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1999-07-27 第145回国会 参議院 地方行政・警察委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         小山 峰男君     理 事                 釜本 邦茂君                 松村 龍二君                 輿石  東君                 山下八洲夫君                 富樫 練三君     委 員                 井上 吉夫君                 岩瀬 良三君                 鎌田 要人君                 木村  仁君                 久世 公堯君                 谷川 秀善君                 保坂 三蔵君                 高嶋 良充君                 藤井 俊男君                 魚住裕一郎君                 白浜 一良君                 八田ひろ子君                 照屋 寛徳君                 高橋 令則君                 松岡滿壽男君    衆議院議員        修正案提出者   宮路 和明君        修正案提出者   桝屋 敬悟君        修正案提出者   鰐淵 俊之君    国務大臣        自治大臣     野田  毅君    政府委員        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        自治大臣官房長  嶋津  昭君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君    事務局側        常任委員会専門        員        入内島 修君    参考人        中央大学法学部        教授       堀部 政男君        筑波大学社会科        学系教授     内野 正幸君        東京大学国際・        産学共同研究セ        ンター教授    安田  浩君        情報処理振興事        業協会セキュリ        ティセンター所        長        前川  徹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 〇住民基本台帳法の一部を改正する法律案(第百  四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議  院送付)     ─────────────
  2. 小山峰男

    委員長小山峰男君) ただいまから地方行政警察委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  住民基本台帳法の一部を改正する法律案の審査のため、本日午後一時から、中央大学法学部教授堀部政男君、筑波大学社会科学系教授内野正幸君、東京大学国際産学共同研究センター教授安田浩君、情報処理振興事業協会セキュリティセンター所長前川徹君、以上四名を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 富樫練三

    富樫練三君 おはようございます。  住民基本台帳法の一部改正について質問をさせていただきたいと思います。  私は、現在の高度情報化社会と言われている中で、国民プライバシーを十分守る体制をつくった上で、行政事務能率的に進めること、住民サービスを拡充させるためにコンピューターによる事務処理を進めることは必要であるというふうに考えております。現に、私自身もパソコンを使い、インターネットを利用する、そういう一人として能率化推進には異議はないものであります。  しかしながら、今回出されております法改正、これには幾つかの非常に重大な問題が含まれているというふうに考えております。  一つは、コンピューター処理を行う場合の個人情報につけられるナンバー番号を従来の限定番号制から共通番号制に移行させる、こういう問題があります。この共通番号制は、世界の流れに逆行するもの、そして日弁連からは憲法違反のおそれさえある、こういうふうに指摘されているものであります。  二つ目の問題は、四情報プラス住民票コード、この五つの情報でありますけれども、まさにプライバシーそのものであります。この取り扱いの原則、これは本人の同意と本人がコントロールする権利、これが保障されなければならないと思います。ここに基本的人権の保障があるわけでありますけれども、今回の法案についてはこの点が極めてあいまいになっている、こういう問題点があります。  三つ目は、ICカードそのものが持っている問題点であります。  四つ目には、衆議院で一部修正が加えられましたけれども、包括的プライバシー保護法がないもとでの今回の法改正、これは順序が逆ではないか、こういう問題もあります。  第五に、今回の法改正は全体として国民的な合意が得られていない、こういう根本問題があると思います。  こういう基本問題のほかにも、地方自治体では既に、外部との接続は行わない、こういうふうに条例で決めている問題との整合性のこと、あるいは、実際に国民がどれだけ便利になり、そのための費用との関係国民が納得できるものなのか、こういう重要な問題も含まれているわけであります。  今度の法案は、国民一人一人のプライバシー基本的人権にかかわる問題であって、一度このネットワークシステムが動き始めて個人情報が流れ始めますと簡単にはやり直しがきかない、そういうシステムであります。したがって、間違いは許されないし、不十分さも許されない重大な問題であると思っております。  したがって、考えられるすべての欠陥や不安をなくして全国民が安心できる内容にすることがこの委員会仕事であり、責任でもあるというふうに考えます。そういう点で、この委員会で十分な審議提案者にもそして委員長にもぜひお願いをしたい、こういうふうに考えております。  さて、そこで質問でありますけれども、まず、最近NHKがこの住民基本台帳法改正に関する世論調査を行いましたけれども、その結果どういうことが出てきたのか、その結果について知っていたならばお知らせいただきたいと思います。
  6. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  NHKが行いました世論調査は、七月九日から三日間、全国の二十歳以上の男女千八百人を対象電話で行われた調査であるようでございます。対象者の五九・九%に当たります一千七十九人から回答を得たものでございます。  それによりますと、今回の住民基本台帳法改正案について、関心があると答えた人は五四%、関心はないと答えた人は三六%であったものと承知をいたしております。  さらに、この制度が導入されると事務処理効率化され引っ越しの際の手続などが便利になる一方で、プライバシーが侵害されるおそれがあるという意見があることを踏まえて法案への賛否を尋ねています。その結果、賛成が二三%、反対が五一%であったと、このように承知をいたしております。
  7. 富樫練三

    富樫練三君 関心があるという人が半分以上、そしてこの法案には反対だという人が約半分をちょっと超えるところ、こういう状況だと思うんですけれども、この世論調査の結果は衆議院法案可決後の一番最新のものというふうに思うわけです。  大臣に伺いますけれども、この調査結果について率直にどのような感想をお持ちでしょうか。
  8. 野田毅

    国務大臣野田毅君) このアンケート、同時に行われました調査で、組織犯罪対策関連法案について同じように尋ねられておるわけです。そのときに、関心があるが六六、関心がないが二四%である。そこで、この組織犯罪対策関連法案について、麻薬やけん銃の密売などの犯罪電話などの傍受を認めないと取り締まりが難しいという意見がある一方で、プライバシーが侵害されるおそれがあるという意見があることを踏まえて賛否を尋ねたところ、賛成が四一%で反対が二九%であるということなんですね。それから、住民基本台帳については先ほどのお話。  ただ、私はここで申し上げたいのは、同じようにこの法案プライバシーが侵害されるおそれがあるということを前提にしてアンケートで問うているということなんです。私どもはこの住民基本台帳法案は、そういう御議論はありますが、少なくともその内容においては組織犯罪関連、いわゆる通信傍受法案とは違うんだということだけは、システム的、制度的、運用面においてもはっきりしている話であって、通信傍受はまさにそれは裁判所の令状をもってきちんとした枠の中でやることではあるんですが、内容そのものが質的に違うということ、ここを同じような形でプライバシーの侵害のおそれがあるがということを付して賛否を問うということになれば、それはやっぱりその種の慎重論が出てくるというのは私はあり得ることだと、そう考えております。  したがって、率直に言って、この種の問いかけというのは果たして質問として適切であったかどうかという疑問を私は持っております。
  9. 富樫練三

    富樫練三君 大臣答弁では、質問の仕方がよくない、こういうことのようであります。ただ、いずれにしましても、今度の住民基本台帳法について国民的な合意はいまだに得られていないというのは実態だろうというふうに思うんです。  そこで、この住民基本台帳中身でありますけれども、まず、住民票コード番号をつけるという問題について伺いたいと思います。  現在、既に基礎年金名簿には個人番号がついておりますし、納税者にも番号はついております。免許証には十二けたの番号がついておりますし、私自身でもさまざまな番号をあれこれの中でつけられているわけであります。たくさん番号がありますけれども、それぞれの番号というのは相互関連がない、こういう状況であります。したがって、例えば私の免許証ナンバー検索を行ったとしても、免許証に関する私の個人情報は出てくるけれども、それ以外の情報は出てこない、こういう仕組みになっているわけであります。いわゆる限定番号と呼ばれているものであります。  ところが、今度のネットワークシステムでいうと、住民票コードが各省庁に流される、各省庁はみずから今まで保有していました個人情報とこの住民票コードを結合する、少なくとも当面は九十二事務と結合することになります。各省庁個人情報、それは住民票コードという統一された番号がつくことになりますね、実際には。九十二事務個人情報住民票コードが結びつく、こういう形になることになりますね。その点はどうですか、確認をしておきたいんですが。
  10. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  住民票コード法律の定める行政機関事務処理のために提供いたしますが、それぞれの国の機関等でどのような形で実際に活用するかはそれぞれ御検討いただけるものと思います。  例えば、そのあり方について、行政分野ごとに独自の番号制度を設けるということは、行政簡素効率化観点から適当でないという考え方もあります。また一方で、個人情報保護観点から、住民票コードがあらゆる行政分野に共通して利用されることは問題である、こういう意見もありますので、この各行政分野における住民票コード活用についてはそういったいろいろの考え方、また住民基本台帳趣旨などを十分勘案して慎重に判断すべきものでありまして、今回の法案においては、提供いたします国の各行政機関等においてそのまま住民票コードを使うということを前提としているものではありません。
  11. 富樫練三

    富樫練三君 そのまま使わない場合もあるけれども、しかし今度の法律によって使うことが可能になる、こういう状況ですよね。  それで、小渕総理が六月二十八日の参議院本会議で、住民票コードは、氏名住所等による本人確認に比べて、コードによる照合は明確であること、迅速な検索が可能であること、重複しないコードにより確実に本人確認ができることなどから、このシステムにおいて全国共通本人確認を行うに当たって不可欠なものと考えた、こういうふうに答弁しております。すなわち、この住民票コード特定個人確定するという目的が速くできる、ここに一つの大きな魅力があるというか、うまみがあるというか、こういうことだと思うんです。  住所氏名生年月日性別、実際にはこの四項目があれば住民票コードがなくても特定個人確定することができますね、ナンバーがなくてもその四項目があれば。この点はどうですか。
  12. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  今回のこのシステムにおいても、本人確認のための情報としては、住所氏名生年月日性別、これにより本人確定ができる、こういう考え方でございます。
  13. 富樫練三

    富樫練三君 ということは、ナンバーがなくても確定はできる、ここを確認したいんですけれども、どうですか。
  14. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  住民票コード利用しないで、例えば氏名住所などの文字情報のみによって本人確認を行うということも可能でありますが、その場合には事務処理迅速性に欠けることに加えまして、総理からもお話がございましたように、例えば名前ですと外字が多数存在しましてその識別が非常に困難である。また、住所につきましては、同様に外字の問題もありますが、そのほかに番地等表記、何丁目何番地と表記する方もいれば、何の何という表記もありますので、コンピューターは判別できません。そういった違い。それからマンション名などの記載の有無、こういったことでその照合が非常に困難である。また、結婚して姓が変わりまして同居する親族などと住所名前が一緒の場合もありますので、そういったケースでは同一人物かどうか確認できないケースがある。  そういうことで、正確性の問題もございまして具体的にはなかなか難しい面がある、こういうことでございます。
  15. 富樫練三

    富樫練三君 そうすると、ナンバーがなくても確認はできるんだけれども面倒だ、能率が上がらない、こういうところに問題がある、したがってナンバーをつけたい、こういうことのようであります。  もう一つ伺いますけれども、今度のネットワークシステムによって全国どこでも住民票写しがとれる、こういうメリットが言われております。この全国どこでも住民票写しがとれるというのは、全国センターがなくても技術的に可能ですね。各都道府県単位でのセンターがそれぞれ横に直結をしているということでありますから、例えば北海道から沖縄であっても住民票はとれる、全国センターがなくても大丈夫、こういうことは言えますか。どうですか。
  16. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  今回のシステムは、市町村の区域を越えて全国の形で本人確認ができる、こういうシステムを構築するものでございます。  それで、住民票写し広域交付に当たりましては、全国センター指定情報処理機関、そこに県の権限を委任するということは予定されておりませんから、そういう意味では指定情報処理機関を介さなくても事務処理を行うことは可能であります。しかし、住民票写し広域交付に必要な情報通信につきましてはこのネットワークを通じて行われるものでございますので、そういう意味では全国的なネットワークが必要である。その場合に、都道府県センターだけでできるか全国センターでできるかということにつきましては、正確性観点あるいは迅速性観点効率性観点から全国センターがあった方が非常に適切である、こういうことでネットワークを考えております。
  17. 富樫練三

    富樫練三君 今度の制度では、各都道府県センター全国センター事務をすべて委任するということは義務づけられていません。したがって、都道府県センター全国センター事務を委任しない場合にはそこがつながらないわけでありますから、そういう点では全国センターがなくても住民票写しをとるということは市町村が変わってもこれは全国的に可能と、ここは確認できますね。
  18. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) このシステムにおきましては、全国センター指定情報処理機関にそれぞれの都道府県が必要な事務委託することができるという考え方をとっております。システム自体考え方が、広域的な団体である都道府県が主体となって市町村連携をしてこのネットワークを組む、そのベースは現在の既存の基本台帳制度の上に付加するものだ、こういう考え方からそういうことをとっております。そして、この全国センターで行う事務というものは、効率性観点あるいは正確性観点からそれにふさわしい事務を、各それぞれの都道府県で処理するよりも全国一本の一カ所の機関において処理することが正確性においてもまた効率性においても適切な事務、それを共同で処理してもらう、いわばそういう作業を都道府県にかわって代行というんですか、下請という議論もありましたけれども、そういう機関として全国センターというものを考えているわけでございます。  お話しのように、機能的には委託しない都道府県がある場合には都道府県センター全国センターと、そういう形で連携をとって処理することが可能でございますが、今お話し申し上げました趣旨を踏まえれば、すべての都道府県全国センター委託するという運営方法が望ましい、このように考えております。
  19. 富樫練三

    富樫練三君 ということは、全国センター委託をしなくても制度上は可能だけれども、なるべく委託をしてもらって全国一本でやりたい、こういう意向のようであります。  そこで伺うわけですけれども、大臣は、この間衆議院委員会で、この制度ネットワークシステムがいろいろな分野にその気になれば転用し得る可能性を秘めているということは、私はあえて否定はいたしませんというふうにおっしゃいました。さらに、そういう意味で、物事をスタートさせてから後においても、それを他のところに広げる可能性があるかもしれないが、それについては極めて十分注意をした上で慎重の上にも慎重に対応していかなければならぬということは当然のことだと思いますというふうに答弁をしております。  そこで、全国センターを通じて十六省庁九十二事務と言われているわけでありますけれども、将来、これは法律で定めることを前提として、政府が考えております利用範囲拡大可能性、これはどういうふうに考えているのかという問題でありますけれども、既に住民記録システムネットワーク構築等に関する研究会報告書というのが平成八年三月に出されております。これは、公表されている中身でありますけれども、そういう中では考えられるもの、今後どういうところに拡大が可能なのか。もちろん法律が決まってからの話でありますけれども、決めるかどうかは国会仕事でありますけれども、政府としてはどういうところに拡大が可能であるというふうに考えているのか、この研究会報告書ではどうなっているのか、ここのところをちょっとお知らせいただきたいのですが。
  20. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  まず、現在の法律内容をちょっと御説明させていただきたいと思いますが、本人確認情報利用事務につきましては、研究会報告等も踏まえながら、各制度を所管する関係省庁十分調整を図った上で法律の別表で規定をいたしております。継続的に行われるような給付行政、または例えば宅建業とか建築士とかいった資格付与にかかわる分野ということで、国民関係の深い行政事務などを掲げることといたしております。  そこで、研究会報告でどのようなことが将来の利用ということで挙げられているかと申し上げますと、行政機関における本人確認事務効率化として、選挙の際の本人確認というものが住民票カード活用すればできるのではないか。また、災害時、緊急時等の本人確認災害時等において自己のコードを申告することやカードを提示することによって簡易迅速な本人確認あるいは早期に安否の確認ができるんじゃないか。また、災害時や急な発病等の際にカードを所持している場合には身元の確認ができる可能性がある。あるいは、ネットワークシステムを通じて援助物資の提供やボランティアの配置などについてより迅速かつきめ細かな対応ができるようになる可能性がある。それから、旅券交付の際の本人申請活用できるのではないか。それから、公共サービスの広域的な利用の際の本人確認利用できるんではないか。また、行政手続における住民票写しの添付の省略ということで、他の行政分野におけるさらなる手続簡素化が可能になるであろう。また、公的年金等受給者に係る現況確認事務省略が可能となるのではないか。それから、納税者番号制度への活用につきましては、政府税制調査会を初め各方面議論を踏まえて、将来的に納税者番号制度が導入されることとなる場合においてはこのシステム活用することが可能となる。  こういうような内容でございます。
  21. 富樫練三

    富樫練三君 そうしますと、例えば今お話がありました選挙のときの本人確認であるとか旅券交付とか、あるいは公的年金納税者番号、こういう点でも活用は可能だということなんです。そうなると、かなり広範な事務住民票コード検索のためのいわゆるインデックスとして使用される可能性としてはあるということです。  そもそも住民票コードナンバーでありますけれども、これは生まれると同時に役所が番号をつける、その番号は決してダブることはない、本人申請で変更は可能であるけれども、その後は死ぬまで同じ番号、こういうことであります。これが広範な事務個人番号として活用されるということになると、例えば当面は十六省庁の九十二事務であっても、法律で定めれば将来は先ほど言ったかなり広範な事務活用することが可能だ、こういうことになるわけなんです。  そこで、これは多目的利用する、この住民票コード、ここのところにナンバーを振る、もちろん先ほどありましたスピードの問題であるとか検索が楽であるという問題とか、そういう問題はありますけれども、同時に各方面事務に多目的活用できる、ここに実はナンバーを振るうまみというものがあるのかなというふうに思うわけでありますけれども、そこの点はいかがでしょうか。
  22. 野田毅

    国務大臣野田毅君) それぞれの行政目的に即してそれをより効率的に簡素に、しかも確実に遂行していこう、そういう中で、その行政サービスを遂行していく中でこういった住民票コードをある種の名寄せの有力な手段として活用するということがよりその効果を高めるという判断があれば、その世界に限定してその目的のために住民票コードをお使いになる、こういう枠組みになっておるわけであって、住民票コードを転用していろんなところに全部展開していくという発想ではないんです。  物事発想というものは、むしろそれぞれの各省庁、国の機関の持っている行政を執行していくサイドから、それをより確実、よりスピーディーに間違いなくやっていこうという、そのことに即してこれを活用するかどうかが判断されていくということだと考えておりますので、ちょっと物事発想が、住民票コードを核にして、いろいろなところに展開していくという発想じゃなくて、それぞれの分野でちゃんとした行政をやっていこうというときに名寄せをより確実、迅速にする上でこれを活用した方が有利であるというなら、その目的に限定したところでそれはお使いをいただくわけであって、そこのところを何かちょっとごっちゃに議論されると話が余計ややこしくなるんじゃないでしょうか。
  23. 富樫練三

    富樫練三君 発想はそういう発想でも構わないと思うんです。それぞれがそれぞれの事務能率的に効率的に迅速に事務処理をするということは結構なことだろうというふうに思います。  ただ同時に、研究会報告書で出されているように、先ほどの選挙とか旅券交付とか、あるいは年金の問題であるとか納税であるとか、こういうところにも法律で定めれば活用は可能である。ですから、それぞれの分野で、例えば年金を担当している分野がこのコード活用すればもっと便利にできるというふうに思えば、そこに限定してそのナンバーを使う、こういうことですね。選挙の方は、その担当する分野がこれを活用すればもっと能率的にいくというふうに思えば、その分野に限定して活用しましょう、こういうわけですね。当面は九十二事務に限定している、将来は年金や納税やあるいは選挙やそういうところにも法律で決めれば活用は可能ですよ、技術的には可能なんだ、こういうわけですね。  そうすると、それを全体総合して考えた場合に、まさにこの住民票コードというのはいろいろなところで、限定しながらであるけれども、かなり多目的活用できる、こういうことになります。  そうしますと、例えばこういうことですね。一度この制度を導入する、システムを一回つくれば後はどこでどういうふうに活用するかは法律で定めればいい。問題なのは、総理答弁しているわけですけれども、参議院の本会議でこういうふうに言っているんです。さまざまな個人情報を一元的に収集、管理することを認めない仕組みとなっておりますと、これは総理がこう答弁しているんです。したがって、国民に付した番号のもとに国があらゆる個人情報を一元的に収集、管理するという国民総背番号制とは異なるものと考えておりますと、こういうふうに答えているんです。確かにそうだと思うんです、それぞれみんな分野別に分かれているわけでありますから。  しかしながら、残された問題というのは、一元的な管理というのはまだやっていないわけですから、法律上もそれはできない。しかしながら、法律を変えれば今度は一元的な管理ができる。そういう準備というか、やろうと思えば、法律を変えればそれが可能なシステムであるということも間違いないと思うんですけれども、どうですか。
  24. 野田毅

    国務大臣野田毅君) その論理を展開するならば、この住民基本台帳ネットワークシステムという問題とは別として、別途その種の一元的な管理をするための法律をつくればそれも論理上は可能なことでありまして、したがってこの法案と一元的に国が管理、収集しようとする可能性があるということとは別問題だと私は認識しております。それを無理やりひっつけるから妙な話が飛び出してくるわけで、基本的にこの法案では、少なくともそういう誤解を与えることのないように一元的に収集、管理することを認めない仕組みに構築してあるわけです。  ですから、今おっしゃるとおり、もし別途一元的に国が収集、管理していこうということを国会でお決めになるなら、別にこの法案改正なんということじゃなくて、この法案がなくたって、それぞれの行政分野においてはそれぞれのデータベースをつくって、それぞれの必要な行政分野におけるきちんとした管理をされているわけですから、それをどこかで何らかで集約すればそれはできるわけでしょうから、ですからこの問題と結合させるというのはちょっと無理があるんじゃないかというふうに私は考えております。
  25. 富樫練三

    富樫練三君 住民基本台帳というのは、すべての国民ナンバーがつけられるわけでありますから、仮に将来一元的な管理をしようと思えば一番いい方法なんです。例えば、社会保険のナンバーであるとか免許証ナンバーであるとか、ナンバーというのはたくさんあります。しかしながら、すべての国民を網羅できる、しかもそれが一番正確にできる、それは住民基本台帳なんだということだと思うんです。ただ、今回はそこまではやらないんだということです。  しかし、いわゆる総背番号制と言われている問題の準備段階というか第一段階というか、そういうことに客観的にはなり得るものと、やろうと思えば可能なわけですから、ただ今回はやらないということを法律で決めているわけですけれども、そういう性格のものだろうというふうに思うんです。  そこで、この住民基本台帳番号制度、これについて旧西ドイツの場合でありますけれども、かつてこの導入が見送られた。憲法裁判所がこの台帳番号制度憲法違反だと判断して、この制度が見送られたという経過が八〇年代にあるわけですけれども、そのときの憲法違反ではないかと言われた中心的な問題は何だったのか、この点、もしわかっていたらお知らせいただきたいんですが。
  26. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  委員が御指摘になっているのは、一九八三年の国勢調査法に関する判決ではないかと考えます。これは論点が二つほどありまして、そのうちの一つが今お話しの点と絡むのではないかと思いますが、この判決で憲法違反とされたことによって住民番号制の導入が見送られたという事実はない、このように承知をいたしております。  そこで、一九八三年に西ドイツの連邦憲法裁判所において出された国勢調査法に関する判決での違憲性の指摘の論点でございますが、これは国勢調査法の規定についての判決でございます。統計目的のための国勢調査と他のデータ、例えば住民登録簿とをマッチングすることは憲法上の要請に適合しない。二点目は、行政目的のためのデータ提供を予定しているのか否かを認識できず、データ提供の際に目的がどのように具体的かつ明確に定義されているのかがはっきりと認識できない。それから三点目は、データが提供される目的が統計上のためだけなのか、あるいは行政執行目的のためにも提供されるのかが十分に認識できないこと、これが挙げられている、このように考えております。  こうした違憲性の指摘を踏まえて、調査データの目的利用の禁止などを規定した新しい国勢調査法が一九八五年に成立いたしまして、一九八七年に国勢調査が実施されております。
  27. 富樫練三

    富樫練三君 今三点にわたって言ったわけですけれども、論点は二つあるわけなんです。つまるところ、この憲法裁判所が判断をしたというのは、個人を全人格的に管理することにつながる番号制度、これは憲法が保障する人格権を侵害する、そういう制度はよくない、一言で言えばそういうことなんです。  この国民番号をつけるという問題について、今度の住基台帳法との関連で日本弁護士連合会、日弁連が見解を発表しております。その中では日弁連の見解として、今度の制度というのは個人の尊厳を著しく侵害するものである、憲法十三条、個人の尊厳、幸福追求権に違反するおそれがある、おそれと言っているわけなんです。日本国憲法はこのようなシステムを許容していないというふうに理解できる、こういうふうに言っているわけですけれども、この憲法との関係ではどういうふうに考えていますか。
  28. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  平成十年三月に日本弁護士連合会から出された意見書においては、「国民のあらゆる個人情報をすべて掌握できるようなシステム行政上の目的をこえるものであり、各行政機関が個別に保有する個人情報を随時かつ瞬時に把握されることになれば、そのことだけで国民プライバシーが丸裸にされることになる。」、そこでお話しの憲法十三条に違反するおそれがありと、こういう見解でございます。  このシステムにおきましては、これまでも御答弁いたしておりますが、保有される情報は四情報プラス住民票コード及び付随情報という限定された情報のみでございまして、さまざまな個人情報を一元的に収集、管理することを認めない仕組みになっているところでございます。  したがいまして、日弁連の意見書にございますように、国民のあらゆる個人情報をすべて掌握できるようなシステム行政上の目的を超えるものであるとの指摘は当たらない。また、国民プライバシーが丸裸にされることになる、個人の尊厳を著しく侵害するものである、憲法第十三条に違反するおそれがある、監視国家に導くものである、憲法はこのようなシステムを許容していないなどの御指摘は当たらないものと考えております。  なお、先ほどの西ドイツの憲法裁判所での判決の論点、二つあると申し上げましたが、もう一つの論点にお触れになったわけでございますが、全人格的に管理することにつながる住民基本台帳制度は憲法に違反するとされたという一部の御指摘があるわけですが、その根拠となっているのは先ほどの判決でございますが、その判決においては御指摘のような表現は述べられておりません。  以上でございます。
  29. 富樫練三

    富樫練三君 時間が大分たってしまいましたので、予定している質問を全部できないんですけれども、プライバシーの問題について伺いたいと思います。  プライバシーを保護するというのはもう大前提になっているわけなんですけれども、参議院の本会議大臣は、「今回の改正案におきましては、本人確認情報利用を公的部門に限るとともに、住民票コードの民間利用を禁止しているところであります。」と、こういうふうに答弁されております。これは説明の中でもあったわけですけれども、例えば四情報プラス住民票コードと五情報、これは民間では利用できない、禁止しているというわけですけれども、これにもしも違反した場合にはどういう対応になりますか。
  30. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  住民票コードの民間利用につきましては、一般的に広く住民票コードの告知を求めてはならないということで禁止をいたしております。特に、改正法案におきましては、契約条件として住民票コードの告知要求をすること、あるいは住民票コードの記載されたデータベースの構成といった行為に違反する場合には、都道府県知事はまず違反をした者に対して当該行為を中止すべきことを勧告する、または当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずべきことを勧告することができる、さらに勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、都道府県知事は都道府県に設置される本人確認情報の保護に関する審議会の意見を聞いて、その者に対し期限を定めて当該勧告に従うべきことを命ずることができる、この知事の命令は罰則をもって担保される、こういうことでございます。
  31. 富樫練三

    富樫練三君 そうすると、今度の改正法案の三十条の四十三の第四項、ここで、「前二項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が更に反復してこれらの規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、」云々と、こういうふうになっているわけですけれども、ここで言う「反復して」というのはどういう意味ですか。
  32. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) 今回の改正法案におきましては、契約条件としての住民票コードの告知要求を禁止し、また住民票コードの記録されたデータベースの構成を禁止するということでございます。  お話の第四項は、この二つを受けまして、さらに反復してこれらの規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは都道府県知事は勧告をすることができることとされておりまして、この前の契約条件としての住民票の告知要求の禁止違反、あるいは住民票コードの記録されたデータベースの構成違反に一回しか違反していない場合であっても、個別具体の事情に応じまして都道府県知事の勧告の対象になり得るもの、このように考えております。
  33. 富樫練三

    富樫練三君 反復というのは二回以上です。一回目は反復とは言いません。ということは、一回目はいい、二回以上やったらそれは勧告の対象になる、その勧告の言うことを聞かなければそれは罰則もありますと、こういう意味です。そうすると、これは法律を一回は犯してもいい、こういう条文です。これを条文どおり、文章どおり読むと一回はいいということです。  しかも、この条文にありますように、その対象住民票コードの記録されたデータベースです。ですから、ナンバーが入っているものです。そういうデータベースを民間でだれかがつくったとします。それをこの条文の中に、このデータベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているもの、他に提供するというわけですから、他人に売ったり配ったり、そういうことが予定されているものです。ということは、こういうデータベースは一回はつくっても罰せられることはない。しかも、それを他に販売したり提供したりしても一回は大丈夫と。  私、考えますと、このデータベースというのは、住民票コードでありますけれども、一回ナンバーを振られますと原則として本人申請して変更しない限りはそのナンバーは死ぬまでずっと同じナンバーです。ですから、実はこのデータベースというのは一回つくればいいんです。あとはコピーをたくさんつくればいいんです。コピーをつくって幾ら外に出しても一回目のデータベースについては罰則の対象にはならない、こういうわけです。これじゃ何の歯どめにもならない、こういう中身です。条文のとおり読めばこれは全く歯どめにならない。そのコピーがどんどん世の中に流れていく、それでもこれは規制の対象にはならない、こういう中身なんです。これでは国民の基本的な人権、プライバシーを守ることはできないというふうに思うんです。  これは、今まで答弁の中で総理も言っていますけれども、制度面や技術面や運用面、こういう点で個人情報の保護に万全の措置を講じているんだ、こういうふうに衆議院からずっと何度も答弁してきました。ところが、実際にはこれはもう穴だらけだというふうに言わざるを得ないと思うんです。名簿屋さんというのがいるわけですけれども、名簿をつくって売る商売です。これについて言えば、一回ならデータベースをつくってもいいです、ただし二回以上つくっちゃだめです、こういう法律になっている。こういう大穴があいている。これが今度の法律だというふうに思うんです。  まだまだたくさん問題点がありますけれども、この点についてはぜひともこれは改善しなければならないというふうに思うんです。そういう点でこの法案そのものはもう一回見直すべきであるということを主張して、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  34. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党の照屋寛徳でございます。  私の方からも何点か質問をさせていただきたいと思います。  まず、修正案の提案者にも一、二点でございますが通告をいたしましたところ、出席をいただきまして感謝を申し上げたいと思います。  私は、本会議における大臣の本法案趣旨説明に対する代表質問の中でも、この法案に対して多くの国民が特に住民票コード十けたの番号が付されることについて、個人の非人格化を強く感じておるのではないか、そして人間が番号によって管理されることへの抵抗感や不安感や嫌悪感を持っておるのではないか、こういうことを申し上げました。  今や、我が国も国際社会もまさに情報化社会であり、またコンピューター情報化社会とも言えるような状況にございます。そういう中で、私は本法律案審議する大前提として、プライバシーの権利を私どもがいかように考えるのか、いかようにとらえていくかということが大変大事ではないかというふうに思っておる次第であります。  そういう意味で、まず冒頭、大臣プライバシーの権利についてどのような御所見をお持ちか、お伺いをいたします。
  35. 野田毅

    国務大臣野田毅君) プライバシーの権利という概念、その内容について、どうも確立された定義なりというものがこの社会にまだ存在しているかどうかちょっとよくわからないんですが、あえて一般論というかそういう面で言いますと、まず個人の秘密が公開されないということが一つあると思います。それから、誤った情報あるいは不完全な情報によって自己に関して誤った判断がなされるということがないようにすること。それから、自己の情報を知って、それをみずからコントロールし得るということ。こういったようなことが、プライバシーの権利という中にそういったものも含まれた中で議論されているというふうに考えております。
  36. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、大臣がおっしゃるように、確かに欧米諸国に比べて我が国ではプライバシーの権利に関する論争というか、あるいは判例法上の形成が十分でないという面はよくわかります。しかしながら、かつてプライバシーの権利が私生活をみだりに公開されないという消極的な意味での権利、いわば一人にしておかれるというんでしょうか、一人にしておかれる権利から、今やっぱり我が憲法上の幸福追求権との関係で、自己に関する情報の流れをコントロールする個人の権利というふうに判例法上も高まってきたのではないかなと思いますし、私もそういう点ではプライバシーの権利はまさに憲法十三条の幸福追求権に基づく自己情報のコントロール権というふうに積極的に理解をすべきだと思っております。  特に、先ほど申し上げましたように、これだけ高度な情報化社会またコンピューター情報化社会になりましたから、そういう点では余計に自己情報のコントロールの権利ということを行政のあらゆる分野で私たちはしっかり位置づけておく必要があるだろう、こういうふうに思うわけであります。  それで、住民基本台帳法の一部改正におけるいわば個人確認情報プライバシーの権利との関係についてはいかようにお考えか、大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。
  37. 野田毅

    国務大臣野田毅君) この法案プライバシーの保護がどのように配慮されているかという趣旨であろうかと思いますが、そういう点で言いますと、制度面、システム面、運用面、いずれの面においても厳重に本人確認情報を保護するという体制をとっております。  第一点としては、それと同時に、本人確認情報の範囲あるいは利用できる分野法律に規定するということ。それから第二に、自己の情報の開示請求権を法律に規定いたしておるということ。それから、住民票コードについて変更請求権を認めているというようなことなどで、プライバシーの権利の考え方も踏まえた個人情報保護措置をあわせて講じているというふうに考えております。
  38. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、修正案の提案者にお伺いをいたします。  共同修正のようでございますのでどなたでも結構でございますが、私は修正提案者の皆さんにもまず大枠でのプライバシーの権利についてどのような御所見、御認識を持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  39. 桝屋敬悟

    衆議院議員(桝屋敬悟君) 照屋委員の御質問にお答えをしたいと思います。  実は、衆議院で随分この法案議論いたしました。大臣が最初にお答えになりましたけれども、プライバシーの権利というのは、憲法十三条、幸福追求権の話も出ておりましたけれども、我が国には明確な概念があるようで、特に国民の中にそうしたものがまだ定着をしていない。実は衆議院地方行政委員会でこの住民基本台帳法議論する中で、我が党は公明党でございますが法律家も多いわけでありまして、先ほどから話が出ておりますまさに自己情報のコントロール権、自分自身の情報をコントロールするという権利、これがまさにプライバシーの権利ではないかというふうに私自身も教えていただいた次第であります。そうした観点から見ますと、まさに自分の知らないところで自分の情報が動く、この方法が悪用されても防ぎようがないわけであります。このように解釈をし、この住民基本台帳法の一部改正案の審議の中でも、我々衆議院段階でもそうした観点から御議論させていただいた次第であります。
  40. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 せんだっての委員会修正案の提案者の方々から、私のメモに基づくことですので必ずしも質問、御答弁が正確でないかもしれませんが、おおむね私が聞いておりましてメモったところで、修正案を提出した目的、あるいは動機というんでしょうか、その中で、プライバシーの保護に関して漠然とした不安、懸念があったということを随分強調していたやに私は記憶をいたしております。  そういうことで、私のメモにあるわけでありますが、そのおっしゃった趣旨は私なりによく理解できるつもりでありますが、修正提案者の方々が原案である住民基本台帳法の一部を改正する法律案のどの部分にプライバシー保護に関して不安や懸念をお感じになったのか、それをより具体的にお聞かせ願えればありがたいなと思っております。
  41. 宮路和明

    衆議院議員(宮路和明君) それでは、衆議院地方行政委員会の理事会の場で最初に修正案の提案をいたした者としてお答えをさせていただきたいと思うわけであります。  今回の改正法案、先ほど自治大臣からもるるお話があったところでございますけれども、私どもは必ずしも今回の改正法案におけるプライバシーの保護の問題に関して最初から不安あるいは懸念を持っておったということは実はないわけでございます。  と申しますのも、私ども自民党の地方行政部会におきましても、政府の提案いたしました改正案にかかわる骨子の段階から我々は随分議論を一緒にさせてもらいまして、そしてその中で、特にプライバシーの保護についての議論が我が党の中でも沸騰をいたしたわけでございます。  そこで、我が党としては、まず第一点は、電算業、情報処理の受託をする業者についても守秘義務を課すという新たな項目を追加してもらったことが一点。それからまた、守秘義務違反の場合に加えて、場合に加えてというか、場合よりももっと重い罰則をこの法律による秘密保持義務違反について課すというようなことも新たに追加して、政府が当初考えておったものに追加してもらったり、あるいはまた請求によって住民票コードの変更を可能にするという道も私どもの党の議論の中から新しく生まれてきたわけでございまして、こういったことをいろいろ加えることによってプライバシー保護に万全を期していこう、こういうことで改正案ができ上がりまして、そして国会へと提案された。  そこで、国会において、地方行政委員会において種々議論をいたしたわけであります。その中で、先般の当委員会における御審議の際にもお話がありましたような、これが国民総背番号制につながっていくのではないかといった御懸念、あるいはまた納税番号につながっていくんじゃないかというふうな御心配等々の議論とあわせて、たまたま我々の審議の時期におきましても幾つかコンピューター処理された情報が漏えいするというような事件もあったりいたしました。そこで、国民が不安やあるいは懸念というものを持っているそれをもっと払拭できるような、そういう意味でもプライバシー保護についての一層厳重なといいましょうか、対策を講ずべきではないか、そういった御議論が野党の皆さんの方からも大変強く展開をされたわけでありますし、幾ら万全だと言っても、いざやってみるとそれはどこかからまた漏れていくのではないかというような御心配の向きもいろいろ議論されたわけであります。  そういったことで、先般も私の方からお話し申し上げましたし、また今、照屋先生の方からもお話がありましたけれども、我が国としてそれではプライバシーの保護という面で欧米諸国と比べてどうかなといったことを考えますときに、政府が持っておりますコンピューター情報についてはその保護のための法律が既にあるわけでありますが、その他の部門については整備をされていない。またこれから、この間自治大臣からもお話しありましたように、この改正法が施行されるまでの間、相当の期間があるわけでありますけれども、その間に日進月歩技術がいろいろと進歩、発展していく。そういう中で、本当にその時々刻々の変化に対応したプライバシーの保護というのは万全なんだろうか、十分なんだろうかということをもろもろ考えますときに、やはりこの際、プライバシーの保護について我が国としてもしっかりした体制をつくっておく必要があるのではないかというようなそういう判断をいたしました。  そして、この修正案におきまして、御案内のとおり第一条の二項にこうした規定を盛り込ませていただいて、政府の方で、今後における、また状況の変化にも対応した、あるいはまた欧米諸国のプライバシー保護に関する法制などとも決して引けをとらないようなものをつくっていく必要があるんじゃないかということでこういう修正案を提示させていただいた、このように御理解をいただきたいと思います。
  42. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、このプライバシーの権利にかなりこだわっておりますけれども、これは先ほどから申し上げておりますとおり、高度な情報化社会の到来との関係でどうしてもここは私たちしっかり把握をしておらなければならないと思うからであります。  公明党の修正提案者の先生にもお伺いいたしますが、私は全国的なことは知りませんけれども、沖縄でも白保議員を初め公明党の議員の皆さん方にも私は日ごろいろいろお教えいただいたりしておりますが、やっぱり公明党は人道主義を大事にするから沖縄なんかでも信頼を得られていると思うんです。そういう点からすると、プライバシーの保護については非常に敏感であるだろうと思うんです。  それで、今度新設される住民票コードという十けたの番号、それから個人確認情報と言われる氏名生年月日、それから住所性別、まさにこの住民票コード個人確認情報そのものは保護されるべきプライバシーではないか、私はこういうふうに思っておりますが、いかがお考えでしょうか。
  43. 小山峰男

    委員長小山峰男君) できるだけ答弁は簡潔によろしくお願いします。
  44. 桝屋敬悟

    衆議院議員(桝屋敬悟君) ただ、私ども公明党に対して特別のお尋ねでありますから、特別にお答えを申し上げたいわけであります。  今のプライバシーの問題、一番最初の委員会で申し上げたとおり、我が党、随分ほかの党がこの法案に対して態度をお決めになる中で、最後まで態度が決め切れずに大変に御迷惑をかけた経緯があります。それは、まさに今、委員御指摘のプライバシーの問題でありまして、確かにこの法律制度面あるいは運用面、さまざまな形で考えられる限りの措置はとられていますけれども、しかし本人確認情報と言われる四情報、そして住民票コード、このコードこそまさに御指摘のとおりプライバシーそのものでありますから、たとえこの四情報たりといえども全国ネットワークシステムをつくるということについては、個人情報保護をどうやって守っていくのか、プライバシーをどう守るのかということを実はぎりぎりまで私どもは議論させていただいたわけであります。  先ほどもこの法案のどこに不安を感じるのかというお尋ねをいただいたわけでありますけれども、むしろ私どもはこの法律のどこにということよりも、社会全体に対する不安、プライバシー権といいますか、先ほどから議論が出ておりますけれども、我が国においてプライバシー権というものが特に高度情報化が進展をする中で非常に概念が明らかになっていない、そしてその概念が国民に理解をされていない、価値観が醸成されていないという状況があるわけであります。したがいまして、数々の個人情報の漏えい事件あるいは名簿屋が盛んに活動しているという状況があるわけであります。  したがいまして、私どもはこの法律を機会に、何としてもおくれている我が国において個人情報保護に関する法整備を含めたさまざまなシステムづくりというものをこの際行っていきたい、こんな思いで修正案の提出に共同参加させていただいた、こういう次第でございます。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  45. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 修正案の附則に、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」と、こういうふうにつけ加えましたね。この附則で言う「個人情報の保護」というのは、まさにプライバシーの保護に政府は万全の措置を尽くせと、こういうふうに私は受けとめておりますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  46. 桝屋敬悟

    衆議院議員(桝屋敬悟君) そのように私どもも理解しておりますし、政府に特段の御努力をお願いすると同時に、早い機会に、この住民基本台帳ネットワークシステムが動き出すと同時に、そのときには個人情報保護システム整備ができている、同時スタートが必要だというふうに私どもは考えて政府に強い期待をしている、こういう姿勢でございます。
  47. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 そこで、施行期日と所要の措置との関係ですけれども、修正案の提案者にお伺いいたしますが、本法案の施行期日の定めでは、「この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」と書いてあるわけです。施行に当たっての所要の措置と施行期日とがどういう関係になるのか。それから、わざわざ修正をして、その附則で政府に対して所要の措置を講ずるという、これは努力義務なのか文字どおりの義務規定なのか、いろいろ解釈はあるのでしょうけれども、そういう定めをした関連でどういうふうに考えたらいいのかというのが一点。  それから、私は、我が国でも今や判例法上はプライバシーの権利については、概念があいまいだとか、まだ確立されていないのではなくして、かつての私生活をみだりに公開されないという意味での消極的なプライバシー考え方から、自己情報コントロール権という意味での欧米のような積極的な判例法に到達をしたというふうに見ております。この所要の措置ということをおっしゃっている、その場合の民間を含む包括的な個人情報保護法の制定と絡んで、所要の措置の中身というか、修正提案者が考えておられる個人情報の保護のあるべき理念ということについて、再度お聞かせをいただきたいと思います。
  48. 宮路和明

    衆議院議員(宮路和明君) 今お尋ねの第一点につきましては、これは前回の当委員会におきましても小渕総理の御答弁について御確認もあったわけでありますが、まさにそのとおりでありまして、「住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であるとの認識であります。」という総理答弁でございますけれども、私ども提案者といたしましても、まさにそういう気持ちでこの修正案を提示させていただいたということでございます。  それから、所要の措置の中身でございますが、これは自治大臣の方からも既に御答弁をいただいているところでありますけれども、一つには、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えていくこと。二つ目には、今申し上げたシステムの整備状況も踏まえながら、その検討状況も踏まえながら、本住民基本台帳法におけるさらなる個人情報保護措置を講ずるための所要の法改正等もいずれ行っていくものであるということ。それから、地方公共団体が適切に住民基本台帳ネットワークシステムを運用することができますように、条例によって、カードの問題なんかは地方自治体が行うということにもなっておるわけでございますので、そういった点を十分念頭に置いて、そのシステムを運用することがしっかりとできていくように政府において、自治省ということになるわけでありますが、個人情報保護に関する指導を十分徹底を図っていただきたい。こういったことを念頭に置きながら所要の措置という修正案を提示させていただき、衆議院において御論議を賜って可決をさせていただいている、こういうことでございます。
  49. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、行政事務簡素化効率化、これは当然必要だろうと思うんです。しかし、今申し上げましたように民間を含む個人情報保護法の制定を急がなければ、プライバシーの保護について十分国民が安心し、そのことが担保されるような社会が実現しないと、どうしても住民基本台帳法の一部を改正する法律については多くの国民が不安を抱くだろう、抱いて当然だというふうに私は思うわけです。  そういう点では、個人情報保護法の理念なり中身なりがまだ全然見えてこない段階で拙速に住民基本台帳法の一部を改正するのは、私は賛成するわけにはいかぬなという思いがあるということをきょうの段階ではお伝えをしておきたいと思います。  そこで、時間が随分押してまいりましたが、総務庁おいででしょうか。──まだ来ておらないようですので、せっかく大臣がおいででございますので、次に大臣に、ちょっと順序が飛びますけれども、時間が少なくなってまいりましたので。  私のメモですと、大臣は先日の委員会で、例の地方自治体におけるオンライン禁止条例と本住民基本台帳法の一部を改正する法律案関係について、たしか、オンライン禁止条例と本法案との整合性については見直しが必要であろうと、あるいはその見直しが必要となってくるかもしらぬみたいな趣旨答弁があったように記憶をしております。いま一度、現在地方自治体で制定をされておりますいわゆるオンライン禁止条例と言うんでしょうか、それと今回住民基本台帳ネットワークシステムがつくられるわけですけれども、識者によっては、いわゆる上位法によって条例の精神が変わっちゃう、あるいは効力を失ってしまう、そういうことについて、まさに分権との関係でもこれはいかがなものかというふうな指摘をする人もおるわけでありますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  50. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 地方公共団体が条例でオンライン接続を例外なく禁止しているというような場合には、住民基本台帳法に基づく情報の送受信につきましては、十分な個人情報保護措置を講じた上で今回の法律の規定を置くことによりまして、条例の禁止規定が解除されるという考えでございます。  また、その他の情報の送信につきましては当該条例の禁止規定は従来どおり効力を有するものでありますから、そういう点で、市町村個人情報保護制度を否定するものではもちろんないというふうに考えております。
  51. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  52. 高橋令則

    ○高橋令則君 自由党の高橋でございます。  私は、自治大臣政府委員質問させていただきますので、衆議院の先生方は結構でございますので、お休みいただきたいと思います。  この法律の一部改正については、私は、まずそれを必要とされる環境に関する認識を申し上げたいと思います。  高度情報通信社会の到来、その必然性については既にもう多くの識者が以前から指摘されているところでございます。その状況について、平成十一年の通信白書を眺めてみました。  現在、インターネットが急速に普及しておりまして、十年度における我が国の十五歳から六十九歳のインターネットの利用者数は約千七百万人とされています。我が国における主な情報通信メディアの世帯普及率一〇%、一割の達成までの所要期間を眺めてみますと、電話が七十六年、それからファクシミリが十九年、そして携帯・自動車電話、これが十五年、パソコンが十三年、インターネットが五年。このように、特にインターネットの爆発的な普及は驚異的なスピードであります。高度情報通信社会の進度は加速度的に速くなってきている、そういう認識を持っております。  これに対して、関係制度を含め我が国の環境整備がおくれている、かつ必ずしも十分ではないのではないか。既に、各委員からもいろんな御指摘がありました。この問題に限らず、民がどんどん先行する、政治、行政がおくれてついていく。面倒な問題は先送りをする、そして問題が一層深刻化する、それが近来の実態ではないのかなということを感じております。  先日、高嶋委員が光と影ということを言われました。私も同感するところが多々あります。タイミングのよい必要な政策が民そして外国から立ちおくれ、光と影を一層際立たせてしまう、こういう状況になっているのではないかと思っております。  今日、高度情報通信社会の構築が我が国の経済発展のかぎを握っているということは国民の大方の認識であると私は思っております。私ども自由党は、光ファイバーネットの整備、そして行政事務の電子化の促進等を含めて関連施策の促進を急速にするべきではないかということを主張しております。そして、人間が情報に振り回されることなく、主体的に活用して豊かな生活ができるような社会を築き上げていきたい、このように念じているところでございます。  したがいまして、高度情報通信社会において官が担うべき環境整備を国が先進的に早急に進めるべきではないか。国際的な動きを見るにつけても、その必要性を強く感じている一人でございます。  しかし一方において、この一環として当然ながらプライバシーの保護、必要な分についてはこれも早急にしなければならないということを私も感じております。各委員からお話がございましたように、衆議院提案者の話がございましたけれども、三党のこの問題に対するプロジェクトについては私も参加しておりますが、そういう意味プライバシーの問題を含めてこの扱いを私自身一層努力しなければならない、このように考えております。  しかしながら、そうはいってもこの住民基本台帳法の一部改正はそうはいっても基礎的なインフラでございますので、この委員会において冷静かつ適切な審議を進めていただき、そして実現できるよう心から切に念じているわけでございます。  そこで、質問になるわけですが、まずこのシステムはあくまでも市町村が運営するということが基本になっております。当事者である市町村あるいは都道府県意見を十分踏まえてシステムがつくられたものというふうな認識をしておりますが、まず最初に、このシステム構築に当たって自治体の生の声をどの程度調査して聴取されたのか、その実態をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  まず、地方公共団体からの要望、意見についてでございます。  一つは、全国市長会からは、平成九年十一月に、住民基本台帳ネットワークシステムの整備を推進するため、早期に住民基本台帳法改正することとの趣旨の御要望をいただいております。また、全国町村会からは、平成九年十二月に、このシステムについては法改正を早期に行い、制度化を図ることとの要望をいただいております。また、全国知事会からは、平成九年三月に、住民基本台帳ネットワークシステムについては住民サービスの向上、行政効率化、高度化に資するもの、このような御意見を受けております。  また、地方公共団体からの意見聴取でございますが、平成六年から検討を始めておりますが、住民記録システムネットワーク構築等に関する研究会に地方公共団体の実務者の方、市区町村の担当課長でございますが、実務者の方に参加していただいております。  また平成八年に、自治大臣主催のいわば懇談会というものを開催いたしておりますが、そこには各界の学識経験者の方々のほか、地方公共団体の長、都道府県知事、市町村長の方にも御参加いただき、意見をお聞きいたしております。  さらに平成九年六月に、住民基本台帳法の一部改正試案ということで試案を公表し、また十年二月に住民基本台帳法改正法の骨子というものを公表し、三月には法案等を国会に提出いたしまして参考資料などを作成いたしまして、その都度、都道府県を通じまして市町村に御連絡いたしました。また、各市町村の首長さん、議長さんに対しましては法案の概要を直接送付する情報媒体を持っておりますので、そこで紹介するなどいたしまして、制度の概要につきましては各市町村に対して十分説明させていただいているところでございます。
  54. 高橋令則

    ○高橋令則君 自治省の方でそれなりの努力をされているということはわかりました。  私は、細かい問題になるかもしれませんけれども、特に実務をやっている市町村の方々からの提案でこれをやってくれというふうな具体的な話もあったと思うんです。それをこの法案に取り入れたとかそういうことが具体的にあればそれを御紹介いただきたい。
  55. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  御指摘のように、このシステムの構築に当たりましては市町村が当事者ということでございまして、大変御熱心な御議論をいただいております。その際にいただいた貴重な提言につきましては、改正法案内容にも反映させていただいているところでございます。  例えば、具体的に申し上げますと、住民基本台帳カードというものにつきまして、各市町村において議会の議決を経た条例に基づいて活用できることといたしている点でございます。各市町村で独自または共同して新しく付加される情報というものをカード内の専用エリアに記録して、それぞれ高度な住民サービスに役立てる。例えば、福祉とか健康管理とか公共施設の利用などに市町村がそれぞれ独自に役立てたいということのために利用できることといたしております。  それからさらには、転入地の市町村長が住所市町村長に住民が転入した旨の通知を現在郵送で行っております。ここをこのネットワークシステムを通じて送信する、いわゆる転入転出の特例手続を定めている、こういったことが市町村からの御提言を反映させたものでございます。
  56. 高橋令則

    ○高橋令則君 法律が施行され、またその後も含めて特に市町村の声を今後とも反映できるように御努力をいただきたいというふうに思います。  一つは、都道府県の問題であります。私も県に長年奉職をした人間ですけれども、この住基の問題については実務はやっておりません。したがって、実はわからない部分があるわけですけれども、今後この法律が決まりますと都道府県がそれなりの役割を負うわけですね。  したがって、都道府県が実態的に都道府県政の中でどのように変わって、そしてどのようなメリットがあるのか、それをお聞かせいただきたいと思いますし、新しい事務でありますので、それに対する処理といったものがどういう形になるのかなということを、ちょっと自分ではまだ余り具体的じゃありませんので、お聞かせいただきたいと思います。
  57. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  都道府県仕事分野というものは、地方分権がいよいよ実行の段階を迎えるということで、市町村との連携というものが非常に濃くなるだろう。その中で、特に高齢社会への対応とか災害対策といったセーフティーネットの関係というか対人サービスの充実ということが大きな課題になるのではないか。また、文化、スポーツ等の振興も市町村との連携ということが重要なことで、県としてはより広域的な観点から、いわばこういった施策を推進する役割というものが期待されてくるだろう。  例えば、高齢者の方に対する配慮の行き届いた行政サービスというものを県もいろいろな分野で行っているわけでございます。場合によっては、災害のための被災者対策ということで、先ほども申し上げましたが、災害が起こった場合にこのネットワークシステムを通じてセンターなどから必要な情報が得られて、援助物資等の提供とかボランティアの配置などについてもより迅速かつきめ細かな対応も可能になってくるのではないか。またさらに、スポーツ施設とかその他の不特定多数の者が利用する公共施設、そういうものについて共同利用あるいは広域利用ということでより一層の有効利用に役立てるということが必要になってくる。  こういった施策をより効果的に推進するためには、やはり広域的な本人確認というものがどうしても必要になってくるのだと思います。市町村の区域を越えたそれぞれの都道府県内での広域的な本人確認、あるいは全国ベースでの広域的な本人確認が必要ということでございまして、そういったネットワークシステムを構築するためには、広域的な地方団体であります都道府県にその役割を担っていただくということが非常に重要であるということで、具体的には住民基本台帳に載せております情報のうち、四情報プラス住民票コードと付随情報というものを市町村から都道府県で受けてそれをデータベースとして保有し、また全国のデータベースに連絡する、あるいは全国ベースから情報を逆流の形でもらうという役割というものが都道府県において非常に大きいだろうということでございます。  その際に、やはりネットを組む場合に、国のシステムで国が管理するというよりも、市町村都道府県連携して都道府県共同のいわば全国センターというものを構築して、都道府県仕事で機械的な仕事、適切な仕事というものをそこに役割を果たしてもらう形で委託する、こういう方式が適切であろうということでこのシステムを構築いたしているところでございます。  そういったことで、都道府県、例えば全国知事会などからも、このシステムを構築するに当たりましては、円滑なシステム導入の前提である国民あるいは地方公共団体の理解、協力が得られるように十分配慮すべきであるとの御意見、また住民のプライバシーの保護というものは極めて重要な問題であるということで、法令上も技術上も万全の措置を講じるべきであるという点、それからこのシステムというものがそれぞれの地方団体での高度情報化への取り組みなどに有効に活用できるように配慮すべきであるということ、また全国センターについては行政改革の流れも勘案して、新たに組織を設けずに既存の法人等の組織で対応できるような仕組みを検討する、こういった御意見をいただいております。  自治省としても、こういう意見につきまして適切に対応してまいるつもりでございます。
  58. 高橋令則

    ○高橋令則君 わかりました。  そうはいっても、都道府県にとっては新しい事務でありますので、その関係はそごのないように密にして、市町村関係、そしてまた自治省の指導ということになりますが、それをより適切にやっていただきたいというふうに要望を申し上げておきます。  もう一つは、角度が少し違うかもしれませんが、高度情報通信社会の推進という観点からしますと、基本的ないわゆる本人確認情報利用というものはできるだけ多い方がいいのではないか、メリットとしては。そうはいっても、プライバシーの保護に反する問題については十分手当てをしなければなりませんけれども、それを前提としながらも、やはり利用については拡大する努力というふうなものが必要ではないかと私は思っているわけです。  まず最初に、今九十二事務にもう限定してしまっているわけですね。法律を変えればできるわけですし、既に各委員からいろいろお話があったわけですけれども、なぜ九十二事務に限定したのか、その選択の基準といったものは一体どういうことだったのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  59. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  このシステムを構築する過程におきまして、本人確認情報利用についてでございますが、それは法律で定めるということで、この改正法案では別表で規定する、こういうことにいたしておりますが、それぞれの行政分野でそれぞれの制度を所管しております関係省庁と十分に調整を行いまして、その上で別表を作成いたしたものでございます。  その結果、二つの分野、継続的に行われるような児童扶養手当の支給とか恩給とか共済年金等の支給などのような給付行政分野、または宅地建物取引業とか建築士などの資格付与にかかわる分野国民関係の深い行政事務などをそこで掲げると、このようにいたしたものでございます。
  60. 高橋令則

    ○高橋令則君 わかりました。  しかしながら、前段申し上げましたように、利用事務というのはやっぱり広い方がいいし、いわゆる行政事務行政改革の一環としても推進することが必要ではないかと思います。コストとかいろんな問題もありますけれども、そういう観点としての取り組みは政府としても必要ではないかということを申し上げておきたいと思います。  一例を挙げますと、これは外務省の問題になるんですかね、例えばパスポートの連動とかという問題については、このネットワークに入れることによって、もう死亡した方についての失効とか、それからあと落とした人については早急に発給ができるようにするとか、そういうメリットが出てくるんではないかということも考えられますし、また不動産登記の問題の活用といったこともどうかなというようなことも考えております。例えば、所有者の住所移転を登記簿上にフォローしておく、今登記簿についてはほとんどやっていないというか、やっていないと言うのは失礼ですけれども、もう死んでしまった人が何代もまだ残っているというふうなものもありますし、動いている分についてもほとんどフォローできていないというような実態もあるので、連動することによってこういうメリットが出てくるのではないかというふうにも考えております。  そういう面で、前段いろいろお話がありましたように、プライバシーの問題からいろんな意味で制限というのは必要だと思いますけれども、今一例を申し上げましたが、そういうことを含めて取り組んでいったらどうかなというふうに思っております。  そういうふうな新たな事務をやることによって、負担というんですか、コストのふえ方といったものはどうでしょうか。これは具体的にやったわけではないかもしれませんけれども、そういう雰囲気というか勘として、コストの伸びようというか、そういうことはどうでしょうか。
  61. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 九十二という事務以外にも、今御指摘のありましたようないろんな行政分野についてこの利用範囲拡大していくということであれば、当然のことながら国、地方を通ずる行政コストの低減、簡素化ということが前進するというのは基本的には私はそのとおりだと考えております。  ただ、それを具体的にではそこまで実際にやるかどうかということ自体は、法改正を伴うことでもありますし、その中で十分御検討をいただかなければならないことだし、この法案作成過程の中で各省庁とそれぞれ相談をして当面九十二ということにしたその大きな背景は給付行政であったり、資格付与行政であったり、言うならそういう行政サービスという側面の上でいろいろ御判断をいただいたということでもございます。  そういう点で、極力これが何といいますか、統制的といいますか、監視社会みたいなことにならぬようにしなきゃならぬとか、言うなら国が一元的に情報収集、管理するような形はよくないとか、あるいは一方でプライバシーというものの保護をしっかりと重視しなければいけない。そういう点で、両面からの慎重な検討が必要であるということとの兼ね合いといいますか、そういったことを踏まえてその時点で十分御判断をいただかなければならない事柄であろうかというふうに考えております。
  62. 高橋令則

    ○高橋令則君 大臣からお話がございましたが、それはそれとして、やはりこの問題はシステムを含めて、国そしてまた地方を含めて、行政改革の推進という観点からも、そしてまた情報社会の進展という観点からも、これはぜひとも相当の決意を持ってやっていただくことが必要ではないかと思いますので、最後に大臣にその決意をお聞かせいただきたいと思います。
  63. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 今申し上げましたとおり、国、地方を通ずる行政簡素効率化、そして確実性あるいは迅速性、こういったことにどうこたえていくか、特にこれからの高度情報ネットワーク社会という中でこの行政分野をよりその社会のあり方に即して改善を加えていくということは当然のことだろうと考えます。そういう点で、これからも利用の範囲について十分検討していかなければならぬという側面があると思っています。一方で、先ほどちょっと申し上げましたが、それに対していろんな面からの慎重な検討という要請もあるわけでありまして、そういったところを十分踏まえた上で検討をしていきたいと思います。  いずれにせよ、これを一刻も早く実施に移させていただく、その上でその活用状況、それから全体的な個人情報システムについて、民間分野も含めた保護措置なりそういったことが具体的にどういうふうにでき上がっていくかということをも踏まえながら、これらの問題はあわせて検討していかなければならない事柄であるというふうに考えております。
  64. 高橋令則

    ○高橋令則君 終わります。
  65. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 参議院の会の松岡滿壽男でございます。  この法案に対しましては各界各層、国民の皆さん方も大変な関心を持って見守っておられると思いますし、先ほど自治大臣の方からNHK世論調査お話も御答弁としてございました。実際に今まで現場でやっておった市町村、それに今度新しく府県も絡んでくるわけですし、個人情報がどういう形で守られていくのか、こういう厳しい財政の時代に新たに国がこの事業をされるということについての新たな投資もある、そういうものについてはどうだろうかとか、あるいは今後の国と地方との負担関係は一体どうなっていくのかというさまざまな角度から、一巡目では私が最後の質疑者になりますが、先行議員の皆さん方からいろいろな角度での御質問があっただろうと思うんです。私もちょっと議運やら何やらで抜けたりしておりましたので重複することがあろうと思いますけれども、お許しをいただきたいというふうに冒頭お願い申し上げておきたいと思います。  この法案のポイントに触れる前に、デジタル社会の急速な進展に対して法整備が全くおくれていることが大きな問題であることを指摘しておきたいというふうに思うんです。私も法務委員として何度となくその点を指摘してきたわけでありますけれども、セーフティーネットとしての法整備がなされる前に利便性を優先する法律が成立しているような感じがするわけであります。また、民間においてはさらなるスピードで情報データなどのグローバル化が進んでいるわけです。まず、セーフティーネットとしての法制化の重要性を再度指摘した上でこの法案について考えてみたいと思います。  ポイントは四つあると思うんです。一つは、利便性とプライバシーの保護。二つには、利便性、いわゆる効果とコストの関係。三つには、一元化すべきデータとすべきでないデータ。それから四つには、いわゆる性善説と性悪説。グローバル化の中で今まで我が国の国民性で考えておったそういう罰則でいいのかどうなのかという問題があると私は考えております。もっと違うとらえ方もあると思いますけれども、この四点に着目しまして、また各界各層の意見をできるだけ忠実に生の声としてとらえた上で御質問をいたしていきたいと思います。  まず、刑事局長、法務省にお越しいただいておるわけですけれども、何か委員会がダブっておられるようでございますので、一点だけ私が御質問を申し上げ、御退席されて結構でございます。  先ほど触れましたけれども、デジタル犯罪に対する法整備のおくれについてどのように法務省としては考えておられるのか、今後の対策をどうされるのか、また犯罪が起きる前に法整備をすることに何か問題があるのかということなどにつきまして、まず法務省に御見解を伺いたいと思います。
  66. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 委員御指摘のとおり、高度の情報化社会に対応した法整備の重要性はますます増大しているところでございます。その意味で、法務省としては、昭和六十二年、十年以上前になりますが、刑法の一部改正を行いました。内容的には、電磁的記録不正作出及びその供用、あるいは電子計算機損壊等の業務妨害、また電子計算機を使用した詐欺罪など、コンピューター犯罪の処罰規定をその際に新設いたしました。確かに、この刑法改正においても、電子情報処理組織、コンピューター等に入力されている情報の不正入手等についてはこの法改正の中では触れていなかったわけでございます。  それは、情報といいましても、その中には秘密情報あるいはプライバシーにかかわる情報、あるいはその情報自体が財産的価値があるというような情報等さまざまなものがございます。その不正入手に対する罰則の要否等につきましては、これらの情報の法的保護はいかにあるべきか、殊にそれぞれの情報の特質に応じた取り扱いをどうすべきかということ、あるいはコンピューター以外で用いられております一般の情報の取り扱い等との均衡を図る必要もございます。また、関連する各種諸規定との関係をどのように考えるかなど検討を重ねる必要のある多くの問題が存在しているところでございます。しかも、情報化社会における情報管理のあり方もその高度化に伴いまして急速に変化してきております。  このようなことから、今後さらにこの問題についてはいろいろな角度から検討を重ねる必要があると考えております。保護の必要性等について個々の分野で御検討いただいて、それぞれの法的な手当てをすべき問題も多々あるというふうに我々も考えている次第でございます。  以上でございます。
  67. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ありがとうございました。もう結構です。  先ほど申し上げた観点から、この法案についても個人情報保護が優先されるべきだというふうに思いますけれども、衆議院におきましても修正がなされてきておるわけです。これについての、施行までに整備をするというのではいかにも遅いんじゃないかという感じがするんです。そういうことで国民の理解が得られるのかどうかということを非常に危惧いたすのですけれども、この点につきましてのお考えをまず伺いたいと思います。
  68. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 個人情報保護という問題につきまして、まず本法案におきます住民基本台帳ネットワークシステムとの関係で申しますと、たびたび申し上げておるんですけれども、このシステムにおきましては、まず住民票コードの民間利用を禁止する、あるいはデータベースの構築を禁止するということのほかに、制度面、システム面、運用面、いずれにおきましても現在の環境の中で考えられます万全の保護措置を講じているというふうに私どもは認識をいたしておりますし、そのように御説明も申し上げておるところであります。  ただ、そうはいっても、例えばシステム面、技術面等の世界で、日進月歩の今日のこの分野における発展というものは、今万全であったとしても、これが実際に施行されて実施に移されていく数年の間にいろいろまたそれを乗り越えるような技術革新があるかもしれないという可能性を否定するものではございません。そういった意味で、それらについてはこの法案の成立後においても技術面におけるそれを上回るきちんとした対応をしていかなければならないということはそのとおりある、これは一つございます。  それからいま一つは、そのほか三面からいろいろ万全な措置を講じておるとはいうものの、この問題とは切り離して、漠然とというとなんですけれども、いろんな分野個人情報が漏えいしているというようなさまざまな事件がございます。それはこのネットワークシステム関係のない分野ではあるんだけれども、そういう個人情報の保護という問題について全体的な保護体制というものをもう一遍見直しをして、民間分野における部分であったとしても何らかの有効な手だてはないものか。それは今回の法案審議の過程の中でこれと直結はしないものの、そういった分野についてもやはり関係がないからといって放置するのではなくて、この機会にきちんと対応する努力をすべきではないかという議論があったことも事実でございます。  それはそれとして、そういう意味では、そういう話になれば、自治省としての所管の行政分野の中での対応ということではなくて、政府全体として省を超えた対応も必要になりますし、それから政府だけではない議会における対応もございますということで、三党間でこれらについて検討会を既にスタートしていただいて、研究もしていただいているというような背景も実はございます。  そういうようなことが重なりまして、この個人情報システムという問題が衆議院における審議の最終場面におきまして、もろもろあわせた形の中である部分については修正ということがなされたという背景がございます。
  69. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 この辺の問題についてはそれぞれの自治体で保護条例とかつくって対応してきておるんですけれども、これはやはり国の問題だろうというふうに思います。特に民間の問題が出てまいりますので、これは全国的にきちっとした法整備で対応していくということが必要であろうと思いますし、個人のデータのセキュリティー、これは万全なものかどうかということが一つありますね、セキュリティー自身が。このセキュリティーシステムについてのお考えをひとつお述べいただきたいというふうに思います。
  70. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  このシステムにおきましては、制度面、運用面の保護措置、プライバシー保護措置に加えまして、システム面でもセキュリティー対策について十分な措置を講じ得ることといたしております。  一つは、コンピューターの不正利用、不正操作の防止対策でございますが、コンピューターを操作する際のICカードや暗証番号による操作者の確認ということをしております。また、各コンピューターにID番号を付すことによりまして、ネットワークシステム利用しているコンピューターを把握するということなどを行う予定といたしております。  第二に、ネットワークシステムへの侵入あるいは盗聴及びデータの改ざん防止対策といたしましては、一つは、専用回線上でデータ通信を行う際はデータの暗号化を行う。また、通信相手となるコンピューターの相互認証のシステムにする。それから、ネットワークシステムに蓄積されているデータの接続制限を行うということを予定いたしております。さらに、データ通信の記録管理というものをしっかり行いまして、これらによりまして不正行為の防止策をより十分なものにすることといたしております。
  71. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 民間へのデータ流出、これが非常に心配されておるわけです。これはもう絶対にないようにしなけりゃいかぬわけですけれども、万一データ流出が発生した場合に、原因等の早期発見とか早期対応等のシステムはどのようにされるのか。先日のNTTのデータ流出のように発見が不可能ということではどうしようもないわけでありまして、そういう点についての御見解をお伺いいたしたいと思います。
  72. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  制度的な面では、このシステムの端末を保持するすべての関係者に本人確認情報の漏えいを防止するための安全確保措置を義務づけることといたしております。  その他の担保措置も講じているところですが、技術的にも、一つは、端末操作の権限を有する職員についてはその職員ごとに操作が可能な情報の範囲を限定するということにいたしておりまして、第三者や権限を有しない職員がデータベースに自由にアクセスするということは不可能といたしております。  また、万が一権限を有する職員が故意に漏えいや盗用の目的で操作をするという場合には、これもなかなか難しい面もありますが、端末からの各種操作の記録、ログを残す、その記録を管理して定期的に不正操作がないかどうかをチェックする、こういうこと。また、そのログそのものを偽造、変造するということもありますので、そういうことを目的とした不正アクセスができないようにすることなどによりまして不正利用者を特定することができるようにしてまいりたいと考えております。  さらに、端末操作の権限を有する職員の入退出の管理を徹底することなどによりまして、不正利用が行われないような厳正な運用を行っていくということで考えております。
  73. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 今回の住民基本台帳ネットワークシステムの構築に要する経費は、いわゆる初期投資が四百億円、それから年間のランニングコストが二百億円要するという試算でありますけれども、合わせて六百億円の投資になるわけです。    〔委員長退席、理事山下八洲夫君着席〕  今まで、それぞれ市町村コンピューターに入力したり、いろいろ努力をしてきています。それの投資がやっぱり最初にあるわけです。さらに、それをベースにしていますからそれほど金がかかっていないにしても、それぞれ広域市町村で、この前視察に行きました浜松とか豊田町とか、それぞれ皆全国的にああいうことをやっているわけです。  そうすると、確かに広域圏の中では住民票がどこへ行ってもとれるという仕組みにしているから、まずベーシックな三千三百の市町村でそういうことをやりながら、なおかつ広域でやってきて、今度は全国的に四項目だけやっていくと。そういう投資が少なくとも二重──三重までいかないにしても、それだけの投資をこの時期にするということになるわけでありますが、それだけの投資をするわけですから、どれだけの効果が、そのコストに見合うものが期待できるのかということにつきまして伺いたいと思います。
  74. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  今、コストとその効果ということでございますが、現在住民基本台帳事務、戸籍事務を含めてですが、三千億円ぐらいの経費で全地方公共団体というか全市町村で処理を行っているわけでございます。    〔理事山下八洲夫君退席、委員長着席〕  今回のシステムの経費でございますが、まず基本的な導入経費といたしまして、システムの基本設計費、またコンピューターの設置工事費、ネットワークシステムのテスト経費、それから、これが大きいんですが、既存の住基データをこのシステムに移行するための経費、こういったことで約四百億円を見込んでおります。また、年間経費といたしましては、コンピューターのリース料、維持費、また電気通信回線の使用料、こういったことを中心として約二百億円を見込んでいる、こういうことでございます。  他方、このシステムにより期待される効果といたしましては、住民サイドでは、全国どこの市町村においても自分の住民票写しをとることができる。また、各種の行政手続での資格申請あるいは授権といった行政手続の際に住民票添付の省略が可能となる。それから、住民基本台帳カード利用した場合にはさまざまな行政サービスや広域的なサービスが受けられる。これはそれぞれの市町村の取り組みによるわけでございますが、そういう取り組みが可能になってくるということでございます。また、希望すれば住民基本台帳カードを身分証明書としてお年寄りとか御婦人が利用できる、こういうことでございます。また、成り済まし転出というものの不正行為をこのカードを使う場合には防止ができる、こういったようなメリットがございます。  その反面、翻って行政サイドにおいては、その分窓口業務の簡素化によりまして窓口人員の一部を他の行政分野、福祉分野などで活用することが可能になってくる。また、国の行政機関においても、システムから本人確認情報の提供を受けられるので事務簡素化効率化が図られるということで、国、地方を通じた行政改革につながるメリットがあると考えております。さらには、将来的ですが、災害時における本人確認情報のバックアップが可能になる、また将来、電子申請、ワンストップサービスなどにおける本人確認活用することが可能になってくる、こういったメリットも想定できるというふうに考えております。
  75. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 いろんなメリットは今の御答弁でわかるんですけれども、この四つだけの情報では結局住民基本台帳事務、今市町村がやっている本籍とか筆頭者とか国保とか国民年金とか、それからあとまた介護保険とか選挙人名簿とかいろいろくっつけてやっています、それぞれ市町村で。そういうものがまた後追い事務になって市町村における事務の複雑化とか増大化というものが考えられぬかなという懸念があるんです。結局、今市町村がやっていることを、この四つにまたたくさんぶら下げていった方がある面では便利がいいわけです、せっかくやられるのなら。だけれども、とりあえず四つだよと言っておって、あとまたこれをぶら下げるという話になっていくといろいろ複雑になるし、後追いになっていくし、その辺を恐らく市町村は皆懸念していると私は思うんです。  その辺の話し合いというのは、例えば市長会とか町村会の方から、先ほど高橋先生がちょっと聞いておられたけれども、どの程度のやりとりが今まであったのか、その辺のお考えを伺いたいと思うんです。
  76. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) お答えいたします。  このシステムにおきましては、お話のようにこのシステムの保有の対象となる情報の範囲をいわば氏名住所性別生年月日の四情報とプラス住民票コードと付随情報といういわゆる本人確認情報に限定して法律で定める、こういうふうにしているわけでございます。住民のプライバシー保護の観点を重視して本人確認のために必要かつ十分なものという考え方でございます。  一つは、この情報の範囲というものを拡大していくかどうかといったことでございますが、今回の法案ではこの四情報プラス、コードと付随情報で必要かつ十分ではないか、このような考え方でおります。その先のことにつきましては、やはり住民基本台帳制度のあり方、あるいはプライバシー保護の観点などを踏まえて慎重に検討していく必要があるだろう、このように考えております。  さらに、これをどの行政分野活用するかということもあるわけでございまして、今回の法案では各省と調整の結果、十六省庁九十二事務における住所確認、また生存確認というものに活用するということで法律案を立案しているところでございます。その後の拡大については、これまでも種々御論議がございますが、他方でプライバシーということも考え、また市町村の実際の需要というものも踏まえながら、これからまずこのシステムを構築し、稼働していく中でまた相談をしてまいりたいと考えております。  なお、それぞれの市町村あるいは地域で共同でさらに住民基本台帳活用することによって情報化に対応していくということについては、可能なようにそれぞれの市町村において条例で定めた場合には、その目的の範囲内で、独自あるいは共同してカード活用することにより高度な行政サービスができる、このような仕組みをカードにはつけ加えておりますので、それによって対応することが可能だと思います。
  77. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 せっかく市町村で三千億かけて住民基本台帳を整備してきている。それで、今度、国が六百億投下してやるわけですから、生き目のいく使い方をしなきゃいかぬと思うんです。今の局長の御答弁だと、四つの情報だけじゃなくて、本人確認情報ということになると、住民基本台帳事務である本籍、筆頭者、国保、国民年金まではそれにプラスするというような御答弁なんでしょうか。
  78. 鈴木正明

    政府委員鈴木正明君) 今回のシステムにおきまして、本人確認するための情報としては、この四情報住民票コードと付随情報ということで必要かつ十分と考えております。
  79. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 四つの情報でいいということですね。  だけれども、今既に法律に基づいて市町村がやっている仕事が先々ついてくるということが読み 取れるわけです。だから、その辺の先が見えないので、市町村が困惑している部分があるので、その辺のお互いの対話をきちっとしておく必要があるんじゃないかということを私は指摘しておるわけで、せっかくつくれば、生き目のいく使い方を、国民の税金を使ってやるわけですから、きちっとやっていただきたいということなんです。どこでも住民票がとれる利便性はあるんだけれども、本当にそういうコストに見合った効果を期待するのであれば、先ほどから申し上げていることをよくお考えいただいて実行に移していただきたいということを私は申し上げておるわけであります。  時間が参りましたので、今の点は要望にとどめたいと思います。ありがとうございました。
  80. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  81. 小山峰男

    委員長小山峰男君) ただいまから地方行政警察委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日、午後は、本法律案の審査に関し、参考人の方々から御意見を承ることといたしております。  参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を承り、本法律案の審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様方からそれぞれ十五分程度ずつ御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人の方々の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、最初に堀部参考人からお願いいたします。
  82. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 中央大学法学部堀部政男です。  地方行政警察委員会におきまして、住民基本台帳法の一部を改正する法律案につきまして意見を述べる機会を与えられましたことを大変光栄に存じます。昨年四月九日には本委員会におきまして、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただきました。  住民基本台帳法改正法案で構築することが考えられています住民基本台帳ネットワークシステムに係る諸問題につきましては、これまでにもさまざまな機会に議論してきました。一九九五年、平成七年三月一日に発表されました自治省の住民記録システムネットワーク構築等に関する調査研究委員会中間報告につきましては、幾つかの疑問点を指摘いたしました。その翌年の一九九六年、平成八年三月にまとめられました最終報告になりますと、それらの疑問点をかなり解消するものとなり、また昨年三月十日に閣議決定されました改正法案を見まして、これ以上要望を出しても日本の現行法制度の枠内においては対応は不可能であるように思いました。  まず、中間報告について論じたことを述べることにいたします。  中間報告が発表されるということで全国紙のほとんど、通信社、放送局からコメントを求められました。メディアによって取り上げ方はさまざまでしたが、私が論じたことは次のようにまとめることができます。  まず第一に、住民基本台帳番号制度は、情報テクノロジーの飛躍的発展に伴い、行政情報の電子化が急速に進んできている状況の中で、その一つの応用例であるということです。  第二に、住民基本台帳番号制度は、一九七〇年代前半に議論が頂点に達しました国民総背番号制を連想させますが、総背番号制問題は日本では必ずしも決着を見ていない問題であり、中間報告で提案されている番号制導入に当たっては、国民のコンセンサスを得る必要があるということであります。  第三に、番号制度プライバシー世界的にも多くの関心を集めてきた問題でありまして、今回のような番号制度導入に際してはプライバシー保護の法的整備がなされなければならないということであります。  第四に、プライバシー保護の問題は、情報流通のボーダーレス化が進んでいる中で、日本的感覚のみでは対処することができないような状況になってきており、国際的感覚で国内法の整備に取り組まなければならないということであります。  それぞれにつきまして改正法案でどのようになっているかを見ることにいたします。  改正法案で考えられております住民基本台帳ネットワークシステムは、第一の情報テクノロジーの飛躍的発展がもたらす一つの応用例であると見ることができます。情報テクノロジーの高度利用世界じゅう多くのところで進められておりまして、社会的条件が満たされるならば、我が国としても積極的に推進していくべきであると考えます。  第二の国民総背番号制論議ですが、中間報告の住民基本台帳番号制度ですと、国民総背番号制を連想させてもやむを得なかったと考えます。中間報告に対するマスメディアの批判もこの点にかなり集中していたように思います。こうした批判を受けていると思いますが、改正法案住民票の記載事項として住民票コードを加えることとしまして、その記載の変更請求権を規定するとともに目的利用を制限しています。中間報告で住民基本台帳に記載されているものについて生涯を通じて一つ全国的に重複しない番号が付されるものであることとなっていましたが、これに対しまして改正法案では変更請求権を創設しております。  これはプライバシーの権利の考え方といたしまして、従来ひとりにしておかれる権利あるいは人にほうっておかれる権利とするものから、自分の情報を自分でコントロールする権利とするものを含むものへと発展してきている状況を考えますと、自分の情報を自分でコントロールする権利の一側面ということになりますし、また利用特定目的にのみ厳しく限定しまして、権限のないもの、例えば民間企業の利用を禁止していますので、国民総背番号制という言葉の使い方にもよりますが、公的部門、民間部門の双方において無限定的に利用するという意味で使うといたしますと、改正法案で言う住民票コード国民総背番号制というよりは行政サービス向上のためのコードという色彩を強めていると言えます。  アメリカでも一九三〇年代に社会保障番号、ソーシャル・セキュリティー・ナンバー、SSNが導入されましたが、これは行政サービス本人確認のために使われております。番号は多くの行政分野、民間部門で本人が意識すると否とにかかわらず使われている状況があります。  第三のプライバシー保護の法的整備については、中間報告では何をどうするのか、明らかではありませんでしたが、改正法案では法的措置が講じられています。プライバシーないし個人情報を保護する法的対応の方式といたしましては世界的に見て幾つかのものがあります。  欧米諸国では一九七〇年代初めから個人データないしプライバシーを保護することを目的とする法律が制定されるようになりまして、現在に至っています。それらは、第一に一つ法律で国、地方公共団体等の公的部門と民間企業等の民間部門の双方を対象とするオムニバス方式、統合方式であります。第二が公的部門と民間部門とをそれぞれ別の法律対象とするセグメント方式、分離方式であります。また、第三にそれぞれの部門につきまして特定分野で保護措置を講じるセクトラル方式、個別分野別方式とでもいうものがあります。オムニバス方式の立法例はヨーロッパ諸国に多く、セクトラル方式の立法例は特にアメリカに見られます。  日本では、国レベルで一九八八年に行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律が制定されましたが、この日本の個人情報保護法は国の公的部門のみを対象とするセグメント方式をとっております。アメリカには民間部門を対象とするセクトラルの法律がかなりあります。  今回の改正法案個人情報保護に係る規定は、パブリックセクターに中心を置きつつプライベートセクターにも関係するもので、しかも第三の方式でありますセクトラル方式のものであると考えます。  第四のプライバシー保護に関する国際的感覚による国内法の整備についてでありますが、一九八〇年のOECD、経済協力開発機構のプライバシーガイドラインや、一九九五年に採択されて九八年に発効いたしましたEU、欧州連合の個人情報保護指令等が重要な意味を持っています。  OECDでは、一九八〇年にプライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告が採択されました。この理事会勧告は、一方で情報の自由な流れ、フリー・フロー・オブ・インフォメーションと言っておりますが、これは言いかえますと情報利用ということにも通じますが、こうしたものをいかにして確保するかということと、他方でプライバシーを保護するためにはどうすべきかに配慮しまして、その調和、バランスをとろうとしているものであります。その附属文書の中の八原則というのが世界的に有名になりました。お手元の資料に八原則等を掲げておりますので、ここでは省略させていただきます。  私は、現在、OECDの情報セキュリティー・プライバシー作業部会の副議長を務めておりまして、一九八〇年のプライバシーガイドラインをグローバルネットワーク時代にどのように適用するかなどを検討しております。そのような経験も踏まえまして、今回の改正法案で具体的にどのように対応するのかということも明らかにすることができますが、ここでは割愛させていただきます。  住民基本台帳法改正案をめぐる議論は、改めて個人情報プライバシーの保護のあり方論に対する関心を呼び起こす結果となりました。私は、五月六日に衆議院地方行政委員会でこの改正法案について意見を述べましたが、そのときに国会で熱心に議論されていることを肌で感じました。  私自身は、これまでにも研究の場、国際機関の場、関係省庁や団体の場、さらには地方公共団体の場で、さまざまな機会にそのあり方論を展開してきました。関係省庁にまたがる場としましては、高度情報通信社会推進本部電子商取引等検討部会がありました。ここでは一九九七年九月から一九九八年六月にわたりましてプライバシー保護についても検討しまして、政府には、民間による自主的取り組みを促進するとともに、法律による規制をも視野に入れた検討を行っていくことが求めらると要望いたしました。  高度情報通信社会推進本部は、昨年十一月九日、プライバシー保護に関する部会報告の記述をほぼすべて取り入れた上で、高度情報通信社会推進に向けた基本方針を決定し、また本年四月十六日、この方針に基づきまして、具体的かつ明確な目標、スケジュールを示したアクションプランを決定いたしました。このアクションプランで、個人情報保護のあり方を検討するため、平成十一年度中に高度情報通信社会推進本部のもとに検討部会を設置する旨が定められました。その後、六月十五日に衆議院を通過いたしました住民基本台帳法改正法案審議過程で、民間部門を含めた個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えていくことの必要性が強く認識されるに至りました。これを受けて、平成十一年、ことしの七月十四日に個人情報保護検討部会の設置について高度情報通信社会推進本部長決定がなされまして、個人情報保護検討部会の第一回会合が先週の金曜日、七月二十三日に開催されました。私はその座長に選ばれました。  これまで非常に多くの関係省庁やさまざまな場で検討をしてきておりますので、そうした経験なども踏まえまして、日本社会にふさわしい個人情報保護方式を構想していきたいと考えています。  以上で私の意見表明を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  83. 小山峰男

    委員長小山峰男君) どうもありがとうございました。  それでは次に、内野参考人からお願いいたします。
  84. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 憲法学者の内野と申します。  皆様のお手元に「住民基本台帳法改正案をめぐって」と題する三枚つづりのものがあろうかと思いますが、大体これに沿って話してまいります。  「はじめに」ですけれども、最近の私は政策テーマごとに是々非々で臨む中道派を自称しております。それで、今回の法案に関してですけれども、現在、法案を成立させて新しい制度をつくる必要性が高いとは必ずしも言いがたい面があるのではないかというふうに感じております。  確かに、一般論といたしましては、社会のさまざまな領域においてコンピューター化を進めるということはすばらしいことだと思いますけれども、しかしこのことを考慮しましても、今回の新構想の推進につきましては慎重に検討し直されるべき点もあるのではないか、このように考えているわけです。もちろん、今回の法案が想定する制度につきましては憲法違反だとかそういうことは到底言えないと思うわけですけれども、やはり少し疑問を感じるわけです。  それで、二として「問題を考える二つのレベル」というふうにありますけれども、今回の法案に関しましては次のような二つのレベルの議論が必要だと思うわけです。  第一のレベルですけれども、それはこの法案を純粋な住民基本台帳コード番号と言ってもいいでしょうけれども、以下単にコードと言うことがありますが、そういう住民基本台帳コードにかかわるものとして理解した場合です。この場合に言えることというのは何かといいますと、莫大な費用を使って制度をつくる割にはメリットが非常に大きいとまでは言えないのではないかということです。今回の法案ですと、住民票にかかわる国民の側の申請その他の手続をより便利なものにするというねらいが含まれていようかと思いますが、そこにも少し限界が感じられます。  例えば、居住地以外の地域でも住民票写しをとれるということが新しい制度一つのうたい文句になっているようですが、しかしそれは本籍地や続き柄などの欄が省略されて空白になっているような種類の住民票にほかならないわけです。このような種類の住民票で足りる場合というのは、省略のない住民票が必要な場合と比べてどれほど多くあるのであろうか。もしかしたら、この二種類の住民票というのは必要な場合がそれぞれ大まかに言って半々ぐらいあるのではないか。そうだとしますと、遠隔地からでも住民票写しがとれるというメリットはもしかしたら半減するのではないか、そういう不安があるわけです。  次に、第二のレベルですけれども、今回の法案につきましては、コード納税者番号として利用することも含めまして、共通番号制の推進に向けてのワンステップといいますか、基礎固めを意図したものではないかというふうに考えた場合であります。  その場合ですと、数年後に法律が再び改正される可能性があるということも頭に入れておくべきでしょう。例えば納税者番号制への転用を図るのであれば、個人コードを取引先に知らせることの必要性などからいいまして、法案の民間利用禁止条項を再改正しなければならなくなるはずです。このような将来の展望まで考えますと、莫大な費用を使った制度づくりもそれなりにうなずけるわけです。  しかし、今度は共通番号制の是非ということが問題になり得ます。確かに共通番号制というのは効率化という点でメリットを持っていると思います。しかし、効率という価値だけを重視するのは疑問です。共通番号化というのは、理屈の上では一個人に関するさまざまな分野のいろいろな情報が合体されて一覧できるような状況を将来つくり出してしまうおそれを少しはらんでいると思うわけです。近い将来、それが部分的にせよ現実化するかどうかはさておくとしてもです。そこで、そういうおそれの余りない分野別の番号制の方がより望ましいのではないかとも感じられるわけであります。  なお、比較の問題として言いますと、住民基本台帳コード制よりも納税者番号制の方が少なくとも徴税事務効率化に大いに役立つなどの点で必要性が高いと言えるかもしれないわけですが、ただ、その場合でも、納税者番号というのを別建てにするというのが一案になろうかと思うわけです。  次に、三としまして、「個人番号化について」です。  先ほど述べました二つのレベルのどちらにせよ、国民個人番号化とかプライバシーにかかわる問題が出てきます。特に国民全員に番号をつけるということにかかわりまして、それぞれの国民番号で扱われることに対する不快感だとか将来に向けての不安が表明されたりもしているわけです。法案が成立した場合に果たしてコードがどの程度まで日常生活に浸透してくるのだろうかということが問題になりますけれども、この種の懸念は分野番号制よりも共通番号制の場合の方がはるかに大きいものになると思います。  ところで、法案ですと、市町村長はコードを記載したときは速やかに本人に通知すべしというふうに規定されているわけです。そうだとしますと、この番号コードというのは何よりも行政の側が内部的に使うものであるというよりも、むしろ国民各自が押さえておくべきものであるということになるのかもしれません。ただ、そういいましても、コード国民の社会生活にもたらす影響は当然に大きいものになるとは言えないと思います。  また、少し細かい話になりますけれども、仮に法案が通った場合、住民票申請用紙に自分の番号コードを書くというスタイルになるのかどうか、仮にそうなった場合、自分のコードを記載した者とそうしなかった者との間で行政サービスに差が出るということがあり得るのか、そういったことも問題になろうかと思います。参考までに言えば、先日の衆議院での附帯決議の中には、カード所有の有無によって行政サービスに違いが生じることのないようという文句が含まれています。  確かに、将来、コードの大幅な活用が行われるようになりますれば、いわばコードの重みが日常生活にのしかかってくるということもあり得るかもしれません。しかし、当面は、個人コードの日常生活への浸透のおそれということについて、それほど強い警戒心を持って臨む必要はないと思うわけです。現在は、少なくとも、すべての国民カードの所持を義務づけるいわば国民監視システムが将来でき上がるおそれがあるといった言葉で危機をあおり立てるにふさわしいような状況ではないと思うわけです。確かに、一般論としましては、法案反対運動において、この法案は将来こういう方向に持っていかれるおそれがあるから問題であるという論法も成立するのかもしれませんけれども。  次に、四としまして、「プライバシーについて」でございます。  プライバシーにとって重要なことといえば、一個人に関するさまざまな情報がそれぞれの担当の部門で相互に結びつき合うことなく別々に保管されたり処理されたりしていることだと思います。時に、市町村役所は住民の個人情報を完全に握っているかのように言われることがありますが、しかし、電話番号、勤務先、病歴、免許証の有無などのような情報は、役所ではなくてそれ以外のいろいろな場所で別々に握られているわけです。  ただ、私の考えですと、憲法上のプライバシーの権利といいますのは、いわゆるデータ結合を全面的に禁止するというところまで強い要求を持つものではなくて、せいぜい無関係なデータ同士の結合を禁止するにとどまると見るべきだと思っております。裏から申しますと、密接に関係したデータ同士を合理的な理由で結合するということについては、ある程度まで認める余地があるのではないかと考えるわけです。  それで、私は、今回の法案とのかかわりにおきまして、国民個人プライバシーの危機を大げさにあおり立てるということには必ずしも賛成できないわけです。それは二重の意味においてでございます。  第一に、今回の制度の構想におきましては、コンピューター回線に載せられる個人情報が外部に漏れるのを防ぐための適切な措置がとられているというふうに思われます。と申しましても、恐らく一〇〇%安全ということにはならないでしょうけれども。そもそも社会では一〇〇%安全ということは期待しにくいことだと思うわけです。  この場面におきましてプライバシーの侵害のおそれを問題にするとしましたら、それは主に制度の運用のプロセスで犯罪行為が行われることを想定した議論になるのではないかと思うわけです。仮に犯罪行為を想定するのであれば、現在の住民基本台帳制度のもとでもプライバシーが侵害されるおそれはあるわけです。ただ、新しいコンピューターネットワークシステムの導入によりまして侵害のおそれが高まるとかプライバシーの侵害の規模が大きくなると言える限りでこの種の反対論も成立する余地はあるのかもしれませんが。  二番目に、個人情報につきましては、秘密性の高いものと低いものという違いといいますか、区別を語ることができそうです。  今回問題になっておりますいわゆる基本四情報、すなわち氏名性別生年月日及び住所、こういった情報は、原則的、大まかに言えば秘密性の高いものとは言えません。もっとも、有名なテレビタレントなど一部の人たちは現住所に秘密性を感じることもありましょう。  仮に民間の業者が多数の人々の基本四情報を何らかの仕方で入手し得たとしましても、それに伴う被害は、例えばダイレクトメールが郵送されてくるといった比較的軽いものにとどまると思われます。なお、私は自宅の電話番号に秘密性をかなり感じておりますけれども、それはこの基本四情報には含まれておりません。  ちなみに、もっと秘密性の高いプライバシー情報といえば、それは個人の病歴などを指すわけです。まさにこのような重大な秘密が漏らされたり公開されたりすれば、それこそ甚だしい人権侵害となるわけです。  それで、個人情報保護のための法体系の整備ですけれども、それ自体として検討すべき重要課題です。  衆議院での修正案におきましては、この法律の施行に当たっては個人情報の保護に万全を期するために速やかに所要の措置を講ずるものとするという一項が加えられております。ここに言う個人情報の保護とは、この法律の運用に直接関連する限りでのものだというふうに理解しております。  最近、包括的な個人情報保護法の制定という課題が今回の法案とのかかわりなどで話題になりつつあります。ただ、それは今回の法案の附属物のような扱いを受けるべき種類のものではないと思います。この包括的な個人情報保護の課題は、確かに今回の法案の抱える問題と重なり合うところがあるわけですけれども、ただ、この課題はもっと広いたくさんの問題をカバーするものです。  思いますに、現在の日本では、刑法上はプライバシーの保護がやや不十分な感じがします。例えば、そこでは医者が患者の秘密を漏らすと犯罪になりますけれども、民間の病院に勤務する事務職員などが患者の秘密を漏らしても犯罪にはなりません。また、いわゆる盗撮に対する刑法的規制も重要課題となります。  さらには、刑法を離れて言いますと、民間の業者などによる個人情報の扱いについて、名簿業者などによる諸個人電話番号情報などの勝手な公開とか、あるいは防犯用の監視カメラで撮影されたビデオテープの扱いなどに関して厳しい法的規制が必要かと思います。  ただ、これらは住民基本台帳コード制とは異なった領域の問題であって、それとして検討されるべき課題だと思います。  以上です。どうもありがとうございました。
  85. 小山峰男

    委員長小山峰男君) どうもありがとうございました。  それでは次に、安田参考人からお願いいたします。
  86. 安田浩

    参考人安田浩君) 安田でございます。  コンピューターネットワークを専門にしております。その関係で、いつも絵を使って御説明するたちになっておりますので、きょうも申しわけありませんがOHPを使わせていただきたいというふうに思います。  私の内容につきましては、一枚そこにレジュメを書いてございます。基本的にはコンピューターネットワークということから見てどういうふうに考えるかという私の意見を述べさせていただこうということでございます。  まず、ポイントとしては、二十一世紀はデジタルネットワークということが社会の基盤になります。そういうことをかんがみますと、こういう形でネットワーク化するということは大変いいことであるというふうに信じております。そういう意味で、ネットワーク化ということをよく見ますと、日本は残念ながらややおくれが目立つということがございますので、この住民台帳法のネットワークシステムはそれを一歩前に進めるということで大変弾みがつく可能性があるというふうに思っている次第であります。  では、ネットワーク化ということがなぜいいか、なぜポイントかということなんですが、そこに四点ほど書きました。  まず一つは、当然のことながらこれは十分論議されておりますので私が申し上げることではありませんが、住民サービスが大変便利になるということはあると思います。これは既にドキュメントに相当るる書いてございますので、ここで申し上げる必要はないと思います。  次に、住民台帳とは直接関係ないかもしれませんが、電子商取引ということ、それからデジタル経済基盤の確立ということにかなり大きな影響があるということを考えてみたいというふうに思います。  ちょっとこちらを見ていただきたいんですが、見えますでしょうか。(OHP映写)  こんな格好で、見ていただくとわかりますけれども、現在は電子商取引あるいはそれ自身の効果というものはまだそれほど大きくはありませんが、二〇〇三年あるいは二〇〇五年という時点におきましてはそれがかなり大きな額を占めるだろう。例えば、情報通信でいいますと今五十兆円が九十八兆円にふえる、電子商取引に至ってはほぼ十倍の額にふえてくるだろうというふうに思います。トータルで約二百兆円程度、あるいはもうちょっとの額というものが社会の中で取引される、インターネット市場に入ってくるということでありまして、多分二〇〇五年時点ではGNPの四〇%近い部分がこういったネットワークを通じたビジネスということになるんではないかというふうに思っております。  それで、その内訳はどうなっているか、あるいはアメリカと比較してどうかということをちょっと調べたわけであります。  まず、情報量がこれだけふえるよということは世界の常識という状況になっております。中身は何かということはこれから申し上げます。ただ、電子商取引の中には企業対企業、BツーBと呼んでおりますが、そういう部分と、それから企業とコンシューマー、つまり一般ですね、それとの商売の両方があるというふうに思っております。  これでいきますと、ちょっと単位が違いますので申しわけありませんが、こちらが大体米国で百五十兆円から二百兆円ぐらいになる、日本はそれに対して五十ちょっとくらいで大体二分の一から三分の一ぐらい。こちらの方は二十兆円ぐらいでちょっとスケールが大体五分の一ぐらいに下がってしまうんですが、一応そういう格好で考える。これだけの額のものが動き出すということですが、今非常に小さいわけです。これもこういうふうに伸びていくわけですが、日本の伸び方というのはどうも今の予測ではうまく伸びていかないという状況で、この辺のところをどういうふうに考えていくか、こういう大きな商売と大きなビジネスというものに結びつけていくためにはどうしたらいいかということを日ごろ考えざるを得ないというふうに思っております。  それで、なぜそういうことを気にしているかということなんですが、こういう絵をちょっと見ていただきたいというふうに思います。  私は、前に電子現金ということも日本銀行さんとちょっと一緒になっていろいろやらせていただいたんですが、基本的にIP業者、情報提供業者でございますが、例えば映像であるとかあるいはソフト、プログラムといったものであるとか、あるいは電子ライブラリーで本とかニュースとか、そういうものを考えてみたときに、現在紙に書いてこういうものをつくっておられる方は多分いらっしゃいません。したがいまして、すべて電子的情報になっているということであります。幸いなことに、ネットワークはかなり進んでおりましてデジタル化されております。したがって、こういう情報ネットワークを通じて配るということについては今何の障害もないという状況になっていると思っていただいて結構かと思います。  ただし、これだけではビジネスにはなりません。つまり、配ってあげてお金をどうする、代価をどうするかということになります。現状では、残念ながら安全な支払い方法というのが必ずしもうまくできておりません。クレジットカードにしても問題があるし、デビットカードにしても問題があるし、それからプリペイドカードにしても問題があるという状況で、この辺のところを整備しなければいけないということで、安全な電子現金というのは必要だということになっております。こういうためには、結局のところ、ネットワークというものをうまく使いこなすすべというものを皆さんが持たないといけないというふうに思っております。  それはなぜかということをさらに砕いて申し上げますと、例えばテレショッピングということを考えたときに、パソコンで注文を出しそしてお金を引き落としてもらうという形でありますが、お店で対面でやっているときには自然のうちに、お店に来た本人の顔を見て、あるいは様子を見て、あるいは現金そのものが相手が正しいということの証明になっているということで、今までそんなことは意識もしていなかったんですが、本人が確実な人かどうかとか、そういったことの証明を自動的にやっている。  ところが、ネットワークでこれをつなぎますと、これは見えないわけです、この人は。したがって、銀行に注文が来たとき銀行は何をやるかといえば、この人は正しい人で信頼できる人ですかということをだれかに求めなければいけないということで、一番重要な問題はこの認証機関というものを設けなければいけない。  これは、現在いろんなところで議論されております。これが例えば今の本人証明ということに結びつくかどうかは、これから議論の必要があると思います。少なくともそういう格好でやらなければいけない。これを、一々本人が出向いてこいよという議論では、全く電子商取引ということの効用が薄れてしまいます。したがいまして、こういった形でネットワーク化するということは、いろんなものをネットワーク化して簡単に短時間で、しかも安全に処理できるということをしなければいけないという状況かというふうに思っております。  先ほどネットワークが幸いにできているというふうに申し上げましたが、ネットワークではこんな数字もございます。少なくとも、もう日本は米国との間は非常に太い回線で結ばれるようになりますし、またデータに関する情報もこんな格好でどんどん伸びてくる。多分この辺が電子商取引としてどんどん伸びてくるわけであります。そういう意味では、そういう様相ができ上がってくるというふうに思います。  ということで、そこに利点として書きましたように、まず電子商取引が将来の大きなビジネスになるであろうことについて、それの応援ということで大変結構なことだと。  それからもう一つは、ネットワークが伸びないといけないわけです。そのときに、こういう住民台帳ネットワークの導入があれば、そのネットワーク関連機器、ミドルウエア、それからアプリケーションソフトといったものの伸びとあるいは開発研究というものにインセンティブがわくわけです。そういったことで、かなりほかのものに影響するネットワーク関連というもののレベルアップが図れるというふうに思っております。  もう一つ、大きな話ですが、今まで我が国は対面でやるということがポイントになっておりまして、したがってネットワークで何かやるということは性向としてまだまだ少ない。現在、パソコンのネットワークが千二百万台ないし千五百万台と言われておりますが、これはパソコンを使える人がネットワークにつないだだけであって、まだパソコンの使えない人がそれを使おうという状況にはなってきておらない。  日本のネットワーク化率は国民の約一三%と言われております。北米、特に米国におきましてはこれは三〇%を超えております。全体の状況でいいますと、あるものが普及するとき、二〇%を超えると必ず急激な伸びを示すということが言われております。ですから、日本ではまだまだ一三%ですので、これは今伸びるか伸びないかというクリティカルな状況にある。それに対して米国はもう伸びる一方に出てきている。  今日、不況感がございますが、それの一つは、日本ではこれからどう伸ばしていくかという大きい意味の目標がやや失われている。それに対して、米国においてはインターネットビジネスということが絶対伸びるんだという状況が明確になってきて、それに対して大きな投資と情熱というものがかけられていることに少し違いがあるのかなというふうに思っております。  それからもう一つ、ちょっと我が国の技術動向というものをごらんに入れたいと思いますけれども、コンピューター関連の技術でこんなことになっております。  少なくとも光あるいは携帯機器というものと、それからプロトコルにつきましてはかなり力を持っているということ。特に次世代インターネットの基盤プロトコルであるIPv6という新しいプロトコルが標準化されました。これについては日本はかなり貢献をしておりまして、その中身について、技術について日本が大きな専門家になっているというところであります。一方、オペレーティングシステムであるとかあるいはセキュリティーポリシーに関する技術というものについては、残念ながらややおくれをとっているという状況にあります。  したがいまして、これを伸ばしながらこちらの力をつけるということをやることによってネットワーク化の時代に対処できるようになるんだろう。それには住民台帳ネットワークというものが一つの大きなトリガーになるんではないかというふうに思っております。  セキュリティーの問題、いろいろありますが、書類を読ませていただいた限りにおいて、技術的な面から見ればセキュリティーについて大きな問題があるというふうには私自身は思っておりません。あるとすれば運用面、それからそれを使う人の問題かなというふうに思っておりますので、これについては運用形態というものをどうしていくかという論議の中で対処していくということが大事なのではないかというふうに思っております。  ここにちょっと書きましたように、少なくともこの辺の技術、この辺の技術というものをさらに磨いていかないと、ネットワークは今非常な勢いで変わりつつあります。毎年毎年進歩があります。そういう意味での産官学共同体制によるネットワーク技術の向上ということ、それからもう一つはセキュリティーポリシー、どういうポリシーを持ってそれを運用していくかということについての議論というものを高めることが大きな重要なかぎではないかというふうに思っております。  以上で意見を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  87. 小山峰男

    委員長小山峰男君) どうもありがとうございました。  次に、前川参考人からお願いいたします。
  88. 前川徹

    参考人前川徹君) 情報処理振興事業協会セキュリティセンター前川でございます。  本日はネットワークのセキュリティーの面から意見を述べさせていただきたいと思います。  お手元にレジュメがあるかと思いますけれども、そこに書いてある順番でお話をさせていただきたいと思います。(OHP映写)  まず最初に、不正アクセスとは何かということでございますけれども、これは通産省の告示であります不正アクセス対策基準の定義ですが、システム利用する者が、その者に与えられた権限によって許された行為以外の行為を意図的に行うこと、こういうふうに書かれてございます。  ここには二つありまして、一つ本人以外の人間が利用する。例えば、私が利用しているコンピューターをだれかが前川だと偽って利用するということでございます。普通はユーザーIDとパスワードでユーザーを識別しておりますので、私のユーザーIDとパスワードを知ってしまえば、コンピューターは第三者を私だというふうに思ってしまうわけであります。  それから二つ目は、許可されていない資源にアクセスをする。これは、私はシステムの管理者ではありませんからシステムの管理者が扱っている領域には入ってはいけないわけですけれども、その壁を乗り越えて入ればこれも不正アクセス、こういうことになります。  次は、不正アクセスの現状ですけれども、これはJPCERTと言いまして、日本のコンピューター緊急対応センター、不正アクセスの被害届け出あるいは相談を受け付けている組織でございまして、九六年の秋から活動しているボランタリーな組織でございます。レジュメの方の名前をちょっと私ミスタイプをしてしまいまして、正式にはJPCERT/CCでございます。  ここに届けられた不正アクセスの件数をグラフにしたものでございますが、九七年度を合計いたしますと四百二十九件、九八年度の合計が千三十九件ということで、昨年度は一昨年度の二・五倍と伸びているわけですが、四半期ごとに見ますと、ここ最近少しちょっと落ちついてきているかなという感じが見受けられます。  このJPCERTはアメリカのCERTという組織をまねてつくられたわけですけれども、アメリカには幾つか緊急対応センターがあるわけですが、一番有名なのがこのCERT/CCでございます。八八年に設立をされたんですけれども、これで見ていただきますと、九四年に二千件を超えまして、それからしばらく落ちついていたんですが、九八年に三千七百件と大変大きな数字になっております。  これらJPCERTにしろCERTにしろ、ここに届けない人あるいは企業というのもございますので、一応これは氷山の一角だということも言われております。ただ、ここに届けられたものがすべて本当にコンピューターの中まで入ってファイルを改ざんしたり盗んだりしたかというと、そうではございませんでして、未遂のもの、入り口まで来たもの、怪しげな行為があったということだけのものも入っておりますので、それをお含みおきいただければと思います。  次は、どういう人がどういう目的でそういう不正アクセスをするかということなんですけれども、クラッカー、いわゆる悪意を持ったハッカー、これは多くは不正アクセス行為自体が目的であることが多いというふうに考えられます。そのほかにも、産業スパイならば恐らく情報入手であるとかあるいは妨害行為を目的とするでありましょうし、あるいはここには書いてございませんけれども、テロリストであれば国家の転覆であるとか社会の騒乱をねらって重要な社会インフラに不正アクセスをするということももちろん考えられるわけでございます。  次は、不正アクセスの手段でございますけれども、非常にベーシックなのが一番最初に書いてありますソーシャルエンジニアリングと言われる方法でございます。訳すと社会工学と言うことになってしまいますけれども、実際には、人をだまして不正アクセスに必要な情報を入手するというものでございます。  例えば、セキュリティーに疎そうな会社の役員の人に電話をかけて、私はシステム管理者です、ただいまシステムに障害が発生しました、あなたのパスワードを復旧のために必要なのですぐ教えてくださいと言われて、うっかりパスワードを口にしてしまう、こういうこともあり得ます。あるいは逆に、今度は出張中の役員のふりをして、今広島からシステムを使おうとしているんだけれどもつながらない、おれのパスワードわからなくなっちゃった、急いで仮のアカウント、口座をつくってIDとパスワードを発行してくれ、こう言いますと、気の弱いシステム管理者だとはいはいわかりました、すぐつくりますと言って、知らない人のために入り口をあけてしまうということもあり得るわけでございます。  それから、簡単な方法として、簡単でもないんですけれども、盗聴をするという方法もございますし、あるいはパスワードが不適切なパスワード、例えば大変短いパスワードでありますとか、あるいは自分の名前、ペットの名前、奥さんの名前、あるいは数字だけ、あるいは辞書に載っているような単語、あるいはそれを組み合わせたものを使っておりますと簡単に破られてしまいます。パスワードは八文字、それも英数字、英文字、大文字、小文字、英記号を合わせて、辞書に載っていないようなそういうものをつけていただくというのが適切かというふうに思います。  また、ここにはいろいろな方法が書いてございますけれども、主にはソーシャルエンジニアリングあるいは辞書攻撃等によりまして人のパスワードを手に入れて、成り済ましによってコンピューターに入ってくる。通常、プロですとコンピューターに入ってきますとパスワードファイルを取得します。ルート権限をとると言いまして、管理者になってパスワードファイルをとる、ファイルを改ざんするあるいは不正コピーをするというようなことをした上で、自分の足跡が残らないように、ログと言いましてコンピューターがとっている記録ですけれども、それを改ざんあるいは破棄して、それでコンピューターから出ていく、こういうことをやるわけであります。  次は、不正アクセスの最近の傾向でございますけれども、三つほど挙げました。  一つは、ツールと言いまして専用のプログラム、それを利用した攻撃が大変多く起きております。一つには、そういうツール、プログラムがインターネット上にあって、それを簡単にダウンロード、自分のところに持ってきてしまえる。あるいは最近CD—ROMといいまして、これは大変大容量の記憶媒体ですけれども、市販の図書がそういうものをつけておりまして、その中にこうしたツール、専用のプログラムが入っているものがございます。そうやって簡単に手に入るようになったものですから、おもしろ半分でやっている人が結構多いのではないかというふうに思っております。ただ、ツールを使って攻撃をする方法というのはもう世間に知れ渡っていますので、それに対する対処方法も十分わかっているということでもございます。  それから二つ目の傾向としては、ポートスキャン、これもツールを利用するわけです。ポートスキャンといいますのは、コンピューターはいろんなサービスを提供できるものですから、そのサービスごとに窓といいますか、ドアがあると思っていただければいいんですけれども、一つの家に幾つかドアがあるようなイメージで考えていただければいいんですが、使わないドアは閉めておけばいいんですけれども、うっかりあけているケースがあります。ですから、ポートスキャンというのはその家の周りをドンドンとノックをしてあいているドアがないか探すというプログラムでございます。これをもちろん自動で走らせることが今はできるようになっております。  それからもう一つ三つ目の傾向として、ウェブページの改ざん、これが多発しております。なぜウェブページがねらわれるかということなんですけれども、この五月から六月にかけまして、アメリカでかなりウェブへの攻撃が発生いたしました。六月にも毎日新聞のマイニチインタラクティブあるいは朝日新聞のアサヒ・ドット・コムがページの一部を改ざんされたというふうにマスコミで伝えられております。  なぜウェブサイトがねらわれるかといいますと、一つ情報提供を目的にしておりますので、外部からアクセス可能なところに置かないといけません。したがって見つけやすい、ねらいやすいということになります。だからといって、簡単に改ざんできるわけではございません。そんなことだったら大変なことになりますので、普通は改ざんできないようにきちっと設定をしているわけであります。  それから、クラッカーは自分がどこかのサイトを改ざんしたというのをやっぱり自慢したいわけでございまして、そういう意味で、ウェブサイトというのは外からいつでもアクセスできるようになっていますので、改ざんをすればその事実がすぐに世間に知れ渡る、こういうことで自己顕示欲の強いクラッカーの標的になりやすいということが言えるのではないかというふうに思います。  具体的な事例を少しお見せしたいと思います。  これはニューヨーク・タイムズの普通の紙面でございます。これが一九九八年の九月にクラッカーに襲われまして、どうなったかといいますと、こんな画面にされてしまいました。あるいは、次にお見せするのは司法省のウェブサイトですけれども、司法省のウェブサイトも九六年の八月に襲われまして、ユナイテッド・ステーツ・デパートメント・オブ・インジャスティスというふうに書きかえられてしまっております。あるいはアメリカのCIAも、九六年の九月ですけれども、CIAのはずがセントラル・スチュピディティー・エージェンシーと、もう完全にばかにされていますけれども、そういうふうに書きかえを行われてしまっております。  では、こういったものにどういうふうにして対処すればいいのかということですけれども、技術的な対策と管理的な対策の二つに分けられるのではないかというふうに思っております。  技術的な対策としましては、ファイアウオールあるいは監視ツールを利用する。それから、セキュリティーホールといいまして、ソフトウエアの中にはセキュリティー上の欠陥が発見される場合があります。言ってみれば建物を囲っている塀に穴があいているようなものでございまして、ですから穴が見つかったらすぐふさげばいいんです。セキュリティーホールを見つけたらそれをすぐにふさぐ。そういう情報というのは、やはり一般に出回っていますインターネットあるいはJPCERT、CERTからそういうアドバイザリーが出ておりますので、そういう情報を見て穴をすぐにふさぐ。  それから、接続対象の制限といいますのは、そのシステムを本当に利用する人だけが利用できるように利用者を制限する、あるいは不用意に電話回線をつながない。電話回線をつなぎますと、外からパソコンと電話回線を持ったクラッカーがどこからでも入ってこれますから、そういう電話回線を不用意に口をあけないということです。  それから暗号技術の利用、これは通信中に盗聴された場合に内容がわからないようにスクランブルをしてしまう。こういう技術を使えば、万が一通信中に盗聴されても内容がばれる、他人に知れることがないということになります。  それから認証技術、これは普通のコンピューターですとIDとパスワードということになりますけれども、そのほかにもデジタル署名でありますとかICカードを使った形での本人認証という方法を行うことができます。  それから二つ目でございますけれども、管理的対策と書きましたが、組織としてのセキュリティーポリシーをきちっと決めていただく、そのマニュアルを整備する、そしてそれをみんなで守っていくということが大事であります。  それから、非常に基本的なことなんですが、パスワードの管理を徹底する。先ほども申し上げましたように、短いパスワードでありますとか、あるいは辞書に載っているような単語は決して使ってはいけないんです。理想としては大文字、小文字、数字、英記号をまぜまして、八文字以上の意味のない文字列をつくっていただく。しかし、そういうのをつくっては覚えられないからといって、紙に書いてパソコンの近くに張ってしまっては全く意味がございません。メモをするなら、せいぜい命の次に大事な自分の手帳か何かに書いていただくのが一番いいのかなというふうに思います。  それから、不正アクセス対策技術というのはたくさん出ておりますので、そういう技術をきちっと正しく使う。ファイアウオールとかを買ってきて設置してあります、ちゃんと設定しましたか、いや買ってきたままです、これでは大変危険なんです。ですから、ちゃんと技術を知って正しく使うということが大切であります。  それから、クラッカーは一番弱い人をねらってきます。弱いところから入ってくるんです。組織としてのセキュリティーの高さというのは平均値ではありません、一番低いところがそのセキュリティーレベルになります。そういう意味では、利用者全員にセキュリティー対策の重要性を知っていただいて、パスワード管理なりいろんなものをきちっと守っていただく。  最後に書いてあるのは、そういうことをしなかったら、あるいは何か起きたら、内部犯罪というのは実はアメリカの場合八割、九割と言われているんです。不正アクセス犯罪の八割、九割は中の人あるいは元中の人が関与しているというふうに言われているんです。そういう意味では、罰則というのも大変大事なのかなというふうに思います。  それで、これはもう安田先生からお話がありましたけれども、インターネットというのはぐんぐん伸びておりまして、これは世界につながっている接続ホストコンピューターの台数でございます。五年前と比べますと、これは全世界ですけれども、大体二十倍ぐらいになっているということになります。このホストコンピューターというのは、例えば私が家で使っているパソコンとかオフィスで使っているパソコンは含まれておりません。いわゆるほとんどがサーバーだと思っていただければいいんですけれども、こちらは最後にjpとついたホストを数えたものですけれども、jpというのは日本ですが、九九年一月時点で百六十八万七千台に達しておりまして、五年前と比べますと約四十倍に伸びている、大変な勢いで伸びているわけでございます。  それで、これも安田先生から電子商取引は広がっているんだよというお話がありましたけれども、ちょっと具体例を御紹介したいと思います。  もうアメリカではインターネット上で物やサービスを買うというのが当たり前になってきております。例えば、パソコンの直接販売で有名なデルコンピュータ、インターネット上での売り上げは一日一千八百万ドル、何かけた数を間違えているんじゃないかというふうにお思いの方がいらっしゃるかもしれませんけれども、二十一・六億円を毎日売り上げております。あるいはアマゾン・ドット・コム、これも世界最大の本屋ということで大変有名になりましたけれども、ここは昨年九八年に、本だけではなくてCDあるいはビデオも売っておりますけれども、六・一億ドル、七百三十二億円の商品をインターネット上で売っております。あるいはチケットマスターといいまして、これはスポーツの試合とかショーとかイベントのチケットを売っているところですけれども、この二月、一カ月で一千万ドル相当のチケットをネット上で販売しているそうであります。また、エクスペディア、これはいわゆるトラベルサービスといいまして、航空券あるいはホテルあるいはレンタカーの予約ができるサイトなんですけれども、一週間で一千六百万ドル、十九・二億円相当の旅行関係の予約を取り扱っている、これはことしの四月の数字でございます。  こうやって、もう既にインターネットの上で大変いろんなビジネスが行われるようになってきております。  インターネットは安全なんですかとよく聞かれるわけですけれども、今までずっと私はインターネットは危険ですと、セキュリティセンターの所長でございますので、立場上危険ですと言い続けてきたんですが、最近少し反省をしております。といいますのは、アメリカではああやって電子商取引が盛んになって、ほとんどクレジットカードで決済が行われているんです。日本でクレジットカードを入れるのは大変危険だというふうに思われているのは、どうも我々が危険だ危険だと言い過ぎたせいではないかというふうに思っておりまして、対策をとらなければ、不十分であれば危険、対策をきちんとすれば安全だと。最後に一言申し上げますけれども、人間系の方に実は問題があることが多いということを覚えておいていただければと思います。  それから最後に、済みません、ちょっと時間が超過しておりますけれども、インターネットと専用線を比べますと、今回の住民基本台帳システムというのはインターネットを使うわけではございませんでして専用線を使うということになっております。インターネットというのはだれでもできるオープンなシステムですし、パソコンと電話線があればだれでもすぐに使えますが、セキュリティーレベルは大変低いわけです。専用線になりますと、関係者のみが利用する大変クローズドな閉鎖的なシステムになります。専用線に接続されているコンピューターでないと利用はできません。したがって、セキュリティーレベルは大変高い。その上にファイアウオールを設置し、認証システムを入れ、あるいはデータを暗号化し、アクセス監視をしますということが書いてございますので、私はここまでやればまず技術面から見れば安全だろう、こういうふうに思っております。  以上でございます。ありがとうございました。
  89. 小山峰男

    委員長小山峰男君) それぞれの先生方、どうもありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 自由民主党の岩瀬良三でございます。  四人の先生方には、貴重な御意見をいただきまして、厚く御礼申し上げる次第でございます。  時間が限られておりますので、前段は差しおきまして質問の方に入らせていただきますけれども、我々は専門家でございませんので、いろいろな面で専門家の皆さん方の御意見をいただきながらこの審議をしてまいりたい、整理してまいりたい、そんなふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。  まず、技術的な問題の方からちょっとお聞き申し上げたいと存じます。  安田参考人前川参考人にお聞きしたいと思いますが、コンピューターセキュリティーの問題でございますけれども、住民基本台帳ネットワーク、これはもう御承知のとおり、専用回線を使用した上での本人確認情報の暗号化だとか、コンピューター操作者の厳重な確認とか、いろいろ情報保護をなされておるわけでございます。今までのいろいろなネットワークシステムに比べましてかなり整備されているものがこの法案だろうというふうに思っておるわけでございますけれども、このレベルと申しますか、保護されているレベルという点も含めまして、お二人の方から御意見をいただければと思います。
  91. 前川徹

    参考人前川徹君) 最後にちょっと申し上げましたけれども、住民基本台帳ネットワークにつきましては、専用線を用い、ファイアウオールを設置し、さらに利用者の認証チェックをきちっとし、送信するデータは暗号化をする、さらにアクセス監視を行うということになっておりますので、これは今現在使われております専用線を使って動いておりますシステムと比べても全く遜色のないシステムだ、これらがきちっと機能するように正しく設定、運用されればまず安全と考えてよいというふうに思っております。  もちろん、人間系の方、管理体制あるいは操作する職員の教育といった面が重要であるということは言うまでもないと思います。  以上でございます。
  92. 安田浩

    参考人安田浩君) 一つ数字をごらんに入れたいというふうに思います。(OHP映写)  これは、暗号の問題を考えていただいたときに、暗号に使うキーというものがあります。このキーがどのくらいの長さになっているかということによってセキュリティーレベルが大きく違います。昔は四十ビットぐらいのキーでやっておったんですけれども、まず基本的にそんなものはすぐ破られてしまうという状況にあります。一応、今日の状況では百ビットから百二十八ビットというオーダーにしなければならないということになっております。このオーダーにすれば少なくとも解読ということは基本的に不可能だということになっております。  前川さんの方からほとんど問題ないということをおっしゃいましたが、このシステムを見る限りにおいて、それから今後どういう暗号方式をとるかということについてはさらに検討を加えるということでありまして、最新の最もセキュリティーの高いものを採用していただければ基本的に問題ないというふうに思っております。
  93. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうすると、次に暗号のお話をちょっとお聞きしたいと思っておったところでございますけれども、技術先進国でありますアメリカが暗号技術製品の輸出を制限しておるというようなことも承りました。また、近年緩和しているんだというような話も承っておるところでございます。  前川参考人につきましては、暗号化についてはその権威であると伺っておりますし、また論文もいろいろお書きになっておるというふうに承知しておりますので、暗号というものはどの程度実用化されているのか、また技術の流通、進歩に暗号技術を熟知した人がいれば、例えばアメリカと日本でアメリカのがたくさん進んでいるということであれば、熟知したところであれば日本の暗号が破られてしまうのか、逆に日本は破れないんじゃないか、こんなふうにも素人考えをするんですけれども、その点についてお話を承れればと思うわけであります。
  94. 前川徹

    参考人前川徹君) 暗号の強さを決める要素は二つございます。一つはアルゴリズム、これはいわゆる算法といいますか計算方法です。それからもう一つはかぎの長さであります。このアルゴリズムとかぎの長さ、それぞれが安全でなければいけない、こういうことになります。  現在、使われておりますアルゴリズムというのはすべて公開をされております。ですから、どういう計算をするのかというのは世界じゅうみんな知っているというのが現在使われている暗号のほとんどでございます。なぜ公開をしないといけないかといいますと、アルゴリズム自身にもし欠陥があるとその暗号が使われているシステムすべてが危なくなるんです。したがって、アルゴリズムは公開され、数学者あるいは暗号学者がそれが安全であることを確認しているわけであります。そういうものでないと使われないと言った方がいいかもしれません。  かぎの長さは、先ほど安田先生が御説明されましたように、最近は百二十八ビットの暗号を使うようになってきております。例えば、日本で市販されております暗号メールというのがございます。今手元に持ってきたのはPGPというものなんですけれども、これも百二十八ビットの暗号を使っております。そういう意味では我々のすぐ身近なところでももうそういう製品が出てきております。  また、インターネットをあちこち閲覧されることがあるかと思うんですけれども、それで使っております例えば、製品名を言っていいのかどうかわかりませんが、マイクロソフトのインターネットエクスプローラーであるとか、あるいはネットスケープのナビゲーターといったソフトウエア、これらにも実はもう暗号のソフトは組み込まれております。昔、日本で売られたものは四十ビットだったんですけれども、もう既に暗号の輸出規制緩和が行われて百二十八ビットの暗号が使われるようになってきております。  したがいまして、そういうウエブで電子商取引のサイトへ行ってお買い物をしクレジットカード番号を入れる段階になりますと、その暗号のシステムが自動的に動いて、我々は暗号を使っているとは気づいていないんですけれども、わかるんですけれども、一番画面の左端にはかぎがかちゃっと閉まるんですけれども、そういう絵が表示されるようになっておるんです。我々が意識しなくても暗号のシステムが自動的に動くようになっているわけでございます。  先ほど先生御指摘のアメリカの暗号輸出規制についてでございますけれども、この暗号輸出規制を推進しているアメリカの組織というのはナショナルセキュリティーエージェンシーであったり、あるいはFBIであったりするわけです。彼らの意図といいますのは、その一つは、犯罪捜査の妨げになりはしないか、あるいはアメリカの国家安全保障が脅かされるのではないかということを心配して暗号輸出を規制すべきだと、こう言ってきているわけです。もう少しわかりやすく申し上げますと、例えばどこかのテロ国家がいろんな通信をやっている最中に強力な暗号を使ってしまいますと、その通信をたとえ傍受しても一体どういう通信をしているのかがわからない、あるいは麻薬犯罪を捜査するときに、麻薬を扱っている悪人たちが強力な暗号を使っているとその暗号が解読できなくて捜査がうまく進まなくなってしまう、そういう心配があって今まで規制をしていたわけなんです。  アメリカの産業界は、これだけインターネットコマースが発展してきたので暗号なしでは外で商売ができない、ソフトを売るためにも暗号輸出規制を緩和してほしい、こういうふうに陳情してきて、そして現在のような段階になっているわけでございます。
  95. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それから、安田参考人にお伺いします。  この法の実施に当たりましてICカードを使うというようなことになっておるわけでございます。それは本人が希望すればICカードを発行するというようなことだろうというふうに思うわけですけれども、そのICカードをなくしたり、何かの形で読むわけですが、そういう読むところのものを利用したりした場合に非常に危険がある、こう言われているのです。  このICカードなるものは、今の段階では磁気カードよりICカードの方が非常に秘密性が高いということが言われておるわけですけれども、そういう中で、ICカードの持っている高さというんですか、そういう点はいかがでございましょうか。また、そのほかのものがあるのかどうか。
  96. 安田浩

    参考人安田浩君) この問題に関しましてはいろいろ検討をして、大体答えが出ているかなというふうに思っておりますけれども、普通に使われておりますテレホンカードみたいな磁気カードはその磁気の状態というものを読み取ることができるということで、またそれを乱すこともできるということでかなりレベルが低いというふうに思っていただいていい。  それに対して、ICカードは中の回路を工夫する、あるいは回路のつくり方に工夫を加える、要するに例えばICを透視してみるというようなことができます。そうすると回路が見えるわけです。その回路が単純な回路であれば、見えた回路をそのまま模写してやるとそれが読み取れてしまうというか、動作がわかってしまう。そういうことになるわけですけれども、現状では回路のつくり方、それから配線の仕方であるとかそういったことを工夫しまして、それがほとんど見えない、読み取れない。大体の配置はわかりますけれども、何をやっているかわからぬという状況に持っていくことができるという状況になっております。  それから、無理に壊せば動作をしなくなるという状況もつくり出すことができる。それから、外部からいろんな意味のトリガーを加えるとやはり動作をしなくなる、内容が消滅するということも基本的にできるという状況になっております。  コストの問題がまだまだ、今すぐという議論ではなかなかないかもしれませんが、数年のうちに、つまりこれが使われる状態のときにはコストも解決しているという状況をつかんでおりますので、基本的にはICカードの耐タンパー性、安全性ということに関して大きな問題が生ずるということは現在ないというふうに思っております。
  97. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それでは、次に法律家の参考人の先生方にお聞きしたいと思いますけれども、住民票コードについては全国民に附帯する、付番すること自体がプライバシーの権利侵害につながるというような、こういう意見もかなりあるわけです。  先ほど内野先生のお話にもありましたけれども、今回の問題については総背番号制だとかそういうものには当たらないよというようなお話であったわけでございますけれども、こういう考え方について内野先生どうお考えになりますか、ちょっと一言お願いします。
  98. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 全国民に番号をつけるということそのものがプライバシーの侵害に当たるとは考えておりません。
  99. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 わかりました。  それから、今度は堀部先生にお伺いしたいと思います。  今回の改正案におきまして、個人情報保護措置という内容で民間の利用を禁止するというようなことや、本人確認情報の提供先の利用目的法律で規定するとかいろいろガードがあるわけでございますけれども、行政機関に係る個人情報保護法に比べましても今回のものはかなり厳格になっているのではないかというふうに私は思います。国、地方自治体、また民間部門を含めましても、今回のものは先生のお話にありましたセクトラル、分野別と申しますか、その側面も備えておるのではないかと思うわけでございます。  個人情報保護についていろいろ国際的に御活躍をいただいておる先生でございますので、この法は国際的水準から見ましてどのようなことになっておるのか、そういう点について御示唆いただければと思うわけでございます。
  100. 堀部政男

    参考人堀部政男君) ただいまの岩瀬先生の御質問の中の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律は、改めて申し上げるまでもなく、昭和六十三年、一九八八年に制定されました。これは、私自身、その前に開かれました総務庁の研究会に出まして、先ほど一つ一つは申し上げませんでしたが、OECDの八原則を踏まえて日本でも法律の制定をしようということで検討したところであります。当時、関係省庁からヒアリングをしたりして行いましたが、関係省庁意見など踏まえまして、いろんな意見を取り入れながらまとめているところであります。例えば収集制限などにしましても、その目的を達成する範囲内に限るというような非常に抽象的な表現になっております。  それに対しまして、今度の住民基本台帳法改正法案で言います例えば収集制限の原則をとってみますと、これは既に現行の住民基本台帳法でも第七条で住民票の記載事項というのは限定をしております。ですから、ここにそれ以外の、これは先ほど内野参考人が触れられました例えば電話番号とか職業とか、そういうものを住民票に記載するということは法的にはできないことになっております。そういうふうにかなり限定をしております。  さらに、改正法案の第三十条の四十三の第二項に住民票コード利用権限を有しない者は契約の相手方に対して住民票コードの告知を要求してはならない、こういう規定も入っております。これはむしろ民間企業などを考えますと、民間が住民票コードの収集について制限を受けているという一つの例であります。  国際的には、OECD、経済協力開発機構が一九八〇年に定めましたガイドラインが今日でも有効なものとして、これを新しい情報化社会の中でどう適用させていくのかということをOECDの委員会、作業部会等で議論をしておりました。昨年の十月、カナダのオタワで開かれましたOECD閣僚級会議におきましても、その宣言をもとに、今後さらに各国がそれぞれ個人情報保護プライバシー保護に努めていくという趣旨の宣言をしたりしております。  そうした観点から見まして、今回の改正法案に含まれております内容は、そのレベルにおいて遜色のないものと見ております。
  101. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それから、堀部先生にもう一つお伺いしたいのは、民間も含めての今後の個人情報保護システム導入が課題となっておるというようなことでございますけれども、民間部門も含めた先ほどの先生のオムニバス方式ですか、こういうことでやられているところがあるんでしょうか。
  102. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 公的部門、民間部門を一つ法律対象にするものは、ヨーロッパ諸国の立法例に見られます。  例えば、イギリスのデータ保護法といいますのが一九八四年に最初制定されまして、これは欧州連合の個人情報保護指令に基づきまして昨年一九九八年に八四年法を廃止して新たな法律ということになりました。  このイギリスの法律がヨーロッパの一つの平均的なものでありますけれども、それですと、国の行政機関が保有する個人情報保護につきましても、データ保護登録官と従来言っていましたものは今度データ保護コミッショナーというふうに名前を変えますが、そのデータ保護コミッショナーのところに、従来登録でしたが今度はノーティフィケーションという言葉を使っていますので届け出ということになると思います。  そういう届け出をするということで公的部門もどういう個人情報を保有しているかということを明らかにする。これは先ほどのヨーロッパの年号との関係で西暦で申しますと、日本の一九八八年の個人情報保護法もこれは行政機関に限ってでありますが、総務庁長官に対して各省庁が事前通知をする、こういう形で事前通知した結果を官報で告示して公開する。これはまたどういうシステムをそれぞれの省庁が持っているかということ自体を公開する。これはOECDの原則の第六に公開の原則というのがありまして、そういうものにのっとっております。  民間部門につきましても、従来の八四年法ですと電算処理しているものは、家庭内で住所録をつくっているというようなものは除きますが、電算処理している個人情報を持っていますと、ほとんどのものはそれは八四年法のもとでデータ保護登録官のところに登録する、無登録で個人情報を扱うということ自体が犯罪になる、こういう仕組みをとっております。  さらに、今度の九八年法ですとファイリングシステムなんですが、個別の一人一人の名前を書いたような紙ベースのものまでは含みませんけれども、一応検索可能なファイリングシステムになっている個人情報システムの場合にはこれも今度は届け出の対象になるという形で、公的部門、民間部門すべて含めて一つ法律対象にする、こういう立法例もあります。  他方、アメリカでは別の立法例もありますので、そこのところが今いろいろ議論になっているところであります。
  103. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 衆議院でいろんな議論がなされ、また参議院でもされているわけですが、衆議院修正がなされました。先ほどもちょっと触れられたところでございますし、また総理からもいろいろお話があり、個人情報のあり方について政府全体で総合的に検討し、法整備を含めたシステムを速やかに備えてまいる所存だと、こういうふうな回答もなされておるわけでございます。  行政情報の将来的な方向、行政と申しましてもこれはもう民間も含めた形になろうかと思いますので、この民間部門を含めた個人情報システム導入の今後のあるべき姿、こういうふうなものをどう考えたらいいのか、またそれぞれのお立場があって今ここで明確に言われることがかなり難しい点もあろうかと思いますけれども、可能な範囲で堀部先生、内野先生からお教えをいただきまして、最後の質問にしたいと思います。
  104. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 望ましい個人情報保護のあり方というのは大変難しい問題かと思います。  衆議院地方行政委員会における参考人質疑でもその問題が出てまいりました。何人かの先生方が包括的個人情報保護法というふうに言われましたので、私もそういうものをつくることはあるいは必要かもしれないというふうに申し上げました。それは議事録にも残っております。  その後、包括的個人情報保護法というのはどういうものなのかということをいろいろ考えてみまして、それ以降いろんな機会にまた論じてきております。  個人情報保護というのは大変重要な問題ではありますが、その個人情報保護を扱う分野というのは極めて多種多様なものがありまして、一律にすべてを同じように規律するのがいいのかどうか、またその規律することによりまして自由な経済活動や情報化の点を阻害するおそれもある、こういう指摘等もあるものですから、全体としてどうするのか。先ほど申し上げました高度情報通信社会推進本部の個人情報保護検討部会でこれから検討をしていきたいと考えております。  いろいろ新聞等にも書いてここのところ論じておりますが、包括的個人情報保護法をつくる場合ですとまたそれによってもたらされるデメリットも多々あるようにも思われますので、全体としてどういうふうにするのがいいのか、ぜひ先生方の御意見も伺って進めていきたいと考えております。
  105. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 現在、個人情報の保護といいますと、日本でも諸外国でも今日の高度情報化社会に固有の問題を意識した上での議論というのが主流になっていると思います。それはそれでいいわけですが、ただそれと同時に、いわば伝統的なプライバシーの権利にかかわる問題、例えば盗み撮りであるとか患者の秘密を口で漏らすとか、そういう問題もあわせて意識し、カバーするような形での法体系の整備が必要ではないかと考えております。  ただ、法体系を整備するという場合に包括的な一つの立法にするのかどうかというのは立法技術にかかわる難しい問題ですので、ここではそう簡単には答えるのは難しいと思っております。  以上です。
  106. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 民主党・新緑風会の山下八洲夫でございます。本日は、四名の参考人の先生方には大変お忙しい中、また大変すばらしい御意見等をお聞かせいただきまして、まずもって心から厚くお礼申し上げたいと思います。  率直に申し上げまして、民主党・新緑風会はこの住民基本台帳法案につきましては党といたしまして反対の立場をいたしておりますが、私はその反対の立場からお尋ねするというのではなくて、率直に申し上げましてわからない点あるいは疑問点、そのようなものが多々ございますので、その辺について逆に教えていただきたいなというような気持ちで何点かお尋ねさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  特に、最初に住民基本台帳ネットワークシステムのセキュリティー対策についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  参考人の先生のところにABCと振った三枚の資料を事前にお渡しさせていただきました。これは私がつくったのではなくて、自治省の資料の中からこの部分だけコピーをさせていただいたものでございます。「住民基本台帳ネットワークシステムの概念図」あるいは「手続のときに、住民票いらないんですね。」と、それから「住民基本台帳ネットワークシステムのセキュリティ対策」、この三枚でございますが、Aを振ったものが一番見やすいものですから、これを中心に疑問点をお尋ねさせていただきたいと思うんです。  先ほどセキュリティーのお話で、特に専用回線を中心とした、そして今回のこの法案でのセキュリティー対策も相当すぐれているというような御意見もいただきました。  私自身、コンピューターは素人でございますし、そういう中から、この表で見てまいりますと、まず市町村が中心でございますコミュニケーションサーバー、それから都道府県センターのサーバーと申しますか、この部分、それから今度は全国センターのサーバー、この間はすべて専用回線でつながっておりますので外部からの侵入というのは、先ほどのお話のとおり遮断されておりますので大変難しいだろうというふうには私も率直に思っております。  ただ、ここには書いてございませんが、Bを見ていただきますと、この全国センターのサーバーからもう一つ外側に十六省庁、九十二事務のところへつながっていくわけでございます。この間、どうもまだ具体的にどのようなものでつなぐのか、この表を見ていきますと、三枚目のに書いてあるんですが、ファイアウオール、あるいは場合によれば、もう時代おくれだと思うんですがフロッピーディスクでつなぐのかなと。そうしないと外部との遮断がなかなかできないというのがあるわけでございますが、ここのつながり。  それからもう一つは、この十六省庁の中の九十二事務に広がるわけでございますから、例えば運輸省で申し上げますと旅行業の登録とかあるいはホテル、旅館業とか、いろいろのそういうものがございますし、またそれぞれの端末でございますパソコンが省内でたくさんいろいろとつながっておりますし、あるいはパブリックコメントをとるためにあけているところもございます。そうしますと、そちらの方から例えば中央センターの大型のサーバーの中にハッカーが侵入することはできないのか。  まず、その辺についてそういうおそれはないのか、ぜひお二人の先生にお教えいただきたいと思う次第でございます。
  107. 安田浩

    参考人安田浩君) 私どもは若干専門が弱いので、後で前川さんに補足していただいたらいいかと思いますけれども、まず技術要因と人間要因とに分けていただいて考えていきたいと思います。  現在、システム的に見て、技術要因から見ればそういうことは全く起こり得ないというふうに思っていただいていいというふうに思います。問題は、その悪意を持った人間がうまくくぐり抜けられるかという人間的要因の方でございますけれども、これ自身もセキュリティーレベルというものを上げることによってかなり防止できるということは間違いございませんので、私自身は少なくともそういうことが発生するということは現状の技術レベル、それから人間の教育というものをきちんとやった段階においてはまず考えられないというふうに思っております。
  108. 前川徹

    参考人前川徹君) 御指摘ありました十六省庁の九十二事務の方のシステム側がどうなっているかというのが大変大きな問題だろうというふうに思います。そちらの方のセキュリティー対策が十分行われているかどうかによって、クラッカーが入ってくる可能性があるかどうかということになるんだと思います。  ただ、その各省庁の九十二の事務処理をやっているシステムとこのネットワークがつながっているところにはファイアウオールを置くというふうにありますので、そのファイアウオールがきちっと設定をされていれば、そこから先に、住民基本台帳ネットワーク側に入ってくることは防げると思います。  以上でございます。
  109. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 そういたしますと、逆の方でございますが、市町村の方でございますけれども、今、市町村は約三千三百ございます。この中でコミュニケーションサーバーがそれぞれ多分市町村の庁内に置かれるんだと思うんです。そういたしますと、今度は同じように市町村のそれぞれの職場で、例えば住民課でございますとか福祉課でございますとか、あるいは税務課でございますとか、端末が置かれています。それがまた全部、一つはコミュニケーションサーバーにつながるのではないかなという気もいたしておるんです。  それからもう一つは、コミュニケーションサーバーの外側に、これで言いますと電算システムとなっておりますけれども、ホストコンピューターがもう一つ置かれている。このホストコンピューターからつながれていればそれほど問題はございませんけれども、そうではなくてコミュニケーションサーバーからつながれているのではないか、その可能性もあるのではないか。また、市町村には出先機関の出張所みたいなのもございますし、あるいはもう一つは、図書館で図書を借りるときもこれを利用しようじゃないかと、いろいろ多様に条例改正で行えるわけでございます。  そうしますと、こちらは三千三百と膨大な数もございますし、そういう三千三百の、そこのコンピューターを扱う皆さんのレベルが、中央の皆さんと同じようなハイレベルで大変詳しい人が配置できていれば別ですけれども、安易につないで安易に、それこそ先ほどのお話ではございませんが、一つ二つかぎをあけっ放しにしていたと、そうしますと簡単に入れる可能性があるんではないかなというような危惧もするわけでございます。その辺については、これは私がつくったわけじゃない、自治省のを参考に申し上げているわけでございますが、ぜひ皆さん方の御意見をお聞かせいただきたいと思う次第です。
  110. 安田浩

    参考人安田浩君) 御心配は確かにおありになるかというふうに思いますが、一応技術面のプライバシー保護策というところを見ておりますと、基本的に一番大きな問題は人間的な要因、先ほど言いました教育レベルがどうか、こういう議論だと思います。その中に、データ通信の履歴管理及び操作者の履歴管理という形で、使っている人のレベルということもチェックするようなシステムに一応してあるということでございます。ですから、そういう意味で、レベルの下がった人が操作をしているということがわかるはずですから、それはそこの対策を講じなければいけない。逆にそこが一番システム要因として大変なんですけれども、そういうことをチェックして、ちゃんとすぐ人を交換する、レベルを上げるということをいかに忠実にやるかということが一つの大きな課題だと思っております。  私自身は、ネットワークはつないでも基本的には技術的に問題ないというふうに思っております。ただ、人間的要因とシステム運用の問題から、まだまだそこまで皆さんのレベルは達していない。したがって、ここ当面は重要なネットワークは少なくとも切り離しておく方がよろしい。ですから、フロッピーによる受け渡しということもやむを得ぬと。しかも中において、そのシステムを操作する人間のレベルというものを常にチェックして早急に手を打つということをやらなければいけないということ、そこをはっきりしていれば基本的に心配はないというふうに思っております。
  111. 前川徹

    参考人前川徹君) 今度は市町村側で、確かにインターネットにいろんなシステムをつないでいるでしょうし、そこがどこかのシステムとつながる、線的に、物理的につながっているということもあり得るとは思うんです。ただ、その場合にも、ネットワークを論理的に分けて壁をつくって、ここからこっちには来れないようにするという設定は可能でございます。また、そのファイアウオールの設定についてもきちっとした設定を最初にしておいて、一般ユーザーは当然いじれないようにする。ですから、途中でセキュリティーに穴があくということのないような形で運用をしていくということも非常に大事なんじゃないかなというふうに思っております。  以上でございます。
  112. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 御趣旨はよく理解できました。  ただ、一点だけそれでも不安だなと思いますのは、三千三百の市町村がございますから、相当レベルの高い人を最低三千三百人は早急に確保しないといけない。そういうレベルの方を、これを間違えないそれ以上のレベルの方がまたチェックをしないと、それ以下の方はチェックできませんので、そうすると最低六千六百人は配置をしなくてはいけないというような大きな宿題を得たなという感想を自分なりに得たわけでございます。  今申し上げましたのは、私も外部からの問題だけを申し上げたわけでございます。先ほど前川先生もお話があったわけでございますが、アメリカの八、九割はもう内部からだというお話がございました。  日本でもいろんなこの種の事件が起きておりますけれども、もうほとんど内部の方がやっていらっしゃる。そうすると、先ほどからたびたびお話が出ておりますとおり、やはり人間の問題でございますから、この人間の教育あるいは管理というのは、それだけ大勢の人間をこの専門的な分野の方だけであっても管理するというのは大変な作業だと思うわけでございます。そういうことがあるからまたそういう問題が出るんではないかなというふうに思ったりするわけでございます。  ただ、これだけ高度情報化社会でこんなにすぐれた性能を持った、私もまだ下手くそですけれども、少しさわれるわけでございますが、さわればさわるほどおもしろいですし、二時間ぐらいすぐ時間を費やしてしまう。確かにそういう大変便利性もございまして、いいわけでございますが、ただ、内部で盗もうと思ったら簡単に盗まれてしまうと。その危険性だけはどうしてもやはり大きな壁かなというふうに一点思っております。  それともう一点は、今デジタル化されたあるいは専用回線だから大丈夫だといっても、そこに盗聴器のようなものをつけられて、暗号で来ておるから大丈夫だとおっしゃっても、その暗号を解析してしまうというようなシステムなんかもかなりできてくるんではないかなというような気もしているわけです。そういう心配もございます。  それからもう一つは、内部の問題。今回の国会で地方分権推進を図るための法改正がございました。この法改正は、A4版の大きさで四千ページの分厚い法律改正、こんなにあるわけです。これがこの一枚のCD—ROMに全部入っているんですね。しかも、お聞きしましたら、その法律改正案だけが入っているのではなくて、その内にマッキントッシュあるいはウィンドウズのこれを開くためのソフトも含まれてわずか一割ぐらいしか使っていない、あとの九割はまだ空っぽだとおっしゃるんですね。大変な容量だと思うんです。  そうしますと、こういうCD—ROMに、もう性能がいいですから一分もあれば全部移りかわりますので、それこそ四情報とバーコードなんかをこれへ複写して持って帰れば、いつ盗まれたとかさっぱりわからないと思うんです。では、ログがあるからいいではないかと。そのログもなかなか、この一枚程度ですと、私も容量としてどれぐらい入るかわかりませんけれども、その程度だったら三十万人以上入るのではないかなというような気もするわけでございます。  内部の人間の問題をどのようにやったらガードできるか、またどのようにしてガードすべきか、その辺、御感想ございましたら一言お聞かせいただきたいと思います。
  113. 前川徹

    参考人前川徹君) まず、システムを一人に任せないということが非常に大事なことだと思います。  先ほどログの話もありましたけれども、そのシステムを、だれが、いつ、どういうコマンド、どういう操作をしたのかという記録をきちっと残す、それをまたほかの人が監査をするという体制を整えることによって一括してコピーをするというような違法な事態は防げるであろうし、もし行われればすぐ発見ができる。発見されれば当然その本人は罰を受けるわけですから。その辺で歯どめがかかるのではないか、こういうふうに思います。  以上でございます。
  114. 安田浩

    参考人安田浩君) 前川さんと同じでございますけれども、ログだけじゃなくて、スタートするポイントにおいて、単にその情報を取り出すというぐらいな話でしたら日常の業務としてやるのは構わないと思いますが、コピーというような場合、あるいは更新というような場合、少なくともある一定の許可権限なりなんなり、いろんな手続を踏まないとできないようにしないとこれは無理だというふうに思います。これは、読ませていただきますと、一応コピー等の重要な操作については二人以上の人間がかかわることというふうに規定はなっておりますので、少なくともその点も安心できるかというふうに思っております。  あともう一つ、六千六百人という数が出てまいりましたが、現状は、先ほど申し上げましたように、インターネットを使える人間は千二百万人から千五百万人という状況になっております。ですから、その六千六百人という数はそれほど驚くに当たらない数なんですが、問題は、市町村側が柔軟にそういう人を雇えるかというシステムの問題があるというふうに思っております。  ですから私は、ネットワークを本気できちっと入れるという状況においては、過去のしがらみ等々いろいろあるとは思います、定員法もいろいろあると思いますが、やはり適材適所、本当にわかる人をちゃんとネットワークマネジャーとして雇うということをしないといけない。今、中の人をまず教育しましょうという議論ではうまくはいかないんじゃないかというふうに思っています。そこはぜひお考えをいただきたいというふうに思います。
  115. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 どうもありがとうございました。  それでは、内野先生とそれから堀部先生にもお尋ねさせていただきたいと思います。  先ほど内野先生の御説明をお聞きして、私も大部分のところは、ああ、なるほどなと納得をしながらお聞かせいただきました。そういう中で、先ほども少し出たわけでございますが、一つは、これは共通する部分で堀部先生にもお尋ねしたいわけでございますが、住民基本台帳コードも、日本国民全員に番号がつくわけでございます。それで、国民総背番号住民基本台帳番号とどのように違うのでしょうか。
  116. 内野正幸

    参考人内野正幸君) そもそも国民総背番号という言葉がある種のスローガンのような形で出てきたものでありまして、国民総背番号という言葉を明確に定義すること自体がやや難しいであろうと思うわけです。ただ、今回の住民基本台帳コード制ですと、当面の法案におきましては使用目的といいますか守備範囲がかなり限定されておりますので、その点において一応国民総背番号制という従来問題になった構想とは趣を異にする面があるのではないかというふうに考えております。
  117. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 国民総背番号制という概念は、私が前に調べてみたところですと、これは、中山太郎先生が「一億総背番号」という本を一九七〇年に出していまして、そこでこういう言葉を使い出したのがどうも最初ではないかというふうに思います。  そこでは、例えば行政機関への各種申告、申請、登録、届け出、願などの一本化が図られ複雑な手続から解放されるとか、いろんなものにこれを使う、その次に、例えば国民個人番号を銀行、生命保険会社、クレジット会社など民間企業が使うだろう、業務によっては身分証明カードにこの番号を記載して活用できるとか、さらに図書館、公民館など公共施設のサービスを受けることが容易になり住民の福祉向上が期待できる等々、かなりの項目にわたりましてこの番号を使うということを言っております。これは先ほど申し上げました一九七〇年であります。  また、政府におきまして、当時、事務処理統一コードだったでしょうか、というのを検討するというようなことがありまして、そういう動きに対して国会でも情報化三原則などについて議論があったりいたしました。一方、一九七二年には労働組合等が中心になりまして国民総背番号制に反対し、プライバシーを守る中央会議というのが結成されました。私はそういう動きには加わっておりませんので、そこで国民総背番号制ということが何を意味していたかは定かではありませんが、恐らく私が見たところでは、先ほど言いました中山太郎先生がこの本で一億総背番号、こういう言葉をもうあらゆる分野に使うということを言う。それになるといろんなところに個人情報が蓄積されるではないか、こういうものに対する一つ反対運動であったのではないかというふうに理解しております。  そこで、先ほど申し上げましたように、公的部門、民間部門を問わず、いろんなところでその番号利用する、その利用する番号が各人につけられているというものではないかというふうに思います。
  118. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 内野先生の先ほどの御説明、将来はこのようなことも考えられているのではないかなというような方向性が出された報告であったわけでございますが、私も、要するに住民コードは最終的には国民総背番号の基礎ベースになるのではないかな、また基礎ベースにすると大変便利だなと思っている一人でございます。  例えば、年金番号にいたしましてもパスポート番号にいたしましても、場合によったら別々に変えないで住民コードと同じ番号にすればより便利だと思うんです。住民番号と同じ番号にしなくて、ほかの番号でも、それこそICカードその他へ、今十三項目ですけれども、そちらの方へどんどんそういうものを入れていくと、データはどんどん蓄積できるわけですから大変便利だと思うんです。  だから、私も、十年後か三十年後かは別にしまして、この法律改正がありました昔はどんなつまらぬ議論をしていたんだというようなことになるかもわかりませんが、この住民コード国民に定着しますと、そしてこれは便利だということになれば、それじゃ納番も入れようじゃないかとか、必ずそういうふうになってくると思うんです。それが、一つはデータが蓄積されますし、そういう中で民間も使わせていただきたい、私は必ずこのようになってくると思うんです。  堀部先生でございましたか、包括的個人情報保護法というのは、民間を含むということになりますと、新聞社が取材も自由にできなくなってくるとか、銀行が山下はどんなやつだと調べることもできなくなってくるということになりますから、包括的な個人情報保護法は民間を含むということには必ず大反対すると私は思っております。それこそ経済活動もできなくなると思います。  だが、こういうデータが蓄積されればされるほど便利になると思いますので、私も最終的には、今はこの四情報でかなり規制がかかっておりますけれども、将来は国民の中へ理解、定着していけば必ず法改正につながると思います。  堀部先生、将来やはり法改正した方がいいんではないかというような考え等ございましたら、何でも結構でございますから御意見をひとついただきたいと思います。
  119. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 私は、将来法改正をすべきだという意見は持っておりません。番号なりコードというのは、それぞれの目的に応じて使うというのがやはり個人情報保護という観点からは望ましいというふうに思います。  これも先ほど申し上げましたが、既にいろんなところで番号がつけられていまして、それは山下先生御指摘のように、もうパスポートならパスポートについての番号もありますし、年金関係番号もありますし、いろんなものでついております。  実際に、地方公共団体におきましても、住民については番号をつけていろんな形で処理しているということもあります。ただその場合に、今回の改正法案では、その番号をつけること自体に法的根拠を持たせているという点が他のものと非常に大きな違いがあると思うんです。ほかで番号をつけることについて法的根拠があるのは寡聞にして存じません。  そうなりますと、やはり法律目的を明確に定める。まさにこれは先生方が国会で判断されることですので、仮にそれを改正してほかの用途にも使おうということになれば国会での審議になる。国会審議するということになれば、それは国民も非常に大きな関心を持って意見を述べるということになりますので、全く法的根拠なしに番号がついてどういう目的に使われているかも外からは見えないような状況よりは、この改正案はそういう点では非常に大きな縛りをかけているというふうに思います。
  120. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 どうもありがとうございました。  もう時間がございませんので、前川先生に端的にお尋ねしたいわけでございますが、ICカード、希望者は持っていいわけでございますが、現在、何か八千字ぐらいあのチップに入力できるということでございます。これもすぐ数年のうちに三万字ぐらいは簡単に入っちゃうだろうと。それだけデータがたくさん入ってしまう。  また、それぞれの市町村で条例をつくりまして、例えばうちの市では健康カードにしよう、血液型も入れようじゃないかと、いろいろとそういう医療関係なら医療関係のデータを入れてしまう。そしてまた、それ以外いろんなものを入れても、ファイルごとにパスワードでキーをかければかかると思うんです。  私の場合は岐阜県でございますけれども、せっかく健康カードがあって、東京で病気になった。その健康カードが東京の病院でも使えればより便利なんですね、それを読み取っていただければ。必ず今度は団体同士で協定のようなのを結んで、お互いにたくさん利用できるようにしようではないかと。そうすると、読み取り機というのが必要になってくると思うんです。  この読み取り機というのは、私は比較的簡単につくれるんではないかなというような気がするんです。サーバーのようなコンピューターを据える必要はなくて、それを病院に置いたりあるいは図書館に置けばいいわけでございます。そういう読み取り機をつくった場合、私はそれこそセーフティーネットというのがかなり弱まって、このカードは、ある意味では個人情報がまた違った意味で漏れる要素があるんではないかというような気もいたしますが、もう時間がございませんので最後にお尋ねしまして、先生の皆さん方にはお礼申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  121. 前川徹

    参考人前川徹君) 恐らく先生御指摘のとおり、ICカードはますます大容量化すると思います。  ただ、そこに入っているCPUの方もどんどん高性能化しまして、そこに入っている情報を守る機能というのも充実されてくるだろうというふうに思っております。もう既にあるものでも、ボックスを決めましてそのボックスごとにかぎをかける、あるいはボックスごとに決められた暗号化を図るということは可能でございます。そうしますと、例えばこの部分はお医者さんしか開けない、この部分は税務署でしか開かないということができます。  例えば東京で病気になったとしても、何らかの方法で、インターネットを使っても構わないんですが、暗号化して、それを開くためのかぎを送ってもらっておけば、そこの病院で簡単に開くということはできます。そういうものを入手できる人たちが限られている形になっていれば、その人たちの個人認証もきちっと行われて、私はちゃんとした医者ですと、お互いにお互いがネットワーク上で認証できれば、そこの安全性も保証されるだろうと。  またそうならないとICカードを持った意味もないと思いますので、先生心配の点は私もよくわかりますけれども、システム的には専門家の人たちは心配ない、こういうふうに言っております。
  122. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 どうもありがとうございました。
  123. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。  きょうは、四人の先生方、本当にありがとうございます。早速ですが、御質問をさせていただきたいと思います。  まず、堀部先生にお願いをしたいんですが、もう先生御承知のとおり、衆議院の段階で本改正案につきまして修正が加えられました。「個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」。そして、所要の措置は何かといえば、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整える、これが一点目。二つ目は、そのシステムの整備状況を踏まえて、本法律住民基本台帳法におけるさらなる保護措置を講ずるために所要の法改正を行うということ。それから三点目に、地方自治体が適切に住民基本台帳ネットワークシステムを運用できるように、自治省として個人情報保護に係る指導を十分に行う。こういうようなことが自治省としても認識をされているというところであります。  また、その所要の措置に関連をいたしまして、総理大臣の認識というものが、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たって、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提である、こういうような言い方で、総理の認識を答弁していただいているところでございます。  この修正は、いわゆる自自公三党で、もうすったもんだしましてまとめたものでございますけれども、この自自公の合意の中で確認がとれておりまして、個人情報保護に関する法律については今国会中に検討会を設置して法制化に着手する、年内に基本的枠組みを取りまとめて三年以内に法制化を図る、このような内容でずっと推移をいたしました。  五月六日の衆議院段階における参考人質疑で、堀部先生は特にプライバシーの権利に関しての我が国の第一人者でおられますし、非常に苦渋に満ちた参考人意見陳述で、質問に対する答弁をなされていたなというように考えております。きょうの意見陳述の中でも、この住民基本台帳システム自体が現段階においては最高のレベルである、そういうふうにおっしゃりながらも、全体としてのプライバシーをどう守るかというようなところで御意見をいただいたところでございます。  私ども人権の党ということで一生懸命やっておるところでございますが、この一連の修正案、これからまだまだ取り組んでやっていかなければなりませんけれども、今御紹介をした内容修正、一連の動きに対して先生としてはどのような評価をされておられるのか、御意見をちょうだいしたいというふうに思います。
  124. 堀部政男

    参考人堀部政男君) ただいまの魚住先生の御指摘もそのとおりであります。先ほども最初の意見を述べる際に触れさせていただきましたけれども、今度のこの住民基本台帳法改正法案審議の過程で国会個人情報保護につきまして大変熱心に議論されたということが、今回のような改正法案の附則に一項を加えるということと附帯決議等に結実したのではないかというふうに考えております。  私は、先ほども申し上げましたように、高度情報通信社会推進本部の個人情報保護検討部会の座長に選ばれましたので、今後、これまでのさまざまな場での経験を踏まえまして、また先生方の御意見なども踏まえながら、日本にふさわしい個人情報保護方式を考えてみたいと思います。  その際に、この国会における審議、それから三党の確認というのは大変重要な意味を持っているものと考えています。
  125. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今御意見の中にありましたけれども、高度情報通信社会推進本部の中の個人情報保護検討部会が七月二十三日に設置されたようでございますけれども、担当部署は内政審だというふうに認識をしております。  内政審の人を呼んでいろんな話を聞いておりますけれども、先ほど先生から御紹介されましたオムニバス方式あるいはセグメント方式、さらにはセクトラル方式ということがございますけれども、内政審としてはどうも個別立法を志向しているかのような、そういうような機運というものが見えるわけでございます。言い方によれば、全体に網をかけるんだけれども漏れがあったら困るみたいな言い方もしておりまして、穴があれば埋めればいいというお話が先ほどもございましたけれども、やはりヨーロッパでできて日本でできないわけはないわけでございます。  そういう方向性で、私はオムニバス方式でいくべきであろうとは思うんですけれども、先生からごらんになって、これから検討されていくということでございますが、やはりどの方向性がベターであるとお思いになっているのか、さらに内政審はセクトラル方式というものに何かこだわっているように私は思えるんですが、その辺についての先生の御感想がございましたらお願いしたいと思います。
  126. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 先ほども触れましたように、プライバシー保護をどう図るかということは、高度情報通信社会推進本部の中でも九七年の九月から九八年の六月にわたりまして電子商取引等検討部会で議論をいたしました。そこでの方針が、政府としては民間主導を中心に進めていく、しかし個人信用情報ですとか医療情報など機密性の高いものについては法的措置を含め公的関与を検討する、こういうことになりました。その議論の過程ではいろんなことがございましたが、一つは、私の理解では、世界的な個人情報保護の潮流の中でかなりアメリカに近い方式を電子商取引等検討部会では取り入れたというふうに見ております。  昨年の五月十五日だったかと思いますけれども、US・ジャパン・ジョイントステートメント・オン・エレクトロニック・コマース、電子商取引に関する日米共同声明がイギリスのバーミンガムで発表されました。この中にも、高度情報通信社会推進本部電子商取引等検討部会での考え方が出ております。そこにあらわれていますような考え方というのが一つ重要な意味を検討に与えているんではないかと思います。  さらに昨年の十一月に基本方針の決定がありまして、ことしの四月にアクションプランの決定があり、趣旨はずっとそれで来ております。ですから、内政審議室としてはその方針に沿って検討を進めていくというふうに考えているものと私は理解しております。  それで、より望ましい方式としてどうするのか。衆議院地方行政委員会における先生方の御意見をいろいろ伺っていて、その段階でどうも参考人の側から質問するということはできませんので、どういうことを包括的個人情報保護法ということで考えておられるのか明確にすることができないまま、これはそのときも申し上げましたが、日本でもOECDの理事会勧告が出ました一九八〇年の秋には、当時の行政管理庁で、プライバシー保護研究会で検討するということになりまして、実際に始まりましたのは八一年の一月からだったと思いますけれども、これは当時東京大学の教授でありました加藤一郎先生が座長で検討いたしまして、いわば今日言うオムニバス方式をそこで御提唱いたしました。  しかし、日本ではその後の実際の動きが、公的部門で法律はつくるけれども、民間についてはそれぞれ関係省庁が連絡調整を図りつつ所要の措置を講ずるということで、法的措置というふうにはなっていっていないわけであります。  そういう流れがずっともう一九八〇年代の前半あたりからある。一方ではオムニバスがありましたが、これは当時の臨時行政調査会の最終答申、これが八三年の三月十四日だったと記憶しておりますけれども、そこでほぼ出た。それで、その方式がずっと今日まで来ております。  言ってみれば、そういう日本の政府におけるポリシーがかなり固まっている中でどのようにするのかということも、現実の問題としては考えていかなければならないところではないかというふうに思っております。  ですから、包括的個人情報保護という場合にどのあたりまでの内容を含むのか。これは事務局で配っていただいたかどうかわかりませんが、新聞に書いたものもございます。いろいろ申し上げたいこともございますが、ちょっと今のところは、そういうものを踏まえまして、また十四人の委員で検討をいたしますので、各分野を代表している方々の御意見も伺いながらどうするか、また広く関係の方々の御意見も伺ってよりよいものを考えたいというふうに思っております。
  127. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 私たちもこの包括的の意味内容、今逆に中身を発しないといけないなと思いますけれども、基本的にはEU型を志向しているというふうに私は認識をしております。家庭内における住所録は除外するというようなそこまでの包括性があった方がいいのではないかというふうに思っておるところでございます。  例えば昨年、NTTの番号表示制度というのが出ました。あれもコンピューターに取り入れれば電話番号レベルでデータベースができるわけでございますが、これも郵政省は自分のところでガイドラインをつくったわけですね。ただ、それも、例えば通信販売業者等についても大変なデータベースができ上がるわけでございますけれども、これもガイドラインとしては担保としての罰則ができないわけですね。  そうすると、今EUとアメリカでかんかんがくがくとやっておりますこのデータの国際的な問題で、流通の中でOECDあるいはEUから本当に日本は大丈夫だというふうに思ってもらえるのか、そういうような懸念がちょっと今あったものですからお聞きしたんですが、この点はいかがでしょうか。
  128. 堀部政男

    参考人堀部政男君) きょうの関係資料としまして全体で十八枚あります資料をお配りしてございます。この十五ページから十六ページにかけまして、日本における検討状況あるいは既にできております法律、ガイドラインあるいは地方公共団体における条例制定等について一覧できるようにまとめておきました。  今、魚住先生御指摘の郵政省で検討いたしましたガイドラインは、十六ページの(12)にあります郵政省電気通信局、電話番号情報に関する研究会報告書に基づきまして、(13)で一九九六年十一月に郵政省電気通信局長が出しましたガイドラインであります。実はこの(12)の報告書をまとめるときの座長も務めました。  これをどうするのか。御指摘のように番号が自動的に出るようになった場合に、それを通販業者が蓄積しまして、どの番号の人がかけてきた、その人はどういう品物を注文したかということも全部データベース化するということになりますので、そこまでをすべて禁止するというわけにいきませんで、それを他の目的利用するということをやってはならないという形でつくりました。  ガイドラインですので、それをエンフォースするといいましょうか執行する方法がないのが先生御指摘のとおり問題であります。これは一般的にはかなりの事業者は罰則等がなくともそれで対応をしてきていますし、そういうものとして期待をしておりますが、中にはそうでない一部の者もおります。そういう者に対してどうするのかというのも、特にEUから見ますとガイドラインという方式ではエンフォーサブルかどうかということでいろいろ質問を受けたりもしております。  日本の場合、このよしあしは別といたしまして、行政指導である程度のところが担保できるという側面もあります。今後、それがいいかどうかということもありますので、いろんな方式をこれから考えてみたいと思っております。  これは全く今のところは個人的なレベルのことですが、どうも日本の場合、今全体として何かまとめるというのは、今度内政審が事務局になりましたので、これまで個別の関係省庁議論をしていましたものが全体として見渡せるようになったという非常に大きな特色があります。  そこで、どういう分野が特に問題なのかということを全体として検討してみまして、場合によりますと、そういうところに罰則を科するような法整備を検討するとか、いろんな方式があろうかと思います。EUも、これも何回もEUの関係者とは意見交換しておりますけれども、EUと同じものを我々求めているわけではない、それぞれの国の法文化、法制度がある、それは我々も認めるところであって、ただ基本は、先生がおっしゃるように人権がきちんと保障されるかどうか、そのうちのプライバシーがきちんと保護されるかどうか、それが重要なんだというわけであります。  ですから、その方式として、これも最近も新聞インタビューに応じて答えているんですが、人間が単に悪い行為をしたことに対して罰則を科するということでいいのか、もっとさまざまな施策を講じていることに対してそれを認証するというようなこともあってもいいのではないか、いろんな方法があると思いますので、そのあたりを含めて検討していくようにしたいと思います。
  129. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 内政審以上に全体を見渡すのは堀部先生だと思いますので、この検討会の方向性をしっかり私も見ていきたいというふうに思う次第であります。  きょうはコンピューターに詳しい先生がお二人見えていますので、だんだん時間がなくなってまいりましたけれども、まず安田先生、これは利点というところに四点掲げられておりまして、産業がどんどん発展していく、あるいは社会も発展していくというところが大きなポイントだと思います。結局、このポイントというのはこのCA、認証機関がポイントなんだろうかなと。この認証機関というところにこの住民基本台帳番号というものを活用できるのではないかという先生の御認識というふうに受け取っていいんでしょうか。
  130. 安田浩

    参考人安田浩君) ちょっとイメージが違うと思います。住民基本台帳で基本になるのは住所、姓名、それから年齢だと思います。それは本人認証のために使うということで、私自身はエレクトロニックコマースで何が必要か、最後の段階で認証局が本人認証をするという議論が出てくると思いますが、それ自身が今これと結びついてうまくいくかどうかというのはまだわからないと思います。ただ、その可能性はある。番号ではなくて住所氏名その他、そこにある四情報がまず基本として受け渡しができるかどうかだというふうに思っております。
  131. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 四情報自体で番号化するということですか。
  132. 安田浩

    参考人安田浩君) 四情報を使えばよろしいということで、番号を使うとかそういうことは必要ないと。
  133. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そのまま検索のあれに載っければいいということですね。
  134. 安田浩

    参考人安田浩君) 直接民業に渡るという議論ではなくて、認証機関というのはまだ要するに構造が明確でないと思いますけれども、私自身はそういうものはまず国家の組織の一部ではないかと想像しております。
  135. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そうしますと、大きな四点と言われているこの一番と二番以降とはどういう関連性になりますか。
  136. 安田浩

    参考人安田浩君) 直接の関係はないというふうに思います。
  137. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 わかりました。  それから、前川先生にもお聞きしたいと思いますが、やはり先ほど来からお聞きしておりますと人間系が非常に問題かと思うんです。いろんな事件がありました、漏えい事件というものが。大体日本においても人間系なんだろうなと。内部の人間が持ち出しちゃった、そういうことになろうかというふうに思います。  先ほど山下理事の方からもレベルの問題がありましたけれども、レベルというのは要するにコンピューターとかそういう部分、あるいはこのシステムの理解というレベルもありますけれども、やはり何か持ち出さないレベルというか、社会性といいますか、そういう部分になっていくのかなと。そうすると、やっぱり教育とかそういうのが本当に重要になるんだろうなというふうに思うんです。結局、持ち出してそれがお金になるというのが大きなポイントなんだろうと思うんですね。宇治でも二十二万人の市民あるいは法人含めて持ち出されたというようなこともございましたけれども、二十二万人でこういう形でやると一億二千五百万を持ち出されたら大変なものだ。当然罰則とかありますけれども、罰金を幾らやっても一億二千五百万で割れば一件当たりは非常に単価が低くなるわけです。  そういうことを考えたら、どういうふうにすればこの利益を奪い得るのかというふうに思うんですが、何かいいアイデアはありますか。
  138. 前川徹

    参考人前川徹君) 御指摘の点ですけれども、確かに名簿屋に持っていけば金になるというのは多分みんなわかっているんだと思いますけれども、ただ捕まってしまえばもうどうしようもない話で、むしろ罰金を取られて社会的な制裁も受けるわけですから、コピーをしたのがだれで、必ずロギングをとりますので、ロギングをとって、だれがいつどういう操作をしたかという記録を必ず残す。  それから、その重要な操作ですね。バックアップのために壊れてはいけないので、当然バックアップをとる。要するに、予備のファイルをとるということを当然やるわけですけれども、そういったことをやるとき、あるいはその修正を加えるときには二人以上の人間が立ち会ってきちっとやっていくということをやりますので、管理上そこをきちっとやれば心配はほとんどないのではないかと思います。  先生御指摘のとおりモラル、特に情報セキュリティー教育というのをぜひ私はやっていただきたい、こういうふうに思っております。  以上でございます。
  139. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 もう時間がありませんので、内野先生に一問だけ。  これは、違憲とまでは言えないということでございますけれども、先生の御判断でもこの法案を精査していただいて決して違憲ではない、つまり先生の意見として、結論としてはプライバシー権をこの法案では害していないという御認識として受け取っていいわけですね。
  140. 内野正幸

    参考人内野正幸君) この法案自体は、プライバシーの権利を当然に侵害するものとまでは言えないというふうに認識しております。
  141. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  142. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。  きょうは、四人の参考人の先生方に貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。短時間でございますので、早速お伺いをしたいと思います。  先ほど安田先生が、この四情報住民基本台帳番号、台帳コード、これを今私どもは問題にしているわけなんですけれども、このコードがなくても個人の認証ができるんじゃないかと。「住民基本台帳法一部改正の利点」というところの二番目に、「電子商取引を便利とし、」というふうに書いてあるんですけれども、このシステム番号とは関係なく民間でも使えると。今の法律では民間利用というのは禁止をしておりますので当然ないわけなんですけれども、私どもは番号でこれを整理するのかと思っていたんですが、番号がなくてもいいというのはどういうことなんでしょうか。
  143. 安田浩

    参考人安田浩君) いろいろ調べた結果なんですけれども、住所氏名生年月日、それから性別、この四情報ということで、日本の一億二千万人、これは重複することが非常にまれであるということは言われておりまして、したがって、これをつくることによって本人認証ができるというのが住民基本台帳の基本になっていると私自身は思っております。  それをエレクトロニックコマースに使えるかという問題ですが、先ほど申し上げましたように、要するに認証機関の設置というのをどういうふうにするかということによりますが、少なくとも認証機関を経由して物事が行われるというふうに私自身は理解しております。  しかも、認証機関というものは現状の流れは国家の一部になるということでありますので、その認証機関の中でそれを使うという形になってくる。ですから、直接関係があるということではございません。
  144. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 先ほどお話がありました自治省のつくった表なんですけれども、午前中にもちょっと自治省の方が答えていましたが、このネットワークというのは一番右側が全国センターになっております。各住民が自分の住民票をとったりとか、そういうときを想定しますと、全国センターがなくても各県のところがございますので、これが横につながっておりますね。そういうことで技術的には全国センターが要らないということなんですけれども、先ほどお話がありました番号で整理しないで、要するに番号をつけないでこういうふうにしますと、個人の認証とかそういうのが技術的に遅くなるとかそういうのがあるんでしょうか。  この一番右側の全国センターもなくなって番号もなくなったというときには技術的にこういうのはどうなのか。前川先生にお伺いしたいと思います。
  145. 前川徹

    参考人前川徹君) 確かに全国センターがなくても都道府県センターだけでも、例えば重複がないかとか、あるいは人の情報といえばその四情報があれば識別できると思いますのでこういう場は不要にはなると思いますし、番号がなくても処理はできるんでしょうけれども、やはりコンピューターの場合は住所氏名性別生年月日というとデータ量が非常に大きくなります。大きなものを扱えば幾ら計算機が速いといってもそれだけ時間はかかります。  十けたのコードですと、コンピューター上でいえば情報量は非常に少なくて済むんです。どういう方法であらわすかにもよりますけれども、実を言いますと、恐らく三十四ビットとか五ビットぐらいで十分大丈夫なんです。そうしますと、コンピューターとしては非常に速く処理ができるという利点がございます。また、全国センターを置くことによって重複のチェックでありますとか、そういう処理が速くなるという利点も当然あるというふうに思います。
  146. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 そうしますと、先ほど来言われておりますように、実際にはこれはすごく大変な容量があると思うんですけれども、それをまた数字にするとますます大変な容量の中でちょっとで済むというふうなためだけだというふうに理解をしてもいいのでしょうか。  ちょっと素人だからわからないのですが、要するにこれだけのシステムをつくるのに住民票だけを遠隔地でとれるとかその他の証明が遠隔地でとれるとか、そういうのですと容量がすごく余るから当然数字化しなくても四情報だけでも私は十分ではないかと思うんですけれども、そういうのは技術的にそういうふうに考えてもよろしいのでしょうか。
  147. 前川徹

    参考人前川徹君) 技術的には可能なんですけれども、処理が遅くなる以外にもシステムが複雑になるとその分コストがかかるというデメリットがございます。やはりできる限り安いコストで安全なシステムをつくるということを考えれば、システム屋としては、私もプログラムを組んだことありますけれども、番号があった方が楽だろうというふうに私は思います。
  148. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 番号を組んだ方が楽ということですね。  よく市町村から言われるのは、こういう電子機器というのは私どもが一般に思うよりも寿命が短くて、何か法的には六年ぐらいが耐用年数だとかと言われておりますが、ここのコミュニケーションサーバーとか都道府県でこういうことをやります、あるいはそれぞれの自治体で読み取りとか何かの端末なんかも入れるんですけれども、これは大体どれぐらいのサイクルでかえなければいけないのか。要するに、安全性だとか、さっきも六千六百人も大変な技術者が要るということがあるんですけれども、そういうのを考えると、全く素人でわかりませんが、わかりやすく教えていただきたいと思います。
  149. 前川徹

    参考人前川徹君) 例えばパソコンを考えていただくとよくわかるんですけれども、かつてパソコンユーザーは大体二、三年置きに買いかえをしてきました。速い人だと新しい機種が出ると一年半ぐらいで買いかえてきたんですね。  それはなぜかというと、自分が使っているソフトウェアがだんだん大きくなってきて、扱う情報量もどんどん大きくなってきて、回りにどんどんいいソフトウェアができて、それを使おうと思うともっといい計算機、もっといいパソコンを買わないと動かない、言ってみれば、もしかしたら企業の悪巧みかもしれませんけれども、そういうものに乗せられて走ってきたわけです。  ところが、最近のパソコン能力というのは物すごく大きくなって、例えば私は家でいろいろな原稿を書いたり表計算をしたりしますけれども、四年前のラップトップのコンピューターをそのまま使っています。要するに、自分の需要に合ってさえいれば新しくする必要はない、こういう状況になっているんです。  さて、振り返ってこれを考えますと、市町村で設置したコンピューターが、例えば住民がむちゃくちゃふえちゃった、何か十倍にふえちゃった、このコンピューターでは容量が足らないというふうになれば当然更新せざるを得なくなると思います。ただ、住民がそれほどふえない、そこでやっている処理も変わらなければ、一たん入れたコンピューターを変える必然性はございません。  恐らくこのシステム、私も具体的にどうなるかという細かいところまでは見ておりませんのでわかりませんけれども、ハードウェアより圧倒的にソフトウェアあるいはそれからのネットワークの費用の方が長い目で見れば大きくなるだろうな、こういうふうに思っております。  以上でございます。
  150. 安田浩

    参考人安田浩君) ハードウェアに関しては前川さんと全く同意見で、目的に応じて寿命は幾らでもあるというふうに思っていただいていいと思います。  それから、数字の問題についてちょっと意見が違っておりまして、数字だけの羅列というのは、基本的に物は小さくなりますけれども、誤操作とか誤りとかいうことに対しては非常に弱くなるんです。基本的に、例えば住所というものを数字に置きかえて書こう、郵便番号にしようというようなことをしますと、住所であればかなりリダンダンシーがありますからちょっと間違った字が書いてあってもわかる、ところが郵便番号は一番でも違いますと全くだめなんです。そういうことで、メモリーの容量だ、操作量だということでは数字だけの方がいいのかもしれないけれども、実際に人間がかんだシステムとしてのコストは、今申し上げたリダンダンシーのある住所とか名前とか、そういうものを用いた方が結果としてはよくなる傾向が強いんです。  ですから、そういう意味住所、姓名、そういったことを基本にして考えるということは、人間を対象にした場合に大変合っているんじゃないかと私自身は思っております。
  151. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 ありがとうございました。  それでは次に、法律中身のことで堀部先生と内野先生にお伺いしたいと思いますが、先ほど来プライバシーの問題ということが大きく衆議院でも話題になりました。この法案衆議院を六月十五日に通りまして、先ほど堀部先生がお書きになったものも読ませていただいたんですが、その後日弁連の方で声明が発表されて、この改正法案というのはプライバシーが侵害されるおそれはぬぐい切れないとした上で、「プライバシーは、自己に関する情報を自らコントロールするという憲法上の権利であり、何よりも先ず個人情報の保護の在り方についての議論を優先すべきである。」という声明を発表されています。  先ほど堀部先生がおっしゃった、これから個人情報の保護の法律をいろいろとおつくりいただくということで、それはいいんですが、こういった個人情報の保護のあり方あるいは法律、こういうものが後からついていくんじゃなくて、まずこういうものが必要なんじゃないかなと私ども思うんです。  それで、プライバシーの侵害のおそれというふうに指摘されている背景にあるのが、明確に憲法違反ではなくても、日本のプライバシーに関する社会的な状況国民の認識、いろいろな社会制度、そういうものにあるのではないかというふうに思うんですが、そういう面ではどうでしょうか。堀部先生にまずお願いします。
  152. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 今、日弁連の声明をお伺いしましたが、そういう御意見があることも承知しております。  そこで、実際の議論の過程としますと、改正法案衆議院賛成多数で成立したという状況がありまして、今後参議院でどういうふうになるかはわかりませんが、それと並行してそのあり方を検討することになりました。  個別の省庁では、これも先ほどお示ししました資料で、既に一九八〇年代の半ばからずっと検討してきていまして、それぞれの関係省庁ではそれなりの認識を持って、その段階ではまだ法的なものというふうには必ずしも考えておりませんが、そういうことで議論してきたわけであります。一部、例えば私が関係しているもので言いますと、個人信用情報につきましては一昨年の四月から検討を始めまして昨年六月に一応報告書をまとめましたけれども、大蔵省と通産省の共同の懇談会で法的措置を講ずべきである、こういうことを出しました。  そういうふうに個別の分野でやっておりますので、先ほど申し上げましたように、今度は内政審議室が事務局となって高度情報通信社会推進本部の中で検討しますので、各省庁の協力を得ながら全体としてどうすべきかということは検討できる段階にまいりました。それは並行してとにかく進めていくということになると思います。  御指摘の日本におけるプライバシーの意識等につきましては、国際的に見ますと、残念ながら全体のレベルは決して高くはありません。それは本の中などでも指摘しておりますが、どうも一方ではプライバシーの加害者意識というのが非常に希薄なのではないか、ですからプライバシーの加害者意識希薄層というのがある。それに対して、一方では、自分の個人情報をどう使われようと別に自分は何も悪いことをしていないんだからいいんだというような、今度はプライバシーの被害者意識希薄層というのがかなり大きく存在している。特に加害者意識希薄層も、これはいろんなテレビ番組などを見ていましても、そういうものに興味を持って、しかも特定個人の過去までいろいろ暴露をするようなことが行われて、むしろそれをまたサポートするような世論があるという非常に私などからすると嘆かわしい状況なんですが、全体としてそういうところがあります。  そういう間にありまして、やはりプライバシーの権利意識層というのが大きくなっていかないと、全体としてのレベルアップは難しいと考えております。残念ながら、プライバシーの権利意識層というのは日本では非常にまだ層が薄い、これを大きくしていかなくちゃならない。  そのためには、もちろん法的整備も必要でありますが、それ以外のさまざまな方法で意識のレベルアップを図っていくということが今求められていると思いまして、研究者としてはいろんな機会にそういうことを論じてきておりますし、また関係省庁で依頼されて検討する、今度もまた内閣内政審議室で検討するということで、そういう点、微力ながら全力を尽くしたいと考えております。
  153. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 私としましても、今の堀部先生の御意見に共感する部分が多いわけですけれども、別の視点から少し補足いたしますと、個人情報の保護という場合に二つの問題を区別すべきだと思っております。  一つ目は、今回の法案法律になった場合の施行に関する限りでの個人情報の保護という問題でありまして、私の理解によりますと、衆議院修正案で一項の追加というのはまさにこの問題ではないかと思うわけです。それとはつながりがあるけれども、別個の問題として包括的な個人情報保護法の制定という問題があると思うわけです。  それで、御質問個人情報保護法の制定を先行すべきではないかという点があったと思うんですけれども、これはどちらが先でどちらが後とか、そういうたぐいの問題ではないと。むしろ、仮に今回の法案に対する賛成反対かという態度を決める場合には、包括的な個人情報保護法がどうなっているかという問題は一応切り離して考えてもいいような気がいたしております。
  154. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 午前中に自治省の方から最近の世論調査ということで、NHKの討論番組で住民基本台帳法改正法についての結果が示されました。それによりますと、七月になってからですから衆議院が通ってからですね、住民基本台帳法改正関心があるというのが五四・三%、関心がないという人も三五・七%あって、わからないという人も一〇%あります。この住民基本台帳法改正賛成というのは二三・三%で、反対は五一・〇%、わからないという方が二五・八%なんです。対象とか問いかけということでもいろいろ問題があると思いますが、一番直近の世論調査ではないかというふうに私は思います。  こういうふうに皆さんが関心を持ち、しかも余り賛成できないなというふうに思って見える、そういう世論というのは国民的コンセンサスという点では何かこの法律を通していくのに心配ではないかなと私は思うんですが、こういうような傾向があるのは、お二人の先生方、どうしてだとお思いでしょうか。
  155. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 大変答えにくい質問でありますが、これは一般的に申しまして、世論調査の場合の情報提供というのがどういうふうになっているのか、それによっているのではないかというふうに思います。  その答えた方、どういう方法によるものかわかりませんが、仮に電話による方法だとしますと、どこまで法案内容を説明した上で、あるいはデータを示した上でお聞きになっているのか、そういう点も含めて世論調査の結果というのは見なければならないと思いますので、直感的にと言うとあるいは語弊があるかもしれませんけれども、こういう反対があるというのは、それは事実として受けとめる必要はあろうかと思います。
  156. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 私自身は、今回の法案に関しましては、もっと慎重に検討し直すべきだというふうに考えておりまして、その場合、御指摘のような世論調査の結果というのもその一つの根拠として援用し得る可能性があると考えております。
  157. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 今おっしゃったように、いろいろな条件のもとでの調査ですので、数字がひとり歩きしてはならないと思うんです。  ただ、この間、委員会でもパイロット事業的にICカードを導入している自治体を勉強させていただいたり、あるいは私も地元近くのところで、広域でこういうことをやっているというお話をいろいろ伺っているんですが、住民票をとるだけとか、そういうのだけですと皆さんこういうシステムが必要なのかどうか。  出雲市なんかではICカードなんかはおやめになるみたいなテレビの討論もございましたけれども、住民にどういうメリットがあるのかが、一生懸命調べているんですけれども、勉強させていただいてもなかなかわからない。その一方で、生まれた赤ちゃんからすべてに番号をつけられるということが、先ほどお話があったように今の日本の社会状況の中で、どうにも自分としては嫌だというふうに一般的に思われるのも、またそれは理解できるのではないかなというふうに思います。  先ほどの堀部先生の御説明の中で、国民総背番号制というのは余りよくないんじゃないかと中間報告のときに思ったけれども、番号を変えることができるとか、そういうのがあるのでいいのではないかという御意見もあったんですけれども、そういう生まれてからすぐ国民すべてに番号をつけるというのが世界的に見て一般的なやり方なのか。それから、番号を変えるというのは、ちょっと気分が悪いから変えるとかごろ合わせが悪いからとかいろいろな理由があると思うんですが、そういうのはどんなふうだと皆さんがこれだったら何とか番号をつけられてもいいやというふうに思える中身になると先生はお思いなのか。  それから、内野先生、番号をつけない自由というのもある意味では認めてもいいのではないかというようなことがさっきのペーパーにもあったんですが、そういう点ではどういうふうにお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  158. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 今の八田先生の御質問というのはこれも大変答えにくいところがありますが、やはり番号というのは既にいろいろな形でつけられているというふうに私は理解しております。ですから、今のようにというか、全国でダブらないような形のものかどうかは存じませんが、各自治体それぞれ住民票には番号をつけているというふうに理解しております。  それが一般には認識されていないというところなわけですが、今度はそれをオープンの場で議論するという形でこの法案は出されたと思うんです。それだからまたそれに対していろいろな意見も出てきているということですので、それを法的根拠に基づいてきちんとやろう、番号が仮にいろいろなところに、法的に違法な面もありますが、蓄積されたりして変えなければならないというようなことになれば、電話番号を変えるのと同じように変えられるということは、各人にとっては一生背番号というか番号をつけられたまま変えられないということに比べればはるかに自由度、まさに自分の情報をコントロールできるという側面があるのではないかというふうに私は見ております。
  159. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 国民全員に番号をつけるという場合に、それに対する受けとめ方というのは個人個人によってかなりまちまちであろうというふうに思うわけです。  一方では、そんなことは別に全然気にならないよという人もかなりいるかと思いますけれども、他方では、それは何か自分に背番号が張られたみたいで嫌な気持ちがするという人もいると思うんです。その中でどうしても嫌だという人は、恐らく少数だとは思うんですけれども、このような少数の人の考え方こそ尊重しなければいけないわけでありまして、最低限ぎりぎりのところとして、今回出てくるようなコード番号を自分としては使いたくないという人が仮にいたとしたら、そういう人でもほかの人と同じように行政サービスが受けられるということが最低限確保されているということは必要ではないかと思うわけで、その意味でぎりぎりのところで自分は番号を使わない自由を持っているというところは必要だと思います。  極端な話をしますと、仮に自分の番号が通知される文書が来た場合、それが来た途端に破って捨てる、そういう人がいても不思議ではないというふうに認識しております。
  160. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。  私は、午前中の自治省に対する質問、それから修正案の提案者に対する質問の中で、かなりプライバシーの権利にこだわってきょうは質問をさせていただきました。  と申し上げますのは、我が国も国際社会もまさに情報化社会の到来であり、コンピューターネットワーク社会の到来であろうというふうに私は認識をいたしております。そういう社会だからこそ、プライバシーの権利の保護については、私たち自身があるいは政治や行政の衝にある者が神経質過ぎるほど慎重にならなければならないだろうというふうに私は思っております。  と申し上げますのは、プライバシーの権利というのは、一たん侵害をされますと回復不可能な被害を生ぜしめるわけであります。例えば財産犯ですと、この財産犯罪による被害法益は一たん侵害されても回復されるということはあり得るわけです。  そういう点では、今審議をしている住民基本台帳法の一部を改正する法律案を私たちが論議をしていく場合に、このプライバシーの権利をどう考えるのか。住民基本台帳法の一部を改正する法律案、ここで初めていわゆる住民票コードという制度を導入するわけであります。さらに住民基本台帳ネットワークシステムというのを法律上の根拠を与えて整備するわけでありますから、今審議をしている法案プライバシーの権利のかかわりというのをとことん吟味しておく必要があるだろう、こういうふうに私は思うわけであります。  午前中の質問の中で、私は自治大臣にも修正案の提案者にも、プライバシーの権利というのをどういうふうに考えておられるんだということを質問させていただきましたが、こもごもおっしゃることは、まだプライバシーの権利は概念としては固まっていないんじゃないか、おおむねそういう趣旨のことを言うわけです。私はそうではないんじゃないかと。  なるほど、プライバシーの権利については、かつては私生活をみだりに公開されないという意味での消極的な概念として考える人たちもおりました。また、そういう学説や判例もございました。しかし、例の三島由紀夫さんの小説「宴のあと」のプライバシー裁判以来、判例法の蓄積や、あるいは学者、研究者の研究によって、今や憲法十三条の幸福追求権を根拠にした自己情報のコントロール、こういうことがプライバシーの権利の中身として積極的に解されておるのではないか、こういうふうに私自身は考えているわけであります。  したがって、本法律案でも想定をしておりますいわゆる個人確認情報氏名住所生年月日性別というのは、まさに私はこれはプライバシーの権利として保護に値する情報だと思います。そういう情報をだれにどこまで知らせるのか、あるいは教えないのかを自分で判断して決定をする権利、そういうものとして私はプライバシーの権利を本法案とのかかわりで認識をしたい、考えておきたいというふうに思うわけであります。  改めて堀部参考人内野参考人に、このプライバシーの権利についてどうお考えなのか、そして本法案プライバシーの権利とのかかわりについての御意見をちょうだいしたいと思います。
  161. 堀部政男

    参考人堀部政男君) ただいまの照屋先生の御説明のように、プライバシーの権利については私も同様に考えております。これもお配りした資料の中に書いておきましたが、伝統的にはひとりにしておかれる権利、あるいは私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利ということで、主として不法行為法の分野で論じられてきたものがあります。  コンピュータリゼーションあるいは情報化社会の進展、特にネットワーク社会の進展という中で、アメリカの学説で出てまいりましたのが自己に関する情報の流れをコントロールする権利、自己情報コントロール権などと言っておりますが、そういうものを含むものへと展開してきているというふうに私は理解しております。  今回の住民基本台帳法改正法案で四情報住民票コード全国センターに蓄積されていくという状況をコントロール権との関係で考えてみますと、コントロール権といえどもそれが絶対的なものではないわけですから、一応法令というふうに申し上げますけれども、法的根拠を持ってどういうところではそれを使えるというふうに決めますと、それでもって自己情報コントロール権もその限りでは制約を受けるというふうに考えております。
  162. 内野正幸

    参考人内野正幸君) プライバシーの権利というものは、今日いわば最大公約数的な部分においては明確に確立しているというふうに認識しております。  また、御指摘の自己情報コントロール権ですけれども、このような考え方が現在の憲法学会で最も有力なわけですけれども、ただ憲法学会がそれで完全に固まり切っているわけではございませんし、私自身も自己情報コントロール権そのものはとっておりません。幾つかの反対説も依然としてあるわけです。  それで、私自身のプライバシーの理解というのは、特にこの場で申すまでもないことかもしれませんけれども、私はどちらかというとプライバシー権というのは、他人から見られたり聞かれたり接触されたりすると本人が困惑を感じるのが合理的であるような私的な事柄を保持する権利というふうに当面定義しているんです。  それはさておくとしましても、仮に自己情報コントロール権というふうに考えた場合でも、その自己情報をいわば中核情報と周辺情報に区別するという発想が必要になるわけでして、今回の基本四情報というのは周辺情報というふうに私は認識しているわけです。その意味で、確かに今回の法案プライバシーの侵害にかかわる問題が出てくる可能性はあるかと思いますけれども、しかし私の認識では、プライバシーの中核情報にかかわる重大なあるいは深刻な問題を引き起こすような種類のことではないというふうに考えております。
  163. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 内野参考人にお伺いいたしますが、住民基本台帳法というのは、その法の目的というんでしょうか、住民の居住関係を公証する制度なわけです。それで、きょういただきました読売新聞に掲載をされた内野参考人の論文を読ませていただきましたが、「自らの存在証明を番号にしたくないという考えもある。」、私はそのとおりだと思うんです。そして、そういう考えを持っている人はあるいは少数かもしれませんけれども、尊重されなければならないということを私は思っております。  それで、今度の法案では、先ほど申し上げましたように、十けたの番号によるいわゆる住民票コードというのが法律上明定されるわけです。むしろ、そういう住民票コードに法的な根拠を与えるということがこの一部改正法律案の主たる目的だろうというふうに思うんです。  そうしますと、確かに一たん付した番号が、変更請求権もあるんだというふうに言われますけれども、しかし変更しても番号はつくわけです。番号がなくなるわけじゃないんです。そういう意味では、いわゆる番号を付すというんでしょうか、付番、そういうことと、内野参考人がおっしゃった番号を使わない自由との関係は、今度の法案では国民一人一人に担保されていないのではないかというふうに私は思うわけです。  内野参考人がおっしゃるみずからの存在証明を番号にしたくないという考え方、これはこの法案国民が、人間が番号によって管理されることへの抵抗感や不安感というんでしょうか、あるいは嫌悪感というんでしょうか、そういったものを抱いている方がおられて、そういうのは無視しちゃいけないし、無視し得ない、こういうことを思っているわけでありますが、参考人がおっしゃる番号を使わない自由の担保ということは、本法案ではどういうふうに実効あるものとして国民に保障されているというふうにお考えなんでしょうか。
  164. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 前置きといたしまして、プライバシーの権利という概念と、自分に番号をつけてもらいたくないという権利は全く別個のものであると考えているということを先に申しておきます。  それで、御指摘の点ですけれども、番号は絶対嫌だという人がごくごく少数ですけれども出てくる可能性があるわけでして、そういう場合に、例えばその人が住民票をとりたいという場合に、住民票申請用紙に恐らく番号を書く欄がつくられると思うんです。その欄は空白にしたままでも住民票がとれるというシステムにすべきである。そういうシステム前提とした上で、いわば行政の内部的な問題としてその人の番号を使う。つまり、本人から見れば自分の番号が使われている姿がわからないわけで、自分は番号を使っていない気持ちになれるということなんですけれども、ただ、今回の法案レベルでそのような番号を使わない自由が確実に保障されているとは言えないと思います。これからそれを求めていく、もし仮に法案が成立したとしても最低限そこは求めていく必要があるというふうに考えております。
  165. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それから、内野参考人に引き続いてお伺いいたしますが、この住民基本台帳ネットワークシステム並びに住民票コードという新しい制度の導入をこの改正法で図ろうというわけでありますが、この新しい制度導入に要する費用と国民の受けるメリットというんでしょうか、一方では行政の簡素合理化と言われる、あるいはその制度導入によって国民が受けるメリットがあるじゃないかと、こういうようなことをさまざま言われるわけであります。  その中で、例えば住民票広域交付で通勤者にも非常に便利になるんだということだとか、あるいは転入転出の手続が転入先の手続一回で済む、だから転勤族にとっては大変ありがたい、便利でメリットがあるんだとかいうことなどが宣伝されているわけであります。そして、その導入のために初期投資額が四百億円とも言われます。年間の維持費が二百億円とも言われます。あるいはそれ以上かもしれません、これから細かい根拠は引き続いてただしていきたいと思いますが。  ところが、本法案では広域交付ができる住民票写しは本籍の表示を省略したものとされておりまして、パスポートや運転免許証申請には使用できません。そういう点ではメリットは本当に少ないじゃないかということだとか、転入手続にしても、転出証明書の添付が省略されるだけで、簡素化されて国民に目に見えるような形でのメリットというのはさほどないんじゃないか。  要するに、莫大なとてつもない費用を投入する割には、行政の側にはメリットは大きいかもしれませんけれども、国民一人一人が受けるメリットはほとんどないのではないか。そもそも住民票広域交付を受ける必要性なんというのはそんなに国民が必要としていないのではないかなというふうに思うんですが、内野参考人はいかがお考えでしょうか。
  166. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 今の御意見についてですけれども、表現に少し誇張が含まれている点を別にすれば基本的に賛成いたします。
  167. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ありがとうございました。  表現の至らない点はお許しいただいて、基本的には賛成いただきましたので、ありがたく思っております。  それから、内野参考人意見の中で、包括的個人情報保護法は本法律案の附属物のように考えてはならないというふうな趣旨の御発言があったと思います。私は表現は別として基本的に賛成でございます。  と申し上げますのは、民間を含む包括的な個人情報保護法というのは、この住民基本台帳法の一部を改正する法律案は別といたしましても、今の進展する情報化社会の中で我が国が早急に取り組まなければならない課題だ、こういうふうに私は思っておりますが、内野参考人から、包括的な個人情報保護法の大事にすべき理念、これだけは大事にすべきだというふうな点がありましたら、一言御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  168. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 個人情報保護法の大切にすべき理念ということで、これは一言では言えないんですけれども、先ほどお話がありましたプライバシー意識ということでありまして、日本の社会に住んでいる人々の場合、個人差もかなりあるんですけれども、平均しますとプライバシー意識は割と鈍いところが、低いところがあります。  それで、プライバシー意識の向上という問題もあると思うんですけれども、仮に法整備をするとしましたら、平均人を念頭に置くというよりも、むしろ平均人よりもプライバシーにより敏感な人あたりを念頭に置いて個人情報保護の問題を考えていく、これが一つの姿勢ではないかというふうに考えております。
  169. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  170. 高橋令則

    ○高橋令則君 自由党の高橋でございます。質問をさせていただきたいと思います。    〔委員長退席、理事山下八洲夫君着席〕  まず、技術的な問題です。安田先生、そしてまた前川先生に質問させていただきたいんですけれども、技術的な問題とかそういうことについては私は余り強くありません。既に他の委員からいろいろなお話がありました。私がお聞きした限りでは、技術的にはこの法案は十分ではないかと。ただし、人の問題、それから運用の問題としてどうか、それを十分にしなければというふうな話と私は受けとめました。  確認のようなことになりますが、まず技術的な問題については、そうはいってもこれからやるわけでありますので、果たして自治省が考えているこのシステム、これが技術的に本当にいいのか。やるとすれば、これをやっていく過程ではこういう点はぜひ、プライバシーとかいろんな面で落とせないような、注意という感じですか、そういうものが必要ではないかというふうに感じられるとすれば、それぞれお話をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  171. 安田浩

    参考人安田浩君) 繰り返しになりますが、基本的に技術的な問題としては問題ない。それからもう一つ運用面でも少なくともここに書かれていることを忠実に実行する限りにおいては問題ない。問題は、忠実に実行される監視役、これがさらに磨かれた人が必要なわけですけれども、その辺にあるいは問題があるかもしれないというふうに思います。  それから、注意すべき点ですけれども、先ほど申し上げましたように暗号そのものが進歩いたします。ですから、どの時点でどの暗号を使うかということをきちっとまず最先端として考えるということと、それから常に固定しないように、つまりこの暗号に決めたからもう変えないよということではなくて、世の状況、それからその目的によって最適な暗号を使うということを注意しなければいけない。  もう一つは、ネットワークの組み方としてどんなネットワークを使うかということでありますが、基本的にはこれから先広がるであろうインターネットベースのプロトコルというものにしていった方が広がり、将来の可能性としては、つまり三千三百しか今ないとおっしゃいますけれども、それはもっとふえるかもしれない、もっと減るかもしれない、いろんな議論がございますが、そういった網の柔軟性ということを確保する上においても、電話網というタイプではなくてインターネットの形のプロトコル、これはいろんな意味議論がございますが、最近新しい標準化になったプロトコル、かなり優秀なプロトコルがございますので、そういうことも含めて御検討になるということが実は大事なことではないかというふうに思っております。
  172. 前川徹

    参考人前川徹君) まず、どういう製品を使うかというのがまだ決まっておりません。その製品によって、ソフトウエア、ハードウエアを含めましてセキュリティーのレベルはさまざまだと思われます。  実を言いますと、この六月にISO国際標準化機構の方で新しくセキュリティーの評価基準というものができました。国際標準ができました。ISO・IEC15408という名前で、まだ世に知られておりませんけれども、もう既にアメリカあるいはイギリス、フランス、ドイツ、カナダといった国では、ISOの15408のもとになったコモンクライテリアと言われているものをベースに評価、認証するという制度がつくられております。  残念ながら、まだ我が国においてはそういった評価の体制あるいは認証するといった制度はできておりませんけれども、できればこのISOの15408に基づいてある程度のセキュリティーレベルが確保された製品を選んでいただくということをぜひお願いしたいなというふうに思います。  それから、二つ目のポイントは、せっかくいい製品を買ってシステムを組んでも、その設定が適切でないと、先ほど人間系の問題というところでファイアウオールの設定を間違えると危ないよというお話をしましたけれども、きちっと設定をしていただくというのが二つ目のポイントでございます。  それから、三つ目は当然運用管理体制でございまして、マニュアルをきちっと整備して運用を適正にやっていただく、こういうところをぜひお願いしたいというふうに思います。  以上でございます。
  173. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  それから、第二問ですけれども、お聞きをしておりますと、電子商取引とか民間にわたる問題なわけですね。今の法律では実は民間使用は禁止ということになっておるわけです。したがって、それが遮断されておる限りは効用というかメリットというのがないわけですね。そして、将来を考えれば、いろんな条件があれば官民の交流というか、そういうものがあってもいいのではないかなというふうに思うんです。法律はわかっておりますけれども、そういうふうに社会全体として、そしてまたいろんな意味の条件から見て必要ではないかと思うものですからお聞きしたいわけですけれども、民間利用の問題について、条件とか含めて、安田先生、そしてまた前川先生にそれぞれお話をいただきたいと思います。
  174. 安田浩

    参考人安田浩君) 先ほど来述べておりますように、そういったことで便利になる可能性があるということは事実でございますが、まず国民というか皆さんの意識というものがそういうことに対してきちっと上がってこなきゃいけない。つまり、ネットワークでつなぐということは便利だけれども危険も伴うよということを明快に意識した上でそれに参加するということにならない限りは無理なんですね。ですから、そういう意味で現在、民間利用禁止、切り離しておくということ自体は、今の日本のレベルからいえば当然のことではないかというふうに思っています。  これがトリガーになって、住民基本台帳ですから皆さん使うわけですね。それで、そのカードを持っていってネットワークを使ったら、いながらにしてできたよということで便利を感じるということが出てくると思います。これは非常に大きな効用だと思っています。単純に一人がそれができることはそんなに効用がないんじゃないかということではなくて、皆さんがそういう意識を持つということは日本国全体にとって物すごく大きな効用だというふうに私は思っています。    〔理事山下八洲夫君退席、委員長着席〕  それから、それがトリガーとなって、ああネットワークって便利だね、だけれどもこういうことをちゃんと考えないといけないよねという形で伸びていって、そこの意識がある程度そろったところで初めてそういう意味の民間との融合というか、そういうことが出てきていいんではないか。それが出ない限りはやはり難しいだろうというふうに思っています。
  175. 前川徹

    参考人前川徹君) 今、アメリカで大変盛んにインターネット上で取引が行われておりますけれども、ここで使われている、ちょっとプロトコルというややこしい話を余りしない方がいいのかもしれませんけれども、ウェブのブラウザーに組み込まれているシステムはSSLと言われているシステムでして、これは実は個人認証はしておりません。個人認証を行うようなシステムというのは、実は、ビザ・インターナショナル、マスターカードあるいは日本のJCBなんかも絡んでいますけれども、SETと言われているプロトコルが開発をされたんですが、こちらの方は個人認証をやるんですけれども、プログラムを自分のパソコンの上で別途動かさないといけないということもあって余り利用はされておりません。  そういう状況でございますので、今、本人認証しないとインターネットコマースが発達しないかというと、私はそうではないだろう、こういうふうに思っております。ただ、本当に詐欺とかいろんなインターネット上でのやはり商取引のトラブルというのはありますので、そういう意味ではきちっとした個人認証ができ上がるともっとインターネット上の商取引は安全なものになっていくことができます。それはSETを使うのかもしれませんけれども、このシステムあるいは個人の使っている、配付されるICカードを使ってやるということも国民合意があれば可能性としてはあるのかなと。ただ、個人的には結構その国民合意をとるのは難しいだろうなという気がいたします。  以上でございます。
  176. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  法制度的な問題についてお聞かせをいただきたいと思いますが、内野参考人質問させていただきます。  資料を拝見しておりますと、慎重でいらっしゃるということはうかがえました。その条件としては、環境というか意識の問題と、もう一つはコスト的に余り大したことがないんではないかというような御趣旨に聞いたんですけれども、この四条件でいる限りは変わらないんですね。したがって、それと関連して、各省庁に関して言えば九十二事務、そしてまた各市町村の持っているコンピューターシステムをつくる事務、こういったものとコミットはできるわけですから、いろんな意味のあれができるのかなと思っているんですけれども、その効用についての先生のお話はどういうふうなことでございましょうか。
  177. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 私自身はコストベネフィット計算の専門家でありませんので、私が今回の制度はコストがかかる割には非常に役立つとまでは言い切れない面があると申し上げたのも、これまでのマスコミその他の報道とかいろんなところから情報を得た上でのいわば素朴な見解でございますということで、これ以上のお答えについてはお許しいただければと思います。
  178. 高橋令則

    ○高橋令則君 堀部先生にお尋ねをいたしたいわけですが、実は私は三党プロジェクトの中に入っておりまして、これからやらなけりゃいかぬものですからこれだけにさせていただきますが、オムニバス、いわゆるヨーロッパシステム、それからセグメント方式、それからセクトラル方式を三回ぐらい中で議論し、そして勉強させていただきましたが、今後の問題だというふうに思っているんですけれども、一方、政府の検討が進んでいるわけですので、それを聞いて、そして政治の中できちんとした結論を得なきゃならないというふうに思ってはいます。  アメリカの方を見ると、セクトラル方式といってもいろんな法律がもうできているんです。いわゆる自主規制が多いように見えるんですけれども、見ているといろんな法律がありまして、立て方は違うんですけれども、包括的ではないかもしれませんけれども、実質的には相当法律的な手当てがアメリカの場合は進んでいる。したがって、一つ法律をばっとしなければこれはだめだとか、それから個別であれば穴があるというふうなことではないのではないかという認識もしたりしております。それが一つあります。  それからもう一つは、これは先生がおっしゃったように思ったんですけれども、フランスのルイズ・カドゥ女史が言ったようですけれども、それを見ていると、やっぱりヨーロッパ方式がいいんではないかというふうな趣旨に見ているんですけれども、それはそれとして、自主規制のよさというふうなことも感じられるわけです。したがって、その辺について少し踏み込んだお話をいただきたいと思うんです。  最後になぜそういうことを申し上げたかというと、保護をどんどんやっていく、それと同時にマスコミとかに対する規制もやらざるを得ないわけです。ですからいろんな意味で、メリットだけではなくて、加害者の問題も出されたんですけれども、それも含めていろんな反面があるんじゃないかというふうに思いますので、それも含めてお話をいただきたいと思います。
  179. 堀部政男

    参考人堀部政男君) ただいまの高橋先生の御質問のうち、まずアメリカについてでありますけれども、アメリカの場合はもともとプライバシーの権利を主張した国でありますが、多くは各州で判例法上プライバシー侵害をどういう場合に認めるかというようなことがなされてきました。その後、今度、個別分野議論が起こってきまして、プライバシー考え方も、いろんな考え方がありますが、自己情報コントロール権的な、自分で自分の情報については決定できるというような自己情報決定権的なものも含めましてさまざまな考え方が出てまいりました。  そういう中で、例えば従来ですとプライバシー侵害が生じたときに損害賠償を請求するという方法だったんですが、そこに誤った情報があるということで、まず自分の情報を見たいという閲覧請求をするというようなことがどうもコモンロー上では認められないというようなところがありまして、これは裁判所でそういうようなこともあって、むしろそれは立法的に解決するということで、特に個人信用情報関係で自己情報アクセス権を認めていくというような法律が一九七〇年にできるというようなことになったわけであります。その後、個別の分野でその種のものが出てきまして、先生御指摘のようにかなりの数に上ってきております。  そのような法律の適用を受けない分野もまた相当数あるわけでして、例えばダイレクトマーケティングの分野などは直接規制する法律はありません。これはそれぞれの業界団体が自主規制で対応する。そういう中で、しかしダイレクトメールは受けたくないという人のために、これは一九七〇年代の初めですが、メールプレファランスサービスということで、当初は、自分はこういう種類のメールが欲しいというのを出してもらって、まさにプレファランスで、好むものを送るというようなこともやったんですが、これは業界にとりましては非常に大きな負担になってくる。そこで、多くはそういうダイレクトメールを受けたくないという選択をしてもらって、その人についてはダイレクトメールを送らなくするというような一種の自主規制で、自分の情報についてはそこのリストから落としてもらって送らないでほしい、そういうものを認めていくというようなことをしております。そのようなことで、自主規制と法的規制とが組み合わさった形になっております。  そういう中で、今度日本でどうすべきなのかということになってまいりますが、日本の場合も、これまでのところ法的規制というのはほとんどありませんで、現代的なプライバシーの権利に比較的近いものとしますと、貸金業規制法の中で返済能力の調査以外の目的に使ってはならないとか、あるいは割賦販売法の中で、支払い能力の調査以外の目的に使ってはならない、こういう目的利用を制限するというような形のものは出てまいりましたが、しかしこれはあくまでも訓示規定でして、それに従わなくともエンフォースといいますか執行ができるというような形になっております。日本でも今度漏えい事件まで起こって、その問題が実際に出てまいりましたので、先ほど触れましたようなことで、大蔵省、通産省で検討を始めて、これは法的措置を講じてはどうかということに今のところなっております。  その他の分野、いろいろあるのを全部なかなか申し上げる時間がございませんが、先生御指摘のように、全体に網をかぶせるということになりますと、マスコミはもちろんですが、それ以外に例えばそれぞれの政党の政党員の情報、これも個人情報ですので、こういうものをどうするのか。仮にイギリスのような形で全部登録制にするというふうにするのか。また、政党員にそれぞれ自己情報アクセス権を認めて、誤りがあれば訂正請求権を認めて、それに従わない場合には裁判所で争うというようなことも法律で決めるかというような問題になってくるわけです。恐らく、そうしますと、いや、そこまでやるのはどうかというようなことになってくると思うんです。これは先ほど魚住先生に申し上げた、イギリスではドメスティックユースに、家庭内で使うようなものについてはそこまで法が介入する必要はないんじゃないかというようなことであったわけですけれども、恐らく法が介入すべき分野はどこまでなのかというようなことももう少し、ヨーロッパで七〇年代、八〇年代と出てきた議論とアメリカでずっと長い歴史の中で出てきた議論とをいろいろ比較対照しながら、しかも今アメリカとヨーロッパだけを挙げておりますが、カナダの場合なども州レベルで、ケベック州などはオムニバス方式のものをつくりましたが、まだ連邦レベルでは民間を対象にしたものはありません。オーストラリアなどもまだできていない。  そういう中で、日本として、やはり日本社会にふさわしい個人情報保護方式は何なのかということを、いろんな意見を踏まえながら、いろいろなことを個人としては考えていますけれども、より多くの方の支持が得られるような方式を考えてみたいと思っております。
  180. 高橋令則

    ○高橋令則君 終わります。
  181. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 参議院の会の松岡滿壽男でございます。  参考人の先生方、本当に御苦労さまでございます。  私が最後の質疑者ということでございますけれども、先行議員の方から既にいろいろな角度での御質問もあったと思うんですけれども、きょうはたまたま、あしたの本会議を控えまして、国旗・国歌法案をどこの委員会でやるかということで議運の方で私は時間をとられておりまして、皆さん方の御意見、御質疑を伺わずに、大変御無礼でございますけれども、重なりましたらお許しをいただきたいというふうに思います。  まず、堀部先生にちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、既に基本台帳の問題につきましては、けさほどの自治省の行政局長の御答弁ですと市町村が三千億円ぐらいかけてそれぞれ入力し、情報を持っているわけです。それに今回、国の方で四つの情報を確保するために六百億円投入をするわけでございます。合わせて三千六百億円という投資が行われるわけで、そのほかに、市町村は別に広域で、これは三千億円の中からでしょうけれども、情報を確保してサービスをしているという状況でございますけれども、今回こういうコストをかけて効果があるんだろうかということにつきましての御見解をまずお伺いいたしたいというふうに思います。
  182. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 今の松岡先生の御質問、その数字につきましてはよく私は存じておりませんが、私が伺っているところではといいますか、先ほどは申し上げませんでしたけれども、九六年に自治大臣の懇談会がありまして、そこで自治省からこのシステムのメリットなどを伺った限りでは、また、五月六日に衆議院地方行政委員会参考人として御出席いただいた岐阜県の梶原知事などが言っていたことを踏まえますと、それなりのメリットがあるのではないかというふうに私は理解いたしました。
  183. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 個人情報保護法が優先されるべきじゃないかという意見も多いわけですけれども、諸外国の場合はこういう問題についてはどういうふうに対応しておるんでしょうか。
  184. 堀部政男

    参考人堀部政男君) それぞれの国で対応は異なりまして、例えばアメリカですと、ソーシャルセキュリティーナンバー、SSNの場合には、これは一九三六年だったかと記憶しておりますが、そのときに導入されまして、これについては特に法的保護措置は講じられておりません。そのためにSSNは、場合によりますとホテルに宿泊するときにも番号を書かなければならないというような時期も私など経験しております。  それぞれの国にそれぞれの対応がありまして、一方、イギリスなどですと、むしろ番号につきまして随分議論をいたしましたが、結局まだ取り入れていない。イギリスの場合には、一九八四年にデータ保護法を制定するというようなことで、今法的保護が先行しているというような状況にございます。そのほか、北欧等におきましてはデータ保護法とともに住民に何らかの番号をつけて利用するというような方法もとっております。
  185. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 資料でいただきましたレジュメで、八原則のうち六番目の公開の原則というのはどういうことなんでございましょうか。
  186. 堀部政男

    参考人堀部政男君) 公開の原則と申しますのは、それぞれが持っております個人情報のファイルなりシステムなり、そういうものを一つの方式としますと、どこかに届け出るなり登録しまして、それでどういうシステムをどこが持っているかというようなことを公開いたします。あるいはそれぞれの自主的な団体が、自分のところではこういうシステムを持っているということでオープンにしていくというようなものでありまして、そのシステム自体を公開する。ですから、秘密のシステムは原則としてあるべきではないという考え方になっております。  そのことから、これは自主的な面ですが、例えば日本でも個人信用情報機関というのがございまして、そこですと、これは私などもOECDの八原則の直後からいろいろ議論をしてきまして、だれがどこからお金を借りたかということをかなり大量に情報を持っているんですけれども、それまではその個人信用情報センターそのものの存在を明かさないということをやっておりました。しかし、それは国際レベルからすると、いつまでもそういうやり方をしていたのでは批判を受ける。むしろ、そういうシステムがあるということを広く世間に公開して、それで自分の情報を見たいという人に対してはそれをちゃんと見せるようにして、誤りがあれば訂正をするというようなことをすべきであるということで、これは私は随分その人たちと議論してまいりましたが、実際に実行されております。そういう自主的なもので全体をオープンにするということになってまいります。  また、日本では今度の住民基本台帳法改正案でもどういうシステムがあるかということは既に明らかになっておりますが、それをさらに今度何か別の法律をつくって別の分野についてやるとなりますと、先ほど言いました例えば政党の党員の名簿はこういうのがあるということ自体を政党が公にするか、あるいは政党がどこかに届け出てそれを明らかにするというようなことも必要になってまいります。これはもちろん、それ以外に宗教団体等も非常に多くの情報を持っているところもありまして、そういうものも全部、自分のところは個々の内容ではなくてシステムとしてこういうものを持っているということをオープンにするというのが公開の原則であります。それが前提になりまして、自分の情報がどこにあるかということがある程度わかりますので、それで自分の情報を見せてほしいという形で請求をする、こういうことになります。
  187. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ありがとうございました。  内野先生、基礎年金番号住民票コードを統一すべきという意見もあるんですけれども、こういうことについてはどのようにお考えでしょうか。
  188. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 確かに統一した方が効率的な面があるかもしれませんけれども、仮に今回コードをつくるとしたとしてですけれども、当面は別建てにして、分野ごとに別々に番号を設けていくという方式の方がより望ましいのではないかと考えております。
  189. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 先生はやっぱり共通番号分野番号というのは別にすべきだというふうに先ほど御説明いただきましたので、そうだろうというふうに思います。  プライバシー保護の観点とは別に、一元化したとき、その方が便利がいいというデータはやっぱりあるだろうと思うんです。一元化するとすれば、どういうデータを、その範囲まで許容できるというお考えはお持ちでございましょうか。
  190. 内野正幸

    参考人内野正幸君) 一元化するという場合、抽象的に言えば密接に関係したデータについては一元化しても構わないわけでして、番号の共通化の問題と少しずれるかもしれませんけれども、例えば、細かい話になりますけれども、運輸省が保有している自動車登録情報都道府県の保有する自動車税関係情報というのは、この程度ならばデータ結合しても構わないんじゃないかというふうに考えておりまして、それと似たような発想番号の一元化についても言えると思います。  ですから、番号の一元化に一〇〇%反対しているわけではなくて、一元化に強い合理性、必要性がある場合については一部認めてもいいというふうに考えております。
  191. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ありがとうございました。  安田先生、電子商取引の問題から、非常に今回の住民基本台帳ネットワークシステムについては評価をしておられるようですが、基本的にはそういう理解でよろしいんでしょうか。
  192. 安田浩

    参考人安田浩君) そのとおりでございます。
  193. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 デジタル社会における法整備がおくれているということで法務省の刑事局長質問もいたしておるんですけれども、そういう電子商取引が行われる社会になると、今までの法整備では対応できない、あるいは法務当局でも対応できないさまざまな犯罪が出てくると思うんです。それには基本的にどういう対応をすればよろしいんでしょうか。
  194. 安田浩

    参考人安田浩君) それは難しい問題だと思います。それぞれのケース・バイ・ケースになってしまうんだというふうに思います。  多分、仮想空間とかそういったところで何か起こるとか、いろいろな議論が発生しているというふうに思いますけれども、私自身、まず一番大事なことは、そういうことが起こるんだということを皆さんが意識して、ではそれに対応して何をするかということを議論できる環境というものが出てこないと、どう取り締まったらいいかとか、どういうルールをつくったらいいかということもまだ議論できないのではないかと。  そういう意味で、まずネットワーク使いなれるという環境、それを少しずつやっていくということが大事なんだという意味で今度の台帳ネットワークは評価しているわけなんです。  それから、その先にいろんなことが出てくるということは確かだと思いますが、まだそこまでちょっと考えるに至ってはいないんです。
  195. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 グローバリゼーションということになると、今までの日本の島国の中での、いわゆる性善説から性悪説に対応できる仕組みづくりをかなりしたたかにしていかないといけないのじゃないかという感じがいたしておるんです。  前川先生のお話ですと、例えば不正アクセスの問題ですが、八〇%ぐらいが内部の人の問題であると。罰則にもちょっと触れられたんですけれども、どういうものをお考えになっておられるのか。現在の日本の法整備ではこれは対応できていないと思うんですけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  196. 前川徹

    参考人前川徹君) 不正アクセスで内部犯が多いと申し上げましたのはアメリカの現状でございまして、内部犯といってもそのときの従業員には限らず、例えば首になった従業員が首になった直後にその会社のシステムを壊したというような事例もございます。そういうのも含めまして内部犯行が多い、こういうことを申し上げました。  ただ、内部犯行が多いと言ったのも、内部犯行をやっている人たちは当然捕まらないということを前提にやるわけで、インターネットを通して会社のシステムを壊したとか、あるいは会社のシステムに裏口をあけておいて、それで首になった腹いせにシステムを壊したというようなケースでございます。  今回の場合は非常にクローズドなシステムになっておりまして、利用する、オペレーティングをやる人間というのは恐らく決まっていると思うんです。そういう意味では、非常に内部犯罪が起こりにくいといいますか、非常にリスクが高い。もし自分がそういうことをやるかと言われたら、リスクが余りにも高過ぎて一歩引いてしまう。そういうような環境にまずあるということが一つございます。  それから、まだ勉強不足なので申しわけございませんけれども、何か罰則は従来のものに加えてさらに強化されたものになっているというふうにお聞きしておりまして、それも大変そういう犯罪を防ぐ一つの策になっているのではないか、こういうふうに考えております。
  197. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 もう私が最後でございますし、参考人の皆さん方もさんざん質疑があったわけでございますので、このぐらいに私の方はとどめたいと思います。  長時間、大変御苦労さまでございました。  ありがとうございました。
  198. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御礼を申し上げたいと思います。  本日は、大変長時間にわたって貴重な御意見を承り、心から御礼を申し上げる次第でございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十七分散会