○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、ガイドライン
周辺事態関連
法案に対し、反対の討論を行います。
本
法案は、戦争をしない国から戦争をする国に変えるという、
我が国の命運にかかわる重大
法案であります。それにもかかわらず、我が党が厳しく追及した自由党小沢党首の戦争参加
法案という発言と
政府見解との重大な食い違いやこの
法案の基本概念など、いまだに明確な答弁が示されず、
審議を十分尽くさないまま採決を強行することは、議会制民主主義を踏みにじり、
国会の
責任を放棄するものであります。
さらに、先日、太平洋戦争で悲惨な戦場となった沖縄で地方公聴会が開かれ、平和を願う切実な沖縄の心が訴えられ、
国会は
法案の通過儀礼とするなとの怒りに満ちた声が表明されましたが、早くもこれを踏みにじってよいのですか。
まず私は、我が党の強い反対を押し切り、自民、自由、公明の多数による本日の採決強行に強い抗議を表明するものであります。
反対
理由の第一は、このガイドライン
法案が、アメリカの起こす戦争に日本が参加する紛れもない憲法違反の戦争
法案であり、我が憲法のもとではそもそもその存在が許されないものだからであります。
侵略戦争を深く反省し、世界に先駆けて戦争を放棄した我が
日本国憲法第九条は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇、武力の行使を厳しく
禁止しています。
国会のどんな多数派といえども、主権者たる国民の意思を問うことなしに、この憲法を踏みにじって戦争に参加する
法律をつくる権限などあるはずはありません。
ところが、ガイドライン法によって日本が引き受けることになる後方地域支援、すなわち戦闘中の米軍に対する武器弾薬、兵員の輸送や軍事物資の補給、武器の修理などは、紛れもなく米軍の戦闘行為と一体不可分の兵たん活動であります。
この支援行為が武力の行使であることは、本院の
審議でも我が党が究明したように、国際司法裁判所の判決や国連総会の諸決議に照らし、今日の国際法の到達点であることは明白であります。また、戦争には前方も後方もない、これも軍事の常識であります。このことは、軍事目標だけでなく放送設備や発電所に至るまで爆撃の
対象とされている今日のユーゴの実態を見ても明らかであります。
日本が行う後方地域支援が武力行使と一体になるものでないという
政府の主張は、まさに日本的造語であり、世界が絶対に受け
入れない詭弁であります。そもそも憲法第九条によって世界で最も武力行使を厳格に放棄した日本が殊さらに武力行使の
範囲を意図的に世界で最も狭く解釈していること一つとってもこの破綻は明白であります。みずからの国の憲法を誠実に守れない
政府を世界のどこが信頼するというのですか。
反対
理由の第二は、
法案の骨格をなす根本概念、定義を明らかにしないままで押し通そうとしていることであります。
そもそも日本周辺地域とはどの地域か、いかなる事態を
周辺事態というのか、この肝心かなめの問題について法文には一切
規定がないという、まことに
法律として異常な
法律なのであります。
政府は、地理的概念ではないと言いながら、一方では
周辺事態が起こると想定される地域があると述べ、それでは台湾が含まれるのかと、こう追及すれば、これには明言できないなど、我が党が明確な
政府統一
見解を要求しても何ら答えられないありさまであります。
結局、明白なことは、周辺地域も
周辺事態有事の判定もすべてアメリカの軍事的判断とアメリカに追随する
政府の判断にゆだねるもので、このような白紙委任立法なるものは、法としての適正
手続、デュープロセスに反し、およそ主権国家のありようでも法治国家のありようでも断じてないと言わざるを得ません。
第三の
理由は、国連と国際法を無視したアメリカの無法な干渉と先制攻撃の戦争に日本が
協力することであります。
政府は、アメリカの軍事行動は国連憲章と国際法に基づくものと繰り返し答弁しています。しかし、このアメリカ絶対正義論なるものが、国連総会決議で厳しく批判されたパナマ、グレナダへの軍事侵攻やイラクへの一方的攻撃のみならず、米国防関係文書そのものが米軍は国益のためには先制攻撃も行うと公然と明記していること、そして現に、何ら国連決議もない今日のユーゴ無差別爆撃によってもその破綻は明白ではありませんか。
このアメリカ絶対正義論なるものは、
我が国周辺諸国はまるで無法国家とでも言うべき不当な立場と一体のものであり、アジア諸国を敵視し、そこへの介入を前提にしたものにほかなりません。
次に、日本
政府は、アメリカの戦争に自動参加するのではなく主体的に判断すると、こう言いますが、今多くの国々がユーゴ空爆の即時中止の声を上げているにもかかわらず、この世界の世論に反し、アメリカに対して即時中止を求めることができない日本
政府に主体的判断などできるはずはないではありませんか。
アメリカがユーゴ空爆のような介入戦争をアジア太平洋地域などで行った場合に、まさにこれを
周辺事態として日本が参加することになるのであります。だからこそ、中国を初めアジア諸国が繰り返し深い危惧と懸念を表明しているように、この
法案はアジアの軍事的緊張を高め、日本がアジアの孤児の道を歩もうとするものであり、二十一世紀への日本の進路を誤るものであることは明白であります。
第四の
理由は、国民や地方自治体の不安や懸念、疑問に答えないままアメリカの戦争に自治体と
民間を動員し、日本列島全体を米軍の発進基地、一大補給・兵たん拠点とすることであります。日本の平和と安全に影響を及ぼす事態なのだから
協力は当然という
政府答弁が示すとおり、一たん
周辺事態となれば自治体と
民間の動員は事実上の強制になり、国民の生活と権利が脅かされることは明らかであります。
米軍基地を持つ十四の都道県知事連絡協議会は、五月二十日の緊急要請で、自治体
協力の
内容、
手続、
期間などを何ら
規定せずにすべて
政府に白紙委任することへの重大な懸念を訴えています。また、地方議会でも反対、批判の
意見書は既に二百三十六に上っています。憲法は、
政府の行為によって国民を再び戦争の惨禍に巻き込むことを許さないと宣言しています。だからこそ、採決の前にこれらの声に
正面から答えるのは
政府の当然の
責任ではありませんか。輸送の
分野を担わされる
民間の陸、海、空、港湾の
労働者がその立場を超えて共同し、国民の先頭に立って大きな反対の声を上げているのも当然であります。
海員組合の代表が本院の公聴会で、第二次世界大戦、朝鮮戦争、中東でのイラン・イラク戦争など、大きな犠牲を出した痛恨の経験に基づいて、
政府の
後方支援だから戦争ではない、安全だという
見解がいかに現実離れした机上の空論にすぎないか、日本の船員は砲弾の飛び交う戦場の海に再び動員されることを断固として拒否すると述べました。
ところが、
政府は、このいずれについても、うそとごまかし、答弁不能に陥りました。いよいよ二十一世紀を前にして、憲法第九条の値打ちが、平和を希求する世界の諸国民の公正と信義にこたえ、国際的にも脚光を浴び、光り輝いているまさにそのときに、これをなきものとする本
法案は、世界の平和と進歩の歴史への許しがたい逆行と言わねばなりません。
だからこそ、
法案の
内容がわかるにつれ、今まさに日本列島各地で国民の反対世論は大きなうねりとなって広がっているのであります。たとえきょう、この戦争
法案が強行成立させられても、国民の闘いはそこで終わるどころか、さらに広がり進むでしょう。
小渕総理は二十一世紀へのかけ橋をと言いましたが、自由党、公明党と手を組んで、事もあろうに戦争参加の橋をかけるなど、平和、中立の日本の進路を願う国民は断じて容認しないところであり、必ずや歴史は厳しい審判を下すに違いありません。
最後に、私は、日本共産党は侵略戦争反対を貫いた平和の党として、いかなる場合にも、アジア太平洋地域におけるこの戦争法の発動を許さない闘いを国民とともに大きく進め、さらには平和を願う主権者国民の意思として、この戦争法そのものを廃止することを目指し、先頭に立って奮闘するかたい決意を表明して、反対討論を終わります。(
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