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1999-03-23 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月二十三日(火曜日)    午前十一時開会     ─────────────    委員異動  三月十九日     辞任         補欠選任      岩城 光英君     岸  宏一君  三月二十三日     辞任         補欠選任      大島 慶久君     片山虎之助君      笠井  亮君     林  紀子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 益田 洋介君                 池田 幹幸君     委 員                 岩井 國臣君                 片山虎之助君                 岸  宏一君                 西田 吉宏君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 林  紀子君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君    政府委員        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        大蔵政務次官   中島 眞人君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省関税局長  渡辺 裕泰君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  及び多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置  に関する法律の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○電子情報処理組織による税関手続特例等に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十九日、岩城光英君が委員辞任され、その補欠として岸宏一君が選任されました。  また、本日、大島慶久君が委員辞任され、その補欠として片山虎之助君が選任されました。     ─────────────
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  関税定率法等の一部を改正する法律案国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案並びに電子情報処理組織による税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 関税定率法等の一部を改正する法律案国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案並びに電子情報処理組織による税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  三案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 広中和歌子

    広中和歌子君 おはようございます。  三法案の審議に入ります前に、この週末に大きく新聞で取り上げられておりましたODA債権全額放棄について、大蔵大臣の御所見をお伺いできたらと思います。  六月に開催される主要国サミット議長国提案として、それはドイツでございますけれども議長案としてODA債権全額放棄が明らかになったというふうに報道されております。主要七カ国全部で二百億ドルに上る最貧国向けODAがあるわけでございますけれども、その対象となるODA債権のうち日本は一兆円規模であるというふうに報道されております。つまり、二百億ドル中八十五億ドルでございます。これまでもたびたび債権の繰り延べなどをなさってきたわけですけれども元本棒引きによる債権放棄というのは非常に画期的なことだろうと思います。これについてドイツのほか米、英、カナダが支持しているということでございます。  この債権放棄の問題につきましては、一九九〇年あたりからユニセフが中心となり、またさまざまなNGO団体が加わりまして、ジュビリー二〇〇〇といったような運動もあるわけでございますけれども、それについて大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 多少長くなりましてよろしゅうございますか。  基本的に我が国債権放棄というようなことについて反対であるわけではもとよりございません。いわゆる先進七カ国、八カ国ですか、サミットがありますたびにこの問題は話題に出ておりまして、フランスがサブサハラの話をするというようなことはしょっちゅうございます。  我が国は、これらの国に対する最大の債権国でございますことからも明らかなように、この問題については深い関心を持っておって、植民地的な背景なしに自然にそういう関心を持っておる国でございますから、これについて我が国が同情的でないということはあり得ない問題であるということをまず最初に申し上げたいと思います。  ただいま、図らずも広中委員が言われましたように、ミレニアムという宗教的な背景一つございまして、ことしのサミットではいよいよこの問題を最終的に取り上げるというふうに言われておりますし、私ども大蔵大臣の集まりなんかでもそういうことがいろいろ議論になっております。したがいまして、恐らくことしのケルンにおけるサミットのこれは一つの、ちょうどそういう時期でございますので、イベントと言っては言葉が悪うございますけれども、大きな話題になる可能性は極めて高いと思っております。  従来、我が国がいろんな問題をこれについて持っておりますけれども、例えば債権免除した場合にはその国に対して新しく援助をすることが非常に難しいという、ややこれは会計検査院的な物の考え方ではありますけれども、つまり支払い能力がないから免除をする、それなら支払い能力のないところに重ねてそれから後も援助を与えるということは矛盾ではないかというような、これは国内的に片づけなきゃならない問題でございますけれども、そういう問題がございます。  全く関係のないことを申し上げますが、かつてエジプト債権免除をいたしましたために、その後対エジプトで非常に必要な政治的な意味のある援助ができなくなった経験を持っております。それとは違いますが、債権免除を真っすぐからやってしまいますと次の援助ができないという問題を法律的にどうするか。したがって、苦肉の策として免除するかわりに新しいものを差し上げる、それと相殺するというようなことをやってきたりいたしておりますが、国際的な議論でもその問題についての物の考え方はきちんとしなきゃならないのかもしれないと思っております。  それから、また別にそれだけの財源をどうするかということでございまして、いつも議論は下手だがちゃんと負担をするのは我が国で、議論は上手で余り負担しない国があったりいたしますので、そういうことではまずいわけでございますから、一体お金をどうするんだということもきちんとしなければならない。そのときにIMFの持っている金をどうかできるかといったようなことを言い出している人たちもいるわけで、それも一案かもしれませんけれども、一種の国際的な宣伝ではない、本当に実のある債権免除をどうやったらいいかというのを、これからサミットまでの間にまともに地道に考えなければいけないというふうに考えております。  大変長くなりました。
  8. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本はもちろん世界第二位のODA大国でございます。しかし、そのかなりの部分借款であるというようなことで、もっとグラントエレメントというんでしょうか、無償援助部分をふやした方がいいんじゃないかというような考え方も今まであったわけでございますけれども借款部分債権放棄ということは事実上の無償援助的なものになるわけでございますから、当然これから援助の仕方というのも変わってくるのかなといったような感じがいたします。  この部分だけではなくて、我が国が行っている援助借款の中に不良債権化しているところもかなりあるというふうに伺っているわけでございますけれども、もし御所見があれば、大臣、お願いいたします。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 戦後、我が国援助の中にグラントエレメントが非常に少ないということは、確かに広中委員のおっしゃいますようにずっと言われてまいりました。しかし、それは考えてみると我が国自身が戦後援助を受けていたんですから、それがグラントエレメントであれ何であれ援助をする方になったことは褒めてもらわなきゃなりません。それから、他方で従来の植民地的な宗主国としての関係で今までやっておったことを援助としてやっている、そういう関係の国も多々ございますから、ここらは自然にグラントエレメントが大きいわけでございます。  そうは申しました上で、しかし我が国グラントエレメントが確かに小さいということがずっと言われてまいりましたから、今、広中委員のおっしゃいますようなことは確かにございます。ございますので、それだけに今度本当に援助をフォーギブするということになりますと、我が国なんかの場合に実際の負担というものはかなり大きいと考えるべきかもしれないと思います。
  10. 広中和歌子

    広中和歌子君 先に関税の方の御質問をした後で、今の続きについてMIGAあるいはIDAの御審議のときに触れることがあると思います。  では、関税政策についてでございますけれども、その目的というのは国内産業保護と税収の確保ということでありますが、ガットや環境問題といったグローバル化に伴って、関税とか税関を取り巻く内外の状況変化というものが絶えずあると思います。  その地位というんでしょうか位置づけが見直されつつあると思うのでございますけれども現状としてはどうでございましょうか。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かつては関税自主権というようなもので明治の先輩が苦労をされた歴史を私どもは知っておりますけれども、その後、関税というものはいわば財政収入という面で一つの大きな役割を果たしておりまして、私が知っておりますような時代にも、財政の中で租税収入の十数%の割合を占めていたことがございます。  しかし、ケネディラウンドを初めといたしまして、関税を引き下げるという多角的ラウンドが進行をいたしました。今恐らく関税収入租税収入の中で一・何%、二%とかいうことになっております。それは昔に比べますと大変小さくなりましたが、それでも一兆円ございますので、ないがしろにはできないということでございます。  その上で、なお何度かラウンドが重なりました結果、我が国鉱工業製品における関税負担は一・五%でございますから先進国の中では最低でございますが、御承知のように農産物あるいは繊維等々は我が国がやや国内産業保護しなきゃならないという立場でございますために鉱工業製品に比べますと高うございまして、この点がいつでも多角的ラウンドのときに問題になっている。  こう申しますと、関税というものが、今確かに広中委員が言われましたように環境であるとかいうことに発展いたしました一つの理由は、多角的交渉をやっておりますときに関税障壁というものから非関税障壁というものに入っていきましたから、したがって多角的交渉は常に大きな、もっと広い範囲でしなければならないということになってまいりました。今WTOに中国が入るか入らないかということがあれだけ大きな政治問題になっておりますのは、やはりそういうこともあるが、本来の経済的な機能というものをまだ関税というものが相当持っておるということを意味するのではないだろうかと思います。  財政的には一兆円といえば小さいとは申しませんが、かつての財政収入としての関税ということからいろんな意味での広がりを持つようになりました。また関連事項として、税関ということであれば、これはもう麻薬とか銃砲とかいうものの防止という機能を担ってきておりますから、問題は確かにかつて考えられたよりははるかに広い領域をカバーしておる問題になっていると思います。
  12. 広中和歌子

    広中和歌子君 質問前にいろいろ答えていただきましたのでどういう視点でこれから質問しようかと思っているわけでございます。  今回も、例えば絹糸に関しまして関税が下がっております。国内産業保護ということをおっしゃるわけでございますが、同時に需要者というんでしょうか、それは製造者であったりあるいは消費者であったりというような、その利益というものもあるわけでございますけれども、どのようにそれをバランスしていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) たまたま私自身が六〇年代初めのケネディラウンドから最近のことまで何度か自分で経験したことを考えてみますと、我が国としては鉱工業製品についての主張は比較的しやすうございました。ただ、そこへ行きますまでの段階日本自動車工業を興そうと考えましたので、そのときにはちょっと逆の立場でございましたけれども、今やもう工業国として日本は確固たる立場を持っておりますから、工業製品についての問題はほとんどございません。  逆に、それ以外の農産物については常に苦労をしてまいりました。今日でも、いわゆる米についての関税化、タリフィケーションというものが御承知のように今日現在こういうふうに各国で問題になっているわけでございますから、常にそれについては難しい交渉をしてまいりまして、いわゆるケアンズ・グループというのとはいつも対立するというようなことでございます。ですから、その間に、殊に米なんかの場合が一番よろしいかと思いますが、国内生産者あるいは消費者との利害関係は非常に激しく対立をいたします。  それから、あと我が国のいろんな特殊性に基づく幾つかの品物等々につきましては絶えず関税率が問題になっております。今で申しますと、米はああいう形で片づきますが、あと木材関係製品等々は今でも非常に問題でございますし、繊維は何とかしてこうやって乗り切ってまいりましたけれども、しかし問題がないわけではない、こんなことかと思います。
  14. 広中和歌子

    広中和歌子君 木材に関しましては、この前の予算委員会でも、私は環境視点WTOに入れるべきだということを申し上げました。そして、木材における関税収入というものをいわゆる国庫に入れるという場合ですけれども、それを逆に途上国輸出国における植林などに使えば、それはそれで非常に意味があることではないかという主張をさせていただいたわけでございますが、この点に関してはまだ大きな動きというのはないんでしょうか、お伺いいたします。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 後で政府委員がお答えしますが、あのとき私は、広中委員がおっしゃっていることに答えろと言われたら困るなと思って実は伺っていたのです。木材のことはいまだに、殊にカナダかな、絶えず難しい問題でございまして、なかなかこれを上げたらいいというような話にまいらないいきさつがございます。  ちょっと政府委員から申し上げます。
  16. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) 木材関税率につきましては、先般の予算委員会でも外務大臣から御答弁がございましたが、ウルグアイ・ラウンド合意に基づきまして、我が国の林業、木材産業が厳しい状況にある中で平均で約三〇%の引き下げを実施しているところでございます。  この税率水準というのは基本的にWTO協定上、譲許税率として国際的に約束しているものでございまして、この譲許税率を超えて木材関税率を引き上げるということは難しいことだというふうに思っております。  先生の方から、環境保護に寄与するために関税率を引き上げてはどうかということでございました。一つのアイデアであるというふうには考えますが、現状WTO協定上はこのような環境保護のために関税率を引き上げるということが認められておりません。ルールが存在しておりませんので、環境措置WTO上の位置づけについて今後各国間で議論をし、それを待たないと何とも申し上げられないというのが今の段階でございます。
  17. 広中和歌子

    広中和歌子君 お待ちにならないで御提案していただければと思う次第でございます。  それから、需要者というんでしょうか、受益者立場に関しても、やはりこの関税率に反映されなければならないと思うわけでございます。関税率審議会というのがあるそうでございますが、そこに消費者代表というのはどのくらい入っていらっしゃるんでしょうか。何%ぐらい入っていらっしゃるんでしょうか。お伺いいたします。
  18. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) 関税率の決定に当たりましては、先ほど大臣から御答弁ございましたようにいろんな利害対立がございます。そこで、各種の産業界農業生産者団体消費者団体等さまざまな分野の利害を調整していくことが不可欠でございまして、審議会委員構成につきましても、これら各界の意見が幅広く反映されるようにする必要があるというふうに思っております。  関税率審議会委員には生産者代表の方も含まれておりますが、先生おっしゃいました消費者意見を十分に反映させるために消費者団体代表の方、あるいは正確な表現かどうかわかりませんが、生活研究所というようなところの方、そういう消費者の感覚にあふれた方にも委員をお願いしているところでございます。今後とも消費者国内生産者等さまざまな意見が十分に反映されるような委員構成にしてまいりたいというふうに考えております。
  19. 広中和歌子

    広中和歌子君 パーセントはどうですか。
  20. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) パーセントは今持っておりませんが、委員が今三十五人でございまして、どの方を消費者代表とするか非常に難しゅうございますが、いわゆる消費者団体というところの代表という肩書でお入りいただいている方がお一人、それから労働団体代表というようなことでお入りいただいている方がお一人、それから言論界でありますが、そういう方が二人、そういうような感じに今なっております。
  21. 広中和歌子

    広中和歌子君 要するに少ないですね。もうちょっと主婦の代表みたいな方、普通の方をお入れいただいてもいいのじゃないか。私は何も生産者の声を消そうというようなことは思いませんけれども、やはりバランスということもあるのではないかと思います。  それから、関税当局としては、迅速な通関ということと適正な通関というのでしょうか、そのバランスでいつもお悩みであるというふうに伺っておりますけれども、どのように対応していらっしゃるのか、お伺いいたします。  つまり、通関が長引きますと、それは企業のコストにつながってくる、あるいは先ほど宮澤大蔵大臣もおっしゃいましたように非関税障壁として外国から非難の対象になるということもあるわけで、特に自動車関係なんかは十年ぐらい前にそれで大分日本とアメリカでやり合ったことがあるのじゃないかということを思い出しているわけでございますけれども、どのようなバランスを今とっていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  22. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) 私どもの用語で、いわゆる適正通関ということ、それから迅速通関、この二つ税関業務運営に当たっての二つの柱でございます。これまでも世界的な流れの中で税関手続簡素化迅速化を推進してまいりましたが、その際にも適正な通関を損なうことがないよう十分留意をしてきているところでございます。  どういうことをやっているかというお尋ねでございますので、手短に実施した施策を申し上げさせていただきますが、迅速通関のためには通関手続電算化、現在御審議していただいておりますNACCS導入でございます。それから、予備審査制導入、それから航空貨物につきましては到着したら即輸入許可が出て引き取れる到着即時輸入許可制度導入、あるいは通関手続のほかに食品検疫でございますとか動植物検疫等もございますので、そういったNACCS食品衛生法等輸入手続の電算システムとのインターフェース化、こういったようなものをずっとやってきたわけでございます。  他方で、このようなことをやりながら適正通関ということも忘れてはなりません。そういうことで通関情報総合判定システム、これは私どもCISと呼んでおりますが、そういったものを導入して、輸入している方あるいは輸入している貨物リスクの高いものであるのかあるいは低いものであるか、それを判別して、リスクの高いものについては重点的に検査をする、リスクの低いものについてはなるべく検査を省略する、そういうようなことをやっております。それからまた、過少申告加算税、無申告加算税導入、あるいは事後調査事務の拡充といったことをやってきているわけでございます。  ですから、どういうバランスでやっているかというお尋ねにはなかなかお答えが難しゅうございますけれども迅速通関という流れに乗りながら電算化を図って、そのことによってできるだけ効率をよくし、また定員の問題もございますので、そこで浮いたというと変でございますけれども、なるべく人員適正通関あるいは麻薬、そういう方に投入する、そういうことで全体を何とかやりくりしながらバランスをとってやっているというのが実情でございます。
  23. 広中和歌子

    広中和歌子君 人数は足りていらっしゃるのですか。
  24. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) 税関業務量が増大しております中で、税関定員につきましては厳しい定員事情でございますけれども、必要な定員確保に最大限の努力をしてきたところでございます。  税関につきましては、今申し上げましたように、覚せい剤等社会悪物品の水際取り締まりの強化、適正、迅速な通関等社会的要請に的確にこたえますために、事務重点化機械化業務運営効率化を進めて何とか要員をやりくりしたというところでございます。税関定員は十年度に四人純減になりましたが、十一年度にも引き続き十二人の純減ということになっております。今後とも実態に即した税関定員確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
  25. 広中和歌子

    広中和歌子君 公務員の定員削減というのは一つ流れでございますけれども、これからますます必要になる部分というものに関してはやはりめり張りをつけた人員の配置というのが必要だと思いますので、大蔵大臣にそのことを申し上げておきます。  次に、関税協力理事会、WCOの地域プロジェクトとして麻薬覚せい剤など不正薬物取り締まりとしてRILO、地域情報連絡事務所がことしから東京税関内に置かれているというふうに伺いましたけれども、これはどういう役割をするのでしょうか。日本だけじゃなくて地域の取り締まりですね、これがどういうふうな働きをするのか、お伺いいたします。
  26. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) お尋ねのございましたRILO、リージョナル・インテリジェンス・リエージョン・オフィス、地域情報連絡事務所でございますが、これはWCO、世界税関機構が推進しております地域プロジェクトでございまして、世界の十の地域にそれぞれ設置をされております。  このRILOは、参加しております国、地域の税関当局から報告をされました不正薬物の摘発報告などをもとにいたしまして、密輸に利用される可能性の高いルート、それから手口、こういったものの地域内における傾向を分析して、各参加税関当局に通報するなどの業務を行っております。  このうち、アジア・大洋州RILOは、現在二十四の国、地域の税関当局が参加しておりまして、こうした業務を通じて我が国を含むアジア・大洋州地域における密輸取り締まりの向上に貢献をいたしております。このアジア・大洋州RILOは、一九八七年から昨年までの十一年間香港税関内にございましたが、本年一月に我が国に移転をいたしまして、先ほど先生がおっしゃいましたように、東京税関内にオフィスを構えて業務を開始したところでございます。現在、我が国税関の職員六名、それからオーストラリア税関の職員一名、香港税関の職員一名、合わせて八人でこの業務を行っております。  最近の不正薬物の密輸入事犯というのを見ますと、組織化、広域化しておりますし、外国人の関与も増加をいたしております。これらを効果的、効率的に水際で取り締まりますためには、密輸入に関する国際情報を収集、分析して活用していくことが我が国を含めどこの国でも大変重要なことになっております。  こうしたことから、私どもは、アジア・大洋州RILOの活動を一層拡充するために密輸動向の分析の強化、参加国への情報業務に関する技術協力、こういった面でこのRILOを積極的に支援していきたいというふうに考えております。
  27. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございます。御活躍を期待しております。  次に、IDAそれからMIGAについてお伺いいたしたいと思います。  日本は数々の国際金融機関に出資をしております。いわゆる世界銀行グループと言われる中でも出資比率がいろいろ違っております。例えば、いわゆる世銀の本体IBRD、国際復興開発銀行については八・二二%、IDA国際開発協会は二一・一七%、IFC、国際金融公社が六・〇四%、それからMIGAが四・二一%等々、いろいろ違っているわけでございますけれども、どういう基準であるいはどういう政策理念でシェアが決まっているのか、お伺いいたします。
  28. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 御指摘のように、同じ世銀グループでも、基本的な本体のシェアは八・二%程度であるのに対して、他の同じ世銀グループの国際開発金融機関のシェアが違っているわけでございます。特に、このIDAが今回の増資でも一八・七%、累積でも一八%ということで飛び抜けて高くなっております。  御案内のように、このIDAは金利ゼロで開発途上国に貸し出すという特に譲許的な資金でございまして、その原資を各国の出資に仰いでいるわけでございます。そこで日本のシェアが非常に高いわけでございまして、これはちなみに言いますと、米国のシェアが今回のIDA十二次増資で二一%弱に対して、日本が一八・七ということですから、相当高いわけでございます。  これは、まさにIDAはそういった譲許的なものでございまして、その資金は基本的に先進国ドナーだけが出しているということでございます。それに対して、世銀本体の方は開発途上国も含めて出資をしておるということがあるわけでございます。さらに、IDAのシェアの決定の場合には、GDPの総額だけでなくて一人当たりのGDPといったものも参考にしておりまして、我が国の一人当たりGDPは、このIDA十二次増資のときには一九九六年の数字を参考にしておりますけれども、米国よりもずっと高い数字になっておりまして、そういったこともあってIDAについて飛び抜けて高いということでございます。  その他のIBRDあるいはMIGA等につきましては、先生御指摘のようなシェアになっているわけですが、MIGAにつきましても一九八八年に創設されましたときに世銀の本体のシェアを参考にしたわけでございまして、MIGA自体、先進国だけでなくて途上国も参加しておるということもあろうと思います。
  29. 広中和歌子

    広中和歌子君 このIDAへの融資というのは無利子でございますね。ですから、今回で十二回目なんですけれども、その増資、二千九百五十億円の払い込みをするわけですが、今までの累計で幾らぐらいになっておりますでしょうか。
  30. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 先ほど申し上げましたとおり、IDA途上国に貸し出しますときには金利がゼロでございますが、その資金をどうやって調達するかといいますと、各国からの出資でございます。したがいまして、各国から来るお金はいわば無利子で、かつ期限の定めのないような形で拠出し、それを使ってIDA途上国に金利ゼロで融資をしておるということでございます。  それで、IDAが貸しておりますものは今も申し上げたように融資でございますので、期限がたちますと返済されて返ってまいります。したがいまして、IDAの貸付金の原資は各国から今回のように拠出してもらうものもございますし、それから過去に貸していたものが返済されて、それをさらに貸し付けるというものもございます。ですから、現在の累積で約二百億ドル程度になるわけでございまして、これは先ほど申し上げたように、IDA十二次増資完了後、全体での千百億ドル強の約一八%程度になるということでございます。
  31. 広中和歌子

    広中和歌子君 ここに銀行の専門家がいらっしゃるかもしれませんけれども、要するに利子なしで貸すということは、例えば十年ぐらいたてばただで上げてしまうというのと一緒ですよね。そういうことになるわけですよね。
  32. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 御指摘のように、一種の経済的な計算で現在価値のような計算をいたしますと、十年、二十年で金利ゼロといいますと、全く贈与と同じにはなりませんが、半分とか三分の二とか、贈与したのと事実上変わらないような現在価値になるというふうに思います。
  33. 広中和歌子

    広中和歌子君 ある日この出資が不必要になるということはあり得るんでしょうか。
  34. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 最近の傾向を見ますと、例えばIDA九次増資のときは全体の規模に対して出資してもらいましたのが八八%、残りの一二%は実はリフローといいますか、前に貸していたもので返ってきたもの等でございました。十次増資のときは出資額は八一%、残りが返ってきたもの等。それから、IDA11のときは、これは一部米国が出資できなかったとかいろんな状況がありまして、やや変則的なのでございますが、各国の拠出したものは四八%で、残りはむしろリフローとか世銀本体からの所得の移転でございました。今回のIDA十二次増資は、出資額は全体の規模の五七%で、残りの四三%は借金が戻ってきたものとか世銀本体からの所得の移転でございました。  したがいまして、これをずっと伸ばしていきますと、おっしゃるようにだんだんと各国から出資してもらう必要性が小さくなってくる。極端に先をとりますと、あるいはもう各国からの新たな出資が要らなくなる。つまり、貸していたものが返ってくる、そのものだけでずっと自動回転するというふうになる可能性ももちろん遠い将来はあり得るというふうに思っております。
  35. 広中和歌子

    広中和歌子君 そのような世の中になれば大変結構だと思っている次第でございます。  ところで、MIGAでございますけれども日本は五千五百十二万米ドルを拠出していて世界で第二位ということでございます。今回の増資は設立以来初めてと聞いておりますけれども、この出資するお金四千二百二万米ドルの範囲内で直接必要なのは一七・六五%というふうに聞いております。残りは必要が起こったときにMIGAから請求されない限り出資の必要はないということなんですけれども、今までの実績から見てそういうことはあり得るんでしょうか。
  36. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 開発金融機関はしばしばそういう形があるわけでございますが、実際に出資しますもののほかにコーラブルという、要するにその国際金融機関から株主たる各国に必要が生じたときに追加的に出してくださいということを言える権利を国際金融機関に与えているというものがございます。したがって、そういうものがいわば二線準備的にあるわけでございまして、それをベースに市場からお金を借りて貸したり、あるいはMIGAのように保証をするということをしているわけでございます。これまでMIGAはコーラブルについてどうこうといったようなこと、そもそもその保証について事故が発生して払っていけなくなったということがございませんので、比較的順調にやってきたということかと思います。  なお、ちなみにMIGAは一九八八年にできまして以来、現在まで資本規模が十一億ドルでございましたので、保証限度額というのはこの資本規模の三・五倍ということで三十九億ドルまでしか保証ができないわけでございますが、既に三十六億ドルまで保証残高が来ておりまして、もう保証できる余地が非常に小さくなっているということで、一九八八年の設立以来今回初めて増資をお願いしているということでございます。
  37. 広中和歌子

    広中和歌子君 最後の質問になりますけれども、世界第二の経済大国として日本はさまざまな国際機関に多くの出資あるいは拠出をしているわけでございますけれども、その割に日本人の職員が少ないんじゃないかということはたびたびこの委員会でもまた別の委員会でも指摘されているところでございます。なぜそういうことになっているのか。国際機関に勤めるというのはかなり魅力的な職業の選択肢の一つだと思うのでございますけれども、どういう理由なのか、大蔵大臣、もし御意見がございましたら。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと私のは学説が古いかもしれませんけれども、ずっと見ておりまして感じます幾つかのことは、一つはだんだん我が国の給与水準が上がってまいりましたためにペイが余り魅力的でないということのようでございます。それからもう一つは、何か日本にいて仕事を持っていて向こうへオンローンで出て何年かしたときに戻ってこれないという問題もあるようでございます。そのほかに、広中委員と違いましてやっぱり語学の問題というのがどうしてもあるんだろうと思います。
  39. 広中和歌子

    広中和歌子君 大蔵省を初め各省庁では留学させていらっしゃいますね、いろいろな世界の大学に。そういうときに学位を取らないで二年間ぐらい留学して帰る方が多いんじゃないかと思うんですけれども、学位を取ることを義務づけられたらいいんじゃないかと思うんです。国際機関では少なくともMA、そして例えば世銀みたいなところではPhDが必要なわけで、日本では必要のないディグリーかもしれませんけれども、海外ではどこの大学のディグリーであろうとディグリーはディグリーなんです。ですから、そんなに難しいことではないわけでございますので、ぜひそれを義務づけられることを御提案申し上げて、時間なので私はここで質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  40. 益田洋介

    ○益田洋介君 日銀総裁、毎日御苦労さまでございます。  去る十八日、総裁は講演をなさいました。これは内外情勢調査会における日本銀行総裁講演と名づけられまして、後にペーパーもお出しになっていらっしゃいます。目を通させていただきましたが、さまざまな高度な経済分析がなされておりますし、その上に総裁の政策、また特に調査について新たな提案をされておりまして、私は講演には参加させていただきませんでしたが、この議事録は興味深く読ませていただきました。  この議事録といいますか、これは抜粋だと思いますが、十三ページに考査・モニタリングの見直しという項目がございまして、特に総裁が指摘されておりますのは、金融機関の考査の運営に当たっては、その経営をめぐる環境の変化に柔軟に対応できるような機動的な対応方法をこれから用いていくべきであろうとおっしゃった末、考査の頻度をもう少し弾力的にふやしていこう、旧来年一回であったものをもっとふやしていこう、これを行うためにさまざまな時間的な制約というのもございますと。ここで総裁が提案なさっているのは、調査のポイントを絞り込んだいわゆるターゲット考査も活用していきたいし、また考査と日常のモニタリングを一体的に運営したいんだと。非常に示唆に富んだ講演をされたわけでございます。このターゲット考査について若干の補足的なお考えを伺いたいのが一つであります。  それから、もう一つ私が気になっておりますのは、考査の結果、問題が発見された場合には、日銀としては個別の指導を金融機関に対してなされるのに加えて、可能な限り考査結果を公表するとおっしゃっていて、この可能な限りというのはどういうところに視点を置かれているのか。これは改正日銀法が施行されて、その精神として総裁がうたわれましたのは独立性と透明性である。この透明性の部分が日債銀の八百億の焦げつきにもつながったわけで、要するに開示が十分でなかったからつながったという苦い経験を最近になってお持ちで、私は、この透明性について、今回このターゲット考査の結果の公表とあわせて総裁の考えをお伺いしたいと思います。
  41. 速水優

    参考人速水優君) 私の講演記録をお読みくださいましたそうで、ありがとうございます。あそこでいろいろなことを申しましたが、最後の方で特に考査のモニタリングにつきまして、これからの考え方を申し述べた次第です。  金融機関経営をめぐります環境変化は非常に機動的で変化が多うございますし、考査も今までのようなやり方でやっておりますと、なかなかそのときの本当の問題、私どもとしてもそれなりの反省を持っておるわけで、これからはもう少し効果的にといいますか、特に日銀の考査というのは金融監督庁その他の検査とまた違った角度でいたしておりますので、考査の頻度を弾力的に変えていくということで調査のポイントを、例えば二〇〇〇年のコンピューター問題に各行がどういうふうに対応しているかといったような一つのターゲットをはっきりさせて短期に考査をする。通常のターゲットですと、二、三週間かけて資産内容とか各種のリスク管理の問題、金融機関の経営全般についてフル考査をやるわけでございますけれども、今考えておりますいわゆるターゲット考査というのは、例えば今申し上げた二〇〇〇年の問題とか特定の問題に絞って、人数も少なくして、調査対象もその時々の情勢を調べてもらって短期間で行いますから考査運営が効率化していく、事務負担も軽減されると思っております。  日本銀行としてはこういうようなことも加えてやっていくつもりですが、公表ということは、ちょっと日経が全般的な公表というふうに書きましたので、これは訂正を申し入れて、翌日、訂正記事が出ておりましたが、私が申しましたのは、考査や日常のモニタリングを通じて得られました金融システム全般に関する調査や研究結果について可能なものは対外公表に努めて、金融機関のリスク管理手法の高度化を後押ししていきたいということを申したつもりでございます。  申すまでもなく、個別の考査結果に関しましてはこれまでもるる説明申し上げてきたところで、これは個別のものは守秘義務というのがかたく守られております。こういうことだと御理解いただきたいと思います。
  42. 益田洋介

    ○益田洋介君 さらに、同じ講演で総裁は、預金保険機構向けの貸し付けについても、日銀のお立場、また今後の方針を発表されております。  まず、資本注入分を除いて、大手銀行などへの公定歩合〇・五%よりも預金保険機構向けの貸出金利は高めに誘導していくんだと、そして同機構にマーケットからの資金調達を促していくという考え方を示されております。  なぜこういうふうに総裁は懸念をされているかというと、不良債権問題の処理の過程において預金保険機構の必要資金が多額に上っている状況にかんがみて、日銀自体のバランスシートの資産がふえるわけです。このことで金融調節を行う中央銀行にとっては資産の劣化が指摘されてくるのではないか、こういう懸念をなされている、この点について若干の補足をお願いしたいと思います。
  43. 速水優

    参考人速水優君) 預金保険機構への貸し付けというのは、私どもはこれはつなぎの資金供給というふうに考えております。もちろん今度の資本投入につきましてももともと私どもも賛成しておりますし、金はどこからか調達しなきゃならぬわけでございますが、預金保険機構の場合は保険料その他借り入れにつきましても民間から借り入れるということができる。現に、今は安い金利ということもございまして、比較的順調な資金の市場調達が進んでおることは非常にうれしく思っておるわけですが、私どもとしては足りなくなったときの補完的な信用供与というものがこれの性格であるというふうに思っております。  こうした貸し付けが著しくふえたりかつ長期にわたって固定化する事態が生ずるというときに、日本銀行のバランスシートの健全性に対する懸念が生ずるとか、あるいは短期の流動性の供給によって金融調節を行っていくという中央銀行本来の機能に支障を来すというようなことになってはいけないということが私どもの非常に強い懸念であるからでございます。  こうした点を踏まえまして、日本銀行としては、預金保険機構が政府保証債の発行といったような調達手段も認められておるわけでございますので、こういう多様化をされて民間からの資金調達に努力させることによりまして日本銀行貸し付けへの依存を極力抑制していただきたいというふうに思っておる次第でございます。  貸付金利につきましても、今は国債担保の取引先への貸し付けである公定歩合〇・五%ということでやっておりますけれども、預金保険機構向けの貸し付けは信用秩序維持のために預金保険機構がその業務の運営上不足する資金を貸し付けるものであるというふうに私どもは判断しております。一方、金融調節の目的を達成するために行っております通常の取引先への公定歩合による貸し付けということとは目的及び性格を異にするものであると考えておりますので、情勢を見ながら金利はその都度考えてしかるべきものだというふうに考えております。
  44. 益田洋介

    ○益田洋介君 それから、総裁は非常に思い切った決断をされて、オーバーナイトのコールレートをゼロ%に誘導するのに成功した。余り英語を使うと広中先生にしかられますので、今はいないからいいですけれども、翌日物の金利のゼロ%誘導、これは国際的にも金融界で非常に注目をされております。それからもう一つの注目点はエクセスリザーブ、日本語で言うと超過準備額が非常に大きい。日銀は市場が必要としている資金を上回る資金の供給を繰り返してきているわけですが、余剰の資金は民間銀行に準備資金の超過分として積み上げている。この額が大変に驚くべき額になっている。  海外の投資家たちは、特に有力なヘッジファンドなんかの責任者たちは、この点に関して、これだけの積み上げをしなければいけないという日銀の意図がわからないと。やはり日本の金融界は七兆四千五百億の公的資金を投入しながらまだ不安に思われているんではないか、こういう声がありますが、総裁のお考えはいかがでしょうか。
  45. 速水優

    参考人速水優君) 確かに準備金は少し多くなったり少なくなったりかなり波を打っております。これが短い資金の一つの調節の道具にもなり得るわけでございますが、非常に多い場合には私どもは売り出し手形などを使いまして資金の吸収をいたしております。今の分量が平均してどれぐらいになっていますかわかりませんけれども、私は必ずしも多過ぎるとは思っておりません。その辺は、こういう非常に難しい時期に、金融機関がここなら大丈夫だといって置いてくる金でございますので、そういうことも考えて多少ふえることはあり得るというふうに思っております。
  46. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、二月十二日に行われました政策委員会金融政策決定会合、この日は私が質問をしたいと思っていたところ、総裁にはお見えいただけなかった。三月二日にもお見えいただけなかった。そして、先週の十五日もお見えいただけなかった。これだけ頻繁にお願いするというのにお見えいただけない理由を私は一度聞いておかなきゃいけないと思っておりますが、それよりも先に政策の面でまず御質問します。  この十二日の会合の議事要旨というものが三月十七日に公表されておりまして、この中で特に金融緩和について相当いろいろな角度から議論がなされたというふうにお見受けいたします。  この議事要旨の二十一ページで、一人の委員は、金利引き下げによる従来型の金融緩和についてはもはや大きな効果は期待できない、さらには潤沢な資金供給という言葉の意味合いが不明確である、これはマネタリーベース、広中先生がいないけれども一応日本語で言いますと、流通現金プラス準備預金に目標を置いた量的緩和を明示すべきときに立ち至ったのではないか、こういう御意見を言われた。その後詳しいことはおっしゃっていない。また、もう一人の委員からも、量的ターゲットの有効性を必ずしも否定するものではないといった意見が出された。結論だけ出ていますが、量的緩和には検討すべき点が多いということで、どうやら現段階での量的緩和については否定的な姿勢を二月十二日の会合では少なくとも持たれている。  一方で、十三日の日経新聞、それから同じく産経新聞にはこのような見出しが躍っていた。「日銀、一段の金融緩和 誘導目標〇・一五%に  通貨供給量拡大めざす」、これは日経です。同日の産経の見出しは、「日銀金融緩和実施 「量的緩和」苦渋の決断」と、決断したように書いてある。先ほど透明性ということを申し上げましたが、総裁、どういうことを実際はお話し合いなされて、さらには今度三月二十五日に予定されている政策決定会合で方針が出されるのか。やはりこの辺で財政金融委員会にはつまびらかに基本的な考え方をお示し願いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  47. 速水優

    参考人速水優君) この政策委員会の議事録要旨に出ておりますように、九人おります委員の中にも、おっしゃるようにそろそろ量的指標にしてはどうかという意見があることも確かでございます。現時点で日本銀行としてはオーバーナイト金利以外の何か新しい指標を見ていくという合意ができているわけではございません。一番最近行われました金融政策決定会合、三月十二日の場合では、あくまでも現状維持が決定されまして、従来同様のオーバーナイト金利をターゲットとする手法を用いてこれをできる限り低目に推移する、それは二月十二日の決定事項の決定のときの発表文にも書いてあるんです。だけれども、一遍にどかんと下がって何かが起こると心配だからなるたけ低めに推移させるけれども、とりあえず〇・一五ぐらいのところを目標にしてみて、何でもなければもう少し下げていくというようなことを発表文に書いてあるはずでございますが、それが現実に〇・一五はほんのわずかな期間でさらに下がっていったわけで、これはもうもともとディレクティブ、委員会から営業第一線への決定事項の中に書いてあったとおりでございます。  政策の運営の手法につきましては、私どもとしては常日ごろから議論、検討を行っております。例えばオーバーナイト金利に加えてターム物の金利とか量的指標をターゲットに加えていってはどうだろうかといったような議論もございます。これらにつきましては、しかし中央銀行がそうした操作の対象をどの程度コントロールできるであろうかというようなこと、そうした操作対象と実体経済との関係というのはどういうものだろうか、またどの程度安定的なものなのであろうかと、そういったところがポイントでございまして、まだまだ議論を重ねていきたいと思っております。  そうしたさまざまな観点を踏まえながら、金融政策決定会合でどのような見解が出されるかということはこれまでも議事要旨の中で言及してまいりましたし、これからもできるだけ明らかにしてまいるつもりでございますが、先の会議でどういう議論が出るであろうかということを、今の時点で私としてもわかりませんし、申し上げるのは適当でないというふうに思っております。
  48. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、私が当委員会に対して行っております資料要求について若干お話を敷衍させていただく意味でお話をさせていただきたい。  平成十一年二月二十五日の参議院予算委員会質疑において、これも総裁は欠席をされ、かわりに藤原副総裁がお見えいただきましたので、副総裁に資料提出要求をいたしましたところ、これを受けて三月十日に予算委員会理事会に回答文書が提出されましたが、その内容についてはほとんど要求事項を満たしていない、加えては未回答である部分もあった。今回はその未回答である二項目について当委員会に、予算委員会が終わってしまいましたので財政金融委員会の理事会に提出をし直しました。  その資料の提出内容は、一、氷川分館と大阪支店長舎宅が売却できない合理的理由について今回の文書には質問の趣旨に添った理由は全く述べられていない。売却した後に再びリースバック契約をして新たな所有権者との間で契約をすれば現行と同様の形態で日銀が中央銀行として他国の中央銀行の総裁をもてなす等、繰り返し総裁がおっしゃっている趣旨のことは、目的は達成できるわけでございます。こうした状況にかんがみまして、売却できない合理的理由についてお述べいただきたいというのが一点。  二、支店長舎宅の売却計画書。これは具体的な売却の計画は、それは一般商行為に基づくものであればなかなかしにくい。また、これが事前に表に出ることによって取引がうまくいかないようなことも考えられますが、私は競売や任意売却、それから地元の公共団体への有償譲渡などさまざまな方法を考えられておると思う。個別にどのようにお考えなのかという計画書をお出しいただきたい。  これが当委員会に提出いたしました資料要求書です。  繰り返すこともないわけですが、この日銀の保有資産の処分については、昨年の五月二十一日の財政金融委員会で最初に総裁に提起をいたしました。その後、さまざまな委員会等を経てことしの一月二十九日、日銀保有資産見直しということで、当面は六軒の支店長舎宅それからグラウンドとか保養施設を売却対象にお考えいただくという回答をいただいておりますが、いまだにこのように未提出の書類があるということは非常に残念でございます。総裁、できるだけ早い機会に責任を持って当委員会に誠意ある合理的な回答を提出していただきたいとお願いする次第でございます。  日銀総裁、ありがとうございました。  大蔵大臣、お待たせして済みません。  中国経済は過去二十年間で最大の難局を迎えているというふうに今言われております。そして、広東省の広東国際信託投資公司、GITICと呼ばれております。広中先生、これはちょっと日本語訳がないので横文字で勘弁してください。これが倒産いたしまして、事実上の信用不安が渦巻いておる。  一番心配なのは、通貨人民元の切り下げということでございます。ことしの一月六日、私どもは超党派で中国に参りまして、胡錦涛国家副主席にお会いしましたところ、国の威信にかけても人民元は下げないんだと、このように明言をされておりました。何しろ財政収入の七割が今国債に依存している状態でございますので、これは実際認識はありながらそう簡単に、例えば今回の全人代、全国人民代表大会においても、これは十五日閉幕しましたが、経済問題について議論なされながら、結局打開策は出せなかった状態であります。  この点についての不安を私は感じるわけでございます。これは中国の国内それから香港など非常にすその長い影響を与えてしまうことになるんじゃないかと思っておりますが、大蔵大臣の御意見を拝聴させていただきたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 中国の経済の動向につきましては、私自身、益田委員と同様に非常な関心を持っております。また、自分のでき得る限りにおいていろいろな情報を集めようと考えておりますことも御同様でございますが、いわゆる開かれた体制ではございませんから、自由な情報、フリーな情報というものは極めて得にくいのが現状でございます。  また、そういう経済でございますので、それについて何かの意見あるいは見通し、批評等を公の場でいたしますことについても十分注意をしておかなければならない、これはおわかりいただけることだと思います。  そのような事情で、大変に関心を持っておりますし、ただいまのお尋ねそのものについても関心を持っておりますけれども、こういう席で申し上げることは差し控えた方がいいのではないかということを考えておりますので、御理解を得たいと存じます。
  50. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。
  51. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸です。  IDAについて伺いたいと思います。  もともとこのIDAというのは、途上国の貧困の打破とか経済的な自立を目的とするということで設立されたわけです。そのIDAが増資するということだからいいんじゃないかというふうにも言われがちなんですけれども、しかし運営の実態からしますと、いろいろ問題があるというふうに考えております。  そこで、IDAは、その設立の目的からいって融資対象国とか融資目的、そういったものがIMFや世銀、私が世銀と言う場合、IDAと区別するためにIBRDのことを世銀と言わせていただきますが、IMFや世銀と違っておると思うんです。しかし、その運営を見ますと、世銀と全く一体になっております。総裁も理事会も全く世銀に依存しているということです。世銀と一体なんです。そうすると、結局、実態からいってこのIDAは世銀の融資を補完する役割を担っておる、そういうものになってしまっているんじゃないかと思うんです。  これについて大蔵大臣、こういった方向がIDAとして望ましい方向とお考えなのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  52. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) まず、私の方から世銀本体とIDA、第二世銀との関係についてお話し申し上げたいと思います。  御指摘のように、実際のスタッフ等は世銀本体とIDAとで別のスタッフを立てているわけではございませんで、同じスタッフが世銀本体の融資もやりますし、IDAの融資もやるということになっております。ただ、世銀とIDAとはそれぞれ別の設立協定、国際条約ででき上がっておりまして、その目的等は異なっているわけでございます。  特にIDAは、先ほども申し上げましたように金利ゼロという非常に譲許性の高い資金を使いまして開発途上国、特に貧困な開発途上国への融資に特化した形で行っておるということでございます。  したがいまして、事実を申し上げますと、IDAと世銀とは別の協定で、しかもその趣旨、目的は違っている面があるわけでございますが、実際の融資の事務等は、御指摘のとおり同じスタッフが共通して行っておるという形で、いわば効率的な運営が図られておると。これは発足以来、まさにIDAというものが第二世銀と言われますように、世銀のいわば譲許的な融資の窓口という形で設けられたという趣旨に沿って行われておるものというふうに理解しております。
  53. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 事務が一体になっておる、スタッフが一緒だということから起こってくるだけじゃなしに、融資の方向が世銀の補完物になっているということを私は問題にしておるんです。  実際、世銀についていえば構造調整融資、これが非常にいろいろと問題になっております。世界的な批判も大きいわけです。その構造調整融資、世銀が全融資の大体三〇パーを占めておるんですけれどもIDAもほぼそれに見合った形であるということで、果たしてIDAの目的に沿っているのか、これは後で質問したいと思いますが、そういう観点から私はこのことを問題にしておるんです。  その前に、世銀の構造調整融資についてちょっと伺いたいんですけれども、これはともかく大変に不評です。構造調整プログラムといったもの、いわゆる貸付条件といいますかコンディショナリティーと言っておるようですけれども、それを見ますと、もともとが国際収支の改善、つまり発展途上国支払い能力を高めて借金の返済ができるようにすることを目標としておるわけです。ですから、債務問題解決のためと言っておりますけれども、実際上は社会福祉予算の削減とか国営事業の民営化、海外からの投資誘致、それからそういう構造政策をとって最後は貿易の自由化というような感じで、そういう条件を押しつけるという形になっております。  そうなってきますと、貿易の自由化それから増税、歳出カット、つまり緊縮財政、結局はその融資を受ける国民に非常な負担を強いる、苦痛を強いるわけですけれども、こういったことについて大体八〇年代から、融資を受ける途上国は当然のことながら融資する側からも批判の声が出されてきております。それに対して日本政府は、世銀の中でそういった批判に対してどういう態度をとってきたのか、どういう対応をしてきたのか、どんな発言をしてきたのか、そして今この構造調整融資についてどう考えているのか、これを簡単にちょっとお話しください。
  54. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 御指摘のように、最近、構造調整融資等のいわゆるプログラムローンというものがふえております。これは道路をつくるとか、あるいは発電所を設置するといったプロジェクト物以外の、まさに御指摘のような政策条件をつけて支援をするものでございます。これはプロジェクト物と基本的な目標は同じでございますが、手法、手段が違うということでございます。  プロジェクト物は、まさに今申し上げたように、発電所をつくる、あるいは道路をつくる、学校をつくるといったいわば典型的には施設、公共資本をふやすという形でございます。プロジェクト物はそういうことでございますが、プログラムローンの方は目標は途上国の持続的な成長あるいは開発を図るということですが、具体的に政策条件といいますと、規制緩和あるいは財政支出の管理の改善あるいは企業の民営化といった経済構造を変えるということについて……
  55. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 内容についてはわかりましたから、どう対応してきたかを言ってください。
  56. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 構造について条件をつけるという形で行っているわけでございます。  これに対しまして、我が国といたしましては従来から途上国の実態にあわせてそういったプログラムローンが必要な国に対してそういう条件をつけることについては支持をしております。  しかし、その際には当然ですけれども、その途上国の経済あるいは社会の実態にあわせた弾力的なフレキシブルな形でそういうことをやっていくべきだということを主張しております。特に社会的な弱者に対する配慮ということもあわせて主張しているところでございます。
  57. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私はこれをちょっと図書館から借りてきたんですが、海外経済協力基金、OECFが一九九一年に早くも「世界銀行の構造調整アプローチの問題点について」ということで世銀に対して意見書を出しました。四点にわたって出しておるんですけれども、そこでは今おっしゃったような部分も若干含まれております。しかし、そんな生ぬるいものじゃなしに、かなりきつい批判だったんですね、これは。ですから、この後、世銀との問題で大分論争になったというふうにも聞いておるんです。  後で内容についても若干言いますが、OECFの世銀批判について、これは世銀の中ではどう扱われたのでしょうか。
  58. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 私ども考え方はもちろん世銀に対して理事を通じて常に言っているわけですが、それと別に、実はOECFも直接的に世銀との対話というのを現在やっております。一年に何回かそういう機会を設けましてやっておるわけです。その場合の要点は、今御指摘のような一般的な構造調整融資についての考え方を申し述べるところもございますし、やや具体的に個別の国のどういうセクターについて、あるいはどういうプロジェクトについての融資を、例えば世銀がこちらを行う、OECFは別なところを行うというような具体的な話もあるわけでございます。したがいまして、世銀は当然OECFの世銀の融資に対しての考え方というのをよく承知しております。  ただ、確かにこれまで時折、私どもから見ておりますと、特にアジア諸国のいろんな社会的、文化的な背景というものと必ずしもそぐわないようなやや性急な民営化を推進するといったような傾向がなかったわけではございませんで、そういうものに対しては、OECFだけでなくて私どもも世銀に対して当該国の社会経済の実態に合わせたプログラム、実態に合わせた政策条件になるように働きかけているところでございます。
  59. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 それがそのように進んでおればいいんですけれども、ほとんど進んでいないというのが実態ですね。九一年の時点で指摘したのは、今ともうほとんど変わっていないんです。四点ほどありますけれども、そのうち私は二点について指摘したいんです。  ここでは、輸入自由化を性急にやらせるなと、途上国の実態に合って自由化しなくてもいいような部分については面倒を見ないといけないんじゃないかというふうなことまでずっと書いているわけです。具体的な事例まで挙げてあります。ですから、ともかく自由化自由化ということで融資を受ける国の産業をぶっつぶしちゃう、産業を育てることができないような状態にしてしまう、こんなことはだめだというふうに言っておる。そしてまた民営化の問題、何でもかんでも民営化ということで、実際そういう市場が育っていないところへ強引に民営化を押しつけるとかいったことをやられておるけれども、これもだめだということで提案しております。ところが、これが全く解決されていない、改善されていないというのが実態です。  そこで、そういうことをまず指摘しておいて、それではこういった方向に進んでおる世銀、それに対してIDAは本来LLDCの貧困の打破それから経済的自立の支援ということをやろうというわけなんですが、ではIDAはそういう方向に進んでいますか、進んでいるというふうに言えるでしょうか。
  60. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 先ほど申し上げたように、IDAはそもそも貧困開発途上国に対する支援が中心でございまして、特にそういう国における貧困の削減、撲滅へ向けてということが中心でございますので、特に社会セクター支援というのが最近は非常に大きなものになっております。  実際、IDAの融資の四割近くが今や社会セクター支援ということで、教育、保健、栄養、人口あるいは失業対策、性格差の是正といったところに集中をしておりまして、こういう面では今申し上げたような性急な民営化云々といったこととはちょっと別の観点からのいわゆる社会セクター支援でございますので、IDAの方向性としては、今申し上げたような貧困削減の方に集中的に融資が行われるようになっているということは言えようかと思います。
  61. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうなっていないから批判が強いわけで、日本立場から見てこうだというのはちょっとよくない見方だと思います。  事実の問題としてちょっと指摘したいんですけれども、九四年の九月に世銀がIDA10、第十次増資の第一年度と題する評価報告書を発表しております。これが出されたのは、それまでのIDAの融資業務についていろいろ問題ありということが国際的に論議になって、そして第十次増資もそういった問題解決のためじゃないかと言われたわけです。そして、きちんとした報告書を出すならば、これこれこういうことをやりなさいと、それについて報告書を出すならばということで第十次増資が認められたという経緯があります。そこでこの報告書が出されたわけなんですけれども、結局何にも前進していなかったということがその後言われております。  時間の問題もあるし、私の方から先に言いますが、その中で幾つかの点が指摘されておるわけなんですが、べーシック・ヒューマン・ニーズ、BHNへの融資がわずか一九・八%にとどまっておると。これは第九次増資の際、IDA9の三年間の平均が三〇・六%なわけですから、物すごく大きく下回っているわけです。しかも、その三〇・六%でも少ない、これを大きくふやすべきだというのがIDA10の合意なんです。全く逆の方向に進んだということで指摘されております。  では、今度第十一次ではそれはどの程度改善されたのか。改善されておりますか。
  62. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 先ほど申し上げました数字は第十一次の数字でございますが、具体的に申し上げますと、IDAの融資承諾額に占めるいわゆる社会セクター関連融資というものでございますが、これが九八年度が三五・五%、九七年度が二二%、九六年度が三二%ということでございますので、まさにこのベーシック・ヒューマン・ニーズのコアをなすような社会セクター支援というものが三割強、四割弱ぐらいになっているということでございます。  ちなみに、第十二次増資についてはどうかということは、今回の法律をお諮りしているものにかかわるものでございますが、こういうセクターごとのシェアというものは別に決まっておりませんが、恐らく現在のようなトレンドが続き、やはり四割前後はこの社会セクター支援ということになるのではないかというふうに考えております。
  63. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 最後の九八年度はまあ三五パーぐらい行っているということなんですけれども、三年平均したら三〇パー切るでしょう。つまり、第九次と比べても前進していないんですね。そういった状態があるわけです。  さらに重要な問題は、IDAは世銀と同じように構造調整融資をやっておりますが、この構造調整融資のシェアが大き過ぎるじゃないかという指摘があったわけです。それについて、それでは改善されたのかどうか。
  64. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 先ほど申し上げたように、最近時点で構造調整融資と申しますか、プログラムローンはふえております。これはまさに、例えばアジア通貨危機などを契機にいたしまして、いわゆるプロジェクト物だけでなく、むしろ構造調整融資といったものの役割が高まっているということから現時点では増加しているというふうに考えておりますけれども、この構造調整融資につきましては従来から経済の状況に合わせて増減をしておりまして、足元で見ますと最近は二割前後ぐらいになっております。今申し上げたように、アジア通貨危機等から増加していくものとは思いますけれども、融資全体の一部であり、現在の二割前後というシェアが異常に大き過ぎるというふうには考えておりません。
  65. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 二割はちょっと、私が調べたところでは大体二五%ぐらいになっているはずです、九〇年代に入ってずっと。三割から二五%だから大分よくなったじゃないかと言うのかもしれませんけれども、もともとは世銀の構造調整融資と一体になってやるべきものじゃないと私は思うんです。  結局、高利とは言えないかもわからぬけれどもきちんとした利息を取る世銀の融資、これとあわせてIDAの融資をする。IDAは無利子だ。世銀の融資をハード論というんですか、それをソフトなIDAに切りかえていくというだけにすぎないので、結局は考えてみると出資している国、そういった国の国民の税金がどんどんつぎ込まれるわけです。さっき話がありましたように、これは贈与に近いものだから出資しなければやっていけない。そういう形で出資してつぎ込んでいくわけだけれども、結局のところ、このつけかえた分について出資国の国民の税金でそれをやる、もし焦げつけば税金で賄ってしまわなきゃいかぬのだ、そういう問題なんです。  そしてまた、途上国の側にとってそれではそれでいいのかと。一部分でも無利子があるからいいと言うけれども、結局は構造調整融資として厳しい条件をつけられた融資の返済を続けていかなければいかぬという問題が残るわけです。  そういった点ではいろいろNGOなどの意見もありますが、最近の大きな声としては、その目的からいっても世銀とIDAはやはりきちんと分けないといかぬのじゃないか、そういった声もあります。そういった方向というのは大いに検討すべき方向だろうと私は考えるんです。  ただ、それではそういった方向を考えていく上でIDA、世銀が話し合ってそういう方向に改善できる仕組みになっているのかという問題があります。  いわゆる投票権の問題ですが、八五%条項ということでいろいろ言われてきました。重要案件については八五%の賛成がなければ議決できないんです。そうすると、途上国意見というのはほとんどIDAの中では反映されていないという批判が強まっておりますけれども、こういった途上国意見を反映させるためにそういった仕組みを変えていこうということをしたときに八五%以上の賛成をとらなければいかぬわけです。それは一体可能なのかどうか、不可能に近いんじゃないんですか。
  66. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) こういう開発金融機関の投票権というのは、基本的に出資額とそれから基礎票とでできているわけですが、世銀の場合には基礎票が一律に二百五十票ですが、IDAの方は二万四千四百票ということで、ある程度小国に配慮するようになっているということが第一点であります。  次に、IDAは先ほど申し上げたように基本的にほとんどいわゆる先進国が出資しているわけでございますが、途上国の投票権のシェアが余り低下し過ぎないように、途上国に対して自国の投票権シェアを維持するための権利というのが与えられておりまして、それが行使された結果、現時点で言いますとIDAの投票権は先進国が六一・四七%、途上国が三八・五三%となっております。したがいまして、もとより途上国が八五%をとるというようなことは不可能でございますけれども、出資額からいいますと、ほとんどすべて先進国なわけです。実際の投票権は今申し上げたように先進国が六割、途上国が約四割ということになっておりまして、理事会でも二十四人の理事のうちに途上国の理事が十一人を占めているということで、確かに御指摘のように、途上国が絶対的な過半数とか、あるいは重要事項についての加重投票で多数をとれるということにはなっておりませんけれども、現在の枠内でもある程度途上国意見が反映されるような投票権の構造にはなっているということだと思います。
  67. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 それは基礎票があるからという話だったですが、基礎票というのは途上国全体で〇・二五%なんです。〇・二五%の基礎票があったとしてもそれはずっと〇・二五を超えないような仕組みになっているわけです。こんなのは全然途上国の声を反映できる仕組みとは言えないというふうに思います。  さて、時間が迫ってきましたので最後の質問をしたいと思うんですけれども、結局アメリカが約一五%持っています。ですから、アメリカが反対すれば何にも実行できない、重要問題に関しては改正もできない、それから増資をするということについて、増資をするに当たってアメリカの比率を低くしようというふうな増資計画を立ててもアメリカが反対したらそれも実施できないんです。だから、重要案件についてはアメリカが反対したら何にもできないという仕組みになっているわけです。  日本は、出資第二位の順位で投票権も第二位という立場にある。これは八〇年代に大変苦労してそこまで持っていったというふうな苦労話がいろいろ書かれております。それでは、途上国意見を反映してくれという意見について、アメリカの立場とは離れて日本として、少なくともIDAの設立目的からいって世銀と同じ歩調を合わせて進むんじゃなしにきちんと途上国意見を聞いてやろうじゃないか、そういう方向での正常化といいますか、途上国の発言権を少しでも高める方向で投票権第二位の日本が何らかのことを考えていかなければいかぬのじゃないか、最後に大蔵大臣に御意見をお伺いしたいと思います。
  68. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) まず、世銀本体のシェアにつきましては、従来から我が国途上国あるいはいわゆる新興市場国等のシェアが適正に反映されるようにということは常に主張しております。特にアジア諸国について主張しているわけでございます。  ところで、IDAの方は先ほど申し上げましたように、基本的に拠出をしてくれる国のシェアがある程度高まってしまうということは、これは仕組みから申し上げて必然的な面があるわけでございます。したがって、私ども主張しておりますのは二つございまして、一つはアジアの国の中でもこういうIDAに拠出できるような経済発展段階になっている国はぜひ拠出してもらいまして、アフリカあるいは南アジアの最貧国に対するIDAの支援を助けるという形で投票権も出てくるということになってほしいというのが一つでございます。  それからもう一つは、まさにIDAのお金を受けるようなアジアやアフリカの最貧国の人たちのいろいろな形での意見IDAの増資交渉の中でよく聞いていこうということを言っております。IDAの増資交渉は、結局出資者とIDAとの間での交渉になるわけでございますが、その場合とかく先進国の意向がやや強く出過ぎる嫌いがございますので、そういう中でどういうセクターに重点を置くかとか、どういう地域に重点を置くかという話を決める際にIDAのお金を受けるような最貧国、アフリカあるいは南アジア等の最貧国の考え方等をいろいろな形で聞くということを進めているところでございます。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在、世銀の総裁はウォルフェンソンという人でございますけれども、この人になりましてからかなりただいま池田委員の言われておられましたようなことを本人は考えているようでございまして、私自身、過去半年の間にこの人に三回会っております。  向こうから積極的にそういうことを、いろいろ意見をこっちへ聞いてこられるので問題意識は確かに本人が持っているように思います。しかも、この人は、おっしゃいますように総裁が言ってもアメリカの議会は強いわけでございますけれども、議会に対してかなり発言力というか説得力が目下のところ少なくともあるような動きでございますので、私にそういう機会がまた必ずあると思いますので、今おっしゃいましたような話をしておるのでございますけれども、彼を激励していきたいと思います。
  70. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  まず、関税定率法、NACCS法関連の質疑をさせていただきます。  通関情報処理センターの天下りの問題でございます。  航空貨物及び海上貨物通関情報処理システムの運営を行う大蔵省の認可法人である通関情報処理センターにつきましてお伺いするわけでございますが、今回の改正案には財務諸表の公開が新たに定められることになっております。これは平成九年の特殊法人の財務諸表等の作成及び公開の推進に関する法律に準じた措置であるということで、大変国民の信頼を確保すると評価できるものであると考えております。  ところで、大蔵大臣が実質的に任命権を持っておられます理事長及び四名の常任理事の出身でございますが、大蔵省が予算委員会に提出した資料によりますと、理事長はもとより、四名の理事のうち三名が大蔵省OBであるということでございます。特殊法人については、主管省庁出身の常勤役員数を全体の二分の一以下にするよう平成九年十二月二十六日の閣議決定がなされているようでございます。また同決定では、認可法人についても特殊法人に準じて国家公務員からの直接の就任者の削減に努めるとされていると思います。  この閣議決定の中の削減についての努力規定はきちんと実行されたでしょうか。今具体的なことを申し上げましたけれども、現在、理事長及び四名の理事のうち三名が大蔵省OBであるような状態を見ますと、どうも閣議決定は遵守されていないように思うのでございますが、いかがでしょうか。
  71. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) NACCSセンターは、私ども税関と民間の方々がともに利用しております通関情報処理システム、NACCSの運用を行っているものでございます。また、NACCSセンターの経費は税関及び民間が支払いますシステムの利用料金によって賄われております。  このため、NACCSセンターの役員につきましては、従来から税関手続や業界の事情に明るく、システムに対する知識、経験が豊富であり、かつ特定の利用者に偏ることなく、利用者間の調整を行う能力がある人材を官側、民間側を問わず幅広い視点から起用しているところでございます。現在九名の役員がおります。そのうち大蔵省の出身者が五人、それから民間の出身者が四人でございます。これを常勤、非常勤に分けますと、常勤職員は六人のうち五人が大蔵省、一人が民間、非常勤は全員民間の方ということになっております。  それで、平成九年十二月二十六日の閣議決定後、この任命動向はどうなっているかというお尋ねでございますけれども、この閣議決定以降の役員の就任者は七名でございまして、大蔵省出身者が三名、民間出身者が四名となっております。  それから、大変恐縮でございますが、ただいま先生の方から常勤役員の国家公務員からの就任者を半数以下にすることというお話がございました。私どもが読んでおりますのでは、常勤役員の国家公務員からの直接の就任者を半数以下にすることというふうに聞いておりますので、私どもはこの閣議決定をクリアしているというふうに考えております。
  72. 三重野栄子

    三重野栄子君 トータルいたしますとまだまだこれからの課題があるだろうと思います。問題の根源は、政府として認可法人の運営等についての取り組みが特殊法人や公益法人に比べましておくれているように思います。  今月、総務庁行政監察局より認可法人に関する調査結果報告書が提出されて、情報公開について同様の問題が指摘されていると思います。この際、特殊法人と同様に天下り等の規制をきちんと行うことを決定するべきであると思いますけれども、政府の皆さんの見解を伺いたいと思います。
  73. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) NACCSセンターにつきましては先ほど申し上げたような事情にございますので、私どもは特に大蔵省あるいは税関関係者に偏重した役員構成になっているというふうには考えていないわけでございます。  ただ、今後ともその役員の任命に当たりましては、先ほど申し上げましたように税関手続あるいは業界の事情それからコンピューターシステムに対する知識、経験が豊富であること、あるいはまた利用料金の算定に当たりまして調整が非常に難しゅうございますので、特定の利用者に偏ることなく、利用者間の調整を行う能力がある人材を官側、民側を問わず幅広い観点から起用していくことにしたいというふうに考えております。
  74. 三重野栄子

    三重野栄子君 これからもよろしく御検討をいただきたいと思います。  次に、税関職員の方の研修について伺います。  先ほどもちょっと質問に出ておりましたけれども、平成十年五月十八日の総務庁によります麻薬覚せい剤等に関する実態調査結果に基づく勧告が出ておりますが、これについて伺いたいわけでございます。  同勧告は、薬物の押収について水際での押収事例や検挙者数から見て組織的な密輸が行われているものと考えられるとした上で、さまざまな勧告を行っているわけですけれども、中でも税関行政に関するものとして、税関関係取り締まり機関の連携を強化するための研修の重要性を指摘してございます。しかし、税関が管区警察学校による薬物事犯広域追尾専科や厚生省の実施する麻薬取り締まり職員研修にほとんど職員が参加されていないということ、それから研修で薬物の実物を活用していないという税関もあるということ、さらにはそもそも薬物研修を実施していない税関もあるという指摘が同時にされていたと思うわけであります。  この勧告で指摘されていることは、我が国の今後の麻薬取り締まりの重要性を考えるに早急に改善されるべきだと思うわけでございますけれども、このような状況についてどのようにお考えか、できたら大蔵大臣の御見解、いかがでしょうか。
  75. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) 不正薬物の問題が深刻化しております中で、私ども関税局、税関では、関係取り締まり機関との連携、それから国際的な情報交換、取り締まり機器の整備、こういったさまざまな施策を講じてきたところでございますけれども、中でも個々の税関の職員の質を高めるということも御指摘のとおり大変重要なことだと思っております。  そのために、座学の研修、語学の研修それから実務上のオン・ザ・ジョブ・トレーニング、これに今力を入れているわけでございます。座学の研修といたしましては、税関において薬物取り締まりに対する専門研修を積極的に実施しておりまして、その講師としては税関職員のほかに警察等他の職員をお願いしてやっております。  それからまた、警察あるいは厚生省が主催している薬物研修に余り出ていないではないかというお話でございましたが、なるべく積極的に出るようにいたしております。実際に出させていただいております。  それから、語学の研修でございますが、やはり捜査を行います上でどうしても語学力というのが大事になります。特に今、密輸犯罪について外国人の関与がふえておりますものですから、英語それから第二外国語、この研修の充実に努めているところでございます。  それから三番目に、オン・ザ・ジョブ・トレーニングでございますけれども、現場におきます実地のノウハウ、これを伝えていくということも大変大事でございますので、これに力を入れるように指示をいたしております。  具体的には、張り込み、船内検査、旅具検査等の実践的な模擬訓練、それから警察、海上保安庁等との洋上取引に関する取り締まり、あるいはコントロールドデリバリーを想定した合同取り締まり訓練、こういうものをやりまして個々の職員の取り締まり技法の向上に役立てているところでございます。  麻薬の実物を使っていないではないかという指摘があるぞということでございました。実際に麻薬犬等の訓練もこのオン・ザ・ジョブ・トレーニングで一生懸命やっております。そのときに、なるべく実物に近いもの、新しいものを使いたいということで、私どもは厚生省ともいろいろお話をいたしまして、昨年後半からかなりの改善を見たというふうに考えております。  以上のような施策を今後とも積極的に推進いたしまして、薬物取り締まりに関する職員の技能、知識の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど税関からの税収入が一兆円云々と申し上げました。それは決して少ない額だとは思っておりませんけれども、かつて歳入の十何%を占めておったということから考えましても、我々が税関に期待している、あるいは税関がしなければならない仕事というのは実は大変に変わってきているのではないか。三重野委員がおっしゃいましたとおり、薬物にしましてもガンにしてもそうでございますが、しかもそれを組織的な相手に対して水際で押さえるというようなことは、それが今の税関の仕事だとお互いに言いますけれども、やっぱり長い役所でございますからなかなかその伝統的な役というものを急に新しく認識するということが難しいと思います。  現実の事態が起こっておりますから気がついていないなんということはもちろんありませんし、在来の方はいろいろ機械化したり何とかしてウエートをそっちへ移そうとしておりますことはただいま局長が申し上げましたとおりですが、恐らくまだ足りないんです。わかっているつもりでいて十分それに対応していないということを私どもはもっと反省しなければいけない点があると思います。
  77. 三重野栄子

    三重野栄子君 あとIDAとMIGAについても伺いたいと思っておりましたが、時間がございませんので、一点、世銀の日本信託基金における不正疑惑の問題についてお尋ねをしたいと思います。  昨年七月、MIGAの上部組織である世界銀行の日本人職員二名が日本コンサルタント信託基金の運用に関しまして不正行為を行っていたということがマスコミで取り上げられております。  この問題につきまして、黒田国際局長は昨年十月の衆議院予算委員会におきまして、早急に調査をし、その結果を公表することを強く世銀に申し入れているという答弁でございましたが、その後の調査結果と、関係者の処分及び再発防止のための内部管理体制の見直しはどのようになったのでしょうか。  また、我が国では政府による援助はアンタイドを基本としていますが、この基金は日本人のみを対象としたひもつき資金であると思います。このように、援助に関する政府の基本方針から見ますとこの基金の存在は例外的とも言えますけれども、今後この基金の見直しの必要性があるのではないかと思うわけであります。さらに、この基金は実質的にはプロジェクトの最終的な承認権限を大蔵省が握っていると言われておりますが、今後、援助の透明性を高め、不正の再発を防止するために大蔵省はどのように措置をされているのか。  二点につきましてお答えをお願いしたいと思います。
  78. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 私ども承知しております限りでは、世銀の内部調査がほぼ終了したということで以下のことが発表されております。  まず第一は、日本が拠出した信託基金から約十一万ドルを不正使用したということで、二人の日本人職員が解雇されているということでございます。その後、世界銀行は、私どもの要請も受けまして、この基金の厳正な管理運営のための改正を発表いたしております。  まず第一が世銀内に特別の監視ユニットというものを設けるということ、それから二番目には、これは実際上各業務担当の部局で案件の形成あるいは技術支援等に使われているわけですが、業務担当副総裁による運営の監視を強化するということ、三番目には情報公開の一層の充実を図るということで世銀側とも合意し、世銀側が公表しているところでございます。  それから、この基金は実はほとんどすべてひもつきではございません、アンタイドでございます。この融資の案件形成あるいは技術支援等のためには当然世銀が外部のコンサルタントあるいは外部のいろいろな研究所等に外注する場合が多いわけでございますが、その場合に完全にアンタイドでやっておりますので実は日本関係企業が受注した例が非常に少ない。ほとんどなかったということがございまして、ごく一部について日本のコンサルタント、研究所等を使うようにという部分を設けていたわけでございます。その部分で先ほど申し上げたような十一万ドルの不正使用があったということでございまして大変遺憾でございますけれども、何度も申し上げていますが、この基金は全体としてはほとんどアンタイド、ひもつきではございません。そのごく一部に日本のコンサルタント、研究所等の受注を促進するために使ってほしいという部分があったということでございます。  いずれにいたしましても大変好ましくないことでございますので、先ほど申し上げたような世銀の一層厳正な管理運営に努めてもらうとともに、我が方といたしましても十分これを監視していきたいというふうに思っております。  なお、基本的にひもつきでないということでございますので、その使用は第一義的には世銀に任されております。ただ、どういうものに使うかというときには事前に日本の理事室に伝えてくる、もしそれがどうしても困るということであれば変えてもらうということにはなっておりますので、その結果等につきましてはすべて情報公開という形で公開をいたしておりますけれども、さらに一層の情報公開に努めたいというふうに思っております。
  79. 三重野栄子

    三重野栄子君 終わります。  ありがとうございました。
  80. 星野朋市

    ○星野朋市君 私は金融監督庁に、コンピューターの二〇〇〇年問題について若干の質問をいたします。  この二〇〇〇年問題というのは、何も金融界だけではなくて、我々の生活全般に及ぶ影響があるかもしれないと言われておりますけれども、この委員会の所管事項であります金融関係について、金融監督庁、このコンピューターの誤作動が起こった場合最低どんな影響があると思っていらっしゃるか、お聞かせ願いたいと思います。
  81. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 今御質問のいわゆるコンピューターの二〇〇〇年問題でございますけれども、これは、来年の一月一日になりまして万一いろいろな誤作動が起こりますと各方面に大変な問題を及ぼすわけでございます。とりわけ御指摘の金融機関につきましては、第一に決済システムを担っているということがございまして、万一そこで不都合が起きましたならばマネーの動きというものがそこでとまってしまう、そうしたならば日本の経済全体が大変なことになってしまうという問題があるわけでございます。  第二に、現時点におきましてはこの決済システムを中心にします銀行間のシステムというものがネットワークでつながっておりまして、しかも日本のみならず外国との取引も瞬時にそれがつながるという仕組みになっているわけでございまして、一カ所でとまったならばそれが東京マーケットのみならず世界にも波及するという問題があるわけでございます。それは日本のみならず世界各国におきましても共通の問題でございますことから、その問題を重大に受けとめまして、日本政府といたしましても各国政府とも連絡をとりながらいろいろな対策を講じておるというところでございます。
  82. 星野朋市

    ○星野朋市君 これは先月、一九九九年二月、アメリカの連邦緊急事態管理庁というところが出したガイドがございまして、実はこの問題は二〇〇〇年の一月一日だけではなくて、今考えられるこれらの日々について留意をしなくちゃならないというガイドが出されております。今読み上げますけれども日本の金融界における二〇〇〇年対策というのは、アメリカの専門家から見ると、いわゆるA、B、CランクでいうとCないしD、国でいうと南米のベネズエラ、ベネズエラはIBMによって背番号制が世界で一番早く取り入れられた国でありますけれども、現在の状態だとベネズエラ並みだというふうに酷評されておるわけであります。  それで、どういう日が留意すべき日であるかということを今ガイドによって御指摘申し上げますと、一九九九年十二月三十一日から二〇〇〇年の一月一日、いわゆる一九九九年の最後の日、二〇〇〇年の最初の日、これは当然であります。それから、一九九九年中一年前の先取り日付とあります。それから、近々でありますけれども、一九九九年四月九日、ファイル終了コードと取り違える可能性がある、一九九九年九月九日、ファイル終了コードと取り違える可能性がある、二〇〇〇年の二月二十九日から三月一日、不規則なうるう年問題、二〇〇〇年十二月三十一日、不規則なうるう年の三百六十六日目、二〇〇〇年一月十日、七けたでの二〇〇〇年の最初の日付、二〇〇〇年十月十日、八けたでの二〇〇〇年の最初の日付、これだけ留意すべき日というのが指摘されておるわけであります。  金融監督庁は、少なくとも御自分の守備範囲の中でこれらに対してどう対処され、またどう指導されているか、お聞かせ願いたいと思います。
  83. 乾文男

    政府委員(乾文男君) まず最初に、お尋ねのございました米国上院から出されました報告書における指摘について申し上げます。  御指摘の報告書につきまして、ベネズエラと同じ第三グループに入っておりまして、実はドイツも入っているんですけれども、いわゆる第三グループに入っているということでございますけれども、この調査報告書のもとになりました調査は日銀が昨年六月に調査して出しました報告書をもとにやっているわけでございまして、現在の日本状況を反映しているものではないのかなという感じが若干いたします。  そこで、私ども金融監督庁といたしましては、監督庁が発足いたしました昨年六月から四半期ごとに、銀行、保険、証券会社等の対応状況につきまして銀行法二十四条等に基づきまして必要な命令をとっておりますほか、この二〇〇〇年問題に特化した検査も通常の検査とは別に行っておりまして、その実態把握に努めているところでございます。  現時点では昨年の十二月末時点の状況がわかっておりますけれども、それを見ますと金融機関のうち七三%が昨年の十二月までに重要なシステムの修正を終えておりますし、また本年六月末までには九八%のところが修正を完了する見込みとなっているわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、先ほどから先生が御指摘になっておりますように、この問題は万が一のときには非常に深刻な問題を起こしますことから、私ども金融機関に機会あるごとにその対応を求めているわけでございます。  とりわけ、この問題は金融機関におきます単にコンピューター技術者の問題ということだけではなくて、これは経営のリスクそのものであると。万が一に起きたならば、それはもう金融機関の経営の根幹にかかわってくる、あるいは存立にかかわってくる問題であるということから、経営リスクそのものであるということをトップが認識するようにということを厳しく話をしているわけでございまして、今後とも本問題への対応の進捗状況を厳格にウオッチしながら、おくれがあるところに対しましては行政処分を含めまして厳正に対応してまいりたいというふうに考えております。  二番目におっしゃいました幾つかのいわゆるクリティカルデートと言われる問題でございますけれども、過去のコンピューターが九ないし九という数字の連続に対して特別の意味を持たせていることから、例えば今御指摘の四月九日は一九九九年が始まりましてから九十九日目に当たるわけでありますけれども、この四月九日というものもクリティカルデートということで指摘をされているわけでございます。  この二〇〇〇年問題に先立ちます一九九九年問題につきまして、これは政府としまして既に内政審議室から二〇〇〇年問題のみならず御指摘の問題につきましても万全な対応を求めるように注意を促す文書が出されておりまして、金融監督庁もこのクリティカルデート問題につきましても金融機関に対しまして必要な対応を要請しているところでございます。  なお、先ほど申し忘れたんですけれども、この二〇〇〇年問題につきまして非常に重要な問題は、幾ら準備をしてもなおかつ問題が起こり得るリスクというのがございまして、それに対する危機管理、危機対処と申しますか、コンティンジェンシープログラムをつくることが大事でございまして、そういう問題につきましても金融機関に対して厳しい対応を求めていきたいというふうに思っております。
  84. 星野朋市

    ○星野朋市君 この短い時間でこれを論ずるわけにはまいりません。  自由党は、実は全党を挙げましてこの二〇〇〇年問題についての委員会をつくりまして、自民党との間に今二〇〇〇年問題についての協議が進められているところでありますけれども、特にそういう形で指摘された金融界については、できるだけ細密な対策を立てていただきたい、こう要望をいたしておきます。  それから、先ほど益田委員が若干質問の中で触れられたことでありますけれども、コール市場においてオーバーナイト物がもうゼロ%というような状態になりまして、コール市場というものが今全く体をなしていないと言われても過言ではないほどになってしまいましたが、コール市場はいっときに比べて今どのぐらいの規模になっているのか、わかりましたら教えてください。──わかりませんか。それでは私から指摘しますから、それが本当かどうか後で調べてください。  今、恐らく三分の二ぐらいですよ。それで問題は、コール市場がそういうふうに収縮して、では短期の資金の移動に支障を来しているかというと、それは今のところないんですけれども、実はコール市場に対する出し手がなくなってきたということが一番問題です。ゼロなんですから、わざわざそんなものを出すことはないと。苦肉の策で普通預金を両方に構えて、そこでわずかなあれをやっているなんという例がありますけれども、これでどこが困っているかというと、短期市場の出し手の一つである生命保険が非常に困っているわけです。生保は、御存じのように非常に低金利の中で運用益というものをなかなか稼げないでいるということで、銀行の方は御承知のように七兆四千五百億も資本投入をされたけれども、生保には全くそういうものがないわけです。  昨年成立した保険契約者保護機構というのがありますけれども、これは公的資金の導入も何もなくて、生命保険会社がお互いに十年間、たしか四千六百億、そのほかに日産生命がアウトになった分二千三百億、合計六千九百億を積み立てて、これでもって救おうという考えです。そうすると、まだ発足したばかりですから正確な数字はわからないけれども、トップの日本生命から最下位の某生命保険まで大体二十社程度がどのくらいの拠出をしていますか。それはおわかりになるでしょう。
  85. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  ただいま先生が言われましたように、保険契約者保護機構につきましては、生命保険について、また損害保険について、機構が各社から年間徴収しておるわけでございます。その年間の負担金の額は、平成十二年度までは生命保険が四百六十億円、損害保険の各社合計で六十五億円でございます。平成十三年度以降は平年度ベースで生命保険が年間四百億円、損害保険が五十億円となっておるわけでございます。  今言われました個々の保険会社が年間に拠出する負担金の額でございますが、これは一応法令上、収入保険料の額に一定の率を掛けて……
  86. 星野朋市

    ○星野朋市君 時間がないので簡単に。私が聞いたのは、一番多いところと一番下がどのぐらいの割合で出しているかと聞いたんです。
  87. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) そういう計算のもとにやっておりますのは、生命保険の上位五社で全体の六二%に当たります約二百八十六億円、損保の場合は上位四社で全体の四七%に当たります約三十一億円を負担するという実績から延ばした計算になっております。
  88. 星野朋市

    ○星野朋市君 最後の質問になりますけれども、銀行は七兆四千五百億を投じて、約九兆円あると言われた不良債権をここで、再生委員長の言葉によると大体すべて償却し終わると。ところが、国民のほとんど約九七%が関与している生命保険会社が抱えている不良債権の整理というものは公にされていないんです、今どのぐらいみんな抱えて苦しんでいるか。  だから、これは自分たちがその資金を出し合ってそこでやれということになるんだけれども、日産生命一社がぶっ倒れて二千三百億円も損失が生じている。こういう状態を、今言った遅々たる、こんな十年間もかけて要するに機構をつくって、その間にアウトになったらどうするか、借入金でそれを埋めるほかないんですよ。こんな不公平がありますか。ここら辺はもう少し考えないと、やがて生命保険の何社かに問題が早々に生ずる可能性があるということだけ指摘して、質問を終わります。
  89. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 我が国にとりまして発展途上国への経済協力が極めて大事なことは言うまでもないと思います。その中でも貧困国に対する経済協力、これは我が国の経済との関連といった狭い問題意識だけではなくて、もっと広い問題意識、つまり人道的な立場というようなこともあるわけでございますから、そういう意味からももっと力を入れていかなければならない問題であろうというふうに思います。  本日審議されております国際開発協会、いわゆる第二世銀でございますが、第二世銀を通じました貧困国への経済協力というのは、経済協力全般の中でも極めて重要な位置を占めているのではないか、そんなふうに私は思っております。  さて、その第二世銀に対します今回の増資ですけれども、昭和三十九年の増資以来十二回目の増資だそうでございますが、先ほど言いましたようなことでもちろん大賛成でございます。ただ、個人的にちょっと残念に思いますのは、今回の増資につきましては日本の出資シェアが少し落ちるということですね。我が国における現下の経済状況からこれはやむを得ない、そういうふうには思うわけでございますが、シェアを従来の二〇・〇%から一八・七%に下げざるを得ないということでこれはちょっと残念だな、こういうことでございます。  発展途上国におきます貧困との闘いにつきましては、先進国がこれを支援するのは当然の責務だろう、こういうふうに思うわけでございます。ですから、我が国経済がともかく近い将来に早く回復しなきゃいかぬわけでありまして、それが何よりも現下の喫緊な課題ということでありますけれども、それによりまして第二世銀に対します出資シェアが二〇%を超えるような形に回復していくということがやっぱり大事ではないかな、そのことを申し上げておきたい。  さらに、もう一つあります。いわゆるジュビリー二〇〇〇の問題です。午前中も出ておりましたけれども、最貧国の債務削減問題というか、昨日の日経新聞によりますと、債権全額放棄、こういうふうに出ておりましたが、午前中の討議におきましても、大蔵大臣のお話によりますと、問題は国内法との関係もこれあり大変難しいといいますか単純ではない、こういうことでございました。  先ほど、我が同僚議員の林先生の話だと、キリスト教国と仏教の国はちょっと違うんじゃないか、こんな話でございました。私は、それと同時に、日本は神道の国、やおよろずの神の国ですから神様がいっぱいおるんですね。キリスト教国というのは一人なんです。ですから、五年前でしょうか、ローマ法王が全世界に向けて号令を発された、これが非常にきいていると思うんです。  ですから、千年紀というんですかミレニアム、これを私は知らなかったんですが、二十一世紀は二〇〇一年からだけれども、ミレニアムというのは二〇〇〇年からだそうですね、来年だそうです。ということで、今度のケルンでこの問題が大変大きな問題になる、こういうことのようですけれども、そういうミレニアムというのもちょっと日本にはないんですね。仏教国、神道の国ではこれはないんです。仏教では猫かわいがりというんですか、そういうのは余りはやらないというか、そういう問題もあろうかと思います。  大蔵大臣が言われる国内法との関係、これはもちろんありますし、それから文化の違いみたいな話もやっぱりあるわけでございますので、ぜひ今度のケルン・サミット議論になりましたら、もちろん人道的立場を踏まえながら、余り情緒的な話にならないように奥の深い議論をしていただくように、ちょっと大蔵大臣がいなくなったんだけれども、ぜひおっしゃっておいていただきたい。大蔵大臣のリーダーシップに期待をしたいということを表明させていただきたいと思います。  さて本日は、我が国にとりまして最も大事なアジア諸国、特に一昨年来通貨危機に直面している国々に焦点を絞ってお尋ねしたいと思います。  一昨年八月のタイ以来、インドネシア、韓国を含めました三カ国がIMFの融資を受けて経済の安定のための調整プログラムを実施していったわけでありますが、御案内のとおり、IMFのプログラムにつきましてはいろいろ批判があるわけでございます。  そこで質問でございますけれども、これら三カ国におきますIMFプログラムの実施状況並びに各国の経済状況につきまして大蔵省といたしましてどのように見ておられるのか、現下における認識というものをお示しいただきたいと思います。
  90. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) まず、タイ、インドネシア、韓国のうち、タイ、韓国はある意味で順調に進んでおります。昨年の経済成長率は、実はタイがマイナス七、八%、韓国もマイナス七%というふうに非常に大幅な落ち込みを示したわけですが、ことしはタイが一%程度のプラス成長、韓国は二%程度のプラス成長というふうに見られておりまして、経済が立ち直りつつあるということでございます。IMFとの間で合意した経済構造調整プログラムにつきましても順調に進行しておるというふうに見ております。  他方、インドネシアは非常に状況が違っておりまして、昨年の成長率も恐らくマイナス一六%ぐらいというインドネシアとしては始まって以来の大変なマイナスの状況でございましたし、ことしもゼロ前後というふうに言われておりますが、実際どのぐらいになるかまだめどがついておりません。  そもそもインドネシアの場合にはIMFの当初のプログラムがやはりやや非現実的なものがあったのではないかというふうに見られておりまして、私どももその点についてはIMFに対して批判的なことも申し上げたわけですが、二つほどあったと思います。一つは、預金者を十分に保護しないで金融機関を閉鎖したものですから非常な取りつけ騒ぎが一昨年起こってしまったということでございます。それから二番目には、インドネシアは財政がずっとバランスして黒字だったわけですけれども、プログラムで財政を黒字にしろということで極端な財政の引き締めをさせたわけですが、そのために結局非常に大幅なマイナスになってしまったということでございます。  ただ、その後IMFもこのプログラムを現実に合わせて変えてきております。例えば最近の金融機関の閉鎖につきましては、預金を基本的に全額保護するというような形で金融機関の閉鎖をするということで取りつけのようなことが起こらないようになっておりますし、財政の方は早くに引き締めの要求を撤回いたしまして、むしろどんどん景気対策をやれということで、たしか財政赤字は昨年はGDPの六、七%ぐらいに上っているということでございます。IMF自身もインドネシアについてはやや当初に非現実的というか、逆に言うと非常にうまくいくという楽観的な見通しのもとにややきつ過ぎるプログラムを組み過ぎたと。その後、実情に合わせてIMFもプログラムを改定してきておりまして、その改定したプログラムに沿ってインドネシアは一応着実には実行しておりますが、先ほど申し上げたように昨年の落ち込みがマイナス一六%ということで、ことしもまだプラスの見込みが立っていないというやや深刻な状況にございます。
  91. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 今御答弁にございましたように、いろいろまだ問題を抱えておるようでございます。今日に至りましても必ずしも問題が解決したとは到底言いがたい、そんなふうに思います。  アジアの経済危機の難しさ、私は悪魔の見えざる手と、こう言っておるんですけれども、発端はいわゆるヘッジファンド等のえたいの知れない巨大な投資筋によっているということでございまして、これは全く新しい形の危機なわけでございます。私はその点につきまして何度か政府に質問させていただきました。この財政金融委員会でも、前回の質問大蔵大臣に私の思いを聞いていただきました。そういうことで、きょうはこの問題については触れません。ぜひ四月のワシントンでのG7、六月のケルン・サミットにおきまして宮澤大蔵大臣のリーダーシップ発揮を強く希望する次第でございます。  先ほど述べましたように、アジア三カ国に適用されておりますIMFプログラム、これは画一的であるとか、要するにそれぞれの国の事情というものを十分に考慮していないとか、あるいはやり過ぎであるとか、いろいろ批判があるわけでございますが、もちろん債務国のガバナンスの問題なんかも当然あるわけでございます。CDFといいますか包括的開発枠組みというようなことがいろいろ議論になっておりますが、そういうような問題もあるわけでございます。  そこで質問でございますけれども、国際金融システム改革の論議の中で、日本といたしましてはIMFプログラムの改革につきましてどのような考え方で今後臨んでいけばいいのかということでございます。せっかくの機会でございますので、この際中島政務次官のお考えをぜひ伺わせていただきたい。CDFの問題は大蔵省の所管を超えている問題かもしれませんが、ぜひ御所見をお伺いしたいと思う次第でございます。
  92. 中島眞人

    政府委員(中島眞人君) 岩井議員からの御質問でございまして、大蔵大臣がおればこれまた自信を持ってお答えができるんだろうと思いますけれども。  常々、先生がおっしゃっているような国際金融市場の動揺にかんがみ、国際金融のシステム強化をしていかなきゃいかぬということで、G7におきましてもまたIMFの総会におきましても、我が国我が国としての立場主張してまいってきているところです。中でもIMFのサーベイランス強化やプログラム及び手続の見直しが国際金融システムの改革にとって中心的な要素であるとの観点から、これからもG7等を含むさまざまな機会に急激な資本移動への、先生から今ヘッジファンドの問題が出ましたけれども、対応を強化すること等、またIMFの危機時の資金供給能力を高めていく、時間的な問題とかそういう問題があろうかと思うわけでありますけれども、こういう問題についてこれまでも主張をしてまいったわけですけれども、これをさらに主張していかなければいけない、このように考えております。  また、今後ともG7や主要な新興市場諸国とともにIMF改革の実現に向けた議論や検討に積極的にやっぱり我が国は取り組んでいかなければいけない、いくべきだという立場大臣も臨んでいるということで御理解を賜りたいと思います。  なお、CDFの問題につきましては国際局長から答弁をさせますのでよろしくお願いを申し上げます。
  93. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) CDFの問題でございますが、これは特にウォルフェンソン世銀総裁が強く主張しております包括的開発フレームワークということの略でございますが、これは世界銀行が従来からやってきておりました開発の経験の中で御指摘のようなガバナンスというものが相当重要である、つまり社会セクターの問題や経済セクターの開発についていろいろなことをやってもらうように世界銀行は支援するわけですが、その支援を受ける相手国の政府の実施能力、ガバナンスということが実は相当重要であって、それが十分でないと開発支援が機能しないという反省に立ちまして、ある意味でいうと、やや世界銀行の従来の支援というところから踏み出しているわけですが、もう少し幅広い包括的なフレームワークをつくって相手国ともっと対話をしていこうということでございます。  基本的なアイデアとしては大変好ましいというふうに思っておりますけれども、実際にこういうことで特定国との間で本格的な対話というのが始まっているわけではありません。ウォルフェンソン総裁が幾つかの国を対象にそういうことを始めようとしているということでございますので、実際にこれが機能するためには世銀の側でも相当なフレキシビリティーが必要になると思いますし、相手国側も相当執行体制等に人手もかかるでしょうし、相当な努力も必要であるということで、非常にいいアイデアだとは思うんですけれども、具体的にどうやっていくのかということは相当世界銀行の中で、また相手国との間で十分議論していく必要があるというふうに思っております。     ─────────────
  94. 勝木健司

    委員長勝木健司君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、笠井亮君が委員辞任され、その補欠として林紀子君が選任されました。     ─────────────
  95. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 CDFの問題は今おっしゃいましたようにすぐにどうのこうのというようなことはなかなか難しいとは思いますけれども、やっぱり一つの大きな方向ではなかろうかと、そんなふうに思います。包括的にといいますか、総合的にといいますか、そういう中でNGOなど民間がどのような役割を果たしていくのかというようなこともございまして、なかなか我が国にとって難しい問題というか大変大事な大きな問題であろうかと思います。これは大蔵省だけの問題ではもちろんないと思うんですけれども我が国全体としてやっぱりそういったことについても取り組んでいかなければならないのではなかろうか、こんなふうに思う次第でございます。  さて、経済危機に直面したアジア諸国に対しまして、言うまでもなくIMFの融資のほか、世銀、アジア開発銀行、それぞれ必要な融資あるいは技術開発援助を行っておるわけでございます。さらに、我が国におきましては、昨年秋にいわゆる新宮澤構想を打ち出して二国間の支援を今やっておるわけでございます。アジア諸国と我が国との緊密な関係からいいまして、我が国といたしましてとにかく全力を尽くして二国間の支援、新宮澤構想も進めていかなければならないと、こんなふうに思うわけでございますが、そこで質問させていただきます。  国際機関による支援に加えまして、そういった日本が二国間支援を行うという理由、私なりにいろいろ考えておりますが、大蔵省の認識というものをお示しいただきまして、そしてその新宮澤構想ではどのような分野に特に力点を置いていかれようとしておるのか、その辺をちょっと御説明いただければと思う次第でございます。
  96. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) ただいま御指摘の新宮澤構想と言われますものは、昨年の秋IMF総会がございました際に、宮澤大蔵大臣がタイ、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、この五カ国の大蔵大臣をお呼びいたしまして議論をいたして、そして発表したものでございます。  その際に宮澤大臣が述べておりましたけれども、これはもちろん人道的というか近隣の国として支援するという立場、そういう趣旨であるけれども、もう一つはこういったアジアの国々が立ち直ってくれるということが実は日本経済にとってもプラスなんだ、そういう経済的な相互依存関係というのが非常に強くなっているということで、そういう趣旨もあってこういう支援をするんだということを言っておりまして、五カ国の大蔵大臣ともすべてそれに賛成していたわけでございますが、今申し上げたように、特に日本としてこれらアジア諸国との経済関係が強いということにかんがみて、国際機関による支援に加えて二国間の支援を行うということかと思います。  それから、具体的にどういうところを重点にしているかということでございますが、これもその際に議論になりまして、宮澤大臣から幾つか提案をいたしまして、いずれも相手国の大蔵大臣が賛成をしておったわけですが、非常に難しい問題は、実は日本の場合とよく似ておりまして、企業債務のリストラあるいは金融機関の不良債権の処理という問題でございます。これは相当容易ならざる問題でございますので、日本だけでできるわけではございませんで、世銀やアジ銀などとともにやっていくという必要があると思いますが、これも一つのテーマであろうと。それから社会的な弱者対策、通貨危機の中で失業等がふえておりますので、そういったものに対する対策、それから景気対策、そしてなかんずくいわゆる貸し渋りの対策、中小企業金融や貿易金融を円滑化するといったもの、こういったことを我が国として輸銀あるいは基金を通じて支援していきたいということを申し上げまして、アジアの諸国から強い賛同を得まして、具体的に約三百億ドルのうち半分程度を既にコミットしておりますが、いずれもそういった内容になっております。
  97. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 もう少し具体的に、その辺の支援の実施状況がどうなっているのか、もうちょっと詳しく具体的に教えていただきたいと思うんです。
  98. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 各国ごとに申し上げますと、まず、一番問題のインドネシアでございますが、インドネシアにつきましては、社会的弱者対策等を支援するということで、総額二十四億ドル程度の、これは円でございますが、二十四億ドル相当円程度の支援を既にコミットしております。韓国につきましては、中小企業支援を目的とする輸銀融資、それから貿易金融円滑化等を目的とする最大限五十億ドルの短期資金支援に加えまして、先週、小渕総理大臣が訪韓いたしました際にインフラ整備等を支援するために十億ドル相当円の輸銀融資を行うということを相手に伝えております。三番目に、マレーシアにつきましては、輸出産業等の支援ということで、総額十五億ドル程度の支援をコミットしております。フィリピンにつきましては、御承知のように電力部門が弱いわけでございますので、電力部門開発等を支援するために総額十四億ドル相当円の支援をコミットしておりますし、タイにつきましては、経済・金融構造改革を支援するということで、十八・五億ドル相当円程度の支援をそれぞれ表明したところでございます。  先ほど申し上げましたように、合わせて三百億ドルの半分程度をインディケートし、あるいはコミットしたわけでございますが、先ほど申し上げたように、昨年十月に発表いたしまして数カ月の間にこれら諸国に大蔵省、外務省、通産省、さらには基金、輸銀等をメンバーといたしますミッションを派遣いたしまして具体策を決定したわけですが、全体として、昨年十月に発表して以来、数カ月の間という短い期間ではありますけれども、比較的順調にこのコミットが進んでいる、その中でディスバースも進みつつあるということでございます。
  99. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 お聞きいたしますと、それぞれの国の現下の状況に応じてきめ細かくといいますか、適切にコミットしていただいておるようでございます。大変それぞれ各国に喜ばれておるようでございます。引き続きましてそれぞれの国の状況に応じた適切なコミットが進んでいきますようによろしくお願いをしたいと思います。  そういった新宮澤構想によります我が国の支援、これが相当力強い形で行われておると同時に、他方でIMFそれから世銀などの国際機関からの融資等がなされておる、両面作戦といいますか、二つ流れがあるわけであります。もちろん、我が国はそういったIMF、世銀等国際機関の重要なメンバーでございますから、そういった二つの大きな流れに食い違いというようなことはないと思うのでございますが、やはりそういった我が国の新宮澤構想による二国間の支援というものと、そしてIMF、世銀等の国際機関による多国間支援というものとの間に密接な連携というものが必要だろうと思うのです。  そこで質問でございますが、新宮澤構想の実施において国際機関との間で十分な連携が図られているのかどうか、どのような連携が図られているのか、その辺の御説明をちょっと承れればと思う次第でございます。
  100. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 御指摘の点は私どももこの構想を進める上で非常に重要なポイントであるというふうに考えております。具体的には、こういった支援を進めてまいります場合に、関係の国際開発金融機関とは密接に協調して情報を交換しておりますし、特に具体的に申し上げますと協調融資という形をとっている場合が多いわけでございます。  例えばインドネシアの場合で申し上げますと、実はIMFとの協調融資の部分、それから世界銀行との協調融資の部分、さらにアジア開発銀行との協調融資の部分というのがございます。マレーシアの場合ですと、世銀あるいはADB。タイの場合ですと、やはり世銀との協調融資という形をとっておりまして、これは協調融資でございますので、当然具体的に進めてもらいます構造調整あるいはセクター改革プログラムにつきまして、当該世界銀行やアジア開発銀行と私どもの方とで十分議論をいたしまして、いわば分担して融資をするという形をとっております。したがいまして、その中身につきましても執行のテンポにつきましても基本的に合わせていくということになっておりますので、十分国際開発金融機関等と協調ができているというふうに申し上げてよいかと思います。  なお、IMFとは、さっき申し上げたようにインドネシアにおいて協調融資をしている例一例だけでございます。これは今回の新宮澤構想が基本的には中長期のお金を貸して経済を立て直すということでございますので、IMFの短期の外貨準備支援ということと性格をやや異にしておりますので、IMFとの協調融資はインドネシアだけでございまして、ほかにはございませんし、今後も余りあると思いませんが、世界銀行やアジア開発銀行との協調融資というのは今後とも相当多くあるというふうに考えております。
  101. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 それでは、最後になりますが、今回この委員会に提案されております多数国間投資保証機関、MIGAに関する質問でございます。それとの関係で言いますと、ヘッジファンド等によって危機に陥りましたインドネシア等アジア諸国の経済が本格的に回復していくためには、基本的にはやっぱり民間の資本が再び流入していくということがないとだめじゃないか、こんなふうに思うんです。  しかし、そこがやっぱり問題でございまして、民間資金といいましても、ロシアだとかブラジルの危機がございましたので、そういった他の新興市場国での危機からして、それはアジアの国々の抱えるリスクに対して安心できないというか、まだまだ過敏になっておるのではなかろうか。したがいまして、やはり民間の資金が動くためには政府だとか国際機関が積極的にこれをサポートしていかなければならない、そういうことだろうと思います。  そこで、最後の質問になりますが、日本政府といたしまして、民間資金がアジア諸国へ再び向かっていくためにはどういう方策を講じていくのがいいのか、その辺の一番効果的なところはどの辺にあるのかということを御説明いただけるとありがたいと思います。
  102. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 御指摘の点は、恐らく通貨危機に見舞われたアジア諸国が一番重要な点と思っていることだと思います。基本的には、これらの国の金融市場が正常化し、経済が立ち直り始めるという条件が整うことが何よりも重要であると思いますが、それだけではなく、御指摘のように何らかのサポートというのが必要ではないかというふうに考えております。  具体的には、この新宮澤構想の一環として二つほど考えておりまして、一つは現在輸銀に保証機能というのがございますけれども、実は銀行の融資に対する保証機能はあるんですが、債券、ボンドに対する保証ができないわけでございますので、現在国会に提出して御審議をいただいております国際協力銀行法案におきまして所要の改正をいたしまして、アジア諸国の発行するボンドに保証を付せるようにしたいというふうに考えております。これが一つでございます。  もう一つは、アジア開発銀行に対しまして我が国から三千六百億円の国債を拠出いたしまして、ADBと民間金融機関の協調融資あるいはアジア諸国による債券発行に対する保証等をこの資金で行うということを考えております。これは補正予算でお認めいただいたものでございます。  いずれもそういう方向で現在検討されておるわけでございますが、この保証というスキームを使って民間資金のアジアへの流入促進ということが具体化するにはもう少し恐らく時間がかかるであろう。それはマーケットの状況がまだ完全に正常化していないということ、それからアジア諸国がこういうスキームを使うためにもそれなりの工夫が必要であるということで、時間はかかると思いますが、今申し上げたようなことを通じて努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  103. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 大蔵大臣が席にお戻りになりました。  先ほどのODAの債権放棄の問題が恐らく今度のケルン・サミットで大きな問題になろうかと思います。午前中も大蔵大臣の御答弁がございましたけれども、そういった国内法との難しい関係だけではなくて、キリスト教国と我が国のような仏教国というか、仏教だけじゃなく神道というのもあるんですけれども、やっぱりヨーロッパ、アメリカと文化が違うのでそう単純には、ローマ法王が言われたからぱっとと、こう単純にはいかないように思います。なかなかこれは難しい問題があるんですけれども宮澤大蔵大臣のお考えでもって、ぜひ言うべきは積極的に言うということで大蔵大臣のリーダーシップに期待したいということを申し上げましたので、もうこれは触れませんけれども、また局長からそのお話をお聞きいただければと思います。  さて、アジアの通貨危機に関連いたしまして、アジアの経済回復の問題に触れてきておるわけでございますが、やはりアジアの経済回復のためには我が国の経済が回復しないとどうにもならないということだろうと思います。ですから、もうとにかく今は我が国の経済回復に全力を挙げてやっていく、これがアジアのためにもなる、こういうことだろうと思うんです。しかし、逆に我が国の経済回復のためにはアジアの経済が回復しないとこれはやっぱりいかぬと、こういう両面があるんです。まことに両方が密接な関係にあるんじゃないか、こんなふうに思います。  したがいまして、国際機関に加えまして、我が国が二国間でも新宮澤構想に基づいて大規模な支援を行うことが極めて大事だ、こういうふうに思うわけでございます。我が国の資金がアジアにとって本当に真に必要な箇所にしかも迅速に投入されていく、そういうことでなければならない、またそれはできるだろうと思います。  政府の中でいろいろ関係する省庁はあろうかと思うんですけれども、今後とも連携を密にしていただきまして、効率的な援助が実施できますように大いに大蔵省の努力を期待させていただきまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  104. 菅川健二

    ○菅川健二君 大体議論も出尽くしたわけでございますけれども、若干の落ち穂拾いをさせていただきたいと思います。  まず、IDA、MIGAについてでございますけれども、この両機関につきまして私も実はほとんど知識がなかったわけでございますが、恐らく一般の国民の方々もほとんどこれについての認識がないのではないかと思うわけでございます。この点のPRというのはどのようになっておるのかということをお聞きしたいということが一つでございます。  あわせて、日本の国というのは世銀とかIMFとか国際金融機関にアメリカに次いで大きなシェアを持つ出資なり投資を行っておるわけでございますが、それについて国際社会でどの程度認識されておるのか。とりわけ、対象となる国について日本の貢献というものが十分認識されておるのかどうか。その点の御感触あるいはそれに対してどういう努力をされておるか、お聞きいたしたいと思います。
  105. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) まず、世界銀行自体の努力でございますが、御承知のように東京にはかなり大きな世界銀行の事務所がございます。その事務所の役割の一つはもちろん東京市場での資金調達でございますが、最近非常に大きな役割になっておりますのが世界銀行の政策あるいは融資の状況について広く日本国民にPRと申しますか情報提供をするということでございます。世界銀行のいろいろな文書も日本語に翻訳されて発表されておりますし、それから翻訳されていない英語の文書もたくさんございますが、そういうもので公開されているものは備えつけてございまして、外部の人が来て自由に見ることができるというような形になっております。したがって、世界銀行としては組織的にかなりのPRということはやっておるようでございます。  それから、先ほど大臣もウォルフェンソン総裁と何度か会われたことを言っておられますけれども、ウォルフェンソン総裁は、日本に来た場合にはいろいろな方とお会いしたりマスコミの方との対話等もして、世界銀行の役割、そこにおける日本の役割について相当意識的に努力して情報提供に努めておられるというふうに思っております。  二番目に、それでは日本として特にどういうことをし、かつ日本の世界銀行における貢献というのがどの程度認識をされておるかということでございます。これはもちろん開発途上国の方に行って実際に調査したわけではございませんが、世界銀行の中で開発途上国の理事等がたくさんおられるわけですけれども、あるいは世界銀行の総会等でいろんな方にお会いするわけですが、日本が二番目のドナーであり、さらにいろいろな任意拠出等も通じてさまざまな形で開発途上国に対する支援を世界銀行を通じてやっているということは、少なくとも政府レベル及び学者のレベルでは相当知られている。ただ、開発途上国における一般民衆のレベルでどの程度認識されているかということは、まだ必ずしも十分でないというか心もとないところもあろうかと思います。
  106. 菅川健二

    ○菅川健二君 先ほど広中委員からも御指摘がありましたけれども、金はたくさん出しておるんだけれども、実際の上級職員の数を見てみますと非常にこれは低位にあるわけでございます。やはり人が情報を運ぶという観点からしますと、上級職員にも日本の方がどんどん出ていくということが非常に重要ではないかと思うわけでございます。これについて特別の対策を講じられる必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  107. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 私どもも全く同じ問題意識を持っております。  最近、世界銀行の幹部クラスに日本人職員が若干増加しておることは事実でございまして、例えば一昨年の二月に西水美恵子さんという方が南アジア地域担当の副総裁になっておられまして、昨年の四月には河合正弘東京大学教授が東アジア・太平洋地域担当のチーフエコノミストになっております。また、昨年の九月には、IFCという世界銀行グループの一つでございますが、そこのマーケティングビジネス開発局長というものに武市純雄氏がなっておるということで、若干幹部クラスにふえていることは事実でございます。  御指摘のように、全体として幹部にも少ないわけですし、平のスタッフまで入れますと実は世界銀行全体で日本人職員は三%未満ということでございますので、世銀の出資額やIDAの出資額等に比べるとはるかに低いわけでございます。この点は常に先方にも申し上げておりますし、具体的に世界銀行の方は先ほど申し上げた東京事務所を使ってリクルートということを相当熱心にやっております。それから、最近もジョブフェアと申しまして、世界銀行グループでいろいろな専門家を求めているということで広くリクルートをしておりまして、日本の景気の状況もあるのかもしれませんが、たしか相当たくさんの人がアプライというかインタビューに応じたというふうに聞いております。  したがって、世界銀行の方としても一定の努力はしておるようですし、私どもとしてもできる限り日本人職員の増加のために努力してまいりたいというふうに思っております。
  108. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ格段の努力をお願いいたしたいと思います。  それから、世銀のバランスシートを見ますと、一九九八年でございますが、内部留保というのが百六十七億ドル余りに上っております。日本円にしますと約二兆円弱じゃないかと思うんですが、かなりのへそくりをためておるなというふうに思うわけでございます。増資を図る前にこの内部留保について積極的な活用を図るように要請するということも重要ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  109. 黒田東彦

    政府委員(黒田東彦君) 先ほどの広中委員の御質問にも出ておりましたが、IDAの資金の源泉は具体的には三つございまして、各国から拠出していただく、それから二つ目がかつて貸したもので返ってきたものをまた貸す、三つ目がただいま委員御指摘の世界銀行からの所得の移転でございます。世界銀行は毎年ある程度の額の純益を生んでおりまして、その相当部分は確かに準備金として積み立てております。これはトリプルAというステータスを確保するためにどうしても必要だということで、貸出額の増加に応じまして準備金がどうしても必要だということでございます。  しかし、その中で利益の一部をIDAの方に移転してもらうということも最近始まっておりまして、今実施しておりますIDA11の中でもやっておりますし、IDA十二次増資でもそういう世界銀行からの移転ということをやってもらうことになっております。  ただ、利益が出たものをすべてIDAの方に移せというのは、世界銀行としての先ほど申し上げたトリプルAのステータスからいってそこまではできないということを言っておりまして、私どもとしては最大限世銀の純益をIDAに使ってほしいというふうに思っております。
  110. 菅川健二

    ○菅川健二君 最後に、NACCS法につきまして一問だけお聞きいたしたいと思います。  通関情報処理センターの罰則規定につきまして引き上げが図られているわけでございますが、例えば所管大臣に虚偽報告をした場合に五十万円以下の罰金となっておるわけでございます。その反面、一般の金融機関の場合を見てみますと一年以下の懲役または三百万円以下の罰金ということで、著しくアンバランスになっておるわけでございます。それから、特殊法人の場合はさらに三十万円以下となっておりまして、一般の民間の銀行とそれから認可法人とそれから特殊法人、身内になればなるほど甘くなっておるという規定になっておるわけでございます。これは恐らく特殊法人、認可法人、民間ということで仕分けしながらそれぞれのバランスをとっておると思うわけでございますが、いずれにいたしましてもそれぞれの間のバランスもやはり必要ではないかと思うわけでございますが、この点についていかがお考えでしょうか。
  111. 渡辺裕泰

    政府委員渡辺裕泰君) NACCSセンターの役員等に対します罰金、科料の額につきましては、前回の改正以来八年間据え置かれてきたところでございますので、他の特殊法人等における罰則の水準等を勘案いたしまして、今回の改正にあわせて引き上げることとしたものでございます。他の特殊法人等との比較におきましては、NACCSセンターの罰則の水準はむしろ高い方に属するというふうに考えております。  しからば、民間金融機関の役員等に科される罰金と比べて低過ぎるのではないかというお尋ねでございますけれども、民間企業の役員に科される罰則等は違反行為によって侵害される法益あるいは違反行為の態様など趣旨、目的を異にしておりますので、一概にその軽重を論じられないのではないかなというふうに考えております。  例えば、先ほどお話のございました虚偽報告でございますが、NACCSセンターの役職員につきましては適正な業務を担保するという観点から罰金刑が設けられております。これに対しまして、民間金融機関の役員等には預金者保護等のための経営の健全性の確保の必要性という観点から罰金刑が設けられているというふうに承知をいたしておりまして、両者の趣旨、目的が異なったものとなっております。  逆に、例えばNACCSセンターにあって民間にはない罰則といたしましては、NACCSセンターの役職員には守秘義務が課されておりますので、これについて懲役刑と罰金刑が科されております。民間金融機関の役員についてはこういうものはございません。また、NACCSセンターの役職員はみなし公務員とされておりますので、贈収賄等においては公務員と同様に扱われるということでございますが、民間金融機関は当然のことながらそういう規定がございません。  以上でございます。
  112. 菅川健二

    ○菅川健二君 終わります。
  113. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もないようですから、三案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより三案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  114. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、日本共産党を代表して、関税定率法等の一部改正案に対して反対、国際開発協会加盟措置法及び多数国間投資保証機関加盟措置法の一部改正案に対して反対、電子情報処理組織税関手続特例法の一部改正案に対しては賛成の立場で討論を行います。  まず、関税定率法一部改正案についてであります。  本法案によって、輸出された織物等を原料とした製品の加工再輸入減税制度は三年間延長されます。繊維業界は、規制の緩和を続ける同制度を活用し、大規模な海外移転を進める等、空洞化に拍車をかけており、アパレル産業等の中小企業や労働者に多大な影響を与えています。同制度は今後一層の対象拡大などが予定され、逆輸入製品国内産業が圧迫を受け、繊維産業の空洞化を促進するものとなっています。  次に、国際開発協会加盟措置法及び多数国間投資保証機関加盟措置法の一部改正案についてであります。  国際開発協会など世界銀行グループの構造調整融資は、融資受け入れ国に融資の条件として、輸入の自由化、通貨の切り下げ、緊縮財政、物価引き上げ、賃金凍結・引き下げなどの実施を強要し、融資受け入れ国の国民に多大な苦痛をもたらしています。国際開発協会の今回の増資は、世銀グループのこの仕組みを温存したまま融資規模の拡大を図ろうというもので、これでは国際開発協会が目的とする後発発展途上国支援の拡大どころか、世銀と途上国間の矛盾を拡大するだけであります。  また、世銀の姉妹機関である多数国間投資保証機関の保証を背景としたプロジェクトが各地で環境破壊を引き起こすなどの問題が起きています。投資の主体である多国籍企業のこのような行動を野放しにしたまま機関の増資を行うことはこのような実態を一層深刻化させるだけであります。  電子情報処理組織税関手続特例法の一部改正案は、手続の機械化効率化等の観点から行われるもので合理性があり、賛成するものであります。  以上で討論を終わります。
  115. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより順次三案の採決に入ります。  まず、関税定率法等の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  116. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  117. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、電子情報処理組織による税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  118. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、広中君から発言を求められておりますので、これを許します。広中和歌子君。
  119. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、ただいま可決されました関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国民経済的な視点から国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和ある対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向上に寄与するよう努めること。    なお、関税の執行に当たっては、より一層適正・公平な課税の確保に努めること。  一 著しい国際化の進展等による貿易量及び出入国者数の伸長等に伴い税関業務が増大、複雑化する中で、その適正かつ迅速な処理に加え、麻薬覚せい剤を始め、銃砲、知的財産権侵害物品、ワシントン条約物品等の水際における取締りの強化に対する国際的・社会的要請が高まっていることにかんがみ、税関業務の一層の効率的・重点的な運用に努めるとともに、税関業務の特殊性を考慮し、税関職員の定員確保はもとより、その処遇改善、職場環境の充実等に特段の努力を払うこと。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  120. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいま広中君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  121. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 全会一致と認めます。よって、広中君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、宮澤大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮澤大蔵大臣
  122. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  123. 勝木健司

    委員長勝木健司君) なお、三案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十一分散会