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1999-01-19 第145回国会 参議院 本会議 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年一月十九日(火曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第一号   平成十一年一月十九日    午前十時開議  第一 議席指定  第二 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、特別委員会設置の件  一、日程第二      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 第百四十五回国会は本日をもって召集されました。  これより会議を開きます。  日程第一 議席指定  議長は、本院規則第十四条の規定により、諸君議席をただいまの仮議席のとおりに指定いたします。      ─────・─────
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) この際、特別委員会設置についてお諮りいたします。  災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る災害対策特別委員会を、  沖縄及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十名から成る沖縄及び北方問題に関する特別委員会を、  国会等移転に関する調査のため、委員二十名から成る国会等移転に関する特別委員会を、  行財政改革税制等に関する調査のため、委員四十五名から成る行財政改革税制等に関する特別委員会を、  また、金融問題及び経済活性化に関する調査のため、委員四十五名から成る金融問題及び経済活性化に関する特別委員会を、 それぞれ設置いたしたいと存じます。  まず、災害対策特別委員会沖縄及び北方問題に関する特別委員会行財政改革税制等に関する特別委員会並びに金融問題及び経済活性化に関する特別委員会設置することについて採決をいたします。  以上の四特別委員会設置することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  よって、災害対策特別委員会外特別委員会設置することに決しました。  次に、国会等移転に関する特別委員会設置することについて採決をいたします。  本特別委員会設置することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 過半数と認めます。  よって、本特別委員会設置することに決しました。  本院規則第三十条の規定により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。     ─────────────    議長の指名した委員は左のとおり ○災害対策特別委員       市川 一朗君    景山俊太郎君       鈴木 正孝君    田村 公平君       長谷川道郎君    松谷蒼一郎君       森山  裕君    依田 智治君       江本 孟紀君    高嶋 良充君       藤井 俊男君    本岡 昭次君       和田 洋子君    海野 義孝君       但馬 久美君    大沢 辰美君       山下 芳生君    大渕 絹子君       鶴保 庸介君    岩本 荘太君 ○沖縄及び北方問題に関する特別委員       海老原義彦君    釜本 邦茂君       鎌田 要人君    佐藤 泰三君       中川 義雄君    橋本 聖子君       三浦 一水君    森田 次夫君       山内 俊夫君    笹野 貞子君       竹村 泰子君    内藤 正光君       松崎 俊久君    風間  昶君       福本 潤一君    小泉 親司君       立木  洋君    照屋 寛徳君       田村 秀昭君    堂本 暁子君 ○国会等移転に関する特別委員       大野つや子君    太田 豊秋君       久野 恒一君    国井 正幸君       末広まきこ君    鈴木 政二君       平田 耕一君    山下 善彦君       郡司  彰君    佐藤 雄平君       長谷川 清君    松田 岩夫君       山下洲夫君    加藤 修一君       木庭健太郎君    緒方 靖夫君       畑野 君枝君    渕上 貞雄君       平野 貞夫君    水野 誠一君 ○行財政改革税制等に関する特別委員       阿南 一成君    石渡 清元君       岩永 浩美君    海老原義彦君       大島 慶久君    太田 豊秋君       狩野  安君    亀井 郁夫君       久野 恒一君    佐藤 昭郎君       清水嘉与子君    田浦  直君       田村 公平君    長峯  基君       畑   恵君    水島  裕君       吉川 芳男君    吉村剛太郎君       脇  雅史君    伊藤 基隆君       小川 勝也君    岡崎トミ子君       川橋 幸子君    櫻井  充君       寺崎 昭久君    福山 哲郎君       本田 良一君    柳田  稔君       吉田 之久君    荒木 清寛君       日笠 勝之君    弘友 和夫君       渡辺 孝男君    富樫 練三君       橋本  敦君    吉岡 吉典君       吉川 春子君    大脇 雅子君       菅野  壽君    谷本  巍君       阿曽田 清君    星野 朋市君       奥村 展三君    菅川 健二君       石井 一二君 ○金融問題及び経済活性化に関する特別委員       石川  弘君    岩井 國臣君       岩城 光英君    岡  利定君       加納 時男君    景山俊太郎君       金田 勝年君    木村  仁君       坂野 重信君    塩崎 恭久君       世耕 弘成君    田中 直紀君       林  芳正君    日出 英輔君       平田 耕一君    松谷蒼一郎君       三浦 一水君    溝手 顕正君       山本 一太君    浅尾慶一郎君       江田 五月君    小川 敏夫君       木俣 佳丈君    小宮山洋子君       齋藤  勁君    直嶋 正行君       峰崎 直樹君    簗瀬  進君       魚住裕一郎君    浜田卓二郎君       日笠 勝之君    益田 洋介君       森本 晃司君    池田 幹幸君       緒方 靖夫君    笠井  亮君       小池  晃君    大渕 絹子君       三重野栄子君    山本 正和君       入澤  肇君    渡辺 秀央君       田名部匡省君    高橋紀世子君       佐藤 道夫君     ─────────────
  6. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて午後四時まで休憩いたします。    午前十時五分休憩      ─────・─────    午後四時一分開議
  7. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  日程第二 国務大臣演説に関する件  内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、堺屋国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。小渕内閣総理大臣。    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  8. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 第百四十五回国会の開会に当たり、私は国政を預かる責任ある立場にいる者として、施政に関する所信の一端を申し述べます。  本年、一九九九年は一九〇〇年代最後の年であります。と同時に、次の新しい千年紀、ミレニアムを迎える前夜でもあります。千年紀をまたごうとしているこの重要な時期に、日本経済的な苦難に直面しております。この苦難を克服し、次の世代に力強い品格あふるる、そして美しい日本を引き継ぐため、私は身命を賭して国政運営に当たる覚悟であることをまず冒頭に申し上げるものであります。  冷静な状況認識はもとより重要であります。しかしながら、私は今や大いなる悲観主義から脱却すべきときが来ていると考えます。行き過ぎた悲観主義活力を奪い去るだけであります。今必要なのは、確固たる意志を持った建設的な楽観主義であります。コップ半分の水を、もう半分しか残っていないと嘆くのはたやすいことであります。私は、まだ半分も残っているじゃないかと考える意識の転換が今まさに求められていると確信するものであります。私たちが愛してやまないこの日本は、必ずやこの困難を脱することができる、そういう土性骨の座った社会をつくり上げたい、そのために私は蛮勇を振るい、間もなく訪れる二十一世紀へのかけ橋を築くために邁進することを誓うものであります。  私は、現在を明治維新、第二次世界大戦後に続く第三の改革の時期と位置づけております。明治維新以来、我が日本官民一体となった先人の血のにじむような努力で近代国家としての基礎を築いてまいりました。驚異的な経済成長と今日の繁栄はそのたまものであります。しかしながら、私どもは今、この成功体験の上に安住し続けることは許されない状況になりました。価値観が多様化し、世界が流動化する中で、過去には有効だったシステム意思決定の方法が、今や足かせになることも少なくないのであります。  明治維新と第二次世界大戦後の改革は、大変困難なものでありました。しかしながら、先人の勇気と覚悟がそれを可能にいたしました。現在の改革の難しさはまさにそこにあります。社会を挙げての意識の転換が不可欠であります。足かせとなるものを壊すだけでなく、新しいシステムをつくり上げなければなりません。同時に、私ども日本の持っているすばらしいものを残す努力も必要であります。申し上げるまでもなく、第三の改革政治家だけでできるものではありません。国民挙げての意識改革と支援がなければ何事もなし得ないのであります。国民各位の御理解、御支援をお願いするとともに、党派を超えた議員各位の御協力をお願いする次第であります。  もとより最も重要なのは、国民お一人お一人が豊かで幸せに安心して暮らせる社会を築くことであります。国は立派だが国民は不幸せというようなことはあり得ません。と同時に、国民がすべて国に頼って生きるということも健全な社会とは言えない時代になったと考えます。戦後五十数年、私たちは豊かさをひたすら追求してまいりました。豊かになりたいという目的はある程度は達成されましたが、その反面、心の充実という人間にとって最も重要なことを忘れがちだったことは否定できません。  内閣をお預かりして以来、私は事あるごとに富国有徳ということを申し上げてまいりました。健全な資本主義利潤追求だけでは維持できません。それはドイツの社会学者マックス・ウェーバーを初め、世界の哲人が主張いたしているところであります。徳すなわち高い志を持った国家でなければ、豊かな国であり続けることは不可能であり、何よりも世界から信頼されなくなるわけであります。  他人に優しく、美しきものを美しいとごく自然に感じ取ることのできる社会、隣人が優しく触れ合うことのできる社会、そして何よりも住みやすい地域社会を建設することが必要だと考えるものであります。このような考え方に基づいて、私は、二十一世紀のあるべき国の姿について有識者から成る懇談会を早急に設置し、次の世代に引き継ぐべき指針をまとめたいと考えております。国会においても十分御議論いただき、ともに考えていこうではありませんか。  私は、二十一世紀に向けた国政運営を次の五つのかけ橋基本にして考えてまいります。第一に世界へのかけ橋、第二に繁栄へのかけ橋、第三に安心へのかけ橋、第四に安全へのかけ橋、第五に未来へのかけ橋であります。この五つのかけ橋に沿って、私の基本的な考えを申し述べたいと思います。この際、個別の施策について十分触れられないことをお許しいただきたいと思います。  今日の世界では、いかなる国も孤立して生きていくことはできません。まず考えるべきことは、我が国の安全と繁栄が確保されること、そして我が国国際社会の中で尊敬され、その地位にふさわしい責任を果たしていくことであります。私は、二十一世紀に向け世界へのかけ橋を築いてまいります。  我が国安全保障を考えますときに、第一に、日米関係をこれまで以上に強固なものとしていかなければなりません。このためには、日米防衛協力のための指針関連法案等早期成立、承認が極めて重要であります。また、米軍の施設・区域が集中する沖縄が抱える諸問題に対し、沖縄県の理解協力を得ながら、さらに真剣に取り組んでまいります。  次に重要なことは、米国と並ぶ地域の主要国であるロシア、中国との安定的な関係を築いていくことであります。特にロシアとは、あらゆる分野での関係を一層強化しながら、東京宣言モスクワ宣言に基づいて来年までに平和条約を締結し、両国間の関係を完全に正常化するよう、引き続き全力を尽くしてまいります。また日中関係は、昨年の江沢民国家主席の訪日を契機に新たな段階に入りましたことを踏まえて、両国間及び国際社会における共通の目標に向けてともに行動する関係発展させてまいりたいと考えております。  朝鮮半島情勢は、我が国安全保障に大きなかかわりを持つ問題であります。昨年秋の金大中大統領との話し合いを通じて、日韓両国は過去との決別を果たし、今や名実ともに近くて近い国になったのであります。一方、北朝鮮に関しましては、米国、韓国などと緊密に連携をとりながら、先般の弾道ミサイルの発射や秘密核施設疑惑をめぐる国際的な懸念、日朝間の諸懸案の解決に向けて努力してまいります。北朝鮮がこのような問題に建設的な対応を示すのでありますれば、我が国として対話と交流を通じ関係改善を図る用意があります。  我が国繁栄は、世界経済がしっかりと安定していることが前提であります。特に、アジア経済の三分の二を占める我が国としては、アジア各国通貨経済の安定に積極的に貢献していくことはみずからの責任でもあります。欧州では本年より単一通貨ユーロが導入され、世界経済通貨体制は新しい時代を迎えました。私は、我が国経済世界経済との相互依存関係を十分考慮しながら、世界経済の新たな枠組みルールづくりに積極的に参画していくとともに、円の一層の国際化実現するよう今後とも取り組んでいかなければならないとの思いを新たにいたしております。  さらに、我が国世界へのかけ橋を築いていく上で、国際社会への応分の貢献を行うべきことは当然であります。開発途上国に対する援助や、PKF本体業務凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、ぜひとも国民各位の御理解をいただきながら、積極的に進めてまいりたいと考えております。  経済繁栄は、豊かで潤いのある国民生活実現と、国家社会発展にとっての基本であります。私は、内閣の命運をかけて繁栄へのかけ橋を築いてまいります。  昨年七月に総理大臣に就任以来、国会の御協力をいただきながら、喫緊の課題である金融システム再生に取り組んでまいりました。金融再生関連二法や政府保証枠整備し、また、貸し渋りに直面していた中小企業などに対して思い切った対策をスピーディーに実行してまいりました。全国の中小企業の皆さんから、何とか苦境を乗り切ることができたなどの声が数多く寄せられたところであります。このことを、関係された方々とともに深く心に刻み、今後とも問題解決全力を傾けてまいります。  また、昨年末に成立した第三次補正予算のもとで切れ目なく景気回復策を実施しており、十一年度予算におきましても、当面の景気回復全力を尽くすとの観点から、公共事業中小企業対策雇用対策に最大限配慮するとともに、科学技術の振興など、将来の発展基盤を確立する施策も十分に取り入れたものとなっております。  税制面でも、内需の拡大や我が国企業国際競争力の強化を図るため、従来なし得なかった思い切った内容の個人所得課税法人課税の恒久的な減税の実施を決断するとともに、住宅ローン減税を初めとする政策減税を実施いたします。これらの減税は九兆円を超える規模のものとなります。また、消費税に対する国民の御理解を一層深めていただくよう、予算総則消費税収の使途を明記し、広く国民老後等を支える基礎年金老人医療及び介護のための福祉予算に使う旨を明らかにしたところであります。  これらの諸施策と民間の真剣な取り組みとが相まって、平成十一年度には我が国経済実質成長率が〇・五%程度まで回復するものと確信しております。我が国には巨額の対外資産個人貯蓄、高い技術力に支えられた製造業の底力、勤勉な国民の資質など、国際的に比較して極めて強固な基盤が存在いたします。私は、この平成十一年を経済再生元年と位置づけ、日本経済再生全力で取り組んでまいります。  今後、日本経済が豊かさの中の不況ともいうべき現在の状況を脱し、自律的に発展していくためには、経済構造改革の一層の推進を図り、経済供給サイド体質強化、とりわけ、新事業を創出することにより良質な雇用の確保や生産性向上を図ることが重要であります。このため、今月末を目途に産業再生計画を策定いたします。また、社会資本整備は、二十一世紀先導プロジェクト推進を核として、民間活力を最大限活用しながら、情報通信、都市・住宅、環境・教育・福祉など、我が国経済活性化に不可欠な分野について戦略的、重点的に行ってまいります。さらに、政府全体の取り組みとして百万人規模の雇用の創出・安定を目指し、雇用活性化総合プランなどの雇用対策を強力に推進してまいります。  我が国財政は、公債残高が三百二十七兆円にも達する見込みであるなど極めて厳しい状況にあり、将来世代のことを考えるとき、私は財政構造改革という大変重い課題を背負っていると痛感しております。日本経済回復軌道に乗った段階におきまして、財政税制上の諸課題につき、中長期的な視点から、幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にそのあるべき姿を示さなければならないと考えております。  昨年末に経済戦略会議から貴重な提言をいただきました。今後の政策運営に当たりましては、この提言をしっかりと受けとめるとともに、法制度整備を含め、国会の場におきましても十分御議論をいただきたいと考えております。また昨日、私は経済審議会に対し、新たなる時代我が国経済社会のあるべき姿と、その実現に向けた政策方針の策定について諮問いたしました。今後十年程度の間にとるべき政策の基本方針をできる限り早くお示ししたいと考えております。  我が国経済社会が、二十一世紀におきまして一段と活力と魅力にあふれたものになるためには、それを構成する一人一人の国民や個々の企業がみずからの個性や独創性を生かし、積極果敢に創意工夫実現に挑戦できる社会状況をつくらなければなりません。  そのためには、規制緩和地方分権の一層の推進、官民の役割分担の見直しなどを通じて、国民生活事業活動に対する政府の関与のあり方を抜本的に見直し、スリム化された政府実現することが何よりまず必要であります。今国会に提出を予定いたしております中央省庁等改革関連法案におきまして、二十一世紀我が国にふさわしい中央省庁の具体的な姿をお示ししたいと考えております。また、地方公共団体自主性自立性を高めるため、昨年決定をいたしました地方分権推進計画を踏まえた関連法案を今国会に提出するなど、地方分権の一層の推進を図り、あわせて、市町村合併を含む体制整備行財政改革への地方公共団体の積極的な取り組みを求めてまいります。国民に開かれた政府実現のため、情報公開法案早期成立にも、政府として引き続き最大限努力してまいります。  今日、日本国民の多くが、人類の古くからの願いであります長寿を享受できるようになりました。その一方で、国民の中には老後の生活に対する不安も広がっております。二十一世紀の本格的な少子高齢社会に向けて、安心へのかけ橋を今から整備し、明るく活力ある我が国社会を築き上げていかなければなりません。  我が国社会には、人生五十年時代に形づくられた制度や慣習が、現在の人生八十年時代に適合するよう改革されないまま残されているものも多く見られます。日本人のライフサイクルの変化に合わせて、人生全般にわたり健康で生きがいを持って充実した生活を送れるよう、高齢者雇用・就業の促進高齢者が活動しやすい生活環境整備など、社会仕組みや人々の意識を変えていくことが必要であります。また、高齢社会の到来は多様なニーズを持った大消費者層の出現であり、経済活動に新たなチャンスを与えるものであります。  社会仕組み全体を見直す中で、セーフティーネットとしての役割を担う年金医療、介護などの社会保障制度につきましても、将来にわたり安定的に運営のできるよう、構造改革を強力に推し進めていかなければなりません。必要な給付は確保しつつ、将来世代負担を考え、社会経済活力を維持するため、給付と負担の均衡を図るとともに、利用者の選択の拡大、民間事業者の導入なども含め、制度効率化合理化を図ってまいります。特に年金医療につきましては、制度改革取り組み、取り巻く環境の変化に対応し、信頼できる安定した制度を確立してまいります。  少子化の急激な進行も、我が国経済社会に大きな影響をもたらすものであります。私は、先般、少子化への対応を考える有識者会議から、家庭や子育てに夢を持てる環境整備社会全体で取り組むべき課題であるとの提言を受けました。私は、この問題に適切に対応すべく、各界関係者の参加を募り国民会議を設け、国民的広がりのある取り組み全力で進めてまいります。今国会には男女共同参画社会基本法案を提出いたしますが、こうした取り組みの大きな推進力になると確信いたしております。  生命や安全な生活を守ること、すなわち人間の安全保障ヒューマンセキュリティーの確立も私たちが果たすべき重要な責務の一つであります。私は、地球全体の環境の保全から国民一人一人の安全の確保に至るまで、安全へのかけ橋を築いてまいります。  大量生産大量消費型の社会は、大量の廃棄物を生み、地球環境に大きな負担をかけております。美しい安定した環境を守り、子孫に引き継ぎ、循環型の経済社会を築き上げることは、私たちに課せられた最も重い責任の一つであります。この責任を果たすべく、地球環境問題への対応省エネルギー対策、原子力や新エネルギーの開発・利用の促進、実態に即したきめ細やかなリサイクルなどに努力してまいります。また、ダイオキシンの排出削減、いわゆる環境ホルモン問題への取り組み化学物質の管理の促進環境保全のための新たな法的枠組み整備を行います。自然を慈しみ、資源を大切にする社会を築き、かけがえのない地球を守るため、我が国がその先頭に立って取り組んでまいらなければならないと考えます。  国民が安心して暮らせる安全な国土、社会整備政府が引き続き取り組むべき重要な課題であり、阪神・淡路大震災や昨年のたび重なる豪雨災害等の教訓を踏まえ、災害対策危機管理の充実に最大限努力してまいります。また、国の発展は良好な治安に支えられるものであり、情報通信技術を悪用したハイテク犯罪市民生活の安全を脅かす毒物犯罪、組織的な犯罪、さらに深刻さを増す国境を越えた薬物犯罪に断固として対処してまいります。  さらに、最近の我が国を取り巻く国際環境の中で、我が国の安全を確保するため、安全保障危機管理に資する情報の収集、分析、伝達等に関し、情報収集衛星の導入を初めとする対策を講じてまいりたいと考えております。  二十一世紀社会を考えるとき、今から取り組んでおくべき多くの課題に向けて、いわば未来へのかけ橋を築いていかなければなりません。  二十一世紀は、ますます科学技術発展し、また、情報化が急速に進展すると見込まれます。科学技術情報化は、将来の経済国民の暮らしの発展の原動力でもあり、我が国として世界の最先端をリードしていく気概で、科学技術の振興や高度情報通信社会実現に向け、官民挙げて取り組んでまいります。一方で、コンピューター西暦二〇〇〇年問題や、コンピューターネットワークにおける不正アクセス対策などにも適切に対応してまいります。  本格的な少子高齢社会の到来に備え、国民一人一人が将来に夢を持ち、生涯の生活に安心を実感できるような社会基盤を整備していくことが必要であります。このため、広く快適な住空間や高齢者に優しい空間などの実現を目指し、かねてより私が提唱してまいりました生活空間倍増戦略プランを今月末を目途に取りまとめ、向こう五年間を視野に入れたあすへの投資を推進するとともに、バリアフリー化への取り組みなどの安心への投資に重点的に取り組んでまいります。また、地域の特色を生かした魅力ある地域づくり、美しい国土づくりを進めるため、地域戦略プランや新しい全国総合開発計画を、首都機能移転問題への取り組みも含めまして積極的に推進してまいります。  農林水産業、そしてそれを支える農山漁村は、食糧の生産に加え、国土、環境の保全や地域文化の継承などの面で幅広い機能を有するものであります。こうした機能に十分目を向けながら、社会の変化や国際化が進む中で農政改革実現するため、国内生産を基本とした食糧の安定供給の確保や経営の安定、発展などの課題に関し、基本法を制定するなど政策の具体化に全力を挙げてまいります。  未来の担い手は、言うまでもなく若者たちであります。私たち大人が未来の担い手のためになし得ることは、二十一世紀へのさまざまなかけ橋を築いていく努力を精いっぱい行うことであるとともに、司馬遼太郎氏が説かれたように、未来の担い手が頼もしい人格を持ち、自分に厳しく、相手には優しい自己を持つ人間に育つ環境をつくっていくことであります。  私は、教育の原点は、生きる力、助け合う心、そして自然を慈しむ気持ちにあると信じます。こうした点をしっかりと心に刻み、幅広い視野を養い、個性を大事にして生きるべきこと、ボランティア活動への参画等を通じた地域や社会への貢献は大変に意義深いものであること、人には多様な生き方があり、お互いにそれをたっとぶべきであること、そんな観点に立った心の教育を充実させていきたいと考えております。また、多様な選択を可能とする学校制度、現場の自主性、自律性を尊重する特色ある学校づくり、国際的に通用する大学を目指した大胆な大学改革実現に向けた教育改革にも、引き続き力を注いでまいります。  家庭や地域、職場などにおいて長年にわたり培われてきた道徳心や温かい人間関係、すぐれた文化や伝統などは、大切な未来への財産として次の世代に引き継いでいくべきであります。また、すべての人々の人権が最大限に尊重される社会実現に努力するとともに、より国民に身近な司法制度の構築にも取り組んでまいります。  二十一世紀の足音が聞こえてまいります。新しい世紀を希望と活力のあるものにするためにも、今世紀中の課題は今世紀中に解決の道筋をつけることが必要であります。経済を自律的な回復軌道に乗せることにまず全力を尽くしてまいります。その上で、個人や企業が希望と誇りを持って活動のできるような環境を整え、格調の高い国家を築くため取り組んでまいります。日本国際社会でみずからにふさわしい貢献をしなければなりません。それと同時に、いかに安全な国家にしていくべきか。英知を結集して困難に立ち向かえば、必ずや世界が尊敬を寄せ得るような国家建設は十分可能だと確信いたしております。  内外の重要課題が山積する折、意思決定は速やかでなければなりません。そのためには私は安定した政治基盤をつくることが肝要と考え、先般、自由党との連立政権を樹立いたしました。当然のことながら、各党各会派との協議も従来の信頼関係の上に継続してまいる所存であります。  今や、国家の意思を決めるという重要な任務を帯びた政治そのものの真価が問われております。一内閣、一政党の利害を超越した高い見地からのスピーディーな対応が求められております。自由党との協議におきまして、副大臣制度の導入や政府委員制度の廃止などで合意いたしましたが、これは、国権の最高機関たる国会の権威を高め、国民に直結した政治に転換し、迅速な政策決定を可能にしたいとの考えからであります。  大転換期の国政のかじ取り役として、私は、微力ながら精魂込めて、責任ある政治を実現するべく全力を尽くしてまいります。  国民の皆さん、また、議員各位の御理解と御支援を心からお願いいたします。(拍手)     ─────────────
  9. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 高村外務大臣。    〔国務大臣高村正彦君登壇、拍手〕
  10. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 第百四十五回国会の開会に当たり、我が国外交の基本方針について所信を申し述べます。  国際社会は、冷戦の終えんを経て、新しい世紀を迎えようとしております。この間、世界規模での戦争の可能性は大幅に低下したものの、地域紛争及び国内における民族紛争の頻発、大量破壊兵器が拡散する危険性の増大、テロの深刻化など、いわば脅威の多様化とも呼べる状況が生じております。我々が目指す平和で安定した世界への道のりは決して平たんではありません。また、世界経済は、グローバリゼーションの進展により近年一層の発展を遂げてまいりました。その一方、アジア経済危機とその世界的な波及に見られるように、グローバリゼーションの陰の部分も明らかになり、それへの対応も急務となっております。  このような中、二十一世紀に向けて、我が国の安全と繁栄確保するためには、現下の諸課題に着実に取り組むとともに、将来も見据えて積極的な外交を展開し、安定的な国際環境を主体的につくり上げていかなければなりません。  我が国が広く世界に外交を展開していくに当たり、基盤となるのは米国との同盟関係であります。この同盟関係を一層揺るぎないものとするためにも、日米安保体制の信頼性を一層高めることが必要であります。今国会に継続審議となっている日米防衛協力のための指針関連法案等早期成立、承認のため、議員各位の御理解と御協力をお願いいたします。また、米軍施設・区域が集中する沖縄が抱える問題の解決については、沖縄県の御理解と御協力を得つつ、SACO最終報告を踏まえ、米軍施設・区域の整理、統合、縮小に向け、政府として引き続き努力をしてまいります。  次に、我が国を取り巻く安定した環境整備するために、ロシア、中国、韓国等近隣諸国との関係強化することが重要であります。昨年秋に展開された一連の首脳外交の成果を基礎として、それぞれの国とのパートナーシップをさらに深めてまいります。  このような取り組みの中、問題となるのが北朝鮮との関係であります。先般のミサイル発射や最近の秘密核施設疑惑などは、我が国はもとより、国際社会にとっても大きな懸念材料となっております。我が国北朝鮮の核兵器開発を封ずるためKEDOを引き続き支援していく用意がありますが、KEDOの枠組みを維持する上で、北朝鮮がミサイル及び核の問題に関し、こうした懸念を解消する行動をとることが重要であります。我が国としては、米韓両国と緊密に連携しつつ、国際的な懸念並びに拉致疑惑や国交正常化問題などの日朝間の諸懸案に対処していく方針でありますが、北朝鮮がこれらの問題に建設的な対応を示すのであれば、対話の再開を通じ、関係改善の用意があることを明らかにいたします。  我が国は、近隣諸国との二国間関係強化に加え、ASEAN諸国、大洋州諸国との関係強化、APEC、ARFなど地域協力の進展への貢献、そして必要に応じ新しい対話の枠組みの構築などを通じて、アジア太平洋地域の安定強化に努めてまいります。  さらに、アジア太平洋地域の先をも見渡した外交を展開することが重要であります。私はこのたび、中東五カ国及びパレスチナ自治区を訪問し、二国間関係強化とともに中東和平の実現に向けた働きかけを行ってまいりました。国際社会の多くの国々とともに中東地域の安定に貢献することは、我が国外交の財産となり、日本の国益にも資するものであります。  国際社会の相互依存が深まる中、我が国としても世界全体にかかわる諸問題に積極的に取り組んでいくことがますます重要であります。新しい世紀世界を、より安定し、より繁栄し、さらに人々にとってより住みよいものとするため、我が国は、国際社会における地位にふさわしい主導的役割を担っていく考えであります。  このグローバルな問題への取り組みに際し、最も重要な国際的枠組みが国連であります。二十一世紀を前にして、国連が時代の要請に適合した役割を一層効果的に果たすためには、全体として均衡のとれた形での改革を早期に実現し、その機能を強化しなければなりません。そして我が国としては、このような国連改革実現される中で、安保理常任理事国として責任を果たす用意があることは、これまで繰り返し表明してきたとおりであります。  脅威が多様化する中、より安全で安定した世界を築いていくためにまず重要なのは、軍備管理・軍縮により脅威を削減する努力であります。今日必要とされているのは、核兵器、生物化学兵器などの大量破壊兵器やこれを運搬するミサイルから、対人地雷、小火器などの通常兵器に至るあらゆるレベルでの軍備管理・軍縮であります。昨年は、国連において我が国が提案した今後の核軍縮・不拡散への道筋を示す決議案が圧倒的多数の賛成を得て可決されるなど、我が国は積極的にイニシアチブをとってきており、今後とも国際的な取り組みの先頭に立ってまいりたいと考えております。  この関連で、大量破壊兵器廃棄のための国連特別委員会の査察を拒否してきたイラクに対し、昨年末、米国、英国により武力攻撃が実施されました。我が国は、イラクが関連安保理決議上の義務を即時かつ無条件に履行し、国際社会の一員としての責任ある対応をとるよう引き続き働きかけてまいります。  一方、いまだに後を絶たない世界各地での紛争に対処していくには、実際に起こった紛争の迅速な解決、紛争後の復興、起こり得べき紛争の未然防止、さらには、紛争の根源にある貧困等の社会問題への対処までを視野に入れた包括的な取り組みが必要とされております。昨年、我が国は第二回アフリカ開発会議を主催し、東京行動計画の取りまとめに当たるなど、紛争との連関をも視野に入れた開発促進へのイニシアチブをとりました。世界的にも認識の深まりつつあるこの包括的な取り組み強化する必要性を一層強く訴えていく所存であります。  次に、より繁栄した世界を築いていくために必要なのが、グローバリゼーションへの対応であります。近年、浮き彫りになってきたグローバリゼーションに伴う危機の連鎖的波及といった問題の背景には、現在の国際的な枠組みがグローバリゼーションの流れに十分対応できていないことがあります。我が国は、我が国経済発展のためにも、既存の枠組み強化、さらには、新たな枠組みの構想などにおいて主導的役割を担っていかなければなりません。  現在進められている国際金融システム強化に向けた議論の中で、迅速かつ有効な支援のあり方や被支援国に課される条件等につき、我が国として議論に積極的に貢献していく考えであります。我が国はまた、二〇〇〇年からWTOにおいて始められる自由化交渉を包括的なものとすることを主張しております。グローバリゼーションのもとで我が国経済のさらなる発展につながるような国際ルールの構築に向け、産業界及び関係団体などとも十分に意見交換を行いつつ、我が国として最善の対応をとるべく取り組んでまいります。  アジア各国経済我が国経済との相互依存関係の深さにかんがみれば、アジア経済の回復が我が国にとって極めて重要であることは申すまでもありません。我が国経済の自律的な回復のために必要な施策をとるとともに、我が国としてなし得る最大限の支援をアジア諸国に対し引き続き行っていく考えであります。これまで発表してきた一連の支援策を着実に実施していくとともに、今後ともアジア経済危機克服のために創造的に貢献を行っていく考えであります。  折しも、欧州においては単一通貨ユーロ導入されました。ドルに次ぐ主要な国際通貨の誕生が世界経済に与える影響については我が国としても注目しており、ユーロが安定した信頼できる通貨となることを期待しております。また、我が国自身も、国際通貨体制の一層の安定に資するよう、国際通貨としての円の役割の向上などに努めていかねばなりません。  そして、世界が安定と繁栄を享受するのみならず、人々にとってより住みやすいものであるためには、地球環境問題、薬物、国際組織犯罪、難民などの国境を越えた問題への取り組みが必要であります。近年、人間の生存、生活を直接脅かすこれらの諸問題を人間安全保障という観点から包括的にとらえ、対応強化するという考え方が提唱されております。我が国は、先般、国連での人間安全保障基金設立のため資金を拠出することを表明しましたが、国際機関やNGOとの連携を深めて、この分野での取り組み強化していく考えであります。  このように山積する諸問題に対処していくに当たり、我が国外交の手段及び実施体制を強化していくことが急務であります。  中でも、ODAは国際社会全体の安定と繁栄確保し、もってみずからの安全と繁栄確保しようとする我が国にとって、最も重要な外交手段であります。政府といたしましても、現在の厳しい経済財政状況の中、援助を推進していくためには、国民の皆様による一層の御理解と御支持が不可欠と認識しており、情報公開の強化などにより、ODAの透明性向上に努めてまいります。そしてODA中期政策や国別援助計画の策定などを通じて、貴重な財源をより効果的、効率的に活用できるよう努力してまいります。  また、資金面だけでなく、人的な貢献も我が国の国際協力の重要な柱であります。昨年は、カンボジアやボスニア・ヘルツェゴビナへの選挙監視団の派遣、ハリケーン災害に見舞われたホンジュラスへの国際緊急援助隊派遣に対し、関係国を初め、国際社会から高い評価を得ました。その一方で、タジキスタンで秋野国連政務官というかけがえのない人材を失ったことは痛恨のきわみであります。この教訓を生かし、派遣要員の安全の一層の確保に努めつつ、今後とも国際社会の期待にこたえて、積極的に顔の見える国際協力に取り組んでいく所存であります。  さらに、外交を展開するためのいわば足腰である外交実施体制の強化もまた重要であります。来年度予算ではアゼルバイジャンの公館設置などを計上させていただいておりますが、これらを通じて外交の幅を広げ、将来を見据えた外交活動を展開してまいりたいと考えております。  二十一世紀はもはや目前です。新しい世紀を希望の世紀とするために我が国が示し得る世界像は、まず第一に、我が国自身が発展基盤としてきた自由、民主主義といった価値が広く共有される世界の姿であります。同時に、我が国としては、多様な価値観や文化が共生し得る世界こそ、歴史も民族も異なるさまざまな国や地域が安定的な関係を結んでいくことのできる基盤であることを訴えていきたいと考えます。この観点からも、国際交流を通じてさまざまな国や地域の人と人がお互いに対する理解を深めていくことが極めて重要であります。  我が国は、現下の困難を乗り越えるべく、官民を挙げて全力を尽くしております。このときに当たって、あすのよりよい国民生活のため、安定した国際環境確保する外交の役割は一層重要であります。外務大臣としての私の信念は、リーダーシップのある外交であります。内においては、世論を喚起し国民とともに外交を進めるべく、そして外においては、国際社会の中で率先してみずからにふさわしい役割を果たしていくべく、全力を尽くしてまいる所存であります。  御臨席の議員各位、そして国民の皆様の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  11. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 宮澤大蔵大臣。    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
  12. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 平成十一年度予算の御審議に当たり、今後の財政金融政策基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明いたします。  我が国は、戦後五十年余りの間にさまざまな試練に直面いたしましたが、国民のたゆまない努力と創意により、その都度これを乗り越え、今日の日本を築き上げてまいりました。  しかし、今日の我が国経済は、資産市場の低迷や不良債権問題の深刻化などバブルの後遺症を抱える中、金融機関に対する信頼の低下、雇用不安などが重なり、極めて厳しい低迷状況にあります。また、我が国を取り巻く国際経済情勢も、一昨年アジア諸国に端を発した通貨経済の不安定な状況により、先行きは極めて不透明であります。  こうした内外の諸情勢のもと、今我が国がなすべきことは、国民の英知を結集して不況を早急に克服し、二十一世紀に向かって豊かで活力ある社会を再構築するとともに、対外的には世界経済発展のために我が国に期待されている役割を果たしていくことであると考えます。  今後の財政金融政策運営に当たりましては、このような認識のもとに、以下に申し述べる諸課題全力を挙げて取り組んでまいります。  まず、財政面から最大限の措置を講じて不況克服に全力取り組みます。  このため、昨年秋取りまとめました緊急経済対策に盛り込まれた諸施策を着実に実施すべく、先般成立した平成十年度第三次補正予算を迅速に執行してまいります。さらに、平成十一年度予算につきましては、例えば公共事業について、公共事業等予備費を含め予算ベース、支出ベースともに前年度に比べ一〇%を上回る伸びを確保するなど、景気回復を最優先課題とした財政運営を行うことといたします。  同時に、景気の回復基盤を固めるためには、金融システムを早急に再構築することが不可欠であります。  このため、昨年秋に制定された金融機能再生法及び金融機能早期健全化法を活用するとともに、中小・中堅企業等の資金需要に的確にこたえ得るよう、政府系金融機関の資金量を十分に確保し、また、信用保証制度強化して信用収縮や貸し渋りの防止に努めてまいります。  さらに、税制につきましては、現下の厳しい経済情勢等を踏まえ、平成十一年度改正において、恒久的な減税を初め、国、地方を合わせ、平年度九兆円を超える減税を実施することとしております。  まず、所得税につきましては、最高税率の引き下げを行うとともに、定率減税を実施するほか、扶養控除額の加算を行うことといたします。  法人税については、我が国企業国際社会の中で十分競争力を発揮できるよう、基本税率の引き下げを行うとともに、中小法人等に対する軽減税率についても引き下げを行うことといたします。  また、景気回復に資するため、住宅ローン減税を実施するほか、情報通信機器の即時償却制度の創設等の措置を講じてまいります。  さらに、有価証券取引税及び取引所税を廃止し、経済・金融情勢等の変化対応して適切な措置を講ずることとしております。  なお、今回の所得税及び法人税の減税は、この際早急に実施すべき負担軽減措置を講ずるためのものでありますが、今後の我が国経済社会の構造的な変化国際化の進展等に対応した個人及び法人の所得課税の抜本的な改革につきましては、引き続き検討を続けてまいります。  このように財政税制面景気回復全力を尽くすことといたしました結果として、平成十一年度予算における公債依存度は、前年度当初予算の二〇%と比べ一七・九ポイント増加をいたしまして三七・九%となります。平成十一年度末の公債残高は三百二十七兆円に達する見込みであり、財政状況の急速な悪化は避けられない状況であります。  我が国の将来の世代社会変化を考えますと、財政構造改革は必ず実現しなければなりませんが、これについては、我が国経済回復軌道に乗った段階において、改めて二十一世紀の初頭における財政税制課題として、根本的な視点から必要な措置をとらなければならないと考えております。  他方、経済国際化が進む中で、我が国世界経済の健全な発展への貢献にも取り組まなければなりません。  一昨年のアジア通貨危機に際しては、我が国は、IMF、世界銀行、アジア開発銀行及び関係各国とも協調しつつ、二国間支援としては関係各国中最大の支援を表明し、それを着実に実施してまいりました。  また、アジア諸国の経済困難の克服を支援し、国際金融資本市場の安定化を図るため、昨年十月には三百億ドル規模の資金支援を含むアジア通貨危機支援に関する新構想を表明し、既に大部分の国について支援の具体策を決定するなど、その実施に努めているところであります。  我が国としては、今後とも関係各国及び国際機関とも密接に連携しながら、アジア支援を行っていく所存であります。  国際金融システムにつきましては、アジア通貨危機以降、短期的あるいは投機的な資金の激しい移動が、特に新興市場諸国に対して、混乱や大きなリスクをもたらすおそれがあるということが国際的な理解になりつつあります。  私は、現在の国際金融システムには、短期資本移動のもたらすリスクとそれへの対応、危機に陥った国への流動性供給のあり方、適切な為替相場制度とはどのようなものかという三つの根本的な問題があり、これらにいかに対処していくかが重要であると考えております。  今後とも、G7や主要な新興市場諸国等とともに、国際金融システム改革実現に向けた議論や検討に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  また、多角的自由貿易体制の維持強化及び貿易円滑化については、我が国は、WTO、APEC等を通じ、積極的に取り組んでおります。平成十一年度関税改正におきましても、特定品目の関税率の引き下げなど、所要の改正を行うことといたしております。  本年一月、欧州において新しい通貨ユーロが誕生いたしました。ユーロの誕生により欧州地域経済はさらに活性化するものと期待され、また、ユーロは国際通貨システムの中で重要な地位を占めるものと思われます。  我が国としても、ユーロの誕生やアジア通貨危機といった内外の経済・金融情勢の変化を踏まえ、我が国通貨円の国際化を進めていくための環境整備を図っていくことが極めて重要な課題であると考えております。  先般、海外の投資家が我が国の国債に投資しやすくなるよう、政府短期証券を公募入札により発行することとし、また、国債利子については非居住者を非課税とする制度を創設するなど、円の国際化推進のための具体的な方策を取りまとめたところでありますが、今後とも、円の国際的な使用を一層推進するため幅広い分野努力をしていきたいと考えております。  次に、今国会に提出しております平成十一年度予算の大要について御説明いたします。  平成十一年度予算は、平成十年度第三次補正予算と一体的にとらえ、年度末から年度初めにかけて切れ目なく施策を実施すべく、いわゆる十五カ月予算の考え方のもとに、当面の景気回復に向け全力を尽くすとの観点に立って編成しております。  歳出面については、一般歳出の規模は四十六兆八千八百七十八億円となり、前年度当初予算に対して五・三%の増加となっております。  国家公務員の定員については、増員は厳に抑制し、三千五百六十四人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。補助金等についても、地方行政の自主性の尊重、財政資金の効率的使用の観点から、その整理合理化を積極的に推進しております。  また、現下の金融情勢にかんがみまして、預金保険機構に交付しております国債の現金化に充てる財源として二兆五千億円を国債整理基金特別会計に繰り入れることといたしました。  なお、平成九年度の決算上の不足に係る決算調整資金を通じた国債整理基金からの繰入相当額一兆六千百七十四億円については、法律の規定に従い、同基金に繰り戻すことといたしております。  これらの結果、一般会計予算規模は八十一兆八千六百一億円、前年度当初予算に対して五・四%の増加となっております。  歳入の根幹である税制につきましては、さきに申し述べましたとおり、所得税及び法人税について恒久的な減税を実施するとともに、住宅建設及び民間設備投資の促進経済・金融情勢の変化への対応等の観点から、適切な措置を講ずることとしております。  以上の措置を受けまして、公債発行予定額は、前年度当初予算より十五兆四千九百三十億円増額し、三十一兆五百億円となります。特例公債の発行については、別途平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。  なお、消費税福祉目的化につきましては、消費税収の使途を基礎年金老人医療及び介護に限ることとし、その旨を予算総則に明記いたしました。これにより、消費税に対する国民の皆様の理解を一層深めていただけるものと考えております。  財政投融資計画につきましては、景気回復に十分配慮して財政投融資資金の活用を図るとともに、特殊法人の整理合理化への対応等、改革に向けた努力を継続することとしたところであり、一般財政投融資の規模は三十九兆三千四百九十二億円となり、前年度当初計画に対して七・三%の増加でございます。また、資金運用事業を加えた財政投融資計画の総額は五十二兆八千九百九十二億円となり、前年度当初計画に対して五・九%の増加となっております。  次に、主要な経費について申し上げます。  社会保障関係費については、急速な人口の高齢化に伴いその増大が見込まれる中、経済発展社会活力を損なわないよう、制度効率化合理化を進め、将来にわたり安定的に運営できる社会保障制度の構築を図ってまいります。  文教及び科学振興費については、創造的で活力に富んだ国家を目指して、教育環境整備、高等教育・学術研究の充実、創造的・基礎的研究に重点を置いた科学技術の振興等の施策推進に努めております。  公共事業については、当面の景気回復に向け全力を尽くすとの観点に立って、公共事業関係費を前年度当初予算に対して五%増額するとともに、別途、公共事業等予備費五千億円を計上することといたしました。また、公共事業関係費の配分に当たりましては、物流効率化による経済構造改革に資する分野、二十一世紀を展望した経済発展基盤となる分野生活関連社会資本への重点化を図っております。さらに、その実施に当たりましては、再評価システム導入などを通じ、公共事業効率化、透明化に努めることといたしております。  中小企業対策費については、厳しい経営環境に配慮し、金融対策、新規開業・雇用創出支援等に重点を置いて施策充実を図っております。  農林水産関係予算については、今後の農業の担い手となるべき者へ各種施策を集中させるとともに、農産物価格政策における市場原理の一層の導入を図りつつ、所要の施策の着実な推進に努めております。  経済協力費については、アジア支援に関する我が国への期待の増大等に対応しつつ、援助の効率化、重点化を一層進めております。  防衛関係費については、一昨年末に見直された中期防衛力整備計画のもと、効率的で節度ある防衛力整備を行うこととし、防衛装備品の調達価格の引き下げ等経費の一層の効率化合理化等を図っております。  エネルギー対策費については、地球温暖化問題への対応の重要性等も踏まえ、総合的なエネルギー対策の着実な推進に努めております。  地方財政につきましては、国の財政とともに巨額の財源不足が見込まれるところでございます。こうした状況を踏まえ、国と地方のたばこ税の税率変更による地方のたばこ税の増収措置、法人税の交付税率の上乗せ、地方特例交付金の創設などにより恒久的な減税の影響を補てんするとともに、所要の地方交付税総額を確保するなど、地方財政運営に支障を生ずることのないよう所要の措置を講ずることといたしております。地方公共団体におかれましても、歳出全般にわたる見直し、合理化効率化に徹底的に取り組み行財政改革をより積極的に推進されるよう要請するものであります。  以上、平成十一年度予算の大要について御説明を申し上げました。  我が国経済が戦後初めての四四半期連続マイナス成長という厳しい局面を迎える中で、こうした経済情勢から早急に脱却することを最優先に予算の編成をいたしました。また、そのような心構えで今後の財政金融政策を進めてまいりたいと存じております。  何とぞ、関係法律案とともに御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)     ─────────────
  13. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 堺屋国務大臣。    〔国務大臣堺屋太一君登壇、拍手〕
  14. 堺屋太一

    国務大臣(堺屋太一君) 我が国経済の当面する課題経済運営基本的考え方について、所信を述べます。  我が国経済は、二年連続のマイナス成長という戦後最悪の不況に陥り、経済国難ともいうべき状況にあります。この不況を克服して我が国経済再生することが、当面の最重要課題であります。  今日の深刻な経済状況には、短期循環、長期波動、歴史的発展段階転換という三重の波が重なり合っています。  まず、短期の循環では、九七年初期を頂点として景気は下降局面に入っています。このため、景気の拡大が続くと信じて行った財政構造改革は、その基本的考え方においては誤っていなかったものの、極めて時期の悪いものとなってしまいました。加えて、バブル崩壊に伴う巨額の不良債権が負の遺産として残存していたため、企業の投資意欲も消費者の心理も冷え込んでしまいました。  次に、長期波動においては、戦後一貫して成長拡大してきた我が国経済が、八〇年代末のバブル景気を境として、安定成熟局面に入っていることです。これには、人口の少子高齢化、国際競争の激化、地球環境問題の重大化など、物的成長に対するさまざまな制約条件が加わったことも影響しています。  もう一つは、より大きな歴史的発展段階転換です。我が国は、明治以来百年余、規格大量生産型の近代工業の育成強化に努めてきました。この目標は一九八〇年代に達成したと申せましょう。  ところが、世界経済と人類文化の歴史的潮流は、規格大量生産型の近代工業社会を超越して、多様な知恵の時代に変わりつつあります。我が国民の欲求もまた、物財の量的充足だけではなく、情報の獲得や自己実現にも広がっています。このため、規格大量生産社会実現のためにつくられた我が国制度や慣習の中には、今日の社会に不適合なものがふえています。  以上、三重の波は相互に絡み合い、経済の実態には不況の環を、国民の心理には未来不安を引き起こすことになりました。現下の経済国難から脱出するには、これら三重の波を同時に解消していかねばなりません。  以上のような認識に立って、政府は、平成十一年度の経済運営に当たって三つの目標を立てました。  第一は、平成十一年度の経済をはっきりプラス成長にすること。第二は、失業をふやさないこと。第三は、経済における国際協調を進めることであります。  これら三つの目標を達成するため、小渕内閣は、発足以来、不況の環を断ち切るべく全力を挙げてまいりました。  小渕内閣が行った不況の環を断つ第一の手だては、金融システム再生であります。これを行うに当たっては、守るべき四つの原則があります。第一は、倒産や失業など金融機関の破綻や信用収縮による社会的コストを最小に抑えること。二つには、これに要する国庫の究極的な負担を最小にとどめること。三つには、再生を最短の期間でなし遂げること。四つ目には、経営の倫理が守られることであります。  これら四つの基準はいずれも重要でありますが、まずもってなすべきことは、社会的コストを最低にとどめることでしょう。こうした考えに従って、小渕内閣は昨年来、金融システム再生のための法的整備予算措置、中小・中堅企業等に対する貸し渋り対策などを行ってきました。  今後は、用意された法的、財政枠組みを的確かつ厳格に運用し、我が国金融システムの早期健全化に努める一方、このような枠組みの中で、金融機関に対しては厳しい効率化情報公開を求める方針です。また、金融ビッグバンを緩みなく進めるとともに、特定目的会社の活用を含む証券化などの手法を通じて、資金調達の拡充、多様化を図ります。  これらの施策は、一部に痛みを伴うものでありますが、それを乗り越えてこそ、我が国の持つ巨大な資金力と生産力を生かした輝かしい金融市場を築くことができるのです。  不況の環を断つ第二の手だては、需要の喚起であります。今回はアジア経済の不振などもあって、輸出からの景気回復は期待しがたい状況にあります。また、卸売物価の下落や、国内市場の供給過剰感などにより、企業の投資意欲は極めて低調です。  こうした中で、我が国経済を下支えするためには、社会資本整備拡大減税による消費刺激で需要を喚起する必要があります。  政府が昨年十一月に決定した緊急経済対策及び平成十一年度予算は、このような考え方でつくられています。緊急経済対策においては、総事業規模十七兆円超の事業を実施することとしました。また、これを受けて平成十一年度予算においては、公共事業について公共事業等予備費を含め、予算ベース、支出ベースともに前年度に比べて一〇%を上回る伸びを確保しました。また、税制面では、緊急経済対策で発表した六兆円を超える個人所得課税法人課税の恒久的な減税に加えて、個人の住宅取得や個人事業者または法人の情報通信機器取得等に対する特別措置を初めとする政策減税を含め、国、地方を合わせて平年度九兆円を超える減税を実施することといたしました。  不況の環を断つ第三の手だては、雇用及び起業の拡大であります。これからの日本経済では、企業別、産業別の盛衰には大きな格差が生じると見られ、より柔軟で適切な労働力の再配置が必要になります。  雇用対策においても、新しい産業構造や就業形態に即した雇用開発と創造に力を注ぐべく、さきの緊急経済対策及び平成十一年度予算においては、勤労者の能力開発強化し、新規雇用創出に対する新たな助成制度を設けるなど、合計一兆円規模施策を実施することとしました。  また、産業基盤整備基金に新事業創出等促進信用資金を設ける等、新たに事業を起こそうとする者の資金調達を支援することといたしました。  以上のような諸策によって、金融、需要、雇用の三点で不況の環を断ち切ることによって、来る平成十一年度には〇・五%程度のプラス成長を見込むことができます。重要なのは、これを平成十二年度までに本格的な経済再生につなげ、二十一世紀においても我が国世界の先端を行く国であり続けるように、経済社会の構造と国民心理を未来志向型に改革することです。  そのために、緊急経済対策には、生活空間倍増プラン及び産業再生計画の策定を打ち出すとともに、二十一世紀先導プロジェクトを盛り込みました。二十一世紀先導プロジェクトとは、先端電子立国、未来都市の交通と生活、安全・安心、ゆとりの暮らし、高度技術と流動性のある安定雇用社会の構築の四つの柱のもとに、省庁横断的な事業を展開するものです。  こうした省庁の枠組みを超えた未来型プロジェクトを推進することは、二〇〇一年からの行政機構の抜本的改組と相まって、公共事業の重点配分と施行効率化を徹底することになるでしょう。  また、民間の資金やノウハウを活用して公共の施設やサービスの充実促進する手法、いわゆるPFIを推進することが重要と考えています。このためにも、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案の早期成立を期待するものであります。  小渕内閣が進めるもう一つの重要経済政策は、国際経済への貢献です。世界経済、中でも我が国とかかわりの深いアジア経済の安定には、我が国経済が果たす役割が極めて重要です。  こうした認識に立って、緊急経済対策には、事業規模一兆円程度のアジア支援策等を盛り込むとともに、三年間で総額六千億円の特別円借款を創設しました。また、我が国制度や慣習をより国際的に調和のとれたものにするため、市場開放苦情処理体制を活用しながら、諸外国の要望にこたえていくなど、輸入や対日投資の促進に取り組んでまいります。  以上のような積極的な諸施策と大規模減税の結果、平成十一年度の当初予算では、三十一兆五百億円の公債を発行することになります。  財政の健全性は、もとより重要であります。しかし、現下の経済情勢においては、何よりも急ぐべきは不況からの脱出であり、その成果を新しい産業の発展と意欲的な起業の増加につなげることでしょう。それができれば、経済拡大による歳入の増加、景気対策事業の縮小による歳出の削減、国有財産の売却など、財政再建の多様な選択肢が生じてきます。経済は生き物であり、現在の財政赤字がそのまま将来の負担につながると考えるべきではありません。  小渕内閣が行った重要な業績の一つは、官僚主導からの決別を知らしめたことです。  我が国の業界の中には、規制緩和や競争促進が言われながら、現実には業界横並び意識と官僚機構への依存感が色濃く残っていました。この中で、例えば金融の分野においては、小渕内閣が発足以来とってきた透明かつ公正な金融行政への転換推進、金融機関の検査・監督、市場規律による不健全な金融機関の淘汰などは、政府が言葉だけではなく、実際の政治や行政においても厳格な自由経済を志向していることを知らしめる重要なメッセージになっています。  昨日、小渕総理大臣より経済審議会に対して、この歴史的な転換期に当たって、我が国経済社会のあるべき姿と、その実現に向けての経済新生の政策方針を策定いただくよう諮問がありました。  総理大臣の諮問機関である経済戦略会議は、昨年十二月の中間報告で百六十四項目から成る経済改革案を提出されました。それは、才能と努力と幸運を持ち合わせた人々にはそれにふさわしい称賛が与えられると同時に、不運な人々にも安全で安心生活が維持できる安全ネットが存在する社会を目指すものであります。  経済審議会では、この提言をも踏まえて、今後十年程度の間に達成すべき我が国経済のあるべき姿と、それに至る道程を指し示していただけるものと期待しています。  これからの時代が、人それぞれの好みと感性が充足されるような多様な知恵の社会であるとすれば、政府経済運営でも民間の経営や家計でも、速やかな判断と正しい選択が大事です。そのため政府としても、経済に関する統計や情報をより早く、正しく、わかりやすく発表できる体制整備を図ってまいります。  選択の自由が広い市場経済では、公正な競争と事業者の情報公開が欠かせぬ一方、選ぶ者の自己責任も重くなります。それに対応して、消費者と事業者との間の契約に広く適用される民事ルール、いわゆる消費者契約法の制定も積極的に検討いたします。また、人々の善意による活動の重要度も増すことでしょう。政府民間の非営利団体、いわゆるNPOの活動を促進するための条件整備を今後とも続けてまいります。  我が国は今、深い不況のやみに閉ざされています。しかし、我々の立つ基盤は揺るぎないものです。我が国には三千百兆円を超える実物資産があり、約一兆ドルの対外純資産があります。巨大な生産力と強力な競争力を持つ産業があり、国民各層に勤勉と秩序と教育を受ける習慣が行き渡っています。  これからの日本が目指すのは、夢と安心がともにある世の中です。若者が夢膨らませる可能性があると同時に、高齢者や失敗者にも新たな挑戦の機会のあることが重要です。消費だけではなく、教育や住居や職業でも選択の幅を広げることが大切です。拡大する高齢者市場、歩いて暮らせる町づくり、育児や家事のアウトソーシングなど、これから広がると見られる分野は限りなくあります。世界に先駆けて高齢社会が現実となる日本は、その豊かさとすぐれた慣習を生かして、これからの人類文化に積極的な貢献ができることでしょう。  今、この国に必要なのは、みずからに対する自信と未来への夢、そして改革実現する勇気ある実行です。国民の皆さん方の御理解と御協力を切にお願いいたす次第であります。(拍手)
  15. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会