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1999-07-13 第145回国会 参議院 本会議 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月十三日(火曜日)    午後三時四十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三十六号   平成十一年七月十三日    午後三時三十分開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。足立良平君。    〔足立良平登壇拍手
  3. 足立良平

    足立良平君 私は、民主党・新緑風会を代表して、宮澤大蔵大臣財政演説に関連し、総理及び関係大臣質問をいたします。  質問に先立ちまして、去る六月からの集中豪雨によってお亡くなりになった方々並びにその御遺族に対し心から哀悼の意を表しますとともに、大きな被害を受けた広島県を初めとする被災者皆様方に対しお見舞いを申し上げます。  政府は、昨年成立を見た被災者生活再建支援法を初めて適用するとのことですが、ぜひとも法律の趣旨を踏まえ迅速な支援を要望いたします。総理の御所見をお伺いいたします。  ところで、小渕総理、ハードなスケジュールの中、中国及びモンゴル訪問大変御苦労さまでございました。  まず、今回の訪中についてお尋ねをいたします。  西ドイツでよく言われた言葉に「過去の克服」という言葉があります。例えば、政治学者のユンゲル・ヴェーバーは、「過去の重荷が克服されてはじめて、ドイツ民主制再建が成功することがわかっていた。過去の克服ドイツの戦後政治の前提となったのであった」と述べております。  しかし、日中関係においては、一九七二年の日中共同声明が調印されたにもかかわらず、残念なことに今なお過去の克服が実現しておりません。常に過去の歴史認識が足かせとなり、両国未来志向関係を構築する際の大きな阻害要因となっております。事実、昨年十一月の江沢民国家主席の来日においても、日本に対し正しい歴史認識を厳しく求めておりました。今回の訪中において小渕総理が提示した百億円の小渕基金とも言われる緑化対策に象徴されるように、日本ODA等資金供与小切手外交とやゆされ、過去の克服を実現しようという政府の強い意志が見えてまいりません。  二十一世紀に向け小渕総理は、日中関係の過去の克服をいつまでに行い、中国の求める歴史認識克服し、未来志向日中友好関係をどのように構築なさるのか、御所見をお聞かせ願います。  また、小渕総理は、李鵬全人代常務委員長及びモンゴルナランツァツラルト首相に対し、朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮ミサイル発射阻止を依頼したとされております。私は、依頼そのものを否定するものではありませんが、当然ながら、まず最初に主権国家としての毅然たる態度を示すことが国際社会の常識であると考えております。  政府は、朝鮮半島エネルギー開発機構、いわゆるKEDOに対し一九九六年に千九百万ドルの拠出を行っておりますが、今後ともKEDOへの拠出を行うのか、テポドンの再発射阻止に向けて北朝鮮に対し日本国として厳しく対処すべきであると考えますが、総理の今後の外交姿勢をお聞かせください。  さて、長引く不景気産業構造転換影響で、本年五月の失業者数は三百三十四万人、完全失業率四・六%と依然として高水準にあり、雇用情勢は危機的な状況に陥っております。  失業者のうち九十七万人は世帯主であり、その家族の生活に深刻な打撃を与えていることは特に憂慮すべきことであります。加えて、今後さらに企業リストラを加速させ、雇用や所得に下方圧力が働くことは避けられません。また、昨年一年間の自殺者が史上初めて三万人を突破し、特に経済生活問題を抱えた自殺者が七割も増加をしている実態であります。  昨日、宮澤大蔵大臣財政演説で明らかにされたように、我が国経済が依然として厳しい状況にあるという認識は私も全く同じであります。しかし、今回提出された補正予算では、雇用不安が払拭されるとは到底考えられないのであります。  それは、国民が年金、医療を含めた将来への不安を抱いているにもかかわらず将来ビジョンを示さず、すべての問題を先送りしている政府に対する不信感景気を牽引すべき個人消費を低迷させているという認識が希薄だからであります。そしてまた、無為無策政府に引きずられ、バブル崩壊による不良債権処理をおくらせてきた企業の生き残りをかけた容赦ない人員削減のあらしが国民の不安を増幅しているのであります。  政府は、今回の予算額及び対策で必要十分であると考えておられるのか、そしてまた今回の対策により今後の失業者数失業率はどのように推移すると予測しておられるのか、総理及び労働大臣にお伺いをいたします。  さて、本通常国会において、我が民主党は、平成十一年度の当初予算では政府公約実質〇・五%経済成長を達成するのは不可能だと主張し、予算の組み替えを求めたにもかかわらず、政府与党は我々の主張を一顧だにせず、原案のまま成立を強行いたしました。そして今、当初予算が執行されてわずか三カ月余りで補正予算提出を余儀なくされたことは、欠陥予算であったことを如実に示すものであり、小渕内閣責任は極めて重大であります。  経済認識を誤り、対策後手後手に回して日本経済の傷口を広げたことに対する責任をどのようにとられていくのか、総理及び大蔵大臣にお伺いをいたします。  昨年あれほど騒がれた金融不安は、現在では、少なくとも表面的にはかなりおさまっていることは事実であります。特に、長銀日債銀破綻したにもかかわらず、日本発世界金融恐慌が起きなかったことは、民主党を初め当時の野党がつくり上げた金融再生法の正しさを立証するものと言えます。もっとも、早期健全化法による資本注入効果は一時的なものであり、いずれまた金融不安は再燃するとあえて私は指摘しておきたいと思います。  さて、長銀日債銀破綻をし、金融再生法に基づいて関係者責任追及が行われておりますが、その過程において、長銀の旧経営陣粉飾決算の疑いで逮捕されるというゆゆしき事態も今日発生をいたしております。  その長銀に対し、昨年三月、政府は千七百六十六億円の税金を投入しただけではなく、八月二十日、小渕総理は官邸に住友信託銀行社長を呼び、長銀を救済合併するよう迫っております。総理としてまことに軽率な行動であったと言うほかありません。民主党を初めとする当時の野党の強い反対がなければ長銀の犯罪は明らかにされず、巨額の税金が投入されていたのは間違いありません。  小渕総理は、債務超過で市場から退場すべき銀行を税金で救済するという、まさに国民に対する背任行為を犯そうとしたのであり、その責任は極めて重大であります。小渕総理の反省の弁を求めます。  さらに、金融再生法第三条には、金融機関破綻処理の原則として、「破綻した金融機関株主及び経営者等責任を明確にするものとすること。」という規定があります。金融再生法を提案した民主党としては、この規定について、大蔵省等行政責任は当然含まれるものと考えております。この点について金融再生委員長の御見解をお伺いします。  昨年来、政治家や官僚の倫理確立を求めてさまざまな議員立法取り組みが行われてまいりましたが、これらが一向に実現をしていないことはまことに憂慮すべきことであります。  我々は、この問題を最重要課題として繰り返し取り上げてまいりました。国家公務員倫理法はようやく今国会成立に向けて与野党合意がなされたようでありますが、そこで一層問われるのが政治家倫理であります。  我々は、公明党、社会民主党護憲連合、参議院の会とともに、特定の業者に便宜を図って報酬を得るような利益誘導政治にきっぱりと決別をしようとする国会議員地位利用収賄罪を処罰する法律案を本院に提出いたしております。  また、民主党は七月六日に、資金管理団体に対する企業団体献金禁止法案衆議院提出いたしました。これは、政治資金規正法附則第九条に明記されていることを実現する法案であります。すなわち、平成六年一月二十八日に当時の細川総理河野自民党総裁の間で交わされた合意書は、「企業等団体の寄付は、地方議員及び首長を含めて政治家資金管理団体に対して、五年に限り、年間五十万円を限度に認める。」と記されており、自民党として、資金管理団体に対する企業団体献金は五年に限ることを明確に合意いたしているのであります。  これだけ明確な合意書及び附則第九条がありながら、いまだ政府与党責任者として何らの手だても講じていない責任小渕総理総裁はどう説明されるのでありましょうか。両法案に対し、自民党総裁としての考え方をお聞かせいただきたいと思います。  同時に、野田自治大臣には政治資金規正法所管大臣としてのお考えを伺うとともに、自由党としての態度を改めて明らかにしていただきたいと思います。  最後に、小渕総理は先般、神崎公明党代表に自自連立政権への参加を正式に要請したとされております。  仮に自自公による大連立政権が実現すれば、衆議院で三百五十議席を軽く超え、本院においても百四十議席の絶対的権力基盤が形成されます。かつて、西ドイツでは、キリスト教民主同盟ドイツ社民党の大連立を実現し、緊急事態法案、いわゆる有事法制成立させました。  そこで、総理にお伺いします。  今、なぜ衆議院で三分の二をはるかに上回る大連立を行おうとされているのか、連立の目的、真意をお聞かせください。  しかし、自自公連立は、かつての西ドイツの大連立のように、政策合意の上に成り立った政権ではありません。政策重要課題については、ガイドラインにおける船舶検査国会議員議員定数介護保険制度等々、先送りされたままであります。つまり、絶対的権力を保持するための大連立ではありませんか。絶対的権力は絶対的に腐敗すると言われているように、このような連立政権は必ず腐敗するでありましょう。  加えて、五五年体制以後の自民党政権は、安全保障問題など、ハイポリティックスなテーマを回避してまいりました。このことに対し、国民の多くが保守政権政党としての軽さ、言いかえれば歴史的責任感の欠如、国家観に対する見識の脆弱性といったものを直感していると考えています。戦後、国会内外で繰り返されてきた不毛な議論の根因、ひいては日本民主主義政党政治が高まらない大きな要因となっているのであります。  このような自民党政権の戦後の負の遺産を自自公連立の中でどのように解消されるのか、小渕総理の真摯なる御所見を求め、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  4. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 足立良平議員にお答え申し上げます。  まず、このたびの豪雨災害につきまして、改めて、政府を代表し、被災地皆様に対し心からのお見舞いを申し上げます。  被災者生活再建支援についてでありますが、被災者生活再建支援法に基づく支援金支給制度につきましては、本年四月から開始されており、今回初めて広島県全域の住宅全壊等被害を受けられた被災世帯に対し適用されることになり、既に受け付けを開始いたしております。昨年の夏から秋の災害被災者に対しましても本制度と同様の措置を講じ、大変効果があったと認識いたしております。今回も支援金の迅速な支給に努め、被災者方々の速やかな生活再建支援を図ってまいる所存でございます。  今回の訪中歴史認識についてのお尋ねであります。  昨年、私は、江沢民国家主席の訪日に際して、十分な意見交換を行い、歴史認識を含め双方の広範な共通認識日中共同宣言として発出いたしました。そして今次訪中におきまして、こうした共通認識を再確認した上で、二十一世紀に向けた多方面の協力について意見の一致を見たところであります。  今次訪中で進めたような日中間の交流と協力を着実に進めていくことによりまして、相互理解相互信頼がさらに強化され、日中友好関係が一層促進されていくものと考えております。  北朝鮮ミサイルに関するお尋ねですが、現時点において発射が差し迫っていると判断していないものの、仮に再発射が行われれば北東アジア地域の平和と安定に深刻な影響を与えることとなりますので、政府といたしましては、米国、韓国と連携しつつ、再発射抑止のために最大限努力する考えでございます。私の中国及びモンゴル訪問の際にも、私より再発射抑止のための協力を依頼し、両国より前向きな反応を得たところであります。  KEDOへの協力につきましては、これを維持する考えではありますが、再発射が行われた場合には協力が実際上困難になることもあり得ると認識をいたしております。  さて、今回の補正予算対策についてのお尋ねでありますが、今般の緊急雇用対策におきまして七十万人を上回る規模対象とした雇用就業機会増大策実施するほか、再就職促進取り組みを充実してまいります。また、少子化対策臨時特例交付金の活用によりまして、新たな雇用就業機会増加が見込まれるところであります。今回の補正予算は、この緊急雇用対策実施するために必要な経費追加を行うものでありまして、着実に効果があらわれてくるものと考えております。  今後につきましては、雇用景気に半年以上おくれて回復する傾向がありますので、雇用情勢は当面は厳しい状況が続くものと考えております。いずれにいたしましても、同対策のスピーディーな実施全力取り組み国民皆様雇用不安の払拭に努めてまいります。  今回の補正予算提出は当初予算欠陥を意味するものではないか、また、経済認識の誤りによって対策後手に回した責任をどうするかというお尋ねでありました。  現下の我が国経済は、各種の政策効果が浸透し、このところやや改善いたしております。先月十日に公表されました本年度一—三月期の実質国内総生産、GDP速報値も、前期比プラス一・九%になったところでございます。政府といたしましては、十一年度予算の着実な執行に努めているところであり、今後はその効果も本格的にあらわれてくることが期待されます。  また、これまで雇用活性化総合プラン実施してまいりましたが、雇用情勢の厳しさが増す中で、今般、さらに緊急雇用対策を決定いたしたところであります。この対策実施するため、補正予算の御審議を今こうしてお願いいたしておるところであります。  次に、長銀についてのお尋ねでありましたが、私としては、金融システム全体の危機的状況は絶対に起こさないとのかたい決意のもと我が国金融システムの安定と内外信認向上全力を挙げて取り組んできたところであり、その意味で、昨年八月二十一日に私より、長銀住友信託の両行が合併を具体的に推進することについて、我が国金融システムの安定に資するとの観点からこれを評価する旨の談話を発表したところであります。  その後、長銀問題を含め、金融問題につきましては、昨年の臨時国会において与野党合意を踏まえた金融再生法成立をいたし、長銀問題につきましてこの金融再生法もと対応することとなったところでありまして、同法の施行に伴い、長銀から申し出を受け、金融再生法特別公的管理の開始の決定を行ったところであります。  いずれにせよ、政府としては、金融再生法及び早期健全化法の的確な運用によりまして、金融システム安定化を図り、預金者の保護と信用秩序維持に万全を期してまいる所存でございます。  次に、政治倫理確立について、かねてより自由民主党等におきましても議論が行われてきたものと承知をいたしております。  企業団体献金についてのお尋ねでありますが、企業労働組合等団体献金については、平成六年の政治改革における政治資金規正法改正により規制が強化され、さらに改正法附則により施行後五年を経過した場合の取り扱いについて定められておるところであります。これらの問題につきましては、まず各党会派等におきまして十分御論議をいただくべき問題と考えております。  最後に、自自公連立政権についてお尋ねがありました。  私はまず、現在、公明党お願いをいたしております自由民主党自由党に加えまして公明党との三党の連立政権の樹立について、私の考えを簡単に申し述べさせていただきます。  昨年秋以降、国会の厳しい状況もと、自自連立の基礎の上に公明党の御協力をいただき、多くの重要法案成立予算早期成立が図られ、政局の安定の道、そして同時に、このことは国の安定の道をたどることができたものと私は認識をいたしております。その上に立ち、国民信頼と期待にこたえ、政策早期実施、諸課題への迅速な対応を図るためには、より一層強固な安定した政権基盤が求められていると確信し、今般、自民、自由そして公明の三党がともに政権を共有するべく、公明党に対し連立お願いをいたしたところであります。三党連立を組むに当たりましては、おのおのの党の主張を持ち寄り、国家国民の立場からできる限り政策を共有して政策の運営を図っていく考えであります。  また、足立議員から、戦後の政治安全保障問題など重要なテーマを回避し、その結果国会内外で不毛な議論が繰り返されてきたのではないかとの御指摘がありましたが、私は、安全保障などについて諸先輩が大変な御努力御苦労を重ねられたことを高く評価するものであります。  他方、戦後の冷戦構造もと与野党議論がかみ合わない面があったことも否定できないところであります。共産主義破綻冷戦構造崩壊など、国際情勢の変化を背景として、我が国政党間におきましても安全保障などの基本問題について基本的な政策の違いが縮まりつつある現在、政治がこれらの基本問題について真正面から取り組み国家国民のために責任ある対応をしていくことが何よりも肝要と考える次第であります。  以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  5. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 小渕内閣発足以来、政府不況脱出全力を挙げる方針のもとに、公共投資等の多額の財政支出大型減税住宅建設促進、また、金融面では金融機関に対する公的資金の導入、主として中小企業等に対する信用保証措置などいろいろやってまいりましたが、これらの措置の累積的な効果は、本年一—三月期の経済成長率に何がしか反映されているようにも見えますが、経済不況からの脱却の本当の決め手は民間消費支出企業設備投資でございますが、それらについてはまだ満足できる兆候を見出していないのが現状だと考えております。  消費につきましては、一—三月期にはかなり高い伸びを見ることができましたが、これが果たして本格的なものであるかどうか。殊に、企業リストラが非常に大きな規模で始まりましたので、それが雇用に与える影響考えますと、この際、雇用維持促進のために十分な対応を怠るようでは消費の本格的な伸びというものは期待できないであろうという考えを持っております。  また、企業設備投資につきましては、在庫水準が少し下がったというようなことはありますけれども、従来からの遊休設備を持っております限りは、企業はなかなか新しい設備投資をすることはできませんので、このためにもやはり企業リストラ政府として支援する必要があるというふうに考えたわけでございます。  先ほども、本年度の本予算施行してつい数カ月でこういう補正をするようでは、本来の予算欠陥予算ではなかったかというお尋ねがありました。  このたびの補正予算並びに関連法案は、恐らく不況脱出最終段階における具体的な問題について対応しようと、そういう努力をいたすための予算補正であり、また、やがて立法企業競争力強化については御審議をいただきたいと思っておりますが、そういう努力であるというふうに御理解をいただきたいと思います。  本来ならば、いつかの臨時国会に御審議をとも思いましたが、しかし、事態はかなり急速に進みつつございますから、会期を御延長いただきましたのでこの会期において御審議お願いするということでございまして、どうぞよろしく御理解お願いいたします。(拍手)    〔国務大臣甘利明登壇拍手
  6. 甘利明

    国務大臣甘利明君) お答えいたします。  今回の緊急雇用対策におきましては、従来からの雇用維持安定を中心とした対策に加えまして、雇用機会創出を最大の柱とし、厳しい雇用情勢影響を強く受けている中高年の非自発的失業者等を重点に、七十万人を上回る規模対象とした雇用就業機会増大策実施するほか、就職支援策対象を十万人拡充いたしまして、再就職促進取り組みをより確実なものとすることとしております。  今回の補正予算は、この緊急雇用対策実施するために必要な経費追加を行うものでありまして、確実に効果があらわれるものと考えております。しかしながら、今後につきましては、雇用景気に半年以上おくれて回復をするという傾向がありますので、当面は厳しい状況が続くというふうに考えております。  いずれにいたしましても、雇用動向を十分注視しつつ、これらの施策を着実に実施し、雇用創出・安定が図られるよう努めてまいります。(拍手)    〔国務大臣柳沢伯夫君登壇拍手
  7. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 金融再生法におきます行政責任明確化についてのお尋ねがございました。  まず、金融再生法等におきましては、御指摘行政責任明確化や、これに係る責任追及を行うことにつきまして、これを私ども金融再生委員会所掌事務や権限とするとする具体的な規定は置かれておりません。また、足立議員指摘金融再生法第三条の規定破綻金融機関株主経営者等というぐあいに規定をいたしておりまして、この例示から見まして、やはり金融機関取引関係者を含意しているというふうに見るのが常識的と考えまして、この条項が行政責任までを対象としているというふうには解しておりません。  金融問題に対する行政責任の問題につきましては、これまでにもたびたび国会において論議が重ねられてきておりまして、これらの論議を踏まえて種々行政改革も進められておるところでございます。私といたしましては、この問題はそのようなプロセスを通じて責任明確化が図られ、将来に向けてこの経験を生かしていくべきものと考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  8. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 企業団体献金などについてのお尋ねでございます。  企業労働組合等団体献金については、平成六年の政治改革における政治資金規正法改正により規制が強化され、さらに改正法附則により施行後五年を経過した場合の取り扱いについて定められているところであります。  この問題につきましては、御指摘のとおり、各党から法案提出をされておりまして、まずは、各党の案が委員会において審議され、それを通じて一刻も早く国会としての結論を得ることができることを期待いたしております。  これらの問題についての自由党態度いかんということでございますが、健全な民主政治及び政治倫理確立観点から重要な課題であると考えており、鋭意検討を進めているということでございます。(拍手)     ─────────────
  9. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 中曽根弘文君。    〔中曽根弘文登壇拍手
  10. 中曽根弘文

    中曽根弘文君 私は、自由民主党及び自由党を代表して、平成十一年度補正予算案について、総理を初め関係閣僚に若干の質問をいたします。  質問に入ります前に、総理はこのたび中国モンゴルを公式訪問されました。短期間の日程の中で両国との懸案の解決に精力的に取り組まれましたことに対し、深く敬意を表するものであります。今回の両国訪問の成果をどのように評価されておられるのか、まずお伺いしたいと存じます。  日本経済は、いわゆるバブルの崩壊からなかなか立ち直ることができず、長いトンネルの中にありましたが、ようやく一—三月期の経済成長率がプラスになり、日経平均株価も一年八カ月ぶりに一万八千円前後の水準を回復、日銀短観も全業種で前回調査に引き続き改善を示す結果となっております。  このような日本経済の好転の兆しを受けて、先般開催されましたケルン・サミットを初めとして内外から小渕内閣の評価が高まってきております。しかし、これは、公共事業の順調な進捗や住宅建設の堅調な発注等々が下支えになっており、民需主導による本格的な景気回復に至るには、国、地方、産業界挙げて、雇用創出や産業競争力の強化等にさらに全力で取り組んでいかねばなりません。  そこで、最初に、日本経済は今や底打ちしたと見てよいのか、経済の自律的回復への兆しがどの程度と見られるのか、景気の現状についての総理の御見解をお伺いいたします。  政府は、今回の緊急雇用対策を中心とする補正予算に次いで、産業競争力強化を具体化するための産業活力再生特別措置法案国会提出を予定されていますが、下期には公共事業による景気対策の息切れが懸念されております。機動的かつ切れ目のない景気対策を行うためには、現在予算に計上されている公共事業等予備費の五千億円を効果的に使うことや、追加的な財政出動も視野に置いた経済運営を行うことが重要でありますが、これは予算編成から地方自治体による発注までかなり日時を要します。九月ごろには四月から六月の国内総生産の数字がはっきり出ますが、ミクロの実体経済の動向にも十分注意しつつ、タイミングを失しない景気対策が望まれます。  今後の景気対策について、平成十二年度の概算要求基準の検討を含め、景気が息切れしないような取り組みを行うべきと考えますが、大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。  次に、今回の補正予算の大きな柱の一つである雇用問題についてお伺いいたします。  総務庁から発表されました五月の完全失業率は四・六%といまだ高い水準にあり、また、有効求人倍率も〇・四六倍と雇用状況は依然として非常に厳しいものとなっております。  今回、このようなかつてない厳しい雇用環境に対応するため、民間企業による雇用創出と迅速な再就職の推進等により、七十万人を上回る雇用創出を目指すことを内容とする補正予算提出されました。  この中では、国と地方自治体が民間企業やNPOの活用、そして業務のアウトソーシング等を行うことにより三十万人の雇用創出し、そのための財源として緊急地域雇用特別交付金を県に交付するという今までにない対策を講じていることが特徴的と言えます。これの実効性を確保していくための具体的対応策を労働大臣にお伺いいたします。  さて、経済のグローバル化に伴う産業構造の変化を背景に、雇用の流動化が急速に進んできております。今日まで日本雇用形態は、終身雇用、年功序列を前提とした仕組みが長年続いてきておりました。しかし、世界的な競争時代に生き抜いていく上には、今や生産性を一層高めることが求められており、多少の過剰人員を抱えるという今までの雇用慣行は維持できなくなりつつあります。  今後、この雇用形態がどのように変化していくのか。それが日本経済にいかなる影響を与え、それに対しどのような中長期的な雇用対策が必要となるのか。先日、閣議決定された経済審議会による答申、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」を踏まえて、経済企画庁長官のお考えをお聞かせ願いたいと存じます。  次に、少子化対策に関してお聞きいたします。  改めて指摘するまでもなく、我が国は歴史上経験したことのないスピードで少子化が進みつつあり、我が国の人口は二〇〇七年をピークにして、二十一世紀を通して減少傾向が続くと予測されています。  こうした人口構造の変化から洞察すると、我が国はまさに今、経済社会構造変化の分岐点にあると言えます。少子高齢化社会は、産業構造や消費市場に少なからぬ影響を及ぼすとともに、社会保障のあり方に大きな見直しを迫っております。少子化、人口減少を大前提とした経済社会のシステムを再構築するに当たっては、長期的、総合的な青写真とその実現のためのスケジュールを国民の前に明らかにし、十分な理解を得ることが重要であります。  今回、当面の対応として、補正予算に少子化対策が一つの柱として盛り込まれたことは高く評価されるものと思います。  具体的には、市町村が保育所待機児童の解消などの事業のために交付金を申請し、国はその申請に基づいて全体で二千億円を少子化対策臨時特例交付金として交付するものとなっています。仕事を持つ女性等を子育ての面から支援するとともに、保育サービス等における雇用就業機会創出に資することが目的と言われます。  そこで、厚生大臣に伺いますが、特例交付金の制度の基本的考え方と地方への二千億円の配分方針を御説明ください。また、今回の少子化対策事業の推進により、どれだけの雇用就業機会増加を見込まれているのか、御紹介いただきたいと思います。  次に、中長期的な対策について伺います。  今回の補正予算での対策は、当面の効果をねらったものと解しますが、二十年、三十年先を考えた中長期的視野での本格的な少子化対策も当然必要であります。将来にわたり、政府が産めやふやせやと財政・税制面で支援するやり方にも限界があります。なぜ晩婚化、少子化が進んでいるのか、若い人が子育てに積極的な意味や価値を見出し得なくなった本質的な問題を十分に分析し、総合的な対策を打ち出す必要があると考えます。  子供を持つことの判断は最終的には個人にゆだねられるわけであります。国としては、心身ともに健全な子供を産み育てられる社会環境を一刻も早く整備しなければなりません。  総理は、深刻な少子化問題をどのように御認識され、中長期的ないかなる対策を進められるお考えなのか、お答えいただきたいと存じます。  来世紀まであと一年余り、少子高齢化社会の中で生産人口が減少し、新たな分野、付加価値の高い生産活動へ経済社会構造が大きく変化していくことは間違いありません。政治もこの変化に的確に対応していく必要があります。今回の緊急対策がその第一歩として有効に働くことを願って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  11. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 中曽根弘文議員にお答え申し上げます。  まず、先般の中国モンゴル訪問についてお尋ねがございました。  この機会に御報告を申し上げさせていただきますが、中国につきましては、まことに短期間の訪問でありましたが、礼をもって温かくお迎えをいただきまして、朱鎔基総理の明年訪日で一致するなど、新世紀へのかけ橋となる訪問となったと評価いたしております。  朱鎔基総理との首脳会談では、昨年の共同宣言で示されました共通認識を改めて確認し、平和と発展のための友好協力パートナーシップのもとで二十一世紀に向けた日中協力を着実に進めることで一致をいたしました。  また、日米防衛協力のための指針関連法も含め、我が国の防衛政策について明確かつ丁寧に御説明し、中国の一定の理解を得たと考えております。  また、中国のWTOの加盟につきましては、日中二国間協議を実質的に妥結いたしましたが、これは、現在中国が他のWTO加盟国との間で進めております二国間協議を加速するものと期待いたしております。  このように、今回の中国訪問では、種々成果を上げることができたと考えております。  その後、モンゴルを訪問いたしましたが、同様に我が国との関係を極めて大切にいたしたいとの気持ちのこもった歓迎を受けました。  ナランツァツラルト首相との首脳会談を通じまして、二十一世紀に向けて総合的パートナーシップの構築を一層促進し、同国の民主化と市場経済化に向けた改革を引き続き支援する環境整備ができたものと評価いたしております。  さて、日本経済の現状についてお尋ねがございました。  我が国経済を見ますと、個人消費は、収入が現在低迷しているため力強さは見られないものの、緩やかに回復してきておると考えます。住宅建設は持ち直してきております。設備投資は基調としては大幅な減少が続いております。公共投資は堅調に推移していると思います。雇用情勢は依然として厳しい状態にあります。  以上のように、景気は民間需要の回復力が弱く厳しい状況にあり、底打ちしたと言うには時期尚早だと考えておりますが、各種の政策効果が浸透し、このところやや改善をいたしておると考えられます。  少子化に対する認識及び対策についてのお尋ねがありました。  我が国における少子化の進行の主たる要因は晩婚化の進行による未婚率の上昇にあり、その背景としては、固定的な男女の役割分業や雇用慣行のもとでの結婚や育児に伴う負担感、結婚観、価値観の変化などが指摘されておるところであります。  少子化の進行は社会経済に深刻な影響を及ぼすことが懸念され、家庭や子育てに夢を持てる環境を整備することが社会全体で取り組むべき重要な課題となっており、このため、先般、少子化対策推進関係閣僚会議、あるいはまた少子化への対応を推進する国民会議を設けたところであります。今後、政府一体となりまして少子化対策を推進するとともに、国民的広がりのある取り組みを進めてまいりたいと思います。  また、新たなプランの策定についてでありますが、政府といたしましては、本年五月の第一回少子化対策推進関係閣僚会議におきまして、本年末までに少子化対策の基本的方針を策定することといたしたところであり、その具体的な内容につきましては、今後さらに検討を進めてまいりたいと考えております。  以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように、本年の一—三月期のGDPにはやや勇気づけられる点もございます。しかし、いずれにいたしましても、景気の本格的な回復のためには、民間消費企業設備投資、この二つが元気を出しませんと本当の市場経済の回復は難しいわけでございます。  民間消費につきましては、おっしゃいますようにリストラがございますので、これはどうしても雇用にはいい影響が起こらないということで、そこから民間消費が落ち込む可能性は十分ございますし、また企業設備投資も、企業が古い設備を捨て切れないようでは新しい設備投資をなかなかやりませんから、この点についてもどうしてもリストラというものを進めてもらわなければならない。  しかし、それは今度雇用に問題があるという大変難しい状況でございますから、結局政府としては、この際、補正予算お願い申し上げ、また立法お願い申し上げて、雇用維持増進を図る、また企業設備投資が新しくふえますようなリストラ支援する、こういうことにならざるを得ないというのが不況脱出最終段階の今の問題だというふうに思っております。したがいまして、このたびの補正予算もそういう意味では、ある特定の目的に対処するために編成をいたしたようなところがございます。  したがいまして、それならば日本経済の本来の動向に照らして一般的な追加的な財政支出等々はどうなんだというのがお尋ねの含意でございましたけれども、私も、もう少しいろいろ様子を見てもよかろう、殊に、おっしゃいますように、四—六月期の経済諸指標なども九月の初めには出てまいりますし、あれこれ少し推移を見ていいのではないかということを考えております。  それでは遅過ぎるということを言われる方もおられますが、今年度の公共投資の支払い分、ディスバースメントについて申しますならば、今年度は昨年度よりかなり高い水準にありますし、下半期においてもかなり高い水準にございますから、多少の時間の余裕はあるという判断をいたしておりまして、その追加財政支出の問題は、したがいましてもう少し事態の推移を見てよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣甘利明登壇拍手
  13. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 緊急地域雇用特別交付金の実効性についてお尋ねがありました。  本交付金は、現下の厳しい雇用失業情勢にかんがみ、臨時応急の措置として、民間企業やNPO等に委託をする事業を中心に、緊急に対応すべき事業を実施することによりまして雇用就業機会創出を図るものであります。  その事業の実施に当たりましては、各地方公共団体が、各地域の実情に応じまして、その創意工夫を発揮することができるようにするとともに、各都道府県から事業計画の提出及び事業報告を求めることによりまして実効性を上げていきたいというふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣堺屋太一君登壇拍手
  14. 堺屋太一

    国務大臣(堺屋太一君) グローバル化の中で日本雇用形態がどのように変わるかという御質問がございました。  先日、経済審議会からいただきました答申、「経済社会のあるべき姿」では、我が国が二十一世紀に築いていくべき経済社会では、グローバル化の中で、少子高齢化、人口の減少に備えた仕組みを持ち、常に生産性を向上して経済活力を維持するような仕組みでなければならないと指摘されております。  今後の我が国においては、少子高齢化の進展によりまして労働力人口が減少するとともに、その中の労働力がまた高齢化するという形になります。これまでの終身雇用と年功的な賃金・処遇制度を前提とした雇用システムを維持することは非常に困難になるのではないでしょうか。これからは、年齢にとらわれずに、高齢者の意欲と能力を生かせるような雇用システムに変更していくことが必要になります。その際、これまでの年功賃金・処遇制度等の企業雇用制度は見直されざるを得ないと思います。  先般、閣議で決定いたしました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」におきましては、こうした変化に対応して適切な経済運営に努めるとともに、性別や年齢にとらわれずに、個人が主体的に職業を選択してその能力を十分に発揮し、充実した職業生活を送れるような環境を整備すること、職業能力開発や職業能力の評価の充実、労働力需給の調整機能の強化を図ることなどが必要であるとされております。(拍手)    〔国務大臣宮下創平君登壇拍手
  15. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 少子化対策の臨時特例交付金についてのお尋ねでございますが、今回の特例交付金は、少子化対策の呼び水として、保育所の待機児童の解消を初め、市町村等がその創意工夫を生かして地域における少子化対策に取り組めるようにするとともに、現下の雇用情勢にかんがみまして、雇用就業機会創出に資することを目的としたものでございます。  交付金の総額は二千億円であり、少子化対策の事業を実施するため申請のあった市町村に対しまして、就学前児童数、人口、そしてまた待機児童数等に応じて交付することとし、待機児童の解消を重視した配分にすることといたしております。  また、雇用創出効果につきましては、今後市町村が取り組むべき具体的な事業内容に応じまして把握できるものと考えておりますが、例えば、待機児童解消のための保育所の整備に伴う必要な保育士等の雇用等の増加が図られることになるものと見込んでおります。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  16. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 益田洋介君。    〔益田洋介君登壇拍手
  17. 益田洋介

    ○益田洋介君 私は、公明党を代表して、昨日行われました宮澤大蔵大臣財政演説に関連し、総理並びに関係大臣質問いたします。  最初に、このたびの総理訪中に関してお伺いいたします。  中国は、アメリカと並んで、二十一世紀を迎えるに当たり我が国の枢要なパートナーであることは論をまたないところであり、文化交流などを含めさまざまな面で交流を深めていくべき国であるわけです。今回の訪中で、総理中国の首脳陣と相次いで会談いたし、応分の成果を上げられたことと推測いたすわけでございますが、重要な点は、日米防衛協力のための指針、ガイドライン関連法を日本が整備したことに関する理解が得られたのかどうかという課題でございます。台湾問題、尖閣諸島問題などを初め、数々の難問を包含しているわけでございますので、我が国が明確な方針を打ち出し、かつそれらを実行していかなければ信頼はかち得ることはできません。  この点に関し、どのような理解を得ることができたのか、総理認識をお伺いいたします。さらには、同行された外務大臣並びに自治大臣の見解も伺っておきたい。  総理一行は、訪中の後、モンゴルを訪問したわけでございますが、八年ぶりに日本総理を迎えたモンゴルという国家に関する総理の印象と御認識、さらには今後の経済協力に関する具体的な方策、加えて文化交流に関する総理考え方につきお伺いしたい。  現在、我が国失業率は四・六%から四・八%という高水準で推移しておりまして、過去最悪と言われる深刻な事態に陥っているわけでございますが、この失業率のうち一・五%は企業リストラの一環としての転職や失業に加え、継続する不況による倒産の結果としての失業であるとされているわけでございます。さらには、家計を支える立場にある中高年男性層の失業率が上昇傾向をたどっていると指摘されております。この思わしくない現況に関する総理の御所見を伺っておきたいと思います。  ところで、七月一日、警察庁のまとめで発表された昨年一年間の自殺者は、一昨年より三四・七%増の三万二千八百六十三人と三万人の大台をついに超えてしまったわけでございます。その動機としては、事業不振や失業、借金、就職の失敗、生活苦など、経済生活問題によるものがほとんどでございます。まさに雇用対策は喫緊の課題であるわけでございます。  今回の補正予算案は、緊急雇用対策を柱として幾つかの項目が掲げられておりますが、中でも雇用就業機会創出を目指し、各地方公共団体が創意工夫に基づいた事業を実施する、また展開するため、各都道府県に緊急地域雇用特別交付金二千億円を交付することとしております。  こうした中で、交付金が目的にかなった効果的な使われ方をすることが肝要であり、地方自治体へ丸投げするようなことにならないよう政府として留意する必要があると考えますが、この点について総理並びに労働大臣の御所見伺いたい。  今回の緊急雇用対策はあくまでも当面の暫定的施策であり、政府としては中長期にわたるスパンで労働市場の流動化を支えられる恒久的条件整備を行っていく必要があると私は考えます。  今後、労働市場の流動化を支える最大の条件整備は、マルチメディアすなわち情報通信産業の育成や、住宅ローン減税による住宅産業の活性化、さらにはダイオキシン撲滅、ゼロごみ対策実現のための一基百億円程度のごみ焼却炉の全国配置などによる新しい産業の創出であり、このことにより雇用の受け皿が次々とつくられていくことだと考える次第でございます。そのためには、新しい事業を起こしやすくするための社会のシステムづくりが重要となるわけでございます。この問題につき総理並びに労働大臣の御所見伺います。  次に、我が党が四月九日、政府自由民主党合意した緊急少子化対策の基本方針を具体的に事業化し、保育所待機児童の解消を初め、市町村の幅広い少子化対策支援するための二千億円余による少子化対策臨時特例交付金に関連してお伺いいたします。  総理府が七月三日発表した少子化に関する初の世論調査によれば、結婚したら子供を持つべきだと答えた人は男女平均で八四・五%に上っておりますが、一方で、育児のつらさについての女性に対する問いには、自由時間がなくなる四二・七%、思ったように働けない三一・八%など、仕事や自分のしたいことと育児との両立が困難なことに対する不満が上位を占めております。また、育児の途上でも働ける環境整備などの社会的支援が必要だと答えた人は七五・五%にも上っておりますが、この点に関し総理の御所見伺います。  さらに、子育てに関しては、七〇%以上の婦人が夫の参加が必要と考えているにもかかわらず、男性の三九・四%が育児に参加するよりは賃金やポストを優先すると答えております。育児は妻任せとなる傾向が依然として根強いことがわかります。  このような傾向は、児童虐待などの社会問題を引き起こす背景になっていると指摘する専門家もおり、そのため女性は子供を産みたくないとする傾向が強まっており、少子化現象に拍車をかけているわけで、この点につき総理の御所見をお伺いしたい。  また、我が党は、自民、自由両党と緊急少子化対策の基本方針を策定する作業の中で、働く母親からの要望の強い駅前保育所の設置や、病後児の一時預かり場所の整備などを強く主張いたし、対象事業の一部に盛り込むことができました。  病後児の一時預かり場所の整備は、例えば子供が水ぼうそうやはしかなどの伝染病にかかった場合、最初の発熱時は母親が仕事を休んで世話をいたしますが、長く休むことは困難な場合が多いわけでございます。しかし、保育所は病気回復期の子供は預かってくれません。病後児の一時預かり場所の整備は母親が安心して働くための必須の条件なのであります。  少子化問題の解決には、子育てと仕事とを両立しやすい環境整備や、子育ての精神的、肉体的あるいは経済的負担の軽減など総合的な施策が不可欠と考えますが、この問題についての総理の御所見伺います。  今回の補正予算案の特徴として、二十五年ぶりに国債の発行を回避したことが挙げられます。雇用対策を打ち出し、底打ちの兆しを見せ始めた景気の足を引っ張らないようにするため、長期金利の上昇につながるような国債発行を避けたものと考えます。しかし、個人消費企業設備投資の回復は依然としておくれており、景気対策の一環としての公共事業もこの秋には息切れするとの見方もあります。  総理は、財政再建を先送りにしてまでプラスの経済成長を公約しておられますが、今後、景気浮揚を目的として積極財政を続行するのであれば、金利の上昇を導き、一段の財政悪化となることも容易に予測されます。  景気と市場をにらんだ財政運営の中で、今後、国債の需給悪化が生じるような事態があった場合、どのように対応されるのか、総理大蔵大臣伺い、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 益田洋介議員にお答え申し上げます。  まず、訪中の件でございますが、日米防衛協力のための指針関連法につきまして、今回の訪中の際に、私は、日米安保体制は全く防御的なものであり、特定の国や地域に向けられたものでないこと、指針関連法は日米安保条約の目的の枠内のものであり、この法律の運用は我が国自身の主体的判断のもとに行うこと、台湾に関する我が国の立場は日中共同声明に述べられているとおりであること等を十分御説明いたしました。このような私の説明について中国側の一定の理解を得たものと考えております。  なお、尖閣諸島について一言つけ加えさせていただきますと、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史上も国際法上も明らかであり、現に我が国はこれを有効に支配いたしておるところであります。  モンゴルに関してのお尋ねでありましたが、今回の訪問を通じまして、バガバンディ大統領、ナランツァツラルト首相の指導のもとで、モンゴル政府が一致して民主化と市場経済化に向けて強い決意を持って自助努力を行っていることに強い印象を受けました。また、これに対する我が国支援への感謝の気持ちと対日関係重視の姿勢が強く感じられたところであります。  我が国としては、同国の改革への努力に対し、経済基盤整備、市場経済化のための知的支援、人材育成、農業・牧畜業支援、基礎生活支援等を重点として、今後とも支援を続けていく考えであります。  また、文化面では、文化財保護のため、日・モンゴル文化フォーラム、友好週間等の行事や青年交流の拡大を通じまして、両国民相互理解を一層促進させてまいる考えでございます。  さて、現在の雇用失業状況認識についてお尋ねがございました。  五月の完全失業率につきましては御指摘のように四・六%となっており、依然として厳しい状況にあるものと認識をいたしております。このうち、景気が低迷していたことなどを背景といたしました需要不足要因による失業が一・五%程度となっております。また、中高年男性の完全失業率につきまして上昇傾向にあるところであります。  こうした中で、緊急経済対策におきまして、中高年の非自発的失業者に重点を当てつつ、七十万人を上回る規模雇用就業機会増大策等を実施することといたしておるところであります。  緊急地域雇用特別交付金についてでありますが、本交付金につきましての事業は、緊急に対応すべき事業のうち、一両年で終了するもので、かつ、地域の実情に応じた雇用就業機会創出効果的に図れるものに限定いたしております。また、国におきましても、交付申請時の事業計画のほか、状況報告や実績報告を受けることといたしておるところでございます。  新規事業について、労働市場の流動化を支える最大の条件整備は新しい産業の創出である旨御指摘された上で、お尋ねがございました。  今後、成長が期待される産業分野につきましては、経済構造の変革と創造のための行動計画や産業再生計画に基づきまして、規制緩和、技術開発等の諸施策を推進いたしておりまして、本日、産業構造転換雇用対策本部におきまして、新たな事業の創出を通じた雇用機会の増大に資する規制改革を決定したところであります。  また、特に創業者に対して、これまでの施策に加え、今国会提出を予定いたしております産業活力再生特別措置法案(仮称)におきまして思い切った支援策の充実強化を図るべく、現在、作業を進めているところでございます。  次に、育児と仕事の両立や育児に対する社会的支援の必要性についてお尋ねがありました。  我が国における少子化の進行の主たる要因は晩婚化の進行による未婚率の上昇にあり、その背景には、固定的な男女役割分業や雇用慣行のもとでの結婚や育児に伴う負担感、結婚観、価値観の変化などが指摘されております。少子化の進行は社会経済に深刻な影響を及ぼすことが懸念されており、家庭や子育てに夢を持てる環境を整備することが社会全体で取り組むべき重要な課題となっており、引き続き育児と仕事の両立支援など各般にわたる子育て支援施策の推進に努めていくことが必要と考えております。  育児を妻任せにする傾向に伴う少子化問題についてのお尋ねでありますが、家庭や子育てに夢を持てるような社会としていくためには、家庭において家事や育児を男女が協力して担っていくことが重要であります。このため、男性の育児参加を訴えるポスターや子育てを支援する小冊子の作成などを進め、家事、育児への男女共同参画の推進や子育ての大切さ、楽しさなどについて広報啓発を行うなど、家庭や子育てに夢を持てる環境の整備に努めているところであります。  少子化問題について重ねてお尋ねがありましたが、これまでエンゼルプランにより総合的な取り組みを推進してきており、加えて、今般の少子化対策臨時特例交付金を活用した市町村の取り組みにより地域における少子化対策の一層の推進が図られるものと考えております。さらに、先般、少子化対策推進関係閣僚会議や少子化への対応を推進する国民会議を設けたところであり、今後、政府一体となって少子化対策を推進するとともに、国民的広がりのある取り組みを進めてまいります。  最後に、今後の財政運営についてお尋ねがございました。  政府といたしましては、平成十一年度予算の着実な執行に努めているところであり、現在、御審議お願いしております五千億円を超える雇用対策についての補正予算の速やかな成立全力を挙げて取り組んでいくことに尽きます。  一方、我が国財政は極めて厳しい状況にあり、将来世代のことを考えますと、財政構造改革という大変重い課題を背負っていると痛感いたしております。日本経済が回復軌道に乗りました段階において、財政・税制上の諸課題につき中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民皆様にそのあるべき姿を示さなければならないと考えております。  また、国債の発行に当たりましては、今後とも市場の動向、ニーズ等を十分に勘案し、確実かつ円滑な消化を図ってまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国債の発行がふえますと自然に金利上昇を招くことになるという御懸念は、今、総理もお答えをされましたが、確かにことしの一月にも、御指摘のようにいっときそういう傾向がございまして、一時金利が急上昇をいたしました。その後おさまりましたが、やはり教訓としては、今、総理もおっしゃいましたけれども、発行方法について政府もよほど気をつけないといけない。発行の条件であるとか、あるいは償還期間についてバラエティーを設けるとか、一本調子で出せばいいというようなものではないということで政府としてもよほど工夫をしなければいけないと考えております。  これは、むしろ御心配の上で御注意をいただいたことだというふうにお話を承りましたが、そして何よりも今後とも国債というものはさらにふえていくという印象を市場が持つようでありますと、どうしてもそういうことになりやすい。  申しますれば、今我が国の国税収入は昭和六十二年のところへ戻ってしまいましたので、十何年後退をしたわけでございますが、施策の方はそうはまいりません。殊にいろいろ福祉の予算などは増大いたします。どうしてもそこのところでやはり経済が順調に成長をして税収が少しずつでもふえていくと。政府の言った税収が年度末には何兆も足りないというようなことでは、これはなかなか国債を減らすということは難しゅうございますから、そういう経済運営をいたしまして、市場も日本経済の展望がやや展開をしていくんだというふうにいたすことが大変大事なことだというふうに考えております。  いろいろ努力をいたさなければならないと思っております。(拍手)    〔国務大臣高村正彦君登壇拍手
  20. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 日米防衛協力のための指針関連法に関する中国側の理解についてのお尋ねでありますが、指針関連法については、これまでも累次の機会に首脳レベルはもとより私や事務当局から中国側に対し繰り返し説明してきております。  今般の小渕総理訪中の際にも、ただいま総理から答弁がありましたとおり、総理より指針関連法を含め我が国の防衛政策につき明解かつ丁寧な説明を行い、中国側の一定の理解を得たものと考えております。  なお、台湾、尖閣諸島に関しましては、ただいま総理より答弁があったとおりでございます。(拍手)    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  21. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 今回の訪中と日米防衛協力のための指針関連法等についてのお尋ねですが、ただいま総理及び外務大臣が答弁したとおりであります。(拍手)    〔国務大臣甘利明登壇拍手
  22. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 緊急地域雇用特別交付金についてのお尋ねでありますが、本事業におきましては、各地方公共団体の創意工夫に基づいてさまざまな事業を行うこととしておりまして、むしろこれによりまして、地域の事情に応じた雇用就業機会創出効果的にあらわれるものと考えています。  なお、国においては、かつての失対事業の弊害をもたらすことがないように、都道府県ごとの事業計画を把握するとともに、事業報告によりまして事業の効果について把握することとしたいと考えております。  次に、新しい事業を起こしやすくするための社会のシステムづくりについてのお尋ねでありますが、今回の緊急雇用対策にも規制改革による新たな事業の創出、成長分野における雇用創出の推進、人材移動特別助成金の創設による失業なき労働移動支援の強化等、民間部門における雇用創出や円滑な人材移動に向けた施策を盛り込んだところでありまして、その迅速かつ効果的な実施全力で取り組んでまいります。(拍手)     ─────────────
  23. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 池田幹幸君。    〔池田幹幸君登壇拍手
  24. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、日本共産党を代表して、小渕総理並びに関係大臣質問します。  日本経済は、依然として消費大不況のもとにあります。本年一—三月期の国内総生産が前期比一・九%増と一年半ぶりにプラス成長を記録したものの、個人消費は依然として低迷し、戦後最悪の状態が続いている上、大企業リストラ、人減らしが本格化しようとしております。中小企業設備投資にも回復の兆しは見られません。  小渕総理、あなたは昨年来、産業再生計画を掲げ、本国会に産業再生法案提出しようとしています。しかし、再生を言うならば、まずこの状態を招いた原因と責任を明らかにするところから始めるべきであります。総理はどこに原因と責任があると考えているのですか。  今日の不況を深刻化させた最大の原因は、九七年に国民に九兆円もの負担増を押しつけた大失政に加え、本年度予算で、所得減税と称して、高額所得者への減税を行う一方、納税者の七割から八割に一兆円もの実質増税を押しつけたことにあります。この結果は早くも明らかになっております。民間の研究機関が行った四月の消費者心理調査によると、年収一千万円以上の世帯の消費意欲が急激に回復したのに対し、中堅サラリーマン世帯の消費意欲は停滞したままであります。  さらに、民間研究機関の調査でも、大企業の設備過剰の原因は四分の三が総需要の不足によるものだと言っているように、あなた方が言う過剰設備対策の立場から見ても、今必要なことは直接消費を拡大する対策をとることであります。政府が、産業競争力強化の名のもとに、リストラ支援、人減らし・設備廃棄支援に走ってきたことは重大であります。これを続けるならば、失業者の増大、消費の落ち込みを一層促進させるだけであります。  庶民に増税を押しつけた過ちは今や明白であります。謙虚に反省し、今こそ国民すべてに減税の恩恵を及ぼし、確実に消費拡大に結びつく消費税の減税に踏み切るべきではありませんか。総理及び大蔵大臣に答弁を求めます。  政府が六月十一日に閣議決定した緊急雇用対策及び産業競争力強化対策では、我が国経済を自律的な成長軌道に乗せることを目指すと言明しております。それならば、景気の二大主役である個人消費の回復、拡大と中小企業設備投資の回復を図るため、消費税減税に加え、国民雇用不安、将来不安をなくす対策、中小企業への直接的な支援策を強化すべきであります。  そこで、雇用対策について伺います。  総理、あなたはこの対策で七十万人の雇用創出すると言っております。しかし、これにはいささかも期待を持つことはできません。あなたは昨年十一月に百万人の雇用創出・安定対策を打ち出しました。その成果はどうなっていますか。この間、失業者は減るどころか、逆に五十万人も増加したではありませんか。このことにほおかむりをしたまま七十万人の雇用創出を打ち出すなど、余りにも無反省、無責任ではありませんか。答弁を求めるものであります。  今、非自発的失業者が急増していますが、この最大の原因が大企業リストラ、人減らしにあることは周知のとおりであります。既に東証一部上場企業だけでこの三年間に三十三万人も減らしていますが、大企業リストラ計画は一層大がかりに組まれ、これからが本格的な実施段階に入ると言われております。産業競争力の強化を目的に、大企業が一斉に設備廃棄、人減らしを進めたらどうなるか。ある民間研究機関の試算によると、日本全体の過剰設備の半分に当たる四十兆円分を二年間で廃棄し、廃棄分に見合う二百四十万人の就業者を減らした場合、企業の経常利益は九九年度には約一〇%増加、二〇〇〇年度は二五%もの増益をもたらす反面、個人消費は大幅に押し下げられ、国内総生産も二年連続してマイナスになるとしています。まさに国民を犠牲にして企業利益を図る構図が歴然としております。    〔議長退席、副議長着席〕  与謝野通産大臣は、衆議院において、全部の会社がリストラをやるということは全部の会社で不況運動をしているのと同じであり、経営者は従業員の雇用維持する社会的責任もあるという趣旨の答弁をされました。甘利労働大臣も産業競争力会議で、雇用企業主にとっての社会的責務だと発言しておられます。この指摘は当然であります。  では、通産大臣、労働大臣は大企業リストラにどう対応されたのか、具体的に何をしてこられたのか、明確にお答えください。両大臣がみずからの発言どおりに大企業に対して雇用責任を果たさせる措置をとってきたならば、少なくとも百万人の雇用創出が五十万人の失業者増加となる事態は避けられたはずであります。  今、政治に求められているのは、企業リストラ競争に走らないようにすること、大企業雇用責任を果たさせることであります。直ちに解雇規制法の制定など、行き過ぎたリストラ規制する法的な措置をとるべきでありますが、その用意があるかどうか、答弁を求めます。  今回の一連の対策議論してきた産業競争力会議に当初から参加している上場企業十六社のうち、この六年間でわずかながら雇用をふやしたのはたったの一社だけであります。残りの十五社は大規模雇用削減を進め、九一年度から合わせて十七万八千人もの大量の人員削減を行っています。政府提出を予定している産業再生法案は、設備廃棄を促す優遇税制を初めリストラ支援の税制をずらりと並べたものになっておりますが、これでは通産大臣の言う不況運動をけしかけるものではありませんか。少なくとも、これらのリストラ促進税制の国会への提出はやめるべきであります。総理の答弁を求めます。  雇用創出するためには、政府対策に盛り込まれたような基金や交付金制度を設けることも必要ですが、短期間で最大の効果をもたらすのは労働時間の短縮であります。社会経済生産性本部の試算では、企業が残業を全廃すれば約二百六十万人の雇用が拡大し、サービス残業をなくすだけでも九十万人の雇用拡大効果があるとしております。言いかえれば、政府が違法なサービス残業を放置していることによって九十万人の雇用が失われているということではありませんか。政府責任は重大であります。労働大臣の答弁を求めます。  金融機関の貸し渋りをやめさせることは、中小企業設備投資を助け、景気回復を軌道に乗せるために極めて重要であります。政府は、大手行十五行への公的資金注入の際、中小企業向け貸し出しをふやすよう目標額を明記させましたが、最近八つの銀行が目標を達成していないことが判明しました。貸し渋りをしないことを条件に公的資金の注入を受けたにもかかわらず、預金と貸し出しの額が逆転するという戦後初の事態まで起きるほど銀行の貸し出し余力が大きくなっている現在においてもなお貸し渋りを続けるなど、大銀行の行為は言語道断であります。中小企業に資金を供給することは銀行の当然の責任です。景気を回復させる上でも政府は銀行甘やかし政策をやめ、貸し渋りに対する実効ある措置を直ちにとるべきであります。総理の答弁を求めます。  中小企業への直接的な支援として、むだな大型公共事業を削減して社会福祉施設など生活密着型公共事業をふやすことが重要であります。東京都における実績から見ても、大型開発事業に比べ福祉・教育施設の建設事業の方が中小企業受注率も雇用の拡大効果もはるかに大きいことが明らかになっております。福祉・教育施設の増設がこういった分野の雇用の拡大をもたらすことは言うまでもありません。大型公共事業を大幅に削減し、その一部を生活密着型公共事業に回す方向に政策転換をすべきであります。総理の答弁を求め、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  25. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 池田幹幸議員にお答え申し上げます。  現在の経済危機を引き起こした責任をどう考えるかというお尋ねでございました。  我が国経済が長期にわたる厳しい状況が続いている背景には、短期的な景気循環だけでなく、金融機関企業の不良債権、日本経済システムの制度疲労など、我が国経済の構造問題があり、こうした中で我が国経済の生産性の伸びが低下している状況があると認識いたしております。  現下の我が国経済は、各種の政策効果が浸透し、このところやや改善しておりますが、本格的な経済の回復に向けては今まさに正念場であり、これらの動きを力強いものとし、雇用不安の払拭を図るとともに、我が国経済の再生に結びつけるため、先般決定されました緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を強力に推進してまいる決意であります。  消費税減税についてのお尋ねでありますが、これもしばしば申し上げておりますが、消費税率の引き上げを含む税制改革は、少子高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものであり、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えております。  消費税に限らず税は低い方がいいという面はありますが、税・財政のあり方を考えるとき、消費税率の引き下げは困難であり、この点、国民皆様にも御理解いただきたいと思う次第でございます。  百万人の雇用創出・安定対策の成果についてのお尋ねでありましたが、昨年十一月の緊急経済対策におきましては、政府全体としての取り組みとして百万人規模雇用創出・安定を目指すこととし、雇用活性化総合プランなどの雇用対策を強力に推進し、雇用調整助成金による雇用維持や中小企業の創業支援による雇用創出等に努めてきたところであります。  今般の緊急雇用対策におきましては、同プランにおける各般の取り組みをさらに拡充、推進するため、厳しい雇用失業情勢の影響を特に強く受けております中高年の非自発的失業者等に焦点を当てつつ、七十万人を上回る規模対象とした雇用就業機会増大策等を実施することといたしております。今後は、同対策のスピーディーな実施全力取り組み国民の皆さんの雇用不安の払拭に努めてまいりたいと考えます。  産業再生法案についてのお尋ねがありました。  六月に決定された産業競争力強化対策におきまして、新規・成長産業の振興、技術開発の活性化、中小・ベンチャー企業の振興を図るとともに、当面の課題である事業再構築のための環境整備を進めることといたしておりまして、現在、本対策を具体化するために、今国会に産業活力再生特別措置法(仮称)を提出すべく作業を進めております。こうした取り組みは、経済の自律的発展を図り、新たな産業と雇用を生み出すものであり、経済再生を目指す上で不可欠であると考えられます。  次に、貸し渋りに対する実効ある措置についてのお尋ねでありましたが、いわゆる貸し渋り問題につきましては、政府におきましてこれまで信用保証協会等の信用補完制度の拡充、早期健全化法による新たな資本増強制度の創設、政府金融機関による中小・中堅企業等に対する融資制度の拡充などの措置を講じてきたところであります。  また、昨年末には、私みずから、借り手である中小企業団体や貸し手である金融機関との懇談会を設けまして、融資の実態や意見等をお聞きするとともに、金融機関に対して改めて適切な対応お願いしたところであり、金融機関の融資動向につきましては今後とも注視してまいりたいと考えております。  最後に、公共事業についてのお尋ねがございました。  公共事業につきましては、情報通信、都市、住宅など、我が国経済の活性化に不可欠な分野に加えまして、環境、教育、福祉などの生活に密着した分野、さらには安全な国土の整備といった分野に重点的投資を行っておるところでございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、総理のお答えになられました消費税の減税のことでございますが、今日、我が国の国税収入は四十兆円台になっておりまして、かつて六十兆を超えておりましたことから比べますと大変な落ち込みになっております。ちょうど昭和六十二年の税収のレベルに落ち込んでおります。  もともとこういう経済運営ではいかぬわけでありまして、それを直さなきゃならないのが先決でございますけれども、しかし、仮に三%の成長をしたといたしましても、もとが五十兆足らずでございますと一兆数千億ぐらいしか毎年税収がふえていかないことでございますので、少子高齢化の時代で福祉のコストは大きくなるということの中で、消費税の減税ということはなかなかどうも私どもの計算の中から出てまいりません。  それは、そうしたら消費の拡大に結びつくだろうというようなこともそうであろうと思いますけれども、ただでさえこれだけ国債を出しておりますので、なかなかどうも、お話しではございますけれども、いいお返事ができないということでございます。(拍手)    〔国務大臣与謝野馨君登壇拍手
  27. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 企業雇用責任についてのお尋ねですが、雇用維持拡大は民間企業における取り組みが基本であることは言うまでもございません。この旨を政労使雇用対策会議の場や、六月十一日の経済団体及び連合を交えた緊急雇用対策・産業競争力強化対策に関する懇談会の場においても、経済界に対して繰り返し要請しているところでございます。  特にこの懇談会においては、政府として緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を策定したことを受け、雇用機会の拡大のため、各企業において、第一に、新規事業展開や社内ベンチャーへの取り組みによる事業の創出や、第二に、既存事業の拡大、活性化に向け、さらなる御努力をいただくよう要請を行ったところでございます。今後とも、政労使一体となって雇用創出・安定に向け全力を尽くしてまいりたいと考えております。  次に、リストラ規制する法的な措置についてのお尋ねですが、解雇に当たっては、具体的な事情に応じ労使間で十分話し合いが行われるべきものであり、一律に規制するような立法措置は適切でないと考えております。(拍手)    〔国務大臣甘利明登壇拍手
  28. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 大企業リストラに対する対応についてのお尋ねでありますが、労働者の雇用の安定に努めることは企業の社会的責務とも言うべきものでありまして、安易に人員削減をするのではなく、雇用している一人一人の労働者の職業能力の向上を図ることにより、生産性の上昇を通じて競争力の強化を実現する企業が社会から正当に評価されるべきではないかと考えておりますし、その趣旨を機会あるごとに訴えさせていただいております。同時に、失業に至らぬための雇用維持、人材移動、雇用創出政策に積極的に取り組んでおるところであります。  次に、リストラ規制する法的な措置についてのお尋ねでありますが、解雇に当たっては、いわゆる整理解雇の四要件や合理的な理由を必要とするという裁判例の考え方を踏まえまして、具体的な事情に応じ労使間で十分話し合っていただくべきものと考えておりまして、一律に解雇を規制するような立法措置は適当ではないと考えております。  いわゆるサービス残業と雇用の喪失についてのお尋ねでありますが、御指摘の財団法人社会経済生産性本部の調査は、ワークシェアリングに関する議論を活性化するために、一定の仮定のもとにその雇用創出効果を推計したものでありまして、報告書自体にも書いてありますが、こうした施策が行われた場合に、そのまま雇用増につながるものではなく、雇用創出効果については今後のさらなる研究が必要であるというふうに書いてあるわけであります。  いわゆるサービス残業につきましては、労働省といたしましては、的確な監督指導を実施いたしまして、労働基準法違反が認められるときにはその是正を図ってきたところであります。(拍手)     ─────────────
  29. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 大渕絹子君。    〔大渕絹子君登壇拍手
  30. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 私は、社会民主党護憲連合を代表し、財政演説並びに平成十一年度補正予算について総理並びに大蔵大臣質問をいたします。  深刻な不況はいよいよ国民の身近なところまで押し寄せています。働き盛りの男性自殺者増加を続け、地方銀行や信用組合の倒産がそれに拍車をかけ、国民は不安を募らせています。  確かに、先ごろ発表されました本年一月から三月までの実質経済成長率は年率換算で七・九%という高い数値を示しました。しかし、経済界も半信半疑で見ておりますし、四月、五月の景気の現状を示す一致指数は三七・五%と、景気判断の分岐点である五〇%を下回っております。所得面から見ても、春闘も、今夏のボーナスも大幅ダウンになり、家庭消費を冷え込ませています。  このような状況でGDP〇・五%のプラス成長が達成可能かどうか、そのための具体的な手だてについて小渕総理伺います。  日本経済成長を支えてきた終身雇用、年功序列、企業内組合の三点セットの雇用慣行が崩れつつあります。従業員構成の高齢化の進展、経済成長率の鈍化、不況の長期化などが雇用の流動化を促進させています。また、このたびの職業紹介にかかわる職業安定法と労働者派遣法の改正雇用のあり方は大きく変化するでしょう。我が国雇用はどうなっていくのか、どうあるべきなのか、総理にお伺いします。  雇用情勢は最悪の状態が続き、ハローワークは仕事を求める人々であふれています。五月の完全失業率は四・六%、有効求人倍率は〇・四六倍と深刻さを増しています。OECDの予測では、我が国失業率はさらに五・三%まで上昇すると試算されています。  そこで、今回の雇用対策についてお尋ねいたします。  補正予算は五千四百二十九億円。労働保険特別会計枠にとどまることなく、一般会計予備費千五百億円、決算剰余金三千七百三十七億円を活用し新規国債発行を見送ったことは評価しますが、現在の雇用状況を打ち破るにはいまだ不十分と言わざるを得ません。大蔵大臣はいかがお考えでしょうか。  失業の発生を事前に防ぐために雇用調整助成金の助成期間の延長が有効だと思います。また、失業者に対する失業給付金の期間の延長や、技能・教育訓練期間についても所得を保障する制度の拡充が必要です。倒産した企業の未払い賃金の立てかえ払いの上限枠の引き上げや、立てかえ制度対象にならない内職者等に対する見舞金支給、日雇い労働者の失業手当、健康保険の受給要件の緩和など、解雇や倒産に追い込まれた人々の再出発を支援するきめ細やかな対策が求められます。  成長が期待できる十五分野で、非自発的失業者を前倒しで雇う事業主に奨励金を支給することで十五万人の雇用創出を見込んでいます。しかし、これらの成長分野は専門的な知識や技能が必要であり、求職者との間にずれが生じています。これをどう克服していくつもりですか。政府は、産業構造の転換を雇用面から促し、失業なき労働移動支援であると意気込んでいますが、この間、成長産業では当然人材確保が進んでいるはずであり、政府対策雇用拡大につながる保証はありません。  地方自治体と国との民間への事業委託により三十万人の雇用創出するとしていますが、事業の期間を二年に限定した上、同じ人の雇用期間は半年までとし、その上、学校などへの雇用以外は直接雇用しないということですが、これでは実効性の確保はまことに疑わしいと言わざるを得ません。  自治体による雇用創出を、医療、介護、教育、環境など、国民が求めている分野に長期的に、継続的に予算をつぎ込むことが必要です。  以下、順次申し上げます。  医療の現場では過重労働が蔓延化し、思わぬ医療ミスが多発をしています。ゆとりある医療のために雇用拡大を図るべきです。また、介護保険導入時期が迫り、自治体に動揺が広がっています。ホームヘルパーの確保や介護施設の充実など、介護のための雇用拡大も必要です。  保育所に入れない子供たちが四万人もいる大都市と過疎に悩む地方の間では、保育行政に大きな違いが生じています。双方とも保育施設の充実を図り、少子化に合わせて保育定数の削減を図ることで、保育行政にも多くの雇用を見つけ出すことができます。  学校教育にありましても、三十人以下学級の実現によって新卒者の雇用をふやすことが可能です。私は、当院の派遣で一足先に少子化時代に入ったヨーロッパの学校視察に参りましたが、二十人の子供に先生が二名、体の不自由な子供がいればさらに一人の先生がついて触れ合いの教育が行われているのを目の当たりにし、衝撃を受けました。日本では子供たちの数は減り続け、学校の統廃合が行われたり空き教室がふえています。雇用対策と少子化対策の両面から今こそ三十人以下学級に踏み込む絶好の機会だと思います。  環境保全も重要なテーマです。二十一世紀は水と食料の時代と言われます。自給率が著しく低下し、衰退を続ける農業を立て直す担い手育成事業にも新しい雇用を多く創出できます。荒れ放題になっている山や森林の手当てにもっと人材を登用してください。減少が続く野生動植物を保護するための人材確保と、ふえ続けているシカや猿などの野生動物の管理をする人たちもまた必要です。  人の健康や生殖機能に被害を及ぼすダイオキシンや環境ホルモンに対する調査研究のための人材も多数必要です。今までの発想を転換し、必要なところに必要な人材が活用できる雇用対策を打ち出し、予算を計上すべきです。それぞれについて総理に答弁を求めます。  次に、今後の我が国経済社会のあり方についてであります。  新しい経済十カ年計画では、競争社会への転換が強調されており、米国流のいわゆる弱肉強食社会に我が国ももっと右へ倣えという危惧を感じます。米国でも所得格差の拡大が問題提起されておりますが、効率性や競争政策を強化し、所得格差を当然視して、国民の不安をかき立てるような経済運営は決して国民を幸福には導かないと思いますが、総理の御所見伺います。  最後に、補正予算の編成のあり方について政府の姿勢をただしておきたいと思います。  ここ数年、当初予算成立後、時を経ずして補正予算の編成が行われることが常態化しつつあります。このことは、当初予算の内容に欠陥があったことをみずから認めたことになります。今回の雇用対策費についてもなぜ当初予算に計上しなかったのでしょうか。雇用情勢が悪化していることは明白な事実であったにもかかわらず、補正回しにしてしまったことについては大きな疑問が残ります。国民生活に重大な影響を与える予算の編成がいやしくも政局や国対の道具に使われることがあってはなりません。総理に厳しく追及いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  31. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大渕絹子議員にお答え申し上げます。  今年度経済見通しと景気回復の具体的手だてについて、まずお尋ねがございました。  景気は、各種の政策効果が浸透し、このところやや改善しておりますが、本格的な経済の回復に向けて今まさに正念場であり、今年度のプラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で臨む考えであります。  また、経済を自律的成長軌道に乗せるためには、雇用対策及び経済の供給面における体質強化に思い切った対策が必要であるとの考えから、先般、緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を取りまとめたところであります。現在の深刻な雇用情勢に対する対応を初め、諸施策を速やかに実施していく考えであり、雇用対策について、今般五千億円を超える補正予算を編成し、今国会提出いたしておるところでございます。  我が国雇用についてのお尋ねでありましたが、長期雇用システムは、労使双方に長期的な経営・雇用の安定というメリットをもたらし、また、社会全体にとっても失業率を低く抑えるという役割を果たしてまいりました。これについては、経済社会の構造変化の中で見直す動きも見られますが、今後とも、長期雇用のメリットを生かしつつ、労使間の十分な話し合いの上で決定されることが重要ではないかと考えております。  雇用調整助成金の助成期間の延長についてでありますが、企業における労働者の雇用維持支援する雇用調整助成金は、失業を予防し、雇用の安定を図る上で重要な役割を果たしております。本助成金の助成期間は、企業における景気変動による雇用調整の実態を踏まえて設けているものであり、現行でも十分にその機能を果たしていると考えております。  失業者への支援についてお尋ねがございました。  失業給付期間の延長等につきましては、自主選択方式による能力開発事業を新たに実施することとし、その期間中には失業給付を支給することとしております。内職者等に対する見舞金の支給は困難でありますが、未払い賃金の立てかえ払いの上限額につきましては、適時適切な引き上げを行ってきたところであります。また、日雇い労働者に対する失業手当や健康保険の受給要件の緩和については困難でありますが、日雇い労働者の雇用の場を拡大することにより対応してまいりたいと考えております。  成長分野における雇用創出についてお尋ねがありましたが、専門的な知識や技能の習得が必要な場合は、今般、緊急雇用創出特別基金を積み増しして創設する奨励金を職場での能力開発に活用していただくことも可能であります。また、成長分野におきましては、今後さらなる成長が期待できることから、将来の雇用の前倒しを支援することにより、雇用の拡大を図ることができるものと考えております。  緊急地域雇用特別交付金制度についてお尋ねですが、本交付金はあくまでも臨時応急の措置として行うものであり、民間企業、NPO等に委託する事業を中心に緊急に対応すべき事業を実施することといたしております。地方公共団体が、各地域の実情に応じ、その創意工夫を生かして雇用就業機会創出を図る事業が行われることを期待いたしております。  次に、医療、介護、保育の分野における雇用の拡大についてお尋ねがありましたが、新高齢者保健福祉推進十カ年戦略や緊急保育対策等五カ年事業等に基づいてサービス基盤の整備を推進する等の中で、必要となる人材の確保に努めております。今後とも、各般の施策を通じて医療、福祉にわたる人材確保対策の推進に努めてまいりたいと考えております。  三十人以下学級についてのお尋ねでありましたが、現在、文部省におきまして、今後の教育のあり方等を視野に入れ、学級規模のあり方等について鋭意検討を行っておるところであります。この点につきましては、教育水準の維持向上という観点から、従来と同様に財政負担をも考慮しつつ、今後とも適切に判断していく必要があると考えます。  次に、農業の担い手育成における雇用創出についてのお尋ねでありましたが、今般成立をいたしました食料・農業・農村基本法を踏まえ、就農に関する情報の提供を初め、新規就農希望者に対する技術、経営の研修やその受け皿となる農業経営の法人化を積極的に推進してまいりたいと考えております。  環境保全の観点からの人材の確保のお尋ねでありましたが、御指摘の分野につきましては、政府としては、今国会で鳥獣保護法を改正するとともに、森林の適切な整備やダイオキシン、環境ホルモンに対する調査研究の推進などを図ってきたところであります。こうした対策の充実と的確な運用がこの分野の人材の確保につながるものと考えております。  今後の我が国経済運営についてのお尋ねでありましたが、七月八日に閣議決定をいたしました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」では、二十一世紀のあるべき姿として、個人の自由と自己責任が基本的な行動原理となり、多くの人々が夢に挑戦し、その中から新しい創造性が生まれる社会を描いております。そこでは、すべての人に対して公正な機会が与えられているほか、失敗した場合の最低限の安全ネットと再挑戦の可能性が確保されていることが前提となります。  政府といたしましては、こうしたあるべき姿を実現するため、国民皆様の御理解と御協力を得て、政策方針で示された施策に直ちに積極的に取り組み、内閣を挙げて全力実施していく決意であります。これにより、二十一世紀初頭に、自由で、少子高齢化と人口減少に備えた仕組みを持ち、環境と調和した我が国経済社会のあるべき姿が実現するものと考えております。  最後に、今回の緊急雇用対策費を補正予算で計上したのはなぜかとのお尋ねでありました。  政府といたしましては、これまでも雇用活性化総合プランを策定し、十年度三次補正予算及び十一年度当初予算におきまして合計一兆円規模の施策を実施してまいったところでありますが、雇用情勢が厳しさを増す中で、緊急雇用対策として七十万人を上回る規模対象とした雇用就業機会増大策実施するほか、就職支援施策の対象を十万人拡充し、再就職促進取り組みをより確実なものとすることといたしました。この緊急雇用対策実施するための補正予算を編成し、その御審議お願いいたしておるところでございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回の補正予算だけでは不十分ではないかというお尋ねでございましたが、今ちょうど総理もお答えになられましたように、実は平成十年の補正それから十一年の本予算でいわゆる一兆円規模の施策を実施してまいりました。  ことしの春ごろからリストラが相当はっきりいたしまして雇用情勢も悪化してまいりましたので、これに加えまして、今回の補正予算緊急雇用対策実施するために必要な経費追加お願いいたしておるわけでございます。あわせまして、殊にまた特別会計もございますので、着実な効果があらわれてくるものと考えております。  我が国のGNPの成長は、何といいましても個人消費企業設備投資、この両方で支えられておりますので、このように設備投資が低調でございますと、やはりそれは古い設備を持っておってはなかなか新しい設備投資ができないという企業リストラの問題でありますし、また個人消費は、殊にそれによって雇用が悪くなればそれだけ傷がつくということでございますから、このたびの補正とそれから立法によりまして何とかこの事態を回避し、改善いたしたいと考えておるところでございます。(拍手)     ─────────────
  33. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 奥村展三君。    〔奥村展三君登壇拍手
  34. 奥村展三

    ○奥村展三君 私は、参議院の会を代表いたしまして、昨日行われました財政演説に関しまして、総理並びに関係大臣にお伺いをいたします。  我が国経済は、今、国際的な競争の激化と国内の経済構造改革という二つの問題に直面していると思います。  経済構造改革を進めるためには、新産業を育成し、古い産業から新しい産業へと労働力を移動していかなければなりません。しかし、公共事業の追加を中心とした従来型の経済対策を続けた結果、構造改革をおくらせてきたのではないでしょうか。  労働省によりますと、ことし四月の完全失業率四・八%を分析いたしますと、景気循環的な需要不足、すなわち不況による失業は一・五%程度であるのに対し、構造的・摩擦的失業、すなわち雇用のミスマッチが三・三%を占めているのであります。また、増加する傾向にあります。つまり、景気が回復いたしましても、構造改革とそれに伴う労働力移動が実現されなければ失業者はふえ続けることになると思います。  これまでも政府は、ミスマッチの解消や失業なき労働移動を円滑に進めるための施策を推進されてきました。しかし、雇用のミスマッチは減少するどころかふえ続けております。このたびの補正予算におきましても一千二百億円余りが計上されておりますが、これまでの施策の効果をどのように検証された上で予算が計上されたのか、総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。  また、五月の完全失業率は四・六%と、前月よりわずかながらも改善したものの、雇用者数は十六カ月連続して減少し、有効求人倍率も〇・四六倍と過去最低を更新しております。雇用の先行指数と言われる新規求人なども前年同月比で引き続き減少を続けており、今後しばらく雇用情勢は一段と厳しさを増すものと思われます。  そこで、総理に、今後の雇用失業情勢の見通しについてどのように認識をされているのか、お伺いしておきたいと思います。  さきに述べましたように、我が国経済は、経済構造改革を進めながら国際競争力を高めていくという極めて厳しい対応を迫られております。  このような中で、ことし二月、経済戦略会議は、従来型雇用政策から脱皮をして、民間の活力を最大限利用する形で、個人がみずからの転職適応能力を高められるよう政府が積極的にこれをサポートする仕組みを構築することが必要である、また、雇用不安を構造改革の方向性と矛盾しない形で政策措置を講じる必要があるとしております。  そこで、能力開発バウチャーの導入を提言しているわけでありますが、私は、この能力開発バウチャーこそ雇用失業問題の解決のための切り札であると思います。我が国経済再生のため、最良のものとなり得るものではないかと考えますが、この点について労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  次に、このたび、各地域における雇用、就業の機会を創出するための臨時応急の措置として、緊急地域雇用特別交付金の創設が盛り込まれております。戦後の失業対策事業の反省から、おおむね二年との年限を設け、原則として直接雇用という形でなく民間企業やNPO等への委託としたことは理解できるところでありますが、あくまでも一時的な措置である以上、事業が終了した時点において雇用失業情勢が好転していなければ、再び失業者増加することになります。とすれば、事実上、地域の雇用を支えてきた公共事業と同様に、一たん始めれば継続せざるを得なくなるのではないかとの懸念が生じます。民間企業への委託という形で行われる際、業績の悪化した企業の救済ということにならないかとの懸念もあります。これらの点につき労働大臣所見をお伺いしておきたいと思います。  また、この交付金は、各地域の実情に応じて、各地方公共団体の創意工夫に基づき、教育・文化、福祉、環境・リサイクル事業等、緊急に実現する必要性がある事業を実施するとされております。  地方分権法が成立した今日、本来そういった事業は自治体みずからが行うべきではないでしょうか。また、雇用創出という観点から見ましても、直接的ではないにしても、公的機関が雇用するよりは、むしろNPOに対する優遇税制を早急に創設することの方が雇用創出効果が高いのではないかと思いますが、これらの点について大蔵大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。  次に、少子化対策臨時特例交付金についてお伺いをいたします。  他の先進諸国に例を見ない速さで少子化、高齢化が進展いたしております。間もなく労働力人口が、続いて総人口が減少に向かうと推測されているわけであります。現在、失業者の増大が最大の課題となっておりますが、中長期的には労働力不足となることが見込まれているわけであります。  その意味からも、個人が望む結婚や出産を妨げる要因を取り除くための施策の一つとして、多様な保育サービスの確保は当然必要であると考えます。しかし、これは本来、少子化対策の柱として堂々と当初予算に計上されるべきものではないでしょうか。緊急雇用対策の一環として位置づけられ、補正予算に計上されていることに違和感を感じざるを得ません。むしろ、単なるばらまきに終わるのではないかとの懸念すら抱きます。  そこで、今後の当初予算に引き続き計上していくお考えがあるのか、厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。  最後に、国債の増発と債券市場の動向についてお伺いいたします。  このたびの補正予算は、その財源が予備費の減額と前年度剰余金とされており、そのことについては高く評価をいたしているところであります。しかし、一方において、もう既に自民党の中からは、公共事業の追加を中心とした二次補正や十五カ月予算といった声が聞かれるではありませんか。  債券市場の動向を見ますと、現在の水準が高いか低いかは別として、国債の需給悪化懸念はいまだに消えておりません。むしろ、国債発行に対して非常に敏感に反応しているように見受けられます。  大蔵大臣御自身が、本年度の当初予算を初回からハマの大魔人を登板させたようなものと評されたように、私は、財政としてはもはや後がない状況であると認識しているところであります。  国家の財政を預かられているお立場から見て、これ以上の国債の増発が債券市場に与える影響をどのようにお考えになっているのかを伺って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  35. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 奥村展三議員にお答え申し上げます。  まず、雇用のミスマッチ解消のための施策の効果についてお尋ねがございました。  政府におきましては、雇用活性化総合プランを初めといたしました一連の雇用対策によりまして雇用情勢の改善に努め、雇用創出・安定を図ってきたところであります。  今般、政府が策定いたしました緊急雇用対策は、依然として厳しい雇用失業情勢を踏まえ、雇用就業機会創出を最大の柱といたしまして、これまでの取り組みを一層充実強化したものであります。今後、本対策を迅速かつ効果的に実施することによりまして、雇用のミスマッチの解消に向け全力で取り組んでまいりたいと考えます。  今後の雇用失業情勢の見通しについてお尋ねですが、雇用失業情勢は、五月の完全失業率が四・六%となりまして、先月より〇・二%ポイント低下したものの、依然として高水準で推移し、有効求人倍率も〇・四六倍と過去最低水準となるなど、依然として厳しい状況にあるものと認識いたしております。  今後につきましては、雇用景気に半年以上おくれて回復する傾向がありますので、当面は厳しい状況が続くものと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  36. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 緊急地域雇用特別交付金の問題についてお尋ねがございまして、これは、あるいは労働大臣からもお答えがあるかと存じますけれども、地方公共団体が直接雇用いたして自分で事業を行うことも一つの考えでございますけれども、かつて、いわゆる失対事業で就労者が非常に後まで残ったという経験もございまして、交付金の対象事業は、地方公共団体が地域の実情に応じて民間企業等に委託することを中心にしてもらった方がいいのではないかと考えたわけでございます。  同じ観点から、交付金の対象事業につきましても緊急に実現する必要がありますし、一両年で終了する事業というふうに考えていくことがいいのではないかと思っております。  なお、それに関連いたしまして、NPOについてのお尋ねがございまして、今回の補正予算におきまして、首都圏及び関西圏における労働者等を対象としまして、NPOでのボランティア活動を希望する人材及び人材を求めるNPOの登録、情報提供等を行うNPO人材バンクを、仮称でございますが、創設するために必要な経費を計上しております。  それから、一般的にNPOに対する税制措置につきましては、今後どのような団体がNPO法人としての資格を取得するか、実情を見ました上で、各種の法人や団体に対する課税のバランスも考えながら検討してまいりたいと思っております。  それから、国債の発行について御注意がございまして、確かに今のような財政状態は、日本経済が回復軌道に乗りましたら、もう直ちに税制も財政も抜本的に二十一世紀に向けて改めなければならない、そのように異常な状態であることはよく認識をいたしております。  具体的な国債の発行に当たりましては、今後とも市場の動向、ニーズ等を十分勘案して円滑な消化を図ってまいりますが、いずれにしても、この問題につきましては、御注意のとおり、十分注意して匡正をいたしてまいりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣甘利明登壇拍手
  37. 甘利明

    国務大臣甘利明君) まず、能力開発バウチャーについてのお尋ねでありますが、能力開発の推進に当たりましては、民間活力の活用や労働者がその自主性に基づいてエンプロイアビリティーを向上させることを支援することが重要だと考えております。  このために、今般、自主選択ができる仕組み、バージョンアップ・フレックス・プランを実施することといたしました。これは、能力開発バウチャーの趣旨を十分に体しているというふうに考えております。  緊急地域雇用特別交付金につきましては、大蔵大臣からお話がありました。若干付言させていただきますが、かつての失対事業の失敗にかんがみて、そういう事態がないように、御懸念がないように一両年で終了するということを旨として取り組んでまいります。  それから、この事業についてのお尋ねもありました。  これも大蔵大臣からお話をいただいたとおりであります。地方自治体が、創意工夫によりまして民間企業とかNPO等に委託することを中心として実施をするというものでありまして、各地方公共団体制度の趣旨にかんがみて、それにふさわしい委託先を決定いただけるものと考えております。(拍手)    〔国務大臣宮下創平君登壇拍手
  38. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今回の少子化対策臨時特例交付金は、保育所の待機児童の解消を初め、少子化対策の呼び水として地域における少子化対策の一層の普及促進を図るとともに、現下の厳しい雇用情勢にかんがみまして、雇用就業機会創出に資することを目的として行われるものでございます。  この交付金につきましては、あくまで臨時緊急の単年度限りの特別措置として行われるものでありますが、当初予算に盛り込まれております保育関係予算等と相まって、保育所待機児童の解消など、地域の実情に応じた少子化対策に有効に活用されるよう努めていく考えであります。  なお、今後とも少子化対策の充実に一層努力してまいります。(拍手
  39. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会      ─────・─────