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1999-05-14 第145回国会 参議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十四日(金曜日)    午前九時四十七分開会     ─────────────    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      吉田 之久君     寺崎 昭久君      魚住裕一郎君     荒木 清寛君      高野 博師君     沢 たまき君      益田 洋介君     山本  保君      小池  晃君     宮本 岳志君      照屋 寛徳君     福島 瑞穂君  五月十四日     辞任         補欠選任      石田 美栄君     藤井 俊男君      輿石  東君     佐藤 泰介君      緒方 靖夫君     畑野 君枝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         井上 吉夫君     理 事                 鈴木 正孝君                 竹山  裕君                 山本 一太君                 若林 正俊君                 齋藤  勁君                 柳田  稔君                 日笠 勝之君                 笠井  亮君                 山本 正和君     委 員                 市川 一朗君                 加納 時男君                 亀井 郁夫君                 木村  仁君                 世耕 弘成君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 橋本 聖子君                 畑   恵君                 松村 龍二君                 森山  裕君                 矢野 哲朗君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 伊藤 基隆君                 木俣 佳丈君                 久保  亘君                 佐藤 泰介君                 千葉 景子君                 寺崎 昭久君                 藤井 俊男君                 前川 忠夫君                 荒木 清寛君                 沢 たまき君                 山本  保君                 緒方 靖夫君                 小泉 親司君                 畑野 君枝君                 宮本 岳志君                 田  英夫君                 福島 瑞穂君                 田村 秀昭君                 月原 茂皓君                 椎名 素夫君                 山崎  力君                 島袋 宗康君    衆議院議員        修正案提出者   赤城 徳彦君        修正案提出者   大野 功統君        修正案提出者   中谷  元君        修正案提出者   遠藤 乙彦君        修正案提出者   佐藤 茂樹君        修正案提出者   山中あき子君        修正案提出者   東  祥三君        修正案提出者   達増 拓也君        修正案提出者   西村 眞悟君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     陣内 孝雄君        外務大臣     高村 正彦君        厚生大臣     宮下 創平君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣     川崎 二郎君        自治大臣     野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障危機管        理室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障・        危機管理室長   伊藤 康成君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        内閣法制局第二        部長       宮崎 礼壹君        警察庁長官    関口 祐弘君        警察庁警備局長  金重 凱之君        防衛庁長官官房        長        守屋 武昌君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        防衛庁人事教育        局長       坂野  興君        防衛施設庁長官  大森 敬治君        防衛施設庁総務        部長       山中 昭栄君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        科学技術庁原子        力安全局長    間宮  馨君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省条約局長  東郷 和彦君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        運輸省運輸政策        局長       羽生 次郎君        運輸省港湾局長  川嶋 康宏君        運輸省航空局長  岩村  敬君        海上保安庁長官  楠木 行雄君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君     ─────────────   本日の会議に付した案件公聴会開会承認要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定を改正する協定締結について承認を求  めるの件(第百四十二回国会内閣提出、第百四  十五回国会衆議院送付) ○周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保  するための措置に関する法律案(第百四十二回  国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案(第百四十二  回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付  )     ─────────────
  2. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、吉田之久君、益田洋介君、照屋寛徳君、魚住裕一郎君、高野博師君及び小池晃君が委員辞任され、その補欠として寺崎昭久君、山本保君、福島瑞穂君、荒木清寛君、沢たまき君及び宮本岳志君が選任されました。  また、本日、輿石東君及び石田美栄君が委員辞任され、その補欠として佐藤泰介君及び藤井俊男君が選任されました。     ─────────────
  3. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の三案件の審査のため、五月十八日午前九時に公聴会開会することとし、公述人の数及び選定等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立
  4. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 多数と認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  5. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の三案件につき、沖縄県において意見を聴取するため、来る五月十九日に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の三案件を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 久保亘

    久保亘君 おはようございます。  最初に総理に伺っておきますが、先般の日米首脳会談において、大統領との間にアジア太平洋地域における平和と安定のためにも日米安保体制信頼性強化することで一致した、こういう御報告をいただいておりますが、日米安保体制信頼性強化というのは具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。
  10. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私は、先般の米国公式訪問に際しまして、参議院の本会議におきまして、クリントン大統領との間でアジア太平洋地域の平和と安定のために日米安保体制信頼性強化していくことで一致した旨、御報告を申し上げました。  この点につきましては、日米首脳会談におきまして、日米安保体制を一層効果的に運用するとの観点から、日米防衛協力のための指針実効性を確保することの重要性を確認するとともに、沖縄における諸問題の解決のため、沖縄県内状況にも配慮しつつ、引き続きSACO最終報告の着実な実施に努めていく点でも一致をいたしたことを意味しており、その趣旨は私が日米共同記者会見の際に申し述べたとおりでございます。  いずれにいたしましても、日米安保体制が、クリントン大統領橋本総理におきまして日米安保共同宣言を新たに発しまして、改めて日米安保条約につきまして両国ともしっかりとこれを見詰め直しながらさらにこれを継続していくことについて、今申し上げたような諸点につきまして改めて確認し合った、こういうことでございます。
  11. 久保亘

    久保亘君 信頼性強化ということで包括されておりますけれども、実際にはいろいろな具体的なアメリカとの間の取り決めというのは、これはすべて日米安保条約に基づいて行われたものでありますか。
  12. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) もとよりのことと存じております。
  13. 久保亘

    久保亘君 日米安保条約をどのような読み方をすれば日米の同盟によるアジア太平洋地域の平和と安定ということに解せられるのか。安保条約極東及び極東周辺ということで説明されてきたと思うんです。だから、その点をひとつ伺っておきたいと思いました。総理のお考えはわかりました。  それからもう一つ、これはつかぬことを伺いますけれども後藤田正晴という政治家が我々の先輩としていらしたのでありますが、後藤田先生については首相は政治家としてどのようにお考えになっているか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  14. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 結論的に申し上げれば、極めて尊敬し、また日ごろの御言動に対しましても掬すべきものが多々あるというふうに認識をいたしております。また、中曽根内閣における五年余における官房長官として、大変この内閣の中心として大きな役割を果たされ、また議員をおやめになられました後も、みずからの体験に基づいての種々貴重な御意見を世に問うておられまして、そうした意味で、私ども先輩として大変後藤田先生の御意見につきましても注目をさせていただいておるところでございます。
  15. 久保亘

    久保亘君 総理が尊敬すべき先輩として見ておられる後藤田さんが、昨年の四月二十八日に橋本内閣のもとで周辺事態法案等閣議決定されまして、そのときあなたは外務大臣として橋本内閣閣議決定に参加されているわけでありますが、その翌日の朝日新聞の記事に「後藤田正晴の目」ということで、かなり詳しい周辺事態法等に関する後藤田さんの意見懸念が述べられております。  これは、今までのこの法案等についての論議を通して、国民の間にあります懸念やどうもわかりにくいというようなことを非常に端的に取り上げておられるような気がいたします。後藤田さんの投げかけておられる問題点についてしっかりお答えをいただくことが国民に対するこの法案等説明になっていくのではないかという気がいたしますので、この点について伺いたいのであります。  まず第一に、日米安保目的範囲を超えて、在日米軍行動範囲そのもの日本が支援する周辺事態になっているのではないかというのが一つ問題点でありますが、この点について、後藤田さんにお答えいただくというよりは、国民、共通して多くの人たちが持っておりますこの懸念についてお答えいただきたいのであります。
  16. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今般のガイドライン関連法案につきましては、日米安保条約目的範囲内ということにつきまして、政府は確たる確信を持ってこの法律案の成案を得て国会にお示ししておるわけでございますので、その目的を超えるものでないことは言うまでもないと存じております。
  17. 久保亘

    久保亘君 先ほどあなたがおっしゃいましたように、長く政府や与党の枢要な地位におられ、今もいろいろと政局に対しても、これらの国家的な課題に関しても御発言になっております方がそのような懸念を表明されており、国民の間にもその点がどうもはっきりしないと思っている人は多いのであります。それだからそこのところが一つ問題であります。  次に、二番目に提起されておりますのは、在日米軍基地アメリカ世界戦略の一環として使われ、それに日本が協力するということになりはしないかという疑問が第二の疑問であります。この点にどのようにお答えになりますか。
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日本における基地提供は、あくまでも日米安保条約に基づきまして極東の平和と安定に資する意味でこれを提供するものでありまして、世界戦略云々ということについては、後藤田先生の真意を確かめてはおりませんけれども、そうした形で米国世界的な軍事的戦略を達成するために提供しているものではないというふうに我々は考えておるところでございます。
  19. 久保亘

    久保亘君 第三の問題点周辺事態とあるが、周辺事態であるかないかの判断日本が独自に行うことができるのかというのが後藤田さんが提起されている第三の問題点であります。この点はどうお答えになりますか。
  20. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これも日本国政府自体が主体的に判断をすることでございますので、日本としてしっかりとした日本の平和と安全に益するという意味で、その範囲を超えるものでないことは言うまでもないことだろうと思っております。  それから、先ほどの世界戦略云々ということについてでございますけれども、その解釈とか、後藤田先生がどういうふうにお考えになられたか十分確かめない上でございますので申し上げられませんが、極東における平和と安全を維持するということがアメリカの基本的な考え方一つであるとすれば、我々はアメリカ日本における基地を活用していくということは当然のことであるということは言うまでもないことだと思っております。
  21. 久保亘

    久保亘君 今、総理お答えになりましたことで後藤田さんが提起されました問題がすべてよくわかったということにはならないと私は思っておりますが、このことで論争をいたしますと時間がありませんので、また改めて申し上げる機会があろうかと思っております。  ただしかし、ひっくるめて非常に国民の中に存在いたします疑問は、今いろいろと日本アメリカとの間にやっていることの根本にあるのは、アメリカ正義日本正義であり、それはまた世界正義でもある、こういう前提に何の疑念も差し挟むことなくいろいろなことが進んでいっているのではないかという懸念日本国民の中にも存在しているのでありまして、それらの点についても今後いろいろなことを進められる場合には十分に念頭に置いてやっていただきたいと思うのであります。  それで、こういうことをお尋ねしました上で具体的な問題で伺いたいと思います。  先般の首脳会談において、日米安保体制信頼性強化ということをおっしゃったことについて今説明がありましたけれども、この上に立って、主要地域情勢について緊密な意見交換大統領との間に行ったという御報告がございます。大統領との間に緊密な意見交換を行われた世界的な主要地域情勢というときの主要地域というのはどこどこを指しているのでしょうか。
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 特に、この北東アジアの平和と安定という問題についてお話をいたしましたことが一つでありまして、その点につきましてはいわゆる北朝鮮の現在の政治情勢を含めました状況について意見交換をいたしました。と同時に、現下喫緊の問題でございますいわゆるコソボ問題に対しまして、この点について我が国の対応、またコソボのこの状況をいかに解決していくかということにつきましての問題点についていろいろと意見交換をさせていただいたということが主たるものだと思っております。
  23. 久保亘

    久保亘君 そうすると、主要地域情勢というのは、大統領との間で話をされた限りにおいては北朝鮮コソボの問題ということのようでありますが、中国に関してはお二人の間でいかなるお話もなかったのでしょうか。
  24. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 中国の問題につきましては、クリントン大統領から、江沢民国家主席に引き続いて朱鎔基総理が訪米されまして、中国改革路線日米とも支援していくことが重要である、また中国WTO早期加盟も実現すべきであるというお考えを示されました。  私自身も、当然のことながら、中国WTO加盟につきましては、かねて来、日本としては強くこれを慫慂しておると同時に、国際社会の中におきましてもこうした国際機関加盟をし中国が大いに経済的な発展をされることが望ましいということで、この点について米中間におきまして結果的に最終結論は得ておりませんけれども日本としては、日本中国との関係ございますけれども、ぜひこれは米国としてもこの点について早期加盟実現をされるよう御検討いただくようにお話を申し上げてきたところでございます。
  25. 久保亘

    久保亘君 日米安保体制拡大強化に対して、中国からは特に台湾地域台湾海峡の問題においていろいろと懸念が表明されておりますが、このことについて大統領との間では何のお話もございませんでしたか。
  26. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 安保条約並びにガイドラインの問題については、多国間の問題についてのお話は特に日米間ではいたしませんでした。日本において、衆議院において、これが政府考え方並びにこれを修正する考え方も含めまして通過したという事実をお話しし、そのことにおきましては米側としても大変評価をするということに終始いたしております。
  27. 久保亘

    久保亘君 防衛庁長官、特にこの台湾地域台湾海峡の問題については、三年前、九六年の三月、台湾における総統選挙を目前にして中国側による軍事演習が行われ、この軍事演習に対して、当時のクリストファー国務長官ペリー国防長官、それから、今の国務長官のオルブライトさんは当時国連大使でありましたが、これらの方々がそれぞれ談話を発表され、そして沖縄台湾を結ぶ線上に、横須賀を母港とする空母インディペンデンスを旗艦とする機動部隊展開し、そして、ペルシャ湾にありました原子力空母ニミッツ機動部隊に対して、大統領台湾東方海上展開するように命令を出しました。ニミッツペルシャ湾展開中のところを急遽台湾に向かってやってくるのであります。なお、台湾西方海域海峡中国ミサイル演習をやりました地域を監視するためにミサイル巡洋艦バンカーヒルが配備されて、その機動部隊や艦隊の集結は湾岸戦争のときに匹敵すると言われたのであります。  それで、こういう状態中国側からも強力な反発がございました。しかしアメリカは、高官たちがこの軍事演習に対して、我々は必要なときには必要な行動をとるということで強力な機動部隊展開をやったのであります。このとき日本側との間には、アジア太平洋地域の平和と安定に重大な問題でありますが、このことに対してどのような協議が行われたのか、わかっておりましたら御報告いただきたい。
  28. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 極めて詳細な事態でありますので、政府委員の方からまず答弁させます。
  29. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 当時のその状況におきまして、外務省も含めまして米側といろいろな情報を交換しておったということでございます。
  30. 久保亘

    久保亘君 中国側軍事演習も、ミサイル並びに実弾の演習で行われた。アメリカ機動部隊実戦配備展開した。こういう状況は、これは周辺事態ということになるのかどうか。これは総理防衛庁長官、これらの問題はどう考えるのか、そこをちょっと。まだ遠い昔の話じゃないんですよ、三年前にあったことです。
  31. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今度の法案では、放置しておけば我が国武力攻撃が及ぶような事態等我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありますから、今先生がお挙げになったようなことをもってこの法案周辺事態ということには必ずしもならないと考えます。
  32. 久保亘

    久保亘君 これは、米軍展開前の状態周辺事態にならないということはわかりますが、米軍が対峙する形で、必要があればいつでも必要な行動を起こすという判断のもとに機動部隊台湾地域台湾海峡展開する、こういうことになってもそれは周辺事態とは見ない、こういうことでよろしいですね。
  33. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 周辺事態というのは、その時々の事態の規模とか態様とか、そういう総合的な事情を勘案した上で我が国の平和と安全に重要な影響があるかどうかという判断をするのであって、今委員が挙げられたような例で、私どもはそれが直ちに周辺事態だというふうに断ずることは不可能だと思っております。
  34. 久保亘

    久保亘君 私はわざわざ時間を使って当時機動部隊がどういう展開をしたかということについても御説明を申し上げたんです。そういう事態に対して、これは日本の安全や平和に影響を及ぼすものではないという判断に立って周辺事態とは見ない。つまり台湾地域台湾海峡というのは、ここでどのような状況が起こってもこれを周辺事態とは考えない、つまり日本は介入しないということを言われるんだったらそうはっきり言ってもらいたい。
  35. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 何度も繰り返して恐縮でございますが、周辺事態というのは、我が国の平和と安全に重要な影響があるかどうかというのが物差しでございまして、それはいろいろな規模、態様等、総合的な事情を勘案して決めるものであります。  先生から今台湾に関する問題についての御質問がありましたが、これはもう総理外務大臣から累次お答え申し上げているとおり、日中共同声明において表明されているとおりでございまして、すなわち、中華人民共和国政府中国の唯一の合法政府であることを承認した上で、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというものでありまして、我が国としては、中国政府台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知しております。  このような基本的立場を堅持した上で、我が国としては、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望しておるというのがこの中国台湾に関する私どもの統一した見解でございます。  もう一度申し上げますと、私どもとしては、周辺事態としては、あくまでも日本の平和と安全に重要な影響があるかどうかという物差しで周辺事態判断しているものであります。
  36. 久保亘

    久保亘君 今、防衛庁長官が言われたことは、不明な点もありますが、かなり私も理解ができつつありますのは、中国の国内の問題であって、私が今言いましたような状態というのは、日米同盟によってこのことが安保体制の信頼性強化という立場から考えられるものではない、したがって台湾問題はこの周辺事態法の範囲外である、これには含まれない、こういうことを言いたかったんだろうと思うんです。そういうことでよろしいですね。これは総理お答えになりますか。
  37. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 総理からも私からも、あるいは防衛庁長官からも累次お答えしているわけでありますが、周辺事態というのは我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありまして、まさに事態の性質に着目した概念であって、あらかじめ地域を特定できないという意味で地理的概念ではない。  ですから、地理的概念でないということでありますから、台湾にかかわらずどこの地域であってもあらかじめ地域を特定できていないわけでありますから、そこは入っているとか入っていないとか、これは台湾だけではなくて、もともと概念がそういう意味での地理的概念ではありませんので、この地域は入っているか入っていないのかということはどこについても言えないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  38. 久保亘

    久保亘君 それは、あなた方の方は言えないということで理由を示すことなく逃げ回る、こういうことになっているわけです。しかし、大もとのところでは日米安保体制強化アジア太平洋地域の平和と安全のためということを、これは地理的概念じゃないんですか、アジア太平洋地域というのは。そういう使い分けをしてはいけないと思う。しかも、台湾の場合には、三年前に起こった事件というのは、これは明らかにどう判断すべきかという判例といいますか事例として最も具体的なものだと私は思います。  きょうは時間がありませんから、またの機会にいたしますが、総理にもう二つばかり聞いておきたいのは、北朝鮮政策に関して、日米韓の協力のもとに抑止と対話のバランスのとれた北朝鮮政策をということを報告なさいました。この抑止と対話のバランスをとる、抑止力の効果を強める役割を持って今回の周辺事態法は提案されていると考えてよろしゅうございますか。
  39. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これはどこの国ということを特定することはありませんで、いずれにしてもこの地域の安定が害されることによって我が国の平和と安定が損なわれるということのないように、そういう意味での抑止的な効果というものを期待していることは事実でございます。
  40. 久保亘

    久保亘君 抑止と対話のバランス、日米韓三国の協力、これは北朝鮮政策で大統領との間に一致したと言われていることなんです。しかも、その前段では日米安保体制信頼性強化ということを高らかにうたってあるんですから、そうなると当然に今回の周辺事態法というのは、その北朝鮮政策の中での抑止力の一環として強化されるものということになりませんか。それはお答えいただかないなら結構です。  それから、もう一つ報告されている中で、コソボ情勢の政治的解決が重要であるということを私が指摘したとあなたは言われたんです。全体を通じて大統領に対して指摘したという表現が使われているのはここ一カ所のようです。コソボについて政治的解決で国際間の一致を図るようその重要性を指摘したとおっしゃっておりますが、この政治的解決の重要性の指摘というのは空爆の停止を含むものであるかどうか、その点を伺いたい。
  41. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) コソボにおける和平の実現のために、ミロシェビッチ大統領コソボにおける戦闘の停止や軍、治安部隊のコソボからの撤退など国際社会の要求を早急に受け入れることが必要である、このような国際社会の要求を集約するものとして先般G8外相会合で七原則につき合意し、この実施のため国連安保理決議の取りまとめを目指して準備を進めることなどが合意されました。ミロシェビッチ大統領早期にこれらの七原則を受け入れ、和平への道を開くことがコソボ問題の政治的解決であると考えておるというのが申すまでもなく我が国の現下のコソボ問題に対する基本的対応でございます。  そこで、今、久保先生お尋ねの点につきましては、私といたしましては、コソボ問題についての我が国の対応といたしましては、特に難民問題に対して資金も提供しながら、現下、厳しい難民の状況をいかに救済するかということに全力を挙げている旨、申し述べたところでございます。と同時に、たまたま当時ロシアのチェルノムイルジン特使が訪米中、ワシントンにおられましたので、この点について、平和的解決について恐らく大統領等とお話しされたと思いますので、その点についても私自身としてはお話を申し上げたわけでございます。  結論が最後になって申しわけありませんが、いわゆるユーゴに対するNATOの爆撃の問題について、このことについて中止を申し入れるというようなことは私はいたしませんでした。
  42. 久保亘

    久保亘君 せっかく政治的解決の重要性アメリカ大統領に指摘されるのでありましたら、政治的解決ということには空爆は含まれないわけですから、それから言及されればよかったと私は思います。しかし、これはもう会談は終わったことですから、ただそこを確かめておきたかったのであります。  時に、前国連事務次長の明石さんがベオグラードへ行かれてミロシェビッチ大統領と会談を行われた。明石さんは、一私人としての行動だという報道もございますが、少なくともユーゴ、ボスニア問題の国連の担当代表を務められた方でもあり、そしてまた国連における外交官としての長いキャリアをお持ちであります。そして、近くは東京都知事の候補者として自民党の推薦を受けて立候補された著名な方でございます。こういう方が戦時下、ユーゴから見た場合には戦時下にありますこういうときに、その指導者でありますミロシェビッチ大統領と長時間にわたって会談を持たれるということは、これは一私人としての旧交を温める会談ということにはまいらぬと私は思うのでありますが、明石さんのミロシェビッチ大統領との会談に当たっては、外務省はどのような連携をとっておいででありましたか。  また、明石さんも、ミロシェビッチ大統領お話をされるに当たっては、当然に日本政府考え方というものをきちんと理解した上でないとできないことだと思うのでありますが、どういうふうになっておりましたのでしょうか。
  43. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 御指摘のように、明石元国連事務次長は個人の資格においてユーゴを訪問し、十日、約一時間半にわたりミロシェビッチ大統領と会談したと聞いております。会談におきましては、G8外相会合の七項目、国際プレゼンス等についてのミロシェビッチ大統領考え方を直接聞くことができたと伺っております。  明石氏は、ベオグラードを訪問する前に、ニューヨークにおいて国連関係者と、またブラッセルにおいてNATO関係者とそれぞれ意見交換を行ったと伺っております。ボスニア紛争に際し国連事務総長の特別代表として活躍した経験を持ち、ミロシェビッチ大統領とも旧知の関係にある明石氏が、コソボ問題の政治的解決のための国際社会の要求に対するミロシェビッチ大統領考え方を直接聞かれたことは意味のあることであり、問題のあることとは考えておりません。  外務省といたしましては、ユーゴの現状にもかんがみ、明石氏のベオグラード訪問に際し必要な便宜供与を行ったということでございます。
  44. 久保亘

    久保亘君 私は、明石さんの行動に問題があると言っているんじゃないんです。そうではなくて、こういう方がユーゴの大統領とお会いになるということについて日本外務省は何をされておりましたかと聞いておるんです。  明石さんから、ミロシェビッチ大統領に話を聞いたということで報告が来るまでは、それは明石さんが個人的におやりになることですからということでほうってあったんですか。そういうことじゃないんじゃないですか。当然、外務省と明石さんの間には十分な連携がとられてやられなければおかしいんじゃないでしょうか。それを私は言っておるんです。
  45. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 十分な連携と言えるかどうかはわかりませんが、事前に外務省の人間もそういうことを知って接触したということで、明石さんの方からは、二元外交にならないように注意をすると、そういう言葉があったということは聞いております。
  46. 久保亘

    久保亘君 私は、このような非常に有力な経歴を持つ方が重大な国際的な問題について接触される場合には、外務省は責任ある立場としてきちっと事前に連携をとらなければいけないと思うんです。行かれるというのがわかっておって、それでそのことに対して終わったら報告してくださいというようなことでは済まないんじゃないか、こう思いましたのでお尋ねしたのであります。  余り私の持ち時間がありませんので、省略をしながら、特に大事な点だけ伺います。  法案に関して、一つは、後方地域支援という言葉が使われておりますが、これは後方地域において行われる戦闘地域、つまり前方地域に対する支援、こういうふうに解さなければいけないと思うんですが、それはそれでよろしいですね。
  47. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) この点につきましては、法案の三条に規定してございますように、後方地域支援につきましては、周辺事態に際して、日米安保条約目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する物品役務提供等の支援、それが後方地域において我が国が実施するもの、こういう概念規定でございます。
  48. 久保亘

    久保亘君 そういう砂をかむようなことを言わぬでいいんだよ。僕が聞いているのは、後方地域において自衛隊が前方に展開している米軍に対して支援を行うものと。後方地域支援というと何か後ろの方に支援するような印象になるから、だからそのことを確かめただけの話で、今のあなたの言っていることでいいんだ。前方、つまり戦線で戦っている者に対して安全なところで支援を送る、それが自衛隊の後方地域支援だということだと私は思うんだ。  そうすると、後方地域というのはどういうところかといえば、そこで現に戦闘が行われていない、そして支援活動を行っている間、武力攻撃が行われるおそれはないと認められる地域を後方地域だと説明をしております。  そうすれば、武力攻撃を受けるおそれのない地域というのは周辺事態の対象とはならないわけです。周辺事態の対象とならない場合には後方地域支援ということは起こってこないのであります。これは周辺事態法によって行われるのでありますから。だから、どういうことになるんだろうかなというのが第一の疑問であります。  これは、防衛庁長官、どう思いますか。
  49. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 周辺事態に際しましてこの法案に基づき行われる後方支援は、後方地域において実施されることとされている。これは先生が御指摘のとおりでありまして、自衛隊が活動を実施する期間を通じて安全に活動が行い得るものと考えております。  しかしながら、自衛隊が当該後方地域支援を実施する地域周辺事態が発生する地域とは同一ではなくて、後方地域の安全が確認されれば既に周辺事態に当たらないとの御指摘は、私は当たらないものだと思います。  なお、周辺事態により我が国の平和と安全に対する重要な影響が存在する場合であっても、完全に後方地域支援を実施することが可能な地域、つまり後方地域が全くなくなるということは想定されません。周辺事態に対して実効的な支援を行うことが可能であると考えておる次第でございます。
  50. 久保亘

    久保亘君 典型的な何とか理屈というものですね。そういうことを説明しても理解できないと思うんです。  それなら、防衛庁長官、あなたお詳しいようだからもう一つ伺いますが、後方地域で支援を送った軍事物資はどのような方法で前方地域に届けられるのですか。
  51. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 後方地域というものを定めまして、戦闘地域と交わらない、武力の行使と交わらない後方地域をつくりまして、その中の実施区域において渡されるものであります。
  52. 久保亘

    久保亘君 それは非常におかしな話ですね。そうすると、米軍が後方地域までとりに来るということでしょうか。それはいいです。  そうすると、ガイドラインの〇九号に何が書いてあるかというと、自衛隊米軍の海上兵たん線の防衛に共同責任、政府の訳では主責任、主なる責任を持つと書いてある。自衛隊米軍の海上兵たん線の防衛に主責任を持つ。これはどういうことですか。
  53. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) ちょっと先生が御質問になされました内容につきまして若干聞き取りにくかった点があったんですが、ガイドラインの〇九号とおっしゃいましたですか。
  54. 久保亘

    久保亘君 ではなかったかと思うが、違うか。
  55. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 私の記憶では、その〇九号というのがちょっとどういうことを指しているのか直ちにわからないからあれなんでございますが……
  56. 久保亘

    久保亘君 何でもいいから。ガイドラインの中にそうなっておるだろう。
  57. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) ガイドラインの中で輸送について言及がございますところといえば、例えば日本に対する武力攻撃があったときの共同対処行動の一環といたしまして後方支援活動というのがございます。これはガイドラインの2の(3)の(ホ)のところでございまして、そこに「後方支援活動」がございまして、その中で先生がおっしゃっている「輸送」という項目がございまして、「日米両国政府は、米国から日本への補給品の航空輸送及び海上輸送を含む輸送活動について、緊密に協力する。」と、こういう記載がございます。
  58. 久保亘

    久保亘君 大体、後方地域で支援したものは何か後ろの方に物品役務提供したもので、そこから先は知らぬよというような話じゃないんです。後方地域において支援を送ったものは前方地域、つまり戦闘地域に届けられることによって支援の役割を果たすんですよ。その届けられるラインをガイドラインでは海上兵たん線と言っておるわけです。この海上兵たん線は自衛隊が責任を持ちますよと。少なくとも日米の共同責任ということになっておるはずです。  そうすると、戦闘地域に届けられるまでの公海並びにその上空におけるラインの防衛ということは、後方地域の解釈によって当たる地域になるのかどうか。ならないと私は思う。
  59. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 先ほどの私の御説明でも言及したところでございますが、このガイドラインで今申しました輸送についての協力、それから例えば「作戦構想」のところで「自衛隊及び米軍は、日本周辺海域の防衛のための作戦及び海上交通の保護のための作戦を共同して実施する。」とか、そういう記載がございますけれども、これはいずれも周辺事態ということではなくて、まさに日本に対する武力攻撃があったときの共同対処行動の際の日米の役割というところから記載をされている事項でございます。  ですから、いずれにいたしましても今回この周辺事態に際しまして周辺事態安全確保法で実施しようとしておりますものは、これまでも御説明しておりますように、そういった武力行動と一体化するもの、あるいは武力行動になるものということではなくて、まさに後方地域において今ここでお願いしているような、そういった武力行使に当たらない行動を実施しようということでございまして、その点を御理解いただきたいと思います。
  60. 久保亘

    久保亘君 いいですよ、あなたが言われたとおりに理解して。防衛庁長官、それでよろしいですね。  結局、日本武力攻撃が加えられているという場合は、これはまた別の問題だから、後方地域支援ということで律せられない状況になるわけですから、後方地域支援を行ったものが海上輸送によって前線に届けられる場合のこのラインについては、自衛隊は責任は持ちませんよ、こういうことで解すればいいんですね。
  61. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほど来先生が御指摘なさっておりますガイドラインのくだりは、今防衛局長から答弁申し上げましたとおり、日本に対する武力攻撃がなされた場合の作戦構想の中に掲げられているものでありまして、これは具体的に日本武力攻撃があった場合の措置について触れているわけであります。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  私どもがこの法案に書いております趣旨は、あくまでも武力攻撃と一体とならない後方地域というものを設けまして、その中の実施区域の中で米軍にこの輸送物資等を引き渡す、こういうことになるわけであります。
  62. 久保亘

    久保亘君 何度説明を聞いてもわからぬ。日本に直接武力攻撃が加えられている場合に後方支援も何もないんですよ、もうそうなったときには。後方支援というのは、いわゆる周辺事態の場合のことを言っているわけです。  それでは、後方地域において行われた支援はどうやって前方地域に届けられるのでしょうか。
  63. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 委員が先ほど引用されてガイドラインについて言及されたくだりは、日本に直接武力攻撃がなされた場合のくだりであるということのみを申し上げたわけであります。  改めて、周辺事態における物資の輸送はどうかと言われれば、後方地域という戦争区域とは一線を画された地域の実施区域内まで日本が運んで、そこまで米軍がとりに来るということになるわけであります。
  64. 久保亘

    久保亘君 それはいいですな、今のあなたの解釈で。後方地域、つまり絶対安全と保証された地域まで持っていけば、そうするとそこへ米軍がとりに来る、そこから先はあなたの方だ、こういうことですね。それでは、今のお答えを承っておきます。  時間がもうほとんどありませんので、次に、今、本委員会に付託されております衆議院送付の法案では削除されております船舶検査活動についてでありますが、船舶検査活動というのは段階を追って言いますと、停船を命ずる、そして検査をすべき船舶に自衛官を送って検査に入る、それから検査をやった上でその検査結果によって目的地、目的港、航路の変更を要請する、要請に従わなかった場合には説得する、それで終わりになっておるんです。  そうすると、どの段階にも船舶の側が応じなければどうなるんでしょうか。これを防衛庁長官は、指揮官としてどうされますか。
  65. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 私ども国会に提出させていただいた政府案の第七条三項は、仮に検査対象船舶の船長が停止の求めに応じない場合にはこの求めに応ずるよう説得を行う、またはその際、説得に必要な限度において接近とか追尾とか伴走とか進路前方における待機といった位置をとることを規定しておったわけであります。  政府としては、これまでの諸外国による活動実績などにかんがみまして、政府案に規定されていた範囲内で実質的に有効に機能する船舶検査活動を行い得るものと考えております。武力の行使及び威嚇を行わなければ活動の実効を確保できないとは考えておらず、また自衛隊が本活動を行うという発想に問題があるとは思っておりません。
  66. 久保亘

    久保亘君 防衛庁長官がその程度の認識でいいのかな。あなた、この間、領海というよりは日本の領土に接近した不審船を停船させることができなかったんですよ。武力による威嚇を行ってもできなかったんです。  今度は、公海における検査活動については、武力による威嚇や武力の行使は行わない。これは、憲法上問題が解決されていないということになっているんですから、武力は全然威嚇用にも、威嚇も行使の中へ含めて考えれば武力の行使はない。そういう場合に、相手が応じなければ説得すればできますというように、説得してできるようなものなんでしょうか。そして、最後にどこへ行けというのを防衛庁長官命令によってやりましても、相手は聞かずに自分の国の領海に行ってしまうということの場合には何もできないんじゃないですか。何ができるんですか。
  67. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) まず委員に御理解いただきたいと思いますことは、この間の不審船はあくまでも特別な意図を持った不審船であります。今度私どもが行うのは商船に対する検査でありまして、しかも国連の決議に基づいて行うものである。  こういうケースの場合は、これまでの実態で、ある調査が、過去の実績がありますけれども、ここでもあるいは開陳されたと思いますが、十万隻以上の船に照会をいたしまして、船舶検査は一万七千隻以上行いまして、進路変更要請をしたのは二千隻以上である、しかし船体への警告、発砲などをしたものはほとんどない、ゼロに等しいという実績であります。私どもは、商船の検査に関するものは世界の実態から見てこういうことでありますから、これに着目して法案をつくったという次第でございます。
  68. 久保亘

    久保亘君 それは、日本の憲法のもとで行われる船舶検査活動はおのずから制約があるんです。だから、国連決議をその制約を外すために使ってもらっては困る。  そうすると、結局、今事例としては平穏に検査活動がペルシャ湾でもどこでも行われたんだと言わんばかりのお話でありますが、日本自衛隊による検査活動というのは、武力を保有しない、武力を行使しないということになった場合に、戦争状態にある相手から見た場合に、その相手国の検査活動にそんなに単純に応ずるものとは思えない。結局、この問題を通して、国連決議を背景にして出動と武力行使に道を開く結果になりはしないか、このことが十分に配慮せらるべき問題だと考えております。  このようなことについては、今あなたは国連決議があるからということで言われたけれども、そこのところはまとまらずに削除されたんじゃないのか。だから、今後またこの問題については、これが政府案になるのか三党案になるのか知りませんが、法案が出される段階で、なおまたこの委員会における現在審議中の衆議院送付案に対する論議の段階で、我々の側としては船舶検査活動に関しての考え方を示してまいりたいと思っております。  私の与えられた時間が参りましたので、通告をいたしました問題を幾つか残しておりますが、これで終わります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  69. 千葉景子

    ○千葉景子君 久保議員に関連をいたしまして質問をさせていただきます。  まず、先ほどもコソボ問題が出ておりました。私は、この問題は冷戦後そして二十一世紀に向けての安全保障という問題を考える際には、大変重要なポイントになってくるのではないかというふうに感じております。  というのは、安全保障というのは二十世紀、これまではいわば国家の安全保障というのがある意味では基本的な考え方でございました。しかし、現在、国家の安全保障ということからむしろ人間の安全保障、こういう方向へと安全保障の基本的な考え方というのが大きく変容をしつつあるのではないかというふうに思います。国の安全が脅かされるということは、そこに生存をしている人間の安全も脅かされるという意味では、確かに国の安全保障ということがこれからも否定をされるということはあり得ないだろうというふうに思います。  しかし、国の安全保障、国の枠組みということだけでは、これから人間そのものの安全保障、安全が本当に確保できるのかどうかという問題が既に発生をしているのだろうと思います。それは、例えば普遍的な価値としての自由とか人権とかあるいはまた新しい時代に向かいましての環境問題であるとか、あるいは犯罪、薬物、こういうような問題にも人間の安全保障、どうやって安全な生活を保障するかという問題にあらわれてくるのではないかというふうに思います。  こういう中でこのコソボ問題というのは、いわばこれまでの国の安全保障、国と国とのそれぞれの安全をどのように確保していくかということを考えると、本当にNATOの新ユーゴに対する空爆あるいは侵攻というのが一体許されるのかどうか、こういう問題になってまいります。しかし、反面、よく言われておりますように、コソボに住むアルバニア系住民の人間としての安全保障をどのようにしていくかということも一つの大きな問題であったことも事実でございましょう。  そういう意味では、非常にこれからの安全保障考えるということは、大変私たちにとっても難しい。どういう選択をすべきかということは大変難しい問題を突きつけていると言っても過言ではないと思います。  こういう中で、やはり人道的な介入、人間の安全を守るための人道的な武力介入というのは、国連憲章とかあるいは国際法上明確に位置づけされているものではないにしろ、国際的に認容あるいは容認されつつあるのではないでしょうか。  そういう意味では、このコソボ問題について、こういう新しい安全保障、これからの安全保障ということを念頭に置きながら、あるいは国連憲章、国際法上の規制とかあるいは位置づけ、こういうことも念頭に置きながら、これからの安全保障ということについて日本政府としてはどのような哲学を持って、どのような考え方で今おられるのか、その点についてまず総理にお尋ねしたいと思います。
  70. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、千葉委員御指摘のとおり、冷戦後における国際紛争というものが、特に人種問題、いわゆる民族問題あるいはまた宗教問題、こうした問題にかかわってアフリカを初めといたしまして引き起こされ多くの人命が失われておるというような事態に対してどのように対処するかということは極めて重要な問題でありまして、そういった意味で、今回起こりましたコソボ問題に対する対応につきましても、これは人類的課題としても取り組まなきゃならないと思いますし、また日本政府といたしましても、正直なことを申し上げますと、民族問題あるいは宗教問題という観点に立って世界で惹起されておるような国々の大変な悲劇に対して、いまだ明確なる答えというものを持ち得ないという状態だろうと思います。  一義的には国連というものがこれに十分対処するということが必要なことだと思いますが、これとてかつてのボスニア・ヘルツェゴビナのことを考えますと、今なおこの問題についての最終的結論が生まれていないという状況でございます。したがいまして、随時起こりました状態に対しまして、最終的には国民判断に帰することでありますけれども政府として慎重の上にも慎重を期しながら、かつ日本としてどのように対応するかということについて対処いたしておるところでございます。  コソボ問題について言えば、現下なおこれの解決のためにNATOの行動が、国際社会における政治的解決のための外交努力にかかわらずなかなか、ユーゴスラビア政府がかたくなにこれを拒否する、五原則を拒否する中で、さらなる人道的惨劇を防止するためにやむを得ずとられた行動であったと理解をしておるという立場でございます。  国連憲章や国際法との関係について申し上げれば、今回のNATOの軍事行動については、我が国は当事者ではありません。また、作戦面を含むNATOの軍事行動に関する詳細の情報を有しておらず、政府としては法的評価を下すことはできないことは御理解いただけると思います。  いずれにいたしましても、この状況の中で日本政府としては、平和的解決とは何ぞやということに関しまして、できる限りの方策をいかに講ずべきかということについて苦慮しておるところでありますが、日本政府の果たすべき役割もおのずとあろうかと思いますので、今全力を挙げて努力をさせていただいておる、こういうことでございます。
  71. 千葉景子

    ○千葉景子君 先ほども、この問題についての政治的解決の重要性ということについて、総理も十分御理解であるということが示されました。  ただ、この間の推移を見ておりますと、大変残念なことに、中国大使館が空爆をされ、それによって大変中国政府としても厳しい態度に今終始しているという状況がございます。さらに、ロシアにおきましても首相が退任をされるというある意味では大きな局面を迎えておりまして、そういう意味ではこの政治的解決、これが大変難しい。  こういう状況も含めながらどうやっていくのかというところであろうかというふうに思うんですけれども、こういう状況の変化も含めて、やはり日本政府としては具体的に、先ほどお話がございました明石さんが行かれたということでございますけれども、何か個人的に行ったことをそうですかと言っているようなことではなくて、やはり平和をつくっていくあるいはこのような問題を解決していくという上でどういう積極的な努力をされようとしているのでしょうか。  このような難しい局面もございますので大変であろうと思いますけれども、お考え方をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  72. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) コソボ問題に対しましての政治解決のためには、G8として統一ポジションを固めまして、その上で国連が主導的役割を果たし得る状況に持っていくことが必要だと考えております。  この点から、先般高村外務大臣が出席して行われましたG8会合におきましても、政治解決のための七原則及びこれらを実施するための国連安保理決議の準備につき合意されたことは極めて重要であると思います。  今後の政治解決に向けた努力におきましては、G8の一員であるロシアの建設的役割を引き続き支持し慫慂するとともに、安保理常任理事国である中国の理解と協力を得ていくことが必要でありますが、特にこうした中で中国大使館の誤爆は、G8外相会合において重要な成果があったやさきに起こった事件だけに、この事件が政治解決へ向けての機運に悪影響を与えることのないようにすべきことは当然であります。  我が国としては、国連安保理決議が取りまとめられることを目指し、今後ともG8の一員としてロシア、中国への働きかけを含め貢献してまいりたいと思っておりますが、今、千葉委員御指摘のように、ロシアにおける政局も大きく展開をしておるような状況でございます。エリツィン大統領とNATOの主要国であるフランスのシラク大統領が会見し会談しておる。恐らくこういった観点でのコソボ問題も話されたのではないかと推測をいたしておりますが、そういうこともございますし、また中国江沢民国家主席とドイツの新首相シュレーダー氏が北京において会談しておる。現在いろいろとこうした事情の変化の中でそれぞれ主要国も、特にこの爆撃に参加しておられる国々の主要な首脳がこうした形で積極的に取り組んでおられるわけでございます。  さて、日本としてはと、こういうことでの御指摘でございますけれども日本が直接的にここに関与するには余りにもあの地域についての経験は不足しておることは事実であります。ありますが、いずれにいたしましても、日本として何らかの努力ができないかということは、冒頭申し上げましたように、ロシアも参加してのG8の中で一つの解決方法を目指して考え方をまとめておるわけでありますから、それを積極的に支持すると同時に、国連に対しましても国連事務総長の努力に期待を寄せつつ、日本としてさらに積極的に対応していくということであります。  当面は、一方でコソボにおける難民に対する対策につきましては、これは世界の中でも決して遜色のない応援態勢をとらせていただいておりまして、一方、そうした形での我が国国民あるいはまた政府の基本的考え方については御理解を得ておるところではないか、こう考えております。
  73. 千葉景子

    ○千葉景子君 今、私もこのコソボの問題をお尋ねしたのは、今、遠いところといいますか、なかなかそこに情報が少ないといいますか経験が少ないというお話でございましたけれども、これは決して他人事ではない。  このような国際情勢、それから先ほど申し上げましたように人道的な理由をもっての武力介入のようなことが起こっている。これは、決して日本周辺、近くに全くそういう火種といいましょうか、そういう状況がないわけではない。この周辺でも、原因はどうあろうかわかりませんけれども、例えばさまざまな政変、あるいは経済的な状況、貧困、そういうものも含めて大量の難民が流出する、あるいは発生するような事態が万が一にも絶対ないとは言えない。そういう世界状況を見たときに、こういう問題についてどういう姿勢を持っているかということは、これからの周辺状況変化、それが周辺事態かどうかは別といたしまして、それに対する日本の対応ということに直接的なさまざまな関係を持ってくるだろうというふうに思います。  そこで、例えば大量の難民が発生する、それが国外に流出するようなそういう事態が起こったとすれば、これは今審議をされております周辺事態法、この周辺事態というものに該当することになるのでしょうか。改めてお尋ねをしたいと思います。
  74. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 大量の難民が発生して、そのことが我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態になれば、それは周辺事態でありますが、大量の難民が発生したからといって、必ずしも直ちに我が国の平和と安全に重要な影響を与えるとは限らないということでございます。
  75. 千葉景子

    ○千葉景子君 これは例示といいましょうか、そういう周辺事態のどういうケースがあり得るかということの中でこの大量難民という問題が指摘をされております。私も、確かに今、外務大臣がおっしゃったとおりであろうというふうに思うんです。大量の難民が発生をしたというだけでこれは周辺事態などと言えるはずはございません。  そこで、この周辺事態意味でございますけれども、今、大臣がおっしゃったように、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える、こういうメルクマールがあるわけですね。だから、難民が出た、もう即周辺事態だということには当然ならないであろうと。  それともう一つ周辺事態の定義に「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」ということがさらに加わってまいりました。この「直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」ということが加わったということは、先ほどの、大量難民が出たからといって即周辺事態ではない、それに対してまたさらに絞り込みをかけたというふうに解釈をしてよろしいのでしょうか。それとも、そういうことではないということでしょうか。参考人の中からも、この「直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」ということが加わることによってさらにケースが絞られたのではないかという御意見どもございましたけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  76. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 「等」という言葉がついておりますので、もし「等」という言葉がついていなければ何らかの絞り込みがかけられただろうと思いますが、「等」という言葉がついていますので、文理的に解釈しても、特に絞り込みをかけたとは考えていないわけで、それは一つの例示であり、大体どういうことなのかなということが国民にわかりやすいように丁寧に説明したものだ、こういうふうに思っておりますし、衆議院特別委員会あるいは参議院の特別委員会で提案者もそういう説明をしておられます。周辺事態の定義を変えるものではない、今までよりこれを広げるものでも狭めるものでもない、こういうことを説明されていますので、そういうことだと理解をしております。
  77. 千葉景子

    ○千葉景子君 平和と安全に重要な影響を与えるということの大きなポイントは、武力攻撃に至るおそれといいますか、武力ということが非常に大きなポイントになるということが、修正でプラスされることによってより明確といいますか、どういうケースなんだということについての一つのイメージというものが明確になったのかなという感じはいたします。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  そうしますと、これも繰り返しになりますが、結局、その「周辺」という言葉ですけれども、これがついていることによって逆に極めてわかりにくい。「周辺」というのは結局余り意味のない言葉というふうに考えてよろしいんでしょうか。あらかじめ地理的地域を確定できない、「周辺」という言葉はどう考えても地理的概念を示す言葉ですね。でも地理的概念をあらわしているものではないということになりますと、この「周辺」というのは取っちゃっても同じだ。要するに、何か起こった事態、それにはいろいろな条件はついているとしても。「周辺」ということはどういう意味があるんでしょうか。
  78. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 周辺事態安全確保法案に言う「我が国周辺地域」とは、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態が生起する地域のことであります。  我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態が生起する地域というものは、現実の問題としておのずから限界があるわけでございます。そのような意味で「我が国周辺地域における」との文言を用いて周辺事態を定義したものであり、かかる文言が無意味であるとは考えておりません。政府としてはこの文言が適当と考え提案申し上げているのであり、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、ある事態周辺事態に該当するか否か、周辺事態に際していかなる措置を実施するかについては、日米両国政府がおのおの国益確保の見地からあくまでその時点の状況を総合的に見た上で主体的に判断することとなるのであり、政府として周辺事態が生起する地域の地理的な範囲を想定しているということはないわけでございます。  取っちゃっても同じじゃないか、こういうことは、委員のように純論理的に国民がすべて考えられるとすれば必ずしも「周辺」という言葉を使わなくてもよかったのかもしれません。かもしれませんが、やはり事態の性質としておのずから限界があるよということが一見国民にわかっていただけるという意味では、この周辺地域という言葉をつけたことは意味があることだ、私はこういうふうに思っております。
  79. 千葉景子

    ○千葉景子君 これでやっていますとまた時間をとることになりますが、それであれば、いつも御説明のときに、周辺というのはそうしたらおおよそ考え得るのは例えばアジア太平洋であるとか、あるいは極東、それに含まれるあるいはその周辺ぐらいまでだとか、むしろそう具体的に説明をいただいた方がよっぽど国民にはわかりやすいのではないかと思います。裏側は入らないでしょう、あるいは中東、インド洋はいかがでしょう、そう言っているから余計非常にあいまいでわかりにくい、こういう状況になっているのではないかというふうに思います。これはまた後に譲りますが、こういう日本周辺でも大量の難民が発生をするというような事態が起こり得る、これは否定できないであろうというふうに思うんです。  法務大臣、済みません、何かお時間があるようでございます。今、難民というものに対しては、基本的には日本は法務省がその手続等を難民条約、難民法によって進めております。今、コソボでもたくさんの避難民が流出をしている、国内にとどまっている。日本周辺で万が一にも大量の難民が発生をするというような事態が起こったときに、法務省が管轄をする、あるいは法務省のさまざまな手だてでこういう問題に対処できると思われますか。
  80. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 我が国に大量の避難民が流入する事態となった場合は、関係省庁が連絡をとり、政府が一体となってこれに適切に対応する必要があると考えております。  法務省といたしましては、出入国管理行政を所掌する立場から、インドシナ難民等の先例も参考にしながら、大量避難民対策がスムーズに行われるよう省内の体制の整備及び施設の確保等に努め、積極的に対応してまいりたいと考えております。
  81. 千葉景子

    ○千葉景子君 今、とても法務省の日常の手続では、いざ大量の難民発生というようなときにはなかなか対応は難しいというお話でございました。  さて、日本政府としては、例えば日本周辺で大量の難民が発生をするというような事態が起こったときにどういう対応策あるいは想定というものをしているんでしょうか。こういうことは、いや、あり得ないんだということで考えているのか、あるいは万が一にもあるかもしれない、こういうことで体制を整えようとしておられるのか。  それと、私はそれに関連して、先ほど難民が発生したから直ちに周辺事態というものに該当するのではない、それにきちっとした条件があれば周辺事態ということにもなり得るけれども、直ちに周辺事態になるわけではないと。片方では、万が一にも周辺事態というようなことにも難民問題としては頭をめぐらしておかなければいけない、しかし片方では、その難民に対してどう日本が受け入れていくのか、受けとめていくのか、あるいは人道的な課題としても、そういう側面でも考えておかなければいけない。両面のような形になるのではないかというふうに思いますが、これら難民という問題に対してどう受けとめ、あるいは想定などをされておられるのでしょうか。
  82. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 委員の御指摘は、難民問題について、大量にこれが流入するというようなことになった場合に出入国管理の面だけでいいかという点も含めてお尋ねがあったんだろうと思います。  政府といたしましても、認識としてやはりこの問題は非常に重要なことだということで、平成八年五月に橋本総理の指示によりまして、我が国に対する危機が発生した場合やそのおそれのある場合に我が国としてとるべき必要な対応について検討、研究を行っておりまして、その中で避難民対策について関係省庁が共同で検討を行う作業グループを設置して、政府全体としての対処の手順等について整理を行っているところでございます。  具体的には、避難民対策の体制、避難民対策の基本要領、身柄の保護、上陸の手続等についても整理を行っているところであります。  これを周辺事態との関係でどうかと言われますが、周辺事態につきましては先ほど外務大臣が答弁を申し上げましたところが今の政府考え方の基本でございますが、その事態はともかくとして、日本に対して想定されるような多くの避難民の流入というようなことについて、万々一起こった場合ということを想定すれば、このような指示に基づいて現下この対策について遺漏なきように検討を進めさせていただいておるということでございます。
  83. 千葉景子

    ○千葉景子君 先ほど法務大臣からインドシナ難民の受け入れなどの経験というようなこともございました。しかし、規模から考えますと、これは想定の問題ですからわかりませんけれども、相当大規模な難民発生ということまでもやはり念頭に置く必要があるのではないか、インドシナ難民を受け入れたときとは状況もあるいは規模も違う、そういうことまでもやはり念頭に置く必要があるのかなというふうに思います。  今、連絡会議なりをつくっていろいろな体制を整えようとしている。やっぱり体制を整える以上は、おおよそどういう規模までなら対応できる、そういう想定も当然おやりであろうというふうに思うんですね。どんなイメージで大量難民の発生、そして規模などを考えておられるのか。  それから、どういう官庁がその主務官庁といいますか取りまとめ役になって動かしていくのか。これは例えば難民の捜索とか救援、あるいは身柄の確保あるいは移送、こういう問題も出てこよう。多少の時間がたてば生活の基盤をどうしていくのかという問題などもある。どっと来たときには一時的に庇護をするような施設をどうするのか、こういう問題などもある。本当に多様な省庁にもかかわり、そしてまたそれをきちっと取りまとめていく体制というのも必要であろうと。  具体的にどの程度進んでおりますか。どういうものを想定しながらこの作業は進んでいるんですか。
  84. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 先ほど総理からも御答弁がございましたが、関係省庁が集まって作業グループをつくっておるということで、実は私どもの安全保障危機管理室がいわば事務局と申しますか、そういう形で関係の省庁といろいろ協議をしております。  それで、まず想定の規模ということでございますが、これはなかなか難しいことでございまして、逆に一定の規模を想定いたしまして、これならできるけれどもこれ以上はというわけにもまいりません。  そこで、私ども今やっておりますのは、ある程度通常の業務ではとても対応できないような場合にどういう手順があるんだろうか、その場合にどういった体制をとればいいんだろうかというようなことを中心に考えておりまして、規模の大小につきましてはいわば起こったときにそれぞれの対応の中で考えていくということになるんだろうと思います。一定の規模を想定してということではございません。  そこで、では具体的にどういうことをやっておるかということでございますが、まず避難民発見時ということがあるわけでございまして、そういう場合にどうやって身柄を保護していくのか、あるいはまたとりあえず応急用の物資を支給しなければなりませんし、身体検査と申しますか、そういったようなことも考えなきゃいけないでしょう。さらにまた上陸手続、あるいはまた仮宿泊施設とかそういったようなところをどう確保していくのか、そういった問題について今種々検討を行っておるところでございます。  ある一定の段階までは達しておるところでございますが、この種の検討と申しますのは実はこれで終わりということはないわけでございまして、それぞれの関係各省庁の体制の整備が進むに応じて、あるいはいろいろな設備等も勘案しながら継続的に続けてまいりたいというふうに思っている次第でございます。  なお、当然のことながら、基本はもちろん法務省が主体となってやっていただくことになると思います。そのほかに、検疫であれば厚生省でございますし、あるいは税の問題であれば税関当局というようなところが関係してまいります。このほかにも、まず発見あるいはその身柄保護といったような意味で、海上保安庁、警察庁あるいはまた防衛庁等とも関係してくるわけでございまして、そういった役所がいろいろと作業しているということでございます。  なおまた、周辺事態との関係につきましては、仮に大量難民発生が周辺事態に該当するということになりますれば、当然、法に基づきまして基本計画の中でその辺の対処要領というものも明示していくということになろうと思います。
  85. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、周辺事態というのは、例えば日本に直接武力行使のおそれがあるというようなことが、例ですけれども一つの大きなメルクマールであるとするならば、そういうことよりもやはり大量の難民の発生のようなことの方がより、確率と言ってはおかしいですけれども、発生をする危険性もあるし、そしてそれにきちっと対応できる、そういう体制が整っている必要があるというふうに感ずるわけです。  周辺事態ということに対応するのであれば、その前にやはりこういう事態、問題に対して対処できるような体制をつくっていくこと、それがむしろまた、周辺事態を抑止したりあるいは人の安全あるいは人権、それをアジアの中で育てていくということにもつながっていくのではないかというふうに思っております。  ただ、現状を考えますと、これは周辺事態とか大量の難民の発生ということではございませんので別かもしれませんけれども日本というのは難民の受け入れなどについては極めて門戸が狭い。  五月十二日に、コソボから一家五名が入国をされたということがございます。これはどういう手順といいましょうか、どういう根拠によって日本に入国をしたということになるのでしょうか。
  86. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) お答えいたします。  五月十二日に、周辺諸国に避難していたコソボ出身のユーゴスラビア人一家五名から、在日の親族を訪問する目的で本邦へ上陸したいとの申請がございましたので、在留資格短期滞在で上陸を許可いたしました。これは、コソボから避難している親族を呼び寄せたいとする在日ユーゴスラビア人からの要請が事前にあったことなどから親族訪問目的による入国を認めたものでございます。
  87. 千葉景子

    ○千葉景子君 今、御説明をいただきましたように、これはあくまでも一般の親族訪問という形での入国であって、難民という形で受け入れたというような位置づけにはなっておらないということのようでございます。  日常も、難民の受け入れの状況というのは非常に少ない。ちょっとこの数字等ございましたら説明をいただけますか。
  88. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) 私どもの所管しております難民認定制度は一九八二年から実施されているわけでございますけれども、それ以降、本年四月末までで難民と認定された者の数は二百三十四名でございます。  最近におきましては、平成十年、昨年十六名、それから平成十一年、ことしは四月末までの数字でございますが七名がそれぞれ難民として認定されております。
  89. 千葉景子

    ○千葉景子君 かなりの年数で二百何名ということでございますし、一年で考えればわずかに数名という程度です。  難民の受け入れが多ければいいということではありませんけれども日本の社会というのはこういう難民の受け入れとかに対しては極めて経験が薄い。そして、それに対して一般の国民の感覚というものもそういう中で十分に育っているとも思えない。そこに万が一にも本当にだっと大量の難民が入ってくるというようなことになると、私は非常にそこで社会的な摩擦とかそういう問題が起こりやすくなるのではないかというふうに思うんです。  そういう意味では、やっぱりふだんから、決して難民発生を喜んでいるわけではありませんけれども、そういうものに対して日本の社会が懐を広くしておく、あるいはそれに対しての人道的な扱い方を社会全体が身につけていく、こういう姿勢が日常にも必要なのではないか。その延長で、いざとなったときに日本はアジアのリーダーとして、あるいはアジアの安全をきちっと受けとめてもらえるという意識が周辺諸国にも生まれていくのではないかというふうに思います。  この難民問題、日常その考え方を育てていく、あるいはいざというときに摩擦を起こしたり、あるいは非常にそこにあつれきを起こしたりすることがないようにしていく、こういうようなことを含めて、総理、どうでしょうか、日本の今の難民の受け入れ状況、あるいは手続などを考えて、その辺、何か御感想はございますか。
  90. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) この難民問題は、現下、地球的な問題として最大の問題になっておるのではないかと。UNHCR、御案内のとおり緒方高等弁務官を中心にいたしまして、その対応に東奔西走されておられるわけでございますが、そういった意味で、今世界規模で難民問題について考えていかなきゃならない時代になっておるかと思います。  ひとえに我が国につきましては、先ほど御報告がありましたように、全体的には我が国に定住するような難民の受け入れということにつきましては、いろんな問題点があって対処に苦慮しておるんだろうと思います。アジアの中において起こりましたベトナム難民の引き受けにつきましても、結果的には非常に数少ないものでありました。いろいろとその原因はあろうかと思います。  一つは、日本語という言葉の問題等もございまして、こうした点では世界的な用語であるアメリカという、また自由の天地と考えアメリカにほとんど最終的に定住を求めるという人がかなりあるというようなこともございます。また、日本人といたしましてコミュニティーにすぐ参画していただくというような環境もなかなかつくり得ないということだろうと思います。  コソボについては、地理的に非常に遠いところでございまして、もともといえば難民が生活に苦労されて新天地を求めてというより、コソボからの、民族浄化の問題がありまして、他の近隣のマケドニアやアルバニアに移っておるわけでありまして、必然的に最終的にはもとの住居に戻るということでございまして、そういう方々が日本に求めるということは非常に少ないのではないかと思います。  しかし、今先生御指摘の、五人の方が大阪に関係者がございまして日本に来ておられるということでございます。こういう記事その他がやはり新聞、メディア等に報道されることによりまして、この難民の問題についても一つ一つ理解が深まるというようなことも、ささいなことかもしれませんけれども、決してそうでないという観点もあろうかと思います。全体的に、日本国民全体のこうした問題が世界に非常に惹起されておられるということについての理解を深め得るような努力を政府としても、地道ではありますが、やっていかなければならないことだろうと思います。  当面は、この北東アジアをめぐっての地域の問題として、いわゆる大量の難民というのが発生し、いかにこれに対応するかということは日本にとりましても危機管理の面から最も重要な問題でございますので、そういった点についてはそれなりに十分対処できるように、御指摘をいただきまして御答弁はありましたけれども、改めて政府として十分検討し、危機に対して対処するための方策をつくり上げておかなければならない、このように考えております。
  91. 千葉景子

    ○千葉景子君 時間が限られておりますので、次の問題に移らせていただきます。  周辺事態法での地方公共団体あるいは民間の協力、この課題について何点かお尋ねしたいというふうに思うんです。  よくわからないんですけれども日本の安全保障というような問題について、国が基本的にはそれに対して責任を負っているというのは当然であろうというふうに思います。それにプラスして地方公共団体が日本の安全保障という問題に法的な責任を負うということは、これまでの制度、法体系といいますか、そういう中ではほとんど考えられないことでございます。私がわかる範囲では、自衛隊法で協力要請といいますか、地方公共団体が協力するということが一つございます。そのくらいかなということです。あとは、自主的にいろいろな面で協力をしているということはあろうかというふうに思うんですけれども、今回のこの法案では、ある意味では安全保障について地方公共団体も応分の法的な責任を一緒に負えということを意味しているのではないかというふうに思えるんです。これまでの議論の中でも、義務ではない、あくまでも協力を要請する、拒否もできる、しかし正当な理由がないとできない、あるいは協力はしていただけるものと思うと。いわば安全保障を地方公共団体も国と一緒になって責任を負うていく、どうもこういう構造に思えて仕方がないわけです。その割にはどういう責任を果たすのかというところが明確になっていない。  幾つかの例は示されました。しかし、それに対して本当にどれだけ責任があるのか、本当に断り切れるのか、こういう問題もございます。地方公共団体や民間への協力を求めること、これは一体どの程度重い責任を負わせようというのか。それとも、本当に協力してもらえばいいんです、もし難しければお断りいただいて結構です、こういう考え方なのか、国と地方公共団体がこの安全保障あるいは周辺事態ということに対してどうお互い責任を分かち合っていくとお考えなのか、その辺の基本をちょっとお尋ねしたいと思います。
  92. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 地方公共団体や民間の協力につきましては、直接国民の権利を制限し、また新たに義務を生ぜしめるものではないことは申し上げておるところでございまして、現行法令の枠内で可能な協力を求め、または依頼するものでありまして、強制されるものでないこと等から、国会承認にかからしめる必要はないとの判断がなされたものと理解しておりまして、政府としてもそのように考えておるところでございます。
  93. 千葉景子

    ○千葉景子君 少しそうすると具体的にお聞きをしたいと思いますが、九条の一項では、法令及び基本計画に従い、必要な協力を依頼することができる。ここで言う法令に従うということはどういうことを意味しているのでしょうか。
  94. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) この第九条第一項、ここで言います法令、この点については、それぞれ例えば個別に地方公共団体の管理する例えば港湾ということであれば、港湾法なりそういった法令があるわけであります。そういう法律に基づいて適正な管理をしていただく、そういう管理する権限、その権限の行使をしていただくことについて関係行政機関の長から地方公共団体の長に協力の求めを行う、こういう枠組みになっておるわけであります。
  95. 千葉景子

    ○千葉景子君 これについては、港湾の施設の利用、それから空港、これは例えば港湾法とか航空法、こういうものに基づくということは言えると思います。さらに、建物、設備の安全を確保するための許認可ということになりますと、これは具体的にはどういう法律になりますか。
  96. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 例えば消防法であったり、あるいは建築基準法であったり、それぞれの法令に基づく許認可等の行為があるわけであります。つまり、その権限の行使について協力を求めるということが第九条一項に規定する法令という内容であると考えております。
  97. 千葉景子

    ○千葉景子君 これは、この質問の中でも皆さんからも指摘をされていたと思いますけれども、やはりこれはきちっと、一体どういう法律でどういう許認可について協力を求められるのかということを具体的に、例えばすべて網羅をして自治体などにも示す、あるいは説明をするということが必要だろうというふうに思うんですね。それはいずれきちっとしていただく。  そして、これはいわば拒否をすること、断るということはできるんですか。
  98. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) たびたびこれは申し上げておりますが、この点につきましては、いわゆる一般的な義務規定ということでございまして、この第九条に基づく協力の依頼があった場合、もちろんそれはこの周辺事態という措置の緊要性、それからその自治体の長の持っております権限の公共性、あるいは他に代替手段を求めるということは極めて難しい、そういう環境の中でその権限の行使を求めるわけであります。  そういうことを前提としての協力の求めではありますが、基本的に正当な理由がある場合には拒否することができるということはたびたび申し上げておるわけでございまして、これに対する強制的な措置、制裁的な措置ということは本法律では規定をいたしておりません。
  99. 千葉景子

    ○千葉景子君 正当な理由というのは、別にその法令に書いてあるわけじゃないんですね。物理的に設備がもういっぱいで使う余地がないというようなこともこれまでも例に挙げられました。  その正当な理由というか、断れる理由というのは、だれが判断をするんですか。自治体の側で、これは難しい、法律にのっとっても断らざるを得ない事情だということになれば、これは拒否をできるということになるんですか。それとも、政府の側が、いや、これは正当な理由でない、むしろ協力を受諾せいという権限を持つんでしょうか。そこはどうですか。
  100. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 正当な理由があるか否かというのは、個別具体の事例に即して考えなければならぬと思いますが、この法案第九条第一項に基づく協力の求めを受けたということを前提としつつ、その権限について定められた根拠となる個別法令に照らして判断がなされることになると考えております。  では、その正当な理由があるか否かの判断をだれがするか、こういうことでありますが、その法令に基づき、地方公共団体の長がまず第一義的には判断をすることになると考えられます。その判断が正当であるか否かということにつきましては、その法令に基づいて客観的に判断がなされるべきものであるというふうに考えます。
  101. 千葉景子

    ○千葉景子君 最終的にはだれが決着をつけるのかちょっとはっきりしないんですが、二項で、「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に」、これは民間などもかかわるわけですけれども、「協力を依頼することができる。」、ここで法令に従いというのは、どういうことになるわけですか。  例えば民間に物資の移送などを依頼する、協力を求めるということになるんですけれども、法令に従い、基本計画に従うことは当然だと思いますが、法令に従いというのはどういう法令を考えているのでしょうか。
  102. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 九条二項につきましては、今、先生御指摘のとおりで、国以外の者ということで広く民間の方、もちろん地方公共団体も入るわけでございますが、そういう方々に協力を依頼するということでございます。  この場合の法令と申しますのは、その内容によっていろいろあろうと思いますが、それぞれ、例えば安全関係の法令ですとか、あるいは給水などでは水道法とかそういうものがあるわけでございまして、そういった法令の規定を遵守しながらお願いする、こういうことでございます。
  103. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうすると、この法令というのは、協力義務といいますか、それを根拠づける法令ではなくて、その行為を行うときに遵守すべき法令という意味ですか。
  104. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 九条二項は、これまでたびたび御説明申し上げておりますが、基本的に義務とかそういうものではございませんで、あくまで依頼ということでございます。  したがいまして、正当な理由とかそういうことではございませんで、受けるか受けないかはいわば相手方の自由と、こういうことになるわけでございますので、したがいまして、その法令も当然のことながら義務規定その他のことを念頭に置いているわけではございません。
  105. 千葉景子

    ○千葉景子君 協力をするために行う行為が法令に従って行われるなんというのは当たり前のことだというふうに思うんですね。わざわざ法令に従って協力を依頼することができるという文言になっているわけですから、どうもこの辺もわかりにくい。  この自治体の問題というのは、先ほど言ったように、それだけの責任を負担する、あるいは民間もそれに協力をして安全保障という問題に一翼を担っていくというような問題ですから、やっぱりここを明確にすること、それから、十分にどういうことに対して責任を負い、どこまで義務があるんだというようなことをもっと明確にする必要がある、説明をする必要がある。それがないことには、どうもそこには不信感とそしてまたそれじゃちょっと納得し得ないという声が出てくるのも当たり前だというふうに思います。  時間が残されてはいるんですけれども、本会議の時間ということでございますので、残った問題、また機会がございましたらお尋ねをさせていただくことにして、私の質問はこれで終わらせていただきます。(拍手)
  106. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  107. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 速記を起こして。  午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後一時七分開会
  108. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件外二案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  109. 松村龍二

    ○松村龍二君 自由民主党の松村龍二でございます。  本日、非常に歴史的な法案とも言えます日米防衛協力のための指針に関する特別委員会におきまして周辺事態法等三法の審議が行われているわけでございますが、これに関して質問をさせていただきます。  まず、私どもも第二次世界大戦が終わりましたのは小学校二年生でございまして、小渕総理も同じお年であると。政治家としては何か月とスッポンという感じでございますが、スッポンがかみつかせていただきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  私は、昭和十二、三年の世代というのは大変このような問題を扱うのに適している世代だというふうに考えております。といいますのは、終戦前のこともおぼろげながら知っておる、戦後の大変な食糧難の混乱期も覚えておる、また戦後いちずに日本が復興していったあの時代も知っておる、そしてバブルに浮かれた時代あるいはその後のバブルがはじけた時代というのを身をもって体しておる。また、国際的にいいましても、総理は諸外国を旅行されたようですけれども、身をもってアジアの諸問題について理解をすることができるといった世代ではないかというふうに思います。  この防衛の問題については、戦後五十数年たちまして、昨日防衛庁から昭和三十年からの日本の防衛予算の総額が幾らになるのかということをちょっと調べてもらいましたところ、九十三兆円、約百兆円の予算を投じてきているわけです。しかし、今もって有事の法制も整備できない、戦前の亡霊を背負っておるわけです。  同僚議員沖縄の問題についての大変な訴えもございました。また、憲法について化石的な態度をとる学者その他の方のお話も聞くわけでございます。しかし、やはり戦後五十数年たちまして、戦前の亡霊を断ち切って、我が国の防衛についてしっかりした地に足をつけた対応がそろそろ必要なのではないかというふうに思います。  考えてみますと、戦後の我々のそのような日本人の態度というのは、あの世界大戦に負けた、国民を地獄のふちまで連れていった、あるいは沖縄においては地獄まで連れていかれた、日本の軍隊あるいは日本の為政者、戦前の天皇制を中心としますいろんな体制についての不信感、これが尾を引いていることかと思います。しかし、戦後、民主主義の政府が樹立いたしまして、これだけ習熟してきたわけですから、やはり自分の国を自分で守る姿勢、方針をつくるということについても、十分日本人が日本人を信頼して体制をかち取っていくということが必要ではないかというふうに思います。  そのような意味におきまして、この三法あるいは有事法制、この三法によってまだ手つかずの部分があるのではないかというふうに思いますが、総理大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  110. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今般の周辺事態安全確保法案は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である周辺事態に対応するために必要な措置を定め、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであることは申すまでもありません。  しかし、日米安保条約を効果的に運用するために必要な法的措置は、現在御審議をいただいておる指針関連法案等に尽きるわけではありません。例えば我が国有事に際しての米軍行動にかかわる法制について、安全保障上の課題であると認識しており、その取り扱いについて真剣に検討してまいらなければならないと考えております。  そういう意味で、いわゆる有事立法についても御指摘がありましたが、有事立法と一般的に言われておりますのは、この委員会でも御説明申し上げましたが、また松村委員も十分御承知のところだと思いますけれども、まず自衛隊行動にかかわる法制という形で、昭和五十二年に福田内閣総理大臣の了承のもとで三原防衛庁長官の指示によって検討開始をされております。ただ、このときには、いわゆる法制化を目的とするものでないということで、純粋に研究をということで始められまして、その結果、いわゆる第一分類、第二分類、第三分類という形での検討が始められておるわけでございます。  一方、有事立法の中には、自衛隊行動にかかわる法制のみならず、米軍行動にかかわる法制、あるいは自衛隊及び米軍行動に直接かかわらないが国民の生命、財産の保護等のための法制、こういうふうな仕分けの仕方もございまして、特に米軍行動にかかわる法制となりますと、日米安保条約第五条によりまして共同対処というようなことが行われるということになりました場合には、米軍のとるべき対応についての国内的な法制の整備ということもこれは念頭にあるべきものであろうというふうに考えております。  ただ、松村委員御指摘のように段々の経緯がございまして、同世代でございますので、ある意味では、安保条約につきましてもこれが制定をされました戦後の時期、その後、六〇年安保のとき、私自身も大学生の生活を送っておりましたが、その後、七〇年の自動延長を含めまして、いろいろの経過がありました。国会における議論におきましても、種々これが残念ながら与野党対決の大きなテーマになってきたというふうに考えております。  しかし、今日、時代の変化の中で、法制的な整備について、世論もこの問題についてかなりこれを指摘されている面もございますし、また国会におきましても、しばしばお尋ねもいただいておりますが、結論的に言いますと、これは国民世論あるいはまた国会での御議論等を通じまして最終的に結論を出すべきことではあろうかと思いますけれども、この有事立法ということにつきましては、これは真摯に勉強し、かつ検討していかなければならない問題だというふうに認識はいたしております。
  111. 松村龍二

    ○松村龍二君 どうもありがとうございます。  一九九七年、ニューヨークにおきまして日米安全保障協議委員会におきまして締結された新ガイドライン、すなわち日米防衛協力のための指針は、旧指針と違いまして、Ⅳという項目で「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」、その2で「日本に対する武力攻撃がなされた場合」、その「作戦構想」として、分類としては「その他の脅威への対応」ということですが、(Ⅰ)といたしまして、「自衛隊は、ゲリラ・コマンドウ攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃を極力早期に阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。その際、関係機関と密接に協力し調整するとともに、事態に応じて米軍の適切な支援を得る。」と書いてあります。  さらに、(Ⅱ)では、先般いみじくもテポドンが飛んできたわけですが、「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」ということを新たに決めておるわけです。  そこでお伺いしたいんですが、「自衛隊は、ゲリラ・コマンドウ攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃を」ということが書いてありますが、これは具体的に何を想定してこのような協定になったのか、防衛庁からお聞かせいただきたいと思います。
  112. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 新しいガイドラインで示されておりますゲリラコマンド攻撃とは、我が国に対する武力攻撃であって、我が国領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃のうち、不正規軍の要員等により破壊や襲撃等の活動を行うものや、あるいは特殊部隊により破壊工作、要人暗殺等の活動を行うものを念頭に置いているわけであります。  通常、これらの攻撃は大規模ではなくて、自衛隊が実施する作戦により対処可能であると考えられますが、不正規型であるという攻撃の特性上、日米が共同して対処した方が効果的な結果が得られる場合もあり得ることから、一般的な意味での米軍の支援について記述したものであります。  また、弾道ミサイル攻撃につきましては、大量破壊兵器を運搬し得る弾道ミサイル世界的な拡散といった状況を念頭に置きながら、日米が発射された弾道ミサイルに対して効果的に対処するシステムを有していないことや、あるいは現在の自衛隊は敵基地攻撃を目的とした整備体系になっておらず、これらに適した装備品を有していないことを踏まえまして、自衛隊米軍が共同して対処する必要性を一般的な意味で述べたものであります。
  113. 松村龍二

    ○松村龍二君 アメリカ日本がこのような協定を結ぶ場合、当然に具体的にどこが襲われるというふうなことが念頭にあるからこういう協定になるんだろうと思いますが、ただいまのお答えでは協定をそのまま言われた、御説明いただいたというふうに思います。  そこで、私は地元が日本海の福井県というところでございます。この福井県は、原子力発電所が敦賀という市から京都寄り、若狭嶺南という地域なんですが、そこに十三基の商用原子炉がありまして、さらに科学技術庁が所管いたします、昔の動燃がやっております「もんじゅ」と「ふげん」という二基、合計十五基の原子力発電所がございます。そして、その原子力発電所では年間八百億キロワット、京都、大阪府の全電力消費量をこの十三基が発電しておるわけであります。  そこで巷間、小説とかまたいろんな評論の中で、日本海沿岸の原子力発電所がゲリラコマンドの攻撃対象になるんではないかといったような評論が目につくわけであります。昨日の参考人の陳述の中でも、そのような発言もあったように記憶するわけでございます。そのような実態があり、またこの海岸には、昨年からことしにかけまして北朝鮮の兵士の死体が二回にわたりまして四体流れ着いた。それからまた、密入国者が原子力発電所のすぐ近くにことしの三月に六十五人、これは中国人を乗せて韓国の船が運んできたわけですけれども、そのようなことがございました。そして、例の不審船は、すぐ隣の富山県、新潟県、能登半島の東側で起きたわけでありますが、かつてこの若狭地方では拉致事件も発生いたしておりますので、不審船も何回も来ているのではないかというふうに思われます。そのようなことからいたしますと、ゲリラコマンドの攻撃対象になるという仮想も成り立つかなというふうに思います。  そこで、国防という観点からこの件について検証をさせていただきたいというふうに思います。  まず、通産大臣にお伺いいたしますが、日本海沿岸にはほかにも原子力発電所がたくさんあろうかと思いますが、どのように発電所が所在するのか。また、朝鮮半島からの距離はどのようになっておるのかお聞かせいただきたいと思います。
  114. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 日本海沿岸に立地しております現在稼働中の商業用原子力発電所は、北海道で二基、新潟県で七基、石川県で一基、福井県で十三基、島根県で二基及び佐賀県四基の六都道府県二十九基でございます。  朝鮮半島のピョンヤンから原子力発電所各所在地域までの距離は、北海道については約千三百キロ、新潟県については約一千百キロ、石川県及び福井県については約一千キロ、島根県及び佐賀県については約七百キロでございます。
  115. 松村龍二

    ○松村龍二君 ピョンヤンからということでございましたが、御承知のように日本列島は大陸と平行して所在いたしますので、北朝鮮の一番端っこから泊原発というふうな、距離にしますとそれぞれ大体同じような距離になろうかなというふうに思うわけです。  そこで、私も地元が福井でございますので、いたずらに原子力発電所が危険であるかのような印象を振りまくような質問にはしたくないわけでございますが、原子力発電所というのはそもそも危険なものなのかどうか。これは商業用原子力発電所、そもそも危険なものなのか危険でないのか、日本におきます事故の例をお聞かせいただきたいと思います。
  116. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) お答え申し上げます。  原子力発電所は危険なものかという御質問がまずございましたが、日本の原子炉は出力が上昇いたしますと、燃料や冷却材の温度が上昇すると反応度が自動的に減少いたします。そして、出力の増加が抑制されるという固有の安全性を有しておりまして、基本的には極めて安全性の高いものであると言うことができます。  加えまして、事故に対する安全対策でございますが、異常の発生防止、事故への発展防止、周辺環境への放射性物質の放出防止を講じるとともに、さらに万々が一の事態に備え、十分な離隔距離をとることによりまして万全の安全確保がされているところでございます。  二番目に、今までの日本の事故例はどうかという御質問でございますが、これまでに国内で発生いたしました原子力発電所の主な事故といたしましては、平成元年一月の東京電力福島第二原子力発電所三号炉における再循環ポンプの水中軸受けの破損事故、次に平成三年二月の関西電力美浜発電所二号炉における蒸気発生器伝熱管の破損事故、第三に平成七年十二月の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故などがございましたが、これらを含めまして、これまでの原子力発電の三十年余りの歴史において環境に有意な影響を及ぼすような事故は皆無でございました。
  117. 松村龍二

    ○松村龍二君 有馬大臣は、理論物理ですか応用物理ですか、大変な専門家であるというふうにお伺いいたしますので、この原子力の問題は臓器移植と並んで政治家が討議するに最もふさわしくないテーマであるということをだれか言っているのを聞いたことがありますが、本当に権威のある方から安全であるということを聞かされますと安心するわけでございます。  私どもの福井県におきましても過去に事故例はございますけれども、第一次冷却水の細管にちょっと破損があったとか、外部に対しては何も影響がない。「もんじゅ」では温度計からナトリウムが漏れたというおどろおどろしい事故がありましたけれども、これも外に対しては何ら影響がないというようなことで推移しているわけです。  そこで、私どもも今自民党の中で原子力防災についていろいろ研究会を開いているわけですが、米国のスリーマイルあるいはロシアのチェルノブイリ型事故というのが原子力発電所の事故として念頭に浮かぶわけです。日本ではこのような事故は絶対に起きないのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  118. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) お答え申し上げます。  過去において外国の大きな事故として言われておりますことは、米国のスリーマイルアイランド、それからロシアのチェルノブイリのような事故でございますが、まず、昭和五十四年三月に米国のスリーマイルアイランド原子力発電所において炉心燃料が損傷した事故が発生しております。これにつきましては、原子力安全委員会において広い範囲にわたり検討すべき項目が摘出されまして、それを踏まえ安全確保対策が実施されてまいりました。また、昭和六十一年四月の旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所事故につきましては、安全設計において固有の安全性に欠陥を有していたこと、運転員が多数の規則違反を行った等が原因であったということがわかっております。  我が国の原子力発電所はこれとは全く異なる炉型であり、先ほど申しましたように非常に安全なものであるということを申し上げました。また、管理運営体制も適切なものであることから同様な事故が起こることは考えられませんが、国際機関や原子力安全委員会の調査報告書で示されております教訓を踏まえまして、適切な対応を進めているところでございます。  今後とも、原子力の安全確保には最大限の努力を払ってまいりたいと思っております。
  119. 松村龍二

    ○松村龍二君 それでは、原子力発電所の防災はどのような事故を想定し、どの程度まで今行われているのか、最新の情報をお聞かせいただきたいと思います。
  120. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) お答え申し上げます。  原子力防災対策につきましては、災害対策基本法の枠組みのもとで必要な体制を整備しておりますが、平成九年六月には防災基本計画に原子力災害対策編を追加いたしました。そして、事業者による通報・連絡体制の確実な実施、国による事故対策本部の設置や放射能影響の予測、地方自治体による住民の避難誘導等の実施など、関係機関の役割分担等を明確化し、その体制の一層の強化を図ったところでございます。  さらに、原子力安全委員会の防災専門部会におきましては、去る四月二十八日に報告書をとりまとめ、原子力防災対策の実効性向上について基本的考えと具体的方策を提示したところでございます。この報告書におきましては、国のより積極的な関与のもとで、事故発生から緊急時までの初期対応の強化や現場での防災実施機能の強化に加え、原子力防災の指示・調整機能の強化を図るため、国、地方自治体、事業者が一堂に会する対策本部の設置等を提言しております。  国といたしましては、これを踏まえまして、今後さらに原子力防災対策の一層の充実強化に取り組んでまいりたいと思っております。
  121. 松村龍二

    ○松村龍二君 ただ、私どもも検討会を持っておるときに、電気事業者あるいは科学技術庁、通産省その他からいろいろお話を聞き、このような原子力発電所が、内部の事故、いわば機械が持っている内在する事故に対する対応ではなくて、外からの攻撃に対しては考えたことがあるかと言うと、それは私どもの範疇ではございません、そんなことまで考えていませんと、こういうような反応に私は思ったわけでございます。  しかし、警察庁は、SAT部隊ですか、予算もつきまして一生懸命ゲリラに対して腕を磨いているように聞くわけでございますが、警察は、原子力発電所に対してゲリラ攻撃があった場合、これに対応する準備が行われているのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  122. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) その前に、まず原子力発電所をめぐる警備状況について若干申し上げますと、警察といたしましては、原子力発電所や通産省あるいは科学技術庁などの関係機関と平素から情報交換をしっかりと緊密に行っておりまして、警備上必要な事項について所要の要請を行うなどの緊密な連携関係を図っておりますということが第一点でございます。  それから、警察自体といたしましては、施設周辺のパトロールなどの所要の警戒を日常的に実施いたしておりまして、情勢に応じ警戒の強化を講ずるなどの柔軟な対応もいたしておるわけです。また、あらゆる事態に対処するため、必要な人員や装備の整備を図りますとともに、実践的な訓練に努めるなどの体制の充実強化に努めておるところでございます。  そこで、御指摘のような事態が発生しました際には、警察におきましては、テロ行為に関する各種情報を収集し、機動隊等の部隊を投入して、まず初動措置を講ずるということにいたしておるわけです。また、必要に応じて今御指摘がございました特殊部隊、いわゆるSATの投入を図るということを考えております。
  123. 松村龍二

    ○松村龍二君 警察はいろいろ輝かしいゲリラ対策をやってきたと思いますので、それぞれいろんなことを想定して取り組んでおられると思います。  しかし、先般来大変ベストセラーになりました小説によりますと、警察がまず不審者が上陸したということで対応したけれども、警察の火力といいましょうか武器ではとても対応できないということで被害者が出て防衛庁に話を渡す、こういう話であるように承知するわけであります。  国内のいわゆる赤軍等の極左であれば、ライフル程度の銃であれば対応できるかと思いますが、ゲリラということになりますと、普通、自動小銃とか、それからバズーカ砲とか、いろんな火薬を持っているのではないか。それに対してライフルではとても対応できないのではないかというふうに思いますが、これらの国外からのゲリラコマンド等に対しまして、再度どのような御準備をされておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  124. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘のように、警察は我が国における第一義的な治安維持の責務を担っておるわけでございまして、御指摘のような事態に際しましても、まず全力を尽くして対処する所存でございます。このため、警察といたしましても、各種の重要施設に係るあらゆる事態を想定した各種警備計画を策定いたしておるところでございます。  なお、一般論として申し上げるならば、警察におきましてはテロ行為に関する各種情報を収集し、機動隊や特殊部隊SAT等の部隊を投入するなどの必要な措置を講ずるところでございますが、なお警察力による対処が困難な場合にありましては、内閣官房、防衛庁等の関係機関と連携を密にして対処してまいる所存であります。
  125. 松村龍二

    ○松村龍二君 それでは、ちょっと自治大臣、国家公安委員長と違う分野で、このゲリラコマンドの攻撃に対しまして、そもそも原子力発電所というのは耐え得るのかということを通産大臣及び科学技術庁長官にお伺いしたいわけです。  考えられますことは、某国のテロ、ゲリラコマンドが技術を身につけまして機器を操作できる、機器を操作することによって原子力発電所というのは暴走し、いわゆる放射能をまき散らすような破壊された状態に陥るのかどうか。それからもう一つは、今度はいわゆる爆発物を使用しての発電所内におきます破壊活動に対して、今申しましたような近隣が放射能で非常に汚染されるといったようなことが起きるのか起きないのか、教えていただきたいと思います。
  126. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 私も、大学を出ましてからすぐ福井県の原子力発電所の一号炉をつくることに従事していた人間でございます。  原子力発電所の破壊防止対策については、原子炉等規制法に基づきまして核物質防護規定を定め、各種の対策を実施しております。  具体的に、第一に、原子力発電所の中枢部への接近を防止する対策というのがございます。これはセンサーあるいは監視カメラ等を備えた防備フェンスで発電所建屋を多重に取り囲んでございまして、発電所の建屋についても強固な扉を設置し、開閉検知装置を備える等、不審者の侵入が一応困難な構造になっているわけでございます。また、出入りを管理することにつきましても、身分証明書の厳密なチェックや金属探知器等による持ち込み物品検査等を行っております。さらに、昼夜を通じた巡回パトロールの実施によりまして、設備の状況の確認、不審者の侵入に迅速に対応しております。  第二に、万が一不審者が原子力発電所の建屋内に侵入し、恣意的な運転操作、配管等の設備の破壊が行われた場合も、基本的には原子炉を安全に停止する機能が働く設計となっております。特に、恣意的な運転操作を試みた場合については、中央操作室以外の場所から遠隔操作により原子炉の安全を確保することが可能となっております。  なお、鉄砲等の武器の所持制限がある等の我が国の事情にかんがみ、実際に発電所が襲撃された場合は、防護設備等の物的な手段をもって攻撃を阻止し、遅延させるとともに、治安当局に迅速に通報して対処しなければならないことは言うまでもないことでございます。  ゲリラコマンドによる襲撃については、装備及び爆発物の具体的な影響等について特定することが困難ですが、最近の情勢に対応し、警備、警戒体制を強化するとともに、治安当局との連携体制の強化を図っているところでございます。
  127. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) ただいま通産大臣がお答え申し上げたとおりでございますので繰り返しを避けたいと思いますが、核物質防御の観点から、敷地境界内への防備フェンス、防止カメラ等の設置、金属探知器等による厳格な出入管理が行われております。そもそも不法な侵入が困難となっております。  また、不法な侵入が発生した場合に、これに速やかに対応するため、警備員による二十四時間体制での警備、防御区域の巡視等が行われているとともに、一般電話または警察直通の非常通報装置等により警察等に通報できるようになっております。通報を受けた治安当局の迅速な出動がなされることとなっております。  このように、安全対策に加えまして危機管理体制を構築することによって原子力施設の安全性の確保に努めてまいりたいと思います。
  128. 松村龍二

    ○松村龍二君 大変安心させていただいたわけですが、しかし、そのように安心なものであれば、私ども福井県の住民からすれば、東京や大阪の埋立地にぜひつくっていただいて、原子力発電所がいかに安全なものであるかということを安心させていただきますと、私ども地域の方もそれほど振興の政策を声高に言う必要もないということでございます。しかし、そもそも原子力発電所というのは潜在的な危険をはらむものであるということは間違いないわけであります。  そこで、私も時間があと八分ぐらいでありますので、そろそろ締めの方へかからぬといかぬわけですが、福井県に、ある町の評論家がいまして、原子力発電所というのは屋根、天井の警備が手薄なんで、脳天から真っ逆さまにテポドンがずどんと落ちると、日本海は大変に広域な地域が放射能で汚染されるというような評論をする人がいまして、地元の新聞がまたそれを使う。片や安全だという人はいないものですからそういう話だけが動くわけですけれども、しかし、天井が危ないのなら天井に金網を張って防いでいただく、鉄かぶとあるいは防空ずきん型の対応を通産省もやっていただく必要があるんじゃないか。  それから、私もこの連休中、中国へ行ってきましたけれども、万里の長城やら明時代の南京の城壁を見るにつけ、二十メーター近い城壁をつくればこれは敵もゲリラコマンドも近づけないわけでありまして、そのような観点。あるいは、警備員は日本では銃を所持することはできないわけですけれども、将来においてはやはりガードマンに銃を持たせるといった問題もあるんじゃないかと思いますが、通産大臣、今後電気事業者に対しまして外からの攻撃に対する防御といったことを指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  129. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) その福井県の評論家の方は、どういうことを言っておられるのかよく存じ上げませんが、多分お気づきにならないのは、それは戦争の話を実はしているのであって、他国がミサイルを撃って原子力発電所をねらうというのは戦争が始まるということでございまして、それはもう原子力発電所の安全性という枠を超えた議論を実はその方がされているわけでございます。  私どもとしては、原子力発電所がなるべく安全というよりも、人間の考え得る最大の安全ということ、それから原子炉側から考えてみた場合には、いわゆるマキシマム・クレディブル・アクシデントという想定し得る最大の事故というものを考えて設計をしております。そういう意味では、原子炉自体は私は大変安全なものだと現場で思っておりましたが、そういう戦争が始まったときに一体どうなるのかということはまた全く別の議論に多分なるんだろうと私は思っております。
  130. 松村龍二

    ○松村龍二君 せっかく運輸大臣お見えでございます。この原子力発電所は、陸の方からは大変ガードがかたいけれども海の方は割と警戒が薄い、冷却水をとらぬといかぬものですから海の方は警戒が弱いという話を聞くわけです。海の方を守っておられるのは海上保安庁でございますので、運輸大臣のひとつ御所見をお伺いします。
  131. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 先ほど一番最初に御指摘いただきましたけれども、不法行為、不審行動を行う外国船舶が非常にふえてきております。平成六年が二百五十八件、平成八年で三百八十五件、平成十年で千九百九十二件と大変増大を見ているところです。  その中で、密航者とか密輸、こういう問題にきちっと対応していかなきゃならない。加えて、先日ありました不審船のような事件、これにどう対応するかということになろうと思います。実は、それから三度ほど不審船情報というのがもたらされた。結局は間違った情報であったわけでありますけれども、私どもその反省の中から、情報が入った時点で自衛隊に連絡をしてお互いに連携をとりながらやらせていただいているところでございます。  先ほど国家公安委員委員長からもお話がございまして、まず情報というものをしっかりとって、そして省庁間が協力していく、ここが一番大事だろうと思いますので、しっかり頑張りたい、このように思っております。
  132. 松村龍二

    ○松村龍二君 先般、五月三日に読売新聞が領域警備という概念をお薦めしたようですが、この話の中で武器の使用について提言があるんですが、治安出動じゃなくてゲリラコマンドは外からの攻撃ですから、その辺をよく御認識いただいて、また領域警備等について防衛庁におきましても御研究をいただきますよう心からお願いを申し上げる次第でございます。  古代から防人というのがありまして、辺地の警備に兵隊がついておったわけですから、経済性をもって自衛官が警備すると一番安くつくということでもあろうかと思いますので、今後の検討課題として御研究を賜りますようお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  133. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 このガイドラインの議論について、よくわかりにくいというような御批判があるわけであります。そもそもは極めて歴史的に必然性のあることであると思うのでありますが、一点は、冷戦後各国の軍事思想というのがどんどん転換している中で、我が国日米安保並びに自衛隊の思想の転換がおくれていたのは確かでございます。例えば、アメリカはもう完全に軍事思想を転換いたしておりますし、NATOはNATOで御承知のような東方展開というようなことで、世界的なレベルでの軍事思想というのは大きく変わっているわけであります。それがなかなか日本で浸透しなかったのがわかりにくい点の第一点。  もう一点は、失礼ながらややもすれば常識に反する議論が見受けられたわけであります。例えば、よくあった議論の中で、航空機の発進準備中の航空母艦に給油をすることが是か非かというような議論がありました。しかし、現実には航空機の発進を準備している航空母艦というのは戦闘フォーメーションをとっておるわけであります。その戦闘フォーメーションというのは、航空母艦がここにいて、護衛の潜水艦、駆逐艦、巡洋艦、ヘリコプターというフォーメーションがちゃんとあるわけであります。その中に給油艦なんか入れるわけがないんです。ましてや、航空機発進準備中の航空母艦は戦闘戦速でありますので給油艦がついていけない。  また、今回の法案には落とされましたが、臨検の問題で、過去十万回の船舶検査があったが実際の警告射撃をしたのはわずか十数回である。それは当たり前の話でありまして、停船命令が出て船舶が停船をするのは、撃たれると困るから停船をするので、例えば警察官が凶悪な強盗犯人に向かってけん銃を向けて、とまれ、とまらないと撃つぞと、しかしこの鉄砲の中には弾が入っていません、あなたが逃げても決して追いかけることはいたしませんと言えば、そんなことは職務にならない。そういうわかりにくさがあります。  最大のわかりにくさは、この委員会の中でも再三指摘がありましたように、憲法問題できっちりとした結論が出ていない。そしてもう一点は、自衛隊をめぐる関係国内法が整備をされていないままガイドラインに入ったということに若干無理があるのではないかと思うわけであります。しかし、ガイドライン関連法案は極めて私は必然的な問題であると思いますので、その必然性を明らかにするという意味で、いささか原理的な問題でありますが、原則の問題でお伺いをいたしたいというふうに考えます。  まず第一点、防衛庁にお伺いいたしますが、防衛力の目的というのは何でしょうか。各国の軍事力にはそれぞれの目的があるわけでありまして、例えば海外に遠征するための遠征軍である国もあるでしょうし、隣国を攻略するためもしくは隣国からの侵略を防止するための軍隊、また国内の治安を維持するための武力装置であるというように、軍事力というのはいろんな性格を持っておるわけでありますが、我が国の防衛力、その目的は何でありますか。
  134. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 防衛の目的は、昭和三十二年五月二十日の閣議決定でも明らかでありますけれども我が国が保有する防衛力は、「直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和を守ること」が目的であります。
  135. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今の長官の御答弁は、三十二年五月二十日、国防会議並びに閣議決定されました国防の基本方針であるわけです。まさにおっしゃるとおりであります。もっと砕いて申し上げれば、日本の国防力というのは正当な権利が侵害されないための抑止力であるということで私は言いかえができると思うんです。  しかし、この抑止力が、例えば日本が有事になっても自衛隊が出動できない、周辺事態になっても米軍と十分に協力ができないということであれば、この抑止力の実効性が確保できない。安保条約の不備であったこのガイドラインを今回整備し、いずれ極めて近いうちに国内法を整えることによってこの抑止力の実効性を確保しなければ、私は納税者に対する責任が果たせないと思う。  もう一つの抑止力に、平和努力、外交努力ということもあると思う。紛争が起こらないように事前に平和努力すること、これは大変重要なことであり、当然のことながら必要なことでありますが、しかし多くの歴史が、これが全く踏みにじられていることを我々に教えてくれております。  ちょっと問題は違いますが、先年のペルーの日本大使館占拠事件、日本政府は終始一貫平和的な解決を主張しておったわけであります。もちろんそれも大切なことでありますが、平和的な解決というのはトゥパク・アマルに対して全く通用しなかった。かえって日本の平和的な解決という主張がペルー政府に恐らく大変な迷惑をかけたのではないかなというような気がいたすわけです。  申し上げましたように、防衛力は抑止力であるということをまず第一点確認をしておきたいと思います。  続きまして、外務省にお伺いいたしますが、日米安保、また駐留米軍極東アジアの中でどういう役割を果たすのかという点でまずお伺いいたします。
  136. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 日米安保条約第六条は、米軍我が国及び極東の平和と安全のために我が国の施設・区域を使用することを認めております。すなわち、我が国に駐留する米軍我が国の施設・区域を使用し、その抑止力を確保することにより、我が国の安全のみならず、日米両国が共通の関心を有する極東の平和と安全を維持するという役割を果たすことが想定されているわけであります。  一言よろしいでしょうか。
  137. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 はい。
  138. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) ペルー事件のときに、日本政府が平和解決を主張したことがペルー政府に迷惑をかけたとは思っておりません。
  139. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今の日本日米安保条約並びに駐留米軍の役割というのは、今、外相から御説明があったとおり、日米安保条約の第六条に掲げてあるとおりでありますが、冷戦後、日本に直接の脅威がなくなったから自衛隊は不要だとか駐留米軍が不要であるというような議論がないわけではありません。しかし、これは極東の近隣アジア諸国に極めて大きな迷惑を及ぼすことになるのではないかというふうに思います。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  極東の各国が日本の経済と極めて密接にリンクをいたしておりますので、日本経済の安定を保障する日米安保が近隣の極東アジア諸国にとって大変重要な意味のあることであるというふうに考えるわけであります。  三番目でございますが、米国世界戦略、軍事戦略が恐らく冷戦後極めてドラスチックに変化をいたしたと思うのでありますが、冷戦後、米軍の軍事政策というのはどういうふうに転換をしたのか、この点をまず防衛庁にお伺いいたします。
  140. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 冷戦中は、先生御高承のように、西側それから東側ということで、その対峙の態勢が基本的な軍事の情勢でございました。冷戦後、こういった対峙の態勢が崩壊いたしまして、それに応じて米国もその軍事政策を大きく検討し直したわけでございまして、その中でボトムアップ・レビュー等が行われ、そういう中で冷戦後の状況変化に応じた包括的な米軍戦力の見直し、こういったものが行われてきていると私は承知しております。
  141. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今お話があったとおりでありますが、米国の軍事思想というのは、かつてソ連と対決をしておった時代から、今や大規模地域紛争、国境紛争、そして民族紛争、そういうものに対する対応ということで、今お話がありましたボトムアップ・レビュー、BUR、世界で大体二カ所ぐらいの大規模地域紛争に対応するために、陸軍十個師団、空母十二隻、空軍二十機動航空団を備えるというふうに転換をしてきたわけであります。  その派生として、やはり米国だけで世界の平和を維持できないというか、米国だけではなくイギリスもフランスも日本も、特に極東にあっては日本に大きなそれ相応の協力を要求した。それが今回のガイドラインであると思うのであります。  先ほど申し上げましたように、防衛力の目的は抑止力であります。日米安保意味はアジアの安定要素であり、かつ冷戦後の軍事思想の転換は多国間の協力というふうに変わってきたのではないかというふうに思うわけであります。  そこで、これは仮定、想定の問題でありますので難しいと思うのでありますが、日本にとって脅威とは何であるか。脅威というのは、一つには直接的な侵略、もう一つは間接侵略、そして今回例示で挙げられているような近傍諸国の内戦、または近傍諸国の二国間紛争、それが日本に大きな影響を及ぼすというようないろんな場合が考えられるわけでありますが、日本にとって当面考えられる脅威というのはどういうものでしょうか。
  142. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) そもそも、脅威は侵略し得る能力と侵略しようとする意図が結びついて顕在化するものであると思いますが、意図というものは変化するものでありまして、我が国の防衛を考える場合には、我が国周辺における軍事能力について配慮する必要があると考えているところであります。  現在の国際情勢下においては、我が国に対して差し迫った脅威が今あるとは考えておりません。
  143. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 日本にとって具体的に差し迫った脅威があるとは思われない、今の状況は多分そういう状況だと思うんです。  しかし、私は、もしも日本にとって具体的な脅威があるとしたら、その大きな脅威の一つはシーレーンが阻害、妨害をされるということだと思うんです。  きょうは堺屋長官がいらしていませんのでお伺いするわけにはいきませんが、堺屋長官は「油断!」という本をお書きになった。あの本は、わずか七カ月間ホルムズ海峡が封鎖をされた際に、日本では死者が四十万人、鉱工業生産がマイナス五五%、GDPがマイナス六〇%という、日本が壊滅的な経済的打撃を受ける、そういう想定の小説であったわけであります。  きのう、志方さんのお話にもございましたが、自由交通の最大の恩恵を受けるのは日本であります。今、日本は原油を二億トン、この二億トンの原油というのは、例えば二十万トンタンカーですと、毎日、日本のどこかの港に二隻ずつ二十万トンタンカーが入る。これを一万二、三千キロの中東と日本の間を往復させると八百隻のタンカーが必要になる。ですから、きょう現在で、日本と中東の間には八百隻のタンカーがピストン輸送している。そのほかには、当然のことながら、ほかの資材、物資の輸入が約七億トン、輸出がその十分の一で七千万トンくらいあるわけです。  したがって、先ほど申し上げましたように、自由交通、自由通商の最大の恩恵を受ける日本にとって最大の脅威が私はシーレーンの確保であると思う。  これは仮定といいますか、申し上げるのはいささか不穏当かもわかりませんが、一九九二年、中国は領海法で南沙、西沙諸島の領有を宣言しております。西沙はともかく南沙諸島も中国の領土であるということになりますと、南シナ海の八〇%は中国の内海になるわけです。尖閣列島につきましても、中国政府は一点の疑いもなく中国固有の領土であるというふうに主張いたしております。沖縄も、沖縄は今はもちろん日本の領土でありますが、かつて沖縄日本に施政権が返還をされたとき、中国政府並びに台湾政府は、沖縄中国固有の領土であるというふうに主張したことがある。そういった意味で、日本のシーレーンをめぐる状況というのは、今直ちに極めて不安な状態にはないかもわかりませんが、多くの不安材料を抱えているわけであります。  シーレーンのことについてお話ししたついででありますのでちょっとお伺いしたいと思うんですが、湾岸戦争日本のタンカーが被弾をいたしました。韓国では大型タンカーが撃沈をされております。ペルシャ湾とは言いませんが、ペルシャ湾から南シナ海、東シナ海、ここで例えば日本のタンカーが継続的に攻撃を受けるというような場合、自衛隊が出動できますかどうか。
  144. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) その状況いかんということになろうかと思います。  理論的なことを申し上げますと、公海上の我が国船舶に対します攻撃が我が国に対する組織的、計画的な攻撃に当たる、こういうふうに考えられるような状況でございますれば、それは自衛隊法七十六条で対応する事態になりましょうし、そういう事態ではなくて、むしろ海上における治安なりあるいは生命の保護というところで対応する必要があるということでございますれば、それは海上警備行動でということもございましょうし、その状況いかんということだろうと思います。
  145. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 さっき申し上げた湾岸戦争の際のペルシャ湾での事件には対応がもちろんできなかったわけでありますが、この点でもやはり大きな不備があるのではないかというふうに考えるわけであります。  続いて領域警備の問題でお伺いいたしますが、自衛隊法八十二条、今回発動されました海上警備行動、これは内閣総理大臣承認が必要とされております。同じく隊法八十四条、領空侵犯に対する措置、これは防衛庁長官によって措置が発動されるということでありまして、片や総理大臣の承認が必要、片や総理大臣の承認が必要でないということであるわけでありますが、この違いはどういうことであるか、御説明をお願いいたします。
  146. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 海上におきます人命、財産の保護または治安の維持につきましては、御承知のとおり第一義的に海上保安庁の任務になっているわけであります。海上警備行動が発令される事態においても、当然海上保安庁が引き続き活動をしていることから、内閣として統一された方針に基づいた対応を確保する必要があること、またシビリアンコントロールの観点からも、自衛隊の海上警備行動に際しては、自衛隊に対する最高の指揮監督権を有する内閣総理大臣による承認を要することとされているものと考えております。  他方、自衛隊法八十四条の領空侵犯に対する措置につきましては、一般の警察機関では領空を侵犯した航空機を取り締まり、適当な措置をとることができないので特に自衛隊の部隊がこれに当たることとしたものであり、防衛庁長官に所要の権限が付与されているわけであります。  いずれにしましても、自衛隊が実態に応じて適切かつ迅速に行動ができるような態勢をとることが極めて重要でありまして、日ごろから政府としても真剣に取り組み、適切に対処していくことが必要と考えております。
  147. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今お話しございました適切かつ迅速に行動をするということであるとすると、内閣総理大臣承認を海上警備行動の必要要件とするということはわからないでもありませんが、例えば今回のケースで、海上保安庁が追跡、追尾を断念した時点で海上警備行動が発令されても当然間に合わなかったわけであります。これも法律の不備ではないかなというような感じがいたします。  実は、この際、海上自衛隊は海上警備行動の発令のかなり以前に準備といいますか、行動を開始しておりました。これも先ほど申し上げましたように、ややもすると法律の不備があるのではないかなと思うんです。  かつて昭和五十一年に函館空港ミグ25事件というのがございました。あの際も、今にして思えばそんなことだったのかなという感じがいたすわけでありますが、ミグ25が飛来したときに、あの直後、ソ連軍の空挺部隊が函館空港に降下をする、もしくはソ連軍のコマンドが何らかの形でもって奪還をする、ミサイルを撃ち込むというような話があった。その際、近傍の十一師団のある部隊では、当然防衛出動もなければ待機命令もないわけでありますので動けない。どうやったかというと、隊員に武器を配付して数を数えた。戦車は営門から出るわけにいきませんから、営門の前に戦車を並べたというようなケースがあったそうであります。そのとき、防衛庁からの部隊に対する指示は、必要な対処をせよという指令が出ておったそうであります。  今回の海上警備行動について、後でまた申し上げますけれども、私は事前の準備を極めてよくおやりになったのではないかなという感じがいたすわけであります。  次に、四月二十九日、防衛庁長官は海上自衛隊に対して第一級賞状を授与されたという報道がございます。これも新聞の悪口に言わせますと、停船をさせることもできず検査をさせることもできず、さっと逃がしてしまったその海上自衛隊になぜ第一級賞状かなんていう報道もあります。自衛隊の今の褒賞規定を私は存じませんのでわかりませんが、旧軍で言えば陸軍大臣感状でありますので、これはもう大変な重みのある賞状だと思うのであります。長官の談話でも手足を縛られた状態の中でよくやったというお話がございました。私も全くそのとおりだと思うんです。今回の第一級賞状はどういう意味であったのか、御説明をお願い申し上げます。
  148. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 第一級賞状につきましては、今までも豪州の観測船が南極の氷海で救出を求めたのに対して砕氷艦の「しらせ」が救出した場合とか、あるいはホンジュラスの国際緊急医療援助隊とか、あるいは長野オリンピック協力団とか、あるいは舞鶴地方隊の災害派遣隊、これはナホトカ号の海難の場合でありますが、こういういろいろな場合に第一級賞状を出しているわけでございますけれども、私どもが今回、四月二十九日に行ったものは、この自衛艦隊は自衛隊初の海上警備行動命令を受けまして、暗やみの中を高速で全速力で逃走する不審船に対して、現行法上の中でなし得る限りの方法によってその任務を遂行し、我が国の不審船対処に係る断固たる意図を国内外に示すとともに、海上における治安の維持を図ったところであります。結果は、停船させるに至らなかったわけでありますが、このような死生をかけた自衛艦隊の行動はこの賞に値するものと考えたところであります。
  149. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 よくわかりました。私は、さらに賞に値するとすれば、あらかじめ不審船をかなり早い時期に探知、捕捉をしたということであると思うんです。  自衛隊のエリントシステム、コミントシステムというのは恐らく世界でも有数の電子技術である。八三年のカムチャッカ沖の大韓航空機撃墜事件で、自衛隊のコミントがほぼ全容を把握したということがございました。この点で、極めて早い時期に不審船を捕捉できたということが一つの賞に値すること。  そして、次に申し上げますが、今回の自衛隊の第三護衛隊群の対応が極めて迅速であったことが私は一つの称賛に値することであったと思うのでありますが、第三護衛隊群についてお伺いする前に、当初、実は不審船が三隻であったという先日の川崎運輸大臣の御答弁がございました。あれっと思ったんですが、結局二隻だったんでしょうけれども、三隻だったというそこら辺の事情についてちょっと御説明いただけますか。
  150. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 五月十一日の防衛指針特別委員会での運輸大臣の答弁のとおり、先般の不審船事案の際には、自衛隊は三隻の不審船らしき船舶を発見し、これを海上保安庁に連絡したものであります。海上保安庁では、連絡を受けた三隻のうち、一隻は船舶電話により現場に所在することが確認できたため、同船は不審船ではないことが判明したものと承知しております。
  151. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 わかりました。ありがとうございました。  それでは、先ほど申し上げました第三護衛隊群隷下の「みょうこう」、「はるな」、「あぶくま」に対して、三月二十二日十五時ゼロゼロ、これは防衛出動に先立つこと三十三時間五十分前でありますが、ちょっと話がわかりやすいように、防衛出動があった時間が二十四日午前零時五十分でありますので、この時間をゼロアワーというふうに申し上げると、ゼロアワーマイナス三十三時間五十分、三十三時間五十分も前に速やかに対応したというのは、これは大変なことであると思うのであります。  よもや超法規的なことではないと思うのですが、この緊急出港命令の法律的な根拠。それから、「みょうこう」、「はるな」についてはかなり詳細な報道がありますが、「あぶくま」に対してはどういう命令、指示が下されたのか。かつ、これは全く参考までなんですが、十五時ゼロゼロに緊急出港命令が下されて、各艦はそれぞれ何時に出港したのか。ちょっと御説明をお願いいたします。
  152. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 「あぶくま」を含む護衛艦三隻は、実は、予定としては射撃訓練等を行うために三月二十三日に舞鶴を出港する予定であったわけでございますが、二十二日は天候状況が極めて悪く、この状況は二十三日以降も続くことが予想されたことから、予定された期間内に訓練を終えなければいけない、そういうことで、できるだけ早く訓練海域に向かうことが必要であったわけであります。このため、予定を一日早めまして、二十二日に出港命令が発せられたわけであります。  この命令を受けました三隻は、二十二日十五時ごろより舞鶴を出港しましたが、翌二十三日早朝、P3Cが不審船らしき船舶を発見したため、第三護衛隊群司令の命によりまして不審船の確認とか追尾、監視に当たっていたわけであります。その際、「あぶくま」は主として「はるな」、「みょうこう」の後方で追尾、監視を行っていた次第であります。  御指摘の、舞鶴を出航した時間について申し上げますと、「はるな」は十四時五十七分、「みょうこう」は十五時十三分、「あぶくま」は十五時二十六分であり、訓練を行う根拠は、毎回申し上げておりますとおり、防衛庁設置法第六条第十二号の「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行う」というものが根拠でございます。
  153. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 ちょうどうまいぐあいにといいますか、タイミングよく訓練の準備をしておられたということなんでしょうけれども、これについては詳しくお伺いしませんが、通常、自衛艦は訓練するときは燃料はそう積んでおらないはずです。恐らく満載量の三分の一以下の燃料しか積んでおらないはずでありますが、ちょうどうまいぐあいに燃料を満載しておったというのは、恐らく事前に若干準備をされたんじゃないかなという推測をいたしますけれども、それについては余り詳しくお伺いしないようにいたします。  訓練用海上警備行動についてさらにお伺いいたしますが、海上警備行動は当然のことながら自衛隊法に定められた任務でありますが、海上警備行動について日ごろどのような訓練をしていらっしゃるのか、それについてお伺いいたします。
  154. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 海上警備行動が発令される以前の問題でございましたでしょうか。
  155. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 海上警備行動というのは、自衛隊に定められた任務でありますが、通常、多分これは海上警備行動の訓練をされていらっしゃると思うのでありますが、どのような訓練をされていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  156. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 海上警備行動が発令された場合におきましては、自衛隊は海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため必要な行動をとることとされております。  したがって、海上自衛隊においてはこういった任務を効果的に遂行するため、船舶及び航空機を用いた警戒、監視あるいは目標船舶の追跡、停船、立入検査等の訓練を行っているところでございます。
  157. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 そういうことなんでしょうけれども、ちょっと事務方にお伺いいたしますが、訓練をするからにはマニュアルがあると思うのでありますが、通常、海上警備行動の訓練では発火信号による停船命令、それから日本語、英語、ロシア語等による無線による停船命令、そして警告射撃の場合は、まず第一発は前方に射撃をする、それでも停船をしない場合は艦橋上空を目がけて射撃するというような段取りになっていると思うんですが、そういうマニュアル、言い方をかえればROEが訓練の際使用されますかどうか、それについてお伺いします。
  158. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 海上警備行動で船舶の検査というような項目で実際に動いて訓練をする場合には、当然ながら手順をもって行っているわけであります。そして一方、訓練の際にもう一つは大規模な訓練、演習の際に、その訓練用のいろんな行動の、これは海上警備だけに限らずいろんな行動をとるそれぞれのROEと申しましょうか、いろんな細部要領については、それぞれ演習のときに持って、その実効性を確認しつつ、そういうものを用いて訓練していることはございます。
  159. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今回の事案でも、よく自衛隊にはROEがないというような言われ方をしておりますが、しかし現実に訓練の際にはROEがあるわけであります。この訓練用のROEというのは、例えば米軍との共同訓練その他で、当然のことながらROEがない武力勢力同士が共同訓練なんかできるわけがありませんから、先ほど申し上げましたように、よくROEがないというような言われ方をしますが、立派な訓練用のROEがあると思いますので、私はそれで整備するのは当然であるというふうに考えるわけであります。  ちょっと時間の関係で、中途半端でありますが、警告射撃が今回行われたわけでありますけれども、警告射撃を行ったことの法律的な根拠というのはいかがなものでございますか。
  160. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 二隻の不審船舶に対しまして海上警備行動に当たる海上自衛隊の部隊が実施した警告射撃と爆弾投下による警告は、自衛隊法第九十三条により準用される警察官職務執行法第七条に基づき実施したものであります。  自衛隊が行った警告射撃と爆弾投下による警告につきましては、海上警備行動発令後、不審船舶を停船させ立入検査を行うため停船命令を行ったにもかかわりませず、不審船舶がこれを無視して逃走を続けたため、あくまで警告のために相手方に危害を与えることのないよう十分配慮して行ったものであります。
  161. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 警職法第七条の準用で警告射撃がなされたわけでありますが、海上保安庁の巡視船が二十ミリ機関砲千二百発、海上自衛隊の各艦艇が五インチ砲三十五発、P3Cが百五十キロ爆弾を十二発投下いたしております。千二百発も撃って、爆弾を十二発も撃って、これが警職法だと言われると、いささか腑に落ちない感じがいたさないわけでもありませんが、これも先ほど申し上げましたように、やはり法律的な不備であるというような感じがいたすわけであります。  実は質問がまだもちろんあるわけでありますが、私のところで時間調整をせよということでありますので、質問を終わらせていただきます。  なお、外務大臣、先ほどのペルー大使館占拠事件、時間がありませんでしたので舌足らずでございました。申しわけありません。  以上で終わらせていただきます。(拍手)     ─────────────
  162. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、緒方靖夫君が委員辞任され、その補欠として畑野君枝君が選任されました。     ─────────────
  163. 山本保

    山本保君 公明党の山本保でございます。  初めて防衛・外交関係で質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は国民の皆様が今非常に心配をしておられるということは事実だと思うんです。これまでこういう具体的な装備であるとか、どういうときに出ていくのかということは、多分国民の皆様はもう何かあったらどうにかなるんだろうというようなことで、さっきマニュアルと言われましたけれども、そういう制度なんというのはもうとっくにできておって、これは私たちのとても手の届かないようなところでもう進んでいたのじゃないかと思っていたと思うんです。私も実はその一人でございます。しかし、今回、ガイドラインに関する整備の法律が出てまいりまして、これはということでございます。  であるならば、政府は、なぜ平和憲法を持っている私たちの国がこういう一見血生臭いようなことにかかわるような法律をつくるのかということについて、やはりこれからもずっと説明をしていかなければならないと思うわけでございます。そういう責任があると思います。また、私たち国会もそれを明らかにする責任があると思います。  私は、本来こういう外交的な問題というのは、党利党略ではなく与野党そろって対処すべきものであると思いますけれども、もちろんそのために審議をしているわけであります。そういう立場から、私は、細部にわたることよりは大ざっぱといいますか、大きな流れについてお聞きしたいと思っております。  まず最初に、新しい今回の、今回といいますか一昨年ですか、日米防衛協力指針、これが二十年前のものから変わったということでございますが、何が新たに加えられたのか。また、その原因というか理由は何であったのか、特に重要なものについてお答えいただきたいと思います。
  164. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 冷戦が終結しまして国際情勢は大きく変化したわけでありますが、我が国を取り巻く国際情勢には依然として不安定、不確実な要因が存在しているわけであります。  このような情勢におきまして、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に際する対応を含め、より効果的な日米防衛協力関係を構築することが一層重要になってきたわけでございます。  このような認識のもと、日米政府は、平成八年四月でありますが、日米安保共同宣言におきまして日米防衛協力のための指針の見直しを開始することで意見の一致を見て、その後日米協議を行い、平成九年九月に新指針を公表したわけでございます。  新旧の指針の比較について申し上げますと、旧指針では、主に我が国に対する武力攻撃に際しての日米の対処行動に関する事項等に関する記述が中心でありました。そして、我が国以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合に我が国米軍に対して行う便宜供与のあり方につきましては、日米政府があらかじめ相互に研究を行うとのみ記されていたわけであります。  これに対して新指針におきましては、対日武力攻撃の際の日米の対処行動等に加えて、新たに我が国の平和と安全に特に着目し、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に際しての日米協力に関する事項等が盛り込まれているわけでございます。
  165. 山本保

    山本保君 もう一つ確認的にお尋ねいたします。  それは、ガイドライン、そして今回の周辺事態法は日米安保条約の枠の中であるということについて、もう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  166. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 日米安保条約は、我が国極東の平和と安全に資することを目的としているものでございます。そしてこの法案は、そのうち、我が国の平和と安全に着目して、そのことに資するようにということでありますから、日米安保条約目的の枠内と、こういうことを申し上げているわけでございます。
  167. 山本保

    山本保君 今回の法案、またガイドライン日米安保条約の枠内であるというお答えなんですが、一、二、不審といいますか、私にはまだちょっとわからないところがありますので、お聞きしたいと思います。  それは、今も外務大臣お答えになりましたように、安保条約や、また以前の古いガイドラインでは、極東での協力というような、極東という言葉であらわされておりますが、今回のガイドラインはそういう言葉が使われておらず、周辺という言い方をされております。  今回、衆議院からもいろいろ議論があり、どこをどう指すのか、こういうふうに言われておりますが、私は、一般的に極東という言葉、フィリピン以北というような答弁を内閣がされたこともありました。こういうものと、日本周辺我が国周辺といえば、どうしても周辺の方が広いだろうと普通思うわけでございます。そのような御説明もあったかと思うんです。この辺はどういうふうに理解したらよろしいか。
  168. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 周辺事態とは、我が国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできません。このような周辺事態は、極東における国際の平和と安全の維持といった観点ではなくて、あくまで我が国の平和と安全に重要な影響を与えるか否かということに着目したものでございます。  したがって、周辺事態極東との間の地理的関係を一概に論ずることはできないわけであります。あらかじめ特定できないんですから、広いとか狭いとかいうことではないというふうにぜひ御理解をいただきたいと思います。
  169. 山本保

    山本保君 実は、ちょうど私の前に長谷川委員から微妙な議論がなされたと思っております。政府の方からはそれについてお答えはありませんでした。長谷川さんも意識的にお聞きしなかったんだなと思っております。それは、簡単に言いますと、今、外務大臣が言われましたように、単純な地理的なものではないんだ、概念規定だと。  そうしますと、日米安保条約をよく読んでみましたら、二つの目的というのが書いてあるような気がいたします。二つの軸がある。一つ日本の平和と安全であり、そして両国が非常に共通の関心を持つ極東の平和と安全である、こういう一つの軸。もう一つは、これは実際上はそんなに詳しく書いてありませんけれども、軍事的な平和と安全ということだけではなく、経済的な、またもう一つ人道的な、また民主主義の擁護という概念があります。この全然別の二つの軸があると思うんです。  そこで、私はぜひここは、これまで平和と安全に重要な影響を与えるとは何だという中身はいろいろありましたが、ここは、国民の皆様にわかりやすく知らせるためには、定義するときには中身の説明と、もう一つ、外ではないという、外延的な説明がございます。そこをやっていただきたいと思っているわけなんです。  それで、ちょっと私なりに整理をしてみましたのですけれども、これでよろしいかどうか。ですから、さっきの長谷川委員とは実は反対のことを言うわけであります。  今、外務大臣が言われましたように、今回はあくまで我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態のことを想定しているのであって、もちろん我が国の平和と安全と極東の平和と安全とは共通な関心がございますが、しかしこれは安保ができたときの状況と現在では相当変わってきているだろう。また、全く同じであるならば日本なんということをわざわざ言うことはないのであって、これは当然程度があるだろう。であるならば、この軸に関して言えば、日米安保目的である極東の平和と安全であったとしても、一義的に我が国の平和と安全には直接かかわらないというものは今回のガイドラインまたはこの今回の周辺法の目的ではないのだと。  第二番目に、安保条約には軍事だけではなく経済的また人道的、民主主義的なこういう安定や協力という目的が書いてあるけれども、今回のこの法律案は、まさに今整備しようとしていることは、その中では軍事的な局面に限って定めようとしているものであって、決して安保が広く覆っている両国の人道的な、または経済的な安定というようなものを目的とするのではないんだということについて、確認的にお聞きします。
  170. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 周辺事態とは、我が国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でございます。したがいまして、ある事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えるものでなければ周辺事態には該当しないわけでありまして、本法案に基づく対応をとるということはあり得ないわけでございます。  それから、日米安保条約の前文が民主主義の諸原則や経済安定等の重要性について言及されていることは委員が今御指摘になったとおりでありますが、同条約の目的我が国及び極東の平和と安全の維持であることは、同条約において特に重要な条項である第五条及び第六条から明らかであります。  周辺事態安全確保法案は、周辺事態に対応するために必要な措置等を定め、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、我が国の平和と安全の確保に資することを目的としており、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであります。このような法案の文脈におきまして「我が国の平和及び安全」の意味するところは、その性質上、軍事的な観点を初めとする種々の観点から見た概念であることは、先般お示しした周辺事態に関する政府統一見解でも明らかにしているとおりであります。  軍事的なことと全く関係ないということは周辺事態には該当しないと考えていただいて結構でございます。
  171. 山本保

    山本保君 一度そういうふうにはっきり言っていただこうと思っておりました。  では次に、ちょっと観点を変えまして、憲法九条に専守防衛という我が国の基本理念が書いてあるわけでございます。もちろんこういう部門の専門家の方にとってみれば、このような規定があることは今の国際状況の中では異例のものだというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、私ども国民大半の方は、こういう理念は日本国憲法の理念として私どもが誇りを持って二十一世紀にもこれを広げていけるようなものとしたい、であると、このように考えていると私は思うわけでございます。  そこで、今回、ガイドラインまた周辺事態法案等で細かないろいろな対応を決めることですけれども、これは憲法九条が定めた専守防衛という我が国の基本理念、方針を変えるというようなものではないのかどうか、これについても確認したいと思います。
  172. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 我が国は、日本国憲法のもと、国連協力を含めた外交努力の推進及び内政の安定による安全保障基盤の確立を図りながら、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安全保障体制を堅持し、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備することを防衛の基本方針としております。  このような防衛に関する基本的な考え方につきましては、周辺事態安全確保法案の成立によっても何ら変更はない、こういうふうに考えております。
  173. 山本保

    山本保君 もしできれば、防衛庁長官、何ら変更がないというよりは、例えば、もしこういうものがなければ抑止効果も少なくなるということもありますし、また、もし万が一、起こってはいけないことですけれども、何らかの事態が起こったときには、超法規的な実力行使というようなものが行われたりして国民の権利や国民の福祉が阻害される、こういうことをなくするためにきちんと整備するんだ、私はこういうふうに国民にはっきりと言っていただきたいと思うんですけれども総理大臣、いかがでございますか。
  174. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日本国憲法は、制定の経緯からいいましても、我が国のかつての歴史的な経過にかんがみまして、この憲法をもって世界の平和に益するために日本国として憲法に基づいて対処することでございますので、そういう意味で、九条も含めまして、今般のガイドライン確保法案はその憲法の趣旨にのっとって対処するということであることは間違いないことであります。それをどのような形で国民にということにつきましての検討の要はあるかと思いますけれども日本の安全を守るためにこうした法案を制定することが日本国民の生命、財産を守るゆえんのものであり、このことはさかのぼれば日本国憲法の精神に合致するものだ、こういうことだと思います。
  175. 山本保

    山本保君 総理は概括的なことを言われましたので、またもう少し補足的に防衛庁長官にお願いしたいんですが、ひとつそれについて具体的に。  例えば、場合によっては武器を使用するということも出てまいるわけです。それから、自衛官だとか部隊というようなものが出動するということも想定されたものであります。これは憲法が禁止する武力の行使ではないということ、これもなかなかわかりにくいんですけれども、この辺についていかがでございますか。
  176. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 一般に、憲法九条一項の禁ずる武力の行使と申しますのは、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為を言うものであります。武器の使用とは、火器、火薬、刀剣類その他、直接人を殺傷しまたは武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械や器具をそのものの本来の用法に従って用いることと解されております。  この両者の関係につきましては、憲法第九条一項の武力の行使は武器の使用を含む実力の行使に係る概念ではありますけれども、武器の使用がすべて同項の禁止する武力の行使に当たるものとは言えない。例えば、自己または自己とともに現場に所在する我が国要員の生命または身体を防護することは、いわば自分の身を守るという自然的権利と言うべきものでありますから、そのために必要な最小限度の武器の使用は憲法九条一項で禁止された武力の行使には当たらない、この旨はこれまで累次申し上げてきたところであります。  周辺事態安全確保法案の十一条に基づき、後方地域支援または後方地域捜索救助活動を命ぜられた自衛官がその職務を行うに際し、自己または自己とともに当該職務に従事する者の生命または身体を防護することは、いわば今申し上げた自己保存のための自然的権利と言うべきものでございますから、そのために必要な最小限の武器の使用は憲法九条第一項で禁止された武力の行使には当たるものではない、こういうふうに考えております。
  177. 山本保

    山本保君 解釈論というのはそういうものだとは思いますけれども政治家としてもう少し国民に強くその辺をアピールしていただきたいと思うんです。  というのは、まず、例えば今のようなことが私は一つ大きいなと思いますのは、そういうことを国会がこれから国民の目の前で議論をする、または報告をする、これからお聞きしますが、それについて承認を求めることもある。昔であるならば作戦か何かで全部やられてしまったことを皆さんの目の前へ出します。しかも、このことを出すということによって、外国もそれを知っておりますから、抑止効果があります。  また、万が一何か接触が起こったとしても、私はちょっと今回の議論を聞いていまして気がついたんですが、これは外交の専門家に聞いてみなくちゃいけないことなんですが、外交の、条約というものは、もし何か起こったときにいわば責任を回避するための条文じゃないかなという気がしてきました。  つまり、たとえ何かそこで軍隊の軍事力の接触があったとしても、いやいや、これは我が国はこういう法律、そしてこのマニュアルにのっとってやったことであって、おたくはいろんな被害を受けて申しわけなかったしという、今回の誤爆もありますから、しかしながら、これはあくまで我が国としてはこの範囲内でやったことでありますので決して国際法上の問題ではないんです、こういうふうに言えるための根拠をつくっているのではないかなという気がしているわけなんです。  ここはこれぐらいにしまして、憲法で言う武力の行使じゃないんだからいいんだということを、同じことを何回も言われるよりは、もっと積極的に官僚の方から知恵を出していただくようにぜひお願いしたいと思います。  次に、今度はもう少し深いところといいますか、日米安保条約というものが先ほどの話で乗っかったものなんだということであって、国民の多くの方は日米安保条約というのが日本の繁栄を築いてきたものであるし、またアメリカという国はいい国だなと思っている方が多いと思うんです。しかしながら、どうもそうでもないんじゃないかという気もしてくる。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  条約というか双方の同盟関係というものは、あくまでお互いの国が信頼し合っていなければならないわけですね。相手がどんなことがあったとしても、これは例えば国連憲章に乗っかっているんだとか、もちろん決議に乗っておれば一番よろしいわけですが、しかし安保条約というのは国連のそういう状況がないということを想定してつくられているわけですから、それであったとしても正義というものに基づいている、こういうお互いの信頼関係というものは信頼感がなければもともと成り立たないんじゃないかと思うわけです。  それで、国民の中から、その辺が大丈夫だろうかというおそれが出てきているんではないかなと思うんです。まさに力が正義だ、勝てば正義だったんだ、こういうことでは困る。もちろんアメリカは強い国ですから大して問題はないかもしれないという気もするけれども、それではどうも私たちの倫理観からいっても合わない。  総理総理として、アメリカという国はどういう国であるのか。本当に信頼していい、そして正義に基づいて行動する、少なくとも日本との関係においてはでいいです、よその国との関係になったときにはそれは相手はいろいろあるかもしれませんから、日本との関係においては、まさに国際的な、また人道的な正義に基づいて行動する国であるというふうにお思いなんでしょうね。ちょっとその辺をお聞きしたいんです。
  178. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 米国につきましてそのすべてを論評申し上げることはなかなか困難だろうと思いますが、日米間にして言えば、一八五三年の黒船到来以来、日米の関係は今日まで大変紆余曲折といいますか、晴れ、雨、あらし、いろいろのときがあったんだろうと思います。  そういう意味では、不幸な日米間の大戦まで経験をせざるを得なかったわけですが、その後、日本が平和日本としての道を歩み、日本国憲法のもとにおいて日本国際社会に信任を得ながら日本として活動する中で、特に日米間というものは極めて重要な同盟関係を持つ国として存在してきたわけで、それの証左として一つ日米安保条約というものがあるんだろうと思います。  そういう意味で、今日時点において日本アメリカとの関係を考えれば、私自身は極めて強固な信頼関係で結ばれておると考えており、さすればこそ、二十一世紀を前にして、さらにこの関係をより安定的なものにいたしたいという形で、先般の米国との間の首脳会談もその精神に立脚して努力をいたしておるところでございます。そういう意味では、日米間において、米国を信頼し、米国もまた我が国を信頼いただいて、そしてともに世界の平和に貢献していかなきゃならぬ、このように考えておるところでございます。
  179. 山本保

    山本保君 総理を信用しないわけではありません。ぜひそれはやっていただきたい。  しかし、例えば、きょうもそういうお話もありました。総理の気持ちがどうだということはもちろん大事なんですけれども、例えば、日米安保条約を読んでみますと、先ほども出ましたが、第一条にはこう書いてあります。  日米双方がそれぞれ「国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、」そして「武力による威嚇又は武力の行使を、」いろいろあるが「慎むことを約束する。」、こういうふうに書いてございます。  まさに、安保条約というのは、何かあったとしても極力こういう武力というものは慎もうではないか、これをお互いに信頼の上に立って結んだものだというふうに思うわけでございます。  そうしますと、総理の責任は大変大きいと思うわけです。少なくとも日米関係において日本アメリカは、いろんな意味があるかもしれませんが、私はほぼ対等のパートナーになってきたのではないかと思います。  我が国国民というのは、やはりパワーよりは人間の心の中のソフトな力を信用したい、信じたい、こういう国ではないかと思うわけです。その代表として総理アメリカと対応されるわけですから、さっき読みましたその両国がこういう武力に対しては慎みを持つというようなことについて、今後総理はきちんとそのことについて、もし何かあれば、またはないように忠告されたり提案されたり、そういうことをきちんとやられるおつもりだと思いますけれども、この辺の決意をお聞かせください。
  180. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日米両国は、言うまでもありませんが、二十一世紀に向けて平和で豊かな世界を構築するという共通の目標を有しており、さきの日米首脳会談におきましても、そのような目標に向かって日米両国が率先して協力することを確認したところであります。新しい世紀を控えて、今後も世界はさまざまな課題に直面するでありましょうが、このような課題を克服し、世界の平和と繁栄を維持するために日米間で忌憚のない対話を行い、日米協力を増進していく考え方でございます。  そういう意味で、日米安保について、今第一条について御指摘がございました。恐らく日米安保、これを両国間で結びました当時の状況から判断して、国際紛争というものはいわゆる武力によって解決する手段を全く放棄した日本国憲法の理念もこの中に当然込められておることであろうと思っております。  そうした意味で、日米におきましては、この条約に基づいてさらに崇高なこの精神を十分全うできるように両国とも努力をしていかなきゃならない。しかし同時に、国際的な現下の状況に配意して、いわゆる国としての安全保障、完全に守るという責任、国民に対して責任を負う立場といたしますれば、当然今般のような法案を提出し国会の議を経てこれを実行していくこともこれまた責任の一つ考えておる次第でございます。
  181. 山本保

    山本保君 総理だけではなく私たち政治家も同じ責任を負うと思っておりますが、ただもう一つ、ここで次のところに移ります。  しかし、国民の皆様は、今政治家やそれから官僚、国や行政というものについては非常に不信感を持っておられます。そうしますと、こういうときにもう一つ大事な歯どめというのは、国会国民の皆さんに目の前でいろいろ出す、その審判を仰ぐ、または決定をしていただく。もちろん、外交とか安保というようなものは大変難しいものであって、私自身も国会議員なんだからこれについて賛否を問うとこう言われて、もし防衛出動なり何かのことで出されたときにどういうことになるのか、自分でも非常に心配な気がします。しかし、それでもやはり普通の国民の代表としてそれに対処しなけりゃならぬだろうと思っておるわけです。  そこで、今回、後方地域の支援活動と捜索活動、これについては国会承認を受けなければならないという修正になりました。これについてはどういう意味を持っておったのか、提案者の方にお聞きします。
  182. 佐藤茂樹

    衆議院議員佐藤茂樹君) 山本委員の御質問にお答えいたします。  国会承認とした修正の意義についていかんということでございますが、私ども考え方を述べさせていただきますならば、今回の政府原案、いわゆる閣法を最初に拝見いたしましたときに、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に対処する法案の割には余りにも国会の位置づけが低いな、そういう問題点を感じさせていただいた次第でございます。そういう点から、衆議院委員会においても、また各党間の協議におきましても、私どもは二点のことに執着をして要求をした次第でございまして、その一点が今言われました国会承認です。  結果としては、今の二つの活動について国会の事前の承認を、緊急時には事後承認をという、そういう形の修正になりましたけれども、これは、二つの活動については、一つ自衛隊という実力組織が出動するということであるがゆえに念には念を入れてやはり国会が関与すべきであるということと、この二つの活動が今までの自衛隊の活動にはなかった全く新しい活動であるということ、そういうことから、国民の皆さんの十二分な理解を得るために承認が必要であろうという考え方一つでございます。  もう一つ国会の関与で、これは公明党が特に強く主張して修正案に入れられた内容ですが、基本計画でとられた対応措置の結果を終了した時点で国会にきちっと報告をしていただく。そういうことによりまして、今、委員が質問の中でも触れておられましたけれども、シビリアンコントロールという観点から、また行政府の活動に対する立法府のチェックという観点からも非常に大きく前進した修正案になったのではないのか、そのように私どもは認識しておりまして、御理解を賜りたいと思います。
  183. 山本保

    山本保君 防衛庁長官にお聞きしたいんです。  私も、今お聞きしたように当然のものではないかと思うんです。ところが、防衛庁の方にいろいろお聞きしましたら、今まではこういう規定がなかったとか、今までの過去のよく似たものだとここまでなのでこれはここまで踏み込むことはないとか、こう言われておりまして、入れなかった。  今、佐藤さんが言われたように、全く新しい状態なんですから、過去のことはともかく、しかも今国民全体が非常に注目しているわけです、初めてと言っていいぐらい。なのに、どうしてこれを入れなかったのか。何か国会を軽視しているんじゃないかという気もするんですが、どうですか。
  184. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 政府としましては、この法案に基づく後方地域支援、それから後方地域捜索救助活動については、当該活動の性質、これはどういうことかと申しますと、私ども累次申し上げておったところでありますが、この活動は国民の権利義務に直接関係しない、武力の行使ではない、迅速性を必要とする、こう申し上げてきました。こういった活動の性質、それからその他の自衛隊の活動に対する国会の関与との均衡論、つまり自衛隊法に基づく要請に基づく治安出動とか海上警備行動とかありますが、こういうものは強制力を伴うものでありますけれども国会承認事項とはなっておりません。  私どもは、強制力を伴わない活動をやるわけですから、均衡論からいっても国会承認を必要としないのじゃないかという観点から、必ずしも国会承認を必要とするものではないと考えていたところでございます。  この法案における国会の関与のあり方については、もとより立法府の御判断によるべきものであり、政府としても、三党の精力的な御協議の結果である自衛隊の二つの活動についての国会承認の枠組みを受け入れることが適当であると判断しているところであります。
  185. 山本保

    山本保君 もしこれが成立すれば、当然責任を持ってやっていただくということだと思っております。  そこで、ちょっと細かいことになりますけれども、今、中にも出てきた迅速、つまり迅速には対応できないだろうということですね。緊急だという説明も、今までの御説明を聞いていますと、決して時間的な緊急性ではなくして、例えば国会がとてもこういう状況では賛成してくれぬだろうというふうなこともこれありというふうにもとれる。ちょっとこの辺についてお聞きしたいんです。  まず一つは、物理的といいますか制度的なことをお聞きしますが、官房長官せっかくおいでで、ちょっとお聞きすることがどうかという気も、担当もそう言っておったんですけれども、例えばきのうの夜の七時か八時に何か起こったとしても、今のこの国会の召集の仕方では、きょうようやく議院に出して、そして一番早くてもあしたの朝九時です。これではとても間に合わないということになって、もう出さずにやってしまおう、こんなことになるかもしれない。  今まで緊急集会とかいうことはほとんど使われていないのでそういう手続もないようでございますけれども、この辺についてはきちんとした、もともとこの法案自体が、ガイドライン自体が起こってはいかぬことなんですけれども、しかし、抑止力というようなことでリアリティーをより増すためにはこういう対応も必要である。また、はっきり申し上げて、総理大臣、政府国会を素通りしてやってしまおうというようなことにならないためにもそういう手続が必要であると思うんですけれども、いかがでございますか。
  186. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 私がお答えするべき立場にあるのかどうかわかりませんけれども委員のおっしゃるとおりに、国会の召集は一番早くても二日を必要とするわけでございますので、もし緊急の場合に、この法案が成立をした場合においては、私は、国会の緊急な召集のありようについては十分議論をされなくてはならない問題であると考えておる次第でございます。
  187. 山本保

    山本保君 次に、総理にもう一つお聞きしたいんです。  もう一つの方の問題で、つまり国会のいろんな状況、与野党の状況からいって、これを出しても早く承認してくれないだろうというところで事後承認に回してしまうというようなことがあるのかもしれません。だけれども、それは非常に大事な大変なことだと思うんですが、私は、総理大臣が政治的な判断でそういうことをされたというときには当然相当な決断でありますので、重大な政治的責任を負ってそういう行動をされるのだと思っておるわけであります。  簡単に言えば、そういうことをやってもしものことがあれば当然責任をとられるということだし、もう一つ言えば、逆に、そのようなつもりで総理は出されたのであるから、私どももそのつもりで、変に党利党略でおくらすというようなことはせずに急いでやりましょうということができるわけです。  もしこういうことになったときの総理の責任というのは重いのじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  188. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 結論から申し上げれば、常にその責任の重さを十分認識して、内閣総理大臣としての決定をし、対処しなきゃならぬと思いますし、そのために国会との関係も極めてスムーズに対処できるように十分心得て結論をつけるべきものだと思っております。
  189. 山本保

    山本保君 最後に、もう一つ総理大臣にお聞きしたいのでございます。  これまでずっとやってまいりましたように、はっきり申し上げて、まだこういうようなことが起こる世界であるということは非常に残念なことであります。しかしながら、起こさないためにも、また万が一のために国民の権利をきちんと守るためにも、このようなことを行うということについては私もなるほどと思うわけでございます。  しかし、一つございます。それは、私どもはやはりこの日本の国はどんなことがあっても平和外交、平和の対話、そして戦争を地上からなくす、こういう理想を追求しているんだということを、こういう法案が出てきたことにかんがみて、バランス論からいっても、ここはもう一歩も二歩もまず平和の方に総理は発言し行動されるべきではないかと思うわけです。  きょうもこれまでいろんな答弁がございましたけれども、はっきり申し上げて、総理が体を張って何かをやるというふうにはまだ聞こえない。G8がどうの国連がどうの、安保がどうの安保理事会がどうの、そういうお話しかないような気がする。例えば、G8の中でも日本だけがコソボに関係しない国ですから、ここで総理、これは私の思いつきですから本当にできるかどうか別として、日本でそういう関係者を呼んで、まずそれまでは即時停戦せよというようなことを呼びかけるとか、または、日本の今一番心配なのは北朝鮮ですから、これについても全く憶測だけで話がされているわけですから、ひとつ直接行って、または来ていただいて話をするというようなことはできないのだろうか。もっとほかにもいいことがあるかもしれません。  最後になりましたので、総理、こういう平和外交というものをここでもう一歩も二歩も進めるということがあってこそ、戸締まり論といいますか抑止効果があるというガイドライン関連法案意味がはっきりするのじゃないかと思うわけですけれども、それについての所感をお願いしたい。
  190. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 我が国の平和と安全を確保するための抑止力の向上とともに、周辺諸国との対話を軸とする外交の展開を重視しておりまして、委員の御指摘も踏まえまして、今後とも対話を通じた安全保障環境の向上のために積極的にいかにしたらリーダーシップを発揮できるかということにつきましては十分心得て対応したいと考えておる次第でございます。
  191. 山本保

    山本保君 行動あるのみだと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  192. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。  ガイドライン関連法案の重要問題の一つ、午前中も質疑の中で触れられておった問題ですが、自治体、民間の協力の問題について質問をしたいと思います。  今、このガイドライン法案に対して反対もしくは慎重審議を求める、こういう自治体の意見書や決議が既に全国で二百自治体を超えております。多くが超党派のものでございます。  昨日も長野県議会が「新ガイドライン関連法案に関する意見書」というものを全会一致で可決をいたしました。この中で書いてありますけれども、「その内容いかんによっては、住民生活や地域経済活動に少なからぬ影響を及ぼすものであると深い危惧の念を抱くものである。」と。そして、政府に対して地方公共団体からの意見聴取など地域住民の立場を十分理解した特段の配慮を求めております。また、民間協力で動員されることになる航空、海運、陸送などの運輸関係の労働組合や労働者の皆さんも強い反対の声を上げております。  そこで、まず伺いますが、政府は自治体、民間の協力について十一のケースということで例示的に示しております。これを見ますと、港湾、空港、燃料の貯蔵所を新設する、あるいは民間輸送、廃棄物の処理、民間医療、それから民間企業の有する物品、施設の貸与等、それからさらに地方公共団体による輸送、給水、公立医療機関あるいは地方公共団体の物品、施設貸与等々が述べられております。これらの十一項目なんですけれども、これはどのようにして出てきたものなんですか。
  193. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) この法案を立案するに際しまして、当然その前にガイドラインの協議等があったわけでございます。そういう中で、このガイドライン法案の中にも、例えば自衛隊がやります後方地域支援の内容について別表で列記しているわけでございますが、そういったものを含めまして、そういった協議の中で出てきた典型的なものということで整理をした次第でございます。ただ、これですべてというわけではないということはかねて申し上げているとおりでございます。
  194. 笠井亮

    ○笠井亮君 協議の中で出てきた、ガイドラインの別表にある、それに基づいたということはよくわかりますが、協議の中でどちらから出てきたどういう性格のものなんですか、これは。
  195. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 別表にもありますように、米側にどういう支援をするかということでございますので、当然日米間の協議の中で出てきたものということでございます。  それから、どういう性格ということでございますが、これはちょっと御質問の意味が私も必ずしも正確に理解できないのでございますが、そういう協議の中で出てきたということでございます。
  196. 笠井亮

    ○笠井亮君 いや、米軍を支援するということですから、どちら側のニーズとかそういうことがあるんじゃないですか、それに基づく協議だから。日本がすべてアメリカのためにやってあげましょうとかということじゃなくて、まずニーズがあったかとかないとか、そういうことをはっきりさせてください。
  197. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 私ども、新しいガイドラインをまとめる中で米側といろいろな意見交換をし、それで別表という格好で協力項目例というのも記載させていただいているわけでございます。こういう周辺事態という状況の中で協力項目としてどういうことがあり得るかということを議論し、その中で浮かび上がってきたと申しましょうか出てきた項目をここで整理しているわけでございます。  こういったものも踏まえた上で、先ほど安保室長が御答弁しましたように、こういう中でこの九条一項なり二項なりで協力を求め、あるいは依頼をする項目としてどういうことがあり得るかということを整理して出させていただいたということでございます。
  198. 笠井亮

    ○笠井亮君 端的に言ってほしいんですが、浮かび上がってきたと言うんだけれども米軍の側から、当然米軍を支援するんだからどういう協力をしてほしいというニーズがあったんでしょう。それに基づいてやったという協議なのかどうか、そこをはっきり言ってください。そのぐらい言えるでしょう、ちゃんと。
  199. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 具体的な事例ではもちろんないわけでございますから、具体的なニーズとかいうそういうことではございません。  こういう周辺事態というような状況の中で、日米間で、例えば後方地域支援とすればこういう項目が考えられるだろう、そういう項目だとするとこういう協力項目例が考え得るだろうというような、いわば概括的な意見交換と申しましょうか、そういう中からこういう項目例が挙がっているということでございます。
  200. 笠井亮

    ○笠井亮君 だめですよ、ちゃんと言わなきゃ。だって、この間いろいろ聞いていったら、これはアメリカのニーズにないからやりませんとか言うわけでしょう。アメリカのニーズがあって、そして協議の中で日本が何ができるかさんざんやったんじゃないですか。それはそうだと言わなきゃだめでしょう。ニーズはなかったんですか。
  201. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) ニーズ、もちろんこういう状態におきましてどういう協力項目があり得るかという議論は、そのニーズも踏まえてでございますけれども、何度も申し上げて恐縮でございますが、何か具体的な事例があってそれで検討をするということよりも、概括的と申しましょうか、そういう検討、もちろんそれはニーズというんでしょうか、そういったものを踏まえての検討になるわけでございますけれども、その結果をこういうふうに取りまとめてあるということでございます。
  202. 笠井亮

    ○笠井亮君 ようやくそんなことを言うんだけれども、具体的な事例とかを話しているんじゃないんです。ようやく認めましたけれども米軍のニーズがあってと、それを踏まえてでしょう。そこはちゃんと言えばいいんですよ、そんな時間をかけてやらなくたって。  ということは、協議の中で、ニーズがあって、そしていろんな具体的なことを話したと。事例はいろいろあるかもしれない。この文章を見ますと、あくまで想定される項目例だと。そして「典型的に想定されるような内容」、「これに限られるものではない。」というふうに書いてありますけれども、そう言うならば、米側との協議の中で、典型的といって十一にまとめてあるけれども、出てきた協力項目数、これは現在全部で何項目あるんですか。いろいろ具体的にあるでしょう、具体的に。
  203. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) ちょっと先生の御質問の御趣旨をよくとらえていないのかもしれませんが……
  204. 笠井亮

    ○笠井亮君 ちゃんととらえてくださいよ、時間がないんだから。
  205. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) ガイドラインにおきまして協力項目例として私ども整理しておりますのは、主体的な活動まで含めまして、整理の仕方によると思いますけれども、いわばいわゆる四十項目として整理されているところでございます。これは別表でございます。
  206. 笠井亮

    ○笠井亮君 四十項目の中にもさまざま具体的に、具体的だと思うんですよ、何をどうするという話は。たくさん要求があるからこそそこから例示が出てくると。そして、今ガイドラインで四十項目という話もありました。そして、事態ごとに異なるのはわかりますけれども、当たり前です、いろんな想定を合わせると、やっぱり項目数というのは極めてこれは具体的なんですよ。だって、それに対してこれができるかできないか一個一個検討しなかったら、クリアしなきゃいけない問題が法制上だっていっぱいあるわけですから、そういう想定も合わせて実際の作業の中で検討して詰めて、これはできる、できないとやったはずですから、そういう項目数は全部で幾らなのか、どういう規模の項目なのか。四十項目だってこれはまとめた話じゃないですか。日米の軍事協力ですから、極めて具体的でしょう。全部で幾つくらい言えるでしょうが。
  207. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 例えば施設の使用という項目で言いますと、補給等を目的とする米航空機関、船舶による自衛隊施設及び民間空港・港湾の使用とか、それぞれ協力項目例に整理しているところでございます。  それから、例えば、自衛隊施設及び民間空港・港湾における米軍による人員及び物資の積みおろしに必要な場所及び保管施設の確保等々ということでございます。これは施設の関係でございます。  あるいは、一つの例として輸送の例をとりますと、人員、物資、燃料・油脂・潤滑油の日本国内における陸上・海上・航空輸送がございます。
  208. 笠井亮

    ○笠井亮君 いいですよ、それを全部読んだって、例えばの話をしてもしようがないんだから。
  209. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) というようなことで……(「幾つあるのか聞いているんだよ」と呼ぶ者あり)ですから、それは数え方によりますが、まとめた協力項目例としてはいわゆる四十項目として表現されているということでございます。
  210. 笠井亮

    ○笠井亮君 だめですよ、こんなんじゃ。そんな話ないですね。今さんざん時間をかけて説明されましたけれども、結局今十一の話あるいはせいぜい四十の話を、例えばこういうことがありますと。  全体どういう規模のニーズを要請されて、日本側考えて、そしてそれを検討したのか、どういう規模のどんなことを、アメリカ日本の間でこのガイドライン関連法案が実際に動いたときに一体どうなるかということで検討したのかということをちゃんと言えないはずないでしょう。  自治体や民間は、午前中も質疑の中でありましたけれども、この法案によって一体何を求められているのかわからないんです、例えばなんて抽象的なことを言っていたって。ここにある十一項目それから別表にある四十項目ということですけれども、それ以外に、具体的にどういうような要請をされ、あるいは協力を依頼されたり求められたりすることがないのかと。  長野県議会だって、全会一致で不安、危惧を表明しているわけでしょう。法案審議しているさなかですよ。だれだって、これぐらいの例示をされて、責任持って我が自治体は結構ですなんていうことは言えませんよ。言っちゃったら大変だもの、後で具体的にこういうことを言われたりしたら。そんなことは例示になかったけれども、これも例えばで、実際はこういうこともありましたなんて言ったって、そんなのは通用しませんよ。審議しているさなかなんだから、アメリカからニーズが幾らあったのか、どういう協力項目について具体的に検討して、これは落としたけれどもこれはここの例示の中に入っていますとか、これ以外にも例えばこういうことがありますとかやらなきゃだめでしょう。  アメリカからのニーズについて、では具体的に言いますけれども、一覧表をまとめて出してください。
  211. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 私ども米側と議論し、ガイドラインとしてまとめる中で協力項目例をまとめたわけでございます。それは、この別表に掲げてあるこれが協力項目例として米側意見調整をした結果でございます。  それから、今度の周辺事態安全確保法案の九条の一項で、地方公共団体に対する協力を求めるという規定と、それから第二項に、民間を含めて協力の依頼というのがございます。  九条一項の地方公共団体の協力を求めるというのは、これは安保室長の方から何度も御答弁しておりますように、この性格として、現行法令で権限として付与されているその権限の適正な行使を求める、こういう内容のものでございまして、新たなものを規定するとか、こういう内容のものではございません。  こういう前提の中で、典型的なものとしてどういうものがあり得るかということをいろいろ政府部内で検討、協議しました結果を先ほど先生もお触れになりましたような形でお示しさせていただいたということでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  212. 笠井亮

    ○笠井亮君 理解できませんよ、そんな御理解と言われても。  防衛庁長官、あなたは、自治体、民間に理解してもらうと。それから、総理も言われましたけれども説明して最大限努力しますと言われましたよ。そうしたら少なくとも、ニーズを踏まえてと防衛局長今言われたんだから、こういうニーズがありました、日本政府としてはこれはできませんと断りました、しかしこれについてはやりましょうということで言いました、政府としても頑張りましたぐらい言ったっていいでしょう、説明するんだから。  政府の責任で、アメリカからどういうニーズがあったか、一覧表を出してくださいよ。
  213. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほどから政府委員が答弁しておりますように、これは双方が協議をして決めたわけであって、アメリカの言いなりになって決まったわけではないということであります。
  214. 笠井亮

    ○笠井亮君 そんなこと言っていない。ニーズを踏まえてと言ったんですよ。
  215. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) いや、私はそう思います。  そこで、それはアメリカのニーズもあるでしょうが……
  216. 笠井亮

    ○笠井亮君 だから、踏まえてのニーズがないんです。
  217. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) いや、一〇〇%アメリカの言いなりになってつくったわけじゃないですよ、それは。それは協議ですから、向こうからそういうニーズは出してくるのは当たり前ですから、その協議の結果決まってきたということです。(発言する者あり)ちょっとまあ聞いてください。  そこで、ぜひひとつ御理解いただきたいのは、私どもは、九条問題についてはできる限り市町村がわかりやすいように、これからもう少し具体的なマニュアルも含めて何かきちっとしたものをつくりたいということを申し上げてきたので、そういうものをこれからぜひ早急に検討したい、こういうことでございます。
  218. 笠井亮

    ○笠井亮君 審議している最中ですから、その後どうするかという問題じゃないんですよ。  それで、アメリカの言いなりじゃない、こちらもちゃんと言いましたと。それだったらちゃんと出して、こういうニーズがあったけれどもこれは断りましたと言った方がよっぽど言いなりでないことがわかりますよ。それが出せないということは、ニーズに対して丸のみしたのかなと国民は思ったっておかしくないですよ。  こういうニーズがあったけれども日本政府の責任でこれは断った、これについてはぜひ御理解いただきたいということで出しましたと言った方がよっぽど説得力があるじゃないですか。なぜそれができないんですか。  委員長、これ、ぜひ理事会で協議していただいて、この資料について一覧表を出していただくということで協議をお願いしたいと思います。協議してください。
  219. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 理事会で協議しましょう。
  220. 笠井亮

    ○笠井亮君 それでは、ちょっと具体的に聞いていきます。  「地方公共団体の有する物品、施設の貸与等」というのが、これは最後の十一項目めのところに加わったものですか、あると思うんですけれども、どんなものがこれは考えられているんですか、具体的には、例示的に。
  221. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 事態によって異なるわけでございますので、今具体的にこれとこれというような限定をできるわけではございませんが、私どもも、したがって、ここでは一般的な書き方をさせていただいております。  あえて申し上げれば、例えば燃料ですとか事務用の機器ですとかといったようなものが考えられると思いますが、それらが必ずあるというものではもちろんないわけでございます。
  222. 笠井亮

    ○笠井亮君 事態によってと言いましたけれども、体育館だとかありますよね、あるいは公民館とか学校のグラウンドというようなことを含めて、ニーズがあればそういうものまで、そういう事態でニーズがあるとなればその使用にこたえていくということになっていくのか。それはどうですか。
  223. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 第九条第二項で、国以外の方に依頼をするということの場合には、これはまさに依頼でございまして、受けるか受けないかという判断は相手方にあるわけでございます。そして、受けるということであれば、いわば契約というような形になっていくということでございます。したがいまして、何ら強制とかそういったものも全くないということはこれまでも申し上げてきたところでございます。  さて、体育館とかあるいは学校のグラウンドというような設例を今お示しでございますが、一般的に申し上げますと、特に学校の施設などは通常常時使っておるものでございます。そういうものに対して、何らかの一時使用というものをお願いするということはなかなか考えにくいということは申し上げたことがございます。そのほか、公共団体の持っている施設の中でフルに使っておるというようなところについて、関係の行政機関から申し上げるというのはなかなか困難かと思っております。
  224. 笠井亮

    ○笠井亮君 あいていれば使えるという話だと思うんですね。  学校のグラウンドですけれども、常時使っているから考えにくいということですけれども、あいていたら使うこともあるということですか。
  225. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 周辺事態というのは、既にいろいろこれまで御議論がございましたようないろんなケースがございます。午前中には難民といったようなケースについてもお話がございました。したがいまして、ごく一時的な使用ということについて一切この九条二項でお願いをすることがないとまでは申し上げかねるわけでございますが、一般的には、現に授業等で使っておるところにあえてお願いをしなければならない理由は私はないのではないかと思っております。
  226. 笠井亮

    ○笠井亮君 法理的には可能だという話ですね、今、要するに。そして「これに限られるものではない。」というふうに書いてありますから、事態によってと繰り返し言われますけれども事態によって、そしてアメリカのニーズもふえたら、これ以外についても協力を求めたり依頼することがある、あらゆることが可能な限りできるようにするということなんですね。
  227. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 九条二項の依頼ということでございますが、これは私どもとしては今考えられるものということでかなり網羅的に挙げたつもりでございます。特に地方公共団体に関係するものにつきまして、施設とかそういう表現を使っておりますので、先生例えば先ほど御指摘のように、体育館はどうだとか、個々具体的になりますといろいろまた出てまいるかもしれませんが、項目としてそれほどふえることはないのではないかと私個人的には思っております。  いずれにいたしましても、この周辺事態安全確保法案でお願いをしておりますのは、米軍の使用ということのみではございませんで、先ほどちょっと避難民というような例も挙げたわけでございますが、そのほかいろいろ、周辺事態において国の行政機関が各種の活動あるいはいろいろな措置を行うわけでございますが、それらに関して必要となるものをお願いするという趣旨でございます。
  228. 笠井亮

    ○笠井亮君 避難民のまた別の問題もありますが、事態によって、そしてアメリカのニーズがあって、そして協議の中で協力項目がどんどんふえるということはあり得るということですよ、今、法律上は。  要するに、この点では際限がどこまでかというと、際限はない。そして、それをずっと進めていけば、法律上は総動員ということができる。どこまでやるのか、何をさせられるのか不明であって、そして審議を通じてもどういうニーズがあったかも言わない。例示はありますと。これでは、自治体の中で危惧の念が出たり、反対や、このままじゃ困る、ちゃんと説明してくれというのも含めてあります。しかし、これがそういう自治体が審議をしているさなかに数がふえている。私は当然だと思います。
  229. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  230. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 速記を起こして。
  231. 笠井亮

    ○笠井亮君 防衛庁長官は、自治体、民間の協力について、一般的協力義務という形で言われてきておりますけれども、これはあくまで強制ではないと。この自治体、民間協力、あくまで強制しないということでよろしいんですか。
  232. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) もう全く強制するものではございません。正当な理由があって拒否すれば罰則規定もございません。
  233. 笠井亮

    ○笠井亮君 これまでもそういう形で言われて、自治体、民間の自主性、判断に任せるという形での政府の立場だと思います。ということは、法律の上ですべての自治体、すべての民間業者が協力を全部断るということは論理的にはあるわけですね。
  234. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 正当な理由があれば拒否できると言いましたが、正当な理由があるかどうかというのが一つ実は残るわけであります。  正当な理由があるか否かは個別具体の事例に即しまして、この法案の九条一項に基づく協力の求めを受けたということを前提にしながら、その権限について定められた個別の法令がございます。例えば港湾法なんかがございます。建築法等があります。こういう権限について定められた個別の法律に照らして判断されるということになるわけであります。  正当な理由があるか否かは、まずは法令に基づき地方公共団体の長が判断することとなるわけですが、その判断が正当であるか否かは法令に照らして客観的に判断されるものである、こういうふうに考えております。
  235. 笠井亮

    ○笠井亮君 私が聞いているのは法律上ですよ。論理的には、正当な理由ということがあってもいいかもしれないけれども、全部正当な理由だ、うちはこういう理由で断りますということで、それは個別法の関係もあるけれども、全部断られるということだってあるということですね、強制はないんだから、あなたがおっしゃるように。論理的な問題ですよ。
  236. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 私はそう考えません。  例えば、米軍がある港湾に入りたいという場合に、港湾法で、国の旗の色によって、旗国によって、あなたのところの船は入れないというようなことになると、これは国によって差別をつけたことになるということでありまして、こういう場合は港湾法で運輸大臣から是正命令が出されることになると思いますが、きょう運輸大臣も御出席でありますから、正確なところは運輸大臣から伺っていただきたいと思います。
  237. 笠井亮

    ○笠井亮君 私が聞いているのは、港湾法の問題は後でやりますけれども、全部断ることがあるでしょうということなんですよ。大臣だって正当な理由があれば断れるとか今おっしゃいました。それから民間でも、前の答弁で、危険がある場合に、いささかでも懸念されるような場合には協力を拒否することは自由でありますから、拒否なさると思いますと言われております。  隣が嫌だからうちも嫌ですよということだってあるわけです。そしてみんな嫌ですよと、全部断ることだってこれは法律上あるでしょうと聞いているんです。ないと言うのは、なぜないんですか。法律上の話ですよ、論理の話です。
  238. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 法律上、正当な理由がなければ断れないわけですから……
  239. 笠井亮

    ○笠井亮君 あれば。
  240. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 断らない場合は、全部あるというあなたの言うとおりにはならないわけです。
  241. 笠井亮

    ○笠井亮君 正当な理由があったら……
  242. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 正当な理由がないのに断れば法令上の罰則が働くということになるわけですね。だから……
  243. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 委員長の許可を受けてやりとりしてください。
  244. 笠井亮

    ○笠井亮君 今、正当な理由ということを言われましたので、ちょうど港湾法になりましたので、これを私は聞きたいと思います。  今、旗国、旗の色によって変えちゃいけないという話をしましたけれども、私、それはとんでもない話をしていると思うんですよ。  運輸大臣いらっしゃいますね。周辺事態の場合に、港湾管理者たる地方公共団体が米軍艦船の入港を拒否する、地方公共団体としては正当な理由だという判断をして拒否するということになったらどうしますか。
  245. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 先ほど防衛庁長官からも御答弁申し上げましたように、正当な理由というものがあれば拒否することができる。しかしながら、国によって区別をつけるということはあってはならない。港湾管理という面で、例えば私どもの港は大変込み合っております、したがって少し待っていただかなきゃなりません、いや優先的に使わしてくれ、こういうときに少し待ちなさいということで拒否権はあるかもしれません。しかしながら、基本的に差別をつけてはならないということでございます。
  246. 笠井亮

    ○笠井亮君 あの港湾法というのを私も改めて読んでみましたけれども、これはもともと占領下で軍港化されていたものを返還して民間港に戻そう、当時のそういう状況の中であったと。まさに米軍から港を解放して、それは当時は占領軍ですよ、そして民間港として発展をさせるというのが一番の立法趣旨です。これはもう私が申し上げるまでもない、釈迦に説法みたいなことになりますけれども、当時の政府答弁でもこれは明確です、私持っておりますけれども。この法律のどこに米軍艦船の入り込む余地があるのか。  十三条二項で不平等取り扱いという話はよく言われますが、「何人に対しても」という中に、これは国の旗によって、民間の船ならわかりますよ、米軍も「何人」の中に入れて不平等にしないというのは、まさにこの港湾法の立法趣旨、そしてそもそもの目的からして曲解どころか、全く逆行するものじゃないですか、それ。
  247. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 再三申し上げておりますとおり、港湾管理者が不平等な取り扱いをしてはならないと決められておる。一方で、日米地位協定によってアメリカ日本の港また空港等を使用できる。ただし、優先使用権ではないと申し上げております。
  248. 笠井亮

    ○笠井亮君 港湾法の基本的性格と目的をうたった第一条は何と書いているかと。「この法律は、交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し、及び保全することを目的とする。」と。軍港にしたり、軍事利用するなどということは全く予定していないんです。それ抜きに十三条の二項の「何人」もに米軍を入れると。最初から入れて、旗の色の中で民間船も米艦船も一緒にしてやるなんということは、立法体系そのものを無視する暴論ですよ、これ。とんでもない話ですよ。  それだけじゃないです。制定時の趣旨説明はこうも言っています。「港湾の管理運営に関し、最大限の地方自治権を」「与えるということを中心題目とし、これに伴い、地方公共団体の自由意思によって選択される港湾管理者の諸形態、港湾管理者の定め方、その任務、組織、財政等について規定し、更に最大限の地方自治という建前から、政府の監督規制は国家的利益を確保するための必要最小限度に止める」ということで、当時、大屋国務大臣も明瞭に述べています。  この意味は明確だと思うんです、私。しかも、あなた方がやろうとしているのは最大限の地方自治どころか、法の建前を逆転させて最小限の地方自治、最大限の国家による干渉をやろうというものじゃないですか。強制でないどころか、法的根拠を持たない無法な強制だと。  「何人」の中に米艦船を含めて不平等取り扱いで一緒くたにするなんという話はできるわけないじゃないですか。地位協定の問題は別ですよ、これ。入ることができるということだけの話なんだから。不平等取り扱いと全然問題のレベルが違いますよ。そんな答弁じゃだめですよ。
  249. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 一つは、地位協定は別ですよということは、地位協定はあるわけですから、当然米軍の使用というものは認められている。  もう一つは、第十三条第二項において、港湾管理者は何人に対しても施設の利用等に関し不平等取り扱いをしてはならないと決められております。
  250. 笠井亮

    ○笠井亮君 「何人に」というのは、この法律全体がもともと軍艦を入れる、軍港にするということを予定していない、そういう目的なんですから、「何人」の中にもともと入っていないんですよ、そんなことは。そして、地位協定で入ることができるということだって、それは十三条二項で言う不平等取り扱いというレベルの問題じゃないと言っているんですよ。  あなたは最初ごまかして、旗の色で区別をしちゃいけないと言いました。それは民間の船で旗の色を区別しちゃいけないということでしょう。もともと民間港として私企業の発展とかということを明確にうたいながら、この中で港湾を本当にそういう形で利用して発展をさせるということでつくった法律なんですから、その十三条二項を持ち出して不平等にしちゃいけない、そしてそういうことで米軍艦船を入れるのを拒否したら、それが四十七条で抑えられるんです、正当な理由にならないんですという話じゃない。全然これは話が通用しないじゃないですか。しかも、私が今議論しているのは、平時じゃないですよ、周辺事態ということです。  この法律のもとで米艦船が入港するときは周辺事態であります。すなわち、紛争当事国の艦船が入港をするということになります。それは相手方から見れば、これは米軍がやっているわけですから、その当事国の船ですから当然攻撃の対象となる。地方自治体の首長が、港湾の安全、住民の平和そして安全を守る立場から見たときに、こんな危険な艦船が入港したら大変だと。あのユーゴへのNATO空爆を見ても、誤爆に次ぐ誤爆です。この問題が起こってからこの国会、この委員会でもずっと議論になっております。  そういう状況の中で、米艦船が入ってくる、攻撃目標にされる、米艦船は当事国ですから、周辺事態のもとで。そのときに誤爆をされて、同じ港の中で間違って隣りのタンカーに当たるかもしれない、民間の商船に当たるかもしれない。こんな危険なことをされたら、港湾管理者としては本当に責任が持てないということだって十分あると思うんですよ。それとも逆に、危険もあるから港湾から民間船を全部排除して軍港化する、港湾法を全く踏みにじる方向でやれ、あるいはやるということなのか。私はこういう問題だと思うんですよ。今議論しているのは周辺事態ですから、この法案。  こんな危険を考えれば、そもそも米艦船が不平等取り扱いけしからぬなんということで入ってくる、十三条二項で入ってくるなんという資格というのはないけれども、拒否するのが自治体首長としてこれは安全の立場から当然だ。そういう判断をするというのがなぜ正当な理由じゃないというふうに言えるのか。まさにこれこそ正当な理由だというふうに地方自治体の首長が判断して、そして所管大臣の運輸大臣がこれはなるほどもっともだというのがおかしいということになるんですか。
  251. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほど来運輸大臣が御答弁されている趣旨は、地位協定五十一条というのは周辺事態だろうと港湾法だろうと働くわけでありまして、これは当然地位協定五十一条によってアメリカの船は港に着岸できるわけです。  その際、さっき運輸大臣お話しされた趣旨は、例えば港湾が込んでいるのにしゃにむに優先権を持って入れろなんというようなことは、それはもう全く正当な理由だから拒否できる、あるいは港湾の施設が小さいのに船がはみ出てほかの船に迷惑がかかるようなときは、正当な理由だから拒否できる、こういうようなことがあるので、正当な理由の場合は当然拒否できるということを申し上げているわけでありまして、そのことは理解してもらわなきゃいかぬことだと思います。
  252. 笠井亮

    ○笠井亮君 議論していても、十三条二項の問題については全く曲解して、そしてそれを前提にしてやっていますよ。これでは本当に運輸大臣だって港湾の安全に対して責任を持てませんよ。そして、今言った問題でもそうです。それから民間の問題でもそうですけれども防衛庁長官だって、断ることはあります、それは仕方がないことですと。  ところが一方で、アメリカのニーズがあって、アメリカは軍事行動をやっている、そして日本が支援するということになっているときに、全くそれにこたえられない、あるいは全く不十分だということだって当然あるわけです。それも仕方がないということですね。
  253. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 何回も運輸大臣も私も申し上げておりますが、アメリカの船が寄りたいと思っていても、港がふくそうして入れないときは断る正当な理由だということを申し上げているわけです。
  254. 笠井亮

    ○笠井亮君 その問題はもうさっき議論したわけです。私が聞いているのは、ニーズにたえないから全部断られることだってあるでしょうと。  では、民間の場合はどうなんですか。
  255. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) これは運輸大臣お答えするのがいいのかもしれませんが、日本の港で全く船が一隻も入れないような港は現存しないと思いますけれども
  256. 笠井亮

    ○笠井亮君 話が全然違いますよ。民間協力の話、断られたらどうするんだということですよ。
  257. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 発言を求めて言ってください。
  258. 笠井亮

    ○笠井亮君 ちょっと、はぐらかさないでください。私が聞いたのは、民間に対して協力を要請するでしょう、仕方がないと言っているんでしょう、断られても。民間に対しては一切契約だから、別にそれで何か罰則もないんだから。  民間に対してこういう協力を要請しますよね、──ちゃんと聞いてくださいよ、笑いながらじゃなくて。まじめに聞いてくださいよ。今は別な話をしているんですよ。さっきの話はもうさんざんやって、あなた方は同じことしか言わないから。──ちょっと、あんなふふんなんという話だったら質問できません、私は。ふふんじゃないでしょうが。ちゃんと聞きなさいよ。
  259. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) いや、あなた方は同じことを言うからといっても、同じ答えしかないのですから、それしか言いようがないと思いますが。
  260. 笠井亮

    ○笠井亮君 だから、私が言っても全く説得力がある話がないから、そして、あいているときはどうだこうだという話はもうさんざんこの前もやりました、高知の問題で。  そして、私は十三条二項の話を、不平等取り扱いということをもって、ただ旗の色が違うとか旗のマークが違うという問題と、民間船と軍艦をごっちゃにする議論をあなた方がして、そして軍港にしてはいけないという原点から始まった港湾法に対して、そういう態度をとってやるから私は問題にして言っているんですよ。それに気がつかないんだったら、そもそも港湾法は何なのかとなりますよ。  いいですか、地位協定でそういうものが入ることができるというのは、そんなことは私も知っていますよ。しかし、だから何でもかんでも入れるわけじゃないでしょう。  そして、込んでいるかどうかというレベルの話もあったけれども、しかし、なおかつ、今周辺事態だ、米軍が戦争をやっている、それが入ってきて港の安全を確保できないということも含めて、もともと港湾法の立場からして、こんなことは不平等取り扱いという問題じゃないんだ、そんなことで入れたら大変だと判断して何がいけないんだという話をしているのに、あなた方がまじめにそのことをきちっと考えようとしない。そして、まともにこれだけ真剣に短い時間の中で、私だって五十五分ですよ、質問しているのに、ふふんなんという言い方で、一体あなたはどういう態度なんですか。  そして、その問題はなかなかあなたがそれ以上言わないから、同じことしか繰り返さないということは、私が言っていることについて答えられないんでしょう。  だから、民間について今度は別に聞いているんですよ。民間に協力を依頼する、それに対してうちはできませんと断られる、仕方がないですとあなたは言っているんでしょう。民間に全部断られたら、契約なかったらどうするんですかと聞いているんです。それでもいいんですね。民間協力全般ですよ。
  261. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 第九条二項でいわゆる民間、「国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」という、この規定についてのお尋ねだと存じます。  これは再々御説明申し上げておりますように、最終的にはその相手方との間の契約、私法契約によってその結果が得られるものであるということでございます。したがいまして、委員御指摘のように、だれも契約に応じないということは、全くの理屈の問題としては考えられないとは申し上げられないと思います。  しかしながら、この法案で想定しておりますのは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、そういう周辺事態におきまして関係の行政機関が、内閣全体で関係行政機関も一致して対応策をいろいろとっておるわけでございます。  そして、この九条二項でそれぞれの業者にお願いいたしますのも、業者と申していいかどうかわかりませんが、国以外の方にお願いいたしますのも、それぞれの行政機関からお願いをするわけでございまして、それぞれの相手方の事情等を十分勘案した上でお願いをするということでございますので、現実の問題としてそのようなことがあるとは私どもは思っておりません。
  262. 笠井亮

    ○笠井亮君 だから、理屈の上ではそういうことはあるとようやく今言われましたよね。そうなんですよ。自治体の方も正当な理由の関係で、そういうことで正当であれば理屈上はそういうことがある、民間もある、そういうことでしょう。  防衛庁長官は、あなたは答弁の中で、日本の存立にかかわる、日本の平和と安全に重大な影響を持っている事態に際してでありますから協力をするのは当然であり常識と。理屈ではあるかもしれないけれども実際はない。実際は協力するのは当然で常識だと。  本当に常識だと思っているんですか。
  263. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 毎回答弁しておるとおりでありますが、この規定はあくまでも協力を求めるということであって地方公共団体に強制するものではないということ、それから権限について定められた個別の法令に照らして正当な理由がある場合には地方公共団体の長はこれを拒むことができるということ、また拒否した場合であっても罰則規定も置かれていないところであるということ。  私は、これらの前提を何度か繰り返しながら、そのときの答弁では、周辺事態という我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に際して行われるものでありますから、地方公共団体の長におかれてもこのような趣旨を十分理解して適切に対処していただけるものと考えており、協力は常識だと思うという答弁をしたわけであります。
  264. 笠井亮

    ○笠井亮君 私は伺っていて、常識とおっしゃいますけれども、それは長官にとっての常識かもしれないですが、法案のどこに常識なんていう話があるんですか。書いていないでしょう。  大体、九条一項の規定というのはどうして設けられたんですか。その趣旨を言ってください。九条一項。
  265. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 先ほど来の御議論の中で、九条の第一項と第二項とで若干混乱しているような気が私はいたします。先ほど私が御答弁申し上げましたのは、第二項についてということでございます。  第一項は、「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」という規定でございます。  その意味するところでございますが、先ほど港湾法の例等も挙げられたところでございますけれども、地方公共団体の長は、当然のことながら各種の法令によりまして公権力の行使をする権限をお持ちでございます。国といえども、何らかの仕事をする場合に、その公権力のもとでいろいろと許認可等をいただかなければならない場合がございます。そういうことでございますので、この周辺事態という国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態の場合に、関係行政機関の長からその適切な行使をお願いする、こういう趣旨でございます。  したがいまして、その地方公共団体の長は、当然のことながら、その基本となっております法令の定める規定に従いまして御判断をいただくということでございまして、適正な御判断をいただけるものと思っております。したがいまして、先ほど来御議論ございます正当な理由というのもあくまでそれぞれの個別の法令ということでございます。  なお、念のために申し上げますれば、これは地方公共団体の長がその有する権限を行使するということでございまして、決してその地方公共団体に対しまして、何らかの労役を課すというと言葉が適切かどうかわかりませんが、そういったものではございません。
  266. 笠井亮

    ○笠井亮君 正当な理由ということで、私は一項の話とそれから法令に基づいてという話もちゃんとわかった上で聞いているんです。二項の方は協力を依頼すると。ちゃんと区別して私も聞いているんです。  一項のところで、この間の答弁を聞いていてもそうですけれども、要するに趣旨というのは、周辺事態に対する措置の緊要性ということにかんがみて地方公共団体の有する権限の公共的性格及び他に代替手段を求めることが困難であるという事情を考慮しと、一般的な協力義務を定めたもので、正当な理由があれば拒否できる。けさも、たしか自治大臣がそのように言われていました。  私はこれを聞いていて、自衛隊、国で全部できないから代替手段のために設けるということだと思うんですね、要するに。緊要だ、そして他に代替手段がないと。自衛隊、国で全部できないから代替手段として求めると、一項ですから。論理的には、これはそういう点では全部断わられることだってあり得る、正当な理由ということはさっき議論しましたけれども。そうすれば代替手段ということはなくなる。あるいは、それを断る正当な理由は、これは認められる、これは認められないということはあるかもしれない。  そうなったときには、ニーズが一方であるわけだから、そうしますと政府の言う必要な米軍支援というのが、一方では米軍は軍事行動している、それを満たすような支援ができるのかということが議論になると思うんです。緊要性ということからすれば、他に代替手段がなくて求めていくわけですから、これは必ず代替手段を確保しなきゃいけない。そうしなければ米軍の支援にこたえていけないということになりますよね。
  267. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 私は、この議論、まずそもそもの入り口における認識から違っているんじゃないかという気がして仕方がないんです。  そもそもこの周辺事態法というのは、周辺事態の定義にありますとおり、米軍が勝手に行動するということを支援する法案なのではなくて、まさに周辺における事態が発生して、そのことが日本の平和と安全にとって極めて重要な影響を与えるような、そういう事態の際にどう対応するかという緊急性を伴った、しかも日本の国益に伴った、日本国民の安全に伴った重大な事態なんです。  そのときに、日本国政府なり自治体なり日本国民がどのように我が国の問題として対応するかということが問われているわけであって、そういう事態の中で、日米間でいろいろ協議をした結果、先ほど防衛局長等からも答弁があったと思いますが、このガイドラインの中で米軍行動に対する具体的な協力事例として、空港なり港湾なり、あるいは自治体、民間の持っている施設なりを提供するということもあり得るんだということで先ほど来るるお話があった。  そういう中で、まさに日本国政府なり国の管理する施設だけで、あるいは米軍の持っている、米軍が使っている施設だけで対応できないような、そういうケースの場合に、それ以外の実効性を伴うための措置としてこの九条の一項、二項等がある、私はそう理解をいたしております。  そういう意味で、この事態の緊要性、緊急性、あるいはこれは法令及び基本計画に従って協力の依頼をするわけでありますから、まさに最初から施設の能力を超えるような港湾を承知の上で関係行政機関の長が自治体に協力要請することは私はあり得ないと思うんです。そういう意味で、先ほど来防衛庁長官がこの求めがあった場合にはその協力の依頼に応じてもらえるものだというのは、私は一般常識だと思います。これはあなたの常識とは違うかもしれないが、しかしその防衛庁長官の常識の線は本当に私も共有するところでございます。  そういう点で、他に代替的手段がないというのは、まさにそういう能力、いろんなことを考えた上で協力要請をするわけであります。そのことを当然頭に置いた上で協力依頼があるわけですから、正当な理由ということもそれらのことを前提として判断がなされなければならないことである、私はそう理解をいたしております。
  268. 笠井亮

    ○笠井亮君 常識という問題を言われましたけれども、私は、今、自治大臣が言われたあなた方の常識というのは国民の常識と全く違うと。あのユーゴを見てくださいよ。ああいうことをやる。中国大使館も誤爆、誤爆といってやっている。そして国際法も一切無視してやる。国連憲章にも国際法にもあるいは国連決議、そういうことともかかわりなくああいう形でどんどんやって、無辜の人たちも殺していくような、そういうNATOの中心になっている米軍でしょう。その米軍を支援すると。この委員会の審議の中でもいろいろ議論してきましたよ。それが当たり前だというのは国民の常識じゃないですよ。世界にだって今いっぱい批判が出ている。  ところが、あなた方は、この法案を通して、そしてあなた方の常識でアメリカに、アメリカは何でも正しいということで協力するために、アメリカからニーズを言われて、そしてそれに基づいてあくまで協力しよう、こういう話でしょう。そして、それにこたえていくというふうになれば、法律には強制、罰則がないと言ったって、あなた方は強制しないけれども必ずこたえてもらえると。こたえてもらわなきゃ困るわけだから。法制的には強制しないが、実際には有無を言う余地がないという仕組みをつくっていくということでしょうが。  戦争に協力、加担する、参加するというのは国民としては断じてあってはならないということで、港についても正当な理由でこれは使わせないということ、これはある意味では当然です。民間だって拒否する。あくまでもアメリカのニーズにこたえてやっていこうというのがまさに無謀な、無法な強制だ、そういう仕組みだということを私申し上げたいんです。  このような憲法九条廃止法案ともいうような周辺事態法というのは断じて許すことができないということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  269. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  まず最初に、月刊「世界」六月号に載せられた論文、「国内の有事体制が準備されている」ということについてお聞きをしたいと思います。  この雑誌の中に出ている警察の中の内部文書というものがあります。ここに、私は手元に持っておりますが、平成五年十二月一日秘密文書となっております「北朝鮮への不正送金対策推進計画」。   第一 趣旨 北朝鮮の核問題をめぐり朝鮮半島の緊張が高まっているが、こうした中、「在日朝鮮人による北朝鮮への送金問題」が、大きな問題としてクローズアップされてきている。しかしながら、送金額、送金方法を含めその実態については、未解明の部分が多い。このため、外事第一課、生活保安課、捜査第二課が合同して、送金の中心をなすとみられる朝鮮総聯系パチンコ業者等の大物商工人を重点に事件化を図り、早急にその実態を解明するとともに、北朝鮮への不正送金を阻止する必要がある  第二 推進計画   一 基本方針   警視庁、大阪府警において対策を推進することとする。それぞれの警察の外事担当課、風俗担当課、捜査第二課において、各種法令を適用し、大物商工人たるパチンコ業者に対する事件化を図る。  捜査をするではなく、明確に送金を阻止するために事件化を図るという計画書です。これには推進体制も書かれております。  こういう内部文書はあるのでしょうか。
  270. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) 委員御質問の「世界」の記事でございますが、それを私も読んでおります。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  中身につきましての御質問でございますけれども、一般論として申し上げますが、警察では犯罪捜査の責務を果たす上で必要な活動を行っているところでございまして、そのための文書を作成することもあるわけでありますけれども、捜査上の秘密の保持の観点から、個別の文書につきましてはその存否を含めましてお答えを差し控えさせていただきます。
  271. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 これは、具体的な事件の捜査ではなく、文書で事件化を図る、事件化を積極的に図っていく、意図的に事件にしていくということがはっきり書いてあるわけです。  こういう内部文書があるかないかだけについて端的に答えてください。
  272. 関口祐弘

    政府委員(関口祐弘君) ただいまもお答え申し上げたとおりでございますけれども、私ども仕事を進めていく上で全国の会議をし、そしてそこで、口頭で指示をいたしましたり、あるいは文書でするような場面も多いわけでございますけれども、ただいま御答弁申し上げたとおり、捜査上、個別文書につきましてはその存否を含めましてお答えすることを差し控えさせていただきます。
  273. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 重要な文書で、この存否についてもお答えできないということですか。  これは通常の捜査ではなく、警察がはっきり一定の意図を持って事件化を図るとしている文書です。これは私は本当に非常にショックを受けました。というのは、これはちょうどノドンが発射された後のことです。私たちは、イラクや北朝鮮情勢についてはやはり大変疎い状況があると思います。そういう中で、こういうふうに事件化を図る、極端に言えば、大げさに言えば盧溝橋事件のようなこともあり得るわけです。だって、これには事件化を図ると書いてあるわけですから、実際ある種の事件が、犯罪行為があり、それに対してどう対処するかということではないのです。  ですから、不審船の問題なども問題になっておりますが、こういう文書を見ますと、例えばある犯罪行為があって捜査を開始したのか、警察がもともと一定の意図のもとに事件化を図ったのかということが全くわからないわけです。それが有事法制の一つ、情報操作あるいは事件がフレームアップされることもあり得るという問題だと思います。これについてお答えしていただけないということをきょう確認して、こちらもまた追及していきたいと思います。  次に、今回、日米ガイドライン、そして周辺事態法でさまざまな何が発生するかということが問題になっております。  それで、過去に起きました朝鮮戦争時における実態、日本における協力体制が一つの参考になるというふうに考えます。朝鮮戦争の際、日本の地方自治体職員、民間人がどのような協力を強いられたのか。防衛庁長官はどう把握していらっしゃるでしょうか。
  274. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ちょっとその前に考え方を述べさせていただきたいと思うんですが、朝鮮戦争当時、我が国は連合国の管理下にあって、当時の法律状態のもとでの種々の協力と、このたびの周辺事態安全確保法案のもとでの協力とはおのずからその性格を異にするものでありまして、両者の法律的性格等について同列に比較して論じること自体は私は適切ではないのじゃないか、こう考えております。  朝鮮戦争当時に我が国が朝鮮国連軍に対して実施した支援につきましては、その詳細については必ずしも私も承知しているわけではございませんが、これらの前提のもとに、民間の協力として承知しているものをあえて申し上げれば、例えば我が国に所在した国連軍病院において日赤の看護婦さんが勤務していたということとか、あるいは当時、米軍の管理下にあった我が国の商船隊について、米軍の下部組織である日本商船管理委員会が米軍のために用船のあっせんをしていたこと等については、事実として承知しているところであります。  いずれにしましても、当時、我が国は先ほど申し上げたとおり連合国軍の管理下であり、例えば我が国の商船隊が米軍の管理下にあったなど、現在の状況とはその前提において著しく異なるものであるため、朝鮮国連軍に対して我が国が実施した支援の負担について確たる評価を申し上げることは私は困難である、こう考えております。
  275. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 自治体がどういう協力をしたかという実態についての把握はお持ちでしょうか。
  276. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) いろいろな記録を読んでみましたが、自治体の協力について詳細に書いたものは私は発見することができませんでした。
  277. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 今回の周辺事態法における協力体制については参考にされなかった、検討、総括はされていないということですね。
  278. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 簡単に言えば、余り参考にならなかったということであります。
  279. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 私は、実は九州の出身で、朝鮮戦争のときには例えば福岡は死体がたくさん運ばれて、死体の処理をしてアメリカに運ぶ。たくさん負傷兵が福岡に運ばれる。佐世保、そして大分の日出生台での米軍と警察予備隊との合同訓練、そして宮崎があり鹿児島があり沖縄があり、日本全国そうですけれども、九州はとても朝鮮半島に近い、福岡は特に近いですから、そういう意味で本当に基地になったという思いが九州の人たちにはまだ大分残っていると思います。  例えば、「史実で語る朝鮮戦争協力の全容」というのを読んでみますと、「休戦協定調印の二十八年七月まで三年間に兵員三百万、傷病兵三十万、物資七十万トンを空輸した。」、先ほどおっしゃいましたように、九州から看護婦さんを募集する。それから、もっと言えば、例えば「神奈川県史」では、神奈川県の県の歴史ですけれども、「朝鮮戦争勃発から三カ月で九州着だけで臨時列車は約九〇〇本にのぼった」、それから「開戦数カ月の間に、貨物船など六九隻、約三四万重量トンの日本船を用船した。」、ものすごいすさまじい動員で、しかも市民に対しても戒厳令的なものがしかれております。例えば、福岡ですと「非常事態防衛措置実施要領」、福岡県主催の市長、警察長、消防長会議は「非常事態における防衛措置実施要領について」を作成し、警察が住民監視を強めたということがあります。  こういうことを全く教訓化することなく周辺事態法の法案をつくられたのでしょうか。
  280. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今、先生が申されましたのは、福岡県の国連軍病院において日赤の看護婦さんが勤務しており、日赤福岡支部の歴史を記した文書に多くよっているのじゃないかと思います。そういうものもあるということは私も承知しておりますけれども、今回のガイドラインは、平素からの及び緊急事態における日米両国の役割並びに協力及び調整のあり方について一般的な大枠及びその方向性を示すことを目的とするものでありまして、特定の国や地域における事態を念頭に置いたものではないということは私ども累次申し上げてきたとおりであります。  周辺事態についても、かかる指針の性格から、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるという事態の性質に着目した概念でありまして、事態が発生する地域をあらかじめ特定できないことについてはこれもまた累次御答弁申し上げてきたところであります。  ガイドラインは、平成八年四月に発出された日米安保共同宣言において旧指針の見直しの開始についても合意されたことを受け、常日ごろから行っている議論も踏まえて、防衛協力小委員会という枠組みのもとで緊密な日米間の協議を行い、その成果を取りまとめたものであります。このため、指針実効性を確保するための周辺事態法案の策定過程において、周辺事態に際して我が国が実施する対応措置を検討するに当たってもこの指針の見直し作業の成果を踏まえて行ったところであり、指針と同様、特定の事態を念頭に置いて行ったということはございません。  したがって、指針及び関連法案を検討するに際して、緊急時において同盟国としていかなる協力を行い得るかという観点から、一般的に過去の種々の事例における経験等を検討の資としたことはありましたけれども、御指摘の朝鮮戦争時の我が国の協力について特に研究やその総括、評価を行ったものではないということであります。
  281. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 朝鮮戦争時における協力の総括がまだ十分されていないということで理解しておきます。  朝鮮戦争時の日本の支出はだれが負担したのでしょうか。
  282. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 突然のお尋ねで、ちょっと私今承知しておりませんので、至急確認をしたいと思います。
  283. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 この点については事前通告をしておりますが、事前確認でお答えを十分いただけなかったんですね。では、またこれについては費用の負担について教えてください。  では次に、日米ガイドライン関連法案に関係した費用負担についてお聞きいたします。  現在ですら思いやり予算と日米地位協定に基づく米軍への資金協力で総額六千五百億円を超える予算が米軍に支出されていると試算されております。周辺事態ともなればこの部分の予算だけでも五倍、十倍になると考えられますけれども、この試算は一体だれが行っているのでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
  284. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 少なくとも外務省の所管ではございません。
  285. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 わかりました。では、総理大臣、お願いします。大蔵大臣は外国に行かれるということで、総理大臣、お願いします。
  286. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 周辺事態に際して周辺事態安全確保法案に基づき行われる対米協力に係る各種の措置にどの程度の経費が必要かにつきましては、個々の事態により異なり、どのような予算措置が必要となるかは一概に申し上げることは困難でありますが、いずれにせよ周辺事態我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、かかる事態に際しては本法案に基づき実施される各種の措置に必要な予算が適切に措置されるべきものと考えております。
  287. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 私は朝鮮戦争のときには生まれていませんでしたが、過去のいろんなものを読みますと、物すごくさまざまな動員が行われたということがよくわかりました。  ですから、今回、周辺事態法のもとで非常に費用がかかる場合も多分あると思うんですけれども、もしだれも試算を行っていないというのであれば、周辺事態となってお金が必要になって無尽蔵に予算が支出されるおそれがあると思います。日本有事でもなく、そのおそれがあるという根拠だけで国民に青天井の負担が強いられるということについては納得がいきません。  総理大臣はこれでよいのでしょうか。もう一度答弁をお願いします。
  288. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) まず、周辺事態という事態になったときにいかなる対応をするかということ自身、その時点のいろんな状況を踏まえて我が国として主体的に判断するわけでございます。自動的に何かが行われるということではございません。  それから、そういう中で、我が方として必要と判断される行為についてその諸経費を負担していくということは当然あろうかと思いますけれども、ではそれがどういう規模のものになるかというのは、これも先生御想像がつくと思いますが、その事態がいかなるものであるかということによって対応措置も変わってまいりますので、あらかじめどういう金額になるということをお示しすることができないことは御理解いただきたいと思います。
  289. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 私は声を大にして国民に対して言いたいのは、この法案が金銭的にもびっくりするほどの負担を国民に強いるということです。  インディペンデンス号が小樽港に一九九七年に入港しましたけれども、延べ一千人の地方公務員が動員をされました。小樽市民の情報公開請求によりまして、一千七百万円交付金が国から小樽市に支払われております。五日間の単なる友好親善で港に寄って一千七百万円、少なくとも小樽市に払っただけでそれだけです。  私たち国民がこれからどれだけ負担を強いられるのかというのはむしろ国民の側がこの法案を見ていくべきかもしれませんが、私は政府が試算も行っていないということは問題だと思います。  では次に、周辺事態における地方自治体と民間の協力についてお聞きします。  九条一項ですが、もし地方公共団体の長が拒否をした場合は違法になるのでしょうか。防衛庁長官、お願いします。
  290. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほどから申し上げているとおりでありますが、地方公共団体の長は正当な理由があって拒否すれば全く違法なものでもなく、罰則も何にもございません。
  291. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 では、正当な理由がなく拒否をしたらどうなるのでしょうか。
  292. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) さっきの議論にまた入るわけでありますが、その正当な理由になるかどうかは個々の個別の法律……
  293. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 いや、違うんです。そうではありません。端的に答えてください。  正当な理由がない場合は違法になるのでしょうか。はい、いいえ、どちらかで答えてください。それで結構です。
  294. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) これは、例えば港湾法で言えば、関係行政機関、つまり……
  295. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 いや、違うんです。防衛庁長官は正当な理由があれば大丈夫だとおっしゃったわけですね。ですから、私は法律家として端的にお聞きしたい。  私は、実は正当な理由があるかどうかで区別するのはおかしいという見解なんですが、地方公共団体の長が拒否をする、正当な理由があれば違法ではない、では正当な理由がなければこれは違法ですか。端的に答えてください。
  296. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) それは先生、端的に答えろといっても、場合によるわけですから、少しだけ説明させてください。  例えば港湾法で、正当な理由がなくて拒否すれば法律によって運輸大臣が是正命令を出すということになります。
  297. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 それは違法なんですか、違法ではないんですか。
  298. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 正当な理由がないのに協力の求めに応じないときと、こういうことだと思いますけれども、そのときは一般的義務の不履行状態にある、こういうふうな評価になると承知しております。
  299. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 私は、実は正当な理由で区別すること自身おかしいというふうに思っております。  というのは、九条一項は「必要な協力を求めることができる。」。法律の条文は、権利として書く場合と可能性、「得」と書く場合とでは明確にいつも区別をしております。「必要な協力を求めることができる。」わけですから、これが要するに義務づけ規定とはとても読めないんですけれども防衛庁長官いかがですか。防衛庁長官、答えてください。
  300. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) まさにこれは一般的な義務ということで、それを別な形で御説明させていただければ、その求めに応じて権限を適切に行使することが法的に期待される立場に置かれる、こういうことでございます。
  301. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 法的に置かれるというのはどういうことですか。
  302. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 九条一項の条文についてはもう御承知のとおりでございます。そして、この法律の趣旨についても既に御承知のとおりだと思います。  地方公共団体の長が有する権限を適切に行使することを求めるということでございまして、そのことをもってそれを適切に行使していただくことを期待される立場に置かれる、こういうことを申し上げているわけでございます。  この周辺事態安全確保法案上は、先ほど来防衛庁長官からも御答弁ございますように、何ら制裁その他の規定があるわけではございませんが、先生先ほど来御指摘のその正当な理由というのは、それぞれの個別法令に照らして考えるということになるわけでございます。これは地方公共団体の長としての公権力の行使に関することでございますので、それがそれぞれのその根拠法令に照らしまして適切に行われたか行われなかったかということにつきましては、違法、合法という判断が当然なされることはあるものだと承知しております。
  303. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 自治体の長は正当性があると考える、国は正当性がないと考える、こういう場合はどういうふうになるんでしょうか。
  304. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 再々申し上げておりますが、いわゆる公権力の行使でございますので、通常それほど大きな開きがあるということは私はないのだろうというふうに思います。それらにつきましては、各法令に従いまして、その解釈につきましては、通常、準則が示されているというのが普通でございます。  ただ、そこで最終的にその当該根拠となっている法令を所管する官庁が余りにも不適当だという場合には地方自治法上の勧告なりなんなりの措置をとることもできるということは、この席で自治大臣から何度か御答弁があったと存じております。
  305. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 私は、地方自治体の長は正当理由があると考える、国は正当理由がないと考えるという事態はこれから大いに起こり得ると思います。ケースによってはもちろん起こり得ると思います。だからこそ、地方自治体から二百以上にわたる慎重あるいは反対決議が出る。それは大変不安に感ずるというふうに思います。  しかも、正当理由ということは私は非常に実はまがいものだと思います。つまり、正当理由を狭く解釈するか大きく解釈するか、最後は国が勧告命令まで出すわけですから、これは本当に自治体を縛る。条文はかわいらしく「協力を求めることができる。」と書いてあります。ですから、これに従えば、正当理由があるかないかに関係なく、私は、自治体は自治体の判断で協力を求められて嫌ということもイエスということも言えるというふうにすべきであると思います。  次に、防衛庁長官にお聞きをいたします。  自治体が協力を決定したけれども自治体職員が思想、信条によりその職務を拒否した場合、これはどうなるんですか。
  306. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) この問題につきましては、防衛庁長官の所管でもなく、私の所管でもないと存じますが、むしろ労働法上あるいは地方公務員法上の職員の権利義務の関係の問題であろうと思います。  したがいまして、私から御答弁するのが適切かどうか私自身も大変疑問でございますが、かつて労働大臣が、衆議院でしたか参議院でしたか、ちょっと私は記憶があいまいでございますが、民間企業の場合でその種の職務命令を出すことはあり得るんだ、ただし、これは民間企業の場合ですけれども、いろいろな労働協約なり労働関係の諸法令に従って処置されていくんだというような御答弁があったと記憶しております。
  307. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 野呂田防衛庁長官衆議院特別委員会で、予算委員会だったかもしれません、重大な場合は処罰の対象になるというふうにお答えされていらっしゃいます。野呂田防衛庁長官の見解をお聞かせください。お願いします。
  308. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 重大な場合というのはどういうことを意味しているんでしょうか。ちょっと意味がわかりません。
  309. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 野呂田防衛庁長官が、公務員が協力を拒否した場合はどうなるかということに、重大な場合は処罰の対象になりますというふうに答えていらっしゃるので、逆に私がお聞きしたわけです。説明してください。
  310. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 地方公務員法とかある場合に、それを遵守しない場合は処罰の対象になり得るという意味で答えたわけであります。
  311. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 地方公共団体の長と国との見解が対立する場合もある、そして地方公共団体の長と個人の公務員の見解が対立する場合も大いにあり得ると思いますが、いかがですか。
  312. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 九条関係でございますので私の方からお答えさせていただきます。  まず、九条一項の関係につきましては、先ほど来申し上げておりますように、公権力の行使ということでございまして、自治体の長がこれはイエスというのをその文書を書かないというようなことがあるのかどうか、私はちょっと理解できませんが、仮にそういうようなことがあったとすれば、それは地方公務員法上の義務違反というような問題が出てくるんであろうと私は思います。  一方、九条二項のいわゆる協力の依頼でございます。こちらで協力をする場合は、何らかの労務と申しますか、そういったものが伴う場合がございます。これも当然のことながら、地方公共団体の長が契約なりなんなりを締結するということを決心されました以上は、基本的にはその職員にはそれに従う義務が生ずるということなんだろうと思います。  もう一度繰り返しになるかもしれませんが、正当理由がある云々という問題は九条一項の問題でございますので、九条一項はあくまで許認可の問題でございます。したがいまして、今その判断をすべき権限者である地方公共団体の長とその職員との間という問題がどのような形で起こるのか、ちょっと私自身としても想定しがたいところでございます。
  313. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 しかし、私はこの国会で、例えば地方公務員が協力を拒否した場合には地方公務員法の懲戒処分の対象になるということを政府が答弁されること自身、たくさんの働いている公務員は非常に不安になるだろうというふうに思います。  自治体が協力を断った場合、補助金交付などで不利益を受けることはないと言えるでしょうか。
  314. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) あくまでこの法案九条二項に基づく行為でありましょうと、あるいは一般的な事実行為でありましょうと、それぞれの国の行政機関が行います法律行為というものはそれぞれの法令に従って適正に行われるべきものでございます。
  315. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 ちょっと話が戻って済みませんが、民間あるいは公務員の職務命令拒否の理由がみずからの生命、身体の安全保持であった場合も同じでしょうか。
  316. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 一般の労働者の場合でございますが、これは労働省の方の見解だというふうに思いますけれども、通常は使用者の業務命令に従う必要があるんだろうと思います。それが、今、先生おっしゃられる安全の問題というものも、基本的には当然のことながら、使用者は少なくとも安全上重大な問題がないという判断をしてその仕事を引き受けるんだろうと思いますので、その辺の見解の違いということになりますと、それはそれぞれの会社の内部の問題ではないかと思います。
  317. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 会社内部の問題ではなく、この法律全体の問題だと思います。  どうして国民の間からたくさん議論が起きるかといいますと、先ほど私は九州の出身だと申し上げましたが、長崎の人にお会いしました。その人は、後方支援だからといって大丈夫だというのは全く信じられない、なぜなら長崎には原爆が落ちたからだというふうに言いました。  広島は御存じのとおり大きな軍港でした。この中で、例えば基地があるから安全だという議論あるいは基地があるから危ないという議論、両方出ております。でも、国民の命にかかわることですからそういう不安が出てくる。パイロットや日本海員組合、さまざまなところからも不安が出ております。私は、国会はそのことに真摯に全くこたえていない、そういうふうに思います。  次に、民間空港は周辺事態に際し、軍事利用が優先されるのでしょうか。
  318. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 民間空港というふうにおっしゃられまして、具体的にどういう範囲を指すのか、必ずしも明らかではございませんが、御承知のとおり、いわゆる民間が使います空港には、国の管理のもの、地方公共団体が管理のもの等々ございます。地方公共団体管理のものにつきましては、九条一項によってお願いをすることがあるということでございますが、これは運輸大臣から再々御答弁申し上げておりますように、地位協定上の根拠は米軍の場合は五条でございますので、優先権を持つものではないということでございます。  ただ、周辺事態という我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態でございますので、そのことは考慮した上で地方公共団体の長としては御判断いただけるものと期待をしているところでございます。
  319. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 非軍事利用を運輸省が約束して建設させた空港、例えば成田空港ではだれがどのような責任を負うのでしょうか。
  320. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) これは運輸大臣の所管でございまして、私の方からお答えするのは適当ではないと存じますので、失礼いたしたいと存じます。
  321. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 アメリカによるアフガニスタンやスーダンへのミサイル攻撃、現在のNATOによるユーゴ空爆は、国際法上どのような条約、条文に照らして適法と言えますか。外務大臣、お願いします。
  322. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 委員御指摘の事例につきましては、いずれも我が国は直接の当事者ではなく、事実関係について詳細を承知しておりません。これらの事例が国際法上適法であるか違法であるかについて確定的な法的評価を行うことはできないわけでございます。  以上の前提で若干触れてみたいと思いますが、ユーゴにおけるNATOの軍事行動は、国際社会による政治解決のための粘り強い外交努力にもかかわらず、ユーゴ政府がこれをかたくなに拒否し、他方でコソボにおいて軍及び治安部隊による過度の武力行使が続く中で、さらなる人道上の惨劇を食いとめるため、やむを得ざる措置としてとられていると理解をしております。必ずしも法的評価ではございません。  それから、スーダン及びアフガニスタンにおける米国行動については、米国が継続的、連続的テロに対して国連憲章第五十一条で認められている自衛権を行使したと米国説明しております。  我が国としては、テロに対しては断固たる対応をとるべきとの基本的立場のもと、米国がとったテロに対するそのような姿勢を理解している。ただ、米軍が自衛権行使と説明して、いろんな事実も説明していますが、その事実は我が国としては確実に確認できませんので、法的評価は確実には行っておりません。
  323. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 ユーゴ、スーダンそしてNATOのことについて、適法とも違法とも言えないという見解の御説明がありました。  しかし、小渕首相は、クリントン大統領との共同宣言の中で、基本的にクリントンのユーゴ政策を支持するというふうに声明を出されております。  小渕首相、適法とも違法とも言えないにもかかわらず、なぜそのようなことが言えるのでしょうか。
  324. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、外務大臣が御答弁を申し上げたとおりでございまして、我が国としては、このNATOの空爆については、その前提として、ミロシェビッチ大統領が平和に対する五つの問題について十分なお答えをしておらないという意味で理解をしておるという立場でございます。
  325. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 しかし、基本戦略を支持するということは、適法を前提にしているのではないですか。小渕首相、お願いします。
  326. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 空爆についてはこれを理解しておるということでございます。
  327. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 適法か違法かわからないにもかかわらず、なぜ理解できるんですか。
  328. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 繰り返しになりますが、国際社会による政治解決のための粘り強い外交努力にもかかわらず、ユーゴ政府がこれをかたくなに拒否し、他方でコソボにおいて軍及び治安部隊による過度の武力行使が続く中で、さらなる人道上の惨劇を食いとめるため、やむを得ざる措置として理解している、これが理由でございます。
  329. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 今のは適法だというふうに聞こえるんですけれども、私が思うには、ある武力攻撃が適法であるという立証がされない限り、あるいは政府がある国が行っている武力行使が適法であるという確信を持てない限り、先ほど高村外務大臣アメリカが主張する国連憲章五十一条に基づく自衛権の行使かどうかスーダン、アフガニスタンの件に関しては判断できないのでというふうに正確におっしゃいました。  もし、確信が持てないのであれば、少なくとも賛成に受け取られるようなことはすべきでないというふうに思います。少なくとも正当性がある、違法ではない、適法であるという確信がない限り、むしろ空爆をやめるように言うか、あるいは全く中立的な立場をとるか、いずれかであるべきだと考えますが、いかがですか。
  330. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 最終的に、各国がとった行為が違法であるか違法でないか、国連憲章上許されるか許されないか、あるいは一般国際法上許されるか許されないか、そういったことの判断権といいますか有権的解釈は一般的に国連の安保理で行われるものだ、こういうふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、ロシアが、この空爆は国連憲章違反である、そして空爆はすぐ即座に停止すべきだ、こういう決議案を提出して、十二対三という大差で否決されているということもあるわけであります。  日本政府とすれば、例えばこれは人道上の介入と言われるようなことに当たる一つのことだと思いますが、その人道上の介入がどこまでどういう条件で許されるかというその物差し自体がまだ形成過程ではっきりしていないということが一つあるのと、それ以上に、例えば民族浄化。コソボには二百万人の人口がいるうち、百八十万人がアルバニア系の人である。そういう人が半分ぐらいもう外国へ出されてしまっている、そしてその中で大変な虐殺行為も行われているという、そういうことが伝えられている。そういう中で、果たしてこういうことを主権国家の中で行われているからということで国際社会が座視していいのかどうか。  これも国際法上、事実関係もはっきりわからない中で、日本政府とすれば、それは適法かどうかはわからないが、そういう中で国際社会十九の国がそういう判断を持って今やっていることをやむを得ざる行為として理解はしている、こういうことでございます。
  331. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) 福島君、時間です。
  332. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 はい、わかりました。(拍手)
  333. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 自由党の月原です。  まず冒頭に、イロハの話ですが、このたび国会承認という項目が入っておりますが、これは当然のことだけれども衆議院、参議院それぞれがオーケーを出すという意味でしょうね。
  334. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) これは修正を御提案された先生方からの御答弁にあるべきだと思いますけれども、私どもが理解しておりますのは、国会承認というふうなこういう形で規定が置かれました場合に、両院の御承認というふうに私どもはこれまで考えてきているところでございます。
  335. 赤城徳彦

    衆議院議員(赤城徳彦君) 今回、国会承認を設けた理由は、自衛隊という組織が活動するという、しかも新しい活動であるということにかんがみて設けたものでございますが、その趣旨は一般的なそのほかの国会承認の場合と同様でございまして、ただいま事務方が答弁しましたように両院の承認と、こういうふうに理解しております。
  336. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 それでは、さらにお尋ねしますが、防衛出動の場合は、緊急集会の話が書いてあるわけですね。これは例示であるかどうかというとり方の問題だと思いますが、今度の場合はそれがないものだから、衆議院が解散しておったといった場合はどうするんだという話についてはどういう解釈をされておるんでしょうか。
  337. 赤城徳彦

    衆議院議員(赤城徳彦君) 先ほど申し上げましたように、これは本来、この法律に基づく措置は、武力の行使を行うものでもありませんし、またそれと一体となるものでもない、国民の権利義務を制約するものでもない、緊急性を要する事態であると。そうした理由から私どもは、自由民主党としてはでございますけれども国会報告で足りる、こういうことでございましたけれども、各党との議論の結果、組織としての自衛隊の活動であり、また新しい活動を行う、こういうことから、特に国会での承認を求める、こういうふうな修正をしたわけでございますので、国会が閉会中であるとかあるいは衆議院が解散されている場合には、基本的には内閣国会の召集を決定するか、参議院の緊急集会を求めた上で事前の国会承認を得ることになると思いますが、これらの手続を経ていては我が国の平和と安全の確保を十分に図ることができないというふうに判断されるような時間的な余裕がない場合には、緊急の必要がある場合ということで事後承認になると思います。
  338. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 これはこれ以上私は深く申しませんが、今の発言そのものは、私はもう少し検討して答弁していただかなければ、これは非常に大きな問題だと思いますよ。  今言ったように、実力集団を動かすんだ、大事なときだ、国会承認だと。衆参一緒に承認ですね。それはそれとして、緊急集会なんか開く暇がないじゃないかと、最初からそういうふうな考え方で法律ができておる。そういう規定もありながら、しかもだめだったから、いやそういうことが難しいからやむを得ずの条文でいくのなら別ですよ。最初から緊急集会で、私が先ほど申し上げたのは、緊急集会というのは当然読めるんだなと私はあえて聞いたわけだ。書いてなくても、当然憲法からすぐおりてくるからここへあえて書かなかったんですよというのも一つの答弁です。しかし、あなたの答弁は全然違うわけです。  だから、その点は、今答弁されるなら答弁されても結構ですし、さらに検討してもらわないと、これ全然、日本有事のときでもないし、平穏なときだからというような感じのものであっては私は軽く考え過ぎておると思いますよ。
  339. 赤城徳彦

    衆議院議員(赤城徳彦君) この国会承認は原則として事前、あくまで原則事前でございますので、どういう場合に事後になるかというその判断は、国会の手続を経ていては我が国の平和と安全を確保することが十分できないというところにその判断基準がございまして、あくまで原則として、例えば衆議院が解散されていた場合には参議院の緊急集会を求めた上で事前の国会承認を得る、これが原則でございます。  ただし、緊急の場合に当たる、事前の国会承認の手続を経ていては我が国の安全の確保を図ることが十分できないという場合には事後である、そういう趣旨でございます。
  340. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 よくわかりました。  そこで、私がお願いしたいことは、そういうことの解釈について憲法から直におりてくるんだと、この問題は。防衛出動の場合は書いておるわけですよ、括弧して、緊急集会の問題をですね。ですから、そういう整合性の議論もありますが、憲法から直接それがおりてきてこう解釈できるんだということをはっきりさせておかぬといかぬ、こういうことを私は申し上げているわけであります。  次に、日本を少し、有事というほどではないけれども、巻き込もうと、逆の立場の国が、そういう立場の国がいるとしたときに、私は、国会承認というのがなかなか難しいように、そのときに恐らく国民の中に巻き込まれ論というものをざっと広げると思うんですよね。  そういうふうな中にあって私は大事なことは、この間も質問をさせていただきましたが、やはり我が国の国益を考えた場合に、こういうようなリスクは乗り越えてでもやらぬといかぬのだという点をまず国民に徹底させぬといかぬ、そういうふうに思うわけです。  また、それを承認するかどうかというのを判断するについて、これは総理大臣にお尋ねするんですが、総理大臣の決断というのは大変な決断になっていくんです。いろいろな情報が上がって、総理が最後に決断されて、そして国会という話になっていくんでしょうが、そういうときに政策協議とか情報の収集、評価というような非常に大きいものがあると思うんです。  それともう一つは、米国側から見たら、この間質問させていただいたときに、米国国民に国益として行動せぬといかぬという説明をせぬといかぬわけです。そういうことは別として、米国側から見たら、日本はこういうケースの場合には共同作戦してくれるんだなということを作戦を練るときにカウントしておかなければ、日本の方が後方地域支援としてこういうふうなところは、こういう部類については支援して一緒に共同作戦ができるんだなと。だから、自分のところはそういうものは余分に持つ必要がないわけです。  そういうふうになるだけに、私は総理が決断されるについて、政府の中でどういうふうなシステム、安保会議を開くとか、どういうふうに判断されておるか知りませんが、もう法律に閣議の問題が出ておりますね。だから、そういうふうな手順を踏んで、そして総理が決断して国会に行くんだというふうなプロセスというものをどういうふうに考えておられるのか。それから、平時において米国と情報をいろいろ交換、収集し、共有する、そういうようなためのメカニズムについて今どうなっておるんだろうか。これは担当者の方で結構ですが、お尋ねしたいと思います。  さらに、そのメカニズムとしてありますのに包括的メカニズムと、それからもう一つ、今でき上がっているメカニズムとこれから早急につくらなければならないメカニズム、これはガイドラインに基づいて、それが今どういうふうになっておるのか、お尋ねしたいと思います。
  341. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 何らかの事態が発生した場合に、それに関します情報をどういうふうに収集し、集約し、政府としての判断につなげていくかという点についてまず御説明申し上げたいと思います。  何らかの事態が発生いたしました場合に、それにつきまして国際社会としての反応等もございましょうし、また米国自身の見方もあろうかと思います。さまざまな情報につきまして、在外公館による情報収集等を初めといたしまして、外務当局、また私どもといたしましても持てる情報、能力を活用して情報の収集を図る、また政府部内のその他の役所におきましても必要な情報の収集を図るというようなことで情報をそれぞれ収集する。そういう中にあって、例えば内閣におきましては内閣情報調査室というようなもの、あるいは安保危機管理室というものがそういった集約の中心になっていくのではないかと思います。  そういった検討を踏まえて、安全保障会議におきまして、当該事態我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるかどうかについての判断、またこれに対応するために我が国として必要な措置を講ずることの判断、こういったものの御審議をいただき、その上で閣議決定を経て周辺事態安全確保法案に基づいて措置が講じられていく、こういう流れになっていこうかと思います。  それから、後段の、新たなガイドラインに基づきます二つのメカニズム、その状況はどうかというお尋ねでございます。  まず、そのうちの包括的メカニズム、これは平素から日米両国におきまして緊急事態においてどういう対応をとるべきかというようなことをあらかじめ協議しておく、研究していくというような場でございます。  具体的に、例えば有事におきます共同作戦計画を検討するとか、あるいは周辺事態におきます相互協力計画を検討するとか、こういう場でございますが、これにつきましては、昨年の一月にコーエン国防長官が来日しました折にその内容が日米両国間で合意されまして、それに基づき現在検討も行われている状況にございます。  もう一つの調整メカニズム、これは緊急事態におきます日米行動、対応を調整する場でございます、緊急事態においてどういう行動をとるかということを調整する場でございます。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  これにつきましては、これもできるだけ早く内容を固めていく必要がございますけれども、今鋭意その内容につきまして関係省庁も含めまして詰めているところでございまして、この点につきましては今現在まだ構築されておらない、できるだけ早くそれを構築したい、こういうふうに努力しているところでございます。
  342. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今のお話ですが、日米調整メカニズムの問題は、平素においてもちゃんと枠組みをつくって、いざというときには動くようにしておきましょうというのがガイドラインの精神ですね。だから、そういう意味では、これは国会と直接関係ありませんけれども、もう既に包括的メカニズムは動いていろいろ積み重ねがなされておるだけに、この日米調整メカニズムを早くつくることは防衛なり政府なりの責任だと私は思っております。  それで、総理大臣、先ほどちょっと事務当局から答弁があったんですが、要するに今申し上げたように、やはりいろいろな巻き込まれ論とか、あるいは危機を醸成するとか、そんなことをしながら相手方にすればできるだけ総理判断を狂わせていくというような、そういうものが出てくると思うんですが、今お話しのような上に立って総理は、そういうところで情報収集したものを安保会議なり内閣というプロセスを踏んで総理として誤りないように判断するおつもりですか、それともそういうのはもう開かぬでもちゃんとやる、こういうことになるのか、どうでしょうか。
  343. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 万遺漏なきを期すために、当然のことですが、会議を開いて、それぞれの情報を十分分析し、判断の誤りなきための措置は講じてまいることは当然と考えております。
  344. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 それから、今度は外側の人から考えたら、実は今まで船舶の話とか、あるいは海上輸送の話は非常にたくさん出ておるんですが、量としては、それよりもむしろ国内の基地を守るということ、それから基地間にいろいろ物を運んでいくというようなことが非常に大きなウエートを占めておるんだと思うんです。それに対して、そういうものを防備する、そしてもっと極端に言えば、内情を攪乱するためにゲリラなりコマンドなりが来て、例えば先ほどの議員の質問にもありましたが、原発のところをやるとかということはありますが、それでなくても、そういうふうな国内における物資の移動そのもの、米軍の物資の移動、そういうものを困難にさせるという作戦に出てくると思います。  だから、そういうものに対して政府の方としては今どういうふうな方法でそれを防ごうとする、阻止するというふうに考えられておるのか。
  345. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 国内の各種の警備につきましては、第一義的にはやはり警察機関の仕事であろうと思っております。  この際、さきの法案修正によりまして、自衛隊が行う後方地域支援についても一定の武器使用を認めていただいて、その分もあわせて活用させていただくことになるだろうと思います。
  346. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 ですから、そういう場合によく考えていただきたいのは、情報通信関係を壊してくるということも考えられますね。だから、たしか昔、警察と防衛庁が協定を結んでおったことがあると思うんですが、これもアップ・ツー・デートに、しかもこういう法案ができて国内における最もねらわれやすい部分、そういうものについては海上保安庁も含めてしっかりした協定をつくっていただきたい、こういうふうに思います。  最後に、周辺有事から日本有事となったときに、今のこの周辺事態法の支援において、国内において今私が攪乱されるおそれがあるぞと言った米軍に対する支援なんというのはこの法律ができたら実施できるんですが、有事になったらこれはどうなるんでしょうか、そういう関係は。防衛庁長官、お願いします。
  347. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 周辺事態我が国に対する武力攻撃に発展した場合は、この法案によりこれに対応することはできないと考えます。  したがって、我が国有事に際しては自衛隊法七十六条に定められた防衛出動の枠組みによって対応することとなるわけでありますが、我が国有事に際しての対米支援については法的整備も含めその取り扱いについて今後検討しなければいけない、こう思っております。
  348. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今、防衛庁長官がおっしゃったとおりでありますが、そういう意味では、この法案が通っても本当に国内の移動についての米軍の支援というものが有事のときにもできるような法体系を速やかに、そしてまた先ほど多くの議員が言われておった地方公共団体との関係も、どういう形にされるのかは別として、そういうものも十分確保しておかなければならないので、この法律がうまいぐあいに多くの賛同を得て施行されるようになっても、今申し上げたような点を早急に手をつけて万全を期するようにしていただきたい、こういうふうに思います。  それで、最後ですが、最後最後と言って申しわけないんですが、こういう議論をしておると、いつも思うのは米国との関係の法律はえらい早く通るなと。米国との関係のことについてはすぐ通るんだけれども我が国を守るもう一つの柱である自衛隊の整備とかあるいは法体系とか、そういうものがいかにも進捗が遅いなと、こういうふうに思うんです。だから、下手をすると外圧の部分だけが、俗な言葉で言うとですよ、私はそう思いませんけれども、世間的に言えば外圧の部分だけは何とかかんとか言って早く通して、そしてそれでもうしばらくは疲れたな、今やらなくたって別にどうということはないなというようなことで休んでおるような傾向があるだけに、今言った点とかあるいは我が国自身が守る力というものを自衛隊を中心として訓練もし、ちゃんとした装備も与えていく、そういうふうなことにお願いしたいと思います。  以上をもって終わります。ありがとうございました。(拍手)
  349. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 この法律は衆議院段階でたしか九十三時間とかあるいは九十六時間かよくわかりませんが、大変な時間を費やした、こういうことになっているし、当院に来てからもこの一週間みっちりとやっておりますので、もう百二十時間はとうに超えているだろうと思うんですね。それが総括のときなんかはテレビに出たりして、国民のたくさんの方が見ておる。にもかかわらず、何かみんなわからぬわからぬと、こう言うんですね。どういうことなんだろう、周辺事態って何だろうというような話から始まって、とにかくわかりにくい。いや、よくわかる法律ですと言う人に会ったことがない。困ったことだと思います、どっちにしても。  しかし、本来はそんなにわかりにくい話であるはずがないのに、わかりにくいというのが私の感じなんです。本来は簡単な話だというのはどういう意味かといいますと、与党もそうですが、野党の多数も、何しろ自衛隊が違憲であるということをおっしゃる方はほとんどいなくなっちゃった。それから日米安保体制、これは大事だということになりました。昔の社会党などは、こんなものはよくないからそのうちなくしてしまおう、こう言っておられたけれども、しかし村山総理のときにあっという間に転換されて、私もびっくりしました、一夜か一朝か知りませんが。ですから、やっぱりこれは大事だ、日本の防衛の、安全保障の基軸であると皆さんおっしゃる。国民の生命、財産を守るというのは本来の安全保障目的であって、そのために一番大事なのは日米安保体制だという話ですから、そこのところは大体そろってしまったという感じがするんです。  それで、外で反対と言っておられますけれども、あの方々も、私はどう聞いても、ここまではいいんだけれども、これから先、この周辺事態安全確保法ですかガイドライン法、これが憲法違反の悪法であるからこれはもうぜひ阻止しろとおっしゃるけれども、その手前のところは余りおっしゃらないですね。だから、それだけそろってきたんだろうと思うんです。  さっきの地方自治体の協力の問題で、港湾の問題、随分もめておりましたけれども、これにしても、これから入ってくる米国の軍艦というのは拒否してもいいんだろうな、こういう話ですが、それだったら、今横須賀とかその他でもう既に母港として使っているあたりはどうお考えなのか私にはよくわからないんですが、おっしゃらないところを見ると、まあそこまではしようがないと、こう思っていらっしゃるんでしょうかね。  何にしても、日米は大事だというところから議論は全部始まっている。みんながそう思っているんだったら、今まで六〇年安保は非常に騒ぎがありました、七〇年安保も少し騒ぐかなと思ったら、まあまあ大したことはなかったということで、日米安保関係は非常に成功してきたという話になっている。とにかくこの間、そういう安全保障に関して一発のライフルの音も聞こえなかったという中で我々は経済の繁栄を追求することができたということですから、よかったよかったという話だろうと思うんです。  さてそこで、アメリカのいろいろな理由もあるし、余り世の中が変わったからうんと変わったことをしなきゃいかぬという話じゃないと思うんですが、とにかくもう少し、何か起こったときには手伝ってもらえないか、あるいはこっちも六〇年安保のころのような貧乏でもないから、やはりもう第一義的には日本の安全だけれども、それを守るためにも、私にもよくわかりませんが、いわゆる周辺事態というところで手伝おうかということで今度の話が出てきた。ちょっと外へ出かかった途端に話がやたらに複雑になってきたというのが私の感じであります。  いろいろわからないところがあるんですが、例えば後方地域というのがありますね、これは本当にわからない。お決めになるわけですな、防衛庁長官がここだとお決めになるわけでしょう。そうすると、しかしこれは固定したものじゃないので、何かいろいろなことが起こると、ここはまずいよといったら、これはすぐに変更したり、あるいは中にいるのを少し下げたり、あるいは横へやったりしなきゃいかぬ。これは大変なことだろうと思うんです。  サッカーというスポーツがあって、あれで真ん中にいる審判は中で走り回っていますが、横でオフサイドを監視する人は旗を持って前後に走り回っていますでしょう。ああいうことを、防衛庁長官はああいう仕事に忙殺されるんじゃないかという気がするんです。  だってこの間、非常に珍しい話ですが、Jリーグのある試合で、こちら側のゴールキーパーがけった球が向こうのゴールにじかに入っちゃったという話があるのを御存じですか。あのボールですらそういうことが起こるので、ミサイルとか今のマッハ幾つの飛行機なんというのがあるんですから、これは一体どういうふうな、神わざを要することじゃないかというあたりは私は本当にわからない。  それから、例えばACSAですが、今ちょっと前に質問に対して答えられましたが、ACSAの最初の協定ができたときに、三つの目的のときにやるという話がありました。これは共同訓練のときとPKOと、それから人道的な活動のとき、このときには融通協定をやりましょうと。あのとき池田外務大臣でしたが、私はこれをどう読んでみても、日本が攻められて有事になったときにはアメリカ軍も共同対処で戦闘状態になるので、戦闘状態になったらこれはおしまいと、こういう話になるようにしか見えないけれどもどうなんだと言ったら、そのとおりですとおっしゃった。これはまた先に研究しなきゃいけない。  ですから、たまたま共同訓練で、古い話で今大砲なんというのは余り使わないんでしょうが、横に兵器を並べて訓練して撃っていますね。なるべく同じ弾が使えるようにというようなことで、武器の種類をそろえて演習をしている。そのときに有事になったということになったら、そこでぱったりとこの融通し合いというのはとめなきゃいけないという話になっちゃう。これでいいんでしょうかと言ったら、いや、これはまだこれから研究してやらなきゃいかぬ、こういうお話で、そのお話はまだ続いているようです。  今度、この外側の話になったら、これもやっぱりやらなきゃいけないというので、この三つの目的プラス周辺事態のときにはできると書いてあるんですね。だけれども、さっきのお話でもそのとおりなんですが、日本有事になったときには一切物品、サービスの貸し借りをやっちゃいけないという話になってしまう。これは随分不思議な話だと思うんです。  それから、武器使用の問題もあります。どういうときに使っていいか。最初は、絶対安全だと言うんだから武器なんて要らないはずだけれども、やはり不測の事態というものがあるということで、武器は置いておいて合理的だと認められたときは使っていいという話になる。その判断をするのは一体だれかという話になると、これも大変あいまいなんだろうと思うんです。  さっきの後方地域というのをお決めになるというのも、防衛庁長官お一人でお決めになるわけでもないでしょうけれども、みんなに相談してどうしようどうしようと言っている間にそれこそボールが回ってきてゴールに入っちゃうというような話になると困るからやらなきゃいかぬ。非常に超法規に近いんです、こんなことをやるのは。一応、そのときにそのときにみんな判断しろよという話になっちゃう。  地方自治体の協力というお話も、さっきの話、随分ありましたが、これも断ってもいいよということになっている。それは、私はさっき自治大臣がおっしゃったように、常識からいってやっぱりそんなことだろうと思うんだけれども、しかし理屈を、ここを本当にぎりぎりやっていくとうまくいかないということは相当あり得るような気がするんですね。これを一体どうやってみんなやってもらうようにするかというのは、これはまたいろんな手はあるんだろうなと。そんなことを言っちゃいけないかもしれないけれども、これ断ると来年の予算考えるぞというような話とか、いろいろ裁量行政みたいな話になってしまうおそれもあると。  随分わからない話ばかり並べましたが、どうしてこんなに難しくなってしまったのか、その御感想をまず伺いたいんです。  つまり、本当に御苦労だと思うんですが、もう何週間もこういうところや衆議院で座りづめで本当に一生懸命御説明をなさっておられるけれども、これでみんなわかったという顔をしないでしょう。どうしてこれは難しくなっちゃうのか、その理由は何であるかについて、総理あるいは外務大臣防衛庁長官の御感想、どなたでも結構ですし、皆さんでなくていいですから、お一人でも二人でもお答えを願いたいと思います。
  350. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 椎名委員御指摘のように、このガイドライン関連法につきまして、国民の皆さんが、正直申し上げて、俗語で言えばすとんと落ちるというそういう気持ちを持てないという感じがしておられることについては、我々の説明に十分な努力が足らなかったという点もあろうかと思います。  同時に、日本の安全保障をめぐる法体系につきまして、やはり戦後の長い経過の中で法的な体系というものが相前後して成立してきたというような経緯もあるんではないかという気がいたしておりまして、この国会を通じてでもいわゆる有事法制についての要請も強く出てきておりますが、先ほど委員が御指摘の点の、例えば日本有事のときにおける自衛隊米軍との共同対処に対する安保条約五条の問題についての対応についての法的な問題についてもいろいろと議論のあるところでございます。そういう意味で、安保条約に伴う法的な措置について、だんだんに国会の御理解を得ながら処置してまいりましたけれども、まだ国民的な合意がなし得ていないというような点につきましての関連性について、きちんとした体系がなかなか整っておらないという意味で、椎名委員をして御理解がいただけない状況になっているような点もあるんじゃないかというふうに思っています。  ただ、こうしたことは、政府としては一つ一つ事態に対処していくために、今般のこのガイドラインをめぐる三法案につきましては、米軍との関係につきまして一つの大きなステップであるし、このことが両国の安全保障をめぐる合意において日本の平和と安定のためにも極めて重要なことであり、この法律が施行されることによりまして、より安定した形を現実の問題として招来することができれば、その責任を果たし得る環境はますます強固になる、こういう考え方で現在対処しておる、こう御理解いただければありがたいと思います。
  351. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ありがとうございました。  説明不足だけだと思っておられると困るなと思ったんですが、その後ろのことに十分に御認識があるというのはまあまあよかったなと、こういう気がするんですけれども。  それで、一つ一つとおっしゃるけれども、やっぱり全体の設計図みたいなのがないと、一つ窓をつけたよとか、あそこをぶち抜いてドアをつけたとかいうのを一つ一つやっていると、本当に見えないという気がするんですね。  私は思うんですが、とにかく四十年ばかり日米安保でやってきて非常にうまくいったという話であります。それでよかったと。先ほどどなたかのお話にもありましたが、日本の安全というのは自衛隊があって日米があって大丈夫だと思っていたけれどもというのが、どうもおかしいなという感じになってきた。  これは、日米安保というのは非常にうまくいったと。うまくいったというのは、何も起こらなかったし、防大を出られて、全部勤め上げて定年で退役する方もかすり傷一つ負わずに卒業されたというようなことは、これはいいことなんですね。本当に軍事力が使われるような事態というのは余りいいことじゃない。  ですから、いいことなんですが、ただ、私はよく言うことなんですが、火事が出たときにスプリンクラーというのがあります。火が出て温度が上がると水がだっと天井から出てくる。この部屋には見当たらないな、大丈夫かと。スプリンクラーの蛇口みたいなものだったと思うんですね、日米安保体制というのは。天井を見るとちゃんとついている。だから、もう大丈夫だと思っていたし、また火事が出なかったから何もテストしないで済んだ。しかし、どうもこれはおかしいんじゃないかというのに最近気がついて、そしてあのクリントン・橋本以来、一回屋根裏へ上がってちょっと検査しようじゃないかと。行ってみたら水道管がつながっていなかったという話だと思うんだな、これは。そうなりますと、一体水道はどこまで来ているんだという話で、これがいわばガイドライン、国内法の方はこっちの責任なんで、また別のパイプをつながなきゃいけないんでしょうが、とにかくこっちまでやろうと。  しかし、いろんなことがあってこの部屋まで来ないんですね、私の感じでは。どうも隣の部屋でとまっちゃったという感じがある。そうすると、この部屋で火が出たときには、やっぱりここらあたりのものは燃えてしまうというあたりにとどまっているんじゃないかということをおととしですか、ガイドラインをやったときに私は申し上げた。  ほかの例で言えば、本当は福岡まで行っておかないといけないんだけれども、切符を買う金がなくて岡山だ。ここらで一休みして、少しアルバイトでもやって稼いで、それから最後の福岡に行こうという話のところじゃないですかな。お金がなければしようがないからしばらく岡山にいるのもいいけれども、いや、ここもなかなかいいところだなんといって住民登録してそこに住みついちゃったりしないでくださいよということを申し上げたことがあります。  よく考えてみると、私はこういうことだと思うんです。やっぱり憲法なんですね、どう考えても。日本国憲法はあります。しかし、国には固有の自衛権がある。これは憲法と関係がないわけです。個別の何の、集団的とかなんとかありますが、何にしても自衛権はあるという話は憲法の外側のところにあるわけです。日本の憲法をつくるときは、大変に理想に燃えて、とにかく何もなくしていこうじゃないかということでやりましたので、それなりの体系が全部できちゃった。しかし、一方では自衛権がある。個別自衛権ならば五条までは行けるはずだった。六条になってくるとこれはまたほかの手当てが必要かなという話になってくると、その外にあるものを非常にきれいにつくり上げてしまった中のことでやろうと思うと、わかりにくさというのが出てきちゃうんじゃないかというのが原因じゃないかと私は思うんです。  我が日本国憲法がよそと変わっているのは、よその憲法は、いろんなことが書いてあるけれども、大体固有の天与の自衛権というのを中に書き込んであるんです。それを組み入れたような憲法ができているからそこのところは苦労しない。だけれども、うちのはそれはそれとしてあるというので、個別自衛権までは何となしにこっちとなじむけれども、いわゆる集団的自衛権ということになるときれいにでき上がった平和憲法となじまないということだから、そこのところは、ないというよりもできないということにしておかなきゃしようがないなというところでみんな苦労しちゃっている。それに合わせたようなことをやろうと思うと、どうしてもこういうわかりにくい後方地域とかいうようなものをつくらなきゃいけないし、それから地方自治体に頼むときも、とにかく日本の憲法というのは何もしないでいいと書いてあるんですから、そんな事態は予想してないわけですから、そこで説明しようと思うとそれは随分無理が来るのは無理ない。  ですから、総理、これはやっぱり設計図が必要なんですね。この次にあの窓をつけようとかあそこのドアをあけようとかいう話じゃないんです。それをぜひやっていただかないともう話にならない。  自分ばかりしゃべって申しわけありませんが、余り聞くこともないのでしゃべらせていただきますけれども、とにかく安全保障というのをやろうと思ったら幾つかしかチョイスはないと思うんです。  選択肢というのは、一つは、全く中立で独立自尊で行くというようなものがある。これは大変なので、非武装中立というのは理想としてはいいけれども難しいと思うんです。ですから、中立でいこうと思ったら相当重武装をしなきゃいかぬ。中立国の義務というのはどこにもフェーバーを与えないということですから、拒否力がないと中立というのはできないんですね。だから、今よりももっともっと五倍ぐらいは防衛費を使わないと、日本のような海岸線の長いところなんというのは殊にそうですが、やらなきゃいけない。  それから国連ですが、国連はまだだめだというのは、日本の防衛の基本方針ですか、昔できたのに書いてありますが、第一義的には日本の安全は国連に任せる、しかし当分だめだから、その間は日米でやるといって現実にも日米でずっと来てしまっているというわけですから、これは当てにならない。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  大体、いい悪いは別にして、国連というところはそれぞれの国益のあるものを背負った国が集まって、みんながそうだねと、こう言わない限り何も決まらないし、決めてもアメリカが動かないと何も動かないという話になっているので、これもだめということになると、あとはどこかと同盟関係で助け合う以外にないということだと思うんです。  たまたま今はアメリカとやっている。しかし、アメリカがなるべくそうしないようにみんなで努力しなきゃいけないんですが、嫌になっちゃったと、もうこれ。何かいろいろとごたごた文句を言って、理屈を言って何もやってくれない、やめたともし言ったときに、仮に万一、国際情勢というのは何が起こるかわかりませんが、そのときにそれではどこかと組もうかといって探しますでしょう。この国と組もうというのはいないですよ。今の法体系で自分のところに入ってきてもきちっと守る手だてを持っていない、何か領域の外に出た途端に、私はできません、あれもできないこれもできない。だれがこの国と同盟を結ぼうと思うか。何も普通の国なんというものにならなくてもいいんです。最低どこかの国と組もうかといったときに、それじゃやろうかなと思わせるぐらいのことはやっておかなきゃいけないというのが私は設計図の最低条件だと思うんです。  アメリカもだんだんみんな忘れてきたけれども、憲法を押しつけちゃってしまったなと思っているのもいるからこれでまだ我慢しているんで、もう少したったらわかりませんよ、これ。  ですから、この法案法案で結構ですが、余り結構だと思わないけれども、前よりはいいという意味では結構だと思うんです。しかし、さっき申しましたように、本当は福岡までもう行っておかなきゃいけないというのを岡山で住民登録をやって、まあしばらくはここで暮らすかというような気持ちに政府はぜひならないでいただきたい。これだけをぜひお願いしたいと思うんですが、あと一分と書いてありますので、どなたか御感想があればお願いをします。
  352. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいまの椎名委員お話、緊張してお聞きをいたしておりました。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  御父君のけいがいにも接した私といたしまして、ここ何十年間の日本の安保論争といいますか、こういうことにいささかかかわり合いも持ってきたわけでございまして、そういう意味で今のお話もいろいろと勉強させられる点もあったと思っておりますが、いずれにしても、ぜひ、今回政府で提案し、かつ衆議院で修正されました法案につきまして御賛同いただき、これが実行のできるようによろしくお願いを申し上げる次第でございます。
  353. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ありがとうございました。(拍手)
  354. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 防衛庁長官にいま一つ確認したいことがございます。例の台湾海峡でのミサイル発射事件に関して周辺事態の概念をどうとらえているかということであります。  三党の共同修正案によれば、周辺事態とは「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」と例示されております。そこで、十一日の本委員会では具体的に、単に漁ができなくなったという影響の発生ではそれに該当しないというふうな答弁をなされております。  そこで、では漁船が被害に遭った場合はどうなるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  355. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先般も申し上げたところでありますが、断片的にお話をしておりますと誤解を受けるおそれがありますので、少し申し上げたいと思います。  御案内のとおり、周辺事態とは、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態である。ある事態我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるか否かは、我が国の平和及び安全に対し軍事的な観点を初めとする種々の観点から見て重要な影響を及ぼすか否かをその時点の状況を総合的に見た上で判断することとなります。  したがって、御指摘のように、まずこの間のお尋ねは、中国ミサイル発射事件で与那国島付近において漁民が被害を受けたというお話でありましたから、そういう事態について周辺事態に該当するか否かについては、その時点の状況を総合的に見た上で判断すべきものであり、一概に申し上げることはできないが、一般論として言えば、単に漁ができないといった経済的な影響が発生していることのみをもって、軍事的な観点を含む意味我が国の平和と安全に重要な影響が生じていると判断することは困難なものと考えている、こういうふうに先般申し上げたのであります。  このたびまた委員の御質問で、今度は漁船が被害をこうむったらどうかということでありますが、この事態中国ミサイル発射でありまして、我が国武力攻撃をする意図でやっているわけではないと一般的には考えられます。だから、漁船が被害を受けたことのみをもって本当にこれが我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であるかということの判断になるわけでありまして、私どもは、漁船が被害を受けたことのみをもって直ちに周辺事態だというふうに申し上げることは難しいのじゃないかというふうに考えております。  なお、御指摘の事態我が国に対する組織的、計画的な武力攻撃に該当するかしないかという問題もありますけれども、そういう場合は我が国の有事にはならないということは申すまでもないと考えております。
  356. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今の答弁からいたしますと、漁民に犠牲者が出た場合においても同様な考え方でございますか。
  357. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) そのように考えます。そういう場合の救済措置はまた別途検討しなきゃいかぬと思いますが、それをもって周辺事態と直ちに断定するわけにはいかぬと思います。
  358. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 国家は通常、領土、国民及び統治権の三要素に着目して定義される。とすれば、公海上の我が国の漁船や漁民は我が国という文言に該当するというふうに思いますけれども、その御見解を承りたいと思います。
  359. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 今、防衛庁長官から御説明させていただきました関係について若干補足させていただきますと、いずれにいたしましても、私ども、その事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えるかどうかというのは、その時点でのもろもろの状況を踏まえて判断しなきゃならない問題だろうと思います。そういう意味で、一つの設例だけでそれの該当、該当しないということを申し上げるのはこれは難しい問題だろう、こういうことをまず御理解いただきたいと思います。  ですから、まさに先生御設例のような例が、その時点のいろんな国際情勢等々も踏まえまして我が国の平和と安全に重要な影響があるのかどうか、こういうことを判断せざるを得ない、こういうふうに考える次第でございます。  それから、もう一つの次の御設例で、漁船に対する被害というのをこの法律との関係でどう考えるかということでございますが、いずれにしましても、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるかどうかというところがまさにその基準でございます。そういう基準に立って判断をさせていただくということになろうかと思います。
  360. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 それでは確認をいたしますけれども、物的被害や人的犠牲が発生した場合でも、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態にはならないのかどうか、この点についてお伺いします。
  361. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、そういう状況、それからそういう影響を踏まえまして、軍事的な観点を初めとする種々の観点から我が国の平和と安全に重要な影響があるかどうかということを判断させていただくということでございます。そのもの自体が、個別のものが入っているとか入っていないとかというよりも、そういう事態も含めて我が国の平和と安全に重要な影響が与えられているかどうか、こういうふうに判断することになります。
  362. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 運輸大臣にお伺いいたします。  この法律が成立いたしますと、我が国の領土、領海の近隣地区は現在より高度な警戒態勢が必要であると思われますけれども、海上保安庁は警備体制の強化、そういったもろもろのことについてどういうふうにお考えですか。
  363. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 前のときにも少し申し上げましたけれども、今、我が国周辺で不法行為、不審行動をした外国船舶は、平成六年で二百五十八隻、九年で八百十六隻、十年では千九百九十二隻と、大変多くなってきております。そういった意味で、海上保安庁の警備体制というものを充実していかなければならないということは非常に強く感じているところでございます。  密航者また密輸もふえております。そこへ加えて先日の工作船の問題。したがいまして、今、内閣官房の方でおまとめをいただいておりますけれども、高速艇、また捕捉機能の強化、こういった問題について予算も含めて我々は今論議を始めているところでございます。そして、この法案というものを直接の理由にはいたしませんけれども我が国の海上警備というものはしっかりしていかなきゃならない、こういう立場でおります。
  364. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 それでは、沖縄自衛隊問題についてちょっとお伺いします。  この法律が成立をいたしますと、沖縄自衛隊の役割やその配備等について変更があるのかどうか、それをお伺いします。
  365. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 現在、沖縄におきましては、私ども自衛隊といたしまして南西航空混成団等を配備しているところでございますけれども、今回のこの法案の関係で、それを理由にと申しましょうか、それで配置を変えるとかそういうことは考えておりません。  といいますのが、今回の措置そのものが、要するに現有の自衛隊の能力なりそういったものを活用するといいましょうか、そういうことで我が国の平和と安全の確保に資していこうという考え方でございますので、このために何か新たな部隊を配置するとかそういうことは考えておりません。
  366. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 現在の沖縄自衛隊の問題なんですけれども、これからの役割、そして人員配置とその状況というものは今どうなっておりますか。
  367. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 自衛隊の全体の体制でございますけれども一つはこれはもう先生御高承のとおりでございますが、日本全域にわたりまして常時警戒態勢をしくというような形で対応できるように必要な部隊を配備し、また陸上部隊でございますと、それぞれの地域特性も考えながらどこからの侵攻に対しましても効率的に対応できるように平時配備をしておく、こういうような考え方で配備しているわけでございます。  それは、要はそういう体制をとることにより、また日米安保体制と相まつことにより侵略を未然に防ぎ、また一たん事がありましたときに即対応できるように、こういう考え方で配置しているところでございます。  それで、現在沖縄におきます体制でございますけれども、一番大きな中心の部隊になっておりますものは空の南西航空混成団でございまして、人員で申しますと、これはことしの三月末でございますが、約二千九百人と私は承知しております。陸につきましては、第一混成団で、これは約千八百人ということでございます。海につきましては、これは第五航空群というのが約九百四十名でございまして、そのほかにいろいろ救難隊でございますとかあるいは病院でございますとかいろいろな部隊がございますが、そういったものをトータルいたしますと、陸海空全体合計いたしますと六千六百人の体制になっている、こういう状況にございます。
  368. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 そこで、その六千六百人の自衛隊沖縄に今現に駐留しているわけでありますけれども、この自衛隊の役割分担そして連絡調整、そういったもろもろの状況についてちょっと説明を願いたいと思うんです。役割分担そして連絡調整、そのほかのもろもろの米軍との関係はどのように対応していくのか、その辺について御説明願いたいと思います。
  369. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 今、先生のお尋ねが私ども自衛隊米軍との関係ということでございますれば、私ども自衛隊は先ほど申しましたようなそういう考え方で配備しているわけでございます。米軍はまた日米安保条約に基づきましてその目的達成のために今なお配備しているわけでございますが、例えば先生のおっしゃるのが周辺事態安全確保法に基づいてどういうことが行われるのかというお尋ねでございますれば、それはやはり、せんだっても御答弁させていただきましたけれども、具体的にどういう事態が生じるのか、それによってどういう地域におきまして所要が生ずるのかということになりますので、あらかじめ沖縄におきまして米軍に対してこういう支援が起こるんだということは言えないと思います。  ただ、いずれにいたしましても、今回の周辺事態安全確保法案で規定されておりますような武力行使には当たらない整備であるとか補給であるとかが仮に行われるということになりましても、今回の法案で規定されている、そういうものでございますけれども、具体的にどういうものかというのはその時点になりませんと申し上げられませんので、その辺は御理解いただきたいと思います。
  370. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 時間が参りました。
  371. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 もう時間ですから終わります。(拍手)
  372. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 本日の質疑はこの程度といたします。  次回は五月十七日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会