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1999-08-06 第145回国会 参議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月六日(金曜日)    午前十時十二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 佐々木知子君                 世耕 弘成君                 竹山  裕君                 仲道 俊哉君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 小川 敏夫君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁刑事局長  林  則清君        法務省民事局長  細川  清君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        司法制度改革審        議会事務局長   樋渡 利秋君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○商法等の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○民法の一部を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○任意後見契約に関する法律案内閣提出衆議  院送付) ○民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法  律の整備等に関する法律案内閣提出衆議院  送付) ○後見登記等に関する法律案内閣提出衆議院  送付) ○組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関  する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百  四十五回国会衆議院送付) ○犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第  百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆  議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十  二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送  付)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  商法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、昨五日、質疑を終局いたしております。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  3. 橋本敦

    橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、商法等の一部を改正する法律案反対討論を行います。  本法案は、九七年の独占禁止法改正によりまして解禁された持ち株会社設立を促進するために、その手続規定を緩和しようとするものであります。  現行商法は、もともと持ち株会社を想定しておりませんから、持ち株会社化に便宜を図るような規定はそれ自体存在しません。このため、現行法によって持ち株会社化するためには、いわゆる買収方式あるいは抜け殻方式などの方法をとる必要があるわけであります。しかし、この買収方式では債権債務移転などに伴う面倒な手続は要しないものの、通常の株式公開買い付けによっては買い取りに応じない株主も出てくる、あるいは高額の対価を要求する株主も出てくる、こういったことがあるために、一〇〇%完全子会社設立が困難であるという問題が生ずるわけであります。  また、抜け殻方式では、既存の事業会社子会社設立して、これに事業部門を譲渡して、みずからは事業そのものを担当せずに本社機能だけを残したいわゆる抜け殻となることによって持ち株会社に転換するわけでありますから、容易に一〇〇%子会社をつくることができますけれども、親会社債権債務子会社移転したり、工場用地事業用地などの事業用資産親会社子会社現物出資をするという形になりますから、債権者債務者保護のために設けられている手続があり、現物出資する資産評価を厳密に行うという要請から現物出資する資産評価等につきましても煩瑣な手続が必要となります。具体的には、商法百八十一条の規定によって裁判所検査役を選任してもらい、検査役による調査結果を株主総会提出することが必要となり、これに時間とコストがかかることであります。  そこで、今回の法改正は、商法株式交換株式移転方式による完全親会社創設設立の条項を新設することによりまして、前記の難点を回避しようとするものであります。  さらに、株式交換について言うなら、財産権強制収用、小株主権利の保全というところに憲法の財産権の保障に照らして問題があるとも指摘されております。すなわち、完全子会社となる会社株式を所有する株主は、株主総会の議決を経るとはいえ、株式交換制度によって強制的に株式が転換されてしまいますから、株主としての権利が侵害されることも起こり得るわけであります。  最後に、大企業利益追求至上主義に基づく持ち株会社化によって、一方、労働者下請企業に犠牲を強いることが断じてあってはならないのでありますが、そういった法整備は不十分であり、この法案については反対をする次第でございます。  以上です。
  4. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  商法等の一部を改正する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  5. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、円より子君から発言を求められておりますので、これを許します。円より子君。
  6. 円より子

    円より子君 私は、ただいま可決されました商法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、社会民主党・護憲連合及び自由党の各派並びに各派に属しない議員中村敦夫君の共同提案による附帯決議案提出いたします。  案文を朗読いたします。     商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について格段の努力をすべきである。  一 完全親会社及び完全子会社となる会社資産が適正に評価され、株式交換比率の公正さの確保及びそれぞれの会社債権者保護が十分に図られるように、制度の適切な運営及び具体化に当たること。  二 株式交換及び株式移転制度創設に伴い、親会社及び子会社株主権利が損なわれることのないように、親会社及び子会社に関する情報開示制度の一層の充実を図るとともに、親子会社関係に係る取締役等責任規定整備及び株主代表訴訟等株主権利の一層の充実を図ることを検討すること。  三 完全親子会社における労使協議実効性を高めるため、労働組合法改正問題等必要な措置をとることをも含め検討を行うこと。  四 時価評価ができる資産の範囲について周知徹底し、疑義が生じないように配慮すること。  五 企業経営の一層の健全化及び国際競争力の向上を実現するために、取締役会制度を含む会社機構の在り方について検討を行うこと。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  7. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいま円より子君から提出されました附帯決議案議題とし、採決を行います。  本附帯決議案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  8. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 多数と認めます。よって、円より子提出附帯決議案は多数をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、陣内法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣
  9. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を十分踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  10. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  12. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 民法の一部を改正する法律案任意後見契約に関する法律案民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び後見登記等に関する法律案を一括して議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。陣内法務大臣
  13. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 最初に、民法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、高齢社会への対応及び障害者福祉充実観点から、痴呆性高齢者知的障害者精神障害者等判断能力の不十分な者の保護を図るため、禁治産及び準禁治産制度後見及び保佐制度に改め、これに加えて補助制度創設するとともに、聴覚または言語機能障害がある者が手話通訳等により公正証書遺言をすることができるようにするため、遺言方式を改める等の目的から、民法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は次のとおりであります。  まず、禁治産及び準禁治産制度改正等につきましては、第一に、禁治産及び準禁治産制度後見及び保佐制度に改め、本人行為のうち日常生活に関する行為成年後見人等取り消し権対象から除外するとともに、新たに保佐人取り消し権及び代理権を付与することとしております。  第二に、軽度の精神上の障害がある者を対象とする補助制度を新設し、本人の申し立てまたは同意を要件として、当事者が申し立てた特定の法律行為について、補助人同意権取り消し権または代理権を付与することができることとしております。  第三に、家庭裁判所適任者成年後見人等に選任することができるようにするため、配偶者が当然に後見人等となる旨を定める現行規定を削除し、成年後見人等に複数の者または法人を選任することができるようにするための所要規定整備を行うとともに、その選任に当たり家庭裁判所が考慮すべき事情を明記することとしております。  第四に、成年後見人等は、その事務を行うに当たり、本人意思を尊重し、その心身状態及び生活状況に配慮しなければならないこととしております。  第五に、成年後見監督人に加えて、保佐監督人及び補助監督人制度を新設することとしております。  次に、遺言方式改正につきましては、現行公正証書遺言方式を改め、聴覚または言語機能障害がある者が手話通訳または筆談により公正証書遺言をすることができるようにするとともに、秘密証書遺言死亡危急者遺言及び船舶遭難者遺言についても、手話通訳によりこれらの方式遺言をすることができるようにするため、所要規定整備を行うこととしております。  続いて、任意後見契約に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、高齢社会への対応及び障害者福祉充実観点から、痴呆性高齢者知的障害者精神障害者等判断能力の不十分な者の保護を図るため、任意後見契約方式効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めることにより、任意後見制度創設することを目的とするものでありまして、その要点は次のとおりであります。  第一に、任意後見契約において、本人は、任意後見人に対し、精神上の障害により判断能力が不十分な状況における自己の生活療養看護または財産の管理に関する事務について代理権を付与することができ、この契約は、家庭裁判所任意後見監督人を選任したときからその効力が生ずることとしております。また、任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によることを要することとしております。  第二に、任意後見契約登記されている場合において、精神上の障害により本人判断能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人配偶者、四親等内の親族または任意後見契約受任者請求により、任意後見監督人を選任し、任意後見契約効力を生じさせることとしております。  第三に、任意後見人は、その事務を行うに当たり、本人意思を尊重し、その心身状態及び生活状況に配慮しなければならないこととしております。  第四に、任意後見監督人は、任意後見人事務監督し、その事務に関して家庭裁判所に定期的に報告をするとともに、随時、任意後見人事務について調査すること等を職務とし、家庭裁判所は、任意後見人に不正な行為その他不適任な事由があるときは、任意後見監督人等からの請求により、任意後見人を解任することができることとしております。  第五に、任意後見契約登記されている場合には、家庭裁判所は、本人利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始審判等をすることができることとしております。  第六に、任意後見人代理権の消滅は、登記をしなければ、善意の第三者に対抗することができないこととしております。  次に、民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、民法の一部を改正する法律施行に伴い、公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律外百八十の関係法律について規定整備等を行おうとするものであります。  最後に、後見登記等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、民法禁治産及び準禁治産制度後見保佐及び補助制度に改め、新たに任意後見制度創設することに伴い、禁治産及び準禁治産の宣告を戸籍に記載する公示方法にかわる新たな登記制度創設し、その登記手続登記事項開示方法等を定めるものであります。  以上がこれらの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  14. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  四案の審査は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  15. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 千葉景子

    千葉景子君 この通信傍受法案を含めて組織犯罪対策三法、審議を重ねてまいりました。その間、参考人から御意見をお聞きし、あるいは公述人からも意見をお述べいただくなど、私も大変その間新たなことを勉強させていただいたり、あるいはこれまで気づかない部分あるいは技術的な面でもやはり審議を十分に重ねていくということの意味合いというのを大変感じているところでもございます。まだまだきょうも視察ということもございますけれども、そういうことを踏まえながら、また問題点、あるいは整備をしなければいけないところ、あるいは矛盾点、こういうものがさらに発見されてくるのではないか、そんな気がしているところでもございます。  これまでの審議を通じまして、私も何点かどうもおかしいと感ずるところ、あるいは問題が大きいものですから、三法といってもなかなか通信傍受にかかわる問題以外の点については本当にお聞きする時間がない。ようやくこれからその他の法律についても議論をさせていただかなきゃいけないなと、こういう状況ではないかと思っておるんですけれども、そんなことを、ちょっと時間も限られておりますが、できる限りお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  私は、この間の参考人公述人からの御意見大変参考になりました。組織的な犯罪とかあるいはとりわけ薬物にかかわる問題などは、やはりほとんどの皆さんが青少年あるいは一般皆さんへの薬物の浸透などに大変懸念を感じておられること、そして基本的には社会のありようとかあるいは教育の問題、そういう点に大変これから考えなければいけない問題があるということ、こういうことは本当に共通な認識ではないかというふうにも思っているところです。  そして一方、公述人皆さんからも、なかなか私は率直な、そしてそれぞれのみずからの体験などを踏まえた御意見をいただけたのではないかというふうに思っているんですが、その中で、大変私は考えなきゃいけないなと思ったことがございます。  それは宮澤公述人、大変もう刑事法では私なども尊敬をする研究者でおいででございますけれども、その宮澤公述人がこういうことをおっしゃいました。我が国と比べて市民の人権意識が大変高いヨーロッパ諸国、しかも権力国家統治下にあって、現実人権の抑圧などを経験したヨーロッパの多くの国ですらこういう通信傍受という手法が採用されているんだ、このような現実を直視しなければいけないということをお述べになりました。  私は、これはちょっと意見が違うのでございまして、人権意識がはるかに高くというところはそのとおりだと思います。逆にそういうところだからこそ、通信傍受というような大変劇薬とも言われるような犯罪捜査手法、こういうものを用いたとしても、そこに大変厳しい抑止力とかそれから監視、監督できる、そういう土壌があるのではないか。  だから、宮澤先生のお気持ちは、そういう国も入れているんだから、人権意識が少し足りない日本でもという意味なのかちょっとわかりませんけれども、逆にそういう意識が高いからこそ、こういうものも本当にある意味では危険性認識というのが随分低くなるのではないかなというふうに思います。  それに引きかえて我が国を振り返ってみますと、やっぱりヨーロッパ諸国などに比べて人権意識あるいはそれに対する国のさまざまな諸施策、そういうものは大変まだまだ貧弱なところが多いのではないかというふうに私は思うんです。法務大臣にも、この間もう随分、人権問題、国際的な批判を含めてしっかりしてほしいということを私もお願いをしてまいりました。  そういうことを考えますと、ヨーロッパですらこうだから日本もというふうにはいかないのではないか。やはり、日本のようなある意味では人権意識といってもまだまだ十分に浸透していない部分がある。だとすれば、より一層このような基本的な人権、とりわけプライバシーとかあるいは通信秘密とか、いわば人間の根幹にかかわるようなところを何らかの形で制約をしていこうということについては、もう最大限慎重に、あるいは最大限抑止的に考えていく必要がある、こういうふうに私は率直に思います。宮澤先生のそのお言葉というのは、私は逆な裏側を見ながらそんなことを痛感したところでもございます。  そういうことを考えると、この通信傍受にかかわる法案というのは、そういう日本の実情とか、さまざまな人権にかかわる諸施策あるいはそれを担保する制度、そういうものと比較しながら、大変私はそこに危惧というものを感ぜざるを得ない。もっと抑止的あるいはチェックのあり方、こういうものを厳格に考えてしかるべきだとまず思うわけでございます。  そういうことを基本にしながら、この間の論議のちょっと延長線上で何点かお聞きをしたいというふうに思っております。  最初に、この間、通信のいわゆる当事者に対する通知の問題、これが論議になりました。刑事局長もその際おっしゃっておられるのは、余りに、関係のないというとおかしいですけれども、いろいろな情報通知すると、いわば傍受の目標になった被疑者、そのプライバシーを逆に過大に明らかにすることになる、そういうお話もございました。  確かに、何事も無罪の推定も働くわけですし、被疑者であろうともむやみに人権を侵害されてよろしいというわけはございませんので、その面も私もわからないではありません。しかしその一方で、通信傍受され、そしていわば内心秘密といいましょうか、それを何らかの形で聞かれ、あるいは外から侵害をされ、それを全く告知されず、あるいは知らされず、そちらの人権というものも、これはどちらが重い軽いではなくて、大変重要なことだろうというふうに思います。  正直言って、人間知らないうちに何か自分内心が見られているんじゃないか、あるいは人間そのものがどこかに暴露されているのではないかというその気持ち悪さというか不安、あるいは自分の尊厳にかけての思いというのはやっぱり人間の一番根本だというふうに思うんです。そこを考えると、確かに刑事局長お話もございます、それからその通知をすることによるさまざまな手間、煩雑さというのもあるかもしれませんけれども、それと比べることのできないほどの重さというものが、通信傍受をされた、あるいはその通信の内容をどこかで見られた者にとっては重みがあるのではないか、そういう気がするわけです。  そういう意味では、改めてこの通信当事者に対する通知をどのように考えておられるか、そしてやっぱりこれを知らせる、通知をする、こういうことを少なくとも検討すべきではないか。大変だとかそういうところは、技術的にあるいは物理的にいろんな手だては工夫できる問題です。  基本的な人権という問題は、少なくとも技術論だとかあるいは手間暇だとかという問題で片づけられることではありません。そういう意味で、この通知ということを改めて考えていかなければいけないのではないかというふうに思いますが、再度これはお尋ねしたいと思います。
  17. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今、先生のお言葉の中にもありましたが、非常に高度の秘密が保たれているべき通信ということを考えますと、それが傍受されるということが持つ響きが一般人としては非常に気持ち悪いという感覚、その傍受という言葉からそういう感覚をお持ちになるということは私も十分に理解できるところであります。  ただ、その点につきましては、これは従来からいろいろ申し上げておりますが、一般人通話がみだりに広く傍受されるということは、今回の通信傍受法案が通りましてもそういう事態にはならないことはこれまで繰り返し御説明を申し上げてきました。罪種自体薬物、銃器、蛇頭あるいは組織的な殺人といった極めて特異な四つの類型の重大犯罪に限られているということからお考えいただいても、一般にお持ちになるそうした気持ち悪い感覚というものは、現実には一般人通話が広く聞かれるということはないということで、そういう懸念には当たらないということは何度も申し上げてきたところであります。  ところで、傍受した通信の中で犯罪関連性のない通信をした当事者には通知は行かないというのは御指摘のとおりでございまして、この問題についてその当事者にも通知をすべきではないかという議論は、この立案の過程あるいは法制審の過程でも非常にいろんな角度から論議がありました。  この点について一つ二つ申し上げますと、結局はバランスの問題ということに尽きるかと思いますが、どんなことが言えるかといいますと、該当性判断のための傍受というものは通信の一部が断片的に傍受されるということにとどまりまして、それのみの通話記録は消去して捜査機関の手元には残さないということにこの通信傍受法案ではなっています。したがいまして、通信秘密に対する制約という点から考えますと、傍受記録記録されている通信当事者の場合に比べまして、相当程度に、通信秘密に対する制約という観点からいえば、相対的にということになるかと思いますが、低いものというふうに言えるのではないかと思います。  また一方で、このような場合にまで通知を行うということになりますと、これまでにも繰り返し述べてきましたが、犯罪関係のない通信当事者、例えば被疑者の友人、一般人にまで、あるいはその取引先ということも考えられるかと思いますが、広く通知をすることになりまして、被疑者の名誉やプライバシーを侵害する処置となることもまた明らかでございます。重大な犯罪について十分な嫌疑がある場合にこの傍受はするわけでございますが、たとえそのような被疑者とはいいましても、そうした重大な不利益を負わせることは健全な刑事司法手続とは言えないのではないかというような点も二番目に指摘できるかと思います。  しかも、そのような通知を行うためにだけ犯罪関係のない通信当事者を特定するための捜査を行うことは、かえってこれらの人々のプライバシーを侵害するおそれも新たに出てくるということもつけ加えて申し上げておきたいところでございます。  ただ、何らかの形でこの傍受記録に残らない通信当事者に対する配慮ができないかということでございますが、私どもとしましては、この法案の二十九条に国会への報告というのがございます。この中でどういう傍受の実施状況にあるのかということを比較的詳細に報告をしたいと思っております。そうした中で、この犯罪関係のない通信当事者のなした通話、スポットモニタリングで傍受された通話ということになりますが、それがどのくらいの割合になるのかとか、例えば具体的な一つの例でいきますと、関係ある通話とそうしたスポットモニタリングにとどまった通話との割合だとかそういったものも、現状をよく御理解いただくような資料もこの国会への報告の中に十分に含めて御報告したいというふうに考えております。
  18. 千葉景子

    千葉景子君 これは平行線になりそうなところもあるんですけれども、先ほど言ったように、これはバランスという問題ではないと思うんですね。被疑者といいますか、当事者になった者の人権というのもそれはあるかもしれません。でも、どっちが重い軽いじゃないわけですね、人間にとって人権というものは。そうすると、そのバランスとか、それからそれによって起こる、今度は特定をしなければいけない、そのためにまたプライバシーを侵害するのではないかということもおっしゃいましたけれども、逆に言えば、それもわからないではないけれども、知らないところで何かされているという問題というのは解消されないわけですね。  今おっしゃいましたように、国会への報告をできるだけ詳細にされる。これ実際にもし運用されるとすると、一体どのくらいの数になるのか、あるいはどういう実情になるか私にはさっぱりわかりません。片方では、非常に限定して、これはこれしか手段がないんだというようなことで通信傍受は使われるんだということも言われますし、しかし逆に言えば、この法律で考えますと、いろんな幅広い適用、それから諸外国の例でもかなりの通信傍受が実施される。せっかくこういう手法ができるということになれば、かなりの通信傍受が実施されるという懸念も一方ではある。  国会にできるだけ詳細に報告をされるということですが、例えば、その実情を見ながら、通知をするということがかなり現実的な、それから数とか含めてこれは当事者にきちっと通知をした方がいいというような実情などが見えたとすれば、これはそのときにも、今は難しいとおっしゃっていますけれども、やっぱり通知制度というのを考えていくことは今後の実施状況からも必要なんではないか。決して今このままの法律でどうぞ、まず始めてくださいと私は申し上げるわけではないんですけれども、そういう姿勢というんでしょうか、そういうのもぜひ持っていただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  19. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 国会に報告を申し上げるということも、そうしたこの通信傍受のシステムそのものの運用をいろんな角度から御論議いただく、また国民にもその実情を広く承知していただくということがその眼目になるわけでございますが、その中で改善すべき点あるいは改正すべき点ということが明らかになりましたら、それはそれでこれを運用する当局といたしましても十分に配慮いたしまして、適正な運用のできるような法律に改めるべきときには改めるという姿勢は堅持していきたいと思っております。
  20. 千葉景子

    千葉景子君 次に、立ち会いの問題について改めてお尋ねをしたいというふうに思います。  これもやっぱり、この間の論議等、それから参考人からの御意見も伺いましたが、どうも意味不明というか、一体これは何なんだというのが結局結論のような気がするんです、この議論の中で。  というのは、その本来の趣旨は、多分立ち会いというのは、この通信秘密、その侵害をできるだけ防止する、それに対するきちっとしたチェック体制、監視体制というものを念頭にした制度であろうと思うんです。しかしながら、それを本当にきちっとやろうとすれば、これは常々議論になっておりますように、通信の内容とかそれから捜査のどういう問題が必要なのかとか、そういうことをきちっと理解した上で、そしてそれが範囲を超えたり、あるいは捜査権限の越権をしているんではないか、こういうことをやっぱりチェックをする、それだけの能力を持ち合わせて立ち会いをしなきゃいけない。しかし今回の法案はそうではない。  しかし、立ち会いの制度があり、しかもかなり民間の皆さんの負担において行われる。しかも余り権限は、逆に言えば、先ほど言ったように専門性をなかなか持ち得ないので、そう大きな権限というわけにもいかない。したがって、重大な義務を負わすわけにもいかない。  そうすると、何か立ち会いとはいいながら、結局は負担ばかり多くて、一私人としては、あるいは民間人として、負担は多いけれども、自分は何をやっておるんだという立場に置かれてしまうのではないか。  制度上は確かに、後から何か損害賠償請求されたりあるいは刑事訴追を受けたり、あるいは何か大変恐ろしい目に遭ったりするはずはないと。はずはないというのはいいんですけれども、事実として、こういう捜査に立ち会ったりあるいはそれに関与したということになれば身に何かいろいろな攻撃があるのではないか、そういう不安を持つのは当然だろうと思うんです。  これだけ権限や監視の実効性というものが乏しい、しかし負担とか不安とかを民間人にこれだけ負わせてしまう立ち会いの制度というのは、いかにも何かやっておかないとどうも手続としておかしいと言われるのではないかというので何かとってつけたようなそんな制度に結果的になってしまっている、中途半端で。これももう一度本当に考え直すポイントではないかというふうに思うんです。  本当に立会人の意味、効果、それからその負担、どういうふうにそれをきちっと説明されるのでしょうか。
  21. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 立会人の御指摘の問題については、大きく分けて二つの観点から申し上げたいと思います。  まず一つは、現在の法律案で立会人に期待されている役割をここで確認的にもう一度取り上げてみたいと思います。  それは、まず立会人には傍受のための機器の接続が令状で許可された通信手段になされているかということの確認があります。特に、原則として通信事業者の立ち会いをお願いするということでございますから、この点はまさに専門家の目で見てチェックをするということになります。  それから、令状によりまして、傍受の時間等が例えば午前十時から午後五時と時間的に限られる場合もありますし、期間が三日とか七日とか十日とかというように、それぞれの令状によって違ってきます。そうした場合に、令状によって許可された傍受の期間、時間等が遵守されているかどうかということ、これも立会人のチェックをいただく事項でございます。  また、該当性判断、すなわちスポットモニタリングのための傍受が適正な方法で行われているかということでございます。これも繰り返し申し上げてきましたが、スポットモニタリングのどういうやり方をするかという具体的な方法は立会人に詳細に説明がされているということが前提でございますので、立会人はその与えられた説明を頭の中に置きまして、現実にそのとおりやっているかどうかというチェックはするということでございます。  それから、傍受をした通信がすべて録音されているか、聞いているのにテープが回っていないというようなことがないかどうか、これもまた大事な点でございますが、それも立会人のチェックをいただく事項でございます。  また、これも重要なことですが、記録の封印をするということです。これは、カセットテープが終わりますと新しいテープに取りかえる、その都度その都度立会人にはそれに封をしてサインをするということをお願いしてございます。  こうした今申し上げたような立会人が果たすべき役割ということ自体をお考えいただいても、傍受の実施の適正を担保する制度としては極めて重要で、また意味のあることだと考えます。  それから、次に申し上げるのは、立会人には傍受をしている通信の内容を確認するまでの役割は今回の法案では負わせておりません。これは、傍受した通信がすべてまず記録されます。その上に立会人が封印をしまして裁判官が保管する。こうしたシステムをとることによりまして、捜査機関が実際にどのような内容の傍受をしたか後から確実にチェックができるという仕組みをとることにしております。これは、捜査官による傍受の実施の適正の確保ということをねらいつつ、同時に立会人の負担の軽減を図ったものということが言えようかと思います。立会人に通信の内容を聞いてもらっていわゆる切断権を行使してもらうまでの関与を求めることは、逆な面でいいますと、立会人に過度の負担を課すということにもなりますし、関係者のプライバシー保護するという観点からも適当ではございません。  さらに、つけ加えて申すならば、非常に専門的な捜査官がそれまで膨大に積み重ねた情報のもとで内容を判断するということが適当なんですが、これをいわば素人の立会人に同じようなことをお願いするというのは、能力的にもやはり限界を超えているだろうという判断もございます。  いずれにしても、立ち会いの問題というのは、この法律案論議される前に検証として通信傍受が五件実際に実施されておりますが、その際に、立会人に確かに、内容を聞き、切断権を与えたということでございます。ただこれは、裁判官がそのほかに通信傍受の適正な執行ということの担保の手段が乏しいものでございますから、ある意味では立会人に相当な期待をしたということでございまして、条件として、その内容を聞き、切断権を与えなさいという条件を付したということもまたお考えいただきたいと思っている次第でございます。
  22. 千葉景子

    千葉景子君 今の御説明は十分これまでもお聞きをいたしております。  確かに御説明はわかるんですが、逆に言えば、今おっしゃったことに逆にその本質があらわれているわけですね。立ち会いは私人、民間人ということを中心にしますから、逆に、プライバシー保護という意味で内容を知らせたりあるいはその中身を知って何らかの権限を行使するということをむしろ付与することはできない、そうすると立ち会いの意味というのは非常に限定をされてくる。  先ほど幾つかおっしゃいました、令状による期間とか時間をきちっと守らせるとか、そういうことで全くチェックの意味がないと言っているわけではありません。しかし、冒頭から申し上げますように、これが極めて人権の一番基本にかかわる問題ですから、手続、こういうものは厳格であり、あるいは二重三重に行われて別に何らおかしくはないわけです。そういう意味からすると、確かに一定の外形的なそういうもののチェックというのはやり得るけれども、むしろ民間人としてはそれ以上のことというのは、今度は逆に確かに問題がある。だから、よく言われておりますように、なかなか日本制度では難しいけれども、例えば裁判所にかかわる書記官であるとかそういう方に、もう少し内容にもチェックのきくような立ち会いあるいは監視の制度、こういうものを考える。  それから、さっき言った機器の接続、これは確かに技術的なことなんです。こういうことはむしろ技術に熟知した当事者、民間の現場におられる方にきちっとチェックを受ける。むしろこれはその人の責任というよりは権利ですよね。自分の機器がとんでもないことになっては大変だ、権限としてそういうときにきちっと立ち会ってチェックをする、むしろそういう権限の問題だろうというふうに思うんです。立ち会いそのものというのは、やっぱりそういうものとは別に、改めて公的にそして第三者的に、しかも内容にチェックのきくそういうシステム、制度、それが人的にもなければそれを要請するあるいは何らかの形で確保していくということで、やっぱりこの手続の厳正さというものを改めて検討する必要があるんではないか。  中途半端なんです。民間にお願いするから私人であるにもかかわらず負担は多い、公務についているという者であればそういう職務の負担というのはある意味では職務上の責任でもあるわけですが、民間人には負担ばかりで、そして制度としてはなかなかチェックの実効性が上がらない、こういう非常に矛盾を抱えた中途半端な制度になってしまったということが言えるのではないか。これも私は当然再検討の余地のある部分だと思いますが、御説明をお願いします。  それから、この制度でもこれだけの意味はあるんだということまではわかります。さらに、人権を守る、そして捜査の行き過ぎを防ぐ、こういう意味での制度というものを検討すべきではないですか。
  23. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 確かに、御指摘のように、立会人にある意味では専門家といいますか、あるいはいろいろなチェックをし得るような人が通信事業者等以外に考えられないんだろうか、そういう議論もあるところでございますが、今御発言の中にありました例えば裁判所の職員というのは確かに思いつくといいますか、厳正中立ということからいいますと裁判所はどうだろうかという発想もまた当面考えられるところでございます。その職員を立会人にするという制度はどうだろうかとか、あるいはこれまでの議論でも弁護士はどうかということもございました。  そうしたこともいろいろ検討事項として議論してまいった次第でございますが、例えば裁判所ということを考えますと、この制度のかなり大きな部分に事後的なチェックといいますか、全体的な適正の担保の一つに不服申し立ての制度、それを裁判所が原記録に基づいて関係者から事情を聞くということももちろんあるわけでございますが、傍受が適正に行われたかどうかということについて司法判断を受けるというのが現在の通信傍受法案の中のかなり重要な適正担保の手続の一つでございます。つまり、裁判所というのはその段階で登場してくる、あるいはその段階で機能する、あるいは重要な役割を果たすことが期待されているわけでございます。  そうしたことから考えますと、傍受の現場に立ち会ってその適正な執行を監視するという役割を仮にやっていただきますと、それで裁判所の職員等が立ち会って意見も仮に言わなかった場合を想定いたしますと、司法的な機関からの職員が一応オーソライズしたことになりかねないわけでございます。そういった意味では、裁判所の職員を立ち会わせることのマイナス面というのもまた考えざるを得ないわけでございまして、今回の法案ではそれは採用しなかったということでございます。  また、弁護士等の特定の職業につきましても、まず立会人の確保が難しいという物理的な問題がございます。それと同時に、弁護士が立ち会いという業務を考えた場合に、弁護士業務との比較の問題で果たして適任なのかどうかというのは、必ずしも弁護士さんだからより適任だということも言えないのではないかというようなこともございまして、この点も立会人の範疇には入れなかったというような判断がございます。  現在の法案というのは、そうしたいろいろな検討を経た上で、通信事業者等を立会人の中心に据えて、これを適正の担保の一つにするということでしたわけでございます。
  24. 千葉景子

    千葉景子君 局長の御答弁をいろいろお聞きしますと、私が申し上げていることを別に決して否定をなさっておられるようには思えません。ただ、現在の制度上とかそれから事後的なチェックの際に裁判所なりもかかわるのだからということも御答弁くださいました。でも、私が言ったように、二重にあっていけないということはないわけです。その趣旨というのは別に否定はなさらない。  また戻りますけれども、やっぱりできるだけ厳格に、そして適正な手続を最大限担保するということを考えたときには、否定されないのであれば、できるだけその趣旨が生きるような、そういうことをむしろプラスの思考として取り入れていく、あるいはできるだけそういうものを遠慮しないで制度として使っていくということが私はこういう問題を考えるときの大事なところだというふうに思うんですね。やっぱり中途半端なものですから、民間の人の負担ばかりになっちゃうと思いますよ、正直言って。  ここも何か負担を軽減する、例えばできる限り検証令状などでも、消防職員とか公務員という形で、職務上そういう責務を果たさなければいけない人を使ったりする。やっぱり負担をできるだけ軽減し、そして不安を除去する。それから、民間ですから、それによるいろんな財政的な問題もあります。そういうことも含めて、これは民間の人に何か中途半端なこういう役割を負わせるということはちょっと考え直した方が私はいいように思いますが、そこは、再度お聞きしますが、どうでしょうか。
  25. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 負担の軽減というのは確かに常に考えていかなければいけない事項だろうと思います。  今回の立会人にいろいろやっていただくということも、負担が過度にならないようにというような配慮は十分にしたつもりでございます。そういう意味で、現在の制度自体が立会人にある一定の役割を果たしていただく、しかもそれを通信事業者に原則としてお願いしているという点について、通信事業者に一つの法律上の負担を課しているということは間違いないことでございますが、通信事業者の果たしている公共的な役割といいますか、そういった事業の性格等を考えますと許容する範囲内であろうというふうに我々は考えておりまして、通信事業者等、立会人となることを予定されている方々に対しましては、ぜひその趣旨、この法案通信傍受の重要性を御理解いただきまして、今後その御理解のもとにぜひ御協力いただきたいと考えております。  それからもう一つは、確かに適正担保のための仕組みというのは二重、三重、あるいはもっと多くてもそれは構わないのではないかと。それはお説のとおりだろうと思います。  ただ、通信傍受というこの制度を考えてみますと、諸外国との比較で立会人を置いているという制度をとっている国はございません。我が国のこの通信傍受制度を考える上で、当然外国との比較ということも一つの重要な検討事項ではございますが、先ほどから委員御指摘のように、それぞれの国にはそれぞれの歴史があり、あるいは国民の意識があり、あるいは法律についてのいろいろな異なった仕組みがございます。  そういった中で、我が国通信傍受制度というのは、そういったことを比較しましても、諸外国と比べますと大変厳重な要件のもとにこれを実施するということになっておりまして、いろいろな観点からの検討事項はあるかもしれませんが、全体としては、諸外国に比べますと、人権に対する配慮あるいは適正手続に対する担保等、どの点をとりましても現在考えられる中ではいわば十分に考慮された内容になっているというふうに御理解いただきたいと思っております。
  26. 千葉景子

    千葉景子君 今、今後通信事業者とのいろいろな話し合いもあり、協力をいただけるものはぜひお願いをしたいというお話でございます。  ただ、これもしばしば指摘をされておりますけれども、大変規模を持っている通信事業者、あるいは本当に数人あるいは一人でやっている通信事業者がおるわけですね。仮に協力を得るといっても、その意味合いというのは私は全然違うと思うんですよ、もうその重さなりは。  だとすれば、やはりそこをかなり緻密に区分けというか、その規模なりにも配慮し、それから、例えば協力の要請についていろいろな問題があれば、この立ち会いを通信事業者にお願いするというやり方、これも改善をするというか制度として考え直すということが当然あってしかるべきだろうというふうに思います。お願いをするというだけでは、これはとてもその負担を緩和できるものではありませんし、その業務自体をむしろつぶしてしまう、そういうことにすらつながりかねないという声もあるわけです。  だとすれば、これはできるだけ早く、この法案ができたらとかいうのではなくて、本当にこういうものが受け入れられるものなのか、あるいは制度として実効性あるものなのか、その辺を通信事業者などともきちっと議論をしていただいて、これは無理だということであれば立ち会いの制度そのものを見直す、あるいはこの法律の中でも変えていくということは考えられませんか。
  27. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先日も参考人の御意見の中に、非常に小さな規模のプロバイダーの例を挙げまして、立ち会いというのが過重な負担になることがあるんだと、場合によるとその業務そのものがとまってしまうというような不安も抱いているというような御発言がありました。  いろいろなそういう点も含めて検討してまいりましたが、改めて参考人のそういう話を聞きますと、そういった点についての十分な配慮というのがぜひ必要だなということをまたその段階でも痛感した次第でございます。  したがいまして、今後、この法案が成立しまして通信傍受を実施するということになりますと、いろいろな機会をつかまえて、そうした事業者との間の意見交換というものは本当に密にやっていきたいと考えております。その中で、事業者の抱えている具体的な問題というものを詳細にお聞きして、過度な負担がかかることのないようにということで、その点は実施の段階でも十分な配慮をしていきたいと思っております。  確かに、少人数で運営しているプロバイダーということになりますと、例えば一週間、十日のメールの傍受に立会人として役割を果たしていただくというのは、客観的に無理な場合が多いのではないかと思います。その場合には、立会人のこの制度の中で必ずしも通信事業者等に固定されているわけではございませんので、かわるべき立会人というものを事前にいろいろ手配をしまして、その通信事業者の立会人とチームを組んでもらって、小さなプロバイダーでありますと、その接続だとかあるいはプロバイダー自体がやった方がいいような部分についてはその関係の立会人をお願いするということでございますが、通常の通信傍受の段階では、例えば地方公共団体の職員等に立ち会いをお願いするとか、そういったことを弾力的に運用する必要があるということだろうと思います。  なお、そうしたことを実施して、やはりある程度の事例が積み重なる中で、立会人制度についてもなお検討すべき余地があるということでございますれば、それはもう率直に我々としても現実を直視しまして、問題点があれば検討していきたいというふうに思っております。
  28. 千葉景子

    千葉景子君 もうその姿勢は当然のことであろうと思いますが、もう少し私は言わせていただければ、やっぱりどうもこの法案そのものが、審議をする中から、そして参考人なりの御意見をいただく中から、改めて今の立ち会い、大変小規模な通信事業者の実態あるいはその問題点、こういうものも明らかになってきている。  だとすると、この法案そのものが当初余りそういうところを十分に認識していないところがあったのではないかと思うんですよ、率直に言って。それをお認めになるかどうかは別として、やっぱりこの議論の経過、それからこの法案のこれまでの議論を見ておりますと、携帯電話の問題なども出てきましたし、それから今の通信事業というのが本当に多様な形で行われているということもだんだん明らかになり、それに本当にきちっと沿ってこの法案が準備されたかというと、やっぱりいささか問題があった。そこは私たちも、そしてこれを提案された法務省としても、率直に認識をして、そういうところはこの法案をまずは通してからとかいうのではなくて、そういう現実があるのだから、そこはもう本当に素直にきちっともう一度点検をし直して、それで誤りなきよう進めていこうということが、私はもうここに至っては必要なのではないかというふうに思っています。  先ほどの通知の問題もそうですし、この立ち会いの問題なども、この法案自体がいろいろな今の現実あるいはその状態にどうも合致していない。そういうところがもう多々見えてきているわけです。  そういうことについて、どうですか、提案をなさった側として、出した当時と議論の中からいろいろ問題点が出てきた、こういうものにもう今でも率直に適切な対応をとられるというお気持ちはありませんか。
  29. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この通信傍受法案でございますが、これは成案を得るまでに非常に長い検討期間がございました。その期間では、もちろんその法制審の議論というのもそれに含まれるわけでございますが、法務当局といたしましても、今御指摘の、例えば中小のプロバイダーの方々からの意見を聞くということも何度かにわたってやっております。  したがいまして、これまでの議論に出てきました基本的な問題につきましては、そうした段階で十分に把握をして法案の中にそれは反映させたつもりでございます。  ただ、この法案につきましては、衆議院の段階で修正をいただいたということになります。修正をいただいた点につきましても、かなりその多くはこの論議の中で修正すべきではないかという、いろんな形から論議が行われていた事項でございました。修正された内容につきましては、原案を立案した法務当局としては非常に謙虚に受けとめている次第でございます。  また、この委員会を含めまして、これまでにいろんな論議がなされたことにつきましても、この運用に当たる我々としましては謙虚に受けとめまして、そうした中で、運用の点に反映すべきものがあれば、これは十分に反映していきたい。そうした中で、この法案の全体の御理解というものを国民にもまた十分にしていただくように努めていきたいと考えている次第でございます。
  30. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっとその点については、まだ質問が続きますので、いろいろ確認をさせていただこうと思います。  私は、前回、報道機関の問題をお尋ねさせていただきました。確かに、局長からも、報道の自由というものを尊重するという趣旨の御答弁はいただいております。ただ、これは本当に報道の自由、表現の自由、こういうものにかかわることでもございます。やはりきちっとした報道の自由を保障するという法的な担保というものが私は不可欠だろうというふうに思うんです。お気持ちだけではこういう問題は決して担保されるわけではございませんし、法の上できちっとそれが保障されているのかということが重要な点なわけです。  それで、私もそのときにも申し上げましたが、決して弁護士とかそういうものと職種として同じ質のものだと、そこに一緒にしろなどとは言っているつもりはありません。法的に報道機関の報道の自由というものをこの法律は決して侵すものではないんだと、それは逆に言えば基本的に当然保障されるべきものだということが明らかになること、それが私は必要だというふうに思います。  それについて、この法律に何かそういうことを記載しては困るとかいけないということはありませんね。いかがですか。
  31. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その点についてでございますけれども、結論から申し上げますと、法案の中に盛り込むことはなかなか難しいということでございます。  若干理由を申し上げますと、報道機関と一口で申しましても、委員も御案内のとおり今さまざまな形態のものがございます。また、その報道という言葉自体をとりましてもさまざまな態様がございます。我が国では、報道機関を初めとしまして、いわゆる報道の自由とかあるいは取材の自由というふうに言うこともございますが、これについて定めた具体的な法制は今までないということでございます。  通信傍受法案との関係で報道機関の意義といいますか、あるいはどういったものを報道機関としてとらえていくのかというようなこと、あるいは先ほど報道ということでもさまざまだと申し上げましたが、活動の内容についてもどの範疇のものをとらえていくのかということにつきまして、これを一線を画していく、あるいは線引きをするということについては極めて困難であるということが言えるのではないかと思います。  これまで報道の関係で、先ほど言いましたような具体的な法制が極めて乏しいわけでございますが、それも今申し上げたようなそういう非常に困難性といいますか、そういったことが反映しているのかと思います。  そういうことで、通信傍受法案に報道ということで対応する、あるいは報道機関ということで何らかの規定を置くというのは非常に難しいということでございます。
  32. 千葉景子

    千葉景子君 局長はそうおっしゃいますけれども、例えばこの法案は、ではほかの部分で大変明確でそして疑義がないような条文になっているかといえば、本当にそうだろうかと思うんですね。  例えば、この間も言われました他人間通信という言い方でも、では本当にインターネットなどについては一体どういうふうにそこが対応するのかという問題だってあるわけです。決してこの法案全体だってもう定義が明確で、そして何ら疑義がないなどとつくられているわけじゃないですよ。だとすれば、今の報道の問題というのも大変それは難しいところがあることは私も別に否定はいたしません。しかし、基本的な表現の自由、報道の自由、取材の自由というものをきちっと法的には保障するんだよという精神あるいは基本的な物の考え方、そういうものを法的にあらわすということは、これからこれを運用する、あるいはそれを適用する、実施する際の大変重要な判断基準になっていくんだろうというふうに私は思うんです。  そういう意味で、難しいからなかなかだめだとかそういうことを私は言ってもらっては困るというふうに思います。その点はぜひ、法的にきちっとした担保をつけて、そして報道機関あるいはジャーナリズム、そういう皆さんの本当の意味での健全な報道の発達というものを保障していく必要があろうというふうに思いますが、今のこの法律全体の見方も含めてどうですか。
  33. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法律上に報道機関に関する規定を置くことは難しいことは先ほど申し上げましたが、全体的な判断といたしましては、報道機関の報道の自由あるいは取材源の秘匿という、その重要性については我々もそれを否定しているわけではございません。前回の答弁でも、最大限の配慮を運用上していく必要があるということについては捜査機関として十分にその点は考慮するということを明確に申し上げました。  ただ、その際にも申し上げましたが、現実問題として、通信傍受が仮に実施された場合の問題として、報道の自由あるいは取材源の秘匿と通信傍受とが現実の活動として抵触する、あるいはそのバッティングの問題が起こってくるというのがどの程度あるのだろうかという現実的な考慮もまた必要かと思います。  我々はその点についても報道機関の方々とさまざまな議論を重ねる中で検討してまいりましたが、現実に抵触する部分というのは極めて考えにくいというふうに我々は考えております。全く例外中の例外として、例えば報道機関の一員がそういう薬物関係事犯の重要な共犯だったというようなケースは、場合によるとその報道機関の一員の自宅の電話が傍受されるということもあり得ることになりますが、そういったことはまず希有の事例でございます。それ以外のケースだとなかなか考えにくいということです。  報道機関の側からしますと、捜査機関がこういう傍受という手段を法的に与えられているということになりますと、何か一般的に自分たちの電話も傍受される可能性があるという意味での気持ち悪さといいますか、そういったものが現に存在するということは我々も理解しないわけではございません。あるいはまた、一般人の不安とある意味では共通なものというふうに考えられないこともないと思いますが、そうした不安というのは現実に考えていただきますと杞憂である、ほとんどの場合が杞憂である。今申し上げたような極めて例外的な場合以外は抵触することはないというふうにあえて申し上げることができると思います。  そういう意味で、報道機関の報道の自由あるいは取材源の秘匿についての最大限の配慮は運用上必要だということはそのとおりでございますし、現実にそういったことをやっても通信傍受のシステムそのものが大きな制約をこうむることにはならないというふうに逆に我々は考えている次第でございます。
  34. 千葉景子

    千葉景子君 わかりましたというか、御答弁はわかりましたが、やっぱりこういうことだと思いますね。この間の議論でも、現実にあり得ないとか、実際にはそういうことは技術的にできないとか、そういう問題と、それから法的にそれが許容されるものかあるいは禁止されるものか、これは別だと思うんです。  確かに、報道機関を傍受するというのはほとんどまれというか、考えにくいと。それは現実に考えにくいのかもしれない。それと法的にどうかという問題はやっぱり別です。  この間も、いろいろ技術的な問題と不可能なものと、それから法的にできるかできないかという問題が大分議論になりました。この報道機関の問題も、やっぱりそういうことが言えようかというふうに思うんです。別に現実にたくさんあろうと、あるいはあった方がいいなどと私も決して思いませんし、規定がなくてもそういうことがあってはならじと思います。  ただそれは、あるかないかということであって、法的に是認されるか禁止されるかという問題ではない。やっぱりそこを明確にしておくということが法律というか、こういう人権に大変重要にかかわる、とりわけ憲法の理念などにも大きくかかわる問題については重要なんだろうというふうに思うんです。  局長は、余りそういうケースはないでしょうと。それはなくていいんです、ない方がいいわけですから。ただ、やっぱり法的にそれをきちっとしておくということは否定できないでしょう。
  35. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御主張の趣旨はよくわかります。  法的にどうかという問題は、先ほど申し上げましたように、この法案の中に通信傍受対象外にする業種として何を入れるかというところの法的な判断ということだと思いますが、その判断といたしましては、これまで申し上げてきておりますが、刑事訴訟法の定めている弁護士、医者等の業種ということに限ることが現在の法律の立て方からしまして適当、相当であろうという判断をしております。  その判断に至った理由の中には、現実的な問題ももちろん入るわけでございまして、先ほど申し上げた、現実的にはなかなか通信傍受と報道との関係の接点というのは考えられない、考えにくいということで法律的なそういう処置をした、あるいは法案の中に盛り込まなかったという判断の大きな一要因にはなっているわけでございます。
  36. 千葉景子

    千葉景子君 まだまだあるんですけれども、ちょっと時間が足りませんで、私は毎回大変申しわけなく思っていることが一つございまして、この通信傍受以外の法案問題点をいつも質問させていただくと通告はさせていただきながら、なかなかそこへ到達しないというのが現状でございます。  ちょっと残された時間がありますので、何点か指摘をさせていただきますが、時間もありませんので、これもまた御答弁をちょっとトータルにしていただきながら、またこれは継続をさせていただきたいというふうに思うんです。  組織犯罪三法という中で、組織犯罪処罰、それからマネーロンダリングの規制、この趣旨は別に私は否定するものではありません。マネーロンダリングについて、それを規制していこうということは私も容認をしているものでございます。  ただ、この法案が本当にそれをきちっと適切に規制できる法案になっているのか、何かむしろざるを広げて水がざっとこぼれ落ちちゃう、どうもそういう嫌いがあるのではないかという感じもいたします。  それから、組織的な犯罪処罰、これを重くしようということなんですけれども、これが非常にあいまいである。それから、現在の刑罰法規で全く対応できないのかどうか。そういう御検討がもうちょっとされないといけないのではないかというふうに思うんです。  例えば、組織的な犯罪処罰などでは、大変日本の刑法の法定刑も幅広くとられています。上限も死刑まで刑罰を設けているものもある。だとすれば、その範囲で十分これまでも適用、運用されてきているし、それから犯罪類型も個人の犯罪あるいは一定の共犯関係、グループ関係にある犯罪、そういうものもある程度見越してその法定刑の幅広さというものも設定されているように私は考えるわけですね。何か非常に組織的犯罪処罰と言いながら、組織的な資金の流れ、こういうものを断とうということとは何か余り無関係処罰規定が拡大されたり、あるいは資金の違法な流れを何かえらく大きな網をかけて全部根こそぎとってしまおうと、どうもそういう法律に全体としては思えるわけです。もう少しその目的にきちっと適切に対処できるような構造に私は検討の余地が大きく言えばあるんではないかというふうに思っています。  ちょっと個別の問題、さらに時間をまたいただいてやらせていただきたいというふうに思いますが、全体の構造としていかがですか。
  37. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この三法案は、組織犯罪をどう抑圧していくかということが中心的な課題でございます。これを考えるに当たっては、やはり日本現実がどうかということが最大の問題ということになりますが、さらにつけ加えるならば、例えばマネーロンダリングの関係では国際的な協力ということで日本の責めが果たせるかどうかということもまた一つの要素になります。  例えば、マネーロンダリングの規制の対象犯罪を今回かなり広げておりますが、諸外国ではそうした犯罪からの不法収益についてかなり厳しい規制がかかっているにもかかわらず、日本がその規制をかけないということになりますと、日本がマネーロンダリングの温床になるというようなこともございます。今申し上げたような例でも御理解いただけると思いますが、国際的な協力という点もこの点では検討すべき重要な課題ということになります。  そうした日本の現状あるいは国際的な現状といいますか、そういったことから今回の法案は緊急に対処すべき事項ということをかなり絞り込みまして、これを法案として内容に盛り込んだということで御理解いただきたいと思います。大きく網を広げて、いわばその内容が非常に雑駁ではないかというような御批判をこうむらないように、そういう観点からの検討も十分にしたというふうに我々は考えております。
  38. 千葉景子

    千葉景子君 国際的な問題というのも別に私は否定はしていないんですよ。それから、緊急にそういうものに対処していこうということも別に否定していないんです。ただ、それに本当に即したものかどうか、個々の中身を見ると、そういうところに私は非常に問題点があるというふうに考えているものですから、その個別の点についてはまた順次時間の許すときにお尋ねしたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  39. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  質問させていただきます。  通信傍受法案を含む組織犯罪対策三法、これは審議時間を重ねるにつれまして同じ論点が、特に通信傍受につきましては同じ論点が繰り返される傾向が顕著になってきました。いろいろそれぞれの立場があって、お互いの立場を言い合うという形になっております。例えば、先ほどの質問で立ち会い制度一つとりましても、この修正案の立ち会い制度というものは何かとってつけたような制度になっているのではないか、こういう御意見もあったわけでございます。  立ち会い制度そのものは、捜索、押収については公平性の担保のために立会人を置くのは刑事訴訟法上の基本的な要請であります。それから、どういう人を置くかということについては、まずその実施する場所の管理者と言いますが、この人を最初に持ってくるということも一つの原則であるというふうに思います。  それで、この立ち会い制度も修正によりまして、常時立ち会い、例外を認めないという形になったわけです。これは、立会人がいなくてもいい場合を認めますと、その間に捜査官が違法なことをするのではないか、乱用が起きてはいけないという観点から常時立ち会い原則で例外を認めないということにするわけでございます。  そうなりますと、この立ち会いにしましても、一方で立会人に切断権を認めるべきだという議論がございます。一方で、いやいや今のこの修正案でも負担が大きいのだという反対の両極端の意見が出まして、じゃ一体どうすればいいのかということになってしまうわけでございます。  この法案につきましてもパーフェクトではないと思います。ただ、我々は、よりベターな、ベストに近いところまでどこまで到達できるかという作業を繰り返していくしかないわけでございます。例えばこの立ち会い制度につきましても、これまでの議論の中からもう十分議論は出たと思いますから、じゃ具体的にこうすればいいんだ、実現可能でしかも条文化できるパーフェクトな立ち会い制度というものがあるのであれば、何らか具体的な形で示していただけると、それについて非常に参考になるという気がいたします。  それでは、同じ論点をまた私も繰り返すことになるわけですが、ちょっと立場、見方を変えての質問をいたします。  これまで、従来の捜査手法では今回の対象犯罪とされているようなものは摘発が困難なのだという、これは刑事局長の方からも御答弁をいただいております。それで、きょうは警察庁の方にお尋ねしたいと思います。実はこれはこれまでも何回か通告しておりましたけれども、時間の関係でできずにいましたので、きょうは最初にさせていただきます。  いわゆる犯罪捜査通信傍受という手法は必要ないのだ、従来の捜査方法で十分である、こういう意見があるわけです。それで、この前の公聴会で佐藤道夫元検事長の言葉に耳を傾けるべきだという御意見が出た関係もありまして、実は前からこれを聞こうと思っていたんですけれども、例えば六月二十八日の東京新聞、「盗聴法は、治安が乱れ、警察力が劣っている国が持つ法律だ。警察の捜査能力が高く、地域住民との信頼関係があって治安が保たれている日本では、犯罪捜査に盗聴など不要だ」、これは発言の要旨ですが、こういう記事もございます。  それから、ごく最近、数日前ですか、これは日本弁護士連合会発行のパンフレットですが、これをお持ちいただきました。七月二十一日の集会の内容ですけれども、「通信傍受法(盗聴法)案 ここが問題だ」ということで、いろんな方が御意見を述べられております。この中で佐藤道夫さんはこういうことをおっしゃっている。「日本社会には武士道という言葉がありますが、要するに卑怯なやり方は許さない、正々堂々と戦え、犯罪者といえども人間ではないのかと。正面から四つに組んで反省を求めて、組織の全貌を明らかにさせる、これが日本古来の捜査方法であると。」ということで、いろんな見方があると思いますし、この捜査手法を否定するつもりは全くございません。それで、佐藤さんは実は警察に対しては温かい目で見てくださっているのかという気がいたします。警察の捜査能力は高いんだということを評価してくださっている、それから地域住民との信頼関係もあるんだと、こういう点では積極評価してくださっておりまして、三十八年間検事をやってこられた方の言葉ですから、ここもやはりさすがに重みがあると思います。  そこで、警察能力は高いんだからこういう捜査手法は要らないんだ、こういう意見に対しまして、現場の警察の立場から御意見をいただければと思います。例えば、従来の捜査方法で十分であったら私もこういう通信傍受という手法は要らないと考えますので、答弁は余り深くかたく考えずに現場の意見として言っていただければと思います。
  40. 林則清

    政府委員(林則清君) 佐藤先生とは非常に長期にわたってともに捜査をいたした仲でありますが、一部の先生方からはしばしば警察不信の発言ばかりといいますか、発言を聞かされておる私どもといたしましては、警察の捜査能力の高さあるいは治安のよさということについての佐藤先生発言はまさに一服の清涼剤の感をいたしておるわけでありますが、それとともに、実は内心じくじたるものがあるというのが偽らざる心境であります。  例えば、治安の最高責任者である警察庁長官が狙撃された事件あるいは企業幹部が殺害された事件、その他多くの国民的な関心を呼んだ重要事件が未解決であるばかりか、特に組織的犯罪につきましては末端の検挙にばかりとどまっており、その中枢部には全くと言っていいほど検挙の手が届いていないというのが実情であるからであります。  今や、二十一世紀に向けて、我が国のみならず世界が組織犯罪の脅威にさらされておるのが現状であります。その意味では、まことに失礼でありますけれども、佐藤先生が現場の検事であられたころに比べて全く隔世の感があるというのが実情であります。そして、この傾向は軽くなるどころかますます深刻になるということは国際的にも認識されておるところであります。  これらの組織的犯罪につきましては、現行の捜査手法では、末端の実行行為者を検挙することはできても、その背後にいる首謀者等の検挙というのは著しく困難であるということから、通信傍受という捜査方法は良好な治安をこれからも維持していくためには必要不可欠なものであり、法の厳格な要件に従って適正に通信傍受を行うことは武士道精神に決してもとるものではないというふうに考えております。
  41. 大森礼子

    ○大森礼子君 刑事局長にもちょっとお答えいただけますでしょうか。  確かにこの盗聴という方法、私は、盗聴というのは室内傍受通信傍受と両方含むので、この法案につきましては当然傍受という言い方をするわけですけれども、アンフェアなやり方ではないか、卑怯なやり方ではないかというふうにお考えになる方がいらっしゃるのも当然だと思います。それから、武士道精神というのも、私、女性ですからちょっと武士道精神はわからぬところがありますけれども、要するに潔くということだと思いますが、そういう精神であるならばそういう精神を持って仕事をしたいと思うわけですけれども、武士道精神で正々堂々とやるべきだ、このおっしゃるところは今も現場の基本精神であろうと思うわけでございます。  ただ、この傍受という方法が捜査手法として卑劣なやり方であるからとるべきではないということについて、ちょっと御意見があれば簡単で結構ですからお聞かせいただきたいと思います。
  42. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 私も捜査の検事になりまして三十年でございますが、覚せい剤の事件を例にとりますと、今、林局長からもお話がありましたけれども、青少年が覚せい剤にむしばまれていく現状が片方にあります。それに対して捜査が十分に機能していない、やはり組織犯罪の中枢をたたけない、どうやったらこれを抑えていけるのかというのに非常に悩ましい思いをしている一人でございます。  捜査官としてどういうことを考えるかといいますと、やっぱり捜査官として国民に対する責務を徹底させるということからいいますと、そのために必要な方法でベストを尽くすということだろうと思います。それは現にある法律を徹底的に運用して、ぎりぎりまで運用してそうした組織犯罪と戦っていくということ、これは当然のことでございます。それと同時に、改めるべきあるいはさらに考えるべき捜査手法というものがあるのであれば、基本的人権に対する配慮を十分にしながらもそうした手法も取り入れていく、組織犯罪と戦うための武器もさらに新しくし鍛えていくということも捜査官としての極めて重要な責務だろうと思います。そうしたことを徹底していくことがいわば捜査官の精神の中枢であろうと私は思いますので、佐藤先生がそれを武士道精神ということで言うのであれば、まさに我々もそれを遂行しているということでございます。  そうした中で、通信傍受すること自体が卑劣な方法とかあるいは本来とるべき手段じゃないんだというようなことではございません。現に世界でそうしたことが広く認知され、現実にそのように機能しているということもそれまたあらわしているんだろうと私は考えている次第であります。
  43. 大森礼子

    ○大森礼子君 次に、この場面になりますと、この前ちょっと明らかでなかったことをもう一度確認させていただくという作業も必要になるかと思います。  それで、法務省にお尋ねするんですが、既に何回も答弁されていることなんですけれども、Eメールの傍受方法について再度確認させていただきたいと思います。  POPサーバーのメールボックスに入ったものを傍受するというやり方との御説明なんですが、どのように傍受するのか、ここはもう既に繰り返されていますので簡単で結構です。もう一つよくわからないというのは、いわゆる傍受記録とそれから裁判所提出する原記録というのは、Eメールの傍受の場合にはどのような形のものになるのかということでございます。  場合によったら現場で傍受記録を作成するという御答弁もいただきましたけれども、その傍受記録というのはどういう形のものになっているのか、人によっては紙にプリントアウトしたものが傍受記録ではないか、こういうとらえ方をしていらっしゃる方もおられますので、なるべく誤解をなくすという意味でもう一度確認させていただきたいと思います。
  44. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) Eメールの傍受は、プロバイダーのところにありますPOPサーバーに傍受機器を接続して行うということになります。  その際に、傍受記録としてどういう形になるのかということでございますが、これはフロッピーディスクのような電磁的な記録媒体、かたい言葉ですが、これを使用することになります。その内容をプリントアウトした紙というものは想定していないということでございます。  その傍受記録のつくり方でございますが、POPサーバーのところに受信する都度それをまず傍受いたします。その上で、原則としてその場で画面に立ち上げまして、該当するものしないものの選別を行う、該当するものを今申し上げましたようなフロッピーディスクのような電磁的な記録媒体に落としていくということで傍受記録ができます。  それから、傍受したフロッピーそのものは、これは原記録として裁判所に保管されるということになっております。
  45. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうしますと、現場で可能なものであれば該当性判断をして傍受記録をつくるということですが、その場合、では現場から帰るときに捜査官が持っているのは、一方はメールボックスですべてを取り込んだ裁判所用の原記録、それから該当性判断を既にクリアした犯罪関連通信だけが入ったフロッピーといいますか傍受記録というか、こういう形になるんでしょうか。もうイエス、ノーで結構です。
  46. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それはおっしゃるとおりでございます。
  47. 大森礼子

    ○大森礼子君 それでは次に、大臣にお尋ねいたします。  先日の公聴会で、村橋公述人が次のような見解を示されました。不法収益による没収された財産は、被害者の救済や暴力団員の社会復帰、それから麻薬対策等のために利用されるのが望ましい、こういうことでございます。それで、犯罪により生じた収益を犯罪対策とか被害者救済に利用するというのは、言ってみれば組織犯罪によって荒らされた社会に対する原状回復といいますか、こういう方法であると思います。  それで、こういう村橋公述人の発想といいますか、没収したものはそういう用途に使うべきだという発想はとても大事ではないかと思うわけですが、没収された財産の使い方、こういう被害者救済とかあるいは犯罪対策とか、これに使うというやり方を真剣に検討すべきことではないかと思うのですが、大臣はいかがお考えでしょうか。余り細かいお答えはできないと思いますが、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  48. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 委員御指摘のような御意見があったことは私も承知いたしております。  それで、没収された財産の利用の問題につきましては、没収制度趣旨とか没収された財産の性格あるいは没収規定の運用の実情など、種々の観点からこれを検討していく必要があると思いますが、この種々の観点の中には、今委員御指摘のようなことも含まれるんじゃないかなと私は思っております。
  49. 大森礼子

    ○大森礼子君 通常、没収された財産というのは国庫に入るわけであります。それで、そのお金がどういう使われ方をするのか一般人はわかりません。ですから、没収された財産とそれから犯罪対策、この因果関係をつけるということは国民にとっても非常に見やすいことでありますし、また組織犯罪対策の立法も国民の方に理解を得られることになるんではないか、こういう気がいたします。  それから、もう一人の鈴木りえこ公述人も来てくださいました。薬物汚染が低年齢の人にまで及んでいる、こういう趣旨からの御発言でしたけれども、この方の論文で「中高生に広がる覚せい剤汚染」というのがございます。読ませていただきました。これまた大臣、もし機会があれば読んでいただけたら非常にいい論文であると思います。  この中で、前回の私の質問の中に入れましたいわゆるダルク、薬物依存者の民間リハビリセンター、このダルクの活動についても実はこの鈴木さんの論文の中で紹介されてあります。ダルクは薬物依存者の社会復帰を支援する民間リハビリセンターでございます。  そして、この論文の記述の中にこういう部分がございます。近藤氏、これは設立者の近藤恒夫さんのことですが、「近藤氏は、薬物問題に関する政府の対策に憤りを募らせている。依存者の再犯率の高さが無視され、未経験者への予防ばかり強調されているからだ。」、少し間を置きまして、「日本では薬物依存者の回復をサポートする困難でかつ危険な役割を、ダルクという民間施設だけが背負っている。彼らには資金がなく、その力には限界がある。」。この後段は鈴木さんの御意見なんですけれども、こういう記述がございます。そして、この論文の結びのところで、「警察や政府間の国際協力は着実に進んでいるが、密造・不正流通の根本を断つ努力を一層強化するとともに、今後の課題として薬物依存者の社会復帰に向けた支援策を充実させていくことも忘れてはならない。」、こういう形で論文が結ばれてございます。  これからの質問は、先ほどの没収財産のことを切り離して考えてください、一般論として申し上げます。  法務省は人権擁護を推進すべき役割があるはずです。犯罪の摘発、処罰のみならず、犯罪被害者の救済にも積極的に取り組むべきでありまして、薬物依存者の社会復帰を民間のダルクのみの仕事にしてよいのか、私はこう考えます。人道的見地に立ちまして、薬物依存者の社会復帰に向けた支援策を充実させるべきではないか。それで、ダルクがしてくださっている仕事というのは、これは本来国がすべきことではないかという気もするわけです。これに対して国が知らぬ顔をしていいはずがない。といって、するとすぐ補助金かという話になるんですけれども、それも含めまして、例えば大臣が、こういう本当に大変なお仕事をしてくださっている、すぐ担当者を派遣して、お困りのことはございませんかとか、何かできることはございませんかとか、こういう支援を申し出るのが筋ではないかなと。私は本当に大臣に行っていただきたいなという気もするんですけれども、視察ということで。  こういう支援策につきまして、大臣に強く要望したいと思うのですが、いかがでしょうか。こういう支援策、将来検討しますではなくて、何か具体的に動き始めてほしいなという気がいたします。大臣の御見解を求めます。
  50. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今御指摘のダルクというのが民間のリハビリ施設として大きく貢献しているということは十分認識しております。  法務省といたしましても矯正保護の分野において、こういう薬物依存者の更生のために関係部局と力を合わせて必要な措置をとっておるわけでございますけれども、今御指摘のようなことも十分頭に置きながら、今後一層こういう対策の強化を図っていく必要があろうかと思います。  そういう中で、先ほどの没収財産の利用のあり方、こういうのも大変関心を持つべき課題ではなかろうかと今感じておったところでございます。
  51. 大森礼子

    ○大森礼子君 他人事にしないでくださいね。これは、本来国がすべき役割だと私は思います。  それから、やっぱり薬物依存者という方、こういうリハビリがこの論文の中にも「困難でかつ危険な役割」というふうに記載しております。危険というのがどういうことを意味するかおわかりになると思うんですけれども、大変なお仕事をしてくださっているわけですから、支援策とか視察とか、何か具体的に動いていただきたいと思います。  時間の関係がありますので、次の質問に移ります。  先日の宮澤公述人意見は、私は大変参考になりました。欧米諸国組織犯罪対策の実情について詳細に御説明をいただいたわけでございます。それで、昔、新渡戸稲造さんという方がおっしゃったことで、日本人は大きいことと小さいことと混同してしまう、こう言ってこの方は嘆かれたそうです。要するに、センスオブプロポーション、何が大きいことで何が小さいことかを見きわめるセンスが欠けているということでしょうか。大所高所から物事が見られない、これは日本人のことですね。部分的で小さな重箱の隅をつつく議論ばかりしていて肝心かなめのことがお留守になって、いつの間にか世界の潮流とかけ離れたところに流されてしまうのではないか、こういう趣旨のことを述べられたことがあったそうでございます。  それで、この通信傍受を含めまして、組織犯罪対策につきましては、制度的、技術的研究も含めましてやはり国際協力の推進というものが必要となると思います。ただ、日本国内だけの摘発ということではなくて、やはり国際協力も推進していかなくてはなりません。  この法案成立後のビジョンにつきまして、法務省の方、例えばこういうことを考えていると具体例を示していただければと思います。
  52. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) おっしゃるとおり、組織犯罪というのは今やボーダーレスでございまして、国際的な協力なしには有効な抑圧ができないという状況まで立ち至っております。  具体的には、例えばマネーロンダリングという点をとらえましても、これはまさにボーダーレスの象徴みたいなものでございまして、国際間を規制の緩いところへ緩いところへと流れていく、そこで洗浄しまして、それがまた表に出ていってしまうということでございますので、この点につきましては、今回の法案の中で疑わしい取引に対する届け出の制度がございます。これは大変有効に機能する制度というふうに我々は期待しているところでございまして、これは金融監督庁に一元的にその情報が入りますが、これが捜査機関、調査機関に回付される、疑わしい、犯罪関係すると思われるものの情報捜査機関、調査機関も入手できるようになっております。  また、さらに条文がありまして、これを国際的な協力の中で外国の機関にも必要な場合には提供できるということになっておりますので、この点についての国際協力はなお一層進むものというふうに理解しております。  それから、そのほかに、例えば薬物事犯等におきましても現在国際協力の面で日本はなかなかその有効な摘発ができていない。したがって、その薬物に関する組織についてその時々で必要な情報も十分に把握されていないというのが現状かと思いますが、これが今回の通信傍受という一つの捜査手法が入ることによりまして、かなりの程度に前進すると思います。そういった薬物事犯の摘発についても国際協力は今非常に顕著に行われております。  そういったことにつきましても、この法案が成立しますと日本は果たすべき責めを今まで以上に果たしていくことができるというふうなことで、また期待しているところでございます。
  53. 大森礼子

    ○大森礼子君 最後の質問になりますが、盗み聞き、盗聴ということで一般的に禁止する法整備が必要ではないか、大ざっぱな質問で申しわけありませんが。やっぱり日常生活がのぞかれるというのは気持ち悪いものだと思います。それで、この通信傍受法案について善良な一般市民が日常をのぞかれるなどという非常に不安感を持たれたわけですけれども、その危険というのは一般に市販されている盗聴機材からも起きてくるのではないかというふうに思います。  それで、どうしても具体的な例が浮かばないのですけれども、やはりこういう盗聴機材というものが一般にしかも値段が安く売り買いされている、私人によってそういう盗聴が広くなされている、これもやはりプライバシーという問題で何らかの手を打たなくてはいけない問題ではないかと思いますが、この点について法務省、いかが考えているか、簡単で結構です。
  54. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 現在、私人によりましてそういう盗聴機器を用いた盗聴行為というのが一般的に広く行われているのではないかというふうに言われておりまして、またある程度それは現実のものだろうというふうに理解しております。  これをどう規制していくかということも当然重要な検討事項ということになりますが、法務省といたしましてもその通信機材を抑制していく、販売を抑制していく方法があるのかどうか、あるいは生産そのものを規制していくことが可能なのかどうかという点も含めまして、それぞれ関係するところと十分な協議をしていきたいなというふうに考えております。
  55. 大森礼子

    ○大森礼子君 終わります。
  56. 橋本敦

    橋本敦君 私は、前回、この法案によって裁判所通信傍受令状が出されますと通信傍受、いわゆる盗聴は、あとは執行するのは捜査官憲ですから、警察官の任意の判断でどんどん進められていく。だから、そこで通信秘密を侵さない、市民の人権をどう守るか、そこのチェックがこの法案では十分でない、そういうおそれを指摘いたしました。  きょうはそれに関連をして、いわゆる逆探知の問題で聞きたいと思うわけであります。  逆探知は十六条で規定されておるわけですが、犯罪関連通信あるいは犯罪関連通信でなくても十四条で認められるいわゆる別件事件、これについての百を超える広範な犯罪に関連する通信、そしてまた同時に、それだけではなくして、第十三条でこの電話の通信犯罪該当通信かどうかを調べるための試し聞きということが許されますが、その試し聞きについても逆探知ができるという規定になっている、これは間違いありませんね。
  57. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおりでございます。
  58. 橋本敦

    橋本敦君 しかも、重大なのは、この第十四条、別件盗聴の場合、これは傍受令状で特定されておりませんから、令状のない通信傍受ということになるんですが、この逆探知もこれまた令状を必要としないということになっていますね。
  59. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法案の十六条に御指摘のような規定がございます。
  60. 橋本敦

    橋本敦君 ですから、まさに裁判所の令状のない強制処分が逆探知という形で、ここにかかってきた電話がだれの電話であるか、どの場所であるか、市民が知らない間に逆探知されるわけですね。しかも、その逆探知される範囲というのが、今私が指摘したように実に広範である。犯罪関連通信は罪名は四十を超えるし、それからさらに別件盗聴の場合は百四十を超える罪種、市民生活にも深くかかわっていく可能性がありますよ。しかも、試し聞きといって犯罪関連があるかどうかを試し聞く、それについても逆探知もやられるとなりますと、ほとんど制約のない逆探知が行われる可能性があると言っても過言ではない。    〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕  今かかってきたこの通信を逆探知すべきかどうか、この判断はそこの現場で傍受している捜査官、具体的には警察官、この判断に任されているわけですね。
  61. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 十六条の要件に当たるかどうかの判断でございますが、それは現場の捜査官の判断ということになります。
  62. 橋本敦

    橋本敦君 そのとおりでしょう。ですから、全く捜査官の任意の判断に任されている。それで、市民が知らない間に、ある人に電話をする、ある場所に電話をする、そうするとそこがたまたま傍受対象、盗聴の対象になっていて、何の関連もない市民が自分が逆探知をされるという危険性が出てくるわけですね。その範囲が、今言ったように令状によらない処分ということですから、これはまさに憲法三十五条、憲法二十一条との関係で、憲法上重大な問題であると言わざるを得ないと思うんです。  その逆探知をするということが具体的にどういう場合に許されるのかということについて基準をつくるとか、あるいは基準があるとか、その点はどうですか。
  63. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 十六条にある程度具体的に判断の基準となるような文言がございますので、具体的な運用ということで多少細かく規定することがあるかもしれませんが、今一般的な運用指針というものは必ずしも必要ではないのではないかと考えております。
  64. 橋本敦

    橋本敦君 答弁のとおり、客観的に覊束する基準がないんですよ。専ら捜査官自体のまさにその場の判断に任される。  そして、もう一つ問題は、この逆探知をするについて捜査官はできません。通信事業者の協力を得なければできません。だから、通信事業者に対して今かかっているこの通信の逆探知をやりたいんだと言って即座に協力の要請をする、こういうことになりますが、その協力は正当な理由なくして協力を拒むことができない、こういう法律の仕組みになっていますね。
  65. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 第十六条第二項には、「通信事業者等は、正当な理由がないのに、これを拒んではならない。」ということでございますから、御指摘のとおりです。
  66. 橋本敦

    橋本敦君 今かかっている通信をすぐ逆探知しないと終わっちゃうんですから、協力してくれと言われたら、正当な理由があるかどうか、どうやって議論をし判断し、それができるんですか。通信事業者は傍受していません、内容はわかりません。捜査官が判断して、協力してくれと言われたら、正当な理由があるかないかそんなことを言っているいとまもないから、全面的に協力させられるということになるじゃありませんか。    〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕  ここで言う「正当な理由」というのは、どういう場合ですか。
  67. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 前提として申し上げますと、例えば、今私の家の電話にも、だれがかけてきたかという逆探知の機器がついております。つまり、かかってきた段階でこの番号が即時把握できるようになっておりますので、逆探知して相手の番号を知ること自体が、通信秘密との関係でどの程度の配慮をすべきものなのかというのは内容を聞く場合とはまた別途の判断があると思います。  探知する必要があるかどうかというのを通信事業者が指示をされます、あるいは協力依頼をされます、基本的にはここにあるような「正当な理由がないのに、これを拒んではならない。」ということになるわけでございますけれども、例えば、通信事業者が自分の持っている能力を超えて協力依頼をされたような場合には当然それはできませんということですから、そういう場合がまさにこの正当な理由ということになろうかと思います。
  68. 橋本敦

    橋本敦君 だから、全部協力させられるんですよ。自分の、通信事業者の能力の範囲では全部協力させられるんです。だから、今の場合は、正当な理由がある場合は拒否できるなんというのは、これは全く法的に、そういう意味では覊束力も拘束力もないと言わざるを得ません。  それから、もう一つ重大な問題は、この十六条の第三項、この逆探知をどこでやるか。第一項では通信傍受をしている場所でやる、こう書いてある。その場所は、裁判所の令状で傍受すべき場所は特定されますね。ところが、第三項によりますと、傍受の実施の場所以外の場所において探知をすることができる、こうなっている。これに対しても、通信事業者に対して探知する旨を告げてやれる、こうなっているんですね。この場合にも、通信事業者は前項後段の規定を準用されますから協力義務があることになる。  裁判所傍受令状で、傍受すべき場所は令状の特定要件として、憲法の要請でも特定性は大事ですから、当然のこととして書かれてあるんですが、傍受を実施している場所以外の場所でも逆探知ができる、これはどういうことですか。
  69. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 憲法には確かに令状主義という原則が三十五条にあるわけでございますが、憲法三十三条をごらんいただきますと、現行犯の場合ということでございますが、この場合は令状なくして捜索、押収ができるということで、強制処分に付随する行為につきましては条件がありまして、新たな法益侵害と言うに足りない、要するに法益侵害ということでないという範囲内では付随的な処分には令状は要しないというのが、これは今の憲法ないし刑事訴訟法等の基本的な考え方でございます。  したがって、傍受しているところの通信事業者に逆探知をお願いする場合は、今御指摘の十六条一項、二項なんですが、これが例えばNTTの事業者のところで傍受しております。ところが、相手がかけてきたのが携帯で、NTTドコモさんの協力を得ないとできないという場合には、まさにこの一項、二項の範囲を超えますので、その場合にNTTドコモに協力をお願いする。その場合にそれの協力をお願いしていいよということをこの三項に書きまして、ドコモさんのそういう情報を与えることの法的な通信秘密保護ということとの関係で義務を解除しているということでございます。
  70. 橋本敦

    橋本敦君 そういうことを言っていると、傍受令状の令状による特定性と人権保障という限度を超えてどんどん進んでしまいますよ。通信事業者というのはたくさんあるんだし、どこからかかってくるかわからないし、どこの通信を利用しているかわからぬのですから、令状は意味をなさなくなってくるじゃないですか。私は、そういう意味で憲法違反性というのはますます高くなってくると思わざるを得ない。  この問題では、その協力の問題について、平成十年三月十二日に法務省刑事局長原田さんと郵政省電気通信局長の谷局長との間で覚書がありますね。この覚書の八のところで逆探知についても書かれてあるんですが、「傍受令状発付の事実など同条第一項の規定による探知であることについて確信が持てないと合理的に判断した場合は、相手方の電話番号等の探知に関する協力を拒み得る。」、こういう協定があるんですよ。  本当にこれが守られるかどうか、重大な問題だと私は思います。だから、今の刑事局長の答弁と比べてこの問題が本当にどうなのか、これをきっちりと確かめていかなければ人権侵害問題は解決しない。  この点で私は委員長に、各省の関係もありますので、当委員会と交通・情報通信委員会との連合審査をぜひやっていただきたい、やるべきだということを御協議願うことをお願いしておきます。いかがですか。
  71. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 理事会、理事懇で協議をいたします。
  72. 橋本敦

    橋本敦君 この書かれてあるものと局長答弁と明白に違いがあるんですよ。  その次の問題、消去の問題であります。  この消去につきましては二十二条に書かれております。時間がないので簡単に聞きますが、犯罪関連通信でない、それ以外の通信は、原記録からは削除できませんが、傍受記録をつくる場合にはこれは削除する、こうなっていますが、その削除はだれが責任を持ってやるんですか。
  73. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは捜査に当たる捜査官がその責めを負います。
  74. 橋本敦

    橋本敦君 その捜査官の消去が、本当にきちっと消去されたかどうか、これはどこで検証するんですか。
  75. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法案は、御指摘のように、傍受記録に残さない通信記録については、捜査機関の手元に残って利用されることがないように消去すべしということが御指摘の条文にございます。これは、捜査官がその責めを負うと今申し上げました。さらに、その次の第五項をごらんいただきますと、捜査官がその内容を伝達、使用することを禁じております。捜査官がこれらの規定に違反した場合には、その監督者も含めて懲戒処分の対象となるということで、記録の消去の確実な履行を期待しているというところでございます。  またもう一つには、この傍受そのものが、請求そのものをかなり高いレベルの請求権者に設定をして、なおかつ県警本部長あるいは検察庁でいいますと検事正の決裁といいますか、それに基づいて請求するということで、組織として責任を負うというような組み立ての中でその適正を担保するというふうにお考えいただきたいと思います。
  76. 橋本敦

    橋本敦君 警察が組織として責任を持つ、本当に関連のない通信部分を消去するかどうか、これが一つ。  それで、組織でやると言うけれども、だれが客観的にチェックするかというチェックの体制はないですね、法律上。ありませんね。
  77. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは法案全体をごらんいただいて、例えば原記録が裁判官に保管されまして、不服申し立て等の段階ではそれが確かな資料になるというようなことも含めまして、全体としてはそういう適正運用についての担保になっているというふうに承知しております。
  78. 橋本敦

    橋本敦君 不服申し立てができる人というのは、傍受をしたことの傍受記録をつくって通知される人だけですから、何度もここで議論しているように、傍受をされ、盗聴されたすべての人に通知は行かないんですから、不服の申し立てようもないんですよ。だから、そこのところでチェックできるといったって、それは無理な話です。  それから、もう一つ。実際に複製コピーがつくられますから、その複製コピーはこの法案で書かれておりますように、複製、それから記録したもの及び書面も含めた、そういった複製が全部完全に消却されたということはだれが確認するんですか。これも警察ですね。
  79. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおりでございますが、そういったことにつきましても、これは先日警察庁の方からも答弁がございましたが、実際の実施の段階ではそうしたメモはできる限り作成しないようにとか、そういうようなことでそういう運用を徹底するということで、捜査機関の方としてもこの二十二条の運用に努めていくという決意を述べておりました。それで御理解いただきたいと思っております。
  80. 橋本敦

    橋本敦君 もう時間が来ましたが、これまた警察に任されているわけです。市民も国民も裁判所もチェックしようがない。だから、警察がひそかに情報を蓄積し消去しない、複製をひそかに保持する、あるいはメモをつくってそれを消却しないで持っている、そういったことで警察に市民情報がひそかに蓄積される。まさにアメリカの政界において政敵に対する攻撃にも使われかねないという、市民社会が実に重大な危機に陥ってくるわけでしょう。そういう意味で、私は憲法上の重大な問題がこの点でもあると思いますよ。  最後に、私は委員長にお願いしますが、今お話しの通りです。全く判断と体制は警察に任せているんですから、実際そこが具体的にどうなるかということも含めて、この通信傍受法案については警察行政を担当する地方行政・警察委員会との連合審査が私は不可欠だと思うんです。このことも強く要望しますので、理事会において御協議をお願いして、質問を終わります。
  81. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 先ほど申し上げましたように、協議いたします。
  82. 橋本敦

    橋本敦君 終わります。
  83. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  たくさん聞きたい論点はあるんですが、前回、明快な答弁がいただけませんでした。世耕委員のつくられたペーパーに基づいて質問したことに関して明快な答弁がいただけず、その後、時間が経過をしておりますので、きょうきちっと詰めさせていただきたい、明快な答弁をお聞きしたいというふうに思っております。  世耕委員のつくられたペーパーの「やってはいけない」というところで、PTT、これはなぜ法律上だめなのか、御答弁をお願いします。
  84. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 少し詳しく申し上げますが、本法案の第十二条をごらんいただきますと、傍受の適正を担保するために、傍受の実施をするときは通信事業者等の立会人の常時立ち会いを要求しているということでございます。その上で、傍受の実施の方法及び場所は、本法案第六条によりまして、裁判官が発付する令状の記載事項とされているところでございます。  そこで、傍受の実施場所でございますが、個別事案ごとに、裁判官がその実施が技術的に可能な場所のうち、適正な立ち会いの確保等の法的観点から判断を加えた最適の場所を決定するということになっております。したがって、傍受の実施は、通信傍受法のもとでの裁判官の法的判断として、電話交換局等通信事業者等の監視する場所において、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者等の立ち会いのもとに行うことになります。  電話の場合で言いますと、電話交換局の主配線盤、MDFと言っていますが、または試験制御装置において傍受を行うことが法的にも技術的にも最も適切でございまして、お尋ねのPTTを用いて捜査機関の施設等からNTT内の試験制御装置に接続して通信傍受を行うことは技術的に不可能である上に、適正な立ち会いの確保という法的な要請を満たすものでもないことから、そのような場所で傍受を行うことは許されない、つまり法的にも技術的にも許されないということになります。  なお、念のために……
  85. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は、今警察から、なぜ警察の中でPTTで盗聴ができないかということを聞いておりません。法律上なぜPTTが使えないかということをお聞きしたわけです。裁判所傍受令状のことなど聞いておりません。それは裁判官がどう判断するかですから。  法律上、PTTが使えないという明文上の根拠を言ってください。
  86. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この前もこの議論になったわけでございますけれども、法律上の根拠で言いますと、この法案の第六条、それから第十二条というところが今の結論を明確に示しているというふうに御理解いただきたいと思います。
  87. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 全く明確に示しておりません。  では、TWSはなぜできPTTはできないのか。私は今、場所のことを言っているのではありません。場所と勘違いして答弁をされていらっしゃいますが、PTTというものを使って傍受がなぜできないのか、TWSはなぜできるのか。私は場所のことを聞いているのではありません。
  88. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) NTTの施設の中、きょう御視察いただくということですが、故障のときに回線の状態を確認するための試験制御装置というのがございます。これは、それに付随している端末で操作するということになるわけですけれども、PTTという今御質問のものはポータブル試験端末ということでございますけれども、この端末を使用しますと電話網を利用した遠隔操作によってNTT内の試験制御装置に接続して操作することができる、これは技術上の問題。  ところが、アナログ回線の場合ですと、これは世耕委員からも御説明がございましたが、遠隔地からPTTを使用してアクセスする場合ですと、通話が開始された後に操作を行って通信の内容をモニターすることは可能でございますが、あらかじめ傍受しようと思ってその回線につないでおきますと、その当該回線の発着が不能になってしまうわけです。そういう意味で、技術的にこれはできない。それから、デジタルの場合でございますと、専用のPTTにはそもそもモニター機能が設定されておりませんので、これを用いて試験制御装置にアクセスして通話の内容をモニターすることはできない。  いずれにしても、技術的には不可能という結論が導かれるということでございます。
  89. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は技術のことを聞いているのではありません。実はこの審議を通じて非常にいら立つのは、法律的にどうかと聞いたときに技術的に答えられる。技術の問題と法律の問題を混同されているわけですよ。  もう一度お聞きします。  PTTは法律上、場所の問題ではありません、法律上、なぜPTTはできない、TWSはできるのか、端的に答えてください。
  90. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは、まず初めの回答のところで御説明したと思うんですが、法案第十二条というのは立ち会いの問題でございますから、常時立ち会いを要求しているということでございます。それから、第六条は裁判官が発付する令状の記載事項が中にいろいろ盛り込まれております。そこで、個別事案ごとにその令状を審査することになりますが、その場合でも適正な立ち会いの確保等の法的観点からも判断を加え、また個別事案ごとにその実施が技術的に可能かどうかということも判断を加えた上で最適な場所を決定するというのが第六条の考え方でございます。  それからいいますと、電話の場合にどこで傍受するかということはもう自明なことでございまして、NTTの施設内の、今御質問にありました箇所でデジタル電話の場合は傍受しますし、アナログ電話の場合は交換機の端末のところでこれを予定しているということは、六条と十二条をよくごらんいただいてその内容を自主的にお考えいただける、そこに法律的な根拠があるというふうに申し上げることができると思います。
  91. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 そういうことは条文上、全く書いていないんです。というのは、衆議院と参議院で傍受のやり方の説明が変わりました。それは、とりもなおさず条文にそんなことは書いてないからです。だから、衆議院説明と参議院の説明でどうやって傍受するかという方法が違うんです。  ですから、非常に不安を持つのは、法律がもし成立したときに、この法律は何でもできるようになっているわけです。限定など何も書いてありません。NTTの中でやるなんということも一切書いてありません。ですから、成立してどんなことが起きるかというのは私たちは法律上、国会として責任を持って歯どめをつけることができないんです。全然答弁になっていないですよ、松尾さん。もう一回言ってください。
  92. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 委員の御質問ですと、傍受の場所を例えば法律でNTTとかそういう事業者内というように個別に書いていくことが必要だと、そこまでおっしゃっていないと思うんですが、六条と十二条、これは基本的な条文ですが、そのほかに適正担保のためのいろいろな規定がございます。そうしたことをごらんいただくと、個別にどこの事業者という固有の指定の仕方を法律はしておりませんが、それはおのずと明らかでございます。それを法律に書いていないというようなことは、我々はそれは当たらないというふうに理解されると思います。法律の解釈の問題として当然にそれが考えられるということであれば、特別にそれが特定していようがしていまいがそのように理解されるということになると思うんです。
  93. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 それだとしたら、本当に法律は要らない、国会において全く歯どめができないと思います。  この間、電子メールについて転送をするとおっしゃいました。プロバイダーのところから別室に転送をして、そこで傍受するということをおっしゃいました。そうしたら同じこと、では、そこの電子メールを転送する部屋にPTT、ポータブル端末を置いてそこで盗聴する、それは可能ですか。
  94. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ポータブル端末、PTTというのは電子メールのときに使われるかどうかというのは、技術的には私はそれは不可能であろうと思います。
  95. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ごめんなさい、電話です。
  96. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 電話の場合でも、先ほど申し上げましたように少なくともEメールと違いまして傍受すると想定されるところがNTTなり電話の通信事業者ですから、それは通信事業者の施設内ということで行うこと以外はちょっと考えられないと思います。
  97. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 全く論理的でないと思います。電子メールの場合は転送できて、電話の場合はNTTの中でしかできないというふうになぜ条文上言えるんですか。電子メールは転送するということは可能なわけですし、この間の答弁ではっきり別のところで電子メールの転送を傍受するとおっしゃいました。では、そこにポータブル端末を置いて電話を盗聴するということも法律上は全く問題がないわけです。どうしてできないんですか。法律上なぜできないか言ってください。
  98. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 全く問題がないんじゃなくて、全く問題があるように私は思います。  先ほども御説明申し上げましたが、傍受の実施の場所というのは、個別事案ごとに裁判官がその実施が技術的に可能な場所のうち適正な立ち会いの確保等の法的観点からも判断を加えた最適な場所を決定する、これが六条でございます。つまり、電話の場合に通信事業者の施設とその機械を使って傍受できるのになぜほかの場所に持っていかなきゃいかぬのかというようなことになりますと、捜査官は全く説明ができないことになりまして、そんなことはこの法律が許しているとは到底思えないということでございます。
  99. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 答えになっていないんですね。電子メールの場合は転送ができる。電話の場合、どこで傍受するかというのは裁判官が恐らくこう判断するだろうと、令状の発付のときに。それをこの法律の解釈の中に盛り込んでいるのです。ですから、ここの立法の機関において限定がついているというふうにはこちらは思えないんですね。どこが違うんですか、電話の場合と電子メールの場合で。
  100. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 最適な場所の考え方でございますが、私は何度か御答弁申し上げたと思うんですが、プロバイダーというのは大中小いろいろございます。確かに、参考人意見等にもありました、非常に狭い事務所で我々が想定しているような傍受の人数、機材が入らないことも当然考えられます。そういった極めて限られた場合にはその近く、最適な場所というのがそこということにはならない、物理的にできないということであれば裁判官としても最適な場所を選ぶということだ、一番いいのは例えば隣の部屋があいていれば隣の部屋、直近の場所、そういうところを設定してそこで傍受する。そうなりますと、POPサーバーからその直近の場所に、傍受をするというふうに裁判所が適正な場所として設定した場所に転送するということは技術的には必要ですし、それをまたやった上で傍受をするということが論理必然的に出てくるということでございます。
  101. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 最適な場所ということは法律上何も書いてありません。ポータブル端末でいろいろ聞くとかそういうことはもう可能ですか。きちっと明快な答弁がいただけないんですね。つまり、きょうきちっと詰めて答弁がいただけるかと思ったんですが、同じことをしつこく聞くのは時間がもったいないと私も思いましたけれども、法律上そういうことが書いてないんですよ。  PTTでなぜ法律上できないかとか、そういうことが何も書いてない。にもかかわらず、できないとか、これはできるとか、例えば、この世耕さんのペーパーを使って申しわけないんですけれども、この委員会の中でこれはできる、これはできないというようなことをいろいろおっしゃいます。ただ、PTTができないという法律上の根拠について、私はきょうの時点で明確に答弁をいただいたというふうに思っておりません。  報道機関についてのこの間の御答弁もそうですけれども、条文には報道機関は除外されていない、しかし運用については考慮するというようなことをおっしゃるわけです。しかし、条文には一切そういうものはない。ですから、国会ではそういうものは歯どめにはならない。答弁いただいてもそれがどう運用されるか私たちは監視ができないわけです。そうすると、できないというふうにおっしゃるのは、政治的にできないと今おっしゃるだけで、法律が成立した暁に、結局裁判官が令状を出せばできてしまうということになってしまうというふうに思います。  ですから、まだちょっといろいろ聞きたいことはありますけれども、きちっと法律家として法律上できるのかできないのか明確に答弁いただかないと納得できないということを申し上げたいと思います。  それで、きょうNTTの視察に行きますけれども、交通・情報通信委員会では大手のプロバイダーの視察に行ったというふうに聞いております。そこでリアルタイムで傍受はできないということを視察で聞いたということも聞いております。この委員会におきましても、NTTだけではなく、非常に問題になっている携帯電話、そしてプロバイダー、大手でも小規模でも結構ですが、それについての視察が必要だと思いますが、委員長、いかがですか。
  102. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 初めてお聞きしましたので、後刻、理事会、理事懇で協議をいたします。
  103. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 橋本委員もおっしゃいましたけれども、この委員会で緒方事件のこと、裏金の問題、それから、まだ十分聞いておりませんけれども、公安から情報が特定の政治家に流れているという極秘文書も発表されました。さまざまなこと、警察がつかんだ情報、場合によってはNTTが持っている情報が政治家やいろんなところに流れる、外部に流れていっている、そういうことも非常に問題となっております。  そういう意味で警察の問題も非常に大きいわけですが、これについての連合審査も強く要求したいと思いますが、委員長、いかがですか。
  104. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 同様に、理事会、理事懇で協議をいたしたいと思います。
  105. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 終わります。
  106. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 組織犯罪法案審議もおととい公聴会が終わりまして、きょうで審議時間も五十時間近くになるようでございます。いよいよ大詰めでございまして、衆議院のいろいろ行き過ぎといいますか審議の欠陥を補うに十分な内容のある審議が続けられてきたと思います。  調べましたところ、参議院で公聴会を終えた法案が廃案もしくは継続になった例はないようでございます。これは非常に重い事実でございます。荒木委員長さん、御苦労さまでございますが、いよいよ有終の美をおさめるためにひとつよろしくお願いしたいと思います。  という状態でございますが、衆議院に所属するある政党の党首が、報道によりますれば、この通信傍受法案を中心にこれを廃案に追い込む、そのために不信任案とか問責決議案を出すという報道がなされております。この発言が事実かどうか確認していませんが、発言が事実だとすると、一体参議院の審議権というのは何かという憲法上の大きな問題にぶつかるわけでございます。  さはさりながら、きょうの審議を聞いてみますと、反体制派、反国家的な立場で自己主張を貫こうとすることも一つの見識でございますが、私がとやかく批判する立場じゃございませんが、千葉先生なんかは運用論、これが実施された場合の問題点ということを非常に真摯に質問されていて、私も大変勉強になりました。  そういう意味で、実は東京新聞が八月一日の日曜版で、「学校の教材に役立つ大図解」という特集をしていまして、これは非常にわかりやすい制度の解説をしております。本来は法務省もこういうPRというのをもっとやるべきだと思うんですが、その中で主要欧米諸国通信傍受制度の比較一覧表をつくりまして、日本のこの制度が決して乱暴なものじゃない、各国に比べて非常に謙虚なものであるということをちゃんと書いてくれております。  ただし、これは共同通信の世論調査ですが、これはやはり反対論が多いということも紹介されていまして、一つはやっぱり制度の本旨を丁寧に国民に理解してもらうことが大事だということになると思いますが、この大図解の一つのポイントとしてこういうことを書いておるんです。「野党、弁護士、学者などから指摘される問題点の多くは「捜査当局が傍受制度を誠実に運用するかどうか」という根本的な問いに行き着く。強力な武器を手にする以上、誠実な運用が絶対条件になる。さらに、司法による厳密なチェックが機能しなければならない。」。こういうのが一つのこの新聞の結論でございます。  「指摘される主な問題点」という、いろいろ議論になっている問題が紹介されておりますが、刑事局長、この指摘に対してどういう御決意ですか。
  107. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、これまでの議論の中でも運用する捜査機関に対する信頼の問題という点で、いろんなさまざまな角度から議論がありました。それに対しまして警察庁の方からは、警察庁長官を初め、厳正、適正に運用するということが繰り返し御発言がございました。確かに運用する機関の心構えの問題というものは大変大事でございます。一線の捜査官にまで徹底すると同時に、組織としてそうしたことに対応していくということも大事でございますし、また検察庁といたしましても同じような観点から、そうした運用する機関の適正運用についての姿勢とそれを現実的に徹底させていく努力というものが大事でございます。  また、検察庁または捜査機関全般を通じまして、日本捜査機関は、私がこんなことを言うとあれですが、世界でもトップクラスの信頼を集めている優秀な機関だと思っております。その期待に十分にこたえてやっていくだけの力とまた組織的な体制を持っているものというふうに理解しております。
  108. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 先般の当委員会でも警察庁の刑事局長が、乱用をなくし誠実な運用について警察庁を挙げてやりますということをここで宣告されておりまして、私は、両刑事局長、実務者の最高責任者の決意を非常に多として、ぜひその決意を実行していただきたいと思います。  そこで、率直に言いまして、国民の多くはこの通信傍受システムの必要性、組織犯罪防止三法の必要性というのは、私はほとんどの人が認めていると思います。ここで反対論の立場から質問される方の意識の中にもその必要性、存在を否定する人は少なかったと思います。  しかし、やはり我が国の国民性あるいは我が国の今までの捜査のシステムになかなかなじまない部分もありまして、運用に当たっての問題点も確かにあると思います。現に、携帯電話の傍受についてはこれからでございますし、それから通信業者だとかあるいはインターネット関係者とのさまざまな打ち合わせ、協議もこれからでございます。依然として乱用についての、多少過剰な部分もありますけれども、やっぱり誠実な不安も国民の中にあると思います。  そこで、大臣にその御決意といいますか、要望を申し上げたいのですが、このシステムがより国民に支持され理解され、そして運用を適切にし、乱用を防ぐために、このシステムが正常に起動し始めるのにまだ若干時間があると思いますが、当分の間でも結構ですが、私的な機関で結構ですが、大臣のもとに学識経験者あるいは実務責任者、そういった者を統合した組織をつくって、このシステムが決して国民の不安になるものではない、むしろ法治国として当然の国民の生命、財産を守る重要なシステムに育てていくのだ、こういうようなことについて法務大臣、最高責任者自身がそういう諮問機関的なもので意見を集約して、この制度のPRも兼ねてそういうことをお考えになってはいかがでございましょうか。
  109. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 国民の皆様にこの組織犯罪対策三法についてよく理解をしていただくということは、この制度をしっかりと運用し根づかせていく上で非常に大切なことだと思います。  それと同時に、今委員御指摘いただきました通信傍受制度のあり方やその運用の適正を確保するという観点から、大臣のもとにそういった御指摘の点を含めまして種々の方策を検討していくようなあり方というものを検討する必要があるというふうに今感じたところでございます。
  110. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 ぜひ国民の目から見えるように、法務省当局あるいは警察庁当局も一生懸命乱用の防止、運用の適正を図るための努力をしているんだということをぜひ国民の目に見える形のものをひとつつくっていただきたいと要望しておきます。  司法制度改革審議会の事務局長をお呼びしていますが、現在どういう活動の状況でございましょうか。
  111. 樋渡利秋

    説明員(樋渡利秋君) 司法制度改革審議会は、学識経験を有する十三名の委員により構成されておりまして、第一回会議は去る本年七月二十七日、午後零時三十分から同日午後三時ごろまでの間、内閣総理大臣官邸において開催されました。  第一回会議におきましては、冒頭、小渕総理大臣からのごあいさつをいただいた後、各委員から今後の抱負の披瀝を兼ねた自己紹介がありまして、その中で、国民の視点、利用者の立場からの改革が必要であるということ、改革の理念とともに司法の現状を踏まえた改革が必要であるということ、国民に開かれた議論、透明性のある議論が必要であることなどといった意見が述べられました。  その後、委員の互選によりまして、佐藤幸治委員が会長に選出され、さらに佐藤会長の指名により竹下守夫委員が会長代理に選任されました。これに続きまして、佐藤会長の進行により、本審議会の議事規則及び議事の公開の取り扱いに関する審議が行われました。  今後の審議の日程につきましては、九月以降十二月まで月二回のペースで会議が開催されることとされまして、当面、有識者等からのヒアリングが行われる予定でございます。  以上でございます。
  112. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 調査項目の選定とかということはこれからの作業だと思いますが、当然、凶悪な組織犯罪対応するシステムが現在のままでいいか、あるいは三法ができてもそのままでいいかという問題が残ると思いますので、これは要望でございますが、ぜひそういう観点からの調査項目の選択もお願いをしておきます。  それからもう一点、実は公聴会で中央大学の宮澤先生から非常に重要な指摘を受けたんです。現在の日本刑事法学のレベルは一九三〇年程度から向上していないという、これが日本社会の混迷といいますかの原因の一つだというふうに私は理解したんですが、宮澤先生の話によると、この通信傍受を中心とする組織三法案、これを刑事訴訟法上の一つの方法でなくする、これを断念することは、とりもなおさず国民のための国家の保護義務を怠ることであると、非常にこれが成立しない場合のことを危惧されております。  同時に、一体現在の我が国は法治国家であるかどうかということの警告をなされておりますが、そこで私は、司法制度改革審議会でいわゆる法曹人、司法関係者のあり方といいますか、教育といいますか、新システムを含めて当然それが議論されると思いますが、先ほど大森先生がなかなかいいことをおっしゃった。新渡戸稲造先生言葉を引用されて、日本人は大きいことと小さいことを混同させて間違えていると。やはり大所高所からの判断、特にこういうシステムをつくるときには重箱の底からつっついちゃ国の本当のシステムにならぬわけなんです。  弁護士の方が、司法試験を受けた方がたくさんいる前でこんなことを言っちゃいけませんけれども、従来のやはり法学教育といいますか司法試験制度というのは、どうもこの新渡戸稲造さんの言うとおりじゃなかったかという危惧を持つわけでございまして、ぜひ今後法曹人として、そうでない人もいますよ、大所高所から活動されている立派な方もいますが、どうもそういう人が参考人とか公述人の中を中心に見られておりますので、ぜひひとつ、この法曹人教育、法学教育の健全性ということについて十分司法制度審議会の根幹にするように、これは答弁は要りません、要望いたしまして、私の質問を終わります。
  113. 中村敦夫

    中村敦夫君 まず最初に、報道機関という問題についてお聞きしたいんですが、先日の千葉景子委員に対する松尾刑事局長の答弁の中で、報道機関の除外規定法律に盛り込まないその理由を述べられました。報道機関は種々多様であり、どの範囲をくくるのかという問題があると答えられています。一方で、その盗聴の運営については特殊な例外というものを挙げながら、報道機関を傍受対象とすることは許されないと明確に断言されました。  しかし、法案には報道機関ということに対する概念規定がないわけですから、具体的な運営のイメージが明確ではないので、ちょっと具体的な問題を含めてお聞きしたいんですが、松尾さんが報道機関と言っている場合には、その機関の本社とか支社とかの施設のことを言っているんですか。
  114. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 施設ではなくて、やはり報道の現に行っている総体といいますか、そういったところを考えております。
  115. 中村敦夫

    中村敦夫君 そうしますと、例えば新聞記者またはその報道機関と契約して働いているようなジャーナリストとか、そういう人たちの自宅だとか携帯電話だとか、これは報道機関には含まれないんですか。
  116. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 一般に報道という場合には、新聞、ラジオ、テレビ等のメディアを通じて社会の出来事を広く知らせることを目的とする機関をいうのだろうと思いますが、これにはやはり構成要素として当然記者という職種ももちろん入ります。  したがいまして、その記者の持っている携帯電話あるいは記者の自宅の電話等はいわゆる報道機関の通信手段というふうにとらえられるかと思います。
  117. 中村敦夫

    中村敦夫君 といいますことは、報道機関というのは場所ではなくて報道のための有機的な機能すべてを含めて、また働く人々の持っている個人的な機材ということも含むということを確認していいわけですね。  次には、報道機関は種々多様であると答えているわけですけれども、例えば新聞社の場合、一般的に言えば朝日、毎日、読売とか大きな新聞社がありますが、これは報道機関であろうというふうにはだれでもわかると思いますが、例えばスポーツ新聞というようなものは報道機関なんでしょうか。
  118. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 報道内容に差異はあるにしても、今御指摘のスポーツ新聞あるいは夕刊紙等が広くあるわけでございますが、これは一般的には報道機関という理解の中に入るものと考えております。
  119. 中村敦夫

    中村敦夫君 そういう販売目的とされているものもありますけれども、業界新聞というのもあります。こういうものは報道機関なのか。これはいろいろ難しいと思うんです。例えば総会屋の新聞とかということもありますが、これも一応は報道しているわけですから。これはどうなんでしょうか。
  120. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 私は、先ほど答弁の中で線引きが非常に難しいということを申し上げました。その非常に難しい領域に近づきつつあるというふうに思います。そこらあたりになりますと、例えば総会屋ということですと、これまで機関紙なりそういう業界紙を発行するということを一つの業務の中に取り入れているところも多いわけでございますが、いろいろ一方でまた問題もございます。その機関紙自体が非常に名目的なものである。機関紙の購読名下に金員を出してもらうための一つの手段にしかすぎない。社会の出来事を広く知らせることを目的とするというのが通常のメディア、報道機関ということですが、必ずしもそういった目的からいうと、新聞と銘打っておっても例えばその実体がないような場合にはなかなかこれを報道機関だというふうには言えない場合もまた多いのではないかと思っております。
  121. 中村敦夫

    中村敦夫君 その判断は大変難しいところにあるんです。それを当局の要するに裁量に任せるかどうかというところでは大分問題が起きると思うんです。  別の形の新聞についてお聞きしますけれども、例えば宗教団体に関係するような新聞、聖教新聞というのはこれは報道機関でしょうか。
  122. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的な新聞について線引きを示すというのは私の立場にないように思いますが、一般的には広く読者を持って社会の出来事を広く知らせるということを目的とするという、自主的にそういう内容、意味を持っている以上、それはやはり報道あるいはそれを担っている組織を報道機関というのに妨げはないのだろうと思っております。
  123. 中村敦夫

    中村敦夫君 私は具体的に例えばということだったんですが、いかがなんですか。
  124. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的に一々これは当たる、当たらないという判断をここですることは適当かどうかということでお答えをその点は控えさせていただきましたが、やはり一般論として言えば、それなりの発行部数を持ち、それなりの体制を整えて取材をし、また多岐にわたる事項について多数の者にそれを伝達するという機能を持っている以上は、報道している実体があれば、それは新聞と銘打ってあればここで予定している報道機関の新聞というふうに理解しても差し支えなかろうと思っています。
  125. 中村敦夫

    中村敦夫君 それで、新聞のことは聞きましたが、例えば報道機関としてかかわっている週刊誌、月刊誌、これはニュース専門のものもありますけれども、広い範囲で社会現象を扱っているわけです。これも報道機関とみなしていいんでしょうか。
  126. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 日刊か週刊かあるいは体裁、これは本質的な要素ではないように思います。私は、今申し上げましたような社会の出来事について広く取材をし、それを報道するというような実体を持っている以上はやはり報道機関という範疇には当然入ってくるものだと思っております。
  127. 中村敦夫

    中村敦夫君 確認ですけれども、週刊誌、月刊誌もその範疇に入るということですね。いや、うなずいていただけばいいんです。
  128. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そのとおりです。
  129. 中村敦夫

    中村敦夫君 テレビ、ラジオ局、これは報道ばかりでなく娯楽も扱っているわけですけれども、これも一応今までの話の流れからすると報道機関というふうにみなしていいわけですね。うなずいていただけば結構です。
  130. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そのとおりです。
  131. 中村敦夫

    中村敦夫君 有料衛星放送とかCATV放送局というのもその範疇に入りますね。
  132. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 一般的には入ると思います。
  133. 中村敦夫

    中村敦夫君 次に、盗聴法による犯罪捜査の国際協力という点について御質問します。  この法案趣旨の中で、国際的な犯罪に対処するために国際協力が必要で、そのための盗聴法を正当化するというふうになっていますけれども、国際的な協力のパートナーということについて、この前、私の質問に警察庁は、アメリカの場合はFBIが相手であるというふうなお答えをもらったわけですけれども、しかもそこから要求があれば傍受記録を渡すという答弁をされたわけですけれども、そんなことは法案のどこで記述されているんでしょうか。
  134. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 現行刑事訴訟法でも捜査機関の入手した証拠の使い方の問題というのは具体的な記述はございませんが、それを他の事件に捜査機関が捜査情報として使用し、あるいは証拠として使うということは当然の前提としてされております。傍受記録はまさに捜査機関の入手した捜査資料ということでございますので、その利用はこれまでの刑事訴訟法上の証拠の利用と異なることがないということでございます。  したがいまして、現在でもやっておりますが、国際的な問題でいいますと国際捜査共助法というのがございます。これは外国に出す場合はまた新しい枠がかかりますので、国際捜査共助法の要件の手続というものをクリアするという条件の中で、必要に応じて外国の捜査機関にも適用されることがあるというふうに御理解いただきたいと思います。
  135. 中村敦夫

    中村敦夫君 しかし、今おっしゃられた法律の中には、今まで盗聴法というものはなかったわけですから、まだ含まれていないはずなんです。それを無理やりそっちへ解釈で移しかえるということなんですか。
  136. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 新しい法律をつくる場合にそれで必要な手当てをその法律でするわけですが、既存の法律の概念あるいはその法律が適用される分野については既存のものが生きてくるということでございます。これは新しい法律をつくる場合の基本的な原則でございます。  したがいまして、むしろ逆に新しい法律に特別な規定を置きますと、一般法としての刑事訴訟法じゃなくてこの特別法が適用されるということにはなってきますので、そのような理解になるかと思います。
  137. 中村敦夫

    中村敦夫君 アメリカの盗聴法と日本のこの法案というものは、対象範囲を含めていろいろ違いがあるわけなんです。FBIと協力するという話になりますと、どこがどうかという具体的なマニュアルというのは今まで詰めているんですか。
  138. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 諸外国とこの法案が成立した後のものについて協議を始めているとか、あるいはこれまで協議をしたということはございません。
  139. 中村敦夫

    中村敦夫君 これはちょっと重大な話だと思うんです。  つまり、外国に対して日本情報が流れるという主権の問題というものがあるので、その問題を協議なしに国際協力をする、だから盗聴法が必要だというような、そんな乱暴な準備不足のままこんなことを始めていいんですか。これ大変大きな問題じゃないんですか。
  140. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 基本的な問題としまして、外国と捜査共助を行う場合には既に日本はしっかりとした法律がございます。国際捜査共助法というのがございまして、この中で共助ができる場合の厳格な要件を定めております。これは捜査機関の証拠一般にも適用があるわけでございますので、今回の通信傍受法が成立した場合に、それによって得られた傍受記録、つまり捜査資料でございますが、これと国際的な利用の問題はこの国際捜査共助法の枠内で行われるという意味で既に法制度整備されているというふうに御理解いただきたいと思います。
  141. 中村敦夫

    中村敦夫君 こちらの傍受記録をFBIに渡すということを言われましたが、FBIから逆に日本でこういう盗聴をしてくれという要請があった場合、法律が違いますから、この法案にない部分ということに関してもそれは受けるんですか。
  142. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これはまさに国際捜査共助法の世界の話でございますが、外国からの傍受ということの捜査共助の依頼がありますと、国際捜査共助法の枠内で、例えば双罰性だとか相互主義とかいろいろな要件がございます。そういうような規定がありまして、その要求された捜査資料が手元にありますとそれは渡すということになります。  ただ、傍受は、それぞれの国のシステムが違いますので、向こうの要請に基づいてこちらが傍受するというようなことは、この傍受法の範疇ですが、傍受法ではできていないということです。
  143. 中村敦夫

    中村敦夫君 日本ではこれ四分野に限定されているんです。アメリカにそれとは違うところで要求された場合にも、盗聴はこの法律ではできないけれども、別の規定でそれをやるということですか。それは矛盾があるんじゃないですか。
  144. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 国際捜査共助の関係でいいますと、外国の要請に基づいてこの共助法によって傍受をするということは、この法律は予定していないということです。
  145. 中村敦夫

    中村敦夫君 アメリカはFBIということがわかりましたが、こういう盗聴法をつくるに際して、国際協力するにはそれなりにいろいろな国々と多角的に詰めなきゃいけないと思うんですけれども、こういうことを詰めている国々があるんでしょうか。
  146. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それぞれの国が持っている通信傍受制度そのものはかなり違います。どういうふうに運用していくのか等につきましては、その国が独自に考えるべきことでございまして、外国と協議して決めるというようなことではございません。
  147. 中村敦夫

    中村敦夫君 そんなばかな話はないんじゃないですか。インターネットだって国際電話だって今ふんだんに使われていて、国際協力して国際的な犯罪を取り締まるといっているのに、その国その国で勝手にやるなんという、そんなばかげたことはないと思うんです。  ですから、実にあいまいですね。こういう次の時代、多分これは五十年以上縛ることになるような大きな法律です。そして、国際化というのはますます進んでいくという時点で、全くそういうところを考慮しないで勝手にこんなものをつくって後でいろいろ考えるというような話はないと思うんです。ですから、このあいまいさこそがこの法律が大欠陥であるということの特徴なんです。  これまでの審議がすべてそうなんです。今までもまだ審議は本当に半分ぐらいしか行っていないと私は認識しておりますけれども、大分大きな問題が持ち上がって未解決なんです。ちょっと挙げただけでも、組対法三法というのは一つの法案でくくられているということはおかしい。無理やり筋道つければ何とかそういう答えがあるかもしれないけれども、本質的にはこれ別々の性格を持っているもので、別個に法案として検討しなきゃいけないという要素があります。しかも、ほかの二法案についてはまだほとんど野党側では質問できていないという状況があります。  もう一つは、通信秘密を侵してはならないという憲法に対して例外を認めるだけの根拠に欠けているんです。公共の福祉といいますけれども、公共の福祉を担保するために人権というものが侵される方が大きいというようなことが大きな問題で残っているんです。  それから、麻薬、暴力団対策というところが随分強調されましたけれども、いわゆる盗聴法が既にある諸外国の実情を見ても、盗聴法によってそれが効力を発揮しているというようなデータ、客観的な根拠、論理的根拠が全くないんです。ただキャンペーンでこれが言われている。そしてまた、それじゃ麻薬に関して日本はどういう捜査をやっているのか、水際作戦はどうなのか、体制はどうなのかという明らかな説明がまだないわけです。それで盗聴法案が決め手だというのはかなり唐突だと。  そればかりか、個人のプライバシーとか産業の自由を侵すおそれが出てきた。特にインターネットやコンピューター通信に関して電話盗聴というのを基本にした法文をかぶせてしまうというのは無理だということは、今までもうはっきりとしてきました。また、その新しい産業である関連業者たちも、つくっている側が技術に対して全くわかっていない、これからどうなるんだか大変に不安を持っているということが非常に強い意見として出てきているわけです。  ですから、今まで盗聴法がある国はそれを応用しながらいろいろ苦労しているということはありますけれども、新しくこちらはつくるんですから、これは明確にこの二つのジャンルを分けた、そういう形の法案にするのがこれは筋であるというふうに考えます。  それから、乱用に対する不安が反対をしている人々の大きな根拠なんですけれども、これは緒方事件に関する警察の反省なしにこの法案を通すというのは、やっぱりこれは世論的に無理だという面があります。また、法務省、通産省、郵政省の詰め、外国同士の詰め、そして関係業者との詰めというものがどうしても十分でない。準備不足のまま、これだけ社会を縛るような法案を拙速に今国会で通してしまうということは私は無理がある、どうしてもこれは見送るべきだと思うんですけれども、法務大臣の見解をお伺いします。
  148. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 法務大臣、時間がもう五分過ぎようとしておりますので、簡潔にお願いします。
  149. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) この法案の必要性、重要性、緊急性については十分御議論いただいております。  ぜひ一刻も早く可決、成立していただきますよう、心からお願い申し上げます。
  150. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 三案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十一分散会