運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-05-20 第145回国会 参議院 総務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十日(木曜日)    午前九時三十一分開会     ─────────────    委員異動  五月十八日     辞任         補欠選任      清水嘉与子君     真鍋 賢二君  五月十九日     辞任         補欠選任      但馬 久美君     日笠 勝之君  五月二十日     辞任         補欠選任      真鍋 賢二君     清水嘉与子君      日笠 勝之君     但馬 久美君      吉川 春子君     井上 美代君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹村 泰子君     理 事                 海老原義彦君                 佐藤 泰三君                 江田 五月君                 入澤  肇君                 堂本 暁子君     委 員                 石井 道子君                 岡  利定君                 鴻池 祥肇君                 清水嘉与子君                 森田 次夫君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 川橋 幸子君                 小宮山洋子君                 但馬 久美君                 浜四津敏子君                 阿部 幸代君                 井上 美代君                 吉川 春子君                 清水 澄子君        発議者      川橋 幸子君        発議者      小宮山洋子君    国務大臣        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君    政府委員        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君    事務局側        常任委員会専門        員        志村 昌俊君    参考人        東京大学社会科        学研究所教授   大澤 眞理君        東京大学大学院        法学政治学研究        科教授      寺尾 美子君        法政大学法学部        教授       江橋  崇君        東京都立大学法        学部教授     浅倉むつ子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○男女共同参画社会基本法案内閣提出) ○男女共同参画基本法案川橋幸子君外二名発議  ) ○議案の撤回に関する件     ─────────────
  2. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ただいまから総務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十八日、清水嘉与子さんが委員辞任され、その補欠として真鍋賢二さんが選任されました。  また、昨十九日、但馬久美さんが委員辞任され、その補欠として日笠勝之さんが選任されました。     ─────────────
  3. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案を一括して議題といたします。  本日は、両案の審査のため、東京大学社会科学研究所教授大澤眞理さん、東京大学大学院法学政治学研究科教授寺尾美子さん、法政大学法学部教授江橋崇さん及び東京都立大学法学部教授浅倉むつ子さん、以上四名の参考人方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案につきまして、参考人皆様から忌憚のない御意見をいただき、今後の委員会審査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人皆様からお一人十分以内で順次御意見をお述べいただくこととし、その順序は、大澤参考人寺尾参考人江橋参考人浅倉参考人の順といたします。  御意見をお述べいただきました後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人の御発言は座ったままで結構でございます。  それでは、まず大澤参考人から御意見をお述べいただきます。大澤参考人
  4. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 大澤眞理と申します。  私は、東京大学社会科学研究所比較現代社会現代社会比較研究の部門に所属し、特に社会保障研究専門にしております。本日の四人の参考人の中で私だけが法律学専門にしておりません。現代社会比較研究という中で、私は特にいわゆるジェンダーの視点男女平等の推進視点から、各国の社会政策経済政策あるいは女性政策と呼ばれるような政策比較研究をこの十年くらい特に集中してやってまいりました。それから、総理府の男女共同参画審議会委員も務めさせていただいております。  法律学専門ではございませんけれども、そのような研究を行い、また調査などもしてきたということから、きょう参考人として発言機会を与えられたというふうに考えさせていただきまして、意見を述べさせていただきます。  私は、特に男女共同参画推進あるいは実現促進するための基本的な法律制度ということで、幾つかの外国法律制度調査をいたしました。その調査に基づいてきょうの意見を申し述べたいと思うわけですけれども、翻って、日本では男女平等に関しまして憲法明文規定があり、かつ男女雇用機会均等法などの個別の法令も存在しております。しかしながら、男女共同参画社会実現は経済社会的に大変緊急の課題であると考え、今回、政府法案を提出されているわけでございますが、この緊急の課題にかんがみて基本法令を速やかに制定する必要は非常に大きいというふうな点を改めて申し上げたいと思います。  ここから諸外国の状況をざっと見渡しますと、例えば憲法男女平等や性差別禁止明文規定を持っている国としてはカナダスウェーデンドイツといった国がございます。このうちカナダ男女共同参画に関して基本法令、ちなみにここで基本法令とは適用が個別の分野のみに限定されていないという意味で使っております。御承知のように、諸外国では日本基本法個別法に類するような区別がなされておりませんので、ここは個別の分野のみに適用されるものではないというような押さえ方基本法令を押さえておりますけれども、カナダではそのような基本法令を持っております。  また、憲法には明文規定はなくても基本法令を持っている国としてオーストラリアカナダ、イギリス、ノルウェーデンマークといった国が七〇年代の半ばから八〇年代の半ばにかけて基本法令を制定しております。  他方で、アメリカベルギーといった国では憲法明文規定もなく、また基本法令もございませんけれども、個別の分野適用される男女平等に関する法律を持っております。このうちベルギーでは、今日に至りまして、個別の法令の間の論理的なまとまりや体系性が欠如しているということが意識されるようになってまいりました。  このようないわゆる先進国と言われる諸外国基本法制のあり方にかんがみて、繰り返しになりますが、日本においても基本法を速やかに制定する必要が大変大きいというふうに考えます。  諸外国法制をざっと見渡しまして、大きく英米法系の国とそれから北欧系の国、そしてヨーロッパ大陸系の国というふうに法律制度のタイプが分けられるかと存じます。  英米法系の国では、差別禁止し、それから私人による訴訟を主たる実施手段とするようないわゆる争訟型、訴訟を起こして争う型の法制が整備されております。これに対して、北欧諸国では男女平等の促進目的に掲げる基本法令を持っております。  しかし、今回の基本法案でもきちんと位置づけられております国の責務に当たるような規定英米法系諸国には見られません。他方で、スウェーデンノルウェーデンマークドイツ及びEUの基本法制の中には国の責務に当たる規定が見られるわけでございます。  英米法系諸国争訟型でございますから、詳細な性差別禁止規定を持っております。日本でも男女共同参画に関する基本法令としては性差別禁止が当然大きな課題になっておりまして、政府提出法案第三条に明確な規定が見られるところでございます。  それから、いわゆるポジティブアクションでございますけれども、いわゆる先進国と言われる国はすべて何らかの積極的に差別改善する、あるいは共同参画促進するような問題に関しまして法令を持っておりますけれども、適用分野積極性にはおのずと差異が認められます。  特に、オーストラリアカナダアメリカといった英米法系の国を中心としまして、公私の雇用主に対してポジティブアクションを義務づけるような規定が、これは個別法課題として見られるわけでございます。しかしながら、ノルウェーデンマークといった国では公的委員会等への男女共同参画法律で定めておりますけれども、雇用分野ポジティブアクションは例外的な位置づけになっております。  我が国基本法を検討する際にはこのようなポジティブアクションが当然非常に重要な論点となりますけれども、今回の法案では国の責務地方公共団体責務ということで位置づけられているところでございます。  時間はどうなっておりますでしょうか。
  5. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) あと一分ぐらいでございます。
  6. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) はい、ありがとうございます。  最後に、ここは申し上げたいところは、男女共同参画推進する国内本部機構基本法制関係がどのように諸外国法律規定されているかということでございますけれども、これはデンマークにおいてのみ規定をされております。つまり、基本法令等を監視する機関である男女平等委員会が同時に国内本部機構でもあるということで規定をされております。  今回、政府が提出した法案におきましては、男女共同参画審議会についての位置づけがございます。また、それ以外に中央省庁等法案におきまして、来る設立されるべき内閣府において男女共同参画会議設置規定されようとしているところでございますけれども、同時に政府が提出しております基本法案におきましては、政府のあらゆる施策策定実施に当たって男女共同参画推進に配慮するものとするという規定がきちんと立てられております。  これは振り返りますと、旧男女共同参画審議会答申であります男女共同参画ビジョンが、この社会実現するための取り組みの筆頭に性別による偏りのない社会システム構築を掲げて以来、男女共同参画二〇〇〇年プランでも、四大基本目標の第一に男女共同参画推進する社会システム構築を据えてきたわけでございます。これは北京で行われました第四回世界女性会議において国際社会が到達した施策理念の水準に比較いたしまして、全く遜色のない理念施策体系を持つと言えると思います。ただし、この課題に総合的かつ効率的に取り組むためには、多くの個別の法令施策の解釈、運用、立案に際して基本方針を示す基本法令を制定することが不可欠なわけでございます。  日本において、社会制度慣行男女共同参画視点に立って見直す根拠が今回の基本法において与えられるわけでございますから、これをかんがみますと、日本では、先進外国法制に比しても意義深い、より立ち入って言わせていただければ一歩進んだ法律ができるものと大いに期待しているところでございます。  以上でございます。
  7. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ありがとうございました。  それでは、次に寺尾参考人にお願いいたします。
  8. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) 私は、東京大学大学院法学政治学研究科教授をしております寺尾美子と申します。東京大学では英米法、特にアメリカ法中心研究教育に携わっております。  本日は、この委員会におきまして、男女共同参画社会基本法案、以下政府提案基本法案と呼ばせていただきます、及び男女共同参画基本法案、以下民主党提案基本法案と呼ばせていただきますが、これらの法案につき意見を述べる機会をいただきまして、大変ありがたく存じております。  私は、平成九年六月に男女共同参画審議会設置法によって設置されました男女共同参画審議会委員といたしまして、一年半ほど基本法案につきましての審議会答申策定にかかわらせていただきました。本日、参考人としてお招きいただきましたのも、こうした経緯によってのことと理解しております。したがいまして、本日はこうした立場から、主として政府提案基本法案について意見を述べさせていただき、民主党提案基本法案につきましては御質問があれば意見を述べさせていただくということにしたいと存じます。  審議会では、基本法答申をまとめるに当たりましていろいろな議論がなされましたけれども、そうした議論を通しまして幾つかの合意点といいますか、基本的な考え方に到達し、その考え方に立って作業を進めてまいったというふうに理解しております。  以下、その考え方基本となるものを二つお話しさせていただきたいと思います。  先ほども大澤参考人がおっしゃいましたが、我が国憲法は、個人の尊厳や基本的人権の尊重及び両性の平等をうたっております。しかし、ここに至りまして、これらの価値をよりよく実現するためには何らかの基本法を制定する必要があるという声がいろんなところで高まってきた。そのために審議会設置され、答申の作成にも携わったというふうに理解しております。  これは言いかえますれば、人々が性別によって差別されることがないような社会個人として尊重され、つまり個人のそれぞれの意思によってみずからが望むような形でそれぞれ得意の分野でその能力を自由に発揮して、そうした形で社会に貢献するとともに、他方社会からひとしく利益を受けるような社会基本法案言葉で申し上げれば、「政治的、経済的、社会的及び文化的利益」という言葉が使われておりますけれども、こうした社会からの恩恵もひとしく受けられるようなそういう社会をつくりたい、そのために基本法を定めようということでございます。  そのために何が最も重要か。まず第一のポイントでございますが、それは共同参画という理念であり共同参画という視点、つまり共同参画が重要であるということです。  我々は今日、非常に高度に発達した複雑な社会の中で生きております。社会の中にはいろいろな制度仕組みがございます。こうした中で既存の制度仕組みのもとで平等に扱ってもらうということだけではなく、これらの仕組み制度をつくっていく、それを動かしていく過程に男女がともに共同して参画していくことが非常に重要なのではないか。それが基本法案の題名にもなっているわけですけれども、それが男女共同参画理念であるということでございます。つまり、国民一人一人が個人として尊重され、性別による差別を受けることがない社会というのをつくるためには、この共同参画が行われる社会というものをつくらなくては、結局はそういう社会実現することができないんだという着眼点でございます。ちなみに、この着眼点政府提案の第四条で述べられております。  以上が第一の考え方基本でございますが、第二の考え方ポイントは、これは基本法であるという点でございます。  つまり、このことから以下の二つのことが出てくるわけですが、まず第一に、これは基本法でございますので、これから将来に向けてなされるべき個別的な改革や改善のための土台となるものをつくりたいということです。また、この分野にかかわりますことはたくさんの事柄がございます。多くの分野のことが関係してくる事柄でございますので、それを統合する機能というものが基本法には期待されるだろうということでございます。さらに、基本法でございますので、長期的スパンに立ったものでなければならないだろうという視点です。  それから第二の点は、これは今述べました第一の点と密接に関係してまいりますけれども、法律というのは国民意思の表明でございますので、国民的合意が前提となります。何が男女の平等かということをめぐりましては、個別の分野各論分野でこれまでもいろいろな議論がなされ、法的あるいはその他の解決、手当て等が既になされている分野もございますけれども、そうでもない分野議論が分かれている分野、あるいはまだまだ議論がなされていない分野、いろいろあろうかと思います。私は、個人的にはもっともっといろんな分野で変わっていってほしいというふうに思っておりますが、しかしそのためには、もっともっと国民全体のレベルで多くの議論がなされ、国民一人一人がこの問題に真剣に取り組むということが必要だろうというふうに考えております。  私は法律学を専攻してまいりましたけれども、今日でも国によりましては、憲法等に美辞麗句を尽くした文言が存在はしていても、実際の社会はそれとはひどくかけ離れているという社会、そういう国もまだ存在いたします。法というものは社会共通の了解と乖離しておりますと、結局は尊重されないだろうというふうに考えるわけでございまして、そういう趣旨からも、国民的合意をどの辺でつくれるかということを審議会でも議論いたしました。  すなわち、いろんな立場から審議会でも議論がなされましたけれども、今の時点で個別の議論や異論を超えて国民的に合意できるのはどの線か、この先改善、改革すべき点等議論して具体的に明らかにしていくという作業をするためのいわばその出発点といたしまして、国民の間で共通認識として共有できるところをその基本理念として示すのが今基本法に期待されているところではないかということで審議をし、答申策定してまいったというふうに理解しております。  審議会では、昨年六月に論点整理ということで中間報告を公開いたしまして、全国五カ所で意見交換会を開催いたしますとともに、これには二千人弱の方が御参加になりました。それから、国民各層の御意見をお寄せいただきまして、その件数は三千六百十一件に上っております。我々が審議会でつくりました答申は、こうしたプロセスを経てつくられたものでございます。  政府提出基本法案は、委員といたしまして、委員の目から見て審議会答申趣旨を十分に生かしていただいたというふうに評価しております。特に、男女間の格差を改善するための積極的改善措置につきましては、第二条二項に定義規定を置き、第八条の「国の責務」でこれを受けて、男女共同参画社会形成促進に関する施策にはこの積極的改善措置が含まれるということが明記され、積極的改善措置位置づけがより明確になったというふうに評価しております。  また、第四条でも、答申趣旨を生かしていただきまして、社会における制度慣行性別による固定的な役割分担等を反映して中立的ではないような影響を及ぼすことがあるというところにも踏み込んでいただいておりまして、その点も評価できるかと存じます。その他、言及したい点もございますけれども、時間の関係で割愛させていただきたいと思います。  全体といたしまして、私は先ほど御説明した、審議会答申策定に当たっていろいろ議論された結果、我々の基本的な考え方としたところは間違っていなかったというふうに考えております。この基本法案が国会で承認され、法律として成立いたしますれば、今後の我が国我が国民にとってよりよき社会に向けての大きな一歩前進となるものというふうに考えております。  以上です。
  9. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ありがとうございました。  それでは、次に江橋参考人にお願いいたします。
  10. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 江橋でございます。  私は法政大学法学部憲法を教えております。また、川崎男女平等推進協議会委員を長らく務めておりまして、その後第四期の東京女性問題協議会委員を務め、また川崎男女平等オンブド設置準備委員会委員を務めております。  そういう立場から、すなわち自治体における女性政策女性行政推進してきた立場から、今回ここで政府提案及び民主党案について意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。  時間がありませんので、早速中身に入りますけれども、政府案につきまして、私は幾つかの評価すべき点があると思っております。既に大澤先生の方からも御紹介がありましたとおり、今日この領域において基本法策定することは急務だと私も思っております。女性行政目標あるいは組織そして権限というものが明確になるということが大事だと思っております。  実際問題、この政府案においては、まず人権保護女性行政目的である、男女共同参画社会形成促進行政目的であるということが明確になっており、とりわけ性差別人権の問題として位置づけたということが評価されるべきかと思います。二つ目に、ポジティブアクションが国及び自治体責務として八条において明示されていることも重要だと思っております。三つ目が、これは実は審議会答申どおりなのでありますが、自治体における男女共同参画行政位置づけが非常に明確になった。政府案で言えば、九条において地方公共団体責務という形でここが明確になったということがございます。四つ目に、苦情処理人権侵害に対する保護、救済にまで及ぼした点であります。これも審議会答申どおりだと思います。  これらを通じて、とりわけ自治体男女共同参画にかかわる固有の責務を明確にしたということが、これまで従来往々にして地方自治法上、根拠規定が明確でないということが指摘されていたこの領域について法的な基盤を提供するものとして重要だ、地域草の根における女性差別に対する一層の取り組み強化が可能になると思っております。  同時に、二つ目に、しかしながら政府案には問題点がもちろんないわけではございません。  まず一番目に、人権は明確化したのですけれども、男女共同参画という概念の自己限定が強過ぎるというのが私の率直な印象でございます。これまで政府及び自治体は、この領域においては男女平等あるいは女性人権確保ということを繰り返し言ってきたと思います。一九九〇年代に入って、男女共同参画あるいは男女共同参画社会形成あるいは男女共同参画社会形成促進という言葉が次々とつくられてきましたけれども、従来は女性人権確保男女共同参画社会形成のかぎだというふうに言ってきまして、のっけから男女共同参画社会とは言わなかったように思います。今回は、その部分女性人権という言葉がほとんど登場してこないわけでございます。  御参考までに、本日参考資料として私の方からお配りした「東京男女平等推進基本条例(仮称) 検討骨子」の印刷物で言えば、八ページの「目的」というところをごらんになっていただくとわかると思いますが、例えば東京都の場合は、「性別に基づく差別権利侵害を受けている者の大部分女性であるため、男女平等参画社会実現するには、まず女性人権確立から始めることが重要である。」というように女性人権確立ということを位置づけております。また、政府におきましても、男女共同参画二〇〇〇年プランでは、「女性人権推進・擁護される社会形成」ということを言っておりまして、男女共同参画社会形成女性人権確保を通じて行われるんだという視点が必要かと思っております。  これは何も抽象的にそうだというだけではなくて、具体的に例えばドメスティック・バイオレンスの問題が政府案には抜けているというふうに言われておりますが、ドメスティック・バイオレンスの問題に触れていきますと、女性人権の今や中心的な課題の一つですから、どうしても女性人権に触れることになる。逆に言えば、女性人権に触れていないということとドメスティック・バイオレンスについて触れていないということは相呼応しているのではないかという意味で、ここに大きな問題が一つあるように思います。  また、男女共同参画社会形成ということを強調するのは、古橋小委員長などがあちこちでお話しになっているところによれば、男性にとってものみやすい法案にするためだということをおっしゃいますけれども、従来から新しい人権とか差別の問題を考える際には必ず、既に社会においてメーンストリームにいる者の側の反省と自己改革抜きには問題は解決しないということが言われているわけであります。私も男性ですけれども、男性に反省と自己変革を求める契機が必要だ、そういう意味において余り甘い、だれでもがうんうんと言えるような、男女ともに仲よく共同して社会をつくりましょうということではなくて、やはり女性差別を是正していくのだという観点はぴしっと入れた方がよいというのが私の意見でございます。  二つ目に、自治体との連携、支援でございますけれども、二十条で情報の提供その他の支援措置が書かれておりますけれども、やはり何といっても法的及び財政的な支援が大事かと思います。法的なものにつきましては、まことにこの基本法は結構でございまして、自治体の固有事務としての男女共同参画社会形成促進を定めたわけですので、これで十分かと思います。あとは財政措置に関する一般的な原則が書かれていればよかったのにと思っております。  三つ目に、苦情処理の問題がございます。  苦情処理の実態像は依然として不明確だと思っております。野中官房長官の御説明などによれば、とりあえず人権擁護委員などの既成の制度を活用するんだということでございますが、政府の行っている施策に関する苦情については、行政相談、行政監察が使えるかと思いますが、自治体の行っている施策、もっと具体的に言うと、例えば公立の学校における男女混合名簿の推進をどうやってするのかというときに、内閣府の男女共同参画局がこれをどう行っていくのか。例えば、うちの学校ではだめだ、まだなっていないという苦情が出た場合にどう処理をするのか。地方自治体が経営する学校の具体的な現場の問題に果たしてかかわることができるかということがございます。また、民間における人権侵害については人権擁護委員を使えということでございますが、これでもとても足りないように思います。  私としましては、三つほど申し上げておきたいと思います。  一つには、やはり女性差別の撤廃とか男女平等とか女性人権といった従来政府のとってきた態度を余り急激にかじ取りをして一切消してしまって、ことごとく男女共同参画社会という言葉で説明するというのはいささか無理があるという意味で、女性人権確保という言葉をどこかに入れた方がよろしいのではないかと思っております。  二つ目に、やはり女性差別の撤廃あるいは男女共同参画社会形成ということであれば、地方、女性、若者をメーンストリームにするんだということが大事だと思っております。地方というのは田舎という意味でなくて現場という意味でございます。したがって、そういった意味において、地方自治体における女性センターなどを通じた多様な市民活動の支援が大事だと。国であれ、自治体であれ、余り行政が前面に出るのでなくて、市民活動を支援していく、草の根において市民自身が問題を解決していくということをサポートするというシステムが必要だと。そういった意味において、その活動を支援するとともに、そこから出てくる政策情報をきちんと吸い上げることが大事だと思っております。  三つ目に、苦情処理人権保護のシステムも地方分権化する必要があると思っております。既に、人権擁護委員制度の中では子供の権利に関し全国に六百人の専門委員を配置しましたけれども、実際の仕事を見てみれば、地方自治体及び地域の市民グループの協力なしに人権擁護委員だけでは全然動かないということがはっきりしているわけでございます。したがって、人権擁護委員制度の抜本的な改正と地方分権化ということをここで念頭に置いて、今後この問題を詰めて検討していく必要があるだろうと思っております。  最後に、伝え聞きますところでは、政府は二〇〇〇年の女性会議にこれを法律化して日本取り組みを強化しているということを持っていきたいというお考えのようにお聞きしております。御承知のとおり、人権擁護委員につきましては、既に昨年、国連においてあれではだめだといういわば国際的な断罪が下されております。今の人権擁護委員制度のもとでこれを使って性差別に関して撤廃をするんだと言えば、国際社会からは極めて冷ややかな反応が返ってくるというふうに予測されます。その点にも十分御留意いただければと思います。  以上でございます。
  11. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ありがとうございました。  それでは、次に浅倉参考人にお願いいたします。
  12. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 東京都立大学の浅倉むつ子と申します。本日は参考人として意見を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。  私は労働法、社会保障法を専門としておりまして、中でも男女雇用平等を研究テーマにしております。本日御審議法案につきましては、部分的ですが雇用に関係ある研究をしておりますので、主としてそういうかかわりでお呼びいただいたと思います。それと同時に、本日ここにお招きいただきましたのは、東京都の条例案の策定の仕事との関係ではないかとも思っております。  東京都は現在、男女平等参画条例を策定すべく検討中ですが、私は、東京都の女性問題協議会におきまして条例検討専門部会の部会長といたしまして条例の検討骨子を取りまとめる作業に携わってまいりました。そのような経験の中から、この法案にかかわる事柄につきまして、若干の意見を述べさせていただきたいと思います。  もちろん、東京都の条例といいましてもまだ検討骨子の段階でございまして、実は、先ほど江橋先生がお配りくださいました資料がそれでございます。ちょうどいい資料をお配りいただきましたので、私もこれを利用しながら意見を述べさせていただこうと思います。したがって、まだ成案になっておりません。また、辛うじてこのようにでき上がりました検討骨子も、決して十分完璧なものとは言えませんで、中にもさまざまな意見があるということはもちろん御承知おきいただきたいと思います。  ただ、幾つかの点で、私どもがこれを取りまとめる経過の中で議論したことがございますので、それについて御紹介することがきょうの法案に対する意見ともなるかと思います。  まず、条例の名称なのですけれども、東京都の私どもの検討骨子では、男女平等参画基本条例という名前が適当ではないかという考えに達しております。国に合わせまして男女共同参画条例というふうにしてはどうかという意見もありましたけれども、私どもは、国が説明しておられますように、男女平等の実現を当然の前提とした上でさらに参画を目指すというふうに言うには、今なお男女平等がいかにも不十分だというふうに考えておりますので、そこで明確に平等という言葉を盛り込むようにいたしました。  ただ、同時に、男性との平等のみが目標ではないという御意見は十分に参考にいたしまして、平等によっていかなる社会をつくるのか、そういう決定を女性が参画して行うということが非常に大切だと考えております。  したがいまして、平等と参画というのは車の両輪だと考えておりますので、平等参画という言葉を使いました。国の場合も決して平等を無視していらっしゃるわけではもちろんありませんし、それが基本であるということは承知しております。しかし、多くの女性の中にはやはり平等が不十分だ、それを明確にうたってほしいという意見が強いのではないかと思いますので、単なる名称というだけではなくて、基本的な考え方としてこのような理解が必要なのではないか、それを最初に申し上げたいと思います。  また、東京都の条例骨子の特徴としまして、一つは、この資料の中で九ページに「責務規定」というのを設けまして、そこでは都、都民、それから事業者の責務というものを置こうとしております。事業者という場合には営利法人、営利を目的とした個人、公益法人、その他の法律による法人格を持つ団体、また権利能力なき社団のうち事業を行うもの、そのような幅広い概念なのですけれども、条例はその事業者の責務の具体化としまして、十二ページのところで「男女平等参画の促進」といたしまして、一定規模以上の事業者については女性の参画状況の報告をせよという要請をしております。積極的にポジティブアクションに取り組むように求めるという仕組みを考えております。また、事業者は事業活動を行うときも男女平等参画の促進に配慮せよという要請、また都が行う施策に対しても積極的に協力せよという要請を置いております。さらに、積極的な取り組みを行う事業者に対しては表彰等を行うなど、プラスのインセンティブを与えるという仕組みも盛り込もうとしております。そのような状況の中で、単に都民という責務のみならず、事業者の責務というのを盛り込んでいるということも条例骨子の一つの特徴であろうかと思います。  もう一点、東京都の条例骨子の特徴は、性別による権利侵害禁止というのを明確に打ち出していることでございます。  資料の十一ページなんですが、その中では、「何人も、職場、家庭、学校、地域社会等において性別を理由とする差別的な取り扱いをしてはならない」、また「何人も、職場、家庭、学校、地域社会等においてセクシュアル・ハラスメントをしてはならない」、また「夫等から妻等への暴力は、これを行ってはならない」、「都は、夫等から妻等への暴力は人権侵害であるとの認識に立ち、その防止のための啓発に努める」、そのようにしたことでございます。そして、被害者に対して、東京都は「保護及び自立の支援等必要な措置を講ずる」というふうに規定しようとしております。  実は、このような女性に対する暴力の撤廃、それをどのように規定するかということにつきましては、現在御審議中の政府案の中では「男女個人としての尊厳が重んぜられる」、その表現から女性に対する暴力の根絶も読み取れるのだという御説明があったように思いますけれども、暴力の根絶という点は非常に具体的な施策でございますけれども、やはりそれは具体的にメンションしておいていただきたいなという要望を東京都の審議経過の中で持っております。  政府案につきましては、実を言いますと、私も政府案を現在制定するということそれ自体については大変積極的に評価いたしたいと思っております。この法律ができることによりまして、女性問題に関する国の施策が計画的かつ総合的に推進されるようになる、それは大変重要なことでございます。私の本日の意見も、せっかく法案をつくるのであれば、それをぜひともよりよい内容のものにしていただきたいという積極的な意見から述べさせていただいているということを御理解いただきたいと思います。  政府案の中では、とりわけ第三条で男女の尊厳が重んぜられるということ、それから性別による差別を受けないこと、それから個人として能力を発揮する機会確保されること、そういうことが重要であると述べていらっしゃる、そういう明確な基本的な姿勢に対しては大変敬意を表したいと思います。しかし、あらゆることをその中に読み込むというのはやはり無理があるのであって、基本法というからには、重要な規定はできるだけ、現在考えられる限りの規定はなるべく具体的なところも盛り込んでいただきたいというのが私の要望でございます。  すなわち、これは基本法ですので、将来の社会の展望となるようなものにしなければなりません。将来の改革の基礎になるものということと、それから現在合意ができていることというのは実はある場合には矛盾してくるのではないか。現在の合意が必ずしも将来の展望まで指し示しているというわけではありませんので、できるだけ現在の社会の合意よりも一歩先に進んでいる、そういう基本法をできるだけ制定していただきたいというのが私の基本的な要望でございます。  どうもありがとうございます。
  13. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 森田次夫

    ○森田次夫君 私は、自由民主党の森田次夫と申します。  先生方におかれましては、大変お忙しいところ、こうして御出席を賜りまして、まずもって厚く御礼を申し上げます。また、ただいまはそれぞれの先生からいろいろと大変貴重な参考になるお話をお聞かせいただきまして、重ねて感謝を申し上げる次第でございます。  そこで、この法案の提案理由でございますけれども、これの中身をごらんいただいておると思うんですけれども、政府としても並々ならぬ決意を持っておるわけでございます。この提案理由等をちょっと朗読をさせていただければ、「我が国においては、日本憲法個人の尊重、法の下の平等」云々とありまして、「しかしながら、現実の社会においては、男女間の不平等を感じる人も多く、男女平等の実現に向けて、なお一層、努力していかなければなりません。また、少子高齢化など社会経済情勢の急速な変化に対応していく上でも、女性と男性が、」ということでもって、「女性と男性が」と、こういうような表現になっておるわけでございますが、「互いにその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、性別にとらわれることなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会実現は、一層、緊急の課題」だ、そしてこれは「政府の最重要課題」だと、こういうような形でもって政府としても取り組んでおるわけでございます。  ただいま申し上げましたとおり、「女性と男性が」というようなことで表現されておるわけで、普通でしたらば男性と女性がと、こういうことになるわけでございますけれども、これだけ見ましても政府取り組みの並々ならないこと、こういったことがあろうというふうに私はとっておるわけでございます。  そして、名称につきましても、女男共同参画と、こういうふうにしたらどうかなというふうにも思ったんですけれども、余りにもそれではごろが悪いのでやはり前の方がいいかなと、こんなことも、冗談でございますけれども、実は思っておるわけでございます。  いずれにしましても、政府、特に野中官房長官は、本当にこの法律につきましては並々ならない決意がいろいろの面でうかがわれるわけでございます。  そこで、私は十五分しか時間がございませんので、早速質問させていただきたいと思うんです。  私も非常に勉強不足でございまして、基本的なことと申しますか、非常に幼稚な質問になるかと思いますけれども、実は男女共同参画二〇〇〇年プランでもって、報告も出ておりますけれども、我が国においては人間開発指数だとかジェンダー開発指数がそれぞれ上位にランクされておるわけでございますけれども、ジェンダーエンパワーメント測定にいきますと御承知のとおり九十四カ国中三十四位と、こういったことでもって非常に低位であるわけでございます。  このことは、いわゆる日本女性は能力はあるけれどもその能力を発揮する機会が十分でない、そして女性の力が十分生かされていない、こういったことではないかと思うのでございますけれども、そうした認識でよいのかどうなのか、そういったことについてお教えいただければなというふうに思います。  また、戦後強くなったのは女性と靴下だと、こういうふうに言われて久しいわけでございますけれども、まだまだ男は仕事、それから女性は家事、こういった風土から脱し切れていないという、こういうことじゃないのかなというふうに思うわけでございます。  実は、さきの選挙におきましては女性の進出が大変目覚ましかったわけでございますけれども、いわゆる意思決定に参画できますところの議員であるとか、行政職、特に管理職あたり、課長さん以上になってくると非常に少ないわけでございますけれども、そうした女性はまだまだ本当に少ないわけでございます。  そこで、この法律が施行された場合に、果たしてそういったような女性の議員さんがふえるとか、行政の管理職等がふえるようになるのかどうなのか、そういった人たちがもっとたくさん参画できるような機会ができるのかどうなのか、私はこれだけでは非常に難しいんじゃないかなというふうに私個人としては考えておるわけでございますけれども、その点についてお伺いをさせていただきたいということです。  それから、あと第三番目でございますけれども、本法案では、男女共同参画審議会委員男女の比率について十対四未満ではいけませんというようなのが二十二条の二に定めておるわけでございますけれども、国によってはこういった公的委員会だとかそれから審議会等における女性の登用のための措置が講じられておる、こういうような国もあるというふうに聞いております。  例えば、ベルギーだとかドイツだとかデンマークだとか、ノルウェーもそうですか、こういった国ではやはり法律なりなんなりで、要するに女性の登用はこのくらいの率でなくちゃいけませんよ、男女の比率はこうでなくちゃいけませんよと、そういうようなことを講じている国があるようでございますけれども、やはりそういうふうな形までしないとなかなか男女同等なりそれに近いような形での参画というのが難しいのかな、こんなようなことも感じるわけでございます。  そうしたことでもって、我が国としてもそういった議員だとかそれから行政職に占める割合、こういったことを高めようとするんであれば、我が国においてもそうした何らかの措置、こういったことを講じる必要があるのかなというふうに思うわけでございますけれども、先生方のその辺の御意見等を聞かせていただければと思います。  そしてまた、そういったことを講じている国というのはそんなに多くないんじゃないかなと思うんですけれども、その措置を講じることによって逆に何か不平等が生じるとか、そういった問題点等があるのかどうなのか、もしあるとすればどんなようなことがあるのか、いわゆる法律で縛ると申しますか、そういったことによっての問題点等あれば、そんなことについてもお聞かせをいただければというふうに思います。  そこで、それならばどの先生にということになるわけでございますけれども、それでは端から、大澤先生、ひとつお教えいただきたいと思います。
  15. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) お答えをさせていただきます。  三つの御質問をいただいたというふうに理解しておりますけれども、第一点は、日本のいわゆるGEM、ジェンダーエンパワーメント測定が九十四カ国中三十四位ですとか三十八位ですとかというふうに低いということは、日本女性が能力は持っているが発揮する機会が十分でないということなのか、そのような意味合いなのかという御質問であったかと思います。  こちらの基本法案審査資料の中に、「HDI、GDI、GEM上位五十か国」という資料が五十一ページでございますけれども提出をされておりますので、これを利用して意見を申し述べたいと思うんですけれども、御指摘のように、日本はGEMでは三十八位でございます。GEMを構成しております要素というのは、御承知のように、国会議員の女性比率、それから行政職や管理職あるいは専門職といった職業についている人の中での女性比率、それから三番目に、これは一つの国で一年の間に働いて稼がれた収入の総額に占める女性の取り分、これは女性の就業率と男女賃金格差を掛け合わせるとこの女性の取り分というのが出てまいりますけれども、この三つを掛け合わせたものがGEMでございます。  これが日本において低いということは、能力発揮の機会もそうなんですけれども、能力を発揮してもなおかつ結果において取り分が少なければ、あるいはさまざまな職業、国会議員を初めとします国の経済社会意思決定の中枢における女性の比率が低ければGEMは低くなってしまうわけでございます。したがって、能力発揮の機会は十分に保障すると同時に、結果においてもそれが達成をされていくというところまで見守らないと、このGEMは高くならないということを申し上げて、お答えにかえたいと存じます。  そこで、第二点に関係するわけでございますけれども、この基本法が成立をし実施をされていくことによって例えば女性議員はふえるのでしょうか、あるいは行政職的な職につく女性はふえるのでしょうかという御質問なんですけれども、これはもう私は国会の御意向にかかっている部分が大変大きいですし、それから行政職、特に公務部門につきましては、各省庁それから地方公共団体といったところが率先して取り組んでいただくということが非常に重要だと思っております。  諸外国の中では、議員について何か比率の割り当てのようなことをしている国はございません。御指摘のように、ベルギーでは選挙の候補者の名簿について男女の比率に配慮をするということが法律化されておりますけれども、それはあくまで候補者の名簿でございまして、議員の比率を割り当てるというようなことは諸外国では法律化されていないわけです。これは、各政党がそれぞれの御方針としてやっていらっしゃることが結果として女性議員の比率にあらわれているわけでございますので、きょうは国会の場ではございますけれども、各政党には私、個人的にぜひその候補者の中の女性比率というのを今まで以上に考えていただきたいというふうに思っております。  行政職、管理職に占める女性の比率では、今回の法案の中に御承知のように「国の責務」、それから「地方公共団体責務」、第八条と第九条でございますけれども、男女共同参画社会形成促進に関する施策には「積極的改善措置を含む」ということが明記された上で、これが「責務を有する」というふうになっております。単なる努力義務というか配慮義務ではなく、「責務を有する」という規定になっておりまして、これは審議会審議をしてきた経過に照らしても一歩踏み込んだ条文のつくりになっているのではないかというふうに理解しているところでございますが、これに基づきまして中央の各省庁それから地方公共団体は早速それぞれのセクションでいわゆるポジティブアクションの計画をおつくりになって取り組んでいただければ、これが民間の企業や団体に及ぼす影響は多大なものがあるのではないかというふうに期待をしているところでございます。  三番目に、一番目、二番目と重なりますけれども、審議会や公的委員会について法律男女の比率を規定している国の御指摘がございます。全くそのとおりでございます。  日本では、個別法の中では男女共同参画審議会設置法が六対四といった数字を挙げて規定をしているところでございます。これは、基本法課題というよりは当然個別法課題というふうになってくると存じますけれども、そのような、特に公的委員会審議会などにつきまして措置を講じるということの意味は一段と大きいと。現在は男女共同参画推進本部が比率を決定なさってこの達成に努力をされているところですけれども、さらに立ち入った措置を講じていただければ一段と進展をするかと思います。  法律で縛ることの問題点いかんという御質問があったわけでございますけれども、これは、例えばアメリカのような国でアファーマティブアクションというような名称で取り組みを行った場合に、逆差別であるという批判、そして訴訟の提起が起こり最高裁の判決なども出ているということを念頭に置かれての御質問ではないかと思うんです。  日本の場合には、今の法体系の中に基本法が加わりますと、これが逆差別であるという解釈の余地はないような、水も漏らさぬ法体系になるのではないかと私は思っておりまして、これは法律学専門とされるほかの参考人の御意見も伺いたいところでございますけれども、今回の基本法では「国の責務」ということで、「積極的改善措置」を明記していただいておりますので、法律で縛ることの問題点、逆差別という批判は懸念には当たらないのではないかと存じます。  以上でございます。
  16. 森田次夫

    ○森田次夫君 済みません、前置きが長くて。  時間が参りましたので、終わります。
  17. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 参考人皆様、お忙しい中いろいろな御意見をありがとうございます。  民主党・新緑風会を代表いたしまして、私たちも、最後に浅倉参考人がおっしゃいましたように、よりよい法律にするための案を提案しておりますので、その中の何点かに絞って何人かの参考人の方に伺っていきたいと思っています。  今回、基本法をつくる意味というのはとても私たちも評価をしているわけですけれども、つくる以上はしっかり役に立つ、使える基本法にしなければいけないのではないか。今まで十五、未施行のものも含めますと十六、基本法があるわけですけれども、その中の幾つがしっかり働いているのか。それは、やはり使う側の一人一人の国民がしっかりその理念を理解して、しかも使えるだけの仕掛けがこの法律の中にしていないといけないのではないかというふうに考えて、私たちは法案を提出しているわけです。  一人一人の理解ということを考えますと、男女共同参画という言葉すらまだわからない、理解をしていない人が多い中で、この法律をしっかり使うためには、やはり基本理念をきちんと明らかにして方向を示す前文をつけるということが大事ではないかというふうに思っているのですが、浅倉参考人はどのようにお考えでしょうか。
  18. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 前文をつけるかどうかというのは、恐らく前文に何を盛り込むのかということと関連していると思います。  先ほど来いろいろと、男女人権という言葉とか、それでは女性人権なのか男女人権なのか、そのような御議論があったと思うんですが、私は、こういう点についてはきちっと前文で説明が必要ではないかという、もしそういう御意見があればそれに賛成したいと思います。  といいますのは、先ほどちょっと東京都の条例骨子のお話をいたしましたけれども、条例の骨子ではそこら辺がやはり議論になりました。といいますのは、男女平等がまだ不十分であるという認識に東京都の場合には立ちました。そして、さらに、女性機会が与えられていないということだけではなくて、なおかつ女性人権が実態として侵害されているという状況がまだ見られるということを私どもは感じております。そういう問題を解決することが、実はひいては男女人権確立することになるのだ、そのような認識に立ちました。  したがいまして、男女人権確立されることだけを強調しますと、現在権利が現実に侵害されている大部分女性であるという認識が少し薄まってしまいそうな気もいたしまして、それを懸念いたしました。したがって、現在女性人権が侵害されていることこそが問題なのであって、それを解決することが将来的には男女人権確立することにつながるのだというような、そういう方向性といいますか基本的な考え方はやはり前文あたりで明記していただかないとどこにも入らないと思いましたので、そういう意味では東京都では前文をつけようというような議論がされました。  そういうことであれば、やはりそういう説明が必要なのではないかと私は認識しております。
  19. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今言われたとおり、そうした方向性を明示するという意味で私どもも提案をしておりますので、参考人皆様の御意見も受けながら、ぜひこの委員会の中でそういった検討がされるように希望をしたいと思っています。  次に、もう一点、私どもがぜひここはもう少しきちんと書き込まないと働けないのではないかと思っているのが苦情処理部分です。これは、苦情の処理、被害者の救済のための組織や運営体制についての法律の整備その他の必要な措置を講じなければならないというふうに私どもは提案をしているわけですけれども、政府の方のお考えは、今ある人権擁護委員あるいは行政相談委員を活用してというような形になっていまして、もちろんその活用も必要ですけれども、そこだけでは不十分だというふうに考えております。この苦情処理機関について何が大切かということを江橋参考人浅倉参考人に伺いたいと思います。
  20. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 先ほども申し上げましたけれども、現在存在している人権擁護委員という制度で地域における性差別の問題に取り組むことは基本的に難しいのではないかと思っております。かといって、じゃ何か新しいシステムがつくれるかというと、この行政改革の時代ですのでとても難しい。例えば、現在、労働基準監督署が全国に五百ありますけれども、その五百のところに五、六人つけると全部で三千人ですけれども、全国で三千人配置しても実際には各地域に非常に薄いものになってしまうので、新しい制度をつくることは非常に難しいと思っております。  他方で、これまで、一九七五年のメキシコ会議以来、日本の地方自治体はそれなりに性差別の問題に取り組んできているわけでございまして、濃淡いろいろあるかもしれませんが、こういう基本法のようなものできちんと筋を通して、言うならば自治体に地域における性差別にかかわる苦情処理あるいは人権保護の仕事を大胆に任せるのが地方の時代の仕事かなと。それを、ピラミッド型の中央集権的な組織をつくると、大変エネルギーというかコストもかかるし難しい話ではないかと私は思っております。  そして、実際に、私自身も川崎男女平等オンブドの設置準備委員会でさまざま検討しましたけれども、地域、草の根で性差別をなくしていく、男女平等を実現するためには、やはり自治体のさまざまな機関と地域の市民のグループ、そういうものの協力がなければうまくいかないということははっきりしていると思います。  他方において、人権国内機関、ナショナルマシーナリーのことがいろいろ問題になっておりますけれども、私はそういうものも必要だと思っております。  とりあえずナショナルマシーナリーに望まれる機能は、まず第一に、全国的な基準をきちんと決める、国及び自治体が仕事をしていく際の基準をきちんと決めるということと、二つ目は、今度の法案を見ても、政府案民主党案もいずれも都道府県や市町村はその区域内での性差別の問題等々にかかわることになっておりまして、広域の、いわば自治体領域を越えた広い問題あるいは全国的な問題に対する取り組みはやはりナショナルマシーナリーで考えていく必要があるだろう。それと三つ目に、国家権力による人権侵害に対しては、やっぱり地域の人権保護機構では対処できませんので、既に強調されていますように、行政監察等々も活用した形でのチェックが必要だという意味で、全国規模の基準の策定と、広域の男女共同参画実現と、もう一つは国による侵害行為の防止、監視という点ではナショナルマシーナリーが必要だと。それ以外のところは大胆に分権化していくことが必要なのではないか。  そして、そのためには少なくとも、この基本法でそこまで書くことはどうかと思いますので、基本法ではそういう法的なことがもちろん必要になるわけで、その法的な措置も含めた、今の性差別にかかわる保護システムの全面的な検討が必要だということは明記する必要がある。そういった意味で私は、民主党案の方がこの点では一歩すぐれていると思っております。
  21. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 国の法案の十七条の「苦情の処理等」、それから民主党の法案の十七条、やはり「苦情の処理等のための体制の整備」というふうにございまして、民主党の法案では「適切かつ迅速に行うため、」という要件が入っております。それからまた、「法制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。」というふうに入っておりまして、このあたりで民主党のお考えをかなりきちっと述べられたのだと思います。  そういうことに込められました内容の一つに、私はやはり独立性というもの、つまり、「適切かつ迅速に」という中に国からの独立といいますか、行政からの独立という視点が盛り込まれているのではないかというふうに考えまして、その点について江橋先生とまた別の観点から少し述べたいと思うのです。  といいますのは、私が研究対象としておりますのは主にイギリスなのですけれども、イギリスにはEOCという機関がございます。これは機会均等委員会というのですけれども、政府からの独立という点ではたぐいまれな機関として国際的にも評価されております。  EOCは、個人訴訟を支援するということ、それから特定の差別の事案について立入調査権を持っておりまして、公式調査、フォーマルインベスティゲーションと申しますが、そういうことを行います。また、差別をそれによって発見しますと、差別停止通告、ノン・ディスクリミネーション・オーダーというものを出すわけです。同時に、しかし、私が注目しますのは、このEOCが政府予算の中で運営されているとはいえ、国を相手取って訴訟をするという権限も与えられているということです。  ちょっと複雑な事例ですが、週の労働時間が短いパートタイム労働者に一定の権利を制限するようなそういう条文を持った法律がイギリスにはございましたが、EOCはパートタイマーに対してこの条文を適用しますと、パートタイマーの七八%を女性が占めている場合、その女性に結果的にその保護を否定することになるので、それが間接的な性差別ではないか、そのように雇用大臣に問い合わせました。ところが、雇用大臣はそれを否定いたしましたので、今度はEOCが雇用大臣を相手取って、イギリスのこの法律がEC法に違反するのではないか、平等指令ですが、それに違反するのではないかというふうに訴えた事例があります。  これに対して貴族院、イギリスでいいますと最高裁ですけれども、そこが一九九四年の三月に判決を下しまして、これはEOCが言うように、この法律はEC法違反であるという判決を出しまして、その判決に従って今度は雇用省が積極的にその法律を是正しまして、判決に従ったといういきさつがございます。イギリスの国会はこれで適正な法律を定めることになったわけです。  私が強調したいのは、こういう事例もあるようにEOCの独立性というものです。つまり、政府までも訴えるという行政から独立した救済機関の存在がイギリスの性差別禁止法というものをかなり大きな存在にしているということでございます。  今回の十七条はそういう意味ではもちろん評価できる規定なんですけれども、しかし、そこに独立性という機関の性質をぜひとも盛り込んでいただければ救済が適切かつ迅速に行われるということも生かせるのではないか、そのように考えております。  以上です。
  22. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 時間がもう余りないので手短にお答えいただきたいんですが、もう一点は、やはり地方にきちんと行き渡るために、私たちは国がそこまで言うのはどうかという意見もありますが、地方にかなり温度差があるので、条例の制定、改廃というような言葉も条文に入れているんですが、江橋参考人はどのようにお考えでしょうか。
  23. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 私は、この基本法で地方自治体責務を明確に定めることは大事だと思っております。  おっしゃるとおり、全国自治体には濃淡ございますので、まだなかなか立ち上がっていない、あるいは国に比べればはるかにおくれている自治体もあるように思います。それで、自治体の条例制定が必要だということは、いわば自治体の固有事務、自治事務として男女共同参画社会形成ということをこれからは考えていくという、あるいは考えていきなさいということを意味しているわけで、先ほど申し上げましたけれども、地方自治法上非常に不明確であったこういう性差別にかかわる施策根拠法の一番中心がここに据わる。そういった意味では、私は条例の制定、改廃も含めて自治体が取り組まなければいけないということははっきりと書いた方がよいと思っておりますので、民主党案の方が支持できると思っております。
  24. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 もう一言、浅倉参考人にも、今東京都でやっていらっしゃるお立場から一言いただきたいと思います。
  25. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私も、ここに条例制定ということを盛り込んでいただきますと非常に地方自治体はやりやすいといいますか、自治体の中でもやはり条例を制定することに賛否両論ありますので、それを積極的に制定の方向に向けるという点では大変意味があることではないかと思います。
  26. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 参考人皆様、本日は大変ありがとうございます。公明党の浜四津でございます。  まず、大澤参考人、そして寺尾参考人にお伺いいたします。  江橋参考人の先ほどの御意見の中で、今回の男女共同参画社会基本法案の中には、女性人権という言葉がほとんど登場しない。これは浅倉参考人もこれを明確に入れた方がいい、こういう御意見でございました。また、ドメスティック・バイオレンスについても触れていない。この二点を基本法の中に入れた方がいいという御指摘がございました。  どこまで法案に盛り込むかという点につきましては、さまざまな御意見もあり、調整が大変かと思うんですけれども、私もこうした点は本来は明確にした方がいいというふうに考えております。  これについて、両参考人、どう考えていらっしゃるか、お教えいただきたいと思います。
  27. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 二つの御質問に両人とも答えるという形をとるのか、それとも分担をした方がよろしいのか、御指示がいただければありがたいんでございますが。
  28. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 できれば簡潔に両点についてお答えいただければと思います。
  29. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 女性人権あるいは性差別女性差別というようなことがもっとはっきり入った方がよいのではないかという意見江橋参考人浅倉参考人からいただいたところでございます。  それで、私は確かに実際の事例において人権侵害的な事例の被害者になっている、これは女性が多いということはそのとおりだろうと思うんです。しかし、これは基本法でございますから、女性人権ということを条文の中に規定していった場合に、それは男性の人権というものとはっきり違った人権、つまり人権Aと人権Bというのがあるというようなことなんだろうか、もしそうだとすると一体その内容は何なのかといったことについて、広く国民の皆さんの間にともすれば混乱も呼ぶのではないかという気が一つはいたします。女性のというところで切るのか、それとも人権まで入れて男性の人権女性人権は違うというようなことになるのか、そのような疑問が起こるのではないかということを感じます。  と同時に、私は企業社会と言われるような日本の男性の働き方あるいは働かされ方、そのことによる家庭生活や地域での生活のいわば内容の貧しさといったものについて研究してまいりまして、そのことからの偏見かもしれませんが、日本では男性の人権こそが無視されている、あるいは尊重されていないのではないかという問題意識を強く持っております。  そういう意味で、これから男性も女性もともにより豊かな選択肢の多い社会に生きていくという未来を展望する上では、過去の差別に特に留意した女性人権という出し方よりも、政府案の出し方がよいのではないかというふうに考えております。  同様に、ドメスティック・バイオレンスでございますけれども、これはこの問題だけを特に出しますと、ほかの問題は基本理念ではないのかという疑問を呼びますので、ここもある程度抽象度を高く、男女人権が尊重されるということの中に当然ドメスティック・バイオレンスのような問題は含まれるということを国会で御確認いただき、国民の皆さんにも理解をしていただくということが重要なのではないかと考えております。  以上でございます。
  30. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) 意見を述べさせていただきます。  まず第一点の女性人権という点ですが、私も今、大澤参考人がおっしゃられたことに基本的に同意するものでございます。私もずっと女性問題だけを研究してきたわけではなくて、アメリカ法日本法を比べるというような仕事をずっとしてきたんですけれども、アメリカでは女性たちが自分たちの権利を要求していたときに、そのとき人種問題も同時に出てきて、むしろそれが先行する形をとったんです。白人の男性はファーストクラスシチズン、第一級市民だと、それに比べて黒人や女性たちは第二級の市民として扱われてきたんだ、我々も第一級の市民にしてほしいというふうに言ったわけです。  私は、そういうアメリカの状況と日本を比べまして、先ほど大澤委員がおっしゃったような、つまり日本で男性が第一級の市民と呼ばれるような状況があったのかといいますと、全くなかったわけではないとは思いますが、先ほど江橋参考人もおっしゃられましたけれども、これからは地方分権の時代だということでございますが、例えば地域においてどういう地域をつくっていくか、あるいは消費者として、納税者としての視点というものは今までやっぱり日本では弱かったように思います。そういう意味で、女性が参画しやすい社会をつくるということは男性もまた参画しやすい社会になるのではないかというふうに考えております。  それから、ドメスティック・バイオレンスにつきましても、確かにこの問題は非常に深刻な、また女性共同参画をするという非常に重要な視点かと思います。こういうものが今政治的なアジェンダに乗っかってきているのも国際的な動きがやはり日本の場合は大きくあって、それに影響されてという色彩がないわけではないというふうに思いますが、国際的なそのときのアジェンダというのは時代によって変わっていくものでございますので、ここにそれを書くと逆にこれは固定化の作用を営むのではないかというふうに思います。  以上です。
  31. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 次に、浅倉参考人にお伺いいたします。  先ほどのお話の中で、今回の法案には男女平等を明確に入れるべきではないか、あるいは今のドメスティック・バイオレンスについても具体的に入れた方がいいという御指摘がありました。そして、できるだけ将来展望に立った一歩進んだ内容を、せっかくの基本法ですからよりよい内容にという御指摘がございました。  一歩進んだ内容にというのは、主として例えばどういう点なのか、簡潔に御指摘いただければと思います。
  32. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私は、基本法であるから抽象度が高い方がよいというそういう観点はあるかとは思うのですけれども、それだけではだめであるというふうに考えております。つまり、現在大事だと思われていることは基本的に書き込む。それが具体的か抽象的かということは判断があると思うのですけれども、例えば女性に対する暴力の根絶ということは現在、国際社会のアジェンダにもちろんなっておりますので、そういう具体的なことを書き込むことがひいてはこの基本法にとっても大事だというふうに考えております。  それから、例えば国際的協調というような意味合いで七条という規定政府案は出されておりますけれども、これだけの規定の仕方では、国際的に協調されれば男女共同参画社会のための活動の中身は問わないというようなことになってしまうのではないかということも懸念いたしますので、そうではなくて、やはり国際的な男女共同参画のための条約その他の文書の理念を尊重するということを明確にうたった方がいいのではないかと思います。  例えば、その中に女子差別撤廃条約ですとか北京行動綱領とか、そういう具体的な名前をもし盛り込むと、これがまた余りにも具体的過ぎて時代おくれになるというお考えもあるかと思うのですけれども、いやそうではなく、現在のところ最も進んだものは具体的に盛り込んだ方がいいのではないかという基本的な立場に立ちます。そういう意味では、具体性か抽象性かというところで多少異論があるところでございます。
  33. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 ありがとうございます。  それでは続きまして、大澤参考人に御意見を伺いたいと思います。  先ほどのお話の中で、各国の法制の比較をされて、基本法の有無、国の責務規定の有無、あるいはポジティブアクション規定のあり方等についての比較を簡潔にお話しいただきました。その比較の上で、先生は、今回の基本法はこれら先進諸国より一歩進んだ法律となるという、こういう御発言があったかと思います。どういう点で一歩進んでいるとお考えか、また今後どうすれば本当に一歩進んだ法律というふうに言われるようになるとお考えか、御意見を伺わせていただきたいと思います。
  34. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 御質問ありがとうございます。  先ほどの意見を申し述べた際、最後に時間が足りなくなりましたので駆け足になったところを重ねて御質問いただきました。  私が調査をしたり実情を知っている諸外国の中では、男女共同参画推進する国内本部機構、いわゆるナショナルマシーナリーと基本法制関係が明確になっておりますのはデンマークのみでございます。ほかの国については、そのあたりは明確ではございません。  ところが、九五年の北京の世界女性会議が採択した北京行動綱領を見てみますと、十二の重大問題領域の八番目として女性の地位向上のための制度的な仕組みを取り上げ、まず国内本部機構をつくり上げる、あるいは強化するということを求めております。そこでは、国内本部機構の主要な任務として、政府全体にわたってあらゆる政策分野男女平等の視点の主流化、いわゆるメーンストリーミングでございますけれども、これを支援することというふうに書かれているわけです。  この場合の主流化は、単に女性が既存のシステムの主流に、真ん中により多く参画していく、これももちろん重要なのでございますけれども、単にこのことを意味するばかりではなく、あらゆる政策制度社会慣行男女平等の推進に役に立つのか、プッシュをするのか、あるいは少なくとも男女平等、男女共同参画を阻害しないように社会制度慣行を見直していくといったことも主流化の重要な課題でございます。  このような主流化を支援するという国内本部機構の主要な任務を基本法制によって明確に根拠づけているのは、私の知る限りでは現在のところデンマークのみでございます。  日本では男女共同参画審議会答申でございますけれども、ビジョン、それからそれを受けた政府男女共同参画二〇〇〇年プランでもこのような主流化の課題というのをしっかり位置づけていらっしゃるわけでございますけれども、今回基本法案が提出されまして、それを見ると、「国の責務」、それからこれは第十五条、「施策策定等に当たっての配慮」、ここに私が考えます主流化のために国内本部機構が十分な権限とまたかつ任務を授けられて活動をしていくということの法律的な根拠が与えられているというふうに考えます。  そこから、私の結論でございますけれども、そのような法律を持っているデンマークと比較しても、非常に北京会議で強調された主流化の任務がきちんと位置づけられている法案だということで、国際社会が到達した課題に速やかにこたえ、そして他の先進諸国に対しても一つのモデルを提示できるような法案なのではないかと考え、先ほどのような意見を申し述べた次第です。
  35. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 ありがとうございました。  最後に、江橋参考人そして寺尾参考人にお時間の範囲内でお答えいただければと思います。  この政府案十三条、基本計画に盛り込むべき事項として二点挙げられております。この条文では具体的にいかなる内容の施策が盛り込まれるのかが必ずしも明らかではありません。このような抽象的な書き方をした理由として、答申は、「基本計画に盛り込む事項については、世界の情勢、時代の変化に柔軟に対応するため、基本法で詳細に規定せず、主要事項にとどめることが適当である。」、こうされております。  確かに、世界の情勢あるいは時代の変化に柔軟に対応することは必要だと考えますけれども、女子差別撤廃条約また男女共同参画二〇〇〇年プランなどにおいて現に取り組むべき課題として具体的な項目が挙がっております。例示的な書き方をすることもできるにもかかわらず、やはりあえてこうした項目について触れない方がいいとお考えか、あるいはもっときちんと明確に触れた方がいいというふうにお考えか、簡潔にお答えいただければと思います。
  36. 江橋崇

    参考人江橋崇君) しばしばここで政府提出基本法案が抽象的に過ぎて民主党案の方が具体的であるというふうな指摘があるように思いますけれども、私もそう思っております。  政府提案が抽象的であることの理由は、具体的に書けば書くほど実は政府部内の調整にもっと手間がかかるということもあるように思います。したがって私としては、政府提案が各省庁の実施権限に触れない範囲内でまとめたいという気持ちはよくわかるんですが、今、浜四津委員がおっしゃったとおり、例示的なことであればそこのところは問題がないわけで、この程度のことであればきちんと具体的に明示すべきだ、そういうふうに考えております。  時間がありませんので、以上にさせていただきます。
  37. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) 私は、江橋参考人がおっしゃったような考え方もあろうかとは存じますけれども、この基本法案が提出される前から審議会の方ではビジョン、それから政府の方でも二〇〇〇年プランというのを策定しておりまして、その中で述べられていることを見ますと、こちらに掲げられていることとほとんど内容的には重なっておるように思います。  先ほども申し上げましたけれども、ここで取り上げられていることは、かなり日本が独自で見つけたというよりは外国でやっていることを受けて日本でもというふうになってきて、そういう形で日本ではイシュー化しているように私は一般に理解しております。むしろ、これからは日本で発見して世界に発信できるようなものを考えて見つけていけるように国民のレベルで力をつけていってほしいというふうに私は考えておりまして、個別的に書くということはそういう趣旨からも余り望ましくないのではないかというふうに考えております。
  38. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 ありがとうございました。
  39. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代と申します。  最初に、四人の参考人の皆さんにお聞きしたいと思うんですけれども、男女共同参画社会基本法案審議したりあるいは議論するときに、片や男女差別の存在を前提にして議論を進め、片や男女平等の実現を前提にして進め、ともすると心情的で抽象的な議論になりやすいのです。  そこで、お聞きしたいんですけれども、差別に直面した経験がおありでしたら聞かせていただきたいと思うんです、話を具体的にしていきたいと思うので。もしなかったら無理にとは申しません。  大澤先生からお願いします。
  40. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 私は、差別はそれを受けた被害者といいますか、人の認識の構造というものに大変かかわっていると思います。もし私が十年前の私でしたら、この御質問を受けたときに個別としては差別された経験は一切ございませんと答えたと思うんですけれども、その後さまざまな女性学やジェンダー研究に携わって今日に至りまして自分の生まれてから今までの過程を考えてみると、構造的な意味でもそれから個別具体的な意味でも差別というのは当然受けてきたというふうに申し上げたいと思います。
  41. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) 私は東京大学の出身なんですけれども、剣道部に所属しておりまして、私は女性第一号でございました。入ったときに、そもそも入れてもらえるか入れてもらえないかよくわからなかった。一人の副将が女性を入れると剣道部の風紀が乱れるというふうにおっしゃって反対しておられるというようなことを聞き、いろいろありまして、やっと入れていただけたんですけれども、更衣室からして自分で探さなければならないという状況でした。  しかし、先ほどの大澤参考人と重なるんですが、私も差別を受けているとは思っていなかったんですね。つまり、差別というのはあってはならないことだということ、そういう意味でございますので、なぜ女性が男性と違った扱いを受けているのかということについてそれはそれなりに理由があるからだとその時点ではいわば納得していたんだと思うんです。私も外国法を専攻しておりますのでアメリカに留学いたしまして、日本がいかにおくれているかということ、特に先進諸国と比べただけではなくて、後進といいますか、今のディベロッピングカントリーと言われている国々と比べた場合でもおくれているということを本当に痛切に身にしみて感じました。  私は、下から国民一人一人がということを申し上げましたのは、例えば、今大学で教えておりますけれども、男子学生だけではなくて女子学生ですら、差別があるというふうに認識して強くその方向性として改革していかなきゃならないと思っている人は余り多くないのでございます。それがなくて、上からただとにかく啓発して、こう変えていきましょうと与えられるのを待っているようではいろいろなところでいけないんじゃないかというふうに考えておりまして、ちょっとお答えが変な方に行きましたけれども、ですから私も今ではあるというふうに考えておりますが、ただそのことについて社会一般の合意が十分あるというふうには考えておりません。
  42. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 私は男性でしてどうお答えすればいいのか多少迷うところがありますが、まず女性差別に関しては大量に見聞きしております。私自身が男性であるから差別されたかというと、むしろ女性差別してしまったという体験がいっぱいありまして、さまざまな不適切な表現をして性差別主義者と怒られたこともしばしばございます。  そして、それは別としまして、男女共同参画ということに関して言えば、私が市民としていろんな発言をしたりする際で一番今まで気を使ったし、一番しんどいし、その意味では一番自分が裸にされて試されていると思いますのは実は団地の自治会でした。恐らく女性の比率が非常に高かった、私の日ごろの仕事よりはるかに高かったんですが、そこで具体的な、まさに団地ですから具体的な問題を語る際には男も女もないというか、女性の前できちんと自分の言うべきことを言って試されるというのは大変きついということがありました。  以上です。
  43. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 簡単にお答えしますけれども、私はもう意識が、物心がついたときから差別されたというふうに感じております。
  44. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 どうもありがとうございました。心当たりがいろいろあるんですけれども、私は省略します。  今回の法律案は、男女平等を実現するという目標は持っているんでしょうけれども、主眼は共同参画、つまり政策、方針の立案と決定に参画していくということにあると思うんですけれども、寺尾先生は先ほどそういう趣旨で、平等に扱ってもらうだけではなくてつくっていく過程に参加していくこと、こういうことをおっしゃっていたと思います。  私は、そのためには現状を変える、つまり現状でも参画していると言えば言えるんですね、それなりに。現状を変える支援策が必要なのだと思うんですけれども、その辺をどのようにお考えでしょうか。
  45. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) まず、基本法ができるということは、これはやはり日本の国で、今の憲法があって、あるいは雇用機会均等法を制定しただけでは十分ではないという認識を国民として示すということだと思います。  それはやはり非常に大きな一歩になろうかと思うんですが、では何が本当に平等なのか、あるいは何が差別なのかということをこれを機会にもっとみんなで議論していきたい、そのための基本法だろうというふうに私は考えております。今、国民的な議論がまさに必要なのであって、女性も含めて外から与えて何となく変わっていくというような状況、何か女子学生の間にそういう感覚を見てとれるんですけれども、それではなくて、自分たちで変えていくという姿勢がこれからは大事であって、参画ということに力点を置いた基本法というのはそういう意味でも意義があるというふうに考えております。
  46. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 江橋参考人にお願いします。  江橋参考人の方では、余りにも自己決定が強過ぎるんじゃないかということを先ほどこの法案の性格としておっしゃっていたと思うんです。とても対照的だと思ったんですが、そういう立場に立ったときに支援策をどのようにお考えになりますか。
  47. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 自己限定ですよね。何か男女共同参画というところばかりに偏り過ぎているというふうに申し上げたと思うんです。  私は、現状を変えていくには、阿部さんの最初の御質問は実に同感なんでして、やはり具体的なところから考えていく必要がある、具体的なところからでなければ日本の現状は変わっていかないというふうに思っております。そのためには、地域におけるいわば性差別の撤廃に対して真摯に取り組んでいく必要がある。特に、そこから出てくるさまざまな経験というものを政策に反映させていく必要がある。  そういった意味からすると、政府案の中で、また民主党案もそうなんですけれども、政府性差別に関する調査の権限が認められていますけれども、あれは政府だけでなくて自治体にも与えられるべきだ、それも自治体の職員が調査するというのではなくして地域において実際に性差別の問題と闘っている運動体なり、あるいは具体的に問題に直面している当事者の経験あるいはそこから出てきた教訓、そういったものを政策の中に取り込んでいくチャネルをつくるべきだ。そういう形で、いわば女性みずからのエンパワーメントということを強調していくことが支援策ではないかというふうに私は思っております。
  48. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 大澤参考人に伺いたいんですが、男女共同参画また男女平等を進めていく上で、男性の七六%、女性の五〇%が働いているわけです。女性についてはこれから就業率が高まっていくことが期待をされているように思うんですけれども、となりますと、職場における共同参画、平等、この推進なくして社会全体での推進というのは余り期待できないような気がするんです。  事業主の責務というその観点が全然なくて、「国民責務」の中に解消されているのは、この法律で一番問題のような気がするんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  49. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 御指摘のように、政府提出法案では「国民責務」、第十条でございますけれども、「国民は」ということで、その後分野を列挙いたしまして、「職域、学校、地域、家庭その他」というふうになっております。  これにつきまして、先ほど浅倉参考人からも、東京都の条例骨子案では事業者を含むということを検討なさっているという御指摘があったわけでございますけれども、審議会基本問題部会あるいは基本法検討小委員会の中での議論は、国民といった場合には、いわゆる自然人、生きて息をしている普通の個人だけではなくて法人も含むということを了解しながら審議を進めてまいりまして、その上でたくさん御意見を中間の取りまとめである論点整理にいただいたところ、そこは事業主あるいは企業の責務をきちんとしてほしいという御意見をたくさんいただきまして、それでその分野を具体的に列挙するということをいたしました。  ここでは職域となっておりまして、論点整理の段階で職場だったのが職域というふうになっているわけなんですけれども、職場と言ってしまいますと、同じ場所で働いている、同一企業であるばかりではなく、同一企業の中でも同一事業所で働いている関係の中というふうにともすれば理解をされてしまうおそれもある。職域というふうに申しますと、企業を超えて、例えば職種、職能という形での横断的な関係というのも責務の中に入ってくる。したがって、ここでは事業主、事業者の責務だけではなくて、例えば職能団体、同業者団体といった関係の中での性差別的な事案というのもそれは国民責務として入るんですよというふうになっているのではないかと考えました。  また、このあたりはもちろん国会で十分に御確認をいただきたいと思っておりますけれども、それは審議会で何遍確認をしても法律にはなりませんので、確認をしていただいた上で、こちらの方が包括的な規定になっているのではないかという私の意見を御了解いただければというふうに思います。  以上です。
  50. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 浅倉参考人に伺います。  諸外国では法のもとの平等を事実上の平等へと進めていく上でさまざまな立法の積み重ね、努力の積み重ねが行われていると思うんですが、その中で間接差別の問題がよく議論になるんです。今回の法律案の審議の中でも、政府は何をもって間接差別と言うか国民的なコンセンサスが得られていないということを一貫して言っておられます。この問題についてどのように考えていらっしゃいますか。
  51. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 間接差別か直接差別かという問題は、私どもは雇用機会均等法を一九八五年に審議したときから抱えている問題で、かなり長い間日本では議論されているように思います。  私が一つ疑問なのは、やはり間接差別の定義がいまだにはっきりしないとか概念がはっきりしないという見解があると思うんですけれども、それはもう十数年前から結構言われていることで、もうそろそろ日本でも間接差別禁止するというような施策が出てきてもいいのではないかという意見を持っております。  何が間接差別かというのは実は余り理解されていないのは確かですが、日本の場合、法律では直接差別のみを禁止するということではありません。ですから、政府法案性別による差別禁止するという中に間接差別も入るのだという説明自体は私ももちろん同意できるところです。  しかしながら、間接差別を盛り込むというのはもう少し積極的な意味合いがありまして、といいますのは、間接差別というのは私は、社会的にはこれがもう当然だと思われているような取り扱いでも、それが結果的に圧倒的な数の女性に対して不利益を及ぼすものであればもっと別のやり方に見直すべきであるという、そういう啓発的な意味すら含んでいるような規定だと思うんです。つまり、性による格差のある影響があるかないかという物差しでもってすべての慣習とか慣行とか社会制度とかポリシーを見直していくという、そういう機能を果たしている規定だと思いますので、間接差別というものがここに入っているんだということをもし明文で確認していただけるのであれば、それは非常に意味があることだというふうに思っております。
  52. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 江橋参考人にもう一度お願いします。  苦情処理の問題でもよく議論になるのは、いわゆるオンブズマンの問題なんですね。どうも私は言葉だけが先行しているような気がするんですが、この問題で、どこにどういう人材をどのくらい配置していくということをお考えになっておられるか、苦情処理のために。
  53. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 私は、確かにおっしゃるとおりオンブズマンという言葉だけが先行しているように思います。実際にはオンブズマンという独任制の形がいいのか、それとも人権委員会のような、男女平等委員会のようなそういう合議制のものがいいのかということは考える余地があると思います。  その上でですけれども、私は、現在一万四千人人権擁護委員が全国にいるということからすれば、例えば全体で三千人ぐらいどうしても必要かなと。一年間に千人ぐらいずつ任用していって三千人ぐらいで、もちろん有料化された形の人権委員というのが必要で、その中に女性差別問題にかかわる専門的な見識を持った人を大量に配置する必要があるというふうに思っております。  あるいは、もう一つは、各自治体自治体独自に性差別にかかわる苦情処理のシステムをつくっていくとなりますと、そこはおのおのの自治体ごとに数が変わってくるかと思いますので全国で何人というふうには言えないかと思いますけれども、いずれにせよ非常に数多く置かなければいけない。先ほど申し上げた労基署五百という数からすると、五百というのでもまだ地域、草の根における具体的な権利侵害にかかわるには少し広過ぎるかな、もう少し細かく切ってもいいのかなというふうに思いますので、五百とか千という数、全国でいえばそれぐらいが必要になるだろうというふうに思っております。
  54. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 どうもありがとうございました。
  55. 清水澄子

    ○清水澄子君 社民党の清水です。  もう随分皆さん質問なさったので、重なってもだめですから、ちょっと幾つか質問させていただきます。  まず、大澤眞理さん、ほとんど皆聞いていますけれども、ではこの基本法の中で大澤眞理さんがもっとここのところは確認をしておくべきだと考えておられるところがあれば御指摘ください。  そしてもう一つは、この推進体制なんですけれども、今度は内閣府に男女共同参画局ができるわけです。とてもこれは、私も本当に喜んでいるわけですが、内閣設置法では、行政各部の施策の統一を図っていくために、必要となる企画及び立案並びに総合調整について特命担当大臣を置くことができるとなっているんですね。そういう意味では、そういう男女平等、ここでは男女共同参画と言うんでしょう、それを推進する特命担当大臣をここで置くということはどのようにお考えになりますか。
  56. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 確認しておくべきことを列挙せよとおっしゃられますとたくさんございまして、時間も足りないことでございますから、先ほどから議論になっております間接差別に関連して、ここはやはり議論を積み重ねてきたところでございますので申し上げたいと思うんですけれども、政府提出法案の第三条、「男女人権の尊重」となっておりますけれども、「男女個人としての尊厳が重んぜられること、男女性別による差別的取扱いを受けないこと、」となって、「男女人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。」というふうになっております。  揚げ足取りをするようなつもりは全くございませんけれども、東京都の基本条例の検討骨子を拝見しておりましたら、これは先ほど浅倉参考人からも言及されたところでございますけれども、十一ページでございますが、「性別による権利侵害禁止等」となっておりまして、盛り込むべきとしている事項等の中には、何人も云々で、性別を理由とする差別的な取り扱いをしてはならないこととなって、議論された事項の中に、間接差別も含む旨を盛り込んではどうかというふうになっております。この政府提出法案の書きぶりとこちらの検討骨子の書きぶりの違いは、政府提出法案の方が取り扱いを受けないこととなっておりまして、検討骨子の方はしてはならないというふうになっております。  私は、これは懸念のし過ぎなのかもしれませんけれども、してはならないというふうに書いてしまいますと、直接的な差別意図があるものに限定をされるというようなおそれはないのだろうか。それに対して、政府提出法案のように性別による差別的取り扱いを受けないこと、つまり差別的取り扱いを受けていないという状態が達成されていなければならないということであるとすれば、直接的な差別意図があるものに限定されないというのは非常に明確なのではないか。そういう意味で、間接差別と言われるようなものがこの中に含まれているという点はこの書きぶりからして明確なのではなかろうかというふうに思っております。  と同時に、さらに考え方、解釈が難しいようなさまざまな事例につきましては、第四条で社会における制度または慣行ができる限り中立なものとするように配慮されなければならないというふうになっておりまして、配慮にとどまっておりますけれども、これはさまざまな微妙な事例についても男女共同参画社会形成推進するという方向で見直し、再構築をしていくんだということが入っている、そのあたり御確認いただいた上でいわゆる間接差別という問題はかなりきちんと位置づけられていると理解しております。  二番目の御質問をちょっと聞き漏らしたんですけれども、恐れ入りますがもう一度お願いできますでしょうか。
  57. 清水澄子

    ○清水澄子君 今度の内閣設置法の中で特命大臣を置くことができることについてです。
  58. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) どうも失礼いたしました。  特命担当大臣のことでございますけれども、この問題は、審査資料の中の三十三ページに中央省庁等改革基本法が抄録されてございます。次の三十四ページに、男女共同参画会議設置された上でその任務としては云々ということがあり、構成員は内閣官房長官を会長とし関係する国務大臣及び学識経験者というふうに規定されようとしているかと思います。  それで、私、特命担当大臣を置いていただくというのは官房長官のお忙しさ、それから担っていらっしゃいます任務のスパンの大きさということを考えますと、それはお願いしたいという気持ちはやまやまなのでございますけれども、ただ特命担当大臣を任命したことによって官房長官が肩の荷をおろされてしまいますと、また私としては不本意な結果になるので、むしろ担当副長官のような方がいらっしゃる、それで日夜男女共同参画の問題を中心に考えていただいて、官房長官を補佐していただくというようなことがむしろいいのかなというふうに思ったりする次第ですが、このあたりは全く個人的な希望でございますので、そのように御理解いただきたいと思います。  以上でございます。
  59. 清水澄子

    ○清水澄子君 寺尾参考人は、先ほどから国民的な議論が必要、国民的な合意が必要だと、私もそう思います。そのためにはやはりもっと具体的に、私たちはこの問題を今討論できるというある程度個別的なわかりやすいものが例示的にあるし、例えば教育における平等とかというのは決して将来そんなに限定されてしまうものではないと思いますし、雇用上における平等の徹底とかそれから女性に対する暴力の根絶だとか、そういうふうな当面日本で今やらなきゃならないものを提起しておく、特に基本計画にそういうものを例示することが地方自治体でもわかりやすいんじゃないか。  そして、私たちは、前文にやはりこの法律趣旨、そういうものがもっと明確になることが、これを読んだ人がわかる。男女共同参画二〇〇〇年プランとかビジョンを一々全部読む人ばかりではありませんから、そういう意味でわかりやすさというのを言っているわけですが、そういう点についてはどうお考えになりますか。
  60. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) 教育のことでは、政府提案の十条で、「国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、」ということで、教育のことについては政府提案でも規定があるというふうに私は理解しております。  それから、暴力の点なのですけれども、また同じことを述べることになろうかとは思うんですが、ちょっと私は法律学をやっております、ほかの参考人の先生方もそうですが、法律の解釈にはいろんな解釈があるんです。類推解釈というのもありますけれども、限定解釈というのもございます。個別具体的なことを例示的に列挙しますと、限定解釈が行われるということの方が拡大解釈が行われるよりも多いかというふうに考えます。
  61. 清水澄子

    ○清水澄子君 それは運動している者、実際いろんな問題にかかわっている者はとても抽象的なこれを解釈していくのは大変だと思うんです。第三条を読んですべてを読み取れる人というのは、とてもこれは難しいことだと思います。  それはさておきまして、さっき江橋参考人が言っておられましたけれども、婦人展望というところで古橋さんが言っていらっしゃるんです。今まで五十年間男女平等男女平等と言ってきたけれども達成されましたかと、平等平等と言うから男性の理解が得られないんですよ、男女共同参画と言った方がいいんじゃないですか、男性の側からそう思いますということで、男女共同参画と言うのが最も適切であると、こういうふうなことを責任者が発言しておられる。あなた方余り平等平等言わない方がいいよという形になっていって、非常に何か、審議している最中に発行されていますので、これが男性の方の本音で、とにかく包んでいってその中であなた方動きなさいと言われているような気がしています。  平等の社会男女共同参画、みずから参画していく中でそういう社会をつくる、主体はどちらかといえばやっぱり女性が目覚めないとそういうふうに男性の非人間性もわかってこないわけで、私たち自身が自覚をしないといけない。そういう意味で、女性の主体でやっぱり平等とか差別をなくす、最も差別を受けている人たちがどう認識していくかという、それをどう引き出すかというのがとても大事なことだと思っているんです。これはそういうことにプラスになるという思いで私たちも一生懸命審議しているんですが、そういう点で非常にわかりにくいという点では私たちも非常に苦慮しているところです。これは私どもの意見で、もうそれ以上、ちょっと時間がありませんので、その次に入りたいと思います。  江橋先生、やはりこの男女人権の尊重ということで先ほどいろいろ御意見、私は全く賛成でございます。その中で、さらに私は、この中でもっとマイノリティーの人たちの権利、人権はさらに一般的な差別の中にもう一つ二重、三重の差別があるから、この法律から見ても人権という中に全部入りますと言われればそうなんですけれども、それらに特別な配慮をすべきだというのはずっと北京の行動綱領でもすべてのところに出ているんです。そういう意味では、江橋先生は最もそういう問題に取り組んでいらっしゃるんですが、今度地方自治体においてそういう意味での苦情処理機関というところがどういう具体的な役割をしていくべきかという点について一言お願いします。
  62. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 今の御指摘の点ですが、日本社会では、差別というのは差別されるような要因が重なったときに非常に厳しい形であらわれてくる。例えば、外国人の女性であるとか障害者で高齢者とか、重なったときに大変なことになりますので、この性差別にかかわる基本法をつくる際に、ほかの人権問題との関連性を指摘しておいていただけると大変ありがたいというか、そうあるべきだと私は思っております。ですから、前文などではそういうところに御指摘があるべきなのかなと思っております。  それで、ごく手短に先ほど来の問題に関して申し上げさせていただきたいのですけれども、マイノリティーの人権侵害が載っていないということもそうなんですが、余り幅広く人権一般にいってしまいますと、これは何といっても国民にこれからの日本社会の進むべき方向を示す基本法ですので、国民の目から読んでわかるようなものであっていただきたいと思うんです。  そして、むしろ、例えば先ほど来ドメスティック・バイオレンスが問題になっていますけれども、先般のカナダの事件でもそうであるように、日本社会は牢固としてそういう問題は存在していたわけであります。ただ、最近はドメスティック・バイオレンスという言葉ができたことによって、言葉を見つけたことによって女性たちがその問題に関して抗議できるようになった。そういった意味で、ドメスティック・バイオレンスという言葉はかつてのセクハラという言葉あるいはストーカーなどという言葉と同じように、これまであった被害者が自分の被害の状況を認識し、社会にアピールし、そういう者同士が連帯することができる、闘う言葉だと私は思っております。  そういった意味で、性差別にかかわる幾つかの、これまで運動体がつくってきたし政府施策でも出てきていた性差別の撤廃とか女性人権というようなその言葉を聞くとそれなりに当事者が元気が出る、そういう言葉をやはりきちんと法の中に取り込んでおいて、国民が読んだ場合にわかる、自分たちも元気づけられる、そういうものであってほしい。マイノリティーの人権に関しても、マイノリティーの人たちが、例えば日本語を読むことに非常に困難のある人でも一生懸命読んだら、ああこういうことが書いてあった、これで頑張れると思うような、何かそういうような言葉が前文やあるいは条文の中にちりばめられていることが必要かなと私は思っております。
  63. 清水澄子

    ○清水澄子君 もうあと一分しかありませんので、浅倉参考人、やはり一番、特に女性の役割分業の差別というんですか、それが最も集中的にあらわれるのが雇用の場だと思うんですね。ですから、雇用上における差別はとても大きいんですが、なかなか解決しにくいんです。その場合に私は、事業主の責任と国民一般の責任はちょっとやっぱり違う。同じようにみんなこれは大事なことなんですけれども、事業主には別の責任があるんじゃないか、社会的責任があると思うんですね。ですから、東京都はちゃんと明確にしていらっしゃるので、その辺について御意見をお願いします。
  64. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私もそういう観点から、事業主に対して一般的な規定のみならず事業主が何をすべきかということを対象にしまして、東京都の条例骨子は事業主がみずからの組織の中でいかに女性を事業の中の意思決定に参加させるかということを明らかにし、それを報告する義務づけをするというような規定東京都は盛り込んだというふうに考えております。ただ単に国民一般が事業主も入っているというだけではなくて、何を事業主に対し義務づけるのか、あるいは何を期待するのか、そういう具体的な規定とあわせて事業主の責務ということを規定した方がよいのではないかというふうに考えております。
  65. 清水澄子

    ○清水澄子君 終わります。
  66. 入澤肇

    ○入澤肇君 私、実はこの法案審議に参加いたしまして政府当局に幾つかの質問をしたんですけれども、歴史的な背景だとか経緯、そういう中でこのような法律が出てきたということはわかるんですが、差別の実態について日本の経済社会の中でどのようなことが行われているかについての調査、分析が不十分じゃないかという感じを持って質問していたんです。これだけ立派な基本法をつくるのであれば、もっと幅広く各省はそれぞれ所管するテーマごとに社会科学的な方法論を駆使して、私が好きな言葉で言えば文化人類学的な手法を用いながら調査、分析をして、その結果、条文というのがつくられていくんじゃないかというふうに実は思っているんです。私も長く幾つもの法律をつくってきましたのでいつもそういう方法論を用いてやってきたんですけれども、この法律は必ずしもそれが十分でないという実感を持っているわけです。  そこで、具体的なことをまず大澤先生からお聞きしたいんですけれども、旧来の日本型の雇用慣行が非常に大きく変わろうとしている。先生も御指摘のとおり、要するに長期安定雇用とかあるいは年齢、勤続に応じて昇給する年功制、それから企業内の労働組合、これが今、今回のバブルの崩壊を契機にして新しく大きく変わろうとしている。この変化に対応して、女性の雇用状況なり女性への雇用条件、これはこれからどんなふうに変わっていくかということについて、もし御見解があったらお聞きしたいと思います。
  67. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) むしろ浅倉参考人にお答えいただいた方がよいことなのかもしれませんが、私の知っている限りで申し上げたいと思います。  御指摘のように、今までいわゆる日本型雇用慣行と言われてきたもの、その骨子は、年功制、それから終身雇用とまで言われたような長期安定雇用、そして企業内の労働組合ということでございますけれども、今これが音を立てて変わろうとしておりまして、特に年功制というところでそれが個人別能力主義に移行するのだということが強く経済団体からも提唱され、また個別の企業で音を立てて処遇制度というのが変わっている。毎日、新聞を開いて処遇制度の変更どこそこの企業でというのを見ない日はないというぐらいの状況でございます。  このことが女性の雇用、それからその待遇にどのような影響を与えるかということでございますけれども、従来のような年功制があらかじめ女性を年功処遇される対象から外した上で成り立っていたシステムであったことを考えれば、この年功制の流動化、解体ということは、性別や入社年次、出身学校等ではなく、個人としての能力や意欲そして貢献というのが評価される方向に動いていくことであるとすれば、女性にとって歓迎すべきことではないかというふうに考えております。  しかしながら、このような雇用慣行を変えるという一方で、学校や入社年次はともかくとして、性別ということだけは意識をしないうちに頭の裏にこびりついているというんでしょうか、そこだけはしっかり組み込んだ上で、能力や実績できちんと評価されるのは男性だけ。女性女性というだけで一くくりにされ、正社員としてのステータスは保障せずに、すべてが派遣や契約社員に置きかえられていくというような状況もただいまの不況の中であらわれており、さまざまに報道されているところでございます。  したがいまして、今回の基本法ができ、また基本法が制定されることによって雇用機会均等法などにもさらにプラスの影響が及ぶことが期待されるわけですけれども、そのことによって今のような日本型雇用慣行の解体なり変動が女性にマイナスの影響を短期とはいえ与えないようにさまざまな取り組みを進めていく必要は大変大きいかと存じております。
  68. 入澤肇

    ○入澤肇君 次に、寺尾参考人にお聞きしたいんですけれども、基本法の性格についての認識が極めてリーズナブルであるということで私は敬意を表したいと思っているんです。  その中で、先ほどの先生のお話を聞きながら、慣行、しきたりというのは、新しい制度ができる、それによって変わる部分はありますけれども、なかなか一直線に変わっていかないんじゃないかと思うんです。  法律理念と現実とのギャップ、これを埋めるために基本法をもとにしていろんな政策が出てくると思うんですけれども、法による強制の限度、これはどこら辺まで可能かということについて御見解があったらお聞かせ願いたいと思います。
  69. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) 法律による強制の限度ということと、制度慣行ということで御質問いただいたと思います。  私は、アメリカ法のことをやっているものですからついアメリカ法的な物の見方を身につけてしまうということなのかもしれませんけれども、日本社会のこういうこととはまた離れて、一つの問題点として、私領域というのがきちんと確立されていない。つまり、プライバシーという言葉日本語には翻訳されずに片仮名で入ってきて、今では子供もプライバシーと言います。ですから、それが大事であるという認識はあるわけですが、そういう言葉を自分たちでは持たなかったということがあります。ですので、その私的領域確保日本の私概念もございますので、それを私は余り私と呼びたくないんですが、しかし一応私と申し上げますと、私的領域確保ということを考えたときに法律の強制という問題との衝突が出てこようかと思います。  アメリカでそれはどういうふうに行われたかといいますと、結局、社会的に差別があって、過去においてずっと差別が行われてきたのだと。これに対して社会として何か対処しなければいけないということが国民的なやはり了解に、全員とは申しませんけれども、マジョリティーの了解になったということが、アファーマティブアクションということをアメリカの場合企業の方が率先して、つまり法律の強制ではなくて率先してとるようになっていったということにあらわれていると思います。  そういう意味でも、一方的に上から下に押しつけるのではなくて、何が差別なのかということを十分議論する中で、何がしてはいけないことなのかということを自分たちで見出していくということがなくては、法律で皆やろうというのは無理があるというふうに思います。そうした中で、法で規制すべきところと私的自治に任せるべきところを自分たちでこれから考えていくという段階に今あるのだというふうに理解しております。
  70. 入澤肇

    ○入澤肇君 次に浅倉参考人に、日本男女の賃金格差の原因といたしまして、性別による分断された労働市場であるとか、あるいは性別の分業観に基づく年功賃金制ということが一般に指摘されております。こういう指摘が男女雇用均等法を契機としてどのように改善されたかということについての御認識をお伺いしたいと思います。
  71. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私は、男女雇用機会均等法が一九八五年にできましてから九七年に改正が行われまして、その十二年の間に相当やはり何が差別かという認識は進んだように思います。その点では、法律ができたということを大変評価しております。  ただし、八五年の均等法は女性のみの取り扱いというのを男女差別だというふうに認識しておりませんで、例えば女性のみパートタイムという募集、採用をしたとしても、それは差別ではないという概念に立っておりまして、それがかなり女性差別に対する規制が弱かった点だと思います。それを九七年に改定いたしまして、現在では原則として女性のみパートタイマーというような募集、採用もこれは違法だということになりました。したがいまして、法律ができて、そしてそれに伴って法解釈が進み、そしてさらによい法律ができるという、そういう役割を法律というのは果たすのではないかと思います。  ですからその意味では、先ほどから大澤さん、それから寺尾さんがとりあえず基本法も第一歩であるとおっしゃる意味合いは大変よくわかっております。ただし、それができるときにはできるだけいいものとして生もうという努力をみんながすべきであると。そういう点では均等法もこの共同参画法も同じでありまして、何が差別かということを十分議論した上で現時点で最高のものをつくりたいというふうに考えております。  ちょっとお答えが違っていたかもしれませんけれども、職業における、雇用における男女性別役割分業というのも、そういう意味では差別が何かということを通して相当人々の意識が変わるという点ではかなり変化したのではないかというふうに考えております。
  72. 入澤肇

    ○入澤肇君 ぜひ学問的な方法論を駆使して、男女雇用均等法を契機としてどのように賃金の格差とか差別がなくなったかということについて実証的な研究をされて論文でも書いていただきたいと思います。  それから、江橋参考人にお聞きしますけれども、人権被害の救済策としまして、男女差別に限りますと具体的に現にある救済策は、例えば人権擁護委員とか何かの制度がございますけれども、何が不足していてどのようにすべきか。先ほどちょっと独立的な機関をつくったらいいじゃないかという話もございましたけれども、そのほかに具体的な対策についての考え方がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  73. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 先ほど申し上げましたとおり、政府が行っていることについては行政監察等をもっと強化する必要がある、それから国レベルのオンブズパーソンということが考えられると思います。自治体レベルのことに関しても自治体レベルのオンブズパーソンのようなものが監視していかなければいけない。  非常に大きな問題は、民間、社会における性差別の問題であります。その問題に関しては、現在政府の案で示されているところでは、結局は人権擁護委員にということになりますけれども、人権擁護委員制度もいいのですけれども、どうしても現状では無理だろうと。私は、むしろ一万四千人を三千人ぐらいに絞ってもいいから有給化して、もっときちんと問題に対処できる人にして、その人たちをいわば核にして、さらに各地域、地方自治体で地域におけるそういう性差別等にかかわって努力してきた人たちが集まって問題を解決していくような、そういう草の根の仕組みをつくることが救済の近道だというように思っております。  アメリカではよく裁判所ということが言われますけれども、アメリカで裁判所を中心人権の救済が行われてきたのは、実は簡単なことでして、アメリカ社会にとっては伝統的に裁判所こそ最も簡易、迅速、安価、公平な紛争解決手段だった。もう西部劇の世界を思い出していただけばたちまちおわかりになると思いますけれども、そういうものであったわけです。日本では裁判所が必ずしもそうなっていないわけですから、それにかわる、一般の市民にとって、地域にとって身近なところで安価、公正、迅速というようなもの、そういうシステムを早くつくり出す必要があるというのが私の認識でございます。
  74. 入澤肇

    ○入澤肇君 次に、では大澤参考人に、先ほど一九七〇年代から八〇年代にカナダとかオーストラリア基本法の制定の動きがあったという話がございました。英米型の法律とそれから北欧型の法律との違いの説明がございました。なぜこんな早い時期にこういう国々では基本法の制定があったのか。その社会的な背景なり理由につきまして、もし知っているところがあったら教えていただきたいと思います。
  75. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 早い時期、日本に比べればそうなのでございますけれども、御承知のように一九七五年が国際婦人年でございまして、それ以降十年、国連婦人の十年がございました。そして女子差別撤廃条約が署名をされ、日本も八五年、最後のぎりぎりの締め切りの年ということで批准をいたしましたけれども、そういう動きがあった時代であった、これが一つの背景でございます。  と同時に、これらの国では、性差別禁止法というふうには申しましても、それが例えばカナダなどでは人権法ということで、性差別だけではない、国籍や宗教それから障害の有無等々による差別もすべて禁止をする人権法の中に性差別が入っているということでの基本法でございます。この背景といたしましては、やはり六〇年代の後半くらいからアメリカ中心とする北米で公民権運動の高まり、それからヨーロッパでも六〇年代の末には若者の反乱と言われるような、それまでの合意されていた社会の秩序に対する異議申し立てということがございました。そのようなものを背景として、さまざまな差別について広く禁止をする、その撤廃を目指すという動きがそれらの国ではあったのだろうというふうに考えております。
  76. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 一番最後でございます。できるだけほかの委員の方とダブらない形で御意見を伺いたいと思います。  まず、この委員会でも税制あるいは社会保障の問題、それから私は農村女性の問題で、土地所有とかそれから農業者年金すら受け取れないような構造があるということで質問をやってまいりました。一番その辺のところがこの基本法と私はかかわってくるところかと思うんですが、たまたま大澤参考人は先ほど構造的差別を受けたというふうにおっしゃいましたし、また御専門領域だとも思うんですが、その基本法とそういった構造的な日本法制をどう変えていけるのかというあたりのところで御意見を伺えたらと思います。
  77. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) 政府提出法案では御承知のように第四条にかかわるところでございます。それ以外の、国の責務あるいは地方公共団体責務、それから施策策定等に当たっての配慮といったところにもこの問題が組み込まれておると私は理解しておりますが、一番直接に関係しているのは第四条ではないかと思います。  このような条文が練り上げられるに至った背景を審議会レベルで申しますと、やはりさまざまな社会制度慣行が、一見それはそれまでの社会のあり方や人々の意識からすれば当然ではないかと思われてきたような社会制度慣行が、実はよく検討をしてみれば、精査をしてみれば、精密に審査をしてみれば、性別に関する固定的な意識を背景とし、また暗黙のうちにそういったものを背景とし、また役割分業を前提として制度が組み立てられているために、その機能において男女に対する影響、効果が中立ではないといったものが多々見受けられるということを、男女共同参画審議会では現審議会でも以前の審議会でも審議をしてきたところです。  その中で特に焦点が合わされましたのが、御指摘の制度に関連するもので言えば、例えば年金制度の中の被扶養配偶者の扱いでありますとか、同様の扱いが健康保険制度の中の被扶養家族の扱いにもございます。また、介護保険制度の中にもそういった仕組みが組み込まれている。今度、民間に目を転じれば、企業でも配偶者手当や家族手当といったことで、暗黙のうちに男性が主たる稼ぎ手であり妻や子供を養うという前提のもとに組み立てられている制度がある。こういうものをやはり見直していかなければならないのだということを議論して、男女共同参画ビジョンなどにも書き込まれたところでございます。  今申し上げたのはかなり具体的な制度のしかも具体的な点でございますけれども、あらゆる社会制度慣行にわたって新たな目線で、つまり今までのあり方を前提としないそういった目線で洗い直した上で考えていく必要があろうということが第四条が書き起こされるに至った背景だというふうに理解しております。
  78. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 寺尾参考人に伺いますが、先ほど浅倉参考人がイギリスのEOCの例を引かれました。私もさすがイギリスというような感想を持ったんですが、実際に審議会におられて、こういった苦情処理機関が独立性を持つことがこの政府案というのは難しいのかどうか。浅倉参考人のおっしゃった危惧というのを実際に審議会におられてどのように考えておられるか伺いたいと思います。
  79. 寺尾美子

    参考人寺尾美子君) 苦情処理機関につきましての政府提案規定は一般的な規定になっておるわけですけれども、ちょっと最後のところだけ読ませていただきますと、「被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならない。」ということになっておりまして、基本的に基本法はその苦情処理の機関については、これは非常に重要であるけれども、こういうふうにつくりなさいということは言っていないんですね。私どもの間でも、審議会でも苦情処理をどうするかということについてはいろいろ議論もいたしましたし、いろんな御要望も承りました。  ただ、その苦情処理の機関をどのレベルでどういう形でつくるのか。つまり、国のレベルで一つ大きなものをつくるのか、あるいは地方で実際の地域社会と密接したところでどうやってつくっていくのか。こういう行革の時代にあって新しい処理機関をつくるという点。  それから、苦情処理に当たるということは、私はまたそこは英米法的なのかもしれませんけれども、苦情というのは、不利益を受けていると主張する人がいて、いやそれはこのままでいいのだというふうに思っている、その主張している人の言うことを聞かない相手がいて、つまり対立構造があるわけです。その中で、私は法律家のせいもあるんでしょうけれども、結局はその権利義務の話になるんだろうと思うんです。  権利義務の話にならなければ、強制力を持たない形で何か勧告をして聞いてもらおうと。ただ、そういう形の、割に不透明な行政のあり方が今までやはり日本的行政のあり方として一つ批判されてきて、行政手続法もできたり情報公開法もできたりしているわけですので、私は国民議論をするためには公開制というのが必要だと思うんです。  ですから、どういう形の苦情処理機関がよろしいのかという点については、例えばもう差別があって変えなければならないという国民的合意が強くできているところであれば、その国民的合意とその威信を受けた機関が設立されれば、そこが言うことはオンブズパーソン制度でもってうまくいくのかもしれませんけれども、それがない段階でそういう機関を設置しても、そこの機関が何か勧告しても実際聞いてもらえなかったり、あるいはそうした機関の力をそぐようないろんな裏で動きがあったりというようなことになりますと有名無実の存在になってしまいます。  今の段階では、苦情処理をどうするかということもやっぱり個別法でもっといろいろな問題点等、あるいは我が国の状況等についての認識が深まった時点でもっとよりきちんとしたものをつくっていただくことを、それを基本法は要求しているというふうに理解しております。
  80. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 江橋参考人に、今、審議会におられたお二人の参考人とそれから江橋参考人浅倉参考人はそこのところでは御意見が大変に分かれているところのように思います。  それで、先ほど浅倉参考人はよりよいものにすべきである、現時点で最も最高のものにしたいというふうに発言されておられましたけれども、その細かいことを入れることが最高の、細かいというか、個別法でも、個別法の中で決めるべき問題、あるいはその地方の決定、地方分権の中で対応すべき問題と、それから基本法の性格というところで御意見が分かれているように私は思います。  特に、例えば条例制定の問題、こういった問題とそれから地方分権の問題、これは江橋参考人はいかがお考えでしょうか。できれば一分以内ぐらいで簡単に浅倉参考人とお二人に伺いたいと思います。
  81. 江橋崇

    参考人江橋崇君) 私は、この基本法の中に条例の問題、あるいは苦情処理機関に関して言えば法的な制度の立てかえが必要だという問題、あるいは自治体に対する財政的支援ということを入れておくことが今後の地方におけるこの問題に取り組む支えになる、基盤になると思っております。  したがって、具体的にこれは入れた方がよいというか、入れないと地方としては非常に抽象的でどこまで何していいかわからない、霞が関の様子見になってしまうように思います。
  82. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私も細かい方がよいという意見ではありませんで、ただし基本的なところをもっと盛り込めないかという意見でございます。  ちょっと二、三だけこの間の議論を聞いていて思いましたのは、この法案の三条の「男女性別による差別的取扱いを受けないこと、」という規定は間接差別を含み、東京都の「差別的な取り扱いをしてはならない」というのが間接差別を含まないのではないかという御意見には明確に反対でございます。  といいますのは、やはり「差別的な取り扱いをしてはならない」という中には直接にも間接にもしてはならないというものを読み込むことはより簡単であって、受けないことというよりはしてはならないという方が法的には明快だというふうに一つは考えております。  それから、寺尾さんがおっしゃいました十三条の基本計画、個別具体的に挙げると限定されるのではないかとおっしゃった点も、例えば政府案でも十三条の第二項の二号にはその他「必要な事項」というふうに書いてあります。そういう包括的な事項を盛り込むことによってほかのものが全部拾えるという仕組みになっていますので、個別に挙げたから限定解釈になるということではないように思いますので、そこはちょっと異論がございます。
  83. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 本当にいろいろなお立場から参考人の方たちがこの問題に真摯にかかわってくださいまして、私ども国会の中にいる側としても、できるだけ御意見を本当にこれから大事にしながら審議を重ねたり、それから法律がどう実行されるかということを考えていかなければいけないということをきょう改めて思っております。  最後に、各省庁より一段高い統括機能を持つ内閣府に男女共同参画会議位置づけられることが中央省庁等改革関連法で今、国会に提出されてきているわけですけれども、それと基本法との関係デンマークの例と比較しながら先ほど大澤参考人が述べられました。そして、世界に誇れるような基本法だというふうにも、その意味ではナショナルマシーナリーのあり方としておっしゃったわけなんですが、そこのところをもう少し具体的に、どのような根拠でそれをおっしゃっているのか、伺わせていただきたいと思います。
  84. 大澤眞理

    参考人大澤眞理君) もう少し具体的と言われましたけれども、具体的に申し述べたつもりなんですが、さらに言わせていただくとしますれば、現在、中央省庁の再編、改革というのが大きな行革の目的のもとで行われております。これはもうそのように申し上げていいと思うんですけれども、政府提出法案推進体制のところは、現行の男女共同参画審議会設置法の条文がそのまま入っておりますが、中央省庁等改革基本法の方の審議の進行状況によってそれが内閣府、男女共同参画会議のセクション、ブロックとそっくり入れかわるというふうなことを念頭に置いて我々は作業をしてまいりました。  私は、内閣府ができて、その中に総合的な企画調整を要する四つの重要事項の一つに男女共同参画が含められたということは、日本のこれまでの経過を考えれば、ホップ・ステップ・ジャンプどころではない、大変な飛躍的な前進というふうに思います。諸外国と比べても、もちろん諸外国は大統領制を持つ国が多いわけですから、そういった政府の上位部門から総合的な判断で調整を行っている、政府全体としてそのような仕組みを持つところがあるわけです。  その一つの典型はアメリカだと思うんですけれども、アメリカ合衆国は、男女平等に関しましては基本法もなく、それから国内本部機構もその時々で設置場所が変わるというような大変心もとない状況になっております。  これに引き比べて、オーストラリアなどは、ここは連邦制でございますし、議院内閣制というようなことで、連邦制は別として、日本共通点がございますけれども、ここでは首相府、これは今審議されている内閣府に大変近い位置づけですけれども、この首相府の中に女性局があって、女性という名前はございますけれども、男女共同参画、ジェンダー、平等ということで、あらゆる政府施策法律案等について点検をしていくという任務を負っております。  このオーストラリア型をさらに明確にしたような位置づけ基本法及び中央省庁等改革基本法によってできていくのではないか、このことに私は大変大きな期待を抱いております。
  85. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には貴重な御意見をお述べいただきまして、しかも御多忙の中、私どもの委員会のために時間をお割きいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  それでは、暫時休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後三時十三分開会
  86. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ただいまから総務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  87. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。  参考人意見聴取を終わりまして、本日、再度改めて質疑をさせていただきます。私の持ち時間は三十分ということでございますが、どうかよろしくお願いいたします。  前回もかなり逐条的にお話をさせていただきまして、確認的な御答弁をちょうだいしておりますが、なおきょうの参考人意見聴取を踏まえまして御答弁をちょうだいしたいと思います。  前回の私が質問させていただきましたときは、政府案の第四条でございます、「社会における制度又は慣行についての配慮」のところで、性別による固定的な役割分担意識、この変革をどうするのかという質問をさせていただきました。  それに関連した条文といたしましては、十六条でございますけれども、「国民の理解を深めるための措置」というところで、国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて理解を深めていく、こういう措置を講じなければいけないというこの条文があるわけでございます。  前回の質問のときに、連合傘下の組合から八件ほどさまざまな意見をちょうだいしているということを御紹介させていただきましたけれども、その後、むしろ大変御要望が強くなってきておりまして、今ごろになってというとちょっと申しわけございませんが、今もなお私のところに五十件以上、要望がふえてきておりますが、その要望項目の中に、十六条の広報活動等につきまして、教育が含まれるかどうか、含んでほしいという趣旨の要望が来ているところでございます。  そこで、確認答弁をちょうだいしたいと思います。国民の理解を深める措置、この中には教育活動が含まれると解してよろしいか、御答弁をちょうだいしたいと思います。
  88. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 男女共同参画社会基本法委員御指摘の第十六条におきましては、人々の意識の中に長い時間をかけまして形成されてまいりました性別に基づく固定的な役割分担意識が男女共同参画社会形成の障害となっていることを踏まえまして、国及び地方公共団体は、広報活動等を通じまして、基本理念に関する国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならない旨を規定しておるところでございます。  本条におきます適切な措置には、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等のマスコミ、インターネットといった多様な通信媒体を通じた広報活動や各種の講演会、イベント行事、学校教育及び社会教育における取り組みなども該当するものと考えておるところでございます。
  89. 川橋幸子

    川橋幸子君 同じく四条でございますけれども、こうした固定的な役割分担、これを反映して、性に中立的ではない社会制度慣行の見直しが規定されているところでございます。  前回の質問では、そうした社会における制度または慣行が性に中立的なものであるよう配慮と書いてある、その配慮の中身を伺ったところでございますが、連合等の要求の中では、配慮されなければならないというこの書きぶりを、むしろ、配慮しなければならないと、このように強めてほしいという要望がございます。その点を御紹介させていただきます。それから、本日の参考人意見聴取でも、社会的な制度慣行についての配慮というものは非常に重要な条文であるということが各参考人から指摘されたところでございます。  そこで、確認の御答弁をちょうだいしたいと存じます。社会における制度慣行についての配慮というこの点につきましては、政府として、税制、年金等を含む制度慣行について見直しを進めるべきではないか、こういう問いでございます。
  90. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 法第四条は、人権問題となる差別的取り扱いではなくとも、例えば社会における制度または慣行が結果として女性の就労等の活動を選択しにくくするような影響を及ぼし、男女共同参画社会形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみまして、その影響に配慮することを基本理念として掲げたものでございます。  この四条に該当する制度慣行につきましては、本条の趣旨にのっとって今後、個別具体的に議論されるものでございますけれども、議員お尋ねの税制、年金等、女性の活動や生活に大きな影響を与えるものにつきましては、女性社会進出や家族、就労形態の多様化、諸外国の動向等も踏まえながら、男女共同参画社会形成促進という視点からも必要な検討が行われなければならないと考えておるところでございます。
  91. 川橋幸子

    川橋幸子君 次に、リプロダクティブヘルス・ライツについてお尋ねさせていただきます。  新しい概念でございますが、リプロダクティブヘルス・ライツの点につきましては、九四年の国連のカイロ会議、それから九五年の国連の北京会議、そしてそれに沿いまして、既に政府の中では二〇〇〇年プランにおきましてこのリプロダクティブヘルス・ライツに関する施策推進されているところでございます。  そこでお尋ねさせていただきます。リプロダクティブヘルス・ライツにつきましては、この基本法に基づいて策定されることになります基本計画におきまして明確に位置づけ、取り組むべきではないかと存じますが、いかがでしょうか。
  92. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) これまでの男女共同参画に関する国の行動計画は、柱立てが時代により変遷していること、来年六月にはニューヨークの国連で女性二〇〇〇年会議が開催され、その動きも踏まえるべきであることを考えますと、法律で細かく規定すると硬直化し、かえって今後の世の中の動きに合わなくなるおそれがあると考えて、具体的項目は掲げていないところでございます。  したがって、リプロダクティブヘルス・ライツ等個別具体的な問題に係る施策は本法案の中に具体的に規定はしておりませんけれども、本法案第三条に基本理念として男女人権の尊重を盛り込んでおり、その理念に照らしまして、リプロダクティブヘルス・ライツの問題も重要であると認識をいたしております。  また、政府の現行の行動計画であります男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましても、生涯を通じた女性の健康支援の問題は重点目標の一つとして取り上げておりまして、その問題の重要性は十分認識をいたしておるところでございます。
  93. 川橋幸子

    川橋幸子君 次に、積極的改善措置についてお尋ねいたします。今回、基本法積極的改善措置、通称いわゆるポジティブアクションでございますが、本法案に定義がしっかり書き込まれたことは評価するところでございます。  この積極的改善措置につきましては、雇用機会均等法につきましては民間部門で既に法の中に規定されておりますが、国家公務員等公務員の部門についての問題、新たにこの基本法に基づいてポジティブアクションを講ずるべきではないかという質問をさせていただいたところでございます。この問題につきましては、地方公務員の問題も大変大きく、ポジティブアクションにつきましての本法に対する地方の女性たちの期待の大きいところでございます。  そこで、確認的にお尋ねさせていただきます。積極的改善措置、公務部門のポジティブアクションをより具体的に推進していくべきではないか、国家公務員だけではなく、地方公務員を含め公務部門におきますポジティブアクションに積極的に取り組むべきではないか、お尋ねさせていただきます。
  94. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 男女共同参画社会基本法の第八条におきまして、国は積極的改善措置を含む男女共同参画社会形成促進に関する施策を総合的に策定実施する責務を有することとしているところでございます。  現在におきましても、男女共同参画二〇〇〇年プランでは、「女性国家公務員の採用、登用、職域拡大及び能力開発を一層推進する。その際、現状について定期的に把握・分析しながら計画的に取り組むことが効果的であるとの観点から、採用、昇進等の状況を定期的に調査・公表し、改善が必要とされた課題への取組を示した計画を策定することを検討する。」と掲げられているところでございます。  また、先般も御答弁申し上げましたけれども、本年三月十六日の公務員制度調査会、公務員制度改革の基本方向に関する答申におきましても、公務部門におきまして、「国家公務員法の定める平等取扱と成績主義の原則に基づき、男女共同参画推進に向けて各種のポジティブアクション推進し、性別によらない開放的な人事運用の一層の促進を図っていくことが必要である。」ことなどが提言をされておるところでございます。  政府といたしましては、引き続き女性国家公務員の採用、登用等の促進について着実に進めてまいりたいと考えております。  また、御質問の地方公共団体における地方公務員のあり方につきましては、第九条において、国の施策に準じた施策策定実施する責務を有することといたしておりまして、必要に応じて取り組みが進められていかなければならないと考えておるところでございます。
  95. 川橋幸子

    川橋幸子君 次に、女性に対する暴力についてお尋ねさせていただきます。  女性に対する暴力の問題につきましては、前回私も質問をさせていただきましたし、また本日の参考人意見聴取の中では非常に大きな問題として各同僚議員からの質問があり、そして参考人からそれぞれの意見が述べられたところでございます。今回のこの法案審議を通じまして注目された部分というふうに理解されるところでございます。  そこで、お尋ねさせていただきます。女性に対する暴力、これには身体的なものだけではなく、精神的、心理的なものが含まれる、このように解してよろしいか。それから、その後の世界の女性たちの取り組みによりましても多様な暴力の問題が女性人権あるいは尊厳にかかわるものとして具体的に掲げられ、それに対する取り組みが行われているわけでございますが、暴力の形態といたしましては、セクシュアルハラスメント、少女に対する性的虐待、家庭内暴力、夫、パートナーから女性への暴力ということでございます。こうしたものが含まれるのではないか、御確認していただきたいと思います。  そして、日本政府といたしましては、九三年の国連の女性に対する暴力の撤廃の宣言あるいは近々予定されております政府男女共同参画審議会答申などを踏まえて積極的に対応していただきたいと考えますが、そういう対応が準備されている、このように考えてよろしいか、お尋ねさせていただきます。
  96. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 一九九三年の女性に対する暴力の撤廃に関する宣言におきましては、女性に対する暴力は女性に対する肉体的、精神的、性的または心理的なものを含む広範な概念とされております。  現行の政府の行動計画でございます男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましても、「女性に対する暴力とは、公的生活で起きるか私的生活で起きるかを問わず、性別に基づく暴力行為であって、女性に対して肉体的、性的、心理的な傷害や苦しみをもたらす行為やそのような行為を行うという脅迫等をいい、性犯罪、売買春、家庭内暴力、セクシュアル・ハラスメントを含む極めて広範な概念である。」としておるところでございます。  女性に対する暴力の問題につきましては、一九九五年の第四回世界女性会議におきまして、行動綱領の十二の重大問題領域の一つとして取り上げられるなど、国際的にも大きく取り扱われるようになってきております。  女性に対する暴力は、本法案男女個人としての尊厳が重んぜられることという基本理念に照らせば、決して許されるべきものではないと考えておるところでございます。  現在、男女共同参画審議会におきまして、女性に対する暴力に関する基本的方策につきまして内閣総理大臣からの諮問を受けて調査審議が進められております。近く答申内閣総理大臣に提出される運びであると聞いておりますけれども、答申が提出されましたら、それを参考にしつつ、今後とも政府として女性に対する暴力の問題につきまして積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  97. 川橋幸子

    川橋幸子君 次に、苦情処理、被害者の救済措置についてお尋ねいたします。  これは前回私も質疑をさせていただきましたけれども、各会派の同僚委員からの質疑、それを踏まえましての本日の参考人意見陳述の中でも、この基本法の中では非常に重要な問題として指摘されているところでございます。  江橋参考人におかれましては、むしろ行政改革というものが進捗していく中で、そして地方分権が推進していく中で、地方での取り組みを期待できるような措置が一歩前進して講じられるようにこの法律の中でその方向性を明示すべきであると、そういう趣旨の陳述が行われたところでございます。  また、前回私はこうした苦情処理あるいは個人の申し立てに関しましては、最近におきます国際的な水準、具体的な例といたしましては、政府の行政機関から独立であることというパリ原則を紹介させていただき、そしてまた、昨年の国連の人権委員会におきます人権B規約の問題に絡みまして、日本政府に対する最終見解が出されておりました。それを引きまして、日本人権擁護委員の問題についても指摘させていただいたところでございます。  そこでお尋ねさせていただきます。苦情処理、被害者の救済につきましては、既存の諸制度、これは人権擁護委員制度でありましたり、さまざまな相談委員制度があるわけでございますけれども、その活用を図ることはもとよりでございますけれども、国際的な水準に照らしまして日本としても新たな法制度を含め今後検討すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  98. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) さきにも御答弁申し上げましたけれども、基本法という建前がございますので、具体的にどのような措置を講ずるかについては本法では規定をしておらないわけでございますが、男女共同参画社会形成促進するためには苦情の処理等が重要であることから、国は政府施策についての苦情の処理のために必要な措置及び人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならない旨規定をいたしておるところでございます。  この規定に基づきまして、具体的な措置につきましては、委員が今御指摘になりましたように、行政改革、一方で地方分権という二つ課題を抱えておるわけでございますので、そのような状況も踏まえながら実効ある措置が講じられるよう検討をしてまいりたいと考えております。
  99. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは次に、本法の将来の問題といたしまして、必要に応じての見直しの問題についてお尋ねさせていただきます。  現在、基本法が初めて提案されまして審議されているばかりであり、将来の見直しについて言及すべきでないというようなお答えがありそうではございますが、今までの審議を通じますと、やはり国際的な動向に日本としては適切に対応すべきである。国際的協調というものは、日本自身が女子差別撤廃条約、グローバルな全地球上の女性たちの憲法というふうに言われているわけでございますけれども、そうした国際文書の遵守をしっかりとやること。それから、その後も女性の問題につきましては、日本のみならず諸外国におきまして新たな行動が起こされ、男女共同参画といいましょうかジェンダーイクオリティーといいましょうか、そうした法のもとでの平等をより事実上のものにしていけるかの歩みが続けられていることを考えますと、今後とも国際的な動向というものをしっかり見据える必要があるかと思います。  それから、この基本法が成立しました後には、中央省庁改革基本法に基づきます省庁改革というものが予定されておりまして、内閣府における男女共同参画会議設置という一段と政府取り組みも進み、あるいは国内の状況も変わってくる、こういう状況にあるわけでございます。提案理由の中でも、官房長官は二十一世紀の日本社会の重要な課題であるというふうにお述べくださいました。  そこでお尋ねさせていただきます。将来における問題といたしまして、二〇〇〇年におきます世界女性会議の成果を踏まえるとともに、国内の諸施策の進展を踏まえ、二十一世紀の日本社会における重要な課題として必要に応じ本基本法の見直しも考えていくべきではないか、お尋ねさせていただきます。
  100. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) お願いをいたしております基本法は、基本理念等を定めることによりまして男女共同参画社会形成を総合的かつ計画的に推進することを目的としておるところでございまして、国、地方公共団体及び国民はこの基本理念にのっとって男女共同参画社会形成に取り組んでいくことが求められておるわけでございます。そのために、本法の趣旨の浸透がまず求められるものでございます。  本法が成立いたしました後は、政府といたしましては、まずは本法に掲げられた基本理念等の定着を図りながら、男女共同参画社会実現に向け、委員御指摘のように、国際状況等を十分踏まえましてさらに力を尽くしてまいりたいと考えておるところでございます。
  101. 川橋幸子

    川橋幸子君 次に、地方公共団体への支援という問題をお尋ねさせていただきます。  本日の参考人意見聴取におきましても、特に東京都の男女平等推進条例、これが検討中であること、あるいは川崎市の男女平等オンブドの設置が検討中であること等々が紹介されまして、地方におきますこうした男女共同参画社会形成につきまして、それぞれの自治体が現在鋭意検討中であるというようなことが紹介されました。  また、そうした検討が進んでいる自治体が見られるのと反対に、地方自治体の中におきましてはなかなか女性議員比率も低いといった現状がございます。さきの統一地方選では、女性の議員が史上最多となりました。丸めの数字で、私の記憶でございますけれども、都道府県議会では女性議員がゼロである県議会をなくそうという活動が進められまして、私もその一端に従事いたしました。民間の女性たちと一緒にそうした活動をいたしまして、十県は解消いたしましたけれども、残念ながら現職の方が落選されて三県新しいゼロ県が生じている、こんな状況がございまして、都道府県における女性議員の割合といいますものも、高まったとはいえ三%から五%ぐらいでございます。  それから、市議会の方は、都市部になりますと女性たちの活動あるいはそれをサポートする男性の活動というものが今回の統一選では大変顕著に見られたかと思います。市議会では、政令市じゃなくていわゆる普通の市でございますね、ここの割合がたしか一〇%ぐらいに高まっていたかと思います。それから、政令市におきましては一五%程度。それから、区議会が最も多うございましたけれども、二〇%にまで高まってまいりました。反面、町村にはまだゼロ議会が、これは選挙管理委員会の方の統計がまだでき上がっておりませんのではっきりつかめてはおりませんけれども、女性議員がいない町村議会というのも半数近くに上るのではないか、こう推定されている、そういう状況なわけでございます。  そうした中で、この男女共同参画社会形成というのは国のみならず自治体も含めまして日本全体として取り組むべきものである、こういう認識であるわけでございます。私どもの江田理事が最初の日の質問の際に、この男女共同参画基本法というのはいわば憲法に準ずるような、準憲法的な規範ではないか、こんな話もございました。それから、よく言われる公法秩序を整備するものだという論もございます。  そういうことでございますと、地方分権という時代でありましても、地方が自主的にその地方自治体の固有事務として男女共同参画に取り組むことが必要であるといたしましても、本日の参考人意見あるいは日本の実態を考えると、国として必要な支援をすべきではないか、前置きが長くなりましたが、そういう認識があるわけでございます。  そこでお尋ねさせていただきます。男女共同参画社会形成につきましては、我が国全体にとっての課題でありまして、条例の制定や地方の基本計画の策定など地方における施策推進につきまして、国として適切な支援を行うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  102. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 本法案におきましては、第二十条で、国は地方公共団体実施する男女共同参画社会形成促進に関する施策を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努める旨、規定しているところでございます。具体的に地方公共団体のどのような施策に対してどのような措置を講ずるかにつきましては、施策の進展状況や国、地方の役割分担、財政事情等を勘案しつつ最も効果的かつ効率的なものとなるよう検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  103. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  以上で急遽事務方の協力も得まして質問させていただく確認事項の質問を終わらせていただきますが、確認事項ということでいささか私の方も読み上げ口調で質問させていただきましたし、お答えの方もそういうことでありまして、少々退屈な質疑だったかと思いますが、重要なことでございますので、委員各位にはお許しをいただきますとともに、ぜひこうした今お答えのありました部分、それから質問者の方の私の言葉というのは、大変恐縮でございますけれども、それは私個人といいますより女性全体の意向、あるいは質疑を踏まえての問題点となったその部分を踏まえて質問させていただきましたので、この法案実施に関してはこうした確認的な質疑について周知していただきまして円滑な実施を図っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  104. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 先生おっしゃるとおり、この法案を期待しておられる多くの方々がおられますし、また私どものところにもいろいろな御意見をいただいております。法案が成立いたしましたならば、私どもといたしましてできる限りのことをしてまいりたいと考えております。
  105. 川橋幸子

    川橋幸子君 四十四分まで時間をちょうだいしておりまして、まだ少々時間が一、二分ございまして、せっかくの時間でございます。官房長官に御質問させていただく機会というのは非常に少のうございますので、これはもうお気軽な御答弁をちょうだいしたいと思います。確認答弁という形をとりませんので、ぜひ官房長官のお言葉でお聞きしたいと思います。  憲法の中に個の尊重、個の尊厳が書かれ、男女平等が書かれて五十年たちました。しかし実態は、以前に比べれば改善はされておりますけれども、なかなか諸外国の水準から考えると日本改善は遅々たるものでございます。国連の開発計画で測定いたしております、ちょっと舌をかみそうなジェンダー・エンパワーメント測定でございますが、これは先進国の中で日本というのは最低である、経済水準の高さに比べてその落差が大きいということが指摘されているわけでございます。本法を実効あらしめるように、特に政府首脳の強力なリーダーシップが要請されると思います。ぜひその御決意を官房長官のお口から伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。
  106. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) ただいま委員が御指摘のように、新しい憲法が制定されまして以来、五十数年を迎えるわけでございますけれども、御指摘のように男女の平等というものがこの間、我が国の発展とともに完全な形で定着をしてきたかどうかは非常に委員が御指摘のように問題があるところでございます。逐次、我が国におきましても改善が行われてまいりまして、ようやく本法をお願い申し上げるような段階になりましたことを私どもとしても意義深く存じておる次第でございます。  本基本法が成立をいたしました暁は、先ほども申し上げましたように、政府として各般の施策を講ずることによりまして、真に男女共同参画社会実現をいたしますように努力をしてまいりたいと決意を新たにしておるところでございます。
  107. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  終わります。     ─────────────
  108. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、吉川春子さんが委員辞任され、その補欠として井上美代さんが選任されました。     ─────────────
  109. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 本日、参考人から、日本では男性の人権もかなり問題がある状況である、こういう旨の御発言がありました。  実は、これは地元の東京でのある調査でございます。中野区の地域センター部女性・青少年課が男性の生活実態をまとめた調査結果があります。それによりますと、平均的な男性の生活というのは、大体朝八時台に家を出て、夜八時台に帰宅する。夜十一時に就寝し、朝六時に起きる。通勤時間を含めて十二時間の労働と七時間の睡眠を除きますと、約五時間が家庭生活の時間に充てられている。ただし、この家庭生活の時間には、おふろとかあるいは食事、トイレ、あるいは翌日の準備、新聞を読む、こういうことに費やされている。実質的な家族とのコミュニケーションの時間はほとんどないという結果が出ております。  また、妻の方は食事の準備あるいは後片づけその他の家事、育児等があって、夫とのコミュニケーションはほとんど皆無と、こういう生活の実態がございます。男性は仕事をして寝るだけ。二十二歳から六十五歳まで働くとして、四十三年間ものこうした生活が男性、夫の主体性の喪失になったり、あるいは自主性を喪失したり、あるいは家庭性、地域性の喪失、あるいは政治など公共生活への無関心などを生んでいるその大きな要因であるということが言われております。  また、退職後は家庭に居場所がない男性も多いと言われておりまして、こうしたいわゆる男性問題というのが子供の家庭教育にも、あるいは女性社会進出の困難さにも、あるいは家庭内暴力にも、あるいは女性が介護で大変苦しんでいる、また地域共同体の崩壊、あるいは民主主義の空洞化、こういう問題の背景にあるとも指摘されております。  男女共同参画社会をつくるということは、女性にとっても男性にとっても人間的な社会をつくるということでなければならないというふうに考えます。この男女共同参画は、女性問題であるだけでなく男性問題でもあるということを、ぜひ野中官房長官、国のトップリーダーとして認識していただきたい。そしてまた、さまざまな機会にその御認識を持っての御発言をしてくださるように、また他の男性の方々への啓蒙等にリーダーシップを発揮していただきたい。その要望とともに、この男女共同参画社会が男性問題であるという指摘についての御見解をお伺いできればと思います。
  110. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員がただいま御指摘になりましたように、この男女共同参画社会というのは単に女性問題でなく、男性問題であるという認識は私も共有するものでございます。特に、女性問題が顕著に取り上げられる傾向がありますし、共同参画社会というのは女性を重視したものにとられがちでございますけれども、我々は男女が共同して、そしてこの社会を築いていくという観点に立っていかなくてはならないと思うわけでございます。  今具体的にそれぞれ男性の生涯を通じたさまざまな例が委員から御指摘がございまして、一つ一つごもっともであり、身につまされる思いもあるわけでございます。このごろやや男性が大変多くの場面で苦悩しておる部面を見ることが多うございますし、例えば給与等につきましても、我が国ではある意味において源泉徴収制度が定着をしており、給与を受けておりましても金融機関に振り込みが行われまして、ほとんど家庭においても奥さんからお手当をいただくような男性の姿を見かけ、一方においては、それを眺めておる子供たちを考えますときに、私どもはこの男女共同参画社会というものの重要さを広く国民共通の認識としていかなくてはならないわけでございますし、後世この基本法がやがて評価を受けるときに、女性に対しても男性に対しても共同の参画社会を築いたのだという評価が行われるようにしていかなくてはならないと考えておるところでございます。  御所見を十分踏まえまして、私どももそのつかさつかさで努力をしてまいりたいと考えております。
  111. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 また、本日おいでいただいた女性参考人の方からこういうお話がありました。今から振り返ってみると自分が差別を受けていたということがわかる、そのときには気がつかなかったと、こういう御発言がございました。こうしたいわゆるジェンダーバイアスというのは、普通に意識せずに過ごしているとそれは当たり前のことあるいは自然なこととして見逃されがちであります。気づきにくいという特色があります。したがいまして、学習を通して意識的に気づかせる、こういうことが必要になろうかと思います。  したがいまして、ジェンダー教育というのが今後ますます重要になるかと思います。また、ジェンダーに基づいて形成された慣習や制度を意識的に排除していくという取り組みも必要になってくるかと思います。特に、一人一人のジェンダー意識を啓発していくことが重要という意味から考えますと、その担い手の一つは教育機関になるかと思います。  これまで教育の分野においては、家庭科と技術の授業の男女区別がなくなるなど、学校教育のカリキュラムについては改善が見られます。しかし、教師の生徒への態度あるいは生徒同士の態度といったいわゆる隠れたカリキュラムが、制度やあるいは教科書の中身よりもむしろ強烈な力を持って子供たちに影響を与えていると、そういう実態が報告されております。  同じ教室で授業を受けていても、生徒に対する質問の仕方、あるいは助言の仕方、あるいは注意の仕方、励ましの仕方、こういうさまざまな正規のカリキュラム以外の要素における差別的な体験を積み重ねていく中で、女性の独立心とかあるいは学習意欲あるいは自己肯定の芽が摘み取られている、こういう指摘があります。これがひいては女性の自尊心の喪失やあるいは職業選択の不自由、こういう問題を生じさせておりまして、女性社会参加を阻む要因になっていくというふうに言われております。  こうしたいわゆる制度やあるいは教科書の中身というものではない隠れたカリキュラムとしてのジェンダー差別にどのように対応していけばいいのかというのは非常に難しい問題でございますけれども、これを含めまして、男女共同参画社会実現のために特に教育の現場で留意すべきことについて御意見を伺わせていただければと思います。
  112. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 教育分野におきますジェンダーバイアスの是正についての対応でございますけれども、委員がおっしゃいますように、男女平等を推進する教育、学習というのが一番重要であると考えるわけでございます。  学校教育におきましては、我が国憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、また男女共同参画社会形成という今日社会課題を十分踏まえまして、男女平等の意識を高める教育を推進していかなくてはなりませんし、そのため、初等・中等教育におきましては各学校の教育活動全体を通じまして、引き続き一人一人を大切にし、尊敬し、教育の平等の意識を高めるような配慮をしていかなくてはならないと考えるわけでございます。  各種の施策を通じて、女性の高等教育機関における学習機会の提供も推進していかなくてはならないと思いますし、一方、社会教育におきましても、男女が生涯を通じて男女平等の意識を高めていき、生涯学習の振興のためのさまざまな施策を通じて男女平等に関する学習の総合的な推進を図っていかなくてはならないと考えておるところでございます。
  113. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 最後に、年金等の社会保障制度やあるいは課税などを個人単位にすることが男女の平等あるいは自立につながるという意見があります。これは制度の根幹にかかわることでもございますので、多くの国民方々の御意見を伺い、十分な議論を経なければいけない問題であると思います。また、プラス面、マイナス面、十分に吟味しなければいけないと思いますが、こういう意見が非常に強くあることも事実でございます。  これについて、官房長官は基本的にどのようなお考えをお持ちか、御見解を伺わせていただきたいと思います。
  114. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) お尋ねの制度慣行につきましては、法第四条のいわゆる人権問題となる差別的取り扱いでなくても、社会における制度慣行が結果として女性の、御指摘がございましたように就労等の活動を選択しにくくするような、あるいは結果として差別を受けたような影響を及ぼすわけでございますので、こういういわゆる阻害要因をなくするために十分な配慮をしていかなくてはならないと思うわけでございます。  また、個別具体的に議論をされる問題として、お尋ねの税制や年金等、女性の活動や生活に大きな影響を与えるものにつきましては、女性社会進出とかあるいは家族、就労形態のさまざまな状態を、諸外国の国際的な動向等も踏まえながら、お説のように男女共同参画社会形成促進という重要な視点からも十分検討を行っていかなくてはならないと存じておるところでございます。
  115. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 ありがとうございました。
  116. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 午後五時に再開することとし、休憩いたします。    午後三時五十八分休憩      ─────・─────    午後五時開会
  117. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ただいまから総務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  118. 井上美代

    井上美代君 日本共産党を代表いたしまして質問いたします。  質問に先立ちまして、一言申し上げたいのですけれども、きょうの午後になっていきなりこの質問の日程が設定されました。質問の通告もしないままに、十分な準備の時間ももちろんないわけなんですけれども、このような形で質問せざるを得なくなったということに私は本当に驚きもしております。これは委員会の運営として不正常ではないかというふうに思いますし、これでは基本法について充実した質疑ができるのかということを疑問に思っております。特に、私は男女の平等というのは、これは民主主義の問題であるというふうに思っておりますので、この突然の日程設定については抗議をさせていただきたいというふうに思います。  質問に入りたいのですけれども、まず第一の質問は、男女共同参画社会基本法、これは女性の地位向上と男女平等、そして人権が守られ、男女がともに支え合う社会実現を切実に願っている私たち国民、そして女性の期待というのは、この基本法について大変高まっているというふうに私は認識しております。  しかしながら、その期待にこの法案は本当にこたえ得るものなのかということについては疑問も持ちながらおります。特に、多くのNGOで、男女平等という法案を欲しいというのがずっとありまして、そういう点でもこれでいいのかという思いをどうしてもぬぐい去ることはできないでおります。  差別撤廃条約は、女子に対する差別は権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に反するものとし、そして国の完全な発展、世界の福祉及び理想とする平和はあらゆる分野において女子が男子と平等の条件で最大限に参加することを必要としていると、このように指摘をしております。女子差別撤廃条約の第三条ですけれども、ここにはやはり単に形式的に機会の均等だけにとどまっているのではなくて、男女平等を基礎として人権基本的自由を享有することを保障するために立法を含むすべての措置をとり、そして実質的な男女平等を進めよと、こういうふうに言っているわけです。  男女平等について、日本憲法や、そしてまた私たちが大事に思っております女子差別撤廃条約など、国内法、そして国際法の男女平等の理念法案に組み入れてあるとおっしゃるんですけれども、どのように組み入れてあるのかということを官房長官にお聞きしたいと思います。
  119. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) お答えをいたします。  昨年の十一月に行われました男女共同参画審議会答申におきましても、男女共同参画社会男女平等の実現を前提にしたものである旨が示されているところでございます。この法案の第一条には、男女人権が尊重される社会実現することの緊要性にかんがみ、男女共同参画社会形成を総合的かつ計画的に推進することを本法の目的とすることが規定をされているところでございまして、また委員が御指摘のように、男女共同参画社会形成についての基本理念の一つでございます男女人権の尊重を定めました第三条におきまして、男女共同参画社会形成男女性別による差別的取り扱いを受けないことを旨として行わなければならないことを規定しているわけでございます。  このように、本法律案の上におきまして、性別による差別的取り扱いの禁止は法の目的基本理念に明確に規定されているところでございまして、御趣旨の点につきましても十分こたえられておるものであると考えておるところでございます。
  120. 井上美代

    井上美代君 今、相当含まれているということで御答弁いただきましたけれども、それだけ男女平等の内容、理念がそこに含まれているとするならば、男女平等の言葉法案の中には一言もありません、男女共同参画社会という表現しかありませんけれども、この男女共同参画の表現は、余りにも私たちにとってはわかりにくい言葉なんです。私は長年女性運動をやってまいりました。そして今も女性運動の現役としてやっておりますけれども、その立場から申し上げまして、私はこの基本法の中に男女平等という言葉を明記すべきだと考えております。  法案の土台となった平成八年の男女共同参画審議会男女共同参画ビジョンでは、男女共同参画、それは人権尊重の理念社会に深く根づかせ、真の男女平等の達成を目指すもので、男女の事実上の平等という観点から検討し、そして改革をする、こういうふうに言ってきたのであります。そしてまた、女性の権利は人権である、これは九三年のウィーンの会議の中でも討議されました。それが北京会議に引き継がれて、そして宣言に入っているわけなんですけれども、今、この女性の権利は人権であるというのは国際的にも常識になっておりまして、そういう意味からも、私は男女平等をどうして基本法に入れることができないのかということをお聞きしたいと思っているんです。  ついこの間、婦人展望という、市川房枝記念会から出ております五月号に座談会がありますけれども、ここに、基本法検討小委員会委員長でありました古橋源六郎さんが、平等平等と言うから男性の理解が得られず、達成されないのではないかと、こういうふうに述べておられるんです。これは少しおかしいというふうに思いますが、官房長官御自身、私はいろいろと官房長官の御答弁を聞きながら、まさか同じお考えではないだろうというふうに思っているんですけれども、もし一部の男性のこうした感情的な反発に気兼ねをして、そして男女平等という言葉を明記できないとすれば、それは女性の地位向上を願う多くの男性たちにとっても失礼なことではないかなというふうに思っているわけなんです。  官房長官の答弁で、憲法男女平等基本理念として法案策定したと、このように今も述べられたわけですけれども、そういう意味でも、私はどのように考えておられるのかということをお聞きしたいというふうに思います。
  121. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) この法案は男性のためのみにあるわけではなく、女性のためのみにあるわけでもないわけでございまして、先ほど来申し上げましたように、男女共同参画審議会答申に基づきまして、男女平等の実現をするために男女共同参画社会があるんだという、そういう明示のもとに私どもとしては本法がつくられてきたことを今も銘記しておる次第でございます。その点で、私は先ほど委員がおっしゃったような解釈をしておらないわけでございます。男女がともに共同して参画する社会を築いていきたいと念じておるところでございます。
  122. 井上美代

    井上美代君 ということは、男女共同参画社会をつくっていく中で男女平等を実現させていくというお考えなのでしょうか。
  123. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) そのようにおとりいただいて結構でございます。
  124. 井上美代

    井上美代君 一日も早く男女が平等になるようなそういう努力をぜひお願いしたいというふうに思います。  平成八年の男女共同参画ビジョンがありますけれども、この中で、女性と男性が共同参画する、本来いかなる経済社会状況にあっても優先されるべき課題だというふうに言っているわけなんです。経済社会環境の変化は女性人権の保障を一層危うくし、個人のレベルのみならず国民経済的な損失を生み出しかねない側面をも持っている。これらのマイナス面をできる限り抑制すると、こういうふうに書いてあるんです。このことは、今度の法案の一条のところでは、同じような言葉ではあるんですけれども、こういうふうに書いてあるんです。社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会実現することが緊要だというのは、いかなる経済社会状況にあっても女性人権の保障を危うくしないよう対応するというようなことだと、私は前の平成八年の男女共同参画ビジョンのところの、たとえ経済や社会環境の変化があっても尊重していくというものと同じ意味だというふうにとっているんですけれども、そういうことでよろしいんでしょうか。
  125. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 男女共同参画の重要性というのは、いかなる経済情勢におきましても変わるものではないと理解いたしております。
  126. 井上美代

    井上美代君 経済社会状況で女性人権が脅かされるということがあり得ますので、そういう点でも今の答弁はぜひ実践の中で証明してほしいというふうに思います。  それで、私は六条にかかわって質問をしたいと思うんです。  家庭責任を果たすべきということが明記されているんです。今、厚生省がつくったポスターで、「育児をしない男を、父とは呼ばない。」というポスターが話題になっているんです。ところが、日本の男性の育児時間というのはわずかに一日十七分なんです。NHKの生活時間の国際比較で見ましても、各国の男性の生活時間を見ますと、日本の男性の家事時間というのは一日に三十一分となっていて、ほかのアメリカカナダ、イギリス、オランダ、デンマーク、フィンランドなどと比べて三分の一から四分の一になっております。  しかしながら、労働時間で見ますと、日本の男性はほかの国よりも一日二時間前後多くなっているわけです。日本の男性たちは、家事をする時間を労働時間にとられているということが言えるのではないかと思います。労働時間が長いほど家事時間は短くなるという相関関係日本の場合はなっているということです。  日本の年間の労働時間はサービス残業を入れると、総務庁の労働力調査から推計しますと二千二百六十八時間、このようになります。世界に、本当に名だたる長時間労働をやっている国だということがここでもはっきりするわけなんですけれども、そういう形で、日本では女性にも長時間の家事労働の負担が重くのしかかってきているというのが現状なんです。  私どもの新日本婦人の会の九七年の働く女性の健康アンケートというのをずっとやっているんですけれども、家族一緒の夕食というのは、毎日夕食ができているというのは一五・一%にすぎません。そして、一日も一緒の食事ができないという家庭が七・五%あるんです。週一、二回というのが一番多くて二八・八%。この時間のところから出てまいりますのは、家族が全くばらばらであるという現状が出てまいります。  そこで官房長官にお聞きしたいんですけれども、この実態の中で家族責任を果たせるわけはないと私は思っているわけなんですけれども、官房長官はこうした現状についてどのようにお考えになるでしょうか。御答弁をお願いいたします。
  127. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) それぞれ例示をされました具体的な問題につきまして、私も深刻に受けとめておる一人でございます。  労働時間の短縮は、仕事と家庭の両立によりまして、女性を含めたすべての働く人たちの働きやすい職場環境をつくることが大切でございまして、経済計画に掲げられております年間総労働時間千八百時間の達成、定着を図りますためにも、週四十時間労働制の遵守の徹底、所定外労働の削減あるいは有給休暇の取得促進を柱といたしまして、引き続き労働時間の短縮に積極的に取り組むことによりまして、さらに家事、育児、そして仕事と家庭の両立のために一層の努力が必要であると考えておるところでございます。
  128. 井上美代

    井上美代君 官房長官が四十時間に努力をするというふうに言われましたけれども、私は、こんなに男性の家事時間が少ないという要因の一つは、やはり国際比較でもはっきりしておりますように、日本の長時間労働の実態が是正されない限りだめなんだというふうに思います。  歴史を考えてみますと、一九九五年のILO調査では、世界百五十一の調査の中で、六十カ国が一日当たりの労働時間の限度を定めているんです。一日の標準の労働時間と最高の労働時間とをともに定めている国を含めると九十六カ国に上ります。それぞれ男女ともに共通の規制があり、うち四十カ国が時間外労働の上限を一日二時間としております。  男女共同参画法案には国際協調という言葉があるんです。そしてそれ以上には書いていないんですけれども、国際協調という言葉は抽象的でありましてわからないんですけれども、そういう言葉よりも、世界の流れというのは労働時間短縮ではないかというふうに思っております。  一九一九年、ILOの第一号条約というのがありますが、ここには今言われました努力をするということも含めましてあるんですけれども、一九一九年、数えてみましたら、これはちょうど八十年前なんです。この条約を日本は批准していないという事実があります。これは全く国際的に恥ずかしいことだというふうに思います。そしてまた、一九九七年、平成九年ですけれども、女子保護規定廃止の労働基準法が議論された参議院の労働委員会では、時間外そして休日労働、深夜労働についての男女共通規制を設けるべきだという論議が随分やられまして、そして附帯決議がそこの中にきちんと入っているわけなんです。  そういう我々のこれまでのことを考えますときに、日本は年間総実労働が一千八百ということを早期に実現するということを世界に公約しているわけで、そういう意味でも私は、国際的には男女共通の上限規制が本当に今すぐやられなければいけないというふうに思うんです。そして労働時間の短縮をしていくということ、これなしに男女が家庭と職場を両立させていくということは本当に大変なことで、できないというふうに思うんです。  そういう立場からも、労働時間の短縮をしていただきたいというふうに思っているんですけれども、官房長官、いかがでございましょうか。
  129. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 今、委員がそれぞれ一九一九年以来の経過について詳細にお述べになりました。残念ながら私も一々検証して把握しておるわけでございませんが、お述べになりましたように重要な問題でございます。  先ほど来、累次申し上げておりますように、より労働時間が短く、かつそれによって女性だけでなく男性を含めて家事、育児が円滑に行われ、仕事と家庭の両立ができるように、ぜひこの基本法の成立のために、せっかくの御賛同を賜りまして、そしてこれからさらに男女共同参画社会が名実ともに実現するためにお力をおかしいただきたいと思う次第でございます。
  130. 井上美代

    井上美代君 特に私は男女共通規制について、附帯決議にもあったことですし、ぜひこれを実現させてほしいというふうに思っておりますが、そこはいかがでしょうか。
  131. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 先ほどお断りいたしましたように、共通規制を十分私承知をいたさないわけでございますが、本年四月施行の改正労働基準法に基づきまして、年間について三百六十時間とするなどの時間外労働の限度基準を定めたようでございまして、その徹底に向けましてさらに一層努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  132. 井上美代

    井上美代君 共通規制はこれはもう国際的には当たり前のことですので、それがなければ天井知らずでどこまでも労働時間は延びていくんです。だからそういう意味でも、この基本法にとっても重要な中身だし、男女共同参画にとっても重要な中身だということを確認させていただきたいと思います。  私は最後に、時間ももうなくなってまいりましたから、質問をしたいのは、十七条にかかわる問題です。この十七条には苦情処理やそして被害者救済に関してのことが述べてあります。  十八日の審議で野中官房長官は、苦情処理や被害者の救済の措置として新たな機関は考えていない、人権擁護委員などの既存の組織を活用すると答弁をされておりました。  そこで伺いたいのですが、今、人権擁護委員はどんな任務を持ち、そしてどんな権限を持っているのか、そしてまた全国に何人ぐらいが配置されているのか、また女性差別是正問題について相談件数は何件ぐらい寄せられて、勧告まで行ったのは幾つあるのか。その辺についてぜひ聞かせていただきたいと思います。局長にお願いいたします。
  133. 横山匡輝

    政府委員(横山匡輝君) お答えいたします。  まず、人権擁護委員制度でございますが、これは人権擁護委員法に基づくものでございまして、人権擁護委員は各市町村の地域住民の中にあって人権擁護活動を行う任務を有する民間人でありまして、各市町村長からの推薦に基づきまして法務大臣が委嘱するものでございます。平成十一年一月現在で全国に約一万四千名が配置されておりまして、具体的な職務としましては、人権啓発活動、人権侵犯事件の調査処理、それから人権相談に区分されます。  女性人権問題に対する活動実績の点でございますけれども、これは、法務省の人権擁護機関としましては、人権擁護委員のほかに法務本省の人権擁護局、それからその下部機関としまして、法務局、地方法務局に人権擁護部、人権擁護課がございます。それからさらに、法務局、地方法務局、支局がございまして、これが全体として法務省の人権擁護機関を構成しているわけでありますけれども、従来から女性人権問題に対しましては、まず積極的な広報啓発活動を行っております。具体的には、「女性の地位を高めよう」を強調事項に掲げて各種の啓発活動を行う。また、法務局、地方法務局及びその支局におきまして、常時開設している人権相談所において人権相談を行う。さらにまた、人権侵犯事件の調査処理等を行っております。
  134. 井上美代

    井上美代君 ありがとうございます。  人権擁護委員が全国に一万四千人いらっしゃるということですが、法律を読みましても、これは本当に実効のあるものではない、私はこれで変わるものではないというふうに思っております。  それで、最後に官房長官にお尋ねして、終わりにしたいんです。  私は、アメリカの大統領が任命する雇用平等委員会の副議長のポール・イワサキさんとお会いをして話をいろいろ聞きました。雇用平等委員会というのがアメリカにあるんです。これは一九六四年につくられておりまして、人種だとか宗教、性別、国籍、年齢など、雇用の差別について、当初は調査と和解を中心にした調停を行うだけで、そして法的な執行力というのは持っていなかったんです。しかしながら、これでは差別はなくならないということがわかりまして、八年後の一九七二年に法改正をして、差別している経営者を委員会自身が訴えて法廷で争うことが可能になったということです。  このように、強力な救済機関があって初めていろんな差別の事件が解決していくんですね。アメリカの三菱セクハラ事件もそういう中で解決になっております。だから、日本でも差別問題で解決できる救済機関をつくるべきだと思っております。そういう意味で、国際的にはノルウェーなどもういろんなところにありますので、オンブズパーソン制度をやはりきちんとつくり、権限が保障され、そして男女平等推進の力になっていけるような制度をつくっていかなければいけないんだというふうに思います。  実効ある苦情処理機関を設置すべきだというふうに思いますので、官房長官ぜひ最後に御答弁をいただいて、希望ある切り開きをお願いしたいというふうに思います。
  135. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 貴党がアメリカ制度及び施策等について評価されましたことを私もよく勉強いたしまして、これからの苦情処理の問題やらあるいは被害者の救済の問題について、具体的な措置につきましては、一方において御承知のとおり行政改革あるいは地方分権が進められる状態でございますので、どのような実効ある施策が行われるか、よく検討をしてまいりたいと考えております。
  136. 井上美代

    井上美代君 男女平等の保障はやはりこのオンブズマン制度だというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  質問を終わります。
  137. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 午後六時十分に再開することとし、休憩いたします。    午後五時二十八分休憩      ─────・─────    午後六時九分開会
  138. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ただいまから総務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  139. 清水澄子

    ○清水澄子君 官房長官も大変ですけれども、私どももきょうは大変です。それで、二十分しかございませんから最後の質問になると思います。  そこで、まず女性差別撤廃条約の中心理念というのは何でしょうか。
  140. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 女子差別撤廃条約は、男女共同参画社会形成を図る上でも重要な条約であると認識をいたしておりますが、その条約におきましては差別をなくすことが規定されておりますけれども、定型化された役割に基づく偏見の撤廃、これが五条に規定されておりますが、などさまざまな内容が規定されております。この偏見の撤廃というところが中心的な考え方かと考えております。
  141. 清水澄子

    ○清水澄子君 条約の中心理念というのは、やはり男女が固定的な役割を持つという考え方をやめて、男女とも自分の個性に応じて伸び伸びと人生を生きようということがまず中心的な概念だと思います。この女性差別撤廃条約は、この男女共同参画社会基本法の原則的な理念として貫かれているというふうに確認させていただいてよろしいでしょうか。
  142. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員御指摘のように、女子差別撤廃条約の内容は、男女共同参画社会基本法の第二条の男女共同参画社会の定義や基本理念等の規定において貫かれているものと考えておるところでございます。
  143. 清水澄子

    ○清水澄子君 それであるならば、なぜこの男女役割分業意識というものをなくしていかなければならないのか、それがこれからの日本の二十一世紀の経済や社会にとってなぜ重要だとお考えでしょうか。
  144. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) まず、現在が非常に社会経済情勢が大きく変化をしてきておるわけでございますけれども、これから二十一世紀を控えまして豊かで活力ある社会実現するためには、男女社会の対等な構成員として、みずからの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会確保され、さらに均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつともに責任を負う社会が重要であろうと思っております。固定的な役割分担によりまして機会が均等に与えられないとか、そういうことがあってはならぬということが非常に重要なことであろうかと考えておるわけでございます。
  145. 清水澄子

    ○清水澄子君 だけれども、この法律審議に当たってここで議論していることが、審議している者同士の間でもなかなか理解されないという現実がありますね。それは、別に女性だけが何とかこの社会で羽ばたこうと言っているわけじゃないんで、それが大きく、男女がお互いを尊重し合うと言っても、それが具体的にこれまでの男女役割意識というものが妨げていたということで、これを取り除こうというのが国際的な大きな政治課題になったということの前提でこの法律ができていると思うんですね。  しかし、それがなかなか共通認識ができなくて、例えば、もう何回も言いませんが、男女平等という言葉を使うと非常に刺激を与えるとか、そういう認識ではなかなか前へ進まないと思うんです。しかしそうであるならば、平等という言葉を使うのがとても刺激されて反発が多いというのであれば、この参画というところに少しバランスのある参画というふうに表現していったらどうでしょうか。
  146. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) バランスあるということを定義規定の中でも均等にというような言葉で表現をしておるつもりでございます。
  147. 清水澄子

    ○清水澄子君 みんなにわかるためには、やっぱりそういう男女のバランスをとっていくということで、参画というのはバランスある参画という形で、私は今後そういう表現も考えてみてもいいんじゃないかなと思います。  そこで、北京女性会議ではエンパワーメントがキーワードになりました。それは特に二〇〇〇年に向けての行動綱領のキーワードなんですけれども、エンパワーメントというのは、女性がそういう意思決定の場に参画をしていくのであるということが大きな世界の女性共通目標であり、それを実現することが今世界の女性たちの課題になっていますし、それを今度政府も一緒に実現していくということだと思うんですね。  そのエンパワーメントの具体的な一つとして審議会女性委員の比率ばかりが出ておるんですが、それだけではなくて、むしろ私は政府は各省庁のといいますか、公務員の採用とか管理職への登用とか、そういう意思決定の場への男女のバランスある参画ということにもっと範を垂れるべきではないかと思うわけです。そういうことを実際にやっていく中で、参画というのはどういうことかというのを政府が率先していくべきだと思うわけです。  そういう意味で、各省庁全体にわたって政策決定過程への女性の参加を進めていくために、具体的にはどのような計画でどういうことを取り組んだらいいとお考えでしょうか。
  148. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 御指摘のように、これから男女共同参画社会を築いていく上におきまして、委員が御指摘ございましたように、審議会等におきます女性登用につきましても一層の努力をしていかなければならないと考えますし、特に国家公務員等につきましても、公務員制度調査会の答申におきましても政策・方針決定過程への女性の参画ということが強く提言をされておるところでございまして、国の政策・方針決定にかかわる女性国家公務員につきまして、その採用、登用等の一層の促進を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  149. 清水澄子

    ○清水澄子君 きょうの午前中の参考人の皆さん方も、やはりこの間接差別についてきちんと確認をしておいてほしいという御発言もございました。  そこでお尋ねしたいわけですが、第三条の「男女性別による差別的取扱いを受けないこと、」というこの条文ですが、ここのところは直接的な差別のみに限定されたものではないというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
  150. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 第三条に書いております差別的取り扱いという中には、現実の裁判実務におきましても明確な差別的意図を持ったものでないものにつきましても差別であると推認されたという実例もあるわけでございますが、ここにおきましては、差別意思が明確ないわゆる直接差別と申しますか、それだけに限定されていないと私どもは解釈いたしております。
  151. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、第六条の「家庭生活における活動と他の活動の両立」には、これは当然職業生活が含まれていると思いますけれども、この第六条は家庭生活と職業生活の両立の権利に関するILO百五十六号条約を前提とするものであるという点で理解をしてよろしいでしょうか。
  152. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 我が国は、ILOの百五十六号条約を批准いたして公布もいたしております。この条文につきましては、当然この条約も前提といたしておるということでございます。
  153. 清水澄子

    ○清水澄子君 第十六条ですけれども、ここには「基本理念に関する国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならない。」とされております。これは「国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、」となるんですが、これは単なる広報にとどまらず、性別役割分業を初めとするそういう人々の意識を変えていく、いわゆる男女平等教育、ジェンダー教育ですね、そういう教育啓発を行っていく趣旨であると理解してよろしいでしょうか。
  154. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 十六条におきましては、人々の意識の中に長い時間をかけて形成された性別に基づく固定的な役割分担意識が男女共同参画社会形成の障害となっていることを踏まえまして、広報活動等を通じて国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならないと、こう規定しておりますが、ここに言います適切な措置の中には、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等のマスコミ、それからインターネットなどといった多様な通信媒体を通じました広報活動、あるいは各種の講演会、イベント行事、それからまた学校教育、社会教育、そのような取り組みなども入っておると考えております。
  155. 清水澄子

    ○清水澄子君 そういう教育啓発というのは非常に意識を変える面で重要なんですけれども、そういう場合に、例えば一般的社会啓発とあわせて、学校における教育というのはやはり教員養成の段階でそういうジェンダー教育が必要だと思うんです。そして同時に、ジェンダーに関する固定観念のない教育課程、それから教科書及び教材を開発していく、そういうこと等が非常に求められると思いますが、その点はどうお考えでしょうか。
  156. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 男女共同参画二〇〇〇年プランの中におきましても、この教育の面におきましての人材の育成等が重要な課題となっております。  具体的な施策といたしまして、学校教育全体を通じまして人権の尊重、男女の平等、相互協力・理解についての指導の充実、教科書や教材における配慮、それから教員の養成でございますとか研修面での充実等を一層推進するよう働きかけていく等々定めておるところでございまして、そのような活動を今後一層強めてまいりたいと考えております。
  157. 清水澄子

    ○清水澄子君 第十一条ですが、ここでは「政府は、男女共同参画社会形成促進に関する施策実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」となっております。そこで、この基本法が成立したら、この委員会におきまして随分いろいろな例えば税制上の問題、社会保障上の問題とか農村女性の問題とかアンペイドワークの問題とか雇用における問題とか、たくさんの課題が提起をされていましたし、審議をされました。そういうふうな問題をこの法律の決定の後やはりそれらを具体化するということに、この法律は直ちにこういう個別法の具体的な見直しに着手をされるというお考えでしょうか。
  158. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) この基本法が成立しましたならば、この各条文に書かれておりますことにつきましてその実施に努めてまいりたいと思っております。  第四条におきまして、「男女共同参画社会形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、」この「影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない。」というような規定がございますが、この規定等に従いまして、この委員会でもいろんな分野の問題が取り上げられましたけれども、そういう面につきましていろいろな点検をお願いしたいと思っておりますし、そういうものにつきまして必要なことがございましたならば、法制上、財政上の措置を講じていくということになろうかと考えております。
  159. 清水澄子

    ○清水澄子君 十八条ですけれども、「国は、社会における制度又は慣行男女共同参画社会形成に及ぼす影響に関する調査研究その他の男女共同参画社会形成促進に関する施策策定に必要な調査研究推進するように努めるものとする。」とあるわけでございます。これは、どういうふうに調査研究を進めようとされているのでしょうか。
  160. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 男女共同参画社会形成促進に関する施策を適切に策定するためには、社会における制度または慣行男女共同参画社会形成に及ぼす影響を初めといたしまして、我が国男女共同参画社会形成の状況に関する調査研究、それから国民意識についての調査研究、諸外国の状況の調査研究など、具体的な施策策定するに当たりましていろいろ必要な事項があろうかと思っております。  このためにこの規定を置きましたものでございますので、今後、できるだけいろいろな調査を進めまして、施策策定に遺漏のないように努めてまいりたいと考えております。
  161. 清水澄子

    ○清水澄子君 行政は調査はいろいろよくするんですけれども、その調査をした結果、それをやはりいろんな政策に具体的に反映させていくということが非常に必要だと思いますけれども、この条項は、そういう調査の成果をそれぞれの政策に適切に反映していくというふうに理解してよろしいですか。
  162. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) 調査をいたしたことにつきましては、できるだけ政策に反映させてまいりたいと考えております。
  163. 清水澄子

    ○清水澄子君 それでは、最後ですけれども、官房長官にお伺いします。  第十九条で、「国は、男女共同参画社会形成を国際的協調の下に促進するため、」ということになっているわけですけれども、これは、当然これまで国際的な、女性差別撤廃条約を初め、ILO百五十六号条約、そして北京行動綱領とか、そういうものを忠実に履行していくという、そういうことを私はここで確認させていただきたいんです。  さらに、発展途上国の女性たちのエンパワーメントのために、日本はやはりいろいろな支援をしていく必要があると思うわけです。そういうためにも、ODAの一定の割合を各国の、発展途上国の女性のエンパワーメントに充てるとか、そういう意味で日本国際社会においても男女平等の実現のために積極的なイニシアチブを発揮していただきたい、そういうことを希望いたしますが、官房長官の御決意を伺いたいと思います。
  164. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員御指摘のように、国内的な男女共同参画社会実現の問題と国際社会の問題が緊密に関連をし、連帯し、それによって男女共同参画社会形成促進をされるものと考えるわけでございまして、世界全体として前進をしていかなければならないと思うわけでございます。外国政府または国際機関との情報の交換、国連や発展途上国への協力など、男女共同参画社会形成につきまして、国際的な相互協力が円滑に推進されるようにさらに一層の努力をしてまいらなくてはならないと存じます。  また、御指摘の発展途上国の女性の支援あるいは連帯につきましては、さらに開発援助の積極的なあり方について十分な努力を傾けていかなくてはならないと銘記しておるところでございます。
  165. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) それでは、暫時休憩いたします。    午後六時二十九分休憩      ─────・─────    午後六時四十四分開会
  166. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ただいまから総務委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、日笠勝之さん及び真鍋賢二さんが委員辞任され、その補欠として但馬久美さん及び清水嘉与子さんが選任されました。     ─────────────
  167. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) この際、議案の撤回についてお諮りいたします。  男女共同参画基本法案について、発議者川橋幸子さん外二名から撤回の申し出がありました。  本案の撤回を許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 御異議ないと認めます。よって、男女共同参画基本法案は撤回を許可することに決定いたしました。     ─────────────
  169. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 男女共同参画社会基本法案を議題とし、質疑を行います。  別に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十五分散会