運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-07-01 第145回国会 参議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月一日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  六月三十日     辞任         補欠選任      長谷川道郎君     阿南 一成君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿南 一成君                 阿部 正俊君                 井上  裕君                 世耕 弘成君                 竹山  裕君                 仲道 俊哉君                 海野  徹君                 小川 敏夫君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    衆議院議員        修正案提出者   笹川  堯君        修正案提出者   山本 有二君        修正案提出者   上田  勇君        修正案提出者   漆原 良夫君        修正案提出者   達増 拓也君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        内閣法制局第二        部長       宮崎 礼壹君        警察庁長官    関口 祐弘君        警察庁生活安全        局長       小林 奉文君        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        国税庁課税部長  森田 好則君        郵政省郵務局長  濱田 弘二君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   浜野  惺君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関  する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百  四十五回国会衆議院送付) ○犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第  百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆  議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十  二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送  付)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨六月三十日、長谷川道郎君が委員を辞任され、その補欠として阿南一成君が選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 角田義一

    角田義一君 おはようございます。  去る六月二十四日に、皆さん御案内だと思いますが、日比谷の野音に約八千人の市民が集まった。市民団体主催で、この通信傍受法、世間様では盗聴法と言っておりますが、これに反対をする大集会が開かれた。そこに私ども菅代表出席をし、さらには共産党の不破委員長、社民党の土井党首、三党の党首が期せずしてそこに並んでこの法案危険性を強く訴えた。  こういうことは近来には考えられない、私はある意味ではまことに異例のことだと思いますが、それだけにこの法案に対して我々野党、そしてまた多くの市民が非常に状況を憂えているということだと思うんです。この時代に市民が八千人も集まるというようなことは余り今までなかったことでありまして、こういう国会外における国民の不安なり反対運動なりというようなものをやはり審議する法務大臣としては心にとめておかなくてはいけないんじゃないか、そんなものは無視すればいいんだということに私はならないと思うんです。  そういうものにも率直に耳を傾ける、なぜそういう事態が起きるのか、こういう立場に立って、立場を変えながらも、そこに配慮もしながら審議を進めていく、それがやはり法務大臣政治家の務めじゃないかというふうに私は思うのでございますが、まず大臣のお考えを承りたい。
  5. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) この法律案につきまして、今委員がおっしゃいましたように、種々のお立場から御議論があることは十分承知いたしております。  しかし、犯罪捜査のための通信傍受の導入というのは、通信秘密重要性に十分に配慮した上で、組織的犯罪の全容を把握し、首謀者を含めて犯人を検挙し、事案の真相を解明するなど、これに適切に対応していくために不可欠な法整備を行おうとするものでございます。したがいまして、できる限り早期に、大方の御理解を得て、この法整備を実現させていただきたいとお願いしたいところでございます。
  6. 角田義一

    角田義一君 ちょっと法務大臣、それでは通り一遍の御答弁のように私は思います。やはり、反対者がなぜ反対をしているのかというところに心を砕くという姿勢が基本的になければいけないんじゃないかと私は思うんですが、どうですか。
  7. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま御答弁申し上げましたように、この必要性重要性、そしてまた一番大事な通信秘密を最大限に尊重していくというところを十分御理解いただくように必要な審議をお願いしたいと思っております。
  8. 角田義一

    角田義一君 理事会のお許しをいただきまして、先生方のお手元と政府側にもお配りをいたしておりますが、ちょっと目を通してほしいのですけれども、「盗聴法案犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案)に反対する法学者声明」というのがございます。  これはことしの六月二十八日に発せられたものでありますが、世話人にはなかなかそうそうたる学者先生が並んでおられますし、この法学者声明、有志ということで四百五十名ということでございます。  ざっと目を通していただきますと、これは全国の法学関係のすべての大学からしかるべき先生方が憂えてこの声明に賛同されているということであります。法学者が四百五十名、こういう形で連署して声明を出す。承りますと、委員長さんのところにも要請があったというふうに聞いておりますが、それはさておきまして、この法学者声明は三つのことを言っておると思います。  余り長いものじゃありませんから、ちょっと読みますけれども、「現在参議院で審議中の盗聴法案は、」「憲法上の本質的疑念を払拭するものとはなっていない。それどころか、この盗聴法案は、令状記載犯罪との関連性のない通信盗聴する予備的盗聴別件盗聴、さらには犯罪発生前の事前盗聴を正面から容認することによって、盗聴が本質的に抱える対象通信の無限定性をいっそう拡大している。」、これが一つ。  それから、この「法案は、憲法に違反する疑いの極めて強い」、それから「盗聴対象の無限定性の故に、広く国民プライバシー通信秘密侵害し、表現の自由を萎縮させる効果をもたらす。衆議院審議の過程で、対象犯罪を減らし、手続的規制を若干強めるなどの修正が行われたが、これらは弥縫策的な部分的修正にすぎず、盗聴法案違憲性危険性をいささかも解消するものではない。」、これが二番目。  さらに、「日本が諸外国とは異なり、これまで盗聴を認めてはこなかったのは、」、ここからが大事です、「戦前・戦中における捜査官憲による深刻な基本的人権侵害に対する深い反省の上に立つものであり、極めて賢明な判断であった。通信手段が高度に発展し市民生活に広く根ざしている現在、この判断はいっそう尊重されなければならない。もし盗聴法案が成立することになれば、捜査実務および令状実務の現状からみて深刻な人権侵害が生ずることは必至であり、市民社会に深刻な影響を与えることになるからである。 以上の見地から、私たち法学者は、このような盗聴法案に対して強い反対の意思を表明する。」。  こういうふうに、三点に要約して法学者皆さん反対声明を出しているわけです。  私は、この法学者の方々の基本的な理念、これはやはりそれなりのきちっとした立派な理由があるだろう、合理的な理由があるだろうと思っているんですが、まず大臣、この法学者声明、今ちょっと私は肝心なところだけ読みましたけれども、率直な御感想をお聞かせいただきたいと思います。
  9. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 最近の新聞で報道されている世論調査の結果等によりますと、本法律案反対世論が特に多いというふうには私は認識しておりません。また、反対の意見の中で犯罪関係のない一般市民通信傍受されるおそれがあるとの理由を挙げる者が多数を占めるなど、この制度が十分に理解されていない面があるものと考えられます。この点について理解が得られればさらに多くの世論の賛成を得られるものではないか、このように考えております。
  10. 角田義一

    角田義一君 大臣、この声明は三点にわたって問題点指摘しているんですね。例えば三番です。戦前のいわば官憲人権抑圧というようなことからして非常に問題があるんじゃないか。そして、こういういわば盗聴制度というふうなことがもし認められたとすると、市民の自由な対話通信、こういうものが阻害され、いつ自分たちの平穏な対話というものが侵害されるのか、非常に閉塞した、極端なことをちょっと言いますと非常に息苦しい、もっと強いことを表現すれば窒息しそうな社会になるのではないのかという疑問を持つ人がいても、それを私は非難することはできないと思うんです。  そういうことがない、そんなことは絶対ないんだ、あり得ないんだというふうに大臣はここで言い切れますか。どうなんですか。そこが私は大きな問題だと思うんですよ。
  11. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 憲法の第二十一条の二項には、通信秘密保障しております。これについては最大限尊重すべきものであるということは申し上げるまでもございません。しかし、憲法保障する各種基本的人権につきましては、それぞれに関する条文制限可能性を明示していると否とにかかわらず、憲法第十二条、第十三条の規定からいたしましてその乱用が禁止され公共福祉制限のもとに立つものであり、絶対無制限のものではないというふうに最高裁判例においても明らかにしているところでございます。  したがいまして、通信秘密保障犯罪捜査という公共福祉要請に基づき必要最小限の範囲でその制限が許されるべきものと考えております。  今、委員指摘のような過去の歴史を踏まえて、このようなことを十分配慮しながら、尊重しながら取り組んでいかなければならないと思っております。
  12. 角田義一

    角田義一君 大臣の概括的な答弁があったけれども実務を担当する刑事局長どうですか。もうちょっと詳しく法律的なものも含めて答弁を。三点にわたって書いてあるから。
  13. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず憲法の問題でございますが、これはただいま大臣からもお答えいたしましたが、種々の観点から検討いたしましても憲法保障する通信秘密侵害するものではないというふうに考えております。  それから、市民生活に対して深刻な影響を与えないか、あるいは不安を与えないかということでございますが、今回の組織犯罪対策三法、通信傍受も含めまして、基本的には現在の日本の治安を守り、ひいては市民生活を守るために必要最低限度刑事訴訟法上の改正をして、新しい捜査手法を導入するというものでございますので、市民生活を抑圧するものではないということをまず御理解いただきたいと思います。  それから、確かにいろいろな御議論がありまして、例えば一般市民電話傍受されるのではないかというような不安感が一部にあるということはいろんな議論を拝聴する中で承知しているところでございますが、ただいま大臣からも申し上げましたとおり、この法案を正確に御理解いただければそうした不安は払拭されるものと我々は確信している次第でございます。
  14. 角田義一

    角田義一君 確かに憲法で言っている基本的人権というものは法文上は一般的に公共福祉によって制約をされるということになっていますが、しかし、基本的人権の中でやっぱり差があると思うんです。  条文のつくりを見れば、通信秘密のところについては公共福祉というような文章は入っていない。公共福祉という文章が入っている条文もあるし、公共福祉云々という制約がない条文もあるということを考えますと、通信秘密というのは憲法上はやや絶対に近い保障を私は予定しているだろうと思います。そして、そのごく例外は、御承知のとおり犯罪による郵便物の差し押さえだとか、あるいはこれはいろいろ議論があるんだけれども受刑者が発する信書についての検閲がある。これらももうちょっと緩やかにした方がいいんじゃないかという議論もありますけれども、本当にごく限られたものしかこの通信秘密制約していないわけで、圧倒的にはこれは自由を保障する、こういう形で私は憲法は予定していると思うんです。  二十一条、表現自由自体には公共福祉云々ということはないということの意味、私はこの憲法の体裁というようなものも非常に大事だと思うんですよ、憲法解釈する上で。どう思いますか。
  15. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ただいま委員指摘のとおり、憲法の明文の規定はまさに先生おっしゃるとおりでございます。  ただ、その点について過去にもそうした根拠を挙げましてそれぞれの基本的人権保障の質的な差異を議論した論議も当然ございました。ただ、それにつきましては最高裁判所判例によりましても、憲法保障する各種基本的人権は、それぞれに関する条文制限可能性を明示していると否とにかかわりなく、憲法第十二条、第十三条の規定からしてその乱用が禁止され公共福祉制限のもとに立つものであって、絶対無制限のものではないということを最高裁判例も言っておりまして、そうしたことからも、制限の明示の有無等かかわりなく、やはり無制限なものではなく一定の制約を受けるものであるということは確定した判例であると我々は理解している次第でございます。
  16. 角田義一

    角田義一君 今あなたが言う確定した判例にしろ、具体的にこの法案の中でどういう一つ制限制約、調和というものが図られるかということがまさにこの審議の場であるわけであります。それを我々とすればここが問題じゃないかというようなことを順次私どもの同僚が指摘をしてまいると思います。  そこで、若干具体論にこれから入ってまいりますけれども、恐縮ですが、この通信傍受法五条二項をちょっと読んでみていただいて御説明をいただきたいと思うんです。
  17. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 五条の二項だけでよろしゅうございますか。  この第五条は、傍受令状発付に関する規定でございます。その第二項ですが、「裁判官は、傍受令状を発する場合において、傍受実施」、これは括弧書きがあります、「(通信傍受をすること及び通信手段について直ちに傍受をすることができる状態通信状況を監視することをいう。以下同じ。)」とあります。「傍受実施に関し、適当と認める条件を付することができる。」、こういう規定になっております。
  18. 角田義一

    角田義一君 そこで、私が非常に気になっておりますのは、裁判官傍受令状を発する場合に、あなた方は令状であるから心配ない心配ないとおっしゃるんだから申し上げますが、「裁判官は、傍受令状を発する場合において、傍受実施に関し、」と書いてある。その実施に関しての中が問題なんですね。この中に書いてある文章というのは具体的に何を指すんですか。どういうことを言っているんですか。
  19. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御質問の御趣旨を必ずしも理解していないかもしれませんが、これは、裁判官傍受令状を発する場合におきまして、その傍受令状の申請を具体的に詳細に検討するということになります。  それで、例えば傍受場所ということでございますと、それを傍受するのに最適な場所ということでその場所を指定する。それから、請求する方ももちろん、例えば通常の電話でありますとNTTの交換設備がある場所という形で特定して請求をするということになります。そういった一番適当な場所でない請求が来た場合には、場所を変えさせるなりなんなりということが裁判官判断で当然あるわけでございます。そうしたことをこの条文では「適当と認める条件」という中に含ましめております。  そのほか、何らかの形で裁判官条件を付した方がいいなということでございますれば、それはそういう条件が付される。具体例を申し上げますと、傍受令状請求につきまして、例えば二十四時間傍受をしたいということを仮に請求書の中で書いてあったとしましても、裁判官がこれは時間を制限した方がいいというふうに判断される場合には、例えば午後一時から夜の十時とか、適当なそういう時間的な条件裁判官判断によって付することができるということで、それを総称して「適当と認める条件」というふうに記載しているということでございます。
  20. 角田義一

    角田義一君 わかりました。  ちょっと私の質問が悪かったのかもしれない。  私が聞きたいのは、「傍受実施」で括弧してこうなっているでしょう。この括弧内が問題なのです。「傍受実施」とは「通信傍受をすること」、これはだれが見てもわかる。通信傍受をする。  次に、「通信手段について直ちに傍受をすることができる状態通信状況を監視することをいう。」というんです。この「通信状況を監視する」というのは一体どういう意味なんですか。
  21. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 括弧内のことについて御説明申し上げますと、「傍受実施」というのは「通信傍受をすること及び通信手段について直ちに傍受をすることができる状態通信状況を監視することをいう。」ということですが、このうち「通信傍受」については、第二条二項に定義規定を設けております。  二条の二項をごらんいただきますと、「この法律において「傍受」とは、現に行われている他人間の通信について、その内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意も得ないで、これを受けることをいう。」と、この定義はこのとおりでございます。  さらに、「通信手段について直ちに傍受をすることができる状態通信状況を監視すること」、こういう表現がございますが、これは対象とする特定通信手段を用いて通信が行われた場合には、直ちに傍受をすることができるよう必要な機器準備等をした上で通信が行われるか否かを見守ることを言います。  具体的には、電話でありますと、例えば交換機のところで対象とする特定の回線に傍受に必要な機器を接続し、発信あるいは着信があったら直ちに傍受することができる状態で通話が行われるか否かを見守ることというふうに理解されておるところでございます。
  22. 角田義一

    角田義一君 いろいろこれも解釈する人がいて、これは国会ですから、国会における政府側答弁というのはうんと重いと思う。  この「通信状況を監視する」ということは、いいですか、通信の中身を聞く、聞くこともできる。したがって、この条文によって、要するに犯罪関係のない、さらにさっき言った学者が言っている無限定性ですよ、無限定通信傍受されるのではないかという疑問を持つ人がたくさんいるんですよ。いいとか悪いとかじゃないですよ、現にそういう解釈をしている学者もいるんだから。  だから、公権力の解釈としてここのところの「通信状況を監視」という意味はどういうものであるかという確定した解釈をしないと、先ほど学者さんが言っている、まさにこの中に何でも聞けるのではないか、まさに無限定性があるのではないか、こういうことを疑問に持つわけだから、これは局長ははっきり答えなきゃいかぬのです。どうですか。
  23. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通信傍受に関する今回の法案でございますが、これが具体的にどういう状況でどういった通信についてどういう条件のもとで傍受するかということは、この法案全体をまず御理解していただく中で十分に特定されていると私は思います。  先生指摘の、この条文のこの文言そのものということになりますと、抽象的な表現等でもございますのでいろいろな解釈が生まれる余地がありますが、そのほかの条文等を総合的にお考えいただきますと、今申し上げたような理解であるということは明白であるというふうに考えております。
  24. 角田義一

    角田義一君 じゃ、その今言ったことを、くどいようだけれどももう一遍言ってください。これ、国会であなたが答弁することはうんと大事なことだから、もう一遍ちょっと言ってみてください。
  25. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほど五条の第二項の「傍受実施」というところの括弧書きのところを読ませていただきました。そこの中で、先生指摘の「通信状況を監視することをいう。」ということは、先ほど御説明したとおりの状況です。それをもって直ちに、通信全体を無限定傍受するという可能性を秘めている、あるいはそういうふうに理解されるんだという理解は、私は間違っているというふうに申し上げた次第でございます。
  26. 角田義一

    角田義一君 そうすると、これははっきりそれはあり得ないんだ、ないんだというふうに聞いてよろしいですな。これは何度も念を押すんですよ、大事なことだから。もう一遍。
  27. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通信一般を無限定傍受することをこの第五条の第二項で認めているということではございません。それは明らかでございます。
  28. 角田義一

    角田義一君 それから、その中で今度は、「適当と認める条件を付することができる。」と書いてありますね、裁判官が。そうすると、先ほどあなた、二十四時間、それは無理だよ、二十四時間ぶっ続けにやっちゃいけないよと。今日までの幾つかの判例は、御承知のとおり、時間についてはかなり厳しく二時間とか三時間とかやっています。  それからもう一つ切断権を与えています、立会人に。いいですか、この条文は、裁判官令状を発するときに、今までの判例と同じように切断権を与えるということを予想しているんですか。そういうふうに解釈してはいけないんですか。裁判官によっては立会人切断権を与えるんだ、そういう条件をつけても構わない、こういうふうに読んでよろしいかどうか。
  29. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず第一に、条件を付することができるということの条件でございますが、先ほど例として挙げました、例えば時間の制限と考えられるところでございます。  ただいま御質問の第二点でございますが、切断権を付与することはこの条件として想定されているのかということでございますが、結論は、立会人傍受令状に従って行われているかどうかという確認等の役割を与えるにとどめまして、立会人切断権通信内容傍受を認める条件は付することができないということでございます。  これは、本法案におきましては立会人通信内容を聞くことは予定しておりません。すなわち、捜査のために傍受している通信内容を第三者である立会人が聞くこと自体プライバシー侵害に当たるものであるということを考慮いたしまして、本法案においては、傍受実施適正確保のための処置としては、捜査官傍受した通信はすべて記録する、その上で立会人が封印をしまして裁判官が保管するということにしまして、捜査機関がどのように通信傍受実施したかということを後から確実にチェックできるという仕組みを定める一方、立会人には傍受令状に従って行われているかどうかの確認等の役割を与えるにとどめまして、切断権通信内容傍受を認める条件を付することができないというふうにしております。
  30. 角田義一

    角田義一君 それはおかしいじゃないか。裁判官は三権分立で独立しているんだから、それに対して法の解釈国会がやったって、それは裁判は裁判でしょう、国会のあれに従属させられないでしょう。もし、裁判官が仮に今までの判例に従って切断権を与えるべきだと、それは苦労してやってきたんだから、今まで判例が積み重なってきたんだから、知恵でやってきたわけですよ。やっぱり切断権を与えると困るということになるんですか。与えてもらっちゃ困ると、そこまで裁判官制約するの。
  31. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生のお考えもある意味ではもっともなところがございますが、その前に、裁判官といえども法律に従って通信傍受令状についての条件等を付することが当然その義務としてございます。したがって、この法律では今申し上げましたように立会人には切断権あるいは通信内容そのものを傍受するということまでは認めていないわけでございます。  それは、この法律を組み立てる際に、先ほども申し上げましたが、立会人につきましては、例えばその内容を全部傍受することが適当かどうか、あるいは切断権を与えることが適当かどうか、いろいろな形で議論をいたしました。その結論として、立会人にはそこまで認めるべきではないということになりまして、法律でそのような仕組みをつくっているわけでございます。  したがって、そうした法律の仕組みに反して裁判官切断権を与え、あるいは内容傍受するという権限まで立会人条件として付することはできないということでございます。
  32. 角田義一

    角田義一君 まず、二つ私は問題にしたいんです。  立法をする際に、現場で苦労してきた一つ判例、慣行、現場の裁判官の苦労、そういうものを無視して、そんなものはほうり投げて立法をやってしまう。それも私に言わせれば、あなた方は切断権なんかない方がいいと言っているかもしれないけれども切断権があった方がいいと思っている人もいるわけだし、そして切断権を与えるべきだと思っている人もいるし、現に裁判官は今まで与えてきたわけです。それを全面的に排除するということが立法作業として果たして妥当なのかどうかという評価を受けますよということが一つ。  それともう一つは、「適当と認める条件」と書いてあるが、ただし切断権は認めない、こうしなきゃ裁判官の中には私は出す裁判官が出ると思う。もっと厳格に解釈すればいいんだから、人権を守るためには。だったら、適当な条件というのは時間だけで切断権というのは一切認めない、これはちゃんと括弧して、ただし切断権は認めないとするのが丁寧というか、私は反対だけれども、どうなんですか、そこまでやらなかったら、あなた、これは解釈を押しつけることになるじゃないですか。
  33. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほども御説明申し上げましたが、この法案通信傍受に関して立会人にいかなることをしていただくのか、いかなる権限を認めるかということは、法制審議会等の論議、また立案の過程でのさまざまな論議でも確かに重要なポイントでございました。  ただ、先生指摘のように、確かに検証令状通信傍受を認めたケースが五件ございます。その中では、裁判所の付しました条件立会人にも傍受させる、それから立会人切断権を与える、五件のうち三例でございますが、切断権も与えているということでございました。  そうした判例あるいは実例の積み重ねということも確かに重要でございます。それも当然論議のときには十分慎重に検討されました。ただ一方で、そうした検証による通信傍受ということにつきましても、その権利保護の規定が明文でございませんので、この検証令状通信傍受を広げていくのは果たしていかがなものかというまた強い批判も一方でございました。  そうしたことから、通信傍受というある意味では憲法規定する非常に重要な国民の権利を制約する事項につきましては、法律で明文を置くべきだというような論議もその当時からあったわけでございます。  先生指摘のように、傍受立会人にも認めるべきだという議論も当然あったわけでございますが、先ほどから申し述べておりますように、この通信傍受の適正執行の担保というのは、この法案全体の中をごらんいただきますとさまざまな工夫がなされておりまして、立会人傍受できないとその適正が担保されないということには直ちにならないわけでございます。  また、傍受することによるマイナスは、先ほども申し上げました通信当事者のむしろプライバシー侵害にもなるのではないかということとか、またもう一点新しく申し上げますと、例えば立会人傍受をした上で切断する決断をしてもらわなきゃいかぬことになりますが、そのような重い責任を果たすのは妥当かどうか、あるいはその決断がそもそもできるのかどうかという問題が十分論議されたことでございます。  通信傍受捜査の非常に重要な段階、ある程度の捜査が積み上がりまして、核心の部分に近づいた段階でなされるものでございます。したがって、かかってきた通話が犯罪に直接関係するのかしないのかというのは、それまでの長い積み重ねの捜査状況を全部把握しないとなかなか決断できるものではございません。  したがって、それに従事してきた捜査官がそれを判断するということが適当だろう、立会人にそのような重い負担を負わせることは現実に大き過ぎますし、また切るか切らないかの決断もなかなかしにくいということもありますので、立会人には傍受をさせない、切断権を与えない、そのほかの方法で適正の担保をしていくということが適当であろうということでこの法案全体が組み立てられている点をぜひ御理解いただきたいと思っています。
  34. 角田義一

    角田義一君 局長、これだけ私は議論をしているわけにはいかないので、今いろいろ問題点が出ましたから、後また同僚議員がこれを尋ねられていくと思います。これは非常に大きな問題なんです。  そこで、次に聞きますが、法律の十一条の協力義務の趣旨を説明してくれませんか。
  35. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 第十一条、これは通信事業者等の協力義務の規定でございます。条文そのものを読み上げますと、「検察官又は司法警察員は、通信事業者等に対して、傍受実施に関し、傍受のための機器の接続その他の必要な協力を求めることができる。この場合においては、通信事業者等は、正当な理由がないのに、これを拒んではならない。」、こういう規定でございます。
  36. 角田義一

    角田義一君 まず最初に、ちょっと細かくて申しわけありませんが、この「通信事業者」の「者」、これは個人、法人両方含むのでしょうか。
  37. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 両方含みます。
  38. 角田義一

    角田義一君 細かいことで申しわけないけれども、「通信事業者等」の「等」というのは何ですか。具体的にはどんなものを予定しているのか。
  39. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、例えばホテルをお考えいただきたいと思います。  例えば、あるホテルで外線から入ってきますと、大きな交換施設に入ります。それから個々の部屋の内線につながっていくわけでございますが、その場合にホテル自体は通信事業者と言えませんので、しかし、これを外線のところで傍受いたしますとホテルにかかってくる電話全部を傍受する形になりますので、これは適当でない。やはり令状請求した何号室の電話ということで特定しますので、その電話傍受できるようにしなければいけません。  そうなりますと、ホテルの持っております交換施設の部屋に行く端子の方ですね、外線が入る方ではなくて部屋に行く方、つまり交換機器の部屋に行く方に傍受機器を備えつけまして、その部屋に行く電話だけを傍受するということが適当でございます。その場合には、ホテルは通信事業者ではございませんので、「等」で読んでいただくということになります。
  40. 角田義一

    角田義一君 そうすると、民間のホテル業者というようなものもこれは入るんだ、こういうふうに理解させてもらいました上で、そこで今度は「通信事業者」の方です。  「等」じゃない方、「等」は今言ったホテルだからわかりますけれども通信事業者は御承知のとおり通信事業法三条、四条という形で守秘義務が課せられていると思うんです。今度は、これによって協力しなきゃならぬ義務があるわけです。これは義務でしょう。そうすると、電気通信事業法三条、四条の守秘義務というのは、いわば憲法通信秘密からストレートに来ている義務だと私は思うんです。憲法上の根拠のある義務です。  ところが、その義務と今度協力しなきゃならぬ義務とのいわば講学上言うところの義務の衝突ということが起こるんじゃないですか、起こらないですか、どうですか。
  41. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生指摘のとおり、そういう議論がございます。  というのは、先ほど検証令状で五例あると申し上げましたが、その際に傍受実施する側がNTTの職員に立ち会いをお願いしたんですが、協力する義務はないということで、この場合は断られております。  そのときのNTT側の理由は、法律に協力義務の明文がないということがその根拠でございました。したがって、今回は、そうしたこともありますので、通信事業者等の協力義務をこの第十一条に明文で置いたということでございます。  確かに先生のおっしゃるように、通信秘密については憲法上の規定がございますが、それにある意味では制約を加える法律でございます。したがって、通信事業者等に協力をいただくのもやはり法律に明文の協力義務を置いた方がよかろうということでございまして、今回この十一条の規定になったという次第でございます。
  42. 角田義一

    角田義一君 そうすると、電気通信事業法三条、四条は、憲法上の規定があって、そのまますとんとおりてくるわけです。おりて素直に読める。しかし、今度は逆に、通信侵害するとは言わないが、傍受に協力するわけだから、憲法上で保障されている、自分の持っている通信を守らなきゃならぬ義務を排除しなきゃならぬ。排除するということを要求する憲法上の根拠は一体明文として何があるのかという問題が出てくるんです。どうですか。
  43. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは先生の冒頭の御質問にまた返る話になろうかと思います。  憲法は、確かに通信秘密については、それを制約し得る明文の規定を置いておるわけではございませんが、先ほど申し上げました最高裁判例によりましても、明文の規定の有無にかかわらず、公共福祉等の一定の制約を受けるということ、通信秘密保障といっても絶対無制限なものではないということを言っております。  その制約につきましては、そういう重要な憲法上の権利でございますので、やはり法律において明文を置くということが必要だと私も思いますが、それがこの第十一条であるというふうに御理解いただきたいと思っております。
  44. 角田義一

    角田義一君 これは、立法の技術的な問題だと思うんです。  それでは、電気通信事業法の三条とか四条とかという規定はそのまま残すんですか。それとも、それに何らかの修正をするとか、手を加えるとかいうことになるんですか、どうなんですか。
  45. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生の御指摘通信事業法等の規定はそのままでございます。  今回は通信傍受という、ある意味では極めて限定的、抑制的に通信傍受するシステムをこの法律でつくり上げるわけでございますので、この法律に従って通信事業者等には第十一条に言う協力義務を課したというふうに御理解いただきたいと思います。
  46. 角田義一

    角田義一君 そうしますと、通信事業法三条、四条は生きているということなんだ、生かしておく。片方では新たな義務規定を置く。そうすると、通信事業者はどちらの義務を自分は履行すべきなのか。あくまでも通信秘密を守らなくちゃならない、これは憲法でそうなっているから守らなきゃならぬ。しかし、片方でこういう法律ができた。こっちの義務もしなくちゃいけないのか。その義務の選択を通信事業者に迫るということになりますな。
  47. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通信事業者に対していかなる義務を負わせるかということでございますが、通信事業者について既存の法律によって固有のいろいろな規定があることはもちろんでございますが、今回はそれに加えまして通信事業者に協力義務を課するということでございますから、既存の法律のあり方等を前提といたしましてなおかつ十一条を置いたということでございます。  通信事業者等にはそういう御理解をいただけるものと我々は考えておる次第でございます。
  48. 角田義一

    角田義一君 それでは、さらに突っ込んで聞きます。  この「者」には個人それから法人も含まれると言いましたけれども、具体的に聞きますが、NTTが会社として、法人としてこの義務を負担するのか、AならA、BならBという個々の職員までがこの義務を負担するのかどうか。これは大問題だ、どうですか。
  49. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 実際の問題となりますと、例えばNTTでありますと、傍受そのものは交換設備のある支店というんでしょうか、支所というんでしょうか、そういうところで行うケースが多かろうと思います。その際には、そこへ行って令状を示しまして協力をお願いするということでございます。  したがって、NTTは、一つの組織として考えますと、どの段階にそういう許可の権限がおりてきているかという問題も内部的にはいろいろあろうかと思いますが、対外的にはNTTとしてこれに協力するという形でございますので、NTT総体として協力いただいたということにはなろうかと思います。  ただ、現実にどこまでそういう報告を上げ、どこの了承をとるかというのはその法人内部の問題でございますので、それはさまざまな形があろうかと思っております。
  50. 角田義一

    角田義一君 法人内部の問題といったって、世の中は力関係というものがあるんだ。会社の業務命令によって立ち会いなさいということになってくるでしょう、恐らく。  Aという人が、私は嫌だ、私はNTTの職員として、どうしても憲法保障されている守秘義務と電気通信事業法の義務も大事にしたいから嫌だと断るということだってあり得ると思う。その場合に、会社とすれば、あなたは業務命令に従わないんでしょう、しかるべき措置をとるということだって、事柄の展開としては十分あり得ることなんです。そんなことは絶対ない、みんなはいはいと従うと思っているのは大間違いだ。  そうすると、懲戒というような一つのペナルティーを科しながらこの義務を履行させていくということになると、これはまた憲法上の大きな問題が出てくるんじゃないですか、どうですか。
  51. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 組織の命ずる業務命令というような形の一つ制約と個人の心情がぶつかることは、このケースに限らずさまざまな形で考えられるところでございます。それはあくまでその組織の内部の問題でございます。  この法案は、通信事業者にそういう協力義務を課しているということでございまして、その構成する内部の者がどんなことを考え、どんな姿勢で臨むのかというところまではさまざまでございまして、確かに先生の御指摘のように個人的には心情として私はこういう傍受には立ち会いたくないという職員もいるかもしれません。ただ、捜査機関側から言わせていただきますと、やはりこの法案が成立いたしましたらその重要性等を十分に通信事業者等に御理解いただきまして、組織としてきちっと対応していただくということを期待しているところでございます。
  52. 角田義一

    角田義一君 私が言っているのは、局長もなかなか政治家だから、それは政治論なんです、一種の。NTTに頼んで、国はNTTの大株主だから言うことを聞かなくちゃならない。NTTの偉い人は職員に、NTTの立場を考えてちゃんとやってくれや、こうなる。嫌だと言ってもそれはやらざるを得なくなる立場に追い込まれるというのは世の中の通例なんです。  しかも、常時立ち会いとかといっても二十四時間ぶっ通しでできないからそれは交代するんだろうけれども、狭いところに入れられてやるということになってくると、私は憲法十八条によるその意に反して苦役を課せられないという条文がぴんと来た。いやしくも国民に苦役を課すようなことまでこの法律は行くんです、これはへたすると。政治論だけじゃないんです。法律論としてそこまでを考えなくちゃいけないんじゃないですか。それを考えないで、何しろ会社に頼めばやってくれるだろう、後は内部で適当にやってくれる、これじゃやっぱり法律としては私はいささかおかしいと思う。どうですか。
  53. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法案が成立いたしますと、我々は通信事業者等に改めてこの内容を説明して協力をお願いするということになろうかと思います。  その際には、この組織犯罪対策三法、通信傍受法案がその一つでございますが、これが組織犯罪と戦うための我が国が今とるべき処置をぎりぎり講じたものである。ひいては、それによりまして組織犯罪を抑圧して今の治安状況を守り、国民の生活あるいは経済を守っていくというために必要なんだというようなこの法案の持っている基本的な理念につきましてやはり御理解をいただいて、確かに通信事業者は一方では通信を利用している当事者の秘密を守るという非常に崇高な義務を負っているということもまた間違いございません。その一部をこういう傍受という形で例外的に協力いただくということでございます。  個々の職員の気持ちの中にある程度の葛藤がある方もおられるかもしれません。それは可能性としては否定するわけではございませんが、ただいま申し上げたより高い理念といいますか、国全体として必要な一つ制度である、あるいは仕組みを新しくつくるんだということの御理解をいただければ、個々の職員につきましても進んで一生懸命協力していただけるものと我々は期待しているところでございます。
  54. 角田義一

    角田義一君 これは時間の関係もありますから、また同僚からお尋ねがあると思うんですが、その立会人をだれにするかという問題と、それから仮に百歩譲って、立ち会いをする人がNTTの職員であった場合にどこまで立ち会わせるのか、非常に技術的なことだけに限るのか。しかし、これは意見を言うこともできるなんと書いてありますから、意見を言うことができて、判こを押して封印して裁判所へ行くんですから、将来場合によれば法廷に呼ばれることだってあり得るわけだからね、これは、ないということはあり得ないわけですから。  そういうことをどういうふうに整合性を持たせてきちっとやるかというのは、私はまだ詰め切っていないと思っている。しかも憲法十八条の、その意に反して苦役を課せられないという条文との関係において、これはよほど深刻な問題になっていくんじゃないかということを、きょうは問題だけ提起しておきます。これは、後また同僚が聞くと思いますけれども、大きな宿題だと私は思っている。  次に、時間の関係もありますから申し上げますが、おとといの服部先生の御質問の中で私は一番最後のせりふだけは賛意を表する。それは、こういう制度をつくっても最後は警察に対する信頼があるのかないのか、これが決め手だ、ポイントだ、少なくとも検察も含めて、要するに捜査機関に対する信頼があるかどうか、こういうことが最後は決め手になる、こういう問題提起があった。私はそのとおりだと思う。これは恐らく全党派そう思っていると思います。  そこで、おとといの質疑の中で共産党幹部宅の盗聴の問題が出た、ちょっと触れられた。松尾刑事局長は、これは負の遺産であるというふうな表現をされた。そうすると、この法案審議する上で、負の遺産というものは相続しないで、負の遺産はどこかで清算しなきゃならぬ、きちっとけじめをつけなきゃいかぬ、こう思うんです。負の遺産を引きずったままこの法案審議を進めていくというのはどこか必ず無理が出てくる。  そこで、私は聞きたいんだが、いわば共産党幹部宅の盗聴事件というものについて、法務省としては、民事の確定判決もある、あなた方は二人の警察官に関して起訴猶予にしている。それから、確定判決の中では付審判の決定も引用されている。これだけのものがそろっている状況の中でこの事件については事案の概要というか、一々細かいことはいいですよ、どういうものだという認識を今日の段階で持っているんですか。
  55. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 神奈川県で起きました共産党の幹部宅の、これは盗聴事件とあえて申し上げますが、それにつきましては検察庁も捜査いたしまして、第一次に不起訴、さらに検察審査会が不起訴不当という結論を検察庁に戻してまいりましたのでさらに捜査を遂げまして、第二次の捜査でも捜査をした結果これを不起訴といたしておるのは先生指摘のとおりでございます。  それで、この問題をどう考えるかということでございますが、確かに通信傍受を行う主体は、基本的には警察でございます。こういった捜査機関に対する信頼の問題というのが非常に重要なファクターだろうということは我々も理解するところであります。  そのためには、私は三つのことを申し上げておきたいと思うんですが、一つは、個々の捜査官通信傍受制度自体をよく理解させた上で適正執行の強い自覚を持っていただくことが必要だろう、これが第一でございます。それから第二は、警察が組織として責任の所在を明確にしつつ、その監督をし、かつ実施をするという仕組みもまた必要であろうと思います。それから三番目には、そうはいいましても仮にこれが乱用されるおそれが皆無ではないということでございますと、それをどう制度的に担保していくか、この担保としての仕組みが十分かどうかということもまた問われるところだろうと思います。この三点がかなり重要だろうと思います。  例えば最初の第一点、第二点につきましては、先日も警察庁の方の御答弁の中で、これを適正に執行するという決意も述べられております。また、個々の職員に対してこの制度としての電話傍受、その内容を徹底して教育する、適正執行させるためにそういう教育も徹底して行うという決意も述べられております。  また、この委員会の席上ではございませんが、警察庁長官も同趣旨の御発言をしているというふうに承っております。  日本の警察組織は、いろいろな見方もあろうかと思いますが、私は客観的に見ますと質、量ともに世界でもトップクラスの組織である。重要犯罪の検挙率にいたしましても、この率をごらんいただければ諸外国に比べまして、特に先進諸国の中でもぬきんでた検挙あるいは解明率を誇っているということもありますので、十分に信頼に足る組織であると考えております。  ただ、そうはいいましても、本法案では例えば捜査官がこれを乱用した場合には重罰に処する、懲役三年以下の自由刑あるいは百万円以下の罰金ということが今度の修正案でも入りました。またさらに、そうしたものを仮に告発がありまして検察官が不起訴にした場合には、付審判請求という制度も設けているところでございます。  そのほか、これまでの論議でもいろいろ触れられておりますような適正担保の仕組みというものが十分に盛り込まれていると思いますので、今先生の御指摘の問題についてはクリアしているものと思います。  そういう意味で、私も確かに過去の遺産というふうに申し上げましたが、その言わんとするところは、神奈川の事件でいわゆる盗聴という形で国民の間に問擬された、問題にされたということにつきましては、電話傍受という一つの仕組みに対して歴史的にそういう事件があるということで、いろいろな不安感がそれによって生じてくる、これはまた否めないところでございます。今回の法案の立案に当たりましても、国民の間の一部にそういう不安感が存在するということも当然に考慮いたしまして、それに対しても十分不安感を払拭できるだけの仕組みをつくる必要があるという基本的な考えのもとにこの法案が組み立てられております。  そういう意味では、でき上がった姿は諸外国、特に先進諸国で行われております通信傍受のいろいろな仕組みと比較いたしましても、非常に抑制的でありますし、厳重な要件が加わっておりますし、立会人という諸外国に見られない制度も設けられております。また、裁判官による司法チェックといいますか、こういったことも手厚くなされるということで、そういった点にも今言った日本の抱えているいろいろな諸状況もマイナス面も含めまして織り込んだ法案であるというふうに御理解いただきたいと思っています。
  56. 角田義一

    角田義一君 局長が言うことも私はよくわかるんです。あなたがさっき三点言ったこと、私は別にそれは何の異存もないんです。そうだと思いますよ。  私が言っているのは、いわば共産党幹部の盗聴事件の事実、これは今私が言ったように法務省は起訴猶予にもしておるんだから、犯罪事実はあったんだから、あって猶予なんだから。さらには、民事の判決も確定しているんだし、その民事の判決の中には付審判の決定の中の文章も援用されているわけです。  そうすると、今の局長の話だと、警察の盗聴はあった、いわゆる文字どおり盗聴だ、それだけの事実ですか。それしかあなたはしゃべれないわけ、ここでは。私が言っているのは、そんなものじゃないんじゃないのと。それはいろいろの委員会で、かつて下稲葉法務大臣は、これは警察官がやったんだということまで言っているんです。  私が言っているのは、負の遺産を清算するためにはそこのところをある程度法務省としてはこういう事実ではないかと法務省なりのものを持っていなきゃどうにもならぬでしょう。そこをまず聞いているんです。あとのせりふはそれでよくわかった。それが聞きたいんです。
  57. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のように、今お尋ねの件については検察庁が捜査をいたしました。その結果でございますが、神奈川県警察に所属する警察官二名が共謀の上で昭和六十一年十一月ごろ、緒方宅の電話盗聴しようとしたという事実は認定されるということでございます。
  58. 角田義一

    角田義一君 したんだよ。
  59. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 盗聴しようとしたという認定になっております。というのは、捜査でございますので、あくまで証拠で確定できるかどうかということでございます。  したがって、証拠で確定できるのは、警察官二名が緒方宅の盗聴をしようとしたということを認定しているということでございまして、そのほか民事訴訟等であるいは検察審査会の指摘内容等でそれ以外の表現がいろいろ使われ、あるいはその辺のさらにいろいろな事実が認定されるのではないかという指摘もあることは承知しておりますが、検察庁の捜査で認定できた事実は今申し上げた点でございます。
  60. 角田義一

    角田義一君 では、民事の確定した事実はこっちへおきます。  警察庁、今法務省が言った法務省としての事実の認定についてはそれをお認めになるんですか、ならないんですか。
  61. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 今御質問が出ておりますいわゆる緒方宅事件についてでございますけれども、昭和六十二年当時でございますが、このときの東京地方検察庁の捜査におきまして警察官による盗聴行為があったということが認められ、それからまた今お話もございましたけれども、その後の民事訴訟におきましても同様の行為があったということが推認されましたことにつきましては、警察といたしましても厳粛にこれを受けとめておりまして、まことに残念なことであるというふうに考えておるところでございます。  私ども警察といたしましては、本件の反省を踏まえまして、今後とも国民の信頼を裏切ることのないよう厳しく戒めてまいる所存でございます。
  62. 角田義一

    角田義一君 警備局長、あなたのいろいろのせりふはいいから。  私が聞いているのは、端的に聞いているんですよ。今法務省が言った事実関係についてはあなた方も異存はないんですか、ないんですねと聞いておるんです。だから、異存はないならない、いや、そんなことはない、どちらかしかないんじゃないんですか、答えとして。
  63. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) ただいまの東京地検の捜査の結果あるいは民事訴訟の結果というものが出ておる、これは客観的な事実でございます。警察としましては、そのことを厳粛に重く受けとめておるところでございます。
  64. 角田義一

    角田義一君 あなた、評論家みたいなことを言っちゃいけないよ。そういう判決が出ております、それは承知しております、確かに出ておる、そんなもの。  私が聞いておるのは、そこで言われていること、事実、今法務省が言っていることを警察としては認めるんですか、認めないんですかと聞いておるんです。判決があったことはだれでもわかっていますよ。厳粛に受けとめるのは当たり前の話ですよ。そんなものはどうでもいいと言ったらこれはえらいことになるでしょう。そこを聞いているんですよ。負の遺産をどう清算するか、これからこの法案審議していくときに必要だから、私はしつこいようだけれども聞いているんです。素直に答えたらよろしい、率直に。
  65. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 今御答弁申し上げましたところでありますけれども、そういう捜査の結果あるいは訴訟の結果ということが出ております。そのことは客観的な事実でございますし、私どもこれを本当に厳粛に受けとめておるというところでございますので、御理解を賜りたいというふうに思っております。
  66. 角田義一

    角田義一君 答えてないんです。私の質問わかるでしょう、皆さんだって。私の聞いていることをみんなわかっているはずです、ここにいる人。客観的に、判決がございました、検察庁もこういう処分をしました、全部わかっている。そういうことはある、厳粛に受けとめている。じゃ、そこで指摘された事実関係について、あなた方警察はお認めになるんですかと私はくどく聞いているわけだ。  判決だって確定しちゃったんですよ、あの判決は。最高裁に訴えたわけじゃないでしょう。そうすると、変な話だけれども、その判決を厳粛に受けとめているというのは、その事実を認めるということでなきゃ厳粛に受けとめることにならないんだよ。現に税金で金は払われているんだから、国民の税金であなた方の不始末をきちっとまたあれしているわけですよ。  私は、圧倒的なお巡りさんはおてんとうさまの下で堂々と立派な仕事をしていると思うんだけれども、こういうことがあったのならしようがないんだよ、あったならあったで。そこを素直に認めないで突っ張る、居直るというような印象を与えるんだよ、あなたの答弁は。そうすると、これは警察憲法なんだよ。要するに、しゃばに通用しない警察だけの理屈を押しまくるというふうに私はとりますよ。また国民もとりますよ。私はそう思うんだ。御理解を賜るって、それなら御理解を私ができるように素直に答えてくださいよ。私の言っていることは無理なことですか。
  67. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 確かに先生おっしゃられておりますように、この事実関係捜査の結果あるいは裁判の結果ということで確定しておるということでございますし、こういう結果が出たということにつきまして、私ども厳粛に受けとめておるということを申し上げたわけでございます。  当時の神奈川県警の内部調査におきましては、県警は組織としては関与したことがない、また個人の関与については、これはもう大変残念なことでありますけれども、確認できなかったというようなことがあるわけでございます。  もちろん、この内部調査で警察官個人の関与について確認できなかった、判然としなかったということについて、それでいいというふうに私ども決して思っておるわけじゃございませんでして、それには警察として、組織として大いに反省すべき問題点があるというふうに認識しておるわけであります。したがいまして、当時もこういうことが二度と起こることがないようにということで、各種の措置をとったところでございます。  御理解賜りたいというふうに思っております。
  68. 角田義一

    角田義一君 これは私は延々と何時間でもやるよ、しようがない。私が聞いていることに、国民質問にまともにあなた答えなきゃだめだよ、警察は。  第一、今何と言った、あなた。内部調査でわからないなんて冗談じゃないですよ。警察が内部調査で自分たちの非違行為を調べ上げられないなんということで、今後いろいろこのでかい武器を与えるんだよ、すごい武器をあなた方に、法案が通れば。それでもし間違いがあったら、内部調査でわかりませんでした、何があったかわかりませんと、そんなことで世の中通らないよ。  私はこういうことを言いたいんです。相手がどなたであれ、何しろ裁判所で決まって、そして損害賠償を我々の税金で払ったんですよ。そうしたら、警察はやっぱり少なくとも二つのことをしなきゃならないんです、世の中の、しゃばの常識からして。一つは、やっぱり関係者に謝ること。それは、本人に会う、国民に謝ること、事実を認めること、率直に。その二つは、警察がおてんとうさまのもとで堂々とこれからやっていくための最低の条件です。それができない、それもやれない。これじゃ、我々にそれでも警察を信用しろと言っても、それは無理。  私は上州で、おてんとうさまのもとで堂々と歩けということを子供のころから教わってきたから、いい言葉だと思っているんだよ、この言葉は。笹川先生もおるけれども、同じ上州で、それはいいことですよ。  そういう態度を警察がとらなかったら、警察は信頼なんかされないでしょう。例えば、百歩譲って、普通は、下の者が間違いを犯したら上の者が謝りに行くんですよ。それが世の中の常識じゃないですか。いまだに行っていないでしょう。そういう世の中の常識に反するというか、合致しない警察独自の一つの論理というか、それを押しまくろうとする、私に言わせれば独善性、それをなくさなきゃだめだよ。私は、ある意味では、市民社会の中における警察の今後の対応を考えたときに言っているんですよ、率直に言っているんです。警察にこんなことを言うとおっかなくて言えないという人がいっぱいいるようだけれども国会議員だから言うんだ。どうですか。
  69. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 先生から県警の内部調査のことについておしかりを受けたところでございますけれども、私どももこのことがこれで決していいというふうには思っておらないわけでございます。やはり当時の組織内部において内部管理体制が不徹底であったとか、あるいは職員の身上監督が不徹底であったとかいうような問題点があったというふうに思っております。したがいまして、私ども警察としましては、大いにこれは反省すべき点であるということで、各種の施策を当時とらせていただいたというような次第でございます。  それから、謝っていないのか、謝罪をというようなお話もございましたわけでございますが、この国賠訴訟の原告の方に対しましては、既に国の行政機関として、法律の定めるところに従いましてこの国賠訴訟の判決で命じられた賠償金というのはお支払いしておるところでございます。それから、この国賠訴訟の結果につきまして、累次国会で申し上げておりますけれども、警察として、これは厳粛に受けとめ、まことに残念であるということで御説明させていただいておるところでございます。
  70. 角田義一

    角田義一君 まず、ちょっと悪いけれども法務大臣に聞きます。これは聞きたくない、聞きたくなかった。  今、松尾局長が事実関係についておっしゃった。私は、検察と警察というものはお互い信頼関係がある、少なくともあってしかるべきだと思うんですよ。警察と検察が一緒に仲よくなかったら、この世の中おかしくなっちゃうからな。私も法務政務次官でいたときに、それは努めなきゃいかぬと思っていましたよ、警察と検察というのは。  そこで、少なくとも法務省が今言ったことを警察が否定しているわけだ、認めていないわけですよ。これは大変なことですぞ。これでなおかつこの法案を通して、検察、警察をあなた方は信頼しろと言うのかね。それが一つ。  それと、法律で判決が出ましたからお金を払いました、これは当たり前の話です。しかも、それは税金で払っているんです。私は、世の中というものはそういうものじゃないと言っているんだよ。判決で命じられたから、国民の税金で払ったからそれでいい、そういうものじゃないでしょう。  我々のしゃばというのは、世の中というのは、何かあって悪いところがあったら、酒の二本でもつるして謝りに行くんだよ。それで社会が円滑にいっているんですよ。そういうごく当たり前の世の中の生きていく作法それもやらないで、ただ金を払ったからそれでいいんですよというような、情がないというか、そういう発想で警察行政をやられたんじゃ、これは僕はたまらぬな。大臣、どうですか。
  71. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 私ども法務省といたしましては、この神奈川県警の警部補の、警察官による共産党の方に対するのは盗聴事件だ、こういうふうに前の下稲葉大臣もおっしゃっておりますし、私も同じような認識でございます。  そして、これに対して、刑事局長が申し上げましたように、警察官本人、組織、それからまた法整備の上で、こういうものが二度と繰り返されないような仕組みをきちっと確立しておくということが一番大事なことだと思っております。  今、先生のおっしゃいましたお気持ちは、私にも十分わかるわけでございますので、そういうお気持ちを体しながら、今申し上げましたような対応を十分に図っていきたいと思っております。
  72. 角田義一

    角田義一君 警備局長どうだい。私の質問に対する感想を率直に言ってごらんなさいよ。
  73. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 累次御答弁させていただきますけれども、この捜査結果、それから裁判結果ということにつきましては、私ども警察としましては厳粛に受けとめておるところでございますし、大変残念なことでありますし、深く反省しておるというところでございます。  私ども、本件の反省を踏まえまして、その後十数年にわたりましてより一層適正な職務の執行に努めてまいったところでございますし、今後ともそのように努めていく所存でございます。
  74. 角田義一

    角田義一君 あとは同僚議員に引き継ぎますが、私は最後に申し上げたい。警察が市民社会で信頼を受けたいと思うならば、そしてこの法律が仮に通って国民の信頼を得て執行したいなら、やっぱりやるべきことをきちっとやる、けじめをつけることはつける。それは最低のことです。それを居直るし開き直る、そんな態度では絶対だめ。しかも、法務大臣の言っていることを否定しているというのは、事実関係を今日なお否定するというのは、これじゃとてもだめだ。  私はもう警備局長をこれ以上責めないから、しかるべき時期に警察庁長官にここへ来てもらいましょう。後でまた要求します。来て、ちゃんとけじめはつけさせてもらいますから。以上。  同僚議員の質問に譲ります。
  75. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 修正案提出者にお尋ねします。  立会人でございますが、立会人切断権を持たない、それから捜査官とともに傍受しないという内容になっております。そうすると、その結果として、立会人捜査官傍受内容を聞き取れない。したがって、捜査官が仮に本来聞いてはいけない通信傍受していても、それをチェックできないということになると思います。  それでお伺いするんですが、立会人捜査官乱用に及ぶ通信傍受をチェックできないとしますと、その後からでもやはりきちんとしたチェック方法を制度的に確立しておかないと乱用の防止の歯どめがきかないと思うんですが、そこら辺、修正案提出者はどのようにお考えでございましょうか。
  76. 笹川堯

    衆議院議員(笹川堯君) 御案内のように、立会人切断権というお話も衆議院でもございましたし、先日の委員会でも御質問いただきましたが、まず、今回私ども修正をさせていただいて立会人、これは常時ということでありまして、仮に立会人が何らかの都合でできないということになれば、当然通信傍受は中断されるわけであります。相当厳しくこの点につきましては修正をさせていただいた。  それから、捜査機関をチェックできるかできないか。もともと立会人そのもののチェック機能というのは外形的条件をチェックできるというふうに定めておりますので、立会人内容を聞いてチェックするというふうなシステムには実はなっておりません。これは、あくまでも全部録音したもの、原本は裁判所の方に提出する、裁判所の方でチェックするべきものはまたチェックをしていただくという制度にしておりますので、委員が御質問のように、捜査機関をチェックすることができるかどうかということになりますと、私は、今お答えしたように、裁判所の方でチェックしていただくということになろうかと思っております。  それから、今の切断権の話でありますが、これは切断権があればいいんじゃないのかなというお話もあります。当初、我々も切断権を認めればいいんじゃないかなという委員の意見もございましたが、立会人にそこまで認めますと、物すごく大きな負担が立会人にかかりまして、それでなくても角田先生から、立会人が断ったらどうするんだというような御質問がありましたけれども、当然私どもも、切断権を持たせれば、もうそんな重い仕事は嫌だと。しかも犯罪内容も知るわけでありますから、組織的犯罪という非常に悪い人たちのことを聞くんですから、後から危害が及ばないというわけにはいかない。そんなことを、まさにプライバシー侵害のようなものを立会人に付するということは、私はやってはならない。しかも、捜査機関の人じゃございませんので。そういうことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  77. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 今、長く答弁いただきましたが、私の質問に対する答えは、後で裁判所が事後的にチェックすればいい、こういう部分でありまして、それ以外は何か質問関係ないお説をお伺いしたように思います。  後で裁判所がチェックすればいいという、その内容を教えてください。  修正案提出者が、本件の修正をもって乱用の防止には十分だという御意見ですので、私は修正案の提出者に聞いておるわけです。刑事局長には聞いておりません。  それから、修正案提出者が即座に答弁できないのなら、少し審議を休んでいただいて、まず相談してきちんと答弁させるようにしてください。審議時間を空費します。
  78. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 裁判官による傍受期間の延長の可否の判断とかあるいは不服申し立てがあった場合の傍受の取り消しを判断するだとか、あるいは公判段階において違法収集証拠の排除をするだとかいうような観点から、裁判官が十分チェックし得るというように考えています。
  79. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 これは本来、乱用の部分については、その性質上、刑事手続に承服できないから傍受記録になされないのが普通であります。今、提出者がお話しされたことは、傍受記録にされた部分についてのお話ですが、私が聞いているのは、傍受記録に本来されないような、捜査官乱用に及んだ部分についてどのような裁判所のチェックが機能されるのかお尋ねしているわけです。
  80. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 傍受記録は確かに捜査官が作成しておるわけでありますが、しかし、立会人がチェックする、いわゆる意見をもって裁判所に書面で提出するという、両々相まって裁判官判断するべきでありまして、立会人の意見の書面の評価やあるいは片方の意見の評価で傍受記録を云々するというようなことを期待しておるわけではない。裁判官が全体としてどう判断するかを我々は期待しておるわけでありまして、その点において御理解を賜りたいと思います。
  81. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 どうも答えの内容が私の質問にダイレクトに答えていただけていないようなんですが、では今、立会人の意見というお話が出ましたが、仮に、この傍受は大変に問題があるという立会人の意見が付されて、原記録が裁判所に送られたと。それを見た裁判官はどのような措置をとるんですか、あるいはとれるんですか、この法律上。
  82. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 何度も繰り返すようでございますが、決定的には、違法収集証拠を排除というような観点から、この傍受記録に対する評価を裁判官がするということでございます。
  83. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 原記録が裁判所に送られてきた、そこで、その裁判所が何の手続も進行していないのに違法収集証拠の判断する手続を開始するんですか。
  84. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 先生の御指摘の、立会人の意見を書面をもって裁判所に提出する、そして、その意見に基づいて乱用があったと認定された場合のその後の裁判官の行動あるいは判断、それをお尋ねであろうとするならば、やはり私が申し上げたとおり、その裁判官は意見の書面、これを見ずして云々はできないだろうというように思っております。
  85. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 全くこの法案とか刑事訴訟の法的手続を離れた個人的な感想にしかすぎないような御答弁をいただきましたけれども裁判官立会人の意見をもって判断するというのであればこの法律上どのような規定に基づいて判断するのか、その根拠を示してください。  では、答えやすいように言いますよ。立会人の意見が付されてその記録が裁判所に送られてきた、しかし、令状を発した裁判官令状を発したことによって職務は終わっているんですよ。そして、だれかが何らかの裁判を起こす、準抗告を起こすというような手続がなければ、裁判所がみずから職権を発動して何らかの行動に出るということはないんですよ。ですから聞いているんです。  この通信傍受には問題があるという立会人の意見が付されて原記録が来たときに、では裁判所は職権で手続を開始するのかどうか。この原記録に、通信傍受に違法があるかどうかを職権をもってチェックする、そういう手続を開始するのかどうか、これをお答えください。この法律ではどうなっているのか。  委員長、答えられないんだったらその間は休憩してください、質問時間は考えているんですから。
  86. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) この法案内容におきましては、立会人の意見書のみによりましては裁判官が職権によってそれについて何ら行動をするというような規定はございません。
  87. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、原記録が立会人の意見を付されて裁判所に保管されても、いかに違法なことがあると意見が付されていても、ほかのことで具体的な手続が始まらなければ、それはそのままで記録がただ保管されてしまって、後は何も進まないわけですよ。  そこで、お尋ねするわけです。  では、ほかの手続が進む場合は何かといいますと、それは傍受記録が作成されて通知が行く、そこで準抗告の問題が起こる、あるいは傍受記録が作成されてそれが後に証拠として使われて、その証拠の証明力、証拠力が争われる、そういう手続があって初めてそういう可能性が出てくるわけです。  そこで、私がさっき質問で聞いた傍受記録が作成されている部分は、これは本来乱用の部分じゃないんですよ。乱用の部分に関しては、傍受記録が作成されるということは事実上あり得ないわけです。わかるでしょう。  そうすると、乱用に及ぶ部分については傍受記録が作成されない。傍受記録が作成されなければ、その後の手続が開始される可能性はない。そうすると、幾ら立会人がこの通信傍受は問題があると言って意見を付されて原記録が裁判所に送られても、その記録について裁判官は自主的に何にも動けない。その記録は裁判所のお蔵に入ったまま、後で手続が開始されなければそのままで終わってしまう、こういう形になると思うんですが、いかがですか。
  88. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 委員は先ほどから乱用というふうにおっしゃっているんですが、この法案におきましては、まずは令状に記載された内容に関する傍受しか行われないということと、その通信傍受している際におきましても犯罪関係のない通信については傍受してはならないということになっておりますので、基本的に委員が御懸念のようなことは行わないというふうに考えております。
  89. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 法律で、そういうふうになってはいけないということになっていますよ。だけれども、さっき刑事局長も言っておられた、警察官が、捜査官乱用に及んではいけないような制度的な担保をつくりなさい、それがなければ警察官が乱用に及んでしまうことがあるでしょうと。実際にこの法律ができる以前にも、再三指摘されているように、警察官が違法な行為をやった例は幾つもあるわけであります。今の答えは私の質問に何にも答えていない。  すなわち、私が聞いているのは、乱用に及んだ部分がもしあったらそれもチェックできるような制度的な仕組みをつくっておかなければならない、しかし乱用に及んだ部分に関しては、立会人が幾ら意見を書いたってそれは何にも意味しないでしょうということを聞いているわけです。つまり、それによって裁判官は自主的に何にも職権を発動できない、傍受記録が作成されなければその後の手続は起きないわけですから。そうすると、立会人が幾ら意見を書いたとしてもそれは乱用の防止の制度的なチェックにはならないでしょうということを聞いているわけです。  法律の精神でやっちゃいけないから警察官がやるはずがないという議論では、これはもう議論したって始まらないですよ。どうですか、制度的なチェックがされているんですか、この法律では。  修正案提出者質問しています、私は。(発言する者多し)
  90. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) お静かに願います。
  91. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 先生は、その傍受記録に乱用の事実は書いていないと。確かに、捜査官が作成する記録にみずからの違法性を指摘したような記録は作成し得ないだろうというようには思います。  しかし、一方で、立会人の意見というのは書面で提出されるわけでありますが、その書面の意見というのは外形的判断以外には何にも書かれていないわけでありまして、そのことからいたしますと、その外形的意見の中に、全く何も聞いていなかったんだ、外形的に傍受していると書いてあるけれどもしていなかったんだと、例えばそういうことがあるならば、それは裁判官は当然、みずからの令状でその行為を許したわけでありますから、その令状を撤回する、取り消しするということが最大の武器であるし、そのことを我々は期待しておるわけでありまして、そのことにおいて我々は信頼が十分できるんだというように思っています。
  92. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 今の御答弁は、全く今の刑事訴訟の手続を無視しています。  裁判官というのは、令状を発する職務に関しては、令状を発した瞬間にその裁判官の職務は終わっているんですよ。今、聞いていなかったから言いますよ。裁判官令状を発する職務というのは、令状を発した瞬間にもうそこで終わっているわけです。その令状に不服がある者が申し立てすれば、ほかの裁判官令状発付が適正であったかどうかを判断するんですよ。  今、あなたは何か令状を発した裁判官が意見がついたものが来ればどうするこうすると言いましたけれども、そんな形には刑事訴訟法はなっていないんじゃないですか。
  93. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 私の申し上げました趣旨は、令状を執行する延長等の可否の判断という意味でございます。
  94. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 では、延長がない場合あるいは最後の延長による場合にはそういった機能は働かないわけですね、当然のことながら。
  95. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 不服等の準抗告制度等が他に整備されているということでございます。
  96. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、そこはさっきから言っているではないですか。いいですか。準抗告を起こすためには、傍受を受けたことを知らなければ準抗告の起こしようがないわけですよ。その傍受をしたということを通知するのは傍受記録を作成した部分だけですよ。だけれども委員はさっき認められたでしょう、乱用に及んでいる部分に関しては傍受記録を作成するはずがないと。それであれば通知は行かないんですよ。傍受されたことも知らないわけです。傍受されたことを知らない人が準抗告するわけがないじゃないですか、知らないんだから。
  97. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 立会人は事業者としての一員でありまして、事業者として外形的に違法を認めたわけでありまして、事業者としての準抗告があり得るということでございます。
  98. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 通信事業者が準抗告できるんですか。  では、その点だけ刑事局長がお答えください。
  99. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) どうも議論が……
  100. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、その点だけでいいです。
  101. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 修正部分のみならず、この仕組みの根本のところにかかわっておりますので、それに誤解がありますと議論が十分にかみ合わないのではないかと思います。  大変差し出がましいようでございますが、どういう場合に令状発付した裁判官あるいは原記録を保管する裁判官がこれに関与してくるのかというところの基本的な仕組みを御理解いただかないと、議論がそれぞれすれ違いになっているというふうに見受けられます。
  102. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 簡潔にお述べください。
  103. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今回の傍受制度そのものは、適正担保の大きな一つとしまして、傍受した通信はすべて原記録に入りまして、それを立会人が封印され、裁判所に届くというところがその基本でございます。  次には、その傍受記録というまた次の概念がございますが、これはかかってきました通話の中で……
  104. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 概念の説明はいいです。
  105. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) しかし、それを申し上げないとなかなか通知の話になりませんので。  それで、傍受記録というのは、犯罪関係する部分、傍受令状関係すると規定された部分については傍受記録に落とされます。その落とされた傍受記録の通信の当事者については確かに先生がおっしゃるように通知をする。それ以外の、例えばスポット的に聞いて関係ないと判断したものについては、これは通知が行かないということになります。なぜそういう仕組みをとったかはまたいろいろ理由がございまして、これまでの場合でも申し上げてきたところでございます。  先生のお尋ねは、そういうスポット的な、すなわち通信傍受記録に載っていない当事者には通知が行かないだろうと。そうなりますと、例えば、関係ない通話をずっと聞いても、それは傍受記録に落とさないんだから、それは通知が行かないことになって何ら司法的チェックを受けないことになるんじゃないか、こういう御質問だろうと思います。  その点につきましては、先ほども申し上げましたようなこの通信傍受の通知の仕組み全体にかかわることの中で適正かどうか、あるいはそういう通知をそこまで及ぼすのはどうかということにかかわりますので、単に一つの設例でもってどうこうという話ではなくて、全体の御理解がまず必要かなというふうに思っております。(「さっきの質問に答えていないと思いますが」「準抗告できるのか」と呼ぶ者あり)  済みません。最後のお尋ねの通信事業者がどういうふうな立場であるのかということでございますので……
  106. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、立場はいいですよ。準抗告ができるかどうかですよ。本来の質問に答えてください。
  107. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この施設内で強制処分が行われると、それを受ける立場でございますので、処分を受けたものとして不服がある場合には準抗告を申し立てることができるということでございます。
  108. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 それは通信事業者の施設内で受けた処分に関してですね。ですから、捜査官が行った内容に関して準抗告ができるわけではないわけですね。
  109. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは御指摘のとおりでございます。
  110. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 修正案提出者にお伺いしますけれども、要するに私の質問の趣旨は、まず基本的において通信傍受を行うについて捜査官乱用するようなことがあっては絶対ならない、これはもう皆さん共通した考えだと思うわけです。それで、その乱用の防止のためには乱用ができないような制度的な保障を講じるべきだ、これは刑事局長も先ほど言われたように、乱用の防止のためには制度的担保が必要だと言っておるわけです。  それで私は聞いておるわけです。立会人がもし一緒に話の内容を聞いていて切断権があるのなら、そこで直ちに捜査官乱用は、それはいけませんと言って防止できるわけですよ。しかし、それを外しておるわけですよね。外しておるのなら、じゃ事後的にでもいいから、そういう捜査官乱用がもしあった場合には、それを発見して何らかの手を打てる、そういう制度が必要じゃないかというふうに私は考えておるわけです。  どうでしょうか、立会人がチェックできないのなら、事後的にそういう乱用を発見できるような制度的な保障をつくるべきではないかという、その総論的な部分に関しては提出者の御意見はいかがでしょうか。
  111. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) まず、立会人が話の内容を聞いてその場において切断権を設けることが、その場においてチェックが可能であるというような御意見でもございましたけれども、私どもは、必ずしも捜査内容等について周知をしていない立会人あるいはその途中……
  112. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 その是非を聞いているんじゃないんですよ。質問に答えていないじゃないですか。
  113. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) いやいや、最初はそういう御質問だったんじゃないですか、最初の部分はそうだと思う。  そういうような委員の御指摘については必ずしも同意するものではございませんが、もちろん事後的にこれの捜査が適正に行われたということをチェックできるための必要最小限の措置については必要であるというふうに考えているところでございまして、それは原案におきましても、まずは犯罪に該当しない部分についての傍受は行ってはならないという法律規定が設けられているということ、必要最小限の原則でございます。  それから、事後的にも、すべての記録が傍受した際に記録をされまして、それが封印をされて裁判所に傍受原記録という形で保管をされており、いつでもそれについては事後的に検証できることは保障されているわけでございます。  また、原記録が作成されました会話の当時者に対しましてはそれぞれ通知が行くというようなことが書かれておるわけでございますし、なおかつ、事後的にその傍受記録並びに原記録の閲覧も行うことができ、それに基づいて不服申し立てもできるというような措置が講じられているところでございまして、私たちとしましては、乱用防止のための措置が十分に講じられているというふうに考えて御提案をさせていただいているところでございます。
  114. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 まず、立ち会いの後の事後的チェックが必要だという意見に賛成であるということは承りました。必要最小限というよりも、むしろ最大限の配慮が必要だと思うんです。  それで、今お話のあった例、今度は具体論として、原記録が裁判所に保管されている、ですからいつでもチェックできるというお話がありました。そこで、先ほどもそういう議論が進んでいっているわけです。  つまり、乱用というのは、いいですか、法律ではやってはいけないということになっていますよ。法律でやってはいけないから捜査官は絶対乱用しないというのだったらもう議論する必要はないですよ。あとは警察を信用できるかどうかですから。それから、刑事局長がおっしゃられたように制度的な担保も要らないですよ。法律でやってはいけないと書いてあるから警察官はやるはずがないというので、それでいいんだというのであれば。だけれども刑事局長もおっしゃる乱用ができないような制度的担保は必要だと。恐らく修正案提出者もその点については異論がないと思うわけですよ。じゃ、その制度的担保が確かに機能しているのか、実効性があるのかという面で私は聞いておるわけです。  そこで、先ほど修正案の方が、立会人の意見というものを原記録に付して裁判所に出すことにしたという修正がなされました。ただ、それに関しては私先ほど言ったわけです。そういうものが来ても、それを読んだ裁判官がそれを読んだからといってみずから職権を発動できるわけじゃないんだと。ですから、その面に関しては全然チェックできないわけで、ただ裁判官の目にとまってもどうしようもないという事態が生じるだけだということです。  それからもう一つは、答弁者がお答えされたように、後の何らかの手続の中でその意見が反映されることがある、これは確かに御指摘のとおりですよ。ただ、後で何らかの手続が起こるというのは、考えられるところ、令状に対する、処分に対する準抗告か、あるいは被疑者が被告人になって、そのテープが、傍受記録が証拠として出されてその証拠能力が争われるということになったときだと思うわけです。すなわち、それはイコール傍受記録が作成された部分に関してそういう手続が起こる可能性があるわけです。  そこで、また話が戻るわけですよね。警察官が本来聞いてはいけない部分を聞いてしまった部分は、つまり乱用に及んだ部分は傍受記録に作成されるはずがないんですよ、乱用に及んでいるんですから。じゃその乱用に及んでいる部分に関しては準抗告の起きようがない。すなわち、通知が行かないんだから準抗告の起きようがないし、証拠として提出もされないんだから証拠能力として争われる可能性がないわけですよ。ですから、乱用に及んだ部分に関しては、その乱用に及んだ部分に関しての裁判所における手続が将来発生する可能性がないから、その手続がない、その場がないんだから、結局は裁判所のチェックというものはきかないでしょうというふうに私は質問しているわけです。  その点、質問の趣旨を御理解いただけたらお答えください。
  115. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) まず最初に、委員の御質問の中で、いわゆる傍受記録に記載されていることのみがその後のいろいろな例えば争い事があった場合の対象になるということでございましたけれども、確かに傍受記録に記載されているその会話の通信の当事者のみにしか通知が行かないというのは事実でありますが、その後の事後的な手続の中におきましては、傍受記録のみならず原記録についても閲覧、複写あるいは複製等は、通信の当時者については申し立てることができる規定になっておりますし、なおかつ、不服申し立てについても、その原記録の中身につきましてもできる規定になっているわけでございます。  またさらに、この法案の二十六条三項におきましては、重大な違法等がある場合におきましては裁判所がその記録の消去を命ずることができるというような規定もあわせて設けているところでございます。
  116. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 法案の説明は余り長々としていただかなくていいんですけれども、その原記録の中から事後的にチェックできると言いますけれども、そもそも傍受されたことを知らない人がそういう申し立てをできるはずがないですよね。  こういう場合、一つの例を前提にして答えてください。捜査官通信傍受しました、しかし、その中で犯罪に関する部分が全然なかった、実際には全部が乱用であった。その場合には傍受記録が一切ないわけです。ですから、だれにも通知が行かないわけです。そういう形で乱用が行われた場合に、一体だれがその原記録を見せてくれと。だれも自分が傍受されたことを知らないんですよ。その中で一体だれが裁判所に対して原記録を見せてくれ、あるいは不服の申し立てができるんですか。  いいですか。捜査官通信傍受した、しかし、その中で犯罪に関する部分、傍受記録作成部分がなかったという場合を前提にして、だれが一体それを見せろと言うのか。そのことについて想定されるのか。刑事局長、後にしてください。まず提案者の方からお答えください。
  117. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 今、委員の想定されているケースというのが必ずしも十分わかりませんが、令状によって傍受を始めた後に、犯罪関係する通信が一切行われなかったという場合を想定されておられるのかというふうに理解します。
  118. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 その中に乱用があった場合のことを言っているんです。
  119. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) その場合には、犯罪関係する通信が行われていない、乱用ということに当たらないというふうに思います。
  120. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私は乱用の防止策について聞いているんですよ、乱用の防止策。だから、絶対乱用がないという前提のお答えじゃないですか、今のは。じゃ、どうぞ刑事局長、お答えください。
  121. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 大分議論が錯綜しておりますので、今のお尋ねは、修正部分というよりもむしろこの原案の骨格にかかわるところでございますので、私からお答えした方が適当かと思います。
  122. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 端的に答えてください。
  123. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それで、先生の御質問の核心の部分は、傍受記録に載ったものだけに通知が行く、それ以外のものは通知が行かないんだと。ですから、傍受記録が作成されないケースについては通知がないだろうと、これはおっしゃるとおりでございます。  問題は、先生はすべてが乱用に当たる場合とおっしゃいましたけれども、これはなかなかちょっと受け入れがたいところでございまして……
  124. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、そういうケースを想定しての話です、乱用の防止について。
  125. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 傍受をしました、スポットモニタリングを繰り返しましたがヒットしないということですね。そうなりますと傍受記録は作成されません。ただし、原記録は作成されますので、それは裁判官の手元に行きます。  問題は、そういったケースについてどうするのかという問題なんですね。それでさまざまな議論がありました。一つには、裁判官にそういうヒットしないケースについてその原記録を全部チェックさせたらどうだというような議論がもちろんあったわけでございます。つまり、先生の御質問の核心はまさにそこの問題でございます。仮に通知の当事者がいなくて原記録が裁判所に保管されたままだとこれは死んでしまうじゃないかという御議論がまさにありまして、それが議論の中心になったわけでございます。  それに対しまして、この法案の立て方は、そういった場合に二つの理由がございます。  一つは、司法当局にその傍受の記録自体を全部当たらせるというようなことが適当なのかどうか。つまり、この中には、まさにスポット的に聞いている部分、しかも犯罪関係しない部分でございますから、むしろ犯罪当事者の犯罪に関する通話やそれに関連する諸状況についての会話等ではなくて、まさに犯罪関係ないプライバシーの部分そのものの記録ということになります。これを裁判官に全部聞かせるのかどうかという判断一つあろうかと思います。  そこまでさせる必要があるかどうかというのは、最終的にはこの法律の中で適正手続がどういう形で保障されているのか、そこまで裁判官にやらせないと危ないのかというような判断の問題でございまして、そこはもう最終的にそれぞれのお立場で異なる結論になるということもあり得るわけでございまして、先生は今、一方のそれはまずいじゃないかと、そういう場合でも、要するに、極端に申し上げると、何らかの手当てが必要だということになりますと、当面考えられるのは、裁判官に全部聞かせるということになろうと思います。  そうしたことをとるべきであろうというような御議論もあることはわかりますが、ただ、我々といたしましては、法案全体の中で適正執行の手続全体がいろんな形で保障されておりますので、そうしたことを全体的に勘案しますと、裁判官にそんなことをしてもらうまでもないだろう。つまり、そこまでプライバシー裁判官が踏み込んでいくということのマイナス面もございますので、そうした制度はとらない方がよかろうということで、確かに、先生のおっしゃるように、何らの通知も行かないケースも想定されるわけでございますが、そうしたケースについては、具体的に当事者のアクションがある、あるいは裁判等でそれが仮に問題になった場合にチェックできるようにしておけばよろしいだろうという制度をとったということでございます。  今の御議論の核心は、まさにそこのところの価値判断の問題ということに帰するんじゃないかと思います。
  126. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私の質問していないことを勝手に答えて、それが私の質問の核心だと言われても困るんですけれども、私の質問は、つまり何度も言うように、捜査官が仮に乱用に及ぶようなことがあってはいけないから、それができないような制度的な担保が必要だ、その制度的な担保がこの法律案あるいは修正案において確立されているのかという観点から聞いておるわけです。  それで、実際に捜査官乱用した場合に、立会人がその場でチェックできないことはもうお認めになっておるわけです。じゃ、事後的にそれをチェックできる方法がないかと言っておるわけです。それを私は言っておるわけですよ。  捜査官乱用したら、その部分に関して傍受記録をつくらない、極端な場合には、その原記録の中の全部について傍受記録をつくらない、そういう場合だってあるでしょうと。そういう乱用の場合に、通知も行かないから傍受されたことも知らない。傍受されたことも知らない人が準抗告を起こすわけないし、後に裁判も起こされないんだから、その通信内容乱用に及んだかどうかは判定される場面がない。それから、立会人が幾ら書いてきたって、それを読んだ裁判官がみずから職権を発動して動くこともできない。そうすると、結論的に、捜査官乱用してしまった場合に立会人はそれを防止できない、チェックできない。それから、後から裁判所がそれをチェックすればいいと言うけれども、裁判所がチェックできる場面がないじゃないですか。  ですから、私、もう一回聞きますよ。通信傍受がされた、その中で傍受記録が全然作成されていない、そういうケースの乱用があった。その場合に立会人がチェックできない。ここからが質問です。じゃ、事後的に裁判官がチェックできると修正案提出者はおっしゃいましたけれども、どういう手続で裁判官がチェックできるんですか。私はチェックできる方法がないと思っています。この法律上ないし刑事訴訟法上もない。私はないと思いますよ。あなた方もゆっくり考えれば、どうですか、あると思いますか。  先ほどあると言ったんだったらお答えください。まず提出者の方に、局長には後から同じ質問を聞きますから、先ほどあると言われたんだから、先ほどの質問の中で、後で裁判所がチェックすればいいと言われたんだから。もう一度聞きますよ。裁判所がどういう手続でやるんですか。
  127. 山本有二

    衆議院議員(山本有二君) 先生おっしゃるように通知されないわけで、その中で捜査官乱用をするというお話ですね。  原記録はスポットモニタリングの記録も全部載っておりますし、先ほど上田答弁者が言われたように、複製も閲覧もそこでできるわけでして、知らない人ができないというと、知らない人がどういう不服を、不服というか、原状回復やら権利回復を求めるのかわかりませんが、ともかく乱用をしたという事実だけがある場合は、捜査官通信秘密侵害罪がありますし、あるいは捜査官が違法なことをしたという意味では、一般的な公務員の法規等々あるいは検察庁や捜査機関の内部規定等で十分私はチェックできるというように思っています。
  128. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今の修正案提案者側の説明もそのとおりだろうと思いますが、問題は、傍受令状をとって傍受しました、しかしヒットしなかった件も、それは確かに抽象的にはあり得ると思います。ただ、その点も、原案の作成者としましては、かなり絞り込んだ傍受を行いますので、まれなケースというふうに御理解いただきたいと思います。  それで、まれなケースはじゃどうするのかという問題です。方法はいろいろありますが、大きな方法として二つあると我々は考えました。  その場合に、先ほど申し上げた、裁判官が事後に原テープを全部もう一度聞いてみる、それで適正執行がなされているかどうかをチェックするという仕組みをつくることも、それは理念的には考えられることでございます。  それからもう一点は、そういった場合には何らかの通知をするようにしたらどうか。先生おっしゃるように、今の仕組みの中では通知は行かないということになりますので、そういった場合に限って、それはだれに通知するかという問題等がありますが、通知をしたらどうかという、この二つの問題がその解決策だろうと思います。  それで、まず第一の点につきましては、先ほども申し上げましたが、裁判官にそういうふうな負担を課すること、あるいは司法がそういう形で全面的に原記録に当たるということの当否の問題、それについては我々は消極的に考えました。  二番目は、それでは何もヒットしない場合に何らかの通知をするのかどうかという問題です。これもなかなか難しい問題ですが、一つは、だれにするのかという問題で大変悩ましい問題があります。  例えば、電話といいましても名義人がいます。実際に使っている者がいます。それも複数います。そういうケースももちろんあるわけでございまして、それじゃその名義人に通知をするのかということになりますと、必ずしも利用している者にはなりません。あるいは被疑者かといいますと、これは捜査の密行性等の問題もありまして、被疑者が不詳の場合にじゃどうするんだろうという問題もあります。あるいは電話の使用者が特定されない場合にどうするのか。  そんな問題も含めまして、通知というもの一つを考えましても技術的にもなかなか難しい問題がございます。それ以上に捜査の密行性の問題がございまして、そうした場合も含めて通知をするのかどうかというマイナス面、つまり何らかの形で対外的に捜査内容を明らかにすることになりますので、そういったマイナス面もあります。  そういったマイナス面と、この法案に盛り込まれております適正手続のためのさまざまな工夫、これを全体としてお考えいただいて、今先生の御指摘のような件が確かに抽象的には考えられますが、その対策として何らかの方法をここに盛り込むというのは適当ではないというふうに考えて法案はそうなっているということですので、そこの比較考量の問題は確かに御指摘のようにあろうかと思いますが、結論としてはこの法案はその場合の通知制度はとらなかったということで御理解いただきたいと思っています。
  129. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 要するに、仮に捜査官乱用に及んだ場合、それを裁判所が事後的にチェックすればいいと言うけれども乱用の部分に関しては裁判所が事後的にチェックできる部分がないのではないかという指摘に関して、先ほどの修正者の答弁も、それを認めた上で、仮に捜査官乱用すれば捜査官犯罪になるんだからいいんだ、こういうお考えに承りました。  それで、刑事局長のお考えも、ないんだと、ないんだけれども、それで僕の本会議での質問で、裁判所に聞かせればいいじゃないかという僕の提案を先取りして、そういう必要性はないんだというふうにお考えでしたけれども、ただ結論的に言えることは、要するに捜査官乱用した場合、立会人はその場でチェックできない、その部分に関しては結局は事後的に裁判所もチェックできないんだ、こういう構造になっているのが本法案だというふうに私は意見を述べさせていただきます。これはもう再三議論をして、これ以上議論をすりかえられても困りますから。  それから、捜査の密行性ということが出てきましたが、警察官が乱用のための工夫を凝らすと、やはり非常に危険な法律であると思うんです。例えば、傍受記録を作成した、当然通知をしなければならないというふうにありますね。一方、その原記録は裁判所に保管されている。捜査官が事後的に捜査必要性といいますか証拠とするために、つまり事後的に傍受記録を作成するために原記録の複製を求めることができるわけです。  そうすると、捜査官犯罪に関する通信傍受した、だから当然その部分は傍受記録にしなければならないんだけれども傍受記録を作成すると通知しなければならない、通知するとちょっとまずいなと。じゃ意図的に傍受記録をつくらないでおいて、傍受記録をつくらなければ通知しなくていいんですから、それで半年か一年かたったら、裁判所に原記録があるから行ってその部分の傍受記録をつくってもらおうというようなことで、工夫を凝らせば傍受手続の通知制度も非常に抜け殻になってしまって機能しないんです。  刑事局長どうですか、こういう私の乱用するためのアイデアは。
  130. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、この法案自体が乱用についていろいろなチェックを置いているというのは先ほどから申し上げてまいりましたが、その場合には、二十二条の第五項には「検察官又は司法警察員は、傍受をした通信であって、傍受記録に記録されたもの以外のものについては、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならない。その職を退いた後も、同様とする。」という歯どめの規定を置いております。  今御指摘のようなことでありますと、明らかに違法な電話傍受ということが言えようかと思います。それをやりますと、この法案では警察署長クラスの者が請求し、県警の本部長が決裁をする、ある意味では警察全体としてその責任を負うという体制をとっております。  それから、今先生も御指摘のとおり原記録というものがございまして、それは裁判官の手元に保管されまして、傍受の実態は明らかになっておりますので、それについて裁判等の場で、あるいはその当事者のアクションが起こされるとした場合には違法な執行であるということが明らかになりますので、厳しい処分がされるということでございまして、そうしたことによって担保されているというふうにお考えいただきたいと思います。
  131. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 どうも私の質問、つまり私が言った乱用のアイデアに関して、それが法律上禁止されているかどうか明確なお答えがなかったんですが、少なくともこの法律上それを禁止するという明文がないから、この法律の構成上できると思うんですが、これは解釈の問題になるから結構です。  次に、質問が変わりますが、通信傍受を行って、その通信の記録の原記録は裁判所に行くわけです。それから、同じ内容のものを捜査官が持ち帰るわけです。持ち帰って、その中から刑事手続に使うものは傍受記録に作成するわけです。それ以外のものを消却しろ、こういう構成になっている。  それで、捜査官がまず通信の記録を持ち帰った段階で、あるいは傍受記録を作成するその作業の中でそれの複製をとること、あるいはその内容をメモすること、これはこの法律上禁止されていないですね、されているかどうかだけお答えください。
  132. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 傍受記録を作成するまでの間のメモ等については、これを禁止する規定はございません。
  133. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 そうすると、また私は乱用のアイデアが浮かびました。メモするわけですよ。つまり、刑事手続に使うもの、傍受記録以外のものは消さなければいけない、だから消しちゃう前に全部メモするわけです。それでこの法案を見ますと、そうした傍受記録作成部分以外の現物あるいはその複製、これは消去しなさいという法律規定があります。ただ、法律のその規定を読みますと、複製とは、通信の記録の全部または一部をそのまま記録したものが複製だと言っているわけです。  では、かかってきた女はこれは愛人だと、愛人はどこに住んでいるかとか、そういう中身のエキスをぱっぱっぱとメモしたもの、これは消去すべき複製に当たるんですか。
  134. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは該当します。
  135. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私が事前に刑事法制課長に電話して確認したときには当たらないというふうに回答をいただいたんです。この法文上も、二十二条の第四項、いいですか、「複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物」ですよ、複製とは。  ですから、通話の相手は愛人何子だと。いいことを聞いたと思って私がメモをした。それは当たるんですか。この条文上、当たらないように思うんですが。
  136. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この条文をごらんいただきますと、第四項は「複製等」の下に括弧がありまして、「複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。」というふうになっております。  したがって、例えばある女について、女房以外にこういう女性がいますよという話がわかった場合に名前を書きますね。その名前そのものが、この解釈として記録の一部というふうにみなされる場合には、その書面はここで消去しなければなりません。  ところが、会話の概要を書く。例えば、そのまま書かないで大体こんなような内容だということでそれを要約したもの等でございますと、それについてはむしろ五項の問題でございまして、「検察官又は司法警察員は、傍受をした通信であって、傍受記録に記録されたもの以外のものについては、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならない。」と。それを何らかの形で利用することについてはこちらで歯どめをかけるということでございます。  いずれにいたしましても、記録をそのまま転写したみたいなもの、速記録みたいなものあるいはそれに類するもの、今言ったように、名前なりなんなりを全部書き抜いてそれを予備的に持っているというようなもの、つまりこの法案として、記録の内容の全部または一部をそのまま記録したというふうにみなされれば四項の問題になりますし、そうでない抽象的なメモ等でございますと五項の問題になりまして、いずれにしてもその使用は禁止されるということでございます。
  137. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、その前に何かメモが当たるような答弁をされましたけれども、実際に通信内容を要約したメモは当たらないんですね。だから、消去しなくていいわけですね。  それから、それは五項の場合で、他人に知らせ使用してはならないという規定が引っかかるということでしたけれども、他人に知らせ使用してはならないといっても、捜査官の手帳の中に次の捜査のための情報収集資料としては残るわけです。  ですから、要約のメモが、捜査官がメモしたことが許されて、それがずっと残るんだったら、この消去の規定はしり抜けだと思います。  それから、法務大臣にお尋ねします。  法務大臣は、その点に関する私の本会議の質疑に関して、メモその他も消去しなければならないと答弁されているんですが、その点いかがですか。この答弁は間違っているんじゃないですか。  法務大臣に聞いているんです。法務大臣答弁を。
  138. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生のおっしゃるのは二十二条四項の「複製等」の解釈の問題でございます。
  139. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 あなたには話を聞いたから、いいです。
  140. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 例えば、メモであっても複製であればこれに当たりますし、複製でなければ五項で、いずれにしても捜査その他にも当然使ってはいけないということになるわけでございます。
  141. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私は本会議の質疑で、通信の記録の消去のほかにメモ等も消去する必要があるんではないですかと質問したわけです。それに関して大臣は、「これが捜査機関の手元に残り利用されることがないよう、それがメモであってもすべて消去しなければならないものとするとともに、捜査官がその内容を使用することなども禁じております。」と。  つまり、「メモであってもすべて消去しなければならない」とあなたは本会議質問で答えているんです。これは間違いを答えたんですか、本会議で。
  142. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) これは二十二条の四項に、先ほど来論議されておるところでございますけれども、「複製等」の中に「書面」というものを明示しておりますけれども、これについては「その記録の全部を消去しなければならない。」ということになっておるということを説明したわけでございます。
  143. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 はっきりメモと言っているんですよ。全文を、通信内容をそっくりそのまま翻訳したものは普通メモと言わないでしょう。やっぱりその要点を抜き出したものをメモと言うわけでしょう。  ここではっきり言っているじゃないですか。私もその点でメモとはっきり聞いているわけで、大臣もはっきり「それがメモであってもすべて消去しなければならない」と。本会議において間違えて答弁しているんですよ。
  144. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 私が御説明いたしましたメモというのは、いろいろメモにも態様があると思いますが、私が申し上げましたのは、きちんと書面というような形で残されたメモという意味で申し上げたところでございます。
  145. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 そういう御説明ならそういうふうにきちんとした説明をしていただかないと、やはり日本語としては間違っていると思います。むしろ、間違ったことをそういうふうに何か言い逃れしているかのような印象を受けるんです。  では、また別のことを聞きますけれども、原記録が裁判所に五年間保管されますね。保管期間が終わった後、その原記録はどうなるんですか。
  146. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは廃棄ということになります。裁判所によりまして廃棄されるということでございます。
  147. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私もそうだと思うんですが、ただこの法律を見ますと、裁判所が五年間保管するとだけ書いてあって、保管が終わった後廃棄するという規定がないんです。そもそもこの原記録は、警察が持っているテープなりそういった媒体に記録を入れたんだから、所有者は警察です、あるいは検察かもしれない、捜査官側ですね。  普通の物事の常識は、保管が終われば所有者に返す、司法における物品の扱いでもどこでもそうなんです。そうすると、五年間保管するとだけしか書いていないんだから、五年間保管が終わった後、物事の常識で考えれば所有者である警察に返すことになると思うんですが、刑事局長が言われたように、裁判所において廃棄するということは少なくともこの法律に書いていないんです。私はこの法律の欠陥だと思うんですが、いかがですか。
  148. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そもそも原記録をこの制度の中へ組み入れた趣旨は、適正担保のための司法チェックということの原資料になるものでございますので入れたわけでございます。これは裁判所に提出された段階で、警察、捜査官の手元から裁判官の手元に移るわけでございますので、その趣旨と、それから、二十七条では保管をするというのは五年間だということを明示しておりますので、これが警察官あるいは捜査官の手元に返るということを法律では全く予定していないということは、格別明示するまでもなく当然のことでございます。
  149. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私も当然のことだと思います、だけれども法律に書いていないんだから。法律の世界では所有者に返すのが当然のことです。ですから、これは法律がそのことを規定し忘れた欠陥だと思います。  所有者の所有権を没収して廃棄するんだったらそのことはやっぱり法律にきちんと書かなくちゃいけないわけです。だから、趣旨はわかります、もういいです、その点は。
  150. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 一つだけ。
  151. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 どうぞ。
  152. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) いずれにいたしましても、この法律が成立いたしますと、その必要な細則等はそれぞれ決められることになりますので、最高裁判所当局も廃棄の仕方等につきましては当然その規則で定めるということが予定されておりますので、先生の御懸念は当たらないだろうと思います。
  153. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 裁判所規則は手続を定めるだけであって、人の所有権を処分するようなそういう実体的なことまでは規則で決められないと思うんですが、これ以上議論しません。  それから、私が質問する前に局長が答えられた、原記録が裁判所に送られてきたら、それを裁判官がチェックすれば捜査官乱用がすべて白日のもとにさらされるから、私個人は非常にいい制度だと思っているんです。これに関して刑事局長が、裁判官がまた通信者のプライバシーを知るようなことがあってはかえって通信の当事者に不利益ではないか、このようなことを申されました。  それに関して聞くんですが、原記録と同じ通信内容捜査官が、警察なら警察が持ち帰る、そこで傍受記録の作成作業をするわけです。当然テープを聞かなくちゃいけない。それに関する規定が全然ないわけですから、例えば通信傍受記録を作成する作業ということで捜査会議を五十人集めて開いてそこで聞かせたって、それはこの法律上禁止されていないですね、どうですか。
  154. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的にどういった形で傍受記録を作成するのかというのは、当然その法律の予定している姿というものがありますので、それを例えば公表に近い形でテープを流しながら聞くなんということは全く想定されておりません。ただ、捜査の必要がありまして傍受記録をつくる際に、関与した捜査官というのは、例えば電話傍受でありますと相当な大人数の警察官がこれには関与することになりますので、当然原記録から傍受記録を作成する際の作業というのはかなりの人数の警察官が関与するということはあり得ることでございます。
  155. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、捜査官が非常に多人数にわたって通信内容を聞くわけですよ。それで、何か裁判官が、あるいは裁判所の書記官でもいいですよ、一人がその記録を聞くことはその通信内容を聞く人がふえてプライバシー侵害されると言うけれども、裁判所の職員が一人聞くだけでプライバシーが広く侵害されるような先ほどのお話は、私は納得できないんです。  そもそも裁判所は、裁判官は、令状発付するという形で被疑者や被疑者周辺のプライバシーやその記録というのはわかっているわけです。その裁判所の裁判官なり書記官なりが後で来た通信の記録を全部聞いたって、それがそこに録音された人のプライバシー侵害になるとは私は考えられないんです。考えられるとしても非常に微弱な侵害であって、むしろそのことによって守られる傍受乱用防止というプラスの方がそれこそ数倍、数十倍大きいと思うんですが、この点は局長いかがですか。
  156. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これも先ほど申し上げたところでございますが、まず前提としまして、この傍受そのものはかなり絞り込んだ形で行われますので、それが全くヒットしないということはなかなか想定されない。しかし、理念的にはあるだろうと言われますとそれはそうだということになりまして、先生の今の御議論になるわけです。つまり、そういう前提の状況の中でお考えいただかないとまずいけないということ。  それから二番目には、この法案そのものは適正手続の担保をいろんな形で置いております。その傍受原記録に当たる場合は、裁判で用いられる、あるいは通知が行った当事者から聞きたいということで原記録にアクセスがあるというような形のときに原記録がコピーされたりあるいはメモされたりということになります。それで不服がありますと、裁判官はその原記録あるいは関係者から事情を聞くなりして、適正手続が行われたかどうかということをチェックする仕組みになっているわけでございます。  そういった仕組みの中で全然ヒットしない場合はどうするかというのは先ほど申し上げた議論になるわけでございますが、そういうまれなケースであり、かつ今言ったような適正手続の担保というのがいろんな形で置かれているという制度の中で、そういったまれなケースについてまで裁判官に全部原記録に当たらせてその内容を審査させるということが適当かどうかという判断でございまして、これも先生の御議論にもございましたが、いろいろな御議論があるところではございますが、制度全体をお考えいただければ、そこまでの負担を裁判官にかける、あるいはそこまで裁判官に聴取させることは、プライバシーとの権衡の問題等を考えればそれは制度としては設けるべきでないという結論でございます。
  157. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 例えば、立会人が常時通信傍受の間立ち会うという、三十日間ずっと傍受すれば三十日間二十四時間立ち会うという大変な苦痛を民間の人には強いているわけです。  一方、裁判所というのはある意味では人権を守るとりでです。先ほど言いましたように、立会人傍受乱用をその場ではチェックできない。それから、その通信の当事者、電話傍受された人間は、乱用がされた場合にはそのこと自体知らないんだからチェックしようがないわけですよ。残るのは裁判所しかないじゃないですか。  例えば、三十日間二十四時間通信傍受したって、その時間全部がテープに録音されているわけじゃないわけです。通信があったその部分しか録音されていないわけです。ですから、実際に来る原記録というのはそれほど膨大な量じゃないし、そもそも通信傍受がなされる件数そのものも非常に少ないと予想されているわけです。そうすれば、裁判所の受ける負担というのは非常に軽微であると思う。少なくともそれを立会人が三十日間ずっと立ち会えなんて、民間人が受ける不利益に比べれば、裁判所が受ける負担などというものは軽微なものだ。しかも、人権を守るというその職責を持っている裁判所がやることは大変に好ましいことじゃないかと思う。  それから、先ほど私が言ったノーチェックじゃないかということに関して、刑事局長はしきりに非常にまれなケースだからとおっしゃる。でも、これは発想が違うんです。まれなケースであってもそのノーチェックができるのであったら、では今度はそのまれなケースを利用して、乱用する知恵を働かせてまれなケースにしてしまえばいいわけでしょう。さっき言ったように、そこにいい犯罪の証拠があったといったって、傍受記録をつくらなければいいわけです。本当に必要だったらそのことをメモしておいて、一年後、二年後に裁判所に行って原記録からコピーをとればいいだけですから。  だから、捜査官はテクニックで傍受記録をつくらないということだってできるわけです。そうすれば、それがまれなケースだといったって、そういうノーチェックだ、そのノーチェックがあれば結局は乱用というものがされてしまうじゃないですかと思うんです。  だから、そういう乱用ができるような方法、そのノーチェックな方法を残しておくことが、すなわち乱用防止の制度的な保障がなされていないということになるんですが、局長、いかがですか。
  158. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 前提として一つだけ確認させていただきたいんですが、この法案の二十五条の第六項でございます。これは、まず傍受記録に落とさなかった場合、しかし捜査の進展によって、スポット的に聞いて関係ないと思ったものも、実はあれはどうも今回の犯罪の嫌疑に関係があるということに気づく場合ももちろんあるわけでございます。そういった場合は、捜査官は裁判所の持っております原記録をさらに聴取しまして、その部分だけ捜査官が持ち帰る記録に落とす、これは二十五条の六項で傍受記録になりますので、当然当事者には通知しなければいけません。その点をまず前提として御理解いただきたいというふうに思います。  捜査官乱用する場合ということをずっとおっしゃっておられますが、一つは、後ほどそれを利用するつもりでそもそも傍受記録に故意に落とさないということになりますと、それはこの法律ではもちろん違法な行為になりますし、それを最初から意図して、つまり正規の手続で適正に電話傍受するつもりでなくて、当初から令状をとって違法な傍受を行うということになりますと、これはもう全体として違法性が強いということで、むしろ三十条に規定しております懲役三年以下のいわゆる盗聴の部類に属する話というふうになりますので、違法性が甚だしい場合、あるいは形式的にこの手続に乗るけれども目的は全然最初から別にあるというようなことでありますと、これは法律は許すわけではございません。それはもうまさに違法な行為として刑事事件になるということでございます。その点はぜひ御理解いただきたいと思います。
  159. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 今、乱用防止の制度保障について聞いているわけですから、仮に捜査官がそういうことをすれば懲役三年以下の処罰をされるんだからやらないはずだと言うのだったら、これはもう議論にならないわけですよ、制度保障の問題とは別の議論ですから。  ただ、警察官の共産党幹部に対する盗聴事件だって、あれはやれば犯罪でしょう。だけれども、やっているわけです。あるいは私が本会議で質問した調書の捏造、これは虚偽公文書作成罪です。やれば犯罪です。あるいは懲戒されるでしょう。そういう処罰される、懲戒されることになっているけれども、実際にやられているわけです。だから、やれば処罰されるということは、今の乱用防止の制度保障議論とはまた別の問題なわけです。(発言する者あり)  委員長、何か関係ない人がしゃべっていますけれども委員長、服部委員に発言を許可したでしょうか。
  160. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 質問をお続けください。
  161. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 最後の質問になるわけですけれども、結局私が言ったのは、まず傍受記録が正常に作成されない場合もある。まれなケースでもあると言われた。その場合にはやはり裁判所はノーチェックだ。それから、さらに警察官が、じゃそういう方法があるんだ、傍受記録にどうしてもしたい場合には後からやればいいんだというテクニックを凝らした場合に、やった場合には、警察官がそれをやれば犯罪になるからやりませんという議論じゃだめなんです。  法律上、そういうことをやればすぐばれる、あるいは絶対やれないような制度保障がこの法律になされているんだということを説明していただかなくちゃいけない。  この質問を最後に、私の質問を終わります。
  162. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) どうも先生の御質問は、結局午前中の論議の冒頭に戻るような感じがいたします。つまり、いろいろな仕組みを考えても、結局それを守らない者がいるじゃないかという議論だろうと思います。  それについては、先ほど申し上げましたように、この法律の中にそういったこともある可能性もあるということでいろいろな担保を置いているということでございまして、個々には触れませんが、当然先生のおっしゃるような事例についての対応もこの中では十分にされているということでございます。その細かいことは、午前中を通じてずっと申し上げてきたいろいろな点をお考えいただければ御理解いただけるのではないかと思います。
  163. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  164. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  165. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  きょうは、私にとりましては初めての質問になりますので、まず最初に、私ども公明党、そして私がどういう立場から質問するかという、これを少し明らかにしておきたいと思います。  昨年三月十三日に当時の与党が提出いたしました政府原案は、これは一言で言えば、あれば捜査に便利との安易な発想によるものであると思います。証拠収集の方法としての代替性の有無などの検討がなく、乱用の危険が極めて大きなものであったと思います。そして、公明党は政府原案については一貫して反対立場をとってまいりました。浜四津代表代行が反対を主張したのも当然でございます。  私たちは、ある法律案に対しまず賛否を決めなくてはいけません。採決に賛成するか反対するか。この時点では反対という態度でございます。政府原案に反対すること、これがイコール憲法二十一条二項の例外は一切認めないとか、どんなケースにも通信傍受を一切認めないということにはなりません。  修正案に反対する政党で、通信秘密の例外は絶対に認めない、あるいは通信傍受という手法は一切認めないという主張をするところがありましたならば、明確にこの委員会冒頭でその旨を明らかにしていただきたい。もしかすれば、基本的立場は私たちと異ならないかもしれないからであります。また、そのような各会派の見解といいますか、立場を明らかにすることが以後の質問意味内容理解する手助けになると私は考えております。  まず、覚せい剤を初めといたします薬物が暴力団関係者のみならず一般の主婦や青少年にまで使用が拡大しているという現実に対しまして、国が対策を講ずるのは当然のことであると考えます。  そして、いわゆるマネーロンダリング規制法案、これが犯罪組織による犯罪収益の剥奪を目的とするものであるとするならば、その犯罪収益の多くを生んでいるのが暴力団による薬物犯罪でございますから、その薬物の売買を規制しようとすることは当然のことであると私は考えます。  問題はいかなる方法でこれを規制するかということで、ここで通信傍受法という一つ法案が出てきたわけでございます。  薬物犯罪を規制するにはどうしたらいいか、こういうふうな観点から私どもはその犯罪摘発の方法として通信傍受という方法が必要不可欠なのかという検討をしてまいりました。そして、極めて限定された犯罪について、捜査手法として例外的に通信傍受を採用することは許されるし、必要である、こういう結論に達しました。これは党内の法務部会で何回も何回も議論を重ねまして、党独自の見解としてまずまとめ上げたものでございます。それが今回の修正案として採用されたものであります。  公明党は変節したとか、こういう批判が他党からございますけれども、公明党は党独自の立場からあるべき通信傍受の方法についての党の見解を示したわけでありまして、もし私たちが変節したというのでありましたならば、組織犯罪対策について通信傍受という方法を認めないならばどういう有効な捜査手法があるのか、これを示さない政党、それから通信傍受についてもこういうふうに修正すればいいのではないかとか、こういう立場を明確にしない政党というのは、これはむしろ私は怠慢ではないかというふうに言わせていただきます。  いずれにしましても、各党、一切認めないのか、条件つきで認めるのか、条件つきで認めるとして従来の検証許可令状の運用にゆだねて立法措置を認めないのか、立法措置は必要だが政府原案同様修正案には反対だというのか、これがいまだ明らかでないように私には思えてなりません。  このようなことになりましたのも、政府原案が余りにも広範な犯罪対象等を認めておりましたために、各党とも、うちの党も含めてですけれども、その阻止のためにエネルギーを集中させ過ぎたからであると私は思います。本来冷静に検討すべき組織犯罪対策や、あるべき通信傍受法議論を空洞化させたことをとても残念に思います。  組織犯罪対策、これはとりわけことし上半期でも既に一トンを超える押収量があるということです。〇・〇三グラムを一発分として三千二百万発分ぐらいに相当すると言われておりますが、私が仕事をしておりましたときには、使用は大体〇・〇二グラムが多かったなと思うんですが、これはささいなことであると思います。非常に大量の覚せい剤が押収されている現実がございます。薬物汚染から国民を守るために各党はいかなる対策を提示できるのか、これもこの委員会で審議すべきこと、検討すべきことではないでしょうか。  いろいろ議論を聞いておりまして思うことは、通信傍受法案は組織的な犯罪、とりわけ私どもは薬物犯罪というのを強調したいわけですけれども、この摘発のための手段であります。目的のための手段でございます。議論が手段の細部に拘泥する余り、通信傍受という手段を与えないならば、目的である組織的犯罪対策として他にいかなる有効な方法があるのか、こういう議論がなされないとしたならば、これは非常に残念なことであります。これは国会議論の中で各党は明らかにすべきです。この部分の検討が欠落していることを指摘させていただきます。  なぜこのようなことを申しますかといいますと、午前中の議論で、民主党の小川委員の方から乱用のおそれということで、例えば通知等すべて行かなかったならば、事後的なチェックをどうするのかというやりとりがございました。  私、実は伺っておりまして、小川委員が意図するところをわかっておりました。要は、全く乱用というものをなくするならば、これは一番いい方法は原記録、これは立会人が外形をチェックするわけですが、その外形チェックされたこの原記録を裁判官が全部チェックするというのが一番乱用の危険がないパーフェクトな方法であろうと私も思います。例えば裁判官が全部その原記録をチェックして、ああこれはいいですよというオーケーが出てから傍受記録を作成するとかすれば、これは全く乱用の危険はないわけで、非常にすばらしい方法であると思います。しかし、それが実際できるかどうかということなんですね。  裁判官が忙しいとかいろいろ言われておりますけれども、実際に原記録を全部裁判官がチェックする、すばらしい方法だけれども、これをチェックするとしたならば、現実にどういうふうな問題が起きるかということでございます。その原記録を全部聞くわけですから、捜査機関が聞いたと同じ時間、裁判官はそのテープの再生に張りつけになると思います。裁判官がチェックするんですから、裁判所の書記官におまえちょっとやっておいてくれなんということは許されないと思います。これが果たしてできるのかということと、それから現実にそこまですることが必要なのかという判断があると思います。これは無理であろうと原案作成者も思ったんだと思いますし、私も思います。  そこで、じゃ別の方法はないかということで通知制度、これに一つの事後チェック機能をゆだねたのだと思います。そうしますと、裁判官が事後的に原記録を全部チェックする、これを一〇〇%としますと、この通知による方法ですと、次善の策ですからどうしても一〇〇%満たされない部分が出てくると思います。ここが皆さん心配されている乱用の危険ということだと思うわけです。  そうすると、裁判官のチェックと通知によるチェックと、その差が必ず出てきます。乱用があるかもしれません。じゃ、これがあるからだめだというのか、それとも一方で組織犯罪対策として、一方で薬物犯罪を防がなくてはいけない、この必要性との兼ね合いでここまでの差ならば仕方がないではないかという、要はこの判断であると思います。  それから、乱用といいますと、余りいいかげんな言い方をしてはいけないんですけれども、人間がいる限りどんなところでも乱用というのはあり得ると思います。これがいいというわけではありません。法律にやはり明文化、条文化する、文章表現するということですから、微に入り細に入りすべて規定することはできません。そして、人間を我々はコントロールできないわけですから、乱用の危険というのは至るところにあると私は思います。ですから、一〇〇%乱用がない制度なんかはつくるのは不可能だと思います。ただ、いかにそういうことが少ないように努力して規定をつくっていけるか、これに私たちは挑戦するしかないのではないかというふうに思います。  以上、前置きが長くなりましたけれども、こういう姿勢から公明党、質問をさせていただきます。  きょう、実は私にとっては初めての審議で、ほかの方の、特に反対会派の方の意見を伺うというのはとてもいいですね。ああそういう考えがあったのかと気づくことがございます。ですから、本当に精力的に審議を尽くしていかなくてはいけないんだなというふうに私も思った次第でございます。  例えば今まで気がつかなかったいろんなことに気づいてくる。午前中に民主党の角田委員が、憲法二十一条二項、公共福祉による制限というものは明文として入っていない、これは憲法が絶対的に認めないという趣旨ではないかと。憲法の例外として認めているのは郵便物の差し押さえ、郵便物等といいましょうか、これは刑事訴訟法百条、そして捜査には刑事訴訟法二百二十二条の一項でしたでしょうか、これで準用されております。それから受刑者通信という例外、例外はこれだけだとおっしゃるのでしょうか。もしそうだとするならば、時代状況というものを考えてみる必要があると思います。  この刑事訴訟法はいつ施行かというと昭和二十四年で、多分この郵便物等の差し押さえもこのころからあったのだと思うんです。それで、例外はこれだけなんだから、通信傍受なんか認めていないんだと言われると、ちょっと待ってくださいよと。その当時、電話というのはどれくらい普及していたのかということです。その当時、携帯電話があるはずもございません。戦時中の官憲人権侵害の色濃い時代ですら、実は郵便物については、これも通信秘密対象ですけれども、例外を認めていた。私はむしろここに意義があるのではないかというふうに思っております。  それからもう一つ角田委員質問で非常に納得した部分がございました。角田委員五条解釈について聞かれまして、「通信状況を監視」という意味はどういう意味ですかというふうに質問されました。つまり、中身を含むのであるならばそれが一般市民一般会話も侵害する、こういう不安を持っている人もいるという質問でございました。これを聞いてやっと私は納得したんです。  といいますのは、修正案というのは原案と変わりがないと簡単に切って捨てる人もおりますけれども、私どもは一生懸命考えました。そして、考えたところ、その修正案が出た後も、何だこんなの変わりないじゃないかと。あるいは修正案を前提としましても、この法律が施行されたその日からあなたの電話は警察に盗聴されていると覚悟した方がいいなんということを言っておる人がおるんですと。監視社会になる、あなたの電話盗聴されるとか、どう考えてもそういうことにならないわけですから、何でこんな議論が出てくるのか、まさかわざと国会議員がデマ宣伝するわけないし、おかしいなと実はずっと悩んでおったんです。先ほどの質問を伺いまして、ああそうか、そういう解釈のところでわからないところがあったのだから、そういう不安をつくる原因になったのだなというふうに気がつきました。  ですから、やはり国民皆さん修正案の中身がまだよくわからないがために、いたずらに不安を抱いておられる方がいらっしゃる。それから、政府原案ははっきり言ってひどかったものですから、あの亡霊にまだ悩まされている方もいらっしゃるのかなと思いますので、本当にこういう審議を通じていたずらな不安は取り除いてさしあげるべきだろう、こういうふうに私は思います。  それで、質問に入るわけですが、民主党さんが質問をされて、反対派はどこら辺が問題だと考えておられるかよくわかりました。それから、修正案に対するほかの批判はどういうものか。一つ手がかりになりますのは、六月十三日でしたか、NHKの「日曜討論」がありまして、民主党さん以外は法務委員の理事、オブザーバーが出た関係がありまして、そこでこういう批判があるんだなということがわかりました。  それで、いろんなところで批判が出てきます。これを前提にして、こういう部分はどうなっておりますかと、修正案提案者の方、それから法務省の方に順次お伺いしたいと思います。  まず最初に、これはNHKの「日曜討論」で、従来の捜査方法でいいじゃないか、こういう意見がございました。検証許可令状による従来の通信傍受の方法で足りる、だから通信傍受法は要らないということだと思います。私ども、党の見解をまとめるに当たりまして、ほかに有効な捜査方法があるかどうか、こういう検討をしていったその結果、対象犯罪を四種類に絞りました。  議論をわかりやすくするために、薬物犯罪ということを前提としてまず質問をしていきたいというふうに思います。検証許可令状で足りるかどうかの前提といたしまして、修正案の提案者の方にお尋ねいたします。ただ、捜査の現場におられた方はいらっしゃらないと思いますので、あとはまた刑事局長に補充していただければというふうに思います。  薬物事犯の検挙、これは末端の使用者等が捕まって、それから上へ突き上げていく上部被疑者への突き上げという方法が通常なわけですけれども、これも含めまして、薬物事犯の検挙、摘発について、通信傍受は必要な捜査手法なんだ、従来の捜査手法ではもう限界があるんだ、こういう点が当然あると思うのですが、これをなるべく詳しく具体的状況に即してお話しいただきたいと思います。
  166. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) お答えいたします。  今、薬物事犯につきまして例をという御質問でございます。今回、対象犯罪を四つに絞らせていただいた中で、その薬物事犯というのが私たちとしても最も深刻かつこの対象となり得る犯罪ではないかというふうに考えた次第でございます。  薬物関連犯罪というのは、一般的に組織的に行われるものでございまして、これらの犯罪の準備、実行というのは密行的に行われ、犯行後にも証拠を隠滅したり犯人を逃亡させるなど、そういうようなさまざまな工作が組織的に行われることが少なくないというふうに理解しているところでございます。  大森委員捜査の現場で長年の経験を積まれていることでございますので、私の方から申し上げるまでもないかとは思いますが、こうした犯罪は、末端の実行者、いわゆる末端の者を逮捕したとしても、その供述による突き上げ捜査などといった従来の捜査方法だけでは、それに関連します、あるいはその指示を出している首謀者等の氏名や関係性、関与等を解明することはなかなか容易ではないという実態がございます。  他方、これらの犯罪において、犯行の準備、実行あるいは犯跡隠ぺい等のために犯人間におきまして相互に指示、連絡、報告等がどうしても必要なわけでございまして、そのためには最近普及の著しい携帯電話を初めといたしまして電気通信が適宜多用されているということが現状でございます。そこで、こうした通信傍受することというのは非常に効果的であり、その意義は大きいものというふうに私どもは考えているものでございます。  そうした意味で、とりわけ今回限定をいたしました四類型の犯罪、その中でも特に薬物の事件につきましては、それらに対して適切に対処するためには、やはり特別の捜査手法として通信傍受を認めることが適当であるというふうに考えているところでございます。
  167. 大森礼子

    ○大森礼子君 そのとおりでございます。  薬物犯罪につきましては、例えば十かけたらできるのを二で済まそうと思って便利だという言い方ではなく、やはりこれが不可欠であるというふうに私は思うわけです。  きょうの午前中、民主党の委員が出されました「法学者声明」がございます。この中に、「通信手段が高度に発展し市民生活に広く根ざしている現在、」と、今現在の状況認識がございます。そのとおりなんです。市民生活に広く根差すということは、これは犯罪者もこれを同時に使ってやるということでございまして、私は思うんですが、いろんなことを考える場合、昔「青春の光と影」という歌がありましたけれども、やはり光の部分と影の部分というのがある。影の部分を見失ってはいけないと思うわけでございます。  それで、この通信手段の発達でどうなったかといいますと、刑事局長に後でチェックしていただきたいのですけれども、まず薬物売買の末端の使用者を捕まえます。供述をとります。だれから入手したということを言います。言わない場合も多いです。相手が暴力団だったら報復を恐れてまず言わないことが多い。仮に供述した場合どうなるか。一方が否認した場合どうなるか。これは密行性といいましてなかなか客観的な証拠というのがございません。パケ、シャブが入っているパッケージですね、これに指紋でもぴたっと残っていればいいんですけれども、そんなものを残すばかはおりませんし、ほとんど物的証拠というのが乏しいわけでございます。  そして、一方が供述しても一方が否認したならば今度は、ここに弁護士さんたくさんいらっしゃいますから法廷でどういうことが起こるか御存じだと思いますけれども、一対一の供述になったときにどちらの供述がより信用できるかということで事実認定がされるわけであります。ところが、しゃべった方も実は覚せい剤を使っておりまして、そういう覚せい剤を使う人間の供述がどこまで信用できるかということがありまして、なかなか一対一で一方が供述した場合でも立証できないという、これも捜査の常識になっております。  今申しましたのが対面売買の場合でございます。そして、電話等が発達しますとどうなるか。よく従来の捜査方法でいいじゃないか、自白をとって正攻法でやれという元検察OBの方もいらっしゃるのですけれども、ちょっと無理な要求だなと思うんですね。内偵捜査でやれといっても、何か怪しいやつだなというので尾行していきます、行き着く場面は何かといったら、携帯電話をかけて連絡をとっている姿じゃないかなというふうな気がいたします。  それから通信手段が発達する、組織犯罪は何人かが連絡をとり合ってやるわけですから、これは本当に電話というのは便利なものでありまして、一緒に話し合っている姿がいっぱい見つかれば内偵捜査等でもできるのでしょうけれども電話の発達によりまして非常に困難になっております。対面売買のケースが電話によって今なくなって、少なくなってきている。例えば電話で買いたい人が売人に申し込む、そうした場合、あと売る方はじゃどこそこと金を受け取る場所を指定します、金を置きます、それを確認します、もう一回電話連絡をとって、じゃどこそこにブツを置いているからとりに行け、とりに行く、こういうやり方、方法でお互い顔を合わさないケースでこの売買がされているわけです。  そうしますと、使用で捕まった人間にあなたこの覚せい剤どこで入手したのと聞いても、売った人間の顔とか見ていなければわからない。金を置いた場所はどこです、ブツを手に入れたのはどこそこです、それから相手はこんな声でした、そしてあとはその売人の電話番号ぐらいではないかなと私は思うんです。自白とりといってもなかなか売った人間の人物については供述が出てこない。私はこれが今の薬物犯罪の実態の一つではないかと思うわけです。  何か質問する側がしゃべっちゃって申しわけありませんけれども、ただやはりここの現状というものを御理解いただかないと、ほかに方法があるだろう、いやないと水かけ論になりますので、まず理解していただきたいと思って述べたのですが、刑事局長、このようなことでよろしいのでしょうか。つけ加えることがあればつけ加えていただきたいと思います。
  168. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 覚せい剤の末端の売買が今や対面方式から非対面の方式に基本的に移っているということは、今委員指摘のとおりでございます。その難しさも委員の述べたことでほぼ尽きているのかなと思います。  一点だけ補充させていただきますと、現在六月十六日段階で、委員指摘のように覚せい剤の押収量が一トンを超えております。このかなり大量の部分が密輸の段階での押収ということになります。  これについて、今どういう現状にあるかをちょっともう一つ具体例として申し上げたいと思いますが、外国から何月何日にどこどこの港に、あるいはどこどこの組がある外国のここから百キロ単位なり何百キロ単位の覚せい剤を輸入する計画がある。これは今のところそちらの国で把握したところによると、何月何日、例えば大阪の港に入るとか神戸の港に入るこれこれの船が利用されるとか、あるいは瀬取りといいまして、日本近海まで相手国の船で行き日本近海で日本の漁船等がそれをとりに行く、沖合で受け渡しする。これも二通りありまして、直接じかに受け渡しする場合と、もう一つは、特定のポイントを定めて覚せい剤をまず持ってきた船が投げ入れます、それを次に日本の漁船が行って回収するという方法と二通りありますが、そういったやり方でどうも覚せい剤の取引がありますよという連絡が来ます。  その場合に日本捜査機関はどうするかということなんですが、最近の一番有効な方法はコントロールドデリバリーというやり方をやります。これは国際的にかなり多用されておりまして非常に有効な方法でございます。と申しますのは、神戸の港にその船が入ります。それで捜査機関は監視網をしきます。そうしますと、その暴力団組織、これは恐らく日本の暴力団組織になります、それが大量の覚せい剤を受け取りまして、それを国内の今度は販売ルートに乗せていくということになります。それを監視網をしいて追跡しながら、ある一定の段階で一網打尽にするというやり方です。  これがコントロールドデリバリーという手法でございますが、問題は、我が国はこのコントロールドデリバリーについて諸外国ほど実績がありません。件数が少ないということです。と申しますのは、このコントロールドデリバリーをやるためには、どうしても組織をある程度解明して、肝心なところの謀議についてこれを明確にとらえなきゃいけません。その謀議のほとんどは委員指摘のように電話等でなされます。直接対面してなど、あるいは暴力団の幹部が一堂に集まってこれをどうしようなんということは今やりません。それは全部通信手段を有効に使ってやるわけですが、この傍受ができませんので、日本はコントロールドデリバリーの相手国としては必ずしも十分な信頼を得ていないということでございます。それでどういうことになるかといいますと、何件かのケースは非常に成功裏にコントロールドデリバリーができまして、かなり幹部まで検挙したケースがあります。しかし、なかなかそれができないということです。  これでひとつ御理解いただきたいのは、先ほど押収量が一トンを超えたといいますが、これは例えば日本捜査機関がたまたま相手の方で予定している場所に張り込んでいるとか、あるいは予定した漁船をキャッチしましてそれが動けなくなってしまった、投げ入れはしたけれども受け取りに来ないわけです。それが海岸に流れ着いてくる、ビニールに厳重にこん包されて百キロというふうな形になります。ところが、こういうケースではなかなか犯人が検挙できません。これだけ大量な覚せい剤が日本に持ち込まれるという事態にかかわらず、暴力団の中枢まで手が及ばない。  それからもう一つは、仮にコントロールドデリバリーでやったとしても中枢の謀議がわかりませんので、順次追っていきますが、こういう大量の覚せい剤をとりに来るのは暴力団の周辺にいる者にすぎません。暴力団の中枢の幹部あるいはこれに主としてかかわるような中心的にいる者は表に出てこないわけでございます。  そういう意味では、組織防衛が今徹底しているということが言えるわけでございまして、そうした極めて重大なケースについてこの通信傍受というものは極めて有効な方法である。先生指摘の末端の使用事案から突き上げていくにも有効な方法であると同時に、大量の覚せい剤が密輸入される現場においてもこれは極めて有効な方法であり、この際、それ以外にここらあたりの幹部を集中的にたたくという方法はないというふうに考えております。
  169. 大森礼子

    ○大森礼子君 どうもありがとうございました。  私がした説明は、従前と比べて末端部分の突き上げでも非常に困難になってきている、こういう趣旨に理解していただければと思います。薬物事犯、この捜査現状といいますか、お話しいただきました。  そこで、反対される方、結構です、この修正案もどんどん批判していただきたい。知恵を絞ってもっといい方法があるのかどうか考えることも必要だと思います。ただ、それのみならず、こういう現状があるわけですから、もし通信傍受の方法がなくても、もっとこんないい方法があるじゃないかという案がございましたらぜひお示しいただきたい。きっと法務省だって一生懸命考えるだろうというふうに私は思います。  それで質問をもとに戻します。従来の検証許可令状の方法、それによるべきであって、あえて通信傍受法などという法律をつくる必要はないという御主張があります。これを前提に、まず基本的なことですが、通信傍受で検証許可令状によった理由といいますか、これを簡単に説明していただけたらと思います。法務省の方、お願いいたします。
  170. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 検証と申しますのは、人の五官の作用によりまして対象の存在とか内容状態、性質等を認識するということでございます。これまで行われました電話通信傍受は、電話回線を流れる電気信号を音声に変換した上でこれを認識して記録するということでございますので、その性質は有体物の押収を目的とする押収、捜索、差し押さえということではなくて、今申し上げました検証に当たるというものと考えられましたために、過去に五例、検証令状によりまして傍受をした例があるということでございます。
  171. 大森礼子

    ○大森礼子君 例えば、新たな証拠物を必要とするようになった場合にどの令状によるかということは過去においても議論がございました。強制採尿ですか、あるいは捜索・差し押さえ令状だったでしょうか、どの令状が適当かといろいろ議論されて、今は捜索・差し押さえ令状に定着している。それは判例によって定着したものもありますし、そして定着していないのが実は私はこの検証許可令状による通信傍受ではないかなというふうに考えているわけです。ということは、やはり令状による場合にはそこにはいろんな限界があるから広くこの方法が普及しないのではないかというふうに思っております。  また角田先生のことばかり言って済みませんが、NHKの討論で角田先生は、哲学の問題としては権力は悪をなすと述べられました。私もそのとおりであると思います。権力は悪をなすという哲学、これを持つと同時に、国家は国民の生命、身体、財産を守る義務があるという哲学も私は持っておりますし、また国会議員は皆さん持っておられるだろうと思います。  犯罪というものは最も直接的な私人による人権侵害でありまして、放置してよいはずがないのであります。そして、権力は悪をなす、なしやすいからこそ、これを国民があるいはその代表である国会議員が監視するのが当然でありまして、だからこそ憲法三十一条が法定手続というものを保障し、刑事手続で恣意的な運用を許さないとしたのだと思います。つまり、手続は法律で定めると規定したのだというふうに思っております。  通信傍受を一切認めないという立場をとるのでなければ、権力を監視するために厳格な手続を法定するのが私は正攻法ではないかというふうに考えているわけなんです。それで、判例の運用だけでいいのかどうか、むしろこれは権力は悪をなすという思想とは矛盾するのではないか。申しわけございません、違うかもしれませんが、こんな気もするわけです。  それで、要は判例が示しております検証許可令状による方法が本当にいいのかどうかということについて少し質問したいと思います。  検証許可令状による通信傍受については、むしろいろんな問題点が弁護士さんとか法学者の方からも指摘されていたように私は思うのです。どういう問題点があったのか、できれば詳しく教えていただきたい。それから、要は通信傍受法もこれは人権にかかわるということで論議されているわけですから、むしろ検証許可令状による方法は人権の見地からもいろいろ問題点があると指摘されていると私は思っております。どういう問題点指摘されているか、これを法務省の方にお尋ねいたします。
  172. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 検証による通信傍受は五例あるわけでございますが、先生指摘のとおり、法律においてその具体的な要件等が定められておりません。個々の事案ごとに令状請求を受けた裁判官判断するということになりまして、まずその指摘の第一点は、その運用も区々にわたるおそれがあるということが言われております。また、検証令状による場合には対象犯罪等に限定がございません。また、傍受実施の方法あるいは記録をつくるのかつくらないのか、つくってだれが保管するのかといった記録の作成、保管。それから三点目には、通知等の事後処置はどうなるのかということが法文上では明らかになっていないわけです。そのほか、不服申し立ての手続など関係者の権利保護に関する規定がないというような点で、その適正の担保のための処置は検証令状の運用ということでは難しいのではないかという非常に強い指摘がございます。  こういったことから、やはり通信傍受というものについては厳格な手続を法律で定めるべきではないかということが強く言われていたわけでございます。
  173. 大森礼子

    ○大森礼子君 検証許可令状によるものもいろんな批判がされていた。ですから、札幌高裁の判例がありますけれども、これでも弁護人の方から、むしろ司法が事後的に確認する手続がないではないか、被傍受者、傍受された人が事後的に救済を求める手続の保障がないではないかということが指摘されていたところであります。  修正案より検証許可令状による方が非常に厳格な手続がやられているとおっしゃる方がいらっしゃいます。どういうことかなと思ったら、例えば立会人切断権とか、傍受するにしても時間を限定的にするとかという理由だそうであります。これがすべてではないのでしょうけれども、これが判例によって認められた検証許可令状の方が修正案よりすぐれているという趣旨であれば、私は部分に気を奪われる余り全体の評価を少し見誤ってはいないかという気がいたします。  今、いろいろ問題になっております切断権とか、ここについてはきょうはちょっと時間が足りませんので、次回詳しく質問させていただきます。  ちょっと質問を飛ばします。アメリカの例は次回にいたします。  令状の却下率が低いから通信傍受法案によっても有効なチェックにならないんだという批判がございます。日本では令状の却下率が極めて低いから令状発付権者を地方裁判所の裁判官限定してもチェックにならないという批判でございます。  政府原案では令状発付権は急速を要する場合には簡易裁判所の裁判官でもよいとされておりました。修正案では地方裁判所の裁判官限定しましたけれども、この理由修正案提案者の方にお尋ねいたします。
  174. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 修正案におきましては、令状発付権者を地裁の裁判官限定したわけでありますが、それは、通信傍受通信秘密に一定の制約を加えるというものであり、その令状発付の要件も厳格にこの法案によって定められているところでございます。そのような要件についての判断というのは、やはりこれは慎重の上にも慎重になされるべきであり、またこのような趣旨から令状請求権者も限定したところでございますので、傍受令状発付は、令状請求権者の限定にもあわせまして、これを地裁の裁判官に限るということにしたものでございます。  また、請求権者にも限定を加えたこと、また衆議院における審議におきまして、警察内部等におきます決裁の方法についても、それぞれ都道府県の警察本部長の決裁を必要とするというふうなことになったことから、これを地裁の裁判官に限るということにしたとしても支障も生じないというふうに考えているところでございます。
  175. 大森礼子

    ○大森礼子君 私、実は党の部会の方で党の見解を出すに当たって検討してきたものですから、その議論、実はわかっております。  それで、請求権者も実は警察の場合警視にした。これも実は共産党の盗聴事件等がありまして、それで組織のトップが知らないということ、こんなことは言わせまいということで実はその責任、それから、本部長決裁ということも、確かに判こだけですとおっしゃるかもしれませんが、やはり責任がありますので、もう言い逃れを許さないという実は考え方も働いておりました。  それから、簡易裁判所の裁判官を外した。これは簡易裁判所の裁判官に失礼なことになったら困るんですけれども、裁判所法の三十三条に簡易裁判所の裁判権というものが規定してございます。事物管轄です。この一項二号で、簡易裁判所の裁判官が扱える刑事事件としては、罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪、それから賭博とか窃盗、横領、贓物罪、こういうことになります。その二項では「簡易裁判所は、禁錮以上の刑を科することができない。」と、ただし書きがありますけれども、こういう規定があります。  そうしますと、実務的に考えましても、簡易裁判所の裁判官を軽く見るわけではございませんけれども、こういうことであるならば、日ごろのお仕事で組織犯罪とかということについてほとんどといいますか余り接しておられない。それよりも、そういう事件に接する地方裁判所の裁判官に限るべきだ、実はこういう検討もしてこういうふうになったわけでございます。一生懸命考えたつもりなんですけれども、ほとんどこれは評価されていないんです。  ある新聞、五月二十九日付の全国紙です。これは修正案の中身を知った上での記事なのですけれども通信傍受についての記事です。「令状発付権者の問題でも、地裁裁判官が膨大な訴訟を抱えて常に多忙であって、令状チェックが十分でないという現状を考えれば、地裁裁判官限定しても実効ある修正とはいえない。」と、もうすぱっと切ってくれまして、もう参っちゃうなと思ったのですけれども。  それで、忙しいことは確かでしょう。令状チェックが十分でないという現状、これを認めるかどうかという問題もありますけれども、実効ある修正とは言えないとするならば、実効ある修正というためにはどうしたらいいのかというふうに私考えたんです。もとの原案の簡易裁判所の判事の方に戻せということなのか、それとも高等裁判所の裁判官に限れということなのか。じゃ、どうすればいいのという疑問が出てくるわけでございます。  それから、令状の却下率が低いから地方裁判所の裁判官がだめだとか、忙しくて十分チェックできないからだめだとか言われますと、ではどうするのか。令状主義をとること自体をやめなさいということなのか、あるいは裁判官が今の二倍になるまでこういう法案は待っておきなさいということなのかなと思って、非常に悩んでしまうわけです、こういう批判を真剣に受けとめますと。  アメリカは年間二百万件盗聴されている、この数字の中身も次回お尋ねいたします。八割は無関係市民傍受、この内容が真実であるかどうかも次回お尋ねいたします。  令状でチェックすることは全く形式論理と、こういうふうに切って捨てられる方もいらっしゃいます。そうであるならば、憲法保障する法定手続というのは一体何なんだろうか、憲法三十三条、三十五条のその令状主義とは一体何なんだろうか、こういうふうに思うわけでございます。  修正案提案者の方にお尋ねしますが、こういう地方裁判所の裁判官であっても、令状チェックが十分ではないから有効ではないという修正案に対する批判についてどのようにお考えでしょうか。私が答えを言ってしまったかもしれませんが、お尋ねいたします。
  176. 笹川堯

    衆議院議員(笹川堯君) 今、大森委員からいろいろと教えていただきました。我々は一般の善良な国民でありますから、裁判だとか検察官の経験はございませんが、やはり反対する方は対案を出していただきたいということ。  簡易裁判所は今御説明のあった内容で、我々もやはり地裁の裁判官が適当であろう。あるいは警察部内におきましても本部長が決裁して、今後はもう知らないなんてことは絶対言わせないよと、こういういろんな歯どめをかけました。しかも懲役三年、罰金百万円だ。肝っ玉の小さい公務員はこれを知ってまでやろうとは思いません。あれもだめこれもだめということになれば、きょうもあしたも毎日こういう薬物の被害者は出ていますから、これがおくれることによって我々はやっぱり自分の仕事をやっているというふうには思わない。夜を徹してでも審議をしていただいて、国民の負託にこたえられるように犯罪を少なくしたい、このことをぜひ御理解いただきたいと思います。
  177. 大森礼子

    ○大森礼子君 では、次の質問に移ります。  時間の関係であと一つの論点ぐらいしかできませんので、法案十四条のいわゆる別件傍受について質問させていただきます。  別件傍受ということで、この別件というのは、その令状に記載されている事実以外のことをそのときには令状なしで聞くということで別件傍受と言うのだと私は理解しております。これは、批判があるということは、一切認めないという主張なのか、あるいはもっと要件を厳格にすべきという主張なのか、そこがよくわかりません。これからいろんな方が質問する中でそれは明らかになってくるというふうに思います。  政府原案では、この十四条で「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に当たるもの」と、これがいわゆる別件の対象でございました。  これは私どもは広過ぎると、こう考えました。長期三年以上と言うと何かすごく重いように聞こえるんです。重いんですけれども、窃盗罪が入りますね、十年以下。傷害罪、これも十年以下です。器物損壊罪、これはたしか三年以下でしたから三年以上に入るのではないでしょうか。それから住居侵入罪、これも三年以下、三年以上にも入るとか、業務上過失傷害、交通事故、それから名誉毀損。非常に多いわけです。  我々は失礼ながらこれがなぜだめだと考えたかといいますと、これですと、勢い乱用の危険があるということです。何かの薬物とかそういうことで、つまり今回対象犯罪四種類に絞ったとしても、何かで傍受令状をとって、それで目的はこの別件を探すといいますか見つける、こういう方法で傍受することを許すのではないか、こう考えたわけです。  といいますのは、暴力団員が被疑者ですと、一つ傍受令状をとる事実がありますと、たたけばほこりが出ると言ったらしかられるかもしれませんけれども、長期三年以上ですと何か該当していると。そうしたら、それでまず捕まえていろいろなことを調べ出す、こういうことになりかねないということで、私どもはこの法案十四条の原案については反対したわけです。  ですから、政府原案には本来の対象犯罪を絞るという作業、それから別件に当たる犯罪を絞るというこの二重のチェックが必要だというふうに考えていったわけであります。そして、その結果修正され、「別表に掲げるもの」、これは対象犯罪四種のものです、「又は死刑若しくは無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たるもの」と、こういうふうに要件が非常に厳しくなりました。  短期一年以上というのは、これは裁判所法二十六条二項二号で規定してありますように、刑事裁判を行う場合に単独ではできない、いわゆる法定合議事件、必ず三人の裁判官でやらなくてはいけないというこの基準にもなっております。  そうしたにもかかわらず、これでも別件傍受はだめだとの批判があるのですけれども、これについて修正案の提案者の方はどのようにお考えでしょうか。
  178. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 今、大森委員の方から修正の趣旨についても御説明をいただいたのですが、私どもは、これは限定されました四類型の犯罪について令状に基づき傍受をしているときにたまたま他の犯罪の実行にかかわる通信が入ってきた、しかもこれはその実行を内容とする明白な通信が行われたという場合におきまして、それは令状に記載されていないものであるから一切捜査に携わる者が傍受しないのかということを考えたときに、それはやっぱり犯罪捜査あるいは防止ということを考えたときに、重大なものについては傍受するということを認めることの方が適当であるというふうに考えた次第でございます。  ただし、先ほど大森委員からもお話がありましたように、この場合におきましても、基本的にはこの通信傍受というのは極めて限定的に行われるというのがその趣旨でございますので、とりわけ重大な犯罪であります短期一年以上のものに限定をさせていただいたわけでございます。  なお、いわゆる別件と言われておりますけれども、これは通常の理解、通常言われております別件というのは、先ほどお話がありましたが、軽い犯罪をまず対象として、それを端緒として重い犯罪に道を開くということでありますが、これはもともと最初の傍受令状に基づく傍受が認められるのが四類型に限定され、なおかつ組織性の強い犯罪限定されておりますので、そのような御批判は当たらないというふうに考えております。  また今回、修正によりまして、このような第十四条に基づく傍受が行われた場合には、通信の当事者の不服申し立てをまつまでもなく裁判官が職権で審査を行うという制度を設けることによりまして、一層その適正を担保したところでございますので、そのような批判については当たらないものだというふうに考えているところでございます。
  179. 大森礼子

    ○大森礼子君 これは法務省にお尋ねしましょうか、それとも修正案提案者にお尋ねしましょうか。短期一年以上の犯罪といいますと大体どんなものがあるか、ざっと幾つか挙げていただけると理解しやすくなると思います。
  180. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 短期一年以上ということですと、もちろん殺人だとかそういうものは短期三年以上でございますからこれは当たります。それから強盗、事後強盗、昏睡強盗等の類型いろいろがありますが強盗のたぐい、それから強姦、準強姦、それから逮捕監禁致死、傷害致死、こういったものでございます。そのほかに、余り例としてはありませんが、当然内乱予備だとか外患予備だとかというようなものも入ってまいります。
  181. 大森礼子

    ○大森礼子君 身の代金目的の略取等も含まれますよね。  それで、これでもだめなんだとおっしゃる方に一つ想像していただきたいんです。  私が警察官だといたします。覚せい剤取締法違反で傍受をしている。そうしましたら殺人に関する話が出てきた。あるいはどこかの子供を誘拐して身の代金を取ろうかと、これがぽっと入ってきた、そんなに頻繁にはないと思う、仮に入ってきた。そのときにこれを切るべきだ、聞くべきではないということを本当に多くの国民の方は捜査官に要求するのでしょうか。もし国民のほとんどの方が、前でも別なんだから幾ら殺人の相談でしょうがあれでしょうが聞くな、強制捜査というのは犯罪が起こってからやるべきものだから、実際、犯罪が起こってだれか殺されて、略取されてからやるべきだ、こう主張されるのかどうか、ここが問題だと思うんです。  もし国民の多くの皆さんが、いや、そんな殺人、どこかの人が殺されるんだからなんという人はいないでしょうけれども、切るべきだという意見が多いのであれば、捜査官としてはそれは非常に不本意ですが、そういう犯罪摘発が仕事、それでお給料もらっているわけですから、やはり捜査官の職業本能というものもございますが、従うだろうと思うんです。そこのところをやっぱり切った方がいいのかどうか、こういう問題であると思います。  考え方はどちらでもあると思います。私が知りたいのは、国民皆さんはどう考えるか。こういうふうに短期一年に絞りに絞ったのは、こういう場合であったならば、たまたま入ってきた傍受であっても、国民皆さんが、じゃそんな場合にそれを聞いて、そういう重大な犯罪は摘発しろ、抑止しろと、こちらを思われるんじゃないかなと思ったので、実は私たちはこういう形でしたわけなんです。これについて批判がありましたらまたお伺いしたいと思います。  それからもう一つ、この法案十四条、別件という以外にもう一つ問題がありますのは、「実行することを内容とするものと明らかに認められる通信」、皆さんいろんな言い方するものですから、別件傍受、事前傍受、準備傍受とか、そういう用語の使い方がよくわからないのですが、将来の犯罪というのを事前傍受皆さんおっしゃっているんでしょうか。そうするならば、将来実行すること、実行行為が将来ですね、それでまた予備罪が決められていない場合でしょう、これを内容とするもの、これを規定していることも多分批判の対象になっているのだと私は思うんです。  これはどんな場合かなと私考えまして、例えば自分に子供がいたとする。そうしたら、捜査官が聞いていて、私はお金がありませんけれども、すごく勘違いして身の代金目的で私の子供を誘拐しようとしていると。そうしますと、多分私としたら、そんなことになったらさらわれる前に警察が捕まえてほしいなと母親の心情として思うと思うんですね。そんな場合、うちの娘が誘拐されてから犯罪捜査をやってちょうだい、こんなことを私は言わないだろうと思うのであります。これも、いや、それでもやっぱりそれは人権上問題があるんだからやめろとおっしゃる両方の意見があると思います。要は国民皆さんがどちらの方がいいというふうに判断されるかということであると思います。  いずれにしましても、将来の犯罪を認めているということでも批判がありますけれども、強制捜査は過去の犯罪対象とするものだからと、こう限定いたしまして、将来の犯罪についての傍受は絶対だめだという批判に対しまして、これは原案ですから法務省でもよろしいんですね、どのようにお考えでしょうか。  というのは、我々やっぱり強制捜査は証拠収集というふうに考えておりまして、証拠というのは犯罪の痕跡というから、犯罪が起きたことを当然の前提ということでこれまで考えてきたものですから、こういう批判が起こるのはある意味では当然だと思います。こういう批判に対しましてはどのようにお考えでしょうか。
  182. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 将来の犯罪をどうするかという問題でございますが、現に通信傍受している最中に飛び込んできた、先ほど委員の御指摘のような例えば身の代金目的の誘拐だとかあるいは殺人だとか、これは現にそれが実行行為に移されている場合もあるでしょうし、移されるべくして計画されているということもございます。これは確かに令状に記載のない、被疑事実には記載のないことではございますが、今申し上げましたような重大な事案に限りましてこれは令状主義の例外にするということも当然考えるべきであろうと思います。  と申しますのは、現在の刑事訴訟法も基本的には令状主義をとっているわけでございますが、例えば現行犯逮捕でございます。現に目の前で犯罪が行われている、犯人を逮捕する、これは単に捜査機関だけでなくて私人にも許されているというところまである意味では令状主義の大きな例外を設けている。そのほかに緊急逮捕というのがございます。これも、犯罪があることが明確な場合に、令状をとるいとまがないというときには、これを逮捕してから後に裁判所の令状をもらう、請求をするというようなことで、現行の刑事訴訟法の手続中にもいろいろな形で令状主義の例外を設けているということでございますので、それとの比較も一つ重要かなと思います。  したがって、そういったことの比較で、本法案で、令状に記載のある犯罪事実以外の事実を探知した場合、それが重要な犯罪であるという枠を決めまして、これを傍受対象にするということについては、比較の問題として現在の刑事訴訟法の体系の中でも当然容認されるものだというふうに我々は理解しております。
  183. 大森礼子

    ○大森礼子君 私は、今の説明には少し同意できない部分がございます。  現行犯逮捕、緊急逮捕もあれですけれども、それはやはり実行行為がなされたということで、犯罪に入っているわけですね。それで、なぜ犯罪の未遂が処罰されるかというところで、要するに実行行為を犯したことで、実行行為の定義というのは、構成要件に規定してあるその結果を惹起する現実的危険をはらんだ行為、これを実行行為としているわけですから、そこから犯罪の実行着手があれば、その後のことについて、それは現行犯逮捕、緊急逮捕などはそうだろうと思うんです。  ところが、ここで言う将来の犯罪については、予備罪が規定されていない場合、またその構成要件に該当していない段階から認めることになりますね。ここを多分多くの方は問題にされているんだろうと思います。ですから、ここの部分については、やはり摘発の必要性とか、こういうほかの理由が要るんだろうというふうに私は思います。  時間の関係がありますので次に行きますけれども、検証許可令状によるべきだという方が実はこの将来行われる犯罪は絶対だめだと批判することはおかしいと思うんですね。なぜかならば、私、札幌高裁しかちょっと今記憶にないんですけれども、将来行われようとしているものについても実は判示した判例がございますね。ありましたら、これを紹介していただきたいと思います。
  184. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ただいまのお尋ねの判例でございますが、札幌高裁の平成九年五月十五日の判決がございます。  これは、過去の覚せい剤の営利目的譲渡の被疑事実に基づいて発せられました検証許可令状によりまして電話傍受実施中に行われたその被疑事実とは別個の新たな覚せい剤の営利目的譲渡を内容とする通話について傍受した、これについて争われたケースでございます。  判示は次のように言っております。  被告人が検挙され起訴された犯罪は、本件電話傍受等の際に敢行されたものであり、本件検証許可状請求の被疑事実とされた犯罪とは異なるけれども、右被疑事実と関連があり、かつ右被疑事実につき必要性、相当性が存在している限り、過去の犯罪のみならず、現在から将来にわたる犯罪についても電話傍受等が許されるところ、本件が検挙、起訴された犯罪は、右被疑事実と同様、組織的、継続的な覚せい剤密売の一環として敢行されたものであり、かつ本件の事実関係のもとでは、本件電話傍受等の際にも、本件検証許可状請求の被疑事実につき、なお右の必要性、相当性が存在していたものと言うべきであるから、本件電話傍受等が許されることは明らかである。  こう判じております。
  185. 大森礼子

    ○大森礼子君 時間が参りましたので、たくさん通告しておりましたけれども、これは次回にさせていただきたいと思います。  以上で終わります。
  186. 橋本敦

    ○橋本敦君 本通信傍受法案、いわゆる盗聴法案は、言うまでもありませんが、憲法二十一条がかたく保障する通信秘密あるいは個人のプライバシーの擁護で、こういった憲法と深くかかわる重大な法案であることは言うまでもありません。したがって、こういった基本的人権がこの法案乱用によって侵されることは絶対に許されないということでありますから、そういう立場から私は厳しくこの問題について質問させていただきたいと思います。  本法案によりますと、今もお話がありましたが、令状以外の別件盗聴という問題もあれば、あるいは試し聞きという問題もあり、警察官憲捜査官憲乱用が厳しく一切禁止されるかどうか重大な疑問が国民の中にあるわけであります。  例えば、ある有力新聞は、「どんなに条件を厳しくしても、それだけで法案への懸念をぬぐい去ることはできない。歯止めの措置が実効性を持つかどうかは、法を執行する捜査機関のありように大きく左右されるからだ。」と、こう述べていますが、確かにそういう運用面での問題は重要な問題であります。  この問題について、そういった観点から考えてみますと、例えばアメリカではスタインハード弁護士、自由人権協会副理事長のお話でも、通信傍受をされ盗聴された市民通話の中で大変大きな部分が犯罪関係がなかった、そういった報告もある、そういう状況もあります。  そしてまた、現に日本の警察において、我が党の当時国際部長であった緒方議員宅に対し、長期間にわたって警察権力が通話通信傍受したということが大きな問題になった事実もあるわけであります。こういった問題は、本案の審議の根本的な前提問題として軽視することができないゆゆしき問題だと私は思っております。  例えば、五月二十日の朝日新聞は明確に次のように言っております。「一九八六年に発覚した共産党幹部宅盗聴事件について、警察庁はいまなお組織的な関与を認めず、」その「答弁に終始している。」、「そのような組織に、「平和で安全な社会を守るために新たな武器を」と言われても、ためらう人が多いのではないか。 この盗聴事件の真相解明と過去の行動への謝罪、具体的な再発防止策の表明が、何よりも欠かせない。その宿題に答えるのが、法律制定の大前提である。」、こういった社説も存在するぐらいであります。  こういう観点からいって、本法案の慎重審議を遂げる上で捜査機関、政府の乱用防止に関して厳しくこれをチェックするという審議、そのためにも緒方盗聴事件について、この問題に一体今政府はどういう態度をとっているか、この問題を私は大変重要な問題だと考えているわけであります。  まず法務大臣に伺いますが、この法案審議を通じて、まさに捜査機関国民からの厳しい信頼の問題、あるいは捜査機関に対する乱用危険性の問題についての厳しい国民からの指摘、この問題は避けて通れない重大な問題だと認識されているかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  187. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 先ほど来御審議いただいているように、現下の組織犯罪をめぐる大変厳しい状況を踏まえたときに、この捜査のために通信傍受方策というのが大変重要であるということでございますが、その運用に当たりましては、公共福祉という観点からでございますけれども通信秘密を最大限に守りながら、公共福祉という観点からの対応が必要である、そういう意味での捜査機関の心がけというのは大変重要である、このように認識しております。
  188. 橋本敦

    ○橋本敦君 捜査機関の態様、体質が大変重要だというお話がございました。  そこで具体的に、緒方事件についてどういう経過と、そしてこれまでの裁判所の判断が示されたかを改めて私は振り返ってみたいと思うんです。  緒方議員宅の盗聴に関して損害賠償請求事件が行われました。この事件で神奈川県警の警備公安課の警官が長期間にわたって違法な盗聴をしたという問題について、九七年六月二十六日東京高等裁判所は次のように明確に判示しております。「本件は、憲法保障されている重要な人権である通信秘密を始め、プライバシーの権利、政治的活動の自由等が、警察官による電話盗聴という違法行為によって侵害されたものである点で極めて重大であるといわなければならない。」「そして、電話回線の傍受による盗聴は、その性質上、盗聴されている側においては、盗聴されていることが認識できず、したがって、盗聴された通話の内容や、盗聴されたことによる被害を具体的に把握し、特定することが極めて困難であるから、それ故に、誰との、何時、いかなる内容の通話が盗聴されたかを知ることもできない被害者にとって、その精神的苦痛は甚大であり、」、こう言って、一審が示した賠償額をさらに大きく認定するということに至りました。  最高裁にお越しいただいておりますが、東京高裁がこのように判示した事実は間違いございませんか。
  189. 浜野惺

    最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 委員指摘のとおりの判決が存在することは、そのとおりでございます。
  190. 橋本敦

    ○橋本敦君 右の事件で、九四年九月六日の第一審判決は次のように言っております。「本件盗聴行為は、電気通信事業法一〇四条所定の通信秘密を侵す違法な行為に該当するものと見ることができるから、法を遵守すべき立場にある現職の警察官が犯罪にも該当すべき違法行為を行ったという点だけを見ても、本件盗聴行為の違法性は極めて重大である。」、まさにそのとおりであります。法を遵守すべき立場にある警察官が憲法二十一条を真正面から踏み破って、法でも許されない盗聴行為をやったというのでありますから、その違法性は重大であります。  この判示にも間違いございませんか。
  191. 浜野惺

    最高裁判所長官代理者(浜野惺君) そのとおりでございます。
  192. 橋本敦

    ○橋本敦君 裁判所が示した判断はそれだけではありません。この事件で緒方議員の関係者から付審判請求が行われました。公務員職権乱用罪の適用の要求であります。  これについて東京地裁の八八年三月七日の付審判請求事件の決定は次のように明快に述べています。被疑者が「他の警察官と共謀のうえ行った右盗聴行為は、電気通信事業法一〇四条所定の通信秘密を侵す違法な行為であって、これを現職の警察官が職務上組織的に行ったことが許されるべきでないことはもとよりであり、法治国家として看過することのできない問題というべきである」、こう明快に判示しています。  これも間違いありませんね。
  193. 浜野惺

    最高裁判所長官代理者(浜野惺君) そのとおりでございます。
  194. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務大臣、まさにこの緒方宅に対する、我が党幹部に対する盗聴行為というのは「法治国家として看過することのできない問題」だ、こう裁判所は言っているわけであります。この認識に法務大臣も間違いないと思いますが、いかがですか。
  195. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 裁判所の判決については、私ども、そのように受けとめております。
  196. 橋本敦

    ○橋本敦君 ちょっと聞こえにくかったんですが。済みません。
  197. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 裁判所で推認したことについては、そのとおり受けとめております。
  198. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところで、この問題ですが、検察庁にお伺いしたいのであります。  八八年三月七日の付審判請求の東京地裁決定でも、「当裁判所における事実取調べの結果によっても、」「組織的行為と推認することができるのであり、」「警察官において盗聴に成功したものと推認することも十分に可能である。」、こういう判断が裁判所からなされています。  検察審査会の八八年四月二十日の議決要旨で、盗聴の実行警官に対して起訴猶予処分、不起訴処分にしたことは不当として、どう言っているかといいますと、「証拠によると、この犯行は、神奈川県警の警察官らが組織的に行つていたものと推測される。 犯罪の取締り、国民の権利の保護に当たるべき警察官らが、あえて法律を破つて国民通信秘密を侵すような犯罪を組織的に行つたという点で、事件は重大であり、社会に与えたショックも大きかつた。 このように、警察に対する国民の信頼を裏切り、これらの犯行に加わつた警察官らの責任は重いといわなければならない。」、こうはっきり、この事件がまさに神奈川県警の職務上の組織的行為として行われた違法な行為であることを言っています。  検察庁、こういう判断がこの事件でなされた事実は間違いありませんね。
  199. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 検察審査会の議決の内容は、そのとおりであろうと思います。
  200. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、検察庁にさらに私は伺いたいんです。  検察庁は、実行行為をした警察官に対して不起訴処分、内容は起訴猶予処分でありますが、そういう処分をいたしました。これは、その当該警察官らが通信秘密を侵した罪、つまり電気通信事業法違反の行為があった事実そのものは認めるけれども諸般の状況から起訴しなかったということなのかどうか、その点はどうなんですか。
  201. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) お尋ねの件につきましては、電気通信事業法違反、認定事実は通信秘密侵害ということでございますが、これについてはその事実を認めながら起訴猶予としたということでございます。
  202. 橋本敦

    ○橋本敦君 事実を認めた上で起訴猶予にされた。その起訴猶予処分が相当かどうかは後で触れます。  事実はあったんですね。ですから、下稲葉法務大臣が九八年三月十一日の衆議院法務委員会において、「神奈川県警の警備部の警察官による共産党の方に対する盗聴事件だ、こういうふうに認識いたしております。」と、こうお答えになったことは私はそのとおりだと思います。陣内大臣もそのとおりでよろしいですか。
  203. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今御指摘の下稲葉法務大臣の御認識と私も同様でございます。
  204. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうであれば、法務大臣に私は一言ここで申し上げたいんです。  去る六月九日の参議院本会議におきまして、我が党の緒方議員が質問したことに対して、大臣は、「この事件については、東京地方検察庁において、神奈川県警察に所属する警察官二名が緒方議員宅の電話通信内容盗聴しようとしたとの電気通信事業法違反の事実を認定した上で、」「起訴猶予処分としたもの」と、こうお答えになりました。  「通信内容盗聴しようとした」という未遂ではなくて盗聴したという事実は、もう検察庁も刑事局長がおっしゃったように認めていらっしゃるわけですから、「盗聴しようとした」と、こうお答えになったのは正確でなかった、盗聴した事実は明白だということはもうはっきりしているんじゃありませんか。
  205. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 盗聴しようとしたという未遂であるというふうに私どもは認定せざるを得なかった、したという事実は見当たらなかったということでございます。
  206. 橋本敦

    ○橋本敦君 刑事局長盗聴した事実ははっきりしていないんですか。それは大問題ですよ。今までの裁判所の認定と全然違いますよ。
  207. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 緒方邸で使用している電話通信回路に機器を接続しまして盗聴しようとしたという事実までは明確な証拠がございますが、その結果、具体的な通話内容等を盗聴できたのかどうかということについて最終的に認定するに足る証拠は十分でなかったということで、終局的な事実認定としては未遂ということでございます。
  208. 橋本敦

    ○橋本敦君 東京高等裁判所の判決とえらい違いじゃないですか。東京高等裁判所の判決は、緒方議員宅で現に盗聴が行われてプライバシー侵害され政党活動の自由を侵害された、そういった事実が認定できる、そして多額の損害賠償請求を容認したわけでしょう。裁判所がそこまで認定していることに対して検察庁は、盗聴の事実ははっきりしない、盗聴しようとしたことだから未遂だと、こんなことで通りますか。はっきりしてください。
  209. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 刑事事件の事実認定というのはあくまで収集されました証拠によって厳密に判定されるということでございまして、東京地方検察庁は、今申し上げましたように盗聴しようとしたと事実までは確定いたしましたが、具体的な事項について盗聴し得たのかどうかということの最終的な証拠は認定できなかった、証拠によってはそれは認定できなかったということで、未遂の限度で認定できるということでございます。
  210. 橋本敦

    ○橋本敦君 裁判所は証拠によって裁判をしないんでしょうか。
  211. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは個々の裁判所の判断ということと同時に、やはり刑事事件の捜査機関の認定というものは、今申し上げましたようにあくまで収集された具体的な証拠によるということでございますので、検察庁の認定は先ほど申し上げたとおりということでございます。
  212. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは、裁判所は現に盗聴されたという事実を認定した上で多額の損害賠償請求を認めたんですが、裁判所が盗聴された事実を認定したというそのことを検察庁は否定するんですか、重く受けとめるんですか。
  213. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 損害賠償請求の民事事件における判断というのは、先ほど委員のお尋ねがございまして最高裁の方からお答えしたとおりで、我々もその認識は共通でございます。
  214. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、警察が一貫して否定しておることも許せないけれども、検察庁自身がこの重大な事件でいまだに盗聴が成功したとは認めない、未遂だ、証拠によってそうだと言うのは、捜査の怠慢以外にないと思いますよ。  例えば、先ほど指摘をした東京地裁の付審判請求の決定ですが、こう言っています。「当裁判所における事実取調べの結果によっても、被疑者」「が上司の指揮命令を受けることなく、その独自の判断により本件盗聴を行ったものとは到底認められず、それが何者であるかを特定することはできないが、他の警察官と共謀のうえの組織的行為と推認することができるのであり、」「使用後消去された形跡のある録音テープが存在していたことなどからみて」、つまり証拠によって「具体的日時を特定することはできないが、警察官において盗聴に成功したものと推認することも十分に可能である。」、裁判所はこう言っているじゃありませんか。検察庁の捜査の怠慢ですよ、この重大事件についてまだ認めないというのは。あの長期間にわたって盗聴が成功しなかった、本気でそんなことを考えているんですか。はっきり言ってください。大問題ですよ。
  215. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 東京地方検察庁におきましては、今委員のお尋ねの中にも出てまいりましたが、検察審査会の議決を踏まえましてさらに捜査を行ったわけでございますが、その結果、立件した被疑者二名以外に盗聴に具体的にかかわった者を認定し、刑事事件として積極的に本件を組織的犯行であると認めるまでには至らなかったものと承知している次第でございます。
  216. 橋本敦

    ○橋本敦君 検察庁は、起訴猶予処分にした実行行為をした警官に対して、どういう理由で起訴猶予処分にしていますか。
  217. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 検察庁の不起訴処分は第一次と、それから検察審査会の不起訴不当の意見をいただいた後の第二次処分と両方ございますが……
  218. 橋本敦

    ○橋本敦君 第一次で結構です。
  219. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 第一次の方は、概略を読み上げますと、その動機において個人的利欲に基づくものではないこと。二番目に、両名はその地位等に照らし、犯行の首謀者あるいは責任者的立場にあるとは認められないこと。三番目、両名とも懲戒処分を受け、また犯行の関与者として広く報道されるなど、既に相応の社会的制裁を受けている。両名とも反省し、警察において本件につき深く遺憾の意を表するとともに、かかる事態の再発防止に努めることを誓約するなどしておりまして、今後このような事案が発生しないことを期待できるということが主な理由でございます。
  220. 橋本敦

    ○橋本敦君 第一次不起訴処分をしたときに、増井次席検事が記者会見をして、末端の警官だけを処罰することは過酷だ、首謀者、責任者的立場とも認めがたいこの二人を処罰するのは過酷に過ぎる、つまり組織犯罪だから指揮命令した人物がほかにいる、残念ながらそれがわからないということだが、だからこそわかっているこの二人だけを起訴するのはこれは相当でないという記者会見をされた。今もそういった理由の一端を述べられた、これは間違いありませんね。
  221. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 間違いございません。
  222. 橋本敦

    ○橋本敦君 与党三党で構成された組織的犯罪対策法の座長の与謝野前官房副長官、今は大臣をなさっていますが、この与謝野さんが共産党幹部宅電話盗聴事件について、自民党として事件は神奈川県警による組織的なものだったと認識している、こう述べられています。それは新聞にも大きく報道されている。  検察庁は、今言ったように、少なくともこの事件が実行行為者だけではなくて、警察の組織的犯行であった、そういう性質の事件だという認識は持っていますね。
  223. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ただいま第一次不起訴の理由の中で申し述べたことにも関連するわけですが、そういった疑いはあるということではございますが、それを最終的に組織的犯行だと認めるに足る証拠がないという判断でございます。
  224. 橋本敦

    ○橋本敦君 認識はあるが証拠がないと。徹底的に捜査すべきです。足りませんよ。  自民党も組織的盗聴だと認めている。社会的にも事実そうですよ。ですから、先ほど言った検察審査会の判断でもこの事件は組織的犯罪だと。こう言っていますね。「検察官の捜査によつても、被疑者が犯行に加わつていたという証拠が得られたにとどまり、その他の警察官で犯行を指揮し、又は実行した者を割り出すことはできなかつた。そのため、本件の全貌が解明されずに終わつたのは実に残念である」、検察審査会はこう言っています。間違いありませんね。検察審査会の議決で言っていることは間違いありませんね。
  225. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 検察審査会の議決はそのとおりでございます。  いろいろな見方が確かにあるところでございます。それぞれの党派あるいは個人等がさまざまな見方をしていることもまた事実でございまして、先ほど与謝野先生の御見解にも触れられておりましたが、やはり一つの個人的な見解というふうに我々は受け取っております。
  226. 橋本敦

    ○橋本敦君 だれの個人的見解ですか。ちょっと聞き取れなかったので。
  227. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生が今御指摘の、与謝野先生がいろいろ申されていることでございますが、これは検察庁の認定そのものを与謝野さんが代弁されているということではございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  228. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は分けて聞きましたから。  警察庁長官、お越しいただきました。  長官は、直近の国会においても、警察はこれまでも盗聴した事実はないしこれからもやらない、こうおっしゃいました。これまでも盗聴した事実はない、本当に責任持って国会国民にそう答えていいんですか。
  229. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) いわゆる緒方宅事件でございますけれども、当時の神奈川県警における内部調査の結果といたしまして、神奈川県警が組織として関与したことはなく、職務命令も発していないという報告を受けているところでございます。  私ども警察は、過去も現在も盗聴を行っていないという答弁をいたしているわけでありますが、およそ警察活動が適法妥当に行われるべきであるという認識と、当時の神奈川県警のただいま申し上げました内部調査の結果を踏まえまして、警察は組織としてはいわゆる盗聴行為という違法行為については過去においても行っていないということを申し上げているところでございます。
  230. 橋本敦

    ○橋本敦君 裁判所が、そして今検察庁が、認識としてはこれは警察官の組織的行為だという認識をお持ちだと、こう言っているんですよ。真っ向からあなたの判断はそれに反するんです。どう受けとめているんですか、一体。真剣さが足りないじゃありませんか。  では聞きますけれども、この現職の警官に対して、起訴猶予処分がなされたときに戒告処分しているでしょう。事実がないのに何で戒告処分するんですか。戒告処分しているじゃないですか。どう答えるんですか。
  231. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) 組織的犯行という点でございますけれども、法務省によれば、ただいま刑事局長も御答弁されているように、東京地検は警察の組織的犯行とまでは認定していないというふうに承知をしております。また、国賠訴訟におきましてもさまざまな指摘はなされているところでございますけれども、警察の組織的犯行と断定したものはないと承知しております。
  232. 橋本敦

    ○橋本敦君 なぜ当該警官を戒告処分したんですかというのを答えてください。事実もないのに戒告処分しないでしょう。
  233. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) 神奈川県警におきまして、二名の警察官を懲戒処分といたしております。これは、神奈川県警におきまして現職の警察官が電気通信事業法違反として取り調べを受け、その結果、起訴猶予処分を受けたこと自体が警察官としての信用を傷つけたものと判断したからであると承知しているところでございます。
  234. 橋本敦

    ○橋本敦君 事実は、盗聴行為をした事実はあったから処分したんでしょう。事実はないのに、疑いを受けたからで処分できるわけないでしょう。事実をはっきりしてください。あったんでしょう。もう時間がないから、簡単に。
  235. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) 今申し上げたとおり、取り調べを受け、起訴猶予処分を受けたというそのこと自体が警察官としての信用失墜行為に当たるという判断で処分をいたしたというふうに報告を聞いているところでございます。
  236. 橋本敦

    ○橋本敦君 起訴猶予処分というのは、犯罪の嫌疑がない不起訴処分とは違うんです。犯罪の容疑はあった、しかし諸般の事情から起訴を猶予したという処分です。だから、実行行為者の警官は盗聴行為をしたという責任を負わなきゃならない。そのための戒告処分じゃないですか。こんなことで何の責任も反省もない、この重要な通信傍受盗聴法案審議の根本的前提として、捜査機関の姿勢は本当に許せないですよ。  大臣、この問題が本当に国民の信頼を得るためには、警察が率直に事実を認めること。そして同時に、組織的犯行であるというその全容について、検察庁はその認識も持っているし、裁判所は言っているんですから、きっちり明らかにすること。同時に、政治活動の自由を侵害された緒方議員に、そしてまた日本共産党にきっちり謝罪をする。これぐらいの誠意があることは、これはまさに社会的道義としても公的機関の責任としても当たり前ではありませんか。大臣、どうお考えですか。最低限これぐらいのことをやるべきです。
  237. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 法務・検察といたしましては、常に証拠と法に基づきまして適正に対応してきた、このように考えております。
  238. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問にお答えください。事実を明らかにし、そして公的立場にある捜査機関として、違法に侵害をされた緒方議員と日本共産党に対して謝罪をするぐらいの誠意があっていいのではないか、こういう私の質問に答えてください。当然じゃないですか。
  239. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 警察は、御指摘の事件に関する東京地方検察庁による起訴猶予処分及び本件関係訴訟の結果を厳粛に受けとめていただいており、その反省を踏まえて、国民の信頼を裏切ることのないように適正な職務執行に努めている旨を表明されております。  違法な活動が行われないよう努めることを誓っておられますので、この事件が明らかとなった後、違法な活動が行われないよう警察内部でも指示の徹底が図られているものと考えております。
  240. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問には全く答えになっていない。こんなことでこんな法案を通すわけにはいかぬですよ。
  241. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  関口長官にまずお聞きいたします。  先ほど、組織的犯罪ではなかったとお答えになりましたが、緒方事件について、個人的に警官がやったんですか。
  242. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) いわゆる緒方宅事件のお尋ねでございますけれども、当時、神奈川県警の内部調査の結果におきまして、警察官個人の関与については確認できなかったという報告を受けているところでございます。  しかしながら、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査におきまして、警察官による盗聴行為未遂があったと認められたこと、またその後の民事訴訟においても盗聴行為があったと推認されたことは、警察としても厳粛に受けとめておりまして、誠に残念なことであったと考えております。  警察としては、本件の反省を踏まえまして、今後とも国民の信頼を裏切ることのないよう厳しく戒めてまいる所存であります。
  243. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 組織としても個人としてもやっていないのであれば、反省する必要は全くないと思いますけれども。  内部調査をされたということを繰り返しおっしゃっていらっしゃいます。したとしたら、いつからいつまで何人でどのような調査をされたか、簡単に教えてください。
  244. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 当時、神奈川県警におきまして内部調査を行ったわけでございます。これは、昭和六十一年十二月の初旬から翌年六月まで調査したものというふうに承知しております。人数については承知いたしておりませんけれども、神奈川県警の監察官室を中心に必要な人数で行われたものというふうに承知しております。
  245. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 関係者を懲戒処分にされましたが、二名について戒告処分ということでよろしいですか。もしそうであれば、その時期について言ってください。なぜその二名になったのかも教えてください。
  246. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 東京地検の起訴猶予処分を受けました二名の警察官に対して、昭和六十二年八月四日に神奈川県警において戒告の懲戒処分を行ったところでございます。  なお、懲戒処分を受けた二名の上司に対しましても、同日付で本部長訓戒という監督責任に基づく処分を行ったというふうに承知しております。  そこで、この二名の警察官の懲戒処分の理由でございますけれども、現職の警察官が電気通信事業法違反ということで取り調べを受けまして、その結果、起訴猶予処分を受けた。そのこと自体が警察官としての信用を傷つけたものであると判断したからであるというふうに承知いたしております。  なお、上司の処分の理由につきましては、その日常の身上指導が十分でなかったためそのような事態を招いたというふうに認めまして、その監督責任を問うたものというふうに承知いたしております。
  247. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 無罪の推定がありますから、取り調べを受けて警察の側で何も個人的にもやっていないと判断しているにもかかわらず懲戒処分になること自身が、もし本当にやっていないのであれば、全くおかしいと思います。  次に、検察庁側に聞きます。  検察庁側は、これは未遂とおっしゃるので非常に残念なんですが、組織的に盗聴未遂行為、未遂行為というのはそういう犯罪があるわけではありませんが、盗聴を行おうとした、そこまでの事実認定はされているわけで、警察の認定と検察の認定がずれているわけですが、検察としては組織的にやったという認定でよろしいわけですね。再度確認します。
  248. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほどの答弁の中でもその点は違うお答えをしております。警察官二名が緒方邸の盗聴に関与したことは認められる。ただ、その盗聴の具体的な通信内容傍受したかどうかという点についての積極的な証拠が十分でなかったので、未遂という形になる。また、組織的にこれに関与したのではないか、組織が関与したのではないかということでも捜査をしましたけれども、その点については、その組織性について認め得るに足る十分な証拠は認められなかったということでございます。
  249. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 先ほど橋本先生も引用されましたが、一九九九年二月二十五日の東京高裁の住民訴訟の判決は、組織的犯罪であるということをはっきり認定しております。特に重要な点は、例えば次のところです。「県警全体の責任者であった被控訴人加藤及び同中山についても、その組織の性格に鑑みるならば、事前に本件盗聴行為に関する報告を受けていなかったとは通常考えにくいところであるというほかはなく、右被控訴人らもこれを承認していたのではないかと疑うべき余地があるといわなければならない。」。つまり、組織的犯罪である、おまけに県警全体の責任者もこれを知っていただろうという認定を裁判所がしているわけです。  私は、緒方事件に対する検察庁そして特に警察の捜査能力、調査能力に著しい疑念、疑惑を感ずるものであります。  裁判所がここまで認定しているにもかかわらず、なぜ検察は組織的というふうに認定できないのか。松尾局長はいつも首謀者を挙げるために盗聴法が必要だとおっしゃいますが、検察も警察もこの件を組織的犯罪である、あるいは首謀者というふうに全然割り出せなかったわけじゃないですか。一体何なのかというふうに思います。これにメスを入れられなければどうするんですかというふうに思います。  それで、警察に再びお聞きします。  裁判所の判決を受けて、警察はもう一度内部調査をし直しましたか。
  250. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 内部調査につきましては、先ほど申し上げましたとおり、昭和六十一年十二月の初旬ごろから翌年六月ごろまで調査したものだというふうに承知しています。
  251. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は不思議なんです。裁判所で国家賠償請求訴訟で一審、二審とも国は負ける。そして住民訴訟においても組織的犯罪だと認定される。事実認定が裁判所、検察、警察でずれるわけです。普通であれば、そこでもう一度きちっと内部調査をし直して、自分たちの調査が不十分であったかどうか検証するはずですが、この後何もやっていないということは一体どういうことなんですか。
  252. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 当時、昭和六十一年十二月の初旬ごろから翌年六月ごろまで神奈川県警で調査を尽くしたわけでございますけれども、事案発生から既に十二年以上が経過しておるという現時点で、当時の調査以上に本件の事実関係をつまびらかにすることは困難であるというふうに考えております。
  253. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 警察の組織的犯罪であるという認定がされて、警察がかつての内部調査のもう一度総括、反省、再調査をされないことについて非常に疑問を感じます。  それで、警察官たちはなぜ不起訴、そして次に起訴猶予になったのかということに関して先ほど松尾局長が話されましたけれども、個人的な利害でやっていないからという理由があったと思います。先ほど組織的犯罪ではないとおっしゃりながら、その個人的な利害というところについてなぜ、私はもう一度質問いたします、警察官たちはなぜ起訴猶予になったんですか。
  254. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その起訴猶予の理由一つに、その動機において個人的利欲に基づくものではないということがございます。委員は民事の裁判においての裁判所の認定についていろいろ言及されておりますが、やはり刑事事件の認定と民事にかかわる認定というのは必ずしも同一ではございません。  刑事事件の場合は、やはり刑事的な責任を課するという観点から証拠を厳密に評価して最終的な認定をするということでございまして、これは捜査機関においても、また刑事の裁判官においても同じだと思いますが、そういったものでございます。したがいまして、民事事件の裁判でいろいろな認定がされているということもまた事実でございますが、直ちにそれで組織的な犯罪だということが明確になったと必ずしも刑事の面では言えないわけでございまして、検察庁はその点は徹底した捜査を遂げた上で、それを組織的であると認定するに足る証拠は十分でないんだということをはっきり言っているわけでございます。
  255. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 再度質問します。  なぜ検察庁が不起訴あるいは起訴猶予にしかできないのかというのは非常に重要なポイントだと思います。この盗聴法が成立をした暁に、もし警察の違法盗聴があった、そのときに果たして検察庁は起訴できるのか。緒方事件、ここまで明白になった事件で起訴できなかったわけです。どんな事件で検察庁は起訴できるのかということを思います。  再びお聞きします。なぜ警察官たちは不起訴、特に後の方ですね、起訴猶予になったのか、理由を言ってください。
  256. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほども申し上げましたが、整理いたしますと結果的には五点ぐらいになろうかと思います。  第一点は、その動機において個人的利欲に基づくものではない。
  257. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 それは結構です。もういいです。  まず、動機において個人的利欲ではないと。では警官たちはこれ何をやっていたんですか。五人の人間、一人の人間は亡くなっていますが、五人の人間がアジト、わざわざマンションの一室を、高いですよね、マンションの一室を長期に借りる。そして電線に盗聴器を仕掛けて電線を引く。そしてそこに明らかに生活をしていた、カップラーメンやいろんなものが全部置いてある。そこに少なくともかなりの人間が出入りしていたのではないかと。関係していた一番現場の人間だけで五人ぐらい、あといろんな名前が出てきます。彼らは個人的利欲以外で日中から何をやっていたんですか。
  258. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは検察庁の認定におきましても、緒方邸の通信傍受するということで機器を設置し、傍受しようとしていたということでございます。
  259. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 個人的利欲でないというふうに検察庁は判断し、起訴猶予にしたわけです。では、組織のためにやっていたんですか。何のためにやっていたんですか、彼らは。
  260. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 個々具体的な捜査内容そのものに触れるのはあれですが……
  261. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 さっき起訴猶予の理由ということをおっしゃったので。
  262. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その中で、個人的利欲に基づくものではないと同時に、その次の理由として、被疑者両名はその地位等に照らして犯行の首謀者あるいは責任者的立場にあるとは認めがたい、こういうことを言っている点でも御推察いただけるかと思います。
  263. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 では、その責任者をなぜ検察庁は特定できないんですか。
  264. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この点、繰り返しお尋ねですが、検察庁も、ほかの事件も同様でございますが、本件につきましてもやはり相当な人数を投入いたしまして徹底した捜査をしております。その結果、刑事の認定でございますから、収集された証拠に基づきますと、組織的な犯行であると断定するまでには至らなかったということを申し上げているわけでございます。
  265. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 先ほどなぜ起訴猶予になったかと。首謀者が別にいる、責任者がいる、大物がいる。あるいは上司かもしれない、恐らく上司でしょう。そして彼らは下っ端である。戒告処分も受けている。個人的利害に従ってアフターファイブにやっていたわけでも何でもないし、一生懸命仕事をやって業務命令で多分されただろう。だから起訴猶予にしたんでしょう。にもかかわらず組織的でないというのはどういうことですか。
  266. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 組織といいますと、一つのいろいろな役割分担等がございまして、例えば課長がいて係長がいてというようなことを一つの組織としてイメージに描かれると思いますが、この犯行自体が複数でやったということは、その二名について起訴猶予処分の対象にしたことでおわかりいただけるかと思いますが、この二名が少なくとも犯行の首謀者あるいは責任者的立場にあるとは認めがたいということを言っておりまして、それがグループ、何人かの犯行であるということは、それは前提の話でございます。  ただ、ではそのグループがある一定の組織かといいますと、その組織を解明するあるいは認定するに至る証拠は十分に収集できなかったということでございます。
  267. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 どんなグループなんですか。どこのグループなんですか。暴力団なんですか。どんな組織なんですか。
  268. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) つまり、組織的な犯行ではないかという観点からの捜査も当然遂行されたわけでございますが、今申し上げましたようないろんな態様も含めまして、その組織の解明をすることはできなかったということです。
  269. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 戒告処分を受けた二人がなぜ首謀者でないというふうに判断されたんですか。
  270. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは、抽象的で申しわけありませんが、収集された証拠全体を通じましてと。具体的なその行動あるいはそれぞれの両者の関係等いろいろな関係がございます。そういったことを収集された証拠で厳密に認定いたしますと今申し上げたような認定になるということでございます。
  271. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 警察が違法盗聴をした場合に警察がそれを認めない。そして、悲しいかな、検察庁はなぜかその事件の全容も解明できず、首謀者特定できず、起訴もできない。これが緒方事件です。しかも問題なのは、裁判所がこれは組織的犯罪であると言っていることです。  午前中、小川敏夫さんが質問されましたが、うっかり乱用あるいはたまたま乱用乱用のケースのための制度担保が午前中問題になりました。しかし、緒方事件はそういう乱用ということではないんです。警察自身が組織的にやっていたということを裁判所が認めたわけです。  ほかのさまざまな文献でもそういうことはあります。例えば「盗聴—権力の犯罪」、「元茨城県警警備部長江間恒氏が語る「政治警察の実態」」。  むしろ自民党のある人をやらなきゃいかん。対象にして、盗聴するんなら。一時はね公明党までいきましたよ、社会党から公明党まで。   だから私らは公明党の幹部の動静ってよく知ってますよ。それこそ本人が知っている以上に知っている。本人が知らない部分で本人に関係ある部分まで知ってる。また、知り得るですよ、簡単に。それは綿密に足で捜査していくんですもの。ウワサを聞いて集めて、そいつに裏付けをこうやっていったって、一年かかればたいてい一人は明らかになるわ。権力にかかったら恐るべきものですよ。警察の力っていうのは。私は選挙やったことあるんです。どんな選挙上手でも、警察に目をつけられたら、もう絶対当選しません。 そういうふうな元警察の大物の方の証言があります。  警察自身が情報収集としてやってきた、それに関する総括も決着もない限り、この盗聴法という、場合によってはすさまじい情報を収集し得る武器を与えることはできないというふうに考えます。  それで、関口長官、この緒方事件で驚くべきことに警察官の多くは法廷にまともに出廷をしておりません。これは司法軽視ではないですか。警察は法廷に警察官が出廷していないことを御存じだったんでしょうか。
  272. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 警察官個人の訴訟活動につきましては、あくまでもそれぞれの個人の判断において決めるところでありますので、その点、我々としてお答えする立場にはないわけであります。  なお、国賠訴訟の裁判につきましては、私ども国が当事者になっております。これにつきましては、警察としては必要な主張とともに、その立証活動にも努めたところであるというふうに承知しておるところであります。
  273. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 住民訴訟の判決を見ますと、その警察官の人たちはほとんど出廷をしていないんです。普通であれば勾引をされるべきケースだと思いますけれども、出廷をしておりません。  私はきょうの答弁を聞きましても、実は本人たちは大変気の毒だと思います。上司の命令を受けてせっせと一生懸命仕事をしていた。しかし、それがあるときばれてしまった。そしたらトカゲのしっぽ切りですよ。処分を受ける、それで本人たちは散り散りばらばらになる、戒告処分ですけれども、五人のうち一人は亡くなっております。もう末端、全くトカゲのしっぽ切りをやっているわけですよ。私がもし当事者だったら怒り狂うだろうと思います。  また今後も、警察の例えば裏金の問題やけん銃押収の問題、暴力団と警察の癒着やいろんなことについて質問していきます。  次に、法務大臣に御質問いたします。  盗聴法があったら坂本事件は防げたというふうに発言されましたけれども、これはどうしてですか。
  274. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) お尋ねの発言でございますけれども、坂本弁護士一家殺害事件が発生した当時、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律が成立していればこの事件そのものを防止することができたかどうかについて述べたものではございませんで、この事件のような組織的な殺人事件の首謀者の検挙及び真相解明のために通信傍受という捜査手法捜査手段が大変効果的であり、通信傍受を初め、組織的な犯罪に適切に対処するための法的整備を実現することによりまして、組織的な犯罪を未然に防止することができるようになり、そして国民全体が安心して暮らせることができる社会を築くことができるようになる、こういう趣旨で述べたわけでございます。
  275. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 いえ、盗聴法があったら坂本事件、オウム事件を防げたというふうに発言されておりますので、盗聴法の何条に基づいて、坂本さんの事件の場合、盗聴ができるんですか。
  276. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 犯罪捜査のための通信傍受というのは、組織的、密行的に行われる、いわゆる組織的な犯罪等の首謀者を含めまして、犯行に関与した者の特定や事案の真相解明に必要かつ効果的である、このように基本的に考えております。  オウム真理教による一連の犯罪が敢行された当時は、実際には通信傍受という捜査方法をとることができませんで、法案の定める要件が満たされていたかどうかを確定するわけにはいきません。この点について明確なことは申し上げられないということになるわけでございます。  しかし、本法案のような通信傍受法整備が実現しておれば、これら一連の犯行のいずれかの段階でオウム真理教による組織的な殺人が行われたことが捜査によって判明したときには、通信傍受によって早期に実態を解明し、そして被害を最小限に抑えることができたということはもとより、その発生を未然に防止できた可能性もあった、このように私は考えております。  したがって、オウム真理教の事件に限らず、今後の同様の事件に対する犯罪対策といたしましても極めて有効であると考えておるところでございます。
  277. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 どこかの段階で役立っただろう、役立ったのではないか、犯罪を未然に防止できたのではないかというふうにおっしゃっていますが、それが実はわからないんですね。犯罪がなぜ未然に防止できるのか。  坂本事件の場合、大森さんも私も彼は同期でよく知っておりますけれども、オウム真理教が犯人かどうかは今は裁判の途中ですから断定できませんが、ではないかというようなことも、捜査を全くしていないわけですから知らないわけですね。とんちんかんなところしかやっていないわけですから。例えば松本サリン事件では、第一次発見者の人が犯人だという報道が随分なされ、彼は厳しい捜査を受けて、報道と人権という問題も起きました。違うところを捜査しているわけですから、その人間の電話盗聴するなんということは考えられないわけです。  もし犯罪を未然に防止するとしたら、不特定多数人、かなりの数、ばっと乱用的に盗聴しない限り情報は収集できないんですが、法務大臣は、どこでどうしたら防げたというふうに判断されたかについて教えてください。  法務大臣、お願いします。
  278. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今、大変詳しく御説明を求められたわけでございます。  その点につきましては、刑事局長答弁をさせます。
  279. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 福島委員大臣にということでございましたが、具体的な捜査手法の問題でございますので、その経験のある私からお答えする方が適当かと思います。  オウムの件は過去に起こった事件でございますから、なかなかそれを引いてこの通信傍受法案があったらどうだということは微妙な問題がいろいろございますが、あえて申し上げますと、例えば松本のサリン事件があります。いろいろな見方があって、その段階ではオウムということを必ずしも特定できないかもしれません。その後で地下鉄のサリン事件がございました。そのケースを考えますと、例えばサリンをまくためにはさまざまな準備がありますが、薬物を購入してサリンを生成する、それが一連の大量殺人事件の計画に基づいてその実行に着手している、あるいはその予備を行っているというように、現に犯罪が予備段階、あるいはまさに通信傍受対象犯罪が実行段階に入ってくるということの情報が十分に入りましたら、しかしそれはだれが首謀者で、どういう形で組織が行っているのかということの最終的な詰めができないという段階であれば、この通信傍受法案による通信傍受は非常にその効果を上げるであろう。それが効果を上げれば、計画されている段階であっても、それが実行に移される前に場合によったら検挙できるかもしれませんということを申し上げているのであります。  過去のケースを具体的にどうこうだということはなかなか申し上げにくいんですが、イメージとして、将来ああいう大量殺人事件が起きる、あるいは計画があって、現に予備的な行為がなされているということになりますと、それをさまざまな形で捜査いたしますが、その組織そのものの関与、だれが首謀者で、どういうような実行部隊があって、どういう形で行おうとしているのかということを突きとめるには、この通信傍受が非常に有効だということを申し上げているわけでございます。
  280. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 テレビで法務大臣が、盗聴法捜査のための通信傍受法があれば坂本事件が防げたという旨発言されると、一般国民はそうかそうかというふうに思う方も随分いらっしゃると思うんです。私自身は実は盗聴法ではないと思うんですね。霞ヶ関のサリン事件が起きる前に、読売新聞で何カ月か前に、オウムのあそこの本拠地の近くからサリンが出た、そういう記事が出たことがあります。ですから、むしろ緻密な、きちっとした科学捜査をすることで事件はもしかしたら、そんなことを言っても事件そのものの総括はもっと大規模にきちっとやるべきですが、きちっとした科学捜査をやることで、捜査の王道を踏むことで防げたというふうに思っております。  私がきょうなぜこういう質問をしたかといいますと、オウムといいますと、一般国民はやっぱり怖い、大変だというふうに思います。ですから、オウム真理教の事件を引き合いに出して、盗聴法があのときあったらオウム事件は防げたというふうに言うのは、私はやっぱりだましのテクニックだと思います。それは明らかに欺瞞ではないか。要するに、できないんですよ。坂本事件のときはオウムというのを被疑者の対象として考えていない、捜索もしていないし、逮捕ももちろんできませんし、要件もありません。  刑事局長はいつも盗聴は最小限度の最後の手段だとおっしゃいます。その要件をどこも満たさないわけです。仮谷さんの事件がなぜ発覚したのか。あれは新聞社などに対する垂れ込み情報というと言葉は悪いですが、ある種の電話がかかって、それによってわかった。あるいは怪文書があったからと言われています。これからそんな電話は新聞社に行かないかもしれないですよ、内部の人間、怖くて電話できないかもしれない。  ですから私は、盗聴法をオウム真理教と安易に結びつけて、盗聴法があればオウム真理教などの事件はなくせるというふうに言うのはデマゴギーだということで、私の質問を終わります。
  281. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 中村敦夫でございます。  通信傍受法案、いわゆる盗聴法案でございますが、さまざまな不明瞭な問題点を抱えている欠陥法案であると私は考えております。  しかしながら、議論の焦点というものが、ともすれば電話盗聴の矛盾と欠陥という点に傾きがちなわけなんです。もちろんこれは見逃すことのできない本当に大きな部分です。しかし、これは多くの方々がやっておられますので、私はもう一つ別の、それ以上に大きいかもしれない問題点指摘したいと思うんです。  現代社会の情報機構、産業の機能、組織運営、これを支配しているのはコンピューター通信、とりわけインターネットだということは皆さん御存じだと思いますけれども、これは今後の情報交換の生命線になるような重要な部分なんです。しかし、電話とインターネットというのは全く性質も機構も違うということです。しかしながら、この法案の中では電話盗聴とインターネット盗聴がごちゃまぜになっている、一括して書いてあるものですから大変にわからない、不明瞭な部分があって矛盾が多いんです。ここにこの法案が欠陥法案であるという大きな理由があると思うんです。  本来でしたら、このコンピューター通信の問題というのは、新しい産業の問題でもありますから、きちんとした新しい大きな法律をつくって、そこできちっと規制なり条件なりというものを規定しなきゃいけないんです。ところが、それがまだできないうちに盗聴法の方からコンピューター通信の分野にどんどん入り込んでしまっているということなんです。これは順序が逆じゃないか、非常に大きな危険を感じるんです、こういうやり方でコンピューター業界の中へ問題を波及させていくということは。このまま法案が通りますと、産業界に大混乱がおきます。また、委縮ということも考えられます。それから、不公平ということも起きてくると私は思っているんです。  こういう新しい産業を開拓していかなきゃならない時勢に盗聴法がブレーキをかけることになりかねない、そういうことで私は法案の問題を一つずつ取り上げて明確な答弁を求めたいと思います。  まず最初に、この法案の二条二項のところに「この法律において「傍受」とは、現に行われている他人間の通信について、その内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意も得ないで、これを受けることをいう。」というふうになっています。  ところが、「現に行われている他人間の通信」のこの「現に行われている」というのは、電話の場合はスポット盗聴ということかもしれませんけれども、インターネットやコンピューター通信の場合、これはどのような状況意味するんでしょうか。要するに、電子メールが送られてきたところをリアルタイムでとらえるというのは可能なんですか、これをまずお答えいただきたいんです。
  282. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) インターネット通信等の傍受は、通信事業者であるプロバイダーが管理する受信者のメールボックスにおいて傍受すべき通信が行われるか否かを見張っておりまして、メールが受信された場合にはこれをコピーして傍受することにしております。  したがいまして、今委員がお触れになった中に含まれているかもしれませんが、令状に基づく傍受実施を開始する前にメールサーバーに蓄積されたメールは、これは傍受対象ではないということでございまして、別途令状を得て捜索とか押収をする必要がある、このように考えております。
  283. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そうしますと、令状をとった時点からいつまでのことを言うわけなんですか。「現に行われている」という言葉にどうも整合性がないんですね。電話の場合は同時性ですね。整合性がないじゃないですか。
  284. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) もう少し詳しく申し上げますと、プロバイダーのサーバーに既に蓄積されているもの、つまり過去のメールといいますか、これは今でも捜索・差し押さえ令状をもっていって押収することが可能です。この通信傍受対象となりますのは、現に日にちを決めまして、それから後にメールとして送られてくるものを対象とするということでございます。それを受信した段階で傍受するということになります。  期間は、これは令状請求に記載いたしまして、例えば十日間、時間的には二十四時間の場合もありますし、それを限定する場合もいろいろございます。それは令状内容によるということでございます。
  285. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 よくわからないんですけれども令状発付された時点からと、それ以前の過去のものも全部読めるということですか。そうすると、令状発付するという時点の意味は全くないんじゃないかと思うんです。
  286. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今の刑事訴訟法の手続でも、当該メールサーバーに既に蓄積されているもの、つまり傍受実施するまでの間に蓄積されたもの、これは現行の刑事訴訟法の捜索・差し押さえ令状によって押収が可能です。傍受実施した後に入ってくるメール、これは傍受対象ということで期間を定めて傍受をするということになります。
  287. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そうしますと、電話ではスポット盗聴ということ、これと、要するにメールは同時にはできないわけですから、どこかから過去のものになってしまう、「現に行われている」というふうな文言とは合わないんじゃないですか。同じ文言だけで、電話もこれも解釈が違う、裁量権にゆだねるというようなことでは法案としては私は非常に不精密だというふうに思うんですが、いかがですか。
  288. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 「現に行われている他人間の通信」ということでございますが、確かに、委員指摘のとおり、電話による場合とインターネット等のメールを送る場合というのは技術的に違いがあります。電子メールにつきましては、傍受のときに電話と違いましてその内容を知ることができないわけでございます。  したがいまして、本法律案条文で言いますとこれは第十三条の二項の問題ということになります。法案ではそこを書き分けておりまして、その該当性判断というのは、電話の場合はスポットモニタリングをやりますが、電子メールの場合はその通信にかかわる信号全体を一たん傍受いたします。その上でこれを印字ないし画面に表示しまして、令状に記載してある犯罪関係するかどうかの判断をするということでございます。これは通信の性質によって変わってくる仕分けでございます。したがって、それを一つ表現でやっているのはおかしいということにはならないわけでございます。
  289. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 電話盗聴期間は十日間、最大で三十日までということになっていますけれども、この項目はインターネットにも当てはまるわけですか。十日間と三十日という部分ですけれども、それ以後はやらないと。
  290. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは令状請求する際の請求内容によります。当初の期間を十日ということで傍受いたしまして、それで終わる場合もございますし、さらに必要であるということであれば、それは裁判官にさらにその点を疎明いたしまして、二回にわたって延長が可能です。最大限では三十日まで。  これは電話もメールの場合も同じでございます。
  291. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 インターネットのメールというものなんですけれども、このことに関して内閣法制局の方にちょっと最初にお聞きしたいんですが、憲法第二十一条二項に「検閲は、これをしてはならない。通信秘密は、これを侵してはならない。」という文言があります。「通信秘密は、これを侵してはならない。」というのは今までも取り上げられて憲法違反なんだという意見が圧倒的ですが、検閲には余り触れられていないので、この場合の検閲という意味、概念をちょっと簡単に御説明いただきたいんです。
  292. 宮崎礼壹

    政府委員(宮崎礼壹君) お答えいたします。  検閲と申しますのは、行政権が主体となりまして、思想内容等の表現物を対象といたしまして、その全部または一部の発表の禁止を目的といたしまして、対象とされます一定の表現物について網羅的、一般的に発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを特質として備えるものを指すというふうにされておるところでありまして、このことは最高裁判所大法廷判決の昭和五十九年十二月十二日判決において明確に摘示されているところでありまして、我々もその考え方に沿って理解すべきものであると思っております。
  293. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そうしますと、インターネットのメールというのはメールというぐらいですからこれは電話ではないわけなんです。むしろ性質上は郵便物とほとんど同じだというところがあると思うんです。ですから、メールをのぞくということは普通の郵便物、メールボックスに入っているかどうか知りませんが、それを取り出して中身を見る、要するに発信者と受取人の間でそれをやるということになりますから、こうしますとこれは事実上は検閲になるんじゃないか。容疑者といえども、メールのやりとりというのは犯罪関係したものばかりじゃないわけです。多くの人々にリンクしている手紙があるわけですけれども、これはどれだかわかりませんから全部検査するということになると思うんです。  そうすると、これは通信秘密を侵すと同時に検閲しているというふうに私は考えるんですけれども内閣法制局としてはこのインターネット、メールに関しての盗聴、これは検閲というふうに考えられませんか。
  294. 宮崎礼壹

    政府委員(宮崎礼壹君) 先ほど申しましたように、多少表現物のように申しましたけれども通信というようなものにつきましても検閲の禁止というものがかかっているということはおっしゃるとおりでございます。ただ、その検閲というものの内容、趣旨は、発表あるいは伝達の禁止というところに本質がございますので、ただいまの法案で考えられておりますのは、メールにつきましても伝達を禁止するという要素はないと承知しておりますから、これが検閲に当たるとは考えておりません。
  295. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 つまり、伝達をしなければ検閲にならないという解釈なんですか。
  296. 宮崎礼壹

    政府委員(宮崎礼壹君) 伝達の禁止をしなければ検閲には当たらないと考えます。
  297. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 逆ですね。  そうすると、例えば普通の、昔ありましたね、軍隊が手紙を検閲するというようなことは、これを開いて読んでそしてまた渡した場合は検閲にならないんですか。
  298. 宮崎礼壹

    政府委員(宮崎礼壹君) 憲法上のさまざまな保護すべき自由、権利というものは、当然この二十一条二項だけにかかわらないと思うわけでありまして、一般の平穏な市民が身構えない形で意思を他人と疎通するという自由なり権利にさまざまな保護が与えられてしかるべきであるということは当然でございますけれども、検閲の禁止というのは何であるかにつきましては、先ほどの申し上げました五十九年の最高裁判決が軸になって考えられるべきものだと思いますので、検閲の禁止に直接当たるというのは、先ほど申し上げましたように、発表なり伝達の禁止をしてしまうということを禁じているものだというふうに考えております。
  299. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 しかし、現実では普通の市民たちのメールが開封されてしまうわけですから、これはやはり検閲じゃないんでしょうか。
  300. 宮崎礼壹

    政府委員(宮崎礼壹君) 多少ダブったお答えになるかもしれませんけれども、したがいまして同じ二十一条二項に「通信秘密は、これを侵してはならない。」という別途の条文があるわけでございますから、検閲の禁止に当たるか当たらないかということだけで、そういう通信等の保護が全部一律にオール・オア・ナッシングで図られているというのではないんだろうと思っております。
  301. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それでは、郵政省の方にお聞きしたいんですけれども、これは電気通信事業法第三条、「電気通信事業者の取扱中に係る通信は、検閲してはならない。」、それから郵便法第八条、「郵便物の検閲は、これをしてはならない。」というふうにありますけれども、これと、この法案のEメールを読んでしまうということがかなり大幅に許されているということとの整合性はどういうふうにお考えでしょうか。
  302. 天野定功

    政府委員(天野定功君) ただいま電気通信事業法第三条の規定解釈通信傍受法との関係のお尋ねでございますが、まず電気通信事業法第三条は、憲法第二十一条第二項の規定を受けまして、電気通信事業者の取り扱い中に係る通信の検閲禁止を規定したものでございます。  この検閲の解釈でございますが、先ほど法制局の方からお答えになったことと趣旨的には同じかと思いますが、一般的に国その他の公の機関が強権的にある表現またはそれを通じて表現される思想の内容を調べることを言いまして、その場合、一定の処分をする前提として行うものであります。国または公の機関は本条により電気通信事業者の取り扱い中に係る通信内容またはそれを通じて表現される思想内容を調査し、その結果、不適当と認められるものの発信を禁止することは許されないと解しております。これが検閲の解釈でございます。  したがいまして、通信傍受法第二条第二項で定義されております傍受は、他人間の通信について、その内容を知るため、これを受けるものであり、発信を禁止する前提として思想、表現を調べるわけではございませんので、今申しました電気通信事業法第三条の検閲には当たらないと解しております。
  303. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 思想、信条を調べているかどうかというのはどうやったら判定できるわけですか。第三者にはこれが判定できないわけじゃないですか。それを全部読まなきゃわからないということが前提になっているわけですね。いかがでしょうか。
  304. 天野定功

    政府委員(天野定功君) この通信傍受法の趣旨は、あくまでも犯罪捜査ということで行われる傍受というふうに理解しておりますので、思想や信条の調査とは違うものと理解しております。
  305. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そういうお答えですと、結局はわからないということになってしまうんです、この検閲の意味というものが。実はこの盗聴法でもEメールをあけてもいいということを全然保障していないと私は思うんです。それは今は憲法論争、法律論争まで行きませんので、次の質問に移ります。  この「他人間の通信」という言葉がございますけれども、相手が人間でない場合、盗聴対象にはならないんですか。例えば、銀行口座へのアクセスとか、それから相手が自動的に対応するFTPサーバーのファイルへのアクセスとか、これはコンピューター通信なんですけれども、同じメールであっても自動応答先へのメールの場合というのは、相手は人間でなくてコンピューターだということなんですけれども、これらも対象になるんでしょうか。
  306. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通信の一方または双方がコンピューターにより自動的に受信、応答等を行う場合もこの「他人間の通信」に含まれます。このような通信傍受対象になり得るとともに、傍受令状によらなければ傍受することができないものと考えております。  そういう意味で、伝言ダイヤルあるいは留守番電話ども同様の理由から傍受対象となるということでございます。
  307. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 この法文の「他人間」というのは、かなり整合性がないというかわかりにくい、そこまで含んでいない非常にあいまいな表現であると思うんです。これはやはり直さないといけない問題じゃないんでしょうか。
  308. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 「他人間」という表現でございますが、これはこれ自体として今申し上げたような、正確に言いますと、その傍受を行う者がその一方の当事者となっていない通信という意味でございまして、個々具体的に申し上げれば先ほどのケースを申し上げることになりますが、概念としては明らかであろうと思います。
  309. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 次に、イントラネットのことについてお聞きします。  二条三項、これは「電気通信を行うための設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供する事業を営む者及びそれ以外の者であって自己の業務のために不特定又は多数の者の通信を媒介することのできる電気通信設備を設置している者をいう。」というふうに書いてありますけれども、この電気通信事業者として、例えばNTTなんかの電話会社あるいは商用プロバイダー、こうしたもののほかにどのようなものが含まれるのか。例えば、企業とか学校、自治体の通信設備の管理部門とか、大きな組織というのはサーバーを持っているケースが非常に今ふえていますから、こうしたところにも適用されるのかどうかということをちょっとお聞きしたいんです。
  310. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、今委員の発言の中にもありましたが、NTT等の電話会社、商用プロバイダーのように電気通信設備を用いまして他人の通信を媒介する事業を営む者というのが典型でございますが、そのほかにその「等」というところで、「自己の業務のために不特定又は多数の者の通信を媒介することのできる電気通信設備を設置している者」が含まれます。これは、法人、個人という両方でございます。内線網を設置しているホテルや企業、自営のLAN、これは企業内のネットワーク等でございますが、を設置している企業や団体がこれに当たります。  このように通信事業者等を広くとらえているのは、犯罪に関連する通信特定の内線電話を用いて行われる場合には、その特定の内線電話についてだけ傍受できるようにする必要があるということでございまして、午前中もホテルのケースを申し上げました。それが今申し上げた具体的な内容具体例としては当たるということになります。
  311. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 しかし、こうしたところにまで盗聴装置が設置されるということになりますと、例えばたった一人の麻薬の容疑者のために、あらゆる企業だとかあるいは組織、学校、とにかくサーバーのある場所というものの全情報が、要するに国家の一機関、警察なら警察というところへ一回集積されてしまうということがあるわけなんです。  そして、それは信用してくれという言葉だけで、信用だけではこの世の中通っていかないわけです。信用だけでやっているのはやくざの世界だけですから、法治国家そして契約社会ではそういう言葉では全く担保にならぬのですけれども、そうした情報の集積が一つの機関に集まってしまうということです。これを持ってしまうということによって避けようもなく乱用のチャンス、そしてたった一つ乱用のために大きな社会的変化や産業の変化というものが起こる。ある意味で大混乱が起こるかもしれません。どうしてそれを担保できるのかということに対して、どんな考えを持たれているのか、ちょっとお聞きしたいです。
  312. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 委員の御指摘の前提には一般的な形での企業、学校ということがありますので、その通信設備も対象になると抽象的な形でお答えすると、あたかもそういったところが総体として傍受対象になるかのような印象を与えるわけでございますが、この通信傍受法案というのは薬物、けん銃、蛇頭等の組織、それから組織的な殺人と罪種を限定いたしまして傍受するわけでございますので、通常の正当な企業活動をしている団体、企業あるいは学校等がその対象になることはあり得ないわけでございます。  また、その乱用の防止策については、いろいろな方策がこの中に設けられておりまして、そうした乱用についての歯どめとしては十分であると我々は考えている次第でございます。
  313. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それはちょっと刑事局長らしくないお答えですね。現実はそんなものでなくて、いそうなところに麻薬犯がいるわけではなくて、大蔵省にもいたじゃないですか。学校にも女教師が覚せい剤、私は取材したことがあるけれども、今、女子刑務所にたくさん入っていますし、つまり、そういうふうな想定できないところにいるからこの犯罪は取り締まりにくいんですよ。ですから、その答えはちょっとおかしいと思うんです。  だから、どこにでもあり得るということでそれが設置される、そのためにあらゆる人たちの情報が警察に集積されてしまう。集積してしまったその情報というものは後どうするんですか、これは大変な情報だと思うんですけれども。これは消せるんですか、どうするんですか。要するに、証拠になって裁判問題にならない場合の情報の処置についてお聞きしたいんです。
  314. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今のお尋ね中でも、その前提の中で、例えば学校の中で確かに現実の問題として、私がかつておりました地方においても女子学生が覚せい剤を買って検挙されたケースがございます。それではその学校、大学を傍受対象にするのかということにはならないわけでございます。学校全体がその覚せい剤の密売についてのかかわりということはあり得ないわけでございますので、広範にその傍受がなされるというような例として、そういう形で引用されますと、それは聞いている人に大きな誤解を与えるということですので、まず一言申し上げておきたいと思います。  そういった設例自体が私から言いますと大変不適当ということを申し上げざるを得ないと思います。
  315. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 松尾さんがそうおっしゃられることはもう漫画チックなほどリアリティーがない話で、麻薬の取材は随分やりましたけれども、そういうわけではないんですね。だって、やっぱり末端から捕まえていかなきゃいけない。それで、上の方をそうやって捕まえていくためには、やらなきゃならないときはどこでもやらなきゃならないでしょう。それじゃなかったら盗聴法なんて何の意味もないわけなんですよ。  いいです、それは。後で聞きますから、六分間のときに。  要するに、例えば学校が嫌だったら学校じゃなくてもいいですよ。企業だったらあるかもしれないでしょう、その企業の性質によりますから。LANがちゃんと構成されている場所、そこでやったとします。いろんな情報が集積します。そして、関係がなかったということになりますが、これは非常に貴重な情報がある。これは警察はどうするんですか。
  316. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これも前提をきちっとお話ししないといけないと思いますが、捜査機関の手元に残る傍受記録はまさに犯罪関係する通話に限られます。それ以外は、原記録にはもちろん聞いたことが全部入りますから裁判官の手元にはありますが、関係のある通話しか残りません。それは……
  317. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 インターネットの話です。Eメールの話です。
  318. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) Eメールも同じでございます。関係のある箇所に入っている通話についてはEメールの中も傍受対象になりますが、そのほかは全部消去いたしますので、捜査機関の手元にはその犯罪関係のある情報だけが残るということでございます。
  319. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ですから、それは消去し切れるんですか。どうやって消去するんですか。
  320. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは電話の場合も同じでございますが、まず原記録がございますので、それから該当の部分を傍受記録という形で落とし込んでいく作業があります。これはテープの場合も、それからEメールの場合も同様でございます。それで、必要なものだけが残っていく、残りは原記録に残るということでございます。
  321. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 だけれども一つの大きなところへ仕掛けた場合、一応全情報が入りますね。ハードディスクに入るわけですよ。これを消すということはどういうふうにやるんですか。
  322. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) Eメールで御説明いたしますと、Eメールの性質上、電話とはちょっと違いまして、まず傍受が通話ごとに行われます。それがフロッピーに入ります。それを直ちにその場で復元できるものであれば復元いたしまして、この通話は関係があるかないかを選別いたします。それで、関係のあるものを傍受記録として電磁的な処理をいたします。そのほかは、ですから捜査機関の手元では消えているということです。
  323. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ハードディスクに残していくんですか。
  324. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) はい。
  325. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 しかし、そのハードディスクに残す、それを消すといっても、実はそれは消しても再現できる、既にもうそういうソフトがあるわけなんですよ。例えばノートン・ユーティリティーズという市販で売っているようなソフトでもって、一回消したやつがまた浮かび上がってくるという技術がもう既に発達しているわけなんですよ。  だから、本当に消したかどうかということを確認する手段、あるいは第三者のそれを保証する機関がないわけなんですよ。これはどうしたらいいですか。
  326. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ちょっと御質問の趣旨がよくわからないんですが。  まず、メールの場合は、入ってきますとそれを丸ごと傍受いたします。これは電磁的に処理されます。それを今度は画面に映しまして、関係ないということになりますと、捜査機関が持っていくフロッピーにはそれは電磁的には入ってこないことになりますので、手元には一切ないということになります。ですから、それを復元するということはあり得ないことになります。
  327. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 後でまた質問します。
  328. 阿南一成

    阿南一成君 自由民主党の阿南一成であります。    〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕  我が国はこれまで非常に治安のよい国でありました。しかし、現在、経済、文化等の諸外国の交流が活発になりまして国際交流がグローバル化する中で、犯罪もグローバル化しつつある現状であります。我が国では、治安機関のトップに対する銃撃事件やオウム真理教のサリンによる地下鉄無差別殺人事件という未曾有の組織的犯罪を経験したことは記憶に新しいところであります。また、暴力団犯罪、それから薬物・銃器犯罪、来日外国人による組織的犯罪等が一層深刻化をしております。また、暴力団と外国人犯罪組織との連携も見られるなど、我が国の治安は急激に悪化をしていると私は見ております。  薬物事犯については、現在は戦後第三回目の覚せい剤乱用期であると言われております。特に覚せい剤が一般市民にまで蔓延し、中学生、高校生の若年層にも及んでおる現状であります。  銃器犯罪につきましても、一般市民が暴力団の対立抗争事件に巻き込まれるというようなこともありますし、また最近では銃器発砲を伴う強盗事件が大変多くなっております。安全な市民生活に対する著しい脅威となっておると私は考えております。  また、来日外国人による組織的犯罪も、手をこまねいておりますと一層深刻化していくと推察をしております。  そして、今日、企業の生き残りをかけた激しいリストラの中にありまして、終身雇用制が音を立てて壊れつつあります。日本の治安のよさを下支えしておったホワイトカラーのモラルも崩壊の一途をたどる。  このため、私は、日本は治安のよい国だという時代はもはや過去の幻想となりつつあるのではなかろうか、かように考える次第であります。  我々政治家の仕事の中で最も大切なことは、国民の生命、身体、財産の安全を守ることであろう、こう考えております。こうした治安の悪化の時代が来たことに我々政治家は今まで打つべき手を打たず手をこまねいていたのではなかろうか、深く反省するべき時期が来た、かように考える次第であります。  そして、私は、国民の不安がこれ以上増幅されることのないように、我々は国民の安全で幸せな生活を維持するためにもあらゆる面で努力していくべきであろうと思っております。  さて、近年の我が国の治安問題を考えますときに、我が国の治安の悪化が組織的犯罪というものを抜きにしては考えられないと思います。例えば薬物問題に関しましても、そこには裏に暴力団の影があります。また、銃器の問題にしてもしかりであります。そして、来日外国人の犯罪問題に関しましては、犯罪を行う外国人は不法入国外国人であります。そこには蛇頭と呼ばれる組織が関与をしているわけであります。つまり、我が国の治安の悪化はその大半が組織犯罪が原因であると言っても過言ではないと思うのであります。こうした現状を踏まえると、私はこの組織的犯罪に毅然とした態度で対処する必要があると考えております。  しかし、我が国は単一民族で周囲を海に囲まれた立地条件でありますし、さらに治安機関の努力によってこれまでは治安がよかったということでありますけれども、そのようなことで日本国民は治安悪化への危機感が薄い。これまでの我が国の組織犯罪対策は常におくれをとっておると思います。今回ようやくこの組織的犯罪対策三法案審議できるところまで来たのであります。  私は、行き過ぎがないように歯どめにきめ細やかな気配りをしながら、速やかにこの組織的犯罪対策三法案を成立させるべきであると考える者の一人であります。  そこで、まず警察庁にお伺いをいたします。  警察庁として、我が国の組織的な犯罪の現状についてどのような認識を持っておられるのか。特に我が国組織暴力団と外国犯罪組織との連携の実態、経済マフィア化の様相、蛇頭、香港三合会、イラン人密売組織等の日本における暗躍の実態、そして日本が国際犯罪組織にとって何ゆえにループホールとなりつつあるのか、そしてこのような組織的な犯罪の検挙に当たる警察当局としては現行法ではどのような点に限界があると考えておるのか、お伺いをいたしたいと思います。    〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕
  329. 林則清

    政府委員(林則清君) お尋ねの、我が国における組織的な犯罪の実態といたしましては、オウム真理教の未曾有の組織犯罪を経験しましたほか、今御指摘がありましたような暴力団犯罪、薬物・銃器犯罪、来日外国人による組織的な犯罪等が一層深刻化し、また集団密航において暴力団と蛇頭が結託するなど暴力団と海外犯罪組織との連携も見られるところであり、組織犯罪は御指摘のとおり我が国治安に対する重大な脅威となっておるというのが現状でございます。  このうち、来日外国人犯罪につきましては特に凶悪化、組織化の傾向が強まっておりまして、我が国が犯罪者や犯罪収益のループホールとならないためにも、こういった国際組織犯罪に対抗する対策を国際社会と協調しつつとっていく必要があると考えておるところでございます。  しかしながら、これらの組織的な犯罪につきましては、組織でありますから相互の連絡が不可欠でありますことから電話等の通信手段が多用される。あるいは、組織防衛のために、犯行をした者が検挙された場合でも、大変なおきてが待っておりますのでこれは首謀者等の自供はしない、そういった特徴があるわけでありまして、現在の捜査手法では、残念なことに、末端の実行行為者を検挙することはできても、その背後にあってほくそ笑んでいる者、本当の首謀者というものを検挙することは大変に困難が伴う、ほとんど例がないと言っていいくらいだというのが現状でございます。  また、組織的な犯罪の多くは、一時の感情によって犯罪を犯すといったようなものではなくて、非常に合理的な収益の獲得ということを目的にして行われるわけでありますので、犯罪の検挙に加えて、何人頭数を検挙するというのも大事ですが、それと同時に本来の彼らの目的である収益を剥奪するということが決定的に効果があるわけであります。  ところが、現行法におきましては、犯罪により得た収益の隠匿等は薬物事犯に係るものに限り犯罪化されており、それ以外の犯罪に係る収益の隠匿等に対処することができない、こういった限界がございます。  その他もろもろございますけれども、あらましそういう状況でございます。
  330. 阿南一成

    阿南一成君 次に、法務省にお伺いをいたします。  組織的犯罪については、国境を越えた犯罪でありまするので一つの国だけで対処することはできないわけであります。したがって、国際的に協調した対応が必要であります。サミット等国際会議においても組織的犯罪対策の必要性が強調されているのはそのゆえでありましょう。  そこで、組織的犯罪に対処するための国際会議の取り組みについて具体的にお教えを願いたい。また、今回のケルン・サミットにおいてどのような議論がなされたかもあわせてお伺いいたしたいと思います。
  331. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおり、組織的犯罪対策の問題は、国際連合あるいはサミットの会議等において最も重要な課題の一つとしてこれまでも継続的に取り上げられてきております。  まず、平成元年のアルシュ・サミットの経済宣言に基づいて設置されました金融活動作業部会、通常これはFATFと言っておりますが、この作業部会は、資金洗浄に関する四十の勧告及びその実施状況の審査等も行っております。それがその後の主要国首脳会議や国連の会議等において支持されているところでございます。  一方、平成六年、国連主催の国際組織犯罪に関する世界閣僚級会議が設けられましたが、ここで国際組織犯罪を防止しこれと闘うことを宣言いたしまして、通信傍受等の電子的監視等の措置の検討を含む立法その他の措置のガイドライン、資金洗浄の規制等についての世界行動計画が提唱されまして、これが同年の国連総会で承認されております。  さらに、翌年の平成七年、ハリファクス・サミットの場におきまして設置されました国際組織犯罪対策を検討するための上級専門家グループというのがございますが、ここで、平成八年、国際組織犯罪に効果的に対抗するための通信傍受を含む電子的監視等の手法の重要性、有効性の強調、重大犯罪の収益の没収等を行うための立法措置の考慮等を内容とする四十項目の勧告を行いまして、これが同年のリヨン・サミットにおいて支持されております。  また、国連犯罪防止刑事司法委員会では、平成七年以降、国連国際組織犯罪条約の問題が継続して論議されております。現在では、国連の特別委員会におきましてこの条約起草に向けた作業が継続して行われております。  そして、先般、今年の六月十八日から二十日までドイツのケルンで開催されました主要国首脳会議では、G8コミュニケにおいて、「我々は、国際組織犯罪並びにそれが世界中の政治、金融及び社会の安定に与える脅威と闘う国際的な努力の勢いを維持する。」とされた上で、国際組織犯罪に関する上級専門家グループに対して「組織犯罪に関する国連条約及び議定書についての交渉の早期終結に向けて引き続き作業を行うよう強く求める。」ということが述べられております。国際組織犯罪条約の早期成立が支持されているところでございます。  また、G7の首脳声明におきましても資金洗浄対策の問題が取り上げられまして、「我々は、資金洗浄に関する金融活動作業部会」、FATFでございます、ここが「行っている、資金洗浄に対する国際的な闘いにおいて実効的な協力を行わず、結果として汚職や組織犯罪からの収益の洗浄を助長している国・地域を特定するための作業を歓迎し、支持する。」としてFATFの活動が支持されているというところでございます。  概略は以上でございます。
  332. 阿南一成

    阿南一成君 次に、ICPOの兼元総裁に組織的犯罪集団の国際動向、そして各国のFIUの現状等について説明を聞きたかったのであります。しかし、本人は現在外国に出張中であるとのこと、また私の当委員会での質問委員差しかえで昨日急遽連絡があったこと等により物理的に兼元総裁の帰国が不可能であるとの説明があり、理解をいたしました。したがって、林刑事局長に御答弁を願えれば十分かと思います。  まず、ICPO、FIUという言葉は比較的なじみが薄いのでありますが、刑事局長、時間がありませんので簡単に解説を試みていただければと思います。
  333. 林則清

    政府委員(林則清君) お答え申し上げます。  ICPOは、インターナショナル・クリミナル・ポリス・オーガニゼーションの略で、我が国では国際刑事警察機構と訳されております。別名インターポールと呼ばれており、国際犯罪捜査に関する国際協力を円滑に行うための国際的機関でございます。  それから、FIUは、フィナンシャル・インテリジェンス・ユニットの略で、現在確定的な訳はありませんが、特定金融情報室のような意味になります。FIUは、国際会議の場においては一般に、犯罪収益のマネーロンダリングを的確に探知するため、マネーロンダリングの疑わしい取引に関する情報を一元的に収集、分析し捜査機関に提供する政府機関のことを指しておるようでございます。
  334. 阿南一成

    阿南一成君 今回、組織的犯罪処罰法第五十七条におきまして、金融監督庁は各国のFIU相互の国際的情報交換に資するため外国のFIUに対して情報提供をすることができるという規定を設けておるようであります。  そこで、外国のFIUに対する情報提供の中身及び方法について法務省にお尋ねをいたします。
  335. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 金融監督庁長官がこの法律案に基づいて外国の機関への情報提供を行うわけでございますが、金融監督庁長官が金融機関等から届けられた事項及びこれを整理または分析した結果である疑わしい取引に関する情報が、疑わしい取引の届け出制度に関する職務を行う外国の機関の当該職務の遂行に資すると認めたときには、その外国の機関に対しまして、今申し上げたような情報を適宜の方法で送付することにより行われるということでございます。
  336. 阿南一成

    阿南一成君 次に、組織的犯罪処罰法関連でありますが、私は、組織的犯罪を抑止するには、まずこれら犯罪集団の犯罪に対して厳正に対処をする必要があるというふうに思っております。  そこで、組織的犯罪処罰法案では、一定の組織的形態の犯罪を刑法の刑よりも加重をしておるということであります。しかし、私から見れば、この程度の刑の加重では組織的犯罪の抑止力として十分機能しないのではないかというふうに考えるところであります。  そこでまず、諸外国では組織的犯罪類型についてどの程度の刑を加重しておるのか教えていただきたいと思います。
  337. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ドイツ、フランス及びアメリカの連邦法について順次見ていきたいと思います。  ドイツにおきましては、以前から一定の類型の組織的な窃盗等につきましては加重処罰規定がございます。近年の法改正によりまして、一定の組織的な類型の盗品等の譲り受け、恐喝等についても加重処罰規定が設けられております。例えば、通常の強盗の法定刑は一年以上の自由刑でございますが、強盗または窃盗の連続的な実行のために結合した団体の構成員として団体の他の構成員の協力のもとで実行した場合には五年以上の自由刑とされております。  フランスでございますが、以前から窃盗、放火等の加重処罰規定がございます。一九九二年に制定されました新しい刑法典におきましては、さらに麻薬の違法製造、強盗、詐欺等の罪につきましても一定の組織的な類型の加重処罰規定が設けられております。例を一つ挙げますと、持凶器強盗、凶器を持って強盗する場合ですが、法定刑は通常は二十年の懲役刑でありますが、組織集団がこれを実行したときは三十年の懲役ということで加重されております。  また、アメリカの連邦法でございますが、一年を超える拘禁を定めた重罪に当たる各種規制薬物に関する所持、製造、譲渡等について組織との一定の関連を持って行われた場合には、終身または二十年以上の禁錮等に加重するなどの規定がございます。  概略は以上でございます。
  338. 阿南一成

    阿南一成君 次に、警察庁にマネーロンダリングに関してお伺いしてみたいと思います。  犯罪組織を抜本的に壊滅するためには、組織的犯罪に対する刑を加重することと、それにあわせて組織的犯罪から生ずる利益を奪い取る必要があります。犯罪組織が生まれ、その組織が膨張していくのはその活動が利益を生むからでありましょう。その利益が莫大であるからこそ犯罪組織は生息をするわけです。したがって、犯罪組織を壊滅するためには、その不正の利益を根こそぎ奪い取ることが必要であろうかと思います。これがマネーロンダリングを犯罪化することの意味であろうかと思っておるところであります。  今回の法案では犯罪収益に関する規定も盛り込まれているわけでありますが、犯罪収益に関する規制を議論する前提として、まず我が国の代表的な犯罪組織である暴力団の利益は年間どの程度であるのか、そしてまたどのような犯罪から収益を上げておるのか、またマネーロンダリングの実態全体についてもあわせて警察庁からお伺いしたいと思います。
  339. 林則清

    政府委員(林則清君) 暴力団の収入実態の解明というのはまことに困難なことでございますけれども、相当以前に行った調査でございますので現在はそれより相当膨らんでおると思いますが、その以前に行った調査でも年間一兆三千億円に上る収益が彼らのところへ流入しておるというふうに推計されておりまして、そのうちの約八割、一兆五百億円に当時の数字ではなりますが、これが非合法な活動によるものであり、その主な内訳としましては、やはり何といっても覚せい剤の密売といった薬物関連が最も多くて、これが約三五%で、当時の金としまして四千五百億円ぐらい。その次が賭博、のみ行為の一七%、約二千二百億円ぐらいであります。残り二割の二千五百億円が企業経営などその他もろもろ、こうなっておるわけでありますけれども、非常に古い推計でありますので、その後の暴力団の、先ほどもちょっと御指摘のあった経済社会への進出でありますとか、彼らの行為態様の多様化でありますとか、あるいは薬物が異常に今日ふえておるということなどを考えますと、これよりもはるか膨大なものに上るというふうに思われます。  それで、今申し上げましたとおり、暴力団はそういった巨額な収入を得ているにもかかわらず、これに対して没収であるとかあるいは収入に見合う納税がなされておるということは到底認めがたいところであります。  また、暴力団によるマネーロンダリングに関しましては、薬物や賭博の収益を他人名義の口座に預金していた事例というようなものが、断片的にではありますけれども相当捜査の過程で見られるところでありまして、こうしたことから暴力団は巨大な規模のマネーロンダリングを現に行っており、これが残念ながら野放しになっておるというのが現状であると認識しております。
  340. 阿南一成

    阿南一成君 次に、法務省にお伺いします。  今回の組織的犯罪処罰法案では、マネーロンダリング行為を処罰すること、それから没収・追徴制度を強化すること、さらに疑わしい取引の届け出制度を設けることなど、犯罪による不正な利益を奪い去り、犯罪組織を壊滅するための諸規定が盛り込まれておるようであります。  これらの諸規定は、犯罪組織から生ずる不正な利益に対処するための有効な制度であると思います。ただ、疑わしい取引の届け出制度については、私は若干その実効性という観点から疑問を感じるものであります。  例えば、組織的犯罪処罰法五十四条を見てみますと、金融機関等は、業務において収受した財産が犯罪収益等である疑いがあり、または当該業務に係る取引の相手方が犯罪収益等隠匿の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認める場合に届け出をしなければならないと規定しております。  金融機関等がこれらの疑いがあると認める場合とは具体的にはどのような場合なんだろうか。金融機関等はどうしてこの取引が疑わしいとわかるのか。その辺がちょっとよくわからないので、御解説をいただければと思います。
  341. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 組織犯罪の対応策としましては、先生から先ほど御質問ありました加重規定等実体法についての手当てをするということ以外に、午前中から論議のある、そうした加重規定を絵にかいたもちに終わらせないために捜査手法も新しい手法を取り入れていくということでございまして、通信傍受がその一つでございますが、今先生お尋ねの疑わしい取引の届け出制度も、情報を集積し検挙に資するという有効な手法でございます。  先生の今お尋ねの点でございますが、疑わしい取引か否かの判断を容易にするような基準の一つといたしまして、いわゆる疑わしい取引の類型を、銀行、保険、証券等の業態別、あるいは現金を扱う取引、口座を利用する取引あるいは他国との間で行う取引等の取引形態別にまた整理いたしまして、金融機関等に提示をして、それぞれに該当する取引の具体的事例をケーススタディーとして示すことを考えております。  疑わしい取引の類型としましては、例えば、顧客の職業、事業内容等にふつり合いな多額の出入金が頻繁に行われる口座にかかわる取引であるとか、あるいは、多数の者から頻繁に送金を受け、送金を受けた直後に資金を引き出して多額の送金を行う口座にかかわる取引などの例が考えられるところでございます。  前者に該当する取引としては、数カ月の間に数百回にわたり例えば高校生名義の口座に合計数億円の現金が振り込まれるというような事例、後者に該当する取引としては、数カ月の間に数十回にわたり合計数億円の現金が振り込まれ、その数日後にまとめて生活費名目等で麻薬産出国に送金するような事例が想定されるところでございます。  こうした類型に該当する具体的な事例を金融機関等に示して解説を行うことを考えております。  以上でございます。
  342. 阿南一成

    阿南一成君 この規定は、金融機関等に法的な届け出義務を課していますけれども、強制力を伴ったものではない、あくまでも金融機関等の任意の届け出に任されるというふうに理解をいたしました。  したがって、そうであるとすれば、例えばお礼参り等を恐れて金融機関等からの届け出の協力が得られないといった場合にはどのような対処をするおつもりですか。
  343. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法律案による疑わしい取引の届け出制度においては、御指摘のとおり、届け出義務違反に対する罰則規定は設けられておりませんが、金融機関等に法的な届け出義務を課しております。したがって、金融機関等がこの義務を履行しない場合には、監督当局において、届け出義務の履行につきまして適宜必要な指導監督を行うことがあり得るところでございます。  なお、届け出を受けた疑わしい取引に関する情報でございますが、捜査機関等に提供されまして、捜査の端緒等の資料として使われることになるわけでございますが、御指摘のようなお礼参りが予想される事案につきましては、捜査機関等としては、金融機関等の届け出を端緒としてその捜査が開始されたことを取引の相手方等に知られないように配慮しつつ捜査を行うなど、所要の措置をとることは当然のことでございます。
  344. 阿南一成

    阿南一成君 次に、マネーロンダリングと課税の問題について。国税庁お見えですか。  組織的犯罪処罰法では、マネーロンダリングの規制として、犯罪収益等を用いた法人等の事業支配を処罰すること、それから犯罪収益等の隠匿、収受を処罰すること等が規定をされております。このような規定は、規制としては理解をできるのでありますが、このような犯罪収益等が明らかになった場合の課税がどのようになるのか、いま一つ理解をいたしておりません。  例えば、検察庁においては、公判維持その他の要因から、犯罪収益の一部のみを起訴するということは実務の世界ではたびたび見られるところであります。立件起訴した部分のみの課税ではその効果が余り期待できないのではないかと思うわけですが、ただ私としましては、税の問題には疎いのでございますので、御教示を賜ればありがたいと思います。
  345. 森田好則

    政府委員(森田好則君) お答えいたします。  一般論で申し上げますが、税法上は、収入の起因となった行為が適法であるかどうかを問わず、現実に収入を得ている場合には、これにより生ずる所得は課税の対象とされます。したがいまして、不法原因に基づいて得た所得であっても、それにより所得が生じていれば課税されることになる。  それからもう一点、起訴されているか否かという話ですが、税法上は、それが起訴されているか否かにかかわらず、それにより所得が生じておれば課税されることとなるということであります。  ただ、その後におきまして、不法原因に基づいて得た金銭について没収または追徴された場合には、経済的効果がなくなるということになりますので是正等が行われることになるということであります。  いずれにしましても、国税当局としましては、常に納税者の適正な課税を実現する、そういう観点から、あらゆる機会を通じまして課税上有効な資料情報の収集に努めまして、これらの資料と、それから納税者から提出された申告書等々を総合勘案しまして、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなど、厳正、適切に対処することといたしております。  以上でございます。
  346. 阿南一成

    阿南一成君 次に、通信傍受法案について警察庁にお伺いをいたします。  その前に、私は本日、委員差しかえで当委員会に出席をさせていただいておるわけでありますが、通信傍受法を繰り返し盗聴法としつこくおっしゃっている方もおられました。当委員会に係っておりまするこの法律案と異なる名称を表現することが許されるのかどうか。しかしながら、当委員会には、国会のことは隅から隅まで御存じの平野先生もいらっしゃることでありますので、一年生の私などがとやかく言うのもいかがなものかと。本日はこの問題をこのままおいておきたいと思います。さらに勉強し直してから再び登場いたしたいと思うところであります。  そこで、近年の技術革新に伴い、高度情報化社会が到来し、今ではだれでもコンピューターを利用してインターネットを使用する時代となりました。また、携帯電話も発達し、一人一台携帯電話を持っているという時代になってきております。これに伴い、インターネットを利用した犯罪あるいは携帯電話を利用した覚せい剤事犯など、いわゆるハイテク犯罪と言われる犯罪が発生をし、犯罪の形態も複雑多様化してきております。このような現状に関しまして、警察の方でもさまざまな努力がされているのでありましょう。  そこでまず、このような技術革新に伴ってどういう形態の犯罪が起こるようになってきたのか、具体的なケースについて御説明を願いたいのでありますが、私も持ち時間がありますので、簡潔に御説明を願えればありがたいと思います。
  347. 林則清

    政府委員(林則清君) 一番普遍的なものといたしましては、例えば携帯電話を利用した薬物密売事例、これが一番典型的でありますが、中でも、イラン人薬物密売人の間では、もう顧客のついた携帯電話そのものを売買するということにまで進んでおります。したがいまして、一人の密売人が検挙されましても、薬物取引関係は携帯電話の譲り受け人によって引き継がれていく、薬物密売組織の存続を支えている、こういうのが典型的な例であります。  また、パソコン通信等を利用した薬物密売事例も見られるようになっておりまして、通信機器通信ネットワークの悪用により、先ほど来お話のあります薬物乱用の拡大が一層これによって拍車がかかるというようなおそれがある状態にあります。  以上でございます。
  348. 阿南一成

    阿南一成君 ただいま伺いましたように、技術革新に伴って複雑困難な事件が発生をし、このような犯罪に対しては、従来の捜査手法ではもはや太刀打ちができない状況になりつつあるということがよく理解できました。  今回のこの通信傍受法が成立をいたしますとするならば、警察としてはどのような効果があると考えておるのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  349. 林則清

    政府委員(林則清君) お尋ねの件に関しましては、犯罪捜査のための通信傍受を行うことができることになりますと、前にも申し上げましたような新たな通信手段を利用した薬物犯罪に対しても、例えば末端の乱用者や密売人のみならず、組織中枢の首謀者の検挙、根っこのところの検挙が可能になるなど、そういう意味では組織犯罪対策に極めて効果があるものというふうに考えております。
  350. 阿南一成

    阿南一成君 アメリカでは、インターネット上のチャットシステムで、子供に成り済ました男が少女をおびき出し誘拐する事件が発生するなど、凶悪犯罪にコンピューターが利用される時代になってきております。また、我が国でも、インターネットのホームページを利用いたしまして詐欺事件であるとか毒劇物通信販売をするとか、あるいはまた、携帯電話を利用して薬物取引等の犯罪も頻発をしておる今日であります。  こうしたハイテク犯罪捜査機関が適正迅速に対処するためには、捜査機関捜査手法も従来の捜査手法だけでなく、技術革新の必要があると私は考えます。犯罪がハイテク機器を利用して行われるならば、捜査機関にもそれに見合った武器を与える必要があるのではないかと思うのであります。過去において警察では、覚せい剤事犯に対しまして、捜査必要性からやむなく検証許可令状による電話傍受をしたことが過去五回ほどあったとのことでありますが、もちろんこれらの電話傍受は裁判所で合法であるとの判断をされたそうであります。  そこで、通信傍受に関する外国の立法例はどのようになっておるか、法務省にお伺いしたいと思います。
  351. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 諸外国におきましても、アメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、イタリアなどで、いわゆる主要先進諸国、ほぼすべてにおいて犯罪捜査のための通信傍受制度に関する法律が整備されておりますが、我が国の通信傍受法案は、これらの諸外国に比べ傍受が許される犯罪の範囲が限定され、要件も非常に厳格でございます。これら諸外国における通信傍受制度を見ますと、我が国の法案における対象犯罪以外に多数の犯罪が含まれております。  例えば、アメリカの連邦法は電話等と口頭会話も傍受対象にいたしまして、恐喝、郵便を用いた詐欺、盗品の輸送、マネーロンダリングなどの幅広い犯罪をその対象に挙げております。このほかにもコンピューター通信等につきましては、長期一年を超える拘禁刑が定められた罪を一般対象としております。ドイツにおきましても、有価証券の偽造、恐喝、集団窃盗等が含まれております。フランスでは、短期十年以上の懲役刑または禁錮刑で罰せられる罪である重罪、または法定刑が二年以上の拘禁刑の軽罪については一般傍受を行い得るものとしているところであります。  また、犯罪の嫌疑に関する要件ですが、アメリカの連邦法では、傍受を行うことができる犯罪が行われた、あるいは行われつつある、または行われようとしていると信ずるに足りる相当な理由があることとされております。嫌疑の程度としては逮捕状の場合と同じ程度とされております。ドイツでは、傍受を行うことができる罪を犯し、または犯罪行為によってその罪を準備したものがあるという疑いがある事実により根拠づけられることが要件とされております。フランスでは、予審判事が予審手続上必要と認めることと、極めて大ざっぱな要件でございますが、これを要件としております。  さらに、傍受ができる期間については、例えばアメリカの連邦法では三十日以内、ドイツでは三カ月以内、フランスでは四カ月以内とされておりまして、また傍受できる期間の延長、更新については、いずれも当初と同じ期間以内で認められ、その延長、更新の回数に制限は設けられておりません。  以上でございます。
  352. 阿南一成

    阿南一成君 今回の通信傍受法案は組織的な犯罪捜査のために通信傍受を認めようとするものでありますが、諸外国の立法例を参考にしながら、組織犯罪集団に対抗するため捜査機関に武器を与えるということであろうと思います。  さらに、諸外国ではアンダーカバー捜査、コントロールドデリバリー、潜入捜査、あるいは司法取引などといった捜査手法が認められているのであります。そこで、これらについて御説明をいただこうかと思ったのでありますが、少し時間が迫ってまいりましたので割愛をさせていただきまして、次に行きます。  我が国も国際化の波の中にありまして、特に国際組織犯罪集団に対抗するため、これらの捜査手法を真剣に検討すべき時が来たと私は考えております。  一九九五年のハリファクス・サミットにおいて設置されました、サミット参加七カ国にロシアを加えた八カ国をメンバーとする国際組織犯罪対策上級専門家会合、いわゆるP8専門家会合が一九九六年四月に行った、先ほど松尾刑事局長がおっしゃっています四十の勧告においても、アンダーカバー捜査及びコントロールドデリバリーの有効性が強調されておるところであります。  今回、我が国もおくればせながら組織的犯罪対策立法を整備しようとしているところであります。私は、これらの新しい捜査手法についても、近い将来これらの法案の一部を改正しまして、国際組織犯罪集団に対峙する我が国捜査機関に強力な武器を与えるべきではないかと思いますが、法務大臣の前向きな見解をお待ちしております。
  353. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいまおとり捜査とかコントロールドデリバリーあるいは司法取引等の新しい捜査手段についてどうかというふうなお話でございます。  その必要性を初め、我が国の刑事司法制度全体に及ぼす影響あるいは適正手続の担保、国民の信頼の確保等、さまざまな観点から慎重に検討していく必要がある、このように考えるところでございます。
  354. 阿南一成

    阿南一成君 衆議院での修正案では、今回の通信傍受対象となる犯罪から誘拐の罪が落ちました。例えば、誘拐犯人が被害者宅に立てこもった、そして他の共謀者と連絡をとり始めたというふうな場合には、私の解釈ではこのような通信傍受することができないと考えます。何ゆえに誘拐の罪が修正案で対象犯罪から削除されたのか、その経過を簡単に教えてください。
  355. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 修正をした提案者ということではございませんが、その経過を聞かされている者として私の理解を申し上げますが、まず誘拐というものの類型といたしまして、必ずしも今暴力団等の組織的な犯罪という形で行われることが多いというまでは言えないだろうということと、もう一つは、誘拐の場合には被害者宅に金品の要求等があるケースが多いわけでございまして、この傍受によらなくても被害者側の電話をその了解のもとに使って犯人側の通信を受けて、それを捜査の中に活用していくということはまた可能でございます。  そういったようなことから、今回はあえてその対象犯罪にしなかったものというような説明を受けている次第でございます。
  356. 阿南一成

    阿南一成君 刑事局長、どうもありがとうございました。実は提案者が選挙その他でお帰りになったということでちょっとあれでございましたが、失礼をいたしました。  次に、口頭会話の問題についてお尋ねをいたします。  口頭会話はこの法案で言う通信に含まれないことになっておりますが、どのような理由で口頭会話を傍受できないこととしたのか。ちまたではスパイ天国日本などとやゆをされているようでありますが、我が国は非常に治安がよかった反面、国際的、組織的犯罪やテロに対して非常に疎くなっている国であります。諸外国では有線電気通信だけでなく口頭会話自体も傍受対象としておるところであります。  口頭会話はこの法案通信に含まれないことになぜされたのか、あわせて口頭会話について傍受対象としている外国の立法例について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  357. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今回の通信傍受法案は、通信秘密によって厚く保護されている電気通信組織的犯罪において悪用されまして、捜査上の壁となっていることから、これを打ち破るために法案としてお願いしているものでございます。  他方、御指摘の会話の傍受、特に室内会話の傍受でございますが、今申し上げたような状況にはない上に、対象者のプライバシー制約する程度が大きいなど、さらに検討を要する種々の問題があると考えて、今回の対象とはしていないということでございます。  なお、諸外国の例をお尋ねですが、例えば米国、ドイツ、イタリア等、先進国の中でも口頭会話の傍受を認めている国もございます。
  358. 阿南一成

    阿南一成君 通信傍受対象となる犯罪につきましては、衆議院において対象犯罪限定する修正が加えられました。当初の原案では薬物に関する犯罪、銃器に関する犯罪、内乱・外患罪などのように死刑または無期懲役、禁錮の定めのある犯罪で組織的に行われることが多い、またはそれが想定される犯罪、逮捕監禁罪など人命に対して現に差し迫った危険のある犯罪、集団密航に関する犯罪等が掲げられております。  しかし、今回の衆議院修正では、薬物に関する犯罪、銃器に関する犯罪、組織的な殺人、集団密航に関する犯罪と大幅に犯罪対象限定をされたのであります。  私は、これからますます国際化の波に洗われる日本の治安は悪化の一途をたどることになるであろうと考えておる者の一人であります。国民の生命、身体、財産の安全を守ることは、我々政治家としての最大の責務であることは先ほど申し上げました。したがって、私は衆議院におけるこのような大幅な法案修正は問題があると考えておる者の一人であります。特に、スパイ天国と諸外国にあざ笑われているであろう日本が内乱、外患の罪を初め死刑または無期懲役の定めのある重大犯罪通信傍受対象から外したことは、主権国家として大変重要な問題であると思います。  百歩譲って、政治は妥協の産物であるとクールに割り切るとしてこのような法案修正に至ったことはやむを得ないと判断せざるを得ないとするならば、国民の生命、身体、財産の安全を守る最大の責務を持つ我々政治家は、一日も早くこの法案を成立させるべく努力しなければならないと考えるものであります。  私は、国際的組織犯罪集団を根絶するためには、捜査機関として通信傍受捜査手法は必要不可欠の武器であると考えています。したがって、衆議院法案修正があったとはいえ、この法案の早期成立が望まれるところであります。これら法案の成立がおくれることによって組織的犯罪に対処する力を弱め我が国の治安が非常に悪化したとしても、それは国際的組織犯罪集団に対する武器を与えられなかった治安機関の責任ではなく、これらの法案を葬り去った我々政治家の責任ではなかろうかと考えるところであります。  ところで、この問題に関しましては、通信秘密という憲法上の基本的人権にかかわるということで非常に強い反対意見があることを承知いたしております。しかしながら、日本憲法は、基本的人権といえども公共福祉との調和を求めているのであります。  それはそれといたしまして、法務省はこの通信傍受法案が成立した場合、福島委員を初めたくさんの委員皆さん方、国民が今最も心配している法律のひとり歩きに対してどのような歯どめを制度的にかけようとしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  359. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通信傍受法案の歯どめの問題につきましては、きょうの御審議でもいろいろな形で制度的な担保を置いているという説明を繰り返し申し上げてきました。それと同時に、これを運用する第一線の捜査機関の姿勢の問題、また現実に傍受を担当する捜査官に対する通信傍受法案の内容の徹底の問題、あるいは適正執行のための指導監督といいますか、そういった問題も非常に重要な問題であろうと考えている次第でございます。  この点につきましては、制度的には請求権者そのものを警視以上の者とする、またさらに決裁権者をその都道府県警察のトップであります本部長の決裁にするというような警察全体として責任をとる体制も組み込まれているということでございまして、そうした法律に内在する制度保障、また運用面でのそうした配慮等相まって適正に執行されるものと期待しているところでございます。
  360. 阿南一成

    阿南一成君 重要なことでちょっと見過ごされがちな点でありますが、今回のこの組織的犯罪対策法案は、犯罪を前提としない単なる情報収集のための通信傍受とは全く次元の異なるものであると私は解釈をいたしています。  組織的な犯罪対策は、最近の国連やサミット等の最重要議題の一つであります。六月十八日から二十日に開催されたケルン・サミットのコミュニケにおいても、組織的犯罪対策は触れられております。  また、サミット宣言に基づく機関で二十六カ国が参加しておりますFATF、金融活動作業部会の総会がこの東京の地で、私がまさにこの質問をしているさなか、六月三十日から七月二日にかけて我が国が議長国となって開催をされているところであります。そして、そこでは組織的犯罪対策三法案の我が国の国会審議状況についての報告が求められているところであります。  そこで、国際的組織犯罪集団の壊滅へ向けて第一線部隊を指揮する組織の最終責任者でもある関口警察庁長官及び犯罪対策に関する諸立法に責任を持ち、公判維持を担当し、その事件を勝訴に持ち込み、組織犯罪集団の構成員を社会から隔離する任務を持つ陣内法務大臣の組織犯罪集団壊滅への力強い御決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  361. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) 委員指摘のとおり、我が国におきましては来日外国人による薬物犯罪、集団密航事案等が発生をいたしまして、日本の暴力団との連携動向も見られるところであり、我が国の治安に対する重大な脅威となっております。  こうした組織的犯罪に的確に対処することは、二十一世紀を見据えたときに治安上最重要課題の一つであると認識をしているわけであります。また、組織的犯罪対策は、サミットや国連の場で継続的に議題として取り上げられるなど世界的にも治安上の最大の課題となっており、いわば人間の安全保障にかかわる問題であると認識をされております。  こうした観点から、組織的犯罪に対しましては抜け道をつくらないために国際的に協調した対応が求められておりますが、我が国は実体法、手続法の面で主要国に比較して立ちおくれているという面もありまして、法制度の整備が図られるということが必要であると痛感をいたすわけであります。  したがいまして、警察としては、こうした組織的犯罪に対決していくために、従来から行ってまいりました徹底した取り締まり、国内外の関係機関との連携等の総合的な対策を一層推進いたしますとともに、本日御審議いただいている法案が成立した場合にはこうした新たな制度を的確かつ適正に運用いたしまして、もって組織的犯罪の壊滅することに全力を尽くしてまいりたいと存じます。
  362. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
  363. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 組織的犯罪対策三法案による法整備は、組織的な犯罪に適切に対処するために必要不可欠な法的武器でございます。真に国民が安心して暮らせる社会を築き、平穏な生活を守るとともに組織的な犯罪と戦う国際社会の一員として責任ある役割を果たすため、これを適切に活用することによって組織的な犯罪に対しまして断固とした決意をもって厳正に対処してまいりたいと考えております。
  364. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。
  365. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 先ほどの角田委員質問に関して配付しました資料に落丁がありましたので、ただいま配ります。(資料配付)  質問に移ります。  覚せい剤事犯、これまでの質問の中で再三その深刻化が指摘されておるんですが、ただ客観的な数字を見ますと、検察庁の覚せい剤取締法違反事件の受理件数は、昭和五十六年、七年ごろが三万四千ぐらい、平成八年、九年が二万七千台、平成十年はさらに減って二万二千件になっております。ですから、覚せい剤事犯はなくさなくちゃいけないことはわかりますけれども、どうも今ここで覚せい剤事犯が急に深刻だ深刻だといって通信傍受法を成立させなきゃならないというほどの必要性の根拠にはならないんじゃないかと思います。  法務大臣にお伺いしますが、この法案ができれば確かに捜査はやりやすくなる面があるかもしれない。しかし、盗聴というのは相手が盗聴されていることがわからない人間に盗聴するから盗聴の効果があるので、相手が盗聴されていることがわかっているんじゃ盗聴の効果がないわけですよ。  今まではこういう通信傍受法案がなかった。そうすると、組織犯罪をやるのはいわば犯罪のプロですから、電話傍受されるということになればそれは犯罪者の方はそれなりの対策を考えるわけですから、電話を頻繁に変えるとか、仮名の電話をさんざん使うとか。ですから、法務大臣が言われるように、この法律ができればこういう凶悪犯罪が壊滅的に取り締まれるということにはならない、意外に効果がないんじゃないかと思うんですが、大臣、そこら辺のお考えはいかがですか。
  366. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) まず最初に、覚せい剤の犯罪の動向につきまして御説明いたさせます。
  367. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 覚せい剤事犯は、戦後第三の高原状態になっているということでございますが、その都度その都度の対応がとられております。  第一次のヒロポンの時代がありますが、これは確かに件数は今の数倍を上回る検挙がございました。覚せい剤事犯統一の処罰基準あるいは捜査等を徹底することによってこれを抑圧したと。ところが、第二次は昭和五十七、八年ごろでございますが、この高原状態も麻薬特例法その他の法的な手当て、重罰化あるいは求刑、量刑が格段に重くなってきているということで下降をたどっていたものが、今回さらに上向きになったということは否めないことでございます。  こうしたことと、午前中から申し上げております覚せい剤事犯の新しい展開、つまり青年層あるいは少年層にまでこの汚染が及んでいること、あるいは家庭に入っている、入りつつあるということまで言われている新しい現象についても適切に今対応する必要があるということでございます。  覚せい剤による暴力団の収益等が巨額に上ることは先ほど警察庁の担当局長からも答弁があったとおりでございまして、予断を許さない現状にあるということでございます。
  368. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 犯罪組織というのはプロ集団であるから、通信傍受制度が整備された場合は、犯罪を行う者はその通信傍受されることを警戒して何らかの対応策をとろうとすることが想定されるという御指摘でございます。そういう面も確かにあろうとは思います。  しかし、薬物や銃器の密売等の事案あるいは複数の者があらかじめ計画を定めて役割分担して組織的に犯罪を実行する事案など、こういった犯行に関与する者の間では頻繁に連絡をとることが不可欠な組織的な犯罪でございますので、電気通信手段を用いないようにするということは極めて困難ではなかろうかと思うわけでございます。  もともと捜査というのは個々の事案ごとにそれぞれに適した効果的な捜査手段を選択して行うわけでございますけれども通信傍受はこのように通信手段が用いられることの多い組織的な犯罪捜査にとって極めて効果的な手法の一つである、このように考えております。
  369. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 話は変わりまして、この通信傍受をだれでもがされる危険がある、こういう民主党のパンフに関して、そういうことは絶対にないかのような御議論がさっきありましたが、これは一つのケーススタディーとしてケースを想定してお尋ねします。  例えば、最近ある政党の幹部の息子が覚せい剤事犯で逮捕されたケースがありました。それをヒントにした想定の上ですが、例えば政治家がいる、政党の大物がいる。その息子が同居していれば同じ電話を使うわけです。その息子がその電話で覚せい剤の取引をしていれば、これは法律傍受することが可能になるんじゃないですか。もしそうであれば、政治家も同じ電話を使っているんだから、該当性判断ということがあるかもしれないけれども、そういう傍受をされることになり得るわけです。そういうことはあり得るんじゃないですか、一つの想定の話ですが。
  370. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的なケースというのは、条件設定が非常に一部分ということでございますのでなかなかお答えしにくいところでございます。ただそれだけの事情ではなくて、それが麻薬取引の組織的な解明が必要だというような状況もいろいろ設定されなければ、直ちに親族が覚せい剤の取引をしているからその家庭の電話傍受されるというようなことにはにわかにならないということでございます。
  371. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 にわかにならないかどうかじゃなくて、法律の構成を聞いているわけです。  例えば、一つ電話をそうやって複数人が共用しているという場合、複数人が共用しているといっても通信傍受令状は出るわけですね。そうすると、複数人の中の一人が犯罪対象者であっても、その他の人は犯罪対象とは全く関係がなくても聞かれる現象が起こる。ですから、複数人が使ってそのうちの一部の者が使っている電話に関して通信傍受はできないという規定がここでないんだから、つまりこの法律上はそういう可能性があると思うんです。お答えください。
  372. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法律の第一条には、「この法律は、組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることにかんがみ、」ということで、その目的をうたっているところでございます。  組織的な犯罪に適切に対処するための法案でありますということですが、そもそも覚せい剤の使用の罪は通信傍受対象犯罪とされておりません。通信傍受は、対象犯罪の実行に関連する通信に用いる疑いがある特定通信手段に限って許されるものであるということから、学校の生徒なりあるいは家庭の構成員が覚せい剤使用の疑いがあるというようないわば軽微な事案で学校の電話あるいは家庭の電話傍受対象になるということはあり得ないことでございます。
  373. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私は法律論で聞いているわけです。軽微な事件じゃなくて、では重大な事件、覚せい剤の密売をやっていたらどうですか。やっぱり入るんじゃないですか。
  374. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まさにそのような重大な事犯に関係する者がその特定電話を使用するということが特定されれば、それはお尋ねのとおり、これを傍受対象にしないということは逆におかしいということになろうかと思います。
  375. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、ある一般人が、自分自身が犯罪をしていなくても、電話を共用しているとかあるいは人の電話を犯人が使っているということがあれば、これは傍受される可能性はある、こういうことになるわけですね。イエスかノーかで結構です。
  376. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほど申し上げましたように、ある一定の条件だけを設定してイエス、ノーというのはなかなか難しいわけでございまして、この電話がそういう組織的に行われる薬物事犯の取引についてのまさにその組織を解明するために必要な傍受であるという状況が設定されるのであればイエスでございますが、そういったことのない単なる一般人の電話であって、たまたまその自己所有者等がそれに関与しているというだけでは傍受対象になることはあり得ないということでございます。
  377. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 それは法律の構成の問題じゃなくて、そういう傍受対象犯罪に含まれない犯罪が犯されたってそういうことを聞かないというだけであって、私の法律の構成について尋ねている答えになっていないじゃないですか。  次の質問に行きます。  電話だけじゃなくて、インターネットによるコンピューター通信、これも傍受対象になるわけです。そこでお尋ねするのですが、インターネットはもう一千万件以上普及しているんですが、インターネットの場合にはどのようにして傍受するんでしょうか。コンピューターがあって、複数のコンピューターをまとめたサーバーというものがある。サーバーから専用回線を流れてほかのサーバーに行くわけです。  刑事局長にお尋ねしますけれども、この法律では、そのどこの段階においてでもこれは傍受してもよろしいんでしょうか。
  378. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 電子メールにつきましては、受信者のメールアドレスというものがございますが、まずこれを特定いたします。通信事業者であるプロバイダーが管理する受信者のメールボックスというのがございますが、そこにおきまして傍受すべき通信が行われたか否かを見張っておりまして、メールが受信されますとこれをコピーして傍受するということになります。  特定の者から発信される電子メールにつきましては、その者が特定電話回線を通じてプロバイダーにアクセスすることによって電子メールを送信している場合には、当該電話回線を電話番号等によりまして特定し、その回線を通じて送信される電子メールを電話の場合と同様に電話局等において傍受するということになろうかと思います。  受信、送信についてのおおよその考え方は以上でございます。
  379. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 そうすると、プロバイダーの業者に蓄積されているそのデータを出すことしか考えないわけですか。そのほかの方法はこの法律において禁止されているわけですか。
  380. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的に多く考えられるケースとしては、今先生指摘の、プロバイダーのもとにおきまして来るメールを傍受するということを想定しております。
  381. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私の質問に答えていないんですけれども。ですから、プロバイダーのコンピューターの中に蓄積されたそのデータを出すだけが傍受なのか、それともそれ以外の方法で専用線を傍受する、あるいはサーバーからコンピューターにつながるところの回線を傍受する、こういう方法があるわけです。こういう方法はとらないんですか。
  382. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 若干、プロバイダーのもとのメールボックスに蓄積されているという表現をされましたけれども、これは現に行われている通信傍受でございますので、令状によって傍受実施するまでにそこに蓄積されているものを押収する場合には、これは通常の捜索・差し押さえ令状ということになります。  それで、傍受実施する、つまり見張りをするそこへ流れてくるメールにつきましては、プロバイダーのもとにありますメールボックスにおいて当該特定の番号に入ってくるメールを傍受するということでございますので、これはちょっと電話傍受の場合とは違いまして、該当条文で言いますと十三条の二項による傍受ということになるわけでございます。
  383. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 どうも質問にはっきり答えてくれないんですが、要するに、傍受はコンピューター通信が今まさになされているその回線を傍受することによってもできるわけです。それは、禁止されていることはコンピューター通信においては全然やらないんだということですか。
  384. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 三通りの方法があろうかと思います。  一つは、今申し上げましたプロバイダーのもとにあるメールボックスに入ってくる通信傍受するということ。  それから、先ほども後段の方で申し上げましたが、発信される電子メールでございます。これは、その者が特定電話回線を通じてプロバイダーにアクセスすることによって電子メールを送信している場合には、その電話回線を電話番号によって特定し得ますので、その回線を通じて送信される電子メールを電話の場合と同様に電話局におきましてその特定の番号から入ってくるところを傍受するということになります。  それから、専用回線、専用線ということの趣旨ですが、若干不明な点もございますが、特定の当事者間でのみ利用される通信回線ということで理解するといたしますと、電気通信であってその伝送路の全部もしくは一部が有線であるなど、本法案に定める要件に該当するものにつきましては通信傍受対象となります。  あるいは、お尋ねの専用線がインターネットとサーバーとの間を接続している専用線ということを指すといたしますと、不特定多数の通信がそこは行き来するわけでございますので、専用線上での特定のメールアドレスにかかわる通信のみを捕捉することは、これは技術的な困難があるというところでございまして、そのような傍受を行うことは想定していないというふうに御理解いただきたいと思います。
  385. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 想定していないという表現は非常に微妙なんですが、この法律で禁止されているんですか。
  386. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法律では、特定の番号、電話番号等を特定しまして通信傍受を行います。それが特定できないということになりますと、この法律では傍受はできないということになります。  今申し上げたインターネットとサーバーとの間を接続している専用線でございますが、これはある意味では自動車で例えれば高速道路みたいなもので、それを寸断しまして特定の車を探し出すということは技術的にはできませんので、これは想定していない、技術的には法律で予定していないということになります。
  387. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 技術的には非常に可能ですよ。つまり、不特定多数じゃないんです。特定多数です。不特定じゃないんです。ですから、あるアドレスを持っている者の通信が流れていれば特定しているんです。そこの専用回線でも把握できるんです。できないのは、その回線部分だけを取り出すことはできないので、同時になされている他人の通信文も一緒に入手しなければできないというわけで、番号は特定されているんです。特定できるんです。  ですから私は、要するにこの質問がしたいわけです。この法律で禁止されていなければ、アドレスで番号は特定されているその特定されている部分をどこでつかまえてもいいのであったら、その特定多数の情報が流れているその専用回線でつかまえれば、そのアドレス以外のほかの情報まで一緒くたに入手することができる。これはやらないというんだから禁止されていなくちゃいけないと思う。  局長が今、技術上できないと言ったけれども、では技術上そういうことができるんだったら法律上禁止しなくてはならないというお答えになるわけですね。
  388. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今、先生のお尋ね中にもありましたが、ある特定通信傍受するためには、技術的に同時にほかの不特定多数の通信傍受してしまうようなことになりますので、不特定多数の方の通信を許可なく傍受することになります。それは技術的に分断できないということになりますと、結論としては、そういった状況での傍受はできないということになることを申し上げているわけでございます。
  389. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 では、もっと簡単な話で、先ほどホテルの話をしました。例えば、ホテルに代表電話がある。そこで、外部でやるとお客さんのだれの電話かわからないから、ホテルの中でやるんだと。だけれども、外部でだってホテルのお客さんの電話はつかまえられるわけです。コンピューターの場合には、同時に特定多数の情報が流れているから、つかまえれば必ず他人のものもつかまえてしまうからいかぬわけですが、有線回線の場合には、ある人間が通信をやっているときには同時にほかの人間の電話が流れているということはないんです、普通の一般電話の場合には。だったら、やろうと思えばこの法律上やれるんじゃないですか。ただ、あとは該当性の判断をすれば済むということになるんじゃないですか。  この法律の構成上ですよ。やりたくないとかそういうことをやってはいけないというモラルの話を聞いているんじゃないので、法律上、代表電話の外線をキャッチして通信傍受することが禁止されているかどうか、この点についてお答えください。
  390. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほど申し上げましたが、そういう設備等あるいは機能等を考えまして、特定電話通信だけを傍受できるということになりませんと、技術的にはそれも可能だけれども、同時にほかのも聞いてしまうということであればできないという結論になります。
  391. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 では、その点はまた改めて議論するとしまして、該当性判断の問題ですが、普通のこれまでの電話ですと、時間を追って会話が進むから、該当性判断をして途中で打ち切ることができる。ただ、コンピューター通信ですと、今まさに行われている通信傍受する場合は別ですが、先ほども言いましたように、メールボックスに入っているものに関しては瞬時に全部取り出すことができるわけです。ですから、瞬時に全部取り出してしまったら、これはもう全部の通信傍受したことになるわけですから、当然原記録として裁判所にも提出するわけですね。
  392. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) おっしゃるとおりでございます。電子メールの傍受における該当性判断でございますが、通信にかかわる信号全体を一たん傍受します。コピーすると言ってもよろしいかと思います。ということで、それを次に印字ないし画面に表示するなどしまして立ち上げまして、これの該当性の判断をして必要なものを残していくという作業になります。
  393. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ちょっとわからないんですが。ですから、メールに入っている情報が一たん全部出ちゃうわけですよ。全部出ちゃったんだから、これはもう傍受したことになるんだから、その全部を原記録として裁判所に提出するわけですね。
  394. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは御指摘のとおりでございます。
  395. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 それで問題は、その原記録と同じものを今度は傍受記録をつくるために捜査官も持ち帰るわけです。そうすると、出てしまった情報を一たん全部捜査官が持ち帰るんじゃないんですか。
  396. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その場合でございますが、立会人がいる傍受実施場所において復元可能なものは復元いたしまして、必要最小限度の判読を行って該当性の判断を行うことになります。その結果、傍受すべき通信が含まれている場合にはそのデータを傍受記録に残しまして、傍受すべき通信が含まれていない場合はそのデータを傍受記録から消去するという作業になります。
  397. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、一たんメールに入っている情報は全部捜査官が入手しちゃうわけですよ。  先ほどしました私の議論の中で、複製は消去しなくちゃいけない、だけれどもメモすることは許されるしメモは消去しなくていいんですよね。つまりこの法案は、全部または一部をそのまま複製したものは消去しなきゃいけないというわけですよ。  しかし、このデータベース、コンピューターの情報というのはすごいですから、例えばその中で小川敏夫というキーワードを押せば小川敏夫に絡むものがずらずらと出るわけですよ。あるキーワードを使ってそのずらずらと出してしまった特定の情報は、これはデータをそのまま、全部または一部をそのまま複製したものじゃないんですよ、まとめてしまったものなんですから。そうすると、消去すべき複製には当たらないと思うんです。ちょうどメモと同じように、メモはそっくりそのまま全部同じものじゃなくて、ただ要約したメモは消去すべきものには当たらないというんだから。  だから、持ってきたものをデータベース化して、それでそのまま複製したものは消去しなきゃならないけれども、今言ったようにある情報だけ抜き出したような、そういう整理してしまったものは消去すべきものには当たらないんじゃないかと思うわけですよ。そして、当たらなければ、持ってきた情報を幾らでも細分化して、コンピューターですからデータベース化してしまえば幾らでも蓄積できる。それをやることは禁止されていないし、消去することもこの法律規定されていないということになれば、警察は入手した情報、警察に限らず捜査官は入手した情報を結局はすべてデータベース化していいということになると思うんです。  この法律ではそこが禁止されていないのでどうも私は欠陥法律だなと思っているんですが、いかがでしょうか、その点は。
  398. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 若干、電子メールの傍受の場合は電話に比べますとわかりにくいという点は確かにあろうかと思います。  先ほどから申し上げましたとおり、その電子メールの傍受は一たん該当性判断のためにも傍受いたします。つまり、記録としてコピーをするということでございます。  それで、先ほどから申し上げておりますが、その上で画面に表示をしないと内容のいかんがわかりませんので、これは画面に表示をして、傍受記録に残すべきメールかあるいは関係のないメールかを区分けいたします。それで、傍受記録に残すべきものは傍受記録としてのフロッピーというんでしょうか、そういうものに落としていくわけです。  それで、全部一応傍受したことになりますので、消したものも原記録という裁判所に持っていくフロッピーには全部入っております。したがって、捜査関係のある、傍受令状犯罪事実に関係あるというふうに判断されるものが捜査官の手元に傍受記録として残っていくわけでございます。  それをどういうふうに捜査に利用していくかというのは捜査内容でございますので、そういった先生の御質問の中にはそこの段階での話が混在しているようにもうかがえるところでございます。
  399. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、むしろ局長答弁の方が話をすりかえていらっしゃる。  一たん情報を全部出して、それは原記録で送る、その後に何かその場でディスプレーして傍受記録をつくる、だから持ち帰らないようなことをお話しされましたけれども、その場で傍受記録をつくらなければならないということはこの法律には全然書いていないわけです。持ち帰って傍受記録をつくったっていいわけです。そのためにデータ、情報は全部捜査官が持ち帰るわけですよ。  では聞きますけれども、さっき言ったように、持ち帰った情報をメモ化してしまう、データベース化してしまう。そうすると、データベース化してしまった情報は消去すべき複製に当たるのかどうか、この点だけについてまずお答えいただけますか。
  400. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生の御質問を聞いておりますと、メールを入手します、そこには該当性判断の前の関係のあるものないものが一切入っているものが原記録としてあります。それを捜査官が適当にどこかに持っていって、例えば警察に持ち帰りまして、後で何か適当に細工するような雰囲気にも聞こえるわけですが、条文をごらんいただきますと、速やかに傍受すべき通信に該当するかどうかの判断を行うという規定が第十三条には明記されております。  つまり、立会人がいてその場所で立ち上げることができるメールについては立ち上げまして、そこで該当性の判断をするわけです。その上で必要なものと必要でないものを分けまして、必要なものだけは捜査機関捜査記録、傍受記録になるわけでございますので、それを持ち帰るということでございます。そのように御理解いただきますと整理されるのかなというふうに思います。
  401. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 刑事局長が言われた御趣旨はわかりますよ。だけれども刑事局長が言われたようにしなければならないというふうにはこの法律規定していないわけですよ。  ですから、そういうふうにしたい、そういうふうにしなくちゃいけないというモラル、精神はわかりましたよ。だけれども、私が聞いているのは、やはり乱用の防止を制度的に確立しなくちゃいけないという観点から、捜査官乱用に及ぼう、この機会に収集した情報をデータベース化してしまおうという気持ちを起こしたときに、それができないような仕組みになっているかという観点で聞いておるわけです。
  402. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 電子メールの場合に傍受記録をつくる作業につきましては今申し上げたとおりですが、まず、その傍受記録に記録されたもの以外のものにつきましては、その内容を他人に知らせ、または使用してはならないと、二十二条の五項にそれの不正使用を禁止する規定は置いてあるわけでございます。そういう意味で、そのほかの規定と相まってそうした傍受を適正に行うということは電子メールの場合でも担保されているものというふうに理解しております。
  403. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私は担保されていないと思うんですが、質問に真正面からお答えいただけなかった。ではその質問はやめます。  時間がないので最後の質問になりますが、先ほど大森委員からも御意見を賜りまして、原記録を裁判官がチェックすれば一〇〇%乱用を防げる、このような御意見を賜りました。それで聞くんですが、この通信傍受法が仮に成立したとした場合に、実際にどのくらいの数が利用されるというふうに予想しておられるんでしょうか。
  404. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的な事件に適用される傍受でございますから何件というのをあらかじめ予想することはなかなか難しいのでございますが、例えばこれが施行されて初年度の一年間ということで考えますと、この傍受内容捜査官に周知徹底するということがどうしても必要でございます。それから、この運用自体がやはり適宜適切な事件で実施しながらなれていくことがさらに適用量を広げていくということにもなりますので、当初の年度あるいはその次の年度等はそれほど多数の件数には上らないだろう。あえて申しますと数十件ぐらいの単位で、三けたは行かないのじゃないかなと私個人としては想定しております。
  405. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 たしか衆議院答弁でもそのような御趣旨の考えを述べておられますが、そのような件数でしたら裁判官が手を割けないと言うほどの事務量じゃないと思うんです。やはり裁判官の職責を考えれば、その方法を取り入れれば一〇〇%乱用は防げるという勇ましい意見を言っている方もいらっしゃるわけですから、ではその制度を取り入れることについて何か弊害があるんですか。そのことについてお答えください。
  406. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 午前中の、全然ヒットをしていない場合の御議論の続きみたいな感じになります。  そこでもいろいろ申し上げましたが、そうした場合に裁判官が全部内容をチェックするんだということのプラスマイナスが確かにあろうかと思います。大森委員指摘したようなプラス面と同時に、裁判官がそうした内容について一々チェックしていく、あるいはプライバシーに立ち入っていくということの当否の問題がございます。  ヒットしないケースというのが概念的には考えられるということでございますが、例えばそうしたケースが電話傍受の大半を占めているということになりますと、ではその一つの塊としてそういうケースが多い場合にはどうするのかという議論も考慮しなきゃいかぬと思いますが、想定としまして、全部ヒットしないケースというのは希有な事例であろうと思いますので、そうしたことをあわせ考えますと、裁判官に全部チェックさせるシステムを設けることのプラスマイナスを総合して、それは必要なかろうという判断がこの法案の立て方でございます。
  407. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 とても納得できないので議論を深めたいのですが、時間がないのでとりあえずここで終わります。
  408. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。二巡目の質問をさせていただきます。  小川委員が、何か私が一〇〇%乱用を防げると勇ましいことを言ってと言うんですね、何件ぐらいですかと聞くので、だから数十件とお答えになるんでしょう。確かに、件数は減ったと思います。前の政府原案でしたらもっとふえたでありましょう。修正案で非常に厳格にしましたので、減るだろうということはわかります。  ただ、数十件、それで全体がふえたらどうするんだという問題になると思います。私が申し上げたいのは、そういうふうに全部チェックする、捜査官が聞いたと同じ時間を裁判官にその仕事に使っていただくことが本当によろしいのかどうかということです。ほかの事件を抱えている、これも一つの時間の使い方であります。そして、この原記録を聞く、これも時間の使い方でありまして、どちらを我々は裁判官に求めるかということだろうと思います。例えば一方で事件も抱えているとなりますと、テープレコーダーの原記録をイヤホンで一方の耳で聞きながら事件をするわけにいかないですから、そういうことをもう少しお考えいただきたいと思います。  それから、今覚せい剤事犯が深刻だ深刻だと言うけれども、そんなに深刻ではないのではないかという言葉がありました。件数は統計から言えば一時の物すごい乱用期から比べましたら減っておりますけれども、そのことについてちょっと私は気になるので申し上げさせていただきたいんです。では、どれくらい件数がふえたならそれを深刻と考えて通信傍受が必要と考えるのかということなんですね。  私は検事をやって覚せい剤事犯もいろんな経験をしました。私は、特に覚せい剤ですが、薬物に対して非常に敵意といいますか、敵がい心を持っております。というのは、薬に侵された人の生の姿を見ておるからです。警察の方はもっと見ておられると思います。  それで、覚せい剤をやりますとどういうことになるかということで、我々人権等持っておりますけれども、肉体、精神がやられるということは、その人権の器これ自体がやられるわけですから、その人権の器を壊して幸福追求権も何もないというふうに私は考えておるわけです。  これは全然予定していない質問で済みませんが、ある検察庁で公判を担当したんですけれども、トラックの運転手が覚せい剤を入手しまして使いました。ちょっと間を置かないで打ったためなんでしょうか、錯乱状態になりまして、どうしたかといいますと、これは出刃包丁だったと思いますが、自分で両方の小指をすぱすぱっと切り落とした。これが事件となって使用がわかったという事案でございます。私はそれの公判を担当しました。私、やくざの人に聞いたことないんですけれども、小指一本落とすのはどのぐらい痛いのかということ、相当痛いという話です。一本のみならず二本も落としたというそのときの精神状態というのは一体どういうことなのかなというふうに思ったことがございます。  貴重な質問時間をこういうことに費やしていいのかどうかわかりませんが、もう少し言いますけれども、公判を担当しまして、その人は両手に包帯を巻いて法廷に出てきました。それで、再犯のおそれがないんだと検事の私も思いましたから、最後にその被告人の方に、それまでその方は淡々と被告人質問に答えておられましたけれども、もしよろしければ、両手を裁判官に見せていただけますか、こういうふうに言いました。これ承諾要りますから、無理強いはできませんから。そうしたら、その被告人の方がわかりましたと言ってそっと両手を初めて見せたわけです。その瞬間に、それまで淡々と語っていたその被告人が、男性ですけれども号泣いたしました。非常に私は残酷なことをしているなと実は思ったんですけれども、この指、この手を見てあなたは絶対二度と覚せい剤を使用することはございませんねということで私は質問を打ち切った、こういう場面もあったわけでございます。  それから、逮捕になるきっかけとして、よく家の中で暴れている、息子が出刃包丁を持って暴れていると警察が呼ばれます。そして、錯乱状態になって出刃包丁を持って本当に家族、母親とかに向かって暴れまくっている。そこを警察が取り押さえる。それで、尿検査したら使用がわかった。こういう事案、現場ではよくあるんです。そのときに、そこまで人間を狂わせてしまう薬物というのは恐ろしいものだなと思うと同時に、本人にとっても悲劇ですけれども、息子がそういうふうになっていく、狂って包丁を振り回している、これを目の当たりにしながらその息子を取り押さえることができない母親の心情というものはいかなるものかなということを私は感じたことがございます。  そういうことから件数がふえたからじゃなくて、件数が変わらなくても、もしかしたら件数が減っていくとしても、覚せい剤犯罪というのはもうどんどん減らしていかなきゃいけないんじゃないか。供給がふえているということは事実なんですから、この供給を絶つということ、これは真剣に考えなくてはいけない問題だと私は考えます。  それでは、午後聞こうと思って聞けなかったのですが、アメリカでは八割は犯罪に無関係盗聴であった、こういう批判がございます。だから、こんな通信傍受法、彼らが言う盗聴法はだめなんだということですね。年間通信傍受数は二百二十万とか二百万とも言う方がおられます。それで八割、八三%が犯罪に無関係な善良な市民盗聴であった、こういう言い方をされるんですね。これは本当かなと。  これを根拠に、この通信傍受を認めると監視社会になる、暗い社会になるとおっしゃるのですが、私は犯罪者を監視する社会というのは非常にいい社会であろうと思いまして、それをしなければ逆に犯罪社会を助長するのがいいのかということにもなるわけです。  問題は、これが正しい言い方なのかどうか。外国の例と比較する場合には、そこの法制度とこの通信傍受修正案とが同じ制度なのか。これが同じであるとして、同じ法制度がアメリカで行われている、そしてこのような結果が出ている、だからおかしいじゃないかと、これならまだよろしいんです。制度が違っていたら、アメリカでこうだから日本でもこうじゃないかという推論はできないと思うんです。  刑事局長、アメリカの制度とそれから日本のこの修正案との違いを明確にしていただきたいと思います。
  409. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、その前に八割が犯罪と無関係であるというようなことがいろいろなマスコミ等で言われているわけでございますけれども、アメリカのワイヤータップ・レポートを見ますと、例えば一九九八年では傍受した通信数の平均が千八百五十八、有罪の証拠となるものの平均数が三百五十、確かにその割合は一八・八%ということです。  しかし、これは犯罪と全く関係のない通信手段が約八割あったということではございませんで、傍受対象となった通信手段を用いて行われた通話のうち約二割が逆に言いますと有罪の証拠となったということでございまして、証拠収集という観点から見ても極めて効率の高い有効な捜査手段であるというような評価もまたできるわけでございます。  それから、アメリカとの違いでございますが、まず犯罪対象がアメリカはかなり広いわけでございます。この具体的な罪名は午前中に申し上げました。それで、我が国はそれに対しまして四つの犯罪類型に限定されているという点で大きな違いがございます。それから、アメリカは口頭会話も傍受対象となっているという点でございますが、この通信傍受法案では口頭会話は入っていないということでございます。  それから、傍受の期間でございますが、アメリカの場合は当初三十日以内でございます。それで延長が可能でございまして、延長期間は三十日以内、延長の回数に制限はないということでございますが、我が国は延長しました場合でも最長でも三十日を超えられないということで、期間については格段に我が法案の方が非常に短いということでございます。  そうした中での対比ということになりますので、そうした前提の違いその他も考慮しながらいろんな数値を考える必要があろうかと思っております。
  410. 大森礼子

    ○大森礼子君 わかりましたけれども、一八・八%は有罪の証拠として用いられたものというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  411. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) おっしゃるとおりでございます。
  412. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうすると、有罪の証拠として用いられたものが一八・八%、その裏が八十何%かになるんですね。これはその裏ですから有罪の証拠として用いられなかったものですね。有罪の証拠として用いられなかったものが八割ぐらいある。このことを結構多くの方が、全く犯罪とは無関係な善良な市民の通話がこれだけ聞かれているという言い方をしているのでしたら、これは正しい言い方ではないと思います。  例えば刑事捜査でもいろいろな証拠が来ますけれども、法定に提出する場合は、ベストエビデンスと言いまして、いい証拠を出すということで、それ以外のものは全部犯罪関係ないかといったらそうとはならない、こういうこともございます。こういうことはやはり正確に理解して、正確に国民皆さんに伝えた上で御判断を仰ぐべきではないかと私は思うんです。  先ほど福島委員法務大臣に対して、通信傍受法があればオウム犯罪を防げたというこの言い方は欺瞞であると言いましたが、本当にそのとおりだと思うんです。坂本弁護士と福島さんと私とは修習が同じでございました。それで、今でも坂本君の事件を思い出すと本当につらいんですけれども、軽々しくそういう言い方をしていただきたくないなという気持ちがあるんです。ですから、この通信傍受法があったらオウム犯罪を防げたと言いますと、そんなに軽く言っていいのか、欺瞞ではないけれども、福島さんと同じ気持ちを持ちます。  だからこそ、私は、このレポートをもとに正確な把握をしないで八割が無関係な通話であったとか、こういうことで日本もあたかもそういうふうなことが行われるようなことを言うとしたら、これはある意味で欺瞞ではないか、デマではないかと思うんです。福島さんは絶対そういう言い方をされないと思いますけれども、そういった意味で、こういう一つ一つの事実をきちんと確定しながら国民の皆様にいい悪いを全部お伝えして、そしていろいろな意見をいただきたいな、このように思います。  ちょうど時間になりましたので、質問を終わります。
  413. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務大臣はよく御存じないかもしれませんので、決して法務大臣を批判したりする立場ではありません。  ということで聞きたいんですが、私は、百十六国会の参議院法務委員会、十一月三十日にオウムの坂本さんの事件で質問をいたしました。質問した趣旨は、あのオウムの事件で坂本さんとオウムの幹部とのいろいろやりとりがあったという情報があり、現場にプルシャが落ちていたということでオウムの事件とのかかわりが明白に一つはあった。  ところが、当時、警察は、関係者や私どもが、これは単なる失踪事件ではない、オウムが関与した重大な事件の可能性があるから厳正に捜査すべきだということを強く主張して、そういう質問を私はいたしました。このときは事件が起こって三週間たっていました。実際はもう亡くなっていたという事件でしたが、だれもわかりませんでした。そのときに警察庁の刑事局捜査第一課長の山本さんは、私の質問に対して依然として、本件失踪事件は、こういう言葉で、いろいろとこれから検討してまいります、こう言われました。私は、こういうことを考えますと、まさに警察の初動捜査があのオウム事件では問題であった。  松本サリン事件でも私は追及しました。裁判所でオウムの土地問題の判決が近づいている、そしてオウムのその問題に対する重大な関心から見て、松本サリン事件にはオウムの影がある、これも厳しく調べるべきだと追及しました。野中現官房長官は当時国家公安委員長でしたが、警察は軽々に想像や観察だけで踏み込めませんということをおっしゃいました。現在になってみればオウムの犯行であることは明らかになっている。だから、私はあのオウムの事件に関する限り、世論が厳しく指摘したようにまさに捜査の立ちおくれが基本問題であって、その意味ではあの事件で通信傍受ができたらということは全く当たらないケースだということをつくづく思います。  坂本さんの告別式に私も参列をして、その無念さに涙が出る思いがしたんですが、そういう意味で、この警察の初動捜査のおくれという問題を抜きにして、あの事件について通信傍受法があればというような言い方は一切してほしくないというのは私も同感であります。  大臣いかがでしょうか、失踪事件だと言い切っていたことを御存じだったでしょうか。御存じなければないで結構です。
  414. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 私も、これは当時参議院の決算委員会か何かのときに先生が急遽質問されたのを今思い起こすわけでございますが、それに対する警察当局のどういう判断だったか、私はちょっと記憶にございません。  しかし、いずれにしましても、捜査というのは個々の事案ごとにそれに適した効果的な捜査手法を選択して遂行すべきものであるということは間違いのないことでございまして、そういう意味ではそれ以上私としては答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。
  415. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから法務大臣、決して批判するんじゃありません。当時、警察は単なる失踪事件という言い方でやっていたということは御存じなかったんじゃありませんか、こう聞いているんですよ。御存じなかったんでしょう、そういうことです。
  416. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) そういう見方をされておったときもあったと思います。
  417. 橋本敦

    ○橋本敦君 御存じでしたか。なおさらオウム事件との関連では、初動捜査のおくれということも認識されるはずですから、その点は今後ともよく検討してください。  それでもう一つ。十六日のテレビ朝日の「あまから問答」で、大臣はあの緒方事件について、これは捜査のためではないんですけれども公安のために電話傍受した、これは警察も認めておりますし警察官も認めております、こういうふうにテレビでおっしゃいました。私は、テレビを拝見しておりまして、それも起こしたんですね。  ところが大臣警察庁長官は、きょう私どもがあれだけ厳しく言っても警察官が行ったことは認めていないんです。戒告処分までしても、それは事実と認めたんじゃなくて、検察庁から捜査を受けた、調べを受けた、それが不名誉だ、こういうことでしたと。全く違いますよ。  ですから大臣が、警察も認めておりますし警察官も認めておりますと、あたかも警察が反省しているかのごとくテレビでおっしゃったことは、もしも警察があのとおり言っていることがそうだとすれば事実に反しますが、私はそうは思わない。大臣がおっしゃっていることが正しい、警察は依然として国会で真実を話していない、これは許しがたい、こういう思いでいっぱいです。  大臣はテレビで、警察も認めておるし警察官も認めておる、こうおっしゃったことは責任を持って間違いないと言っていただけますね。
  418. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) お尋ねの事件につきましては、警察において、東京地方検察庁の捜査で警察官による盗聴行為があったと認められたことや、民事訴訟でも同様の行為があったと推認された、こういうことを厳粛に受けとめて、その反省を踏まえて、国民の信頼を裏切るようなことのないように厳しく戒め、適正な職務執行に努めているということを承知しておったものですから、お尋ねのテレビ番組においても私はこのような認識を示したわけでございます。
  419. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう時間がありませんから。  だとすれば、私はきょうの警察庁長官の当委員会における答弁は、国会に対する答弁として私は許しがたい重大な問題だと思います。  終わります。
  420. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ちょっと先ほどの確認で、松尾刑事局長にお願いします。  なぜ起訴猶予にしたのかということに関して、首謀者が別にいたからであるというふうに答えられたと思うんですが、ということは、組織的犯罪という認識だったということでよろしいでしょうか。
  421. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 表現といたしましては、起訴猶予にした両名について、その地位等に照らして犯行の首謀者あるいは責任者的立場にあるとは認めがたいということでございます。それ以上、その犯罪自体が組織的な犯罪であるというところまでの認定を裁定の中でしているということではございません。
  422. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ただ、実行行為者がいて、別に首謀者、責任者がいるということは、何か組織なり団体なりチームということではないんですか。
  423. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは推測でございますが、恐らくその首謀者でないあるいは責任者的立場にあるとは認めがたいという裁定をしております以上、その組織性についての捜査も徹底して行ったものと思われますが、結論としては、証拠によってそれを認定するには至らなかったというふうに御理解いただきたいと思います。
  424. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 警察は認めないけれども、検察庁としては別に首謀者あるいは責任者がいたという認識であったということで、きょうは聞いておきます。  それで、私は政府の答弁で一番というか非常に矛盾していると思うのは、市民の中にかように覚せい剤が蔓延しているということを大変おっしゃいます。犯罪市民が全く別世界に住んでいるわけではなく、当たり前ですが、市民国民の中に犯罪が存在しているわけです。  私は、また別の面で捜査のための通信傍受法案、いわゆる盗聴法組織的犯罪対策三法案と呼ばれていることに実は大変不満を持っております。捜査のための通信傍受法案、盗聴法にはどこにも、一条から組織、団体という要件はありません。つまり、これは覚せい剤そして大麻の単純所持も盗聴対象になります。だから、今サラリーマンや主婦の人にも覚せい剤が蔓延し、単純所持はふえているという前提に立つのであれば、この盗聴法は単純所持も対象にしているわけですから、一般市民対象にしているというふうに思います。  なぜこの盗聴法組織的犯罪対策三法案というふうに呼ばれているのでしょうか。
  425. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 組織的な犯罪対策としましてこの三法案でございますが、組織的な犯罪に適切に対処するために緊急に整備すべきものと思われる事項について法整備を図るということでございます。  この組織的な犯罪におきましては、その準備及び実行が密行的に行われまして、犯行後にも証拠隠滅したり犯人を逃亡させるなど、犯跡隠ぺい工作が行われることも少なくないわけでございます。このような犯罪が実行された場合には、その犯行の把握自体が非常に困難でございまして、首謀者を含めた犯人を特定し、事案の真相を解明することは極めて困難な状況にございます。そうしたような犯罪に対しまして、捜査手法のみでは、犯行に関与した末端の者を検挙することはできましても、その者から首謀者等の氏名や関与の状況等について詳細な供述を得ることは容易ではありません。  他方、これらの犯罪において、犯行の準備、実行、犯跡隠ぺいのために複数の犯人間において相互に指示、命令、連絡、報告等が必要とされ、そのために適宜携帯電話等の電気通信が多用される現状を踏まえますと、これを傍受することは非常に効果的であり、その意義は大きいと思います。  この三法案は、一面で組織犯罪自体を、加重規定を置くと同時に不法収益の移動等をとらえまして、これを犯罪として抑圧していく。同時に捜査手法の面でも、その犯罪の抑圧のために通信傍受ということが効果的であるということをとらえまして、一体として組織犯罪対策ということで立案されたものというふうに御理解をいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕
  426. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 松尾さんは法律家だからそんなことを言ったらいけないと思うんです。つまり、この三法案は全然別個の法案です。そして、いわゆる盗聴法の中には、一条以下組織、団体ということは全くありません。先ほども言いましたように、覚せい剤そして麻薬の単純所持も盗聴対象になります。  だから、先ほど小川敏夫さんが言ったように、例えば国会議員のどら息子、どら息子と言ったら気の毒ですが、国会議員の息子が例えば覚せい剤、麻薬の単純所持をしている可能性があるということであれば、議員宿舎、議員会館、選挙事務所とかできるわけですね。あるジャーナリスト、新聞記者が覚せい剤を持っている、単純所持の可能性があるとか。私たちが問題にしているのは、条文が組織、団体を要件としていない、麻薬、覚せい剤の単純所持も共謀という要件さえあれば、電話も二人でするものですから、自分は暴力団でもないし、オウム真理教でもないから無関係だと一般の人は思っているかもしれないけれども法律条文対象にしているということです。  ですから、これを組織的犯罪対策三法案と呼ばずに別個独立に、組織的というふうなことで若干カモフラージュをするのは大変問題だということで、時間が過ぎていますので、私の質問を終わります。
  427. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 まず最初に、去る二十九日の法務委員会で私が覚せい剤犯罪の実情、実態について質問いたしました際に、私の発言の中で数字のことで間違っていた部分がございますので、訂正をさせていただきたいと思います。  すなわち、仮に十トンの覚せい剤の使用回数はどのくらいかということに対して、警察庁の局長が一回〇・〇三グラムとして三億三千三百三十三万回分だと、こういう答弁をなさって、私はそれを受けて、日本の総人口、赤ちゃんからお年寄りまで年平均一回使用できる量だというふうに申し上げたんですが、ビデオを見直しまして、あらっと思いまして計算しましたら、二・六回、三回とはちょっと言いにくいところでございますが、二・六回使用できる数字だということでございますので、訂正しておきます。  その際に、警察庁当局の説明によれば、押収量は全体流入量のほんのわずかとかという表現、氷山の一角だ、それから流入量は相当量だという、非常に私にとりましてはせつないお答えをしたんですが、気持ちはよくわかります。私は、最近は十トンは下らぬだろうという推測をしておったんですが、そういう答弁から推測しますと、ひょっとしたら二十トン以上あるいは三十トン以上、現在そうあるかもわからぬし、あるいは近い将来そういうふうになるかもわからぬというふうな想定を政治としてはしなきゃいかぬ、こう思っておるわけでございます。  そういたしますと、仮に三十トンとすれば、約一千二百万人の日本人が一週間に一回ぐらい、六日に一回ぐらい使う量になるのでございます。それ以上になるかもわかりませんが、これはもう日本市民社会が崩壊する量だと思います。平成のアヘン戦争と言ってもいいと思います。自由な市民社会の継続を願うためにこの通信傍受法必要最小限度のインフラ整備だと僕は思っておるんです。それを、治安維持の検閲とか、それから警察管理社会をつくるとかという発想でこの法案を見るのは私は大変残念だと思っております。それを意見として言っておきます。  それから、きょうはそれぞれ与野党の先生方、専門的な立場から私たち素人にとりましては大変勉強になる質疑をしていただいたんですが、その中で四百五十人の法学者声明というので角田先生が三点声明の中身を説明されました。これも我々もやっぱり心して勉強しなきゃいかぬ問題だと思っていますが、ちょっと御本人がいなくて欠席裁判みたいで悪いんですが、肝心なことを抜かされておる。  この三点を言って、「以上の見地から、」というので結論を言っておるんですが、「広く国民諸階層の意見に耳を傾け、憲法基本的人権とに照らして慎重かつ厳格に審議すべきである。」というのがこの結論でございます。このとおりだと思っております。この人たちも廃案にしろということを言っていないんです、反対ではありますけれども。(「賛成しているのか」と呼ぶ者あり)いや、反対と言っておると言っているんです、廃案にしろとは言っていないということです。  そういう意味で、厳格、濃厚な審議をぜひ来週からも続けていきたいということを要望しまして、ちょうど時間になりましたので終わります。
  428. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 麻薬捜査盗聴法と言うと怒る人がいますけれども、この法律の有効性についてちょっとお尋ねしたいんです。  この法案の推進派の方々の中で、その論拠として大きくまとめると三つのことがよく言われているようなんです。一つは、先ほど言われましたオウム問題に絡めたキャンペーンですが、あれはちょっとやっぱり的外れである。もう一つは、アメリカなど先進国でもやっているんだから日本もやらなきゃいけないという説もあります。また、麻薬が蔓延しているのでこれは大変だから、こういうことが非常に強調されているんです。    〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕  実は私は三百本近い報道番組をやりました。その中で何度も取材して麻薬の現場というものもよく見ております。例えば、ロサンゼルスの市警だとかニューヨークの市警にも行って一緒に現場に踏み込んだこともあるんです。つくっている連中を取材したこともありますし、あるいはDEA、麻薬捜査局です、アメリカ大使館にもいますけれども、そういう人たちにも取材もしましたけれども、実際の話が盗聴というのは余り麻薬の役には立っていないんです。捜査官なんかの話でも、そんなもので捕まるのはチンピラだけだということが実は実態なんです。  ですから、平野さんなんか感動的な演説されました。私も本当に心配しています。気持ちは一緒です。しかし、ちょっと実態が違うんです。それとこの法案の有効性とは余り関係ないんです。  それが証拠に、このアメリカの場合は、盗聴法というんでしょうか、ワイヤータップですけれども、これはもう数十年間の歴史があるんですけれども、アメリカでどんどん麻薬は蔓延しているんです。アメリカの場合はコカイン、クラック、アヘン、マリファナ、ハシッシュ、LSD、もうすごい種類のものです。これは要するにあそこの国の国際交流の形態だとか社会生活の階級制だとかいろんな問題があって蔓延しているわけです。ですから、結局アメリカで麻薬捜査で役に立っているといえば潜入捜査です。潜入捜査というのは一番力があって、司法取引あるいは垂れ込みがほとんどという段階で、困っています、なかなか捜査方法として難しい。盗聴法ではもう現場ではちょっとお手上げだというのが実態なんです。  日本の場合どうかというと、日本の場合はいろんな種類の麻薬が蔓延しているのじゃなくて、覚せい剤が圧倒的なんです。女子刑務所なんかへ行っても六割が覚せい剤なんです。ですから、ここが突出しているという特徴があります。しかし、この法案でもってこれも減らすことができるのかと。そういう論法だけでキャンペーンをしていいものかということを大変疑問に感じているんです。  これは検証令状で北海道の暴力団がいわゆる盗聴で捕まったという例はあります。しかし、これは相当間抜けな暴力団であって、この法律がなくても、実際の連中はそんな電話だとかメールだとかなんて使っていないんです。このことも私はよく取材してわかっているんです。  さまざまな流入経路があるわけですけれども、大体外国から入ってくるんです。ここを押さえるという捜査体制なりスケール、手法というものを本当にがっちり用意しないと、実はこれはふえるのをとめることができないというふうな私は考え方なんです。  例えば、でかいコンテナが船で横浜に揚がってきます。あれの中で検査できるのは千個に一個の割合なんです。あの中に、コンテナの軸や何かの中にはいっぱい銃器も麻薬も詰まっているんですが、千個に一個しか調査しないという段階で、見つからない方が圧倒的に多いんです。これは大量流入なんというのは楽々できるようなのが事実であって、その検査できるのも海外の担当局からの連絡があったときぐらいなんです。  あと日本でやっているのは麻薬犬です。これも取材しましたけれども、麻薬犬というのは鼻が十日に一回しかきかないわけですから、こんな原始的な形でやっているというのが現状なんです。  それから、国際的な問題ですから、発展途上国、フィリピンだとか、そこも行きました。日本人に関係のある犯罪捜査というので日本の警官が来たという場合にも立ち会いましたけれども、何せ相手の警察機構が全然組織的じゃない、無秩序なものである場合が多いわけです。逆に言えば、非常に腐敗していて、どっちが暴力団だかわからないというような、これが事実なんです。そこへ日本のまじめな警察が行っても、二、三日いてもしようがないから一杯飲んで帰ってしまうというようなことが、実は実態として私は知っているんです。  ですから、こういうことで、麻薬だから盗聴法だと。それはないよりはいいかもしれないけれども、そのことのためにあらゆるところに波及してしまう。どこに触れるかによって違うところが爆発してしまうような爆弾を、しかもさっき言われたような何十件かの捜査のためにこれを国家的な法律として通してしまうということは疑問なんです。  どうです、松尾さん、私は個人的にあなたのファンなんですから、腹を割って、麻薬とこの法律は実は関係ないということの実感をちょっとお聞きしたいんです。
  429. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今の先生のお話は大変説得力のある内容で示唆に富んでいたと思います。  アメリカも通信傍受以外に強力な捜査手法を駆使しましてさまざまな効果を上げている点も我々は承知しております。特に潜入捜査が非常に効果を上げているということも承知しております。  ただ、一点だけ、先生に反論するようで申しわけないんですが、アメリカのワイヤータップ・レポートを見ましても、十年間の統計を見て、通信傍受を端緒にしまして逮捕及び有罪をかち得た数というのは、一番少ない年でも三千数百件、多い年ですと四千六百人というような被疑者を捕まえているということがありますので、先生がいろいろおっしゃいましたが、やっぱり通信傍受もそれなりの効果を上げているということをまず御理解いただきたいと思っております。
  430. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 その数千人以上の人たちの捕まっている姿も全部取材しましたけれども、ここにはマフィアの大物なんかはいないわけなんです。マフィアは依然として健在ですし、麻薬はどんどん今でも広がりつつあるんです。非常に心痛い現実であって、また、日本で覚せい剤は何とか押さえなきゃいけない、それは外部の方向へ行くんだということです。  私はこの法案は麻薬捜査には役に立たないということを断言して、質問を終わりたいと思います。
  431. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 三案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十分散会