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1999-05-27 第145回国会 参議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)    午前九時四十分開会     ─────────────    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      角田 義一君     本田 良一君  五月二十七日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     阿南 一成君      本田 良一君     角田 義一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿南 一成君                 阿部 正俊君                 井上  裕君                 岡野  裕君                 竹山  裕君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 本田 良一君                 藁科 滿治君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁長官官房        長        野田  健君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務大臣官房司        法法制調査部長        兼内閣審議官   房村 精一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省社会・援        護局長      炭谷  茂君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       泉  徳治君        最高裁判所事務        総局総務局長   浜野  惺君        最高裁判所事務        総局人事局長   金築 誠志君        最高裁判所事務        総局経理局長   竹崎 博允君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○司法制度改革審議会設置法案内閣提出、衆議  院送付)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十六日、角田義一君が委員辞任され、その補欠として本田良一君が選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 司法制度改革審議会設置法案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 千葉景子

    千葉景子君 きょうは、総理、この委員会出席をいただきまして、大変ありがとうございます。  今、審議をされております司法制度改革というのは、ある意味では日本社会にとっても一大事業という大変重いものでもございますので、そういう観点も含めまして、私の方からは二点、総理お尋ねをさせていただきたいというふうに思っております。  まず、今回の司法制度改革審議会設置法案趣旨説明では、陣内法務大臣は、二十一世紀我が国社会は、社会複雑多様化国際化等に加え規制緩和等改革により社会事前規制型から事後チェック型に移行するなどの社会のさまざまな変化に伴い、司法役割はより一層重要なものになるとの認識のもとで、司法機能社会ニーズにこたえ得るよう改革し、その充実強化を図っていくことが不可欠である、こういう御説明をいただきました。  二十一世紀社会自己責任の原則に貫かれた社会へと転換をすることによって司法の需要が増すことは否定できないと思います。特に、経済界からは利用しやすい司法制度を構築することへの要望が出されております。しかし、司法機能というのは、決して経済界が要望している紛争解決の手段、こういう側面だけではございません。人権擁護社会正義実現立法行政に対する監視と抑制という機能も忘れてはならないところであろうと思います。また、二十一世紀考えますと、国際社会においても人権、環境などの時代とも言われております。そういう意味でも、いわば人権の面でもグローバルスタンダードというものを日本も構築していかなければいけない、こう考えているところでございます。  そういう意味では、司法制度改革審議会における審議においては、やはり単なる経済合理性競争原理、こういうことではなくて、司法国民、とりわけ弱者の自由と権利を守るとりでとして機能すること、こういうことをぜひ積極的に論議していただきたい、こう念願をしているところでございます。  そして、これは改革審議会に単にゆだねておけばいいということではなく、より一層の司法充実というのは、冒頭申し上げましたように、私たちも、そして日本社会がこぞって取り組まねばいけない、こういう課題であろうと思います。この法務委員会でも、立法機関としての責任を果たすべく、小委員会設置という方向も今検討が進められているという状況でもございます。そういう意味では、立法機関も、そして特に政府としてもぜひこの司法改革という問題に積極的に目を向けていただきたい、こう考えております。  そういう意味で、この大きな重要な問題につきまして、総理としてはどういう基本的な理念のもとに司法改革が進められるべきか。そして、司法制度改革審議会にどんな理念のもとに改革の論議を進めてもらいたいとお考えなのか、その辺について、改革理念考え方総理としてはどのように御認識をなされているのか。まずその点についてお尋ねをしたいと思います。
  5. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、当院法務委員会におきまして、司法制度改革審議会設置法案並びに修正案につきまして熱心な御審議をいただいておりますことを感謝申し上げます。  ただいま千葉先生から基本的理念を問われましたが、司法国民権利実現を図るとともに、国民基本的人権擁護し、さらには安全な国民生活を維持するなど、国民生活にとって極めて重要な役割を担うものであります。二十一世紀我が国社会におきまして、社会複雑多様化国際化等が進むに伴いまして司法役割はより一層重要となっていくものと考えられます。  このよう司法の果たすべき役割を踏まえ、国民がより身近に利用することができ、社会法的ニーズに的確にこたえることのできる司法制度改革に取り組んでまいりたい、基本的にこのよう考えておる次第でございます。
  6. 千葉景子

    千葉景子君 さて、このよう司法改革に一丸となって取り組むにいたしましては、これまでの司法に関する財政的な面、特に予算はまことに貧弱と言って私は誤りないのではないか、そういう実態ではないかと思います。  総理平成十一年度の裁判所予算がどの程度のものか御存じでいらっしゃいましょうか。多分御承知のところであろうと思いますけれども、一般会計予算の総額が八十一兆余に対して裁判所予算は三千百八十四億円、その割合考えますと〇・四%、こういう率でしかございません。  そして、これは別に平成十一年度に特段低かったというわけではございませんで、これまでの裁判所予算の変遷を見てみますと、裁判所予算一般会計予算に占める割合というのは、昭和三十年にはそれでも〇・九%ほどございました。しかし、それ以降だんだん減少の一途でございまして、昭和四十年には〇・八%、四十五年には〇・六%、そして五十五年には〇・四%に落ち込んで、それ以来ずっとこの状況でございます。ここに、これまでの残念ながら我が国司法の貧弱さあるいは司法の本当に軽さみたいなものが象徴されているのではないかというふうに思います。大きな行政と小さな司法、こういう実態なのではないでしょうか。予算規模で見ますと、小さな司法、よく二割司法などと言われておりますけれども、むしろ〇・四%といいますと四厘司法、こう言っても差し支えない状況でございます。  総理、こういう数字をお聞きいただきまして、裁判所予算をどういうふうにお感じになられますでしょうか。そして、今後国民がより利用しやすい司法制度実現するためには、審議会議論もこれは重要でございますけれども、やはりまずは私たちあるいは政府としてできること、あるいは取り組むことができる部分、そういうことには積極的に取り組んでいただきたい。裁判官増員あるいは施設の充実などもすぐにでも着手ができる、そういう問題であろうというふうに思います。そういう意味では、裁判所予算の増額というのはもうどなたが考えても必要不可欠なものではないかと思います。私は、例えば少なくとも年々一%ずつはふやしていこう、これぐらいの具体的な御計画などをお持ちいただくとよろしいんではないかというふうに思います。  そういう意味で、この司法予算裁判所予算あり方、そして今後の予算をやはりしっかり増額して司法充実に努めていきたい、こんな総理の御決意のようなものがお伺いできれば大変うれしいというふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。
  7. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 司法機能充実強化し、国民に身近な司法制度実現するため具体的にいかなる施策をとるべきかについて、利用者である国民各層の声を広く聞く必要があると考え法案を提出いたしたところでありますが、早急に必要な施策につきまして、審議会審議状況等を踏まえつつ適宜適切に実施してまいりたいと考えております。  司法機能の拡充につきましては、政府としても予算等の面で最大限の配慮をしてきたものであり、今後とも適切に対処してまいりたいと考えておりますが、今、千葉委員指摘ように、予算額の推移につきましてはお示しをされましたよう数字でございます。裁判所あるいはまた法務省が国全体の中で占めてまいりました予算額そのものは、一応額としては数字的には伸びておりますが、委員今御指摘ように、パーセンテージ的にそういう数字になっておることにつきましては承知いたしております。  そういう中でも、裁判官増員等につきましてはそれぞれかなり増員をしておる数字は一応見えておりますが、現下、きょうは専門先生方ばかりでございまして、私も司法全体を掌握しているとは思いませんが、なかなかスピーディーに裁判裁判所が処理しておらないという一般国民の声も聞こえないではありません。そのよって来る原因がどこにあるかということについては、これからこの審議会等でも十分御検討いただくのだろうと思いますが、予算面といいますか、あるいは人員の面等でそうしたスピーディーな裁判処理が遅滞をしておるということであるとすれば、これは今後こうした問題を一つ一つ取り除く努力をしていかなきゃならぬということは言うまでもないことだろうと思います。  よって、そうした問題につきましてもぜひこの審議会におきまして十分な御検討をいただき、その御答申を得ながら、内閣としてなすべきことはいかなるものかという御提言がありますれば、それに対しては最善を尽くして努力をいたしてまいる。今の段階ではそのように御答弁させていただきたいと思います。
  8. 海野徹

    海野徹君 おはようございます。民主党の海野であります。  きょうは総理に御出席いただいて私どもの質問に御答弁いただける、大変ありがたいと思っております。  まず第一に、私の方から、二十一世紀における司法役割についてという大きなタイトルで御質問させていただくわけなんですが、代表質問でもさせていただきました。二十一世紀をどう見るか、あるいは過去にさかのぼって今の日本司法制度について総理はどういう御見解をお持ちなのか、その中で期待される審議会における議論はどうなのか、そんな点を二十一世紀司法役割という中からお聞きしたいと思っております。  まず第一ですが、これは法務大臣を今お務めいただいている陣内法務大臣の郷里の大先輩、明治政府をつくったときからずっと続いているわけなんですが、司法卿として江藤新平初代だった。その江藤新平初代司法卿司法省誓約五箇条ということを言っております。これは、一つには、きちんと正しく潔白に職務を行い、民の司直たるべきこと。二つ目は、法律をよく守り、人民の権利を保護すべきこと。三つ目は、裁判に当たっては、よく情実を尽くして遅廷や冤罪をなくすこと。四つ目には、物事に明るく、訴訟を渋滞させないこと。五つ目は、つまり裁判は民が訴訟を起こさなくて済むように日々の治安を保つ効果のあるものでなければならない。  こういう司法省誓約五箇条で簡潔に司法役割というのを初代司法卿が述べておりますが、これは今でも十分通用する。制度は変えても精神は変えてはならないと思いますから、その点について、まず総理大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  9. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま委員から御説明いただきました。まさに明治の新しい改革を始められるに当たって、江藤新平司法卿がこの誓約五箇条を示しておられますが、御指摘ように、まさに今に通ずる問題の諸点を明らかにしておると思っております。したがいまして、その精神をたっとびながら、日々刻々世の中は変わってまいりますけれども、基本的なこうした考え方に基づきまして対応していかなきゃならぬと思っております。  これから二十一世紀を迎えるわけでございますが、ますます世の中複雑多岐、国際化してまいりますが、こうした社会の諸活動が公正かつ透明なルールに基づいて行われていかなければならないと思いますし、国民一人一人の権利というものは今日さらに重きをなしておる、こう考えております。  そのよう状況のもとで、司法の果たすべき役割としては、国民にとって身近で利用しやすいものとなり、法的紛争を適正、迅速に解決し、国民権利実現を図るとともに、社会情勢に応じて法秩序を維持し、国民基本的人権擁護していくことにあると考えております。  司法司法としての役割を果たすということは国家として最も大切なことであり、内閣といたしましてもその信頼のもとになることだろうと考えておりますので、その責任を十分自覚し果たしていきたい、このよう考えておる次第でございます。
  10. 海野徹

    海野徹君 二十一世紀をどう見るかという質問に前もって御答弁されているような感があるわけですが、なぜ二年間でこの議論を尽くさなくちゃいけないかということを考えますと、それにはいろんな背景がある。一つには経団連等経済界からの要請も大変ある。  二十一世紀をどう見るか。最近大変注目されているサミュエル・ハンチントンの「文明衝突」というものがございます。非常におもしろい観点からいろいろな物事を論じておりますから、大変私も興味深く読んだわけなんです。その中に、欧米で通ってきました進化論的な歴史観では世の中通用しない、文明が違うんだから、民族、言語、文化その他も違う、そういう中でもっと多元的に世の中を見ていこう、結果重視経済重視世の中になっていくだろう、そういうことが述べられております。  そうなりますと、やはり日本というのは独特なジャパニーズスタンダードがあるのではないかと読み取れますし、そういった中で、冷戦後の世界状況経済状況を極めてすぐれて把握して、それを的確に、このハンチントンの「文明衝突」も参考にしながらクリントン政権というのは政策展開を大きくしていったのではないか。  そういう中で、経済活動自由化規制緩和、それにつられて経済が非常にグローバル化していますし、人、物、司法動きが非常にボーダーレスになっておりますから、そういった意味経済界焦りがあって、二年間でつまみ食いだけして、司法制度の根本的な問題よりも、とにかく改正できるものだけ改正していこう、そういうよう焦りがあってこういう設置法案が出てきたのか。そうだとしたら私としては不幸なことだと感ずるわけなんですが、その点について総理大臣はどうお考えですか。  二十一世紀というのが、ハンチントンが言っているような本当に経済的アプローチをしたら、多元的な結果重視で、いろいろな問題点が多く含まれる中で、とにかく日本だけが今埋没してしまっている、アメリカが最先端を行っている、それをEUは通貨統合という形で追いかけている。そんな中で日本経済人焦りがこの司法制度改革審議会ということを要請してきたのか、そんな感想を私はちらっと感じたんですが、その辺については、総理、どうでしょうか。
  11. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほど千葉委員からも若干同様な御指摘がありまして、そもそもこの審議会設置して司法制度の問題に取り組むに当たりまして経済界からの要請もあったというお話でございました。  もちろん、一般的にあらゆる団体、あらゆる機関がいろいろな形で政治に対して要望することは必要なことであり、その業界としても、当面取り組むべき課題の中で、経済事犯に対しての裁判所判断が必ずしもスピーディーでないというお考えもあって提言があったんだろうと思います。  私は先ほど申し上げたよう専門家でありませんが、国民の中に今日、司法制度といいますか、司法あり方あるいは裁判所あり方等々につきまして、もう少し事を処理するのにスピーディーにやってほしいとかいろんな考え方が、うっせきしていると言ってはなんですが、そういうものがあることは私は事実だろうと思います。そうしたことに総合的な判断を求めて一つ方向性を定めるということが極めて重要な時期に来ておるのではないか。  さればこそ、やはりこうした審議会をもって全般の問題について取り組むべき時期に来ておるということでございまして、必ずしも一団体要請にこたえるということでなく、国民の幅広いこの問題に対する、内閣責任といいますか、そうしたことについての強い要請があってこうした審議会設置に至ったんだと。したがって、その審議会にもそうした要請にこたえて結論を出していただくことを期待いたしておる、こういうことではないかと認識をいたしております。
  12. 海野徹

    海野徹君 私、特定の一団体という意味でもございませんが、ただ、そういうよう背景経済的にあるのかなと。世界的な経済動きの中から、あるいは冷戦後の世界の今後を読み取ると、やはりどうしてもアメリカ経済外交戦略となるとそういうことが浮かんでくるのかなと思ったわけなんです。  今、総理大臣の方から、国民全般国民にとって使いやすいようにというようお話がありました。ただ、現実問題として、司法に対する関心というか意識が非常に日本人というのは薄い、これはよく言われております。  私も法律専門家じゃありませんから、法律用語というのは難しいな、言葉自体大変それなり歴史的な背景というか概念を持っていますから、一言一言易しくするということもこれは非常に困難性が伴うかもしれませんが、それにしても難しいなと思っております。  そういう中で、我々の日常生活の中で、裁判ざただけはしたくないねという会話がよく聞かれます。それほど裁判所というのは遠いし、法律というのは難しいし、裁判にしたくないという国民意識があるのではないかなと。そういう心性というか、心のさががあるのではないか、それをつくってしまった歴史があるのではないかなと思うわけなんです。  裁判という言葉自体が使われたのが江戸の末期なんですね。それ以前には裁判という言葉が出てこないんです。そうなると、人が人を裁く、あるいは裁判ということが極めて近世の歴史の中しか出てこなくて、それでまだ裁判ざたになるのを嫌悪している、それが日本人意識の中に底流としてあるとしますと、今回の司法制度改革審議会はその辺のことを十分議論しなくちゃいけないんじゃないか。  だから、国民意識も変えていかなくちゃいけない。そういった意味では、総理国民意識改革をするにはどうでしょうかというよう質問もあろうかと思うんですが、それと同時に、審議会委員人選というのは極めて重要になってくるのではないか。  総理も、素人といいますか、余り法律家として法律に造詣が深くなくてもというような答弁を衆議院の委員会でされていると思います。「法に対して、素人という言葉はいかがと思いますけれども、幅広く、むしろ専門的という立場でない形で、全般をよく理解される方を任命」申し上げますというよう人選について御答弁されていると思うんです。私も全くそのとおりだなと。  今回、いろんな意味での全般的な国民要請があってこの議論がされる、いろんな議論の中身が非常に根源的なものだ、そうなると、やはり歴史学者とか哲学者とか民俗学者とか、そういう全く法律専門的でない方々に十三人の中の委員を占めていただいて、生活のありよう、国のありよう社会のありよう等を論ずる中での司法あり方ということを議論していただきたい、そういう人選を私は希望するわけなんですが、総理の御見解をお伺いします。
  13. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 委員人選についてのお尋ねがございました。  一国の司法制度あり方考える際に、国のあり方歴史観など根本的な問題を問われる側面があることは極めて重要なことでございます。司法制度改革審議会は、二十一世紀我が国の実社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について国民的見地から審議することを目的とするものでありますから、司法制度全般にわたりましてこのような視点の上に調査審議をするにふさわしい有識者を広く国民各層から委員として選任する必要があると考えて、そのよう基本的考え方に基づいて選任をする努力をいたしていきたいというふうに考えております。  それから、前半は大変参考になる御意見だったと思いますけれども、日本社会において日本国民司法に対する認識について触れられました。  私自身も立法府あるいは行政府にずっと所属してまいりましたけれども、やはり司法の面については、御指摘よう国民全般的に理解が必ずしも高くないといいますか、日本人古来の、あるいは良風美俗ということでもないんだろうと思いますけれども、訴訟で問題を解決するということについてふなれなのか、あるいはそういうことを忌避する気持ちが残っているのか、できれば相身互いで、和議のような形で話し合いで問題を解決するという感覚があってかという気もいたしております。それは国民の従来の一つの生き方としてあったことだろうと思いますが、一方、これが制度として、先ほど来申し上げているように非常になじみやすいといいますか、すぐ受けとめていただけるという制度が十分でなかったという反省も一部あるんじゃないかと思っておりますので、そうしたことも含めまして、三権がそれぞれに機能を発揮するようなこととしての司法あり方についてもこうした機会に十分検討していただければありがたい、こういうふうに考える次第でございます。
  14. 海野徹

    海野徹君 ありがとうございました。  それで、我々国会とそうした審議会とのあり方なんですが、法務委員会参考人質疑の中で田中直毅参考人から、審議会に選ばれて我々が発言をする、その発言の中であるいは行動の中で大変制約が多い。選ばれているわけじゃないものですから、ある意味では発言することの中で責任がとれるのかとれないのか、本当にこれを実現する意思と意欲があるのかどうなのか、その辺についても制約があるような話がありました。前もって作文されたもののとおりに審議がされていく、決定権は我々にないんじゃないかというようなこともあったわけなんですが、やはり決定権というのは我々国会にあるんではないか。そういうようなシステムが審議会と国会との関係において私は担保されるべきだろうと思いますが、大臣は審議会と我々法務委員会あるいは国会との関係について、この司法制度改革審議会においてはどのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  15. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これは審議会の公開の問題にも触れることだろうと思いますけれども、従来から政府の基本方針でもあり、具体的な公開の方策について審議会において適切に対応されるものと考えており、国会からの求めがあれば審議会の所要の報告がなされるものと考えております。また、国会の御意見と国会での審議の過程につきましては、事務局から審議会に対し適宜適切に報告され、審議会審議に反映されるものと考えておりまして、この点は衆議院におきましての附帯決議もなされておるわけでございます。  今日、この法律案を通していただき、設置をされました上におきましては、今お話しのよう委員先生方の御意見が反映されることはもちろん当然のことでございますけれども、審議の過程のいろいろの状況につきましても、法案を御審議いただきました国会に御理解を願うための資料その他につきましては、これは十分こたえていかなけりゃならない問題だというふうに認識をいたしております。
  16. 海野徹

    海野徹君 ありがとうございました。
  17. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  総理、きょうはお忙しいところ大変ありがとうございます。  最初の質問をいたします。女性議員だからというわけではございませんけれども、「審議会は、委員十三人以内で組織する。」とありますが、この中に女性の委員がどれだけ含まれるのかということが私たちにとりまして重要な関心事でございます。  最近、二十一世紀が間近であることもありまして、二十一世紀二十一世紀と言うんですが、では二十一世紀はどういう世紀かといいますと、女性の世紀であるとも言われております。私はよく申し上げるのですが、女性の特質といたしまして、女性には守るべきものを守る本能というものがあるということ、それから非常に女性は正義感が強いと思います。いいものはいい、悪いものは悪い。それから、やはり現実の生活に根差しまして、経験に基づいて不合理なもの、不正なもの、これを見抜くという直観力もすぐれているのではないかなというふうに女性の私は思っております。  こういうことからいいますと、そして国民にとって利用しやすい司法制度ということで見ますと、やはり女性の意見を多く採用するということは非常にこの審議会にとって有用であろうと思います。そういうことを考えますと、十三人ですから七人ですか、女性にしたら非常に画期的だなと思うんですが、そこまでは申し上げません。  一方で、審議会の女性委員のメンバー、三割目標ということもございますが、それは当然満たされるもの、当然のことと思っております。十三人の三割は三・九人ですから、四人、少なくともこれだけは入るんだろうと思うのですが、総理、十三人以内ですが、女性の委員は何人ぐらいが適当とお考えでしょうか。
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 国に設置をされます審議会等における女性委員の登用に関しては、政府としてその登用に努めているところであり、本審議会委員選任におきましてもこの方針を踏まえ、委員としてふさわしい女性の有識者も登用したいと考えております。ちなみに、男女共同参画推進本部決定でございまして、これは「平成十二年度末までのできるだけ早い時期に二〇%を達成するよう鋭意努めるものとする。」ということで努力をさせていただいております。  戻りますが、この審議会におきまして、ふさわしい有能な方が多いことだろうと思いますので、ぜひ女性の有識者にもできる限り参画していただきたいというふうに考えておりまして、そのようなことが可能になりますように最大限の努力をしていきたいというふうに考えております。
  19. 大森礼子

    ○大森礼子君 ただ、性別だけで物事判断できるわけではありませんけれども、「学識経験のある者のうちから、」といいますが、学識経験者はいっぱいいらっしゃると思いますし、やはりこの中に何人の女性委員を登用するかということでこの審議会総理がどれほどの意気込みでおられるかということがわかるのかなという気がいたします。たくさん入れてください。お願いします。人は必ずいるはずです。  次に、先ほど千葉委員の方から予算のことについて質問がありました。まことに貧弱な予算であるということです。  よく言われることですが、何に金をかけるかによってその国の施政者の方針、政治を行う者の姿勢がわかると言われております。先ほど千葉委員も挙げられましたけれども、私も昭和六十二年から平成十一年までの一般会計予算に占める法務省予算裁判所予算を見て本当に愕然といたしました。一%にも満たないわけです。それで、物事を何か改革ようとするときには必ず予算というものが要るわけです。金は出さないけれども何とか変えろといっても、これはしょせん無理なことでございます。  そこで、司法制度改革を行う審議会設置する、そして答申が出る。いろんな有用な意見が出た場合、次にそれを実現しなくてはいけないわけですが、そのときに、それを実現するために、これまでの固定的な一般会計に占める割合、大体法務省予算で〇・七五%、それから裁判所予算で大体〇・四%、これは定期預金の利率かと間違えましたけれども、〇・四%を大幅に変えるという姿勢はあるのかどうか。それをまずお尋ねいたします。
  20. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 全体の国の予算の増加率に比べまして、司法関係の数字というのは示された数字からも委員今御指摘のとおりだろうと思います。ほかの予算が一般的に大変増加する中でということだろうと思いますが、比較いたしますれば一目瞭然のところはわかるわけでございます。  単純比較がいいかどうかについてはなかなか難しい点であろうと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、現在の司法に対する国民の強い要請といいますか、そういうものにこたえ得るだけの十分な予算が配分されておらないということであるといたしますれば、これは可能な限り充実強化していくために必要な予算は配分されなきゃならぬということは一般的におっしゃるとおりだろうと思いますし、また政府としても努力しなきゃならぬと思います。  そういった点で、国民的な理解を得て司法関係にそれだけの予算を配分するということについて国民的な要請をいただくためには、このよう審議会におきまして、何ゆえに裁判実態がかくあり、また問題の所在がここにありということにつきましてのお考えを十分お示しいただくことができれば、それをもとにいたしましてそれこそ予算を編成し、また国会にもおかけできるんじゃないかというふうに考えております。  一般的に、数字だけ申し上げれば、委員の今御指摘ように一%を下回るよう数字になっておるということについては、司法の重要性から考えましてこの数字でいいかなという印象はいたしますけれども、それをきちんと国民に理解を求められるような形としての基本的な考え方をぜひ審議会等でも十分御結論をいただくことができればという感じも一方でいたしておる次第でございます。
  21. 大森礼子

    ○大森礼子君 今、この数字でいいかなというふうに総理はおっしゃいましたけれども、いいはずは絶対にないわけでありまして、本当に司法改革というのであるならば、まず予算について非常に大幅なアップとか、そういう姿勢を見せる必要があると思います。  それから、司法関係の予算といいますと、例えば国民裁判所を使いやすい、あるいは法律相談を受けやすいということは、国民自身がどこまで自分の権利があってどこまで自分の義務があるかということを学ぶことにもなると思います。そして、法治国家においては、そういう権利と義務を正しく知るということが国民にとって不可欠な要件であろうと思いますし、また権利義務関係を知るということ、それから人権感覚についても国民が研ぎ澄まされていくということは、これは国家にとっても非常に有用なことであろうと思います。つまり、真の民主主義国家を支えるものは賢い国民であると私は思いますので、そういった意味からも司法関係の予算充実させるということは大切であろうと思います。  それから、もちろんこの司法制度審議会の方でもいろいろ審議していただくわけですが、それまでの間も法務省、最高裁、法務委員会でいろいろ審議するわけですけれども、ここでもいろんな問題が指摘されております。そして、この審議会審議の行方とはまた別に、最高裁、法務省の中においても当然改革すべきところは改革していかなければならないと思いますし、そうでなければ法務委員会というものは存在意義をなくすと思います。  そうした場合に、やはり法務省関係それから最高裁関係の予算につきましても、この審議会とは別に必要なことがあれば拡充していく、増大していく。これから概算要求とかになりまして来年度の予算編成の時期になりますので、まず来年度予算の中でそういう政府の姿勢を示していただきたいと思うのですが、重ねての質問になりますが、総理はどうお考えでしょうか。
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 予算を増額することによりましてさらに司法制度がより拡充していくということについて、これを何ら否定するものではありません。しかし、予算額をふやしたから直ちに裁判官を何百人も増員できるというような現下の情勢でも必ずしもないかと思います。  したがいまして、先ほども申し上げましたように、ぜひこういった問題について、なぜ必要とするか、また例えばそのことによって裁判が迅速化するとか、国民基本的人権を守るためにいろいろなことができるとかということについて、そういった要請にどういうことをいたしたら予算的に増額が可能になるのかということについても十分勉強させていただいた上で、その予算編成についても責任を持たせていただきたい、こう申し上げておるところでございます。
  23. 大森礼子

    ○大森礼子君 これは本当は法務大臣とか最高裁からお願いしなきゃいけないことかもしれませんが、先ほど言いましたように、もう六十二年からずっと予算の規模は変わっておりません。そうしますと、省庁の方も、どうせ言ってもだめなんじゃないかというあきらめがあって余り要求していないんじゃないかという気がして仕方がないわけです。ですから、総理が、必要なものであればどんどん考えるからもう思い切って言っていらっしゃいぐらいな度量を示していただければ、また来年度の予算編成に反映されるのかなという気がいたします。  最後の質問、これは個別的なことになるのですが、司法通訳制度というものについて総理のお考えをお伺いしたいと思います。  先ほどの説明にも国際化ということが挙げられておりました。それから、外国人が入ってくるということで入管法の改正もありました。そうしますと、刑事事件に限って言いますが、外国人事件というのも当然増加するわけでございます。そのときに、捜査段階それから裁判で通訳というものが必要となります。裁判それから捜査段階の調書も日本語でとりますから、これは通訳を介してそういう日本語の調書あるいは日本語の供述となるわけですが、現在のシステムではその通訳の正確性を担保する手段というものがないように私は思います。例えば総理アメリカへ行かれまして演説をする、日本語でされる場合、その通訳が正しいという前提でされていると思うんです。だから、もしここのところの正確性の担保がないとするならば、それは正しい刑事裁判をしているということにもならないと思うわけです。  それで、私はずっとこの司法通訳の問題に関心を持っているのですけれども、なかなか光が当たらない。というのは、非常に閉ざされた法廷とかでやられますので人目につきにくいということがございます。しかし、外国人の人権考えます場合に、やはり適正な通訳というのは適正公正な裁判実現するためにこれから大きな問題になろうと思いますので、ぜひこの点は総理にも関心を持っていただきたいと思うわけであります。  アメリカの方では司法通訳の資格認定制度というようなものもございます。これからこういう問題についても日本はしっかり取り組んでいかなくてはいけない。そうでないと人権国家と言えなくなるのではないかと思いますけれども、総理は外務大臣の御経験もございますので、多少言葉の問題ということで、この司法通訳制度について御関心がおありかどうか、おありならばどのようにお考えか、これを最後にお尋ねしたいと思います。
  24. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 問題意識は非常に持っているつもりでございまして、卑近な例を言いますと、外国人の犯罪者が警察等の取り調べに対しまして日本語が理解できないというようなことで非常にその審理が進まないというようなことを時々新聞などで拝見いたしております。そういう意味で、最近の我が国における外国人の増加、またある意味ではそれに関連いたしまして犯罪を行う人たちが多くなってきておる、そういうことについてどのように対処すべきかということを非常に問題としては理解しているつもりでございます。  今、委員の御指摘ように、国際化の進展に伴って増加しておる外国人事件について、適正公正な捜査、裁判実現するために、刑事手続において有能な通訳人を確保し正確公正な通訳がなされることは重要であると考えております。そこで、通訳人名簿のデータベース化等により通訳人の確保に努めるとともに、全国規模で通訳人セミナーを実施するなどして通訳人に我が国の刑事手続への理解を深めていただくための施策を講じておるところでありますが、通訳人の確保状況等を踏まえつつ、委員指摘ようなことを十分配慮しながら、将来、試験制度の創設など、検討課題としてまいりたいと思っております。  アメリカでは、委員十分御存じのところでありますが、法廷通訳人法というような法的な制度も確立しておるようでございますので、こういった点で改めて法律を必要とするかどうかというようなことにつきましても内閣としても勉強させていただきたいと思います。アメリカように多人種多言語の国はこうした形で既に進んでおるんだろうと思いますが、日本もそういう意味で時代がこういうものを必要とする時期に来ておるのではないかという認識は、冒頭申し上げましたようにいたしておるつもりでございますので、検討させていただきたいと思います。
  25. 大森礼子

    ○大森礼子君 終わります。
  26. 橋本敦

    ○橋本敦君 いよいよ司法制度改革論議が我が国の大きな課題になってまいりましたが、総理がお越しいただきましたこの機会に、これからの司法制度改革論議に関連をして、現在の切実な解決すべき重要な課題として、私は犯罪被害者の問題について御意見を伺いたいと思うのであります。  言うまでもありませんが、あの地下鉄サリン事件でたくさんの人が犠牲になり、今も苦しんでおります。警察庁は、平成十一年一月に「地下鉄サリン事件被害者の被害実態に関する報告書」をおまとめになりました。この報告書を見ても、現に今多くの方々があの忌まわしいサリンの後遺症に苦しんでいる実態が明白でございます。犯罪被害者のこうした苦しみを国の責任において救済するという問題は、私は司法改革を論ずる上でも大事な課題だと思うのでありますけれども、これに関連をして一つの具体的な問題について私は総理にお伺いしたいのであります。  総理も御存じと思いますが、サリンの被害者の皆さんの立場に配慮をして、国のオウムに対する債権を破産管財人のもとで行われている手続で放棄をしてほしい、こういう世論が関係弁護士、被害者から高まりまして、我々法務委員会でも、私も質問いたしましたが、各党全会一致の賛成ということで国の債権を放棄するという措置がとられました。私はこれは大変よいことだったと思うわけであります。  ところが、その国の債権放棄ということが起こりますと、今度、厚生省はどういう態度をとったか。Aさんという方の例を引いて言いますと、サリン被害に苦しみ、治療費も事欠くありさまになって、ついに仕事も失い生活保護を受けるようになった。そのAさんに対して福祉事務所は、生活保護法の規定によって、保護費支給額の範囲内の額を破産管財人から二割の配当があれば返還をしていただくことになります、こう文書で通知しました。これを受けた被害者のAさんは、まさにサリンは私の一生を変えた、その代償としてほんのわずかの補償金が配当されるというそのときに、自分の今後の生活設計にもそれを使えない、今までの給付金を返せと言われる、まことにむごい、そういう思いがする、こう言っているのでありますが、私は当然だと思うのです。  こういうように、せっかく国が債権を放棄すると決断なさったのに、今度は被害者に給付した生活保護費を返還せよということになりますと、結局国の債権回収のために放棄をさせたのかというようなことにもなりかねない、こういう矛盾が出てくるわけであります。  こうした問題について、被害者からそういった実態を訴えられた現地の福祉事務所は、これは生活保護法の規定によってそうなっているんだけれども、要望を踏まえて何ができるか、被害者の立場もよくわかるので検討したい、そういう返答もあったと私は聞いております。  私はこの問題について、この被害者の立場を考えると、国が債権をせっかく放棄した、ところが今度は生活保護費はその支給があったら全部返しなさいよ、その支給された金額がなくなるまでは生活保護費はもう出しませんよ、こういった仕打ちをするということは、犯罪被害者の権利あるいは救済ということについて国が本当に温かい立場で対処していることだろうか、そうではないのではないかという私は重大な怒りを持った心配をしているわけでございます。こういったことが起こってよいのだろうか。総理はいかがお考えでしょうか。
  27. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、犯罪被害者に対する支援策、一般的な点でございますが、これは政府といたしましても重要な課題であると考えておりまして、これまでも必要な施策を講じてきたと考えております。  特に、司法制度改革に関しまして、各界からそれぞれの立場に立った各種の提言がなされているところであり、今回の審議会において、こうした各種提言、国会における審議経過等を踏まえ、具体的な審議項目を明確にし、適切な審議がなされるものと考えており、こうした問題全般にわたりましての御論議をいただけたらありがたいと思っております。  そこで、橋本委員が今御指摘の具体的な事例についてでありますが、サリン事件で現在でも後遺症に悩んでおられる方々が少なくなく、被害者に対しまして改めて心からお見舞いを申し上げたいと思います。  これらの方々に対する生活上の支援については、その健康状態や生活状況を踏まえつつ、社会福祉施策や障害年金を初めとする関係施策を適切に運用することにより必要な対応を行ってまいりたいと考えております。今、委員が具体的に御指摘のAさんのことにつきましては、これは裁判所から損害賠償について配当金を受けたために生活保護が打ち切られたということでなくて、損害賠償についてまだ配当を受け取らないという状況の中で、ほかの法律との関係におきまして、既に給付されたもののうちでの返還について、その御本人と当局との考え方に差異があるのではないかという点が、委員が今お触れになったケースではないかというふうに考えております。  したがいまして、その点につきましては、具体的事例にも関連して御質問がありましたので、もし御答弁をお許しいただければ御説明させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  28. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは厚生省からお答えになって結構ですが、私の指摘しているのは、破産管財人から債権請求の二割の額が支給される、それが支給されれば、生活保護費を受給しているサリン被害者に対して、それは国に返還してもらいますよ、こういう通知を福祉事務所が出した事実はあるんですよ。  だから、そういうことをすること自体が、私が指摘したように、せっかく国が債権放棄を各会派、弁護士の皆さん、被害者の皆さんから受けてやっているのに、債権回収をそこからやったら何にもならぬじゃないですか。被害者をしっかり守る立場からもっと温かい配慮をしたらどうですか。こういう質問ですから、その点答えてください。
  29. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 生活保護法の規定につきましては、橋本先生が御指摘ように、六十三条によって、損害賠償金などの受領をした場合は、生活保護を受けている方は事後的に保護費を返還していただかなければならないという規定があるわけでございます。  しかしながら、今回のケースのように、被害者が後遺症に大変悩んでいらっしゃるなどの事情があることは事実でございます。このような場合におきましては、生活保護制度におきましては、受けられた損害賠償の金銭のうち、例えば医療に必要だとか、また生活の再建に必要だなどのような自立助長などに必要な額などについては返還を求めないという規定に既になっております。  したがいまして、今回のケースについていろいろと福祉事務所の方の通知、また何か生活保護を受けていらっしゃる方に御不快を催した点があろうかとは思いますけれども、結果的に損害賠償の配当金から保護費を返還していただく取り扱いにはならなかったというふうに承知いたしております。
  30. 橋本敦

    ○橋本敦君 それを返還してもらう措置にはならなかったということで、配当はもう終わったと思いますけれども、今後ともそれを返還させる、そういうことがないということは法律上保障されているという意味ですか。
  31. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 現在の私どもの生活保護の取り扱いですと、先ほど申したような取り扱いになっておりますので、損害賠償の配当金から返還を求めていただくことにはならないというふうに言えると思います。
  32. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、福祉事務所が出した通知というのは間違った通知でしたか。
  33. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 事情はつまびらかには承知しておりませんけれども、ある意味では不適切な通知なりであったというふうに思います。
  34. 橋本敦

    ○橋本敦君 適切な……。
  35. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 不適切なお知らせではないかというふうに思います。
  36. 橋本敦

    ○橋本敦君 よくわかりました。そういった温かい対策をぜひ進めてほしいと思います。  時間が参りましたから、最後に、一九八五年国連総会におきまして国連被害者人権宣言が採択されました。その中には「被害者は、その尊厳に対して同情と尊敬の念をもって扱われるべきである。被害者には、司法制度にアクセスし、彼らが苦しめられている危害について、国家の法律制度によって定められている「速やかな被害回復」を受ける権利がある。」、こう宣言されているわけであります。その点、我が国において、現在の時点では被害者に対する救済措置が極めて不十分だということは言うまでもありませんで、諸外国の今日の国際制度の進みぐあいから見ても大いにこれから論議をするべきであります。  こういうわけで、今後司法制度改革審議会では、我が国司法制度あり方の根本課題、いろいろと論議をされますが、国が責任を持ちあるいは地方自治体が責任を持ち、犯罪被害者に対してどういう対応を、求償の面でもあるいはメンタル的な補償の面でも健康被害補償の面でも、そしてまた再就職や生活再建の面でもどういう手だてを講じるのがよいか、まさに人間らしく生きる権利を保障する我が憲法の理念に基づいて積極的な論議をしていただきたいと期待をしております。  総理もお触れになりましたが、重ねて総理見解を伺って、終わります。
  37. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 犯罪被害者に対して救済をするということは極めて大切なことだろうと思っておりますので、十分心して対処いたしていきたいと思っております。
  38. 橋本敦

    ○橋本敦君 終わります。
  39. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  司法権は立法権とも対立し、あるいは行政権とも厳しく対立するセクションです。それで、内閣審議会設置する意味問題点についてどうお考えか、お聞かせください。
  40. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 本審議会は、司法制度改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議することを所掌事務とするものであり、このよう審議会内閣に置き、その調査審議の結果を踏まえて司法機能充実強化のための施策を講ずることは、いわゆる司法権の独立を侵すものではなく、むしろ内閣の責務と考えております。  政府としては、常に司法の独立を尊重してきたところでありますが、いやしくも行政による司法への干渉ととられることのないよう十分配慮していきたいと考えております。
  41. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 司法権の独立について配慮するというお答えでしたが、具体的にどういうことに気をつけて審議をされるか、お聞かせください。
  42. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 司法権の独立の論議をここでちょうちょう申し上げるつもりはありませんが、いわゆる裁判官裁判を行うに当たって、いかなる権力、いかなる人、いかなる集団からも干渉を受けず、指揮、命令にも拘束されないこと、そのための保障として、司法権の独立を確保するために裁判官の職権の独立、狭義の司法権の独立と裁判官の地位の独立が保障されなければならない云々ということで定義されておられるようでございますが、いずれにいたしましても、この審議会におきまして、冒頭申し上げましたような趣旨にのっとって私は十分な審議をしていただけるものと確信をいたしておるところでございます。
  43. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 衆議院の附帯決議の中にある司法権の独立とは、個々の裁判に対する介入ではなく、制度としての司法権の独立が内閣審議会設置されることで侵されないかという論点だと思います。  例えば、具体的には行政権のチェック機能司法権にあるわけですが、残念ながら違憲立法審査権の行使あるいは違憲とした判決は少ない。あるいは裁判官の令状の却下率が低い、行政訴訟でなかなか原告が勝たないという現状があるわけですが、行政権のチェック機能を使命の一つとして持つ司法権の改革が、内閣審議会が置かれるということと矛盾をしないかという点についてはいかがでしょうか。あるいは行政権のチェック機能についてはこの審議会でどういうふうに判断をされるかについてお聞かせください。
  44. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 司法役割一つとして行政に対するチェック機能を果たすということが存在するのは、委員指摘のとおりであろうかと思っております。  ただ、この審議会において具体的に裁判所がチェック機能を果たしているかどうかというようなことを審議するということではなくて、この審議会においては司法のあるべき姿を御議論いただき、それに基づいて司法充実強化国民にとってより利用しやすい司法制度実現するためにどのよう施策が必要かということを御議論いただくという場でございますので、当然その議論の中身が裁判所司法権の行使に干渉するというようなことにはならないものと考えておりますし、また委員の方々も当然その司法権の独立の重要性は十分理解された上で審議に当たっていただけるものと考えております。
  45. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 この法務委員会でも、判検交流などについて、司法権と行政権の癒着を生むのではないかという指摘はたびたびされているところであります。具体的にその判検交流などの問題についてはこの審議会で取り上げられるのでしょうか。
  46. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 法務省の所掌事務の中には、司法制度、民事、刑事の基本法令の立案等、法律的知識、経験を要する事務が多く、これらの事務を適正に行うためには、法律専門家として裁判官の実務経験を有する者の中から任用することは相当の理由があるものと考えております。  法曹は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場におかれても、その立場に応じて職責を全うすることができるところに特色があり、現行の一元的法曹養成制度裁判官任用制度もこのことを前提としておりますので、司法権の独立を損なう制度ではない、このよう考えております。
  47. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 二十一世紀のあるべき司法ということのみが強調され、本来の司法が果たすべき役割が弱くなるのではないかということは小田中参考人を初めさまざまな方が参考人として述べられています。ですから、従来のさまざまな指摘があったこと、行政権のチェックの問題、判検交流等も含めてぜひ審議会で取り上げていただきたい。本来の司法が果たすべき役割ということも審議会の中で十分議論していただきたいと思います。  そして、この審議会でどうしても落ちてしまうのではないかと大変危惧していることに基本的人権の保障、法の支配といったことの論点があります。  国際人権規約B規約の規約人権委員会におきまして、日本は刑事司法、捜査の改革をするようにということを言われております。例えば、代用監獄の制度、自白調書に頼り過ぎではないかという指摘はたびたびされております。捜査あるいは刑事司法に問題があれば、幾ら陪審制、参審制を導入しても、証拠に問題があればいい結果が出ないというふうに考えております。  この審議会においては、刑事司法改革の問題、とりわけ国際人権規約B規約の委員会から指摘された問題などについてどういうふうに取り上げられる予定でしょうか。
  48. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 我が国の刑事司法あり方につきましてはさまざまな指摘がなされております。その改革につきましても各種の提言がなされていることは承知をいたしております。具体的な審議項目につきましては、これらの提言等を踏まえ、審議会において明確にしていただくことが適当であると考えております。  御指摘のありました規約人権委員会から勧告がなされていることは、委員に御指摘いただいておりまして、承知をいたしております。それらの点も含め、司法制度改革につきましては各界からのさまざまな提言がなされているところでありますが、具体的な審議項目につきましては、これらの提言等を踏まえ、審議会において明確にしていただくことが適当であると考えております。
  49. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 国際人権規約B規約の論点などもテーマとするかどうかについて検討すると言っていただいたことは大変心強いと思います。  二十一世紀のあるべき司法経済的にどうかという論点だけではなく、今まで五十年間さまざま指摘されてきた司法制度改革、刑事司法改革などについて積極的にこの審議会が取り上げてくださることを期待しております。  それで、国会の法務委員会などとの関係なのですが、私自身は、内閣にこの審議会を置くこと自身非常に疑念もあるというふうに実は考えております。百歩譲って、国会の方が少なくとも内閣よりも議論するのに適しているのではないかとも考えるのですが、この法務委員会とその審議会との関係についてはどうお考えでしょうか。
  50. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、冒頭の御質問にあったことかと思いますけれども、内閣の権限としてこの審議会内閣に設けるということについてでありますが、これは憲法第六十五条において「行政権は、内閣に属する。」とされ、立法及び司法に固有の作用を除く国家作用はすべて内閣に帰属することとされておるということをもとにいたしておるわけでございます。  そこで、国会との関係でございますが、言うまでもありませんが、国会は国権の最高機関でございまして、先ほど来申し上げておりますように、この審議会審議状況につきましても、国会がこの法律について御審議を願っておることにかんがみまして、十分これは連絡等遺漏なきを期して、御要請をいただければ、当然のことながら事務局からこのことについては説明をし、よりよき司法制度が確立できるように、これは立法府と、そして内閣にこうした審議会はできてはおりますけれども、結論的には国民のためになる司法制度はいかにあるべきかということに帰着するわけでございますので、最大の御協力を当然のことながらいたさなきゃならぬ、こう考えております。
  51. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 代用監獄制度も含めたさまざまな刑事司法改革、そして司法改革、特に基本的人権、法の支配に留意して審議会議論されることを期待して、終わります。
  52. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 中村敦夫です。よろしくお願いします。  司法改革というのは、二十一世紀日本の進路、そして社会のありようを決定的に規定するものであり、また現状の矛盾を考えますとこれはぜひやらなきゃいけない。しかし、一党一派あるいは特定の団体や組織に偏向するということでは困りますから、やはり広く国民的な議論を喚起する、そして普遍的な良識というものを反映される、そういう方向で進められなければいけないと思うんです。  それで、結局、こういう大改革をやるときには必ず審議会形式という形になってくるわけですけれども、これまでの審議会というのはやはり密室主義、それから事務局の主導だという批判が非常に強いやり方です。ですから、こうした大問題をやる場合に、もちろんそうした核となる審議会は必要であると思いますけれども、そこにすべての問題を閉じ込めて全面委任すべき性質のものではないと考えるんです。  それで、具体的に言えば、十三人の審議委員と事務局ということだけではやっぱり取りこぼしてしまう大きな分野がたくさんあると思うんです。例えば世界的な人権組織の支部だとか、たくさん日本には民間の団体があるわけです。多分そういうところからは委員が選ばれないだろうというふうに私は予想しているんです。しかし、それは大変まずい。  ですから、こぼれ落ちた、しかもそれはかなりすそ野の広い分野ですから、そうした人々の意見を反映させるというようなこと、あるいは審議会だけで専門的に進んでいるんだということじゃなくて、国民がこの議論に参加するということで、例えば国民的なアンケートをやるとかいろいろな催し物をやるとか、そうした百花繚乱の議論の中で、そして整理していって、審議会で普遍的な骨格ができ上がるということが私は理想的だと思うんです。そういう装置あるいはプログラムというものを総理はどうお考えになっておられますか。
  53. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 本審議会は、国民的見地から司法制度改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議することを目的として設置されたものであるため、国民各層の意見を十分反映した審議が行われる必要があり、その必要性については審議会委員におかれましても十分配慮されるものと考えております。  具体的にいかなる方法をとるべきかについて、審議に当たられる本審議会において適切な方法を決めていただけるものと考えておりますが、今、中村委員が前提でお話しされたことにつきまして、私も異論はありません。ただ、あらかじめ人選が必ずしも好ましいものでないという前提でお考えいただくことは、ひとつそうでないように最善を尽くして人選に努めていきたいというふうに考えております。  一般的に司法関係につきましては、これは我々行政、それから国会、立法府に比べまして、やや専門家だけが担当しているという印象が国民に正直言ってあると思うんです。ですから、そういう意味で、余り専門家だけでやっておるということになりますと、今、委員が御指摘ように、どうも司法はよっぽど何か自分の身に起こらなければかかわり合いを持ちたくないというような感じのものが率直に言って国民にあると思うんです。  そういった意味で、やっぱり三権の大きな一つ司法の大切さということを考えると、こういう機会に、審議会においてももっと国民に向けてこういう問題の所在があるということを明らかにするとともに、先ほどアンケートを出したらよろしいとかいろいろなことを考えろという御指摘でございますから、これは審議会で御検討いただくことであろうかと思いますが、我々内閣でこの審議会をつくるということから考えれば、そういった点で国民的世論を、司法に対して目を向けていただけるということにつきましても、こういう機会にもっとやはり広く司法が開かれたものになっていくために必要なことではないかという御指摘は私は賛成でございますので、工夫をいたしていきたいというふうに考えております。
  54. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 衆参両院の法務委員会参考人質疑がありまして、たくさんの参考人が非常に積極的ないろいろな意見、問題提起をされました。結局、こういうこと自体ができ上がった後の審議会へどういうふうに反映されるのかということについてお尋ねしたいんです。
  55. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 両院の法務委員会参考人その他の意見を聴取いたした内容についてまだすべて私自身把握しておりませんが、これからそうした貴重な御意見を述べられたことについて注目をさせていただきまして、そういった点が今後の審議につきましてもいろんな形で参考になるための努力はさせていただきたい、こう考えております。
  56. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 つまり、それ自体が何らかの形で審議会に提出され検討されないと、あれだけのことをやったことが余り意味がなくなりますから、ぜひそれはやっていただきたいという要請です。  それで、総理に最後にお聞きしたいんですけれども、この参考人の御意見の中に、国民司法にどんどんなじんでいく、つまり日本ではなじみが非常に薄いというのが現状ですから、そういうことのためにも、あるいは判決の正当性を客観化するためにも陪審制度の採用ということを積極的に言われる参考人が多かったと思うんです。この件に関して総理自身は個人的にどういうふうにお考えになるか、お答えいただきたいんです。
  57. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘の陪審制度の採用については、本委員会における参考人の意見も含め、司法をより国民に身近なものにしていくという観点からも意義があるといった提言をなされていることは承知をいたしております。この問題については、我が国司法の基本にかかわる問題であるので、広く国民の意見を踏まえて種々の観点から慎重に議論される必要があると考えております。  私も不勉強でございましたけれども、実は陪審制度については既に日本の法制度の中では成立をしており、これを今停止しておるということになっておられるようです。したがって、この問題は常々、明治以来日本裁判あり方について恐らく国としても重大な関心を寄せてきておった問題であろうと思います。  そこで、個人的なということを問われましても、まさにこの問題についても審議会で慎重御審議をいろいろいただくことであろうかと思いますので差し控えさせていただきたいと思いますが、例となるのは、身近で知っておるのは、アメリカの陪審制度というものが我々の目に触れるわけで、有名なO・J・シンプソンの事件とか、我々もアメリカの映画で「十二人の怒れる男」とか「ザ・バーディクト」、いわゆる「評決」とかという映画を随分見せていただきまして、陪審制度についていろんな思いを実はいたしております。おりますが、大変申しわけありませんが、今私がここでその制度について是非を明らかにすることについては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
  58. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 陪審制度は、実は日本でも採用されてやったことがある歴史がありまして、なかなか内容がおもしろいんですね。ぜひ総理に個人的にもちょっと研究していただくと大変おもしろいと思うので、それをお勧めして、質問を終わります。
  59. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 以上で内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  60. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 速記を起こしてください。  引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  61. 千葉景子

    千葉景子君 総理に対する概括的な質問はさせていただきましたが、この司法制度改革審議会設置につきまして、ほぼ論議も終盤を迎えておろうかというふうに思いますので、残された問題等、法務大臣、そしてまた最高裁事務当局の方にもお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほど、総理にも基本的な問題、基本的な考え方お尋ねしたんですけれども、私は、今回の司法制度改革、この論議は、いわば経済界等の動き、これが大きなきっかけになりまして動き出したということにある意味では極めて特徴があろうかというふうに思っております。  これまでも司法に対してはさまざまな改革の意見あるいは取り組みがなされてまいりました。しかし、政府がこぞって司法制度改革、こういうものに腰を上げてきたということはございませんでした。経団連等いわば経済界あるいは経済的な要請、こういうものの中で司法改革というのが重い腰を上げ始めたということ、私は、これが本当にいいことなのか、あるいは非常に危惧をする面もあるのか、そんなことを感ずるところでございます。  すなわち、経済の面でも、従来からの護送船団方式と言われるものから自由な競争、そして自己責任あるいはルールを重んじた社会に転換をしてきた。こういうことの中で、自由競争ルールに基づいて的確に進めて、そして、紛争があれば迅速に処理することが要請されるということは当然のことであろうかというふうに思います。そういう意味で、経済界からも司法充実や強化、こういうものが要請されてきたということであろうかと思うんです。  ただ、忘れてならないことは、やはり司法というのは、そもそも経済運営のために、あるいは経済動きに合わせるために行われるわけではないことはもう十分大臣も御承知のところでございます。経済の場においても、公正なルールや法の支配というものが貫徹されるということは別に否定することではございませんけれども、それだけではない。やはり経済の変動の有無にかかわらず、司法がより一層充実をされ、そしてその役割を果たすこと、これは当然であり、その問題点というのは大変多岐にわたり多くあろうかというふうに思います。これまでにもそういうことが多々指摘をされてまいりました。  また、経済がこのように自由競争が進むという中では、むしろこれまで以上に経済的な要請ではなく市民にとっての権利保障というのが重大になってくる。弱肉強食という社会になってはならないし、それから経済と市民生活、その間の情報の格差というのも大変大きいものがあるわけですから、規制が緩和されることによってより一層個人の権利、こういうものに注意を払っていくということが必要だというふうに思います。そういう意味では、一人一人の個人の権利人権が保障されるということは、大きな経済動き社会動きの中でもいわばセーフティーネットという役割を果たすのではないかというふうに思っているところでもございます。  どういうきっかけでこの司法改革の論議が大きく踏み出されてきたか、これは別としても、審議会議論がこういう基本的な視点を忘れずに活発に展開されることを私たちも望んでおります。それのみならず、立法府、これも先ほど触れさせていただきましたが、当委員会でも司法改革専門的に論議をしようということで小委員会設置するという方向も今進められているところでもございます。政府としても、審議会ができたのでそこにすべてをゆだねるということではなくして、これまで長年にわたっていろいろ指摘されてきた、あるいは今取りかかるべき課題については、やはり怠りなく積極的に取り組んでいくということが必要ではないかというふうに思います。  特に、先ほどもどなたかが触れておられましたけれども、審議会も二年間という期間でございます。参考人からも多岐にわたる問題指摘もありましたが、二年間で本当にどうやって意見集約ができるのだろうか。社会のこれからのありようを本当に決めていこうというくらいの大仕事ですし、具体的な個々の問題を取り上げれば、これまでも一年、二年かけても解決し得なかったよう課題がその中にたくさん盛り込まれる。こういうことになると、審議会も論議を進めていただく、しかしその一方で、国会も、そして政府としても、むしろ競争し合うぐらいの形で司法改革というものに取り組んでいく、そういう姿勢がやっぱり必要だというふうに私は思います。  そういう意味では、審議会にもきちっとした理念のもとに論議をいただきたいというふうに思いますけれども、さらに、政府法務省としても、そして最高裁としても改めて司法充実、より一層の発展に向けた取り組みをお願いしたいというふうに思います。  まず、改めてということになって恐縮でございますけれども、これからの司法充実に向けてどういう姿勢、どういう理念考え方に基づいてお取り組みをされようとするのか。これは審議会への期待もあろうかというふうに思いますけれども、みずからの姿勢として、どういうお考えのもとにこれから法務行政あるいは司法行政などを進めていかれようとするのか、それぞれ法務大臣、そして最高裁の事務当局にもお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
  62. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま委員お話しなさいましたように、司法というのは国民権利実現を図るとともに、国民基本的人権擁護し、さらには安全な国民生活を維持するなど、国民生活にとって極めて重要な役割を担っておるわけでございます。  二十一世紀を目前に控えまして、ただいま社会経済、あらゆる面で複雑多様化し、国際化が進んでおりまして、そういう中で司法の果たすべき役割というのは一層重要になってきております。  したがいまして、二十一世紀司法がより国民に身近で利用しやすくするためにいかにあるべきか、その基盤なり整備の問題について早急に審議会議論を深めていただき、方向を出していただきたい。二年間がどうかという問題はございますけれども、二十一世紀を目前にしておりますだけに、精力的にこれまでも議論されましたよう国民の幅広い御意見を集約しながら方向づけをしていただきたい、このように願っておるわけでございます。  そういうわけでございますけれども、私ども法務省といたしましては、審議会の結論を待って取り組むこともございますけれども、それを待たずに早急に必要な施策につきましては適宜適切に実施してまいりたい、このよう考えておるところでございます。
  63. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 改めて申し上げるまでもなく、司法制度は、市民の家庭関係や社会生活経済活動等に伴い発生いたしますさまざまな法的紛争の予防と解決、権利の保護と救済を図るためでございます。したがって、国民生活あるいは社会実態が変容すればそれに即して司法制度も改善するという努力を常に払っていかなければならないと自覚いたしております。裁判所といたしましても、その本来の使命であります適正、公正、迅速な裁判実現のためにこれまでも着実な努力を重ね、国民の皆様方の一定の信頼を得てきたものと考えております。このよう努力は、審議会の御審議を離れても続けてまいらなければならないと考えているところでございます。  しかしながら、最近の経済を初めといたします社会情勢の大きな変動によりまして、法的な紛争が量的に増大したのみならず内容的にも複雑多様化しております。これを公正な手続でより迅速に解決してもらいたいという国民ニーズは一段と高まっておるところでございます。また、国際化の進展に伴いまして、裁判の適正、公正、迅速さといった面でもグローバルスタンダードという視点を抜きには語れなくなってきているわけでございます。現在各方面から寄せられております司法制度改革議論というものは、まさにこのような要望を反映したものであろうと考えているところでございます。  二十一世紀を目前にいたしまして、我が国のさまざまな分野におきまして構造的な見直しが進められているところでございますが、このようないわば節目の時期に司法制度全体について総合的な見直し、改善を図るということは、まさに時宜を得たものと考えている次第でございます。  最高裁判所といたしましては、個々具体的な事件の適正、迅速な処理を通じて、国民権利擁護し、法の支配を実現し、そして国際的に見ても遜色のない裁判制度をつくりたい、こういう目的を持っておりまして、そのよう理念に立って司法制度改革審議会における審議に協力させていただきたいと考えている次第でございます。
  64. 千葉景子

    千葉景子君 確かに、二十一世紀を目前にするこういう大きな時代の変わり目ですから、そういう時期をとらまえて、司法の分野でもやはりこの際改めて抜本的な見直しやあるいはこれからの方向性をこぞって考えていこうということは、そういう意味では私も理解をさせていただきます。ただ、この機会をとらえることはよろしいですけれども、これまで本当にもっともっとやれてきた部分、あるいは余りにも腰が重かった部分があったのではないか、こういう気がいたします。せっかくこういうチャンスを国民の側からも与えられたということでもございますので、そんなことをよくよく頭に置いてぜひ積極的な姿勢をお持ちいただきたいというふうに思います。  そこで、先ほども総理お尋ねしましたが、そういうことを考えるにつけ、やはり余りにも貧弱な予算ということを改めて感じます。総理も、とてもこれでいいとかあるいは十分だとはどうも思わなかったのではなかろうかと先ほどの御答弁ぶりから推測をさせていただくわけですけれども、こういう機会に司法予算というものを運用している側としても積極的にやはり充実させていこう、こういう気構えも必要ではないかというふうに思います。  この間の審議あるいは参考人等の御意見からも、少なくとも司法がもっと小さくてよろしいなどという意見は皆無なわけでございます。もうちょっと充実、そして容量も含めて大きくせいという意見こそあれ、小さくなってよろしいという意見はないわけでございます。もう繰り返しませんけれども、先ほど総理にもお示しをさせていただいた数字考えますと、これは本当に残念ながら貧弱そのものと言わざるを得ないというふうに思います。額が多ければいい、金だけ持っていればいいということはございませんけれども、これから改革を進める、あるいは法務省審議会のあれを待たずしてもやるべきことはやろうということでもございますので、やはり財政措置などについて積極的に物を申していくということが必要ではないかというふうに思います。  裁判所の方も、どうもこれまで予算については極めて遠慮がちというか、まさに紳士的といえば紳士的なのかもしれませんけれども、どちらかといえば予算は分捕り合戦になるくらいなところ、余りそういう様子もございません。別にそれを悪いというわけではございませんけれども、せっかくこういう機会ですので司法充実に向けたやっぱり財政面での積極姿勢、こういうものも求められるのではないかというふうに思います。  法務大臣、これから少し、せっかく応援団がたくさんいるときですから、法務省予算、それから裁判所も、裁判所に目が向けられる機会というのはなかなか少のうございますので、これもせっかくのチャンスでもありますから、やはり世界にも引けをとらない、そういう意味での予算について積極的な姿勢で臨んでいただく、こういうことをぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  65. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま委員から大変力強いお話を承りましてありがたく存じております。  司法機能充実につきましては、政府といたしましても予算等の面で最大限の配慮をしてきたつもりでございますけれども、これからの司法の重要さにかんがみまして、今後ともさらに適切に対処してまいらなければならないと考えております。そして、そういう場合に、この審議会において国民的な論議が盛り上がり、御理解と御協力がさらに高まりますことを期待し、私たちもそれに向けて努力してまいりたいと思います。
  66. 竹崎博允

    最高裁判所長官代理者(竹崎博允君) 裁判所役割と申しますのは、適正、迅速な裁判実現ということでございまして、裁判所予算というのは全国の裁判所でこの機能が十分確保されていくということを担保するものでなければならないというよう考えております。こういう観点から必要な予算の確保にこれまで努めてきたわけでございまして、こうした裁判所の果たすべき役割につきましては、先ほど総理の御答弁にもございましたように、政府から理解を得てきたものというよう考えております。  ところで、今回、司法制度改革審議会設置されるに至りました大きな流れと申しますのは、今後の我が国における社会複雑多様化あるいは国際化等の傾向の中で、司法機能を一層拡充し、国民の利用しやすい司法実現する必要があるということであろうと考えております。その具体的な方策につきましては今後の審議会検討を待つことになるわけでございますが、いずれにいたしましても、そこでは司法機能充実強化を図るための施策が提案されることになるであろうと考えております。私どもといたしましては、これらの施策を講ずる上で今後必要とされる予算につきましては、これを確保するように努めてまいりたいと考えておるところでございます。  また、審議会の答申を待つまでもなく、司法予算の増額を図るべきでないかという御指摘でございます。  予算は、申すまでもなく、具体的な施策の遂行に必要な事柄について確保すべきでございまして、一般的にはどういたしますということは論ぜられないわけでございますが、ただいま申し上げましたよう審議会設置に至る経緯を踏まえまして、審議状況等についても十分配慮し、適正、迅速な裁判実現していく上で早急に必要とされる施策については必要な予算を確保するよう努めてまいりたい、こう考えております。
  67. 千葉景子

    千葉景子君 今お話がございましたように、金だけあればいいというわけではありません。どういう施策のためにどれだけの予算が必要か、こういうことは当たり前のことでございますが、やるべきことは幾らでもあると言っては語弊がありますけれども、本当に必要なことというのは山積をしているわけです。施策がないところに金だけとってこい、決してこんなことを申し上げるつもりはございませんので、施策の推進とともに財政面での積極姿勢もぜひお持ちいただきたいということでございます。  さて、審議会の方でもいろいろな御議論が今後あろうかというふうに思いますが、今申し上げましたように、それを待たずしても、そしてそれと並行しても必要なことは積極的に対応し、あるいは取り組みを進めていかなければいけない。  そういう中で、二十一世紀、これも審議会の大きなテーマであろうかというふうに思いますが、やはり国際社会の中でも大きな問題というのは人権の問題、人権充実ということが挙げられようというふうに思います。人権と環境の時代とも言われるくらいでもございまして、そういう意味では、これからの司法あり方司法の場で人権を保障し、そしてそれをさらに深化させていくためのさまざまな努力をしていくということも大きなテーマであろうというふうに私は思います。  先般、この委員会でも外国人登録法などの議論をさせていただきました。これからの開かれた国際社会、そういう中で日本はどうあるべきかという議論もありましたし、それから規約人権委員会での日本に対するさまざまな意見、こういうものに対しても私たちがどう受けとめていくか、こういう議論もさせていただきました。  やはりこれから人権の国際的な保護、伸長のためにさまざまな努力日本もしていくということが必要であろうというふうに思います。そして、国際的な人権の水準、国内でも私たちがそれにできるだけ沿う社会を率先してつくっていく、あるいは国際的な取り組みに日本がリーダーシップを発揮していく、こういう面では司法というものがそれの後ろ盾になっていくということが言えようかというふうに思います。  また、とりわけアジア諸国との中でも、例えば日本がアジアの中で人権意識の啓蒙に努めていくとか、それからヨーロッパなどでもございますが、人権保障のためのシステム、機構、こういうものなどを日本が提唱するなどして進めていく、こんなことも今後求められていくことではないかというふうに思います。  二十一世紀司法ということを考えるに当たって、国際化、国際的な対応、こういうことをどうお考えになっておられるか、そしてまた具体的にどんな取り組みをされようとしているのか、法務大臣お尋ねをしたいと思います。
  68. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) お尋ねの点で、法務省は従来から、刑事面では法務省所管の国連アジア極東犯罪防止研修所におきまして、既に三十七年間にわたりましてアジア太平洋諸国の刑事関係実務家を対象とした研修を実施しております。さらに、入国管理や矯正関係に関しましても法務省において国際研修を実施しているところでございます。また、平成六年度からは、刑事分野のみならず、民・商事の分野等における法制度の整備に関しましても、外務省及び国際協力事業団等関係諸機関との綿密な連携協力のもとで、アジア太平洋諸国に対する法制度整備のための支援を行っておるところでございます。  これらはいずれも人権擁護というものをベースに踏まえながら行っているというふうに考えているところでございまして、今後とも、人権保障を含め法整備支援体制を一層強化するなどいたしまして、できる限りアジア太平洋諸国の法的インフラ整備に貢献してまいりたい、このよう考えております。
  69. 千葉景子

    千葉景子君 努力をされておられることについては私も承知をさせていただいておりますが、ただ、これまでの国際的な社会から眺めている日本というのは、どうも閉鎖的であり、そして人権条約はさまざま締結いたしておりますけれども、なかなかそれに沿った国内的な対応がされていないのではないかといろいろな指摘もされてきたところでもございます。  そういう意味では、今大臣がおっしゃられましたよう努力は当然のことながら、国際的な人権というものにさらに目を向けていただき、そして国際的なさまざまな指摘などにも謙虚に耳を傾けながら、むしろ日本世界人権リーダー国だというぐらいに努力をいただくことが二十一世紀へ向けたまず大きな第一歩ではないかというふうに思います。これは私の希望ということでお聞きとめいただきたいというふうに思います。  さて、今回の改革の中でどこからも指摘をされておりますのが司法の量と質の拡大です。これはどなたも否定されるものではなく、指摘をされているところでございます。  これは、審議会などで今後どういう形で容量の拡大などをしていこうかという議論を進めていかれるでしょうけれども、これはある日突然ばんとふやすことができる問題ではありません。これまでもそうかもしれませんけれども、きょうからでもより一層、質、量をできるだけ前進させていくよう努力を不断に続けていく、こういうことが必要であろうというふうに思います。  そういう意味で、裁判官の任用について改めていろいろな抜本的な改革が必要となってくるのではないかと思いますが、その中で、質そして量、こういうものを考えたときに避けては語れないのが法曹一元という問題であろうというふうに思います。これも本当に長年語られ、そして議論されてまいりました。決して今度の審議会で初めて議論が始まり、そこで突然びっくりするような結論が出るという問題ではなく、私はこれまでの議論の積み重ねの上に立って語られる問題であろうというふうに思います。  この法曹一元、私はこれを今度の大きな改革のテーマに据えて、そしてその方向性を出していくべきものではないかというふうに考えておりますが、大臣はこの法曹一元という問題について、どのように御認識され、そしてこれからの進展あるいは推進方についてどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。
  70. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 法曹一元制度につきましては、司法制度改革に関する各界の提言中にもこの制度につき言及するものが少なくなく、司法制度あり方についての一つ考え方として広く国民の意見を踏まえて議論される必要があると考えております。昭和三十七年に設置されました臨時司法制度調査会におきましてもこの問題が議論されたわけでございますけれども、今度の審議会においても重要な審議のテーマの一つだと思っております。
  71. 千葉景子

    千葉景子君 先ほどから話にも出ておりますように、逆に考えれば二十一世紀司法は多様化、そしてさまざまな専門性あるいは情報化、国際化、こういう中でやはり裁判官などが幅広い社会的な経験やあるいは見識を持ち、そして適切な公正な判断をしていくということが極めて私は必要なことであろうというふうに思います。  そういう意味では、法曹一元、法曹資格を弁護士として持ち、そしてその経験を踏まえて裁判官として任用されていくという考え方は、私は非常に時宜を得た、そしてこれからにふさわしい考え方ではないかというふうに思っています。決してこれまでの裁判官がそういうものを持ち合わせていないとか、あるいは非常に判断がおかしかったということを別に申し上げたいわけではないけれども、さらに社会がそういうものを必要としてくる、こういうことではないかというふうに思います。今後この委員会あるいは審議会などでも議論が進んでいこうかというふうに思いますけれども、ぜひそんな視点を大臣にもお持ちいただきまして、議論を積極的にサポートしていただきたいものだというふうに思います。  この制度といいますか考え方、これも一気にできることではございません。できるだけこういう幅広い人材を、そしてできるだけ数もふやしていこうということになりますと、当面すぐにでも取りかかれる幾つかのことがあるのではないかというふうに思います。  私も当委員会で何回か指摘させていただいたことがあろうかというふうに思いますけれども、例えば非常勤の裁判官制度。今、弁護士からの任官というものも制度としてとられております。しかし、なかなかやはり一気に任官をするというところまでには至りにくい。だとすれば、非常勤で経験豊かな人が裁判官として一定の役割を担うということなどは、柔軟にできることではないかというふうに私は思います。  それから、場合によっては、これは私も物の本などで読ませていただいたりしましたが、アメリカなどでも、一定の年齢でどうしても定年というものがございます。ただ、日本も非常に寿命が長くなりまして、定年時というのはまだまだ実務者としても大変お元気で豊かな見識をお持ちだという時期でもございます。定年という問題をすぐに変えるわけにはいかないとすれば、定年後の裁判官を一定の部分、一定の事件とか一定の職務についていただいてその経験などを生かしていただく、そして裁判のスピードアップにもつなげていくことも可能ではないかというふうに幾つかの私の乏しいあれから考えているところでございます。こういういろんな工夫などもやって、これは議論をまつまでもなく、だれもが別に否定をしたり、あるいはけしからぬと言う問題ではないというふうに思います。  その点、こういういろいろな司法のすそ野を広げていく、できるだけ裁判の容量をふやしていく手だて、こういうものについていかがお考えでしょうか。
  72. 房村精一

    政府委員(房村精一君) ただいま委員から御指摘のありました非常勤裁判官制度あるいは定年後の裁判官の活用というものも、その具体的な内容が必ずしも明確でない点もあってお答えしにくい点もございますが、裁判官につきましては、国民権利を左右する、あるいは場合によれば生命すら左右するという非常に重要な職責を担っておりますので、その職責の重要性にかんがみまして憲法上も身分保障その他詳細な規定が設けられております。そういう裁判官の役を果たす者について従来の制度と異なる新しい制度の導入を検討するということになりますと、これは非常に慎重な検討が必要になるのではないかというぐあいに考えております。
  73. 千葉景子

    千葉景子君 やはり裁判官というのがそれだけ独立性を保障され、そして身分も保障されて、それだからこそ公正で適切な役割を果たし得る、こういう仕組みになっていることは当然でございます。ただ、むしろ今求められていることは、そういうことは当然のこととして、できるだけすそ野を広げ、そして市民とのすき間も減らし、スピーディーに裁判を進めていくということでもございますので、その原則を壊すことなくいろいろな知恵を働かせるということは、私はできるだろうし、そしてそれがやはり政府あるいは法務省としての役目ではないかというふうに思うんです。審議会などでも議論があろうかと思いますけれども、ぜひそんなことにもいろいろな知恵を働かせていただきたい。ただ待っていて結論が出てからやるということではない課題であろうというふうに思います。  それから、これも多くの参考人などからも御意見がございました。やはり司法への市民参加、これが大変重要な課題だということも指摘されてきたところです。ちょっとこれは半分からかい加減もあるのかもしれませんけれども、逆に裁判官の市民社会へのもっと参加ということが必要なんじゃないか、あるいは市民的な自由、こういうものももっときちっと保障することで市民との距離を縮めていく、そして市民の生活にのっとった生活感のある裁判というものを進めるべきであるという御意見すらあったところでもございます。  そういう意味で、司法への市民参加という問題は、これも多分審議会でも大きな議論問題点になるのではないかというふうに思います。  その大きなポイントは、陪審あるいは参審と言われるような形で司法に市民が参加をする形、こういうものが当然頭に浮かんでくるところでございます。これについては、これからこの委員会などでもむしろ時間をとって議論すべきことであろうというふうに思いますので、きょうここですぐにお答えを出していただこうということは私も求めるわけではございませんけれども、やはり市民が裁判に参加をする道というのもそろそろ準備を始めてもよいのではないかというふうに思います。  私は、この議論が煮詰まって、例えば審議会などでも陪審というものを、これは新規に入れるということではなくてある意味では制度的には復活させるということかというふうに思いますけれども、そういう議論が進んできた、そうなって、さあ、いざとなってどんとスタートしよう、これも大変なことでございます。なかなか市民にとっても経験をしていないことでございます。  これは私もどうやったらいいものかというのをすぐに思いつかないんですけれども、例えば法務省が、あるいは裁判所などと協力し合いながら司法への市民参加、陪審などの模擬的な法廷、そういうものを開いて、多くの市民の皆さんにも、実際こういうものですよ、こういう法廷になります、どうでしょうかと、むしろ率直に問いかけてみる。そして、市民も一回体験をしてみて、なるほど、これは自分たち責任を持って司法にかかわれるし、そんなにびくびくしないで大丈夫なことだというようなことも経験をする。  やっぱりいざとなったときにどんといっても大変ですから、こういうことも含めてむしろ審議会議論を進める上でのいろんな情報、条件を整えていくということも役割ではないかというふうに思います。  そういう意味で、陪審や参審ということをぜひもっと身近な問題としてとらえていく必要があるだろうというふうに思います。検察審査会という制度がございまして、私も何回かいろいろな機会に話を聞かせていただきましたが、大変市民が責任を持って、そして積極的にその役割を果たしているという、これは裁判ではありませんけれども、こういう経験もあるわけです、私たち社会には。  今、司法がどうも市民から遠い、そしていろいろな問題について裁判所の中だけでどうも物事が進められているということに対する違和感、こういうものがあるわけですから、ぜひこういう陪審、参審、市民参加ということについて積極的な何か条件整備とか、あるいは多くの国民考え得る土壌というものを今こそつくるべきではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。少し大臣としてのお考え方などをお聞かせいただきたいと思います。
  74. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 司法をより国民に身近なものにしていくという観点から、委員指摘の陪審・参審制度の導入というのは一つあり方だと思っております。  この陪審、参審という言葉については国民の方々もよく御存じと思いますが、その内容等につきましては、今委員お話になりましたように、中身については必ずしも十分な理解が行き届いているとは思わないと思います。きょうあたりも某新聞は大きく取り上げておりますけれども、やはりこの制度を実行していく上には国民の責務というものあるいは義務というものを本当に果たしていっていただけるのかどうかとか、裁判制度に対する国民考え方がどういうものなのか、長い我が国裁判制度になじんでおる国民として陪審・参審制についてどういう考え方をお持ちなのか、いろいろ考えてみると難しい問題があろうかと思います。  また、裁判所の施設整備の問題もあわせてやっぱり必要になってくると思いますので、そういったものをそれぞれわかりやすい形で国民の皆様に理解していただく中で、こういう制度国民の大方の考え方としてどういうふうに認識していただけるのか、こういうものを見きわめていく必要があろうかと思っております。  いずれにしましても、今度の審議会で取り上げる大きなテーマとなると思いますので、その審議の実が上がるようにいろいろな工夫が必要かと思っております。
  75. 千葉景子

    千葉景子君 おっしゃるとおりだと思います。何も情報がなくて、あるいは経験とかそういうのがなくて、国民がどう思っているか、意識といってもこれはなかなかわからない。知らないものは、いや、やっぱりという消極的な姿勢になりかねない。こういうことでもございますので、そういう情報とかあるいは実情などをわかりやすく提供して、そして審議会議論などにもそれを生かしていくということなどにぜひ努力をいただきたい、こういうふうに私は考えているところです。  それから、ちょっと私、先ほど予算のところでもう一点お尋ねするつもりでおりまして忘れましたので、ここでお聞きいたします。  予算をできるだけ充実させていくという中で、法律扶助の制度がございます。これは今、日弁連なども主体的に取り組みまして、そして財政的にもこの間大分厚い補助などを出していただくようになってまいりました。しかし、これはやはり国民裁判を受ける、そういう権利を実質的に保障していくという意味では大変重要なポイントであろうというふうに思います。そういう意味では、これをできれば法的にきちっと位置づけ、整備をして、そして国民に対するサポート、法的サービスが十分にできるような体制を整えるということが必要ではないかというふうに思いますが、この点についてお尋ねをしておきたいというふうに思います。  それから、その中で被疑者の弁護とかについても、これから公的にという議論などもございます。ただ、被疑者の方もそうなんですけれども、もう一つ、少年の付添人、こういうところにもやはり十分なサポートが必要であろうというふうに思うんです。  この間、いろいろな問題がありまして、どうしてもやはり少年事件に付添人なくして本当の意味での少年の問題というのは解決し得ないという状況もあり、この法律扶助という中で付添人などにも十分な扶助なりができるようなことを積極的にしていく必要があろうというふうに思いますが、これらを含めて、市民の実質的な裁判を受ける権利、こういうものの充実という面で大臣のお考え方をお聞きしておきたいというふうに思います。
  76. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 法律扶助制度につきましては、これはもう御案内のように、憲法三十二条に定める裁判を受ける権利を実質的に保障するという理念のもとに充実が図られてきた重要な制度であると認識しております。そして、委員指摘のとおり、この制度の一層の充実強化を図っていくということは、司法国民に身近で使いやすくするという観点から、我が国司法制度にとって喫緊の重要課題であると認識しております。この制度につきましては、法律扶助制度研究会が平成十年三月に取りまとめました研究成果などを踏まえながら、関係機関とも協議し、法制度を含めてその一層の充実発展に努めてまいりたい、このよう考えております。  また、少年事件における付添人の扶助についてでございますけれども、この問題につきましては、今国会に提出しております少年法等の一部を改正する法律案におきまして、少年保護事件において審判に検察官が関与する場合に、少年には、弁護士である付添人がないときは弁護士である国選付添人を付すこととしております。それ以外の付添人に対する国庫金支弁に関しましては、少年審判における国選付添人制度あり方などとともに付添人制度全体の中での検討が必要である、そのような問題であると考えておるわけでございます。  なお、もう一点、被疑者に対する公的弁護制度の問題でございますが、被疑者段階の弁護に関する国庫金支弁の問題に関しましては、法務省としても種々の角度から研究を続けているところでございますが、これについては、捜査手続への影響など刑事司法手続全体の構造との関連、適正な被疑者弁護活動あり方、国の財政負担との関係、国民の理解、弁護士偏在など、さまざまな角度から検討が必要とされる問題である、このよう考えております。
  77. 千葉景子

    千葉景子君 時間がもうそれほどありませんので、私も、今司法に求められている、そして審議会でも当然いろいろ議論されているであろう問題、多分重なり合って多方面で議論されていく課題であろうというふうに思います。きょう御指摘をさせていただいた、あるいは大臣の御意見をお聞きしたのはほんの一部でございまして、考えてみると、これだけいろいろな課題、そしてそれをトータルとしてこれからの司法どうあるべしと、私も二年間で本当に十分な議論を尽くせるのかなという感じがするわけです。  ただ、そういう意味で、私が言いたいのは、審議会では、例えば先ほど言ったこれからの裁判官の任用のあり方、法曹一元とかあるいは司法への市民参加、陪審とか参審、こういう大きな柱でどんと議論をいただいて、そしてそれに付随をするわけではありませんが、本当に日常、日に日に改革をしていかなければいけない幾つかのこと、今指摘させていただいたことも含めて、この委員会、あるいは法務省、最高裁、そういうところでこぞって、論議をまつまでもなくどんどん進めていく。こういうくらいのことがないと、審議会の方も、どっとお店は開いちゃいましたけれどもということになりかねない。そして、個々の問題は審議会を待ってからといってテンポが遅くなっていく、こういうことにもなりかねませんので、ぜひそんな懸念のなきように、大臣にもそういうリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思っているところです。  そこで、もう最後になろうかというふうに思いますが、この法案で、もう皆さんからも、事務局の任命について遺憾なきようにする、あるいは情報の開示などをしっかりとするようにという話もございました。私もそのとおりであろうというふうに思います。この委員会との関係なども御指摘がありました。  そこで、私は、こういうことはできないだろうかと。多分お答えはできないだろうというふうに思いますので、御感想ぐらいお聞かせいただけたらというふうに思うんです。  委員を両院の同意のもとに任命するということになるわけです。先ほど大森委員の方からも、女性の割合をきちっとせいということもあり、私も本当にそのとおりであろうというふうに思います。この委員会と相反目する問題ではありませんし、十分な連携を図りながら議論していくという意味で、その任命について、私たち責任を持って同意させていただくということになるわけですので、こういう皆さんに委員をしていただきたいということがありましたらば、例えばこの委員会で意見の陳述をいただくとかお考えを御表明いただいて、なるほどこういう皆さんに審議会で一生懸命議論していただくんだということなどを私たちも十分知った上で責任を持って議論をゆだねていくというようなこともできたらなというふうに思います。委員の皆さんに質疑に応じていただくということはなかなか難しい面があろうかと思いますけれども、こんなお考えの方だ、こういう幅広い御見識のもとに議論をしていただくんだということなどが私たちにもわかると大変うれしいなというふうに思います。  そんな意味で、ぜひそんな機会をつくることができたらなと思いますが、大臣、お答えというわけにはいかないかもしれません、これはこちらの委員会の問題、国会の問題でもありますので。ちょっと御所見、御所感などがございましたらお聞かせをいただければというふうに思います。
  78. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 委員の同意をお願いする立場からということでちょっと発言をさせていただきます。  基本的に私どもとしては、この審議会委員として国民的見地に立って審議をしていただくにふさわしい方を選考いたしまして御同意をお願いするということになりますが、その御同意をいただくに当たって、国会でどういう形で行うかということについて、お願いをする私どもの立場から御意見を申し上げることは差し控えさせていただきたい、こう思っております。
  79. 千葉景子

    千葉景子君 大臣、何か御感想がありましたら。
  80. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 先ほど総理も、ふさわしい方を、皆様方に御理解いただける方を選ぶということをおっしゃっておりました。そういうものを国会の同意の中でひとつまたお決めいただければありがたいと思っております。
  81. 千葉景子

    千葉景子君 それは私どもでまた考えさせていただくことにいたしましても、本当に幅広いいろいろな角度から、そしてそれを受けとめて運用していくのはやはり司法関係者ということになりますので、そんなことも多角的に考えていただきまして、ぜひ適切な委員を任命いただきたいものだという希望を申し添えておきたいというふうに思います。  時間が多少ございますけれども、私の方からはきょうはこの程度にさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  82. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時開会
  83. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、本田良一君が委員辞任され、その補欠として角田義一君が選任されました。     ─────────────
  84. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 休憩前に引き続き、司法制度改革審議会設置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。質問いたします。  まず、この審議会の構成について確認しておきたいことがございます。  審議会の構成につきましては、内閣が両院の同意を得て任命する十三人以内の委員でありまして、これまでの質疑では、法律実務家、労働界、消費者団体経済界法律学者という各層から選ばれるほか、裁判官経験者とか検察官経験者、それから弁護士からも委嘱されるように聞いておりますが、これはこのとおりでよろしいのでしょうか。もう一度確認させてください。
  86. 房村精一

    政府委員(房村精一君) この審議会は、二十一世紀我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について国民的見地から調査審議することを目的とするものでありまして、そういうことから、司法制度全般についてこのような視点のもとで調査審議するのにふさわしい有識者を国民各層から委員として選任する必要があると考えているところでございます。  ただいま委員から御指摘のありましたよう司法を利用する側の立場の方々、経済界とか労働界あるいは消費者団体等の国民各層からふさわしい有識者を選ばせていただきたいと考えております。また、司法関係ということで、法律実務家あるいは法律学者という方々も委員になっていただきたいと考えておりますが、その法律実務家の中には、当然、裁判官を経験された方あるいは検察官を経験された方あるいは現に弁護士をなさっている方、こういうような方も含まれようかと考えております。
  87. 大森礼子

    ○大森礼子君 この審議会委員につきましては、むしろ専門家でない方が自由な意見が聞けていいということもあるんですけれども、しかし現状認識をする場合に、やはり実務の中身、仕組みとかがわかりませんと、正しいそういう認識がありませんと正しい評価にもならないと思いますので、そういった意味で、やはり法律実務家が入ることは必要であろうというふうに、個人的見解ですが私は考えております。  それから次は、事務局なのですけれども、この審議会には事務局が設置されることになっております。この事務局員も専ら内閣によって任命される官僚の方とか裁判官、検察官がなるものと思うのですが、この事務局員の構成についてはどのようにお考えでしょうか。確認させてください。
  88. 房村精一

    政府委員(房村精一君) この審議会に置かれる事務局の役割でございますが、これは改めて申すまでもなく、その審議会における審議のための資料の調査、収集、整理、分析あるいは審議結果の整理というような、審議会において委員による審議が十分に行われるようにそれを補佐する役割を果たすということになります。したがいまして、その事務局の職員にはこのよう役割を果たすのにふさわしい知識を持っている方々になっていただきたい、こう考えているところでございます。  具体的には、司法制度改革に関連するような省庁から官僚の方々に来ていただく。その中には検事あるいは裁判官の経験のある人も含まれるかもしれませんが、そういうことになろうかと思っております。また同時に、いろいろ御指摘をいただいている中に、そういう知識を有する民間の方の登用も検討すべきであるという御指摘も受けておりますので、そのような点も含めて事務局の構成については検討をしていきたいと考えております。
  89. 大森礼子

    ○大森礼子君 この審議会は、内閣法十二条四項の規定によって設置するものとされておりまして、審議会内閣設置される一機関であり、これは衆議院の法務委員会政府側答弁でも内閣の補助機関というふうに位置づけられております。  それで、審議会委員人選、これも公正でなくてはいけませんが、その事務局員の選び方につきましても、これがまた時の内閣の意向が強く働いて、審議会方向性を位置づけるものであってはならないと思いますので、事務局員の人選についても十分考慮していただきたいと思います。  それから、事務局との関連になるかと思うのですが、五月二十五日の参考人質疑の中で、21世紀政策研究所の田中参考人の意見でこういうのがございました。審議会あり方、メンバーの選定に関する話の中ですが、司法基盤の整備とか、それから陪審など新制度導入が議論をされる場合に、それに関する詳細な現状調査が必要であるということ、そしてそれを分析することによってどういう成果につながるかを明らかにしなければならない、こういう御意見がございました。それで、物事の分析にたけたその道の専門家審議会委員として加えるべきではないか、こういう御意見がございました。  確かにいろんな問題を検討して方向性を出していく場合に、認識せずして評価するなかれという言葉がございますけれども、正しい事実認識、これがベースになるだろうと思うんです。そうしますと、田中参考人がおっしゃった詳細な現状調査、そしてそれを分析していくという作業がとても重要であるし、またそれが効率的な審議にも大いに役立つものであろうと思います。  この点について、どのようにお考えなのでしょうか。
  90. 房村精一

    政府委員(房村精一君) ただいま御指摘のありましたように、司法制度についての施策検討するというときには、司法の現状がいかなるものであるのか、どういう問題があるのかというようなことにつきまして、詳細な資料に基づいて、かつこれを分析して、その上で議論をして問題点を把握するということが必要であろうと思っております。  そういう意味で、そのような現状に対する資料の収集あるいは分析ということが当然必要になってまいりますが、この審議会におきましても、設置法の六条におきまして、関係行政機関あるいは最高裁判所日本弁護士連合会というようなところに対して、資料の提出あるいは意見の開陳など必要な協力を求めることができるというような規定も置かれております。こういうような協力を求められた場合には、関係する機関においてそれぞれ詳細な資料を提出し、あわせてそれの分析についても御意見を審議会の方に提出するということも可能になっております。また、事務局につきましても、先ほど申し上げましたように、審議充実したものにしていただくために、必要な知識と能力のある方々に審議会の事務局に来ていただくということも当然考えております。  そういうようなことで、現状の調査、分析ということも十分可能であると思っておりますし、またそういう専門的能力を有している方々、外部の方のお力を審議会としておかりするということも十分あり得るわけでございますので、そういった方法を組み合わせることによって、司法の現状を十分認識した上で御議論いただけるというぐあいに考えております。
  91. 大森礼子

    ○大森礼子君 わかりました。  現状調査、それから分析の部分、これは委員みずからがする必要があるのかどうか、これはちょっとよくわかりません。もしかしたら第三者的立場の方に委託する方法もあるのかなという気がいたします。ただ、田中参考人の御意見というのは本当にもっともなことでありますので、正しい結論を得るために十分こういう調査、分析を行っていただきたいと思います。  次に、最高裁の方にお尋ねいたします。  最高裁は審議会メンバーとは直接かかわらないわけでございますけれども、国民法的ニーズが多様化かつ量的に拡大しているので、この国民ニーズにどうこたえるかということがこれからの課題になってくると思います。  それで、四月二十一日の衆議院の法務委員会で、最高裁の方が、「国民ニーズを受け、司法制度全般機能あり方について実証的かつ多角的に検討を加え、」という御発言をされているわけであります。  それで、最高裁もいろいろお考えになっていると思うのですが、この言葉の中に出てきます「司法制度全般機能あり方について実証的かつ多角的に検討」というのは、これは具体的にどのようなことをお考えになっておられるのか、お尋ねいたします。
  92. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) お答え申し上げます。  司法制度は、国民権利擁護、救済を図ることを目的とするシステムでございますけれども、この目的を達成するためには、単に裁判手続の一部を変えれば済むという問題ではなく、紛争の発生の時点にさかのぼり、そこから権利回復の実現に至るまでに国民の方がたどらなければならなかった道筋を検証し、国民の方々がどうして紛争に巻き込まれたのか、どうすればそれが防げたのか、紛争に巻き込まれた方が初期の段階で身近に法律情報を入手する機関、施設があったのかどうか、紛争が軽微な場合にそれに見合った手軽な解決手段が整備されていたのかどうか、また紛争が重大な場合には当然弁護士に解決を依頼する必要が出てまいりますけれども、弁護士を依頼する過程においてその選択や費用の点で障害はなかったのかどうか、また訴え提起に至った場合に、迅速性に問題があるとすれば何が原因をなし、それを取り除くためにはどういう手段が有効であるか、今申しましたよう権利侵害から権利回復に至るシステム全般にわたり、客観的データに基づいて現状を十分に把握し、具体的問題点を抽出し、それに見合った対応策を講じていく必要があろうかと存じます。  衆議院におきまして、御指摘よう司法制度全般機能あり方について実証的かつ多角的に検討を加える必要があると申し上げましたのは、そういうことを念頭に置いた言葉でございます。  また、一国の司法制度は、申すまでもなく、国民社会生活の基盤をなすものでございまして、その国の歴史、文化、国民性に根差すものでございます。外国の司法制度にも大いに学び、また参考とすべきことは当然でございますが、歴史や伝統の異なる外国の司法制度の一部だけを切り取って直訳的に導入しようとしても、日本社会の中でうまく育ち、機能することはなかなか直ちには難しい場面がございます。日本の土壌で育つかどうか、よく見きわめる必要があるのではないかというふうに考えます。そういう意味も含めたつもりでございます。  国民の方々が本当に役立つようになったと実感し、喜んでいただけるよう司法制度改革実現するためには、地味かもわかりませんけれども、今申しましたような実証的な検討が欠かせないのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  93. 大森礼子

    ○大森礼子君 二十一世紀司法あり方考える、その目的でこの審議会設置されるわけですけれども、繰り返しほかの委員の方もおっしゃっていますけれども、審議会にすべて任せていいわけではない、そして司法改革に着手するのが二年後以降であっていいわけはないわけでありまして、同時に最高裁も考え、また法務省考え審議会議論と同時進行という形で二十一世紀に向かっていくのだろうと私は思います。  今、最高裁の方からお答えいただきましたけれども、繰り返しの質問になるかもしれませんが、今そのような実証的かつ多角的検討を加えて、そして対応策を最高裁の方でも、最高裁独自の立場という意味ですが、積極的に講じていくという姿勢であると受けとめてよろしいのでしょうか。
  94. 浜野惺

    最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 委員指摘のとおりでございます。  裁判所といたしましては、長い過去の歴史の中で、裁判所でできる運用面、あるいは政府法務省に御理解いただいて最終的には国会でお決めいただいた制度面、各種の施策について工夫し、実行してまいりました。そういうことで、審議会設置にかかわらず、これまで適正、迅速な裁判実現ということで充実強化を図ってまいったわけでございます。  一方、ただいま設置法を御審議いただいております司法制度改革審議会でも、幅広い観点から建設的な審議がなされ、一層司法制度全般についての利用しやすい提言というものがなされるだろうというふうに期待しております。  裁判所といたしましては、そういう提言がなされました暁には十分それを尊重させていただいて、さらに最終的には国会の議論を経た上で制度面でも充実強化を図っていただきたいというふうに思いますと同時に、委員がただいま御指摘のとおり、裁判所としていろいろ従前からもやってきましたように、司法制度、特に裁判の手続についての現状分析、あるべき姿をさらに模索して、一層の充実強化を図ってまいりたい、かよう考えております。
  95. 大森礼子

    ○大森礼子君 続けて最高裁の方にお尋ねいたします。  これは前回の参考人質疑の中で参考人の方がおっしゃっていたことですが、時として世間の感覚とずれているような判決が出ることがあるということの中で、これは常に裁判所の判決がすべての方を満たすことはないわけでありまして、いろんなとらえ方があるでしょうが、この参考人がおっしゃっていたことは、純粋培養型という言葉を使っておられましたけれども、裁判官の養成ということについてやはり純粋培養型ではないか、それゆえに世間の常識を十分わきまえているかどうか、こういう懸念を持っておられるという御意見だろうと思います。  それで、世間の感覚とずれている判決を出していますか、こういう質問はできるわけがないのでありまして、ただ、こういう御指摘についてやはり最高裁としても何か考えていくべきことがあるのではないかという気がいたします。  確かに、裁判官、検事もそうかもしれませんけれども、外から見まして、非常に中立的な立場を要求されるものですから、このことが私生活の面においても勢い非常に抑制的な生活と言うと変なんですけれども、余りサラリーマンの方と同じように自由にできないという制約はあるのかなと思います。  その上で、こういう参考人の方の御意見について裁判所としてはどういうふうに認識しておられるか、こういう意見についてはどのように対応していこうとお考えかをお尋ねいたします。
  96. 金築誠志

    最高裁判所長官代理者金築誠志君) 委員指摘ような批判がありますことは私どもも承知しております。  また、ただいま委員からお話がありましたように、裁判官にはそういう行動の面で一定の制約があるということも事実でございます。ただ、裁判というのが社会的な感覚に反するものであってはならない、裁判官がそういうものを養わなきゃいけないし常識を涵養しなきゃいけない、これも大変大事なことだというふうに思っております。こういう常識を涵養するというふうなことは、一定の法律分野の知識を習得するというふうなことと違いましてなかなか難しい面もあるわけでございますけれども、やはり基本は物事を広く見る、社会的な紛争の背後にある実態というものを見通す力を持つということであろうと思います。  裁判官は事件を通じて、事件にはいろいろな社会事象、人間のいろんな活動ぶりというのが出てきているわけでございますので、そういうものをしっかり見ることによってそういう能力を養っていくということが基本ではございますけれども、それだけではやっぱり足りない点もあると思います。仕事を離れて別の観点から物事を見るという機会を持つことも大事だろうと思います。  そういう趣旨から、裁判所の方では、若い判事補を民間企業へ派遣いたしまして、そういう企業の現場で働く人たちがどういう仕事をどういう思いでしているか、どういう問題があるかということを学ばせる。あるいは、報道機関へ派遣しまして、報道記者と同じ視点で物事を見る、裁判をする立場ではなくて、むしろ裁判を報道する立場からの目で見る機会を持つ。あるいは、海外へ留学させて、外国から日本社会のありさま、日本司法あり方というものを考えさせる機会を持つ。そういうふうないろいろな機会を設けて裁判官の視野を広めるよう努力をしているところでございます。  こういった点につきましては、今後とも一層充実してまいりたいと考えております。
  97. 大森礼子

    ○大森礼子君 仕事を離れて物事を見るということはとても大事だと思います。そのためには、ある程度はゆとりを持った仕事の体制でなくてはいけないわけでありまして、こういう純粋培養が世間知らずにならないためには、やはりゆとりある執務体制というものを用意する。そのためには、人的な拡充というのが必要だろうという気もいたします。  それから次に、審議会でも議論していただく、このことは繰り返しになりますが、最高裁、法務省で、そちら任せにしていいというわけではございませんで、同時進行でできるところから改革を手がけていただきたいと思うのです。  これも参考人の方がおっしゃったことからヒントを得た質問なのですが、裁判所にしましても、それから法務省、検察庁も入りますが、やっぱり現場の人が一番問題点を正しく認識しているのではないか。その問題点考える中で、こういうふうにしたら解決できるのではないか、こういうことも考えておられるかもしれません。そこで、何が問題になっていて、どういうふうにしたらいいかということを考えるときに、現場の人間に聞くということが非常に有効な手段であろうと私は思うわけです。  私も検事の経験がありますが、現場で余りそういう意見を聞かれるようなことはなかったかなという気がします。一時期、検察問題研究会ということでみんなが任意で集まりまして、いかにして検察をよくしていくか、こういうことを話したことがあるんですけれども、その後どうなったのか、ちょっと追跡調査しておりません。  そこで、裁判所とか法務省でも、中で一度、どういうふうにしたらよくなるかということについてアンケート調査みたいなものをされたらいかがか。そのときに、もちろん氏名は書かないようにする必要があるかもわかりませんけれども、こういうことも一つのおもしろい方法ではないかと思うのですが、最高裁、それから法務大臣、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  98. 浜野惺

    最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 委員指摘の点は、非常に裁判所としても重要な点だというふうに考えておるわけでございます。  裁判所としては、かねがね申し上げておりますように、司法制度改革審議会設置されました暁には、裁判の実情、手続の内容等、わかりやすい形で実情を十分御理解いただけるような資料、御説明をしてまいりたいと考えておりますが、そういう御協力をする前提におきましても、委員指摘のとおり、裁判の実務に携わっている裁判官その他の職員も含めまして、実務のありようについての意見もさまざまな形で私どもの方に吸収して、それを審議会審議の過程で十分御理解いただけるような方法で御説明、御協力できるようにしたいというふうに思っておりますので、その点につきましてはいろいろな工夫をこれから重ねてまいりたいと考えております。
  99. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 委員指摘ように、実務に携わっている者の意見を酌み取ることは大変重要だと考えております。  法務省におきましても、従来から各種会議等を通じまして、現場の検察官の意見、要望等を聴取し、これを施策に反映させることに努力してきたわけでございますけれども、ただいま委員指摘のアンケートの実施も含めまして、現場の声を吸収する適切な方策についてさらに検討してまいりたいと思います。
  100. 大森礼子

    ○大森礼子君 それでは最後に、当たり前の質問をさせていただきます。時間の関係で法務大臣のみにお尋ねいたします。  審議会の意見の尊重につきましては、法務省としてはこれを尊重して政府施策に最大限反映させていくものと信じております。都合の悪いものは無視とかあるいは先送りするなどあってはならないと思うのですが、この審議会の意見をどのように反映していくかについて、大臣の御決意といいますか、これを最後にお聞かせいただきたいと思います。
  101. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 司法制度改革審議会の意見を十分尊重し、政府施策に最大限反映させていく必要があると考えております。審議会の意見をいただいた後には、速やかに具体的な施策を策定してまいりたいと考えております。
  102. 大森礼子

    ○大森礼子君 終わります。
  103. 橋本敦

    ○橋本敦君 きょうは、総理がお越しになったときにも我が国の犯罪被害者救済制度の確立が重要な課題であるということを申し上げまして、特にサリン事件を中心にお話をいたしました。引き続き私はこの問題を質問したいと思うんですが、警察庁にわざわざお越しをいただきまして、その点から伺いたいと思います。  言うまでもありませんが、あの地下鉄サリン事件は、無差別テロの凶悪なまれに見る事件でございまして、十五人の痛ましい死者が出る、そして五千五百人を超す被害者が出るという大変な事件でございました。こういった最大規模の凶悪犯罪で今も多くの方が苦しんでおられます。  私は、当法務委員会においても、犯罪被害者の実態について、警察庁も厚生省もあるいは労働省も、政府として総合的な実態調査をする必要があるということを指摘したのでありますが、警察庁はこの調査に取り組んでいただきまして、公的調査としては初めて本年の一月に「地下鉄サリン事件被害者の被害実態に関する報告書」をおつくりいただきました。  この調査を拝見いたしましても、現在の実情がよくわかるわけであります。例えば五千人余りの被害者の中で、調査に回答した方は二千二百人を超えるわけですが、事件後三年を経過した今日の時点で、五七%もの人が精神的影響が残っている、あるいは極度の精神的ストレスを原因とするいわゆるPTSD、心的外傷後ストレス障害ですが、これに見られる症状を訴えておられる。また、身体的症状の訴えも、疲れが多い、あるいはまた肩が凝る、あるいはまた思いがけない疲労感に襲われる、こういったことも五四%に達している状況であります。通院期間を見ますと、二五%の方が事件後一年以上通院しているという実態があり、現在も通院を余儀なくされている方も一七%に上っています。  大体、この調査から以上のような事実が見られるのですが、間違いございませんでしょうか。
  104. 野田健

    政府委員(野田健君) 今、委員お尋ねの報告書と申しますのは、地下鉄サリン事件が発生した後三年がたった時点の調査であります。警察庁の犯罪被害者対策室と科学警察研究所が共同いたしまして、昨年の五月から実施してことしの一月に取りまとめたもので、今御発言のありましたものは、その内容でそのとおりでございます。
  105. 橋本敦

    ○橋本敦君 こういう被害者の実態一つは出てきたんですが、今の警察庁の調査で国への要望等も調査をしていただいております。この国への要望等について拝見をいたしますと、いろいろ要望が出ておるんです。報告書の三十一ページに記載されておりますが、大体どういう要望が主な要望であったか、御説明いただけますか。
  106. 野田健

    政府委員(野田健君) このアンケートの中で国への要望というのをお尋ねいたしました。質問項目の中でお答えが多かったものというのは再発防止への努力というようなことでございますけれども、ほかに、「労災を打ち切らないでほしい」であるとか、「被害者がおかれている現状を国が正確に把握してほしい」、「精神的な立ち直りの援助の方法について考えてほしい」等々がございました。
  107. 橋本敦

    ○橋本敦君 今の要望を整理なさってくださった項目が書かれているんですが、一つは、「被害者がおかれている現状を国が正確に把握してほしい」、これはもっともな要望ですが、こういう要望が基本的にあります。それからもう一つは、「サリンの後遺症の治療法を確立してほしい」、これは、サリンという今まで使われたことのない凶悪な毒物による犯罪の障害でありますから、その治療法の確立をしてほしい、もっともな意見。それからまた、サリンの影響は長期に及びますから、長期的な視点で調べてほしいという要望もあります。そして、もう一つは、サリンの後遺症の治療をするのに専門的な医療施設がなかなかないということが大変な苦しみの一つになっておりまして、そういう病院をつくってほしいということもございました。  こうしたことを含めて、「国に財政的援助をしてほしい」ということが今御説明いただいた調査の三十一ページに出ておるわけですが、こうした要望については、私は、国としては積極的に対応していってあげるという姿勢で臨むことが大事ではないかと思うのですが、法務大臣はどういう御所見でしょうか。
  108. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 委員指摘の点につきましては、法務省といたしましても重要な課題であると考えております。本年四月から犯罪被害者通知制度を全国的に導入するなど、これまでも必要な施策を講じてきたところであります。また、本年三月、事務当局に対しまして犯罪被害者の保護等に関する法整備に向けての検討も指示し、調査、検討を進めているところでもございます。  司法制度改革に関しましては、各界からそれぞれの立場に立った各種提言がされておるところでございますので、審議会におきましてもこうした各種提言、国会における審議経過等を踏まえて具体的な審議をしていただけるもの、適切な審議を行っていただけるものと、このよう考えております。
  109. 橋本敦

    ○橋本敦君 今、私が指摘した要望の中で、厚生省に関するものはかなりあるわけでございます。きょうは厚生省にもお越しいただいたんですが、外科、眼科、精神科と、一つの科にとどまらない総合的身体障害、被害が出るんです。何度も診察してもらったけれども今でも原因不明の激痛に悩まされているという声があります。あるいはまた、精神的な痛みが残っているいわゆるフラッシュバックという現象に苦しんでいるということがありますが、とりわけ女性については、将来子供を産んだときに悪い影響が出るかどうかということが痛切な心配だということも言われているわけです。  こういったことに対して、厚生省としては調査及び対応を具体的にどのようにおとりいただいたのか、またいただけるのか。その点はいかがでしょうか。
  110. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) お答えをいたします。  サリンの被害者の方につきましては心的外傷後ストレス障害、今委員の方からPTSDというような御指摘がございましたが、多くの方が現在その症状を訴えているということは承知をしているわけでございます。  サリンの被害につきましては、大きく分けまして、急性期に対する対応、それからこのPTSD、さらに長期的なサリンの影響というものについて対応していく必要があると考えているところでございます。  そこで、長期的な対応につきましては、ほとんど我が国におきまして治験がないというのが実態でございまして、厚生省といたしましては、平成九年度から、東京大学の前川教授を班長といたしまして、地下鉄サリン事件被災者の慢性期における身体的、精神医学的影響に関する患者対照研究という調査研究班をつくりまして、現在まだ研究中でございます。  これは、人数は比較的少ないわけでございますが、例えば警視庁で従事された方、消防庁で従事された方と性、年齢が対照になるような対照群をつくりまして、長期的にサリンの被災者とそうでなかった人の間に影響に有意差が出てくるかどうかという、そのような観察を続けておりまして、現在のところ平成十二年度まで計画的にこのような研究を進めていくということで考えております。  したがいまして、中間的な報告は出ているわけでございますが、現時点におきましては長期的な影響についてまだはっきりしたことは申し上げられないというのが実態でございます。  それから、PTSDに対しますいろいろな対応でございますが、これは阪神・淡路大震災のときも非常に問題になったわけでございます。厚生省といたしましては、精神医療それから精神保健福祉事業に従事する医師及び保健婦などに対しまして診断、治療及び相談指導に関する研修会を実施しておりまして、そういうことに従事する人の資質の向上に努めているところが現状でございます。  さらに、現実の医療の問題といたしましては、東京大学の前川教授の研究班や虎の門病院などと連携をとりまして具体的な方策をいろいろ相談していただいておりますが、何分はっきりとした長期的な影響というものがなかなかつかめないものですから、現在のところはっきりとした医学的な対症方針というのはまだ研究中であるというふうに申し上げざるを得ないと思います。
  111. 橋本敦

    ○橋本敦君 今お話しのように、まだまだこれからの課題がいっぱいあるわけです。  そこで、厚生省としては各部局ごとに任せないで、例えばサリン事件に対応して生活上の助成が要るとなれば福祉局になりますし、それから医療担当ということでは保健関係ということになりますから、サリン対応の総合的な省内の連絡協議会をぜひつくって、長期にわたる検討を続けて積極的に対応してほしいと思うんですが、いかがですか。
  112. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 保険局、社会・援護局、関係局と十分省内で連絡体制をとりまして、そのような対応をさせていただきたいと思います。
  113. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、時間がないので、その点は今後の検討課題として進めていただく、積極的な努力をお願いして、次に移ります。  刑事局長も来ていただいておるんですが、現在の我が国の犯罪被害者に対する救済の制度は極めて不十分ではないか。死者に対する、あるいはまた重度心身障害者に対するものしかない、こう言われているんです。諸外国ではこの点どうなっているか、おわかりの範囲で簡単にお話しいただけますか。
  114. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 御指摘のとおり、現行法上、我が国では犯罪の被害者というのは、民事手続によりましてその被害回復を受けるとか、あるいは犯罪被害者等給付金支給法によりまして一定の場合には国から給付金を受けることができるというようなことになっておりますが、実際には財産が散逸したり、あるいは被害者による証拠資料の収集の困難ということなどから、迅速的確な被害の回復には種々の問題がある、こういうことは否めないところでございます。  先生御指摘ように、諸外国では国によっていろいろな制度があるようでございますが、こういった被害者に着目した被害回復制度というものについてはいろいろな手だてが講じられているという実情がございます。  例えば、刑事手続への被害者の参加制度というものがとられている国もございます。これは刑事手続に被害者側がいわば同時並行的に参加しまして、民事的な損害賠償についての早期の実現を図る、あるいは早期にその被害を回復させるということでございます。  あるいはもう一つ申し上げておきますと、被害者側にとっての財産的な損害の回復でございますが、事件経過後、例えば被疑者あるいはその関係周辺から財産が散逸したりしまして、なかなか実際に民事訴訟を起こしましてもその損害の回復には困難を伴う場合があります。そうしたことに備えまして、民事的な仮処分あるいは保全の制度というものを刑事の場合でも導入できないかということ等も、既に一部の国でそういったことを実施し、あるいは検討しているということもございます。これも我が国制度にとりまして非常に重要な課題だろうと思います。  それからもう一つは、そういう財産的な問題のほかに、被害者の精神的なケアをどうするかという問題がございます。これは、例えば被害に遭った犯罪の捜査がどういう状況になっているか、公判がどういう状況になっているかということの情報をこれまで以上に被害者に開示する手だてがやはり必要だということも検討課題でございますし、また被害者の感情等、あるいはこういうことを言いたいということがありましたら、その捜査過程あるいは公判の過程で的確にそれが反映されるようにというよう制度考えるべき問題であろうと思っております。そうしたことについて、既に実現されている諸国もございます。  刑事局といたしましても、そうした諸国のいろんな制度参考にいたしまして、我が国でもどんな制度を取り入れるのかを真剣に検討している最中でございます。
  115. 橋本敦

    ○橋本敦君 最後の質問になります。午前中にも申し上げたんですが、国際的にも、国連で一九八五年に犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第七回国際連合会議で、我が国もこれを採択して賛成しているわけでありますが、そういった中にも今刑事局長が御指摘されたような点が、被害者側の基本的な救済の観点として、被害者は個人として尊重されることが大事であること、加害者の刑事手続にも関与して情報を知る権利があること、あるいは被害回復を求める権利が特に重視されること、その被害回復には、おっしゃったように物質的、精神的、心理的、そういった問題についての社会的支援を受ける権利、こういったことがいろいろと明確に言われておりまして、こうしたことは我が国日本憲法の要請にも沿うところだと思うんです。  今後、犯罪被害者の救済制度について、大臣おっしゃったように、こういったことを総合的に審議会においても積極的に議論して、よい制度に発展させていただくように最後にお願いして、大臣に一言重ねて御意見を伺って終わります。
  116. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま御指摘の件、大変重要なことだと認識しております。
  117. 橋本敦

    ○橋本敦君 終わります。
  118. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  この委員会を通じて委員の構成、事務局の構成をどうするのかという質問が大変出たと思います。衆議院の附帯決議でも、「政府は、審議会委員選任に当たって、司法制度の実情を把握すると同時に国民各層からの声が十分に反映されるように努めること。」、「審議会の事務局の構成及び運営については、審議会審議を公正に補佐することができるよう民間人の登用も含め配慮・指導すること。」とあります。恐らく参議院でも附帯決議が出ると思いますが、この委員会での審議を通して、委員の構成、事務局の構成などについて、例えばもっとこういう民間人を登用するとか、内閣から役人をかき集めはしないとか、何かお約束していただけることがあればよろしくお願いします。
  119. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 委員の構成は、二十一世紀司法あり方を御審議いただく委員会でございますので、どのような方に委員になっていただくかということは非常に重要な問題だろうと思っております。そういう意味で、まさに二十一世紀司法が果たす役割を明らかにして、その必要な基本的施策について調査審議するということをしていただけるような、それにふさわしい有識者の方を国民各層から選ぶということに尽きるわけでございますが、どのような方という点につきましては、内閣において国民、利用する側の立場を代表するような方あるいは司法の実情に詳しい方、こういう方々の中から適切と思われる方を選任いたしまして、それぞれ両議院に同意を求めさせていただくということになろうかと思っております。  また、事務局につきましては、そのような重要な任務を負っております審議会審議を円滑に進めていくためにこれを補佐するという役割を担っているわけでございますので、そのよう役割を果たすのにふさわしい知識と能力を有する人を広く事務局に登用するということを考えていくことになろうかと思います。  また、御指摘のありましたそういう知識を持っている民間の方の登用という点についても、これは当然検討をしていくことになろうかと思っています。
  120. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ありがとうございます。  特に民間のNGOからたくさんの登用をぜひぜひよろしくお願いいたします。  午前中、千葉委員質問されましたし、私もいつも食い下がって質問しているんですが、今回、国連の規約人権委員会で勧告されている司法課題審議会検討されるよう法務省努力する御意思はおありでしょうか。
  121. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 御指摘の国連の規約人権委員会我が国の刑事司法あり方について種々の提言あるいは勧告をされているということは私どもも承知しております。  このような規約人権委員会の勧告も含めまして、我が国司法制度、特に刑事司法制度についていろいろな御提言がございます。これは当然この司法制度改革審議会において我が国司法あり方議論する際にそのような資料として用いられるということが考えられるわけでございます。常識的に考えれば、このような各種提言につきましては、事務局において取りまとめをして審議の資料として委員の方々に見ていただくということになるのではないかと思っております。その点はそういう充実した審議のための事務局に有能な人材を集めて適切な方策をとっていただくということになると思っております。
  122. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 資料としてつけてくださるということは大変ありがたいんですが、資料としてではなく、課題として検討する余地はあるのでしょうか。
  123. 房村精一

    政府委員(房村精一君) これは我が国司法全体をテーマとしてこの審議会で御議論願うということでございます。その審議のための基本的なあり方は、何度も申し上げておりますが、国民にとって身近で利用しやすい司法制度、その司法制度をしっかりしたものにすることによって国民基本的人権を守り法の支配を貫徹する、こういう基本的な審議観点であろうかと思っております。  それを実現するために具体的にどのよう審議項目を取り上げるかということは、何回も申し上げておりますが、その審議に当たられる審議会において決めていただくのが適切であろう。その決めるための審議の材料として、今申し上げたような各種の提言あるいは勧告というようなものは当然資料として用いられることになるだろうということでございます。
  124. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ただ、身近で利用しやすいというふうに問題を立ててしまいますと、規約人権委員会から勧告されている司法課題はちょっとワンクッションあるのかなという感じもするんですね。ですから、二十一世紀のあるべき司法の中には、基本的人権の尊重ももちろんあるわけですし、本来の司法ということであれば、規約人権委員会で勧告されている司法課題は本来の司法課題だとも言えると思います。ぜひ重要な課題として取り上げてください。それはお約束はできないですか。あるいは、重要視します、前向きに検討しますでも結構です。
  125. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 今、司法制度議論するスタンスとして身近で利用しやすいということを冒頭申し上げましたけれども、当然のことながら、基本的人権擁護あるいは法の支配という司法に期待されている最も重要な役割をいかに適切に果たしていくかという観点から、その一環として身近で利用しやすい司法制度の構築ということも出てくるわけでございますので、特定の題目について選別するためにこういうことを申し上げたわけではございませんので、審議会においてもそれを踏まえて当然適切に判断していただけると考えております。
  126. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ありがとうございます。  法の支配や基本的人権の尊重ということも考え審議会をやっていただくとお聞きいたしました。  次に、午前中、総理大臣にも聞き、今までも聞いたんですが、衆議院の附帯決議の第一項目めは司法権の独立です。やはり司法権の独立を侵害しないということが極めて重要だと思いますが、正直言いまして、総理の答弁だと何だかぼんやりしていましたので、再度、審議会でこの附帯決議の一項をどう生かすかについてちょっと具体的に話してください。
  127. 房村精一

    政府委員(房村精一君) まず、基本的にこの審議会議論いたしますのは、司法制度充実するための基本的施策が中心でございます。具体的な裁判権の行使のあり方とかあるいは裁判所が行使しております司法行政権の行使のあり方の適否を直接議論する場ではございませんので、そういう審議のテーマからいきましても、司法権の独立を侵害する、あるいは司法に対する行政の干渉になるおそれは少ないものと考えております。  それから、第二点といたしましては、このような国会での懸念、そういうものは当然審議会審議に当たられる委員の方々にも議事録等を通じて御理解していただけると思っておりますし、私どもとしても、そういう審議会の運営が司法に対する干渉には当たらないように十分心していく。また、当然このような重要な審議会委員になられる方々であればそれは御理解されているものというぐあいに考えております。
  128. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 裁判官の市民的自由についてもこの委員会でテーマになったと思います。宮本参考人の方から、「日独裁判官物語」の話、キャリア裁判官のシステムの問題などの指摘もありました。たまたま、あした弁護士会で「日独裁判官物語」の上映会もありますけれども、裁判所はもっと変わってほしいという声は国民の間に非常に強いと思います。その点について、審議会でどんなことをテーマとして取り上げたらいいというふうに裁判所はお考えでしょうか。
  129. 金築誠志

    最高裁判所長官代理者金築誠志君) 法務省の方からお答えがありましたように、審議会で取り上げるべき事項はその審議会でお決めになるということになっておりますので、私どもの方でこうすべきだということを申し上げる立場ではないと思いますが、今までいろいろな議論が出ておりまして、裁判官の任用制度あり方なども一つの論議の重要なテーマになるのではないかというふうなこともいろいろ言われておりますので、今委員指摘ような点についても議論がなされるんじゃないだろうか、そういうふうには思っております。
  130. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 衆議院の附帯決議に、国民司法参加というテーマがあります。この委員会でも国民司法参加のことは非常に具体的な提案もありましたけれども、国民司法参加についてはどのようにお考えでしょうか。
  131. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 司法制度というものは、もちろん裁判所等を中心とする直接その運用に携わる者が努力をしなければならないことは当然でございますが、同時に、国民に支えられて初めてその機能を十分に発揮することができるということも間違いのないところでございます。そういう意味で、国民の方々に司法に対する十分な関心を持っていただくということは非常に意味のあることだろうと思っております。ただ、具体的にどのような形で国民司法に参加するのがいいかということについてはいろいろ御議論があろうかと思います。  我が国においても、現に検察審査会あるいは司法委員あるいは調停委員、いろいろな形で国民の方々に司法の過程に参加していただいております。これをさらに進めた、例えば陪審であるとか参審であるとかということがいいかどうかというのは、この審議会で十分御議論いただければと考えております。
  132. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 小田中参考人は、基本的人権擁護と公平な裁判実現という本来の司法の任務がやはり大事にされるべきだとおっしゃって、私は本当にそのとおりだと思ったのですが、公平な裁判実現という小田中参考人の意見などについて、審議会でこういうことは議論になり得るのか。公平な裁判実現ということを考えた場合に、どのようなことがテーマになり得るでしょうか。
  133. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 裁判というのは、まさに裁判の生命は公平さにあるわけでございます。ですから、これをいかにして実現するかということのために多分裁判に当たられている裁判官の方々は日夜努力をされているのだろうと思います。そういう公平な裁判実現するためにどういうような仕組みが望ましいかということは、これはこの審議会でもいろいろ議論はされるのではないかとは思いますが、具体的にどういう項目がというのを私どもこの場で直ちにはお答えできないものですから、この程度でお許しをいただきたいと思います。
  134. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 抽象的な質問をしてごめんなさい。  この審議会経済における規制緩和という流れの中でのみ議論されるのではなく、ぜひ基本的人権の尊重あるいは刑事司法改革議論もきちっと、短い時間ですけれども、二年間の間にされることを要望して、私の質問を終わります。     ─────────────
  135. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、有馬朗人君が委員辞任され、その補欠として阿南一成君が選任されました。     ─────────────
  136. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 法律の文言の表現や言葉遣いについてお尋ねします。  実はこれはさきの参考人質疑参考人先生方に感想を聞いたんですが、この方々が法律専門家であったため、よく意味がわからないというか、私が期待した答えがなかったんです。つまり、そのこと自体が問題なんです。  一般的に言って、今の法律を読んだとしますと、これは大変に古い言葉遣いですね。こんな言葉を二十一世紀に持ち越してずっとほうっておくのかどうかということは大きな問題だと思うんです。言葉自体が旧式であるというばかりではなくて、実は文体、センテンスが場合によっては非常に長くなっていく。その中にはそれぞれ違ったテーマのことがたくさん入っていて、無理やりつないでいるような文体になっていまして、結局全体の論理の整合性がわかりにくいというのが現在の状態なんです。  それを勉強した人たちは大体わかるのでしょうけれども、文章を書く我々のようなクラスの人間ですら三度、四度読んでもわからないということが一般的に多いわけです。これではまずいのじゃないか。そしてまた、解釈の仕方が非常にあいまいになって、どうとってもとれるような状態になるということは、余りにも法律の解釈の効率としてもよくないのじゃないか。もう少し文体を短くつないでいくというのが今のよい文章と言われているわけです。ですから、今の法律文というのは非常に悪い文章として指導されてしまうということが文章書きの中での鉄則になっているわけです。  しかも、国民司法になじむということは非常に重大だと言うにもかかわらず、入り口である法律そのものが最初から難しければ、やっぱり入り口を閉ざしてしまうということになっていると思うんです。  法務大臣はこの点についてどういう個人的なお考えを持っているか。そしてまた担当の方に、この問題が今度の審議会検討材料になっていくかどうかということをお尋ねします。
  137. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 専門家の先生の御指摘、まことにそのとおりだと思って拝聴いたしました。  私もかつて、砂防法というのがございますが、これは明治三十年に制定された大変古い法律でございまして、これがまさに片仮名言葉で書いてございます。これを改正するにも大変長い年月がかかっているわけでございますが、法律に関する文章をできるだけ簡潔で国民にも理解されやすいものにするということは非常に重要なことだと考えております。  法務省におきましても、これまで法令の平易化等のための努力、工夫を重ねてきたところでございますが、御指摘の点についてはさらに努力を重ねなければならないと思っておるところでございます。
  138. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 法律の用語がわかりにくいというのは本当に委員指摘のとおりだろうと思います。特に、法務省が所管しております法律の民法、商法は、いずれも片仮名、文語文、濁音もない、句読点もないという非常にわかりにくい条文でございます。  私どもとしても、国民法律を理解していただくためにはこのような用語を改めてわかりやすい条文にすることが重要だということは十分認識をしておりまして、平成七年には刑法を、やはり片仮名、文語文でありましたものを現代用語化いたしました。民・商法についてもそれぞれ法務省内部では研究を重ねているところですが、なかなかほかのいろいろな諸課題が多いものですから一気に行かないという状況にございます。そういう意味で、このよう法律を平易なものにすることは重要な課題であるということは法務省としては十分認識しているところでございます。  ただ、この審議会で取り上げていただけるかどうかということになりますと、これは先ほど来何回も申し上げておりますが、こういうような国会の審議経過とか各種提言を踏まえてこの審議会審議項目を具体的に決めていただくということになろうかとは思っております。
  139. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 審議会は割と専門家ばかり集まってしまいますから、意外とそういうことに気がつかないと思いますので、やはり国民参加という視点から、法務省としてもこういう話が出ているんだということはぜひ皆さんにお伝えいただきたいんです。  もう一つ明治以来の死に法というものがたくさんあるわけなんです。びっくりするよう法律を見たこともあります。それがどんどん積み残されている。数人の弁護士の友達に法律というのは数でいったら大体幾らあるんだと言うと、だれも答えられないんですね、何万とか、五万かな、六万かなとか。そういう状況法律というのはほとんど意味がないんじゃないかなと私は思うんです。それで、これを整理する意思あるいはプログラムというものをお持ちでしょうか。
  140. 房村精一

    政府委員(房村精一君) ただいま委員から御指摘のありました死に法といいますか、実質的にもうほとんど効力を失ったと思われるよう法律という趣旨だと思いますが、これは最終的にはそれぞれ各法令を所管しております省庁が判断をされ、それが不要というときに廃止の手続をとるかどうかということもその省庁の判断になっているわけでございます。  ただ、法務省では法令の収集及び整備等の事務を所掌している関係上、法令集の編さん等も行っております。それに登載するかどうかという観点から、形式上存続しております法律につきまして、現在もなお有効な法律として適用可能性があるのか、あるいは実質的に実効性を失ってもう適用される可能性はほとんどないのかというよう判断をして、実質的に効力を失っていると思われるようなものについては法令集に登載することをやめるというようなことを行っております。法務省の方では今そういう形で法律を扱っておりまして、現行法令集には法律にいたしまして大体千七百件程度を登載しております。実効性を喪失していると考えておりますのは大体二百件程度ございます。  このよう法律につきまして整理するかどうかということですが、先ほど申し上げたようにこれはそれぞれ各省庁の御判断になりますので、法務省としてどうかということはなかなか申し上げにくいわけです。ただ、それぞれの法律について、これが完全に適用される可能性がなくなったのかというようなことを一つ一つ判断していくことになりますと、これもなかなか難しい問題もあるわけでございます。そういうことから、法務省として、このよう法律についてどう考えているかということを各省庁に情報提供するというようなことはしてまいりたいと考えておりますが、具体的に最終的にどうされるかは各所管省庁において御判断いただければと考えております。
  141. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 当たりさわりない法律は生きてしまうみたいなところもあります。それが必ずしも時代には必要がない、間違っているということではなくても、そういう場合もあると思うんです。  一部には、すべての法律をそれぞれの時代の有効性を考慮して長短バリエーションのある時限立法とすべきではないかと。そうすれば意味のない法律が自動的に消えていくわけです。そういう点に関してはどういうお考えを持っているんでしょうか。
  142. 房村精一

    政府委員(房村精一君) 確かに、既に用済みになった法律が形式的に残っているということを防ぐためには、時限立法を活用するというのは御指摘のとおりそれなりに意味があることだと思っております。現に、現在御審議をお願いしておりますこの審議会設置法につきましても、審議期間との関係で二年の時限立法ということでお願いをしているわけでございます。  ただ、例えば法務省で所管しております民法、商法あるいは刑法というようなものについて、国民生活の基本を規律するこれらの法律が果たして時限になじむかということになりますと、これはなかなか時限立法としては難しいだろうと思います。またそれから、法律の性質上、ある程度の期間がたつとその有効性がなくなるだろうということはわかっても、一体それがどの程度の期間なのか。二、三年でなくなるのか、十年かかるのか二十年かかるのか。これは立法をするときにそこを判断するのはなかなか難しい問題もあろうかと思います。  そういうことで、それぞれの法律をつくるその時点で、時限にできる性質のものについてはでき得る限り時限にする、その判断が難しいものについては、その後適宜適切にそういう法律については見直しをしていくというようなことが現実的な方策ではないかというぐあいに考えています。
  143. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 残りの質問はこれまでの質疑と重複しますので、質問を終わります。
  144. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  145. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は反対です。  司法制度改革審議会設置法案は、内閣設置され、かつ具体的な審議方向性が不明であり、審議会を組織する内閣審議事項と審議方向を白紙委任するに等しいものです。  この間の司法制度改革論議が経済活動における規制緩和の一環として論議されてきたことや、今後、司法制度改革に名をかりた治安強化が進められる危険性もあります。基本的人権の尊重、公平な裁判実現などの論点が欠落していくのではないかという危惧もあります。  よって、反対いたします。
  146. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  司法制度改革審議会設置法案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  147. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、円より子君から発言を求められておりますので、これを許します。円より子君。
  148. 円より子

    ○円より子君 私は、ただいま可決されました司法制度改革審議会設置法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合及び自由党の各派並びに各派に属しない議員中村敦夫君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     司法制度改革審議会設置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に伴い、次の諸点について格段の努力をすべきである。  一 審議会設置及び調査審議に当たっては、司法権の独立に十分に配慮すること。  二 国民がより利用しやすい司法制度実現国民司法制度への関与、法曹一元、法曹の質及び量の拡充等の基本的施策調査審議するに当たっては、基本的人権の保障、法の支配という憲法の理念実現に留意すること。特に、利用者である国民の視点に立って、多角的視点から司法の現状を調査・分析し、今後の方策を検討すること。  三 審議会委員については、広く国民各層の意見が十分に反映されるよう選任すること。  四 事務局の構成及び運営については、審議会設置目的が十分達成されるよう配慮すること。  五 審議会は、その調査審議状況に関し、情報公開等透明性の確保に努めることとし、法務委員会は、必要に応じ、同審議会事務局を介して、同審議会の議事録並びに審議状況について報告を求めることができるものとすること。  六 審議会調査審議と並行して、司法予算の拡充に努め、裁判官、検察官及びその他の関係職員の増加等司法関係機関の人的・物的充実を図るとともに、既に一定の方向が示されている法律扶助の法制定を含む諸制度充実を図ること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  149. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいま円君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  150. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 全会一致と認めます。よって、円君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、陣内法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣
  151. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、政府といたしましてもその趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりますことをお約束申し上げます。
  152. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十二分散会