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1999-06-08 第145回国会 参議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月八日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  六月八日     辞任         補欠選任         小川 敏夫君     藁科 滿治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         野間  赳君     理 事                 岩永 浩美君                 三浦 一水君                 和田 洋子君                 須藤美也子君                 谷本  巍君     委 員                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 佐藤 昭郎君                 中川 義雄君                 長峯  基君                 森下 博之君                 小川 敏夫君                 久保  亘君                 郡司  彰君                 風間  昶君                 木庭健太郎君                 大沢 辰美君                 阿曽田 清君                 石井 一二君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    政府委員        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省畜産        局長       本田 浩次君        農林水産省食品        流通局長     福島啓史郎君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        食糧庁長官    堤  英隆君        林野庁長官    山本  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 威男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○食料農業農村基本法案内閣提出衆議院  送付) ○委員派遣承認要求に関する件     ─────────────
  2. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  食料農業農村基本法案を議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 三浦一水

    三浦一水君 自由民主党の三浦一水でございます。  今回、新しい農業基本法を設立するに当たりましては、昭和三十六年に制定されました選択的な規模拡大、そしてまた他産業並み農業所得を追い求めてきた現行基本法にかわっていくというものであります。二十一世紀を展望しながら、新しく三十六年ぶりに生まれ変わろうとしている今の状況でございます。  それにしましては、若干マスコミ等に見られます、象徴されます国民関心はいかがかなと思う向きもあるわけでございますが、なかんずく農家のこれに対する関心というものは非常に高いものがございまして、地元を中心とし、場所を問わず、このことがどうなるんだという心配と、そして大きな期待とを私も感じながら、今日までこの問題の議論にも参画をしてきたところでございます。  そういう中で、農家は戦後の非常な食料難の中で、国の政策に基づき食料増産に対して大きな役割を果たしてきたのは周知の事実でございます。その後におきまして、三十六年に基本法ができて、選択的な生産拡大といったような、時代を背景とした方針を打ち出されてきたわけであります。それにも農家は沿ってまいりました。その後、状況の変化の中で、また米の過剰基調という状況の中で、減反政策にも農家は従順に反応し、国を信じ今日まで来ている。これが我が国の戦後の農政一つの大ざっぱな流れではなかろうかなと考えております。  しかし、農家のその受けとめは今日どうなんだろうかということを考えますと、本当に我々は国の政策には従順に従ってきた、忠実に食料安定供給に努めてきた、その役割も果たしてきたという思いがあると思います。  しかしながら、農業という業態を通じて、兼業は別としまして、本当に十分な他産業並み所得はそのことで確保できてきたかというと、そうでもない。それらのことを反映しまして、農家の表情の中には現在非常に沈痛な気持ちがあり、その中で、非常に心配も持ちながら、この新しい基本法制定期待しているという状況ではなかろうかと考えております。  二十一世紀における食料農業そして農村あり方農業そのものに加えて、食料そして農村あり方を積極的に考えていくというこの基本法は非常に大きな意義があるかと思っております。  現行農業基本法のもとにおける各種の施策と、あるいは農業基本法そのものに対する評価があって初めて新たな発想や観点が生まれてくるべきだと私は考えております。現行基本法につきましては、農林水産大臣主催懇談会として農業基本法に関する研究会というものが数年前に設立され、その中でいろいろな評価もなされているようでございますが、政府としての公式の見解というものは、総括したものはないやに伺っておりますし、私もそう受けとめをいたしております。  衆議院でもいろいろ議論はされたところでありますが、まず農業基本法下における農政に対する政府自身の御評価と、そしてまた現行農業基本法に対する政府総括的な見解を一番目に求めておきたいと思います。
  4. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の三浦先生の御質問でございますが、先生指摘のとおり、昭和三十六年からスタートしました現行基本法は、時代高度経済成長ということで農村社会生産条件を他産業並みにしていこう、あるいはまた生活水準を他産業並みにしていこうということで制定されたわけであります。  具体的には、生産政策あるいは価格流通政策構造政策といった三本柱から成り立っておるわけでございますが、生産政策につきましては、いわゆる米麦中心から他作物、需要が見込まれる畜産物、果実、野菜等重点を移すというよりもそちらの方も重点にしていこう、それからまた、いわゆる選択的規模拡大ということで、総生産自体増大させていこうと。  また、価格流通政策につきましては、実は消費者の可能な負担の範囲内で価格を安定させるような機能期待いたしましたけれども消費者ニーズというものが的確に生産者サイドに伝わっていない、したがって生産者消費者との間に密接な情報のやりとりがなかったと言わざるを得ないという問題点があると思います。  また、構造政策につきましても、経営規模拡大ということによってコスト削減あるいは合理化ということを目指したわけでありますが、先ほど申し上げた、日本全体の経済が成長していく中で、日本の一戸当たりの面積は非常に少ないわけでありますけれども、しかし地価が農地においても上昇したということで流動化が進まなかった。手放すよりも資産保有をしておこうというようなことで、北海道が三・六倍に規模がふえたということでありますけれども北海道以外では一・二倍ということで、所期の規模拡大目標を達することができなかったということでございます。  その結果、生活水準につきましては、いわゆる勤労者世帯を上回るような状況になったものの、生活環境については、いわゆる生活インフラについては依然として都市に比べてまだまだ低い。それから、農業生産性向上はいたしましたけれども、他産業がもっと伸びたものでありますから、格差の是正には至っていないというのがこの農業基本法における総括であります。  さらに加えますならば、現在、農政においても非常に重要な、いわゆる環境を初めとする多面的機能の問題等々についても当時は予測し得なかったような事態が幾つも出てきておりますので、そういう意味で、この基本法ではもう対応し切れないということで、本日から食料農業農村基本法案の御審議をお願いしているということでございます。
  5. 三浦一水

    三浦一水君 今、大臣答弁にありましたけれども、いわゆる選択的規模拡大そして他産業並み農業所得実現ということについては、現行基本法の実施の中で十分に得られなかったという総括だと受けとめさせていただきます。  その面について、このような文言は新しい基本法案の中には見られないと私は思っておるわけでございますが、これらの問題としては、新しい基本法のもとでの取り組みの中でも十分に尊重され、今後も実現をあきらめてはならない問題ではなかろうかと思います。  その点、大臣の決意も含めまして、もう一言御所見を賜れればと思います。
  6. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現行基本法における農業重要性、あるいはまた農業者の皆さんの御努力に報いるような施策の推進、これはもう新法におきましても当然最重点の柱の一つでございます。  二条から五条まで四つ理念というものがあるわけでございますが、まず食料というものを冒頭に持ってきたということは、さっき先生がお話しになりましたように、つまり国民全体にとって非常に重要な法案であるということをまず何としても御理解いただかなければならない。将来的に非常に不安な世界の食料需給状況を考えますと、安定的な食料供給というものが国民全体にとって不可欠であるというのが一点目であります。  それから二点目としては、先ほど申し上げましたように、いわゆる農業農村の果たす多面的機能役割というものがこれからますます重要であるということ。  そして、三番目が農業の持続的な発展、これは基本法流れの延長線上にあると言ってもいいのかもしれません。  それから、四点目が農村の振興ということです。  簡単に申し上げますならば、農業基本法というのは、農業者あるいは農業生産活動というものに着目をした基本法であったわけでございますけれども、新しい基本法におきましては、まず国民全体にとって必要不可欠な食料というものを国内生産基本としてといいましょうか、若干修正言葉が入りましたけれども国内生産中心になって備蓄と輸入とでやっていく。そしてまた、多面的な機能農業農村は担っているんだ。それから、面的に農業農村地帯発展、あるいは農業維持というものを、持続性のある農業というものをやっていくんだということで、今回の基本法というのは、ひとしく国民全体に意味のある施策を遂行していく、そしてまた業として、あるいは人だけではなくてその空間、地域にも着目した形で国民的なメリットのある農業農村地帯発展のためにやっていこうと。  そのほか、国際貢献とかいろいろありますけれども、二条から五条までの四つ理念前提として、それにかかわりのあるものを含めて総合的に、単に農業農村地帯だけの法律というよりも国際的にもたえ得る、そしてまた国内全体にかかわりのある基本法としての位置づけというふうに御理解をいただきたいと思います。
  7. 三浦一水

    三浦一水君 基本法というものは、農業基本法にかかわらず、ほかの分野におきましても本来抽象的な性格であると考えております。現行農業基本法においても、専ら国としての姿勢がどうであるか、意思がどうであるか、あるいはそのときの政治経済状況、これらのものに大きく影響されながら個々政策が実施されていくということではないか、またそのような評価であります。  このことを踏まえ、新農業基本法は、機動的な政策運営が可能となるように、農業基本法に比べてややもするとより抽象的で政策体系も不明確だと見る向きもあるわけでございます。また、非常にうがった見方もできますけれどもWTO交渉のために、あるいは現実施策の指針たり得なくなったとされる農業基本法を清算しながら、平成四年に農林水産省が打ち出されました新農政、「新しい食料農業農村政策の方向」、これらの考え方に沿った新基本法制定と見る向きもあるわけでございます。  そこで、もう一度重ねてお尋ねをしたいと思うんですが、現行農業基本法に対する総括を踏まえて、今新しい農業基本法制定する理由は何かということについて改めてお尋ねをしておきたいと思います。
  8. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、やはり安定的に国民食料を供給する義務がまず国家としてある、その責務を果たしていかなければならない。これは平時においてはもとよりでありますけれども、不測時においてもできるだけきちっと食料国民に供給していかなければならないということが大前提にあります。  そして、当時は想定し得なかった環境の問題あるいは水の涵養の問題、景観の問題、さらには農村における貴重な財産であります伝統文化等の承継、さらには、特に都市子供たちを初めとする人たちが自然の大切さあるいはまた自然への理解というものを深め、小さいころからその大切さあるいは実態というものに触れていただくことがこれからを担う子供たちにとって非常に大事であろうというようなこと等々、これから推し進めるべき農業政策だけではない、農業の果たす多面的役割というものを当時は想定し得なかった。  また、国際的な観点からいいますと、やはりこれから食料と人口とのアンバランス、食料の方が当然不足してくるのではないかというような予測に対して、我が国としても貢献すべきことがあるという前提条文がいろいろと書かれておるわけであります。  先生指摘のように、あくまでも基本法であり、このようなことごとを四つ理念を土台としまして書いてあるわけでありますから、この文章だけでは確かに抽象的というふうに御指摘なさるわけでございますが、これに基づいて実体法、さらには基本計画というものをつくって、そしてそれによって現実にいろいろな目標を立てて、そしてそれを毎年毎年、国会で報告し、あるいはまた基本計画等国会でもいろいろと御論議をいただき、実体法基本計画とで進めていく。あるいはまた、農業者だけではなくて消費者、さらには地方自治体、経済界、あらゆる方々がひとつこの目的に向かって一致団結といいましょうか、一体となってこの目的を達成していかなければならないということでございます。  そういう意味で、新しい基本法というものは、これからの二十一世紀農業者農村に住む人々が自信と誇りを持ち、そして国民が安心して食生活を享受できるというような極めて大事な、将来に向かってもたえ得る基本法であるというふうに確信をしております。
  9. 三浦一水

    三浦一水君 大臣も御認識ありましたように、基本法が本来抽象的である、その時々の政治経済状況によっても影響を受け、また国の姿勢というものが最も問われるのではなかろうかということであります。どうぞ、成立の折にはそのようなことを十分に踏まえながら今後の農政運営に責任を果たしていっていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。  次に、国内農業生産をどう位置づけるか。国内農業生産、この基本法原則につきましては、いろいろと食料農業農村基本問題調査会中間取りまとめ最終答申、あるいは農政大綱議論をされてきたところでございます。国内農業生産基本位置づけるという基本的な考え方中間取りまとめ最終答申に沿ったものであると私は考えてまいりました。そして、衆議院においてまさにここのかかわり部分修正をされたわけでございますが、若干その経過を振り返ってみたいと思います。  まず一点お伺いをしたいんですが、農政大綱に見られました、可能な限りその維持増大を図るという視点が抜けたということがあったわけでございます。これについて衆議院においてもいろいろ議論をされてきたところでありますが、改めてその視点が欠落したという理由についてお尋ねをしたいと思います。
  10. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生指摘のように、素案においては国内農業生産維持増大を図るという文言であったわけでございますが、最終的な政府案といたしましては「国内農業生産基本とし、」ということで、衆議院で御審議をいただいたわけであります。非常に乱暴な言い方をすれば、御趣旨は十分この文章で読めるのではないか。維持増大がなぜ消えたのか、なぜ入れないのかという御質問に対しては、極端に言えば、維持であればいいのかとか、あるいは少しでも、〇・〇何%でもふえれば増大ではないか、だから基本ということの中にそれも含めたもっと大きな意味が定性的にあるんですよということを私自身は御答弁をしたわけでございます。  しかし、最終的には「国内農業生産増大を図ること」ということで、定性的というよりも定量的といいましょうか、とにかく右肩上がりでやるように努力をせよということになりました。これは、その維持増大を図ることを基本としという中には国内生産基本とするということが当然読み込まれていると私の立場からまた同じようなことを言わざるを得ないわけでございますが、御質問されている方の趣旨も我々の考え方基本的には一致している中での文言修正でございました。  したがいまして、各党が御協議いただいた上での衆議院での文言修正でございますので、内容的にはどちらがより強い意味を持つのかということは、正直言っていろんな方の話を聞いていても感じ方の問題じゃないかとすら思うわけでございます。  いずれにいたしましても、国内農業生産中心になって、そしてこの低い自給率を少しでも上げていくんだという意味では我々と衆議院の御議論とは一致をしておるというふうに考え、最終的には院の御判断で修正をされたということでございます。
  11. 三浦一水

    三浦一水君 昨年の九月十七日の最終答申中身では、その部分について、国内農業生産基本とし、できる限り食料生産維持増大を図るというようなことではなかったかと思っております。それが農政大綱では、先ほど申しましたとおり、若干これについては修正に至るまで紆余曲折だなという感じがしております。  ただ、私がぜひ期待を申し上げたいと思うのは、昨年の最終答申中身が出ましたときに、本当に国民一つ合意として、あるいは国民に対するさらなるアピールとして、この国内農業生産基本とするという非常に明快な一線が引かれたことを最も私はその当時評価をいたしました。いろんな取り組み議論をしてきて本当によかったなという思いを率直に持ったわけでございます。  私は法律家ではございませんので、感じ方等々もいろいろさまざまにあるところかと思いますが、この中で国内農業生産基本であるという関係から、その増大を図ることが基本であるとすることとは、大臣もおっしゃいましたように、少し意味合いが違うのではないかと感じております。それが、この基本法が長く長く生きていく中で弱まった意味解釈をされて運用がなされていくならば、私は甚だ残念な結果になりはしないかと思っております。実体法への取り組みも含めて、ここは今後非常に永続性のある、継続性のある政府の確固たる姿勢が私は求められるところだろうなと考えております。  率直に私は弱まったという気持ちを個人的に持っておるわけでございますが、そういう意味も込めまして、大臣、もう一度御所見がありましたらお願いを申し上げたいと思います。
  12. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 「国内農業生産増大を図ることを基本とし、」ということで、弱まったとは私どもは考えておりません。  それから、もう一つ修正点の十五条の方で、「自給率目標は、その向上を図ることを旨とし、」ということで、とにかく今のこの低い自給率を上げていかなければならない、私自身衆議院での答弁で、現状は国内生産基本になっていないと言わざるを得ないということを申し上げておるわけでございますので、そういう意味で、先生の御趣旨も十分この条文の中で読み込めると思っておりますし、また具体的な施策におきましても、先生の御趣旨を体した形での具体的な施策、特に自給率設定目標についてつくっていこうというふうに考えております。
  13. 三浦一水

    三浦一水君 重ねての話になりますが、自給率とのかかわりで見ましても、自給率が結果的に上昇しないという状況が続いたといっても、この内容であればやむを得ずという解釈も成り立つのかな、そんな読み方もできるのではないかと思います。  そういう意味で、私が最も具体的に心配をしておりますのは、いわゆる今回明確な姿勢を持って食料安全保障の面で果たす農業役割ということを位置づけし、あるいは多面的な機能ということを位置づけし、国民理解を求めるということであり、さらに次期WTO交渉に向けまして、この国内農業生産基本原則は対外的には強い国民合意に基づく我が国アピールだと私は受けとめてきたわけであります。  このような、今後具体的に我々が政策的に取り組みをしなければ、あるいは国際交渉取り組みをしなければならないことに影響があってはならないというのが私ども最大心配であります。その点、御見解があれば個々にお聞かせをいただきたいと思います。
  14. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回のこの新しい基本法は、将来にわたって日本生産者そして国民が安心してそれぞれ生きていくための施策理念法であるという位置づけであると同時に、国際的にも今まで以上にはっきりとしたかかわり合いを条文の中で決めておるわけであります。  時あたかもWTO交渉がこれから本格化していくという中で、これは決して我が国だけのひとりよがりの法律ではなくて、これは国際的にも十分通用する法律であるというふうに考えておりますが、交渉でございますから、それぞれの国の立場があるわけでございますので、我が国といたしましては、国民的合意前提といたしまして、諸外国とも連携をとりつつ、この法律が国際的にも正当化されるようにさらに努力をしていかなければならないと考えております。
  15. 三浦一水

    三浦一水君 ありがとうございました。  再三申し上げますが、基本法運用に当たりましては、実体法を十分に把握しながら、国が確固たる姿勢を持つということに尽きるかと思っております。その姿勢をしっかり持っていただきながらこの点につきましてもお取り組みをお願い申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。  自給率を今後上げていこうということであります。本当に数ある先進国の中で断トツに低い、断トツに低いというのは言葉の使い方が適切じゃないかもしれませんが、五〇%を割る自給率を誇る我が国であります。この点は、本当にこの国の持てる農地というものに限界があるということが最大理由かと思っております。  しかし、この特殊な事情は、WTO交渉の場でもぜひ、事情事情として、国を理解してもらうことは我々人間を理解してもらうことと同じであります。その条件を変えることはできないんだという姿勢でしっかり臨んでいただきたいと思います。  さはさりながら、農地の面から見ていきますと、今後確保していくべき農地面積を明らかにしながらこの基本法に基づく施策の展開を図っていくべきだろうと私は考えております。基本法に基づきまして基本計画というものがこれから夏に向けて取りまとめをされていくやに聞いておりますが、農地面積ということについてはその中に明記をされていくのかどうか、まずその点についてお尋ねをしたいと思います。
  16. 高木賢

    政府委員高木賢君) 農地面積についてのお尋ねでございます。  基本計画食料自給率目標を定めるということにしておりますけれども、その場合には、全体のカロリーベース目標だけではなくて、主な農産物につきまして品目ごとに品質やコスト面などの課題を明確化した上で、課題が解決した場合における到達可能な水準、これを生産努力目標として策定することにいたしております。  その中で、農地面積につきましても、品目ごとにどの程度の作付面積が必要なのかということの指標といたしまして、基本計画の中で農地面積の数値を明らかにしていく考えでございます。
  17. 三浦一水

    三浦一水君 関連して、食料農業農村基本問題調査会は、優良農地の確保に向けて農地確保方針の明確化と公共の財であることの認識の徹底と農地の適切な利用規制を求めておりますが、この点について御見解をお願い申し上げたいと思います。
  18. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) たしか基本問題調査会の答申の中に「計画なければ開発なし」というふうなくだりがあったと思います。  私どもは、この基本問題調査会の答申を受けまして、現在、衆議院に農振法、いわゆる農業振興地域の整備に関する法律の改正案を提案いたしております。その中で、国として農用地の確保に一体どういう方針で臨むかということを、これまでは都道府県、市町村段階の計画しかございませんでしたので、国としての基本的な指針をきちんと定めるということを盛り込ませていただいておりまして、今、官房長の方から答弁がございましたように、基本計画と農振法の改正による国の農地の確保に関する指針、この二つが両々相まって優良農地農地の総量が確保されるというふうな方向で臨みたいと考えております。
  19. 三浦一水

    三浦一水君 我が国の現在の農地面積は五百万ヘクタールをちょっと割るという状況と伺っております。また、穀物飼料等を海外からの輸入に頼っているという現状の中で、海外の農地使用分を換算すると一千二百万ヘクタール、我が国農地の二・四倍の農地を海外に借りているという状況が続いているやに聞いております。  農地の確保は絶対条件でございます。今それぞれお二人の局長さんからお答えをいただきました。ぜひ農地の確保が具現化できるように施政をお願い申し上げたいと思います。  次に、担い手の対策についてお尋ねをしたいと思います。  担い手対策を推進していく上で、最低限確保すべき新規参入者の目標値をやはり明らかにしていかなければ、農地ももとよりでございますが、今の農業就業者の高齢化の状況、そして一方で、最近ではやや上向きになってきたやの報道もあっておりますが、新規就農者の微増という状況もあるようでございます。しかし、ここは最も国民心配も高いわけでございまして、食料の安定的な供給という面では農地と相まってこの面が欠くことができないわけであります。であるならば、具体的な数値を持って政策の展開を図っていくということが最も肝要かと考えております。それらを踏まえてお答えをいただきたいと思います。
  20. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) お話がございましたように、我が国農業が持続的な発展を続けていくというためには、次の世代の農業を担っていただきます新規就農者につきまして、農家の子弟の皆さんはもちろんなんですけれども都市で育てられた青年の方とかほかの産業から農業へ参入される中高年齢者の方々、いろんなルートから幅広く確保していくということが大切なことではなかろうかと考えておりまして、いろんな施策を講じているわけでございます。  その中で、今御質問ございましたのは新規就農者の目標値をどうするかというお話でございます。  今後、新しい基本法のもとで望ましい農業構造の全体の展望を示すということになっておるわけでございますが、現時点ではその具体的な内容がまだ確定をいたしておりませんで、きちっとしたことを申し上げるのはお許しを願いたいと思いますが、私ども、先ほどお話をしましたように、新規就農者の確保水準につきましても、こういう全体の展望、見通しをつくっていく中で、お話がありましたようなことも念頭に入れながら、関係の部局とよくよく相談をしてまいりたい、そういうふうに考えているところでございます。
  21. 三浦一水

    三浦一水君 当然、担い手対策の中では新規就農をどう支援していくかという具体的な課題があるわけであります。今、資金的な対策が施されております。私は、いろいろな状況を見聞きするに当たり、これで十分かなと思う面が強うございます。十分な資金がまず新規就農者、なかんずくUターン的な農業者、土地の所有がなくして農業に入ろうという方々に足りているかどうか、まず御認識をいただきたいと思います。
  22. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 新規就農者が円滑に就農されるということを支援するためにいろんな資金措置があるわけでございますが、無利子の資金制度でお話をいたしますと、三つほどございます。一つは、なかなか新規就農の方は技術が身についておられない方が多いということもございまして、技術習得のための就農研修のための資金。それから、自分が実際に就農するところがどういうところでどこが適当であろうかといろんな調査をされたり、場合によっては家族で引っ越しをされたりというようなこともございますので、そういう準備のための資金。それから、実際に経営を始められるということになりますと相当程度の機械なり施設のために投資が必要でございますが、そのための経営開始資金。大別して三つほどの資金が用意をされております。  若干細かくなって申しわけないんですが、御質問も十分であろうかというお話がございましたので、金目で御紹介をいたしますと、就農研修のための資金につきましては、県の農業大学校で研修をされるという場合は月額五万円、それから実際に農家にお入りになって研修をされる場合には月額十五万円というような資金が用意されております。それから、就農先の調査等の資金としての就農準備資金、これは二百万円。それから、実際経営を開始される場合の開始資金、認定就農者になられた場合には二千八百万、そうじゃない場合は二千三百万という貸付限度額が設けられているわけでございます。  なお、これらの限度額につきましては、このところ資金需要がふえているといいますか、十分おこたえをするという観点から、平成十年度に限度額の引き上げを図っておりまして、就農準備資金につきましては、それまで百五十万だったのを二百万円、また経営開始資金につきましては、認定就農者でございます場合には二千三百万から二千八百万、それ以外につきましては千八百万から二千三百万と限度額を引き上げております。  なお、貸し付けの実態でお話をいたしますと、どのような形で実際借りられているだろうかということの事例でお話をしますと、平成十年度、まだ最終的な決算は出ていませんが、見込みで御紹介をいたしますと、就農準備資金が先ほどお話をしました二百万円の限度のうち百七十五万円程度、それから経営開始資金が二千万円余りの限度額があるわけでございますが九百万円余りということでございまして、現時点ではまあまあ限度額のところにまだ余裕がございますので、私どもとしては資金需要にはおおむね対応しているんじゃなかろうかと一応判断をしているわけでございますが、この実績はきちっとトレースをしていかないといけないと思っておるところでございます。
  23. 三浦一水

    三浦一水君 限度額の問題につきましては、今御説明もいただきまして、重大な問題はないんじゃないかという御認識であります。しかし、実際これは融資であります。融資である中で、新規就農を目指す方が担保の提供が不可能だとすれば、融資は成り立たないということであります。  そういう意味で、私がいろいろと耳にする中におきましては、新規就農者のいわゆる融資申し込みに対しまして、債務保証の制度があるならば非常に取り組みがしやすいのではないかといったことであります。これについて、現況で政府はどのようなお考えをお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
  24. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 先ほどお話をしましたような資金につきましては、従来、農村がどちらかといいますと人的な結合が強い、それから金額的にある程度受容できる金額だろうというところで保証人を立てていただくということで対応してきていたという面がございました。それが平成四年に、一件当たりの貸付額が高くなってきているんじゃないかとかいうことで、幾ら農村に人的つながりがあるといってもそれが希薄化しているとか、正直言って高くなるとなかなか保証するよという元気も出ないという面もあったんだと思いますけれども、それまでの人的保証制度に加えまして物的担保ということで保証制度は充実をされたわけでございます。  さらに、平成六年になりましてからは、就農支援資金というのが創設されていますが、人的担保と物的担保いずれでもいいということでございますが、お話がございましたように、新規参入される場合になかなか物的担保を確保できないという実態があるわけでございまして、現在、そういう方々に何とか貸し付けをできないだろうかということで、地元で私どもが推奨していますのは青年農業者育成確保推進事業というのがございまして、関係者が集まって何とかして保証をされる人を探すというような、地域での地道なといいますか、実情をよく知る人たちでよく相談をしていただくという活動を実施いたしております。  しかし、それでも、お話がございましたように、金額が張ってまいりましたり、このところの農村の隣近所の事情とかいろんなことがございますと、どうしてもそれだけでは十分じゃなかろうということで、私ども、正直申しまして、いろいろな検討をしているわけでございます。  そのときに、保証制度という場合には、一つは、せっかく無利子の金なのに保証料を取ると結局また利子ということと同じになりますので、その辺をどうするかという問題もございます。これは、先生がおっしゃるような事情はわかっておりますといいますか、私どももなかなか難しい中で考えておるところでございまして、今後の研究課題にさせていただくということになろうかと思っております。
  25. 三浦一水

    三浦一水君 検討をする中で技術的な問題もあり悩ましい問題もあるということでありますが、私は現場に足を運ばれるのが一番いいと思うんです。余り政策はひねくって難しく考えることはない、現場で本当の実態を受けとめれば必ずいい答えが出てくるのではないか。私は政治家としてもそういう信念を持ちながら取り組みをさせていただいているところでございますが、ぜひ検討が進むように、この担い手確保が現実的にできるように検討を進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、食料安全保障の問題について一点お尋ねをしたいと思います。  食料安全保障につきましては、国民の八割がやはり安全な、そして合理的な価格であれば国内農産物の提供をしてもらいたいというのが一つの明確な国民期待ではないかと受けとめております。また、調査の結果もそのような中にあると存じております。  そういう中で、農業に先んじていろんな我が国産業が海外へ生産拠点を求めるという事態が続いております。そういう意味で、将来の我が国の外貨準備高の減少を非常に心配する向きもあり、それで果たして我が国が諸外国の食料を買い続けられるかなという心配もあるようでございます。そのことはまたいろんな議論に任すとしまして、私はそのことでは答えを求めません。  日本の各企業が農業分野におきましても海外に生産拠点を求めているという現象は、これも他産業並みとはいかなくとも数多く見られるわけであります。このことが農業自体の空洞化に拍車をかけるならば、私はこの食料安全保障自給率という問題も非常に厳しい面に直面をするのではなかろうかと考えております。  ある面では国民に対するアピール、その中に、いわゆる企業が企業原理に基づけば安いコストの場所を求めるというのは当たり前のことであります。しかし、食料安全保障という国家的な取り組みを企業に理解を求めていくという姿勢も、これは実は農業のみならず我々の国が物づくりということに立脚しながらその歴史を歩んできている、それが最大の資源であるという状況の中では大事なことかと考えております。  今回は、農業面におきますいわゆる生産拠点を海外に求めるということで、これらの国内企業に対してどのような呼びかけをなさるつもりか、またそんな考えがないか、お尋ねをしておきたいと思います。
  26. 高木賢

    政府委員高木賢君) 海外に農業生産が移動するといいますか、そういうところで生産したものを輸入してくるという動きがあるということは御指摘のとおりだと思います。また一方で、食品産業の空洞化というようなことも起こっておるかと思います。  これは、国内農業生産消費者あるいは実需者のニーズに十分対応し切れていないという問題が根本にあるのではないかと思います。やはり、品質やロット、価格、この三つの点で国内の需要を的確に把握いたしまして、実需者との意思の疎通を通じまして、国内農業生産増大を図っていく、言いかえれば需給のミスマッチを解消していくということがこの問題の基本的態度ではないかと思います。  新しい基本法におきましても、その二条三項に「農業と食品産業の健全な発展を総合的に図る」ということがうたわれております。食品産業我が国農業の結びつきがより緊密になるようにしていくということが基本的な態度でございます。そういう過程の中で、食品産業サイドにも我が国国内生産されたものが使われるように働きかけていくということは大変重要なことと思っておりまして、そういう一環として企業にも十分国内農業理解を得ていきたいというふうに思います。
  27. 三浦一水

    三浦一水君 私企業に対する、企業活動そのものに対する規制はもちろんできませんし、お願いもしにくいわけではありますが、食料安全保障という考え方理解を求めていく、その延長ならば私は得られる理解もあり、また我が国農業に利する点も出てくるのではなかろうかと考えております。難しい問題ではありますが、ぜひその点も取り組みをお願い申し上げておきたいと思います。  それから、これはちょっと話が飛びますけれども、輸入農産物につきまして、その輸入農産物自体が我が国農業に決定的な打撃を与えるときには関税措置も辞さないといったような内容がこの基本法の中にあったかと思います。緊急に必要がある場合に関税率の調整、輸入の制限等の措置は現行法でもありますが、この基本法の中でもとり得るということであります。  しかし一方で、WTOの協定、現在議論しております新基本法そのものがそのことを視野に入れずには語れないという状況の中で、そのような事態になったときのWTOの協定との整合はどのように図っていくのか、その点について御説明を賜りたいと思います。
  28. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 新基本法案の第十八条でございますが、関税率の調整、輸入の制限について規定を置いているわけでございます。これは、予期しない事情の変化による輸入の増加によりまして国内産業に重大な損害なりそのおそれが生じておって、国民経済上緊急に必要があると認められる場合に行います関税の引き上げや輸入数量制限を想定しておりまして、いわゆるセーフガードと言っておるものでございまして、ガットの規定で申しますと第十九条とか、それからWTOのセーフガード協定に基づいて発動される措置を念頭に置いているものでございます。  したがいまして、これらの措置につきましてはWTOの協定上認められているものでございますが、なおその発動要件なり手続につきましては、セーフガード協定なり関係する国内法令に詳細な規定も置かれております。これらの協定、法令との整合性には十分配慮しながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  29. 三浦一水

    三浦一水君 次に、いわゆる生活者、消費者の方々と農村の交流、あるいはグリーンツーリズムという言葉もよく使われておるようでございますが、この点についてお尋ねをしたいと思います。  グリーンツーリズムが言われて政策的にも実施を見ているところでございますが、非常にうまくいっている事例があれば、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  30. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) グリーンツーリズムの振興は今後の農政の新しい柱の一つでありまして、これまでもいろいろと合意の形成なり広報、情報提供、体験民宿、さらには交流拠点の整備といったことをしてきたわけでございます。  そういう中で、例えば関東の近辺で申し上げますと、群馬県の新治村の新治地区、ここもそば打ちとかコンニャクづくりといった農産物に対する加工の分野に都市の住民が参加をして、楽しい、珍しい体験をするというふうなことを軸にしてグリーンツーリズムをやっているわけですけれども、年間の入り込み客が四十万人、農産物なり加工品の売り上げが一億一千万円、雇用創出六十五人というふうな状況でございます。  それから、山梨県の小菅村、これは東京の奥多摩の裏側になりますけれども、ここでもやはり各種の事業を使いまして交流拠点を整備して、ここは水がきれいだということと、甲州街道の裏街道に当たるということで、伝統芸能なども残っておりますので、そういうものも発掘をいたしまして、やはり年間十万人程度の入り込み客。  さらには、Uターンをしてこられた方が九人いらっしゃるというふうな事例が、まだ点の状態ではありますけれども、各地に出ておりまして、私ども毎年毎年その優良事例をこういった冊子にいたしまして関係の方々に情報提供する、これをまた一つの土台にして進めていくというふうなことをやっているところでございます。  今回、基本法案の三十六条にもその点が明記をされましたし、いずれ小中学校も週休二日制ということでゆとりも出てまいりますので、グリーンツーリズムをさらに振興したいと考えております。
  31. 三浦一水

    三浦一水君 ちょっと私の聞く順序がまずかったなと、余りにいい例が出たのであとの質問がしにくくなったわけでございますが、実は、いわゆる農業が果たす多面的機能理解してもらう場面としてもこういう交流の場というのは非常に大事じゃないかと考えておりますし、農家が、いわゆる条件不利な地域に置かれる方々は特にでありますが、何か農外的な収入がそのことで果たしていけるならば、非常にそれも推進すべきことだろうと考えております。  ところが、食料農業農村ということで全面的に打ち出してきている割には、このグリーンツーリズム、例えば我々が農家として外の方をお迎えしようとするなら余り過大な投資はできないわけです。できるだけ農家としてある機能を活用しながら外の方をお迎えができて若干の農外収入が果たせるならばというのが本音であろう、手軽にグリーンツーリズムに取り組める状況をつくり出すことが非常に肝要ではないか、それがまた手軽な消費者の利用にもつながっていくのではないかと考えております。仰々しくそれらを求める必要もないのではないか。全国的にすばらしい景観、場所、そのような人々、たくさんの資源が私はあると思っております。そういう点で、農業経営の一環として農家はこのグリーンツーリズムに取り組むわけであります。  食料農業農村であります。それであるならば、小規模な宿泊施設とか食堂、そういうものについては農業施設として扱って初めてこのグリーンツーリズムも広範な推進ができるんじゃないか。現状はそうでないと認識をしております。加えて、農用地区域の除外手続やいわゆる農地転用許可を必要とするならば、農家が自分の土地に何か建てようとするときにそういう諸手続が非常に小規模な施設であっても求められるとするならば、これはグリーンツーリズムの一つの推進の障害になってきやしないだろうか、また現実取り組みにくい面を残していると思っております。  その点を、最後になりましたが、お答えいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  32. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 農家なり農業者所得拡大の機会を与えるということも考えますと、やはりある種の農業用の施設であり農業用の用地であるという考え方もできるわけでございます。私ども、やはり手続は何としても簡素化をしていかなければいけませんし、できるだけ地元に近い県知事なり市町村長がそこら辺を柔軟にやれるようにしたいと思っておりまして、そもそもこういった交流施設につきましては転用の場合には許可の例外になっておりますし、このたびの農振法の改正の中で自治体の長の権限も強化をしたいと思っております。  ただ、全く手続もなく自由にすることがどうかというふうに申しますと、やはりそれは同じ旅館を建てる、あるいは同じ施設を建てるのが農業者でない方もあるわけでございますし、そういう方々とのバランスという問題もありますので、あくまでもその手続は簡素にして柔軟にするけれども、やはり踏むべきものは踏むということで現実的な対応をするのが一番ふさわしいのではないかなというふうに考えている次第でございます。
  33. 三浦一水

    三浦一水君 ありがとうございました。
  34. 中川義雄

    中川義雄君 自民党の中川義雄であります。  今、昭和三十六年当時制定された現行農業基本法を三十八年経て新しい基本法制定し直すという大きな節目にあるわけですが、私自身はあの安保の混乱の中で社会に第一歩をしるしたその年でありまして、それが中川大臣のもとで新しい基本法制定される、非常に感無量なものを感じているわけです。  そこで、第一点お伺いしたいわけですが、昭和三十六年当時の我が国農業を取り巻く環境や諸条件が今日の間では大きく変化し、だからこそ抜本的な改定になったと思いますが、その点について農林省の認識を伺いたいと思います。
  35. 高木賢

    政府委員高木賢君) 昭和三十六年以降と今日を比べて何が農業を取り巻く環境条件で変わったかという点でございますが、何といたしましても大きな変化は我が国経済規模、これが大変大きく拡大したということであろうと思います。昭和三十五年のGDP十六兆円が平成九年度には四百八十九兆円ということで、約三十倍に拡大をいたしております。これは予想を上回るテンポでの成長であったと思います。これに伴いまして、賃金水準は製造業で二十二倍に上昇しておりますし、またこれに伴い国際化も急速に進んでいるというのが大きく変わった点ではないかというふうに基本的に思っております。  農業をめぐる状況について申し上げますと、そういった経済成長を背景にいたしまして、農地価格が上昇した、農地の資産的保有傾向が強まったということがございます。そのために経営規模拡大が停滞したという側面がございます。  また一方で、先ほど申し上げました他産業の賃金水準が上昇したということで、若年の農業者中心に他産業に吸引されたということから、農業農村の活力の低下につながった面があるというふうに思います。  それから、所得向上国民の食生活の向上という面では非常に大きく寄与いたしまして農業のマーケットとして拡大をしたという面もございますが、同時に対応し切れない面につきまして輸入依存が高まったということで食料自給率が大幅に低下した、こういった変化が大きなポイントではないかというふうに思っております。
  36. 中川義雄

    中川義雄君 今回提案されております新しい基本法の名称を食料農業農村基本法として食料問題を前面に掲げたわけであります。そのことは、食料問題が我が国はもとより世界の大きな問題になっている、そういう認識からだと思いますが、昭和三十六年当時の食料問題と今日の食料問題の相違点みたいなものがありましたら、農林省としてその認識を説明していただきたいと思います。
  37. 高木賢

    政府委員高木賢君) まず、現行基本法制定されました昭和三十六年当時でありますけれども、米の自給がほぼ達成可能なときに近づいておったということもあります。それに加えまして、我が国食料自給率カロリーベースで八割近い水準であったということであります。その後、先ほども申し上げましたが、国土資源に制約がある中で国民の食生活の水準が大幅に向上いたしまして、自給品目である米の消費が減少する一方で、畜産物あるいは油脂の消費が大幅に増加をいたしました。その結果といたしまして、飼料穀物などの原料農産物の輸入が大きく増加をして、食料自給率の低下をもたらしたわけでございます。  それから、現在の食生活は畜産物や油脂の消費の増加によりまして、むしろ脂肪分の摂取過多、それによる栄養バランスの崩れというおそれまでの状況になってきたと思います。また、余りにも食料が豊かであるということのために、食べ残しや廃棄の増大、こういった問題が生ずるに至っているというふうに認識をいたしております。  また、今お話がありましたが、世界全体を見ますと、にもかかわらず、食料生産拡大を図る上での制約要因というものが明らかになってきているというふうに思いますし、一方では栄養不足人口が相当数いるという、食料をめぐっての格差の拡大という局面もあらわれております。先ほど言いましたように、生産拡大についての要因がはっきりしてまいりまして、今後、短期的な不安定の発生、あるいは中長期的には食料需給が逼迫する可能性というものも出ておると思います。  それから、我が国国民の中には飽食の時代に不安を覚える、むしろ健康な生活の基礎として食生活のあり方を見直す動きというものも強くなってきている、こう思っております。
  38. 中川義雄

    中川義雄君 二十一世紀を目前にいたしまして、ローマ・クラブの「成長の限界」、またアメリカ国務省の「西暦二〇〇〇年の地球」、これらがいろいろと警鐘を乱打しているように、まさに二十一世紀はレスター・ブラウンが言うような「飢餓の世紀」と言われておりますが、そうなった最大の要因を、数点あると思いますが、示していただきたいと思います。
  39. 高木賢

    政府委員高木賢君) 食料の需給につきましていろいろと不安定な要因といいますか、不安をもたらす要因が明らかになっておるというふうに思います。  二つの側面で申し上げますと、まず需要面でございますが、やはり何といたしましても人口増加が開発途上国を中心として依然として続いている。年間一億程度ふえているわけでございますが、この勢いがやんでおらないということが一つ。  それから、食料需要の内容も高度化しておりまして、経済成長に伴いまして中国を初めとする国々で畜産物の消費の拡大が進んでいる。そうなりますと、飼料穀物需要が増加をいたします。こういう人口の増加と飼料穀物需要の増加という点で需要面では大変食料需要には堅調なものがあるという状況かと思います。また、見通しとしてもこれが続くというふうに思われます。  一方で、供給面では逆に制約要素が出ております。農用地の面的拡大、これはもう非常に適地が少なくなってまいりまして、農地拡大するにも制約があるというのが一点。  二つ目には、これまでの生産増大を支えてきました単収、これが環境保全の重要性というような問題からこれまでどおり肥料をやり続ければいいということにもなりませんので、単収につきまして伸び悩みの傾向が出てきているということでございます。  それから三番目には、既にいろいろなところで報道されておりますが、世界各国におきまして土壌劣化でありますとか砂漠化が進行している。さらには、地球温暖化等の大きな環境問題の顕在化ということもありまして、供給面では種々の制約が明らかになっているというふうに思います。  こういった、需要は拡大する一方で、供給面では制約があるということでございますので、短期的に食料需給の不安定さが増すと同時に、中長期的には逼迫する可能性があるというふうに認識しております。
  40. 中川義雄

    中川義雄君 確かに、需要面と供給面からの要因というものは、もちろんそれがすべてを説明できるわけですが、しかしそのことは南北問題、南における飢餓状態、要するに発展途上国と先進国、そしてもう一つは東西問題、ベルリンの壁が崩壊して社会主義国家はすべて飢餓で悩んでいる、北朝鮮で見られるように。社会主義国家における破綻の要因、これは需要と供給だけで説明できないような気がするんですが、その点についての何か認識があれば説明していただきたいと思います。
  41. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 社会主義国家はいずれも農政に非常に苦労している。今、たまたまある新聞で中国の特集をやっておりまして、五〇年代のあの大躍進の失敗というものが非常に生々しく書かれておりますけれども、やはり社会主義体制においてみんな平等だということでやってきた理想と現実との違いというものが非常に大きい。  したがいまして、旧ソ連時代も、例えばヨーロッパからシベリア鉄道を経由してビール麦なんかを日本に輸入したときの話を聞いたことがありますけれども、その列車の中からは量が半分ぐらいになって、そしてスコップとか下着とか、そんなものがいろいろ入ってきちゃって、途中で非常に量的にも質的にも悪くなってきたというような話をある商社の方から聞いたことがございますけれども、やはり生産体制あるいはまた技術関係もそうなのかもしれませんが、トータルとしての農業生産体制に関してやはり日本先進国とかなり違うのではないか。  特に、北朝鮮につきましては土壌の問題あるいはまた米の品種自体もどうも違うようでございまして、収穫量の問題等々があって、今百三、四十万トンの食料がどうしても確保できないというような状況のデータもあるようでございますが、人口が二千万ちょっとの国で、穀物の必要量は五百万トン程度の国で百三、四十万トンの食料不足ということは、かなり深刻な状況なのではないか。  中国につきましては、大洪水等々ありましたけれども、市場主義を今一生懸命導入しておりますが、豊かさと並行して、やはり食生活の変化というものが食料の輸入というものの方向に行かざるを得ないというようなデータもあるわけでございます。  一般論としてそれぞれの国がいろんな農政上の問題を抱えておるわけでありますけれども、社会主義国家についてという御質問でございましたのであえて特定の国を挙げながら、そういう問題点があって、いずれも大変苦労されておられるのではないかというふうに考えております。
  42. 中川義雄

    中川義雄君 この二十一世紀に向けての飢餓状態、これは人類の英知を傾けて解決しなければならない最大の課題だ、こう言われております。そういう中で、我が国は非常に経済も成長し、人的資源も豊富でありますが、我が国の使命としてこの問題にどうやって国際貢献するかということが大きな使命になると思います。  しかし一方では、国際世論は我が国に対して見方が二分しておりまして、ローマにおける食料サミットにおいては、いわゆる飢餓に苦しんでいる低開発国から我が国等に対して、豊富な資金に物を言わせて食料を輸入し、飽食に明け暮れて健康まで害している、それがまた国際的な食料価格を値上げして低開発国における食料の輸入を困難にさせている、そういうことでの不信、不満が非常に大きかったと聞いておりますが、そういった国の論点。  さらに、それと全く逆の、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといういわば輸出国は、我が国経済政策が特に農業に対しては黄政策で非常にフェアでない、だからウルグアイ・ラウンドだとかWTOにおいて、我が国に対してもっと市場を開放しろというような強い圧力をかけてきております。  そういう国々の論点、これを整理しなければなりませんが、まずそういった論点について農林省のおまとめになったものについてここで説明していただきたいと思います。
  43. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 二点御指摘があったわけでございます。  まず、我が国食料を大量に輸入していることにつきまして、世界食料サミット等の場において開発途上国から直接的にこれを非難する、あるいは批判するような発言があったというふうには承知していないわけでございます。例えば、世界食料サミットと並行して開催されましたNGOフォーラムの声明の中では、食料不足の基本的な要因の一つとして、先進国の過剰消費パターンが世界じゅうの貧困を深刻化させているというような指摘がされておるところでございます。  我が国としましては、食料サミットの場におきまして、世界の食料安全保障達成の観点から、国内生産、輸入、備蓄の適切な組み合わせが重要である、中でも持続可能な国内生産の推進が重要であることや農業の持つ多面的機能を考慮すべきことを主張して、その考え方につきましてはローマ宣言の中にも取り入れられているところでございます。  一方で、米国、豪州等の農産物輸出国でございますが、例えばWTO等の場におきます議論の中で、こうしたいわゆる農産物の輸出国が、我が国農業政策自体を直接的、具体的なターゲットとして、開放的でないとかそういった不満、不信を表明しているという事実は特に承知していないわけでございますが、一般的に農産物輸出国は、みずからの農産物の売り込みのために、輸入国の国境措置の分野におきます市場開放やら、あるいは輸入国におきます国内支持の廃止とか縮減といったことを強力に主張してきているところでございます。  これに対しまして、我が国としましては、従来から世界最大の農産物輸入国として我が国の市場というのは十分に世界に開かれているものであるということを主張しているところでございますが、次期交渉におきましてもそういった観点からの主張はきちんとしていきたいというふうに考えております。
  44. 中川義雄

    中川義雄君 こういった世界のいろいろな国々の思惑や条件の違いなどの中で、いずれにしても我が国としては世界に対する貢献、飢餓状態からの開放といいますか食料危機の解決のために最大限の努力をする、そのことはどんな国の干渉も受けることのない主権国家たる我が国の独自の政策でやっていかなければならないと思っております。  そして、そういった世界の期待にこたえるためにもこれから積極的に展開するわけですが、そういった意味の問題を解決するためにこの基本法の中でどのようなことを掲げ、余り見当たらないんですが、しかしこの基本法の陰にある願いはそういうことにもあると思いますので、その基本法に基づいて具体的に施策を展開する考え方があれば御披露いただきたいと思います。
  45. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 条文の中では二十条に「国際協力の推進」という項目がありまして、特に世界の食料需給の安定、さらには特に開発途上地域における農業農村の振興と技術協力等々いろいろ書いてございます。現に、去年から新しい援助システムということで、インドネシアを中心に米の援助、さらには世界じゅうで農業技術指導、資金協力等をやっておるわけでございます。  委員指摘のポイントは、二つ重要なポイントがあるのだろうと思います。一つは、輸出国側が主張しておる、安いんだからちゃんと買えという全く自由貿易の強者の論理で、日本のような輸入国に強く当たる。これを何としても是正していかなければいけないというのが次期交渉での大きなポイントだと思います。APECのような全く場違いの場でもそういうことを堂々と厚顔にも言ってくるということでございます。これについては、我々としては諸外国と協力し合いながら、非貿易的関心事項、多面的機能等々、それから輸入国の立場というものがイコールフッティングでなければならないということで、我々としては強い意志で交渉に臨んでいかなければならないと思っております。  もう一つは、先生指摘の「飢餓の世紀」ということでありますけれども、とにかく食料がないけれどもお金がないから買えないということに対して、これは貿易品目なのだから金のないやつには上げないよ、そのかわりに飢餓で死んじゃうよ、こういうことに対して、やはり国際的な協力あるいは日本の果たすべき役割がこれから重要になっていくだろうと思います。  日本としても、限られた範囲内の協力、さらには技術面、資金面では世界一の貢献をしておるわけでございますけれども、そういう二つの側面から日本と世界との関係というものが今後ますます重要になってくるわけであります。  したがいまして、既に始まっておりますWTOに向けたOECD会合でありますとかそういうところでも、発展途上国の位置づけ、サミットでも多分議論になるのだろうと思いますが、発展途上国に対する一般論としての援助のあり方、特に食料関係につきましては我が省が積極的にやっていかなければならないというふうに考えておりまして、委員指摘のとおりのことをこの基本法に基づいて実態的にさらに推し進めていかなければならないというふうに考えております。
  46. 中川義雄

    中川義雄君 また、この新しい基本法では「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。」、私は非常に理想に燃えた条項だと思いますが、これはまた一方では価格の決定に際しては市場のメカニズムにある程度ゆだねる、そういったものをここで宣言しているのかとも思われるのですが、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  47. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のありました合理的な価格という点でございますが、これは二条一項で「食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものである」という食料の性格から「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。」と、いわば消費者視点を重視した規定でございます。  その中で合理的価格ということでございますが、これはやはり国民理解と納得が得られる価格、こういうことになるわけでございます。その考え方は、今御指摘のありましたように、物の価格を決める因子は何かということでございますが、これは具体的には三十条に出てまいりますが、需給事情と品質評価を適切に反映して形成される価格、これがいわば合理的価格というふうになっております。需給事情と品質評価を適切に反映して形成される価格ということでございますから、まさに生産と消費が出会う場、いわば市場において形成される価格ということに純粋に言えばなろうかというふうに思います。  いずれにしても、生産と消費の双方が納得し得る需給事情、品質評価の反映された価格というふうに考えております。
  48. 中川義雄

    中川義雄君 この法案によりますと、食料の安定的供給ということに力を入れております。いわば、食料の安全保障という言葉に置きかえてもいいと思うんですが、この点につきまして、先ほどの「飢餓の世紀」を書いたレスター・ブラウンがその同じ書物の中で、各国の政府だけがその国民を養う責任を担うことができると言っている。    〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕  ですから、二十一世紀に向けて政府最大役割というのは食料安保なんだ、そのことを非常に強調しているわけでありますが、そのための方策としてこの基本法の中において自給率のアップだとか国内生産を重視するといったことを、それにまた備蓄問題その他を掲げておりますが、それはそれなりにすべて正しいことだと思います。ただ、食料の安全保障という観点から見ると、食料の供給国を一部に依存するということも、石油でもあの中東での紛争が石油危機に拍車をかけて大変な問題になったことを考えると、私は食料の安全保障のためには供給ソースを分散する、このことが大事だと思うわけであります。  そこでお伺いしたいんですが、主要農産物のうち四分の一、二五%を特定の地域や国に依存しているものがあれば例示していただきたいし、特にもし五〇%以上を特定の地域に依存しているような農産物があればここで例示していただきたい。そして、そういったものがあるとしたら、これを分散させる方式といったものをこの基本法の中で食料の安全保障という観点からどう取り扱い、また具体的に施策としてどう展開していくかということについてもあわせて伺いたいと思います。
  49. 高木賢

    政府委員高木賢君) 輸入数量ベースで特定の国や地域に四分の一以上を依存している農産物ということで拾いますと、一九九八年の貿易統計によりますと、トウモロコシ、大豆、小麦、牛肉、豚肉、鶏肉というものがございます。その中で特に五割以上を依存しているものに何があるかということでございますが、トウモロコシ、これはアメリカ一国で八八%、大豆、これもアメリカが七九%、小麦、これもアメリカで五四%ということでございます。    〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕  それから、輸入先の分散化の問題でございます。こういったやや集中した輸入先になっておりますが、これはそれなりの原因といいますか、消費者のニーズにかなう品質なり価格、あるいはさらにはそれをまとまった量で輸出する力のある国が輸入先として選択される傾向にあるということでもございますが、御指摘のように安定的な輸入の確保という観点からは、供給国や地域の分散化を図るということも安定的な輸入の確保のための一方策として位置づけられるというふうに考えております。  具体的には、この新しい基本法の十八条に「国内生産では需要を満たすことができないものの安定的な輸入を確保するため必要な施策を講ずる」とありますけれども、これは特定の輸出国との安定取引に関する取り決めなどの着実な履行の確保といった問題もありますが、同時に常日ごろから海外における食料生産あるいは供給動向につきましてウオッチをして的確な情報を把握しておく、そして必要に応じて輸入先を多角化するということも当然視野に置いているわけでございます。そういう視野に置いた中で安定的な輸入の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
  50. 中川義雄

    中川義雄君 食料安定供給に必要なのは国内生産向上自給率のアップにあることは間違いない事実なんです。しかし、私は、この政策課題は解決しなければならないが、物すごく難しい問題だと、こう思うんです。  そこで、農林省がここに提出した資料の中に我が国食料自給率の推移について図解や表があるわけですが、昭和三十五年の八〇%ぐらいから最近の四〇%ぎりぎりまで一貫して自給率は低下しているんです。ですから、この自給率がなぜ低下しているのかという要因分析をきちっとしないと、ここへ来て自給率を上げていく施策の転換の参考にならないと思うんです。  そこで、これだけ一貫して自給率が下がっている要因を農林省はどうとらえているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  51. 高木賢

    政府委員高木賢君) 食料自給率の低下の要因でございますが、やはり基本的には国民の食生活の大きな変化が背景になっていると思います。  具体的に言いますと、米の消費が大幅に減少している、それに対して畜産物あるいは油脂の消費が増加しているということが基本にあると思っております。米の消費が減退するとなぜ自給率の減少につながるのかというのは、もう御案内のとおりでございますけれども我が国の風土に適した農産物である米の消費が減りますとその供給量も減るということで、米のウエートが減ってまいりますから自給率低下の要因ということでございます。  一方、油や畜産物の消費が進みますと、そのえさや原料たる大豆あるいは菜種というものは日本国内では生産が不得意なものでございますから輸入に依存せざるを得ない、こういうことで、油脂や畜産物の消費の増大が原料農産物等の輸入の増大につながっている、こういうことで説明できるものが大きな要因でございます。
  52. 中川義雄

    中川義雄君 今、自給率の低下について一定の説明を受けましたが、これははっきり言うと、国内の総需要に対する国内生産がどうなるかということなんです。総需要がふえたのは、人口がふえてきたこと、それから一人当たりのカロリーがアップされてきたこと、主にカロリーがアップされてきたのは食生活の洋風化、昭和三十五年から今日まで食生活の洋風化が極端に進んできている、そういうこともあったと思います。  それともう一つは、農業をめぐる条件が厳しくなっていった。ですから、農地が壊廃し、転作または耕作放棄地が出たり農地が他の用途に変わっていった、そして分子が減っていったということも私はあると思うんです。それを率直に見ないとならないわけです。  それともう一つは、この法律では自給率を設定するというふうに書いてあるんです。ところが、食料自給率農政サイドだけでは決められない。これは農業基本法ですから農政基本になっている。しかし、漁業だとか林業も合わせていないと決められないと思うんですが、その点の矛盾についてはどう考えておりますか。
  53. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のありましたように、食料という面を見た場合には、農産物だけでなくて水産物あるいは林産物の一部でございますキノコ類も入ってまいります。したがいまして、食料自給率という場合には当然、魚や海藻などの水産物もカウントをするということをしなければいけませんし、特用林産物であるキノコ類もカウントをするということで臨みたいと思います。  厳密に言いますと、カロリーベースで全体を表示しようということでありますから、海藻やキノコはそれほどカロリーはございませんけれども、これも品目別に目標を立てる、その数値を表示しようということで現在検討をいたしております。  では、それは一体どういうことでこの基本法位置づけられているのかということでございますが、まさに水産業、林業とのかかわり農業においては否定できないわけでございますので、この総則の第六条におきまして水産業と林業とのかかわりについて規定をいたしまして、水産業、林業の振興に必要な配慮をするということでつながりをつけているわけでございますし、基本計画自給率目標を立てるときに、先ほど言いましたように、食料として重要な位置を占める水産物、キノコをカウントする、こういうことにいたしておるわけでございます。
  54. 中川義雄

    中川義雄君 それで、衆議院における修正において、これは本当にそうあっていただきたいという願望が入っていると思うんですけれども自給率の「向上を図ることを旨とし、」と、自給率の設定に際して。ですから、今度つくる基本計画では現行自給率より必ず向上する目標を掲げぬとならない。これは施策目標としてはすばらしいことだと思うんですが、しかしこれは大変危ういことがあると。  それは、目標として掲げたが、実際やってみたらそれが目標よりはるかに下がったようなことを国民に与えてしまうと、この基本法全体に対する信用が失われるという大きな問題が起きてくるわけです。しかし、国権の最高機関たる国会修正を受けたわけですから、何としてもその目標を、向上する数字を掲げぬとなりませんが、そのための施策の展開ということになりますとこれは簡単なことではない。なぜかというと、人口問題を考えていかぬとならないが、これも農林省の所管ではない。一人当たりのカロリーをどうするかというと、食生活に関することですから、これは厚生省だとか他の官庁にやはりお願いする。  農林省ができることは国内生産増大する政策ができるだけであって、そういったものとの相関性を考えると、かなり大きな目標でないと率としては向上しないというそういう大きな壁があるわけですから、これをやっていく決意みたいなものを、政府としてそれを受けてやっていくという決意みたいなものをここで明らかにしていただかないと、これは大変なことだ。ただ安易に向上するということを掲げるだけで本当にできなかったときのことを考えると、私は恐ろしささえ感じます。そのぐらい難しい問題だと思っておりますが、いかがでしょうか。
  55. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 諸外国に比べて極めて低い我が国自給率、これに対しては、先ほども質問がありましたけれども、もう国民の大半が強い関心を持ち、そして向上を望んでいるということでございます。  他方、委員指摘のとおり、この自給率というのはあくまでも供給し、そして食べることによって結果的に自給率というものが出てくるわけでございます。したがいまして、消費者サイドのニーズを生産サイドが受ける、あるいはまた消費者サイドの食べ残しの問題、あるいはまた日本型食生活の普及、さらには子供たちに対する食生活の教育といった問題等々、多面にわたるわけでございます。したがいまして、御指摘のとおり、農林水産省だけで数字を決めることはなかなか難しいわけでございます。  そこで、食料農業農村審議会というところでこの基本計画をつくるわけでございますけれども、この審議会は政府全体の審議会でございまして、この基本計画をつくるに当たっては、各省、政府全体に関していろいろな意見を聞いたり、また資料等の提出を求めることになっておりますので、総理大臣のもとでのこの審議会で政府全体としてあらゆる面から検討をし、そして必要な施策実現できるように、政府全体として努力をしていくと。  もちろん、その中心には農林水産省があるわけでございますけれども、我が省一省だけではやり切れない部分もございますので、各省、政府全体が力を合わせてこの基本計画審議会のもとでつくり、そして全力を挙げてそれぞれ一体となって実現に向けて努力していかなければならないと考えております。
  56. 中川義雄

    中川義雄君 非常に難しい問題だが基本的で非常に大事な問題だと思いますので、国会としても十分協力しなければならない、そんな決意を新たにしているわけであります。  次に、この基本法の名称に農村という、聞いただけで心温かくなるような名称が入ったわけでありまして、私は非常に大きな意義があると思っております。その真意と、この基本法では農村多面的機能について掲げておりますが、その具体的な内容について説明していただきたいと思います。
  57. 高木賢

    政府委員高木賢君) 農村を新たに入れましたのは、農業が持続的に発展する、そしてその役割たる食料の供給あるいはその他の多面的機能、これが適切に発揮される上での基盤であるということで、どうしても農村の振興ということがこれからの農業に求められる役割を着実に果たす上でそのグランドとして欠かせない、こういうことで基本理念一つに掲げたわけでございます。  その中で、多面的機能がどういうものかということでございますが、幾つか申し上げますと、まず国土の保全というものがございます。これは、土砂の崩壊、土壌侵食の防止といった、例えば水田などが持つ機能などを指しております。  それから、水源の涵養ということでは、地下水を涵養するとともに、それを徐々に河川に還流していく、相当期間水をためておく機能というものが水田などを中心にあるのではないかということでございます。  それから、農業生産活動を通じまして、多様な生物の生息地の提供といった自然環境の保全というものも一つございます。特に、ヨーロッパなどでは大変強調されておりますが、最近、我が国でも評価されております良好な景観の形成ということでございます。大地に植物が育つ姿、あるいはその周りの農家の母屋、水辺、里山、こういったものが一体となってつくり出す農村の景観というものも近年高く評価されている多面的機能一つではないかと思います。  それから、もう一つが文化の伝承ということでございます。農業生産活動を通じて農村に伝承されてまいりました芸能とかお祭り、こういったものも幅広く農業農村の持つ多面的機能ととらえましてその位置づけをしておりまして、これの位置づけ、価値というものが最近、国民の皆様方に見直されている、また農村期待されているということで明記したわけでございます。
  58. 中川義雄

    中川義雄君 私は、その上にもう一つ多面的機能の大きな役割があると思うんです。この「飢餓の世紀」を翻訳した小島先生は我々の先輩でありますが、そのまとめの中で、農業多面的機能の中で農村の持つ共同体的社会、そこから生まれる美風、それに加えて、農村の持っている、日本人の心の底にある東洋的な思想、そしてそこから自然を大切にし、そこで心豊かなふるさとをつくろうという人たち、こういった農村の心の豊かさが、今日の物質文明本位のぎすぎすした社会の形成に対して、二十一世紀に向かって農村こそがこの日本の精神文化をきちっと下から支えていただけるものだと。  そのためにも農村の持っている機能を大切にし、そこから出てくるいろんな文化といったものを大切にすることがこれからの日本のために大きく貢献する、だからこそ我々は農村の振興のために胸を張ってやっていく、そう思うんですが、そういった考え方に対してもし何かありましたらお知らせいただきたいと思います。
  59. 高木賢

    政府委員高木賢君) ただいま御指摘のありました心豊かなふるさとたる農村維持発展させるという考え方も、当然この農村の持つ機能の中の一つとして私どもは認識しております。法文上は「文化の伝承等」ということで若干散文的にはなっておりますけれども、やはり人間そのものが有機的な生命体でありますから、そういう生命を育てる農村における価値というものは今後ますます高くなっていくというふうに見通した上で、多面的機能の中に「文化の伝承等」ということで明記をさせていただいた次第でございます。
  60. 中川義雄

    中川義雄君 この基本法の中では、農業の持続可能な産業としての側面を大きくとらえております。私もそのとおりだと思うんです。多様な産業が複雑に機能し合っている現代社会では、農業以外のすべての産業というものは資源消費型の産業であります。数十億年地球が蓄えた化石エネルギーを消費したり、また鉱物資源を消費して、環境に対する負荷を大きくして今日の大きな問題を発生させ、そして有限な社会において、特に化石エネルギーなどはもう数世紀もつかと言われるほど、この百年間ぐらいで人類の歴史上それを多消費した社会でありました。  しかし、農業だけは五千年の歴史の間に誇り得る唯一の産業なんです。投下するエネルギーと産出されるエネルギーでは、農業だけは多いんです。だから、五千年たっても農業は営々として続いている。ですから、持続可能な社会を国の大きな目標にするならば、そういった点からも農業を大切にしなければならないと思いますが、いかがなものでしょうか。
  61. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のとおり、農業は本来的機能として自然循環機能を持っていると思います。これは、太陽エネルギーを活用いたしまして、まさに今求められているリサイクルということを農業生産過程そのものの中に内在しているということでございますので、そういう意味で、第四条で農業資源や担い手の確保やその効率的な組み合わせという経済的側面に加えまして、「農業の自然循環機能維持増進される」ということを農業の持続的発展の要素として明確に位置づけた次第でございます。
  62. 中川義雄

    中川義雄君 しかし、農業そのものも、最近は化学肥料、いわば土地を収奪するような農政のもとで土地は瀕死の重症状態にある。そういう中で、もっと農業の持っている自然循環過程の中でゼロ・エミッション、要するに放出されるものは一つもない、むだは全然ないというようなある種の農業の理想を構築することによってこの持続可能な産業としての農業、これを二十一世紀、二十二世紀につなげることが今日生きる我々の最大の務めだと思う。そのために大きな資本を投下しても、国民またはいろんな人たちに何のまずいことはない。心を大にしてやっていただきたいと思います。  それでは次に、一方、農業の基礎、基本というものは私たちは小さいときから人づくりと土づくりなんだという話を随分聞かされてきたんです。しかし、日本農業の今日の状態というのは、それが非常に間違った考え方農業というのは単純労務でそれほど知識がなくてもやれるんだという、そういう農業をべっ視するような風潮がこの国には物すごく強いわけであります。  私自身、アメリカの農業地帯へ行くと、農業人のほとんどは一流大学出身、ほとんどというより全部と言った方がいいと思います。そういう人でないと農業は経営できない。ところが、日本の場合は、一流の農業大学を出た人はほとんど農業人になっていない。農林省の役人だとか農協の職員だとか、または農業に関するいろんな生産法人の役員になる。いわば船頭にばかりなっている。この国の言葉に「船頭多くして船山に上る」という言葉がありますが、まさにそんな状態になっているのではなかろうか。  農業人というものは単なる労務者ではなくて高い技術そしてまた経営感覚にすぐれた者でないと絶対できないんだ、そういう農業者を育成するんだ、そして農業者に誇りを持たせること、このこともこの国の農業の将来にとって非常に大切だと思いますので、その点についてこの基本法ではどうとらえ、そして今後どういう施策の展開をするか、説明していただきたいと思います。
  63. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 先生の御指摘と全く同感でありまして、これからの農業者にはやはり高い技術と経営感覚が当然求められる時代になっていると考えております。基本法では、二十一条、二十二条におきまして望ましい農業構造の実現とそれを支える農業者、意欲ある農業者に対する支援措置というのを掲げているわけでございます。  私どもは、効率的、安定的な農業経営が生産の相当部分を担う、そういうふうな農業構造を実現したいと思っておりまして、そのためにこれまでにも増しまして経営感覚にすぐれたこうした効率的、安定的な農業経営を育成し、その創意工夫を生かした経営展開に対して環境整備、育成というよりは支援というふうに言った方がいいと思いますけれども、そういうふうな形で進めたいと思っております。  とりわけ、認定農業者制度発足以来十四万人に達しておりますけれども、こういう方々も含めまして、あるいはこれから新規就農をされる方も含めて、何よりも意欲のある担い手に施策を集中するということで、資本装備の充実、労働力の確保、経営管理能力や技術の向上という点で経営全般にわたりまして施策重点的に講じたいと思います。  その場合、とりわけ段階に応じた施策の実施というのが重要でございます。新規就農するときにはその技術なり資本装備に対する支援が必要ですし、経営を発展させていこうという段階におきましては必要な経営管理技術であるとか資金の手当てとか労働力の確保とか、そういうものが必要であります。さらに、安定の時期、そして最終的には経営をスムーズに次の者に継承する、そういうふうな発展段階に応じた特色のある政策を効率化の側面と安定化の側面を通じまして重点的に体系化をして投じていくというふうなことにこれからは力を入れるべきだと考えております。
  64. 中川義雄

    中川義雄君 この新しい基本法の第二十二条で「専ら農業を営む者」、いわゆる私たちの北海道の専業農家意味するものだと思いますが、この専業農家に対する支援策について述べられておりますが、どうしていくのか。一番大事なのは、専業農家こそ誇りある農業人でなければやっていけない。そのためにはそれだけの専門知識と経営感覚を持っていないとできない。そのためにどう支援していくか。  例えば、つい最近、麦価の決定がありましたが、そのときに生産費の計算基礎があります。麦価はその大宗を専業農家が、いや北海道の麦作はほとんど専業農家役割を担っております。ところが、残念ながら、農林省の生産費の基礎では農業者農業就業者を建設業等の単純労務者と同じ水準に置いて、同じ範疇で判断しているんです。それで、経営者としての誇りを持たせるとか、そういうことは不可能なんです。ですから、もしそういう支援をするとしたら、今後の農政の展開にあって、例えば麦価の決定、所得の補償等においては農家経営者が一般の企業の経営者と対等の誇りを持てるような、そういう取り扱いをしなければならないと私は思いますが、私の考えに対する御判断をいただきたいと思います。
  65. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 先生北海道の例をとられて専業農家とおっしゃいました。先生が例示をされました専業農家というのは、多分ここで言っている「専ら農業を営む者」というのとほとんど同じだろうと思います。  ただ、私ども、この農業者個人に着目した概念で、家族なり世帯にとらわれた概念でないものですからこういう言い方をしました。例えば、世帯でいいますと、だれか一人どこかに勤めているということになると、こっちで立派な営農をしていても兼業農家という扱いになりますし、それから老齢の御夫婦が二人で農業を細々という言葉は適切かどうかわかりませんが、そういうことになりますので、「専ら農業を営む者」ということで、それで生計を立てている者であって主として専業農家を念頭に置いた概念であるというふうにお取り扱いいただきたいと思います。  こういう「専ら農業を営む者」というのは、この基本法の中の二十二条ではいわば経営意欲のある農業者の代表選手という形で位置づけをいたしておりますので、ここに施策重点的、集中的に投じていく。それを通しましてこういった方々が農業経営、こういう農業経営が生産の相当部分を担うような農業経済実現していくということになろうかと思っております。先ほどの答弁の繰り返しになりますので避けますけれども発展段階に応じ、またその効率性、安定性、その特徴に応じてやっていきたいと思っております。  先ほど御指摘がありました麦作農家の麦価等の問題における経営者としての扱いということは、これは大事なことでありますし、長期的な課題として私どもはこれから新しい基本法のもとで経営ということに重点を置いた考え方にしたいと思っておりますので、そういう中で検討させていただきたいと思います。
  66. 中川義雄

    中川義雄君 間もなくこの基本法案国会を通って施行に移されると思うんです。それに当たって、この宣言法をこれからまた実体法基本計画等、次から次にやっていかぬとなりませんので、大臣の抱負を聞いて、私の質問を終わらせていただきます。
  67. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 食料農業農村基本法ということで、国民全体に対して安定的な食料の供給を将来にわたってきちっとやっていく、そのためには農業者の方々が自信と誇りを持ってやっていけるような体制にしていく、そして農業農村の果たす多面的役割を守り発展させていくというのがこの法律趣旨であります。  この四十三条の中には理念的な部分が多いわけでございますので、今御指摘のように基本計画、あるいはまた今検討会でいろいろ御議論をいただいていることの結論をいただきまして、さらにはほかの法律の、先ほどの例でありますと持続的な農法の新しい法律を御審議いただきましたが、このようなものも含めまして法整備もきちっとやりまして、できるだけ早い時期に総合的な施策の推進ができるように頑張っていかなければならないというふうに考えております。
  68. 中川義雄

    中川義雄君 終わります。
  69. 野間赳

    委員長野間赳君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  70. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、小川敏夫君が委員を辞任され、その補欠として藁科滿治君が選任されました。     ─────────────
  71. 野間赳

    委員長野間赳君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  食料農業農村基本法案につき、宮城県及び福岡県において意見を聴取するため、来る六月十五日に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 野間赳

    委員長野間赳君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 野間赳

    委員長野間赳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  74. 野間赳

    委員長野間赳君) 休憩前に引き続き、食料農業農村基本法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  75. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司でございます。午前中に引き続きまして、基本法議論に入らせていただきたいと思います。  まず、大臣にお伺いをしたいと思います。三十八年ぶりの基本法議論だということで、その間、ちょうど数字が同じように三八%自給率が下がってしまったというような余り芳しくないごろ合わせの中でございますけれども、既に衆議院の方におきまして三十四時間ほどでございましょうか審議をいただいた、そして与野党の合意によりまして三点の修正がなされたというようなことを承っているわけでありますけれども、これまでの審議あるいは三点の修正について、現在の率直な感想を大臣の方からお聞かせいただければと思います。
  76. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生指摘のとおり、三点、衆議院修正されました。  当初、二条二項におきましては「国内農業生産基本とし、」というものでございました。議論の過程の中で維持、あるいはまた途中から維持という言葉よりもむしろ増大の御意見が強かったと感じておりますけれども増大ということをはっきりと定量的に示せということで、我々としてはそういうものももちろん十分含んだ上でより定性的にきちっとした位置づけをしようということで御答弁申し上げておりましたけれども、「増大を図ることを基本とし、」ということで、これも我々の従来からの考え方も含まれるというふうに考えております。  それから、十五条の六項で「遅滞なく、これを公表しなければならない。」ということで、これは当然公表するに当たっては国会先生方に真っ先にお渡しをし、そして必要があれば御議論をいただくということで、これも実質そういうことですよと申し上げておりましたが、国会の方でも責任を負う立場になるから明確にしてもらいたいということで「国会に報告するとともに、公表しなければならない。」ということになったわけでございます。  その前に、十五条の三項で自給率目標のところに追加されまして、「その向上を図ることを旨とし、」ということで、より高い自給率を目指すということを、当然そういう趣旨でおりますとお答えを申し上げていたところでございますけれども、明確にするということでございまして、これもより具体的になったということでございます。  いずれにいたしましても、国権の最高機関で御審議をいただいた上での修正でございますし、内容的にも我々の当初の考えと違うものではないということで、国会でいろいろと御審議をいただき、そしてまた引き続き国会でも報告をすることによって御議論をいただくということは大変意義深いことであり、この修正につきましては真摯に受けとめております。
  77. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、大臣の方から修正の内容について話をいただきました。先ほど、午前中の審議の中で、WTOといいますか新しい国際的な枠組みを決めていく中でこの基本法というものが急がれてきたのではないかというふうな話がございました。  振り返ってみますと、一九六一年の制定でございましたから、その前年の六〇年には日米安保条約が結ばれてきた。今の時代をちょっと見てみますと、ことしの国会の中で新ガイドライン法案が成立をする、また基本法議論がなされるということで、これは必ずしも否定的な意味でとらえているわけではもちろんありませんけれども、ガット体制からWTOの体制に日本というものが国際的な中において、立場でありますとか地位でありますとか位置でありますとか、そういうものを十分に考えるということになると、当然このような日本の変わり目のところでこの基本法議論というものもされてきたのかなというふうに思っております。  特段に安保とどうのこうのということではございませんけれども、今がそのような日本としてやはり変わり目の時期だというような認識でよろしゅうございましょうか。
  78. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まさに、昭和三十年代半ばの高度経済成長時代から安定成長といいましょうか、そういう中で国際情勢も食料につきましても大きく変化をしておるという現状、そしてまた、これはたまたまでございますけれども、新しい世紀を迎える目前であるということ、そういう中でWTOの次期交渉も始まるということも、これもたまたまではございませんけれども、そういう中で我が国食料、あるいはそれに携わっている方々、そして国土全体の多面的な機能を果たす役割農村社会維持発展といった問題、環境問題等々、新しい時代の要請というものにも十分こたえていかなければならないということが今回の基本法の数年来の議論の末の法律案でございます。  WTOとの関連におきましては、これは我が国が将来にわたって食料農業農村発展をしていくことに必要な施策を講じるための基本法でございますので、これがWTO交渉においても我が国立場がきちっと受け入れられるように国民的なコンセンサスのもとで次期交渉に臨んでいきたい、そういう意味で大きな時代の転換点にふさわしい、将来にわたってたえ得る基本法として御審議をお願いしたいと思います。
  79. 郡司彰

    ○郡司彰君 修正がありましたことについてのみちょっとここで触れさせていただきます。  報道によりますと、修正がなされたということでWTO交渉により厳しさを増したというような発言があったやに載っておりましたけれども、この修正WTO交渉が厳しくなった、国内生産拡大するということで厳しくなったというような認識はございますか。
  80. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 先ほど大臣から三点の修正について申し上げましたけれども、それは基本的に観点が変わるわけでもありませんし、このことによって直ちに次期交渉に何らかの影響があるということではないと考えております。
  81. 郡司彰

    ○郡司彰君 それでは次に、現行基本法評価ということで、午前中も議論がございましたけれども、私ども、常々これまでの農政をその都度振り返ってきちんと反省すべきところはすることによって新しいものが理解もされ、実行に移されるべきだろうというようなことを申し上げてまいりました。  平成八年の農業基本法に関する研究会報告ということで、政府としては改めてのこの評価というものを行っていない。しかしながら、大臣の考えについてはということで午前中お聞きをしましたけれども、今後、改めまして現在の基本法について評価を行うという予定はございますでしょうか。
  82. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 改めてといいましょうか、当委員会で何回かそういう御質問をいただいておりましてそれについてお答えをしておるところでございまして、公式の、正式の場で私どもが申し上げておることが現行基本法に対する一つ評価というふうに御理解をいただきたいと思います。
  83. 郡司彰

    ○郡司彰君 現行基本法の中では幾つか目的といいますか大きな柱があったわけでありまして、選択的規模拡大ということもその一つだったわけでありますけれども、一部畜産を除いては思うような進み方ではなかったと。原因については、土地の高騰あるいは機械化、化学肥料によります兼業化が要因になったとか、いろいろなことが言われましたけれども、新しい基本法についてはこの選択的規模拡大という考え方は踏襲されるということでよろしゅうございましょうか。
  84. 高木賢

    政府委員高木賢君) 現在の農業基本法におきましては、生産政策の方向として選択的拡大を掲げております。これは、当時の農業生産が、消費者所得の増加に伴いまして畜産物や果実などの需要が増加する、一方で米や麦などの需要につきましては停滞あるいは減少といった需要構造の変化が見通されたわけでございます。これに対応して我が国農業生産を需要に適合したものに変革するということで、当時として合理的な判断であったろうと思います。  今、先生指摘になりましたが、畜産物以外にも果実等はかなりバラエティーに富んだ生産が展開されるようになったと思いますし、野菜はさらに多品種のものが我が国で栽培されるようになったと思います。全体としては、需要の動向にどう生産を適合させ、そのことによって所得を得ていくか、こういうことであったと思います。  その考え方はどうなったのかということでございますが、需要がないところに生産があってもこれはまた売れない、あるいは高く評価されない、こういうことでございます。したがって、食料の供給は国民のニーズにこたえなければならないという考え方でございまして、新しい法案では二条の三項にその点を規定しております。「高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即して行われなければならない。」ということで、食料の供給についての考え方といたしましてはあくまでも国民の需要に即して行うんだということを明記してございます。
  85. 郡司彰

    ○郡司彰君 選択的規模拡大が思うように進まなかった原因の一つに土地ということが挙げられておりましたけれども、これからの新しい農業基本法の目指すものが、もしかするとまたいろいろな要因によって思うように進まないというようなことが出てくるかもしれない、その要因の一つにはまた改めて土地ということも含まれてくるのかなという思いがいたしまして、土地制度の問題、土地の問題というものは、農林水産業の関係につきましても今後とも非常に大事な観点といいますかファクターになってくるだろうと思うんです。  そこで、所感といいますか、農林水産大臣がこのことをすべからく行うということにはもちろんならないわけでありますけれども大臣として、日本の土地制度について、これまでのことも含めまして御意見等がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  86. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) やはり、特に農業者農家にとりまして先祖伝来の土地というものを守っていくという意識がいい意味で非常に強いものがあるというふうに考えております。しかし、総括のところでも申し上げましたが、経済発展とともに地価が上昇し、それによって資産的な意味を持つ土地保有ということが規模拡大に貢献することができなかったということがあるわけでございます。  これからも育成すべき農家中心にした施策をやっていくわけでございまして、そういう意味規模拡大というもの、あるいはまたもっと広い意味の土地の流動化といったものをきちっと進めていくことが必要である一方、いわゆる中山間地のような条件の悪い土地での農業の耕作放棄といった土地をできるだけ少なくしていくという面も必要ではないかというふうに考えております。
  87. 郡司彰

    ○郡司彰君 バブルの崩壊のときにも大分言われたことでありますし、日本の金融システムが間接金融に偏り過ぎているとか、ほかの国に比べて土地そのものが資産を生み出す風潮というものが余りにも強かったのではないか、それが結果として日本における農業あり方についても影響を及ぼしたことは間違いのないところでありますので、今後とも内閣全体としても、土地制度については慎重な中で、狭い国土の中での有効活用というものが実際にどうあるべきなのかということについて御議論をいただければと思っております。  続きまして、同じようなこれまでの間の関係でございますけれども、前回のガットの最終的な合意を受けて、六年間に限りましてウルグアイ・ラウンド対策を国内できちんとやっていこう、そして次の交渉までには国内農業をもう一回きちんとした形につくり上げていこうということで六兆百億円の予算が組まれて、これは現在も含めて使われているわけであります。  この六兆百億円の使い道については、この前質問をいたしましたところ、効果は上がっていますよというようなお答えをいただきました。地元の方でそれぞれ聞いていますと、一人一人の農民にとりましてはウルグアイ・ラウンド対策費でこれほどよくなったということを聞くことが少ないようなところがございます。  もうすぐ二〇〇〇年が過ぎるわけでございますけれども、どのような形でもってお使いになったか、この全体像をいつの時点でか明らかにすべきだろうと思いますけれども、そのような報告をなさる考えはおありでしょうか。
  88. 高木賢

    政府委員高木賢君) ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策につきましては現在進行中でございますが、完了した暁にはきちんとどのような実績であったかということは整理したい、また公表したいと思っております。
  89. 郡司彰

    ○郡司彰君 私どもは、一生懸命やってくださっているだろうということで、そのような全体像が明らかになるのを楽しみに待ちたいなという思いがあるわけであります。  若干この間の経過の中で、例えば新聞報道によりますと、このような事業がUR対策費で使われていいんでしょうかというような記事も見られたことがありますし、場合によりましてはUR対策費の中で、新たな外郭団体でありますとか、ありていに言うと天下り先になるような団体というものが多くつくられているのではないかというようなうわさがございますが、私はそのようなことはないだろうと考えております。  しかし、事業体としてそのようないろんな団体ができ上がったということになりますと、この経過が過ぎた段階でランニングコストがかかるようなものもつくられてきているのかなという感じがいたしまして、そのようなものがありますれば、この経過後のランニングコストその他の予算的な措置はどのようになさるお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  90. 高木賢

    政府委員高木賢君) この事業の中には、例えばある団体に資金を積みまして、その団体が弾力的に事業を実行できるという見地からそういう仕組みをとっているものも確かにございます。しかし、御指摘ありましたように、新たにそのために団体をつくった例はないというふうに承知しております。既にある団体の仕事として活用するという形を基本的にとっていると思います。  それから、その後がどうなるかということでございますが、一応これは期限を切った事業でございます。したがいまして、その時点が来ましたら締め切る、こういうことでございまして、その先またどうなるかということは、そのときの需要がどうなるかということにもかかわり合ってくるわけでございますが、一応これは六年間の事業、公共事業につきましては二年延ばしておりますが、完了時期があらかじめ定められておりますので、そのように対処したいと思います。
  91. 郡司彰

    ○郡司彰君 本文の方に入っていきたいと思います。  三点の修正がなされたということでございますけれども、私ども民主党としましては、できますればもう少し議論を重ねる中でよりよい形のものがつくられればありがたいなというような思いがございます。  その一つに、私どもの和田委員が本会議でも質問をいたしましたけれども、前文の関係でございます。これは、私どもだけではなくて、私ども以外の政党の方も質問等でそのような発言をいただいておりますけれども衆議院の方の大臣答弁等を読ませていただきますと、過去三、四年の間、基本法というものについては前文がない形のものが多かったというような説明がございました。  御存じのことと思いますけれども、ことしの二月に成立をいたしました、私どもが提唱してまいりましたものづくり法案でありますとか、あるいはまた今、参議院の方で修正を加えまして衆議院の方に送られております男女共同参画社会基本法案、これらについては前文が入っている、あるいは修正でもって新たに加えられたというような経過がございます。  そのような観点から、改めて現行までの流れの中で前文がないということが定着をしているんだということについては、違うんだという認識でお考えいただけますでしょうか。
  92. 高木賢

    政府委員高木賢君) 経過を申し上げますと、今まで、三十八年ですか、中小企業基本法政府提案で出されたときを最後にいたしまして、政府提案の基本法には前文がないというのが通例でございます。それを御説明して申し上げているわけでございます。  もちろん、その後、先ほど御指摘のありましたように、国会の御意思により男女共同参画社会基本法案が参議院で前文を入れる修正があったということも承知しております。ただ、今回の基本法案につきましては、衆議院段階ではそういう合意が成らなかったということで修正が行われていない、こういうふうに承知いたしております。
  93. 郡司彰

    ○郡司彰君 もちろん、与野党での合意がなかったということで修正が成らなかったというわけでありますけれども、参議院の審議はきょうからでございます。きょうからの審議の中で、それぞれ各党がそのような認識に立ち至ったときには、改めてこの前文についてもお考えをいただきたいと思います。  この前文につきましては、これは申し上げるまでもないと思いますけれども、残念ながら、私どもは地方に戻りまして今、農業基本法議論をしているんですよという話をしますけれども、なかなか内容にまで立ち至って、深みまで知りたいという方は非常に限られているわけであります。しかしながら、先ほどの御指摘にもありましたように、そこに携わる人たちにとっては重要な問題だということでかなり関心も深くなっていることも事実でありますから、この差を埋めるということが、私どもとしてはこれからのWTOに臨む日本国内支持その他も含めまして非常に重要なことになってくるんだろうというふうに思っております。  そういう意味で、条文の全文を読んでいただけるということが一番ありがたいわけでありますけれども、なかなかそうはならないという段階におきましては、やはり前文をもって国民各層に知らせることが私どもの責務ではないかなという思いがありますけれども、改めて大臣のお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  94. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 前文を置かなかった経緯については今、官房長から申し上げたところでありますが、そもそも前文というのは、法律制定するに当たっての経緯、そしてまたその基本的な理念というものをわかりやすく概括的に書くということでありますが、経緯につきましては、私の提案理由説明で経緯を申し上げたところでございます。  また、この法案自体が、先ほども指摘ありましたが、四十三条という非常に短い条文で、しかも基本理念的なものがいろいろと書かれておる。ですから、非常に読みやすいと同時に、今抽象的という御指摘がありましたが、要は、この法律基本理念、二条から五条まで四つあるわけでございますけれども、一番の前提となるいわゆる前文的なものは第一条を読んでいただければこれの基本的なことが御理解いただけるのではないか。全体として、基本法としての、理念法としての位置づけというもので、これに基本計画実体法その他で実際の施策を講じていくその前提になる基本法でございます。
  95. 郡司彰

    ○郡司彰君 続きまして、二条の方の関係でありますけれども、「食料安定供給の確保」というところで、二行目に「将来にわたって、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。」というような文言がございます。  私ども、いろんな資料を見る中で国民食料に対する関心は、安全だということ、合理的な価格、あるいは安定的にという、この三つがどうも多いようでございますが、この中で言います「良質な」というのは、国民の多数が望んでおります安全ということと同意義のようなことでとらえることが解釈としてよろしいかどうか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  96. 高木賢

    政府委員高木賢君) この辺も法制当局との間で議論になったところでございますが、良質と言う場合に、品物の性質としてすぐれている意味であるということで、安全性について非常に重要なポイントであることは当然ですけれども、良質な食料と言う場合には、品物の性質としてすぐれているということから当然安全性の条件を満たすものであるということで、良質の中に簡単に言えば包含されているということで整理されたわけでございます。
  97. 郡司彰

    ○郡司彰君 良質という中に安全が包含されているということでございますけれども、良質ということで今思い出しますのは、居酒屋に行って例えば枝豆が出てくる、非常に形も何もそろっていて、そういうものが本当に多く出回るようになりました。この良質ということと安全というものが、それぞれの意識の中では必ずしも同一になってきていないという現実があります。  例えば、遺伝子組みかえ食品等の普及によりまして、形や栄養価も含めて全部そろってきています。しかし、それの安全性が私どもの一般的な認識として、一般的に安全ということまでみんなが認識をしているかというと、これは必ずしもそうじゃないんじゃないかというふうな思いがあります。  そういう意味では、良質という中に安全というものが包含されるというようなことではなくて、安全ということをもっと前面に出すことによって、良質と言われる中でも危惧を持っている人たちに対してそういうものも訴えていくということが大事なんじゃないかと思いますけれども、改めてどうでしょうか。
  98. 高木賢

    政府委員高木賢君) 繰り返しになりますが、二条一項の「良質」という規定では、見た目あるいは食味という五感に訴えるものだけではなくて、そのものに内在する質のよしあしの中で安全性というものを含んで解釈しているということでございます。  ただ、現実の実践的な施策に当たっていわゆる安全性を確保するということは一つのポイントでございますので、第十六条で具体的な対策の方向を規定するに当たりましては、食料の安全性の確保を図るということで、その良質をかみ砕いて安全性ということを明示したわけでございます。
  99. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、官房長の方からも十六条ということもございましたので、また後ほど触れたいと思います。  さらに、この二条の中には、これも既に私どもの共通の認識になっているかと思いますけれども、安定的な供給については、農業生産増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせるというような文言がございます。まさに、そういうことでよろしかろうと思います。  大臣の方にちょっとお尋ねをしたいと思いますが、国内生産基本だということでありますけれども基本というのはどの程度の割合といいますか比率が基本ということで考えておられますでしょうか。
  100. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) これは自給率でいえば一番わかりやすいことになるんだろうと思いますが、当然我が国は主要国家の中でも一番低い自給率である。一方では、最近はデータとしてはとっておりませんけれども、金額ベースでどのぐらい自給しているんだとか、いろんなとり方があると思います。野菜とか海藻とか特用林産みたいなものは日本の中でも結構とれている。魚は六割の自給でありますけれども、なかなかカロリーベースにすると生きてこないというようなこともありまして、定量的に基本というものはどのぐらいになるのか。  もちろん、自給率の設定というものはこの後やっていくわけでありますけれども基本と言った場合に、ではどのぐらいなんだと言われると、これから自給率設定に向けてかなり難しい作業もしていかなければならないわけでございまして、直接的にはお答えできにくいというか、今の段階ではできない話でございます。  ただ、私自身は、今の日本の食生活というのは国内食料基本になっていないという認識を持っております。
  101. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、大臣の方から最後の方でいただいた話で、今後の施策がより充実されるのではないかなという思いもしております。  さらに、輸入と備蓄の関係でありますけれども、輸入については、先ほど外貨の準備というものがいつまでこれほどあるというふうな予測が立てられるのかというようなことがございました。一方、備蓄の関係でありますけれども、備蓄はやっぱり不測時の食料安定供給の確保としてとらえるというようなことだろうと思います。そういう意味では、備蓄というのは安全保障と同じような意味合いを持つものではないかなということを考えるわけでありまして、特に日本の中におきます耕種農業と畜産との関係が複合的なものにはなかなかなっていない、そういうふうなことも含めて広い意味での備蓄というものを日本の土地利用のあり方も含めて考えていくことが必要なんじゃないかというふうにも思っております。  穀物そのものの備蓄に加えまして、食用に転用可能なえさ米、あるいは家畜そのものも入るんでしょうか、食用穀物、芋類などの作付に切りかえることができるような土地利用などがもう少し備蓄という観点でもって議論されてもよろしいのかなという思いがありますけれども、いかがでしょうか。
  102. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 専ら、人間が直接食用に供するといいますかそういうものと、それを畜産といいますか飼料に転用できるものが当然あるわけでございます。例えば、お米でございますと、備蓄との関係で申しますと、現在、政府が回転備蓄方式で物を確保しているということは御承知のとおりだと思いますけれども、これを飼料米として、つまり一定の位置づけを与えてつくっていくということについては、生産といいますか物を確保するという意味では、食用に転用可能という利点は確かに先生おっしゃるようにあるわけでございます。  ところが、片方で、一番のハードルといいますか高いハードルなんですが、生産農家の採算性、それから飼料の場合は飼料工場における原料を安定的に確保しないといけないという課題もございます。そういうこともございまして、大変高いハードルがあるということでまだまだ検討すべき課題が多いと思っておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、米の場合をとりますと、畜産農家から見ますと輸入のトウモロコシと同じ程度で供給できないとなかなかそれは利用できないだろう。例えて言いますと、トン当たり二万円程度で供給できるということが一つ目標になるわけでございまして、米の生産コストは現在、トン当たり平均で二十六万程度でございまして、なべて十倍を超えるような、そういう価格の乖離があるということでございます。  確かに、お話のように新たな投資が要らないとか技術が容易だという利点がある一方で、大きな経済的負担を行うという課題がございますので、今後の土地利用型農業あり方の検討を進めるに当たっても一つの検討対象になると思いますが、その位置づけを与えることについては相当慎重な検討が必要じゃないかと私どもは考えているところでございます。
  103. 郡司彰

    ○郡司彰君 いずれにしましても、これからの長い将来にわたっての基本法でございますので、そのような議論も重ねていただく中でよりよい形を見出していただければというふうに思います。  次に、自然循環機能維持増進ということで、四条の方にも書かれておりますけれども基本法議論に先立ちまして、高農業生産方式導入促進法でありますとか家畜排せつ物管理適正化法あるいは肥料取締法等の審議がなされました。その際も私の方でちょっと申し上げたわけでありますけれども、持続的な農業に転換をするということをうたった基本問題調査会の答申よりも全体後退をしているような感じに私には受け取れるようなところがございます。  例えば、先ほど言いました環境三法と言われるものも、持続的なというような中身も内容的には若干盛られておりましたけれども基本線は金融でありますとか財政の支援措置のような形にどうしてもとられるような中身に偏していたのではないか、この自然循環機能の持続的なというような形のものがもう少しわかりやすくといいますか、アピール力を強めるような形でもって打ち出せないかという思いがありますけれども、どうでしょうか。
  104. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) お話ございましたように、この法律の中では持続的な農業農業が持続的に続いていくそれなりの条件を確保するために自然循環機能を確保する。その手法として、環境保全型農業という言葉を使って御質問もあったわけではございますが、私どもで申し上げますと、一つ持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律案、それから家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律案等々、もう前回ここで御審議をいただきまして御可決をちょうだいいたしておりますが、こういうものの制定によって連携を進めるための条件整備を進めていきたい、そういうことで対応をしていきたいと思っております。
  105. 郡司彰

    ○郡司彰君 自然循環機能維持増進については、私も本会議で食糧法の関係で質問をいたしましたときに、生態系というような観点も取り入れていくべきではないかというようなことを申し上げまして、それについては若干心強いような答弁もいただいたわけでありますけれども、この基本法の中に生態系というような直接的な言葉としては入ってきていないというような思いがございます。  例えば、平成七年の生物多様性条約に基づく生物多様性国家戦略を策定したというようなことでございまして、農業農村においても生物の多様性を確保していくことが盛られるということになっているわけでありますが、どうもその辺の観点がこの法案の中では字句として出てこないということを私どもは感ずるわけでありますけれども、この辺についてのお考えはどうでしょうか。
  106. 高木賢

    政府委員高木賢君) 自然循環機能維持増進というふうに規定をいたしました。これは、これまで農林水産省で使っておりました環境保全型農業の推進に加えまして、いわゆるリサイクルの意味合いも含めた概念でございます。  今お尋ねの点でございますが、自然循環機能維持増進というのは、植物が光合成によりまして生育する、それを動物が食べる、動物のふん尿につきまして微生物が分解する、そしてそれがまた植物の栄養となる、こういうまさに自然界の循環を促進しようとするものでございます。まさに、植物が育ち、それを食べ、そしてその排せつ物を微生物が分解する、この過程は生態系の保全にほかならないというふうに考えております。そういういわゆる環境保全型農業のほかに、リサイクルなり生態系の保全という意味合いを含ませましてこの自然循環機能維持増進という言葉に集約した、こういうことでございますので、農業によって生育される作物をめぐる生態系の保全もその自然循環機能維持増進の中に当然含まれる、こういう整理でございます。
  107. 郡司彰

    ○郡司彰君 先ほども申し上げましたが、例えば日本の畜産の場合ですと排せつ物の管理法律ができ上がりました。その中で、堆肥化をするというようなこと、あるいは肥料取締法の中でもそれを業とする方々についての決まりができたわけでありますけれども、耕種農業と畜産というものの結びつきが日本の場合には随分違った形でもってなされてきた。この狭い国土の中での畜産のあり方としていたし方のない点が相当あったかと思いますけれども、今後はその辺の結びつきをきちんと政府としても行っていくという姿勢がおありだろうと思います。  それについて、具体的な形でどのようなことを考えていらっしゃるかをお聞かせいただきたい。
  108. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 一つ具体的な対応を御紹介しておきたいと思います。  耕種農家と畜産農家、地域にもよりますけれども、かなり距離的に離れたところで実施をされているというケースが間々あるわけでございまして、そういう場合にはおつくりになった堆厩肥がなかなかスムーズに耕種農家に届かないということもありますものですから、十一年度から新たに事業をつくりまして、そういう需給マップをつくりまして、スムーズに結びつけられるようなお手伝いをしようじゃないかという事業をつくりまして、事業名で言いますと堆肥流通利用推進対策事業という事業でございまして、この事業を御活用いただいて、できるだけスムーズに結びつけられるようにということで対応を考えております。
  109. 郡司彰

    ○郡司彰君 大きな工場、自治体もISO14000シリーズ等の関心も高くて、それぞれ取得をされているところもふえている。その中では、若干でありますけれども、食べ物、生ごみ等も含めまして堆肥等が出てくるというようなこともあるのかもしれませんが、数として少ないものでありましょうけれども、ぜひ有効活用ができるような手だてをきめ細かく行っていただければと思っております。  次に、五条、三十四条の農村の振興ということでございます。  この間の農村の人口が急激に減少しているというようなことが言われておりますけれども、集落の消滅等について農水省の方ではどのような数字をつかんでいらっしゃいますでしょうか。
  110. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 八〇年から九〇年のセンサスにかけまして、消滅集落は過去十年で十四万二千が十四万百二十二となっておりますので約二千、十年間に消滅をしたというのがセンサス上の数字でございます。加えて、一九九〇年から九五年にかけて農家がいなくなった、あるいは農家が点在をして機能がないというふうなことも含めまして約百近くの集落が消滅途上にあるというふうなデータもございます。合わせますと二千を超える集落がこの十五年ぐらいで消滅をしているというのが私の手元のデータでございます。
  111. 郡司彰

    ○郡司彰君 十年間で二千ぐらいの集落が消滅をしているということだそうであります。ちょっと古い数字で見ますと、二十年弱ぐらいで二千六百という数字がありますから、その後の十年間の方が多分消滅の度合いが早まってきているのかなという感じがいたします。  さらに、平場、中山間で都市部を除いた地域集落の中で小学生がいなくなってしまったところで見ますと、それの倍以上、五千以上の集落で小学生が既にいないというようなことも何かの資料で見たことがありましたけれども、このような形で消滅あるいは小学生がいないという集落がふえ続けている。  今回の五条、三十四条等にも農村の振興ということが書かれているわけでありますけれども、この内容で思うような成果が上げられるというふうにお考えになりますか。
  112. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 今、先生から御指摘がありましたのは、特に中山間地域でそういう傾向が顕著だろうと思いますが、押しなべて最近の農村の現状は都市化が進行している、混住化が進むということで農業者の数も減ってきている、高齢化をしている。つまり、農業者が抜けるということと都市化、混住化をするという、そういうふうな二重の意味で伝統的な農村の集落機能が低下をしてきているという状況が見られるわけでございます。  これを放置しますと、コミュニティーとしての機能もさることながら、その地域にいろいろと設置をされております水路であるとか排水路であるとか、そういった各種の施設の維持にも支障を来しかねない、それからそのコミュニティーがこれまで長い歴史の間に培ってきた伝統とか文化といったものも実施をできない、地域活動ができないというふうな状況になるわけでございます。  今、農業集落の消滅であるとか混住化という話を申し上げましたが、これから先はやはり混住化を前提として非農家の方々も御一緒になってコミュニティーというものを再構築しなければならない、そういう時期に来ているのではないかというふうに私どもは思っております。とりわけ、私ども統計情報部のアンケートなどを通じましても、非農家の方々もそういったことに非常に大きな興味と関心を持っておられます。そういった環境施設の維持管理にかかわりたい、参加をしたいというふうな希望も強いわけでございますので、そういったことも背景にいたしまして、集落機能、集落活動の再構築をしたいと思っております。  例えば、今たくさんあちこちに見られますような棚田の保全などに地域の住民だとか非農家都市住民の方々の参加を求める、あるいはこのたびの予算あるいは前回の補正予算の中でつくっていただきました田園空間整備事業というふうな形で、農村地域全体をエコミュージアムというふうな形でもう一度復元してみる、さらにはお祭りの復活、推進、グリーンツーリズムといったようなことをいろいろと投じまして、もう一度コミュニティーの機能維持に力を注いでいきたいと思っております。
  113. 郡司彰

    ○郡司彰君 今答弁いただきましたように、これまでと同じような形のとらえ方だけではなかなか難しいだろうと思います。  ちょっと三条の方に戻らせていただきますけれども、「文化の伝承等農村農業生産活動が行われることにより生ずる」というようなことで、多面的機能の発揮の条項がございます。今の局長答弁の中でも、逆な意味農村ということだけで多面的機能ということに即結びつくのかどうかというような観点もございまして、この辺のところについては農村という使い方に非常にこれまで以上に気を配って使っていかなければならない。  私どもからすると、この農村農業生産活動というのは気持ちの上では違和感がないのでありますけれども現実問題として、農村と言われるところ以外での農業生産活動多面的機能の発揮というものは多いわけでありますから、この辺のところについても逆な意味で意を使っていただければというふうに思います。  それから、局長の方から先ほどもグリーンツーリズムを含めていろいろありました。このグリーンツーリズム、先ほど群馬県その他ですばらしい取り組みがあるという話をお聞きしましたけれども一つの地域でうまくいっているということと、全国的に普及をしてくる、全国的な流れの中でいろんなところにそういうものが結びつくという形までなかなかいっていないような嫌いがあります。  これはいろんな方法があるかと思いますけれども、例えば自治体でありますとかいろんなところに登録をしていただいてネットワークをつくっていく。インターネットでも結構ですし、役場に電話するなりそういうような形でもってのネットワークをつくる中で、どこにいる者も自分の住んでいるところの市役所なり役場に電話をすれば、行きたいところのそういう登録をしている農家の住所等がわかるようなシステムを行政が仲立ちになってやることも必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  114. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 午前中の質疑の中で事例集もちょっと御紹介申し上げたんですが、今のネットワーク、特に最近ではもうあちこちにそういうのが出ておりますけれども、インターネットを通じましてある県のグリーンツーリズムのページにリンクをしますと、そこで具体的な市町村でどういう可能性があるかというのが出てまいります。それをまた具体的にリンクをしますと、市町村、個別の農家というふうに広がるようになっております。これは、私ども、こういうふるさとの活動を21塾の村づくりの運動などの中でやってきておりますので、なお一層それをエンカレッジするようなことを考えたいと思っております。
  115. 郡司彰

    ○郡司彰君 私もちょっとアクセスしたことがあったんですけれども、実はそのときに、そういうネットワークが広がってくる、そして登録をしていただいて、ピンからキリまでじゃなくて、こういうような基準でこのような料金でというような、その辺のところの指導についてももう少し行っていただければなというような思いがございます。  もう一つお願いをしたいのは、これまでのそのようなあり方がどうしても開発を伴ってきたんですね。開発ということにお金をかけるのではなくて、できるだけありのままに接していただくというようなことで、開発というようなことではないような必要最小限度の設備にとどめていただければなというような思いがございます。  それから、都市との交流の関係でいきますと、家庭菜園などというものもそれぞれの地方で行われてきておるようでありますけれども、どうももともとのヨーロッパやその他でもって始まったものとはちょっと違うのかな。私も数少ないところを見に行った経験がありますけれども、精神医学的な観点から都市部に住む人たちが土と触れ合うことによってというようなことで始まった。しかしながら、例えばミュンヘンなんかですと、四分の一ぐらいの自給を賄う程度のクラインガルテンと言われるところでの生産そのものも上がっている。生涯にわたってその権利を使っていきたいとか、そのようなことでの思いもあるわけでございます。  今の日本の土地制度の中でなかなか難しいと思いますけれども、本当に集中化された極になっている大都市以外のところではまだそういうようなことが一定程度可能なところもあるんじゃないかという思いがありますが、そのようなことをいろんな形で、今第三セクターその他という方法もとられてきましたけれども、なかなか思うようにいかないんですね。このようなところについては、農水省だけじゃなくて、あるいは厚生省とかそのようなところも含めて日本の中で定着をさせていこう、願わくば副次的に農業に対する関心やら興味やらも持っていただけると。そのようなことについての取り組みの考えはございますでしょうか。
  116. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私どもも考えておりますようなことを御指摘いただきました。市民農園制度というのが本格的に取り組みを始めてまだ十年たたないわけです。五、六年の歴史なわけで、まだ緒についたばかりというのが現状でございます。かつて、一坪農園のような形で、言葉を選ばずに申し上げますと、シャビーであったのが、最近ようやく各地域にクラインガルテンとか、やや中期の滞在型の市民農園ができ上がって、本当の意味での憩いという段階に入りました。  それから同時に、市民が農業に新たに参入をして一定の量の農産物をつくることもかなり可能性が出てきたわけでございますので、これからどういう方向に育てていくかもう少し勉強しなければいけませんけれども、やはり都市との交流という点ではこれは非常に大事な芽でございますので、これから先もう少し力を入れるようなことをいたしたいと思っております。  これは古い数字になりますけれども、恐らく市民農園のベースでいって五千をちょっと超えるぐらいの数字ではないかなというふうに思っておりますので、これからもう少し力を入れたいと思っております。
  117. 郡司彰

    ○郡司彰君 そこで、ちょっと逆のような話になってしまうんですけれども、先ほど多面的機能農村の中でも生かしていこうということ、それから農用地の転用についてもそこのところは柔軟にというような話がございました。どちらの話も私はよくわかるわけでありますけれども、一方で農用地に指定されているものは五百万をかなり下回って四百三十五万ぐらいというような数字になってきているわけであります。  農村が活性化をし、これからのあり方を考える場合に、農用地の転用というものも柔軟にということもわかるわけでありますけれども、しかしながらその辺の歯どめが、市町村だけにすべて任せてしまって国全体の仕組みの中で農用地そのものの総量が把握できないというようなことが起こってくるとすれば、これまた別な問題があるんだなという思いがありますけれども、その辺の兼ね合いといいますか、どのようなことでお考えでしょうか。
  118. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 先ほど午前中の答弁で柔軟にと申し上げたのは、グリーンツーリズムという形で農業者が実際に農村の振興のために行おうとするそういった転用については既に農地法の中で特別の取り扱いをされておりますし、それからそういったものについて、一定のまとまりがあれば線引きをどうするかということも市町村長や都道府県知事が柔軟に行えるようにということを申し上げて、手続はきちんと踏んでいただきたいということを申し上げました。  幸いにして、地方分権の中で農地法につきましても従来、通達でやっておりました基準を法律上きちんと明確にいたしました。つまり、透明性のある基準によって運用が行われるということになりました。それから、農用地区域などを定める農振法の基準につきましても現在、国会法律案を提出いたしておりますけれども、その中で法定によって基準を明確化するということでございますので、あくまでも優良な農地はきちんと維持をしていく、それから基本計画の中で必要な農地面積については積み上げを行った上で、その必要量とそれを保持するための方策を明らかにするということで対応したいと考えております。
  119. 郡司彰

    ○郡司彰君 農村の関係につきましては、先ほど「文化の伝承等」という言葉もありました。これは私の考えたことではなくて、作家の司馬遼太郎さんなんかが言っておりますのは、文化というのは農耕民族の中で生まれてくる、これはやっぱり排他的ということがその文化の発祥のもとにはあるんだというようなことを書いているものがありました。  農村のことを考える場合に、これまで守ってきたといいますか残されてきたよいところが、逆に裏返して見ると、それ以外のところの人たちからするとなかなか入り込めないといいますか、そのような感性を持っている方が都会の方にはいらっしゃるのではないかというふうな感覚がございます。その辺のところは、一方に偏することなく、都会の方が農村にも行ける、農村に住んでいながらいろんな文化的といいますか、生活排水等の生活的な基盤も含めてでありますけれども、そういうようなことをきめ細かくやっていただきたいなという思いでございます。    〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕  それから次に、株式会社の農業参入ということが今回の基本問題調査会の議論でもございました。農業生産法人の一形態としての株式会社に限って土地利用型農業への導入を認めていこうということでございます。これについては、業務執行役員要件というものの中で農作業従事者が過半数を占めなければならないということになっているわけでありますけれども、これは商法の関係から株式会社の経営管理権といいますか、そのようなものとの整合性について、現在の考え方、進め方の中で保たれるということになりますでしょうか。
  120. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御案内のとおり、土地利用型農業における株式会社形態の取り扱いにつきましては、一貫して、株式会社一般は認めない、それから地域に根差した農業者の共同体である農業生産法人の一形態としての株式会社に限り認めることとしている、しかしその際にいろいろの懸念を払拭するための措置を検討するということで、この夏までに結論を得て、明年の国会で関連法制度の整備を行いたいというふうに思っているわけでございます。  その中で、今おっしゃられました業務執行役員、農作業に従事する執行役員が過半を占めることという点、あるいは事業でどういうものがやれるか、それから構成員としてどういう方が認められるかという点について今、最後の非常に熱心な議論を行っているところでございます。今おっしゃられた点について言えば、耕作者主義、つまりこの農業生産法人が農地法に基づいて農地を現に耕作する者にその権利を与えるという、その点をクリアすべきバーはどこなのかというところを議論しているところでございまして、もうしばらくお待ちいただきたいと思っております。
  121. 郡司彰

    ○郡司彰君 今検討中だということですからこれ以上は無理だと思いますけれども、いずれにしても今の商法の絡みでいくとそうそう簡単ではないなというようなところがございまして、しかしながらこれも先ほどと同じように偏ったような形で実質的に参加ができないというようなことになれば、また議論が出てくるところでございますから、その辺のところについては知恵を働かせていただいて、結果としてその土地利用型に参入をした暁にはその土地そのものが農地以外の使用ということにならないような、その辺のところについてはしっかりとやっていただければいいと思っております。  それから、特定農業法人でありますけれども、そうそうふえているというような思いはないんですけれども、どのぐらいのシェアになっておりまして、どのような現状でございましょうか。
  122. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御指摘は特定農業法人でございますか。  私の記憶ではこの一年間にたしか一けたまたふえておりますので、三十二、三だったのが三十九になっていると思います。三十九です。    〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕  それで、この特定農業法人というのは、御案内のように、集落全体の話し合いの中から、この集落の営農をある種の農業生産法人なら農業生産法人の方々にみんなお任せしようというふうなことで、合意のプロセスが非常に大事でございますし、それがありませんとこれは成功するものではございませんので、この歩みというのは私自身はそれほど遅いとは思っておりません。着実に進めていくべきものと考えますし、そうなっていると思っております。
  123. 郡司彰

    ○郡司彰君 三十幾つかのところで、そのうち七つか八つぐらいは島根県だろうと思います。島根県で一定程度成功しているところもあるということで見させていただきましたけれども、どうして島根県がうまくいっているのかなということになりますと、因果関係はそれだけではないと思いますけれども、島根県そのものが独自に中山間地、集落が消滅をする、そういうところにやっぱりきちんと自治体として予算措置をとりながら相当きめ細かい施策を行っているというふうに思います。そのような細かい施策を行うことによって一定程度成功するところが出てくる、やろうとする地域が出てくるということではないかと思います。  そういう意味では、さらに農水省の方も、それぞれの自治体にお任せということではなくて、よりよい指針をつくっていただいて、中山間地あるいは農村の活性化に役立てていただければと思います。  それから、分権の関係でありますけれども、私ども民主党の方で地方分権推進計画が出されてもう少しこの基本法の中で分権に関するところが明確になるのではないかというような思いがございました。十三条、三十七条を含めまして、財源でありますとか権限でありますとか、その辺のところをより踏み込んだ形でもって基本法として仕上げると、そのような思いがございますが、いかがでございましょうか。
  124. 高木賢

    政府委員高木賢君) 地方分権につきましては、農林水産省といたしましても、例えば去年の通常国会におきまして農地転用の許可権限の都道府県への委譲を内容とする農地法の改正を行うなど積極的に推進してきました。今国会にも地方分権一括法案を提案されておりますけれども、その中では機関委任事務制度の廃止なり地方公共団体に対する国の認可、承認などいわゆる国の関与の縮減、さらには農業委員会におきます農地主事の廃止など必置規制、必ず置かなければならないという規制の見直し、こういうことを盛り込んで御審議をいただいております。  こういうことで、国と地方の関係でございますから、これは農林水産省のある部分だけが分権をするということでは受けた方の地方の側もうまくいかないと思います。そういうことで、政府全体の方針に基づいてその中での必要な対応をすると、こういうことでやっております。  新しい基本法案は、個々具体的な点については触れておりませんけれども、頭の整理といたしましては地方分権の考え方を十分に取り入れております。  一つは、地方公共団体の責務でございますが、今提案しております地方公共団体の責務は第八条にございまして、「地方公共団体は、」「国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と。  これがどれだけ画期的かと申しますと、現行農業基本法におきましては、ここのところを地方公共団体は国に準じて施策を策定するということで、もう右へ倣えということであったものを、地方公共団体の主体性を明確にいたしまして、国との役割分担のもとにその地方公共団体の条件に応じた施策を策定し推進するということで、地方公共団体の自主性を明確にしたところでございます。  それから、国と地方の関係につきましても、三十七条で国と地方公共団体が対等の関係であるということを明示するために国及び地方公共団体が相協力をするということをうたっております。  こういうふうに、地方公共団体の位置づけ現行農業基本法と全く異なっておりまして、考え方としてはそういう整理でございますが、あと個々具体的に施策ごとに、何を地方公共団体がやり何を国がやるか、あるいは国と地方公共団体が相協力してやっていくかということについては、個別の施策ごとに適切に対応していきたいと思っております。
  125. 郡司彰

    ○郡司彰君 分権についてはこれからの議論の中でまた触れさせていただきたいと思います。  農地面積あるいは耕地利用率についてでありますけれども、先ほど来の議論の中からも農地面積が必要だということの議論がなされておりました。私も同様に、優良農地を含めまして優良ではないと言われている農地もきちんと確保していくということが大事だろうと思っております。その中で、どのように耕地を利用していくかというようなことが問題になってくるかと思いますけれども、麦あるいは大豆というようなことの前に、きょうの農業新聞によりますと、農水省の方で来年以降転作、いわゆる減反政策でありますけれども生産調整を大幅に見直すことを検討しているというような記事がございました。これについてはどのようなことで理解しておけばよろしいでしょうか。
  126. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) これは、記事にございますように、転作という形でのとらえ方ということは必ずしも正確ではございませんで、水田利用を中心といたします土地利用型全体の農業を、新しい基本法にございますように国内生産体制をどういうふうに進めていくかということの中でどういうふうに考えるかという全体の検討を進めている、その中のいろんな情報を整理されたのではないかと思いますが、そういう取り上げ方をされたのだと思っております。
  127. 郡司彰

    ○郡司彰君 全国にもいろんな意見がありまして、生産調整そのものをやめてしまった方がいいという意見ももちろんありますけれども、これはこれできちんとして残しておくことが日本のためにもなるんだというような議論ももちろんこれまでもあったわけであります。  いずれにしましても、さきの食糧法のときだったでしょうか、今現在そのようなことについて検討はしていないということでしたけれども、これから検討がなされるとすれば、検討する内容等についてもできるだけ速やかに明らかにしていただければということを申し添えておきます。  それから、農地の利用のことに関しまして麦の関係、大豆の関係についてお聞きしたいと思います。  麦は、年次報告、農業白書の方で見ますと、わずかながら増加傾向にありますということ。しかしながら、麦価のときにもお話がありましたように、需要と供給の大幅なミスマッチが生じている。新しい麦政策によって、つまりこの情報シグナルを的確にとらえるような民間流通に移していこうということで、ミスマッチをなくしていこうということだろうと思います。  しかし、御存じのように、天候等によりまして非常に品質が変わってくるというようなことが一方でありながら、この麦のところを見ますと、いわゆる規模が大きくなれば収益が増加をするんじゃないかというふうにとらえがちですけれども農業白書の方を読みますと、小規模の方が収益がよいというような形で記載されておりまして、スケールメリットが生かされていない原因は何なのかということと、新しい麦政策に基づいてこれから麦の作付その他ミスマッチを起こさないような形で行っていこうということに対しての具体的な施策についてお話しいただきたいと思います。
  128. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 自給率が低うございます麦とか大豆等の生産を振興していくというのは、これは大変大切なことだと思っておりますし、特に、法案の中にも書いてございますように、消費者なり実需者のニーズに即して生産をしていく、これは大事なことだと思っております。  これまでも、麦、大豆、特に麦等につきましてはいろんな対策を推進してきたわけではございますが、もう一度さまざまな角度から状況を整理してみる、見直してみるということで検討してきておりまして、一つは需要と生産のミスマッチ、それから品質と収量の変動が大変大きいということが課題になっておりまして、三点ほど対応を整理しております。  一つは、実需者のニーズに対応した生産をどうやってやっていくか。二つ目が、担い手を中心としました生産体制の整備をする。それから、消費者サイドといいますか実需者サイドからよく言われております品質と収量の安定化を推進するということが大事だと思っております。  具体的には、産地ごとにやはりそういう理解をきちっとしてもらうということが必要でございまして、生産者、実需者、普及組織、それから行政等が一体となりまして、良質な麦それから大豆を安定的に供給する主産地の育成を図っていくということをしております。  ただ、麦、大豆と一言に言いましても産地の状況はいろいろ違うわけでございまして、例えば畑作でございますとか水田でやる、当然違うわけでございますが、そういう産地の状況に応じまして生産組織を育成するとか期間借地の促進をする、そういうような規模拡大一つでございます。それから、契約栽培や品質取引に対応できるような生産体制をつくる、それから作付の団地化や合理的な輪作体系を導入、普及していくということが重要なことでなかろうかと思っております。  なお一点、コストのことについてございましたが、ちょっと今御質問部分が正確にわからなくて申しわけないんですが、例えば麦でございましたならば、三ヘクタールから五ヘクタールになりますとそこでいろんな装備を切りかえないといけないという、一種の過渡的な規模に達しまして、そこでなだらかにじゃなくて突然コストが高くなるという規模部分がございますので、恐らくそのことを言っていたんじゃなかろうかと思っております。
  129. 郡司彰

    ○郡司彰君 大豆の方の関係でありますが、先ほど官房長の方が別の委員質問に答えられまして、日本は大豆は不得意だというような発言がございましたけれども、私はちょっと別なのじゃないかなという思いがあります。例えば、冒頭お話をしました六〇年の日米安全保障の交渉のときに岸総理が伺ったときに、自由化の第一段として大豆の自由化というものを決めてきたわけです。  そういうような経過の中で現在があるわけでありまして、必ずしも不得意だから今の大豆の生産量、生産シェアになっているというふうには理解をしていないんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
  130. 高木賢

    政府委員高木賢君) 先ほどの答弁があるいは舌足らずだったかもしれませんので詳しく申し述べますと、先ほどの流れは、油の原料としての大豆ということを申し上げました。油脂の原料ですから当然、油の含有率が高くないとペイしないということで、日本は非常に雨が多いものですから、たんぱく質は多いんですが油が少ないという意味で、油糧の原料としての大豆が不得意だということを申し上げたわけでございます。  ただ、念のためですが、国産大豆は豆とか納豆、豆腐、こういった食品用の大豆としては当然得意であると私は思います。そういうコメントをさせていただきました。
  131. 郡司彰

    ○郡司彰君 それで、大豆についてもこれから自給率向上だけではなくて、大豆そのものの需要が大変あるということで、ふやしていこうということだろうと思います。  特に、大豆の場合よく言われますのは、品種、いわゆる種子をどのような形でもって開発をし押さえていくかということが、種子戦略ということで一般的に言われておりますけれども、非常に大事だというふうに聞いております。そういう意味で、日本の種子戦略はまだ若干、力足らずなのではないかというような論調もございます。  それらを踏まえてこれからの日本の、大豆に限らないのでありますけれども、種子戦略についてお話をお聞かせいただきたいと思います。
  132. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 我が国では北から南までいろんな条件のもとで作物が栽培されているわけでございまして、例えば麦の例をとりますと、麦に限りましても品種に対する要求というのがいろいろ違うわけでございます。例えば、南でございますと梅雨がございますので、それに負けないようなといいますか、それぞれの地域によって要求が違うわけでございまして、具体的なそういう目標といいますかねらい目といいますか、それをきちっと定める。  それから、単に品種を開発するというだけではございませんで、地域の中で具体的に栽培をされる段階まで含めてそれが育成されませんと最終的な効果を上げないわけでございますので、現在は生産者から実需者まで入っていただきまして、どういう品種を育成したらよかろうかという協議会をつくるということを一つテーマにしております。  それから、ちゃんとした品種を開発するには、まず研究開発の体制というのが何より大事でございますので、そこに力を入れて、全体として新しい品種を開発するための、総合的にといいますか、一緒になってやっていくという体制の強化を図っているところでございます。
  133. 郡司彰

    ○郡司彰君 当然、DNAといいますか遺伝子の組みかえということもその視野の中に入ってくるだろうと思いますし、研究の中にも当然そういうことも含まれてくるかと思います。遺伝子の問題についてはまた後ほどさせていただくということで、しかしながら開放系利用の研究その他については慎重にお願いしたいというふうに申し添えておきます。  それから、農地の減少の関係でありますけれども、土地改良事業が行われた農地の転用、いろんなことがありまして、八年を過ぎていないものについては変換ということにはならないことにもなっているわけであります。いずれにしましても、相当程度税金を使った上での圃場整備が行われたその土地が農地以外に転用されているということがありますれば、これはなかなか国民的にも理解しづらいところだと思いますけれども、今そのような形の転用というものは実際に出ているのか。出ているとすれば、今後の対策等についてもお聞かせいただきたいと思います。
  134. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御案内のとおり、農地法ではそうした土地改良事業を行って八年を経過していない土地、これはもう一番上のランクでございますので転用は原則禁止。それから、農振法に基づく農用地区域の設定をする場合にも優良農地として確保するということでございますが、たまたまこれは後から公共的な用途として一定の広がりの土地が必要になる、あるいはそこに道路の計画が上がってくるというふうなことでやむを得ずそういった事情が生ずる場合もありますが、それらにつきましては都市計画あるいは道路の計画がございますので、そういった段階で極力あらかじめ調整をするような指導をしておるところでございますけれども、やむを得ないものも多少はございます。
  135. 郡司彰

    ○郡司彰君 やむを得ないものがそうそう出ては困るわけでありまして、その辺のところについても今後厳しくチェックというよりは、計画段階そのものだと思いますので、お願いをしたいと思います。  次に、十六条関係、食料の消費についてお尋ねをいたします。  いずれにしましても、世界の中でこれから後進国における絶対的な貧困をなくしていこう、一方で先進国と言われるところの高度な社会経済システムを見直していこうというようなことが言われて久しいわけであります。大量生産、大量消費、大量廃棄ということがその内容にもなってくるだろうと思いますけれども、大変な量の食料が輸入されてきているかと思っております。  例えば、先ほどの発言ではございませんけれども、現在、輸入のものと同じものを国内生産しようとすれば一千二百万ヘクタールの土地が必要だという表現がございましたけれども、それと同等ぐらいの数量が今度逆に入ってくるわけであります。この入ってきたものの結果としましては、多数がごみとして出ることになる。日本の場合にはほとんど焼却でありますから、入ってきたものを焼却してダイオキシンが発生するというような、このような循環の中に日本の社会が今あるんだろうと思っております。  今現在、つかんでいればで結構でありますけれども食料品としてどのぐらいのものが重量ベースで入ってきていて、そのうち、これもまた確かな数字ということになりませんけれども、どの程度のものが残ったもの、生ごみ等として出されているんでしょうか。
  136. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 一定の前提を置いた推計でございますけれども、一年間の家庭での食べ残し量は約三百四十万トンという推計が出ております。これは純食料供給量、可食部分の五・二%に相当するという推計がございます。  また、食品産業あるいは家庭からどれぐらい食品廃棄物が出ているかということでございますが、産業廃棄物、それから一般廃棄物を合わせまして年間約千八百万トンが発生しております。その内訳は、食品産業から発生するものが八百七十万トン、家庭から発生するものが九百三十万トンということでございます。
  137. 郡司彰

    ○郡司彰君 その中で、例えば外食産業そのものはここ一、二年減少ぎみだと。一方で、お弁当類を含めました需要は相当ふえてきている。  そういうような状況の中で、日本そのものは、昔から言われておりますように、私が住んでおります霞ヶ浦もそうでありますけれども、富栄養化というような形で国全体が栄養があり過ぎる。持ってくるところについては劣化をしているというような関係の中でありますから、何とかしてそのものを抑える努力も必要ですけれども、少なくとも、入ってきたものの生ごみ等を燃やすというような努力ではなくて、堆肥化させるような、そういうような手だてというものも考えてもよろしいのかなと思っております。  例えば、企業、工場等では、自治体も含めて、先ほど言いましたように、ISO14000シリーズ等で若干のものがございますけれども、できますれば、私は法律という網をどのようにかけるかまだちょっと細かいところまで精査をしておりませんが、一定食以上の食事を提供する、あるいは一定食以上を毎日コンビニ等で残ったものを捨てるというような、そのような業者に対しては生ごみを堆肥化するような、そういう法律制定も必要になってきていると思いますけれども、そのような考えについてはいかがでしょうか。
  138. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 今、先生指摘のように、最近の環境問題に対する社会的関心が高まっていることを反映いたしまして、食品関係の事業者におきましても食品残渣の分別、あるいはこれを堆肥化しまして農業者に供給するといったようなリサイクルに取り組む事例もふえてきておるところでございます。  例えば、茨城県の例を申しますと、あるスーパーでございますけれども、二十店舗から出ます生果くずを地元の青年団が設立しました農事組合法人に委託して堆肥化して、さらにそこでつくられた野菜をこの食品スーパーが仕入れて販売するといったような事例もございます。また、札幌市の例でありますけれども、ごみの減量化と資源循環ということで生ごみの飼料化を進めている。これはレストラン等から出ましたものを含めてでございますが、そういう事例もあるわけでございます。こうした事例もふえているわけでございます。  ただ、問題は、その場合のコストの面と再生品の需要先をどうやって確保するか、そういった重要な問題があるのも事実でございます。そうしたことから、この食品廃棄物のリサイクルを進めることは、資源の有効利用あるいは廃棄物の減量化に有効であることから、農林水産省としましてもこれを進めてまいりたいというふうに考えております。食品廃棄物の処理施設の整備あるいは技術の開発普及等あるいは関係事業者への取り組みを促す、そういったことも関係省庁とも連携をとりながら進めてまいりたいというふうに考えております。
  139. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、答弁いただきましたように、設備は見に行ったところでは、通常のコストを計算したものよりそんなにべらぼうに高いわけではないんだけれども、でき上がったものをどうするかというのが、そちらが困るんだというような話がありましたので、その辺も今後検討いただきたいと思っております。    〔委員長退席、理事三浦一水君着席〕  それから、食料消費の関係につきまして、あるところからいただいた資料で、例えばホウレンソウでありますとかいろんな野菜がそうでありますけれども、今、ハウスその他でもってつくる、いわばしゅんを外したような形でもって野菜の生産というものが行われているけれども、栄養価が相当程度、いわゆる昔でいったしゅんのときにでき上がったものと比べると相当違ってきているというような資料をいただいておりまして、私もなるほどという思いをしているわけでありますけれども、このような情報は余り提供されていないんじゃないかなという感じがします。  例えば、私どもも買ってきたもので非常に形が整っていて季節じゃないものを食べたとき、珍しいということと昔の味と違うなというふうな感じが相当ありまして、そういうものが見た目だけじゃなくて栄養価としてもかなりの違いがあるんだということが、どうも今までの中では情報として伝わってこなかったんじゃないかなというふうな思いがございます。  この新しい基本法ができる、食料消費についていろんな啓発も行うという中でこのような情報を開示するといいますか、きちんと流していくという努力も、逆に食料に対する関心を呼び、安全性に対する疑念を晴らすことにもなるんだろうと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  140. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 今度の基本法の十六条二項にも、健全な食生活に関する指針を策定したり、食料の消費に関する知識の普及あるいは情報の提供ということが進めるべき方向として示されているわけでございます。  今、先生御案内の、野菜はしゅんなもの、また時間とともに劣化するということがあるわけでございますので、そうした点をまず調査研究すると同時に、その結果を消費者に対しまして提供する仕組みなどを検討し、対処してまいりたいというふうに考えております。
  141. 郡司彰

    ○郡司彰君 時間が残り少なくなってまいりまして、大分残しているんですが、WTO交渉の対応について大臣にちょっとお聞かせをいただきたいと思います。  既に、七月には五カ国農相会議がカナダでしょうか、決まっているというようなことでございます。その中では次期交渉に向けての共同宣言が出されるのではないか、そういうようなことも聞いておりますし、十月の末からは第三回WTO閣僚会議が米国で開かれ、交渉方式でありますとか期間についての話し合いがなされるということでございますけれども、現段階で大臣の考えております日本側の対応についてお聞かせいただきたいと思います。
  142. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現段階では、まさしくこの委員会を初め、国民的な議論を尽くしていただいた上で次期交渉に向けて取り組んでいきたいというふうに考えておりますから、かちっとしたものがまだでき上がっている段階ではございませんが、いずれ近いうちに方針を決定していきたいというふうに考えております。  その上で、農業の果たす多面的な役割食料安全保障も含めまして、こういうものを強く主張していくこと、あるいはまた輸入国としての立場、特に輸出国とのバランスの問題といったもの、そしてこれは第一義的には一番最初に申し上げなければいけなかったわけでありますけれども、各国とも食料安定供給というものが国の責務である、日本にとっても当然それが一番大事であるといったようなこと等を含め、また各国それぞれの事情も勘案しながらそれぞれ国として食料政策をきちっと進めていくようにしていかなければならないということで、我が国だけではなく、私も何カ国かの農業大臣と会合をいたしましたが、EUあるいはお隣の韓国等はかなり考え方も似ておるわけでございますので、そういう国々とも相集いながら次期交渉に臨み、この基本法の精神がWTO交渉の場でも正当に取り入れられるように頑張っていきたい。何よりも国民的コンセンサスづくりが当面の最大の重要な課題であろうというふうに考えております。    〔理事三浦一水君退席、委員長着席〕
  143. 郡司彰

    ○郡司彰君 その中では、当然、緑の政策がどの程度、どこまでというようなこととか、見直しを含めてあるんだろうと思います。また、日本の論調の中では食料主権というような言葉が非常に使われるようになってまいりました。大臣には、緑の政策の見直しについてもしお話しいただければと、それから食料主権という言葉大臣の方ではどのような語感として、どのような感覚でとらえていらっしゃいますでしょうか。
  144. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 緑の政策というものに我が国の主張が入るように努力をしていく、当然のことでございます。各国いろいろそれぞれ主張があると思いますけれども、先ほども申し上げたように、一般的に各国とも理解可能な我が国の主張だろうと私は考えております。一部の輸出国は全くまた別の考え方議論が行われることは予想されますけれども我が国の主張を緑のボックスの中に入れるように努力をしていきたいというふうに考えております。  また、食料主権という言葉でございますが、私自身は余り使っていない言葉でございます。要するに、国民に対する独立国としての食料の安定的な供給というのは国の大きな責務の一つであろう。それを対外的な関係において食料主権というような意味でお使いになっている方がいらっしゃると思います。  いずれにいたしましても、国民に対し、将来にわたり平時あるいは不測時を含めて安定的に食料を供給することはむしろ国の責務であるというふうに考え、またその責務は、生産者はもとより消費者あるいはまた流通・食品産業界等々皆さんの国民的な御理解をいただいた上でこの責務というものが果たされていかなければならないというふうに考えております。
  145. 郡司彰

    ○郡司彰君 ローマ宣言等にも大臣がおっしゃったような言葉の使い方がございますから、そのようなことだろうと思います。  時間がございませんので、次に構造改善局長お尋ねをしたいと思います。  衆議院で私どもの鉢呂議員が質問をいたしましてその答弁をいただいた関係でございますけれども環境の保全あるいは調和ということに関しまして調和と保全の違いをお述べ願いたいと思いますという鉢呂議員の質問に対しまして、局長の方からの答弁がありました。ちょっと長いですからそのところだけ読みますと、その環境をそのままの状態で保存するように配慮するというような表現ぶりですとこれは論理上矛盾をするという、その後また続くわけでありますけれども、このような答弁がございましたけれども、この答弁でよろしゅうございますか。
  146. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御指摘の点は法案第二十四条のことだろうと思います。法案第二十四条は、農業生産の基盤の整備ということでございますので、あくまでも基盤整備を実施するという人為による作用を加える場合の考え方を整理した条文でございます。人為による作用を加えるということになりますと、環境に対して一定の負荷を与える可能性を持っております。したがって、このことを前提法律の規定を考えた場合には、法制用語上、これはあくまでも法制用語上ですが、環境の現状をそのまま保つというニュアンスの強い「保全」よりも「調和」の方が適当だというふうに考えているところであります。  そこで、その「調和」という規定ぶりですが、環境に一定の負荷を与える可能性がある事業を実施する中で、その影響をできる限り抑えて環境に適合するように配慮しつつ事業を実施することを求めるものでございます。  このことは、実はミティゲーションの五原則というのがございますけれども、そのうちの第一番目でございますがアボイダンス、つまり回避、事業を行わないということも当然含まれるものでございまして、そういう点でいいますと、鉢呂先生あるいは先生が今おっしゃっておられるであろうお考えと趣旨とするところは同じであるというふうに私は思います。
  147. 郡司彰

    ○郡司彰君 ちょっと時間がありませんので、この環境についてはできますればまた後ほど時間をいただいて質問をしたいと思います。  法制用語上というような言い方がございましたけれども、法制用語上というようなことでいえば、農水省構造改善局の中で、言葉として調和でありますとか保全でありますとか、厳密な使い分けをしていらっしゃるのでありましょうか。
  148. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 法律という国会で御承認をいただくことについてはできるだけ一番ふさわしい表現ぶりをした方がよいのではないかということを考えまして、種々、例えば最近の立法例でありますと河川法あるいは海岸法、さらにはさかのぼって環境基本法もございますが、そういった条文環境の保全あるいは環境の整備と保全、河川環境の整備と保全、海岸環境の整備と保全、こういうものを一つ一つ参考にいたしまして、この二十四条のコンテクストで裸で使うのであるならば「環境との調和」というのが適切であるというふうに判断をした次第でございまして、国会で御審議をちょうだいしたものでございます。
  149. 郡司彰

    ○郡司彰君 また後ほど議論をさせていただきたいと思います。  それ以外にも、経営安定対策でありますとか中山間地の問題について質問をしたかったわけでありますけれども、次回に譲りたいと思います。
  150. 風間昶

    ○風間昶君 公明党の風間です。  まず、我が国食料需給について伺います。  日本の食生活というのは米から、所得水準が向上してきて米の消費が減少して、輸入飼料穀物に依存せざるを得ない畜産物の消費が増加するという、全体からいくとバランスがいいのかもしれないけれども我が国農業の実態からすると大変厳しい、多様化、高度化してきているという状況の中であります。今後の需要につきましても、品目別でいうと、米は緩やかに減少、牛乳・乳製品、肉類などの畜産物は引き続き増加、野菜、果実、油脂等その他の品目はほぼ横ばいというふうになっております。  今回のこの新農業基本法衆議院における修正自給率向上を図るということが明文で明らかにされたわけでありますけれども政府としては、この需要の予測を前提に、今度はそれぞれの品目別の国内生産向上をどう図るのかということが極めて大きな課題になっているのではないかというふうに思います。今、述べさせていただきました需要についての傾向と相まって、国内生産向上をそれぞれどのように図るのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  151. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) まず、私の方から、稲、小麦、大豆、野菜につきましてお話をしたいと思います。  稲、お米でございますが、これはもう逆に需給ギャップが存在しているぐらいでございますのは御承知のとおりでございまして、市場評価を踏まえた品質選択によりまして、需給動向に即した良質米生産等を推進して安定供給の確保を図っていくということでございます。  それから、小麦、大豆につきましては自給率が低うございますし、これから実需者のニーズに応じた生産基本としてまだ需要に対して生産は十分可能だということでございますので、水田地帯、畑作地帯等それぞれ地域の実情はございますが、期間借地等による担い手の規模拡大あるいは合理的な作付体系の樹立、作付の団地化等々で収量、品質の向上、安定化を集中的に推進していくということで小麦、大豆の生産の定着を図っていきたいということを考えております。  また、野菜につきましては、国民が必要とされる野菜をもう少し国内で安定的に供給し得るようにするということが大事ではないかというふうに考えておりまして、これにつきましては機械化一貫体系の導入、それから国産野菜の周年的な安定的な生産体制、特に野菜につきましては、消費者の皆さんの本物志向でございますとか安全志向等々、そういう志向が高まっている、あるいは業務用需要が増大をしている、そういう需要サイドといいますかニーズがございまして、それに的確に対応し得る生産流通の推進を図っていくということが大事ではなかろうかと思っております。
  152. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 私の方からは、牛乳・乳製品と肉類につきましてお答えさせていただきます。  畜産物国内生産拡大を図っていくためには、生産コストの低減でありますとか品質向上対策の推進などを図りながら、高品質で安全で特色のある畜産物生産に努めていくことが重要であると考えております。  このために幾つかの施策を考えているわけでございますけれども、まず第一には、飼養規模拡大でございますとか、乳牛、肉牛といった大家畜生産におきます自給飼料生産の推進などによって生産コストの低減を図ること。さらに、家畜改良によりまして、例えば一頭当たりの搾乳量を増加する飼料効率の高い牛でありますとか豚をつくること。それから、肉質改良などの生産能力の向上を図っていくこと。それから第三点目には、肉用子牛生産者補給金制度などの各種経営安定対策の適切かつ円滑な運営を図っていくこと。さらに四番目には、ヘルパーなど支援組織の活用によってゆとりある経営の実現を図ること。さらに、大変重要なテーマでございますけれども、地域と調和した経営を図るための畜産環境対策の推進を図るといったこと。  こういった施策を講じているところでございまして、今後ともこれらの施策の推進によりまして国内生産の振興に努めてまいりたいと考えております。
  153. 風間昶

    ○風間昶君 果物についてはどうですか。果樹について。
  154. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 果樹につきましては、全体としては安定した需要の状況でございますが、物によりましては若干国内生産量の方がオーバーをする、あるいはオーバーの可能性があると思われるものがございます。そういうものについては適切な計画生産等を指導してまいらないといけないわけでございますが、いずれにしましても生産を担い手の方に集中してコストを下げる、それから品質を向上させる。それで片方で、国民のといいますか消費者の皆さんのいいものを食べたいという要求、それから海外との競争といいますか輸入物に対する競争力を確保する、品質での勝負をする、そういう面で対応していくということだと思っております。
  155. 風間昶

    ○風間昶君 今、コスト面での改善あるいは品質の向上を図ることで国内生産を増加させるという答弁がありましたが、ではコスト削減を具体的にどうやるのか。目標はわかったので具体的な治療法をどうするのかということについて、小麦、大豆、それから牛乳・乳製品、肉類、これについてお答えいただきたい。
  156. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) それでは私の方から、稲、麦、大豆という点でございますが、いずれも土地利用型の作物につきましては、まず一つは、これらの農業機械の大部分が共通に使われるという利点が一つございます。それから、作付規模あるいは作業規模拡大することにより十分スケールメリットを発揮できる余地があるわけでございます。それから、これら作物を適切に組み合わせますと農地を有効に活用できるという利点がございます。こういう点がなかなか十分に発揮されてこなかったという面はひとつ反省をしているところでございますが、こういうことを一体的に行うことによって生産コストの低減に取り組むことが効果的だということで、生産性の高い営農のためにこういう組み合わせということをひとつ対応していくということであると考えております。  それから、特に南の方には二毛作あるいは稲、麦、大豆の二年三作の体系など、地域によっては特別なそういう作付体系を確立してそれを導入していきますと、今お話をしましたような作物の優位性をさらに一層発揮できるという面もございますし、それから大豆等につきましてはさらに基本的な技術を励行していけば単収も上がりますし、一定のロットがまとまって品質が向上すれば高く買ってもらえる、売れる大豆がつくれるというような面がございます。そういうものを一体的に推進していくということで対応するのが適当でなかろうかと考えております。
  157. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 牛乳と肉牛の関係につきまして、若干具体的にお答えさせていただきます。  まず、畜産物生産におきましては、例えば牛乳でいいますと、生産コストの四割が飼料費でございまして、労働費が三割ということになっております。それから、肉牛の繁殖経営では飼料費が二割で労働費が五割、それから養豚でいいますと同じく飼料費が六割で労働費が二割。総じて、飼料費と労働費が費用の大部分を占めておりまして、生産コストの削減を図るためにはこれらの費用の低減が重要でございます。  これまでも、例えば酪農経営でいいますと、平成九年と昭和六十三年を比較しますと、規模拡大合理化、乳牛改良の進展などによりまして労働時間がかなり減少しております。それから、これは年によって変動するので一概には言えないんですけれども、飼料価格の低下による飼料費の減少などもありまして、この十年間では費用合計で八%ほど下がっている、こういう状況にございます。これは例示でございます。  こういった方向を考慮いたしまして、今後とも、まず一つは飼料給与技術の向上でありますとか効率化、それからできるだけ安い資源を利用すること、それから乳牛、肉牛といった大家畜生産におきましては、できるだけ自給飼料生産の推進や放牧の活用などによって飼料費の低減を図ること、それから飼養規模拡大やフリーストール・ミルキングパーラー方式などの新しい生産方式の導入などを通じた飼養管理の合理化によって生産性向上を図ること、それから先ほども御説明いたしましたけれども、家畜改良によって生産能力の向上を図ることなどを推進していきたいと考えております。  今後とも、これらの対策の推進によって生産コストの削減に努めてまいりたいと考えております。
  158. 風間昶

    ○風間昶君 今、それぞれの品目についての生産向上に対するコスト削減、品質改良、そのまた具体的な方針を述べられましたけれども、何年ぐらいをめどにそういう言葉が出てきたのか、それぞれちょっと教えていただけますか。  要は、基本計画を立てるわけですね。それで、いろんな情勢を勘案して五年ごとに変更するということもちゃんと第十五条で述べられているわけでありますから、こことの整合性を持ってコスト削減を図っていくんだということと私は理解しておりますけれども、それでいいんですか。
  159. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 私どもの関係で酪農それから肉用牛経営について申し上げれば、現に私どもは酪農及び肉用牛の生産振興に関する基本方針を持っております。現行の方針は平成八年につくったものでございまして、平成五年を基準として平成十七年度を目標年次にする方針になっております。この方針に沿いまして各施策を展開して生産合理化を推進している、こういうことでございまして、私どもといたしましては、新しい基本法のもとで基本計画がつくられますと、酪農及び肉用牛の生産に関しましてはこの基本計画の策定に合わせて基本方針を改定するというような方針で作業をしていくことにしております。
  160. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 先ほどお話がございました基本方針、これに関連してつくられます経営展望といいますか構造はどのような形であるか、見通しをつくられるということになります。この関連で個別品目ごとに数値を設定していくわけでございまして、この関連の中で五年先の指標といいますか見通しをつくられるということになりますから、その数値が必要であれば五年ごとにまた見直すということになろうかと思っております。
  161. 風間昶

    ○風間昶君 国内生産増大というか、国内生産向上といえば従来ならすぐ価格保証という形で対応してきたし、現在でもその方法によって対応していける品目は多いわけであります。しかし、このWTO貿易協定のもとで、要するに価格支持の増加による競争力の維持ができなくなった現在、今おっしゃったコスト削減の方法が本当に可能かどうかということがまた問われているわけでありますから、そういう意味WTO協定の観点から再度、今おっしゃった削減方法が可能なんですか。  価格支持がとれない中で、どう国内の保護を図っていくのかということなんですが、これは大臣に聞いた方がいいかもしれない。答えられないかな、大臣は。
  162. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) まず、稲、麦、大豆の関係でございますが、WTO協定のもとで、一つは米につきましては、内外価格差に基づきまして適切な関税相当量の設定、あるいはミニマムアクセス分の国家貿易の維持ということはございます。  それから、麦につきましては、国家貿易体制のもとで需要に見合った適切な輸入を確保するということになっているわけでございます。  このような国境措置のもとにおきまして、先ほどからるるお話を申し上げました経営安定対策等の適切な運用を図るということと、生産組織あるいは大規模農家といった担い手の育成、規模拡大をやっていく、それから合理的な作付体系の確立をする、片方、例えば品種あるいは作型を改善しながら単収の向上、安定化を推進していく、これらの施策を実施しまして、国内生産の振興と生産コストの削減を図るという方向で進めていきたいと考えておるわけでございます。  なお、大豆につきましては、先ほどお話をしました二つとやや条件が違っておりまして、昭和三十六年に自由化されております。いわゆる水際の部分の制約はないわけでございますが、油を搾ります大豆は別としまして、いわゆる食用の大豆につきましては、品質面、それから一定のボリューム、実需者の条件を満たしますならば、十分競争はできるということで私ども実需サイドのそういう意見を承知いたしておりますので、そういう面を踏まえながら、担い手の育成とか単収の向上、安定、何より価格もそういう品質も安定してくれという希望がございますので、そういう条件を満たせるような生産対策を推進していくということでございます。  なお、つけ加えますと、大豆につきましてはそういう事情もございますので、市場評価生産者の手取りに的確に反映されるように交付金制度を見直そうということで現在検討に入っているところでございます。
  163. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 牛乳・乳製品なり、それから肉類とWTO協定との関係でございますけれども、牛乳・乳製品につきましてはWTO協定のもとで高水準の関税相当量を設定しておるということと、それから農畜産業振興事業団によります脱脂粉乳、バターといった基幹的乳製品の国家貿易による輸入制度を確保しておるところでございます。  このような関税相当量と国家貿易のもとで農畜産業振興事業団がカレントアクセス数量にかかわります乳製品を一元的に輸入して、国内の需給動向を踏まえた適切な放出を行っている、こういうことでございます。  それからまた、牛肉、豚肉につきましては、関税引き下げ幅を最小限にとどめますとともに、所要の関税緊急措置を確保したところでありまして、さらに豚肉につきましては差額関税制度の機能を実質的に維持しておるところでございます。  したがいまして、これらの国境措置のもとで、先ほど来御説明しておりますような各種施策を総合的に展開することによりまして、国際化に対応した国内生産の振興と生産コストの削減を図っていきたいと考えているところでございます。
  164. 風間昶

    ○風間昶君 大臣はおわかりになりましたか。  それでは、野菜の生産についてちょっと伺いたいんですが、野菜も生産は品質面での向上で現状維持というふうにとらえられますけれども、何とかそういう意味で、中長期の野菜の供給安定対策のうち、いろんな技術開発、耐病性にすぐれた品種の育成だとか省力的栽培技術の開発推進について行われているようでありますけれども、まだ十分に生産者の方に浸透していないという面もあると思います。  そこで、具体的にどういう成果が上がっているのかということをまずお知らせいただいて、じゃそれをどう全国展開していけるのかという、この二点について伺いたいと思います。
  165. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 野菜の耐病性等の品種改良ということでございますが、農林水産研究基本目標に即しまして品種改良と栽培技術の両面において研究に取り組んでおります。  例えば、キュウリの糸状菌病とかトマトの萎縮病、そういったものに関します品種開発が具体的な例として例示すれば成果として挙げられております。  また、省力栽培という面では、セル成形苗による機械化移植あるいは接ぎ木の自動化、そういったような研究が進められておりまして、具体的な成果が上がっております。
  166. 風間昶

    ○風間昶君 今の片仮名で言ったセル何とかかんとかというのはよくわからないんだけれども、丁寧にもうちょっとわかりやすく教えて。
  167. 野間赳

    委員長野間赳君) よくわかるように。
  168. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 不十分な説明で申しわけありません。  セル成形苗というのは、苗のユニットをセルという小さな格子状の単位に寸法を合わせましてつくります、成形して。そして、それをサイズがありますので機械で非常に効率よく、またその栽植密度をそろえて移植することができますので、それをセル、細胞という意味ですけれども、セル成形苗と言っております。
  169. 風間昶

    ○風間昶君 わかりました。要するに、形成外科的な手法ですね。  次に、食料自給率について伺いますが、基本問題調査会の意見の中には、食料自給率そのものの議論は余り有益でないという御意見もあったというふうに聞いております。確かに、飼料用穀物は輸入に頼っているわけでありますから、それがまた自給率引き下げの原因の一つにもなっている。だから、大臣も参議院の本会議で、日本型の食生活を見直さなきゃならない、その見直す時期にもう来ているんだというふうに答弁もされていたと思いますけれども、そこで今度、各品目ごとに生産目標を決めた方がよいのではないかという意見も出てくるわけでありますから、この意見に対して政府としてどういう見解を持っているのか、お伺いしたいと思います。
  170. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) この法律に基づきまして、基本計画の中で自給率目標を立てるわけでありますが、立て方といたしましては、先生から今御指摘があったように、やはり国が幾ら頑張っても、とにかく国民が食べなければ意味がないわけでございます。  そういう意味で、生産者消費者、要するに消費ニーズにかなった形の、品質のよい、またコスト的にも適当な農産物を供給するということ、それからまた食べ残しあるいは日本型食生活というものの普及といった面での自給率向上のための数字の積み上げも一方でございますし、それから品目ごとにこれだけの需要があるんだ、またこれだけの需要にこたえていかなければいけないんだということで、品目ごとに自給率向上することを旨として積み上げていくということによって、最終的な自給率目標というものを実現可能なできるだけ高い水準で設定していきたいというふうに考えております。
  171. 風間昶

    ○風間昶君 自給率そのものでありますけれども、近年では供給熱量、つまりカロリーベース自給率であらわされることが多いわけですけれども、今まで伺ってきた国内生産向上を通じて、現在、一日一人当たり二千六百キロカロリーでしたか、そのカロリーベース自給率が、今各品目ごとの生産向上の方針が述べられましたけれども、どのぐらい上がるんですか。それも積み上げ可能なレベルまでというふうな何だかよくわからないような、もちろん積み上げていくわけですけれども、どのぐらい上がるのか、上げていけるのかということをおおよそでも目標値として持っていらっしゃるのかどうか、伺いたいと思います。
  172. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) これは、先ほどから御議論がありますように、やっぱり消費者ニーズにこたえた技術面、例えば先ほどは大豆であれば納豆用とか煮豆用とか十分国産で対応できるもの、あるいは麦等につきましても新品種の開発といった技術開発というものも重要なポイントだろうと思います。  そういった中で、実需者あるいは消費者のニーズにこたえていくということが自給率向上の必要不可欠な要因であろうというふうに考えておりますが、よく言われるのは、大豆は今の三倍つくっても一ポイントしか上がらないよとか、小麦で倍つくっても一ポイントしか上がらないよなんということが試算として言われておりますけれども、大変難しい積み上げの状況だろうと思います。  しかし、これだけ低い自給率、しかも低下傾向が依然として続いておるという状況を何としても打破していくためには、先ほど申し上げましたように、国民的な努力といいましょうか、最終的には国の責務で目標を設定するわけでございますけれども実現可能なできるだけ高い数字ということで、どのぐらい実現可能なものが十年先を見据えた基本計画の中で設定できるかということについては現在検討中でございます。
  173. 風間昶

    ○風間昶君 確かに、非常に難しい問題ですから、可能な限りそれを追求していく方向性が生産者の方にも見えればもっと意欲が出てくるんじゃないかというふうに思うんです。  そこで、今も大臣もおっしゃったように、カロリーベース自給率は、とにかく現在ある多様な食生活、そして豊かなというか飽食も一部ではあるわけでありますけれども、それを基礎として供給熱量を単純計算しているというふうに思うんです。現実我が国では、とにかく食材のむだというか、食べ残しも含めて、そのむだの多さ、あるいはアンバランスな栄養に関する考え方、特にむだの部分については、まさに今、大臣がおっしゃったように、消費者のニーズですから、そのことについて政府はとやかく言われる筋合いはないと私も思うわけであります。  自給率を算出していく分母の話でありますけれども国民の健康と節度ある豊かな食生活を保障していくという限りにおいては、例えば二千四百キロカロリーだというふうに決める決め打ち、これもある一つ視点から僕は大事じゃないかというふうに思うんです。基本問題調査会でも、必要な基本カロリーを潜在的に確保されていることが重要だというふうにおっしゃっているわけで、そのために必要な農地だとか担い手だとか技術を確保すべきという意見があったわけでありますから、政府として自給率算定の根拠となる分母をどういうふうにとらえているのか、再度、確認の意味でお聞きしたいと思います。
  174. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 今、先生から御指摘がありましたように、現在の我が国の食生活の状況でございますが、食料の相当部分を海外に依存する一方で、脂質の摂取割合が適正範囲を上回るような世代が見られるといったような栄養バランスが崩れているということ、また御指摘がありましたように、食べ残しあるいは食品の廃棄といったような資源のむだ、そういった諸問題が出てきているわけでございます。  こうした状況を踏まえまして、今回の基本法案の十六条二項でございますが、食料消費の改善及び農業資源の有効利用に資する観点から、健全な食生活に関する指針の策定、それから食料の消費に関する知識の普及や情報提供等を推進する、そういった施策基本的な方向が明らかにされているところでございます。  今後、この基本法条文を受けまして、厚生省等関係省庁とも連携いたしまして、健全な食生活に関する指針を策定する。これに即しまして、食生活を見直す運動を展開してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  具体的には、広範な関係者の賛同、協力を得まして、食を考える国民会議を通じました運動の展開、それから食生活と自給率との関係についての積極的な情報提供、また子供たちに対する食教育の充実などを図ってまいりたいというふうに考えております。
  175. 風間昶

    ○風間昶君 それはそれとしていいんですよ、あなたの言うことは。分母をどう考えているのかと聞いているんです。それを答えてください。
  176. 高木賢

    政府委員高木賢君) 分母につきましては、二つのアプローチをしたいと思います。一つは食べ残しやむだの抑制、もう一つは栄養バランスの改善でございます。  食べ残しあるいはむだの抑制ということになりますと、今二千六百キロカロリーが供給ベースであるわけですけれども、それは要らないということです。例えば、我々の試算では、五・二%に相当する三百四十万トンが食べ残しあるいは廃棄されているという推定をいたしておりますけれども、その分はむだがなくなれば供給しなくても済むという形で、計算上の話をすれば分母から差し引くことが可能だということになります。  それから、栄養バランスの改善では、脂質の摂取量が減るということになりますと、その分のカロリーがまた要らないということになりますので、そういったものを見込めるかと思います。
  177. 風間昶

    ○風間昶君 そこで、さっき福島さんからお話がありましたように、食生活の改善、教育の話が出てくるわけであります。食生活の改善がとにかく自給率向上に大きなウエートを占めていることは、今おっしゃったように国民に改善を呼びかけるということが極めて大事であります。  特に、子供たちに対する食教育、これは参議院本会議でも質問があったわけであります。実際に都会の子供たち農村に行って交流して、一泊二日でカレーライスでも何でもいいからとにかく交流をしながらやるとか、いろいろあの手この手があると思うんです。北海道においても旧産炭地で農業をやっているところはあるわけでありまして、札幌市内の子供たちが一学校二グループに分けてトータル二泊三日で、そこの空き教室を利用して食事をつくるという交流もやっているところがあるわけですけれども、そういう具体策をもっと推進していただきたいと思うんです。  それは、まさに地域の実情に応じて、全国一律に農水省がわっとやるのではなくて、そのためにも実際にどうなっているのかということを知らなきゃできないわけであります。その部分について、体系的な食教育の一環としても、空き教室を利用した子供たちの交流、この導入についての検討をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  178. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 特に、子供たちに対しての食教育ということにつきましては、有馬文部大臣とも常に連携をとりながら、同じ目的、認識でもってやっておるところでございます。  まず、いわゆる健康にいい食生活とは何かとか、あるいはまた自然に親しむ、あるいはまた農業生産現場の体験をするといったことをことしからより積極的にやっております。都市農村との交流という意味で、体験的に農村に行ってそういうことをやっておりますし、また農林省の中にも子供電話相談室、あるいは玄関を入ってすぐ左側に消費者の部屋ということで、今たしか全国の魚の情報を提供しておりますけれども、こういうことも必要であろうというふうに考えて、これを積極的に広範囲に推し進めていきたいと思っております。  そういう意味で、今の先生の空き教室を利用した農業体験といったことも非常にいいお考えだと思いますので、我々といたしましても検討させていただきたいと思います。  それからもう一つは、学校教育だけではなくて家庭教育というものも非常に大事なのではないかというふうに思います。政府が家庭の中に入り込んで何々を食べちゃだめとかということはなかなか言いにくいところでありますけれども国民的な健康あるいは食料安定供給という観点からも、家庭の親御さんたちに対して正しい知識の普及啓蒙といったものも同じように重要なのではないかということで、これも関係省庁とよく連絡をとり合いながら充実していきたいというふうに考えております。
  179. 風間昶

    ○風間昶君 もう一つの食生活の改善教育からすると、食べ物だけじゃない話ですけれども、まさに家庭教育でむだを廃止していく、むだの防止ということが極めて大事であります。日本のほとんどの食品が輸入農産物に依拠せざるを得ない状況の中で、一方では国内生産をきちっと高めていって、日本人のいわばエネルギーの源にさせていくという観点でいうと、今、大臣がおっしゃったように、食生活のむだについてどうやって資源の浪費を抑えて環境負荷を軽減していくかということが大事である、個人的な意見でありますけれども。  では、大臣、ちゃんと自分のお子さんに、残しちゃだめよということを言っているんですか。
  180. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 食事をしている時間に私が存在している限りは、日本型食生活と食べ残しについては嫌われるぐらいに言っております。
  181. 風間昶

    ○風間昶君 もう一つ私が提起したいのは、今回の新農業基本法で、今までは生産者及び供給者のいろんな団体に対しての視点が極めて強かったのが、消費者視点が盛り込まれたと。そうすると、環境の保全ということが一方で法文にあるわけでありますから、今度は環境の負荷を軽減するという観点で食品関連の廃棄物について伺いたいと思います。  私も、魚や肉のトレーが何でこんなに大きさがまちまちなのかということでは大変頭を悩ましています。もっと小さな魚でも一定の規格のトレーに入れれば、よりリサイクルに向かってスムーズにいくのになというふうに思うし、また限られた店でないとそのトレーがきちっと回収されていないというのも、札幌市内ですらそうであります。  そういう意味で、最近、トレーやペットボトルの回収がだんだん定着してきたように私は思いますが、実際に農水省が、トレーそのものはつくっていないにしても、食材を覆っている容器、あるいは飲み水についてもペットボトルの容器、この回収実態がどうなっているのかということをつかんでおく必要があるのではないかというように思います。  トレーそれからペットボトルの回収実態の二点、そしてその実態を踏まえて三点目に、それでは今後一層その再資源化を含めてリサイクルを推進していく上でどう農水省として取り組むのか、伺いたい。
  182. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) まず最初に、いわゆる食品トレーでございます。  平成九年は約七万五千トンが出荷されておりまして、そのうち約九%、約七千トンが回収、リサイクルされているという報告を受けております。  また、次にペットボトルでございますが、御案内のように平成九年四月から大手企業を対象に容器包装リサイクル法に基づきます回収が実施されております。その回収率でございますが、平成九年度は九・八%、平成十年度は一八・〇%の見込みとなっております。  また、御案内のように、この容器包装リサイクル法でございますが、平成十二年四月一日から全面施行されることになるわけでございます。したがいまして、食品トレーもこの法の適用対象になるわけでございますし、また従来、猶予されておりました中小企業に対しましてもリサイクルが義務づけられるということになるわけでございます。  この全面施行を控えまして、関係省庁とも連携しながら、容器包装リサイクル法の円滑な施行を図るため、関係業界、団体と十分連携を密にしながら、食品トレーあるいはペットボトルの回収リサイクルを推進してまいりたいというふうに考えております。
  183. 風間昶

    ○風間昶君 容器包装リサイクル法は農水省もたしか共管でしたね。連合審査もあの当時やりましたね。もっと推し進めていくように具体的に、単純に連携をとってなんていうんじゃなくて、主導権を握っていかないと、結局またトレーが九〇%回収されないで土の中に行ったりいろんなところに行ってまたごみ問題につながる、あるいは環境の負荷にまたつながって温暖化を進めていくということにもなっていきますから、もうちょっとリーダーシップをとっていくべきではないか。  主務大臣だったのではないですか。そうしたら、もっとやるべきではないのか。
  184. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 容器包装リサイクル法の主務大臣でございますので、先生の御指摘も踏まえまして、全面施行を控えまして、それに十分対応できるようにしっかり準備を進めてまいりたいというふうに思います。
  185. 風間昶

    ○風間昶君 頼みます。  もう一点、消費者の関連でいいますと、今回、この法案消費者選択の幅を広げるということが大きな柱になっているわけでありますけれども、産地表示、それから農薬使用の表示について若干伺いたいと思います。  産地表示については、例えば具体的に魚沼のコシヒカリ、本当に魚沼のコシヒカリだけではないのも魚沼のコシヒカリになっているし、若狭の越前ガニだって、日本海全部一円若狭の越前ガニになって出ているということも聞いています。私は、実際にどこの越前ガニだかわからないのを食べたこともあるんですが、こういう問題についての有効な解決策をきちっと一方ではやっておかなきゃならないのではないかというふうに思います。  もう一点は、農薬使用の表示について今後どうされていくのか。この二つについてお伺いしたい。
  186. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 最初の原産地表示の問題でございますが、先日御審議いただき御可決いただきましたJAS改正法におきまして、生鮮食料品につきましては原産地表示をするということを申し上げたわけでございまして、成立後はそれを実施してまいりたいと思っております。  また、いわゆる加工原材料の原産地表示の問題でございます。これにつきましては、問題となっております個別品目ごとにどういう表示が適切か検討会を開くなどして検討してまいりたいと思っております。当面、梅干しとラッキョウにつきまして手をつけてまいりたいというふうに思っております。  また、農薬の使用でございますが、これは先生御案内のように、農薬につきましては農薬取締法に基づきまして適用作物なり使用方法を含めまして登録することとされているわけでございまして、その範囲内での使用が行われているわけでございます。また、登録された使用方法に従って使用すれば安全性が確認されている、つまり農薬の登録検査におきまして安全性が確認されているわけでございます。そうしたことから、農薬の使用一般につきまして表示の必要性はないものというふうに考えております。  しかしながら、消費者からは、消費者によっては農薬を使用しない農産物が欲しい、あるいは通常の農産物より農薬の使用が少ない農産物を購入したいという要請があるわけでございます。  それにつきましては、これもJAS法改正の中に盛り込まれておりました有機表示、化学合成農薬なり化学肥料を三年間使用しないという農作物につきましては、第三者の認証を得まして「有機」という表示を行うことができるということ、これはJAS法に基づくものでございます。  また、ガイドラインでは、通常の農作物よりも農薬の使用が少ない減農薬農産物につきまして減農薬栽培農産物の表示を農薬の使用状況とともに表示するというガイドラインの徹底、そういったことも可能なわけでございまして、両方相まって適切な表示に努めてまいりたいというふうに思っております。
  187. 風間昶

    ○風間昶君 質問通告はなかったんですけれども、何で梅干しとラッキョウだけなんですか、それが一つ。もう一つは、農薬使用表示についてるる今述べていただきましたけれども、最初、必要ないというふうにおっしゃった、しかしちゃんと有機表示はやるということも含めておっしゃってくださったけれども、農薬表示のできていない、ネックになっているのは何なのかということについて、二点お伺いしたいんです。
  188. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 最初に、原料農産物の原産地表示の問題につきましては、特に要望の強いものから検討していこうということでございまして、別に梅干しとラッキョウに限定しているわけではなくて、そこから手をつけまして逐次範囲を広げていこうということでございます。  それから二番目の、農薬の表示の問題でございますが、一つは、生産段階での使用状況の確認というのが難しいということがございます。二番目は、農薬を使ったものと使わないもの、あるいは使い方によって分別して出荷する、あるいは卸売される、あるいは小売されるということは非常に難しいというふうに考えるわけでございます。また、輸入される食品につきましてもこうした農薬につきましての表示を義務づけている例はありませんので、諸外国にそういうことを強制すれば貿易障害という問題も出てくるわけでございます。  そういうことから、すべての農産物につきまして行うということよりも、むしろ農薬を使っていない、あるいは通常の農作物よりも農薬の使用を少なくしている、そういうものをいわば表示することによって消費者のニーズにもこたえられるようにするという方法が適切ではないかというふうに考えるわけでございます。
  189. 風間昶

    ○風間昶君 わかりました。  国内食料需給について伺いましたので、今度は世界の食料需給の見通しについて、外務省の方にもおいでいただきましたのでお聞きしたいわけであります。  日本の国の食料安保のあり方や世界の食料問題を検討するためには、やっぱり世界の中長期的な需給見通しをきちっと総括、検証していく必要があるわけであります。三十年間で世界の人口が一・七倍にふえたのに対して、穀物生産はこれを上回る二・二倍の増加を示した。しかし、穀物の生産は二・二倍に増加しているけれども、収穫面積はほぼ横ばいであるわけであります。生産量の増加のほとんどは単収の伸びに依存しているわけで、その単収の伸びも世界的には鈍化傾向にある。  とすると、今度我が国へはね返ってくる問題としては、国内における優良農地の確保ももちろんさることながら、世界的な耕地不足、耕作面積の不足に歯どめをかけることがまた日本としての国際貢献あり方としても議論されなければならないのではないかというふうに思うわけであります。  しかし、日本のODA大綱の中で、食料農業分野における位置づけということが必ずしも明確になっていないわけであります。基本理念の第一が、人道的見地からの日本の道義的役割がODA大綱の基本理念になっているわけであります。あと二番目、三番目、四番目とありますけれども、この第一の理念の中で、必ずしも食料あるいは農業分野における国際貢献ということの位置づけが明確に見られないわけであります。当然、具体的には、個別的に国ごとに開発途上国に対する持続的な農業生産拡大とか、あるいは栄養不足人口の解消に向けて技術は協力する、資金も協力しますと、食料援助を積極的に推進していくということはなされてはいるものの、むしろODA大綱の中で、きちっと食料農業分野における国際貢献重要性、ここの位置づけがないと思うんですが、これに関して国際協力の今後の取り組みということから外務省にお伺いしたいと思います。
  190. 大島賢三

    政府委員(大島賢三君) 食料を含みます農業・農林水産分野というのは、我が国の開発援助の中におきまして非常に重要な分野になっておるわけでございます。年によって数字が変わってきますが、例えば無償でやっております資金協力の大体二十数%が農業あるいは水産分野に行っていると思います。それから、円借款で見ますと大体一〇%前後、それから各種の関連の技術協力、これも二〇%前後といったように、我が国の二国間援助の中で大変に重要な地位を占めておるわけでございます。  ODA大綱の関連でございますけれども、一応このODA大綱はごく、何といいますか、総括的あるいは全般的な基本理念中心に定めたものであるわけでございまして、そこでは飢餓の問題とか貧困との関連で日本のODAが実施されていくということがうたわれておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、例えば個々農業でございますとか、教育でございますとか、あるいは一般の経済社会インフラでございますとか、そういった個別の分野については触れておりません。  これにつきましては、このODA大綱に従いまして、さらにそれをいわば詳しくこれから明らかにしていくという意味で、現在、政府全体としてODAの中期政策をこれからつくっていくということになっておりまして、ことしじゅうにその中期政策、それからさらに国別の細かな援助計画を定めていく、こういうことをもって我が国のODA全体の透明性と効率性を向上させていくということで作業が始められておるわけでございます。  したがいまして、個別の分野についてどういう考え方に基づいて実行していくかということは、この中期政策の中でしっかり受けとめまして明らかにしていくことになるんだろうと思っております。これにつきましては、関係所管の農水省ともよく協議、相談の上、きちんと対応してまいりたいと思っております。
  191. 風間昶

    ○風間昶君 農水省は専ら資金協力というよりは技術協力をやっていらっしゃるわけでありますけれども、今の外務省の答弁に対してどうですか。言うことがありますか。
  192. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) ただいま経済協力局長からお話がございましたけれども、そういう中で、私どもとしても私どもなりのノウハウも活用しながら協力していきたいと考えております。  もう御存じのところでございますが、新基本法案の第二十条におきましても、食料農業分野における国際協力につきましてきちんと位置づけているところでございまして、私どもとしましても、途上国の具体的なニーズとか、実態に応じた国際協力が一層効率的、効果的に実施されるように努めていきたいと考えております。
  193. 風間昶

    ○風間昶君 農水省としては国際貢献観点から二十一世紀の前半、地域的にはどこを一番このODA分野のターゲットとして絞っていますか。
  194. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 現在御提案申し上げております新基本法案におきましても、「世界の食料需給の将来にわたる安定に資するため、」というように規定しておるわけでございます。私どもとしましては、グローバルな食料需給の安定への貢献、あるいは開発途上国の自立的な経済発展に対する支援、さらにはまた地球環境問題への貢献、そういった観点から食料農業分野における国際協力事業に取り組んでいるところでございますが、東南アジア等を中心にした開発途上国が対象国としては主体になるのではないかと考えております。
  195. 風間昶

    ○風間昶君 これは質問通告はなかったんですが、日ごろのお考えが出るかどうかということで試させていただくために伺いました。アフリカ地域へも私は大変目を向けておかなければならない問題ではないかと思っていますので、一言つけ加えさせていただきます。  北海道の襟裳岬というところがあります。  そこでは、日本の鳥取砂丘の緑化に始まった研究からの蓄積で、このえりも町で、襟裳岬のすぐもうあそこは山になるんですけれども、そこに植林をして、海に栄養に富んだ水が流れ込むようになってきて魚が戻ってきたという、農水省も誇れるこの襟裳地域での植林緑化事業があります。こういう我が国の砂漠の緑化技術の海外への技術移転、ただ単に技術協力という観点だけでなくて、ODAの政策一つで、要するにグリーン・コーズといいましょうか、砂漠を緑化していく日本の技術を海外に移転していくという取り組みも必要になってくると思いますけれども政府取り組みはいかがでしょうか。
  196. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生指摘のように、世界の砂漠の緑化は地球環境を守る上で大変重要な課題であると私ども考えております。幸い、林野庁を中心日本には世界でも大変高い水準の林業の技術や知識を身につけた職員が大勢おりますので、こういった職員を活用いたしまして、アジア、中南米、アフリカ等の緑化に力を入れております。  現在、対象国は二十三カ国、それから長期、短期を含めまして林野庁の職員でございますと毎年百名がこれらの開発途上国の地域での緑化の技術指導等に従事いたしておりますし、また林野庁以外の関係機関の職員を含めますと二百名、おおむね長期、短期百名ずつ、半々程度でございますが、出かけております。さらに、最近ではボランティアの海外緑化の団体の活動も大変盛んになっておりまして、これらに対しても私ども御支援をさせていただいておりますし、また外務省の資金協力を通じてもこういった海外の緑化の推進に努力いたしておるわけでございまして、私どもはこれからも諸外国の御要請に応じてこの海外の緑化についてはできるだけの協力、技術移転に努めてまいりたいと考えております。
  197. 風間昶

    ○風間昶君 終わります。
  198. 須藤美也子

    須藤美也子君 須藤美也子です。  まず、大臣お尋ねしますけれども現行基本法の前文には、農業及び農業従事者の重要な使命をうたい、また民主的で文化的な国家建設にとっての重要な意義、そしてその使命を果たすための他産業との格差の是正などがうたわれております。  しかし、制定後三十八年たった今日、農業が極めて危機的な状況に陥っている原因がどこにあるのか、簡潔に大臣の御説明をお願いしたいと思います。
  199. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 基本法制定当時から現在までを簡単に振り返ってみますと、とにかく生産性は上がってきた、あるいはまた規模拡大も少なくともプラスで進んできた。しかし、この基本法目的とする生産性あるいは生活水準等々のギャップというものは依然として、他産業の方が伸び率が高かったわけでございますので、ギャップを埋めることはできなかった。  これは、やはり農業という自然を相手にし生き物を相手にする非常にデリケートで難しい、そしてまたそれぞれの地域によって条件も違うわけでございまして、そういう中で、工業製品のように一気に三倍つくる、五倍つくるということはなかなかできにくいという本質的な農業の一面もあるわけでございまして、そういうことが目的を達成し得なかった理由一つであろう。  そういうことを含めまして、今回さらに中山間地の定住あるいは振興等も含めて、国民的な食料安定供給農業農村の果たす多面的役割、そしてそのためのバックグラウンドとしての農業発展農村の振興というもので新しい時代のニーズにこたえていきたいと考えております。
  200. 須藤美也子

    須藤美也子君 この三十八年間の歴史の中で農業が非常に大変な縮小をきわめている、こういう状況は、今、大臣答弁がありましたけれども、そういうことも確かにあるかもしれませんが、高度経済成長とさらには自由化のそういう状況、情勢の中で農業がはじかれていった、こういう結果も一方ではあると思います。  そういう中で、この法案の中に情勢の変化が農業農村にどのような影響を与えてきたのか、また明確なそういった三十八年間の原因の分析、これは法案の中にはありません。  国際化と自由化の中で農業と農民を犠牲にしてきた。これはだれの目から見ても明らかであります。  例えば、一九六〇年、この当時から今日まで工業生産日本で八倍にふえました。八倍以上であります。ところが、農業は一・三倍です。工業と農業のこのような格差、これは世界で日本だけであります。先進国と言われる多くの国でも農業生産よりも工業の生産が二倍以下、これが国際的な状況であります。そういう状況の中で、私は、日本の工業生産の異常な成長率、それは農業生産を犠牲にしてきた結果ではないか、こう言わざるを得ないわけであります。  そういう中で、農業産業として日本経済の中でどういう位置づけなのか、また農業をどう発展させなければならないのか、そういう理念を明確にする必要があるのではないか、このように考えるわけであります。  法案では、二条から五条まで基本理念とされていますが、農業食料供給にとって、あるいは多面的機能の発揮という点でその重要性には触れられておりますけれども農業産業としてどう発展させるのか、どう位置づけていくのか、こういう点が明記されていないと思いますが、どうですか、大臣
  201. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 四十年近くにわたって農業を虐げてきたつもりは全くございません。  ただ、農業というのは、さっきから申し上げておりますように、一生懸命生産者の方が御努力されて頑張っても、天候に左右されることもありますし、また価格が変動することもあるわけでございまして、そのときの食べ物といいましょうか自然物でございますから、やはり工業品のようにいろいろな多様な生産のやり方というものと違う、農業の特性というものがまず大前提にあるというふうに考えております。    〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕  農業といいましょうか食に関して申し上げますならば、食品、農林水産関係で日本のGDPの約一割を川上から川下まで占めておるわけでありますし、また単純な売り上げでも約百兆円という大変大きな、約一割を占める産業分野でございます。その一番川上にあるのが農業生産活動でありまして、そこが頑張らなければまさに我が国国民の活動、生命が維持できないということでございますから、極めて重要な産業であり、これから一層重要になっていくわけであります。  したがいまして、今度の新しい基本法におきましても、育成すべき農家位置づけ、あるいはまた川上から川下に至る食品産業、あるいは消費者とのいろいろな意味での交流、さらには農業を効率的かつ安定的に推進していくためのいろいろな施策、そしてさらには、このままでは大変なことになるということで、自給率の設定を可能な限り高い、向上させるような目標設定をしていこうということで、新たなさまざまな施策基本をこの法律の中に盛り込み、そして実体法あるいはまた予算、そしてこの基本計画に基づくさまざまな施策実現していくことによって足腰の強い産業としてこれからまた頑張っていただかなければならないというふうに考えております。
  202. 須藤美也子

    須藤美也子君 大臣が頑張る、あるいは農業を重視している、そういうことはわかります、言葉上は。しかし、その気持ちがこの基本法の中に入っていないということなんです。  しかも、そういうふうに農業を大事にしてきた、しかし食料自給率は四一%、世界に類のない状況に落ち込んでいます。もし本当に農業を大事にしてきたのだとすれば、食料自給率もそれと並行してこんなに落ち込まないはずであります。  私は、九六年にローマで開かれた世界食料サミットに参加しました。世界食料サミットのローマ宣言は、二〇一五年までに八億人を超える世界の飢餓人口を半減させること、そして主食である食糧は増産すること、こういうことをすべての人々の食料安全保障として各国政府の責務とする、こういうことを宣言いたしました。  今、二十一世紀を目前にして、先ほど来お話ありましたが、世界の人口が増大食料が逼迫している、こういう深刻な状態になっていることが国際的にも常識になっていることは大臣も御存じだと思います。  そういう中で、日本農業を国の重要な産業として位置づける、生産として見るのでなくて産業として位置づける。つまり、国の基幹的産業として位置づけることが必要なのではないか。  大臣の出身地である北海道農業を基幹産業として位置づけています。日本共産党も綱領の中で基幹的産業として農業位置づけております。今こういう大変な状況農業は耕作放棄地がふえる、担い手もいない、そういう状況の中で、本当に農業を基幹的産業として位置づけることが農業者生産者を勇気づけることになります。  そういう点で、今度の新しい基本法農業を基幹的産業として位置づけること、こういうことを宣言することが国内的にも国際的にも非常に強く求められている問題ではないかと思いますが、この点はどうお考えですか。
  203. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まさに、この法案の第一条で、食料農業農村に関する施策についてきちっとやる、きちっとというのはちょっとあれですけれども、「もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。」と。まさに、この農業、今、先生産業面にあえて限定されましたけれども産業面はもとよりでありますけれども、それ以外のいわゆる多面的な機能も含めまして、国民生活あるいは国民の生命、暮らしに直接的に、私は共産党綱領は知りませんけれども、基幹産業としての位置づけとして我々は十分認識をしております。
  204. 須藤美也子

    須藤美也子君 それでは、この基本法案の中に基幹的産業として位置づけられたらどうですか。これは要求として大臣に強く申し上げたいと思います。  さらに、この法案基本理念食料安定供給の確保を国の責務としております。しかし、自給率向上は義務としていない。これは十五条三項ですね。政府がつくる基本計画で、「食料自給率目標は、その向上を図ることを旨とし、」と、衆議院修正されて「向上」という文言が入りました。それは、「国内農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他の関係者が取り組むべき課題」と、こういうあいまいな表現になっています。これでは国の責任はどういうふうになるのでしょうか。
  205. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) この法律に基づいてつくられる基本計画は、政府食料農業農村審議会で御意見等をいただき、そして決定されるものであります。したがいまして、この十五条に書かれておる基本計画で決めなければいけないことにつきましては、これはあくまでも政府の責任において実施していかなければならないものだというふうにお考えいただきたいと思います。
  206. 須藤美也子

    須藤美也子君 政府がこの法案の中で言っていることは、農業生産者とか消費者、先ほど来お話がありましたけれども、そういう人たちの協力を得て数値を積み重ねていく、こういうことですね、この法案の内容、基本計画の内容は。    〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕  そうなりますと、農業生産性向上日本型食生活の普及、農民、消費者の課題を示す。それならば自給率はこれで何%になる。できなかったのは農民や消費者がその課題をこなせなかったから。そういうふうに、食料自給率向上させることができなかった責任が国民に振り向けられる、そういう懸念を感ずるんですが、その点はどうですか。
  207. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) この自給率の設定の仕方につきましては、本日も何回か申し上げておりますので一々申し上げませんけれども、とにかくかなり複雑な作業を積み上げていって、そしてその他教育的な側面あるいは啓蒙等、消費者生産者国民的な御理解をいただいた上で自給率を設定するわけでございます。この設定に対する責務というのは政府が持つわけでございます。  しかし、この場合に、例えば平成五年のような大凶作が来たというような場合も現にあるわけでございますし、また食べ残しや日本型食生活の普及が進まなかったり、あるいはまた消費者やメーカーが求めるような農産物の供給が何らかの事情でできなかったりといろいろと不確定要素があることは事実であります。したがって、これは必ず実現をしなければならないというふうに考えておりますけれども、各方面の国民的なコンセンサス、協力がなければ、あるいはまたお天気に恵まれなければ実現ができないということも十分考えられるわけでございます。  その場合には、政府の責任ではありますけれども、みんなでこの目標達成のために頑張っていきましょうということを申し上げているのでありまして、仮に目標が達成できなかった場合には生産者消費者に責任を転嫁するなんということは毛頭考えておりません。
  208. 須藤美也子

    須藤美也子君 私はそういうことを言っているのでないんです。基本的に設定をするのは政府の責任と。であるとすれば、食料自給率は四一%です。しかも、この法案の中には「国内農業生産基本とし、」と書いてあります。基本にするからには半分以上でしょう。そういうところに政府として政策的に責任を持つのがあなた方ではないんですか。できなかったからこれは仕方がなかった、それは国民に転嫁はしませんよ、そう言っても、できなかったとき、国民的に食料自給率が低下した場合、これは国民が被害を受けるわけです。そういう点から、私は農水省の食料自給率向上に責任を持つ責務というものを明確にしていただきたい。  そういう点で、私は日本農業の持っている技術あるいはこれまでの歴史的な経過を少し振り返ってみたいと思います。なぜなら、私はオランダ、ハンガリーに行ったとき、日本農業は世界で最高の技術を持っている、こういうふうに言われました。この技術を東ヨーロッパで学んで、いい農産物をつくるから日本で買ってほしい、国会の招待で行ったわけですが、向こうの国会の方々、経済通産省の方々から言われました。しかし、なぜ日本がそれだけ技術が向上してきたのか。五〇年代、農業生産が飛躍的に拡大し、当然、自給率もあの当時向上いたしました。戦後、一九五〇年代、食料増産運動がありました。  農水省にお聞きいたします。この間、政府のとった主な施策はどのようなものがあったのか。特に、価格政策、米の場合の労働報酬や農業所得は製造業労働者のそれと比べてどのような水準にあったのか。その結果、生産はこの五〇年から六〇年の十年間でどのくらい上回ったのか。その点は通告をしておりますのでお願いします。
  209. 高木賢

    政府委員高木賢君) 一九五〇年代の食料増産についてのお尋ねがございました。  農林省としましては、戦後の混乱した状況、特に昭和二十五年にいわゆる朝鮮戦争が勃発をいたしまして食料輸入やそれに必要な外貨獲得への不安、こういうものが背景になりまして、食料増産が喫緊の課題になったということで、昭和二十七年の九月に食糧増産五カ年計画を発表いたしました。これは昭和二十八年度から五カ年間、つまり昭和三十二年度までの間に総額として三千三百億円を投じ、一千七百万石、当時の表記に従いまして一千七百万石、今日的に言いますと約二百六十万トンに相当いたします、の米麦の増産を行うということにいたしました。  この計画では、手段としては、開拓及び土地改良、それから種子・健苗対策、それから地力増進対策、病害虫対策、農機具対策、こういった生産対策のほかに、土地改良の面では土地改良法によります国営、県営及び団体営と、今日の事業体系、三本立ての事業体制がそのときに確立をいたしております。  それから、食糧管理法の一部を改正いたしまして麦類の統制を撤廃してパリティー価格による政府買い入れ制へ移行いたしました。それから、非常に重要なことですが、農地法を制定いたしまして、農地改革の諸原則の恒久制度化を図った、こういうことでございます。  そういった農家の方々の意欲を、自分の働いたものが自分のものになるということが非常に意欲の背景になったというふうに当時の記録は述べておりますが、そういった施策が講じられました。そのうち、冒頭申し上げました計画の一部は財政事情の制約によりまして間もなく縮小、変更を余儀なくされました。  計画終了時点の三十二年ごろに一体どうなったかということでございますが、先ほど申し上げましたような施策の結果、作付面積、単収が増加いたしまして、農業全体で見た生産指数は昭和二十八年に比べまして三一%増、それから米麦の生産量は合計いたしまして三百二十四万トン増、それから農家所得農家の家計でございますが、これは勤労者世帯と比較しまして、一九五〇年、昭和二十五年には農家の方が二割増しでありましたが、一九五五年、昭和三十年には勤労者世帯より八%増し、こういうことでございました。
  210. 須藤美也子

    須藤美也子君 何かもう少し自信を持って答弁していただきたいと思うんです。  その当時は増産運動で全国的に農業が非常に活力のあった時代ですよ。そのとき、私は、今、高木房長答弁なさいましたけれども農業所得が現在三〇%、他産業に比べ三分の一、当時は六〇%から七〇%農業所得がふえていたわけですよ。それだけではないんです。いろいろおっしゃいましたけれども、戦後の食料不足、これはいろいろな背景は当然違います。しかし、ここで申し上げたいのは、食料自給率カロリーベース国民一人当たり一九五〇年から五二年、千九百三十二カロリーあったんです。今はどうですか。これだけ文化が発達し、これだけ世界的に、いろいろな食料が飽食の時代と言われるほどお金さえあれば何でも食べられるような日本で、国内でとれる一日のカロリーは千四百四十カロリーしかないんです。そういう点で、今と当時の歴史的な経過、これはこの中から何を学ぶのか、ここを抜きにして私は今度の新しい農業基本法という問題は出てこないと思うんです。  というのは、その当時、食料増産政策を展開して価格所得も保障されていた時期、三千四百万ぐらいの農家人口で、今は三分の一に減っております。その当時、生き生きと農民が生産拡大に励んだわけです。こういう歴史的な経験があります。生産がふえるも減るも政府施策いかんにあるということなんです、私が言いたいのは。政府生産拡大、増産運動を掲げたとき、農村は変わった、そういうことに学ぶべきだと思うんです。  そういう点で、総則の二条から五条基本理念の中に自給率向上を入れて政府の責務の中に含めるべきだと思います。日本共産党の修正案は、自給率向上農政中心課題に据え、国の責任でそのための総合的施策を実施する、こういう修正案を衆議院で出しております。なぜ最も重要な、主権者である国民の重要な食料自給率向上基本理念の中に入れないのか、ここをお聞きしたいと思います。
  211. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の先生のお話を伺っていて、まさにここ三十数年間に日本全体が発展をし、豊かになって、その結果、食生活が変化をして、そして肉とか油脂類のウエートが高くなった。米の消費量もほぼピークの半分になってしまったということが、まさに当時千九百三十二カロリーですか、現在は供給ベースで二千六百、摂取ベースで二千百弱だと思いますが、そのうち千四百カロリーしか国内でやっていない。  これはまさに、国民がみずからの懐とそして嗜好の結果としてそういう食生活に変化をしていった結果、自給率というものが下がってしまったという一番大きな原因であろう。日本は、御承知のとおり、日本型食生活がいいんだから食べなさいとか、お肉はほどほどにしなさいとか、とても国が、行政が言うようなほかのどこかの国とは違いますから、そういう意味で我々は国民のまさに自由な意思のもとでこういうことになったわけでございますけれども、今や国民の大多数はやはりこのままでは日本の将来に対する食料には不安があるぞ、あるいは安全で安心して食べられる国産の農産物をもっともっと食べていかなければならないのではないかといったようなことをきちっと認識をしていただいておりますので、この新しい食料を先頭にした基本法というものを国民的なコンセンサスのもとでスタートさせていきたいというふうに考えております。  もちろん、自給率向上を目指すということが重要であることは私も同感でございます。したがいまして、基本計画の中に、この基本理念法であるこの法律に基づいたいわゆる実施要領みたいなものとしてこの十五条の三項に自給率の「向上を図ることを旨とし、」という条文がありますが、これはまさに二条の二項の「国内農業生産増大を図ることを基本とし、」というこの理念を受けて基本計画の中で具体的に食料自給率の「向上を図ることを旨とし、」というふうに受けておるわけでございますから、二条と十五条とはこれはもう一体の関係であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  212. 須藤美也子

    須藤美也子君 大臣答弁はすりかえだと思います。先ほど私は国民のせいにするなと言ったでしょう。食料自給率向上しなければ農民が生産を怠った、あるいは消費者が食生活に国内物を使わない、こういう点で国民に責任をなすりつけるような形にならないかと。ならないと言ったでしょう。  ところが、今、大臣国民がそういう食事を選んだ、だから結果としてこういう状況になったと。そうでないでしょう。学校給食から始まって、どんどん小麦の輸入、米を食べればばかになるとか血圧が上がるとか、こういう教育のもとで外国産物をどんどん輸入してきた。その結果、自給率がこのように落ち込んだわけです。  そういう点で、食料自給率向上させるのは、今、大臣がおっしゃったように国の責務だと思うんです。そういうことを反省して、国民合意食料自給率向上させる、それを国の責務とする、こういうことが私は今回の農基法にとって非常に重要な課題だと思うんです。  この問題についてもう少し突っ込んでいきたいと思うんですけれども食料自給率の数値の問題であります。この数値目標をなぜ入れないのですか。
  213. 高木賢

    政府委員高木賢君) 食料農業農村基本法に限らず、基本法というものは政策分野に関します今後の方向、基本的枠組みを定める法律でございます。したがって、具体的な数値の目標であるとかいうところまで書くべき性質の法律ではありません。これは各種の基本法をごらんになっていただいても、例えば交通事故をなくすための法律とかありますが、死者を何人以内にしなければいけないというようなことを数値にしたものはないわけでございます。これはそういう意味での基本法という法律の性格によるものというふうに御理解をいただきたいと思います。
  214. 須藤美也子

    須藤美也子君 宣言法ということなんですね。基本法はつくるけれども中身の具体的な問題についてはこれからつくっていく、こういうことなんですか。この辺ちょっと……
  215. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 宣言法ではありません。基本法というきちっとした法律です。
  216. 須藤美也子

    須藤美也子君 私が今質問をしているんです。  今、高木房長答弁なさったことは、これは入れるものではない、こうおっしゃったから宣言法なんですかと、こう聞いたんです。
  217. 高木賢

    政府委員高木賢君) この基本法は、一条に規定してありますように、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定めるということでありますから、基本理念が二条から五条まで、それからそのほかの実現を図るのに基本となる事項が以下規定してあるわけでございます。そういうまさに方向といいますか、これからのあるべき姿というものは描いておりますけれども、先ほど来言っておりますように、数値については十五条基本計画において明らかにする、こういう構成をとっているわけであります。  それから、この基本法が特別に異なる扱いをしているわけではなくて、他の同種の基本法においても大体そのような扱いになっているということを申し上げているわけでございます。
  218. 須藤美也子

    須藤美也子君 我が国自給率が八〇年代後半に五〇%を切ったとき、いろいろ後でお話しいたしますが、八九年九月のガット・ウルグアイ・ラウンドの際、食料安全保障をなぜ日本政府が重視するかを各国に説くために、農業交渉グループにおけるステートメントには、五〇%以下の水準は食料安全保障から重大な問題だ、こういう意味の内容が書かれております。これを確かめていいでしょうか。
  219. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) ウルグアイ・ラウンド農業交渉でございますが、一九八六年九月に始まりまして、一九八九年四月に至りましていわゆる中間合意というのがなされております。  その内容は、一つには、農業の支持や保護の相当程度の漸進的削減を交渉目標とするということ、それから二つ目には、交渉におきましては、食料安全保障のような貿易政策以外の各国の関心事項に考慮を払うということ、それから三つ目には、各国は一九八九年、同じ年でございますが、十二月までに詳細な提案を提出することという内容の中間合意がなされたわけでございます。  これを受けまして我が国としましては、今お話がございましたように、一九八九年九月の農業交渉グループにおきます我が政府ステートメントにおきまして、食料自給率が五〇%を下回るという切迫した状況のもとで、我が国のような輸入国にとりましては、非貿易的関心事項として食料安全保障は極めて重要である、農業の支持や保護を撤廃することは困難であることにつきまして国際的な理解を得るという観点から、我が国は本来的に低い食料自給率も累次の市場開放政策の実施により現在では五〇%を下回るような状況に至っていることにつき理解を得たいという説明をしたわけでございます。もちろん、そういう自給率低下に至りました要因なり背景につきましては、先ほど大臣からもお話がございましたように、国民の食生活に大きな変化があったということでございます。
  220. 須藤美也子

    須藤美也子君 同じ時期に、一九八九年十一月、日本の有機農業推進議員連盟主催の講演で、当時、来日した元EC委員長のマンスホルト氏が講演してこう言っております。  日本食料事情はきわめて脆弱である。代表的な先進工業国の間では、このように低い食料自給率は例外中の例外である。他国の例をみても、日本食料自給状態は由々しいというべきだ。これからは国内生産こそが食料供給の基盤とされるべきだ。いま、ガットの場で世界の食料問題が討議されているが、農業食料の専門家として私が強く申しのべたいことは、「日本はこんごとも最低五〇%の食料自給率を是非とも確保すべきだ」、 このように講演で言っております。  こういう中で、食料自給率向上、もう一度ステートメントを聞きますが、とりわけ自給率五〇%を下回った理由については何と書いてありますか。
  221. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) これは我が国自給率が五〇%を下回っているという状況を述べた上で、食料安全保障は極めて重要な関心事であるということについて理解をいただきたいという説明をしたわけでありまして、そういう要因分析はしていないのではないかと、今詳しく全部は見ておりませんが、受けとめております。
  222. 須藤美也子

    須藤美也子君 ステートメントを持っておりますが、このときにこう言っております。五〇%を下回るような状況に至った理由は、累次の市場開放政策の実施によって五〇%を下回った、こう言っているんです。農水省さんが言っているんです。私が言っているのではないんです。そういう点で、私は今五〇%の問題を申し上げました。  農水省に今寄せられている全国各地の食料農業農村基本問題調査会あての要望書、これは九万件近く寄せられていると思います。このうちの多くが食料自給率目標の提示を求めているのではありませんか。例えば、鳥取県農業会議は、消費の実態、変化の見通しを踏まえた自給目標を明確にすることが必要、だれにでもわかりやすい数値で明確にすべきだと。全中の会長も衆議院の公聴会で五〇%以上と公述しております。JA新潟中央会の基本主張でも、食料の過半、五〇%以上を国内で自給を、こう主張しております。  五〇%は国民の声ではないですか。そういう点で、現在四一%に下がっている食料自給率を一刻も早く五〇%に回復し、さらに我が党は六割、七割を目指す、こういう総合計画を策定すべきだ、以前は七八%あったわけですから、それより今は下がっているわけですから、これはやれないはずはないと思うんです。  そういう点で、私はこの五〇%を明記すること、六〇、七〇というのはできないとすれば、それは上に置いても、今、国民的合意として五〇%は各党も合意できるのではないか、このように考えます。  この法案目標数値を明記することが政府の積極的姿勢、責任を明らかにするとともに、国民全体の目標としてより明確になるのではないでしょうか。大臣、どうですか。
  223. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 確かに、昭和三十六年当時、自給率が七九あったのが現在四一である。非常に私も危惧をしておりますし、自給率を少しでも上げたいということは何回も申し上げておるところであります。  しかし、その間、米の消費が年間百二十キロ近く食べていたものが、今やもう六十何キロというほぼ半分に減ってしまっておる。あるいはまた、ピークでは一千三百万トンの魚を世界じゅうで日本の船がとってきたわけでありますけれども、現在はもう七百万トンしかとれないという状況になっておる。一方では、いろいろな油脂類の需要がふえている。あるいは、牛肉やいろいろな食生活の変化、これが全部、全部というかほとんど外国からの輸入ということになるわけでございまして、やはりそこには消費者の嗜好というものが、最終的には自由な意思で食するわけでございますから、そういうものを全く無視して、自由化したらどっと物が入ってくるとは限らないわけでございます。自由化しても入ってこないものはあるわけでございます。  そういう意味で、ただ自由化だから自給率が下がったということじゃなくて、最終的にはそういう当時からの、三十数年間の国民の食生活の変化というのがやはり一番大きな原因ではないかと私は考えます。
  224. 須藤美也子

    須藤美也子君 私が申し上げました食料自給率国内生産基本とするのであれば少なくとも五〇%、国民のこれは合意として明記をしていただきたい、このことを重ねて要求をしたいと思います。  さらに、今、輸入自由化の問題が出ました。これは農水省の資料であります。(図表掲示)これを見ていただきたいんですけれども、輸入依存では自給率向上はできない。これは三十五年から、この黒い方が国内生産であります。上の方が輸入であります。これを見れば一目瞭然、わかるわけです。見えますか。  そうしますと、この三十五年から一九八〇年、これまでの間は輸入も国内生産も、選択的拡大とかいろいろありましたけれども、それぞれ補い合いながらこの八〇年までは進んできているんです。ところが、八〇年になってから輸入が二倍にふえて、国内生産ががくっと下がっております。これは何でしょうか。これは、つまり輸入自由化、この拡大国内生産を縮小する以外の何物でもないということを物語っていると思うんです。それは認めていただかなければならないと思います。  そういう点で、輸入の増大はこの間の関税率の引き下げ、あるいは輸入制限品目の撤廃、農産物の総関税化、また米の関税化も含めて、こういう結果によって食料自給率が低下していった。八〇年から今日まで何ポイント下がっていますか。今、四一%です。ウルグアイ・ラウンド、WTO合意から五年間で一年に一ポイントずつ下がっております。このときは、八〇年代は、先ほど申し上げましたが、五〇%前後でした。このようにどんどん下がっている。これは日本国民であれば憂えなければならない状況だと思います。そういう中で、市場開放、輸入自由化によって自給率低下をこの農水省の資料でも認めているのではないか、自給率低下は政府施策がもたらしたものではないか、私はこのように言わざるを得ません。  そういう点で、この基本法食料安定供給について、この法案の中に輸入と備蓄を組み合わせて行わなければならないと、基本理念で明記しております。さらに十八条には、安定輸入のために必要な施策を講ずると、わざわざ輸入依存を明記している。これは現行基本法にはありません。足りなければ輸入は当たり前なんです、世界で。不足する食品を、足りなければ輸入するのがこれは決まりです。ところが、あるものも輸入するで輸入してきたではありませんか。これが食料自給率を低下させてきた。それなのに、なぜ安定的な輸入、こういう必要な施策を講ずるとわざわざこれを明記しなければならないんですか。大臣に聞きます。
  225. 高木賢

    政府委員高木賢君) 順次、原因から申し上げたいと思います。  自給率低下の原因というのは何が寄与しているかということをまず見ていただかなければならないと思います。先ほど来、包括的に大臣から御答弁申し上げておりますが、この十年余を見ましても、主な原因は米の消費の減少、畜産物の消費の増加で寄与率がマイナス三・六%でございます。それから、魚の漁獲量の減少でマイナス一・四%、それから油脂類の消費がやや増加する中で、魚の漁獲量の減少に伴う魚の脂の生産減少、これが寄与度マイナス三・〇%、こういったところが非常に大きいわけでございまして、今、先生御主張のような姿と必ずしも一致しないのではないかと私どもは思っております。  それから、現実実態として、自給率が低いということはそのとおりだという認識を持っておりますけれども国民の食生活の安定ということを考えますと、国内農業生産だけで現在のレベルの食生活が実現できないことも全く明らかなことでございまして、やはり足らざるものは今おっしゃったように輸入、あるいは不測の事態には備蓄も組み合わせて対応しなければならない、こういう現実実態にございます。これがある日突然、輸入が途絶えますと、かつて大豆の禁輸というのがアメリカによって行われましたけれども、豆腐の値段が上がって国民の食生活に大きな悪影響が及ぶわけでございます。  したがって、国内生産では需要を満たすことができないもの、これについては安定的輸入を確保する、そのために二国間の取り決めをしたり、あるいは日ごろから食料需給についてウオッチして、輸入ソースの多角化の模索をしたり、いろいろな手段をとって安定化をする必要があるわけでございますが、あくまで最終的な結論といたしましては、輸入が先にありきということではなくて、るる申し上げておりますように、国内農業生産、これの重要性前提といたしまして、国内農業生産増大を図るということを基本に輸入と備蓄を適切に組み合わせる、こういう考え方でございます。  したがいまして、十八条というのはその一種の補完的なものでありますから、これを削るとか、あるいはこれが優先するとかいうことではございません。
  226. 須藤美也子

    須藤美也子君 十八条が補完的なものであれば、わざわざここに、これまでの現行法にないものを、安定的な輸入を確保するため必要な施策をとると、こういうものは要らないと思うんです。私の方では削除を求めたいと思います。  同時に、これは安定して輸入しますよ、安定的な輸入を確保するということですから、喜ぶのはだれでしょうか。アメリカあるいは輸出国に、安定的に輸入しますよと基本法に書きました。これは輸入依存をどんどん拡大していくものではありませんか。そういう点で、本当に国内農業基本に据えて再建させていく、そういう決意があるのであれば、この十八条の安定的な輸入の確保は削除すべきだと思います。これはこれからも議論していただきたいというふうに思います。  さらにもう一つは、WTO協定の問題であります。政府は、これだけ国民そして野党の主張がありながらも自給率向上を国の責務にしない、目標を明示しない、輸入依存を明記しているのを外さない、さらに価格政策を放棄して市場原理に移行する、この方向を法案に盛り込んでいる、この背景を考えてみたいと思います。  そもそも現行基本法の目指した自立経営の育成、農工間の所得格差の是正、この目標は全く達成されないまま絵にかいたもちに終わってしまった。しかし、この三十八年の間、最近まで改正の動きは全くありませんでした。  ある雑誌で、農業基本法をつくった当時の事務次官小倉武一氏と東京農工大学学長の梶井功氏が対談しております。この対談を見ますと、こう言っております。一九八一年に、今の農政基本法を全く無視してやっている、これだけ空洞化させてしまっていると。今度は一九九一年になるわけですが、こんな農政をやるなら基本法を廃止してしまえと。これは割愛して読んだんですけれども、こういうことを言っております。小倉武一さんといえば皆さんの先輩ですからおわかりだと思います。こういう人がこういうことを言っているんです。  これまで三十八年間改正の動きはなかった、しかし現行基本法は実施されなかったんです。一九九一年、廃止してしまえと、こうおっしゃったが、その当時も、九〇年代に入っても改正の動きはなかった。ところが、それが表面化してくるのは九三年末のウルグアイ・ラウンド後です。  新基本法制定のきっかけはWTO農業協定ではないか、WTOに合わせて現行基本法を廃止し、それに合うように基本法をつくろうとするものではないのか、こういう声が全国各地、農村部に行くと言われます。どうですか、大臣
  227. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、最初の部分先生のお話ですが、我々は自給率目標を設定しないわけでもありませんし、きちっと基本計画に基づいて明示をさせていただきます。  小倉先生の話は、私も直接伺ったことがありますけれども、苦労されて現行基本法をつくられたという大変勉強になる話を伺ったことがあります。  今度の新しい基本法というのは、やはり四十年近くたって、社会情勢も、あるいはまた農村地帯農業地帯も都市部も国民全体も、そして世界的な飢餓の問題等々もございまして、そういう観点、さらには環境、景観、国土保全等の当時は予想し得なかった農業農村の果たす新たな役割等々が現在の大きな関心事項であるということです。そういう意味で国際協力の推進でありますとか、先生は十八条の安定的な輸入という条文をけしからぬとおっしゃっておりますけれども、二項では逆に農産物の輸出を促進する条項も明記してあるわけでございます。  まさに、我々は新しい時代に向かって、生産者あるいは農村地帯が自信を持って、国内はもとより海外にも打って出られるような農村農業づくりをしたいということで、いろんな観点から時代のニーズにこたえてこの基本法をつくり、それに基づいて実体法あるいはまた基本計画等々を通じてこの法律目的実現のために全力を尽くしていきたいと考えております。
  228. 須藤美也子

    須藤美也子君 そうおっしゃいますけれども、「農村都市をむすぶ」十一・十二月号で高木事務次官はこうおっしゃっているんです。そもそもウルグアイ・ラウンド農業合意に、今回の農政審議会についてですよ、いわゆる源流を発している、まずはここを思い起こしていただければいい、こうおっしゃっているんです。  ですから、今回の新しい食料農業農村基本法案は、まさにこれから始まろうとするWTO農業協定の交渉に基づいて、それに合わせてこの改正をやろうとするものだと、私はそう思わざるを得ません。なぜなら、WTO協定に抵触すると思われる価格安定制度、この政策が削除されました。そして三十条で、農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるという市場原理万能論を打ち出しています。こういう点ではWTO農業協定に合わせて新しい農業基本法をつくろうとするねらいがあるのではないかと、こう思わざるを得ないんです。そういう点で、次期交渉に向けて私は極めて重要な問題だと思っています。  このWTO協定は交渉で改正する、こういうことを再三、大臣は決意を述べられております。そういう中でも、農協を初め国民の一千万人署名、その中にはWTO協定の改正を求める要望も入っております。  日本共産党は今度の新しい農業基本法案の中で、WTO協定の改正を含め関係諸国との協議など、政府が必要な施策を講ずることを明記しなさいと、こういうことを提案いたしております。  この点については、もう時間も参りましたので、まず何よりも早急に、私、きょうの質問で結論的に言えば食料自給率向上、これは国の責任でやっていただきたい、責務としてこれを明記する。それから、数値としては五〇%以上、これを明記していただきたい。さらに、輸入依存政策からこの日本農業を転換させる、こういうことを高らかに農水省が宣言する、そういう基本法をつくっていただきたい。こういうふうに申し上げて、時間ですので終わりたいんですけれども大臣の一言を、結論的な答弁をお願いします。
  229. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 時あたかもWTOの次期交渉の時期でございます。このWTO、たしか共産党さんはWTOから抜けるべきだというような御議論を食糧法のときになさっておりましたが、やはりWTOという枠組みの中で我が国が主張すべきことを主張し、実現をしていく。輸出国と輸入国とのバランスだとか、あるいは非貿易的関心事項、多面的な面、食料安全保障等々、我が国が主張すべきものはWTOの全体の中で実現をしていく。一方、WTOの中で、今回は緑の政策として認められるものについては積極的に導入をしていこうということで、例えば中山間等の直接支払いという手法を初めて導入するわけでございますし、WTOの中で我が国にとってプラスとなるようなものについては積極的にこの基本法の中でも導入することによって農業農村、そして国民、国土を守っていかなければならないと考えております。はっきり言えば、WTO協定上だめなものはだめとしてその廃止、変更を求め、そして必要なものは我が国としてきちっと守っていくという方針で交渉に臨んでいくわけでございます。  なお、食料自給率向上につきましては十五条の三項ではっきりと書いてあり、そして七条だったと思いますが、国の責務でこの施策をしっかりとやらなければいけないということになっておりますので、自給率向上を目指すことは国の責務であることは前にも申し上げたとおりでございます。
  230. 須藤美也子

    須藤美也子君 終わります。
  231. 谷本巍

    ○谷本巍君 基本法問題については過般の大臣の所信表明の際にも伺っておりますので、できるだけダブらないような形で御質問してまいりたいと存じます。  初めにお尋ねをしたいのは、六月四日の本会議で私は質問をさせていただきました。お答えをいただいておるのでありますが、きょうは、その全部ではありませんが、大体七割方といいましょうか、確かめたい点がございますので、そこから質問させていただきたいと存じます。  初めが農用地の確保問題であります。  本会議で私が申し上げましたのは、国内生産増大をやっていこうというのであれば、これは農用地を造成しなきゃならぬだろうということを申し上げました。現在の五百万ヘクタールにしましても、昔は六百万ヘクタールあった。ところが、減ったのは二百万ヘクタールでありまして、それが四百万ヘクタールにならずに済んだのは、百万ヘクタールの農地造成が行われていたからであります。  ところが、今度は農用地はどうも転用されるばかりで造成の見込みがなさそうだ。果たしてそれで自給率を引き上げることができるでしょうかというふうにお尋ねをしてまいりましたら、総理がお答えになりましたのが、農地の確保それから有効利用、これは新法できちんと位置づけている、これを踏まえてやっていくんだと、簡単にそういうふうなお答えがございました。これは私の方からすると答弁漏れも同然なんです。農用地の造成をどうなさるんですかと聞いているんですが、そこはお答えになっていないんです。  まず、この点もう一度重ねてお尋ねをいたします。
  232. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御指摘がございましたように、農業生産食料安定供給の上で最も基礎的な資源である農地につきまして、これを良好な状態で確保していくというのは当然のことでございます。  重複はいたしますけれども基本計画の中で具体的に食料自給率目標値を定める際に、農地面積につきましても、品目ごとの作付面積など、生産努力目標の達成に必要な指標としてお示しをいたしますし、また今回提出いたしております農振法の改正の中でも、優良農地の確保につきまして数字も含めた指針を示したいと思っております。  ただ、その際どういう形で、またどういうやり方で農地を確保していくかということですが、二つの点を申し上げたいんですが、第一点は、我が国農業における農地の利用実態というのが、耕作放棄あるいは不作付ということで、現状で三十二万ヘクタールほどが作付されていないという状況にございます。それから、耕地利用率も平成九年の数字で九六%、特に冬の間は作付率が三〇%を切るような状態でございます。私どもは、まず既存農地の整備あるいは汎用化の推進によって利用をきちんとしていくというところから始めたいと思っております。  それから、農地造成につきましては、経営規模拡大あるいは主産地の形成、さらには地域振興等の観点や担い手の存在状態、地元のニーズ、意向等、その必要性を慎重に検討し、見きわめた上で、既存農地との一体的な整備あるいはコストの縮減、環境等にも十分配慮をしながら継続して実施をしていくつもりでございます。具体的には、国営農地再編整備事業あるいは県営の農地開発事業におきまして、今申し上げましたような状況を見ながら、直近の五カ年を見ましても、年間に三千六百ヘクタール程度の農地が造成をされているところでございます。
  233. 谷本巍

    ○谷本巍君 耕作放棄地、これを整備していきたいと。もちろん、優良農地の確保というのがその上にあるんでしょう。それからもう一つ、今のお話ですと利用率、これを引き上げていこうということであります。  利用率は今下がっているわけです。これを引き上げていって果たして自給率、今話題になっておりますような五〇%の水準まで持っていくことができるのでしょうか。他方では、農用地の転用というのに完全に歯どめをかけるということはできはしませんよ。ですから、一方で転用は転用で進むでしょう。  そういう状況の中で、農地の新造成はやらない、耕作放棄地の手入れをやります、利用率を上げていきますというようなことで果たして食料自給率五〇%水準あたりまで持っていける可能性があるんでしょうか。そこはどうなんですか。
  234. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) ただいま申し上げましたように、食料自給率のかなめになりますのはやはり土地利用型農業の中の大豆であり麦であります。麦の場合には、特に中央から西の方では裏作というのが昔から常識でございました。裏作の作付の状況が今申し上げましたように冬の期間で三割を割る、これはたしか七二%だと思いますけれども、が放置をされているというふうな状況でございますので、これを表との米麦一貫体系にするとか、あるいは大豆も入れた三作のローテーションとか、そういうことでかなり発掘をすることが私は可能だろうと思っております。  それから、農用地の造成につきましては、今お話し申し上げましたように、近年では大規模な開発というものの適地はなくなっているわけでございます。したがいまして、私の説明でいいますと、既存農地とうまく組み合わせて、そういう担い手がいる、まだ農地をふやしてもいいというふうなところでは、国営の再編事業であるとか県営の畑地開発というふうな形で造成を続けていこうというふうに思っておるわけでございます。  そういうふうなことで、線引きもしくは転用の問題については、やはり整然とした対応ということできちんとした線を引く、そういう観点で農振法の改正もお願いをしているわけでございますので、これらが両々相まって優良農地農地の総量が確保されていくということになろうかと思います。
  235. 谷本巍

    ○谷本巍君 どうも今のお話を聞いただけでは、自給率は確実に上がっていくのかなということについて心もとない感じがしてなりません。  さて、もう一つの問題は、生産増大させる方法としてありますのは、面積当たりの収量を引き上げるという方法があるわけであります。これまで農業基本法体制のもとで政府がやってまいりましたのは、単位面積当たりの収量をどう引き上げるかということじゃなくて、労働生産性をどう引き上げるかということが中心でありました。私どもに言わせますというと、土地と自然をむしばみながら労働生産性向上をやってきた。そして、農法というのは、もう既に相当、土を痛めてきていますから限界に来てしまっている。ですから、今度は土にもっと力を入れていく、そういう土地生産性を重視した農法への転換、ここのところを積極的に進めていくという、従来の農法の路線からしますというと軌道修正が必要になってきているんじゃないのかというふうに思うんですが、そこはどうでしょうか。
  236. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) お答え申し上げます。  今後、国内での農業生産増大を図る上では、土地利用型の作物につきましてお話ございましたように生産性向上を図っていく、特に自給率が低うございます麦、大豆につきましては、単収、品質を向上させる、それから何より農地の有効活用を図るということが大事だと思っております。  したがいまして、特にことしからでございますが、生産者から実需者、普及組織、行政が一体となりまして、きちっとした具体的な振興目標といいますか、そういうものを定めまして、しかも、先ほどもお話ございましたけれども、同じ大豆なら大豆、麦なら麦といっても、全国非常に条件が違いますので、産地に合った条件を定める、その振興目標を定める、それを具体的にどうやっていくかということでございます。  例えば、一、二御紹介を申し上げますと、土地利用率を上げるということにつきましては、九州地方のように、先生御承知のように、一年二作が可能なところがございます。そういうところでは、稲と麦あるいは麦と大豆をつくってそれを推進していく。また、北陸地方のように二年三作というようなことが可能な地帯では、麦、大豆、稲を効率的に組み合わせる。そういう地域の実情に合ったような作付体系を関係者できちっと整理をしてやっていくということだと思います。  それから、単収、品質の向上、安定化につきましては、例えば水田の転作を行うというような場合には団地化を行うと同時に、排水対策は大変重要な基本的な技術でございますので、弾丸暗渠等を行って営農排水対策を徹底するとか、こういうふうに関係者が納得したといいますか、きちっとした議論を重ねた上で具体的な目標を定めて生産性向上していく、こういうことが大事じゃなかろうか、それを推進する必要があると思っております。
  237. 谷本巍

    ○谷本巍君 相撲の世界でいいますと、横綱曙の相撲のとり方というのと、若乃花だとか琴錦なんかの相撲のとり方というのはまるで違うんですね。  農業も私は同じだろうと思いますよ。アメリカはアメリカ農業の行き方があるでしょう。日本には日本の行き方というのが僕はあると思うんです。歴史的に見たって、ヨーロッパが近代化農法を確立した当時、これは幕末の時代ですよ。日本はどうだったか。日本の場合は集約型農業というのを確立したわけですよ。単収でいえばヨーロッパの十倍以上だ。そういうものを築いてきたという歴史があるわけです。しかも、あの時代農業というのはもう循環型もいいところです。私は何も昔に戻れということを言うつもりはいささかもありませんけれども、やはりそういう伝統に基づいた、そして近代技術を巧みに取り入れながらの農法の開発というのにもっと私は日本は積極的に取り組んでいいんじゃないかと思いますよ。  私がつき合ったある有機農業生産グループの皆さんは、五百万ヘクタールを割ったって自給率が七〇%ぐらいだったらやりますよということを自信を持っておっしゃっている方がいる。これは自分の農業の経験の中からおっしゃっておる話ですがね。  そういう意味では、農法の問題については、民間の力にも着目しながら、そういう主張があるわけですから、もっとやっぱり積極的な検討をしていただきたいと思うのだが、いかがでしょうか。
  238. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 先生おっしゃいましたように、持続性の高い農業を展開するということは大変大事なことであるわけでございまして、先般も本委員会で御審議をいただきましたような、例えば持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律等々を中心にしまして、私どもとしては、必要な予算措置なんかとあわせて、自然循環型といいますか、そういうものに十分配慮したような農法を展開していくことは非常に大切なことじゃないかと思っておるところでございます。  その場合でも、全国一律ということではなくて、地方地方といいますか、地域地域で条件に合ったような農法を展開してもらうということを基本に、各県が推奨すべきといいますか、導入を促進する農法を定めていただくという考え方をとっているのも、地域の条件に合った農法を展開してもらうことが大事だという考えが一つそこにあらわれているんじゃないかと考えております。
  239. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、本会議の質問でもう一つ食料自給率の引き上げ問題との絡みで水問題について伺いました。私、本会議で申し上げましたのは、世界的水資源不足の時代に入ってきた、日本も例外じゃないだろうということを申し上げながら、新基本法の中での水問題の位置づけいかんということを伺ったのでありますが、大臣からいただきました答弁は、農業用水の確保、水の有効利用を図ることを本基本法案は明確に位置づけておると、これだけでございました。私、そういう答えは期待していなかったんです。農林業というのは、水の使用者である前に、水の大なる生産者なんですね。  この基本法は残念ながら前文がない。前文がないから強調されなかったのかと思うんですけれども環境問題といえば、イの一番の問題はやっぱり水問題ですよ、特にこれからの時代は。悪いことには、しかも日本の場合は、水が足りなくなった問題が出てくると必ずマスコミが言ってくる、農業用水を都市の方に回せと。ふざけるんじゃないというんですよ。水の生産者たる農林業者をぶったたいておいて、それでもって水の供給量をふやすことができるかといったら、できやしませんよ。そういう状況の中に我々はあるんです。それだけに、水問題については、新基本法制定に当たっては私はまず前文の中で高らかにうたい上げてほしかったなという期待があってのことであります。  そこで、大臣に三点ほど伺いたいのであります。  まず一番目に伺いたいのは、最近の水事情について大臣がどう認識しておられるかについてであります。  外国のことをもう一度繰り返して申し上げますというと、地球全体のアンバランス状況というのが今出てきておりまして、あるところでは渇水、あるところでは洪水、そしてそういう状況を背にしながら、世界銀行が水資源が決定的不足の時代に入ってきたということを言っておるわけであります。しかも、人口問題と食料問題というのはこれまでずっと議論されてまいりましたが、最近は水問題がそのキーワードだなという声が非常に大きくなってまいりました。  一方、日本国内の問題を見てみれば、それは降水量の問題でいいますというと、ちょいちょい台風の上陸が外れていく、空梅雨というのは昔から比べるとずっと多くなってきた。これは異常気象の時代といいましょうか、地球温暖化の影響といいましょうか、ともかくもそういう状況が出てきている。  そして、本会議場でも申し上げましたように、森林の荒廃はかつてない荒廃ぶりですよ。渇水対策としてのダム、河口堰だとかダムをつくるなんというのは、それはもう環境問題から限界に来てしまっていますよ。  地下水はどうなのか。地下水の汚染はひどいですよ。しかも地盤沈下。地下水利用というのはそういう意味ではもう限界に来ておるというふうに言われているわけです。  ところが、使用量の方はどんどんふえてきていますね。中小都市と大都市の一人当たりの水の使用量を比べてみるというと歴然たる違いが出てきます。大都市の方が使用量がぐんと多い。人口の移動で見ますと、水の使用量というのはそういう意味でどんどんふえていくんじゃないかというふうに思われるような状況です。世界的にも国内的にも、それからまた農業の上でも大変な時代に入ってきた、私はそう見ておるんです。大臣、どうお考えでしょうか。
  240. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 水は人間が生きる上でも必要不可欠のものでありますし、また、先生指摘のように、農業という面から見ましても、文字どおり水をつくり出す機能、涵養機能があるわけでございます。  本会議場での答弁では先生の御質問に十分お答えできなかったようでございますが、世界銀行の九五年八月のレポートというのがありますけれども、今、世界的に水が非常に厳しい状況になっておる。特に、発展途上国では農業で使う水の量が非常に多いわけでありますけれども、これが不足あるいはまた汚染等で非常に被害が出ておるということで、世界的にも異常気象、少雨、渇水といった問題が起きておるわけであります。  我が国でも昨年はたび重なる豪雨水害がございました。一方では、今御指摘のように空梅雨とか台風が空振りしたとかということで、まさに自然のデリケートな、そしてまたダイナミックな面が水においてもあらわれておるわけでございます。そういう意味で、国土保全あるいは農業生産活動を含めまして、水の問題、特に農業用の水の問題のきちっとした管理といいましょうか、問題の解決といいましょうか、地域の特性に応じてきちっとやっていくことが基本であろうというふうに考えております。
  241. 谷本巍

    ○谷本巍君 欧米農業日本農業の違いの最大のところは何なのかというと、どうも私は水問題のような気がするんです。欧米の方は、森林を切り倒して、水の最大消費者ですよ。日本農業はそうじゃなかったわけでしょう。山に木を植えたのはだれかというと百姓ですよ。農家が植えたんです。杉だったら六十年、七十年たたなきゃ銭にはなりません。だから、息子か孫の代ですよ、収穫ができるのは。今の経済学じゃ成り立たないようなことを日本の百姓はやってきたんです。何でやってきたのか、水が欲しいからです。米をつくるためにそれをやってきたということです。  ですから、私が子供のころには、平場の農業というのは長男坊が後を継ぐ、次三男はみんな山へ行ったんです。そして、山を整えながら自分が食うだけの水田をやった。だから、祭りになりますと、山に行った苦労している次三男をみんなもてなしたものです。川下の者は川上を大切にしたものです。  そういうふうな蓄積というのが、僕は戦後の日本の工業化を成功させたと思う。どなたか先ほどおっしゃいました、日本の小農技術は世界一だと。私もそうだと思う。それを生んだのが世界一優秀な労働力です。そして、鉄を生産するのに水はどれだけ必要だったか、百トンでしょう。車一台に百二十トンでしょう。アルミ一トンに百八十トンの水が必要だったわけでしょう。そういう水を供給してきたのはまさしく農業なんです。農家の働きなんです。そういう意味では、私は一滴の水といえども労働の所産であるということを言い続けてきました。  ところが、今度の基本法問題にはそれが出てこないんです。アンケートで日本が世界に誇るべきものは何だというと、よくトップになるのは治安のよさだとか、あるいは景観だという話が出てくるでしょう。これだって、つくったのはだれですか。そこを支えているのは農家です。そういうふうな問題というのが全く今度の基本法の中では出てこないんです。やっぱりそういうふうなものは前文の中に高らかにうたい上げられてよかったのではないのか。前文がないから提案理由説明の中でというお話も伺いました。ところが、そこを読んでもやっぱり出てこないんです。今じゃ手おくれなのかもしれません。しかし、何かその辺のところを工夫することはできないのでしょうか。
  242. 高木賢

    政府委員高木賢君) ただいま先生のおっしゃいました農業が持つもろもろの機能というものにつきましては、これも釈迦に説法かもしれませんが、第三条の「多面的機能の発揮」というところに集約して規定したつもりでございます。  今お話の出ておりますダイレクトのもので言いますと、水源の涵養機能というものを農業の持つ機能としてきちんと位置づけておりますし、良好な景観の形成、文化の伝承等、等ということでその他の機能もございますけれども農村農業生産活動が行われることにより生ずる機能、これは将来にわたって適切かつ十分に発揮されなければならないということで条文として明確化したつもりでございます。さらに、それに敷衍したというものがあればという御指摘でございますが、法案ということでもございますので、この四行に集約させていただいたということでございます。
  243. 谷本巍

    ○谷本巍君 とにかく何か考えてほしいですね。  水問題の最後に大臣に伺いたいのでありますが、森林と水田の公共財としての位置づけをひとつきちっとしていただけないかということであります。  これは、森林が水をつくり、水田が涵養するというような関係で来たわけであります。したがって、広葉樹林と組み合わせた水源林の整備についても、これは公的支援をしなきゃなりませんというようなことでまいりましたし、それから緑をふやすということについても、地球温暖化との絡みの問題等々もあってこれも支援していかなきゃならない。そして、米の生産調整についても水田を守らなきゃならぬからということで、皆さんがガットの中でこれをグリーンボックスの中に入れたというような経過があるわけです。  そういう点からして、WTOの次期交渉問題も念頭に置きながら、やはり森林とともに水田、公共財としてのその種の位置づけというのがあってしかるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  244. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 特に、日本の地形あるいは降雨条件を考えますと、国土の八割を占める森林と農地、これが一体となって水をつくり、涵養し、そして最終的には下流の都市住民が利用するということになるわけで、まさしく山と農地とが一体となって水というものをはぐくんでいるわけでございます。  先生指摘のように、農家のうちの四割強が山林を所有しているいわゆる農家林家であるわけでございまして、山の果たす公益的機能、水の涵養では四兆数千億とか、あるいはまた農地のダム機能がどうだとか、いろいろ数字はございますけれども、いずれも山林あるいは農地においてきちっと水が管理されておるということが大前提であるわけでございまして、そういう意味からも、山林の整備あるいは農地の整備というものもきちっとやっていかなければならないと、今、先生のお話を伺いながら痛感しているところでございます。
  245. 谷本巍

    ○谷本巍君 大臣、この質問をわざわざここでさせていただいたのには実は理由があるんです。といいますのは、一時期、マスコミがどういうわけか次から次と米の生産調整解除問題を書きましたね。これに対して農林水産省は、それは絶対にないということをおっしゃいました。おっしゃいましたけれども、いまだに信用なさらぬ方が結構あるんです。それはなぜなのか、何なのか。次のラウンドで日本が果たして米の生産調整問題をグリーンボックスということで最後まで粘れるか、恐らく粘れぬだろう。そのときに米の生産調整というのがパアになっていくんだ、こういう見方があるんです。それだけに、水田の持つ公共財としての位置づけというのをきちっとしていただいて、そこのところは腹を据えて次期交渉にも臨んでいくというふうにひとつ大臣のお答えをいただきたいんです。
  246. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 既に、世界食料サミットあるいは昨年のOECD農業大臣会合でも日本として主張をし、取り入れられております農業の果たす多面的役割、これは次期交渉において我が国が主張する大きな柱の一つでございます。  したがいまして、一般論としての農業の果たす多面的役割、それから地域に特色のある、それぞれの国の農業を守っていくということも我が国の主張すべき論点の一つになるかと思いますが、いわゆるアジア・モンスーン地帯における水田農業というものが我が国において、一言で言えばそういう水田農業、稲作形態でございますので、そういう観点からもその重要性というものを主張していかなければならないというふうに考えております。
  247. 谷本巍

    ○谷本巍君 それからもう一つ、本会議質問の中で、私、この法案の言う効率的生産というのは何なのかということのお尋ねをいたしました。  そのとき私が申し上げましたのは、薬剤漬け、大型機械のいわゆる近代化農法というのは、確かに目先の低コスト化にはつながる、しかし他方では大きな環境負荷を生み出してきたという問題を挙げながら、例えばEUでいいますというと、効率的な農業というのは、これまでの近代化農法じゃなくて、環境保全型がそうなんだという論者が出てくるようになってきたと。  さてそこで、効率化というのを大臣はどうお考えになっておりますかということを伺いました。これについての直接的な大臣からのお答えはありませんでした。ありませんでしたが、大臣は、環境保全型農業の推進は、自然循環機能維持増進を図る上で重要な役割を果たすということで、病虫害や連作障害の減少、それから有機性資源のリサイクル等々により経営の効率化、地域資源の効率的利用にも資するものだというふうな見解を表明しておられました。  と言っているところを見ると、本法案の言う効率化というのは、最近EUあたりに出てきているのと同じような見解だというふうに受け取っておいてよろしいですか。
  248. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 今、先生からお話ございましたこと、もう少し具体的に御説明といいますか答弁を申し上げますと、法案の第四条で、農業の自然循環機能維持増進が持続的な発展のために不可欠だと、これは当然御承知だと思います。  一方、土づくりと化学肥料、農薬の使用を低減するということで、環境負荷の軽減に配慮をしました環境保全型農業を推進する。これはまた自然循環機能維持増進を図る上で大変重要なんですが、それだけではなくて、そういうことを行うことによって、やや具体的で申しわけないんですが、土づくりを行うということになりますと、当然、土壌中の塩基バランスが適正化するということになります。例えば、そういうことが起きますとどういうことになるかといいますと、その結果、本来ならといいますか、やらなかった場合に施用しないといけない資材とか労力が減ることになってまいります。  それから、気象変動があった場合に収量低下を避けることができるというのはおわかりだと思います。それから、作物が養分を非常にバランスよく吸収するということで、収量が安定するし、何より実需者といいますか、消費者サイドの品質が安定するという一番の要望にこたえるということが一つあるわけでございます。  それからもう一つ、土づくりを行うことによりまして病虫害や連作障害を避けられるということになります。そういうことになりますと、当然、防除回数が減ってくるということになりますので、それに必要となります労力あるいは経済的な負担というのは減るわけでございます。それから、土壌消毒を要しなくていいということになるわけでございます。  それから、先ほどとやや似通っておりますが、いい品質のものができるということになりますので、収穫等の場合にかなり合理的にといいますか、効率的に収穫をすることができる等々が経営を行う場合の効率化に資する側面であろうということで、幾つか事例を挙げましたが、こういうことで投下資本や労働力が減少をするということが効率化につながっていくということでございます。  そのほか、当然畜産との連携を行うということになるわけでございまして、そういうものや、あるいは食品廃棄物等、地域にございます有機性資源をリサイクルすることができるということで、そういう地域資源の効率的な利用、それもまた効率的な側面であろうかと考えているわけでございます。
  249. 谷本巍

    ○谷本巍君 そうしますと、法案の第二十一条が言う「望ましい農業構造の確立」とは具体的に何なのかということについて伺っておきたいんです。  この文章は、「国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、」ということで始まります。「効率的」という言葉がまず一番最初に出てくる。そして、幾つかのことが並べられて、最後の結びの方に来るのが、「規模拡大その他農業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずる」ということで終わっております。これを従来の感覚で読んでみますと、単作・専作型の大規模経営を想像される方が圧倒的に多いんです、これまでの感覚からしますと。  そうすると、ここのところで言う「望ましい農業構造の確立」というものは、今のお話ですと、環境保全ということに非常にウエートを置いた、そういう意味のものだというふうに理解しておいてよろしいですか。
  250. 高木賢

    政府委員高木賢君) 二十一条におきましては、先生指摘文章の前に、あえて「営農の類型及び地域の特性に応じ、」という字句を入れてございます。したがいまして、一本やりということでなくて、まさに営農の類型、地域の特性に応じてということですから、そういう幅広い姿を予定しているということでございまして、今具体的にお話のあった環境保全、こういうものも踏まえた姿として考えております。
  251. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、認定農家位置づけをめぐって伺いたいと存じます。  私の考え方を先に申し上げますというと、農村社会というのは、大きい農家、小さい農家というのがいろいろあるわけでありまして、そういう大きい農家や小さい農家が相補うネットワークづくりの中心的な柱に位置づけるべきではないのかというのが私の考え方であります。以前のように、小さい農家よ出ていけ、そして大型農家に土地を集中させよう、これはもう私はやめてほしいと思うんです。意味のないことですよ。やったって簡単に実効が上がるものではないですよ。  そして、認定農家の多くがどんな役割を果たしているかという実態を見てみますというと、土日百姓の家の育苗から耕起、代かき、田植え、刈り取り、全部かその一部などを請け負ったりお手伝いしたりというようなことでやっているものが非常に多いですし、これで勤め中心の人も日曜百姓がやれるようになるんですよ。年寄り百姓もこれで田んぼ回りが楽しめているんです。母さん方にしますというと、そういう状況があるからその分野菜づくりにも励むことができると。最近の産直なんかで野菜づくりをやっているお母さんの例を見ると、皆さんそうおっしゃっていますよ。  こういう実態に農政の寸法を合わせることが私は一番大事だろうと思います。つまり、地域のいろんな人たちの支えになる。その認定農家が頑張れるように今度は国が応援していく。こういう関係ができ上がっていきますというと、地域農業あり方の構想が描けるようになってくるように思います。例えば、米作を主とする農業地帯でいいますというと、何ヘクタールが適正かということが全体の協議で大体決まっていくんですね。  新潟の大潟村というところで私の知り合いが今、八十ヘクタールかな、三世帯六人でやっていますけれども、この皆さんのぼやきがひどいですよ。隣近所の人たちに何とか農家として残ってくれということを必死に働きかけながらやっています。それは、自分たちだけになっちゃいますと、用水路の整備から何から全部自分たちにかかってくるということもありますけれども北海道と内地の違う一番大きな点は、村の集まりに行っても農業のノの字も話題にしてもらえなくなっちゃったということが寂しいと。村の中のつき合い、これをおっしゃっておられる皆さんが多いです。  村の中心的な役割を果たしてもらっていくのには、他人の面倒を見ながら専業農家としてやれる範囲というのはどの程度なのか、これはおのずと適正規模がそこで決まってまいります。六ヘクタールとか七ヘクタールといったような規模というのが決まっていくということであります。それに野菜や花木や果樹、畜産などとの結合関係をつくっていく。そして、それぞれの立場を生かしながらのあり方を具体化していくということだろうと思うんです。一生、百姓を続けたい人、定年退職で農業に従事したい人、そして地域の中で今や多数派を占めるようになった高齢者農家の生きがい農業をやれるような状況。  認定農家はみんなを支えながら、そして認定農家がみんなに支えられる、そしてその牽引車になっていく、そういうような状況が出てきますというと、あっちの田んぼ、こっちの田んぼという、ああいう非効率な規模拡大、これが解決できるような条件が整備されてくる。私はそういう例を幾つも見てまいりました。  やはり、何といいましても、今、農村社会は人類未到の超高齢化社会です。そういう超高齢化社会を迎えた日本農村が、そうした地合いに見合う新しい地域労働システムをつくっていく上でも、今申し上げたような地域農業づくりというのが大事になってきているんじゃないかと思います。  こうしたあり方は、農業は地域社会全体のものとして社会化が進んでいく。そしてそこでは、安全な食べ物をつくる、そして地域の環境をよみがえらせる、これができれば食べ方を変えていくことができますよ。そして、トータルとして環境負荷の少ない、生産性も高くて生活の原理にかなうような地域農業づくりができるんじゃないか。米作地帯で見ても、やはり集団的に生産されているコストが安いですね。私はそういう方向を目指すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  252. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私も全く同感でございます。  認定農業者を初めとする農業経営体の発展、これのために支援措置を重点化していくということが必要ですし、もう一つの柱として、やはり集落の安定的な持続といいますか、これが肝要でございます。特に、日本の水田農業中心とした集落というのは、やはり水と農地の共同的な管理といいますか、面倒を見るというふうなことがございませんと成り立っていきませんので、到底一人でやれるわけではございません。私どももいろいろお話を伺っておりますけれども、認定農業者の方々あるいは農業生産法人の方々も、集落を離れて自分たちは成り立ち得ない、集落に何をし集落から何をしてもらうかということを強く感じておられるようでございます。  したがいまして、これから先の農業というのは、地域における効率的な農業生産の意欲ある担い手、これが中核になりますけれども、これらの地域に存在する小規模な兼業農家や土地持ちの非農家、こういう方たちとの間で、各種の土地、水路、労働力等、いろいろ役割分担をして連携を図ることが重要でございます。  大小相補う、大小相補といいますか、そういう考え方でやるべきだろうと思っておりまして、システムとしては、基盤強化法の中で市町村の基本構想を立てますけれども、その基本構想の中で地域農業の将来像というのを明確化する。これも、画一的ではなくてその地域地域に見合った将来像を明確化いたしまして、認定農業者等の担い手が支柱というか中核になりまして、それに兼業農家、高齢農業者等との役割分担を明示する。地域の実情に応じて補完し合いながら集落営農の多様な担い手の活動を促進する。地域全体として効率的、安定的な農業生産が確保できる。こういうことを目指したいと考えております。
  253. 谷本巍

    ○谷本巍君 今の局長答弁を伺いながら、やっぱり農林水産省は変わったなというふうに思いました。そういう答えがいただけるのに三十数年、私にとってはかかりました。  ここで農林大臣に聞いていただきたいことがあるのでありますが、これは私の思い出話であります。  今度の基本法づくりに当たって、この間の代表質問でも総理に申し上げましたけれども、まず現行基本法総括をやってほしいということを申し上げました。それがないからやっぱり前文が出てこなかったのかなというような気がいたしますけれども、私の四十数年の農民運動の生涯の中で痛烈なる教訓を味わったというのが三十年ほど前にありました。それは現行基本法が成立して間もないころでありました。  当時言われましたのは、私どもが勉強させていただいた学者、研究者の先生方からも、経済成長が順調にいきますというと、今度は農村から人口が外へ出るようになってきます、そして、規模拡大農業実現するようになるのだというような話を随分と聞きました。  私どもも、フランスの農業基本法など、ヨーロッパの基本法を一生懸命勉強いたしました。そして、構造改善事業が始まった当時、農村に入ったときに愕然とするような場面に幾つか私は出くわしました。  当時の構造改善事業というのは、土地基盤整備事業と大型機械というのをセットにしておりました。土地基盤整備事業はやりたいが大型機械はお断りだというのが圧倒的でありました。そして、規模拡大をどう実現するかということについて、みんなで話し合いを進めていくというようなことをやりましたけれども、進まないんですよ。どうして進まないのか。結局、小農、小さい農家をたたき出して大きな農家実現しようといっても、これは村の論理に合わなかったということに気づくのに私はしばらくかかりました。  確かに、日本の米がつくりました地域社会というのは、米をつくるための労働力の結いがあり、米をつくるための水の共同管理があった。そして、そういうものを通じて相互補助的な地域社会を形成してきた。そして、その相互補助的な地域社会というのは、大は大なりに、小は小なりに生きられる世界であって、そういう生き方ができるためのシステムづくりであって、落ちこぼれをなくしていく、そういうふうな地域づくりでありました。  そんな中で私はふっと思い出しましたのは、まだ八歳か九歳のころですよ、昭和恐慌でした。そして、娘売りが私の村にもありました。そこで、みんなが集まって簡易法人である部落実行組合で講をつくって、そしてみんなが少しずつ金を出し合って、娘売りをしなくてもこれだけの金があれば済むなという人がそれを落とす。ここで村の長は決まってこう言いましたよ、おまえ担保を出せよと。担保を出すときには、あそこの田んぼ、ここの田んぼを出せと、いい田んぼばかり出せと言うんですよ。なぜそう言うか。それは、いい田んぼを出せば借金を返すために真剣になるということをその村の長老が語っていたのを子供ながらに覚えております。  小農よ出ていけというこの論理は村社会にはやっぱり通用しなかったんです。アングロサクソン的規模拡大政策というのは日本農村社会が受け付けなかった、そういう思いというのが私はありました。  それから、私どもが言ってまいりましたのは、先ほど局長もおっしゃいましたけれども、大小相補い合うような地域農業づくりということを私どもも党も言ってきたのがそういうふうな意味合いでありました。  大変古い話でありますが、今、局長答弁を聞きながら農林水産省も変わったなと。やっぱりヨーロッパ型農業というのをうのみにしたやり方じゃだめだと我々は言ってきた、そういう時代にようやく来たなというのが私の今の答弁を聞いての実感であります。  ですから、このことは大臣に聞いていただきたいということを申し上げただけのことでありまして、答弁は必要といたしません。大臣が何か御感想があればお聞かせいただきたい。それだけであります。
  254. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の谷本先生の話、本当に特別の感情を込めてお話しになって、私自身も聞き入らせていただいたわけであります。  とにかく、新しい時代基本法づくりということでありますけれども、この法律の名前が示すとおり、国民全体に対する食料、そして面的、空間的に農業農村生産だけではないいろいろな機能を守っていくということがポイントでございますので、そういう意味で、まさに集落というものが人と人とのつながりの上に成り立って、それを壊していくということは、まさに集落の崩壊だけではなくて、国土の未来に対しての破壊にも通じるということを今、先生の話を伺って痛感したところであり、一生懸命頑張っておるそれぞれの農家が、役割分担をしながら、集落を中心としてやっていくということの重要性というものを今、先生のお話を伺って改めて認識させていただきました。
  255. 谷本巍

    ○谷本巍君 さて、そうした農業づくりをこれから目指していく。そこでもう一つ気になるのは、やっぱり自主的にみんながやれるような体制づくり、つまり分権問題ですね。この点についてどうお考えであるか伺いたいのであります。  何といいましても地域農業をしょって立っているのは農家であります。そして、住民や自治体との関係、これが密接不可分の関係にあって、そういう中で農政の推進主体というのがつくられていかなきゃならぬと思います。地域が主体となって、政府がこれを積極的に応援すれば、先ほども申し上げましたように、そしてこれまでも論議になってまいりましたように、多くの皆さんがこの国土が生んだ食べ物を食べてくれるような状況というのができ上がっていくはずであります。それにまた、家庭や学校給食の生ごみの利用なんかにしましても、縦割りじゃなくて横割りへの転換が進んでいきますというと、この種の問題の実現だって楽にやっていくことができるようになるはずであります。それには、財政支援も含む分権、これが大事なのではないのか。その点どうお考えでしょうか。
  256. 高木賢

    政府委員高木賢君) 新しい基本法案におきましては、地方公共団体の位置づけを、上位下位という国の下部機関ということではなくて、対等の機関というふうに位置づけております。  基本法自体は、国の行うべき基本施策を大体整理してございますけれども、地方公共団体も、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的・経済的・社会的諸条件に応じた施策を策定し実施する責務を有するということで、地方公共団体がみずからの判断でいろいろと対応していただくということを予定いたしております。その場合、国との関係では相協力するという整理になってございます。  したがいまして、まさに今、先生おっしゃいましたように、縦のものを横にするといいますか、地域の立場で横にくくるという点では、大いにその地域の独自性を発揮していただくという点で我々も期待をいたすわけでございますが、同時に、そういう上下という関係ではございませんので、やはりそれぞれの特色を生かしてお取り組みをいただくということが必要だろうと思います。  その際、国としても全国的立場から支援すべきものは支援していく、非常に図式的な言い方になるかと思いますが、そういう基本的な枠組みの整理ということをいたしております。
  257. 谷本巍

    ○谷本巍君 もう既に時間が参りまして、あと四分ほど残っているだけでありますので、この分権の問題についてはまた機会を改めてもう少し突っ込んだ話を伺いたいと存じます。  最後ということになりましょうか、地域ごとにラウンドテーブルを設けてはどうなのかということについて伺いたいと存じます。  先日の本会議での総理への質問の中で、総理が、不足農産物の生産増強に向けて、全国的な目標にとどまらず、地域段階でも実情に応じた目標を策定してまいりたいというふうにお答えになっておりました。  何といいましても、これからは環境型の農業を主軸にやっていこうというのであれば、日本列島というのは非常に変化に富んでおるわけでありますから、それぞれの地域の自然をどう生かすかというところが勝負になってまいります。したがいまして、全国画一じゃなくて、それぞれの地域ごとに独創的な取り組みというのが求められるようになっていくだろうと思います。  そうして見るならば、地域ごとに、ないしは県の中のブロックぐらいに、農家と地方議会の皆さん、そして行政、それから市民団体の皆さん、そしてできるならば地方財界の皆さんなどにも参加をいただきながらラウンドテーブルをつくって話し合いをするということが大事になってきたのではないかと思います。  特に、地方財界の皆さんと断りましたのは、所によっては、例えば環境保全型農業づくりなんかについて農協は無関心だった。役場に行っても相手にしてもらえなかった。しかし、商工会議所だけが相手にしてくれたというところだってあるんです。特に、これからWTOに向けて、そういう意味じゃやっぱり地方財界の皆さんも地場の経済に根っこを張っておるわけですから、そういうところとも連帯の関係が結べるような状況をつくっていくという意味でも、そうした点も念頭に置いたラウンドテーブルを設けてやるようにしたらどうかと思うんだが、いかがでしょうか。
  258. 高木賢

    政府委員高木賢君) 各地域地域で、今おっしゃいましたような地方公共団体なり生産者の方々、あるいは消費者の方々、あるいは場合によっては地方財界の方々、こういった方々の参加のもとに、まさにラウンドテーブルでその地域の農業をどうしていくのかという姿を描き、また実行していく、こういうことは非常に私どもも貴重な取り組みだというふうに思います。ぜひ各地でやっていただきたいという思いは非常に強いわけでございます。  ただ、先ほど来等の話とも関連いたしますが、国が一方的に指示するものではないので、本当に地方地方で独自に取り組んでいただければと思いますし、また私どもができるお手伝いといたしましては情報提供、例えば二月には農政改革大綱等で、いわゆるキャラバンということで地方に回る運動もいたしました。また、WTO状況についても情報提供で今説明会もやっております。そういう情報提供を積極的に行ってまいるつもりでおりますが、それにこたえて各地域でそれぞれ独自のお取り組みをされるということにつきましては、非常に方向として私ども望ましいと思っておりますので、ぜひとも各県各地域でよろしくお願いしたいと思っております。
  259. 阿曽田清

    阿曽田清君 ようやく新たな基本法制定されるのかなという思いで私も大変うれしく思います。現行基本法は既にもう役立たずじゃないかという思いをいたしたのも久しくなります。まさに、減反政策が始まったときに、米の減反政策さらには果樹等の減反政策が実施された、そのときに、農業基本法はないのに等しいな、いち早く新たな農業基本法をつくるべきだ、そういう思いで今日までまいりました。  今回の基本法を改正するに当たり、三十八年間の農業基本法、成果もあったと思いますし、また反省も大きかったと思います。大臣、その成果と反省、総括をまずお聞かせいただきたい。
  260. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 成果と反省ということでございますが、やはり日本農業を守り発展させていくということが原点であったわけでございます。  三十六年に制定されて、直後に米がほぼ自給できるようになった。その直後から、先生指摘のように、大きく分ければ二度にわたる大過剰時代があり、その間、私が初当選した昭和五十七年は非常に米がなくて、韓国から米を貸していたのを返してもらうなんということもございましたし、平成五年には大冷害があったというようなことがあって、やはり自然相手、生き物相手で非常に難しい仕事であり、また極めて重要な仕事であるわけでございます。  それの基本法という位置づけでございますが、やはり農業生産性を少しでも他産業並みにしていく、あるいはまた生活条件生活水準都市並みにしていこうということでございましたが、生産面では他産業の伸びの方がはるかに大きくて、是正をすることが難しかった。また、所得では他産業並み所得になっているところもありますけれども、依然としていわゆるインフラの整備が立ちおくれていったというような反省点もあるわけであります。  大きく分けて生産政策価格流通政策構造政策、三本柱でやったわけでございますけれども、例えばうまくいった一つの例といたしましては、いわゆる選択的拡大による総生産増大、それから米麦中心から他作物、畜産、果実、野菜等への広がりができた、あるいはまた規模についても、北海道では三・六倍、本州では一・二倍ですから、拡大ということについては土地保有の志向の強まりから北海道以外では余り成果が上げられなかったということだろうと思います。  そして、その間、自給率の大幅な低下、あるいは農業就業人口の減少と高齢化、過疎化の進行といった問題が生じてまいりましたし、他方、農村の果たす多面的機能、それから中山間地域を守ることによる国土の保全等々の、あるいはまた環境に対する役割といったような新たな時代のニーズというものも生まれてまいりましたので、そういうことを総括いたしまして、国際貢献といったものも含めまして新しい基本法総括をした上でこの法案の御審議をお願いしているところでございます。
  261. 阿曽田清

    阿曽田清君 反省するところは僕はたくさんあるかなと思いますし、成果が上がったところもあるけれども、むしろ反省するところが多かったのかなという感じを私自身は持っております。  前の農業基本法はすなわち農業サイドを中心に据えた基本法、今回は今おっしゃった多面的な機能を認めつつ、また消費者サイドを含んで、しかも国民の皆さん方に供するといいますか、そういう意味で今回のものは私はある意味で高く評価をいたすわけでございます。  しかしながら、国内農業の形態は大きく三十五、六年前とさま変わりをし、また海外からのそういう自由化というようなものについては、まさにWTOの制度化の中での自由化、今回、市場原理の導入ということを真正面に打ち出してこられたということからすると、新しく取り組み方もおのずから、また私は農政そのものの取り組みは違ってくるのじゃなかろうかなというふうに思うんです。もっと積極的にやらなきゃならないというものが多く出てきていると思うんです。  農家の方々が大変今回の法案期待しておるところなんですが、この四つ理念というもの、安定的供給の確保や持続的農業、さらには農村の整備、そしてもう一つ多面的機能、こういう四つのものを一つ理念として掲げておられるわけですが、この理念からどういう農政の将来の姿を描いておられるのか。  一言で言って、前回の農業基本法選択的規模拡大、すなわちそれによって農工間所得格差の是正を図りますと。いわば、農業者と勤労者の方々の所得を均衡に持っていくんだと、一言で言うならそういうことがみんなの一つの励みになった。  今度は、この四つ理念を持ってどういう方向をこの基本法は目指しているんだというものを、一言で言うなら、農家の方々に説明するときに一言でこういうことなんだ、こういうことを目指しているんだというようなことを考えておられたら、お聞かせいただければと思います。
  262. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) なかなか一言というと難しいわけでございますが、まず国内農業中心位置づけ国民に対して安定的な食料の供給をするということ、それによって全国民かかわりが出てくるわけでございます。それからもう一つは、やはり農業農村の果たす生産以外の、国民、国土にとって極めて重要な役割というものをきっちりと位置づける。  一言ではなくて二言で大変恐縮でございますけれども、強いて挙げればこれが最大のポイントではないかなというふうに考えております。
  263. 阿曽田清

    阿曽田清君 この四つを一言で言うのは大変難しいのはよくわかります。  私は、本会議でも質問で申し上げたのは、魅力ある農村への回帰を実現するんだということで大きく見てくくられるのかなと。農業者の方々、農家の方々に向かって、今度の基本法の目指すところはそういうところなんだ、都会の方々があこがれ、農村人たちが誇りに思えるような農業農村をつくっていくんだというのがこの基本法の中に織り込まれている理念四つなんだということが言えるのかなと、私なりにそういうふうにPRをいたしております。  次の質問に入らせていただきます。  自給率の問題についてはいろいろと御議論があったところであります。問題は、そういう食生活の大きな変わりもありますが、特に農林水産省として今後力を入れていかなきゃならないのは麦と大豆、そして飼料作物だろうと思うんです。これがまさに、国内自給ゼロとは言わぬけれども、それに近いような低空飛行で飛んでいるわけであります。その中で、麦に対しては取り組みがいよいよ農林省としても本腰ではまってこられておりますが、大豆等においてももっと研究開発を積極的にやるべきだというふうに思います。そして、おいしい米づくりは成功したと思うんだけれども、飼料米に今後本格的に取り組む必要があるなというふうに思います。  私は、先日、自由党で連休を利用しましてフィリピンの国際稲研究所に参りました。そこで、開発研究をされているのでどれくらいとれますかという話をしましたら、新しい緑の革命として取り組んでおるんですが、あそこは一ヘクタールで表現されましたので、十二トンですと、こういうことでした。可能性としては十四トンまでとれる。だから、十アール当たり一・二トン、こういうことです。これは精米していないもみの段階ですけれども日本のモンスーン地帯であるならばもっととれますよ、こういう話もありました。おいしい米じゃなくて重たい米をつくるということで、味はどうでもいいんだ、形もどうでもいい、とにかく量のあるものをつくるとするならば、フィリピンで研究するよりも日本の研究をなされた方がより多くとれるんじゃないですかというお話でありました。  仮に、一・四トンとれるということでしたから一・四トンとしますと、これが稲わらまで、ホールクロップでいきますと二・八トンになります。しかも、東日本、東北は難しいでしょうけれども、西日本は二毛作にできます。大体七割方とれますから、そうしますと大体四トン半ぐらいとれるんです、二毛作でした場合、ホールクロップで。  そうした場合に、畜産農家と連携をして飼料米生産というのが一つの形としてでき上がってくるんじゃないか。今も稲わらを輸入しているんでしょう。そういう中であるだけに、今までのおいしい米づくりだけをずっと伸ばしてきたことが本当の国策なのか。そういう水田を生かして、稲ならば水を張ることができる、水を張ることがすなわち自然環境を守ることであるし地下水の涵養にもつながるわけでありますから、それが三六%使われていない。  そういうことからしましても、私は、飼料米の問題について真剣に、やっぱりこの基本法に取り組むに当たって、自給率を上げる上においてもそういう取り組みというのが必要ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  264. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) それでは、まず大豆をひとつ私の方から、よろしゅうございましょうか。
  265. 阿曽田清

    阿曽田清君 研究開発について。
  266. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) わかりました。  それでは、飼料米で、畜産局長からも御発言があるかもしれませんが、まず飼料米と言った場合には二つあるわけです。  一つは、食料に転用するかどうかというのがあるわけでございますが、食用の場合は先ほどお答えをしましたし、もう先生とは実は何度かこの話をしましたので、その部分は省略をさせていただいてよろしゅうございましょうか。  えさにする場合には、最大の問題はやはり飼料工場なり農家等との結びつきの上で心配される採算性ではないかと思うんです。そうすると、そのときに最大の問題になりますのは、専用の収量が大きいものをきちっと農家段階まで入れて普及できるかどうかということではなかろうかと思います。これにつきましては、決して私ども、できない話だというような形で、平たく言えばおっぽり出しているわけでは全くございませんで、研究者の皆さん方もそういう多収の品種ができないものだろうかと一生懸命研究をしておられますし、またそのことは実は先生は御承知のはずでございます。  そういうものを具体的に導入するということについては、まだ若干収量の面について、実は先ほど御紹介がありましたものと私が承知しておりますものとオーダーが倍半分ぐらいの開きがございますので、もう少し研究をしないといけないのかなという気がいたしております。
  267. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 二点お答えさせていただきたいと存じます。  御指摘のとおり、食料自給率増大を図っていく上で、飼料作物の生産拡大を図っていくことは極めて重要なテーマでございます。これまで飼料作物作付面積、ピークだったのは平成二年でございますが、百四万六千ヘクタールほど作付をされております。その後、若干減少傾向で来ておりまして、平成十年は前年に比べて若干ふえておりますけれども、九十六万九千ヘクタール、こういう状況でございます。  この作付面積拡大をまずもって全力を挙げて進めていきたいというふうに思っているところでございまして、この三月にまとめた新たな酪農・乳業対策大綱におきましても、作付面積の具体的な数値目標、これは地域別の数値目標でありますとか、地域の実情に応じた増産のための効果的な推進方策を定めた飼料増産推進計画を策定してその生産拡大を図っていこうということで、現在、検討に着手したところでございます。  これは、それぞれの地域の大家畜の飼養頭数と土地利用の実態等、かつて裏作などでどういうふうに利用されていたか、それから現在、土地利用がどうなっているか、耕作放棄地がどうなっているか、こういった実態をできるだけその地域の地べたに即するような形で明らかにしていって増産計画を明確にしていきたい。それから、関係者の皆様方の意向なども踏まえた形で計画をつくり、それを運動論的に推進を図っていきたいというふうに考えているところでございます。  それから、飼料用稲につきましては、文字どおり先生は大変いろいろと御研究をなされておるところでございますので釈迦に説法ということでございますけれども、湿田において作付栽培が可能であって通常の稲作と栽培体系が同じであるというようなことでメリットがあるわけでございますが、現在の段階では生産コストが非常に高い。場合によったらコウリャン、トウモロコシに比べるとコスト面においては二十倍ぐらいになる、こういうような状況でそういった問題があるわけでございます。  したがいまして、その導入を図るため、まず多収量品種の収量安定化のための技術の開発などを推進することが重要でございまして、本年度から、まさにホールクロップサイレージ用の稲の品種を開発するということで、開発に着手したところでございます。試験研究機関の問題でございますので直接的には技術会議の事務局長が答えればいいのかもしれませんが、開発に着手したところでございまして、五年ないし七年後を目指した研究開発で、例えば品種開発ではトウモロコシ並みの乾物収量を目指した開発を行うというようなことで、先生指摘のようなことを目指した開発に着手した段階である、こういうことでございます。
  268. 阿曽田清

    阿曽田清君 畜産農家の方々で大規模な経営をしている方々はそういう取り組みをやろうという意欲を持っていらっしゃるんです。だから、そこは私は、まだ増収ができない段階であったにしても、減反の対象としてやっていくならば決して成り立たない話じゃないと。ですから、具体的に畜産農家と耕種農家を結びつける、そういうものに今から着手していかないと自給率は上がりませんよ。そのように御検討方をいただきたいと思います。  次に、所得補償制度につきまして、これも本会議で質問いたしましたが、大臣からは主要作物ごとに価格安定対策を講じていきながら将来にはという表現での御答弁がありました。これからというのはどれくらいのスタンスを考えておられるかということも一つこれありで、WTOというものの交渉に臨み、恐らくかなり日本に対して強い要求が出てくるだろう。そして、国内においては競争原理を導入してやっていこうということからするならば、安心して農業にいそしむことができるということを一方できちんと農家経営の中で確保してやるということで、農業者の方々も安心して農業に取り組むことができる。そういう制度を国が、強制じゃなくて、そういうものに参加して自分なりの経営を保っていこうという方々に対する道を開いてやる、二十一世紀に向かって日本農業をこれから背負っていこうとする方々のためにそういう制度を任意でもいいからスタートさせてやると。  実は、カナダにも行ってNISAを勉強してきました。二日間かかって勉強してきましたが、そこはカナダの生産の八割を受け持っておる五割の農家の方々が加入されている。その五割の方々はカナダの農業生産の八割を担っている方々です。その五割の方々がひとしく言われるのは、この制度は本当にいいということでした。  もちろん、兼業農家の方々が入っていらっしゃる割合は少ないと思いますが、五割のいわゆる専らの方々はこのNISAという制度に対して大変な喜びを感じておられたということからするならば、各作物ごとの対応ということで価格安定をしていく、価格政策から所得安定政策と、こういう作物ごとに移行する、そしてその後に、おっしゃるようなやり方をと言うけれども農家の方が自主的にそういう制度に参加できるような道として開いてやるということ、これからのWTO、そして競争原理を導入するもとで、麦までもいくわけですから、そういうものを用立てしてやっていくということも私は必要じゃないかなと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  269. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 三十条で、いわゆる需給で価格を決めていく、しかし経営安定対策でぎりぎりのところはきちっと支えますよということでございますが、もう既に何回も申し上げているように、作物別の経営安定対策ということで、米あるいはまた来年から麦、それから乳製品、大豆、砂糖等主な作物について個別にやっていくわけでございますが、結論から申し上げると、検討をしていますと、こういうことになるわけであります。  特に、NISAというのは私は余り詳しく存じませんが、収入保険ということで、やはりカナダの経営というのは、聞くところによると大体ほぼ規模も粒がそろっていて、そして同じような経営形態である。日本の場合には、いろんな形の経営形態があり、また自然条件等も影響するわけでございますから、そういう意味で、果たして収入保険に限らず、農家全体の所得補償的なものをどういうふうに導入できるのかできないのかということも含めて、やはり個別作物から入っていくというところから全体としてのそういうNISAのようなもの、あるいはまた別のものでも農家単位で何ができるのかできないのかということについて、先生は大変お詳しいわけでありますけれども、我々としてはとにかく個別のものをスタートさせて、その段階で状況を見て検討をさらに進めていくということが現時点での我々の考え方でございます。
  270. 阿曽田清

    阿曽田清君 今度の農業基本法をスタートさせて、そして何が変わったのかということからするならば、海外、国内ともに大きなさま変わりをしてきた。それを新しい農業基本法の中で堂々とそれに立ち向かってやっていくんだということからするならば、今までの価格政策、これはある意味では失敗だったところもあると思います、ある段階では。価格政策からそのまま今度は価格安定対策というか、こちらの方に切りかえただけでは、私は、やっぱり農家そのものの経済の安定というものに対しては、つながるようなんだけれども、物すごい下支えをしていくといえども、やはり落ち込んでいくときの落ち込み方はこれは社会経済情勢、こういう不況のもとでも下がるし、作物の悪かったときも下がるというようなこともあるから、その下がったときでも農家人たちがみずから基金を出して、それに国も県も出し合う形の中できちんと農家の方が最低生活するのに必要な保障といいますか、そういうものを一方で自分たちみずからがつくっていっているんだというようなことは、私は大きな一つの二十一世紀農業基本法をスタートさせる上において、国が農業者の方々が安心して農業にいそしめる道をきちんと確保してやる、それが私はこれから農業を継ごうとする人たちにとって農業に対する魅力を持つことになるんじゃなかろうかなというふうに思いますので、検討課題に一歩踏み込んで出されたら、大臣、全国の若手は、新規就農者は支持しますよ。私はそう思います。実際、自分なりにその制度をうちの若手に説明しますと、本当にそうやっていただくのが一番いいと。これは、価格が安かったというだけじゃなくて、おやじがけがに遭って収入が途絶えたときにも対応できるということになりますので、ぜひひとつお考えを願いたいというふうに思います。  関連しまして、担い手対策、第二十五条に載っておりますけれども、この担い手対策の中で、いわゆる日本の新規就農者に対するとらえ方とフランスのとらえ方はまるっきり違っているなと思いました。それもこの前、申し上げたところであります。  先々週でしたか、青森型新規就農奨励事業というのが載っておりました。これはまさにフランスの新規就農者対策とある程度似ているなと思ったんですが、新規就農者に三百万円、一定の条件をクリアした人に対して三百万円やろうと。そして、これは一たんは貸し付けるんだけれども、五年なら五年以上続ければ返さぬでよろしいという制度なんです。これは単なる三百万貸し付けるだけじゃなくて、いろんな住宅の移転や、さらには農地取得、営農生活指導、それぞれに対しても助成事業を考えておるというようなことでした。私は、これをむしろ国が提案して、そしてこれから農業を継ごうという方々に対しては一定のレベルをクリアする、いわゆる親がしているから息子が引き継いでやるという、これは優秀でなければ農業はできないんだよという意味の、ある一定の信用力もある、経営技術もある、そしていろんなリーダー性も持っている、そういうところから新しい自分の農業プランをつくり上げていくという、そういう夢をちゃんと提案できる人間であるならば、農業を新しく継いだ人たちに、継いだ時点で、よし、頑張れという奨励措置があってもよいのではなかろうか。そういう意味で、青森県がこれをスタートさせたということは、私は大変国に先駆けてやったと。今回の基本法は国と地方公共団体が相協力してと、こういうことになっているわけでありますが、地方の方が先に走ってしまっているというようなことで、喜ばしいことでありますけれども、私は、国がそういうリーダーシップをとった形の制度化をされていくことが本来の姿ではなかろうかなというふうに思います。  この取り組みに対して、新規就農者は六十歳まで認めようとかという話で、それに対しては安い金利で貸し出しますよということではなくて、私の意図とするところは、優秀な後継者に対してはいろんな施策を講じてあげましょう、そういうものが一緒になって農業基本法を新しくスタートするのが私は必要ではないかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  271. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 先生お話ございましたように、農業というのは気象とか動植物、生物等に関するいわゆる自然科学面だけでの知識ということではなくて、経営や経済面での高度な能力、こういうすぐれた農業技術を必要とする先端的な産業であるというふうに考えているわけでございます。  優秀な人材を確保することは大変大事なことだと思っております。そのため、先生も先ほどお触れになりましたけれども、技術習得等がまず一つ、そういう研修教育の実施や農地の取得等、あるいは就農のためにいろんな財政的な需要があるということで無利子の資金等のいろんな支援策を推進しているというのは御承知だと思います。  ただ、先生おっしゃったのは、フランスの事例を引かれて、私が承知をしております限りでは、一定の研修等をやった人たちだけにそういうことを、何といいますか、かなりハイレベルな人たちに限定的にいろんな支援策を打つということではなかろうかと。
  272. 阿曽田清

    阿曽田清君 逆です。研修するに足ると認められた人は研修を受ける。
  273. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 一定の研修を終わったような人たちとか、あるレベルになった人を条件にいろんな支援策を講ずるということではなかろうかと思いますが、就農そのものを制約することはできないというのはもうある意味で当然のことだと思います。  実際問題としまして、我が国の新しい就農の人たちの数を見てみますと、正直言って、このところ伸びてはきておりますけれども、まだまだ足らないということが一つございます。  それからもう一つは、いろんなほかの産業の経験を積まれた方も新規に就農して、ある意味では農村の活性化につなげてもらいたいというような意向もあるわけでございまして、仮に今みたいなかなりハイレベルなところで施策を講ずる、そこに限定的にやるということになりますと、まだ人数的になかなかそのレベルに達し切れないんじゃないかということが一つと、せっかく農業を担おうということで新しく参入してみようかという御意向をお持ちの方たちをむしろ追い返すことになるんじゃなかろうか、実際問題そういう心配がございます。  それから、財政的には、限られた財源の中でどういう対応をするかという場合に、現在のような形でかなりいろんな施策、無利子の資金、助成等々、それからそういう研修されるための施設の整備とか、いろんな形で対応するということが現時点では適当であろうということでこういう対応をしているということでございます。
  274. 阿曽田清

    阿曽田清君 今までの流れのままやっていくんだったら、今までの農業者の構造で進んでいくだけですよ。ですから、二十一世紀農業をするについては、今の認定農業者の決まり方というのは御存じのとおりですよ。そうじゃなくて、親方から自分が経営を引き継ぐときに、農業者年金のおやじがやめるから農業を継ぐというんじゃなくて、農業を自分が親方から本当に引き継ごうとしたときに、それなりのレベルを持った後継者に対しては、本当の新規就農者としての位置づけの中でいろんな助成をしてやる、支度金をつけてやる、その条件一つの経営プランが合格しないとだめですよと、それが認定農家でならなきゃならぬじゃないですか。  今までの認定農家はどうですか。金を借りたい、あるいはいろんな補助事業をしたい、それには認定農家の方でないとだめですよ、だから認定農家の手続をするんでしょう。それでは本当の将来のリーダーというのは育たない、つくられない。もっといろんな面で優秀な人がその地域を引っ張っていってくれる、その引っ張っていってくれる人を最初の段階からちゃんといろんな面で教育もするし資金も出してやるし近代化のためにはいろんな支援もする。この青森方式というのは私は本当にすばらしいと思いますよ、国が青森県に倣うべきだと、そんな思いもします。  新しい農業基本法をつくる時点から将来の一つの方策というものにめり張りをきかせるというか魂を入れるということもまた私は必要だというふうに思いましたので、いい機会だからこういうものをひとつこれからの、基本法基本法でこれにつながる基本的な計画の中に織り込んでいただければというふうに願うわけですが、大臣、いかがでしょうか、決意は。
  275. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 申しわけありませんが、その青森方式という記事を読んでいないので何とも申し上げられませんが、とにかく優秀な人が新規に就農してくるということでなければまた農業としてもやっていけないわけでありまして、そういう人が入ってこられるような体制をできるだけ支援できるように、これからもまたいろいろと知恵を絞っていかなければいけないというふうに思っています。
  276. 阿曽田清

    阿曽田清君 しっかり頼みます。  最後に、農業者のいわゆる生活保障についてでありますが、五条と三十四条の中に「生活環境の整備その他の福祉の向上」と、こういうふうになっているんですが、「その他の福祉の向上」というのはどういうものを指すんですか、官房長からお聞かせください。
  277. 高木賢

    政府委員高木賢君) まさに、一般的な福祉の向上というものが皆入るわけでございまして、農村でいえば、例えば介護の問題とかそういったものとか、生活の住みやすさのレベルを上げるとか、そういったことがあると思います。
  278. 阿曽田清

    阿曽田清君 だと思いましたが、そういうことでなくて、農業者の労災保険の問題も中途半端です。この問題について、法案の中にこの生活保障が抜けている、だから福祉向上に入っているのかなと、広域に解釈して。  どうなんですか、入っているんですか、入っていないんですか。入っていなければ、次の段階でいわゆる労災保険制度の充実というふうな形でもひとつ取り組みを考えてもらえませんか。
  279. 高木賢

    政府委員高木賢君) 結びが「必要な施策」ということでありますから、それは現にそういう労災制度の対象にも部分的といえどもなっておりますから、その点は入っているということでございます。
  280. 阿曽田清

    阿曽田清君 ぜひ中途半端な労災保険制度の充実を図っていただくよう要望いたしまして、ちょうど時間になりましたので終わります。
  281. 野間赳

    委員長野間赳君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時二十分散会