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1999-05-18 第145回国会 参議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十八日(火曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員異動  五月十七日     辞任         補欠選任      佐藤 泰介君     谷林 正昭君      寺崎 昭久君     今泉  昭君      荒木 清寛君     魚住裕一郎君      加藤 修一君     沢 たまき君      弘友 和夫君     風間  昶君      福島 瑞穂君     田  英夫君      入澤  肇君     月原 茂皓君  五月十八日     辞任         補欠選任      今泉  昭君     足立 良平君      内藤 正光君     山下洲夫君      緒方 靖夫君     畑野 君枝君      宮本 岳志君     富樫 練三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         井上 吉夫君     理 事                 鈴木 正孝君                 竹山  裕君                 山本 一太君                 若林 正俊君                 齋藤  勁君                 柳田  稔君                 日笠 勝之君                 笠井  亮君                 山本 正和君     委 員                 市川 一朗君                 加納 時男君                 亀井 郁夫君                 木村  仁君                 世耕 弘成君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 橋本 聖子君                 畑   恵君                 松村 龍二君                 森山  裕君                 矢野 哲朗君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 足立 良平君                 伊藤 基隆君                 石田 美栄君                 今泉  昭君                 木俣 佳丈君                 久保  亘君                 谷林 正昭君                 前川 忠夫君                 山下洲夫君                 魚住裕一郎君                 風間  昶君                 沢 たまき君                 小泉 親司君                 富樫 練三君                 畑野 君枝君                 宮本 岳志君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 月原 茂皓君                 椎名 素夫君                 山崎  力君                 島袋 宗康君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君    公述人        早稲田大学法学        部客員教授    栗山 尚一君        全日本海員組合        教宣部長     平山 誠一君        元陸上幕僚長   冨澤  暉君        上智大学法学部        教授       猪口 邦子君        株式会社岡本ア        ソシエイツ代表        取締役      岡本 行夫君        軍事評論家    藤井 治夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定改正する協定締結について承認を求  めるの件(第百四十二回国会内閣提出、第百四  十五回国会衆議院送付) ○周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保  するための措置に関する法律案(第百四十二回  国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案(第百四十二  回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付  )     ─────────────
  2. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、佐藤泰介君、寺崎昭久君、弘友和夫君、加藤修一君、荒木清寛君、福島瑞穂君及び入澤肇君が委員辞任され、その補欠として谷林正昭君、今泉昭君、風間昶君、沢たまき君、魚住裕一郎君、田英夫君及び月原茂皓君が選任されました。  また、本日、内藤正光君及び緒方靖夫君が委員辞任され、その補欠として山下洲夫君及び畑野君枝君が選任されました。     ─────────────
  3. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の三案件を一括して議題といたします。  本日は、三案件審査のため、公述人方々から御意見を承ります。  午前は、早稲田大学法学部客員教授栗山尚一君、全日本海員組合教宣部長平山誠一君、元陸上幕僚長冨澤暉君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  公述人方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、公述人方々からお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず栗山公述人からお願いいたします。栗山公述人
  4. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 御指名をいただきました早稲田大学栗山でございます。  まず冒頭に、当委員会で御審議になられておりますいわゆる周辺事態の安全を確保するための法案、それからACSA協定改正につきましての私の基本的な立場を述べさせていただきたいと思います。  我が国をめぐる安全保障環境は、冷戦の遺産が完全に清算されていないということもございまして、不安定でありまして、それから将来の見通しについても不確実、不透明ということが申し上げられると思います。日米安保体制は、そのような我が国をめぐる安全保障環境のもとにおいて、我が国の平和と安全を守るために不可欠な枠組みであるというふうに私は認識をしておる次第でございます。また、我が国死活的利害を有しておりますアジア太平洋地域、この地域の平和と安定のためにも安保体制というものは欠かせない存在であるというふうに考えております。  以上のような認識に立ちまして、私は安保体制抑止力信頼性を高めることを目的としております本法案、それからACSA協定改正を支持するものでございますし、またその速やかな成立を期待いたすものでございます。  法案の柱の一つとなっておりますいわゆる船舶検査活動に関します規定が衆議院の段階で削除されましたことは残念に思っておりますが、近い将来、各党各派の御協議の結果が調いまして、適切な法体制の整備がこの問題についても行われるように期待しておる次第でございます。  なお、一言つけ加えさせていただきますと、我が国安全保障環境というものを今後改善していくためには、安保体制抑止力を維持していくということだけでは当然のことながら不十分でございまして、先ほど申し上げましたような不安定性でありますとか将来の不確実性というものを減少させていくための積極的な外交努力というものがあわせて必要であるということを指摘させていただきたいと思います。  次に、法案についての私の所見を述べさせていただく前に二つのことをお話し申し上げて、委員各位の御参考に供したいというふうに考えます。  一つは、私が駐米大使を務めさせていただきました時代の私自身体験からくる所感でございます。  委員方が御記憶のとおり、九三年から九四年の前半にかけて、朝鮮民主主義人民共和国、すなわち北朝鮮核兵器開発疑惑、それから北朝鮮のNPTからの脱退宣言、そういう問題をめぐって朝鮮半島緊張が大変高まった時期がございます。  このとき、日米政府関係者は、北朝鮮軍事的暴発という不測の事態が発生した場合に、日米両国防衛協力のために必要な我が国国内体制というものが整備されておらないために、安保体制というものがそのような事態に効果的に対応できないのではないかという非常な危機感を共有したというふうに私は考えております。  この危機感が、その後、三年前の日米安保共同宣言、それから二年前の新しいガイドラインについての合意、それから今般、当委員会審議をされておられます周辺事態法案というものにつながってきたというふうに私は認識しておりますが、私が申し上げたいのは、当時、このような安保体制の基本的な脆弱性というものが北朝鮮の誤った判断というものを誘発して、かえって緊張を一層増大させるのではないかということを私個人といたしましては大変に心配したということを申し上げたいわけでございます。  次に御紹介申し上げたいのは、最近のアメリカ一般国民世論でございます。  シカゴ外交評議会という団体が従来からアメリカ外交政策について定期的に世論調査を行っておりますが、昨年行いました調査の結果が最近公表されました。その中で、外交評議会回答者に対して出しました一つ質問は、アメリカ同盟国あるいは友好国侵略を受けた場合にそれを守るために米軍派兵というものを支持するかどうかという質問でございました。  私の注目を引きましたのは、この質問に対する回答ぶりでございまして、一つの例を申し上げますと、北朝鮮によって韓国が侵略を受けた場合に派兵を支持するかという問いに対しまして、イエスと答えたのが一般国民の中では三〇%であったということでございます。これはオピニオンリーダーに対して別途質問をしておりますが、オピニオンリーダー回答派兵を支持すると言いましたのは七四%でございまして、オピニオンリーダー一般国民との間に非常に著しいギャップがあるということを申し上げたいわけであります。  それからもう一つ、この同じ質問に対する回答で御紹介したいのは、派兵支持率が五〇%を上回った国は約十カ国の中で一つもないということでございます。一番高かったのはサウジアラビアでありまして、サウジアラビアの場合に派兵を支持すると回答したものが四六%でございます。  この数字が何を意味しているかということでございますが、これを考えますと、今日のアメリカ国民は、アメリカ同盟国あるいは友好国というものを守るために戦う、あるいは血を流すということに対して、極めて慎重であり消極的であるということでございます。  そういうアメリカ国民の非常に内向き心理状況というものを踏まえて考えてみますと、アメリカ同盟国側日本を含めましてでございますが、アメリカ同盟国側におきましては、同盟関係信頼性というものを維持していくためには平素から相当な努力を払う必要があるということを申し上げたいわけでございます。  次に、法案につきましての私の所見を三点に絞って申し上げたいというふうに思います。  第一は、同盟関係というものは同盟国同士による公正な責任分担というものがあって初めて成り立つということでございます。責任分担というのは、同盟関係を結ぶということに伴いまして生じますさまざまな政治的、経済的、あるいは場合によっては軍事的なリスクコストというものを分担するということでございます。これは別の言い方で申し上げますと、共通の目的、すなわち平和を守るということのために、それぞれの同盟国がある一定の範囲で自国の行動の自由に対する制約というものをお互いに受け入れるということを意味するものであるというふうに私は考えております。  別の例で申し上げますと、連立政権を組むための政党間の協力でございますとか、合弁事業を行う場合の企業間の協力についても今私が申し上げたようなことと全く同じことが言えるのではないかというふうに思います。  そのような責任あるいはリスクコスト分担というものがなければどういうことが起こるかということを申し上げますと、相手国はいざというときには自分自身判断で独自の行動をとる、勝手な行動をとるということになるわけでございまして、これは同盟関係が崩壊するということにほかならないのであります。  本法案の本質は何かというふうに考えますると、アメリカとの同盟関係において、安保体制の枠内でガイドラインに基づきまして我が国分担をする責任というものを果たしていくために必要な国内法体制というものを整備するんだというふうに理解をすることが必要であろうというふうに考えます。  二番目に申し上げたいのは、いわゆる国連安保体制との関係でございます。  国連というのは、御承知のように国際社会が一体となって違法な武力行使というものに対抗して国際社会の平和を守るために存在する、いわゆる集団安全保障体制というものを実行していくための国際的な組織でございます。したがいまして、個別の加盟国によります自衛権行使、それが集団的自衛権であるか個別的自衛権であるかを問わず、自衛権行使というものは国連が効果的な集団安全保障措置をとるまでの間の暫定的なものだということで認められているわけでございます。この点は国連憲章の五十一条にも明記されているとおりでございます。安保体制というものもそのような国連集団安全保障体制の枠内でその正当性というものが認められておるものでございまして、この点は委員各位承知のとおり、安保条約の第一条あるいは第五条に明記されておるところでございます。  したがいまして、国連安保体制との関係というものは決して二者択一的な関係ではありませんで、後者、すなわち安保体制というものはあくまでも国連集団安全保障体制というものを補完するためのものであるというふうに考えます。他方、このことは、国連が効果的な措置をとるまでの間は、我が国の平和と安全というものは安保体制によって守らなければならないということを意味しております。  国連がいざというときに効果的な対応ができるためには、御案内のように国連の安保理の常任理事国の足並みがそろうということが必要条件でございますが、関係国の複雑な利害が絡んでおります我が国周辺国際環境というものを考えますと、今申し上げましたような必要条件というものが必ず満たされるという保証はないように思います。この点を十分に認識しておくことが必要であろうというふうに思います。  最後に、第三点でございますが、防衛協力というのは一体だれのためのものなのかということについての私の考えを簡潔に申し上げたいと思います。  ガイドラインや本法案をめぐりますマスコミ等国内論議を拝見しておりますと、後方地域支援あるいは後方地域捜索救助活動といった防衛協力というのは我が国攻撃を受けていない事態のもとでの協力でございますが、そうであるためにどうもこれはアメリカのための協力ではないかという論調が多く見られるやに思われます。しかし、よく考えてみますと、そもそも周辺事態というのは、この法案に定義されておりますように、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということでございますから、実はアメリカが効果的に対応してくれないと困るのは我が国自身なのでございます。  したがいまして、後方地域支援等防衛協力というものは我が国自身のために行うものであるという理解が必要だろうというふうに思います。そのように理解されれば、憲法の枠内、憲法が許します範囲で最大限の協力をするということは、これは当たり前のことであるというふうに考えられるというふうに存じます。空港でありますとか港の使用でありますとか、あるいは輸送、医療といった分野でこの法案が想定をしております地方公共団体等に求められます協力、それからそういう協力のために一般国民が受け入れなければならないさまざまな不便、そういったものは我が国自身、我々自身の平和と安全のために払わなければならないコストであるというふうに考えるべきだろうと思います。  本法が単に紙切れにとどまりませんで真に機能していくためには、この点についての国民理解というものが不可欠であろうというふうに存じますし、大変僣越でございますが、そういった国民理解を確保するということは政治の責任であるのではないかというふうに考えるということを最後に申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  5. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ありがとうございました。  次に、平山公述人にお願いいたします。平山公述人
  6. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 本日は、こうした場所で発言の機会を与えていただきまして、深く感謝を申し上げたいと思います。本来であれば組織代表者である組合長の中西が出席をして発言するところでありますが、本日、重要な機関会議と重なりまして、本問題に関する組織広報窓口を担当しております責任者であります私が出席いたしました。御了承いただきたいと思います。  全日本海員組合は、我が国外航・内航海運長距離フェリーや旅客船、港の中で活躍するタグボートやはしけなどで働く船員、また遠洋、近海、沿岸で操業する漁業船員を中心に、約四万人を組織する個人加盟方式産業別労働組合であります。また、ナショナルセンター連合に加盟し、連合運動の前進に積極的な役割を果たすとともに、国際的にも国際運輸労連の一員として活躍している組合であります。  次に、船員はなぜこの新ガイドラインとその関連法案に反対するのか、このことについて述べたいと思います。このために、戦前、戦後を通しまして、船員という職業、しかも戦後においては明確に一民間人という立場でありながら、船員職業を選択したことによってどのような体験を強いられてきたのか、若干時間をとって述べてみたいと思うわけであります。  全日本海員組合は、終戦直後の一九四五年十月五日、全国に先駆けて組合を創立いたしましたが、その前身といたしまして、戦前には日本海員組合海員協会労働運動がありました。太平洋戦争突入前夜の一九四〇年、日本海員組合海員協会十五万人の労働組織は解散を余儀なくされ、海運報国団に統合、海運戦時統制のもと、船員はすべて徴用の対象とされました。また、当時の艦隊決戦優先主義に固執する戦争指導部は、海上輸送路を護衛する戦略もなく、戦場の海に丸裸同然のまま駆り出されることになったわけであります。  こうした結果、連合軍の徹底した通商破壊作戦によりまして日本商船隊は文字どおり壊滅しました。二千五百三十四隻、八百九十万総トンが沈められ、六万二千名に及ぶ船員が逃げ場のない海で戦没したわけであります。これは、動員された員数に対する犠牲者の割合という点で見れば、陸軍・海軍軍人と比較しても大きく上回るというまことに痛ましいものでありました。  当然のことながら、戦後の海員組合は、二度と再びこの悲劇を繰り返してはならないという不戦の誓いを根底に再建、創立されたわけであります。しかしながら、戦後、戦争のない平和な社会を実現した日本平和憲法により武力行使を放棄した日本ではありますが、船員職業とする者にとっては陸上皆さんほど安寧であったわけではありません。  一九四五年九月には、再び船員戦時体制と同様に総動員されました。海外に残された軍人軍属一般邦人復員輸送に従事したわけであります。一万一千個と言われる日本沿岸に投下された米軍機雷がきばをむく海域を、それこそ身命を賭して、航海の安全を確保しつつ、六百四十万同胞と中国大陸朝鮮半島から強制連行された人々など百三十万人、合計七百七十万人の輸送活動をほぼ無事故で完遂したわけであります。  その後も、戦後だけでも百八十六隻、七百七十八名の犠牲者というこの投下機雷による船舶被害に日々恐怖しながらも、戦後復興の先頭に立って船員は活躍してきたわけであります。  一九五〇年四月には、海運の国家一元管理体制が解除されまして、民営還元が行われました。船員にとってもようやく平和な戦後を迎えることになったわけでありますが、この年の六月に勃発した朝鮮戦争は、再び船員を直接戦争に巻き込むことになりました。  戦後の日本の進路を決めた第二の転換点とも言われる朝鮮戦争でありますが、言うまでもなく半島に展開する主力米軍後方基地として日本は大きな役割を果たしました。日本海運会社もまた、連合軍占領下の中で、米国軍事海上輸送部の要請に応じ、開戦数カ月間で貨物船など約七十隻、三十四万重量トンが直接の用船契約に基づいて提供されたと言われておりまして、船員も半ば強制的に数千人規模でこれら船舶の運航に従事させられたと推定しているところであります。  その後も、日本人船員は、国内海上輸送はもとより、世界の海に展開し、我が国国民生活経済活動に必要な物資の海上輸送に従事するわけでありますが、四次にわたる中東戦争ベトナム戦争、比較的最近の例としてはイランイラク戦争湾岸戦争と、絶えず国際間の武力衝突地域紛争に巻き込まれ、その都度生命の危機にさらされてまいりました。  イランイラク戦争について若干公述いたしますので、皆さんに資料など配付しておりますので、参考にしていただければと思います。  一九八〇年から八年間続いたイランイラク戦争では、開戦初頭、四隻の日本船乗組員戦闘地域に孤立しまして、その脱出のために大変な苦労を強いられました。このほか、イランイラク両国によるペルシャ湾内に就航する中立国船舶をも巻き込んだ船舶に対する無差別攻撃によりまして、体験した者しか語れない恐怖と戦争のすさまじい現実を体験することになるわけであります。数字だけで見ても、この間、四百七隻の船舶攻撃を受け被弾し、三百三十三名の死者、三百十七名の負傷者を出すという、世界じゅうの船乗りにとって悪夢のような八年間であったわけであります。  日本人船員の乗り組む船舶は、中立国・非交戦国表示を徹底いたしまして、具体的には舷側や甲板上に百畳もあるような大きな日の丸をかいて就航したわけでありますが、戦闘が激化した後半、とりわけ反イラン・親イラク側にありました米軍の艦艇がクウェート船籍船舶を護衛するようになりましてから、イラン側と見られる小型ボートによる機銃掃射携帯型ロケットを使用したゲリラ的な船舶攻撃が激発しました。また、これに対抗するイラク側報復攻撃もエスカレートいたしました。  こうした戦場を支配する狂気の中で、日本人船員の乗り組む船舶も相次いで攻撃を受け、十二隻が被弾、二名のとうとい犠牲者を出したわけであります。  ペルシャ湾から日本への航路は、別名オイルロードと呼ばれまして、日本のエネルギーの大動脈であります。当時、ペルシャ湾内には常時十数隻の日本タンカーが就航しておりまして、組合も経営側も労使共同して、何としても日本人船員の生命の安全を確保しつつ国民生活のためにもこのオイルロードを維持しなければならない。こうした使命感の中で、文字どおり昼夜毎日、懸命の情報収集と分析、戦闘の激化が予想される場合には航行ストップを指示する、小康状態を見計らってゴーサインを出す、こうしたストップ・アンド・ゴー方式、また船内では、ブリッジから居住区域におきましては攻撃に備えて土のうを積み上げ、戦闘用のヘルメットや防弾コートで身を包む等、可能な限りの安全対策を講じて対処してきたところであります。浮遊機雷が遊よくし、船舶の臨検、拿捕、威嚇など日常茶飯事でありました。乗組員も労使も、日本中立国である、非交戦国である、紛争当事国でないということを唯一の誇りある正当なよりどころとして、粉骨砕身このオイルロードを維持してきたわけであります。  さらに、その二年後、今度はイラクのクウェート侵攻により発生した湾岸戦争にも日本人船員は深くかかわることになります。  当時、政府の強い要請で、中東貢献策の目玉として日本船舶による物資輸送協力を求められるわけでありますが、組合も厳しい選択を迫られることになりました。一切の武器弾薬、兵員など直接戦闘行為に供する物資の輸送があってはならないこと、乗組員個々の就航拒否権を完全に保証することなど、政府組合との間で特別な協定締結いたしまして、日本人船員の乗り組む日本船二隻ほか三隻が建設資材等を積み込んでサウジアラビア方面に二航海程度就航したわけであります。  その後、本船のキャプテンが組合機関誌のインタビューに答えまして、日本に帰ってきて、ああ、生きて帰ってきたんだな、日本は本当に平和な国だと思った、世界の海に真の平和が訪れ、日本国憲法が世界的に理解されることを望んでいると結んでいるところであります。本船近くにスカッドミサイル飛来の情報が飛び交うなど、当時の生々しい詳細な体験談は時間の都合で紹介できませんけれども、この船長の思いこそ海洋国日本に国籍を持つ日本人船員全員の共通のキーワードであります。  次に、こうした体験を持つ船員立場から、簡潔に新ガイドラインとその関連法案の問題点について触れてみたいと思います。  まず、法案審議におけるこれまでの政府答弁を聞いておりますと、現行憲法では明確に禁じられていると政府みずから明確にしておられる武力行使と、いわゆる民間に協力してもらおうとする後方支援との関係であります。政府は、両者の関係には明確に一線が引かれるので後方支援武力行使と一体化することはあり得ないと繰り返し述べておられますが、私どもの過去の経験から見ますと、とりわけ海上輸送におきましては、全く現実離れした見解としか聞こえません。皮肉な言い方を許していただくならば、全くの机上の空論であり、平和ぼけ、こう言わざるを得ないところであります。  最も身近な例では、NATO軍によるユーゴ空爆が四月に入ってからコソボ地域のユーゴ軍の補給路を遮断する作戦、すなわち後方支援活動を主たる攻撃目標とし、このための補給路である橋や鉄道、道路などが次々に破壊されています。ユーゴ空爆の正当性に対する疑問はさておきましても、経験的に申し上げれば、戦争は一たび戦端が開かれますと確実にエスカレートするわけであります。やがては民間も巻き込んで、後方地域に対する攻撃はもとより、誤爆、誤射、味方同士の相互攻撃、いわば何でもあり、何が起きても不思議はないというのが戦場を支配する論理であることをこの際申し上げておきたいと思います。  また、周辺事態というあいまいな規定が想定していると言われる朝鮮半島、台湾海峡有事などについて申し上げれば、日本海、対馬海峡、黄海、東シナ海、バシー海峡から南シナ海周辺に、恐らく複数の米空母機動部隊が展開し、作戦行動するものと想定されますが、これら海域、船舶の航路帯は極めて狭い限定されたものであります。この狭い限定された海域に、米軍作戦の後方支援のために就航する船舶は、必然的に米軍作戦行動の傘の下に入ることになります。一体、どこに武力行使と一線を画す安全な後方地域が存在するのか、御存じの方は具体的にチャートの上で線引きをしていただきたいと思います。米軍の護衛のもとでの後方支援活動は、まさに武力行使との一体化そのものではないでしょうか。  このように国民生活に決定的な影響を及ぼす自治体協力や民間協力について、法案では一切具体的、明確な内容が示されないばかりか、後方支援イコール安全、あとは白紙委任してくれと、政府答弁が繰り返されるたびに私どもは、この法案の危険性、危うさとともに、国民生活を初め、直接後方から前方へ兵たん活動を担う船員はもとより、陸上、航空、港湾の交通運輸労働者の命にかかわる深刻な事態を痛感せざるを得ないのであります。  船員は、昔から板子一枚地獄という過酷な職場で働いてきました。海の日が国民の祝日として制定されるなど、だれしもが日本を海洋国家と認めるように、国民の日常の暮らしや文化、経済活動は深く海に依拠しているわけでありますが、コスト競争力のない日本人は不要である、こうした大合唱の中で、船員職業の魅力は喪失し、船員の減少にも歯どめがかからない深刻な現実がある一方、依然として海難事故も多く、陸上に比べて労働災害も少なくありません。こうした中でも、遭難した仲間は見捨てない、こうした船員社会の不文律を大切にし、我が組合員だけでも毎年二百名を超える人命救助を行っている、そういう職業集団であります。人道的な立場においては、時としてみずからの命を賭して職に当たってまいりましたし、そのことについては全くやぶさかではありません。  しかしながら、船員は弾雨飛び交う戦場の海はもう御免であります。しかも、他国の戦場にみずから当事者となって後方支援という兵たん活動の先頭に立てなど、本人はもとより家族の皆さんにどう説明がつくのでしょうか。  来るべき戦争に備えよと声高に叫ぶ前に、なぜ、世界に誇る憲法の平和主義をはぐくみ、武力なき平和の実現に向けて目に見える具体的な努力ができないのか、理解できません。  どうかこの新ガイドライン関連法案につきましては、一たん白紙撤回していただき、二十一世紀日本のあるべき針路は本当にどの方向なのか、徹底した国民討議の上、総選挙で信を問うていただき、それでも必要というのであれば国民投票で決めていただきたい。  最後にこの点を訴え、私の公述といたします。  どうもありがとうございました。(拍手)
  7. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ありがとうございました。  次に、冨澤公述人にお願いいたします。冨澤公述人
  8. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 冨澤であります。  私は、ガイドライン関連法案という略称を使わせていただきますが、この法案に対しまして全面的に賛成であります。考えてみますと、恐らくこの五十年で初めてできる有事法制だと思いますが、まさに待望のものであります。一日も早く成立していただくことを皆様にお願いしたいと思います。  それでは、なぜ私がこの法案に賛成するのかということをまず述べさせていただきます。  ここに、対話と抑止と対処という言葉が書いてございます。現在、特に、例えば朝鮮半島をめぐって対話が続いております。これを太陽政策とかあるいは宥和政策と申しておりますが、これはそういう太陽だけが一つ存在するのではないのでありまして、必ずその後ろには抑止というものがあり、そして抑止につながる対処計画があるというところでこの対話が成り立っているものと考えます。  すなわち、北風には北風をということではないのでありまして、北風には北風よけをしっかり持って、そしてその上で太陽をということだと認識しております。つまり、互いに北風の冷たさをよくわかる者にとって初めて太陽の暖かさがわかるんだ、こういうことであると認識いたします。まさにこの法案は、そういう意味で対処の計画をつくるもととなり、それがしっかりした抑止につながり、その上で太陽の対話政策を進めるというものであるというふうに認識いたします。  また、有事法制と申しますと、有事法制というのは有事が本当に近づいてきたらつくればいいじゃないかと、こう言う方がおります。これが全く私は違うと思うのであります。有事法制というのは平時につくる。つまり、対話というのは平時に行われます。有事になったらもう対話はなくなるわけです。対話が大切なんです。ですから、対話をつくるために平時に有事法制をつくって、それに基づいてしっかり訓練をして即応の態勢を保つことによって初めて抑止ができる。その抑止という土台の上に本当の対話ができるんだろう、このように思います。  その意味で、今私は平時だと思っております。この平時に有事法制ができるということはすばらしいことだ、そうでなければならない、このように考えております。これによって、まさに三者のバランスのとれた外交が我が国の平和と安定をもたらすものであろうというふうに考えますので、この法案に賛成するわけであります。  次に、個別的自衛、集団的自衛、集団的安全保障という言葉が書いてございます。これは皆さん既に御承知のとおりでございますが、この中で一体何が大事かといいますと、これは言うまでもなく個別的自衛が一番大事であります。なぜ個別的自衛が一番大事かと申しますと、残念ながら世界の現状は他国をそこまで一〇〇%信じられないような状態にあるからであります。私は、現在は残念ながらそういう集団的なものにすべてをかけることはできないと思いますので、個別的自衛が一番大切であるとは思いますが、だからといって個別的自衛しかやらないという体制は、またこれは非常に困ったものであります。  個別的自衛しかやらないということは他人と組まないということでありますから、当然その国は孤立いたします。孤立するということは発言力をなくすということであります。発言力をなくすということは自主性を失うということであります。自主性を失うということは、その国の存在がもうなくなるということであります。防衛の目的そのものが失してしまうということであります。ですから、個別的自衛は大切でありますが、個別的自衛だけではだめだということであります。  我が国はこの数十年間、その個別的自衛すらどうだという議論がありまして、また、そのために個別的自衛そのものの準備も極めていまだに不十分であります。そういう事情もあろうと思いますが、そのために余りにも集団的自衛とか集団的安全保障とかということについての議論がありませんでした。したがって、それが一国平和主義とかあるいは日本は核武装をするんじゃないかなんということの原因になっているわけであります。  要するに、一国平和主義ということは、自分だけで何でもやるということですから、世界のあらゆる脅威に対応しなきゃいけない。世界の脅威で一番怖いのは核兵器です。そうなりますと、スイスのように日本じゅうをシェルターで取り巻くか、あるいは核兵器を持つのじゃないか、シェルターの方が高いでしょうから核兵器を日本は持つのじゃないのと、キッシンジャーだけじゃなくて、私も外国へ行くといろんな人に聞かれるわけであります。こういう誤解を招いているもとを絶つためにも、やはり我が国の防衛はこれから集団的なものにシフトしていくべき時期だと思います。  そういう意味で、今回のこの法案に関する審議というものは、我が国が一国平和主義から脱却する第一歩を踏み出したという意味で極めて画期的なものだと思いますし、この法案が成立すればまさにそれが実行に移るわけでありますから、そういう意味で大変結構だ、こういうふうに思うわけであります。  しかし、それじゃこの大変結構な法案ができれば、この法案に基づいて米軍を支援して、あとは米軍に任せれば我々は平和で安穏と暮らしていけるのかという問題になりますと、私はこれはノーである、このように考えます。なぜノーなのかということであります。  まず、我々が考える周辺事態、いろいろございますけれども、基本的に米軍に支援するわけですから米軍周辺事態で戦うという前提だと思いますが、その場合、米軍及び米軍とその関係する当該国が、それぞれ個別的自衛あるいはその当該国と米軍との間の集団的自衛によって自衛戦争を始めます。この自衛戦争というのがどのくらい続くかというのはよくわかりませんが、私はこの自衛戦争の期間というのは意外に短いのではないか、こういうふうに考えております。短いということはどういうことかというと、比較的早く国連軍、多国籍軍が出現するだろう、このように考えております。  具体的に、例えば朝鮮の場合を申しますと、一九五三年に御承知のように休戦協定が結ばれましたが、このときにそれまで国連軍として参加していた韓国を除く十六カ国は、この協定を認めるけれども、この協定が破られてもしもこの地で再び侵略が起こった場合は我々はここに再結集して戦うと共同宣言をしております。そして、それを受けるかのように、その後、国連軍は、部隊はほとんど帰ってしまいましたけれども、いまだになお韓国ソウルには国連軍の司令部がございます。そして我が日本にも、キャンプ座間に国連軍司令部の後方部門がございます。これらの部門は、いつでも、今は比較的少ないですが、その人員を拡大して国連軍を再結集して戦える準備を整えております。  すなわち、休戦が破れれば同時に休戦以前の状態に戻る、つまり戦争の状態に戻る。そこで、休戦協定をした人は南側の国連軍総司令官マーク・クラーク大将ですから、その人はもうもちろんおられませんが、それを継ぐ人が当然それを受けて国連軍を再発動するということが考えられるわけであります。  しかし、先ほど栗山公述人のお話にもありましたように、実際の現在の国連の状況とか、またアメリカ国連との関係がありますので、必ずしもこの国連軍がそのとおり成るかどうかということは私も一〇〇%申し上げることはできません。しかし、そういう場合には、私は、必ずそれにかわる、今度は国際慣習に基づく多国籍軍というのができるだろうというふうに考えております。  また、逆に言いますと、いつまでたっても国連軍も多国籍軍もできないような状態の戦争のときに、日本が本当に支援しなきゃいけないのかどうかということは、また別途議論する必要が出てくるような話だろう。事ほどさように、恐らく国連軍、多国籍軍というのができるのだろう、こういうふうに考えるわけであります。  当然、こういうものができれば、米国による米国の自衛のための戦争というのは終わるわけであります。ここのところが重要であります。そういう状態になったときに、我が国米軍国連軍の部隊にどういう支援ができるのかということでありますが、米軍に対しては、現在持っております米軍の地位協定と、それから今回できますガイドライン関連法案で引き続き支援が可能なのかと思います。  ただ、私、一つだけちょっと懸念するのは、今回のガイドライン関連法案というのは日米安全保障条約に基づくものであります。この日米安保条約というのは、確かに我が国からの集団自衛権行使はないということになっておりますが、アメリカ側からの集団的自衛権行使は多分期待しているんだと思いますし、よくよく考えてみますとこれは同盟条約でありますから、社会常識から考えるとこれはもともとは相互の集団自衛権に基づいて締結された条約であろうと。  そうしますと、この条約から出てきたガイドライン関連法案でもって自衛戦争を終わった米軍に本当に支援できるのかどうか。私は法律の専門家でありませんのでよくわかりませんが、ちょっと疑義がありますが、そのときは多分政府はこれは集団的自衛権に全く関係しないということで引き続き支援を続けることは多分できるのかなとも思います。  それでは、一方、米軍を除くその他の国連軍に対してはどういう支援ができるのかといいますと、現在、一九五四年にできました国連軍地位協定日本国における国連軍との地位協定というのがございます。これに基づいてそういった国々を支援できるということになるわけでありますが、それは実は米軍との地位協定と同じようなものでありまして、端的に言うと日本における基地をどういうふうに貸すかという協定であります。ですから、これでは基地を貸すことについてはある程度できると思いますが、今回のガイドラインで決まったようないろいろな行動に関する支援というのはとてもできないというふうに考えます。  それからまた、基地についても、実は一九五四年当時とは基地の状況が全然変わっております。沖縄を除いては日本に外国軍のための基地というのは激減しておりますから、そういうところで基地についても私は十分にこの国連軍に対して支援ができないだろうというふうに思います。  その結果どういうことになるかというと、日本という国は米軍にはこれだけ支援するけれども何だと、友好国軍には一切支援しないのかということになります。これは非常に大きな問題であります。こういう話を私どもの仲間でしますと、私どもの仲間の中には、いや大丈夫だよと、これは米軍にさえ支援しておけば米軍トンネルになって横流しで全部行くんだから結果は同じだよと言うんですが、私はこれは困ると思うんですね。これこそ、こういったことを認めるということこそ日本の自主性をなくすことであります。国連軍が出てきたら国連軍参加一国一国との間にきちんとした協定なり条約を結んで、それに支援するような体制をとらなきゃいけないというふうに思うわけであります。  じゃ、どうしたらいいかということでありますが、比較的事は簡単でございまして、今回このガイドライン関連法案米軍に支援するという内容が決まりましたら、その内容をそのまま国連軍ができたらばその国連軍にも適用するというふうに決めていただければいいわけであります。ただ、当ガイドライン関連法というのはあくまでも日米安保条約の枠内のものでありますから、これをそのまま適用するわけにはいきません。したがって、的枠組みだけは別にしなきゃいけないということであります。当関連法が憲法違反でないとするならば、これもまた当然憲法違反じゃないわけでありますから、全く法律をつくるのに当たっては問題ないと考えております。  ただ、国連軍についてはもう現実に国連憲章がありますし、司令部が現に日本にありますし、地位協定もありますから余り問題ないと思いますが、多国籍軍というのは国際慣習でありますし、まだ現実に見えていないものですから、これを対象に立法ができるかどうかは私はわかりません。そういうときには国連支援のための法律の中にそれを含めるとか、それがどうしてもできないのだったら政治的宣言にとどめておくというのも一案かと思います。そういうことが必要じゃないかということを皆様に御提言申し上げたいと思います。  要するに、現在の日本の防衛というのは余りにも個別的防衛に偏しておりました。その我が国の防衛の実態を多少なりとも集団的なものに修正してきたという点でガイドライン関連法案の議論というのは大変大きな成果をおさめたものと思います。  しかし、一方でそれはいいけれども、何となく米国一辺倒なんじゃないかなという感じを国民に与えていることもまた否めないと思います。そういうような感じを払拭するためにも、今こそ国連軍とか多国籍軍とかPKOとかいういわゆる集団的安全保障の分野に目を向ける時期だと思います。  要は国連軍、それから多国籍軍のことについて主として申し上げましたけれども、実はその他にも残っている問題がたくさんございます。この下に書いてございますけれども、私ども何十年と長い間待望しておりました本来の日本有事における法制の整備、それから最近問題になっております領域警備あるいは部隊警備というようなことに関する任務、権限を自衛隊に付与すること。さらに、今PKF凍結解除をしようという話がたくさんあるようでありますけれども、それは大変結構ですが、そうした場合に武器使用基準が今のままでできるのかというような非常に重要な問題があります。  これらの問題は当法案と直接関係するものではございませんが、我が国の平和と安定のために大変大事である、この有事法制をできるだけ早くこの平時のうちにつくっておいていただきたいということをお願いしまして、私の話を終わらせていただきます。(拍手)
  9. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  これより公述人に対する質疑に入ります。  なお、公述人方々にお願い申し上げます。  御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。  それでは質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 加納時男

    ○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。  栗山平山冨澤公述人の先生方には、大変有意義なお話をありがとうございました。今のお話に基づいて一、二質問させていただきたいと思います。  最後にお話しなされました冨澤公述人から集団的自衛権個別的自衛権のお話がございました。ここからスタートしてみたいと思います。  日本国憲法の中に、今お話しの集団的自衛権、これはないとか、個別的自衛権、これはあるというふうに明文では書いていない、これは確かでございます。したがって、憲法解釈の問題だというふうに理解しております。  集団的自衛権というのはこの席で何度も実は議論されてまいりました。これは国際法上の概念で、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することが正当化されるという地位であると我々は理解しておりまして、これは国連憲章にも集団的自衛権というのは明記されておりますし、また日本国アメリカ合衆国との相互協力並びに安全保障条約にも明記してあるところでございます。  ところで、日本憲法第九条はよく問題になりますけれども、確かに「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」ということで書いてございますが、これは個別的自衛権の放棄ではないというふうに私ども理解しているわけでございます。これは憲法の前文の中に、我々は「平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とありますし、また十三条でも、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、」「最大の尊重を必要とする。」とありますので、国民の平和に生きる権利というものは明確に保障されておりますし、これを侵すものに対しては国民を守ること、すなわち個別的自衛権はあるというふうに私は考えているわけでございます。  ところで、きょうまさにお話しなされたのは、この自衛権があるとして、これを発動する場合にこれを極力狭く限定的に解釈してきたというのがあるかと思っております。冨澤さんはお話の中で、個別的自衛権集団的自衛権そして集団的安全保障の中でも最も基本にあり、最も大切であるけれどもこれだけでは十分でないと言われたんですが、その個別的自衛権そのものが、日本ではいわば三原則等が御存じのとおりありまして、日本に対する急迫不正の侵害がある、そしてこれを排除するためにほかに適当な手段がない、こういうときに発動するんですが、それでもなお必要最小限の実力行使にとどまるべきというふうになっております。  この表現は自衛隊法ですとか警察官職務執行法ですとか、関係する法律全部にありまして、何かやるに当たってもやることは最小限にということで、私も基本的にはこの考えは賛成でありますが、その結果被害が最大限になってはならないということも同時に強く申し上げておきたいと思います。  そこで質問に入りたいと思うんですけれども、できれば三人の先生方に一言ずつでもお答えいただけたらと思っております。  私の質問は、集団的自衛権国際法上存在するが憲法行使できないということが国会でよく議論されます。こういう憲法解釈、これは政府憲法解釈でもありますが、こういう解釈があるのは事実であります。  これに対して、日本の同盟のパートナー、例えばアメリカということでございますが、そこから見て、今、冨澤さんも引かれましたように、日本の一国平和主義というような国際的誤解を受ける可能性があるのではないかとか、このためにアメリカ人はどのように考えるのか、こういったことについて御感想を伺えたらと思います。  なお、栗山元大使には、申しわけないんですが、先ほどのお話の中で、これに関係しますので、シカゴ外交評議会が去年行った世論調査、大変参考になりましたけれども、この中で、例えば同盟国侵略を受けたときにアメリカ派兵に対してイエスと言った者はどのくらいあるのか。五〇%を超えたものは十カ国の中で一つもないというお話がさっきございました。トップがサウジアラビア、四六%と言われていました。韓国が三〇%ですか、日本は何%だったかも含めてお答えいただけたらと思います。
  11. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 集団的自衛権憲法関係をどう考えるか、こういうことでよろしゅうございますか。  私は、個人の考えで申しますと、現在の日本国憲法の第九条というのは、一九二八年のケロッグ・ブリアン不戦条約というのがございますが、その精神を受けているだけであって、文言は、前項のためにとかいろんなものがついておりまして、陸海軍を持たないとか、交戦権を持たないとか書いてありますが、それは一九二八年の不戦条約と内容は基本的に同じでございまして、その中で、個別的自衛権を持たないとか集団的自衛権を持たないとか、ましてやその集団的安全保障には参加しないとか、そういうことはどこにも書いていないんじゃないか。私は素人ですからわかりませんが、憲法を読んでもそれを読み切れないんです。  先般、「諸君!」という雑誌に篠沢さんという学者の方が私と同じような見解のことを書いておられました。全く同意でございまして、当然、集団的自衛権個別的自衛権も持っておりますし、それから集団的安全保障には、もちろんこれは権利じゃないので、責務ですから参加しなければいけない、このように解釈するのが正しいと思っております。  ただ、憲法自衛権を必要最小限にするということでありますが、必要最小限とは何かという問題がありますけれども、それはそれで構わないと思うんです。この自衛権の問題というのは権利の話ですから、権利というのは主張もできますけれども自制することもできるわけです。ですから、日本ができるだけこの自衛権の発動は最小限に自制するんだということは、それはそれで結構なのじゃないか、このように思っております。  ただ、集団的安全保障の方は、これは権利でございませんので、明確に責務とも書いておりませんけれども、国際慣習による多国籍軍への参加であろうと国連軍への参加であろうと、これは明らかにみんなで一緒にやろうという話ですから、これに参加してはいけないなんということはもちろん憲法に書いていないわけですから、これの方こそ積極的に自制することなくやるべきだ、このように私は解釈しております。
  12. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 加納先生の御質問にお答えさせていただきます。  まず、集団的自衛権の問題でございますが、集団的自衛権というものを放棄しておるという状況のもとでそれは同盟国にどのように見られるだろうかというのが御質問であったというふうに理解いたしましたけれども、アメリカの一般の国民からいたしますと、国際法上の自衛権というものは何であるか、あるいは集団的自衛権個別的自衛権というものはそもそも何であるかということを理解している人は、あえて申し上げれば、ほとんどいない。学者その他の専門家は別とすれば、アメリカ国民の九〇%以上の人は、それは何かということは理解していないと思います。  だから、重要なことは、いざというときに、アメリカ国民自身が戦わなければならない、同盟国のために血を流さなければならないというときに、同盟国は本当にどこまでアメリカ協力してくれるんだろうかという実態的な問題でございます。  そこで、もし同盟国が普通、常識上考えられるようなアメリカに対する支援とか協力というものを何らかの理由で行えないというのであれば、それはそんなことはおかしいじゃないかということが当然アメリカ国民の反応として出てくるだろうというふうに、これは間違いないことだというふうに思います。  それから、第二のシカゴ外交評議会世論調査でございますが、これは冷戦が終わりまして、日本それから西ヨーロッパの諸国に対する武力攻撃侵略というものは、現実の可能性としては考えられないという前提で、その質問の対象の国としては日本、西ヨーロッパというのは挙げられていないのでございます。したがいまして、韓国でございますとか、それからヨーロッパで申し上げますとポーランドでございますとか、あるいはイスラエルとか台湾とか、そういう国が対象になって質問になっております。
  13. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 海員組合としての公式な見解というのは、今の加納先生の御質問について明確なものを持っているわけではありません。  ただ、今回、我々は先ほど公述させていただきましたけれども、そうした立場でこの法案に反対しているわけでありますが、現行の政府が見解を出されている自衛隊の存在の理由あるいは安保条約存在の理由、こうしたものについては我々も肯定的に理解しているわけであります。すなわち、自衛隊につきましては、まさに日本の領域が侵略をされる、そういう状況の中で自衛隊役割を果たすという観点、あるいは、そのために一定の協力関係日米安全保障条約で持っているということについては、我々は理解する立場であります。  それとあわせて申し上げますと、我々のまさに国民サイドから見るこの法案的な立場から見れば、もちろん今回の法案憲法上どういうポジションにあるのか、そうした国際法上から見てどうかという論議があるわけですけれども、何よりもやはり現在のユーゴ、NATOの空爆にさらされる、あるいはまたコソボにおきましてはそうした治安部隊の衝突がある、難民が発生する、まさにそういう状況がこの法案によって、まさに先ほど栗山公述人が申されたような、ある種の我々のコストとして払わなきゃならないという問題がもし仮に提起されているとするならば、これは大変な問題でありまして、どうかこれは広範な国民判断をゆだねてもらいたい、まさにそういうふうに我々は思う次第であります。そういう観点で申し上げておきたいと思います。  質問の答えになったかどうかはありますけれども、御容赦いただきたいと思います。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  14. 加納時男

    ○加納時男君 少し法案の中身に触れて御意見を伺えたらと思っております。  幾つか論点が出ているんですが、その一つに後方地域の問題がございます。周辺事態法案では、後方地域というのを「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」と定義をしまして、さらに物品提供等では、武器弾薬は含まず、また物品とか役務提供に当たっては、「公海及びその上空で行われる輸送を除き、我が国領域において行われるものとする。」という注釈がついているわけでございます。  私の質問でございますが、ところで戦闘行為が行われないと考えている公海で、仮にそういう状態が変わった場合、例えば戦闘行為が行われると変わってきますとどうなるのか。そうすると、自衛隊がそこに出動していたとしてこれがそこからいなくなる、撤退することになると思うのでございます。  これは冨澤公述人に伺いたいと思うんですけれども、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態、いわゆる周辺事態というときの話でございます。よその国の話ではない、コソボの話ではないわけですが、日米安保条約目的の達成に寄与する活動として行っている米軍が目の前にいるときに、日本はいや危険ですから自衛隊は下がりますといって下がるというのが今の解釈でございます。私は、この解釈は今の法律を読むとそのとおりだ、間違っていないと思っております。  私の質問は、こういった日本側の行動に対して一体全体第三者から見たらどう思うだろうか、冨澤さんはどう思われるか。これは栗山公述人アメリカに大使として長くいらっしゃったので、例えば日米の信頼関係への影響はどうなのか、なぜ日本自衛隊が危ないからといっていなくなったところでアメリカ人が血を流さなきゃいけないんだといったことに対するアメリカ人の国民感情というのをよく元大使は御存じだと思うんですが、この辺、軍事的な面から冨澤公述人に、それから日米関係という視点から栗山公述人にお伺いしたいと思います。
  15. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 海上においてはどういうことになるのか、私、海上の専門家じゃないのでわかりませんが、一つの例として、現在PKOというのに出ております。  実は、このPKO法案ができましたころ私まだ現職だったんですが、そのときにPKF、本当は外国ではPKFとPKOと分けていないんですが、日本ではPKFというのとPKOというのは分けました。それで、PKFというのは言うなれば私どもで言うと普通科部隊、昔の言葉で言うと歩兵部隊等が行って実際に兵力を分離したり警備をしたり、非常に武器を使う頻度の高そうな仕事をやるということでありました。それに比べましてPKOと日本で決めたものは、後方であって比較的安全である、だから武器を余り使うことがないだろうということで判断しまして、PKOの方だけ行くことになりました。  そのときに、私どもの気持ちの中では、本当はPKO、後方部隊でも危ないことは十分にあるので、きちんとそういうときに、単に正当防衛、緊急避難だけではなくて、任務遂行のために必要があるときには武器使用ができるというような条件にしてほしいと心の中では願ったわけでありますが、そういうことはできませんでした。ただ、確率としては確かに後方部隊はそういう武力抗争に巻き込まれる公算というのは、全くないとは言いませんが極めて少ない。それならばいいだろうということで私たちも同意してPKOに参加いたしました。  ただ、現実に行ってみますと、諸外国の軍隊からは不思議に思われているらしい。ですから、ゴラン高原へ行っても、最初はゴラン高原の歴代の司令官が、日本の軍隊は何だ、我々と一緒にPKO活動をやるならば一緒に何かあった場合の訓練も同じようにやって、そしていざという場合にお互いに協力し合ってやれる体制をつくらなければ本当のPKO部隊とは言えないじゃないかとはっきりと物を申した司令官が何人もいたというふうに私は聞いております。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  そういう実態でありますから、私個人としましては、これはまさに、実は特にPKOとかこういうものは戦争とかなんとかという話じゃなくて、いわゆる任務遂行のための武器使用というのは、先ほど言います範囲で言うと、どちらかというと領域警備とかあるいは部隊警備とかというような話に近いんです。そういうようなものは、これはいわゆる先ほど言ったケロッグ・ブリアン協定で禁じられたような戦争行為とは仮に同じような武力行使であっても全く意味が違うわけでありますから、こういうのは本当は憲法で違うものだというふうに別にして、諸外国の軍隊並みに全部一緒に使わせていただく、こういうふうにしていただく方が私はよいと思っておりますが、憲法解釈は政府の方でいろいろあるようでございますから。  以上であります。
  16. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) お答えいたします。  今、加納先生御質問の点は、実は私が個人的に最も心配している点でございまして、実はそういう点については昨年新聞に投稿もさせていただいたという経緯もございますが、一般のアメリカ国民から見ますと、今の加納先生が例示されましたような事態がもし仮に起これば、これはアメリカ国民は大変怒るだろう、これはもう間違いないところだろうというふうに思います。  その点で、私は、今の法案の背後にございます政府憲法解釈については、個人的には従来から非常に問題があって、必ずしもいわゆる常識に合致した解釈ではないんではないかというふうに私は個人的に考えておる次第でございます。
  17. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  平山公述人にひとつ伺いたいと思いますが、海を守るお立場でとても一生懸命やっていらっしゃるお話、責任感を持ってやっていらっしゃるお話、感銘深く伺いました。  私は、憲法の前文というのが大好きなんですけれども、そこに、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」、こうあって、私の一番好きなところの一つでございます。  私もこの諸国民の公正と信義に信頼したいんですけれども、現実には、例えば最近で言うと、テポドンを日本の頭越しに発射したり、あるいは不審な工作船を侵入させたり、あるいは十五万人と言われておりますけれども、特殊秘密工作員、武装ゲリラをできるような、そういう人間も養成しているといった情報もございます。こういう国が目の前にあるということは公正と信義に信頼できない状況も起こるのではないかということが非常に心配でございます。  日本国内では、一連のガイドライン論議の中で、一部のマスコミの中にはアメリカの軍事行動に巻き込まれるとか、戦争に参加させられると。戦争参加だという意見もこの国会でもございます。私は国民の圧倒的多くではないと思っております。  また、政党の中ではこのガイドラインについてもいろんな意見がございますが、例えば日本共産党の綱領の第七章の最後の方を見ますと、当面アメリカ帝国主義と日本独占資本と闘い、人民革命の勝利のために闘うと、こうありますので、いろんなお立場を私は国民が選択されるのはいいと思うのでございますけれども、この公正と信義に信頼して諸国民の信頼のもとに日本が生きていくというのは、私は本当にうれしいと。そうしたいんですけれども、それができないような状況がある中で、平山公述人としては、本当に海を守るお立場でジレンマに陥っていらっしゃるんじゃないかと思います。御感想を一言いただけたらと思います。
  18. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 質問にお答えしたいと思います。  昨年、テポドンが日本海を渡りまして日本上空を越えて太平洋におっこったと。この段階において、我々は直ちに北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国とうちとの交流関係もあります向こうの労働組合、水産関係海運関係の労働組合でありますけれども、これはちょっと船乗りの常識からしてやや外れているんじゃないですかと。あの辺は日本の航行船舶も多いわけでありますし、漁船の就航もありますから、そういうところへいきなり不意にどかんとおっこってくるというのは、これはちょっとやり過ぎだろうと、こういうことで実は抗議をしているところであります。  また、先ほど不審船の問題が出されましたが、これは海員組合もこの不審船の問題について、特に公式な見解ということで出しているわけではありませんけれども、若干組合の中でふだんの会話として論議されていることなんかを紹介して、考え方の一端とさせていただきたいと思います。  まず、この手の船、不審船と言われる、これは何をもって不審船と言うのかというのはいろいろあるわけですが、どうも正体のはっきりしない船舶というのは日本の海域、日本沿岸を含め、相当いろいろあるわけであります。私は日本海を就航した経験というのはそう多くはありませんけれども、日本海を主として就航する船乗りあるいはそういう経験を持つ皆さんからは、あんな船はよく見かけますよと、こういう話が出てくるわけであります。そうした我々はマラッカ海峡におきましては海賊とも対峙をしなきゃいかぬと、こういう職業集団でありまして大変な思いをしているわけでありますが、我々の第一印象としては、なぜこの時期にああいう反応を政府なりがとられたのかなと。これは、そうした一般的な我々の職業的な体験から、やや奇異に感じたというところがあるわけであります。  その後、我々は北朝鮮の、先ほど述べました若干交流のあるそうした労働組合関係のパイプを通しまして、北朝鮮に行くという話に実はなっているわけであります。日本北朝鮮とは外交関係が途絶して、その後なかなか対話もないようでありますが、我々はあくまでもそうした不信感、新聞報道等で拉致事件の問題であるとかいろいろ書かれていますから我々も非常に心配をしているわけでありますけれども、いずれにしても対話を続ける、平和的な方向でそうした問題を解決する以外にないわけであります。イランイラク戦争もそうでしたけれども、いろんな戦争を見ても、無条件降伏でサインをするのか、あるいはもうへとへとになって、国民、民間にも多数の犠牲が出た上で妥協を図って停戦をするのか、結局はその先の見えるそういう経過をたどって戦争というものはいくのだろうというふうに思います。  それは我々の実体験であるということで御理解いただきたいし、そういうことで我々も船乗りの立場としてそういう努力も重ねているということを御理解いただいて、先生の質問に答えたことになりましょうか、御容赦いただきたいと思います。
  19. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。(拍手)
  20. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 民主党・新緑風会の齋藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。きょうは本当にありがとうございます。  短時間でございますので、私の方の質問も端的にさせていただきたいというふうに思います。御協力をお願い申し上げます。  最初に冨澤公述人でございますけれども、今回のガイドライン関連法案、総合的に評価をされて、一番最初に五十年来待っていたというようなそういう御表現だったでしょうか。有事という言葉もたびたび使われているんですけれども、今回の法案一つのこれからの流れの中で、いわゆる有事法制についてやはり検討すべきであると。有事法制について早く検討して、きょうのレジュメにもお書きいただいていますけれども「日本有事の法制整備」と。長く自衛隊の陸幕におられたんですが、今、内部ではどういうような検討状況、もう内部案というのはあるんでしょうか。
  21. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) これは御案内のとおりにもう昔の栗栖発言から始まりまして、またそういう指示もありまして、有事法制を検討しなさいという話がありまして、防衛庁内で相当昔から検討してきた問題であります。  それで、私はちょっと詳しいことはわかりませんが、それを幾つかに分類しまして整理していると思います。ただ、その多くは防衛庁内だけでできる問題ではなくて、他官省庁にかかわる問題とかいろいろございますので、まだすぐにこれを法制化するというような段階に至っているというふうには私は認識しておりません、それらをすべて含めてですね。  もちろん、その中には幾つか、こういったものはすぐにでも国会で審議されて法制化すればできるというものはあると思います。ですから、それらの全部を一緒に完全な形として法制化するか、そのうち合意できるものから法制化していくかという、そのアプローチの仕方はいろいろあるのではないかと思いますが、いずれにしても基本的にほとんど有事法制と言われるものはないということであります。  これが私は非常に大きな問題だと思うんですね。要するに、私ども、いろいろ高い予算で装備等を買っていただいております。また、それに伴って訓練をしております。しかし、有事法制というソフトウエアがないと全くこのハードは機能しないという感じを持ってずっと何十年と自衛隊の中で暮らしてまいりました。  したがいまして、現在相当に準備されたものがあると思いますので、ぜひそれに取りかかって、他官省庁との調整による部分がまだちょっとあるかもしれませんが、それもぜひ政府の方にハッパをかけていただいて準備をして、それを法制化していただくことを私は望んでいるところであります。
  22. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 ありがとうございます。  さて、先ほど平山公述人から、いわゆる後方支援地域は安全なところにあるんだろうか、どこで線を引くんでしょうか、こういうお話がございました。そして、前駐米大使栗山公述人からは、昨年の五月に読売の「論点」で「防衛協力欠かせぬ常識」ということで、第一、第二の常識ということで幾つかお書きになって、拝見をさせていただいているんですが、これは全部読みますと時間がなくなっちゃうので、関連するところでお尋ねする点を読み上げさせていただきますけれども、「ここで問題とされるのが米軍に対する後方地域支援である。同法案によれば、「後方地域」とは、「わが国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められるわが国周辺の公海及びその上空」」、これが法案であり、ずっと衆議院も参議院もこういうことを繰り返し繰り返し私どもはここで、国会でやりとりをしているわけです。  ところが、後方地域に安全なところがあるんだろうかというようなことも確かに委員からも指摘もございました。  ここでの一つの想定としては、常識という言葉を使っているんですが、法案が定義しているような事態が現実に起きる可能性があるのは朝鮮半島有事の場合ではないだろうかというくだりの中で、ここの今申し上げましたいわゆる後方地域ということで、「朝鮮半島有事の場合に、「戦闘行為が行われることがないと認められる」ような地域日本海に存在するであろうか。」という、想定としては朝鮮半島と、そしてまた後方地域の今度の法案ということなんですが、ここはもう極めて今回の政府とやりとりをしていく中で論争点なわけですけれども、栗山さんも平山さんも線引きするところはないとはっきりお話しになっているわけなので、ある意味では、栗山さんもこの論点で言えば御同様な立場に立つのではないかというふうな私は受けとめ方をするわけです。  いわゆるここでの常識論ということと、そして栗山公述人にお尋ねしたいんですが、今、政府がこの法案について、こういう私どもの提案、そして論戦をしているんですが、このことに対してのここでの政府に対する感想と申しましょうか、きょうは政府はいません。聞いているかもわかりませんけれども、やっぱり国民に説明すべきではないかということも含めてお話しいただければありがたいと思います。
  23. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 先ほど、加納先生からも同様な御質問がありまして、ちょっと簡単にお答えさせていただいたわけでございますが、まさに私が書きました新聞への寄稿を齋藤先生が御引用になられましたので、大変恐縮なのでございますが、私は政府憲法解釈は憲法解釈といたしまして、二つのことを申し上げてお答えにさせていただきたいというふうに思うわけでございます。  一つは、加納先生にも申し上げましたが、もし洋上での後方地域支援というものが一たん決定されて実行されるような段階になりまして、それからその後、法案が禁止をしているような状況が発生をしたということで後方支援を中止する、そのために従事している自衛隊が引き揚げるということになりましたときに、アメリカの一般の国民がどういうふうに反応するかという問題を考えますると、これは私は率直に申し上げて、恐らく日米同盟というものはその日限りでおしまいになるだろうというふうに思っております。これは私の個人的な見解でございます。  それから、憲法解釈の問題につきましては、私は、以前から、武力行使と一体化というものは禁止されているんだ、集団的自衛権に当たる可能性があるので憲法九条のもとでは認められないんだという政府の考え方そのものについて、若干実は疑問を持っております。  個人的には、集団的自衛権というものを余りにも広く解釈をし、他方において国際法上認められております個別的自衛権というものを極めて厳格に狭く解釈をし、その結果として九条のもとではできないというものが非常に広がっている、その結果、国際的には常識として通用しない理論というものが日本憲法解釈として存在をしている、そのことが持つ日本の安全保障にとっての意味あるいは対米関係にとっての問題というのは非常に深刻なものがあるのではないかというふうに私はかねがね考えている次第でございます。
  24. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 ありがとうございます。  次に、今回、衆議院から参議院に送付されてきた法案の中では、いわゆる船舶検査の条文については削除されております。それから、いわゆる自自公の修正の中で、周辺事態を厳密に定義し直すということで、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態という政府案の規定があったわけですけれども、「放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」という例示を加えました。これは従来の法案と全く変わりがないんだというのが政府であり、ここに来られている自自公の方々の説明のやりとりなんです。  しかし、大方は、なぜそれならば法案を修正したんだろうか、新たにそういうことを加えたんだろうかということで、これに対する一つの疑義としてかねがね修正を加える側の政党の方々にしたのは、周辺事態協力自衛権の発動ではないという政府あるいは自民党の方々の見解というのと、それは自衛権に踏み込むものだということの論争がずっとある中でこの法改正に至ったわけですから、それは解釈が違うのではないか、解釈の違う方々がこの法案の修正に乗っているといいましょうか前提になっているということをいろいろ指摘させていただいているんですが、なかなかそこら辺はかみ合っていない議論としてございます。  そこで、お三方に伺うというのも恐縮でございますけれども、一般的に国民が、きょうは公述人国民代表ということで来ていただいていますが、ここの法案の根幹にかかわる修正をめぐってどうもあいまいさが残っているというふうに受けとめざるを得ませんということで、このことに対しての御意見をいただければありがたいというふうに思います。  栗山公述人からそれぞれお聞かせいただければありがたいと思います。
  25. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) お答え申し上げます。  私はもちろん政府の人間ではございませんものですから、法案改正がどういう経緯でこのようになったかということをつまびらかにいたしませんが、そういう前提でこれを拝見したところでの感想を申し上げますと、これはここに書いてある「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」というのが周辺事態一つのケースであるということは、これは当然だろうというふうに私も理解いたします。  他方、要するにこれだけがいわゆる後方地域支援等が発動されることを許容する事態かといいますと、それは全く普通に考え、常識的に考えましてそうではないであろう、日本に直接の武力攻撃が至らないような事態であっても、間接的に日本の平和と安全に非常に重要な影響を与える事態というのがほかにもいろいろ考えられるのではないかというふうに私自身も思いますので、この改正というのは、これはこれで私は特に異存がございませんけれども、これに限定されるという趣旨がもし改正を提案された方の御意図であるとすれば、それは若干この法案の性格を変えてしまうものではないかというふうに推察いたします。
  26. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 衆議院におきましてこの法案が自民党、自由党、公明党の各政党によって一部修正されたということについては、我々も十分理解しておるわけであります。  その上に立ちまして、先ほど後段で私が公述させていただきましたように、やはりこの程度の修正で国民生活、我々に直接影響のある部分、とりわけ民間協力、自治体協力を含めて、何もこの法案の本質的なところでは変わっていないという立場に立ちまして、先ほど述べましたように、これは一たん白紙撤回していただきたい。それで、徹底していろいろ法案の内容についても、先ほど栗山公述人の方からも日本海の話も出たわけでありますが、国民から、我々から見るそれこそ日本海の問題も実はあるわけでありまして、そういうことを含めてひとつ本当のところを、この法案は何を言っているのか、もっともっとやはり国民によく理解してもらう。言われるように、国民の安全、平和を維持するために、我々の生命や財産を守るために必要なコストを払わなきゃいかぬのだというのであれば、そのことについてやはり徹底した国民的な論議が必要なのではないかと思います。  しかも、肝心な後方支援地域なんかの問題については、これは別の見方を我々はするわけでありますけれども、公海から先へ行かないような話なんということは船舶の場合にあり得ないと思っておるわけであります。そういうことも含めてまだまだ全く明らかになっていない隠された部分、この法案によって何が起こるのかということを想定できないような、そういうものが相当隠されている。しかも、それを全部白紙委任しろ、これは我々国民立場から見ればどうしても承服できない。  こういう立場で、修正をされた法案でありますけれども、我々としては白紙撤回を最後まで求めていきたいというふうに考えております。
  27. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 私が個人的にこの修正のことを新聞で読みましたときにどう感じたかといいますと、先ほど栗山公述人が申されておりましたけれども、要するにこのような米軍に対する支援というのは、日本のためではなくてアメリカのためにやるんだというような国民一般の反感を抑えるために、そうではないんだ、これは日本のためなんだということを強調するために日本有事に移るおそれのある場合ということを入れたんだろうと解釈しました。  そういう意味では、それはそれでよろしいのじゃないかと思いますけれども、では日本有事になるおそれのある場合というのは具体的にどういうことかというと、非常にその解釈がまた難しくなってくる。先ほど、これまた栗山公述人が言われましたけれども、それに至らない段階でもやはり全般の地域の安全のためには支援しなきゃいけないということも、当然そういうエリアもあるのだろうというふうに思います。  だから、そういうところでは一切今度はやらないんだと逆にとられるとまずいんじゃないかと思いますが、そんなような感触を持ったということを申し上げます。
  28. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 栗山公述人にお尋ねいたします。  今回の法案だけに限らないのですけれども、日本日本の国益の立場に立ち、国民の生命、財産を守る立場に立ち、今度とりわけガイドライン法案はそうだと思うんですが、自主的に判断する、判断できる、そうして日米が対等に話し合いをしてその結果を出していくということが私は必要だというふうに思っています。  長く外交官として御活動されまして、とりわけ駐米大使として御活躍をされていますけれども、今よく日米対等のパートナーシップとか日米対等と言う。我が国の総理大臣もアメリカに行き、大統領も日本に来る。対等、パートナーという、こういう表現も新聞報道等の中ですとか、あるいは首脳も言われるわけですが、現時点で日米対等であるかどうかということについて、大変茫漠としたお尋ねの仕方なんですけれども、そんなことをちょっとお聞かせいただければありがたいなというふうに思います。  そして、先日、これはもう相当前のことでございますが、昨日もこの委員会で一、二やりとりもございましたけれども、「核搭載船日本寄港に大平外相「了解」」ということで、いわゆる核搭載の一時通過、トランジットをめぐって、日本への寄港、通過を一九六三年四月に当時の大平外相が米側に認めていたということの文書がアメリカの公文書館で見つかったということが、これは一、二の新聞で明らかにされたわけです。  この日米対等、そして事前協議ということになるんですが、これは事前協議と、今までそういう事例がなかったということで、日本政府側の方の私どもに対する答弁として一貫をしているわけですけれども、ここら辺の対等であるという言い方。これは、そう言うと巻き込まれ論ではないか、巻き込まれ論に入っているんではないかというふうにいろいろ言う人もいるんですけれども、対等であるということ、そして事前協議、岸・ハーター交換公文が空文化をしていると、ずっと国会では明らかにしているんです。  もう一つは、この事前協議というあり方について、日米対等ということ、そして事前協議、とりわけこの米公文書の大平外相当時のことについては具体的になるのでなかなかお触れできないかもわかりませんが、ここら辺についての御見解をいただければありがたいなというふうに思います。
  29. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 最初の、日米の対等かどうかということについての御質問でございますが、パートナーシップとか同盟関係というのは、一方が他方に全面的におんぶするという関係ではこれは成り立たないわけでございまして、基本的に対等な国家間それぞれが独自の意思を持ち、国益というものを持って、その上でお互いに協力をしていく、平和を守るという共通の目的のために協力していくという関係でございますから、本来、対等な関係でなければならないというふうに考えるわけでございます。  そこで、対等の関係になるために必要なことというのは何かということでございまして、これは本日私が公述させていただきました中でも申し上げたことでございますが、やはりパートナーシップとかあるいは同盟関係とかいうものは、お互いに責任分担というものがきちんとなされているということが前提でございまして、そういう責任分担がなされないままに、一方的に一方の国が他方に責任を押しつける、あるいはそれに伴うリスクとかコストというものは相手の方に押しつけて、自分の方は負わないということをもしやろうとすれば、それは必然的に対等な関係にはなり得ませんし、相手の国は、そんなことであればそんな国と相談してもしようがないから、自分は自分の国益に従って独自の行動をとる、そういうことに結局なるわけでございますので、対等というためにはやはりそれなりの責任日本が持つということが大前提になる。安全保障の分野におきましては、従来そういう意味での責任分担というものが、憲法の制約を前提といたしましても必ずしも十分なかったのではないかというふうに私は感じておるわけでございます。  それから、核兵器の持ち込みの問題につきましては、これは私がかつて外務省におりましたときから、今新聞記事に出ましたようなことというのはしばしば巷間言われていることでございます。今さら私、既に政府の人間ではございませんので、余り私が申し上げることは意味がないというふうに思いますが、当時から政府が申し上げていたことは、大平外務大臣がそのような了解を当時のライシャワー大使に与えたというようなことは、どこにもそういうものは記録としても存在しないし、そういうことはないんだというふうに言っているということで、それ以上私は今つけ加えて何か先生にお答えできるような材料を持ち合わせておりません。
  30. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 事前協議、そして対等ということ、そして日米同盟の中での日米安保、地位協定、そして在日米軍基地の果たす役割が極東、そして周辺の安全のみならず第七艦隊の寄港としてアジア太平洋、インド洋まで大変広くなっています。この在日米軍基地を提供する、そしてさまざまな思いやり予算ということで、アメリカとの同盟国はいろいろありますが、これだけ負担をしている国はないのではないかというふうに私は思っているわけです。  そういう意味では、先ほど来、栗山公述人のお話の中で、もう少し何かアメリカ日本がしなきゃならないのではないかという、そんなふうに受けとめられるんですけれども、もう少しグローバルにその点を考えてみても、ある意味では同盟国として他の同盟国にないほどの、そういう意味では負担と提供を十分しているのではないかというふうに思います。その点はいかがでしょうか。
  31. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 確かに駐留米軍経費では、日本はほかの同盟国をはるかに上回る実質的な負担をしておるというふうに思います。  それから、日本提供しております基地が単に日本あるいは日本周辺の安全というのみならず、広くインド洋からペルシャ湾にかけての世界の平和というものに寄与するようにアメリカ行動できるような能力を与えているということも全く齋藤委員御指摘のとおりだろうと思います。その意味で私は、日本責任とかコストというものを全然負担していないということを申し上げるつもりはございません。  ただ、私が申し上げたいのは、やはりいざ有事、それは安保条約で言ういわゆる五条事態日本有事の場合でなくてもいわゆる六条事態と申しますか、まさに今の法案が想定をしておるような事態のときに、どこまで日本憲法九条で、アメリカと一緒に戦う、血を流すということはできないという大前提のもとで、それじゃどこまで一緒に汗を流すかという問題だろうというふうに思います。  実は旧ガイドラインができたのが七八年でございますが、それ以後の二十年間というもの、そういう意味での日本分担というものが今まできちんと行われていなかったということは、これは間違いないことだと思うので、私はよく二十年来のやり残しの宿題を今やっているんだというふうに申し上げるわけですけれども、そういう意味で、今まで日本としては本来やるべきことでやっていなかったことがかなり残されている。今回の法案というのは、まさにそういうやり残しの宿題というものに初めて手をつけたものだというふうに考えております。
  32. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 ありがとうございました。(拍手)
  33. 風間昶

    風間昶君 公明党の風間でございます。きょうはお忙しいところ、ありがとうございます。  まず個別的自衛権について、若干、私自身の考えを整理する意味でも教えていただきたいと思うんですが、法解釈上、個別的自衛権について、今回のガイドライン法案に加わったものとして、後方地域における兵たん支援、それから通信、警備、捜索救助といったようなものが加わっておりますけれども、さらにそれ以外に具体的にどんなものがあるのかなということを、もしあるのでございましたら教えていただきたいなというふうに思うんですが、いかがなものでございましょうか、栗山公述人に。
  34. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) ちょっと先生の御質問、必ずしもよく理解できませんでしたのですが。  法案で想定されておりますのが後方地域支援後方地域捜索救助活動ということだろうと思いますが、それ以外にどういうものがあり得るかという御質問で、ちょっと私は必ずしもお答えできないのでございますが、もしお差し支えなければもう一度御念頭にありますことをおっしゃっていただければあるいはお答えできるかと思いますが。
  35. 風間昶

    風間昶君 それは失礼いたしました。  それでは、冨澤公述人にそれ以外に考えられるものとしては何があるのかを教えていただきたいなと思うのですけれども、考えられるものとして。
  36. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 最初に個別的自衛権についてと言われたようなんですが、つまり集団的自衛権に入らない範囲でほかに何があるか、こういう質問の意味でございますか。  ちょっと私もこれについては、集団的自衛権行使に当たらないものとしてどんなものがあるかということで防衛庁が中心になって一生懸命いろいろなことをまとめて、今回、この後方支援とそれから後方地域における捜索というものが出たということでございますから、これ以外には大きなものはないのであろうというふうに認識しております。
  37. 風間昶

    風間昶君 私は、もっと自衛隊に何ができるのかということを考えたときに、現実的な場面において、周辺日本の安全の状況が脅かされるというような状況においては、例えば先制攻撃とかあるいは領空、領海での行動といったことも法解釈上可能ではないかというふうに思ってもいるんですが、その部分についてのお考えを実はお聞きしたかったわけでございます。  法解釈上可能だとするならば、実態上さらに今度はどんな法案が必要になってくるのかということまで踏み込んでいかなければならないというふうに私は思っているものですから、その部分についてお聞きしたかったわけでございます。むしろ、栗山公述人よりは現場において長い経験を積まれた冨澤公述人に、もし例えば先制攻撃とか領海、領空上でのいろんな場面について具体的に、今現在のこの周辺事態法案ACSA、それから今三党間で協議をされていらっしゃる船舶検査のことも含めてのできてくるであろう法案、これ以外にも考えておかなければならないじゃないかというふうに私は思うものですから、その部分についてのお考えをちょっとお聞きしたいなと。前段を省略した形で最初にぽんとぶつけてしまったわけですが、改めてそういう点で、栗山公述人冨澤公述人にお考えの一端を教えていただければありがたいなと思います。
  38. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 失礼いたしました。お考えはよくわかりました。  私は必ずしも専門家ではございませんが、私の感じていることの一端を申し上げさせていただきますと、こういういわゆる周辺事態というようなものが発生をいたしました状況というものを考えてみますと、我が国としては当然自分自身の領域はきちんと守るということができる、これは平素でも当然そうなわけでございますが、周辺事態というようなことになればなおさら我が国自身の領域の防衛というものは我が国自身責任においてきちんとやれるということが当然なければいけない。そういうものがなければ、せっかくの後方地域支援というものも、それは生きてこないのは当然でございます。  先ほど冨澤公述人が公述されましたときに最後に指摘をされておられましたけれども、領域警備と申しますか、そういうまさに日本の領域保全のために何をすべきかということは当然きちんと検討をしてそれに対応できる国内体制というものを武器の使用も含めましてきちんとしておく必要がある、これは当然のことであろうというふうに考えております。
  39. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 今から五年前に朝鮮の核疑惑ということがありました当時、私どもはもしも朝鮮で何かあった場合に我々が何が手伝うことができるのかなということを考えていた時期がありました。  そのときに私は、先ほどの御質問ではありますが、まずは現在の集団的自衛権行使しないという政府範囲内でということであるならば余りないだろうと。ただ、特に私は陸上でございましたから、陸上はないだろう、海空は多少あると思います。陸上は、もちろん駐屯地を貸すとか、それから陸上自衛隊が持っている病院をあけて貸すとか、それから毛布を貸すとか、そういうようなことは当然あると思いますが、これは細かいことでございます、今回もそれは入っているわけでございますけれども。  そのときに私が一つ気になりましたのは、米軍日本にある基地の警備を自衛隊にやってくれとまさか言わないだろうなということを心配しました。仮に言われてもそれはやるべきじゃないと。部隊というものは、先ほどちょっと部隊警備ということを言いましたけれども、部隊というのはみずからの警備はみずからやるというのが原則でございますから、まさか陸上自衛隊米軍のガードマンになってそれを守るなんということはあり得ないというふうに考えておりました。そういうときに考えたことが今回のことに映っているだろうと思います。  ただ、御質問の趣旨は、そういうものを超えて、いわゆる集団的自衛権の中で武力行使にかかわるものも含めてやるとしたら何ができるのかということだと思います。  これはちょっと問題を離れまして、米軍にどうするかということじゃなくて、それは逆に言うと、国連軍なり多国籍軍ができたときに当然集団的安全保障として、集団的自衛権じゃなくて、そういうものに参加したということを考えてみればよいわけであります。  先ほど言いましたように、国連軍に参加する各国は、もちろん米軍や韓国軍よりも少ない勢力であります。少ない勢力でありますが、自分の比較的得意とする分野、衛星を持ってくる人もいますし、飛行機を持ってくる人もいますし、何か艦艇を持ってくるところもある、陸軍の特殊な部隊を持ってくるところもあるわけであります。  そういう意味で、日本がこの地域で、仮に朝鮮で事が起こったときに一番支援できるのは何か、一番アメリカ側がありがたがるのは何かということは、また欲しいものは何かといったら、やはり今回の中に含まれているような基地を提供する。彼らはどうしても拠点をここに求めたいわけですから、基地を提供する。これが日本の最も得意とするところでありますし、日本しかこれはできないわけでありますから、これはまず当然第一だと思います。  しかし、今言ったように、武力行使もやるということになった場合は、やはりその中で、いずれにしろ陸海空軍にしましても米軍に比べれば非常に力の小さいものでありますから、その中で特殊性のある、効果のあるものを使わなきゃいけないと思います。ですから、一番有名なのは、日本の掃海能力というのは世界に冠たるものだというふうに私ども認識しておりますが、まずそういうものから優先して支援をしていくということになるんじゃないかと思います。  具体的にどれもこれもとリストアップするということは今ちょっと私にはできませんので、そういうお話で御勘弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  40. 風間昶

    風間昶君 それでは、栗山公述人に。  潮という雑誌の六月号に、日本アメリカの同盟の新たな目標と進路ということについてお書きになっていただいていることについて、先ほどの齋藤議員の質問にもラップしますが、日米のいわゆるパートナーシップということで、栗山さんは、外交問題だけじゃなくて、経済、貿易も含めて日本アメリカと対等に、いわばお互いに学習し合って責任コスト分担するということが必要だというふうにおっしゃっております。  とりわけ、日米安保については、旧ガイドライン米軍自衛隊協力のあり方だけであったことから一歩踏み込んで、今度は日本アメリカという国と国の、いわばそれぞれの国の経済社会システム同士の協力という関係に踏み込んでいっているというか、拡大されていっているという観点からしますと、今回の法案日本が自国の安全のためにアメリカに対して、いわば米軍に対して協力しなければならないという責任分担をかなり提供するということでありますけれども、じゃアメリカ日本協力、支援するというものがあるのかと。それがなければ私は本当のイコールの日米関係にはならないんではないかというふうに思うんですが、そのことについてどういうふうにとらえたらいいのか、お考えを教えていただきたいと思います。
  41. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) アメリカは、冷戦のときからもそうでございましたけれども、冷戦が終わった今日におきましてもこの地域に約十万、日本国内では五万人足らずの兵力というものを展開して、そしてこの地域の安全保障というものに重要な役割を担っているわけでございます。  そのこと自体は、もちろんアメリカの国益から見てそういうことが必要だというふうにアメリカ政府認識してそういうことをやっておるわけでございますけれども、他方において、そういうアメリカの政策というものがアメリカ友好国あるいはパートナーであります、あるいは同盟国であります日本、あるいはその他のアジア太平洋地域の国々の平和にとって大変にプラスの要素になっているということでございます。  そういうアメリカの政策から利益を受けている国の立場からしますと、アメリカの安全保障に対するコミットメントに対して、それに見合う責任なりコスト分担というものが必要だというふうにこれは当然考えるわけでございます。  先ほど私の公述の中でも申し上げましたが、今のアメリカ国民世論の一般の傾向というのは、もう冷戦も終わったんだから自分の国の安全は自分で守るということにすべきであって、ほかの国のためにアメリカが出かけていって、何万という軍隊を出して、そして場合によっては血を流すというようなことはすべきではないというふうに考えている国民が圧倒的に多いわけであります。  そういう状況のもとで、日本が自分の国の、あるいはこの地域の安全というものをアメリカに全面的でないにせよある程度依存しようということであれば、やはりそれに見合った責任分担というものが必要であるというふうに、これは安全保障の問題に限定して申し上げればそういうことではないかというふうにまず私は考えておるわけでございます。
  42. 風間昶

    風間昶君 そうしますと、いわゆる周辺事態、もともとこの事態を回避するための、不穏な事態が起こらないようにするための法案だと私は思っているものですから、まさに先ほど冨澤さんがおっしゃったように、平時のときに周辺事態における情報の収集と交換がいかに効率的に連携をとってやれるかということが物すごく大事になってくると思うんです。  つまり、ふだんからの軍事的な情報交換とその対応について、残念ながらこれまで衛星に関してもいろんな情報が、この間の不審船についてもそうですしテポドンの問題にしても残念ながら日本はまだまだその十分な対応もできないし、またそれ以前に、情報も入ってきていない、得られていないという根本的な格差があるわけであります。そこをどう埋めていくのかということ、単に自衛隊だけの話じゃなくて、日本国としてやらなきゃならないのかということについて、ふだんからのアメリカとの信頼醸成という観点からどういうことが必要なのかということをもうちょっと僕は具体的に大々的にやるべきだと思っているんです。それがきちっとなされれば何もこんな周辺事態法案を目くじら立ててやるほどのことではないと私は思っておりますが、どうでしょうか。
  43. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) たまたま私、昨日、前統幕議長の夏川元海将の話を聞いたんですが、現在でもアメリカ日本の軍関係の情報の交換に特別の問題はない、非常にスムーズに情報交換されているという認識でありました。今、先生のおっしゃいました三月の不審船事件のときも、あるいは昨年のテポドンのときも、情報の上では軍同士において何も問題はなかった。  ただ、問題があるとすれば、やはりその情報というのはいかに外に発表するかどうかという問題であります。発表するということは情報源をある程度こちらが知らせることでございますから、それはわかっていても、発表するとこちらの手の内を見せるからどうしても発表できないという問題はその中に幾つか当然入っているんだろうと思います。そういう問題が、マスコミの方やいろんなことの間で、どうも日本アメリカとの関係で情報の交換がうまくいっていないんじゃないかというあれを生んでいるんじゃないかと思いますが、私はそういうことは基本的にまずないんだろうというふうに認識しております。  ただ、おっしゃいますように、情報というのはお金と同じでギブ・アンド・テークでございますから、こちらも何がしかの情報源を持って、こちらからの情報も上げなければ向こうからの情報も来ないというのは、これはまた当然のことでございます。その意味で日本独自のいわゆる情報源というものを持つ必要はあるわけでございまして、今遅まきながらそういう努力政府でもされているというふうに思っております。  ぜひこれをさらに十分な情報源にしていただけば、それによってギブすればさらにまたテークもできるという状態になると思いますので、そういうものを期待しているわけでございます。
  44. 風間昶

    風間昶君 そこで、想定されることでもし万一不幸な事態が起こったと。いろんなことが想定されますが、殊に日本海域において起こった場合に民間の協力が必要だということであります。  憲法二十九条にも財産権のことがきちっと書かれてあります。「財産権は、これを侵してはならない。 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」というふうに憲法にきちっと規定されております。もし民間の協力によっていろんな不測の事態が起こった場合に、この補償に関しての議論が私は余りなされてないんではないかと思うわけであります。  そういう意味で民間人の側から平山さんに、もしそうなった場合にどういう補償が考えられるのかということについて、お考えがあればぜひお聞きしておきたいと思います。それで私は終わります。
  45. 平山誠一

    公述人平山誠一君) お答えいたします。  まず、先ほども御紹介いたしましたように、本組合はこの法案をぜひとも白紙撤回、廃案にしていただきたいという立場でありますから、そうした不測の事態に対する補償という問題について、ここで当組合の公式的な見解として述べる立場では若干ないわけでありますが、過去の例といたしまして申し上げておきますと、湾岸戦争がありましたときに、先ほども紹介しましたように、これは政府の中東貢献策として我々がサウジアラビア方面に就航するんだと、こういうことを明確にしていただかないと我々としては協力する立場にはないと。これは我々も大変組合員との間で大もめにもめた話でありまして、なぜ平和憲法のもとで我々が、憲法によって我々の身の安全というのは保障されているにもかかわらず、なぜこうした事態に、しかも民間である我々が一番真っ先に行かなきゃいかぬのかと。  これは、相当組織でも厳しい論議があったわけでありますが、外務省、運輸省を初めとする当時の政府は、とにかくペルシャ湾内に日の丸の旗が上がった船舶を入れて日本も湾岸のこうした事態協力をしているんだ、こういうあかしとして何としても行ってもらわないといかぬと、こういうこともありまして我々も腹を決めたわけであります。当然のことながら、そうした場合の人的な被害がもし発生した場合には、これは政府が全面的に責任を負うんだなということもあわせて協定の中で明確にさせていただいた、そういうふうに記憶しているわけであります。  いずれにしても、我々労働協約で船主側と労働災害あるいは船舶の作業中に職務上亡くなった場合のいろんな災害規定も設けてあります。じゃ仮に一億円出すから行ってくれ、こう言われても、我々の命はいずれにしても一つしかありませんので、一億円であるからじゃ行きましょうと、こういうことになるかどうかについてはこれは何ともこの場所では申し上げられませんし、我々が一億円出すから済まぬが組合員の皆さん行ってくれとは絶対に言えない、こういう立場であることも重ねて申し上げて、質問のお答えになったのかなというふうに思います。  以上です。
  46. 風間昶

    風間昶君 終わります。(拍手)
  47. 宮本岳志

    宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。  公述人の皆様にはお忙しいところ、まことにありがとうございます。時間に限りがございますので早速質問に入らせていただきます。  まず、全日本海員組合平山公述人にお伺いをいたします。  大変感銘を受ける生々しい話でございました。さきの大戦あるいは戦後も数々の戦火の中で命がけで仕事をされてきた船員皆さんの現実に立った大変重みのある公述だったと思います。  今回の法案については、交通運輸関係の労働組合皆さんは、陸、海、空、港湾など二十単産単組約三十五万人の方々がそれぞれの労働組合の上部団体の違いを超えて共同されて反対運動に立ち上がっておられると聞いております。交通運輸に働く皆さんにとっては、海はもちろん、陸でも空でもあるいは港湾でも、みずからの命と安全にかかわる重大問題だというふうに思いますが、そういう皆さんの思いについて少しお話しいただきたいと思います。
  48. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 御質問ありがとうございます。  先ほど齋藤委員の方から突然集団的自衛権、個別自衛権の問題についても御質問があって私もちょっと戸惑ったわけでありますが、いずれにしても海員組合がとっている立場というものは、今御質問いただきました日本共産党の主張される日米安保条約の破棄あるいは自衛隊の縮小、改編という立場には実は立っていないわけでありまして、基本的には現行の平和憲法が認める安全保障政策としての専守防衛に徹する自衛隊の存在なり軍事同盟を禁止する集団的自衛権行使の禁止、こういう観点については我々も政府の見解、今までの日本のとってこられた立場というのを明らかにしているわけであります。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  そういう海員組合がなぜ今回この法案について積極的に今反対の声を上げているかということを申し上げれば、これはもう公述で申し上げたとおりでありまして、船乗りという職業を選択した私も東京商船大学を卒業して船に十五年ほど就職しましたけれども、まさかこういう事態が、しかも半ば強制的に出てくるなんということは想定をしなかった。多少海賊に襲われかけたり、いろんなそうした国際紛争の中で誰何といいますか臨検を受けっぱぐったり、こういうふうな事態というのは我々も体験上あるわけでありますが、まさか戦争状況の中で明確に兵たんを担当しろ、こういうふうなことを言われるというのは全く青天のへきれきであるわけであります。  今回、特に交通運輸関係の労働者、陸、海、空、港湾と申し上げておりますけれども、そうした二十団体三十五万人の皆さんが、今、宮本先生のおっしゃったように、明確に立場を超えて、中には日本の安全保障条約なり憲法の考え方について若干意見の違うグループもあるわけでありますけれども、とにかく後方支援活動を担当させられる交通運輸関係の労働者が一番身近な問題として考えたからだろう、まさにそう思います。  先ほど公述の中でも御紹介しましたように、ユーゴの事態を説明していただければと思うわけでありますが、まさにたちどころに空爆が後方のインフラ施設に向かったのは、私ども船乗りの立場から見ますと、今までのいろんな戦争、そうした体験を通して、ある意味で戦争が始まれば当然のことかなというふうに思うわけでありまして、交通運輸に働く皆さんも敏感にこの点を感じられた、こういうことであります。  海員組合は、一昨年の新ガイドラインの中間報告が出る段階で、これはとんでもないことになってきたぞと、こういうことで、それから一貫して港湾関係組織でいいますと全国港湾労働組合協議会というところでありますけれども、特に港で働く労働者の皆さんと共闘関係を結びながらこの問題に対処してきたわけであります。  ことしの二月になりまして航空安全連絡会議、これは全く政治的にも純中立的な立場で航空の安全をどう維持していくのかという観点でいろいろ活動される団体でありますけれども、そこから特に交通運輸関係、海を含めて申し入れがありまして、これはゆゆしき事態になったのでひとつ皆さん一緒に集まりませんか、こういう呼びかけもありまして、現在二十団体が中心になって反対の声を、国民皆さん、大変なことなんだ、皆さんに血を流せと文字どおり覚悟しろと迫っている法案なんだと。これを政府皆さんは実に隠ぺいし、安全であるとただただ言っているわけでありますから、そういう法案を、これはスポーツで言えばレッドカードじゃありませんけれども、極めてルール違反ですと私は思うわけであります。  いずれにしても、そうした観点からこの法案が持っている重要な問題、本当にこれでいくんだ、こういうことであればやむを得ないところもあるわけでありますが、全く国民によく知らされていない、しかも白紙委任だということで、国会論戦等も見聞きするわけでありますが、何一つ明らかになっていない。政府の答弁も繰り返し同じことしか言わない。これでは我々の心配、不信といいますか、危惧の念はますます高まるばかりであります。  そうした思いでありまして、たまたま海員組合ということで本日の公述の指名をいただきましたけれども、私の後ろにも陸、海、空といいますか、陸送、鉄道、それから航空関係皆さん、港湾関係皆さんの思いが込められている、こういうことで話させていただいているつもりであります。  以上です。
  49. 宮本岳志

    宮本岳志君 そこで、少し海の問題についてお伺いします。  政府は、後方地域支援は公海上に設定されると言っております。そうすると、海の上で米軍輸送物資の受け渡しをしなければならなくなるというふうに思うんですね。現在の船等の構造や機能から見て、海の上で船から船に物資などを受け渡すことは可能でしょうか。  また、海の上でやりとりできないということになりますと、これは目的地まで持っていかざるを得なくなります。他国の領土、状況によっては紛争国にまで踏み込んで輸送させられることもあり得る、こうお考えでしょうか。
  50. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 御質問の趣旨は、法に定義される後方地域支援の地理的な範囲といいますか、この問題を御質問されているんだろうと思います。  これはもう明確に法律の中に定義されていまして、日本領域から公海までと、こういうことだったわけです。ここで後方支援活動をやるんだと、こういうふうに言っているわけです。しかも、戦闘が実際に行われていない、行われる予測もない、全く万々が一にもそういう危険なことはない地域、こういう附則がつくわけでありますが、法に定義している公海までという話ですけれども、これは本当のことを言っていないなと。  というのは、船というのは、現在の船は帆船時代といいますか、そういう時代の船や小さな百トン前後の船と違いまして、もう何千トン、何万トンという大きな船でありまして、東京は東京港も近いですし横浜港も近いですからちょっと港に出ていただければ船は見られるので、ああ最近の船というのはこういう格好をしているのか、こういう荷役といいますか荷物の揚げおろしをしているのかということが一発でわかるわけであります。  そういう大型の船が公海上で、ここから相手方の領域だというその境目、仮に境目までは行ける、しかしその先は行かないなんということは絶対に私はあり得ないというふうに確信しているわけであります。いや、そんなふうに確信されても困ると政府の方はおっしゃるのかもしれませんけれども、これは極めて現実離れした話だろうと思います。  それは先ほど私も公述の中で述べました海上に後方、前方の区別をどうやってつけるのか、どうやって線引きを具体的にするのか。天気予報で等圧線というのがありますけれども、本日の安全な地域はこういう等圧線という、毎日毎日時間おきにそれが変化するようなことを考えておられるのかどうかよくわかりませんが。  いずれにしても、この後方地域支援範囲ということで言えば、例えば船が持っていった武器弾薬や兵員あるいは車両を含むそうしたさまざまな軍事物資を公海から先へ持っていかない、どこかで相手の船に受け渡しをするというふうなことは物理的に全く不可能、積みかえるなんということは全く不可能でありますから、政府がいかにも安全であると、あるいは憲法上の制約からこういうことをおっしゃっている、政府みずから認めてそういうふうにおっしゃっているんでしょうけれども、全く現実離れした机上の空論でしかないと、私はそういうふうに考えておるところです。
  51. 宮本岳志

    宮本岳志君 政府は、民間の船舶を今回の支援に使う場合に三つの契約のあり方、一つはあっせんという場合、国が米軍にあっせんをする、あるいは借り上げの場合、そして直接米軍が民間の船会社と契約をするという場合、三つの場合を挙げておりますが、特にその三つ目の直接契約の場合は公海を越えて出ていくということもあり得るというふうに述べております。  この問題について、国会で防衛庁長官は、民間業者の安全確保の手段の一つとして、政府から米軍に対し安全の確保について配慮を厳しく要請することも考えなければならない、あるいは、なお米軍としても輸送契約にかかわる物資等が安全に輸送されることは当然必要でありますから、我が国の民間業者に支援を依頼する際には安全の確保について当然配慮がなされて依頼するものと考えておりますと、こう述べております。先ほど公述でも、米軍による日本船舶の護衛というようなことにお触れになりましたけれども、こういうことに触れられております。これについてどうお考えでしょうか、平山公述人
  52. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 今回の法案審議の国会議事録等を読ませていただきました。なかなか法律論争というのは難しいんだなと我々庶民の側は、国民の側といいますか、思うわけであります。  その中でとにかく先ほど述べた後方地域支援範囲と、それと附則としてといいますか、戦闘が行われていない、あるいは行われる予定がないといいますかそういうことは想定されない、あるいは万々が一にもそういうことのない安全な地域が後方地域だと、こう言っているわけです。  それともう一つ、そういうところに民間協力船舶による物資の移動も含む協力をお願いする、こういうふうに政府が答弁しているわけでありますが、そのほかに直接米軍が注文を出す、そういうケースについてもあるだろうという質問に対して、そういうケースがあり得ると。それで、この場合には一生懸命アメリカの荷物を、いずれにしてもそういう戦闘を継続するために、あるいはそのための物資を運ぶわけでありますから、当然ながらアメリカアメリカ軍もそういう船舶の安全について配慮するでしょうという答弁をされていますし、日本政府としてもそういうものについて積極的に要請をしていくんだということもおっしゃっておるわけです。  そういう非常にわかりにくい答弁でありますが、我々海の立場から見ますと、一つは、事態法のもとで政府が直接用船をするといいますか契約を結ぶような船舶につきましてはなるべく公海より先に行かせないのかなと。しかし、それだけではもう物資の輸送というのはできませんから。日本はいずれにしても陸続きではありません、周囲すべて海に囲まれているわけで、どうしたって大量の貨物というのは船舶を使わざるを得ない。海上自衛隊輸送艦というのはありますけれども、そんなに数は大きくありませんし、それほどの大きな作戦を遂行できる、継続的に荷物を送れるようなものではありませんから、当然民間の船舶が使われるのはもうこれは自明の理であります。  その場合に、アメリカが直接契約をして持ってくる船、例えばアメリカから釜山に荷物を運ぶ、こういう船舶、あるいは日本に一時寄港して、例えば佐世保に寄ってそこから釜山に持っていくとか、そういうふうなことを別の米軍の直接契約として考えておられるのかな、こういう感じは印象として持っておるわけです。  その場合に、当然現在の日本商船隊は約二千隻と言われています。二千総トン以上のいわゆる日本が支配する外航船舶でありますが、そのうち日本フラッグの船というのはわずか百数十隻であります。もうほとんどは便宜置籍船と申しまして、究極の規制緩和の中でフラッグの売買によってそうした便宜置籍が行われているわけでありますが、本組合組合員あるいは日本人船員を含むそういう人たちは当然ながらそういう船にも多数乗っているわけでありまして、我々の組合員、組織された組合の人たちも一千隻を超えるそうした便宜置籍船に乗っている。こういう船がアメリカに直接用船されて契約をされて、それで行くということになれば、これは当然、先ほど公述しましたように武力行使との一体化、こういうことになってくるわけでありますから、当然、御質問の中でも言われたように大変な問題になる。  イランイラク戦争のときも実は、戦争が激化して日本タンカーも攻撃を受けるようになってから、アメリカから日本船舶もアメリカ艦艇が守ってあげる、そういうふうな申し出もあったわけでありますけれども、我々はそれはかえって一方の側に立つと。当時アメリカは反イラン立場で、親フセインといいますかイラク側に立っていましたから、これはかえって日本立場が中立的な立場から一方にウエートを置く立場になってしまう。しかも軍事的に護衛されるということの危険性、これについては我々過去の経験であるわけですから、こういうことから丁重にお断りをして、まさに平和憲法に基づくそうした範囲の中で、中立国であるということを明確にして安全をキープしてきた、このことを誇りにしていますし、それは正しかった、こう判断しているところです。
  53. 宮本岳志

    宮本岳志君 今回の法案では、民間の皆さんに対する協力の要請が九条二項で規定をされております。政府は、強制ではない、断っても罰せられることはないとしきりに言っておりますけれども、企業がこれを引き受けた場合、労働者の皆さんはこれを拒否できるか。特に、戦争の手伝いはしたくないという理由で拒否するようなことは実際に現場で可能だというふうにお考えでしょうか。平山公述人にお伺いいたします。
  54. 平山誠一

    公述人平山誠一君) これも我々はそういう経験がありまして、イランイラク戦争のときもそうでありますが、朝鮮戦争のときもそうでしたけれども、とにかく個人の拒否権、そういう危険なところに行かない拒否権というのを最大限確保してきたわけであります。  この点につきましては、使用者側といいますか、経営側もそのとおりだということで、ペルシャ湾でもそうでありますけれども、日本を出航するとき、それからホルムズ海峡から湾内に入るときに、必ずキャプテンが全員を集めまして、敵陣じゃありませんが、これからいよいよホルムズ海峡に入っていくけれども、どうしても行きたくないという者は手を挙げろ、あるいは言ってこいと。ここでそういう方についてはドバイで下船をさせまして、日本に送還といいますか送り返す、こういう対応をしてきました。  常時あそこは六百人からの日本人船員が入っていたわけでありますが、そうした方はそう多くありませんでした。八年間を通して十人にも満たない、そういうことがあったわけであります。  いずれにしても、個人の拒否権というのはこれは絶対必要なことだというふうに思っています。ただ、この法案アメリカによって極めて実効性の高いものにしてほしいという要請がある以上、そのことによって運航に阻害が出てくるということになれば、これは労使間といえども非常に険悪な状況になりましょうし、経営者側としても非常につらい立場でありますけれども、要請を受ける政府との関係においても非常に難しい局面を生んでくるのではないかなというふうに思います。  船は、キャプテンが乗らない、一等航海士が乗らない船というのは動きませんから、交代がなければ、これは必ずだれかを連れてこなきゃいかぬわけです。集団的にもし行かないということになりますと、船の半数が、おれはもう嫌だ、こんな戦争に加担するのは嫌だ、一億円もらったって嫌だ、こういうことになれば、これは何らかの強制的な方法によって駆り出さなきゃいかぬ、そのことをまた我々はこの法案の次に来るものとして極めて高い懸念を持っているわけであります。  政府は、いや、いいんだ、行きたくなければいいんだよ、こうおっしゃっていますけれども、いずれきばをむくといいますか、失礼があったらお許しいただきたいわけでありますけれども、いや、船乗り、行ってくれと。私らは普通に税金を払っている普通の国民でありますので、特別に何か優遇されているわけでも全くありません。なぜそういう民間が、これは海洋国家日本であるがゆえにそういうことになるのかなという宿命的なものもあるわけでありますが、それにしてもそういうことを我々に強制されるいわれはない、こういう立場であります。
  55. 宮本岳志

    宮本岳志君 ありがとうございました。  あとのお二人の方にも質問を準備しておりましたけれども、時間が来てしまいました。一言おわび申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  56. 山本正和

    山本正和君 社会民主党の山本でございます。  三公述人には大変御苦労さまでございます。私からもお礼申し上げます。  栗山さんとは、実は六年前、今の議運委員長をしている岡野さんと一緒に大使館にお邪魔しましていろいろとお話をいたしました。当時は、アメリカがどうやら経済をぐっと立ち直らせるという上り坂だったわけで、大変苦しい状況だった。日本に対して随分いろんな注文を経済的な問題ばかりじゃなしに受ける中で、大使として大変御苦労が多かったと私は思うんです。  ただ、きょう栗山さんの論文なりなんなりを見せていただいて、ちょっと私は年齢の差を感じている。あなたは戦争に負けたとき、たしか中学の一年生か小学校の六年生ぐらいだったですね、敗戦当時。私は最後の徴兵検査を受けたわけであります。ちょっと年代の差を感じた、この論文を見まして。  というのは、外務省の皆さんも世界各国で随分御苦労願っていると思うんですけれども、私が一番心配するのは、どこの国でも憲法は大切にしているんですね。アメリカ人ぐらいアメリカ憲法を大切にする者はいない。だから、情勢が合わなければ直ちに憲法改正をします。憲法改正をきちっとする。ベトナム戦争の反省から戦争権限法をきちっとつくって、そして憲法ではっきりと国会の役割を認めさせた。そういうことをいろいろやるわけですね、アメリカは。ですから、憲法を守るということに対してはアメリカは非常に忠実な国なんです。  ところが、日本国憲法というものをアメリカ人に本当に理解させるための努力を戦後外務省はしてきたんだろうか、この懸念が私はしてならないんです。ですから、例えば今の話で、栗山さんが、集団的自衛権までは本当はいいんじゃないかというふうな印象で、この文章も、きょうのお話もありました。私は、実際は今度の法案はまさに集団的自衛権にかかわると思うんです。かかわるのならば、政府は堂々と憲法改正国民に訴えて、あるいは法案が必要とするものは訴えて、そして国民の合意を得てやるべきだと私は思う、本来からいえば。  というのは、私どもの戦争世代は戦争に負けて帰ってきていろんなことがあった。憲法をつくるときにいろんな議論があった。当時の吉田総理もあるいは岸総理も、あるいはその後の池田さんもずっと言い続けてきたのは何かといえば、日本の国は戦わないんです、戦争でもって事を解決することはしないんです、こう言い続けたんです。  しかし、その中で国民的合意として生まれたのが自衛隊なんです。自衛隊は、専守防衛の日本国憲法のもとに、我が国を守るためにみんなでこれだけは認めようということでできたのが国民的合意であって、したがって個別的自衛権という話の流れになっているんです。その流れを世界の人にみんな説明しなければ、日本国際的地位というのはわからないんです。  この中で、栗山さんもおっしゃっておられるけれども、九五年に村山さんが総理として訪米いたしました。そのときに初めて、それまで細川さん以来誤解のあったさまざまな問題についてもこれからちゃんとやりましょうという話になって、大使も大変御苦労願ったと思うんですけれども、そこで話し合いが始まった。私は、村山内閣と橋本内閣と二回とも与党で経験したんです。このガイドラインの問題もそこで出てきた。そうしたら、アメリカから何を言われているかをめぐって党内で随分議論したんです。山崎拓さんとも随分やったんです、みんなで。  その中で、ここをはっきりしなさいよと言ってきたのは、日本国憲法の許容する範囲日米安保条約の枠内、日米安保条約はもう何十年という間大切にした条約だ、この範囲内ということはきちっとしましょうということでずっと議論してきたんです。  ただし、これは解釈の問題は別ですよ。両方とも一致しておった基盤は何かといったら、この二つを基盤にということで議論をしたんです。解釈をめぐって狂ったんです。しかし、本当に日米安保条約の枠内ということと、それから憲法の枠内ということをアメリカ側に政府は言ったかと。私はそこで随分やかましく言ったんです。我が党からも当時の及川君が随分問い詰めた。  しかし、アメリカ人にはこれはわからないんです。絶対わからないんです、日本国憲法は。アメリカ人は、殴られたらちょっとは我慢するけれども、しばらくしたら戦うのは当たり前なんです。アメリカの正義です。ところが、日本の国はたたかれても場合によってはじっと我慢するという部分ですから、外へ出ていったらけんかせぬというんだから、わかるはずがないんです。  しかし、なぜその憲法ができたかということを、日本国憲法の成立の経過にさかのぼってアメリカに訴えるのが外交官の義務なんです。あるいは政治家の義務なんです。それを果たしていないことから日本がおかしな国だと言われている。私はそう思うんです。しかし、情勢が合わないならば外交官からも、日本の国にはこれは合いませんよ、だから、逆に政府憲法発議を提案したらどうですか、国会議員の皆さんどうですかと、こうやればいいんです、堂々と。それをせずに、だれが読んでも、英語で書いてある日本国憲法アメリカの高校生が見ても戦争をしたらいかぬとはっきり書いてある。同盟関係を結んで戦争はいかぬとはっきり書いてあるんです。それを、いや解釈でできるんだというふうなことをしたのではだめだと私は思うんです。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  ですから、私はここで栗山さんのお顔を見たものだから、ちょっと質問したいのは、我が国外交努力の中で、要するに今度のガイドライン法案をつくるについて、これはOBという立場から、外務省として果たすべき部分があったのではないか。恐らく退官された後、じっと客観的にごらんになったと思うんです。  私は、正直に言いますけれども、橋本さんが日米共同宣言をして帰ってきた。私は橋本さんを本当に歓迎したんですよ。御苦労さまでしたと私は言った。その中で、いろいろ議論した中身というのは、本当に憲法の枠内、日米安保条約の枠内ということを私は言ってきましたよと、こう橋本さんは私に言ったんだ。しかし、そこのところが、その橋本さんの言った意味を本当に外務省は、外交官はアメリカに伝えたのか、この懸念が今もって私にあるわけです。  その辺のことは、OBという立場で御感想があったら一言お聞かせ願いたいと思うんです。
  57. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) お答えさせていただきます。  私自身を含めまして外務省におる者は、当然のことながら、日本国憲法に基づく日本立場、法律的な立場というものがどういうものかということについては機会あるごとに説明を、アメリカ政府内外の人、あるいは議員、議会筋でありますとか、その他マスコミ等につきましてもやってきております。私自身も随分いたしました。そういう意味で、まだ努力が足らないという外務省に対する御批判があれば、それはもちろん甘んじてお受けしなければいけないわけですけれども、私どもとしては一生懸命努力をしてきたつもりでございます。  それから、私自身個人的な意見を申し上げれば、私は別に改憲論者ではございませんで、憲法九条というのは日本としては堅持していくのが国内的にも、それから日本の外交という見地からも望ましいことだというふうに考えておりますので、個人的な憲法についての意見というものを申し上げれば、私は別に改憲が必要であるというふうに思っているわけでは毛頭ございません。  ただ、私が従来、私自身の本や論文等で外務省を離れましてから申し上げてきたことは、憲法九条を含めまして憲法というものは、やっぱり国が存在しての、国の平和とか安全というものが守られた上での憲法であるということでありまして、日本憲法の平和主義というのは非常にとうとい原則でございますけれども、しかしそれは、日本一国だけが平和であればいいんだといういわゆる一国平和主義というものが日本憲法の言う平和主義では私はないだろうというふうに思っているわけでございます。  したがって、国際協調の中で日本の平和を守っていく、あるいは国際の平和を守っていくのに日本自身も積極的に役割を果たしていくというのが九条の精神ではないか、前文を含めまして日本憲法の精神ではないかというふうに思っておりまして、そういう点から見ますと、これまでの国会等におきます憲法論議というのは、若干そういう一国平和主義に傾きがちな論点が多々見られるんではないかというふうに、僣越でございますけれども私は感じておるということを一言申し上げたいというふうに思います。
  58. 山本正和

    山本正和君 ですから、栗山前大使がそういうふうな形で感想を持たれるのは、私はそれはそれでみんなの解釈だと思うんですね。ただ、だれが見ても今度の問題で兵たんを我々は持つということを法律でこれはつくる形になるわけです。ですから、その辺の段階ではもう少しけじめをつけた方がいいのじゃないかということをちょっと申し上げたんです。  それは別にしまして、それではもう時間がありませんから冨澤公述人一つだけお尋ね申し上げておきたいんです。  私は、実は自衛隊の隊員の皆さんぐらい今の日本の国の中で大変な仕事をしておる、そしてまさに生命、身体を含めて大変な公務員はないと思います、正直言って。しかし、その人たちが正直言って命がけで戦わなきゃいけないというそのときは何かといえば、私は国を守るということだと思うんです。そしてまた、国民的合意がある、自衛隊の後ろには。そして、国民的合意の象徴としては日本国憲法がある。その中で戦い抜けるんだと私は思うんです。それにしては余りにも待遇が悪い。この前からときどき、予算委員会でも私は自衛隊の待遇が悪いと盛んに言っているんです。あるいは自衛隊をやめた後、退職後どうなるのかという十分な保障もない。こんな国はないんです。ちゃんと直さなきゃいけない。  しかし、そのことと、憲法上の問題まで含めていろんな議論がある中で、有事法制と私どもは言うんですが、これは国際的有事法制と私は思う。これはまた見方が違います。絶対政府は有事じゃないという立場ですからちょっと違いますけれども。いずれにしても、自衛隊が出ていってそこで死ぬということ、もし弾に当たって死ぬというふうなことが起こった場合の思い、それがあるからこの法律については本当に厳密にみんなで考えようという議論をしてきたと私は思ったんです。  私が申し上げたいのは、先ほどの話で何も危険を伴うことは一切自衛隊はせぬのだ、日本の国は知らぬのだということになれば、まさにこんな勝手な国があるかということになると思うんです。しかし、堂々と今までの法律の中で言われているのは、国際平和という観点から、自衛隊の持っているすばらしい能力である機雷処理能力、掃海能力、これを公海上ではやるということを国としても認めて、国民的合意も達してやるわけですね、公海上の浮遊機雷の除去。それも、実は大変な議論のある中でそこまでは来たわけです。これは明らかに国民的合意がある。しかし、私どもが心配するのは、戦闘地域、後方地域政府は言っていますけれども、そこまで行ったときに、アメリカが戦う中で自衛隊が被害を受けたらどうするかと私は思うんです。私どもの世代は、絶対私たちよりも若い者を国家の命令で戦争という名で殺したくない、こんな気持ちがあるんです。後藤田さんが慎重なのは私はそうだと思うんです。そういう中で我々は議論しているんです。  ここで、自衛隊を卒業された、OBの立場も含めて、冨澤公述人に私が申し上げたいのは、本当に今、日本の国を向こう側が攻撃する、そのときにアメリカ北朝鮮というものに今備えている、ここでの対峙関係から生まれる場合の衝突ということには我が国は非常に関係しますから、かかわらざるを得ない場合があると思うんです。しかし、仮に中国で何か起こった場合に、これは日本はかかわりないといったらおかしいけれども、そのときに日本も巻き込まれて戦うというようなことになった場合、正直言ってこれは私はおかしいと思うんです。  先ほどのお話のように、朝鮮半島の有事の場合は国連軍は出動できるんですね。しかし、中国の内戦が起こった場合には、国連軍が出動したら大変なことになる。できないですよ。したがって、せめて自衛隊協力するとしても国連軍の名前の中でそれに協力するというのが限界じゃないかと私は思うんですけれども、そのことだけ一言お答えいただきまして、時間が参りましたので。
  59. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 中国で周辺事態が起こった場合に君たちは行くのか、こういう御質問でございますか。  その問題はまさに国会がお決めになる問題だろうと思います。そして、そのときに国民がやはり行くべきだと言ったら自衛隊員は喜んで行くと思います。しかし、行くなと言ったら行かないと思います。  以上です。
  60. 山本正和

    山本正和君 終わります。
  61. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 自由党の田村秀昭でございます。  公述人の三人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。  御三人に共通して質問させていただきますが、私個人の考え方なんですが、ヨーロッパにおけるNATO、ワルシャワ・パクトに対してNATOという組織が今もあります。冷戦後も引き続いてあるわけですが、アジア太平洋はまだ冷戦が必ずしも終結したとは言い切れないような状況でありまして、アジア太平洋においては日米安保条約というのがヨーロッパのNATOの役割を演じているというふうに私は個人的に考えておりますけれども、三人の公述人の御意見を承りたいと思います。
  62. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) それぞれ少し簡潔にやってください。
  63. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) NATOと日米安保の比較でございますが、NATOというのは、冷戦のときにソ連の脅威から西ヨーロッパを守る、あるいはヨーロッパを守るということでできました米欧同盟でございます。日米安保も我が国及び極東の平和と安全を守るということでできた条約でございますが、もちろん田村先生よく御存じのとおりに、ヨーロッパではいろんな理由から集団的な防衛体制というものができるような素地があって、そしてそれに基づいてNATOというものができて今日に至っているわけでございます。  アジア太平洋におきましては、アメリカ同盟国とか友好国とか言われている国それぞれの置かれている環境、安全保障上のニーズとか対外的な脅威とか、それからまた日本との関係ということもございまして、戦前戦争中の日本が行った行為に対します記憶とかそういう問題もありましてヨーロッパのようなわけにはまいりませんで、二国間の防衛条約というものを総合しまして地域的な安全保障をつくっていくというシステムをアメリカはつくったわけでございますが、その中で日米安保というものが非常にそのかなめになる役割を果たしてきているということであれば、それはそのとおりだろうと思います。
  64. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 私どももいろいろ見聞きし、読み、勉強する範囲でありますけれども、NATOというのは、いずれにしても集団的な自衛権行使可能な一つの軍事同盟集団というふうに我々は理解していますし、少なくとも日米安保条約は、平和憲法によって許容される範囲、こういうことでこれまでもたびたび政府でも見解を出されているわけでありまして、個別的自衛権範囲、その中で日米安保条約が存在している、第九条と整合がとれているという関係で我々は理解しているところです。
  65. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 私、陸上幕僚長時代に東南アジアの参謀総長等、たくさんのそういう人たちと話したんですが、彼らは同時に政治家でもありますからあれなんですけれども、そういうような話をしたことがあります。  彼らが言うのは、本当はアジアで何がしかのまとまりを軍事的にもつくりたいところだけれども、残念ながら今のところアジアにはそれをリードするリーダーシップを持つ国がないということでありました。でありますから、現在は最も信頼の置ける、また力もあるアメリカとそれぞれ二国間関係を結ぶしかないだろう、将来そういうものができるとするならば、やはりその場合でもアメリカという国をNATOと同じように一緒にして、アメリカのリーダーシップのもとにまとまるということだったらあり得るかもしれないという意見を述べる人が大半でありました。  私もそれに同意であります。
  66. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 自由党は、安全保障の三原則というのがございまして、その三番目に、国際的な貢献、国際間の話というのは普通の国と同じようにやるべきである、普通の国が行っているのと同じグローバルスタンダードで国際協力というものは行わなきゃいけない、経済もグローバルスタンダードと言っているんだから特殊なものだけはつくっちゃいけないという考え方で、国連に対する協力というものは積極的にやるんだ、これは憲法九条に違反するものではない、前文にきちっと書いてあるという考え方でいるわけでございまして、きょう冨澤公述人がお話しになりましたような方向というものを模索していかなきゃいけないというふうに考えているわけです。  それで一つ周辺事態の中に入る入らないといろいろありましたけれども、実際問題として、台湾に有事が起きたときに日本のSLOCにどのような影響を及ぼすのか、シー・ラインズ・オブ・コミュニケーション、海上交通路というのはどういうふうになるか、特に平山先生にお聞きしたいと思いますが、三人の先生方にお尋ねしたいと思います。
  67. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 三人ともですか。
  68. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 三人ともです。特に海運にどのような影響を我が国は受けるかということであります。
  69. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 大変難しい質問が連続するわけでありますが、台湾海峡でもし有事というようなことになりましてこの事態法が発動になる。この事態法は何しろ中身がありませんので、当然そのころまでにはいろいろな政令や規則ができていてそれによってこの法の精神が貫徹されるとすれば、台湾海峡から南シナ海、マラッカ海峡にかけてはこれは先ほど御紹介したオイルロードのまさに締めくくりのところであります。台湾までは与那国島から見ますとまさに国境的には目と鼻の先でありますし、九州の佐多岬あたりから見渡しても約九百キロです。一昼夜半くらい、十五ノット程度の船舶でバシー海峡を抜けていく場合にも大体そのくらいではなかったのかなというふうに私も記憶しているわけであります。  この辺は、一時、台湾海峡で若干台湾と中国の間で緊張が高まってミサイルが何か実験でおっこちてくる、こういう事態もありまして、我々も大変懸念したわけでありますけれども、当然、日本のいわばオイルロードでそういう状況が、極めて危険な状況に脅かされるということが発生するというふうに考えていますし、そこに当事国として我々が関与していくということになりますと、イランイラク戦争では通用した日の丸が、明確に敵性の船舶である標識と、こうなりますから、まさに格好の標的になってくる、こういうことを我々は懸念するわけであります。  以上です。
  70. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 栗山公述人、簡潔に。また、冨澤さんもそうお願いします。
  71. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 一言だけ申し上げます。  台湾海峡あるいは周辺の海域というのが、日本ばかりでなく韓国にとってもそうでありますが、この地域に存在します国の海上交通の確保、石油の輸送を含めまして海上交通の確保のために極めて重要な地域、水域である。したがって、あの水域が平和であるということがまさに日本にとって非常に重要なことであるというふうに考えております。
  72. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) ただいま両公述人が申し述べられたとおりだと思います。極めて重要なところであるというふうに考えます。
  73. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  74. 山崎力

    ○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。  まず、栗山先生よりお伺いしたいと思いますが、いわゆる武装中立を含めた中立国、それからかつては非同盟諸国というような言い方で同盟関係を結ばないでというようなことを標榜した、特に中進国から発展途上国の集団があったわけですけれども、そういった国々がいわゆる国際紛争解決のために国際社会においてどういう役割をしてきたというふうにお感じになっておりますでしょうか。
  75. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 冷戦中、今、山崎先生御指摘のように、かなりの数の国が非同盟運動というものに参加をいたしまして、インドとかインドネシアとかユーゴとか、そういう国が中心になりまして非同盟運動を行って、東西対立の中で政治的には中立という立場をとるということをやったわけでございますが、それはそれなりの役割と申しますか、国際政治における影響力というものを持っていたグループであるというふうには思います。  しかし、それではそういった国々が世界の平和と申しますか、冷戦時代の平和を守るための国際秩序というものにどれだけ貢献したのかということになりますと、私はかなり疑問ではないかというふうに思います。まさに今日の非同盟運動のリーダーでありましたインドが現在どういうふうな状況にあるかというのを見ても、その点はかなりはっきりしておるんではないかというふうに思っております。
  76. 山崎力

    ○山崎力君 平山公述人にお伺いしたいと思います。  海員組合として、いろいろ外航を中心とした船員方々の御苦労ということはよくわかるんですけれども、今回のガイドライン周辺事態関係して、日本の一般の船が周辺事態におけるアメリカに対する物資輸送、兵たんということになるかならないかというのは定義の問題もあろうかと思うんですが、その輸送というものを船から船、洋上での輸送というものは物理的に可能なのかなというちょっと疑問があるんですが、皆様方はどういうふうなことを想定されているんでしょうか。
  77. 平山誠一

    公述人平山誠一君) その件につきましては、先ほどの宮本委員の方の質問にも若干お答えさせていただきましたけれども、物理的にはほとんど不可能だと。洋上で何千トンも何万トンもあるような物資の受け渡しを、きょう資料で皆さんに最近の船の格好なり形というのはどういうものかということをお示しできればよかったのかもしれませんけれども、その辺は海洋国家の国民皆さんの常識と、こういうことで用意してきませんでしたけれども、まず物理的に不可能と。  したがって、海上で兵たんに当たるといいますか輸送をする場合には、必ず港から港へ行くと。すなわち、公海を越えて相手方の領域へ行かなければ船舶による海上輸送というのは完遂しない、こういうふうに考えております。
  78. 山崎力

    ○山崎力君 ということは、いわゆる周辺事態法律案が通ったら、新たな日本としての義務が生ずる地域というのがあるわけですが、協力するかしないかというのは、これは日米安保の今度のガイドライン法案にかかわらず、安保条約がある以上そういった中で日本協力するかしないか。要するに具体的な想定をすれば、朝鮮事態になったときに、日本船員の方たちが協力するのは、日本から物資を積んで朝鮮半島のしかるべき港に物資を運ぶ、こういう協力になると思うわけです。ならざるを得ない、今のお話でも。  さすれば、このことは今回のガイドラインの問題、この法案が通ったから通らなかったからという問題ではないんではないか。今までの我々の審議の中で出てきているのは、今度のガイドライン法案において、協力するのは後方地域においての協力だ、こういうふうになっているわけですね。ということは、今回の新たな範囲ではないところでの協力を実質的にせざるを得ない。ということは、繰り返しになりますが、言葉をかえれば今回の法案と具体的には関連、関係の極めて薄い、どちらかといえば安保条約の一種の同盟国としての対米協力ということに実質的にはなるというふうに感じているんですが、そういう考え方というのはおかしいでしょうか。平山公述人にお願いします。
  79. 平山誠一

    公述人平山誠一君) 例えば、先ほども御紹介しました湾岸戦争のときには、当然ながら日本自衛隊というのは専守防衛のための軍隊でありますから、それによって国民的な合意を得られている軍隊でありますし、当然ながら先頭に立って自衛艦を輸送に使うというようなことはできないわけでありまして、そういう意味で、我々は民間でありましたけれども、結局我々がそういう形で行かざるを得ないのかなと。そこは先ほど申しましたように非常に厳しい選択だったわけでありますけれども、まさに先ほど紹介した船長の思いということを含めて、我々がそういう役割を果たしたことそのものを否定したり卑下したりということではありません、そのこと自体は一つのある種の国民的な合意に基づいて行われたということでは我々も誇りを持っているところでありますけれども。  いずれにしても、そういうことが今後も、周辺事態というのは定義があいまいでありますから一体どこまで範囲が広がってくるのか、このことについては我々も極めて厳しい見方をしておるところでありまして、これがどんどん広がっていくことによって兵たんの先頭にいつも我々が、日本から発進される船が先頭に立っていかなきゃいかぬ、これは一民間人であり同じように税金を払っている国民としてどうしても、繰り返しになりますが納得いかないところである、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  80. 山崎力

    ○山崎力君 そういう疑問というのはあるかもしれませんが、少なくとも今回のガイドラインで直接懸念が具体化されるものではないというふうにしか今の公述は受けとめられなかったです。  時間の関係冨澤公述人にお伺いしたいんですが、今回の審議を通じて私が非常に感じているものは、ガイドラインはそれはそれとして、それとの絡みの国内法でいくと余りにもそごが多過ぎる。要するに国内的なものが非常に未整備である。かえってそのことによってアメリカに対して疎んじられるというんでしょうか、栗山公述人の表現をかりれば、その時点で日米同盟がおかしくなるようなことにもなりかねない。例えば、周辺事態自衛隊の補給艦が周辺地域において補給中日本有事になった、ところが有事になったときに対米協力の法制ができていないものですから、その時点で、日本有事になったところで油の補給をストップしなきゃいかぬというような今の法体系になっている。そんなばかなことがということになるわけです。  そういった点、現場の自衛隊を率いていた経験からして、ガイドラインよりはむしろ国内法の整備だ、非常事態法の整備だという気がしているんですが、その辺御経験も含めて、よく言われる道路交通法で何が起こっても赤信号なら出動した自衛隊がとめにゃいかぬという、そういうこともあるわけですが、その辺についてのことをちょっとお教え願えればと思います。
  81. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) 御承知のように、日米ガイドラインが昭和五十三年に最初にスタートしたわけですが、そのときは米軍との関係でも、日本有事の問題を中心に私ども、計画と言っちゃいけないから研究だということでやっておりました。それと並行して、先ほども申し上げましたけれども、やはり日本有事の場合の法制というのがないとそれが生きないということで、一方でいろいろな研究もしてまいりました。しかし、このガイドラインに基づく作戦研究の方はそれなりに進んだのですが、それを支える有事法制がないということで非常に困っておったわけです。だから、早く日本有事の法制をつくってほしいということはかねがね念願していたところであります。  しかし、今般は、五年前の朝鮮の核疑惑から始まって、そういう日本有事の前の周辺事態に何か我々が支援することはないかという話題が出ました。そのときに、その事態も大切だけれども日本有事も早くやってくれないかという意見は当然私どもの仲間にもありましたけれども、しかしやっぱり実質的に考えると、より近い将来に起こり得る事態というのはむしろこちらの方かなという判断でこういう結果になったのだろうと思います。  その辺の判断はむしろ政府の方がされたわけでありますので、おっしゃるとおり、私たちとしては日本有事の問題というのを、もう相当、何十年と待っているわけでありますから、さっき申し上げましたように早速にやっていただきたいという気持ちであります。
  82. 山崎力

    ○山崎力君 終わります。ありがとうございました。(拍手)
  83. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 二院クラブ・自由連合の島袋宗康です。  本日は御三名の公述人方々大変御苦労さまです。  まず、平山公述人にお伺いいたします。平山さんのインタビュー記事を拝見いたしましたが、多くの点で海運業に従事される労働者と我が沖縄と非常に共通点があるような気がしております。  その第一は、戦争が起こったら海という皆さんの職場は常に最前線であるということでございますし、米軍基地の集中する沖縄は、有事の際には米軍の前線基地となり、我が国後方支援においても最前線になるという地域であるというふうに思っております。  その第二は、戦争の被害を真っ先に受けたという歴史的な御経験、そして皆さん組合は敗戦直後の一九四五年十月五日に戦後一番早く創設された産別組合であるということでございます。その背景には、船員がさきの大戦で軍人以上の被害を受けたというふうな御認識、そしてその体験を強いられたということ、そういう事情にかんがみて、そして平和な海を希求していこうというスローガンのもとに結集されたということについてもよく理解できます。その点でも、国内唯一の地上戦で十数万人余の犠牲者が出た我が沖縄と共通する点がございます。  また沖縄では、その反省から一九五〇年に私が委員長を務める沖縄社会大衆党という地方政党ができて、現在も反戦平和のために微力ではありますけれども頑張っているところでございます。  私は、本委員会で何度も戦争で真っ先に被害に遭う危険性は一番沖縄が高い、こういうふうな主張をしてまいっております。今述べた二点にもし共通点がございましたら、平山公述人の御意見を伺いたい、こういうふうに思います。よろしくお願いします。
  84. 平山誠一

    公述人平山誠一君) ありがとうございます。  今、島袋委員の御指摘は、私も言われてみると共通する部分が非常に多いなというふうに思うわけであります。沖縄は、地理的な条件、たまたま沖縄に私は生まれませんでしたけれども、沖縄県に生まれたばかりにという思いというのは、沖縄県民の皆さんの中にいろいろな複雑な気持ちとしてありましょうし、できたらもう少し基地のない平和なところで生まれたかった、こういう思いというのは共通するものがあると思います。  船員の場合には、いずれにしても、みずから選んだ職業という点では皆さんの場合と若干違いますけれども、先ほど申し上げたように、我々は別に弾雨飛び交う中を行ってみたい、こういうことで船乗りになったわけでは全くないわけでありまして、そういう点ではたまたま船乗りになった。  我々も戦後、私は十八年生まれですけれども、平和憲法を学校の先生に教えられながら、日本もこういう国なんだということを理解しつつ育ったわけであります。学校に入って、そういう職業につこう、こういうときにも、船乗りですから多少の冒険心、アドベンチャースピリットがあるわけでありますけれども、まさかそういうことを職業としたために強制される、いわばそういう環境に身を置かされるということを想定したわけではありません。  そういう意味では、我々の主張と、島袋委員の方から今御紹介があった沖縄の人たちの現状と気持ちといいますか、共通するところが多いんではないかなというふうに考えます。
  85. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 我が国の戦後処理をリードしてこられました外務省出身の吉田元総理でありますけれども、一方で、我が国外交政策の裏で大きな打撃を受けてきたのはほかならぬ米軍施政下で二十七年を過ごしてきました沖縄であります。サンフランシスコ条約の締結によって我が国は独立を実現いたしましたけれども、同条約によって沖縄は本土から切り離されたという歴史的な事実がございます。  非常に伺いづらいことでありますけれども、私が先ほど申し上げました御質問とまた平山さんの今の御意見等を含めて、前駐米大使の外務省の顧問であられる栗山公述人に今の御感想をお聞きしたいと思います。
  86. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 私は、たまたま外務省におりましたときに、沖縄返還協定アメリカと交渉する、そしてでき上がった協定につきまして国会の御承認をいただくための仕事に参加した経験がございまして、その前から、戦後沖縄が置かれました状況、それから返還後もアメリカの基地の存在から生じます経済的、社会的な負担というものを非常に多く負っておられる沖縄あるいは県民の方々の状況に対しては、私自身としては非常に胸が痛む思いをしておるわけでございます。  そういう状況のもとで、できるだけそういう県民の方々の御負担というものを減らしていくように政府としては努力をしなければいけないし、また日本全体でもって沖縄県がこれまで負ってこられた負担というものをできるだけ分け合うということが必要なのではないかということを外務省におりましたときから思っていた次第でございます。
  87. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 自衛隊の最高責任者であられました冨澤公述人、今の点についてどうお考えですか。
  88. 冨澤暉

    公述人冨澤暉君) そういった意味での沖縄の負担というのが大変重いということは私どももよく承知しております。ですから、できるだけそれを軽減するための努力というものを政府にやっていただかなければいけないんじゃないかというふうに思っております。  ただ、軍事的に申しますと、沖縄にある基地をそれでは内地に分散すればいいといいましても、 すべてそういうわけにもいかないんじゃないかというふうに認識いたします。ただ、その中で一つでも二つでもそういうようなことができるならば、そういうことも含めて政府努力すべきであろうというのが私の個人的な意見であります。
  89. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 栗山公述人にあと一つお伺いしたいと思います。  栗山さんは、日米関係が非常に重要であるということを強調されておりますけれども、一方において外務省の国内での役割、とりわけ沖縄問題への配慮が足りなかったのではないかというふうな率直な感想を私は持っております。  外務省沖縄事務所が平成九年に設置されましたけれども、外務省の沖縄事務所を置いてほしいということはもうずっと以前からあったわけなんです。残念ながら平成九年に、一昨年ぐらいにしか沖縄事務所を置いてもらえなかったというふうな、非常に遅きに失したという感じを持っておりますけれども、その辺の御見解についていかがでしょうか。
  90. 栗山尚一

    公述人栗山尚一君) 私も、四年前まで外務省におりました人間といたしまして、今の御指摘に対しては、そういう意味での沖縄の御要望になかなか沿えなかったという点については、どうも大変申しわけなかったというふうに思っております。  遅きに失したという御指摘ではございますけれども、事務所ができまして、最近また担当大使も新しい大使が赴任するということでございまして、先ほど私が申し上げましたような観点から、何とか沖縄の方々の御負担というものを少しでも軽減する、アメリカとの交渉を通じまして軽減をしていくというために、外務省としては今後とも努力をしていくつもりであるというふうに私自身は当時思いましたし、私の後輩の者たちもそういうふうに思っておるだろうというふうに考えておる次第でございます。
  91. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございました。時間ですので、終わります。(拍手)
  92. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 以上をもちまして午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  93. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、今泉昭君及び宮本岳志君が委員辞任され、その補欠として足立良平君及び富樫練三君が選任されました。     ─────────────
  94. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 休憩前に引き続き、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定改正する協定締結について承認を求めるの件外二案を一括して議題といたします。  午前に引き続き、三案件審査のため、公述人方々から御意見を承ります。  午後は、上智大学法学部教授猪口邦子君、株式会社岡本アソシエイツ代表取締役岡本行夫君、軍事評論家藤井治夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  公述人方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、公述人方々からお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず猪口公述人からお願いいたします。猪口公述人
  95. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) きょう、この発言の機会を賜りまして、大変ありがたく存じます。  新ガイドラインは、先生方御存じのとおり、日本側の新防衛大綱の策定、アメリカ側の東アジア戦略報告の発表、それから日米首脳会談の日米安全保障共同宣言など、両国におきます冷戦終結後の日米の安全保障協力のあり方についての検討努力の結果として示されたものでありまして、この国会におきまして関連法案につきましての御熱心な審議がなされていることに関しまして、まず敬意を表させていただきます。  まず申し上げたいと思いますのは、新ガイドラインは以下のように明記してございます。日本の行為は憲法範囲内で行い、また日本集団的自衛権などに関する政府のこれまでの解釈は変えないことということを前提にしており、予算及び行政措置についての義務づけはないということが明記されておりますので、すなわちこれは日本の自主性について十分に尊重するという内容になっており、国会の先生によって非常に自主的な議論がなされているということがその結果として非常に貴重なことであると存じます。  ですから、日本の今までの政治的な伝統、対外政策における従来との整合性について、無理のない方法で二十一世紀におきます日米協力を考えるということについての米国側のまず理解があり、またそうでなければならないということについての日本側の主張があり、それの合致したところがその内容としての範囲になっている、そういう形で日米ガイドラインは策定されたというふうに理解しておりまして、関連法案につきましてもそれにのっとってなされているというふうに考えております。  いろいろ御議論がございましたことについて若干私なりの考えを述べさせていただきますけれども、例えば周辺事態を地理的な概念でなく状況的なものとする内容につきまして、これはいろいろ御議論がございましたと理解しておりますけれども、この方法は、私が理解しますところ、二国間の安全保障に関する協定や条約のつくり方としては、従来の国際法の方法論に極めてのっとっているのではないかというふうに思います。つまり、地理的な適用範囲を明確化することは関係国日本を含めての安全保障環境を悪化させることにもなりかねず、そのような取り決めの根本目的に反するというふうに考えるからであります。  そのような地理的範囲をある程度明確化するというやり方は、多国間の地域防衛協定、リージョナルディフェンスの場合にのみあるというふうに理解いたします。例えば、NATOのような場合におきましては、加盟国各国の境界自体が適用範囲となり、それを超えるのは域外活動というふうになりますが、一般的な二国間の防衛協定とか条約というものにつきましては、地理的な範囲を規定したものは例を挙げるのが非常に難しく、つまりその理由は明白で、そうすることによりその国の安全保障環境を悪化させるのであって、安全保障政策の根本目的に反するということになりますので、極めて通常の国際法の方法論にのっとった考え方に我が国の場合もなっているというふうに理解いたします。  それからもう一つは、この周辺という表現でございますけれども、この範囲についていろいろ御議論がありましたというふうに理解しておりますが、英語での表現を見ますとエリアズ・サラウンディング・ジャパンでありますので、これはサラウンディングジャパンということですから、ぐるりと取り巻くという表現になりますので、そのように理解すると非常に限定的に理解ができるというふうに思います。ですから、それの適切な日本語の表現という場合に、ぐるりと取り巻くという表現がうまくほかの表現に置きかえることが難しかったということからいろいろと議論の余地が出てきたのであろうかと思いますが、もともとの日米で合意した表現がサラウンディングジャパンであるということを常に思い返せば、その考え方の基本が了解できるのではないかというふうに考えます。  それから次に、私がきょう申し上げたいと思いましたことは、ここでアメリカ日本に一体何を本当に求めているのかということについての機能的な意味合いでございます。文言等につきましては、既に詳細に文書がたくさんありますのでそこでごらんのとおりなんですけれども、私が理解するところ、以下のように表現できるかと思います。  アメリカはたくさんの作戦を展開した国家としていろいろな壁にもぶつかってまいりました。その中でもベトナム敗戦がとりわけ大きな経験となりまして、それ以降、作戦の方法についての根本的な見直しをやってこられたのではないかと考えます。その結果の対処の仕方が今日の基本的な作戦方法になっており、それについて協力国に求めていることもそのような内容から来ているのではないかと思います。  では、ベトナム戦争において何を考え、その後の作戦を転換したのかと申しますと、ベトナムでアメリカは建国以来初めての敗戦を経験しているわけであります。どの国にとっても敗戦は大きなインパクトをもたらしますが、そこでアメリカは敗戦の原因について検討し、以下のような結論に至ったのではないかと理解いたします。  それは、史上最大の軍事力を持つ国がどうして敗北したのかということについての一つの答えは、これは戦死が多過ぎ、したがって世論が反戦化し、したがって議会も反戦議会となり、最終的には御存じのとおり一九七三年戦争権限法を採択しまして、六十日以内に議会が承認しなければ撤兵しなければならないという考え方を取り入れます。もともとはトンキン湾決議の中で議会がみずからそのような議会による承認の大権を放棄して大統領にその大権を付与した経緯がございますけれども、いずれにしてもこの戦争権限法の採択によって敗戦となるわけです。  では、なぜ採択となったかと考えると、議会がこの戦争について非常に反感を持つようになった。その理由は何かと考えますと、ドミノ理論ほか数々の戦争についての理論がございましたが、結局、実際の戦死が非常に多くなる中で、またそれが一般家庭のお茶の間から報道を通じてわかるようになるにつれ、非常にこの戦争についての不安感と懐疑の念が拡大していくことになります。それがやはり一つの原因ではなかったかということをアメリカは恐らく分析し、高度民主主義社会においては多数の戦死が出るという作戦は容認されないという結論に至ったのではないかと思います。  したがって、それ以来、アメリカは戦死最少化作戦の方法を国防総省初め国防関連の方面に指示し、その方法を探ってきたということではないかと思います。  もちろんそれは非常に困難であり、その結果投入されましたハイテク兵器がさまざまな誤爆を繰り返していることは、もう今日のコソボの状況を見てもごらんのとおりであり、一たん戦争が始まってしまえば戦死を最少化することは非常に困難であるけれども、しかし空襲による無差別殺りくの手法ということから、ピンポイント空爆という特定施設をターゲット化するという正反対の空爆の思想に転換したというふうに言えるかと思います。  それと同時に、地上軍は戦死が多く出ますので、最後の段階にしか投入しないであるとか、いろいろな新しい考え方が出てきておりますけれども、ここにおきまして、とりわけパイロットが全員生還するということが非常に大きなポイントにもなっていきます。つまり、全員生還の前提ということを少なくとも理念的には追求し始め、それが不十分であって多くの犠牲が出ておりますけれども、湾岸戦争でも出ましたけれども、考え方としてはそういうところであると思います。  そこで、これからのあらゆる地域紛争ないしそれに類似した有事においてアメリカが兵力を投入する場合においては、そここそが最大の関心であろうと思われます。つまり、パイロットの全員生還であり、それにどういうふうに有効に協力してくれるかというところこそがアメリカの求める決定的なところであろうと思います。  ですから、それとの関連で、例えば船舶検査についてそれほどアメリカが大きく反応していないとかということがあります一方で、施設関連ですね、空港の利用あるいは港湾の利用ということについて非常に敏感に反応するのは、それがパイロットの生還率につながる非常に重要な部分であるというふうに考えているからではないかと考えます。  ですから、私は、このガイドラインの根本精神というのは、万が一の有事の場合においては、もちろん派兵される米軍のパイロットも含め、その他のすべての非武装市民の犠牲最少化というところではないかと思います。その限りにおいて日本協力し、それこそが日米協力の最大の共通目的とし、その観点からの後方支援ということに限ってよろしいと思いますし、そのように読むと、実際の協力項目として挙がっているのはそのような内容になっているというふうに考えます。  ですから、一般的に協力相手がどういう考えで有事をとらえ、どういう活動をすることを想定し、そして最終的に絶対譲れないところは何なのかということを判断していくと、相手が求めてきているという内容が見えてくる。そこにおいては、日本は戦死最少化という理念そのものには協力できるのではないかと思いますし、そのための後方におきます医療、衛生関係協力から、やむを得ずの発進の場合における犠牲最少化、できるだけゼロカジュアリティーに向かうような方法ということをガイドラインの中で理解しているのである、またその協力について合意しようとしているのである、また関連法案はそれに向けての内容となっているというふうに大局的に見ると理解できるのではないかと思います。  後方地域の支援につきましても、後方中の後方を内容としては定義しているというふうに思います。アメリカの定義では何段階かの後方を定義することができるわけですけれども、日本としてはフォワードエリアに接近しないところでの協力という考え方でよろしいのではないかと思います。  一番最近に議論が多くありました船舶検査につきましては、これはアメリカ側は今のような趣旨から見ますとそれほど神経質ではないかもしれませんが、私の意見を一言申し上げさせていただきますと、私は個人的にはもともとの政府案といいますか、国連決議が前提となっており、警告射撃などは認めない、それから活動範囲日本の領海と周辺の公海というようなところは非常に適切ではなかったかと実は思います。  国連決議に基づくということにつきまして、そもそも経済制裁は国連憲章の中で定められている緊急事態の合法手段ということになっていますので、やはりその国連の決議ないし憲章にのっとっての考え方というのは適切な論理の立て方ではないかと思います。  警告射撃をしないのでは何の意味があるかというような考え方につきましても、それをしなくてもやはり検査権というのは非常に大きく、一たん検査をするということであれば、何かを発見すれば、それに自分で対処しなくてもその事態を安保理に通告する、あるいは報告、場合によっては安保理報告ということも可能かもしれませんし、あるいは国際の注意を全般的に喚起するということもできますので、本来であるならば、そのような形で含めるという考え方も十分に今回の議論の中で整合性を持って位置づけることができたのではないかと思います。  いずれにしても、国連決議の重要性ということは、経済制裁等につきましてこれからも変わらずあるのではないかというふうに理解いたします。  以上、簡単に私の考えるところを述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)
  96. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ありがとうございました。  次に、岡本公述人にお願いいたします。岡本公述人
  97. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 私は、本院が今議論しておられる周辺事態安全確保法案に賛成でございます。その立場から意見を申し上げます。  私が賛成している理由は簡単でございます。我が国の安全をどのように確保するか。これは、現段階では理論的に考えても三つの選択肢しかないと存じます。丸裸になるか、丸裸は失礼しました、守る方の選択肢に入りませんね。守るということであれば、独力で武装中立の道を歩むのか、それともどこかの国と同盟して守るのかということでございます。  集団安全保障体制というのは、私もやがて日本がその方向に進めたらいいとは思っておりますけれども、現下の国際情勢はとてもそれを許容する状況ではないことは御案内のとおりでございます。そういたしますと、どこかの国と同盟しながら守っていくということになれば、日本にとっては自由と民主主義という価値観を共有するアメリカしか相手方はないと存じます。  周辺事態安全確保法案は、この日米安保体制信頼性を高め、そしてそれによって極東地域、ひいては東アジア全域の安全と平和を確保するための抑止力を高めることになると私は存じております。この法案は、あくまでもそのような意味でも日米安保条約のもとの枠組みであります。  したがって、現在御審議されておられる修正案が、第一条の「目的」で安保条約の「効果的な運用に寄与し、」との文言を加え、周辺事態措置というものが日米安保の枠内であることを明記されたことは、私はガイドラインというものの位置づけを明確にした上で評価されるべきと考えております。  常識的に考えれば、我が国への脅威というものは、我が国に対する直接の攻撃によって行われる可能性は低いと存じます。むしろ、我が国周辺において起こる紛争、危機というものが我が国に波及してくることによって我が国自身の安全というものが脅かされる、そのような可能性の方がずっと高いと存じます。  安保条約というのは、米国が持ちます集団自衛権我が国が持ちます個別自衛権のその組み合わせでできております。周辺の安全を確保することが我が国自身の安全にとって極めて重要ということでありましても、我が国は当然個別自衛権しか有しませんから、我が国自身が出かけていって武力行使をする、軍事行動をとるということは、これは憲法上許されないところでありますから、その分は米国が行う。我が国は、それを国益に基づいて一つずつ判断しながら支援していく、こういう格好になっているわけであります。  もともとアメリカの考え方というのは、極東全体を大きな面として考えて戦略をつくっておると存じます。つまり、先ほども申し上げましたように、米国が持ちます集団自衛権と、それから米国が日本と、あるいは韓国とというふうに個別に持っております個別の安全保障条約の組み合わせによって米国はこの地域の平和と安全を確保するということになっているわけでございます。  そういうふうに考えてまいりますと、在日米軍というものはあらかじめ区分けして決められている兵力水準ではございません。極端に言えば、その日その日に日本の領土、領海、領空に存在する米軍を在日米軍といわば便宜的に総称しているわけであります。第七艦隊は横須賀におりますときには在日米軍になりますが、領海外へ出れば在日米軍からは外れる、そういうことでございます。つまり、アメリカの防衛戦略というのは、米軍日本国土の防衛だけに張りつけているのではなくて、極東全体を面として考え、そして各地の部隊から最も適切なユニットを集めてきましてその時々の防衛に充てる、こういうことでございます。  日本は、安保条約というものをそのようなものとして理解し、昭和三十五年以来我が国の防衛の基本的な枠組みとして選択してまいりました。今回のガイドライン法案というものは、まさにそういう意味で、当初から日本がそのような方向での協力、便宜供与を行うということが想定されていたものと言っても私は過言ではないと思っております。  現在、御審議されている周辺事態安全確保法案というものは、先ほど法律の目的というものが明確化されたことは大変結構であると申し上げましたけれども、そのほかにも、後方地域支援の際の武器使用の規定の明記等、改善されている面も多いと存じます。また、周辺事態の概念の類型化、あるいは地方自治体を初めといたします国以外の者の協力が想定されている事態の例示が示される等、私は、国会の議論を通じてより明確な形で国民がこの法案の意義を知ることになってきた、大変そのことに対して、国会の御努力というものに敬意を表する次第でございます。  ただ、依然として基本的な部分で若干首をかしげる点も存在しております。もちろん、この段階に至ってこの法案の修正を希望するものではありませんけれども、本院における今後の安全保障論議の一つ参考として聞いていただければと念ずる次第であります。  第一に、私は、この法案では、依然として有事法制議論を恐れる余り、周辺事態安全確保法案のもとで自衛隊が活動することになる、それに対して、その際に必要となる国内法の改正が手つかずでいることには疑問を感じます。例えば、海上交通三法でありますとか道路交通法でありますとか、当然緊急事態には必要になる国内の法改正が手つかずのままなされていないというのは、将来の検討課題と存じます。  船舶検査活動に関する条項が削除されましたこともこのガイドライン法案の全体のバランスから見て残念なことでありましたが、この点については別途の法律をもって措置するということが合意されておるようでございますから、その点に期待をしたいと思います。  ただ、その際に、国連安保理決議のみをその発動要件とするということについては、およそ世界の中で我々がおりますこの地域ほど国連の安保理決議というものが成立しにくい場所はないわけでございますから、私は現実の需要というものから考えれば、安保理決議のみに発動要件を限定することが妥当なのかどうか、そこも疑問に思うところでございます。  それから、第三点について、これは皆様方にいささか申し上げにくいことかもしれませんが、自衛隊の部隊等が実施する対応措置については、国会の事前承認を得なければいけないというふうに現在の修正案はなっております。一般に、シビリアンコントロールが必要だ、不十分じゃないかという言葉は国民の耳に心地よく響く言葉ではあります。報告というものを国会に行うことは私は当然のこととは思いますが、ただ、現在の周辺事態安全確保法案の議論の中で、この法律のもとで対応する自衛隊行動というのが、自衛隊法上の防衛出動とあたかも同じような次元のものであるというような印象を国民に植えつけられてしまっているのはいささか残念だと思います。  世界の各国の中でも、このような単なる便宜供与について議会の承認を条件づけているところはただの一カ国もございません。報告ですらイタリアやオランダといった一部のヨーロッパ諸国を除いては議会が求めないのが通例でございます。  もちろん、宣戦布告とかあるいは実際の戦闘行動とかあるいは自衛隊法が想定いたします防衛出動のようなものについて国会の承認を求めるのは当然のことでございます。ただ、このように後方で行う後方支援についてまで、便宜供与についてまで国会の承認ということで余りにも重きを課しますと、非常事態というのは一日単位で動くものではございません、一時間単位で動くものでございますから、そのときに迅速な対応ができるのかどうか。  私は運用の問題として、事前であっても事後であっても、このような法案になるわけでございますから、そのような案件が国会にかかった際には、本当に速やかな御審議と採決をお願いしたいと切に思う次第でございます。  大変生意気なことを申し上げますが、我が国アメリカのような完全な厳密な三権分立ではございませんで議院内閣制でございます。皆様方、国権の最高機関である国会が行政府をいわば統制しているわけでございますから、行政府行動にもう少し信頼感を置いてあげてもいいのではないかと私はかねて思っている次第でございます。  あと、この際申し上げたい点を二、三点申し上げたいと思います。  一つは、政府国民に対してこの法案の意義というものをもう少しわかりやすく説明してもらいたいと思っていることでございます。アメリカが行う戦争に対する協力法案である、甚だしきはアメリカが行う戦争日本を巻き込む法案であるというような議論がなされるわけでございますけれども、これはこの法案ができるから事態が物騒になるのではなくて、既に物騒な事態が周りにあることに対してこの法案をもって平和を確保するという、因果関係が逆でありまして、そこのつながりがわからない、国民として納得しない限りは民間の協力も得にくいと存じます。  次に、私は現時点で日本が集団自衛権行使に踏み切る必要性はないと存じておりますけれども、他方、政府が行ってきております集団自衛権の定義の設定の仕方というのは余りにも広くとり過ぎていて、本来個別自衛権の中で日本が行い得ることまで集団自衛権に抵触するからということで行えないできた。そのために我が国は、国際社会の中で極めて奇異な防衛体制をとる、そういう防衛体制と思想を持った国になってしまっておるわけでございます。その点については、また御質疑の機会が与えられればその中で申し上げていきたいと思います。  最後に、この法案によって我が国のいわゆる周辺事態に対する日本の安定化への貢献というのは増加すると思いますけれども、およそ一国にとって一番大切なのは自国の直接的な防衛であります。ガイドライン法案によって周辺に対する抑止力が高まりますけれども、我が国自身への直接脅威に対応する法制というのは依然として穴だらけであります。  この点について、本法案の成立の後にもぜひとも国会において議論をお続けになられることが、先般の不審船侵入事件にも見られましたように、私は多くの国民が願っていることだと信じております。  ありがとうございました。(拍手)
  98. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ありがとうございました。  次に、藤井公述人にお願いいたします。藤井公述人
  99. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 藤井でございます。  国会における日米防衛協力指針に関する審議が特別委員会で始まりまして、そして衆議院では実に九十三時間審議がなされた。参議院でも非常に熱心な審議が続いているわけであります。  私は、衆議院における審議会議録をずっと拝見してまいりました。大体、今まで読ませていただいたのが約百万字ぐらいのものでありました。恐らく参議院を含めますと約三百万字ぐらいになるのではないかと思いますが、実に膨大なボリュームでありました。そして、その中には委員各位の非常に質の高い審議がたくさん出ているわけでありまして、非常に私も勉強させていただいております。  ただ、残念ながら審議全体のレベルという点から申しますと、これはもう一つ物足りない感じがいたします。国民の一人として率直に申し上げますと、これはやはり何よりも行政府の側の答弁に問題がある、こういう感じがいたします。  実にむだが多いといいますか、答えるべきことをお答えにならない。そして、例えば高村外務大臣は、何度も申し上げていますように、あるいはまた、何度も繰り返すようでありますがと。そう何度も同じことを繰り返す必要はなさそうに思うわけでありますが、答弁ではガイドラインの棒読みが非常に多いんです。そういうものは読んでいただかなくても委員皆さんは十分わかっておられるわけでありまして、そこから一歩進んで質問が出ている。したがってそれに答えるべきじゃないか。  六〇年安保と言われているあの新安保条約締結のときの特別委員会会議録を読み返してみますと、非常に質が高いと思います。議論がかみ合っている。そして、どんどん未解明の問題が解明されていく感じがするわけであります。あのときは参議院での審議は不十分でありましたが、今度は両院で進むわけですから、ぜひこれは中身のある審議をしていただきたいと私はお願いしたいと思います。  それで、全体として、今日までのこのガイドライン問題あるいは周辺事態法に係る状況というものを考えてみますと、私は三つの点で問題を感じております。第一に、我が国の国是としての平和主義、これから日本は今脱線していこうとしているのではないか。第二に、日本は主権国家としてのプライドを捨て、外国の言いなりになっている。第三、議会制民主主義がないがしろにされ、行政府国民や国会をコントロールしようとしているのではないか。そして、憲法が非常に重大な危機にさらされてきている。こういう感じを受けるわけであります。  それで、ガイドライン問題あるいは冷戦終結後の日本の防衛のあり方に関する論議は、細川内閣以来今日まで約五年間続けられてきているわけでありますが、この経過を見て思いますのは、今も申し上げましたように、行政府の政治手法が非常にこそくである、こういう感じがするわけであります。  それで、どういう点にそれがあらわれているか、一、二申し上げていきたいと思います。  まず、このガイドラインあるいは周辺事態法というもの、これをなぜやるのかということにつきまして、高村外務大臣は、安保条約というのは日米間の条約で、まさにそこに規定があるものは条約上の義務としてやらなければいけない、しかしそれ以外のことを何も日本が主権国家としてやってはいけないということではない、そういうことで、安保条約に規定のないことでもやっていいんだ、そしてそれが周辺事態対処であり、あるいは新たな対米支援である、こういうふうな論理を展開されているわけであります。  だが、本当に条約にないことをやるのであるならば、それはどういう憲法上の根拠に基づいてやるのか。この点について高村外相は何も説明をされていないわけであります。それを政府がやる、外務省がやる。これはその根拠が必要である。憲法七十三条、これは内閣の職権として、その三において「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」と、こう書いてある。そして、条約にない新たな義務をやる場合には、当然それは国家間の文書としての条約として定め、そしてそれを実行する法律をつくる。この条約と法律について国会の承認あるいは制定を求めるということが必要である。  ところが、ガイドラインというのは実に奇妙なものでありまして、これは一体米国との約束なのか、あるいは単なる名称どおりのガイドラインなのか、そして単なるガイドラインにどれだけの強制力があるのかというふうなことについての説明はございません。  外務大臣はガイドラインの法的意味について、これは日米協力のあり方についての一般的な大枠、方向性を示したものであり、法的位置づけといっても大変難しいのです、こういうふうにおっしゃっている。法的位置づけがそんなに難しいものなのか。そしてまた、そういうものであるならば、それを根拠にしてなぜこんなに私たちは長期間にわたって議論をしなければならないのか、そしてまた法律の制定をしなければならないのか、そして国民はなぜそれに基づいて協力義務を負わなければならないのか、こういうことについての御説明はないようであります。  申すまでもなく、従来の政府は、国会の承認を求める条約の基準を明らかにしております。つまり、それは外務大臣が七四年二月二十日に政府統一見解として明らかにしたものでありました。  国会の承認を必要とする条約は、法律事項を含む国際約束、財政事項を含む国際約束、その他基本的な条約、こういうふうになっているわけでありますから、今この法律を審議し、あるいはまたこの問題がスタートいたしますと対米支援について新たな財政負担が必要になってくる。これはもう明らかなことであります。自衛隊後方支援をやるといたしましても、それは皆お金のかかる話であります。そういうお金の問題についての説明が何らなされていない。そういうことでもってどんどんと事を進めていくことが許されるのであろうか。私は非常な疑問を感じているわけであります。  例えば、今、国会に提出されておりますACSAという協定がございますが、これは、最初、九六年に締結されたときには池田外相とモンデール大使が署名をしております。そして、それを今回改定いたしましたときには当時の小渕外務大臣とオルブライト米国務長官が署名をしています。ガイドラインというのは一体どこでだれが署名をして始めているのか。これがあいまいであります。  そして、そういうふうな手法というものは今まで何回もとられてきている。その最たるものは久保・カーチス協定という沖縄返還の際の防衛局長と在日米軍の参謀関係の方との協定でありまして、これは、アメリカ側が政府間の確認を要求したのに対しまして、当時の愛知外務大臣は安保協に上程して最高首脳間で合意する方法をとりたいと提案し、そして協定が久保防衛局長らによって締結された同日、安保協が開かれまして、その報告を聴取し、これを承認した、こういう手続でもってオーソライズしたわけであります。  そういうふうな形でなぜやらなければならないのか。堂々と外務大臣が交渉すればいいのであります。そしてそれを国会にかければいいのであります。それをやらないからどういうことが起きているかと言いますと、国民皆さん方にはこれがわからないのであります。何をやっているかわからない。ガイドラインというのは一体何だ。これがまたわからないのであります。  そして、そういうふうなわからない言葉を使うことに我が国の行政府は最近非常に熟達してまいりまして、非常にわからない言葉を使う。例えば、周辺事態というのはこれも非常にわからない言葉であります。幾ら議論をしても、全然この定義の解明がされておらない。周辺というのもわからなければ事態というのもわからない、こういうことであります。あるいはまた、有事法制というのもこれもまたわかりにくい言葉であります。有事とは一体何だ、何か事があるということはわかるでしょうが、それが戦争が起こることだとかあるいは国家非常事態であるとか、そういうことはわからないのであります。  つまり、文章というのは、あるいはまた概念とかというのは、正確に事の本質を示す、そういう言葉を使うべきであって、それをわざわざわかりにくいネーミングを探しまして、そしてわからない文章でもってこれを発表していく。何度読んでもガイドラインはわからないという人が非常に多いのであります。  法律のつくり方も、私はどうもあのPKOの法律あたりから非常にわかりにくくなってきているんじゃないかと思います。最近つくられましたこの周辺事態法もやっぱりPKO法と構成がよく似ておりますね。それに比べますと自衛隊法などは非常にわかりやすい。憲法はもっとわかりやすいですね。読んだらすぐわかります。  ところが、そういうふうにしないのは一体なぜなのか。やはり主権は国民にあるわけであって、国民理解を得て、そして政治を進めていくということでなければならない。まるっきり転倒したやり方ではないかと思うわけであります。したがいまして、国会におきましては、十分主権在民の原則の上に立って国民にわかる審議をし、また意思決定をしていただきたいとお願いしたいと思います。  具体論といたしましては、例えば周辺事態の問題あるいは後方支援の問題、戦時国際法の問題あるいはまた自衛隊員諸君の人権の問題、そしてまたそれと同じく国民全体の人権の問題、いろんな問題がございますから、そういうことについてもし御質問をいただければ申し上げたいと思いますが、これで終わります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  100. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  これより公述人に対する質疑に入ります。  なお、公述人方々にお願い申し上げます。  御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。  それでは質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 自民党の橋本でございます。よろしくお願いいたします。  大変お忙しい中、公述人の先生の皆様には御出席をいただきまして、ただいま大変貴重なお話をお聞かせいただきました。勉強になりまして、本当にありがとうございます。  御存じのように、このガイドライン法案は長い時間、審議されてきましたけれども、なかなか国民皆さんにはまだ御理解されていないという面がたくさんあると思っております。たくさんの反対意見がありますけれども、これも国民皆さん日本の平和と安全を願う気持ちと思い、しっかりと私も受けとめていきたいというふうに考えております。  私も戦争を知らない年代ではありますけれども、スポーツの選手として世界各国を回らせていただいた経験があります。そのときに実際の戦争の怖さを身近に感じた一人でもありまして、質問させていただく前に、少しその話から入らせていただきたいというふうに思います。  今から八年前になるんですけれども、一九九一年一月に湾岸戦争が勃発いたしました。ちょうど一月というのはスケートシーズン、ウインタースポーツの真っ最中でもありまして、これからちょうど一月の大会に向けてヨーロッパに向かうときでありました。もしかしたら湾岸戦争が起きるかもしれないから今回の出発はもう少し見合わせた方がいいんじゃないかという声もありまして、どうしようか迷っていたところもありました。  ただ、やはり選手として、大会もありますし合宿参加ということもあって、早くに現地に行かなければいけないという気持ちが強かったものですから、単独でヨーロッパに出発することが決まりました。  そして、成田からヨーロッパ、ドイツのミュンヘンに向かうことになったんですけれども、機内に行きましたら、五百数十人のジャンボジェット機だったんですが、乗っているお客さんが三十人弱だったんです。そして、聞きますと、乗務員の方の数の方が多いということでした。私は、本当にこの飛行機に乗って大丈夫だったんだろうかという不安な気持ちになりました。そして、着きましたら、後で聞いたんですが、その飛行中に湾岸戦争が勃発したということでした。  緊急事態ということもあって、ドイツ、ミュンヘンの飛行場ではいろんな方が入国する人をチェックしていたんです。私は一人で行きまして、八年前ですので年齢は二十六でした。そして、どちらかというと童顔なものですから、十代、未成年者に見られたんです。そして、日本人らしき未成年者が一人で入国をしてきたということもありまして、すぐにだれよりも早く、国境警備隊というんでしょうか、そういう方たちに取り囲まれて審査に入りました。片言の英語とドイツ語で身ぶり手ぶりで話をして、パスポートを見せてやっと二十を過ぎている、もう成人している人間だということをわかってもらって、そして合宿やまた世界大会で来ているスポーツ選手ということも理解を得て現地に行かせてもらうことになったんですけれども、本当に身近にそういうことが起きたという怖さを感じました。  もう一つはユーゴスラビアなんですけれども、九一年六月に戦争が始まりました。私にとって一番の思い出となる大会が、やはり一九八四年に行われたサラエボのオリンピック大会でした。開催されましてから前後して三年連続で私はサラエボに行きまして、合宿ですとかまた大会でお世話になった地でもありまして、本当に思い出のある地でもあるんですけれども、そのサラエボが九一年に戦場となってしまいまして、連絡がとれなくなってしまった友人もたくさんおります。  その次の年の九二年にバルセロナ・オリンピックが開催されたことになるんですけれども、その地に私も、今度は自転車の選手として大会に行きました。そうしましたら、戦争をしている国のユーゴスラビアの選手が数人参加してきていたんです。はっきり言ってびっくりしました。そしてまた、いろんな声がありました。それは、母国が戦争をしているのに何で来たんだろうか、でもすばらしいな、いいことだよというようないろんな声がありました。  そこで選手たちが本当に自信を持って言っていたことにびっくりしたんですけれども、何と言われても今だからこそ出場して、夢を捨ててはいけない、やればできるんだという勇気と希望を持ち帰るためにあえてここに来たんだということを自信を持って言っていたんです。本当に私たち選手はユーゴスラビアの勇気ある選手に大変感激をいたしました。  それと同時に、もし日本が同じような状態になったときに私たちはどうなるんだろうか、事前にしっかりとした準備をしていなければいけないんではないか、いろんなことを不安に思いました。同じ場所で競技をしているはずの選手が戦場に行ってしまっている現実を見たときに、このままでよいのだろうかと、頭から離れない問題がいっぱいありました。改めて戦争の怖さ、平和の大切さを感じたときでもありました。  少し前置きが長くなったんですけれども、私はこのガイドライン法案は終戦後の日本安保にとって極めて有意義な法案であると思っております。  終戦後の東西冷戦の対立から、宗教、民族に起因するさまざまな紛争が多くなり、我が国周辺地域は世界で最も不安な状況にあると考えます。戦後、日本が平和であったのは、自分の国は自分でしっかりと守るという自衛隊日米安全保障条約があったからだと思います。したがって、今日、日本がやらなければならないことは、日米安全保障条約をさらに強化することでしっかりと日本アジア太平洋地域の平和と安全に寄与すること。そして、最も必要なことは、このガイドライン法案国民の皆様に正しく理解されて、日本はもとよりアジア太平洋地域の安定と平和の確保に役立つと多くの国民の皆様にしっかりと理解をしていただくことではないかなというふうに思っております。  このわかりづらいと言われるガイドライン関連法案なんですが、もう何回も同じことをお話ししていただいて恐縮なんですけれども、いま一度国民の皆様にわかりやすく、このガイドライン関連法案についての意味というものを三公述人皆さんに御説明していただければと思います。
  102. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 橋本先生、大変興味深く、また意味の深いお話ありがとうございました。また、一般的な理解が必要であり、そういう方向に向けて意見を述べよという御指摘も非常に適切なポイントであると思います。  今、先生がおっしゃいましたことの中で私が一つ補足させていただきたいと思いますのは、日本がここまで平和であったということは、先生がおっしゃられました内容もそうであろうかと思いますけれども、しかしさらに非常に重要なものとして、日本が経済発展にいそしみ、そして世界の中で非常に注目すべき、尊敬されるべき、そういう存在感を実現してきたからであると私は思います。  その意味で日本が平和であり続けるためには、安全保障の観点からだけでなく、国力のさまざまな分野において多角的に総合的に国民がいそしんでいくということが重要であると思いますし、とりわけ日本は経済立国の国家でありますので、その経済の存在感の強さと競争力ということで、世界的にもその国を大事にとらえようというような了解のされ方が実現したのだと思います。  国際社会の中ではどのように国の安全が実現できるかということについて現実政治、リアルポリティックといいますかリアルポリティックスといいますか、そのような観点から一つ思うことがございます。  それは国の国際的な地位が高いということがまず最大の安全保障であるということです。やはり日本は世界において重要な国であり続けなければならず、重要な高い地位の国に対して国際社会は基本的には国家を上回る大きな法廷とか権威はないわけですから、各国の自主的な抑制によって秩序が保たれるわけですけれども、そのような国に対しては安全についてほかの国がいろいろと介入しにくいということがあるのではないかということを一つ補足的に申し上げさせていただきたいと思ったことであります。  ですから、このようなガイドライン及び関連法案審議及び成立につきましても、日本国の根本が平和で経済発展を遂げ、そして社会発展あるいは文化的な発展についても尊敬すべき内実を持っているという前提があるということが必要であろうと思いますし、そのようなことの犠牲において、何をやってもより高い地位を獲得することができませんので、みずからの安全保障の環境を悪化させるということになると思います。  そう申し上げた上で、ではガイドラインというのはどのような観点から重要になったのかということについて私なりの考え方を、先ほども少し申し上げさせていただきましたけれども、さらに追加させていただきます。  冷戦が終結しまして、それからベトナム戦争など大きな冷戦期の戦争が終わりまして、基本的には世界におけるより平和な時代が来ると予定されてはいたと思いますけれども、民族紛争なり宗教対立等さまざまな理由による紛争が残りまして、またリスクは多様化し拡散していくという事態にもなりまして、全く武力介入のない理想的な時代というものがすぐには来ないということがだんだんわかってきたんです。ただし、そのような介入を行うときにも冷戦期のようなやり方では、先ほど申し上げたように、高度民主主義社会としてはもたないということをアメリカを中心に非常に強く敗戦の結果理解したのだと思います。  先ほど申し上げたように、介入するからには犠牲最少化でやりたい、それに向けてあらゆる協力をあらゆるメンバーに求めたいというような文脈の中で、日本にはこういう協力を求めたいというような要請、お願い、これがアメリカから来ていると思いますし、日本としてもそのような限りにおいては、自分の地域、自分の関係する地域でもありますし、そこにおける有事はあらゆる外交的手段を通じて防ぎたいけれども、もし政治的な限界により何かが発生したときには、その結果の犠牲が最小化されるような形で協力をしたいということではないかと思います。  ですから、ガイドラインの根本精神は、私は、そのように戦争犠牲を最少化するために各自が可能なことを協力してやるということで、日本アメリカと同じことをやるということは全く要求されていないし、アメリカは生還についての徹底的な訓練を受けたパイロットが飛んで必ず生還して帰ってくるということを訓練の中でも徹底してやっておられるわけで、必要があればそういうパイロットが出動するかもしれないけれども、日本に要求することは、そういう人がちゃんと全員生還できるように、また現地における犠牲が万が一出たときにはその救済について後方的な救済の手を差し伸べてほしいという、そういう内容であるというのがまず根本的な理解であると思います。  ですから、概念を使うならば、国家安全保障のためというよりは人間の安全保障のためのものである、ヒューマンセキュリティーという考え方なんです。  つまり、先ほど藤井先生もおっしゃいました、自衛隊の人権というような表現もお使いになりましたけれども、パイロットの人間としてのセキュリティーが確保できているか。また、戦火によって犠牲をこうむっている地域の人々の個々の人間としてのセキュリティーが確保できているか。それから、万が一日本に救援を求めてくるような方のそのヒューマンセキュリティーが確保できているか。そういうところに焦点を置いて考えるべき内容であると理解しています。  その上で、御存じのとおり、指針は三つの分野、つまり日本に直接攻撃があった場合の対処、それから平素からの対処、それからエリアズ・サラウンディング・ジャパンという、先ほど申し上げた日本をぐるりと取り巻いている状況についての協力、そこでの緊急事態への協力という三つの分野についてどういうことを日米がするかということを書いてございます。  以前の一九七八年の旧指針におきましては、例えば平素についてどういう協力をするかというようなことが明記されていなかった部分もありますが、そういうことを明記していくというプロセスをとったことは、非常にやっていることの透明性を確保し、情報的にも積極的に示していくという精神がそこにはあるかと思います。  想定され得る日本にとっての安全保障上のリスクというのは、リスクに対応する分野としてはこの三つであろうと思います。もちろん、直接攻撃があった場合はどうするかというのは考えなければならないし、しかし平素から信頼醸成的な努力をどう国際協調をしながら行うかということも考えるでしょうし、それから冷戦後はリスクがこの地域全体に分散していっていますので、多様化したリスクの中でどういう協力を、より重大事態にその事態を至らせないために、緊急事態に至らせないために行うかということを考えるというようなことであろうと思います。  日本分担の部分については、先ほど申し上げましたとおり、犠牲最少化に資する範囲のことというふうに理解すると、どういうところについてアメリカが積極的に日本にお願いをし、どういうところについてはそれほど積極的でもないということの仕分けがはっきりと見えてくると思います。アメリカが実に日本に強く要求しているのは、やはりこの犠牲最少化にかかわる部分であり、その部分についてはヒューマンセキュリティーの考え方からも協力してよろしいのではないかと思います。
  103. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 質疑者の持ち時間に制限がありますので、できるだけ簡潔に。
  104. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 冒頭も申し上げましたとおり、私は物事を比較的単純に理解しております。  日本という国を守る必要があるのかないのか。ないという議論はこの際省きます。守る必要があるという議論が国民の大半の意見だと思います。その際には、理論的に考えて、自分で守るか人と一緒に守るかしかない。自分で守るというのは、日本は現在の憲法のもとで放棄した路線であります。憲法第九条のもとで、必要最小限、専守防衛のための防衛の手段しか持ち合わせておりません。  これは、単純に日本と周りの国の兵力を比較してみてもわかる話でございまして、我が国陸上自衛隊員わずか十五万人、周りを見れば、韓国には五十五万人、北朝鮮には百万人、中国に至っては二百三十万人という膨大な軍事力を擁しております。海洋を渡る能力があるかないかというのはまた別の問題でございますけれども、結局日本は、独力で守るということはこれまで日本が歩んできた歴史的な経緯にかんがみても適当ではないということで、アメリカと同盟しているわけでございます。  したがいまして、万一どこかの国が日本攻撃するようなことがあれば、これは安保条約に基づきまして、アメリカは自国が攻撃されているのと同様に受けとめて日本とともに共同行動をとるということになっております。  日本に対する直接の攻撃に対する安保条約上の取り決めは以上でございますけれども、しかし日本周辺事態を安定化するために、米軍日本の防衛の周辺でさらに安定化のための努力を行う。  防衛の基本は抑止ということであります。世界の一部の国には、みずからが攻撃をしかけることを考えておるところもあるかもしれませんけれども、日米両国に関してはみずから攻撃をしかけるということは絶対にない、あくまでも基本は抑止であります。それは、どこかの国の侵略行動というふうなものが仮にもあれば、それに対応して十分な対応ができるということがその国をして侵略行動を思いとどまらせる、こういうことでございます。  今回のガイドライン法案のもとで想定されております我が国行動と申しますのは、先ほど申し上げましたとおり、世界各国においては議会の承認はおろか報告すらも要求されない程度の便宜供与であります。そのような便宜供与でもって私は日本が平和主義を逸脱するとはとても考えられません。この支援活動によって安保条約信頼性のあるものに強化されていく、私はこれがガイドライン法案の本質だと考えております。
  105. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 安全保障の問題で最近非常に国民の関心を集めているのは、朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮の行っている活動であります。  ミサイルか衛星かはともかく、全く通報なしにしかも日本列島に向けて撃ち込んでくる。こういうことが許されないことはもうだれにもわかっていることであって、わからないのは北朝鮮の人たち、そのまたリーダーであろうと思います。あるいは不審船の問題にいたしましてもそうであります。これは明らかにルール違反である。  しかし、そういうふうなことに対してどう対応していくのか、これはやはり私たちが賢明に冷静にやらなければならない。最近の議論を見ていますと、何か北朝鮮とけんかをおっ始めようと言ってもいいような、そういう動きがございます。これは極めて愚かで拙劣なやり方だと思うんです。やっぱり問題を解決すればいいわけであります。また、北朝鮮の人々が大きな財源を軍事開発に振り向けていくということによって自国の民衆自体が非常に苦しんでいるというようなことは、やはり彼ら自身によって解決していただかなきゃならない。それを側面から手伝っていくようなことができるのかできないのか、こういうふうに考えるべきだと思います。  私は、不審船などというのは、これはどういうふうにするかといえば、責任者である運輸大臣ですか、この方を罷免すればいいと思います。あなた方、一体何をやっているんだ、ちゃんとやりなさいというふうに言えばもうそれで次からはちゃんと捕まえますよ。非常にけじめのつかないことをやっているから、自分たちにも問題があるわけであります。  そして、ああいう無害航行ではない領海への侵入という事態に対しましては、これは警察権でもって十分に対処できるわけでありまして、何も自衛隊が出る必要はないわけであります。捕まえればいい、そして裁判にかければいいわけであります。そういうふうなやり方がある。  例えば、ミサイルあるいは人工衛星の打ち上げと言われた事態がございました。私は、あれは人工衛星の打ち上げだとそのロケットの軌道から判断しております。しかし、いずれにせよそれは許されない。何よりも下界の安全の問題がございます。それから宇宙の平和利用か軍事利用かという問題がございます。あるいはまた、打ち上げロケットを軍事に転用するのかどうか、攻撃ミサイルになるんじゃないか、こういう問題もございます。  しかし、そういうことは日本として、北朝鮮との関係を正常化して、そしてどんどんそれを要求していけばいいわけでありまして、ともに宇宙は平和利用、そして攻撃ミサイルは持たない、こういうふうにすればいいのに、際限なく争いを引き起こして、そしてそれが悪循環を来すというふうな、そんなことをやっていいのかどうか、これはもう十分冷静に論ずれば結論を出せるんじゃないかと思っております。  以上です。
  106. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 大変参考になる御意見をいただきましてありがとうございました。  時間がもう来てしまいまして、用意していた質問に次に行かなかったんですけれども、あしたは沖縄で地方公聴会が開かれます。日米安保で重要な米軍の基地を持つ地で行われるということは大変すばらしいことだと思いますし、五月十五日には沖縄本土復帰二十七年を迎えまして、来年は日本にもサミットがあります。  私は沖縄及び北方問題の委員会委員として何度か行かせていただく機会がありました。そこで、沖縄の重要性についてお聞かせいただきたかったんですけれども、今回はこれで終わりにさせていただきますけれども、またこの法案が一日も早く国民の皆様に御理解が得られるようにしていくためにも頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。  本当にありがとうございました。(拍手)
  107. 石田美栄

    ○石田美栄君 民主党・新緑風会の石田美栄でございます。  三人の公述人の皆様、本当にありがとうございます。時間がございませんので、すぐ質問に入らせていただきます。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  まず、二点につきまして、猪口公述人岡本公述人の御意見を伺いたいと思います。  この特別委員会でも、周辺事態が一体どこなのかという議論を延々してまいりましたが、幾ら議論をしてもはっきりしない。多分はっきりすることができない、しない方がいい、あいまいにしておいた方がどうもいいんじゃないかということなのかなと思うんですが、多分、猪口さんも岡本さんもそうお考えなのかなと思うのですが、そうでしょうか。そして、それはこのガイドライン法案そのものを有効なものにするためにどうしてそうなのか、御意見をお伺いしたいと思います。  そしてもう一つ周辺事態が地理的概念でないということも繰り返し言われてまいりましたし、先ほど猪口公述人も、そういう考え方が世界の普通の考え方だとおっしゃいました。すると世界的規模に拡大適用されることになるというふうに言われるんですが、そのことに対してどのようにお考えでしょうか。  この二点、お伺いしたいと思います。
  108. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 大変実質的に重要な御質問をいただきまして、ありがとうございました。  先ほど申し上げましたように、この周辺事態の意味、内容につきましては、あいまいといいますよりは、もう少し積極的な意図ある表現ではないかと思うんです。あいまいにして裁量の範囲に任せておこうというそういう発想からではなく、先ほど申し上げましたとおり、英語ではエリアズ・サラウンディング・ジャパンですから、極めて概念的にははっきりした範囲が想定できる内容となっています。それを特定の具体的な地理的な場所あるいは国名、場所の名前等を列挙することで定義するようなことは、そもそも日本安全保障環境を悪化させるものでありますから、安全保障条約あるいは協定その他のたぐいのあらゆる枠組みの持つ目的そのものに反することになりますので、一般的には、そういう具体的な国名及び地理的な場所の名称等を含む、含まない、列挙するという方法はとらないということであります。  リージョナルディフェンスの場合は、先ほど申し上げたように、域内活動といいますか、適用範囲と、あと域外活動ということを構成国の国境範囲をもって定義するというやり方でいたしますけれども、二国間の取り決めにつきましては、今申し上げたように、この取り決めはだれを対象にしたことかなどということを具体的にするわけがないと思います。それは国家間でなくてもどういう社会とか人間関係におきましても、特別に仲よく協力していこうというときに、だれに対してというようなことを具体的に明らかにすることは余り合理的でないと思う場合が多いのではないでしょうか。ましてや、国家間の関係におきましては、そのような二国間の協力関係について、対象国あるいは対象の地理的な具体的な名称をどこであるというようなことを言うことは、もう不必要に自分の安全保障上のリスクを増加させることであり、安全保障政策そのものの意図に反することで、明らかにやるべきでないということでございます。  では、二番目の御質問にありますとおり、そうであれば世界的規模に広がるのであろうかということにつきましては、これは、ですから英語の原典をよくごらんになって、具体的な個々のケースについて常にそこに立ち返って政策判断をしてもらうというのが本筋であって、そこの部分を読めばエリアズ・サラウンディング・ジャパンということで非常に明確な表現であります。それはほかにはもう表現できない具体的な表現であります。サラウンドというのはぐるりと取り巻くということでありますから、日本があって、日本をぐるりと取り巻くエリアであるということで、そんな遠くまでの、日本を中心に全世界地図をかいているわけではありませんので、全世界にぐるりと日本を取り巻く状態を広げて考えるということは、政策決定者として常識的ではないわけですから、そのような解釈の余地が残っているというふうな心配をすることは必要がないことだと思います。  ですから、先ほど申し上げましたように、エリアズ・サラウンディング・ジャパンが周辺という表現で訳されましたことにつきましては、若干の難しさがあったのだと思いますけれども、しかしこれをほかの言葉で言いかえることは極めて困難だと思います。例えば、近隣という言葉を使うと非常によろしくないという判断がございますし、では日本をぐるりと取り囲む範囲事態についてということも非常に格調のない表現でございますので、ただ意味としてはそういうことであるということをきちっと申し合わせておくということで、日本の不必要なリスクは確実に回避できるというふうに考えます。  以上でございます。
  109. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 周辺事態というのは、先生の御質問の御趣旨にもありますとおり、ややわかりにくい言葉でございます。我が国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態周辺事態と呼ぶという政府の当初の説明は、私は、国民がこのガイドライン法案というものに対して一種の疎遠感を持ってしまった一つの原因かなとも思います。  ただ、国会を通じる御審議によって、今や政府統一見解というものが出され、周辺事態が何であるかというのはかなり明確になってきましたから、私は今の段階としてはこの政府の統一見解でよろしいかと存じます。内容は御案内のとおりでございますから、省きます。  ただ、私が当初から思っておりますのは、これは先ほどもどなたかから御指摘がございましたけれども、あくまでも安保条約の枠内の話でございます。安保条約には周辺事態という言葉は出てまいりません。極東という言葉が出てまいるだけでございます。つまり、親の条約である安保条約が想定している区域を超えてガイドライン法が適用されるということは考えられないわけでございます。そうすると、どうして極東以外に周辺事態という新しい概念を持ち込む必要があったのか。これが立ち上がりの議論をかなり混乱させてしまったことを私は残念だったと思います。  そうすると、次の問題は、では極東というのはどこからどこまでだという議論になります。これは私は昭和三十五年の政府統一見解にもう一度お戻りいただきたいと思うのでございますが、そこには、「在日米軍日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域」とございます。つまり、在日米軍基地をベースとして米軍が発進するところをいわば事後的に極東と呼ぶ、こういう話であります。  例の有名な、「フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域」云々と申しますのは、後からあくまでも例示として出された話であります。つまり、もともと安保条約が想定しておりました極東というのは、ここからここまでという明確な線引きはなされておらなかった、あえてその時点での例示をすればフィリピン、台湾を含み云々と、こういうことになるわけであります。  その後、この例示がひとり歩きをしてしまったと私は思います。本則の方が忘れられてしまっている。本則は何を書いているかといえば、一言で言えば、その時点時点でアメリカ判断し、日本判断し、どこが安保条約を適用させるべき地域であるかということをそのときに判断するということでございます。英語で言いますシチュエーショナル、つまり、そのときの戦略環境、政治環境、国際環境によってこの極東という区域が変わり得るんだと、これがもともとの安保条約の趣旨でございます。  したがいまして、ガイドラインがどこからどこまで適用されるか。私は極東の範囲を超えることはないと存じますけれども、この極東の範囲というのは結局はその時々に決めていくことだと思います。それゆえにこそ、後段の先生の御質問でありますけれども、どこまでも広がっていくということがあってはならない。それはまさに政府が、そして国会御自身でよくチェックされていくべき事柄だと思います。
  110. 石田美栄

    ○石田美栄君 国会承認あるいは事後承認によって支援活動や捜索救助活動が始まって、その後、国会への経過報告の必要はないのか、またいつどのようにしてその活動を終了させたらいいのか、そういう疑問を私は非常に持っているんです。  午前中に元陸上幕僚長でいらっしゃいました冨澤公述人もその点をレジュメにずっとお書きになっているんですが、途中から国連軍とか多国籍軍による集団的安全保障の強制措置に移行するというふうなことになったときには我が国からの支援はどうなっていくのか。そして、その中の米軍が関与している部分は、地位協定とかガイドライン関連の部分はできるけれども、一体この行動に関する支援が続けられるものかどうなのか、その辺のことなんです。  私たち民主党の方では、六十日後に再承認の修正案というのを出しているんですけれども、先ほど猪口公述人アメリカ戦争権限法の六十日後の承認のことをおっしゃいました。そのことも含めて、今回のこのガイドライン関連の周辺事態支援等のことはどのようにして終わりが来るのか、そのあたりについてどのようにお考えになりますでしょうか、猪口公述人、そして岡本公述人の御意見をお伺いできればと思います。
  111. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 原則的に国会承認をそもそも盛り込んだことが大変に重要であったと私は考えます。その上で基本計画について承認を受け、そして行動に移るわけですけれども、その基本計画を大幅に変更するときには報告が必要でございます。  さらに、変更の程度によるかと思いますけれども、根本的に違う基本計画、基本方針を策定するということであれば、さらなる閣議決定とそれの国会承認がその都度必要になるというふうに理解してもよろしいのではないかと思いますが、一度一つ事態に対して基本計画を策定して国会承認を原則的に得るという手続を踏みましたら、その範囲の中で一定程度の活動を展開するという段取りになると思います。  その後の報告については、少なくとも報告は必要であると思いますし、大幅な基本計画の根底を変えるような何か必要が出てくる場合には、やはり今回の法案にのっとって再度の国会承認をとればよろしいというふうに考えます。  どういうふうに終了するかということにつきましては、緊急事態が終結した後、終結の仕方についても変わるかもしれませんが、終結した後、国連の何らかの平和維持機能がこの地域に投入されるということであれば、それと日本がどうかかわるのかということでさらに国会で審議されたらよろしいと思います。  つまり、それについてどういうふうにかかわるかということは、基本計画に最初のうちに盛り込むことは難しいでしょうから、その着地点が見えてきたときに、大きな日本の関与が必要であるということであればまた審議なさってもよろしいかと思います。どのような終わり方をするかによりまして、それがさらなる国会承認となるのか、それとも基本的には、基本計画にのっとって予想の範囲で着地しているので国会への結果報告というふうになるのか、そのときの世論も見ながら御判断ということにもなるかと思います。  いずれにしても、先生のおっしゃる少なくとも最小限の報告は必要であろうと思います。  それから、六十日以内の派兵を許す戦争権限法につきましては、それまでの国会承認がなされていない場合でございますので、アメリカの場合はそれまで国会承認が必要ないというふうに解釈できるわけです。(「そんなことないよ」と呼ぶ者あり)もちろん、厳密に言えばそうではないという解釈もできますが、議会がそれを要求しない限りにおいてそのまま続行できるということがありますので、日本の場合は基本計画のところで国会承認をするということになっていますので、六十日後にさらに国会承認をするということの必要性は、基本計画の変更がない限り、どういうふうに理論的に位置づけていいのかということが少し残るかと思います。にもかかわらず、やはり日数の限界を設けることを一つの歯どめと考えるという、そういう概念を導入するのであれば、その意味もまた審議してもよろしいかと思いますが、論理的には日数で切るというよりも、基本計画を承認していれば、アメリカの場合とは少し違ってもう日本では承認した形となるということになるのではないかと思います。  以上でございます。
  112. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 現在の修正案におきまして、国会承認と国会への報告についてはかなり明確な規定が既になされていると存じます。  私は、先ほど来、このようなことは諸外国では例を見ないことであるということを申し上げてきておりますけれども、それは、私はこのような日本の体制の中でも必要はないと申し上げておるのではなくて、あくまでも論旨は、国会の承認、国会の承認ということを余り強く言い過ぎることによって、国民日本がこれからいかにもおどろおどろしいすごいことをやろうとしているんだという印象が過度に与えられてしまっている、その点についての懸念を表明したわけでございます。  国会は、憲法に従いまして国政調査権も閣僚の出席要求権もお持ちであります。それから、この法律自体に「内閣総理大臣は、」「国会に報告をしなければいけない。」ということが書いてございます。私は、現在の規定ぶりのもとで国会としての十分なコントロールというのは可能と存じますし、基本計画が仮にも変わるようなことがあれば、それに対して修正ないし停止を求めるのは国会の当然のお役目かと存じます。
  113. 石田美栄

    ○石田美栄君 もう一点くらいになるかなと思いますが、船舶検査活動がこの周辺事態法の中から抜けたことについて、近い将来、別の法律としてできなければならないわけですけれども、そうなることの是非、そしてそうなったことのメリット、デメリットについて同じくお二人の公述人にお伺いしたいと思います。  また、国連決議に基づきという部分は両公述人岡本さんは最も成立しにくい地域なんだからということをおっしゃいましたし、猪口公述人はそれは適切な論理の立て方が重要であるというふうにおっしゃったので、この部分は、あること、ないことによってはどうかということをお尋ねしようかと思ったんですが、別法になることについての功罪について御意見を伺いたいと思います。
  114. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 先ほど申し上げましたように、私は個人的には政府原案のままでいく方が全体としての整合性と位置づけがわかりやすい、先ほどから議論がありますように、国民にとってもわかりやすいというふうに思いましたが、そうならないのであれば別建ての法律でということで、その場合にもやはり国連決議が私は必要であると考えます。  成立しにくい地域ということは、どの地域についてもある程度冷戦後の今日では言えるかもしれませんので、また冷戦後の国際社会の中で国連をどう日本は育てていくかという立場も考えてもよろしいかと思うんですね。その意味で、やはり国連の安全保障上のそのような機能について、より大事な位置づけをしていくという姿勢を示す国であってもよろしいと思いますので、またいろいろな面での一つの歯どめともなるわけでありますから、やはり国連決議ということが必要であろうと思います。  警告射撃の問題は、やはり非常に難しいというふうに私自身理解いたします。要するに、英語ですとスレットと言うのですか、スレットというのはデリバーできなければやるべきでないので、デリバーできないスレットをやったときには非常に国家威信が傷つきますので、警告をしてそれが遵守されないとき、相手がそれに屈服しないときにはどうするのかということに直ちになりますので、デリバーできない、具体的にその次に対応できない、相手がその警告を認めない、それに屈しないような行動をとったときに、警告というのは、それに対して自分の意図に従わなければ重大なことになるということを込めて警告するわけですから、その重大なことに至らすことができないで警告だけをするということは、警告がデリバーできていないということになります。  私は、警告射撃はたとえ認めなくても、それでは意味のない法律かというとそうではなくて、先ほど申し上げましたように、本当にそれが重大なことの内容であれば、やはり安保理に通報するという方法がありますし、報告するということもできますし、国際社会にどう対処すべきかということの大きな注意を喚起することによって、日本単独でそういう事態に対応するよりは、実際には日本の安全保障を図れるのではないかというふうに今現在では考えております。  以上です。
  115. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 我が国の周囲は申すまでもなく海で囲まれております。したがいまして、今度のガイドライン法案によって日本周辺地域の安定化を図るというときには、どうしても領土領海におきます後方地域支援それから海上におきます捜索救難活動、それとともに船舶の検査活動というのも重要な対米支援の一翼を担うべきものであったと考えます。  その意味では、この部分が欠落したのはやはり残念だったと思います。
  116. 石田美栄

    ○石田美栄君 ではもう一点、ちょっと全部お答えいただけない部分があったかなと思いますが、もう一点、岡本公述人にお伺いしたいんですけれども、後方支援活動の実施区域が指定された後、後方地域支援、海空の警備の必要性について、実施区域が指定されますね。その後、地域支援の警備が必要になります、空と海。これはどういうふうにお考えになりますでしょうか。  ですから、領域の警備、その場合どうなりますか。領海内だけなのか、あるいは経済水域内までになるのか、これを海上保安庁だけで対応できるのか、そうすると自衛隊の任務規定とすべきなのか、この点についてはどのようにお考えになりますでしょうか。
  117. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 現在御審議なさっておられるガイドライン法案というのは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺地域事態に関するものでありますけれども、お尋ねの点は、どこかの国あるいはテロリストたちが、いろいろな種類の脅威があると存じますけれども、我が国の領域、領海に直接の脅威となったときにどう対応するか、そういう点だろうと思います。  我が国には個別自衛権というものがあるわけでございますから、当然現在の法制のもとでも動員し得るすべての手段をもって私は我が国国民の生命と財産というものを守る、そういう行動がとられることになるのは当然でございます。  ただ、その手段というものが必ずしも十分具備されていない。我が国の領海を国連の新領海条約に禁止されているような形でどこかの国の不審船が突破して入ってきたといたしましても、我が国の海上保安庁も海上自衛隊もそれを有効に排除する権能と手段がない。そういったような点は、またこのガイドライン法案とは別途御審議いただいてしかるべき問題だと思っております。
  118. 石田美栄

    ○石田美栄君 どうもありがとうございました。(拍手)
  119. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 公明党の日笠勝之でございます。  きょうは三人の公述人方々、公私大変にお忙しいところ当委員会にお出まし願い、貴重な公述、御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  では、発言された順番に、まずお一人ずつ御意見、お考えをいただきたいと思います。  猪口先生、先ほどアメリカベトナム戦争を反省して、いわゆる戦死最少化作戦というんですか、戦死最少化戦略ということで、いわゆる米軍兵士の全員生還を前提にするとか、また地上軍部隊の投入はなるたけ控えてピンポイント爆撃であるとか、こういうのが今のアメリカの戦略になっているということをおっしゃいました。  ところが、コソボのNATO軍中核である米軍を見ますと、確かに三人のアメリカ兵のパイロットが帰ることについては、黄色いリボンだとかいろいろ報道もされ、大統領もいろいろ動かれたようでございますが、それは恐らく、先ほどちょっと先生おっしゃった中で人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーということをおっしゃいました。これからは一人の人間を守らないような安全保障では意味がないということを、先日、毎日新聞か何かのインタビューでもお答えになっておられましたが、それらを総合的に考えますと、自国の兵士の戦死最少化戦略はいいが、他国の誤爆で、どうあれ陳謝はされましたけれども、それについては余りコメントもないようでございます。陳謝されていろいろ修復はされました。  そうすると、人間の安全保障とアメリカの今考えている戦死最少化戦略、コソボの今の問題等からどうリンクされているのか、関連があるのか、お考えをいただければと思います。
  120. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 先生のおっしゃるとおりの矛盾が出ております。しかしそれは、要するに作戦が失敗してミスが出たという、戦死といいますか非武装市民の犠牲であるわけで、初めから非武装市民の犠牲を含めて無差別殺りくの手段としての空襲を使うというやり方ではないんですね。  二十世紀、ライト兄弟により飛行機が発明されて以来、飛行機を戦闘機として作戦活動に使うという長い不幸な歴史を人間社会は生きてきてしまったわけですけれども、その中で、その大半の時間においては、それは無差別殺りくの手段として非常に効果があるというような作戦の立場から戦闘機は使われていた。その最終局面がやはりベトナム戦争の村落の焼き討ちであるとか激しい北爆の活動であったというふうに理解しますが、その結果アメリカは、にもかかわらず負けたということの分析の中で、自国の兵士の生存はもちろんのこと、相手国における非武装市民の犠牲も出してはならない。なぜならば、それが反戦世論につながるからだという理解なんです。ですから、ここにおけるやはり民主主義社会の成長の重要性と世論と反戦意識の重要性ということを私たちは改めて敬意を持って理解しなければならないかしらというふうに思います。  それを前提に、やはり非武装市民の戦死も防がなければならないという作戦思想は立てているのですが、思想はあってもテクニックが伴わないという問題があると思います。  コソボの空爆、そもそも空爆手段があのような状態において有効な手段かどうかということについて別途私はたくさんの議論をいたしたいと思いますけれども、この委員会目的ではないので控えますが、空爆手段をとったアメリカ立場としては、もちろんコソボ地域におきますアルバニア人、セルビア人、あらゆる人を含めて非武装市民の戦死は意図した結果ではない、それはですから誤爆ということになってしまうわけです。  にもかかわらず戦争を行うのであれば、誤爆が発生し得るのであるから、もし戦死最少化作戦をとるのであれば、そもそも戦争をしないというのが正解であるわけでありますが、そこがやはり今後アメリカが解かなければならない矛盾であると思います。つまり、戦死を出さずに、そして誤爆をしないで非武装市民の戦死も出さないような作戦というものが理論的には可能であっても実際には可能であるのかどうかということの問題とアメリカはこれから悩みながら向き合わなければならないんだと思います。その結果どのような答えになるのかは、私たちはその思想とテクニックの両方を注目し続けるべきだと思います。その結果、日本のような平和主義の立場アメリカがより理解を示す二十一世紀があればよろしいと思います。  しかし、その際にも、地域的な、まさに人間の安全保障の破綻、例えば今回のコソボに見られましたような事態に対して国際社会がどう介入するのかということについて、ほかの答えがなくそれを批判するというのもまた無責任かという問題はありますけれども、アメリカはその悩みの中で、非武装市民も死なないはずであったという理解の上で作戦活動をやっているんですね。  御存じのとおり、ボスニア和平の前段階で若干の空爆で和平案を引き出せたというやや見当違いの理解から実は今回同じような方法をとったわけですが、セルビア人にとってのコソボの歴史的な意味は全く違いますので、非常に戦闘が長引きました。戦闘が長引けば誤爆の可能性であるとかさまざまなミスが頻発するようになるというのは、やはり作戦の常であると思います。最も先端で訓練を受けたパイロットたちは初期の段階で発進していますので、その後ずっと何日も続けば、やはりいろんな問題が出てくるという結果になっています。  いずれにしても、このように長期に行っている戦争の中で、本来アメリカが実現したかった思想と現実のテクニックとが合わなかったというのが結果であって、にもかかわらず思想がそこにあるということは、やはりアメリカとの非常に深い協力関係にある日本としてはフォローするといいますか理解してあげるべきではないかと思います。
  121. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 ありがとうございました。  では、岡本先生、二点ほど。  一点は、先ほど日米安保条約日米同盟は抑止を高め、この周辺事態安全確保法もそれに類する旨の発言がございました。抑止を高めるのはおっしゃるとおりだと思いますし、私たちもそれについては理解をしているつもりです。  そこで、最近は抑止と対話ということで、この対話の部分、先ほど猪口先生もおっしゃいましたけれども、外交交渉といいましょうか対話といいましょうか、このアジア太平洋地域における対話、特に先生は外務省にもいらっしゃって、外交というものが今後の二十一世紀のアジア太平洋地域には非常に重要なものとなると思います。  そこで、抑止と対話という観点で、特に対話の部分、アジア太平洋地域における日本の対話ということについて、どのような手だてがあるのか、またどのような構想を持つべきであるのか。時間の関係で簡単でございますが、お答えいただければと思います。
  122. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 対話はどの国にとっても、特に日本のようにみずから自己完結的に防衛する手段を持っていない国にとっていかに重要であるかは、これはもう言をまたないところであります。  特に日本は、現在残念ながら国際社会において友人が少のうございます。本来、アジアの諸国と日本はもっと緊密な関係を築き得るはずだったと思いますが、一つ一つの理由については申し上げませんけれども、全体として見れば、日本という国がどのくらいの重さを持っているか、大変疑問な状況になってまいりました。今まで日本は、欧米とアジアの間のかけ橋になるんだ、例えばG7サミットでも日本はアジアのスポークスマンとして話をするんだということで、まあいわば日本側の思い込みでやってまいりましたけれども、残念ながらアジアの側に日本にそのような役割を期待する部分が少なくなってきている。  私は、日本はもう少しみずからの価値観というものを前面に出し、アジア諸国にとっても予見可能な外交ということをやっていくことが大変に重要かと思います。  世代は各国で変わってきております。我が国の外交上の極めて大きな桎梏でもあり、転換点でもありました戦争、そしてそれを引きずった戦後の遺産というのもだんだんと今清算されつつある。私は、今こそ特に若い世代との対話というものを重ねていく、そしてその際に、日本がみずからの座標軸、アジアの一国としての座標軸というものを向こう側にわかる形で示していくことが重要だと思います。その座標軸の一つが平和外交であることは言うまでもないところであります。
  123. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 もう一点、岡本先生にお願いしたいのは、先ほど船舶検査活動についてもお尋ねがございました。これは衆議院の段階で全面削除され、修正されて参議院に送付されてきたわけでございます。  そこで、先ほど猪口先生と岡本先生の間で、いわゆる船舶検査活動国連決議を猪口先生は非常に重要視された御発言でございました。岡本先生の方は、今の日本周辺を見渡して一番国連安保理決議が成立しそうにない地域である、こうおっしゃいました。ということは、船舶検査活動において、原案には国連安保理決議に基づくとありましたけれども、これは削除した方がいいのか、削除せずに何かほかのことをつけ加えた方がいいのか、それのお考えをちょっと岡本先生にお伺いできればと思います。
  124. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 先ごろ、マセドニアにPKOを派遣する件で、中国が拒否権を発動して安保理決議は成立いたしませんでした。自国と非常に離れた地域にあって、戦略的なかかわりの薄いマセドニアに対してであってすらそうであります。この中国の近接地域である極東地域において、さらにはロシアもおります、アメリカとの間で利害関係が完全に一致するケースというのは、私はむしろ想定できないと考える方が現実的だと思います。  そういたしますと、現在の考えというのは国連決議ではなくて国連安保理決議であります。一カ国が拒否権を発動すれば、それが国際的な行動の大原則となってしまう。中国ばかりを挙げるのは不当かもしれませんけれども、フランスにせよイギリスにせよ、どこかの国が自分は嫌だと言えば国際行動はとれないということが本当に正義の公平という観点から考えていいものなのかということは、私はやはり問題にせざるを得ないと思います。  常任理事国五カ国が一致して決議を通すときには、これは相当の条理というものが認められるでしょうから国際社会がそれに従って行動することは当然と私は思いますが、一カ国が反対すれば何もできなくなってしまうということに、日本はみずからの判断というものを停止させたまますべての行動をゆだねてよいのかどうかというのが私の疑問であります。  したがいまして、国連安保理決議というのはもちろんいいことでありますから成立すればそれにしくはございませんが、仮に成立しない場合にも日本として国益に基づいた行動ができるように、その他の国際約束、あるいは国連憲章の第八章が認めておりますところの地域取り決めというものに従った要請行動が、船舶検査というものが行われたときには、私は日本はそれに参加できる道を法律上も開いておくことが必要かと存じます。
  125. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 藤井公述人にお伺いしたいと思います。  午前中も公聴会がございまして、三人の公述人の方から御意見を伺いました。その一人に栗山尚一駐米大使、現在、早稲田大学の客員教授をされておりますが、栗山先生の方から駐米大使時代の体験を通して、周辺事態安全確保法、ACSA改定、自衛隊法一部改正もあるのでございますが、三法案と私たちは言っていますが、この三法案法案が固まり、今日まで議論をしていただいておる時系列で見ると、こういうふうにおっしゃっていました。  九三年、九四年の朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の核疑惑、NPTの脱退宣言で非常に朝鮮半島緊張が高まった。それで、北朝鮮の暴発を危惧し、安保体制の効果的な運用に資するため、日米共同宣言があり、また新ガイドラインがあり、そして今の三法案へと結実したのだと、このようなことを栗山先生はおっしゃっておられました。  藤井公述人は、月刊社会民主のことしの五月号の「周辺事態の発生と国民戦争協力」という論文の中でこうおっしゃっていますね。「新ガイドラインが中国に向けられたものであることは、疑問の余地がない。」、米国が「中国が脅威にならないようにするこの「関与と拡大」戦略の一翼に位置づけられているのが、新ガイドラインなのである。」、こういうふうにおっしゃっていますね。  ところが、当委員会では、この周辺事態はどちらかというと朝鮮半島有事を想定した質問が大変多かったんです。また多いんです。ということは、ちょっと意外でございまして、先生は疑問の余地がないと断定されておりますが、何か根拠ないしは想定されるお考えがございますれば、なぜこういうふうなお考えに至ったのか、お聞かせ願えればと思います。時間が短時間でございますが、よろしくお願いします。
  126. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 余りその点は論点としては浮上しておりません、確かに。ただ、問題はやはりアメリカの冷戦終結後の全体的な戦略の中で出てきている。  まず、大規模地域紛争湾岸戦争及び朝鮮半島事態と、こういうふうに設定されましたからアジアにおいては朝鮮が問題になっているわけですけれども、しかしアメリカが考えているのは、アジア太平洋地域においてアメリカに対抗できるようなライバル国家が出現するのは許さないと。つまり、アメリカは世界で最強であると同時にアジアでも最強なんだと。したがって、中国の台頭、アメリカに挑戦するような形での台頭は許さないというふうになっております。  それから、具体的に言いますと、アメリカと中国、台湾の関係において、やはり台湾関係法というのが非常に大きな意味を持つことになると思います。そこでは台湾安全確保の手段を提供する、アメリカの方が。同時に、台湾有事対応に必要な兵力をアジア太平洋に維持する、こうなっている。それがどこかということはわかりませんが、しかし沖縄とか、あるいは日本に駐留している米軍及び第七艦隊が非常に大きな役割を果たすということは、せんだっての台湾海峡におけるミサイル騒動の際にも非常にはっきりいたしました。やはり空母は台湾海峡に向かって集中していくわけです。  だから、そういう点からいいますとやはり一番のねらいは対中国であると。そして、それだからこそ日本に全面的な協力を求める必要がある。それから、施設の提供という点でも、非常に大規模なものをアメリカとしては考えている。やっぱり五十万、六十万という軍隊を運用するような事態というものを考えているだろう、こういうふうに見て間違いはないと思っております。  朝鮮半島の脅威というのは、これは当面の段階においては大きな問題ですけれども、しかしそれは解決可能な問題である、割合中期的な期間において解決可能な問題であると位置づけているように読み取れます。そういうふうに考えています。  よろしいでしょうか。
  127. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 もう残り時間がありませんので、三人の先生方に感謝を申し上げて終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  128. 畑野君枝

    畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。  本日は、公述人皆さん、お忙しい中本当にありがとうございます。  私たち日本共産党は、今度の周辺事態法案及び日米ガイドライン関連法案は、戦争を放棄し、そして武力の威嚇行為を禁止した憲法九条に真っ向から反する戦争法案だと考えております。  私は、沖縄に次ぐ米軍基地を抱える神奈川県選出の議員としてお伺いしたいのですが、横須賀には米第七艦隊空母機動部隊、キティーホークの母港があり、アジア一と言われる相模総合補給廠、浦郷弾薬庫、上瀬谷通信基地、鶴見と小柴の貯油施設、そして横浜港の中には横浜ノースドックが置かれているなど、こうした状況でございます。また、海軍厚木基地では、空母艦載機による訓練の爆音に周辺住民が大変苦しんでおります。  沖縄では、航空機爆音についての県の初めての調査でも子供たちの健康や学習への影響、住民への深刻な影響が明らかになっておりますし、横田基地訴訟でも東京地裁は米軍の爆音は受忍限度を超えると言っているように、まさに沖縄でも神奈川でも首都東京でも米軍の爆音に苦しんでいる、そういう現状があるわけでございます。  私は、藤井公述人に幾つかまず伺いたいというふうに思います。  野呂田防衛庁長官が、沖縄が周辺事態に巻き込まれる可能性について米軍基地が多く存在することを考えてもあり得る、このように答弁され、その後訂正をされたわけですが、沖縄に次ぐ米軍基地県神奈川が周辺事態法案との関係でどのようになるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  129. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 横須賀が空母の母港になりましたのが七三年、そのわけは、やはりそれまでのベトナム戦争、南の方に向いていたやりを北に向ける、そして、それ以後非常に米ソの、当時のソ連との対立が激化しまして、非常にもう戦争寸前というところまで行ったわけですね。  そういう中で、ずっと厚木が母港となり、それまでは例えばベトナム戦争中であれば、タイコンデロガという水爆をおっことした空母も、空母に飛行機を積んだまま横須賀に入っていたわけです。ところが、母港になりましたのでその飛行機をおろすということになって、どうしても訓練をしなくちゃならないということでNLP訓練、夜間離発着、これが厚木で行われるようになり、それからさらに、八一年ぐらいからますます冷戦が激化して、そしてどんどんこの被害が増大したわけです。  同じような形で北方を向いているかといえば、今はもはやソ連は崩壊しているわけです。しかし、それでもやっぱりずっと同じようなことが行われてきたわけです、最近はやっと硫黄島の方へ少し移りましたけれども。ただ、有事においてはやっぱり同じようなことがやられております。  だから、横須賀に駐留している、配置されている第七艦隊やその他補給部隊等がどういう役割を今後果たしていくかということを考えますと、第七艦隊は何といったって日本周辺だけではなくて東南アジアにも、あるいはまた中東の方にも向いているわけです。ですから、これが削減され、あるいはまた母港が撤去されるというふうなことがない限り、やはり攻撃力の一番中心を占めている空母機動部隊が存在する神奈川というのは有事とは非常に密接な関係を持つことになるし、それから特に神奈川の場合は沖縄よりも一層、後方支援の基地としての役割を強く持っています。  ですから、そういう意味では周辺事態において非常に密接な関係を持ち、かつ、そこから生じてくるいろんなはね返りというのがございます。つまり、相手の反撃、後方支援基地に対して反撃するのは戦時国際法上は当然の権利になっているわけですから、だから向こうが撃ち込んでくるということもあり得るわけです。そういうふうな問題があろうかと思います。
  130. 畑野君枝

    畑野君枝君 藤井公述人は、朝日の九八年六月二十四日の山口氏の発言に関連して、周辺事態への対応として米軍の活動に対する日本の支援について、自衛隊と民間の行う対米支援の役割を述べていらっしゃいます。  今、神奈川のことについても大変お詳しく触れていただいたんですが、横浜港に専用のバースを持つ外国船の会社がアメリカの有事の際には優先的に軍事出動に当たる、こういう契約をアメリカ政府と結んでいることが米運輸省海事局資料で明らかになりました。周辺事態になれば横浜港は米軍の契約船が最優先される、そういう輸送拠点、後方地域支援の場所になるんじゃないか。民間商業、貿易に重大な影響が出るおそれも指摘されております。  その点で、自衛隊と民間の行う役割、違いも含めてお話をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  131. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 自衛隊の場合は、実際に考えていることは何であるかといいますと、これはやはり武装部隊としての行動です。決して、輸送能力とかその他兵たん能力というのは自衛隊自体のためには保有しておりますけれども、よそのお手伝いをするぐらいゆとりはたくさん持っていないわけです。  しかも、一方では、アメリカが必要とする兵たんというのは膨大なものです。朝鮮戦争のときでも何千万トンというものを日本を経由して送るとか、そういうようなことが必要であり、かつ、そういうものを調達する上で日本というのは非常に大きな役割を果たしたわけです。兵たん庫であったというふうに言ってもいいと思います。  そういうふうに考えますと、兵たんの仕事を割り振りするというふうなこと、計画するというふうなことを自衛隊がやるということはあると思うんです。しかし、実際に担うのはだれかというと、それはやはり民間の業者であり、あるいは地方自治体であるというふうに考えていいんじゃないかと思います。  ことしの防衛予算の中に入りましたけれども、コンピューターによって兵たん状況を掌握し、その能力を調査し、そして必要なものを調達していくというふうなシステムを防衛庁は今開発しておりますが、そういうふうになってまいりますと、防衛庁がアメリカ軍と打ち合わせをしてつくった計画に基づいて民間が動く、それから実際の業務といいますか事務は地方自治体がやるというふうなことが当然考えられるんじゃないかと思います。そういう問題がございます。
  132. 畑野君枝

    畑野君枝君 藤井公述人も著述の中で、この朝日の記事の山口陸幕防衛調整官が、日本には膨大な社会資本がある、水、燃料、食料、輸送力など民間が協力するのであればということで、輸送などはJRや輸送会社に委託した方が効率もいい、自衛隊の負担については日本全体が防衛体制をとる、この点で意義がある、この点にも触れられていらしたというふうに思います。この点で大変な事態だというふうに現実的にはなってくると思うんです。  藤井公述人に伺いたいんですが、これまで政府は、ガイドライン法案憲法の枠内、安保条約の枠内と言ってきたわけですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
  133. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 集団的自衛権行使は禁じられているというような政府見解がございます。じゃ、後方支援はどうなのかといいますと、これは明らかに集団的自衛権行使に当たると思います。その後方支援は、ただ民間の人たちが契約でやる場合、入るかどうかは問題がございますが、自衛隊という武装組織後方支援をやるということになりますと、これはもう明らかに集団的自衛権行使になり、憲法にも違反すると。  同時にまた、交戦、戦いを交える、そういう行為をやっていると相手方は見るわけです。それは当然のことでありまして、後方支援なくして戦争はできませんから、しかも一番弱いところが後方支援です。だから、そこをたたきに来るというのは、第二次大戦における日本の経験からしても非常にはっきりとしております。だから、そういう点から、山口陸幕防衛調整官のおっしゃっていたこと、これを民間にずっとやらせるんだということになりますと、それを取り仕切っている自衛隊が一番中枢ですからねらわれることもありますし、当然輸送活動その他をやっている民間の業者もねらわれるということになり得ると思います。  したがいまして、こういう問題につきまして、民間の能力というのはけた違いにやはり大きいわけでありまして、例えば営業用の民間のトラックは百万台、しかし陸上自衛隊が持っているトラックはたった九百台しかない。九百台で何をやれと言うんだと。これはできないわけです。  だから、そういうことで国全体が、いわゆる全部巻き込まれていくということになり得るんじゃないか、そういうふうに思っております。
  134. 畑野君枝

    畑野君枝君 加えまして、安保条約の枠内というふうに政府が言っていることについてはいかがでしょうか。
  135. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) この安保条約の枠内という論理は全然意味をなさないんじゃないかと思います。  安保条約目的は何だといいますと、これは日本の安全とそれから極東の平和と安全だ、こういうふうに言うわけです。そういうことが安保条約のどこに書いてあるのか。つまり、そういうふうな解釈を日本政府がやっているということは言えると思いますが、それがもし目的であり、それが枠であるとするならば、この枠を使えば何でもできるわけです。安保をもとにして、冒頭に申し上げましたように、何でもできるということになってしまいますので、これは条約の解釈としては全然意味をなさないんじゃないか、こう思っております。
  136. 畑野君枝

    畑野君枝君 次に、猪口公述人にお伺いをいたします。  先ほどのお話の中でも、アメリカの行う空爆はピンポイント空爆ということで、アメリカの戦死者は出さないという戦死最少化作戦、こういうことをお話しになりました。それで、ガイドラインでは、そのために日本の基地を提供するのはやむを得ないというお立場も述べられております。お話にもありましたが、一方でコソボの問題、ユーゴの空爆の問題では、一たん戦争が始まったらというお話もされておられたというふうに思うんです。  実際、このユーゴの空爆はアメリカが中心になって行われているということで、鉄道やテレビ局、果ては中国大使館といういわば無差別な攻撃が行われているというふうに思うんです。この点で、ユーゴの空爆の事態とそれから周辺事態法案、これとの関係についてお考えがあれば伺いたいと思います。
  137. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 先ほども申し上げたんですけれども、一たん作戦が始まってしまえば確かに誤爆ということは実際に起こっておりますが、先ほど申し上げましたことは、やはりベトナム敗戦以来、どういうふうに作戦目標を立てるかということについて大きな理念的な転換があり、それを見ない限りはアメリカが最終的に何を日本に本当に求めているのかということがわからない、そういう観点から申し上げたんです。  その転換というのは、無差別殺りくの手段として空襲を使うということではなく、非武装市民も戦死を出さないように工夫するということもそうなんですが、さらに自分のパイロットについては全員生還という意味で、あらゆる意味での戦死最少化であるということです。  それで、ガイドラインとの関係では、アメリカとしては、それはアメリカが主権国家としてやっていることですから仕方がないんですけれども、作戦を行うからには犠牲を最少化したいということを日本だけでなくさまざまな協力してくれる国々に対して要請していく、そういう形をとっているわけです。  ガイドラインとの関係アメリカが結局求めているのは、パイロットが生還する確率が極大化できるようなあらゆる手段をとりたい、そのために恐らく一番敏感に求めているのは、先ほども申し上げたように飛行場の使用、港湾施設も含めて、しかしより直接的には飛行場のその時点における自由な発進についての利用を許可してもらいたいという、そういうところになるかと思います。  そのことについて、日本として、この地域における有事に際してアメリカが軍事的に危機管理を行うという立場努力をしているときに、そのような目的にすら協力しないということがいいかどうかということについての国民判断があって、今日ここまでこの法案審議が進んでいるというふうに理解いたしますが、先生の御懸念の点は私はよくわかります。ですから、やはり国民社会としてこのような議論を尽くし、日本側の考え方としては人間の安全保障という観点からこの運用を願いたいということだと思います。アメリカの作戦活動も、やむを得ずあった場合にはそういう観点からの対応であり、そこに焦点を当ててもらいたいということですね。全体の利益のためにとか、全般的な合理性のために個々が犠牲になるというような発想は、二十一世紀には持ち込まない方がよろしいと思います。  その限りにおいて、しかしすべての人間はひとしく人間としてとうといのであるから出動するパイロットも生還できるように、日本としては日本の国是の前提の上で可能な限りの協力はそのためにし、一日も早く緊急事態が収束し、犠牲最少化でその危機事態がある程度解決し、政治的な解決への段階へと移行できるようにという方向で最大の努力をするということだと思います。  私は、そのように、日本がどういう思想的な立場でこれに協力するのかということについてももう少ししっかりと議論があれば、国民、市民全体にとってもその精神がよりわかりやすくなるかと思いますので、きょうはそういう観点から、何度もくどいようで失礼いたしましたが発言させていただいておりますし、人間の安全保障という観点から今後展開し、対応がとられることが私の一市民としての願いでもあります。
  138. 畑野君枝

    畑野君枝君 今もアメリカの求める空港あるいは港湾の提供というお話がございましたが、岡本公述人と藤井公述人に伺いたいと思います。  この法案は対米支援ではないか。このことについて御意見を伺いたいと思います。
  139. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) この法案は対米支援のための法律と存じます。まさに日本がそのような形でみずからの防衛を図るという考えのもとにつくられた法律だと存じます。  地方自治体は新たな義務を課されるものではございません。現行の港湾法ほかの、あるいは日米地位協定のもとで負っております現在の体制、そのもとでの協力を国がお願いするということでございます。私は、このようなことというのは最小限のことであると思います。  そのかわりにその道を選択しないとすれば何が起こるかというのは、先ほど来申し上げておりますように、日本がみずからの力でみずからを防衛するしかない。そのためには、自衛隊の規模を数倍にし、憲法改正し長距離爆撃機や攻撃型空母を持つようになる、その道がいいのかどうかという国民的な選択と存じます。私は、今の世論はこの周辺事態安全確保法案というものは理解してくれるものと存じております。
  140. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 時間が参っておりますので、できるだけ簡略に。
  141. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 新たな義務を明らかに負うことになる、それは第一に後方支援という面でのアメリカに対する協力です。それから、もう一つは運用面における日米協力ということでありまして、これはオペレーションの面で自衛隊が全面的にアメリカ協力していくということである、そう思っております。
  142. 畑野君枝

    畑野君枝君 ありがとうございました。  短い質疑の時間でございましたけれども、いろんな問題点が明らかになったというふうに思います。本日の公聴会がいわゆる通過儀礼にならずに、徹底的な審議が必要だ、このように私も訴えさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  143. 田英夫

    田英夫君 三人の公述人方々、大変参考になるお話をありがとうございました。  最初に猪口さんがベトナム戦争のことに触れられました。アメリカが敗れた戦争だということから説き起こされましたが、ベトナム戦争アメリカが負けているということを報道したためにニュースキャスターを首になりました者としては、大変ひとつの感動を持って聞かせていただきました。  私は、猪口さんが指摘された面も理解できますが、主としてその後冷戦構造が崩壊をしたということの中で、ソ連がまさに崩壊をしたということでアメリカ立場が大きく転換をしたというのが、アメリカが今や世界の唯一の超大国として、同時に世界の二カ所で紛争が起こったものに対応できる戦力を持つという戦略になってき得たんじゃないかと思います。  そこで、一つ伺いたいのは、こういう冷戦構造崩壊の中で依然として日本政府日米基軸、日米安保条約中心という外交を変えていない。そこに問題があるんじゃないだろうか。そして、その結果として、延長線上で新ガイドラインということになってきたんじゃないかと思うんです。  一方で、日米中トライアングルという考え方があります。これは、アメリカの中でもブレジンスキー元大統領補佐官とかオーバードーファー元ワシントン・ポストの記者とか、日本の中でも松永信雄元駐米大使もこの論をとっておられますが、猪口さんはこの日米中トライアングルという考え方に対してどうお考えですか。
  144. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 大変重要な御指摘を数々いただきましたが、冷戦構造が終結したにもかかわらず、日米中心、日米安保を基軸とおっしゃいましたか、そういう形で進んでいる外交はいかがなものかという御質問につきましては、日本は非常に素早く対応するというような政治風土といいますか、そういうものを十分には持ち合わせていないかもしれませんが、にもかかわらず自分たちの過去と比べれば相当テンポの早い、時間を圧縮したような対応を冷戦後とれるようになりつつはあると思うんです。  ですから、そのような学習過程に我が国はまだあるというふうに考えてもよろしいかと思いますが、その中で信頼醸成措置について非常に活発にアジア各国との対話を始めておりますし、そのようなことの重要性を非常に強化しているというふうに思いますので、冷戦期のような日米基軸というだけの外交では必ずしも今日はないというふうに理解し、また先生のそのような御質問なども受けながら、外交全体がこの地域全般の信頼醸成プロセスを強化するような多角的な方向に進めば非常に適切ではないかというふうに考えます。  それから、日米じゃなくて日米中ということではどうかということで、それはもちろん非常に適切であると思いますが、日米は冷戦構造の中でということとは全く別の視点から非常に重要な関係性を持っていると思います。それは、ナンバーワンとナンバーツーであるという関係性です。  近代四百年の歴史を見れば、ナンバーワンとナンバーツーがこのような協力関係にあった時代というのは非常に少ないわけであります。その結果、非常に破壊的な大国間の政治対立、場合によっては軍事対立へと行った時代も数多くありましたので、長い歴史の中で見てみると、このようにナンバーワンとナンバーツーの協力関係が非常に強固であるということは、後世の史家により評価されるような重要な部分ではないかと思います。  日米中の協力関係は、やはり日米の強い信頼関係協力関係の上に初めて安定したトライアングルができるのではないかというふうに思います。  アメリカも中国との関係性を相当去年から改善し、クローズアップさせていますけれども、またそれについて日本は頭越しにされているんではないかという不安が世論の中では一部表明されたりもいたしましたけれども、アメリカははっきりと日米が強い協力関係にあるということを前提に初めて中国と大胆な外交協力に向かいたいと考えているというような立場でいると思いますので、日米中の関係を強化し、さらにユーロでさらに統合を強化しているヨーロッパ地域あるいはアジア太平洋地域のさまざまな国との関係をいずれも強化しなければならないと思います。  ですから、日米中というだけでなく、もう少し多角的に日本の外交を強化していくということについて、私はその重要性を考えますが、にもかかわらず、中国はこの地域の大国でありますから、その中でもとりわけ日本がその関係について重視しなければならないということであると思います。その場合には、今申し上げましたように、日米の紐帯がしっかりしていてこそ、日米中のトライアングル関係もより充実した形で、またその他のメンバーに脅威にならないような形で健全に発展できるのではないかというふうに考えます。
  145. 田英夫

    田英夫君 藤井さんは先ほど七四年の政府統一見解のことに触れられました。  私もこの委員会で先日、安保条約の規定にはないことをこれからやろうとするんだから、本来ならば安保条約を改定して、六〇年安保という言い方で言えば九九年安保ということをやって、その上でやるならわかるけれども、筋としては、内容は別にして、そういう議論をしたんですけれども、この七四年の政府統一見解ということから考えると、今回のこのやり方というのを藤井さんはどういうふうに思われますか。
  146. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 先ほどは極めてこそくなやり方であるというふうに申しましたが、そのとき同時に、議会制民主主義というものをないがしろにしているんじゃないかというふうにも言いました。やはり、議会制民主主義ということを考えますと、憲法上のルールというものは守らなくてはならない。内閣の行政権で条約の締結はできるとしても、その中で七四年の統一見解に示されているようなことについてはきちんと国会の承認を得てやるべきである。  それから、だれがサインをしているかわからないようなガイドラインです。そして、それを何か安保協議委員会で了承したと。この了承も、了承なのか承認なのかよくわかりませんが、そういうふうなあいまいな手続でやっている。ですから、国民皆さんには本当にわかりにくいんです、単なるガイダンスとかあるいはガイドブックとかいうふうな、そういうガイドにすぎないんじゃないかというふうに思っておられますから。  そこがわからなくて、次に周辺事態法の周辺事態もわからないということで行くということは、これは民主主義のルール違反であり、同時に、この後で行われていくこと、もちろんそれは主体は自衛隊ということになるでしょうが、シビリアンコントロールという点でも非常に問題を残すことになるんじゃないか。国民皆さんは、事態が起きてどんどん発展していって、場合によっては交戦もあり得るというふうに自由党の皆さんおっしゃっておられるようですけれども、戦争になったときの後になって、そんな話は全然聞いていないということになってはやはりいけないように思います。ボタンのかけ違えというにしては余りにも大きなミスじゃないかと私は思っております。
  147. 田英夫

    田英夫君 おっしゃるとおり、私も今回の周辺事態というのはよくわからないのですけれども、少なくとも安保条約第五条で言う日本有事と言っていいんでしょうか、日本攻撃を受けた場合、これは自衛権の発動という形になるわけでしょうけれども、政府の見解でも。しかし、それではないと。そうすると、自衛隊が出ていくという理由は一体どこにあるのか。  六〇年安保のときの岸総理の答弁は、実に明快に、自衛隊日本の領域から出ていくということは許されないのであります、こう言っているわけです。領土、領海、領空から出ていくことはないんだと。ところが、今回は公海という形で出ていくことがある。こういうことになるわけですから、これは明らかに条約の改定を経なければできないはずであります。  そういう中で、先ほど自衛隊が出ることは実は余りないんじゃないかという山口昇さんの言葉を引用しておられます。藤井さんが書かれたものの中にもそれは出てきております。  実は、私は山口昇さんに先日直接お会いをしました。今度ワシントンの駐在武官になられるということでありますが、しかも山口さんは、日米両国政府間でこの新ガイドラインを話し合う交渉をする中で、制服の一人として直接参加をされた。こういう経験を持っておられるその山口さんが、実は自衛隊が出ていく場面は少ないんじゃないか、今度のガイドライン。むしろ民間の後方地域支援ということが非常に中心になるんじゃないかということを言われましたけれども、藤井さんの書いておられるのもそういう意味でしょうか。これは「月刊社会民主」に書いておられるんですが、そういう意味でしょうか。
  148. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 山口さんの御意見を私は方々で紹介させていただきましたが、彼がお考えになっていることは、その他の自衛隊のユニホームの幹部の方々がいろいろ発言をされているんですね。とりわけ皆さんが一致しておっしゃっているのは、運用面における日米協力というのがガイドラインに明記された、これはすばらしいことだというふうにおっしゃっているんです。やはり自衛隊は武装集団ですから運用面で実績を上げたいわけですね。決して後方支援、そういうことは余りやりたいとは考えていないことは明らかです。栗栖弘臣さんも湾岸戦争のときもおっしゃいましたが、米軍の使役に等しい後方支援はやめよ、堂々と自衛隊は軍艦を出して、自衛艦を出してペルシャ湾で肩を並べてやれ、こういうふうにおっしゃっていましたから、やっぱり彼らが考えられることはそういうことだと思うんです。  では、だれが担うんだということになりますと、これは民間、日本のこの巨大な能力を持った民間です。それから民間といいましても、例えば自衛隊法百一条で、JRとかNTTとか、これは防衛庁長官の要請によっては協力する義務を負わされているわけです。ですから、そういう人々も含めて全体としてやっぱり対米支援をやるということになっていくし、またそういうふうになってこそ初めていわゆる周辺事態なるものを戦っていくことができるんじゃないかと思います。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
  149. 田英夫

    田英夫君 同じくこの藤井さんが書かれた中で、包括的メカニズムと調整メカニズムのことにかなり詳しく触れておられるんですけれども、実は残念ながら衆参の今までの審議の中でこの問題は余り深く突っ込んで議論がなされていないんです。これはつまり参謀本部を置くような、そういうことにもなってくるわけでありまして、この問題というのはどういうふうにとらえたらいいか、藤井さんの御意見を伺いたいと思います。
  150. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 包括的メカニズムというのは、これは日本政府機関、そういうところを含めてつくることになっているわけです。したがいまして、これは後方支援、地方自治体及び政府を含むアメリカに対する協力全体の計画とかそういうことを決めていくところです。  それから、調整メカニズムの方は、これは恐らく自衛隊施設かあるいは横田基地につくられると思いますけれども、そこにできる日米統合司令部のようなものである。  それからもう一つ、包括的メカニズムのもとにつくられるバイラテラルプランニング、BPCといいましたか、これは直接は調整メカニズムに入るものではありません。しかし、実態的には日米のユニホームによってそこは構成されるわけですから、それをもとにして調整メカニズムは活動を始めるというふうな関係になると思います。そのユニホームがやっていることの中で共同作戦計画と総合協力計画が煮詰まっていくわけで、それを実際転がしていくために包括的メカニズムというのは日本の国全体を巻き込んでやっていく。  これはアメリカ側にはそういうメカニズムはないのです、日本周辺事態に関して。日本だけがそういうことをやらなきゃならない。軍の方から言いますと、アメリカは太平洋軍が出てきて、そしてその方向の中で自衛隊及び調整メカニズムが動いていくということになります。  ですから、日本の指揮権というのは一体どうなるのか。太平洋全体をにらんでいるところに決定権、判断権が行くはずですから、そういう意味ではNATOと同じようなことになっていくのじゃないか。つまり、NATOの最高指揮官はアメリカの軍人ですから、そこが決めていくということになっていると思います。
  151. 田英夫

    田英夫君 終わります。ありがとうございました。(拍手)
  152. 月原茂皓

    月原茂皓君 自由党の月原です。  きょうは、公述人方々、お忙しい中ありがとうございました。  それでは、質問させていただきます。  最初に猪口公述人ですが、今まで国会で、政府の方からの答弁もなかなか難しいからあえて聞かなかったわけですが、抜けておることは何かといったら、冷戦後のアジア太平洋の軍事情勢が今後どう変わっていくかということ、朝鮮半島それから中国、こういう問題をどういうふうにとらえていくかということがそもそもこのガイドラインの初めになきゃいかぬのですが、こういうのは立場上なかなか議論されない。  そこで、猪口先生はその点をどうにらんでおられるか。それとガイドライン関係とまでは言いません、どうにらんでおられるか、軍事情勢を。
  153. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 時間が余りないんですけれども、考えていることを述べさせていただきます。  アジア太平洋の軍事情勢は、まず日本として所与のものとして考えるべきではないと思います。それに対して影響力を発揮できる立場であるというふうに見て、こういうふうになるのだからこれを所与のものとしてこう対処しようというよりも、こういうふうになるべきではないという観点から強く関係の国々に働きかけ、外交的なルートも使って、あるいは民間、さまざまな交流の範囲で影響を及ぼしていくという立場が必要であると思います。  まず、私が思いますのは、アジア太平洋地域におきます経済成長がどれほどあるかということに関してであります。近代四百年と先ほど申し上げましたが、私は研究者ですので、どういうときに大きな戦争が発生するかということのいろいろな研究をしたことがございます。景気循環との関係で数百年を見てみますと、数百年といっても信頼できる統計がとれますのは三百年ぐらいですか、見てみますと、こういうことがわかるんですね。非常に恐ろしいことでもあるんですけれども、大きな戦死は景気の上昇期のピークの方に起きるというようなことなんです。  ここ三、四百年の景気上昇期と下降期の戦死の総和をとりますと、景気上昇期の戦死は下降期の二十一倍になっている、つまり成長の高いときにやはり大きな戦争が発生していると。それは恐らく戦争をファイナンスする余力がその人間社会に発生するからであろうと。原因はいろいろ論じることができますけれども、またそれは推論の域を出ませんが、今申し上げた事実関係は歴史の事実としてあるわけです。  そこで、アジア太平洋地域におきまして今後成長率が高いということであれば、それはそれだけ軍事的なファイナンシングが可能になるということで、戦争と平和の問題につきまして安全保障上非常に懸念すべき事態があり得るというふうに考えますが、その数百年の今申し上げたデータは、ヨーロッパ中心的世界システムにおきまして実際にオブザーブされた結果であります。  今日、初めてアジア太平洋地域に成長の芽といいますか成長ダイナミクスの中心が移りつつあるときに、アジア太平洋地域が成長の担い手となる新しい近代世界システムといいますかポスト近代世界システムに移行したとき、成長の糧、繁栄の果実を軍拡ファイナンシングによって浪費し、それがきっかけで経済下降局面に入るというこの愚行の歴史、それの継承者にアジアはならないという決意をするべきではないかと思います。  つまり、そのような観点から日本は、成長するアジアに対して、それを軍拡ファイナンシングに使わないように、その余力を軍事的なファイナンシングに使わないようにという指導をすべきではないかと思います。そういうことについて政治的なリーダーシップとメッセージを強く発揮すべきであると私は思います。  ですから、このまま行くとアジアは、高成長地域、そして高い軍事的なファイナンシングがなされる軍拡地帯となることが、一般的なヨーロッパ中心的世界システムの延長として考えるのであれば予見できると思いますけれども、そのようなことを所与のものとしてとらえずに、日本責任ある国家として、そのような愚行の歴史を繰り返さないようにという観点から発言し、影響力を発揮すべきであると思います。その意味で、日本の平和的な立場というものは、また経済立国としての立場というものは非常に説得的ではないかと思います。  それからもう一つは、民主化との関係における緊張感でございます。  冷戦終結は、ソ連邦の民主化と崩壊、それから東ヨーロッパの民主化要求市民運動とその成功と解放という形で終結したという歴史の理解に基づき、冷戦後は、民主主義を支援する、そして民主主義を推進するという動きが非常に活発でございます。ちょうどことしは冷戦終結十年目です。一九八九年のベルリンの壁の崩壊から十年目の一九九九年の時点でございますが、この十年間に非常にそういう傾向が顕著になっています。その中で途上国も、自分の国際的地位を上げるためには今までであれば成長率を高めるということで事足りたのですが、今後は民主化も推進するという課題を担うことになります。  ところが、アジアの特徴は人口の多い国が幾つかあるということです。民主主義はすべての人々の平等な権利を考えますので、人口の過剰地域及び国はそれだけ民主化に手間取ることにはなります。早く民主化する国や地域との関係において緊張が発生する可能性がありますが、そのようなことについて十分に予見して、その民主主義を長期的には推進しながらも、また人口の多い国についても段階的に自信を持って民主化が推進できるような、そういう影響力を発揮することにより、民主化において先んじた国及び地域とそれにおいておくれをとっていると焦る国及び地域との反目の構図といいますか、そのような緊張の高まりを防ぐことができるかと思います。  ですから、このアジア太平洋地域におきます軍事情勢を考えるときに、成長率がどうかということと、それを自動的に軍拡に結びつけないようなシグナリングが必要であるという観点と、それから、民主化に伴う地域緊張をどう緩和し、とりわけ人口過多の国におきます民主化が段階的でもよろしいから自信を持って進めるようにというようなリーダーシップが日本にとって重要ではないかと思います。  そのようなことが成功裏に外交的に実現したときには、アジア太平洋地域は二十一世紀において平和と繁栄の地域となり、繁栄が即大きな戦争へとつながらない初めての時代を人間社会は迎えることになり、それがアジアで展開することは日本にとって大変名誉あることであると思います。
  154. 月原茂皓

    月原茂皓君 非常に我々の考えている視点以外からも判断されている。  そこで、岡本公述人、今のお話を聞かれたと思うんですが、アジアにおける日米安全保障条約、日米同盟ですね、それの猪口公述人が今言われたところにおける日本の働きかけとして、米国がそこに国益を求め、そして我々もそこに協力して、猪口先生が今言われたような抑えた格好の平和的な発展に寄与するというものは私は大きいと思うんです。  よく言われるのは、アジアはこの日米同盟に対して批判的である、日本が余り安全保障条約で働くことはマイナスだ、戦争危機だと言われるぞと、こういうことを言う人たちがおるんですが、アジアの方にいろいろ行動されておる岡本先生はどういうふうに考えられるか。  それからもう一つは、日本の計画というものがアメリカとのメカニズムの中でそれぞれの国益を調整しながら軍事力においてプランインされた場合に、私はむしろ、米国の方が行動しようと思っても、それはうちはできないよとはっきり言ってかえってブレーキをかける役割を果たす、そういうところが大きいのではないかと思いますが、この二点についてお伺いしたいと思います。  時間が少ないので簡単に。申しわけありません。
  155. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) あと一分しかないようでございますから、もうポイントだけ申し上げます。  アジア諸国は、東アジアで最も信頼のできる安全保障の枠組みとして日米安保条約をとらえている。これは日本の首脳との会談その他の場でアジア諸国の首脳自身がたびたび口にしておられるところであります。  米国の行動にブレーキをかける、日本は国会の御審議を経て成立いたしました日米安保条約というのが国にとっての最も重要な安全の規範でございますから、これを逸脱するようなことがあればもちろん日本協力しないのは当然でございます。日本にとっての目的というのがアジア太平洋地域における平和、安全、繁栄であることは間違いのないところだと存じます。
  156. 月原茂皓

    月原茂皓君 藤井先生、どうも済みませんでした。お尋ねせぬといかぬのですが、きょうはありがとうございました。(拍手)
  157. 山崎力

    ○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。  まず、藤井公述人にお伺いしますが、先ほどからの御意見を伺っての私の意識なんですけれども、公述人安保条約並びに自衛隊というのは憲法違反だとお思いでしょうか。
  158. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 今の御質問は、私は法律家ではありませんので詰めた議論はしたことは、考えたことはございません。ただ、憲法問題を論じられる裁判の場等で素人なりの御意見を申し上げたことはございます。  非常に憲法上疑いが深い、護憲性に深い疑いがある問題を抱えているというふうに思っております。
  159. 山崎力

    ○山崎力君 そういった考えのもとに、藤井公述人の考える国家としての自衛権のあり方、それの担保装置たる武力組織のあり方というのはどのようなものだとお考えでしょうか。
  160. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 私の考えでは、一番これが理想像だというふうなものは提示することはできませんけれども、少なくとも今日までとってきた政策、つまり非核三原則とか専守防衛とか、あるいはまた武器輸出禁止とか宇宙の平和利用とか、そういうふうな原則を守り抜いていくことが日本の安全にとって、またアジアの安全にとって一番寄与する道じゃないかというふうに思っております。
  161. 山崎力

    ○山崎力君 それはどういう観点からなんでしょうか。日本戦争の主体となってほかの近隣諸国にいろいろな問題といいますか被害を与えた。それに対する反省からこういったものが出て、憲法もその一つでありましょうし、そういったことなんですが、そうしますと、そこのところの考え方というのは、戦後一貫して我が国においては武力装置としては米軍が占領軍から始まってずっといるわけです、旧安保時代も含めてですけれども。そういったものとして日本国民が自律的にそういったことを考えてこなかった、みずからどう律してどういうふうなことをやっていくかということを考えてこなかったというのが一番の問題点じゃないだろうかというふうに私は感じております。  その中で、今おっしゃられたことがどういう論点から、歴代政府その他がやってきた非核三原則を含めた国民の気持ちというものであろうということはわかるんですが、それと同時に、先ほど申し上げた在日米軍がずっといたということもまた事実でございまして、その辺のマッチングというんですか、整合性がどうも私は公述人の話から見えてこなかったものですから、ちょっとお伺いしたいんです。
  162. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 私が一番最初に申しましたように、平和主義というものは、今おっしゃいましたようなそういう弱点というのはあったと思います。しかし、平和主義のためにどれだけのことをできるかというような方向を出して、そうして汗を流すというふうなことは可能だと思うんです。まさに、そういう方向で護憲の立場に立っておられる皆さん方がやっていただけるということが非常に求められているんだと思います。  そのことは、私の戦争体験というのも一つございます。つまり、日本は加害者としてアジアに対して向かったわけでありまして、かつそのことについての何の反省あるいはまた償いもしていない、そういう部分もあるわけです。したがいまして、中国にしろ朝鮮にしろあるいは東南アジアにしろ、そういう立場関係を深めていくことが求められているし、もしそういうふうにすれば、先ほど来もちょっと指摘がございましたけれども、日本とアジアとの間にある溝、そういうものをやっぱり埋めていくことができる。そして、そういうふうになれば日本の平和政策というものがアジア諸国と一体化できるんじゃないか、そう思うんです。したがいまして、安保条約とかあるいは自衛隊の強化とか、そういうことなしに、別の手段でもってアジアの平和を築いていくことが可能になる。  ただ、今までほとんどやっていなかったと思います。例えば平和協力というようなことでもほとんどやっていなくて、実際はPKOの問題が出てから非常に泥縄式に取り組んだというふうな面があったと思うんです。そういうことのないように、そこのところをどうするかということを考えていけば方向が見えてくるように私は思っております。  それで、最近の周辺事態法及びそれに伴ういろんなやり方というのは、むしろ逆効果であって、非常に問題の解決を難しくしてきているんじゃないかというふうに考えております。
  163. 山崎力

    ○山崎力君 法律の専門家でもないし、まして政治の方ということでもないんでしょうが、そうすると、やはり藤井公述人の話からすると、現存する国会に大多数を占めている、この一連の法案審議をしている議会の構成が日米安保を肯定する人がほとんど、まあ固有名詞を挙げれば共産党さんとあと一部の政党あるいは個人だけが日米安保を否定して、大多数の議員の所属する政党その他の人たちが肯定していると。このギャップというものは極めて法案審議の中に大きく出てきているだろうと。ところが、これが現存の選挙の中でほぼ一貫して選ばれてきているというそのギャップ、そこのところがある意味では今回の法案で反対されている方々との意識のギャップじゃないのかなというふうに思っている次第です。  藤井公述人ばかりというわけではなくて、恐縮なんですが、岡本公述人それから猪口公述人、簡単に一言ずつお答え願いたいんですが、今回のガイドライン関連の法律というものは、日米安保の実効性を高めると同時に、自衛隊日本の領土、領海外に出て協力するという意味では、先ほど田委員が申されたように、確かに一歩踏み出した内容であろうと私も思いますが、そのことが相手国周辺事態の最初の当事国にとって、アメリカ軍が日本に基地を置いているという安保条約自体以上に日本に対する敵がい心というんでしょうか、そういったものを植えつける要素になるかどうか。  今までは日本国内だけでの対アメリカ協力だった、それが半歩だか何歩だか知りませんけれども、一応、後方地域とはいえ、日本の領土、領海外に出てアメリカ協力すると。このことがどの程度周辺事態の当事国にとって日本への敵がい心をあおる行為になるのかというふうなことがポイントだろうと私は思っておりますが、その辺どのようにお考えでしょうか。
  164. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 時間が短うございますので、簡潔に。
  165. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 一言だけ申し上げます。  自衛隊我が国の領海、領土、領空外への出動というのは、憲法上禁じられておりますのは武力行使目的とする場合だけであります。本件のような後方支援については適用されないと存じます。  自衛隊は、例えば各国への親善訪問であれ演習であれ世界じゅうに出かけていくわけでございます。これは安保条約の実効性、そして基本的なことは我が国自身のためということでございます。国際的な影響のないほかの国の内戦、内乱に自衛隊米軍の支援をするわけではございません。我が国の安全が脅かされたときに限っての支援活動でございますから、これは当然、現法及び今までの法制の中で想定されたことであると存じます。
  166. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 私は、近隣諸国の敵がい心をあおることになるのかならないのかという御質問に対しまして、以下のように答えたいと思います。  これは、日本のそのような後方支援活動に先ほどから申し上げております人間への視点があるかどうかということであると思います。それは、そういうような緊急事態に限らず、さまざまなアジア太平洋地域における困難性に対して日本が人道的で人間安全保障への強い意識、例えば難民救済であるとか貧困の撲滅であるとかさまざまな非軍事的な面における人間安全保障への視点と人間への視点が連続的にこの地域において感じられるような対応を今後していくことができるかどうかということにかかっていると思います。  そうであれば、自衛隊につきましても具体的には余りそういう形で出動することにはならないようにも思うんですけれども、自衛隊の活動につきましても、要するに新しいタイプの実力部隊というような概念で世界が日本の部隊をとらえてくれるような、そういう方向性を導き出すといいますか、それも不可能ではないと思います。つまり、攻撃を全くミッションとは考えない、そして人間への視点を持つ、人間への安全保障という観点から被害の最少化と個々の人間の具体的な救済、難民救済も含めた救援、救済について努力する人々、実力部隊というようなとらえ方で今後日本のこの実力部隊が世界に理解され、できればほかの国々もそのような形にそれぞれの国の実力部隊を編成し直していくというのを二十一世紀において課題とするような国も、特に第三世界において出てくることが望ましいと思いますけれども、そういういろいろな可能性があると思います。  ですから、敵がい心をあおるかどうかというのはかなり条件的なものであると思います。今後の対応次第という形だと思います。
  167. 山崎力

    ○山崎力君 どうもありがとうございました。終わります。(拍手)
  168. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 二院クラブ・自由連合の島袋宗康でございます。御苦労さまでございます。  本委員会の一連の審議におきまして、政府側の答弁は、例えば周辺事態範囲や概念などが余りにも漠然としておりまして、したがって法律案の細かい点に論議が集中しがちであります。  この際、藤井先生にお伺いしたいんですけれども、旧ガイドラインと新ガイドラインは一体何が違っているのか、その観点から整理して、ひとつ何か説明をしていただきたいというふうに思います。
  169. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 新ガイドラインと旧ガイドラインの違い、特徴的な点を申しますと、一つは、旧ガイドライン自衛隊米軍はということを主語にした規定が非常に多かったんです。ところが、新ガイドラインの場合は日米両国政府はということを主語にした叙述が非常に多い。これは大体六十カ所ぐらいはあると思います。つまり、自衛隊米軍防衛協力をどうやるかということを旧ガイドラインは定めている。しかし、今度の場合は日米両国政府はどういうふうにやるんだということを定めているという意味で、政府が結んだものであるという点がございます。  それからもう一つ、これは英文の方ですが、バイラテラルという言葉が新たに登場しているということ。旧ガイドラインの場合は、それに当たるところにはジョイントという言葉が使われていたんですね。ジョイントのエクササイズとかいうふうになっていたのがバイラテラルということになった。そして、そのために必要な機関が、先ほど田委員がおっしゃいましたようなそういうものがいろいろつくられるというふうになってきました。そこが非常に違うと思います。  それから、さらに違いますのは、やっぱり周辺事態という新たな対米協力の義務を負うような、そういうものが入ってきたということ。さらに、周辺事態において後方支援やあるいはオペレーションの面で自衛隊米軍協力し合うというふうなことも、周辺事態におけるオペレーションという考え方は従来なかったものですから、そこが違ってきていると思います。
  170. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今おっしゃるように、新ガイドライン法案に多くの問題点があるというふうに思います。  もう一点、藤井公述人はその大きな問題点は何だというふうにお考えですか。何点か御指摘願いたいと思います。
  171. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) やはり周辺事態において何をやるかということです。その前提として、周辺事態というのは際限なく広がっていくと考えたらいいと思います。  例えば一つの例を申しますと、防衛白書、これは一九八九年版から我が国周辺の中に東南アジアを入れておるんです。我が国周辺というタイトルの中で東南アジアが入ってくる。ということは、つまり極東の範囲を大きく超えるわけです、我が国周辺が。  そういうふうなこともございまして、あるいは新防衛計画大綱が決まりましたときに、そこに定められている我が国周辺という言葉の定義につきまして、時の橋本総理は、その時々の国際情勢により変動し得るものであり、明確に境界を画するような性格のものではない、こうおっしゃっています。つまり、場合によってはどんどん広がっていく、むしろこういう説明の方が私は正直だと思うんです。そういうふうに地域が限定されないということと、それからもう一つは、その事態というのはやはり戦争事態を含んでいるということです。アジア太平洋における戦争事態を含んで、それに対応しているということ。  それからもう一つは、後方地域というものは、日本というのはやはりアジア太平洋における戦争事態においては最前線基地になるというふうに考えていいと思います。日本を最前線基地にしてそういう周辺事態というのは展開していくわけです。だから、日本後方基地だという考え方自体がやっぱり成り立たないんじゃないか、そういう場合が多いというふうに考えていいと思います。  それから、後方支援というのは、先ほども申しましたが、交戦行為である、敵対行為である。したがいまして、相手の反撃というのがここに及んでくるということで、日本戦争に巻き込まれるということですから、六〇年安保のときに国民の多くが危惧しました、これは日本戦争に巻き込むものじゃないかと言われていたことが今度は現実のものになる危険性があるというふうに考えるべきじゃないかと思います。  それから、さらに申しますと、この周辺事態法には戦争が起こるまでのことは書いてあるんですが、起こった後のことは書いてないですね。つまり、例えば後方支援にいたしましてもあるいは戦闘遭難者の捜索救助にいたしましても、そこで交戦、戦いを交えるという事態が起きてくる、出動した自衛隊と対立している国との間に。交戦事態が起きたときに一体どうするのか。私は、自衛隊がそういう事態において逃げ帰ってくるということは、これは絶対あり得ないと思います。だから、そこで相手が攻撃してきたらこちらも撃ち返す。  この間の不審船の問題のときには警備行動でしたからそういうことは起こりませんでしたけれども、交戦をあえてやるということになればそういう事態が起きてくる。その交戦が始まったときに一体どうするのかという問題。  それからさらに、政府の見解として、一九六九年四月八日、答弁書において明らかにされておりますが、仮に海外における武力行動自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としてはそのような行動をとることが許されないわけではないという政府見解が出ています。つまり、海外へ出ていってそこで自衛権を発動するというふうな事態が起きてくるわけですね。海外に出ていかなければ自衛権発動ということは海外においては起きません。日本が攻められたときに初めて自衛権を発動する。  ところが、周辺事態法が動き始めますとそういう事態が起こる。それから後はまさに本当の戦争になるということで、この周辺事態法というのは戦争権限法である。憲法戦争を放棄しているにもかかわらず政府に対して法律が戦争権限を与えるということでありまして、国会の事前承認を確実にとるとか、いろんな歯どめをきちっとやらない限りこれは非常に危険なものになると私は見ております。
  172. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 では、再度お聞きしますけれども、米軍は十分な兵たんを確保しない限り作戦は開始しないというような先生の御指摘がございます。今回の法案は、その兵たんを確保することに主眼があると思われます。したがって、この法案が成立すれば、米軍はいよいよ作戦を開始できる状況になったと理解できるわけでありますけれども、今後、日米防衛協力はどのように展開されていくと思われますか。
  173. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 日米防衛協力は、アメリカが現在湾岸あるいはユーゴスラビアに対してやっているような行動、これをもし始めた場合には、もうたちまちにして日本を最前線基地とした形で東北アジアにおいて展開されていくということになるわけであります。したがいまして、この間の野呂田防衛庁長官の発言にもございましたように、あれは否定されましたけれども、実際に起きる事実そのものはやっぱり否定はできません。そういう意味で非常に大変な問題を含んでいるというふうに考えます。
  174. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 岡本公述人にお願いします。  岡本さんは四月七日の衆議院特別委員会でも、また先ほどの意見陳述でも、日本への危機という観点からいえば、日本への直接攻撃よりは、日本周辺における紛争が日本に波及した場合に引き起こされる可能性が高いというふうなことをおっしゃっております。私は、沖縄から選出された者として、このことは非常に気になります。  率直に、今回の法案の影響を直接受ける可能性は沖縄が高いのではないかというふうに思われますけれども、御見解を賜りたいと思います。
  175. 岡本行夫

    公述人岡本行夫君) 外から侵入者が庭の中に直接入ってきた場合には、当然その家は身を守るための措置を講じるわけでございます。ただ、そもそもそういう侵入者がその町内から出てこないような、そういう人が出てこないような社会をつくる、そこを安定化させることの方が重要であろうというのがこのガイドライン法案の考えだと思います。それを超えて、今度は日本に直接の攻撃が及ぶような場合には、これはガイドライン法案とはまた別の枠の個別自衛権範囲の話となるわけでございます。  沖縄がその被害をこうむる可能性が高いとの御指摘は恐らく後者のことを御懸念のことと思いますが、日本に対してそのような深刻な脅威が及んで、それが日本への攻撃となったような場合には、もう沖縄も本土も私は区別がないと思います。それは日本に対する攻撃であります。日本のどこに攻撃があるのか。常識的に考えて首都へ攻撃してくるのか、あるいは経済センターへ攻撃してくるのか、自衛隊の基地へ攻撃してくるのか、米軍基地へ攻撃してくるのか、それは相手方の判断でありまして、そこまでは確定的にしんしゃくはできません。ただ、日本攻撃を受けているということであれば、それはもう一体となって防衛行動を行うべきは当然のことだと思います。
  176. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 あと何点かまだお聞きしたかったわけでありますが、時間ですので終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  177. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 以上をもちまして公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は二十日午前十時から委員会を開会することとし、これをもちまして公聴会を散会いたします。    午後四時十三分散会