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1999-04-15 第145回国会 参議院 国民福祉委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月十五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十三日     辞任         補欠選任      今井  澄君     堀  利和君  四月十四日     辞任         補欠選任      堀  利和君     千葉 景子君      堂本 暁子君     奥村 展三君  四月十五日     辞任         補欠選任      奥村 展三君     堂本 暁子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         尾辻 秀久君     理 事                 常田 享詳君                 朝日 俊弘君                 渡辺 孝男君                 小池  晃君     委 員                 久野 恒一君                 塩崎 恭久君                 中原  爽君                 水島  裕君                 櫻井  充君                 千葉 景子君                 直嶋 正行君                 松崎 俊久君                 沢 たまき君                 井上 美代君                 清水 澄子君                 入澤  肇君                 奥村 展三君                 堂本 暁子君                 西川きよし君    国務大臣        厚生大臣     宮下 創平君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        警察庁長官官房        給与厚生課長   岡  弘文君        厚生大臣官房障        害保健福祉部長  今田 寛睦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十三日、今井澄君が委員辞任され、その補欠として堀利和君が選任されました。  また、昨十四日、堀利和君及び堂本暁子君が委員辞任され、その補欠として千葉景子君及び奥村展三君が選任されました。     ─────────────
  3. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 久野恒一

    久野恒一君 自由民主党の久野恒一でございます。  余り質問に立ったことがございませんので、なれておりません。そういう意味では的が外れるかもわかりませんけれども、御容赦願いたいと思います。  本日は、精神保健福祉法の一部を改正する法律案質疑でございます。確かに、精神障害者が温かく家庭に迎えられ、そして社会に戻される、いわゆる障害の垣根を越えて生活をエンジョイできるということは、ノーマライゼーションの精神に基づき非常に理想的であると私は思うわけでございます。確かに、精神障害者にとりましては、そういう治療法というのが一番いい治療法ではないかなと思うわけでございます。  来年はこの法律案を施行する年でございますので、それについて五年ごとに改正するとはいいましても、そのときの社会情勢によっていろいろとニュアンスが変わってくるのではないかなと思うわけでございます。いわゆる不況の問題とかあるいは社会環境変化、それから国際情勢変化、いろいろ要素がある中で法律改正していくわけでございます。  来年から介護保険が導入されます。そうなりますと、在宅福祉が始まるわけでございますので、今回の改正でもって在宅福祉がより拡充すると私は解釈するわけでございます。  今後の障害者プランもやはり視野に入れて改正していかないと、将来はにっちもさっちもいかないような状況になるのではないか、そういうことを念頭に置いてこの改正をしていかなければならない、そういうふうに思うわけでございます。したがって、より詳細な改正を願うものであります。  そこで、質問に入らせていただきます。  まず、配付した表をごらん願いたいと思います。  これは、出典はこういう厚い本で、診療報酬点数早見表からとってございます。入院医学管理料でございますが、三番目に精神病棟、二番目に結核病棟が書いてございます。参考として病院及び一般病棟です。そういう大学病院とか高次機能病院が三〇%以上の紹介率でもって二十日以内に大体帰るというような保険医療機関でございます。  これを併記して書いたのは、平成十年の四月に改定されたわけでございますが、ごらんのように二週間以内、二週間から一カ月以内、一カ月から三カ月以内、三カ月から六カ月以内、六カ月以上というふうに書いてございます。そのような中でもって、この精神病院というのは、平成九年は平均して四百二十四日間であった。ところが、点数早見表で見ますとこのように区分されているわけでございます。全く一般病院と同じような区分でございます。二週間で治る、あるいは二週間以上一カ月の間に治るというような結核とか精神病というのは数が少ないのではないかなと思うわけでございます。  そこで、この点数表に基づいて早く患者さんを出してしまう、一カ月過ぎてしまうと五〇%以下の医学管理料になってしまうので、したがって病院が赤字になるから出してしまう、余りにも早く患者さんを出すということは、余りいい結果が得られないのではないか、そういうふうに危惧するわけでございます。  私は、そういう意味で、早く出せばよいという問題ではないと思うわけでございますが、そういう点を保険局長にお伺い申し上げます。
  5. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先生指摘のように、確かに精神病院在院をされる方の在院日数が長くなっているということでございますが、これは言われているように、諸外国と比較しても我が国の精神病院平均在院日数が長い、こういうふうに言われております。  ただ、そうした中でも退院された方を入院期間別で見ますと、十四日以内に退院という形に結びついたものが一五・三%、それから三十日以内に退院に結びついたものが二七%、あるいは三月以内に退院に結びついたものが五六・九%、退院された方自体のあれを見ますというとそういうようなことになっております。実態として、多くの方が長期入院しておられることは否めない事実でございますけれども、すべての患者の方が必ずしも長期入院しておられるわけではないようであります。  しかし、この精神科医療分野におけるあり方につきましても、一般医療分野だけではなくて、できるだけ入院早期、いわば急性期に濃厚な治療を実施することによりまして患者方々早期退院につなげていくという考え方は、やはり精神科医療の領域においても大事ではないかなというふうに考えます。  そうした観点から、診療報酬の評価に当たりましての一つのめり張りの問題といたしましていえば、精神病棟におきましても一般病棟と同様に個々の患者入院期間に着目をいたしまして入院早期入院医学管理料を高く評価する、そのことによって早期退院にできるだけつなげていくようなインセンティブを働かせていこうということを考えておるわけであります。そうした観点から御指摘のような診療報酬体系にいたしておるわけでございます。  もちろん、精神科医療一般医療ということになれば、精神科医療の場合に長期入院が必要であるケースが一般医療よりも多いだろうというような点につきましては、先生お挙げいただきました資料でもおわかりのとおり、いわゆる入院期間によります逓減制というもの、一般病棟のものよりも徐々に下げていくという意味での緩やかな段階的な逓減ということには配慮をいたしておるところでございます。  今後とも、各医療機関機能あるいはそれぞれの入っておられる患者さんの病態、あるいはどういうふうに今後政策的に医療を持っていくかという観点から診療報酬あり方につきまして全体的に検討していく中で、この点についてもさらに今後どういうふうに持っていくのが患者さんにとってあるいは今後の精神医療あり方にとって最もいいかという観点については不断に検討していかなければならない、こんなふうに考えておるところでございます。
  6. 久野恒一

    久野恒一君 ありがとうございました。  こういう方法でもって患者さんは二分化してきていると思います。確かに、短期でもって帰る患者さんと長期滞在型の患者さん、これは後でもって触れさせていただきますけれども、なかなか家へ帰れない環境にある患者さんもおるわけでございまして、これは論外でございますけれども、そういう状況にあろうかと思います。  そこで、このグラフをちょっと見ていただきたいのでございますが、入院時のこっち側のグラフでございます。これで見ますと、最初の、病棟病院別に見てみますと、これが大学病院とか一般病院。それから、療養型病床群ではないんですけれども介護力強化病院、これが白の枠で囲ってある棒グラフでございます。バツ印結核病棟。それから精神病棟ということでございまして、初めのうちは点数はいいんですけれども、大体一カ月から三カ月の間が段階的にまとまっている、そういうことであると思います。そういう中身が違うわけでございまして、お医者さんの張りつけ人数が違うから、同じ高さでもお医者さんの数がこの中で十人いるのか一人いるのか、これの差はあると思います。ただ、表現上でもって大体この辺に、三カ月ぐらいまでに収れんしているのかな、そういう意味保険局長の御答弁のようにこれが二分化していくんじゃないかなというふうに思うわけでございます。ありがとうございました。  次に移らせていただきますけれども、精神保健福祉法に関する専門委員会報告書で示されておりましたように、社会福祉資源不足している、地域偏在が甚だしい、また現行制度での人権問題にかかわる対応不足の具体的な内容など四点ばかり挙げているわけでございますけれども、そのうち社会福祉資源不足、それから地域偏在、また現行制度での人権の問題、そういう具体的な内容障害保健福祉部長にお伺いいたしたいと思います。
  7. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 御指摘のように、特に社会復帰施設につきましては、総体として必ずしも十分な量が整備されていないという状況もございまして、全国の市町村のうち大体一割の市町村に集中して設置されているという意味では、偏在もかなり強くあるというふうに私ども認識しております。これらを踏まえまして、すべての障害者にとって身近な地域福祉サービスが利用できるようにするべきだというような御意見がこの報告書で述べられているところでございます。  また、人権問題に関しましては、一つ精神医療審査会の活動が必ずしも十分に活動していないのではないかというような御指摘。あるいは、行動制限などの判定を行う精神保健指定医、この指定医が院内における役割として必ずしも明確になっていないのではないか、処遇の確保のための責任の所在が不明確ではないかといった点。それから第三点といたしまして、医療保護入院要件が不明確であるために、家族の要望などに応じまして、同意能力があるにもかかわらず、医療保護入院がなされている場合があるのではないか。四点目といたしまして、現在の精神保健福祉法におきましては改善命令に従わないような精神病院をそもそも想定しておりませんので、こういったことをちゃんと担保する形での方策を設けるべきではないか。このような人権にかかわる改善必要性指摘されているところでございます。
  8. 久野恒一

    久野恒一君 そこで、今いろいろ説明を受けたわけでございますけれども、今回の法改正におきまして、社会福祉資源偏在、それから人権問題についてどのような対策を講じようとしているのか、大臣にぜひお伺いいたしたいと思います。
  9. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 現在の状況につきましては、今、部長説明したとおりでございまして、それらの諸問題に今回の法改正において必要な措置を講じようというものでございます。  具体的に申し上げますと、社会福祉資源というのは生活訓練施設授産施設福祉ホームあるいは福祉工場等でございますが、今回はそれらの整備を図るということをやっております。今回の法改正におきましては、まずその実施主体市町村に移すということをいたしております。市町村責任主体となって身近な地域で必要な在宅福祉サービスが受けられるようにするということが大きな特色でございます。  それから、障害者福祉施策の利用に関する助言あるいは調整あっせん等についても市町村実施責任を負っていただく、実施主体になっていただく。それから、従来県がやっておりましたが、市町村が行いますこうした助言調整あっせんについての広域的な調整保健所で行うようにいたしまして、身近な地域福祉サービスを利用できる体制整備したところでございます。  また、第二点の人権配慮した施策につきましては、今、部長が原因は言われましたが、その裏返しとして精神医療審査会報告徴収権限付与等審査機能を強化する。これも患者人権配慮したものと言えましょう。  それから、精神保健指定医につきましては、診療録を記載する義務を拡充いたしますと同時に、その役割を強化することによって患者への配慮その他も行われるということになると存じます。  それから第三番目に、医療保護入院要件を明確化いたしまして、精神障害者により同意が得られない場合でも保護入院という措置がとられることを明記いたしております。  それから、改善命令に従わない悪質な病院に対する指導監督強化等を図ることとしておりまして、今言った社会復帰施設対策を通じて精神障害者社会復帰を促すと同時にその援護を行うということと、人権配慮する、地域対策も進めていくというようなことが今回の法律改正の主要な点でございます。
  10. 久野恒一

    久野恒一君 ただいま市町村への移譲と患者への配慮という点で申されました。  次に、家族高齢化の問題、それから単身障害者増加についてちょっとお尋ねしたいと思います。  この問題は、高齢化社会の到来とともに既に予測されていたんではないかなというふうに思うわけでございますが、今までの施策展開に際しまして、障害者側主体と考えるのか、あるいは家族介護人、近所の人、そういう人たちについてはどういう配慮をしているのか。そして介護保険が導入されてまいります。それによって患者側がどのような介護保険負担をこうむるのか。障害保健福祉部長にこの二点についてあわせてお伺い申し上げます。
  11. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) まず第一点目でございますが、御指摘のように、年々精神障害者家族方々高齢化をしている、あるいは単身者増加をしているという傾向にあるわけでございますが、そういった意味では精神障害者生活支援というものを家族に依存するということがだんだん難しくなってきているというふうに言えようかと思います。そういう意味では、地域社会全体で精神障害者生活を支えていける、そういう体制づくりというものが必要なのではないかと考えております。  このために、今回の改正におきましては、障害者地域生活支援する、つまり、何はともあれ障害者のためにということではありますけれども、それを支えていただいている家族のことも視野に置きながら幾つかの点につきまして改正を行うことといたしております。  まず第一点は、精神障害者生活支援にかかわるいろんな相談、こういったものをしていただく施設として精神障害者地域生活支援センターを設けておりますが、これを法定化して、障害者本人はもちろんのこと、家族への支援強化を図りたい。  第二点は居宅介護等事業、ホームヘルパーの派遣でありますとか、それから短期入所事業ショートステイといういわば臨時的に施設の方でケアができるような仕組み、あるいは自宅にケアのために人を派遣する、こういった地域での生活支援、それから一時的な家族支援といったものを視野に置きつつ、これらの制度の創設を図るということが第二点でございます。  それから第三点といたしまして、保護義務者の自傷他害防止監督義務を含めて義務軽減を図っているという点、こういった点もあわせて患者自主性の尊重と家族負担軽減という両面において一つの意義あるものとして今回提案をさせていただいている次第でございます。  それから、第二点目の介護との関係でございます。  精神保健福祉施策介護保険の仕切りの問題でありますけれども、当然、精神障害者であっても介護保険の被保険者でありますし、介護サービスが必要となった場合には要介護認定を受けた上でふさわしい介護サービスは当然受けられる。  精神科医療におきましては、介護保険がどの部分までを適用対象とするかという点についてはまだ検討中のところもございますが、適用されるところにおいては介護保険、適用されなければ医療保険から医療分野としては支給されるということになろうかと思います。  したがって、負担という意味ではそれぞれのルールに従った負担が課せられるものというふうに思います。
  12. 久野恒一

    久野恒一君 どうもありがとうございました。  何となくまだ言い尽くせない部分が私にはございますけれども、時間の関係でもって次に進ませていただきます。  先ほどの精神福祉対策市町村におろすということについてでございますけれども、報告書では、具体的な考え方として、まず地域に密着した精神保健福祉施策充実を掲げ、医療施策については、精神科救急等地域での即応体制整備、また市町村中心とする福祉施策体制整備などを明示しております。  そこで、市町村中心とする福祉対策体制整備について、人員とかノウハウとか予算が自治体には余りない、こういうことでございますので、具体的にどのような体制整備を進めていくのか、また現在まで保健所で積み上げたノウハウというものをどのように市町村に移譲していくのか、これを福祉部長にお伺いいたします。
  13. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) このたび、身近な行政主体であります市町村においてできるだけきめ細かなサービス提供をされるようにという観点から、一つ市町村居宅介護等事業ホームヘルプ事業あるいはショートステイなどを法定化いたしまして、さらにはグループホームについても同様に市町村事業とするということで、サービス提供主体市町村におろすという考え方制度を組み立てているわけであります。  ところが、市町村はこれまで精神障害者に関する施策につきまして十分な経験を有しているわけではございません。従来は都道府県がそれを多く担っていたわけでありますが、それにつきましては今度新たに法定化いたします精神障害者地域生活支援センターに対しまして市町村相談助言を委託してそのノウハウを使っていただくということもできますし、またさらに御指摘保健所精神障害者対策に非常に大きな力と経験を持っているわけでございますが、市町村での受け皿、受けられる体制というものに保健所の力をおかりして、研修をする、あるいはマニュアルをつくっていただくということで、予定をしております十四年までに十分な体制をとりたい、このように考えております。
  14. 久野恒一

    久野恒一君 そういう施策がまだ未経験市町村におりるわけでございます。  そこでもって、地域生活支援センターにこういうものがおりるとすると、市町村はそれなりの施設をつくらなければならない、そういう面でもって資金が足らなくなるんではないか。そういう意味を含めまして、大臣、ちょっと温かい御答弁をお願い申し上げます。
  15. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今お話しのように、これから市町村中心にやっていただくわけでございまして、施設につきましても従来のグループホームのほかに、今お話しのようにホームヘルプサービスとかショートステイ等機能も法定化いたしまして、市町村中心に行わせることになります。  したがって、保健所は、都道府県が今までやっておりましたけれども、指導等は行いますけれども、市町村主体にやるということになりますれば、今御指摘のように市町村施設運営その他施設整備等について財政措置が必要でございます。  この点は法律にも今回明記をされておりますが、国、地方公共団体の補助に関する事項として指定されておりまして、市町村精神障害者居宅支援事業を行う者に対して補助した場合は都道府県市町村に対して補助できる、そして都道府県がやった場合には国はその費用の一部を補助することができるということで明定をしてございます。  我々としては、この社会復帰施設対策及び地域対策としてのいろいろの諸問題については今後予算的にも充実を図ってまいりたい、こう思っております。
  16. 久野恒一

    久野恒一君 持ち時間が大分迫ってまいりましたので、五番の問題は割愛させていただきたいと思います。  次に六番の問題でございますけれども、身体障害者知的障害者精神障害者に関する福祉施策をそれぞれどこの課が担当しているのか。担当が分かれることによって縦割り行政の弊害というものが出てこないか、その辺のところを簡単で結構でございますから福祉部長にお願い申し上げます。
  17. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 知的障害身体障害精神障害、それぞれの所掌につきましては、従来厚生省におきましても三局にまたがっていたわけでありますが、平成八年から組織を改めまして、現在の障害保健福祉部を設置して、これらの総合的な施策の推進ということで発足をしたわけであります。それらも反映いたしまして、都道府県も現在そういった意味では所管が分かれておりましたところが徐々に一緒になっていこうということで、現在三十九県が同一の局でやっているというふうになってまいりました。  いずれにいたしましても、組織が一本化すればそれで足りるわけじゃありませんけれども、やはり連携がとりやすいことによって総合的な障害者施策が進められるように今後とも指導等を進めていきたいと考えております。
  18. 久野恒一

    久野恒一君 ありがとうございました。ぜひ、そうお願いいたしたいと思います。  最後の質問になりますけれども、医療費をこれからうんと有効に節約して使わなければならない、こういう状態にあろうかと思いますが、どうしても長期入院が必要な患者さんがいるわけでございます。  そういう意味では、病院類型化、もちろん今類型化されつつあると思いますけれども、民間病院高次機能病院、いわゆるそういう機能を整えた国立病院、そういうものの機能分化というものをしっかりとやっていただきたい。相当な料金体系を整わせることによって、そういう民間病院国立病院役割分担というものをもう少ししっかりとやっていただきたい。そして、国民が安心して住みやすい地域づくりというものをつくっていただきたいという大臣の心強い決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
  19. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) まず、長期入院患者の療養環境整備でございますけれども、これは今御指摘のように、病院類型化を進めてはどうかという御意見、これは私どももその療養にふさわしい施設設備を整備するという観点からいたしまして、例えば病棟単位で区分するとかいろいろな方法があり得るかと思いますが、検討してまいります。  なお、医療法におきまして、病床機能の見直し論も今議論をされておりますので、そうしたことを背景としながら、精神科医療における効率的な医療提供体制あり方についても鋭意努力をしていい方向を出したいと思っております。  今御指摘の民間と国立病院との問題でございますが、確かに統計を見ますと国立病院精神障害者の利用率は非常に少ないです。したがって、それはいろいろの原因があるかと存じますけれども、やはり国立病院というのは、ある意味で基幹的な病院でありますと同時に先導的な役割も果たしておるわけですから、もうちょっと国立病院機能もそういった面で充実強化すべきものではないのかなというような感じを持っております。
  20. 久野恒一

    久野恒一君 ありがとうございました。  以上で質問を終わらせていただきます。
  21. 櫻井充

    ○櫻井充君 民主党・新緑風会の櫻井充です。  今回の法改正におきまして、患者さん、そして家族方々にとっては一歩前進かなというふうに見ております。基本的に賛成なんですが、少し足りない点がありますので、その点について御質問させていただきます。  まず最初に、趣旨説明の中で「精神障害者人権配慮した適正な医療の確保」というふうにうたっておりますけれども、今回のこの法律の本文中で人権ということに全く触れておりません。人権という言葉が一つも出てきていません。総則の中に人権の尊重ということを明記すべきではないかと思いますが、その点について厚生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  22. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私ども、今回の改正点の実体的な意味は、先ほど申しましたように、人権への配慮地域福祉の充実支援体制充実が大きな柱であると存じております。  御指摘のように、法律条文を私も見ましたが、一条、二条、三条、それぞれ義務的なことあるいはあるべき方向性は書いてあります。人権という言葉は使われていないのは事実でございますが、それぞれの条文をよく読んでいただきますと、この背景にはやはり人権への配慮ということがなければこういう表現になってこないということもございますので、今回の改正で特に人権への配慮と、表向きそういう言葉はございませんが、この規定全般にわたってそういう配慮はなされているものというのが私どもの判断でございます。
  23. 櫻井充

    ○櫻井充君 今回の法改正においても、要するに基本理念が見えてこない、見えにくいというところがあるかと思います。つまり、大臣がおっしゃっていますように、確かに配慮しているというところは見えますけれども、はっきりこの法律はこういうふうな形でつくっているんだということを示すためには、やはり人権に対して、僕らは尊重だと思っておりますけれども、そういうふうなことをきちんと明記すべきだと思います。そういうふうに考えてもこれは明記する必要がないというふうにお考えなんでしょうか。
  24. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 先ほど申しました点を補足いたしますと、例えば第一条では、精神障害者医療、保護ということでその援助の規定を明確に打ち出しております。二条でも、国や地方公共団体義務として精神障害者の自立と社会経済活動への参加ということを明確にいたしております。第三条におきましても、国民義務として精神障害者に対する理解を深めるとか、あるいは精神障害者がその障害を克服して社会復帰ができるように協力しなければならない等、まさに人権への配慮精神障害者中心に記述されて一条、二条、三条は構築されております。  そして、それを展開する意味で、いろいろの施策が今回も改正されておりますので、私どもとしては人権への配慮は十分なされているというように考えております。
  25. 櫻井充

    ○櫻井充君 昨年、法改正されました感染症予防法に関してですが、感染症予防法に関しては基本理念が第二条にございます。その第二条では、人権への配慮ということをきちんとした形でうたっております。そして、第三条の国、地方公共団体の責務のところにも人権を保護しなければいけないと、それから国民の責務のところにもそのようなことが書かれています。  これまでの経緯を見たときに、感染症の患者さん方が隔離される、強制入院させられなければいけない、そしていろんな形で差別を受けてきた。そういう意味でいいますと、感染症の患者さん方も精神疾患の患者さんたちも今までずっと同じような経過を歩んできたんではないかというふうに私は思っています。  昨年の法改正で感染症予防法ではきちんとした形で法文の中に明記しているにもかかわらず、今回の法文に関して明記しない、この点に関してはいかがなんでしょうか。
  26. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 昨年改正いただきました感染症予防法におきましては、これは厚生省の当初案ではそういう表現は乏しかったわけでございますが、当院の議論を踏まえてそのような修正がなされております。  私どもとしては、感染症の問題がこれと全く同一かどうかという視点の検証も必要でございますが、しかし今、委員のおっしゃられるように、精神障害者といえどもやはり感染症患者と同様なシチュエーションにある場合も多いわけですから、当然人権への配慮は必要でございます。  しかし、現行法の体系において、先ほど申しましたように十分裏づけがなされておるということで、私も頭の中ではかすめました。去年の議員立法でやられたことも思い起こしながらどうかなという検証も自分自身では考えましたけれども、やはりこれは実体的に保障措置をきちっとしておいた方がよりいいんではないかという感じで、今回はそういう言葉自体は挿入をいたさなかった次第でございます。
  27. 櫻井充

    ○櫻井充君 今、大臣がおっしゃった中で、最初の感染症予防法に関しても厚生省案の中にはそういうことがなかった、そしてこういう討論の中で人権に対しての配慮という言葉がここの中に盛り込まれたというお話がございました。  それとぜひ同じようなことを今この場でお願いできないか。つまり、厚生省の案には、確かに今回の改正の中に人権に対する配慮、僕らは尊重と思っています。その言葉がございませんが、こういう討論を含めてここの部分を明確にした方がこの法律の理念もはっきりすると思います。再度くどいようですけれども、それでも大臣、ここの中には明示してはいただけないんでしょうか。
  28. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私どもは、この法律を政府案として出している以上、責任を持って御提出申し上げておりますので、これで御審議を十分尽くしていただきたいなと思います。一方、院の方でどういう御議論をなさるか、それはまた院の問題としてこうした委員会等の機会があるわけでございますから、御議論をいただくことはもう十分いただいてしかるべきだと思いますけれども、今、私の方でそういうことを申し上げる立場にもございません。
  29. 櫻井充

    ○櫻井充君 それではお願いなんですけれども、五年後に法改正がございます。そのときにはもう一度、一条から三条について人権の尊重なり人権への配慮という言葉を明示するということを御検討願えればというふうに思いますが、それは御検討願えますでしょうか。
  30. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この法案を今御審議を始めていただいたばかりのときに、五年後には必要だから見直すということは自己矛盾みたいに感じます。したがって、この法律でよく御審議をしていただいて、実体的な意味をよくお酌み取りいただくと言うしかないと思います。
  31. 櫻井充

    ○櫻井充君 確かにおっしゃるとおりだと思います。  なぜこんなにしつこく言うかといいますと、いろいろ不祥事がございました。例えば、平成七年十一月の神奈川県の福井記念病院患者預金無断引き出し事件、平成九年二月の高知県の山本病院の院内暴力事件、昨年五月の新潟の犀潟病院の事件など、要するに医師とか医療機関従事者による不祥事が後を絶たないわけでございます。ですから、人権に関してきちんと明示すべきではないかということをしつこく申したんです。  それと同時に、感染症予防法のところには「医師等の責務」というのがございます。今回の総則の中には医師もしくは医療従事者に関しての責務というのがございません。こういういろいろな不祥事がございますので、この総則の中に医師、医療従事者の責務を加えるべきではないかというふうに思いますけれども、厚生省の御見解をお伺いしたいと思います。
  32. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神科の医師あるいはいわゆるコメディカル、医療に従事される有資格者の皆さん方、看護婦さんもそうだと思いますが、それぞれ身分法を持っておられて、その身分法の中で責務が規定されているという意味であれば、ここであえて重ねてその旨を書くべきかどうかという点については、少し検討してみなければちょっと今即お答えすることができないという状況でございます。
  33. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、部長の言われたように、一般的に医師である以上、精神科医であれ外科医であれみんなそれだけの責務を負っておると存じます。それはその基盤にあるわけです。  しかし、精神障害の問題につきましては、精神保健福祉法としてその医師の特殊な領域というものをきちっと守っていただく、つまり指定医制度です。これが本当に機能していないから今御指摘のような不祥事件等々も起きている一因にもなっておりますので、今回は指定医義務その他をきちっとして精神障害者患者本位の体制をつくり上げようというところに主眼がございます。  そういった点で御理解いただければ、医師の責務が書いてないからこれは軽く扱っているんだと、そういうことではないと私は思います。
  34. 櫻井充

    ○櫻井充君 大臣の発言の内容に関しては重々承知しております。ただ、今指定医という医者のことに関して大臣もおっしゃいましたけれども、こういう不祥事を起こしているのは医者だけではございません。看護婦さんの場合もございますし、それからそこの中の管理者の方々の場合もございました。  ですから、指定医に関していろいろあるかもしれません。しかし、そのほかの人たちに関してきちんとした形で明示されていないのではないかというふうに思いますが、その点に関していかがでしょうか。
  35. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) まず、今回の改正で、精神保健指定医につきましては、まさに精神科の病院の中で一人あるいは二人の設置を義務づけてあるわけでありますけれども、その意味というのは、医療機関の中で患者さんの人権というものを指定医という資格を持って全体を見ていただくという観点から、このたびの改正におきまして病院において不都合な人権侵害等があったらそれを管理者に報告するなどの改善について努めなければならないということで、一つ指定医の目で見て従業員の方々を通しての人権侵害の防止というものに努めていただくという形で改善を図ったところでございます。  なお、個々の職種、いろんな方がいらっしゃると思いますけれども、個々の方々人権上の問題というのは、一般的には当然のことでありますけれども、まさに精神病院指定医によって身体の拘束も含めて人権上の制限を加えることができる非常に重要な立場にあるという意味から、とりわけ指定医に対して病院全体で人権を守っていただく責任者としての義務を今回新たに創設させていただいたという趣旨でございます。
  36. 櫻井充

    ○櫻井充君 今の話を聞いていますと、そうするとほとんど指定医責任を負わなければいけないというような感じになりますが、何か不祥事があった場合はすべて指定医責任になるんでしょうか。
  37. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、部長説明したのは、今回の改正の非常に主要なポイントを御説明申し上げました。病院管理の全体は病院管理者に責任があります。病院管理者というのは病院長です。したがって、病院長の傘下にある看護婦さんでありますとか事務職員その他を含めて、あるいは給食に従事する方々を含めて管理者の責任は今回の改正でもより強めておりますので、病院の従事者一人一人の職種の態様に応じて、それぞれを記述してございませんけれども、全体として病院体制をきちっとするように管理責任をより明確化しているという点はございます。  ただ、今部長が言いましたように、直接的に精神障害者を管理というか医療行為をやるのは資格者でございます。資格者は直接的に接触がございますから、きちっとした報告義務を課したりなんかして、いいかげんな、また暗やみの中の治療みたいなことで不明瞭であってはなりませんから、報告義務を課すとか明快に審査会にも報告するとか、いろいろの義務を課しているわけです。  そういうことによって人権を擁護する立場を担保しているというように思いますので、今御指摘のように資格者だけを中心にしたものでもない。しかし、資格者が非常に中心的な役割を果たすという点に着目して改正をお願いしてあります。
  38. 櫻井充

    ○櫻井充君 私も十数年医療の現場におりました。最近の医療で本当に大事なのは、看護婦さんとかいろんな方々を初めコメディカルスタッフの協力がなければ今の医療はやっていけないということになってまいります。しかし一方で、この間の横浜市立病院の事件のように患者さんを取り違える等、やはりコメディカルスタッフの問題点というふうなものもございます。ですから、一概にすべてが医者責任、それから管理者だけの責任が問われるものではないというふうに思っています。  ですから、その病院患者さんたちにかかわってくるスタッフの方々義務なりなんなりというふうなもの、特に精神疾患の患者さんたちというのは医療法でも特別な枠を設けられているわけですから、この精神保健福祉法があるんだとすれば、そこの中で医療従事者についても人権を擁護するなりなんなりというような責務をきちんとした形で明示すべきではないかと思っているわけです。
  39. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) おっしゃる点は趣旨としては私も賛成です。病院全体が、従事者全体が精神障害者の立場を考えながら人権配慮し保険医療を給付していくというのは当然のことでございます。そういう体制になっていない事例があることは残念でございますが、それは運用上、実行上の問題もかなりあると思います。  それから、今、横浜市立病院のお話が出ましたが、ああした問題はやはり病院の運営システムの問題だと私も考えます。それが大きな要因だと思います。極めて単純なミスです。しかし、その単純なミスが流れ作業の中で疎外されている。単純であるだけに、気のつかない間に、流れ作業といっては人間を扱う病院の表現としては非常にまずいんですけれども、実際は大量に扱う場合にそういう単純なミスが生じておりますから、システムをきちっとすることは、精神病院であると一般病院であるとを問わず重要な視点であろうと思っております。
  40. 櫻井充

    ○櫻井充君 今、システムという言葉が出ました。今回の人権問題にしても不祥事に関してもですけれども、結局この法律、今回の精神保健福祉法だけを改正すれば済む問題ではないというふうに考えています。  システムを確立するためには何といっても人の力が必要でございます。ちょっとこれは医療法の話になってしまいますが、現在、精神病院では医者一人に対して患者さん四十八人、そして看護婦さん一人に対して患者さん六人と非常に劣悪な条件で働かされているし、患者さんたちもそこで診療を受けているという事実がございます。この点について今後改正する予定というのはおありなんでしょうか。
  41. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この問題は、私も多少個人的には大臣になる前から疑問を持っていました。つまり、四十八人に一人の医師、その三分の一が一般医療機関では定数化されているわけです。  どうしてかということを尋ねてみましたところ、戦後、病院が非常に不足しておって、特に精神病患者は慢性期の問題が多いものですから収容施設もない。とにかくとりあえず収容して治療しようということから、医師の配置その他も非常に一般病院との差が大きかったと思います。ところが、最近においては精神障害者医療行為もかなり高度化してきておりますので、そこの差が多少縮まってきているんじゃないかと私は思うんです。  したがって、この定数配置の問題は医療提供体制の問題として今検討中でございますから、精神科医の配置とそれ以外の一般病院の医師の配置の問題は今後改めて検討させていただこうかなと思っておるところでございます。
  42. 櫻井充

    ○櫻井充君 世界と比較したときに、患者さんに対しての医師の定数それから看護婦さんたちの定数というのはかなり低いんです。一般の医療の中と比較しても、精神病院の医師それから看護婦さんたちの数が非常に少なくなっています。もしわかればの範囲なんですけれども、ほかの国のデータがございましたら教えていただきたいんです。
  43. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 今、手元にございませんけれども、一般的に言われておりますのは、我が国の入院期間が長いことの一つの理由として、それへの従事者が少ないということが関係しているのではないかというふうな御指摘をいただいているのは事実でございます。
  44. 櫻井充

    ○櫻井充君 これは手元にないだけであって、厚生省の中にはあるんでしょうか。あれば後で教えていただきたいと思います。
  45. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) ないと言っておりますが、ともかく一応当たりまして、御返事を申し上げたいと思います。
  46. 櫻井充

    ○櫻井充君 今やグローバル化といいますか、もう島国ではないんですから、世界のほかの国々で果たしてどういうふうなことが行われているかということはやはりきちんと調べるべきではないでしょうか。  クロイツフェルト・ヤコブが起こったのも、一九八七年にもうアメリカのJAMAの方では、人の硬膜を移植すればクロイツフェルト・ヤコブが発症するかもしれないという情報がございました。残念ながら厚生省はそれを知らないで十年間過ごしてきて、日本ではクロイツフェルト・ヤコブの患者さんが多かったということもございます。ですから、世界の情報というふうなものはきちんと早くに入手すべきだというふうに私は考えております。  さて、今度は移送についてお伺いしたいんですけれども、患者さんの同意を得ない、そしてなおかつ保護者の同意も得ないで入院が必要となる場合に、今度は移送というシステムをつくることになりました。これは救急医療とはまた別ものなんでしょうか、救急医療の一環としてこの移送というシステムが使われることになるんでしょうか。
  47. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) このたび移送の仕組みをつくりましたのは、先ほどの御質問の中にもございましたけれども、一つは保護者の同意は当然必要だという仕組みの中でこれを機能させることといたしております。  改めて全体を申し上げますと、精神障害があって本人に医療必要性が十分判断できない、そういう場合に当然家族の説得とかあるいは主治医の協力とかを得ることになるわけでありますが、それでもなおかつ努力を尽くしても本人が受診に同意しない、しかも医療はどうしても必要なんだということについて指定医が判断した場合に、保護者の同意を条件に適切な医療機関にこれを移送する、こういう仕組みでございます。  したがいまして、一般の救急というところで物を考えますと、もちろん休日とか夜間とかといういろんな意味での救急はあろうかと思います。何はともあれみずからの意思で救急的なケアを受けるという意味では一般の救急もこれに十分活用できるというふうに思いますけれども、今回は本人がそれを同意しないということがあるために、法的にこれに責任を持って、人権配慮した仕組みを持って、しかも適切な医療機関に送るというような仕組みで提案をさせていただいているという内容でございます。
  48. 櫻井充

    ○櫻井充君 済みません、移送というのは応急入院ということで考えてよろしいんですか。移送していくというのは応急入院ということですか。
  49. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 応急入院というのは保護者の同意が直ちに得られない、扶養義務者がいるけれども、扶養義務者の場合は家庭裁判所の選任を受けなければなりませんので、そういった意味でしばらく時間がかかるので応急に入院する、保護者がいないという意味において一つ入院手続が応急入院であります。  今回の移送と申し上げますのは、これは一つ医療保護入院に至る入り口として一定の手続に基づいて医療機関にこれを移送する、その移送先が従来応急入院を受け入れることができる施設として指定していたものを活用しよう、こういうことで応急入院を受け入れる指定病院をこの移送の受け入れ病院として位置づけた、このような構成になっております。
  50. 櫻井充

    ○櫻井充君 要するに、応急入院と移送で入院させるそこのシステムの違いは、そうすると保護者の同意があるかないかという一点でしょうか。
  51. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 応急入院というのは一つ入院形態でありますから、移送ということとは直接は関係ないわけです。医療保護入院入院するのか、あるいは医療保護入院の場合には保護者の同意が要るけれども、保護者がいないという場合には七十二時間を限度に保護者のいない状態であっても入院することができるということを規定しているのが応急入院であります。  移送は、その病院に至るまで、そこの病院に行こうとする段階の間に、その適切な医療を受ける医療機関までどうしても連れていってさしあげないと医療が確保できないということに係る手続を定めたものが移送であります。したがって、意味は違うというふうに思います。
  52. 櫻井充

    ○櫻井充君 そうしますと、移送する場合の手段といいますか、それは救急車ということになるんですか。
  53. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 通例の流れから申し上げますと、家族治療を受けさせたいんだけれども本人が同意してくれないというときには県、つまり保健所にこれが通報される。保健所は、県としてこの方が本当に移送するにふさわしい人か、あるいはどういう形でそういう状態になっているのかを把握し指導して、やはり診察が必要だということになると指定医のお医者さんをそこに呼ぶ。そこで診断をして、確かにこれは医療保護入院するような状態にあるという判断をされたところで県の責任医療施設まで運びます。  ただ、そのときに、県の責任で運ぶわけですから、例えば保健所の車である場合もありましょうし、あるいは消防の皆さんにその機能をお願いする、つまり委託をするといういろんな選択肢はあろうかと思いますが、実施主体者はあくまでも県でこれを担保する、こういう運用を考えております。
  54. 櫻井充

    ○櫻井充君 その移送先は応急病院ということになるわけですね。そうすると、今応急病院というのは全国で六十二カ所しかありません。我が宮城県はゼロでございます。こういうふうな場合、どうすることになるんでしょうか。
  55. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 御指摘のように、応急指定病院というのは一定の要件がございまして、例えば指定医の数でありますとか備えるべき機械とかいうのがあります。ただ、この応急指定病院につきましては、もともと応急入院を想定して制度ができ上がっている。そうすると、応急入院を適用しているケースというのは年間全国で百八十件ぐらいが現在あります。そういう意味では、必ずしも多くの需要を見込んで制度を走らせている状況にないということ、それから今申し上げたように施設に一定の基準がありますから、それに該当をしない場合もこれありということも多少影響していたのではないかと思います。  今回、そういう応急指定病院の仕組みを移送先として改めて位置づけようとするわけでありますから、今度は移送先としてふさわしい基準あるいは条件というものとしてこの指定の基準を見直す必要があります。  これにつきましては、公衆衛生審議会にお諮りをして、どういう基準がいいかという点についても御議論いただいて、施行に間に合わせるように見直して、その地域配置それから絶対量、こういったものが確実に確保できるような形で準備を整えていきたい、このように考えております。
  56. 櫻井充

    ○櫻井充君 大体全国で何カ所ぐらいを予定しているんでしょうか、もしくはどのぐらいの数がなければシステムとして稼働しないというふうにお考えでしょうか。
  57. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 全体どの程度の方が利用されるかという点はなかなか予測しがたいところもございますが、かといって搬送距離というものが、延々と長いリーチでやると事実上機能しないということからすれば、二次医療圏を一つの単位として、その中にやはり複数は必要になるのではないか、このように考えております。
  58. 櫻井充

    ○櫻井充君 先ほども申しましたように、精神病院というのは劣悪な条件となっています。医師の定数にしてもです。その中で、二次医療圏の中に幾つかを設ける。そうすると、当然のことながらこれまでの応急病院と全く違って、質がと言ったら怒られるんですけれども、救急を受け入れられるかどうかわからないという状況になるのではないでしょうか。  先日、仙台市の消防局の方が私のところにお見えになったときにちょっと話をしたんですが、現状でも精神病患者さんが救急車に乗り込まれて病院を見つけるのに本当に苦労するというふうに申しておりました。  再度お伺いしますが、今のような条件で果たしてそれを確保することができるんでしょうか。
  59. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) もちろん精神科の医療機関の御協力というものを仰ぐ必要があろうかと思いますが、今回の移送という観点から二次医療圏にできるだけ複数の施設を用意したいということで準備をいたしますし、そのための要件というものについても見直しを図るということであります。  目的は、そういう制度がなぜ必要だったかというと、そのことによって家族が非常に困っていたという問題もある一方で、例えば搬送業者が無理やり身体を拘束して病院に運んでいるという実態に対する批判等があって、何はともあれ患者さんの人権というものを今よりもより丁寧に扱うということを一つの目的として制度をつくっている。それを支えるために応急指定病院というものについて運用が滞ることがないように精いっぱいの努力をさせていただきたい、このように思います。
  60. 櫻井充

    ○櫻井充君 今の一般救急の中でも受け入れ先はできているんですけれども、受け入れ先で必ずしもその専門の医者に当たっていないという場合もございます。ですから、昔は救急車の中でよく、よくと言ったら怒られますけれども、たどり着いたときには患者さんが亡くなるケースもございました。最近はそうではなくて、専門外の人が、例えば本当ならば循環器に診てほしい、心臓を診てほしかったといった場合に、脳外科の医者が救急であった、たまたま引き受けてしまったときに心臓の病気であった、そういう格好で亡くなっているケースというのも最近見られております。  そうしますと、移送というシステムに関しては確かに必要だと思いますが、その受け入れ先で十分な医療が行われないようなところを応急病院に指定されたのでは、今度は運ばれた患者さん自体がたまらないことになると思います。  その点に関して、その数を確保するためには相当レベルを下げないと数は確保できないと思います。レベルを下げるということになれば今のようなことが起こってくると思います。ですから、根本的な改革をしていかなければこのシステムというのは稼働できないんじゃないでしょうか。
  61. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 現在の応急入院の指定病院の基準につきましては、精神科の指定医が一名以上いる、常時入院に対しては応需体制が整っている、あるいは一床以上の空床を確保しておく、こういう幾つかの基準も設けております。  先ほど申し上げましたように、このことは応急入院という一つの視点に立っての基準でありますが、今回移送というものに着目をして、その移送を受け入れるべき施設としてどういう基準がいいのかという点については、審議会等の御意見をお聞きし、その条件をまず定めた上でその確保方について、先ほど申し上げましたようにそれにふさわしい施設として努力をさせていただきたい、このように申し上げたわけであります。
  62. 櫻井充

    ○櫻井充君 移送するというシステムをまずつくった、ほかに場所があるかどうかというのはわからないけれども、とりあえずシステムだけつくった。逆じゃないですか。つまり、移送先の病院がある程度確保できるということをきちんと踏まえた上でこのシステムをつくらなければ何の意味もないんじゃないですか。
  63. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 審議会の審議の経過におきましても、病院関係者は、個々に応急入院の指定基準、こういったものを念頭に置いて、一定の条件を定めるという意味において、医療関係者あるいはその他の皆さん方もこれに協力をして実現するべきであるという形で報告書がまとめられ、我々もその御趣旨に従い、関係者の理解を得ながら、より人権配慮できる適切な移送体制というものを構築していきたい、このように思っておるわけであります。
  64. 櫻井充

    ○櫻井充君 病院のことに関してなぜこんなことを言っているかといいますと、八割が私立の病院でございます。しかも、診療報酬点数は物すごく低いわけです。そういう中で人員を確保しろということ自体がまず難しい状況ではないでしょうか。ですから、何度もそれができるのかどうかということを問うているわけです。それができないんだとすれば、国公立でそういうものをつくっていかなければいけないんじゃないかと思います。  例えば、この法律の第二節「精神病院」の第十九条の七のところに「都道府県は、精神病院を設置しなければならない。」というふうに明示しております。ですから、これこれに見合っただけの応急病院都道府県は幾つか持たなければいけないとか、そういうような形で、都道府県単位である程度公的なところでやっていただけるような法律をつくるべきではないですか。
  65. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 審議会の御意見の中にも、移送も含めて救急医療について、公的な医療機関役割については御指摘があったわけでありますし、今回の移送システムの導入に当たっても、それを法定するということではございませんけれども、少なくとも都道府県立あるいは公的なあるいは国立の医療機関にこの制度に最大限の御協力をいただくようにお願いをしてしかるべきである、このように思っております。
  66. 櫻井充

    ○櫻井充君 そうしますと、応急病院に関してですが、我々の宮城県の中には今まで一個もなかったわけです。こういう場合、応急入院する場合はどうしていたんでしょうか。
  67. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 手元にちょっと資料がございませんけれども、応急入院施設がないということは、その病院は応急入院のケースの対象とならなかったということとして理解せざるを得ないわけでありますが、ただ、現実的には、ゼロの県でも数県計上されている場合に県を越えてこれが運用されているということもあるのかもしれません。いずれにしても、その実態につきましては調査をしてみないとよくわからない分野ではないかと思います。
  68. 櫻井充

    ○櫻井充君 今のは全然違うんじゃないですか。患者さんが出なければその病院がないなんて、そういう話じゃないんじゃないですか。それは全くおかしいんじゃないですか。そういう患者さんが出たときに困るから病院があるのであって、病院がないから今までなかったなんて、そんなばかな答弁はないでしょう。
  69. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今の櫻井先生の御質問と御議論を承っておりまして、全国で千七百近くの精神病院がありまして、三十三万人くらいが入院しています。したがって、応急指定病院だけが精神障害者のある一定水準以上の医療給付ができるというようには私どもは考えておりません。  これはさっき部長が言いましたように、一定の基準をきちっとして拡充していかないと、宮城県の患者が出た場合に岩手県まで持っていかなけりゃだめだというようなことであっては現実的でありません。今六十何カ所というのは、確かに一県に一つあるかないかの話でございますから、こういう移送制度を設ける以上は、どんな病院でもいいというわけにもまいりませんから、一定の基準をきちっと定めて、そして指定を拡充していかなければこの移送制度というものは本当に実効性が上がらないというように考えておりますことを申し上げておきます。
  70. 櫻井充

    ○櫻井充君 しつこく言っているのは、要するに十分な設備とか医師、看護婦さんたちが配置されている精神病院がかなり少ないということ、そこはやはり御理解いただきたいと思います。そして、くどいようですけれども、そういうために患者さんたちの人権が損なわれていたということがございますので、その点についてはまた今後御検討願いたいというふうに思います。  あと、保護者に関してなんですけれども、今回は自傷他害防止監督義務の規定を削除いたしました。基本的には、今後保護者の監督は不要というふうに考えていいんでしょうか。そして、もうこの患者さんに関して監督は不要なんだというふうなこと、これはだれが下すんでしょうか。もしくは、監督が必要と考えられる場合には、保護者に協力を要請することは可能なんでしょうか。
  71. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 今回の自傷他害防止監督義務の廃止の流れを申し上げますと、まず、実際に自傷他害を防止するというのはどういうことをすればいいのかということになりますと、 具体的には、保護者が日ごろから患者の病状に注意し、病状が悪化して、あるいは自傷他害のおそれがある状態になった場合には速やかに医師あるいは保健所相談をして適切な医療が確保できるように、こういうことが家族にできる、そういうことをやってもらいたい、こういうことで自傷他害防止義務があるわけであります。  これは同じく保護者の義務の中に治療を受けさせる義務がございます。この治療を受けさせるということは、まさにそういった自傷他害の状態になったときに、すぐにでも医療機関あるいは保健所相談して治療をとにかく受けていただくという行動をとってほしいということにおいて事実上担保されるという観点からこれを削除したわけでございます。  したがって、この自傷他害防止監督義務そのものは保護者の義務から完全に削除されるということでございますので、今後治療を受けさせる義務ということ、これだと具体的な行動がとれますので、こういったことをもって適切な治療の確保の手だてとして有効に機能するのではないかと思っております。
  72. 櫻井充

    ○櫻井充君 済みません、もう時間になりました。警察庁の方に来ていただいているので、最後に。  現在、精神障害者によって害を及ぼされている被害者の方々に対して犯罪被害給付制度があります。しかしながら、必ずしも十分な補償制度とは言えません。  例えば、両親が殺害された場合には孤児になってしまうという方々もいらっしゃるわけで、この方々に対しての生活の保障というのが全くできていません。保護者の制度が外されるから、義務が外されるからというわけではございませんが、これまで被害を受けてきた方々に対してやはり国として十分な補償をするシステムを確立していくべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  73. 岡弘文

    説明員(岡弘文君) 犯罪の被害に遭われまして不慮の死を遂げられた方の御遺族や重障害が残った方に対しまして、社会の連帯共助の精神に基づきまして見舞金的性格の給付金を支給する制度といたしまして、現在、犯罪被害給付制度がございます。この制度は、精神障害者により危害を加えられた被害者に対します補償を直接の目的とはいたしておりませんけれども、精神障害等によりまして心神喪失状態にあったため、刑事、民事、両責任を問われない加害者による犯罪の被害者に対しましても給付金が支給されるというものでございます。  この制度につきましては、昭和五十六年の犯罪被害者等給付金支給法の施行以来、経済情勢や犯罪被害者への支援を拡充すべきであるという要請に応じまして、三回にわたって支給金額を増額してまいりましたとともに、平成九年におきましては支給対象となります重障害の範囲の拡大を行ったところでございます。  今後、さらにどこまで拡充していくかにつきましては、犯罪被害者等給付金のみならず、犯罪の被害に遭われた方々にどのような支援の手を差し伸べていくかという観点から、さらにもっと幅広い議論が必要なのではないかというふうに考えております。
  74. 櫻井充

    ○櫻井充君 時間が参りました。どうもありがとうございました。
  75. 千葉景子

    千葉景子君 この精神保健福祉法でございますが、一九八七年に実は精神衛生法から精神保健法に大きく改正をされまして、今日に至るまで既に十年余り経過をいたしております。その間に、一九九三年、九五年と順次改正が積み重ねられてまいりまして、そして今回のまた改正ということになろうかというふうに思います。  この一九八七年、振り返ってみますと、私もこの改正時に多少議論に加わらせていただきました。あの有名になりました宇都宮病院事件などに私も弁護士の一人として多少かかわらせていただいていた。そういうこともございまして、このときの精神衛生法から精神保健法への改正というのは、ある意味では本当に精神医療に対する大きな転換期でもあっただろうというふうに思っています。その際は、やはり人権擁護そして適切な医療提供、また社会復帰の促進、こういうことが大きな柱になりまして、その後の改正も含めて今日に至っているということであろうかというふうに思います。その都度、厚生省を含め、あるいは医療従事者、それぞれの関係者の努力というものが今日に至っているということは私も十分理解いたしておりますし、今回の改正がさらにそれを前進させるものであることを大変切に期待している一人でもございます。  ただ、この間を振り返ってみますと、この十年余で根本的なところが本当に変わったのだろうかというじくじたる思いもあるわけです。というのも、先ほども触れられたところでもありますけれども、この間も本当にたび重なる精神病院の不祥事件、こういうものが生じているところでもございます。  幾つか挙げさせていただければ、既にもう皆さんが御承知のところでございますけれども、長野県の栗田病院事件、これは病院長が入院患者から預かっていた預金通帳などを無断で引き出していた事件でございます。あるいは大阪府の大和川病院事件、これは他の入院患者から暴行を受けたと思われる入院患者が亡くなった、そして調べた結果、入院患者の処遇などにいろいろな問題があったのではないかということが明らかになってきたということもございます。それから、先ほどもありました新潟県の犀潟病院、大変残念なことではございますけれども、これは国立療養所でございます。ここでもやはり患者の死亡事例がございまして、調査の結果は、隔離や身体的拘束等について著しく適切でないことが存在していた、こういうようなことがございます。  これだけではございませんで、まだまだ問題点はあるんですけれども、この間いろいろな努力は重ねてきた、あるいは法律整備というものも進められてきたにもかかわらず、こういう不祥事も相変わらず起きている。一体どういうところに根本的な問題があるのだろうか。やっぱりそういうことをきちっと押さえた上で改正、法整備あるいはシステムのありようというものを考えていきませんと、制度は進んでいく、しかし結局実態は変わっていかない、こういうことにもなりかねない。  こういう残念なことを繰り返していることは、私たちにとっても本当に願うところでは当然ないわけですから、そういう意味でこの構造的、根本的な問題点というのは一体どういうところにあるというふうに大臣は御認識なさっていらっしゃいますでしょうか。まずそれをお聞きいたします。
  76. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 栗田病院とか大和川病院、それから犀潟病院は私が大臣に就任して以降に扱っておりますが、精神障害者というのは、要するに精神障害があるわけですから、判断能力が乏しいとかないとかいろいろそういう現象が多いと思うんです。それだけにその配慮が行われませんと、経営管理者あるいは患者間においてもいろいろのトラブルが生ずる可能性が基本的にあると私は考えます。一般病院でももちろんそれは否定できない点でありますが、より確度の高い形が精神障害者を扱う病院であるだけにあるのではないかと基本的にまずは考えております。  そのことだけちょっと申し上げた上で、現行制度でそういう点をコントロールするメカニズムは本当にあるのかどうかという点になりますと、今度の改正点に及ぶわけでございますけれども、まず病院が行政の改善命令に従わないようなケースの是正措置が必ずしもはっきりしなかったというような点がありますので、今回は監督義務をきちっと担保できるようにしようということでございます。  それからまた、今まで議論されております精神保健指定医の院内における役割というものが不明確であったように思いますし、責任の所在が不明確である。特に、犀潟病院なんか指定医の取り消しを処分としていたしましたけれども、これもそういった本当の責任体制が行われておるかどうか、指定医が看護婦さんに包括的な授権を与える与え方がいいのかどうかとか、そういう指定医あり方が非常に大きく影響していると思います。  それからもう一つは、精神医療審査会というのがございますが、これが本当に十分機能していたのかどうか。つまり、精神障害者のそういった事件を未然に防止するためには、指定医が自分の診察したことを国民に報告するなり、ある程度情報を伝達しておかなければいけないと思うんですが、そういう義務を今度課することになりますので、審査会の機能を拡充しようと。  例えば、審査会の法定人員は五人から十五人と掲げておられますけれども、大きな県で一つというような場合に、それは東京都でも東京都が一つの単位ですから十五人では処理し切れないと思うんです。五人単位でチームを組んでやるようでございますけれども、それはもっともっと拡充しないとその保護に欠けると思います。そういった審査機能の拡充強化が非常に重要ではないか。  そのほか、医療保護入院あり方とか、それから先ほど来御議論にありました移送の問題とかみんな関係はしておりますけれども、いずれにいたしましても、そういう精神障害者を対象にした病院であるということを基本的に踏まえて、それを補うべく公正な医療給付が行われ、そしてまた病院管理者もそういう誘惑に駆られないようなきちんとしたシステムあるいは管理者意識の高揚等も必要だと思います。特に大和川病院なんかは、患者間の問題であると言いながら、よく調べてみたら管理者のでたらめさが多かったというようなこともございます。  全体としてそんな感じで私どもは見ておりますので、今回の改正点によってただ法文を改正すればいいというのではなくて、本当に実効性が上がるように、やはりアフターケアといいますか、その法律の実効性を私どもは見届けていかなけりゃならぬなというように思っております。
  77. 千葉景子

    千葉景子君 個々の改正点についてはこれから触れさせていただきますが、今、大臣も触れられましたけれども、やはり精神医療というのがどうしても御本人の意思確認あるいは自立性というのを十分に担保しにくい部分がある、それからこれまでの社会的なさまざまな偏見、こういうものも含めてどうしても隔離された、閉鎖された中で行われがちであるというところに問題点がなかなか外に出てこない、あるいはチェックの目がききにくいということが私は根本にあるだろうと思うんです。  この間の実情をちょっと拝見しますと、例えば入院されている年数、これがほとんど変わらないんです。私の手元のあれですので大きく誤ったらまた後ほど指摘をいただきたいと思いますけれども、一九八三年で十年以上の入院というのが三〇%以上、これが一九九六年になりましてもやはり三〇%以上なんです。五年以上でとれば約半数ぐらいはそれだけの長期入院ということになっているようです。  それから、入院の形態それから処遇の状況なんですけれども、これも非常に閉鎖処遇が多いんですね。長期にわたって一つのところに処遇をされている、しかも閉鎖状態というのがかなり中心になっている、こういうところに、制度を変えたり努力をしても根本的なところが解消しにくいという問題点があるというふうに思います。  そこで、この開放と閉鎖処遇というのがよくわからないんです。というのは、任意入院の場合でも非常に閉鎖処遇が多い。それから、閉鎖病棟といいながら開放処遇なんだと。外出などが許されて、これが開放処遇だと言われていたり、どこまでが本当に自由な開放的な処遇でありどういうことが閉鎖処遇なんだというのがどうもいま一つはっきりしていないんじゃないか。閉鎖処遇というものについて厳格に基準なりあるいは処遇のあり方というのを決めて、それででき得る限り限られた場合にそういう閉鎖処遇を行うという方向は私はやっぱりつくっていくべきだというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。  何をもって閉鎖処遇といい、その基準というのを今後さらに明確にされていくというところについてはどう考えておられるでしょうか。
  78. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 御指摘のように、閉鎖処遇につきましては統一的な基準がございません。その結果、必ずしも治療上の必要性がない場合も含めて閉鎖処遇が行われているというような実態があるものと認識をしております。  この一月の公衆衛生審議会からいただきました意見具申の中でも、閉鎖処遇の手続それから概念を明確にするために、精神保健福祉法第三十七条の第一項に処遇の基準があるわけでありますけれども、この処遇の基準として位置づけるということが提言をされました。しかしながら、この閉鎖処遇ということについての具体的な基準となりますと、一日何時間以上施錠されていれば閉鎖なのかといったような御意見だとか、あるいは施錠されていても自由に出入りできるんだから閉鎖じゃないんじゃないかとか、今御指摘のようなことも含めて、関係者の間で必ずしも意見が統一されているという状況にはございません。  しかし、委員指摘のように、この基準というものにつきましては、公衆衛生審議会の意見を聞きまして具体的な内容を決めたい、このように考えております。
  79. 千葉景子

    千葉景子君 これまでも、例えば一日何時間ということもあるんですけれども、開放処遇がなかなか進まない、それから施錠の中で一部、外出をさせながらそれを開放処遇的に位置づけている。開放処遇が進まない原因には施設面での不足とか病院側の体制整備のおくれとかこういうものが当然あるんだと思うんですけれども、そういうものはかなりネックになっているんですか。
  80. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 医療保護入院、自由入院がうまく病棟構成で分かれるのであれば、またそれは一つの対応は可能だと思うんです。例えば、五十床五十床の病院に七十五対二十五で入院されていらっしゃるような場合には、どうしてもそのあたりの管理上の問題として、病棟の構造上の対応として困難を訴えられている医療機関の方もいらっしゃいます。  したがって、今回、具体的に閉鎖はどういうことか、開放はどういうことかということにつきまして明確に基準を定めることによって、それを目指して各医療機関がその方向で御努力いただければということを期待しているところでございます。
  81. 千葉景子

    千葉景子君 これは財政的なことにもかかわる問題ですね。本当に十分な広さなりそういうものが確保できていれば、任意入院医療保護入院の方がいたりしても十分にそれを分けて、あるいはそれに適切に対応できるということになるわけですから、なかなかこれは一気にいかないというふうには思います。ぜひ閉鎖医療の基準をきちっと位置づけていただいて、できるだけ開放医療を目指して進めていただきたいというふうに思っております。  ところで、今回、これまでの問題を踏まえて幾つかの改正点がございますが、その中で精神医療審査会についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  今回、人数の制約、規制を廃止いたしましてこの審査会についてさらに拡充をしていくという方向がとられたことは、私も評価をさせていただくところでございます。しかしながら、この審査会の構成についてどのようにお考えになっているのか。今後、従来の構成のままいくのか、あるいは現状などを踏まえて構成についていろいろな検討をされようというのか、その点についてはいかがでしょうか。
  82. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神医療審査会委員の上限の撤廃ということで、一つの審査が五人という単位、これはこのまま維持するわけであります。その単位を幾つつくるかという意味においては、これは四つつくっても五つつくっても、そこは都道府県の実情にお任せをしようということであります。  その五人の構成につきましては、現在、医師が三名、法律にかかわる方が一名、それからその他の学識経験者、こういうふうな構成になっておりますけれども、審査会で審査される内容というのは主として医学的な判断、これに基づいてなされる部分が非常に多いということから、審査会の委員構成としては、どうしても精神保健指定医である医師というものの役割が大変重要なものになるというふうに考えております。  なお、委員のうちでその他の学識経験者という規定もあるわけでありますが、その場合には、社会福祉協議会の役員その他の公職経験者などであって精神障害の保健、福祉に関して理解のある者ということで規定されておりますので、都道府県知事の判断によっていろいろと御工夫いただけるのではないか、このように思っております。
  83. 千葉景子

    千葉景子君 審査会の委員の構成ですが、やはり医師がきちっとした判断をする中心になることは私もよくわかります。しかしながら、この精神保健福祉法の大きな精神としては、適切な医療と同時に、できるだけ社会復帰とか社会的なケア、こういうことも含めてサポートをしていく、そういう必要があるわけですね。  例えば、そこに法律の専門家が入っているというのは、適切な手続がとられているか、あるいは人権に問題がないかというチェックができようかというふうに思うんですが、社会復帰社会的なサポート、こういうことを考えると、医師が今三名ですから、そのうち一名を例えばPSWとかそういう専門職を入れるというようなことも一つ考え方ではないかというふうに思うんです。社会復帰したい、しかし家族もなかなか受け入れる余地がない。本当はもう退院できるんだけれども、またやむなく病院に帰らざるを得なくなってしまう、こういうようなこともこれまではたびたび存在をしておりました。  こういうことをできるだけ調整したり、社会の受け入れ体制などを全体に眺めて調整するというようなことを含めて考えると、審査会の直接の役割ではないというにしろ、そういうものにも目配りができるという意味でこういう専門職を入れるなども一つ考え方にもなろうかというふうに思うんですが、その点についてはいかがですか。今回そうせいとは言いませんが、そういう方向なども頭の中に置いてもよろしいんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  84. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 先ほども御説明申し上げましたように、入院を継続する必要性があるかないか、それから処遇の適否が、要するに処遇がいいのか悪いのか、そういう審査に係ります部分がメーンでございまして、それはまさに精神的な患者の症状に応じた判断というものが大変重要だという意味で、医師が三名という仕組みをつくって構成されているわけでございます。  社会復帰のために努力をいただく方々役割につきましては、御指摘のように非常に重要な役割をいただいていると思いますが、その場合には、先ほど申し上げましたように、その他の学識経験者の要件として社会福祉協議会の役員等精神障害者の保健、福祉に関して理解のある人、こういう人たちを充てるというふうにされておるところでございますので、これらを大いに活用いただければというふうに思います。
  85. 千葉景子

    千葉景子君 今回はこの審査会の事務局が精神保健福祉センターに置かれるということになりました。これまでの自治体の中に置かれているということに比較いたしますと、一定の自立性といいますか、独立性が担保できるのではないか。あるいは、こういうところで今、審査会の構成メンバーとしてPSWなどどうかというふうに申し上げましたけれども、この事務局体制という中で、そういう機能を補てんするということが多少可能なのかなという気はいたします。  この精神医療が、先ほどからいろいろお話があり、櫻井委員の冒頭にもありましたけれども、人権の尊重というようなことが本当に基本になければいけないわけですから、そういう意味では審査会もその医療の側面を見るのは当然のことであります。そういうもっと全体のきちっとした審査ができるような体制充実していくような、そういう方向性をぜひ今後念頭に置いていただきたいというふうに思っています。  そうなりますと、この審査会というのはやはり患者さんの人権あるいは医療の適正さを担保するという意味では非常に重要な責任を帯びた役割ということになってこようかというふうに思います。その点では、やはり改めてこの機関が十分な中立性、独立性を持って、いわば第三者的機関、準司法的な機関としての役割機能していただかなければいけないというふうに私は考えております。  ただ、現在の審査会、そして今回その権限がさらに重くなるわけですけれども、これで十分なんだろうかという気がいたします。国際的な規定に照らしてみると、いわば人権B規約でも、あるいは国連で採択された精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則、こういうことから見ても、今回の改正で本当にまだ十分とまではちょっと言いがたいのではないかというふうに思います。  本来は独立した第三者的な機関として、またその審査会の決定に対して不服申し立て、異議申し立てができるような、そういう機能を持った機関として、今後さらに検討を続けていっていただきたいというふうに思っております。その点についてどうお考えになっておられるか、お聞きをしておきたいと思います。
  86. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 御指摘のように、精神医療審査会の事務局を精神保健福祉センターに置くということで、従来本庁の一つの課の中で措置入院の事務をする方と、それからそれに対して審査会が不服等を受け付ける事務とが同居しているという点については、いささか見直しをする必要があるのではないかということで、精神保健福祉センターの方にその事務を移させていただいたわけであります。精神保健福祉センターにつきましては、本庁に比べてもやや独立性が高くて、かつ福祉に関する専門家がたくさんいらっしゃるということもあって、センターに事務局機能をお願いすることにした次第であります。  今後の審査会のあり方についての御意見でございましたけれども、審議会でも同様な意見があって、今後引き続いて検討していくというような御意見もございますので、そういった面も含めて今後対応していきたいというふうに思っております。
  87. 千葉景子

    千葉景子君 実はこういうことを申し上げるのは、この審査会はこれまで人数も制限をされておりましたのでなかなか全体に機能しにくいというところはあったかというふうに思うんですけれども、この審査状況が極めて少ないんです。平成九年度で見ますと全国ベースで退院請求の審査件数が九百六十八件、それから処遇改善請求の審査件数は五十件なんです。しかも、全国的に非常にばらつきもありまして、これはどういう原因なのかというのもちょっとお聞きしたいんですけれども、年間審査件数が全くゼロというところもあるんですね。  先ほどからも出ていますように、全国で三十万人以上、三十四万人ほどの方が入院されているという状況の中で審査件数、本当にこんなものなのか。もしこれが本当であれば、不祥事なんかが出るはずがないし、適切な医療が行われていてもう私たちが心配することはないということになるんだろうけれども、どうもその審査会の機能が十分に発揮されていないのではないか。  これは、今回その人数をふやすということがありますけれども、これまでの原因とか、あるいは何が問題だったのか、どう考えておられますか。
  88. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神医療審査会の活動状況について、特に退院請求等について請求件数が少ない、あるいはばらつきが大きい、こういう御指摘でございますが、その件数だけで活動状況をはかるということが適切かどうかということは別といたしましても、やはり自治体間で格差は大きいというふうに思われます。  そういう意味からいたしましても、今回、委員数の制限の撤廃等で審査会の機能を強化するということから、それを受け入れやすくする審査会のありようというものも変えることにいたしますし、それからそもそも精神病院入院する場合に現在障害者に対して退院とか処遇改善の請求ができるんだということを書面で知らせることが法律義務づけられております。  また、退院請求等を受け付ける都道府県の部局への通信、面会の制限は行ってはならない、それから電話機は自由に使えるところに置く、あるいは都道府県精神保健主管部局でありますとか法務局の人権擁護主管部局等の電話番号を見やすいところに掲げるとか、こういったことで入院患者さんに極力情報をお伝えするようにしておるわけでありますけれども、それが必ずしも十分に理解されているかどうかという点におきまして、今後、医療機関はもとより、患者それから家族の皆さんにこの制度の趣旨というものがもっと周知されるということで、この審査会の制度が有効に活用されるように努めていきたい、このように思っております。
  89. 千葉景子

    千葉景子君 その点についても確かにもっと周知をすることは必要なんですが、その審査会自体に、問題を積極的に受けとめる、そしてできる限り患者の立場に立って人権をきちっと適切に守り、そして本当に病気に対して医療を適切に施そう、そういう積極的な意思、それからあるいは先ほど言いましたような構成、そういうものも含めてもっと厚生省指導監督に努めていただきたい、そういう環境整備に努めていただきたいというふうに思います。  今、先におっしゃいましたけれども、さらにそれにプラスして周知徹底ということも当然必要だというふうに思います。精神疾患で入院されたりする際に、書面で云々といっても、あるいは、確かに電話も設置をするというようなことになりました。ただ、電話といってもその施設の中にあって、周りには人もいるというようなことにもなりかねない。そういうような状況を考えますと、なかなか自分で申し立てるという格好にはなりにくいですよね。そういう意味では、できるだけ簡易にそしてどこにでもすぐに伝えられるというようなことを大いに周知していただきたい。  例えば、精神医療人権センターとか障害者一一〇番というようなことで、一般市民の中でもいろいろな受け皿というものもございます。そういうことも含めて情報をきちっと伝える、そして電話などもできるだけ個人で余りだれにも左右されずにかけられるというような環境整備もするとか、そういうことを含めて総合的に対応していく必要が当然あろうかというふうに思いますが、改めまして周知徹底を含めてその点についていかがでしょうか。
  90. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 現実場面として御指摘のようなことがあるということも踏まえて、この制度の周知徹底には改めて努力していきたいと考えております。
  91. 千葉景子

    千葉景子君 時間がなくなってまいりましたので、最後に医療保護入院についてお尋ねをしておきたいというふうに思います。  医療保護入院というのは本人の意思によらない強制入院でございますので、その運用はより厳密に行われる必要があろうかというふうに思います。その意味では、昨年九月の精神保健福祉法に関する専門委員会報告書では、判定基準を作成することについて検討すべきと、こういうことが指摘をされております。  そういう意味では、この医療保護入院要件については、指定医による診察の結果、精神障害者であること、それに入院治療がないとさらに病状が悪くなるというような要件などをプラスするなど、より明確、厳格な対応というものが必要になってくるのではないかというふうに思います。  こういう問題点も含め、今回の改正でも一歩前進ということは当然評価をさせていただきますが、先ほどの審査会の問題、閉鎖処遇のあり方、それから医療保護入院要件のさらなる明確化、そして人権保障に対する基本的な法の理念、こういうことも含めて今後まだまだ積み残した問題、あるいは将来に向けてさらに深めていかなければいけない問題点が多々あろうというふうに思いますが、今の医療保護入院要件の問題なども含めて、大臣どうでしょうか。  先ほど、今この法律を審議しているんだから、なかなかその先はというお話ではございましたけれども、これが終着点ではなくて、これを踏まえてさらにその先もあるんだよというお考えに立っておられるのか、その将来について大臣の御見解をお伺いして終わりたいと思います。
  92. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 精神保健福祉対策につきまして、審査会のあり方等貴重な御意見をちょうだいいたしました。  私ども、これですべて完結しておるというようにも思っておりません。しかし、今回提出したのは現在の情勢下において最善の選択をしたものでございますが、なお引き続き今後適正な精神医療を確保していくとか、あるいは社会復帰を一層進めていくとか、精神障害者の福祉の増進対策を拡充していくことはもうもとより重要なことでございますから、今後といえどもそういう方向性で検討はさせていただきます。  とりあえず今回の改革案は、こういうことで一歩前進ということで評価もいただいておるようでございますので、何とぞ御了承いただきたいと思います。なお、引き続き私どもとしても努力させていただきます。
  93. 千葉景子

    千葉景子君 終わります。ありがとうございました。
  94. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ─────・─────    午後一時六分開会
  95. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  96. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。  精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。  まず最初に、精神障害者の動向についてお伺いしたいと思います。  我が国の精神病院等に入院、通院する精神障害者は、平成五年患者調査によると推計で百五十七万人でありましたけれども、平成八年調査では二百十七万人となっております。三年間で六十万人増となっておりますけれども、どうもこれは自然増とは考えにくいのでありますけれども、この急増の原因は何なのか、厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  97. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 御指摘のように、平成五年から八年にかけまして六十万人が患者調査によって増加した、このようなデータがございます。  この増加内容でございますけれども、この多くは外来患者増加したものであるということであります。しかも、その主な疾患といたしまして、中高年のうつ病患者、それから青壮年のアルコール性精神障害、高齢者の神経症などが増加しておるという傾向がございます。  それに加えまして、精神科の診療所が平成五年は二千六百四十四でございましたけれども、平成八年には三千百九十八と大変増加をしておりまして、精神科の外来にかかりやすくなったということも一つの要因ではないかと考えております。
  98. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 景気低迷による生活不安あるいは社会的ストレスの増大は精神疾患患者増加と関連しているというふうに分析されているのかどうか、その点に関してお伺いしたいと思います。
  99. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 先ほど申し上げました中高年のうつ病でありますとかあるいは高齢者の神経症といった点につきましては、高齢化が進んでいるという意味精神障害患者そのものもある程度ふえているのではないかというふうに考えられます。
  100. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 景気低迷との関係をちょっとお聞きしたんでしたけれども、その点に関しましてはどうでしょうか。
  101. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 景気がどのような形でストレスにつながるかということにつきましては、ケース、ケースによって違おうかと思いますけれども、ただストレスが加わるとどういう疾患がふえるかというと、うつ病それからアルコール性の精神障害、神経症、こういったものにかかりやすいというふうに言われております。  先ほど申し上げましたように、患者調査でもそのような傾向があるということは、やはりストレスと関連のある疾患が増加している、つまり社会のストレスの増加による影響が出ているとも言えるのではないかと思います。
  102. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今お答えになったように、社会情勢変化の激しさや複雑さが精神的なストレスの要因を増大させている、そのような認識から昭和六十年度より心の健康づくり推進事業精神保健福祉センターで行われております。  この中で、職場不適応の調査もしていると思うんですけれども、最近の動向とそれに対する政府の対策についてお伺いしたいと思います。
  103. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 今御指摘の職場におきます出社拒否、また学校等におきます不登校など、いわゆる不適応といいますか、これが大きな問題になっているというふうに認識しております。しかしながら、実態把握が必ずしも十分ではないというふうにも考えておりまして、これらの実態を把握するとともに、私どもとしましては心の健康づくりを進めていく必要があると考えております。  健康・体力づくり事業財団の調査によりますと、平成八年に調査したものでございますが、二十歳以上の人の半数以上、五四・六%が一カ月間に不満、悩み、苦労等のストレスを感じているということでございます。  したがいまして、心の健康づくり対策といたしまして、従来から都道府県精神保健福祉センターや保健所などにおきまして、一般住民に対する啓発普及やストレスや悩みを抱える住民への各種相談を行っているところでございます。  さらに、厚生省といたしましては、平成十年度からストレスや睡眠障害に対しまして保健医療従事者が必要な相談、指導、訪問などを行うことができるように現在このマニュアルの作成をやっているところでございます。  今後とも、心の健康づくり対策の一層の充実強化に努めてまいりたいと考えております。
  104. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 やはり精神疾患の場合の病因に関しましては、個人的な要因ばかりでなく社会的要因も関係するものであり、社会全体として総合的に精神疾患の発生予防、治療あるいは社会復帰を考えていかなければならない、そのように考えるわけでございます。  続きまして、法案に即して質問させていただきたいと思います。  今回の法改正を行う理由としまして「精神障害者人権に配意しつつその適正な医療及び保護を確保し、及び精神障害者社会復帰の一層の推進を図る」ことが挙げられております。本法の目的を定めた第一条では「精神障害者等の医療及び保護を行い、」とありますけれども、この医療については単に「医療」とのみ表現されております。今回の改正の趣旨では人権配慮した適正な医療の確保を目指していると思います。  この改正案で「医療」を、人権配慮した適正な医療もしくはそれと同様の趣旨の表現に改めなかった理由について厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  105. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 午前中の御議論でもその点に触れられたわけでございますけれども、私どもとしては精神障害者方々人権配慮するというのは極めて重要なことであると考えておりまして、今回もそのような措置が審査会の拡充強化とか、いろいろの面にあらわれております。  現行の法律の一条、二条、三条の御説明も先ほど申し上げたわけでありますが、これらはすべて精神障害者中心にその医療と保護あるいは社会復帰というようなことで国及び国民の責務等も記述されておりまして、私どもは十分精神障害者人権配慮するということが読み取れる内容になっていると存じますので、あえてここで明文化する必要もなかろうという判断のもとに現行法どおりにさせていただいたわけであります。
  106. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 また、今回の改正案では精神障害者の定義を定めた本法第五条の一部が改正されることになっております。すなわち「中毒性精神病」が「精神作用物質による急性中毒又はその依存症」に改正されることになっているわけであります。  この点に関しましては、現代の医療用語から見てもより適切な表現になっておりますので異存のないところであります。既に、以前から用いられておりました「精神薄弱」の用語も昨年九月の第百四十二回国会で「知的障害」に改められました。  しかし、まだ本条の「精神病質」という用語は今回の改正でもそのままとなっており、問題であると思います。この精神病質という病名は厚生省精神障害者医療統計でもそのままの表現では用いられていないようですが、どのような疾患を意味しているのか、またなぜ今回の改正で削除あるいはより適切な疾患名に見直されなかったのか、その点に関しましてお伺いしたいと思います。
  107. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 今回の定義規定におきましては、「精神作用物質による急性中毒又はその依存症」ということで明記を行ったわけであります。これは、現在現場で運用上の疑義が生じております現行法第四十四条、覚せい剤の依存者に関する準用規定を削除することにしたわけでありますが、それを削除するということで逆に覚せい剤などの依存症の者が法の対象から外れるのではないか、このような誤解を招かないためにこの覚せい剤を含む精神作用物質の依存症を例示として明確化した、こういう趣旨でございます。  御指摘精神病質でありますけれども、現在国際疾病分類で用いられております言葉にはこの言葉はございません。ただ、非社会的人格障害ということで、国際分類上これに含まれるのではないか、このように言われております。これが代表的な精神疾患とは言えないということから、この定義規定の例示として不適切であるというような御意見もございました。  また一方で、精神病質についてそもそも精神科医療の対象足り得ないのではないか、こういうことから精神障害者の定義から除外するべきだ、こういう意見もございました。しかしながら、これらにつきまして見解がまとまらなかったわけでございまして、現段階でこれらの例示を変更するということはいたしませんで、審議会としても引き続き検討していくということにされたところでございます。
  108. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 シュナイダーという人の定義では、精神病質とは人格の異常性のために自分自身が悩み、あるいは社会が悩むものを指しているというふうに言われておりますけれども、社会が悩むという基準は医学的概念ではなくて社会的概念である、その社会の価値観によって異なる場合もあることから、精神病質という言葉を精神医学用語として用いることには批判もあるということであります。  特に、英語圏では精神病質といった言葉の場合には犯罪など社会病理的な現象と関連して用いられることが多いと言われておりますので、国際的に標準化された現代の疾患分類によるより適切な言葉、用語に変わることが望ましいのではないか、あるいはまた例示として取り上げることをやめるということも一つの方法ではないかなというふうに考えますので、今後早急な対応をしていただきたい、そのように思います。  次に、精神保健指定医に関して質問させていただきたいと思います。  人権配慮した適正な医療提供するに当たりまして、指定医の果たすべき役割は非常に重要であると思います。その役割を担うにふさわしくない場合には精神保健指定医の指定が取り消されるわけでありますが、これまで精神保健指定医の取り消しというものが行われたのかどうか、それからまたその取り消しの要件はどのようなものか、それについてお答えいただきたいと思います。
  109. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神保健指定医の取り消しにつきましては、法第十九条の二に基づいて行われるわけでありますが、その取り消しの要件につきましては、まず指定医が医師免許を取り消される、または期間を定めて医業の停止を命ぜられたとき、このときにあわせて指定医の取り消しが行われます。それから精神保健福祉法もしくは同法に基づく命令に違反したとき、それから三点目といたしまして職務に関し著しく不当な行為を行ったとき、四つ目にその他指定医として不適当と認められたとき、このようになっているわけでございます。  これまで十八名の精神保健指定医が取り消されておりますけれども、このうち医師免許の取り消しにあわせて指定が取り消されたケースを除きますと、つまり精神保健福祉法上の問題によって取り消された者は三名ということになっております。
  110. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 三名というわずかな人数であるということでありますけれども、指定医の取り消し処分と今回新たに設けた職務の一時停止処分との処分実施の要件の違いはどういうものなのか、お伺いしたいと思います。厚生大臣にお答えいただければと思います。
  111. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 指定医の取り消し処分と今回新たに設けました停止処分の要件の違いということであろうかと存じますが、私どもとしては、精神保健指定医の重要性にかんがみまして、取り消し処分というのは厳正でなくちゃならないということでございますが、実際上は取り消し処分をいたしますと五年以上の取り消し処分になるということ等もございまして、それに至らない、軽微なと言っては言い過ぎかもしれませんが、指定医義務違反その他精神障害者に害を及ぼすような行為をやった場合は、その及ぼす影響の度合いに応じて処分も考えていいのではないかなというのが率直なところでございまして、一々指定医の五年をそれでは一カ月までするかどうかというようなやり方もあるいはあるかもしれませんが、これはこれとしてやっぱり職務の停止処分ということで取り消し処分と範疇を異にしたペナルティーの課し方をやった方が、より弾力的で現実的ではないかというように考えてこのような対応にさせていただいたものでございます。
  112. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 そのほかに、精神科診療が不適切な病院に対する改善命令があると思うんですけれども、これまでの改善命令が行われた状況と、その改善命令に従わなかった病院というのはあるのかどうか、その点に関しましてお伺いしたいと思います。
  113. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 改善命令につきましては、精神保健福祉法第三十八条の七に基づきまして、精神病院入院中の者の処遇、それからその処遇基準が適合していない場合、こういった場合に厚生大臣または都道府県知事がその改善について命ずることとされているわけでございます。  これまで六件の改善命令がなされております。この六件のうちで大和川病院につきましては、改善命令にもかかわらず指定医の確保がなされなかったことから大阪府が医療保護入院患者退院させることとしたところであります。その後、大和川病院につきましては開設許可が取り消されましたので廃院ということになりました。  その他の病院につきましては、任意に改善計画を策定されまして都道府県知事等からの指導等を受け、適正な改善がなされているものと認識しております。
  114. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 これは大臣にお伺いしたいんですけれども、今回の法改正によりましてこのような不適切な病院に対しましての改善命令が無視されるというようなことがないことになるのかどうか、その点に関しましてお伺いしたいと思います。
  115. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 現在の精神保健福祉法におきます指導監督制度としては改善命令がございますけれども、従わない場合の罰則規定等もございません。したがって、各方面から実効性についての疑問も提示されておったところであります。  今回の改正では、改善計画の提出命令というものを明定いたしまして、きめ細かい指導監督を行うようにしたということ、それから改善命令に従わない病院管理者等に対しましては、入院医療提供の制限命令を創設し、さらに制限命令に違反した場合には三年以下の懲役または百万円以下の罰金ということで実刑を改めて創設いたしまして、その実効性を確保するようにいたしております。
  116. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 少し厳しい法律ができるということでありまして、今もときどきいろんなそういう不適切な病院指摘されているところでありますので、きちんと適切な医療提供できるようにしていただきたい、そのように思うわけであります。  次の質問に入らせていただきます。  これまで地域での精神保健体制の不備によりまして、あるいは在宅医療が十分でない、そのような理由におきまして医療保護入院が行われる、あるいは保護者の個人的な都合と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、個人的な理由でいわゆる社会入院の一種として医療保護入院が行われるというようなことがあったのかどうか、その点に関しましてお伺いしたいと思います。
  117. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 最近の病院の不祥事件におきまして申し上げますと、同意能力のある患者さんが医療保護入院になっているというような問題事例がございました。そういうこともございまして、今回の法改正におきましてその要件を明確にし、精神保健指定医の診察の結果、法第二十二条の三、任意入院でありますけれども、この規定による入院が行われるべき状態にないとされた者といたしまして、任意入院と明確に区別することといたしたところであります。
  118. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 これは大臣にお伺いしたいんですけれども、医療保護入院は本人の同意に基づかない強制入院の一種でありまして、その運用はやはり限定的になされるべきである、そのように思います。  精神障害者人権配慮した適正な医療提供するためには、医療保護入院の客観的な指標としての指定基準、そういうものをやはり作成する必要があるのではないか、そのように私は思うんですけれども、厚生大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  119. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 保護入院もやはり強制措置の一種でございますので、私どもとしては、本人の同意がなくても保護者の同意ないしは指定医の診断ということによって強制的に保護入院をしていただくということにいたしておりますが、一方、人権にも配慮していかなければなりませんので、そういった点は慎重な取り扱いが必要だと存じます。  したがって、明確な基準は今はないようでございますけれども、一定のこういう場合はどうだというようなことがあってもいいのではないかと思いますので、運用上の問題として今後検討させていただきたいと思います。
  120. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 指定医の方はある程度きちんと研修を受けて指定医になっておられるので、主観的な判断だけでは保護入院を行わないと思うんですけれども、やはり客観的な指標としての判定基準があった方がよろしいのではないか、そのように思いますので検討を進めていただきたいと思います。  入院の形態にはいろいろあるわけでありますけれども、入院当時、医療保護入院入院された患者さんが、その後で同意が得られた任意入院に変わられるというようなこともあると思うんですけれども、そのような実態というのはどのようになっているのかお伺いしたいと思います。
  121. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 医療保護入院から引き続いて任意入院に変更になったケースの総数については把握をしておりませんけれども、現時点で把握しております三十三都道府県、五指定都市に関して申し上げますと、平成九年度に退院もしくは入院形態の変更を行って退院届を出された患者のうちで医療保護入院退院届があったのが四万一千六百三十九件でございました。そのうち任意入院に変更されておりますのが九千四百九十五件で、大体二割程度というふうになっております。
  122. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 患者本人の同意に基づかない医療保護入院の比率が今後とも少なくなって患者本人の同意に基づく任意入院が主流になるように、精神医療の面での治療の向上ないし国民の理解を進めるような形で政府の方もいろんな情報提供をしたり、精神医療、福祉の環境整備に努力していただきたい、そのように思います。  次の質問に移らせていただきたいと思います。  救急搬送システムでありますけれども、措置入院医療保護入院、あるいは応急入院等で本人の同意に基づかない強制入院でありますけれども、その場合の病院への搬送手段としましては、やはり患者さんの状態によりまして、保護者がそのまま病院入院させる場合もありますでしょうし、保健所の方が絡む場合もありますでしょうし、救急車とかあるいは警察の力をかりて入院という場合も今まではあったのではないかと思います。この厚生省の調査の結果によりますと、やはり各県あるいは各自治体でもさまざまな搬送手段で行われているということであります。しかし、そういう中で、しばしば患者さんあるいは家族指定医あるいは搬送者との間でやはりさまざまな問題が起こっている、そのように聞いてもおります。  今回の法改正では、緊急に入院が必要となる場合、精神障害のため本人の同意に基づいた入院を行う状態にないと精神保健指定医が判定した精神障害者都道府県知事が応急指定病院に移送する制度を創設することにしたわけでありますけれども、この搬送手段としましては、やはり一般の救急患者と同じように原則として救急車を利用できないかなというふうに思っているわけでありますけれども、その点に関しまして大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  123. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 公衆衛生審議会の意見具申におきましても、今、委員の御指摘のような精神科の救急医療につきまして、医療計画に規定する救急医療の中で精神科の救急医療体制の確保が必要ではないかという御指摘もございます。  一方、今、精神科だけの救急指定ということはいたしておりませんが、現実には、精神科の救急医療につきましても医療計画の一般の救急医療体制の中へ組み込んでいきたい、そして一般の救急医療体制における精神治療への適応能力を充実していきたいというような方向で今考えております。  今後、総合病院精神科の救急医療への参加の促進とか、あるいは夜間や休日を含めての緊急な精神科対応が可能な医療機関の確保を推進する等、そういうことは非常に重要なことでございますから、そういった視点から精神障害者への緊急の医療体制の確保は推進してまいりたいというように思っております。
  124. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 何か消防法では患者さんの求めがないと救急車を使えないというようなお話も聞いております。実際に救急搬送する場合にその患者さんの同意ということが得られなくて救急車を使えないというような事態が今までもあったわけでありますので、その点もこれから関係省庁と協議をされて、なるべく一般の疾患の患者さんと同じように救急車が使われて病院に行けるというような形にしていただきたいなというふうに思うわけであります。よろしく御努力をお願いしたいと思います。  次に、保護者のことにつきまして質問させていただきたいと思います。  今回の法改正案では保護者の自傷他害監督義務の廃止を打ち出しておりますが、これは、今日の保護者の負担過重の現状より考えまして妥当ではないかなというふうに思っております。  保護者の自傷他害監督義務が廃止された後はこの自傷他害監督義務の第一次的な責任の所在というのはどこになるのか、この点に関しまして厚生大臣よりお答えをいただきたいと思います。
  125. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 保護者の自傷他害監督義務を今回外しましたけれども、病院に行って受診をさせる義務は存置しておりますので、その範囲内で十分可能ではないかということで、保護者の義務の中からこの自傷他害監督義務だけは外させていただきました。  この背景はいろいろございますけれども、保護者の重圧とかいろいろな点も指摘されておりまして、いろいろ具体的なケースでなかなか容易でない事態もお聞きしておりますけれども、とにかく病院に届ける義務が保護者にありますので、そうしたことで十分対応が可能ではないかということで自傷他害監督義務については今回外させていただきましたが、その他は全部保護者の形で存置させていただいております。
  126. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 保護者からは自傷他害監督義務が外れたということでありますので、そうなりますと、地域とか医療機関とかがやはり患者さんに対して適切な治療を行うことができるのかどうか。例えば、在宅の患者さんになった場合にきちんと病院に来ていただけるのかとか、そういう点でも心配があるわけですが、家族が受療させる義務は残していらっしゃるということでありますのでその点は安心するわけでありますけれども、やはりいろいろな原因で自傷他害というのは完璧にゼロにするというのがなかなか難しいことでもあるので、そこは十分、地域社会あるいは行政の責任としてそういう自傷他害のことが起こらないようにしっかり環境づくりをしていく必要があるのではないかというふうに思います。  それから、この保護者の責任に関してもう一点。  現代は、少子化あるいは核家族化、あるいは人によっては家族でなくて個々ばらばらの個族だというふうに表現されるように個人を中心とした家族形態に変化しているわけでありますけれども、そのことを考えますと、今後、引き取り義務を保護者に求めることが難しい場合も多くなってくるのではないかというように心配するわけであります。  家族の引き取り義務を努力義務というような形にすることができないのかどうか。その分、社会全体として受け入れ体制を早急に整える必要があるということになるわけですが、この保護者の引き取り義務を努力義務にするという考えが厚生省の方にあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  127. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 精神保健福祉法の四十一条に規定しております保護者の引き取り義務というのは、措置入院を解除した場合等におきましても医療と保護が中断されることのないようにしたいという趣旨であろうかと存じます。具体的には、現実に精神障害者を引き取ることのほかに、医療保護入院等への移行を考え対応するというようなこととか、社会復帰施設へ入所させることも含んでおると存じます。  引き取り義務の対象となっている措置入院解除者につきましては引き続き医療等を必要とする場合が多いようでございますので、このような場合におきましては保護者による支援を確実に担保する必要がございます。そして、引き取り義務について、現行の規定を維持し、法律上も引き続き具体的な義務を課す必要がございますので、この引き取り義務規定はそのままこれを有効なものとして運用していきたい、こう思っております。
  128. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 引き取り義務も、家族も高齢になってきて引き取っても義務を果たすことができないとか、今後、高齢社会に伴いましていろいろな事情で引き取り義務を果たせないような方も出てくるのではないかと心配しているわけであります。そういう面では、社会的にそういう方のかわりをするシステムをつくることが大切なのかなと思いますので、この点も十分考慮しながら、今後の精神障害者の在宅医療に関しましてきちんと医療が受けられるような体制を組んでいただきたい、そのように考えるわけであります。  次に、触法精神障害者に対する今後の対応についてお伺いしたいと思います。  アメリカとかイギリスあるいはカナダなどの諸外国では、精神障害者長期入院を解消するため、入院ケアから地域ケアへと精神障害者施策を転換し、居住施設等の整備を行ってまいりました。それと並行して、触法精神障害者に対しては司法精神医療システムも整備しているというふうに聞いております。  今回の法改正の趣旨である精神障害者人権配慮した適正な精神医療の確保、あるいは精神障害者社会復帰の一層の推進、そのような考え方を踏まえまして、厚生省としては今後触法精神障害者に対する適正な医療提供社会復帰に関しましてどのような方針で改善を図っていくのか、お伺いしたいと思います。
  129. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 精神保健福祉法は、もう言うまでもなく犯罪予防ということを目的とする法律ではございませんけれども、自傷他害のおそれのある患者に対しましては措置入院制度等において適切な医療の確保を図ると、強制力を持たせてもおります。  しかし、いわゆる犯罪を繰り返す精神障害者に対する犯罪予防の観点からの対応につきましては、従来から、これは保安処分問題として、刑法体系にかかわる重要な問題として議論がなされてまいりました。現に、昭和四十九年、改正刑法草案が出されて保安処分を位置づけしておりますし、また五十年代にも同様な検討がなされておりますが、いずれにいたしましても人権上の問題その他意見が非常に多うございまして、これは実現を見るに至っておりません。  こうした精神障害者につきましては、他の精神障害者と異なる処遇が必要であるという御意見もあることは承知いたしておりますが、しかし一方、刑法体系との関係も含めて、今後幅広い観点からの議論が必要であると考えておりますので、なお引き続きこうした問題を大所高所から判断して検討を続けていきたいと思っております。
  130. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今の問題は、保安という問題からではなくて、そういう触法、たまたま法を犯してしまったというふうな障害者に対しまして、その病状に応じて適切な医療提供できるようなシステムがやはり日本にまだ欠けているのではないかというような指摘もいろいろあるわけであります。外国の例、よい悪い、いろいろ評価はあると思うんですけれども、それもタブー視をしないできちんと検討していって、より日本に合ったスタイルでそういう触法精神障害者の方に対してもきちんとした医療提供できるようにしていただきたい、そういう旨での私の質問でありました。  ここは今までのいろんな歴史上の観点からさまざまな難しい問題もはらんでいることを私も知っておりますけれども、やはりタブー視をしないできちんと検討をしていただきたい、そのように考えるわけであります。  もう少し時間があるんですが、次の質問のときにも引き続きやりたいと思うんですが、今回、いろいろ入院形態によって在宅精神医療を行う場合にさまざまな障害があるということでございます。各県、地方によってその受け入れ体制が異なると。  例えば、精神障害者社会復帰施設等の受け入れ可能率というのが資料で出ておりますけれども、この中では、受け入れ可能率が六%以上の県が六県あるのに対しまして、二%未満の県もまだ九県も残っているということで、県によって格差があるということであります。この格差是正をどのようにしていく方針なのか、厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  131. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 御指摘入院形態、措置入院あるいは医療保護入院、任意入院におきましても各県によってばらつきがございますし、また平均在院日数あるいは社会復帰施設の受け入れ率についても、今御指摘のように差がございます。  これらの格差でございますけれども、これは一つには、病院あるいは社会復帰施設などの医療福祉資源そのものの整備状況にばらつきがあるということ、これが大きく影響しているのではないかと思いますが、それに加えまして、その地域のそれまでの経緯みたいなものにも多少関係しているのではないかと思います。  現在、医療資源や社会復帰施設、こういった福祉資源の効率的な活用ということ、それから施設の相互の連携といったことを進めるために、医療計画でありますとかあるいは障害者プランに基づきます障害保健福祉計画というものを作成することになっておりますけれども、特に都道府県域で作成するというのではなくて、二次医療圏などのより身近な圏域でこれを策定するというようなこと。さらに、これらの計画策定を促進するということをあわせて、極力地域間の格差が縮まるような努力をしていきたいと考えております。
  132. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 以上で質問を終わります。
  133. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  私は、精神保健福祉法質疑の前に、一昨日の介護保険の審議に関連して幾つかお聞きをしたいと思います。  第一に、モデル事業に基づく概算で、今の利用者のうち約四万人がホームヘルプサービスの対象外、そういう答弁がありました。これはとんでもない話だと思うんです。  既に特養で一万四千人、これが自立及び要支援だと在宅が四万人、合わせて五万人以上の権利が奪われるということになります。大量の介護難民、これは絶対に放置できない問題ではないか。基盤整備がおくれているから入り口の認定で排除していく、こういう事態が起こっているのではないだろうか。  おとといも議論があったように、国の負担が全体の二分の一から四分の一に減ることによって三千七百億円。全体の介護保険の財政規模はもっと膨らむだろうということでいえば、もしかしたら五千億円ぐらい国の負担が減るかもしれない。これを基盤整備に振り向けて、少なくとも今受けている人が介護サービスから排除される、こういう事態は断じてなくすべきだと思いますが、いかがですか。
  134. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回の四万人という数字でございますが、必ずしも四万人であるか正確にははっきりいたしません。おおよそということで、約四十万世帯の一〇・一%ぐらいが自立だというと約四万人ということになりますが、在宅介護でヘルパー等を今まで派遣していたものが打ち切られるのではないかということでございます。  介護保険のシステムからいいますと、当然それは保険対象ではないのでありますけれども、しかし一方、こうした介護保険制度の対象とならない方へのサービスに関する地方自治体の取り組み、なお国の助成措置等は引き続き検討してまいることを申し上げておりますので、今後の検討課題としてやっていきたいと思っております。
  135. 小池晃

    ○小池晃君 おとといも議論がありました在宅高齢者保健福祉推進支援事業、これは百億円という規模では到底足りない、これ自体強化する必要があることははっきりしていると思います。これはもう介護保険サービスとは明らかに異なるわけですから、肩がわりでやろうなんという議論は通用しない、やはりあくまで現在サービスを受けている人は介護保険サービスで見るべきだ、そのことを強く主張しておきたいと思います。  それからもう一点、大臣答弁ですが、老人福祉法の第四条「国及び地方公共団体は、老人の福祉を増進する責務を有する。」、これについては介護保険施行後もこの条文が生きている以上、国あるいは地方公共団体の責務が残されていることは間違いない、そういう答弁がございました。  この意味なんですが、要介護認定介護保険制度の対象外とされた方も含めて、すべての高齢者に対して必要な介護サービス提供していく、このことは介護保険施行後も引き続き地方自治体の責務であるし、同時にそれを国庫補助も含めて国が支援することも国の責務である、そういうことですね。老人福祉法の第四条の趣旨というのはこういう意味だということでとらえてよろしいですね。
  136. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 現在の老人福祉法第四条におきまして「国及び地方公共団体は、老人の福祉を増進する責務を有する。」というように規定されておりますが、これは老人全般について福祉を増進する責務が国及び地方公共団体にあることを一般的、総括的に宣言したものであると存じます。  そこで、介護保険制度のもとにおいて制度の対象とならない独居老人等を対象とした配食などのサービスや寝たきり予防の施策等についてその推進を図ることは必要であると考えておりますので、こうした政策的判断に基づきまして、介護保険制度の対象とならないサービスに関する自治体の地域の実情に応じた取り組み等に対しては必要な支援も講じてまいる所存でございます。  それから、ただいまお話のございました百億円の在宅高齢者保健福祉推進支援事業でございますが、これは今仰せられたとおり、介護保険は来年の四月から本格的にスタートするわけでございますので、ことしとまた明年の四月以降はおのずから範囲を異にしたりいろいろいたしますので、十分そういった点は踏まえながら検討させていただきます。
  137. 小池晃

    ○小池晃君 老人福祉法による国と地方自治体の責務というのは、これは介護保険施行後も現行どおり残るということをやはり周知徹底すべきであるし、そのための財政措置をきちっととるべきだというふうに思います。  それから、先ほどからの御議論の中であるんですが、在宅高齢者保健福祉推進支援事業というのが介護保険サービスにかわるものではないということを改めて申し上げたい。これは今もおっしゃられたように、移送であるとか給食サービスであるとかホームヘルプとか訪問看護であるとか、そういった事業は含まれていないわけですから、これで介護保険サービスから外れる人の分を補うことはできないということを改めて申し上げたいというふうに思います。  その上で、これは老人保健福祉局長がおっしゃったことなんですけれども、調整交付金の問題、これは後期高齢者の比重、低所得階層の比重で分配するので療養型病床群の入所者の数などに応じた調整機能は持っていないというふうに答弁されました。しかし、その調整交付金のうち特別調整交付金というのがあって、これは療養型病床群が多い地域あるいは保険料の減免を行った場合の調整に充てる、そういう検討がされているというふうに聞いております。  昨年の十月に全国町村会からも要求が出ていまして、調整交付金は二五%の国庫負担の枠から外して別枠でふやせという要請書も来ております。この調整交付金、特に特別調整交付金を活用して、おとといも議論のあった療養型病床群が過剰な地域、多い地域、あるいはその保険料の減免制度を行った場合の支援、これにぜひ充てるべきだ、そういう検討をすべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  138. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 調整交付金の関係でございますけれども、この調整交付金は第一義的にと申しますか優先的に、一番目は後期高齢者、七十五歳以上の方が非常に多い地域との調整をする、それから二番目といたしましては、五段階に分かれます所得段階別の被保険者の構成割合の相違を調整するというこの二つが大きな目的だと思っているわけでございます。  さらに、先生は特別調整交付金という言葉を使われましたけれども、法律上の概念といたしましては調整交付金でございます。使い方によっては、今申し上げました高齢者の関係調整、所得段階別の調整、それ以外のものを特別というふうに称する場合もあるわけでございます。  そういう中で、災害等によりまして保険料の減免を行った場合などの特殊事情、こういったものにつきましてはなるべく調整の対象にしたいという方向で検討をいたしているわけでございます。療養型病床群等の整備状況に基づきます介護サービスの給付水準の調整、これは非常に難しい面もあるわけでございます。これによって非常に大きな影響を与える、こういう場合につきまして調整できるかどうか、全体の枠との関係もございますので、そういう方向で全体の需要がどの程度あるのかという面もございますので、調整枠との関係も考慮いたしましてこれからさらに詰めてまいりたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  139. 小池晃

    ○小池晃君 何か私が特別調整交付金と勝手に言っているような言い方をされましたけれども、これは十月二十九日の全国課長会議ではっきり示されていますからね。その使途としても、検討中だということですが、療養型病床群の過剰整備等というふうにちゃんと案としては出ておりますので、ぜひ前向きに検討していただきたいというふうに思います。  次に、精神科医療の問題について取り上げたいのですが、国立病院精神科看護の問題についてここではお聞きしたいというふうに思います。  昨年五月、国立療養所の犀潟病院の事件がございました。これは指定医の診察と指示がないのに患者を拘束して患者さんが吐物で窒息死されたという、あってはならない事件であります。もちろん最低限の法的手続を守らずに患者人権をなおざりにした、こういう病院側にも大きな責任と問題があるし、意識啓発など重要ではあると思うのですが、それだけで根本的な事件の防止、患者の処遇改善につながるかという問題であります。  そこで、ちょっとお聞きしたいのですが、国立病院・療養所の看護婦の夜勤の実態について、二人夜勤の八日以内といういわゆる看護の二・八体制は実現しているのかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  140. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 特別調整交付金という言葉でございますけれども、これはまだ正式な言葉ではございません。  調整交付金の中で、後期高齢者の加入割合の相違でございますとか、それから所得段階別の相違というのを一応一般ということで一般調整交付金、その他を特別ということで特別調整交付金という言い方をする場合があるということでございまして、誤解がないようにお願いしたいと思います。
  141. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 国立病院・療養所の看護婦の夜勤の実態でございますが、平成十年十月におきます調査によりますと、国立病院の夜勤回数は八・一回となっております。また、二人夜勤の状況でございますが、これは国立病院におきましては一〇〇%でございます。また、国立療養所におきましては夜勤回数は七・九回。また、二人夜勤の率につきましては、病棟単位で申し上げますと九九・四%の病棟が複数夜勤となっております。  おおむね二・八体制が図られている状況であると認識しております。
  142. 小池晃

    ○小池晃君 これは平均で八日ということですからね。あくまで平均ですから、そのすべてが達成しているわけじゃないので、これで達成したというふうに言われると困る。  その上で、看護婦の体制について、一病棟ごとの看護婦の数、国立病院、国立療養所のうち精神療養所について数字を教えていただきたいのと、さらに夜勤の問題でいうと、国立療養所犀潟病院の看護婦の夜勤の実態についてはどうか、お聞きしたいと思います。
  143. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 国立病院・療養所の平成十一年一月現在の一病棟当たりの看護婦数でございますが、国立病院が二十二・四名、国立療養所が十九・七名、国立精神療養所が十七名となっております。  また、国立療養所犀潟病院の看護婦の夜勤の状況でございますが、平成十年十月におきます調査によりますと八・五回となっております。
  144. 小池晃

    ○小池晃君 先ほど、全体としては平均八・〇だったということですが、犀潟病院は八・五ということで、二・八をクリアしていないわけです。そのほかを見ても、東尾張病院、ここも九・〇、ここはもう全病棟精神科の病棟だと。それから五百七十四床の肥前療養所、ここも八・二ということでクリアしていない。全日本国立医療労働組合の夜勤の実態調査の結果というのもこれに符合するものであります。  昨年七月の調査ですけれども、犀潟病院、先ほど月八・五とおっしゃったけれども、これは病院全体、重心とか結核病棟も入れてですから、精神科の病棟だけを見ると深夜勤務月九回以上の方が八十九人、八六%です。  その他、今の全国の数字、厚生省の調査を私もいただきましたけれども、例えば厚生省が政策医療ネットワークということで国立精神病院の頂点に置いている国立精神・神経センターの武蔵病院、ここは八・四日です。それから、国府台が八・六であります。国立病院精神医療のナショナルセンターと言われている、いわば見本になるべきところで看護婦の夜勤の実態が基準を達成していないということであります。  犀潟病院ですが、事件の起こった六病棟、ここは五十四ベッドで、昨年五月、まさに事件が起こったときの患者数は一日平均で五十二・九人、九八%のベッド利用率です。ほぼ満床だったと。夜勤可能な看護婦さんはこの病棟では十五人だが、そのうち三人はいわゆる不当な扱いを受けている定員外の賃金職員であります。八人の看護婦さんが夜勤を九回やられている。あの事件は、やはりこういう国立病院精神科医療の、特に看護労働の実態が背景にあるのではないか。  大臣、こういう国立精神病院の看護婦さんの労働実態をどのように思われるか。こういう労働の実態がその一因となっているのじゃないかということでいえば、やっぱり改善の必要があるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  145. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 看護婦さんの定員の問題でございますけれども、定員事情は全体としてかなり厳しいコントロール下にありますけれども、十分その必要性を勘案して、看護婦の方については重点的に増員を行ってきておるところでございます。  なお、具体的数値等は省略させていただきますが、犀潟病院の場合に看護婦が少ないからああいう事件が起きたと私どもは考えておりません。これは指定医と看護婦との包括医療の問題等々、いろいろの要因が重なり合ってできておりますので、必ずしも看護婦が多くいればああいう問題が排除できたとも考えられませんが、いずれにしても看護要員というのは非常に病院の基幹的な要員でございますので、今後とも重点的に増員を図っていきたいと思っております。
  146. 小池晃

    ○小池晃君 私は、別にそれが原因だと言っているんじゃないんです。それが一つの要因になっているのではないか。それはお認めになると思うんです。こういう実態を解決することなしに根本的な解決は図れないということははっきり認めるべきだし、増員に向けて今努力すると、それはぜひやっていただきたい。  しかしその一方で、今国立病院を取り巻く状況ということでいうと、むしろ収入増のための患者確保、人減らし、それから二交代制の導入、こういった徹底した合理化がやられている。独立行政法人化が計画されていますけれども、やはりこうした傾向に拍車をかけるものである。  中央省庁の改革大綱によりますと「独立行政法人の会計基準は企業会計原則によることを原則とするが、公共的な性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算性を前提としない」、こんなふうに書いてあるんですけれども、実際は企業会計への移行ということで、経常収支率の一律の目標設定がされているという実態があります。  ことしの一月二十五日の国立病院・療養所の全国事務長会関東信越支部幹事会、ここで地方医務局の経営指導課長がこういう報告をしているんです。これは、犀潟病院で職場にまで配られている報告ですが、十一年度の事業計画の策定に当たっては、独立行政法人を視野に入れて具体的数値目標を設定すること。十一年度からは一〇〇%達成計画に加えて一〇五%達成計画を求めていくとはっきり書いてあるんです。これは経常収支率です。  国立病院の担っている医療の性格からいって、こういう一律の目標の強制は現場に混乱をもたらすだけだし、こういう精神医療の実態からすると、こういう数値目標が押しつけられるということはやはり現場の実情を考慮しないやり方ではないか、改めるべきだというふうに考えるんですが、いかがですか。
  147. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 国立病院・療養所の経営改善につきましては、平成四年六月に提出されました国立病院・療養所経営改善懇談会報告に基づきまして各般の施策を実施しているところでございます。独立行政法人化の有無にかかわらず、国立病院・療養所は経営改善に努力すべきというふうに考えておりまして、この平成四年以降、各般の施策が功を奏しまして経常収支率の改善を見ているところでございます。  そこで、御指摘の点でございますが、この経営改善目標の設定に当たりましては、それぞれの病院・療養所の事情を勘案いたしまして、私どもは個々の施設の診療機能、病床規模等の現状を踏まえて個別に相談をしているわけでございます。御指摘のように、厚生省から一律の経営改善目標を示しているということはございません。
  148. 小池晃

    ○小池晃君 実際こういう文書が配られているんですよ。病院の看護婦さんの職場にまで配られているんです。一〇五%と地方医務局から言われている。犀潟病院は文書で出ている。口頭ではいろんな病院でもう一〇五%という話がひとり歩きしているんです。もちろんその経営改善は必要ないとは言いませんよ。それはそれぞれに応じて必要だと思いますけれども、一律に一〇五%というようなことを押しつけることはやはり医療の実態をゆがめるものだ。こういうことは認めません。ぜひやめていただきたい。  さらに言えば、国立の実態を今までお話ししましたけれども、民間病院はさらに過酷なわけであります。もうお話にならないぐらいひどいわけです。厚生省の九七年の医療施設調査、これを見ますと、開設者別に見て、看護婦、看護士一人当たりの一日の入院患者数は、厚生省開設、国立機関で四・七、医療法人では八・二人であります。ですから、国立病院の半分のスタッフでやっていると。こういう看護労働によって日本の精神科医療が支えられているということだと思うんです。ぜひやっぱり光を当てるべきだというふうに思います。  それで、先ほどから議論がありましたこうした背景にある精神科特例の問題ですが、先ほど大臣もこれは疑問を持っているというふうにおっしゃいました。これと低い診療報酬の問題があると思うんです。こういった基準が人員不足を招き、やはり拘束や隔離などの温床となっているのではないか。  ただ、この間の現場の努力で、実態を見ますと、日本精神病院協会加盟病院の看護基準というのは、一九九八年で、特一類と特二類で二九・八%、基本一類で四一・三%ですから、合わせて七一・一%、これが一般病院の基準に到達をしているわけです。看護の分野では実質的な特例解消の方向に向かっているのではないかというふうに考えるわけです。  先ほど特例の見直しを検討するという答弁がございましたが、先ほどの大臣の検討するという答弁というのは、やはりこの特例の廃止ということも含めて検討するというふうにとらえてよろしいんでしょうか。
  149. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 先ほど特例の見直しを必要とするということを申し上げたのは、今、一般論としても一般病院精神病院との格差が開き過ぎておりますので、それを是正する必要があるということで、必ずしも一本化するということを申し上げたわけではございません。合理的な範囲内でバランスのとれたものにしていきたいということでございます。
  150. 小池晃

    ○小池晃君 少なくとも今の特例については、そういう意味では廃止の方向で検討しているというふうにとらえさせていただきます。  同時に、精神科の診療報酬の問題をちょっとお聞きしたいんですが、これも一般科との大きな格差があります。社会福祉医療事業団の調査を見ると、全入院患者の二〇%を占めている精神科が診療報酬ではわずか五・一%、一ベッド当たりの入院収入は一般科の四三%、こういう実態がございます。  例えば、具体的な問題で言うと入院精神療法、これが精神保健指定医の三十分以上の精神療法に対して三百六十点、三千六百円です。こうした例。かなり低いんではないかと思うんです。全体として時間をかけてじっくり相手のお話を聞いて治療をするという精神科の特性からいって、こういう技術料の評価の低さ、これがやはり精神診療報酬全体の水準を低水準にしているというふうに考えているんです。ぜひこの技術料を抜本的に引き上げるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  151. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 入院精神療法につきましてのお話を具体的にお挙げをいただきながら、精神科領域における技術報酬の引き上げについてのお尋ねでございました。  私どもも、精神科領域における診療報酬につきましては、必要な部分については段階的に評価を拡充してきたつもりでございます。具体的にお挙げをいただきました入院精神療法(Ⅰ)といういわゆる急性期患者に対しまして濃厚な精神療法を行うことを評価するという趣旨の部分につきましても、これは平成八年の診療報酬改定時に、従来の入院精神療法を二段階に分割いたしまして、より濃厚なそういう精神療法をしていただくところについて、従来との関係からいえば、今お挙げいただきました三百六十点でございますけれども、これは従来の二倍以上の点数をつけたという形になっております。また、平成十年の改定におきましても、算定要件を緩和するということで、従来の要件ですと四十分以上必要というようなことを要件にしておりましたけれども、これを三十分以上に短縮するというように、段階的な評価、段階的な拡充を図ってきているところでございます。  今後におきましても、医師の技術評価のあり方ということにつきましては、これは精神科領域だけではございませんけれども、今後における診療報酬改革のいわば重要事項の一つでございますので、今後におきます中央社会保険医療協議会におきます具体的な検討という中で、精神医療分野における評価につきましても議論をし、取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  152. 小池晃

    ○小池晃君 今まで上げてきたというお話はこちらもわかっているんですが、まだまだ引き上げの水準が足りない。精神療法だけじゃなくて、例えば入院医学管理料の問題も、先ほど御議論あったように一般病院との格差がまだまだあるわけで、やはりこういったことを、全体を含めて抜本的に引き上げるべきであるということを主張したいと思います。  その上で、精神科救急の問題をお聞きしたいんですが、応急入院の指定病院の数、先ほど議論があって、現在三十七県、五政令指定都市で六十四施設だということでありました。十の県で今もない、政令指定都市でもあるのは千葉と名古屋、大阪、神戸、広島のみということであります。九三年四月の段階で二十九県四十二施設で、これは国会で審議がありまして、当時の保健医療局長が、指定病院のない県については、こういう県についての設置の促進ということを指導していきたい、そう答弁されているんです。ところが、それから八県しかまだふえていないというのが実態であります。  何でこのようにふえないのか、その背景についてどう考えるのか、お聞きしたいと思います。
  153. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 応急入院指定病院の設置が少ないという理由でございますけれども、一つにはその対象が限定されているというようなこともありますし、また応急入院の指定基準が厳しい内容になって、この基準がクリアできないというようなことも理由になっているというふうにお聞きをしております。  こういった状況を踏まえまして、平成八年におきまして、応急入院施設の基準につきまして、精神保健指定医についてはオンコール態勢を含むこと、それからCTにつきましては、これもCTを置くようにということになっておるわけですが、必要に応じて他の医療機関の協力が得られる場合には当該精神病院において整備することは必要がないというようなことで、若干の基準の弾力化を図ったところでございます。  今後とも各都道府県にこの応急入院指定病院整備されるように努力をしていきたいと思います。
  154. 小池晃

    ○小池晃君 いろいろと基準にも問題があるということですが、応急入院制度というのは精神科救急制度のシステムのごく一部でしかないわけでありまして、移送ができたからといってこれだけで全体として救急体制ができるというわけではないわけです。もちろん大臣が言われたように、応急入院制度の拡充というのはぜひやっていただきたいというふうに思いますが、やはり大事なのは、例えば地域における電話相談とか救急外来とか、あるいは短期入院のための病床を一次医療圏、二次医療圏レベルでつくっていくとか、あるいは緊急介入のための往診チームみたいなのをつくって対応していくとか、そういう全体としての精神医療の救急ネットワークづくりが必要ではないかというふうに思うのです。そういうことも含めて、先ほど御答弁があったように、応急入院指定病院についてももちろん強化していただきたいのですけれども、それだけではなくて、精神科の救急システム全体の強化をぜひやっていただきたいなというふうに思います。  その上で、法案の条文に関して幾つか聞きたいんです。今回の改定で、先ほどから御議論があるような保護者規定の問題、自傷他害の監督規定削除、これは大切な改正だというふうに考えております。  ところで、そのほかに四十一条に、先ほどあった引き取り義務の問題があります。この引き取り義務の規定ですが、厚生省精神保健福祉法規研究会というところが監修している「精神保健福祉法詳解」、これを読みますと、この規定は、四十一条は二十二条の保護者の一般的義務措置入院の場合に入念的に規定したものである。要するに、もう二十二条で一般的な義務規定はあって、念を入れて、引き取り義務については入念的に四十一条で規定したと、そういうふうに書いてありますが、そういう理解でよろしいんですね。
  155. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 四十一条に規定しております保護者の引き取り義務の趣旨につきましては、先ほど大臣からも御説明がございましたけれども、措置入院を解除した場合などにその者の医療及び保護が中断されることがないということを確保するという観点で、具体的な内容としては、現実に精神障害者を引き取る場合、医療保護入院等へ移行させる場合、社会復帰施設に入所させる場合、こんなことがあろうかと思います。  保護者の義務につきましては、法の第二十二条で一般的、総括的に今規定をされております。このような保護者に関する一般的、総括的な義務を前提として、精神障害者に適切な医療を確保するために保護者が担うべき具体的な役割一つとして引き取り義務等を具体的に定めているものと考えております。
  156. 小池晃

    ○小池晃君 今のお答えにあったように、一般義務としては規定されていて、入念的規定だということなんです。ですから、これはなくても一般的な二十二条の義務規定で十分ではないか。わざわざ四十一条があるから、これによって家族義務感に駆られて、社会から孤立した状況を強いられるような事態が起こっているんじゃないかというふうに思うんです。例えば、四十一条があるから、こういう規定があるから引き取らなければいけないんですよというふうに家族が迫られると、これはやはりかなり圧迫感があるんじゃないだろうかというふうに思うんです。入念的規定だというのであれば、この規定はやはり削除すべきだ、できるのではないかというふうに私は考えるんですが、大臣いかがでしょうか。
  157. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 法律の構成の中で、保護者の義務を一般的に規定しながら、特に措置入院等に関することで具体的にさらにメンションをしていくという手法は、私はあっていいと思います。そういう意味で、今回これは特に削除いたしておりません。
  158. 小池晃

    ○小池晃君 あってもいいと。なくてもいいわけです。なければいけないわけではないわけです。ですから、ぜひこれは検討する必要があるのではないかというふうに私は考えます。  さらに、精神医療審査会ですが、これは機能強化が非常に求められている。先ほども議論がありました合議体の構成の問題であります。医者三、法律家一、その他学識経験者一という構成、三、一、一の構成であります。やはり客観的、公正な第三者機関という大臣答弁の見地からしても、医師だけで過半数三を占めるということはいいことなのかどうか。これは、先ほど医学的判断が中心だから医師が三なんだという御説明がありました。ところが、これにも疑問があるんです。  まず第一に、精神医療審査会が医学的に判断するのは患者への一時的な権利制限が適切かどうかということだと思うんです。基本任務は不当な人権侵害の防止だと。患者の権利擁護機関であるということからすると、やはり中立性、独立性ということが必要なのではないかというふうに思うんです。  第二に、例えば麻薬中毒審査会とか結核診査協議会、こういったところでは過半数を医師と決めていないわけです。さらに言えば、感染症の協議会は過半数なんですが、この審議の中で、昨年四月十六日の当委員会でその根拠について政府はこう答えています。感染症の診査協議会は「症状が急性で、迅速かつ的確な対応が必要とされる一類及び二類感染症等の患者入院必要性等について学問的、専門的に審査する機関であることから、精神医療審査会とはその性質を異にする」というふうに答えているんです。  そういう点でいうと、医師が過半数でなくてもいいのではないか。三対一対一から、例えば二対二対一にするとか、あるいは先ほど御議論があったようにソーシャルワーカーを加えるとか、そういう法改定を考える余地は十分あるのじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  159. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 先ほど御説明申し上げましたように、入院患者入院の継続の必要性の有無あるいは処遇の適否ということを審査するわけでありますが、これが患者の症状に応じて、また医学的な判断に基づいてなされる部分が非常に多いということで三名ということにしているところであります。  なお、人権の確保を図る観点から、法律に関し学識経験を有する者、その他の学識経験を有する者、こういうことで五名構成になっております。  法律家の委員には、裁判官の職にある者、検察官の職にある者、弁護士、大学の教授などである者を、また有識者の委員につきましては、社会福祉協議会の役員その他公職経験者等であって、精神障害者の保健福祉に関して理解を有する者を充てることとされておるところでございます。
  160. 小池晃

    ○小池晃君 いわゆる国連原則というのを見ても、こういう精神病者の人権を守る審査機関については医者中心ということじゃない。書き方としては、一人またはそれ以上の資格を持つ自主的な精神保健従事者の助言と助力を得た司法的または他の独立かつ公正な機関と。医療的な役割助言であって、あくまで患者人権を守る機関として存在すべきだということが国連原則にもあります。やはりそういう観点で見直すべきではないかということを申し上げたい。  最後に今後の問題ですが、先ほどから何度も議論があったので質問にはいたしませんが、多々課題は山積している、一歩前進にしてもゴールはまだまだ遠いという感じではないか。  同時に、今後のことを考えますと、介護保険制度があり、医療法改定の議論があり、社会福祉事業法の議論もされようとしているということの中では、この法案をめぐる情勢が大きく今後も変化していくことは十分考えられるというか、現実問題としてあるわけでありますから、やはり今後の動きから見て見直し条項を入れることはどうしても必要なのではないかというふうに考えております。  そういう意味では、ぜひ全体でよく議論をして、当事者の皆さんの期待と不安にこたえる精神保健福祉法をつくり上げていきたいという決意を表明させていただいて、質問を終わります。
  161. 清水澄子

    ○清水澄子君 社民党の清水澄子でございます。  ただいまの質疑もありましたけれども、精神医療審査会というのは、いわゆる宇都宮病院事件の反省に立って一九八七年に法改定されて設置された制度であるわけです。そして、その目的は、精神障害者人権を尊重しつつその適正な医療や保護を図ることである、そういう行政組織だと書かれているわけです。  そこで、先ほどから皆さんもいろんな御質疑をされております。答弁も、本当に医療的判断が多いから構成メンバーは医療関係者が多いということをおっしゃっていましたけれども、はっきり精神障害者人権を尊重することが目的で、そこには適正な医療とあわせて保護を図るということがあるわけです。  そうであるならば、この審査会に、人権確保を第一に考えるような観点から精神障害者患者側の意見を反映できる委員を加えるべきではないでしょうか。さっきPSWもという御意見もありました。そういう方も、またそのほか人権問題に取り組んでいる人を加えていくように、今後この法の運用面でも、都道府県の判断で構成メンバーにそういう人たちを加えるような運用をすべきだと思います。  大臣に、そのことについて、前向きにやってみます、検討するというお答えをいただきたいんですが、いかがでしょうか。
  162. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 精神医療審査会委員の構成についてはたびたび今まで議論が出されております。そして、お答え申し上げているのは、精神障害者人権擁護といいますか、そういうことでございますので、医学的な見地が非常に強いというのでこういう構成になっていることはしばしば局長から申し上げているとおりでございます。  しかし、その中には「その他の学識経験を有する者」という規定がございます。これは一般的には社会福祉協議会の役員でありますとか、その他の公職経験者等で精神障害者の保健福祉に関し理解を有する者というように私どもは前提として考えております。しかし、回復者がそういう要件を満たしておるものであれば、資格を特定するものでもございません。そういう角度から選定をさせていただきます。
  163. 清水澄子

    ○清水澄子君 ぜひ前向きにひとつ実践をしていただきたいと思います。  このことは専門委員会の報告でも「委員の構成について検討する」ということがうたわれておるわけです。そしてまた「精神医療審査会の独立性を高めるために、都道府県における監督部局とは別の事務局を設けること。」と述べているわけです。  審査会がそういう強い独立性を持つということは非常に大事なことだと思うんですが、審査会の事務局を監督部局に置く場合と精神保健福祉センターに置く場合とどこがどう違うんですか、そしてどのような面で独立性が確保されているのか、そのメリットは一体何なのか、お聞かせください。
  164. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神医療審査会の位置づけにつきましては、一つは、この事務局が措置入院の事務を担当している課であり、なおかつまた審査会の事務もその課が担当しているというようなことに対して見直しが求められたところでございます。  このために、措置入院等の事務に直接関与していないということ、それから都道府県の本庁担当課よりも独立性が高くてなおかつ精神保健福祉に関する専門家をそこに有しているということから精神保健福祉センターに審査会の事務局を担わせることとしたところでございます。
  165. 清水澄子

    ○清水澄子君 精神保健福祉センターにはそういう審査をする場所とか機能はこれからちゃんと準備できるんですか。
  166. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 審査会は常駐して審査するというわけではございませんので、そういった場所の確保は十分にできると思います。  それから、それに係ります事務局でございます。これにつきましては、従来も県の本庁でやっていた人たちが当然センターの方に移るということでございますので、そういった意味ではそういう体制づくりにおいて何らそごを来すことはないというふうに考えております。
  167. 清水澄子

    ○清水澄子君 その点はちょっと私はまだ非常に疑問がありますから、次の機会に質問いたします。  次に、応急入院させるための移送についてなんですけれども、今回の改正案では、指定医の診断の結果、都道府県知事は医療保護入院に該当する者について、緊急を要する場合には保護者の同意を得ることができない場合であっても応急入院させるため指定病院に移送することができるとしているわけですが、この規定は一歩誤ると非常に大きな人権問題が生ずると思います。ですから、非常にこれは慎重な運用が必要だと思うんです。  そこで、まずここで確認しておきたいのですが、この条文の「指定医による診察の結果、」「移送することができる。」という点は、あくまでこれは診察を前提としておりますね。これは移送した後に指定医が診察するというようなことはないと確認していいかどうか、これが一点。それからまた「保護者の同意を得ることができない場合」というのは、どういう場合のことを言っているのか。その二つを確認したいと思います。
  168. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) まず、指定医による診断は移送の前提条件でございます。したがって、診察した上で移送する、こういう仕組みでございます。  それから、応急入院につきましては、保護者が物理的に見つからないという場合には、時間を限定して入院させる仕組みでありますが、そういった人たちも移送の対象となる。  そこで、この運用におきまして、やはりどうしてもその移送制度を使わなければならない、こういうことへの、それまでの判断の持っていき方だと思いますが、当然、家族による努力、それから保健所の保健婦さんなり精神保健福祉相談員の方々の努力、あるいは主治医がいらっしゃれば主治医の皆さんの努力、そういった人たちのお力でできれば自発的に病院に行っていただくという努力をやった上で、それでもなおかつ必要な措置としてこの移送制度を使わざるを得ないという場合にこれを適用する、このように考えております。
  169. 清水澄子

    ○清水澄子君 そこで、応急入院の場合の移送ですが、これは二年ほど前でしたか朝日新聞に、警備会社が精神病院への搬送をしているということが出ておりました。その後、これを厚生省ではどのように調査なさったでしょうか。そして、実態はどういう状況にあったのでしょうか。
  170. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 御指摘のことにつきましては、平成九年七月に朝日新聞の紙上で搬送に関する報道がなされたわけであります。本人の意思を無視して強制的な搬送を行うということは、当然人権侵害につながる場合もあるということでありますが、必ずしもその実態は明らかではございません。  平成九年度の厚生科学研究事業におきまして、精神障害者精神医療へのアクセスに関する調査というものを実施いたしております。これはアンケートでございます。対象につきましては県庁所在地の保健所、指定都市・特別区の保健所、それから管内人口三十万人以上の保健所を対象にしておりますけれども、ここで百五十一件の回答が得られました。その結果、複数回答ではございますけれども、緊急時の搬送につきましては家族等の協力で説得するというのが百三十三件、救急隊員の依頼が三十七件、保健所の職員が説得するというのが九十四件、それから警察職員に待機依頼するというのが百九件とありまして、民間会社による搬送というのが十六件ございました。  さらに、十六件あるということから、警備会社等の民間業者が有料で精神障害者の搬送を引き受けている事例を管内で聞いたことがあるかというような質問をしましたところ、三二%の方がある、このような回答がございました。  いずれにいたしましても、民間警備会社の有料搬送業務が約三分の一の保健所で報告があったということでございますし、人権配慮した搬送等、適切な受診援助の構築の必要性があるということがこの報告書指摘されているところでございます。
  171. 清水澄子

    ○清水澄子君 そういうふうに民間の警備会社が搬送するということの実態がまだ十分明らかではないというお話でしたけれども、改正後は指定医の診療が前提であるわけですから、その後の移送手段も警備会社に委託するのではなくて、やはり患者人権尊重に沿った手段を取り入れるべきだと思いますが、その点はどういうふうにお考えになっていますか。
  172. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 新しく設けます移送制度でございますが、これは夜間とか休日などに病院への搬送手段を持たない保護者等が民間の警備会社を利用するというような実態に対する裏返しの対応というふうにも位置づけられるわけであります。このために、都道府県知事の責任において適切な医療機関へ移送する制度整備するということが基本的な考え方でございます。  したがいまして、都道府県知事の責任において搬送するということがまず基本でございますので、単に業者に任せるといったことは念頭にございません。
  173. 清水澄子

    ○清水澄子君 その点はぜひ明確にこういう状況を解消するように徹底していただきたいと思います。  次に、当事者への情報開示でございますが、この改正案では、精神保健指定医診療録記載義務を拡充しようとしておりまして、その記載内容厚生省令で定める事項となっているわけですが、省令では何を定めようとしておられるのでしょうか。
  174. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 政省令で定めます幾つかの事項の中で、十九条の四の二にございます政省令で定める事項につきましては、その職務を行った日時でありますとか精神保健指定医の氏名等を想定しておりますが、さらに詳細につきましては今後検討したいと考えております。
  175. 清水澄子

    ○清水澄子君 この指定医に関する事項には、措置入院とか医療保護入院といった当事者の同意に基づかなかった強制入院を行ったとき、そういう場合に事後的に当事者が記載の内容を求めた場合には、当事者に開示していくことを指定医義務にぜひ加えるべきではないかと思うのです。  それは公衆衛生審議会の意見書及び答申にも精神医療に係る情報公開の推進ということが指摘をされておりますし、またなぜ自分が入院をしたのかわからない場合があるわけです。だから、当事者が自分の健康、体に関しての診療録の情報開示を要求したときには、カルテの開示がどうとは私は全然言っていませんよ、そういう答えは要りません、これは医療法が改正されないからとおっしゃるに決まっているんですから、そういうことじゃなくて、本人が自分は何で入院したんだろうかというのがわかるような精神医療に係る情報の開示ということを私はやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  176. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神医療に係ります情報公開の方策ということでございますが、これにつきましては公衆衛生審議会の意見でも御指摘のように早急に検討すべきだという御意見をいただいております。この精神医療に関する情報につきましては、医療提供体制等に関する内容も含まれることもあって、精神保健福祉法だけの問題ではないのではないか。現在、医療法等の見直しの中で情報公開についての検討が行われているということでございますので、その検討も踏まえながら、私どもの方もあわせて検討を進めていきたいと考えております。
  177. 清水澄子

    ○清水澄子君 指定医がなぜそういう判定を下したのかという理由はやはり当事者に開示すべきだと思うのです。ですから、それは指定医義務に加えていくということをぜひ検討されるべきだと思います。  また、精神医療審査会の判定理由についても当事者に開示される制度を設けるべきではないでしょうか。とりわけ精神医療においては、当事者が自分の病気についての病識というのがない場合があるため、症状が安定期に入った場合には入院が必要と判定された理由とか経緯を当事者みずからが了解できるようにすることが精神医療におけるインフォームド・コンセントの観点からも非常に重要だと思います。  そういうことによって、当事者が自分の健康についても納得をするということで治療の上でも効果があるものと考えますけれども、この点についてもぜひひとつ進めていただきたいと思いますが、大臣、検討しますとぜひ答えてください。
  178. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 審査過程の問題でございますから、プライバシーの保護の問題が当然ございます。しかし、それ以外の点についてどういう開示が可能か、あるいは本人にどういう知らせが必要であるか等々について、なお検討すべき点があればさらに引き続き検討させていただきます。
  179. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、長期入院が減らない理由についてお聞きしたいんです。これまでも精神衛生法から精神保健法になり、そして精神障害者のノーマライゼーションに向けた取り組みという形でずっと法改正が行われてきたわけですけれども、やはり患者の数というのは横ばいです。むしろふえているというのが現状だと思います。  そこで、このように長期入院傾向が是正されない理由というのは何であると認識をされておられるでしょうか。
  180. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神病院入院していらっしゃる患者さんの平均在院日数につきましては、平成二年から平成八年にかけて四百九十六日から四百四十一日と短くはなってきておりますけれども、一方で五年以上入院している者の割合というのは昭和五十八年が四七・八%、平成八年で四六・五%とほとんど変わっていない。非常に長期の人たちがいる一方で、新しく入院される方については比較的短い期間で退院していただいているというのが今の状況ではないかと思います。  いずれにいたしましても、入院期間が長いということについての理由でございますが、一つ入院医療を終えて社会復帰をするという時点で、社会復帰を援助するための施設、マンパワー等が必ずしも十分ではないという点が一つあろうかと思います。それから、諸外国との比較にもなりましょうが、ナーシングホームのような仕組みを持っている国もありますが、集中的な医療にある程度特化した治療が必要でない精神障害者についても、引き続き精神病院が処遇することを余儀なくされているという実態ももう一つあるのではないかと思います。さらに、社会復帰に対する理解が必ずしも十分でないということから、結果として社会入院が容認されてしまっている傾向があるのかなと。  このような点が私どもは入院患者の減らない一つの要素として考えているところでございます。
  181. 清水澄子

    ○清水澄子君 結局、精神障害者地域ケアしていくための社会的な受け皿といいますか、資源の不足長期入院の是正が進まない大きな理由であると思うわけです。ですから、先ほどの応急入院の場合でも、むしろもっと気軽に治療を受けられる環境が、地域に日常的にそういうシステムが必要だと思うんです。  地域ケア体制不足が結局病院以外に居場所がない、そして今度はそのことで社会復帰が進まないためにいわゆる地域ケア体制整備も進まないという悪循環に陥っていると思うんですが、その点を今後どのように改善しようとされておりますか。
  182. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 長期の入院患者に対応することを含めまして、精神障害者社会復帰を促進することは極めて重要でございます。今御指摘のように地域ケア体制地域における精神障害者生活支援体制整備は極めて重要なことであると認識しております。  そこで、今まで障害者プランに基づきまして精神障害者授産施設あるいは精神障害者福祉ホーム、生活訓練施設、福祉工場などの社会復帰施設や、それからまた地域生活援助事業としてグループホーム等の整備を今までやってまいりました。  今回の改正案におきましては、それに加えまして、地域生活する精神障害者が身近なところで相談、指導や福祉サービスの利用、援助を受けることのできる精神障害者地域生活支援センターというのを設置することにいたしております。また、そのほかにも精神障害者の居宅に食事あるいは身体の清潔の保持等の介助を行うホームヘルパーを派遣する精神障害者居宅介護等事業ホームヘルプ事業等の法定化を盛り込んでございます。  今後、精神障害者地域生活のより一層の支援を図らなければなりませんが、今回の改正によって相当前進するのではないか。また、裏づけに施設整備等も図っていかなければならないというように思っておりまして、今後一層地域精神障害者生活支援体制整備の促進を図ってまいりたいと考えております。
  183. 清水澄子

    ○清水澄子君 その点は、次のときにまたいろいろ質問させていただきます。  次に、保健所のマンパワーについてなんですが、この改正案では、市町村都道府県精神保健福祉センター、地域生活支援センター保健所市町村保健センターというふうに、今後これらの精神障害者社会復帰施設等の利用に関する相談とか助言とかあっせん等の業務を市町村が行うために保健所が技術的な協力を行うとなっているわけですが、先ほど申し上げたそれぞれの施設役割分担というのはどのようになっていくんでしょうか。それらを考えたときに、今日の保健所機能とか人員で本当にそれがカバーできるのかどうか。  そういう点で、むしろ保健所はこの地域保健法以来、統廃合がずっと進められてきているわけでして、最近の一月十八日の厚生関係局長会議においても、保健婦の人材確保は厳しい状況だと、それから保健婦さんの確保が計画よりも大幅に下回っているという報告がなされているわけです。  一方で、市町村はこれまで精神障害者福祉施策での蓄積というのはほとんどないと思うわけです。そういう中で、市町村主体福祉サービスの定着までに保健所がこれを支える役割というのは非常に大きいと思うんですけれども、それらを現状のままで十分カバーできるのかどうか。もっと財政的な支援も含めて根本的に保健所役割というものを強化すべきだと思いますが、それらについてお答えいただきたいと思います。
  184. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 平成六年に保健所法の改正など地域保健法の全面改正を行ったわけでございます。この改正平成九年に全面施行されたのを契機といたしまして、保健所地域におきます専門的、技術的拠点としての役割を発揮することができるよう、各都道府県に対しまして、保健所機能強化計画の策定を初め、所管区域の拡大に伴う保健所の統廃合とともに、精神保健対策を担当する専門職員の確保を含め、機能の強化を進めているところでございます。  ちなみに、平成六年におきましては保健所数は八百四十七でございましたが、平成十年には六百六十三に減っております。技術職員、例えば保健所の保健婦につきましては、都道府県の保健婦数が平成六年の五千二百十五人から四千六百六十三人と若干減っておりますが、政令市の保健所におきましては三千三百十一から二千八百四十五、また母子保健等の市町村への業務の移譲に伴いまして平成六年の一万二千五百二から一万六千四百六十六と、総体といたしまして都道府県の保健婦は若干減っておりますが、市町村の保健婦をかなり重点的にふやしてきている、そういう対応をしてきているところでございます。  いずれにいたしましても、平成九年からの地域保健法の全面施行の目的といたしました保健所機能強化が目的どおり進んでいるかどうかということにつきまして、私どもといたしましては、平成十年と十一年の二カ年をかけまして地域保健法施行後の保健所機能の強化推進の評価に関する研究というのを今依頼しておりまして、検証をしていきたいと考えているところでございます。  いずれにいたしましても、厚生省といたしましては、今回の精神保健福祉法改正も踏まえまして、今後とも保健所機能の強化を図っていくために、地方交付税措置を講じ保健所職員の確保に努めるとともに、保健所職員の知識、技術の向上を図れるよう各種研修などを実施してまいりたいと考えております。
  185. 清水澄子

    ○清水澄子君 終わります。     ─────────────
  186. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、奥村展三君が委員辞任され、その補欠として堂本暁子君が選任されました。     ─────────────
  187. 入澤肇

    ○入澤肇君 今回の法律改正の要点につきまして、先ほど大臣から人権への配慮を徹底させたということ、それから地域福祉の充実を念頭に置いて必要な条文を入れたということ、これはそのとおりであると非常に評価していいんじゃないかと思うんです。  ただ、私は、若干の疑問がありますのは、五年ごとの見直しを行う規定があるために、どうも前回の改正のときに当然入れておくべきことを入れないで小出しにしているんじゃないかな、そういうふうな感じが実はするわけであります。  感染症予防法の継続審議で私は初めて質問に立たせていただいたんですけれども、あのとき衆参両院の委員会議事録を全部読みましたら、百年に一度の改正がなぜ行われたか、見直しの規定がなかったからという答弁が中に入っていました。そんなことはおかしいんじゃないか、むしろ常時緊張感を持って時代の流れに即した改正をすべきじゃないかという質問をいたしましたら、そのとおりだという答弁があったわけでございます。  この精神衛生関係法律は累次にわたって改正が行われていますけれども、五年ごとに見直しをするということで、本来、前回の改正で入れておくべきことも入れないまま残していたんじゃないかと疑わざるを得ないような規定がかなりあるんです。  例えば規制を緩和したんでしょうか。指定医の取り消しの規定、これなどは「期間を定めてその職務の停止を命ずる」ということが新しくつけ加えられましたけれども、当然のことながら、取り消しの前にもっと緩い要件の期間を定めた職務の停止というのが考えられてしかるべきであったと思います。それから、指定医が職務を行う場合に遅滞なくその氏名その他厚生省令で定める事項を診療録に記載しなければいけない、これなども当たり前な規定で、前の改正のときに入ってしかるべきだったと思います。さらに、処遇の改善のために必要な措置をとられるように努めるものとする、これも当たり前の規定であります。  こういう中で、しかし人権配慮をして精神医療審査会機能の強化あるいは医療保護入院等に関する事項につきまして明確な規定が入ったということは、これは非常に評価すべきだと思うんです。今後、同じように小出しでやるようなことはできるだけやめた方がいいと私は思うんです。  これは私も役人をやったから経験があるんですけれども、土光臨調以来、十数年にわたって行政改革をずっと行政当局はやらされてきました。そうしますと、点数を稼ぐために少しずつ出すんですよ。思い切ってやらない。だから、十年に一度ぐらい行政改革をやると思い切った効果が上がるんですけれども、毎年やるものだから一向に行政改革の効果が上がらないまま終わって現在に至ってしまう、そういうふうなことがあるわけです。  ですから、今回はこの法律を契機にいたしまして、思い切って、精神医療関係の予算が全体の医療費に占める予算としては少ないし、さらに大臣が先ほど申されましたように、地域福祉の充実ということに焦点を置いて改正したのであれば、医療費への配分と同時に精神福祉に対する予算の配分にも重点を置いてやるようなことにエネルギーを使ったらいいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  188. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回の改正案を提案している直接的な原因は、見直し規定もあるということはこれは否めない事実でございますが、そういうものがなくても、やはり医学の進歩あるいは情勢の変化、経済社会変化に応じて、私どものつくった制度でございますから、それに適合するように常時見直しの気持ちで眺めていくことはぜひ必要だと思います。その結果として、不備な点があったり、あるいは時代に適合しないような点があったりすれば、それは改正していくのは当然でございます。  この法律につきましては、二十五年ごろからつくられておりますが、その流れとしては社会防衛的なものから人権擁護という方向へずっと来ておりますから、大きな流れに沿った中で必要な改革をやっているというのが現状でございます。ことしはまだなすべきことがあるけれども、また来年あるいは次の機会になどという考えはないわけでありまして、私どもはこれがベストなものだということで提案を申し上げているところでございます。
  189. 入澤肇

    ○入澤肇君 そこで、具体的な質問に入りたいと思います。  今回、精神医療審査会というのが委員の数の制限を撤廃し、さらに機能強化を図るということで規定されていますけれども、いろんな人がいろんなことを言っています。病院関係者だけだとお互いにかばい合って、本当は不適切だと指摘したいところもそうでないというふうに言うんじゃないかとか、それから医療施設に勤めている職員も自分の身分の問題があるからなかなか思い切ったことが言えないんじゃないかとかいうことがありまして、先ほどからも議論がありますように、審査会の構成メンバーについては非常に重要な課題だと思うんです。  他の国の例を若干調べてみますと、例えばカナダなどでは人権擁護のために全く第三者的な機関、こういうところに審査会の機能をゆだねているということが言われているんです。そのように透明性、客観性、公平性、それからまたお互いにかばい合うようなことのないような仕組みにすることを考えているかどうか。当然のことでしょうけれども、決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  190. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) このたび、審査会につきまして精神保健福祉センターの方へ事務局を置くということにいたしましたけれども、公衆衛生審議会の議論においても、現在の体制であれば精神保健福祉センターにこれを置くということはそれはそれで前進であろう、しかし今後、そのあり方についてはもう少し検討していこうではないかというような御意見もございました。  審議会の御意見等もまたお聞きしながら、将来本当にどうあるべきかということについてまた考えていきたいというふうに思います。
  191. 入澤肇

    ○入澤肇君 次に、今回の規定で非常に重要なところは、いわゆる仮入院の規定が削除されました。条文をそれぞれ読んでみますと、「精神障害者の疑いがあつて」という言葉は一切消えております。「疑いがあつてその診断に相当の時日を要すると認める者」というのが仮入院要件一つにありましたけれども、これは消えております。  しかし、医療保護入院と、恐らくこの疑いのある方は任意入院になるかと思うんですけれども、この場合の当事者の判断能力からしまして、どちらに行くべきかというのは非常に難しいんじゃないかと思うんです。その場合のいわゆる対応の仕方の基準、こういうことについてはどう考えておりますか。
  192. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) まず仮入院の廃止でございますけれども、仮入院というのは診断に相当の時日を要するということで、精神障害者について一週間を限度として仮に入院をする、しかもそれは強制行為を働かせる、こういう仕組みでございます。それで、最近診断技術も発達してまいりましたし、一方で精神障害であるかどうか不明確な段階で強制的に入院させるというのはいささか人権の侵害につながるおそれがあるのではないか。それから、現実に年間二十件程度全国で適用されているという意味で、事実上非常に診断については早くこれが行われるようになったということから、そういう人権侵害につながるおそれのある仕組みを今回廃止しよう、一つはこういう趣旨でございます。  と同時に、医療保護入院と任意入院の違いということでございますが、最近の病院の不祥事なんかを見てみますと、同意能力があるのに医療保護入院になったことがあって、医療保護入院要件を明確にする必要があるという観点から、法二十二条の三の規定による入院、つまり任意入院が行われるべき状態にない人をもって医療保護入院とする、こう規定したわけであります。  この二十二条の三の規定による入院が行われるべき状態にないということそのものは、患者さんの精神障害によって入院必要性を理解できない状態ということでございますので、この判定について精神保健指定医が医学上の専門性に基づいて個別に判断せざるを得ないのではないか、そういう意味もございまして、これは医師の判断にゆだねたいと。しかし、規定をこのたびつけましたように、任意入院ができないんだという一つの基本的基準というものは明示した、こういうことで取り扱っていきたいと考えております。
  193. 入澤肇

    ○入澤肇君 よくわかるようなわからないような話なんですが、専門分野のことですから、ぜひトラブルが起きないように明確な指針をつくって各医師に提示していただきたいと思うのであります。  そこで、先ほど清水先生からも質問がございましたけれども、今回精神保健指定医診療録の記載義務というのが拡充されました。ところが、新聞報道とか何かによりますと、いわゆるカルテそのものの法制化については厚生省は非常に消極的である、あるいは医師会等が必ずしも前向きでないという報道がなされていますけれども、この点についてはどのように対応するお考えですか。
  194. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) カルテ等の診療情報の開示につきましては、昨年の六月にカルテ等の診療情報の活用に関する検討会というものがありまして、そこから報告書が出てまいりました。それをもとにこのカルテ開示のところについては審議会で御議論が進んでおります。昨年の秋から審議会が始まって、まだ現在も審議会で御議論いただいているところであります。  この審議会は、御存じのように公開でやっておりますので先生も多分お聞きになっていらっしゃるのではないかと思いますが、これまでの審議の中では、カルテを患者さんに開示するということについては大方の委員がもう皆さん御賛成という感じになっていますが、実は検討会の報告書の中にそれを法律に書きなさい、努力義務で書きなさいという一節がありまして、そのことについて意見が二つに分かれております。  一つは、開示というのはプロフェッショナルの仕事でやるのだからそれは法律に書かないで自分たちでやります、だから法律には書かないでほしいという意見と、いや、それはやるんだから法律に書いた方がいいんじゃないかという御議論と二つありまして、そこについてまだ議論がある。法律に書くかどうかというところで御議論があると。  要は、患者さんにカルテの開示をするということ自体は医療をよりよくしていくために必要だから、それをやりましょうということについてはそんなに御意見が分かれているということではございません。  いずれにしましても、最終的には審議会の御報告をいただいて、そして法制化に向けて努力をしていきたい、このように思っております。
  195. 入澤肇

    ○入澤肇君 今の答弁でわかったんですけれども、私も健康診断をやったときにカルテをのぞきましたら、女医さんにえらく怒られまして、この人はカルテをのぞくのよなんてみんなに言われてしまいまして、自分の診断をしてもらったんだからのぞいてもいいと思うんです。ただ、ドイツ語の専門用語で書いてありますから見てもわからないんです。しかし、患者に開示することを今ごろ議論しなければならないというレベルにあるのかなという思いを今深くしたわけであります。  そこで次に、今度の精神医療関係でいただいた資料等を読んでいまして、医療全体の中で非常に特別な位置にあるのではないかということが指摘されております。例えば、医療法の特例で精神科特例というのがあるんだそうです。患者何人に対して医師の張りつけ方が何人だとか看護婦の張りつけ方が何人だとか、こういうふうなこともあるということで、精神科の関係者は精神科特例は廃止すべきじゃないかということを指摘している人もたくさんいるというふうに聞いております。  それからまた、先ほど申しましたけれども、医療費全体の精神関係の額、これも少ないし、さらに精神科の福祉関係は一層少ないということでございます。全国の自治体病院の一般病床と精神病床とで入院患者一人にかかる一日当たりの医療費の比較というものも出ています。これを調べてみますと、一般病床が二万九千二百二円、精神病床が一万二千四百七十六円という数字が出ております。  こんなに差があるのかなと思うんですが、この差は精神関係の疾患とほかの疾患との関係からして実態に合うリーズナブルなものであるのかどうか、合理的なものであるのかどうかということについてどうお考えか。さらに、このような精神科特例的なものは本来であれば廃止すべきものであるかどうか、専門家の立場からひとつ御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  196. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神科特例につきましての御質問でありますけれども、その特例ができた経緯といたしましては、やはり医療機関が非常に少なかった、精神病院が非常に確保しにくかった時代、そしてそれに従事する職員が非常に少なかった時代背景の中で規定された部分もございますし、また一方で、精神疾患の特性として非常に慢性疾患の方が多いというようなこともあって今日に至っているというのが現状であります。  現に、実態を見てみますと、百床当たりの医師数で見ますと、精神病床の場合は医師が二・七人、一般病床だと十一・二人というふうな状況でありますし、看護婦は百床に対して精神病床が二十七・五人、一般病床は四十六・二人、看護婦さんは比較的格差が実態としては縮んできているということは言えようかと思います。  診療報酬との関係でありますけれども、現在の診療報酬体系では看護料というのは基本的に看護婦さんの配置されている実人員を反映するように評価していただいておりますので、結果としては、少ないという意味においては診療費が下がってしまいますけれども、たくさん看護婦さんを置いているところでは、それはそれなりの評価を診療報酬で受けているというふうに私どもは理解をいたしております。
  197. 入澤肇

    ○入澤肇君 累次にわたるこのような精神衛生関係法律改正があるわけでございますから、やっぱり専門家の皆さん方が集まって、こういうものは廃止したらいいという意見が出ているとすれば、財政当局の問題はあるかもしれませんけれども、実態に合わせて改善の努力を一層やっていただきたいと私は思うんです。  例えば、外国に比べて、資料をいただいた中で、特に精神疾患の平均在院日数がOECDの中では日本が一番長いというんです。一体なぜこのようなことになっているのか。これは、きょうの法案の中で地域医療地域福祉施設充実させるということがあるから、それで対応すれば短くなるというふうに恐らく答えられるのかもしれませんけれども、実際にそれだけなんだろうか。  今までの医療体制あり方、そういうことについてOECDと日本ではこのような違いがあるんだという特徴的なことがあったら、それの御説明を願いたいと思います。
  198. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 諸外国との比較というのは、その国の医療提供体制制度の差でありますとか、調査の対象となった施設に差があるものですから必ずしも単純に比較することはできないわけでありますけれども、一つは我が国が諸外国に比べて長いという実態に合わせて精神病床も多いという実態もございます。したがって、病床が多いということが結果として長期入院と相関する可能性があるという点も指摘されております。  それから、先ほども御説明申し上げましたけれども、五年以上も入っているような方々社会の受け皿を整備する必要があるのではないか。それが、要は長期入院そのものがかなりのウエートで支配しているという意味からしますと、半分近い患者さんが五年以上入院しているというこの実態、これをやはり社会復帰のための施策充実によって少しでも改善するように努力するというのはやはり大事なことではないかと思います。  いずれにいたしましても、平均入院期間が長い、あるいは病床の問題も含めて、今後こういった地域医療という視点から充実をすることが私どもにとってはまず喫緊の課題ではないかということで努力していきたいと考えております。
  199. 入澤肇

    ○入澤肇君 努力をするというのはわかるんですが、例えばアメリカとかヨーロッパ、こういうところでは入院医療から地域医療、保健、福祉、こういった施策に重点を移しているということなんですけれども、日本では今これが始まったばかりなんでしょうか、国際的に見て本当におくれているんだろうか、そこら辺はどうでしょうか。
  200. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 福祉施策という視点から見れば、スウェーデンなり北欧の福祉施策あり方というものに比べてさらに充実を図らなければならない分野もあろうかと思います。また一方で、それを支える福祉の財源を出す仕組みそのものにも国によって差があるということもありますので、現実論としてやはり西欧の福祉にできるだけ近い、あるいはいいところがとれるようなそういう形での努力をするのが大事ではないかというふうに私は思っております。
  201. 入澤肇

    ○入澤肇君 このように日本とヨーロッパ、アメリカとの間で非常に差があるという場合に、先ほどもほかの先生からそんなことも調べていないのかという御質問がございましたけれども、もっと積極的にデータを集めまして、例えば新ゴールドプランあるいは障害者福祉プランと同じように精神衛生関係の福祉の充実のための長期的なプランをきちんとつくって、そして財政的な充実を図るというふうなことも当然のことながら約束していただきたいんですけれども、約束してもらえますか。
  202. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 平成七年に障害者プランを出されたわけでありますが、このとき初めて身体障害知的障害に加えて精神障害を対象とする福祉施策について数値目標を設定するということをやっております。したがって、平成十四年を目途に社会復帰施設等の整備あるいは地域生活支援センター等の整備、そういったものについて今目標を定めてこれに邁進したいと考えているところでございまして、御指摘のように三障害あわせて一定の目標を定めて、その実現方に努力していくということが今当面の最大の課題だというふうに思っております。
  203. 入澤肇

    ○入澤肇君 せっかく法律を出すんですから、大臣が御答弁されましたように、人権配慮し、それから地域福祉を充実させるという極めて明確な目的意識を持って法律改正をやっているわけですから、ぜひその裏づけの施設整備とか何かについても格段の努力をしていただきたいと思います。  それから、今度の法律でもう一つ、これは本当にプラスなのかマイナスなのかよくわからないんですが、保護者の義務のところで、自傷他害防止監督義務法律上廃止しましたけれども、果たしてこれを法律の条文から削っただけで家族負担というのが軽減されるのだろうかという疑問を持つわけであります。負担軽減をする場合には、当然患者というか、要するに疾患を持っている方本人が安定、自立するようにしなければいけないでしょうし、そのためにはホームヘルプを初めといたしましていろんな政策の組み合わせが必要なわけです。  これらについて、特に家族負担軽減するということを明確に言ったわけですから、具体的にはどのような対応策を講ずる考えであるかをお聞かせ願いたいと思います。
  204. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) まず、精神障害者家族方々というのは本当に高齢化が進んでまいりましたし、それから精神障害者自身も単身がふえてきているという状況にありまして、家族に依存するということがだんだん難しくなってきている。こういう認識に立った上でのお話でございますが、そういう背景に基づきまして、今回の改正案では、在宅精神障害者支援をするということから、市町村責任主体を置いて、ホームヘルプサービスでありますとかあるいはショートステイ、こういったものを創設する、これによって一時的であれ、また訪問していただくなりして家族負担軽減につながるのではないかということで一つ役割を演じていただけるのではないかと思います。また、さまざまな家族の御相談に応じるということから、地域生活支援センターを法定化するということで相談体制整備充実させることといたしております。  御指摘の自傷他害防止監督義務などの義務でございますけれども、今回それを廃止すること、あるいは一部の保護義務の対象となる精神障害者を限定するなどの保護者の保護義務軽減を行うことにいたしております。こんな点が障害者家族負担という視点に立った上での一つ改正案の内容ではなかろうかと思います。
  205. 入澤肇

    ○入澤肇君 家族負担軽減するということの一つの方法といたしまして、やっぱり疾患を持っている人でも安定したときには自立した生活ができるような条件を整備しなければいけない。  その意味で、いわゆるいろんな資格試験等の欠格条項がございます。他に危害を与えるとか何かの心配のないいろんな資格もあると思うんですけれども、そういうものについての具体的な考え方、欠格条項について、これはもう外していいんじゃないかとか、これは残すべきじゃないかということについての基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  206. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 各種の制度には精神障害者を欠格条項として置いているものがございます。障害者プランの中でもこういったものの見直しが規定をされているわけでありまして、現在、総理府を中心といたしまして、平成十二年中を目途といたしましてその見直し作業を行っているところでございます。  欠格条項というのはいろんなところにございますが、政府全体で取り組む事項ということで、厚生省といたしましてもその見直しにつきましては最大限の努力をしていきたいと考えております。
  207. 入澤肇

    ○入澤肇君 最後に、非常にある意味では前向きな、また前進した考え方改正でありますので、先ほど部長答弁されましたけれども、この精神福祉関係予算の充実についてことしの夏の概算要求に向けて格段の努力をするということを大臣に一言御答弁いただいて、終わりたいと思います。
  208. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回の法律改正の趣旨も社会復帰ということを重点に置いておりますので、各種の社会復帰施設充実とか、あるいは地域対策としてホームヘルプサービスショートステイ等を新たに法定化しているわけでございますので、当然裏づけになる予算措置等もあとう限り努力をしてまいりたいと思います。
  209. 入澤肇

    ○入澤肇君 終わります。
  210. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願い申し上げます。  まず冒頭、大臣にお伺いしたいと思います。  昭和五十九年の宇都宮病院の事件の後、六十二年の改正精神病院に対する指導監督の創設、あるいは精神医療審査会の設置、また精神保健指定医制度の創設などなどいろいろと講じられたわけですけれども、その後におきましても私の地元大阪の大和川病院の事件等々、一部の精神病院におきまして人権侵害の事件が本当に多数発生しております。  今回の改正案の目的の一つが、当然こうした事件の発生を未然に防ぐ策ということで講じられたことと思いますけれども、まず厚生大臣の基本的なお考えからお伺いしておきたいと思います。
  211. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 昭和六十二年の法改正というのは、改正の主要点が一つの大きな流れをつくったように思います。その場合、精神障害者人権配慮した医療の確保ということが極めて重要だという流れができておりまして、そう措置しておったわけでありますが、御指摘病院事件初め、精神病院をめぐる人権侵害が生じていることはまことに遺憾なことでございます。  したがいまして、今回はそういった反省を踏まえながら、それを予防するための措置として、御議論いただいておりますように、精神審査会の調査権限を拡充するなどして機能を強化して入院患者の処遇等の審査に万全を期していきたいというようなこと、それから精神保健指定医役割も強化して精神障害者のために明確な責任を持ってもらうような体制をとること、それから保護入院等の要件を明確化すること、あるいは改善命令に従わない場合の入院医療を制限することができるなどの規定を創設し、従わない場合には罰則まで設けるというようなことで精神病院に対する指導監督を強化するなど、さまざまな人権侵害防止のための施策を講じておるところでございます。  先ほど来御議論いただきましたように、精神障害者は自己判断ができかねるとかいろいろ特性がございますので、それだけに一般病院とまた違った配慮が必要でございます。私どもは、この法律を機会に、より一層人権侵害防止に努めてまいりたいと思っております。
  212. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。  そういう意味におきましても、きょうは御本人そして御家族、身内、全く第三者的な立場でいろいろと御質問をさせていただきたいと思います。  この大和川病院を含む安田系三病院ですけれども、まず大和川病院の問題につきまして今までの経緯を御説明いただきたいと思います。
  213. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 大和川病院の問題につきましては、平成五年二月に病院内におきまして他の入院患者から暴行を受けたと思われる入院患者が八尾病院に転院後死亡した。この事件を契機といたしまして、大和川病院において入院患者の処遇に問題があるのではないかということが判明したわけであります。  この件につきましては、その後、大阪府におきまして実施いたしました立入検査で、まず任意入院患者に対する違法な退院制限があった、入院患者に対する違法な隔離があった、常勤の指定医が不在のままで医療保護入院を実施していた、医療保護入院に際して指定医の診察義務違反があった、このように精神保健福祉法に違反する人権侵害が発生しておりました。さらに、看護婦を水増しいたしまして診療報酬の不正請求を行っていたことも確認されたわけであります。  この問題に対応するために、大阪府は平成九年五月に、患者人権の確保とか常勤の精神保健指定医の確保等について本法によります改善命令を行いまして、同年八月には保険医療機関の取り消し処分、十月には病院の開設許可取り消し処分、このように経緯した状況でございます。
  214. 西川きよし

    西川きよし君 今回のこの大和川病院を含む安田系三病院の問題は、医療監視、病院指導のあり方、そして精神科救急医療体制の問題など、本当に多くのこういう課題が明らかにされたわけです。そうした中で、昨年の十一月に大阪府におきまして、安田系病院問題に対する大阪府の取り組みという報告書がまとめられております。  この報告書内容に沿って、厚生省考え方についてきょうはお伺いしたいと思うんですけれども、その前に一点、ただいまの御説明にもございましたが、平成五年二月二十二日に大和川病院入院患者の死亡事件が報道されたわけです。その年の六月、衆参における厚生委員会におきまして問題が取り上げられております。議事録も目を通させていただきましたが、その際、厚生省の御答弁では、大阪府が調査中でありますというお答えでございました。  その後の大阪府が報告された調査の内容というのはどういった内容であったのか、そして厚生省としてはどういうふうな対応をおとりになったのか、御答弁をお願いします。
  215. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 平成五年六月の御答弁でございますが、これに関しまして、大阪府におきましては、その翌月に立入検査を実施いたしました。入院患者二十八人分のカルテのチェック、それから入院患者の面接等を行っております。  その結果といたしまして、入院時の医師の診察がなかった者がいる、電話の使用制限がなされている、面会制限がなされている、指定医の署名のない十二時間以上の隔離が行われている、それから告知の書式が不適切あるいは書面告知がなされていないと思われるケースが多くあった、このように入院患者人権を擁護する観点から不適切な事項が確認されたということで、八月に厚生省に報告をされました。  厚生省といたしましては、この報告を受けまして、九月に大和川病院に対しまして医療保護・任意入院入院者の隔離などに関しまして改善指導を行いますとともに、病院から文書による改善計画を提出させ、期限を定めて当該計画の進捗状況を調査するよう大阪府に通知したところでございます。
  216. 西川きよし

    西川きよし君 この大阪府の報告書の中で、平成五年二月の大和川病院事件や大阪精神医療人権センターを初めとしまして、当事者の方や三病院の元従事者の方々の訴えなどを受けまして、同年九月の三病院統一医療監視を実施したわけです。さらに、三病院医療監視を実施したものの、虚偽の報告の発見に至らず、結果として有効な手だてを打てずに、府民の医療に対する信頼を揺るがせる事態を招いたことを真摯に受けとめ深く反省をしたところであると、このように書かれているわけです。  この三病院の統一医療監視は、厚生省、大阪府、大阪市で行われておるわけですけれども、この際の医療監視の結果、そして内容に対して厚生省としてはどういうふうに判断をされたのか、お伺いします。
  217. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 医療監視、これは医療法に基づいて実施されるものでございますが、御指摘の九月二十日におきまして、大阪府、大阪市が三病院に対して医療監視を実施いたしますとともに、厚生省と大阪府の合同で医療法人北錦会への立入検査を実施したところでございます。  お尋ねの統一医療監視につきましては、医療従事者の体制を確認するという視点から立入検査を行ったものでございまして、その時点の結果といたしましては、安田病院については看護婦五十名必要数のところ不足が十名、それから大阪円生病院については必要数六十七名のところ看護婦の不足が三名、大和川病院については、看護婦の必要数八十一名のところが不足二十二名、薬剤師が必要数三名のところが不足一名ということであったと承知しておりまして、この際は医療従事者の充足改善を指導するにとどまっているということでございます。  その後、大阪府、大阪市は数次にわたり医療監視を行ってきたわけでございますが、その都度、少なくとも表面的には医療従事者の配置状況改善されているという状況でありまして、先生指摘のとおり、重大な人員不足があるという認識を持つに至らなかった、残念な結果となってしまったというのが事実でございます。
  218. 西川きよし

    西川きよし君 この医療監視体制の問題ですけれども、報告書一つ目といたしましては、書類チェックが中心であった。医療従事者の確認に係る従来の医療監視が書類チェック中心であります。ですから、今回のようにあらゆる書類を偽造するなどされた場合に、この偽造の報告を見抜けなかった。  それから二つ目といたしましては、法制度上、医療従事者に対し直接報告を求めることができなかったということでございます。医療法においては、医療監視は病院の開設者または管理者に対して報告を求めることとなっております。健康保険法などのように従事者に対して直接報告を求め得る規定がないわけです。医療従事者に対する聞き取り調査ができなかった。その他関係機関等々との連携などの問題も書かれてあるわけですけれども、その中でも特にこの二点については、厚生省といたしましてはどういうふうにお考えでしょうか。
  219. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 安田病院事件につきましては、書類の改ざん、あるいは立入検査に際しまして極めて非協力的な対応がなされたというようなこともございまして、結果として迅速な対応がなし得なかったということは、これは極めて遺憾であるというふうに考えております。  こういった事件の経緯を踏まえまして、平成九年六月、医療監視の実施方法につきまして見直しを行うこととし、一つは、従来一病院につき年一回の医療監視の実施を指導してきたところでございますが、今後、特に問題のある病院については繰り返し医療監視を実施する。それからまた、系列病院につきましては同時進行的に、同時に医療監視を実施していく。それから、問題のある病院につきましては、保険当局、福祉当局との連携を密接にいたしまして、一斉監視を行う。それからさらに、必要に応じて病院職員本人への面接による個別確認を行っていく。また、関係書類を提出しない等、非協力的な病院については、医療法に基づいて司法当局に対して告発を行うということも考える。そういった対応を今後行っていくということで、都道府県にも通知いたし、徹底を図ってきているところでございます。
  220. 西川きよし

    西川きよし君 大阪府では、医療監視体制につきまして、今回のこの教訓を踏まえまして、医療法上適正を欠く疑いのある病院に対しては、事前に通知を行うことなく抜き打ちで医療監視を行うなど六項目の改正点を報告されているわけです。  また、医療制度改正に向けた国への要望でございますけれども、ここで四項目読ませていただきます。  ① 医療従事者に対する報告の徴収権限について医療法に明記すること。  ② 標準数に対し大幅に人員が不足している場合における改善命令等の権限を医療法に明記すること。  ③ 病院が保存している資料の複写権を明記するとともに、いわゆる抜き打ち検査においても必要書類が閲覧できるよう、医療監視に必要な書類の保存、常備等について法・施行令及び施行規則に詳細に規定すること。  ④ 医療機関医療監視に応じない場合、並びに報告の聴取についてその提出を怠った場合及び虚偽の報告を行った場合等の罰則の強化・充実。 こういうふうに書かれているわけですけれども、この四項目につきまして、厚生省としての御見解をお伺いしたいと思います。
  221. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) いわゆる安田病院事件につきましては、書類の改ざんや医療監視員による立入検査への非協力的な対応がなされたこともあって、迅速な対応が困難であったことは遺憾に考えているところでございます。  また、大阪府からの報告書に対しましては、指摘された事項について厚生省としても真剣に受けとめているところでございます。  具体的には、医療従事者に対する報告徴収権限の創設や資料の複写権、抜き打ち検査において必要な書類の保存、常備等に関する権限の強化につきましては、安田病院事件のようなケースに的確に対処するためには有効と認識をいたしております。しかし、これらは行政庁の権限強化ということにもなるわけでございまして、こういう方法しかないのかということもあって、実は権限強化というのはまた役人をふやして云々と、こういうことですから、そういう意味では慎重に対応すべきではないかという意見もありますので引き続き検討してまいりたい、このように思っております。  それから、医療法で定められておりますところの医療従事者の数について、不足人員の改善命令に関しましては、適正かつ良質な医療を確保する観点から、現在、医療審議会において審議を進めている医療提供体制の改革の中の一つの課題として検討を進めているところでございます。そのことは、昨年の十二月二十五日に医療審議会に厚生省医療法の改正についての議論のためのたたき台というのを出しておりまして、その中に明文化されております。  そして、医療監視等に応じない場合の対応に関しましては、安田病院事件においては虚偽報告を主な処分理由として、医療機関の開設許可の取り消し処分及び医療法人の設立認可取り消し処分が行われたところでありますが、さらに罰則の強化により対応することが適切かは、なお検討を要するものがあったと考えておるところであります。
  222. 西川きよし

    西川きよし君 本当に人権、虐待、死亡というところまで、こんな大きな事件になったわけですから、公務員の方がふえるようなことはまたそちらの方でよろしく御指導いただきたいと思うわけです。  次に、精神病院の実地指導上の問題点についてお伺いしたいと思います。  この点については、この報告書では、平成五年二月、大和川病院患者さんの死亡事件が報道されて、それ以降、入院患者の処遇の改善、代理人である弁護士さんへの面会の拒否等に対しまして、その都度、病院実地指導を繰り返し実施したところであるが、結果として有効な指導ができなかったことを真摯に受けとめ、深く反省したところである、こういうふうに記されております。  その上で、これまでの病院の実地指導の問題点、一つには精神保健福祉法に係る入院患者の処遇の基準、昭和六十三年四月八日の厚生省告示百二十八号から三十号を中心に繰り返し指導を行ってきたところであるが、改善指導のみにとどまり改善命令がなかったこと。また、病院に対して改善指導を繰り返している間、府民にその事実を公表してこなかったために、府民が病院情報を得ることができず不利益をこうむった。さらに、府庁職員のみによる原則年一回の実地指導だけでは、大阪府内六十の病院を対象ということで詳細な情報の収集体制となっていなかったこと。その他二項目を含めて五項目の問題が挙げられているわけです。  こういう調査報告書を見せていただいても、今の御答弁等々も、少し人員もふやしていただけたらというふうに思うわけですけれども、これも含めて厚生省のお考えを御答弁いただきたいと思います。
  223. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 大阪府が指摘いたしました五項目につきましてでございます。  まず、患者の処遇について繰り返し行ったけれども、法律上罰則規定がなくて効果が疑われたということから改善命令も発しなかった、こういうことでございました。  確かに、現行制度におきましては改善命令に罰則がないということから、いわば確信犯的な悪質な病院ということになりますと、仮に発動しても必ずしも実効性が上がらないということになりかねないわけであります。今回の改正案では、改善命令に従わない場合には、最終的な処分としては入院医療の制限命令を創設し、さらに罰則も創設するということで、実際上の効果を上げることができる仕組みへと変えることといたしております。  それから二番目に、改善指導を繰り返しているときに公表しなかった、そのことでいろんな情報が手に入れられなかったということが指摘されております。改善命令そのものにつきましては現在でも公表するという取り扱いをしておりますが、今回の大和川事件を踏まえまして、重大な違反があった場合には速やかに改善命令を行って処分するということで都道府県を指導しているところでございます。  また、本庁職員の苦情対応に限界がある、こういう御指摘がありました。確かに、本庁の職員の皆さん方は必ずしも専門性にたけていらっしゃるというわけでもないわけであります。一つには、今回の改正案で精神医療審査会の事務局を精神保健福祉センターに行わせることになっておりますが、そういうふうになれば、そこには専門性の高い職員がいるということで、こういった職務に携われるようになるんじゃないかということを期待いたしております。  また、年一回の実地指導では限界があるということでありますが、平成十年三月の厚生省関係局長通知におきまして、法律上適正を欠く等の疑いのある精神病院については、数度にわたる実地指導を行うよう指導したところでございます。  また、所管課との連携、特に医療法所管課との連携等についても御指摘がございました。これにつきましても、医療監視を行う際、あわせて実地指導を行うように十分な連携を図るよう指導をしたところでございます。  今回の大阪における御意見も踏まえながら、人権配慮した観点から、この法の運用に引き続き努めていきたいと考えております。
  224. 西川きよし

    西川きよし君 この問題については、大阪府が取り組んだ改正点として、例えば病院に対して改善指導を繰り返しても効果が見られない場合は速やかに改善命令を行い、その事実を公表する。また、入院患者さん等から苦情等があった場合、府庁職員のみならず地域保健所の職員が現場に駆けつける体制を構築する、こういう改正を行い、実地指導体制の強化を図るとしております。  さらに、国に対する要望、こちらも読み上げさせていただきます。  ① 精神医療審査会は、現在三つの会議体で運営しているが、この体制の強化のための委員定数の増、及び委員資格の見直しを図ること。  ② 精神病院管理者は、病院における精神医療の総括責任者であることから、精神保健指定医の資格取得の義務化を図ること。  ③ 入院患者人権の確保のため、処遇(特に、任意入院患者に対する。)基準について、具体的に明示すること。  ④ 改善命令を担保する罰則規定を法制化すること。 こういうふうに書かれておるわけですけれども、今回の改正案でこうした点もかなり反映されているとは思うわけですけれども、この項目について厚生省のお考えをお聞かせください。
  225. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 要望事項を大阪府からいただいたわけでありますけれども、その第一の、精神医療審査会体制強化のために定員数の増等について見直しをしてほしいという御指摘がございました。  今回の改正によりまして委員数の上限規定を撤廃することになりますので、地方の実情に応じた委員数にすることができるという点では患者さんの人権の確保に有効に機能し得るのではないかと思っております。  それから二番目に、精神病院の管理者が総括的主任者なんだから、精神保健指定医の資格を全員が取るべきだ、こういう御指摘もございました。ただ、総合病院なんかの場合には管理者が必ずしも精神科医ではないという場合もありますし、一律に対応することは困難だと思います。  ただ、今回の改正におきまして、精神病院の中で指定医の処遇確保のための努力義務を規定することになりました。これによりまして、管理者と精神保健指定医が協力して病院内での処遇の確保を図る、こういった対応が可能になるのではないかと思います。  三点目の、改善命令をしても担保する罰則規定がないので法制化してほしいという点につきましては、先ほども御説明申し上げましたけれども、改善命令に従わなかった場合には入院医療制限命令を創設する、あるいは罰則という担保をつけるというふうな対応をとることといたしております。
  226. 西川きよし

    西川きよし君 今回のこの反省点の中でも、改善命令は罰則規定がなく効果が疑われたので発しなかったと。  今回、三十八条の七第三項の運用については具体的にどういったケースが想像されるのか、もう一度改めてここでお伺いしておきたいと思います。
  227. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 新しく創設いたします法三十八条の七第三項に基づきます入院医療の制限命令でございますけれども、これは同条第一項及び第二項に規定いたします改善命令それから退院命令がございます。これらに従わないような悪質な精神病院について、精神障害者に対する入院医療の制限を命ずることができる、こういう内容でございます。  このような命令の対象となります具体的なケースということになりますと、まず改善計画を作成させるわけでありますが、改善計画を作成しない、それから作成した改善計画を履行しない、それから繰り返し改善命令をしても何らそれに従わない病院といったところを想定いたしております。
  228. 西川きよし

    西川きよし君 次に、もう時間がございませんので御答弁いただけないかもわかりませんけれども、この精神科救急医療体制、大和川病院の調査で判明した点ですけれども、これは平成三年十二月より開始したということでございますけれども、五〇%近くの入院患者が他府県を含む警察、消防、福祉機関からの依頼によって入院した。一部ではあるが薬物の使用などによる特別な配慮、そして民間二十八病院の当番制で一日六床確保、府内全体で年間約千四百人ぐらいの方が来られる、平成八年度でありますけれども、そういう取り扱いをしていた。当番病院の中には、満床であるから、指定医でないからというような事由で断るというようなことが多々あるそうです。  そして、こういうことも指摘されております。「大和川病院問題に関する日本精神病院協会提言」ですけれども、  病院医療や看護の質が一般水準よりたとえ低くあっても、行政の無理を聞いてくれる病院ということで、行政も安易にその実態を見逃したのではなかろうか、これが大和川病院のような事件が発生する背景となったと考えられる。また、行政も、公立病院が断り、民間病院も受け入れ困難な救急患者及び多様なニーズを持って入院を求めて来る患者などをいつでも引き受けてくれる民間病院を利用して来たともいえる。   さらに民間病院は、近年の開放医療を進める一方、精神科救急医療にも取り組んでいるものの、患者の受け入れには看護体制、隔離室数などの制約もあり、その結果、一部の病院に救急患者等が集中し、いびつな構造を作ってしまうこととなった。 というようなことも言われております。  これについて、もう一分しかありませんが、大臣、最後に一言いただいて終わりたいと思います。
  229. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、大和川病院事件についてるる詳細な項目にわたりまして御質問をいただきました。整理されておりまして、私も大変参考にさせていただきました。  今後、こうした経験を踏まえて、今指摘されたような救急医療体制の問題を含めまして、また病院の管理体制あり方を含めて本当に実効性のある、この精神保健福祉法精神にのっとった病院管理を行っていくように最大限努力をしてまいります。
  230. 堂本暁子

    堂本暁子君 先ほど、千葉委員が弁護士として十年前に精神衛生法の改正にかかわったとおっしゃいましたけれども、私もジャーナリストとしてかかわりまして、そして朝日委員は当時精神科医でいらっしゃいまして、今は小林健康政策局長ですけれども当時は小林精神保健課長ですよね。宇都宮病院の後の時期に、それぞれドクターであったり法律家でいらしたり、それから私はジャーナリストでしたし、課長は行政の方の立場で何とか日本の精神医療がよくなるようにという思いで、それぞれ違う立場で法改正にかかわったことを本当にきのうのことのように今思い出しておりました。当時、小林課長も本当に大変な御努力と苦労をなさったのも目の当たりに見ておりましたし、私もジュネーブの人権委員会まで出かけたり、日夜、朝日先生と会っていろいろ相談をしたりしたものです。  その当時、十年たってどうなるかということをどう考えていたかなと私は今改めて思っていたんですが、精神病院の中で、二十年、三十年とおられた方たちに出会って大変驚きまして、多分十年たったら半分ぐらいは地域に住んでいるようなことになるんじゃないかと思ったりもしたような気がいたします。とにかく、日本の精神病院の病床がどんどんがらがらにならなきゃいけないんじゃないかというのが実感で、当時ニューヨークへ参りましたときに、ニューヨークの州立病院はもう既にゴーストタウンみたいになって、ほとんどの方が地域での復帰をしていましたし、ドクターたちも町の中の診療所に移っておられた。イタリーとかフランスでも社会復帰地域がどんどんできていたのを思い出します。そして、日本も今それがスタートなのだとあの当時思いました。  それからちょうど十年たちまして、きょう、やはり今、今田部長は病床が多いから減らないのかというふうにおっしゃったんですが、もしかしたら現実は本当にそうなのかと私も改めて思いまして、当時の数字として三十二万人の入院患者がいらした。先ほども閉鎖棟、開放病棟は一体どうなっているかというような御質問も出ていましたけれども、それが今はもう三十三万人と、半減するどころか逆にふえている。  確かに、痴呆老人の病床もあるわけですからその事情がわからないではないですけれども、十年前に、朝日先生はどう思っていらっしゃるか、千葉先生はどう思っていらっしゃるか、それから課長はどう思っているか私はわかりませんけれども、少なくとも月に一度も二度も出会っては議論をし、そして話をしていたそれぞれが、十年たっても相変わらず三十万床の入院患者があると当時想像したのかということなんですね。何か内容的には、人権擁護の面では進んだような気もいたしますけれども、大変足踏みをしてしまっているのはこの病院の中の人数じゃないかと思います。  それで、外国では、病院を開放するというケネディ大統領の声明があって、アメリカは二万人ぐらいの大きい州立病院がどんどんあいていったわけです。そういったドラスチックな変化をしたアメリカに比べると、十年しこしことした厚生省の御努力も存じてはおりますけれども、やはりドラスチックな変わり方はしていないんじゃないかというような気持ちでおります。  質問に入らせていただきますけれども、そういった観点から、私は社会へ復帰することの手だてが足りないんじゃないかというふうに思いますので、きょうはそこに焦点を当てて、そして現場で今、当時出会った保健婦さんだとかケースワーカーさんだとかお医者さんだとか、いろんな方にも聞いてみましたけれども、十年前と同じような問題を相変わらず抱えているんだなというふうに思ったりもいたしました。  例えば、今回の改正で、精神障害者社会復帰の促進と、それから自立の促進のための精神障害者住宅支援事業というものも法改正の中に入れておられます。その中でスタッフのトレーニング、これは私はとても大事だと思いますけれども、精神を病む、あるいは疲れている方たちに関してどのように接するべきかということの知識、あるいは特別視しない、偏見を持たないというようなことでスタッフの養成がなされているのか、まずその点から伺いたいと思います。
  231. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神障害者に対しまして社会復帰施策あるいは地域福祉施策を進めるということに際しましては、それに携わる専門性のある人材の育成確保というものは不可欠であろうかと思います。  精神障害に関します専門的知識を持って、精神障害者社会復帰に向けて相談に応じるという位置づけで精神保健福祉士がございます。国家資格化を行いまして、先般合格発表をさせていただいたところでもございます。この精神保健福祉士の養成ということが、まさに精神障害者社会復帰に携わります方々全体の質の向上につながるのではないか、このように思っております。例えば、いわゆる精神科ソーシャルワーカーの方でありますとか、あるいは保健婦の方々、あるいは社会復帰施設の指導員の方々に、この資格を持っている方々が非常にいい影響を与えていただけるのではないか、このように思っております。  また、市町村におきまして、ホームヘルプ事業など、在宅福祉について市町村にお願いする事業がございます。これは、これまで必ずしも市町村で十分に対応できるそういうノウハウをお持ちでないわけでありますが、それを十四年から実施しようとしておりますけれども、今年度から訪問介護試行的事業というものを行いまして、つまりホームヘルプを先取りした形で試行していくということによりまして、精神障害者を訪問するホームヘルパーに対して講習をしていこうと。この場合にも当然保健所等のお力をおかりすることになるわけでございます。  また、法定化することにいたしました市町村による在宅福祉サービスの施行までの間に、これらにかかわります職員に対しまして研修を行うことといたしております。  このように本当に地域に密着した社会復帰対策を進めるということは、また逆に言えば、地域に密着した人たちにしっかりとそのノウハウを身につけていただくということにつながるのだと思います。そういう意味で、今後、この十四年の市町村への取り組みに間に合うように精いっぱいの努力をしていきたいと考えております。
  232. 堂本暁子

    堂本暁子君 先日、介護保険についても質問させていただきましたけれども、市町村におりるということで、相当財政的に市町村が心配していると申しますか、今まで国でやっていたことが市町村で果たしてできるのかというようなこともございます。そのことが一つ。  それからもう一つは、例えば精神障害者ケアマネジャーの制度をつくったらどうかというようなことはいかがでしょうか。  また、もう一つぜひお願いし、それからお答えいただきたいと思いますことは、実際そういう精神障害の方と一緒に働くということは大変に時間が、四六時中と言ってもいいと思います、夜中に電話がかかってきたりもするわけですから。そういった働く方の身分や待遇の保障がどれだけできているのか。よほど保障がないと、専門的な知識を持ったり、それからトレーニングされたスタッフがなかなか集まらない。  現場の声はもう本当にへとへとで、むしろサポートが欲しいのは働く側ですというふうな声が現場から出て、これはいつものことなんですが、相変わらずそういう声が強いです。本当に献身的に、ある程度自分の職業の領域を超えてお世話している保健婦さんやサポートの方や看護婦さんが多いと思いますので、その辺を厚くサポートしていただきたいということが三つ目の質問です。  その次に伺いたいのは、退院した方たちが行く共同作業所とか福祉工場といった社会福祉施設への予算を十分にとっていただきたいということです。そして、特に福祉工場のハードルをできるだけ低くしていただいて、地域にたくさんできるようなことができないか、そしてそのコーディネートを地域生活支援センターできちんと実施することができないかというような、以上の点について御答弁いただきたいと思います。
  233. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) まず初めに、精神障害者ケアマネジメント制度は検討できないのか、こういう御指摘でございます。精神障害者につきましては、対人関係がなかなかとりにくいというようなこともあって、本人のニーズに応じた支援がある意味では得にくい面もある、あるいはさまざまなサービスを有効に活用することに限界があるというような御意見もあるわけであります。  一方で、医療的なケアから地域ケアへというような流れの中で、地域ケアを分散化してやろう、あるいはリハビリテーション機能を多様化してやろうというような流れの中で、地域において複合的なニーズを抱えた精神障害者に対して在宅福祉サービス中心としたケアマネジメントを行う体制というものは、やっぱり必要性が高まってきているのではないかというふうに思います。  これらのことから、精神障害者のニーズを十分に把握しながら適切なサービスの利用につなげるということで、精神障害者ケアマネジメントに取り組むということで、今試行的事業に入っておるところでございます。これらを踏まえまして、御指摘精神障害者に対するケアマネジメントの理想的な、あるいは実効あるあり方というものについて少し検討してみたい、このように考えております。  それから、順序が逆になるかもしれませんが、社会復帰施設整備を促進するということで、福祉ホームあるいは福祉工場で本当によく働いていらっしゃる方々の処遇を改善するという御指摘でございます。  障害者福祉ホームでありますとか福祉工場、本当に量も十分でありませんけれども、そういう意味でもなお一層大事な社会復帰のための施策というふうに思っております。これは、障害者プランを踏まえまして計画的な整備を進めているところでありますけれども、これらの整備については、従来から整備費あるいは運営費等で国庫補助制度を設けております。  これらの運営費に対する補助でございますが、職員の人件費につきましては、国家公務員の勧告等を基礎に改定いたしておりまして、職員の処遇の改善には極力努めてきているところでもございます。これらの施設の運営が適正に行われるようにこれからも努力をしていきたいと思っております。  それから、社会福祉法人になれない小規模な民間事業者がいろいろ努力をしていただいている。こんなところに助成というか手を差し伸べられないのか、こういう御指摘かと思います。  NPOでありますとかボランティア団体、あるいは家族会なんかを中心として、地域に本当に根差した地域福祉の充実に貢献していらっしゃる、このように思うわけであります。  特に、小規模作業所につきましては、精神障害者の自立と社会参加という面から見てもかなり大きな役割を担っていらっしゃるのではないかとも思います。こういうことから、家族会等を中心にいたしまして地域に根差したそういう自主的取り組みをされている作業所に対して、運営費助成をこれまでも実施してきているところでございます。  この助成事業は昭和六十二年から実施しておりますけれども、補助先の計画的な拡大でありますとか、あるいは助成費の拡充を図ってまいりましたし、また地方交付税につきまして、都道府県分について交付税措置が講じられておりますし、平成十一年からは新たに市町村分についても交付税措置がされるというふうな予定となっております。
  234. 堂本暁子

    堂本暁子君 それで、いろいろな施策はあるんですが、諸外国と比べて一番日本での欠点というのはやはり縦割りだと思います。厚生省の中でもいろいろ縦割りになっている。ましてや、それがまた別の省庁の中だとさらに縦割りになっている。なかなかそこに、人間の方は一人きりなんですが、AさんならAさんという一人の人であるにもかかわらず、ばらばら事件が起こってしまって統一した一つの流れにならない。  アメリカなんかのケースで見ますと本当に一貫性がある。例えば就労のノーマライゼーションというようなことでも、医療から福祉、教育訓練、雇用といった一つの流れがあるわけです。日本は、医療社会復帰地域というようにみんなばらばらになっている。どうしてもここのところを、一貫性のあるものをぜひ実行していただいて、モデルをつくっていただいて、そしてそのモデルをまた全国に広げるというようなことをやっていただけたらいいんじゃないかというふうに思っています。  きょうは労働省にもおいでいただきましたけれども、その辺のところで省の壁を越えて、やはり精神障害者社会参加、特に雇用の促進ということが必要だと思います。結局、退院できないのは、地域で住むだけではなくて、働く場がないということのためかと思います。  それで、労働省が管轄していらっしゃる雇用支援センターとそれから地域生活支援センター、この機能を、統合とか相互乗り入れとかして連携的な体制をつくることがとても大事だろうというふうに思っています。ことしの四月からテスト的に全国十カ所でやっていらっしゃるそうですけれども、これをぜひ推進していただきたいということで、厚生省、労働省両方に御答弁いただきたいと思います。
  235. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働省におきましても障害者の雇用対策につきましては古くから取り組んでいるわけでありますが、知的障害者それから精神障害者については、大変まだまだ対策がおくれている分野だというふうに思っております。特に知的障害の方につきましては、法律改正によりまして、雇用率の算定基礎にも知的障害者を加えるということで、昨年から雇用率も一・六から一・八%へというふうに上げてまいりましたけれども、精神障害者についてはまだまだこれからというのが実情でございます。  特に精神障害者の方につきましては、雇用を進める上でも、生活面での援助ということとあわせてやりませんとなかなかこれは進まないというような状況にあるかと思います。今、委員指摘のように、平成十一年度からは厚生省、労働省共同いたしまして、生活支援あるいは就業支援を両方一体になって全国十カ所ぐらいで試みにこれを始めてみようというようなことで取り組んでおりますので、ぜひこれをうまく成功させまして、本格的な施行ということに向けて進んでいきたいというふうに思っております。
  236. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 先ほど労働省の方から御説明があったとおりでございますが、そういった視点から、この障害者の就業・生活支援センターの設置につきまして、厚生省としても大いにこれを活用できるように協力して推進を図っていきたいと考えております。
  237. 堂本暁子

    堂本暁子君 労働省にさらにお願いしたいんですけれども、雇用のあっせんというところまではなさる。しかし、その後のフォローアップですね、やはり職業を続けていくということがとても大事だと思うんです。そういうフォローアップが、例えば、とかく外国の話になって恐縮なんですが、ニューヨークの場合でも、最初は二時間、それから半日というような仕事について、そのときに、半分ボランティアですけれども、ニューヨーク市からある程度のお金もアルバイトにしては出ているんですが、必ず一人のメンバーの方をずっとフォローして、自立してフルタイムで働けるまで、二年であったり三年であったり、もっと短い場合もあるんですが、フォローしている。  日本でもやっぱり、単にあっせんだけではなくて、それから後ずっと無事に仕事を続けられるような、そういうフォローアップが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  238. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) まだまだ数が少ないのでございますけれども、障害者雇用支援センターを全国で現在二十二カ所設置しておりまして、ここにおきましてはボランティアの方も登録いたしまして、精神障害者の方、知的障害者の方がうまく就職できまして、そのアフターケアといいますか、職場に定着というふうなことでこのボランティアの方の力もかりながら、例えば通勤を一緒に行くとか、あるいはお昼休みには電話をかけて様子を聞いてみるとか、そういったことの取り組みはしておりますが、まだまだ大変取り組みも少ない、数も少ないということでございますから、こういったことはさらに充実して、本当に精神障害者の方も職場にきちんと定着できるというふうなサポートをしていくことが必要じゃないかというふうに考えております。
  239. 堂本暁子

    堂本暁子君 ぜひともよろしくそこをお願いしたいと思うんです。特に、長いこと入院した後ですと、あっせんだけではとても仕事がなかなか続かないというケースも多いと思いますので、実際にちゃんと職業の場で、また時には休まなきゃならないようなときも出てきますけれども、それでもまた復帰できるというようなところまで丁寧なフォローをぜひ、これは両省でしょうけれども、労働、厚生両省でやっていただきたいというお願いをしておきます。  あと、復帰後のトレーニング、それからケアを行う、こういったところについてもぜひ、先ほどNPO、NGOのお話がありましたけれども、民間の参与と申しますか、それも積極的に活用していただきたいというふうに思っています。  次に、一番困るのが住宅の問題なんです。住宅の問題について伺いたいと思いますけれども、グループホームが全国で六百カ所あるというふうに聞いています。しかし、グループホームというのは働いていないと入っていてはいけない。ところが、精神障害の方は、働き続けたり、それからぐあいが悪くなったりということがありますので、やはりそこの住宅をどういうふうにするかということが非常に問題ではないかということを思います。  ですから、働いている方が入っていて、できるだけそこに安定感が持てるような住宅を確保できるようなことが大事かと思いますけれども、これは厚生省に伺います。
  240. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) グループホームにつきましては、その目的が、一定程度の自活能力があって、就労している者に対しての日常生活上の援助を行う事業、このように位置づけているわけでございます。したがいまして、そういう位置づけで見ますと、このグループホームにおける就労要件を外したらどうかということにつきましては、やはりグループホームの運営全体の支障も考えられることから、適切ではないのではないかと思っております。
  241. 堂本暁子

    堂本暁子君 今おっしゃったのは、働いていないとグループホームには入れないということですか。
  242. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 就労している者に対する日常生活上の援助を行うという性格で位置づけているということでございます。
  243. 堂本暁子

    堂本暁子君 普通の人でも、別に障害者とか病気とかでなくても例えば一年ぐらい仕事を休まなきゃならないようなときがあって、そういうときに、さあ引っ越しなさいと言われても、精神障害の方は本当に困ると思います。家族にも受け入れてもらえないということもいっぱいあるし、経済的にも大変貧しい方が多いし、そういった場合に、はい、あなたは仕事に行かなくなったからどこかへ引っ越しなさいと言われても、権利金も、それから事によったら障害者であるがゆえに借りるお部屋とかアパートすらもないというように、路頭に迷うと思うんです。  そういった意味では、それが条件のグループホームということで、日本の法律というのは非常に厳密に運用なさるんですが、人間の方は、特に精神の問題を抱えている方は、そんな厳密に運用されたら大変に困ってしまう局面が、仕事の場面でもそれから住居の場面でも出てきます。その辺を今後工夫していただきたいと思います。  次の質問です。今度は援護寮の問題ですが、とかくこういった援護寮も、ほとんどが医療機関に併設されています。でも、自立するためには、やはりドクターからの自立というのもあるんです。病院からの解放はイコール、ドクターからの解放。国立の医療センターで、武蔵野でアパートに住んでいた方が、いつでもおふろに入りに来なさい、御飯を食べに来なさいと病院の方で開放していましたけれども、いらっしゃらないわけです。どうして行かないんだと言ったら、病院の門の中に入るのが嫌だと言って、缶詰の缶ばかりいっぱい積んであったのを今でも覚えています。  医療機関に併設されているということは、ある意味でいえば完全にそこから解放されていないという場合があって、そのことを気にしない方もあるかもしれません、むしろ病院に近い方がいいと思う方もあるかもしれませんが、やはり病院でのつらい思い出を持っている方もあるわけです。そういった人はできれば病院の外で自立したい。そういった場合に、市町村あるいは民間で援護寮がつくれるようなハードルの低さというのも必要なんじゃないか。あるいは予算も必要である。  介護保険の場合の高齢者に対しては対応できるけれども、それ以外の障害者についてはなかなかできないというような状況に今あります。グループホームの方がそういった限定的である以上は多様な選択ができるような施策が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  244. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 先ほどの就労の要件でございますが、この就労というのは、福祉的就労ということもそれで列記をしておりますので、例えば、仕事はやめたけれども福祉工場へ行くとかあるいは授産施設に通うといった場合には、当然それも就労の一形態という理解で、運用上の弾力化を図っていないわけではございません。  それから、いろんな福祉サービスを行ってくれる施設病院のそばにあるということで、ある面で地域性を失ってしまうんじゃないかという御意見があるのも十分私ども承知をいたしております。身体障害でありますとか知的障害も同じようにそういう考え方があるわけです。ただ、精神障害の場合は、治療を継続するというまた別の負担といえばいいんでしょうか、そういう面もあって、医療機関との連携をどうとるかという問題も一方で視野に置きながら物を考えていかなきゃならないと思います。  基本的には、やはりそれぞれの病院から離れた地域地域に一番近いところでそういった福祉サービス整備できるような、そういう意味も含めて今回、市町村にそういう在宅福祉主体を置いたという意図もございますので、その辺を踏まえて、今後も地域福祉の充実には努力をしていきたいと思います。
  245. 堂本暁子

    堂本暁子君 今度、精神障害者の対人サービスを、今おっしゃったように市町村が担うことになるわけですけれども、地域でのプランの実践とか、それからそういったものを保健所責任を持ってやるようにしてほしいという声も地域から上がっていますが、これについてはいかがでしょうか。
  246. 今田寛睦

    説明員今田寛睦君) 精神障害の皆さん方にどういう接し方をしたらいいかとか、あるいはどういう窓口で対応すればいいかという意味では、本当に今まで必ずしも十分な経験を踏んでいらっしゃらない市町村方々あるいはホームヘルパーの方々がいらっしゃる。そういった方々に対する後押しといいますかノウハウ提供、こういったことについては、やはり保健所が一番そのノウハウを持っていると思います。したがって、保健所地域精神障害者社会復帰のために、あるいは地域福祉のためにこれまで以上に活躍していただかなければならないという意味においては、先生指摘のとおりだと思います。  一方で、地域生活支援センターというものを医療圏の中に二つ程度整備しようということで障害者プランで計画を立てておりますけれども、そこもまた同じように、保健所あるいは精神保健福祉センターあるいは市町村と一緒になっていろんな相談を受けていこうという仕組みをつくることといたしております。  したがって、保健所とどのような連携をとるかという具体的な点につきましては、まだ成案があるわけではございませんが、何はともあれ、保健所のお力をかりるということがなければこれから地域精神障害者を支えるということにはならないんだ、そういう考え方でこれからも都道府県の方にも御指導申し上げたいというふうに思います。
  247. 堂本暁子

    堂本暁子君 時間になりましたので終わらせていただきますが、最後に大臣に、病院の中も大事なんですが、十年たってみまして、頭で申し上げたように、むしろ病院の外、地域でもって本当に精神障害の方が豊かに自分らしく生きられない限り、私は幸福にならないと思います。  呉秀三さんという精神科医が、昔、初めて精神科を日本の大学につくったときに、この病を得たる不幸のほかにこの国に生まれたるの不幸と言ったその言葉は、私は今も変わっていないと思うんです。日本のバロメーターというのは、精神障害という言葉も私は余り好きじゃございませんが、そういったいろんな悩みや病や疲れを持った方たちがいかに幸福にそれぞれの地域で生きられるかということが、この国が本当の意味で世界のすぐれた国と評価されるか否かと。それは仕事の面でも同じだというふうに思っております。  最後に大臣のその点についての御所見を伺って、終わらせていただきます。
  248. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員からいろいろこの施策あり方について御指摘がありました。  特に、縦割りはやめて総合化したらどうかとかいう御指摘もございましたが、私も大体そんな感じを持っております。つまり、施策がそれぞれ単発的でありますとなかなか効果は発揮できませんので、一例を申しますと、精神障害、それから身体障害あるいは知的障害、こういうものを総合化して対応するということも必要です。  また、受け皿の方でも、官だけが主導してやるということではないはずなので、これは御指摘のとおりでありまして、私ども、民間の力、ボランティアの力等もかりて全国民的な基盤を広げていくことが重要だと考えております。それは例えば、社会福祉法人も今厳格な要件のもとでしかできませんが、もっと簡易な方式で、これは介護とも関係いたしますけれども、受け皿を容易につくれるようにして、しかも、厳格な福祉法人には助成が行くけれどもそれ以下は行かないという区別があるわけですから、そういう助成措置を前提とする限り、もう少し簡易な方法で、ボランタリーの人たちも参加してそういう活動を総合的にできるような多様化した受け皿が必要だと思います。  今御議論をいただいておりますように、社会復帰施設として、あるいは地域対策として、いろいろの法定化された施設を私ども今度の改革でも追加をいたしておりますけれども、この運用については、今申しましたような多様な受け皿としてこれを利用していきませんと、箇所数を限定して、そしてその箇所数の配分というようなことでありますと、私もいささか驚いているんですが、例えば生活訓練施設だったら三百カ所とか、授産施設だったら四百カ所とか、福祉ホームだと三百カ所、福祉工場に至っては五十九カ所ですか、というようなことでありますと、これは全国的に配置を見た場合に極めて微々たる存在になります。  ですから、こういう入れ物がつくられた以上、もうちょっと受け皿を多様化してそれを活用できるような基盤をつくり、国も、税金を使う話でありますから有効に使わなければなりませんけれども、層を厚くしていくということが委員指摘されたような問題の解決につながる、こう私は思っております。
  249. 堂本暁子

    堂本暁子君 どうもありがとうございました。
  250. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時三十一分散会