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1999-02-23 第145回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月二十三日(火曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  二月二十二日     辞任         補欠選任      狩野  安君     金田 勝年君      角田 義一君     藤井 俊男君      柳田  稔君     寺崎 昭久君      加藤 修一君     白浜 一良君      畑野 君枝君     市田 忠義君      入澤  肇君     泉  信也君  二月二十三日     辞任         補欠選任      吉村剛太郎君     鈴木 正孝君      藤井 俊男君     円 より子君      白浜 一良君     加藤 修一君      小池  晃君     阿部 幸代君      宮本 岳志君     須藤美也子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 鈴木 正孝君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 若林 正俊君                 海野  徹君                 江田 五月君                 郡司  彰君                 寺崎 昭久君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 藤井 俊男君                 加藤 修一君                 白浜 一良君                 浜田卓二郎君                 渡辺 孝男君                 阿部 幸代君                 市田 忠義君                 小池  晃君                 須藤美也子君                 宮本 岳志君                日下部禧代子君                 照屋 寛徳君                 泉  信也君                 月原 茂皓君                 奥村 展三君                 菅川 健二君                 佐藤 道夫君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     中村正三郎君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   尾見 博武君        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣審議官    安達 俊雄君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        人事院総裁    中島 忠能君        警察庁刑事局長  林  則清君        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        北海道開発庁総        務監理官     斎藤 徹郎君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        防衛庁装備局長  及川 耕造君        防衛施設庁長官  大森 敬治君        防衛施設庁施設        部長       宝槻 吉昭君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁大気保全        局長       廣瀬  省君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        沖縄開発庁総務        局長       玉城 一夫君        国土庁土地局長  生田 長人君        国土庁地方振興        局長       中川 浩明君        法務省民事局長  細川  清君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済局長  大島正太郎君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省体育局長  遠藤 昭雄君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        食糧庁長官    堤  英隆君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        運輸大臣官房長  梅崎  壽君        運輸省運輸政策        局長       羽生 次郎君        運輸省航空局長  岩村  敬君        郵政省貯金局長  松井  浩君        郵政省簡易保険        局長       足立盛二郎君        郵政省放送行政        局長       品川 萬里君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設大臣官房総        務審議官     小川 忠男君        建設省住宅局長  那珂  正君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      片木  淳君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君        預金保険機構理        事長       松田  昇君     ─────────────   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算案審査のため、本日の委員会預金保険機構理事長松田昇君及び日本銀行理事松島正之君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。  関連質疑を許します。片山虎之助君。
  5. 片山虎之助

    片山虎之助君 おはようございます。自由民主党片山虎之助でございます。  きょうは総括質疑二日目、きょうもテレビの中継がございます。国民皆さんがごらんになっておりますので、私はできるだけわかりやすく質問させていただきたいと思いますので、御答弁の方もぜひ簡潔直截かつわかりやすくお願いいたしたい、こう思います。  小渕内閣が発足いたしまして約七カ月でございます。総理支持率がしり上がりに上がってきている。二月十六日には某新聞の調査によりますと三七%になっている。大変私は結構なことだと思っておりますし、また内外のこの政権、総理に対する評価がかなり変化してきている、よくなってきている。例えば、これ私じゃございませんので、総理、疾走を始めた鈍牛鈍牛でもないのかもしれませんけれども、あるいは極めて行動的な総理だとか、ただの凡人でないとか、こういろんな──済みません、私じゃありませんから、マスコミが言っているのですから。  私は、それはやっぱり七カ月のいろんな意味での実績が評価されてきている、こう思いますね。例えば、大変新鮮な有能なる内閣の布陣だとか、あるいは思い切った経済対策、財政も金融も税制もありますよね。あるいは大変意欲的な首脳外交、あるいは皆さんがびっくりされたと思いますけれども自自連立、あるいは党内のいろいろな気配り心配りだとか、私はその総合評価がこの支持率論調の変化になっている、こう思いますけれども、総理、これについて、御自身でなかなか言いにくいという面はあると思いますけれども、率直なる御所見をまず冒頭にお聞かせいただきたいと思います。
  6. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ボックス・ポペリー・ボックス・ディーアイという言葉があります。ラテン語の時代から民の声は神の声であるということだろうと思います。そういった意味で、国民の声を十分受けとめていかなきゃならぬし、そのことの評価世論調査という数字にあらわれることもこれは事実だろうと思います。特に、選挙制度によって政治家が選ばれる民主国におきましては、こうした国民の声、世論というものを大切にしなければならないということは言うまでもないことだと思っております。  そういった意味で、今、片山委員指摘のような数字をいただけるということはありがたいことであるとは思っておりますが、ただこのことに一喜一憂することなく、謙虚に受けとめつつ、なすべきことはなしていくという態度が必要だと思いますし、特に政治家にとりましては最終的には結果責任でございまして、今の時点を考慮することもさることながら、将来最終的にどのような結果を国民と国のためになし得たかということに尽きるだろうと思いますので、謙虚に受けとめ、誠心誠意努力をいたしていきたいというふうに思っております。  ただ、若干時間をちょうだいいたしますれば、六カ月間ひたすらに走り抜いてきたような感じがいたしておりますが、御指摘いただきましたように、内閣ができました当初、まずは日本金融システムの大変な危機状況にありまして、この内閣早々、夏の暑い時期にかかわらずすぐ国会を召集させていただき、両院の各党各派の御協力を得ましてまずは金融二法を成立せしめ得たと。  これを基礎にいたしまして、まだこれから継続していく問題ではありますけれども、日本からこの大きな大恐慌の発端をしてはいけないということにつきましては、国会の意思、政府考え方、この理解が求められたということが一種の国際的な信認も得ておることも大切なことだなと思っております。  また、この内閣がうたっております何といっても経済再生内閣、こういうことでありますれば、当面のこの不況をどう乗り切るかということの中に、特に日本中小企業皆さんの大変な厳しい環境の中で幾つかの施策をスピーディーにとり得たということもあろうかと思っております。特に、政府保証債特別保証枠として二十兆円、それから政府関係機関を合わせますと四十兆円を超える保証等をいたしたということにして、これが各県の保証協会等を通じましていわゆる貸し渋りに対しましても非常な効果を発揮しておりまして、実は昨年末以降の中小企業倒産率が六年ぶりに三けたになったということにつきましては、つなぎ的であったかもしれませんけれども、年末の厳しい金融情勢の中でこうしたことが効果あらしめたということに対しての評価もいただいたのじゃないかと思っております。  また、御指摘いただきましたように、たまたま昨年秋以降、諸外国首脳日本に参られたということもございますし、私自身ロシア訪問等のそうした外交的な案件につきましても特に指弾を受けるようなこともなかったと思っておりますし、また日本としての基本的な姿勢は堅持しつつ、諸外国との関係もより友好関係を増進できたのではないかという感じがいたしております。  さらに、先ほど御指摘のありましたように、自由民主党と自由党との連立の問題、これにつきましては、いろいろ世論も厳しい点もありますけれども、しかし同じ基本的考え方の上に立脚をして相協力して、政党が異なりますからもちろんすべての点で一致しているわけじゃありませんけれども、両党のよき点をさらに相乗的な効果あらしめることによりまして政策を実行していける体制が生まれつつある、こういうことにつきましても国民的安心感が生まれているのではないか、こう考えております。  いずれにいたしましても、若干評価をいただける状況になったということはありがたいとは思っておりますけれども、さらに一層の努力をいたしまして国民の期待にこたえますように、この内閣閣員力を合わせまして全力を尽くしてまいる、この決意を申し上げさせていただきたいと思います。
  7. 片山虎之助

    片山虎之助君 総理、御丁寧な答弁ありがとうございました。やっぱり国民の声に真摯に耳を傾けて謙虚に精いっぱい努力していかれれば、私はまだまだ支持率は上昇すると思いますし、論調も高い評価をすると思いますので、ぜひ御奮闘賜りたい、こういうふうに思います。  そこで、自自連立でございますけれども、今、総理のお話にありましたように、理念政策を同じくする者がこの国家的危機のときに大同団結して事に当たる、私はもう大変結構なことだ、こう思うわけでありますが、総理は、施政方針の中だったでしょうか、新しい保守理念を持って大きな役割を果たす、こういうことを言われましたが、私は、よくわかりませんけれども、保守ということは、守るべきものは守る、変えるべきものは変える、そこをきちっとやるのが保守だと自分なりに理解しておりますけれども、そういうことなのかどうか。あるいは新しい保守理念とは、総理、どういうことなんでしょうか。自自連立の意義とも絡みますけれども、御答弁をお願いします。
  8. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自自連立ということの中で、今、委員指摘のように、理念の点でもあるいは政策の面でもかなり近いものがあるという両党が力を合わせて今の国難に当たろうということで一致をいたしました。  そういった意味で、新しい保守と申し上げましたけれども、今、委員指摘のように、保守というものは単に保ち守る、旧来のものを保持するだけでなくて、かの有名なエドモンド・バークの言っておりますように、改革のための保守ということでございますので、両党が相協力してお互いのよき点を十分発揮していくということであるとすれば、そういった意味で、新しい保守といいますか、さらにこの理念を達成していくという意味で実は考えたわけでございます。  保守につきましては、いろいろと易しい意味保守というようなことも言われておりますけれども、基本的には保守理念をさらに高揚して昇華していく、高いものに至らしめていく、こういう気持ちで申し上げさせていただいたところでございます。
  9. 片山虎之助

    片山虎之助君 総理は、施政方針演説でもその他のところでも、富国有徳という新しい国家理念国家ビジョンのことをいろいろお説きになっております。昔は富国強兵だったわけでありますが、今強兵というわけにはいきません。富国有徳、こういうことだろうと思います。  戦後の日本で一番今なくなっているものは、かつてのよき日本日本人の心なんです。本当に今一番失われているのは、私は、道義や倫理や節度、あるいは国や地域社会を思いやる心や恥を知る心だ、こういうふうに思います。  そういう意味で、総理の言われる有徳ということは大変正しいことだと思いますけれども、中身がもう少し国民にはよくわからないんです、有徳中身富国はよくわかるんです。富国有徳有徳の部分についての御説明と、富国有徳を実現するためにはどういう手だてをお考えなのか。何か今度有識者の懇談会をおつくりになるようでありますけれども、総理としてのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  10. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 富国有徳という漢字文字は、読みますとちょっとクラシカルなという印象を持つかもしれませんが、ごく簡単に申し上げれば、物心ということに尽きるのではないかと思います。物と心と言ってもいいかと思います。  日本の歴史をたどりますと、ややそのバランスをとれない時代、例えば戦時においてはやや精神主義高揚というようなことでありまして、もちろん物のことも考えておったと思いますけれども、そういう時代もある。また、戦後を考えますと、ある意味では経済復興というところに日本政治課題が集中した。ですから、物について大変これを豊かにするというところにかなり課題があった。そのことの究極というわけではありませんけれども、かつてバブルの状況というものは、ある意味でそうしたことの集大成のような形になっておった。  そういう意味で、物と心と相調和のとれる、そういう国家の姿というのが望ましいのではないかということでございまして、特にそういう意味で物質と精神と言ってもいいのかもしれませんが、このバランスのとれた国ということだろうと思います。  そこで、富国というのはおっしゃるようによくわかることでありますが、有徳というのはそういった意味日本の一面の姿というものも、さらにこれは実際は存在をしておるわけですけれども、これを明らかにしていくということでございます。  私の親しい学者の説を御紹介すれば、日本の最も象徴的な山は富士山である、富というのはまさにトミである、士というのはココロザシと言ってよろしいでしょうか、あるいは精神といいましょうか、まさに富士の山こそ日本を象徴するものだということで、なかなか漢字の四文字になると古いという感じがしますが、あえて横文字で言ったから新しいというわけじゃありませんけれども、ザ ネーション ウイズ ウエルス アンド バーチューといいますか、要するにそういった富士の山、国家的な国民経済というものをより繁栄させていくということと同時に、一方では日本人が本当に国際的に信頼をされる、そういう国民国家像といいますか、こういうものをつくり上げることができれば望ましいのではないかと実はかねてしみじみ考えてまいりました。  いつぞや私は衆議院の本会議で申し上げたんですが、これは松下幸之助翁がかつてお話ししたことを思い起こして申し上げたんですが、人間には人徳というものがある、しかし国にも国徳というものがあっていいのではないかと。  したがって、戦後の日本というものは国際的に世界第二位の経済大国にはなりましたけれども、果たして国際的に日本という国の評価というものはそれとパラレルになっておるかどうかということを考えますと、そうでないという御意見もかなりある。  こういうことで、二十一世紀にはまさに心身ともに豊かな、そして国家としてもほかの国々から、まさに憲法の前文に書かれておりますように世界に信頼される国家というものをつくり上げられればいいな、こう思いつつ三十数年間やってまいりましたので、そのことをひとつ何らかの形で取りまとめさせていただきたい思いまして、できれば近々いろいろな方々の御意見を拝聴させていただきたい、こう考えておる次第でございます。
  11. 片山虎之助

    片山虎之助君 さすが前外務大臣、今首脳外交の先頭にお立ちになっていますから横文字をぽんぽん挙げられまして、国徳、なるほどそうだと思います。ぜひ有識者懇その他で御意見をお聞きいただいて強力に御推進を賜りますように、やっぱりこの国のいろんなものを変えていただかなきゃいかぬと、私はこういうように思います。  そこで、今申し上げましたように、自自連立をおつくりになって、これを安定、定着させていかなきゃいかぬ。あるいは富国有徳というこれからの国家の形づくりの方向づけをやっていただかなきゃいかぬ。あるいは経済については後ほど申し上げますけれども、来年度は〇・五%のプラス成長をやる、さらには安定成長路線に乗せる。あるいは今まで積極的、意欲的におやりになった首脳外交のアフターケアというような、言葉がよくありませんけれども、これはきちっとこれから形をつくっていかなきゃいかぬ。  そういうことでございますと、総理、七カ月やってこられましたけれども、少し腰を据えて長期的な視点でじっくりと国政に取り組んでいただきたいと思いますが、その辺のお覚悟はいかがでしょうか。
  12. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 一日一生涯というのが私のモットーでございまして、日々全力投球して対応していきたいというふうに思っております。  私自身は、この大任に当たりましてしみじみ実は思いますけれども、私個人の力というものにはみずから限界があるというように承知をいたしております。  ここにおられる堺屋長官が私にあるアメリカの有名な人のお話をされました。これは鉄鋼王カーネギーの言葉でございまして、その言葉というものは、言葉というよりも彼の墓碑銘に書かれておったことでございまして、「みずからより賢き人を近づけるすべ知りたる者ここに眠る」という墓碑銘があるのだそうであります、まだ私は眠るのは早いと思っておりますが。  いずれにいたしましても、みずからの力でなくて多くの方々の力を結集していきたい、そういう意味小渕内閣はそれこそ大臣になっていただかれる方々もそれぞれの分野におきまするエキスパートにお願いをしておるわけでございます。そういった力を結集して現下の課題に取り組んでまいる、チームワーク、そして力を結集するということでございまして、その力によりまして現下の課題に果断に挑戦をして一つ一つその道を開いていきたいというのが今の私の心境でございます。  どうぞひとつ片山委員初め、御鞭撻、御指導を賜りまして、懸案の課題を解決するために全力投球でまいりたいという気持ちを持っておりますので、よろしく御支援をいただきたいと思います。
  13. 片山虎之助

    片山虎之助君 自自連立に絡みまして、前の衆議院議員の総選挙は平成八年の十月二十日だったかと思います。現時点でいいますと二年四カ月前ですね。そうなると、そろそろ警戒水域に入ったんではないか、それから自自連立そのものが国民の審判を受けていないではないか、こういう意見が野党にあるわけですね。だから、この六月か七月か知りませんが、あるいは秋か何かに、そういう意味では国民の信任を問うべきではないか、こういう意見があります。しかし一方、景気、経済がこういう低迷の中にある。衆議院だけでいいますと、自自では超安定勢力なんですよ。何でそれじゃ選挙や解散をやらにゃいかぬか、こういう議論が一方であるわけでありますけれども、総理、この点についてどうでしょうか。  自自連立は信任を受けていないという見方、そういう意味では国民の信を問うべきではないか、こういう意見について総理はどういう御所見をお持ちでしょうか。
  14. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 解散権は総理大臣にゆだねられた大きな権能というふうに理解をいたしておりますが、これはみだりやたらに行使すべきものではないというふうに私自身は認識をいたしております。衆議院におきますれば与えられた四年間の任期というものの中で国民の信託を得て政治活動を行うわけでございますから、そういう意味で四年間の任期を十分責任を持って全うするということが必要かと思います。  しかし、現実の政治の中ではいろんなことが起こってまいりまして、その中で、憲法上から申し上げれば、六十九条の規定によりまして、内閣不信任案というものが通過した場合には総辞職するか十日以内に解散するかどうかの決定をしなければなりませんので、そういう事態に至らぬように最善を尽くしていきたいと思います。  そこで、連立政権をつくったから総選挙をして信任を問うべき、私はこのことは必ずしも否定はいたしません。いたしませんが、現実の政治の中ではしばしばいろいろな形での連立ないし、言葉はなんですが、合従連衡といいますか組み合わせということは、これは生きた政治の中では行われるわけでありまして、その中で、そうした事あるごとに解散・総選挙で国民の信を問うということは、必ずしも一定のルールというものはないかと思います。  と考えれば、今時点におきましては、今十一年度予算を御審議いただいておりますけれども、何はともあれ経済再生のために昨年来行ってまいりました数次の景気対策、補正予算、そして本予算、こういうものを一日も早く成立せしめて、このことによって経済を活性化するということの方を先行すべきであろうと考えておりますので、そういった点から考えますと、自自連立が成り立ったといいましても、今の時点は解散・総選挙をなすべき時期ではないと私は考えておる次第でございます。
  15. 片山虎之助

    片山虎之助君 総理の御意向はよくわかりました。  それでは次に、経済問題に入りたいと思います。  二月十六日の月例経済報告によりますと、大変景気が低迷している、厳しい状況が続いているというのは、もう六カ月ほぼ同じ表現なんですね。それから、堺屋長官が言われた変化の胎動も三カ月同じ表現、変化の胎動については改善を示す動きと悪化の動きが相半ばして広がりがないと。胎動というのは胎児の動きですから、三カ月もたったら胎児は大きくなるんですね、かなり。ところが、どうもこの胎児は大きくならないらしい。  そこで、長官は同時に、今は底ばいだ、しかし底割れはしないんだ、いずれよくなると、こういうことなんですけれども、それはいつごろ、どういうことになるでしょうか。何人もの同僚議員が同じような質問をしたと思いますけれども、ひとつ国民にわかりやすくお願いいたします。
  16. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 我が国の経済は、なお大変厳しい状況にございます。  全体の六割を占めます個人消費が、ボーナスが余り多くなかったこと、減少したこともございまして低迷しておりますし、設備投資は依然として非常に低い段階にあります。また、輸出の方も、アジア諸国の景気が余りはかばかしくございませんので伸び悩んでおります。  そういった全体の状況を見ると、極めて厳しい状況が続いているという認識が続いているわけでございますけれども、一層の悪化を示す数値もある反面、改善を示すものもあります。  公共投資は秋にかなり出ました。発注高は減ってまいりましたけれども、工事高はかなりの高水準を維持しております。倒産件数が、先ほど総理もおっしゃいましたけれども、貸付保証等でかなり減少いたしました。個人消費では、まだら模様でございますが、自動車、家電等、一部良好なものも出てきております。それから、ことしに入りましてから住宅需要はかなり活性化しております。これは、減税効果、低金利効果等もございまして、かなりそういう点では期待ができるということです。  これに対しまして、政府といたしましては、財政的にも金融政策の面でも最大限のことをかなり速やかに手を打っております。最近も、金利の上昇等が懸念されました、また為替の問題等も懸念されましたが、こういった面でも政府としては景気対策を重視した政策を執行しておりまして、委員指摘のように変化の胎動もちょっと大きくなってきているんじゃないかなという感じがしております。  けれども、同時に、夜明けの前が一番暗いということがございまして、これからなお雇用問題などを中心に厳しい数字が出てくるということも覚悟しているような状況でございます。
  17. 片山虎之助

    片山虎之助君 いつごろからどうかというお話がございませんので次の答弁のときお答えいただければいいんですが、今、長官からるるお話がありました。  私は、景気回復を野球の打線に例えますと、一番バッターが公共投資なんです。二番バッターが住宅建設、三番バッターが、これは強打者じゃなきゃいかぬし、個人消費ですね、四番バッターが設備投資、五番が輸出。  一番二番は、これは公的な政府のあれでできますから、一番二番は大変活発によくやっている。公共投資は端境期なんかいろいろありますけれども、これだけ公共投資予算を組んでいるんですから、これはもう十分ヒットを打って塁に私は出ると思います。住宅建設は、もうあれだけ住宅建設促進税制を大幅に上積みしましたから、盛んに今伸びていますね、何割増しになっていると思います。  問題は、やっぱり三番の個人消費なんです。あるいは四番の設備投資、これは需給ギャップが三十兆あるとか四十兆あるとか、個人消費はいまだに何となく冷え込んでいる。輸出もよかったり悪かったり。今ちょっと円が安くなってきましたからよくなると思いますけれども。そこで、一番二番が出ても三番四番が打ちませんから景気回復の得点が入らないんです。一過性になっちゃうんです。  そこで、どうやって三番四番に奮起させるかということが私は景気対策の大きな課題だと思いますけれども、これについてどうでしょうか、長官
  18. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 委員指摘のように、公共事業、そして減税政策等はやりましたけれども、問題はこの住宅でございます。住宅は幸いなことに、この十二月、一月になりましてかなり上昇してまいりました。まだ成約には至らないまでも、住宅展示場あるいはマンションの分譲場へのお客さんの来られる量が急増しているというようなこともございまして、これは十分期待できるのではないかと思っております。こういういわば現在の在庫がはけますと同時に、次の着工が出てまいります。これをより推進するために、土地の利用等も利便なように規制緩和等も考えていく必要があるのじゃないかと思っております。  問題は三番バッターの消費でございますが、これは雇用状況等の安心感がないとなかなか出てこないと思います。したがいまして、恐らくことしの後半になってくるとかなり景気の安定度が出てくる、そういうことからよくなるのじゃないかと考えております。(発言する者あり)  税制について申し上げますと、国民の八割が去年よりも増税になるというように言われております。去年の税制は一時的な特別減税がありまして、それと比較するのはいかがなものかというのは大蔵大臣も再三答弁しておられるところでございますが、恒久的な減税、恒久的な税が下がったということでの安心感というのがやはりあると思います。そういった点を含めて、三番バッターが夏以降に出てきてくれればと思っております。  設備投資の方、これはやはりかなりおくれると思います。というのは、設備投資が出るためには企業の投資効率がよくならなきゃならない、つまり利益が上がる見通しができなきゃなりませんが、それに至るまでにはまず景気がよくならないとそういう見通しがない。  それから、もう一つ輸出でございますが、従来は輸出が二番バッターか一番バッターで出てきたのでありますけれども、アジアの経済がどうか、アメリカの景気がどうかというような見通しでございます。アジアの景気については下げどまりになったと一般に言われておりますが、まだ輸出がふえるまでに至っておりません。このあたりもこれからの景気の注意信号だと思いますが、これだけ金利の点、金融の点、そして公共事業、財政あるいは税制の面で措置をとりましたので、まさにハマの大魔神が出ておるわけでございますから、ことしじゅう、来年度、十一年度には必ずプラスに転化すると私は自信を持っております。
  19. 片山虎之助

    片山虎之助君 今、長官が言われましたように、来年度の当初予算、十一年度の当初予算は八十一兆八千六百億ですか、一般歳出は五・三%、二十何年ぶりですね、それだけふやしている。今まではマイナスシーリング、ゼロシーリングで抑えつけてきたものがばっとこうなっている。それから減税は九兆四千億です。もう大変な減税。  これだけやってどうにかならないということはないと私も思いますけれども、総理、これだけやったんですから、もう追加の予算だとか追加の減税を考えるとか、そういうことはないんでしょうね。何か昨日の何かの会合で、新聞によりますと、総理は景気回復の秘策があると、こう書いておりました。何か秘策があったら、全部は言えないかもしれませんが、少しでもいかがでございましょうか。
  20. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 昨晩は私の親しくしておる経済人との定例の会合でございまして、ちょっと新聞の報道が違っておりました。私は、正直申し上げて政府としてやるべき手段はすべて講じてきた、そこでこれからは経済界の皆さんがみずから立つというつもりで積極的に、設備の更新も含めまして、設備投資その他全力を挙げて前向きに進んでもらいたいという実はハッパをかけたわけでございます。秘策なんというものがあればもう出しておるわけでございまして、そうしたことも含めまして、実はいろいろのマクロ、ミクロの経済も含めましてさらに、さりながら実経済の中で生きておられる方々が何らかの秘策といいますか、考え方がないか、お互いひとつこれをともに考えてもらえないか、こういうことを申し上げたのでありまして、私がいいものを持っておればそんな隠し立てしないでもう一生懸命これは出させていただいておるということだろうと思います。  それから、お話しのように、やはり政府としての限界ということを申し上げちゃいけないかもしれませんけれども、財政出動によって景気に与える影響というものは、今、片山委員指摘のように、GNPの六割を超えるこの消費というものがどうして生まれてくるかということが最大の問題だろうと思います。  いろいろの観点があると思います。きのうも今井先生から消費税の問題等にも触れられましたし、また今年行っております特別減税の効果等にもございました。  そういった意味で、この消費をどうするかということですが、これも昨日申し上げましたが、かつてのような不況時における状況と今日は性格をかなり異にしておる。  戦後何回かの経験した不況というものは、世の中に物が全く不足したとは言いませんが、かつての三種の神器を取り上げましても、カー、クーラー、カラーテレビ、お金があれば買いたいということでございました。今も新しい製品が、かなり経済界も知恵を絞りながら幾つかの商品が非常に売れてはおるようでありますけれども、そういった意味で、豊かさの中の不況状態というかつてない経験をしながら、これを乗り越えるという意味で財布のひもが非常にきつく縛られておる。しかし、財布の中身はかなりこれはあるということもかつてとは若干違ってきておるという中でございます。  そういう意味で、消費の拡大についてこれからも我々もさらに勉強をさせていただきますけれども、委員その他皆さんの御意見をお聞きしながら、いかにひもを緩めさせられるかということだろうと思います。  一番簡単なことを言えば、かつてのようにインフレーションが起こるというようなことになりますれば必然的にお金というものは動いてくるということですが、長い経験からそうした手段をとるということは難しいということになれば、今の集中すべき課題としては、衣食住でやれば住宅問題ということで税制も取り組みましたけれども、この辺にさらなる消費の大きなことが生まれてこないかというようなことも含めまして、この経済の中で消費をどう伸ばしていくかという問題。  それには、国会でもいつも問題になっておりますけれども、将来に対する不安というような問題があればこそ、ますますみずからの自己責任で生きていくということで消費よりも預貯金だ、こういう傾向になっておることでございまして、こうした点につきましてはさらなるひとつ知恵を絞りながら、やはりこの六割を占める消費が大きく進んでくるということでないと、景気全体に与える影響から考えまして極めて重要なポイントであると認識をして考えてまいりたいと思っております。
  21. 片山虎之助

    片山虎之助君 総理、わかりました。  まさにこれから景気回復には、国はもうかなりやることはやったわけでありますから、経済界や国民に自信を持ってもらう、元気を出してもらう、こういうことだと思いますね。  我が国は本当に今世界有数の底力のある国で、もう何度もこういうところでそういうことが言われておりますけれども、個人の金融資産千二百兆だとか、対外純資産が一兆ドルだとか、外貨準備高も二千億ドルを超えているとか、これだけの技術、これだけの優秀で勤勉な国民、しかも廃墟の中これだけの経済成長をやった実績がある国なんですね。その上にもうこれだけの経済対策をとっている。これでまあどうにかならないなんということがあるんだろうかという気がしますけれども、まさに今、総理が言われた、経済界や国民皆さんに自信を持ってもらう、元気を出してもらう、こういうことだと思いますね。  戦後の悪い癖は、国に頼り過ぎるんですよ、公に。昔は滅私奉公だったんですよ。今は滅公奉私なんですよ。これはもう富国有徳ということで直してもらわにゃいかぬ。滅私奉公が私はいいとは思いませんけれども、今の滅公奉私はいけません。国に頼る、国に依存する、国の責任にする、あるいは地方団体の責任にする。こういうことではこの国は再生しないと思います。  そういう意味で、経済の面ではぜひ経済界や国民が自信や元気を持つ環境を整えていただく。二月の金融経済月報で日銀もそういうことを言っておりますけれども、そのためにはやっぱりちゃんとした景気回復の見通しを政府が責任を持って示していただくということ、さらにもう一つは、雇用不安や老後不安解消のための雇用対策や社会保障の対策をきちっと示す、こういうことが私必要だと思います。どうでしょうか、総理大蔵大臣、お願いします。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど一番バッターから四番バッターまでの話を……
  23. 片山虎之助

    片山虎之助君 五番まで。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 五番まで伺っていまして、今おっしゃったことと同じことを申し上げようとしているんですが、おのおののバッターの打力が違う。  御承知のように、これ経済企画庁のことしの経済見通しでございますけれども、五百兆でございます。五百兆円でございますが、そのうち一番バッターの政府による資本形成というのは四十兆しかございませんので、八%ぐらいでございます。それから、その次の住宅でございますけれども、これは二十一兆でございますから、四%でございます。そこで、消費は三百兆ですから、これは六〇%ありまして、企業設備は衰えたといえども六十三兆と書いてございますから、一二%。  ですから、いかにも打力が違いまして、大いに一番バッター、二番バッター、確かに頑張っているのですが、本当に打ってくれるのは民間が打ってくれないとどうにもならない。
  25. 片山虎之助

    片山虎之助君 三番、四番。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のように、大変重い大きな経済ですから、何とかして引っ張ろうとしましても、四四半期、前に動かないで後ろへ動いているわけでございますから。一昨年の十―十二月から四四半期みんなマイナス成長しておりますから、前へ動いてくれない、後ろに動いていっているので、これを前へ引っ張るのにやっぱり大変な力が要るが、どうも一番バッター、二番バッターが一生懸命やっても、おっしゃるように三、四のところがやってくれない分にはなかなか大変で、それで堺屋さんが言われるように、三月の初めになりますと十―十二月が果たしてプラスであったかマイナスであったかということがわかりますが、それもさることながら、この一―三月の、今のところがプラスに出てくれるかどうか。ちょっと動き出したら必ず動くのですが、後ろへ動いてくれたのではこれはどうしようもないので、まさにおっしゃるように一番大きなシェアを持っております民間の御奮起を願わなきゃならない。  このごろ伺っていますと、もう政府もこれだけのことをやったからな、今度はおれたちの番だなというお話が聞こえるので、ぜひそうお願いしたいと思っておるわけです。
  27. 片山虎之助

    片山虎之助君 経済界にそういう元気な意見が出始めていることも承知いたしておりますし、ぜひそれが大きな動きになることを期待いたしたいと思います。  そこで、三番バッターの個人消費を刺激して頑張ってもらうためには、私は今の経済対策はフローの経済対策金融システムの安定のためのいろいろの対策、またもう一つ、資産デフレ対策というのが要るのじゃないかと思います。株がこれだけ下がる、土地がこれだけ下がると、国民はみんな株を持っているのです、みんな土地を持っているのです、大小ありますよ、大小あるけれども、みんな損した損したと思っているのです。もう気分が落ち込みますよ。これではなかなか個人消費が活発になるというわけにいかない。バブルのときは逆だったのですね。土地が上がる、株が上がる、もうかった、もうかったというので個人消費に行くのです。アメリカがまさに今そうだと思います。いい循環でぐるぐる回っている。  そこで、株を上げる、土地を上げるということを私は本気で考えなきゃいかぬと思うのです。しかし、そんなことを政府が入って、公が、しかも公的資金を出してという議論は確かにあると思いますけれども、そこのぎりぎりの接点で何らかの私は対策をとる必要がある。例えば株価対策につきましては、株買い取り機関その他ということが言われておりますけれども、これはなかなかそういうわけには私はいかないと思う。  そこで、恐らく衆議院その他でも議論になったと思いますけれども、持ち合い株を解消するということが一つ。同時に、厚生年金基金か何か積立金がかなり穴があいているから、足りないから、それを株式で拠出して、一石二鳥のことはどうか、こういう議論がありまして、厚生大臣はこの国会で現金でなくて株式でよろしいという法律改正も考えるとかやるとかという御答弁衆議院予算委員会でしたやに聞いておりますけれども、これについて、厚生大臣、お願いいたします。
  28. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 厚生年金基金の掛金は、これは法律上現金で納付することになっておりますが、今、ただいまの経済状況で厚生年金基金の赤字がかなりふえてきております。  一方、株式市場との関係ももちろんございますが、一定の条件であれば、株式等の有価証券を積み立て不足に充てるということをいたしますれば、円滑にこの年金基金の方の積立金解消にもつながりますし、それからまた来年の四月からは国際会計基準の適用等もございますから、貸借対照表上それを表示するということもございまして、この不足額を株によって償うということも可能になります。  したがって、私どもは今鋭意検討しておりまして、今度、三月には年金の改正法案を出す予定にしておりますが、その中にできたら織り込みたい、そして実現に向けて法律改正をいたしたい、こう思っております。
  29. 片山虎之助

    片山虎之助君 それと、株に係る税の話がいつも問題になりまして、有価証券取引税は四月から廃止、こういうことを言っておりまして、配当課税については昔から二重課税じゃないかという議論があります。それから、キャピタルゲイン課税は今度の税制改正、二年後には申告分離に移行する、こういうことなんですが、私はこの辺はいろんな考え方や説があると思います。  しかし、何か税の方で株が上がるようなうまい思案がないのかなという気がいたしますけれども、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今、資産デフレということをおっしゃいましたが、先ほど総理がウエルスということをおっしゃいました。この間もアメリカへ行って聞いたんですが、資産効果というのはウエルスエフェクトと言うんだそうです。アメリカの株が上がっている。日本の場合は今度は逆に下がっている。ですから、そこが大事なのです。  これもその話の続きだったんですが、アメリカが金融が非常にごちゃごちゃしましたときに日本と同じような経験をして、彼らは、不良資産というものを高く売ろうと思っちゃいかぬのだと。政府は最初は損してもいいと思って売ると、それで値がつく。そうでないと、いつまでたっても値がつかないので資産が動かない。そのことは日本も同じかどうか知らないけれども、とにかく安くても損するつもりで売って初めて品物は動き出す。殊に不動産はそうなので、そういうことは大事なことだよということを私に言ってくれましたが、確かにそういうことはあろうと思います。だれかが、それでぼろもうけする人が一人や二人いても、全体の市場が構成されることの方が大事だという考え方はやっぱり今の資産効果に大事なことだと思います。  今、厚生大臣がお答えになったことも、法律改正も要りますし、大変複雑な部分がたくさんございます。税法もかかわってくると思いますが、できればいいなと私も思っていることの一つでございます。  それから、税法でも、今御指摘になりましたような有取税だとか取引所税だとか、邪魔になるものは大体切ってしまおうと思っておりまして、いや邪魔になるというのは語弊がございますけれども、流通の妨げになるということが今はよくないことでございますから、流通したらまたお金をもらえばいいので、流通のないのに流通税というのは取れっこないですから。  ですから、譲渡所得の方も私は、いろいろ議論はあるけれども、総合課税というのはしなくてもいいんだろうと思いますし、何にも取らないというわけにはいきませんですけれども、殊にこのごろは余りそういう課税をいたしますと外国へ資産が行ってしまうということもございますから、そのことも考えて、なるべく税制がそういうことの流通の邪魔に、邪魔にならないというのは語弊がございますが、今としては流通が起こることが大事なんだろうと思います。
  31. 片山虎之助

    片山虎之助君 大蔵大臣、主税局長が赤くなったり青くなったり向こうでしておりますけれども。  そこで、今、大蔵大臣からもお話がありました不動産、土地です。今土地の税制は、特に譲渡益や何かについての課税はバブルの前より緩いんですね。もっと緩和しているんですよ。しかし、土地が動きません、動かない。私は、やっぱり土地が動いて、いい土地はちゃんと高くなっていく、こういうことでなければどうにもならないのではなかろうか、こう思います。  いろんな工夫が今なされておりますけれども、土地については、例えば昔から言われておるんですが、公共や公共用に係る土地は少し長目に思い切った前倒しの先行投資を、先行取得をやる。どこにやらせるのか。住都公団がいいのか、あるいは地方団体の土地開発公社がいいのか、私はよくわかりませんけれども、何かそういうことでとにかく動かせると。  それから融資も、土地に対する融資は、例えば民間なら五〇パーぐらいでしょうか。住金は貸しませんね、土地に対しては。国民金融公庫も事業用でなきゃ貸さない。だから、この辺をもっと緩める。民間については、例の中小企業の貸し渋り対策で信用保証の特別の手だてをしましたから、何かああいうものでも考えるのかどうか。あるいは住金でも、条件、限定をつけて土地についても貸してやる、家だけじゃなくて。国民金融公庫ももっと緩める。  今度、ローンの例の住宅建設促進税制では土地を認めましたですよね。あれもやや厳重なんで、もっと私は緩めてもいいんじゃなかろうか、こういう気がいたしますけれども、いかがでしょうか、土地について。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府の税収見積もりが一番大きく外れる部分は、一つは法人でございますけれども、一つは個人の土地取引による譲渡所得の見積もりがいつもこういうことになりますと外れておりますので、そういう意味では、予期以上に土地の取引が動かない。  わずかですが、ああやって住宅金融公庫のローンの対象に土地を入れたり、あるいは、買いかえたい人が今の家を売ると損するわけですね、だから買いかえない、しかしその損はひとつ一般所得から引いてあげましょうといったような、もう少し正確に申しますと、損を少し将来に向かって引いてあげましょう、こういうようなこともしたり、これは余り普通のことじゃございませんが、したりしておりまして、できるだけ税制の上でも土地の動きを何とか邪魔にならないように一生懸命いろいろ考えております。
  33. 片山虎之助

    片山虎之助君 来年度の税制改正では、私も党税調に長くかかわっておりますので、相当思い切ったことをやりましたね。今、大臣が言われたキャピタルロスの手当ても両方できるような、ローンの恩典を受けながら、いろんな仕組みをとりましたから、ぜひ国民皆さんにPRして活用してもらう必要があるのじゃなかろうか、こう思います。そういう意味で、ぜひ資産デフレ対策も、フローの経済対策金融システム対策と並んで三点セットでお考えいただくことが私は個人消費を刺激していく、こういうことになると思いますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。  そこで、今回の減税なんですが、今回の減税は恒久的減税ですよね、恒久減税でない。ただし、今までの減税が私は場当たりとは言いませんけれども、単年度、小刻みの減税だったんですよね。そういう減税は効果がないですよ、景気対策として。そういう意味で、そういう小刻みのものが恒久的になったということはいいと思いますけれども、恒久的というのはどういうことかよくわからない。単年度でないという意味なんでしょうね、二年か三年か四年か知りませんけれども。  しかし、やっぱり税制というのは安定する、減税の方向というのはきちっとこういうことになる、抜本的にこういう改革に向かうんだということを私は国民にきちっと示すことも、これだけ国、地方の長期債務が六百兆を超えているんですから、必要だと思います。そういうことも個人消費を萎縮させている一つだと思います。  将来どうなるのかわからぬ、将来増税になるのかわからぬ、妙なことになると、そのためにはやっぱりここは厳重に行こう、こういうことになると思いますので、この恒久的減税、それがいずれ恒久減税に変わるんでしょうけれども、この辺の道筋はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前内閣において、やむを得ない事情はありましたが、平成十年分の所得について定額の減税をいたしました。その結果、課税最低限が大変高く御承知のように上がっておりまして、これをいつまでもやっているわけにはいきませんと思いましたが、今回恒久的と申し上げたのは、所得税の基本に返って定率減税にいたしまして、そしてこれはそのかわり一遍限りではなくて将来とも法人、個人を通じましてこれを変えずにまいります、こういう意味での恒久的と申し上げました。  ただ、日本経済が本当に順調にプラスの成長軌道に入りましたときには、実は今の国の税収は大変毎年減っていきまして、マイナス成長でございますから、昭和六十二年の税収と同じでございますから十何年押し戻されてしまっております。こんなことでいいはずはないので、したがいまして、日本経済が順調な成長過程に入ったとき、私は二%ぐらいの成長がサイクルでいけるというぐらいな段階ではないかとひそかに思いますが、そのときには全部税制も財政も中央、地方の関連もやりかえなければならないだろう、そういう時期を我々は忘れてはならないわけでございますから、そういう意味で、そのときに初めて二十一世紀の日本の恒久の税制ができる、それまでの今の税制でございます、こう御理解をいただきたいということでございます。
  35. 片山虎之助

    片山虎之助君 それは大蔵大臣、こういうことですね。来年度はプラス〇・五%、再来年度は安定成長軌道に乗せたいと、二%かどうか知りませんが。そうすると、それ以降の安定成長軌道に乗ったら抜本的な改革をやる、こういうことですね。だから、それまでのつなぎが恒久的だと。二、三年後と、余りはっきりそういうことを言うのはいかがかと思いますけれども、そういう感じでいいんでしょうか。
  36. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そこは実は十分議論はいたしておりませんけれども、感じで申しますと、仮に今年〇・五%成長があって来年二%になる、しかしその軌道に乗ったか乗らないかはちょっとやっぱり確かめる必要があるであろう。総理の諮問機関の方々は、そこから後、日本経済が本当に大丈夫だというまでにどのぐらい間合いをとるかという御議論をしていらっしゃるそうでございますけれども、おっしゃいますようなタイミング、これせっかく軌道に乗って、早まってやりますともとへ戻しますから、そこも考えながらと思っています。
  37. 片山虎之助

    片山虎之助君 税では、経済界が非常に要望が強いのは連結納税制度がありますね。税調でも大議論しまして、二〇〇一年を目途に導入を検討する、導入しようと。ただ、これはいっぱい問題がありますね、技術的な問題、それから税収が大幅に落ちたりするとそれはぐあいが悪いですから、これはぜひ御検討いただきたいと思います。  もう一つ、地方税の関係では、法人事業税の外形標準課税の話がある。これも来年度は見送ろうと。こういう景気ですから、私は当然だと思います。特に、中小企業や小売に対する影響を考えずにやるわけにはいきません。  そこで、報道によりますと、野田自治大臣が、基礎年金の国庫負担率を三分の一を二分の一に上げることによって企業の社会保険料負担が軽くなるから、その分を肩がわって、例えば給与か何かでしょうか、それで外形標準化したらどうかと。何か国庫負担を高めることによって地方税収を安定させるみたいな話になりますけれども。そういうことが個人のお考えか党のお考えか、そういうことを言われたようですけれども、それについていかがでございましょうか。
  38. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 二つの視点からこの問題について問題提起を自由党としてしておったわけであります。  一つは、地方財源というものの性格からいって、地方行政の中身そのものが極めて住民の生活と直結していることだけに、できるだけ普遍性があり、そしてまた税収の安定性がある、そういう意味で応益課税的なものが中心的な形であることが望ましい。そういう意味で、事業税についても外形標準というものをその世界の中に導入するということの方がはるかにいいということは、いろんな地方制度調査会なりあるいは政府税調においても、あるいは自民党税調でも大体そういう方向で合意ができておると思います。しかし、現実にそれを実践しようとすれば、率直に言って、現在所得課税がまず中心でありますので、そういう点で赤字の法人からは増税だ、黒字の法人は減税だ、こういうことになってなかなか政治論として難しい部分があるということで、理屈はみんないいんだが実際の政治論になるとしんどいということが現実にございます。それをどう乗り越えるかということが一つございます。  それから、いま一つ自由党として、現行の社会保険というシステムによって老後の不安を解消することには限界があるのではないか。そういった点で、むしろ現行の社会保険の、課税標準という言い方がいいかわかりませんが、所得を基準にした仕組みにしている社会保険というのは、大体所得を基礎にして計算して社会保険料という形になっている。それを逆に消費を基礎にした料率を考えるということであれば、まさに消費税そのものが一つの社会保険料的な要素があるのではないか。そんなことから、基礎年金やあるいは介護や老人医療について、現行の社会保険という形よりも、現在の消費税を社会保障税という形に切りかえて老後の不安を解消する形に使ったらどうだ。  ただしその際に、実は現在の社会保険料というのは雇用主が半分負担している、その部分まで実際に低くなってしまうのは、企業にとって不当なる優遇ではないかという見方が一方であるわけであります。むしろ、企業が従業員の給与に応じて支払っている社会保険料、その低くなる部分はむしろ地方の応益課税的な、地方に納めてもらう、地方の財源に振り向けていくということと組み合わせていくことによって、より地方財政の安定性と連動するのではないか、そんな発想で実は自由党として言ってきたことが事実でございます。  ただ、当面、大蔵大臣が今おっしゃいました国、地方を通ずる、あるいは国税全体のきちんとした税体系そのものを恒久、まさに恒久的でなくて恒久措置としての税制改革をやろうという、このことについては全く同感でございますが、地方の独自の事業税という世界においては、一刻も早く、ザ・スーナー・ザ・ベターだと思います、事業税の応益課税化ということについては。ぜひそれをまつまでもなく、与野党を通ずる議論の中でその方向性が出るならば、地方の自主性、自立性、その要請を満たす大事な柱としての改革といいますか、改正ができるならばと、そう考えているわけであります。
  39. 片山虎之助

    片山虎之助君 自治大臣、ありがとうございました。  私は、地方税の特性から考えて外形標準課税化は進めるべきだと思いますが、いろんな関係がありますから、前向きにかつ慎重に御対処をお願いいたしたい、こういうふうに思います。  当委員会、昨日審議をやりましてきょうでございますが、ガイドライン法案の質問がまだないんですね。ないから私質問するわけじゃありませんが、衆議院予算委員会では半分ぐらいがガイドライン法案についてのいろんなやりとりだったような気がいたします。  衆議院では特別委員会ができました。参議院でも、まだ各党協議調整中でございますけれども、特別委員会をつくる方向での議論が進んでいくだろう、こういうふうに思います。また、これだけ衆議院予算委員会その他で議論が出ましたので、問題点がある程度もう全部出尽くして、しかも修正云々の話まで出ておるわけですね。ただしかし、それはちゃんとした特別委員会ができるわけでありますから、そこでの議論をまたなければなりませんが、何点かについてお考えをお伺いいたしたい、こういうふうに思います。  周辺事態についていろんな議論がございました。周辺というのは全く地理的概念なんですけれども、それに事態がついているわけですから、それは地理的要素は含むけれどもやっぱり事態の規模や態様や程度によって変わってくると。これは私は政府の言われることは正しい、こう思います。事態が重大なら周辺が延びるんですよ、遠くまで周辺になっちゃう。事態が小さければ周辺は手前になる。その意味で、私はそこは弾力的に考える方が正しいと思いますけれども、今一部で言われているように、例えば一条の「目的」に、日米安保条約の目的の枠内とか安保条約の枠内とか、こういう文言を挿入することによって今までの政府のお考えが変わってくることになるんでしょうか。  それによって、例えば地理的な限度が──地理的要素はないと言っても、地理的要素はあるんですよね。それは衆議院で御答弁になったように、地球の裏側だとかアフリカだとか中近東は入らない、インド洋もそうかもしれません。こういうことなので、そういうお話がこの一言、ワンセンテンスを入れることによって変わってくるんでしょうか。そこのところをちょっとお伺いいたしたい。外務大臣になるんでしょうか。
  40. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 法案第一条において、この法案の目的として、我が国の平和と安全の確保に資すること、こういうふうに既に書かれているわけであります。そして、安保条約の目的というのは、我が国と極東の平和と安全ということでありますから、もう安保条約の目的の枠内であるということは既に明らかになっているのではないか、こういうふうに思っております。  ですから、そういう言葉を入れることは、直ちに地理的範囲がどうなるのかということにはつながらないと思いますけれども、屋上屋を重ねることになるのではないかというふうに考えております。
  41. 片山虎之助

    片山虎之助君 外務大臣は、言わずもがなで、もう既にそのことははっきり今の条文にあると言うんですが、恐らく、挿入をしたいという向きは、そうすることによって、安保条約そのものは「極東における」でしょう、ただ場合によっては米軍の活動がその範囲を超えることもあるかもしれぬから極東及びその周辺でしょう、だからそれを入れることによってそれがはっきりするという意図をお考えじゃないかと思うんですが、今の外務大臣のお話では、入れようが入れまいが同じだと。そういうことですね。
  42. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 安保条約の目的は、我が国の安全と極東の平和と安全、両方あるわけです。そのうちの我が国の平和と安全に着目したのがこの周辺事態法案であるわけであります。  文言として安保条約の目的の枠内とか安保条約の枠内とかいう言葉を入れるのがどういう意味になるのかというのは、まだ政府としてそういう案を出しているわけではありませんから有権解釈をする立場にないということですが、それによって地理的範囲がどうだということには、今の状況と変わってくるということはないのではないかと思っております。    〔委員長退席、理事鴻池祥肇君着席〕
  43. 片山虎之助

    片山虎之助君 政府としては今のままでもう十分で、入れることはむしろ屋上屋である、地理的範囲云々もそれによって影響を受けない、こういう御答弁だと思いますが、そう理解いたします。  それから、もう一つ議論になっているのは、これもまた何度もそういう議論があったと思いますが、基本計画の国会報告を国会承認に直すと。  そこで、私がよくわからないのは、類似の例として防衛出動や治安出動やPKFがあるわけですね。防衛出動は事前ですよね、原則事前。PKFも原則事前。治安出動は事後ですけれども、みんな承認になっているんですね。今回、これは報告とされたのは何かもちろん意味があると思いますけれども、どういうことなんでしょうか。
  44. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 委員御承知のとおり、今度の法律で三つの活動が書かれてあります。後方地域支援、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動でありますが、この三つの活動はいずれも防衛出動と異なり武力の行使を含むものではない、それから命令による治安出動と異なり、国民の権利義務に直接関係するものではない、それからPKOの凍結業務と異なり、迅速な決定を行う必要があるものであると。こういう観点から見ておのずから異なるわけであります。  また、この三つの活動は何ら強制力を伴うものでございませんが、例えば、自衛隊法に定められる海上警備行動や要請による治安出動は、警察官職務執行法の武器使用規定が準用されるような強制力を伴う活動であるにもかかわらず、国会承認が必要とされてはおりません。  以上のように、活動の性格及び他の法律との均衡といった点を考えますと、本法案における基本計画については必ずしも国会の承認を得る必要はなく、基本的計画を遅滞なく国会に報告し、国会での議論を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切と考えているところでございますが、この点については国会において十分御論議を尽くしていただきたいと存じている次第でございます。
  45. 片山虎之助

    片山虎之助君 防衛庁長官の御答弁よくわかります。よくわかりますが、やっぱりシビリアンコントロールのあり方等を含めて国会で十分議論していくことだろう、こういうふうに思います。  もう時間がありませんので次に行きますが、船舶検査活動、それは国連決議に基づく船舶検査活動なんだけれども、我が国がやるものは強制力はありませんですね。相手の船長の同意が要るとか、説得だ方向転換だとかということになって強制力がない。ないから、例えば国連決議を外しても一向に構わないではないか、こういう議論がありますが、外した場合に国連憲章に違反するというまた意見があるわけですね。そういう臨検的な船舶検査活動ができるのは、自衛権に基づく場合か国連決議に基づく場合だ、こういう制約があるようですけれども、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  46. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 船舶検査活動等については旗国主義というのをとっていまして、X国の旗を立てた船についてはX国が取り締まる。この場合は、仮に船長の同意があったとしてもそれは同様のことでありまして、ある国がある国について検査するということについては、船長の同意があって任意のものであってもやはり旗国主義というのは適用されるわけです。  その旗国主義が原則でありますけれども、じゃどういう場合できるかというと、典型的な例が国連決議がある場合、あるいはX国の同意があるような場合、明示の同意がなくても同意があると同じような状況があるような場合には、それは我が国としてできますけれども、何の国際法上の根拠もなくて、任意の検査だからできるじゃないかということはないというふうに考えております。
  47. 片山虎之助

    片山虎之助君 その点もまた、国会で恐らくいろんな議論になると思います。  そこで次に、地方自治体の協力なんですね。私は、地方自治体の協力、当然だと思います。ただ、あの書き方がもう一つ、いろんな混乱や誤解というか疑問というのか、そういうものを生じているので何かマニュアルをおつくりになるとか協力例を示されたとかいうことですが、もっときちっと、こういうことが地方自治体の協力の内容なんだ、こういう場合には断れるけれどもこういう場合には断れないよ、それはやっぱりやってもらわなきゃいけないよということをもっとはっきり丁寧に私は地方自治体に教えてやるべきではなかろうかと。  さらに言えば、もっと法案をきちっと地方自治体に義務づけるように書かれてもよかったんではないかと個人的に思いますけれども、その辺を含めて御答弁お願いします。
  48. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 法案の第九条によりまして、国が国以外の者に対して求め、または依頼する協力の内容につきましては、衆議院予算委員会等においても典型的な例を累次説明してまいりました。特に、政府部内の意思の統一を図るために、内閣官房が中心になりまして協力の具体的な項目を取りまとめたところでございます。  協力内容のあらゆる項目についてあらかじめ具体的に定めることは困難でありますが、現行法の法令の枠内で可能な協力を求め、または依頼するものでございます。また、現行法令を超える新たな対応を要請するものではございませんので、本法案では、法案の四条二項七号で定める基本計画において、協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項について記載することとしております。  また、衆議院予算委員会では、運輸大臣から、特に運輸省の所管に関する事項でありましたが、地方の協力についてのマニュアルをつくることにつきましても検討してまいりたいという答弁をしているところでありまして、いずれにしても、御指摘の点も含め国会において十分に御審議をいただきたいと考えているところでございます。
  49. 片山虎之助

    片山虎之助君 マニュアルをできるだけ丁寧に網羅的に、全部の網羅はできないかもしれませんが、私は示してやることが必要だ、それが十分な協力を得るもとだ、こういうふうに思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  そこで、ガイドライン法案をいろいろ勉強させていただく中で、例えば今度は後方支援というんじゃないんです、我が国の場合には後方地域支援なんです。後方地域支援なんという概念が国際法上あるのかといったら、ないというんです、お聞きしますと。後方支援というものは、これはまさに兵たん支援というのか軍事補給というのか。わざわざ前方地域と後方地域を分けなきゃいかぬというのは、やっぱり我が国の憲法の今までの何十年かにわたる、主として国会答弁における解釈との乖離をしないようにするためなんです。だから、後方地域なんという特殊な概念をつくっているわけです。後方支援というのはそうじゃないんです。  私は、それはそれで今までの積み重ねですからやむを得ないと思いますけれども、我が国の将来の安全保障のあり方、それから日米の関係、国際連合との関係、いろんなことを考えた場合に、根っこをもう一遍みんなで議論して、国民的コンセンサスがなきゃできません、そんなことは。できませんけれども、国民的なコンセンサスを得てしっかりやる、議論をすべきではなかろうか、こう思います。  こういうことを言うと、あれは右だと言われるかもしれませんが、例えば集団的自衛権は持っているけれども使えないなんというのはわからないんです、国民は。持っているけれども使えないというのは持っていないということなんですよ。しかし、これは憲法と国連憲章のはざまでそういう大変知恵のある人がつくり出した解釈なので、それはそれで私はやむを得ないと思いますけれども、一遍しっかり将来のことを考えて議論していく必要があるのじゃなかろうか、こういう気がいたしておりますので、個人的な御感想でも結構でございますから、外務大臣、何かありましたら。
  50. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) おっしゃるように、後方地域というのは国際法上今まで使われてきた概念ではありません。そして、おっしゃるように、憲法九条との関係で武力行使との一体化を定型的に避けるためにそういう概念をつくったというのもそのとおりであります。  ただ、そのことは米国との間でも我が国の憲法はこうだからこういうことですよということはきっちり話し合っておりますし、米国はきっちり了解していると。そして、そのことは近隣諸国にもきっちり説明して、だから大丈夫なんですよということは我々としても努力していますし、これからも努力していくと。  そして、御質問の本当の趣旨については、今私はちょっと答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  51. 片山虎之助

    片山虎之助君 時間がなくなってまいりましたが、行革を少しだけやらせていただきます。  今回の国会では行革法案が五十一本あるんですね、総理。まさに行革国会なんですよ、後半は。ガイドラインもありますが。そこで、行革についてひところの熱意が大変冷めたのではないか、こういうことが巷間言われておりますけれども、そんなことはありませんですよね。総理の御決意をひとつ。
  52. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 昨年七月三十日に内閣を発足いたしまして、翌日、内閣総理大臣談話を発表させていただいております。その一つは、言うまでもありませんが、この日本経済を再生させる、景気回復に向けた政策の実行に全力投球をしますということですが、もう一つの点は、この行革につきまして、中央省庁再編を初めとする行政改革は、スリムで効率的な行政や民間活力の活性化のために不可欠のものであり、不退転の決意で実行しますと。内閣総理大臣としては大きくこの二つの問題について決意を申し述べさせていただいておるわけでございます。  いささか今の片山委員のような御批判をちょうだいいたしている向きも、片山委員というわけじゃありませんが、一般的にそういうことを言われますのは、一つは、前の橋本総理大臣御本人も、自由民主党にありましたときに行財政調査会長を長きにわたって相務められまして、そのことを政府の責任者として実行しようということで行政改革を六大改革の一つとして大きく取り上げ、かつ、みずからも体験上この問題に対して熱意を燃やされました。それに相比較をいたしまして私が少しおくれをとっているのじゃないかということでありますが、私はその点については、橋本総理の意思を十分受けとめまして、今申し上げましたように、内閣の二つの大きな柱と言っても過言でないようなこの行革については強い決意を持って臨んでまいりたい、こう考えておりますので、これまた御鞭撻をいただければありがたいと思います。
  53. 片山虎之助

    片山虎之助君 そこで、閣僚の数もあるんですが、副大臣制の導入と政府委員制度の廃止なんです。  副大臣、政務官を置かれるのは私、結構だと思いますけれども、余り数が多いと、国会議員さんから百人から百五十人内閣に入るようなことになりますと、私は今、国会対策委員長をやっていますが、国会が回りませんね、委員会の構成その他。だからその辺は、私は数はほどほどがいいんではなかろうかと。それからまた、大勢になりますと、その分担やお互いの連絡や本当にややこしいと思いますよ。それから、副大臣や政務官を一人置くと、事務方の人に聞きましたら何か八千万から一億二千万かかると、どういう計算なのか知りませんが。まあ個室、車、秘書その他でしょう。そういう意味で、そこのところはきちっと整理をしておかれる必要があると思います。  それから、政府委員廃止も結構です。しかし、やっぱり政府参考人なら参考人で、質問者の要求の上に委員長が場合によったら仕切れて、委員長の仕切り、裁量で答弁できるような弾力的なことを考えないと、余り厳重にやるとまた国会審議が私はストップしたり、妙なことになると思うんですよ。  その辺、どなたに聞けばいいのかよくわかりませんが、まず総理から御感想を聞いて、関係の方お願いいたします。
  54. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これは、いわゆる自自合意の中で、私と小沢党首との間で取り結ばれた合意に基づくものでございまして、特にその考え方につきましては、自由党の小沢党首のかねがねの理論といいますか考え方をもとにいたしておることは事実でございまして、そうしたことの御説明は、後ほどまた自治大臣といいますか、自由党の野田さんからもお話を聞いていただくとより鮮明になろうかと思いますが、委員が今御指摘の点については十分考慮すべき点ではないかと。  どちらかというと、私は従来の大臣、政務次官というシステム、そしてまた、そういう中で行政を行うということ、その中での改革、改善ということを考えておりましたが、自由党からも強い要請もありましたし、かねてこの問題については民主党におきましても御主張がございまして、そういう意味では、これを取り入れるということは、ひとり行政の姿のみならず、この国会のあり方にまで大きな変更を来すものではないかと。    〔理事鴻池祥肇君退席、委員長着席〕  今回、この副大臣制度がとられ、そしてまた議会における審議のあり方等にも変更があるやに、これは議運で決めることですが、考えられております。今日、そうなりますと、大臣といいますか、政府側からも議員の皆さんに対する反問権といいますか、そういうものまであり得るのではないかというような議論も起こってきておりますので、国会の姿が相当変わってくる。そういう中で、今御指摘にありましたように、細かい数字その他もこれは当然のこととして必要なことでありまして、それに対してすべからく大臣なり副大臣が答弁するという形でよろしいかどうかについては総合的に判断しなきゃならぬと思っております。  そこで、お尋ねの第一の点について、そういう方々が政府側にすべて入って、国会機能がというより与党としての立場が十分とれないということになると、これは実態的に非常に問題を起こすことになろうと思います。  そこで、その点については、結論から申し上げれば、十分考慮して副大臣の数あるいは政務官の数その他については検討していかなきゃならぬと思いますが、一府十二省という、ことしになりまして、委員御案内のように役所の中ではかなり大型のものもございまして、そういうところには例えば大臣にかわる役職もかなりついていただかないと実態的には行政が回らぬというような点もあります。  御指摘の点、非常に重要な点であろうかと思いますので、今後議運でもいろいろ御議論をいただきたいと思いますけれども、政府側としてはそのように考えていきたいと思います。  ただ、考え方のもとは、いわゆるイギリスにおきます与野党のあり方、特に与党は議院内閣制の立場から政府と一体で責任を負うという立場でございますので、議員の立場と同時に行政の中で責任を負うという形も望ましいという一つの例がございますので、この点についてはさらに検討して、せっかくの合意でございますので、よりよい姿にできますように努力してまいりたい、このように考えております。
  55. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 補足でございますが、中央省庁改革推進本部の事務局の立案方針を定めましたのが昨年の九月の三十日でございますが、その時点で副大臣制度を導入するということを我々確認をいたしておりまして、それがさらに自自連立によって充実したものになったということであると思います。  副大臣制の導入に当たりましては、例えば今の各省庁にあります文書決裁規則、最終的な決裁をだれの段階で終えるのかということについて、例えばその段階で今は大臣決裁になっているのが大変少ないわけでございます。大変限られたものしかやっていない。それが副大臣制度で副大臣が来たり、あるいは政務官のようなものができれば、その文書決裁規則上の決裁権を相当分散していくということになろうかと思いますし、またもう一方は政策目的の審議会を廃止しようとしております。それは、従来審議会に頼っていた部分を大臣や副大臣がかわってやっていくということになってまいりますので、相当政治家がやる部分が各省庁の仕事の中でふえていく、それが可能になるということであろうかと思っております。
  56. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 考え方そのものは今、小渕総理から概略お話があったとおりであります。  事柄の発想は、やはり明治以来日本が国つくりをやっていく過程の中で、中央集権という形の中で人材を中央の役所に集めてくる、それが地方を支配し、また民間を支配するという形で国つくりをやってきた。いわゆる大事なことの決定権あるいは情報というものを中央の役所がコントロールするという形の中で進んできたことも事実である。そういう中で、政治家がみずからの責任において重要な政策の意思を決定していくというこの形をどうしてもつくっていかなければならない。  そういう意味で、政府委員制度を廃止し副大臣制度を導入するということは、それだけ、閣僚ももちろんでありますが、与野党を通じて政治家がみずからそういういろんな政策課題について従来以上にしっかりと自分自身の判断をつくり上げていくということを要請されていく。これは当然のことだと思いますし、何よりも議会運営そのものが、このような委員会の審議のあり方もこういう形で政府対云々という、言うなら質問する側が一方的に質問だけをして、答弁する側が一方的に答弁だけをするというようなやり方ではなくて、お互い言うなら双方向の論戦が行われていくという、むしろそういう形の実質的な、政治家同士がお互いが責任を持ちながら論議を交わしていく、そういう国会運営になっていくだろうということを想定しておるわけであります。  一方で、この副大臣の話は、それが政府委員制度廃止ということの一つのポイントであります。そうなれば、法案そのものが、かなり技術的な法案が、いわば役所間の覚書の延長線みたいな法律がたくさんあるわけでありますが、むしろそういった事柄が、何が法律事項として大事なのかという、もう少し交通整理、国会に提案される法律の数そのものもまた整理されていくということも連動するだろうと思います。  国会審議のあり方あるいは法律の中身、そして同時に、役所の中で意思決定をしていく上で、今は率直に言って、政務次官というシステムはあるんですが、スタッフになっている。結局、最高意思決定だけは大臣という形になっていますが、あとは全部役所に取り巻かれているわけであります。  実際問題、そういう中で、この副大臣というものを単なるスタッフということではなくてラインの中にきちっと位置づけをするということで、いわば政治家の責任において意思決定をしていくということをより明確にしていこうということが、限られた時間でありますからたくさんのことを申し上げることはできませんが、簡潔に申し上げればそんなことをねらいとしていこうと。そのことが具体的に動き出しますと、実にいろんな分野で今までやってきた事柄と抵触するところがたくさんあると思います。  そういう意味で、まさにこのシステム改革ということがいろんな意味で、行政改革であったり、いろんな分野に対する改革のある種の切り口になり突破口になっていくという要素を含んでいることであるというふうに考えております。
  57. 片山虎之助

    片山虎之助君 野田自治大臣の言われることもよくわかるんですが、政治主導であると同時に、やっぱり仕組みが効率的に動くということ、それから、議院内閣制で国会内閣は車の両輪ですから、国会も審議のあり方を変えるのは結構です。結構だけれども、国会もきちっと運営できるような、いろんな要請をうまく満たすようなやり方をぜひお考えいただきたいと思います。  中央省庁再編について、一府十二省になるわけでありますが、私はこれは寄せ集めで量を変えたということだけではだめだと思う。やっぱり質を高めないといかぬ。  そこで、例えば国土交通省なんというのは十四局になるでしょう。一人の事務次官でコントロールできるでしょうか。それから、百二十六ですか、の局が九十幾らになるので、かなり局長さんの失業が出る。私は、この機会にスタッフ職、専門職を充実してそういう意味での活用を考えたらどうか、こういう気もしますし、例えば大きな省はいろんな政策を横断調整する何かのセクションが要りますね、そういうことも考えていただく。  あるいは、事前裁量を事後チェックにするのなら大幅に仕事を減らす、そういうことでないと、いろんな省を寄せ集めただけですと、局長はちょっと減りました、課長はちょっと減りました、その課長が全部ぶら下がっていますと、こういう中央省庁じゃ意味がないと思いますので、そこのところはしっかりやっていただきたい、こういうふうに思います。総務庁長官
  58. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) おっしゃるとおりでございます。ただ、局長、局の数を減らしたからその分を補うために分掌職をつくるということでは決してなくて、そして、局横断的な仕事をする分掌職というものを新しい役所のポジションとしてぜひ積極的に活用をしてまいりたいと思っております。
  59. 片山虎之助

    片山虎之助君 これで終わります。よろしくお願いします。  ありがとうございました。
  60. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で竹山裕君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  61. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、白浜一良君の質疑を行います。白浜一良君。
  62. 白浜一良

    白浜一良君 公明党の白浜でございます。  まず初めに、大蔵大臣にちょっとお伺いしたいんですが、予算衆議院を通過する段階で我が党と自民党のいろいろな協議がございまして、確認書が交わされました。いろんな、この予算の問題もある、関連税制の問題もあるわけでございますが、その中で税制に関しては総合課税化への流れというか、そういう文言が入ったわけでございます。きのうも若干議論されておりましたが、税の公平性、適正化という意味では、大変この流れは正しいことだというふうに我々は評価しているわけでございますが、この点に関する大蔵省としての見解、御認識をいただきたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これに関しまして、昨日、今井委員からお尋ねがあったところでございます。で、私ちょっと言葉を尽くさなかったかと思います。基本的には総合課税というのはやはり一番理想的な制度だと思いますが、そのためにいろいろな、例えば納税者番号であるとか、あるいは昨今のように外国に資産が移ろうとする状況をどうするかとか、あるいはその他の所得、勤労所得を持っていらっしゃる方とのいわゆる確定申告の問題とかいろいろございます。したがいまして、そういう整備が必要でございますという意味のことを申し上げようといたしましたが、一部には、しかし総合課税というものについて、一種の分離課税でも一つのメリットがあるのではないかという議論が学者さんの中にございますということを実は御紹介いたしました。  他方で、二月十八日、公明党・改革クラブの政審会長と自由民主党の政調会長との確認書を取り交わしておられまして、その基本には、次期の抜本的税制改正には、「利子・株式譲渡益等に対する総合課税を含め、課税の適正・公平化を図る。」ということがございます。これはやはり高額所得者にこういうことがありやすいわけでございますから、それらの所得についてもやはり累進による総合課税の適用をすべきである、いわば税の基本原則を確認されたものと受け取っておりまして、これは重大に受けとめております。
  64. 白浜一良

    白浜一良君 これは抜本改正の時期にということでございますので、確かな道筋をお願いしたいと要望しておきたいと思います。  明年度の予算、またこの税制改正の案でちょっと総理に伺いたいんですけれども、いろいろ指摘されていますが、どこが一番問題かといいますと、昨年、四兆円の特別減税を定額でやったと、ここに起因していることもあるんですが、定率に変えると負担増になる部分があるわけですね。それがよく言われる標準家庭で年収が七百九十三万円以下の方が負担増になってしまう、実質的に負担増になってしまう。景気が持ち直していない段階でそういう現状でいいのか。ここが一番大きな問題になるわけでございます。  国民の六割、七割、そういう方が負担増になってしまうということで、私どもは二兆円程度の戻し税をやるべきだと。党の主張でございますが、衆議院段階でもいろいろ協議をされまして、私どもは参議院の審議を通じてもこのことを政府に求めていきたい、このように考えているわけでございますが、総括的な総理の御判断をお願いしたいと思います。
  65. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今年度実施をいたしました二回にわたる特別減税四兆円の問題につきましては、これはこの時点におきまするいろいろ税の執行上の問題等もこれあり、緊急にその効果を発揮すべきということで実施をいたしたわけでございますが、これを引き続いて各年度続けていくということは、これは税の本質から申し上げて好ましいことでないということで、御案内のように、今回定率減税という方式によりまして恒久的減税の実施をかなり思い切った数字でいたして引き下げたわけでございます。  そこで、今申し上げたようなことで、確かにこの特別減税による効果というものもございましたから、それを相補うことはできないかというお尋ねはこれは衆参どこでもされてきたわけでございますが、そういった問題につきましては、各種の政策を複合的に遂行することによりまして、そうした新しい負担といいますか、特別減税によっての利益といいますか、これにどうこたえていくかということにつきましてはいろんな姿があるんだろうと思います。地域振興券というようなことも、ある意味ではそうした形で少なくともその辺の落差を埋めようということも一部あったかと思います。  したがいまして、今御指摘のようないろんな諸懸案につきましては、これは今御審議中でございますので、各党の御意見も拝聴していかなければならぬかと思いますが、政府は既に予算案として提出をさせていただいておりますので、その範囲の中でぜひ実行していきたいということを考えておるわけでございます。  そういった意味で、新しい御提案でこの予算を変更するということは非常に困難なことだ、こう言わざるを得ないと思っております。
  66. 白浜一良

    白浜一良君 そう言わざるを得ないと思いますし、この予算また関連税制法案の中では、たとえどういう困難さがあったとしても、私たちは国民の意識というかニーズといいますか、そういうことに基づいて要求しているわけでございまして、確認書の中でも引き続いて両党で協議、こういう事項もございますので、積極的に主張していきたい、私どもはそう考えております。  それで、減税法案に私たちが消極的ながら賛成した理由は、これは本当に消極的なんです。例えばこの減税法案がつぶれてしまうと、九兆三千億という今回大きな減税法案になっているわけですね。景気対策という観点からこれが飛んでしまうといかがなものか。そういう苦しい、我々はその中身の話を問題ありと言っているわけですが、規模的に見ますとこの九兆三千億の減税というのは大きな規模でございまして、景気対策という観点から必要だ、中身に問題はあるけれどもこれを飛ばすわけにいかない、こういう判断もございました。  それからもう一つ、この減税法案が飛んでしまいますと、所得税も全部本則に戻ってしまうわけですから、だから年収八百万の標準家庭の方でございましたら十四万ほど税が負担増になるわけですね。年収五百万の方でも四万三千円ほど負担増になってしまう。最低限それだけは阻止しなきゃならないという苦しい上での、消極的であるけれども判断をしたということを主張しておきたいと思うわけでございます。  そこで、もう一つ私たちが国民のそういう負担増を軽減するという意味で一貫して主張してまいりましたのは、だんだん日本も少子化が進んできていまして、あすの日本を担う子供たちをどう育てるかという総合的な政策が必要だと私ども考えております。そういう意味で、個々の政策ではなしに、例えば今は児童手当ということもされておりますが、三歳未満で本当にごくわずかの制度しかございません。思い切って赤ちゃんで生まれてから社会人に育つまでの一貫した国としての支援策を設けた方がいい、そういう私たちの政策的主張をつくったわけでございます。  例えば、赤ちゃんから義務教育の中学生ぐらいまでは児童手当を拡充したらどうか。今所得制限もいろいろございますが、すべての子供を育てていくという意味で児童手当制度の拡充と。額も今は一子、二子が五千円、三子以降が一万円、こうなっておりますが、一子、二子は一万円、三子以降は二万円、そういう政策主張をしました。高校生以上は、大学へ行かれる場合も専門学校へ行かれる場合もございますが、そこからは自立していくと。家庭にお金がないから学校に行けない、そういう事態はあってはならないわけでございます。これも親の所得制限とか、また本人の成績が特別優秀なことだけというんじゃなしに、行こうという大変意欲のある人がみんな無利子でお金を借りて高校にも大学にも行ける、そういう一貫した子育ての制度をつくってはどうか、そういう我々の政策主張があったわけでございますが、この点も今回、確認書におきまして若干の前進を見たわけでございます。  特にこの奨学金制度、新しい意味での拡充がされました。文部大臣、どのように御認識されているか、伺いたいと思います。
  67. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) たびたび申し上げておりますように、奨学金は極めて大切なものだと考えております。  去る二月十八日の自由民主党と公明党の政策合意の中で、奨学金制度につきまして二点が強調されております。まず第一、有利子奨学金についての貸与人数の増員、学力基準の緩和、利息の扱いの変更ということが一つ。二に、保護者の失職・死亡等による家計急変に対応した緊急採用奨学金制度を創設することが確認されたことはよく承知しております。  文部省といたしましては、この合意を重く受けとめまして、誠実に実行してまいりたいと思っております。
  68. 白浜一良

    白浜一良君 私どもの理解では、この四月からこれを実施される、そのように伺っていますが、それでいいんですね。
  69. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 既に提出しております予算要求の中にも、奨学金に関しましては極めて抜本的な予算要求をいたしております。  そこで、ほぼ自公合意の内容は修正しないでも、十一年度予算については修正をしないでもやれると考えております。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  70. 白浜一良

    白浜一良君 この確認書の内容のまま実施される、そのように理解をしておきたいと思います。  それで総理、いわゆる児童手当の制度、これは大変コンパクトにできた法律でございまして、なかなかいらいにくいというか、年度年度で考えていかなきゃならないという、当局からいろいろそういう話を聞いています。私もそれは理解しております。  しかし、この確認書によりますと、新年度という意味では来年の予算編成の時期、こういうことになるわけでございますが、本年も何かできることから手をつけよう、少しでも道筋をつけようという前向きな総理の指導性というか、御指導がいただきたいわけでございますが、この点はいかがなものでしょうか。
  71. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 若干、予算の姿といいますか、予算修正の問題との関係に関連するかと思いますが、児童手当の今後のあり方につきましてはさまざまな論点がございまして、これらを踏まえ今後真剣に検討してまいらなきゃならぬと思います。したがいまして、新しい児童手当の制度につきましては今何らかの結論をこの時点で得るということはなかなか困難ではないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、自民党そしてまた公明党・改革の間でのいろいろとお話し合いというものがございますので、それをいかに実現してまいるかということにつきましては、これまた真剣に検討させていただきたいと思っております。
  72. 白浜一良

    白浜一良君 具体的な施策になることを期待しております。  もう一点総理に伺いたいんですが、今回は児童手当と奨学金ということを申し上げましたが、国が子育てを支援するというか、本当に安心して産み育てられる、あすの日本はこのままいくと人口がどんどん減っていくという現象がありますので、いわゆる子育てのトータルプランと申しますか、少子化対策トータルプランといいますか、そういうものをぜひともお考えいただきたい。  例えば、今はもう子供を産んで働いていらっしゃる女性の方がたくさんいらっしゃるわけです。保育園もありますが、不便なところも多いんですね。本当は住居とか駅の近くにあるとか、そういう保育園の整備ということも要るでしょうし、育児休業制度もございますが、まだまだ今の制度では難しさがある。もう少し拡充した方がいいというような、関連する省庁の問題がいっぱいあると思うんです。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  関係省庁で力を合わせていただいて、子供を育てるということはあすの日本を確かにするということですから、政府としても関係の閣僚会議か何か開いていただいて、少子化対策のトータルプランというか、そういう確かな流れを、省庁ごとじゃなしに、エンゼルプランというのは厚生省なんですが、文部省も関係あるでしょうし、それから建設省も関係あるかもわかりません、そういう関係部局が集まってトータルプランをつくったらどうか、そのように御提案を申し上げたいわけでございますが、いかがなものでしょうか。
  73. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘は全くそのとおりというふうに認識をいたしておりますが、直ちにどのようなことを具体的にいたすかということにつきましては、それぞれ担当の役所もございますが、それを個々にやるのでなくて、全体的、総合的に実施すべきだという御主張は全くそのとおりだと思います。御指摘のとおり、結局少子化問題ということになるかと思いますが、総合的対策を講じていくということはそのとおりでございます。  そこで、政府といたしましては、少子化への対応を考える有識者会議というところから具体的な施策にかかわる提言を私自身ちょうだいいたしたところでございますので、今これを十分精査いたしておりますけれども、これをいかに実行すべきかということにつきまして、今お話しのように、閣僚レベルでもう少し、それぞれの役所の考え方をトータルでやれということでございますので、いかなる形になりますかということは今わかりませんが、御主張の趣旨を十分受けとめていたしていきたいと思います。  それと同時に、政府だけでなくて、あるいは国民的な参加ということができないかということで、国民会議というものができないかなという感じがいたしておりまして、そして国民的な広がりのある取り組みを全力で進めまして、もって総合的な対策にいたしていきたい、このように考えております。
  74. 白浜一良

    白浜一良君 結構なことで、国民会議も必要だと思いますし、関係の閣僚会議も含めて確かな流れをお願いしたいと思います。  それで、景気問題に移りたいと思うわけでございます。私どもの主張で商品券構想を打ち出しまして、昨年度の補正予算政府・自民党の方もこれを受け入れて、若干少額ではございますが、地域振興券という形で実施されることになりました。  しかし、これは誤解がございまして、私ども別にこの商品券で景気がよくなるなんて言ったことはないわけでございます。景気をよくするためには総合的な施策が大事なわけで、昨年の参議院選挙でも私たちは十兆円の減税施策、法人税も所得税も下げた方がいいという政策もやりました。また、たびたび議論になりますが、国民の需要の多いのは住宅ですから、この促進税制もすべきだということを申し上げましたし、貸し渋り対策、雇用対策も含めてさまざまなトータルの景気対策を訴えてきたわけです。この地域振興券というのは、一昨年消費税を二%上げて、景気も悪いのに上げたから余計落ち込んだ、それを国民に還元した方がいいということで、それも同じ戻すのなら、各地の振興という面では、商品券というのは現場の知恵で随分活用されているわけでございまして、そういう形で返した方が実効性があるという面で私たちは言ったわけでございまして、トータルな景気対策の中の一環として言ったわけでございます。若干誤解もございますので、申しておきたいと思います。  それで、経済企画庁長官、いろいろこの点で御答弁いただいておりまして、単純に七千億を減税するよりも、そうするとGDPの押し上げは〇・〇六だと、いろんな派生効果もあるので、地域振興券にすると〇・一%ぐらい押し上げるだろう、こういう答弁をずっとしてきていらっしゃいます。それは知っております。  先日、電通が首都圏の調査をやりまして、地域振興券を二万円使うときにどれだけ派生して使うかという調査をしたんです。その調査によりますと、一万五千百円ぐらい余分に使うという電通の調査があるわけでございます。これは調査ですから、データでございます。こういう事実をどのように御理解されますか。
  75. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘調査につきましては、私たちも承知しております。それによりますと、二万円の地域振興券をもらった人で六十五歳以上の男女の方は二万七千円追加で出す、それから十五歳以下のお子さんのあられる方は九千円ぐらい追加で出す、委員指摘のように平均して一万五千百円ぐらい追加をするということで、消費効果はかなりあるだろう。  そのほか、きのうも松山市で追加を市の財源から出すというような話もございましたし、いろいろおまけをつけるというような努力をしている地域もございまして、地域の知恵が出ているという効果もあると思います。  ただ、この地域振興券を使うときに、追加で使うという点はありますけれども、別の方のお金をためるということももちろんあることでございまして、これはそのまま消費の増加になるというようには言えないと思いますが、以前にも答弁いたしましたように、単なる可処分所得の増加よりも、地域あるいは期間が限定されておりますので、短期間の即効性という意味ではかなり率がいいんじゃないかというように承知しております。
  76. 白浜一良

    白浜一良君 もう一つ経企庁長官に御意見を伺いたいんですが、「潮」という雑誌で政府税調の加藤会長が、これは奇策だけれども大賛成だ、惜しむらくは七千億と少なかったことであって、四兆ぐらいは欲しかった、こういうコメントを寄せられているわけでございますが、政府税調の会長がそういう御見解を述べられているということに関しましてどのようにお思いですか。
  77. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 加藤寛税制調査会会長は、私も税制調査委員をしていたこともございますし、またその他の会合でも一緒で、大変尊敬する先輩エコノミストでございますが、加藤先生の御意見は御意見として承りたいと思いますけれども、果たして四兆円がよかったか七千億円がよかったか、そのあたりはいろいろと検討する必要があると思います。  また、この地域振興券の効果というものと、その使う地域が限られている、いろいろそういう影響もございますので、その金額はどうだったかということはさておきまして、加藤先生の御意見はそれなりに真摯なお気持ちで発言されたものと思います。
  78. 白浜一良

    白浜一良君 結構でございます。  それで、一月二十九日から支給が始まっているわけでございます。これは初めてのことでございますし、何か変に事故につながってはいけない。いろんな活性化した話題を私どもも聞いておりますが、成功させるべきだというふうに考えております。  自治大臣、いろんな各地のお声を聞いていらっしゃると思いますので、御所見をいただきたいと思います。
  79. 野田毅

    国務大臣野田毅君) この地域振興券事業につきましては、事業主体が市町村でありまして、市町村の皆さんには事務的に大変御苦労をいただいておるわけでありますが、二月末までに九十二団体が交付を開始することを決めておりまして、全体として順調に進展しております。  今御指摘のありましたいろんな工夫を、ただ単に地域振興券を配るということだけではなくて、それに連動して地域振興をうまく結びつけていこう、あるいは商店街の活性化につなげていこう、そういうことでいろんな取り組みをしておるんです。  例えば、振興券のデザインを地元中学生から募集するとか、券面に地域の名産や名所をあしらっているところがある、あるいは全市町村が連携して、地元特産品である和紙を用いて全県統一デザインの地域振興券を発行することとしたところ、こういう工夫をしておるところもあります。  また、地元商店街における取り組みとしましては、商工会が地域振興券の発行に合わせて一斉に消費拡大セールを展開することとしたところがある。また、商工会が地域振興券に数%上乗せして使用できるようにしたところがある。また、商店街が地域振興券での買い物客に支払い額の数%分の独自の商品券を還元するところもあります。それから、商店街が地域振興券の使用者を対象に抽せんを行い、景品を交付するなどしたところもございますし、商店街が地域振興券を使って買い物をした住民の買い物ポイントを通常よりも多く加算する。  そのほか、業界における取り組みとして、旅行業者や玩具業者が地域振興券支給額に合わせて二万円パックとか四万円の商品を発売するとか、そういうようなことを計画したり、外食業者が地域振興券に合わせた記念メニューを作成したり、いろいろそういうようなことを工夫して、この地域振興券事業だけでなくて、地域の活性化ということと何とか連動させていこうと。今落ち込んでいるメンタルな部分を考えますと、非常に大事なプラスアルファの要素があるだろうと考えております。  さらに、自治省としては、今度の予算に関連して地域活力創出プランという財政措置を一兆円規模でやることにいたしておるわけでありますが、これを生かしたような地域経済の活性化への取り組みと呼応していくというようなことで地域の振興という効果が広がっていくことを強く期待いたしておりまして、今後とも市町村との連携を密にして、事業が円滑に実施されて地域振興の効果が上がるように一生懸命努力をして万全を尽くしてまいりたいと考えております。
  80. 白浜一良

    白浜一良君 よろしくお願いしたいと思います。  次に、貸し渋りの問題でちょっとお伺いしたいんですが、これは金融再生委員会担当大臣になるんですかね。──両方ですか。保証協会はいいんです、後でやりますから。  昨年の予算委員会でも私は御質問いたしまして、昨年の場合は一兆八千億公的資金投入、こういうことがございまして、公的資金を投入するんだからいろいろ自己資本を高めるために使うのは間違いないんですが、その分貸し渋りを解消すべきだという御主張を申し上げまして、当時の橋本総理は銀行を呼んでいろいろそういう懇談をされたという経緯になりました。  今回はもっと大きな七兆四千五百億円という公的資金を導入する仮決定をされたと。今回の場合は不良債権を処理しようと。これは大きいから当然それはそれでそういう目的があってもいいと思うんですが、これだけの公的資金を導入するんですから、悪質なそういう銀行の貸し渋りがあってはいけない、むしろ融資の枠もいろんな、融資をふやすとまた不良債権がふえるという危機感もあるでしょうけれども、そこの部分は金融再生委員会としても担当大臣として厳密に対処されるべきだ、このように思いますが、御見解をいただきたいと思います。
  81. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 先生御指摘のように、私ども昨年の金融国会でもって金融機能早期健全化法という法律をつくっていただきました。その趣旨とするところは、今御指摘がまさにあったように、第一に不良債権問題の解決、このことによって日本金融システムに対する信認を回復するということでありますが、同時にそのときに議員の皆さん方の視野にあったものの大きな部分は、何とか信用供与を円滑化したい、つまり貸し渋り等のことがあってはならない、これを防いで金融が円滑に疎通することを期したい、こういうことがありまして、目的の条項にもこのことが入っております。  私どもは、法律にも書いてあることでございますが、今回国が投資家としてこれらの金融機関にいわば資本を注入するに当たって経営健全化計画というものを出していただくことになっておりますが、その経営健全化計画のいわば必要的な記載事項として、貸し出しの状況、特に貸し出しが増勢を示すということの計画を盛り込むようにということを既に指示しているところでございます。特に貸し出しにあって中小企業を重視して、中小企業皆さんへの貸し出し、こういうものについては原則として残高が増加するようなそういう計画であってほしい、こういうことを申しているわけであります。  そこで、今の景況との関係で本当にそんなにうまくいくんだろうかというような御懸念の節もちょっと今御発言あったような気がいたしますけれども、私は、これらは銀行だけが何が何でも貸せということではなくて、債務者というか貸出先もこの景況をどうやって乗り切っていくかというような意味合いで、必要なリストラをする、あるいはむだを省くというような計画をお互いに話し合って、そこに資金が流れていく、こういうようないわば共通の目的を立てて共同作業としての融資が行われる、こういうようなことでぜひやっていただきたいものだ、このように考えております。  なお、この計画についてはフォローアップをすることに我々義務づけられておりまして、金融再生委員会全体といたしましてこの計画が確保されるというようなことでこれから運営してまいりたい、このように思っております。
  82. 白浜一良

    白浜一良君 適正なフォローをよろしくお願いしたいと思うわけでございます。  それで、もう一つ、信用保証協会の話をしたいんですが、これは私ども昨年の参議院選挙のときも要求いたしました。実際、中小企業向けにはこれは随分機能しておりまして、保証枠を拡大すべきだという主張をしてきたんですが、政府におかれましても、昨年十月からこの二十兆円の特別枠をつくられている。いろいろ問題ございますが、こういう枠を組んだからこれで年末の倒産が随分抑えられたということは事実でございます。  ただ、二十兆円という大きな枠をつくったんですが、今の時点で十二兆か十三兆ぐらいもう使われているんですか、これで年度末三月をどう迎えるか。決算時期が五月六月、いろいろ難しい時期がこれからずっと続くわけです。二十兆という枠でいいのかなという感じもするんですが、これは通産大臣ですか。
  83. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) まず実績から申し上げますと、昨年十月一日からこの特別枠がスタートいたしまして、当初、財政当局と相談しまして二十兆の特別枠を設けたわけでございます。一番最近の統計でございますと、金額にして十三兆円、件数にして六十五万社がこの特別枠を利用されております。十二月末の利用というのは大変多かったんですが、年を越しまして一月になりましたらぐっと利用が減りました。しかし、この後三月に決算期も参りますので、恐らく保証枠はさらに三月末に向けて使われていくのではないかと思っておりますが、枠はあと七兆円残っておりますので、まだ相当使いでがございます。  しかしながら、その枠を使い切りそうになる前には、やはりその後の措置をどうするかということは政府の中で、特に財政当局と御相談をしながら考えていかなければならないと思っております。  当面は、あと残っております七兆の枠ということで、数カ月ないしは半年ぐらいはその枠を使っていれば事態に対応できるのではないか、そのように思っております。
  84. 白浜一良

    白浜一良君 数カ月は大丈夫だとおっしゃる。数カ月というのは二カ月、三カ月も数カ月ですし、七カ月、八カ月も数カ月です。いずれにしても今の景気の状況から見ますと需要はふえる、このように思うわけで、今の答弁というのは、その段階では必ず手を打つと、このように理解していいですか。
  85. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) お金のかかる話ですから、大蔵大臣ともよく御相談しないと決められないことでございます。しかし、中小企業に対する対策というのは小渕内閣の最重要政策の一つでございますから、当然財政当局の御理解も得られるものだろうと思って努力をいたします。
  86. 白浜一良

    白浜一良君 それじゃ、財政当局の大蔵大臣、ちょっとよろしく。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大変効果を発揮している政策でございますから、将来とも決して御不自由はおかけしないつもりです。
  88. 白浜一良

    白浜一良君 前向きな御答弁をいただきましてありがとうございました。  それで、通産大臣、もう一つだけちょっと私お考えを聞いておきたいのは、思い切って枠を拡大しましたから事故率も心配、不良債権化する可能性もあるわけですね。それを恐れていたら融資はできないわけでございますが、今まででしたら事故率一〇%で半分回収できる、こういうお考えで信用保証されていたわけでございますが、若干これふえるかもわからない。そういうリスクはある程度やむを得ないですよね。その点の手当てといいますか、補助金等の手当てをされるお考えはありますか。
  89. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 特別枠ができる前の制度の物の考え方から申し上げますと、例えば何件か保証協会が保証をしましたと。これは例えば中小企業が銀行から借りましたものを保証するわけです。例えば累計百億の保証をしましたというときに、事故が起きて保証協会が代位弁済せざるを得ないものが大体二億円ぐらいだったわけでございます。大体二%ぐらい事故が発生した、代位弁済が発生した。そこで、保証協会がかわって金融機関にお金を払うわけですが、その後で保証協会が債務者に対して、できる限り代位弁済したものに対して支払っていただきたいというお願いをしまして、それが回収率なんですが、いろいろお話をしまして時間をかけますと、代位弁済した二億円のうち大体一億円ぐらいが返ってきたというのを回収率と呼んでいます。ですから、この回収率は、二億に対して一億ですから、五〇%と呼んでいたわけです。こういう制度設計をしておりましたが、大体今までの実績ではその範囲内で動いてきたわけです。  しかし、特別枠を設けるについては、そこまで厳しい話をしたのではなかなか保証もできないし使い勝手が悪いということで、事故率は今までの五倍ぐらいはしようがないだろう。百億保証したら十億ぐらいは代位弁済になるかなというような、これは厳密に数学的な話ではなくて、そういう方向で大体一〇%ぐらいの代位弁済率を想定したわけです。そういう一〇%の事故が起きても、そのうち半分は時間をかけてお願いをすれば返ってくるから、最終的には二十分の一が完全な損失になる、五%が損失になるということです。  この特別枠を使う前は貸していいかどうかということを判断したんですが、今度は、今やっておりますネガティブリストというのは貸していけない人のリストをつくっていまして、そのリストに該当しない限り原則として保証するということでございます。  現在のところ、ネガティブリストを縮小するという考え方は実はございません。ネガティブリストというのは、貸していけない人、保証していけない人というリストは本当に限定されたものでございまして、一〇%というのは数字で積み上げたものではございませんで、むしろネガティブリストの方が保証するかしないかということの決め手になっております。むしろ、一〇%の事故率を想定しているということは財政当局との間で物の考え方を整理するときに使われた数字だというふうに御理解をしていただきたいと思っております。
  90. 白浜一良

    白浜一良君 スキームはわかりました。いろいろな事態があるでしょうから、適切な対応をしていただきたい、このように思います。  それから、ちょっと関連して大蔵大臣に伺いたいんですけれども、銀行、信組も地方銀行も含めましていろいろ傷ついて、いわゆる預金保険料を七倍に上げましたね。それをこの三月に適切かどうかもう一度見直されるというお話を伺っているんですが、この点はどうなっているんでしょうか。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは金融再生委員会と私どもの共管になっておる事項でございますけれども、おっしゃいますように七倍にいたしました。これはことしの三月までのことでございますので、その後はそのときに決めなければならないことになっておりまして、金融審議会の方で今それを検討しておられるところでございます。
  92. 白浜一良

    白浜一良君 これは難しいですね。保険料を減らすわけにもいきませんし、いろいろ公的資金を導入して銀行の健全化を目指すわけですから過度の負担もできない、それはそういう中で結論が出るんでしょうが。  大臣、どうなんでしょうか。よく昔から言われているんですけれども、日本は一律保険制ですね。銀行によっても随分もう違いが出てきている。危ない銀行は、それで危ないということがわかってしまうとまた問題も起こるでしょうが、やっぱりある一定の可変制というものにしないと、何でも一律主義というのは方向性としていかがなものか、こういう指摘が前からあるわけでございますが、この点はいかがなものでしょうか。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) あるいは今度の審査の過程でそういうお話が出るかもしれませんけれども、ただいま暗におっしゃいましたように、危険の多いところはたくさん保険料を積め、危険の少ないところは少ないというのは、銀行間の本当の自由競争になりましたら一つの考え方かもしれませんけれども、おっしゃいますように、ここは保険料が大きいんだなということはすぐにわかるわけでございます。そして、言ってみれば好きこのんで危ないことをしているわけじゃございませんから、やっぱり持てるところは、少し余裕があったら持ってもらうというような今までの考え方、その方が穏やかなのかなと私自身は思っておりますけれども、もうちょっと審議会の御議論を見ておきたいと思います。
  94. 白浜一良

    白浜一良君 わかりました。  それでは次に、行政改革関連で伺いたいんですが、明年度の予算も三十一兆円の国債発行ということで、大蔵大臣がおっしゃっていますように、ハマの大魔神が一回から登板だと。それはそうですね。こういう財政の予算はそんなに何回も組めるものじゃないというのは私も理解できるわけでございます。だから、本当に行政がスリム化しないと、国債をふやすわけにもいかぬし、税負担を求めなければいけないし、いずれにしても国民に負担を求める場合はそれだけ政治、行政に対する国民の信頼度が要るわけで、その意味でも徹底した行政のスリム化ということが大事だと思うんです。  総体を論じてもあれなんで、きょうは特殊法人の問題だけちょっとお伺いしたいんですが、例えば特殊法人の役員数の定数を削減しよう、これは平成九年十二月二十六日、橋本内閣で閣議決定をされているわけでございますが、それ以後の役員数の経緯はどうなっていますか。
  95. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 役員数につきましては、役員数を一〇%削減するということになっておりますけれども、平成九年末の特殊法人等の整理合理化についての閣議決定において、役員数が十名以上の特殊法人については、その役員数を一割削減することといたしております。七法人でございます。
  96. 白浜一良

    白浜一良君 これは平成九年に橋本総理が一〇%減らす、こういうふうに閣議で決められたわけでございますが、減っていないんですね。私がいただいている資料でも、例えば原子力研究所の平成九年、平成十年、役員数は十二名です。石油公団も十一名です。国際協力事業団も十二名です。これは減っていないんです。総数を見ましても、平成九年が八百二十で、平成十年が八百九。そう減っていないんですね。閣議決定されたことがなぜ遂行されないのか。  こういうことがやっぱり行政の信頼感に通じると思うんですが、これはだれにお答えいただいたらいいんでしょうかね。
  97. 尾見博武

    政府委員(尾見博武君) 閣議決定をした後の削減の数についてのお尋ねでございますけれども、全体で、例えば特殊法人が七、それから認可法人一つ含めまして合計八名削減をすると、こういう状況でございます。
  98. 白浜一良

    白浜一良君 そういう結果なんでしょう。だから、一割減らすというのが全然減っていないわけです。  総理、これは御存じですか。
  99. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) なかなか決定のとおり十分な成果が上げられておらないという実態については大変残念に思っておりますが、今後ともその方針に基づきまして、役員数の削減等につきましては、その実態それぞれございましょうけれども、せっかくの閣議の決定でございますから、それを遂行するようにこの内閣といたしましても引き続いて努力をいたしてまいりたいと思います。
  100. 白浜一良

    白浜一良君 私は、余り個々の問題を針小棒大に言うつもりはないんです。しかし、個々の事象の積み重ねが国民の信頼になるわけです、逆に言いますと。だから、私は具体論で言っているわけでございます。  この平成九年十二月の閣議決定はどこに問題があるかというと、年限を切っていらっしゃらない。だから、三年かけてとか四年かけてとか、はっきりですね、閣議決定されるんならば。まして一〇%という数を挙げていらっしゃるんですよ。そういう面で言うと、やっぱり時限を決めてやるべきことだ。これはだらだらと、時限がなければいつまでもできない。今役人から話がございましたが、八人ぐらい減っているだけで、それでいいというような格好になってしまうわけです。  だから、これは総理、どうですか。もうきちっと、余り詳細は御存じないと思いますが、やっぱりいついつまでにはちゃんと整理する、方針どおりやる、こういうふうに決められるべきだと思いますが。  総務庁長官は無理やわ。官房長官ちょっと。
  101. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) お答えいたします。  ただいま省庁再編のための法案を準備いたしております。これが実施をされますときに独立行政法人のあり方も決めるわけでございまして、この時期に合わせまして特殊法人の整理をやっていきたい。そして、橋本内閣のときに決定をいたしました一〇%がそれ以上に達成できるように我々も点検をしていきたいと考えておるところでございます。
  102. 白浜一良

    白浜一良君 今の官房長官の御発言を受けましたら、この国会でいわゆる行革関連の省庁再編法案が審議されるわけでございますが、その審議が終わるまでに要するに道筋をつける、こういうこととして理解したらいいんですか。──では、まあ、そのように理解をしておきたいと思います。個々の特殊法人の事情もございましょうから、一律にはいかぬのは私もよく存じ上げておりますが……。  それから、これも個別具体的なことで恐縮なんですが、特殊法人の役員の退職金の問題で、これも昨年の予算審議のときに我が党の同僚議員が当時の橋本総理に質問をいたしまして、高額でひんしゅく買うというようないろんな報道もされておりまして、それも検討するというふうに当時の橋本総理は答えられたわけでございますが、この点はどうなっているんでしょうか。
  103. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 特殊法人の役員の給与についてでございますけれども、昨年の七月末に小渕内閣が発足をいたしました際に、初閣議におきまして小渕総理から四項目の指示がございました。一つは御承知のように国有財産の処分、活用でございます。もう一つはODAの援助の透明化の問題であります。もう一つは留学生対策を積極的に行うことでございます。もう一つは役人の天下り特殊法人について、事務次官で天下った者が天下り先で事務次官以上の給与を取っておるという話がある、こういうものについて徹底した見直しを行って、そして給与の適正化を行うべきであると。こういう四項目が指示をされまして、その後調査をいたしまして、それぞれ関係をいたします二十四の法人の総裁、理事長、計三十名につきまして本年四月一日から給与カットをすることにいたしました。  今後、省庁再編を踏まえまして、先ほど申しました独立行政法人のあり方等を調整いたします中において、その総裁、理事長以下の給与についても適正化を行ってまいりたいと考えておる次第であります。  ただ、お断りを申し上げたいと思いますのは、この組織の中には民間から入った方もいらっしゃいます。そういうことは十分調整をとりながらやっていきたいと思っておるところでございます。
  104. 白浜一良

    白浜一良君 もう一つ、退職金の話。
  105. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 退職金の話につきましても同様見直すことにいたして、検討をさせております。
  106. 白浜一良

    白浜一良君 これも橋本総理が当時──済みません、もう小渕総理になっているのに古い話ばっかりで。だけれども、内閣は継続していますから、そういう答弁をされているので、きちっとしていただきたい、このように思います。  もう時間がなくなってまいりまして、日債銀の話をちょっと聞きたいと思いますが、昨日もこれは審議をされました。総裁来ていただいているので、日債銀に八百億の出資をされると決められたのは、日銀としてはいつ決められたのですか。
  107. 速水優

    参考人(速水優君) お答えいたします。  日本銀行が日本債券信用銀行に対して八百億円の出資をするということを決めましたのは、一昨年の四月一日でございます。平成九年四月一日でございます。
  108. 白浜一良

    白浜一良君 その段階で日債銀のいわゆる経営実態、不良債権の実態、それはどういう認識をされていたんですか。
  109. 速水優

    参考人(速水優君) 日本銀行は、平成七年の二月に日本債券信用銀行の考査をいたしております。その考査の後、関連ノンバンクの不良債権の動向とかあるいはその処理の実施状況とか、それから金融債の消化状況とか、海外の店の動きなど注意深く監視をしてきております。  そうした考査のフォローアップの一環として、同行は自己査定をしておるわけですが、四月一日に新しい経営再建策を発表しておるわけですけれども、それが適切であるかどうかのチェックをして、三月二十四日、二十五日の二日間にわたって詳しくそれを調べました。その内容は、個別企業のラインシートのサンプルチェック及びそれに関する先方からの報告に基づいて、その妥当性について調査、確認を行ったものであります。これを踏まえまして、日本債券信用銀行の経営再建策の基礎となっている自己査定の方法、内容につきましては妥当なものであるという判断をしております。  もとより、出資方針の決定につきましては、今申し述べましたように、自己査定のチェックだけで行ったものではなくて、いかにして信用秩序の維持というものを、日本銀行の責任である信用システムの維持、金融システムの安定の維持を保っていくか。当時は御承知のようにまだ金融再生法も早期健全化法もございません。もし、日本債券信用銀行のように内外に発展している銀行の破綻が起こった場合には、必ずや日本の内外の金融、特に国内の金融システムに大きな波を立てることは間違いないというような判断がございました。  それに加えて、金融債につきましては、御承知のように、これが預金保険の対象になるのかならないのかということもはっきりしておりません状態の中で、大蔵省の検査の結果を伺いますと、中間の途中経過、大蔵省は四月から検査を始めておるわけですけれども、途中経過として債務超過にはなっていないということを言っておられたわけです。  私どもは、その前の年にこういうことが起こる可能性があるということから、新金融安定化基金という社団法人ができまして、これは自民党案でございましたけれども、平成八年九月にこれができまして、日銀に千億を払い込めという御指示がございまして、それに千億円を払い込んだ。これは政策委員会の決定を経て払ったわけでございます。その千億円の中から今回、四月の新しい再建策を検討した結果、また大蔵省の途中経過の御報告を聞いて、八百億をとりあえず限度として日本債券信用銀行に出資をしたらどうかということで、行内の手続をとって七月の末になって払い込みをいたした次第でございます。
  110. 白浜一良

    白浜一良君 ちょっと時間がないので詳しくやることはできませんが、経過は今おっしゃったことだと思いますが、だけれどもあなた、きのうの委員会で、きょうも質問されておりますが、その八百億円はもう損失になるとお認めになった。しかし、その間のつなぎとしてなり得たので、いろんな金融再生法とかできなかったのでむだにならなかったと思うと。中央銀行の総裁としてこういうコメントを言うべきじゃないですよ、別に。中央銀行総裁として、八百億を出資されるにはそれなりの根拠があって、むだにならなかったと思う、こういうコメントをおっしゃるべきじゃない。この点に関してきちっと見解を述べてください。
  111. 速水優

    参考人(速水優君) こういう何もシステム安定化のための道具立てができていない段階の中で、一千億円の基金から八百億、今一番問題になっている日本債券信用銀行に出資をするということが必ずや安定化維持に役立つであろうということを当時考えたと思います。  それで結果としては、何もなかったところへこの資金が入って、ある意味では新しい法律等ができ上がって今のように道具立てがそろうまでの間の何らかのつなぎの役割は果たしたかもしれないというような感じがいたしております。これは私の感想でございます。
  112. 白浜一良

    白浜一良君 要するに、そういう側面はなかったとは言いませんよ。しかし、あなたはこの八百億を出資した責任者じゃないですか。責任者としての発言としていかがなものかと私は言っているんです。全く機能がない、役目を果たさなかったとか、そういうことは言っていませんよ、別に。八百億の出資を決めた総裁としての責任を言っているんです。
  113. 速水優

    参考人(速水優君) 決定をいたしましたのは先ほど申し上げましたように一昨年四月でございますが、出資が毀損され得るという事態になりまして、日本銀行としては非常に重くこれを受けとめております。  今回の大きな痛みを伴った経験から得られた教訓を、今、昨年できました日本銀行の新法のもとで今後の中央銀行としての対応に最大限生かしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  114. 白浜一良

    白浜一良君 納得できませんが、また後日に譲りたいと思います。  もう一点、この日債銀の話で、大蔵省の検査があって、その途中でいわゆる確認書をその出資の各関連会社に渡されたと。きのうも議論されておりましたが、これ、当時は大蔵省、今は金融監督庁ですか、何月何日、だれの決裁を得て、だれの名前で出したんですか。
  115. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  昨日も御答弁申し上げたと思いますが、これは出資を要請した先が全部で三十四ございますが、その全部に対してそういった確認書などがあるわけではございませんで、具体的に個別の銀行やあるいはほかの出資先のことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、幾つかの金融機関からの御要請がありまして、大蔵省としては当時、そこにどんなことが書いてあるかということは、一つ一つ申し上げると大変長時間になりますので要旨を申し上げますと、大蔵省としては再建策がもし実施されれば日債銀の再建は可能であるという認識を持っておりますということが一つ。それからもう一つは、この件は金融システム全体に大きな影響を及ぼす問題であるという認識を持っているということなどが出資先に対する理解を求める文書として、場合によっては確認書あるいは場合によりましては応接録といったような形で取り交わされている。  これは、先方の求めに応じて取り交わされているわけでございますが、出資されたのがちょうど六月末から七月の末にかけてのことでございますので、いつ幾日というお尋ねですが、これも一つというふうに特定されておりません。幾つかございますので大まかに申し上げますと、おおむね平成九年の五月中旬から六月中旬にかけてということでございます。  それからまた、だれがということでございますが、これも金融機関によりましてはそれぞれのレベル、段階によって違いがありますし、それから大蔵省の方も必ずしも特定の官職にある者というわけではございませんで、さまざまのレベル、対応するそれぞれのレベルに応じた確認書とかあるいは応接録とか、そういったものになっております。  そして、その内容は、先ほども申し上げましたように、その性格上決裁文書といったようなものではございませんので、それはないというふうに承知しておりますが、いずれにいたしましてもその内容は、平成九年の四月に大蔵大臣の談話が発表されておりますので、その当時の大蔵省としての方針をその文書の中にそれぞれの個別の出資要請先の御要請に応じて確認書あるいは応接録といったような形で取り交わされたものだというふうに承知しております。
  116. 白浜一良

    白浜一良君 そういう大蔵大臣のアナウンスがベースになっているんだったら公開したっていいじゃないですか、それなら。資料要求をしておきたいと思います。検討してください。  要するに、大蔵大臣、客観的事実はどうであったかということは、これは証明するのは難しいんですが、下手をしますと民間会社からお金を出資させるのに大蔵省が裏打ちしたというような話になるわけです、これは。とらえ切れない。だから、この関係を明確にすべきだということを私は言っているんですが、どうですか。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 当時の状況は、先ほど日銀総裁が言われましたように、現在おかげさまで昨年制定していただきましたようなセーフティーネットがございませんから、日債銀が破綻をするならば内外に及ぼす影響は非常に大きいであろう。これを救う方法がない。先ほど日本銀行総裁がちょっと銀行債のことを言われましたが、銀行債は現在、預金保険機構の保護を受けることが明確になっておりますが、当時なっておりませんでした。ということもありまして、非常に関係者が心配をされた。  そして、日債銀の再建策が発表されました四月一日に大蔵大臣が談話を出されて、そして各行に協力を、殊に日本銀行に対して協力を要請されたということがございますので、大蔵省としてはこの日債銀を破綻させずに再建させることが内外ともに非常に大事なことであるという認識を持った。大蔵省は途中から検査をいたしておるわけでございますけれども、その検査結果は日債銀には伝えておるわけでございますが、日本銀行に対しては債務超過ではないというはっきりした印象を与えている、金額は言っていないわけでございますけれども。  そういう状況でございますから、行政としては、大蔵大臣が最高責任者としてこの銀行を救うということが日本の内外における信用のために必要であると判断をされたということになると思います。  私は、そういう判断は行政の判断で、特に瑕疵があったとは思いませんけれども、御指摘のようにこれによって、日本銀行まで申し上げていいかどうか知りません、日本銀行には要請をした、市中銀行、金融機関には大蔵省の関係者が現実に要請をして、大体これで日本は内外の信用は救えるだろう、この銀行は大丈夫だろうと言っておるわけでございますから、結果責任といたしますと、日債銀は昨年の暮れに債務超過になったと検査は判定されたわけでございますから、この行政の判断は、その間、時間が推移しておりますのでそこは正確に表現できませんが、結果としては適正な判断ではなかったということにならざるを得ないと思います。  ただ同時に、日銀総裁が言われたことは私はまことに真実であると思いますのは、もしこの平成九年四月あるいはその近くの時点で日債銀が破綻いたしましたときにはどのようになったであろうかということは、いろいろ考えますと、今とネットが違いますので大変な事態であったろうと思われますので、日本銀行総裁がこの八百億円の支出というものはまことに遺憾であるけれどもそれなりの意味を持ったと考えるとおっしゃることは、私もそのように考えております。  ただ、さりながら、行政当局の判断、故意あるいは重大な過失があったとは思いませんけれども、結果として金融機関に対して、いわば恐らく日債銀の株式評価は、まだこれからでございますけれども、閉店の前日の百六十円なんというものではないだろうと思いますから、それらの株式はいわば返済されることがないという損失をかけた。そのことは、仮にそれが一年何ぼかの間の事態を救済する意味があったといたしましても、大丈夫だと思うと言って株式を募ったわけでございますから、その辺、損失をかけたという事実は私はどうも消し去ることはできない。故意、重大な過失がないといたしましても、行政としては結果責任をやはり感じるべきものである、私はそう判断しております。
  118. 白浜一良

    白浜一良君 これでやめますが、これは株主代表訴訟になるんですね、生保とか。そうなりますね。そういう法廷の場でこういう経緯というものが議論されて、最も議論して国民に知らせるべき国会の場でこういうことが明らかになっていかないというか、事実経過もわからなければ、だれが責任あるのかもわからなければ、うやむやで終わってしまうということが一番いけない。そういうふうに思うわけで、しつこく大蔵大臣の見解も求めたい。
  119. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一言申させていただきますが、これについては株主代表訴訟が起こるかもしれません。今おっしゃいましたような可能性がございますでしょう。それはその際、私は行政として故意または重大な過失はなかったが行政としての責任があると申しましたのは、それは行政側の一種の自己反省でございまして、裁判所がこの点をどう判断されるかということは、これは申すまでもなく裁判所の決定によるということであろうと思います。私が行政にやはりそういう反省があるということを申し上げることが裁判所の決定に何かの影響を与えるということはないであろう、これは行政としての反省を申し上げているのだと思って申し上げておるわけですけれども、いずれにしても最終的には裁判所の御判断であります。
  120. 白浜一良

    白浜一良君 本当はガイドラインもやりたかったんですが、もう時間が、私、五分残さなければいけませんので、一つだけ聞きます。  きょうの朝日新聞の朝刊に、朝鮮有事を想定した米軍からのそういう要請がいろいろあった、九四年時点と、こう書いてございますが、防衛庁長官、これは事実ですか。
  121. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 御承知のとおり、日米間におきましては、日米安保体制のもと、平素からいろいろなレベルで安全保障上の情報交換や意見交換を行ってきているところであります。  我が国に対して武力攻撃が行われた場合や周辺事態等に際して、日米協力につきましては日米防衛協力のための指針の見直し作業の中でも種々の検討が行われたところであります。その検討経過につきましては、平成八年九月の見直しの進捗状況報告やあるいは平成九年六月の見直しに関する中間取りまとめという形で対外的にも公表し、御議論をいただいたところであります。また、その検討成果は平成九年九月に新たな「日米防衛協力のための指針」として最終的に取りまとめられ、対外的に公表されたほか、同年十二月に国会にも御報告を行っているところであります。  そのような日米間の種々の意見交換や検討作業の中で、緊急事態に際しての米軍に対する我が国の支援につきましてもさまざまな形で議論が行われたことは事実でございますが、御指摘のように、一部の報道にありますように、対日支援要求として固まったものを政府として受領したものがあるわけではございません。中身については、米国の関係もあるので、かかる意見交換や検討作業の具体的な内容については対外的に明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  122. 白浜一良

    白浜一良君 そういう答弁をされると話が続かないわけでございますが、いずれにいたしましても、日本が侵略戦争をしたというこの戦後五十数年の経緯がございまして、やはり自衛隊の海外の任務に対しては特に国民は慎重なものがあるわけでございます。それはアジア諸国の認識を見ても尊重しなければならない。一方で、何か事があればということのそういう準備もされていないのもそれは事実でございまして、そこをどうしていくかということが大事なんですが、今のようにもう何かわけがわからぬところに何か始まっていて、国民が絶対わからないという、ここの不信感を払拭することが、総理、一番これは大事だと思うんです。  だから、本格的にガイドラインの審査もこれから衆議院でまた予算が上がってからやられるんでしょうが、この点を一番注意してもらいたい。配慮されて、十分意を尽くされるべきだというふうに思うわけでございますが、私の質問の最後にコメントを求めたいと思います。
  123. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 我が国が戦前行いましたことに対しての我が国に対する信頼が薄れておったことは当然であります。したがいまして、我が国としてはより慎重に周辺諸国の理解を求めていく必要があろうかと思っておりますので、今般のガイドラインの法をめぐりましての御審議を通じまして、より一層そうしたことに留意をしつつ諸外国の理解を求めていけるような法を制定いたしてまいりたい、このように考えております。
  124. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  125. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。  関連質疑を許します。渡辺孝男君。
  126. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。白浜委員の関連質問をさせていただきます。  ダイオキシンについて質問させていただきます。  国民の中には、昨年度の大阪府のごみ焼却場でのダイオキシン汚染、それから今回の埼玉県の一地域での野菜の、野菜といいますか農作物のダイオキシン濃度の問題でいろいろ不安が高まっております。大阪府の方はごみ焼却場の地域の住民の健康調査を行っておりますけれども、その中で血液中のダイオキシン濃度をはかっております。個別の人体に及ぼす影響の指標としましては、やはり血中濃度というのが一番参考になるのではないか、そのように思っております。大阪府の調査では一部の人に数倍の高い濃度が認められたということであります。  これに関して、環境庁、労働省、同じような検査をしておりますけれども、その結果についてお伺いしたいと思います。
  127. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 渡辺先生、もう御専門でございますので、数字のことについても熟知なさっておると思いますが、環境庁でも今年度より、大気のダイオキシン類などによる健康影響の調査を実施しておるところでございます。  調査地域といたしまして、今、先生が御指摘になられました大阪府の能勢町及び埼玉県の所沢市、狭山市、川越市、三芳町、大井町の各廃棄物焼却施設周辺とその比較対照とする地域において公募した調査対象者の血液、それから食事及び居住場所近傍の大気、土壌などのダイオキシン濃度を測定いたしておるところであります。  できるだけ早くということでございまして、今調査をいたしておるところでございますけれども、三月中には公表、公開できるものと思っておるわけであります。
  128. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 我が省といたしましても、当該センターで作業に従事をしました労働者のうち九十六人について、血中ダイオキシン類の濃度の測定、それから作業歴の調査等を行っておりまして、現在分析を進めております。三月中には取りまとめ、公表ができると思います。
  129. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 大阪府の方はもう結果が出ている、しかし国の方ではまだ出ていない。どうして国の方は時間がかかるんですか。その点に関して質問いたします。
  130. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) できるだけ早くということで調査を進めておるところでございます。  しかしながら、このダイオキシン問題については環境保全上極めて重要な問題であると認識していまして、国民の健康を守るためには広範な施策を推進していかなければならないと思っておるところであります。  環境庁では昭和六十年からダイオキシンについての環境調査を開始しまして、平成四年には、環境庁の要請によりまして、紙パルプ工場からのダイオキシン排出対策について、業界が自主取り組みをいたしたところでございます。また、平成九年度には所沢周辺を含め埼玉県内五カ所で測定調査を実施したところであります。さらに、ダイオキシン対策としては、平成九年八月に大気汚染防止法施行令の改正によりまして、廃棄物焼却炉に係る規制の実施をしているところであります。  現在、大気、水質及び土壌等について、全国四百カ所ほどを指定しまして緊急に調査を行っておるところでございます。  それで、耐容一日摂取量、TDIでございますけれども、世界保健機関、WHOから、昨年五月に従来の十ピコグラムから一―四ピコグラムの範囲に見直ししたところでありまして、その根拠となる公式な報告書が本年一月に届いたところであります。それを受けまして、厚生省、環境庁で専門家会議を開いて今検討をいたしておるところであります。  できるだけ早くこのTDIの処置をしていかなければならないと思っておるところでありまして、懸命に頑張っておるところでございます。
  131. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 質問のお答えになっていないと思うんです、なぜ大阪府より遅くなっているのかということを聞いたんですが。
  132. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 遅くなっておるというのは、今まで調査をしておったわけでありますけれども、動物実験等によって科学的知見を得なければならないということで、その報告をWHOから求めておったところでありまして、その点につきまして若干、安全宣言をしなけりゃならないわけでありますから、きちっとした数値を出さなきゃならないということでおくれておるわけであります。出した以上はそれを遵守してまいらなければならないということであります。
  133. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 そうすると、血中濃度等のデータは出ているけれども、ほかのデータと照合するためにおくれているということでよろしいですか。
  134. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 調査についてのおくれということで先生から御指摘を受けていますが、具体的にはおくれておりません。  仕事の段取りとして、きちっと順序よく進めているわけでございまして、先ほど申したとおり、大気と土壌と、全体に比較して相対性の暴露の経路を調べて血液の判定まで入っていくという作業をとっておりますので、具体的な形では、今調査をしておりますが、これを専門家にも分析していただいて、具体的に三月中に早く報告したいというふうに思っております。  ですから、調査の範囲がかなり広い範囲で行っています。それから、コントロールもとっておりますものですから、そういう意味で、きちっとした形で、それから十分に協力してくれる人たちとの具体的な納得関係をきちっと整理していくということもございまして、そういう意味で、慎重に仕事をしているという意味でございまして、おくれておるという形ではございません。  ですから、大臣のおっしゃるとおり、数字が出次第、きちっと御報告申し上げるというつもりでおります。
  135. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 やはり日本のダイオキシンに関する対策がおくれている、そのために調査してもなかなか結果が出てこない、あるいはその調査のデータがないということではないかと思います。  このパネルに示しておりますけれども、やはりドイツ等欧州の場合は、一九八五年にきちんと、人体に摂取してよろしい基準、よろしいといいますか、これ以上とってはいけないという基準を決めております。(図表掲示)スウェーデンが一九八八年、英国が一九九二年、米国が九四年、これらに比較しまして、日本の場合は一九九六年に初めて厚生省が示している。その後、環境庁が次に値を示しているということで、非常に、十年以上おくれているというのが一般に言われております。  このおくれた原因について、環境庁長官からお答えいただきたいと思います。
  136. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先ほども答弁申し上げましたように、環境庁としても時期的には早くからこの問題に取り組んでおったところであります。  その都度数値も発表いたしたわけでありますけれども、しかしながら数値の安全基準というものがいかほどであるかというところの指針が出ておりませんでした。それがためにということで、WHO等々からの情報提供を待って、そしてこれが安全か否かというところを模索したわけでありまして、今回もこの所沢の野菜の問題またお茶の問題等々が出ておるわけでありますけれども、その出た数値というものが果たして世界的な標準に合わせて安全なものであるかどうか、日本国内についても安全であるかどうか、その辺の照合をいたしておるためにおくれたわけであります。  確かに、スウェーデンやヨーロッパ諸国、先進諸国と比べて十年のおくれがあるということも現象的には言えると思いますけれども、しかし取り組む姿勢は、環境庁としては従来からなしておるところであります。
  137. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 公明党としましては、国の対応が遅いということでいろいろ汚染地域等の実態調査を行い、そしてまた関係の団体からいろいろ御意見を聞いて、新しい今度の日本で定めていく基準についてこういうのがいいんではないかということで、一月二十七日にまず法案をつくりました。ダイオキシン類対策特別措置法という法案をつくりまして、やはり人体に対する摂取許容量というのはWHOが示している一番最も望ましい値、一ピコグラム一日量でありますけれども、体重当たりの、これにした方がいいんではないかということで、きちんと法案に盛り込んでおります。  この値に関しまして、環境庁、厚生省それから農水省に考えをお聞きしたいと思います。
  138. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) お話しのように、WHOの方から昨年の五月に専門家会議の報告がございました。これは条約とかそういうものではございません。一ないし四ピコグラムということで、実際の詳しい資料等は出ておりませんので、今環境庁長官の言われたように、この一月に出てまいりました。  しかるところ我が国におきましては、私ども厚生省としては、大体十ピコグラムを基準に今までしておりました。しかし、環境庁の方では、望むべき、あるべき姿として五ピコグラムをやっておりますので、そこで基準が二つあったりして紛らわしいという問題がございますから、今度総理の御指示によりまして閣僚会議を設置して総合的に検討するということに相なりましたので、その基準値の統一あるいはWHOとの関係等は念査してまいりたいと思います。  なお、公明党の提出されました法案につきましては私も了知しておりますが、この一というのはWHOで一ないし四という基準を示しておりまして、四をまずクリアすべきであるというように私どもは解しております。したがって、望ましい姿としては一ということであると理解しておりますので、例えば厚生省で今この一日当たりの耐容許容量を食品別に、食品のバスケットによって、食品調査によって大体二千グラムくらい一日にとるだろうと。その中でいろいろの魚類、野菜、その他区別いたしまして、そして総合的にそのピコグラムといいますか基準値を算出しておりますが、今のところ私どもとしては、平成九年に出したのが二・四一ピコグラムになっておりますから、一にいたしますともうそれがほとんど超過するという状況にもなります。四でございますと、まあまあダイオキシンが例えば所沢で野菜が多少、野菜というかお茶の問題なんかも〇・〇二ピコグラム、体重一キログラム当たり、そういうことでございますから、その許容量の中に入っておりますから、私どもとしては安全宣言をしてもいいなと思いますが、なお念のために調査をしておるということでございます。  私どもとしては、今直ちに一にすることの問題は、十分専門家会議等の意見を聞いて、そして一ないし四のWHOの趣旨をよくそんたくして日本として基準を決めていかなければならない、このように思っております。
  139. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ただいま厚生大臣からも発表されましたように、平成八年の厚生省の発表によりますと、十ピコグラム、一キログラム当たりの許容量ということであったわけでありますが、一年後の平成九年では環境庁では五ピコグラムというような形になりまして、そこに一年間の間でも格差が倍と半分というような形になってあらわれておるわけであります。これはやっぱり動物実験によるわけでありまして、動物の種類によってその数値も変わってくるものと思っておるわけであります。  そこで、大切なことはWHOのあらゆる面からの検討数値というのが一つの目標値になってくると思っておるわけでありまして、そのWHOに関する数値にいたしましても、ここ二、三年の数値が違っておるわけであります。今回、公明党からダイオキシン法案が提出されまして、一という数字が出ておるところでありますけれども、果たして日本におきまして一ピコグラムの数字を今後維持するにはどのような対応をしたらできるのだろうか、そういう点もこれから検討していかなきゃならないと思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、専門家の意見をまずお聞きしてということで、一月二十八日に、WHOからの報告があった後に、環境、厚生の専門家による検討会を開始いたしたところであります。  そういうことでございまして、決して私は手抜きをしておるとかおくれておるとかいうだけの問題ではなくて、それだけに慎重を期しておるというふうに御理解をいただきたいと思うわけであります。
  140. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 農林水産省といたしましては、農作物等の安全性に関して、現在、環境庁、厚生省と鋭意調査をしているところであります。  ダイオキシンについての国民的な関心が非常に高いことは重々承知をしておりますし、農作物等でも検出量が少なければ少ないにこしたことはないわけでございますが、二年前に調査いたしましたJA所沢のデータ、あるいは厚生省のデータ、それから先日テレビで誤解を招く報道がありましたけれども、その数字が仮に正しいとしても、それ自体で安全性に影響があるということは我々は考えておりません。  一方、今、厚生大臣環境庁長官からもお話がありましたが、耐容一日摂取量、TDIというものが一方であって、それの食生活の中で足し上げていったものがどの程度かということを今両省庁の方でやっておるわけでございまして、今までのデータでは二・四という数字でございますから、食品全体から摂取される量についても安全であるというふうに考えております。
  141. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 自治大臣に一つお聞きしたいと思います。  やはり地域の総量規制というのが必要になってくると。その場合には住民の参加というのも大事だということ、また情報公開も大事だということで、それを我々は法案に盛り込んでおります。その点に関して御意見を伺いたいと思います。
  142. 野田毅

    国務大臣野田毅君) ダイオキシン対策が現下の最重要課題の一つであるという、まず基本認識においてはそのとおりでございます。  この問題はいろいろ御議論ございますが、現在のところ、所管の環境庁などでいわゆる個別発生源対策、廃棄物焼却炉に係る排出抑制基準ですね、こういう個別発生源対策を重点に進めておるわけであります。同時に、ダイオキシン類の排出を抑制するためには、住民の理解と協力を得て広くごみの減量化や再資源化を積極的に進めていくということが大変肝要なことでございまして、そういう点で、今後住民の声も十分に聞きながら対策を進めていくことが必要だろうと考えております。  それらのことを積み重ねていく中で、総量規制という問題については、これはまた環境庁を主体としてその辺の検討がなされていくことになるだろうというふうに考えております。
  143. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 最後に、総理の公明党案に対する考え方、それから今後のダイオキシン対策について御見解をお伺いして、終わりにしたいと思います。
  144. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ダイオキシン対策は、国民一人一人の安全性を確保いたしまして安全へのかけ橋を築いていく上で極めて重要でございまして、現在、排出削減対策の実施、環境汚染及び人の健康への影響の実態把握、安全に関する基準及び汚染土壌対策の検討など、各般の施策を進めております。  今後とも、既存の法制度を十分に活用し、最新の知見を踏まえつつ、ダイオキシン対策関係閣僚会議の開催を決定いたしましたところでございますので、効果的かつ総合的な対策の推進を図ってまいりたいと思っております。  公明党から提出をされておりますダイオキシン類対策特別措置法案、一月二十七日とお聞きしましたが、内容につきましてこれからよく勉強させていただきたいと思いますが、先生のお示しをいただきましたダイオキシンの基準のこれを拝見いたしておりましても、各国とも、ピコグラムの数字はそうでありますが、いろいろ一週間当たりとか一日とかそれぞれあるようでございます。そういう意味で、先生も御専門でございます、また先生を中心に恐らくおまとめいただいた法案だろうと思いますので、政府といたしましてもこの問題については、冒頭申し上げましたように、最重要課題という取り組みの中で今後検討をさせていただきたいと思っております。
  145. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 ありがとうございました。
  146. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で白浜一良君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  147. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、市田忠義君の質疑を行います。市田忠義君。
  148. 市田忠義

    市田忠義君 日本共産党を代表して質問をいたします。  日本経済は依然として深刻な消費不況状態を脱しておりません。その大きな要因になっているのが雇用不安や社会保障などの将来不安であることはこれまでもたびたび指摘されていたことであります。きょうは、そのうちの一つ、介護保険問題についてまずお尋ねをいたします。  介護保険の実施まであと一年余りとなりました。ことしの十月からは介護を必要とするかどうかの認定を受ける申請事務が始まります。我が党は従来から、このままでは保険あって介護なしになりかねない、こういうことを指摘してまいりましたが、事態は改善されるどころかますます深刻になってきております。認定基準の問題やマンパワー対策、保険料水準、在宅と施設介護の区分けと水準など、さまざまな問題がありますが、きょうは特に特別養護老人ホームにかかわる問題に絞ってお聞きしたいと思います。  まず第一に、基盤整備の問題であります。  特別養護老人ホームに入所したい、そう考えて申請をして、入所資格ありと認定されたけれどもいまだに入所できていないで待機している人、これは全国で何人いますか。
  149. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 私どもでは直接には把握しておりません。各市町村で、登録という形ではありますけれども、本当に要介護認定かどうかわからないというケースもございますので、単純推計としては余り意味がないということで私どもは把握しておりません。
  150. 市田忠義

    市田忠義君 全く話にならぬです。国民には介護保険で新たに二兆円を上回る負担を求める。だれだって、これだけ取られるんだったら少しぐらいはよくなるだろう、そう考えるのが当たり前であります。ところが、特別養護老人ホームの待機者すらつかんでいない。余りにも無責任じゃないですか。  我々は独自に調査をいたしました。これがその表であります。(図表掲示)  九八年二月、去年の予算委員会で志位書記局長が質問したときに、前の年の二月が我が党の調査で七万六千六百五十人から十万を超える待機者になっている。さらにことしの二月、我々独自に調査をすれば十一万三千六百九十六人、また待機者がふえている。これが実際の姿であります。  去年の予算委員会で、我が党の志位書記局長は、待機者の数は前年の七万六千六百五十人から二万五千人ふえて十万一千二百三十四人、そして新ゴールドプランの目標を達成しても八万人の人が特別養護老人ホームに入れない、そういう問題を指摘しました。  それから一年がたった今日の状況はどうか。先ほど示したように、待機者は十一万三千六百九十六人、さらに一万二千四百六十二人もふえている。確かに整備目標はふえてはいるけれども、それを上回って待機者がふえている。総理、この現状でいいとお考えですか。総理に聞いている。
  151. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 事実関係だけちょっと申し上げておきますが、今、局長の方で数字がわからないと言ったのは、正確な数字がわからないという意味だと存じます。  それは、今市町村において介護保険の事業計画というものを策定する準備をやっておりますから、それによると明らかになってくると存じますから、共産党の皆さん方がお調べいただいたのはこの数字、それはそれなりに私は根拠があってのことだろうと存じますから、参考にはさせていただきます。  この間、私も本会議で質問を受けまして、七万人というように貴党の議員から質問を受けました。これをどう見るかによりますけれども、やはりかなりの待機者があり得るだろうと私も想定しておりますから、ひとつ参考にはさせていただくつもりでございます。
  152. 市田忠義

    市田忠義君 去年の二月の質問の中で、待機者を調べる必要がある、そういう指摘をしながら、まだ今調査中である、大変怠慢だということを指摘しておきたい。  計画目標が一万ふえた、予算でふやしたということを聞きました。しかし、それを上回って待機者がふえておる。だから、資格がありながら入れない。昨年の八万人からさらにふえているということは言いましたが、こういう現状についての認識が本当に私は欠如しているというふうに思うんです。  九十七歳の母親の面倒を見ている七十四歳のある男性。自分は病気がちでもう限界だと、お母さんも早くあの世からお迎えが来てほしいとしょっちゅう言う、私も頭がおかしくなりそうだ、こういう話を聞きましたが、こういう人たちが何万人も待機させられておる。計画を大幅に引き上げるべきじゃないですか。総理、いかがですか。
  153. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ちょっと事実関係だけ申し上げておきますが、ゴールドプランによりまして二十九万人を十一年末に達成するということで、現在補正予算等で重点的に配慮して三十万人にいたしておることは御承知のとおりです。  それでも足りないだろうという推定がつくわけですが、実はこの問題はやはり道路、河川の改修事業の補助金と違いまして、それを設置する地方自治体がその運営その他責任を持ってやっていただかなきゃなりません。そして、それは地方自治体からの申請主義によって対応しないと、国が強制的に一方的にここへ特老をつくったらよかろうというわけにいきませんので、あくまで介護関係の事業計画をもとに私どもはそれを把握して、そして今度は介護保険というのは在宅と施設介護に分かれますから、それぞれどの程度の配分でバランスがとれるかということも考えながらやっぱり配置を考えていかなければならない、そういうことでございます。
  154. 市田忠義

    市田忠義君 今のような話はわかっています。  保険料を払ったのに入所資格のある人が特養ホームに入れない、こうなれば保険契約違反ですよ。先ほど宮下厚生大臣は、二十九万を一万引き上げたけれども入れない人が生まれるということをお認めになったわけですから、大幅に引き上げることを重ねて要求しておきたい。  二つ目の問題はもういいです。  現在入所している人がどうなるか。現在特別養護老人ホームに入所している人で来年四月から介護保険制度が始まったら、自立または要支援と判定される人、これは厚生省、シミュレーションやっているはずですが、どういう数値が出ておりますか。
  155. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 五年間は法律によりましてその施設にお残りいただいて福祉の施策を受けることが可能になります。しかし、介護保険が実際スタートいたしますから、要支援以外、自立ですね、今のお話のような……
  156. 市田忠義

    市田忠義君 何%。
  157. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) パーセントはちょっと局長の方から答弁させます。
  158. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 十年度の要介護認定の試行事業でございますけれども、これにつきましてはまだ介護認定そのものの、基準そのものの見直しを現在やっておりますけれども、この介護、十年度の結果で申し上げますと、自立と判定されたものが二・七%、それから要支援と判定されたものが三・四%でございまして、合計で六・一%でございます。
  159. 市田忠義

    市田忠義君 今言われたように、厚生省のシミュレーションで自立または要支援と判定された人、これは六・一%であります。こういう人は特別養護老人ホームでの施設介護を受けられない人ということになる。先ほど五年の経過措置、これは後で聞きます。全国の特養入所者の六・一%ということになりますと、推計で一万四千人の人が施設を追われることになる。  いろんな新聞で介護難民だとかそういう言葉も使われているぐらいであります。ほとんど収入のない人も含めて四十歳以上のすべての国民から新たに保険料を集めて介護保険制度をやります、そう言って始めたら、その結果一万四千人ものお年寄りが施設から追い出される。これが介護保険の実態だとしたら大問題じゃないですか。  総理、いかがですか。
  160. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘のような点の有無も含めまして、介護保険を始めるに当たりましていろいろな問題を解決しなきゃならないと考えておりまして、今厚生省を中心にいたしまして、あるいはこれをお引き受けいただく地方自治団体等とも十分話し合って、遺漏なきを期して全力でこの開始までに至る間努力をいたさなければならないと考えております。
  161. 市田忠義

    市田忠義君 先ほど厚生大臣が五年の経過措置という話をされました。そのことについてちょっとお聞きしたいんですが、こういう人たちの介護費用、今は国からの措置費によって賄われているわけですが、介護保険制度が導入されればそれは当然なくなる。そうすると、介護施設の側にそれに見合う新たな報酬が保障されなかったら、結局施設が犠牲になるか入所者が犠牲になるか、そのどちらかの選択しかないと思うんですね。一体どういう手だてを講じられるのか、それについてお尋ねしたい。
  162. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 五年間たちますと退所していただくことになります。  なお、ちょっと先ほどの議論の中で誤解があってはいけませんので申し上げさせていただきますが、今の特別養護老人ホームに入っている方がすべて要介護者になるかどうかは要介護認定の基準によって判定いたしますから、その点はおわかりだと思いますから、念のために申し上げさせていただきます。  それで、どういう措置をとるかということですが、介護保険がスタートいたしますと、結局要介護者Ⅰ級からⅤ級までの方々には介護給付が行われます。しかし、外れた方々に対しては従来の措置費をそれではそのまま維持できるかということでございますが、基本は介護保険に今度は移りますからそちらで自立していただくのが本来の筋でございますが、しかし、それも五年間という法律が認めている限りはなるべく弊害のないように、つまり特老の経営者に対する補助になりますから、措置費から補助になりますから、その弊害のないようには配慮していきたい。  なお、五年後には福祉のそういう施設をつくる、あるいはいろいろの施設で収容できるような体制はこれは当然考えていかなければいけないということでございます。
  163. 市田忠義

    市田忠義君 総理に確認しますが、少なくとも五年間は従来と同じような状況できちんと保障する、今基本的にはそういう方向で厚生大臣がお答えになりましたが、改めて確認していいですね。総理、どうですか。
  164. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府といたしましては、先ほど厚生大臣が御答弁申し上げたようなこととして全力を尽くしてまいります。
  165. 市田忠義

    市田忠義君 三つ目の問題は、自治体が独自に行っている単独補助の切り捨て問題であります。  今、東京、大阪、神奈川、愛知など全国の自治体で、介護保険導入を口実にして民間の特養ホームなどの職員に対する人件費の上乗せや国基準を上回る人員配置の補助金をカットする動きが広がっている。例えば、神奈川県では民間社会福祉事業振興費の人件費、管理費が三〇%削減される大幅なカットが行われております。  これに対して、県内の三十七市町村の過半数の十九市町議会で削減見直し反対の意見書が採択されております。例えば津久井町議会では、「この補助金が削減や廃止されることになれば、社会福祉施設の増設はもとより、現状の運営が困難になるばかりでなく、市町村の高齢者福祉及び障害者福祉の諸計画に大きな影響を与えるほか、更なる負担転嫁につながることが憂慮される。」、こういう決議を上げているほどであります。  また、東京都ではことし二月五日、民間社会福祉施設に対する補助金のリストラ案を発表いたしました。東京都は、これまで国の基準が余りにも低過ぎるというので、東京都独自でさまざまな補助をしてきました。  例えば職員配置の国基準、これは入所者百人に対して三十五名、これが国基準ですが、都が上乗せをして四十八名にしている。入所者の処遇にかかわる費用を国基準の二十四万二千百十円から三十五万四百七十七円に加算する。民間社会福祉施設の職員の給与を公立並みに保障する公私間格差是正を行う。こういういわゆる上乗せや横出しの措置で何とか福祉の水準を維持してきた。ところが、これを介護保険の始まる二〇〇〇年四月に廃止する、こういう計画であります。  そうなりますと、当然職員が確保できなくなる、利用者の処遇が悪くなる、あげくに施設が維持できなくなる、そう社会福祉施設の関係者は大変心配しておられます。ただでさえ施設が足りなくて待機者が年々ふえる。こういうのに全く逆行したことが行われている。こうして新たに二兆円の保険料を国民に課して介護保険制度が発足するのに、かえって福祉水準が下がる。極めて異常な事態が起こっている。  総理は、介護保険制度が発足することでかえって福祉水準が切り下げられる、こういう逆転現象が起きることをどうお考えですか。
  166. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今までのは措置的な福祉政策でございますから、国の基準を上回って市町村が特に配慮するということは事実ございます。  しかし、保険制度ということになりますと、一般的に水準がやっぱり統一されなければなりません。そうしないと保険の公平公正は期せられません。そういうことでその問題が起きてきているわけでございまして、必ず上乗せだけがあるというものでもございません。地域によってはこの水準によってかなりレベルアップされるところもあるし、それから横出し、上乗せというところもございましょう。そういうことを私どもは、介護保険制度という保険制度でございますから、そこで一つの基準値を見出していきたいと思います。  なお、地方公共団体が独自にやっている福祉政策について、これはむげにカットしっ放しにするわけにもいかないという点がございますので、そういった点はどのような財源措置でどのような措置が可能かというのは、私どもはやっぱり問題意識として持っております。ただ、それを保険ですべての水準をカバーすることはできないということははっきりいたしておりますから、その点はそれで全部打ち切りという、保険では見れるけれどもそれ以外の福祉政策で可能ではないのかどうか、あるいは地方財政対策等で可能ではないのかどうか、それを続けるとした場合。そういった問題意識は持っていることを申し上げておきます。
  167. 市田忠義

    市田忠義君 介護保険制度の導入を口実にしてそういう補助金カットが幾つもの自治体でやられている。補助金カットなどの結果、現場でどういうことが起こっているのか。  ことし一月十一日付の東京新聞のレポート。今、特養ホームでは介護保険の導入を機に寮母さんなど介護職員の数を減らす動きが出始めた。入所者百人のあるホームは、昨年退職した三人の寮母の補充をしないでさらに六人減らす計画で、朝六時の起床時間に間に合わせるために午前四時半から準備にかからなければならなくなる。さらに六人減ると、ベッドから起こしたり洗面や食事への誘導という余裕がなくなってしまうために、入所者はこれまでは食堂でとっていた食事をベッドの上でとらなければならない。こんなことが起こっている。  こういう事態を認識しておられますか、こういうことがあってはならない、そういうふうに総理、思われませんか。総理に思わないかと聞いているんです。
  168. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) そういう事実は、私も、どの市町村でどうなっているかという実態までは個別には把握しておりませんが、容易に想像できることでございます。ただ、人員配置その他はやはり特老でも基準値がございまして、それで一定の基準に従ってサービスをやっていただければ国としての水準は達成できるという前提に立っておりますから、それ以上に人員をふやしておられるような施設でありますとか、あるいはお医者さんも例えば老健施設でございますと配置がございますけれども、それは手厚くすればするほどいいという考え方でなさっている地方団体もあると思います。あるいは民間法人でもあるかもしれません。  しかし、私どもは、そういうことを適正化していただくということも保険システムをつくる上で非常に重要なことだと考えておりますから、保険制度の維持とそれからそういったさっきの横出し、上乗せの問題をどうするかという問題はやはり区別して対応して考えていかなければならないというように思います。
  169. 市田忠義

    市田忠義君 今行われているような自治体での補助金カットというのは国の方針としてやらせているんですか。それとも、そうでないというなら、自治体が単独事業をやることを国が妨げることはない、そういうふうに言えますか。
  170. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 基準の詳細につきまして、もしか必要であれば局長の方から答弁させますが、当然そういう特老施設等も基準値がございますから、それを超えるものは今回の、施設介護として今度は位置づけるわけでありますから、統一的なやはり基準でやっていただくのが原則だと存じます。
  171. 市田忠義

    市田忠義君 では、補助金カットを国がやらせるためにそういうことを指導するということはあり得るんですか。自治体が独自にやる場合は妨害しないということを確認できないんですか。
  172. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これはよく実態を調査してから私どもとしては対応することになると思いますが、先ほど申しましたように、切りっ放しでいいというように私どもも考えておりませんから、何らかの措置が可能かどうかを含めて、福祉の後退につながらないように措置すべきものだと一般論としては考えております。
  173. 市田忠義

    市田忠義君 では次に、国の責任問題について一言指摘したいと思うんです。  これまでの措置制度では、かかる経費のおおむね二分の一を国が負担していた。今度の介護保険では、被保険者、いわゆる四十歳以上のすべての国民が二分の一を負担して、残りの二分の一の半分、すなわち国の負担分はこれまでの二分の一から四分の一に減る。これは先日、厚生省の担当者にも確認をいたしましたが、政府の試算でも、二〇〇〇年実施の場合、九五年単価で、今なら一兆五千五百億円かかるのが一兆一千八百億円に、三千七百億円国の負担が軽くなる、これは間違いありませんね。
  174. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは実は介護保険法を制定した当時議論がございまして、医療保険からも介護にかわったりいろいろいたしますから、差し引き、あるいは措置費からかわるのはどうなるんだという議論がございました。当時は確かに、平成八年度の時点で議論されたわけですが、平成七年度の診療報酬や措置費の単価を用いて計算をいたしましたところ、今御指摘のように、国としては三千七百億円当時の金額で節減といいますかマイナスになる。都道府県は八百プラス、市町村は千六百のマイナスということでございます。  しかし、今これを試算してございませんけれども、単価の設定とかあるいは人数等が相違してまいっております。それから、介護保険の実施がいよいよ具体化するということもございまして、これが縮まることは容易に想像できるのでありますが、三千七百億きちっと今でもそうだということではございませんが、当時の議論としてはそういうことがあったということでございます。
  175. 市田忠義

    市田忠義君 少なくとも、九五年単価によれば三千七百億円国の負担が軽くなるということはお認めになりました。大体、国民に二兆円を超す新たな負担を求めるというのに、国の負担は減らす、これはとんでもない話だと思うんです。  ことし一月二十七日の衆議院予算委員会で我が党の児玉議員に対して宮下厚生大臣は、保険料が余り高度または高額になりますとこの保険制度が成り立たなくなる可能性もあると、こう答弁されました。このことを真剣に考えるなら、国庫負担の切り下げというのは到底許されないんじゃないか。いかがですか。
  176. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 国庫負担の切り下げと今の三千七百億と直にどういう関係になるかはつまびらかにしておりません。  介護保険につきましては、五割を国及び地方公共団体で公的負担で賄うということはもう既に法律で決まっていますし、二号被保険者の四十歳以上の方々に三三%分を負担していただく、あと一七%を年金受給者等から上乗せでしていただくということも決まっておりますので、そういった枠組みの中でやることになると存じます。  私どもことしの予算でも、これはまだ介護保険が本格的にスタートしておりませんけれども、高齢者のいろいろのサービス部門といいますか、サービスとかあるいは健康、予防、あるいは健康なお年寄りの方々をきちっと活動できるようにするために百億円の事業費をつけてやっておりますが、私どもとしては、本格的にスタートいたしますればそういった問題をもっともっと基本的に掘り下げてみたいなというように思っておるところでございます。
  177. 市田忠義

    市田忠義君 国民には新たに負担を求めながら国の負担は逆に減る、これは本当に本末転倒だと。今のような説明は私は言いわけにならないと思うんです。  介護保険施行を来年四月に控えて、わずか月額一万五千円の年金からも保険料を天引きする。しかも、保険料は当初政府が言っていた平均月額二千五百円をかなり上回るだろうということも言われている。利用料の負担に耐えられずに、低所得者は結局利用できなくなるのではないか。いざ介護保険制度が実施されると、福祉水準がよくなるどころか逆に現在よりも水準が後退するのではないか、こういう心配が全国に広がっている。  昨年秋、特別養護老人ホームなどの施設の責任者が、全国の老人ホームのほとんどを占める四千四百六十六の施設に対し行ったアンケート調査では、利用者負担が重くなる、施設経営は苦しくなる、こういう回答がそれぞれ八割以上を占めた。このままでは大変というので、実施の延期を求める声が自治体や施設の関係者から上がっておるほどであります。  九七年十二月三日の参議院本会議では、介護保険の施行に当たって講ずるべき課題を全会一致で決議いたしました。その内容を読み上げてください。
  178. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは全文を読めとおっしゃるわけですか。
  179. 市田忠義

    市田忠義君 前書きはいいですよ。項目だけでいいです、項目だけ。
  180. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) それじゃ、読ませていただきます。  一、「保険あって介護なし」とならないよう、介護保険法施行までに介護サービスに関する人材、施設等の基盤整備を着実に進めるとともに、地域間格差の解消に努めること。また、法施行後も高齢者の増加に対応して引き続き介護サービスの基盤整備の推進に努めること。  一、市町村が制度を安定的に運営できるよう、その意向を十分反映した各般の支援に万全を期すとともに、広域化の取り組みを支援すること。  一、介護を要する状態の認定については、公平、公正に留意するとともに、迅速な判定を行えるよう必要な措置を講ずること。  一、全ての国民が適切に介護サービスを利用することができるよう、低所得者に対する必要な措置を講ずること。   右決議する。 でございます。
  181. 市田忠義

    市田忠義君 総理は、一月二十七日、同じく衆議院予算委員会で、「いろいろと附帯決議等をつけられておるということでございますから、その実行のために、政府としては最大限の努力はいたしていかなきゃならない」と、こう答弁をされました。  今、厚生大臣が読み上げられた本会議決議の立場で最大限の努力をすることが求められる、そう思いますが、いかがですか、最後に。介護問題の最後にいかがですか。  総理に聞いているんですよ、総理に。総理がどう思うかと。本会議決議に対してどうかというのを総理に聞いているんですよ。
  182. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) まず、厚生大臣がお答えになられた後、総理、お答えください。
  183. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) それじゃ、委員長の指名でございますから私の方から申し上げます。  最大限努力する内容はいろいろさまざまな点にわたると存じますけれども、例えば委員の御指摘の低所得者に対する必要な措置でございますが、これは先ほどやはり保険料が貧しい方々に過重になるのではないかとか、あるいは一割負担が低所得者に過酷な状況になるのではないかという御指摘だと存じますけれども……
  184. 市田忠義

    市田忠義君 そういう心配の声が出ているということです。
  185. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 心配の声が出ていることに対応して、私どもとしては、低所得者には軽減措置を、保険料でも半額あるいは自治体の条例によってはそれ以下にすることも可能な状況をつくり出そうということでございます。また、一割負担の方も、それは療養費、医療費につきまして高額療養費制度がございますが、それをさらに緩和したような形で低所得者の一割負担の軽減も図るというようなことで、最大限の努力は今設計上しつつあるということだけ申し上げた上で、総理の御答弁をお願いします。
  186. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 十二年の四月から始めます介護保険制度というものは、我が国として初めてこの制度を実施するわけでございますから、いろんな諸問題はあろうかと思います。ドイツその他各国とも経験をした中での問題を十分検討しながらこれから開始をしようということでございますが、委員指摘のような諸点もございますし、また国会での御決議等もございます。  政府としては、全力を挙げてせっかく始めますこの制度が、介護をされる方、また介護に対しまして責任を持つ地方自治団体あるいは関係者の皆さんをして、これが十分その成果を挙げられるように政府として努力いたしていくことは言うまでもない、こう考えております。
  187. 市田忠義

    市田忠義君 次に、ガイドライン関係関連法案について質問をいたします。  衆議院での質疑を通じて、ガイドライン法案がアメリカの戦争に日本が参加する法案であり、大変危険なものだということを我が党は追及してまいりました。  きょうは、ガイドライン法案で日本が引き受ける行為は何か、それは日本を国際的にどういう立場に立たせるのかを中心にただしていきたいと思います。  そこで、まずお聞きしますが、ガイドライン法案は、日本が行う後方地域支援の内容について別表などで具体的に何を行うと規定しているか、御説明ください。
  188. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 周辺事態安全確保法案でございますけれども、この法案では、この周辺事態に対応いたしまして「我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定め、もって我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。」と、こういうふうにしてございます。  それで、例えばこの後方地域支援でございますけれども、この後方地域支援につきましては、周辺事態に際して日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する物品及び役務の提供、その他の支援措置であって、後方地域において我が国が実施するものをいう、こういうふうにしてございます。  後方地域につきましては、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」とございまして、具体的な後方地域支援の内容、この三条の第二項に定めます内容といたしましては、法案の別表第一にその種類と内容が定めてございます。種類といたしましては、補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、空港及び港湾業務、基地業務等でございます。
  189. 市田忠義

    市田忠義君 戦闘行動を行っている米軍に対して、武器弾薬やアメリカの軍人の輸送、燃料、物資の補給等の支援を行うことなどが定められている。こういう行為がアメリカが戦闘を行っている相手国から見て国際法上敵対行動となるかどうか、軍事目標となるかどうかについて、総理、吟味されましたか。総理どうですか。総理に聞いているんです。
  190. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 日米安保条約に従って、そして国連憲章に従って活動している米軍に対して後方支援をする。国連憲章に従って活動している米軍というのは、もしそこで武力衝突があるとすれば相手は不法な武力の行使をしている国でありますから、その国が後方地域支援をした日本を武力攻撃するとか、そういったことを国際法上正当化する余地は全くないわけであります。
  191. 市田忠義

    市田忠義君 全く聞いていることに答えていないです。まともな吟味をしたとは思えない答弁であります。  国連総会が国際法違反として非難決議を上げるような行為をしばしばアメリカはやってきましたし、アメリカが常に国連憲章に合致した戦争をする、こういう政府の立場は到底世界に通用しない。  しかし、私が今ここで問題にしているのは、一たん武力紛争が始まったら、双方に適用される国際的なルールがある。その国際法から見て、日本の後方地域支援が敵対行動とみなされるのか、軍事目標とされるかどうかを吟味したのかということを聞いているんです。日本の後方支援が国際法上軍事目標とされるのか、敵対行為とみなされるのかどうかということを吟味したのかと、そのことを聞いているんです。アメリカがやる戦争、それに協力する日本のそういう問題を聞いているのではないんです。後方地域支援が軍事目標となるのか、国際法上どうなのか、吟味したのかということを聞いているんです。
  192. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) ですから、後方地域支援をしている日本に対してどこかの国が攻撃をすることが国際法上許されるようなことにはならないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  193. 市田忠義

    市田忠義君 聞いていることに全く答えていないです。  ではお聞きしますが、国際人道法や武力紛争法、ここでは何を軍事目標にするのか、またはしてはならないのかについてどのように規定していますか。
  194. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。  委員御質問の人道法あるいは戦時国際法等における軍事目標というものはどのようなものであるかという点に関連して、現在の国連憲章下における戦時国際法の位置づけについて申し上げたいと思います。
  195. 市田忠義

    市田忠義君 そんなことを聞いていないですよ。そんなことを聞いていない。  国際人道法では……
  196. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 答弁に立たれたら含意をよくわきまえて御答弁ください。
  197. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) いわゆる戦時国際法は、戦争が政策遂行の一つの手段として認められていた時代に戦争の仕方を規律するものとして発達してきたものでございます。  他方、現在の国連憲章下においては、自衛権行使や安保理の決定に基づく軍事行動を別とすれば武力行使が禁止されており、この結果、伝統的な意味での戦争というものは認められなくなっております。  国際法におけるこのような戦争観の変化の結果、戦時国際法のうち、例えば戦争開始の手続、中立国の義務等、戦争が違法でないことを前提とした国際法規がそのまま適用される余地はなくなってきております。  他方、従来の戦時国際法中の害敵手段の制限、戦争犠牲者の保護等にかかわる国際法規は、国連憲章下においても武力紛争が生じた場合には適用されるということでございます。
  198. 市田忠義

    市田忠義君 国際人道法や武力紛争法などの国際法では、文民や市民を保護する、これは攻撃してはならないと。同時に、それを保護するためには何を軍事目標として特定するか、そういうことを決めているはずですよ。  ですから、その軍事目標に照らして我が国のやる後方支援が軍事目標となるのかどうかを検討したのかということを私は聞いておるんです。軍事目標となれば当然攻撃をされて、戦闘行為に発展する。だから、日本の勝手な判断ではなくて国際法に照らしてどうなのか、日本がどう思うかではなくて相手がどう判断するかが問われていると。そういう立場で検討したのかということを私は聞いているんです。
  199. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 軍事目標になるのかならないのかという前提には、相手が戦争をする権利があるという前提で、それでは何を軍事目標にしていいかということを定められているのであって、不法な戦争をしているところがどこを軍事目標としていいとか悪いとか、そういう前提を欠く議論を委員はおっしゃっているんだと思います。
  200. 市田忠義

    市田忠義君 勝手な解釈しちゃだめですよ。  私、ここに一九八七年に作成されたアメリカ海軍省の「指揮官のための海軍作戦法規便覧」、訳本ですが、持ってまいりました。ここにはどういう対象を攻撃目標とするかについて、次のように規定している。  敵国の軍隊や軍艦、施設だけではなくて、それを直接間接に支援するもの、すなわち敵国の戦争遂行、戦争継続努力に統合されている場合、攻撃、破壊される。戦争遂行への統合とは、主に物資輸送による戦争遂行への貢献を意味する。戦闘地域かどうかが問題ではないんです。戦争遂行やその継続に貢献しているかどうか、物資の輸送は軍事目標として攻撃するんだと。日本が協力する相手であるアメリカが、自分たちの海軍の指揮官に国際法上の立場からいえばこういうことですよと説明するためにつくった「海軍作戦法規便覧」の中で明確に述べている。このアメリカの国際法の解釈は間違っているんですか。
  201. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) よその国の規則を私が解釈する立場にはありませんが、あえて言えば、アメリカは軍事行動をとることが正当化された場合でもそういう攻撃目標に絞ると、こういうことを言っているので、もともと軍事目標、軍事攻撃をすることができないときにでも、どんなときでもそういうものには攻撃していいなどということを言っているものだとは思いません。
  202. 市田忠義

    市田忠義君 ここに、アメリカ空軍省の「指揮官のための武力紛争法便覧」を持ってまいりました。これは防衛研究所の教官の岩本誠吾氏が訳したものです。  何と書いてあるか。戦争は両方の国が自分が正義だ、自衛の戦争だと主張する。武力紛争法はすべての国際的な戦争または武力紛争において双方に適用される。一方が違法戦争または侵略戦争を行った罪を有するとしても、このことは妥当する。すなわち、正義の戦争かそうでないかに関係なく適用される。  しかも、先ほどアメリカがどう決めているかについて自分が意見を差し挟むということは避けるとおっしゃったが、私がさっき例に出したアメリカの海戦法規というのはアメリカ独自の考え方を示したものじゃないんです。武力紛争についての国際法の考え方を説明したものなんです。その冒頭に何と書いてあるか。この海戦法規は「海上における合衆国海軍の作戦を規律する国際法及び国内法の基本原則を説明している。」、こう明記しているんです。すなわち、米海軍が戦争に当たって国際法を遵守することを徹底させるために、指揮官のために、それを徹底させるためにつくったマニュアルだ、こういうふうに述べている。  また、先ほど私はアメリカの空軍省の「指揮官のための武力紛争法便覧」を紹介しましたが、その第一章序説に何と書いてあるか。武力紛争法は、国際的な協定または条約と国際慣習から由来している。すなわち国際条約、国際慣習法に基づいたものなのである、そういうふうに明記されている。  日本を含む世界の主要国政府の専門家が参加してつくられたサンレモ・マニュアルと言われる海上武力紛争法、ここでも、例えば輸送と通信システム、鉄道、飛行場、港湾施設と同様に、その目的や性質が軍事活動に貢献するものであれば攻撃目標になる、そういうふうに明記をされている。  あなた方がどんな言い逃れをしようとも、後方地域支援、日本が引き受ける活動、輸送などの後方地域支援が国際法上軍事目標、攻撃目標にされることは明白じゃないですか。そういう立場で吟味したのかということを聞いているんです。あなたは違う概念の話をしているんです。
  203. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 先ほど政府委員答弁しましたように、私も何度も言っておりますように、かつては国策遂行上、戦争ということが国家の権限として認められていた時代があったんです。そういう中でどういうことを、中立国だとか交戦国だとか、戦争のときには何を攻撃していいとか、そういうことが戦時国際法として発展してきたわけですが、現在ではそういったものがそのまま適用されるわけではないと。そして、もともと戦争行為そのものをしていけないときに、戦争行為をしているところがこういう軍事目標だったら攻撃していいなどということは絶対にあり得ない、こういうことを申し上げているんです。
  204. 市田忠義

    市田忠義君 では、具体的に聞きます。  ガイドライン法では、日本の領域外公海上にあるアメリカの艦船に日本の自衛隊が武装した米兵を輸送したり、在日米軍の弾薬庫から武器弾薬を輸送して米艦船まで届ける、こういうこともできるようになっている。これは戦争に貢献し戦争の継続を支援する活動じゃないですか。いかがですか。どうなんですか。
  205. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) それはあくまで後方地域に限ってやることをこの法案では認められているわけでありまして、武力行使と一体化するということはない、そういうことを法的に吟味した上でやっているわけでありますから、戦争に参加するということではないわけであります。
  206. 市田忠義

    市田忠義君 では、離れたところでやれば、近くなら撃たれるかもしれないけれども、離れたところではそれは戦争行為ではない、そういうことなんですね、今の説明は。  軍人や武器弾薬なしに戦争なんてできないんです。それは戦争のいわば常識ですよ。テレビを見ている人もみんなそう思っていますよ。米軍の軍人や武器弾薬を運ぶ、公海上にそれを輸送するということは戦争継続に貢献する行為でないなんてだれも思わないです。そんな詭弁を弄してもだめです。その輸送を領域外公海上で行う、これこそ国際法で言う戦争遂行に貢献する活動なんだ、戦争遂行に統合された活動じゃないか。こういう活動は軍事目標になるというのが国際法の考えじゃないか。軍事目標にならないというならその根拠、国際法上の根拠を示してください。
  207. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 国連憲章に従って活動している米軍の相手国というのは、それはまさに不法な戦争行為をやっている国、こういうことになるわけでありますから、その国が、我が国が後方地域支援をやったからといってそれに攻撃すれば不法に不法を重ねる、こういうことになるだけ、法的にはそういうことであります。
  208. 市田忠義

    市田忠義君 全然違う話なんですよ。軍事目標となるかならないかということを聞いているんです。あなたは国際法上の根拠を与えるんだとか別の話をしているんですよ。軍事目標となるかどうか、戦争遂行に貢献するようなこういう活動をやって、相手国から見たら当然それは戦争行為だと、それが軍事目標にならないという保証はどこにあるのか、そういうことを聞いているんです。
  209. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 委員の御質問が法的評価と事実行為としてどうかということが必ずしも明確でないから私は法的評価の方からいきましたが、今のお話だと、事実行為として相手が攻撃する可能性があるかどうか、そういうことですか。
  210. 市田忠義

    市田忠義君 違います。国際法上、軍事目標となるかどうかを聞いているんです。
  211. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) だから、法的評価ということであれば正当化される軍事目標にはなり得ない、こういうことを申し上げている。
  212. 市田忠義

    市田忠義君 全然答弁になっていないですよ。(「質問がなっていない」と呼ぶ者あり)そうじゃないよ。  先ほど私が紹介したように、戦争は両方の国が自分が正義だ、自衛の戦争だと主張して始めるんですよ。その場合に国際法上どういう行為が軍事目標となるか、私は根拠を示して、サンレモ・マニュアルでもアメリカの空戦法規でも海戦法規でもそのことをちゃんと定義しているじゃないかと。だから、それが軍事目標とならない国際法上の根拠を挙げなさい。
  213. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 国際法上の根拠との関係で、米軍の出しております文書、それからサンレモ・マニュアルについてのお尋ねがございました。  まず、委員指摘の米軍の海軍マニュアルでございますけれども……
  214. 市田忠義

    市田忠義君 国際法上の根拠を挙げなさい、軍事目標にならないということの。
  215. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 申し上げます。  米軍の海軍マニュアルでございますけれども、これは他国の文書で私が有権的な解釈を申し上げる立場にはございませんが、紛争が始まったときの一定のルールというものを示しております。しかしながら、このルールを示しておるマニュアルの中に、国連憲章下においては伝統的な国際法上の交戦法規、中立法規、それがそのまま適用されることはないということを示唆することもあり、先ほど大臣が申し上げたことと全く矛盾することはございません。  それから、サンレモ・マニュアルでございますけれども、これは人道法の普及と理解に資することを目的として人道法国際研究所が収集した一連のラウンドテーブルに個人の資格で参画した法律専門家、海軍専門家のグループにより一九九四年に作成されたマニュアルと承知しております。私からこのマニュアルの解釈を有権的に申し上げる立場にはございませんが、このマニュアルもまた、攻撃は厳に軍事目標に限定されねばならないとした上で軍事目標を具体的に述べているものでございます。  しかしながら、いずれの文書も、大臣からるる申し上げましたように、国連憲章に従って正当な行動をとる軍隊に対して不法な行動をとる軍隊の活動を正当化するものでは全くございません。
  216. 市田忠義

    市田忠義君 私は、その戦争の性格が正当か不当かということを聞いているんじゃないんですよ。戦争に貢献するような後方地域支援活動をやった場合に、相手国が軍事目標にしないという国際法上の根拠を挙げなさいと言っているんです。全然挙げていないです。
  217. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 法的な観点からの御質問と心得て、大臣から申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますが、もう一回申し上げたいと思います。  国連憲章下におきましては、原則として武力の行使というものは禁止されております。しかしながら、武力の行使の違法性を阻却する事態、これは広い意味での七章に基づく措置、それから自衛権の行使、このような武力の行使は許容されるということでございます。  したがって、国連憲章に従って行動をする軍に対して、これに対して反対して行動する軍、そちらの方は違法性を持つということがございます。違法な軍隊が行動したときに、仮に例えば委員指摘の軍事目標主義、そういうものをきちんと守って行動したとしても、それはいささかも違法に行動する軍の正当性が加わることはない、これが現下の国連憲章のもとにおける国際秩序と心得ております。
  218. 市田忠義

    市田忠義君 国連憲章に反するような行為をいっぱいやっているんですよ、いっぱい。  その行為が、その戦争が正当かどうかを決めるのは国連でしょう。国連が決めていない、あるいは非難しているような行動をいっぱいやっているんでしょう。相手が正当だと言った場合どうなるんですか。相手が正当だったら、日本が協力している米軍、その後方支援をやっていることに対して攻撃する権利は生まれるでしょう。そのことを聞いているんですが、どうですか。
  219. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 相手が正当なときはもちろん日本はそういう行動をとらないわけでありまして、相手が不当なことをやっているときにそういうことをやるので、もともとそういう戦争行為をしていけないところがどこの軍事目標だからやっていいなどという話には全然ならないんです。戦争をやっていい特定の国際法上許された場合であっても軍事目標はこういうところに限られますよということを言い、戦争をやってはいけない国がここが軍事目標だからやっていいということにはならない、そういうことを申し上げているんです。
  220. 市田忠義

    市田忠義君 違うんですよ。一たん武力紛争が起こったらどういう行為が、どういう性質を持った行為が軍事目標となるかどうかという国際法上の根拠を示しなさいと。あなたは全然言っていないです。全然答弁になっていないです。すりかえですよ。答弁になっていないですよ。
  221. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  222. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 速記を起こして。
  223. 市田忠義

    市田忠義君 では、別の問題を聞きましょう。  ガイドライン法では民間の船も米軍人や武器弾薬を輸送することができることになっている、これは間違いありませんね。
  224. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) この周辺事態安全確保法案におきます民間協力でございますけれども、これにつきましては第九条第二項で、「前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」、こういう規定がございまして、その中で輸送というものを依頼することも可能性としてはあり得る、こういうことだと思います。
  225. 市田忠義

    市田忠義君 先ほど私が紹介したサンレモ・マニュアルと言われる武力紛争法、この作成には日本の専門家も含む二十二の主要国が参加している。この武力紛争法にはどう書いてあるか。  事実上敵国の補助艦として行動するもの、例えば軍隊の輸送または軍艦に対する補給は軍艦はもちろん民間の船でも軍事目標、攻撃目標となると明記している。ガイドライン法で日本が行う行動そのものじゃないですか。これだけ根拠を示しても国際法上軍事目標とならないというんですか。
  226. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 御質問が繰り返しでありますから答弁も繰り返しになりますが、もともと国際法上許されない攻撃が、軍事目標が何かであれば許されることになるなどということはないんです。
  227. 市田忠義

    市田忠義君 軍事目標というのは、その戦争が正当か不当かにかかわりなく適用される国際法上のルールなんですよ。そこをあなたは混同しているんです。どんなに国際法上の根拠を示しても、あなた方は日本の後方地域支援が軍事目標となるということを認めようとしない。  しかし、どうして日本政府の判断を相手に押しつけることができるのか。日本の勝手な判断を国際法の上に置くことはできない。そもそも海上輸送というのは最も危険なんです。軍事専門家にも私は聞きました。輸送というのは丸腰で行くわけではない、必ず護衛艦をつける、あるいは潜水艦にねらわれないように対潜哨戒機P3Cも飛ばす。これは攻撃目標となるからです。  私は、ここに全日本海員組合の機関誌「海員」を持ってまいりました。公海上への物資の輸送が国際的に見て軍事目標となることは体験者である船員の皆さんが一番よく知っている。海には前方も後方もない、太平洋戦争では民間商船の船員の死亡率は海軍軍人を上回ったと書いてある。六万人を超える船員が海の藻くずとして海底に沈んだ、民間の商船は開戦時の八八%を失った、この悲しい現実を忘れることはできない、こういう声が掲載されている。  イラン・イラク戦争の際、海員組合の調査では、民間船四百二十九隻が攻撃を受けて、六百五十人が死傷した、日本人が乗った船も十八隻が被害を受けた、中立国でさえ安全を守れなかった、特定の国に加担すればなおさらだと、こういう発言も載っている。戦争水域以外を航行中に攻撃を受け、命を落とした方の遺族の話も載っています。  あなた方は、戦闘地域から離れたところで行動するんだから問題はないと。しかし、それは日本の勝手な判断じゃないか、相手がどう判断するかだということを私はずっと聞いている。そういう地域が軍事目標にならないという保証はないじゃないか。明確にお答えください。
  228. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 先ほど、委員の御指摘が法的判断を聞いているのか事実行為か判然としないということを申し上げましたが、あくまで法的判断だとこうおっしゃったから、私は先ほどから法的判断を申し上げていたわけでありますが、今の御質問だと、どうも事実上の攻撃目標になる余地があるのではないかと、こういうことのようでありますから、そういうことについても後方地域というのを設けて、そういうことができるだけないように配慮しています。  ただ、それはもちろん絶対にないとか、絶対に保証というのは、それは安全保障の問題ですから絶対ということは私はあり得ないと思いますが、そういうことによって巻き込まれる危険性よりも、日米安全保障条約の信頼性を高めて、そして日本の平和と安全に重大な影響を与えるようなことを抑止する効果の方がはるかに大きいと私たちは判断をしているわけであります。
  229. 市田忠義

    市田忠義君 一般論で、攻撃されるかどうか、絶対ないかどうか、そんなことを聞いているんじゃないんです。  日本のやる後方地域支援が軍事目標になる、国際法上そういうふうに規定されているじゃないか、アメリカの海戦法規でもサンレモ・マニュアルでもそういうふうに規定されているじゃないか、そのことをあなたは否定するのかということを聞いておるんです。
  230. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほど来、外務大臣とのやりとりをお聞きしておりましたが、委員が先ほど来言っておられますこの問題は、例えばアメリカの海軍攻撃目標法というのがありますが、海軍攻撃の適法な目標の中に軍事行動の遂行や支援に用いられる軍事目標が含まれるということは御指摘のとおり書かれております。  しかし、戦争当事者としてはいろいろな作戦があるかもしれませんけれども、我々としては戦争に巻き込まれない地域を想定し、それが本法で言う後方地域であると定義したものであります。  ガイドラインに基づいて実施することを想定している活動は、それ自体武力の行使には該当しないし、また国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対して我が国が行う協力は国際法の基本原則にも合致し国際法上許容されるものであり、他国の我が国への武力の行使を国際法上正当化されることはないと思います。  なおまた、委員が御心配いただいておりますように、戦争に巻き込まれるようなこの法律に書いた要件を満たさなくなった場合は、実施区域を変更したり行為の中断をすることによってこの武力行使と一体になるような事態を避けるということで法律に明文しているところでありますから、御指摘のような事態にはならないという確信を持ってこの法律を提出させていただいている次第でございます。
  231. 市田忠義

    市田忠義君 今、防衛庁長官の戦争に巻き込まれない地域、ならないと確信している地域とは、だれが確信するんですか。戦争に巻き込まれない地域とはだれが判断するんですか。
  232. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) そういう計画は、法律に基づく基本計画に定められ、総理大臣が決定するわけであります。そういう基本計画に基づいて私が具体的に実施区域を決めるわけでありますが、それは防衛庁が長年持っておりますいろいろな蓄積情報あるいは外務省が持っておる情報、それから米軍の情報等を常に絶えず情報交換をやって、練度の高い情報に基づいて判断をしていくということになると思います。  もちろん、基本計画につきましては、その問題については安全保障会議等に付せられて決めていくということになるわけであります。
  233. 市田忠義

    市田忠義君 その認識、あなた方が判断された認識をどうして相手に、あなた方の認識や判断をどうして相手国に押しつけることができるんですか。判断はあなた方が判断されるんでしょう、戦争に巻き込まれない地域だと、自分たちが確信する地域だと。しかも、戦争に巻き込まれかねない、そういう事態が起こったら地域を変更する、そういう可能性があるということをみずから認めているじゃないですか。自分たちの判断だけではどうしようもないんでしょう。  地域が離れているからといって、攻撃目標にはしません、そんなことはあり得ないですよ。どうですか。
  234. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 委員の言うようにすべて仮定の上に立てば……
  235. 市田忠義

    市田忠義君 あなたが仮定ですよ。自分が仮定の話をしているんです。
  236. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) そうじゃないですよ。  相手が攻撃しないという可能性があるかということになれば、相手は別に後方地域だけじゃなくて場合によっては日本本土も攻撃することもあるはずでありますから、それを保証があるかと言われても、私どもはそういうことにならないように、したがってそういう状況が出てくれば実施区域の変更や行為の中断をやると申し上げているわけであります。
  237. 市田忠義

    市田忠義君 そんな、何もしないでも攻撃されるかもしれないという一般論を聞いているんじゃないんです。  戦闘行為をやる米軍に武器や弾薬や武装した米兵を輸送するという行為が戦争貢献に当たるじゃないか、そういう行為をやるから軍事目標、武力攻撃の対象となるじゃないかということを聞いているので、何もしなくたって撃たれるかもしれない、そんな一般論を聞いているんじゃないですよ。具体的な問題で私は聞いたんです。  大体、政府自身も攻撃目標となることは百も承知しながら言い繕っているんです。自衛隊だって実際には後方支援、後方地域支援をやれば攻撃されると考えている。  これは、防衛庁が編集協力している「セキュリタリアン」という雑誌、十二月号です。自衛隊用語はわかりにくいと。後方支援のQアンドAという特集をやっています。何と書いてあるか。こう書いてある。後方支援は、戦場などにおいて作戦部隊が戦争を行う上で必要な装備品などの調達、整備から人員の輸送、燃料・食糧の補給、衛生など戦闘力の展開、維持に必要な活動の総称のことだ。後方支援で心がけなければならないことは、抗堪性、敵の攻撃にたえ得るものでなければならない。  国際法も、防衛庁が編集協力しておる雑誌でも、後方支援が軍事目標になることを認めているじゃないか。攻撃目標とならないなどという詭弁をいつまで続けるのか。  政府総理大臣、いかがですか。
  238. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 今引用された雑誌でございますけれども、私よく記憶にございますが、今、先生おっしゃいましたのは後方支援とおっしゃいましたですか。私どもが、今、大臣も御説明しているのは後方地域支援でございますので、その点は違うんではないかなと、こういうふうに思います。
  239. 市田忠義

    市田忠義君 多分そう言うだろうと思っていました。以前の委員会で、同じ活動だが活動する地域が違うだけだと野呂田防衛庁長官は言っているんですよ。国際法上、戦闘行為の近くか遠くかなんて全く意味のない話なんです。その行為が戦争遂行に貢献する行為かどうかが問われているんです。  私は、きょうの質問を通じて、物資の輸送などいわゆる後方地域支援が国際法上軍事目標となる、どこでやるかどうかは問題じゃない、関係ない、軍事目標となるということを明らかにしてきた。あなた方は、何の国際法上の根拠も示さずにそのことを認めようとはしなかった。あなたたちが認めなくても国際法は明確に定めている。軍事目標となることは明白であります。  もともと、輸送が軍事上攻撃目標となることは、日本も参加してつくった条約などの中でも明白なんです。例えばフランス、イタリア、日本、オランダ、イギリス、アメリカなどが参加して作成した空戦規則案の二十四条の二項、軍事目的に使用される通信・輸送のラインは攻撃目標となる、そう明記されています。  日本がガイドライン法案でやろうとしていることは、国際的に見て戦争行為そのものであります。まさに戦争法案です。それを隠すために陳腐な詭弁を弄している。戦争行為だから国際法で攻撃対象となるんです。自衛隊もそう理解している。戦争行為でなければ攻撃対象にはならない。相手に国際法上の根拠を与えないと言うのなら、国際法上攻撃目標となることが明白な後方支援をやらないことだ。  私は、憲法の立場を真っ向から踏みにじるガイドライン法案は廃案以外ないと、撤回を求めて質問を終わります。
  240. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で市田忠義君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  241. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、大渕絹子君の質疑を行います。大渕絹子君。
  242. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 中村法務大臣、昨日一日考えられて辞任の決意をなさいましたか。
  243. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) きのう一生懸命状況を御説明させていただきまして、それで御理解がいただけないかと思っております。
  244. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 総理と御相談なさいましたか。
  245. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 相談はしておりません。
  246. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 昨日の当委員会で民主党の角田委員の質疑に引き続き、私も中村法務大臣の辞任を強く要求いたします。  きのうの質疑の中で、検察庁の独立性を脅かし、そして私的なことに職権を乱用し、さらに省内の賀詞交換会における日本国憲法を否定する発言、これは憲法九十九条の閣僚は憲法を尊重し擁護する義務を負うということに明確に違反をしている。そのことに対して総理が釈明を求める、そして総理はそれを了承したということであると、総理自身にもその責任が及んでくるというふうに思いますけれども、総理の御見解をお聞かせください。
  247. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 昨日の角田委員と中村法務大臣の質疑応答、お聞きをいたしておりましたが、私は中村法務大臣のお考えに際しまして、中村大臣としての立場は十分主張されたというふうに認識をしております。
  248. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 総理、あなたは施政方針演説やあるいは国民皆さんの前でごあいさつをなさるとき、自分の気持ちを込めてごあいさつをなさいますか。
  249. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自分の基本的な考えに偽りなく、できる限りごあいさつその他につきましてはその意思を明らかにしていきたいと思っております。
  250. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 私もそのように心がけています。政治家たる者、常に人の前で話をするとき自分の心をできるだけわかっていただくように話をするのはごく当たり前のことでございます。  法務大臣は賀詞交換会において自分の所轄する省庁の職員を前にして自分の思いのたけを発言した、私はそう理解いたしますけれども、総理はいかがでございますか。
  251. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今の御質問は、中村法務大臣の一月の発言についてかと存じますが、この件につきましては、私からその真意をただしましたところ、司法制度に関する改革の必要性を強調するために、我が国が直面するさまざまな局面を説明し、複雑な世界情勢に言及したかったというのが真意でありますが、その改革の必要性を強調する余り表現に適切を欠いた点があったのでおわびして撤回する、こう言われましたので、私といたしましては、閣僚として憲法を尊重、擁護することは当然のことであるということも申されましたので、その発言につきまして了承したものでございます。
  252. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 申しわけをすればそれで理解ができるという問題ではないというふうに思います。  かつても憲法問題に言及をし、辞任を強いられた方がおられると思いますけれども、御存じですか。
  253. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) すべてを承知しておりませんが、たしか憲法問題の発言をされて問題になった閣僚もあったかと承知しております。
  254. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 一九九三年十二月、細川政権、このとき自民党は野党でございました。そのとき中西啓介防衛庁長官の発言、半世紀前にできた憲法に後生大事にしがみつくのはまずい、こういう発言をして、野党から罷免要求を出されて辞任をしているという経過がございます。  このことも含めて、私は、この発言よりももっと重大な発言である、中村法相の発言は憲法に挑戦をする、まさに憲法をないがしろにする発言であるというふうに思っています。
  255. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) どなたにお聞きですか。
  256. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 もちろん総理です。
  257. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 過去の閣僚の発言の中で、今御指摘のありました点につきましては、予算委員会の審議がそのことによりまして中断をされました。中西長官がその予算委員会の空転の責任をとられまして翌日みずから辞任を表明された、こういう事実と聞いております。
  258. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それは本当に曲がってとった理解というふうに思います。直接の原因は、その発言で辞任になったということで私たちは理解をしております。  総理、いかがですか。
  259. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 繰り返しますが、今私がこれを資料として提供を受けましたものを拝見いたしまして、そのようなことで御みずから辞任をされた、こういう事実を承知いたしております。
  260. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは、予算委員会がとまれば責任を持ってやめられるんですか。
  261. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 一例をもってすべてを律することはできないんだろうと思います。それぞれそのお立場になられた方が御判断をされて対処した、こういうことだろうと思います。
  262. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 総理日本人は連合軍からいただいた、国の交戦権も認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それで改正できないという中でもがいているというこの認識、閣僚の中にいらっしゃるんですよ、総理の選んだ。問題だと思いませんか。この認識でいいと思いますか。自衛も持てないんですと、私たちの国は。
  263. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 不適切であったということで本人がこれを撤回されましたので、私はこれを了とした、こういうことであります。
  264. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 国の公の場所で、そして国家公務員を前に発言をした大臣の発言が、後で間違いました、取り消しますで済まされるはずはないと思いますよ。その総理の認識も非常におかしい。それだったら、総理も共通の責任を問われることになりますよ。
  265. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほども申し上げましたが、改革の必要性を強調する余り表現に適切を欠いた点があったので、おわびし撤回をいたしましたので、私は了承いたしたものでございます。
  266. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 総理も先ほど私の質問に答えて、人の前で話をするときには自分の気持ちが伝わるように話すとおっしゃったじゃありませんか。それだったら、中村法相も当然そういう気持ちで話したと思いますよ。  それは、もう明らかに憲法を改正していかなければならないという思いがこの言葉の中に本当に脈々とこもっている、私はそう思っています。それは、憲法九十九条で禁止をされている、閣僚の憲法擁護の理念とは相反するものなんです。ですから、閣僚にとどまることはできないと思います。ぜひ罷免をしていただくか、みずから進退を決めるべきであると私は思います。
  267. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 事実関係について申し上げたいと存じます。  一月四日の発言でございまして、翌一月五日、閣議を開催いたしまして、閣議後の閣僚懇談会において小渕総理の方から、報道されておるような中村法務大臣の発言はいかなるものかという御指摘がございまして、中村法務大臣から、私の発言の中に非常に適切を欠いて誤解を招く発言がございましたので、謹んでこれを取り消し、陳謝をいたしますという言葉がございまして、それを了といたしまして、この閣議後の閣僚懇において、中村法務大臣の問題についてこれ以上言及しない、今後憲法を守って閣僚として精進をしていただくことで終結をした次第でございます。  御了承を願いたいと存じます。
  268. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 せっかくの御説明でございますけれども、それはそちら側の事情でございます。私たちあるいは国民はそんなことでは納得をしておりません。過去においても、さまざまな問題で失言をし、みずから閣僚の座を去っていった者あるいは罷免要求なされた人たち数々あったというふうに思います。私は、今回のこの中村法相発言事件というのは、それら一連の事件と等しい、やめていただくにふさわしい発言であったというふうに思います。  中村法相はいかがでございますか。みずからの進退はみずから決めるべきではありませんか。
  269. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これは一月四日の法務省内の新年をお祝いする席でのことでございますが、その朝の朝刊のトップも司法制度改革の話でございまして、司法制度改革をことしはやる年で、それに法務省は全力を挙げていかなきゃいけないということをお話を申し上げました。その入り口で内外なかなか厳しいものがあるのだよというお話をいたしまして、そのときに極めて不適切な言葉があったものですから、それはおわびをして撤回をさせていただいたわけでございます。  私はこの発言で決して憲法を変えようとも申していませんし、変える意図もございませんし、憲法を遵守し擁護することは私の義務でありますから、それはきちっと守ってまいりたいと思っております。
  270. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 自自連立政権によりまして憲法解釈の拡大をする中で新しいガイドラインがつくられる。これもまさにアメリカから要請をされるがままに、自主権のないがごときの中身につくり上げられる。そして、それに基づいて憲法違反、安保条約を乗り越えた新しいガイドライン関連の法案をつくっていく、あるいはまた憲法調査会の設置をして国会の場所で憲法を変えようとする流れと連動をした法務大臣の発言であると私たちは認識しています。  憲法や法律の擁護が一番求められる法務大臣においてこういう認識で国会が運営をされるとすれば、今後法律の審査に応ずることはできないと私は思います。法務大臣、もう一度。
  271. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私がお話ししましたのは、内外の情勢が非常に厳しい中で国際貢献をするにも一定の憲法の制約があるということの意味で申し上げたことでございまして、私は憲法を改正する意思もございませんし、憲法を遵守し擁護する意思でございます。
  272. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 これ以上追及しても、御本人はそれ以上のことは言わないでございましょうし、総理自身も、私はもう一度お考えになっていただくことが必要だろうと思っています。とても、過去の経過からいたしましてもあるいは過去の経験からいたしましても、これはこのままで済まされる問題ではないということをきっちりと認識をしておいてもらいたいと思います。  了として許したということは撤回をしていただきたい、総理
  273. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私は、私の責任としてそのような判断をさせていただいた次第でございます。
  274. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 この問題はまたいずれ追及をしていかなければならないと思いますし、さまざまな観点からの追及があると思いますけれども、私自身は、私自身そして我が社民党といたしましても、これから先も中村法務大臣の罷免要求あるいは辞職要求を強く求めていくことをここで申し述べさせていただきます。  それでは、大変不本意ですけれども、次の質問に入っていきます。  総理は一月二十二日、本会議におきまして我が党の梶原議員に答えられまして、新保守主義とは、単なる現状肯定や現状維持ではなく、漸進主義に代表される、よき伝統や秩序を維持しつつも常に創造や進歩を求め現状を改革していくというふうに述べられました。  総理が求められる理念の中において、経済活動というのはどういう特徴を持っておられますか。
  275. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今の内閣といたしましては、現下の日本経済を思いましたときに、一日も早くプラスの成長が可能なような姿に戻す、そのためのあらゆる政策経済政策としてとってまいることがその務めと認識いたしております。
  276. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 経済至上主義の原則にのっとって経済運営がより活発化をさせられていくというふうにとらえてよろしゅうございますか。
  277. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 経済至上主義とおっしゃられるその趣旨を十分とらえないかもしれませんけれども、申し上げましたように、今、日本経済は世界に対する大きな責任も背負っておるわけでございますので、そうした意味経済が活性化し、そして申し上げたように、経済成長率といたしますれば、どうしても二年続きのマイナス成長を続けることはできないという観点に立ちまして、政府としてできまする経済政策はあらゆる手法を講じてこの事態を脱却するために努力をしていく、こういうことであると思います。
  278. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 戦後一貫してそういう考え方で運営をされてきた我が国の社会は、いわゆるその市場原理のもとでさまざまな問題が発生をしています。富の格差であるとかあるいは自然環境の破壊であるとか人心の荒廃であるとか、そうしたさまざまな問題が噴出をしていますけれども、そういう問題を是正する予算案でなければならないと思いますけれども、総理はいかがですか。
  279. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 予算案というのは国の運営を定める中心になるものでございますから、基本的にはそういう思想が貫かれていなければいけないと思います。  ただ、国の局面もそのときそのときでいろんなことがございますから、一種の緊急事態においてその原則に多少の変更を加えるということはあり得ることであります。しかし、そのことは基本的なそういう物の考え方を放棄するというものではありません。
  280. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 自自連立は、私たちと一緒に組んでいたリベラルな政権とは、本当に税制においても予算の組み方においても大きく変わってきているということを私は指摘をしなければならないと思っています。  私たちとの自社さ政権のときに、税制問題についてもさまざまな議論をしてまいりました。例えば、法人税を引き下げるときにはその課税ベースを拡大させるために租税特別措置法の廃止をしなければならないという議論がありました。しかし、今回、その租税特別措置法は一切手をつけることなく法人税だけ引き下げてくる、これは大企業を優遇する税制にほかならないと思いますけれども、いかがですか。
  281. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 法人税を改正するときは租税特別措置法を廃止するなんというお約束は私はしたことはないと思います。  ただ、法人税の税率を下げるのならば、課税ベースというものはなるべく広くすることが大事なんだということはこれはお互いに思っていることでして、現に私どもは何度も租税特別措置法は必要があるに従ってもう古いものは切って捨てるというように整理をしてまいっております。たまたま今度はそれをしておりませんけれども、考え方は変わっておりません。
  282. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 課税ベースを広げるためには、租税特別措置法をことごとく切っていくという作業が求められるわけですけれども、これからもそういうことを心がけていっていただけますか。
  283. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ことごとくというようなことをお約束したことはありませんので、例えば住宅の、住宅金融公庫から借りております金、減税いたしますね、今度もお願いしております。あれはたしか租税特別措置法でございます。ですから、ことごとくというようなわけにはまいりません。
  284. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 大企業を優遇する租税特別措置と言っています。ぜひそこはわかってください。  あと、年収七百九十三万円以上の高所得者にだけ増額になる減税措置、所得税の減税に踏み切ったのはどうしてですか。
  285. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、昨日、今井委員からお尋ねがございまして御説明いたしましたので、余りくどくならないように申し上げます。  前内閣におきまして、定額減税をやられた。それは時間的な関係でやむを得なかったと思いますが、その結果として課税最低限が四百九十一万円にまで上昇をいたしました。ただでさえ我が国の課税最低限は高うございますので、所得税は御承知のように少しでもいいからなるべくたくさんの国民に納めていただきたい、そのかわり、所得の少ない方には累進税で少し上の方には多くというのが考え方でございます。四百九十一万円というのは我が国のそういう基本的な所得税の理想からいいますと、恐らく七百万以上のたくさんの納税者がそれで従来の場からリタイアされたわけでございますから、こういうことは何度もあってはいかぬことだと考えました。  したがいまして、今度は定額でなく累進に忠実に定率にいたしまして、しかもその定率も大きなところが大きな金額にならないように頭打ちをいたしまして、切り下げる率をそれだけふやしたということでございます。  ですから、一遍限りの減税が平成十年分所得でございますので、それがなくなりますと、平成十一年分所得は原則に返って三百六十一万円という課税最低限に戻るわけでございます。そこのところは、一遍限りの減税でございますからやむを得ない。  そこで、今度は定率で減税をすることに返りましたわけですが、その際に、おっしゃいましたように、四百九十一万円の課税最低限と三百六十一万円の課税最低限は違いますから、確かに前年納められなかった方が平成十一年分では納めていただかなきゃならないという現象は起こります。それは前年の免税が一遍限りであったからでありまして、そういうことが起こらないようにしようと思えば、もう一遍前年と同じことをいたしますればそういうことは起こらぬはずでございますけれども、四百九十一万円という課税最低限を二年続けてやりますと、恐らくこれはもう恒久化されるであろうと思います。  今、実はなるべく多くの方に免税の特典を得ていただきたいと思いますけれども、将来、我が国のことを考えますと、イギリスの四倍に近い課税最低限なんというものは私はやっぱり日本の所得税としては適当でないと思いましたので、将来のことも考えまして今のようなことになりました。
  286. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 応能負担の原則ということをどのように考えるかによって考え方が随分と変わってくるのだろうと思います。  例えば、一億円の年収の人に五〇%の税率を掛けたとしても、五千万円の税金は取られますけれども、手元に五千万円の生活費が残ります。しかし、どうですか、五百万円の人に一〇%の税率を掛けたとしても四百五十万円しか残らないんですよ、それで暮らさなければならない。そういう層の人が圧倒的に日本国民には多いんです。  その一億円あるいは高額所得者の人たちの税率を下げたとしても、その人たちの暮らしというのは大きなお金で支えられているんです。その差を私はどうするのかということを言っている。応能負担の原則でいくならば、より低いところに手厚くきちっと行き届くということが私は原則としてあっていいと思っています。  過去、日本の税制は、そうした応能負担の原則をしながら、高額所得者にはより多くの税金を賄ってもらうという体制で維持をしてきた。私はいい制度だったというふうに思っていますけれども、この観点はそれでは宮澤さんとは違うのですね。
  287. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いいえ。私は、さっきも申し上げましたが、今、従来の三百六十一万円という課税最低限は、イギリスが百十万円でございますし、アメリカのニューヨーク州あたりで二百六十万円ぐらいですから、実は非常に高いのでございますね、課税最低限が。そして、最初の、初度の税率は一〇%である、一五%ではないということを考えますと、日本の所得税というのは、表現がうまくいきませんが、かなり社会主義国のそれに近いというふうに私は従来から思っています。それが悪いという意味で言っておりません。かなりそうなんですね、実際。外国人がよく言うことでございます。ですから、そういう思想そのものに反対しているわけではないんです。  ただ、これだけ生活水準が上がってまいりましたら、生活保護を受けられるような方々は別としまして、まあ普通のある程度成熟した社会の生活がおできになる方には少しでもいいからやっぱり所得税を払っていただきたい。そういうことは健全な民主主義国家としては私は大事なことだと思いますので、この際の定額減税によって八百万人もの納税者がいなくなるということは、私は将来の日本のためにも適当ではないというふうに考えております。
  288. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 先ほどの、これから目指すべき社会のありようで生活格差の是正とか富の再分配というのをどこに求めていくかということがここにつながってくるわけでございまして、これからの税制の運営というのは、社会全体で生み出されてくるその利益をどう再分配していくかという観点の中で構築されていかなければならないということをぜひ申し上げておきたいと思っております。  それでは、自自連立の目玉商品であった消費税改革は一体どうなったのですか。予算総則の中で福祉目的税として掲げられただけで、肝心かなめの消費税の改革は何一つ行われてこなかった。自自連立の約束というのは一体何だったのでしょうか。どなたでも結構ですが、総理でしょうか、お答えくださいませ。
  289. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自民党と自由党との合意に関しまして、税制につきましては、合意後、両党の責任者同士でいろいろお話し合いをされてまいったわけであります。まだ継続中の案件もあろうかと思いますが、消費税につきましては、いわゆる消費税収のうち、国分でありますが、基礎年金、老人医療及び介護に限って使うことといたしまして、その旨を予算総則に明記することといたしましたのは、これによりまして消費税収を広く国民の老後等を支えるための予算に使うということが明らかとなりまして、消費税に対する国民の理解が一層深まるものと考えたからでございます。  なお、消費税率の問題を含む将来の税制のあり方につきましては、社会経済構造の変化や財政状況などを踏まえ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えておりまして、今後とも、自自の話し合いの中でより国民に対して望ましき形は何かということは常々追求いたしていかなきゃならない、こう考えております。
  290. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 福祉目的税化をうたい込むのに予算総則に盛り込んだおかしさというのは、きのう、ここの委員会でも指摘がされましたのでもうやめますけれども、福祉目的と言いながら、福祉の目的を達し得ない金額をそこに盛り込むこの手法というのは、私にはわかりません。次に来るものは一体何でしょう、宮澤大蔵大臣
  291. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 絶対に、福祉の三つの目的を掲げておりますが、その需要が今の収入を超えるものであれば、足りない収入をどこかから持ってくればよろしいわけです。それだけの歳入の手当てをすればいい。
  292. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そのことで予算総則に福祉目的税と書き込む必要がありましたでしょうか。
  293. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 全体、三つの目的に必要な経費はたしか八兆八千億ぐらいと思います。消費税の収入はそれを下回っておりますので、それだけでは実際は足りない。足りないのでございますから、足りない分をよそから持ってきているが、少なくとも消費税というものは今後それに充てて、それで全部でなければ足りないものを今のように持ってくる、そういうことを言っているわけで、それは二つの違うことでございますよね。
  294. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 私は、その後に来るものが非常に怖いです。それをきちっと、そういうことがないようにということで言っておかなければならないと思っています。  いずれ福祉の税財源の議論をするとき、福祉目的税が消費税なんだから消費税で賄うのが当たり前という議論になり、消費税を上げていくという方向が模索されるのではないかと非常に懸念をしています。そういうことは一切ございませんか。
  295. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) きのうもそういう御議論がしきりにございましたので、足りなければどこかから財源を持ってこなければならない、あるいは福祉の方をそれだけ下げるか、どっちかしかやりようがないわけでございますから、その財源をどうするかということはまたいろんなことが考えられるだろうと思いますので、すぐおっしゃったようなことに結びつくわけではないと思うんです。
  296. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 消費税の財源を福祉目的に使うということは私はあっていいと思いますけれども、今までの福祉のあり方、今まで予算に割いていた福祉の部分のお金を削るというようなことは、私はあってはならないというふうに思っています。ぜひ増額をして、よりよい福祉の国家につくり上げていっていただきたいと思っております。  私たちが前政権のときに、納税者番号を導入して、より公平公正な税制度をつくり上げるために総合課税にするべきであるという議論をし、自民党とも確認事項として大綱の中に盛り込まれていったという経過がございますけれども、きょうの宮澤大臣の御答弁を聞いておりますとかなり後退をした答弁に聞こえるのですけれども、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  297. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 納税者番号につきましては、政府税調でも長いこと検討が続けられておりまして、その間いろいろ世の中の受け取り方に変遷がございますが、租税を中心とした学者の方々は賛成をされる方が当然のことながら多いわけです。  しかし、その結果としてプライバシーを言われる方もありますし、あるいはまた納税者番号をいたしますと経済取引に全部それがついて回るわけでございますから、経済取引の円滑を害するだろう、あるいは非常なコストがかかるかもしれない、いろんな御議論があって、政府としてはなお検討を続けておるということで、その考えを放棄したなんということはもとよりございません。
  298. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 選挙制度についてお伺いいたします。  東京都知事選挙に絡みまして、衆議院議員を辞して新たな衆議院議員に立候補するというようなことが行われようとしておりますけれども、これは大変ゆゆしき問題。衆議院議員に何種類かの種類があるんですか、総理
  299. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 衆議院議員は衆議院議員でございます。
  300. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 選挙制度の欠陥が露呈をしていると思います。  野中官房長官、この選挙制度の欠陥について、野中さんは制度改正そのものももう言及しておりますけれども、欠陥についてどのようなものがあるのか、網羅していただきたいと思います。
  301. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) お断りを申し上げておきますけれども、私は自由民主党事長代理のときに選挙制度のあり方について言及をいたしました。現在、私は政府の一員として、選挙制度について発言するべき立場にございません。  ただ、連日、私は二回記者会見をいたします。記者の皆さんから、具体的な例示をしながら、ただいま委員がおっしゃったような質問を受けるときがございます。その際に、過去の私の発言にもさかのぼって言及をされるときがございます。したがいまして、そういうときに私の考え方を申し上げるのみでございまして、それは報道では、官房長官は会見においてという報道になるわけでございまして、その点をあらかじめお断り申し上げておきたいと思うわけでございます。  今回、くしくも東京都知事選挙をめぐりまして、予想される二名の国会議員がおやめになる、そしてその選挙区に比例で出られた方がまた立候補を予定されるような報道があります。また、一方におきましては、この比例の方がお出ましになり、そしてその後、既になくなった党の方が当選をされるかもわからないという報道があるわけでございまして、今日まで行われてきました衆議院選挙制度につきまして、一挙にこの制度の非常にわかりにくさが国民の前に露呈をしてきた、こういうことでございます。  こういうときでございますだけに、各党の皆さん方からもっとわかりやすい制度というものを考えるべきではないのか、あるいはそういう機会に今日の惜敗率で、法定得票数を上回らない、あるいは供託金も没収された人が惜敗率で当選するなどといったようなこともやはり考えるべきではないのかといったような中から、私は、つい先ほど申し上げましたように、幹事長代理の際に、お互いにこの制度は重ねていくと、この国がやがて一強他弱の結果になっていくのではなかろうかと危惧をする余り申し上げておるのでございまして、これは根本的にいろいろな分野から検討をされる時期が来ておるのではないかということを申し上げておる次第でございます。
  302. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございます。私もそう思います。  この選挙制度は、一院において否決をされた選挙制度なんです。本当ならば、一院において否決をされた法律は同じ国会に出すことができないという法規があるにもかかわらず、党首会談によって復活をしてきて、そして強権的な手法でできていった制度です。欠陥があるのは当たり前なんです。参議院においては否決をされた選挙制度なんです。  そういうことで、私は、早急に見直す時期が来ていると思いますので、そのことを申し上げておきたい。  私たちは、その反対をした人たちは、非常に多くの世論の人たちから造反だの、裏切り者だの、改革を妨げる守旧派だのという激しいお言葉をいただきながら、私以外の人たちは何人も何人もこの国会に戻ってくることができませんでした。そういう選挙制度なんですよ。ぜひ、これは早急に改革をしていただきたいというふうに思います。  最後になりますけれども、随分と質問を残してしまって申しわけなく思いますけれども、一点だけ農業問題について確認をさせていただきたいと思います。  総理、WTOの農業協定に基づいて一キロ三百五十一円の関税を設定されましたけれども、これが将来的にきちんと維持することができるのか、あるいはまた有利だと言われているけれども、何が国民にとってこの関税化に向かったのは有利なのか、そして二〇〇〇年のWTOの農業交渉に向けて日本の立場、いわゆる食糧安保から、日本の国の食糧を守るという観点からさらに新しい協定へ変えていくという決意を総理から、あわせて三点、大変短い質問で済みませんけれども、力強く答えていただきたいと思います。
  303. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) もう先生は今回の関税化措置につきましての経緯は御承知だろうと思いますが、重ねて簡単に申し上げますと、特例措置でスタートをいたしました日本の米の国境措置につきまして、内外の諸情勢あるいはまた次期交渉に向けた我が国の対応をこれから議論し、そして国際交渉に臨んでいくわけでありますけれども、そういう中で我が国といたしましては、ウルグアイ・ラウンドの五年目でございますけれども、四月一日から関税化をした方が得である、国益にかなうという判断に至りました。そして、それによりまして、まず関税化をする措置というのは、WTOの農業協定上のルールにはっきり基づいた中立的な作業によって国境措置をとったわけでございます。  一方、それによって日本の米が、外国から関税化相当量で入ってくるお米との関係におきまして、国内の生産者あるいはまた国内の米需給に影響を与えることはないという判断も我々はいたしておるところでございます。  そういう状況の中で、二〇〇〇年以降、次期WTO交渉が始まるわけでございますけれども、日本の国益というものをまず国内的にきちっと国民各層の共通認識をいただいて、そして国論が固まった形で世界の中で交渉に当たっていかなければならないと考えております。幸い、EUあるいは韓国等、日本と同じような考え方を持っておる諸外国もたくさんございますので、日本としては諸外国と同じ立場で、農業の果たす食糧の大きな役割、あるいは農業農村の果たす多面的機能等々につきまして諸外国と理解を深めながら、次期WTO交渉に日本の立場というものが最大限実現できるようにこれから頑張っていきたいと考えております。
  304. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 総理もお願いします、一言。総理と農水相に別々に通告してありますので。
  305. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) この米の関税化の問題につきましては、今、農水大臣が御報告いたしたことを、内閣としてもこのことを認識して了解しておるわけでございます。  ただ、農産物のみならず、林産物あるいはまた海産物その他につきましては、諸外国との関係がございます。先般のAPECにおきましても、林産、水産の問題につきまして諸外国のいろいろの意見もありましたが、私、日本政府としては、今回の問題につきましては、この自由化の問題について政府として一定の責任を果たしてきた、こういう認識をいたしております。  それぞれのお考えはあろうかと思いますけれども、政府としては今、農水大臣が御報告した方針に基づいてこれを守ってまいりたいと思っております。
  306. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 もう一点だけ。  総理、二〇〇〇年の新しいWTOの農業協定の交渉に、本当に日本の農業を守る観点で臨むということが聞きたいのです。ぜひお願いします。
  307. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日本の国益を守ってまいりたいと思っております。
  308. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。照屋寛徳君。
  309. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。  私は、最初に防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。  けさ朝日新聞が報道した朝鮮半島有事を想定した日本への支援要請の内容、これは報道されたとおりでしょうか。
  310. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 結論から申し上げますと、報道されたとおりとは言いかねる向きもございます。  日米間におきましては、日米安保体制のもとで平素からさまざまなレベルの安全保障上の情報交換や意見交換というものを行ってきているところであります。我が国に対しまして武力攻撃が行われた場合や、あるいは周辺事態に際しての日米協力につきましては、ガイドラインの見直し作業の中でも種々の検討が行われたところでございますが、その検討経過については、平成八年九月の見直しの進捗状況報告とか、あるいは平成九年六月の見直しに関する中間取りまとめという格好で対外的にも公表し、御議論をいただいたところであります。また、その検討の成果につきましては、平成九年九月に新たなガイドラインとして最終的に取りまとめられ、対外的に公表されたほか、同年十二月に国会にも御報告を行っているところでございます。  このような日米間の種々の意見交換や検討作業の中で、緊急事態に対しての米軍に対する我が国の支援についてもさまざまな形で議論をされたことは事実でありますが、一部報道にあるように対日支援要求として固まったものを政府として受領したわけではありません。  中身につきましては、米軍との関係もありますので、この詳細な意見交換や検討作業の具体的な内容につきまして対外的に明らかにすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  311. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 防衛庁長官、私は、報道された内容というのはこれはもう日本の主権にとって、それから日本の憲法、平和にとって大変な一大事だというふうに思っております。  一九九五年の四月に、さまざまな交渉はあったでしょうけれども、アメリカからの朝鮮半島有事に備える支援要請にこたえて千五十九項目の防衛庁自身のまとめをしたことはありませんか。
  312. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 検討作業の中でいろいろな議論が交換されておりますので、幾つあるかは定かじゃありませんが、今、委員が御指摘のような数のものがきちっと出されたということはないと思います。
  313. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 防衛庁長官とそれから運輸大臣に質問いたしますけれども、防衛庁から運輸省に対して、アメリカから求められた有事の際の支援要請、この資料を運輸省に提示された、ところが運輸省がその受領を断った、こういう事実はありますか。
  314. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 政府部内のことでございますので、担当者間でいろいろな情報の交換等はございますが、そもそもその前提といたしまして、米側から固まった内容として支援要求というものを受領しているわけではないわけでございますから、それを運輸省にお伝えする、こういう立場でもないと思います。
  315. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、総理にお伺いをいたします。  橋本内閣のときに、沖縄問題は内閣の重要課題である、それから内閣の命運をかけて解決に取り組む、こういう姿勢が表明をされておりました。小渕内閣における沖縄問題に取り組む姿勢について改めてお伺いいたします。
  316. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、前内閣橋本総理のとられました方針につきまして御評価いただきました。私自身も同じ考え方にのっとりまして、その意思を継いで努力をいたしてまいりたいと思っております。  改めて申し上げれば、沖縄問題は現内閣といたしましても最重要の課題であるということでございまして、橋本前総理と同様、沖縄に対して深い関心の思いを抱く中で本問題の解決に取り組んでおるところでございます。  具体的には、昨年十二月に開催されました再開第一回の沖縄政策協議会に私みずから出席をいたしまして、新たに選ばれた稲嶺知事ともじかに意見交換を行いまして、また百億円の特別調整費につきましても直接指示をいたしまして、先頭に立って沖縄の抱える厳しい現状の改善に向けて努力をいたしておるところでございます。  こうした中で、沖縄経済の現状改革に向けての緊急対策につきまして、既に一月末の政策協議会で基本方向が示されるなど、進展を見ておるところでございます。  米軍施設・区域の整理、統合、縮小につきましても、先般、安波訓練場の返還がSACO返還案件の中で初めて実現するなど、SACOの最終報告の着実な実施に向け鋭意努力しておるところでございます。  今後とも、沖縄の抱える諸問題の解決に向けまして政府として最大限の努力を払ってまいる所存でございますし、照屋先生も御案内かと思いますが、私自身も学生時代から沖縄の問題に取り組んでまいったことでございまして、また沖縄開発庁長官も経験させていただきました。  橋本内閣と同様に、これからも沖縄問題に積極的に対処いたしてまいりたい、このように決意を申し上げさせていただきます。
  317. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 野中官房長官、このたび沖縄開発庁長官も兼ねられることになりました。ぜひ沖縄のために御奮闘いただきたいのでありますが、開発庁長官として、また官房長官として沖縄の経済振興についてどのような理念、施策を考えておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  318. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 去る一月十四日、沖縄開発庁長官を兼ねることになりまして、それぞれこれから総合調整と沖縄開発庁長官を兼ねたことが私どもの沖縄振興に役立つように、また官房長官という職責から、沖縄開発庁の仕事がかえって私どもの手抜きにならないように細心の気配りをしながら務めてまいりたいと存じておりますので、一層の御支援をお願いいたしたいと存ずる次第であります。  照屋委員十分御承知のように、今沖縄経済はまことに深刻なものがあるわけでございまして、私どもはそういう中におきまして、沖縄経済振興二十一世紀プランという稲嶺知事自身も示されておりますこのプランを中心にいたしまして、これを早期に策定し、具体的には、知事みずから要望をされました本年半ばごろまでに少なくとも中間的な報告を取りまとめたいと考えて、現在、政府、県一体となって取り組んでおるところでございます。  また、省庁の積極的な協力をいただくことによりまして、昨日、二月二十二日に内政審議室から関係省庁に対しまして、それぞれ省庁におきましても今後前向きな検討が行われるように要請をしたところでございます。  沖縄経済が基地依存から自立型経済でやっていけるような状況をつくるために、微力でございますが、一層頑張ってまいりたいと考えておるところでございます。
  319. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、在沖米軍基地とガイドラインの関係について質問をいたします。  よく言われますように、国土面積のわずか〇・六%の沖縄に在日米軍の七五%が集中いたしております。防衛庁長官、なぜ沖縄に在日米軍が集中しておるんでしょうか。
  320. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 沖縄に米軍が駐留する要因としては、地理的に米本土やハワイ、グアム等よりも日本を含む極東の各地域に近く、同地域に急速な戦力投入を行うに際しての迅速性が確保できること等が考えられるわけであります。  ただ、おっしゃるように、国土のわずか〇・五、六%しか占めない沖縄県に在日米軍施設・区域の七五%が集中しており、これによって沖縄県民の方々に重い御負担をおかけしていることは政府としても痛切に認識をしております。  このような我が国全体の安全のために沖縄県の方々が担っておられる御負担についてはできる限り国民全体で分かち合うべきものと考えております。このため、稲嶺知事も折に触れて述べておられるとおり、SACO最終報告の着実な実施が沖縄県の方々の御負担を一歩一歩軽減するための最も確実な道であると考えております。  政府としては、今後とも米軍施設・区域の整理、統合、縮小に向け、稲嶺知事のお考えを十分に拝聴しつつ、沖縄県の御理解と御協力のもとSACO最終報告を踏まえ、真剣に取り組んでいく所存でございます。
  321. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 各省の調整によりまして、ただいまの質問は外務大臣答弁することになっておりましたので私は控えたわけでありますが、外務大臣のただいまの発言と全く同じであります。
  322. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 沖縄は戦争が終わって二十七年間アメリカの軍事支配下に置かれました。そして、沖縄に基地を集中的に置いているのは、ソ連が日本を攻めてくるかもしらぬ、そのために日本の平和を守るために沖縄に基地を置いているのだと言われてきました。そのソ連が崩壊した後もなお変わらぬ過密な米軍基地を沖縄に置いているわけであります。  外務大臣にお尋ねいたしますが、沖縄に米軍基地を集中させる条約上の根拠はあるんでしょうか。
  323. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 沖縄に基地を集中させなければいけないという条約上の根拠があるとは承知しておりません。
  324. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 安保条約では沖縄に米軍基地を置きなさい、こういうことは決めていないですね、大臣。
  325. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 安保条約そのものにそういう取り決めがあるとは承知しておりません。
  326. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 安保条約以外の地位協定その他に沖縄に米軍基地を集中させる明文上の根拠が決められておるんでしょうか。
  327. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 沖縄に集中させる根拠というものは決められておりません。
  328. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 戦後における日本の基本的な安全保障政策というのは、沖縄に米軍基地を集中させて安保体制を維持していく、こういうことであったと私は思います。  しかしながら、安保条約上も地位協定その他の法令上も沖縄に基地を置けとは書いていない。そういう根拠は全くない。しかし、現実にはひたすら沖縄県民だけが戦後五十三年経過したというのに日本の安全保障の負担と犠牲を一方的に強いられている、こういう認識を総理防衛庁長官は持っておられますか。外務大臣はいかがでしょうか。
  329. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 外務大臣も御答弁申し上げましたけれども、沖縄県における米軍の基地を初めとしてそうした施設が多く存在をいたしておることによりまして県民の皆さんに大変御負担をかけておることにつきましては、十分承知をいたしておるつもりでございます。  そうした意味合いにおきまして、県民の皆さんの福祉安定のためにもどのようになすべきかということを日々考慮しながら政府としては全力を挙げて対応してまいりましたし、またこれからも同様な気持ちで進んでまいりたいと思っております。
  330. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 この基地問題を解決するについて、私は、日本の外交姿勢、外務省の姿勢はアメリカに対して非常に弱腰であったんではないか、こういうふうに思います。  野中官房長官もせんだって記者会見で、沖縄の基地問題を解決する上で政府としてアメリカの交渉に当たるその姿勢が弱かったんじゃないか、こういう反省をしているという趣旨のことをおっしゃっております。  もう一度、長官の発言の真意についてお聞かせ願いたいと思います。
  331. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 昨年暮れ、初めて沖縄担当の閣僚として沖縄の関係者の皆さんとお会いをし、また閣僚という立場でそれぞれ基地を見、沖縄の各地を訪問いたしました。  そして、皆さんの声を聞く中で、私は、もっと基地問題その他について米軍当局や米国と率直に話し合いをし、そしてその窮状を大胆にお互いに話し合いをするならば道はあけることができたんではないかと思うことや、あるいはそれぞれ市町村長の皆さんとお会いしても、そういうお話を聞くにつけて、私どもは、今後沖縄県民の痛みを考えるときに、もっと米国に言うべきことは言う、そして先方もまた我々に主張すべきところは主張をして、お互いにそういう信頼関係の中で基地のありようを考えていかなくてはならないということを強く認識して申し上げた次第であります。
  332. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 外務大臣、今の官房長官の答弁を聞いてどうですか。外務省は、米国に言うべきは言ってきたと思いますか。
  333. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 外務省とすれば一生懸命やってきたつもりでございますけれども、そういう御批判がいろいろあるとすれば、まだまだ足りなかったということも顧みながら、これからさらに我々の主張をアメリカの方にも伝えていきたい、こういうふうに思います。  昨年、私、コーエン国防長官に、よき隣人として振る舞ってほしいということをきっちり申し上げましたら、その言葉がそのまま東アジア戦略報告書に取り入れられるなど、アメリカもそういったことは気を使っているわけでありますが、そういう言葉をまた実際に実行していただくようにこれからも一生懸命やってまいりたい、こう思います。
  334. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、官房長官、二月十二日の週刊ポストで、官房長官と鳩山邦夫さんが謀議をはかって都知事選を勝利して、沖縄の米軍基地を小笠原に移す、あるいはまたグローバル・アイの三月号で、稲嶺知事と官房長官がもうお話し合いは済んで、普天間の代替基地を伊江島に移すんだと、こういう報道がありましたが、いかがでしょうか。
  335. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) よく聞いていただきました。私は、おっしゃるように、週刊ポスト及びこのグローバル・アイの報道を見て、実は憤りを越したものがあるわけでございます。  私どもは、この沖縄の普天間の問題を今日まで申し上げてまいりましたことは、沖縄の頭ごなしにはしないということが基本でございまして、稲嶺新知事もこの普天間を含む基地問題につきまして庁内にプロジェクトチームをおつくりになって、そしてこれからお取り組みになるという体制をお伺いしております。  そういう中において、知事のお話を聞き、そしてそれにお手伝いをするところはお手伝いをし、そういう中から米国側とも協議を進めて普天間の移転、あるいはそれの代替措置のあり方を考えていきたいと考えておるところでございまして、現在のところ、私どもは先橋本内閣のときに決められた海上ヘリポートの問題以外に新たな提案を聞いておらないわけでございまして、全く白紙であります。改めて沖縄の皆さんの頭ごなしに普天間の跡地問題について、あるいは代替措置について考えることはございません。  週刊誌類といえども、何の根拠もなくかかる報道をすることをまことに残念に思う次第でございます。ぜひ御理解を賜りたいと存じます。
  336. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、防衛庁長官に。  周辺事態安全確保法、それから新ガイドラインにおける民間航空での武器弾薬の輸送はどうなるんでしょうか。
  337. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 御質問の趣旨が必ずしも明確に把握できているかわかりませんが、周辺事態安全確保法案では、民間に対する政府からの依頼と申しましょうか、これにつきましては第九条の第二項で依頼をすることができる、こういうふうになってございます。その中で、もし民間航空に輸送を依頼するのであれば、当然のことながら国内法令等に則して業務が行われる、こういうことになろうかと思います。
  338. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 周辺事態安全確保法九条二項の人員や物資の輸送には当然武器弾薬も含まれる。そして、九条二項で民間への協力依頼、これは飛行機も当然想定しているわけですね。
  339. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) もちろん、九条の第二項でどういうものを我が国以外の者に対して依頼をするかというのは、そのときの状況等によりますのであらかじめ申し上げることはできないと思いますが、そういった航空機による輸送、またその中で、場合によりましたら、今、委員がお触れになりましたような物資の輸送、こういうことも排除はされていない、こういうふうに思います。
  340. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 運輸大臣にお伺いいたしますが、民間航空で、民間の飛行機で武器弾薬を輸送する場合に、国内法の規制はどうなっているでしょうか。
  341. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) まず、武器弾薬という概念を航空法では持っておりません。したがいまして、両方のケースがあるとお答えするのが正しかろうと思います。航空法第八十六条においては、「爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのある物件で運輸省令で定めるもの」、爆発物ですけれども、民間航空機では輸送してはならないと決めてあります。  しかしながら、航空法施行規則等により定められた包装方法等に関する安全基準を満たす場合には運べるということでございます。この基準は、基本的には国際民間航空条約附属書に準拠して定められております。
  342. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今度は外務大臣にお伺いいたしますが、民間航空で、民間の飛行機で武器弾薬を運ぶ場合の国際法上の規制はどうなっているでしょうか。
  343. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) お尋ねの件は、周辺事態安全確保法第九条に基づきまして民間航空により武器弾薬等が輸送される場合に、国際民間航空条約との関係がどうなるかということかと思いますが、そのような場合につきましては、国際民間航空条約第三十五条におきまして、その(a)項でございますけれども、「軍需品又は軍用器材は、締約国の許可を受けた場合を除く外、国際航空に従事する航空機でその国の領域内又は領域の上空を運送してはならない。」旨規定しております。したがいまして、事前に領域国の許可を得ている場合、または当然ながら自国や公海の上空においても、締約国の国際航空に従事する民間航空による軍需品の運送を認めているものと解されるところでございます。  いずれにいたしましても、この周辺事態安全確保法第九条第二項に基づきまして民間にかかる協力を依頼する場合には、当然のことながら国際民間航空条約に反することがないように措置する次第でございます。
  344. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、周辺事態という段階で事前に許可をもらって弾薬を民間航空で運ぶなんというのはあり得ないと思うんですよ。外務大臣、この武器や弾薬を民間の飛行機で運んだ場合に、攻撃をされない、撃墜されないという保証はありますか。
  345. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 保証があるかと言われれば、保証というのは絶対的なものだと思いますから、そういう保証はないんだろうと思います。  今までのそれぞれの御答弁も、積極的にそういうことを想定しているということではなくて、この法案の中から当然に排除はされない、こういうことを述べているんだろう、こういうふうに思います。
  346. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 外務大臣、沖縄には辺野古の弾薬庫、それから在沖米軍四軍が使う嘉手納の弾薬庫があります。当然、周辺事態安全確保法九条の二項、それから新ガイドラインで民間の船、飛行機、特に飛行機で弾薬を運ぶといった場合に、沖縄の在日米軍基地が攻撃対象になる可能性は高くなると思います。  法的な評価じゃなくして、事実行為として撃墜される可能性、攻撃の対象にされる、そういう可能性はないのか。あるいは、そういう可能性が全くないと政府は責任を持って保証できますと、こういうふうに国民、県民に約束できますか。できないだろうと思うんですが、もう一度御答弁お願いします。
  347. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) ですから、実際にそういうことをお願いするということを一般的に想定しているわけではないので、もしそういうことをお願いする場合は、実際に撃墜されるような可能性が限りなくゼロに近いような場合にしかお願いしないんだろう、こういうふうに思っております。
  348. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 内閣安全保障・危機管理室の高見澤さんが、武器弾薬を含む、運ばせることも想定していると言っているんですよ。撃墜されない保証、攻撃されない保証が全く少ない段階で、そのときにお願いするなんというのは、これはおかしいんじゃありませんか。外務大臣もう一度。  むしろ、沖縄の基地が真っ先に攻撃をされる、あるいは沖縄から離発着する民間の飛行機が攻撃をされる、撃墜される可能性がある、このことは明らかじゃないでしょうか。
  349. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) ですから、この法案でそういう形態を排除しているということではないということを申し上げているので、いつもいつもそういうことをお願いすると言っているわけでもありませんし、そしてそういう万々が一というか、そういうことを仮にお願いする場合には、そういう可能性が限りなくゼロに近いような場合にしかお願いしないと。  実際にお願いするような事態があるかどうかは、私にはわかりません。
  350. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で大渕絹子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  351. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、泉信也君の質疑を行います。泉信也君。
  352. 泉信也

    ○泉信也君 自由党の泉信也でございます。  きょうは、大きく三つの点についてお尋ねを申し上げたいと思います。  まず最初に、所沢における野菜、ダイオキシン問題についてお伺いをいたします。  自由党は、先週の十八日と十九日、所沢それから東京の大田市場にお邪魔しまして、現地の実情を調べてまいりました。買い手がつかずに値崩れをしておるというようなホウレンソウの状態でございましたけれども、けさはほぼ事件前の値段に回復したようでございまして、関係者の御尽力に、現象面では一つの峠を越えたかなと、こんな思いでございます。  しかし、今回は大変多くの課題を残しておるわけでございます。総理の御指示によりダイオキシン対策閣僚会議というのが二十四日に設立されるという措置をしていただきましたけれども、これは大変評価をしなければならないことだと思っております。  そこで、環境庁長官にお尋ねをいたしますが、このダイオキシン問題についてこの閣僚会議を中心にどういうふうにお取り組みになるのか。例えば統一基準をつくる、さらには世界の基準とどう調整するか、あるいはデータの公表の仕方をどうするのか、こんな問題がたくさんあるかと思いますが、長官のお考えを聞かせてください。
  353. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ダイオキシン問題で所沢の生産者やまた消費者の皆さん方には大変御迷惑、御心配をおかけしたところであります。  これらの問題につきまして関係省庁、いわゆる厚生省、農林省とも環境庁一緒になりまして早速に取り組んだところであります。二月八日に関係省庁の事務方会議を開きまして、その後、二月十六日には早速に調査に取り組んだところであります。  その調査に取り組んで、三月いっぱいに結論を出す予定でございますけれども、それだけでは国民皆さん方のダイオキシン問題についての御心配を払拭することもできないだろうということで、ただいまお話がございましたように関係閣僚会議をあす開催することになりまして、できるだけ早くその心配を払拭させていこうと考えておるところであります。関係省庁十三省庁が集まりましてその会議を持つわけでありますけれども、その中におきまして各省庁から出た意見をまとめていかなきゃならないと、こう思っておるわけでありまして、環境庁としてもそのまとめ役に事務局として取り組んでいきたいと思っておるわけであります。  しかしながら、この問題につきましては、やはり日本国内だけの問題処理ということにも相ならないかと思うわけでありまして、WHO、世界保健機関によります報告もいただきたい、こう考えておるところでありまして、ちょうどこの一月の末にその報告が参ったところであります。二十八日にその報告が参りましたけれども、その報告の中には動物的実験を重ねて科学的知見の背景を持って事に当たっていかなければならないということで、そのような取り組みをいたしておるところであります。  さて、安全基準の問題でございますけれども、TDIの問題につきまして、どの辺が適切な基準値であるかということについていろいろ思いをいたしておるところであります。この問題に対しましても、動物的実験をもって数値を決めていくわけでありますから、一概にこれという数値が出てまいらないわけであります。しかしながら、適正な値があるということで、この問題は専門家会議にゆだねていこうということで、今、厚生省や環境庁によりまして専門家会議を開いておるところであります。何とか専門家会議の答申を得て、またWHO等々の数値を比較調整しながらその安全基準というものを出していきたいと思っておるところであります。  また、化学物質等々の問題につきましてもいろいろと関与してまいるところでございます。これらの問題につきましては、通産省ともよくよく相談しながら今国会で法制化してまいろうと思っておるわけでありますけれども、まさに移動登録等の問題でございますので企業秘密等々もあるわけでありまして、また中小企業等の思いやりもしていかなきゃならないし、都道府県の協力も得なければならないということで、あれやこれや思いをいたしながらまとめに入っておるところでございます。
  354. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。  知見の蓄積を必要とする部分がたくさんありますけれども、国民が大変気にしておるところでございますので、ぜひお取り組みに精を出していただきたいと思います。  郵政大臣にお尋ねをいたしますが、郵政省は十八日に、国民へ十分説明するようにというテレビ朝日に対する要請書を出しておられますが、放送法の一条の目的あるいは三条の二に言う「報道は事実をまげないですること。」、こういう規定にかんがみて要請をするだけで十分なのかどうか、大臣の御意向をお聞かせください。
  355. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 少し繰り返しになりますけれども、事実確認として、テレビ朝日の「ニュースステーション」におきまして二月一日の放送では、「野菜のダイオキシン濃度」と表示されたボードを使用して濃度〇・六四から三・八ピコとの報道がされました。また、二月九日には、ホウレンソウの濃度として〇・六三五から〇・七五ピコとの報道がなされたことから、これらの二つの数値の関係が明確でなかったと。そういうことに関して、この両者の関係について二月十五日にテレビ朝日に対し照会を行ったところ、テレビ朝日の方から、まず濃度の中で最高値である三・八ピコは野菜以外の農作物の数値と承知していること、さらに国民視聴者に対し番組で十分納得できるよう説明する所存であるという回答をいただきました。この回答を得て、直ちに担当局長からテレビ朝日の社長に対して、可能な限り速やかに国民視聴者に対し十分な説明を行われたい旨要請をさせました。  郵政省としては、放送法の適用いかんについては、これまでの放送またはさらに今後この本件の関連の放送がなされた場合には、その放送を含めて一連の放送全体を視野に入れて判断したいと考えています。これにつきましては、まず現行の放送法に照らして、公正、適正なる対応を真剣に検討していきたいと思っています。
  356. 泉信也

    ○泉信也君 もう一問、郵政大臣にお尋ねしますが、けさの新聞によりますと、民放連はテレビ朝日一社の問題という認識で、民放連としては取り上げる予定はないと、こういう反応をしておりますが、こんなことでよろしいんでしょうか。
  357. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 民放連の会長のコメントにつきましては、承ったところでございます。  私たちの方としましては、放送法にありますように、表現の自由の尊重と公共の福祉に適合というその両方を放送法の中では取り組んでいるところであり、事業者に関してはそれに準じて適正な対応をしていただきたい、そういうことを考えておるところでございます。
  358. 泉信也

    ○泉信也君 ちょっと別な話になりますが、二〇〇〇年問題なども根が深く幅広い問題ですから、報道機関がちょっと間違った報道をすることによって国民生活に混乱を来すこともあるわけですね。そういうことを考えますと、ただ単に注意を喚起するだけではなくて、全社長を呼びつけてきちんとした郵政省の対応をしていただきたいと思います。  次に、国家公安委員長にお尋ねをいたしますが、虚偽の情報を報道し、いわば所沢の農家の業務を著しく妨害したテレビ朝日の行為というのは、刑法第二百三十三条の信用毀損及び業務妨害罪に該当すると考えられるわけであります。徹底した捜査を行うべきではないかと思いますが、大臣の見解を聞かせてください。
  359. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 所沢の農家の皆さんの立場を考えれば、心情的には理解できるお話でありますが、ただ御指摘の事案について犯罪が成立するのではないかと、こういうお尋ねでありますが、ある事件についてそれが何らかの刑事事件に該当するかどうかということは個別具体の案件でございますので、お答えは差し控えたいと存じます。  なお、一般論として申し上げれば、警察においては、今後とも刑罰法令に触れる行為を認めれば、法と証拠に基づいて適切に対処していく所存であります。  いずれにせよ、今回の問題は、報道のあり方としてまず論議をしていただきたい問題であると考えております。
  360. 泉信也

    ○泉信也君 ぜひ国家公安委員長としましても注意を引き続きお持ちいただきたい、このようにお願いいたします。  次に、長野オリンピック招致疑惑についてお尋ねをいたします。  この問題は、単に疑惑の解明ということではなくて、二〇〇八年の大阪オリンピック招致を円満に、国民全体のお力添えをいただいて成功させますために私は疑惑の解明が必要だと思っておるわけです。  文部省は、JOCがIOCに回答した内容を御承知でしょうか。
  361. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) JOCがまとめましたIOCへの回答の概要でございますが、JOCはプロジェクトチームの会議において取りまとめた回答を二月十五日にIOCに送付いたしました。  その内容は、本人もしくは家族等の長野訪問についてIOCの提示したガイドラインに照らして不適切な行為のあった委員が九名いたということ、それから日本画や日本刀が贈られたことなどであると承知いたしております。  いずれにしても、オリンピックというのはあくまでもフェアに公平にあるべきでありますので、残念に思っております。
  362. 泉信也

    ○泉信也君 今、日本画、日本刀というお話が出ましたけれども、調査では、作成者の好意によりという文言が入っておるようですが、これはどういう意味でございましょうか。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  そしてまた、現物はIOCにあると認識してよろしいでしょうか。
  363. 遠藤昭雄

    政府委員遠藤昭雄君) お答えいたします。  好意という点でございますが、これはつくった人の本人の発意によって贈られたというふうに伺っております。  それから、JOCの委員が招致委員会に入っているかという御質問ですか。
  364. 泉信也

    ○泉信也君 そうした二つのものはIOCに贈られたもの、IOCにあるかということでございます。
  365. 遠藤昭雄

    政府委員遠藤昭雄君) 絵の方につきましてはIOCの方にあるというふうに聞いておりますが、刀につきましてはどうなっているかということについてはJOCとしても確認をいたしておりません。
  366. 泉信也

    ○泉信也君 作成者の好意というふうに言われますけれども、日本芸術院会員のこの絵を書かれた画伯は、サマランチ会長に贈られたことも知らない、また招致委員会からありがとうとも言われていない、こういう発言をしておられます。JOCの調査がいかにも無責任でいいかげんだというふうに私は思うんです。  ですから、文部省はJOCを指導するなり、あるいはきちんとしたルールをつくった上で大阪大会の招致に向けて努力をしていただきたい。二月八日の招致委員会設立総会に政府は従来の態度と違う対応をしておられますけれども、そういうことをしないで、積極的に出ていくというお約束をしていただけますか。
  367. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 今、IOCは今後の招致活動をどういうふうに行うかということを検討いたしております。そのガイドラインがやがて割に近い時期につくられると思っておりまして、こういうものがつくられた段階において大阪のことを考えようと思っております。  ただ、大阪でやることは私はいいことであると思いますので、先ほど申し上げましたように、こういうオリンピックという若者たちも国民全体も元気がつくようなものでございますので、あくまでも公明正大にやってほしいと思っております。その上で、私たち政府といたしましては最大限のお手伝いをしたいと思っております。
  368. 泉信也

    ○泉信也君 ぜひ大阪で、また若者に夢と希望を与えるような立派な大会を開いていただきたいと思います。  次に、教育問題についてお尋ねをさせていただきます。  総理が心の教育ということを施政方針演説で触れていただきましたように、教育の現場は目も当てられないように乱れておるということでございます。  文部大臣にお尋ねしますが、今日の教育界の乱れは何が原因だと、具体的にどんなことを大臣はお考えでございますか。
  369. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) さまざまな原因があると思います。  昨日も、実は教育界、特に昨日はカウンセラー等々を中心にして心の教育を主にやっている方たちにお集まりいただきまして現場のことをお聞きしました。  ただしかし、今御指摘の教育の混乱、いわゆる教室崩壊というふうなものは私はまだそこまで多くの学校、多くの教室がなっているという認識ではございません。ただ、確かに教育困難な子供たちがいるということは明らかであるようであります。  さて、何が原因か、これは実に難しい。まず第一に、家庭教育ということがあると思うんです。家庭教育をきちっとしなければいけない。そこで、私どもといたしましては大変心配をいたしました。ここまで文部省あるいはその前に中央教育委員会が家庭の話、社会の話までお願いをしていいものか大変心配をいたしましたけれども、あえてこの際家庭にしつけをちゃんとしてほしい、間違っていることは間違っている、いいことはいいと言ってほしい、そういうしつけをしてほしいということをお願いいたしました。これがまず第一。  それからもう一つは、先生たちはよくやってくださっておりますけれども、まだ子供たちと先生との間に時によってちょっとギャップがある場合があると思います。こういうことについて、初任者講習等々を通じてさらに先生方に対して御努力を賜るべくお願いいたしたいと思っています。  最後にもう一つ、社会全体の問題だと私は思います。やはり社会全体、地域社会がきちっとしていかなければ、子供たちだけに要求してもそれは無理でございます。社会全体がきちっとした倫理観を持って、そして愛情を持って教育に向かっていただきたいと思っております。
  370. 泉信也

    ○泉信也君 大変いいお答えをいただきました。  ただ、私が非常に残念に思いますのは、私ども自由党は教育基本法のところに問題があるということを党の政策として掲げておるわけであります。  まず、教育基本法立案時の背景でありますとか内容について、事務的にで結構でございますのでお話を聞かせていただけますか。国民皆さんもお聞きでございますので、ぜひわかりやすく。
  371. 小野元之

    政府委員小野元之君) お答えを申し上げます。  教育基本法でございますが、現行憲法の制定を受けまして、民主的な平和的な国家をつくらなければいけないということが当時の大きな考え方だったわけでございまして、その場面におきまして教育の根本の刷新が必要だということで新しい教育の基本理念の確立が必要だということが唱えられたわけでございます。そういった考え方のもとに現行憲法の精神を具体化いたしまして、教育上の諸原則を明示する法律として教育基本法が制定されたわけでございます。  この教育基本法制定におきましては、当時の提案理由説明におきましても、憲法改正の基本の上に立ちまして、民主的、平和的国家を建設するためには教育の根本的刷新が必要だ、その前提で新しい教育の基本理念を法律で決めるんだということを言っております。さらに、従来ございました勅令でございますとか詔勅といった形式ではなくて、国民みずからのものとして法律で定めることが必要だということで、先ほど来申し上げておりますように、教育上の諸原則を明示しようということで教育基本法が制定されたわけでございます。  教育基本法第一条には、教育の目的が示されておるわけでございますけれども、その内容は、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として国民が身につけるべき基本的な徳目あるいは国民としての義務などを示しているのでございます。  この制定当時も現在もございますけれども、なお愛国心であるとかあるいはもっと基本的な徳目を入れるべきではないかという御意見がございますけれども、第一条は国民として身につけるべき基本的な徳目は含まれておると私どもは理解をいたしておりまして、戦後の我が国の教育はこの教育基本法の精神のもとに実施されてきておるところでございます。
  372. 泉信也

    ○泉信也君 大体御説明をいただきましたが、この教育基本法はアメリカから調査団が来て約一年ぐらいで慌ててつくったという事実が実は背景にあることは国民の多くの皆様方にもぜひ知っておいていただきたいと思います。  愛国心の話もなさいましたけれども、この教育基本法を読む限り、あるいは当時の貴族院の議事録を読む限り、そういう議論はほとんどなされていない。今の時代から思いますと、おおよそかけ離れた議論がなされてつくられたのが現在の教育基本法でございます。歴史とか伝統とか家庭、そういう言葉は全く出てまいりません。これからの子供たちを育てていくには、自立心でありますとか創造力とかあるいは倫理観、こういうものを書き込んだ教育基本法をつくるべきだ、これが自由党の政策なんです。文部大臣、いかがでしょうか。
  373. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 新しい教育課程ではかなりそういうことを具体的に書き込んでいると思います。例えば、国に対して愛情を持つというふうなことをはっきりと書き込んであります。それから、倫理観についても、先ほど申しましたように、このところ文部省といたしましては、教育改革において、子供たちが倫理観を持つ、そのまず前に社会自身が倫理観を持つ、こういうふうなことについて強く述べているところでございます。  ただ、教育基本法の見直しのことについてでございますけれども、戦後教育の基本としてその果たしてきた役割はかなりあると思う。それを踏まえて、これからさらに国民的な議論を積み重ねながら慎重に行っていきたいと考えているところでございます。
  374. 泉信也

    ○泉信也君 現行法が果たした役割を私は否定するものではございません。どうなさいますかということに対して、今、国民的な議論を積み重ねながら慎重に行うべきと考えると。これは野田大臣が百四十二回の議会で質問された答えじゃないですか。しかも、百四十四回で小渕総理と大臣がお答えになった答えそのままじゃないですか。やる気があるんですか、ないんですか。
  375. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) そのまず前に、今の子供たちの教育環境を直すことが私はまず大事だと思っております。さまざまな登校拒否というのがある。不登校、これが十万人おります。まずこれを何とかして減らさなきゃいかぬ。  それから、子供たちが学校に楽しんで行くようにしなければならぬ。私が訪ねた学校はまだ数少ない、十校に足りませんけれども、そこではすべて子供たち楽しいかというと、楽しいと言っていました。ただ、きのう聞いたところによりますと、見知らぬ人にはそう言うんだそうです。そういうこともあるようでありますので、これは気をつけなきゃいけませんけれども、やはり学校が楽しくなきゃいかぬ。  それから、小学校では三割わからない子がいる、中学校では五割わからない子がいる、高等学校では七割わからない子がいる。こういう子供たちを何とかもっと理解するようにするということを私はまずやりたいと思っております。  その上で、中央教育審議会等々の審議会等を通じたりいたしまして、教育基本法というようなことに必要なときに検討を進めたいと思っております。
  376. 泉信也

    ○泉信也君 文部大臣は教育のプロでいらっしゃいますので、私ごときが口を挟むのはどうかと思いますけれども、根本のところを直さないで、枝葉末節とは申しませんけれども、家庭教育だ、社会教育だという、そのもっと上のところを直していただきたい、これが私の思いでございます。  次に、教科書問題についてお尋ねをいたします。指導要領が昨年の十二月に改訂され、一月には検定規則、検定基準も改正をされましたので、この機会に教科書問題についてお伺いをいたしたいと思います。  この過程で、教科用図書検定調査審議会というのがこれからの教科書あるいは検定手続等について文部大臣に建議を行っておりますが、なぜ諮問、答申という手続を踏まずに建議という形をとられたんでしょうか。
  377. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 手続の問題でございますので、御説明いたしたいと思います。  教科書検定基準は学習指導要領の改訂に伴いまして当然に見直されるべきものでございます。したがいまして、学習指導要領の改訂作業、これは中教審、教育課程審議会、そして私ども文部省という一連の流れがあるわけでございますが、その間、そうした学習指導要領の中身につきましての審議を横ににらみながら、教科用図書検定調査審議会におきましては独自にみずからの発意において審議を行ってまいりました。  したがいまして、その結果がまとまりましたものは建議という形で私ども文部大臣にいただいたわけでございます。ただ、答申でありましても建議でありましてもその重さにつきましては変わらないところでございまして、私どもはそれを最大限尊重いたしまして、教科用図書検定基準等の改正作業を行っている、こういうことでございます。
  378. 泉信也

    ○泉信也君 同じ重さであれば、審議会に対しては諮問、答申というのが通常の形でありまして、建議ということにしなきゃならなかった背景が必ず私はあるとこのように思っておりますが、きょうはその点には触れずにまいります。  そこで、学習指導要領が改訂されたわけですが、中学校の社会科の目標、さらに歴史分野の目標でどういう点が改訂されたのか、具体的に教えてください。
  379. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほど一部お答え申し上げたわけでございますが、新しい中学校学習指導要領の社会科の目標において、新たに我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深めるということを明記いたしております。また、歴史的分野の目標といたしましては、我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てることを明記いたしました。  また、歴史的分野の内容につきまして、目標の改善を踏まえ、歴史学習を通じて子供たちが先人の努力に思いをいたし、現在の我が国社会の発展について理解することができるよう、例えば近現代の歴史に関し次のような改善を図ったところでございます。  まず第一に、戦後、国民努力により経済や科学技術が急速に発展し、生活が向上し、国際社会での役割が増大したことを理解させる。第二点、明治維新やその後の近代化における政府や人々の努力、それからその人々の果たした役割などについて気づかせる。三、明治期以後、学問、教育、科学技術、芸術などが発展し、その進歩の著しかったことを教えるというふうな改革を図っております。  まず世界の人間を愛そうとするならば、そのまず前に自分たちの国を愛するということが必要であると思っております。
  380. 泉信也

    ○泉信也君 大臣が最後におっしゃっていただいたその言葉が、それではこれからの教科書の中にどういうふうに反映されるとお考えでしょうか。歴史観、それを構成する事象、あるいは人名、どんなふうに変わってくるとお思いでいらっしゃいますか。
  381. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 今のところ具体的な教科書の方に、でき上がった教科書を見ておりませんのでわかりませんけれども、今申し上げたような近現代の歴史に関する方針、それから歴史的なことに関する認識等々がちゃんと組み入れられるようになっていると思います。
  382. 泉信也

    ○泉信也君 具体的に一つ二つお尋ねいたしますが、中学校の教科書には、伊藤博文を殺害しました安重根、三・一独立運動の柳寛順という韓国の人の名前が出ております。この方々の名前を消せとかいうことを私は今申し上げるつもりはございません。ただ、日本人を教えるという観点からしますならば、乃木希典とか東郷平八郎という名前が中学校の教科書になぜ出てこないのか。  どうお考えでいらっしゃいますか。
  383. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 教科書の記述でございますけれども、現在の我が国の教科書制度は検定制度というものをとってございます。国定でもございませんし民間の自由発行でもございません。民間の創意工夫を生かす執筆をまずお願いし、それを学習指導要領というものに合わせて検定をするという、そういう形で官民が力を合わせて教科書をつくるというルールになってございます。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  その際、どういう人物を取り上げるか、その記述をどのようにするかというものは、まず一義的には発行者、執筆者の判断にゆだねられるわけでございます。しかし、おのずとそこには、どういう歴史を行うかについて、こういう人は当然出てくるであろうということはあるわけでございます。  小学校につきましては、人物を特定いたしまして固有名詞を挙げまして、最低限これはという形でのものがございます。ただ、中学、高校ということになりますと、かなり歴史学の研究を踏まえた著述ということになりますので、その人物の取り上げ方等につきましてはまず執筆者の判断にゆだねる、そういうルールになっているわけでございます。  すべての教科書についてお答えすることはなかなか難しいわけでございますけれども、それぞれ各教科書によって特色のある教科書になっているわけでございますけれども、共通にこの人はというようなものはおおむね取り上げられているのではないか、こんなふうに思っております。
  384. 泉信也

    ○泉信也君 検定基準については後ほどお尋ねしますが、大臣、この柳寛順という方は、写真がここに出ています。一枚めくりますと、この一ページ使って全体にいろんなことが説明してあるわけですね。そういうことではさっきの指導要領を改訂されて国民としての自覚を育てる、あるいは我が国の歴史に対する愛情を深めるということにはならないんじゃないか。  文部省はどう考えているか、私はそこをお尋ねしたいんです。民間がやっていますからとか検定ですとかと、そんなことを言っているんじゃないんです。
  385. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) まず、教科書の執筆は先ほど申し上げましたようなことでございます。  ただ、学習指導要領に照らしまして内容が公正か、妥当か、あるいは偏っているかいないかという観点での検定は、検定調査審議会の審議を仰ぎつつ、私ども全力を挙げてやっているところでございます。  そこで、具体的に、この人物はどうか、あるいはこちらの記述はどうかということになりますと、なかなかお答えしにくい点はあるわけでございますけれども、基本的には今のような観点に立ってございます。  ただ、教科書あるいは執筆者によりまして扱いの軽重がございます。その逐一につきまして、これは多過ぎる、あるいはこれは少な過ぎるということを申し上げることはなかなか難しい、それは検定制度ということを考えますとなかなか難しい、その点は御理解を賜りたいと思います。
  386. 泉信也

    ○泉信也君 そういう説明は全く理解できないんですよ。柳寛順をなぜ日本の中学校の教科書にあれだけのページを割いて載せなけりゃならないか。  例えば、司馬遼太郎さんの「殉死」という小説に、先輩の方が御承知の「水師営の会見」という記述がございます。敵将ステッセルに恥ずかしい思いをさせてはならない、着剣を許して正装をしてお互いに並んで写真を撮る、それが日本の武士道だといって世界に広がった。こういうことを教えることこそ日本の教育の一番大切なことじゃありませんか。なぜ柳寛順が大切なんですか。
  387. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 教科書の検定でございますけれども、検定基準に詳細な基準が決めてございますが、その時々の学界の状況、あるいは科学的に裏づけられた資料である等々基準がございます。その際、それに外れていればもちろんこれは削除を命じ、あるいは訂正を命ずるということであるわけでございますけれども、そうした学界の状況やあるいはさまざまな学問あるいは文献等の資料に照らし合わせて、それは間違ってはいない、その前提でございますけれども、その際に、その記述をどの範囲で、どのような形で取り上げるか。これは国定ではございません。したがって、そこには検定制度の一応限界と申しましょうかそういったものがある。その幅は私どもは認めていく。それが今の教科書のルールになっているわけでございます。  したがいまして、一つの記述、それをすべての教科書にという、これはもう国定になるわけでございまして、そういう教科書制度を現在はとっていないわけでございます。  しかし、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、余りにも偏った記述ぶりであるとかというようなことにつきましては私ども厳正にやっているつもりでございますけれども、今後十分に留意をして対処してまいりたい、こんなふうに思います。
  388. 泉信也

    ○泉信也君 私は検定基準のことを言っておるんじゃなくて、学習指導要領に我が国を愛するとか歴史を愛するというふうに書くならば、なぜ今私が申し上げておるようなことが出てこないか。検定の前の話を私は申し上げておるつもりです。  では、検定についてお尋ねします。  文部省はこの資料の中で、南京事件について、原本の約二十万人ということは推計二十万人にしろ、約を消して推計にしろという検定をしております。文部省は、南京事件は約二十万人あるいは推定二十万人ぐらいの、それくらい多かったと思っておられるんですか。どれくらいの数だと思っておられますか。
  389. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) ただいま申し上げましたように、検定でございます。その際には、学界の状況、その時点での資料としておおむね評価をされているというそういう前提でございます。そのときに、特に近現代になりますと、さまざまな資料、学説等がございまして、一つにこれといった決まったものがないというのが実情でございます。年代が新しくなればなるほどそういう状況がございます。  その際にどうするか。そのときには、国としてこれが正しい、これは正しくないという断定を下す立場にないわけでございますので、したがいまして、その資料の範囲の中である程度の幅を持って許容していくということでございます。そのときに、明確にその一点が正しいという事実がないならば、それは推定であるとか、あるいは、これはこうした資料によればそういう数字になっているという形での記述をお願いする、こういうやり方をしているわけでございます。  ただいま先生のお尋ねの件でございますけれども、文部省自体が歴史的事実を認定するという立場にないわけでございまして、さまざまな学説、資料等の中から、先ほど申しましたような、根拠を明示する、あるいは推定とみなされるというようなさまざまな工夫をいたしまして、誤りなきを期しているということでございます。
  390. 泉信也

    ○泉信也君 約二十万人という表現は悪いけれども推計二十万人だったらいいと言うんだったら、およそ二十万に近いんだなということを暗示しておるんではありませんか。  南京虐殺についてはベイツという南京大学教授の四万人説というのがあるんですけれども、これは、その当時の中華民国の公文書には全く出てこない。十三年五月の国際連盟の決議、同じく毛沢東の演説、十三年七月の蒋介石の声明にも南京虐殺に論及したものが全くないんです。これは「「南京虐殺」の徹底検証」という本の中にあるんですけれども、そういう事実があるにもかかわらず、推計二十万人なんて書くのは間違いじゃありませんか。
  391. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) この南京事件の犠牲者数につきましてはさまざまな説がございます。研究者により、あるいはさまざまな資料、辞書等におきましても、先生が御紹介されました四万人という数字から、物によっては三十万人以上というような数字、さまざまございます。  その中で、では、国がこれが正しいということが断定できない現時点におきましてどのような記述を求めるかということは、審議会の中でも大変な議論をするわけでございます。そこで、今申し上げましたように、その数字につきましてその根拠を明示する等そうした形で行っているということでございます。
  392. 泉信也

    ○泉信也君 この問題にはもうこれ以上触れませんが、それでしたら、推計二十万人というようなことをよしとするのはやめていただきたい、わからないと、こう書いていただきたいと思います。  今回の検定基準の改正に当たっていわゆる近隣諸国条項がそのまま残っておりますが、大臣、これはなぜ残されたんでしょうか。
  393. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず、我が国の教育は、非常に平和的な国家及び社会の形成者を育成することを目的にしております。このため、学校教育においても、国際理解と国際協調の精神を養うことを重要視しております。  この点につきましては教科書検定におきましても従来から配慮してきたところでございますが、昭和五十七年夏に、中国、韓国等から寄せられました意見を踏まえまして、特に近隣アジア諸国との国際理解と国際協調の見地に配慮する旨の新たな検定基準を加えることにより、我が国と近隣アジア諸国との友好親善を一層進める上で教科書がより適切なものになるようにしたところでございます。  今後とも、教科書検定につきましては、この趣旨を踏まえまして、国際理解と国際協調の見地に立って適切に行うことは必要なことであると考えており、今回の検定基準の改正におきましても、この項目につきましては存続することとしたところでございます。  文部省といたしましては、今後ともこの基準を踏まえて検定を行ってまいりたいと思っております。
  394. 泉信也

    ○泉信也君 大臣、それがだめなんですよ。誤報事件に基づいてつくったこんなものが何で大切なんですか。  お尋ねしますけれども、諸外国にこんなたぐいのものがございますか。
  395. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 研究者の一人としての発言になるかと思いますけれども、近隣諸国と友好関係を保っていくために、その近隣諸国並びに国内の歴史研究者がきちっと皆で検討して正しい歴史をつくっていってほしいと思っております。
  396. 泉信也

    ○泉信也君 国際理解とか国際協調はこの教科書の検定基準に書く必要は全くありません。これは当然のことであります。  そこで、もっとお尋ねをしたいことがございますが、教科書採択制度の仕組みにも問題がある。教員のかかわり方が八〇%もある。このことについてどう思われますか、改革の方法がございましたら教えてください。
  397. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 公立学校で使用されております教科書の採択は所管の教育委員会が行うわけであります。市町村立の小中学校につきましては、市郡単位の広域採択地域を設定して共同して採択を行っております。地域内の教育委員会は採択地域協議会を設けて検討を行い、各教育委員会の責任において採択教科書を決定しているわけでございます。  その際に、ここが多分御質問の真意かと思いますが、各教科ごとに校長、教員などに調査を委嘱し専門的な調査研究を行わせるとともに、都道府県教育委員会の指導、助言を受けております。教科書の採択は、授業で使用する教科書を選ぶということから、その調査研究に当たって教員に調査研究を行わせることはやはり私も必要であると考えております。  各採択地域におきます具体的な採択方法につきましてはそれぞれの地区にゆだねられているところでございますが、文部省においては、これまでも適切な採択組織、手続によって専門的な調査研究の充実が図られるよう指導、助言を行ってきたところでございます。また、保護者等の意見をよりよく反映させ、採択がより開かれたものになるよう促しているところでございます。  今後も、こういうやり方でよりよい教科書が選ばれるよう努力をさせていただきたいと思っております。
  398. 泉信也

    ○泉信也君 かつての日教組に洗脳されたような先生方が七割も八割も教科書選択にかかわるということは、今、大臣がお答えになりましたような立派な教科書が選ばれるはずはありません。もしそれをやられるんだったら、だれがどういう意見を出したかというようなことを全部公表するような仕組みをぜひ考えていただきたい。  それからもう一つ、教師用の指導書についてお尋ねいたしますが、これはだれの責任で編さんされておりますか。
  399. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 実は、私もこの教師用指導書を書いた人間でございますので、私も大いに関心があったのですが、教師用指導内容というのは各教科書の記述に即した適切なものである必要があるというふうに考えております。これまでも教科書発行者から成る社団法人教科書協会を通じて記述の改善方について要請をしているところでございます。  この指導書をどこが出しているかということでありますが、それぞれの教科書会社がやっていると思います。
  400. 泉信也

    ○泉信也君 時間が参りましたのでもうすぐやめますが、今教科書協会を指導しておるとおっしゃいますけれども、これは六十二年三月の塩川文部大臣の記者会見での指摘を受けて二項目申し合わせをしておられます。その後ずっとほっておかれまして、平成九年二月に改めてさきの申し合わせを確認するという、ただ二度、それも文部省から文書を出して指導したという形跡は全くありません。野放しじゃありませんか。こんなことでいい教科書、いい指導書ができるとは私にはとても思えないわけであります。  実は、総理に最後お尋ねさせていただきますけれども、教育問題はだれでも語れる、それだけに私は難しい問題だろうというふうに思うんです。  心の教育という中で、日本の歴史でありますとか伝統でありますとか、そういうことを培っていくということが大切だと思いますが、もしできますならば、新たな臨時教育審議会というようなものを起こして、教育基本法の議論、その他の議論をやっていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  401. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 二十一世紀に本当に子供たちがこの日本を背負い、そしてグッドシチズンとして世界の中からも評価されるような、そうした成長を願うということは当然のことだろうと思います。そういう意味で、教育は国家百年の計ということだろうと思います。  そういう意味で、前の内閣も五つの大きな改革、それは主に経済の問題に触れての問題であります、もちろん行政改革もございますけれども。しかし、その中であえて教育改革の柱を立てたというゆえんのものは、極めて今日的な問題として考えるべき課題ではないかと思っております。  私は、施政方針でもちょっと引用させていただきましたが、去年総理になりましてから、あるところで司馬遼太郎氏の「二十一世紀に生きる君たちへ」という、今の教科書に載っておるわけでありまして、こういうのを載せることは非常にいいことだと私は思っておりますけれども、あれを読みまして、推敲に推敲を重ねながら司馬さんが二十一世紀の子供たちへの思いを込めて書かれたのを拝見いたしまして、改めて教育の重要性といいますか、次の世代を背負う子供たちにいかなる教育をなすべきかということにつきましては、正直申し上げて私はその道の専門家ではございませんけれども、橋本総理が随分こういった点について各界への諮問をされておりまして、私になりましてからその答申等をちょうだいすることになってきておるわけでございます。  そうしたことを十分真剣に受けとめながら、二十一世紀の日本の子供たちをどう育てたらいいかという考え方に立脚しての教育の改革といいますか、教育のあり方というものについて真剣に勉強してまいりたいと思っておる次第でございます。
  402. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。
  403. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で泉信也君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  404. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、奥村展三君の質疑を行います。奥村展三君。
  405. 奥村展三

    ○奥村展三君 ただいま審議をさせていただいております平成十一年度予算でありますが、この十一年度末を考えてみますときに、国と地方と合わせまして約六百兆円の借金残高になるということが言われておるわけであります。これはGDP、国内総生産の一・二倍とも言われておるわけであります。単年度の収支あるいはまた債務残高等を含めますとはるかに、先進国の中で特にイタリアを抜いて最悪の状態になってしまうものでございます。  国だけの借金を見てみますと、三百二十七兆円にもなると言われております。国民一人当たり二百五十九万円、四人家族にいたしますと一千三十七万円ぐらいになろうと思います。  これまでの利払い、私が今ここで約十分ぐらい質疑をさせていただきますが、この質疑をさせていただく十分間だけで見ましても、二億一千六百三十万円の利払いをしなければならない。一分間で当然二千百六十三万円利払いをしていかなければならない。こんな状態が我が国の財政であります。  やはり、これを考えてみますときに、三世代にわたって返していかなければならないのかな。自分たちは今このように生活をさせていただいておりますが、子供たちあるいは孫たちにこれを申し送っていく。これは六十年償還でありますから、そういうようなことを考えますと、本当にこの財政赤字というものを憂うわけであります。  そこで、数点についてお伺いをさせていただきたいと思うものであります。  特に、強行日程の中で宮澤大蔵大臣はG7に御出席をなされたわけでありますが、先ほども申し上げました十一年度だけの新規国債だけでも三十一兆円、そして借換債四十兆円、合わせますと本年だけでも七十一兆円の国債が発行されることになりますね。政府の一部の方から国債の日銀引き受け等々、これは信用低下に私はつながると思うんですけれども、こういう議論が出てみたり、やっぱりグローバルな中で長期金利が上がってくる、あるいはまたその買い支えが出てくる、いろんな問題がG7の中で私は語り合われたと思いますが、大蔵大臣のこの議論等についてお伺いをいたしたいと思います。
  406. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、三十一兆の国債を発行する傍ら予算の国債費ほとんど二十兆でございますので、それだけごらんになりましてもまことに異常な健全でない財政であることはおっしゃるとおりと思います。  ただ、今お話しになられましたG7等でそういう問題について非常に議論があったかとおっしゃいますと、G7の国も我が国の実情をよく知っておるものでございますから、この不況から脱出するにはどうもそういう手法しかあるまい、いい悪いを超えまして、どうもそれしかないだろうなと。それと、金融の秩序をどうかするか。とにかく、決して先々欠陥を残さない、累を残さないというわけではないだろうけれども、そうかといって今どうもそれ以外にやりようはなさそうだ、そういう理解と申しますか、そういう見方をしておると思うのでございます。  確かに、しかしその手法も、せんだってうちちょっと長期の金利が二を超えましたので、この二というのは彼らの頭では大変な低い金利ですが、しかし〇・幾つであった国の金利が二になれば、これはやっぱり異常ではないかという頭はございました。ただ、その後、また金利は正常に戻りまして、一・八とかいうところに行きましたので、ちょっとそういう話はありましたけれども、これでクラウディングアウトするであろうとか、あるいはこれで国債の発行が難しくなるであろうというような話は、これはございませんでした。  ただそれはしかし、今、日本のやっていることが大変もううまいことを立派にやっているということではさらさらありませんで、確かにそういう道を通るしかあるまいなと。したがって、今国債が多過ぎる、金利がというようなことも、この程度になっておれば特に言うことはないのかなという、大変褒められているという意味ではございませんが、今の日本状況というのをもうちょっと現実的に見ておりますので、今は黙っていると申しますか、とにかく早くこの不況を脱却してほしいと、こう言っておるようでございました。
  407. 奥村展三

    ○奥村展三君 確かに、日本がそれだけの経済大国でありますから、その影響というのは大変大きいと思います。三、四年前、このG7、仄聞をいたしますところによりますと、やっぱり欧米先進国は雇用問題あるいはまた財政赤字が最大の問題であったと思いますね、そういう流れ。今になりますと、日本が長期金利の上昇やあるいはまたこれだけの赤字、本当に私は世界の経済に影響を及ぼす、今、大臣がおっしゃったとおりだと思います。ぜひ、健全な経済運営あるいは財政が確保できる、後ほどまたいろいろ質問していきますが、ぜひそういう問題もG7でも大いに今後も語り合い、健全な形になるよう期待をさせていただいて、次に移らせていただきます。  租税民主主義といいますか、これは財政民主主義という言葉に置きかえてもいいかもわかりませんが、極めて非常に、先ほど来申し上げたように我が国の状況は厳しい問題であります。  例えでございますが、ここで一兆円の公債を発行した場合、十年債、六十年償還、これは現在は利率を二・一%に仮置きをなされていると思うんですけれども、これを五%に単純計算をいたしますと利払いだけで約一兆八千億、そういうようなことになります。そうすると、元本と合わせますと二兆八千億になるわけですね、これは大蔵省から聞いたんですが。  だから、そういう状況考えたら、こういうことを簡単に当てはめてしまうと、大変申しわけないんですが、確かに先ほど来いろいろ議論の中にありましたが、私は地域振興券は反対はいたしません。確かに経済効力はあると思います。ただ、手法的に、臨時国会で申し上げましたが、十五歳以下の子だとかあるいは六十五歳以上の人でもいただける方とそこに物すごい差がある。所得のない方しかもらえないというようなことで、私の田舎なんかでは、ゲートボールをしている最中に、十人のうちこの中で四人ぐらいしかもらえぬだろうな、あとの六人はみんな所得があるから、これはひょっとすると差別やでと、こんなこともお年寄りから聞いたようなことがありますが、それはそれとして、地域振興券は私は経済的に効果は今後出てくると思っております。  ですから、今六十五歳のおじいさんが二万円をいただかれる、それを六十年かけて先償還を考えてみますと約五万六千円返さなければならない。私の単純計算ですけれども、今二万円もらわれた方が六十年先には五万六千円を返さなければならない。これは孫、末代、あるいは子供たちが返していかなきゃいかぬわけですね。  こういう状況、これは物価の動向だとか仮定計算をしているわけですけれども、こういうことが、将来に向かって今負担を求めていいんだろうかな、そんな思いをするんですが、租税民主主義の原則として、将来世代への負担について、大蔵大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
  408. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど国債費が二十兆足らず、十九兆八千億でございますか、申し上げましたが、実はこれは金利が低いので救われておりますので、普通の金利でございましたらやっぱり大変なことになります。そして、こういう低い金利はまた正常な状態ではございませんから、もし我々が国債に頼る癖を非常につけてしまって、しかも低い金利での国債が発行できないとなりますと、今、委員の言われましたような事態はさらに深刻になるわけでございます。  ですから、民間の経済活動が出まして、それはそうしますと自然に金利が上がるんだと思いますが、国債と競合するようになればそれはもう国債の方が引っ込んで、そして民間の経済活動で日本経済がやっていけるようになりませんと、おっしゃいますようなことが起こってまいりますので、こういう状況は何とかして、不況脱却よりはもう少し時間がかかりますんですけれども、いつまでも続けておるわけにはやっぱりいかなくて、財政再建を考えなければならない時代がもう来ざるを得ないというふうに思います。
  409. 奥村展三

    ○奥村展三君 六十年という超長期の国債ですね、非常に私は長いと思う。先ほどもいろんな例を出したんですが、長いと思うんですが、諸外国ではどうなっておりますか。
  410. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、我が国におきましては、現在、建設国債、特例債ともに六十年間という特定の年限で償還を図っていこうという、いわゆる公債の減債基金制度というものを設けているわけでございますが、英国あるいは米国、ドイツ、フランス等につきましてはこのような制度を持っておりません。満期の到来した国債等につきまして、その年度の歳入歳出の状況に応じて借りかえ等の措置を講じているところでございまして、日本のように特定の年限で償還するということにはなっておらないわけでございます。
  411. 奥村展三

    ○奥村展三君 地方におきましても建設公債、いろいろ特に学校なんか地方債でやるわけでありますが、これも五年据え置きあるいは二十五年償還だとか、このごろですと公立の学校を見ましても三十年ぐらいで建て直さなければならない。そういうようなときに国から補助を、六十年もかかって本当にそういうのでいいのかなというような私は思いをいたします。  そこで、大蔵大臣いかがでしょうか、この六十年という超長期償還を改めるというお考えはないでしょうか。
  412. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 歳入補てん公債は、建設国債と違いまして六十年で償還というようなことは本来考えていなかったわけでございます。やむを得ず、片っ方はそれによってつくられました耐久の建物等々が六十年耐用年数がある、それはうそではないように思います。しかし、歳入補てん公債にはそういう理屈は何もないわけでございますから、何となくそうしちゃったという、それしかやりようがなかったとでも申しますんでしょうか、これは全くどうも説明のしにくいことでございまして、全体の問題ではございますけれども、いつまでもこんなことがあっていいわけではないと思います。
  413. 奥村展三

    ○奥村展三君 単純に三十年にすれば半分になるかと、そうではないと思いますけれども、やはり負担は減ってくる。そういうようなことで、ぜひお考えいただければと思います。  次に、総理にお伺いをいたしたいと思います。  総理は、施政方針演説の中で、日本経済が回復軌道に乗った段階において、財政・税制上の諸課題につき、中長期的な視点から、幅広くしっかりとした検討を行い、国民皆さんにそのあるべき姿を示さなければならないとおっしゃいました。  しかし、〇・五%の経済成長を目されておりますが、例えば来年度、十一年度、もしも二%経済成長したとしても税収は一兆円しか入らない、あるいは四%経済成長したとしても二兆円しか税は伸びないと思うんです。しかし、これはもう三十一兆円の新規国債を発行するわけですから、非常に数字からいけばけた違いの結果になってしまうと思うんです。  そこで、イギリスにおきましても七九年でしょうか、サッチャーさんが鉄の女性と言われ、いろいろエコノミストなんかにも批判を受けながら、日本とよく似た状況であったと思うんです。しかし、行政改革だとか民営化だとかエージェンシーだとかいろんなことをやって、そして金融のビッグバン等々をおやりになってそれを打破された、脱皮された。これをまた八〇年にはレーガンさんも、アメリカもそれを倣って、そういうように今日なっておる。  ぜひ、そういうことを考えますと、財政再建のことにつきまして、やっぱりアジアの中でも日本の占める存在というのは非常に大きいわけでありますが、総理、真剣に財政再建に取り組むお気持ちをお伺いいたしたいと思いますが、いかがですか。
  414. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政治の責任の任に当たる者は、基本的には歳入歳出が均衡すべきことは、これは古今東西そうした教えがあると思っております。古き中国の礼記にも、入るをはかって出るを制するということでありまして、そのことは常に念頭を去ってはいけない課題だろうというふうに認識をいたしております。  さりながら、現在、国、地方を合わせまして六百兆を超える財政的な赤字を抱えておる。こういうふうな状況の中で、この額はまことに大きく、一年間のGNPを超えるものでございまして、一日も早く財政が均衡する努力をしていかなきゃならぬと思っております。  これはそうした意味で財政構造改革をやっていかなきゃなりませんが、現下、そうなりますとどうしても歳出を削減していく。そのことは予算的にいえば縮減をしていくという形でありまして、一方の大きな課題である日本経済、世界に責任を持っていく日本経済から考えますと、今日、十一年度でお世話になりますこの予算が、これが日本としてなすべき課題であるというふうに思っております。  今、先生御指摘のように、サッチャー政権における財政に勇気を持って取り組まれましたサッチャー英首相並びにレーガン政権における二つの赤字を克服されたこのひそみに倣わなきゃならない点もありますが、しかし現実には、現下は大変大きな国債を発行してでも経済を大きく伸展させるということの必要性にかんがみて努力をしていかなければならぬと思っております。  委員指摘のように、世界の中でも、大きな財政赤字の中で国債の発行が不可能になってきてこれが消化できないというところもあることを考えますと、今、日本の場合には先ほど大蔵大臣申されましたようにかなり低い金利でこれが発行できる、それこそ我が国のある意味での底力という点もあろうかと思いますので、政策のよろしきを得て必ず将来にわたってこの財政が赤字を解消して健全な姿に持っていけますように、十分心得てこれから対処していきたいというふうに考えております。
  415. 奥村展三

    ○奥村展三君 ぜひ英断を持って財政再建に御努力いただきたいと思います。  各連立あるいはまた政党で合意をされています基礎年金負担率、二分の一へこれは引き上げていただく、非常に結構なことだと思います。児童手当も拡充していこう、これも大変結構なことであります。しかし、これも財政が一体どうなっておるのか、やっぱり将来を考えますと非常に憂えるものであります。ぜひ、今、総理が述べられましたように、一日も早く財政再建のめどもつけていただきたいというように思うわけであります。  そこで、前橋本内閣の推し進められてきた六大改革でありますが、私は経済対策と六大改革は両輪であるというように思うわけですが、現在、進捗状況はどのようになっておりますか。
  416. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 六大改革というのは各省にわたっておりますのでちょっと答弁がしにくいものですから、私から申し上げさせていただきます。  まず、行政改革は御存じのように今非常に進捗しておりまして、間もなく行革法が出ると思います。  経済構造の改革につきましては、通産省等で実行しておりますし、我々の方でも総理大臣の諮問をいただきまして経済審議会等で考えることになっております。  既に金融改革の方は相当に進んでいることは御承知のとおりでございます。  それから、四番目はたしか社会福祉、社会保障改革でございましたが、これも今、委員指摘のように厚生省を中心として検討しております。  そして、教育改革でございますが、これは先ほどから議論ございましたように文部省を中心として進められております。  最後に、残りました財政改革でございますが、これは財政改革法を凍結していただきまして、いましばらく先送りになっていることはまことに残念ながら事実でございます。この点について、衆議院でもここでも議論がございましたので、余り財政改革について将来が悲観的に思われると国民の方々が士気を落とすことがございますので、ちょっと御説明させていただきたいと思うんですが、財政再建の二%の成長というのはあくまでも実質成長を言っております、ことしの〇・五、来年の二%。財政収入の方は、名目の成長率、物価の変動等も関係がございます。  今、卸売物価、消費者物価まで値下がりぎみでございますから、大変税収の方も厳しい状態でございますが、経済の流れが変わってまいりますと、経済成長率に対する税収の割合、これは税収弾性値でございますが、これが変化することもございます。また、金利の関係、さきに大蔵省が試算を出しましたけれども、これは名目成長率と国債に与える金利との関係を一定の比率に置いておりますが、これも変わる可能性がございます。  委員指摘のように、サッチャー政権あるいは特にレーガン政権はそうでございましたけれども、今から十年前、レーガンさんの最後のころには三千億ドルというような大きな財政赤字がございました。  それがどうやって解消されたか。ちょっと計算の方法はいろいろ見方があるんですが、約三分の一は景気の上昇による税収の増加、自然増収で行われました。これは、もちろん名目の問題でございます。三分の一は冷戦が終わったことによって支出が削減された。日本でも経済が立ち直りますと、今景気対策でやっておりますような事業を縮小することが大胆にできるだろう。そこまで景気が回復してくれたらできるだろうということも考慮する必要がございます。そして、三分の一はどんとレーガンさんのときに大減税をやりまして、そのうち減税分の四割ぐらいまた増税する。まだ六割は減税したままでございますけれども、そういう増税によって賄われた。  だから、日本の場合も経済が本当にしっかり立ち直ってくれたら、支出も削れますし税収の増加も見込めますから、必ずしも機械的に計算したほど絶望的なことではございません。  したがって、まず今経済を立ち直らせまして、そういう長期の問題、財政再建の問題に何年か後には本格的に取り組む、そのときには支出の削減も税収の増加も、あるいは税制体系の変化もいろんな点で考えさせていただきたいと思っております。  目下そういう状況でございます。
  417. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  ぜひ財政赤字、今、長官がおっしゃいましたような姿で進みますことを期待させていただきたいと思います。  以上、私の質問を終えさせていただきたいと思います。あと関連をお許しいただきたいと思います。
  418. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。菅川健二君。
  419. 菅川健二

    ○菅川健二君 参議院の会の菅川健二です。  行政改革についてお尋ねいたしたいと思います。  午前中の質疑の中にもありましたように、小渕総理にはいろいろ御尽力いただいておるわけでございますけれども、行政改革につきましてはやや熱が冷めておるのではないかという批判もあるわけでございまして、私は、その中でも特に行政のスリム化について特段の熱意をあらわしていただきたいと思うわけでございます。  その具体的な一環といたしまして、小渕総理が就任当初、所信表明におきまして、今後十年間で国家公務員は二〇%削減、行政コストの三〇%の削減を約束されたわけでございます。その後、自自連立内閣の成立によりまして、国家公務員の定員は二五%削減と、五%ハードルをさらに高められたわけでございまして、大変かけ声だけは勇ましいわけでございますが、小渕内閣も誕生してから約半年が過ぎたわけでございます。そういった現在におきましても、その具体的な姿がはっきりいたさないわけでございます。  その後の具体的な取り組み状況なり来年度の予算編成におきまして、こういったことについてはどのように取り組んでおられるか、総理の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  420. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府におきましては、計画的な削減と独立行政法人化によりまして十年間で二〇%の削減を目指してきたところでございますが、自民、自由両党の合意が出されまして、さらにこれを受けまして、十年間で二五%削減の方針を中央省庁等改革に係る大綱に盛り込んだところでございます。  この削減の達成のためには、数値を上げたわけでございますので、さらなる努力は必要と考えておりますが、以上、十年間でございまして、この間に種々の改革努力を行い、スリム化された政府を実現することが必要となりますが、政府といたしましては、与党とも連携しつつ、大綱に沿った定員削減を実施できますように最大限の努力をいたしてまいりたいと思っております。  菅川委員にいささか私のこの問題に対する姿勢を問われましたけれども、再々申し上げておりますように、前橋本内閣の取り組まれた行政改革に対する、六大改革の一つの大きな柱でございますので、私といたしましても全力でこの問題に取り組まさせていただきたいと思います。  内容につきましては、総務庁長官が現在法律その他に取り組んでおられますので、具体的な問題につきましては総務庁長官から御答弁をお許しいただきたいと思います。
  421. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) たびたび同じことで申し上げておるわけでございますが、橋本内閣で行政改革については総論、そしてまた一部特別な各論もございましたけれども、総論をはっきりさせていただいて、それを小渕内閣が受けとめて各論を今やっておるということでございまして、それはおおむね総論賛成各論反対になるところでございますから、今が一番大変なところでございます。  それで、今おっしゃった二五%でございますが、結局はただいまの国家公務員、総定員法の定員が五十四万八千人ということになっておりますので、その四分の一は十三万七千人でございます。そういたしますと、それをどうやって達成するかということでございますので、一つは、独立行政法人になったことをもって総定員法から外れるわけでございますので、そこはカウントをさせていただくということで、現在のところ六万七千人の方々の職場が独立法人化に同意をしておられるということでございます。  十年間をかけてこのようなさまざまな改革と定員削減、つまり採用を抑制するというようなことで達成をするということを目指しております。
  422. 菅川健二

    ○菅川健二君 二五%という数字、総論における数字はわかるわけでございますが、中身ということになりますと、今御指摘の独立行政法人に六万何千人が移行するということでございます。  ただ、これは器をAという器からBという器に移しかえただけでございまして、行政経費においてはコスト節減に全然役立たないんじゃないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、実質的な公務員の減にならないんではないでしょうか。いかがですか。
  423. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) これはどういうことかといいますと、国家公務員の定員についてだれが責任を持つかということでございまして、内閣が直接に責任を持たなければいけないのが今言う五十四万八千人でございまするので、内閣の直接の責任から外れて定員管理の責任は独立行政法人の方に行くということであります。そこで、その定員管理から外れるので今おっしゃる対象の数が減るということになるわけでございます。  なお、独立行政法人については、これはどういうことかといいますと、定員の管理、それから資産、負債の管理について責任を持っていただくということでございますので、その身分が国家公務員であるか否かを問わず、そこは独立体として国民に直接その事業としては責任を持っていただくということでございますので、内閣の責任から外れるわけでございます。
  424. 菅川健二

    ○菅川健二君 今申し上げましたのは、私はコストの点において申し上げたわけでございまして、定員が内閣の責任から別のところに行くんだというのでは答えにならないわけでございます。それは、責任の所在が別のところに移るということにすぎないわけでございまして、使う税金は同じであるということになりますと、行政のスリム化には全然結びつかないんじゃないですか。
  425. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 独立行政法人に支出される公的なお金、これは交付金という姿で行くわけでございまして、従来のように人件費とかあるいは利子補給とかいう形で特定化されたことで行くわけではありませんので、それはちょうど地方自治体と中央政府のような関係になるということでございます。
  426. 菅川健二

    ○菅川健二君 交付金といいましても、そのもとは税金じゃないですか。いかがですか。
  427. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 行った先が、支出された先にとってそれは運営交付金のような形で受け取るわけでございますから、地方自治体が国から交付金を受け取るのと同じことになるわけです。そして、その定員管理についてみずから責任を負うということでございますので、今言う定員から外れるという理屈はそういうふうにして成り立つということであります。  なお、独立行政法人にするということがいかにも簡単なことのように思ったらば間違いでございまして、定員削減をするのとあるいは独立行政法人化をするというのが、それぞれの職場における責任ある人たちにとってどっちが厳しいことであるのかということ、これは甲乙つけがたいわけでございます。
  428. 菅川健二

    ○菅川健二君 どうも理解されないようでございますけれども。  いずれにしても、独立法人にされるということについては、それは身分とかいろいろな問題が変わりますので、国家公務員あるいは公務員にとっては大変なことだというのはわかるわけでございますが、私が申しておるのは、行政コストがどの程度それによって節減されるのかという観点から申し上げておるわけでございます。
  429. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 結局、それは独立するわけですから、例えば独立行政法人ができますと、そこの理事長さんといいますかトップマネジメントが自分のリスクでもって経費、コストを削減したり、あるいは採用を手控えたり、借金を早く返したりして経営内容をよくするという努力を一方でやる。 もう一つは、政策目標があるわけでございますから、政策目標を十分に達成していくということで、そのような形でもって自助努力でやっていただくということでございます。
  430. 菅川健二

    ○菅川健二君 いずれにしましても、独立行政法人にしただけでは行政コストの節減にならないわけでございまして、独立行政法人にした後どういう形で経費を節減していくかという、その先まできちっと押さえていただきたいと思うわけでございます。  そこで、独立行政法人に時間をとりましたけれども、独立行政法人につきましては大体一〇%程度ではないかということでお聞きいたしておるわけでございますが、あとの一五%は全く純減になるのか。  私は、一五%というのを純減にするというのは大変なことではないかと思っておるわけでございます。その場合に、何としてもやはり地方分権といいますか、事務事業というものを思い切って地方に移譲することによって、人材も地方に移譲することによって国の政府をスリム化していく、そういうやり方がぜひ必要ではないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  431. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 独立法人のことについてまず申し上げますと、一〇%というのは、五十四万八千でございますので五万四千八百になるわけでございますが、それは先ほど申しましたように、今お約束をいただいた職場におられる方の数でいいますと六万七千でございますので、もし全部が行っていただければ、そういう保証はまだないんですけれども、全部行っていただければ、そういう意味では大体それを超えておるわけでございます。  さらに、今はさらなる機関にお願いをして、独立法人化の姿になっていただこうということをお願いいたしておりまして、これは各省との協議でございますので、まだ確定をいたしておりませんけれども、まだ相当数そのような御理解をいただけるようになるのではないかと思っております。  それ以外に、これは私どもがそういうことを言っておるわけではございませんけれども、自自の協議では、離職をされる方々が年間にたしか五千人ぐらいおられるわけでございます。その分を、例えばそのうちの半分だけしか充足をしないと。ちょっと乱暴な話でございますけれども、例えば、試行実験的にはそれは考えられるわけでございますけれども、二千五百人しか補充をしないという形でもって削減をしてはどうかというふうな御議論もあったやに聞いております。
  432. 菅川健二

    ○菅川健二君 どうも行政のスリム化という観点からの定員の削減という視点がもうひとつぴんときておられないんじゃないかという感じがいたすわけでございます。  行革国民会議の並河さんという専門家がおられますけれども、この方が国民から見れば二五%という数字はほとんど意味がない、政治的スローガンとして意気込みを示す程度にしかならないと言っておられるわけでございますが、そういうことにならないように、ひとつ総理、先頭に立って道筋をきちんと立てて着実に実行していただくようお願いいたしたいと思います。  以上でございます。
  433. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 菅川委員お尋ねのように、定員の二五%削減が独立行政法人で達成した場合に、コストの問題をどうするかというお尋ねでございまして、このことにつきましても、私自身が実は総理になりまして最初の所信表明でその決意を申し上げておるわけでございまして、率直に申し上げればなかなかコスト削減ということも非常に難しい問題だと思っております。  ただ、これから中央省庁等の改革にかかわる作業も見きわめつつ、各省庁がそれぞれ所掌している行政分野ごとに行政コストをどうとらえ、どう削減するか、こうした検討をした上で具体的な削減の目標も設定していかなければならない、こう考えております。  こうした考え方に基づきまして、この中央省庁等改革に係る大綱を踏まえまして各省庁がそれぞれ所掌している行政分野ごとの削減目標の設定作業を行っておるところでございまして、中央省庁等改革関連法案提出の時期を目途に具体的な取り組み方針を策定いたしたいと考えておりまして、そういう意味で定数の削減と同時に行政法人化をしますが、同時に今申し上げたようなコストの削減、これは非常に私は大変なことだろうと思いますけれども、先生方の御支援もいただきながらぜひこれを達成したいという熱意に燃えて実は第一回の所信表明で申し述べておるところでございます。  また、地方に行政の改革、権能を移しながらこの問題についても関連すべきだという点は、これはお説のとおりだろうと思います。そういった意味での地方のあり方等につきましても関連することでございますので、この点にも、もともとの根本であります行政改革、行政コストの削減、こういった点に関連をいたしまして努力をいたしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  434. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で奥村展三君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  435. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、佐藤道夫君の質疑を行います。佐藤道夫君。
  436. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最後になりました。朝来さぞお疲れと思いますが、いましばらく御辛抱ください。  私は、午前中の質疑で出ました四文字富国有徳、この富国の方は切り捨てまして、有徳の方につきましてちょっとお尋ねしてみたいと思います。政治家の徳のあり方、政治倫理、モラル、こう言ってもいいと思います。  そこで、野中官房長官にまずお尋ねをいたしたいと思います。  野中長官は、平成八年に「私は闘う」という本を出されております。その第三章は「小沢一郎との闘い」、一章を割いて小沢氏に対して極めて厳しい非難を浴びせております。こんなことを言っていいのかと思うぐらいであります。  ちょっとサンプルを挙げてみますけれども、大恩人を売った男は人間として許せない。そのころは保保連合と言っておりました。保保連合の構想が実現したら私は体を張ってでも阻止する。それから小沢氏の行動、これは独断専行、秘密主義、唯我独尊、側近政治、強権的、これはとてもまともな政治家とは思えない。日本にいる政治家とは思えない。それぐらいです。その次が大事です。政策が似通っていようが政治の原点は信義である、信義をわきまえない人と手を組んでこの国の将来を一緒にやっていくようなことは政策以前の問題であると言っております。政策が合うから一緒にやっていこうとかそんな問題ではない。私もこのとおりだと思います。  それから、そのころ雑誌その他のマスコミのインタビューに応じましていろんな話をしております。これはインタビューですから、マスコミが勝手に推測をして書いたものではなくて、インタビューの記事というのは、記者が原稿にまとめまして、後で会った人のところに持ってまいりまして、これでよろしいか、いいですよということでそれが記事になるわけであります。  九七年五月号の宝石、私はどうしても小沢一郎とは組めない、彼が歩んできた道は我が国を危険にする道だという信念を持っている、彼がトップにいる新進党とは絶対に組めないと。彼は今自由党のトップだと思いますけれどもね。  それから、九七年五月の週刊朝日、これもかなり権威のある週刊誌であると思います。亡国の独裁者小沢一郎と組むやからは自民党を去れと言っております。しかも、これは私怨ではない、この国の将来を考えるときに危険な政治家の一人と思うからであると。  それから、ある自民党内の有力政治家が小沢氏に接近した際に、その人に対して、悪魔と手を握るような悪魔はぶっ殺す、こう言っております。かなり物騒な言葉でございます。要するに悪魔と手を握れるのは悪魔しかいない、そういう趣旨であろうと思います。  それから、九六年七月の週刊宝石で、岩見隆夫というかなり高名なジャーナリストですけれども、彼との対談の際に、小沢さんと連立をするようなことがあるのかと、そのとき私は党と決別します、こうはっきり申しております。  国民はこれを聞いておりまして、あるいは読んでおりまして、なるほど小沢氏とはそういう人なのか、私もそう思うなと、そう思った国民も相当おるのだろうと思います。一方、野中氏というのは極めて筋目を通す政治家であると、そう考え国民が非常に多いと思います。  ところが、一夜明けてみましたら、みんなあっと驚きました。昨年の十一月、今度は自自連立、こういう言葉が使われ出しまして、その仕掛け人は、どうもマスコミによると野中官房長官だ、こう言われております、真偽はわかりませんが。その当時のマスコミで、野中氏は小沢氏にひれ伏してでも協力を願いたいという趣旨の話をしておったと、これはどの新聞も載せておることでありますから、間違いないことだろうと思います。  悪魔と手を握るのが悪魔ならば、悪魔の前にひれ伏すのは一体これは何だろうか。虫けらかというふうに考えた人もおろうかと思う。失礼はお許しください。かつて、ヒトラーとスターリンが手を握ったんです、独ソ不可侵条約。あのとき西側の諸国は、悪魔と悪魔が手を結んだ、これは大変なことだ、戦乱のおそれありと言って皆驚き恐れたわけですが、現実はそうなりまして、人類史上初めてと言っていい大戦争が起きまして、結局命を失った人が何千万人という大災害にもなったわけであります。  さて、この国はどうなのか。政治家である以上はやっぱりおのれの言動に責任を持つ、これは一番大切なことです。何か連立をお組みの際はもう決別するんだというようなことも言っておられました。これもまた私大事なことだろうと思います。そういうことは一体どっちへ行ってしまったんだろうかと、こういう気がしてしようがないわけであります。  どうかひとつ存念を述べていただきたいと思います。官房長官として、今の政治を仕切っているのは、日本政治を仕切っているのは野中長官だというふうにも言われておるぐらいでありますから、日本政治がいかなる人によって導かれているのか、国民はやっぱり知る権利があると思います。これは、経済不況を乗り切るために小沢氏の率いる自由党との協力がぜひとも必要だったというようなことをおっしゃることはできないと思います。政策以前の問題だということをはっきりあなた述べておりますからね。  それから、何といっても、これは悪魔だと自分が言った人と手を結ぶのは、結ぶ人も悪魔だということも言っておりますから、国民のサイドから見ましても、少しぐらい景気を回復する、悪魔の力をかりる、そんなことはやめてくれと国民は言うと思いますよ。  あれこれ申し上げて大変申しわけないと思いますけれども、どうか野中官房長官の存念を国民の前にはっきりと聞かせていただければありがたいと思います。これは国民が皆知りたがっていることだと思います。
  437. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 私のそれぞれ言動につきまして、今、委員から詳細にお話を賜りました。  私は、みずから書いたもの、みずから発言したことに、一人の人間とし、政治家として重い責任を持っております。  昨年七月に、自由民主党は参議院選挙において国民の御支持をいただくことができずに、橋本内閣は総辞職をいたしました。  その後、小渕内閣が発足をいたしました。時まさに、これは委員がおっしゃるように、それはいかに経済危機であったと言いわけをしても私の言動が許されるわけでございませんけれども、まさに我が国は大変な経済不況でありますとともに、金融恐慌が起ころうとしておるときであり、それはまさに世界に向かって金融恐慌が起ころうとする中における臨時国会の開会でございました。  私は、その中において今の官房長官を拝命したわけでございます。苦しい連日の国会運営のはざまの中であえぎ苦しむ中、ある私の友人から私に、ぜひ小沢さんと会って話をしてみたらどうだというお話を賜りまして、そして、今この緊急事態をどうしてもやっていくためには個人のしがらみを捨てて小沢さんと話をしてみろと、そういうお話のもとに私も小沢さんとお話をさせていただく機会を設けました。  そして、私は率直に個人的な失礼をおわびいたしました。小沢さんは、個人のことはいい、今当面しておる今日の国家的な危機に対してお互いに理念政策についてこれから話し合うことができればいいではないかという話のもとに、これからの政治のありようをお互いに話し合ったわけでございます。そういう中から、それぞれ自自連立への道があけてきたことは御指摘をされましたとおりでございます。  まあ、いろいろ批判は甘んじて私は受けたいと存じますけれども、私どもはお互いに生まれた世代も異なります、そして環境も異なってまいっております。したがいまして、その後も、時に国民皆さんからごらんになりますと、本当に自自連立ができたんだろうかと思われるようなお互いに言葉のやりとりもありました。  また、私自身は、そういう中におきましても、戦争世代の最後の残された人間としてきょう生かされておるわけでございますので、それだけに我が国が危険な道に走らないためのまた私は役割を果たしていかなくてはならないという使命を持って時に発言をしますことが対立をしたような構図に映ったりして、あるいは、選挙制度のあり方についてみずからの気持ちを率直に申し上げると、それが異なったようなとられ方で報道をされて、対立をしておるようにとられがちでございますけれども、それは私の至らないところでございまして、先ほども申し上げましたように、みずからその責任をとらなくてはならないと存じておりますけれども、おかげさまで自自連立の道筋をあけることによって、あの金融国会を乗り切ることができ、そしていわゆる金融不安と言われるものを一応見通しをつけ鎮静化をすることができ、不良債権等の処理もでき、さらにたび重なる予算の通過と御審議を賜るようになり、行政改革等それぞれの道筋があいてまいりました。  やがてそういうものが明らかになったとき、みずから私は自分の行動に責任をとっていきたいと思うわけでございまして、君子豹変すると言われますけれども、君子ではありませんけれども私はあえて豹変をして、そしてそれによって政局の安定の礎になることができれば、みずから政治家として幸せであると存ずる次第であります。  今、御指摘いただきました点は謙虚に私はいただきたいと存じております。
  438. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 率直に申し上げまして、私は全然納得できないんです。  政治家というのはおのれの言動に責任を持つべきだということを私は申し上げました。今現在、じゃ野中長官は小沢氏を悪魔であるとなお考えておるんですか。恐らくそうではないようなことを弁解なさるんでしょう。それじゃ、この本は一体どういう考えで書かれたのか。  この前、あなたは衆議院予算委員会で菅代表から二枚舌と言われて大変激怒されまして、いやしくも一党の代表たるものが二枚舌とは何だ、言葉を使うなということを言いました。あなた自身が一党の党首である小沢氏に対して、人間ではない、悪魔である、この国の将来を危うくする政治家であると、はっきりと自分の本の中でそういうことを言っておる。  これはもう推敲に推敲を重ねて、みんなにも見せて、そのあげく最終的にこれで行こうということで出版して、これは公的立場ですから、政治家が小説を書いているわけじゃございません。政治の評論をしているわけですから、政治を分析しているわけですから公的立場で行っておるわけでありまして、これもし今現在小沢氏は立派な政治家だ、あれはついうっかり書いたんだと言えばこれは名誉毀損そのものでございますから、政治家というのはそのぐらい自分の言動に責任を持たねばならぬことなんで、何かちょっと一晩話し合ったら、了解しました、後始末はあるので少しく政治をやりましてその上でと。私は全く納得できないんですけれども、もう一度ちょっとお願いします。
  439. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員の御納得をいただけないことは私も十分承知をいたしております。けれども、みずからこの昨年八月以来歩んできた今日の道のりについて、一人の人間として政治家として、我が道、あえて批判を受けても歩んできたという自負に満ちておる次第であります。
  440. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 富国有徳と私が申し上げたのは、この問題につきまして実は小渕総理のまた御見解も承りたい。小渕内閣の重要なポストにおられる方がこういうことでありますので、富国有徳という観点からいたしますとこの件は一体どういうことになるのか。政治家の徳のあり方ということにつきまして、国民全部に対して政治はこういうものなんだということを知らしめていただければありがたいと思います。
  441. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 一般的な徳ということにつきましては、これはそれぞれ考え方があろうかと思いますが、政治家におけるその最大の責任は何かということになりますと、なかなか難しい問題があると思います。従来発言しておりましたことにつきましても、大きな問題についてその責任を負うということがこれまた政治家の責任であるということにもなるのではないか。  ですから、先ほどスターリンとヒトラーのお話がございましたけれども、我が国の明治維新を迎える前に、これは西郷南洲と勝海舟がまさに従来の遺恨を乗り越えて、手を結んでこの江戸、東京を守り、そして我が国は明治維新を迎えたということの故事をたどれば、お互い長きにわたってのいろいろ個人的な感情はありましても、これを乗り越えて何をなすかということがこれまた政治家にとっての大きな責任である、私はこう考えております。  そういった意味で、なかなか難しゅうございますが、ドイツのマックス・ウェーバーが言っておられますように、すべて善の中から善が生まれる、また悪の中から悪が生まれるということでありませんで、お互い最終的に国民国家のために大きな責任を果たすということの中では、私は、野中官房長官のとられた態度につきましては私としてはこれを了とし、ともどもに責任を持って内閣を推進していきたい、こう考えておるところでございます。
  442. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 終わります。
  443. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で佐藤道夫君の本日の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会