○岩本荘太君 参議院の会の岩本でございます。
ただいま議題となりました
食料・
農業・
農村基本法案につきまして、参議院の会の皆様のお許しをいただき、小渕
総理並びに
農林水産大臣に
質問いたします。
まず、
日本農業に対する理解と取り組みに対する熱意についてであります。
本
法案は、
平成九年四月に
総理の諮問機関として調査会が組織され、広く全国の
農業関係者並びに有識者の英知を結集されて
検討された結果が反映されたものと理解しておりますが、その御
努力に対しましては、まず敬意を表するものであります。
しかし、法令の内容が幾ら立派でも、これから講じられる諸
施策が魂の入ったものでなければ意味がありません。これから長年にわたって
日本農業の
理念として、
農業関係者のみならず、日本
国民を支える支柱となるものでありますから、そのスタートに当たっては、
日本農業に対するしっかりした
認識が
国民全体に
確立されていなければなりません。特に、国政をリードするお立場にある
総理の御
認識は大切であります。
そこで、お
伺いいたします。
日本の
農業の大切さにつきましては、ただいまの
農林水産大臣の
趣旨説明の中でも健康な
生活の基礎となる
食料を
安定供給すること、
国土や
環境の
保全、文化の伝承など
多面的機能を
発揮することによって
国民に暮らしの安全と
安心を与えることを強調されておりますが、このことに異を唱える者はまずないと
考えます。
総理におかれましてもお気持ちは同じだと御推察申し上げます。
それは今に始まったものでなく、農耕民族である日本人のある意味では原点であると言っても過言ではありません。
昭和三十六年に制定されたさきの
基本法においても、その精神は全く同じだったはずであります。
しかし、現実はどうだったか。さきの
基本法が施行されてからしばらくは、日本の高度
経済成長期でもありましたが、年率一〇%を超える
経済成長が続く中で、
農業の成長率はその半分程度で推移していたのが実情であります。
農業は日本経済から立ちおくれ、のけものにされていたかの感があったことは否めません。
自立
農家を目指しても、
農地の流動化がままならず、大規模経営
農家として自立した
農家は数多くありません。やむなく兼業化によって家計を維持したのが多くの
農家の実態であります。兼業化をとりたてて罪悪視するつもりはありませんが、他動的要因でそうなったものであり、決して
農業を大事にする
姿勢からなったものではありません。そのことが
後継者の
農業を軽視する
姿勢につながり、
日本農業を惨たんたる
状況に追い込んだ元凶ではなかったかと
考えております。
この
反省を踏まえなければならないのは当然でありますが、それには
日本農業に対する正しい理解と深い愛情を持って取り組む
姿勢こそが大切です。
日本農業に対する
総理の御
認識とこれからの取り組みに対する御熱意を、ぜひ生の声でお聞かせ願いたい。
総理の思いを
農業関係者だけでなく全
国民にぜひ発信していただくようお願いいたします。
また、広く
国民全体に
農業を理解してもらうためには、実際に身をもって
農業を体験してもらうことが大切であると
考えます。学校教育の場では体験
農業等が実施されているとも聞きますが、企業等の初任者研修などで取り上げてもらう方法もあろうかと思います。もちろん、企業が自主的、主体的に
考えることではありますが、このような試みについて
総理の御
所見をお
伺いいたします。
次に、
自給率についてお
伺いいたします。
我が国の
食料自給率は、
平成九年時点で穀物
自給率が約二八%、カロリー
自給率で四一%。なかなか下げどまらないのが実態であります。どのくらいの率が妥当なのか、私には確たる数字はわかりませんが、
先進諸国に比べてはるかに低い日本の実態を
考えますと、
安心できないのが正直な気持ちであります。
不時に備えるための
自給率の
確保は、国防にも匹敵する
重要課題であります。安全
安心社会の構築を目指す
総理にとっては、まさに最
重要課題の
一つではなかろうかと御推察申し上げます。しかし、この問題はかけ声だけで済まされるものではありません。しっかりと具体性を持って取り組まなければならないことは言うまでもありません。
具体的に申せば、
国内自給率を上げようとするなら、
消費者に
国内産品を選択してもらわなければなりません。そのためには、今の自由経済の中では、価格競争かあるいは品質競争で外国産品に勝つしか道はありません。
農業の
多面的機能を
評価する動きもありますが、いまだそのことによって
国内農業が優先されるというところにまで国際的コンセンサスは得られていないのが現状です。また、
国内農業を守るために保護的色彩を出せば、即座にWTOに提訴されてしまいます。
まず、価格競争であります。
この競争に勝つためには、
生産者である
農業者にもっと効率のよい
農業を展開してもらわなければならないことは言うまでもありません。
しかし、
産業連関表で分析してみますと、
平成七年時点で、
農業の
国内生産額に対する営業余剰、すなわち必要経費を除いて
農業者が取得できる取り分は約三七%にすぎず、
生産額の半分にも満たないのであります。このことは、
農業者が幾ら
努力してもこの約四割弱の範囲でしか価格を下げられないことになります。残りの六割強は二次
産業、三次
産業の取り分であります。
自給率を
向上させるためには広く全
産業界の協力がなければならないことがわかります。
自給率の
向上をこの全
産業にかかわる問題として取り組む御
覚悟がありやなしや、
総理にお
伺いいたします。
次に、品質競争であります。
国内産品の方が品質がよければ
国内産品が買われ、
自給率は上がります。そのためには品質の優位性を明らかにする必要があります。
現在、無
農薬栽培等の指導もされているようでありますが、この
方向をさらに
拡大して、例えば野菜類は鮮度により栄養価が変わるはずでありますが、その点に着目して、台所まで日数のかかる外国産品より鮮度のよい地場産品の方が栄養価が高いなど、時間的経過によって品質が変わることなどを明らかにして、
消費者に品質比較ができる情報を提供する等の取り組みがあろうかと思います。これは一例でありますが、このような
方向に向けた研究や普及について
農林水産大臣はいかがお
考えか、御
所見をお
伺いいたします。
次に、
自給率をどの程度にするかについてであります。
どの
自給率をもって設定されるかは存じませんが、総合的な
自給率であるカロリー
自給率について
質問いたします。
現在のカロリー
自給率は四一%でありますが、留意しなければならないのは、この
自給率は飽食の時代の
自給率であることであります。大量のカロリーを有する穀物飼料を大量に
輸入して、その数分の一のカロリーしか提供しない肉に変換して食べているのであります。このことが
自給率を下げている大きな原因の
一つだとも思われます。不時の異変が発生したときまでもこの飽食の現代の食
生活が要求されるとは思いません。
もちろん、不時といってもいろいろな
状況が予想されます。単に総論として
自給率の
向上を唱えるのではなく、それぞれの
状況に合わせた
対策を立てなければなりません。現在、きめの細かい
検討を準備されているとも
伺いますが、その辺も含めて
農林水産大臣の御
所見をぜひお
伺いいたします。
最後に、中山間地活性化
対策についてお
伺いします。
昨年十二月の臨時
国会の冒頭でも、小渕
総理の所信表明に対する代表
質問で
伺いました。中山間地の活性化は、農林業の問題としてだけでなく、教育
環境や福祉厚生
環境などの
生活環境の整備も必要であり、関係する多くの省庁が総合的に取り組むべきである旨ただしたのに対し、関係省庁と一体となって
施策の充実と効率的な
推進に努めてまいりたい旨、大変前向きの御答弁をいただきましたが、今、
基本法が審議されるに当たり、具体的にどのような御
努力をされるおつもりか、再度
お尋ねをいたします。
以上が私の
質問のすべてであります。我が会派は農水
委員会に席を持たないため、若干細部にわたる
質問をしたことをお許しいただき、
総理並びに
農林水産大臣の生の声の御答弁をお聞かせ願うことを再度お願いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣小渕恵三君
登壇、
拍手〕