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1999-03-24 第145回国会 参議院 総務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月二十四日(水曜日)    午後二時二分開会     ─────────────    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      久野 恒一君     青木 幹雄君      木庭健太郎君     浜四津敏子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹村 泰子君     理 事                 海老原義彦君                 佐藤 泰三君                 江田 五月君                 月原 茂皓君     委 員                 石井 道子君                 岡  利定君                 森田 次夫君                 足立 良平君                 千葉 景子君                 松田 岩夫君                 日笠 勝之君                 阿部 幸代君                 吉川 春子君    事務局側        常任委員会専門        員        志村 昌俊君    参考人        東京大学大学院        法学政治学研究        科教授      宇賀 克也君        弁護士        日本弁護士連合        会情報公開法・        民訴法問題対策        本部委員     三宅  弘君        神奈川大学法学        部教授        前神奈川県立公        文書館館長    後藤  仁君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○行政機関の保有する情報公開に関する法律案  (第百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国  会衆議院送付) ○行政機関の保有する情報公開に関する法律の  施行に伴う関係法律整備等に関する法律案(  第百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会  衆議院送付)     ─────────────
  2. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ただいまから総務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  本日、木庭健太郎さん及び久野恒一さんが委員を辞任され、その補欠として浜四津敏子さん及び青木幹雄さんが選任されました。     ─────────────
  3. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 行政機関の保有する情報公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報公開に関する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して議題といたします。  本日は、両案の審査のため、東京大学大学院法学政治学研究科教授宇賀克也さん、弁護士日本弁護士連合会情報公開法民訴法問題対策本部委員三宅弘さん、神奈川大学法学部教授・前神奈川県立公文書館館長後藤仁さん、以上三名の参考人方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  行政機関の保有する情報公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報公開に関する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、参考人皆様から忌憚のない御意見をいただき、今後の委員会審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人皆様からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただくこととし、その順序は、宇賀参考人三宅参考人後藤参考人の順といたします。  御意見をお述べいただきました後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人皆様の御発言は座られたままで結構でございます。  それでは、まず宇賀参考人から御意見をお述べいただきます。宇賀参考人
  4. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 宇賀克也でございます。  現在、本委員会におきまして御審議中の情報公開法案につきまして、意見を述べる機会を与えていただきましたことに厚く御礼申し上げます。  私は、御審議中の法案を高く評価し、情報公開法の速やかな成立を祈念する立場から、主要な論点に絞って意見を述べさせていただきます。  私が本法案を高く評価しております第一点は、国民主権理念に基づく政府説明責務目的規定に明記していることでございます。行政改革委員会がこの方針公表する前の情報公開条例には、説明責務目的として規定した情報公開条例は存在しなかったと思われます。しかし、行政改革委員会情報公開法要綱案、さらには政府情報公開法案公表されました後は、情報公開条例制定改正に際しまして、説明責務を明記することが通例になっております。この情報公開法成立いたしますと、行政を行う者が国民、住民に対して負うアカウンタビリティーについての認識が一層社会に浸透することになるのではないかと存じます。  第二に、外国情報公開法我が国情報公開条例の中には、請求権者に何らかの限定を付しているものが少なくありませんが、本法案開示請求権を何人にも付与しております。国民主権理念に基づくものである以上、外国人開示請求権を付与する必要はないことになりますが、開示請求権国民に限定して外国人を排除する積極的意義に乏しく、他方、我が国が広く世界に情報の窓を開くことに政策的意義が認められることから、外国に居住する外国人にまで請求権者を広げたもので、この点においても画期的な法律であると言えます。  第三に、本法案は、対象となる行政機関を非常に広くとっております。都道府県におきましては公安委員会情報公開条例実施機関に含めていないのでございますが、本法案国家公安委員会対象としております。都道府県も、本法案が可決されましたならば、公安委員会対象に含めるべく条例改正を行っていくことと予想されます。また、本法案は、内閣から独立した地位にある会計検査院も例外とすることなく対象に含めております。  第四に、対象文書を広くとっていることが挙げられます。情報公開条例におきましては、決裁等事案処理手続を終了したものを対象文書要件とするものが一般的でありました。しかし、本法案は、事案処理手続を終了したものでなくても、組織共用文書であれば対象となるとしております。そもそも、事案処理手続を要しない行政文書の中にもアカウンタビリティーという観点から開示が望ましいものもございますし、また、事案処理手続を要する場合でありましても、行政審議検討過程への国民参加という観点からすれば、事案処理手続終了前の行政文書開示することが必要な場合が生じ得ると考えられます。事案処理手続終了前の行政文書情報公開法対象とすることによって審議検討に不当な支障が生ずる場合は、不開示情報の適用の問題として処理すれば足り、事案処理手続終了前の行政文書情報公開法対象から外す必要はないと考えます。本法案組織共用文書を広く対象としたため、東京都のように条例改正して、本法案と同様に組織共用文書全般対象文書を広げる流れが一般化しつつあります。  本法案は、電磁的記録例外なく対象としているという点においても特筆されるべきと考えます。行政改革委員会がこの方針を明らかにする前の情報公開条例の中で、電子情報対象としているものは極めてまれでした。言うまでもなく、行政情報化が急速に進展していく中で、電磁的記録対象外とすることは情報公開制度意義を大きく損なうおそれがあります。幸い、本法案趣旨に即し、電磁的記録例外なく対象とする情報公開条例が登場するようになりました。本法案が可決されましたならば、この動きに拍車をかけることになると確信しております。  さらに、情報公開法施行前に行政機関職員が職務上作成または取得した文書でありましても、行政機関職員が現に組織共用文書として保有している以上、例外なく対象文書としているという点も高く評価されます。  第五に、不開示情報規定でございますが、情報公開条例の中には、審議会等合議制機関が不開示の議決をした場合、文書内容性質を問わずに不開示とする規定を設けているものが少なくありません。本法案は、かかる不開示規定を設けることは、合議制機関を実質的に情報公開法対象機関から除外する効果を持つと考えられるため、このような規定を設けておりません。その影響もあり、東京都等、合議制機関についての特別の不開示規定を持つ情報公開条例改正され、この規定を廃止する動きが出ております。  また、本法案は、地方公共団体において一般意思形成過程情報と言われている不開示規定につきましても、率直な意見の交換や意思決定中立性が単に損なわれるおそれがあるだけでは足りず、それが不当に損なわれるおそれがあることを要件とする等、審議検討過程であるということのみで過度に広く情報が不開示となることを避けるための配慮をしております。  なお、不開示規定が抽象的であるという見方があるかもしれませんが、情報公開法に基づく開示請求行政手続法に基づく申請に該当いたしますので、行政手続法五条により、審査基準作成して公にする義務が行政庁に課されることになります。この審査基準とは、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準でございます。行政手続法五条は、この審査基準をできる限り具体的に作成し、行政支障のない限り公にしておかなければならないと定めております。このように、情報公開法行政手続法の存在を前提としているわけでございます。  また、アメリカ情報公開法にあるイクスクルージョンの規定は、実務上、記録があってもないと答えてよいものとして運用されておりますが、本法案がかかる規定を設けなかったことも妥当であったと考えます。  第六に、本法案は、従前情報公開条例と比較して、第三者保護の点ですぐれているものと評価しております。第三者に関する情報記録されている文書開示請求がなされた場合、その情報性質内容についての行政機関の長の判断に誤りなきを期するという観点からも、当該第三者適正手続の保障を与えるという観点からも、開示決定をする前に当該第三者意見聴取機会を付与することが重要であります。また、開示決定をした場合、直ちに開示をしてしまえば当該開示決定を争う機会が失われてしまいますので、開示決定の日と開示を実施する日との間に相当期間を置くことによって開示決定を争う機会を保障しなければなりません。本法案は、この点に適切な配慮をしております。  第七に、本法案においては、情報公開審査会の調査、審議手続についてもきめ細かい配慮がなされているものと評価しております。すなわち、情報公開審査会における不服申立人等口頭意見陳述権情報公開審査会提出資料閲覧請求権を明示的に保障するとともに、情報公開審査会開示決定等に係る行政文書諮問庁から提示させて審理するインカメラ審理権限を明記し、さらに、諮問庁は、情報公開審査会から開示決定等に係る行政文書の提示の求めがあった場合、これを拒否できないことも明確にしております。  第八に、文書管理については、従前、各省庁が訓令形式定めており不統一が見られましたが、本法案は、文書の分類、作成保存及び廃棄に関する基準等について政令定め行政機関の長は、この政令定めるところにより行政文書管理に関する定めを設けるとともに、これを一般閲覧に供しなければならないとしております。これにより、文書管理透明性が向上するとともに、不合理な不統一状態はなくなり、組織的、体系的文書管理に向けて大きく前進することになります。  本法案は、外国情報公開法地方公共団体情報公開条例等を大いに参考にしつつ、かつ我が国の実情も十分に踏まえて作成されたものと認められ、情報公開法国際的相場に照らしても決して見劣りするものではなく、また地方公共団体情報公開条例制定既存情報公開条例の充実に向けての見直し動きを加速させるものであると評価いたします。  また、地方公共団体情報公開条例運用のもとで、著作権法との調整という困難な問題が生じていますが、情報公開法施行に伴う関係法律整備に関する法律案におきましては、情報公開法のみならず、情報公開条例を含めて、情報公開制度の円滑な運用の確保という新しい視点を踏まえた著作権法改正を行うことになっており、関係者の御努力に敬意を表したいと思います。  本法案が昨年三月二十七日に国会に上程されましてから、三回の継続審査を繰り返し、約一年が経過いたしました。都道府県におきましては、情報公開法成立を見込んで公安委員会実施機関に加える予定であったところも、情報公開法成立のめどが立たない中で、情報公開条例改正に際しても公安委員会実施機関に加えることを見送る等の動きが出ております。私がさまざまな機会情報公開について話をした方の大半は、一日も早く情報公開法成立し、それが施行されることを切望しております。また、特殊法人情報公開に関して、情報公開法の公布後二年を目途として法制上の措置を講ずることになっておりますが、国民の関心が極めて高い特殊法人情報公開制度検討を可及的速やかに開始するためにも、御審議中の本法案早期可決を期待するものであります。  以上でございます。  御清聴ありがとうございました。
  5. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ありがとうございました。  次に、三宅参考人にお願いをいたします。
  6. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 三宅でございます。  情報公開法案衆議院で全会派共同修正の上可決された現状において、日弁連立場から私の意見を述べさせていただきます。  日弁連は、一九九四年に情報公開法大綱を発表し、九七年には情報公開法試案を発表しました。日弁連の求める情報公開制度については、土生参考人衆議院内閣委員会で述べたとおりです。これが現在審議中の法案にすべて盛り込まれたわけではありませんが、ともかくも早期制定を求めて衆議院で全会派共同修正案が可決されたことに対し、敬意を表するものであります。  しかし、なお不十分な点については、良識の府である参議院において再修正並びに法案附則三項に基づく制度見直しのための充実した附帯決議を求めて、次のとおり意見を述べたいと存じます。  第一は、情報公開原則を踏まえて不開示情報を厳しく限定した運用がなされるべき点です。この点について、衆議院では、「開示・不開示判断をする際の審査基準の策定及び公表並びに不開示決定をする際の理由明記等措置を適切に講ずること。」との附帯決議がなされました。しかし、この附帯決議は、行政手続法が要請する当然のことを包括的に決議したに過ぎません。  さらに、以下述べる四点が個別具体的に附帯決議に盛り込まれるべきです。  その第一点は、慣行として公にされる公務員の氏名が不当に不開示とされることのないように運用されることです。また、人の生命、健康、生活または財産の保護公益上の理由による個人識別情報開示規定、さらに個人識別部分以外の情報開示を義務づける部分開示規定が積極的に活用されることです。  情報公開条例では、プライバシー保護の名目でその保護とはかかわりのない個人識別情報が過度に非公開とされがちでしたが、情報公開法においてはそのような弊害は避けるべきだからです。  その第二点は、非公開条件つき任意提供情報を不開示とする規定誤用、乱用されないようにすべき点です。政府答弁には、政府情報収集法的権限があってもこれを行使せずに、意図的に行政機関が要請して任意提供された場合にも任意提供情報として不開示にできるかのようなものがあります。しかし、こうした運用情報公開原則に反する、不当な拡大解釈と言わなければなりません。  改正された東京情報公開条例における同種の規定については、当該情報提出を求める権限があるにもかかわらず、行政指導により情報提出させた場合には任意提供情報に含まれないこととする旨の解釈をすることが提言されています。政府解釈は、これに劣る解釈です。  その三点は、防衛外交情報及び捜査秩序維持情報について、「行政機関の長が認めることにつき相当理由がある」との不開示規定が、不服審査会裁判所の実質的な判断を拘束しないように運用されることです。  情報公開条例では、防衛庁の言い分に従って安易に非公開とした実例があります。米軍相模補給廠新築倉庫についての建築計画通知書添付図面公開請求について、米軍非公開を求めているという防衛庁説明に従って相模原市長非公開とし、審査会処分を維持した事例です。ところが、アメリカ情報自由法に基づく公開請求をしたところ、米軍を通じてこれら情報はすべて公開されました。この例に照らすと、防衛外交情報及び捜査秩序維持情報については、秘密指定されているという形式的な行政機関の長の第一次的な判断を尊重して、実質的判断をせずに安易に「行政機関の長が認めることにつき相当理由がある」と認定されるのではないかと懸念されるからです。  その第四点は、存否応答拒否処分に当たっては、当該行政文書性質に照らし、できる限り誤用、乱用されないように運用することとし、当該拒否処分についての事前及び事後審理を十分に尽くし、その運用結果が総務庁長官報告によって公表されることです。情報公開条例運用では、既に誤用とも言うべき存否応答拒否事例が見られます。東京都の情報公開条例改正を提言した懇談会では、この規定には誤用、乱用も懸念されることから、事前審査会事務局等情報公開担当部局に照会する制度と、事後運営審議会報告する制度を設けることが提言されました。事前照会は、アメリカ情報自由法運用に倣うものですが、情報公開法においても同様の運用がなされるべきです。また、情報公開法案三十九条に基づく施行状況公表において、存否応答拒否処分運用状況を個別具体的に公表することにより、国民監視にゆだねるべきです。  アメリカ情報自由法運用においては、私の知る限り、存否応答拒否裁判上の争いは防衛外交プライバシー犯罪捜査に限定されていることからも、存否応答拒否処分運用当該文書性質に照らし制限的なものとし、さらに今述べた事前事後のチェックをすべきです。この趣旨附帯決議に盛り込むことを切に要望いたします。  以上、不開示情報について四点の附帯決議を要望しましたが、同時に、この四点は、法案附則三項による施行後四年の見直しの際にも特に検討されるべき事項であると考えます。  次に、不開示情報以外の要望を第二ないし第六として述べます。  第二は、開示情報に係る前払い納付額は一請求書提出につき一件とし、開示実施の際の閲覧手数料は、関連文書を一件とし、一関連文書ごと上限を設け、コピー代はできる限り安くて、本当に利用しやすい金額となることを要望します。手数料審議は、法案十六条一項が「政令定める額」としているため、国民からはいまだ明確なものとは言えません。  このままでは、アメリカとの外交交渉文書については、アメリカ情報自由法を利用した方が安くつきます。アメリカ情報自由法では、私どもが郵便で開示請求をするに当たり、前払い金は要りません。郵送で受け取る文書コピー代は一枚十セント程度ですし、日弁連などの公益団体あるいは大学などの学術研究団体として請求すれば公益目的による減免が受けられるからです。政府答弁には、カナダでは五カナダ・ドル、日本円で四百五十円ほどの開示請求手数料の例が紹介されていますが、都合のいい例だけが紹介されているように思います。  ちなみに、現行の個人情報保護法十三条による開示請求手数料は、一個人情報ファイル一回の請求につき二百三十円とされていますから、情報公開法においても、開示請求手数料をどうしても取るというのなら、一請求書提出につき一件二百三十円程度にとどめるべきです。  また、情報公開法閲覧手数料に同調して、地方自治体の条例でも閲覧手数料徴収動きがあり、悪い影響が出ていると言わざるを得ません。しかし、既に衆議院審議でも、一決裁文書ごと手数料を徴収するとか、そういったような制度にはしないという政府答弁があります。日弁連閲覧手数料は取るべきではないと考えていますが、この答弁前提としますと、閲覧手数料を認めるとしても、関連文書をまとめて一件とし、一関連文書ごと上限を設けるべきであると考えます。そして、評判の悪い手数料規定改正した東京情報公開条例十七条及び別表、それよりもましな手数料規定にしていただきたいと存じます。  第三は、行政文書の適切な管理の具体的な中身です。新聞報道によれば、文書保存期間は、三十年以上、十年以上、五年以上、三年以上、一年以上それぞれ保存するというものと、一年未満廃棄できるものの六段階に分類しているとのことです。ただし、何を一年未満文書とするかについては明確な基準がないということです。しかし、一年未満保存期間文書にも重要なものがないとは断言できません。文書授受簿において授受廃棄の記載を両方義務づけるなどの方法により、適切な管理がなされるようにすべきです。  また、公にされるファイル管理簿については、秘密保護理由にこれに記載されない文書などが生じないように、適切な管理がなされることを盛り込んだ政令であることを要望します。  第四は、刑事訴訟法五十三条の二の新設により刑事訴訟記録情報公開法が適用されないために、刑事被害者による不起訴記録開示請求権が認められないことや、刑事確定訴訟記録閲覧請求権確定後三年経過記録について原則開示となる扱いを改善できない点です。具体的には、刑事被害者自身の不起訴記録開示請求権を認める被害者救済制度法制化と、刑事確定訴訟記録法改正が必要です。  交通事犯などで不起訴処分とされると、事故態様を客観的に記録した実況見分調書についても被害者とその遺族に固有の開示請求権が認められないことは、被害者保護観点から極めて不十分です。また、刑事確定訴訟記録法に基づく閲覧請求権は、郵送による開示請求を認めていません。さらに、三年経過記録を一律除外する規定は、情報公開法開示請求対象にした上で内容によって部分開示とも全部不開示ともするものと比べると、およそ原則開示基本的枠組み定めているとは言えません。  第五は、本法における行政文書請求する権利国民の知る権利に基づくものであることを確認し、国民による行政監視参加に資するよう運用されることを附帯決議として明記すべきことです。少なくとも、附帯決議前文としてなら、改正された東京情報公開条例前文のように、国民の知る権利情報公開制度化に大きな役割を果たしてきたことを十分に認識し、国民が知ろうとする行政機関の保有する情報を得られるよう決議するなどという文言を入れることは、これまでの議論を承っても十分可能なのではないでしょうか。  最後に、第六として、那覇地方裁判所裁判管轄を認めることにつき、歴史に残る特別の御高配を賜らんことをお願いします。  そもそも、行政改革委員会行政情報公開部会では、司法救済について、何人にも請求権を与えると新しい訴訟制度をつくっていく方がよいのではないかという意見もありました。この意見に従い、原告の居住地裁判所管轄情報公開訴訟の特色と意義から独自に定めることができたはずなのに、あえて抗告訴訟によるとしただけではなかったでしょうか。情報公開制度にふさわしい訴訟手続を新たに考えないで、既存抗告訴訟制度に基づいたにすぎないものを、あくまでも被告所在地地方裁判所管轄権原則とこだわることは、国民の知る権利裁判を受ける権利よりも訴訟提起を嫌がる行政官僚の利便を優先させた本末転倒の議論と言うべきです。  四年後の見直しにおいては、情報公開法において原告の居住地裁判所で訴訟提起することができる規定を設けるか、行政事件訴訟法十二条一項を改正するか、いずれかの方法を必ずとっていただきたいと存じます。  ただし、早期制定の要望も踏まえ、参議院において那覇地方裁判所裁判管轄を認める修正案が出されたことについては、これに賛成し、最低限この点は修正をしていただきたいと存じます。  この修正提案に接し、私は、太平洋戦争末期の沖縄戦において、大田實海軍少将が自決前に海軍次官にあてた電報で、「沖縄県民かく戦えり、県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを」と結んであったことを思い起こしました。私自身は、情報公開訴訟の代理人としてこの十年間に百回近く沖縄に参りました。めぐった戦跡の中でも、那覇南方の小禄に立てこもった海軍部隊の地下五十メートルにも及ぶ海軍壕は、いまだに五千人の犠牲者の霊気を感じさせるものでした。大田少将の遺言となる電報はそこで打たれたものでした。  その後、一九六五年八月の沖縄訪問の際、沖縄の祖国復帰が実現しない限り、戦後は終わっていないとおっしゃったのは当時の佐藤内閣総理大臣ではなかったでしょうか。しかし、祖国復帰に当たり、沖縄県民が高等裁判所の設置を求めたにもかかわらず、裁判所規則に基づく高裁支部の設置にとどめたのでした。この点では、沖縄の戦後は終わっていません。  沖縄の戦後の終結をさらに一歩進め、二十一世紀を迎えるためにも、小渕内閣総理大臣、野中沖縄開発庁長官、太田総務庁長官、参議院、衆議院のすべての議員の皆様の歴史に残る特別の御高配を賜らんことを切にお願いするものです。  既に施行されている韓国の情報公開法においては、宇賀克也教授らと同じ四十代の学者も加わった不服審査会が不開示処分審査し、成果を上げていると聞いています。日本でも、不服審査会委員の人選と、それを支える強力な事務局体制の確立が大切です。この点も附帯決議には盛り込んでいただきたいと存じます。  日本の情報公開法も早期に制定され、遅くともサッカーワールドカップ共催の前年の二〇〇一年には日韓で情報公開の相互請求ができ、情報交流の中から異質の理解と寛容の精神を培う社会がさらに推進されることを希望して、私の意見とさせていただきます。
  7. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) ありがとうございました。  次に、後藤参考人にお願いいたします。
  8. 後藤仁

    参考人後藤仁君) 後藤でございます。  国会におきまして、特に現在はこの参議院におきまして国民を代表する議員の皆様によりまして情報公開法案審議が進んでいることに私としては大変な期待を持っておりまして、敬意をあらわすものでございます。その審議参考にということでこうして意見を述べる機会を与えられ、大変光栄に存じます。  本日は、文書管理ということに焦点を合わせまして私の意見を申し上げたいと思います。なお、せっかく与えられた機会でございますので、多少我が田に水を引きまして、公文書館の仕組みについて触れさせていただきますが、お許しをいただければと思います。  さて、情報公開をめぐります法律、そして法の制度ということと、もう一つ行政機関におきます文書管理の実務のシステムということとは車の両輪に位置するものと思います。もしこの両輪がうまくかみ合いませんと、この制度趣旨は生きないということになります。情報公開法成立すればいろんな効果と影響が予想されるわけですが、その最大のものの一つは、恐らくは政治の言葉と行政の仕事に対する市民、国民の不信が解消し、信頼が回復するということではないかと思われます。  市民が行政当局へ参りまして、こういう文書を見たい、こういう情報を知りたいということで閲覧請求をいたしますれば、行政機関の方はその開示請求にこたえまして、法に基づく義務としてこの開示を自分にとって都合の悪いものであってもしなければいけないというのが情報公開法律制度でございますが、そういうことになりますと市民の方は都合の悪い情報も出るということで信頼回復のきっかけになるわけです。  ところが、そうやって請求に行きまして実際に請求権を行使する段階で、いや実はその文書はちょっと見当たりません、ございません、どうもなくしました、あるいは捨ててしまいましたという返事がもし続出するといたしますれば、これはかえって不信は増すわけでありまして、制度趣旨とは反し逆の効果が生まれてしまう。どうしても開示請求にこたえるためには、その場になって急にではなくて常日ごろから文書管理についてきちんとした仕組みをつくり上げ、機能させておかなければいけない、さもなければ制度は生きない、こういう関係になると思います。ということは、裏側から申しますと、日ごろから文書管理についてきちんとした制度をつくっておけば、いざ開示請求があったときに慌てないできちんと開示請求にこたえられるということでもあります。  もともと文書というのは自分たちの仕事の、業務の記録でございますから、その業務の記録についてきちんと記録をとって、それを保存し、開示請求にこたえられるように整理をしておくということになりますと、それは結局仕事の進め方についても影響を与えるわけであります。説明がつく仕事をやっていく、市民とか国民に対して説明がつかない仕事については廃止したりあるいは改革を加えたりして公務の改革を進める、そういうきっかけにも、実は情報公開法律の方が実務に影響を与えるというふうになると思います。  そうしますと、市民は実際に開示請求権を行使しなくても、開示請求権というものを手中に確保していることによって行政の仕事の進め方について牽制を加える、あるいは制御を加える、コントロールをするということが可能になるわけで、これがまた積み重なってきますと、行政、政治、市民の間の信頼関係の構築に役立ってくる。こういうことで、うまく循環をしますと文書管理の仕組みと情報公開の法制度というものが非常に好循環でかみ合っていくわけでありますが、そのためにはやはりそれなりの努力をしなければいけない。文書管理の仕組みをきちんとこの段階で整えて、情報公開法の円滑な運営を助けていかなければいけないということが現段階の仕事ではないかと思われます。  その文書管理の仕組みについて、三つほどポイントがあると思います。  第一は、あらゆる情報の媒体、メディア、それから情報の表現形態を通じまして、すべての文書について統合したマネジメントのシステム、管理のシステムを考えなければいけないということだと思います。  特に、これから電子政府ということで、電子情報、デジタルメディアに入りました情報行政機関の仕事におきましても公務におきまして非常に大きな役割を果たすことになると思います。今度の法律案はその点で非常に配慮の行き届いた法律になっていると思いますが、この実務の仕組みとしても電子情報を含めたすべての情報メディアについて統合されたマネジメントシステムを考える、これが第一のポイントだろうと思います。  第二は、全文書の全ライフサイクルということを考えた管理の仕組みが要るということでございます。  文書も人間と同じように生涯というのがあるのでありまして、生まれまして、あるいは取得されまして仕事の過程でいろいろ手を加えられ、あるいは保存され、最後には使命を終えて保存期間が満了し、かなりのものは廃棄されるわけでございます。この生まれてからの文書の一生にわたって、全生涯にわたってやはり統合したマネジメントの仕組みを考える必要があるということでございます。  第三に、あえて本日申し上げておきたいのは、現用を終えた非現用の文書につきましても、現用と一貫した管理の仕組みをぜひ考えていただきたいということでございます。  といいますのは、その公務におきまして任務を終えた文書といいましても、それを全部すぐに捨てられると歴史が中断してしまいます。後世の世代に対する説明責任というものが果たせなくなるわけでありまして、私たちは失敗を犯すと思いますが、もし犯した失敗について誠実に記録を残しておけば、後世の人たちは少なくとも私たちと同じ失敗を犯す可能性が少なくなるわけです。もし私たちがそれを隠してしまいますと、後世の人が同じ失敗、過ちを犯す可能性が高くなります。そういうことで、自分たちの仕事の記録については、これを現在の世代の市民、国民に対して開示するだけではなくて、歴史的に重要なもの、自分たちの仕事として重要なものは後世に引き継いでいく必要がある。そうしますと、保存期間を過ぎた文書をすぐ捨ててしまわないで、あるものは後世に対する資料として残していかなくてはいけない。  そのためにあるのが実は公文書館の制度でございます。国の方にも国立公文書館という制度が現在ございますが、これにつきまして何もかも情報公開法で一気に盛り込んでという欲張りなことを私は申し上げませんけれども、情報公開法というものが成立した曉には、この情報公開法というのは現在使っております文書についての法律になると思われますので、現用期間を過ぎて歴史のものになっていく非現用の文書についてはぜひ充実した公文書制度を確立できますように、現在、公文書館の法律とそれから国立公文書館の設置法についてもお考えがあるようですが、それらのことでぜひいい制度をつくっていただければと思います。  この歴史的な文書を残すということが、実は現用の公文書をきちんと管理する上でも大きな刺激になるといいますか、材料になるわけです。  一般に、文書については三つの基準を区別して、かつ組み合わせて適用していかなければいけないと思います。  その第一は、文書保存基準といいますか、保存期限基準であります。  仕事で使っている文書を、あるものは一年間、あるものは三年間、あるものは五年間、あるものは十年間、あるものは長期、三十年間というふうに一年、三年、五年、十年、三十年と期限を切りまして、その期間はきちんと保存する。しかし、その期限が切れたところでは文書作成した当局から文書管理権を一応取り上げまして、その後どういう文書を歴史的な扱いにするか公文書制度検討するということになるわけですが、そういう文書保存基準というものをひとつはっきりさせる必要がある。  ただし、この保存基準と全く同じでないのが開示基準でありまして、開示、不開示という基準。一年の文書、短い文書、十年の文書、長い文書、三十年の文書、その保存期間の長短にかかわりなく、あるものは開示請求権に応じて開示しなければいけませんし、開示原則ですが、しかしあるものについては原則不適用で不開示ということもあるわけです。開示基準というのは、直接に保存基準とイコールではありません。この区別をしていただくということが大事だと思います。  次は、もう一つ基準がありまして、これは現用を終わったところで、保存期間が満了になったところで、これを歴史的に残すかそれとも廃棄するかという選別と廃棄基準です。これも、一年だから全部捨てていいということにはなりません。一般に、長期保存文書ほど歴史的にも価値あるものが多いと思いますが、一年保存のものでも残すべきは残すべきなのです。  そのことを考えて、文書保存基準開示基準、そして選別基準というものを区別し、かつ組み合わせてぜひいい文書管理の仕組みというものを情報公開法機会に国においても整備されることを私としては心から期待しているところでございます。それで、僣越ではございますが、あえてきょうはその点に絞って意見を申し上げたところでございます。  どうもありがとうございます。
  9. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 大変ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 海老原義彦

    海老原義彦君 宇賀先生、三宅先生、後藤先生、お忙しい中をおいでいただいて、ありがとうございました。  十五分という短い時間なのでなかなか思うところをすべてお述べいただけなかったと思うんですが、これから質疑の中で今度はゆっくりとお話しいただきたいと思います。  初めに宇賀先生に伺いますけれども、宇賀先生は、アメリカ情報自由法とかそういった諸外国のものについてお詳しいと思うんですが、例えばアメリカ情報自由法と比較して、いわば今回の法案のできはどうでございましょうか。ちょっと気楽にお答えいただきたいと思います。
  11. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 私は、アメリカ情報自由法の研究を長年やってまいりましたが、今回の情報公開法案アメリカ情報自由法とを比較いたしまして、私は全体として見て、この情報公開法案アメリカ情報自由法、世界で最も進んでいると言われ、また最もよく使われている、年に六十万件ぐらい請求が出るわけですが、その情報自由法と比べても決して見劣りしないものであるというふうに考えております。  そして、アメリカ情報自由法と比べまして、日本の情報公開法案の一番大きな特色は何かといいますと、情報公開審査会であると思います。アメリカの場合にも不服申し立てはできます。日本でいうと審査請求ということになるんですが、これは上級庁、上級の職員に対する審査請求でありまして、第三者性を持った機関が審査をするわけではございません。それに対しまして情報公開法案では、不服申し立てがあった場合に、独立の第三者性を持ったそうした中立的な審査会に諮問するという仕組みになっております。このような仕組みはアメリカにはございません。
  12. 海老原義彦

    海老原義彦君 そのことについてもう少し詳しく伺いたいんですが、日本の場合、第三者機関というのは割合行政の内部にたくさんある。どちらかというと、日本はそういう第三者機関的な審査というものについて諸外国よりも少し進んでおるのかなと私は思っておるんですけれども、そういう流れの一環として今回の情報公開審査会も非常にすぐれたものができた、そういうことでございましょうか。
  13. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 我が国の場合、地方公共団体情報公開条例におきましても、こうした情報公開審査会という独立の審査会を設けるのが一般的でありました。このような独立の審査会に諮問をして、そして答申を受けて決定するという仕組みというのは、実はこれは諸外国と比べますと我が国独特ということが言えます。  外国にもこうした似た制度はないわけではありません。例えば、フランスですとCADAという独立性を持った審査会がありますが、この場合には直接CADAの方に苦情、不服を申し立てるという仕組みです。それに対しまして我が国の場合は、まず行政庁に対して不服申し立てをし、行政庁の方からその諮問があり、それに対して答申をするという仕組みで、その点がフランスのCADAとも違っておりますし、あるいはカナダには情報コミッショナーという制度がありますけれども、こことも違っておりまして、その意味では非常にユニークな制度であろうというふうに思います。
  14. 海老原義彦

    海老原義彦君 話が進んでいきましたので、さらにお尋ねしたいのでございますが、先生のお話の中でもインカメラについて触れておられました。  こういった行政不服審査の中でインカメラを導入したというのは日本でももちろん初めてでございますけれども、諸外国では行政不服審査会的なそういう第三者機関的なものが少ないからもちろん諸外国にも例がないと思いますが、諸外国では裁判で、民事訴訟で導入しているところもある。だけれども、我が国の場合、これを民事訴訟で導入することはできないのでしょうか。ここら辺はいかがでございましょうか。
  15. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 不開示決定に対して取り消し訴訟を提起しまして、そのときに裁判所インカメラ審理ができるかどうかという問題でございますが、これにつきましては、アメリカと異なりまして、我が国の場合には憲法八十二条で裁判公開原則というのが明記されているわけでございます。  この憲法八十二条にもかかわらず、こうした情報公開の訴訟でインカメラ審理ができるかどうかという点については学説が分かれておりまして、できるという学説もないわけではありませんが、文理に照らして到底無理であるという解釈もかなりあるわけでございます。  そういう中で、これまで情報公開条例運用のもとにおいて、裁判所インカメラ審理は行わないで推認という方法でやってきたということでございます。
  16. 海老原義彦

    海老原義彦君 裁判の実務の方々に伺いますと、確かに民訴法でインカメラというのは何か革命的なことであって、とても導入できないだろうなとおっしゃっております。しかし、情報公開審理の場合には、インカメラをとらなければ、こういうものであるから、これを一般公開したならば例えば国の安全にかかわるとか、そういった説明を単に抽象的に聞いてもこれは裁判官も判断できない。  ですから、インカメラを導入できるこの審査会の価値というのがますます高くなる、こういうことなのかと思いますが、いかがでございましょうか。
  17. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) おっしゃるとおりでございます。  日本の場合、裁判所インカメラ審理をすることについて憲法上問題がございますので、それだけに、御指摘のとおり情報公開審査会インカメラ審理権限を持っているということが私は非常に重要なことだと思います。
  18. 海老原義彦

    海老原義彦君 そのほかにも審査会の特徴はいろいろあると思うのでございますが、例えばボーン・インデックスだとかああいったのもなかなか有効な武器として、迅速、公正な判断をするためには極めて有効な武器だろうと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  19. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) おっしゃるとおりでございます。  実はアメリカにおきましても、確かにアメリカ裁判所インカメラ審理権限を認められておりますが、実際にはインカメラ審理をしているケースというのは非常に例外的でございます。ほとんどのケースはボーン・インデックスで処理されているということでございます。
  20. 海老原義彦

    海老原義彦君 お話を伺っていると、やはり今回の不服審査会は非常に立派なシステムをお考えいただいたんだなと。先生も行政改革委員会の関係専門部会、行政情報公開部会の部会長要請による出席者ということで御参画いただいているわけでございますね。これは非常にいい基礎をつくっていただいて、それに基づいて忠実につくった法律でございますから、大変よくできておるんだなという思いを新たにするわけでございます。  さて、この法案の中に知る権利という文言を明記すべきだという御意見と明記すべきでないという御意見と、いろいろ議論があるようでございますが、先生はこの問題についてはどういうふうにお考えになりますか。
  21. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 我が国におきまして、情報公開法制に関する議論の中で、知る権利という言葉は情報公開に対する国民の関心を高め、その制度化を推進する上で重要な役割を果たしてきたということは私も高く評価しておりますし、またこの情報公開法案に知る権利という言葉が用いられていないことが知る権利を否定したものではないというふうに考えております。ただし、そのことと知る権利という言葉をこの法案に明記するかどうかというのは別の問題であるというふうに考えております。  つまり、この知る権利という概念につきましては、憲法上さまざまな学説があるわけでございます。この問題について非常に専門的に研究され、そして著書まであらわされている学者の中にも、請求権的な意味での知る権利というものは認められないという否定説もございます。また、認められるという説の中にも、これが具体的権利なのか抽象的権利なのかという点については見解が分かれておりますし、またその根拠につきましても、これが憲法二十一条から出てくるものなのか、国民主権、参政権から出てくるものなのか、あるいは幸福追求権から出てくるものなのか等々、さまざまな学説がございます。  また、実はこの知る権利の問題について、情報公開問題の草分けとして長い間情報公開問題を研究されている知る権利論の提唱者の方の中にも、例えばここで言う知る権利の中にはいわゆる第三者情報と申しまして、個人や法人から政府が取得して保有している文書、これは知る権利対象にならないんだという説もあるわけです。その説に立ちますと、目的規定に知る権利を明記しましても、実はこの情報公開法案でいきますと、五条の一号、二号、個人情報、法人情報の部分は実は除かないといけないということになるわけです。  さらに、知る権利という言葉の中に、自己情報開示請求権というものを含めて解する説もありますが、そうしますと、この法案のもとで知る権利という言葉を使った場合に、では本人開示はできるのかということになりますが、この法案は本人開示の問題は別途個人情報保護制度の問題として処理するということになっております。  そのように、この概念の内包、外延についても見解が分かれておりますので、憲法学説上見解が分かれている場合には、一方の説に立って書いた場合に、他方の学説から見ますと、例えば否定説から見ますと、本来憲法改正という手続にのっとってやるべきことを通常の法律改正手続でやってしまった、解釈改憲だということにもなりかねませんので、私は非常にこの言葉が果たしてきた役割については高く評価しておりますが、現段階で明記するということについてはやはり慎重に考えざるを得ないと思っております。
  22. 海老原義彦

    海老原義彦君 非常にわかりやすい説明をありがとうございました。  確かに、解釈改憲というお言葉が今ございましたけれども、そう言われてみると非常によくわかるわけでございまして、そういう流れの中で今知る権利という言葉は入れられないんだなということを十分理解いたします。  さて次に、手数料の問題でございますけれども、手数料については情報開示請求権と裏腹のものとして、できるだけ開示しやすく安く決めた方がよろしいという考え方と、それから情報開示するということは、そのための専門の職員を置かねばならぬほどいろいろと手間もかかることである、また、もちろん機械も紙も使うということで、これは実費を徴収すべきだ、そうでないと国民の税金が一部の請求者に用いられるということになってしまうという意見と二つあるわけでございます。またその中間的な意見として、公益のための請求であるならばというような話もある。この公益のためというのは非常に技術的に難しい、何が公益なのかという難しさがあってちょっとやりにくいんだろうなと私は思うんです。  そういういろいろな考え方があるんですが、先生はこの問題についてはどのようにお考えになりますか。
  23. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 私も、この情報公開制度というのは利用されることが重要でありますので、利用しやすい金額であるべきだというふうに考えております。そのために、例えば複写の費用をできるだけ軽減するとかあるいは文書一件の考え方を工夫するとか、いろいろな努力が必要だろうと思っております。  ただ、手数料を無料にするということについて、果たして国民の合意が得られるだろうかといいますと、私はそれはなかなか難しいかなという気がしております。  この点について、国民全体の世論調査というのは行われていないと思いますが、実は東京都が昨年条例改正をするに際しまして、情報公開に関する世論調査を行いました。そのときに、手数料問題についてどう考えるかということについて一般都民の意見を聞いたことがあります。その結果によりますと、一定の経費がかかるのであるから閲覧する人が手数料を負担すべきであるという御意見が六八・一%でございました。他方、一定の経費がかかるとしても手数料を廃止して税金で賄うべきであるという御意見は二六%であったわけです。  そのほか、東京都ではモニター会議といいまして、東京都のモニターの方にもこの点についての御意見を伺ったんですが、その御意見の中では、手数料を無料にすると営業上の利益を目的とした請求に関する費用も税金で負担することになってしまうのではないかとか、情報を知るのにお金がかかるのは常識で請求者が負担すべきだといった御意見、あるいは手数料を無料にすると全く必要のない情報が多量に請求されるから反対であるといった御意見が出ました。他方、都政の情報は都民のものだから手数料を取る余地はないという御意見もございまして、非常に分かれております。  さらにもう一つは、意見を聴く会というのを東京都でやったんですが、そこでもこの問題は非常に都民の間でやはり分かれておりまして、申請手数料も当然取るべきだとか、あるいは無料にするのは不公平で恣意的な大量請求を助長するとか、受益者である請求者が負担するのが当然であるという意見を述べられた方もかなりおられました。他方、原則無料とすべきであるとか、あるいは金額については市民感情を重視して設定してほしいという御意見も出ました。  東京都がいろいろなルートで行いましたこうした調査によりますと、これは国民全体ではありませんで都民の調査ということですが、都民の方がこれを全額税金で負担するということについてはやはり納得されないといいますか、合意が得られないだろうなというふうに考えております。
  24. 海老原義彦

    海老原義彦君 次に、衆議院法案修正で、全国の高裁所在地八カ所の地裁において情報公開訴訟を提訴できるというようになったわけでございます。  本来、被告の居住地という民訴の大原則が不思議な形で崩れたということのようでございますが、ここらについてはどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  25. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) この問題は非常に悩ましい問題でございまして、実は私も、この行政訴訟の土地管轄の問題などについて本格的に研究してみようと思いましたのは半年ほど前ぐらいからでございます。  一つは、やはりこの問題を考えるときに、私どものような行政法全体を取り扱っている者から見ますと、情報公開法の中での平等の問題と、それからそのほかの全体の法律の中での平等の問題と、両方を視野に入れる必要があるというふうに思っているわけでございます。つまり、情報公開法に限って平等を論ずるだけでは足りず、全体を見た上での平等ということを考えなければいけないと思うんです。  そういたしますと、この問題は本当に悩ましい問題でございまして、つまりこの情報公開訴訟抗告訴訟として位置づけられているわけでございますから、行政事件訴訟法の十二条が適用され、行政庁の所在地で提訴するというのが原則になるわけでございます。これは自分の具体的な権利が侵害された方、例えば免許を取り消されてしまったとか、あるいは何かの金銭的な給付の支給決定を取り消されてしまったとか、あるいは営業の許可を取り消されてしまったということで、あすにも路頭に迷う、そういうような方も行政庁の所在地で提訴しなさいということになっているわけです。  私も情報公開法ができればこれを利用したいと思いますが、例えば私が研究のために情報公開法を使って開示請求をして不開示決定を受けた、その取り消し訴訟を提起しようというときに、免許あるいはいろいろな金銭的な給付の決定を取り消されて、あすにも路頭に迷うという方に対して、果たして私の提起する訴訟の方が土地管轄の面で優先的に取り扱われるべきなんだということが言えるだろうかということを考えてみますと、そこは非常に悩ましいわけでございます。あしたから本当にもう生活に困ってしまう、自分の免許取り消し、これを取り消したいという方は、恐らく私が幾ら情報公開訴訟の方が優先されるべきだと言っても納得されないだろうというふうに思うわけです。  ですから、この問題というのは、やはり情報公開制度の中での平等の問題、これももちろん重要でございますが、それだけではなくて、外を見ていわばほかとの平等ということも考えなければいけないだろうなというふうに思うわけです。  そういたしますと、要するに自分の具体的な権利、利益を侵害された方が提起する訴訟と、それから確かに情報公開訴訟抗告訴訟という形にはなっていますが、これは請求目的を問わないわけですから、商業目的請求というのももちろんあり得るわけです。あるいは全くの趣味で請求することも妨げられないわけです。それが不開示決定を受けた訴訟の場合の方が、一般の許可とか免許とかあるいは給付決定が取り消された方よりも優先されるべきだということをどう理屈づけるのかというのは、この行政法の理論から見て非常に難しいんですね。  実は諸外国を見ましても、ほかの一般行政訴訟と比べて情報公開訴訟の場合の方が土地管轄が拡大されるということを定めている例というのはございません。アメリカは確かに原告の居住地で提起できるということになっておりますが、これはアメリカでは行政訴訟は一般的にそうでございますから特別扱いをしているというわけではないんです。実は逆の議論がございまして、むしろ情報公開訴訟の場合には自分の権利、利益と直接かかわらないで提起できるのだから、いわゆるフォーラムショッピングと言いまして、自分の好きなところを選んで提訴することをむしろ限定すべきではないかという議論はあるんですけれども、逆に広げるべきだという議論は、外国をいろいろ探してみたんですけれども、残念ながら見当たらないんですね。そこが非常に悩ましい問題であるということ。  それから、もう一つだけ申し上げさせていただきますと、私自身、行政訴訟の場合には一般論として行政事件訴訟法十二条のような原則を変えるべきではないかと一年ほど前までは実はそう考えておりました。と申しますのは、一般的に行政訴訟の場合、原告は弱者、そして行政機関、国は強者というイメージがございまして、予算とか定員の面でも十分そちらは対応できるんだから、むしろ原告の便宜を重視すべきだというふうに私自身かつてそう考えておりましたし、その趣旨の発言をしたことすらございますが、半年ぐらい前から、この問題をよく考えてみますと、実は私は問題の一面しか見ていなかったなと。要するに、問題は前からだけでなく、後ろからも横からも上からも下からもいろんな角度から眺めなければいけないのに、実は一面だけしか見ていなかったということに気がついたわけでございます。  情報公開訴訟に限定いたしましても、通常、請求者が不開示決定を受けて、その不開示決定の取り消しを請求する場合のことだけを念頭に置きがちなんですけれども、実はそれだけではありません。例えば、私たちのプライバシーに関する文書開示請求されて、その不開示決定が出た。その不開示決定の取り消し訴訟が提起されて、私たちが自分のプライバシーが侵害されないように参加しようというときには、原告の方にとって便利な居住地が、私たちが参加人となって出ようとするときには不便になることがありますし、それから開示決定の取り消し訴訟が出ることもあるわけですね。そういう点も考える必要があるということです。
  26. 海老原義彦

    海老原義彦君 大変詳細な説明をありがとうございました。もうさっきから宇賀先生にばかり伺っていて申しわけございません。  ちょっとまだ時間がございますので、次に後藤先生に伺いたいんですが、後藤先生、大変明快な御説明でございまして、やはり文書管理というのは保存基準と、開示、不開示基準と、それからさらに歴史的資料として重要かどうかという選別、廃棄基準、この三つの基準が大事であるというお話を伺いました。  このうち歴史的文書としての保存というのは、これはいわばアーキビストの仕事でございますけれども、これは大変難しいんだろうなと。事公文書に関しますと、一体何が重要で、何を後世に残すべきか、どうもわからなくなる面も非常に多いので、これはそのためにアーキビストがいるんだと言ってしまえばそれまでなんですが、一言何かヒントで結構でございますが、こういうことなんだよというお話をいただけませんでしょうか。
  27. 後藤仁

    参考人後藤仁君) 確かに御指摘のとおり、歴史的文書を選別するということは、いざその場面になりますと大変なことだと思います。世界的にもアーキビストの世界の中でもいろいろ議論があるところでございます。一時は、現在の歴史家が歴史家としての目を最大限生かして選ぶことに関与して、決定権をかなり持っていいのではないかという考え方が強かったようです。しかし、私どもが日々の仕事の中でつくった文書が歴史にとって価値を持つのは、ほとんど後世の世代がその文書をそっくり受け継いで、自分たちで判断して、自分たちで歴史を書いていくわけですね。  そう考えますと、現在この社会に生きている歴史家がすべてを決めるということはやっぱりどこかおかしいということになってまいりまして、この辺からアーキビストの本質をめぐって議論が難しくなってきたんですが、やはり基本的には、それぞれの時代で現に仕事をやっている人たちが、自分たちの仕事についてこれを記録にとって、そのまま手を加えないでなるべく残せるものは残しておこう、こういう考え方になってきているように思います。  ですから、そのためにはアーキビストという一種の専門家の養成をやっていかなければいけないんですが、日本でも国立公文書館を中心に少しこれが緒についたといいますか、アーキビストの世界の確立が始まったところで、まだまだここに全部任せられないんじゃないかという御意見は非常に強いと思います。しかし、任せなければいつまでもアーキビストは育たないわけでありますから、何か鶏と卵みたいなところがございますけれども、前向きに突破するということが必要ではないかと思っているところでございます。
  28. 海老原義彦

    海老原義彦君 どうもありがとうございました。  国立公文書館においてもこれからアーキビストの養成に取り組んでいくべき一つの機運が出ております。そのために、やはり議員立法で国立公文書館法というようなものも用意しようかという段階になっておるわけでございます。どうもありがとうございました。  三宅先生にはもうお話を伺う時間がなくなってしまいまして、失礼いたしました。後の質問者がたくさんお伺いするだろうと思いますので、私は質問を省略させていただきます。  先生方、どうもありがとうございました。
  29. 江田五月

    ○江田五月君 三人の先生方、きょうは私どもの情報公開法案審査のために御足労賜りまして、大変ありがとうございます。お礼を申し上げます。  海老原委員の方から何か三宅参考人の方に私がたくさん聞けという申し送りがあるんですが、必ずしもそれにとらわれずに皆さんにお伺いしたいと思います。  ずっと伺っていて、どちらかというと、宇賀参考人は今議題になっている法案を高く評価される立場といいますか、そういう面からこの法案に光を当てられた。三宅参考人は、この法案、そうはいってもこういうところがひっかかるよという、気になるところに光を当てるという立場から御意見を述べられた。後藤参考人は、それらを通じて実際情報を今後どうやっていくのか、いろいろ情報公開についていい制度はできても、情報作成管理保存、こうしたものの実態がそれに伴っていなかったら機能しないのでという点を言われたという気がするんです。  さて、そこでお三人の方にそれぞれ伺いたいんですが、まず総論的に、今出てきている法案に光を当てて、これがこういいとかこう悪いとかということをちょっと離れてみて、情報公開制度が国にできるということの意味。  宇賀参考人はそこよりもむしろ中身についていいところをピックアップされたと思いますが、やはり全体に、世界じゅうたくさんの国がある、その中で情報公開制度が国というレベルであるところは数は少ないです。数は少ないけれども、私ども日本という国にこの制度ができることの意味というのは、私は非常に大きな意味があるんだろうと思いますが。  三宅参考人は、いろいろひっかかるところを言われたんですが、しかし、さはさりながら一日も早くつくってほしいということも言われたので、やはりこういう点が日本の民主主義を大きく変えるんだということを認識されているんじゃないかと思いますし、後藤参考人も同じです。  簡単で結構ですから、三人の方からそれぞれ伺いたいと思います。
  30. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 私は、情報公開法成立するということは我が国の民主主義にとって非常に大きな意義を持っているというふうに考えます。  これまで行政文書というのは、情報公開制度がない段階におきましては、いわば行政機関職員が自分たちの執務のために使用する文書であると、そういうふうにとらえられてきたわけです。しかし、情報公開法ができますと、不開示情報に該当しないものはいわば国民との共有財産ということになるわけで、これまでは文書を出すか出さないかということはいわば行政機関側の裁量であったわけですが、これからは不開示情報に該当しないものにつきましては開示する義務があるということで、そこが百八十度変わってくるわけでございます。  したがいまして、この法律が通りますと、要するに公務員というのは国民に対して常に自分たちが行政を行っていくときに説明できるように、そういうアカウンタビリティーを持った行政を行っていかなければならないという認識が浸透していくと思います。そういう意味で、私は非常に我が国の民主主義にとって重要な法案であり、一日も早い可決を祈念しているわけでございます。
  31. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 情報公開法というと、大体国民の皆さんがイメージされるのは官官接待かというところで情報公開という話が結びつくんです。それまではなかなか情報公開といっても説明するのが難しかったんです。それほど自治体の情報公開条例における税金の使い道に光を当てたという点では大変成果のあったことだと思うんですが、それが中央の省庁においても税金の使い道に光を当てることができる。  それは、つまりは今の国家予算の中で、むだ遣いをしないで有効に税金を使わないとなかなか国家が成り立っていかないという状況の中で、今までの高度成長期と違う国のあり方なりを、国民がつぶさに税金の使い道なり政策形成を、個別具体的な意思形成の過程を見ることによって意見を言い、それによってまた行政効率を高めるという新しい国のあり方が一つ出てくると思うんです。  それからもう一つ、日韓情報公開交流というのを最後に私説明しましたけれども、これは九六年の春に韓国の嶺南大学で講演したときに、若い女子学生から、日本の情報公開法ができれば従軍慰安婦の問題の資料なんかも公開されて私たちも手に入れることができるのかという素朴な質問が出たんです。  個別の問題に入るわけではないんですけれども、ややもすると今までは隣の国でも歴史的な文書なども含めて情報を相互に交換し合うことができない、そういう中で行きがかり上の問題が生じたりしていると思うので、そのあたりは相互に理解し合いながら、お互いに寛容し合う世の中を情報交流の中で築くことができる。これは日韓だけにとどまらず、アメリカもそうですが、いわばアジア全体に日本が情報公開法をつくったこういう動きを紹介することによって、アジアの諸国が同じように情報公開法を持って、情報公開による市民レベルでの情報交流ができると、これはやはりアジアとして一つの一体感がまたそういう形で地道に定着するんじゃないかと思います。  そういう意味で、今回の日本における情報公開法制定の過程というのは非常に有意義な過程であり、この参議院、衆議院での議論も国際的にも紹介すべき事例ではないかと考えているところです。
  32. 江田五月

    ○江田五月君 後藤参考人にお答えいただく前にちょっと。  これは月刊「晨」という雑誌ですが、後藤参考人が「電子文書への対応と公文書館の役割」という文章をお書きになっているのを拝見したんです。その中に例えば、これは自治体についてのことをお書きなんですが、「条例改正制定によって公式の制度を整え、新たな実務システムに対して、契機と根拠を提供する。一方で、実務のマネジメントを変えて、制度に生命を吹きこむ。情報公開をめぐって、自治体も、もう一汗流す覚悟を固めるときである。」と。これをお書きになって早くも二年がたってしまっておるわけですが、今のお話の中で後藤参考人は、法律が実務に影響を与える、実務が法律影響を与える、それを市民のインパクトで変えていく、そういう一つのメカニズムのようなことをおっしゃったと思うんです。  日本というのは、明治維新で急ごしらえで中央集権の官僚主導の国家をつくり上げて今日まで来ましたが、ここへ来て、行政というのが無限定の権限を持っていて、とにかく設置法で何かこういう目的で設置をすると書かれたらそれが権限規定みたいになってわっと広がる。そのかわり情報国民開示しない。有権者の方は国から幾らサービスを受けるかということばかりを競う。ちなみに政治家はそのサービスをどれだけ提供するかを競う。そういうあり方から、行政というのもルールがあるんです、ルールの中でやれることしかできないんです、そのかわりやっていることは全部国民に明らかにするんです、国民の責任なんです、行政が失敗したらそれは国民も責任を共有するんです、そのかわり次の世代にはこれを変えていくんです、何かそういう民主主義の新たなフェーズに入っていくきっかけに情報公開制度というのはなるような気がするんですが、そんなことを踏まえて後藤参考人にお願いします。
  33. 後藤仁

    参考人後藤仁君) 私も、情報公開法というのは日本の社会に非常にいい大きな影響を与えると思っております。  今、私の考えを一部先に述べていただきましたけれども、私は、仕事を委託されてやっているところにいい情報が集まったり生まれたりするのは自然なことだと思うんです。ですから、それ自体は別に非難の対象ではない。どういうことかといいますと、つまり政治とか行政の仕事は主権者である国民の信託に基づいてそれぞれのところでやっているわけですが、その過程でどうしても仕事に関係をしまして非常に高度な情報も必要になりますし、それも集まってまいりますし、実際に、特に議員の皆さんは、議論をする過程で情報をいわばきちんと取り扱っておるわけですから、良質の情報環境の中で仕事をするということになると思うんです。  これ自体は、仕事を頼んだ方もその気になっていなければいけないんですが、問題は、それが完全に内部に隠れちゃって外へ出てきませんと、主権者である国民の方がいざ必要になって、自分もこの情報が必要であるとか、あるいはある程度の信頼関係があるうちはいいんですが、どうもこのところちょっと不安とか不満とか不信が政治や行政側の行為に見られるというときに、何かコントロールを及ぼしたいというときに、情報が内部から出てこなければコントロールする手がかりがなくなるわけです。情報公開法というのはそれについての手がかりを、つまり制度の面できちんとつくることになりますので、多分、賢い国民、市民は、絶えずこの権利を発動して乱用するというようなことはないと思うんです。  これは、持っていることによって、信頼をしてふだんは任せておく、しかしいざとなれば開示請求権を正々堂々行使するのであると。それに対しては、今度は行政側は原則開示するのが義務なんです、こういう関係を定めるわけですから、ふだんは裁量的に政治と行政がいい仕事をやりながら、かつ国民の側は、主権者の側は必要なコントロールを加えられる、こういう仕組みになっていくはずだし、いけるはずだと。そうなれば非常に日本の民主主義にとっていいことではないか。特に代表制民主主義という、いろいろ批判はありますけれども、人類の知恵みたいなものですから、これにとっていいことではないかというふうに考えています。
  34. 江田五月

    ○江田五月君 ありがとうございます。  宇賀参考人にもう少し伺いたいのですが、今出てきておりますこの法案についてのすぐれた面をいろいろ御指摘いただいて、現にここにあるわけですから、それがいかにおいしいかということを余りお互い言い合ってもしようがないので、むしろ気になる点ばかりを委員会の中ではつついておりますが、そんな中で、いや、だけれどもこんなにいいところがあるんだよというのを教えていただいたのは大変ありがたかったと思うんです。  しかし、幾つか聞いておきたい点があります。時間のこともあるのであれもこれもというわけにいきませんが、インカメラのこと、あるいは知る権利のこと。知る権利についていろんな学説があると、それは確かにいろんな学説がある。知る権利というものを明記すると、ある学説からするとこうなる、こっちの学説からするとああなる、そこで困ってしまう、ひょっとしたら解釈改憲になりかねない、そういうお話でした。だけれども、それはどの学説の知る権利を採用したんだというようなことで明記する、条例などがそうなっているわけではないと思うんです。  むしろ逆に、知る権利ということを明記することによって実務の運用にある種の方向性を与えるという、そういう理念的なことというよりもむしろ実務的なことからすると、私は知る権利を明記しておいた方が実務がより情報開示の方向に一定の方向性を与えられることになるのじゃないかという気がするのですが、いかがですか。
  35. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 欧米諸国の情報公開法の中で、知る権利という言葉を目的規定に明記しているものはないわけでございます。  私、ずっとアメリカ情報公開法を研究してまいりまして、その中で何度も調査にも参りました。その際に、向こうの市民団体の方とか弁護士の方とかあるいは非常に情報公開に熱心な学者の方等に、アメリカ情報自由法には目的規定がそもそもないと、したがって、知る権利どころかアカウンタビリティーも書かれていないんですけれども、修正一条に基づくものだということを明記するといったような、そういう改正を働きかけないのかということを聞いたことがございます。  しかし、これに対しては一様に、要するに不開示情報判断というのはそれぞれの不開示情報規定の仕方によって決まるのであるから、目的規定をどうこうしなくても、不開示情報規定の方を、もしもっと拡大させたいというのであれば、そちらの方を改正させればいいのであって、したがって、自分たちとしてはそういう運動は全くしていないし、しようとも思わないという、そういう回答を得たわけでございます。  私も、やはりこの情報公開法というのは原則公開、そして不開示例外であるべきだと思います。しかし、そのことは目的規定に知る権利という言葉を入れなくても、それは不開示規定をそのようにつくればいいというふうに思うわけです。私は、この情報公開法案はそのような原則公開という趣旨でつくられているというふうに考えておりますし、それから私の考えでは、アカウンタビリティーと、それから私個人の学説としての知る権利というのは実は別のものではございません。説明責任も知る権利も両方入れるべきだという説もあるんですけれども、私はこの両者というのはいわばコインの裏表の関係であって、知る権利説明責任というふうに並列されるものではないと思うんです。  ですから、私はこのアカウンタビリティーが入ったことでもう満足しているということでございます。
  36. 江田五月

    ○江田五月君 制度を書かれた文書、文字、これで見ると、あってもなくてもというよりも、実際には不開示制度をどれだけ限定するかということでよろしいということになるかもしれませんが、その制度が実際に動くときにどうなるかということはなかなか大変なことがあって、動かしていくときの姿がどうなるか、これを見ておかなきゃならぬと思うんですが、それはおいて、管轄のことについてもう一つ。  おっしゃることがなるほどと思うところもあるんです。私自身もこの情報公開訴訟管轄についてはなかなか悩ましいところだということは思っていまして、しかし自分の行政上の例えば許可なら許可が取り消されて路頭に迷う人の訴訟と、情報を不公開にされてこれの取り消しを求める自分の訴訟と、自分の方を優先させろとは言えないという、しかしそれは行政事件訴訟法十二条がこれでいいのかという問題でもありますよね。  情報公開訴訟の方は管轄が広がる方向に修正された。今は我々の手にそれをどうするかというのが来ているわけですが、それはある種の時間の流れであって、過去の姿と今現に動きつつあって変えようという姿と、それを比べてどちらが優先ということは、いや情報公開の方を優先せよということは言えないという、比較はなかなか難しいのじゃないか。もっと時間の要素を入れればこれから行政事件訴訟の方も変わる可能性が出てくる。  国会が、少なくとも衆議院が、いわば立法裁量で八つの地方裁判所管轄を広げた、それは立法裁量として、そういう裁量は違法であるとか不当であるとかということになりますか。それとも、それはそれなりにそういう裁量を行使する合理的な理由があるというふうにお考えですか。
  37. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 衆議院におきまして、私などにはわかりませんが、恐らく大変な御努力の末に全会一致ということで、こういう御決断をされたんだと思います。私は、もうそれには大変敬意を表しております。別にそれに対して異論を唱えようとかそういう趣旨では毛頭ございません。  ただ、私が申し上げたかったことは、今申しましたように、一般原則に対して例外をつくる場合に、やはり説明責任の問題があり、どうして一般原則に対して例外を設けるのかということについての説明を考えなければいけないと。それは私も一生懸命考えたいと思います。
  38. 江田五月

    ○江田五月君 私も法律には無縁というわけではないので、法律家の立場で見ますと衆議院修正というのは管轄の法理の中で言えば革命じゃないか。つまり、事物管轄で地裁ということにして、そうすると全国五十の地方裁判所がある、そこへどういうふうに割り振るかですね。そのときに、事物管轄が全然違う高裁の土地管轄の原理を持ってきて全国を八つに割る。八つに割った中には複数の地方裁判所がある。そこのどれにするかというので、今度は高裁所在地という、高裁が当事者でも何でもないのに、高裁所在地という全く関係のない理論を持ってきて一つの地方裁判所に決めるというのだから、頭の中がこんがらがります、これは真っ白。しかしそれは恐らく、今おっしゃる原則例外という、行政事件訴訟法の場合には被告住所地が管轄裁判所になるという原則、これが原則ではいけないんですよという、そういう立法府側からの強い問題提起ではないのか。  そうすると、今、我々はさらにもう一つと言っているわけですが、これが成立すれば、立法府の考えを受けて法律の論理を形成していく世界で、さてそこで別の論理を考え出さなきゃいけないという重要なところへ来ていて、そうなると、やはり次に見直すときには行政事件訴訟法十二条というものが俎上に上がってくるんじゃないか。もちろん利害関係人の参加の便宜というのもありますが、それこそ例外ですから、ひとつ先生に大いにそこは立法府の意を受けて理論構成をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  39. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 理論的な問題については考えたいと思いますが、実は理論的な問題以外に実務的な問題というのもあるということに最近気がついたわけでございます。それはどういうことかと申しますと、これまで私個人も行政事件訴訟法十二条の原則について疑問を持っていたことがございます。  しかし、実際にいろいろと検討をしてみますと、実は行政機関というのはそんなにオールマイティーではなくて、行政機関の中にもいろんなものがございます。地方支分部局とかあるいは施設等機関の中で定員も予算も非常に乏しいものがあるんです。出張旅費などほとんどないところがあるわけです。実際に行政訴訟が提起されますと、訟務検事がいるからいいではないかといいましても、実は訟務検事というのはそれほど実態を知っているわけではございませんので、実際上は行政機関職員が一人行政訴訟に張りついてやる形になるわけです。  しかし、その出張旅費を考えてみますと、例えば北海道大学の教官一人当たりの出張旅費なんというのは、これは一度九州なりあるいは沖縄なりに行きますとそれで一年分使い果たしてしまうような額なんです。そういたしますと、では、その出張旅費の制約のために公判が一年に一回しか開かれないということですと、これは迅速な審理を期待している請求者にとっても不利益じゃないか、そういう実務上の問題もやはり検討していただきたいというふうに思います。
  40. 江田五月

    ○江田五月君 学者、研究者の皆さんも出張旅費が少ないので大変苦労されている、そのお気持ちからの発言だと思いますが、しかし、司法予算が少ないからといってこれだけの司法サービスしか提供できませんという、それはいけませんね、本末転倒です。  三宅参考人には、那覇地裁、沖縄のことについて、若い世代からの本当に心のこもった発言ありがとうございました。  時間になりましたので終わります。
  41. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 公明党の日笠勝之でございます。  参考人の先生方、大変に御苦労さまです。  まず、知る権利につきましてちょっとお伺いしたいんですが、先ほど宇賀先生は、手数料の問題で東京都のアンケートといいましょうか、六十数%の方は手数料を取るべきだろうと、こういうことをおっしゃいました。  その東京都の情報公開条例前文というんでしょうか、これには、「都民の「知る権利」が情報公開制度化に大きな役割を果たしてきたことを」云々というふうに明記をされています。そしてまた、最近、東京都の議会情報も知る権利を盛り込もうとか、こういう諮問が出ております。それから、続々と四十七ある都道府県の中でも知る権利前文なり条文に盛り込む、たしか八つか九つの道府県だと思います。だんだんとそういう方向に行きつつある中で、我々の審議しております行政情報公開法が知る権利を明記しなければかえって後退するんじゃないか、あったものを改正で今度削除したり、そういうふうなことも考えられますが、この知る権利法律のどこかに明記するということについてはどういうお考えなんでしょうか。
  42. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 東京都はおっしゃるとおり前文に知る権利という言葉を入れました。ただ、東京都が前文に入れました知る権利というのは、知る権利が保障されており、それに基づいて開示請求権を認めたという趣旨で入れたのではなくて、要するにこの情報公開運動を進める上で知る権利というものが大きな役割を果たしてきた、そういういわば背景として入れたものだというふうに聞いております。  ですから、実際には、地方公共団体情報公開条例の中に知る権利という言葉が入っている場合も、例えばかぎ括弧つきで、権利として認められているかどうかということは別として、いわば知る権利というものが情報公開の運動を進める上で大きな役割を果たしてきたという、そういう認識を述べるというもので入れているものもございまして、そこはいろいろあると思うわけでございます。それはそれぞれの地方公共団体が自主独立の団体として御判断してされていることですから、それはそれで尊重されるべきだろうと思います。  ただ、情報公開法案についてどうかというふうに尋ねられましたならば、私は個人的にはこの言葉は非常にいい言葉だと思います。また、運動を進めてきたということについても高く評価しています。ただ、明記することがいいかどうかということについて法律学者として聞かれますと、私はそれについては現段階ではやはり慎重にならざるを得ないというふうに考えております。
  43. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 三宅先生は附帯決議の方で知る権利を明記したらどうかとおっしゃいましたが、今の宇賀先生の御意見をどう思われますか。
  44. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 知る権利法律に入れるかというのは入れ方の問題だと思うんです。だから、知る権利の保障といったときに、その知る権利は何かということで、自己情報開示請求権も含むのかとか、いわば知る自由という自由権にとどまるのかとか、そういういろいろな問題が出てくると思うんです。  多分そういうようないろいろな問題もおありだろうけれども、先ほど江田議員がおっしゃったように、実務の運用に方向性を与えるという観点では大変重要な言葉である。それは、立法をつくった段階で実務の運用に方向性を与えるところが終わるわけではなくて、立法ができてからこれをどう使うかということで非常に重要な言葉としての意味を持ってくるだろうと思うんです。  宇賀教授は、欧米のお話をなさいましたけれども、韓国は日本の自治体の条例参考にしながら法律をつくったわけですけれども、その中で知る権利というのを明記している。ただ、私ども九六年に調査に行った段階では、実務上何を公開するのかというと、これを公開しますという一覧の本みたいなものを渡されまして、それ以外は非公開ですという話なものですから、条例はできてもなかなか実務としてはまだ日本の自治体よりはおくれているんじゃないかなとちょっと思ったことがあったんです。  しかし、知る権利を保障していく制度として、この運用を通じてひょっとすると日本よりももっといいものができるのかもしれない、そういうときの実務上の運用、それから不開示情報規定解釈にもやはりいろんな影響を与えてくるのじゃないか。  日弁連がなぜ知る権利の保障を明記せよということを強く言うのかというと、私どもはできた法律をどう運用していくかというところから常に見るわけです。しかも、それが裁判所でどのように活用されるのか、生かされるのかという観点から見ますと、どこかにやはり知る権利という言葉を入れておくことが必要だろうと。議論として知る権利の保障という形で入るのが難しいとすれば、それは自治体であれば前文なんかにも入るだろうと。  私は、東京都の情報公開懇談会のときに、前文なら入るでしょうという話をしたんです。ただ、全会一致ということで通らなかったものですから、前文には入らないんだなと思っていたら、条例の案が出てきたときに前文に入っていたんです。もちろん、今おっしゃったように開示請求権ということを明確に認めた形で知る権利を入れているわけではありませんけれども、都民の知る権利の期待を十分に担うという趣旨で、先ほど私が附帯決議案を少しアレンジしてお話ししましたけれども、都民の知る権利情報公開制度化に大きな役割を果たしてきたことを十分に認識し、都民がその知ろうとする行政機関の保有する情報を得られるようというところに、これは都民なり人間が生まれながらにして持っているという知る権利、広い意味での知る権利、そういうものが込められているように思うんです。  そういう知る権利を厳密に法律学者として分析していただくことはそれなりに大事なことだとは思うんですけれども、その中で、国権の最高機関である国会が、この定義で知る権利ということを、しかも用い方として、附帯決議に入れるのか法律の一条に入れるのかといういろいろ議論はありますが、今は、共同修正案が参議院に来ている段階ですので、一条に入れてほしいという議論は今もう成り立たない状態ですので、そうであれば、用い方によって知る権利という言葉をやはりどこかに入れていただくことによって、我々がこれから使わせていただくときの解釈に非常に生きてくるだろう、そう考えているわけでございます。
  45. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 済みません、持ち時間がわずかなもので。  次に、宇賀先生は、審査会のことをいろいろ長所はあるということをおっしゃいました。問題は九人の委員です。両院の同意を得て総理大臣が任命するんですが、私もこの参議院の当委員会で、この九名の委員はもちろん国会の同意を得るわけですが、官僚OBだけはだめですよと。身内が身内の開示か不開示か、存否応答拒否もありますから、それはないでしょうということを官房長官に申し上げました。それで、官房長官は、総理にその旨をお伝えしますと、こういうことでございました。  宇賀先生と三宅先生に、この情報公開審査会委員は官僚OBは極力排すべきだと私は思いますが、お二人にそれぞれ御意見をお聞かせ願えればと思います。
  46. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 一般論として、官僚OBが全部だめかというふうに聞かれますと、官僚OBの中でも自分の出身省庁の利害関係にとらわれないで立派な見識を述べられている方なども個人的には存じ上げていますので、全部だめかと言われるとちょっと即答しかねるところもあるのでございますが、一般論として、これは本当におっしゃるとおり、まさにこの情報公開制度のかなめだと思いますので、やはり国民の信頼を得られるような方が選任されることが望ましく、特にそれは国会同意ということになっていますから、恐らくどの党の方から見てもそういう信頼の置ける方が選ばれるということになるんだろうと思います。
  47. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 情報公開法による不開示についての決定は、行政官僚がなさった不開示処分についての判断をするわけですから、やはり国民から見てそれに信頼が得られるかどうかという観点から人選をしていくとなると、おのずと官僚OB、官僚OBといっても十年前に官僚であった人と一年前に官僚であった人とはちょっと違いますけれども、できる限り直近にやめられた方というのは避けていただく必要性が出てくると思います。
  48. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 ただ、三宅先生はそうおっしゃるけれども、十年保存もあれば三十年保存もありますから、十年前にやめたからいいといったって、当時自分が関係していたかもしれませんので、だから官僚OBは原則ノーだと、こういうふうに私は信念を持っておるわけでございます。  それから、文書管理の問題でございますが、宇賀先生は訓令でなくて政令で透明化が図られる、こういうふうにおっしゃいました。確かにその一面もあるんですが、実はきのうここの委員会で私も質問いたしましたが、今各省庁の文書管理規程というのがございますが、全部集めて比較しますと、もうばらばらなんです。例えば総理府と総務庁を比べただけでも、総理府の場合は、ちゃんと文書受送主任を置けとか文書保存主任を置けと、こういう文書管理規程はありますが、総務庁には一切ない。それから、公文書行政文書の書き方も、今度反対に総理府の方は平易簡明な口語体で書けと、単純な書き方。ところが、総務庁のは常用漢字で現代送りがなでとか、横書きにしろと細かくやっている。  そうすると、これを全部集めてどうするかという政令をつくるときに、下手をすると最大公約数で各省庁みんなある分だけをしておけよ、政令だからと、あとは行政の長に任せようと、こうなっちゃうと、せっかく立派な文書管理規程のある省庁の管理規程が、いいところがどんどん欠落していくんじゃないか、こういうおそれがあるんです。  政令のつくり方について、宇賀先生、それから専門であります後藤先生、お二人から、ちょっと時間がありませんので、簡潔にお願いできればと思います。
  49. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 非常に重要な御指摘であると思います。やはりおっしゃるとおり、これまで各省庁の文書管理規程を見ますと、本当に不統一、それも合理的な説明のできない不統一がいろいろございます。ですから、そうしたものを排除するようなしっかりとした政令をつくり、もしその政令で足りない部分があれば、例えば総務庁に文書管理についてのしっかりとしたガイドラインをつくっていただいて、それに応じた文書管理規程をつくっていただくということが望ましいと思います。
  50. 後藤仁

    参考人後藤仁君) 全く私もそのとおりだと思います。今度、法律でともかく文書管理が大事だということがうたわれるわけですね。一項起きております。それに応じて政令ができる。その政令をきちんとつくれば、現在のような一種の、失礼かもしれませんが、ばらばら事件みたいなことは直っていくと。また、直っていくところがこの情報公開法をつくる意味でもあるというふうに理解しております。
  51. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 次は手数料でございますが、手数料は非常に今関心が当委員会でも高いのでございます。どの委員の方もほとんど質問をされるんですが、正直言いまして今もって茫漠として、これも政令なんですよね。この参議院の当委員会できちっとした議論をして一定の方向づけをしなきゃいかぬと思っております。  ざっくばらんに申し上げて、一番この情報公開条例などなどを使いこなしておられる三宅先生、どの程度開示請求手数料、それから今度は開示の実施に係る手数料、二段階ということですが、実施に係る手数料の中にも閲覧手数料と称するものと謄写、コピーなどなどの手数料、三段階ぐらいあるのかなと思っておりますが、それぞれどういう手数料ならば乱用が防止でき、なおかつ国民の、我々が知る権利が行使できるか、どういう金額ならば理想的といいましょうかベターなんだろうということについて、三宅参考人からお伺いしたいと思います。
  52. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 先ほど東京都のアンケート調査の話が出たんですが、あれはもう三段階で取るという話を前提にしているわけじゃありませんので、国会国会の独自の判断をしていただかなきゃいけないと思うんです。  ただ、開示請求手数料については、乱用防止というお話がありましたけれども、先ほど紹介しました個人情報保護法開示請求、これも乱用しようと思えばできますが、これは二百三十円ということですから、乱用防止といっても実務上今考えられるのは二百三十円が限度かなというのが一つです。  それから、実施に係る手数料閲覧手数料というのは、一件の数え方がやはり非常に混乱のもとになりますので、基本的には私も閲覧手数料は取るべきではないと思っているんです。コピー代二十円というのも、全国の自治体でいうと大体十円のコピー代もありますし、コンビニが十円ということなので、コピー代を大体二十円取るということになると、その中に大体閲覧手数料は本当は含まれているんだろうなと思うので、十円でいいところを二十円取っているコピー代の中に黒塗りにしたりするような部分の検討費用みたいなものも含まれていると思うんです。  そういう意味では、閲覧手数料はお取りになるといってもできる限り少な目に、関連文書を一括して一つにして、それで一件と見て、その中でなおかつ上限を設けて、一件の文書について百円以上は取らないとか、そういう上限を設けないと安心できませんので、コピー代は枚数が多くなれば若干ふえるというのは仕方がないなと思っているんですが、そういうことです。
  53. 日笠勝之

    ○日笠勝之君 ありがとうございました。
  54. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  お三方には大変有意義な御意見を本当にありがとうございます。  まず、三宅参考人にお伺いいたします。  知る権利についてなんですけれども、これが明記されていないということによって具体的に、この情報公開法案の中で、法律が本来こういうふうにあるべきなのにゆがんでいるとか不十分になっているとか、そういう点がありましたら端的にお教えいただきたいと思います。
  55. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 知る権利は、先ほど言いましたように不開示事由の解釈のときに非常に影響を及ぼしてきますので、知る権利がなくてもいい不開示情報規定をつくったんだと宇賀教授なんかは作成にかかわられていますからそうおっしゃいますが、今後の運用の中でやはり不安があるという点が一点。  それから、裁判管轄の問題になりますけれども、情報公開法における知る権利を全国同じように保障するという観点からは、裁判所に行くまでの費用が不均等になるという問題なんかも、これは知る権利の保障という観点からいえば、もちろん裁判を受ける権利ということも裁判管轄の問題では出てきますけれども、知る権利という言葉が入らないような法律であるからこそその辺が不均等なままで処理されてしまうんではないかなと考えております。
  56. 吉川春子

    ○吉川春子君 宇賀参考人にお伺いします。  今裁判管轄の話が出たんですが、行政訴訟法の十二条一項、これの改正の必要はないというふうに考えが変わったかのようにちょっと先ほど伺ったんですが、きのう実は総務庁長官もこの規定については将来見直しの必要があるということを限りなくにおわせた答弁をされていました。その点、私は非常に矛盾に満ちた条文だなと思うんですけれども、改正の必要がない、こういうお考えでしょうか。
  57. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 検討する必要があるということは否定するものではありません。私も行政訴訟が提起しやすいということは一つの重要な価値であるというふうに考えております。  ただ、私もかつてはその点だけしか考えていなかったんですが、よく考えてみますともっといろいろ考えなければいけない問題があり、実はこれまで私ども行政法学者の責任でもあるわけですが、実際に行政訴訟がさまざまな場所で提起されたときの問題ですね、これは今度の修正案の三十六条の二項で一定の手当てはされているんですけれども、実はアメリカの場合にはこの点につきましていろんな法理を使いましてそこを解決しているわけです。例えば、争点遮断効とか請求遮断効とかあるいはいわゆる連邦礼譲の法理とか、いろいろなものを使って複数の裁判所で同じような訴訟が提起される場合の矛盾とかあるいは訴訟上の不経済とかいう問題を解決する、そういうさまざまなメカニズムを実は持っているんです。日本はそこのところがまだ非常に不十分であるということに一つ気がついたということ。  それから、これは実際上の問題として、行政機関といっても実は非常に乏しい予算と人員でやっているところもあって、本当に対応できるんだろうかという面も見ていかなくちゃいけない。また、例えばこれから独立行政法人というのができることになると思いますが、独立行政法人が情報公開法の適用を受けるのか、これはまだわかりません。しかし、仮に受けた場合に、独立行政法人のような非常に小規模なものがあるわけですね、そういうところが本当に対応できるのか。あるいは地方公共団体、これも行政事件訴訟法は適用されることになりますので、小さな町、小さな村などで情報公開条例を持っているところがいろんなところに職員を派遣してやるということが本当にできるんだろうか、そういったことも視野に入れて検討する必要があるというふうに考えております。
  58. 吉川春子

    ○吉川春子君 後藤参考人文書管理の問題についてお伺いいたします。  後藤参考人神奈川県立公文書館前館長でいらっしゃるということですが、要するに県の行政文書が公文書館にどういうふうにスムーズに移管されているのか、その辺のメカニズムがどうなっているのかという点に私は非常に興味を持っているわけなんです。  国の省庁と国立公文書館の関係も実に悩ましいというか、ある意味ではいいかげんというか。公文書館に移管されて、じゃこれが国立公文書館で公開されるかというとそうでもない。そこには、公開しないでほしいという条件がついて国立公文書館に移管されている文書も少なくないわけです。  そういうことを考えたときに、そういう関係は神奈川ではどういうふうにされているかということをひとつお教えいただきたいのと、それから保存期間を一年、三年、五年、十年というふうに決めますね、これはだれが決めるんでしょうか。例えば、先ほどアーキビストのお話がありましたけれども、日本には制度としてはありません。こういう専門職の存在なしには文書保存し、移管し、公開するという手続が実は非常にあいまいにしかできないのではないかと思いますが、その辺大変御苦労があるかと思います。その辺についてちょっとお伺いしたいと思います。
  59. 後藤仁

    参考人後藤仁君) 神奈川県の例が必ずしも国にそのまま適用できるか、ほかの地域で適用できるとかというものではないと思いますが、御参考までに、こういう仕組みでやっているという一つの典型例ではあると思いますので、御質問にお答えして申し上げます。  神奈川県では公文書条例という条例を持っておりまして、この条例規定によりまして保存期間を満了したすべての文書原則として公文書館に送られることになっております。ただし、一年保存文書だけは一年で保存期間が満了した時点で公文書館がつくりました選別基準に従ってそれぞれの部署で選別をし、一部を残し一部を廃棄して、残したものについて公文書館へ移管をいたします。  そのほか、三年、五年、十年、三十年のすべての公文書は現物が原則として公文書館へ毎年やってまいります。つまり、保存期間が終わったところでやってまいります。そこで、条例規定に従って公文書館長がそのうちから歴史的資料として残すものと廃棄すべきものを選ぶことになっています。つまり、公文書館へ保存期間満了文書を引き渡すことは各行政機関の担当部署の条例上の義務です。そして、その中から何を残し何を廃棄するかを決定するのは公文書館長の権限です。  そういう形で、完璧にある意味では公文書が、現用から非現用と申しておりますけれども、実際に行政当局で使われなくなった途端に公文書館に権限が移るという仕組みを整えています。この仕組みは、今のところ多分条例でそこまできちんと規定をしているのは神奈川県だけだと思いますが、ある意味では、例えば保存期間を勝手に短くして都合の悪い文書を早目に勝手に処理をしちゃう、捨てちゃうとか、あるいは逆に何でもかんでも永年ということでつくったところが永遠に持っている、外へ出さないということも防げますし、かなり合理的な制度ではないかというふうに考えているところです。  ただし、選別が大変であるというのはそのとおりです。文書箱にして何万箱というものが現実に公文書館に来るわけですから、この箱をあけて残すものと捨てるものを選んでいくという作業は大変な作業です。  それから、御指摘にありましたように専門家について、日本ではまだアーキビストというものができておりませんから、神奈川県の館にも本当のアーキビストといわば世界的な水準で呼べる人はまだ残念ながら育っていないわけですので、現実の選別作業は理想的な制度とは別に困難を極めているということは事実であります。しかし、これを一歩一歩やっていく以外に今この公文書の本当の管理制度をきちんとしていくということはないんじゃないかということで、歯を食いしばってやっているというのが実情でございます。
  60. 吉川春子

    ○吉川春子君 今度、情報公開法施行に伴いましてどういう体制で国は都道府県の窓口をつくってやっていくんだろうかと伺いましたところ、総務庁の行監局と行監事務所が合わせて四十六カ所プラスもう一カ所ありますので四十七カ所、都道府県に一カ所ずつあって、ここが窓口になるんだそうです。そして、今行政監察という大変重要な、オンブズマン制度のない日本にとっては、テーマにもよりますけれども、かなり実績を上げておりますこの行政監察をやっているんですけれども、この行政監察の件数がこの十年激減いたしまして、四割ぐらいになっているんです。人数もものすごく減っているんです、ちょっと今資料を持ってきていないんですけれども。しかも、今度は情報公開を総務庁の全国の行監事務所を窓口にしてやるということになりますと、それは公開するかどうかは各省庁に割り振るにしても、そういう仕事をやりますと、ますますオンブズマン的な仕事ができなくなるんじゃないかなと私はちょっと懸念をしているんです。  神奈川県の場合、これは何人の体制で今おっしゃったその何万箱の行政文書を整理していらっしゃるんでしょうか、お教えいただきたいと思います。
  61. 後藤仁

    参考人後藤仁君) 現役とOBの職員、それからOBの教職員、特に歴史とか国語の先生、校長先生をやっておられた方にお願いをしておりまして、実際に選別作業に携わっているチームのメンバーは十人少しという少人数でございます。必ず二人で選ぶ、一人では選ばない。二人で選びまして、二人で意見が一致しないときはチーム全員で会議を開いて残すか残さないかを決める。まだ歴史が浅いですから、私が館長でありましたときは疑わしきは残すということで、当面なるべくは歴史的に残していこうという方針でやっておりましたけれども、十二人でございます。それでも全国的には多い方ではないかと思います。
  62. 吉川春子

    ○吉川春子君 現用文書、非現用という言葉がありましたけれども、情報公開対象になる文書とそれから歴史文書がありますね。その文書との違い、そしてその情報公開はこの二種類の文書についてどのように適用されるべきなのか、その点を最後にお伺いしたいと思います。
  63. 後藤仁

    参考人後藤仁君) 現用文書は、すべて神奈川県の場合には県のいわゆる情報公開条例対象になります。ですから、原則公開であります。一年保存のものはその一年間保存されている間は全部情報公開条例対象になる、三十年保存文書は三十年間保存されている間は情報公開条例対象となって原則公開されます。例外開示というのが当然あるわけですが、その開示、不開示基準に従って現用の文書はすべて運用されています。  例えば、十年保存文書が十年たって保存期間を満了して公文書館に移されて、先ほど言いましたように、そのうちの一部は歴史的文書として残されるわけですが、この残された文書は公文書館ににおいて開示されます。閲覧ないし写しの交付が行われるということで、閲覧ないし写しの交付をするのは公文書館のいわば責務になっておりますので。  では、その基準はどうなのかというと、現役時代と同じ情報公開条例による開示基準を準用しております。ただ、基準自身は準用しますが、実際の適用に当たっては不開示にする事由の多くが消滅いたしますので、現役時代よりは歴史文書の方が開示の率は高くなるということが実際です。  一部個人情報等については、これはまた別に個人情報保護条例保護してございますから、本人以外に対しては歴史的文書といえども開示閲覧は制限されますけれども、一般的に言えば同じ開示基準を持ちつつ、歴史文書になった方が開示事由の消滅に伴ってより広く開示される、ですから公文書館に来れば大体見られる、こういうことになるわけです。
  64. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  65. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 自由党の月原です。  きょうは参考人に感謝を申し上げます。  まず、宇賀先生にお尋ねいたしますけれども、この四十条に「地方公共団体情報公開」という規定を設けて、「地方公共団体は、この法律趣旨にのっとり、その保有する情報公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」、そして先生がおっしゃったように、これができることによって地方の方も加速的にこういうものをつくっていくのではないかと。もう既にでき上がっているところもあるわけです。  そこで、私がお尋ねしたいのは、非常に抽象的な話になる、試験問題でもよく出るような問題ですが、この法律条例との効力、要するにここで言われておる新しくできた法律の範囲と地方の条例の範囲が食い違った場合に、それはどういう場合にどのような調整をすればいいとお考えですか。
  66. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) この情報公開法案は国の行政機関が保有する情報に適用されることになっておりますので、地方公共団体の機関が保有する情報については適用されないということになっております。しかし、先ほど御指摘の条文が入っておりますのは、一つにはまだ情報公開条例をつくっていないところが特に市町村レベルでは相当ございますので、そういうところにできるだけつくってくださいという希望と、それからもう一つこれも御指摘のとおり、既に条例をつくっているところもこの法律のいいと思われるところは積極的に取り入れて見直しをしてください、そういう趣旨規定でございます。  したがいまして、それぞれの地方公共団体において独立の団体として御判断されて条例をつくられる、そしてそれはその地方公共団体の機関が保有する情報に適用されるということで、一応そこはこの情報公開法案とは別の体系ということになると思います。
  67. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 地方も選挙された議員によって構成されておるし、それへの自主権に基づいてつくるということにおいては国と変わらない点が多いと思います。  しかし、国の平和に関する、安全保障に関するような問題が出てきた場合に、例えば今まだ最高裁で争っておりますけれども、沖縄の米軍の潜水艦基地の設計図を見せろという話ですね。そういうものを向こうは、条例はオーケーだから示したわけです。そして、一審、二審と今最高裁で争っておるわけですが、要するに国の安全保障、高度に専門的な、そして国家として守らなければならないもの、そういうものについて、今申し上げたように、側面的に今言った潜水艦の問題、ちょっと三宅参考人のお話による相模原の問題もその延長線上というか、ずばりの問題として出てくるのかもしれませんけれども。  そういうものによって、地方の条例とこちらの法律との範囲が食い違ったときに、もし食い違っていれば、私は理想的に言えばその種の問題はむしろ今までできた条例も今度のものに合わせていく、少なくとも国のそういう問題については、国が新しくいろんな人の意見によって情報公開法をつくったら、それと私は合わさなければならないと思う。住民のそれぞれの特色というのはあるにしても、国の高度な安全保障に関するもの、あるいは捜査でもそうでしょうが、そういうようなものについては今までのも改めなければならないし、新しくつくる人たちもその点だけは確としてしっかりした制度につくってもらわないと、日本の国そのものが秘密保護法は何もないわけですね。一、二、例はありますよ。しかし、基本的には諸外国はそういう制度を持ちながら情報公開をやっている。日本の国はそうでない。  それだけに、私はそういう法律条例との関係というものをしっかりした考え方を示しておくし、政令でそのことについては詳しく考え方を示す、政令でなくてもいいんですが。そういうふうにしないと非常に国が混乱するんじゃないか、このように思うからあえてお尋ねしているわけでありますが、どうでしょうか、宇賀参考人。後でまたそのことで三宅参考人にお願いいたします。
  68. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 地方公共団体が保有している情報でも国のいろんな利害にかかわるものというのがあるのは御指摘のとおりでございますし、実は逆の問題として国が保有している情報であっても地方公共団体の利害にかかわるものがあるということもあります。  そこで、地方公共団体の場合にはそうした場合に、国等関係情報という不開示規定一般に入れておりまして、国等との信頼関係を害するかどうかということで判断しているものがございます。私は、これから情報公開法ができますと、地方公共団体情報を国が出すかどうかということで地方公共団体判断が食い違うという問題も今度は逆の問題として出てくると思います。  そこで、これは運用でも構わないと思いますが、そうした場合には必ず例えば地方公共団体は国の意見を聞く、また国も地方公共団体意見事前に聞くということがひとつ必要かと思います。  それから、両者の判断が食い違って国は出してほしくない問題を地方公共団体が出す、あるいは地方公共団体が出してほしくない情報を国が出すというときに、事前にやっぱりそれを争う仕組みはあってしかるべきだろうと思うんです。  現在この点は、御指摘のASWOC訴訟におきましては、そもそもそういうものは抗告訴訟法律上の争訟ではないんだということで認められていなくて、今これは最高裁に係属しておりますから、最高裁がどういう判断を示すかということはわかりませんが、仮に最高裁がこうした問題については法律上の争訟ではない、あるいは法律上の争訟であるにしても抗告訴訟の原告適格が認められないということになれば、何らかのそうした開示決定事前に争って司法審査をするシステムというのはこれはどちらにとっても必要じゃないか。国が地方公共団体が出してほしくないという情報を出すということもこれからはあり得るわけですから、どちらの場合を考えてもそういうシステムというのを考える必要があるんじゃないかと考えております。
  69. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 私も、高度に専門的で国家として守らなければならないというものが全くないとは言わないんですけれども、きょう相模原の例を出しましたのは、一体高度に専門的で国家として守らなければならないものというのは何かということが今回の法律なりこれまでの条例で非常にそれが広く緩やかに解釈されている。そういう観点から、非常に今回の法律案についてもかえって懸念を持っているんです。  法案の五条三号ないし四号も含めてですけれども、「行政機関の長が認めることにつき相当理由がある」というところの要件を除いても、いわゆる国家安全保障にかかわる重要な情報というのは保護されるんではないかと。私の方は、今までの自治体の条例、それに関する国のいわゆる主張なんかを見るとそのような考えを持つわけです。  それからちなみに、ASWOCの裁判については法律上の争訟かどうかというのは議論になっていますけれども、あれは建設省の方はその辺について余り開示、非開示のことについて問題にしなかったという点もありますので、本当に防衛施設局において公開を不必要とするのであれば事前にかなりもう少し那覇市の方に説明をなさった方がよかったのではないかなと思うんです。  そういう個別具体的な不開示解釈をこれから法律ができれば国のいろんな機関の方もなれてくると思いますが、ぜひ個別具体的な主張で争えるような形にしてみたいなと考えています。
  70. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今のお話、宇賀参考人は何らかの制度整備するという、私は全くそのとおりだと思います。また、三宅参考人のおっしゃっている問題も、これからは情報公開法ができたらちゃんとしっかりした人間が、今までしっかりしていないという意味ではないけれども、こういう今世の中になったんだ、そういうことでお互いの信頼関係で私はよりよく解決していくんではないかなと希望を持っておるわけであります。  それでは次に、管轄の問題なんですが、今、衆議院の方の各党一致で高裁のところまでおりてきたわけです。それは衆議院方々に聞かなければならない問題でもあるかと思いますが、外から見て、法案作成にタッチしなかった、しかし見識のある皆さんから見て、今までは行政訴訟というのは一カ所だ、それは中央官庁のところが非常に多いから、そして東京というのは裁判官の数も多いしそれからそういうものにたけておる人たちも多い、そして統一的な基準として国が示すのはふさわしいと、今のところは、将来の話は別として。そういうふうに考えられていたわけです。そして、最初の案はやっぱりそういう考え方に基づいておったんだけれども、いろんな人の御意見に従って高裁までおりてきた。  では、高裁までおりてきた理論は、先ほど江田先生もちょっとおっしゃっていたけれども、高裁までおりてきた理論は何なんだ。その次の理論としてはどういうものがあるのか、継ぎ足し継ぎ足しじゃなくて、やっぱり基準をつくって、これはまたお話しのように、そういう議論も大事だけれどもある段階が来たら早くやることが大事なことだというふうに言われておりますが、今の議論が非常に今沸騰しておるわけです、この委員会では、外もそうでしょうけれども。  そこで、改めてお尋ねしますけれども、もう一つ落としたら、もう少し広めたらどういう基準になるでしょうか。例えば、今沖縄のが焦点でしょうけれども、沖縄は今、三宅参考人のおっしゃったように、大田中将のお言葉もあるし、そういう特別なことというのはわかります。しかし、そういうものを離れて日本の国の法体系として次の段階ならどういう基準になるか。今の八つというのは一つの理屈だな、そこらのところの御意見をお尋ねしたいと思います。  後藤先生にも後で、全然専門以外のことでしょうけれども、この雰囲気を御承知でしょうから、順次ひとつ考え方を教えていただきたいと思います。
  71. 宇賀克也

    参考人宇賀克也君) 今回、衆議院の方で修正されて出てきた案というのは、先ほど江田委員の方から革命的という言葉がありましたけれども、まさにそのとおりだと思います。従来の考え方からしますと、自分の具体的な権利、利益を害された方ですら行政庁所在地が原則のもとで、請求目的も問わず何人でもできるものについてそれ以上に広げるということですから、私はまさに革命的という言葉がぴったりすると思います。  そこで、大変な御苦労の末に高裁の所在地の地方裁判所という、そこの高裁所在地というメルクマールで一つの基準をお立てになった。これは本当にぎりぎりの御判断としてこういうのが出てきたんだろうというふうに思います。  その後、いろいろそれでも不便なところが残るというところはわかるんですが、ただ、それを言い出しますと、実はもっといろんなところがございます。例えば、私はかつて東京都の小笠原村に行こうと思いましたら、飛行機が全くなく、今でもそのようですけれども、フェリーで二十五時間かけて行くしかない。しかも、六日に一回しか出ないので五泊しないといけないんです。六日目に乗りおくれてしまうともう六日待たないといけないというので結局行くのを断念したことがございます。それから、北海道を旅行しておりましたときも、札幌に行くのに、実は那覇から福岡に行くよりももっと時間がかかってしまうようなところもあるんです。  ですから、そういったところの方たちのお気持ちなども考えますと、高裁所在地という固有名詞の出てこないところで一つの区切りをおつけになったというのは、まさにぎりぎりの御判断で、それ以上にまだ不便なところが残りますよということを言っていきますと、実はもっと自分のところはどうしてくれるんだというところがいろいろ出てくるんじゃないかという気がいたします。
  72. 三宅弘

    参考人三宅弘君) 先ほど行政情報公開部会の議論の話をしましたが、従前制度のものを借りるから、抗告訴訟という制度を借りるから被告所在地ということが原則であるかのような意識になるわけです。情報公開法は何人にも請求権を与えるんだから抗告訴訟じゃないという割り切り方をして、別個の観点から考えればやはり原告、請求する人の所在地で裁判ができるというのは基本的には原則だと思うんです。  ただ、借り物の抗告訴訟制度の中で、これは先ほど江田議員のお話がありましたけれども、やはり行政事件訴訟法ができた当初における国民の意識と、今のそれは不便だという意識は、またこれから審議会などで議論されるのかもしれませんが、そういう歴史的な流れの中で、どこから改正の糸口を見出していくかということが今回こういう形で行政事件訴訟法の改正の糸口が全国八カ所というような形であらわれていると思うんです。  実は、日弁連で昨年の秋に行政事件訴訟法の改正のシンポジウムを持ったんですが、最近の例としては珍しい例なんです。つまり、学者の中でも今までそれを積極的に提言される方はなかったし、それと官僚からそういうことが出るわけはないので、そういう意味では今回八カ所に広げたということは、行政事件訴訟法の改正に結びつく糸口であるし、被告の住所地にしなければいけないという理論的な前提は崩れ去った、そういう意味からはもう一つつけてもいいだろう。  さらに、その点で沖縄の特殊性というのは沖縄に、現地に行きますと、やはりヤマトンチュとウチナーンチュといういろんな意識の違いみたいなものも感覚として感じるし、非常に熱い思いを感じますので、そういう点から行政事件訴訟法の改正に進めてもう一歩進んでいただければ、さらに国民に便利な制度に近づくんではないかなと考えているわけです。
  73. 後藤仁

    参考人後藤仁君) では、素人考えをお許しいただいて申し上げます。  実は、日本じゅうの公文書館で今一番立派な公文書館は沖縄県の公文書館だと思います。やはり戦争で文書が焼かれて残っているものは少ないんですが、アメリカの占領下、琉球政府というのがございまして、その時代の文書が残っております。その琉球政府というのは、行政主席がいて立法院があって裁判所があって、三権があった、そういう政府だったんですね。やっぱり沖縄というのはそういういろんな特別な事情があるところだと思います。ですから、裁判についても一種独特の扱いがあってもいいのかなと、そんな感じを琉球政府文書というものを見ながら感じたことがございます。
  74. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 どうもありがとうございました。
  75. 竹村泰子

    委員長竹村泰子君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、本日は大変御多忙な中、私どもの委員会のためにおいでいただき、そして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会