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1999-03-11 第145回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十一日(木曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  三月八日     辞任         補欠選任      阿曽田 清君     月原 茂皓君  三月九日     辞任         補欠選任      谷本  巍君     山本 正和君      月原 茂皓君     阿曽田 清君  三月十日     辞任         補欠選任      山本 正和君     谷本  巍君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         野間  赳君     理 事                 岩永 浩美君                 三浦 一水君                 和田 洋子君                 須藤美也子君                 村沢  牧君     委 員                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 佐藤 昭郎君                 中川 義雄君                 長峯  基君                 森下 博之君                 小川 敏夫君                 久保  亘君                 郡司  彰君                 風間  昶君                 木庭健太郎君                 大沢 辰美君                 谷本  巍君                 阿曽田 清君                 石井 一二君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    政府委員        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省経済局長  大島正太郎君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省畜産        局長       本田 浩次君        農林水産省食品        流通局長     福島啓史郎君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        食糧庁長官    堤  英隆君        林野庁長官    山本  徹君        水産庁長官    中須 勇雄君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 威男君    説明員        労働省労働基準        局労災管理課長  荒  竜夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○農林水産に関する調査  (平成十一年度の農林水産行政基本施策に関  する件)     ─────────────
  2. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産に関する調査のうち、平成十一年度の農林水産行政基本施策に関する件を議題といたします。  本件につきましては既に説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 中川義雄

    中川義雄君 おはようございます。  今、間もなく二十一世紀という中で、我々のかけがえのない地球、大変大きなたくさんの課題を掲げられて、どうやってこれを乗り切っていくか、大きな課題だと思います。我が国農政もそういった大きな中で今後の方針をしっかりしていかなければ大変なことになると思うわけであります。特に、地球環境保全資源的ないろんな制約、さらには人口爆発、それに伴う食料危機、これらの行方を視野に入れて二十一世紀に向けての新しい農業の展望を持つことが大切であり、このため農業についての政策を抜本的に見直して、発想転換して新しい価値観に基づいた農業への挑戦が求められております。  このたびの食料農業農村基本法もそのような観点に立って立案されたと思いますが、その点についての見解を伺いたいと思います。
  4. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、委員指摘のように、まさにこれから御審議いただきます新しい基本法は、四十年近い時代の経過とともに農業あるいはまた農村あるいは日本国土全体、国民全体、そして世界的な事情が大きく変化をいたしまして、そういう意味発想転換あるいはまたさらなる推進等々、抜本的に法律を新たに制定するものでございます。  今回の基本法というものは、国民的な視野あるいは国土あるいは地球全体を含めた環境保全、さらには文化、伝統、さらには次の世代を担う子供たちに対する教育的な側面まで視野に入れた形で法律を御提案申し上げるわけでございます。  このような国民的なさまざまなニーズにこたえるために、基本理念といたしまして、まず国内農業生産基本とした安定的な食料供給、さらには不測の事態に対する対応視野に入れております。そしてまた、農業農村が有する多面的なさまざまな機能の十分な発揮を明確に掲げるとともに、その役割を果たすための基盤整備を充実させていきたいと考えております。さらには、我が国農業が将来にわたって維持発展できますようないわゆる持続的な農業というものの育成、さらには農村農業生産地域でございます農村振興といった従来になかった視点を取り上げた農業農村、そしてさらに農業生産のお客さんといいましょうか、利用者消費者、全国民でございますから、消費者を含めた国民的視野からもこの法案を作成しているところでございます。  このような理念のもとで、具体的には消費者あるいは農業関係者からも強い要望のございます食料自給率目標の設定あるいは食料安全性確保品質改善表示適正化等々、消費者ニーズあるいは消費者視点に立った施策の充実、そして専ら農業を営む者その他意欲のある担い手農業者確保育成といった農業経営展開促進、そして需給事情品質評価を適切に反映した価格形成、そして価格形成に一体となって経営安定対策というものも実施していきたいと考えております。  さらには、農薬肥料の適正な使用など望ましい農法推進を通じた農業自然循環機能維持増進、そして豊かで住みよい農村とするための総合的な整備、いわゆる農村空間というものを一つの概念として農村発展基盤となる振興対策、そして中山間地域等多面的機能を有する地域機能確保を図るために生産条件の不利を補正すると同時に、農業生産活動が適切に行われますような支援の実施といったようなことを施策としてやっていきたい。  結論的に申し上げますならば、農業者が自信と誇りを持って農業生産活動にいそしみ、そしてまたその地域発展をし、そして国民全体が豊かさと安心を実感できるための農政指針基本法としての位置づけとしていきたいというふうに考えております。
  5. 中川義雄

    中川義雄君 以下、具体的な話になりますので、時間がありませんのでなるべく簡潔に答弁していただきたいと思います。  農業白書によりますと、食料自給率カロリーベースで四一%に落ち込み、穀物ベースですと一九七五年から一九九六年の間に四三%から二六%へと大変な落ち込みを示しているわけであります。これは先進国の中で最も低く、他方、地球全体で考えますと、砂漠化温暖化などによって異常気象が相次ぎ、例えばこれまでの穀倉地帯と言われていた米国中西部やロシアのウクライナ地方、これらの地域生産力が低下しているとも言われております。  このことは、この国の将来においてもその食料事情に大変な危機感を持っているわけであります。農業に最も大切なのは食料自給率をいかに確保するかということでありますが、この点についてこの新しい基本法ではどのように取り扱われているのか、示していただきたいと思います。
  6. 高木賢

    政府委員高木賢君) 食料自給率の問題は御指摘のように非常に重要な問題でございます。  したがいまして、おととい提出をさせていただきました食料農業農村基本法案におきましては「食料安定供給確保」ということを第二条に置きまして、いわば基本理念ということで第一番目に掲げております。その中におきまして、今御指摘のありました趣旨を条文にも取り入れまして、「食料の安定的な供給については、世界の食料需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内農業生産基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」と、まず基本的な理念明記しております。これを受けまして、具体的に第十五条で政府食料農業農村基本計画を定めるということにしておりまして、基本計画におきましては食料農業農村に関する施策についての基本的な方針などを定めることにしておりますが、特にその基本計画に定めるべき事項といたしまして、第二号で「食料自給率目標」ということを特記いたしまして、これを定めるということにいたしております。また、その食料自給率目標は、国内農業生産及び食料消費に関する指針として定めるという位置づけにしております。
  7. 中川義雄

    中川義雄君 御承知のように、東西冷戦構造が終結しまして、これまでのイデオロギーの対立から、一方では南北問題といいますか、人口爆発を続けているそういったところでの食料危機、まさに飢餓が広がり、困窮した人々が食料を求めて史上類例を見ないほどの難民に化しているとも言われております。そのことが今大変な国際問題になっております。  一方では、我が国は大変な発展の中で、お金に物を言わせてと言ったらなんですが、安易に海外食料を依存して、それがそういった困っている人たちからのいろんな批判というような形で今後大きな問題にもなるのではないかというようなことさえ危惧されているわけですから、食料を安易に海外に依存するこれまでのこういった政策から、まさに国内生産中心とした、または備蓄その他のいろんな政策をもって食料自給、これをしっかりしなければならないんですが、そういった観点から、新しい基本法の中で、こういった安易に海外に依存するというようなことの発想転換すべきだ、そういうことがどのような形であらわれているのか、お示しいただきたいと思います。
  8. 高木賢

    政府委員高木賢君) ただいまの御指摘でございますが、まさに先ほど来申し上げましたが、食料安定供給確保ということを改めて基本理念明記をしたということ、さらにはいわゆる食料安全保障考え方もその中ではっきりさせたということがまず第一点で挙げられるかと思います。  そしてまた、具体的な対応方策といたしましては、食料自給率目標を定めるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、さらにまた一歩進めまして、開発途上国などの需給の安定ということも考えまして国際協力推進をしていく、開発途上国食料供給の力をつけるということも明記をさせていただいております。  それから、当然のことですが、それを支える我が国農業につきましては、この持続的発展を期するということで、新しい基本法案におきましては第二十一条以下十三条の規定を設けまして、農地なり担い手なり経営なり、あるいは技術生産基盤、こういったものにつきましての総合的な規定を置きまして、この推進を図りたいと考えております。
  9. 中川義雄

    中川義雄君 御承知のように、レスター・ブラウンが「飢餓世紀」という名著の中で、まさにこのことが今後のそれぞれの国家の盛衰といいますか死活の問題になるだろう、ですから食料の問題こそは各国政府だけが解決できる他国に依存できない最もとうとい使命であろうと。まさに私は大切なことだと思います。  そういう中から考えてみますと、この国の現実というのは、ここに一億二千万以上の人が住んでおります。しかし、国土が非常に狭いですから、その地理的条件からいってすべてを国内で生産するということはできないんです。しかし、食料安保的な発想に立つと、例えば飼料などはアメリカにほとんど一〇〇%依存している。これは大変大きな問題で、これは政策的になるべく分散して食料安全保障というものを確保しなければならないと思いますが、この点について今後の方針などをお聞かせいただきたいと思っております。
  10. 本田浩次

    政府委員本田浩次君) 我が国は、トウモロコシコウリャンなどの飼料穀物の大部分、千六百万トン余りでございますけれども、これを海外からの輸入に依存しておりまして、その輸入先国は、平成十年の実績で見ますと、米国が七一%、アルゼンチンが一四%、オーストラリアが九%などとなっております。  御指摘のとおり、飼料穀物安定供給を図っていく上で輸入先国多元化は重要であると考えているところでございます。ただ、トウモロコシなどの飼料穀物輸入は現在自由化されておりまして、民間業者判断価格の安い国から輸入されている状況にございます。したがいまして、輸入先国各国供給価格に応じて変動している実態にございます。例えば、平成十年には豊作になりましたアルゼンチンからの輸入量が増加しております。シェアでいいますと、前年の五%から一四%にふえるというようなことになっておりまして、この結果、我が国飼料穀物輸入に占めますアメリカシェアは前年の八二%から七一%に低下しているという状況でございます。  このように、飼料穀物輸入につきましては、輸入先国の豊凶などに左右されますことから、その安定供給を図るためには配合飼料の主原料でございますトウモロコシコウリャン需要量の一カ月分の公的な備蓄を行いますとともに、配合飼料メーカーにおきましてもおおむね一カ月分の通常在庫確保を図っているところでございます。  今後におきましても、こうした飼料穀物備蓄の適切かつ効率的な運用もあわせまして、その安定供給に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  11. 中川義雄

    中川義雄君 御承知のように、石油大宗海外に依存する我が国がそのほとんどを中東に依存していた、それがあの石油危機をもたらして大変な状況になり、その反省に基づいて、供給地を分散化すること、備蓄問題については真剣に考えること、省エネルギーに真剣に取り組むことといったことが功を奏して、その後は安定的な供給が図られておるわけですから、しっかりやっていただきたい、こう思うわけであります。  この国の農業の限界というものは、地理的条件がありますから、自給率向上するというのは国内生産だけに依存するわけにいきませんが、国内でやれる手としてあるのは、需要供給関係ですから、むだな需要量をどれだけ縮減するか、それが一つでありますし、国内での備蓄といったものをどうするかということが一つであります。  一方で、この国はほとんどが栄養過多で、私もそうなんですが、医者からもうちょっとやせろやせろと言われておりますが、本当にむだな食事によって健康まで害している。やはり、食料自給率向上させる一つのキーワードとして、厚生省などとも十分協議しながら、国民の健康な食料あり方、それにあわせて国内生産、または備蓄海外からの輸入あり方といったものをきちっと組み合わせてやることが大事だと思いますが、その点の考え方についてお示しいただきたいと思います。
  12. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のとおり、自給率向上のためには、農地面積制約がある我が国といたしましては、生産面では単収の増加なり、それを高いレベルで安定させることとか、耕作放棄地の解消とか、あるいは耕地利用率向上、こういったことが必要であろうと思います。  それから、消費の面では、ただいま御指摘になりましたように、大量の食品残渣が出るという実態にございます。そういったむだが無視し得ない状況になっておりますので、その点についての対応。それから、いわゆる脂分、脂質のとり過ぎという傾向が出ておりまして、いわゆる栄養バランスの崩れ、生活習慣病の増加などの懸念が出ているわけでございます。したがいまして、食べ残し、廃棄の削減あるいは日本型食生活普及など、食生活の見直しに向けた運動の展開を図ることが必要になってきていると思います。  そこで、新しい基本法案におきましても、食料自給率目標を策定する際には、国内農業生産だけでなくて、食料消費に関する指針としても定めるという位置づけにしております。具体的には、それを受けまして、健全な食生活に関する指針の策定、これは厚生省と協力してやっていかなければいけないというふうに思っておりますが、この点が一つ。あるいは食料消費に関する知識の普及とか情報の提供、こういったことで国民判断に訴えていきたいというふうに考えております。
  13. 中川義雄

    中川義雄君 先日の大臣所信表明によりますと、農業持続的発展という言葉が使われておりますが、御承知のように、二十一世紀地球環境上のいろんな諸制限から、果たして人類がこのまま持続的にこの社会を形成していけるかというのが一つの大きな課題になっております。  私は、農業ほど持続的に可能性のある産業はない、そのことは御承知のように数千年の歴史を持っております、数万年とも言われておりますが。農業だけは、投下したエネルギーに対して産出されるエネルギーが大きいという唯一の産業であります。ほかの産業は、工業すべて、この地球が数百億年をかけてためた資源消費し続けていていろんな問題を起こしているという中にあって、私はやはりそういった観点からも農業に対するしっかりした心構えを持つことは大事だと思うんですが、その農業が今危機に瀕しているというわけであります。  その大きな問題は、何といっても農業のいろんな環境が厳しくなっている。特に、経済的な側面から見ますと、他産業と比較すると生産性向上その他ではどうしても劣勢である。農業をやっていると食べていけない。そんなことで離農し、担い手がなくなっているというのが一番大きな問題であります。そして、そのことは土地が放棄されて荒野と化していくというような問題にも発展しておりますが、まずその点について、基本法や今後の方策でどのように取り扱おうとしているのか、お伺いしたいと思います。
  14. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 新しい基本法案の中で、第三節第二十一条に「望ましい農業構造確立」という条文を置いております。それに引き続きまして、第二十二条では「専ら農業を営む者その他経営意欲のある農業者創意工夫を生かした農業経営展開できるようにすることが重要である」というふうに位置づけをいたしております。私どもも、こういう農業者方々、専業的と言ってよろしいと思いますが、専業的経営方々農業生産大宗を担っていただくような構造をつくり上げることが大事だろうと思っております。  こういう観点に立ちまして、経営施策を体系化いたしまして、こういった認定農業者などを中心とする意欲ある担い手方々施策を集中する。それから、日本農業東西南北営農状況がかなり多様でございますので、集落営農の活用とか市町村あるいは農協等の公的な主体が農業生産に参画をするような方向につきましても、多様な農業展開という観点に立ちましてこれを支援する。さらには、法人に新規就農方々が就職をしていくというふうなことを支援したいと考えております。  また、やむを得ず離農される方々につきましては、離農跡地あるいは離農後の諸施設担い手に集約をされていく、あるいはリースをされていくというふうな施策を現在やっておりますし、これをまた今後も充実させていきたいというふうに思っております。
  15. 中川義雄

    中川義雄君 御承知のように、農業人づくり、そして土づくりだと、こう言われておりますが、一方の土が今瀕死重症になっております。生産性向上したいという願いからたくさんの化学肥料殺虫剤などの化学薬品が大量に使われ、大きな機械がそれを上から押しつけていくというようなことで、まさに土が瀕死重症になっていると、こう言われております。この対策も非常に大切だと思いますが、いかがでしょうか。
  16. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) 御指摘ございましたように、近年、土づくり取り組みが減退をいたしておりまして農地生産力が低下をしておりますし、化学肥料化学農薬への過度の依存によりまして営農環境が悪化しているという状況が見られているところでございます。  このような状況対応しまして、農地生産力維持増進のための土づくりを十分に行うこと、それから化学肥料化学農薬使用の低減を促進して自然循環機能維持増進するということが農政の緊急の課題になっております。  このため、御提案をいたしております基本法案におきましては、基本理念のところで、「農業自然循環機能維持増進されること」という規定を置いておりますとともに、具体的な施策一つで三十二条という規定で、内容は省略いたしますが、明確な規定がございます。  これまでも地力増進法という法律がございまして、従来からいろいろ施策を講じておりますが、本国会に別途、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律案等々を御提案させていただいておりますので、これらに基づきまして各般の施策展開するということで、従来にも増して地力増進対策を積極的に推進したいと考えているところでございます。
  17. 中川義雄

    中川義雄君 今後の地球的な課題として、サステーナブルな、持続可能なということと、もう一つはゼロ・エミッション、なるべく循環させて資源と産出されたものが上手にめぐり合う、そのゼロ・エミッションという意味でも、これも農政一つの大きな課題になります。  最近、そういった点で、自然農法といったような発想が、消費者からもそれに対する需要が非常に大きくなってきている。そんな観点から、農林省の考え方を示していただきたいと思っております。
  18. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) 一般的な農法に比較しまして化学肥料とか農薬使用を低減する農業生産方式といいますか、そういうもの、自然農法あるいは有機農法等々さまざまな呼び方がされておりますが、これらは、背景には消費者健康志向とか生産者地域生産条件をできるだけ生かしたいというような意向とかが相まちまして、いろんな工夫をして取り組みが拡大されてきているというふうに私ども承知をしているところでございます。  農林水産省といたしましては、いろんな条件がございますが、条件を満たすものにつきましては、例えば補助事業を実施しますとか、それから金融措置を講ずる、あるいは一定のルールをつくりまして表示をしてそこの普及推進をしていくというようなことをやっておりまして、例えば具体的には堆肥の供給施設とか土壌の診断施設でございますとかそういう補助事業、それから農業改良資金の貸し付けを行うとか、あるいは有機農産物等表示ガイドラインをつくりまして、適正な表示生産管理を指導するというようなことをやっておるところでございます。
  19. 中川義雄

    中川義雄君 自然循環型の農業確立、これは非常に大事なんですが、今問題になっているのはその中で畜産の排せつ物、しかしこれはすべてありがたいことに有機質でありまして、すべてが土に返ることが可能なものであります。ですから、農業の中ですべてが解決でき得る問題でありまして、これを安易に産業廃棄物というような発想でこの問題を乗り越えるのではなくて、自然循環型農業確立のために貴重な資源としてそれを考えていく、そういう発想転換も大事だと思いますが、これは私は意見として述べさせていただきたいと思っています。  一方、どうしても人の問題として、今回の農業基本法で、価格は市場の原理をなるべく導入してやっていきたい、そして消費者に喜ばれるような商品を提供していきたい。しかし、そうなると、御承知のように、どうしても農業というのは生産性の低いものですから、意欲のある担い手、北海道のように農業だけでないと生きていけない地域、また根釧のように酪農しかできないというような厳しい地域、そういったところで将来に夢を見ながら営々と経営している農家に対する、それこそある程度の所得補償的な政策、これがなければ農業はもっていかないと思いますが、その点についての考え方を示していただきたいと思います。
  20. 高木賢

    政府委員高木賢君) 農産物の価格につきまして、需要者の動向といいますか需給事情といいますか、あるいは品質評価、こういうものが適切に生産者に伝わるということは大事なことであろうと思います。それを端的にあらわすものが価格等の評価ということでございますから、そういった農産物の価格需給事情品質評価を適切に反映して形成されるようにするということが一方において必要であろうと思います。  しかしながら、それは半面でありまして、その場合に意欲ある担い手に対して価格変動の影響が及んで経営安定が阻害される、こういうことではいけませんので、育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するということで、新しい基本法案におきましても、前段申し上げました価格形成という問題の条文の二項目に、「国は、農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずる」という幅広い規定ぶりで書いてございます。  これによりまして、具体的には、例えば麦につきましては民間流通への移行を図るとともに麦作経営安定資金を導入するということにいたしておりますし、お話のありました牛乳・乳製品につきましても、実際の取引価格が市場実勢を反映して形成される制度に移行すると同時に、現行の生産者補給金制度を加工原料乳の生産者に対する新たな経営安定措置に移行するという方向で検討をいたしているところでございます。大豆につきましても、本年秋の価格決定までにこうした方向での方向づけをしておるという状況でございます。  このように、逐次、価格政策の見直しと同時に、これに伴う意欲ある担い手経営安定対策の具体化を図っていく、こういう考えでおります。
  21. 中川義雄

    中川義雄君 時間がないですから、少し簡潔に答弁していただきたいと思います。  問題はもう一つは、この農業基本法の特筆すべきものは、農村の持っている多面的機能を発揮していくんだ、これは非常に大事なことだと思うんですが、その中で一つは、上流部で大変な苦労をする中で役割を果たしている中山間、これには特にそれを掲げて施策として展開していくと、こう言っておりますが、具体的に内容を示していただきたいと思います。
  22. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 「中山間地域等振興」という条文の第二項におきまして、「国は、中山間地域等においては、適切な農業生産活動が継続的に行われるよう農業生産条件に関する不利を補正するための支援を行うこと等により、多面的機能確保を特に図るための施策を講ずる」と書いてあります。私どもはこの条文をよりどころといたしまして、今回、中山間地域等におきまして直接支払いを位置づけし、実施したいと考えております。  今、先生から御指摘がありましたように、耕作放棄を防止し、多面的機能確保するという観点から、基本的な枠組みをおおむね決めさせていただきましたので、現在、検討会を設置いたしまして、対象地域をどうするか、対象行為をどうするか、対象者をどうするか、そして地方公共団体の役割をどう位置づけるかといったことについて検討を行っているところでございます。予算に関連をすることでもございますので、十二年度の概算要求時、つまりことしの夏までに結論を得たいと考えております。
  23. 中川義雄

    中川義雄君 農村の持つ多面的機能の中で誇り得るものは、ずっと日本の伝統、いろんな工芸品、民芸、民話、合掌づくりといったような、そして織物、加賀友禅その他たくさんの織物は、それぞれ農村の厳しい生活の中から少しでも豊かな、そういう願いを込めてでき上がったものであります。私は、その農村の持つ心の優しさ、創造性というものを発展させることも大事なことだと思うんです。  ですから、伝統的な文化をどう伝承しそれを発展させるか、これも多面的機能を維持し、ぎすぎすしがちなこの国の中で潤いのある地域として農村を、それは国民の大半が求めておりますが、その点をどうとらえているか、お伺いしたいと思います。
  24. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) このたびの基本法第三条におきまして、「多面的機能の発揮」という条を設けまして、その中でとりわけ文化の伝承等ということを多面的機能の重要なものの一つとして取り上げております。  ここで重要なことは、こうした文化の伝承等の多面的機能の発揮は、農業生産活動が適切に行われていなければ確保されないということでもございますし、そしてもう一つ、こういった多面的機能につきましては、将来にわたって適切かつ十分に発揮をされなければいけないという規定ぶりをしたわけでございます。  御案内のとおり、文化というのは地域や民族にとって固有のものでございます。周りの方々から理解をされ、そして尊敬をされるべきものでございます。農村はその誕生以来、この文化をはぐくんできたところでございますので、こうした機能が今後、より一層発揮をされますように施策を強化していきたいと思っておりますが、大臣からも御説明しましたように、地域の歴史を語る農業用水とか農業景観の保全に関するそういった基盤整備を行うといった田園空間の整備事業あるいは特定農山村の相互支援事業、さらには都市との交流施設等を整備する新しい山村振興事業、棚田の保全事業、こういったものを通じて文化の伝承、こういう面でも施策を強化したいと考えております。
  25. 中川義雄

    中川義雄君 一方、林業においてもすばらしい景観や水資源の涵養、そしてまたこれも持続的に可能な木材の生産といった非常にすばらしい機能を持っています。  そしてまた、水産業においても本当に食料の生産という大事な大事な二百海里時代ですから、経済水域が大きくなったんだ、そのためには前浜を大事にする、根魚を大事にするというような水産業基本方針展開といったことが必要だと思うんです。  ですから、林業基本法だとか水産基本法といったものを制定して、誤りのない総合的な施策展開が必要だと思いますが、それに対する考え方を示していただきたいと思います。
  26. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 山と海とは一体といいましょうか、山は海の恋人とかいろんな表現方法が最近特に使われておりますが、御指摘のように、山そして川等を通じて海につながる、これはまさに自然の一つの大きな体系の中のそれぞれの重要なパートが連携した形で構成されておると委員指摘のように私も全く同感でございます。  そういう中で、山を守り発展させていくということは、林業という産業だけではなくて、環境面あるいは国土保全機能、さらには現状の厳しい山の状況を考えますと、委員しばしば御指摘のように、保水力というものの低下ということも大きな問題になっておるわけでございますから、山の整備をしていくということは、山だけの問題ではなく、極めて大事なポイントだろうと思います。そういう意味で、林業基本法の新しい観点からの制定も踏まえ、検討しなければならないと考えております。  また、海におきましても、厳しい現状、さらには新しい漁業秩序の国際体制の中で、我が国の周辺の漁場あるいは漁業資源をどうやって安定的に確保していくか、これもいろんな多面的な機能も含めて新たな時代に対応できるように水産基本法の制定も含め検討していきたい。  委員指摘のことを総括させていただくならば、山もあるいは農村も海も一体として、国土そして国民の生活あるいは将来に対する発展一つの大きな基盤であろうというふうに認識をしております。
  27. 和田洋子

    ○和田洋子君 民主党・新緑風会の和田洋子です。  現行基本法農政ということでお伺いをいたします。  私がまず最初に伺いたいのは、現行の農業基本法のもとで農政がどのように展開されてきたかという問題です。  農業基本法が制定されましたのは昭和三十六年、これまで三十七年間が経過したことになります。「新農基法への視座」という本の中で、大内先生を初め学会の方々農林水産事務次官を務められた澤邊さんの座談会が掲載されております。その中で澤邊さんは、実は私は農業基本法の制定には加わらなかったけれども、「農業基本法が十年くらい経って空洞化し、政策誘導の機能を早々と失ってしまった。」というふうに述べられております。  制定後十年といいますと、農政の歩みの中では米の生産過剰が顕在化する中で生産調整が開始され、農産物の自由化の圧力が強まってきて、また農山村では過疎問題が深刻化するといった農業をめぐる情勢の変化に対応すべく総合農政展開された時期であります。  私も、農業基本法が今日まで政策誘導の指針として機能してきたかということに対しては大きな疑問を持っています。現実の農政は総合農政に引き続いて「八〇年代の農政基本方向」に沿って推進され、国際農政という時期を経て、また平成四年の新しい食料農業農村政策の方向、いわゆる新農政に引き継がれました。この間、農業基本法と現実の農政との溝はますます深まっていったと思います。新農政はそのきわめつけであります。新農政理念は今国会に提出された食料農業農村基本法の原型となっているものであり、明らかに現行基本法理念が違っていることは事実であります。  このように基本法と全く異なる理念農政推進されたということは極めて異常な事態であるというふうに思いますが、農林大臣はこのことに対してどういう印象、評価を持っておられるか、お尋ねをいたします。
  28. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 昭和三十六年に制定されました農業基本法についての現実との認識についてのお尋ねだと思いますが、当時の日本の経済状況、あるいはまた農業農村状況というものを考えたときに、やはり当時は米はあの時点ではどんどん増産されておりますけれども、まだ完全に一〇〇%自給ではない状況でありましたし、またそれ以外の農作物についてももっともっと国内生産をしていかなければならないというような状況でありました。  そういう観点から、農業生産性をどうやって上げていくか。一方、都市部におきましては高度経済成長の中でいわゆる二次産業中心に非常に生産性が上がっていっておるわけでございまして、それとの生産性の格差をどうやって埋めていったらいいかということが一つの大きな柱にあったわけであります。もう一つは、そういう農村地域に住む人々の生活面での所得の問題、あるいはまたインフラ整備の問題等で都市部と大きな格差があって、その生活面での格差をどうやって埋めていったらいいかというのが一言というか、二言ですけれども、二言で言えば農業基本法の大きな基本理念だったと思います。そういう意味では、私はその基本理念というものは、それ以降の時代においてもその目的を達成するということの正当性というものは十分根拠のあるものだと思います。  もちろん、個々の条文一つ一つ実態と乖離しているとか、また時代の状況の変化とともに少し意味が変わってきた、あるいは意味をなさなくなったというものも個別には一部あるとは思いますけれども、全体としての理念というものはやはり当時から現在に至るまで私は間違ったものではない、あるいは意味をなしていないとは認識をしておりません。ただ、時代の変化とともに新たなニーズ、またその手法においての変化等々という、そういう状況の変化も出てきたということもあるわけでございまして、そういう観点から今回、農業基本法から新しい食料農業農村基本法という基本法に変えていくわけでございます。  現行基本法におきましては、あくまでも基本法でありますから、実定法といいましょうか、現実対策にかかわる法律との間の直接の、基本法と実定法という関係が余り明確でなかったということもその原因の一つとして結果的に言えるのではないかと思いますが、今回は基本法というものを根っこに置いて、これはあくまでも理念法でございますから、それを基本計画というものに位置づけて、その基本計画からまたいろんな法律を改革したり新たにつくったりしていくということで、基本法と実定法との間にきちっとした結びつきをつけていくという条件のもとで、これからの諸施策推進していきたいと思っております。  そういうことで、基本法の評価につきましては、一部その実現がまだまだできていないものもありますけれども、例えば規模拡大なんかについて申しますならば、地元のことで恐縮ですけれども、北海道等では非常に規模拡大が進んでおるとか、あるいはまた米、麦中心から畜産物、野菜等の生産が増大をしていったとか、またそういう目標に向かっての実現もある一方、現実に高齢化の問題とか輸入の増大とかいった現実の問題点もあるわけでございまして、基本法基本理念というものが四十年近く経過して新たな基本法を必要とする時代に変わってきたということで、これから御審議をいただきたいというふうに考えております。
  29. 和田洋子

    ○和田洋子君 大臣からお答えをいただきましたけれども、長年にわたって農林水産行政に携わってこられた政府委員の皆さんお一人お一人から本当はこの問題についてお聞きをしたいんですが、官房長、代表して、どういう御感想をお持ちですか。
  30. 高木賢

    政府委員高木賢君) 基本的には大臣から御答弁のあったとおりというふうに考えております。  私も、大体基本法制定直後ぐらいに役所に入りまして、大体個人の私の意識としては、基本法というものを意識して仕事を進めてきたという気がしております。ただ、年々といいますか、ある程度進みますと、多少時間の経過につれて定着した面がはっきり言って相当あると思うんです。いわゆる選択的拡大という点について言えば、需要も減少する、米から他作物への転換というのは既に現行農業基本法の二条一号に明記してございますけれども、そういったことがあるとかいうことでやりますが、先ほど先生から御指摘がありましたように、新しい食料農業農村政策の方向、いわゆる新政策というものが出されたころから、やはり単に農業だけでなくて食料問題も非常に重要だ、それから農業を支える農村というものも重要だということで、単に農業だけじゃない食料農村、さらには多面的機能といったものの重視といった事態が出てまいりまして、今日の基本法の制定ということにつながったと思います。
  31. 和田洋子

    ○和田洋子君 現行の基本法が、今、定着した、守られているというふうにお話がありましたけれども、私は必ずしもそうは思わないわけで、何で守られなかったのかなということを考えるときに、これもやっぱり澤邊元次官が座談会の中で言っておられますけれども、どうして守られなかったかというと、恒久法として長期にわたる抽象的で具体性のない目標、方向を示すことにとどまり、したがってまた権利、義務を明確に規定することもしていないというそういう性格を本質的に持っていた。要するに、権利と義務を明確にしなかった。抽象的で具体性のない目標、方向を示していたから、このままずるずる来れても問題がなかったのではないかということを言っておられると思いますが、私は実に的確な指摘だと思います。  この新しい基本法がもっともっと定着するためには、この基本法をもっとすばらしいものにしていくためにはいろんな方法があると思いますが、例えばアメリカの時限立法的な方法もあると思います。新基本法の立法化に至る議論の過程では、時限立法という選択肢も検討されたということを聞いていますが、あえて恒久法とした理由をお聞かせいただきたいと思います。
  32. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) いろんな方が過去について評価をしたり検討したり、あるいはまたひとつの反省といいましょうか、問題点を振り返って提起されるということは非常にある意味ではありがたい話でございまして、そういうものの積み重ねの中でまさに今回の新しい基本法がスタートをするというふうに私は理解をしておるわけであります。  一方、先生御指摘の時限立法にしなかった理由は何かということでございますが、もちろん一年一年あるいは数年ごとに状況というものが少しずつ変わっていくということは、過去においてもまた将来においてもあるわけでありますが、やはり農業あるいは農村あるいは食料というものは国家にとって永久に必要な存在であるわけでございまして、それに対しての基本的な考え方というものは長期にわたる一つの大きな理念でございます。  目標というものと理念というものは密接ではございますけれども、同一ではない。つまり、基本的な理念のもとで、そしてあるべき姿というものを決めていくわけでございますけれども、それに到達するための目標あるいはまた目標に到達するための手段というものは場合によっては途中で変更されるべきものであろうと考えます。  現に、今回御提案を申し上げる基本法におきましても、基本計画等々を見直すということも必要であるというふうに条文に書いてございますけれども基本理念そのものはやはり長期にわたる国民共通の認識のまさに基本でございますから、これは中長期にわたってたえ得るものでなければなりませんし、その基本に基づいて目標というものを定め、あるいはまた手法というものを定める。それについては、時とともに変更する必要があれば当然実態に合わせる、あるいは目標達成に向かって修正をしていくということはあり得べきことだろうというふうに考えます。  今回は、先ほど申し上げましたように、そういう目標あるいはまたその実現に向かっての実体法、その密接な根っこに基本法があるということでございますから、その基本法そのものは恒久的に定めてしっかりと守り、それを前提にして諸施策あるいはまたいろいろな目標の実現に向かって柔軟にやっていくという位置づけでこの基本法を制定させていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  33. 和田洋子

    ○和田洋子君 基本法理念を持ってしっかりと長期的にやっていくということで、現実の農政との乖離を避けるために、その骨格の一部である基本計画をおおむね五年ごとに変更するというふうに言っておられると思いますが、基本計画で示されている内容は法律でないわけですから、今日では永続的に必要な理念と考えられるものであっても時代の変化で本当に変わっていくというふうに今、大臣もおっしゃいました。それならば、もっと基本計画の見直しの中で本体の基本法を改正する必要性が生じたらちゅうちょなく改正していくという姿勢こそ大切だというふうに私は思いますが、いかがですか。
  34. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 新しい基本法においては、まず基本計画を定めなければならないというふうになっておりますから、これは義務規定でございます。  その基本計画というのは、先ほどの自給率等々いろいろと文字どおり決めていかなければならないわけでございますけれども、しかしそれは先生御指摘のように、また私が先ほど申し上げましたように、その目的達成あるいは状況の変化によって全く無関係である、あるいは五年間は見直さないということではない。それは本来の目的にむしろ逆行するわけでございますから、あえて「おおむね」というふうに規定をしておるところでございますけれども、これは状況の変化等を勘案して修正ということも十分考えられるわけでございまして、そういう意味で、基本理念のもとで基本計画というものはその理念達成のために必要なものでございますから、その状況に基づく修正等々については柔軟に対応すべきものというふうに考えております。  一応、毎年毎年ということもなかなか生産者の皆さんにとっては、よく我々御指摘を受ける将来目標はどうなんだということとのこともございますので、一応おおむね五年ということを一つの目安としてその目標というものを設定し、生産者の皆さん、関係者の皆さんのその活動の一つの大きなお役に立っていただきたいという認識でおります。
  35. 和田洋子

    ○和田洋子君 柔軟な姿勢こそ大切だと思いますので、よろしくお願いします。  先日、大臣所信表明において、次期WTO農業交渉に向けた取り組みについて、本年四月からの米の関税措置への切りかえを我が国の国益にとって最善の選択とされた上で、来年に開始される次期WTO農業交渉において我が国農業農村発展のため確かな成果を獲得するための出発点でもあるというふうに述べておられますが、私はこれは食糧法の改正を踏まえておっしゃっているというふうに思います。  この食糧法の改正についてはまだまだこれから私たちも審議をしていかなければいけない。決定までの経過に対しても本当にいろんな疑問が残っています。国民の合意は得られたと言っているけれども、果たして国民の合意は得られているんだろうか。また、この政府政策についても関税化の後の姿が全然見えないということで、私なんかはまだまだわからないのですけれども、まずこれは食糧法の改正を踏まえておいでになる、また農業基本法を今国会で成立させたいと。  我が国がかねて主張していた農業の持つ多面的機能に対する配慮とか食料安全保障に対する取り組み姿勢を鮮明にすることこそが、WTO交渉に向けた大臣の姿勢として大変必要なことだというふうに思います。次期農業交渉に対しては毅然とした態度で臨んでほしい、日本農業を世界にもっともっと主張してほしい、私たちは食料自給権という言葉を持ってするぐらいに思ってほしい、そして国民食料は国が義務としてきちんと守らなければいけない、そのような態度で臨んでほしいというふうに思っています。  いろんなところで大臣は述べておられますが、しっかりとした御決意をお伺いしたい。
  36. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 国あるいはまた公的な自治体も含めて、国民食料を安定的に供給するということは、これはいわゆる食料安全保障という言葉に象徴されますように国家的な義務であろうというふうに考えております。  そういう意味で、これから基本法におきましても、安定供給に当たっては国内生産基本としつつ、また一方では自給率を実現可能な数字で、私はできるだけ高いものにしていきたいというふうに考えておりますが、しかし現実、あるいはまた仮に一〇〇%という数字を一つの前提で計算しますと、今の日本の耕地の三倍以上の耕地が必要になる、これはかなり不可能な現実だと思います。ですから、国内生産基本としつつ、備蓄あるいは輸入を適切に組み合わせながらということになるわけでございますけれども、そういう観点。  それから一方では、我が国農業農村食料といった、あるいはまた国土保全といった多面的な機能も含めまして、我が国が次期交渉に向けて主張すべき論点というものをこれからまとめていかなければならない、そして国民的合意のもとで次期交渉に臨んでいかなければならないというふうに考えておりますので、どういうふうにして交渉に臨むかについての具体的な細かいところまではまだ申し上げられる段階ではございませんけれども、まさに御議論をいただいた結果として、そういう日本の国益に合う立場を諸外国の理解も得るように積極的に働きかけをしながら頑張っていかなければならない。  そして、その手段の一つとして米の四月一日からの関税化があります。四月一日からの関税化は、もちろんそれだけではないわけでございますけれども、次期交渉に向かっての一つの交渉スタンスとしてプラスになる判断だというふうに理解をしておりますので、先生御指摘のように、国民的合意をバックにいたしまして強い決意で交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  37. 和田洋子

    ○和田洋子君 それは本当に日本もきちんと主張してほしいなという思いです。  全然視点は変わって、農地確保についてお尋ねをいたします。でも、農地確保ということは、食料自給率目標というものを設定する中では決して避けて通れないものだというふうに思います。  食料農業農村基本問題調査会の答申は、「我が国農地面積は、宅地への転用等により減少を続けている。しかし、農地農業生産にとって最も基礎的な資源であり、かつ、いったん毀損されると、その復旧に非常な困難が伴うことから、将来のために優良農地を良好な状態で確保していく必要がある。」というふうに答申の中で述べておられます。  食料安定供給を図る上でその生産基盤である農地確保が重要なことは申し上げるまでもありませんが、最近の動向を見ますと、一年間の減少面積はおよそ四万から五万ヘクタールでありますから、減少の程度は物すごく強まっているのが事実であります。先日のこの委員会で谷本委員もおっしゃいました。百年たったらゼロになるというようなお話もあったわけでありますが、これは真剣に心配しなければいけない状況に立ち至っていることは事実であるというふうに思います。  大臣所信表明でも、「優良農地確保」という言葉が使われていることでありますが、今日の事態は、必ずしも優良農地とは言えない農地であっても大切に維持していくことが必要なところまで追い込まれている状況ではないのでしょうか。  そこで、お尋ねをいたしますが、現在の農地面積のうちこれだけは確保しなければいけないということをそろそろしっかり言ってほしいと思いますが、いかがですか。
  38. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 国民にとって必要な食料国内確保するためには、当然農地確保というものが必要なわけでございます。そして、優良農地確保し、またそれを維持増大していくということが大きな農政の柱の一つでございますけれども、先生御指摘のように、優良農地だけでは国民に対して必要な食料供給することができないということでございます。  それから、優良農地の定義とは何かといえば、これは厳密な定義は事務局から必要があれば答弁させますけれども、私の感じとしては、ただ地力があるとか、あるいは平地であるとかだけではなくて、利用集積というか広い耕作ができる地域であるとか、あるいはまた一面では、生産条件が悪いにしてもいいものができるという意味では、中山間地域も広い意味では私は耕作する上でいいものができる農地だというふうに考えておりまして、そういう意味で、優良農地確保、それからまたその逆の問題として耕作放棄地をいかに少なくしていくかということとこれは両々相まう問題だと思います。  いずれにいたしましても、必要な自給率を品目ごとに設定し、実現していく、そしてトータルとして実現可能なできるだけ高い自給率を実現していくというためには品目ごとにやっていくわけでありますけれども、どれぐらいの農地が必要なのかということは、当然一定の計算式か何かでできるかどうかわかりませんが、相関関係があることは言うまでもないわけでございます。  したがいまして、農地の面積に関しましても、全体でどのぐらい農地が必要なのかということは自給率目標達成との間に密接不可分な関係がございますので、必要な農地の数量というものを今度の基本計画の中で明らかにしていきたいというふうに考えております。
  39. 和田洋子

    ○和田洋子君 ぜひ明らかにしていただきたいというふうに思います。  今、国民が一番関心を持っているダイオキシン、食品の安全性確保についてお伺いをいたします。  この問題は衆参の予算委員会の中、またいろんなところで言われておりますが、政府もダイオキシン対策関係閣僚会議を設置して真剣に取り組んでおられるというふうに思います。  ダイオキシンの問題は、平成十一年三月五日の朝日新聞に出ておりますが、実はPCPとかCNPとかいう除草剤が一番問題であったというふうに書かれているわけですけれども、ダイオキシンの問題に対して、PCP、CNPを使ってしまった農業に対して除草剤によるダイオキシン汚染の実態をどのように考えておられるか、まずお尋ねをします。
  40. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) ダイオキシンと一口に申しましても大変種類が多いわけでございますし、微量な化学物質でございます。これと今の農薬との関係についてのお話がございましたが、過去に使用されておりました農薬中にダイオキシンがどの程度含まれていたかということ、つまり含有率といいますか、それについては明確な知見が正直言いまして存在をいたしておりません。  それからもう一点は、ダイオキシン類、今お話がありましたように、一口にそういうとらえ方をしても二百種類を超えるような種類があるわけでございまして、その物質が仮にあるということになりましても、その発生源と結びつけてこれがどこから出てきたかということを特定するというのは大変難しいし、またそういう確定した判定の仕方ということがないわけでございます。  等々の理由もございまして、農薬といいますか、今お話しの除草剤からどういうふうな形で出てきているかという実態につきましては、私どもは量を判定し推計することは大変難しい状況にあるということは御理解をいただきたいと思います。  しかしながら、ダイオキシン類について知見を収集しまして実態を解明していくというのは大変重要であると認識をいたしておりまして、現に、所沢についてはもう既に実態調査を実施いたしておりますし、十一年度から全国の農用地につきましてダイオキシン類の実態調査を行うほか、その内分泌攪乱物質の動態解明ということで作用機構に関します総合研究等々いろんなことを実施していきまして、汚染実態の把握と、どういう形でそれが影響していくかというようなことの解明に努めていきたいと考えておるところでございます。
  41. 和田洋子

    ○和田洋子君 現在これらの除草剤は使用されないというふうに思いますが、農家もそれを知らなかったわけですから、農家も被害者であるんですね。これらがどの程度土壌の中に残留しているかとか河川を通じて海底に残留しているか、これは正確な調査が必要だ、これが今後の大きな課題になるというふうに思います。  大臣は、今後調査をするというふうに言っておられます。所沢あるいはその周辺は三月中に調査が終わると発表されておりますが、これは所沢とかその周辺とかの限定的な調査ではなくて、全国的な調査を実施していかなければいけないというふうに思いますが、いかがですか。
  42. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 御指摘のとおりでございまして、本来、平成十一年度から三年かけて全国の農作物あるいは土壌の調査をすることを予算が成立した後に早急にやることになっております。三年というのは、毎年やって三回三年やろうということであります。  所沢というのは、一月二十九日の国会での御質問を受けまして、所沢が大変なんだと、その問題でいろいろと消費者そして農業者の方が大変困っているんだということでございましたので、それを受けて私が事務当局に緊急に調査をするように指示をしたところでございます。この件につきましては三月中にデータの結果を公表させていただきたいと思いますが、これはあくまでも所沢という問題、そしてさらにそれに拍車をかけたのが例のあのテレビでの報道であったわけでございます。  あくまでも緊急の措置として所沢をやっておりますが、先生御指摘のように、十一年度のできるだけ早い時期から全国の農作物の土壌あるいは農作物そのもののダイオキシンの調査に、そしてまたそれに対するいろいろな研究を始めていきたいというふうに考えております。
  43. 和田洋子

    ○和田洋子君 新聞発表のようにPCPとかCNPの除草剤が使われたことが大変な問題で、今は終わってしまえば後の祭りというようなことなんですけれども、この調査は十一年度から始められるということですけれども農地から流れた河川、河川から流れた海、海の底の土、そういうものにも、これは農林省の管轄でないということはよく存じていますけれども一つの問題を他省庁にわたってきちんと連携をとって海底土壌の方にまで調査を進めていっていただきたい、それは大臣がぜひそのリーダーシップをとってやっていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  そして、私は農林省の研究所の皆さんにお願いしたいことがあります。  今日でこそダイオキシン類が強い急性の毒性とか発がん性とか生殖毒性とか奇形を起こす作用があるとか免疫毒性などがあるというふうに確認されていますけれども、このような毒性が確認される以前に既に大量の除草剤は使われてしまいました。過去の経過を振り返ってみますと、農林省もCNPとがんとの関係指摘されていながら農薬の登録を繰り返してきたような結果があります。残念ながら政策サイドの官僚の皆さんには先端科学技術の知見が欠けていたというふうには言えないか、知見が欠けているというふうに言ったら悪いんですけれども、専門家の皆さんの判断というのが大変必要になってきますし、今後国民の健康に影響を及ぼす未知の問題が発生すると思われます。  そこで、このようなときに科学的な見地から御判断をいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  44. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) ダイオキシンの対策等についてその科学的見地に立った対応が必要だということは先生の御指摘のとおりであります。しかし逆に、毒性その他について現在、科学的知見が十分でないということもまた事実だと認識しております。  そういうこともございまして、毒性等について、環境庁、厚生省が行う調査研究、そういった研究と密接に連携をとりながら、農水省におきましてはダイオキシンの土壌、水環境中における動態とか、あるいは作物への移行機構、そういったことに関する研究に積極的に取り組みながら、調査等のデータの意味するところ、そういったものも正確に行政に反映させていきたいというふうに思っております。
  45. 和田洋子

    ○和田洋子君 まだまだ質問はあるんですけれども時間で終わりますが、残留量が多くて侮れないけれどもパニックになる必要はない、着実に排出の蛇口を締めて問題と向き合ってほしいということを私もお願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございます。
  46. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。  まず、米の関税化に関してお尋ねしますが、マスコミ、新聞の報道でしか私は事実関係を知らないんですが、何か堺屋経済企画庁長官が関税率は高過ぎるという発言をパリか何かでされて、それに対して中川農林水産大臣がそのような発言をするのは選挙を経ていない政治家がすることだというような報道がされたんですが、これは実際の事実関係はいかがであったんでしょうか。
  47. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 一月の初めに堺屋長官がパリでの講演の中で米の関税化に伴う御発言をされました。  御発言をされた内容は、たしか参議院の予算委員会でも堺屋長官御自身が御答弁をされておりますので、その堺屋大臣の発言については私から申し上げない方が、また不正確なことを言ってもあれでございますので。要は、原稿にない部分を自分がその場でアドリブでおっしゃられた。とても高い関税であって、一〇〇〇%ぐらいの関税、これは国際的に通用するはずがないというような御発言だというふうに概略聞いております。  私も実は海外におりましたけれども、そのことを聞いたときに、率直に申し上げまして、我々としてはきちっとルールに基づいた数字であり、しかもこれは生産者の皆さん、あるいはまた国会でも随分おしかりをいただいておりますけれども、議論の過程が非常に唐突であったというようなことも、内容の結果そのものは別にいたしまして、いろいろな御指摘をいただき、それに対して我々としては、短い期間であったかもしれませんけれども消費者団体も含めましていろんな方々に御説明を申し上げ、また国会の場でも御質問をいただくたびにお答えを申し上げて、内容そのものについての御理解はいただきつつあるという状況の中で、堺屋大臣から全く事実と異なる、誤解を与えかねない御発言があったというふうに私自身は受けとめたところでございます。  したがいまして、せっかく御理解をいただきつつある状況の中で、事実に基づかない御発言であったわけでございまして、そういう中で、私は農林大臣であり、また選挙で当選をしておる立場から、政治家といいましょうか、学者あるいはまた役人的な発言というよりも、むしろ政治的にこの問題を重視いたしました。  何としても国民の皆さん、関係者の皆さんに正確な御理解をいただくために、かなり自分でも過激な発言を結果的にしてしまったということは率直に認めるところでございますが、私自身が、事実をよく御存じのない、したがって事実に基づかないでそういう誤った内容の御発言をされるとするならば、今改めて言うにはまことに口から出にくいような単語を使いましてそういうふうに言わざるを得ないということでございまして、それがマスコミ等で中川が堺屋は何とかと言ったと、こういうふうに見出しとしてなったわけでございます。  その後、堺屋大臣に早速この問題について農林省の状況をお勉強していただきまして、事情がわかったと。これはまず従量税でございますから、何%なんという設定の仕方をしていないことも含め、そんなに高い関税相当量ではないし、諸外国においても高いものはほかにもたくさんあるわけでございまして、堺屋長官から自分の発言は事実と違った発言であったということを公の場でおっしゃられ、また私自身も、あたかも私のごとき人間が日本を代表するような知識人である堺屋大臣に向かいまして、まあ私が言ったから多分記事になったんだろうと、逆に堺屋さんが私に向かってばかと言ってもこれは全然当たり前のことでございますから問題にはならなかったと思いますけれども、その単語を使ったことについてはまことに無礼なことであるということで、その単語自体について私は訂正をさせていただいたというのが事のてんまつでございます。
  48. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 では、その堺屋長官の発言はともかくとしまして、関税率の問題ですが、国民の中には、やはり高過ぎるのではないか、安いお米が入ってくればうれしいという声も一部にはあると思うんですが、そういった面での配慮は大臣としてはどのようにお考えでしょうか。大臣じゃなくても結構ですが。
  49. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 今回の二次税率につきましては、農業協定に書いてあるところに従いまして忠実にそういう形で算定をいたしまして、今御指摘のような形での従量税ということを張っているところでございます。  御指摘のミニマムアクセス米等々につきましては、国内の加工業者の方々、流通業者の方々がおられます。そういう方々に対しましては、従来から食糧庁が輸入しておりますミニマムアクセス米、全体で六十八万トンことしはあるわけでございますが、その中の一部を使いまして供給をいたしております。その価格につきましても、国内産米との整合性、それから品質の格差、市場評価、そういうことを踏まえまして供給いたしておりまして、現実に加工原材料用の業者に対します売り渡し価格につきましては、国内産の加工用米に対しましてかなり低廉な価格供給いたしております。  これからもこういう方々の事業運営ということに配慮いたしまして、今申し上げましたような基本考え方に立ちまして今後も進めてまいりたいというふうに考えております。
  50. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 その関税率の算定が決められた数字であると言いますが、ウルグアイ・ラウンドの協定上はそれ以上高くしてはいけないということが決められてあるので、それ以上低くすることは別に政策的に可能なわけでございます。  ですから、私は、例えば消費者の立場に立てば、あるいは安いお米が入ってくることも消費者としては利益があるのではないかと思うわけですが、それ以上高くしてはいけないという関税の一番高いところに持っていったその根拠とか政策的な考えについてお尋ねしたいんです。
  51. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) これは農業協定上、明確にどういう考え方を持って二次税率を張るべきかということが明確に書いてございまして、最高とか最低とかそういうことはございませんで、農業協定に書いてあるとおり忠実に私どもとしては算定をした結果ということでございます。  したがいまして、何が書いてあるかと申し上げますと、一九八六年から八八年のデータに基づいて国際価格国内価格との差を関税相当量として設定しなさいと、こういうふうに書いてございます。その場合の国際価格は原則として実際の輸入価格、CIF価格ということで明確に書いてございます。それから、国内価格は原則として代表的な卸売価格と、こういうふうに書いてございます。それを御指摘のように、何か調整するということになれば関係各国と協議を要するということでございますが、そのままということでございますので、私どもとしてはそのまま算定をいたしまして通報したと、こういうことでございます。
  52. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ちょっとそこのところの理解が私は違うんですが、算定された数字をそのまま、つまり高い関税の率がそのまま関税としなさいという協定ではなくて、それより低い関税率に設定することは可能ではないか。少なくとも協定上、例えばこれは一つの仮定の話ですけれども、関税をゼロにしたってこれは政策上できると思うんですね。ただ、出た数値以上高くすることは協定上できないということだと思うんですが、今言われた基準で出た数字でなければならないということはないと思うんですね。また、そういうことであれば、アメリカがなぜ高いといっていろいろ抗議してくるのか、ちょっと疑問に思うんです。
  53. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 先ほども申し上げましたように、先ほど申し上げたような形での国際価格国内価格の明確な規定が書いてあるわけでございますから、これに沿いましてやるわけでございますが、それに違った形で調整を行えば関係国と十分な協議の機会を与えなきゃならないというふうになりますので、関係国との協議ということに入ります。これはそれぞれの利害がございますので、相当な協議を要することになるだろうというふうに思います。  むしろ、農業協定の基本原則に明確に算定の方法が書いてございますので、その算定の考え方に沿って忠実に算定するということが素直であるし、私どもとしてはそういう対応をしたということでございます。
  54. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 どうもちょっと議論がかみ合っていないので。そういう関税率でなければならないと、それより低くすることはできると思うんですが、ここで同じ議論を繰り返してもしようがありませんので進めます。  まず、私は、消費者の立場に立ちますと、例えばこの関税化に関して唐突に出てきたという件もあるんですが、政府、与党、生産者団体の三者協議で一致したということが非常に重要な要点として関税化が決定されたように思うんです。私どもとしてはそこになぜ消費者の声が入っていないのかということが大変不満なわけですが、例えば消費者団体と協議するとか、そういう消費者の声をくみ上げるという努力はされたんでしょうか。
  55. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) いつも当委員会でもおしかりをいただいておりますけれども、時間が短期間でというような御議論がいろいろありましたけれども、それは横に置きまして、決定の前後、特に後の方が多かったわけでありますけれども消費者団体の皆さん方とも私自身も含め何回かお話をいたしました。  消費者団体の連合会の代表の方たちと私自身、一時間半ほど率直な意見交換をいたしましたが、急だったとか、あるいはそんなにいいことだったらもっと早くにやっておけばよかったじゃないかとか、そういう御議論はございましたが、関税化したこと、あるいはまたそのやり方等々については、事後であったにいたしましても、特におしかりをいただいたというふうには私どもは受け取っておらないわけでございます。  消費者団体に限らず、自治体も含めまして、できる限り国民的にこの関税化について御理解をいただくべく努力をしたところでございますが、総じてこの関税化、そして三百五十一円あるいは三百四十一円という数字について、低いとかあるいは高いとかいうことは特に御指摘はなかったというふうに理解をしております。
  56. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 非常に抽象的な議論になるんですが、例えば今非常に低迷する経済、金融情勢が非常に混乱しているという一つの反省は、やはり金融行政が過保護であったと、護送船団方式という形で余りにも過保護であったがゆえに、その問題点が結局は広く根深く浸透してしまったというようなことがあると思うんです。  農業問題も、これはやはり日本農業が強くなってもらわなくてはいけないということは私も当然思っていることで、これは消費者の立場からも当然のことだと思います。そのためにこれまでもたくさんの税金を使ってまいりましたし、今後もそういう意味で税金を投入して保護することはいいんですが、ただ保護する中で、日本農業はもっと強くなってもらわなくちゃならないという前提があると思います。  率直な私の感想を申しますと、どうもこれまで多額な税金を使ってきた割には農業が強くなっていないんじゃないか、そういうふうに感じるんですが、そこのところ、これからの政策を行われる立場として大臣はどのようにお考えか、ちょっと所感をお聞かせいただきたいんです。
  57. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私自身は、農業というものはどの国においても必要不可欠なものであり、自国で生産をすることに努力をするということは日本に限らずどんな国でも私は必要なことであり、またそのための努力を各国ともしておるというふうに考えております。発展途上といいましょうか、最貧国においても、何とか自分のところで少しでも食料増産をしたい、あるいは輸出大国と言われる国々も自分のところに入ってくる農業に対しては極めてディフェンシブといいましょうか、入らないようにするための努力をしておる。  そういう意味でいえば、我が国もこれだけ低い自給率、そしてまた将来に対する不安を国民の多数の方がお持ちになっている状況の中で、日本農業を守り発展させていくということは、私は当然のことではないかと考えておるわけであります。  そういう状況の中で、一方では、先生御指摘のように、日本農業の体質強化ということも、また消費者にできるだけいいもの、そしてまた安全なものを、安全といえばやっぱり国産ということに当然なると私は思うわけでありますが、しかも適切な値段で供給するということも、これまた消費者生産者との間に一つの大きな信頼関係をつくる上でも必要なことだろうと思っております。  そういう前提で振り返ってみますと、お米の値段にいたしましても、あるいは乳価にいたしましても、いわゆる政府が今まで決めてきた価格というのは実質どんどん下がってきておりますし、また一方では、生産性向上等々も極めて顕著に、単収あるいはまたいろいろな数字を見ましても生産性が上がってきておるという状況でございますから、私は日本農業を守り発展させていく、そしてまた国内農業の体質強化、あるいはまた生産性向上等の生産者の御努力というものも結果として私はあらわれておるというふうに認識をしております。
  58. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 質問の項目を変えますが、今、遺伝子組みかえ作物というものが実際に流通しております。これについては健康上、害はないというふうに公的には言われておるわけですが、ただ実際に、それでもなおこれは将来にわたって人体に有害ではないか、ですからその表示をしてほしいという声も少なからずあるわけです。  ですから、安全だというだけではなくて、やはりそういう声がある以上、行政サービスとして遺伝子組みかえ作物については何らかの表示をしてほしいということを前向きに検討してみるのも一つの考えではないかと思うんですが、その点はいかがでございましょうか。
  59. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 遺伝子組みかえ食品の表示あり方につきましては、食品表示問題懇談会で現在検討をしていただいておる最中でございます。  また、外国からも、アメリカあるいはEU等からも、アドバイスというよりははっきりと言えば要望みたいなものも来ておるわけでございますけれども、外国に対しては、今国内で専門的な立場から、あるいはあらゆる立場の皆さんの御参加をいただいて検討しておる最中ですから、現時点でお答えすることはできませんというふうに申し上げております。  率直に申し上げれば、先生も御存じのように、アメリカの方は安全だったら表示は要らないじゃないかと、EUの方はいや、きちっと表示すべきではないかというようなことを言ってきておるわけでございますけれども、我々といたしましては、安全であるということがまず大前提になければならない。その上でどういう表示にしたらいいかということにつきましては、いろいろなお考えがあるわけでございますけれども、できるだけ国内的な御理解の上に立った結論を出していきたいという考え方から、昨年いわゆるたたき台を提示いたしまして、その上でいわゆるパブリックコメント、いろんな方々の御意見をお聞きいたしましたところ、一万件を超える多くの御意見をいただきまして、消費者方々の声は表示をすべきであるという声が強いというふうに受けとめております。  これから表示につきまして信頼性あるいは実効性の観点から、これは先生御指摘のように、遺伝子組みかえという極めて先端技術的な食品でございますから技術的、科学的な検討をきちっと行うことが必要でございまして、その意味で懇談会の下に小委員会を設置しております。この小委員会のもとで、本年の夏ごろまでにひとつ検討の結果を取りまとめていただきたいということを今お願いしております。  農林水産省としては、この懇談会の取りまとめを踏まえまして遺伝子組みかえ食品の表示ルールを確立いたしまして、適切に実施していきたいというふうに考えております。
  60. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 では、また別の質問に移ります。  毎年三月ごろになりますと、東京など首都圏以西の地域では杉の花粉症というのが出まして、特に東京でもこの時期にマスクをかけて町を歩いているという方を多く見受けるわけですが、この杉の花粉はこれはアレルギーでして、基本的には杉の花粉が多過ぎる、抗体反応で余りにも多過ぎるためにアレルギー症状が出るということであるわけです。  私が思うのは、どうも日本の山林、戦後の植林計画で杉を非常に多く植えたということも一つの原因であると思うんですが、非常に単純に考えれば、杉の花粉が多過ぎるのであるから杉を切れば花粉症もその分減るのではないかと思うんですが、そこら辺、この杉の花粉症に絡めて杉の植林のあり方について考えをお尋ねしたいんです。
  61. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 杉は、古くから天然に、文字どおり日本の文化、生活と一体の大事な樹木として人間と共生してきたわけでございますし、四百年ぐらい前から造林もされてきております。  しかし、近年、特に先生御指摘のように、都市部において杉花粉症に悩む方が大変多くなっておられて、花粉症になると大変苦しいという話をよく、幸い私はちょっとおくれているのかもしれませんが、花粉症になっておりませんので、その人々の苦しみのお話を聞いて大変だなと思うわけでございますが、原因がまだよくわからない、あるいはまた予防、治療、発生源に対する対策をこれから早急に進めていかなければならないということで、例えば環境庁では花粉症と大気との関係、あるいは厚生省では花粉症の治療に関する研究、そして我が農林水産省では花粉の少ない杉品種を選定するとか、あるいはまたその杉を供給していくということを既にやっておりますけれども、花粉が出てくることを抑制するために間伐、枝打ちといったことを実施しております。  今後とも、関係省庁と十分な連携をとりながら、花粉症に苦しんでいる方々に対する対策というものを実施していきたいと考えております。
  62. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 なお、その花粉症のことについてなんですが、どうも杉が植林してから大体三十年ぐらいたつと花粉を出すようになる、出すようになるとその後四、五十年ずっと出し続けるというような状況だと言われております。そうすると、これは今から品種改良したりしても、今花粉症が出ている人は死んでからのような話になって余りにも遅過ぎるのではないか。また、杉の花粉症というものがはっきり言われてからもう二十年ぐらいたつわけですが、これまでやってきておられるのか、あるいはやっておられるとしても余り効果がないようで、一向に杉の花粉症に関してこれがおさまるというような状況ではないわけでございます。  ですから、杉の花粉が多ければ多いほどアレルギーになる人がふえるしアレルギー症状がきつくなる、杉の花粉が減れば減るほど程度は和らぐという状況にあるわけですから、杉が多過ぎるということに原因があると思われるのであれば、これは百万人単位の方が花粉症に苦しんでいる状況を考えれば、やはり思い切って杉を伐採して、他の杉以外の何らかの植林政策を行うということも抜本的に考えてみてもいい時期に来ているのではないかと思いますが、そこのところ、くどいようですが、重ねてお伺いしたいと思います。
  63. 山本徹

    政府委員山本徹君) 大臣からも御説明申し上げましたけれども、杉花粉症の原因というのは杉花粉の増加だけでは説明がつきませんで、人間の体質の変化とか大気汚染による生活環境の悪化等が絡み合った結果であるという医学的な御指摘もございまして、未解明な点が多うございます。  その点で、関係省協力してこの対策の研究を行っておりますが、もちろん杉の花粉の飛散というのも一つの原因ではございますので、私ども、先ほど大臣からも御説明しましたように、杉というのは日本において木造住宅の主要な資材でございまして、今後とも杉というのは日本の林業にとって基幹的な樹種の一種であると思っておりますが、この杉花粉症を回避するために、花粉の少ない杉品種の選定、供給体制、また間伐、枝打ちを進めております。特に、都市周辺において杉花粉の飛散に伴い苦しんでおられる住民の方は大変多うございますので、広葉樹の造林に転換する、あるいは杉も今徐々に間伐から主伐期になっておりますので、伐採し樹種を見直すというようなことも指導いたしているところでございます。  ただ、これが主として、例えば東京、首都圏で申し上げましても民有林に植栽されているものでございますから、林業の関係の方とも御相談しながら、今のような対策で少しでも都市住民の方々の花粉症を少なくできるような努力を私どもとしてもしてまいりたいと思っております。
  64. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 答弁は要りませんけれども、何か杉の花粉がはっきりまだ証明されていないかのようなことでしたが、大気汚染とか人間の体質とかいいましても、杉の花粉の発生時期に限って極端にあらわれるというような状況から見ましてこれは杉の花粉であるということは今争いようがないと思う。  ただ、それが大気汚染とか体質といった複合的な要素があるということであるならそれは認めますが、杉の花粉のアレルギーが杉の花粉が原因でないかのような、ちょっとそのようにとれたんですが、それはやはり撤回していただきたいと思っております、杉の花粉の発生時期にこれはぴったり一致しているわけですから。  あと、これは単なる意見だけでございますけれども、杉を全くやめろ、全部なくせと言っているのではなくて、杉の有用度もあるわけですが、やはりそれにかわる材木の開発等をさらにもっと積極的に研究して、杉の花粉症に苦しむ人たちの悩みをもう少し軽減していただきたい、努力していただきたいということを述べて、私の質問を終わります。
  65. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 冒頭、ちょっと外務省の方にお聞きをしておきます。何をお聞きしたいかというと、インドネシアへの食糧援助米の問題でございます。  農水省の方は、昨年九月に食料農業農村基本問題調査会の答申の中でも、食料農業分野における主体的、積極的な国際貢献というようなことをうたった上で、こういう援助米というようなことも進めておるわけでございますけれども、インドネシアへ送られた五十万トンの米がどうもきちんと本来の趣旨に使われていない、そういう話が現地でも報道され、日本のマスコミでも報道されております。どういう実態になっておるのか御説明もいただきたいし、せっかくこれやっても全く意味がなければ今後のあり方にもかかわる問題ですので、外務省からまず答弁を求めておきたいと思います。
  66. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 先生ただいまお尋ねのインドネシアに対する支援米でございますが、初めに五十万トン、それから追加二十万トン、これは貸し付けをしております。そして、そのほかに世界食糧機構等からタイ米等を買えるようにということで日本から無償の支援をしておるというようなことで、一応合わせて百万トンの米支援ということになっておりますが、御指摘のようにインドネシアの中で配付状況が滞っているのではないかということがございました。  これは実際そういうことがあったわけでございまして、私どももせっかく日本からの支援米、それも昨年の秋口が食料が不足するのでなるべく早くくれという御注文もございましたので、鋭意そういう作業をして相当部分をインドネシアに送ったわけでございますが、現地に着いた米が有効活用されていないと先生御指摘のような報道、情報もございましたので、この点については調査もいたしましたし、インドネシア政府に非常に強く申し入れをいたしました。インドネシアのギナンジャールという経済調整大臣にも高村外務大臣から直接、日本の米を滞らせることなく困っている人たちの手に早く届けてもらいたいということを強く申し入れた経緯がございます。  先方は、日本のお米は質が高い、向こうでも少し高い値段で売っているのでいろいろな地域に配分するに当たってはいろんな考慮があって、一挙にともかく配ればいいという事情ではございませんというような御説明がございましたが、いずれにいたしましてもこちらから強く申し入れまして、最近、放出量が相当程度ふえている、かつては一週間に千トンとか三千トンぐらいであったのが最近は週二万トンぐらい放出されているという状況になっております。
  67. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それだけじゃないわけでしょう。要するに、積みっ放しの問題ももちろんあるんですよ。それだけじゃないわけでしょう。結局、例えばこの米が正当に使われているのかどうかという問題ですよ。向こうの食糧調達庁の職員がこれを勝手に職員に無料で配ったり、そんな問題が起きているわけでしょう。そういうこともきちんと報告をして、なぜこんなふうになるのかという問題点を、日本としては言うだけじゃなくて渡しっ放しだけでいいのかという問題が残っているわけでしょう。それに対してきちんと答弁してもらわなくちゃいけないわけです。
  68. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) インドネシアの支援米の状況というお尋ねでございましたので、先ほどお答えいたしましたが、今、先生がおっしゃいましたインドネシアの食糧調達庁職員に無料配給された、横流しをしたのではないかという報道がございました。  この点につきましては、インドネシア側にただしましたところが、これは食糧調達庁の職員が出資する協同組合、これが昨年十一月に出資金を利用して日本からの米四十一・七トンを購入して職員に配付した、しかしこれは市場の通常の販売の一環であって特別な便宜を図ったものではないという説明がございまして、この旨、インドネシアの商工大臣が現地で記者会見でも説明をしておりまして、そういう説明であれば無料配付とか横流しということではないと理解をしております。  他方、世間にそういう結果として疑念を生じたということもございますので、今後こういう点にも十分に気をつけて慎重に我が方の貸付米を活用してもらいたいということを、先ほども申し上げましたような形で、また現地の大使館からも先方に申し入れをしている、こういうことでございます。
  69. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 余りこの問題ばかりやるつもりではないのですが、ただ、いずれにしてもそういう問題が指摘されるようなことが起きる。ですから、日本から送るのは大事なことで、やればいいのであって、ただ、行った先の問題というのは常にこのODAの問題では起きてくるわけです。その辺は、お忙しい大使館でしょうけれども、我々としても、せっかく日本の米を送っておいてそれがどこかに野積みになったり、穴をあけられて勝手に持っていかれて、そんな問題が起きているということについては非常に心外でございます。  本来、私は農水省がこれを管理してその後何かいろいろやっているのかと思ったら、どうも外務省の管轄だということで、きょうは来ていただきましたけれども、ぜひともそういう意味ではきちんとした形で今後もこれをやっていただきたいと、こう思っております。この問題はこれだけで終わりませんから、さらにチェックさせてもらおうと思っていますから、きちんとやっておいていただきたい。これだけを申し上げて、外務省、もう結構でございます。ありがとうございました。  それでは、所沢のダイオキシンの問題で大臣に何点かお聞きをいたします。  一つは、三月三日付のテレビ朝日の回答に対して大臣自身も記者会見で、これでは不満だ、さらに回答を求めるというような話があったやに我々はお聞きしておるわけでございますけれども、どういった点に不満を感じ、どういった点をさらにきちんとしなくちゃいけないと感じていらっしゃるのか、まずその点を伺っておきたいと思います。
  70. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 所沢の農作物とダイオキシンの関連につきまして、先ほど申し上げましたように、一月二十九日の国会での御質問をいただきまして、早急に調査することにしたわけでございますけれども、その直後の二月一日のテレビ朝日の「ニュースステーション」の特集番組の中で、所沢の野菜が安全ではない、あるいはまたかなり、何グラム食べたらもう許容量を飛び越して大変なことになるというような報道がございました。  その後、私どもとしては、どういう根拠でやったんですか等々、いろいろと質問といいましょうか、事実関係について教えていただきたい、あるいはそのデータの根拠は何なんだと。もちろん、仮に事実であればそれはそれとして率直に受け入れなければならないわけでございますけれども、率直に申し上げますと我々のダイオキシンのデータというものが余り多くないものですから、現在その調査もやっている最中でありますけれども、私どもが持っております厚生省等の調査の結果と比べてかけ離れておりますので、事実関係について問い合わせをいたしました。  三月三日というのは三回目の申し入れに対する回答でございますが、申し入れをするたびに新しい事実あるいはまたいろいろな釈明が次々と出てくるわけでございます。三月三日について私が直観的に一番不思議というか怒りを覚えたのは、放送の中で、ホウレンソウを二十グラム食べるとほぼ基準値に達してしまうということに対しての回答でございますが、二月九日だったと思いますが、テレビ朝日では〇・幾つから三・八までの数字のその三・八はホウレンソウではない、ホウレンソウは〇・三七という我々の持っておるデータとほぼ変わりがないというようなことをたしか報道されたと思いますが、なぜ二十グラム食べるとその基準値に達してしまうのかということに関しましては、実はホウレンソウを二十グラム食べると、当然何ピコグラム掛ける二十グラムの数字が出てくるわけでありますが、それでは到底その基準値、彼らの言っている基準値でありますけれども、それに達しない。実は、それにさらに所沢の大気あるいは水、土壌等に含まれるものも足し上げて初めてその基準値に達するということなんでございますというような回答でございました。仮にこれが事実だとするならば、やはり報道の良識からいってそのことをきちっと報道すべきではないのかということ等で、極めて私自身不可解なものを感じ、改めて実は四回目を三月八日に申し入れをさらに細かく詳しくしたところでございます。  もとより、この問題はダイオキシンという極めて毒性の高い物質が原因であることは私自身も根本の問題として認識をしておりますが、あたかも所沢の野菜がダイオキシンの塊のような印象を与えて報道をした、それによって生産者の皆さんあるいは流通業者の皆さん、そして消費者の皆さんが大変な不安や、特に生産者の皆さんは経済的実害、あるいは生産者としてのプライドに対する毀損を受けたわけでございますので、何としてもこの件に関しましては、農林水産省の立場としてあくまでも安全な農作物を供給するという観点から、この放送については事実が究明できるまで我々としては納得することのできない問題としてとらえておりますので、今後もさらに申し入れをして、きちっとした回答をいただくようにするのが報道の義務だというふうに考えておりますので、私自身強い怒りを覚えながら、現在四回目の申し入れをしておるところでございます。
  71. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ところで、この問題で、JA所沢への回答ではテレビ朝日さんは、価格の暴落は風評被害には当たらないというふうな話を一顧だにせずに返しているようでございます。  大臣、テレビ朝日が言っていること自体をどうお考えになるのかというのもお聞きしたいし、もう一点は、いわゆる風評被害というものをどうとらえていくかというような問題もあると思います。  さらに、もう一点この問題で関連するのは、もちろん風評被害であって、それに対して当事者であるそこが責任を持つのは当たり前だという考え方になってくるんでしょう、確定すれば。ただ、風評被害が出た後に実際に被害を受けるのは農民であって、それに対してどう一体、全面的にそれで国がどうこうやれとは言いませんけれども、こういった問題が、農業の問題ではこれだけじゃなかったと思うんです。例えば一回、あれは厚生省が出したカイワレのときか、あのときもちょっとひどかったですね。だから、いわゆる風評被害が起きたときに、もうその人たちはしようがないという場になっているのが現状です。  これについて国としても何らか方法を考えなければいけないような、何回もこういういろんな問題が起きていますし、特に今回の所沢の問題ではそのことを感じたんですけれども、こういった問題に対して何も考えずに、それは当事者間の問題とほうっておいていい問題なのかと。もちろん、大臣が怒っていらっしゃることは重々承知ですけれども、怒りとともに、実際被害を受けたところにどうするかという問題についても、これは配慮せにゃいかぬようなところまで来ているんじゃないかなと思うんですけれども、幾つか聞きましたけれども、風評被害という問題について大臣としてお考えのことがあれば聞いておきたいと思います。
  72. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 幾つか大事な御指摘がございました。もしも漏れておればまた御指摘いただきたいと思います。  まず、風評被害ということを私どもも最初思いまして、実は法制局長官に風評被害の定義とは何だと聞いたんですけれども、これに類似したものに証券取引法上の株価インサイダーとか風説流布、その風説流布的なものに当たるのではないか。つまり、事実と関係なくうわさ等を流してそれによって損害を受けた、その場合には、法制局長官は法律をかたくかたく解釈されるお立場ですから、その場合の損害賠償責任というのは、民法上の七百九条に基づいて故意または過失によりというその前提が入ってきて、一方、放送法上の表現の自由というものも絡んでくるからなかなか難しいのではないかというような、極めて私にとってはわかりにくいというか何を言っているのかよくわからない説明でございますが、政府法律解釈の責任者でございますから、正直言ってこの問題については、実はテレビ番組も見ておりませんからそれ以上のことをお答えすることができないというのが法制局長官の答弁でございました。  ですから、いずれにしても、風評被害によって損害を生じたならば、その損害の賠償責任者は、その風評被害をつくったといいましょうか、流したといいましょうか、原因者が損害賠償責任を負うということになるんだろうと思います。  しかし、私自身は、今回いろいろとテレビ朝日とのやりとりの中で、どうもこれは風評被害ではなくて、真実に基づかない報道ではないかというふうに私は思っております。放送法三条、四条あるいはまた一条の趣旨からいっても真実に基づいて放送をしなければいけないということでございますし、またその放送が与える影響というものはファジーなものであったとしても、大多数の国民が受けとめる受けとめ方というものもあるわけでございますから、その辺を意識した放送というものではないと私は信じたいわけでございますけれども、今回、先ほど申し上げましたように、いや、二十グラムでアウトというのは実はこれとこれも足し上げた結果ですよなんというのは、あたかもホウレンソウだけ二十グラム食べたらアウトというような報道しかしていないわけでございますから、この一つをとっても事実に基づかない報道ではないかというふうに、私自身は現時点ではその可能性を持っておるというふうに認識をしております。  そういう中での引き続き事実確認をしておる最中でございますが、その損害を受けた方は生産者でございますから、損害賠償につきましては、その生産者、現にホウレンソウを出荷できなかった、あるいは価格が大暴落したことによって損害をこうむっておる生産者の方が損害賠償責任を訴える権利があるわけでございまして、私どもは直接的な訴訟の立場にはないわけでございますが、我々としてはJA所沢あるいは生産者の皆さん方のその損害をできるだけバックアップ、損害あるいは名誉の回復のためにバックアップするべく、いろいろな融資制度等々もございますけれども、当面この問題に関しましてはまだまだ一件落着ではないわけでございまして、所沢の皆さんが今後どういう行動に出られるか、これは見守るしかないわけでございますけれども、いかにあの報道が事実と違っているのかいないのかの原因究明を農林水産省としてテレビ朝日に問いただしていくことが事実関係の究明につながっていく、このことが、今回の報道に関して申し上げますならば、我々がきちっとやっていくべき当面の早急かつ最大のポイントではないかというふうに理解をしております。
  73. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その点はその点で、大臣おっしゃったとおり、一生懸命取り組んでいただきたい一方、今おっしゃったように、実際に今被害が出ている現状の中で、国としても融資制度を使いながらというお話がございました。これに関連して何点かお聞きしておきたいんです。  今、埼玉県で国の農業改良資金のうちの地域農業技術導入資金、これを活用してパイプハウスなど新たな整備をこういった農家に対して無利子のものでやろうとしている問題がございます。これは一応知事と大臣の間で協議ということになっているようですけれども、これはこれとして、訴えることは訴えることとして、その一方でこういった問題は早急に取り組む必要があるでしょうし、これについてどうお考えかというのが一点。  さらに、これでも実際にハウスを立ち上げるのには、これでは五百万円ぐらいだと思うので、どうなのかと思います。そうなると、例えば今後、農林公庫資金とか農業近代化資金の融資とか、そんな問題も起きてくると思うのであります。この辺についてどのように対応なさるおつもりでいるのか。  また、もう一点、今公的な融資を受けていらっしゃる方が被害を受けた方の中に結構いらっしゃると思います。当然、今回こういう形で生産がダウンするわけですから、そういう中において、いわゆる借りていらっしゃる方の返済期間の延長みたいな問題の御相談も来ているだろうと思いますし、実際そういう声も上がっております。こういった問題に対してきちんと私は、もちろんテレビ朝日と戦うことも必要ですけれども、被害に遭った農家の方たちに対してやるべき問題はきちんと農水省としてやるべきだと思います。  何点か申し上げましたけれども、一応この点についてお答えをいただきたいと思います。
  74. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) 私の方から最初の御質問にお答えを申し上げます。  お尋ねの地域農業技術導入資金、これはいわゆる無利子の資金でございまして、特に必要な場合に都道府県と農林水産大臣が協議して貸し付けを行うことができるといういわば特認の資金でございます。大臣の指示もございまして、すぐに埼玉県と連絡をとりまして、トンネル栽培用の施設等を貸し付け対象とするということで、もう既に埼玉県と農林水産省の間では実質的な調整は了しております。形式的には、埼玉県から申請がなされればすぐ関東農政局で手続をするということでございまして、私が承知をいたしておりますところでは、きょうあすにも申請がなされて直ちにできるということで、一言で申しますと、準備は既に整っているということでございます。
  75. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 農林公庫資金とか近代化資金の制度資金のお尋ねでございますが、農家がハウスなどの施設をつくるといったような場合に必要な資金につきましては農業近代化資金、農林公庫資金の活用が可能でございます。その金利につきましては、現在、財投金利並みということで大変低い水準になっております。こうした資金を円滑に融通することによって農家の経営の安定に資していきたいと考えております。  それから、既に借りている制度資金でございますが、今回の関係農家につきまして、既に借りている制度資金の償還期間の延長などの措置が受けられるように関係金融機関に指示をしたところでございます。
  76. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大変低い利子だというのはよくわかっているんですけれども、例えば特例で、こういう場合は無利子にするようなことはできないですか。
  77. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) これは国の制度資金全体の体系というものがございまして、現在ほぼ最低水準でございますが、そのほかの資金とか災害資金とか、そういったバランスからいって、これ以上さらに引き下げるというのはなかなか難しい状況でございます。
  78. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほど大臣はダイオキシン関係の今後の調査の問題について御発言をされたようです。私はちょっと記者会見の記事しかなかったんですけれども、あれを見ると、今後こういうダイオキシンに関する調査、いわゆる農産物汚染調査は今、所沢でやっていらっしゃるという先ほどの御答弁ですけれども、会見というか例のダイオキシンの関係閣僚会議ですか、あのときにハウス栽培物をというような話をされていたような報道がなされていたんです。これは来年度から全国調査に入るわけですけれども、これについては別にハウスと限ったわけじゃなくて、露地物からハウス物からいろんな意味できちんとそういうものを点検しようと、こういうお考えでいらっしゃるわけでしょう。特段このハウス物だけをやろうというお話じゃないわけですね。  何かそういうふうに間違ってとれるような感じもちょっとあったものですから、調査あり方、今後ダイオキシンの調査を全国的にやられるときにどういう観点でどんな形でやろうとなさっているのかを正確に言っていただきたいと思うんです。
  79. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私がハウス栽培物に言及したということが正確に先生に御説明できないのが申しわけございませんが、とにかくあの報道の二月一日時点での冬野菜、特にホウレンソウは全部ハウスでやっているわけですから、そういうもの、あるいはまた露地物、それからお茶なんかでもまだ茶摘みの時期ではございませんから、いわゆるお茶を摘む時期の時点とか、いろんな条件を踏まえて平成十一年度から全国にわたって主要な農作物あるいは主要な耕作形態についてできるだけ広範囲にやっていくということで、特にハウス物に限ってというふうに申し上げたことはないと思いますが、何か私が言い間違えたのか報道が間違えたのか、真意はそういうことでございます。
  80. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 予算ももう少しで、そろそろ参議院で終盤を迎えておりますけれども、国会はこれでちょっと落ちつきますから、大臣、所沢へ行かれますか。こういう問題というのは実際に現地を見ることも大事だろうと思います。ダイオキシンの実験場だ何だかんだ言われて、現地の農民の方々は大変な状況だと私たちも思います。そういう実態大臣みずからごらんになり、逆に言えば、そのことが農業者に対する一つの私は大臣の具体的行動につながると思うんですけれども、行かれるお考えはありますか。
  81. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現地の状況は、自治体あるいは現に生産されている皆さん方、そしてまた農林省の職員等々から逐一状況をお聞きしておるつもりでございますが、これから対策をいろいろと考えていかなければならないというふうに考えております。生産者の皆さんと現地でまたゆっくりお会いしましょうということを申し上げてお別れした方々もおりますから、今のところいついつ行くということは日程として確定はしておりませんが、現地に行ってお役に立つということであれば私もそういうふうに考えてみたいというふうに考えています。
  82. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 話を変えまして、基本法の問題で何点かだけお伺いをしておきたいと思います。  農業基本法は、前にできた現行農業基本法から三十八年でございます。今回、新たに法案をつくろうということになったわけでございますけれども、当然新しい法律をつくろうということであって改正ではないということでございます。なぜこれは改正でなくて新しいのをつくらなければいけないのかなと。この辺はもう少し御説明をいただいてもいい問題だろうと思います。特に、戦後農政というか基本法ができて以来、いろんな反省に立った上で今回、新法にということになるんだろうと思います。  そういった意味でどういった点を、ある意味では、我々は野党ですから、野党から考えれば政府は反省をして新しいものをつくろうという気になったのかなと。その辺、もし大臣のお考えがあれば、基本的なことを伺っておきたいと思います。
  83. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 御指摘のとおり、農業基本法から食料農業農村基本法という新しい法律をつくるわけでございます。なぜ基本法をなくして新しい法律をつくるのかということの原因の一つは、基本法ではこれからの農業農村あるいは食料政策を進めるに当たって適切なものではないということであります。  では、なぜ適切なものでなくなったかということから新しい基本法に変えていくのかといえば、やはり実態と合わなくなったということでございますから、そういう意味で評価をして、その評価の結果、新しい法律をつくるということになったわけでございます。  四十年近くを経過いたしまして、農村農業の果たすべき役割、あるいは農業という産業形態の新しい時代に向かってのいい意味での変化への対応、さらには農業の果たす多面的な役割、農村地域の果たす役割、さらにはそこから生み出される食料が全国民供給されていくわけでございますから、そういう意味でその食料の相手方であります国民的な立場から食料というものを考える。さらには、国際的な観点からも我が国食料農業政策というものを考えていくということから、基本法でございますから、かなり大きい意味を持つ法律を変えていって新しいものをつくるということでございます。  確かに、時代と合わなくなった、あるいはまた当初予想していた状況あるいは政策執行を変更せざるを得なくなったというようなことも含めまして、抜本的に時代に合った、また将来にたえ得る法律基本法としてつくるということの必要性が不可欠だという認識のもとで新しい基本法を制定したいというふうに考えております。
  84. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本格的な論議は基本法のときにやらなくちゃいけないんでしょうけれども。  この基本法の中での一つのポイントは、やっぱり食料自給率という問題をどうとらえてどう表現するかという問題に至るんだろうと思います。基本法の中では、基本計画を策定してその中でこの食料自給率の問題、触れるのか触れないのかというような話になっているようでございます。  私どもの党としては、この食料自給率の問題というのはやはり基本法の中、基本計画の中できちんとすべきであろうし、その際は、当面の目標としては五〇%以上、そして十年後には六〇%というような目標も掲げるべきではないか、こう党としては考えておるわけでございます。  したがって、今、農水省としてこの問題、この食料自給率あり方についてどうお考えになっていらっしゃるのか、また政府目標とする数字についてはどの程度なのか、何回か論議されてなかなか数字は出てきませんけれども、一応お伺いしておきたいと思います。
  85. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 食料国内生産基本とするというのは、何も日本だけではなくて私は世界に共通した認識であろうと思います。  一方、我が国は世界の中でも最も自給率の低い国であり、しかもその数字がさらに少しずつ下がり続けておるという状況、そして将来にわたっての食料に対する国民的な、また世界的な不安があるということでございますから、できるだけ自給率を上げていきたいというふうに考えております。  ただ、全部つくればいいんだと、例えて言えば、水田全部目いっぱい米をつくって、千三百万トン、千四百万トンつくっても消費されるものはそのうちの何割かでございまして、それは結局、消費されないということになりますので、できるだけ消費者あるいはまた実需者のニーズにこたえられるようなものということで、消費者生産者との間に共通認識、お互いに理解をし合うと。よく申し上げておりますが、農業あっての消費者であり、消費者あっての農業生産だという認識のもとで、実現可能なぎりぎりの数字を品目ごとに足し上げていって自給率というものを設定していきたいと考えております。さらに、これは消費者サイドの方にも御理解をいただかなければならないというふうに考えております。  食料を豊かにでございますから、多少食べ残しをしてもいいのではないかというようなものが、現実の問題として食べ残しの問題が多少ではなくてかなり大きな、試算でございますけれども、数字的にも無視できない数字でございますから、食べ残しというものをできるだけ減らすというような消費者の皆さんの御理解、さらにはバランスのとれた日本型食生活推進ということが自給率向上にもつながっていくと我々は考えておりますので、生産面あるいは消費面両方から自給率を上げていくということが、最終的には両方の立場の方々にとって自給率を上げていくというニーズにこたえていくというふうに考えております。  具体的には非常に幾つかの仮定を置いた数字になるわけでございまして、その仮定そのものもなかなか複雑でございまして、現時点において我々としても具体的に推計もしておる状況じゃございません。しかし、基本計画の中で自給率を設定していかなければなりませんので、基本計画策定時には間に合うように、自給率というものを、重ねて、できるだけ実現可能な高い水準に設定をしていきたいというふうに考えております。
  86. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に、違う問題を一点だけ聞いておきます。  先ほど議題というか指摘がありました遺伝子組みかえ食品の表示問題です。この問題は私どもも随分前から、これは消費者サイドから非常に強い要望がありまして、表示問題についても指摘をしてきたところでございます。これは既にEUでは表示が義務づけされております。  先ほど御答弁があったように、農林水産省の懇談会で検討中だというふうにも聞いているんですけれども、当初はこんな予定じゃなかったんじゃないかなと。たしか早い段階で、昨年、私自身が質問したわけじゃありませんけれども、結構早い段階で出すというお話であったのが、先ほどの大臣の話では夏におくれていると。  なぜこんなになっているのか、この辺の理由だけお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  87. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 遺伝子組みかえ食品の表示あり方につきまして検討しております食品表示問題懇談会におきます議論におきましては、今、先生から御指摘がありましたように、諸外国におきましても、また国内におきましても、この遺伝子組みかえ食品の表示あり方につきまして消費者あるいはメーカー等関係者の見解が異なっているわけでございまして、なかなかコンセンサスを得る状況にない、それが一番おくれている原因でございます。  したがって、こうした状況を打開するために、この食品表示問題懇談会の中に、表示に関しまして信頼性なりあるいは実行可能性観点から科学的あるいは技術的な検討を行うことが必要だ、これを行うべきであるということになりまして、現在、小委員会を設置してこの検討を進めているわけでございます。  この小委員会におきましては、六月ごろまでに検討いたしまして、これを踏まえまして懇談会として検討いたしまして、遺伝子組みかえ食品の表示あり方につきまして取りまとめを行っていきたいというふうに考えているわけでございまして、一応のめどといたしましては八月をめどとして取りまとめをお願いしているところでございます。
  88. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほど大臣がお約束されていましたから、今度はおくれないように結論をきちんと出していただいて、対立する立場があることも重々承知です。その上でやはり詰めるべきものは早く詰めなくちゃいけないと思っておりますので、先ほどの大臣答弁のとおりになると思っておりますので、ぜひきちんとこの問題は処理をしていただきたいと思います。  以上で終わります。
  89. 野間赳

    委員長野間赳君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時二十七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  90. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産に関する調査のうち、平成十一年度の農林水産行政基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  91. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 日本共産党の大沢でございます。  大臣は所信で米の関税化問題についてこう述べています。「米についての関税化の特例措置の取り扱いにつきましては、本年四月から関税措置へ切りかえることとしました。これは我が国の国益にとっての最善の選択であると同時に、来年に開始される次期WTO農業交渉において、我が国農業農村発展のための確かな成果を獲得するための出発点でもあります。関係者が一体となって、揺るぎない国民合意の交渉方針を早期に確立する考えです。」と述べています。しかし、今この米の関税化に対して非常に農民の中からも不安と批判が一層高まっているのも事実でございます。  まず、国外でございますけれども、一昨日発表されましたアメリカの通商年次報告を見ましたら、日本が米の関税化措置を決めたことに対して三点について指摘をしております。その一点は、二〇〇〇年度のミニマムアクセスの減少につながってウルグアイ・ラウンドの自由化精神に反すると。二つ目には、国内高級米と加工用の輸入低級米の価格を比較して関税値を算定している算定方法に疑念があると。三点目は、関税化の決定にかけた時間について二国間の協議する時間を残さなかったことを理由に輸入障壁になりかねない強い懸念を表明しています。  新聞各紙とも、アメリカ我が国の関税化措置に対してWTOへの異議申し立てに踏み切ることはほぼ確実になったと報道しています。通商年次報告にこれだけのことを書かれた以上、異議申し立てがされることは当然の道筋になろうかと思いますが、四月一日までにこの関税率を示す譲許表の改正ができないという事態が現実のものになってきたのではないかと思うのです。  この間、我が党は衆議院の議論で、譲許表の修正がなされなければ関税率が明記されていない譲許表が残り、それが有効となることが明確になったと思うんです。外務省も、もし異議申し立てがあった場合は撤回してもらうように働きかけると言っています。こういうふうに国内法の改正だけで譲許表の改正はできていない場合に関税化はできるなどということはWTO協定に真っ向から反するものになると思うのです。だから、本当に世界に通用するものではないと思います。  まして、国内では、関税化は長期的な関税の引き下げになりますし、日本の米の生産、国内農業に深刻な打撃を与えます。食料自給率も引き下げをもたらすものであって、米の関税化の関連法案は私は直ちに撤回すべきであると考えますが、大臣、まず見解をお聞きしたいと思います。
  92. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 昨日の新聞報道でアメリカの一九九九年通商政策課題と、一九九八年年次報告が公表されたということはマスコミ報道で私も承知をしております。しかし、これはあくまでもアメリカ政府が議会に対して報告をした内容でございまして、対外的に、特に我が国に対してどうこうしろ、あるいはどうこうすべきだということを意思表示したものではないというふうに理解をしております。  また、一部報道で異議申し立てへというような記事もございますけれども、我々としては異議申し立てを決定したということも認識をしておりませんし、するかしないかについて私の立場で現時点でこれは予測をすることは控えるべきだと思います。  いずれにいたしましても、我が国としてはWTO協定に基づいて全く中立的に関税相当量というものを決定したところでございまして、WTO協定上何ら異議申し立てを受ける筋合いのものではないというふうに考えておりますので、引き続きアメリカ関係各国にはこの状況をきちっと説明をしながら、四月一日以降の関税化措置を進めていきたいというふうに考えております。
  93. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 事実はもちろんまだ異議申し立てはしていないわけですが、そういう意思表示があったということはやはり大きな問題であるということを一応認識していただいておきたいと思います。  ですから、私たちは、衆議院での紹介をいたしましたけれども、譲許表の修正がなされなければ関税率が明記されていない譲許表が残ると。御存じのように、譲許表には関税は無税と書いてあるわけですから、これは事実であるということ。そして、外務省もお認めになったということをもう一度確認しておきたいと思います。  ということは、関税化を実施する四月一日までにこの譲許表の修正がなされなくても関税化できるなどという根拠は本当にWTO協定の中にはないということなんですね。ですから、日本政府の一方的な解釈にすぎないことはこれまでの議論で何回も何回も繰り返し明確になったと思います。だから、異議申し立てが出たら撤回してもらうように働きかけねばならないという外務省の答弁になってきたと思うんです。ですから、私たちは、繰り返しますけれども国内法の改正だけで関税化できるなどということは世界的に通用するものではないと。米の関税化関連法案は直ちに撤回することを再度要求して、関税化そのものについて質問をいたします。  この間の議論の中で、国内の稲作経営そして日本農業に対する関税化の影響について、高関税を前提に今回の措置により国内産米の需給に影響が出るとは考えていないと、このように繰り返すにとどまっている。農業団体との三者合意の前提も高関税の維持、生産者に対する説明も、今は高関税すればWTOの通知だけで高い関税を設定することができるというものだと。このように輸入禁止的な高関税の維持が今回の措置の大前提、いわゆる皆さん政府が言うメリットの一つの核心になっています。しかし、これが長期的に高関税を維持できる保証があるのかということです。生産者が一番ここは心配しているわけですが、この点について明確な答弁をお聞きしたいと思います。
  94. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生今おっしゃられましたように、関税化を撤廃しろということをおっしゃられた後の御質問でございますが、今回決められた関税相当量というのは、WTO上の協定に基づく極めて中立的であり、加盟国すべてに約束されておるルールの中での決定でございます。それによりまして、九九年四月一日から三百五十一円十七銭というものが当然の結果として出てきたわけでございます。この三百五十一円十七銭という関税相当量を仮に輸入されるであろうお米のプラスCIF価格に乗っけた場合には、日本の国産米との間にかなりの開きが結果的に生じるということがございますから、外国からお米が入ってくるということの見通しを立てることは困難であろう、つまり入ってくる可能性はないというふうに我々は認識をしておるわけであります。  もとより、我が国方針といたしまして、九三年、平成五年の十二月の閣議了解に基づきまして、もともとミニマムアクセス米におきましても外国から入ってくるお米については国内の生産及び需給に影響を与えないという方針があるわけでございまして、仮に関税化した後もそういう方針のもとで進めていくわけでありますが、先ほど申し上げましたように数字的に言ってもこのことは十分担保されるものというふうに考えております。
  95. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 私は今、もし関税化になった場合の質問をしているわけです。この関税化措置は撤廃というしっかりした私たちの提案をしながら、もし関税化になった場合に心配だから質問しているわけです。  皆さんは、ルールだから大丈夫だ、高関税は保てる、そのことを大丈夫だ大丈夫だと言い続けているわけですけれども、WTO協定の目的はもう何回も皆さんも、繰り返し私たちも述べていますけれども、やっぱり例外なき関税化でしょう。だから、関税率の段階的な引き下げで、一番最初は高関税を認めているけれども、この関税の大幅引き下げの実質的な関税自由化という最終目的を果たすために関税化というスタートラインですか、そのための措置であることはもう明白だと思うのです。  九四年にWTO協定を受けた、表明後なんですけれども、当時の農水省の経済局国際部ガット室長の永岡洋治さんがこういうふうに述べています。農業改革のプロセスが二〇〇〇年以後も継続し、しかもこの改革の方向は後退が許されるものではない、その後の改革プロセスを念頭に置いた場合、いずれ関税水準がアクセス数量を超えて輸入が行われる程度の水準まで低下していくであろうと予測して物事を考えていくことが必要であろうと、こういうふうに述べているわけです、農水省の方がですよ。  だから本当に、それぞれ学者の皆さんもこの問題については指摘しているわけですけれども、やはりWTO協定上、関税率の引き下げが目的であって、その方向が増す趨勢だということ、このことは否定できるのですか。
  96. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 次期交渉におきましても、世界の自由貿易ルールというものをどういうふうにしていくかということが大きな農業交渉における議論になるわけでございますけれども我が国といたしましてはこの基本法の、午前中の御議論でもありましたように、あくまでも国内生産基本とし、国内生産の維持増大、そして国内生産を守っていくということが大前提であるわけであります。  また、いろいろな貿易障壁の撤廃について議論をしよう、さらに改革を進めていこうということも、関税率等いろいろな要因についての議論をしていくということでありまして、関税率をいかに下げるかということだけが議論ではないわけであります。  我が国といたしましては、きちっと内外の、特に米に関しましては国産の生産あるいは需給を引き続き守っていく。さらには、輸出国と輸入国とのアンバランスを何としても是正していかなければならない。さらには、農業あるいは農村地域の果たす多面的役割、特に地球環境地球規模での環境問題等についても大きく議論をしていかなければならない。さらには、各国それぞれに自然条件あるいは歴史、伝統、文化、いろいろございますから、この生き物相手、自然相手の農業という産業あるいはまたそのいろいろな活動を、それぞれの国がきちっとそれぞれの立場を、特性を生かしながら全体的なルールづくりをやっていくということでございますから、我が国としてはいろいろな側面から次期交渉に臨んでいく決意で今これからの対処方針を決めていくことにしておるわけでございます。  したがいまして、次期交渉というのはいかに関税をどれぐらい下げるかということだけを議論する場ではないわけでございまして、むしろ非貿易的関心事項のことも含めまして総合的に次期農業交渉に臨んでいくわけでございます。いずれにしても、国産の農業生産あるいは農村を守っていくということが大前提であるということは御理解をいただきたいと思います。
  97. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 国内生産を守っていくのが前提だということが大きな一つ指針だということは当然のことです。だけれども実態はどうなのかということを、私たちはこのことについても数字を示してずっと指摘をしてまいりました。  今日までの農産物の輸入自由化がどんな影響を日本の農家に与えてきたかという、一昨日、衆議院で中林議員が牛肉の問題を指摘していましたから繰り返しいたしませんけれども、本当に今までの関税化によって牛肉にしろオレンジにしろそうですけれども、そういう事態を繰り返したくない、繰り返してもらっては困るというのが今農家の方たちの思いなのです。ある農村の町長がこう述べておりました。米は関税化阻止の最後のとりでではなかったのか、このように指摘をされていました。これが本当の農家の声だと思うのです。だから、例外なき関税化の撤回を求めて、次の質問に移ります。  次に、WTO協定上のアクセスの数量についてです。  これは一昨日の衆議院の農水委員会の関税化関連法の審議で、我が党の中林議員がミニマムアクセス米についての質問をしたときに述べた内容ですけれども、国家貿易だからアクセス機会を設定すればそれが全量義務輸入になるという日本政府の解釈についてはWTO協定上の根拠は全く示せなかったと思うんです。  私はちょっと他の国家貿易品目について調べたんですけれども、国家貿易品目である指定乳製品、これはアクセス数量が十三万七千トンなんです。この輸入量が何と九五年は二十四万八千トンになっています。九六年は二十三万二千トンなんです。九七年は二十一万三千トンと、いわば倍近い量が相手国によって低い一次税率で輸入されています。国内の加工原料の方たちは限度数量の拡大をずっと求めていたけれども、その願いにこたえていないわけです。農水省はそのことにこたえずに、輸入だけはこういうふうにふやして酪農家を苦しめているというのが実態になっているわけです。  ですから、政府はアクセス数量の二倍にも上る量を極めて低い一次税率で輸入するなど、私は許せないと思うんですが、この点はいかがですか。
  98. 本田浩次

    政府委員本田浩次君) 一般用途向けの指定乳製品などについてでございますけれども、カレントアクセス分として平成七年度から十二年度まで生乳換算重量で毎年約十三万七千トンを農畜産業振興事業団が輸入することとされておりまして、事業団は国内で不足基調にございます脱脂粉乳を中心輸入、放出を行ってきたところでございます。  先生御指摘のとおり、平成六年に我が国の生乳生産、これは猛暑の条件の中で生産が減少いたしまして、一方、飲用牛乳につきましては前年に比べて五%弱需要が伸びる、こういう状況のもとで需給が極めて逼迫をいたしたわけでございます。このために平成七年度から九年度までの三年間につきまして、脱脂粉乳の需給の逼迫基調に対応いたしまして追加輸入を実施したところでございます。その結果が御指摘の数量になっている、こういう状況でございます。
  99. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 数字的にお認めになったわけですけれども需要があるという内容と、そしてそういう緊急の事態があったということもありますけれども、これは今言われたように八六年から八八年の畜産振興事業団が生乳換算で平均輸入量を上回って輸入したわけですけれども、でも言ったら倍以上でしょう。だから、畜産局が公表した九三年十二月二十二日の畜産物に関する交渉の経緯という文書ではこの数字が示されているわけですから、この数字以上に輸入がされたということはやっぱり反していると思うんです。  ですから、やはりこの部分については二次税率をかけて、そして国内の酪農家を守るような対応をしなければならないのではないかと思いますが、なぜ放置をしていたのか、その点についてもお聞きをしたいと思います。
  100. 本田浩次

    政府委員本田浩次君) 先生御案内のとおり、牛乳・乳製品につきましては、特に指定乳製品、バター、脱粉でございますけれども、これにつきまして、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法によりまして、安定指標価格を基準にしてその指定乳製品の価格安定を図っているという状況でございます。その制度によりまして、安定指標価格を超えて、基準としては四%を超えるわけでございますけれども、外国から緊急に農畜産業振興事業団が輸入してまいりまして、需給の安定を図って国内の乳製品価格の安定を図る。  この不足払い制度は、生産者の生産振興を一方で図りながら、消費者の求める指定乳製品、バター、脱粉の価格の安定も確保していくための制度でございまして、制度上、まずカレントアクセスについては約束どおり輸入するわけでございますけれども、先ほど御説明いたしましたとおり、緊急に国内需給が逼迫した場合にはそうした制度のもとで輸入するという仕組みになっているわけでございます。
  101. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 今回の場合はそういう緊急の問題があったわけですけれども、酪農家はもっと生産をしたいという点もあるわけですから、当初の国内の酪農家には影響を与えないという政府の約束というのもあるわけですから、今後の対応については税率も含めて検討しながら、酪農家を苦しめる、困難に追いやるようなことだけはやらないということを約束していただいて、提言をいたしまして、次の質問に入りたいと思います。  ミニマムアクセス米のマークアップについて一点お尋ねしたいと思います。  これは関税化によって現在ミニマムアクセス米にかけられているキロ二百九十二円、この上限のマークアップがどうなるのか、この二百九十二円というのは維持できるのですか、お尋ねします。
  102. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 米の今回の関税措置への切りかえ後のミニマムアクセスの輸入制度につきましては、従来どおり食糧庁によります国家貿易制度を維持するということにいたしております。したがいまして、その二百九十二円の最高のマークアップにつきましてはそのまま残るということでございます。
  103. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 しかし、ウルグアイ・ラウンドの合意受け入れの表明直後の、これも九三年十二月十六日付の食糧庁の合意に伴う米及び麦の対応方向についてという文書を見てみますと、ミニマムアクセスのマークアップにつき、これはダンケル・テキストでは低率または最小限の水準とされるべきだとされています。だけれども、関税化の特例とされることによりこの規律が適用されないとしています。これで二百九十二円、七三一%という高税率が徴収できるのは特例措置をしているからではないですか。だから、関税化するということは、ミニマムのマークアップを低率または最小限の水準に引き下げを求められるんじゃないか、それで政府が頑張れるかどうかですけれども、その点をもう一度。
  104. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 今回の制度改正は、いわゆるミニマムアクセス分については何ら変更はございません。従来どおりの国貿という形になってまいります。二次税率の方は農業協定に従いまして新しい税率を張るわけでございますけれども、従来のミニマムアクセス分については何らの変更はございません。そういう意味で、従来からの二百九十二円というマークアップがそのまま徴収できるということでございます。
  105. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 それはおかしいですよ、制約はないと言っていますけれども。WTO協定では、関税の特例は附属書五のAで規定されていますし、AからEまであるわけですけれども、その条件を満たすものが特例措置をとれるとしているだけで、この協定から外れれば、いわゆる関税化になれば、特例措置の適用終了後に関税化を通告すれば、二百九十二円という現在のマークアップを維持できる根拠はどこにもないのではないかと考えますが、もう一度責任ある答弁をお願いします。
  106. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 国貿自体は農業協定の規定ではございませんで、ガット本体の十七条の規定でございます。そこで国貿というものが認められておりまして、それを前提にしての我が国の譲許表の中で二百九十二円のマークアップを徴収しますということを言っております。  国貿がもしなくなるということになれば、それは一次税率、御指摘のような本来の一次税率ということになりますので、その一次税率につきましては各国と話をして決めていくことになりますが、当然ながら今御指摘のようにかなり低い税率になってくるだろうということでございます。そうすると、外国の米が一次税率の枠の中でどっと入ってくるということで国内産米の大変大きな支障になってまいりますので、そういう意味から、ガット上認められております国貿を今回変えることなくそのまま維持する、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  107. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 二百九十二円という輸入差益は、本当に低くなった場合のことを考えたらちょっと想像を絶すると思うんです。もし七十円ぐらいになってしまったら北海道のきららと同じ金額に六十キロ当たりだったらなるわけですから。こういうことになれば輸出国を喜ばすことになりますし、やっぱり関税化はやめるべきだし、このミニマムアクセスの問題についてもこういう問題が本当に山積みしている中で、私は次のWTO協定についての改定を求めて提言をしたいと思います。  その提案の内容なんですけれども、私たちは真の食料安全保障確立するために三点についてWTO協定の改正の提案をいたしました。この点については四日の衆議院本会議でも質問いたしましたけれども、総理大臣は答弁ありませんでしたので、もう一度大臣にお尋ねをしたいと思います。  一点目は、食料自給の根幹をなす米を自由化の対象から外すなど実効ある輸入規制が行えるようにすること。二点目は、各国の生産拡大への助成措置を一律に削減、禁止する条項を削除すること。三点目は、環境保全のための施策にアジア・モンスーン地帯などの手間をかけて水田を維持する農業生産を加えること。このことについて提案をいたします。  そして、WTO協定の改定を政府は求めるということを私たちは提案していますが、その点について大臣の答弁をお願いしたいと思います。
  108. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、来年から始まります次期WTOの農業交渉に我が国がどういうスタンスで臨んでいくかについては、まさにこれから国民的な御議論、そして国民的な合意のもとで交渉に臨むべく、時間をかけてといっても限られた時間ではありますけれども、じっくりとこの議論を深めていき、交渉に臨んでいきたいと考えております。  したがいまして、先生御指摘のこの三点を含めまして具体的にどういうことにしていくかについては、今の段階ではそれを採用するとか、いや、それは採用しないとかいうことは申し上げる時期ではございませんけれども基本的なスタンスといたしましては、次期交渉でまず我が国農業が引き続き安定的、そして将来さらに発展できるような明るい展望の持てる農業が行われるようにすることが大前提でございます。  そして、交渉に当たりましては、農業の果たす多面的な役割あるいは食料安全保障面の重要性、さらには我が国の米が主食であるということのその重要性、さらには農業農村の果たす文化、歴史等の役割、そして先ほども申し上げましたように、輸出国と輸入国との間にいろいろな規制措置等につきましてアンバランスがございますから、輸出国、輸入国の間にお互いに、貿易ということでありますから、少なくともイコールフッティング、輸入国の立場をより現協定よりもバランスが輸入国の方にシフトした形のルールを確立することが必要ではないか。さらには、それぞれ自然相手、生き物相手の大事な食料でございますから、各国がそれぞれの立場で農業というものが、あるいはいろいろな国内食料供給というものが少しでも安定的になるように、日本の場合にはさらにさらに安定できるようになるように、それぞれの国の事情というものが共存できるような国際的なルールをつくっていくということが現時点での大きな基本的なスタンスだろうと思います。  いずれにしましても、具体的にどういうふうにするかにつきましては、国民的な御議論のもと、国民的な共通の合意、認識のもとで次期交渉に来年以降臨んでいくということでございます。
  109. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 既に、衆議院では関税化実施のための食糧法などの改正案の審議が行われています。参議院でも、本当に日本農業の存立にかかわる問題ですから、この問題を日切れ扱いで期限を切って短時日で成立させることは、私は生産者消費者も納得できるものではないと思います。もちろん、WTO協定に向けて私たちは全力で改定を求めて頑張っていきたいと思いますが、こういう日切れ扱いなどをさせるのではなく、徹底審議を要求して、次の質問に入りたいと思います。  次は、中山間地の問題について質問をいたします。  日本農業の厳しさの中でも中山間地農業は一層厳しいものがあります。我が国農業の中で、耕地面積でも生産額でもそうですけれども、全体の約四割を占める中山間地域対策について質問をしたいと思います。  この間、私も地元の兵庫県の中山間地域の町を訪ねて、町長さんや生産者の方たちから実情を伺いました。この三十年間で四分の一の耕地が壊滅した、災害で水田が崩れても復旧の手がつかない、放置されたままになっている、集落維持も危ぶまれると、極めて深刻な状況を話されました。中山間地の問題は、まさに与野党問わず、真剣に私は取り組むべき問題であるという立場から質問したいと思います。  九二年の農水省が打ち出した新政策は、中山間地にはその立地条件を生かした特色のある農業、地場産業展開をと強調して、その実施法として中山間地の活力を回復し農林業を振興する目的で特定農山村法が制定されました。農業振興のための目玉であったこの中山間地域経営改善安定資金の融資実績がどうなっているか、まずお尋ねしたいと思います。
  110. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 融資実績はございません。
  111. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 本当にひどい法案というか内容だったと思うんです。この法律制定の際、中山間地域農業者が本当に望んでいた所得補償をせずに、農民に借金を負わせる融資事業に終始した実効性のない対策だったからだと思うんです。その点については、私たちは反対したんですけれども、この法律が制定されて以来、資金需要はもちろんなくて、千五百九十市町村は計画だけは立てたけれども実態は計画倒れになっているというのが今証明されたと思うんです。だから、本当に中山間地で農業を経営しようと思ったら、継続しようと思ったら、やはり直接の所得補償が必要だと思います。この点について質問したいと思います。  今回、農水省が打ち出した中山間地への直接支払い自体は、私たちも主張してまいりましたし、私も先ほど申し上げました兵庫県の中山間地の自治体を回って町長さんからもお話を伺いました。その点について非常に期待が大きいものがあります。だけれども、本当に手放しで喜べない内容もあるということで、その点についてお聞きしたいと思うんです。  これについては、財源の問題もありますけれども、やっぱり中山間地を食料供給基地として、また国土保全を守るという点でも真剣に考えるのであれば、今の農業予算の枠内でこれは到底十分な対策が講じられないと思いますが、その点について、予算的な考え方というんですか、基本的な考え方についてお尋ねしたいと思います。
  112. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 大前提として、中山間地域等への直接支払いでございますけれども、二つございます。一つは、やはり我が国農政史上前例のないものでありますから、国民的な合意のもとに進めなければいけないということでございます。それから二つ目は、やはりWTOの農業協定の中での緑の政策に合致したものでなければならない。WTOの直接支払いの中には、生産コストの格差の範囲内において支払うというふうになっておりますので、そういうことを頭に置かなきゃいけないと思います。  何よりも、どういう地域に対して、またどういう行為に対して、どういう方に対して、どういう単価で直接支払いを行うかということを詰めませんと財源なり予算の規模なりも出てまいりません。現在、これは夏まで真剣に議論をいたしまして、十二年度の予算要求に間に合わすべく鋭意検討しているところでございますので、その時点でまたお話ができるかと思っております。
  113. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 確かに、初めてのことですから、例としてはやはりEUの例などがあると思うんですけれども、その例を述べたいですけれども、時間的な関係で省かせていただきたいと思います。  ドイツ、オーストラリア、なかなか条件不利地域にすばらしい補償がされています。やはり、日本型でやらないといけないと思いますけれども、その点について今検討中であるということですけれども、私は、この検討の中で認定農家に限定すべきという意見も出されているわけですけれども、この点についてはやはり今の中山間地で認定農家だけに絞るというのは大変な守れない実態がそこにあると思うんです。  一つの町村で認定農家が平均十人だというところもありますけれども、私は、兵庫県の村岡町、ここに行ったとき、認定農家は二人だけだと。だから五百六十五ヘクタール、一万六百九十八枚の田んぼがあるけれども、これでは国土保全できない、環境を守れないということをはっきり言っていますが、認定農家に限定するというのは、私は、中山間地の農業実態とかけ離れた発想であるが、この点については中山間地対策になり得ないと思いますが、一点だけ例を挙げて述べたいと思いますが、いかがですか。
  114. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 二回検討会を進めてまいりまして、その中で対象者を絞るか絞らないかという議論がございました。片や、構造政策に資するということでそうした認定農家を対象とすべきだという御意見と、やはり公益的機能に着目をして、ダムもしくは防波堤の役割をやるのはすべての農家であるということで、限定をすべきではないという御意見、二つが出ております。  私どもは、どちらかといいますと、公益的機能に着目をして耕作放棄が生じないようにするということが目的でありますので、後者の立場の方を強く打ち出すべきではないかなというふうに思っておりますけれども、検討会の御意見を踏まえまして実施をいたしたいと思っております。  なお、村岡町長さんにも直接私どもの担当がお会いいたしまして、御意見を伺ってきているところでございます。
  115. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 本当に農業をやれる人、やりたい人すべてが対象になるような直接支払い制度を実現していただきたいということをお願いして、最後にもう一点だけ。  農地保全に対する国の支援の強化なんですけれども、中山間地、いわゆる条件不利地域では十アール当たり大体百八十万から二百万円かかるわけですね。農家負担というのは五%になるように農水省のガイドラインは示していますけれども、財政力の本当に弱い町では、結果的には一五%の町の負担も農家が負担しないといけないような実態にあるわけなんです。これではやはり進まないと思うんです。だから、農道だとか水路、公共性の高いところについては国が責任を持って農家負担をなくするようにすることが大切だし、小規模、低コストの圃場整備に対しても国が手厚い補助をすべきだと思います。だから、五%といっても、今高齢化が進んでいる中で払えないんですよ。ですから、本当にこの点についても、中山間地の実態に合った特別な制度を見直していただきたいと思いますが、最後にこの点を聞いて、終わりたいと思います。
  116. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 御意見はよくわかるんですが、最終的には私有財産でございますので、果たしてゼロであっていいのかどうかという点につきましては相当議論が分かれるところだと思います。  それから、整備水準自身をここまでやったらいいということは、よくよくその地域の農家と御相談をして、できるだけ整備水準が低コストで必要限度のものというふうな工夫をしたいと思っております。  それから、土地改良施設等につきましては、建設費もさることながら、その後の維持管理にかなりのお金がかかりますので、そういった点につきましては、今後、土地改良制度全体の見直しの中で公的支援を強めていくという方向で対応したいと思っております。
  117. 谷本巍

    谷本巍君 食料安全保障問題をめぐって若干お伺いしたいと存じます。  大臣所信表明の中で指摘されました農政改革大綱、これを見てみますというと、国内生産基本輸入備蓄、これをもって食料の安定確保をするんだということだと思います。  まず初めに、国内生産問題について大臣に伺いたいのです。  その一つ自給率にかかわる問題であります。これまで言われてきておりますことは、農家に対してはコスト低減を含む生産努力、それからまた消費者に対しては食生活の見直し、そうしたものを前提としながら、農業政策展開等々と相まって自給目標を決めていきたいというふうに言ってきております。私たちがこれまで申し上げてきたものは政府責任による自給目標の設定ということでありました。どうもこの表現ですと、自給目標が未達成に終わった場合に、時としては生産者の責任にすることもできますし、消費者のせいにすることもできる。さらに、もう一つ申し上げておきますというと、農政改革大綱の中では、自給率について政策指針として定めると、こうはっきり言っておりました。ところが今度は、法文作成の段階になりましたら、「農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める」と、こう言っているんです。これはいよいよもって政府責任というのがぼけてきたなと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  118. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 自給率目標設定は条文の十五条に書いてありまして、そしてその十五条の三項に、先生今御指摘のように、「目標は、国内農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めるものとする。」と、これは御指摘のとおりの条文の内容になっております。  一方、この条文、私は余り条文のことを細かく言っても専門ではないので間違えていたら後ほど当局から答弁させますが、国の果たすべき役割というもの、あるいは地方自治体の果たすべき責務のところもあるわけでございまして、そういう意味自給率基本計画に基づきまして設定する、その場合には国に全く責任がないどころか、やはり国の責任というものは大きいということははっきり申し上げなければならないことだと思います。  しかし、実際に自給率というものを積み上げていくときには、先生は農政の大先輩でございますから言うまでもないことでありますけれども、実現可能な自給率というものを中期的な期間を置いて達成するためには、国だけが頑張ってもだめですし、生産者だけが頑張ってもだめでありまして、国もあるいは自治体もそして生産者も、そしてさらには消費者食生活あり方の問題あるいは食べ残しの問題等々も含めまして、消費者の皆さんの御理解というか御協力というか御努力というか、そういうものも必要なわけでございます。  したがいまして、自給率そのものの最終的な基本計画実現のその責任といいましょうか、その策定並びに実施に当たっては、国がきちっと総合的に勘案し実施する責務を負うという第七条の規定が私は生きてくると思いますけれども、国だけではできない。自治体そして生産者消費者、総合的な共同の努力のもとでできるだけ高く設定したい自給率を実現していくために、国がやはり一義的な責務はあると思いますけれども、国だけではなく、今申し上げたようなそれぞれの立場での御努力と一緒になって、自給率向上、そして目標の達成というものが実現できるというふうに私は理解をしております。
  119. 谷本巍

    谷本巍君 自給率を決めていく上で、それは生産者消費者、そこと一体になってやらなきゃならぬという考え方は私もわかるんです。しかし、それは手続上の問題として理解はできるということであって、三者協議で決める自給率というのとは性格は違うわけであります。  ですから、政策を担当する政府責任としての設定なのかどうなのかということをお聞きしているんです。イエスかノーか簡単に答えてください。
  120. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 三者協議で決めることではございません。最終的には国が目標の設定をするということであります。
  121. 谷本巍

    谷本巍君 ですから、それは政府責任としての設定だということですね。
  122. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) そういうことです。最終的には国の責務においてということです。
  123. 谷本巍

    谷本巍君 最初からそう答えていただければよかったんですよ。  それから、大臣、もう一つこの際伺っておきたいことがあります。  それは国内生産問題について、当初、大綱が国内生産の維持増大を基本とした安定供給というふうに言っておりましたね。ところが、この維持増大というのは消えちゃって、国内農業による供給基本とするという表現になりました。これはどうも後退なのではないのかというふうに私は思ったのですが、その点、大臣、どうお考えになっておりますか。
  124. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 確かに途中段階におきましては国内生産の維持増大という表現から、最終的な条文の中では国内生産基本としてというふうになりましたが、これはこれだけ自給率が低い中で、二八%あるいは四一%という低い低い数字を維持増大というよりも、むしろ基本という全体の枠組みの中で、基本といえば、何%になるのかは申し上げられませんけれども、むしろ自給率を上げる意味合いといいましょうか、上げるニュアンスがより強いということで表現方法を変えたわけでございまして、あえてつけ加えさせていただきますならば、維持増大することによって、国内生産基本としてできるだけ高い実現可能な自給率を目指す、こういうような御理解をいただければというふうに思います。
  125. 谷本巍

    谷本巍君 維持増大よりも基本的ということでより意味が強まるんだという意味合いのお話でありますけれども、私が心配しますのは、国内農業生産の維持増大の場合でしたら自給率を上げるぞという意欲を読み取ることができる。ところが、基本としてという話になってまいりますというと、まあ現状維持でもいいや、何なら少々ダウンしたってこれはいいじゃないかというような解釈が出てくる可能性がありますよ。そこはどうでしょうか。
  126. 高木賢

    政府委員高木賢君) 国内農業生産基本とし輸入備蓄を組み合わせるということで、この三者の関係において基本だということを定性的にはっきりさせたと、こういう趣旨でございます。  維持増大というのは、極論すれば低いものがちょっとでも上がれば維持増大でありますから、そういうことではなくて、その三者の関係において定性的に国内生産基本だということをはっきりさせておるわけでございます。基本的ではありません、「基本とし、」です。
  127. 谷本巍

    谷本巍君 そうすると、これを自給率という意味合いで言いますというと、最低限どの程度の水準というのを想定しますか。
  128. 高木賢

    政府委員高木賢君) ただいま申し上げましたように、輸入国内生産との関係におきまして、食料供給基本国内生産としていくということを総括的、定性的に述べたということでございまして、定量的に幾らということまでここでは規定はしておりません。
  129. 谷本巍

    谷本巍君 私たちが求めているのは具体的な事実なんですよ。どうするかということなんですよ。今のような答弁ではこれはもう論議にならないですね。  この点についてはまた引き続きこれから機会がたくさんありますから、きょうは食料安全保障論の問題に限って伺うつもりでおりますから、そこのところは先送りしながら、次の課題に移らせていただきます。  安定的確保の問題の二つ目の問題が安定的輸入であります。  かつて、アメリカが大豆の輸出を禁止しましたとき、日本国民全体が大変なショックを受け、大変な迷惑をこうむった。それ以降歴代内閣は、食料安全保障上、輸入先の多面化、多元化という表現を使うようになってまいりました。ところが、今度は新基本法づくりに向けてのこの点での表現は、食料安保ということをこれまで大きく強調しながら、輸入については安定的輸入という表現になってきた。もとへ戻っちゃったんですよ。  としますと、アメリカが不足したときも供給を約束してくれたのかどうなのか、そういう事実があるということは私どもは知らない。そして、ウルグアイ・ラウンドでは例外なき関税化をアメリカ日本に押しつけながら、輸入禁止等の国内法は依然として持続をしているという事実が残っている。  では、なぜ多面的輸入というふうに言わないのか。ここのところはどうでしょうか。
  130. 高木賢

    政府委員高木賢君) 国内生産では需要を満たすことができないものについて輸入に依存せざるを得ない部分があるということは事実であろうと思います。  その輸入について最も基本的な上位概念はやはり安定的な輸入確保だということで、安定的輸入確保ということを総括的な最上位概念として輸入に関しては使っておるわけでございます。  今の多面的というのも、まさに輸入先をふやすということは、一国だけに頼るとお話のような危険なこともございますから、安定的輸入確保するための一方策であるというふうには位置づけておるわけであります。もちろん、輸出国との間で、安定的な供給ができるように、物によっては既に毎年の協議によってそれを実現していくということをやっているものもございます。  それから、輸入多元化のためには各国の生産情報あるいは流通情報というものをきちんと収集しなければいけないということで備えをしていかなければいけない、こういうこともあろうかと思います。  いずれにしても、いろいろな方法はありますが、最上位の概念は安定的輸入確保だと、こういう整理でございます。
  131. 谷本巍

    谷本巍君 そうしますと、一国に偏ることなく多面的な輸入という考え方、この精神は変わらないというふうに受け取ってよろしいですか。その精神は変わらないと。
  132. 高木賢

    政府委員高木賢君) 安定的輸入確保の手段の一つとして位置づけております。
  133. 谷本巍

    谷本巍君 手段の一つと言いますというと、ほかに何がありますか。
  134. 高木賢

    政府委員高木賢君) 輸出国との間で輸入量の協議をしているものがございます。それが一つございます。  それからもう一つは、先ほど言いましたが、各種の生産流通情報、これをきちんと把握して何かのときにはそこから手当てするという、そういう準備運動をするということがございます。
  135. 谷本巍

    谷本巍君 その中でも、多面的輸入というのは大事にしていかなきゃならぬ考えだと、官房長、そういう考え方ですね。
  136. 高木賢

    政府委員高木賢君) 安定的輸入のための方策として位置づけておるということでございます。
  137. 谷本巍

    谷本巍君 次に、備蓄問題について伺いたいと存じます。  現在の百五十万トン、プラス・マイナス五十万トン、これは全量回転備蓄というような考え方に立っております。  農家の立場からします最大の問題点は、豊作が続きますというと簡単に大過剰になって価格は暴落し、その反面、簡単に価格は回復してこない。じゃ、不作になったらどうかというと、備蓄は放出されるでしょうし、MA米も放出されるでしょうし、緊急輸入も行われるであろうと。価格は抑制される。市場原理というのは、豊作になると下がっちゃうけれども不作のときには上がる、それでバランスがつくものだというのが一般常識ですよ。ところが、備蓄体制のもとでそうならなくなっちゃったというのが今日の状況であります。これは回転備蓄一本やりというようなところに問題の基本があってのことではないかと思います。  食料安全保障体制づくりというのは、生産の維持増大ということを念頭に置きながらやっていかなきゃならないんだというぐあいにかつて大臣がここでおっしゃっておりました。そういうことからしますと、この回転備蓄一本やりというのは少々やはり再検討しなきゃならぬ問題点があるのではないのかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  138. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 御指摘のように、備蓄制度については大きく分けまして回転方式と棚上げ方式があるかと思います。備蓄ということを持ちます場合には当年度に使いませんお米がどこかにあるわけでございますから、それが価格抑制に働くという御指摘があるとすれば、どういう方式をとっても基本的にはそういう性格は残ると思います。  そのことを前提にした上で考えまして、やはり味の点がどうであるかということと、それからもう一つは財政負担ということも考えなきゃいけないと思うんです。国民の皆さん方のかたい支持でもって備蓄制度を維持していくというからには、財政負担がある程度リーズナブルでなきゃならないんじゃないかと思います。  そういう意味で、回転備蓄でありますというと、ある程度回しながら、基本的に主食として回しながらやっていきますので、かつ保冷施設も完備しておりますので、味もそう落ちないという意味国民の皆様方に受け入れていただく余地が非常に大きいというふうに思います。  他方、棚上げをしました場合には、三十万トンの米を三年間か四年間かわかりませんが置きました後には、トン一万円、二万円のえさとかそういう形になるわけでございますので、この負担をずっとたえていただけるかということについては非常に厳しい面があると思います。  そういったことも全体で考慮しながら、やはり備蓄制度の必要性を先生のようにお認めいただくのであれば、そういった味の面、それから財政負担の面、つまるところ国民の皆さんの御支持をいただける、そういう制度としては、当面、回転備蓄の方が私はすぐれているんじゃないかというふうに思っております。
  139. 谷本巍

    谷本巍君 財政モデルから見ればどっちが有利であるかというのは、これは安上がりは回転備蓄が明らかですよ。問題は、農家がそういう不利益をこうむっていますということを私は申し上げたい。そこでどうするかの問題だろうと思うんですよ、長官。  これはランニングストック以上の備蓄米があれば、あるというだけでこれは市況圧迫になるんですよ。ならないと言ったってこれはうそになっちゃう。これはもう現実問題として厳然たる事実ですよ。ですから、食糧庁にしたって苦心惨たんしながら政府米と自主流通米の売り方について団体側といろいろ協調しながらやってきているわけでしょう。それもやっぱり今の備蓄制度の持つひずみのしわ寄せがそういうぐあいになっているのかなという印象を受けることだってしばしばあります。  問題は財政負担との絡みの問題、これが私は重要だろうと思うんです。そこのところでどう知恵を出していくかということについてはこれから先も検討してほしいと思うんです。その知恵の出し方の一つは後でまた私自身がえさ米のところで提案しますけれども、長官、いかがでしょうか。
  140. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 先生のかねてからの御指摘でございますので、私どももいろんな意味で多角的に今後とも勉強をさせていただきたいと思いますが、やはりこの二、三年のことを考えれば、四年連続の豊作ということが自主流通米の価格に必要以上の下落傾向を強めたということも事実だろうと思うんです。  そういう意味で、稲作農家の方々に大変大きな御不安を与えましたので、平成十年からは稲作経営安定資金という形のものを新たに導入いたしまして、そういった過度の市場価格の変動ということを防止して農家経営の安定を図るという道もとっているわけでございまして、そういったこともこれから充実強化しながら農家経営の安定ということについては対応していきたいというふうに考えております。
  141. 谷本巍

    谷本巍君 次に、危機管理問題について伺いたいと存じます。  不測の事態が生じた場合、国民が必要とする食料供給確保するために、一つ食料増産、生産のあり方についての一定の規制、それからまた流通制限等を実施するということが明らかにされております。  そこで、次の三点を伺いたいんです。  一つは、ここで言う不測の事態というのはどういうことなのかということであります。いろんなことが想定されます。凶作が続いた場合、輸入が途絶した場合、震災などの天災、あるいはまた最近はヨーロッパじゃチェルノブイリ以降の核汚染の問題、この問題が一つの検討課題になってきています。ですから、そういったような不測の事態というのはどういうことを想定しておられるか、これが一つ。  それからもう一つは、そういう場合が生じた場合の対応、この対応についてはどんな手法と手順で対応していくのか。  それから三つ目に伺いたいのは、生産と流通規制は一方的に行うということを想定しているのかどうかということであります。  この点について申し上げておきますというと、例えば旧食管法で申し上げますというと、農家に対して売り渡し義務を課す、これは一種の権利制限ですよ。ですから、それとの見返りの措置として生産費と再生産の確保を保障する。ここで言う食管法制定当時の再生産の確保というのは、今の法律の解釈ではなくて、個々の農家を指しての再生産の確保でありました。  ところが、新基本法案づくりの中で明らかにされているのは、平常じゃ市場原理でいく、そして不測の事態が生じたときにどうも一方的な制限だけしてくるというようなことが述べられておるのでありますが、そこでの代償措置ということを念頭に置きながらそれを言っているのかどうか、そこのところを端的にお答えいただきたい。
  142. 高木賢

    政府委員高木賢君) まず、どういう事態があるかということでございますが、これはまさに国の内外におきます御指摘のありました凶作、これが国の中だけなのか、輸出国が一つなのか多数なのか、たくさんあると思いますが、いずれにしても凶作という形が一つございます。それから、作物はできたけれども輸入の手段、よく上がりました港湾ストライキ、そんなに長くないんですけれども、輸送ができないという事態、それから今御指摘のありましたいろいろな事故等というようなものがあり得ると思います。  それに対しましてどういうことをするかということでございますが、まず、後のお尋ねにも関連いたしますが、国内外の食料需給状況、これは常に把握しておかなければいけない、動向に敏感でなければいけないと思います。  そういう基礎の上に立ちまして、順番でいえば軽いものからすれば備蓄の取り崩しというところから始まるわけですけれども、それじゃ間に合わぬという事態になりましたときには、熱量効率の高い穀類、芋類、こういったものの増産、あるいは場合によってはほかのものを差し控えてもそこから生産転換をするということが想定されます。  それから流通関係、これも少なくなりますと値段が上がることが容易に想定されるわけでありまして、標準価格の決定とかあるいは売り渡しの指示とか配給とか、これは例のオイルショックのときにつくられました国民生活二法あるいは食糧法等にも関連規定がございますが、こういうのを活用してやれるか、それを上回る必要があるかどうかということが問題になるかと思います。  実は、そこから先の非常に厳しい事態の検討というのはまさに今作業が始まったばかりでございまして、まさに具体化に向けて検討を推し進めなければいけないと思います。その際、今おっしゃいました不測の事態の対応におきまして権利制限的なものが事態が厳しければ厳しいほど発生する可能性もありますし、そうなったときに一方的にやらずぶったくりということで済むかどうかというのは頭の中にあるわけでございまして、御指摘の点も念頭に置いて、まさに代替措置の必要性の有無とか程度というものをこの事態の厳しさとの相関関係で検討していかなければならぬと思います。
  143. 谷本巍

    谷本巍君 今、官房長が言われた念頭に置いてというお話でありますけれども、もう一つ念頭に置いていただかなきゃならぬことがあります。  それは、平常期の農政というのは認定農家中心で、そして大体かなり徹底した選別政策でやっていきますという方向になってきましたね。ところが、不測の事態が生じた場合は、日ごろ農政の恩恵から排除されておる層、恐らく数からいえばそっちの方が多いと思いますよ。そこも対象として権利制限はやってくるという形が起き上がってくるわけですね。そうすると、どうもそういう意味じゃ非常にこのあり方というのは不公正なあり方だという問題が出てくるんじゃないのかと、こう思うんです。その辺のところも念頭に置きながら検討すべきじゃないかと思うのだが、いかがでしょうか。
  144. 高木賢

    政府委員高木賢君) 事態が厳しくなれば、あるいはそれにつれて統制が厳しくなればいわゆるやみ的なものも発生しやすくなるというのは御指摘のとおりだと思います。今までも厳しい事態、五十年前後前にはあったわけでございますが、そういったことも十分参考にしながら検討を進めたいと思います。
  145. 谷本巍

    谷本巍君 次に、えさ米の問題です。これは大臣、答えてください。  私は、不測の事態が生じた場合にどう力で対応するかという前に、不測の事態が発生してもしのぐことができるような体制、それは備蓄だけじゃなしにいろいろ考えることができるのじゃないか。  例えば、欧米の場合でいいますというと、食用以上の穀物生産というのは平常時は家畜の飼料にする、不測の事態が生じた場合には人間の食用に回していくという行き方があります。  日本の場合も、既に私どもはもう二十年近く前になりましょうか、十数年前かな、米というのをひとつ欧米の穀物並みのような扱いができないものかというふうなことで、えさ米生産運動というのを長いことやってまいりました。最近の例で申し上げますというと、庄内の農協の皆さんがかなりやっておられるようであります。どうも当初の設計からしますというと、十アール当たり一万円台の前半のところぐらいの赤字でもってとどまりそうなお話を伺っておったのでありますけれども、実際にやってみたらかなりの赤字が出るというような状況が見られるようであります。  ところが、ホールクロップサイレージということになってくると少々状況は違ってくる。ホールクロップサイレージの場合には、肥料農薬などの物財費の使い方、これが随分少なくなってきますし、それからまた稲ごとえさにしていくわけであります。ですから、利用価値のことからいいますというと、緑よりも少々栄養価も高いといったような問題等々もありまして、埼玉県の事例では十アール当たり三万七千円の、生産費を上回った分ですね、いわゆる所得というのが出てまいりますといったようなレポートも出ております。  とにかく、この辺のところ、一方で力ずくの不測の事態への問題が出てきているわけでありますから、えさ米問題についても本腰を入れた検討をしてしかるべきではないのかというふうに思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  146. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 不測の事態ということを前提にしての先生の御意見あるいはまた御質問でございますが、そもそもその不測の事態というのは、こんなことを私がこの場で言うのはちょっと唐突かもしれませんが、どの程度の不測の事態までが予測可能かということもある程度考えておかなければいけないのかなと。  先生が御指摘になり、あるいはこちらから答弁しているのはあくまでも食料事情に限ってであって、残りの部分はある程度平時に近い、例えば海上交通網が確保されているとか、極端に言えば、本当に五十年前のような戦争状態なんてことはあってはならないことではございますけれども、そういうような状況がまさにぎりぎりの状況だろうと思います。  そこまで考えていくともう切りがないというか、そのときはそのときのまたぎりぎりの対応ということになりますから、不測の事態といっても、国内生産ががたっと落ちた平成五年のような状態、あるいはまた主に特定の農作物の大半を頼っている国が輸出をしないようになった、あるいはできなくなったというような状態等々、いわゆる戦争状態じゃない中での食料事情だけの不測の事態ということを前提にしての議論ということでお話をさせていただきます。  不測の事態ということに関して、えさ米の生産を積極的にふだんから振興すべきではないかということでございますが、先ほど食糧庁長官からも御答弁申し上げ、また先生も御理解いただいておりますように、販売価格がえさと主食用の米との間では大変なコスト差があるということから、ふだんから販売価格が十分の一程度のえさ米を常にある程度生産していくということは、生産農家の採算性あるいは飼料工場の安定的な原料確保といったいろいろ課題が現実に大きいんだろうと思うわけであります。  しかし、実は自給率の議論の中でも、飼料作物をどういうふうに導入するかということも自給率向上の中での一つの議論になっていることも事実でございまして、そういう意味で、経済原則からいけばかなりこれは、生産者を含め、また財政を含め大変厳しい状況だということは先生も御理解いただいておる上での御質問だと思います。  いずれにいたしましても、自給率、特に不測の事態での安定的な食料確保、広い意味食料安全保障という観点からは、今後の土地利用型の農業あり方の検討の一つとして慎重な検討をしていく課題一つではないかなというふうに考えております。
  147. 谷本巍

    谷本巍君 その際、大臣にくれぐれもお願いしておきたいのは、コスト問題だけで判断していただきたくないという点があります。  例えば、先ほど申し上げた回転備蓄の問題、これに対して、棚上げ部分を含めたらどうか。その辺、棚上げ備蓄の方へ充当するという方法だって考えられるんですよ。だから、そういう問題と絡めながらひとつ考えてみるという手法もあるでしょう。  それからまた、とにかく金銭に直接あらわれにくい部分をきちっと評価していただきたい。例えば、国土保全との絡みでいえば、昨年、水害があった、各地で共通しているのは、一つは山がもうどうにもならなくなりましたという話が多いですよ。それと、ところによっては減反面積が余りにも広くて、水田というダム的受け皿というのがなくなってしまったために云々といったような指摘も出ております。  それにまた、環境問題との絡みでいえば、最近大きな問題になってきている硝酸窒素問題、これは専門家の皆さんの話を伺いますというと、水田ならこれを分解し発散させることができるというお話も承っております。そして、そういう皆さんから提案が出ているのは、やっぱり水田の力は生かすべきじゃないかという指摘があります。  さらにまた、自然保護団体からしますというと、生物多様性との絡みですね。水田はやっぱり環境保全型に切りかえてもらって、そして水田農業というのが生物多様性維持について力を発揮することができるようにしてほしいといったような期待等々があるわけであります。  そういう点も含めながら、そして食料安保と国土環境保全のための保険料という発想であれば、少々の財政負担というのは私はそう苦になるような問題じゃなかろうという気もいたします。ですから、そういう点も踏まえながらひとつ御判断いただきたいということをお願いしておきます。よろしいですか。
  148. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) いろいろな意義があります。今、先生御指摘のとおりだと思います。  ただ、逆に、財政面のことばかり申し上げるつもりはありませんけれども、いろいろと検討すべきこともございますので、文字どおり総合的に、不測の事態ですから、まさに保険的な発想というものも考えの中に入れていくことも必要ではないかとも思いますので、総合的にまた検討し、御指導いただきたいと思います。
  149. 谷本巍

    谷本巍君 質問通告では農地確保の問題があったのですけれども、時間がなくなりましたので、その先へ進ませていただきます。  最後に、国際協力による安全保障問題について伺いたいと存じます。  御存じのように、FAOは昨年十一月、緊急に援助を必要とする途上国は三十七カ国に上っておるということを挙げておりました。また、日本はインドネシアに対する大規模な食糧援助を行いました。  私どもがかねがねこの席でも申し上げてまいりましたのは、東アジアなら東アジアという一つ地域、これでもって食料安全保障システムをつくるということができないものだろうかといったような問題提起等々を行ってまいりました。  それは気象変動、それから最近は経済不安により輸入が難しくなってくるという例も出始めてきましたね。それだけに、豊作で穀物がたくさんあるときに相手国へ援助をする、そして相手国から今度は物で返してもらおうと。お金のやりとりというのは非常に難しいですから、外貨問題がありますから、物交的な要素を含めたやり方というのがあるんじゃないのかというようなことで問題提起を行ってまいりました。  今度のインドネシアへの、これは商品借款でありますから、金銭が伴う話ではあっても、事実上東アジアの食料安保をつくっていく上での第一歩になるのかなというような認識も私どもは深めておるところであります。そうした点についてひとつ検討いただきたいということをお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
  150. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 先生の方から御指摘の東アジア食糧備蓄機構ということにつきましては、私どもの方もお話を聞かせていただいております。そういう意味で、関係国の間で米を中心としての貸し借りをしていくんだということで、この地域の安定を図っていくという趣旨につきましては、私どももかなり賛同する面がございます。  そういう中で、先生も御指摘ございましたけれども、昨年、大規模かつ緊急な食糧支援仕組みをつくったわけでございまして、実にインドネシアに対しまして七十万トンというミニマムアクセス米と国産米の支援を行っているわけでございまして、そういう意味でもインドネシアの安定ということに大きく寄与していると思うんですけれども、そういうことで、私どもとしては御趣旨をいただきながら、今の状況の中で何ができるかということを考えながら、こういう制度をつくって、まさにことしから動かし始めているところでございます。  これからも大規模な食料不足というようなことは起こり得ると思いますので、御指摘のようなことにつきましては、また関係国、それから関係省庁との間でこれからも十分な検討をさせていただきたいというふうに考えております。
  151. 谷本巍

    谷本巍君 終わります。
  152. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田でございます。  私は、農業者にやる気を起こさせるためのいわゆる施策条件整備が必要ではないかという観点から、わずか二十分しかありませんので、三点だけ絞って御質問させていただきます。  今、私の管内の農協では、施設園芸の販売高が農協取扱高で約百二十億円であります。これも大分減ってまいりましてそれくらいになったわけでありますが、生産量が年々減ってまいっておりますし、同時に品質も落ちてきているというようなことから、何かいい方法はないかなということでそれぞれ技術者に検討させたわけでありますが、なかなか妙案が浮かばないということから、私、せんだってハイテク施設園芸の世界で一番進んでおるオランダを視察してまいりました。  大変驚いたわけでありますが、私も日本で福島県あたりを見に行ってまいりましたけれども日本のハイテク施設、私は極めて取り組みがおくれておる、国としてまさに怠慢ではなかったろうかと思うんですが、どのくらいまでそのハイテク施設の国の研究なりが進んでおるか、その点、まずお聞かせいただきたいと思います。
  153. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) お話ございましたように、施設園芸の体質強化というのは大変大きな課題一つでございますが、園芸用の施設のことでお話がございましたので若干御説明を申し上げますと、私どもも、おっしゃるような問題意識を確認しましたのは、オランダと比較をしてみますと、どうも二つほどの理由があったんじゃないかと思われます。したがって、それが解決の課題というふうにも理解していただいても結構なんです。  一つは、我が国と土地条件がかなり違いまして、我が方は、どちらかといいますと全国的に平たんな国と違うものですから、なかなか同じような仕様がつくれないんじゃないかということが一点でございました。  それから、北から南までかなり環境が違うところに対応するというようなことがございまして、例えば降雪も想定しながらつくると、それから場合によっては地震をも考慮に入れるというようなこともございまして、相当割高になっておったということがございまして、そういう反省を踏まえて九年度からコスト削減のための事業を仕組んでおるわけでございまして、その中でも二つございます。  一つは、共通の部材といいますか共通の仕様みたいなものを何かつくれないだろうかと。全部が共通というのは、さっき言いましたように、やや違うものですから、つくれないだろうかというのが一点でございます。  それからもう一つは、低コストのための取り組みの中で、輸入物も含めて少し宣伝をしてみようじゃないかという取り組みをしているというのが実情でございます。
  154. 阿曽田清

    阿曽田清君 やっと緒についたというよりは、今から検討をやっておりますという程度だと思います。  施設園芸自体、果樹につきましてももう既に施設化なんですよ。そういう中で、特に施設園芸の分野においては、要するにオランダと比べて私は二十数年おくれておる、そう言わざるを得ないと思います。現に、福島県を視察してまいりましたけれども、そのときのそこの施設、何と一ヘクタール当たり安い方で一億四千四百万かかる。高い方で約二億、一ヘクタールつくるのに日本の場合二億円かかる。オランダの方に私は日本でこの施設をそっくりそのままつくったら幾らでつくってくれますかと聞きましたら、一億二千万ということでした。  私は、日本技術力からもってすれば、一億二千万をオランダから仕入れてきて建てるのではなくて、国産でローコストの施設をつくるとすればその三分の二ぐらいまでは抑えることができるだろうと。例えば、耐震の問題にしても、台風に強いものにしても、国産でそれくらいのものができたら、私は農業者施設園芸の新たな取り組みが生まれてくると思うんです。  まさに、そういうことへの早急な取り組みがなされていなかった。それが今、韓国にそういうものができて、あるいは中国にできて、そこから日本輸入されてきているというのが実態なんですよ。同じような施設を中国や韓国がつくっている、日本でそれがつくれていない。まさしく私は国の取り組み、これは農業団体も悪いけれども、まさに一体となって日本独自のハイテク施設というものをつくり上げて、いわゆる野菜等についてはもう規制がなくなったと一緒ですから、海外にどんどん逆に輸出ができる商品じゃなかろうかなと思うんですけれども、どうですか。そういう取り組みを一、二年やってみませんか。
  155. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) 実は、先ほどお話をしました中で既にそういう取り組みをしている部分もあるわけでございます。  一番のネックといいますのは、やはり各メーカーさんがなかなか自分のところの、そういう積み重ねられた努力みたいなものをどうしても公開したがらないといいますか、競争力を保持したいとおっしゃっている部分がありますのと、それからそれによりましてなかなか互換性のあるような部材がつくれないということがネックではないかと思いますので、そういう部分についてはできるだけ共通部分が活用できるようにということは、この事業が始まったときからも、現在もずっと私どもとしてはお話をしているところでございます。
  156. 阿曽田清

    阿曽田清君 お話をしているということで、デビューしなけりゃ何にもならないわけでして、もう既に花とか施設園芸等については、そういうものが海外と肩を並べて逆に輸出できるような生産体制をつくっていかないと、株式参入になったときに本当の農業者方々がそういうことに取り組むのには余りに投資が大き過ぎるということで、取り組みがおくれてしまうということになると思いますので、どうぞひとつ前向きに、もっと積極的にやっていただきたいというふうに思います。  同時に、これからもいろんな果樹関係施設化にどんどん入っていっております。そういうものもローコストの一つ施設化ということにも、これは同時に目を向けて取り組んでいただきたいということをお願い申し上げます。  それから次に、担い手育成の問題についてお尋ねいたしますけれども、これは大臣にお尋ねいたします。  農業者担い手問題については、国もいろいろと取り組んではおりますものの、私はぴりっとしたもう一本しんが抜けているなというふうに思います。  せんだって、ちょうどオランダに行きました流れでフランスに参りました。担い手対策については世界で一番フランスが対応がよくいっているということでありましたので、じっくり一日間、そこの担当課長さんと話をしてきたわけでありますが、日本では例えば六十歳になってリタイアするときに後継者に後を譲る、そのときに経営移譲年金というもので大体六十万ほど出ているわけですね。そして、その後継者がいないというような方々は老齢年金として六十五歳から出るということであります。もちろんフランスにおきましても引退年金ということで、そういう引退される方に対する年金の保障といいますか、そういうものもきちんとあるんです。  私が驚きましたのは、うん、これだと思いましたのは、農業者がお父さんから後を継ぐ、その継ぐときに経営責任がそこで伴います。伴った時点で、いわゆる親方となった時点で経営プランを提出いたします。その経営プランを提出したものを、県や団体や、いろんな方々の審査会みたいなのがあって、そこをクリアすれば何と就農助成金というのを支出しているわけですね。経営主単独の場合と配偶者も就業的農業者とついた場合どれくらい出ているかというと、三百五十万から七百三十万。両者ついた場合は、経営主と奥様両方が農業就業者ということになったときに、七百三十万から一番低いところが三百五十万まで三段階あるわけです。  だから、農業を自分が親たちから引き受けて経営責任を伴って、さあ、これからやろうとしたときに自分の農業の将来のプランはこういうプランでやっていくんだということを提出して、それが説得力あることになればこれだけの助成金を出し、かつ低利融資の資金も出す、近代化のための設備のためのそういう助成もある、そういうようなことが、私は、農業というものに対してだれでも農業は継げるものじゃない、いわば農業を継ぐのにも優秀でないと継げないんだという一線を引いたということだと思うんです。  日本では、おまえ頭悪かけんが後を継げとかというような、長男が優秀だから学校にやって次男坊に継がせろとか、まだまだそういう傾向は残っています。むしろ、頭のいい優秀な人しか農業は継げないんだというような形に大きく意識転換をさせるための絶好のチャンスだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  157. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 新規就農者の確保というものは極めて大事な農業施策の柱の一つだと思います。  現行制度におきましても、今、先生がおっしゃった非常に高度な技術を必要とする先端的な産業であるという位置づけのもとで、実践的な研修教育の実施、あるいはまた農地に関する情報提供や農地のリースを通じた確保、あるいは無利子資金の貸し付け等の施策を行っております。  そしてまた、ことしはこの貸付限度の引き上げあるいはまた運用の弾力化等をさらに充実しておるところでございますが、無利子資金制度そのものが財源が限られていること、あるいはまた他産業とのバランスから、先生御指摘のフランスではそういうものが行われておると承知しておりますけれども我が国におきましては個人に対する就業に対して直接お金を助成するということについては今申し上げたような観点からもなかなか難しい。  しかし、現行の新規就農支援策におきましても、一時大変新規就農人口が減っていたわけでありますけれども、ここ数年、着実に学卒者あるいはまた若い就農者を含めてふえておりますので、この施策を一層充実することによって、先生また私も共通の認識である新規就農についてのバックアップの施策を継続させていきたいというふうに考えております。
  158. 阿曽田清

    阿曽田清君 フランスで私はこんなことを質問したんです。日本では直接個人に助成金を出すことは国民的合意が得られにくいので、だから直接助成金というのは難しいので、たまたま農業政策の一環として移譲年金ということで老齢年金よりも倍の金額を積み立てて、やめていく方々に出しているんですよと、こんな話をしましたら、日本でも無利子資金とか低利融資資金というのがあるんでしょう、それは間接的に農業者に個人的に税金を使っているのと一緒じゃないですかと言われました。  フランスがやっていること、これは非常に自信を持って言っていらっしゃいましたけれども農業につくということが一つの誇りなんだ、一つのステータスなんだというようなことを農業者自身が持てる国がフランスですよという言い方も自信を持って担当課長はおっしゃっていました。  なるほど、直接助成金をやるのがどうかなと私なりに行くまでは思っておりましたけれども、そう言われれば、間接的に無利子の資金を出してやるのも間接的に税金を使っているのと一緒じゃないか、あるいは移譲年金で八百億ぐらい国から農林年金基金に出しておる金もある意味では税金じゃないかと。そうするならば、そういう経営責任を伴った時点でこれから自分が農業をこういうスケジュール、プランを出して取り組んでいこうとするやる気のある農業者に対して、いわゆる投入といいますか支度金といいますか、そういう形で支えてやる、そういう農業者として資質を認めた人間はそういう形で支えていく。これは私は農業観というのががらっと変わってくると思うんですよ。  今まで、くどいようですけれども、後継ぎだから能力のあるなしにかかわらず後を継いでいるところが実態はみんな借金を抱えてもうどうしようもない不良資産農家に落ちているという事例は極めて多いわけでありますから、私は、農政一つ発想転換を二十一世紀に向かって日本農業も変えていけば、農業をすることは優秀な人間でなきゃできないし、農業をすることは本当にすぐれた人間がすることだというようにいわゆるイメージが変わってくるだろうというふうに思いますと、農村というのは逆にすばらしい方々農村を守り育てていくことにつながっていくのじゃなかろうかなと思いますので、大臣の二十一世紀に向かっての思い切った取り組みをひとつ期待いたしたいと思います。  時間がございませんので、あと一点。  これは、労働省おいでになっていますか、もう再三質問いたしておりますので経過はわかっておられると思いますけれども農業者の労災保険の問題でありますが、篤と昭和四十二年に伊東正義先生が質問されて以来、何ら進んでいない。少しずつ条件は緩和されてきておりますけれども、意図されているものにまだなっていない、もう三十年ぐらいたつんですけれども。それでも地元の管内でことし五十二名の方をこの労災特別加入に入れました。だけれども、みんなが言うには、農業をやっている家庭の中で限定つきの災害しか適用にならないというのはやっぱり魅力を欠くということであります。  ですから、ここでひとつ労災保険問題も農業者にも漁業者と林業者と同じようにオール圃場で起こった事故に対しては労災の適用をする。今までは、農薬で事故が起こった、サイロにおっこちて事故が起こった、馬や牛にけられて事故が起こった、動力機を使っている部分で事故が起こった、そして二メーター以上の高いところからずっこけて事故が起こった、この五つしか適用にならないというのは私は片手落ちだというふうに思います。  前の大臣も労働省とよく相談して進めますというようなことでありましたが、一向だに進んでいないようでありますから、ここでひとつ労働省の方からの御答弁をいただき、また大臣からの所見もいただきたいと思います。
  159. 荒竜夫

    説明員(荒竜夫君) 御説明いたします。  先生の御質問の御趣旨は、農業従事者につきましても林業あるいは漁業の自営業者と同様に一人親方として労災保険の特別加入を認めるべきではないかという御趣旨というふうに承っております。  この一人親方としての特別加入につきましては、漁業や林業の自営業者については自宅と作業の場所が海とか山ということで明確に区分ができる、そういうことがございまして、一人親方としての特別加入を認めているところでございます。  しかしながら、農業従事者につきましては、一般論としましては作業の場所と私的生活の場所との区分が明確でない場合も多いということもございまして、私どもとしましては一人親方としての特別加入は難しいのではないかというふうに考えているところでございます。  しかしながら、先生御指摘ございましたように、農業従事者につきましても特定の危険な機械を使う、あるいは特定の危険な作業を行う、そういった場合には労災保険への特別加入を認めております。平成九年度で十二万五千人ほどの方が特別加入をしているところでございます。  こういった指定農業機械の範囲の問題等につきましては、新たに指定をふやす、そういった必要のある危険性のある機械があるかどうか、そういったことにつきまして、具体的な災害の発生状況等も踏まえまして常に農水省さんとも連絡をとりながら検討を進めているという状況でございます。
  160. 阿曽田清

    阿曽田清君 今の答弁は三年前にされたことと全く一緒なんですよ。農業と林業と漁業とをなぜ一緒にできないんですか。生活と生産の場が明確でないと。明確ですよ。家から圃場まで行く間の通勤災害、圃場の中で起こった事故、これは生活とは別です、全く作業の現場ですよ。どこに明確な違いが出てこないと言えるんですか。  農業者方々が今度五十二名入った中でもう既に二人が事故に遭って、非常に喜ばれた。だけれども、まだまだそこに迷路があるということでなかなか加入が先に進まない。だから、もう一歩だというところでみんな待っているんです。  大臣、どうですか。ここの所管だけれども、農林大臣として、これは藤本農林大臣のときからやりますと言っていらっしゃるのに実現していないんですから、大臣の前向きな答弁を期待して、終わります。
  161. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 確かに今、先生御指摘のように、二メートル以上のところからおっこちた場合とか馬にけられた場合、豚にけられるかどうかはよくわかりませんが、そういう農業実態があり、しかもそれが時代とともにいろいろと、事故の発生する状況というものも少しずつ変化していくわけであります。  私の地元の北海道なんというのも、トラクターに挟まれたとかいう悲惨な事故も時々あるわけでございまして、そういう意味で、先生の御趣旨を踏まえ、農業現場の実態を労働省に伝えて、よく労働省と相談しながら、先生の御趣旨を引き続きまた検討させていただきたいと思います。
  162. 阿曽田清

    阿曽田清君 終わります。
  163. 石井一二

    ○石井一二君 大臣初め農水省の皆さん、お疲れさんと思いますが、若干の質問をいたしたいと思います。  いささか旧聞に属するかと思いますが、先般来、農水大臣が経済企画庁長官はばかだと米の関税化の問題で言われ、新聞がいろいろのことを書いております。  大臣が就任されたのはたしか七カ月前だったと思いますが、あの当時、大臣の慰安婦発言というものがございまして、私は、あのときにどういうことがあったんですかといってお聞きをいたしまして、あの発言は取り消したんだということで、また大臣の場合はお若く、将来、総理まで上られる方だと思いますからひとつ気をつけてしっかりやってくださいというエールを送ったつもりでございます。そういう観点から、今回のばか発言を見ておりまして、またマスコミさんが若干オーバーにおもしろおかしく書かれておるんだろうと、そういう解釈で読んでおったわけでございます。  また、結果、手打ちが行われたということで閣内不一致ということもないわけでございますが、ちょっと遅い質問ですが、大臣、一言で言ってこれはどういうことだったのか、簡単に御所見をいただきたいと思います。
  164. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 昨年の十二月十七日に、閣議で米の関税化を決定いたしました。その後、生産者関係の皆さん方、あるいは当委員会を初め国会の場でいろいろな御質問あるいはまたおしかり等もいただいておりまして、そういう中で農林省を初め全力を挙げて関係者の皆さんに御説明をし、そして御理解を得つつあって正月を迎えたわけでございまして、正月早々、堺屋大臣、私、それぞれ別々に海外に行っていたときに、パリで堺屋大臣が当初の講演の予定外の発言として、一〇〇〇%もの関税というのは外国で通用するはずがないというような実は報道を、間接的にその話を伺いました。  今、一生懸命御理解をいただき、それがだんだん浸透しつつある状況の中で、これがまたマスコミ等を通じまして生産者関係の皆さん方に、事実に基づかない報道でありながらまた関係者の皆さんに御心配をおかけするということは何としても避けなければならないということで、私自身の、大臣というよりは政治家という立場といたしまして、全力を挙げてこの事実に基づかない発言はできるだけ早く修正し関係者の皆さんの御心配を払拭させたいと思う一念で、できるだけ早く、またできるだけ強烈に発言を私の立場としては否定すべきであるというふうに判断をいたしまして、いろいろ申し上げたのでございますけれども、事実のほどを御存じないまま、外国との単純な比較といっても外国においても大変高い、高関税の農産物の品目はたくさんあるわけでございますから、米の三百五十一円というものではなく、一〇〇〇%という数字をお述べになったことについて、一刻も早くそれを否定しなければいけないということの緊急性、そしてまたその目的達成のために幾つかの前提を置いて、御存じないまま御発言をされればこれはばかとしか言いようがないというような発言をしたわけでございます。  その後、堺屋大臣はさすがに御立派でございまして、すぐに事実関係を農林省等からレクチャーを受けられまして、みずからレクチャーを求められまして、そしてその結果、自分の発言が事実とかけ離れておるということを公式の場でおっしゃられ、また私自身も、大先輩であり、もともとおやじの代から大変尊敬申し上げていた方でございますし、日本を代表する知識人である堺屋大臣というか堺屋先生に対して、いろいろそう端的に新聞報道のように言ったつもりではありませんけれども、とにかく不適切な表現方法を使ったことについては私も公式の場でおわびをし、手打ちをしたというよりも、お互いそれぞれの立場で公式に発表したということでございます。
  165. 石井一二

    ○石井一二君 今、事実に基づかないという御表現もございまして、私も諸外国でどのような高関税があるかということを調べてみたわけでございます。例えば、スイスのバター、チコリ、薬味用セロリ等は一〇〇〇%、九五〇%というような高い数字が示されており、またこれが国際社会で受け入れられておる。したがって、そういう例もおもんぱかって中川大臣は今おっしゃったようなお説を率直に申し上げられた、そういうことであろうと理解をいたしております。  ところが、国民の中にはいろんな方がおりまして、いろんな論議が起こるということは逆に国民の関心も高まりますし、そういった論議を通じて知識の幅も広くなるという面でいいことだと私個人は思っております。  三月十日付のサピオという雑誌があるわけでありますが、その中で、井沢元彦さんという評論家が「堺屋経企庁長官VS中川農水相の「バカ論争」の核心に踏み込めなかった大新聞の愚」ということで、こういった論議はすぐに火を消さずにどんどん一遍大論議をやってみたらどうなんだと。二十一世紀食料問題を論ずる上において、しかも二十一世紀食料危機飢餓世紀なんて言われているわけでございますから非常に大事なのではないかというようなことを申し述べておられるわけであります。  その一部分をちょっと参考までに引用してみますと、「私は」というのはこの井沢さんのことです、「どちらかというと食糧安保という考え方には賛成だ。つまりいくら安く外国米が輸入できるような体制になったとしても、食料のかなりの部分は国産でカバーしておいた方が、いざというとき安心だという考え方である。」と、このとおりだと思います。「しかしそれでも今のようなやり方で金をつぎ込んでいくことは、日本のためにもそして農業自身のためにもよくない」云々と書いて、いろいろ言われているわけでございますが、「とにかく予算をつけさせ、米価のつり上げを図り、文句を言う人間にはさまざまな圧力をかける、というやり方はもはや見直すべきではないのか。それをしないから「日本農政はノー政だ」などといわれるのである。」、これは評論家なりの彼の御意見でございますから、それはそれでいいかと思います。  そういった中で、先般来、国会におきましてもいろんな予算づけをして、より国際競争力を高め生産コストを下げる、そういう方向で努力をしてまいったはずでございます。例えば、ウルグアイ・ラウンドの農業合意関連対策費の六兆円とか農業基盤整備事業費、両方合わせて約五十兆なんというふうに言われておりますが、こういったことの進捗状況を見ながら、経過的効果等についてこの問題と関連して、大臣はどのような御所見をお持ちでしょうか。あるいは局長でも結構です。
  166. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) すべてというより代表的な例を申し上げたらよろしいと思います。ウルグアイ・ラウンド農業関連対策農業農村整備事業、公共で十一年度当初予算までで二兆七千億が投じられておりますけれども、これによりまして相当顕著なコストダウンが図られております。  例えば、これは八年、九年度に完了した地区を調査いたしますと、事業の実施の前と後で、二つ申し上げますけれども担い手の経営規模が一経営体当たり二・六ヘクタールから五・六ヘクタール、約二・二倍に拡大をしております。それから、これは完全にコストダウンにつながるわけですが、担い手の稲作労働時間が十アール当たりで六十二時間から十九時間へと七割減になっております。この十九時間というのは全国平均の五割水準でございますので、これから先、ウルグアイ・ラウンド対策を着実に進めまして、さらなるコストの削減に努めたいと考えております。
  167. 石井一二

    ○石井一二君 先ほど大臣は、去年の十二月の閣議で三百五十一円云々の関税については決めたんだと、こうおっしゃいましたが、私はちょっと決め方が早過ぎたのではないかということを心配しております。  と申しますのは、けさの新聞等を見ておりますと、米国が年次報告の中で日本のこのやり方について若干のクレームをつけておると。例えば、九三年に決着したウルグアイ・ラウンドの自由化推進の精神に反する日本の関税化の決定だというその根拠として、関税の算定方法に疑問があると、こういうような言い方をしているわけですが、九十日以内というクレームをつける期日というのはまだ来ていないと思うんです。  これから米国がそういうクレームを出した場合に、恐らくアメリカさんの言うことは何でも聞こうという、一部にはへっぴり腰外交と言われる日本の姿勢からして、これはもう一遍変えなきゃならぬというようなことになりはせぬかと思うんですが、EUとの交渉の経過等を踏まえて、この問題についてどのような見通しを持っておられるでしょうか。
  168. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、十二月十八日の閣議決定が早過ぎたという先生の御指摘ですが、とにかく急に決めたというおしかりを当委員会を初め随分いただいておるところでございますが、WTOのルールに基づく、例えば今回のミニマムアクセスから関税化への移行、まあミニマムアクセスは残りますけれども、関税化への移行というのがスタートするのは毎年四月一日であるということでございまして、四月一日よりも九十日前にWTOに通告をしなければならないというのが協定上のルールでございます。したがいまして、むしろぎりぎりの段階で通知をしたというふうに言わざるを得ないのかなと思います。それが逆に、遅かったじゃないかということも含めて、議論の期間が短かったというおしかりをいただいていることは事実でございます。  昨日のアメリカ政府から議会への年次報告は、あくまでもこれはアメリカ国内政府、議会間の報告書のやりとりでございますから、それを我が国として直接的に、向こうから何の連絡や要請等もございませんから、一部新聞ではWTOへ提訴するんだというような記事が出ておりますけれども我が国としては今までと同じように、今回の関税化措置はあくまでも例外措置から一般原則へ戻ったという意味で、WTO全体の例外なき関税化という一般の土俵に戻ったという意味で、むしろアメリカから我々に対して評価されるものだというふうにすら私は実は思っておるわけでございます。  関税率のとり方がどうだとか、いろいろ報道によりますと報告書には書いておるようでございますが、一々コメントをすることは、それに対して反応をすることは控えますけれども我が国としてはあくまでも協定のルールにプラスでもマイナスでもない、全く中立的なルールにのっとった計算方法あるいはまた通知の仕方等々を行ってきたところでございまして、それをアメリカ側に今までと同様に、必要であればアメリカに限らず関係諸国に今回の手続の経緯について何回でも御説明をすることはやぶさかではございません。  いずれにしても、我が国がWTOに対して通知をしたことが、九十日というと三月二十一日が期限になると思いますけれども、四月一日から関税化に踏み切っていくことがWTOの全体のルールからいいましても、また消費者生産者両方の立場から見ましても、さらには次期交渉に向かっての交渉ポジションから見ましても、総合的に言ってこれが一番いい判断であるということで、国益にかなった判断だというふうに申し上げたところでございます。
  169. 石井一二

    ○石井一二君 多分、私が老婆心で言っておるということになるのであろうと思います。だがしかし、今、大臣は、アメリカ国内的な場における発言、発表だと、したがってその心配はないというような御意見でございますが、正式に昨日この年次報告が出たわけですから、クレーム的な問題が出てくるとすればこれからである。しかも、具体的に算定方法に疑問があるということは、今の大臣のお言葉では全くルールにのっとったという発言でこの問題を表現されましたけれども、先方の言い分は恐らく、上は上米の高い値段をとり、下は砕いた東南アジアからの輸入米といったようなものが市場に幾らかあるにもかかわらず全く考慮していない。上と下との差が大き過ぎるという現実をゆがめて日本日本に有利なように計算をしておるというような趣旨ではないかと思うわけでございます。また、既に法案は関連として四本、そのうち直接この問題に関係のある法案が三本あろうかと思います。関税定率法、暫定措置法、そして食糧法等の改正案の本体。  それで、もしここらでこの数字をいじらなきゃならぬということになると、一たん上程した法案をもう一遍書かなきゃならぬというようなややこしいことになるんじゃなかろうか。そういうことを私は心配しつつ、大臣中心とする農政がうまく振興するように祈りつつ申し上げたわけでございまして、これ以上その論議をしておると逆にアメリカが立ち上がってくるかもわからぬというようなニュアンスの御発言もございましたし、私もそれには一理あろうと思いますので、ひとつ全力を尽くして、この問題がセツルされますように頑張っていただきたい、そのように思います。  以上で私の質問を終わりたいと思います。
  170. 野間赳

    委員長野間赳君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十九分散会