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1999-06-04 第145回国会 参議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月四日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十五号   平成十一年六月四日    午前十時開議  第一 森林開発公団法の一部を改正する法律案   (内閣提出衆議院送付)  第二 農業災害補償法及び農林漁業信用基金法   の一部を改正する法律案内閣提出衆議院   送付)  第三 国家公務員法等の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第四 海上運送法の一部を改正する法律案(内   閣提出、衆議院送付)  第五 航空法の一部を改正する法律案内閣提   出、衆議院送付)  第六 日本政策投資銀行法案内閣提出、衆議   院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、国家公務員等任命に関する件  一、食料農業農村基本法案趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  この際、国家公務員等任命に関する件についてお諮りいたします。  内閣から、  土地鑑定委員会委員安藝哲郎君、黒川弘君、佐藤實君、清水幹雄君、瀬古美喜君、高山朋子君及び平井宜雄君を、  中央更生保護審査会委員長増井清彦君を、同委員櫻井文夫君を、  中央社会保険医療協議会委員村田幸子君を、  また、労働保険審査会委員松本康子君を 任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。  これより採決をいたします。  まず、土地鑑定委員会委員のうち安藝哲郎君、黒川弘君及び佐藤實君の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  4. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          二百十七   賛成            百九十四   反対             二十三  よって、同意することに決しました。     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕     ─────────────
  5. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 次に、土地鑑定委員会委員のうち清水幹雄君、瀬古美喜君、高山朋子君及び平井宜雄君並びに中央更生保護審査会委員長、同委員中央社会保険医療協議会委員労働保険審査会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  6. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  7. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          二百十九   賛成            二百十九   反対               〇  よって、全会一致をもって同意することに決しました。     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕      ─────・─────
  8. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) この際、日程に追加して、  食料農業農村基本法案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。中川農林水産大臣。    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  10. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 食料農業農村基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  現行農業基本法は、昭和三十六年、その当時における社会経済の動向や見通しを踏まえて、我が国農業の向かうべき道筋を明らかにするものとして制定されました。  しかしながら、我が国経済社会が急速な経済成長国際化の著しい進展等により大きな変化を遂げる中で、我が国食料農業農村をめぐる状況も大きく変化し、関係者の多大な努力により成果を上げた面がある一方で、国民が不安を覚える事態が生じるに至っております。  まず、食料自給率低下であります。米の消費の減退、畜産物、油脂の消費増加という国民の食生活変化食料需要高度化等に対応した国内供給体制はいまだ十分に確立されていない状況にあります。  次に、農業者高齢化とリタイアが進んでいますが、次代の担い手育成確保は不十分な状況にあります。農地面積は減り続け、耕作放棄地増加しています。農地を有効に利用する体制も十分ではありません。  さらに、農業生産の場であり、生活の場でもある農村の多くは、高齢化の進行と人口減少により、活力が乏しくなっております。地域社会の維持が困難となる集落も相当数見られるようになっています。  一方、国民我が国農業農村に対する期待は高まっております。  すなわち、健康な生活の基礎となる良質な食料合理的価格での安定供給役割を果たすこと、国土環境保全、文化の伝承などの多面的機能を十分に発揮することなど、暮らしと命の安全と安心の礎としての農業農村役割に大きな価値を見出す動きは近年着実に増大しております。  しかし、現状のままに推移するのでは、期待される役割を果たすことは困難であります。  現行農業基本法を初め農政全般の総合的な見直しを行うとともに、全国各地で見られる新しい芽生えに未来を酌み取り、早急に、国家社会における農業農村位置づけなど食料農業農村政策に関する基本理念明確化政策の再構築を行わなければなりません。  このような二十一世紀展望した新たな政策体系確立により、これまでの傾向に歯どめをかけ、国民は安全と安心を、農業者自信誇りを得ることができ、また、そのことを通じて、生産者消費者、都市と農村の共生が可能になるものと確信しております。  本法案は、このような基本的考え方のもとに、食料農業農村基本問題調査会答申を踏まえ、食料農業及び農村に関する施策についての基本理念とこれに基づく基本的な施策の枠組みを国民的合意とするべく、提案したものであります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、食料農業及び農村に関する施策についての基本理念を明らかにすることであります。食料安定供給確保多面的機能発揮農業の持続的な発展及び農村振興という四つの基本理念と、国及び地方公共団体責務等を定めています。  第二に、基本計画を策定することであります。食料農業及び農村に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食料農業農村基本計画を定めて、施策についての基本的な方針食料自給率目標、総合的かつ計画的に講ずべき施策国民の前に示すこととしております。  第三に、食料農業及び農村に関する施策基本方向を明らかにすることであります。食料安定供給確保農業の持続的な発展及び農村振興に関する施策として基本的なものを定めております。  第四に、国に・農業農村政策審議会を設置すること等について定めることであります。  なお、食料農業農村基本法案は、衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりであります。  第一に、国民に対する食料の安定的な供給については、国内農業生産増大を図ることを基本として行われなければならないことを明記すること、第二に、食料農業農村基本計画に定める食料自給率目標は、その向上を図ることを旨として定めることを明らかにすること、第三に、政府食料農業農村基本計画を定めたときは、遅滞なくこれを国会に報告しなければならないものとすることであります。  以上、食料農業農村基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)     ─────────────
  11. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。太田豊秋君。    〔太田豊秋登壇拍手
  12. 太田豊秋

    太田豊秋君 私は、自由民主党を代表して、ただいま趣旨説明のありました食料農業農村基本法案について、総理並びに関係閣僚に若干の質問をさせていただきます。  新しい基本法は、現行農業基本法制定以来三十八年ぶりに我が国食料農業農村のあり方を展望し、政策基本方針を指し示すものとして大きな意義を持つものであります。それだけに、農業の持つ特性に十分配慮しつつ、長期的な幅広い視野で総合的に審議していくことが望まれるところであります。  新しい基本法は、現行農業基本法と比べ、農業分野だけでなく、食料農村を含めて総合的にとらえていることが大きな違いであります。このような幅広い視点基本法を構成されるに至ったのは、内外の諸情勢や農政に対する要請が大きく変わったことによるものと思われますが、現行農業基本法評価反省も踏まえ、食料農業農村基本法が多様なニーズにこたえつつ、二十一世紀においていかなる役割を果たし、新たな展望を切り開くのか、その基本的お考え総理にまずお伺いいたします。  次に、長期的視点から見た基本法理念施策についてお伺いをいたします。  来世紀世界人口は急増し続け、二〇五〇年には世界全体の食料需要は二・二五倍にもなるというFAOの予測が出ております。他方、地球環境の悪化に伴い、毎年砂漠化が進み、農業生産環境も悪化し、将来、世界食料需給は大きく不足することが心配をされております。  このような中で、我が国食料輸入が急増し、自給率は年々低下し、最近では史上最低の四一%にまで低下いたしました。平成八年の総理府の世論調査では、国民の七割以上が我が国食料事情に不安があると見ていることを重く受けとめなければなりません。  このような点を踏まえ、食料安全保障について国家の屋台骨を支える基本政策として位置づけるべきでありますが、将来の食料需給見通しを踏まえ、その基本的なお考え総理にお伺いいたします。  総論的には食料農業重要性をうたっても、自給率低下に象徴されるように、今まで余り功を奏していないように見受けられます。さらに、農業経営後継者不足耕作放棄地増大規模拡大が進まないことなど、このような農業の先行きはまことに憂慮すべきものであります。  これは、農業に魅力がない、農業の将来に不安が大きいことによるものであり、新しい基本法において、この不安をなくし、希望を持って営農にいそしめるよう、明確な理念施策を打ち立てることが不可欠であります。  農業経営者初め消費者にとっても、一番わかりやすい理念食料安全保障であり、それに基づく自給率の具体的な目標、例えば、少なくとも五〇%以上を国内生産確保することや、国民安心できる質の高い農産物供給を明確に掲げることであります。確固とした政策的な裏づけのない生産努力目標では何の意味もありません。  食料安全保障のために自給率向上を大きな柱に据え、その目標達成のために法律上の明確な規定を設ける必要があります。このために衆議院において、第二条の国内農業生産について「増大を図ること」、さらに第十五条の自給率目標について「その向上を図ることを旨とし」などと修正されたことは評価をいたしたく思います。  これに対して、日本農業がよみがえる最後のチャンスを生かすために、食料安全保障のため、自給率向上に向けた新たな農政展開について、農林水産大臣の真剣な御決意と御答弁を御期待申し上げるものであります。  特に、農業従事者高齢化し、後継者不足が深刻化する中で、農業の持続的な発展を図るためには、認定農業者経営規模拡大農業への新規参入の促進、農業生産法人の拡充などを講ずるべきと考えますが、経営意欲のある後継者地域農業担い手育成確保の方策などをあわせお伺いをいたします。  また、国土環境保全などの多様な機能について大きな役割を果たす中山間地域は、条件に恵まれず人口が急減し、農業衰退により集落自体が消滅しているところも出ています。第三十五条での中山間地域などの振興規定が設けられたことや、農政改革大綱において直接支払いを導入することが決定されたことは前進であると思います。  この対策は、耕作放棄の発生を防止し、公益機能確保することが主眼であるようでありますが、その対象地域要件等がまだ明確でなく、条件不利要件をどのように決めるか、大きな課題であります。各地意見も踏まえ、十分な検討を期待いたしますが、現在の検討状況について、中間的に農林水産大臣からお聞かせをお願い申し上げるものであります。  最後に、この新しい基本法により、二十一世紀において、我が国食料安全保障農業農村の健全で持続的な発展が図られることを強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  13. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 太田豊秋議員にお答え申し上げます。  まず、本法案役割と新たな展望基本的考え方についてお尋ねがございました。  この新たな基本法案は、国家社会における食料農業農村位置づけを明確にいたしまして、農業者だけでなく国民全体の視点に立った基本理念のもとに政策を再構築しようとするものでございます。これにより、農業者自信誇りを持って農業に励み、国民が安全と安心を得て暮らすための条件整備が図られると考えております。  食料安全保障についてお尋ねですが、世界食料需給について中長期的には逼迫する可能性もあると見込まれる中で、国民の必要とする食料安定供給確保することは国の基本的責務であります。食料安全保障は、国政の重要課題一つとして認識をいたしており、国内農業生産増大を図ることを基本とし、食料安定供給確保に万全を期してまいる覚悟でございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  14. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答え申し上げます。  まず、食料自給率向上についてのお尋ねですが、食料の将来にわたる安定供給確保することは国の基本的な責務であると考えております。このため、本法案では、基本理念におきまして、国内農業生産増大を図ることを基本とすることを明記するとともに、基本計画において食料自給率目標を定めることとしております。今後、総合的かつ計画的に施策を講じ、国内農業生産増大食料消費改善を図り、国民的理解を得ながら食料自給率向上に向けて真剣に取り組んでまいる覚悟でございます。  次に、担い手確保育成対策についてのお尋ねでありますが、地域農業において中核的な役割を果たすことが期待される認定農業者新規就農者等の意欲ある担い手育成確保は、現在特に重要な課題であります。このため、これらの方々に必要な施策を集中するとともに、新たに就農したとき、経営改善途中にあるとき、経営安定期等経営体としての発展段階に応じ、資本装備の充実、経営規模拡大経営管理能力・技術の向上等経営全般にわたる支援策を体系的に整備してまいりたいと考えております。  最後に、中山間地域等への直接支払いについてのお尋ねですが、さきの中間取りまとめでは、対象とする地域の範囲は特定農山法等いわゆる五法の対象地域が適当ではないか、生産条件不利性を示す基準としては傾斜度等とすることが適当ではないかなど、現段階での検討状況を公表したところでありますが、必ずしも意見の一致していない点もあります。今後、各方面の御意見も仰ぎつつ、その集約に向けて平成十二年度概算要求時までに結論を得るべく検討を深めてまいります。(拍手)     ─────────────
  15. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 和田洋子君。    〔和田洋子登壇拍手
  16. 和田洋子

    和田洋子君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました食料農業農村基本法案について、総理並びに関係大臣質問いたします。  私は、まず、本法律案衆議院段階において、国内農業生産増大を図ることを基本とすること、食料自給率向上を図ること、そして基本計画国会報告を義務づける三点について与野党五党の共同修正が行われ、新たな基本法が目指す方向がより鮮明になったことを高く評価したいと存じます。  今、世界では八億人を上回る人々が飢餓と栄養不良に苦しんでおり、二十一世紀における食料需給が一層深刻さを増すと予測されている中で、世界の各国、とりわけ先進諸国は、一九九六年の世界食料サミットにおけるローマ宣言とその行動計画に基づき率先して食料供給能力を高める責務を有するにもかかわらず、新基本法案国内農業基本とした食料安定供給体制確保するための積極的姿勢に欠けていたことは極めて問題であったと思われます。  幸いにも、この大きな課題修正によって改善されたわけですが、この際、修正趣旨を踏まえた国内農業増大食料自給率向上に向けた政府取り組み姿勢総理からお示し願いたいと存じます。  次に、新基本法案農業基本法が持っている前文を欠いていることであります。  この点は、残念ながら衆議院においての共同修正にのせることができませんでした。しかし、農業基本法は、我が国農業及び農業従事者国民経済発展国民生活に果たしてきた役割重要性とその使命が恒久的に変わりないことを宣言し、その使命を達成するために国を挙げて努力することの重要性をうたい上げているのでありますが、このような確固たる前文を置くことは、二十一世紀に向けて食料農業農村政策基本的な方向を宣言する上において極めて重要なことであります。  最近、本院で可決された男女共同参画社会基本法案でも、委員会審議の結果、前文が加えられ、法の趣旨目的理念がより明確にされたところでありますが、基本法における前文必要性について、総理所見をお聞きしたいと存じます。  次に、昭和三十六年に農業基本法が制定され、基本法農政総合農政、そして国際化農政というように経済社会変化に対応して農政の指針は何度となく書きかえられてまいりましたが、その総括についてお聞きいたします。  今日、政府は、農業基本法看板の塗りかえではなく、看板のかけかえを行おうとしているのでありますが、この際に重要なことは、農業基本法という看板のもとで展開されてきた各種の施策がどのような成果を生んだかを的確に評価し、それを新たな食料農業農村基本法に生かしていくことであります。  農業基本法が目指した最大の目標は、農業生産性向上を図ることによって農業従事者生活水準を他産業並み改善することでありました。しかしながら、農業生産性は他産業との比較生産性で見る限りわずかな上昇にとどまっており、製造業賃金に対する農業所得の割合は専業農家でさえ四割を切っているのが実情であります。  また、生産性向上を図るために推進されてまいりました生産方式は、農薬化学肥料多投型の化学農法であり、機械化による省力化でありました。これらのもたらしたものは、本来、環境保全型の産業であるはずの農業を、地力を収奪し、環境負荷を高める産業に組みかえてしまったのであります。  また、農業の総生産増大を図ることも農業基本法目的一つでありましたが、これも、農業従事者農地面積の著しい減少輸入農産物との激しい競合などによって衰退の一途をたどっております。食料自給率四一%という結果がその成果を雄弁に物語っているのであります。  経営規模拡大によって自立経営農家育成するという目標にいたしましても、平成九年度の戸数シェアは五%にすぎないのであります。  これが、農業基本法のもとで展開された農政が招いた今日の我が国農業の一端であり、この反省なくして新制度を仕組むことは、なし崩し的な方向転換と言われても仕方がありません。政府はこの点を明確にすべきであると存じますが、農林水産大臣の見解をお聞きしたいと存じます。  次は、今後の農政展開方向についてお伺いいたします。  新基本法案がその理念として位置づけている四本の柱、すなわち、食料安定供給農業多面的機能発揮農業持続的発展、そして農村振興は、いずれもこれまでの農政推進に当たり、当然に確認されなければならなかった課題であり、殊さら新しい発想に基づくものとは思えません。むしろ、なぜ今日こうした課題基本理念に据えられなければならないかということこそ問われなければならないのであります。  そこでまず、食料安定供給についてお尋ねいたします。  私は、衆議院における議論をお聞きして不思議に思ったことは、食料安定供給を図るために国内農業基本とする姿勢が明確に示されながら、それを裏づける具体的な指標がついに示されずに終わったことであります。  国内生産による供給熱量が五〇%を切ったら、それは国内生産基本とするとは言えないことは明白でありまして、今後、審議会においてどのような検討が行われるにしても、五〇%以上という指標は当然のこととして示されてしかるべきと考えますが、農林水産大臣の御所見をお聞きいたします。  また、現在の食料自給率を引き上げていくことがいかに難しい課題であるかは私もよく理解しているつもりですが、食料農業農村基本問題調査会に提出された経済企画庁の資料によりますと、産業空洞化傾向がこのまま進むとすれば、海外に立地した工場からの製品輸入増加によって二〇一〇年から経常海外余剰赤字になり、赤字幅は二〇二五年には一四・三%にもなるということであります。これは、産業空洞化がこのまま進めばという仮定の話であります。  しかし、それにしても、我が国食料でも木材でも必要なものは何でも輸入できるという状態になってから数十年の歴史しかなく、それが永続することを前提に食料供給体制考えることは適切でないと考えますが、経済企画庁長官の御認識をお示し願いたいと思います。  次に、お聞きしたいのは、多面的機能発揮についてであります。  農村において農業生産活動が健全に行われることによって多面的機能発揮されることは、新基本法案規定するとおりであります。しかし、農産物価格市場原理を導入し、効率的かつ安定的な農業経営育成施策を集中するという新基本法案考え多面的機能発揮することが果たして可能なのでしょうか。新基本法案は、持続的農業重要性、多面的な機能発揮を強調しつつ、一方で効率性追求理念も捨てることができず、矛盾した理論で構成されているように思えてならないのですが、農林水産大臣の明確な御所見をお聞きいたします。  次は、農業持続的発展についてであります。  新政策は、我が国食料政策は、可能な限り効率的な生産を行い、内外価格差縮小にも努めつつ、国際的な食料需給の観点も踏まえて、まずみずから国土資源を有効に利用することによって食料安定供給するとともに、消費者視点に立って安全な食料供給することを基本としなければならないと述べています。まことに立派な文章だと思います。しかし、多少なりとも農業農村の実態を理解している人なら、持続性の高い農業確立とこの文章との矛盾を理解できるはずであります。  すなわち、化学肥料農薬の投入を抑え、堆肥等有機質肥料を中心とした環境に優しい持続性の高い農法が効率的な生産と両立し得ないことは明らかであります。また、内外価格差縮小という課題にたえられる農家は一握りにすぎず、多くの農家農業生産からの離脱を余儀なくされ、持続性の高い農業どころか、農業持続性が図れなくなる結果を招くであろうことは容易に想像できるのであります。  そこで、私は、自然循環機能を損なわない持続性の高い農法によって、生産性向上、効率的な生産を実現し、内外価格差縮小を図ることが可能と考えておられるのかどうか、農林大臣お尋ねしたいと思います。  次は、農村振興についてお伺いいたします。  中山間地域などの条件不利地域に対する直接支払いの導入については、夏の概算要求をめどに具体的な検討が進められると伺っています。この点について、法律案を拝見いたしますと、対象地域については「中山間地域等」とされており、必ずしも中山間地域に限った施策でないと理解できるのですが、あくまでも条件不利地域という考え方で対応すべきと思われますが、農林大臣の御答弁をいただきたいと思います。  また、法律案では「農業生産条件に関する不利を補正するための支援」とされておりますが、私は、平地農業との生産費の格差を是正するといった程度のものではなく、それによって中山間地域振興を図ることが可能な水準を考えるべきであり、基本問題調査会の答申にありますように、「地域社会として維持・活性化させていく」という理念のもとに実施されるべきと考えますが、いかがでしょうか。  さらに、直接支払いの導入に当たっては、全国一律の弊害を防ぎ、地域の実情が反映された制度としていく必要があり、そのためには一般財源措置として実施することが必要と考えますが、農林水産大臣の御所見をお聞きしたいと思います。  最後に、WTO次期農業交渉についてですが、先般、農林水産大臣が訪韓され、我が国のかねてからの主張を実現すべく、ともに協力して臨む体制を構築されたことは喜ぶべきことだと思います。  申し上げるまでもなく、国際規律との整合性のもとで農政を展開せざるを得ない状況考えますと、WTO協定の行方が我が国農業の死命、生きるか死ぬかを制すると言っても過言ではありません。  そこで、私は、一九九六年の食料サミットで確認された各国の食料生産努力が尊重され、農業多面的機能評価されるような協定の再構築と、食料輸出国と輸入国の間に存在する不平等の解消に向けた交渉への取り組みについて大臣の御決意をお聞きし、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  17. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 和田洋子議員にお答え申し上げます。  基本的な点、二点につきましてのお尋ねでございました。  まず、国内農業増大食料自給率向上に向けた取り組み姿勢についてお尋ねがございました。  衆議院におきます修正により、国内農業生産位置づけ自給率目標に関する規定がより明確になりました。今後、基本計画において食料自給率向上を旨として目標を定めるとともに、その目標に向かって総合的かつ計画的に施策を講じ、生産者その他の関係者と一体となって取り組んでまいります。  次に、基本法における前文必要性についてお尋ねがありました。  前文には、法案基本理念法案提出に至った事情が記述されるのが通例であります。本法案におきましては、基本理念は条文の形で明確化しており、また、法案提出に至った事情につきましては、趣旨説明に盛り込むことから前文を置かなかったものでありますが、必要な事項は盛り込んでいるものと考えておるところでございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  18. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答えいたします。  まず、現行基本法農政の総括についてでございますが、現行基本法に基づく施策の展開により、農業従事者生活水準の格差是正等に一定の成果を上げたものの、予想を上回るテンポの経済成長国際化進展等の中で、自給率低下農業就業人口減少高齢化の急速な進展、過疎化が進行いたしました。一方で、食料安定供給農業農村多面的機能発揮への国民の新たな期待への対応も欠けておりました。  このような現行基本法のもとで生じている事態を直視し、これに抜本的に対処するため、基本理念政策を再構築しようと決断した次第でございます。  次に、供給熱量自給率目標についてのお尋ねですが、「国内農業生産基本とし」とは、輸入、備蓄との関係において国内農業生産が優先的な位置づけにあるという基本的かつ定性的な考え方を示したものであります。  供給熱量自給率目標は、何の前提もなく数値を掲げるものではなく、政府を初め、農業者消費者等の関係者が一体となった取り組みと国民的な理解により実現可能なものとなるよう、生産消費両面での課題を初め、いろいろな面での問題を精査しながら数字を積み上げ、基本計画の中で明らかにしていきます。  次に、持続的農業等の強調と効率性追求の関係についてのお尋ねですが、農業持続的発展の実現には、まず、農業構造面において農地、水といった資源や担い手確保し、効率的な農業を図る、また、農法面におきまして自然循環機能が維持増進されることの両面が必要であると考えております。その両立により、農業持続的発展が図られるとともに、それを基盤として多面的機能発揮されるものと考えています。  次に、持続性の高い農法についてのお尋ねですが、農業の持続的な発展のためには、農業自然循環機能の維持増進を図っていくことが不可欠であります。このため、持続性の高い農法の導入について、所要の法制度の整備や関連する予算措置を講ずることとしており、この農法の導入は、農業経営の効率化につながるのみならず、地域資源の有効的な利用にも資するものと考えております。  次に、直接支払い対象地域についてのお尋ねですが、特定農山法等地域振興立法の対象地域のうちから傾斜等により指定することとしておりますが、検討会では、これらに準ずる自然的、社会的、経済的条件の厳しい地域対象としてはどうかという意見もありました。このことは、自然的、経済的、社会的条件の厳しい地域のうち、農業生産条件の不利な農地対象とするとの考え方に基づくものであります。  次に、直接支払いの水準についてのお尋ねですが、広く国民の理解を得るためには、生産条件の格差の範囲内で設定することとされたWTO農業協定と整合的に設定する必要があります。また、中山間地域等は、農業振興、就業機会の拡大生活環境の整備等多様な課題を抱えており、生産条件を補正する直接支払いのほか、農村工業導入や生活環境の整備などの施策を総合的に実施することが重要であると考えております。  次に、直接支払いの交付方法についてのお尋ねでありますが、その導入に当たっては、国民の理解を得る観点からもWTO農業協定の緑の政策とする必要がありますが、このためには、同協定上、生産者に対する直接支払いを行うこととされていることから、地方公共団体への一般財源措置はそぐわないものと考えております。  いずれにしましても、中山間地域等への直接支払いの制度のあり方については、現在検討会において御議論いただいているところであり、平成十二年度概算要求時までに結論を得るべく検討を深めてまいります。  最後に、WTO次期農業交渉への姿勢についてのお尋ねですが、交渉に臨むに当たって、農業多面的機能食料安全保障重要性に十分な配慮がなされるとともに、輸出入国間の権利義務のバランスが確保されることが基本的に重要であると考えており、今後、国民的共通認識を得ながら、後世に悔いのない交渉結果を獲得すべく、我が国考え方を積極的に主張していきたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣堺屋太一君登壇拍手
  19. 堺屋太一

    国務大臣(堺屋太一君) 食料供給のあり方について質問がありました。  御指摘の試算結果は、経済審議会平成八年十二月に公表したもので、当時想定された制度をそのまま放置しますと、経常収支が大幅な赤字に転じるなど国民経済に大きな問題を与えることを示し、構造改革を実施することの必要性を指摘したものであります。  政府といたしましては、今後とも我が国の経済構造改革に積極的に取り組んでいくことにより、そうした事態を回避しなければならないと考えており、その方法と必要な政策につきましては、経済審議会よりこの七月にも答申される予定の「経済社会のあるべき姿と政策方針」において明らかにされる予定であります。  国民に対する食料供給には、安定性と効率性の双方が大切であり、供給国内農業生産輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行うことが必要と考えております。(拍手)     ─────────────
  20. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 渡辺孝男君。    〔渡辺孝男君登壇拍手
  21. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました食料農業農村基本法案につきまして、小渕総理大臣を初め、関係大臣質問をいたします。  本法案は、近年の我が国経済社会及び食料農業農村をめぐる情勢の大きな変化に対応するため、今から三十八年前の昭和三十六年に制定された現行農業基本法にかわり、今後の食料農業及び農村の各分野にわたる基本理念とその基本方向を明らかにする趣旨でつくられた新しい農業基本法というべき性格の法案であります。  本法案基本理念一つは、食料安定供給確保でありますが、政府原案では「国内農業生産基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」とするもので、国内生産を維持拡大するという姿勢が弱いところに問題がありました。  衆議院において、公明党・改革クラブが提出した修正案をもとに協議し、共産党を除く与野党が一致して、この部分を「国内農業生産増大を図ることを基本とし」と修正したことを高く評価するものであります。  そこで、まず総理大臣並びに農林水産大臣伺います。  政府原案では何ゆえ国内農業生産増大と明言できなかったのか、その理由をお聞かせいただきたい。  次に、政府原案の「国内農業生産基本とし」が、「国内農業生産増大を図ることを基本とし」と修正されたことをどのように重く受けとめておられるか、総理大臣の御所見をお聞かせいただきたい。  改めて言うまでもなく、食料国民の生命、生活、生存の確保のために不可欠の基礎的物資であります。しかるに、近年、我が国食料自給率低下の一途をたどり、平成九年度には実にカロリーベースで四一%、穀物自給率では二八%と、先進国中類を見ないほどのレベルにまで落ち込んでしまいました。  これでは、世界的な凶作時あるいは穀物輸入が途絶するような不測の事態が起こった場合に、国民の必要とする食料を安定的に確保することはできません。食料安全保障は、国が果たすべき重要な役割一つであり、そのためには食料自給率向上させるとの政府の明確な意思表示と、その具体的な数値目標の設定が必要であります。  今回の政府原案では、食料自給率向上が明記されていませんでしたが、これも公明党・改革クラブ提出の修正案をもとに与野党が協議した結果、共産党を除く与野党が一致して食料自給率向上法案に明記する修正を行うことができました。これは大きな意義があるものと考えます。  そこで、総理並びに農林水産大臣伺います。  法案に、食料自給率向上と明記されたことに対する所見と、食料自給率向上の当面の目標値に関する見解をお聞かせいただきたい。  さて、国内農業生産増大並びに食料自給率向上を図るためには、それを可能とする農地総量の確保、とりわけ優良農地確保が重要となります。これをどのように定義し、また、政府としてこれらの目標達成のため農地総量としてどの程度を確保するつもりか、農林水産大臣の見解を伺いたい。  また、国内農業生産拡大自給率向上のためには、農地確保ばかりでなく、農業担い手確保が当然必要となってまいります。  近年、農業就業人口減少や就業者の高齢化に伴って、農業担い手確保は深刻な状況となっております。今後の農業担い手と期待されている認定農業者は、本年一月現在で十三万人に達しましたが、農産物の価格の低迷によって農業経営改善計画が思ったように進んでおりません。政府として、今後、認定農業者に対する施策の強化をどのように図っていく方針か、農林水産大臣にお伺いいたします。  また、認定農業者の最大の関心事であるWTO次期農業交渉に臨む政府方針について、総理並びに農林水産大臣にお伺いいたします。  さて、農業農村は、食料安定供給に加え、国土保全、水源の涵養、自然環境保全など、多様な公益的機能を有しています。その公益的機能は、ある試算では、全国的には六兆九千億円、そのうち中山間地域は三兆円に達するとされています。中山間地域等において耕作放棄の発生を防止し、これらの多面的機能確保を図るため、本法案農業生産条件の不利を補正するための支援に初めて道を開いたことは大変評価される点であります。  そこで、農林水産大臣伺います。  中山間地域等の「等」で表現された地域のより具体的な例示と不利を補正する所得補償のあり方についての方針をお聞かせいただきたい。  さて、食料自給率は、農地農業担い手、技術革新といった生産面の因子によって影響されるばかりでなく、平成九年度の農業白書で指摘されたように、米消費減少畜産物や油脂類の消費増加といった食生活変化によっても大きく影響されております。この食生活変化は、国民栄養の面では脂質エネルギー比率の増加となり、国民の健康面では肥満や高脂血症、心臓病や大腸がんの増加の一因となっております。  厚生省は、このような生活習慣病を予防する観点から、食生活改善をも含めた健康日本21計画を現在策定中と伺っております。国民栄養の改善生活習慣病予防のため、あるいは食料自給率向上のためといった目的政府国民の食生活に直接介入することを問題視する向きもありますが、いわゆる日本型食生活の効能を消費者国民に情報提供し、啓蒙活動を行うことは、中長期的には国民の健康寿命を延長することにもつながり、国民にとって有益であると考えます。この点に関しての農林水産大臣並びに厚生大臣の御所見をお聞かせいただきたい。  また、法案で述べられている「健全な食生活に関する指針の策定」に当たっての農林水産省及び厚生省の役割分担、連携について、両大臣にお伺いいたします。  最後になりますが、現在、地球上では約八億人を超える人々が栄養不良状態にあるとされ、今後の世界人口増加によりさらに食料事情は逼迫することが懸念されます。  このような飢餓の不安を解消し、また、飢餓を救済するためには、農業生産増大努力するだけではなく、穀物の国際備蓄構想や、その東アジア版である東アジア食料構想といった国際的な食料安全保障体制を早急に確立することが求められております。ODAでの貢献と同様に、我が国がリーダーシップをとってその実現に努力すべきと考えます。  総理の御所見をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 渡辺孝男議員にお答え申し上げます。  まず、国内農業生産増大等の修正についてでありますが、政府案におきまして「国内農業生産基本とし」という規定には、国内生産の現状から見て、国内農業生産増大を図るという趣旨が含まれているものであります。衆議院におきましての修正によりましてその趣旨が条文上より明確になったものであり、与野党間の合意に向けた協議の結果として真摯に受けとめております。  食料自給率についてお尋ねでありましたが、衆議院修正で、「食料自給率目標は、その向上を図ることを旨とし」と明記されたことにより、自給率向上に向けて取り組むという趣旨がこれまた明確になったと考えております。自給率目標は、何の前提もなく数値を掲げるのではなく、生産消費面での課題を明らかにしながら数字を積み上げ、基本計画の中で明らかにする考えでございます。  次に、次期農業交渉に臨む我が国基本姿勢についてお尋ねでありますが、食料安定供給農業農村持続的発展を図り、二十一世紀に向け農業者が明るい展望を持って農業に取り組むことのできるよう、次期交渉では、農業多面的機能食料安全保障、輸出入国の貿易関連措置の状況を踏まえた貿易ルールの確立を積極的に主張していきたいと考えております。  最後に、食料安全保障体制についてお尋ねでありましたが、食料備蓄を含む食料安全保障の問題は、人類生存基盤に影響を与え得る重要な問題であります。我が国は、開発途上国に対し、食料・資金・技術面で支援を行うとともに、世界食糧計画等国際的な食糧援助システムに参加し、積極的な貢献を行っており、今後とも世界的な課題であります食料問題に真剣に取り組んでまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  23. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答えいたします。  まず、国内農業生産に関する政府案の考え方についてでありますが、政府案の「国内農業生産基本とし」という規定の中には、国内生産の現状から見て、国内農業生産増大を図るという趣旨が含まれているものと考え、明記しなかったものでございます。  次に、食料自給率についてでありますが、政府原案でも、基本計画政府食料自給率目標を定めることとしており、自給率向上に取り組んでいくことは趣旨として含まれていたものでありますが、衆議院における修正でその趣旨が条文上より明確に表示されたと考えております。  また、食料自給率目標については、生産面、消費面における課題の整理や、課題が解決した場合にどの程度自給率向上への寄与が見込めるか等についての作業を通じ数字を積み上げ、基本計画の中で明らかにしてまいります。  次に、農地についてのお尋ねでありますが、農地の面積につきましては、生産努力目標の達成に必要な指標として基本計画の中で明らかにしていく考えであります。  優良農地とは、集団的な農地、土地基盤整備が実施された農地等が考えられます。その面積につきましては、今国会に提出しております農業振興地域の整備に関する法律の改正案において新たに定める国の基本指針で示したいと考えております。  次に、認定農業者に対する支援策についてでございますが、今後、認定農業者等の意欲ある担い手施策を集中していくとともに、就農時、経営改善途上時、経営安定期等経営体としての発展段階に応じ、資本装備の充実、労働力の確保経営管理能力・技術の向上等経営全般にわたる支援策を体系的に整備してまいります。  次に、WTO次期農業交渉への姿勢についてのお尋ねですが、交渉に臨むに当たって、農業多面的機能食料安全保障重要性に十分な配慮がなされるとともに、輸出入国間の権利義務のバランスが確保されていることが基本的に重要であると考えており、今後、国民的共通認識を持ちながら、交渉に対して最大限努力してまいります。  中山間地域等の直接支払いについてのお尋ねですが、対象地域につきましては、いわゆる地域振興五法と言われる法律対象地域のうちから傾斜等により指定することとしておりますが、学識経験者等で構成される検討会では、これに加えて、これらに準ずる自然的、経済的、社会的条件の厳しい地域対象としてはどうかという意見も出されております。  また、不利の補正につきましては、生産条件の格差の範囲内で直接支払いを行うことで意見の一致が見られております。  次に、食生活についてのお尋ねですが、我が国における現在の食生活状況を踏まえ、今後、健全な食生活に関する指針の策定、食料消費に関する知識の普及、教育、情報提供等を推進し、関係省庁及び食にかかわる関係者とも連携し、食生活を見直す国民的な運動を展開してまいりたいと考えております。  最後に、健全な食生活に関する指針の策定についてでございますが、食料消費改善及び農業資源の有効利用に資するため指針を策定することとしており、厚生省の知見もおかりしながら、連携して策定してまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣宮下創平君登壇拍手
  24. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 渡辺議員にお答え申し上げます。  日本型食生活にかかわる啓発に関するお尋ねでございますが、肥満とかあるいは高血圧症等の生活習慣病を予防するためにも、国民一人一人が食生活改善に対する自覚を持ち、実践できるように普及啓発を行うことは極めて重要なことであると認識いたしております。  このため、厚生省におきましては、従来から健康づくりのための食生活指針というものを策定いたしまして、その普及啓発に努めてきたところでございます。  現在、御指摘のように策定作業を進めております二十一世紀における国民健康づくり運動、いわゆる健康日本21と言っておりますが、この中におきましても食生活改善を重要な柱として位置づけまして、国民にわかりやすい形で普及啓発等に努めてまいりたいと考えております。  また、食料農業農村基本法案に盛り込まれました健全な食生活に関する指針の策定につきましては、ただいま農林大臣からも御答弁ございましたように、厚生省といたしましても、国民の健康の増進を所掌する立場から、関係省庁と十分な連絡を図って適切な策定をしてまいりたい、このように考えております。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  25. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 大沢辰美君。    〔大沢辰美君登壇拍手
  26. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました食料農業農村基本法案について、総理及び農林水産大臣に対し、質問をいたします。  我が国食料自給率はわずか四一%と世界最低の水準にまで落ち込んでいます。輸入増大農産物価格の低迷で農家は何をつくっても経営は成り立たず、農家数は一九六〇年の六百五万戸からほぼ半減し、専業農家もこの期間に五分の一にまで減少しています。高齢化が進み、農業集落が相次いで消滅するなど、食料供給の基盤を揺るがしかねない事態となっています。  このような中で、国民の生存に係る課題として、食料自給率向上は新たな基本法の中心的課題に据えるべきであります。早急に五〇%に回復させ、六〇%、七〇%を目指すことが政府の当然の責務であると考えます。この点で総理認識をまずお伺いいたします。  食料自給率を引き上げるためには、イギリスやドイツなどEU諸国で歴史的に試された政策があります。それは、第一に生産意欲のわく農産物価格確保であり、第二に安価な輸入農産物による国内生産の打撃を防ぐ輸入抑制策です。このことによって、これらの諸国は一〇〇%の自給率を達成したのです。これが食料自給率引き上げの鉄則ともいうべき農業政策基本ではありませんか。総理の見解を求めます。  その点で、本法案は、自給率向上国内生産増大の言葉だけは加わったものの、自給率引き上げの担保がないばかりか、農業生産縮小に向かわせる重大な問題点が存在しています。  第一に、本法案は、農家経営の維持に不可欠である価格政策について、生産費に基づく農産物価格支持制度を廃止し、市場任せにするものとなっています。  農家経営が農産物収入によって成り立っている以上、農家経営の維持のためには再生産を保障し得る農産物価格制度が確立されなければなりません。農家減少を食いとめ、新たな担い手確保することが緊急の課題となっているときに、農家収入を支える重要な役割を果たしてきた農産物価格支持制度を事実上廃止して、果たして担い手をふやし、生産拡大する緊急な課題にこたえられるのですか。答弁を求めます。  政府は、価格が下がった場合、影響緩和のため経営安定対策をとると言っていますが、それが無力であることは米の例でも明らかです。いち早く市場原理が導入された米は、九七年大暴落し、稲作経営安定対策は導入されたものの、農家の手取りは暴落前に遠く及びません。もともと生産費を補償する仕組みのない経営安定対策では、農家経営を維持発展させることはできないのではありませんか。  しかも、本法案では、価格が下がったときの経営安定対策すら一部の担い手に限定され、大多数の農家は無防備で市場競争にさらされ、切り捨てられることになるのではありませんか。これでは、我が国農業生産を全面縮小に導き、自給率をさらに引き下げることになりますが、総理はこれを是認するのですか。答弁を求めます。  第二に、自給率向上には輸入拡大政策の転換が不可欠ですが、本法案は、食料安定供給確保国内農業生産とともに輸入と備蓄を適切に組み合わせて行うことを掲げています。また、「国は、」「安定的な輸入確保するため必要な施策を講ずる」と食料供給における輸入依存を明記しています。これは現行法にはない規定です。  農水大臣、あなたは農産物輸入自由化が食料自給率低下の原因となったという明白な事実さえ認めようとしていません。農水大臣の私的諮問機関、農業基本法に関する研究会でも農産物輸入増加自給率を一貫して低下させたと明確に指摘しているのです。この事実を否定するのですか。明確な答弁を求めます。  輸入依存の規定基本法に盛り込んだままでは、農産物輸入を一層ふやそうということであり、自給率引き下げの方向を宣言しているようなものではありませんか。総理の答弁を求めます。  本法案が進める価格支持制度の事実上の廃止と輸入依存の方向は、WTO協定を忠実に実行することを意味しています。WTO協定に沿った政策の実施は、日本農業生産基盤を破壊し、危機を一層深刻化させるものであり、日本農業の将来に対して大きな禍根をもたらすものです。日本のように極端に食料自給率の低い国にも一律に輸入規制や国内助成の禁止を迫るWTO協定は、不当かつ不平等なものであります。改定が不可欠ではありませんか。その一歩として、食料自給の根幹をなす米の関税化の撤回を行うべきだと考えますが、総理の見解を求めます。  第三に、本法案が、農業生産担い手については、圧倒的多数の家族経営には一言触れるだけで、効率的かつ安定的な農業経営育成農業経営の法人化推進に力点が置かれている点です。  これは、七年前につくられた新政策、稲作でいえば十ないし二十ヘクタールの大規模農家育成し、大多数の中小農家を切り捨てる法文化であります。現行基本法がうたっている家族農業経営発展と自立経営の育成を放棄するものではありませんか。  七年前の新政策育成すべきとした認定農家の実態はどうでしょうか。農水省の調査でも、四割が経営改善計画の見直しが必要とし、農産物価格低迷を理由に三割が再申請を行わないとしています。市場原理のもと、規模拡大を押しつけられた認定農家育成は重大な困難に直面しているのではありませんか。規模拡大市場原理の一層の導入を目指した新政策農業経営そのものを危機に追いやっています。そのような政策を見直さないで、さらに効率的、安定的経営という大規模経営の育成を進めても、ますます農家経営を困難にしていくのではありませんか。農水大臣の答弁を求めます。  さらに、法人化推進の行き着く先は株式会社の農地取得です。農水大臣は農業経営の株式会社化を後押しすると言いました。農業生産法人の株式会社化を認めたり、その資本参加を容認することは、一般の株式会社の農地取得にもつながります。こうした方向は、農地を利潤本意に扱い、土地投機や農地減少に導くものではありませんか。あわせてお聞きをいたします。  本法案のように、家族経営を基本とせず、大規模化、企業的経営の育成を中心に据えることは、大多数の農家農政対象から切り捨てるものであり、このことは、国内農業縮小食料自給率の一層の低下につながることは明白ではありませんか。総理、お答えください。  総理、二十一世紀を前に食料危機の警鐘が鳴らされている中で、我が国世界最大の食料輸入国であり続けることは許されません。自給率向上農業の維持発展は国際的責務でもあります。私は、その課題を果たすため、食料輸入依存政策を転換すること、家族経営を農業経営基本位置づけること、そして市場原理万能主義を改め、農産物価格保証制度の再構築が必要であることを主張して、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  27. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大沢辰美議員にお答え申し上げます。  食料自給率についてまずお尋ねがありました。  食料自給率目標につきましては、生産消費両面での課題を明らかにしながら数字を積み上げていくことが適当であると考えております。また、その実現に向けまして、生産性向上と需要に即した生産の展開による国内農業生産増大食料消費改善のために必要な施策を総合的かつ計画的に講じてまいる考えであります。  次に、農産物価格政策についてのお尋ねでありますが、今後、農業生産拡大を図るため、需要に即した生産の展開を促すことが不可欠であります。そのため、農産物の価格政策につきましては、需給事情や品質評価を適切に反映して価格が形成されるよう見直しを行うとともに、経営安定の施策を通じて担い手確保にもつながるものと考えております。  次に、経営安定対策の内容や対象は、大多数の農家経営の維持発展が図られないものとなるのではないかとのお尋ねであります。  価格政策の見直しに伴う経営安定対策は、今後の我が国農業持続的発展を支える農業者の安定的な経営の維持継続を確保することを基本に講じていく考えであります。この考え方に基づきまして、現在、各品目別にその生産・流通状況等を踏まえつつ、具体策の検討が進められているところであります。  これに加えまして、経営全般にわたる支援策を総合的かつ計画的に講ずること等により、農業持続的発展を図ってまいります。  次に、輸入に関する規定についてでありますが、国土資源に制約のある我が国におきましては、国民が必要とするすべての食料国内生産で賄うことは極めて困難であります。このため、国内生産増大を図ることを基本として安定供給に取り組むものの、国内生産では需要を満たすことができない農産物につきましては輸入を行い、安定的供給確保する旨を規定いたしたものであります。  次に、WTO協定の改定及び米の関税化についてのお尋ねでありますが、重要なことは、まず初めに協定の改定ありきということではなく、二十一世紀に向け農業者が明るい展望を持って農業に取り組める交渉結果を獲得できるように努めることであると考えております。また、米の関税化は国益の観点から最善の選択として決定いたしたものであり、撤回する考えはありません。  次に、担い手考え方についてお尋ねでありますが、今後の農政において効率的かつ安定的な農業経営農業生産の相当部分を担う農業構造を確立することが重要と考えておりますが、我が国農業はこれまでも家族経営を中心に展開されておりました。この効率的かつ安定的な農業経営についても家族農業経営が主体となって担われるものと考えております。  最後に、農政対象についてお尋ねでしたが、今後の農政において望ましい農業構造を確立するためには、各地域に広範に存在する兼業農家や高齢農家についても効率的かつ安定的な農業経営との協力関係のもとに地域の組織活動の中に適切に位置づけることが重要と考えており、集落営農等組織的な活動を促進していく考えであります。  以上、お答え申し上げましたが、残余の質問につきましては関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  28. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答えいたします。  食料自給率低下の原因についてでありますが、食料自給率低下してきたのは、国土資源に制約がある中で、自給品目である米の消費減少する一方、輸入飼料、輸入原料に頼らざるを得ない畜産物や油脂の消費増加するなど、主として国民の食生活が大きく変化したことによるものと認識をしております。  次に、効率的、安定的な農業経営確保育成についてでありますが、農業の持続的な発展を図るためには、その中核的な役割を担う経営感覚にすぐれた効率的、安定的な経営体確保育成することが極めて重要であります。このため、本法案においても営農の類型と地域の特性に応じ必要な施策を講ずるものとしております。  最後に、法人の農地取得でありますが、株式会社一般の農地取得は適当ではなく、地域に根差した農業者の共同体である農業生産法人発展段階の一形態としての株式会社形態を認める等、農業生産法人制度の見直しを行うこととしております。  なお、農地の投機的取得等、この見直しに伴う懸念を払拭するための措置については、現在、専門家による検討会で検討をして、夏ごろまでに結論を得た後、関連法制度の整備を行うことを考えております。(拍手)     ─────────────
  29. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 谷本巍君。    〔谷本巍君登壇拍手
  30. 谷本巍

    ○谷本巍君 社会民主党・護憲連合を代表し、食料農業農村基本法案について、総理並びに農林水産大臣質問します。  高い理念をうたった農業基本法が制定されたのは三十八年前でありましたが、もたらされたものは、食料自給率の著しき低下であり、自然的再生産過程の破壊が進んだことでありました。農村の過疎化も進みました。  しかるに、政府は、このような状態を招いた責任を省みないまま新法案を提案していることは極めて遺憾であります。  私は、まず、現行法のもとで展開してきた政策の総括を総理に求めるものであります。  次に指摘したいのは、現行基本法は、四十年代半ばには自由化の進展と米需給の不均衡等々の諸問題が顕在化したにもかかわらずそのまま放置され、平成四年の新政策以降は明らかに政策理念をも転換したため、この法律は完全なるもぬけ法と化したのであります。  国会の審議を経た法律がこのように形骸化され、閣議決定どころか省議決定さえもないままに新政策推進されてきたことは、法治国家として許されるべきことではありません。総理の御所見をお聞きしたいのであります。  衆議院は、政府原案に対して二つの柱より成る修正を行いました。  その第一は、国内生産増大基本食料自給率向上を明確にしたことであります。  総理国内生産増大を目指すには、担い手確保とともに農用地の拡大が図られなければなりません。  かつて日本の農地は六百万ヘクタールを数え、今日では五百万ヘクタールを割る水準に落ち込んでおります。その五百万ヘクタールは、二百万ヘクタールの転用があったのに対し、百万ヘクタールの造成によって確保されたものであります。現在、農地をめぐる現状は、転用のみが一方的に進む状況にあります。農用地確保につきどう考えているか、伺いたいのであります。  また、小麦、大豆、飼料作物など不足農産物自給率引き上げと地域農業づくりについての御所見もお聞かせください。  さらに、国内生産増大させていく上で水の確保が重視されなければなりません。昨年、東北地方を襲った集中豪雨による被害を見ると、いかに山が荒れ、保水力が低下しているかが歴然であります。中山間地の過疎化の進行は歯どめがかかっておりません。山の守り手を失うことは水を失うことであり、水を失うことは食料を失うことであります。米一キロをつくるのに必要な水は四千五百キロ、牛肉一キロを生産するのに必要な水は実に二万キロに及ぶという事実を見ても明らかであります。既に世界銀行は水資源の不足が決定的段階に入ったと警告しております。本法案は、水問題をどのように位置づけ、具体的にどのような施策を講じていくのか、農水大臣の所見を承りたいのであります。  また、自給率引き上げのもう一つの手法とされるいわゆる日本型食生活を広げるために、政府はどのような施策を展開していくのでありましょうか。  戦後の日本の食生活の急変の背景には、MSA小麦等々の例に見るように、アメリカ政府の余剰農産物処理政策と日本政府の受け入れに向けての助成政策がありました。政策によって生み出された行き過ぎは政策で是正されるべきである。単なる教宣活動等によって日本型食生活の復権が実現するとは到底考えられません。農水大臣、いかがお考えでしょうか。  次に伺いたいのは、農業の果たす多面的機能の重視についてであります。  初めにお尋ねしたいのは、本法案の言う効率的生産とは何かということであります。薬剤漬けと大型機械で肥沃な土を滅ぼす農業は、目先の低コスト化にはつながるものの、他方では大きな環境負荷を生み、地域社会環境から食物汚染をも生み出してきました。既に、EU等に見るように、環境負荷軽減に向けた農業こそ本当の効率性とする見解が生まれていますが、農水大臣はどうお考えでしょうか。  農業生産をめぐる世界の動向は、環境破壊型から環境保全型への転換のときを迎えております。そのため、農政のあり方にしても、薬剤漬けから有機型へ種子も農法も変えていくことや所得確保等への公的支援も進めていくべきです。農業の果たす多面的機能を重視し、現行農地制度を守るとともに、環境保全農業育成に向けた所得政策の拡充が求められております。総理、どうお考えでしょうか。  最後に、以下二点について総理にお伺いいたします。  本法案は、国内生産輸入と備蓄によって食料の安定的供給を期すとしております。この前提には日本の貿易黒字がいつまでも続くという考え方があるかのようであります。しかし、現実は、政府内部や民間のシンクタンク等から示されているものは、二〇〇五年から一〇年程度の期間に赤字へと転落するという見方が少なくないのであります。総理はそのような事態にどう対処されるか、お尋ねいたします。  次に伺いたいのは、衆議院におけるもう一つ修正の柱をなす基本計画国会報告についてであります。  本法案は、宣言法的性格のものであって、その実行は、実際は行政の手による基本計画一任も同然となっております。冒頭に申し上げたように、現行基本法理念政策の乖離などによるもぬけ法になったのは、行政一任の宣言法であったことにあります。法治国家としてあるまじき事態の発生を防ぐには、基本計画国会への報告とともに、国会論議の保証が伴わなければなりません。その点総理はどう受けとめておられるかを伺い、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  31. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 谷本巍議員にお答え申し上げます。  まず、現行基本法の総括についてお尋ねでありました。  現行基本法は、農業者生活水準の格差是正等に一定の成果を上げたものの、予想を上回る経済成長国際化の中で食料自給率低下等が進行いたしました。一方で、多面的機能発揮国民の新たな期待が高まってまいりました。これらの事態を直視し、これまでの政策を新たな理念のもとに再構築しようと判断するに至ったものであります。  現行基本法の形骸化についてお尋ねでありました。  現行基本法制定後の状況変化国民の新たな要請に対応すべく新基本法案を提出いたしたところであり、本法案におきましては、個別の施策のつながりを確保する仕組みとして基本計画の策定とその定期的な見直しを定め、本法案に沿った施策の展開を図ることといたしております。  農地についてのお尋ねがありました。  新基本法案におきましては、農地確保及びその有効利用を図ることを明確に位置づけております。また、これを踏まえまして、農業振興地域の整備に関する法律の一部改正案を今国会に提出し、優良農地確保について新たに国の指針を明らかにしてまいりたいと考えております。  小麦などの自給率引き上げについてのお尋ねでありましたが、小麦、大豆、飼料作物などの生産増大を図るに当たりましては、全国的な目標にとどまらず、地域段階でもその実情に応じてさらに具体的な目標の策定を促進し、生産者、実需者、行政等が一体となった取り組みを推進することが重要であります。地域農業におけるこのような取り組みに対し、必要な支援を行ってまいる考えであります。  次に、環境保全農業についてのお尋ねでありました。  このような農業推進するため、農地制度の適切な運用により優良農地確保しつつ、土づくりと化学肥料農薬の低減を一体的に行う農法への転換を促進する法制度の創設、それに必要な施策の整備への助成など、支援措置の充実を図ってまいります。  食料安定供給についてのお尋ねですが、将来にわたり国民が必要とする食料安定供給確保することは国の基本的責務であります。本法案では、食料供給につきまして、国内農業生産増大を図ることを基本とすることや、不測の事態においても最低限度必要な食料確保を図ることを基本理念といたしており、食料安定供給確保のための政策を着実に推進してまいる考えであります。  最後に、基本計画国会報告についてのお尋ねがありました。  基本計画は、国会での御審議をいただき制定される本法の基本理念基本施策方向に沿って政府が具体的施策推進するための計画であります。このような性格を有する基本計画につきまして国会に報告することは、国民の理解と支持を得つつ農政を進める上で大変意義深いことであると考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  32. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答え申し上げます。  まず、新基本法案における水問題の位置づけでございますけれども、本法律案第四条及び第二十四条におきまして農業用水の確保及び有効利用を図ることを明確に位置づけております。  水は、農地と並び農業を営む上で不可欠の資源であり、今後とも農業用水を確保するため、かんがい排水施設の計画的な整備、更新を図るとともに、施設の適切な管理を図ってまいりたいと考えております。  次に、食生活でございますが、我が国における食生活の現状を踏まえ、今後、健全な食生活に関する指針の策定、食料消費に関する知識の普及、教育、情報提供等を推進することとしております。また、関係省庁及び食にかかわる関係者とも連携し、食生活を見直す国民的な運動を展開していきたいと考えております。  最後に、環境保全農業についてでございますが、本法案では、農業の持続的な発展を図るため、望ましい農業構造の確立とともに、農業自然循環機能の維持増進が必要である旨を基本理念として規定しております。  環境保全農業推進は、この自然循環機能の維持増進を図る上で重要な役割を果たすものでありますが、それにより病虫害や連作障害の減少、有機性資源のリサイクルが図られること等により、農業経営の効率化にもつながるのみならず、地域資源の効率的な利用にも資するものと考えております。(拍手)     ─────────────
  33. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 阿曽田清君。    〔阿曽田清君登壇拍手
  34. 阿曽田清

    ○阿曽田清君 私は、自由党を代表して、食料農業農村基本法案について質問をいたします。  昭和三十六年、現行農業基本法農業の憲法として誕生し、機能してまいりました。農業者や関係団体は基本法目標を目指し全力を挙げてその実現に取り組んでまいったと言っても過言ではありません。  本法案は、二十一世紀の国際的視野に立った農業政策に指針を示すものであります。農業国民食料生産基盤として、農家の暮らしや国土環境保全を眼下におさめて農村視点を取り入れるという画期的なものと言えましょう。そして、農業者が奮い立って取り組めば農業がよくなるんだという気持ちが発揮できる政策であることを大いに期待するところであります。  国民にとって新たな基本法はどのような意義を持ち、今後の農政のあるべき姿を描いておられるのか、総理お尋ねいたします。  次に、基本理念によりますと、国民の高度で多様な需要にこたえる合理的価格形成を推し進め、供給面では国内農業増大させることを基本として、輸入、備蓄を組み合わせることがうたわれておりますが、それでは農家所得の安定確保は期待できません。中山間地における直接支払いへの道が開かれることとなりましたが、生産条件不利性を補うための支援とあわせて、平場の所得対策についてはいかに考えておられるのでしょうか。  先進国では、価格政策から所得政策へと政策の軸は移ってきております。農業の特性からして収入の不安定さが魅力をなくしているのであります。所得の安定対策としてカナダのNISAのような制度こそが必要だと考えますが、農林水産大臣、いかがなものでしょうか。  次に、担い手対策についてお尋ねいたします。  農業人口が一貫して減少していることから、担い手対策は切実さを増しております。かつては十万人近くいた新規学卒就農者は今や二千人ほどに落ち込んでおります。  フランスでは、経営主となったときを新規就農者と位置づけ、就農助成金と近代化のための低利融資、さらに助成などを行っております。その前提として、新規就農者が経営能力、信用、技術等を持ち、自立する経営プランを提出し、審査に合格すれば新規就農者と認められるわけであります。  農業は優秀でないと務まらない、そのような認識が生まれることが私は大事であると思いますが、思い切った方針の転換ができないか、農林水産大臣にお伺いします。  次に、農村の伝統文化の継承についてお伺いいたします。  我が国農村では、自然と共生しながら生活がなされ、地域社会や多様な文化が形づくられてきた歴史的経緯があります。このため、農村地域における伝統芸術、文化的遺産、さらに技術等は極めて多種多様にわたり、農耕民族としての彩りの濃い我が国の文化の原点と言えましょう。    〔議長退席、副議長着席〕  私どもの理想は、美しさと活力に満ちた農村が存在することであり、都市住民のあこがれと農村住民の誇れる農村への回帰の魅力の創造であります。  農村の伝統文化等に対する評価とこれからの取り組みについて、農林水産大臣及び文部大臣の御所見をお伺いいたします。  次に、WTOと法案の関係についてお尋ねいたします。  次期WTO交渉は来年より始まり、三年を予定して交渉に臨むとの政府姿勢が示されております。交渉は改革の過程にあることが前提となっており、改革とは非関税障壁の廃止、貿易管理の見直しなどの自由化を指すものであります。交渉を待って国内体制を整備するという愚かさを再び繰り返さず、競争力を備え、万全の体制で交渉に臨むのが政治の王道と言えるものでしょう。  本法案で、食料安定供給国内農業増大を図ることを基本とすると明記されております。WTO交渉において国内法を盾に頑張るという姿勢を高く評価しますが、新農業基本法を機に国際競争に打ちかつ我が国農業の構築を目指す政府姿勢と決意を総理にお伺いいたします。  次に、自給率向上と飼料米対策についてお伺いいたします。  現在、カロリーベースで我が国食料自給率は四一%で、先進国では最下位であります。来年度より需給の調整に向けて飼料米の生産を取り入れる方針が示されておりますが、自給率アップを目指し、力強くこれに取り組む意向があるのか否か、いま一つ見えません。自給率目標を示せという多くの主張は、政府姿勢が問われているのであります。  我が国は瑞穂の国と言われますが、三六%の水田に水を張ることができません。水田に水を張ることのできる作物は飼料米の栽培であろうと存じます。  減反の有効活用、飼料貿易のあり方等を見据えた取り組みが二十一世紀の大きな課題だと思うのでありますが、農林水産大臣、いかがなものでありましょうか。  最後に、基本法案前文がありません。現行基本法十六本のうち六本が憲法のように前文を持っており、法の理想とする目標達成を目指す関係者の力強い励みとなっているものであります。  当時の池田勇人総理は、みずから願って、農業従事者の希望をわき立たせようと前文の起草を命じました。  小渕総理のリーダーシップのもと、農村がよみがえり農家が奮い立つような前文を盛り込むことができないか、総理にお伺いいたします。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  35. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 阿曽田清議員にお答え申し上げます。  まず、本法案の意義と今後の農政のあるべき姿についてお尋ねがございました。  この新たな基本法案は、国家社会における食料農業農村位置づけを明確にし、農業者だけでなく国民全体の視点に立った基本理念のもとに政策を再構築しようとするものであります。これにより、農業者自信誇りを持って農業に励み、国民が安全と安心を得て暮らすための条件整備が図られるものと考えております。  次に、国際競争に打ちかつ農業の構築についてお尋ねがありました。  本法案は、食料農業農村に関して、国民全体の視点に立った基本理念のもとに政策を再構築しようとするものであります。本法案に示された方向に沿いまして、国内農業生産性向上、品質の向上生産資材費の低減、加工、流通の合理化等に向けた総合的な対策に取り組み、我が国農業の体質強化を図ってまいります。  最後に、基本法における前文についてのお尋ねがありました。  前文には法案基本理念法案提出に至った事情が記述されるのが通例でありますが、本法案におきましては、基本理念は条文の形で明確化し、法案提出に至った事情は趣旨説明で説明することから前文を置かなかったものでありますが、必要な事項は盛り込んであると考えております。  なお、今国会の施政方針演説でも申し上げましたとおり、農政の改革は、二十一世紀に向け今から取り組まなければならない未来へのかけ橋とも考えております。農業農村の有する幅広い機能に十分目を向け、農業者自信誇りを持って農業に取り組めるよう、政策の具体化に全力を挙げてまいる覚悟であります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  36. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答えいたします。  まず、平地の所得安定対策でございますが、今後の農政の展開においては、農業者自身の経営努力基本に経営の安定、発展に資する施策を総合的に講じていくこととしており、この一環として、品目別に価格低落時における経営安定対策を講じる考えであります。  なお、農業経営全体をとらえた安定対策につきましては、品目別の価格政策の見直しの状況等を勘案しつつ検討を行ってまいります。  次に、担い手対策についてでございますが、農業は、自然科学面での知識のみならず、経営・経済面での高度な能力、すぐれた農業技術を必要とする先端的な産業であります。このことは国民の皆さんにも知っていただかなければならない重要な点と考えております。  農業者育成に当たっては、その発展段階に応じて、普及センターによる技術・経営指導、農業大学校における研修コースの開設等による生涯教育の実施、各種の資金の手当て等の積極的な施策推進しており、今後とも農業が優秀な人材によって担われるよう努力してまいります。  次に、農村の伝統文化等についてでございますが、農村に根づく伝統文化は、農業生産とこれに携わる人々の生活の中ではぐくまれ、歴史的な経緯の中で受け継がれてきた我が国にとってかけがえのない財産と考えております。  このため、文部省を初めとする関係省庁などとも密接に連携し、農業史跡の保存と伝承活動に対する支援や顕彰、さらに、国民が伝承文化に親しみ、農業生産活動とのかかわりやその今日的意義を普及する機会の充実、そして田園空間全体に親しめるようにすること等、農村文化の保全、伝承のための施策推進してまいります。  最後に、飼料用稲生産についてでありますが、飼料用稲につきましては、湿田において作付栽培が可能であり、通常の稲作と栽培体系が同じである一方、生産コストが非常に高いという問題点があります。その導入を図るためには、まず多収量品種の収量安定化のための技術の開発等を推進することが重要であり、本年度から研究開発に着手したところであります。(拍手)    〔国務大臣有馬朗人君登壇拍手
  37. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 阿曽田議員の御質問にお答え申し上げます。  農村地域の伝統文化に対する評価及び取り組みについてのお尋ねでございますが、農村地域では、祭礼行事、伝統芸能、農具等が有形無形の文化財として伝承されており、地域文化が形成され、伝承されているものと認識いたしております。そのような伝統文化を大切にしていかなければならないと考えております。  文部省といたしましては、これまでも農林省を初め関係省庁や地方公共団体と連携しつつ、これらの文化財の保存、活用に努めてきたところでございます。  また、四月に出されました生涯学習審議会の中間まとめにおきましても、地域の文化を伝える活動など地域に根差した子供たちの体験活動を展開することなどが提言されているところであり、文部省といたしましては、今後とも伝統文化の伝承のための施策の充実に努めてまいります。(拍手)     ─────────────
  38. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 岩本荘太君。    〔岩本荘太君登壇拍手
  39. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 参議院の会の岩本でございます。  ただいま議題となりました食料農業農村基本法案につきまして、参議院の会の皆様のお許しをいただき、小渕総理並びに農林水産大臣質問いたします。  まず、日本農業に対する理解と取り組みに対する熱意についてであります。  本法案は、平成九年四月に総理の諮問機関として調査会が組織され、広く全国の農業関係者並びに有識者の英知を結集されて検討された結果が反映されたものと理解しておりますが、その御努力に対しましては、まず敬意を表するものであります。  しかし、法令の内容が幾ら立派でも、これから講じられる諸施策が魂の入ったものでなければ意味がありません。これから長年にわたって日本農業理念として、農業関係者のみならず、日本国民を支える支柱となるものでありますから、そのスタートに当たっては、日本農業に対するしっかりした認識国民全体に確立されていなければなりません。特に、国政をリードするお立場にある総理の御認識は大切であります。  そこで、お伺いいたします。  日本の農業の大切さにつきましては、ただいまの農林水産大臣趣旨説明の中でも健康な生活の基礎となる食料安定供給すること、国土環境保全、文化の伝承など多面的機能発揮することによって国民に暮らしの安全と安心を与えることを強調されておりますが、このことに異を唱える者はまずないと考えます。総理におかれましてもお気持ちは同じだと御推察申し上げます。  それは今に始まったものでなく、農耕民族である日本人のある意味では原点であると言っても過言ではありません。昭和三十六年に制定されたさきの基本法においても、その精神は全く同じだったはずであります。  しかし、現実はどうだったか。さきの基本法が施行されてからしばらくは、日本の高度経済成長期でもありましたが、年率一〇%を超える経済成長が続く中で、農業の成長率はその半分程度で推移していたのが実情であります。農業は日本経済から立ちおくれ、のけものにされていたかの感があったことは否めません。  自立農家を目指しても、農地の流動化がままならず、大規模経営農家として自立した農家は数多くありません。やむなく兼業化によって家計を維持したのが多くの農家の実態であります。兼業化をとりたてて罪悪視するつもりはありませんが、他動的要因でそうなったものであり、決して農業を大事にする姿勢からなったものではありません。そのことが後継者農業を軽視する姿勢につながり、日本農業を惨たんたる状況に追い込んだ元凶ではなかったかと考えております。  この反省を踏まえなければならないのは当然でありますが、それには日本農業に対する正しい理解と深い愛情を持って取り組む姿勢こそが大切です。日本農業に対する総理の御認識とこれからの取り組みに対する御熱意を、ぜひ生の声でお聞かせ願いたい。総理の思いを農業関係者だけでなく全国民にぜひ発信していただくようお願いいたします。  また、広く国民全体に農業を理解してもらうためには、実際に身をもって農業を体験してもらうことが大切であると考えます。学校教育の場では体験農業等が実施されているとも聞きますが、企業等の初任者研修などで取り上げてもらう方法もあろうかと思います。もちろん、企業が自主的、主体的に考えることではありますが、このような試みについて総理の御所見をお伺いいたします。  次に、自給率についてお伺いいたします。  我が国食料自給率は、平成九年時点で穀物自給率が約二八%、カロリー自給率で四一%。なかなか下げどまらないのが実態であります。どのくらいの率が妥当なのか、私には確たる数字はわかりませんが、先進諸国に比べてはるかに低い日本の実態を考えますと、安心できないのが正直な気持ちであります。  不時に備えるための自給率確保は、国防にも匹敵する重要課題であります。安全安心社会の構築を目指す総理にとっては、まさに最重要課題一つではなかろうかと御推察申し上げます。しかし、この問題はかけ声だけで済まされるものではありません。しっかりと具体性を持って取り組まなければならないことは言うまでもありません。  具体的に申せば、国内自給率を上げようとするなら、消費者国内産品を選択してもらわなければなりません。そのためには、今の自由経済の中では、価格競争かあるいは品質競争で外国産品に勝つしか道はありません。農業多面的機能評価する動きもありますが、いまだそのことによって国内農業が優先されるというところにまで国際的コンセンサスは得られていないのが現状です。また、国内農業を守るために保護的色彩を出せば、即座にWTOに提訴されてしまいます。  まず、価格競争であります。  この競争に勝つためには、生産者である農業者にもっと効率のよい農業を展開してもらわなければならないことは言うまでもありません。  しかし、産業連関表で分析してみますと、平成七年時点で、農業国内生産額に対する営業余剰、すなわち必要経費を除いて農業者が取得できる取り分は約三七%にすぎず、生産額の半分にも満たないのであります。このことは、農業者が幾ら努力してもこの約四割弱の範囲でしか価格を下げられないことになります。残りの六割強は二次産業、三次産業の取り分であります。自給率向上させるためには広く全産業界の協力がなければならないことがわかります。自給率向上をこの全産業にかかわる問題として取り組む御覚悟がありやなしや、総理にお伺いいたします。  次に、品質競争であります。  国内産品の方が品質がよければ国内産品が買われ、自給率は上がります。そのためには品質の優位性を明らかにする必要があります。  現在、無農薬栽培等の指導もされているようでありますが、この方向をさらに拡大して、例えば野菜類は鮮度により栄養価が変わるはずでありますが、その点に着目して、台所まで日数のかかる外国産品より鮮度のよい地場産品の方が栄養価が高いなど、時間的経過によって品質が変わることなどを明らかにして、消費者に品質比較ができる情報を提供する等の取り組みがあろうかと思います。これは一例でありますが、このような方向に向けた研究や普及について農林水産大臣はいかがお考えか、御所見をお伺いいたします。  次に、自給率をどの程度にするかについてであります。  どの自給率をもって設定されるかは存じませんが、総合的な自給率であるカロリー自給率について質問いたします。  現在のカロリー自給率は四一%でありますが、留意しなければならないのは、この自給率は飽食の時代の自給率であることであります。大量のカロリーを有する穀物飼料を大量に輸入して、その数分の一のカロリーしか提供しない肉に変換して食べているのであります。このことが自給率を下げている大きな原因の一つだとも思われます。不時の異変が発生したときまでもこの飽食の現代の食生活が要求されるとは思いません。  もちろん、不時といってもいろいろな状況が予想されます。単に総論として自給率向上を唱えるのではなく、それぞれの状況に合わせた対策を立てなければなりません。現在、きめの細かい検討を準備されているとも伺いますが、その辺も含めて農林水産大臣の御所見をぜひお伺いいたします。  最後に、中山間地活性化対策についてお伺いします。  昨年十二月の臨時国会の冒頭でも、小渕総理の所信表明に対する代表質問伺いました。中山間地の活性化は、農林業の問題としてだけでなく、教育環境や福祉厚生環境などの生活環境の整備も必要であり、関係する多くの省庁が総合的に取り組むべきである旨ただしたのに対し、関係省庁と一体となって施策の充実と効率的な推進に努めてまいりたい旨、大変前向きの御答弁をいただきましたが、今、基本法が審議されるに当たり、具体的にどのような御努力をされるおつもりか、再度お尋ねをいたします。  以上が私の質問のすべてであります。我が会派は農水委員会に席を持たないため、若干細部にわたる質問をしたことをお許しいただき、総理並びに農林水産大臣の生の声の御答弁をお聞かせ願うことを再度お願いして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  40. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 岩本荘太議員にお答え申し上げます。  まず、農業振興にかける理解と熱意についてお尋ねでありました。  今国会の施政方針演説でも申し上げましたとおり、農業農村は、食料生産に加えまして国土環境保全地域文化の継承等の幅広い機能を有していると考えております。こうした機能に目を向け、新たな基本法に基づく農政の改革が未来へのかけ橋となるよう、農業者自信誇りを持って農業に取り組める条件の整備に全力で取り組む決意であります。  次に、農業体験についてお尋ねがありました。  都市と農村の交流促進や市民農園の整備のほか、子供たちを対象農業体験学習の推進等の取り組みを行っております。  企業の研修の中に体験農業を組み込むとの御提案につきまして、農業への理解を促進する上で有効であり、企業からの要望があれば、体験農業の受け入れ場所や指導者の紹介等の支援を行ってまいる所存でございます。  食料自給率についてのお尋ねでありますが、自給率向上は、需要に即した生産推進され、生産されたものが消費者や実需者に選択されて初めて実現されるものであります。このため、国内農業生産性向上、品質の向上生産資材費の低減、流通の合理化等に向けた総合的な対策に、関係業界の協力も得つつ、関係省庁が十分連携をとり、取り組んでいく考えであります。  中山間地域の活性化についてお尋ねでありましたが、中山間地域振興に当たりましては、農業振興のほか、生活環境の整備、就業機会の増大等多様な課題があります。これらの課題に応じて、関係省庁の連携によるプロジェクト方式での予算措置、関係省庁から成る協議会方式を活用した生活環境整備事業の効率的な執行など、具体的な対応を促進してまいりたいと考えております。  昭和三十六年に現基本法が制定をされました。私自身、三十八年に国会に議席をいただきまして、たまたま出身地も中山間農業地帯でございましたので、この基本法に基づきまして努力をいたしてまいりましたが、新たなるこの基本法を制定することによりまして、二十一世紀に向けての基本的考え方に立脚いたしまして、食料農業農村確立を図るとともに、新しい世代に向けて私自身も全力を挙げて努力をいたしてまいりたい、このことを質問者に申し上げて、御答弁にかえさせていただきたいと思います。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁させていただきます。(拍手)    〔国務大臣中川昭一登壇拍手
  41. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答え申し上げます。  まず、国内産品の優位性を明らかにするための品質比較等の研究についてでございますが、野菜や果実等の青果物は鮮度保持が極めて重要であり、貯蔵・流通技術に係る研究開発や実用化を進めているところであります。また、国産農産物について、品種の改良や栽培技術の改善等により栄養価を高める等、品質の向上を図っております。  今後とも、このような研究開発を着実に進めるとともに、研究成果につき幅広く情報提供をしてまいりたいと考えております。  最後に、食料自給率についてでございますが、食料自給率目標は、農業者消費者、その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定め、実現可能なものとする必要があります。  このため、生産面では、品目ごとに品質・コスト面における課題明確化した上で品目ごとの生産努力目標自給率を明らかにし、また、消費面では、食べ残し・廃棄の抑制や日本型食生活の定着への取り組みを考慮していくこと等の国民的理解を得るための普及啓蒙にも努めながら、きめ細かい検討を行った上で、これらの数字を積み上げながら目標を設定していきたいと考えております。(拍手
  42. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  43. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 日程第一 森林開発公団法の一部を改正する法律案  日程第二 農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案   (いずれも内閣提出衆議院送付)  以上両案を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長野間赳君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾掲載〕     ─────────────    〔野間赳君登壇拍手
  44. 野間赳

    ○野間赳君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  まず、森林開発公団法の一部を改正する法律案は、特殊法人の整理合理化を推進するため、農用地整備公団を廃止し、その権利義務について森林開発公団を改称した緑資源公団に継承させるとともに、水源を涵養するため森林の造成を行う必要があるものとして指定された地域のうち、農業生産条件が不利な地域において、森林の造成と農用地、土地改良施設等の整備を一体的に実施する事業を緑資源公団の業務に追加する等の措置を講じようとするものであります。  委員会におきましては、農用地整備公団の廃止に伴う基盤整備事業の推進方針、緑資源公団における組織・業務のあり方、特定地域整備事業の実施方針、林道整備のあり方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して須藤理事より反対である旨の意見が述べられました。  討論を終わり、採決の結果、本法律案賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対し、四項目にわたる附帯決議を行いました。  次に、農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案は、最近における農業事情の変化等に即応して農業災害補償事業の健全な運営に資するため、共済事業のてん補内容の充実、蚕繭共済の畑作物共済への統合、農業共済組合等の負う共済責任等の範囲の見直し、農業共済組合の共済事業の運営基盤の充実及び強化の促進等の措置を講ずるとともに、農業共済基金を解散し、その業務を農林漁業信用基金に行わせる等の措置を講じようとするものであります。  委員会におきましては、農業災害補償制度が果たす役割、麦共済における災害収入共済方式の試験的導入の意義、農業共済組合の広域合併、二段階制への対応方針、収入保険制度導入の必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、採決の結果、本法律案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  45. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これより採決をいたします。  まず、森林開発公団法の一部を改正する法律案採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  46. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  47. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十四     賛成            百五十六     反対             七十八    よって、本案は可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕     ─────────────
  48. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 次に、農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  49. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  50. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十四     賛成           二百三十四     反対               〇    よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕      ─────・─────
  51. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 日程第三 国家公務員法等の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。総務委員長竹村泰子君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾掲載〕     ─────────────    〔竹村泰子君登壇拍手
  52. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  本法律案は、人事院の国会及び内閣に対する意見の申し出にかんがみ、一般職の職員の定年退職者等の再任用制度について、六十五歳までの在職を可能とし、再任用された職員の給与、勤務時間等に関する規定を整備するとともに、懲戒制度の一層の適正化を図るため、退職した職員が再び職員として採用された場合において、当該退職及び採用が一定の要件に該当するものであるときは、退職前の在職期間中の懲戒事由に対して処分を行うことができることとする等の措置を講ずるものであります。  委員会におきましては、再任用に当たっての選考の基準の明確化、再任用職員の定員管理、公務員の懲戒処分の実態と綱紀粛正等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終わり、採決の結果、本法律案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対し、附帯決議を行いました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  53. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これより採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  54. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  55. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十三     賛成           二百三十三     反対               〇    よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕      ─────・─────
  56. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 日程第四 海上運送法の一部を改正する法律案  日程第五 航空法の一部を改正する法律案   (いずれも内閣提出衆議院送付)  以上両案を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。交通・情報通信委員長小林元君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾掲載〕     ─────────────    〔小林元君登壇拍手
  57. 小林元

    ○小林元君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、交通・情報通信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  まず、海上運送法の一部を改正する法律案は、離島等の住民の生活に必要な輸送を確保するための措置を講じつつ、一般旅客定期航路事業等への参入に係る需給調整規制を廃止して事業への参入を容易にし、運航ダイヤ並びに運賃・料金の設定及び変更につき原則届け出制とすること等により多様なサービスの提供を促進するとともに、旅客輸送に係る安全確保及び利用者保護の徹底を図るための所要の措置を講じようとするものであります。  次に、航空法の一部を改正する法律案は、国内航空運送事業への参入に係る需給調整規制を廃止して、事業への参入を路線ごとの免許制から事業ごとの許可制に改め、運航ダイヤ並びに運賃・料金の設定及び変更につき原則届け出制とし、あわせて、航空技術の発達等に対応して、航空に係る安全規制の合理化を行おうとするものであります。  委員会におきましては、両法律案を一括して審査し、需給調整規制の廃止と生活交通の確保策、航空及び海上運送における安全確保と公正競争の維持、航空事業への新規参入促進と整備体制のあり方、離島航路の維持と補助制度の必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、順次討論に入りましたところ、日本共産党宮本委員より両法律案反対意見がそれぞれ述べられ、順次採決の結果、両法律案はいずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、海上運送法の一部を改正する法律案に対し、四項目から成る附帯決議を、航空法の一部を改正する法律案に対し、三項目から成る附帯決議をそれぞれ行いました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  58. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これより両案を一括して採決いたします。  両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  59. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  60. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十四     賛成            百九十八     反対             三十六    よって、両案は可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕      ─────・─────
  61. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 日程第六 日本政策投資銀行法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。財政・金融委員長勝木健司君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾掲載〕     ─────────────    〔勝木健司君登壇拍手
  62. 勝木健司

    ○勝木健司君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  本法律案は、特殊法人の整理合理化及び経済社会情勢の変化に応じた業務の効率化の観点から、日本開発銀行及び北海道東北開発公庫を廃止して日本政策投資銀行を設立し、経済社会の活力の向上及び持続的発展、豊かな国民生活の実現並びに地域経済の自立的発展に資するため、一般の金融機関が行う金融等を補完し、または奨励することを旨とし、長期資金の供給等を行わせる等の措置を講ずるものであります。  委員会におきましては、横須賀市において開銀融資の実情調査を行いましたほか、参考人からの意見を聴取するとともに、開銀、北東公庫の出融資の現状、苫小牧東部開発・むつ小川原開発両プロジェクトの失敗の原因、財投機関における政策コスト分析手法導入の必要性、日本政策投資銀行の設立目的及び融資方針等各般にわたる熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。  質疑を終了し、民主党・新緑風会を代表して広中和歌子理事より、北海道東北開発公庫の損失について、一般会計からの交付金により補てんする旨の修正案が提出されました。  本修正案は予算を伴うものでありますので、内閣意見を聴取いたしましたところ、宮澤大蔵大臣より反対である旨の意見が述べられました。  次いで、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して池田幹幸理事より原案及び修正案に反対する旨の意見が述べられました。  討論を終了し、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対し、附帯決議が付されております。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  63. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。小川勝也君。    〔小川勝也君登壇拍手
  64. 小川勝也

    ○小川勝也君 私は、民主党・新緑風会を代表して、政府提出の日本政策投資銀行法案反対する立場から討論を行います。  本法律案は、平成九年九月二十四日の閣議決定に基づき、特殊法人の整理合理化及び経済社会情勢の変化に応じた業務の効率化の観点から、日本開発銀行及び北海道東北開発公庫を廃止して日本政策投資銀行を設立し、日本政策投資銀行法を制定するものであります。  開銀、北東公庫とも、産業の開発及び経済社会発展を促進するため、一般の金融機関が行う金融等を補完し、または奨励することを目的として、長期資金の供給を行うための特殊法人として設立されました。その目的と業務の内容から、開銀と北東公庫が統合することには十分な合理性があり、かつ今後も新銀行が同様の目的を果たしていくことについて、その必要性は十分認められると考えます。特に、拓銀が破綻した北海道では、道内二位の北海道銀行までもが早期是正措置の対象となり、いまだに民間の金融仲介機能は回復したとは言えないことから、北東公庫の業務が新銀行に引き継がれるかどうかは死活問題と言えます。  ところで、北東公庫を語るとき、苫小牧東部開発及びむつ小川原開発を避けて通ることができません。言うまでもなく、両プロジェクトは、昭和四十四年の新全国総合開発計画に基づく大規模工業基地開発計画として、すなわち国家的開発プロジェクトとしてスタートいたしました。苫東には電力会社や石油備蓄、自動車メーカーが、むつ小川原には核燃料サイクル施設が進出しておりますが、分譲率は、苫東が一五%、むつ小川原が三九%と、両プロジェクトは時代の変化に取り残された失敗プロジェクトだと言わざるを得ません。  政府は、昨年十二月、両プロジェクトの取り扱いについて方針を打ち出しましたが、いずれも抜本的処理とは言えず、将来の展望に欠けるものです。経済や社会の構造変化のスピードが目まぐるしい我が国の現状を考えるとき、国家的開発プロジェクトについては従来とは違う新たな発想が必要であり、新銀行の発足を機に、過去の失敗の反省をしっかりと踏まえた上で議論を深めるべきであると考えます。  しかし、大変残念なことに、政府にはそのような姿勢が欠けていると断ぜざるを得ないわけであります。その証左が、両プロジェクトに係る北東公庫の損失を不透明な形で処理し、関係者の責任の明確化等過去の清算をうやむやにしてしまうという、本法律案が有している重大な欠陥にあらわれているのです。すなわち、本法律案では、両プロジェクトに係る北東公庫の損失は開銀の準備金で穴埋めすることとなっており、大蔵省の密室裁量行政的体質を考えると、国民の目に見えないところでうやむやに処理されているという懸念をぬぐい去ることができません。長銀にしても日債銀にしても、金融再生法に基づいて透明な破綻処理を進めていることから、経営者等の責任が厳しく追及できるという事実を肝に銘じるべきであります。  このような考えのもと、民主党・新緑風会としては、損失処理の透明化を確保するため、北東公庫の損失を一般会計で補てんするという内容の修正案を提出いたしました。まことに残念なことに、私たちの主張は受け入れられず修正案は否決されましたが、修正案では北東公庫の損失処理について国会の一般会計予算の審議を経ることとなり、政府原案と比較してはるかに透明性が高くなることから、国や関係機関の責任も明確にすることができたはずです。  現在、衆議院においては行政改革関連法案の審議が進んでいます。「仏つくって魂入れず」という言葉もあるように、行政改革には何よりも意識改革が必要であり、器だけつくり直せばいいというものではありません。当然のことながら、政府系金融機関の統合にも同じことが言えるわけであり、本法律案に魂を吹き込むためには、私たちの修正案を受け入れるべきと考えます。  以上、政府提出の日本政策投資銀行法案反対する旨を申し述べ、討論を終わります。(拍手
  65. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  66. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これより採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  67. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  68. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十二     賛成            百五十一     反対             八十一    よって、本案は可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕     ─────────────
  69. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会      ─────・─────