運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-03-15 第145回国会 参議院 文教・科学委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十五日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員の異動  三月十日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     今井  澄君      扇  千景君     平野 貞夫君  三月十一日     辞任         補欠選任      今井  澄君     本岡 昭次君      平野 貞夫君     扇  千景君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         南野知惠子君     理 事                 狩野  安君                 馳   浩君                 江本 孟紀君                 松 あきら君                日下部禧代子君     委 員                 阿南 一成君                 亀井 郁夫君                 北岡 秀二君                 世耕 弘成君                 仲道 俊哉君                 橋本 聖子君                 石田 美栄君                 佐藤 泰介君                 本岡 昭次君                 山下 栄一君                 畑野 君枝君                 林  紀子君                 扇  千景君                 田名部匡省君    国務大臣        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君    政府委員        内閣官房長官  上杉 光弘君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        科学技術庁科学        技術振興局長   田中 徳夫君        科学技術庁原子        力局長      青江  茂君        科学技術庁原子        力安全局長    間宮  馨君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省学術国際        局長       工藤 智規君        文部省体育局長  遠藤 昭雄君        文化庁次長    近藤 信司君    事務局側        常任委員会専門        員        巻端 俊兒君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付)、平成十一年度特別会計予算内閣提出  、衆議院送付)、平成十一年度政府関係機関予  算(内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管日本学術会議科学技術庁)及  び文部省所管)     ─────────────
  2. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ただいまから文教・科学委員会を開会いたします。  去る十日、予算委員会から、三月十二日から十六日正午までの間、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち日本学術会議科学技術庁び文部省所管について審査の委嘱がありました。  この際、平成十一年度一般会計予算外二案中、総理府所管のうち日本学術会議議題とし、上杉内閣官房長官から日本学術会議関係予算説明を聴取いたします。上杉内閣官房長官
  3. 上杉光弘

    政府委員上杉光弘君) 平成十一年度日本学術会議歳出予算要求額概要について御説明申し上げます。  日本学術会議は、我が国科学者の内外に対する代表機関として、科学向上発達を図り、行政、産業及び国民生活科学を反映浸透させることを目的とし、内閣総理大臣の所轄のもとに、総理府の特別の機関として設置されており、科学に関する重要事項審議科学に関する研究連絡を図ること等を職務としております。  平成十一年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、日本学術会議歳出予算要求額は十三億二千六百万円であり、これを前年度の当初予算額十三億六百万円と比較いたしますと、二千万円の増額となっております。  次に、その内訳について御説明申し上げます。  第一に、科学に関する重要事項審議等を行う総会、部会等のほか、百八十の各専門分野研究連絡委員会審議関係経費として三億三百万円を計上しております。  第二に、国際学術団体への加入分担金代表派遣及び学術関係国際会議開催等国際学術交流関係経費として三億四千百万円を計上しております。  第三に、平成十二年七月に任命予定の第十八期日本学術会議会員に係る会員推薦関係費として二千五百万円を計上しております。  第四に、事務局職員人件費等日本学術会議一般行政経費として六億五千七百万円を計上しております。  以上が平成十一年度日本学術会議歳出予算要求額についての概要であります。  よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。
  4. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 以上で日本学術会議関係予算説明の聴取は終わりました。     ─────────────
  5. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 平成十一年度一般会計予算外二案中、総理府所管のうち日本学術会議科学技術庁び文部省所管議題といたします。  予算説明につきましては既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 自由民主党の世耕弘成でございます。  私のような若造が人生の大先輩であります有馬大臣を前に語るのは少し気恥ずかしいところもございますけれども、今回、平成十一年度の予算について考えるに当たりまして、私、自分なりに最近の日本が抱えている諸問題というものをいろいろ突き詰めて考えてみました。  そうしますと、私が行き当たった一つの結論というのは、今、日本が抱えている諸問題の根源には器と中身の問題というのがあるんじゃないかというふうに考えています。どうも日本人というのは、ある時期から器、外見を整えることばかりに執着をして、中身充実させることをおろそかにしてきてしまっているんではないか、そういう現象日本の社会のあらゆる局面に深く入り込んでしまっているんではないかというふうに考えています。  例えば、ブランド物の洋服などで外見を整えるだけで、人間としての中身を忘れていたり、あるいは、テストの点数ばかりが優先されて、他人への思いやりですとか日本の古きよき文化を学ぶことを忘れたような教育ですとか、あるいは、立派な箱物は建設するけれどもその活用については十分な検討が行われていないようなことがあったり、あるいは、立派な補助や助成制度はつくるんだけれどもその活用については十分なフォローが行われていないなど、例を挙げれば枚挙はありませんけれども、私、今日本が直面する閉塞感を打開していくためには、中身充実ということについてしっかりと考えていかなきゃいけないんではないかというふうに考えています。  お断りしておきますけれども、私は器をつくらなくてよいというのを決して申しているわけではありません。当然器をつくることも重要ですけれども、あわせて中身充実もきちっとしていくべきではないかということを申し上げたいんです。文部大臣所信表明の中にございました「心の教育」という言葉は、私としては、教育文化活動の面から見た人間中身充実ということにつながっていくんではないかというふうに考えております。  さて、具体的な質疑に移らせていただきますけれども、今後、子供たちにゆとりある教育を提供していくという形の大臣所信表明がありました。そして、大臣が表明されたような美しいものや自然に感動する心を持った人間として成長させていくということを実現していくには、そういう美しいものや自然というものに触れる機会をふやしてあげることがやはり一番のことだと思います。  私、そこで非常に重要になってくるのは、美術館博物館の機能ということが重要だと思うんです。特に、これから学校完全週五日制になってくるということをにらんだ場合、充実した美術館博物館が身近にあるということの意味が非常に重くなってくるんではないかと考えています。  そこで文部大臣にお伺いしたいんですけれども、今回の予算の中で、国立科学博物館等整備に百三十四億円、国立美術館博物館等計画的整備に二十六億円、さらに美術館博物館活動充実に五十四億円というものがそれぞれ計上されておりますけれども、具体的にどういう哲学でどういうことを実施されようとしているのか。まさか箱物だけを充実させて中身を忘れておられるというようなことはないんでしょうねということをお伺いしたいと思います。
  7. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 大変重要な点を御指摘くださいまして、ありがとうございました。  決して箱物だけをやろうというわけでございません。現在、国立美術館博物館等美術品の買い上げに係る予算充実に努めているところでございます。また、国立美術館博物館において美術品を収集し国民の観覧に供するとともに、調査研究を実施するということも努力しているところでございます。
  8. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 もう一つお伺いしたいのは新国立劇場なんです。これも今回、運営費ということで五十三億円が計上されています。あの初台にある東京オペラシティの中にあるやつですけれども、非常に立派な建物で、鳴り物入りでオープンをしたわけですけれども、実は私、前に勤めておりました会社の本社がすぐ隣にあるんですけれども、どうも人の集まりが余りよくなくて、新しい文化の中心、発信地になっているというふうには思えないんです。現在の公演状況、あるいは入場者数状況、あるいはそれをほかの類似の文化施設と比べた場合にどういう状況にあるのか、そしてそれを平成十一年度どれぐらいに持っていかれるおつもりでいらっしゃるのか、そしてそれに向けて今回の五十三億円はどういう形でお使いになるプランなのかについてちょっと教えていただけますでしょうか。
  9. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 御案内のとおり、新国立劇場は、オペラでありますとかバレエでありますとか、我が国現代舞台芸術の一層の振興普及を図るために、平成九年十月に開場したわけでございます。  平成十年度の劇場公演入場率等でございますが、まだ三月が若干残っておりますから最終的な数字はまとまっておりませんが、二月末現在ほぼもう大体出そろったわけでございますが、例えばオペラで申し上げますならば、有料の入場率が八五%でございますし、演劇では約七〇%。オペラバレエ現代舞踊演劇の四分野で実施をしているわけでございますが、七三・二%という入場率でございます。これは、当初私ども予定をいたしておった数字よりは、若干ではございますけれどもよいかな、こんな印象を持っておりますが、いずれにいたしましても、より多くの方々にこういった施設を利用していただきまして我が国芸術文化の一層の普及振興を図るよう私どもも努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  10. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 公演の回数についてはどうでしょうか。十分行われているというふうにお考えでしょうか。
  11. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) これはいろいろと考え方はあろうかと思いますが、私どもはおおむね良好にいっているんではなかろうか、かように考えております。いずれにいたしましても、さらに委員の御指摘も踏まえまして、また研究もしてまいりたいと思っております。
  12. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 せっかく立派な建物が建っているわけですから、ぜひもっと多くの国民が親しく利用ができるような、すばらしい建物です、レストランもたくさんございます、そういうところを文化の拠点として使っていただきたいと思います。  それとあと、これは一つお願いなんですけれども日本演劇とかオペラの上演時間というのはどうしても早いんですね、スタートが。一般に勤務している人が六時とか七時にそういう劇場へ向かうということは極めて通常は困難でありますので、もう少し一般勤労者が見に行きやすいような時間帯に開演をするような工夫もぜひやっていただけないかというふうに考えております。  さて、それでは続きまして、また美術館の話に戻りますけれども、実は、先日私、予算委員会質問をさせていただきましたが、時間の関係十分議論を尽くせませんでしたので、もう少し踏み込んで議論をしてみたいと思います。  皆さん御存じのとおり、バブル経済というのがございました。今非常にその後始末に我々苦しんでいるわけですけれども、しかしいいことも幾つかあったというふうに私は考えています。  その中の代表的なものが、バブル日本経済が一時期潤って、そのときに企業が相当なお金を出して海外からの美術品を買い集めた。言ってみれば、一時的に日本に非常に海外の価値ある美術品が集まってきたという現象バブルの結果として起こったんではないかというふうに思っています。  しかし、今現在、バブル崩壊ということで、企業の倒産ですとか、あるいは倒産しない企業でも、非常に決算が苦しくて決算対策ということで、一度買い集めた美術品を買ったときとは比べ物にならない値段でもう一度売りに出さなきゃいけない。しかも、売りに出されているのがサザビーズなどといった海外でのオークションの市場で売られているという現状でございます。  私、せっかくすばらしい美術品が現在日本国内に存在していて、その美術品が極めてリーズナブルな値段で国の手に入るチャンスが目の前にある。これを見逃す手はない。これを見逃して、何も海外に再び安い値段で流出させることはないんではないかというふうに考えています。  私、日本美術館中身充実させるという観点から、これらをぜひ国が国策として買い取るようにしていただきたいというふうに考えています。今回、美術館博物館充実の五十四億円中、どれぐらいをこれら美術品海外流出防止にお使いになるつもりか、お伺いしたいと思います。
  13. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) それぞれの美術館博物館におきましては、それぞれの館の収集目的に沿いまして、中で専門家がどういう作品購入しようかということをいろいろ研究しておるわけでございます。  したがいまして、今の段階で、この五十億の予算が、例えば海外のものを買うということを明確に決めるということはなかなか難しいわけでございますけれども、それぞれの館がそれぞれの収集目的に応じてその中身充実していくように今後とも考えてまいりたいと思っております。
  14. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 特に、企業決算対策とかということが絡んできていますので、非常に購入に当たってのスピードが重要になってくるんですね。  これは私、何人か実際に手放さざるを得なくなった方にお話を伺ったんですけれども、基本的には日本人ですからやはり日本国内にとどめておく手だてを考えるんだけれども、どうしても文化庁の場合は決定に時間がかかる。どうしようもなくて、海外へ持っていってオークションにかけざるを得ない実情があるというふうに聞いております。  スピードアップについてはどういう対策をお考えでしょうか。
  15. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 国立美術館博物館におきまして美術作品購入する場合、一般的には、これはもう委員案内のとおりでございますが、まず各館で購入予定作品のリストアップを行うわけでございます。続きまして、その購入の是非について外部の有識者による委員会で選考し、さらに有識者によります買い取り評価委員会、この場で購入適正価格審議いたしまして、これに基づきまして館長が購入予定価格を決定し、所有者売買契約を締結する、こんな手続をとっております。  実態といたしましては、これは館によって違いがあるのでございますが、通常日本国立美術館博物館ではこの期間に一カ月から三カ月を要しておる、こういう実態がございます。これは一つは、やはり作品の真贋でありますとか、適正な価格を決めるため美術館博物館では慎重な手続をとっておるわけでございまして、そこはある程度の一定の期間はかかるということは御理解をいただきたいと思うわけでございます。  委員指摘のとおり、そういったいろんな動向もございます。迅速化につきましては引き続き博物館美術館で検討してまいりたいと、かように考えております。
  16. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 例えば海外オークション日本側が、政府が出かけていって競りに参加するなんということは、現実的には不可能なんでしょうか。
  17. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 御質問をいただきましたので幾つかの美術館にお聞きしましたら、やっぱりそういうことはやっていないと。  確かに、これまたもう少し私ども研究をさせていただきたいと思いますが、国立博物館美術館とはいえやはり国の行政機関でございます。美術品、物品を購入し、あるいは契約をするということになりますと、当然国の会計法なりそういった手続、規定がかぶってくるわけでございますので、なかなかそこは一般の私立の美術館博物館のようにはいかないのではなかろうかと、こんなふうに考えております。
  18. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 なかなかいろいろ障害が多いとは思うんですけれども、ぜひそこを制度的に工夫して、何とか迅速な購入ができる対策考えていただきたいというふうに思います。特に、欧米の美術館と比べますと、まだまだ日本美術館というのは内容が寂しい。私は、一枚有名な絵が来たからといって行列をしている日本美術館を見ると悲しくなるんです。  私、アメリカに住んでおりましたけれどもアメリカで私の住んでおりました町にもいい美術館があって、印象派のすばらしい絵がたくさんそろっていて、しかも学生なんかにはほとんど無料に近い状態で見せられるような環境になっている。もちろん並ぶこともありません。好きな時間に出かけていって、ゆっくりと好きな絵の前に座って何時間も眺めることができる。こういうことがないと、なかなか心の教育とかゆとりの教育とかができないんじゃないかというふうに思っています。  バブル経済の破綻という今大変大きな負の遺産の処理に我々苦しんでいるわけですけれども、その中でも、こういういいことに関してもきっちりと前向きに取り組んでいきたいと、そういうふうに考えております。  それでは、ちょっと話題を変えさせていただきます。  実は今回、大臣所信の中でも、また予算の中にも出てまいりますけれども中学校高校中高一貫教育充実ということを挙げておられます。私はこれに関しては全く賛成でございます。特に、人格の形成上非常に重要な時期にある中学生に対して、受験一辺倒ではなくて、それを見直して心の教育を実施していく上で非常に重要な施策になるんじゃないか、中高一貫教育というのはそういうふうに考えます。  今回の予算の中では、中高一貫教育推進事業ということで約二億円が計上されている、これはもう非常にすばらしいことなので有効に使っていただきたいと思います。しかし、私ふと考えましたら、一つ思い当たったことがございました。  といいますのは、国立教育大学附属中学校高校というのは、何十年も前から実験という名目で中学・高校一貫教育を既に実施されてきているはずで、かく言う私も国立教育大学附属中学校高校の卒業生でございまして、青春の六年間を国の教育実験にささげたつもりだったんですけれども、今までこれに関して何らかのちゃんとしたフィードバックがあったんでしょうか。それがあった上で今回、中高一貫という話になっているのか、あるいはそれは全く横に置いた話で、むだにして、新しい話として出てきているのか。特に、今回の予算に計上されている二億円の使い道とあわせてちょっとその辺を御説明いただきたいと思います。
  19. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 大変役立たせていただきました。  さまざまな中高一貫考えましたけれども、私自身が勤めておりました東京大学の中高一貫、あるいは先生のいらっしゃいました国立大学中高一貫、そういうのも視野に入れまして検討させていただきました。  もっと詳しくは局長よりお返事申し上げます。
  20. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 附属学校につきましては、中高の先導的な試行ということで御参加をいただいておりまして、それが今回の中高一貫に結びついたと考えております。ただ、附属学校小中高たくさんあるわけでございますけれども、その学校がすべてということではございません。  文部省では、研究開発学校という制度を設けておりまして、学習指導要領によらないでカリキュラムを構成して、次のカリキュラム改訂へ向けて実験研究をしていただく、そういう制度があるわけでございますけれども、その中に何校か附属学校につきましてもお加わりいただいた、その成果は今回の中高一貫制度化に起用させていただいている、こういうことでございます。すべてではございませんが、国立中高一貫がそういう形でかかわっておるということでございます。
  21. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 今年のその二億円というのは、具体的にどういう形でお使いになる予定でしょうか。
  22. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 大きく柱が二つほどございます。  一つは、既にこの四月から中高一貫をスタートさせる自治体もあるわけでございますけれども、そうした自治体を含めまして、現行の制度下での中学校高等学校での中高一貫をさまざまな角度から研究していただく、中高一貫教育実践研究校というふうに申しておりますけれども、そうした実践研究をしていただくための経費がございます。これは基礎的には、各都道府県ごとに五校、それから政令指定都市につきましては三校ということで研究をしていただこうと思っておりますが、それにかかわります経費一つでございます。  それからもう一つは、学校関係者だけではなく、広く有識者あるいは保護者等中高一貫にかかわりましてのフォーラムあるいは推進会議等を各地方公共団体等に設けていただいて、そこでいろいろな議論をしていただこうという経費二つ目にございます。その一環として、この中高一貫の趣旨を正しく理解していただくためのパンフレット、積算上は四十九万部ということになってございますけれども、そうした中高一貫を理解していただくためのパンフレットの作成。  この大きな柱を二つ立てまして、中高一貫教育を推進していこう、それが約二億円弱となっているわけでございます。
  23. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 それでは、また話題を変えさせていただきます。  今回、文部省予算書の中を見ますと、情報通信教育に関するメニューというのが非常に多くなっております。  こういう切り口で事前に質問通告していないのでお答えいただけるかどうかあれなんですが、情報通信関連で、大体ことし情報通信教育という観点予算総額幾らぐらいになっておるんでしょうか。
  24. 小野元之

    政府委員小野元之君) 平成十一年度の文部省情報化関係予算でございますが、今突然の御質問でございますが、情報通信事柄自体がさまざまな分野関連があるわけでございますが、合計で十一年度予算額で九百二十三億でございます。
  25. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 済みません、突然の質問で申しわけございませんでした。  九百二十三億円という大変なお金をかけていただいているということで非常に心強い限り、日本情報通信教育の前進に大きな一歩になる一年になるんじゃないかというふうに期待しております。また、三月十日に日刊工業新聞で報道されておりましたけれども教育情報化プロジェクトということにも政府はしっかり取り組んでいくということで、いろんなメニューとしっかりした予算があって非常に心強いのではないかというふうに考えています。  しかし、一つ問題があります。そこまで踏み込んでいただいている上で、まだ情報通信教育面でフルに活用するに当たって大きなネックがあるんです。それは何かといいますと、現行法制下では、学校へ行ってフェース・ツー・フェースで先生の顔を見ない限り授業の単位が取れない。コンピューターを通した、あるいは衛星放送を通した、放送大学は除いてですけれども、いわゆる遠隔教育では単位が取れない。これが非常に大きな障害になっているんです。  文部省として、ここまで予算をつぎ込まれてここまでメニューを充実されてきているわけですから、情報通信活用した未来型教育へ向けて、あるいは見方を変えますと、最近ふえています登校拒否児等に対して多彩多様な教育メニューを提供する一環として、この単位取得規制にかかわる規制緩和に踏み込まれるおつもりはないんでしょうか。
  26. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 今委員指摘のように、学校教育においては何といっても、先生と児童生徒の対面を通じて触れ合う、そういう教育が非常に重要でございますし、また児童生徒の集団活動ということも学校生活で極めて大切な面でございます。そういう学校生活を通しての教育が極めて大切でございます。  今、インターネットが一方で大変進んでまいりますから、インターネット等を活用した在宅での学習を小中学校等の教育一般的に取り入れることはどうだろうかという御指摘でございますが、これはやはり、先ほど申しましたように学校で集団的に教えるということが極めて重要でございますので、在宅で学習ということはいかがかと思われる面がございます。  しかしながら、今非常にふえて私も心配しているのですが、不登校の子供たちや病気等で長期療養中の子供についてできるだけ教育の機会を確保するという意味で、インターネットは大変いい道具であろうかと思います。不登校の子供たちに対する教育の上で、インターネット等を活用して学校外での学習を援助することは大切と考えておりまして、このための研究を進めてまいりたいと思います。  念のために申し上げますと、平成十三年度には完全にすべての小中学校高等学校にインターネットが接続されます。それからまた、平成十四年度から実施予定の新しい学習指導要領では、各教科等の学習においてコンピューターやインターネットを積極的に活用できるようにするという努力を払っているところでございます。したがいまして、不登校の子供たちに対してどうしたらいいか、インターネットをどう活用できるかというふうな研究を進めているところでございます。  今後とも、このように情報教育ということを文部省としても重点的に考えながら進めてまいりたいと思っております。
  27. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 まず、登校できない生徒に対してインターネットを使用した単位取得をこれから認める方向で検討されるということですので、最初の第一歩をそこから進めていただいて、生涯学習観点からもこの遠隔教育での単位取得というのは非常にメリットが大きいのではないかというふうに私は考えていますので、ぜひ御検討をいただきたいと思います。  インターネットの活用というのは、かなり学校教育を変えていくと思うんです。生徒と先生の関係もかなり立体的なおもしろいものへ変えていくと思うんです。  ある大学の先生が言っていたんですけれども、実際に英語で書かれた論文を先生が解釈していたら、生徒が手を挙げて、先生それは違います、こっちの解釈でしょうと。先生は、いやそれは絶対違うと。それで言い合いになって、何でおまえはそこまで言い張るんだと生徒に言ったら、生徒は、きのうインターネットでこの原作者に質問を送ったらこういう答えが返ってきて、原作者がこう言っておりますと言うので、もう先生はそれ以上何も言えなくなったというようなこともあります。授業の活性化という意味では、ぜひインターネットの活用を進めていただきたいと思います。  あと、大学や研究機関、これも未来へ向けて、器や制度だけではなくて、やはり研究の内容そのものをしっかり充実、高度化させていただきたいというふうに考えていますけれども、そのためには、大学や研究機関の閉じた世界の中にいてはだめだというふうに考えています。大学や研究機関研究成果というものが外へきっちりと出て、役に立つものとして育てていく必要があるんじゃないかというふうに考えています。  今度は科学技術庁予算になりますけれども研究開発成果の活用の促進ということで、これもまた百八億円という非常に大きな金額が計上されていて、メニューも非常に充実した内容になっています。今後、大学の研究機関研究成果の活用に関してどういう方針で臨まれるのか。まさにこれこそは、文部大臣科学技術庁長官として、両官庁にまたがる問題だというふうに考えております。また、理化学研究所時代に有馬大臣が取り組まれた非常に重要なテーマだというふうに聞いておりますので、大臣から御答弁いただけますでしょうか。
  28. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 先ほど御質問ございました大学関係研究情報は、文部省の附属であります大学共同利用研究所の一つである学術情報センターで詳しくそのデータが整理され、皆様に提供できるようになっております。この研究成果をどういうふうに活用していただくかということにつきましては、科学技術基本計画におきましても、我が国研究開発の活性化、新産業の創出等の観点から重要とされております。  このため、既に、まず第一に研究成果に関する情報の民間への提供、第二に研究成果の特許化への推進、第三に研究成果についての企業化開発や民間へのあっせん、第四に産学官の共同研究の推進等の取り組みがなされているところでございます。  今後とも、科学技術振興施策の重要課題の一つといたしまして、研究成果の活用に係る施策の拡充強化を図ってまいりたいと思っております。その中にさまざまなことがございます。詳しくまた申し上げてもよろしゅうございますが、ここでひとまずこの御質問に対するお答えといたします。
  29. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 時間でございますので質問はこれぐらいにさせていただきますけれども、ぜひ教育の面から、有馬大臣の哲学である心の教育中身充実ということに頑張っていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  30. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 有馬大臣には毎日御苦労でございます。国会議員になられた直後のそのままの大臣でございまして、さぞ御心労も多かっただろうと思いますが、自分の経験なり、または教職についておられること、または管理職についておられる等々の経験から、私たちが聞いておりましても大変自信を持って御答弁なされておりますし、大いに二十一世紀にかけての教育改革について期待をいたしておりますので、ぜひ頑張っていただきたいというように思います。  きょうは、先般、日の丸・君が代の問題について私ちょっと質問したんですが、またくどいようでもありますけれども、先般私が質問した後、予算委員会で広島県の高校の校長会長さんを参考人としてお呼びし意見陳述をお聞きいたしましたので、そういうことからこの問題にもう少し深く触れてみたいというふうに思う次第でございます。  現場の直接の責任者から教育の現況をお聞きしたわけですので、大臣としてこの広島県の実情についてどのような感想及び御認識を持たれているか、直接お聞きしたその感想をお聞きいたしたいというふうに思います。
  31. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 先日の予算委員会で岸元広島県高校長協会会長のお話を伺いました。  その中で、県立世羅高校長の自殺事件のことにも触れながら、広島県における研究現場の困難な状況を率直に話されたものと真摯に受けとめた次第でございます。特に学校教育は、児童生徒、保護者、教員との信頼関係に基づいて、秩序正しく校長の権限と責任において営まれなければならないものでございますが、広島県において外部の団体からの圧力がかなり見られることは問題であるという思いで岸元会長のお話をお聞きしたところでございます。  文部省では、教育を進めるに当たっては、政治運動や社会運動との関係を明確に区分いたしまして、教育の中立性が守られなければならないと考えております。私も、岸元会長のお話を伺いながら、広島県において法令に基づく学校運営と教育活動が確保されるよう、広島県教育委員会による取り組みを全面的に支援していきたいと気持ちを強くし、新たにしたところでございます。
  32. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 今の答弁にも多少かかわりがあると思いますけれども、広島県の教育を進める上で八者合意というものがあるとお聞きをいたしたんですが、その八者合意というのは実際どのような性格のものであり、これに対して文部省としてどのように認識をしておるのかお聞きいたしたいと思います。
  33. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) いわゆる八者合意でございますが、これは、昭和六十年九月十七日、広島県知事、広島県議会議長、広島県教育委員会教育長、部落解放同盟広島県連合会、広島県教職員組合、広島県高等学校教職員組合、広島県同和教育研究協議会、広島県高等学校同和教育推進協議会、この八者で広島県におきます学校教育の安定等を目指しまして結ばれたものというふうに承知をいたしております。  ただ、この文言を読ませていただきますと、文言を見る限り、形式的には一般的な表現でつづられているというふうに見受けられるわけでございますけれども、その運用に当たって、先ほど大臣からお話がございましたけれども教育の中立性確保という観点からいかがかと思われるような実態があるということでございまして、そのような運用を生み出しているこのいわゆる八者合意というものにつきましては、そうした点で問題ありというのが私ども文部省考えでございます。
  34. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) つけ加えさせていただきます。  たびたび申し上げますように、同和教育というのは極めて重要であると思っております。あらゆる差別をなくすべきだと思います。しかしながら、同和教育を進めるに当たって、同和教育と政治運動や社会運動との関係を明確に区分し、教育の中立性が守られなければならないと思います。したがいまして、八者懇合意というものの中で、この文書の運用によって教育の中立性がゆがめられるという実態があると聞いておりまして、そのような文章は問題があると考えております。  文部省といたしましては、広島県教育委員会及び県下の各市町村教育委員会の責任において法令に基づく適正な学校運営、教育活動が行われるよう指導して、今もいたしておりますし、今後も指導してまいりたいと考えております。
  35. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 八者合意に対する文部省の態度、見解ははっきりわかったんですが、このような八者合意に似たような一つの仕組みというのは他の県にもすべてあるんでしょうか、これは広島県だけの特異の存在でしょうか、そこのところをちょっとお聞きいたしたいと思います。
  36. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 私どもが承知しております限りにおきましては、このような、いわゆる八者合意のようなものは他県にあるかどうか私どもは承知いたしておりません。
  37. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 わかりました。  このたびの校長会の会長さんの参考人出席ということについても、お聞きしますと随分いろいろな圧力がかかったと聞いております。その圧力に屈しないで出てきた会長さんに、私は本当にその勇気に敬意を表したいと思うんですが、恐らくその会長さんも、自殺した石川校長の死に報いるため、また広島一県の教育を正常化するために必死の思いで出席したのではないかというように、その後も情報がいろいろ入ってくるのを聞きますと、私は、よくぞ出席をしていただいたということで本当に敬意を表したいと思います。  このような行為に対してこの校長は、今言いいましたように、広島県の教育を今後本当に正常化しなきゃならないということで真剣に取り組んで参考人として出てきてそれだけの意見陳述をしたわけですが、では、文部省として広島県のこの教育正常化に対してどのように今後指導しようとしておるのか、また、その今後の取り組みについて文部省の決意なり見解なり態度をお聞きいたしたいと思います。
  38. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 広島県におきましては、学校の指導上、管理上の多くの問題が指摘されていたことは私もよく承知していた次第でございます。このため文部省では、広島県の教育問題について、昨年の四月に広島県教育委員会、福山市教育委員会に対して現地調査を行い、この結果に基づいて広島県教育委員会、福山市教育委員会に対してその是正を指導してまいりました。  これを受けまして、広島県教育委員会では教育の正常化に向けて現在全力を挙げて取り組んでおり、文部省といたしましては、このような広島県教育委員会の取り組みに最大限の支援を今後も続けるとともに、さらに一層必要に応じて適切な指導を行っていく所存でございます。
  39. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 ぜひひとつ、今回のこの事件を契機として、勇気ある文部省の取り組みを期待いたしたいというように思います。  日の丸・君が代、国旗・国歌の法制化については、今随分新聞紙上等でいろいろな意見が出ております。私は、この件については政党の党利党略で処理するような問題ではないと、国民的な一つの課題であると、そのように考えております。  ただ、思想的に、日の丸・君が代が軍国主義につながり、または差別の象徴として位置づけられておるというような人々は別として、今国民の間では日の丸・君が代が国旗・国歌と認識されているということはもう周知のとおりでありまして、これまでの世論調査の結果を見ましても、日の丸は国旗としてふさわしいと思うが八四%、思わないが四%。それから、君が代が国歌としてふさわしいと思うは七七%、思わないが九%で、これは総理府の調査ですが出ております。  問題は、これまで慣習法で指導してきたという現実があるわけですね。今までずっと慣習法で出てきた、だから問題がないじゃないかという意見も中にはあるわけですね。しかし、ここであえて法令化をするというその意義について、文部省の立場から見解をお聞きいたしたいというように思います。
  40. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) この問題につきましては、現在政府内部におきましてもさまざまな検討がなされているところでございまして、今確定的なことを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、私どもといたしましては、ただいま先生が御指摘になられましたように、既に国旗・国歌につきましては慣習法として定着をしている、そういうことで文部省もこれまでそれを前提に取り組んできたわけでございますけれども、この法制化によって国旗・国歌というものが成文法としてより明確になるということで、そのことによって国旗・国歌に対します正しい理解がさらに促進されることにつながるのではないか、こんなふうに私どもとしては考えておるところでございます。
  41. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 文部省の立場はわかりました。  そこで、学習指導要領に、入学式や卒業式で「その意義を踏まえ、」云々と、こうあるわけですね。ですから、「その意義を踏まえ、」ということはどのように解釈をすればよいのか。今の学習指導要領でもそれが載っておるわけですが、「その意義を踏まえ、」ということについて見解をお聞きいたしたいと思います。
  42. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 国旗・国歌につきましては、現在、社会科の授業あるいは音楽の授業、そして入学式、卒業式におきまして国旗掲揚、国歌斉唱という形で私ども学校では取り扱っておるわけでございますが、今お尋ねの点でございますが、これは、小学校中学校等の指導要領では基本的なルールが書いてございまして、その扱いにつきましては、学習指導要領の指導書というもの、学習指導要領を解説したものでございますけれども、そこに書いてございまして、それをもとに私ども教育委員会や教職員に示しているわけでございます。  例えばでございますが、小学校六年生の社会科でございます。まず、その指導におきましては、国旗・国歌はいずれの国も持っているものであること。それから二つ目といたしまして、国旗・国歌はいずれの国でもその国の象徴として大切にされており、互いに尊重し合うことが必要であること。三つ目といたしまして、我が国の国旗及び国歌は、長年の慣行により、日の丸が国旗であり君が代が国歌であることが広く国民の認識として定着していること等を、例えば社会科の授業等においては指導内容として示しているということでございます。
  43. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 一つつけ加えさせていただきます。  まず、第百三十一臨時国会において、当時の与謝野文部大臣は、学校における国歌・国旗について、教育的指導をすることについては義務づけられている旨の答弁をしています。これは、国歌・国旗についての指導が学習指導要領で明確に規定されており、各学校はこれに基づいて児童生徒を指導する義務を負うことを述べていると思われます。  今回の法制化を含めました検討は、国旗・国歌の根拠について、慣習であるものを成文法としてより明確に位置づけることを検討するものでございます。先般の参議院予算委員会、三月十日でございますが、で官房長官が発言しておられましたが、その発言どおり、学校現場での取り扱いは現在の取り扱いを変えるものではないと承知しております。私は、法制化により国歌・国旗に対する正しい理解がさらに促進、推進されるものと考えているところでございます。
  44. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 この次の質問にその第百三十一回のことを質問しようと思ったんですが、ちょうど、もう先に答弁が出てまいりました。  先日、ある報道の中で、聞いておりましたら、生徒に無理に歌わせるのは生徒の人権を無視していることであるとか、学習指導要領には拘束力はないのだからというような解説をしておる場面を見たんです。そうしますと、教育の場での教えるということと生徒の人権との関係一つ。それから、学習指導要領ではその拘束性がないのだということだったんですが、学習指導要領に対する文部省の見解もあわせてお聞きいたしたいというふうに思います。
  45. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) これはかつて、平成六年十月十二日、衆・予算委員会において御質問がありましたことに、当時の村山総理大臣と与謝野文部大臣との答弁に多少食い違いがあるのではないかという指摘がなされたことがございます。これにつきましては、その後十月十三日に、先ほど申し上げました十月十三日に開かれた衆・予算委員会の理事会において議事録を精査した結果、総理大臣文部大臣の答弁内容を整理したものとして次の内容が配付され、答弁に特別の食い違いはないことが確認されておりますので申し上げます。  まず第一に、学習指導要領は、学校教育法の規定に基づいて、各学校における教育課程の基準として文部省告示で定められたものであり、各学校においてはこの基準に基づいて教育課程を編成しなければならないものである。  第二点、学習指導要領においては、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」とされており、したがって、校長、教員はこれに基づいて児童生徒を指導するものである。  第三点、このことは、児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨のものではなく、あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことが必要である、という三点の確認が行われておりますので、文部省といたしましては今後も、法制化が行われればもちろんでありますが、行われない段階においても、こういう立場で今後も教育を進めさせていただきたいと思っております。
  46. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 今の学習指導要領での村山元総理と与謝野文部大臣との答弁内容での結論として十月十三日に出ておる。このことは今お読みになったんですが、私の質問は、学習指導要領が法律として、法則としてどうあるのかという、そのことについての質問でございますので、ちょっと私は答弁が違うんじゃないかなというふうに思います。
  47. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 学習指導要領は、学校教育法という法律に基づきまして、その根拠を置いて文部大臣が告示として定めているものでございます。それは教育課程編成、実施の基準としていわゆる法的拘束力を持つものであるということでございます。そして、これに従って各学校においては指導の責めを負っている、指導することが義務づけられている、そういう性格のものというふうに私どもは理解をいたしております。
  48. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 それでは皆さん納得しません。  それで、私はこういう答弁が出てくると事前に調べたんです。  伝習館高校の事件において、学習指導要領というのは基準に定めたもので法規としての性格を有するものであると、はっきりここに最高裁の判決が出ているわけですから、そういう意味では、文部省の姿勢として、はっきりこれは法規として定められておるものであるという、そういう性格で私はやはり指導すべきものであろうというように思います。  続けて、ちょっと時間がございませんので先に進みますが、以前私がおりました学校現場に沖縄県の宮古島から内地留学で島村という先生が来たことがあるんですが、その先生からお聞きした話をちょっと御披露申し上げたいと思うんです。  ちょうどアメリカの占領下であったわけですが、昭和四十七年に日本に復帰したその前の占領下時代に沖縄県の先生方がどういう態度をとったか。体育の時間になりますと、それぞれ生徒に日の丸の小旗を持たせて、そして海岸まで出まして、そしてこの日の丸の旗を振って、早く日本に復帰したい、そういうことを教育の現場で先生たちが生徒に指導した、そういうお話をお聞きいたしました。  そして、昭和四十七年に日本に復帰したときに、沖縄県の島民は、ちょうちん行列をし、先頭に日の丸の旗を持って、今までは占領下で日の丸の旗を上げられなかった、星条旗だけしか見ていなかった、その現状の中で日本に復帰した。そこで、晴れてこの日の丸の旗を振れるんだと、今までこっそり海岸で振っておったその小旗が大きな旗となって、そして堂々と沖縄県民が日の丸の旗を振った、そういう話を私はお聞きしたことがございます。  その話を聞いておった私が、先般沖縄のある中学校の卒業式のときに、女の子が壇上に上がり日の丸の旗をちぎり、そしてみんなの前で日の丸の旗を投げたという現状を見たときに、先ほど、生徒の人権というものに対することと教えるということがどういうふうに結びつくのか、どうなのかということをそういう観点から私は質問したわけです。  やはり、児童生徒には人権をたっとびながら教えるべきことはしっかり教えなけりゃならない、大人ではないわけですから。ですから、恐らく占領下におけるところの先生方は、日の丸に対して、君が代に対してそれなりの教えをしておったんでしょう。それが復帰をして先生方が日教組に入り、そしてその運動の中で、反戦、反米、基地反対の闘争の中において日の丸・君が代に対して反対であるということを教えたために、その女の子が壇上に上がったと。知らないわけですから、その女の子たちは。ですからそういう行動に出たのであろうと、そのように思います。  そういう意味で、日の丸の旗については、小学校六年生の社会科に先ほど読まれたようなことが書いてございますが、君が代については、日の丸は出ておりますけれども君が代のことは出ていないわけです。ですから、君が代の扱いについては今後どのようにされるのか、その点についてお聞きをいたしたいと思います。
  49. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほど私が読みましたものも、小学校六年生の社会科の記述ぶりを読み上げたわけでございますが、これも国旗だけではなく、国旗・国歌はいずれも云々ということで三つの指導内容について御紹介をいたしました。  それは、国旗も国歌もともにいずれの国にもあるということとか、あるいはお互いに象徴として大切にされ、互いに尊重し合うことが必要であるとか、あるいは日の丸が国旗であり、君が代が国歌であることが広く国民の認識として定着していると、国旗につきましても国歌につきましてもそこでは触れているわけでございます。  したがいまして、そのようなことで指導をしておりますし、これからも指導していきたいということでございます。
  50. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 小学校六年生の社会科ですね、今お話しになったようなことの中で、日の丸については、例えば薩摩藩や水戸藩等で日本の船舶について云々だという歴史を、なぜ日の丸がこのように国旗となったかという歴史がここに述べられておる。そのことは私が調査したいろいろな雑誌の中にもそのとおり出ております。  君が代についてはそういう記述がないわけです。広島の例をとりますと、日の丸の白地は人間の骨であり、そして真ん中の赤はそのために亡くなった人間の血であると、そういうようなことを日の丸について指導をしておる。現場の先生方が今の日の丸なり君が代なりに対して正しい指導をしなければ沖縄の女の子のような状態になるんだということで、あえて私は、どういう位置づけで日の丸が、君が代がこの教科書の中に位置づけられておるかということをお聞きをいたしたわけでございます。  日の丸については出ておるわけですけれども、君が代については解釈が難しいからなかなか出てこないんだろうと思うんですが、私が調べた範囲内では、例えば一番最初にこれが出てきたのは古今和歌集に君が代の歌は出てきておるわけです。そういう意味では、その後変遷がございますし、外国人のフランス人がその作曲を明治になってした云々とか、しかし主として歌われ出したのは鎌倉時代以降、それぞれ長寿を歌う賀詞として歌われ出したというのが大方の定説であると。  一時、残念ながらあのシナ事変から太平洋戦争、第二次世界大戦で日本が不幸な時代がございました。そのときに日本の帝国主義者、軍国主義者の指導者が日の丸・君が代を戦争のために悪用して、そして国民にそれを植えつけたという、そのことの印象が余りにも強いものですから、この日の丸・君が代に対するところの曲げられた解釈がされておるんじゃないか、そのように私は思う次第でございます。  このことについては、日の丸は出ておりますけれども、君が代のことについては今後どうするか、ひとつ文部省の方としても研究をしていただきたいというふうに思います。  続けて、もうあと十四分しかございませんので次の問題に行きたいと思います。  それは学級編制と教職員の配置の改善についてでございますが、いじめや不登校、学級崩壊等々、学校を取り巻くいろんな問題が今深刻な状態であります。その解決のために多くの皆さん方が頭を痛めておりますが、その一つの解決策として、この前からここの委員会でも出ておりますが、三十人学級を含むそういう学級規模の問題、教師の問題等が一つの解決方法ではないかということで取り上げられておるわけですが、一律に学級編制を三十人にすることがいいのかどうか、むしろチームティーチング等の多様な指導方法をとること、そういうことを工夫することも大事ではないかと。  現に、今これ実験的にやられておるようでございますが、私も、もう二十年ぐらい前になりますか、筑波の中央研修を終えまして、教育視察団としてアメリカ教育事情を見に行ったことがあるんです。そのときに、一つの学級に二人の先生がいて、そして二人で常に話し合いをしながら体育や理科やそういうところで指導されている姿を、もう二十年前の話ですが、そういうことを見て非常にこれはすばらしいなというふうに思ったんです。そういうことで、日本で今そういうことが研究されておると聞いて大変力強く感じておるんです。  そこで、現行の改善計画を策定した際に学級編制についてはどのような考え方であったのか。また、現在推進をしておる、先ほど言いましたチームティーチングについてどのように評価をしておるのか。さらに、実施教科や実施学年のそれぞれの状況について説明をお願いいたしたいというふうに思います。
  51. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 現行の第六次公立義務教育学校教職員配置改善計画を策定いたします際に、四十人学級が十二年をかけて実現をしたという現実がございまして、当然そのときも、三十五人学級にしてはどうかというような御議論教育界の内部にさまざまあったわけでございますけれども文部省といたしましては、最終的には当時も専門家の方々あるいは現場の方々にお願いいたしまして教職会議で報告をまとめていただいたわけでございますけれども、その際の議論のポイントは二つあったかと存じます。  一つは、今後、児童生徒数が大幅に減少していくということに伴いまして、四十人という標準ではございますけれども、実際の学級の規模というのは徐々に縮小していくという傾向が今後とも続くであろうということ。  それからもう一つ、四十五人から四十人にいたしましたけれども教育上のさまざまな課題というのは社会の変化や子供を取り巻く環境とともに起きておりまして、例えば当時の校内暴力、あるいは今日に至りますいじめ、自殺あるいは不登校、こういった問題に対処するためには、学級のサイズを一律にいじるというよりも、この際、きめ細かな指導が行えるような方法で機動的に教員を使っていくということで、例えば一つのクラスに複数の教員が入っていく、あるいは二つのクラスをさまざまな観点から三つに分けて少人数の授業をしていくというような、現場の工夫に任せるという意味でのチームティーチングというような観点から、さまざまな学習集団を構成しながら授業を行っていくという現場の創意工夫を生かすための教職員配置ということを主体的に取り組んではどうかというようなことになりまして、最終的には教員の改善数の半分以上をチームティーチングのために活用するという現行の改善計画ができ上がったわけでございます。  その後、各学校におきますチームティーチングの状況でございますが、平成十年度に国が加配をしております状況についてのみ見てまいりますと、実施教科につきましては、小学校では加配を受けた学校の八六%が算数、あるいは中学校の場合は六二%の学校が数学、さらには、二六%の学校が外国語というところが教科では多くなっております。  また、学年につきましては、小学校では四年生が六八%、それから五年生が六一%と多くなっております。中学校では、むしろ学年といいますよりも教科ということで、各学年を通じて行われているという状況が報告されているところでございます。  これによる学校の評価ということでございますけれども、大きく三点、私どもとしては評価できるんではないかと思っております。  一つは、子供たちの理解の程度やつまずきの状況をきめ細かく教員が対応できるということで、子供たちは主体的に学習に取り組む、そういった意味で意欲が高まり、あるいは早い段階でつまずきの具体的な原因を把握できて解消できるようになったこと。それから、教員にとっては、事前の準備を複数の教員で実施する、あるいは外部の方々の協力を得て行うということでかなり負担増になっているという面もございますけれども、結果といたしましては、複数の立場で一人一人の子供たちを見ることができる、子供の理解が深まる、さらには、教員間の協力が深まることによって指導力や教材研究といったものも深まってくるというような、教員にとってのメリットも報告されております。  さらには、何よりも学校全体といたしましては、教員が共同作業をするということが大変多くなりましたので、校内の一致協力した指導体制が確立され、若い方あるいはベテランの方を含めまして教員間に切磋琢磨の活気が出てきた、こういったことがおおむねプラスの評価として報告されているものと私どもとしては把握しているところでございます。
  52. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 チームティーチングの効果なり、またその問題点を挙げながら、大変効果が上がっているというすばらしいお話を今お聞きいたしたんですが、この制度については、今後広げるためにはどうすればよいか、このことについて十分研究しなければならないと思います。反面、学級規模を縮小すれば今起こっている学校におけるさまざまな問題点が解決するんじゃないかというような、そういう片方のまた強い意見もあるわけです。  文部省としては、学級規模についてどのように考えておるのか、そして学級規模を縮小するとすれば何が問題になるのか、そういう今いろいろ問題になっている学級規模の縮小についての、チームティーチングはわかりましたけれども、それについての問題点等をちょっとお聞かせいただきたいと思うんです。
  53. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 学級規模と学習効果をどう実証するかということが実は大変難しいという実態でございまして、なるほど一般的には、少人数で指導いたしますと教員の目が届き、きめ細かな指導ができるということは事実でございますが、また一方、それに要します財政的な負担というものと教育効果というものをどのように比較考量するかということは大変難しい問題でございまして、まずこの辺につきまして、必ずしも従来の学問的な研究等では私どもとしては十分な実証が得られた、そういう確信を持っていないということが一点でございます。  それからまた何よりも、一律な形での四十五人から四十人に下げたことによって、大臣も常々申し上げておりますように、どういった教育効果が顕著に上がったかということにつきましても、必ずしも万人に客観的に納得できるようなデータとしてお示しすることが難しいという問題がございます。  したがいまして、私どもといたしましては、現行のチームティーチングによりますさまざまな指導方法の工夫、こういったものの教育効果、それから諸外国におきます学級規模の実態、さらには諸外国におきます教員一人当たりの児童生徒数と我が国との比較、こういったものを十分検討した上で、現場の御意見というものを十分踏まえながら、専門家あるいは現場の方々によります協力者会議におきまして、今後そういった点につきまして十分議論を詰めてまいりたいと考えておるところでございます。
  54. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 学級規模と教育効果というのは、非常に難しい問題があろうと思いますし、かなり実験的なデータ等が出されなければ出てこないだろうと思います。  私も昭和二十五年から現場の教壇に立って、その当時は五十人学級で机間巡視もできないぐらいの詰め込みで、PTAが来ましても、教室の中にはもういっぱいぎりぎり入っていますから廊下で参観をするというような、そういうような教壇に立っておったわけです。そういう意味では、適正な学級規模をどうするかということはなかなか難しいと思いますが、ただ、中教審で学級編制の弾力化がうたわれております。  ですから、今、四十人学級をいきなり三十人学級ということで、四十人というのをコンクリートしてしまいますと、例えばこういうことがあるんですよ。五年生のときに八十一人で三学級だったのですね。二十七、二十七、二十七で三学級だったのが、この三月の転勤で親御さんが転勤するということになりますと八十人になるわけですね。そうしますと、もう二学級の四十、四十になる。しかも、大体小学校というのは、一・二年、三・四年、五・六年と学級を変えないで生徒同士の交流を深めながらということで、五年、六年はできるだけ学級編制をしないで卒業させよう、教育的な配慮からそういうような学級編制をしておるんですが、たった一人転勤をしたためにその三クラスが二学級になる。もう三月の転勤のときはよく、その転勤はわかりますので、周りのPTAの皆さん方がもう転勤させぬでくれとか、物すごいいろいろな圧力がかかるし、事我が子のことに関してはそういうことになるわけです。  ですから、少なくとも三十人学級になる前の三十五人から四十人ぐらいの弾力性を持たせて、例えば八十一が八十になっても一応三学級で五年、六年でそのまま上げていくとかいう、そういうひとつ温情のある、文部省というのは非常にかたいものですから、何かそういうようなことが運用上できないかというように思うんです。
  55. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 今の問題でございますが、詳しく具体的には局長よりお返事申し上げますが、昨年九月の中教審答申において、学級編制の弾力的な運用等について提言がなされております。  文部省といたしましては、今御指摘のようなことにつきまして、現在、今後の学級規模のあり方や学級編制の弾力化等について、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れまして検討をまさに行っているところでございます。  なお、ただいまの八十一人が八十人になった場合の点につきましては、ちょっと局長よりお返事申し上げます。
  56. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 現行の標準法のもとにおきます一学年四十人という標準につきましては、これは都道府県が負担する教員の給与費とも密接に絡んでおりますので、特段の事情がない限り、私ども、四十人という標準に基づいて学級編制を決めていただくように指導いたしているところでございますが、御指摘のような極めて例外的な個別的なケースにまでこの法律ががんじがらめになっているというぐあいには私ども考えていないわけでございまして、例えば御指摘のようなケースにおきましてそのまま三学級を維持するというふうなことにつきまして、これを国庫負担するというわけにはまいりませんけれども、国が負担しております全体としての教員定数の範囲内で県が融通をしていく、あるいは県が自分の県のそれなりのお考えで何人かの県担教職員を用意して、国庫負担に頼らずにそういう準備をして、それで市町村との間で十分合意が成り立ち、県の財政的な枠の中におさまるというようなものにつきまして個別具体的、例外的にそのような取り扱いをする、これにつきましては、今の法律自身がこれを制約していると私ども考えておりませんし、各県の御判断に任せたいと思います。
  57. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 時間ですけれども、もう一問質問があるんですけれども、私はそれはもうしないで、ちょっといいですか。  今のことについては十分知っておるんですよ。県担で雇って今実際それぞれ県教委やっておりますけれども、それが県によっては、また地域によっては、県担でやっていないでそのままいったり、だからその点を私は、その四十から三十五という幅を持たせて国庫負担でそのくらいの、中教審の答申も出たわけですから、ぜひやっていただきたい、そのことを強く要望したいんです。
  58. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) その点につきましては、先ほど大臣が答弁したとおりでございますので、その点も含めて十分検討してまいりたいと思います。
  59. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 また取り上げます。
  60. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 それでは、よろしくお願いします。  過日のこの委員会においても人権教育にかかわってさまざまな議論がされてきましたけれども、私は、きょうは人権教育のための国連十年における文部省の取り組みについて伺わさせていただきたいと思います。  御存じのように、本年は人権教育のための国連十年のちょうど中間年に当たります。私は、九七年七月四日に発表されたこれまでの国内行動計画の取り組みを、文部省としても点検をして、より一層推し進めていかなければならない大変大切な折り返し点であると思っていますけれども、まず、この点について文部省としての御認識、お考え説明していただけますか。
  61. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 人権教育は重要なことであると重々認識いたしております。  ただいまのことでございますが、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画は、国連の決議を受けまして政府に設けられました、内閣総理大臣を本部長とする人権教育のための国連十年推進本部において平成九年七月に策定されたものでございます。  文部省におきましては、あらゆる場を通じた人権教育の推進の一環といたしまして、学校教育や社会教育の場での施策を推進しているところでございます。人権教育については、重々重要なことを認識して努力しているところでございます。
  62. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 全体的な取り組みは今報告があったんですけれども国内行動計画として具体的な取り組みがありましたら、あるはずだと思うので、具体的な取り組みをお知らせいただけますか。
  63. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 国内行動計画、さまざまな柱がございますが、学校教育におきます人権教育の推進状況について御説明をさせていただきたいと思います。  大きく柱が二つございます。一つは、子供たちに人権尊重の意識を高める教育の推進ということでございます。それからもう一つは、子供たち自身が人権が尊重された形で学校教育を受けられる、例えばいじめといったことが起こらない、こうした学習環境を整えるという、この二つが私ども学校教育におきます人権教育推進の柱だと、こう理解をいたしております。  まず一つの点でございます。子供たちに人権尊重の意識を高める、そうした教育を推進するということでございますが、これは学習指導要領にございますカリキュラムの中でそうした教育充実を図っていくということでございます。  具体的には、特に社会科の授業の中で小学校子供たちも憲法学習をいたしますが、そういうところでの基本的人権の重要性についての理解を深めるといったこと。さらに、中学校になりますと社会科の中の公民的分野というところで憲法の原則あるいは人間の尊重についての考え方といったものを深める学習をいたしますけれども、そういったものをきちっと行うということ。さらには、道徳といった授業におきまして自他の権利の大切さ、それから、だれに対しても差別あるいは偏見を持つことなく公正、公平に正義の実現に努める、これは中学校におきましても同じでございますけれども、こうした教育を行うといったことが第一点の柱でございます。  それから二つ目の点でございますけれども、これはやはり子供たち自身についても、例えばいじめといったものは人権にかかわる大変重たい問題であるという、そういった認識を持たせるといったこと。それはただいまの社会科や道徳の授業でも行うわけでございますけれども通常学校生活全体の中で、一人一人子供たちを大切にする、あるいは他への思いやりといった心を培う、そういった教育充実に努めているところでございます。そして、子供たちが悩んだりあるいは不安に思った、そういうようなときには、子供たちが安んじて相談に乗れるような教育相談体制を充実するといったこともこの施策の一環として位置づけられようかと思っております。  この大きく二つのことを柱にいたしまして人権尊重の教育に努めているところでございますが、今後もさらにこういった面に十分留意をした教育を推進していきたいと、こんなふうに思っております。
  64. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 今、これからの取り組みも含めて御説明がありましたけれども、私は、人権教育のための国連十年の取り組みは、まさに日本の中に人権文化をつくっていくことだというふうに考えております。  今、局長からも話がありましたが、差別や偏見を許さず、子供がどこにいても大事にされる、あるいは、他の人に会ったらすぐ友達になりたいな、そんなことを思えるような人権文化をつくっていくことがこの人権教育のための国連十年の取り組みで必要なんだろうというふうに思うわけですけれども、今さまざま全体的な取り組みについて詳しく説明をしていただきましたので、若干具体的な問題で次に移りたいと思います。  人権擁護施策推進法に基づいて人権擁護推進審議会が設置をされて、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について二年間にわたって審議がされ、ことしの夏までに人権教育・啓発に関する答申が出ると、このように聞いております。  この審議会についてお尋ねをしたいと思いますが、この議事録を私も二十二回ほど読ませていただきました。その中で、例えば現在問題となっている差別事件、あるいは人権教育に対する先進的な取り組み、そういう事例等々のヒアリングがまだまだ私は不十分ではないか、このように思っているわけでございますけれども、どのようにお考えになってみえるのか、そしてさらに今後の審議状況等について御説明をいただきたいと思います。
  65. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) ただいま御質問の人権擁護推進審議会は法務省に置かれておりますが、その審議に当たっては、法務大臣のほか、文部大臣、総務庁長官、または関係大臣からの諮問に応じて審議を行うことになっております。平成九年五月に法務大臣文部大臣、総務庁長官から人権教育・啓発に関する施策の基本的事項について諮問を受け、審議が進んでいるところでございます。  現在までに、委員からの意見発表や各種人権課題に関する関係団体等からヒアリング、関係省庁からの情勢説明などを行うなど、人権教育・啓発に関する施策の総合的な推進について調査、審議がなされ、これまで御指摘のように二十三回の会議が開催されました。  その審議の内容といたしましては、人権尊重の理念、人権教育・啓発の現状、人権教育・啓発のあり方、人権教育・啓発の推進のための方策などの主要な論点を設けまして、各論点ごとに議論を深めているところでございます。御指摘のように、夏ごろを目途に取りまとめが進んでいるものと承知いたしております。  文部省といたしましても、人権擁護推進審議会における審議に積極的に協力してまいりたいと思います。  細かい点につきましては、必要に応じまして局長より御説明申し上げます。
  66. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 今の御説明で大体理解はさせていただいたので結構でございますけれども、これは法務省だと言われましたけれども教育にかかわる部分ですので、文部省としても大いに責任を持っていただかなければならないということをつけ加えさせていただくと同時に、まさに二十一世紀に向けて人権教育・啓発の理念にかかわる部分ですので、今申し上げたように、教育の中心である文部省は十分に責任を果たしていただきたいと思うと同時に、これは夏ごろに答申が出るという話でございましたけれども、中間の取りまとめというのはあるんでしょうか。中間の取りまとめがあるとするならば、私先ほど申し上げたようにまだまだヒアリング等不十分だと思っておりますので、中間の取りまとめ等があった場合は、それが出た後さらに多くの人々の意見を聞いて、これから二十一世紀人権国家に向けての教育・啓発、そんな理念法をつくりあげていくんだと思いますので、そのあたりちょっと説明していただけますか。
  67. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) この審議をどのような形でまとめていくかというのは、これは審議会の御判断にあるわけでございますけれども、私どもが承知いたしております限りでは、中間まとめという形、そしてそれを受けて答申ということは予定をされていないようでございます。  その前に、ただ素案というような形で公表をして、そしてそれを正式な答申に持っていくというような運びになるようでございますが、いずれにいたしましても、大変重要なテーマを検討している審議会でございますので、その審議会がより中身のよいものが答申されますように、私ども今まで事務局の一人としてその審議のためにいろいろ協力をしてきたつもりでございますけれども、さらにしっかりと協力をしてまいりたいと、こう思います。
  68. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 ありがとうございました。  大変な決意を述べていただきましたので、冒頭にも質問させていただきましたが、ちょうど折り返し点にも差しかかっておりますので、より一層の取り組みを進めていただきたいというふうに思いますし、事務局の一員でもあるわけですから、中間の取りまとめはないそうですけれども、そういう素案等出たら直ちに公表していただいてぜひ幅広い人の意見を聞いていただきたいなということをつけ加えて、次の質問に移らせていただきます。  先ほど仲道委員の方からも同和の問題に多少触れられましたけれども、私は、人権教育考えるときに、これまで長い間積み重ねられてきた同和教育・啓発の成果を踏まえていかなければならないと考えております。憲法で言うところの基本的人権を尊重していく文部省としては、子供たちにさまざまな取り組みをしていると今報告がございましたけれども、そうした成果が中心的な課題になっていくんだろうと、私はこのように思っております。同和教育・啓発の成果を基本に、さらには国際的な人権教育・啓発の流れ、その取り組み等々を踏まえながら私はこれからの人権教育・啓発は考えていかなければならぬだろうと、こう思っているわけでございますけれども大臣、この部分はいかがでございましょうか。
  69. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) いわゆる同和問題につきましての対応は大変重要なことだと思っております。  平成十年三月時点でございますけれども、私どもが承知をしております数字といたしまして、学校教育現場におきますいわゆる差別事件の発生状況は百九十七件、こんなふうに承知をいたしているわけでございます。そういうことで、まだまだこの問題につきましては取り組みをしっかりとしていかなきゃいけない、こんなふうに思っております。  この点につきましては私どもいろんな機会に申し上げているわけでございますけれども、同和教育の推進に当たりましては三つの観点から取り組みを進めるということにいたしております。  一つは、日本国憲法、教育基本法の精神にのっとって基本的人権尊重の教育が全国的に正しく行われることを推進するということ。それから二つ目といたしましては、全国民の正しい認識と理解を求めつつ、具体的展開の過程においては地域の実態を十分配慮してこれに即応した教育を推進するということ。それから三つ目といたしましては、同和教育を進めるに当たっては、同和教育と政治運動や社会運動との関係を明確に区別し、教育の中立が守られるように留意すること。この三つを私ども同和教育を進める場合の特に重要な留意点と考えているわけでございますが、この三つを柱にして今後も同和教育の推進に努めてまいりたい、こんなふうに思っております。
  70. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 もう一度お尋ねしますけれども、そういった成果をやっぱりこれからの人権教育・啓発に生かしていくという部分ではどんなお考えでございますか。
  71. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 御指摘のとおりでございまして、先ほども数字をもって申し上げましたが、まだなおそうした事象が発生をしているということでございます。これは私ども重く受けとめなければならない、こう思っております。  これは、ただ学校だけの取り組みではない、社会全体あるいは保護者の意識、さまざまな要素があろうかと思いますけれども、やはり学校教育においてこの問題にしっかりと努力をする。人権教育の推進、人権尊重の教育というものをしっかりと子供たちに培っていくということも大変重要な要素だと思いますので、そうした分析をどう反映するかということでございますが、今のような受けとめをベースにしてこの問題につきましてはさらに取り組んでいきたい、こう思います。
  72. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 今の答弁、それから先ほど大臣も極めて重要な課題だというふうに御答弁されましたので、同和問題、大変幅広い問題でございますけれども、今御答弁いただいたような形でさらに推し進めていきたいというふうに思います。  そんな立場で一点確認をさせていただきたいと思うんですけれども、先ほど申し上げた審議会の素案なり答申等々の取りまとめに当たっては、九六年五月に出されました地域改善対策協議会の意見具申等を踏まえた、そんな視点からの素案なり答申へというふうに思っているわけでございますけれども、その点を確認させていただきたいと思いますが、どうですか。
  73. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) ただいま御紹介されました答申、これは政府として重く受けとめておるわけでございます。したがいまして、この審議会におきましても当然そのように重く受けとめた上でこの審議が進められているものと、こんなふうに思っております。
  74. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 ぜひとも地対協の意見具申を踏まえた観点からの取りまとめを強く要望しておきます。  公開されている二十二回の審議会の議事録を読む限りにおいては、私自身若干、十分に踏まえられているのかなというような感想も持っておりますので、審議会のことですので具体的な中身は申し上げませんけれども、ちょっと気になるような発言もございますので、十分に地対協の意見具申を踏まえて、この審議会の発足のこれは経緯でもあると思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいということ。  次に、地方自治体のこの十年の取り組みについて伺わせていただきますけれども、推進本部事務局の調査によりますと、九八年七月現在で、行動計画を発表した地方自治体は六府県、策定に向けた検討を行っているのは二十都府県に上っていると聞いています。  しかし、具体的な施策や策定を発表している自治体数が西高東低と言われています。これはもう御存じだと思いますが、西に行くほど取り組みが強くて、取り組む自治体が多くなり、東に行くほど少なくなるという意味でございます。ある文部省の担当者の方に北限は茨城かなというようなこともお聞きしたことがあるんですけれども、こうした全自治体の取り組みの格差といいますか落差を埋めていくことは非常に重要だろうと。  これから人権教育・啓発を一層進めていくためには、こうした全国的なアンバランスを解消してさらに強力な取り組みが必要なんだろうというふうに思うわけですけれども、こうした自治体の取り組みにばらつきが出る原因といいますか、どんなあたりに原因があると考えておみえになるか。そして、こうしたばらつきをなくし、さらに全国展開をしていくためには今後どんな取り組みが必要だと考えられておみえになるのか。この二点について伺わせていただきたいと思います。
  75. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 全体的な分析評価は内政審議室の方が担当いたしておりますので、全体的なお答えは私できないわけでございますけれども学校教育という場について申し上げますと、やはり長い歴史的沿革の中でのこの問題での取り組みあるいは地域の実態といったものがさまざまあるわけでございます。そうしたものが反映されてさまざまな実態にあるということが言えるのではないかと思っております。  したがいまして、個別の実態を踏まえた対応というのは、これはある程度地域の実情を踏まえたものということで、全国一律に同じようにということは必ずしもないのではないかとは思います。  しかし、人権教育の重要性、人権尊重という意識を子供たち一人一人にしっかりと培うという点では、これは地域に関係なく大切なことであるわけでございます。したがいまして、地域の実情の違いは違いとして、私どもといたしましては、冒頭の御答弁で申し上げましたけれども、一人一人の子供たちにしっかりとした人権尊重の意識を培うということと、それから一人一人の子供が大切にされた学校教育を受けられる、そういう環境をつくるということ、この二つはどの子供にも大切なことだ、こういう認識のもとに進めてまいりたい、こんなふうに思っております。
  76. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 今、歴史的な経過、地域の実態だというようなお話がございましたけれども文部省の中の取り組みに指定校というのがございますね、人権教育にかかわっての。これもちょっと私は西高東低のような感じがするんですけれども、この指定はどういう形で指定をされていって今のようなアンバランスになっているのか。  ついでですのでもう一点伺わさせていただきますけれども、私の記憶では幼稚園の指定が非常に少ないという記憶があるのでございます。たしか六幼稚園ぐらいだったかなと思うんですけれども、指定校のばらつき。それから、幼児期から人権意識をはぐくんでいくことは私は非常に重要だと思っております、したがって、そのあたりを聞かせていただきたいと思います。
  77. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 研究指定校でございますけれども研究指定校は各県段階での研究指定校もございますし市町村段階の研究指定校もございます。  ただ、この問題の重要性ということで、私ども国としても研究指定校制度を設けております。人権教育研究指定校という名前になってございます。  私どもは、一応各県ごとに何校ということをおおむねの目安として推薦してくださいという形で各県の教育委員会の方に照会をするわけでございますが、この指定校をどんな形で受けるのか、どのくらいの数といったことはあくまで各県の教育委員会の判断を尊重して、私どもそれを受けた形で指定をする、こんなふうな形になってございます。  したがいまして、県によっては全国平均よりも多く研究指定校を指定してほしいという県もございますけれども、一方では少し消極にと申しますか、少なくて結構ですという県もございます。ですから、そういう点は私どもそれを尊重してやっておるわけでございます。ですから、その指定校の数そのものを形式的にとらえて、数が多いところが熱心で数が少ないところは不熱心だというそういう画一的な評価は私どもしたくはないわけでございますけれども、各県がどのような形でこれを扱っているか、そのあたりのところはよく聞いてみたいと思います。  しかし、私どもとしては、この研究指定校制度は国が押しつけるということではないわけでございますので、ばらつきというものはある程度やむを得ないものではないか、それは各県で生かしていただければいいわけでございますので、そんな気持ちは持っております。  そして、小学校中学校高等学校のほかに幼稚園をどのように扱うかということでございますが、これも各都道府県の判断にしてございます。確かに、先生御指摘のとおり、小中学校に比べますと幼稚園の研究指定校は少のうございます。ただ、幼児の発達段階ということを考えまして、幼・小・中・高のバランスをどう考えていくか、これはまた研究指定校の成果の分析等を通しまして考えていきたい、こんなふうに思います。
  78. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 指定校も各県の事情ということで、ばらつきが出てもしようがないというような御答弁だったかと思いますけれども、これから人権国家をつくっていこうというときに、やっぱり、かなり差があったり落差があったりばらつきがあるということは私は一つの問題点だろうというふうに思いますので、全国展開をしていく必要があろうというような文部省が一律的に指導するということではないでしょうけれども、そんなことも機会を見つけながら全国展開ができていけるような方策をぜひとっていただきたい。それについて、人権教育のための国連十年にはそんな決議も含まれているように思うわけです。  一点目としては、推進体制を強化していくというような問題、さらには人権教育教材開発のためのセンターをつくりなさいよとか、さらには人権教育を担い得る人材の育成とか、そういった三点を掲げながら人権教育十年を目標達成にというようなことが私はうたわれていると思いますので、そうした人権教育・啓発にかかわる教育が全国的に盛り上がっていくような、そんな取り組みをお願いしたいというふうに思うわけですけれども、どうでしょうか。
  79. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほどから繰り返しお話ししておりますように、この人権教育、人権というものの大切さを一人一人の子供にしっかりと培うということは大変重要な教育課題だという認識を持っております。したがって、県の担当者の会議あるいは指導部課長会議等におきましてもこの点は繰り返し強調しているところでございます。  その取り組みの形として、研究指定校の数が県間にばらつきがある、あるいは幼・小・中間にばらつきがあるという点の御指摘でございますけれども、私ども、こうした実情等を十分に分析して、いずれにしろ人権教育がより充実する、その視点に立って例えばこの研究指定校制度が生かされるということが大事でございますので、そのあたりのところにつきましては、各県の教育委員会からもいろいろな事情をよく聞いて、しっかりと人権教育充実、それに資するということで努力をしてまいりたい、こんなふうに思います。
  80. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 ぜひ全国展開がしていけるような取り組みを期待しつつ、簡単で結構ですけれども、先ほど申し上げた三点、推進体制の強化、これは文部省としてどういう強化をされているか、あるいは地方自治体としてどんな体制がつくられているか。人権教育教材開発のためのセンター的なものは現在あるのかないのか、今後つくられていくのか。人権教育を担い得る人材の育成、これは今後どのような形で進められていくのか、この三点について伺いたいと思います。
  81. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず、推進体制の点でございますけれども、私ども初等中等教育の内容の点につきましては、初等中等教育局として各課連携をとりながらその推進に取り組んでいるところでございます。  各自治体におきます推進体制、教育関係してでございますけれども、それぞれ課を設けたり室を設けたり、その他さまざまなチームを設けたりということで各県いろいろな取り組み体制があるわけでございますけれども、私は、各都道府県教育委員会、市町村教育委員会においても、この人権教育というものの重要性というものを認識していない自治体はない、こんなふうに思います。したがって、どういう組織体制にするかということは各自治体の御判断にまちつつ、その内容において充実するように私ども連携をして取り組んでいきたいと思います。  それから、特別の教材開発センターといったものは設けてございません。私ども国としても人権教育資料といったような資料をつくっておりますが、それは局として関係各課連携のもとにつくっております。私どもとしては特にそういう組織をつくるということは今考えておりませんが、いずれにしろ、この内容の充実がさらに進められる、こういうことが大事だと思いますので、そのような観点に立って取り組んでいきたい、こんなふうに思います。
  82. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 時間が参りましたので、大臣、今のやりとりを聞いていただいて、人権教育・啓発に向けて私は三点申し上げました。さらに強力な体制を文部省の中にも、各局の対応も重要ですが、横断的な組織も必要なのではないかな、これからの十年、目標達成に向けては。そんなことやら、センターはまだ現在はないということですけれども、そんな機能を果たしていくようなものからセンターへと発展させていくような方途も含めて、今後の人権教育・啓発についての大臣の取り組みに対する決意をお伺いして、私の質問を終わります。
  83. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) たびたび申し上げますように、人権というのは極めて重要なことであり、それを十分しっかりと教育で教えていかなければならないと思います。  それからまた、国内における人権問題もありますが、人種差別に対する問題も大変重要なことでございますので、国内外をにらんで、人権を重要視するということをさらに学校教育や社会教育の場で積極的に施策を推進してまいりたいと思います。  そのために必要なことがどういうことがあるか、今後さらに検討いたしましてこの問題に取り組んでまいりたいと思います。
  84. 山下栄一

    ○山下栄一君 今、人権教育の話がございましたが、私も人権の観点にかかわる質問になるだろうかと思います。  去年の十二月の初めに参議院の本会議がございまして、これは補正予算の趣旨説明ないし質疑だったわけですけれども、その中で私は、学校施設におけるバリアフリーの取り組みの問題について、時間の関係文部大臣には御質問できませんで、総理が答弁されたわけでございますけれども、この取り組みについて御質問したいというふうに思います。  まず、文部行政としてこの学校施設のバリアフリー化についてどのような心構えといいますか、理念で取り組んでおられるかということをお聞きしたいというふうに思います。  私は、きょうは予算の委嘱審査でございますが、予算計上の金額、それから取り組む部局のばらつき等考えまして、腰の据わった取り組みになっていないのではないかという印象がございますもので、まず冒頭、学校施設のバリアフリー化、この問題についての文部省の取り組む意欲というか決意というか、どういうふうにして取り組んでおられるのかということをお聞きしたいというように思います。
  85. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私も、自分が勤めておりましたところ、すなわち東京大学におきましては、身体障害の方、目の不自由な人のために随分努力をいたしました。ただ、私がこういう問題について気になることは、熱心な人がいるときはいいのですが、いなくなると続かないんですね。理化学研究所でもバリアフリーにするために食堂等々にもスロープをつくりました。東大でもつくりました。こういうふうなものは、やはり常にだれかが見守ってなきゃならないということを最初に申し上げておきましょう。  学校施設における障害者への配慮というのは極めて望ましいことだと思います。各学校の設置者は、障害の状況学校施設の種類等に応じて適切な手法を選択し、学校施設のバリアフリー化を進めていくべきだと考えております。  学校施設のバリアフリー化の状況調査につきましては、バリアフリー化の手法、学校施設の種類には多種多様なものがございます。また、障害者の種類と言っていいでしょうか、足の不自由な人もいれば目の不自由な人もいる、さまざまなことがございますので、やはりそういう多種多様なものがあるということを十分認識しております。また、全国の学校施設の数は膨大な量に上っておりますために、現在すべての学校施設のバリアフリー化の状況を正確に把握することはまだ残念ながら困難でございます。しかし、努力をいたしているところでございます。  文部省といたしましては、今後とも、各学校の設置者が行う学校施設のバリアフリー化を積極的に支援してまいりたいと思っております。
  86. 山下栄一

    ○山下栄一君 平成六年十二月に、文部省大臣官房文教施設部長のお名前で、全国の都道府県教育長、また知事さん、それから国立学校施設、また高等教育機関に対しまして、「学校施設等における高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の建築の促進について」という通達が出ておるわけでございます。  この通達ですけれども、この観点は、子供、また児童への配慮というよりは、学校開放せにゃいかぬから、一般の方々も学校に入ってくる、だから、図書館とか体育館とかプールとか、そういうところに対してこういう障害者の方への配慮をしなさいというふうな観点が非常に強い内容になっているんじゃないかというふうに思うんですけれども、この通達の趣旨というか理念というか、余り児童生徒の観点に立っていない通達ではないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  87. 小野元之

    政府委員小野元之君) 御指摘ございましたように、平成六年に文教施設部長から、各県の教育委員会教育長、知事、それから国公私立の学長等にお願いをしているわけでございます。  お話ございましたように、この通達の趣旨は、学校施設等の整備に当たりまして、学校開放のニーズにも適切に対応した施設づくりが必要だという観点から、これは実は、平成六年にいわゆるハートビル法といいますか、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築促進に関する法律というのがございました。この趣旨を徹底する必要がある、そして大臣が先ほどお話し申し上げましたように、障害者等の円滑な利用に配慮するように学校施設をする必要があるという観点からこの通知は出したものでございます。
  88. 山下栄一

    ○山下栄一君 だから僕は、これは大人の観点が強くて、障害児に、そこで勉強している子供に対する配慮という観点が弱いというか、そういう観点じゃないのじゃないかというふうに思うんです。この通達の趣旨ですけれども、それをお聞きしているわけです。
  89. 小野元之

    政府委員小野元之君) この通達自体は、先ほども申しました法律の施行に関連をいたしまして、各教育委員会あるいは知事さんあるいは学長にお願いしているところでございますが、文部省といたしましては、従来から学校施設整備におきまして、もちろん児童生徒が障害児でいらっしゃる方もたくさんいらっしゃるわけでございますので、そういった方々の円滑な利用に配慮するよう指導する必要があるというふうに考えておるところでございます。  そういった観点から、私どもといたしましては、例えば障害者用のトイレの設置でございますとか、あるいはスロープの設置でございますとか、さまざまな観点から、国立学校、公立学校等につきまして、施設の改築の都度、あるいは具体的な改修の時点等々に十分配慮しながらできる限りの努力をしてきているところでございます。
  90. 山下栄一

    ○山下栄一君 ちょっと関連して質問させていただきますが、この平成六年度の通達のような形で、通達という言葉がいいのかわかりませんけれども、幼稚園から大学までハートビル法の精神を学校施設という観点からとらえ直して、精神の話を私はしているんですけれども、やっぱり障害児に対応した、配慮をしたそのような施設にするべきだという理念のもとに、文部省のお考えをすべての学校施設改善に向けて、施設設置者に対しての指導といいますか、通達でも構いませんけれども、そういうことをされたことはあるんでしょうか。
  91. 小野元之

    政府委員小野元之君) そういった観点から通達のような形でしたものはございませんが、例えば、国立学校につきましては私どもは設置者でございます。そういった観点で、例えば予算がついて新しい施設をつくるとき、あるいは従来の建物を改修するとき、そういった時々に応じましてできる限りそういった障害者の方々への配慮ができるよう努力をしてきておるところでございます。  ちなみに、国立学校でございますが、平成九年度で約四百二十カ所、それから平成十年度で約八百七十カ所、こういったバリアフリー化のための改築等を行っているものでございます。  それから、公立の小中学校につきましても、九年度で約五百十校、十年度におきまして約七百五十校がこういった観点からの改築等の整備を行っているところでございます。
  92. 山下栄一

    ○山下栄一君 公立の小中学校施設に対する障害児等の学習環境を改善するための配慮といいますか、そういう補助事業がされておるわけですけれども、新しく建物をつくる、増改築するという観点からではなくて、既存の、言ったら古い学校というかそういう学校施設に対して、こういう障害者への配慮をした改築工事というか、そういうのをするときに補助してあげましょうという制度平成八年度から始まっておると聞いております。  これは私、非常に画期的なことだなというふうにとらえておるわけでございますが、こういう補助事業をやることになった背景を教えていただきたい。
  93. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 御指摘のとおり、平成八年度から既設の学校につきまして、エレベーターやスロープ、障害者トイレ等、大規模改造事業というような手法で行う場合にも補助対象事業とするという形で補助事業を始めたわけでございます。  これにつきましても、エレベーター等の補助につきましては、最初は昭和五十五年から特殊教育学校につきまして、その必要性等に基づきまして補助対象とし、そして平成三年度からは、一般学校につきましても子供たちが入ってくる、さらには平成八年度からは、教職員につきましても実際に車いす等で授業をやる教職員がいる、そういうような現場の実情に合わせまして補助事業の対象を徐々に拡大してきたわけでございますけれども、既設の学校につきましても平成八年度から大規模改造という手法の中で取り入れようということにつきましては、そういった学校現場におきます実態にできるだけ補助制度の中でこたえたいという観点からでございます。
  94. 山下栄一

    ○山下栄一君 この平成八年度から始まった、公立小中学校におけるさまざまな障害児に配慮した施設改善の具体的な取り組みというのを教えてほしいんです。  ちょっと細かい話で申しわけありませんけれども平成十年度第三次補正の資料をいただいたんです。大規模改造、すなわち既存の施設改善についての整備状況ということで、四十一学校で、エレベーター十四、自動ドア一つ、スロープ二十四、障害者トイレ三十一、その他、その他というのは点字ブロックとかで、その他三、こういうふうな資料をもらったんです。  この予算が一億円というふうに聞いているんですけれども、第三次補正で、四十三億のうち四十二億は新増改築。それに対して、既存のものに対しては一億円と。一億円でこんなにたくさん、四十一学校に対してエレベーター十四とか、これは本当にできているのかなと。一番新しい予算でしょう。平成十年度三次補正の中身なんですけれども、一億円で本当にできるんですか。
  95. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) あくまでも、全体の第三次補正を組みました際に、バリアフリー化を推進するであろう新増改築事業並びに大規模改造事業ということで四十三億円という積算をさせていただいたということでございまして、従来からの事業の実績に合わせまして、あるいは第三次補正の場合は具体的に事業の内容がある程度予想されるということもございまして、一応予算積算上そういう四十二億と一億に案分させていただいたということでございます。
  96. 山下栄一

    ○山下栄一君 それはいいんだけれども。だから、一億では無理じゃないかということを聞いているんです。とてもこんなのはできませんよね。だから、大ざっぱに四十二億と一億円に分けたということ、そういう感じですか。  それで、私、本当にこれ気になってきたんですけれども、この大規模改造、要するに既存の施設への配慮ということは、新しくつくるときは、新しい建物にスロープもつくりましょうと、どんどんこれ公共事業でやりやすいと思うんですけれども、既存の施設に障害者用トイレをつくるとかスロープをつくるとかいうのは、これは今までの予算の執行の仕組みとしては非常に難しいんじゃないかなと思うわけです。  だから、それに補助をしてあげましょうということは大事なことだと思うんですけれども、ところが実態は余り進んでいないのではないかなと、感じだけで申しわけありませんけれども思っております。  これは平成八年度から始まって、八年、九年、十年、三年やってきたと。先ほど文部大臣もちょっと触れられましたけれども、全国の、公立でいいですよ、公立の小中学校は数万校あると思うんですけれども、どれだけ障害者用トイレがちゃんと整備され、スロープはどれだけついているかというようなことを、僕はやっぱり調べるべきじゃないかなと。  実態を把握せずして、人権教育を行っているとか、配慮しているとか、子供の一人一人を大事にしているんだというようなことは言えないのではないかなと思っていまして、こういう公立の小中学校はちゃんと補助事業として始まっているわけですから、少なくとも今、全国の数万校の学校の現状はどうなんだということぐらいはやはり、まだ把握していないと聞きましたけれども、これは少なくとも早く把握すべきだと、こういうふうに思うんですけれども、どうでしょう。そう難しいことじゃないと思うんです、把握するのは。
  97. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 先ほど官房長の方から、今年度七百十校でそういった事業をされたということでございますけれども、子細に見てみますと、新増改築事業につきましては、七百十校のうち五百六十八校、およそ六割の学校で主としてスロープや身障者トイレ等を中心に何らかの事業がやられているわけでございまして、これはいずれも、それぞれの学校実態に応じて、具体的に子供が就学しているあるいは就学する予定があるというようなニーズを踏まえまして、文部省としてはこれまで補助事業を実施してきたということでございます。  御指摘のような点につきましては、今後とも私どもといたしましても、もう少し実態を何らかの形で、また市町村等に余り負担をかけない形で適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  98. 山下栄一

    ○山下栄一君 適切な対応をしていただきたいんですけれどもね。  日本の国の義務教育学校は、公立の学校は、障害のある児童生徒にどれだけ配慮しているんだ、これぐらいしていますよということをやっぱり胸を張って言えるような状況をつくる必要があるのではないかなと。先進国日本としても、進んでいなかったら手を打つとかいうようなことをすべきだと思いますし、これは都道府県の教育委員会を通してやられたらそう難しい掌握方法じゃないと思いますので、きちっと私は掌握すべきだというふうに思いますけれども、どうでしょうか。大臣、どうですか。
  99. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私はこれは随分やっていると思います。先ほど申しましたように、国立大学国立関係のところでは、例えば車がなければだめな子供に対しては、エレベーターまでつかなくても、スロープを上がるエスカレーターみたいなものをつくったり、便所なども随分努力をいたしました。それから、御指摘の公立学校等々も、各地方地方、私が見たところでは随分やっていますので、なお今後もちろん調べてみますけれども、努力は随分していると思います。  具体的にそういう障害の子供が来てしまいますと、何としてもこれは努力を各地方自治体としてもやってくださらなければなりませんので、なかなか今申しましたように詳細な調査というのは難しいんですけれども、どういう実態になっているかはできる限り把握をしてみたいと思います。  私の見るところでは、各地方自治体は努力を随分しておられると思っております。
  100. 山下栄一

    ○山下栄一君 各自治体独自の取り組みとしても、市の予算、県の予算等でやっておられるというふうに私も認識しておるんですけれども、県によってばらつきが大変あるという認識を持っておりまして、大臣も調べてみたいということでございますので、民間の調査とかそういうのはあるんですけれども国の資料がないので、私はぜひそれをお願いしたいというふうに思います。  私は、エレベーターとか自動ドアとかそういうものも大事なんですけれども、去年十二月四日の本会議でも申し上げましたように、最も切実なのはトイレなんです。これは要するに、エレベーターがなくても、スロープがなくても、人の手をかりれば何とかなる、ただトイレだけはそういうわけにいかぬということで、そういう施設がないと実質受験拒否、例えば高校とか大学であれば受験拒否になってしまう、受験すらできないと、ちょっとお手紙を紹介して本会議でも申し上げたわけです。  だから、私は、調査していただいて、少なくとも、予算の限界がございますので、これはまさに補助事業としてあるわけですから、いまだに例えば公立の小中学校でそういう肢体不自由児の方に対する配慮ができていない、車いす用のトイレがないというところについては、重点的な政策で早急に手を打つというふうなことも、最低の保障としての障害者トイレだけは全部の学校にあるというふうな状況をやはり指導していくことも重点政策として必要ではないかなというふうなことを感じておりまして、この辺のちょっとお考えをお聞きしたい。  総理大臣は、この前のときにはプライオリティーも考えながら研究してみたいとおっしゃっていたんですけれども文部省、直接の御担当でございますので、取り組みをちょっとお聞きしたいというふうに思います。
  101. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 御指摘のトイレにつきましても、本年度九百八校を新増改築事業をいたしました際、四百五十六校で実施して、相当の学校が取り組んでおられると思っております。  いずれにいたしましても、実態を踏まえた上で、さらに現行以上の特別な対応は必要なのか、あるいは現行の大規模改造で十分対応できるのか、その点も踏まえて検討させていただきたいと思います。
  102. 山下栄一

    ○山下栄一君 公立の小中学校の話は終わりまして、次に幼稚園です。  幼稚園の施設整備に対しても、国は市町村に対して、また学校法人に対して幼稚園の施設整備の補助事業というのはやっておられると思うんですけれども、今申し上げましたような障害を持った園児の観点からの取り組みを今まで余りやってこられなかったんじゃないかと思うんです。やるべきではないかというふうに考えているんですけれども、この点のお考えをお聞きしたいと思います。
  103. 小野元之

    政府委員小野元之君) 幼稚園の場合、私立が御承知のようにたくさんあるわけでございますけれども、私学のこういった施設につきましては、設置者である学校法人がみずからの責任と負担で整備するというのが基本でございます。  国といたしましては、例えば大学でございますと私学振興・共済事業団等による長期低利の融資の制度がございます。こういった制度でもってそういった障害者のための施設整備を進めてほしいということもお願いしておるわけでございますけれども、幼稚園等につきましても、これは直接には都道府県知事が所轄になるわけでございますけれども、それぞれの教育の需要に応じまして、もちろん知事といたしましても、こういったバリアフリー化を県として進めることは恐らくそれぞれの県で検討いただいていると思いますので、そういった中でぜひ御検討いただくようにお願いしたいというふうに考えているところでございます。
  104. 山下栄一

    ○山下栄一君 私も自治体の取り組みが基本だというふうに思うんです。  ただ、この文部省予算の内容を見てみましたら、幼稚園施設整備拡充を図るために市町村の公立幼稚園の経費の一部を補助するというふうな中身があったもので、その補助する観点の中にこういうトイレとかスロープとかいうことも配慮することを一言入れられたらどうかと思いました、市町村の公立幼稚園に対して具体的に施設整備の補助をされておりますので。だから、障害園児に対する取り組みもこの補助事業の中に入れたらどうかなというふうに思うんですけれども、これは難しいんですか。
  105. 小野元之

    政府委員小野元之君) 公立幼稚園につきましても、公立小中学校に準じて国の補助制度が一部ございます。そういった観点で、私どもといたしましても最初に御答弁申し上げましたように学校施設のバリアフリー化というのは大変大事な事柄だというふうに認識をしておりますので、私どもとしては、国立学校もそうでございますし、先ほど来お話にございます公立学校もそうでございます、幼稚園も含めて、これからもバリアフリー化の推進について積極的な指導をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  106. 山下栄一

    ○山下栄一君 午後の最初の世耕さんの質問の中で、情報通信予算教育ということで十一年度は九百億円を超える予算を取り組まれているというお話を聞きまして、国際化の観点、情報化の観点、また心の教育観点からさまざまな予算を取り組まれてきておるわけです。  私は、障害者に配慮した学校施設のバリアフリー化への取り組みというのは、それに劣らず柱になるべき問題ではないかなというふうに思っておりまして、幼稚園そして小学校、中学、高校、大学、さまざまな学校施設がたくさんある、その施設は基本的に障害者に配慮した、また障害がある子供たちに配慮した状況になっておるということをあらわしていくことが、学校近代化という観点、また心の教育という観点からも非常に大事な柱になるべき施策である、こういうふうに感じておるんです。  ところが、実際に予算を見ましたら、情報化の方はもちろん近代化の一環だと思うんです。大変重要な柱であるわけですけれども人間の心のバリアを取り除くというふうな意味でも、また個性というのはさまざまな個性があるんだということを子供たちに教えるためにも、障害児、障害者へ配慮をした施設になっておるということを実現していく施策というのは劣らず柱になるべき施策であると。金額の大小ということを言っているんじゃなくて、そういうふうな取り組みというのはこれから非常に重要ではないかというふうに思うんです。  いろいろお聞きしましたら、施設の改善という観点からも、幼稚園は初中局で、また小中は教育助成局で、私学はどこでしたかというふうに一貫した取り組みではないわけです、それはもちろんそうだと思うんですけれども。さまざまな文部省全体の部局の中で障害者に配慮した施策を推進しようというふうなことも、ある一定期間取り組んでいこうという柱として据えるべき施策ではないかと感じておりまして、これからますます二十一世紀はそういうことを配慮しないと、何が近代化だ、何が心の教育だと言われかねないというふうに感じるんですけれども文部大臣、ちょっとお考えをお聞きしたいと思います。
  107. 小野元之

    政府委員小野元之君) 御指摘ございますように、学校施設は、幼稚園から小中高、大学、それぞれさまざまな施設がございます。さまざまな状況がそれぞれあるわけでございますけれども文部省といたしましても、こういったバリアフリー化をきちんと図っていくということが心の教育を推進する上でも御指摘ございましたように大変大事なことだと思っております。  そういう観点で、私どもではいろんな部局にまたがるわけでございますけれども大臣官房としても各局と相談しながら、文部省全体としてそういったバリアフリー化が進むよう努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  108. 山下栄一

    ○山下栄一君 官房長の御答弁に尽きるかもわかりませんけれども大臣、一言ございましたらお願いします。
  109. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 先ほども申し上げましたように、私自身、自分の勤めていたところのバリアフリー問題というのは常に積極的に取り組んでまいりました。もちろん予算の問題がございまして、率直に申し上げて、ないものはない、残念ながら。ですけれども、今後もできる限り最大限の努力はさせていただきたいと思っております。
  110. 山下栄一

    ○山下栄一君 もちろん、国の費用で何でもやらにゃいかぬということはないと思います。ただ、日本の文部行政のあり方として、そういうのは大事な柱の一つなんだということをどんどん発信していくというか、そういうことも大事ではないかと思いました。  冒頭幾つ質問しましたように、こういう観点からの通達というか御指導をされてきたのかと思いましたときに、そういう観点での指導というのは全体的にはされていないということをお聞きしましたもので、何も金を出せということを言っているんじゃなくて、そういう配慮をした教育内容であるべきだと。さまざまな初等教育、中等教育その他において、全体的に文部省の理念というか取り組み、決意を発信していただきたいと思いますもので、しつこいようですけれどもお聞きした次第でございます。  あと、時間がございませんけれども、私は、この少子高齢化という時代における学校制度のあり方、これは二十一世紀は本当に深刻になっていくというふうに思います。  教える先生が年をとってこられる、新規採用はほとんどない、子供の数はどんどん減っていきまして、特に高校の私学も含めた定員、大学の定員、定員はたくさんあるけれども生徒がおらないというような状況になってくるとこれは大変なことになるというふうに思っておりまして、少子高齢時代における学校制度のあり方ということは二十一世紀の大きな課題になってくるというふうに思います。  それで、一つだけ質問させていただきますが、小学校の先生ですけれども、小学校の先生が十年たったらどうなるんだと。年齢構成の資料によりますと、これは平均でございますけれども、もう五十代の先生が四割近く占める、学校によったら六割は五十代以上である、そんな学校も出てきかねないというふうな状況になってくる。そうなると、これは活力のないと言ったら怒られますけれども、そういうふうな手本を示す先生、一緒に走ることもしにくくなるし、運動会で物を運べないという、そこまでひどくならないかもわかりませんけれども、非常に深刻な問題になっていくのではないかなというふうに思います。  そういう意味で、先生はずっともう一生先生なんだという意識が、日本では学校とか学校の先生に対して尊敬の念が強い風土、最近はそうでもないかもわからぬけれども、そういう状況の中で、先生になったらずっと先生なんだというふうなことでは成り立たなくなるような時代を迎えていくんじゃないかなと。  もっと前向きにとらえて、教員経験のある方の積極的な人材活用、新しい職種、新しい分野への進出、生涯学習観点、福祉、文化観点、これからの人材活用みたいなものも考えていかないと、学校現場は総合学習の時間とか単位制とか新しい教育課程審議会等の取り組みもたくさん出てきているわけで、それに先生の方が対応できないというふうな状況になったら大変だなというふうにも思いますので、教員の高齢化問題というのは大変な問題ではないかなというふうに思うんですけれども、これに対して文部省はどのように今、先のことを考えながら取り組まれようとしているかということをお聞きしたいというふうに思います。
  111. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 御指摘のとおり、五十歳以下、四十代の教員ないし三十代の後半の教員が大変大きな割合を占めている、半分以上に両方合わせるとなろうかと思いますけれども、御指摘のとおりでございます。  現在、退職者、五十代後半の教員が少ないものでございますので、全体として高齢化していくということは避けられないかと存じます。また、それ自体大変な問題であることは事実でございますけれども、残念ながら、現行の公務員法制を前提といたします際に、六十歳までの定年制という前提があるわけでございますので、私どもといたしましては、できるだけベテランの方々に今後ともしっかりと子供の教育に情熱を傾けていただくような研修や学校運営のあり方等について検討してまいりたいと思っておりますが、また逆に、五十歳下から四十代の方々が退職する段になりますと、毎年その分の採用者というものは見込めるわけでございますので、平均年齢が十年後もまた一気にそのまま進むということではなくて、今度はそこからまた十年ぐらいたちますとある程度バランスがとれてくる、それ以上は平均年齢という形では上がっていかないということにつきましては、それなりに若い方がふえてくるということは希望は持てるかと思っております。
  112. 山下栄一

    ○山下栄一君 どうもありがとうございました。
  113. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  卒業式での日の丸掲揚、君が代斉唱をめぐって、広島県の世羅高校の石川敏浩校長がみずから命を絶つという痛ましい事件が起こりました。  私が石川校長先生のお宅に伺ったところ、夫人は、命を大切にと教えてきた者がみずから命を絶たざるを得なかった無念さを思うと本当に残念でならない、夫の死をやみからやみに葬るようなことはないようにしてほしい、こういうふうにお気持ちを話していらっしゃいました。  私は、二度とこうした事件を起こしてはならないと、石川校長先生の遺影の前で誓ってまいりました。その気持ちからきょうは質問をしたいと思います。  まず、確認を一つしたいと思うのですが、広島県教育委員会は、県立高校の校長に、卒業式、入学式の日に日の丸掲揚、君が代斉唱を行うよう昨年の十二月に職務命令を出しましたね。これは、文部省が昨年広島県に調査に入って、広島県の教育に関して是正指導を教育委員会に行った、そしてその中で、特に卒業式、入学式における国歌斉唱の指導の一層の充実に努めること、こういう指摘をしているわけですが、これを受けて県の教育委員会が職務命令を出した、こういうふうに考えていいと思いますが、その点を一点端的にお答えいただきたいと思います。
  114. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 昨年、広島県の教育委員会に現地調査に参りましてさまざまな指導をいたしたわけでございますが、その中に、入学式、卒業式におきます国旗掲揚、国歌斉唱につきましてもその一つとして指導を行ったことは事実でございます。  そして、その後、県におきましては、指導通知を発するというような形で、入学式、卒業式におきます国旗掲揚、国歌斉唱の取り扱いについて県下の学校に対しまして指導の徹底を図っているということは私ども承知しておるわけでございますけれども、その職務命令がどのような経緯かということにつきましては必ずしも明確ではございません。私どもが指導の徹底を図るということの指導をしたことは事実でございますが、そのことと、職務命令という形をとってこれに対処したこと、この間につきましては、どういう関係があったのかということは必ずしも今明確に申し上げることはできないということでございます。
  115. 林紀子

    ○林紀子君 しかし、国のこの是正指導が今回のこうしたことにつながったということは確かだと思うわけですね。私は、この今回の職務命令で日の丸・君が代というのが強制されなければ今回の悲劇は起こらなかったというふうに思うわけですが、そのことはお認めになりますか。
  116. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 今回の校長先生の自殺の原因、背景につきましてはまだ必ずしも確たる結論が出ているわけではございません。県の教育委員会においても調査中の事柄でございまして、そういう段階でございますので、私ども、この因果関係と申しますか、それについてここで御答弁申し上げることはできないということでございます。
  117. 林紀子

    ○林紀子君 しかし、この職務命令が強制であったということは確かだと思うわけですね。職務命令というのは、従わない者を処分する、こういうものだと思うわけです。三月一日の県の教育長の記者会見、これは高校の卒業式が一斉に行われた直後、前日には石川先生が命を絶っているわけですけれども、その記者会見で、君が代斉唱をしなかった高校の校長に対し、事情を把握した上で処分を考えている、こういうふうに述べているわけです。そして、実際にこの三月一日に君が代斉唱をしなかった校長は進退伺というものを県の教育委員会あてに提出しているわけです。卒業式に先立っては、生徒の妨害行為には毅然たる態度をとれと、臨時の県立校長会で教育委員会はこういうふうに指示をしているわけですね。  こういう経過を考えてみますと、校長にも日の丸・君が代を強制した、また生徒に対しても強制した、こういうことになるんじゃないかと思いますが、こういう強制というのは教育現場にふさわしいものかどうか、その辺はどうお考えになりますか。
  118. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 職務命令に関しましては、十二月十七日の通知に関連をいたしまして、二月二十三日の臨時県立学校会議におきまして教育長から、十二月十七日の指導通知の内容というものは県教育委員会の職務命令であると、こういうぐあいに受けとめていただきたいということで口頭でお話をした経緯がございますので、当然、職務命令として地方公務員法の規定に従いまして、校長はそれに従って卒業式におきまして国旗を掲揚し、君が代を式典の中に位置づけて斉唱をする、こういう行動をとらなければならないという意味では、これは校長の義務であり、責務でございます。
  119. 林紀子

    ○林紀子君 そういう職務命令ということが義務であるというお答えあったわけですけれども、そういうことを出したために、本当に校長が苦しんだということになるんじゃないでしょうか。広島東部のある校長先生は、石川先生の気持ちは本当によくわかる、自分の気持ちに正直に自由にどうすべきかを選べるなら死んだりはしないというふうに言っているわけですね。  今までも日の丸・君が代反対の動きというのは広島県でもほかのところでもあったと思うわけですが、ことしはどうしてこういうふうに自殺にまで追い込まれるような事態になったのか、今までとことしの違いは何か。それは、今おっしゃった県教育委員会が強制力を持った職務命令を出し、そして日の丸・君が代の職務命令は文部省の是正指導が背景にある。そういうことを考えますと、今回の事件に対して、広島県の教育委員会だけではなくて、文部省の責任というのも非常に大きいんじゃないかというふうに思うわけですが、その責任についてはどういうふうにお考えになっていますでしょうか。
  120. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 私どもは、このたび校長先生が命を絶たれたということについては大変残念なことと思っているわけでございます。  ただ、長くなりますので説明を省略いたしますけれども、国旗・国歌というものについて正しい理解を深めさせるということは、これからの社会を考えるときに必要なことであろうということ、そういう判断のもとに学習指導要領等にもこれを明記いたしまして、その指導をお願いしているわけでございます。  したがって、私どもといたしましては、この国旗・国歌というものを指導するということについて、各学校においてその意義等について正しい理解を深めていただいて、こうしたことにならないような形で教職員の人たち等がこの国旗・国歌を指導することについての理解を深めていただく、そういう方向にぜひ動いていただきたいものだと、こんなふうに思っております。
  121. 林紀子

    ○林紀子君 人の命を犠牲にしてまでこの職務命令というものを出さなければいけなかったことなのかどうかということなんですよね。学習指導要領のお話がありましたけれども、野中官房長官は記者会見で、日の丸・君が代について指導要領だけで対応させていいのか、定着したという位置づけだけでいいのかと、こういうことを述べて、国旗・国歌の法制化に乗り出すということを表明したわけですね。  そうなりますと、今まで日の丸・君が代に何らの法的な根拠がなかったということを認めたということじゃないでしょうか。それなのに教育の場に押しつけてきた。そして、そもそも思想信条は強制すべきではないのに、これも押しつけてきた。そういうことをやったからこそ今度のような犠牲者が出たということが言えるんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  122. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 法制化の問題につきましてはただいま政府内部でいろいろ御検討中であるわけでございますけれども、この法制化は、慣習法として位置づけられている、それを成文法をもって明確に位置づけるということでございます。  そのことは、日の丸・君が代というものが国旗・国歌であるというものについて根拠がこれまで薄弱であったということではないわけでございまして、その根拠づけのところを慣習法等から成文法をもってかえると。いずれにしろ明確にするということでございまして、私どもは、慣習法として定着しております国旗・国歌というものを、それに沿って指導してきたこと、そのことは特に問題がなかったというふうに思います。  法制化の問題は、また別途、それを成文法として明確にするということで今検討されていると、こんなふうに理解をしております。
  123. 林紀子

    ○林紀子君 慣習法ということですけれども、しかし野中官房長官は、指導要領だけで対応させていいのか、定着したという位置づけだけでいいのかというふうに述べているわけですから、やはりこれは、いいのかというのは、いけなかったんだというもとで法制化というのが出てきたんだと思うわけです。  それからもう一つ、サミット参加国の状況ということですけれども教育の場に国旗・国歌を強制するというような事例はほとんどない。これはちょっと資料が古いんですけれども政府が出した一九七五年の資料を見せていただきましたら、これを押しつけているという国はサミット参加国では少なくともないわけですね。  それからもう一つ申し上げたいのは、有馬大臣は、これは予算委員会で御答弁があったと思うんですけれどもアメリカでは国旗を焼いて処罰されたというふうにおっしゃっていらっしゃいましたね。しかし、事実は違うんじゃないですか。アメリカの最高裁判所は、レーガン政策に批判的な青年が国旗を焼いた事件というのが確かにありました。その事件で一九九〇年の六月十一日に画期的な判決を下しました。その判決の内容というのは、国旗を焼いたりする行為を処罰する国旗保護法というのがアメリカにはあるということですが、この法律は言論の自由を定めた憲法修正一条に違反する、こういう判決を出しているわけですから、国旗を焼いたということで処罰されるということは一九九〇年以降はないはずなわけですね。その後、下院も国旗を守るための憲法改正決議案というものの採決を行ったそうですけれども、結局三分の二に達せず決議案は否決された。国旗保護より言論の自由にアメリカの国会も軍配を挙げたということだと思うわけです。  ですから、教育の場での日の丸・君が代の押しつけというのは、世界から見ると日本は民主主義と無縁の国だ、こういうことになるんじゃないでしょうか。日の丸・君が代が平和と民主主義の我が国の国旗・国歌にふさわしいのかどうか、大いに国民的論議をするということが今大変大切な時期じゃないかと思います。  ですから、それに当たっても、やはり職務命令などを出して押しつけをやるということは絶対にやめるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  124. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず、国旗・国歌についてでございますけれども、先ほどサミット参加国というお話がございましたけれども、最近の私どもの資料では、例えば中華人民共和国におきましては国旗掲揚の儀式が学校において行われる、そうした際には国歌斉唱が求められるというようなことになっておりまして、必ずしも私ども日本国だけがということではないということを一点申し上げさせていただきたいと思います。  それからもう一つでございますけれども、職務命令云々の話がございましたが、私どもは、先ほど申し上げましたような趣旨で国旗・国歌についての正しい理解を得ること、自国のみならず他国の国旗・国歌に対しても正しい理解を得るということは、私たち将来の子供たちの基本的な知識の一つとして必要であろうと考えておりまして、したがって、そういうことで学習指導要領にその取り扱いを規定しているわけでございます。  したがって、その学習指導要領の趣旨をぜひ理解していただきまして、教職員一人一人がその指導を行うことの意義をぜひ理解していただく、まずそのことを特に強調させていただきたい、こういうふうに思います。
  125. 林紀子

    ○林紀子君 例えば、今回のように、卒業式で日の丸を上げて君が代を歌いなさいというような押しつけで本当に主体性や自覚というのが養われるのか。強制と、みずから学びみずから考えるということはどうしても矛盾することだというのもマスコミも指摘しているわけですね。ですから、私はこの押しつけというのは絶対にやめろということを申し上げているわけです。  今回の事件のもう一つの背景といいますのは、先ほど来お話があります部落解放同盟の介入圧力だと思うわけですね。十日の予算委員会では、部落解放同盟の教育介入について、広島県の東部選出の宮澤大蔵大臣も、自分が今日までこの事態解決に十分寄与ができなかったことを恥ずかしいと思う、そして、共産党だけが実に勇敢に発言してきたがと、私たちも評価をしていただいたわけですけれども、その後、渾身の努力を尽くしたいということまで述べていらっしゃるわけですね。  今回のこの世羅高校の校長先生にかかわりましても、例えば、これも同じ十日の予算委員会で広島からいらした岸本校長先生が証言をなさっていましたけれども、福山地区や尾道、三原地区の校長先生たちを、大衆団交とおっしゃっていましたけれども、部落解放同盟の広島県連合会の人たちが百人も動員されて、そしてそこで要望書を教育委員会に出す出さないということが迫られたというふうに言われているわけで、私もこれを確認いたしましたら、ここに同席をしていた校長先生から、そういうことがあったと、教組の先生たちも来ていたわけだけれども、その先生たちは後ろの方にいて、前面でそういうことを迫ってきたのは部落解放同盟の人たちであったということもおっしゃっていらっしゃいました。  こうした問題の根本には、先ほど来お話がありますように、県教育委員会と部落解放同盟など八者が結んだ八者合意がある。九月の委員会でも私はこの場でその問題、具体的な事例も挙げながら御質問いたしましたけれども、そもそもここにメスを入れるべきだと思うんですね。  今回の事件というのは、校長先生が、教育委員会の職務命令による押しつけと、それからもう一方、部落解放同盟などによる強要と、その板挟みの犠牲になった、そのことはお認めになりますか。
  126. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほども申し上げましたように、原因、背景の明確な結論というものは出ておりませんので断定は避けなければなりませんが、国旗・国歌の扱いをめぐりまして、これを実施しようという立場と、それを反対する立場とが衝突をした、その結果としてこういう事件が起こったということは私どもそのとおりだというふうに認識をいたしております。  そして、その原因、背景の個別の明確なものはまだでございますが、先ほど先生から紹介されましたいわゆる外部からの圧力といったもの、これは、あらゆる機会、あらゆる場において教育の中立性というものは保たれなければいけないわけでございまして、そうしたものがもしあったとすれば、それはあってはならないことであるというふうに考えます。
  127. 林紀子

    ○林紀子君 大臣からも一言コメントをいただきたいと思います。
  128. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 世羅高校の石川先生、亡くなられたことは大変残念であることでありますし、私もたびたび申し上げているように心から哀悼の意を表している次第であります。  そしてまた、今初中局長よりお返事申し上げたように、自殺の原因が本当に何か、その背景がどうかというふうなことについては、なおまだまださまざまな調査が行われているようでございますので、もう少し待ちたいと思っております。  ただ、この問題につきまして、広島県教育委員会として、卒業式での国歌・国旗の取り扱いをめぐって校長が教職員の反対等々に遭って悩んでいたということが自殺の大きな要因となっていることは否定できないと考えている旨を表明したという報告がございまして、その点は我々も、そういう可能性ということに関しては深く考えているところでございます。  大変不幸なことでございまして、さまざまな問題がここに含まれていると思いますが、ただ、私が一つ野中官房長官の発言で繰り返させていただきたいことは、今回の法制化を含めた検討につきましては、国旗・国歌の根拠について、慣習であるものを成文法としてより明確に位置づけることを検討しようとするものでございまして、文部大臣も国会におきまして答弁されておりますけれども、先ほども申し上げたような学校におけるこれまでの国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるようなものではないと考えておりますので、この際、御理解いただきたいと存じまして、一言申し添えることにいたしましたという文言を三月四日発言しておられますので、この点、確認させていただきたいと思っております。
  129. 林紀子

    ○林紀子君 まだ調査中ということで、はっきりしたお答えがとうとういただけなかったわけですけれども、本当に二度とこういうことが起こらないように、この調査というのがどういうことになったのかということは、この場でもきちんとまた御報告をいただきたいということをお願いしたいと思います。  そして、今新聞にも国旗・国歌をめぐっての投書が大変多く載せられておりますけれども、また社説でも取り上げられておりますけれども、その論調は、国民の十分な論議を行うべきだという声が圧倒的なわけです。  私たち日本共産党は、日の丸・君が代は、国旗・国歌としてはふさわしいものではないと思います。だから、何よりも十分な国民的論議を行った上で法制化をするべきだということを提起しました。法制化された場合でも、ここが一番教育の場では重要なわけですが、教育の場と、それから国民一人一人にも強制すべきではないということも明確にいたしました。先生の思想信条の自由を侵すということは、結局、子供たちの思想信条の自由を侵すことにつながる。教育の場への日の丸・君が代の押しつけというのは直ちにやめるべきだということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  130. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。私は教科書の価格の問題について伺います。  この四月に小学一年生になる子供たちは、歌の中にもあるように、桃の花もきれいに咲いて、もうすぐみんなは一年生と、希望に胸を膨らませています。私の子供もその一人です。そして、入学式や新学期に教科書をもらったときのうれしさというのも、多くの方が覚えていらっしゃることではないかと思います。  小中学校の教科書は無償で配付されております。義務教育無償を実現するものであります。ところが、この定価というのが、知ったら驚くほどの安さでございます。  これは中学一年生の英語の教科書ですが、定価が二百九十円。見ますと、カラーの口絵が二十数ページありまして、表紙を除きまして、本文は二色刷りで百二十四ページの合計、そういう状況です。一方、こちらは、同じ大きさで、百十二ページのこの英語よりも少ない大学ノートですが、価格は三百円。けい線以外何も書いていない大学ノートよりも教科書の方が安い、常識では考えられないような安い価格に設定されております。  この価格の低さでは、教科書をつくっている皆さんも本当に大変だと率直に思います。子供たちは、学習が楽しくて本当に身につくような、そんな教科書を期待していると思いますし、また教科書をつくっている出版社の皆さんも、子供たちに喜んでもらえるようなすぐれた教科書を届けるという社会的使命を果たすための努力を続けていると思います。こうしたことからも、教科書の価格を実情にふさわしく抜本的に改善して大幅に引き上げる、そのための教育予算をふやすことが必要だと思いますが、いかがですか。
  131. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私も教科書を何冊も書いた人間でございまして、その際の原稿料は非常に安いものでありました。  しかしながら、これはあくまでも私は、子供たちに対する教育ということをやる人間といたしましては、もう無料でもいいと思いました。ですから、さまざまな人がやはり子供たちにいい教育をするために努力して安くしているんだと思います。決してそれで十分関係者が潤っていると私は思いません。確かに犠牲を強いている面があると思うんですけれども、すぐれた教科書が安定的に供給されるよう、教科書発行者の経営分析をよく見ながら、保護者負担や財政的観点も考慮しながら、適正な価格を設定するよう努力をいたすべきだと思っております。  しかし、一番重要なことは教科書の無償配付でございまして、無償給与制度を堅持していきたい、そのためにどうしても少し財政の上で苦労することがあるということを御理解賜りたいと思います。
  132. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 一方で、やはりいいものをつくるためには、安かろう悪かろうでは、私はこれは今の資本主義の世の中でいかないと思うんですね。  一九九四年の衆議院決算委員会で山原議員が、適正価格の設定に向けて価格のアップを計画的に実現すべきだと質問したのに対して、文部省として、毎年の全教科書の適正な定価改定を図るように努力をしてまいりたいと答弁されて、その結果、一九九五年は三・四%アップいたしました。しかし、その後はまた、一九九八年一・三%のアップ、一九九九年も一・二%のアップにとどまっております。  私、教科書予算について伺いたいんですが、平成十一年度、一九九九年度の予算案では、その額は前年度と比べてどのようになっておりますか。
  133. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 平成十一年度予算は四百二十六億一千三百万でございまして、前年度比五億七千百万の減ということになってございます。
  134. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 私は、こうして教科書の予算が減額されている、もう大変な状況だというふうに思います。今、この抜本的な見直しが必要になっていると思うんですが、この原価計算というのはいつのものかを伺います。
  135. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 教科書の定価の決定方法でございますけれども、これは、教科書発行者の教科書部門にかかわります収支実績、これを、製造原価でありますとか編集費でありますとか人件費、営業費、供給費等のさまざまな構成要素をベースにいたしまして、教科用図書検定審議会で価格を決定する分科会がございますが、そこで専門家の御意見等もいただきながら分析をして、基本的に言うと、教科書発行者の収支をベースにして決めているものでございます。
  136. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 伺った、いつの時点での原価計算かをお尋ねいたします。
  137. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) これは、教科書無償制度発足時以降こういう方法がとられておりまして、教科書無償制度が昭和三十八年度にスタートいたしましたが、その後、今のような形で、定価の変動でありますとか人件費のアップでありますとかという要素をベースにしながら、毎年度アップを図って今日に至っているということでございます。
  138. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 一九六三年といえば三十六年前のことでございます。公共料金でも、郵便はがきは五円から今五十円、十倍になっております。しかし、小中学校の教科書ですけれども、これは当時の昭和三十九年の社会ですけれども、これを学ばれた方はもう五十近くになっていると思いますが、大体口絵だけがカラーで、あとはみんな一色という白黒のものですが、今はもうほとんどがカラーがたくさん使われて、二色という状況になっております。これでも四・二倍程度であります。  小学校家庭科は一番安いというふうに言われておりますけれども、これも口絵でカラーが使われておりますが、あとはすべて二色刷りです。今の家庭科というのは半分がオールカラー、残りも二色、大判になっている、こういう状況になっているんですね。伺いますと、この大判化とかカラー化、それから図もたくさん入れる、写真も入れるというので大変コストが高くなっているというのに、これが当時と同じ原価計算で行われているということです。  今、価格改定率がどのように定められているかお話がございましたけれども、どのような経営の状況のところを調べていらっしゃいますか。
  139. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 私ども、教科書の定価を設定いたします際には、教科書に関係いたします実勢をできるだけ反映するということが必要かというふうに考えております。  そこで、市場占有率と言っておりますけれども、義務教育用教科書全体の冊数に対しましてそれぞれの発行者がどのくらいのシェアを持っているかということ、それから、発行者は教科書だけではございません、いろんな雑誌等も発行いたしているケースがございますので、それでは教科書ということについての正確な単価が出ませんので、会社全体に占めます教科書の売り上げ比率といったこと、それから、同じ教科書の中でも義務教育用と高校用等がございますので、教科書の発行比率といたしまして、教科書の総発行数に対します義務教育用の比率といったような要素、主にこの三つの要素の指標を出しまして、そしておおむね占有している会社をとりまして、そしてそこでの先ほど言いましたような収支の実績を計算して出しているということでございます。
  140. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 それですと、占有率が高くない中くらいの会社というのは反映されないんですね。成り立たないということです。しかも、この原価計算時の小中学校用の教科書の採算部数というのは二十万部とされているんですけれども、とてもこれでは上位二、三種類しか採算がとれないというふうに伺っております。ですから、出版労連からは十万部の採算でどうかということで、新しい生活科では大体採算がとれるけれども、理科、有馬文部大臣も理科の先生でございますが、これでは一・四倍ぐらいにしないとだめなんじゃないか、英語は二倍近くしないといけないんじゃないか、こういう声も出されているわけでございます。  そういう中で教科書をつくり続ける、安定的に子供たちに届ける、学校に届ける取り扱いのお店も年々減っているという状況で僻地とか離島まで一冊残らず届ける、こういう点で、今不況の中で本当に大変になっているというふうに私は思います。  そういう点で、ぜひこの大幅な見直し、価格の引き上げ、これを実情に合わせて進める必要があるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  141. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 大臣からもお話がございましたように、教科書は教育上重要なものでございますので、安定的で豊かな教科書が提供されるということが大事でございます。そういう観点で、この価格の問題、さまざまな要素があるわけでございますけれども、私ども財源の確保には十分努力をしていきたいと思います。
  142. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 ありがとうございました。
  143. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 本年の四月から改正男女雇用機会均等法が施行されます。十三年ぶりの改正でございますが、従来、事業主の努力義務でありました募集、採用や配置、昇進での男女差別が今度は禁止規定に改められております。悪質な違反の場合には制裁措置が設けられております。この男女雇用機会均等法は民間企業が対象ではございますが、この際、国家公務員の実態はどうなのか、その点検をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。  ところで、文部省あるいは文化庁科学技術庁にお伺いいたしますけれども、女性職員、これは行政職のⅠ種の職員採用状況、それから昇進につきましては、これは指定職とそれから行政職(一)の十一級、十級、九級においての昇進の状況というものをお願いしたいと思います。  数字をずっと言っていただくと大変なことになりますので、比較をしたいと思います。昇進の場合には平成元年度と平成八年度の場合、平成八年度というのが一番新しい数字だというふうに思いますので、平成元年度と平成八年度を比較した形でお知らせいただければというふうに思います。  では、採用と昇進につきまして、どうぞよろしくお願いいたします。
  144. 小野元之

    政府委員小野元之君) 文部省本省におきます女性職員の採用でございますが、文部省は女性職員をできるだけ採用しようという観点から従来から取り組んでいるところでございますが、お話ございました平成八年度の行政職……
  145. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ちょっとごめんなさい。  採用の部分は一番新しいもの、そして私が平成八年度と元年度と言ったのは、これは昇進の場合です。
  146. 小野元之

    政府委員小野元之君) 了解しました。  平成十年度のⅠ種職員の採用でございますが、合計十七名でございますが、女性職員が四名でございます。  それから、昇進でございますが、平成元年度、指定職が三名、それから十一級が一名、それから十級が三名、九級が六名でございます。
  147. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 これは何%ずつに当たりますか。
  148. 小野元之

    政府委員小野元之君) 平成元年度は、指定職が〇・三九%、それから十一級が一・三三%、それから十級が一・九〇%、九級が一・三六%で六名でございます。合計十三名、全体で〇・九〇%です。  これに対して平成八年度が、指定職が五名で〇・六九%、それから十一級が二名で二・七四%、それから十級が四名で二・三五%、それから九級が八名で一・六%で、合計いたしまして十九名で一・三〇%でございます。
  149. 興直孝

    政府委員(興直孝君) お答え申し上げます。  科学技術庁の内局におきます女性職員の採用の問題につきましては、現在本省庁に在籍をしております職員の一番古い方と申しましょうか、昭和五十九年度採用の方でございます。この方でございますので、今御指摘の点についての幹部職員登用等々の問題におきましては、現在九級に相当するような年次の方が一人いるところでございます。  平成十年の採用は、十人のうち女性が二人でございます。したがいまして、先ほどお話がございました平成元年並びに平成八年におきますその年度末の女性職員はゼロでございます。  以上でございます。
  150. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、行政職あるいはまたⅠ種職員採用状況というふうな言葉で御質問いたしましたので、そのとおりお答えいただいたんですが、もっと平たく言えば、いわゆる指定職というのは局長クラスというふうに考えてよろしいですね。そして、行政職(一)の十一級、十級、九級、これは課長補佐以上というふうにとらえてよろしいですか。
  151. 小野元之

    政府委員小野元之君) 先ほど五名と申しましたが、この指定職は、本省でございますればもちろん審議官級以上と。それから、国立大学等を持っておりますので、学部長以上あるいは学長等が含まれております。  それから、十一級は御承知のように課長等でございまして、九級が企画官、室長でございます。十級と十一級は課長でございます。
  152. 興直孝

    政府委員(興直孝君) 指定職におきましては、本省庁におきましては先生御指摘のとおり審議官以上、いわゆる局長級、そのようなものでございます。  また、本省の外の研究所におきましては、所長並びにそれに次ぐような職の方でございます。したがいまして、いわゆる研究所の部長職の方についてはこういう指定職ではございません。  なお、科技庁の場合、部長職が二人女性の方がおります。  以上です。
  153. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 例えば文部省の場合、採用が平成十年度十七名中四名というのが、これは応募者が少ないのか、それともどうなのかということなのですけれども、どうなんでしょうか。
  154. 小野元之

    政府委員小野元之君) どの時点で私どもの方に就職・採用の御相談に見える方の場合確定ができるかということがございますけれども、私どもとしては、国家公務員採用試験に最終的に受かった方の中から面接等を行いまして十七名を決めておるわけでございます。  ちなみに、私どもとしては、文部省の職場というのは女性にふさわしいといいますか、女性の能力を大変活用していただくことがより望ましい職場もあるわけでございまして、そういった点も踏まえながら、できる限り女性職員のⅠ種採用についても努めているところでございます。
  155. 興直孝

    政府委員(興直孝君) お答えします。  科学技術行政分野は、ある意味では昔は女性の方にとって非常にバリアの高いところであったのかもしれません。具体的な数字といたしまして、当庁に入庁されました女性の方が、昭和三十四年度一人、昭和五十二年度一人、昭和五十五年度一人、その後昭和五十九年度にいらっしゃるわけですが、その昭和五十五年度までの方は退官をされている次第でございます。  最近の応募者の状況でございますが、この四月に採用される予定の方々につきましては、ちょうど昨年おおむね三百五十名弱の方が当庁の方の門をたたいて、いろいろとその状況について調査あるいは面接をされました。このうち女性の方が四十名強でございました。ちなみに、この三百五十名の中から明年度採用する予定は十名でございまして、うち女性が二人おります。  最近の状況としましては、科学技術に対する関心が非常に高まってきている、このようにとらえてございます。
  156. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 行政職(一)の九級以上の職員に占める女性の割合ということを今お答えいただいたわけでございますが、国全体で見ますと、これは平成八年度でございますが、九千三百四十八人中九十四人、一%でございます。文部省の場合が千四百六十一人中十九人、一・三%ですね。それから科学技術庁が百人中ゼロということになるわけでございます。  この今御発表いただきました数値を大臣はどのようにお受け取りでございましょうか。まあこの辺が妥当かなというふうにお考えでございましょうか。その点も含めまして、今発表なさいました数値についての御感想をいただきたいと存じます。
  157. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私の専門は原子核物理学でございますが、その元祖の一人がマダム・キュリーです。女性です。それから、私が直接研究をしておりました原子核構造論でノーベル賞をもらった一人がゲッペルトマイヤー。もう一人は男です。イエンセンという男、ドイツ人。ゲッペルトマイヤーというのは、私非常に親しくしておりましたが、これは女性です。私が最初に出した博士が女性。今スウェーデンで教授をやっている。  そういう意味で、先ほど興官房長科学技術は女性にふさわしくないという心配をしていましたけれども、そんなことはありません。ただ、どちらかというと実験に強いですね。どちらかというと実験の方が強い。  余計なことを申しました。いずれにいたしましても、女性の方々に活躍していただかなきゃ日本は二十一世紀もたないと思っております。そういうことを感想としてお答えいたしたいと思いますが、これでお答えになりましたでしょうか。
  158. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 なりません。
  159. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 今後とも女性の活躍をふやすべく努力をいたしたいと思っております。これでよろしいでしょうか。
  160. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 まだもう少し。
  161. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) いずれにいたしましても、男女共同参画社会基本法案というものが提出されると思います。こういうことで、今後さらに男女共同参画社会の形成の促進のため、学校教育、社会教育を通じた教育学習の一層の充実を図っていきたいと思っております。女性の方々の御活躍を私は大いに期待しているものでございます。
  162. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私は今、文部省科学技術庁の職員の問題についてお話をしたわけでございますね。だから、今の大臣のお答えですと、もっともっと文部省科学技術庁に女性の応募者が来てほしい、そのためにはそういう教育もしようということなんでしょうけれども、今の現状の職員の割合、私はこの数字を改めて見まして、えっ、こんなに少ないの、私の第一の感想はそうでございます。たった一%。  民間企業での差別といいましょうか、格差の問題が言われておりますけれども、国家公務員の場合には一応平等のチャンスが与えられているというふうに一般では受けとめられておりますし、そうだろうと思うんです。しかしながら、現実の場合には、さまざまな事情があるかもわかりませんけれども、一%というのは、やはり昇進の場合非常に私は少ない割合だと思うのですが、大臣は少ないとお思いになりませんか。
  163. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 少ないと思います。  それから、私自身も大学の教授、助教授にどのくらい女性がいるかということを調査したことがあります。一〇%を超えていたと思いますけれども、そういう意味では随分大学は努力していると思います。それでも少ない。  ですから、そういう点では今後大いに努力していかなきゃならないと思いますけれども、先ほども強調いたしましたように、まず女性の方たちが官庁で活躍していただいたり大学で活躍していただいたりできるように教育からきちっと準備していかなきゃならないと私は思っております。  しかし、今の数字は文部にしても科学技術庁にしても少ない。でも、文部も審議会等々においては女性の活用に大変努力しております。科学技術庁も一人、防災研の部長は女性ですね。そういう努力をしておりますので、今後ふえていくと思います。
  164. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今から審議会については聞こうと思って、早々とお答えをいただいてしまいましたけれども審議会はもう私数字を持っておりますから申し上げてしまいます。  文部省が女性の割合は二二・一%、もし間違っていたらおっしゃってください。文化庁が二四・四%、科学技術庁が一六・五%というふうに承っておりますが、これでよろしゅうございますか。
  165. 小野元之

    政府委員小野元之君) 文部省についてはそのとおりでございます。
  166. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ありがとうございます。  ところで、この数値は国全体の審議会の女性の割合からいけば高いと言ってよろしいと思います、わずかながら。国全体の審議会の女性の割合ですと一八・三%でございます。女性の委員を含まない審議会もまだ八・九%あります。  ところで、国際的な日本の目標というのは三〇%でございます。当面、平成十二年、二〇〇〇年度までに二〇%にしようというのでございますから、文部省文化庁も平均点にちゃんと到達している。ところが、科学技術庁の場合には一六・五%でございますが、これはどういうことでございましょうか。
  167. 興直孝

    政府委員(興直孝君) お答えいたします。  先生御指摘の点の審議会の女性委員の割合でございますが、確かに平成十一年三月一日現在の数字につきましては一六・五%でございます。  私ども、女性の方の委員等への御就任はぜひお願いを申し上げたい、このようにかねて思っているところでございまして、現在、新しく任期を満了されるような方々もございますところ、この四月までにトータル二名の方の女性の就任をお願い申し上げたい、さらにということでお願い申し上げたい、このように考えてございます。  実はこの一六・五%ということについて非常に頭の痛いことは、御案内のとおり、いわゆるポストで委員をお占めになられる方もあるわけでございます。当然、行政を遂行する過程であるわけでございますので、そういう官職指定の方が、そちら側の事情で男性の方が非常に多いというふうなこともございます。私ども、いわゆる官職指定の方を外しまして、それ以外のポストでどの程度女性の方が就任されているかちょっと出してみましたら、平成九年三月時点では一七・五%、平成十年三月では一八・〇%でございまして、この十一年三月十五日現在では一九・三%でございます。先ほど申し上げました、さらに女性の方がふえられるというふうなことを考えますと、二一・一%ぐらいまでにはなろうかと思います。  今後とも、官職指定の問題も含めまして当庁として一層努力していきたい、このように考えてございます。
  168. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 確かに努力をしていただきたいと思います。  科学技術会議では九・一%、男性十名に対して女性は一名しかいらっしゃいません。それから、宇宙開発委員会に至りましては、これは向井さんなんかで大変宇宙飛行士が脚光を浴びているわけでございますが、お一人もいらっしゃらない、〇%というふうなことがございます。  ところで文部省は、私は及第点を差し上げたんですけれども、中央教育審議会、いわゆる中教審におきましては、これはついせんだってまで大臣が会長をなさっておりましたけれども、十九人中三人、一五・八%なんですね。これは文部省の中の他の審議会に比べますと低いのでございますが、これは何らかの理由はございますか。これは一番重要な審議会の一つだと私は思うわけでございますが。
  169. 小野元之

    政府委員小野元之君) 私ども審議会、中教審はもちろん重要な審議会でございますが、それぞれの審議会の役割がございます。例えば、中教審の場合、国立大学の学長先生あるいは高校校長会の会長先生とか、ある程度その世界を代表するといいますか、その分野を代表する方におなりいただくようなところがあるわけでございます。そういった場合におきまして、たまたま女性の方に適任の方がいらっしゃらないというようなこともあるわけでございます。  そういうことはございますが、いずれいたしましても、文部省といたしましては審議会におきます女性の委員の比率を高めるべく努力をしていきたいと思っておりまして、これからも努力するつもりでございます。
  170. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今なぜこういうふうに数字を申し上げたかといいますと、これは科学技術庁文部省の方にもお答えいただきましたように、そういうところに女性がいないというふうな暗にお言葉もあったと思うんです。そのことは今日本の女性が置かれている状況というものを非常に象徴的にあらわしているというふうに思うわけでございまして、数字にこだわったのもそういう意味でございます。  ところで大臣、今、数字幾つか挙げていただきまして、なぜ数字を挙げていただいたかという意味も申し上げたわけでございますが、もう一度大臣の御見解を承りたいと存じます。
  171. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 先ほどもお答え申し上げたことでございますけれども我が国において今男女共同参画社会をつくらなきゃならないということを盛んに言っておりますし、皆で検討しているところでございます。そういう意味で、文部省関係文化庁関係科学技術庁関係それぞれにおいてだけではなく、全日本的にもっと女性の参画を図っていかなければならないと思っております。そういう意味では、審議会あるいは本省の職員等々に積極的に女性を登用していくことが極めて重要であると認識しておりますし、単に重要であると認識するだけでなく、具体的に女性委員、女性職員の積極的登用に努めていかなければならないと思っております。  文部省といたしましては、男女共同参画二〇〇〇年プランというものを踏まえまして、引き続き女性委員、女性職員の積極的登用に今非常に努力をしておりますし、科学技術庁におきましても同じく女性職員の管理職への登用や審議委員への女性参画を進めてまいっているところでございます。どちらの省もどちらの庁も、あるいは文化庁も、それぞれ女性の方たちの御活躍を大いに期待し、積極的に登用を図っていく所存でございます。
  172. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私は今まで、研究者の場合あるいは大学教官の場合などにつきまして、ジェンダーの問題をたびたびこの委員会において御質問させていただいてまいりました。きょうは国家公務員の場合を御質問したわけでございますが、先ほどのお答えの中にもございましたように、文部省は非常に女性にとって能力を発揮しやすいというようなお言葉もございました。ぜひとも機会をぜひ平等に与えていただきたい。どんな能力を持っている人でも、その能力を発揮できるチャンスがなければ、それをみんなに示すわけにはいかないわけでございます。特に科学技術庁に対しましては、これから理科系あるいは数学系、その中で優秀な女性をいっぱい私は存じ上げております。そういった方々に勇気を与えるためにも、ぜひとも科学技術庁は頑張っていただきたいと思います。  ところで、改正均等法によりますと、職業の名称というのに対して男女差をなくそうということも言われているわけでございます。男性しかあらわさない職種の名称だけで募集してもいけないというふうなことも言われておりますし、女性だけをあらわす職種の名称も、女性の職業の固定化につながるということで禁止されるわけでございます。  例えば、ウエートレスと言うときには、やはりウエイター、ウエートレス、あるいはフロアスタッフというふうに言わなければならないということでございますね。保母さんの場合には保育士、スチュワーデスの場合は客室乗務員あるいはフライトアテンダントというふうなことも労働省は指導をしているわけでございます。しかし、神父さんだとか、あるいはホスト、ホステスはこのままでよろしいそうでございます。これは適用除外だそうでございますが、例えばチェアマンはチェアパーソンというふうな形で、これはヨーロッパ、アメリカではチェアパーソンというのはもうずっと使われております。  改正均等法のそういった趣旨、それからまた今申し上げたような具体的な問題、これは教育現場でどのように対応なさる御指導を文部省としてはお考えでいらっしゃいますか。
  173. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 学習指導要領に法律の固有名詞が出るということはないかと思いますが、男女の本質的平等とか基本的人権とかというようなことは、特に中高の社会科とか公民のところで学習することになっております。  そういう学習指導要領の規定を踏まえまして、現在でも、中学校の社会科、あるいは高等学校の公民の教科書には法律が固有名詞で出てまいりまして、その趣旨、ねらい等が載っております。今回また改正されたということでございますので、教科書の書きぶりにつきましては、まずは発行者の判断によるわけでございますけれども、そうした動向を踏まえた記述に変わってくるものであろうというふうに思います。  それから、今幾つかジェンダーの関係で例示されましたけれども中学校の英語の教科書等におきましては、フライトアテンダントとかポリスオフィサーとかというような用語が現にもう使われておるところでございます。
  174. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 英語の場合じゃなくて日本語の片仮名の場合です、今私申し上げたのは。だから、それが教科書に使われる場合には、やはりきちんと注意をすべきだと思います。  時間がなくなってしまいましたけれども、改正均等法では、職場でのセクシュアルハラスメントの防止につきまして、これは事業主の義務ということに規定されていますね。公立学校もこれは対象になります。男性上司による女性教員へのセクシュアルハラスメントというのは規制されますけれども、しかしながら、生徒や学生に対する教員によるセクシュアルハラスメントは規制の対象外ということになります。  現在、いろいろなところで学校におけるセクシュアルハラスメント、あるいはまた高等教育におけるセクシュアルハラスメントの問題というのは非常に大きな問題になっております。そういう実態を踏まえた上で文部省はたしか調査をなさいましたね。セクシュアルハラスメントの防止に対してどのような現状がその調査の結果あらわれておりますでしょうか。
  175. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 小中高校の先生による児童生徒に対するセクシュアルハラスメントにつきましては、その取り組みの状況について、先ほど先生からもお話がございましたように、調査をいたしまして先般公表をいたしました。  そこでは、いずれの県におきましてでもございますが、研修会の際にそうしたことの趣旨を徹底する、あるいはセクシュアルハラスメントにつきましての資料を作成するといったこと、それから通知を発するといったこと、あるいはセクシュアルハラスメントの問題についての児童生徒に対する相談窓口あるいは救済方法等について検討するといった状況、あるいは具体的にそうした被害を受けた場合にはどのように学校が体制をとっているかということでは、ほとんどの学校が養護教諭等を中心に対応しているというような回答があったわけでございますけれども、このような状況が私どもの調査として把握されました。  そこで、これは一般にマスコミ等にも公表したわけでございますが、これを各都道府県、指定都市教育委員会等の共通の資料としてこれからいろいろな機会にその現状をお伝えし、またさらに取り組みを強化するような、そういう対応をしてまいりたいと、こんなふうに思っております。
  176. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 その調査を私拝見しておりますけれども、今は肯定的なお答えだったと思うんですけれども、私の見方ですと、文部省調査の中でセクハラ対策をちゃんとしているというところは全大学の八%にしかすぎないし、短大の場合は一一%、高等専門学校は一八%、いずれも二割未満でしかないわけですね。教育委員会に至っては、教員向けの啓発冊子をつくっているのは東京都と大阪市だけ。学校に通知で指導しているところは大阪市と兵庫県、島根県だけ。そして、児童生徒に対しての配慮すべき指針をつくっている教育委員会はゼロという文部省の結果が出ているわけです。  大学におきましても、大学の中で自発的なそういう対策委員会があちらこちらでできております。特に大学の場合ですと、教授会など内部組織の場合には訴え出ていても握りつぶされてしまうという状況が非常に多いというふうに聞いております。ある大学の女性学の教師がアンケート調査を行ったところによりますと、一九九三年から九六年にかけて、学部学生の七%、大学院生の三四%が何らかの被害を経験している、そういう調査結果も私は持っているわけでございます。そういう実態に対しての対応の仕方というのが、この文部省の調査によりますとかなりまだきちんとしていないということが判明したわけでございます。  セクシュアルハラスメントというのは、特に大学院生の場合には多いというふうに出ていますけれども、泣き寝入りになってしまうとか、自分の指導教官に対して何か文句が言えない、抵抗できない、そういうふうな事情も私はあるというふうに伺っております。  そういうことを踏まえまして、大臣といたしましては、教育委員会が非常に対応していないこと、そして大学の場合もセクハラの対策に対しては二割未満しかしていないという実情を踏まえまして御見解をいただいて、私の質問を終わりたいと存じます。
  177. 小野元之

    政府委員小野元之君) 文部省といたしましては、全体、小中高、大学も含めましてでございますが、人事院でこの四月一日からセクハラ防止についての規則が制定されるところでございます。  文部省といたしましては、これに合わせまして現在訓令の作成を準備いたしておりまして、内部規定をきちんと作成いたしまして研修を充実いたします。それから各機関におきまして苦情相談体制を整備するよう積極的な指導等を行っていきたいというふうに考えているところでございます。
  178. 田名部匡省

    田名部匡省君 最後でありますのでよろしくお願いしたいと思うんですが、私は前回同様、原稿というのがないものですから、前回と同じように質問の通告もいたしておりませんし、議論をさせていただきたいと思うんです。  昨年九月の中教審答申で、だんだん地方分権推進の観点で見直すというようなことを言われておりまして、私も本当にそうだなと、地域の実情に応じたようにやらせてあげることで教育はもっと進むだろうと。特に、三十人学級等も最近いろいろ言われておりますけれども、多いよりは少ない方がいいと思うんです。  ただ、もう既に私の方では三人とか五人とか十人とかという学校も実はあるんですね。ですから、そういう地域の実情に応じたやり方をしていかなきゃならぬ。特に、教員の費用等は二分の一県担で持って、こういうのは一体どうなるのか。あるいは三十人にしたときに教室が大規模校の場合は足りるんだろうかどうか。さまざまな問題がありまして、三十人であることはいいわけですけれども、これはだれも反対しないと思うんです。ただ、実際にやるとなると、すぐできるところもあれば、もう既になっているところもあれば、そうでないところもある。  この辺は、例えば青森県をとってみると、青森、弘前、八戸、規模が大きいところはなかなかそう言われても簡単にいかぬのかなという感じがするんです。  教育も地域の実情に合ったように、だんだんそこへ持っていくにしても、そういうことをやりませんと、ただ一方的に法律をつくってぼんとやれと、こう言ってもできないところがあると思うんです。その辺の考え方をまず伺っておきたいと思います。
  179. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 去年の九月の中央教育審議会において学級編制の弾力的な運用等について提言がございました。そこで、文部省といたしましても現在、今御指摘のような点で、今後の学級規模のあり方や学級編制の弾力化ということについて大いに検討しているところでございます。特に、学校週五日制時代にどういうふうに新しい教育課程の実施も視野に入れてやっていったらいいか、この辺について現在検討を行っているところでございます。
  180. 田名部匡省

    田名部匡省君 もう一つは、スクールカウンセラー、これが文部省から三十人とかそういって決められておるようでありますが、なかなかいないんですよ、地方では。臨床心理学士とか精神科医とか、臨床心理等を専門とする大学の先生か助教授ということになるとそんなにいるわけがないので、校長先生とかすばらしい先生がおるでしょう、もう少しそういう人を認めてあげたらどうかと思うんです。もっともっとOBの先生方を、これにかわることができるような人を、どうでしょうか。
  181. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) この点は、詳しくはまた局長よりお答えいたしますが、現在、心の教室相談員という格好で、校長先生の経験のある方というか、そういういろいろな方を各中学校教育委員会の判断で配置できるようにしてございます。ですから、御指摘の点は、専門家としてのカウンセラーじゃなくても、心の教室相談員という格好で、御経験の豊かな方をお願いするようにいたしております。
  182. 田名部匡省

    田名部匡省君 きょうはスポーツについて少しお話をしたいと思って、ここには大変なスポーツマンばかりおりまして、江本さんはプロ野球の選手だし、馳さんもレスリングでロスのオリンピックですか出場された。橋本委員はもう七回もオリンピックへ出られた。私は苫小牧に就職してアイスホッケーをやっておったものですから、そのころ、お姉さんのだんなが高橋辰夫先生で、国会で同期だったものですから、そんなことで宿舎にもよく見えておったし、腰を痛めたときも、こうして治した方がいいよ、ウエートトレーニングを、負荷をかけて山を登った方がいいとか。自転車のオリンピックへ出ようかどうかと迷っておったときも、自転車の選手が出れなくなればと、やっぱり心優しかったです、彼女は。出れなくなれば困るというのでやめようかというときも、出なさい、力のある者がやっぱり出るべきだと、そういう関係だったものですから。その点で、スポーツをちょっと取り上げてみたいと思うのであります。  先般、文部省予算をさっと見せてもらった。各省のも見ましたけれども海外の調査費というのが結構あるんですね。私は、参考にするのは結構ですけれども日本はやっぱり日本的な考え方でやっていかなければ、先般も大学の問題で文部大臣と少しお話をしたんですけれども、何かというと諸外国諸外国とこう言うんですよね。諸外国でなくて、日本はどうするかということをもっとやっぱり知恵を出す時代なんだろうと思うんです。  この間、慶応の竹中先生から、牛尾治朗さんがこういう話をしておったと。タイタニックが今沈むときに、英国人には、あなた方はジェントルマンでしょう、女性と子供を先に乗せてくれと。それからアメリカ人には、あなた方は誇り高い国民だろうということで説得をした。ドイツ人には、これはルールだからそうやってほしいと。それで、日本人には何と言ったか。みんなでやっているから、そうやってくださいと。これは本当に日本人を見ておった外国人の気持ちだろうと思うんですよね、みんながやっていればいいんだと。何でも横並びだという感じでね。  かつて、七、八年前までは日本は世界に冠たる教育立国だと、こうやって褒められて私たちも得意になっておったものですよ。今ごろは、その世界に冠たる教育国がどこへ行っちゃったか、随分さま変わりしたなと、こう思うんです。  せっかく立派な文部大臣が誕生して、こういう機会にやっぱり我々国民のアイデアで、発想でやろうという雰囲気をつくる必要があると思うんですが、どうでしょうか。
  183. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) お答えいたします。  先生おっしゃるように、スポーツにおきましても国際的なルールというのはもちろんありますから、そういう国際的な視野というのは大変大切なことでございますが、それぞれの国の文化を背景としてそれぞれの国のスポーツというものも発展してきておりますから、そういったことも十分頭に置きながら育成というのを図らなければいけないというふうに考えております。
  184. 田名部匡省

    田名部匡省君 スポーツばかりでなくて、日本全体がそういうふうに何か決められたことで何でもやるというのでなくて、やっぱりそれぞれの学校が、地域が、この間も農業問題でお話をしたんですが、雪の降る地域、ああいう地域というのは、都会と同じように幼稚園でも保育所でも介護でもやれといったってできっこないんですよ。だから私は、地方分権というのは本当に大事だな、こう思っている一人なんです、スポーツもそうであります。  特に、日本のスポーツはどうしてこんなになったんだろうと、こう思っていろいろとソウル・オリンピックが終わったときに私の私案というのを出したんです。それは、指導者と施設、それから一貫した指導体制をどう確立するかということは非常に大事だという田名部私案というのを出して、その後文部省もそのことで少しやってくれておるんですよね。中にはずっと入っていますよ。ただ、やっぱり本気でやろうとするのでないとなかなかうまくいかない。  特に申し上げたいのは、日本学校スポーツに依存し過ぎておるんですよ。諸外国は年齢刻みですよ、七歳・八歳、九歳・十歳というように二年刻みで、クラブチームなんです。学校教育というのは、この間も言ったように、学校の中で、教室の中でも指導をするし、体づくりのためにはどういうことをやればいいかということは学校でやる。  そして、本当にサッカーをやりたい子供、野球をやりたい子供、レスリングをやりたい子供は学校が終わったらそのクラブチームへ行って、二年刻みの組織をつくって、二年刻み同士でやらせてやらないと。スポーツ少年団というのがあるんですけれども、六年生と一年生が一緒では、これはだれもやらなくなっちゃうんです、おもしろくないから。一年、二年生同士でやらせておくと、下手は下手同士で楽しむんです。まずそこからスタートさせなきゃいかぬ、私はそう思う。  私は青森県のスポーツ振興審議会の会長をやっておるんです、もう二十年ぐらい。もっとなりますか。盛んに今これを中体連と高体連に投げかけているんです、そうしなきゃだめだって。だから、外国にアイスホッケーを派遣するときには、ちょうど中学校一年、二年が二歳刻み。三年と高校一年生なんです。大会に参加させるにも何も戦いようがないんです、外国は大体そうなっちゃってますから。日本だけがそういうことをやっているんです。  そして、試合というと、中体連でも高体連でも年間に五、六試合です。春の大会、何とかかんとか。カナダの子供たちはシーズンに四十試合やるんです。だから、きょう負けてもあした頑張ろうというのができるのに、日本は全部トーナメントなんです。負けるところはいつも一回戦で負ける。全部やったって六試合なんです。  強いのは四回ぐらいやるんです。だから、どういう現象が出てきたかというと、みんな強いところに優秀な選手は行きたがるんです。何ぼバスケットがうまいといったって、一回戦で負ければもう将来大学も入れなければ日本リーグにも参加できない。それでどこに行くかというと、みんな能代工業高校へ行っちゃうんです。日本のトップ。だからずっと強いでしょう。だから、スポーツというのは楽しくて、やっておもしろいような仕組みをつくってあげないと。  ゲートボールだってそうでしょう。何人かで組んでやるんですから、下手なのと一緒にチームを組んだら、一人をみんな寄ってたかっておまえやり方悪いってやっているんです。やめますよ、みんな。  だから、今言うように、そういう仕組みをどうやってつくるかというのは、文部省がある限りはなかなか。学校スポーツはそれはやっていいですよ。しかし、本当に一流を目指したいという者をどうやって救うかということを、金もかけるし組織もつくり直さなかったら、これはできないと思うんですが、どうですか、局長
  185. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) まさにおっしゃるとおりでございまして、二〇〇二年より学校完全週五日制になります。部活だけに頼っていいかということが問題なんです。地域社会を育てなきゃいけない。ですから、部活の方が少し時間が短くなる、その分地域社会に肩がわりをしていただかなければなりませんので、先生の御指摘のような地域社会のスポーツ振興ということを図っていかなければならないと文部省考えております。
  186. 田名部匡省

    田名部匡省君 私は、指導者がもう一番大事だと思うんです。日本には指導者、例えばコーチ、トレーナーを育てる学校がないんです。鹿屋はあのときはこの発想でやったんです、昔。ところが全然そういう者は出てこない。  なぜ指導者が大事かというと、外国の指導者というのは物すごいんです。既存の大学に私は提言したんです。コーチ、トレーナーの専門の科をつくって、各競技団体のトップの連中はそこへ行って四年勉強する、それで資格を取ったら専門職になりなさいと。さっきはいろんなところにお金がどうのこうのと言ったが、全く我々はボランティアなんですよ、一銭も取らずに一生懸命選手を育てているんですから。幾らかもらってやっているのではない。しかし、それでは育たないんです。ですから、スポーツ振興基金をつくって有償のコーチを育てなきゃだめですというのが私の前からのねらいであれをお願いしてきたんです。そしてその人たちが、レスリングはレスリング、バスケットはバスケットというふうに全国のレベルで育てればいいんです。教えていけばいい。  私がなぜこんなことを言うかというと、世界選手権のとき、札幌でやったとき私は監督でした。カナダからトレーナーが来てくれたんです。まあびっくりしました。もう日本とこんな差。それから、私が監督時代も、カナダのオリンピックの監督でファーザー・バウワーという神父さんが監督だった。それから、札幌オリンピックのとき私のコンサルタントコーチでロシアのニコライ・カルポフというのが私に三年ついてくれた。この二人を見たとき私は、ああ、もうこれだけ差があっては日本を強くできないなと思った。監督以上に選手は伸びないですよ。だから、監督の資質をいかに高めるかということが大変大事なんですが、その点がまことにお粗末。どこでも学びようがないんです。  これをどうやってつくっていくかということを、考えがあったらひとつ答えてください。
  187. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) スポーツを振興していくに当たりましては、競技スポーツそれから生涯スポーツ、この両面にわたりましてすぐれた指導者を養成し、なおかつ確保していくということが大変重要であるということは先生おっしゃるとおりでございます。  今、文部省の方では、先生も御承知のように大臣認定制度、これで指導者の養成ということを確保しておりまして、これまでに養成された指導者数は現在約八万九千八百人に上っております。これは競技スポーツ、生涯スポーツ、両方の数字でございますが、これでもまだ人数的に不足しておりますし、かつ、その取得した人の活用という点について見ましても十分とは言えないというふうに私どもは思っております。この点についてはさらに力を入れて充実をしていきたいと考えております。  それから、大学で専門的な指導者を養成していくという点につきまして、現在、二十六大学それから九大学で体育学部あるいは教育学部などを中心にそういう指導者の養成というものをやっていまして、大体入学定員で言いますと毎年七千人の定員になっております。こういった人たちが輩出をされまして資格を取得していくという仕組みになっておるわけですが、問題は、場の確保といいますか、その人たちが出て働く場がなかなか確保できないという面がございます。これは主に生涯スポーツの観点でございます。  それから、先生おっしゃったように、より専門的な人の養成というものも、これはやはりスポーツ団体の方の声を十分聞いて、我々としても大学なんかと連携をしながらさらに深めていかないといけないというふうに認識をいたしております。
  188. 田名部匡省

    田名部匡省君 時間がありませんから中途半端で終わるんですが、例えばJリーグの監督、外国から監督を連れてくることが多いんです。いかに日本にいないかということなんです。個人競技は結構そこそこ戦うんです、スピードも強いしジャンプも強い、レスリングも強い。そうでない競技は絶対強くなれない。やっぱり指導者なんです。一人で頑張れるものと教えていかなきゃならぬ競技と全く違うんです。ですから、本当にプロを育てなきゃだめなんです、農業でも何でもプロを。それを一般的にばあんとやったって、まあ学校の先生には申しわけないけれども、いろいろ部活でバスケットだアイスホッケーだってやっているけれども、私は見えているんです。全くこの程度の指導では強くならぬなと思う人が多過ぎるんです。  もうきょうはこれ五十分ですから終わりますけれども、国の組織のあり方も、厚生省は厚生省、労働省は労働省で体育館を建てたり競技大会をやったり、もうばらばらなんです。やらされるのはそれこそそこの県の体協が全部手伝うんです。これはひとつ一本にして、これだけ子供からお年寄りまでスポーツをやるこの国に、本当は行政改革でなかったらスポーツ省をお願いしたいところだけれども、それをどうやるかというのは、これは本当に詰めてもらわぬとだめです、ばらばらにやられたら。  私は、今度身障者のアイスレッジのホッケーとスピードの会長になったんですよ。貸してくれないんですよ、リンクを。穴をあけられるというので。それは厚生省ですから、今度は。私はアイスホッケー連盟の副会長をやっていますから、今、日本の。私が会長になったと言ったらみんな何と言ったかといったら、いや、困ったなと、言われたら手伝わないというわけにいかぬ、貸さないというわけにいかぬから、おい、どうしようかと。それで、結局動き出したんです、しようがないから。  事ほどさようにやることが余りにもばらばらでやっておる。この問題は私はこれからもっとやりますけれども、きょうはいっぱいあったんですけれども、二十分というのは本当に言わない間に終わっちゃうものですからまことに残念です。きょうはもうお答えは要りませんけれども、本当は一時間ぐらいじっくりやらせてもらえれば、わかったと、そうしなきゃだめだと思う話をしたいと思ったんですが、大変残念ですが、次の機会にやらせていただきたいと思います。  きょうはありがとうございました。
  189. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 以上をもちまして、平成十一年度一般会計予算外二案中、総理府所管のうち日本学術会議科学技術庁び文部省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会