運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-03-30 第145回国会 参議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月三十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         野間  赳君     理 事                 岩永 浩美君                 三浦 一水君                 和田 洋子君                 須藤美也子君                 村沢  牧君     委 員                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 佐藤 昭郎君                 中川 義雄君                 長峯  基君                 森下 博之君                 小川 敏夫君                 久保  亘君                 郡司  彰君                 風間  昶君                 木庭健太郎君                 大沢 辰美君                 谷本  巍君                 阿曽田 清君                 石井 一二君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    政府委員        外務大臣官房審        議官       小松 一郎君        外務省経済局長  大島正太郎君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省畜産        局長       本田 浩次君        食糧庁長官    堤  英隆君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 威男君     ─────────────   本日の会議に付した案件主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     ─────────────
  2. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 岩永浩美

    岩永浩美君 おはようございます。自民党の岩永浩美です。  食糧法改正案について、農水委員会における質疑もきょうが大詰めになりました。二月二日に国会に提出されたのでありますが、昨年の十二月、三者合意に基づいて米について関税化への切りかえ決定に伴うものでありますが、これは三度に及ぶ衆参両院国会決議の趣旨とは異なるものであって、WTOに対する大きな政策であることはもう御承知のとおりであります。  今までそれぞれ同僚議員からいろいろ議論が出されておりますように、生産現場、農家の方々を初め広く国民皆さんからすれば、今回の政策変更WTOルールに沿って行うことだと政府幾ら説明をされても、拙速であるとのそしりは残念ながら免れないと私自身も思っています。  今国会には、また別に、昭和三十六年に制定された現行農業基本法にかわる新たな基本法として食料農業農村基本法案が提案をされますが、この法案準備作業が優先をされて、今回の政策変更についての説明が必ずしも徹底されなかったことも大きな原因の一つだと私は思います。過日、同僚中川議員からも話がありましたが、与党の一員として、今回の手続なり経過を通して国民皆さん方理解が十分得られていないのなら私は大変残念でなりません。  そこで、世紀末というこの時期において、米の関税化への切りかえ、新基本法の制定、我が国農業、農政が大きな転換期を迎えていることについて私自身もひしひしとその感を強くいたしております。そこで、新たな時代を見据えて、今回提案されている食糧法改正案について幾つか大臣並びに関係者質疑をしたいと思います。  まず、三月二十一日までに四カ国から異議申し立てがありました。既に、このことについては当委員会でそれぞれの立場議論がなされました。  ところで、政府は、EU異議の内容、経緯を把握するために、急遽、農林省熊澤農林水産審議官をブリュッセルに派遣されました。そして、二十五、二十六日の両日、EU事務局の幹部と会談をされたと聞いております。また、ジュネーブではWTO農業委員会も開かれたと聞いておりますが、そこでまずこうした一連の会談を通して会議の報告とその結果について御説明をお願いしたいと思います。  また、週も今週にかわりましたので、他の三カ国の様子についても確認をしておきたいと思いますので、御説明をいただきたいと思います。
  4. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 御指摘の四カ国に対しましては、今回の我が国関税措置への切りかえが農業協定の規定に忠実に従ったものであるということを改めて御説明しまして、申し立てが撤回されるよう努力していくことにいたしております。  まず、豪州に対しましては、既に二十一日、二十二日に与謝野通産大臣からフィッシャー副首相兼貿易大臣に対しまして、豪州異議申し立てに対する遺憾の意をお伝えいただきまして、今後、両国の農業担当専門家同士で話し合いを続けていこうということになっております。  また、EUに対しましては、ただいまお話がございましたけれども、去る二十四日に中川農林水産大臣から在京のヨーゲンセン駐日大使に対しましてEU留保について再考を要請していただきますとともに、二十五、二十六日に熊澤農林水産審議官EU農業総局ロバーツ次長対外総局ベーゼラー総局長会談いたしまして、我が国農業協定に忠実に従って関税相当量を算定していることを説明しました上で、EUが本件につきまして早急に再考をして留保を撤回していただくよう要請したところでございます。  これに対しましてEU側は、日・EUの良好な関係を維持することは大変重要である、また次期WTO交渉に向けて日本との協力については大変重視をしているといたしました上で、米の関税措置への切りかえ自体異論はない、また四月一日からの実施についても異議はないけれども関税相当量の計算の手法について技術的な留保を行ったものであるというふうにいたしまして、技術的な観点からの検討を継続したいという意向が表明されているところでございます。この継続検討につきましては、事務的に早急に対応すべく現在、EU側と日程の調整を行っているところでございます。  また、ジュネーブにおきましては、林国際部長が出張しておったわけでございますが、EU豪州を含めウルグアイアルゼンチンに対しましても、これらの諸国問題意識を聴取しました上で、我が国立場について改めて説明を行ったところでございまして、現在、各国において我が国説明について検討していると、そういった状況でございます。
  5. 岩永浩美

    岩永浩美君 既に会議に行かれて、技術的な問題だということだけでああいう異議申し立てというのがなされるというのは私ども理解ができないんですけれども、じゃ関税化に踏み込む決定をされた後、こういう国々に対して農林省熊澤審議官を中心としてそれぞれの国にどういう方々を派遣されて今まで交渉されてきたんですか。異議申し立てがこういう形でなされるということ自体、ただ事務的なことだけで異議申し立てがなされるということはどうも我々にとっては理解ができませんけれども、どういう説明を今までそれぞれの国になされてきたのか。
  6. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 昨年十二月のWTO事務局への通報以来、私どもとしましては関係諸国関心を持っている諸国に対しましてさまざまなレベル、さまざまな機会をとらえて我が国考え方について説明を十分やってきたつもりでございます。  ただ、異議申し立てというのは、加盟国の権利としてあらゆる点について申し立てをすることは可能であるということでございまして、現にEUなどにおきましても、先ほども申し上げましたように、関税化自体には異議がない、四月一日から実施することにも特段異議はない、ただ技術的な観点から疑問があるので留保をして説明をさらに受けたい、そういうスタンスでございまして、技術的な点についてそういう疑問があれば異議なりあるいは留保なりを申し立てるというのが、いわばEUなんかにおきましても極めて通常あり得る話であると、そういう受けとめ方のようでございます。
  7. 岩永浩美

    岩永浩美君 ただ技術的なことだけで異議申し立てをなされたという見解ですか。もっと奥にはそれぞれ四カ国の地域異議申し立て背景が少しあるのではないのかなと。  例えば、アルゼンチンとかそういうところは、決して私どもにとって輸入国ではない。どこかの国の代理異議申し立てをそこの場でしているのではないかと、うがった見方かもしれないけれども。直接アメリカが異議申し立てをしないでオーストラリアがする、あるいはアルゼンチンがするという、ケアンズ・グループ、EUグループそれぞれの代理戦争みたいな形でそれぞれの国が異議申し立てをしたといううがった見方をしなくてもいいんですか。本当にそれぞれの国が事の経緯について技術的な十分な理解が得られないで異議申し立てをしたというふうに理解していいんですか。
  8. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生の御指摘は、推測としてではありますけれども、そういうふうに考えざるを得ないというような御指摘については理解のできるところであります。  結論的に申し上げますならば、我が国が今回関税化に踏み切ったことも国益に照らして最善選択だという前提で、WTO協定ルールにのっとって方針を転換したわけでございます。各国ともやはり国益というものがそれぞれあるわけでございますから、そういう意味で、技術的な問題という言い方をしておりますけれども、要は、もっと低く二次関税を張れというようなことをきっとオーストラリアなり、ごく少数、ウルグアイからも入ってきている場合があるようでありますけれども、そういう国々については、少しでも関税相当量を下げて入りやすくしてもらいたいという要望は当然向こうの方は考えるであろうと思います。  国益として日本に対するもっと広い意味での考え方というものも当然あるんだろうと思いますが、我々がはっきりこの場でお答えできることとしては、向こう側から言ってきていることは技術的な問題についての検討が必要である、あるいはまた技術的なことについて問題ありということで異議申し立てたということでございます。しかし、お互い国益判断であり、それに対する反応であるという先生の広い意味での御指摘については、私も政治家としてそういう対応があるのかないのかについて、全くないというふうに否定するだけの材料はございませんけれども、我々の知り得ている情報の限りでは、向こうから言ってきていることについてはあくまでも技術的な問題が理由であるということでございます。
  9. 岩永浩美

    岩永浩美君 私自身は、そういう技術的な問題だけで異議申し立てがなされたということだと、それはそれとして了としたいけれども、そのほかに深い何かがあるとすれば大変将来に対する不安を抱かざるを得ない。そういうことが危惧にならないように、ぜひ今回の問題についてははっきりした形で決着をつけておいてほしいと私は思います。  次に、米の関税化への切りかえについての説明ですけれども、過日、東洋大学の服部先生参考人としてこの委員会に御出席をいただきました。服部先生は、九九年度から関税化に移行するという決断は高く評価すると述べられました。  今回、米の関税化に切りかえることについて、やっぱり大臣の言葉として国民に、こういう形ではっきりすることが、将来のために、食料自給率を高め、そして米の生産を高めていくということについて不安はないんだという説明を十分にされなければいけなかったのではないのかなと。三者合意の中でこのことを出発したといっても、過日お見えになった参考人の方で、現実的に現場で働いておられる皆さん方の中で、そのことについては三者合意が仮になされたとしても生産現場は大変そのことに不満だという御意見、もちろんそれぞれの御意見があることは承知しても、十分理解され得ていない部分があるのではないのかなと私は思っています。  そういう意味で、今回関税化変更していく過程の中で国民理解は十分に得られたという判断に今なお大臣は立っておられるのか、もう得られたんだという立場にお立ちになっているのか、説明はまだ足りないけれども、今後努力してやっていくというふうなお考えが今お気持ちとしておありになるのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  10. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の決定につきましては、十二月十七日でしたか、私自身記者会見で発表をさせていただいたところでありますけれども、それ以来限られた時間であったということ、それから最終的には最善のとり得べき選択であるという判断のもとでこういう決定をしたんだということを、私なりにあらゆる場、消費者団体皆さんの場も含めて御説明を申し上げ、また当委員会を初め国会の場でもお答えを申し上げ、また最低週二回ある記者会見の場でも申し上げておるわけでございますけれども岩永先生を初め、現時点におきましてもそれぞれの地域あるいは全国を代表する当委員会先生方からそういう御質問をいまだにいただくということは、まだまだ国民全体に今回の選択最善のものであるという御理解を完全にはいただいていないというふうに、御質問をいただいている以上、判断せざるを得ません。  御理解を随分といただいておると思っておりますけれども、まだまだ完全ではないというふうに思わざるを得ないと受けとめさせていただきますので、引き続き私を初め政府全体といたしまして、今回の関税化のメリットといいましょうか、国益にかなう選択であるということについての御理解をいただくべくこれからも努力をしてまいりたいと考えております。
  11. 岩永浩美

    岩永浩美君 やっぱり大きな国の政策変更に伴うものというのは大臣の口から直接おっしゃっていただくこと、これが一番わかりやすいことだと思う。また、国民への広報とか情報提供というものは、ただ単に大臣記者会見を通してのみそのことがなされてもそれが全国隅々まで行き渡るというのは大変難しいことであるかもしれない。あらゆる機会を通して、私は情報提供というものはなされていくべきだと思います。  私自身も、今回、食糧法審議がこの委員会に付託されてから後、毎日、部屋に帰ると委員あてファクスが流れてきていて、慎重な審議を促すようにというそれぞれファクスが来ています。それは、仮に反対する人のみではなく賛成する人の中にも、こういう問題についてはどうかという御意見等を聞くにつけ、これだけ政策を大きく変更していく過程の中には広く啓蒙していく時間的なものも少しはなければいけないことを正直、痛感いたしております。  ただ、農林当局皆さん方がそれだけやっておられるのと同じような思い外務省は対他国との交渉をやっておられるかどうかということについて非常に私は疑問に思うことがあります。もちろん、外交交渉のことについては、憲法において外交関係を処理することは内閣の責任においてやるということ、これは規定されていますから、そのことについて私自身異論を挟む気持ちはありません。現在、情報公開法が参議院で審議中でありますが、政府の一層積極的な情報公開もまた一方において求められていきます。こういう外交案件についても、農林水産物に関する貿易交渉、ただ単にほかの問題でなくて、直接日常の生活の中で深いかかわりのある農林水産物輸入等々については国民関心が非常に深いです。  そういう意味で、農林当局外務当局一体となった経過説明等々が十分になされていると、こういう不安は増幅しないでよかったのではないのかなと。ややもすると、外交交渉一つのプロセスで必ずしも国民に対する情報提供というものは今までなされていない嫌いが多分にある。そういう点について、外交交渉過程ではそういうことを言うと、対相手国の問題があるからそれはしゃべれないんだというようなお気持ち公開はされないのか、政府の御見解をお聞きしたいと思います。
  12. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  外務省といたしましても、WTO交渉農業交渉政府一体となって進めてきておりまして、当然、農水省と常に緊密に連携をとりながら行ってきております。したがって、今回の関税措置への切りかえの方針についても一体となって作業をさせていただいたところでございます。  今後の交渉について国民との関係でどうやって説明をしていくかということでございますけれども、一般的ではございますけれども、これからWTO本格交渉が始まります。外務省としても、例えばいろいろな団体国内にございます。そういう方々に対して、俗にNGOと申しますけれども、そういった方々にも集まっていただいて基本的な方針説明させていただいております。それから、最近はインターネットの時代でございますので、ホームページをつくりまして、そこでいろんな情報提供しておりますし、質問も受けるようにしてございます。  こういった形で、交渉作業過程においても、政府として、外務省としてどういった姿勢で臨んでいるか、国民方々に御理解を得るよう努力させていただいております。
  13. 岩永浩美

    岩永浩美君 その過程の中における情報公開、そのことを示していくことによって安心感を与えていかなければいけないと思いますから、外務省交渉というのは、まずうまく事を運んでいくことを先に考えて、具体的なことについて、どちらかというと情報提供されない部分があるのではないかという心配を時々受けることがありますので、そのことはぜひお願いしておきたいと思います。  今回提案されている食糧法改正案がこの委員会の中で採決をいただくと、このことについての切りかえの作業そのものについては事務的に進んでいく、このことは私も理解いたします。  ただ、今まで米の輸入化措置という衆参両院による三回の国会決議、今回はそのことに対する大きな政策変更、そういうことでありますから、国内法対応だけではなくて、国会承認というものはやっぱり求めるべきではないのか、そういう手続をちゃんとしなくていいのかどうか。このことについては、一応終結をしたときには国会承認を得るということになるのでしょうか。
  14. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) 譲許表修正についてのお尋ねと承知いたしますので、お答え申し上げます。  まず、そもそも論になりますけれども農業協定において特例措置の終了ができるということが定められておりまして、その場合には農業協定に従って国内措置国内法令改正を行うとともに、譲許表修正をするための手続をとる必要があるということでございます。  したがって、先ほど来御説明がございますように、政府としては、一部の国から出ております異議が撤回されて譲許表修正というのが確定して、WTO事務局長から確認書というものが発出されることをできるだけ早く行うように期待しておりまして、それが行われれば、つまり確認書日本政府に対して発出されれば、それを速やかに国会に提出して御承認を得たいと考えております。  ただ、累次申し上げておりますとおり、四月一日までに譲許表修正手続が終了しない場合であっても、関税化というのは農業協定上の基本原則に従って行っていますので、国内法令による関税措置への切りかえというのは実施できるということでございます。
  15. 岩永浩美

    岩永浩美君 事務的には四月一日までにできなければだめだと、そういうことをお尋ねしているのではなくて、この法案そのものについてここで可決をすればそれは事務手続はできると思う。ただ、WTOからそういう確認書が来たときには、国会承認というのは必ず受けるということですね。
  16. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) そうでございます。確認書をお諮りして御承認をいただくということでございます。
  17. 岩永浩美

    岩永浩美君 そこで、大臣にお伺いをしておきたいと思います。  大臣は、今回それぞれの議員各位から、今の関税化に切りかえていく上において今後、関税率がだんだん引き下げられてくるのではないかというそれぞれの質問に対して、交渉事だからそのときの状況力関係等々によってというような御答弁をされています。その力関係とか状況の変化というのはどういうことを指しておられるのか。私自身が一番危惧するのは、農産物輸入工業生産物輸出と同列に扱われてしまって、貿易不均衡が出てきたときには米の輸入産品についても関税率引き下げの要求が強く出てきて、農産物がその犠牲になるのではないかという心配を多くの皆さん方がしている背景にあると思うんです。  だから、その力関係というのはどこを指してお話をしておられるのか、そこを大臣にお聞きしたいと思います。
  18. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 次期交渉に当たりましては、これから国会を初めいろいろな場で、我が国農業生産を守り、そして国民食料に対する安定需給のために、さらには農業が果たすいろいろな重要な国家的あるいは地球的役割を確保するためにどういうふうに臨んでいったらいいのかということにつきましては御議論をいただき、そして国民合意のもとで、関係国との連携もとりながら交渉に臨んでいくということで、まさにその作業にこれから取りかかっていくわけでございますが、先生の御指摘のように、あくまでもこれは交渉事でありますから、相手のあることである。  前回WTO交渉におきまして、我が国が最終的にああいう選択をとらざるを得なかったというような七年間の経過等も我々は経験として持っておるわけでございますので、次期交渉に際しましては、まず国民的なコンセンサスが得られること、そしてそれが諸外国、特に一部輸出国の極めてアンバランスな現在の貿易ルールというものと我々としては多分対立した形の交渉になっていくんだろうというふうに思います。我が国主張EUでも、あるいはまたいろいろな国際会議の場でも取り入れられている部分も多いわけでございますので、そのような経験も踏まえまして、次期交渉に向けて全体的に我が国立場というものが各国においても取り入れられ、そして我が国農業生産農業地域、そして消費者に対する安定供給という最大の目標が実現できるように頑張っていくという意味で、これからの交渉ですから、相手のあることでありますから、しかも対処方針がまだ確定しておりませんけれども、基本的な現時点におけるスタンスとしては、そういう決意でこれから国内作業あるいはまた対外的な作業、そして次期交渉に臨んでいきたいということで、いろいろな要素の中で我が国主張を最大限実現できるようにしたいという意味で、先生が御引用なさった私の発言というものを御理解いただきたいと思います。
  19. 岩永浩美

    岩永浩美君 大臣スタンスについては、私どもはいつもお目にかかりお話をさせていただいておるからよくわかります。ただ、今までの外交交渉や通商問題において必ず議論になってくるのは、担当の省庁と外務省との意識のずれが多分に出てくる。外交当局は特に良好な外交関係まずありきで、国内における問題の重要性とか現場切実感みたいなものが本当に伝わって交渉に当たっておられるのかということを、私自身時々じだんだを踏むような思いをすることがあります。  巷間よく言われるように、後ろから銃で撃つことのないように、やっぱり農林水産省ともよく連絡をとって交渉に当たっていただきたい。そうでなかったら国民理解を得ることができないので、このことについては外務省に強く確認をしておきたいと思います。  時間がありませんので、これで終わります。
  20. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党の郡司でございます。  私どもは、今、同僚委員の方からもありましたように、今回ちょっと拙速であったのではないか、それから今後の関税化の引き下げに対する担保というものがとられていないということで、この法案に対しては反対というふうな立場でいるわけでありますけれども、これまでのやりとりの中で若干理解ができていないところがありますので、その辺のところについてまず質問をしたいと思います。  大臣の答弁をこれまで聞いておりますと、WTOの正常なルールというのは関税化ですよ、今回は日本という国が正常な方に戻したんだ、しかも戻すときの譲許表の作成についても与えられた考え方の中できちんとなされている、これは当然、異議申し立てるというふうな筋のものではないということ、さらには二〇〇〇年以降の次期交渉に当たってまず少なくとも国論を統一するということが一番大事なことなので、そういうふうなことをもって今回、四月一日から移行する、そういうふうな考え方でよろしゅうございますか。
  21. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の四月一日からの関税化につきましては、三年余りのミニマムアクセス制度のもとでの、一部、外国からお米が入ってきている状況の中での国内生産あるいは需給状況等と消費者ニーズ等々がある程度把握されてデータとして持つことができるようになった。そういう中で今後もこの特例措置を継続するということは、一部、加工米の需要もありますし、また援助に回る米もありますけれども、備蓄に随分回らざるを得ない、備蓄というか在庫の方に回らざるを得ない外国米があるという状況でございます。今後、さらに〇・八%ずつふやしていくということは、我が国全体の財政的な面を初めとするいろいろな形の中で決してプラスではないということで、今回、関税化措置をとることによって、国内生産者に対して、関税相当量さえ払えばどっと入ってくるということがないという我々の判断を前提にいたしまして、しかも関税化することによってそのふえ方が半分で済むということのプラス面が一つであります。これは現時点でのメリットであります。  先生指摘のように、今後の次期交渉に向かいましても、あくまでも例外なき関税化という中の特例措置我が国が今までとってきた。そして、次期交渉は改革の継続という大前提が一方であるわけでありますから、それは全体としてはいわゆる自由化というものの推進ということになるのでありましょうけれども、我々としては安易な輸出国の要求を受け入れるということは断じて認めることができないわけでございます。生産者を守り、国内需給を安定させ、消費者のニーズにこたえていくという、さらには非貿易的な側面等々をも踏まえまして、次期交渉に向けて我が国スタンスをより強い立場に置くという観点からも、特例のポジションから原則のポジションに移ることがメリットであるということでございまして、順序は逆になったかもしれませんけれども先生の御指摘と同じでございます。
  22. 郡司彰

    ○郡司彰君 そこで、ただいまも岩永委員の方からもあったんですけれども外務省の方にちょっとお尋ねいたします。  ルーズリーフ方式総合譲許表という中の七のところにいわゆる確認書が届くまでの手続が書いてありまして、いろいろ書いてありますけれども、最終的に可能であれば三カ月以内に、遅くとも六カ月以内に、その他の改定の場合には事情の許す限り早急にというふうなことで、日本の場合には三カ月以内に届け出をしたと、十二月二十一日、三月二十一日というところで。三カ国・一地域異議の、あるいは承認留保するというようなことがございました。  この異議申し立てというのは予測されたことなんでしょうか。初めから織り込み済みのことだったんでしょうか。
  23. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  今回の関税化、具体的には関税措置への切りかえというのは、何度も申し上げておりますとおり、農業協定に基づいて行っておりますので、日本として農業協定という条約の枠内で根拠のあることをしておりましたので、それはほかの国にも当然理解してもらえるというふうに思っておりました。  他方で、異議申し立てというのは権利でございますので、すべて完全に排除されることはもちろん考えられなかったわけでございますけれども、基本的には十分理解され得るものと思っておりましたし、今でもそう思っております。
  24. 郡司彰

    ○郡司彰君 この前の大臣の答弁の中で、甘いか、辛いか、しょっぱいかというふうなことがございましたけれども、今の話を聞いていましても、やはりちょっと甘かったんじゃないか。先ほどの委員の指摘にもありましたけれども、ここに至る間にそのようなことが起こらないような十分な説明なりというものがきちんとされてこなかったのかなという疑念をどうしてもぬぐい去ることができないわけであります。  今の流れからいきますと、この後は、異議申し立てから六十日以内に何事もなければそこでということになるんだと思いますけれども、五月十八日までに調整といいますか、異議申し立て留保をしているところとの話し合いはつくという見通しでしょうか。
  25. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) 三カ月と申しますのは、私ども譲許表修正WTO事務局を通じて各国に通報してから、各国がそれに対して異議申し立てる期間でございます。  異議申し立てができてから私どもとしては可及的速やかに説明を改めて繰り返しして撤回を図るということでございますけれども、それについていつまでということはございません。できるだけ速やかにということで私ども作業をさせていただく、そういうつもりでございます。
  26. 郡司彰

    ○郡司彰君 これは、異議申し立て後の流れを見ると、六十日以内に解決できないときにはパネル設置というようなことになり、パネルの報告、それから上級の方に行くと最長で十八カ月間かかるというふうなことが予測されるわけでありますけれども、実際には十八カ月間の期間がありますと次期交渉に入ってしまうわけですね。  当然、そういうふうなことで、次期交渉に入るということが想定されるような時期まで相手国もやらないだろうと、そういうふうな見通しなんでしょうか。
  27. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  ちょっと技術的なことで恐縮でございますけれどもWTOには確かにWTO上の権利義務関係に関して、一つの国が相手国に対して紛争状態になって、それを解決するための手続というのがございます。紛争解決手続というのが定められております。そこには、今おっしゃったように一定の期間、手続が決まっておりまして、申し立てを行ってから何カ月以内にどうするこうすると書いてございます。  ただ、今回の譲許表修正にかかわる異議申し立ては紛争処理手続申し立てとは違っておりますので、手続的には今回の譲許表修正異議申し立てというのは特にいつまでに撤回しなければならないということはございませんので、私どもとしてはそもそも異議の方に根拠が十分ないと思っておりますので、撤回をできるだけ速やかに図っていただくということを行うつもりでございます。  それと、紛争処理手続、そこにはいろいろな手続、期間等が定められておりますけれども、それとは異なった手続でございます。
  28. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、話がありましたけれども国内ではそういうような体制がきちんとできましたよ、しかし国際的には確認書が来ないと認知をされていない、そういうふうに一般的に言われるかと思うんですけれども、実際問題として、今までの話のやりとりを聞いていて、外務省としては確認書というのが予測としていつごろ来るような流れになるというふうに考えていますか。
  29. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  繰り返しになりますけれども異議申し立てを行っている国及び地域、これに対して説明をして、先方の理解を得て、異議申し立ての撤回を図るということで、できるだけ速やかに最大限の努力をさせていただくということでございます。
  30. 郡司彰

    ○郡司彰君 そのやりとりはこれまでも何回も聞いていたわけでありまして、いずれにしましても、国際的に一応認知をされるような状態になるのに、どの程度の期間で、どういうふうなことをやっていくという戦略があって、いろいろな国とお話し合いをするんだと思うんですね。それが最終的にはこの辺までにきちんとしますよ、そして国会承認がもしある場合にはこのぐらいのときまでにはそういうことをやりますよ、そしてその残りの期間できちんと次期交渉に向けた国内の世論の統一を行っていくんですよ、そういう戦略というものがあってしかるべきだと思うんですが、その辺については一切ないんですか。
  31. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) 基本的には、今回の関税措置への切りかえというのは農業協定に基づいて行っておりますものですから、当然、私どもの根拠のある措置ということで諸外国の理解を得るということでございます。  今回の譲許表修正につきましても、大方の国は何ら異議申し立てていない、先ほどの御答弁にございましたように、EUの方も、技術的な理由はともかくとして、基本的には了解しているわけでございますので、引き続きEUも含め、異議申し立てのあった国々に対して可及的速やかに異議の撤回が行われるよう説明をする、そういうことでございます。  そして、確認書が得られた段階で、先ほど申し上げましたとおり、国会にお諮りし御承認を得るということで臨んでおります。
  32. 郡司彰

    ○郡司彰君 今のことについて農水省としてはどのような戦略を立てて、どの程度の時期に確認書が届くようになるというふうにお考えでしょうか。
  33. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 関係四カ国でございますが、これに事務的な説明をした上で了解をしていただいて初めて撤回されるということになるわけでございますので、相手国との話し合い次第という面はあるわけでございます。  ただ、基本的には、先ほども申し上げましたように、四カ国とも関税化自体について特に異論はない、技術的な面でなお検討を要する事項、あるいは解明を要する事項があるというスタンスでございますので、私どもとしては誠意を持って説明すれば理解をいただけるものと考えております。
  34. 郡司彰

    ○郡司彰君 最後に、外務省に事務的なことをちょっとお尋ねしますが、確認書というのは日本に届くわけですね、事務局から。各国はそれをどのようにして知る形になるんですか。
  35. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) 末尾のところがよく聞き取れませんで、申しわけございません。
  36. 郡司彰

    ○郡司彰君 確認書が届きますね、日本に。WTOと世界加盟各国関係でいうと、ほかの加盟国はどのような形で知るんですか。日本から通知するんですか。
  37. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) 確認書は、諸外国からの異議がなかったことをWTO事務局確認したところで出てまいります。そして、それを日本が受けて国内手続をして、その旨をWTOの方にまた返します。つまり、国会承認を得たという段階で返します。それがWTOの事務局を通じて各国に通報されます。したがって、そういった形で加盟各国手続が完了したことを承知することとなります。
  38. 郡司彰

    ○郡司彰君 やりとりをしていてもよく腑に落ちないような形なんですが、ちょっと時間の関係もありまして、次に入らせていただきます。  MA米の関係ですが、一般とSBSというふうな形になっていて、全体が食糧庁の国家貿易ということになるわけでありますけれども、この中のSBS米の関係ですけれども、実績から見ると一万トンが二万二千トン、五万五千トン、昨年実績で十二万トンぐらいというふうに倍々で増加をしておりますけれども、この実績がふえてきた原因といいますか、どのような形の中身としてふえてきたのか。今後、次年度以降、四月一日以降の年度でどのぐらいを見込んでいらっしゃるのか、ちょっとお願いします。
  39. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) SBS米につきましては、御案内のように、さまざまな外国産米がミニマムアクセス米として入ってくるという状況の中で、どういう種類のものがどういうニーズがあってどういう価格で入ってくるかということについての指標を得る必要があるだろうということで、今おっしゃいましたように、国家貿易のミニマムアクセス米の中の一部としてSBSという形で導入をいたしております。  これにつきましては、今おっしゃいましたように、数字で増加してきておりますが、基本的にはやはり全体のミニマムアクセス米がふえてきたということの中で、その中でSBSについてもある程度ふえてきたという面があると思います。ただ、このSBSにつきましても、その用途を見ますというと、破砕米は大半が加工用という形になっております。それから、ウルチ米は大半がいわゆる業務用ということでございまして、国内産米との競合が、低価格米との関係でございますけれども、基本的には低価格米需要に対応して運用するということでございますので、極力、国内産米との直接の影響がない形で運用をされてきているということでございます。  今後につきましては、十一年度のお尋ねがございましたけれども、今おっしゃいました形で十年度までに十二万トンまでふえてまいりましたけれども、こういった関税措置への切りかえ等々の状況がございますので、十一年度につきましては、今年度内に食糧法の規定に基づきまして基本計画をつくることになっておりますが、その中では大体十年度と同様の回数、一回ごとの回数も合わせまして大体同様の形で運用したいということで現在、検討しているところでございます。
  40. 郡司彰

    ○郡司彰君 十二万トンまでふえてきて、こちら側からする目的の数量ぐらいまでになったというふうなことなんだろうと思いますけれども、いろいろ心配をしている向きもありまして、このSBS米というものが大分脅威になってくる可能性もあるのではないかというふうな論調もあるわけであります。  そこで、ちょっとお尋ねしたいんですが、私、不勉強でよくわかりませんが、全体のMA米の数量が大体決まってまいりますね。そのうちから当初分として、SBSが年間で大体このぐらい、今年度はこのぐらい基本計画の中でやりますよと、残りの分がいわゆる一般の方にという考え方でよろしいんですか。
  41. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 全体的には、全体のミニマムアクセスの数量が決まります。その中でどういう用途のもの、どういう価格のものがあるのかという意味での指標を得るということでございますので、SBSについては大体このぐらいということでその必要量を決めて、残りにつきましても、それぞれの用途ももちろんあるわけでございますけれども、そういうことを総合的に勘案してそれぞれ決めていくということであろうと思います。
  42. 郡司彰

    ○郡司彰君 一方の一般輸入の方が数量的にはかなり多くなってくるわけでありますけれども、これもまた報道ですから真偽のほどは定かではありませんけれども、アメリカが今回の異議申し立てをしない理由には、どうもこのMA米で相当数量を確保している、昨九年度の実績でいうと五〇%、その前が四七、八%ということでほぼ五〇%ぐらいをアメリカが実績として持っている。こういうふうなところから、今回とりあえず異議申し立てをしなくても、このMA米で一定数量をきちんと確保することの方がアメリカの戦略にもかなうんだというふうなコメントが出ておりましたけれども、この数量割り当てというのは、毎年毎年、原則的には変わるんだと思いますが、結果としてこのような数字になってきたというのは、やはりいろいろな意味での配慮が各国に対してあっての数字なのかというふうな意見がありますけれども、どうでしょうか。
  43. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) ミニマムアクセス米につきましては、基本的には国内需給動向を踏まえまして、通年安定的な形の売却操作ができますような形での平均的な輸入という形をしております。国別の具体的な輸入数量につきましては、これまでのミニマムアクセス米の売却状況でありますとか、SBS輸入の結果でありますとか、輸出国生産状況、それから輸出国貿易輸出能力といいますか、そういうことを総合的に勘案しながら決定をしてきております。  したがいまして、今おっしゃいましたように、アメリカの輸入数量が幾らかということについては結果として出るということでございまして、あらかじめどういうものでなきゃならないとか、シェアがあるとか、そういうものでは全くないというふうに考えております。  現実にもかなりのそれぞれ国別の変動というのは見られるわけでございまして、中国等につきましてはふえておりますし、それからオーストラリア等については下がってきております。それぞれ先ほど申し上げましたような貿易の事情、生産の事情、それから我が国輸入の必要性等々の中で総合的に判断して輸入をしてきている、こういうことでございます。
  44. 郡司彰

    ○郡司彰君 また、ちょっと単純な質問をさせていただきますが、MA米の輸入国の中で中国が入っておりますね。このMA米というのはWTO関係で、譲許というのは国際約束だと、私からすると、大体この代償かなというふうな意味でとらえているんですけれども、その中にWTOに加盟していない中国からの輸入というのがありますけれども、これはどのような、論拠ではなくて実際問題として入ってきているんですが、これはどういうふうにとらえればよろしいんでしょうか。
  45. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 私ども、ミニマムアクセス米を入れます際に、WTOに加盟しているかどうかという考え方よりは、それぞれの需要に応じた形での対応ということでやっておりまして、特に問題はないのではないかと思います。
  46. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) もちろん、中国はWTOには加盟しておりませんけれども我が国WTOルールに基づいてやっておるわけであります。したがいまして、米を輸入したい、あるいはSBSのように輸入したい、あるいは輸出したい、全体で日本に出したいという国があれば、今、長官が申し上げたような判断のもとでやっていくということでございます。  なお、賠償的なという先生のお言葉がありましたが、三から五が原則であって、それに対しての四から八という意味であれば、特別のプラスが乗っかっているということは先生御承知のとおりだと思っております。
  47. 郡司彰

    ○郡司彰君 さらに、国論を統一して次期交渉に当たらなければならないというような考え方が当然出てきていると思うんですが、国論の中にもいろいろあるんだろうと思うんです。SBS米をもっとどんどんふやせということもあるでしょうし、国家貿易そのものを取っ払って民貿にしたらいいんじゃないかというふうな意見もあるかと思います。  それはそれとして、例えばMA米でほかの国から日本に入ってくる。その入ってくるお米を実際にはいろんな国で生産しているけれども日本の商社の契約栽培というものも相当入っているんじゃないですか。これは、例えばあるとすれば、どういうところがどのぐらいの国でどのぐらいの規模でやっていらっしゃるか、ちょっとわかれば教えてください。
  48. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 海外での状況でございますけれども、二つあると思うんです。日本の企業が海外の現地企業との合弁によりまして精米等をしている、生産をしているという場合と、それからそれとはまた別に、契約栽培という形でそれぞれやっている事例があると思います。  私どもが承知している限りにおきましては、合弁としてやっておりますのが、米国では今のところ二社というふうに考えております。タイでも二社でございます。ベトナムで三社、中国で四社という形でそれぞれ合弁という形の中で入っております。  その展開状況でございますけれども国内の、例えばアメリカであれば米菓製造販売という形で合弁に入っているんですけれども、基本的には国内の需要向けに出しているというところもございます。それから、タイのように国内向けのものと輸出向けのものがありますけれども、例えばもろみ製造といったことをやっているところもあります。それから、ベトナムとか中国におきましては主として精米、ベトナムでは米菓製造も入っておりますけれども、そういう形の中で、主として輸出向けという形で、それぞれのいろいろな態様があると思います。  それから、契約栽培につきましては、これはさまざまな事例があるかと思いますが、全体は性格上、全部把握できませんけれども、それぞれの地域で契約栽培という形で農家の方々とまさに契約をして栽培している事例というのは承知いたしております。
  49. 郡司彰

    ○郡司彰君 この前段、ウルグアイ・ラウンド交渉の際も、例えばほかの工業製品の見返りで米の問題、農業の問題が扱われ過ぎているのではないかという話がありましたし、これは事実かどうかあれですけれども、アメリカの精米業者協会のロビイストの資金も一部、日本の方から行っているんじゃないかなんというような話もありました。  次回交渉に臨んで国論を統一しようというようなことの中で、日本の商社がほかの国に行って栽培をしてそれを日本に持ち込むというふうな手法の中で、国民意見の統一といいますか、生産者の方には我慢をしろというふうな形でずっとやってきて理解をしてくれ、一方で商社がほかのところでやって輸入という形で日本に持ってくる、このようなところを国内においてきちんと考えを統一していく、そういうことをやらないとおかしなことになってしまうと思うんですけれども大臣、そういうようなことに関して、農水省として、あるいは大臣として今後の考えがありましたら。
  50. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、国民的合意というのは、安定的に国民食料を供給するという大前提、そしてそのために最も大事な選択肢が国内生産が基本であるという前提にあるわけでございます。  その中で、何回も繰り返しますので簡単に申し上げますならば、農業の果たすいろいろな役割等々、あるいは諸外国との連携等々でやっていくという枠組みの中で、今申し上げたような我が国国益を守るべく交渉に臨んでまいりたいというふうに考えております。  そういう中で、日本の商社が外国に行ってどういうふうに何をやるかということについては、一方では経済自由の原則というものがあるとは思いますけれども日本の米を国家貿易あるいは食糧庁が需給調整をやるというルールの中で、どういうふうにやっていくかということは自由かもしれませんけれども、基本的な今申し上げた我が国生産、消費、あるいは国土を含めた国家的な利益を守っていくという制度が大前提にあるという中で次期交渉に臨んでいきたいと考えております。
  51. 郡司彰

    ○郡司彰君 もちろん、自由経済の中でありますから、商社が何を考え何をしようということに対して、国、政府があれこれとということはわかるのでありますけれども、一方において、先ほども申し上げましたように、どうもほかの産業の犠牲に農業がなってきているんじゃないかという思いは相当強いわけでありますから、その辺のところについても、逆な意味情報提供していただいて、国民の間に、このような中でこういう議論が行われているんだというようなこともこれからまたひとつお願いしたいと思います。  次に、UR対策の関係でありますけれども、先ほども言いましたように、今回、ちょっと時間的な制約があってやはり拙速だったのではないか。拙速ということは、URのときにはこれからこういうことがあったんだから、六兆百億円、六年間で国内対策をやりましょうよというふうなことが同時に決まってきた。しかし、今回の場合には、先ほどの委員の御指摘にもあったように、これは今回も大変な変換、移行になるわけであります。しかしながら、今回の場合には関税化に伴う国内対策というものが十分に議論されてきていないで今日に至っているのではないかというふうなことがあります。  その上に立って、関税化に移行するしないにかかわらず、農業をもう一回自立できるような形にするための対策というものはこれからも必要でありますので、この間のUR対策の六兆百億円、現在までの執行状況はどの程度で、どういう効果が上がったというふうに判断していらっしゃるか、お聞かせ願います。
  52. 高木賢

    政府委員(高木賢君) まず、最初の進捗状況のお尋ねについてお答え申し上げます。  平成十一年度の当初予算までを見込みましての進捗率でございますけれども、公共事業につきましてはおおむね八五%、非公共事業につきましてはおおむね八九%、対策全体ではおおむね八七%程度ということに相なっております。
  53. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 成果ということでございましたので、私の方からそれをお話ししたいと思います。  もちろん、対策期間中でございますので、全体としての総括をする状況にはございませんけれども、個別の事業について見ますと、私はかなりの成果が上がっているというふうに考えております。  一つは、農業の体質強化と地域の活性化という点で行っております農業農村整備事業の加速的推進でございますけれども、個別の事業について申し上げますと、都道府県営の担い手型の圃場整備事業、平成八年、九年で三十七地区完了しておりますけれども、それらの地区におきましては担い手の経営規模が約二倍になる。それから、労働時間が七割減少する、コストが全体として六割減少するというふうに着実な成果が上がっているというふうに私は思います。  それから、総合助成事業であります農業構造改善事業でありますけれども、これにつきましてもその地域内、平成十年度まで七百以上の地区でやっておりますけれども、ここでもやはり担い手のといいますか、認定農業者の数が二・四倍になる。あるいは労働時間、これは施設物ですから育苗とか乾燥になりますけれども、そういったものにつきまして時間が半減するというふうな成果が上がっております。残された期間内もこの対策を着実に推進して、農業構造の改善を図りたいというふうに考えております。
  54. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、御説明いただきました農業農村整備緊急対策事業、公共事業に当たるわけですね、これが大体六兆百億円のうちの半分以上、三兆一千億以上になるわけですね。どうも農家の方々なんかに話を聞くと、もう少し直接農家側にこういうものがあったというものを実感として余り感じられない、そういうふうな意見があるわけでありますけれども、例えばそのような形の施策という形でいうとどういうふうなものがありますでしょうか。公共事業以外の関係で。
  55. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 今、公共事業のお話が出ましたけれども、公共事業は事業費ベースで三兆一千七百五十億円を予定いたしておりますが、このうち三割程度は中山間地域のかなりきめ細かい事業を、しかも採択基準等かなり弾力化をしてやる事業になっておりますので、中山間地域について特にてこ入れをするという点では現地からも相当喜ばれているものでございます。  それから、非公共事業につきましても、私がただいま申し上げましたような総合助成事業としてのメニューがかなり広く、しかも重複してできるような基盤を確立する農業構造改善事業を実施いたしておりまして、これも先ほど申し上げましたような成果が上がっております。  それ以外にも次第にその対策を強化いたしておりますけれども、新規就農の対策等々、資金の面でもいろいろと御要望にこたえながら内容の充実を図りつつ、実施をしているところでございます。
  56. 郡司彰

    ○郡司彰君 個々の農家にとってみますと、実際には前倒しの議論が今出ておりますけれども、六年間のうちにやっていけるというふうな形になるのかなと、そういうふうな思いがあったわけです。今、ことしの四月一日から関税化という議論をしながらやっていってまだ残りがあるわけでありますけれども、今までのところを見ると、じゃ農家の方々がこの六年間を一年残して過ぎた段階で、本当に関税化になっても専業として米だけで食っていけるのか。農家の方が、例えば後継者、息子さんや娘さんがいるときに、大丈夫だよ、国がこういうふうにやってくれるということになってこれだけになってきて、これから十年先、二十年先も米をつくっていてちゃんとやっていけるんだよというようなものがどうも感じられないというふうに言うんです。ですから、後継者、息子や娘に、おまえ、米をつくって農業を継げという話ができない。  農水省の方で、専業でやる場合、あるいは兼業の場合でも結構ですけれども、例えば北海道とか新潟とか、どこでも結構ですけれども、こういう地域でこのぐらいの規模でこういうふうな形でやれば米をつくって農業としてやっていけるんですよと、そういうものを示していただくのが一番皆さんのやる気につながるんじゃないかと思いますが、その辺のものがございましたら教えてください。
  57. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 既に、私どもではいわゆる新政策という形で、これからの農業生産をやっていく上で二つの指標、つまり生涯所得においてほかの産業に従事している方々と遜色のない水準、これは当時の水準でいいますと、生涯所得二億ないし二億五千万という所得水準でございます。それから、労働時間でいいますと、千八百時間ないし二千時間という目標を立てまして推進をしてまいりました。  そして、このウルグアイ・ラウンド期間中にこれがちょうどオーバーラップしているわけでございますけれども、認定農業者という形で今十三万の農業者の方々が自分の経営を安定的かつ効率的に行っていこうということでみずから改善計画を立てていらっしゃいます。その改善計画を拝見いたしますと、稲作の単一経営ではおおむね十二ヘクタールぐらい、これが改善計画の総平均でございます。その方たちの現在の規模が恐らく六町歩ないしは七町歩でございますので、認定農家として約二倍ぐらいの規模に持っていけば、先ほど申し上げました生涯所得なり労働時間で他産業の方々と比較して遜色のない経営が行われるというふうにみずから計画を立てられ、市町村長が認定をしているというのが現況でございます。
  58. 郡司彰

    ○郡司彰君 これは農水省の統計の方の資料で見ると、現在、専業でやっているところは三百万をちょっと切るぐらいの収入、そのうち五十万ぐらいが農外だと。兼業の方は大体平均八百万近くの収入のうち、おおよそが農外収入だというような統計の数字が出ております。これを見ると、今の話はどうも素直になかなか信じられない。本当にそういうような状況全国にあれば、もう少し農家の子弟が本当に代をかわって専業でやってみようかという人もふえてきているんじゃないかと思いますが、実際そうじゃないですね。  その辺のところを、数字とかこういうふうなことだけじゃなくて、本当に安心できますよ、本当に責任を持ちますよ、十年後、二十年後、農業をやっていてごらんなさい、あなたたちの生活は今より格段によくなりますよ、そのような自信を持たせるようなお話はございませんか。
  59. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 今、御指摘のような方向に向かいまして私どもも省を挙げて努力しているわけでございます。このたび、農林水産省として農政改革大綱をまとめ、そして新しい基本法を制定しようということで国会にも法案を提出しているのは、そこに私ども思いがあるわけでございます。  こういった専業的農家といいましょうか、効率的、安定的な経営を中心に農業構造を望ましい形に持っていこうということで、例えば農地の流動化にいたしましても、日本の農地の過半をこういう担い手に集積するということで、五百万のうちの半分の二百五十万ヘクタールぐらいをできるだけ早いうちに担い手に集積したい。現在、約二百万ヘクタールまで来ておりますので、もう一段努力が必要かと思いますけれども、担い手に向けて施策を集中する、体系化する、そういう努力をしたいと考えております。
  60. 郡司彰

    ○郡司彰君 そのような中で、先ほど答弁の中にもありましたけれども、新規就農者のための支援対策というものも行われているわけでありますけれども、大きくいうと資金の関係では就農支援資金、あるいは経営開始資金というふうな形でもって、それぞれ就農支援資金の方についてはこの数字を見ますと九年度で一千三百八十三件、百三十五億ということですから、一人大体百万円ぐらいというふうな額が出ているようであります。一方、経営開始の方は、大体一人当たり一千万ぐらいというような数字の資金が出されているというふうになっております。  先日の新聞報道で、全国農村青少年教育振興会というところが新しく農業をやる方いらっしゃいませんかということでやったら、五百人ぐらいの方が都会の中で集まっていただいたというような記事がございました。この五百名の方が集まっていただくというのは非常にこれからのことに対して希望が持てることなんでありますけれども、一方、実際に就農をされるというふうな方になると非常に少なくなってきているんじゃないかなと思うわけです。この辺の落差というものがどのようなところから出ているとお考えでしょうか。
  61. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 実は、今、先生がおっしゃいました事業といいますか、それはまさに私どもが支援を申し上げている対策でございまして、御答弁というよりはむしろ御理解をいただいてお礼を申し上げたいぐらいでございます。  この場合、どういう発想からこういうことをやっているかといいますと、私どもとしては、農村にいろんな考え方、外からの経験を持ち込むといいますか、そういう能力をお持ちの方が行っていただくというのは活性化のためにも大変役に立つのではないかという気がいたしておりまして、いろんな御経験の方から就農していただくために、こういうガイダンスなりあるいは電車のポスターなんかでもごらんになった方がおられるかもしれませんが、支援をいたしております。  その中の一つに、就農準備校というのを持っておりまして、全国で十カ所余り設置をされておりますけれども、そこで実際に勉強をされて就農しておられる方のデータからの判断でございますが、おおむね三つに分けられるのではないかと思います。すぐ就農される方。それから、いずれ就農の希望はあるんだけれどもなかなか潮どきといいますか、ころ合いを見ている、したがって全く就農の可能性がなくなったわけじゃない方。それから、もう一つのタイプが、好奇心と言うと若干失礼でございますが、そういうところにも行っていろいろ勉強してみようかという方でございます。  私どもが承知をしておりますだけで、これは八年度と九年度の数字だけで恐縮なんですが、大体六百名ほどの方にアンケートをとってみまして、すぐ就農されたのは五十人ぐらいということでございますから必ずしも率は高うございませんが、先ほどお話をしましたように、気持ちの中にいずれということをお持ちの方がどのくらいおられるかわかりませんので、私どもとしては貴重な就農のいわばソースではないかなというふうに判断いたしておるところでございます。
  62. 郡司彰

    ○郡司彰君 こちらの方でお聞きしたかったのは、今そのようなことに取り組んでいらっしゃる、六百名のうちの五十名、これが多いか少ないかというのは非常に意見が分かれると思います。私どもからすると、六百名のうち五十名も就農されるというのはかなり高いのかなとも思ってしまいますが、いずれにしても六百の五十でありますから、その差がもう少し縮まるために、あるいはこの開いている原因についてはどうお考えでしょうか。
  63. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 農外から就農されるときに隘路になりますのは、いろんなことがございますが、私どもは大きく分けて三つあると思っております。  一つは、農業は何しろある程度特別の技術みたいなものがありますので、そういう技術の習得をしてもらわなきゃいかぬ。二つ目が、開業資金といいますか、ある程度のまとまった資金が要るだろう。それから三番目に、一般的に地べたが要るわけでございますから、農地の取得についてある程度の制約をされる。  この三つをどういうふうにして外すかということでございまして、技術についてはいろんな研修のシステムを用意いたしております。それから、資金につきましては、先ほど先生もおっしゃいましたように、さまざまな就農支援の資金がございます。それから、農地の取得につきましては、各市町村等々にそういうアドバイスをする機関がございますので、そういうところとよく相談をしてもらう。  いずれにしても、できるだけの情報をお示ししながら、全部が隘路じゃなくてそれぞれ事情が違いますので、そういう方々の事情に応じたようなお手伝いができればと思っております。
  64. 郡司彰

    ○郡司彰君 三点お示しいただきましたけれども、そのとおりだろうと思うんです。  特に、技術がなくちゃいけない。そのために、例えば国の方でも、平成九年度でいうと将来、就農を希望する他産業従事者を対象とした短期研修に千二百名ぐらいが参加をしている、そういうふうな数字もございます。これからインターンシップなども多く活用していただいてそのような機会をつくっていただきたいと思うのと同時に、一方で、これまで農業というものが工業というものに対して、考え方として、そんなことはないんですけれども、どうも下の方に位置するようなイメージというものを国全体がつくってきたということがあるんだろうと思うんです。  農業というのは、環境問題から何から何まですべてのところに精通している人がやることによって初めて立派な成果が出るわけでありまして、ただ単に耕すとか植えるというだけの技術以外にいろんな幅広い知識を持った人がやることによって、農業というのは本当に豊かなものがつくれる。つまり、農業を行う人というのは非常にすぐれた人たちなんだよ、そういうような啓発というものに国全体として必ずしも重きを置かれてこなかったんじゃないか。そういうふうなところがどうも農業に向かう人を萎縮させているような面があったと思うので、技術だけでなくて、そのような啓発というものもこれから十分にやっていただきたいなというふうに考えています。  それから、資金の関係でありますけれども、これは前回阿曽田議員の方から話がありましたけれども、私も同じような考えを持っているんです。  フランスがという話がこの前の話ではありましたけれども、いろんな制度がある。自分はどの制度を引っ張ってきて出すことによってそれがまたその資金としてなるのかというのがなかなか都会にいる方にはわからないんですね。それよりももっと、大ざっぱという言い方はおかしいのかもしれませんけれども、やる気がありますよ、こういう計画を持っていますよ、土地はどういうふうな形でか探していただけませんか、そういうところがあれば私はこういうことで家族と一緒に移り住んでやってみたい、そういうような計画をきちんと出して、それに対する支援というものを一定程度、それが何年になるかというものはあります。それから、額の問題もありますけれども、おおよそこのような形で何年間その資金を援助するからやってみてくださいよと、そういうような包括的な資金的な支援というものがあってしかるべきだろうと思いますし、そのような形の方が五百名来た中の方についてもより説得が可能なんじゃないかと思います。  そのような方向にするために、先ほども言いました逆な意味での国民的な合意をしなくちゃならない、当然なのでありますけれども、そういうことも含めて、将来的にはそのような方向に持っていこうというような考えはおありでしょうか。
  65. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 正直言いまして、今すぐ将来の姿をお示しするというほど具体的な姿を描いているわけではございませんが、就農支援のシステムとしまして、個別の、例えば金融だけとか技術だけとかそういうことではございませんで、私どもが今考えておりますのは、全体として就農支援の窓口、コンサルタントみたいなものをできるだけたくさん置いて、お見えになられればいろんな立場からのアドバイスができる、そういう対策は多少今持っております。今後、そっちの方で力は入れていきたいと思っておりまして、具体的な名前で申し上げますと就農支援システム強化対策という事業を今持っておりまして、そちらの方で対応できる部分はできるだけ対応したいと思っております。
  66. 郡司彰

    ○郡司彰君 実は、いろんなところへ話を聞きに行きますと、かなり専門的な方が多いわけでありまして、それはよくわからぬというような受け答えがあるんだということなんです。  先ほども言いましたように、細かく精通していないと補助金や何かを含めてなかなか引き出せないというようなことがあるわけでありますから、もっとぼんという形で、こういう相談に来たらそれは何課ですね、それは何局ですねということじゃないような、そういうような手だてをきちんとしてほしいということなのでありまして、そこのところを申し添えておきたいと思います。  それから次に、女性の関係なんですけれども日本の場合は、資料によりますと、関連産業を含めて男百人に対して女の方が九十一名ぐらいだというふうな数字がございます。一番多いところですと、オーストラリアが男百人に対して女の方が百七十九名とか、国によってそれぞれ違いがあるわけですけれども、いずれにしましても、日本の場合も農業の中の女性の役割というのはかなり大きいだろうと思うんです。そして、世界的な傾向を見ると、一九七五年、当時は国際婦人年と言っておりましたけれども、その辺のあたりからこれまでの既存の組織ではないいろんな新しい女性組織というものが各国においてもできつつあると。  当然、日本の場合におきましても家族的な農業が主でありますから、どうも農家の収入には本当に女性が働いた分が労賃としてカウントされているのかどうかということになると、必ずしもそうじゃないようなところがある。それから、いろんな政策決定の場所に女性の方が男性よりも遠いというふうなこともある。いろんな意味で女性の力というものを引き出すということがこれから大事になってくると思うんです。  農水省の中にはよく見ましたら婦人・生活課というのがあるので、多分ここがそういう関係なのかな、やっている仕事は何ですかということでよく見ると、今言ったようなことに必ずしもなっていないような、ちょっと私の読みが甘いんでしょうけれども、そういうふうに思える。当然、ほかの国も法的にも政治的にも経済的にも自分たちで自立できるような女性の組織というものが大変広がってきていると思いますけれども、農水省の女性の方がどのぐらいいらっしゃるのかわかりません。上級あるいは課長以上でいらっしゃるのは二名ぐらいだということで、これがほかのところに比べて多いのか少ないのかわかりませんけれども大臣の方で今後こういうようなことに対してお考えがあればお聞かせいただきたい。
  67. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、政府として男女共同参画型ということを推進しておりますが、農林水産地帯においては参画というよりも現実の問題として女性の役割というのは非常に高いわけでございまして、就業人口のうちでも五七%、それから基幹的農業従事者でも四六%以上が女性ということでございまして、しかも家事、育児等は女性がほとんど現実にやられておるんだろうと思います。そういう意味で、農村社会における女性の役割というのは特に大変大きいものがあるわけでございまして、そういう中で、単に現実問題として女性の方が仕事をせざるを得ないんだというようなことではなくて、むしろ積極的に女性が参加できるような形の農村あるいは農業経営あるいは農家づくりというものをこれから推進していかなければならないというふうに考えております。  具体的には、基本法の中にも女性の地位という条文を一条設けておりますけれども、例えば農協の役員等への女性の参加、あるいはまた特定農産加工等の起業活動に必要な無利子融資の支援あるいは家族経営協定の締結による家族間での役割の分担等々も含めまして、女性が男性と対等なパートナーとして農村社会あるいは農村家庭、さらには営農におきましても、無理やりというか、義務的というよりも積極的にまた女性御自身の意思において参画できるような体制づくりに行政としても推進をさせていただきたいと考えております。  なお、今も先生指摘のありました婦人・生活課というのは、十年ほど前、私が政務次官のときに農村における女性の役割をバックアップする必要があるということで私がつくらせた課でございまして、それだけに特別の思いのある課でございます。また、引き続きその課を通じていろいろやっていかなければいけないこともありますし、省全体としてもそういう方向でこれから頑張っていきたいと思いますので、御指導をよろしくお願いいたします。
  68. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、心強い話を聞かせていただきました。婦人・生活課は大臣がおつくりになったということも聞きました。  言わずもがなだと思いますけれども、先ほどの就農支援とか何かも、何かしら頭の中で就農者というものを目をつぶって思い浮かべるときに、男の若い青年、男性をどうしても思い浮かべてしまうわけです。結局、立派な男性の後継者、担い手にどこからかお嫁さんを探してこなくちゃという図式でこれまで来ていたような感じがありますので、そうではなくて、やはり女性そのものがもうこれだけ農業を担っているわけでありますから、立派な男性ができたときにどこからか嫁さんが来るというそういう構図ではないような農村にしていかなければいけないのかなと。  それと、大臣お話と逆なような話をして非常に恐縮ですけれども、実は男性の方がそのような意識を持っておるということと、そのような組織ができるということは、またちょっと別な問題があるんです。ですから、フェミニスト的なことになったのではいけないというふうなことでありますから、できますれば、先ほど言ったようなこともあるんでしょうけれども、女性がみずからそういうものを考えてやっていくときに、いろんな意味での整備面だけはきちんとやっていく。端的に言いますと、婦人・生活課も優秀な課長さんが今いらっしゃるんだと思いますけれども、でき得れば女性をできるだけ登用するなりして、そういうような形でもっての手だてをお願いしたいなというふうに思っております。  それから、時間がもうありませんので、最後に生産調整の関係ですけれどもWTOの国境措置の関係からいうと一応生産調整をしなくても済むというふうな形にはなるわけでありますが、国内的にはそれとはまるっきり別な視点で生産調整というものを考えていかなければならないだろうと思っております。しかしながら、これは昨年のは誤報であったということで、今それを問題にするわけではありませんが、根強く今後、減反政策というものは変わるのではないかというような意見がございますけれども、それに対して農水省の考え方を示していただければと思います。
  69. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の米の関税化措置と国内における生産調整の問題とは、大きな意味では関連をしておりますけれども先生の御質問の御趣旨のお答えといたしましては、あくまでも現在続けております生産調整、特に十年度、十一年度の緊急措置というのは、大幅な需給ギャップを調整するための生産者にとっても結果的にプラスになる、みんなでやっていこうということでございまして、そこには当然、国も自治体も団体も含めて、国にも責務があるわけであります。  一時、昨年末に一部報道で、これによって生産調整から国が手を引くんだというような報道がありましたが、全くの事実無根の報道でございまして、大変生産者の皆さんに御心配をおかけしたわけでありますが、我々としては、決してそうではないという努力を年内ぎりぎりまでやったわけであります。引き続き、国も責務を持って需給バランスの安定のために、生産者の皆さんの本当におつらい気持ちも重々理解できますけれども、最終的には生産者にとってもプラスになるということで、国としても現在と同じような形で生産調整に責務を負っていきたいというふうに考えております。
  70. 郡司彰

    ○郡司彰君 時間が参りましたので、もう一つ本当は、CAPが一応の決着を見たということでありまして、どういう中身だったのかなということと、それから今後の日本交渉に影響があるやなしやということについてもお聞きをしたかったのでありますが、時間でありますので、次回に譲りまして、終わらせていただきます。
  71. 風間昶

    ○風間昶君 公明党の風間ですけれども、まず今回の関税化受け入れにつきまして、これは農業新聞に出ておりましたが、早稲田大学の堀口教授が、今回の関税化は「日本にとって不利な条件を減らすための決断で、あの状況ではやむを得なかった。もっと早く踏み切ってもよかった」とおっしゃっている記事が載っています。だから、たとえ関税化を避けたとしてもミニマムアクセスの重圧はふえてくるはずだからということだと思います。関税化を回避してミニマムアクセス米をふやし続けるよりはよりましな選択だ、やむを得ないけれどもましな選択だということをおっしゃっているわけです。  私も、この部分については国益を考えると理解できるわけでありますので、そういう意味では食糧庁としてももっとこれをアピールするべきだと思うんですけれども、取り組みを伺いたいと思います。
  72. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 先生が今御指摘のとおり、この堀口先生がおっしゃっていることも、現在の特例措置を講じた場合に比べて、こんな形でのいろんな意味での不利な条件を減らすということと、それからいいものがあるんだということをもっと積極的に説明する必要がある、こういうことだろうと思います。  私どもも、これまでもそういうつもりでやってきたわけでございますが、先生がおっしゃったような形で、特例措置の継続に比べまして、ミニマムアクセス数量の増加量が半減できることであるとか、それから二〇〇〇年以降も特例措置を継続しようとすれば、当然ながらミニマムアクセス数量の一層の増大が避けられないと、そういった事情につきましても、これからも農家の方々に対しまして、そういったメリットがあるんだということでよく説明をしていきたいというふうに考えております。
  73. 風間昶

    ○風間昶君 そこで、確認しておきますけれども、次期のWTO交渉で本当にミニマムアクセス米がふえることはないのかということなんです。交渉事でありますからあれですが、要するにミニマムアクセス米をふやさないと。先ほど昨年と同じぐらいのSBSの十二万トンの話を伺いましたけれども、ミニマムアクセス米をふやさないというその食糧庁の決意を伺いたいと思います。
  74. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) これは、一九九九年度につきましては七十二万四千トン、二〇〇〇年度については七十六万七千トンということで、従来の特例措置を継続する場合に比べまして増加量が半減する、これははっきり言えるわけでございます。  二〇〇〇年以降の問題につきましては、これはやはり基本的には次期交渉という形の中で対応していくことになります。それにつきましては、先ほどから大臣もお答え申し上げておりますように、米の稲作に占めます地位、それから米の消費生活に占めます地位、そういうことからいって、日本農業の基盤をきちんとした形で守れるような、そういう形でこの問題に対応していかなきゃならないと考えております。  そういう意味では、ミニマムアクセス米につきましても、そういった全体の戦略戦術の中できちんと位置づけて、どういった形でやっていくことが国内農業基盤を守るか、稲作の農業生産基盤を守るか、そういう観点に立って鋭意検討していきたいと考えております。
  75. 風間昶

    ○風間昶君 ミニマムアクセス米の在庫処理についての基本的な方針を伺いたいんです。  原則として加工用として使うことになっているわけでありますけれども一つは在庫処理の基本方針、もう一つはミニマムアクセス米の処理がだぶついた場合に日本の国産米の百五十万トンの備蓄に影響が出るんじゃないかと思うわけですけれども、そこの部分についてもちょっと確認しておきたいと思います。
  76. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) ミニマムアクセス米につきましては、基本的に、平成五年の閣議了解にございますミニマムアクセス導入に伴う転作の強化は行わない、この趣旨がございますので、これをきちんと守っていきたいというふうに考えております。  したがいまして、その閣議の趣旨を実行するために、食糧庁におきましては国家貿易制度をきちんと維持しまして、それで国内産米の需給価格の安定にできるだけ影響を与えない、そういう方針で、これからも国内産米で対応しがたい加工用等の需要を中心に供給するという方針でやっていきたいと考えております。したがいまして、ミニマムアクセス米が例えば主食用に供給されるような場合には、それと同量の政府国産米を援助用等、他の用途にも持っていくということでやってきておりますし、これからもそういう基本的な方針で臨みたいと考えております。  それから、備蓄との関係で申し上げますれば、平成五年度の大不作を受けまして、現在百五十万トンプラス・マイナス五十万トンの幅の中で国産米を中心とした備蓄運営を行っております。ミニマムアクセス米につきましては、今申し上げましたように、国産米の全体の需給の操作、需給の調整とは切り離した形で私どもも転作その他をやっておりますので、これとは別の形で対応してきておりますし、これからもそういう方針で臨みたいと思っています。基本的には、ミニマムアクセス米については十万トン程度の在庫ということを考えて対応いたしております。
  77. 風間昶

    ○風間昶君 これもまた新聞報道でありますけれども、昨日、WTO次期交渉に影響する閣僚会議などの外交日程が固まったと、それで五月十一、十二日両日、東京で日本、アメリカ、カナダ、EUの四極通商会議で枠組み交渉議論が本格化するというふうに出ております。我が国は、そういう意味では農業分野だけが突出しないような形で包括的な交渉主張する考えだというふうに書いてあるわけです。だれが言ったかわからぬけれども書いている。  そういうことでありますと、EUと同じような考え方をとるであろうということが予測されるわけですから、どういう調整が必要なのかということになってくるのではないかと思うんですね。EUの今回の異議申し立てとまた絡んでくる話ではありますけれども、ここの部分我が国立場説明EUに対して早急に行わなきゃならないというふうに私は思うわけですから、そういう意味外務省としてはどういう努力をしていくのか、伺いたいと思うんです。
  78. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  EU委員会とのその異議申し立てについては先ほど来の御説明のとおりでございますが、今後の農業交渉を中心といたしました次期交渉についての協調についてどういうことかということでございますけれども、そもそも今後どういった形でWTO交渉が行われるかは、今、WTOの場で方式について議論しているところでございます。  EU日本とは基本的には、農業、サービス等の合意済みの課題という既にやることになっているものに加えて、もっとほかの分野、例えば鉱工業品の関税、こういったものを入れた包括的な交渉とするべきだということについて一致しております。そして、農業についても、まだ具体的にEUがいろいろ考えていると思いますし、今後とも、いろいろ共通点が多いかと思いますので、連携していくわけでございます。  既に、日本EUの間では、事務レベルでございますけれども、今後のWTO交渉全体をどういうふうに持っていこうかという定期的な協議を行っておりますし、いろんな場でも行っております。したがいまして、御指摘の今回の五月に行われます四極の場を通じても、あるいは二者間の場を通じても、極めて基本的な立場が近いということから連携を深めていく、そういう所存でございます。
  79. 風間昶

    ○風間昶君 この場合、農水省としてはどういう立場の方が行かれるんですか。通産大臣が当然、貿易大臣ということでしょうから行かれるんでしょうけれども、農水省としてのかかわりはどういうふうになってくるんですか。
  80. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 四極通商会議というのは通産大臣が行くわけでございますが、例えば昨年のAPECの例を申し上げましても、あれは外務大臣、通産大臣ということでございましたが、御承知のとおり、林、水が大きな問題になっていたわけでありまして、我が省関連のことでございます。したがいまして、政府内で外務、通産あるいは大蔵、そして私と総理のもとで十分調整をした上で、交渉出席する閣僚は外務大臣、通産大臣でございましたが、我々の立場というか、政府全体の立場を十分踏まえてやっていただきましたし、その場合には、農林水産省から農林水産審議官もしくは経済局長を初め、担当の幹部が同行するということになります。
  81. 風間昶

    ○風間昶君 結局、農業交渉であるにもかかわらず、貿易全体の話になるから通産大臣が行かれると。そうすると、農水大臣は今、審議官か担当の方というふうにおっしゃいましたけれども大臣の意向というのは行く前の段階だけで終わる話ですか、通産大臣に対して。
  82. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私の経験で申し上げますならば、APECクアラルンプール会議では、刻々私のところに、当時は農林水産審議官が行っておりましたけれども状況の報告を受け、それに対して指示をし、リアルタイムで対応していたわけでございますけれども、四極通商が通産大臣だけの会合だというルールであればそういうことになろうかと思いますし、また特に農業関係だけで農業大臣がみんなで集まろうというような合意が仮にできるのであれば、これは全く可能性の問題であり、そういう議論現時点では私は聞いておりませんけれども、そういうことであればそういうことにもなることは否定はいたしませんけれども、そういう考え方で現在おります。
  83. 風間昶

    ○風間昶君 いやいや、なぜそうやって聞いたかというと、外交日程の中で、五月十一、十二日に四極通商会議が行われますね。その後すぐ、六月には農業大臣の会合があるわけでしょう。だから、それとの整合性を含めて、農水省として日本国益を本当に主張していける通産大臣なりあるいは外務省に託すということが必要になってくるから私は伺っているんです。だから、通商会議の方では、農業分野だけが突出しない方向で日本が包括的にというふうに言う。しかし、六月に予定されている農業大臣会合では日本はもうがんがんやるということになると、またこれはある意味ではEUとの調整にねじれが出てくる可能性もあるわけですから、そこを私は言っているんです。
  84. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、政府として、外務省、通産省と農林省との間で、少なくとも農林水産分野に関しましては通産大臣に大いに頑張っていただく。APECにおいても大変厳しいアメリカとの意見の対立がありましたけれども、外務大臣、通産大臣に大変頑張っていただいて、我々の意思を体してやっていただきました。  六月には、先生指摘のようにバンクーバーで五カ国農相会議がございます。その場では私が各国農業担当大臣と協議をするわけでございますが、そこの場での議論一つ先生の御指摘にあるわけであります。  EUとの関係におきましては、先ほど外務省経済局長からお答えいたしましたように、まず包括交渉でやっていこうという全体の枠組みの一つEUとの間ではもう共通認識になっておる。それから、例えば農業関係で申し上げますならば、農業の果たす多面的役割についてEU考え方が同じである。その他、今までのOECD会合あるいはFAOの閣僚会議等でも我が国農業に関するいろんな主張が取り入れられている等々を含めまして、EUだけが辛うじて味方で、あと全部が敵だということではなくて、我が国立場というものをできるだけ多くの国々理解していただくべく、政府を挙げて努力する。もちろん、私自身もその先頭に立たなければならないわけでありますが、外務省、通産省を初めとして、政府全体として我が国農業に対する立場というものを主張し、各国の御理解をいただくということがこれから極めて大事だと考えております。
  85. 風間昶

    ○風間昶君 ぜひ頑張っていただきたいと思います。  もう一つ、これは鳥取大学の伊東助教授の試算があるわけですけれども、要するに二次関税率が二〇〇一年度以降も毎年二・五%ずつ下がり続ければ二〇〇六年度から米の輸入が可能になる、そうなると、幾ら高関税をかけたとしても寿命は短いのではないかと。現実に、二〇〇六年にアメリカのアーカンソー州のコシヒカリとか、あるいは二〇一四年に中国の黒竜江省の短粒種ジャポニカ米が輸入可能な水準になってくると、セーフガード関税を積み上げてもこの二つの米はかなり安く入ってくる。食味も日本人好みになっているわけでありますから、本格的にこれを輸入されれば大変な打撃を受けることは予測がつくわけであります。  そういう意味で、次期交渉に当たって、関税率を引き下げよという輸出国側の論理に対して、これは事務レベルの交渉じゃなくて政治判断をきちっと持っている首脳レベルというか、農林大臣の決意というものが物すごく大事になってくる。大臣やっていたおかげで、中川のおかげで関税化をやられちゃったよというふうにならないように、その部分に対する決意を伺いたいと思います。
  86. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 次期交渉に臨む基本的な対処方針は、何度もお答え申し上げておりますとおり、これから本当に、国民のいろいろな立場方々消費者も含めて、もちろん生産者はもとよりでありますけれども我が国食料を守っていくんだ、国内生産を基本としていくんだ、特に米が主要食糧である以上、米の生産については守っていくんだという基本的なスタンスがあるわけでございます。具体的にどういうふうにしていくかという細かいところにつきましては御議論を踏まえた上で交渉に臨んでいくわけでありますが、その基本的なスタンス。  一方、先ほどの御質問、それから答弁にもございますように、これからWTO交渉ルール自体をどういうふうに決めていくかということを今まさに作業をしておるわけでございます。そういう意味で、先生指摘の、六年間で一五%削減というのはあくまでも一九九五年から二〇〇〇年までの六年間でございまして、二〇〇一年以降をどういうふうにしていくかということも含めましてルールづくりについてこれから交渉し、そしてまたその中での交渉ということになっていくわけでございます。  その学者の先生のこのまま同じスピードで下げていったらというのは、一つの仮説といいましょうか、我々としてはそれを前提にした議論というのは当然考えておらないわけでございまして、そのことについてコメントをさせていただく必要はないかと思います。  いずれにいたしましても、結論的に言えば、我が国国内生産を守っていく、そして輸出国はもちろんまたいろいろ言ってくるとは思いますけれども、この協定自体輸出国輸入国の間のバランスを欠いた協定でございますから、その是正も含めながら我が国立場を強く主張し、中川のおかげで日本の米が崩壊をしたなんということを言われないように、政治家としての決意を持って臨んでいきたいと考えております。
  87. 風間昶

    ○風間昶君 おっしゃるとおり、本当に政治家としての直接交渉を行わなきゃならないわけですから、英語がわからなかったら、ばかやろう、このやろうとか、もう日本語でいいからがっとやるぐらいの、そういうあれが大事なんです。  それで、農業分野の対応方針の骨子は、またこれも新聞記事で大変恐縮ですが、政府と与党と農業団体から成る三者会議で四月下旬をめどにまとめると、その後、六月中旬までに細かい方針を決めるとおっしゃっているけれども、これは極めて大事なことで、拙速な中で決めたという国民的な思いがある中で、これもまた極めて限られた日程の中で決める場合に、消費者意見、それから生産者の意見、これをどうやって本当に小まめに丁寧に聞いて、そして日本として方針を決めるかということは大事な問題だと思うんです。先日の参考人質疑の中でも、主婦連参与の甲斐参考人の方からも、国民合意の形成に向けた国内対策は極めて大事だと思うということでした。  では、具体的に国民的合意を形成する手法としてどういうことが考えられるのか、伺いたいと思います。
  88. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 具体的に国民的合意を得る手だてということでございますが、これは、まず次期交渉の枠組みなり論点なりといったことにつきまして、きめ細かくあらゆる機会をとらえていろんな消費者団体、経済団体あるいはその他のNGOなどあらゆる各界各層の方々に御説明させていただく機会をつくり、その中で地道に御説明をしていく努力を重ねることではないかと、こう考えております。
  89. 風間昶

    ○風間昶君 あらゆる機会をとらえてって、じゃそれはどういう機会なの、具体的に言ってください。
  90. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 一つは、まず第一にこの国会の場だろうと思います。国民を代表されております特にこの委員会を初めとする国会の御議論というものが一番大事な材料と言ったら失礼ですけれども次期交渉に臨む一つの御議論の場だと思います。  それから、生産者サイドは、これも当然のことであると思っております。全国団体を初めとして、各地域も含めてできるだけ御意見をきめ細かくいただくということが必要だろうと思います。それから、専門家の方々の御議論、いわゆる学識経験者、学者の先生方の御議論、そして前回の私なりの印象としては、マスコミとの連携といいましょうか、理解といいましょうか、これも極めて大事なことではないのかなというふうに考えております。  そして、何よりも国民的に、国民的にといいましょうか、食料安定供給の最も享受者であります消費者といいましょうか、食料を必要とする方々、つまり全国民という意味でありますが、こういう方々の御意見あるいはまた御議論、そして我々との話し合いということであります。  総花的に申し上げましたが、今回の米関税化のときにも、私自身消費者団体全国組織の代表の方々と一時間半ばかり御議論をさせていただきましたが、非常に有意義でございました。そういう意味で、私を初めといたしまして政府外交交渉に臨むわけでございますから、農林水産省を挙げまして、今申し上げたような議論の場あるいはそれぞれのお立場の場に、時には必要があれば出向き、またいろんな場で御議論をいただくということでございます。  できる限りのことをするということは、今、私としてはそのようなことを含め、さらにまた先生方からいろいろ御指示、御指導があればそれも参考にさせていただきながら、とにかく国民的合意のもとで次期交渉に臨めるように最大限の準備作業をさせていただきたいと考えております。
  91. 風間昶

    ○風間昶君 あさってからもうエープリルフールで四月に入る。六月中旬までにまとめるということになると、例えば最低二週間か三週間に一遍は地方公聴会も含めてきちっとスケジュールを立てて、全国的に、それこそ中山間地の方々や平場での専業農家の方々にそういったことをきちっと情報開示していくことが大事だと思うんです。お仕着せの役所からの集まってくれという形ではだめじゃないかと思うわけです。ぜひやっていただきたいと思います。  次に、農業に対する補助のうち、削減対象外でもあります緑の政策については農産物輸出国にきちっと認めさせることが大事であって、次期交渉の中で、緑の政策の範囲を拡大して国際合意をつくるということがまた一方では大事な話だと思いますので、日本として、ではどこまでが具体的に緑の政策なのかということを含めてどう考えているのか、基本的なことを伺いたいと思います。
  92. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 緑の政策というのは、一応現在のWTO協定上の理解があるわけでございますが、その後、いろいろ新しい論点等も出ておることでもありますし、次期交渉におきましては改めて緑の政策にさらに追加するもの等々の議論もされることになろうかと思います。  私どもとしては、我が国農業の実情を踏まえて、積極的にそういう議論に参加していきたいと考えております。
  93. 風間昶

    ○風間昶君 何だかよくわからぬな。基本方針だから積極的にかかわっていきたいということだけは何となくうっすらと聞こえてきたけれども。ぜひこれはしっかりと取り組んでいかないと国際合意を形成することが難しくなってくる話だと思いますので、頑張っていただきたいと思います。  国内対策で伺いたいと思いますけれども、三月二十六日の自主流通米の第九回の入札結果が出ました。六十キロあたりの加重平均価格で一番高いのが新潟魚沼産のコシヒカリ三万二千円、私の地元北海道のゆきまるは一万五千二百九十四円、きらら三九七が一万五千九百三十六円、要は二倍以上も差が開いている。  安いばかりじゃなくて、いわゆる中長期的な価格の見通しが立ちにくいということが、ある意味では農業生産者の方の生産意欲というか就農意欲を大分落としているというふうに私は思うわけであります。さらに、減反で最盛期に比べて四割ほど水田面積が減っているわけですから、これ以上の負担に耐えられないというのが、毎回毎回各委員からの主張でもおわかりのとおりだと思います。  だから、従来の価格形成のあり方にやっぱり問題があるんだと私は思うんです。経営努力が手取り収入に反映していないという生産費プラス適正利潤という決め方、政府米の価格決定の方式というのは問題なんです。  ですから、そういう政府米の価格決定がここに至って立ち行かなくなってきているという事実をきちっと農水省が認めて、では具体的に合理的な価格決定というのはどうあるべきなのかということについて、食糧庁が今後の価格政策をどう考えているのかを含めて伺いたいと思います。
  94. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 御案内のように、米につきましては、現在、自主流通米が七割から八割、それから政府米が二割程度という形で流通いたしております。  米の価格のあり方については、国会におきましてもさまざまな御議論があったわけでございますけれども、新食糧法制定の際に、やはり基本的には米の価格というのは需給あるいは銘柄評価、そういうことの中で自然的な形で形成されることが基本ではないかという強い御指摘があったというふうに理解いたしております。  そういうことを受けまして、新食糧法におきましては自主流通米が基本になりまして、政府米については備蓄運営という形のものに限定されて現在の新食糧法はできた、こういうふうに理解いたしております。  そういう中で、自主流通米については、まさに需給実勢、銘柄評価という形の中で価格形成が行われてきているわけでございます。先生が今おっしゃいました新潟産のコシ、魚沼産のコシ、これは非常に高いわけでございますけれども、これはある意味では特異な事例でございます。今、私の方としましては、例えば新潟産、魚沼産コシも含めた北陸地方の産地銘柄の価格と、それから北海道のお米をすべて含みます北海道産の価格を比べますと、約四割高ということでございます。かつ四割高ということを考えましたときには、北海道の規模が北陸に比べまして約五倍ということと、したがってコストが七割程度で済んでいる。そういったことも全体として考えていかなきゃならないのじゃないかというふうに考えております。  他方で、今おっしゃいました政府米の関係でございますけれども、これはやはり自主流通米の価格の反映ということと同時に、生産コストをどうするかということがございますので、現在までのところ、このウエートを半々に置いて運用いたしてきております。そういう意味では、政府米地帯におきます地域経済の安定ということにも役立っているというふうに私どもとしては理解をいたしております。  さらに、その買い入れに当たりましても、ことしにつきましては約四割を北海道の政府米の買い入れというふうになっておりますけれども、そういった価格決定の仕組み、それから政府買い入れ数量を北海道とか青森とか、そういった政府米地帯を中心にやっているということと相まちまして、農家手取りの確保ということと、その地域におきます稲作経営の安定ということにも資している面があると思います。基本的にはやはりそういう考え方でこれからも運用させていただきたいというふうに考えております。
  95. 風間昶

    ○風間昶君 もうちょっと突っ込みたいんですけれども、違うことをやりたいものですから。  先ほど郡司さんも質問しておりました全国農村青少年教育振興会のお話でありますけれども、私は、企業に就農戦士をスカウトしていくにはいい機会だと思いますからどんどんやってもらいたいと思うんですが、むしろそこに、農業の厳しさの部分も含めて、ノウハウを知っていらっしゃる農業生産者あるいはJA、それから府県の農政担当課の方々を企業の就農相談に派遣されていけるようなシステムをつくるべきじゃないかと思う。その際、出張していくわけですから助成措置を考えるべきだと思うんです。ただ単に農水省が振興会に委託してやっているわけでしょう、どのぐらいお金を出しているかわからぬけれども。そうしないと、さっきの乖離、実際に六百名来たうちの五十名しか就農していないということですから、その乖離を埋めるためにももうちょっときめ細かい施策が必要かと思うが、助成措置を含めて、いかがでしょうか。
  96. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 少し御説明が足らなかったのかもしれませんが、今お話しになりました企業ガイダンス、実はことしからやっている事業でございまして、お見えになった中で農業をやろうという方と、それから自分のところの社員に説明をしようという、何といいますか、人事担当者と言った方がいいのかもしれませんが、そういう方がまぜてお見えになっているわけでございます。  私どもとしては、それが一番理想的であるとは決して思っておりませんで、そういう中からむしろこういうことをやっているということが浸透していくということではなかろうかと思っております。浸透していきましたならば、まさに先生おっしゃいましたように、実際に行きたい方を御紹介して、そこで受け皿でどういうことをやりたい、畜産をやりたいのか稲作をやりたいのかとか、そういう具体的な御相談が始まるんじゃないかと思っております。  いずれにしましても、ことしからやっている事業でございまして、経験あるいは試行錯誤を重ねながら、今いただきましたお話も十分頭の中に入れさせていただいて充実をしていきたい、そういうふうに考えております。
  97. 風間昶

    ○風間昶君 次に、農地法と農協法について若干伺いたいんです。  九八年度の農業白書の原案によれば、農村の振興と農業の有する多面的機能の発揮という項目が第四章に盛り込まれておりますけれども、きのう国会に地方分権一括法案が提出されましたね。その中にも、農地法の農地の権利移転に対する許可事務や農業協同組合法に基づく信用事業の監督が機関委任事務から法定受託事務になっているわけでありますけれども、農地法について二つ、簡明に答えていただきたいんです。  農地の規模拡大に農地の集積が必要だと、優良農地をそういう形で確保するということは当然そうなんですけれども、農家の方々にその許可基準を緩やかにしていくべきだというふうに私は思う。もう一方では、農業生産法人の方に対しては活性化を図るために要件の見直しが必要だというふうに農業白書の原案の中にもあるわけですけれども問題意識が提示されているわけでありますから、農地法で農地の取得を農業生産法人に限ってもその設立要件を今度緩和し過ぎると、逆に私は実効性が期待できないのではないかと思うから、農家個人には優良農地の確保という観点から許可基準を緩やかにして、農業生産法人にはきちっとある意味では制限条項を設けていくことが私は農地保有に関して大事な観点じゃないかと思うので、この二点について構造改善局から。  そして次に、農協法について。  新聞記事でありますけれども、経営の困難になったJAを吸収するJAうおづに貯金保険機構から資金援助がなされるというふうに出ておりました。前回質問でも指摘しましたけれども、要するにこれは破綻処理の枠組みができているから行われたのであって、同じような枠組みは都道府県信連が破綻した場合に備えてぜひ必要じゃないかと思うんです。  この間も指摘しましたように、農林中金と信連との合併に道を開く法律をつくったんだけれども、信連の経営不安に対する深刻な危機意識があったから、系統は全力を挙げて信連の立て直しに奔走されたことは敬意を表するわけです。しかし、そのことは直ちに破綻処理の枠組みが要らないということにはならないのであって、本当に各信連の状況を見てみると厳しいところもあるわけですから、実際に信連が破綻したときの処理に対する枠組みの整備について、公的資金導入の部分に関してもどんな形のものが望ましいのかということは農水省として検討しておく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、この三つについてお伺いしたい。  それで質問を終わります。
  98. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 前段、農地移動についての御指摘でありますけれども、基本的には私どもも同意見でございます。  ただ、やはり農地法のもとでの耕作者主義という理念、この基本理念に沿った原則というのは貫徹をしなければなりませんので、この原則との整合性という意味での限度の中でチェックをしていきたいと思っております。  御指摘ありましたように、農地の流動化はこれからまだまだ進めなければなりませんので、具体的な流動化の目標を立てるなどして流動化の推進に当たりたいと思いますが、同時に、緩和しても差し支えない規制があるならば、それらについては緩和することを検討したいと思っております。具体的に申し上げますと、例えば農地移動についての下限面積という仕組みがございますけれども、この運用について極力、都道府県知事におろすというふうなことを考えたいと思っております。  法人問題につきましては御指摘のとおりでございまして、投機目的あるいは地域あるいは家族経営との調和という問題に十分配慮いたしまして、懸念を払拭するための措置につき現在検討中でございます。
  99. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 信連の破綻処理の枠組みについての御質問でございますが、これまでは、信連が経営困難に陥りました場合にはその信連の自助努力による対応、あるいはまた傘下の農協を初めとする県内農協系統による支援とか、さらにはまた系統全体としての支援というようなことで対応してきておりまして、今後も基本的にはこういった対応で経営の健全化が図られるものと考えております。  ただ、先般来も御指摘ございましたように、金融ビッグバンに向けまして、他の金融機関との競争がさらに激化し経営環境が厳しくなるという中で、現在の貯金保険制度なり相互援助制度、これを中心にしました農協の貯金者保護制度に加えまして、信連を含めた系統金融機関全体としてのセーフティーネットが必要じゃないか、そういう指摘もされているところでございます。そういった御指摘も十分踏まえながら、今後さらに検討させていただきたいと考えております。
  100. 風間昶

    ○風間昶君 終わります。
  101. 野間赳

    委員長野間赳君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  102. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  103. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は、この前の二十六日の参考人質疑で、四十二年間農業をやってこられた方の発言に大変胸を打たれました。その人の発言は、三者合意はまさに寝耳に水だった、今現場では米価の暴落と減反の拡大で後継者は生まれない、農家は現場で悲鳴を上げている、こういう発言がありました。さらに、関税化になれば関税引き下げは必至であり、仮に二〇〇〇年まで高関税が維持できてもそれ以降は政府交渉次第、こういうことです。また、参考人の全中の常務さんも保証は十分でないが闘っていくと、こういう発言にとどまりました。  そういう点で、やはり農家にとっては不安が残ります。後継者は、二、三年でなく長期的展望の上に立って経営を継ぐかそれとも別の道を選ぶか、こういう判断をつけるわけですから、関税化によって農家の後継者が生まれる条件を一層悪くするのではないか、まずその点についてお聞きをいたします。
  104. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の関税化の最大の目的は、国内生産あるいは消費者に対する安定供給をより安定的なものにする、つまり関税化措置によりまして義務的に入ってくるMA米の数量の増加が半分で済むということ、これは国内での米の全体の位置づけにおいてプラスになるというふうに判断をしたところであります。三年余りを経過したMA米の動向等、いろいろと我々もデータの蓄積をもとに、またいろいろな方々の御議論も踏まえ判断をしたところでございます。  さらには、特例措置から原則の関税化ということに移行することによりまして、次期交渉に向かいましてもより有利なといいましょうか、よりよいポジションに移ることができるということも含めまして、総合的に関税化をすることによって生産者に影響を与えず、また国内関税化によるお米が入ってくる予想はできにくい、困難であるという判断のもとで今回の措置をとったところでございます。
  105. 須藤美也子

    須藤美也子君 ミニマムアクセスについては後で質問いたしますけれども、最大の国益に関する選択だということで関税化に切りかえる、そういう答弁をこの前も予算委員会でいただきました。  そういう中で、先ほどどなたかもおっしゃいましたけれども、今のペースで行っても、仮に七年ぐらいたつとアメリカや中国の上質米と日本の国産米が競合する、そういう試算もされているわけです。関税化したら、中長期的に見た場合、必ずそういう方向に行くのではありませんか。
  106. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほどの御質問は、毎年二・五%ずつ関税相当量を下げていった場合には、そのスピードで行くならば二〇〇六年にはどうなりますという御質問でございましたが、あくまでも二〇〇一年以降のルールにつきましてはこれから各国と協議をしていくわけでございます。  その前提となりました御議論というのは、現行の農業協定に基づき一九九五年から二〇〇〇年までは六年かけて一五%、つまり毎年二・五%ずつ引き下げていかなければいけないということがそのまま続いた場合という仮定での御質問でございまして、我々としてはそういう仮定を前提とした御質問にはお答えすることができないということを先ほど申し述べさせていただいたところでございます。
  107. 須藤美也子

    須藤美也子君 それでは、逆に、これから中長期的に高関税を維持できる、相手があるから交渉次第ということではありましょうが、それが保証できる展望というのはあるんですか。
  108. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 何をもって高関税と言うかはいろいろと議論があろうかと思いますが、関税率あるいは関税相当量あるいはその他のいろいろな手法も含めまして、総合的に国内生産に対して影響を与えない、そしてまた国内需給にも影響を与えないというための努力を全力を挙げてやっていきたいというふうに考えております。  保証はあるかということにつきましては、これは交渉でございまして、相手のあることでありますし、そういう中で最大限、今申し上げたようなことが実現できるように国民的な合意のもとで努力をしてまいるということを申し上げさせていただきます。
  109. 須藤美也子

    須藤美也子君 先の保証もなければ、交渉次第、そういう状況の中で農民の皆さんは、この間の参考人発言もそうでしたけれども、これまでの農産物関税化というのは、どんどん下がる、そしてついには日本の農畜産物と競合してだめになってしまった、そういう経過があるわけです。  そういうことを見た場合に、今でさえ後継者がいないのに、こういう状況のもとで農村に後継者が生まれるのかどうか、ここが非常に心配であります。その点はどうですか。
  110. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 農業を継ぐ方々の育成といいましょうか、継いでいただく方が存在していただくということは農政上も極めて大事な問題だと理解をしております。  したがいまして、我々といたしましてもさまざまな新規就農あるいは後継者育成のための施策を講じておるところでございますし、一時期に比べまして新規学卒者あるいは若年層の新規就農者も増加傾向にございます。そういう状況の流れをさらに守り推進していくことによりまして、日本農業あるいはまた日本農産物生産というものを守り、維持発展させていきたいというふうに考えております。
  111. 須藤美也子

    須藤美也子君 それでは、さきに自由化いたしました肉牛農家の場合、自由化以降、後継者はどのくらいふえていますか。
  112. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 肉用牛の飼養農家戸数の状況でございますけれども、高齢化などによりまして小規模な繁殖経営を中心に長期的に減少傾向で推移しております。平成三年には二十二万一千戸あったわけでございますが、これが平成十年には十三万三千戸、こういう状況になっております。年率では七%の減少ということでございまして、このうち十一万戸、八三%が繁殖経営になっている、こういう状況でございます。  しかしながら、肉用牛の飼養頭数につきましては、飼養農家の経営規模の拡大によりましてほぼ横ばいで推移しております。平成三年が二百八十万五千頭であったものが、平成十年の二月一日現在で二百八十四万八千頭、年率〇・二%でふえてきている、こういう状況にございます。  なお、後継者の確保状況でございますけれども、全肉牛農家を対象に調査した調査結果はございませんが、農業構造動態調査をもとにいたしまして全体の状況を試算してみますと、経営主、主たる経営者でございますけれども、経営主が五十歳未満または五十歳以上で後継者が確保されている経営の割合でございますけれども、これは肉用牛経営のうちいわゆる単一経営、これは肉用牛にかかわります販売金額がこの農家の総販売金額の八割以上を占めている経営体でございますけれども、この経営体が三万二千戸弱ございます。この三万二千戸弱の肉用牛経営の単一経営におきます後継者の確保状況は六三%程度、こういう状況にございます。  それから、もう少し丁寧な調査結果でございますけれども、先ほど申し上げました、八三%が繁殖経営になっているわけでございますけれども、この繁殖経営におきます後継者の確保状況、これを平成八年度の調査結果をもとに試算してみますと、この平成八年度の調査というのは比較的丁寧に調査をされているものですから規模別にも見られるという意味で、この平成八年度の調査結果をもとに試算してみますと、後継者の確保状況は四二%になっております。しかしながら、飼養規模が大きい層ほどその割合が高くなっておりまして、二十頭以上層では七割から九割、こういう状況にございます。  したがいまして、私どもといたしましては、先ほど大臣からの御答弁にもありましたように、いずれにいたしましても、後継者の確保であるとか担い手の確保ということは畜産行政上も最大の課題でございますので、しっかりとした規模の大きい経営体を育成する方向であらゆる政策を展開していきたい、こう考えておるところでございます。
  113. 須藤美也子

    須藤美也子君 丁寧に御答弁いただいたわけですけれども、私がお聞きしたのは後継者の問題であります。ですから、後継者が六三%というのは、ここだけ言うとこれだけで一時間もかかると思いますが、その問題でありませんので、そこはもう少し詳しいデータを資料として私の方にいただきたいと思います。  そこで、米作農家の現状をどう見ているのか。つまり、自由化した肉牛の場合、これはこの前、本会議でも申し上げましたけれども、戸数としては九万何千戸減っているわけです。ですから、そういう点で、減った中での恐らく後継者のパーセンテージの算定だと思うんですけれども、米作農家の現状をどう分析しているのか。  つまり、規模拡大をした農家ほど大変な状況だということは御承知のとおりだと思います。米価暴落で、あるいはその上、土地改良負担で物すごい負債を抱えて離農する農家がふえている。関税化は今ぎりぎりのところで踏ん張っている農家にさらに追い打ちをかけるものではないでしょうか。  これから十年、十五年と負担を払わなければならない農家にとって、先が見えない。関税化になったらどうなるのか、先が見えない。こういう農家経営にとっては本当につらいことだと思うんですが、この点はどうお考えでしょうか。大臣、どうですか。
  114. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 米作農家がいろんないい経営あるいは苦しい経営、それぞれあることは我々も承知をしております。しかし、今回の関税化の措置とは直接的には関係ない、影響を与えないという判断関税化判断に踏み切ったわけでございます。  また、先生指摘の、五年後、十年後に向けての将来展望はということでございますが、一つには、先ほどから申し上げているように、次期交渉において我が国国益生産者サイドにおいてもきっちりと守っていくということが一つ。そして、それと一体のものとして、この後、御審議をいただきます新しい基本法におきまして、将来展望をきちっと持てるような、基本計画に基づく中期的な生産目標等の問題等々を踏まえまして、国内対策で将来展望が持てるようないろいろな諸施策をこれからも一層講じることによって、先生の御懸念のないような農政を推進してまいりたいと考えております。
  115. 須藤美也子

    須藤美也子君 参考人の方は、三者合意が寝耳に水と、合意を認めていないわけです、関税化の合意に対して。国民関税化に対して多くの意見を持っています。関税化をしてから国民合意を図ると、先ほど来の御答弁ではそうでしたけれども、そういうのでなくて、しかも大臣は、その合意は国会であり専門家でありマスコミであると。考えてみれば、一番現場で働いている生産者の意見を聞かないで、あるいは消費者意見を聞かないで、合意を得ないでこれをやるということは後に禍根を残し、しかも日本農業に相当な混乱をもたらすものだ、こういうふうに私は考えざるを得ません。  さらに、先日、私は第六十五条について申し上げました。この第六十五条の「国際約束」、これはあのときのわずかな時間でしたので、今回、再度質問させていただくわけですが、国際約束が確定していないまま「国際約束」という国内法の条文が生きるのか、こういう法形式上の問題点を指摘したわけです。  既に関税化をした麦の場合、これはどうなっているか、麦の場合は同じなんです。国際約束された関税相当量を支払えばだれでも輸入を行うことができる。その場合、関税相当量の一部は納付金として政府に納付され、それ以外は関税として徴収することとされたと、これは麦の場合と同じです。そうしますと、この国際約束というのは関税相当量、これがあって初めてこの条文が生きるのではないですか。関税相当量が初めにあって、協定に基づく譲許表で麦の場合は定められているわけですけれども、この譲許表がまだ定められていない。  したがって、米の場合、譲許表が確定していないもとではこの条文は宙に浮いたものになっていると考えざるを得ないんですけれども、これはどうですか。
  116. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 麦と米とを比較してお話がございましたので、私の方から御説明させていただきます。  今おっしゃいましたのは、麦につきましては食糧法第七十条ということだろうと思います。これに麦の納付金規定がございます。  麦等の関税化の際の二次税率の算定につきましては、ウルグアイ・ラウンド農業合意を行う際に、締約国間でその算定方法について認識されました共通の考え方に基づきまして行われております。その結果を、算定された二次税率が具体的に今おっしゃいました譲許表というところに記載されています。その内容につきましては、後で申し上げますが、今回の米の関税措置への切りかえに当たっての二次税率の算定方法について規定いたしております農業協定附属書五の付録と内容的には同じでございます。麦の場合にはこの農業協定附属書五に相当する規定はございませんが、今申し上げたような形での関係国間の合意、了解という形で整理されております。  したがいまして、食糧法七十条の「国際約束」というのは、農業協定譲許表も含めたWTO協定全体が該当すると思っております。  米につきましても基本的には同じでございますが、麦と一点違いますのは、この間も大臣から御答弁申し上げましたように、農業協定におきまして二次税率の算定方法が明確に規定されております。その明確な規定に基づきまして、二次税率の一部を構成します納付金につきましてもこの農業協定の規定に従った上で実際の枠は農林水産大臣が告示において定めるべきことというふうになっておりますので、六十五条に言いますところの「国際約束」というのは直接的には農業協定ということで大臣から御説明したところでございます。
  117. 須藤美也子

    須藤美也子君 せんだってもそういう納付金の問題等についてお答えいただきましたけれども外務省の方にお尋ねします。  この譲許表、これは国際約束でしょう。国際約束とは譲許表のことを言うんでしょう。
  118. 小松一郎

    政府委員(小松一郎君) お答え申し上げます。  「国際約束」という用語の意味でございますが、これは広い意味での条約という意味で御理解をいただければと思います。定義的に申し上げれば、一般に二つ以上の国際法主体の間に国際法上の権利義務関係を設定する国際的な合意、国際法主体と申しますのは国家及び国際機関というふうに御理解をいただければと思います。  なぜこの「国際約束」という言葉を使うかということでございますが、例えば形式的な観点からはその表題が日米安保条約というように条約という名前がついているものもございますし、国際合意もございますし、協定というものもございますし、議定書というようなものもございます。そういった一番狭い意味での条約という意味と区別をするために、まずこの「国際約束」という言葉を使ってございます。  また、我が国国内法上、条約の締結手続につきまして、憲法第七十三条三号でございますが、「内閣は、」「左の事務を行ふ。」というところで「条約を締結すること。」というのが「内閣の事務」としてございまして、「但し、事前に、時宜によつては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」と、ここで言っております「条約」というのは、この締結に当たって国会の御承認を必要とする条約、こういう意味でございます。そういうもの以外に、現存の法令の範囲内で締結をするような広い意味での国際的な合意というのもあるわけでございまして、これは憲法でいえば七十三条二号の「外交関係を処理すること。」と、こういうことで読んでいるわけでございます。  そういう意味で、国際約束というのは日本国内法上そういった狭い意味での条約と区別をする広い意味での条約という意味で使ってございまして、譲許表も国際約束の一つでございますが、今、農水省の方から御答弁がございましたように、農業協定を含むWTO協定全体、これも国際約束でございます。
  119. 須藤美也子

    須藤美也子君 何か、安保条約まで始まって、いろいろ長い答弁をいただいたわけですけれども、つまり国際約束の中には譲許表が入るわけでしょう。
  120. 小松一郎

    政府委員(小松一郎君) そのとおりでございます。
  121. 須藤美也子

    須藤美也子君 そうでなければ、譲許表、国際条約として国会承認する必要はないからですよ、国内法で通るのであれば。そういうことではないんでしょう。
  122. 小松一郎

    政府委員(小松一郎君) 繰り返し今までの審議でも政府側から答弁しておりますように、この米の貿易に関する我が国が負っております条約、広い意味での条約、国際約束上の権利義務というものは、譲許表だけに限るわけではございませんで、農業協定を含みますWTO協定、これは全体がそれに該当するわけでございます。  そこで、累次御答弁をしておりますように、特例措置を停止いたしまして関税化をするというときの条件が農業協定の附属書に書いてございますが……
  123. 須藤美也子

    須藤美也子君 時間がありませんので、それ以上はいいです。わかりました。  つまり、正式な修正手続をしない関税化は不正常であると。最初は、マラケシュ設立協定と十五分野にわたる附属書、そして譲許表、三点セットで一括方式的にこれを承認したわけです。今回は農業協定によって、国内法があればいいんだ、そういう点では不正常だから国会承認は必要だ、だからWTOから確認書が来れば国会でその修正手続を行う、こういうことを先ほどから繰り返し答弁されたわけですから、それ以上あなたの答弁は必要ないわけです。  そういう点では、国内法だけでやると。つまり、譲許表国会承認事項なんだと、そういうことをやる前に国内法でやるということ自体が不正常ではないか、手続上も私は問題があると、こういうことを今までいろいろ言われましたので、この問題は非常に重要な問題ですから、このことを指摘したいんですが、大臣、どうですか。
  124. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほどから食糧庁並びに外務省からお答えしておりますように、食糧法上、六十五条とか七十条とかありますが、国際約束というのは、WTO協定あるいはガットの協定、さらには国際的な合意も含めて「国際約束」という言葉が適用されるわけであります。  先生質問の今回の関税化措置というものは、WTO農業協定の附属書五並びにその付録に基づいてきちっと関税化措置、そしてその関税相当量というものが決められておるわけでございまして、それについてWTOに通知をし、また異議等を申し立てております四カ国・地域につきましてもその関税化措置そのものについては何ら問題はないということすら言っておるわけでございます。したがいまして、今回のこの関税化手続というのは農業協定に基づいてやれるものである、実質的にはそれでもって完結するものであるということでございますが、しかしその関税相当量というものを国際的にきちっと完結させるためには譲許表変更手続というものが一方では必要であるわけでございます。  実態論としては、四月一日から、我が国WTOに通知したルールに基づいて仮にどこかの国が米を輸出、あるいは日本輸入する場合には、三百五十一円十七銭を払えば輸入することができるわけでございまして、これは協定上何ら問題のないことでございますが、一方では、譲許表修正というものによってこの一連の手続が完結するわけでございまして、その場合の譲許表変更手続というものは、国際協定の内容の変更でございますから、憲法上、国会の御承認をいただくということでございます。しかし、これは四月一日からの協定上のルールに基づく関税化並びに関税相当量の張り方等の有効性に対して影響を与えるものではないということでございます。
  125. 須藤美也子

    須藤美也子君 四月一日からもう関税化する、国内法でやる、こういうところに私は無理があるのではないかと。こういう点では、私の方の立場からすれば、それは私だけでなく農民の立場生産者の立場消費者立場からすれば、関税化については、無理をして四月一日からやるということに国際的にもいろいろな混乱が出てきているのではないかと。つまり、日本立場を一層悪くしている。異議申し立てによって、日本関税が余りにも高い、現状の農業協定の税率の定め方でも高くなる、こういう印象を世界に与えたのではないか。輸出国の攻勢を招いたのではないか。アメリカも、異議申し立てをしなかったことを新たな関税引き下げとして輸出増大のてこに使おうとしています。二十六日、アメリカの農務省は対日輸出可能な関税水準を試算しております。日本は太刀打ちできない、一キロ当たり百七十九円以下、こういう試算結果を発表いたしました。  こういう点で、一斉に次期交渉と言いますけれども関税化問題に対して日本が攻勢を受けるのではないか、こういう懸念を私はしているわけです。ですから、二国間協議も含めて、三百五十一円、来年三百四十一円、これさえ保証できるのかどうか、この点も心配であります。この点と、さらに二〇〇一年以降の関税引き下げ、これは交渉いかんと言っておりますが、いろいろなマスコミ等の報道によれば、既に輸出国だけでなく、国内消費者ども中長期的な視点から将来の関税引き下げを視野に入れた米ビジネスの布石づくりが始まっていると。  国民合意もなく、余りにもこういう無理なやり方がこういう状況を招いている。結局は、日本関税がどんどん下げられて一層困難な状況に追い詰められるのではないか、こういう問題についてはどうですか。
  126. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) たしか先生は以前、アメリカ政府がアメリカの議会に対して出した報告書を引用されて、アメリカが異議申し立てをするのは間違いないのではないかというような御趣旨の質問をされたと記憶しております。  今回、アメリカの試算というものを引用されましたが、これは我々としては正式に通知を受けているものでもございませんし、あくまでも新聞報道でございますから、我が国としてはそれについて何のコメントもできないというか、する必要もないのではないかと思います。我が国としては、アメリカが一切今回異議申し立てをしなかったということをもって事実として受けとめておるところでございます。  いずれにいたしましても、三百五十一円十七銭あるいは三百四十一円という数字は、我が国として農業協定に基づいて純粋に忠実に計算して出された結果でありまして、二〇〇一年以降につきましても我が国国益、特にこの場合には生産者サイドの国益、さらには消費者サイド、需給も含めた国益も含めまして、その他の多面的ないろいろな機能も含めまして、我が国国益を守っていくということで次期交渉に臨んでいきたいという決意を重ねて申し上げます。
  127. 須藤美也子

    須藤美也子君 時間がなくなりましたので、大臣次期交渉ということを言いましたので、次期交渉について申し上げたいと思います。  さきの委員会同僚の大沢議員に、米を自由化から外せなどとは言えないと、こう言っておりました。  前回交渉では、みんな例外なき関税化に反対、こういう立場をとったわけですが、それから五年ぐらいたってその考えが変わったのか。どうなんですか。
  128. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 前回は、我が国を含めて数カ国がどうしても関税化できない品目があるということで、結果的には我が国一国という厳しい状況でありましたけれども我が国自身は米については関税化できないということで特例措置選択せざるを得なかったという状況であります。  今回、我が国の現状、そして次期交渉に向かいまして、関税化が我々のルール上与えられた選択肢の中でベストであるということで今回の関税化措置に踏み切ろうとしておるわけでございますけれども次期交渉に当たりましては、あくまでも改革過程の継続という前提がございますので、その前提、つまり関税化というものを前提にして、しかし関税化の中で我が国農業を守っていくために、先ほども申し上げましたように、どのような数字あるいはまた非貿易的な関心事項、さらには輸出国輸入国とのアンバランスの是正といったさまざまな方面から、総合的に我が国国益、つまり農業生産活動、消費者需給、こういった問題も含めまして頑張っていきたいというふうに決意をしておるところでございます。
  129. 須藤美也子

    須藤美也子君 日本農業を守るためにそういう決意をいただいたわけですけれども、その決意の上に立って、食料安全保障と農業の持つ多面的機能、次期交渉の中では、日本主張して前文に非貿易関心事項、こういうものを入れさせたというようなこともこの前、答弁なさいましたので、そういう立場で、協定全部をつくりかえなくとも、かなめは農業協定第四条の二、関税化措置の中で附属書五に定めてある特例措置、この対象外になる問題があるわけです。  ここで大臣にお聞きいたしますが、仮に附属書の除外措置の中に、その国の基礎的食料需給の根幹をなすもの、我が国でいえば米は日本農業の背骨とも言われている需給の根幹をなす、日本農業の根幹をなす米であります。これを条約の形式上では自由化から外すことができるのではないか、形式上ですよ。大臣があれであれば外務省、長く答弁されると困るんですけれども、形式上の問題で聞いているんです。どうですか。
  130. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お尋ねは、形式的にどうかということでございますけれども、そもそも次期農業交渉についての考え方については、外務省政府の一部として一体となって行っておりますので、今、農水大臣がお答えになりましたそういう基本方針に従って臨む所存でございますけれども、包括的な関税化というのは農業協定の原則でございまして、農業協定の第二十条に基づく次期交渉というのは基本的には改革過程の継続のためにある、そういうためのものであるということでございます。  そのような現実のもとで新たな関税化の例外、そういったことを設けよということについてWTOの多数の加盟国の合意を得ることは難しいということは言わざるを得ません。したがいまして、基本的に次期交渉については先ほど来の立場で臨んでいくということでございます。
  131. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は、そういう除外措置に米を入れられないか、こういうことを大臣に申し上げたいと思います。次期交渉の中でも、日本の米、農業を守るためにはこれは必要だ、これをぜひ主張していただきたい。  また、附属書二には、国内助成の削減に関する、先ほどもどなたか質問されたと思いますが、この約束の対象からの除外の根拠が定められています。アジアのように、特に日本のように、手間暇かけて水田を維持する、これが環境、国土の保全にとって大きな役割を果たしています。しかも、水田という特殊な条件もあります。その水田の維持のために、例えば身銭を切って飼料米をつくったり棚田を保全したり、いろんなボランティア的な運動もしながら、自治体の支援もいただきながら維持しているわけです。  この農業生産を保障する国内助成は当然認められてしかるべきだと思います。この点で、次期交渉で、こういう水田を守る、環境保全、国土保全のために水田維持をするためのそういう助成は除外する、助成を削減から除外させる、こういう点で主張していただきたいと思うんですが、その点はどうですか。
  132. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生の米に対する今の御認識は、私も事実関係は同じ認識を持っております。  だからこそ、WTO協定次期交渉の場で各国に対して我が国主張をし、そしてその結果として我が国農業あるいは農村あるいは国土を守り、消費者を守っていく、食料安定供給をしていきたいということでございまして、そういう意味での非貿易関心事項、特例措置と言うとちょっとMAと混同されますけれども我が国主張すべき、そしてまた諸外国の理解が得られるような主張というものを大いにWTO次期交渉の場でやっていきたいと考えております。特例だから米だけWTOから除けということは、我々としては考えておりません。
  133. 須藤美也子

    須藤美也子君 水田についてはどうですか。
  134. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 水田につきましても、環境あるいは国土保全、水源涵養等々、多面的な機能があるわけでございますから、この重要性というものも我が国固有の立場として各国理解を得るべく努力をしていきたいと考えております。
  135. 須藤美也子

    須藤美也子君 時間ですので、もういっぱいあったんですけれども、終わります。
  136. 谷本巍

    ○谷本巍君 去る三月二十四日に本会議質問をさせていただきました。その際、いろいろ答弁をいただいておるのでありますが、改めてここで確認をしたい点、それからまた直接お答えをいただくことができなかった部分について質問させていただきたいと存じます。  初めに伺いたいと思いますのは、私は、稲作を守ることの重要さについて、私自身考え方の一端を示しながら総理の見解を求めました。改めてここでもう一度その文章を読んでおきますというと、  かつて日本列島の平野部の多くは人の住めないところでありました。急峻な山が多く、雨が季節的に集中することから、平場が常襲災害地であったためであります。平野部に多くの人が住めるようになったのは、私たちの先祖が、米をつくる水を確保するため、営々と山に木を植え、川を整え、そして水田農業を維持するための水の共同管理等々を通じ、相互扶助的地域社会を形成してきたことにあります。この国土が生んだ木を使い、米を主食とすることが国土と環境を守る基礎であり、日本の文化が米と木の文化と言われるようになったのも実にそのためであります。 ということを申し上げて、総理の見解を求めたのでありますが、総理の見解は、「米は国民の主食であり、稲作は我が国農業の基幹であることは何ら変わりないところでございます。」という答弁でありました。米は国民の主食で、稲作は農業の基幹だと。どうも、米というのを単なる米づくりの産業としかとらえていないということであります。  これが、政府のいわば公式的な、統一的な見解でありましょうか。
  137. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の谷本先生の御質問に対して総理が、米は主食、稲作は基幹というのは、総理も十分認識しているとは思いますけれども、一面的な表現だろうと思います。  米は、もちろんエネルギー源としての主食であると同時に、米に関連するいろいろな文化的、歴史的あるいは心にかかわる多面的な機能がございますし、また米づくりに関しましては、先ほどもお答え申し上げましたように、水田の果たす役割、さらには米を中心とする農村の人的結合体の歴史的、あるいはまたいろいろな意味でのいい日本文化の一つの発信源としての役割等々、もう言い尽くせば時間がございませんので、私自身もいろんな思いがございます。  それぐらいに私自身も思っておるわけでございますし、まして総理は群馬県の農山村部の御出身でございますから、十分その点は理解した上で、直接的に先生にはそのように答弁したものというふうに理解をしております。
  138. 谷本巍

    ○谷本巍君 私、この総理の答弁になぜこだわるのか。本会議場で時間があれば再質問したかったです。それほど私はショックを受けた。  あの総理の答弁を聞いていて、私、思い出しましたのは、ウルグアイ・ラウンドの当時、経団連に行って役員の皆さんとお会いして激論をやりました。このときにわかったのは、経団連の皆さんは稲作を米づくりの産業と思い込んでいるということであります。したがって、同じ物づくりの他の工業と同列に受けとめる。でありますから、家族農業が生む、国民の生存にとって必要なさまざまな役割などの評価はとんと出てこない。つまり、直接に金にならぬものの価値は認めたがらぬということを私はそこで発見いたしました、気づきました。  ですから、経団連の皆さんから出てくるのは、それは米は市場開放すべきですよと、そして農地法なんか緩和しちゃって企業が農業に参入できるようにすべきでありますということを言われるんですね。どこに違いがあるかということになってくると、私どもと、今、大臣が答弁された答弁と、総理が答弁された答弁の違い。そして、総理が答弁された答弁というのは、経団連が当時言っていたことと全く同じだったということなんです。ですから、私はこの点に非常にこだわりを感じました。  これから先のこともありますし、そこのところは重々ひとつ留意願いたいし、これから先のこの件に対する取り組みについても極めて基本的な問題、基礎的な問題でありますから、しかも最近は、例えば世界に冠たる日本の中小企業にしたって稲作文明が生み出した中小企業のよさなんじゃないのかという、そういう評価も生まれているんですね。企業文化が米の文化の延長だという見方も出ているんですね。それだけに、ひとつこうした点についてはきちっとしていただきたいということをこの際お願いしておきたいと存じます。よろしいですね。  それから、次に伺いたいのは、次期交渉に臨む基本姿勢についてであります。これも本会議場で申し上げたことであります。  御存じのように、ウルグアイ・ラウンドでの貿易ルールづくりは、例えば輸出補助金の存続に見るように、輸出国のごり押しが目立ちました。そして、そのごり押しというのが過剰問題解決との絡み、こういう点がかなり濃くありました。私も、例えばECのマクシャリーですか、あの人なんかと激論を闘わした中でそのことを痛切に今なお記憶しております。  次期交渉は、過剰時代じゃなくて不足時代を迎えてのルールづくりになるわけであります。ウルグアイ・ラウンドの場合と一変するような状況になってくるわけであります。したがいまして、この変化を踏まえて世界の食料問題解決に貢献し得るルールづくりに力を注ぐべきではないかと思います。  本会議場で大臣からいただいた答弁は、三つの論点、つまり基本姿勢でなくて基本方針について御説明がございました。改めてここで私が質問した点についての大臣考え方をひとつお聞かせいただきたい。
  139. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 次期交渉に当たりましては、何度もこの場で申し上げておりますが、国内生産の確保、それから安定的な食料の供給、さらには農業の果たす多面的な役割、つまりそこには、先ほど先生からも御指摘あった、私も若干答弁申し上げました国土の保全から文化、歴史、さらには教育に至るまでいろいろな機能があるわけでございます。そしてまた、我が国には我が国の自然条件があり、世界にはそれぞれ自然条件があるということ。  それからもう一つは、世界の中で食料輸出国というのはごく限られた数カ国だろうと思うのでありますけれども、前交渉におきましては、その数カ国に極めて有利な形のアンバランスな協定ができてしまった。  先生指摘のように、先日、当委員会でも御指摘いただきましたが、過剰時代の過剰処理ルールのような現協定から長期的な人口と食料のアンバランスに基づく不足時代対応するルール、これはまさに地球的な意味で私は最も大事なことだろうというふうに思うわけでございます。  八〇年代の初めころには、バターが余ったとかワインがやたらと余ってしまったとかというようなことで輸出競争みたいなことがEU、アメリカの間でありましたけれども、幸いにしてEUにも我が国主張の一部分理解いただいておりますし、ほかの国々にも我が国主張が地球的な意味でも、またそれぞれの国にとっても意味のあることであるということで御理解を得つつありますし、その努力を引き続きしていかなければならないと思っております。  今回も、何としてもごく一部の輸出国の事情、しかもそれは都合の悪いときには輸出しなくてもいいんだという、極めて都合のいいといいましょうか、非常にアンバランスなこの協定を直していくということで、繰り返しになりますけれども、多面的な機能あるいは安定的な国内生産需給を補完する意味での貿易という位置づけを我が国としてはとりつつ、全体的には長期的な食料不足というものに対応し得るような協定というものをつくっていくための交渉に臨むための国民議論をこれから先生の御指摘のようなことを初めといたしましていただいて、次期交渉に臨んでいきたいと考えております。
  140. 谷本巍

    ○谷本巍君 それから、大臣、次の交渉農業協定第二十条の言う改革過程の継続という性格を持つ交渉となるとされておるのでありますが、この改革過程の継続という点について、どういう取り決めをなさるかということについて伺いたいと思うんです。  過剰期の時代につくられたルールで、不足期の状況にさらに過剰期のルールを徹底していく形というのは、これは少々、今申し上げたようにおかしいことなんじゃないのかというぐあいに私は思います。  としますというと、この改革過程の継続ということについては、やっぱり世界の食料事情の変化に伴ったそれなりの扱い、つまり一定の変更的な扱いがあってしかるべきなのじゃないかと思うんですが、大臣、その点いかがでしょうか。
  141. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現行協定が輸出国に有利なアンバランスな協定である、しかもさらに輸出国が自分たちの輸出に有利なようにするというのは極めて不合理なことと言わざるを得ません。  先ほどから、先生も私も多分共通であろう認識は、世界的な人口と食料とのアンバランスのギャップをどう埋めていくのかということでありますが、現に片一方では八億数千万人と言われている飢餓人口があって、片一方では輸出に非常に熱心というか、強引な国々がある。この関係がどういうことになるかというと、商売では成り立たないから、片一方では買いたくても買えない、片一方では売りたくても売れない、だから日本よ、お金はあるんだからもっと買いなさいと、こういうことになるんだろうと思うわけであります。こういうことでは、やはり地球的な意味での人類共生とかみんなで幸せになりましょうという、特に先進国が言っておるような主張と現実とは違うというふうに言わざるを得ません。  そういう意味で、我が国も、新しい基本法あるいは次期交渉におきましても、御議論をいただいた上でございますけれども日本を含めた世界の先進国あるいは食料生産に余力のある国々がどうやって地球的な規模で食料安定供給のために貢献できるかということもひとつ議論に入れていきますならば、さらに輸出国に有利なような協定づくりになるということには決してならないであろうという信念で交渉に臨んでいきたいと考えております。
  142. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、次期交渉の三つの論点、このうちの第一の問題を中心に若干伺ってまいりたいと思います。  初めに、農業の持つ多面的機能の重要性、この重要性を国境措置や国内助成等にどう反映させるかということであります。  御存じのように、これまでの経済学というのは市場経済のみを対象としてまいりました。つまり、貨幣化されないものは対象外。ところが、今度私どもが取り上げていくそれというのは、貨幣化されないものをどう見るかという議論を吹っかけていくわけでありますから、非常に難しい。しかし、非常に難しいけれども、これはやり抜かなきゃなりません。これはひとり日本国民のためだけじゃない、地球上の人類のために私はやり抜かなきゃならぬ問題だろうと思います。  そういう点で、この多面的機能というのを農業生産問題や国境措置、これにどう反映させるのか、どんな構想をお持ちなのか、具体的にひとつ考え方を述べていただけませんか。
  143. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 次期のWTO交渉におきまして農業の多面的な機能、具体的には国土保全とか自然環境の保全、さらにはまた地域社会の維持、活性化といった面において期待されます機能をどう貿易ルールとの関係において評価していくか、大変重要な論点と私ども考えております。  今後の次期交渉に向けての具体的な方針につきましては、これからいろいろ関係各方面の御議論もいただきながら深めていきたいというふうに考えておりますけれども、基本的にはこういったいわゆる非貿易関心事項の交渉への反映につきましては、例えば緑の政策の範囲等、国内助成のあり方あるいは国境措置に対する規律のあり方につきまして、国内農業生産に支障が出ないよう農業の多面的機能等の必要性に十分配慮することや、あるいはまた食料安定供給の確保のために輸出規制、輸出補助金等に対しても適切な規律を課することといったことも含めて、今後検討を深めていきたいと考えております。
  144. 谷本巍

    ○谷本巍君 どうも今の答弁、ああそうですかというふうには私の気持ちはとても持てません。いいですか。こういうことが考えられます、ああいうことが考えられますと、どんどん出さなきゃだめなんです。国民的に論議を起こしていきましょうといったって、あなたの方の側がそういう具体的な問題提起をしなきゃ論議は出てこないんです。  それでは、食料安全保障の場合はどうですか。
  145. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 食料安全保障につきましても、非貿易関心事項の重要な一要素としまして、そして国境措置のルール化等の関係で問題になってこようかと思いますが、例えば輸出国における輸出補助金とか輸出規制をどういうふうに考えていくべきか、これに一定の規制をかけていくべきではないかというような観点から議論をしていきたいと考えております。
  146. 谷本巍

    ○谷本巍君 どうもこれはやっぱり論議になりませんねということを申し上げ、後でまた大臣考え方を伺うようにいたします。  それともう一つ、これは私の側から提案したいのでありますが、この三つの論点を読んでみまして、環境問題を一つの柱というぐあいになぜ立てなかったのかなというふうに私は思いました。  今、WTOを舞台にグローバル化が進んでおります。そういう状況の中でいろいろな問題が出てきた。例えば、労働力の使い捨てが始まった、そこから出てきているのが人間資本の破壊問題だと。それから、市場原理の徹底を通し、家族や地域社会の解体が始まった、社会資本の喪失をどうするかという議論が始まってきました。  何といっても大きいのは、自然という生きた資本が失われつつある、そういう状況が展開され始めたということであります。森林にしてもそうであります。漁業資源もまたしかりであります。土の滅び、水の枯渇、そして水や大気や土の汚染と生態系の破壊という状況が進み始めているということであります。  局長、よろしいですか。農産物貿易の自由化と競争の激化が生むものは何なのか。これは環境負荷の多い低コスト生産、これがやっぱり急ピッチに進みはしないか。これは私だけじゃありません、みんながそういう不安を今感じてきているところであります。この点は輸入国だけじゃないですよ、輸出国についても共通の問題ですよ。それだけに、環境問題をきちっともう一つの柱というふうに位置づけるべきだと思うのだが、その点いかがでしょうか。
  147. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) 環境問題についての御指摘でございます。  私どもとしましては、農業は持続的な生産活動を通じて良好な景観を形成したり、国土保全や水源涵養あるいはまた生態系の保護といったような環境保全上の重要な役割を果たしておるという認識でありまして、こうした機能を貿易とのかかわりにおきましてどういうふうに評価していくか、次期交渉における重要な論点と考えております。  我が国といたしましては、農産物貿易に関する措置とかルールに、環境に配慮した適切な農業生産を行うために特に必要になってくるようなコストとか、あるいはまた農業生産により生じる環境保全上の効用を維持強化していく、こういったことへの配慮を積極的に認めるべきであるというふうな考え方でございます。  ただ、一方で、輸出国サイドにおきましては、こういった議論につきましては、自由貿易こそが資源の効率的な利用を促進する、非効率な資源利用に伴う環境への負荷を減少させることができるんだ、そういう主張もあるわけでございます。そういうふうに国によってかなり立場が違ってくる論点でもございまして、立場は違え、WTO加盟国各国関心も高いテーマでございます。  私どもとしましては、今後、我が国立場に近い諸国との連携も図りながら、我々の主張を最大限最終合意に反映できるように努めていきたいと考えております。
  148. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の先生の御質問をお伺いしていて改めて思いましたのは、何か前回がそうであったという認識を私自身持っておりますので、今回もついついそう思いがちになってしまう、いけないことを先生の御質問で今改めて思い出したというか確認したわけであります。  輸出国側が言ってくることに対して我が国がいろんな理由、今、局長がるる述べたような理由でもって防ぐだけではなくて、輸出国輸入国、特に世界一の輸入国である我が国我が国立場として、輸出国の論理に対して、あるいは輸出国状況に対して、我が国からむしろ積極的に相手に対して批判をしていく、論議を挑んでいく。例えば、先生今御指摘のように、アメリカのカリフォルニアで米をつくるつくるといっても、水管理はどうなっていますかとか、あるいはアメリカでどの程度農地が砂漠化していますかとか、表土が失われていますかとか、そういった面も含めまして、ほかにもいっぱいあるかもしれません。  そういう意味で、我が国は、一部の輸出国から言われる自由貿易という名のもとだけの論理でもって必死になって防御するだけではなくて、輸出国の論理は場合によっては極めて、いろんな原因によってその論理はおかしいんだということをどんどんと積極的に議論をこちらからして、向こうに対して、それに対する対策、対応をさせていかなければいけないということも次期交渉において必要だと思います。  そういうことも含めまして、この場を初めとしていろいろな場で御議論をいただき、次期交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  149. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、外務省さん、お伺いをいたします。私、持ち時間がちょっと詰まってきておりまして、予定どおりの質問ができる状況じゃなくなってきておるのであります。  OECDを舞台に多国間投資協定の協議が進められてまいりました。おととい、外務省の事務当局の皆さんお話を伺いますというと、どうやらそれは成立ということじゃなくて不調になる見通しである、しかしそれにかわる何らかの作業は行われていくであろうと見通されるというお話を伺いました。  そこで、これまでのことについて若干伺いたいのです。  アメリカが提出をいたしました多国間投資協定、これは農業との関係が結構あるんですよ。例えば、外国資本の投資の自由の保障の分野で申し上げますというと、外国資本の土地所有権あるいはまた天然資源の取得権、これを保障しようという方向が出されておりました。  それからまた、外国資本に対する内国民待遇保障の分野では、例えば外国資本が日本農業を始めた場合を仮定しますというと、日本政府なり自治体なりが自国の農業について保護政策的なものをやったとするというと、外国農業にも同時にやらなきゃならぬ。外国農業に対しては、国内農業よりも過保護なものをやった場合にはよろしい、しかしそれ以下のことをやったら外国の企業が日本政府相手取って裁判に付すことができるといったような問題等々が出てくるわけですね。これはえらいことですよ。  しかも、土地問題で申し上げますというと、日本の土地規制は緩い、しかし農地規制は外国と比べても非常に厳しく行われているという状況があります。投資協定論議の中でそういう土地問題というのが議論されたかということは、事務当局に伺いましたら、ないというお答えでありました。どうしてそういうふうな状況であったのか、手短にひとつ教えていただけませんか。
  150. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  OECDの場における多数国間投資協定、この中において御指摘のような農地の問題等がどういうふうに扱われたかでございますけれども、そもそもこの交渉そのものは、今どちらかといえば不調に終わっておりまして、似たような作業は続けますけれども、協定そのものの作業はもう実質的にはOECDの場では実現できないという見通しが強いと思います。  では、過去を振り返ってみましてどういう議論が行われたかと。農業の問題そのものについては議論されているわけではございません。むしろ、先生が御指摘のような内国民待遇、こういった観点から、それぞれの国の規制がより自由化していくような方向で議論されてきたわけでございます。ただ、さはさりながら、各国ともすべて基本的には自由化を目指しつつもそれぞれの国に困難な問題があり得て、その部位については例外として、いわば申告というんでしょうか、出して、それはそういった制度としては認められるという形になっておりました。  したがいまして、例えば農業についてそういったような、いざ最終的な交渉妥結という観点になった場合には日本農業問題、難しい問題を抱えますので、当然、例外ということを求めるとか、そういった方向を考えておったわけでございます。  したがって、要するに今まで行われた交渉の中では、内国民待遇といったような基本的な原則を中心に交渉してきたと。その原則のところであって、いざ最終的な妥結のときには難しい問題については例外を申請するという枠組みができておりましたものですから、そこで個々の問題について深く入ったわけではない、こういうことでございます。
  151. 谷本巍

    ○谷本巍君 続いて、農林省に伺いたいんですが、この多国間投資協定というのが通っていたらどういうことになったのかなということでありますが、これが通りますというと、国や自治体の行っておる経済政策にしましても農業政策にしましても、あるいは環境保全の規制にしましても、すべてが規制緩和の対象になっていきますね。それからまた、WTO農産物貿易交渉の分野で、家族農業の持つ多面的役割や食料安全保障論議というのをこちらが提起してこれからやろうとしている、この論議もナンセンスということになりますよ。そういう重大な性格を持った問題であった。  しかし、どうやら今の外務省の答弁を伺っても、農林水産省から積極的な問題提起らしい問題提起はなかったようであります。こういうことで、果たしてよいのでありましょうか。
  152. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) ただいま外務省経済局長からお話ございましたように、OECDの場での多国間投資協定交渉の中では、特に農林水産業絡みの議論がなかったということでございまして、そういう観点から格別これまで議論に私どもとして具体的に絡んできたことはないわけでございますが、今後何らかの場で先生指摘のような議論がされるというようなことになりますれば、私どもとしましては農林水産業に悪影響がないよう、御指摘も踏まえまして適切に対応していきたいと考えております。
  153. 谷本巍

    ○谷本巍君 そこのところはこれからも重々念頭に置いて対処していくということでよろしいんですね。
  154. 竹中美晴

    政府委員竹中美晴君) そのとおりでございます。
  155. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、次期交渉に向けた合意づくりについて大臣に伺いたいと存じます。  当面、急ぐべきことはどういうことかといいますというと、国民的論議を起こすための問題提起、これを具体的に提起していく、そして論議が起こるような状況をつくっていく。ですから、当初の問題提起というのは、完璧なものでなくていいんですよ。いろいろな問題があるわけでありますから、そういう問題を積極的に提起しながら国民的合意づくりを進めていくということが大事だろうと思うんです。  その点、大臣、どうお考えになっておりますか。
  156. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 最終的には、先生指摘のように国民的合意という形で次期交渉に臨んでいくわけでありますが、現時点ではもう既に当委員会でもいろんな御指摘、御示唆がございますけれども、そういうものをどんどん御議論いただいて、そして最終的に対処方針を決めていかなければならないと思っております。  まさに、この食糧法、今回の米関税化もそういう御議論の重要な参考の一つになる御議論がずっと続いておるわけでございますし、また今後、基本法の御議論をいただく上でも次期交渉に向けての非常にありがたい御議論になるのではないかと私自身期待というか、そういう認識を持っておるわけでございます。  ですから、そういう意味で、常に当委員会を初めとして、国会、いろんな場で御議論をしていただくことが一定の時期まで必要でございますが、先生指摘のように、農林省の方からというか、政府の方から次期交渉に当たっては包括的な交渉としてこういうところが問題になります、あるいは個々に農林省としてこういうところがポイントになります、こういうところをかち取っていかなければならない、あるいは場合によっては、こういうところはなかなか難しいですよというようなことを提示すべきかどうかということについては、正直申し上げまして、この食糧法議論あるいは基本法議論を踏まえながら、かなり問題点というのはおのずから出てくるような気もいたさないでもないものですから、いついつまでにたたき台のたたき台として、農林省として次期交渉に向かっての論点なり一つのたたき台を出しますというふうに今の段階ではっきりと申し上げていいのかどうなのか、率直に言って判断しかねているところでございます。
  157. 谷本巍

    ○谷本巍君 今申し上げた合意づくり問題と関連してのことでありますけれども、今度はやっぱり地方財界対策といいましょうか、地方財界の皆さんとこの問題をきちっと手と手を携えてやっていくことができるような条件整備、これが必要ではないかと思うんです。  どうしてそれが必要かというと、一つウルグアイ・ラウンドの経験がありました。あのときにはもう見事に経団連の皆さんに足をすくわれました。今度はそういう状況にしてはならない、その意味一つございます。  それからもう一つは、経済のグローバル化が進んできている中で、地方に根を持つ市場経済の活性化ということが重視される時代に入ってきた。つまり、グローバリズムとローカリズムのバランスをきちっととらなきゃならぬ、これは国連の貿易開発会議などでもそういう問題を指摘するようになってきましたね。それだけに、グローバル化の時代、そういう時代であるから余計、地方の経済状況というのをどういうふうにしていくのか、この論議を盛んにしていかなきゃならぬと思います。  そういうことと結合しながら、次期交渉に臨む体制整備、これをやっていくべきだろうと思うんです。いかがでしょうか。
  158. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) グローバル化とローカル化、これは二つとも時代の流れであろうというふうに認識をしております。  たしか参議院予算委員会で、ある先生質問で、農産物日本国内のできたところで消費するのが一番いいのではないかというような御質問をいただいた記憶がありますけれども、一方ではそういう御議論もありますし、もちろんおいしいものであればどこに住んでいてもその流通を利用してうまく手に入れることができるというような議論もあって、国内の中では地域地域の特色を生かしながら、その地域を、特に私の立場からは農林水産を中心に、特に地方が発展をしていっていただきたい。と同時に、我が国全体の立場としては、国内全体として安定的なトータルとしての食料需給の安定化というようなこと等々、そういういろいろな視点があるわけでございまして、これが全く別々に議論されるということだけは避けなければならないと思っておりますけれども先生指摘のように、片一方ではグローバル化、先ほど先生WTO二十条の改革過程の継続という条文を引用されましたけれども、そういう流れが一方にありますし、また我が国の中ではさらに地域の特色という、より小さな部分に光が当たるような政策というものも一方では必要になってまいりますので、その整合性をも考えていかなければならないと思っております。  結論的に申し上げますならば、毎度申し上げていることで恐縮でありますけれども我が国農業活動、農業生産農業にまつわるいろんな機能を守り、発展をし、国民に対する安定的な食料供給というものを一言で言えば守るという観点から、今の大事な御指摘についても我々も十分踏まえていきたいと思っております。
  159. 谷本巍

    ○谷本巍君 終わります。
  160. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田でございます。  まず、三点ほど質問したいと思いますけれども、その中で、SBSの輸入量が平成七年度一万一千トンありましたのが、八年、九年、十年と倍々々でまいりまして十二万トンになっておりますが、このSBSがふえてきておる理由とその背景を、食糧庁長官になりますか、まず教えてください。
  161. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 御指摘のように、数字的には今、先生がおっしゃいましたような形でふえてきております。基本的にやはりミニマムアクセス数量が年率〇・八という形でふえてきておりますので、それに伴いましてSBS自体もふえてきている面があると思います。  やはり、SBS自体は、多様なミニマムアクセス米の需要、それから品質、価格、そういうものの指標を得るということが目的でございますので、そういう意味では、平成十年度十二万トンまで大分ふえてきましたので、平成十一年度につきましては、関税化ということもございますので大体これを横にしまして対応していくことが当面必要ではないかな、そういう考え方を持っております。
  162. 阿曽田清

    阿曽田清君 このSBSの十二万トンのうち、いわゆる短粒種というべきものが九万六千、約八〇%入っているんです。いわば、ジャポニカ系のものがSBSの八〇%を占めておるということからするならば、ここに私は関税化へ向けての助走が始まっておるなというふうに受け取りました。今、食糧庁長官の御説明と若干私の解釈は違うのですが。  と申しますのは、もう既に中国から六万二千トン、アメリカから三万六千トン輸入されておりますが、何と中国産あきたこまち、これが既に五百トン、三井物産の手によって輸入されました。吉林省に三井物産や佐竹製作所の合弁のいわゆる精米会社が設立されておると聞いておるわけでありますが、まさに現地で日本向け用のお米が生産されて、日本の技術を導入した精米工場でいわゆる精米されて、そして品質を高めたところで輸入してきている、これが中国から入ってきているSBSの実態であります。  また、アメリカでは、カリフォルニア州あきたこまちあるいはコシヒカリ、アーカンソー州のコシヒカリも入っておると聞いておりますが、伊藤忠商事、これがコシヒカリを輸入しているということを聞き及んでおるわけであります。まさにこのことは、次の関税化へ向けて日本人の口に合うものを日本人が海外でつくってそれを逆輸入する、そういう事態がもう既に生まれてきているということは私は大変ゆゆしき問題だなというふうに思います。  なぜ私がそれを非常に心配いたすかといいますと、十年前に熊本県でイグサがまさにこのパターンだったんです。中国に日本の商社が日本のイグサの苗を持っていって植えて、そして七年前は一割しか入っていなかったのがその後急速に伸びて、七年間で約四六%ほど入ってきているというような状態になってしまったということからするならば、私は、日本企業が、あるいは合弁投資会社として海外で日本のコシヒカリ、あきたこまちというのを生産させて輸入してくるということがこれからさらに拡大していくということになってくれば、まさに脅威的になってくるというふうに思うわけであります。  日本の企業もそういうところは、日本企業として日本の国家のため、あるいは社会のために貢献していくという観点をもっと持っていかなければならないのではなかろうかな。いわば、金もうけならどんどんやっていくという時代は終わったのではなかろうかなというふうに思うんですが、そういうことからして、大臣、どのようにお考えになりますか。  もみがどれぐらい出ているんだと、こういうことで農林省の方にお聞きいたしましたら、試験用だけは出ておりました。商業用では一つも出ておりませんでした。試験用でも中国、アメリカには行っていないんです。行っていないけれども、そういう実態があるということから、非常にこれは不可解だなと思いながらも、しかし現実そういう実態が登場してきているということに対して、私は日本人みずからこういうものについてはきちんと考え方を共通認識しておく必要があるんじゃなかろうかと思うんですが、いかがでしょうか。
  163. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今後の米につきましては食糧庁長官から答弁させますが、先生指摘の、一般論として、ビジネスとして我が国固有の農作物を海外に持っていって、そしてそれを逆輸入する、それによって商売になるということ、これはいろんな農作物について現にあるわけでございます。私も就任以来、先生の御地元のイグサにつきましても大変厳しい状況にあるということは関係者皆さんの御要請等で重々承知をしておるところであります。  この問題は、先生指摘のように、商売になりさえすれば何でもやっていいのかという、一つの自由貿易という大原則ではありながらその中にもおのずから倫理というもの、ルールというものといいましょうか、最低限のものがあるべきではないかというのが私の感じであります。  それからもう一つは、種というのは今やもう国際的に大変重要な戦略物資でありますから、安易に外国に持っていって、そしてそれが日本に逆輸入されるだけではなくて、日本の優秀な種が海外で世界じゅうに売られていくということについては、広い意味でいえば食料安全保障、もっと厳密な意味でいえば種子に関する安全保障というような観点からも、私は決して野方図にすべき問題ではないのではないかというふうな考えを常日ごろから持っております。そういう前提で、米について長官から答弁をさせます。
  164. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 二、三の点につきまして御説明させていただきます。  もみにつきましては、商業的輸出というのは平成七年度から十年度の間にありましてはありません。今、先生がおっしゃったとおりです。ただ、試験用、見本用、これは多分、もみにつきまして殺虫剤でありますとか除草剤でありますとか、そういうものをドイツだとかそういう国々でつくる、そのための農薬の選抜試験という形の中で恐らく利用しているんじゃないかと思います。そういう意味で、試験用としては平成七年度、平成八年度から最近におきまして大体三千四百キロから千七百キロぐらい輸出をされております。  それから、SBSの中に占める短粒種の国別輸入実績でございますが、先生は平成十年度の単年度をおっしゃいました、八割ということでございました。これは年によってかなり違います。平成七年度ですと五六%、あるいは平成九年度は五八%ということでございますから、大体五割から八割の間で年によって移動しているということだろうと思います。これは先生指摘のように、やはり中国からの短粒種が多いときにそのウエートが高まるということは先生指摘のとおりだと思います。  それから、各企業の海外合弁企業の状況でございますけれども、今、私どもが掌握している限り、米国におきましては二社、それからタイについても二社、ベトナム三社、中国四社というふうに理解いたしております。  それで、米国につきましては基本的には米菓製造販売等となっておりまして、基本的には米国国内需要向けというふうに理解をいたしております。それから、タイにつきましては、一部、国内向けもございますけれども、もろみ製造販売等もありまして、輸出向けも一部ございます。それから、ベトナムにつきましては精米等が入ってまいりまして、これは主に輸出向けということになっておりますが、基本的には長粒種を利用しているというふうに理解をいたしております。それから、中国については四社と先ほど申し上げたとおりでございますけれども、精米あるいは米粉という形の中で、基本的には短粒種が先生指摘のように輸出向けというふうになっております。  これは、大臣も申し上げましたように、基本的には商業ベースの問題でございますが、私どもとしても重大な関心を持ってその動向はこれからも注視していきたい、こういうふうに考えております。
  165. 阿曽田清

    阿曽田清君 このことがじわっと国内の米作農家を締めつける結果につながってくる、これはイグサを見るまでもなく結果は明らかだということを私は心配いたします。本来ならば、ヨーロッパあたりだったら農民の方々が抗議行動を起こすというくらいのものだろうと思うんですけれども日本農業者の方々は非常におとなしいのでそういう行動はないような感じですが、私は農協の一員として、こういう問題は一つ国民運動として、合弁投資会社等で日本輸入等については自粛することが本当は望ましいんじゃないかな、非常にみんな真剣にやっている最中でもありますし、また日本食料日本国内生産していくという基本路線の中で踏襲すべきだと思います。  もちろん、海外が日本の米を、自国で消費するためのいい米をどんどん、それは協力していくことは当然かもしれませんが、逆輸入の手助けを、手助けというかリーダーシップを日本の企業がとるべきではない、そのような感じを持っておりますので、農林省としても特に御注意いただきたいなと思います。  次に、先ほど質問も出ましたけれども、いわば関税化の決まった時点で生産調整の廃止ということが新聞に出て誤報だということになりました。生産調整と関税化はリンクしないということで、そこで一件落着したわけであります。  きのう私は理事会をやってまいりまして、役員の方から出ましたのは、関税化に移行になって二〇〇〇年以降本当に生産調整が守られるのか、あるいはその生産調整面積、減反面積がまたさらにふえていくのではないか。いわゆる余剰構造の中であるだけに、皆さん大変心配をしているというのが現状であります。いや、生産調整もきちんと皆さん方が今日まで協力してきてもらったんだ、だからこれからもそれは国としてちゃんと続けていくんだということもはっきり大臣は申し上げておられるので心配要らないと思うということまでは申し上げておりますが、私の一立場ではなおかつそう言われても心配であります。  転作の強化は行わない、生産調整は堅持していく、改めてお答えをいただきたい。
  166. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) もとより、平成五年の閣議決定によりまして、ミニマムアクセス導入によって国内生産需給に影響を及ぼさないという前提で今までやってきたつもりでございますし、今後も、関税化になりましてもその方針でやってまいる所存でございます。しかも、引き続き国家貿易という制度の枠の中で食糧庁がきちっと需給調整をやっていくということでございます。  現行の、大変生産者にとって重たいであろう生産調整は、あくまでも四年連続の豊作による、一方では一人当たりの消費量の減退等々の需給ギャップの結果としての在庫の積み増し、それによって結果的には生産者御自身に影響が及ぼされるということを回避するための臨時、そしてまた国内的な措置でございまして、今回の関税化によって国が需給ギャップを埋めるための生産調整を放棄するとか責務を負わないということではございませんし、また今回の関税化によって転作を強化するということも考えておりません。
  167. 阿曽田清

    阿曽田清君 ありがとうございます。  早速帰りまして、大臣みずから減反政策は続けながら増産はさせない、減反の増加はないということをはっきり申されたとお伝えをいたします。
  168. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 関税化に向けて。
  169. 阿曽田清

    阿曽田清君 関税化になりましてもね。これは二〇〇〇年だけじゃないですよ。二〇〇〇年以降も続くものですからね。  最後に、いわゆる二〇〇一年からまさに仕切り直しということですよね。仕切り直しでしょう。二〇〇一年からのWTO交渉仕切り直し。まさに、振り出しに戻ってこれから準備万端整えて新しく相撲をとりますよということであるわけでありますから、そうした場合に、先ほどからいろいろ申し上げておりましたいわゆる海外での日本向けの品質を上げて、生産性向上も上げてということを当然向こうは準備しますよ。そして、ここは三百四十一円と思っておってそれから下がってくるんじゃなくて、改めて仕切り直すというようなことになると、先ほど須藤先生から出たのは、三百四十一円の半分の百七十九円、それがいわゆる輸出可能なボーダーラインだ、価格だ、こういうふうにアメリカが言っているということであるならば、もう最初から百五十円か二百円の攻防なんという話からスタートせぬとも限らない、私はそういう心配も一面するんです。だけれども大臣は大変自信を持っておられますから、それは三百四十円よりももっと高い線で行かれるかもしれないなという期待もまた一面いたしております。  それから、輸入米に対してこれからの関税率移行がどう仕切り直しになるかわからないけれども、国際競争に勝ち得るような国内の米作経営体系をつくっておかなきゃならないと思うんです。ですから、これに向けて早急に、国際競争にたえ得る米作経営のあり方というものに向けての具体策を準備する必要があるんじゃなかろうかなというふうに思うんですが、その決意をひとつ大臣からお聞かせいただき、具体的な施策を既に検討中でありましたら、それを局長からお答えいただければありがたいと思います。
  170. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、九三年の十二月十七日にWTO農業合意をしたときに、我々としては、我々としてはというか、当時の政府といたしましては、国内農業を何としても守っていかなければならない、そして六年後に向けてきちっとした対策をとらなければいけないということで例の総事業費六兆百億円のウルグアイ・ラウンド対策というものをつくったわけであります。その実施状況現時点での効果については、先ほど構造改善局長から労働時間が七割減ったとか生産性が五割上がったとかいろいろ申し上げましたけれども、そのような効果は上がっておる最中だというふうに考えております。  そして、それと同時にといいましょうか、何といいましても結論は日本農業を守り安定的な食料供給を国産を基本としてやっていくということが、いろいろほかにもありますけれども生産と消費という関係で申し上げればそのことが最大の目標でございますので、それに向けて交渉に臨む。そしてまた、交渉に当たりましては、関税率あるいは関税相当量といった一つ貿易障壁と言っていいんでしょうか、だけではなく、先ほど申し上げたような多面的機能の役割等々、先ほど別の先生といろいろ御議論をいたしたようなことも含めて最終的な目標に達していきたいというふうに考えておるところであります。そのための議論というのが、まさにきょう何度も申し上げておりますように、この場を初めといたしまして各界各層で御議論をいただき、国民的な合意を形成していかなければならないということでございます。  次期交渉結果に対する対策ということにつきましては、順序としては対処方針が決まり、交渉に臨み、そして交渉の結果あるいは交渉の見通しが出た段階で何らかの対策が必要であれば最終的な国内生産者、生産形態等々を守るという最終目標のために何らかの対策をとることも考えなければならないわけでありますが、それをとるということになりますとするならば、それは大変我が国にとって厳しい結果であるということが前提になった議論になるわけでございますので、現時点ではそういうことのないように交渉そのものに向けて全力を尽くして取り組んでいきたいということで、先生方の御指導をいただきたいというふうに思います。
  171. 阿曽田清

    阿曽田清君 はい、結構です。
  172. 石井一二

    ○石井一二君 私は、先日の委員会で、今回の我が国関税措置への切りかえに対して米国より異議申し立てがあるのではないかという懸念を申し上げ、またその前の各紙はあたかも米国が異議申し立てる、そういう言い方をしておったわけでありますが、結果として四カ国の異議にとどまったということでほっとしておられる方も多いのではないかと思います。  それはさておきまして、四月一日も目の前であり、我々は次期交渉に向けていろいろ考えていかなければならない。特に、米国は改革過程の継続ということを農業に関する協定の二十条でうたい、そういったターゲットのもとに今後の戦略を練ってきておると理解をいたしております。  具体的には、次期交渉を例外なき関税化、そして関税率のさらなる引き下げ、非関税障壁の撤廃、そして公正な競争を阻害する国内農業助成の削減、撤廃という理念であるわけでありますが、そう簡単に譲歩に譲歩を重ねてアメリカが言うようなぐあいに持っていくということは我が国にとっては極めて致命的な、大きなダメージを農村の皆様方にお与えすることになるのではないかと懸念をいたしております。  そこでお伺いいたしたいのは、まずこの交渉に対する今後、四月一日以降の中長期的な一つの戦略ビジョンと直近の戦略について何かお考えがあれば簡単に御説明願いたいと思います。
  173. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 中長期的には、来年から実質的に始まります交渉結果が我が国農業あるいはまた国内食料生産、そして供給、消費という形にたえ得るものでなければならないということが交渉の目標であります。  直近ということに関しましては、そのための国内的な合意形成のための御議論を各界各層でいただくと同時に、近隣諸国あるいはまたEUを初めとする我が国主張と同じ立場あるいは理解を示す国々地域とのより強力な連携過程を通じる、さらにはアメリカが当面の一番の存在でございますけれども、アメリカも全体的に言えば友好国でございますから、アメリカを初め各国に対して我が国立場を粘り強く主張し続けていくということが直近のやるべきことだろうというふうに考えております。
  174. 石井一二

    ○石井一二君 だれが考えても、人口は物すごい勢いで伸びておりますし、二十一世紀のそう遠くないときに大変深刻な食料危機が世界を襲うであろうということは予測にやぶさかでないところであります。そういった中で、我が国生産基盤をがっちりと保持しつつ、こういった交渉もうまくすり抜けていかねばならないというところが本来の姿であろうと思います。  特に、アメリカや欧州を見ておりますと、広大な農地、そして十分な資本、そして近代的な技術、こういうものを持ったいわゆる新大陸型の農業ということでございまして、今のままいけば巨大な穀物メジャーを中心としてそういった食料一つの武器として世界制覇をねらう、こういうことになってこようとしておるのではないかという懸念がいたします。  私は、今、大臣に長期的な一つの戦略ビジョンと直近の戦略ということをお伺いしたわけでありますが、一つ見逃しておられるのではないかと思うことがあるわけであります。  それは、国内議論も大事ですし、近隣諸国とかEUとか今おっしゃった、またアメリカとのコミュニケーションも大事ですが、私は日本農業新聞というのを読んでおるんですが、昨年の暮れぐらいから、次期事務局長の選挙についてとかくの論議がございます。例えば、十二月では、なかなかもめそうで年越しだと書いてあるかと思えば、三月三日の記事では、これはみんな日本農業新聞ですが、事務局長の選挙は混戦模様で、モロッコとカナダとニュージーランドとタイとそれぞれそうそうたる方が立候補されると。しかも、今のルジェロ事務局長の任期が四月末ということで一つの大きな脚光をその分野の専門紙では浴びせておるわけであります。  私は、事務局長とか委員長というものの重要性は極めて大きいと思うんです。例えば、この委員会でも、野間委員長がおられるからしょっちゅう委員会もありますし、米価審議会と並行して同タイミングで、我々影響力はないんでしょうが、米価に対する論議もしましたし、実にいい委員会だなと、そのように思っておりますが、このWTO事務局長にだれがなるか、どういった背景を持つ国の方が出てくるかによって私は日本の今後の戦略も違うと思うんですね。  そういった意味で、もうそんなことは関係ないんだとおっしゃるかもわかりませんが、私がかつて外務政務次官をやっておりましたころに、日本が国連の安全保障非常任理事国になるということでアルゼンチンの大統領のところへ行って一票をお願いしたり、ペルーの大統領にお願いしたりとかいろいろ選挙運動をやりましたけれども、直近の戦略として私はこういったことも大事じゃないかと思うんですが、何かビジョンなり作戦なりあれば、ひとつ御披瀝を願いたいと思います。
  175. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  今、先生指摘のとおりと私ども思っております。つまり、来年から始まります次期交渉において、WTO事務局長というのは事務方ではございますけれども、極めて重要な役割を果たし得ると思っております。  日本としましては現在、ちょっと御説明申し上げますけれども、最初四人の候補がございました。私ども日本政府としましては、一体となりましてスパチャイというタイの現副総理・商務大臣を支持することとしておりまして、ずっと一貫して支持しております。  その他、候補としてあと三名ございました。モロッコから出たアブユーブ、ニュージーランドのムーア、カナダのマクラレン、それぞれ立派な方でございます。現在、その後いろいろ話し合いが続いている中で、カナダとモロッコはこの二人の中から最終的にいずれかが事務局長になる可能性はないということで仕切られております。モロッコの方はみずから辞退しております。残っておりますのはタイのスパチャイ副首相と、ニュージーランドから出ておりますムーアというかつて首相をしておりました方でございます。この二人が今出ておりまして、今月中に、今月といっても残り少なくなりましたけれども、できれば今月中ということでジュネーブを現地に調整が行われております。現事務局長は四月いっぱいでございますので、それまでには決めて十分な引き継ぎをして次期交渉に臨みたいと考えております。  日本政府としましては、一貫してスパチャイ、タイの副首相を支持しております。
  176. 石井一二

    ○石井一二君 外務省局長が得々としてタイを支持するんだ、こう述べておられますが、肝心の農水大臣はどのようなお考えですか。それと、だれがタイがいいと決めるんですか。そういう我が国内のコンセンサスはどのような経過をもって決められるのか。  まず、大臣の現在のお考えを聞きたいと思います。
  177. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほどの四人の方のうち何人か、スパチャイさんを含めて私のところにも来られました。  我が国としては、日本政府決定でございますので、私としてもスパチャイさんを支持、私が支持しても別に対外的には何の影響もございませんけれども政府の一員としてそういう考えでございます。
  178. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) 私の言い方がまずければ、どうも失礼しました。  もちろん、日本政府としてスパチャイ副首相ということで今支持してきているわけでございます。
  179. 石井一二

    ○石井一二君 今、私が思いますのは、単にどちらの国がいいということではなしに、ニュージーランドとオーストラリアというのは非常に近い親戚行動をずっと歴史的にもとりがちな国でございます。こういう大陸型の大規模農業推進者と、タイのような日本に近い、一本ずつ植えていったというような過去の経歴を持つ国とは違いますので、これは背景にある大きな農業交渉の影響という面でぜひ頑張っていただきたい。  特に、私がぜひ頑張っていただきたいと言う裏には、日本政府の悪いところは何でもアメリカの言うことを聞くという嫌いがあるわけです。プラザ合意の後の低金利政策といい、いろんな面で押されがちだ。アメリカは向こうを推していますので、ひとつそこのところを踏ん張ってぜひタイの副首相を当選させていただきたい。  そういうお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  180. 野間赳

    委員長野間赳君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  181. 和田洋子

    ○和田洋子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、本法案に反対の立場から討論いたします。  反対の理由の第一は、昨年末の関税化受け入れの政府決定が、立法府における協議や広範な国民議論がないまま、政府、与党、一部農業団体の三者のみの合意で強行され、今日に至るまで国民的合意が得られていないことであります。  また、前回参考人に対する質疑で明らかになりましたように、系統組織は関税化移行に同意していますが、その構成員である生産者個々の段階では反対であるとの意見もありました。そのような声を無視して本法案を強行するのは、国民的コンセンサスの欠如に加えて、生産者に負担を強いる暴挙と言わざるを得ません。  反対の理由の第二は、世界の食料需給動向が不安定な中で、関税化後の国民への安定供給について政府政策が不明確なこと、またWTO次期農業交渉に向けた政府の姿勢も同様に不明確なことであります。  次期農業交渉は、WTO協定第二十条において改革過程の継続と位置づけられており、米国やEUにおいても、国内体制の整備を行い、次期農業交渉へ着々と準備していると聞いております。米国等の輸出国は、我が国に対して国家貿易の廃止や高関税の引き下げなどを強く迫ってくるものと見られ、我が国前回以上に厳しい交渉が強いられるでしょう。  我が国では、現在、新たな農業基本法が提出され、二十一世紀を視野に入れた農政の基本理念を定めようとしておりますが、問題とすべきは、WTO協定との関係で何ら方針を示していない点であります。法案のもととなった食料農業・農村基本問題調査会の答申においても、「国際的なルールの形成に当たっては、我が国立場主張を最大限反映させる」と述べるにとどまり、交渉に当たってみずからのフリーハンドを確保しておきたい、法律で行動を縛られたくないという意図が明らかであります。諸外国が国内体制を固めて、いざ交渉に臨もうとしているのと対照的であり、いかにも軟弱外交と足元を見られかねません。  調査会答申で、食料供給について、国内農業生産と備蓄、輸入を適切に組み合わせることが不可欠と述べておりますが、具体的な輸入については何ら戦略を打ち出しておりません。WTOは、食料安全保障の観点からは、輸出国に有利な協定であり、我が国のような食料輸入国は主権国家としての権利が保障されていないことはだれもが認めるところであり、交渉に当たって自給する権利を主張し、そのためにも食料自給目標を定めていく必要があります。  反対の理由の第三は、国内農業の体質強化を講じるとしたガット・ウルグアイ・ラウンド関連対策がほとんど効果を上げておらず、事業の真摯な総括もないこと、また今後の国内農業の体質強化に向けた明確な政策及び予算の裏づけがないことであります。  ガット・ウルグアイ・ラウンド対策予算は総額六兆百億円で、平成六年度の補正予算より措置されてきました。既に、国費で六割は消化されてきているそうですが、具体的にどのようなことに使われているのか不透明であります。どのようなことに使ったかを明確にし、それでどのような効果があったのかを検証することが、今後の次期農業交渉でどのようなスタンスで臨むかに重大にかかわってくることと考えます。また、交渉の結果、決定するに際し、どのような国内措置を施すかを議論することが不可欠であります。  政府は、関税化に切りかわっても、当分の間、米が輸入される心配はないと主張していますが、しかしながら我が国の米市場を虎視たんたんとねらっているとの報道もあり、先行き、生産農家はもとより、参考人意見にもありましたように、安全性の観点消費者も非常に不安になっています。しかしながら、高関税に守られているから大丈夫と十分な国内対策を講じておりません。将来どうなるか、明確な展望を持たないまま関税化に入ることは非常に危険であります。今後どうなるかは次期交渉で決まるからとの答弁は、現段階での責任回避にすぎません。  反対の第四の理由は、今後の我が国農政の方向を決める新農業基本法案の審議が後回しにされていることであります。  新農業基本法は二十一世紀の我が国農業のビジョンを定めるものであり、それを明らかにした上で農業関係の法体系を整備できるのであって、本法案も新農業基本法の理念に沿ったものでなければならないはずです。にもかかわらず、大もとの法案より先に具体的な施策に関する法案を審査するというのは順序が違います。まず、基本法議論し、それを決定してから関税化についてその是非を検討すべきでしょう。  以上の理由から、本法案に断固反対である旨を申し上げて、反対討論といたします。
  182. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 私は、日本共産党を代表して、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部改正案に反対の立場で討論を行います。  まず最初に、国民の主食である米を関税化、つまり輸入自由化することを政府は極めて拙速、唐突に、十分な国民合意抜きに強行しようとしていることに強く抗議するものです。  米関税化の撤回、慎重審議を求める要請書が当委員会開催中も各地から届いています。その数は、この数週間で、農業団体、労組、消費者団体など百近くに及び、また地方議会でも米関税化撤回が決議されています。政府はこれらの声を真摯に受けとめるべきです。  本法案に反対する最大の理由は、関税化日本農業食料の将来を脅かすものであることが明白であるからです。  政府は、国内生産に影響はないとしながら、その大前提となる高関税が二〇〇一年以降将来的に維持できるとは明言できません。そればかりか、オーストラリアEUなどが高関税異議留保申し立て、アメリカは圧力をかけ続けると表明するなど、WTO協定のもとで、関税化は諸外国からの絶え間ない関税引き下げ要求に直面せざるを得ないことは既に明らかです。  関税化が段階的な税率引き下げに直結することは自明のことであり、商社なども海外でのブランド米の生産や精米拠点の拡充など開発輸入体制を強化しています。輸出国もさらなるコスト削減、品質改良を進めています。圧倒的な価格競争力を持つ外国産米の輸入拡大は必至であります。今でさえ米価暴落、また減反拡大、そして高齢化と痛めつけられた日本の稲作の生産基盤をますます脅かすことは避けられません。唯一自給可能な米までが壊滅的打撃を受け、四一%と異常に低い食料自給率をさらに引き下げることは、国民の願いにも反するものです。  本法案は、このような事態に日本農業食料の将来を追い込む米の関税化実施法であり、日本共産党は成立に強く反対するものです。  今必要なことは、関税化ではなく、二十一世紀に向けて農業食料を守るため、WTO農業協定の改定を求めることです。輸出国や多国籍企業の利益を優先させ、農産物の特性を無視して一律に貿易自由化を押しつけるWTO農業協定を、各国食料主権を尊重した公正なルール改正することこそが必要です。  日本共産党は、政府が米関税化を撤回し、次期WTO交渉で、日本農業の再建と食料自給率向上、世界的な食料問題解決のため、農業協定改定交渉を行うよう求め続けることを明らかにして、討論を終わります。
  183. 村沢牧

    ○村沢牧君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論をいたします。  まず、反対理由の第一は、国民食料の基本であり、我が国農業の大宗である米について、政府は過去の経緯にかんがみ、重大な関心を持って臨んできた国会消費者理解を得ることなく、政府、与党、系統農協組織の三者だけの合意で、国民的合意が形成されないままに関税化への移行を強行したことであります。  この余りにも拙速的な手法については、本委員会質疑を通じ批判をしてきたところでありますが、我が党はガット農業合意に至る七年の交渉過程において米市場開放阻止の闘いを展開し、細川内閣のとき、国内対策に万全を期することを条件に農業合意を認めるという苦渋の選択を行わざるを得なかった経験を持つだけに、外交交渉の努力もせず、我が国の稲作農業、米に対する将来展望を何ら示さないまま関税化への移行を決定したことは極めて遺憾であり、容認できるものではありません。  反対理由の第二は、政府関税化最善選択だと強調していますが、多くの稲作農家はその将来に危機感を募らせており、これにこたえられるような展望が描かれていないことであります。  政府は、当面の数年間はミニマムアクセス米の輸入を抑えられることと、次期交渉に向けて有利なポジションが確保できるという利点を挙げ、関税化されても当分の間は二次関税による米の輸入はあり得ないという楽観的な見方を示すのみで、このような稲作農家の危機感にこたえようとはしておりません。しかし、政府が示した関税化のメリットは既にほころび始めているのです。  すなわち、四カ国の異議申し立て輸入禁止的高率関税の設定に向けられたものであると同時に、次期交渉で米をめぐる我が国の譲歩を引き出すための宣戦布告であり、高率関税によって守ることができるという米の輸入について、果たしてそれを守り通していけるかどうか、保証の限りではありません。  反対の第三の理由は、本委員会の論議においても、譲許表改正国内法との関係が依然として不透明なことであります。  政府は、これまで関税措置への切りかえはWTO農業協定に則して忠実に実施するものであって、加盟国からの異議申し立てにより四月一日までに譲許表修正手続が終了しない場合でも、国内法令により関税化を実施することが可能であると今日まで主張してまいりました。  しかし、譲許表改正は、条約と同様の効力を有する国際法規であり、条約が国内法に優先するという法秩序のもとで農業協定附属書における関税化特例措置を内容とする譲許表を残したまま、いつ改正できるか見通しも持てない中で、我が国国内法のみで関税化に踏み切ることは、次期交渉に対する影響力が絶対にないとは言い切れず、将来に問題を残すことでありまして、遺憾であります。  反対理由の第四は、我が国農業・農村を守るには、輸出国に有利な現行農業協定を改め、食料安全保障という観点から、また農業の持つ多面的機能の重要性を評価する立場から、我が党は常に新たな農産物貿易ルールの確立を求め、基本政策も提言してきました。しかるに政府は、どのようなルールをつくったらよいのか、また外圧に立ち向かっていったらいいのか全く展望が持てない実情の中で、四割近い生産調整を強いられている我が国稲作農業の位置づけも国内農業の具体的対策も明確にされずに、関税化により市場原理を導入することは日本農業を崩壊に導くものと言わざるを得ません。  以上、反対の理由を申し上げましたが、我が国食料自給率は先進諸国にその例を見ない四一%まで低下し、食料の安全性と安定供給の確保に対する国民の不安が高まっている中で、国内農業の再生が以前にも増して重要であるにもかかわらず、米の関税化はこれに逆行するものであることを申し添えて、反対の討論といたします。
  184. 野間赳

    委員長野間赳君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  185. 野間赳

    委員長野間赳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 野間赳

    委員長野間赳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時九分散会