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1999-05-07 第145回国会 参議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月七日(金曜日)    午前十一時三十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十八号   平成十一年五月七日    午前十一時三十分開議  第一 国務大臣報告に関する件(米国公式訪  問に関する報告について)  第二 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一  部を改正する法律案内閣提出)  第三 卸売市場法及び食品流通構造改善促進法  の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 農林物資規格化及び品質表示適正化  に関する法律の一部を改正する法律案内閣提  出)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、学校教育法等の一部を改正する法律案(趣   旨説明)  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、  学校教育法等の一部を改正する法律案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。有馬文部大臣。    〔国務大臣有馬朗人登壇拍手
  4. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 学校教育法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  二十一世紀に向けての大きな転換期にある今日、大学が、学問進展社会要請に適切に対応しつつ、不断に改革を進めて教育研究活性化を図り、知的活動分野において社会に貢献していくことは、我が国の未来を築く上で極めて重要な課題となっております。  この法律案は、このような状況を踏まえ、第一に、大学教育研究上の多様な要請にこたえられるよう大学制度弾力化を推進するため、所定の単位を優秀な成績で修得した者について三年以上の在学大学卒業を認めることができる制度を設け、また、大学院研究科位置づけを明確にするとともに柔軟な組織編制を行うことができるようにするものであります。  第二に、大学が一体的、機能的に運営され、責任ある意思決定が行われるよう、あわせて社会に対して開かれた大学となるよう大学組織運営体制整備するため、大学における学部長設置国立大学について、運営諮問会議及び評議会設置学部等教授会所掌事務を定め、あわせて国公立大学教員選考における学部長等役割を定めるものであります。  次に、この法律案の概要について申し上げます。  第一に、新たに在学期間の特例として、卒業の要件として各大学が定める教育課程をすぐれた成績で修めた学生について、三年以上四年未満の在学大学卒業を認めることができる制度を設けることとしております。  第二に、大学には学部長を置くことができるものとし、学部長学部校務をつかさどることとしております。  第三に、大学院研究科位置づけを明確にするとともに、研究科以外の教育研究上の基本となる組織を置くことを可能とすることとしております。  第四に、国立大学に新たに運営諮問会議を置くこととし、その委員は当該大学職員以外の者で、大学に関し広くかつ高い識見を有するもののうちから、学長の申し出を受けて文部大臣が任命することとしております。運営諮問会議は、大学教育研究に関する基本的な計画大学自己評価その他大学運営に関する重要事項について、学長諮問に応じて審議し、及び学長に対して助言または勧告を行うこととしております。  第五は、国立大学評議会について、単科大学を除く国立大学には評議会を置くこととし、学長学部長等をもって充てる評議員組織することとしております。評議会は、大学教育研究に関する基本的な計画、学則その他重要な規則の制定改廃大学自己評価等その他大学運営に関する重要事項審議することとしております。また、学長評議会議長として、評議会を主宰することとしております。  第六は、国立大学教授会について所掌事務等を明確化することであります。国立大学学部等組織教授会を置くこととし、教授会は、学部等教育課程編成学生入学卒業学位授与、その他学部等教育または研究に関する重要事項審議することとしております。また、教授会議長学部長等とし、議長教授会を主宰することとしております。  第七に、国立大学は、当該大学教育研究上の目的を達成するため、学部その他の組織の一体的な運営により、その機能を総合的に発揮するようにしなければならないこととしております。  第八に、国立大学は、大学教育研究及び組織運営状況について公表しなければならないこととしております。  第九は、国公立大学教員選考等についてであります。まず、教授会教員選考を行う場合に、学部長等は、当該大学教員人事の方針を踏まえ、その選考に関し、教授会に対して意見を述べることができるものとしております。また、現在、学長教員選考等については、当分の間の暫定的な措置として、学長評議会または教授会が分担して行うこととされておりますが、このたび、評議会教授会に関し規定したことに伴い、所要の規定の整備を行うものであります。  このほか、所要改正を行うこととしております。  以上が法律案趣旨でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)     ─────────────
  5. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。松あきら君。    〔松あきら君登壇拍手
  6. 松あきら

    松あきら君 公明党松あきらでございます。  私は、公明党代表いたしまして、ただいま議題となりました学校教育法等の一部を改正する法律案に対しまして、小渕総理質問をいたします。  総理は、アメリカから帰国されたばかりで、お疲れがまだいえておられないことと思いますが、アメリカ政府からは、景気対策のために積極財政を続けるよう求められたと聞いております。  ところで、経済の問題では金融機関がしっかりしていなければなりません。しかし、アメリカ日本とでは、金融技術力の格差の拡大により、今後、金融機関実力差がどんどん出てくると言われております。それは、金融機関にとって最も重要なリスク管理にしましても、我が国では、情報通信技術のおくれとともに、リスク管理に関する多くの英文文献を十分に分析理解する能力が欠けているからであります。  その日本のおくれの最も大きな原因の一つは、このような最新金融技術を習得し、開発するのに必要な能力育成する基盤が現在の日本大学にはないからであると言われております。優秀な学生を、厳格な成績評価のもと、大学三年生で卒業させるというくらいの改正では、厳しい国際競争社会の中で日本の優秀な頭脳があらわれてくるとは考えられません。  そこで、今後の日本経済発展に重大な影響を与えるこのような人材育成につき総理はどのようなお考えなのか、まずお伺いをいたします。  第二に、現在の大学実態の中には、大学教育あり方自体に疑問を投げかけざるを得ないという事実があり、これらの点につき総理の御所見をお伺いいたします。  まず、中学校高校大学英語の勉強をいたしておりますが、有名大学英文科卒業した人でもその多くが十分な英語の会話すらできません。大学現場でも、学生英文論文中英語意味自体を理解できないので、長年海外論文を教材にしていたが、日本学術書にかえたとのことです。ゼミが英文解釈で終わってしまい、経済理論研究までたどり着けないからだそうです。こういった状況日本世界にどう伍していくのでしょうか。  また、東大に合格して、駒場に胸を張って出かけますと、校門の前には司法試験予備校の方がパンフレットを配っております。新入生の半分は学校に行かないで予備校に行く、残りの半分は学校に行くが勉強しないとまで言われております。大学で勉強しているより予備校に通った方が司法試験に合格しやすいのです。東大に入るぐらいですから、中学、高校国立か私立の受験校から入ってきます。そして、司法試験予備校でまた受験テクニックを学び、裁判官、検事、中央官庁エリート官僚になっていく、こうした人ばかりが日本国家の中枢を占めるという現実があります。  このような現実にかんがみ、今後の大学教育あり方総理はどのようにお考えか、お伺いします。  第三に、大学生学力低下に関し、二十一世紀日本高等教育あり方について質問します。  さきに申しました英語等語学力ばかりではありません。学会でも算数ができない学生が話題になってきています。国語力低下で、修士論文でも何を言いたいのかわからない文章もふえているそうです。このように、現場からは専門知識を身につけるのに必要な基礎学力がお寒い状態であるという声が聞こえてきます。教育システム全体を見直さなければ、将来、日本社会の衰退は免れなく、もはや学力低下社会問題でさえあります。  教育内容が三割減る小中学校の新学習指導要領が二〇〇二年度にスタートすると、基礎学力の欠けた大学生がさらにふえる可能性があります。大学教育はこれからの国家社会を担っていく人材をつくっていくわけですが、大学現状はまことに問題があると思います。  入学をしてもアルバイトばかりに精を出して勉強しない、それでもやすやすと卒業していくことができる大学生がたくさんおります。基礎学力もなく、知識を吸収し柔軟な頭でいろんなことを分析し、友人、教師と議論をすることもなく、ただ卒業してしまうという現状は感心できません。  今、国際化情報化進展産業構造変化など、日本経済社会変化に伴って、企業雇用慣行を取り巻く環境や求められる人材が大きく変わってきております。一たん会社を出たら再就職の道は険しく、また能力関係なく給料が上がる年功序列制にはかなりメスが入っていくことになります。  総理は、こうした事態に対応した今後の大学改革方向としてどのようなことをお考えなのか。また、二十一世紀日本高等教育に何を期待し、どのような高等教育の全体像を描いておられるのでしょうか。御答弁をいただきたいと存じます。  第四に、奨学金についてお尋ねします。  先進諸国大学の中で、学生から高額の授業料を徴収しているのは日本アメリカぐらいのものです。しかし、アメリカ大学授業料は高いが奨学制度が完備されておりますし、高い授業料に見合う充実した教育学生に十分な付加価値をつけてくれます。日本大学とは大きな違いがあると思われます。  育英奨学制度充実については、我が党の提案した拡充策がこの四月から大方の御賛同を得、実施されました。希望者のほぼ全員奨学金を受給できることとなり、大きな前進が見られたところです。これにとどまらず、人材育成のため、勉学のできる環境を整えることは大切な公共のための事業です。学費負担を軽減する奨学制度充実がどうしても必要です。親の収入や成績関係なく、勉学の意欲のある学生には全員に無利子奨学金を用意すべきと思います。総理の御所見をお伺いします。  第五に、運営諮問会議設置して、大学運営に関して重要な意見文部大臣の任命した学外者から聞くことになるわけですが、学問の自由にとって最も重要な大学自治確保されなくなるのではないかという大いなる懸念が寄せられております。  大学自治学問の自由を確保しつつ、どのように運営諮問会議にその役割を果たさせるのか、総理の説得ある御所見をお伺いしたいと思います。  第六に、大学は一国の大きな知的財産であります。特に国立大学には多額の国費が投入されており、国民全体の共有財産であると言えます。  最近、一橋大学中谷巌商学部教授がソニーの社外重役に迎えられることが内定したとの報道がされました。総理は、国立大学教授であっても、民間企業の実務を学び、企業がこうした人材を活用することが望ましいとコメントされたようです。  社会は、魅力ある産学協同を願っております。公務員法制で画一的に大学人事を縛ってしまって大学人産学連携を許さなければ、国際社会における厳しい競争に打ちかつことはできません。  しかし、一方、産学協同が余りにも進み、運営諮問会議による大学運営への介入が過大になり過ぎると、大学自治学問の自由が守れなくなる懸念があります。これをどのように調和させるのか、総理の御見解を伺いたいと思います。  最後に、いろいろと大学現状について問題点を指摘しましたが、その一方で、多くの先生方学生教育研究に熱心に取り組んでおられることも事実であります。また、活力満ちた教員研究者大学という創造的な場で自由に研究活動を進めていくことは、あすの我が国を築く上で大変重要であります。  しかしながら、日本高等教育に対する公的財政支出先進諸国と比べて相当に低い水準にあります。このままでは国際的に通用する研究成果を上げることを求めるのは無理だと言えるのではないでしょうか。日夜、教育研究に打ち込んでいる先生方が十分にその実力を発揮できるように教育研究環境整備を図ることも活力ある大学づくりのためには不可欠です。  育英奨学充実はもとより、国立学校特別会計への繰入金や私学助成充実も含めて、我が国高等教育財政充実を図り、広く国民充実した高等教育の機会を享受することができるように格段の御配慮をお願いしたいと存じます。  その点について総理の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  7. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 松あきら議員にお答え申し上げます。  まず、人材育成についてお尋ねがございました。  科学技術発展情報化進展の中で、我が国経済的に発展し、国際社会において貢献していくためには、社会の各分野で活躍し得る独創的ですぐれた人材や高度の専門的な職業人育成を図るべく、学部大学院を通じた改革に積極的に取り組んでまいらなければならないと考えております。  今後の大学教育あり方についてお尋ねでしたが、我が国創造性と活力のある国家として発展していくためには大学教育の一層の充実が重要な課題であり、そのため、みずから主体的に学び、考え、柔軟かつ総合的に判断のできる課題探求能力育成を重視するとともに、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力を培うことを基本とし、大学教育改革を進めてまいりたいと考えます。  今後の大学改革方向、二十一世紀高等教育への期待とその全体像についてのお尋ねですが、創造的な人材育成大学組織運営体制整備大学自律性確保、多元的な評価システムの確立を図るなど、大学改革に積極的に取り組み、それらを通じて大学社会経済変化に対応しつつ国際的な教育研究水準確保し、その社会的責任を果たしていくことを期待いたしております。  奨学金についてお尋ねがありました。  学生勉学に対する熱意にこたえるため、平成十一年度予算では、日本育英会奨学金につきまして、無利子奨学金充実を図るとともに、有利子奨学金について貸与人員の大幅な増員や貸与基準の緩和など、その抜本的拡充を図っているところでありまして、今後とも無利子有利子をあわせて奨学金充実に努めてまいります。  運営諮問会議大学自治学問の自由についてお尋ねでした。  運営諮問会議は、社会からの意見を聴取し社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から設置されるものでありまして、大学教育研究自主性の尊重を前提といたしておりまして、その審議勧告を踏まえ大学としてどのように対処するかは各大学の自主的、主体的な判断にゆだねられるものでございます。  運営諮問会議産学協同についてのお尋ねですが、今後の厳しい国際競争時代にありまして、産学連携協力は極めて有益であり、積極的に推進していく必要があると考えます。各大学におきましては、このような取り組みを進めるに当たりましては、運営諮問会議審議等への対応も含め、大学の主体性の確保教育研究自主性を尊重しつつ行われることが基本であると認識をいたしております。  次に、高等教育財政についてお尋ねでありますが、我が国大学がすぐれた人材養成学術研究の推進について期待される役割を十分に果たしていくためには、大学教育研究充実を図るための基盤整備が必要であります。このため、国立大学教育研究条件改善私学助成など高等教育関連予算に十分配意いたしてまいりたいと考えます。  以上、御答弁申し上げます。(拍手)     ─────────────
  8. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 畑野君枝君。    〔畑野君枝登壇拍手
  9. 畑野君枝

    畑野君枝君 私は、日本共産党代表して、学校教育法等の一部を改正する法律案について質問いたします。  初めに、学問の自由と大学自治について伺います。  学問の自由とは、国民が真理を探求する自由であり、学問研究活動の自由です。日本国憲法はその二十三条で「学問の自由は、これを保障する。」と述べ、教育基本法教育目的達成のために学問の自由を尊重すると規定しました。これは、第二次世界大戦前の我が国教育制度及び教育行政が著しく中央集権化され、強度の官僚統制のもとに置かれ、教育の自由は尊重されず、学問研究の自由が不当に拘束されたことへの批判と反省の上に結実したものです。そして学問の自由を保障するための不可欠の制度として、大学自治が確立されてきました。それは、大学学長学部長教授その他の研究者の選任に当たっての権限研究教育内容自主的決定権構成員による大学自主的運営などを含むことは言うまでもありません。学問の自由、大学自治について、総理並びに文部大臣認識を伺います。  さて、本法案に対して、大学関係者から慎重審議を求める声や、また、法案を廃案にすべきなどの声が寄せられています。衆議院の短時間の審議だけでも、この法案大学自治を著しく侵害し、学問の自由すら奪いかねない、憲法理念に反する重大法案であることが明らかとなりました。この間の大学関係者の危惧の念もここに集中しています。私は、こうした多くの大学関係者の方々の声を真摯に受けとめ、総理並びに文部大臣質問いたします。  第一に、大学意思決定あり方を変えようとしていることです。  国立大学では、長年の慣行として、全学的な意思決定機関として評議会を、学部意思決定機関として教授会を機能させてきました。ところが、政府は、大学意思決定と実行に責任を負うのは全学では学長学部においては学部長であるとして、評議会教授会審議機関にすぎず、学長学部長審議を尊重するが意思決定を拘束されるものではないなどと答弁してきました。これは、大学自治を踏みにじり、学長ワンマン体制を認めることになるのではありませんか。文部大臣答弁を求めます。  東京大学自己評価報告書東京大学 現状課題」は、全学では評議会、各単位では教授会という合議体最高意思決定機関である、合議体が生き生きとして真剣に討議が行われる世界を異常視する方が異常なのではないか、いたずらに権限を集中し上意下達方式にすれば、大学活性は失われ、おざなりの管理運営しか期待できない、性急に画一的な答えを出そうとすることのないことを願うものであると指摘しています。これこそ、政府が進める大学改革のやり方に対する警鐘ではありませんか。これは、この壇上におられる有馬文部大臣東京大学総長のときに出された九二年の報告書です。文部大臣、あなたが総長時代立場を貫くのであれば、それに反するさき衆議院における不当な答弁を撤回するべきですが、文部大臣見解を求めます。  また、大学意思決定機関はこれまでどおり評議会教授会とすると大学判断すれば、これを尊重すべきですが、いかがですか。  第二に、本法案が、学長権限強化のために現行評議会教授会を大きく変質させようとしていることです。  国立大学は、学問研究の自由を保障する立場から、長年の大学運営の中で、その規模や特性に応じて自主的な運営を確立してきました。評議会は、学長学部長に加え、各学部より数名の代表が選ばれるなど、民主的な構成になっていました。ところが、本法案は、評議会を法定するとして、その評議会構成員並び審議事項まで新たに定めました。評議会構成員として学部代表は必須ではないとし、新たに学長が指名する教員が加わるなど、学長の専断、即決を支える審議機関に変えようとしています。  文部省は、現行評議会役割を終え、法律に基づく構成による評議会となるとの見解を示し、審議事項についても法改正趣旨に沿って見直されると答弁しました。  大学自治原則からいえば、評議会構成員審議事項などはそれぞれの大学判断にゆだねるべきです。それを各大学に押しつけるのでは大学自治への介入そのものと言わなければなりません。各大学判断でこれまでどおりの構成員審議事項とする評議会を置くことを認めるべきです。いかがですか。  次に、教授会についてです。  憲法二十三条に基づき、その制度的保障一つとして、学校教育法五十九条で大学には重要な事項審議するために教授会が置かれてきました。この大学自治のかなめとしての教授会は、人事権を持ち、全学的課題はもちろんのこと、学部学生に至るまでさまざまな問題を審議意思決定を行ってきました。  ところが、本法案は、教授会審議事項学部研究科教育課程学生の入退学など、学部に関する三項目に絞ってしまいました。まさに、教授会弱体化形骸化につながるものです。大学自治原則から、教授会判断すれば全学的にかかわる重要事項についても当然審議できるはずですが、いかがですか。  第三に、国立大学設置を義務づける運営諮問会議についてです。  大学が広く社会意見を求めることは自主的な大学改革を進める上で重要なことであり、既にさまざまな形でアドバイザーを置いている大学もあります。しかし、こうした会議はそれぞれの大学判断設置すべきものです。大学自主性を尊重するなら、法律、省令で設置を義務づけることはやめるべきではありませんか。学外の有識者によって大学基本計画評価予算の再配分、その他大学に関する重要事項審議し、その上こうした学長諮問機関勧告権まで付与することは大学自主的研究をゆがめることになりませんか。文部大臣に伺います。  最後に、大学改革文部行政責任についてお尋ねします。  今、文部行政に求められているのは、こうした大学管理運営を画一化し、統制する改革の押しつけではなく、二十一世紀日本社会を展望した大学人みずからによる自主的、創造的改革を励ますことではないでしょうか。そして基礎的教育研究経費充実し、大学の貧困という事態を克服することではないでしょうか。  衆議院会議答弁小渕総理は、大学改革を進めるに当たり、国際的な教育研究水準確保することに言及されました。ところが、実態は国内総生産、GDPに対する高等教育への公財政支出の割合は、日本はわずか〇・四%で、アメリカ、カナダ、OECD諸国と比較しても何と半分以下ではありませんか。今こそ高等教育予算を抜本的にふやすための計画を立てるべきでありますが、総理答弁を求めるものです。  こうした教育研究条件整備を進めるとともに、真の大学改革は、大学教育研究の自由を保障し、教授学生職員など大学の全構成員が能動的、自主的に教育研究発展にかかわっていくことによってこそ実現するのではないでしょうか。その意味で、このような新大学管理法案と言うべき法案は撤回すべきです。このことを強く主張し、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  10. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 畑野君枝議員にお答え申し上げます。  学問の自由、大学自治についてのお尋ねですが、私といたしましては、学問の自由は憲法により広くすべての国民に保障されたものであり、また、大学自治は、特に大学における学問の自由の重要性にかんがみ、それを保障するための制度であり、大学に対する今日的要請を踏まえつつ尊重されるべきものと考えております。  次に、高等教育財政についてのお尋ねでありました。  我が国大学教育研究水準確保し、期待される役割を十分果たすことができるよう、高等教育関連予算には十分配慮してまいりたいと考えます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣有馬朗人登壇拍手
  11. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 畑野議員にお答え申し上げます。  まず第一に、学問の自由、大学自治についてのお尋ねでありますが、学問の自由とは、学問研究及びその成果の発表の自由を意味しております。憲法第二十三条では、学問の自由を広くすべての国民に対して保障しておりますが、特に、大学における学問研究とその成果の教授が自由かつ自主的に行われることを保障しております。  また、大学自治とは、大学における学問の自由を保障するため、教育研究に関する大学自主性を尊重する制度慣行であると理解されております。  私といたしましても、教育研究の今日的要請にこたえ得る形で学問の自由、大学自治を尊重していく必要があると考えております。  第二に、学長役割についてのお尋ねでございますが、大学学部運営の最終的な責任者は学長学部長であり、学長学部長意思決定を行うに当たっては、学内や学部内の合意の形成の観点から評議会教授会意見を尊重することが必要であります。その意味で、評議会教授会大学意思形成に重要な役割を果たすものでありますが、あくまで審議機関であり決定機関ではありません。この点は、従来から変わらず大学自主性を尊重しているものでありまして、学長ワンマン体制との御指摘は当たらないかと考えております。  第三に、評議会教授会位置づけについてのお尋ねでございますが、繰り返しになりますが、従来から評議会教授会審議機関であり、それぞれ大学学部意思形成において重要な役割を果たす機関でありますが、大学としての最終的な意思決定学長が行うものであります。東京大学報告書もこれを前提としたものでございます。  今回の法律案は、学長学部長評議会教授会の機能分担を明確化しようとするものであり、各大学においてもこの趣旨に即した適切な対応がなされることを求めております。  第四に、評議会構成審議事項についてのお尋ねでありますが、今回の法律案においては、評議会構成員について基本的な構成を定めるほかは各大学判断にゆだねておりますが、大学運営の機動性と責任性を確保する観点から適切な規模や構成とすることを求めるものであります。  また、評議会審議事項については、今回の法改正が学内の機能分担の明確化により大学意思決定の合理性を高めるという観点から審議事項を具体的に列挙したところでございます。  各大学においてはこのような趣旨に即して適切な対応が求められるところであります。  第五に、教授会審議事項についてお尋ねでございますが、学部教授会学部教育研究に関する重要事項審議し、教育公務員特例法による権限を行う機関であります。したがって、大学運営に関する事項について学部教授会審議を行うことができるのは、学部教育研究に関する重要事項に限られるというところであります。  第六に、運営諮問会議についてのお尋ねでございますが、社会からの意見を聴取し、社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から、大学教育研究自主性の尊重を前提としつつ、すべての国立大学運営諮問会議設置することといたしております。  なお、運営諮問会議審議勧告を踏まえ大学としてどのように対処するかは、各大学の自主的、主体的な判断にゆだねられております。  第七に、高等教育財政についてのお尋ねでございますが、大学等の高等教育機関は、すぐれた人材の養成確保、人類の知的財産の継承と未来を開く新しい知の創造等、さまざまな面において社会発展を支えていく中心的な役割を果たすことが期待されております。このため、文部省といたしましては、厳しい財政状況のもとではございますが、引き続き教育研究条件改善充実など高等教育関係予算充実に努めてまいります。私といたしましても、今までも努めてまいりましたが、それ以上努力をさせていただく覚悟でございます。(拍手)     ─────────────
  12. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 三重野栄子君。    〔三重野栄子君登壇拍手
  13. 三重野栄子

    ○三重野栄子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題となりました学校教育法等の一部を改正する法律案について、総理並びに文部大臣に対し質問いたします。  まず、改正案の内容に入る前に、総理大学観についてお伺いいたします。  少子高齢化や情報化など、我が国社会構造が急速な勢いで変化を続ける中、環境、平和、人権、福祉等の重要な問題に対する社会的な動き、制度面での対応を見ると、国民の多くは自分の将来展望に明るいものを見出せない状況にあるのではないでしょうか。今日の大学には、こうした閉塞状況を打破する切り札の一つとしての役割が期待されており、大学の知性を社会全体で活用していくための取り組みが求められるところであります。  現在、大学には、産学連携への取り組みが強く求められておりますが、大学の存在意義を産業経済活性化の観点からとらえるだけでなく、あらゆる分野学術研究を人類の資産として継承発展させていくことに思いをいたすべきであります。国際平和や環境、福祉問題などに的確に対応できる幅広い視野を持った豊かな人間性の涵養も今こそ強調されてしかるべき大切な使命として忘れてはなりません。  学校教育法第五十二条は、大学目的を「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」と定めております。戦後の新制大学の特色は、旧制の高等教育機関の多くが狭い専門教育と職業教育とに偏していた弊を是正し、一般的、人間的教養の基盤の上に学問研究職業人養成を一体化しようとするところにあったと言えるでしょう。  大学現状は、学校教育法にうたう大学目的とは幾分ずれが生じているように感じますが、大学の今日的な存在意義について御所見をお伺いいたしたいと存じます。  続いて、改正案について三点ほどお伺いします。  まず第一に、改正案と大学自治についてであります。  今日まで、大学意思決定は、学校教育法において重要な事項審議するための必置の組織とされている教授会を中心として行われ、これが大学自治の根幹をなしてきたと言われておりますが、これまでの大学運営あり方について、文部大臣評価をお伺いいたします。  学長等執行部の権限強化に対しては、戦後、新制大学設置以降、幾度となく議論が繰り返されてまいりました。大学紛争のときには、大学自治が破綻したとも言われ、大きな社会問題となりましたが、抜本的な制度改正はなされずに今日に至っております。その後、社会情勢の変化とともに大学関係者の意識にも少なからぬ変化が見られておりますけれども、今回の法改正に対しても、管理強化につながるものであり、大学自治を侵すとの声があります。  しかし、大学改革が迫られる中、保守的な考え方に安住していては時代の流れに飲み込まれてしまう可能性がございます。現状維持的な大学自治から、大学独自の個性を打ち出す積極的な自治への転換が求められるところであります。総理は、大学自治の今日的意味をいかに考えられるのか、お伺いをいたします。  また、文部大臣は、改正案が大学自治に及ぼす影響をいかに考えておられるのか、過去の経験に照らし、大臣就任以前に抱いておられました大学自治のあるべき姿は改正案の中にどのように反映されているのか、あわせてお伺いいたします。  第二に、改正案と学外からの意見聴取、学外への情報開示との関係についてお伺いいたします。  改正案は、すべての国立大学運営諮問会議を置くことにより、学外意見を取り入れる仕組みを導入するとともに、学外への情報開示を義務づけております。運営諮問会議については、学外からの意見大学運営を左右されはしまいかと導入に難色を示す向きもあります。しかし、自律的判断のもと、こうした制度を効果的に活用する見識が大学人には期待されるところであり、運営諮問会議と学内各組織の間にはよい意味での緊張関係が築かれることを望むものであります。  新設される運営諮問会議を生き生きと運営していくには学生の参加も一方策として考慮に入れるべきと考えますが、文部大臣はいかがお考えでしょうか。また、大学運営学生はいかにかかわっていくべきか、御意見をお伺いいたします。  情報開示につきましては、国立大学に対する義務づけとなっておりますが、国民の求める情報とは何かをいかに把握し、どのようにこたえていくのかが問われることになります。また、学内情報の開示責任は、公共的な機関としての大学の性格から、国公私の別を問うべきではなく、社会的存在としてその透明性を高めるべきであり、すべての大学人にこうした意識を持っていただくよう、大学側の意識改革が望まれるところであります。  国立大学における情報開示の促進に向けての施策と私学における学内情報の開示の必要性についても文部大臣にお伺いいたします。  第三に、学部教育と三年以上の学部在学で例外的に卒業を認める措置についてであります。  本来、学部教育は完成教育であり、その年限は四年間と定められております。この四年間は、学力はもとより、学士としての豊かな人間性を養うためにも必要な期間として定められているものと存じます。しかし、学力に関しては、平成九年の就職協定廃止以降、就職活動の早期化、長期化によりまして四年次は授業にならず、既に学部教育の実質は三年となっているとの指摘もあり、学部卒業生の学力の質の低下は各方面から指摘されているところであります。豊かな人間性の涵養に関しても、平成三年の大学設置基準の大綱化に伴い、一般教育科目と専門教育科目の区分が廃止されたことにより教養教育の衰退に拍車がかかったと言われています。今日の大学における教養教育現状について、文部大臣はどのような認識をお持ちでしょうか。  また、昨年の大学審議会の答申も教養教育の重要性を強調しておりましたが、こうした精神をいかに大学の間に広めていくのか、今後の取り組みについてお伺いいたします。  三年間の在学での卒業は、学部卒業生全体の水準確保の観点からも、教育機能の強化と厳格な成績評価がきちんと担保された上での運用がなされるはずであり、あくまで例外的な制度であると承知しております。しかし、学部教育の四年間には、学内外でのさまざまな活動による学士にふさわしい豊かな人間形成を期待する側面もあったのではないでしょうか。四年間と定められている学部教育目的とは何か、この際、文部大臣にお伺いしておきたいと存じます。  大学審議会の試算によると、平成二十一年度には、大学、短期大学入学志願者に対する収容力が一〇〇%となり、全入時代を迎えることとなります。つまり、二十一世紀大学は、学力、個性の面でこれまでになく多様な属性を持った学生を引き受けることになります。大学入試制度や初等中等教育におけるカリキュラム改革等によって一部に新入生の学力の低下が言われております。  国際的に通用する大学とは、その規模のみならず質的にも通用する大学を指すものであります。センター・オブ・エクセレンスの形成や高度専門職業人養成に特化した修士課程の創設などさまざまな施策が打ち出されておりますが、ユニバーサル段階へと進んでいく二十一世紀大学において教育研究水準はいかに維持されるべきか。  学力レベルの後退を容認し、学部レベルの教育大学院で引き受けることとするのか。もしくは、大学の多様化、種別化を促すことで、研究中心の大学教育中心の大学とで受け入れる学生を峻別、少数の国際的に通用する大学を育てていくのか。  大学改革のための取り組みは、少子化と進学率の上昇に押された上げ底的な拡充に終わることなく、高等教育全体の質的向上が望まれるところでありますが、総理の描く高等教育のビジョンとそれを踏まえた財政支出拡充に向けての御所見をお伺いいたします。  高等教育あり方考える際には、教育制度全体、ひいては社会あり方全体を考える必要があることは言うまでもありません。  少子高齢化が進む中、人的資源の最大限の活用こそが、我が国が豊かな未来を築く近道であり、一人一人の多様な適性、能力を尊重し、最大限に生かし、社会全体で受け入れていくための国民各層の意識改革が喫緊の課題であります。  二十一世紀我が国が、すべての国民にとって希望に満ち個人が生き生きと輝く社会となる第一歩として、多様な個性、多様な価値を認め合う全人格的な教育機能の強化への取り組みが、我が国教育制度全体にわたって求められているところでありますが、総理の御所見をお伺いして、終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  14. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 三重野栄子議員にお答え申し上げます。  まず、大学の今日的存在意義についてお尋ねがございました。  大学教育の普及に伴う多様な社会要請に対応するため、今後は、教養教育の提供を重視する大学、専門的職業能力育成に重点を置く大学、最先端の研究を指向する大学など多様で個性的な大学が求められますが、いずれの大学にありましても、幅広い視野を持つ人材育成するとの理念を基礎に置くことは極めて重要であると考えます。  大学自治の今日的意味についてのお尋ねでありました。  教育研究に関する大学自主性を尊重する制度としての大学自治は今日においても尊重されなければならないと考えますが、教育研究社会との関係変化等の今日的要請にこたえ得るよう、大学が開放的かつ積極的に、また自主的、自律的に意思決定を行い得る仕組みを整備することが求められていると考えております。  次に、高等教育財政についてお尋ねがありました。  我が国大学等の高等教育機関が、すぐれた人材養成学術研究の推進について期待される役割を十分果たすことは、将来にわたる我が国発展と国際的貢献の上でも極めて重要な課題であります。このため、大学等の教育研究条件改善など高等教育関連予算には十分配慮してまいりたいと考えます。  我が国教育制度についてお尋ねがありました。  今日、未来を担う子供たちに、自然を慈しむ心、助け合う心、社会的倫理観、多様な生き方を尊重する考え方、生きる力等をしっかり身につけ、心身ともに健康な人間に育てることは極めて重要な課題考えております。このような考え方に立ちまして教育改革を着実に進めてまいりたいと考えます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣有馬朗人登壇拍手
  15. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 三重野栄子議員にお答え申し上げます。  第一に、これまでの大学運営評価についてのお尋ねでございますが、大学運営に当たって教育研究に関する自主性は尊重されるべきものであり、学部教授会はそのための重要な審議機関であると考えます。しかし、これまでの大学運営では、学部教授会学長学部長評議会などとの役割分担や連携協力が必ずしも十分でなく、本来、大学が持っている教育研究の総合的な力を十二分に発揮することができにくい点があったと考えております。  第二に、大学自治との関係についてのお尋ねでございますが、今後の大学には、各大学全体としての教育研究の目標、計画を明確化した上で、学内の各機関の機能分担と連携協力により、大学としての合理的で責任ある意思決定の体制をつくることが求められております。  今回の法案では、評議会教授会審議事項法律上明確化することなどにより、教育研究に関する大学自主性を尊重しつつ、大学組織体として総合的に機能を発揮することが可能になり、大学自律性が高まるものと考えております。  第三に、運営諮問会議への学生参加についてのお尋ねでございますが、運営諮問会議は、大学社会からの意見を聴取し、社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から設けられる機関であります。  学生につきましては、学外者に該当しないことでもあり、運営諮問会議への学生参加については、その設置趣旨になじまず、予定していないところでございます。  第四に、大学運営への学生のかかわり方についてのお尋ねでございますが、大学運営については、その最終的な責任者である学長評議会意見を踏まえつつ大学としての意思決定を行うものであり、教育を受ける立場にある学生大学意思形成に参画することは適当ではないと考えております。  しかしながら、各大学判断により、授業の内容、方法の改善や学習環境整備などについて、学生による授業評価学生に対するアンケート調査などを通じ、その希望や意見を取り入れ、教育研究活動を改善していくことは極めて望ましいことと考えております。  第五に、大学情報の開示についてのお尋ねでございますが、大学は公共的な機関であり、大学教育研究活動に対する情報を社会に対して提供することは大学社会的な責務であります。  今回、国立大学につきましては、社会に対する国立大学の説明責任をより明確にする観点から、教育研究等の状況の公表について定めることとしておりますが、公私立大学につきましても国民にとって関心が高いと考えられる情報を社会に提供していくことを制度上明確にするよう考えております。  第六及び第七の問題でございますが、教養教育現状認識と教養教育の重要性の周知方策についてのお尋ねでございますが、教養教育に関しましては、例えば学際的、総合的な内容の科目を設けるなど、各大学において独自の努力や工夫も見られるところでございますが、一方で教養教育の軽視が進んでいるのではないかとの指摘もあります。私もこれを心配しております。  社会の高度化、複雑化等が進む中で、教養教育の重要性が増しており、各大学におけるカリキュラムの工夫、改善全学的な取り組みの積極的推進を促してまいりたいと考えております。  第八に、学部教育目的についてお尋ねでございますが、学部教育は、いわゆる課題探求能力育成を重要視しつつ、教養教育及び専門分野の基礎、基本を重視した教育を行うことにより、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力や生涯学習の基礎等を培うことを目的といたしております。これは、四年間の修業年限の間における正課活動のみならず、教科外の活動も含めて幅広く人間性を培うことなどにより達成することが期待されております。  以上、お答え申し上げました。(拍手)     ─────────────
  16. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 石田美栄君。    〔石田美栄君登壇拍手
  17. 石田美栄

    ○石田美栄君 民主党の石田美栄でございます。  私は、民主党・新緑風会を代表して、学校教育法等の一部を改正する法律案について、小渕総理大臣並びに有馬文部大臣に対して質問いたします。  文部省に大学審議会が設置されて十年が過ぎ、この間さまざまな改革や提言が打ち出されて、大学改革が進められてまいりました。しかし、改革は十分な効果を上げてきたかといえば、まだそうとは言えないのが現状ではないでしょうか。二十一世紀へ向けて、日本大学は今変わらなければならない。そして今変わろうとしております。  昨年十月に出された大学審議会の答申、「二十一世紀大学像と今後の改革方策について」を受けて、最初に実施される具体策がこのたびの法改正となるのですが、小渕総理としては、この十年間の大学改革の成果をどのように評価し、さらにこの法改正にどのような意義を持たせての提案であるのでしょうか。総理大学改革についてのビジョンをお尋ねいたします。  また、総理は、所信の中で述べられた五つのかけ橋の中で、未来へのかけ橋として教育を取り上げています。その中で、国際的に通用する大学を目指した大胆な大学改革を実現すると言及されています。そこで、二十一世紀我が国のビジョン、ありようと高等教育大学大学院の果たすべき役割についてはどのようにお考えか、さらに、国際的に通用する大学とはどのような大学をイメージしているのかの二点についてお聞かせ願いたいと存じます。  続いて、有馬文部大臣お尋ねいたします。  「日本は、初等・中等教育が強く、高等教育は弱い。一方、アメリカは、初等・中等教育に問題があるものの、高等教育は極めて優秀である。」とは、アメリカ社会学者ダニエル・ベル氏の言葉です。このように我が国高等教育に対する評価は決して高くはないのであります。  そこで、東京大学の総長、大学審議会の副会長を歴任された有馬文部大臣としては、答申する側からそれを受けて実行する立場へと変わられたわけですが、この十年間の大学改革の成果をどのように評価し、今後、一層の大学改革のためにどのようなリーダーシップを発揮されるおつもりか、その決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。  それでは、法改正案に沿って逐次質問を続けてまいります。  まず、大学制度弾力化を推進するため、学校教育法の一部改正の中で、優秀な成績で所定の単位を修得した者について、三年以上の在学卒業を認める制度を設けることになっておりますが、法文では「文部大臣の定めるところにより、」となっております。そこで、文部大臣は、この制度をどのような大学に対してどのようにお認めになるつもりか、想定しておられることについてお尋ねいたします。  次に、もう一つ改正理由の、大学、特に国立大学組織及び運営体制を整備することについてであります。  このために、学校教育法の一部改正で、学部長の追加設置、並びに国立学校設置法の一部改正で、国立大学における運営諮問会議及び評議会設置に関する規定を追加整備し、教授会についても、その所掌事務を定めるなど、学長権限を明確にして大学責任体制の整備を図っています。これに対して、一部にこれまで守ってきた学問の自由、大学自治が根底から脅かされかねないという批判があります。文部大臣はこうした批判や懸念に対してどのようにお考えか、お尋ねいたします。  同じく、いわゆる大学自治と、特に国立大学に求められている社会に対するアカウンタビリティー、社会に開かれた大学大学の透明性といったこととの関係をどのようにとらえておられるのか、お聞かせください。  また、このたびの法改正で、新たに国立大学に対して設置が義務づけられることになった運営諮問会議についてであります。  大学教育研究に関しての計画教育研究活動の状況についての評価、また、大学運営に関しての重要事項などについて、学長諮問に応じて審議し、学長に助言または勧告を行うことのできる重要なものであります。「学長の申出を受けて文部大臣が任命する。」とありますが、大臣はどのような選考方法でどのような構成考えておられるのか、お尋ねいたします。  続いて、大学審議会の答申の中で、教育問題として次のような指摘がなされています。  教員の意識は、「研究重視の意識は強いが教育活動に対する責任意識が十分でない。また、カリキュラム改革や学習指導の改善が、個々の教員レベルに任せられており、組織全体としての責任意識が十分でない。」とあります。この問題と、このたびの学部長評議会教授会の法的位置づけ、そして外部監査的な機能のある運営諮問会議設置によりどのような大学責任体制がつくられていくとお考えなのか、お尋ねいたします。  次に、このたびの法改正も含めて、ここしばらくは大学改革はちょっとしたブームと言われるほどで、およそ九割もの大学がカリキュラム改革や自己点検や自己評価などの取り組みを進め、結果の公表や外部評価を実施する大学もふえております。また、二十一世紀大学世界的な競争にさらされること、少子化の影響で十年後には数字の上では希望者全員入学できる時代が来ること、国立大学の独立行政法人化について平成十五年までに結論を得ることなどを考えると、自己評価はもちろん、学内学外を含めて公正で信頼性のおける総合評価の仕組みを日本においても確立することが大変重要であると考えます。  さらに、国立大学について、大学審議会の答申は、国費によって支えられているがゆえに、特にその社会的責任として果たすべきことが期待されている機能を明確にして、このような機能を十分果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき改組転換を検討する必要も出てくると述べています。さらに、透明性、客観性の高い大学評価をするために、第三者機関を設置して、その結果を国立大学予算配分に際しての参考資料の一部として活用することも言及しております。  そこで、文部大臣大学評価について、アメリカなどに比べて日本は非常におくれていることがよく言われておりますが、この外部監査的な役割を持つ運営諮問会議に加えて、今後、大学評価をするための第三者機関を本当に設置されるおつもりなのでしょうか。もし設置するのであれば、それはいつごろまでに、多様で総合的な評価システムをどのような構想で進めていくおつもりなのか、お尋ねいたします。  最後に、最も重視されている大学改革大学院重点化であると言われています。  高等教育に関して、事大学院については欧米との間に格段の差があります。例えば大学院生の数で見ると、人口千人当たり、アメリカは七・五人ぐらいですが、日本は一・七人、英国、ドイツ、フランスでも日本の倍の三・五人くらいになっております。将来の国立大学の独立行政法人化問題や国際競争するには国立大学の再編が必要といった問題も含めて、小渕総理大臣の大学院に関する将来像をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 石田美栄議員にお答え申し上げます。  ここ十年間の大学改革の成果への評価と、今回の法改正の意義についてのお尋ねでありました。  これまで各大学改革への取り組みが着実に進められてきておりますが、本法律案におきまして、教育研究の質の向上や組織運営体制整備を図るとともに、今後、大学自律性確保や多元的な評価システムの確立等を図り、国際的に通用する大学を目指した大胆な大学改革の実現に努力してまいりたいと考えます。  二十一世紀における我が国大学等の役割と国際的に通用する大学のイメージについてのお尋ねですが、すぐれた人材の養成や独創的な学術研究の推進等の役割を担う大学が、社会経済変化学問の動向等に適応しつつ、国際的な教育水準確保し、その社会的な責任を果たしていくことが極めて重要であると考えております。  最後に、大学院に関する将来像についてのお尋ねでありますが、今後の大学院は、独創的な学術研究の推進や創造性を持った研究者の養成とともに、社会要請に的確に対応した高度な専門的能力を有する職業人の養成など、国際的な教育研究水準確保しつつ、多様で活力あるシステムを目指すことが重要でありまして、引き続き質、量の両面にわたりまして充実に努めてまいります。  なお、国立大学の独立行政法人化等につきましては、大学自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討を行ってまいりたいと考えます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣有馬朗人登壇拍手
  19. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 石田美栄議員にお答え申し上げます。  第一に、大学改革への取り組みについてのお尋ねでございますが、大学改革につきましては、大学審議会答申等を踏まえ、各大学改革への具体的取り組みが着実に進められ成果を上げてきておりますが、さらなる改革の推進が求められております。  このため、本法律案におきまして、教育研究の質の向上や組織運営体制整備を図るとともに、今後、大学自律性確保や多元的な評価システムの確立等を図る必要があります。  引き続き、所要制度改正に取り組むとともに、各大学において学長のリーダーシップのもとに大胆かつ積極的に大学改革が進められるよう促してまいります。  第二に、三年以上の在学卒業を認める制度についてのお尋ねでありますが、この制度は、学生能力、適性に応じた教育を行い、その学習成果を適切に評価するという観点から設けられた例外的な措置であります。  このことを踏まえ、三年以上の在学大学卒業を認めることができる場合として、責任ある授業運営や厳格な成績評価を行い、かつ学生の履修科目登録単位数の上限設定等が行われている場合に限ることを文部省令等において明らかにすることとしております。その上で、各大学において、この措置を講ずるかどうか、どういう学生に適用するか等を判断し、実施していくことになります。  第三に、今回の法案学問の自由、大学自治との関係についてのお尋ねでございますが、今回の法案は、大学内部の各機関の役割分担の明確化を図るという観点から、評議会学部教授会設置所掌事務等を定めておりますが、例えば、学部教授会学部教育研究重要事項審議することとするなど、教育研究に関する大学自主性を尊重した内容のものとしております。  したがって、この法案は、大学における学問の自由や大学自治を前提とした上で大学としての自律性をより高めるものであり、それを通して教育研究充実に資するものであります。  第四に、大学自治国立大学の説明責任との関係についてのお尋ねでございますが、国費で支えられている公的な機関である国立大学が、社会意見等を適切にくみ上げることとともに、教育研究等の情報を積極的に社会に対して提供することは、その社会的な責任を明らかにする上で極めて重要であります。その場合、教育研究活動の主体は大学であることを踏まえ、教育研究活動に関する大学自主性は尊重されるべきものと考えます。  今回の法案は、このような考え方を前提とした上で国立大学教育研究活動の状況社会に対して説明する責務を制度上明確化しようとするものであります。  第五に、運営諮問会議についてのお尋ねでございますが、本会議の委員の選考については、学長文部大臣に申し出るに当たり、学内の意見を聞くことは予想されていることでありますが、最終的には、運営諮問会議設置趣旨を踏まえ、学長の主体的な判断により適切に人選を行うこととなるものと考えております。  また、委員の構成としては、地方公共団体の代表者、地域経済界の関係者、卒業生、他の大学研究機関の関係者など、社会の各界から大学に関し広くかつ高い識見を有する方々になっていただくことを想定しております。  第六に、組織運営体制整備大学教育充実との関係についてのお尋ねでございますが、今回の法案は、学部教授会評議会役割分担の明確化などについて規定し、学長を中心とする大学としての合理的で責任ある意思決定と実行を可能とするものであります。これによって大学全学的な教育課題組織として一体的に対応することが可能となり、教育機能の充実に向けた各大学の積極的な取り組みが期待されます。  なお、このような取り組みは運営諮問会議審議大学情報の公表等を通じて、社会に対して責任ある形で実行されるものと考えております。  第七に、大学評価のための第三者機関の設置についてのお尋ねでありますが、大学教育研究の質の向上を図るため、第三者評価機関を設置し、教育活動、研究活動など大学の行う諸活動について多面的な評価を行い、その結果を各大学にフィードバックし、各大学教育研究活動の改善に役立てていくことを考えております。  今後、第三者評価機関の速やかな創設に向け、専門的な調査研究の成果を踏まえつつ、評価内容、方法等について工夫、検討していくなど、調査、準備を進めてまいる所存であります。(拍手
  20. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。  これにて休憩いたします。    午後零時五十分休憩      ─────・─────    午後五時二分開議
  21. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  日程第一 国務大臣報告に関する件(米国公式訪問に関する報告について)  内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。小渕内閣総理大臣。    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私は、クリントン大統領の招待を受け、四月二十九日から五月五日まで米国を公式に訪問し、クリントン大統領と首脳会談を行ったほか、ロサンゼルス、シカゴを親善訪問いたしました。今回の訪米は、我が国の首相として十二年ぶりの公式訪問であり、八年ぶりの地方都市への親善訪問でありましたが、日米両国の友好と協力のきずなを一層強固なものとする上で所期の成果を上げ得たものと考えております。  三日に行われました首脳会談では、日米両国が自由と民主主義という基本的価値を共有する同盟国として、二十一世紀に向けて平和で豊かな世界を構築するという共通の目標に向けて一層協力していくことを確認いたしました。  大統領との間では、アジア太平洋地域の平和と安定のためにも日米安保体制の信頼性を強化していくことで一致するとともに、大統領より、周辺事態安全確保法案等の衆議院通過を評価する旨の発言がありました。  私より、来年の九州・沖縄サミットの首脳会合を沖縄で開催することに決定した旨説明し、大統領は、大変よい考えであると述べられました。  また、主要地域情勢につきましても緊密な意見交換を行いました。北朝鮮に関しては、日米韓三カ国の協調のもと、抑止と対話のバランスをとりつつ北朝鮮政策を進めていくことを確認いたしました。この関連で、私より日本人拉致疑惑に言及し、大統領より、引き続き米国としても取り組んでいくとの発言がありました。  コソボ情勢に関しては、私から、その政治的解決を目指した国際社会の一致した対応の重要性を指摘するとともに、難民支援を中心に二億ドルの支援を決定した旨を伝えました。大統領からは、日本の姿勢を高く評価する旨の発言がありました。  なお、米国を訪問中のロシアのチェルノムイルジン特使との間でもコソボ問題の解決に向けた取り組みについて協議いたしました。  経済に関しては、日本経済回復に向けてとり得る限りの施策を迅速かつ大胆に講じてきたこと、そして本年度にプラス成長を確実にすることに向けて引き続き不退転の決意で臨んでいくことを説明いたしました。また、我が国経済の根本的再生のための供給面の体質強化を図る構造改革についても説明いたしました。大統領は、こうした日本の取り組みを高く評価しつつ、日本経済の早期回復への期待を表明いたしました。また、日米がアジア経済の回復、国際金融システムの強化やWTOの次期交渉の開始に向けて緊密に協力する旨が確認されました。さらに、大統領と私は、規制緩和、投資、コンピューター二〇〇〇年問題及び競争分野の協力協定に関する日米協力の成果を歓迎いたしました。  また、私は、米国民との交流を深めるため、ロサンゼルスとシカゴを訪問いたしました。両都市において、アジア太平洋における日米の協力や今後の日米関係に関する演説を行ったほか、シカゴ大学学生との懇談など米国民との交流行事を行い、日米関係のすそ野の拡大を図りました。また、ワシントンにおきましては、米国の財界人や日本滞在経験を有する米国人青年等の日米交流関係者とも懇談し、多様な分野の多くの米国の方々とお会いいたしました。  こうした出会いを通じて、両国のパートナーシップが国民同士でも強固な相互信頼により結ばれていることを実感いたしました。また、日米関係のさらなる発展のために両国民の一層の交流を促進していくことの重要性を強く感じました。  今回の六日間に及ぶ訪米及び日米首脳会談を通じ、新たな世紀を迎える世界にあって、より多くの国の人々がより強固な安全と一層の繁栄を享受できるよう、率先して協力していくことが日米両国にともに課せられた使命であることについて、クリントン大統領とともに決意と展望を示せたことが今次訪米の最大の成果であったと思います。私としては、日本外交の基軸である日米関係の一層の強化のために今後とも尽力してまいる所存であり、議員各位の御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  23. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。吉村剛太郎君。    〔吉村剛太郎君登壇拍手
  24. 吉村剛太郎

    ○吉村剛太郎君 私は、自由民主党と自由党を代表して、先ほど御報告のありました日米首脳会談等について、総理に若干の質問をいたします。  今回の総理の訪米は、中曽根元総理以来十二年ぶり、冷戦終結後初めての公式訪米であり、不安定な国際情勢の中、内外の注目を集めて首脳会談等が開かれました。  訪米前半で、各地での米国民との友好的な交流や財界人を初めとして積極的に対話されたことは、総理のお人柄と相まって日米の相互理解を一層深めたものと思われます。  また、歓迎式典、首脳会談、共同記者会見を通じ、日米両国が永続するパートナーであることを強く世界に印象づけました。  首脳会談では、直面する安全保障問題、景気回復問題を初め、世界の平和と安定へ向けて率直な意見交換がなされ、自由、民主主義、人権の共通の価値観を持つ日米同盟が、二十一世紀の共通の目標に向けて一層協力していくことを確認されたことは大きな意義を持つものであります。  日米の相互の信頼関係に基づき、安保、経済両面にわたる協力、連携を深めていくことは、我が国のみならず、アジアを初め世界の平和と安定の基礎となるものであり、それだけに我が国としても、景気回復や日米防衛協力、平和外交の展開、積極的な国際貢献等へ最大限の努力が望まれるところであります。  総理に、公式訪米の意義と日米首脳会談の主要な成果について、まずお伺いいたします。  日米間の三年越しの緊要な懸案事項でありましたガイドライン関連法案については、先日、一部修正の上、現在、本院で特別委員会の審議が始まる運びとなりました。クリントン大統領も衆議院通過を評価したいと表明されたようでありますが、船舶検査関係の条文の削除等、衆院での修正事項について米国サイドから何か反応があったのかどうか、お伺いいたします。  北朝鮮問題については、引き続き日米韓が緊密に協議していくことは不可欠でありますが、総理は、ミサイルや核に加え、日本人拉致疑惑問題についてクリントン大統領の協力を強く要請され、米国として取り組んでいく旨の意向を引き出したことは大きな成果として評価いたしたいと存じます。  また総理は、朝鮮半島、特に北朝鮮への対応は、抑止と対話のバランスを基本とする包括的アプローチを進めることに賛同されたと伝えられていますが、現実には、ミサイル協議を初め、対北朝鮮交渉への日本の直接参加への道筋はいまだ見えてきておりません。  北朝鮮に対して、拉致疑惑を初め多くの懸案問題に真剣に対応させる外交上の手だてがぜひとも必要であります。日本、ロシアを加えた六者協議の実現も含め、総理の取り組みについて方針をお聞かせ願います。  日米両国は、国民総生産が世界の四四%と、約半分を占める経済二大国であります。それだけにアメリカは、一刻も早い日本経済の回復を実現し世界経済を安定化させようとの認識が強く、日米首脳会談でもその姿勢が明確にうかがわれました。  総理は、就任以来、金融システム安定化、総需要刺激策を初め日本経済再生に向け総合的な経済政策を力強く進められているところであり、クリントン大統領は、総理の指導力のもとで金融制度改革やマクロ面での措置、民間のリストラ努力を進めていることを高く評価すると述べられています。  ただ、アメリカは、アジア経済を含めてデフレへの危険性を指摘しており、特に我が国は、株価は回復しつつありますが、土地資産価格の下落に歯どめがかかっていません。土地の流動化・有効活用対策などはいまだ不十分ではないかと思われますが、総理はデフレ回避策を今後どのように推進されるお考えなのか、伺います。  さらに総理は、日本経済は本格的な回復には今まさに正念場だ、引き続き不退転の決意で取り組むと表明され、クリントン大統領は、回復が弱いうちは刺激策をとめないことが重要だとの要望を出されています。今回の日米首脳会談で対外公約にもなった観がある九九年度のプラス成長について、総理はどのような決意と具体策で実現を図られるお考えなのか、伺います。  四—六月を踏まえての補正予算編成の観測も一部に出ていますが、他方で財政の悪化やそれに伴う長期金利の上昇懸念もあり、この点も踏まえ、御判断をあわせお伺いいたします。  構造改革への取り組みを緩めてはなりません。企業が抱える人、設備、債務の過剰状態の改善は急務であります。現在進行中のリストラにおいては雇用の悪化など経済社会に痛みを伴い、現に三月の失業率は四・八%と最悪を記録しました。雇用の悪化については、ベンチャー育成など過剰人員の受け皿創設や人的能力の開発、職業訓練の充実が急がれねばならず、政治、行政、産業界は総力を挙げて取り組むべきであります。他方、過剰設備に関しては、先般の産業競争会議で提唱された設備廃棄への税制手当て拡充、すなわち欠損金繰越控除の期間延長などが有効と考えます。  そこで、税制面の手当て、規制の廃止などを含む構造改革への思い切った取り組みや雇用対策の抜本的拡充策について、総理にお伺いします。  日米の経済パートナーシップは総理訪米を機に一段と強まると期待されますが、唯一心配されますのは通商問題であります。  四月二十九日に米商務省は熱延鋼板のダンピング認定を下し、我が国メーカーは対応に追われています。これに加え、板ガラスなど五分野に関してアメリカ側は日本市場の開放を求めています。これらの情勢も踏まえ、首脳会談で合意を見た日米規制緩和協議共同報告書の内容の着実な実現が望まれます。  こうした状況を受けて、総理に次期WTO交渉での新たな秩序形成を視野に入れた通商問題への取り組み姿勢を伺います。  ユーゴスラビアのコソボ問題について、小渕総理は、首脳会談において難民支援、周辺国への支援等、総額二億ドルの援助を行うことを言明され、我が国としても主要八カ国の一員としてこの問題にできるだけの貢献をする考えを表明されました。  これに対してクリントン大統領は、ロシアの建設的な仲介努力に加えて、事態打開に向けて、我が国が難民支援等にとどまらず、外交的役割を果たすことが可能であるとの期待を表明されました。  その後、小渕総理は、急遽ロシアのチェルノムイルジン大統領特使と会談され、政治的解決に向けて協議が行われたようであります。  このような状況のもとで、G8のうち唯一コソボ問題に今まで関与していない我が国として、どのようなスタンスでコソボ和平に関与していくのか、また、和平に向けた環境づくりにどう貢献していくのか、総理見解を承りたい。  関連して、停戦後にコソボに展開する国際プレゼンスへの我が国の参加いかんについてもあわせてお伺いいたします。  最後に、来年主要国首脳会議が開催されることとなった沖縄について一言申し上げます。  サミット開催が伝えられるや、沖縄県民がお祝いの踊りのカチャーシーで喜びを分かち合う報道に接し、総理の決断に心より敬意を表するものであります。  サミットは、失業率が全国平均の約二倍等、さまざまな問題を抱えた沖縄の振興策を図る絶好の機会であり、現実的対応を掲げられる稲嶺知事の方針のもとで、普天間飛行場の移設を初めとする基地問題への取り組みを一層進めていかなければなりません。  また、沖縄サミットを評価されたクリントン大統領には、ぜひとも沖縄の戦後の歴史や現在抱える諸問題を理解していただけたらと思います。沖縄サミットの成功に向け、国を挙げて努力し、二十一世紀に向けた新しい沖縄の歩みを強く期待するものであります。  日米首脳会談を踏まえた今後の取り組みや沖縄サミット成功への総理の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  25. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 吉村剛太郎議員にお答え申し上げます。  訪米の意義と成果に関してお尋ねがございました。  先ほども申し上げましたように、新たな世紀を迎える世界にあって、より多くの国の人々がより強固な安全と一層の繁栄を享受できるよう率先して協力していくことが日米両国にともに課せられた使命であることにつきまして、クリントン大統領とともに決意と展望を示すことができたことが最大の成果であったと考えております。  日米防衛協力のための指針関連法案に関しましてお尋ねでありました。  議員御指摘のとおり、クリントン大統領は、同法案衆議院通過を評価したい旨表明されましたが、船舶検査活動の削除等、同法案に係る衆議院における修正につきましては、他国の議会のことでもあり、何らの言及もございませんでした。  北朝鮮への対応に関するお尋ねですが、我が国としては、ミサイルや拉致疑惑等の問題の解決に向けて、米韓と協力しつつ努力していく考えであります。また、日朝間の対話のみならず、種々の多国間の場を通じて北朝鮮に建設的な対応を求めていくことが重要であり、その一環として北東アジアにおける多国間の対話の場の実現に努力していく考えであります。  土地の流動化・有効活用対策などを含めたデフレ回避策についてのお尋ねがございました。  地価は最近下落が続いておりまして、土地取引も依然として停滞状況が続いております。こうした中で、昨年の緊急経済対策では、金融機関等が保有する不良債権等の実質的な処理を進めるため、整理回収機構や債権管理回収業法などの新しい不良債権処理の市場環境基盤も活用するとともに、公的機関等の活用を図りつつ都市再開発を促進することにより土地の有効活用を推進し、土地、債権の流動化を進めることとなっており、着実な実施に今努めておるところでございます。  私といたしましては、十一年度に回復基盤を固め、プラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で取り組む考えであり、緊急経済対策を初めとする諸施策を果断かつ強力に推進してまいる決意であります。  プラス成長に向けての決意と具体策についてお尋ねがありました。  先般、緊急経済対策の実施状況と今後の予定について確認いたしたところでありますが、緊急経済対策関連の諸事業は極めて熱心に遂行されつつあります。現下の我が国経済は、民間需要が低調なため極めて厳しい状況にありますが、各種の政策効果に下支えされて下げどまりつつあります。  平成十一年度には、金融システム安定化策等によりまして、不良債権処理、金融機関の再編が進み、我が国実体経済の回復を阻害していた要因が取り除かれると考えられます。また、昨年末に成立いたしました十年度第三次補正予算のもとで切れ目なく景気回復策を実施しており、十一年度予算におきましても、恒久的な減税を初めといたしまして、国、地方を合わせまして九兆円を超える思い切った減税を実施するほか、公共事業について大幅な伸びを確保するなど、積極的な財政運営を行うことといたしております。  私といたしましては、ただいま申し上げましたように、十一年度に回復基盤を固め、プラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で取り組む考えであり、このような諸施策を果断かつ強力に推進してまいります。  補正予算についてのお尋ねでありました。  先ほど申し上げましたように、我が国経済現状を見ますると依然として厳しい状況にありますが、緊急経済対策等の効果に下支えされ下げどまりつつあり、また、今後は十一年度予算の効果も本格的にあらわれることが期待されます。さらに、先般の閣議におきまして雇用対策の取りまとめを指示したところであります。  こうした状況のもと、現在のあらゆる対策を効果的に進めるよう、まさに内閣を挙げて全力で取り組んでいくことに尽きるものと考えております。  産業競争会議についてお尋ねでありました。  本会議は、生産性の向上による産業の競争力強化を目指し、官民が協力して総合的な検討を行うため開催することにいたしたものであります。したがいまして、この場での議論を踏まえつつ、設備廃棄の円滑化や規制緩和等も含めまして政府としても検討を行い、経済の供給サイドの体質強化を図る構造改革に真剣に取り組んでまいります。  雇用対策についてお尋ねがありました。  雇用の創出、安定に向けた産業界の努力を期待するとともに、能力開発や円滑な人材移動による早期再就職の促進のためのセーフティーネットを整備していくことが急務であります。このため、新たな雇用確保に向けた政策展開を図るべく施策の検討を進めております。  具体的には、雇用対策として人材のエンプロイアビリティーの向上と雇用のミスマッチの解消に向けた施策を検討し、また、雇用機会の創出策として新事業創出支援策の周知徹底を図りますとともに、医療福祉、情報通信など今後雇用の大幅な増加が見込まれる分野における一層の規制緩和、予算の有効活用等の具体化に努め、五月中にも検討結果を取りまとめたいと考えております。  今後の通商問題の取り組み姿勢についてお尋ねでありました。  我が国は、二〇〇〇年からWTOにおきまして開始される次期交渉を通じまして、多角的貿易体制の強化を推進すべく取り組んでまいる考えであります。そのため、WTOにおける次期交渉の開始に向けまして日米両国で協力し、主導的な役割を果たしていく考えであります。  次に、コソボ問題に対する我が国の今後の取り組みについてお尋ねがございました。  先般のG8外相会合には高村外相が出席をいたしまして、七つの原則につき合意を得る等、G8としての共通の立場の形成に努めた次第でございます。我が国としても、国連の枠組みのもとでの解決を目指し、またG8の一員として外交努力を払っていく考えであります。  国際監視団につきましては、その具体的な内容は未定でございまして、我が国の参加につき考え方を現在述べる段階ではないと考えております。  最後に、沖縄問題についてのお尋ねでありました。  先般の沖縄政策協議会におきまして、緊急対策の実施に向け最終方針を了解するとともに、沖縄経済振興二十一世紀プランにつきまして県側の要望を伺ったところであり、今後、県側の要望を極力反映できるよう、同プランの策定に向けまして鋭意取り組んでまいる方針であります。  また、米軍施設・区域の整理、統合、縮小につきましても、政府としては、稲嶺知事のお考えを十分に拝聴しつつ、沖縄県の理解と協力のもと、SACO最終報告を踏まえ、真剣に取り組んでまいる考えであります。  九州・沖縄サミットについてのお尋ねでありました。  九州・沖縄サミットが成功裏に開催されますよう万全の努力をしていく考えであり、本日、内閣に九州・沖縄サミット開催に関する準備態勢を設けることとしたところであります。  政府といたしましては、サミットが成功することで沖縄経済活性化に役立つとともに、県民が一体となって二十一世紀に向けて新たなスタートを切るよい機会となることを強く期待いたしておるところでございます。  以上、お答えといたします。(拍手)     ─────────────
  26. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 松前達郎君。    〔松前達郎君登壇拍手
  27. 松前達郎

    ○松前達郎君 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま行われました小渕総理の訪米報告に対しまして若干の質問をいたします。  総理は、四月二十九日から六日間の日程で訪米されましたが、このたびの訪米は十二年ぶりの米国公式訪問であり、その目的を一言で言えば、日米間の関係をより強固で安定したものにすることにあったのではないかと思います。  そこで、総理は、出発に当たりまして、ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、日本は二十一世紀の平和と繁栄に貢献できる国家に自己変革しつつあり、現在の経済的困難を克服すれば、日本は活力ある柔軟な社会に生まれ変わるといった旨のメッセージを米国国民に伝えたのであります。それには経済的困難の克服が条件となっておりますけれども、私もまさにそのとおりだと思います。  総理は、首脳会談で、九九年度の実質経済成長率をプラスにするよう不退転の決意で取り組む旨強調をされました。これに対してクリントン大統領は、日本景気対策が確実になるまで景気刺激策を継続するよう要求し、財政健全化もさることながら、世界経済の脅威は赤字ではなくて、デフレによる経済の萎縮であると述べたと報じられております。この大統領の発言は、必要に応じて補正予算の編成をも含めた追加景気対策を求めたと見られるのであります。このことは、既に世界銀行やIMFが日本経済の見通しをマイナス成長に下方修正したこともあり、このままでは小渕政権最大の公約の今年度経済成長率〇・五%達成の実現は到底困難と見ているからではないでしょうか。このクリントン大統領の発言に関して、総理見解と今後の施策についてまずお伺いいたします。  また、ロサンゼルスでの日米協会での歓迎夕食会では、二十一世紀をアジア太平洋地域の平和と繁栄の世紀とするには日米の協力が必要であり、そのためにはまず日本がしっかりしなければならない。二十一世紀日本は明るい希望を持ち、思いやりに満ち、世界に貢献する日本日本人であってほしい旨の演説を行われました。  しかし、このような総理の意気込みとは裏腹に、我が国の完全失業率は過去最悪の四・八%を記録、また、文部省の国民性調査では、日本現状や先行きを悲観的にとらえる人が急増し、多くの国民が自信喪失に陥っている結果が出ております。特に、心の豊かさや生活水準あるいは経済力などに対する悲観論が際立ち、評価がいずれも過去五年間の最低となったのであります。  総理は、シカゴで、日本の三月の完全失業率が過去最悪となったことについて、日本経済に活力と競争力を取り戻す上で避けて通れない数字であるとし、やむを得ないこととの見方を示されたのでありますが、企業の倒産やリストラなどにより痛みを受ける人々にとっては惨めであります。景気の回復がない限り、新たな倒産やリストラは続いていくと思います。リストラによって企業が生き残りさえすれば景気が回復するのか、あるいは倒産やリストラで失業者が増加する現象は景気回復のためにやむを得ないことなのであるか。景気回復が先かリストラが先か、両者は互いに深く関連した問題であると思います。この問題を成り行きに任せて見ているわけにはいきません。今後の重要な政治課題として重く受けとめるべきと考えますが、総理見解を伺いたいのであります。  今回の総理の訪米に当たっての最大の関心は、ガイドライン関連法案の国会通過であったと思います。この法案は、その重要な項目として盛り込まれていた船舶検査条項を法案から削除して衆議院を通過し、辛うじて訪米の面目を保持できたのであります。  これに対して、クリントン米大統領の最大の関心事は何であったでしょうか。NATO軍による空爆がその効果を上げることができないばかりか、たび重なる誤爆がついに国境を越えてブルガリアの首都誤爆にまで至ったこと、将来の地上軍投入の可否をめぐる問題など、長期化する空爆の成否が米政権の浮沈を左右しかねない情勢の中での日米会談であり、会談直後に設定されたロシアのチェルノムイルジン特使との緊急会談や日米首脳会談翌日からのドイツ訪問、ベルギーでのNATO首脳との今後の戦略協議などがクリントン米大統領の最大の関心事であったことは容易に想像できます。  ある新聞に、防衛指針、サミット沖縄開催などのお土産むなしくコソボが主役に浮上と皮肉めいた記事がありましたが、総理は、今回の米国での行事及び日米首脳会談全体を総括してどう評価されているのか、お伺いいたしたいのであります。  また、予定外に急遽行われました総理とロシアのチェルノムイルジン特使との会談の内容についてもお聞かせをいただきたいのであります。  ユーゴ情勢に関しては、G8の中でも米英両国などとロシアとの間には立場上の大きな食い違いがございます。NATO側は、事態進展によってはユーゴのじゅうたん爆撃をも辞さないという圧力をかけつつありますが、NATOによりますと空爆は既に最終段階に入り、ユーゴ軍のコソボからの撤退が解決へのかぎとなりつつあります。  NATOはユーゴスラビア・コソボ自治州をめぐる紛争終結後の日本に対する期待として、コソボの復興やバルカン半島の包括的安定策づくりへの日本の積極的な関与を挙げております。  ボンで行われていたG8外相会議は、コソボに国際文民治安駐留組織を展開させるなどの議長声明を採択いたしました。また、六月にケルンで行われるサミットではユーゴスラビア・コソボ問題が議題になることは必至であります。我が国として積極的に貢献するために何をなすべきか、ただ二億ドルの資金援助だけでは紛争解決に対する役割を果たしているとは言い切れません。総理が言われた紛争の外交的解決とは米国追認ということなのでしょうか。ここで考えなければならないことは、サミットのメンバーでNATO以外の国は日本とロシアのみだということでございます。  我が国政府にとって伝統的に不得意な積極外交かもしれませんが、あらゆるチャネルを使って積極的に汗を流し、行動する外交の展開がぜひとも必要だと考えますが、総理見解をお伺いしたい。  総理は、四月二十九日に、二〇〇〇年七月下旬に予定されておりますサミットの主開催地を沖縄県の名護市と決定して訪米されたのであります。沖縄で開催することは、普天間基地移転問題や基地縮小問題、あるいは沖縄が今後周辺事態に対して出動する米軍の拠点になる可能性をも含めて、沖縄の抱えている問題にどのような影響を与えたいとの考え方で決定されたのか、この点について総理の御見解を伺いたいのであります。  また、首脳会談における対朝鮮民主主義人民共和国政策では、核疑惑問題やミサイル発射問題に加え、日本人拉致問題解決に対する米国の支援を求めたとのことでありますが、これに対する米側の新しい対応が表明されたのか、それとも協力すると言うにとどまったのか、伺いたいのであります。もし、米国が拉致問題解決に協力すると言うならば、その方法には何があるのか、総理のお考えをお伺いしたいのであります。  来る六月に行われますケルン・サミットは、多くの国際的課題を討議することになりそうであります。特に、対ユーゴ問題、コソボ自治州の平和維持などが大きな議題になることは間違いありません。また、二〇〇〇年の九州・沖縄サミットは米軍基地問題を各首脳に認識させるよい機会ともなると思います。今後の我が国の外交に当たり、誤りのない歴史観と世界観のもと、毅然とした独自の外交戦略を展開されるよう総理に要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  28. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 松前達郎議員にお答え申し上げます。  まず、日米首脳会談におきまして日本景気対策に対してさらに刺激策を継続するよう要求したのではないかというお話でございましたが、日米間、申すまでもありませんが、世界第一そして第二の経済大国でございます。と同時に、それぞれの国における経済そのものは、自国のみならず他国に対して極めて影響の大きいことは申すまでもありません。  かつてはアメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引くと言われた時代もございますが、現在、アメリカ経済は大変好調でございまして、みずから健康優良児的立場でありまして、むしろ我が国が風邪を引けば東南アジア初め肺炎を起こすというような状況でございます。  したがいまして、ひとりその国の経済状況は、この二つの大きな経済大国の及ぼす影響について改めて深く認識し合うと同時に、現在の日本経済状況について、一日も早くさらに経済的な活性化を求められるという一般的なことを申されたわけでございまして、具体的な問題に触れての我が国に対する要請であったということではございません。  それから第二に、シカゴでの失業率の問題についてお触れになられました。  これは、シカゴ大学学生たちとの懇談会のときに日本のマクロ経済につきましてのお尋ねがございました。現在、日本は残念ながら四・八%というかつてない失業率になっておる、こういう状況の中で、一方では企業におきましてリストラをし競争力を回復していかなきゃならない、こういうことでございまして、そういう意味合いの中で、この失業率というものをできる限り抑えていかなければなりませんが、一方、企業のリストラが進展していく中で、失業率の問題も決して安閑とするものでない。  したがって、一方におきましては雇用政策について十分な対応をしていくことでこの事態を乗り越えていかなければならない。かつてのアメリカのように、極めて短期に企業がレイオフその他の強硬的な政策を遂行して一挙に経済が回復したというような形での状況というものは、我が日本の中におきましてはそうした政策をとり得ることがなかなか困難な中で、どう乗り越えていくかということについていろいろと討議した中でお話が出たことでございまして、何とか失業率を抑えつつ、かつ企業が体質を強化して競争力をつけることによりまして、日本経済再生のために努力していく決意を申し述べさせていただいたところでございます。  次に、チェルノムイルジン特使との会談についてお触れになられました。  ちょうどたまたま、御案内のとおりにエリツィン大統領の特使としてワシントンに参っておられまして、前日にゴア副大統領並びにクリントン大統領とお話をされまして、松前先生御指摘のように、今回のNATO十九カ国爆撃に関しまして、いわゆるG8としてはロシアと日本がこれに参画しているわけではありません。したがいまして、ロシアは、長いバルカン半島に対する政治的ないろいろの歴史的なかかわりの中で、大きな力を発揮しようということであろうと思いますが、我が国としては、御案内のとおりに、コソボからの難民に対しての支援ということにまず全精力を傾けさせていただいております。  なお、政治的な観点から、今回のこの平和的解決のためにいかなることがなし得るかどうかというようなことも含めまして、チェルノムイルジン特使とも率直なお話を交わすことができましたが、その内容につきましてはひとつ差し控えさせていただきたいと思います。  考え方としては、ぜひ今回の問題が一日も早く解決するための手段として、日本としての政治的な対応、何がなし得るかどうかということについて、十分これからも検討していくべき課題だろうと考えております。  一般的なコソボ問題につきましては、我が国としては、この問題の解決のためには国際社会が一致してユーゴ政府に働きかけていくことが基本であると考えておりまして、G8外相会談や先ほど申し上げましたチェルノムイルジン特使との会談等を通じまして、これから積極的な外交努力を試みてまいりたいというふうに思っております。  それから、二〇〇〇年サミットの開催地についてのお尋ねでありましたが、九州・沖縄サミットの首脳会合の開催につきましては、会議に必要な施設、環境が備わっていることに加えまして、沖縄の長い歴史の痛みと県民の熱い期待にこたえるとの観点から、沖縄に決定をいたしました。  政府といたしましては、サミットが成功することで沖縄経済活性化に役立つとともに、県民が一体となって新しいスタートを切るよい機会になるように期待いたしておるところでございます。  最後に、北朝鮮に関するお尋ねでございましたが、今般の日米首脳会談におきまして、私より、ミサイルや核施設疑惑の問題に加え、拉致疑惑の問題があり、大統領の協力を得たい旨申し述べたのに対し、大統領から、この問題のことは承知をしており、米国としても取り組んでいきたい旨の発言がございました。  残念ながら、日本と北朝鮮の間には公式の今正常化交渉が中断をいたしておりまして、事は核施設疑惑の問題ではございますけれども、北朝鮮とのパイプを最も持しておるのは米国でございますので、そうした米国が我が国におけるこの問題についての関心を十分持たれるということは極めて重要であるということで、あえて私からこの問題を提起させていただいたところでございます。  北朝鮮との各種の協議を行っている米国が、このような我が国懸念を引き続き十分念頭に置いて対応することを期待いたしておるところでございます。  以上、御答弁をさせていただいた次第でございます。(拍手)     ─────────────
  29. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 魚住裕一郎君。    〔魚住裕一郎君登壇拍手
  30. 魚住裕一郎

    ○魚住裕一郎君 私は、公明党代表し、今般の小渕総理米国公式訪問に関連し、若干の質問をいたします。  まず、総理の今回の訪米の基本的意義づけは一体何だったのかという点であります。  総理は、二十一世紀の日米関係に関して、アジア太平洋地域の平和と安定に不可欠なのは、日米両国が確固たる安全保障上の同盟関係を維持していくことであるとし、日米関係を二十一世紀において史上最高最強のものとすると表明されました。  私ども公明党も、日米関係我が国外交の基軸であるとの認識のもと、今般の公式訪問は、二十一世紀に向けた強固な日米協力関係の構築を目指すために、北東アジア情勢など地域の安全保障や世界経済の安定に共通の認識に立ち、協力を確認する重要な会談と意義づけをしたのであります。  しかるところ、総理は歓迎式典において、大西洋を挟むNATO首脳が一堂に会したこの首都で太平洋を挟む日米が会談するのは意義深いとして、みずからNATO同盟と同列に近い日米同盟を目指す考えを示されました。  現在、ガイドライン関連法案が本院において審議されております。私は、平和憲法の精神と原則を踏まえつつ日米安保体制の機能充実を図ることは必要であると考える者ですが、NATOと同列視するまでは考えておりません。創立五十周年を迎えたNATOは、冷戦下での集団防衛を目的とする西側軍事同盟から脱却して、危機管理型の安全保障機構への脱皮を目指し、先般、新戦略概念を採択して欧州安保の将来構想に踏み出しました。  その内容は、NATOの地理的範囲を超える抑止力が必要との考えのもと、予防外交ではなく、予防防衛を志向するものであります。総理みずからの公式訪問の意義づけアピールのためのNATO同列視ともとらえられますが、総理はこのNATO同盟と同じ方向性に日米関係を牽引される考えか否か、お尋ねいたします。  次に、ユーゴ・コソボ情勢に関してお尋ねいたします。  ユーゴ空爆が始まって既に四十日余を経過し、長期化の様相を呈しております。また、周辺諸国への多大な難民流出、誤爆等による一般市民の犠牲者続出など、まことに悲惨な事態を迎えております。かかる中での日米首脳会談では、早期の平和的解決へ向けた要請、殊に早期打開に向けた国連の強力なリーダーシップ発揮への働きかけが日米共同して行われるべきではないかと考えます。  ユーゴ空爆それ自体、国連の危機であるととらえる向きもありますが、だからこそ、国連中心外交の考えのもと、クリントン大統領に要請すべきであります。  総理は、単にクリントン大統領の長期戦略支持、G8共同歩調、二億ドル支援策を述べたにすぎません。対米追従外交と言わざるを得ません。国際社会の一致した対応が必要とする総理が、何ゆえ国連のリーダーシップについて言及しなかったのか、お伺いいたします。  次に、今般、G8緊急外相会議が開催されました。マケドニアに赴き、スコピエ郊外の難民収容所も視察した外務大臣は、G8外相会議で新和平案づくりに何を提唱したのか、また、二億ドル以外の日本の貢献策についてどのように考えているのか。例えば、国連が決議した文民と治安維持部隊による実効力のある国際駐留団に日本として要員を送るのか否か、外務大臣にお伺いいたします。  次に、沖縄サミットについてお聞きいたします。  訪米直前にサミットの沖縄開催を決定されました。私も、沖縄の歴史並びに基地問題、経済問題も含む現状を踏まえ、歓迎すべきことと評価いたします。  ただ、来年七月の沖縄サミットに向け、SACOでの合意がありながら具体化が滞っている県内の基地問題にどう対処していくのか、総理の決意をお伺いしたい。  次に、経済問題についてお伺いいたします。  総理は、クリントン大統領に不退転の決意を持って、プラス成長、〇・五%成長を確約されました。大変厳しい状況にある日本経済を九九年度本予算のみで国際公約達成が可能とお考えなのか、お伺いいたします。  現状のまま推移すると、マイナス一・四%との見通しがIMFの判断であります。直前のG7蔵相・中央銀行総裁会議の共同声明でも、あらゆる可能な手段を用いて景気刺激措置を執行すべきであると求められております。さらに、アジア開発銀行総会においても日本の景気回復を名指しで求められているのであります。  すなわち、日本経済に対する米国を含む諸外国と日本との認識のずれがあるのではないか。現在の景気対策や構造改革で九九年度はプラス〇・五%成長達成可能とする日本に対し、諸外国では財政支出の息切れ、失業率上昇で景気失速と懸念しているのであります。来月はケルン・サミットであります。総理はいかなる手法で景気回復を図るのか、お伺いいたします。  これに関連して、野田自治大臣は、輸血措置として補正予算の編成も積極的に検討すべきであると述べられております。九九年度予算は補正なしで景気対策にも対応するというのが自由党の主張ではなかったでしょうか。どのような認識のもと、右のような発言をされたのか、自治大臣にお伺いいたします。  右発言とともに、自民党幹事長も補正予算の必要性を指摘しておられます。  総理は、補正予算との明言は避けておられますが、細心の注意を払った後には補正もあり得るのか。その際、デフレを悪化させないための短期政策と日本産業構造改革とをどう調整されていくのか、お伺いいたします。  総理のプラス成長確約を白じんで聞いていたのが日本国民ではないかと思います。完全失業率は最悪の四・八%にはね上がり、失業者は三百三十九万人となりました。現金給与の伸び率もマイナスとなり、サラリーマン世帯の消費支出も大幅減となっております。国民は不満と将来への不安にさいなまれていると言っても過言ではありません。総理は、企業の過剰人員整理のため、失業率の一層の悪化の見通しを述べておりますが、問題は失業増加にどう対処するかであります。  マクロ的にも失業から経済への下押し圧力が大きくなり、景気の腰折れを招き、ひいてはアジア経済危機の深刻化につながる、九七年の財政構造改革を急ぐ余り消費税率を引き上げたあの失敗をまた繰り返すのではないか、米国も諸外国もこのように懸念していると考えます。五月にまとめるとの雇用対策の方向性についてお示しいただきたいと思います。  最後に、半島情勢についてでありますが、拉致疑惑につきクリントン大統領の協力を要請し、日本立場への支持表明を得たことは評価すべきであると考えます。  しかし、ミサイル問題につき総理が米朝協議の場への日本の参加を提唱と事前の報道がありました。総理は首脳会談で具体的に提唱されたのでしょうか、お伺いいたします。  不審船事件等、挑発的な外交姿勢が改められないままであり、右のミサイル協議の場への参加のないまま、KEDOへの十億ドル資金供与協定に署名されました。どのような検討のもと、署名されたのかを伺って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  31. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 魚住裕一郎議員にお答え申し上げます。  まず、日米関係方向性についてお尋ねでありましたが、私がNATO諸国に言及いたしましたのは、米国から見まして大西洋の方向にはNATO諸国との同盟関係があり、太平洋を隔てて日本との同盟関係があるとの事実を指摘したものでございまして、日米安保体制を米国のNATO諸国との関係と同列に論じたものではございません。  今回の訪米の意義は、価値を共有する同盟国である日米両国が平和で豊かな世界の構築という共通の目標を目指して協力していくことで一致いたしたということだろうと思います。  コソボ問題についてのお尋ねでありました。  問題解決のためには、G8諸国を中心として国連の枠組みのもとで本問題の解決を探求することが重要であると考えております。  今般のクリントン大統領との会談におきましては、このような考え方のもと、G8諸国間の協調が必要であるとの考えを述べた次第でございます。  六日のG8外相会合におきまして、コソボ問題解決のための七つの原則に合意が得られ、今後国連安保理決議採択に向けて作業を進めることとなったと承知をいたしております。  沖縄における米軍施設・区域に関する問題についてのお尋ねでありましたが、これまでもSACO最終報告に盛り込まれた返還事案を着実に実施しているところであり、整理、統合、縮小の具体化が滞っているとの御指摘は当たらないと思います。政府としては、今後とも、同報告の着実な実現に向けまして、稲嶺知事のお考えも十分に拝聴して、沖縄県の理解と協力のもと、最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。  我が国の今後の景気についてと、同時にまた、米大統領に対する我が国経済成長についての確約をしたのではないかということでございますが、現在の日本経済が大変厳しい環境にあることは十分承知をいたしております。  したがいまして、従来から我が国経済活性化するために種々の政策を講じてまいってきておるところでございまして、特に十一年度に、金融システムの安定化策によりまして不良債権の処理、金融機関の再編が進みまして、我が国実体経済の回復を阻害しておりました要因が取り除かれつつあると考えております。  また、昨年末に成立した十年度第三次補正予算のもとで切れ目なく景気回復策を実施いたしておりまして、これと十一年度の予算におきまする各種の減税、こうした思い切った施策を実行することによりまして、積極的な財政運営と相まって十一年度に回復基調を固め、プラス成長を確実にすることに向けて引き続き不退転の決意で取り組む考え方でありまして、このような施策を果断かつ強力に推進してまいりたいと思っておりますし、また、このことを米側にも強く申し上げたところでございます。  補正予算及びデフレ対策についてでございますが、我が国経済現状を見ますると、依然として厳しい状況にありますが、先ほど申し上げました緊急経済対策等の効果に下支えされまして下げどまりつつある。また、今後は十一年度予算の効果も本格的にあらわれてくることが期待されておるところであります。先般の閣議でも特に雇用対策の取りまとめを指示したところでございまして、こうした状況のもと、現在のあらゆる対策を効果的に進めるよう、まさに内閣を挙げて全力で取り組んでいくことに尽きるものと考えております。  なお、申し上げましたように、経済の根本的な再生にはどうしても供給面の体質強化を図ることが不可欠であると考えておりまして、政府といたしましても、いま一度規制緩和等による事業環境整備に強く取り組んでまいっておりまして、引き続き、産業競争会議におきましても官民の知恵を出し合うなど、構造改革に全力で取り組んでまいりたいと考えております。  関連いたしまして、雇用対策の点でございますけれども、雇用の創出、安定に向けた産業界の努力を期待するとともに、能力開発や円滑な人材移動による早期再就職の促進のためのセーフティーネットを整備していくことが急務であります。こうした考え方に立ちまして、新たな雇用確保に向けた政策展開を図るべく、雇用対策及び雇用機会の創出策のさらなる充実に向けまして早急に検討を進めているところでありまして、五月中にぜひこの検討結果を取りまとめたいと考えております。  北朝鮮のミサイルの問題に関するお尋ねでありました。  今般の日米首脳会談におきまして米朝協議への我が国の参加に直接言及したわけではありませんが、我が国としては、日米韓の三国がミサイル問題を初めとする共通の諸課題につき緊密に連携し、効果的に対応することが重要と考えておりまして、このような我が国立場につきましては米側も十分承知をいたしておるところでございます。  北朝鮮への対応に関して、なお御指摘のようにいろいろ不審船の問題あるいはまた諸懸案があることは承知をいたしておりますが、今後とも対話と抑止によりまして適切に対応してまいる考えでございます。  そういった意味では、KEDOにつきまして、北朝鮮の核開発を阻止する最も現実的かつ効果的な枠組みとしてこのKEDOを維持することが我が国自身の安全保障上極めて重要であるとの考えから、今般KEDOの資金供与協定に署名したことも御案内のとおりでございます。  なお、北朝鮮との関係につきましては、申し上げましたように、対話と抑止によりまして積極的に対応していきたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣高村正彦君登壇拍手
  32. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) コソボ問題についてのお尋ねでありますが、我が国としては、コソボ問題を解決するには、ユーゴ政府国際社会の要求を受け入れること、そのためにG8間で共通ポジションを早急につくり上げ、同政府に働きかけていくこと、また、国連が主導的役割を果たすことが必要と考えております。  今般のG8外相会合にも私はこのような考え方のもとに出席をいたしましたが、結果として、コソボにおける暴力と抑圧の終了等、コソボ問題解決のための七つの原則につき合意されるとともに、かかる原則を実施するために国連安保理決議の準備を行うこと等が合意されました。我が国が表明してきた考えにのっとってこのような決定がなされたことは重要な前進であると考えております。  今般発表しました二億ドル以外のさらなる貢献策につきましては、現地の状況に応じ検討していきたいと考えておりますが、国際駐留団につきましては、その具体的な内容は未定であり、我が国の参加につき考え方を述べる段階にはないと考えております。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇拍手
  33. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 補正予算の編成に関する御質問にお答えをいたします。  平成十一年度当初予算の編成に当たりましては、年度途中で大規模な補正をしなくても済むようにしたいという考え方で、自自両党の交渉、折衝に臨みました。その結果、両党合意の上で、大幅減税あるいは公共事業や中小企業対策、雇用対策等、景気対策に最大限配慮して当初予算が編成されたことは御承知のとおりでございます。  ただ、その際私は、当時自由党の幹事長といたしまして、日本経済は景気回復という意味においても構造改革という意味においても危機的状況にあり、十一年度を必ずプラス成長とするためには、景気動向を注視した上で果断な対応が必要であるという考え方もあわせて申し上げておったところでございます。  御指摘の私の輸血措置という発言についてでありますけれども、今後の景気動向によっては、追加的な景気対策に係る補正予算の編成というのは、一般論として否定されるべきものではないという趣旨を申し上げたわけでございます。  特に、経済の構造改革や個別企業のリストラということは、経済再生のためには必要不可欠な経路でありますけれども、一方で、目先、足元の動向についてはデフレ圧力を伴うというものでもあるわけであります。したがって、手術をするときには輸血措置が必要であるのと同じように、経済の構造改革を成功させようということである場合には、マクロ政策のバックアップということも必要でもあるということも念頭に置く必要があるということを申し上げたわけであります。(拍手)     ─────────────
  34. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 池田幹幸君。    〔池田幹幸君登壇拍手
  35. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、日本共産党代表して、日米首脳会談に関連して小渕総理質問します。  総理は共同記者会見で、日米両国が二十一世紀に向け平和で豊かな世界を構築するという共通の目標を目指して一層協力していくことを確認したと述べられました。しかし、率直に言って、会談で確認された内容は、日米安保体制強化を全面的に打ち出し、平和の問題でも経済の問題でも、日本国民にとっては、協力の名のもとに一方的な犠牲を強いられるおそれの大きいものだと言わざるを得ません。  そこで、まずガイドラインについて質問します。  ガイドライン関連法案については、衆議院における短い審議の中ですら、その危険性が明らかになり、国民の中から多くの疑義や危惧の念が出されつつあります。また、本院における審議は開始されたばかりであります。にもかかわらず、首脳会談の結果は、既に法律が成立したかのような立場で、新たな約束をした疑いが濃厚なものであります。こういった参議院の審議をないがしろにする行為に対し、私は強く抗議するものであります。  クリントン大統領は共同記者会見で、我々は会談で、新たな日米ガイドライン関連法案衆議院を通過し、これによって、我々がアジアにおけるいかなる地域危機にも柔軟かつ迅速に対応できるようになることを喜んでいると述べました。これはまさにガイドラインの危険な本質を浮き彫りにしたものではありませんか。  総理は国会で、ガイドラインの周辺事態とは、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重大な影響を与える事態だと答弁してきました。しかし、クリントン大統領のこの発言は、ガイドラインによって日本の協力が確実となり、いかなる危機にも対応できるようになったというもので、日本の平和と安全に重大な影響を与える事態といった限定など全くないではありませんか。クリントン大統領が「我々」と述べたのに対し、同席していた総理はこれに何の異議も挟みませんでした。ということは、総理も同じ認識なのですか。答弁を求めます。  また、小渕総理は新ガイドラインの実効性確保の重要性を確認したと述べていますが、確認し合った実効性確保の中身は一体何なのか。具体的にどのような約束をしたのか、明確な答弁を求めます。  さらに、クリントン大統領は、米国の政策は一つの中国を支持している、日米防衛協力はいかなる意味でも中国に向けられたものと見られるべきものではないと述べ、総理もこの発言を否定しませんでした。総理、この問題はあいまいなままでは許されません。周辺事態で台湾を対象にしないと明言すべきではありませんか。答弁を求めます。  NATOのユーゴ空爆によって列車、バスを初め多くの民間人が犠牲となっています。コソボ問題では三本の国連安保理決議が出されていますが、どれ一つとして武力行使を容認したものはありません。NATOの攻撃は、国際法上何ら根拠のないもので、違法なものであることは明白ではありませんか。  政府は、民間人をも巻き込んでいるNATOの空爆の開始に際して、早々と理解するという態度をとりました。しかし、NATOの空爆は国際法上根拠がない上に、ユーゴ爆撃には米下院でも批判が強まり、支持決議が採択できないというのが最近の現実です。ヨーロッパでも批判の声が高まっています。しかし、総理の言明からは主権国家を爆撃することの重大さへの認識も爆撃批判の高まりへの理解もまるで見えません。国際的な平和解決の努力や国連での空爆停止、和平交渉の努力への言及もなしに、なぜ米国を支持すると言明したのですか。それは武力行使強化の新たな呼び水になるのではないですか。  次に、経済問題についてであります。  一昨年の消費税増税の大失政に始まった消費大不況は、依然として深刻であります。小渕総理は日米首脳会談で、景気回復に向けてあらゆる施策を迅速かつ大胆に講じたと発言されましたが、その目玉である九九年度予算、ゼネコン奉仕の公共事業と金持ち、大企業減税を柱とした九九年度予算に景気回復を期待する声はほとんどありません。今年度経済成長見通しを〇・五%としたのは政府だけであり、それを信用する人はありません。多くの民間シンクタンクはもとより、財界もマイナス成長を予測しており、IMFに至っては先月マイナス一・四%成長に見通しを下方修正したではありませんか。今必要なのは、景気対策の真の決め手である個人消費の回復の方向へ政策を転換することではありませんか。  首脳会談では、クリントン大統領が、景気回復に全力を尽くすことが大事で、回復が弱いうちは刺激策をやめないことが大事だと述べたのに対し、総理は、大統領の指摘は大事なことであり、細心の注意を払いたいと応じられましたが、その真意を述べていただきたい。  大統領の要求は明らかに従来型景気対策の追加、継続にありますが、総理はこれをそのまま受け入れようと考えているのではありませんか。そうであるならば、それは国債を増発して公共事業を上積みするものであり、景気対策どころか長期金利の上昇を招いて景気の足を引っ張りかねないものであり、財政破綻をさらに深刻化するものではありませんか。このような不当な要求はきっぱりと拒否して、圧倒的多数の国民が要求している消費税の減税をちゅうちょなく実施すべきであります。  総理はシカゴ大学での懇談で、企業競争力を持つためにはリストラが必要との立場から、失業率が五%になることもあり得るという見方を示したと伝えられておりますが、これは今日の失業問題を真剣に受けとめない国民無視の発言と言うほかありません。完全失業率が四・八%に達した背景には、大企業がグループぐるみで数千人単位の人員削減を相次いで進めていることがあります。  今、政治に求められているのは、大企業がその社会的責任として果たすべき雇用責任を放棄して進めているリストラ、人減らしを規制することであります。ところが、小渕総理、あなたの直轄下にある産業競争会議は逆にリストラ支援の減税策まで提案しようとしております。これでは失業者を増大させ、個人消費を落ち込ませることにしかなりません。今こそ解雇規制法を含む雇用対策に全力を挙げるべきではありませんか。  会談で承認した日米規制緩和報告書も問題です。  ここでは日本側の約束した項目は百六十一項目で、大型小売店の進出に対する地方自治体の規制を封じるなど極めて具体的に実施を約束したものですが、アメリカ側の項目はわずか三十項目で、内容は、検討協議を約束するといった抽象的なもので、実施の約束などはほとんどありません。これでは数の上でも内容の面でも日本側の一方的な譲歩ではありませんか。  総理、首脳会談で共通の利益を求めて協力することを確認したといいますが、その共通の利益とは、ガイドラインを初めアメリカ世界戦略に従属、迎合することなのですか。そうであってはなりません。二十一世紀に向かって今大切なことは、日本国民に一方的犠牲を強いる対米従属的な姿勢を改め、対等、平等な日米関係の確立を目指し、自主的な外交姿勢に転換することであります。このことを指摘し、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  36. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 池田幹幸議員にお答え申し上げます。  首脳会談でのクリントン大統領の発言につきお尋ねですが、御指摘の大統領の発言は、周辺事態安全確保法案の意義につき一般的に言及したものと理解しており、周辺事態我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である点につき日米間に見解の相違はなく、米の立場我が国の従来の立場と異なっていることを認めたとの御指摘は当たらないものであります。  日米防衛協力のための指針の実効性確保の中身についてお尋ねですが、さきの首脳会談におきまして、私から指針の実効性確保のための関連法案衆議院を通過した旨を説明し、クリントン大統領がこれを評価したわけであります。また、私からは、今後とも日米安保体制の信頼性の強化に努力していく旨を述べたところでございます。  周辺事態と台湾についてのお尋ねでありましたが、周辺事態はその生起する地域をあらかじめ特定することはできないという意味での地理的概念でなく、ある特定の地域における事態につき、あらかじめこれが周辺事態に当たるか否かの質問にお答えすることは不可能であります。  我が国は、日中共同声明において表明された基本立場を堅持した上で、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望いたしておるところであります。  コソボ問題についてお尋ねがありましたが、今回のNATOの行動が安保理決議を根拠とするものか否かは、一義的には安保理が判断すべきものであります。この関連でロシアが提出した決議案は、安保理において賛成三、反対十二の大差で否決されたところであります。いずれにしても、我が国は今回のNATOの行動の当事者ではなく、詳細な情報も有しておりませんので、法的評価を下すことはできないことを御理解いただきたいと思います。  コソボ問題の解決についてのお尋ねでありますが、我が国としては、G8を中心としての国連の枠組みのもとでの解決策を探求することが重要と考えております。今般の日米首脳会談においてこのような外交努力の重要性を強調いたしたところであります。  このような考え方に基づき、我が国としても今般G8外相会合等で外交努力を行っており、同会合の結果、解決のための七つの原則に合意が得られ、国連安保理決議に向けての作業を進めることとなった次第でございます。  個人消費の回復へ政策を転換すべきということでありますが、我が国経済の回復のためにはGDPの約六割を占める個人消費は重要であると考えております。こうした観点も踏まえまして、昨年末に成立した第三次補正予算のもとで切れ目なく景気回復策を実施いたしておりまして、十一年度予算におきましても、当面の景気回復に全力を尽くすとの観点から、個人所得課税の恒久的減税を実施するほか、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、住宅ローン減税を行うことなど、人々の生活基盤の安定化につながる施策を十分取り入れたものとしておるのであります。  日米首脳会談における経済問題についての私の発言についてお尋ねがありました。  私より、本格的な回復に向けては今まさに正念場であり、九九年度に回復基盤を固めプラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で取り組むことを表明いたしたものであります。私としては、現在、あらゆる対策を効果的に進めるよう、まさに内閣を挙げて全力で取り組んでいくことに尽きると考えております。  従来型の景気対策を追加、継続するかということでありますが、我が国経済現状を見れば、依然として厳しい状況にありますが、緊急経済対策の効果に下支えされ下げどまりつつあります。また、今後は十一年度予算の効果も本格的にあらわれてくることが期待されます。さらに、先般の閣議におきまして雇用対策の取りまとめを指示したところであります。先ほど申し上げましたように、こうした状況のもと、現在のあらゆる対策を効果的に進めるよう、まさに内閣を挙げて全力で取り組んでいくことに尽きるものと考えております。  消費税の減税についてお尋ねがありました。  消費税の引き上げを含む税制改正は、少子高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものであり、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えております。消費税に限らず、税は低い方がいいという面はありますが、税、財政のあり方考えるとき、消費税率の引き下げは困難であり、この点、国民の皆さんにも御理解いただきたいと思います。  リストラについてでありますが、事業の再構築は、我が国経済の再生を図る上で不可欠な道となっております。これを進めていくに当たりましては、雇用の取り扱いが重要であると考えており、雇用の創出、安定に向けた産業界の努力を期待するとともに、官民が一致協力して能力開発や円滑な人材移動による早期再就職の促進のためのセーフティーネットを整備する必要があると考えております。  雇用対策についてでありますが、能力開発や円滑な人材移動による早期再就職の促進のためのセーフティーネットを整備していくことが急務であることは申し上げたとおりであります。こうした考えに立ちまして、新たな雇用確保に向けた政策展開を図るべく、雇用対策及び雇用機会の創出策のさらなる充実について早急に検討を進めておるところであります。  なお、解雇につきましては、判例の考え方を踏まえて労使間で話し合われるべきものであり、一律に規制するような立法措置を講ずることは適切でないと考えております。  日米規制緩和対話第二回共同現状報告に関するお尋ねでありましたが、この報告は、日米間の規制緩和対話の二年目における成果を取りまとめたものであります。日米間の規制緩和対話は双方向性の原則に基づいておりまして、三年目についてもこうした原則に立って対話を継続することといたしております。いずれにせよ、我が国としては、我が国自身の課題として規制緩和に取り組んできているところであります。  最後に、日米関係我が国の外交姿勢に関するお尋ねでありました。  クリントン大統領と私が確認したのは、日米両国が、自由と民主主義という基本的価値を共有する同盟国として、二十一世紀に向けて平和で豊かな世界を構築するという共通の目標に向けて一層協力するということであります。私といたしましては、日本外交の基軸である日米関係の一層の強化のために今後とも全力を尽くしてまいる考えであります。  以上、お答え申し上げます。(拍手)     ─────────────
  37. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 福島瑞穂君。    〔福島瑞穂君登壇拍手
  38. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、日米首脳会談の内容に関連して、小渕首相に質問いたします。  日米新ガイドライン関連法案に関連して質問をいたします。  私が一番思うことは、総理は、国民に向けて政治を行っているのか、アメリカに向けて政治を行っているのか、一体どっちを向いて政治を行っておられるのかということです。  私は、衆議院議員の人たちから、衆議院の採決をめぐって、小渕首相がゴールデンウイークに渡米されるので、それまでに衆議院で日米新ガイドライン関連法案を通過させてほしいと言われたと聞いております。周辺事態法などがアメリカへのお土産であるとも言われました。国民の命や暮らし、生活は、アメリカへのお土産程度のものなのでしょうか。  日米新ガイドライン関連法案を危惧して、反対や慎重審議意見書を採択した地方自治体は二百を超えようとしております。反対や慎重審議を求める国民の声に耳を傾けてください。国民に向けて政治を行っているのか、アメリカに向かって政治を行っているのか、疑問に思います。  次に、声を大にして言いたいことは、参議院の軽視ということです。  私は、参議院のメンバーであることに誇りを持っております。当たり前のことですが、参議院は衆議院のカーボンコピーではありません。衆議院で通過しただけでアメリカになぜ報告ができるのでしょうか。  総理にお聞きします。  日米新ガイドライン関連法案について、アメリカに対し具体的にどういう文言で報告をされたのか、お答えください。また、アメリカに対し具体的にどういう約束をされたのかをお答えください。  さらにお聞きします。日本アメリカに対して主体性を発揮できるのでしょうか。必要な場合、ノーと言えるのでしょうか。そのことにつき、特に二点、お聞きいたします。  まず、軍事紛争へのアメリカ介入に対して、過去に日本が一度でも反対を表明したことがあるのでしょうか。アメリカの主導する軍事行動には、国際法上、疑問のある行動が数多く含まれております。例えば、スーダン、アフガニスタン、ユーゴスラビアがアメリカやNATOを侵略あるいはまさに侵略しようとしたという事実はないにもかかわらず攻撃をしております。けしからぬ国があるからといってミサイルを撃ち込むことはできないはずです。日本政府は、スーダン、アフガニスタンへのアメリカのミサイル攻撃に理解を示すとともに、ユーゴスラビアへのNATOによる攻撃を強く支持するという姿勢をとっていますが、このようなアメリカの行為は、国際法規に基づくならば認められるものではありません。  総理は、日米首脳会談で、コソボ問題についてクリントン大統領の長期戦略を歓迎するとおっしゃっています。しかし、民間人に数多くの犠牲者を出し、正当性のない空爆をやめるようおっしゃるべきだったのではないでしょうか。  次に、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文についてお聞きをいたします。  岸・ハーター交換公文があります。これは一九六〇年一月十九日に交換された公文で、日米間の事前協議がなされる場合として三つが決められております。そのうちの一つは、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用です。  今まで、例えば一九九八年一月二十三日、空母インディペンデンスが横須賀港から中東出兵をしました。これは、日米安保条約第六条が定めている極東の枠を大きく超えております。明らかに事前協議の対象です。このように、アメリカが事前協議の対象となる日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用をしたことは何度もあります。  そこで、お聞きします。  これまでの日米間の事前協議は、何回行われたのでしょうか。  私の調査では、アメリカの軍事紛争への介入に対して、過去に日本はノーと言ったことはありません。反対をしたことはありません。そして事前協議が必要な場合にも事前協議がなされたこともありません。しかも、野呂田防衛庁長官は、ことし四月一日の衆議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会において、周辺事態法が成立すれば、絶えず緊密な連絡調整をやっているので、実態上ノーと言うことはないと答えています。  しかし、相手が理不尽なときには、国民のためにノーと言うべきです。ノーと言わないということは、日米安保条約第六条が必要だと考えてつくり出したシステムをばっさりと葬り去ろうとしているのです。四十年前の政党政治家よりも後退し、よりアメリカの言うがままになっているのではないでしょうか。だからこそ、周辺事態法などが成立をすると、アメリカ世界のどこかで始めた戦争に日本は巻き込まれていくと危惧するのは理の当然ではないでしょうか。総理国民全員の命や生活に関する問題です。真摯に答えてください。  日米の緊密な関係ができたと報道されている面もありますが、緊密な関係は軍事同盟ではなく、平和外交の具体化をすることでなすべきではないでしょうか。  次に、四月二十八日、衆議院の法務委員会で、盗聴法、組織的犯罪対策法の参考人質疑が行われた直後に、全く不意打ちに、今後の委員会の進行をすべて委員長に一任するという強行採決が行われました。自民党筆頭理事は、これは内なるガイドラインだ、急がねばと言ったと伝えられています。  しかし、そういう位置づけはおかしいのではないでしょうか。盗聴制度の導入やマネーロンダリング規制は、国の刑事司法制度の根幹にかかわる重大な問題です。アメリカでも、盗聴制度の中で実はテロ対策に全く効果が上がっていない、そして政治的に盗聴が使われている、政治家こそが最も盗聴の対象にされているという報告もあります。  強行採決ということになれば、これは日本の民主主義の自殺行為です。前国会で全野党が継続に反対した問題の多い法案を拙速で審議するのは民主主義の破壊です。慎重審議をすべきだと思います。  このことを主張し、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  39. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 福島瑞穂議員にお答え申し上げます。  周辺事態安全確保法案についてまずお尋ねがございました。  本法案につきましては、衆議院における長時間にわたる御審議を踏まえ、同院における修正の上可決されたところでありまして、拙速に採決を行ったとの御指摘は当たらないと考えます。  なお、本法案につきまして、国民及び地方自治団体の関心も非常に高いものと承知をいたしており、今後ともさまざまな機会をとらえ説明に努めてまいりたいと考えております。  日米防衛協力のための指針関連法案等についての米側とのやりとりに関するお尋ねでありますが、私は、クリントン大統領に対し、指針関連法案等が先日衆議院を通過した旨を説明いたしましたが、このことが参議院軽視であるとの御指摘は全く当たらないと思います。政府としては、本法案等が参議院においても十分御議論され、可能な限り早期に成立、承認されることを期待いたしておるところでございます。  米国の軍事行動に関するお尋ねでありますが、我が国は、国際法上違法な武力行使には一貫して反対の態度をとってきております。  クリントン大統領の長期戦略を歓迎すると私が申し述べたことについてのお尋ねでありましたが、本件コソボの問題でありますが、真にコソボ問題の解決を図るために、コソボにとどまらず、南東欧全体の平和と安定を探求していく必要があるとの米欧諸国の考え方に賛意を表したものであります。  事前協議についてお尋ねがありましたが、事前協議はこれまで一度も行われたことはありませんが、これは日米安保条約締結以来、事前協議を行わなければならないような事態が生起しなかったためであり、日米安保体制の抑止力が効果的に機能してきたことの証左であります。事前協議の対象となる主題に該当する場合があれば、当然事前協議が行われることになり、我が国としても適切に対処することは当然のことであります。  日米間の緊密な関係を築く施策に関するお尋ねでありますが、日米両国は、二十一世紀に向けて平和で豊かな世界を構築するという共通の目標を有しております。三日のクリントン大統領との会談でも、このような目標に向かって日米両国が率先して協力することを確認いたしたところであります。私といたしましては、世界の平和と繁栄の達成のため、既に緊密な日米関係ではありますが、さらにこれを一層強化すべく努めてまいる考えであります。  最後に、組織犯罪対策三法案審議についてのお尋ねがありました。  国会での御審議につきまして意見を申し述べることは差し控えたいと思いますが、昨年三月に提出したこれらの三法案は、組織的な犯罪をめぐる国内外の情勢にかんがみ、この種の犯罪に適切に対処するために必要不可欠な法整備として重要かつ緊急の課題でありますので、できる限り早期に実現させていただきたいと考えるところでございます。  以上、お答えといたします。(拍手)     ─────────────
  40. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 奥村展三君。    〔奥村展三君登壇拍手
  41. 奥村展三

    ○奥村展三君 私は、総理米国公式訪問に関する報告に対しまして、参議院の会を代表して、質問をさせていただきます。  このたびの日米首脳会談につきまして私の素朴な感想から述べて、そして質問をさせていただきたいと思います。  クリントン大統領が就任されてから我が国総理大臣は、小渕総理で六人目であります。また、十二年ぶりの公式訪問であったわけであります。先進諸国の首脳が長期にわたって政権を担当されているのが一般的であります。我が国総理は首脳会談のような国際会議においては常に顔ぶれが新しくかわっているのが現状であります。首脳間の信頼関係の構築や国際的な我が国の発言力という観点から見ましても、余りいいことではありません。  さらに、つけ加えて申し上げるならば、我が国のあらゆる改革が遅々として進まないのは、このあたりにも原因があるのではないでしょうか。特に経済構造改革などは、その効果があらわれるまでに少なくとも数年単位の時間がかかります。改革を進めるには短期的な効果ばかりに目を奪われてはなりません。その改革の痛みに耐え、腰を据えて取り組むことが重要であります。  我が国が国際的な発言力を高めていくためにも、また国内の改革を進めていくためにも、中長期の視点が大切であると思います。我が国の将来を思うとき、政治判断が最も重要であります。総理はどのようにお考えになるか、お聞かせを願いたいと思います。  次に、日米関係についてお伺いをいたします。  日米関係は、我が国にとりまして最も重要であります。このたびの日米首脳会談におきまして、東西冷戦の崩壊後しばらく漂流ぎみでありました日米関係を、安全保障と経済の両面でその価値観と責任を共有する同盟関係として位置づけたことは大変意義深いことであったと思いますが、ただ残念なことに、首脳会談の最大の成果は始球式であるとアメリカ政府高官の発言が冗談めいて報道されておりました。日米首脳会談に対する注目度の低さも感じられたわけであります。我が国との強力な同盟関係があってこそ、アメリカは今や世界ナンバーワンの地位を支えていると言っても過言ではないと思います。  日米の関係は、アジア太平洋地域の平和と安定を引き続き保障する枠組みを提供して、軍拡競争や武力紛争のおそれがないよう経済的繁栄や発展を導くことにあると思います。日米両国は一九九六年四月の安保宣言で確認をいたしてもおりますし、それが冷戦後の新戦略概念ではないでしょうか。  日米同盟の強化が中国の懸念を増幅することにつながると心配する声がありますが、むしろ日米が協力して安全保障、経済の両面で中国を国際社会責任ある一員とすることが必要ではないでしょうか。総理見解をお伺いいたします。  次に、日米安保問題についてお伺いをいたします。  ガイドラインは衆議院を通過いたしました。今、参議院に送られ、その審議が始まったばかりであります。十分な審議を要することは言うまでもありません。今日まで対米協力協議などはどちらかといいますと役人レベルの内容ばかりであったと思います。本当に現実として日本が受け入れられるのかどうか、また、イエス・ノーをはっきりと言える政治のリーダーシップの分野が抜け落ちていたのではないでしょうか。日米防衛協力のグレーゾーンを解消して、有事における超法規的行動を避ける意味でガイドラインの必要性は理解できるものであります。  先ほどの日米関係のところでも触れましたが、中国との関係に関しましては、中国自身が軍事力を必要以上に強化されることによってアジアにおける不安定要因にならないように、日米両国が共同して中国との信頼醸成に努めていくことが重要だと思いますが、総理はどのようにお考えになるでしょうか。  最後に、経済問題についてお伺いをいたします。  我が国企業国際競争に生き残っていくためには、過剰設備の廃棄や雇用調整などの経営の効率化が避けられないと思います。一部にはそのような動きが出始めており、これが本格化すれば設備投資や失業率などの経済指標が一層悪化することになると思います。また一方、公共投資を大幅に前倒しした結果、年度後半には前年度比半分ぐらいに落ち込むとの試算も言われているところであります。日米の専門家の間でも、年度後半に息切れしかねないとの見方が強まっております。  総理は改めて今年度のプラス成長を国際的に公約されたわけであります。そこで、もし今年度のプラス成長が達成されなかった場合、総理はどのようにして責任をおとりになるのかをお伺いしておきたいと思います。  また、今回の会談の中で、クリントン大統領は、アジア経済が直面する問題は財政赤字拡大や金融緩和によるインフレではなくデフレだと報じられております。財政出動を柱とする現在の景気刺激策を継続するよう強く求められたと仄聞いたしております。  今、我が国はまさに綱渡りの経済運営を強いられているにもかかわらず、従来の景気刺激策を求めてくるアメリカは、我が国経済の長期的な構造をどう考えているのでしょうか。日米間の景気認識の差は何なのでしょうか。総理の御見解をお伺いしたいと思います。  また、総理は、今回のこの会談において追加対策についての明言を避けられておりますが、年度後半には需給ギャップを埋めるための従来型の景気刺激策を講じざるを得ない状況に追い込まれるのではないでしょうか。現に、自民党の森幹事長は、秋の臨時国会での補正予算の編成について言及されているではありませんか。  今回の一連の首脳会談において、アメリカの強い要請にこたえることで短期的には景気を下支えすることが可能かもしれませんが、長期金利の抑制などが可能であったとしても、経済構造改革に逆行して二十一世紀我が国経済のポテンシャルを失ってしまうことにはならないでしょうか。その点について総理の率直な御見解をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  42. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 奥村展三議員にお答え申し上げます。  冒頭、奥村議員から、他の先進諸国に比較して我が国総理大臣が相対的に短期間で交代している旨言及をされました。  たしか明治十八年に内閣制度始まって以来百年、私で八十四代目でございまして、そうした意味では、比べる国にもよりますけれども、必ずしも長いものではないと思っております。  ただ、我々としては、与えられた、国会で御指名をいただいたその任期の中で最大限の努力をし国家国民に尽くすべきだと、こうした考えで全力を尽くさせていただいておるところでございます。また、私自身も、就任以来、国際的な首脳間の信頼関係の構築に精力的に取り組ませていただき、国際的な発言力のさらなる向上に意を用いてまいっておるところでございます。  また、私、しばしば申し上げておりますように、現在を近代日本の明治維新、第二次世界大戦後に続く第三の開国の時期と位置づけまして、あらゆる分野における構造改革を進めていかなければならない時点だと考えております。  非力ではございますが、奥村議員を初め議員各位の御理解と御支援を心からお願い申し上げる次第であります。  日米関係に関するお尋ねでありますが、首脳会談において私と大統領の間で、アジア太平洋地域の平和と安定のためにも日米安保体制の信頼性を強化することで意見が一致し、新たな世紀を迎える世界にあって、より多くの国の人々がより強固な安全と一層の繁栄が享受できるよう、日米間で率先して協力していくとの決意と展望を確認いたしたところであります。  日米同盟と中国との関係についてお尋ねでございました。  我が国といたしましては、米国とともに中国との関係を最も重要な二国間関係考え、アジア太平洋地域ひいては世界の平和と繁栄のため、中国を国際社会のより建設的なパートナーとしていく必要があると考えております。  こうした観点から、先般の日米首脳会談におきましても、中国のWTO早期加盟を含め、種々の分野で日米両国がそれぞれ中国との協力関係を促進していくことが重要であるとの意見で一致を見たところでございます。  我が国のアジア政策についてでありますが、我が国憲法のもと、他国に脅威となるような軍事大国にならないとの基本理念に基づき、地域での米国の存在と関与を前提としつつ、域内の信頼醸成促進でその平和と安定に努力いたしております。また、アジア経済危機に関し、これまで約八百億ドルの支援策を表明する等の協力を行っており、これらの取り組みはアジア諸国の理解を得ていると考えております。  日本経済について、日米双方の認識についてのお尋ねでありました。  我が国経済が長期にわたって厳しい状況が続いている背景には、短期的な景気循環だけでなく、金融機関企業の不良債権、日本的な経済システムの制度疲労、産業の空洞化など我が国経済の構造問題があり、これらが景気回復の妨げとなっているものと認識をいたしております。  先般の日米首脳会談におきましては、私より、日本経済の根本的再生には需要喚起とともに供給面の体質強化を図る構造改革が不可欠であると説明をいたしました。これに対しクリントン大統領は、我が国の金融システム安定化策、マクロ経済措置経済構造改革に対する取り組みにつきましてはこれを高く評価されましたが、このことからもわかるように、我が国の長期的な構造問題の重要性につきましては米国としても十分に認識をいたしたものと考えております。  今年度のプラス成長についてのお尋ねがございました。  私といたしましては、十一年度に回復基盤を固め、プラス成長を確実にすることに向けまして、引き続き不退転の決意で取り組む考えであり、緊急経済対策を初めとする思い切った諸施策を果断かつ強力に推進してまいりたいと考えております。  また、我が国経済の根本的な再生には供給面の体質強化を図ることが不可欠であると考えておりまして、政府といたしましても、規制緩和等の経済構造改革に真剣に取り組んでまいりたいと思っております。  以上、お答えといたします。(拍手
  43. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  44. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 日程第二 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案  日程第三 卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案  日程第四 農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案   (いずれも内閣提出)  以上三案を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長野間赳君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕     ─────────────    〔野間赳君登壇拍手
  45. 野間赳

    ○野間赳君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  まず、特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案は、特定農産加工業の経営改善を引き続き促進するため、法律の有効期間を五年間延長しようとするものであります。  次に、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案は、卸売業者及び仲卸業者の経営体質の強化、公正かつ効率的な売買取引の確保、卸売市場の再編の円滑化等のための措置を講じようとするものであります。  次に、農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案は、認定を受けた製造業者がみずから日本農林規格による格付を行うことができる制度を導入するほか、品質に関する表示の基準の対象をすべての飲食料品に拡大するとともに、生産の方法に特色のある農林物資の名称の表示の適正化を図るための措置を講じようとするものであります。  委員会におきましては、三法律案を一括して議題とし、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案について、それぞれ参考人を招致してその意見を聴取するとともに、特定農産加工業の経営状況と今後の見通し、卸売市場の公共性、公開性の確保、卸売業者等の経営改善方策、零細な生産者や卸売市場関連業者への配慮、取引手数料のあり方、生鮮食料品の原産地表示のあり方、有機農業の振興策、有機農産物の検査・認証及び表示のあり方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案について採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案について討論に入りましたところ、日本共産党代表して須藤理事、社会民主党・護憲連合を代表して谷本理事より、それぞれ反対である旨の意見が述べられました。  討論を終わり、採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案について採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対し、それぞれ附帯決議を行いました。  以上、御報告を申し上げます。(拍手)     ─────────────
  46. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより採決をいたします。  まず、特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案及び農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。  両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕
  47. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕
  48. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          二百十五     賛成            二百十五     反対               〇    よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕     ─────────────
  49. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 次に、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案の採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕
  50. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕
  51. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          二百十五     賛成             百八十     反対             三十五    よって、本案は可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕     ─────────────
  52. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 本日はこれにて散会いたします。    午後七時七分散会      ─────・─────