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1999-08-06 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月六日(金曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  八月五日     辞任         補欠選任      菅川 健二君     奥村 展三君  八月六日     辞任         補欠選任      笠井  亮君     宮本 岳志君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 浜田卓二郎君                 池田 幹幸君     委 員                 岩井 國臣君                 片山虎之助君                 西田 吉宏君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 山下 善彦君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 益田 洋介君                 宮本 岳志君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 奥村 展三君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君    政府委員        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      山田 昭雄君        大蔵政務次官   中島 眞人君        大蔵大臣官房総        務審議官     原口 恒和君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省金融企画        局長       福田  誠君        大蔵省国際局長  溝口善兵衛君        通商産業大臣官        房審議官     林  洋和君        中小企業庁次長  殿岡 茂樹君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨五日、菅川健二君が委員辞任され、その補欠として奥村展三君が選任されました。     ─────────────
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 租税特別措置法の一部を改正する法律案(閣法第一一七号)を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 金田勝年

    金田勝年君 今回の租税特別措置法案につきまして十五分の時間をいただきました。そこで、しっかりと質問をさせていただきますので、ひとつ考えを明らかにしていただきたいと思います。  今回の産業活力再生法及び税制上の措置というのは、去る六月八日に私どもの党の臨時経済再生産業競争力検討チームにおきます取りまとめに基づきまして、六月十一日に政府におきまして産業構造転換雇用対策本部決定緊急雇用対策及び産業競争力強化対策決定を受けたものであります。それから約一カ月の間に、例の十一年度の第一次補正予算を成立させ、そしてまた今回この法律案審議するという、極めて緊急的かつスピーディーな対応を行ったものであると考えるわけであります。六月十七日までの百五十日間の会期を五十七日間延長する際の大事な根拠の一つとなったのも記憶に新しいところでありますし、政策的にも政治的にも重要な措置であるというふうに考えるわけでございます。  そういう中で、引き続き現下の経済情勢を考えますと、景気回復がまさに正念場に差しかかっておるという時期でもございます。このようなスピーディーな対応が非常に重要であるという点をまず申し上げたい。そしてまた、そういう関係者努力に対しては非常に評価をし、今後もそういう方針で頑張っていただきたいというふうに思うわけでございます。  まず、振り返ってみますと、平成十一年度通常国会におきまして、三月に当委員会税制改正について審議いたしました。所得税法人税住宅ローン税制、それから有取税、そういう各税につきまして、国と地方合わせて平年度ベースで九兆円を超える規模減税を行うことをこの委員会審議して実現したわけでございますが、こういうものは政治の強力なリーダーシップのもとで関係者努力でできたわけでございます。言ってみれば、この春の措置におきましては個人消費とか設備投資拡大という効果、すなわちディマンドサイド政策効果を主眼としていた、それを期待したものであったというふうに言うことができると思うわけであります。  一方で、今回の産業活力再生法に伴います税制上の特例措置が講じられたことにつきましては、今申し上げたディマンドサイド措置に比べまして、それに加えてといいますか、今度は企業体力強化を通じて生産性を上げていこう、そして経済活性化させていこうという、いわばサプライサイド施策であるというふうに評価できると思うわけであります。  具体的な中身としては、法人税等につきましては、新たな設備投資に係る特別償却、それから共同で現物出資をした場合の譲渡益課税の繰り延べ、設備廃棄に係る欠損金特例といったような特例措置、そしてまた登録免許税につきましては、増資登記等登記に対する軽減税率特例措置といったようなものも内容としておりまして、極めて技術的、専門的であるわけでございます。また、十三年三月までの時限措置ということであるわけであります。  いろいろと聞きたいこともあるわけでございますが、時間との相談もございますので、かいつまんで質問をさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  そこでまず、大蔵大臣にお聞きしたいのでございますが、我が国経済再生させて自律的な成長軌道に乗せるというためには、まさに努力しようとしている企業、その企業事業構築に向けての取り組みを促進させるように支援する措置というものを通じて企業活性化を図る、これが経済再生につながるという考え方に基づく今回の産業活力再生法案につきまして、今回こういう税制措置をあわせとりましたことの必要性といいますか必然性といいますか、それからその効果につきまして確認を申し上げる意味大蔵大臣にお聞きしたいと思う次第であります。よろしくお願いします。
  5. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたびの産業活力再生特別措置法及び租税特別措置法案の持っている意味でございますが、今、金田委員の言われたところが全体の中での大局的な把握であると私も思いますが、私自身のまた別の見方で申しますならば、昨年、小渕内閣が誕生いたしまして、不況脱却を図ろうと考えましたときに、一つは御承知のように財政措置財政の出動でありますとか減税でありますとか財政に関するもの、もう一つ金融に関するもの、これらをさしずめ緊急かつ大規模にしなければならないということを考えましたことは御承知のとおりであります。  その次の段階、それが今の段階であると思っておりますが、前から予想しておりましたが、次に来るべきものは、恐らく施策が進んでまいりますと、企業リストラクチャリング雇用の問題であろうというふうに考えておりました。殊に、企業リストラクチャリング金融リストラクチャリングをやってまいりますと、そこから必然的に出てくる問題だと思います。やはり一つは、二十一世紀に向かって我が国が本当に国際的な視野で競争力を持つためには、従来の遊休あるいは劣化した設備というものをどうしても廃棄するなり更新するなり、そういう根本的なリストラクチャリングが要るのではないかというふうにも思いました。  また今おっしゃいますように、サプライサイドという見方もできると思うのでございますが、そういう不況脱却の恐らく最後の段階と申し上げたいところでありますけれども、に起こってくるのは企業リストラクチャリングであり、したがってやむを得ないことでございます。そういう意味で、雇用に及ぼす影響への対応といったようなことで、雇用につきましては、先般、補正予算も通過をさせていただきましたし、十年度補正、十一年度の本予算でも一兆円施策というものをしてまいりました。雇用についてはそういうことでございます。  企業リストラクチャリングについては、ただいま御審議いただいておりますこの二つの法案が大事なのではないかというふうに考えてまいりましたところであります。  通産省のお立場からいえばもっとオーソドックスな御説明があると思いますが、私としてはそういう見方もしております。
  6. 金田勝年

    金田勝年君 通産省からもおいでいただいていると思いますが、きょうは経済産業委員会産業活力再生法審議を行っておるわけでございますが、今回の法案が、この税制上の措置も一緒にどの程度緊急性にこたえたものとなっているのか、それから全体の措置とも相まってどの程度効果が期待できるのか、そういうことにつきましてわかりやすく簡潔に教えていただきたいと思います。
  7. 林洋和

    政府委員林洋和君) お答え申し上げます。  私ども問題意識あるいは急いだ背景を手短に申し上げますと、第一には、国際的な競争環境が非常に厳しくなっておるということでございます。モービル、エクソン、ベンツ、クライスラー、ダウ、ユニオンカーバイド等々、世界的な大合併を背景として国際的な競争環境が非常に厳しくなっているというのが第一点であります。  第二点、我が国経済全体、これは製造業だけではございませんで、むしろ、非製造業をも含めまして生産性上昇率が非常に低下しております。今やOECD平均よりも下回っているという状況でございます。他方収益というのを見た場合に、ROAで見ますと、欧米企業が一〇%平均であるにもかかわらず日本企業は二%強でございます。これはどういうことを意味しているかというと、日本企業に世界じゅうのお金が入ってこないということでございます。先生承知のように、名立たる企業であるにもかかわらず社債を出せない、あるいはCPが投資不適格になる。これは生産性上昇がない、あるいは収益を上げられないということの結果でございます。  第三点、国際会計基準への移行でございます。連結、年金債務あるいは時価評価、こういったものがマーケットによる日本産業企業評価を一層厳しくするということでございます。  こういう背景のもとに、私ども今回の法律のキーワードは選択と集中でございます。やはり、生産性の高い分野収益を上げられる分野経営資源を投入するべきであるというのが基本的考え方でございます。  ただ、私ども、この法律は第一歩だと思っております。例えば、いわゆる事業構築につきましては新再建型の法制、これは臨時国会があれば臨時国会に出てくると思います。あるいは商法の抜本的改正である企業分割法制、こういった商法的な部分、それから中小企業、ベンチャーでは中小企業基本法改正等、あるいは技術開発につきましては小渕総理も言っておられますミレニアムプロジェクト等の官民共同した研究開発体制の整備、こういったものも進めながら、相まって生産性の上がる経済収益を上げられる日本経済にしていきたいと思っております。
  8. 金田勝年

    金田勝年君 生産性の高い事業あるいは高い分野経営資源をシフトさせていく、そういう考え方が今言われたわけですけれども、やはり我が国産業活力ということを見たときに、その九九%近くを占める中小企業というものが我が国経済を支えている現状というのはきっちりとあるわけでありまして、そういう中小企業再生なくして我が国経済再生というものはあり得ないというふうに思う一人でございます。その中小企業に対する業況判断というのは、七月の初めに発表された日銀短観を見ても、非常に改善のテンポが遅いというふうに思われるわけでございまして、そういう中で中小企業を軽視するようなことは、税制上の措置を今回適用するに当たっても、準備するに当たってもそういうことがあってはいけないというふうに考えるわけですけれども、どのような税制上の配慮がされているのか。  そしてまたもう一つ、いろんな議論がなされている中で、産業活力再生法案につきましては、そもそも経営者の過去の失敗救済するのではないかというふうな指摘とか、あるいは経営モラルハザードといったようなものが指摘されるという側面もあるわけでありまして、やはり企業過剰設備廃棄に対して税制面での優遇措置を講じているんだけれども、これについては厳しいチェックがシステム上働く形に持っていくことが国の税制上の支援を企業に対して講じる場合のやはり基本的に重要なポイントということになろうかと思うんです。  ですから、そういうことについて、時間の関係で簡単にお答えいただきたいと思います。
  9. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) まず最初に、中小企業が大切であるというお話がございました。今回の税制改正におきましても、中小企業に対しましては新規設備投資について特別償却率を上乗せする、また税額控除制度選択制中小企業については認めるということになっているとともに、対象設備についてもあらゆる種類の機械装置対象とするというふうにしているところでございます。  それから第二点目の、過去の失敗救済ではないかというお話でございましたが、今回の設備廃棄に係る欠損金特例措置でございますが、設備廃棄に伴う事業構造の変更に加えまして、新商品の開発など事業革新をあわせて行うもの、またそれを事業構築計画として定めまして、その認定を受けた事業者に限定するということになっておりまして、過去の失敗救済というには当たらないというふうに考えているわけです。  それから、チェックの問題がございました。この産業活力再生特別措置法に基づきこの計画認定を行う場合の基準でございますが、これはまさに透明性を重んじまして、また税の立場からも客観性のある指標を今後つくっていきたいというふうに考えておりますし、またこの認定を受けました事業者計画でございますが、これは公表することになっておりまして、国民のチェックもあわせて行われるということになっております。
  10. 金田勝年

    金田勝年君 もっとお聞きしたいことがあるんですけれども、今回の措置が多くの企業に活用されて、しっかりと経済に好影響を与えることを願い、そして行政当局においてもしっかりとそういう対応を頑張っていただくことをお願いして、終わります。
  11. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 三十分間という短い時間ですので、早速、端的に質問させていただきたいと思います。  最初に、当局にお聞きしたいわけでありますが、今回の租税特別措置法によって減税規模はどのぐらいになるんでしょうか。
  12. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 今回の税制改正に係る減収額でございますが、年度改正の際の増減収見積もりの手法によって行いますと、平年度約四十億円程度と見込んでいるところでございます。
  13. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 通産省はどう見込んでいますか。
  14. 林洋和

    政府委員林洋和君) 企業等税制措置によって受けますプラスの影響額として約三百億円程度になると考えております。
  15. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大蔵は四十億と言い、通産が三百億と言い、その違いはどこにあるのかというのはわかりませんが、ある意味では金額的に見るとその程度だと。これは、過去のいわゆる租税特別措置もそうなのでありますが、一体効果が上がったのかどうかということについて、非常に税収が落ち込んでいるときに、なおかつまたこうして企業に対して租税特別措置を通じて減税恩典を与えていく、たかだか四十億、大蔵でいえばそうですが、そういうものが本当に効果が上がっているのだろうか、この点はある意味では費用効果の面で十分に点検されているんだろうか。これは通産省でしょうか、大蔵省になるんでしょうか、その点についてどのように考えておられましょうか。
  16. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 租税特別措置はまさに税制の手段を通じて政策を行うものでございますが、他方において、税の公平という点を犠牲にして政策目的を実現しようとするものでございます。  それで、租税特別措置につきましては、従来から期限を付しまして、その期限到来ごと費用効果といいましょうか、政策効果を常に吟味しているところでございます。
  17. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 常に点検をしているところですということですが、私もかつて与党の税制調査会のメンバーでいろいろ議論したことがあるんですけれども、一度たりともこれがどのような効果があったのかということを数量的に把握したことはなかった気がいたすわけでありますし、ましてや企業にとって、特に大企業で、しかもある意味では利益の上がっている企業恩典を受けていくということで、本当にこの点効果があるのかなと思います。  ちなみに、最近実はフォーリン・アフェアーズの論文で、マイケル・ポーターさんと一橋大学の竹内弘高先生の、一番新しい「論座」に載っていた論文を見たわけですが、産業政策として今までやってきたことで、政府が支援して成功した例というのはほとんどないんじゃないのかと。一番新しい雑誌の巻頭に竹内教授が、日本の戦後のヒット作品をずっと見ると、ミシン最初ヒット作品に挙げるだろう、続いて電化製品とか、そういうハイテク製品が出てくると。今や二十一世紀ゲームソフトの時代だろうということをおっしゃっていまして、政府がそのうち大きな影響を持ったのは最初ミシンぐらいであって、続いてハイテク製品とかそういうものは今度は企業になったと。やがて、ドラクエだとか、私も余りそちらの方は強くないんですけれどもゲームソフトというのは個人が非常に重視されるということです。  そうすると、これからの産業政策というのをずっと見たときに、政府が介入することあるいは政府がいろいろ支援すること、これはもちろん一定の効果がないということは私は言えないと思うのでありますが、果たして戦略的に産業構造産業を発展させていく上において大きな効果を持っていると思われる、あるいはこれから発展するだろうと思われるところにちゃんとこれは照準が当たっているんだろうかなという点、非常に私は疑問に思っているわけであります。その点をここでやっても仕方ありません。  そうした中で、ストックオプションという制度は、私はある意味ではそういうことを刺激するという点では非常に効果があるというふうに思って、予算委員会で、当時は村山総理だったですけれども、このストックオプション税制を導入してはどうだということについての意見を出したことがございまして、ようやくストックオプション税制が入ってきておりますが、さてこれはどのように使われているのか、どのぐらいのストックオプション税制が活用されているのか、この点、実態はいかがになっていますでしょうか。
  18. 林洋和

    政府委員林洋和君) ちょっと詳細なデータを持っておりませんが、私の記憶によりますと、平成九年の六月にできてからたしか六十九件ではないかと思います。
  19. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 これは大蔵じゃなくて通産になりますか、六十九件、金額にしてどのくらいになっているんでしょうか。概算で結構でございます。
  20. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 平成十一年の六月現在で申し上げますと、上場公開会社におきまして二百四十七社、新規事業法においては十三社、計二百六十社というふうに調べております。
  21. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 このストックオプションというものがこれからも活力を進めていく上においてぜひとも充実をさせていく必要があるのではないかなというふうに思っておりますので、その点はまたぜひ制度充実に向けて努力をしていただきたいと思います。  さて、実は六月十一日、政府産業構造転換雇用対策本部決定された文書なんですが、大蔵大臣にちょっとお聞きします。  この中で、「我が国経済自律的発展を図るため、経済供給面での体質強化を図る産業競争力強化対策を強力に推進する。」と、こういう表現があるんですね。政府文書供給面体質強化という表現を使ったのは私の記憶では初めてじゃないかと思うんですが、大蔵大臣、これは初めて使われた言葉でしょうか。それとも過去にこういう表現を使っているということがあるんでしょうか。  そして、もっと言いますと、この供給面での体質強化ということについて、何というんでしょうか、昨年、宮澤大蔵大臣が就任されて以降、何でもありというか、まさに一回の表から大魔神を投入するという表現がございましたけれども、そういう流れの中でこれからは需要拡大路線、これよりも供給面の重視、もっと言えば、先ほどこちらでもありましたサプライサイダーといいますか、エコノミストの間では随分激しく対立しているようにも聞いておりますが、そういった点について、この六月十一日の決定というのはそういう重みのある決定なんだろうかな、どうなのかな、この点ちょっとお聞きしてみたいと思うのであります。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 偶然に先ほど金田委員に申し上げたところでございますけれども、昨年の今ごろ小渕内閣が発足して、私は財政税制金融、この三つの問題にまず集中しなければならないと思っていたしましたが、次の段階は必ず企業リストラクチャリング雇用になるだろうというふうに考えておりました。  それで、幸か不幸かと申しますか、財政税制あるいは金融の問題につきましては一応施策が行われまして、ことしに入りましてまさしく残ったものが企業リストラクチャリング、それから雇用というそういう段階に入ってきたと思っておりましたから、そのことを供給サイドと言えばまあそういうことであろうかと思います。  とかく需要が不足だというふうに問題意識需要サイドにあれば、いや供給サイドにも問題があるだろうという話が出てくるのは当然ですけれども、ただこのたびの産業強化法案というのは、ある意味で私は二十一世紀というものをにらんでおるというふうに思っておりまして、つまり過去における過剰になった、あるいは遊休になった設備そのものをこの際廃棄しておかなければ、もちろん設備投資が生まれないということもそうですが、二十一世紀対応できないだろうという、私の気持ちの中にはかなりそういう部分がございますので、ただ需要の手当てをしたから次は供給だなと、そう簡単にも考えておりません。  雇用の問題はもっともっと複雑でございますけれども、そういうフェーズになってきたというふうに私は思っていまして、おっしゃいますように、供給サイド云々というのが政府文書にかつてあったかどうか存じませんけれども、幾らかジャーナリスティックな表現であろうかなと思います。
  23. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 実は、「論争」という雑誌の七月号を読んでおりまして、その中で与謝野通産大臣が次のように発言されているんです。これは「供給サイド改革は急がば回れだ」なんということになっておりますが、そこの中で宮澤大蔵大臣に言及したところがあるんです。どういうふうに書いてあるかというと、いずれにせよ過剰な設備廃棄のために関連法制政府があらゆることをやりますよ、その際、資金繰りに問題があったら政府系金融機関を含めて何らかの対応が必要だというふうに言った後で、「一方で、これは宮沢蔵相ども言われていることだが、銀行への先の公的資金投入は別に銀行を助けることだけではなく、その裏側にある企業との債権債務関係を、世間の批判を受けない形でちゃんとやってほしいという期待もある。そうしないと企業のバランスシートはよくならない。」、こういうふうに与謝野さんはおっしゃっているんです。ですから、これは宮澤さんが直接おっしゃったということじゃなくて、そんたくされているわけです。こういうふうにおっしゃっているわけです。  その前、私ども金融機関の問題に関して聞いたときに、昨年の金融国会もそうでしたが、何のためにやるんですかというと、これは金融システムの安定化のためにやるんですよということを強調されてきたわけです。今度は、企業のバランスシートをとにかく改善しなきゃいけないと。さっきも恐らく供給サイドというよりも、これは企業の負債のところを、バランスシートが非常に傷んでいるから銀行だけでなくて企業の方もやらなきゃいかぬ、ここのところをにらんであの七兆五千億円のお金も含めて供給したはずだよ、こういうふうに宮澤さんは思っているはずだと、こういうふうにおっしゃっているんですが、大蔵大臣はそう思っていらっしゃるんですか。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 思い当たる節はございまして、与謝野さんがこの際、産業活力をつけなきゃいかぬということを考えておられたことは明らかなんですが、私は私で、それは非常に大事なことなんだが、設備廃棄というものをやっていくとこれは必ず金融の方に関連が起こってきて、しかも多くの場合、協調融資であるから一行だけで話がつかないというふうに思われる、したがってこの話には金融界がその気になってもらわないとうまく進まないと考えまして、正直そういう気持ちで産業界にも呼びかけましたし、金融界にも、みんなプライベートな話ですけれども、御協力を要請してきたという経緯がございます。  そういう経緯の中からこの法律案が生まれておりますから、通産大臣がそういうふうに言われましたのはそのようなこととの関連であるかなというふうに思います。
  25. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今度の法案からちょっと離れるわけでありますが、今、経済産業委員会にかかっている産業再生法律で、中にデット・エクイティー・スワップ、いわゆる債務の株式化というのがございますですが、いわゆる企業の中のバランスシートをよくするというときに、当然、銀行企業に貸しておる、そうするとデット・エクイティー・スワップにしてそこを身軽にしていこう、恐らくこういう対応が考えられたのも一つだと思うんです。  その場合の、いわゆるデット・エクイティー・スワップは具体的には日本ではどんなやり方をやろうとしているのか、この点、まず大蔵大臣にお聞きしたいと思うんです。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前段の問題だけ申し上げますが、私が金融界に協力を非公式に求めておりましたときに、どういう処理をするかという話が当然問題になりまして、アメリカでやっていることなんかを見ていますとデット・エクイティー・スワップはあり得ますね、一般論としてはそういうことも考えていいんじゃないでしょうかと。独禁法の問題がございますけれども、そういう方法というのはないわけではないということを会話の中で申し上げておったことがございまして、それで私は比較的早い時期に、ちょっといびつな出方をしましたものですから正確に理解されませんでしたが、そういう経緯はございました。
  27. 林洋和

    政府委員林洋和君) いろいろなやり方があると思います。ただ、一般的には、多額の債務を抱えて経営が悪化した企業が債務免除を受ける見返りとして、債権者が当該企業の増資して発行した株式を取得する方法と理解しております。  ただ、通例の場合は、借り手側の経営者に対する責任問題、あるいは大胆なリストラの実施が前提になる、あるいは回収の可能性が高い債権を放棄することについては金融機関側において株主代表訴訟の対象になり得るというようなことから、米国の例では通例、経営に行き詰まった企業の再建の場合に使われる例が多いと承知しております。
  28. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そのときに、いわゆる破綻に瀕しているといいますか、そういう大変な負債を抱えているところの株主の責任というのは問われないんですか。減資をするということですか。
  29. 林洋和

    政府委員林洋和君) 通例問われると思います。私ども法案の中でも、法案に基づいて事業構築計画というのが出される場合には、減資などについて当然記載されるものだというふうに理解しております。
  30. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そういうことをやったけれども、さらにまた負債を株式化して、それを銀行なら銀行に渡すわけですね。つまり日本銀行がやはり株式を持っていると。もちろん、五%ルールですから五%以上持っちゃいけないわけです。そうすると、銀行にとっては、いわゆるデット・エクイティー・スワップで企業から負債を株式でもらうということになると、要するにバブルの原因になって、しかも貸し渋りの大きな原因になっているのは、御存じのように例のBISの八%規制ですね。そうすると、株価が上がったときはどんどん貸すけれども、株価が下がった景気の悪いときにはどんどん貸し渋りになっていくという大変まずい仕組みだということがはっきり出てきているわけです。そのときに、また株式でやりますというやり方は、どうも構造改革と言っている割に構造改革に逆行しているんじゃないのかという意見があるんですが、この点はどのようにお考えになりますか。  これはむしろ大蔵大臣にお聞きした方がいいと思うんですが、どうでしょうか。まず通産からやりますか。
  31. 林洋和

    政府委員林洋和君) いっとき報道等で、このデット・エクイティー・スワップが打ち出の小づちであるかのごとく報道されたこともございますが、私の理解では、これが有効に機能するという場合は限定的なケースではなかろうかと思っております。  例えば、ある特殊な要因によって債務が膨らんでしまった。PLとか環境問題とかそういうことで何百億、何千億の負債を抱え込んだ。他方、将来、収益を上げられる安定的な中核事業がある。そういった場合に、その特殊な要因によって抱え込んだ債務を株式にするようなケース、あるいは親会社が子会社の再建をするようなケース、あるいは特殊な要因によって過少資本で過大な債務があるようなケース等、かなり限定されるのではないかと思います。  ちょっとお考えいただきましても、二千億の債務を株価二百円でやれば十億株が出てくるわけでして、どんなに大きな企業でも三十億株か四十億株でございます。その中にそんな大きな株数が出てくるというのは、株式の希薄化等の問題もございます。したがいまして、私が今申し上げたようなケースに現実には限定される場合が多いのではないかというふうに考えております。
  32. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 公取にお聞きしますが、この法案の中、今度の法案じゃありませんが、全体として、公正取引委員会の独禁法のいわゆる柔軟な解釈とか、そういう表現がここの中に出てくるんですが、この五%ルールを緩めろとか、そういうことを恐らく指しているのではないかなと思ったんですが、この点についてはどのように公取は考えておられるでしょうか。
  33. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) お答えいたします。  独占禁止法は、金融会社による事業支配力の過度集中を防止するというために金融会社が他の会社の株式の五%を超えて保有することを禁止しているわけでございます。ただ、十一条のただし書きで、事業の性格上あるいは債権保全の一環としましてこのような制限を超えて株式を保有する必要があり、かつ事業支配力が過度に集中するおそれがない場合については認可を行うと言っているところでございまして、私どもは独占禁止法の執行を行っているところでございますので、法律を適正に運用していくということでございます。  金融会社による債務の株式化に係る株式保有につきましても、このような十一条の趣旨を踏まえまして適切に運用するということでございます。政府決定に盛り込まれております事柄もこの運用の明確化を図るということでございまして、決して何か弾力的とかいうことではないと思います。あくまでも法律の趣旨に基づいて適切に運用していくということでございます。
  34. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 先日も何か千葉市で談合のやみカルテルがあったとか、むしろ日本の社会の中ではそういう仕組みを直していくということの方がはるかに経済活性化に役に立つのではないかと思っておりますので、ぜひ公取にはこれからも、総務省という妙なところにつけられましたけれども、機能をアップするように頑張っていただきたいと思います。  さて、ちょっとお話をまた別の方に変えたいんですが、例の信用保証協会の二十兆円の特別融資枠、これはどのぐらい今最新で使われておりますでしょうか。
  35. 殿岡茂樹

    政府委員(殿岡茂樹君) この特別保証制度でございますけれども、昨年十月に発足いたしまして、この七月までに合計で九十万六千件、金額にいたしまして約十六兆四千億円の利用がございます。大変多くの中小企業に利用していただいているところでございます。四月以降になりまして、大分保証の状況も落ちついてまいりまして、このところ月約五千億円ぐらいの保証という状況になってきております。
  36. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大蔵大臣は、これはちまたに非常に効果があったと、私どもは貸している先については非常に問題が含まれていやしないかなというふうに絶えず懸念はしておりますけれども、そのことは別にしまして、さらに十兆円程度この枠をふやしたらどうだという声があるやに聞いているんですが、財政の責任者としてそういうことについての御見解がもしあればお聞きしたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的には、入り用があれば財政でお手伝いをすることは決してやぶさかでございません。今、通産大臣がお話ししておりますと言っておられるのは、あと三兆余り今のお話ですと残っておるわけでございまして、それで月の平均が五千億であったらかなりまだ時間がある。しかし、季節によって変動して大きくなるかもしれないということもあるかもしれません。そんなようなところだと言っていらして、私はお入り用なときはいつでもお話に応じますと申し上げてございます。
  38. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 わかりました。  もう時間もなくなりましたので、また大蔵大臣に、最後の質問になると思うのでありますが、実は、二日前、長銀、日債銀を中心にした予算委員会がございました。私は十分フォローして聞いていたわけじゃございませんが、非常に最近割り切れないものを感じていることがございます。  それは、私の地元の拓銀で元頭取が二人、常務が一人告訴されたわけです。刑事罰の対象になったわけでございます。その方々ももちろん経営者責任という点ではあるんだろうと思うんですが、もともとバブルを起こした最初のきっかけをなした一九八七年、八八年当時、その当時に一番最初段階における経営責任を起こした方々は実は逮捕されていないわけですね。時効の壁に完全にガードされてしまっているんです。  ですから、いわゆる奉加帳を回したときの責任の問題云々かんぬんだけではなくて、どうも国民の中には、あれだけ大量のお金を注ぎ込み、金利をゼロに近い状態にし、業務純益を非常に大きく膨らませながら金融機関を支えてきた、しかし政財官のその責任のとり方たるや、政界においてはどうなんだろう、業界においてはどうなんだろう、あるいは官の世界では大蔵省の責任はどうなんだろうという問題になってくると、不思議とそこが非常に問題だと思われながら、その人たちがいつの間にか責任から逃れてしまっているという大変不満の声が私どもに聞こえてくるわけなんです。  それで、宮澤大蔵大臣、私は、一度ぜひお聞きしてみたいと思ったのは、こういう八〇年代に起こしたバブル、トータルの責任というのは、今さら時効五年を十年にしろといったってそれはむちゃな話ですからそういうことは申し上げるつもりはないんですが、この構造を明らかにしていくという何らかの作業をこれはどこかできちんと後世の歴史のためにもやっておく必要があるのではないだろうかなというふうに思えてならないのであります。  アメリカでは戦前にペコラ委員会というのが議会に設けられたというふうに聞いていますから、それは議会に設けるのが一番いいのかもしれないんですが、これはもう政治家宮澤大蔵大臣に、そのあたりの責任問題というのを国民が本当に納得し、しかも後世から見てなるほどここに問題があったんだなということを、しかもそれは政の側、官の側、業界の側、そこら辺をきちっとどこかで明らかにしないと、何か結果的に刑事責任を問われた人たちだけに問題があったような形になって、非常に後世の歴史にとっても不平等、不公平な形になってしまうんじゃないかというふうに思えてならないんですが、この点を宮澤大蔵大臣にお聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その問題には満足にお答えを申し上げる力が自分にはございませんけれども、何度か本会議で申し上げたことは、一九八五年にプラザ合意というものがあって、二百四十二円であった円が、今日は百十四、五円でございますが、途中で七十九円まで行ったりしておりますから、大変なことが日本の社会全体に起こった。その中でバブルがありバーストがありということで、私は国会でお尋ねを受けましたので、自分がやっぱりこれに十分に対処できなかった、あのときどうしたらいいかということはなかなか考えてもわからない部分がございますが、十分に対処できなかったことは結果からいえば明らかであるということを何度か申し上げました。  それでございますので、今たまたま峰崎委員は刑事事件としてお話をおっしゃいまして、そのとおりでございますが、この八五年以後、日本に何が起こったかということはやはり総合的にいつかかなり大々的に顧みられなければならないのではないかと思っています。その中で、例えば何々銀行についてどういうことが起こった、中興の祖と言われたはずの方が実はその元凶ではなかったかというように価値判断が変わったりいたします。その辺のところも全部包んで、大変大きな大河、大きな流れだったと思います。ある意味でいい悪いということもございますが、何が現実に起こって、どういう判断をしてこれに対処し、対処できなかったかというようなことは一遍やはり、まだ早いのかもしれませんが、大々的に検討されなければならないことではないかというふうにひそかに思っておるところでございます。
  40. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ありがとうございます。終わります。     ─────────────
  41. 勝木健司

    委員長勝木健司君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、笠井亮君が委員辞任され、その補欠として宮本岳志君が選任されました。     ─────────────
  42. 広中和歌子

    広中和歌子君 残りの貴重な時間をちょうだいいたしまして、新宮澤構想について再度御質問させていただきたいと思います。  タイのバーツの下落に始まるアジアの通貨危機、そしてそれが経済危機に広がる中で新宮澤構想というのが発表され、それが三百億ドルという大きなお金、円に直してみましたら三兆五千億という大きな金額でございまして、年間ODA予算の三倍にも当たる大きな規模でございます。それがどのような形で使われ、そしてどのように評価されているかということについてまずお伺いしたいわけでございます。  新聞報道などによりますと、「「宮沢構想」半年—高い関心、非対象国から要請も」という何かポジティブな見出しの記事もございますけれども、「三百億ドル支援 効果不透明」といった見出しもございますし、軍施設や大学建設に投入、景気回復基調で関心低下といったような論調もございます。  そういう中で、この宮澤プランですけれども、どのような形で総額どれだけ今のところ使われたのか、まずお伺いいたします。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 簡単に経緯を申し上げますと、一昨年の七月にタイで起こりましたああいうことが各国に蔓延いたしまして、その直後の各国の問題は二つございました。  一つは、我が国と同じで、非常に失業が出て、そしてインフラの整備をしなければならない、ソーシャルセーフティーネットを張らなければならない、公共事業をしなければならない、そういう資金の不足、これに対して我が国から支援をする部分が百五十億ドル。もう一つ、これは我が国と違いまして、これらの国々は輸出をしなければなりませんが、そのための原材料を輸入する外貨がないので、その外貨の手当てを当面してあげなければならないというのが百五十億ドル。この二つで、五カ国を対象にお求めに応じて支援をしてまいりました。  それから、ことしになりまして、次の段階の問題は、だんだん回復してまいりますから、各国政府が広く市場で国債を出したい、自力で金をつくりたい、また応募する人もいないわけではない、しかし信用が足りませんから自力だけではできないというときに、日本がその国債の発行について信用保証をしてあげればどこのマーケットでも国債が売れる。そういう部分にこれから二年間で一兆円ぐらいのお手伝いができるかと、それがあの構想の第二段階でございます。  第一段階で今どれだけになっておりますかは政府委員から申し上げます。
  44. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 大臣からお答え申し上げましたように、三百億ドルは二つの百五十億ドルの部分から成るわけでございます。  前者のインフラあるいは経済構造改革を進めるという部分につきましては、輸銀と基金で資金を供与しているわけです。これは中長期の資金でございます。これを今までにコミット、日本としてこういうプログラムに対して支援をしますという約束をしているものが現在までのところ百二十億ドルでございます。うち、輸銀が約八十億ドル、基金、OECFが四十億ドルということでございます。  それからもう一つの方は、その国が外貨の危機に見舞われたような場合に、短期の資金を供与いたしまして外需の不足に対応するという部分がございます。これにつきましては、韓国に対しまして五十億ドル、マレーシアに対しまして二十五億ドルの短期の資金を供与するファシリティー、スワップという形で行いますけれども、これを結んでおります。ただ、約束しているだけでございまして、発動はまだされていないわけでございます。  この二つを合わせますと約二百億ドルぐらいになるわけでございます。  ただ、前者の方は、そういう中長期に支援をしていくということでございますから、全部既にディスバースされたということではございませんで、百二十億ドルのうち約四十億ドルぐらいが供与され、さらにプログラムの進展に応じまして引き続き供与がなされていくということでございます。
  45. 広中和歌子

    広中和歌子君 これは緊急の経済対策でございますから、従来型のODAと違うということはよくわかるのでございますけれども、しかし三百億ドルの新宮澤構想ということで、多くの期待も集まっております。昨日、私、UNDPのアジア太平洋局長から訪問を受けまして、そして急遽、新宮澤構想に対して御要望してほしいといった依頼を受けたわけでございます。  先ほど御説明いただいた中長期の分の中で、アンタイドローン、その中でも、いろいろソーシャルセーフティーネットプログラムであるとか環境の問題であるとかといったようなものにも融資されているということでございますけれども、これはあくまでも要請ベースであるという中で、少なくともこの新宮澤構想の一〇%ぐらいを環境問題、そして末端に行き渡るような支援、ベーシック・ヒューマン・ニーズというんでしょうか、そうした社会福祉に至るような支援をしていただけないか。そして、そのプランに関して言えば、例えば国際機関、UNDPであるとかUNEPであるとか、そういうようなところと構想し合いながら、一〇%ぐらいの予算をイヤマークしていただけないか、そのような要望が来ているわけでございますけれども大蔵大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御理解いただいておると思いますが、今申し上げました二つのことはいわば緊急の場合のファーストエードみたいなところがございまして、制度としてというよりは、とにかく困ったときにというふうに考えましたので、いろんな意味で余り整合性がないと申しますか、しっかり積み上がったものでない、緊急のときにお助けをしたという感じなものでございますので、本来であれば、それ自身の評価がいろいろあるんだろうと思います。とりあえず、相手政府の言われることをお手伝いしたということでございますから、必ずしもそれがバランスのとれたリクエストでないだろうということはあり得ることだと思います。  ですから、今のようなお話は、UNDP等との御相談も本来のエードの形ですべきではないんだろうか。今のような私のいたしましたことを何度も続けてやっていい話ではないような気もしますので、そこは私どもの中でまたよく考えてみます。
  47. 広中和歌子

    広中和歌子君 本当にこれは誤解に基づくものかもしれませんし、私も三百億ドルというと一つのODAの延長線のように考えていたわけでございますけれども、これは緊急の経済対策であるということで、無理なのかもしれません。  ただしかし、同じお金が使われるのであれば、日本政府の方針として、少なくとも一〇%ぐらいは環境関係、そして雇用の創出につながるような形で使われるべきであるというようなメッセージを世界に向けて、特に対象の地域に対して発信していただけますならば、それは私どもが税金としてお出ししているこうした支援、そしてまたそれを受け取る側としても、日本のプレゼンスというんでしょうか、顔の見える支援ということになりますので、どうかよろしく御検討いただきたいとお願い申し上げまして、私の質問を終わります。  よろしくお願いします。
  48. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は活性化法案についての本会議質疑をやらせていただきましたので、きょうはその補足的な意味合いで若干の点についてお聞きをしたいと思います。  先ほど、この租税特別措置による減税効果といいますか減収額は幾らかという峰崎委員からの質問に対して、大蔵省の方から四十億円、通産省の方から三百億円という御答弁があったわけですが、この違いというのは、根っこから見れば三百億だが、つまりこの特別措置による、上積み減収額と言うと変ですけれども効果が四十億と、そういう趣旨と理解してよろしいでしょうか。
  49. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 私どもの平年度減収額は四十億円というふうにお答えさせていただきましたけれども、これは毎年度の、ただいま先生おっしゃいましたように、改正増減収ということを年度改正のときに試算してございますが、この手法によったものでございます。したがいまして、その税制改正なかりし場合、全体の税収にどれだけの影響を与えるかという観点からのものでございます。また、買いかえの特例のように、あるいは今回の欠損金の繰り越し、繰り戻しのように、性質上、私どもの増減収試算では試算していないものも含まれております。  通産省の三百億円というのは、まさにそういうもののメリットを受けるものの全体の総量が三百億円ということでございますから、ただいま先生のおっしゃったとおりかと思います。
  50. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 気持ちはよくわかるわけで、通産省はできるだけ大きく言いたいですよね。この法案効果があるということをおっしゃりたい。大蔵省はこれによって不公平は余り助長していないんだよということを言いたい。そういうことかなというふうには想像いたします。  それにしても、私も税のことはよくわからないところがあるんですが、この鳴り物入りの法案で租税面からのバックアップが四十億円、平年度で四十億円にすぎないというと、非常に限定されたバックアップ措置であるというふうに私は感ずるんです。どうなんですか、租税特別措置の今までの取り組みの中で見て、これはやっぱり思い切ってやったという措置なんですか。
  51. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) まさに欠損金の繰り戻し還付などについて申し上げますと、今までは例外的に一定の中小事業者の方を対象にしたものでございますけれども、それを今回やっておりますし、また今度のまさに買いかえの特例でございまするならば、一定の場合は九割まで圧縮記帳ができるというふうになっております。さらに、新規投資における特別償却にいたしましても、中小企業について今までの最大の税額控除制度まで設けられているということで、決して手を抜いているとかそういう御批判は当たらないものと実は思っております。  なお、もう一言申し上げさせていただきたいわけでございますが、例えば買いかえの特例について申し上げますと、これはまさにこの措置によりましてそのような動きが出てくるわけでございます。だから、ある面から見ますと確かに租税特別措置ですから減収になるわけですが、例えば買いかえの特例の場合でございますと二割の部分は増収になるわけでございまして、我々はそれはこれまで計算できないと言っているわけでございますが、それを通産省の方では全体を見まして百億円ぐらいにはなるんじゃないかというふうに言っているわけでございますので、実態面のお話としては相当な措置が講じられているというふうに私どもは考えております。
  52. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 大蔵省の言い分はよくわかりました。  通産省はどうですか。
  53. 林洋和

    政府委員林洋和君) 今、主税局長から御説明がございましたように、大蔵省の方では計算に入れていなくて私どもで入れております項目というのが幾つかございます。それは、一つ欠損金の繰り戻し還付、それから二つ目は現物出資における譲渡益課税の繰り延べ、それから買いかえ特例でございます。  例えば、私の記憶では一週間ぐらい前の報道だったろうと思いますが、水島にある石油会社二社と石油化学二社が現物出資をして共同出資子会社をつくるというようなものもございますし、あるいは最近、この十月以降やりたいということで、例えば電子・電気メーカーが、モーターであるとか燃料棒であるとか、従来ライバルであった会社が共同子会社をつくるというようなことも公取の認可を受けて進みつつあります。  そういう意味で、現物出資譲渡益課税の繰り延べ、買いかえ特例、あるいは欠損金の繰り戻し還付等はこの法律ができればやりたいというようなことが結構ございます。そういう意味で、私ども期待をしておるところでございます。
  54. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 この問題はこのぐらいにしますが、日本経済の現状というのを考えれば、当面の景気がよくないというだけでなくて、それこそ、おっしゃるように大きな構造変化をなし遂げていかなければならない。これは大変重要な時期だという認識は私も共有するものであります。  戦後、傾斜生産方式に代表されるように、産業政策政策金融、そして租税特別措置ということで大きな経済成長を実現してきた。その過程で通産省はノートリアスMITIと言われたり、かなり大きな存在感を示してきたわけであって、私は、今、日本経済産業にとって未曾有の変革のときに、やっぱり政府が頑張るというのは必要なことだと思うんです。ですから、基本的にこの再活性化法というのは評価をしているわけであります。  それだけに、よほど大きな変化をなし遂げていかなければいけないわけでありまして、そのツールを提供するわけでありますから、批判はたくさんあると思いますけれども金融における思い切ったシステム安定化のための取り組みと並ぶように、やはり日本産業構造をしっかり変えていくという観点から大いに頑張ってほしい、そのために必要な措置というのは四十億が十分なのかどうかということも含めて大いにこれからも詰めていっていただきたい、そういうふうに思うわけです。  ただ、本会議の質問でも申し上げたんですが、やはりこれは何とかかんとか言っても主たる対象というのは大企業になっていくと思います。大体、こんな法律案を見て、これで勇気を持って事業認定計画認定を受けようなんと思うところはやっぱり少ないわけでありまして、先ほど金田委員から指摘したとおり、日本経済産業の大宗を支えている中小零細企業に対する配慮というのは、これも大事だけれどもそれもまた大事だということで、同じぐらいのウエートで取り組んでもらわなきゃいけないなと思っているんですね。  そういうことで言いますと、新規に事業を始めようとする方、あるいはまた創業三年以内ですか、そういう方に信用保証枠を二千万まで拡大したというのは、私はこれは結構なことだと思うんです。しかし、何で二千万なのか、二千万で本当に創業できるのか、その辺のお考えをちょっとお聞かせいただきたい。
  55. 殿岡茂樹

    政府委員(殿岡茂樹君) 先生今御指摘のように、産業活力再生特別措置法案におきまして、創業者に対する信用保証を、二千万までその限度枠を引き上げてございます。  創業の現状でございますけれども、開業にどのくらいの資金を用いているかということにつきまして私ども調べておりますが、これによりますれば、平均額で大体千五百二十万程度でございまして、二千万以下のケースが全体の八割以上を占めているというような状況にございます。  また、国民金融公庫等が創業向けの融資というのをやっておりますけれども、ここの実績で見ましても、融資額の一件あたりというのは平均で約七百六十万ということでございまして、二千万はある意味で相当カバーしているというような状況にあるかというふうに思っております。
  56. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 何にもなくても二千万借りられるかと思ったら、そうじゃないんですね。担保は要らないけれども、自己資金は準備しておけということですね。例えば、手元に五百万しかなかったら五百万しか貸してくれないんでしょう。それはどういう考えなんでしょうか。
  57. 殿岡茂樹

    政府委員(殿岡茂樹君) 創業は実は非常に大変リスクのある事業でございます。ことしの中小企業白書でも、製造業の場合ですけれども、最近では二年、三年のうちに相当の部分が廃業せざるを得ないというようなことでございまして、そういう意味で過大な融資というのは、本当にその創業者にとって仕事を立ち上げていくということでいいのかどうかという点もございます。過大な融資を受けた場合に、利息を払う必要があるわけでございますから、利息が利息を生むといったような事態に追い込まれるようなこともございますから、背伸びをしない堅実な事業計画を立てていただくということが大変重要だというふうに思っております。  またさらには、モラルハザードということもございますので、これを防止するような措置というのをあわせて講じていくことが必要だというような観点もございまして、こういう意味で保証限度を自己資金の範囲内とするというようなこととさせていただいている次第でございます。
  58. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 細かな話で恐縮ですけれども、私の身近なところでよく聞くような話では、一生懸命事業を開始するためにもうあらゆる努力をしてきていると。その間にお金もかかっているわけですよ、親戚じゅうからかき集めてやっとここまで来たと。それで、いざ立ち上げるときにお金が欲しい、もう少しあったら立ち上がる、そういうときに、自己資金がなきゃ貸せないよというようなケースもあるんですね。だから、お役人さんがこの方が安全だと考えるというやり方がすべてに当てはめられるわけじゃありませんから、いい制度なんだからぜひ生きて動かせるように、私は弾力的な運用というのを考えてあげた方が生きると思います。  一生懸命やってきて、もう一つ、あと二千万あればというときに、二千万手元に用意できているかと言われたら、それはなかなかそうはいかないケースもたくさんあるんだというふうにあえて申し上げたいわけです。  それから、私は、今、政策金融の最大の目的は何かなと考えるわけですが、以前この委員会政策投資銀行法を議論したときも同じことを申し上げたわけですけれども産業構造が変わるということは二つあるわけで、おっしゃるように、大企業、既にでき上がっている企業が時代の変化にあわせて変身をしていく、その間に生じた過剰投資、過剰設備廃棄していく、あるいはまた抱え過ぎた余剰人員を整理していく、これは一つの流れです。  しかし、これだけ追っかけていたら産業構造は私は変わらないんだと思うんです。むしろ産業構造に穴ぼこがあいちゃうわけであります。だから、やっぱりこっちが変わっていく、既存のものが変わっていく、それを助けてあげる、これが再活性化法だと、私は単純化すればそう思っているわけです。  しかし、それによって生ずる、後で池田さんも御質問になるようですけれども、いわゆるリストラによって出る余剰人員、それを穴ぼこにしちゃわないで、本当に産業構造が変化したと言うにはそれを吸収していく新しい企業が育たなきゃだめなわけですね。  それは、ここの法律で書いてあるような、政府認定して新製品だ、新技術だ、新商売だというお役人さん流の認定できる事業以外に、草の根でいっぱいそういう事業はあるわけです。例えば、企業がリストラをする、そうするとアウトソーシングでいろんなことが外に出ていく、チャンスだと思っている人たちもいるわけです。それは決して新技術でも新商品でも新製品でもないんです。でも、それをきちんと受けとめて、新しい企業を起こす人がいればそこでリストラに伴う穴ぼこがまた埋まっていくわけで、それがうまくいけばそれ以上の雇用が生まれてくるわけです。  それから、規制緩和ということを盛んに言われます。規制緩和をすれば、これは商売のチャンスだと思って見ている人たち、たくましい人たちはたくさんいますよ。アイデアはある、でも事業をどうやって起こすんだと。だから、私は本会議質問では雑草のような国民の意欲ということを申し上げたわけですけれども、そういうものを制度的に受けとめていける、そしてそれが新しい企業雇用に結びついていくための体制というのはもう一つで準備しておく必要がある。これはもっと大事だと言うと言い過ぎかな、同じように大事だと私は思うんです。  そこで、全く新規に事業を起こそうという人がどれだけの資金調達を無担保でできるかと考えてみますと、国民金融公庫で五百五十万無担保融資がありますね。そして、今回この法律が通ればこの九月一日から動き出す二千万の融資枠がある。これはさっき申し上げた自己資金が必要だという前提がついちゃいますけれども、それだけがあるわけです。ただ、それでは私は足らないと思うんですね。  だから、私は、せっかく誕生した日本政策投資銀行、現在の政策金融の最大目的の一つはそういう創業、事業を新しく起こさせる、その金融を提供する、これが戦後の傾斜生産方式に匹敵する政策金融の目的であってしかるべきだと、そういう議論をしているわけでありまして、よって、本会議でも宮澤大蔵大臣の大変前向きな御答弁をちょうだいしたんですけれども、私は本気で日本政策投資銀行の中の創業者金融制度というものを大幅拡充すべきであると思うんです。  担保がないんですから、それにかわるものとして事業内容をきちんと審査できる体制をつくる。人がいなかったら融資は動きません。土地本位はもうだめなんですから、土地もない人が事業を起こしていくわけでありますし。だから、要はもちろん一般の金融機関が事業本位金融をもっと本格的にやれる体制になればいい。しかし、これは理論であって、すぐさま人材の育成とかそういう体質をつくっていくというのはなかなか難しい面がある。  でも、政策金融部門は政府がリスクテークをできるわけですから、しかも創業者金融というのは今の日本産業経済の立ち至っている状況からすればリスクテークをしていい話である、そういうふうに思うものですから、どうでしょうか、もう一つ踏み込んだ、私は日本政策投資銀行と言っておりますが、ほかにも政策金融機関はありますけれども日本政策投資銀行を中心とした踏み込んだ創業者金融制度の確立というのを私は急ぐべきであると思います。本会議に引き続いてで恐縮でありますが、大蔵大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだって本会議で御質問がございましたときに、実はもう少し申し上げたかったのですが、本会議でどうも主管大臣でない者が余り申し上げるのもいかがかと思いました。  今重ねてのお尋ねがございましたが、この産業活性化法案というのは、実はその経緯におきまして、通産省は本来次の国会でもう少し完璧なものを出したいと考えておられたわけですが、通産大臣の御決断で、ともかく大事な部分だけでもここで出そう、御審議をいただこうとされた経緯がございます。  したがいまして、一つは、先ほど政府委員が言われましたように、商法のもう少し深い改正等とかいうものは後回しになっておりまして、それはいずれ将来の国会で御審議を願うというのがこの法案の直接の関連のことでございます。  もう一つは、通産大臣がかねてから、こういうものの考え方中小企業版と言えばいかにもちょっとジャーナリスティックですけれども日本経済を本当に担うのは中小企業でございますから、それについて一般にどうするのか。中小企業の基本法そのものの問題でもありましょうけれども、この際、中小企業についてどうすべきなのか。この間、浜田委員からエンゼル税制というようなお尋ねもあって、税制のことは私はお答え申すことができましたけれども、全体に中小企業、それにベンチャーであるとか創業者に対する優遇であるとか、そういったようなものを通産大臣はいろいろお考えのように私はお見受けしております。  ですから、金融の方もそこでどういう協力ができるかということをこの間も政策投資銀行の話があってお答え申し上げましたけれども、全体の中小企業、これも二十一世紀に向かって大変な問題を事業自身が持っていますし、また日本の将来も非常にそこにかかるわけですから、そういうものを通産大臣としてはおまとめになって、やがて国会の御審議も得たいとお考えのように、十分は存じませんけれども、私はそうお察ししていまして、それについては全面的に協力いたしたいと思っております。
  60. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 先ほど金融行政についての責任のとり方というような御議論もありました。時代は変わっていくわけでありまして、あのバブルのときのような時代を乗り越えて、今必要な新しい行政、新しい政策というのを考えなければならない。多分、戦後の日本経済の歩みの中で今がそういう戦後に匹敵するような時期だろうと思うんです。  ですから、そこにどう行政や政治が真剣に取り組んで新しいルールをつくり上げていけるか、そして新しい産業活性化していけるか、それが私は責任の広い意味のとり方だというふうにも思っておりますので、政府の御奮闘をぜひお願いして、質問を終わりたいと思います。
  61. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸です。  産業活力再生法案は、提案理由説明によりますと、我が国経済の自律的回復のために供給面体質強化が不可欠だ、そういう立場から企業のリストラを税制金融面で支援する、こういうものになっております。  まず、大蔵大臣に伺いたいんですが、失業率が四・九%、過去最悪、戦後最悪という状況が続いているんですけれども、この最大の要因は、経営を続けていけなくなって首切りをしたということによる失業の増加よりも、もうかっている企業、そういう大企業、黒字企業のリストラによる要因が非常に大きいという状況になっております。その中で、人減らしをすればするほど企業の格付が上がって株価が上がるという非常にゆがんだ風潮が出てきております。ゆがんだというふうにお考えでないかもわかりませんけれども、私は非常にゆがんだ風潮だと思うんです。  その中で、政府が、リストラをすれば税金で支援してやるよ、人減らしをすれば税金で支援してやるよということであったのでは、これはリストラをけしかけてますます失業を増大させていく、ゆがんだ風潮を助長するものになるのじゃないかと考えるんですが、そのことについての大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだっても本会議で共産党の議員からそういう御趣旨のお尋ねがありまして、雇用問題はどうしても深刻になるということがわかっておりましたから、平成年度補正、十一年度の本予算でいわゆる一兆円施策というものをやってまいりましたが、いよいよ本格的になりますので、先般、補正予算を御審議願い、成立させていただいたわけであります。でございますから、雇用については政府は最も心を痛めており、また最善の措置を講じようとしておりますが、それとの関連で企業のリストラというものをどう考えるかということでございます。  もちろん、今も申し上げかけましたが、この産業活性化法案だけでリストラが終わるのではないと私は思っていまして、中小企業についてさらにすべきことをいろいろ考えなければならないのではないかというふうに先ほども申し上げました。ただ、この間も申し上げたことでございますけれども、アメリカの現在の好況というものの一番の原因は何かということをアラン・グリーンスパンは何度も私に言うわけでございまして、それは、今アメリカの生産性というものが三%になっている、かつてそれは一%というのが常識であったので、三%の生産性というものが経済の好調の原因になっているということは疑いがない。もとより、それはインフォメーションテクノロジーとかいろいろございますが、結果としてマクロでいえばそうだと思います。  そのことは、アメリカばかりでなくて我が国にとっても今大事な問題だろうと思います。それによって労働が生産性の低い部門から生産性の高い部門に流れていくということは、労働そのものにとって大切なことでありますし、また労働条件もそれによって向上するということは疑いがございませんから、したがって大変に注意をしながらでなければなりませんが、生産性を向上するための努力というのは終局的には私は雇用のためになるはずだ、そうでなければならないというふうに考えております。  経営者の中にも、雇用を減らすことができれば経営者としては及第なんだというわけではないよということをおっしゃる経営者もちゃんとおありになるので、したがって生産性の向上というものが雇用の改善に基本的には役立つということを私は申し上げていいのではないかというふうに思うわけでございます。
  63. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 一般的な生産性の向上が雇用拡大につながるだろうということは否定できないんですが、ただ、今の状況の中で、個別企業のリストラによる生産性向上が我が国経済再生につながっていくというふうに言えるかというと、私はそうじゃないと思うんです。  今さっき申し上げましたように、リストラによってもうけている企業があるんだと。その人の減らし方を見てみますと、ここ数年、東洋経済統計月報がずっと続けて追いかけておられます。昨年、ことしの統計を見てみましても、昨年度では、五年連続でほぼ上場企業の全業種が人員削減をしたということが出ておりますし、それからことしについても、前年度末と比較可能な全上場店頭公開企業三千二百八十九社ベースで見たら、一年間に合計して十万五千百八十三人減らしている。  ともかく、上場企業でもうかっている企業が人を減らしているんだと丁寧に書いていますけれども、この数字には経営破綻など上場廃止となった企業は含まれていないんだということまできちんと書いてありますが、そういうふうに大企業において人減らしがどんどん進んできているわけなんです。  言いかえれば、大企業雇用の社会的責任を放棄するということによってもうけを上げているということが言えるのじゃないか。そういう点で、今度の法案でさらにリストラを支援していくということについては、税金まで使うということについては到底国民は納得できないだろう。ともかく産業活性化につながるんだから、税金で支援してもいいじゃないかとおっしゃるけれども、私は今の情勢下ではそれは違う、逆に不況を拡大していくことにつながっていくのじゃないかというふうに考えます。  そういうところで、具体的にちょっと通産省に話を伺いたいと思うんです。  この再生法案ではどういう企業税制上の優遇措置を受けるかというと、構造変革といって設備廃棄する、それから事業革新といって設備投資する、設備廃棄設備投資の両方を進めていく、そういった企業事業構築計画としてそういう計画を出した場合に税制上の優遇措置をするんだ、こうなっております。  そこで、委員長、ちょっと資料を配らせていただきます。(資料配付)  先月半ばごろの時点で、私は、純利益ランキング五十位以内の企業と、そこで人員削減がどれぐらいやられているかということで見てみたんです。これは新聞報道や雑誌の報道を拾ったものですから拾い漏らしもあるかもわかりませんけれども、要するに純利益ランキング五十位以内でこれだけ大幅な人員削減がやられてきております。  今度の法案について伺うんですけれども、このように、ソニーだとか松下だとか武田薬品だとかNTT、こういう大もうけしている企業、このような企業もというよりも、こういった企業こそ今度の事業構築計画認定を受けて税制上の優遇措置を受ける、そういった対象だというふうに考えるわけですけれども、これは確認だけで結構です、ひとつ確認してください。
  64. 林洋和

    政府委員林洋和君) この法律に基づく税制上の措置は、大小を問わず、先生御指摘の事業革新、前向きなことをやれば対象になることになっております。
  65. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ほとんど大企業にしか適用されないと思うんです、実態的には。結局、倒産しかかったといいますか、経営を縮小するしかないといった企業には適用しないわけです。要するに、強い企業をより強くするための法案だ、だから再生法案なんでしょうけれども。  結局、過剰設備についても、これから投資拡大して大きくなっていくんだから、そういった企業については過剰設備廃棄することを応援するぞということなわけですけれども、しかし、そういった過剰設備廃棄というのは個別企業経営責任に属する問題です。何で税金でこれを支援してやらなきゃいけないのか、全くおかしな考え方だと思うんです。これはとても国民の納得のいくところではないというふうに思います。  そこで、具体的な条項について伺いますけれども再生法案の十七条五項です。これは税制上の優遇措置を設けることに関することなんですけれども、ここでは設備廃棄設備投資のことと絡んでくるんですが、人減らしの実施と設備投資の実施、これをあわせて計画として出してきたところを認定するわけです。その認定をする際に、設備廃棄投資が同時に実施されなければ認定しないのか、それとも設備投資の方は二年後、三年後あるいは五年後、六年後でも計画に載っておればいいということなのか、どちらですか。
  66. 林洋和

    政府委員林洋和君) 必ずしも同時でなくてもいいと思っております。  私どもの今の考えでは、大体三年程度計画を想定しております。
  67. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 さらに、設備投資などの事業革新計画、これは設備廃棄による雇用の削減を補うものだと。つまり、削減数を上回る雇用を盛り込むことをここでは義務づけるのか、それとも雇用は減らしたままでもいい、設備投資計画を持っておればいいということなのか、どちらですか。
  68. 林洋和

    政府委員林洋和君) 雇用の数について特に条件をつけるというようなことは考えておりません。
  69. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、事業構築計画ということで認定するわけだけれども、減らす方はきちっと減らしなさい、生産性向上というのがこの法案のキーワードになっていますが、ふやす方、雇用を将来ふやしていくことになるだろうという点については全く保証はないということなんです。結局、税金を使って大企業収益は一層大きくなるだろうけれども雇用の方は減らしっ放しということが起こるわけですよ。現実の問題としては、当然のことながら、設備投資を先行させて、それから設備廃棄するなんて、そんなばかなことは起こらぬですよね。必ず設備廃棄を先行させてくるということは間違いないわけで、これは景気をより悪化させる要因にならざるを得ないだろうというふうに考えます。  この法案は、企業ごとの生産性の向上に着目したものになっております。事業分野生産性の向上ということは事業構築認定のときには必要ないんだ、一企業が相対的に生産性向上措置をとればよろしいという法案になっています。  そこで、伺うんですけれども事業構築計画の中で、設備廃棄は国内でやる、投資の方は海外でやる、今私がここでお示ししました大企業のほとんどが、電力は別としまして、多国籍企業化しております。ですから、設備投資にしても国内だけの投資計画なんてありません。投資の方は海外投資を含む、廃棄の方は国内、こういった場合でもこの再構築計画認定するんですか。
  70. 林洋和

    政府委員林洋和君) この法案の趣旨が、我が国に存在する経営資源の効率的な活用を通じて生産性の向上を実現するというものである以上、支援措置対象となりますのは、本邦内における事業構造の変更や事業革新になると思っております。  したがいまして、計画中、事業革新行為に関しまして、海外における行為のみが記載されている場合、本法案における事業革新を行う事業者として認定を受けることは想定しておりません。
  71. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 だから、私は申し上げたんですよ。多国籍企業の場合は、海外のみとか国内のみとか、そんなことはない、海外投資も含めてもっと全地球規模でのもうけを考えるわけです。ですから、恐らくこういった大企業の場合、巨大企業の場合には海外投資も当然含んできますよ。このことが我が社の生産性向上を進めることになるんだ、部品工場は東南アジアに置きますよ、そういったことも起きてくるわけです。そういったものが含まれていても認定するんですかと私は聞いたんです。それのみの場合と言っているんじゃないんです。
  72. 林洋和

    政府委員林洋和君) 本邦の中におきまして事業革新行為を行わなければ認定はいたしません。  あわせて、国内における事業革新行為と海外における同じような行為がある場合にどうかという御指摘かと思いますが、先ほど申し上げましたように、私どもは国内にある経営資源の効率的な活用を通じて生産性の向上を図るというのが目的でございますので、海外で何をやるかということは見ずに、国内で何をやるかということに着目をする、こういうことでございます。
  73. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 巨大企業、多国籍企業の場合には、そんな簡単に区分けして見られないんですよ。そうでしょう、現実の問題として。もし計画の中に海外投資まで含んでいる場合には認めないというのであれば、私はそれはそれで確認しておきたいと思うんです。そこまで約束できますか。
  74. 林洋和

    政府委員林洋和君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、国内での事業革新が相当程度あるということが必要な条件でございまして、海外で事業革新行為をやるケースについて認定をしないということは申し上げられません。
  75. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、そういうことなんですね。  だから、今の実態でいきますと、多国籍企業はどんどん海外投資をしていっている現実があります。そういった中では、結局は下請の仕事が減っていっているわけです。空洞化ということで言われておりますけれども、そういった現実があるわけです。  片や、この法案で、それでは下請に対する対策が特別にとられているかというと、それは全くありません。そういった点では非常に不公平な法律になっております。  確かに、下請に対しては下請二法というのはありますけれども、この下請二法自身が有効に機能していないことは政府自身御存じだし、毎年、通産省中小企業庁長官と公取委員長の名前で下請対策について通達を出すという現実が起こっておることを見れば、そのことでも明らかだと思うんです。  私は、結局この法案では、設備廃棄、それから人減らし、そして下請に対する圧迫という形が必然的に起こってくるというふうに考えます。しかも、税制上の優遇措置だけじゃないんです。金融面で、ともかく設備廃棄するためには担保抜き資金が必要なわけだけれども、それまで公的資金で援助してやろう、産業基盤整備基金で債務保証をしてやろうというわけでしょう。さらに政策投資銀行で低利融資もしてやろうというふうなことまで準備されているわけです。これでは、大企業はもうける、失業者はふえる、だから国民は税金を使われた上に踏んだりけったりだと言わざるを得ないというふうに思います。そういうことをまず指摘しておきたいと思います。  それから、この法案は私は非常に重大な欠陥法だというふうに考えているんです。といいますのは、事業構築計画認定なんですけれども、これでは第三条六項というのが準備されています。七号まであるんですけれども、その四号、五号についてちょっと伺いたいんです。  といいますのは、先ほど申し上げましたように、この法律は個別企業生産性向上を図るものとなっておりますし、認定の際も個別企業生産性向上を見ることになっているんです。  ところが、ここに設けられた四号、五号というのは、その認定条件が個別企業の問題ではなしに、四号は「中核的事業の属する事業分野における生産性の向上を妨げるものでないこと。」ということが入っておる。五号においては、「事業構築が国民経済の国際経済環境と調和のとれた健全な発展を阻害するものでないこと。」、こう言っているんです。ということは、事業分野における生産性向上を問題とすることになっております。一体、こういったことで通産省事業分野生産性、これの基準を設けることができるんですか。  第一、四号、五号というのは何を意味しているのかというふうに通産省に伺うと、前者の方は設備廃棄ですけれども、後者の方は貿易摩擦を考えているんだと、投資し過ぎて貿易摩擦を起こしたらいけない。個々の企業計画認定してもらうために申請する。そのときに、一体どこまで投資すれば貿易摩擦を起こすかというようなことがどうやってわかるんですか。そんな基準通産省は示すことができますか。大体できもしないものをここに載っけているんじゃないですか。
  76. 林洋和

    政府委員林洋和君) 御指摘の第三条第六項は一号から七号まで要件が書いてございます。
  77. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 たくさん要らないんです。私が聞いたことだけ答えてください。
  78. 林洋和

    政府委員林洋和君) 御指摘の四号、五号は、ちょっと不正確な言い方かもしれませんが、私どもはネガティブチェックをする基準であるというふうに考えております。例えば四号でございますが、事業分野全体として非効率な設備を導入するようなことになる。今、鉄鋼分野であれば連続鋳造が一般的でございますが、そういう中で一昔前の造塊方式というような……
  79. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 時間がないので、五号について、私の聞いたことについて答えてください。
  80. 林洋和

    政府委員林洋和君) 五号も、特段の国際貿易上のトラブルを生じさせないかというような観点から確認をするための要件として設けております。
  81. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、何も基準は示すことができないはずなんです。そうでしょう。今、ネガティブだと。ネガティブだということは、数字としては示せないけれども、出てきたものについてそういうふうな形で見ていこうというだけの話で、極端なことを言えば、うまくやれよということを法律に書いているみたいなものです。うまくやれよと言ったのに、おまえはうまくやらなかったじゃないかというふうな、こんなことを法律上言えますか。極端な例かもわかりませんけれども、私はそう思う。  そこで、四号について見ても、五号についてもそうなんですけれども事業分野ごとに基準を設けると通産省は言います。事業分野はどの分類で、産業分類でいえばどれでやるんだと言ったら、小分類でやると。小分類といったら、細分類で千数百、小分類で六、七百あります。そういった事業分野生産性なんという常に動いているものをどうやって基準がつくれるのか。それから、貿易摩擦を起こすことについて基準なんかつくれっこないんです。  通産省はそれだけの能力があると考えているんでしょうけれども、かつて通産大臣もお務めになった宮澤大蔵大臣に伺いますが、一体通産省にそんな能力がありますか、私はないと思いますが、いかがでしょうか。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 伺っておりますと、大変行き届いた御質問をしていらっしゃるのに対して、答えの方は短くしろとおっしゃるものですから、政府委員も幾らかフラストレーションがあるのではないかと思います。
  83. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、私が最初に申し上げましたように、もし常に貿易摩擦を起こす基準がわかるのであれば、かつてそんな貿易摩擦なんか起こしていないですよ。基準がわからないからこういうことが起こってきているわけです。それがあたかもできるかのようなこういった認定基準を設けることについては、まことに私は不遜だと思います。これはできないことを載っけているわけですから、欠陥法だと言えるのじゃないかとも思います。  それから、もう一つ指摘しておきたいんですけれども、もしこれができるとします。できれば私はもっと問題だと思うんです。  というのは、それぞれの企業設備廃棄を出してくる、これは共同で話し合って出してきたんだったら合理化カルテルですし、不況カルテルですし、あるいは輸出摩擦を起こさないように話し合ったんだったら輸出カルテルだ。しかし、今度の場合は企業は責任がないわけです、企業は個々に申請してくる。それを通産省がにらんで、おまえのところはこれ以上設備投資をやったら貿易摩擦を起こすよ、おまえのところはこれ以上設備廃棄をしたらさらに景気が悪くなるからこれ以上するなとか言うことができる、考えた上での法体系になっているんです。だとすれば完全な官製カルテルです。  企業がやったとすれば、公正取引委員会は、こら待てと言えるけれども、この法律ができて通産省がやった場合、公正取引委員会は手も足も出せないと思うんですが、公取、いかがですか。
  84. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 本法案事業構築計画というのは、先生お話しのように、あくまで個別事業者の自主的判断でかつ市場原理に基づいて行う、こういうことになっておるのではないか、このように考えております。
  85. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、肯定したということでしょう。  個別企業云々の話は私が申し上げたとおりなんで、カルテルではないけれども、カルテルと同じ効果を起こすようなことができるかのように、私は実際そんな能力はないと思うからできないと思いますが、しかし法律としては、こんなおかしな法律をつくることはまた別問題だと思うんです。まことに欠陥法だということを申し上げて、質問を終わります。
  86. 三重野栄子

    三重野栄子君 社会民主党・護憲連合の三重野栄子でございます。  租特法改正案に対しまして質問をいたします。  まず、今回の租税特別措置法改正に伴う減収額についてお伺いしたいんですが、先ほど数字も出ておりましたけれども、少し初めの方に戻りまして質問をいたします。  大蔵省は今回の税制改正に伴う減収額を初年度はゼロ、平年度は四十億円と試算しておりますけれども、その積算方法と減収額の内訳についてお伺いします。
  87. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 平年度四十億円の内訳でございますが、通産省等の資料をもとに、まず法人税関係の特定の新規設備投資に係る特別償却制度の創設に伴いまして十億円程度、それから中小企業者の新規設備投資に係る特別償却または税額控除制度の創設がございますが、これが十億円程度、それからもう一つの項目といたしまして登録免許税関係がございます。認定事業者計画に基づく登記に対しましては軽減税率特例制度が創設されますが、これが二十億円程度ということで、四十億円というふうに見込んでいるところでございます。
  88. 三重野栄子

    三重野栄子君 ところで、通産省では、今回の産業活力再生特別措置法租税特別措置法改正が実施された場合の減税額を平年度三百億円と試算しておられますが、これは大蔵省試算の四十億円とは一けた違うようですが、なぜ大蔵省の試算と大きく異なるのか、その点をお伺いしたいと思います。  あわせまして、三百億円の減税効果で果たして産業再生は可能なのであるかどうか。私は、先ほどもいろいろ出ておりましたけれども、単にリストラの促進とか雇用不安を助長するだけの結果になると危惧するのでございますが、その点について、通産省にお伺いいたします。
  89. 林洋和

    政府委員林洋和君) 私どもは、企業等が受けるプラスの影響額は三百億だと思っております。第一点の違いは、大蔵省の方の試算では欠損金の繰り戻し還付というのが、これは新たな制度としてできるものですから計算はしていない、私どもはこれを百億円ぐらいと見ています。それから、譲渡益課税の繰り延べ、それから買いかえ特例、これも同様でございます。これも私どもは約百億円と見ております。  それから、あと幾つか細かいところの違いがございますが、それが一番大きな違いでございます。  それから、仮に三百億円としても果たしてこれで十分かという御指摘でございますけれども、私どもの今回の物の考え方は、税制それから商法の手続、この二つについてグローバルスタンダードのものを用意して、この二つの手段を利用しながら、各企業がみずからの責任において選択と集中という事業構築を行うものであるというふうに思っております。役所が個別に介入する、あるいは共同でカルテル的に何かをやらせるという時代ではございません。  そういう意味で、今申し上げたような考え方で、企業の自主的判断で今の世界的大競争というのを考えながらやっていくものと思っております。
  90. 三重野栄子

    三重野栄子君 具体的にもう少し大蔵省通産省の違いにつきまして、二つの省にお伺いしたいのでございます。  通産省の試算では、欠損金特例で百億円、それから買いかえ特例や共同の現物出資特例で百億円、ストックオプションで三十億円と見積もっておられますけれども大蔵省試算では、これらの減収額をゼロとされております。また、設備投資関係でも、通産省試算では五十億円ですが、大蔵省は二十億円としておるようでございます。  これだけ大きな試算の違いがなぜ出てくるのか。通産省企業へのサンプル調査をしておられますけれども大蔵省はしない結果がこうなっているのか、そこらあたりについて、両省からお伺いいたします。
  91. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 何か意図的に大蔵省通産省が違っているかのようなお話でございましたが、実はそうではございません。  大蔵省は従来から改正の都度減収額の試算をしてございますが、要はその税制なかりし場合に全体の税収にどれだけ影響を与えるかという観点から私どもはやっているわけでございます。それが基本的に違うところでございます。  あと、もう少し技術的な点を言わせていただきますと、先ほど一例として申し上げましたが、買いかえ特例のように、この制度があって初めて出てくる、しかも二割の部分あるいは一割の部分は増収要因になって、残りの部分は減収要因になる、そういう場合、従来からの整理では増減収には立てないということに私どもはしてございますが、しかし個々の企業にとってみれば間違いなくそれで恩恵を受けるわけでございます。  税収の総量についてはよくわからない、あるいは試算できませんけれども、個々のミクロの企業にとってはまさに事業革新等へ向けての大きな誘因になってくるということでございまして、そのような違いが今の大蔵省の四十億円と通産省の言う三百億円との違いにあらわれている、こういうことかと思います。
  92. 林洋和

    政府委員林洋和君) ただいま主税局長から説明がございましたとおりでございます。
  93. 三重野栄子

    三重野栄子君 大蔵省減収額通産省減税効果と、それぞれ違うようでございますが、事業者はおわかりになると思いますが、一般国民から見ますと、どっちが正しいのかわからないという感じもございます。  そこで、大蔵大臣に二つだけお伺いしたいと思います。  政府としては、四十億円と三百億円のうち、どちらの数字を使って産業再生関連法に伴う減税額として説明していかれるか。それから、買いかえ特例などのように初めから試算を行わないのではなくて、経済への波及効果を考えた減収額試算を今後行っていくべきではないかと思うんですけれども、それらの点につきまして、大臣、よろしかったらお願いします。
  94. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 実は、この四十億円でございますが、これは従来から当委員会でも租特の改正の都度、減収額を示している手法によっているわけでございまして、財政の見地から、我々の手法は手法で、これまでのルールで正しい姿だと思います。  ただ、通産省の三百億円といいますのは、まさに企業の個々のメリットの総計でございますから、財政に与える影響という見地からは四十億円。措置全体としてという意味で申しますなら三百億円という方がむしろわかりやすいかもしれません。
  95. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かつてアメリカのレーガン大統領が、所得税の税率を下げると増収になると言ったことがございます。それと違いますけれども、やや似ていまして、一人一人が受けるべき減税の利益ということと、その制度がなかったならば国が受ける増収、減収とは一緒ではないということを申し上げているんだと思います。
  96. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。  では、ストックオプション制度の改正に関しましてお伺いしたいと思います。  ストックオプション制度の改正に関しては、今回の産業活力再生特別措置法では、子会社の取締役、使用人へのストックオプション拡大、及びMBO、EBO支援のための付与上限の拡大ということになっていると思いますが、これらの二項目の改正のうち、税制上の特例対象となるのは後者の付与上限の拡大のみで、子会社へのストックオプション拡大については税制上の優遇措置対象としないということになっています。これでは、せっかくの措置も十分に活用されないのではないかと思うのですけれども、なぜ税制上の優遇措置対象としなかったか、大蔵省にお伺いいたします。
  97. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 今回の産業活力再生特別措置法で、先生が今おっしゃられましたように、子会社の取締役、使用人も親会社のストックオプションを受けるという商法の特例があるということは承知しているわけでございます。この税法の関係につきましても今回手当てがなされていないのもそのとおりでございます。  実は、この点に関しましては、その会社に勤務されている取締役、使用人でございますれば、業績の反映とでも言いますか、その努力をするわけでございますが、その子会社の使用人と親会社との関係というのを一体どういうふうに考えるのかという問題もございます。  それからまた、税法上から申し上げますと、親会社と子会社の間の所得の区分、あるいは法人税の取り扱いは一体どうなるのかということで、検討すべき点がいろいろあろうかと思いまして、今回の措置には盛り込んでいないところでございます。
  98. 三重野栄子

    三重野栄子君 それでは、最後に通産省にお伺いいたします。  今回の改正で、MBO、EBOの支援のためにストックオプションの限度枠を発行済み株式総数の十分の一から四分の一に引き上げるとなっておりますが、なぜ四分の一という数字になったのか、合理的に根拠はどこにあるのか大変疑問に思うところでございます。また、四分の一というのはかなり大きな数字でございますので、この場合、株式の希薄化に伴う一般株主の利益が侵害されることが懸念されるのでありますけれども、これらにつきまして通産省の御見解をお伺いいたします。
  99. 林洋和

    政府委員林洋和君) 私ども、MBO、EBO、日本的な雇用慣行を考えますと、大変重視をした中身でございます。例もございました。ある商社がつぶれたときに、その子会社、そのままではつぶれてしまうんですけれども、従業員の方が自分たちが持ち株を持って自分たちでやりたいと。恐らく、今後も不採算部門をつぶしていくというようなことも当然出てくると思います。そういう中で、その部門長である部長さんとか、あるいは従業員の方が自分で株式を持って自分でやるんだというのは大変いいことだということで、ストックオプションのみならず、あわせて出資等の支援措置も講ずることとしております。  なぜ四分の一かということでございますが、やはり支援措置を与えるということと、それから具体的なニーズ等のヒアリング等をやりまして、二五%というのが一番適切な水準かなというふうに判断をした次第でございます。
  100. 三重野栄子

    三重野栄子君 もっと伺いたいんですが、時間が来ましたので終わります。  ありがとうございました。
  101. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  102. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、日本共産党を代表して、租税特別措置法の一部改正案に反対の討論を行います。  本法案は、産業活力再生法に基づいて大企業が行う事業構築を促進するためにとられる税制上の措置であります。  それは第一に、産業競争力会議における大企業の要求を直接受け入れ、大企業が利潤拡大のために行うリストラや組織再編を支援するものであります。その結果、大量の人員整理や解雇をもたらすなど、雇用や下請中小企業経営に著しい悪影響を与えることになります。  第二に、本法案は過剰設備廃棄や債務の株式化などを促進するための税制措置を講じていますが、過剰設備や過剰債務はバブル時の過剰な設備投資など、大企業経営見通しの失敗から生じたものであり、これを減税や公的負担で救済することはモラルハザードを著しく助長するものであります。  第三に、税制上から見れば、本法案による税制上の措置は主として大企業が利用できる租税特別措置であり、大企業への優遇税制拡大にほかなりません。これは、税率を引き下げても課税ベースは拡大するという政府税制改革の方向にも逆行するものであります。  以上の理由から本法案に反対の態度をとるものであります。
  103. 三重野栄子

    三重野栄子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました法律案について反対の立場から討論を行います。  本法律案は、産業競争力を強化するため、企業事業構築を支援することを目的としておりますが、企業が抱える雇用設備、債務の三つの過剰の解消を国として後押しする姿勢はまさに企業中心の発想であり、生活者としての雇用者の視点が極めて希薄であると言わざるを得ません。  以下、本法律案に反対する理由について簡単に申し上げます。  反対の第一の理由は、本法律案はリストラを促進させ、現下の雇用不安をさらに助長させる点であります。  工場撤退などの設備廃棄税制面から支援すれば、大規模な人員整理を招くことは必至であり、地域経済、なかんずく雇用問題に与える影響は甚大であります。しかも、完全失業率が月を追うごとに史上最悪の水準を更新する現状の中で、このような税制措置を成立させれば、雇用不安の拡大によって、底入れ期待のある我が国経済を再び失速させることは明白であり、断じて容認することはできません。  反対の第二の理由は、今回の優遇税制企業経営者モラルハザードを招く点であります。  バブルの清算で生じた過剰設備廃棄は、いわば経営ミスの産物であり、企業が自己責任で進めるのが筋であります。これを国が税制面から支援すれば、結果として、自力で競争力をつけた企業よりも、努力を怠り過剰設備の処理を国に頼って進めようとする企業の方を優遇することになり、企業経営者モラルハザードを招き、公正な競争を著しくゆがめることになります。  反対の第三の理由は、雇用創出を図るための税制面措置が講じられていない点であります。  本法律案の前提となる産業活力再生特別措置法案では、雇用面に十分な配慮が見られないばかりか、あとは労働法制にお任せという無責任な姿勢ばかりが目立ちます。社会民主党は、従来より、失業者の雇用に積極的な企業に対して法人税の軽減などの措置を創設することを提起しております。現下の雇用不安を解消するためには、政府案のようなリストラ促進税制ではなく、我が党が主張する雇用創出税制の創設が不可欠であります。  以上、本法律案に反対する理由を申し述べ、私の反対討論を終わります。
  104. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  租税特別措置法の一部を改正する法律案(閣法一一七号)に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  105. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  107. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 速記を起こしてください。  暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕