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1999-03-15 第145回国会 参議院 国民福祉委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十五日(月曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  三月十日     辞任         補欠選任      堂本 暁子君     椎名 素夫君  三月十一日     辞任         補欠選任      松崎 俊久君     北澤 俊美君      椎名 素夫君     堂本 暁子君  三月十二日     辞任         補欠選任      北澤 俊美君     松崎 俊久君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         尾辻 秀久君     理 事                 清水嘉与子君                 常田 享詳君                 朝日 俊弘君                 渡辺 孝男君                 小池  晃君     委 員                 久野 恒一君                 塩崎 恭久君                 武見 敬三君                 中原  爽君                 水島  裕君                 櫻井  充君                 直嶋 正行君                 堀  利和君                 松崎 俊久君                 沢 たまき君                 井上 美代君                 清水 澄子君                 入澤  肇君                 堂本 暁子君                 西川きよし君    国務大臣        厚生大臣     宮下 創平君    政府委員        環境庁大気保全        局長       廣瀬  省君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        厚生省社会・援        護局長      炭谷  茂君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        厚生大臣官房障        害保健福祉部長  今田 寛睦君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部障害者雇        用対策課長    村木 厚子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付)、平成十一年度特別会計予算内閣提出  、衆議院送付)、平成十一年度政府関係機関予  算(内閣提出衆議院送付)について  (厚生省所管及び環境衛生金融公庫)     ─────────────
  2. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。  去る十日、予算委員会から、十二日から十六日正午までの間、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管及び環境衛生金融公庫について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  予算説明につきましては既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 中原爽

    中原爽君 それでは、お時間のこともありますので早速始めさせていただきます。  平成九年八月以来、医療保険制度医療提供体制抜本改正につきましては、与党及び政府から改革基本方針が示されたところであります。また、関係審議会も改組、転換を図りまして、医療保険福祉審議会が新たに設置された経緯があります。  この改革基本というのは四点ございまして、診療報酬体系、それから薬価基準制度、それと医療提供体制最後高齢者医療制度、この四点のおのおのについての見直しを行う、こういうことでございました。現在この改革検討が進められているわけでありますけれども、この四つの改革見直しというのは個別に独立したものではないわけでありまして、相互に関係があって、いわば同時進行するということが必要であります。  また、この中で薬価基準制度につきましては、既に医療保険福祉審議会から平成十年の十月には見直しに関する作業チーム報告書が出されましたし、ことし一月には薬剤給付あり方についての意見書が取りまとめられたところであります。また、この意見書あるいは取りまとめにつきましては、薬価基準制度の新たないろいろな試案が提示されたところでありますけれども、その中で薬価改定について薬剤定価給付基準額制という方式が、いわゆるたたき台ということで特に提示されているわけであります。  本日は、この薬剤定価給付基準額制について細かい各論的なことの御質問を申し上げて、相対的にこの方式の概要が浮かんでくればというふうに思っているところであります。  それで、早速ですが、この薬剤定価給付基準額制ということにつきましては、公的な薬価基準を決めるという方式についていろいろ説明が加えられております。一つは、同一グループ内の全薬剤に係る医薬品卸医療機関等への納入価格、すなわち前年の納入価格加重平均値消費税率損耗経費率を掛けるということで算定をする、これが同一グループの全医薬品についてという方式であります。もう一つありまして、個別医薬品について製薬企業主体的な判断、すなわち企業届け出価格に基づきまして薬剤定価の全国一律のものを設定するということであります。要するに、同一グループ内というものと個別薬剤というものについておのおの価格市場平均あるいは企業届け出価格を出しまして、そのどちらかの低い額を基本的に保険給付にするんだ、こういう御説明でございます。  それで、この保険給付基準額を超える部分については患者さんに全額負担をしていただくということでありますし、下回る部分については二割あるいは三割の一部の定率負担をする、こういう方式だそうであります。  これは、いわゆるドイツ型と言っておりましたこの制度と少し違っておりまして、要は同一グループ内の全医薬品という方式個別薬剤方式、この二つを出しまして低い方を給付基準にしていくということでありますが、この方式について二つ方式のどちらか一方、低額のものを取り入れるということについては何か意味があるのかどうか、それと現在損耗経費率というものが、本来中医協でお決めになることであろうかと思いますが、このあたり考え方について、簡単で結構でございますから御説明いただきたいと思います。
  4. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 薬価制度改革につきましては、先生指摘のとおり、現在、審議会意見書をちょうだいいたしまして、これを踏まえまして、与党など関係方面の御意見というものを検討しながら、具体案の作成に向け検討中の段階でございます。したがいまして、そのようなこととして、たたき台としてお示しをしましたものの考え方についても、そういう段階のものとしてお聞き取りを願えればというふうに思います。  今回、こういったたたき台あるいは意見書が出ました背景といたしましては、やはり現在の、いろいろなゆがみを生じ、また医療費の効率という面からも問題を生じております薬価差、こういったものをできるだけ解消していき、同じような効果のある薬であればその中でできるだけ安いものが選択をされる、それを患者主体選択によって、患者の意向というものが反映された形での選択という形の中でされていく、そういう制度を目指そうということでのお話でございます。  具体的に今、委員指摘ございました意見書の、出す意見として取り上げられました薬剤定価給付基準額制考え方は、基本的には個々に設定をされます薬剤定価に基づきまして保険給付を行うわけでありますけれども、やはり臨床上、それによりまして同等効果がある薬剤グループごと給付基準額を設定いたしまして、その給付基準額を上回る薬剤定価のものについては定率負担とは別に患者負担が生じるという格好にいたしております。また、給付基準額以下のものについては、定率負担があることによるある種のコスト意識、またそこに競争というような世界ができるということでありますけれども、給付金額を上回る薬剤定価のものについて定率負担とは別に患者負担が生じるという形になっておりますので、そのことの効果によりまして、同じような効果のあるものであればより安価な使用が促進されるということをねらったものでございます。  また、今、損耗経費等状況についてのお尋ねがございました。  この定価制をあれします場合の流通経費あるいは損耗経費といったようなものにつきましては、御指摘ございましたように、今後の中医協審議の中で具体的な検討がされるべき事項でございますけれども、現在の状況で申し上げますと、損耗経費率についてはまだ調査というようなものの段階に至っておりません。流通経費につきましては、日本医薬品卸業連合会調べによりますと約一〇%というような調べができておるところでございます。
  5. 中原爽

    中原爽君 ありがとうございました。  公定価格を上回る、超えた部分について、患者さんの自己負担分でありますけれども、これについてはこういうふうに書いてあります。薬剤定価給付基準額制度がねらいとする質と価格による患者主体薬剤選択を妨げるおそれがある場合には、緊急の措置として保険収載を取り消すというような文章がございます。要するに、患者負担分が余り過度になるという意味合いであれば保険収載あるいはこの価格そのものを取り消す、こういう意味だろうと思います。  しかし、患者側から言いますと、いい薬であるということと御自分が負担される価格との割合で、できれば安くていい薬がいいということになりますし、製薬企業から言えば、これは自信がある大変いい薬だということでこの価格を設定したい、こういうふうに相反したことが起こるわけであります。  この意味で、緊急措置を決めるという基準、これを少しお聞かせいただきまして、またこの部分はいわゆる混合診療だというふうに言われておりますが、このあたりのところの御説明を、簡単で結構でございますので、あわせてお願いいたします。
  6. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 薬剤定価から一定幅以上乖離が生じた薬につきましては、緊急措置として、先生今お挙げになりましたような薬剤公定価格世界に戻してしまう、あるいは保険収載を取り消すというようなことをいわば制度の手段として組み込んでおくということについての考え方でございますが、これにつきましては、製薬企業等医療機関への販売価格といいますものが、薬剤定価から一定幅以上、通常の流通経費というようなもので想定しております範囲を超えまして乖離をしておるというような医薬品につきましては、緊急措置としてまず薬剤定価を公定するということにするわけであります。そして、それがなお是正をされない場合には、保険収載を取り消すということもなし得るというような世界をつくるということでございます。  この措置趣旨でありますけれども、医療機関への販売価格薬剤定価が大きく乖離をしております場合には、現在の薬価差によります薬剤販売と同様の状態、つまり薬価差の弊害というものがもろに新制度の中でも出てくるというようなことになり得ますので、こういったことを防止しまして、せっかく先ほど申し上げましたような薬剤定価制ということで、いわば製薬メーカーの自主的な申告によりまして、それがまた適正な価格を反映するという形の中で運営をされるということの趣旨が没却するようなことになってはまずうございますから、そういったことを防ぐためのいわば担保措置としてこのような措置の提案がなされているというふうに考えております。  それから、混合診療になるんではないかという点があわせてお尋ねがございました。  私ども、現在、医療保険の建前としましては、同一の診療において保険診療自由診療とが自由に組み合わされるというようなことについては原則としてこれをとっておらないところでございます。しかし、高度先進医療というような形で非常に高度先進的な医療を受ける場合、あるいは特別病室に入るというような場合につきましては、医療サービス基本的な部分につきましては医療保険で賄いまして、その他の部分については患者同意のもとに医療機関が特別な料金患者から徴収できるという、いわゆる特定療養費制度を導入していることは御案内のとおりでございます。  今回、薬価給付基準額を設定いたしまして、その臨床上の同等性を有する薬剤グループ薬剤による標準的な医療を保障するということにするわけでありますけれども、その標準的な医療に係る費用である給付基準額を超えるような高額な医薬品につきましては、必要な情報提供を受けた患者同意のもとに、つまり患者としてはそれ以外の同一グループの薬を選択するという選択の余地があるわけでありますから、そういった同意のもとに医療機関が特別な料金患者から徴収するという点で、混合診療ということではございますけれども今までの特定療養費制度と同様の、いわばその延長線上の制度であるというふうに位置づけることができます。  したがいまして、この制度を提案しているということが、即混合診療につきまして、従来の考え方を変えまして、これを大幅に拡大していくことのいわば一つの突破口というようなことを考えているわけではないということを申し上げさせていただきたいと存じます。
  7. 中原爽

    中原爽君 ありがとうございました。  この混合診療という言葉が現在ひとり歩きをしているような気がいたしますので、お聞きをいたしました。  それで、今お話がありました薬価差益を解消するということが必要でありますし、外国では特に外来診療において、薬剤の投与につきましては完全医薬分業を実施する、それと入院についてはいわゆる償還払いのような形をとるということが多いようでございまして、そういう意味医療機関、特に医療担当者医師歯科医師側にとっての薬価差益が生じないという方式をとりたい、こういうことをやっているようであります。  この医薬分業の、特に外来診療についての状況の御報告を御説明いただきまして、さらに特定療養費という形で飛び出た部分を処理していくということと、医薬分業状況、それとそのあたり分業ということについての、外来主体にするのか、あるいは入院も含めていろいろ考え方があるわけでございますけれども、概略で結構でございますから、行政側の御説明をいただきたいと思います。  あわせて、この薬価制度改革が特に重点項目であるということでございますので、最後宮下厚生大臣の御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  8. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) それでは、私からまず医薬分業の点につきましてお答えをさせていただきたいと思います。  医薬分業につきましては、経営主体が異なる個々の独立した機関でございます医療機関薬局という二つ主体が、これにかかわることによりまして薬剤重複投薬でありますとかあるいは飲み合わせ等に関しまして、いわば二重にチェックをするということによりまして副作用を防止するなど医薬品適正使用推進する、そういう観点からこれまで厚生省としてもその推進に努めてきたところでございます。今ちょっと手元に具体的な数字をあれしておりませんが、二十数%に既に及んでおるというふうに承知をいたしております。  委員指摘ございましたように、医療機関医師が処方を行いまして、これを薬局において調剤するということになりますと、薬価差による不必要な薬剤多用あるいは高い薬価薬剤使用するという点に関しましては、まさに現在薬価制度改革ということで意図しています点が、そういういわば薬価差によるゆがみというふうに申し上げておったような事項についてのいわばインセンティブというものは、医療機関サイドからは少なくとも生じないということにはなるわけであります。  そういったことで抑制はされていくというふうに思いますけれども、当然、医薬分業を進めるための条件整備基盤整備といったようなこともあわせてやっておかないと、一挙に進めて無理やりやっていくというような性格のものではございませんので、そういった意味では、いわゆる医薬分業推進には当然そのための基盤整備というものが相伴わなければならないということで、それはそれなりに時間と手間暇のかかってくる事柄であろうというふうに思います。  また、入院医療等につきましては、依然としてやはり院内での重複投薬というようなことも当然あり得ることでございますので、そういった意味合いにおいて、今回の薬価制度改革医薬分業が今後推進をされるにしましても、やはり薬価制度改革改革として進めていく必要があるであろうというふうに考えているところでございます。
  9. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回の医療保険改革の中で、薬価基準制度見直しというのは大変重要な、大きなポイントになる課題でございます。  現在、薬価差益があるとか、あるいは診療報酬出来高払いを中心にいたしておるというようなこと、あるいは情報コスト意識がなかなか不足しておるというようなことに原因がございますが、こういった薬剤の不必要な多用、あるいは高薬価シフトを惹起しやすい仕組みとなっておるというのは御指摘のとおりでございまして、その是正が緊急の課題であると思っております。  厚生省では、ただいま御議論いただきましたように、現在、医療保険福祉審議会意見書が出ておりますので、この意見書を踏まえまして関係者意見も聞きながら具体的な制度改正案を鋭意検討しているところでございます。この制度改正の具体的なあり方につきましては関係者の間でさまざまな意見のあることもこれは事実でございまして、私どもとしては、その意見の集約、調整をしなければならないと思っておりますが、平成十二年度からの実施に向けまして関係者の合意が得られるよう最大限努力してまいる所存でございます。
  10. 中原爽

    中原爽君 ありがとうございました。  終わります。
  11. 常田享詳

    常田享詳君 自民党の常田享詳でございます。  まず、冒頭にお願いしておきます。私に与えられた時間は四十分まででございますので、そのことも御勘案いただいて簡潔なる御答弁をいただきたいと思います。  ただいま中原先生の方から医薬分業について取り上げていただきました。今まさに薬剤師に対する役割が年々重視されております。それは、今、局長からもお答えをいただいたとおりであります。ところが、それらのことと全く相反するような状況が今起ころうとしておりますので、急遽この問題を取り上げさせていただきます。  薬学教育六年制の問題であります。私は、この問題につきましては、以前の旧厚生委員会でも取り上げさせていただきました。  そもそも薬剤師養成あり方については、平成六年六月、厚生省薬剤師養成問題検討委員会から国家試験受験資格を六カ月以上の実務研修を含む六年教育を受けた者に与えるとの最終意見が出されているにもかかわらず、その後、具体的な作業が遅々として進んでいないわけであります。検討委員会最終意見が出されてから既に五年が経過しております。冒頭に申し上げましたように、医薬品薬剤師を取り巻く大きな環境の変化などもあり、私は近年ますます薬学教育六年制実現必要性が高まっていると感じております。  一方、文部省は、学校教育法を今国会改正して、優秀な大学生にいわゆる飛び級を認めると聞いております。私もその趣旨には大賛成であります。もっとも、特定教育分野では飛び級が相ふさわしくないものもあり、医学教育歯学教育はもちろん飛び級の対象外となっています。ところが、薬学教育だけは当初は飛び級の対象となっていたのであります。つまり、薬学教育六年制についての熱心な議論が続いているにもかかわらず、文部省学校教育法改正により現行四年制の薬学教育すら実質三年制に短縮しようとしたわけであります。  そこで、文部省及び厚生省薬学教育についてどのような御理解をされているのか、また医療職種としての薬剤師社会的役割についてどのような御認識をお持ちなのか、改めて順次お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、文部省お尋ねをいたします。  飛び級により薬学教育実質三年制を導入するのであれば、薬剤師という職能のあり方に極めて大きな影響を与えることは明白であります。ところが、文部省は、風聞するところ、薬学飛び級が及ぼす影響について関係者へのヒアリングアンケート調査事前に全く行っておりません。しかも、薬剤師国家試験あり方薬剤師社会的役割についても何ら検討せず、厚生省にも抜き打ち的に法案を持っていったと聞いております。  そこで確認させていただきます。文部省は、学校教育法改正による飛び級が薬学教育に及ぼす影響について、事前薬科大学大学薬学部関係者ヒアリングアンケート調査を行いましたか。また、現場の薬剤師に及ぼす影響について事前に日本薬剤師会や日本病院薬剤師会ヒアリングアンケート調査を行いましたか。国会には私を含めて衆参七名の薬剤師国会議員がおりますが、その方々の意見を聞きましたか。薬剤師国家試験あり方薬剤師社会的役割について事前厚生省に相談をして十分に意見を聞きましたか。  以上四点について、簡潔にお答えいただきたい。
  12. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 今回の学校教育法等の一部を改正する法律案は、昨年十月の大学審議会答申を受けて、御指摘早期卒業措置を含め、大学制度弾力化国立大学組織運営体制改革を一体的に行おうとするものでございます。  この審議会答申につきましては、大学全般にかかわるものであるため、大学関係者関係団体等広く意見を伺ったところでございますが、特に薬学教育に係る関係者に個別に意見を伺うことはいたしておりません。
  13. 常田享詳

    常田享詳君 今の答弁が実態であります。時間がありませんので次に進みますが、許しがたい文部省の姿勢だということをまず冒頭に申し上げておきたいと思っております。  文部省に引き続きお伺いいたします。  二月二日の衆議院予算委員会におきまして、薬学教育六年制の実現を求める大野由利子議員質問に対して、有馬文部大臣は「薬学教育の充実について、教育年限の延長も視野に入れつつ、引き続き検討してまいりたい」と御答弁されました。  ところが、その御答弁から一カ月もたたないうちに、まさに舌の根も乾かぬうちに、文部省は薬学飛び級による三年制を強引に導入しようとしたのであります。このような矛盾は、文部省薬学教育そのものを軽視し、薬学教育六年制が省内で真剣に議論されていない現状を図らずも露呈したということであります。  文部省は、薬学教育重要性薬剤師の果たしている社会的役割についてどのように認識されているのか。また、先般の衆議院における大野議員肥田議員意見を無視するかのような独善的なやり方に対してみずから反省する部分がないのか。以上二点、簡潔にお願いいたします。
  14. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 早期卒業の例外措置でございますが、この制度は、大学の修業年限は四年という原則は維持した上で、大学の責任ある事業運営と厳格な成績評価を前提として、特に早期卒業の希望を持ち、すぐれた成績で卒業に必要な単位数を修めた者についてのみ適用される極めて例外的な措置でございます。したがいまして、薬学など各分野ごとの取り扱いについては、あらかじめ個別の検討というものは事実上文部省としても行っておるわけでございます。  したがいまして、通常の法案協議におきまして、厚生省を含む関係省庁との協議を行った上で、各省庁からは必要に応じ関係団体の意見等を踏まえて所要の調整が行われ、国会に提出されるという運びになるわけでございますが、その段階において、文部省といたしましては、各方面からの意見も踏まえつつ、国家資格との関係などにより多くの授業科目が必要となっていること、また実習の占める割合が多く、今日の社会のニーズとしても修業年限の延長を視野に入れた実習期間の延長を中心とした教育の充実が必要とされている、そういう薬学教育の実態ということを踏まえて対応を考えているところでございます。  御指摘いただきましたように、今日、医薬品の安全かつ適正な使用を促進する上で薬剤師の果たす役割というのはますます重要になってきております。このような中で、薬学教育においては、医療の担い手としての自覚を持ち、医療チームの一員として患者に接するとともに、高度の専門的知識を持って適切な情報提供することのできる薬剤師を養成することがますます重要であると認識しておるところでございます。これを踏まえまして、文部省としても各大学における学部段階での医療薬学や実習を重視した抜本的なカリキュラム改革推進するとともに、薬学系大学院の量的、質的整備を進めているところでございます。
  15. 常田享詳

    常田享詳君 大野議員肥田議員意見を無視するかのごとき独善的なやり方に対する反省ということについては、今後積極的に進めていくということをもって、不満ではありますけれども、答弁を受けておきたいと思います。  文部省に引き続きお伺いいたします。  現在、欧米先進国では薬学教育六年制または五年制の国がほとんどであります。また、東南アジア諸国でもほとんどの国が六年制または五年制の薬学教育を実施しております。あるいはその実現が間近であります。世界的に見ても四年制は日本と韓国ぐらいであります。韓国も既に六年制実現に動き出しております。世界的に臨床薬学、医療薬学が重視され、薬剤師の活動領域が拡大しております。そして、薬学教育については六年制あるいは五年制がグローバルスタンダードとなっているのが現実であります。そのような中で、日本だけが四年制の薬学教育に固執し続けているのであります。  しかも、世界的な傾向に逆行するかのように、先ほど来申し上げているように、文部省は三年制の薬学教育すら導入しようとしたのであります。学術面での国際的整合性、薬剤師教育におけるグローバルスタンダードという点から、世界の中で日本だけが薬学教育四年制に固執し続けている現状について何ら問題点はないのか、文部省にお伺いいたします。
  16. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 先ほども申し上げましたとおり、薬学教育重要性、しかも今日的課題を踏まえた改善充実の必要性ということについては、文部省としても強く認識をし、また各大学に対して所要の対応をお願いしておるところでございます。  その場合、薬学教育の年限でございますが、これにつきましては、薬剤師を初めとする薬学関連の人材の養成に当たってどのような教育内容が求められるかを基本とし、必要な教育を行うための条件整備状況、あるいは医療現場の需要動向等を勘案しつつ検討をしなければならないと思っておるわけでございます。その際、御指摘いただきました諸外国における薬学教育の修業年限についても参考にしながら検討する必要があるというふうに考えておるところでございます。  この問題につきましては、実務実習の受け入れ体制や大学院の収容能力等の問題があることから、今後とも必要な条件整備を図りつつ、六年制を含む修業年限の延長の問題につきまして、関係者と十分協議しながら検討を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  17. 常田享詳

    常田享詳君 必要なことを整備しながら順次進めていくなんということは何年も前からおっしゃっているんですよ。それが一向に進まないからこういうことを指摘しているわけであります。  有馬文部大臣は、つい先月の衆議院予算委員会で、先ほど申し上げました大野先生や肥田先生質問に対して、薬学教育六年制の実現について「学部カリキュラムの改革や大学院の整備を充実することをまず推進しなければいかぬ」と答弁されております。ところが、この答弁は、平成九年一月の参議院本会議での山本正和先生に対する当時の小杉文部大臣の答弁と全く同じ答弁なんです。つまり、大臣答弁だけを聞いていっても、この二年間、文部省は全く何もしていないんです。今、局長がおっしゃったことと全く違うんです。何もしていないんです。  それでは聞きますけれども、この二年の間に文部省はいつの時点でどのような学部カリキュラムの改革を行ったのか。また、薬学系大学院について、いつのどの時点でどのような整備充実を進めたのか。以上二点、簡単に具体的に話してください。
  18. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 文部省といたしましては、薬学部におけるカリキュラムについてでございますが、平成八年三月に薬学教育の改善に関する調査研究協力者会議の最終まとめが出ております。そこでモデルカリキュラムというのが示されておるわけでございますが、それを参考としながら、各大学において、臨床薬学教育の重視、実務実習の充実などの視点に基づいて改善充実を図るよう促しておるところでございます。  また、病院等での実務実習につきましては、国公私立の薬科大学、薬学部、薬剤師会等関係団体で構成される薬学教育協議会が受け入れ先の調整等に当たっているところでございまして、文部省といたしましても、各国公私立大学附属病院に対し薬学部生の積極的な受け入れを要請するなど、このような取り組みを支援しておるところでございます。  これを受けまして、各大学では薬学教育の改善充実に向けて積極的な取り組みを行っておるところでございまして、例えば広島大学の例で申しますと、臨床薬学教育の強化充実の観点から、平成八年から新たに臨床薬動学、薬剤治療学などの科目を開設し、さらに昨年十月からは四年次生全員に対し三週間の病院実習、一週間の薬局実習を課しているところでございます。  また、薬学系大学院の整備についてでございますが、平成八年度以降、平成十一年度予定を含めまして国公私立大学合わせて二十大学で臨床薬学系を中心としてその拡充整備を行いまして、合計四百二人の入学定員の増が図られておるところでございます。この結果、平成十一年度の入学定員は千七百七十三人となっておるところでございます。
  19. 常田享詳

    常田享詳君 そういうたまたまやっているようなところを引っ張り出して、やっておりますなんということを聞きたいわけじゃないんです。大もとのところで、いつどの時点で薬学教育を六年制に持っていくかということをきちんと決めて、それに基づいて大学院の問題とかカリキュラムの問題をやろうという姿勢がないということを私は指摘しているわけであります。  厚生省お尋ねいたします。  現在、医療関係者審議会の議論を経て、医師については二年、歯科医師については一年の研修義務を実施する予定と聞いております。ところが、薬剤師については現在その養成のあり方について真剣な議論を行う場がありません。薬剤師養成問題懇談会、いわゆる四者懇も開催されておりますけれども、残念ながら全く形骸化しているのが現状であります。  また、先ほど中原先生がおっしゃっていただきましたけれども、医療制度の抜本改革についても薬剤師の存在はほとんど忘れ去られたままであります。医療提供体制見直しの議論が進められておりますその中で、まことに私は残念至極であります。  厚生省は、これまでの国会答弁薬学教育六年制の実現に前向きな答弁をされてまいりましたが、もし本当に積極的に取り組む気があるならば、今の医療改革、そして医薬分業のさらなる推進、そして病院薬剤師等の職務の拡充等あわせ考えるときに、薬事審議会薬剤師あり方に関する部会を設けて審議する等の積極的な前進ある取り組みが必要と考えますが、いかがでございましょうか。
  20. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 薬剤師の養成のあり方につきましては、平成八年度より、文部省厚生省、それから薬剤師会、病院薬剤師会の四者による薬剤師養成問題懇談会を設けまして、六年制移行に係る諸課題を含め、病院でのあるいは薬局での実務実習の充実方策、大学院修士課程の充実方策等について幅広く検討を進めてきているところでございます。  先ほど先生からもいろいろ御指摘ございましたように、さらにこれを具体化するべく、この懇談会に国公立あるいは私立の大学薬学部あるいは薬科大学関係者にも入っていただき、六年制を含む修業年限のあり方について検討を進めていこうという方向で文部省との間で私ども合意をいたしておるところでございます。  私どもといたしましては、そうした大学関係者も含まれた懇談会の場におきまして具体的な方向あるいはどのように課題を解決していくかということを検討いたしまして、その上で今後の方策につき、先生御提案のようなやり方もあろうかと思いますけれども検討をしていきたい、かように考えておるところでございます。
  21. 常田享詳

    常田享詳君 厚生省検討する検討するというのはもう随分昔から、私が参議院に出させていただいた三年半前から、もっとその前から検討する検討するとおっしゃる。まだそのころは、厚生省文部省と違って二〇〇〇年までに六年制については方向性を出すんだと。二〇〇〇年というのは来年ですよ。ところが、今の局長の御答弁を聞きますと、これからさらに検討していく検討していくと。厚生省さえ後ろ向きになっている。  ところが、薬剤師に求められているものは医療改革の中で従来とは全く違うぐらい重要になっている。薬に関するいろんな事件やいろんな問題が多発しているじゃないですか。だから、世界の国々も薬学教育を充実させて、医師や歯科医師や看護婦さんや、そういった医療に携わる者の質をより充実させて、国民のためにより高いレベルの医療提供しようとしている。そのための教育を一生懸命やろうとしているんじゃないですか。日本だけじゃないですか、こんなことをやっているのは。  私は、最後厚生大臣お尋ねいたします。  厚生大臣にこの質問をさせていただくのは初めてであります。厚生大臣は、かねてから医療の質を高めていかなければならない、そのための医療制度改革なんだということをおっしゃっておられます。  ただいまの議論を聞いていただきます中で、この問題は厚生省だけで解決できる問題ではありません。文部省とあわせてやらなきゃならない問題でありますが、やはり文部省考え方を変えていただくのは、医療制度の中で薬剤師役割が随分変わってきている、質を高めるためには教育の中身を変えなきゃいけない、それはもう一日も早くやらなきゃいけないということを強く厚生大臣の指導のもとで文部省を引っ張っていただかない限り、これまた五年十年たっても世界からおくれていく。もう明白にそういう状況にあるわけであります。  どうか厚生大臣の前向きな御答弁をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  22. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 薬剤師の皆さんが医薬分業の担い手として、また病院における本当に専門家としてその職務を十分果たしていかなければなりませんし、委員の御指摘のように医療保険の中で重要な役割を担っていただいておるわけでございます。  平成六年の厚生省薬剤師養成問題検討委員会報告書というのがありまして、今御指摘のとおり二〇〇〇年までに今世紀中の大学の新入生に対して新しい受験資格を適用することまで決めて発表しているわけでございますが、委員の御指摘のようにこれが遅々として進んでいないという現状は率直に認めざるを得ません。  今後、委員の御指摘のように、今また局長答弁されましたように、薬剤師養成問題懇談会という場もございますので、そういった場を通じてスピードアップして議論をしていただいて、医療保険制度の中で重要な役割を果たしていただいておるわけですから何らかの結論を出していきたい。もちろん、薬剤師先生方も、医師、歯科医師あるいは獣医師の方々は飛び級を免除されておりますが、薬剤師の方といえども六年制が議論されているときに飛び級をやるというのはこれはもう全く考えられないことでございますから、そういうことのないようにして、なるべくスピードを上げて結論を出すように努力をさせていただきます。
  23. 常田享詳

    常田享詳君 終わります。
  24. 堀利和

    ○堀利和君 現在、中央省庁等改革推進本部のもとで国の省庁に関する改革が進められておりまして、一月二十六日にも大綱が出されたわけです。私も二十一世紀に向けて国の行政のあり方、あるいはそことの関係での地方行政のあり方、大きな改革というのは進めなきゃならないと思っております。  そこで、厚生省としての仕事を見るときに、もちろん現在も少子高齢社会でありますし、二十一世紀にはそれがさらに進むわけです。そういうことを考えますと、当然行政改革はしなきゃならない。あるいは地方分権ということで国の仕事を地方に移す必要もありますし、一層の効率化も必要です。そういう流れの中ではありますけれども、私は厚生省の仕事というのは国民生活にとって大変重要な役割を、そして国民の期待というものを負っていると思います。  中央省庁の行政改革の流れの予定を見ましても、二十一世紀には厚生省と労働省が一緒になる、労働福祉省というようなことも想定されているわけですから、そういう観点からいいますと、国民の生活、そしてさらには雇用という政策が一緒になるわけでして、そういう意味では国民が安心して暮らせる、あるいは老後の心配がないように、あるいは失業の不安がないように、そういう点でも今後の厚生省の仕事を見ても、労働省と一緒になる上で二十一世紀はまさに一大政策官庁というふうに私は見ておるのです。  その点、人と財源というものは適切に、必要なところは必要なところにきちっとしなきゃならぬと思いますけれども、この辺について大臣の御所見と御決意をまずお伺いしたいと思います。
  25. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員の御指摘のように、厚生省、労働省の業務分野は国民生活と密着いたしておりまして、大変重要な分野でございます。そしてまた、二十一世紀におきまして少子高齢化を迎えながら、その中で一大政策官庁であるという御指摘もごもっともで、同感でございます。  私どもとしては、この両省の合併によりまして、本当に社会福祉や社会保障あるいは公衆衛生等、従来やっておる厚生行政と、それから労働者の福祉あるいは職業の安定、雇用問題、これを一体的なものとしてとらえて、やはり国民生活の向上のために本当に大きな役割を果たさなければならないと思っております。  特にまた障害者の問題につきましては、福祉政策と障害者の雇用問題、これが別々に行われているような実態が今度は一体として行われることになりますので、そういった面を含めまして厚生行政と労働行政との一体的な連携強化に努めてまいる所存でございます。
  26. 堀利和

    ○堀利和君 そこで、こういう形で大改革が予定される中で、現在やはり障害者施策が進められておるところで少し不安を私は感じております。  つまり、改革の中で、現在障害保健福祉部というのが官房のもとにあります。平成八年七月一日からこういう組織改革をされたわけですけれども、それまではいわゆる身体、知的、精神等の三つの障害が三局三課に分かれておりまして、私も以前予算委員会等でも、今後、地域福祉サービスとして総合的に行われる、あるいは場合によっては高齢者福祉と連携を強めなければならない、そんなときに厚生省の頭の方が三つに分かれていたのではとても二十一世紀に対応できないということで、私自身できれば障害保健福祉局というものを期待したのですけれども、大臣官房のもとに部ということで落ちついたわけです。  そういう経過もある中で、今度の改革の流れを見ますと、どうも社会・援護局の方に障害保健福祉部が移るようだというふうにも聞いております。そうなりますと、果たして障害者保健福祉施策の推進に当たって、その機能、役割というものがどうなっていくのだろうかということを私は大変心配するわけですけれども、その辺の今後の障害保健福祉に対する機能、そして部としての位置づけはどうなるか、お伺いしたいと思います。
  27. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 委員指摘のように、現在の障害保健福祉部は、従来三局にまたがって所掌しておりました障害者に対する保健福祉施策を一体的かつ強力に推進するということで、従来の関係組織を統合して新しく設置されましたのが八年の七月であったわけであります。  この障害保健福祉部設置後におきましては、障害者プランに基づきまして、身体障害、知的障害、精神障害の施策につきまして、それぞれの施策の連携あるいは整合性に留意しながら推進いたしますとともに、平成八年の十月からは、障害者関係いたします三審議会がございますが、この三審議会を合同で審議するための企画分科会を設置しまして、今後の障害保健福祉施策のあり方全般について審議を進めていただくといったふうに、障害者保健福祉施策の総合的な推進に努めてきたところであります。  このように総合的な推進を図っております障害者の保健福祉に関する事務につきましては、本年一月に決定されました中央省庁等改革に係る大綱におきまして、新省の組織整理後の社会・援護局、まだ仮称ではございますが、この社会・援護局の所掌事務として位置づけられることとなっております。  新たな省の官房あるいは各局における具体的な所掌事務については、大綱に基づきまして、今後その範囲を明確にする作業が行われることになるわけでありますけれども、障害者の保健福祉施策については、今後とも身体障害、知的障害、精神障害に関する施策が一体的、総合的に推進されるべく、そういった組織体として機能する必要があると考えておるところでございます。
  28. 堀利和

    ○堀利和君 障害といいましても、その障害の種別によっては具体的な施策も違ってくるわけですし、そういう意味では個別な充実した施策が必要だと思います。  ただ、やはり何といっても障害保健福祉という施策は総合的かつまた一体的に実施されなければならないわけでして、そういう意味では大臣官房のもとにある現在の障害保健福祉部が、組織改革のもとで言うなれば力が弱まるとか機能が低下するということであってはならないと思いますので、その点は今後の二十一世紀に向けて力強い施策が打ち出せるような組織改革を改めてお願いしておきたいと思います。  次に、先ほど大臣の御答弁にも労働省との一体化、合同される中で雇用の問題が指摘されておりましたけれども、行政はとかく縦割りということが言われまして、今後、労働福祉省ということになれば、障害保健福祉の施策と職安行政としての障害者の雇用対策というこの縦を、今度は横の連携、つながりというものを強めた総合的な福祉と雇用ということが求められるんだろうと思うんです。  国の方でも、厚生省、労働省の方でも、平成十一年度、十二年度の施策を見ますと、障害者の就業・生活拠点づくりということで、モデル事業ですけれども、これが厚生省、労働省の協力のもとに実施されるようになっております。そういう意味でも、やはり障害者の福祉と雇用、この辺の横の連携ということについて一層強めていただきたい。  労働省の方にもたびたび申し上げてはおるんですけれども、厚生省のサイドから労働省に対しましてその辺のところを御協力いただくような形で進めていただきたいと思うんですけれども、改めて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  29. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 保健福祉施策と雇用施策を一体的に推進するという必要性は、今後ますます重要な課題になってくるだろうと存じます。今度の省庁の再編におきましても、そういった視点を踏まえながら保健福祉施策と雇用施策を一体的に推進されるように体制を整えていかなければならないと存じております。  今、委員が御指摘のように、十一年度予算厚生省と労働省が連携をいたしまして、障害者の就業・生活支援の拠点づくりという試行的モデル事業を実施いたしましたのも、今までこれは例のないやり方でございますけれども、今後の両省の一体化という先取りとしてこういうことが行われているんだろうと私は見ております。今後、障害者の保健福祉施策と雇用施策がさらに一体的に推進されますように関係部局の密接な連携、協力が必要ではなかろうかと思いますので、その方向で努力をさせていただくつもりでございます。
  30. 堀利和

    ○堀利和君 その辺のところ、ぜひよろしくお願いしたいと思います。せっかく厚生省と労働省が一体になるわけですので、そのメリットを生かすといいますか、二十一世紀に向けた施策として、一緒になってよかったなと国民なりあるいは障害者自身が思えるようにぜひ前向きに御努力を改めてお願い申し上げたいと思います。  次に、同じくこの中央省庁の改革のもとで、一月に出された大綱を見ましても多くの審議会を廃止するというふうに出されております。もちろん、余りここの段階審議会の存続なり廃止について云々するというのも差し控えなきゃならないかと思うんですけれども、ただどうしても障害者施策を総合的に推進する上で、現在障害者基本法に基づいて設置されている中央障害者施策推進協議会、事務局が厚生省にございますが、これも廃止の対象になるんですね。この中央障害者施策推進協議会というのは、それなりに審議会としては非常に重要な役割、機能を備えております。  まずその辺について、障害者基本法に基づいた中央障害者施策推進協議会の役割、機能について御説明をいただきたいと思います。
  31. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 中央障害者施策推進協議会につきましては、障害者基本法第二十七条に基づきまして厚生省に設置されております審議会でございます。  その事務に関しましては、まず障害者基本計画の案について審議をする、それから障害者に関する基本的、総合的な施策の樹立について必要な事項調査審議する、それから第三番目に障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要するものに関する基本事項について調査審議することとされております。また、中央障害者施策推進協議会は、これらの事項に関しまして、内閣総理大臣、厚生大臣を初め関係各大臣に意見を述べることができる、このようにされております。  中央障害者施策推進協議会は、保健福祉施策のみならず、障害者に関する総合的な施策の推進関係する行政機関相互の連絡調整を要する施策に関しまして調査審議し、意見を述べる機関、このように位置づけられております。
  32. 堀利和

    ○堀利和君 従来ですと、障害者の問題は厚生省だと。もちろん労働省、文部省ございますけれども、何かと障害者の問題になると厚生省だというふうに言われてきたわけですけれども、この国際障害者年、障害者の十年の推進の今日では、やはり障害者の施策等は決して厚生省だけではない。もちろん厚生省が第一義的に重要だと思いますけれども、各省庁にまたがる施策を講じていかなきゃならない。障害者という一人の社会人が社会に参加するわけですので、決して保健福祉だけの分野にとどまることではないわけです。そういうところがこの障害者基本法の意義であり、そしてそれを具体的に推進していくための審議会としての中央障害者施策推進協議会だろうと思います。  御説明になったように、基本法の二十七条ではその辺のところがきちんと位置づけられておりまして、例えば中央障害者施策推進協議会の委員には各省庁の職員も委員になると、しなきゃならぬというふうになっているわけですね。各省庁から審議会委員として位置づけられている。このことから見ても、単に厚生省一省庁の審議会ではないというふうに、先ほどの御説明どおりだと思っております。  そういう意味で、これが万が一改革という中で廃止されたらどうなるんだろうか、障害者施策が総合的に、社会参加としての施策が進まないんじゃないかということで非常に不安に思っております。  私は、できれば本来この審議会、協議会は総理府に置くべきだろうというふうに認識しております。昭和六十年、国の委任事務等の整理の中でもともと総理府にあったものが厚生省の方に移されたというふうにも聞いておりますので、本来、総理府に置いて総合的にやるべきかと思っております。それはさまざまな行政の事情もあろうかと思います。仮に厚生省に残すとしても、この審議会としての協議会を単独として、できれば独立した形で残すべきではないだろうかと思いますし、それが無理であればまた何らかの方策を講じてでもこの機能、役割というのを残さない限り、障害者の総合的な施策は基本法に基づいて進むことはできないのだろうと思っております。  その辺のことについて、大臣にこの審議会としての協議会の役割、機能の重要性を御認識いただいて、ぜひ何らかの形でその機能、役割が低下しないような御努力をいただきたいと思いますけれども、大臣、どうでしょうか。
  33. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 中央省庁等改革に係る大綱におきましても審議会の整理合理化が打ち出されておりまして、百十八審議会くらいを統合、廃止することになっております。  この審議会の整理合理化につきましては、廃止の対象となる審議会につきましてなお存続が必要な機能は十分考えられますので、そういった必要のある審議機能、これは引き続き存置される審議会で機能を果たしていただくことが重要だということも大綱で指摘されております。  中央省庁等改革推進本部において今現在具体的に検討を進めておるところでございますが、私ども厚生省としては、障害者に関する総合的な施策の推進について調査審議する中央障害者施策推進協議会の機能は、今御指摘のように引き続き極めて必要であるというように考えておりますし、また障害者関係団体が意見を表明する場としても重要であり、関係各省の調整の場としても大きな機能を果たしておりますので、こういった趣旨を踏まえながら、存置される審議会のいずれかの中に中央障害者施策推進協議会の機能が取り込まれて設置されるように努力してまいることをお誓い申し上げておきます。
  34. 堀利和

    ○堀利和君 今回の改革は、厚生省一省庁だけではなく政府全体での国の行政改革ですから、なかなか思うようには望み得ないところもあろうかと思います。ただ、大臣が今御答弁されたように、機能を低下させない、存続するような形での何らかの方策はとっていただけるようでございますので安心もいたしました。ぜひこの障害者基本法に基づいて総合的な施策を、やはりその中核となるのは厚生省でもございますので、ぜひ前向きに大臣の御努力を重ねてお願い申し上げたいと思います。  次に、今後の障害者制度の根本的な基礎的な改革というものが厚生省の方でも準備されております。中でも、戦後長きにわたって進められてきた措置制度というものが、今後障害者施策についても利用契約型というふうに進むような形で厚生省が準備されているわけです。  そこでまず、障害者プランについてお伺いしたいと思います。  障害者プランは平成七年の十二月に策定されたわけですけれども、このときの保健福祉に関する数値は、私なりに言わせていただければ、平成三年の障害者の実態調査、あるいは現在もそうですけれども措置制度であるわけです。措置制度というのは行政処分ですから、これだけの方々にはこれだけの提供量、質を用意するということでかなり計画的に、ある意味では計算されてきちんと需給バランスが合うようにするわけです。そういう措置制度のもとで、かつ前々回の実態調査等に基づいて策定された障害者プランのまず数値の算出根拠について改めてお伺いしたいと思います。
  35. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 障害者プランにつきましては、平成七年に障害者の自立と社会参加を目指した障害者施策に関する重点施策の実施計画ということで策定されたものであります。  厚生省の担当いたします保健福祉施策の分野のうちで、ホームヘルパーの増員でありますとかあるいは社会福祉施設の整備などの数値目標につきましては、委員指摘のように、平成三年の身体障害者実態調査調査結果等をもとに、全国レベルの身体障害者のニーズを推計したものでございます。
  36. 堀利和

    ○堀利和君 だとしますと、つまり前々回ですから一つ古い実態調査になるわけで、その当時の障害者数、総数も四百数十万ですか、今回、平成八年の実態調査では五百数十万ということで百万弱ふえているわけです。精神障害者の数、あるいは身体で言えば内部障害者等、あるいは知的障害者もわずかにふえているわけです。そういう意味では、ホームヘルパーの数一つとっても、障害者数の少ないときをもとに数値目標が立てられているわけです。ですから、やはり直近の実態調査に基づいた提供数、ヘルパーならヘルパーの数というのが私は必要だと思うんです。  さらに、今後の行政処分としての措置制度から利用契約型、つまり当事者の選択ということを考えたときには、ある程度余裕を持ったといいますか、十分な提供量あるいは質が必要だと思うんです。そういう意味では、私はこの障害者プランの保健福祉の数値目標については、見直すかあるいは二〇〇二年まで待たないで一年でも前倒しするかしなければならないと思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。
  37. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 障害者プランの見直しにつきましては、障害者プランの中で述べられておりますけれども、進捗状況を定期的にフォローアップし、社会経済情勢の変化、関連制度・法令の改正、市町村障害者計画の策定状況等を踏まえ、必要に応じ見直しを行うこと、このようにされているわけでございます。  現在、厚生省におきましては、障害者プラン関係の保健福祉施策の推進状況につきまして、これを把握するために都道府県等を通じて調査を行っているところでございます。また、障害者プラン推進のかなめでございます市町村障害者計画の策定状況を見てみますと、平成十年度末現在で全市町村の約五四%の策定率が見込まれております。全市町村における早期策定を実現するために、平成十一年度の予算案では、都道府県が管下の市町村の障害者計画策定を支援するための障害保健福祉圏域計画推進事業を創設するなど、ともかく市町村障害者計画の策定について強力な支援を行うことが必要ではないか、このように考えております。  したがいまして、障害者プランにつきましては、これら進捗状況の把握はもちろんでございますけれども、何よりもまずその数値目標の着実なる達成が肝要ではないか、このように考えておる次第であります。
  38. 堀利和

    ○堀利和君 確かに厚生省、国の方で数値を高めたり量をふやしても、実際に実施するところは市町村でありますから、市町村が数値目標を実施するだけの準備ができていなければこれは確かにうまく進まないわけですし、たとえその数値を決めても絵にかいたもちになってしまう。これは十分わかります。  市町村計画も、今御説明あったように、この三月末で五四%、半分をちょっと超える程度しか策定できていない、進んでいないわけです。そういうことは確かにわかるんですが、進捗状況を見ながらというのではなくて、もう一歩進めて、市町村には確かに御無理申し上げることになるかもしれないけれども、一年前倒しでもしながら、国としてはやはり何とか都道府県の協力を得ながら実施し、進めていく。そうしないと、厚生省として予定されている二〇〇二年、三年でしょうか、措置から利用契約型への障害者の福祉制度も、名目上選択利用型になったけれども実質提供量、提供施設が足りないということでうまくいかないんじゃないかと思っておりますので、その辺は自治体、市町村からむしろ厳しい声を逆に厚生省が受けるかもしれないけれども、何とかそれは国として、厚生省としてぜひ御努力願いたいと思います。  次に、社会福祉基礎構造改革の流れの中で、御説明を受けたところによりますと、地域福祉計画というのがございました。この中身については私自身まだよく理解していないわけです。今後進める上で厚生省としてどれだけこの計画の中身を吟味されているかもわからないものですから、まずこの地域福祉計画とは何ぞやということをお聞きしたい。  同時に、老人保健福祉計画が全国の市町村にあります。障害者の場合ですと市町村計画は半分を超える程度なんですが、既存のそれぞれの計画と地域福祉計画とはどんなふうな関係になるのか、御説明いただければと思います。
  39. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 今、先生が御指摘されましたように、現在、社会福祉の基礎構造改革検討を進めております。その中の一つの柱に、我が国で大変おくれております地域福祉の確立というものを一つのねらいにいたしております。現在、個人の自立をした生活を総合的に支援するためには、公的なサービスのみならず、住民による福祉活動と相まって行うということが重要でございます。これらによって地域における総合的な福祉サービスが確保されるだろうというふうに思っておりますが、このようなために都道府県及び市町村にそれぞれ地域福祉計画を作成していただくということを検討いたしているわけでございます。  既に先進的な都道府県、市町村におきましては、このような地域福祉計画を定めているところがございます。そして、かなり成果が上がっております。したがいまして、社会福祉の関係者の方々にはこのような計画というものを全国的に策定するべきだという声も強く上がっているわけでございます。  計画の中身といたしましては、高齢者、障害者などの個々の計画に基づいての福祉サービスの供給体制を整備するという内容、またこれらの施策を効率的にまた総合的に進めていくという観点から、権利擁護とか苦情解決とかまた情報を開示するというような地域における利用者保護の仕組みの整備促進のあり方、また地域住民の自主的な活動と公的なサービスの連携の強化、また保健、医療、福祉の連携のあり方というような地域福祉の確立にとって必要な事項を盛り込んでいこうというふうに考えているわけでございます。  そこで、先生がただいま御指摘されました、既に策定されている老人保健福祉計画、また半分近く制定されております障害者の計画など他の計画との関係でございますけれども、私どもといたしましてはそれらの計画を生かしながら、と申しますのは、例えば既に計画ができているところについては改めてその分野について地域福祉計画でつくるというのは地方自治体にとっては二重の手間ということもございますから、あくまでこれは地方自治体の自主的な御判断ということになろうかと思いますけれども、その二重の手間というものをできるだけ回避しながら、またそれを既存の計画を生かしながら進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  40. 堀利和

    ○堀利和君 そうしますと、老人保健福祉計画はこれは義務づけですべて策定されていますけれども、障害者の市町村計画については半分程度ということになりますと、この地域福祉計画の中に単独では計画できない障害者の計画を盛り込んでいくような形ということも想定されるんでしょうか。そして同時に、地域福祉計画は義務づけであるのかないのか、その辺もちょっとお伺いしたいと思います。
  41. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) どのように地域福祉計画と障害者の計画との関係をするかにつきましては、基本的には地方自治体の御判断にお任せしようかなというふうな方向で考えておりますけれども、仮にその市町村に基本法に基づく障害者の計画がない場合につきましては、やはり地域福祉計画の中で障害者の分も策定していただかなければいけないだろうというふうに考えております。  また、地域福祉計画の策定のあり方、今、先生は義務づけというようなこともおっしゃいましたけれども、これについては現在私どもも検討しているところでございます。私どもの、私自身の気持ちといたしましては、全地方公共団体につくっていただきたい、またその方が望ましいだろうというふうに考えておりますけれども、いろいろな計画との関係というものを踏まえまして現在検討しているところでございます。
  42. 堀利和

    ○堀利和君 わかりました。今後の展開ということですので、私自身もまた関心を持って成り行きを見守らせていただきたいと思います。  次に、高知日赤病院で行われました臓器提供の問題について質問させていただきますけれども、臓器提供をされたドナー本人の御冥福と御家族に対してのお悔やみをまず心から申し上げておきたいと思います。  臓器移植法が施行されて初めてのケースですから、いろいろ予期せぬ事態も当然起こってくるだろうということは認めざるを得ないと思うのでございます。そこで、法に基づいて施行規則なりあるいはガイドラインというものもあるわけですけれども、ガイドラインを見る限りでは、本当に病院の現場できちんと人権に根差したドナーの御家族の意思、プライバシー、そういった意味でもきちんとなされていくことができるかどうか、ガイドラインについて言えば私は非常に不十分だと思っているんです。そういう意味では、もっと具体的な現場におけるマニュアルというものが必要ではないのだろうかと思います。  そういう意味で、その辺のマニュアルというのがあるのか、厚生省として用意されているのかどうかお伺いしたいし、同時に、今回高知日赤で行われたことにつきまして、厚生省がこの法律の施行について予想されていたような形で果たして進められたのかどうか、お伺いしたいと思います。  本日の午後、この件に関して、病院とコーディネーターのネットワークと厚生省とでその経過についての公表があるというふうにも伺っておりますけれども、その当日ではございますけれども、今申し上げたことをちょっとお伺いしたいと思います。
  43. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 脳死下での臓器提供に関する手続につきましては、御指摘のガイドラインのほかに、平成九年度の厚生科学研究の報告書といたしまして「脳死した者の身体からの臓器の提供に関する標準的手順」というものがまとめられておるところでございます。この手順書は、臨床的に脳死と診断した場合の対応から移植実施後に至るまでの一連の手続におきまして、臓器提供施設、移植実施施設、コーディネーター等の関係者の具体的な対応につきまして、ガイドラインを補足する形で記載しているところでございます。厚生省といたしましては、この手順書につきましては既に各臓器提供施設に対しまして送付し、周知を図っていたところでございます。  そこで、御指摘の、今回マニュアルどおりに進行したのかどうかということでございます。  今回は臓器移植法の制定後初めて脳死状態から臓器の提供があったものでございますが、この移植手術は無事終了し、術後の経過もおおむね順調と聞いております。しかしながら、今回の事例につきましては、移植医療の透明性の確保と臓器提供者やその御家族のプライバシーの保護の両立といった難しい課題が残されたものと認識しております。  こうした問題を含めまして、病院及び臓器移植ネットワークにおきましては、御家族の御了承をいただいた上でその経緯を公表するとしてきたところでございますが、本日午後、その経緯を公表いたすこととしております。  厚生省といたしましては、今後、この一連の経緯を点検いたしまして、国民が信頼できる移植医療推進、定着に努めてまいりたいと考えております。
  44. 堀利和

    ○堀利和君 時間がなくなりつつありますので、簡潔に私の方で質問させていただきますが、報道によりますと、いわゆる最初の臨床的脳死診断のときに、施行規則第二条二項の各号のうちの第五号「自発呼吸の消失」、つまり無呼吸テストなんですけれども、これを行ったというふうに聞いておるわけです。この法律の制定当時からも、無呼吸テストを安易にやることについていかがなものか、ドナーにとって非常にダメージが大きいのではないか、その侵襲性から見てやらない方がいいのではないかと。私自身は同様に無呼吸テストはやるべきではないと思っております。ガイドラインではそのところが、やってはいけないとも示していないし、やっていいとも示していないわけなんです。  これはやはり重大なことだと思いまして、厚生省としては今後この件についてどうするのか。当然、行政サイドですから専門家の御意見を聞かなきゃならぬと思いますけれども、そのことを含めて今後どういうふうにするつもりか、お伺いしたいと思います。
  45. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 御指摘のように、ガイドラインにおきましては、主治医等が患者本人の臓器提供に関する何らかの意思を把握する時点は、法律上の脳死判定基準五項目のうち自発呼吸の消失を除く項目が最低限確認されたとき以降であるということを要求しているわけでございますが、追加的な検査を行うことを禁止している規定ではないというふうに理解をしております。  そこで、一般的に臨床的に脳死と診断する際に無呼吸テストを行うこと自体につきましては、通常の医療行為の範囲内における専門性を有した医師の判断によるものと考えておりますが、今回の事例の妥当性につきまして行政として判断することはなかなか難しいと考えております。今後、関係学会等によります専門的な評価を待ちまして、厚生省としての対応を検討してまいりたいと考えております。
  46. 堀利和

    ○堀利和君 ぜひ前向きによろしくお願いしたいと思います。  大臣にお伺いしたいんですけれども、今回そういう意味では初めてのケースということで、私から見ても現場では恐らく混乱したように見えます。  そこで、臓器提供者、ドナー御本人あるいは御家族の人権、プライバシーをきちんと守らなきゃいけない。同時に、そうはいいましても、情報公開といいますか、その開示も私は不可欠だろうと思います。その辺のところがどうも今回うまくいっていないのではと思うんです。今後きちんとやっていくためにもガイドラインというようなものを用意しておかなきゃならぬと思うんですけれども、大臣はその辺をどのようにお考えでしょうか。
  47. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回の臓器移植は臓器移植法が制定されてから初めてのケースでございまして、マスコミ等が非常に注目をし、過熱した報道があったことは事実でございます。  私どもとしては、今、委員のおっしゃられるように、臓器提供者及びその家族のプライバシー保護というのは一義的に非常に重要であるということでございまして、その家族の御意向等も間接的に伝えられましたものですから、報道陣に対しまして家族のプライバシーに配慮して節度ある取材をしてほしいということを再三要求してまいりました。一部過熱報道があったのは事実でございます。  なお、情報開示とか臓器移植のプロセスの開示の問題等も、また今後の臓器移植の発展のために極めて重要なことでございます。  先ほど局長が言われましたように、これら一連の動きにつきまして、きょう午後、大阪で厚生省も入りまして報告をなさるということを承知しておりますが、情報の開示とプライバシーの保護、この調整の問題というのは非常に重要な問題でございますので、私どもとしては、ガイドラインという形になるかどうかはともかくとして、一定のルールというものをきちっと定めて今後の臓器移植の発展に資するようにしていかなければならないと思っております。
  48. 堀利和

    ○堀利和君 私の時間がなくなりました。残念です。せっかく労働省から来ていただいておりますので、申しわけないのですけれども、簡単に御質問させていただきます。  重度視覚障害者職場介助制度というのがございまして、特に事務系等の民間企業で働く場合の視覚障害者に介助者をつけるという制度でございます。  この制度の簡単な概略と、同時に、恐らく十年間あるいは同じ事業主というような規定があろうかと思うんですけれども、途中で配置転換だとかあるいは国内外に転勤という場合に、その場では介助者が必要ないといいますか、なくてもいいという環境もあると思うんです。しかし、また職場がかわって介助者が必要だというときに、中断したものを再度申請して制度を受けることができるのかどうか、時間がないところで申しわけありませんけれども、この辺を最後にお伺いしたいと思います。
  49. 村木厚子

    説明員(村木厚子君) 先生質問の重度障害者介助等助成金のうち視覚障害者の職場介助に係るものでございますが、視覚障害者の業務遂行のために必要な職場介助者を事業主が委嘱あるいは配置をした場合には、その費用の四分の三の額を十年間支給するという制度でございます。  この十年間の途中で制度の適用を一たん中断した場合につきましては、これまでのところでは、職場における人的支援が必要でない職場での雇用継続が可能になったというふうに判断をいたしまして、再度適用申請があった場合でも助成金を適用しないという仕組みでこれまで運用してきております。  ただ、この制度につきましては、平成十年四月にも改正を行いまして、対象を事務的業務以外の視覚障害者にも拡大をしたところでございまして、今後とも、職場における重度障害者に対する人的援助の必要性や実態を見まして、これに合った形で制度の整備を図ってまいりたいというふうに考えております。
  50. 堀利和

    ○堀利和君 時間が来ましたので終わります。
  51. 櫻井充

    ○櫻井充君 民主党の櫻井充です。きょうは介護保険法とダイオキシン問題について質問させていただきます。  来年四月から介護保険法が導入されます。私は、基本的には介護保険法に対して賛成ではありますけれども、現状のままでは幾つか問題点があるのではないか、要するにうまく施行できないのではないかと自分自身としては考えているところがありますので、御質問させていただきます。  まず最初に、介護認定が行われまして七段階に分類されることになっております。そして、現場の方にはこのような要介護状態の区分の状態像の例というふうなものが配られておりますけれども、自立に関してどういうふうな人たちが自立なんだということが明確に示されておりません。現場では、要支援状態と自立状態に関して非常にあいまいで、患者さんたちに説明がうまくつかないというふうなことを指摘されております。  厚生省としては、自立に関してどのような人たちを自立というふうに考えていらっしゃるのか、その辺についてまず教えていただきたいと思います。
  52. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 介護保険法でございますけれども、介護給付を受けようといたします被保険者は、要介護状態あるいは要支援状態、こういうものに該当することが認められた場合に給付を受けるわけでございます。したがいまして、自立と申しますのは要介護状態にも要支援状態にもならない、こういうことで、大部分の方がこれに該当するわけでございますので、特別の定義というのは設けるつもりはないわけですが、先生指摘のように十年度の試行事業におきまして自立と要支援の区分がわかりにくい、こういう御指摘がございました。  現在、専門家の間で要支援をどういう定義にするかということにつきまして再度検討いたしているところでございまして、その検討結果を踏まえまして認定基準の中に取り込みたい、こういうふうに考えております。
  53. 櫻井充

    ○櫻井充君 そうしますと、自立に対しては定義というのをきちんとは設けないということなんでしょうか。  そうすると、例えば今回の区分状態の例を見たときに、つめ切りに一部介助が必要だとか、それから浴槽の出入り、洗身に一部介助が必要だというのが要支援になっておりますが、例えば要支援状態、この項目の中の一つでも満たさないものがあれば自立というふうに考えてよろしいのでしょうか。それとも、ここに幾つか例が挙げられた項目の中の二、三項目を満たさない場合には自立とか、そこら辺の境をきちんとつけてほしいというふうに言っているんです。
  54. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 要介護の関係もそうでございますが、要支援の関係も、全体の心身の状況の組み合わせと、この組み合わせから必要な要介護時間という物差しを当てはめて決める、時間数にかえて認定する、こういう形をとりますので、個々のものの積み上げというよりは個々のものの組み合わせだと、こういうふうに考えているわけでございます。
  55. 櫻井充

    ○櫻井充君 なぜこのようなことを申しているかといいますと、要するに今回のコンピューターの判定が非常に厳しいわけです。そのために、この患者さんたちがなぜ自立なのかと、こういうちょっと説明のつかないような症例が多々あったというふうに仙台の方で聞いております。  仙台で行われましたモデルケースの中の何例かをちょっと持ってまいりましたので聞いていただきたいんです。  まず、八十八歳の女性です。この方は、まず両足での立位も支えが必要である。歩行もつかまる。浴槽の出入り、洗身も一部介助。洗顔、一部介助。つめ切り、全介助。室内の掃除、全介助。金銭の管理、全介助でございます。この方が自立です。  それからもう一例ですが、八十五歳の女性です。この方は室内の掃除だけが全介助なんですが、これまでは訪問診療を月一回、それから訪問介護を月八回受けておりました。この方はなぜそういうふうになっていたのかというと、慢性の呼吸不全がありまして在宅酸素を使っております。そして、ちょっと動いた後に息切れがひどい。息切れがしてその後に今度は生活に不安があるというか、何もできなくなって寝てしまうような状態になるので訪問介護などを受けていた方ですが、この方も自立になっております。  今のコンピューターの判定が非常に厳しい、そして現場としてはこの人たちが自立なんですよというふうなことを説明つけられないという本当に大きな問題点がございます。ですから、自立という点のはっきりとした区分をつけていただきたいことと、それから今のコンピューターによる一次判定が余りに厳しいんですが、その点についてどうお考えでしょうか。
  56. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 九年度の試行事業と比べまして、十年度の試行事業は確かに名目上の要介護度というのは落ちております。これは、十年度の基準の設定に当たりまして、従来の一番高い要介護度Ⅴというのがあるわけでございますけれども、これは最重度のケースと過酷なケースの両方が含まれているような形で非常に広範囲なものにわたっていたわけでございます。これを最重度のケースと過酷のケースに分けましてサービスの枠の充実を図ると同時に、それぞれの区分で利用可能なサービスの額を引き上げる、こういうことにいたしたわけでございます。したがいまして、ⅤのものがⅣなりⅢになると、こういうケースは多々あるわけでございます。  それから、コンピューターの結果等おかしなものが出ているじゃないかということでございますが、確かに結果としてそういうものも見受けられるわけでございます。ただ、コンピューターの関係は統計処理によりますので、必ずしも一〇〇%正しいというわけではないわけでございます。そこはまずはたたき台だということで、それを、認定審査会がございますので、そこで主治医の意見書でございますとか調査員の特記事項、こういうものを加味いたしまして一番類似する状態像により判断していただく、こういうふうな経過をとるわけでございまして、コンピューターの結果が必ずしも一〇〇%正しくないところを人間の目で訂正していただく、こういう形をとっているわけでございます。
  57. 櫻井充

    ○櫻井充君 基本的には、まずコンピューターの判定が厳しいか厳しくないか、その点については厚生省はどうお考えでしょうか。
  58. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 厳しいか厳しくないかというのはいろいろ御議論あると思いますけれども、やはりその要介護度に応じましたサービスの水準を設定するわけでございまして、それとの相対関係になるわけでございます。  そういう意味で、今度は過酷なケース、重度の要介護度Ⅴになったものにつきましては従来よりはずっと高い限度額を設定する、そういうふうな形でサービス水準の確保を図っている、こういうことになるわけでございます。
  59. 櫻井充

    ○櫻井充君 いや、そういうことではなくて、例えばここに要介護度の区分状態の状態像の例というのがあります。皆さんがおっしゃっているのは、この例に即したぐらいの介護度が出てくればいいんだと。ところが、この状態像には、先ほどもお話ししました例なんかはまさしく典型的な例でございますけれども、どう見ても要介護のⅠぐらいに入る方が自立になっているわけです。こういうふうに一段階から二段階ぐらい低い人たちがかなり多くいる。ですから、ここの状態像の例にあるような形にコンピューターが判定してくれれば何ら問題ないんだというふうに言っているわけです。  ですから、その状態よりもかなり厳しく今出てきている、これが現実だと私たちは思っているんですが、その点に関してはどうお考えでしょうか。
  60. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 十年度の試行事業におきまして、先生指摘のような事例も含めましていろいろ御指摘を受けているわけでございまして、現在その見直しを行っているところでございます。したがいまして、その結果に基づきまして、審議会に改めてかけまして要介護認定基準を決めたい、こういうふうに思っているわけでございます。  現在のものが厳しいかどうかという点につきましては、これはいろいろ御意見があろうかというふうに思っております。
  61. 櫻井充

    ○櫻井充君 現場の方では、そのコンピューターのプログラムを見せてほしい、どういうことでそういう認定になるのかプログラムを見せてほしいということになっておりますが、公開はされるでしょうか。
  62. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 第一次認定に用います認定ソフトにつきましては当然公開をいたしたいと思いますし、ただ公開するだけでは非常にわかりづらいわけでございますので、その仕組みが国民に理解ができますようなわかりやすい説明ができるように工夫をいたしたいと思っております。  なかなか複雑な仕組みでございますので、それをそのまま提供しただけではなかなかわかりづらい、こういう面もございますので、工夫をいたしたいというふうに思っております。
  63. 櫻井充

    ○櫻井充君 十月から介護認定が始まりますけれども、現在のプログラムを使われるんでしょうか、それともプログラムを変更される予定があるんでしょうか。
  64. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 変更すると、こういうことで検討していただいております。
  65. 櫻井充

    ○櫻井充君 そのプログラムはいつまでにでき上がるんでしょうか。
  66. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 現在、基本的にはできているわけでございますけれども、まだ試行的なテストを行わなきゃいかぬ、こういうことで、最終的にはもちろん審議会で決めていただかなきゃいかぬわけでございますけれども、それについての諮問は今月末か来月の初めまでにはいたしたい、こういうふうに考えております。
  67. 櫻井充

    ○櫻井充君 そうしますと、平成九年や十年に行われたようにまた一般でのモデルケースというふうなものも試されるということになるんでしょうか。
  68. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 九年度とか十年度に行いましたような大々的なものはできないと思っておりますが、十年度にかなりのデータをいただいております。それをもとにいたしまして、幾つかの地域の専門家にお願いいたしまして妥当性等について御意見をいただく、こういうふうなことを考えております。
  69. 櫻井充

    ○櫻井充君 宮城の場合には余り妥当でないというふうな意見が大勢を占めております。そこの中で、このままテストを行わないで果たしてそのプログラムが信頼できるものなのかどうなのか、そういう状態で果たしてそのプログラムを使って要介護認定を始めていいものなんでしょうか。
  70. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) したがいまして現在検討しているところでございまして、それの中身が妥当性があるかどうかにつきましてさらに専門家から御意見を聞いて、その上で実施するということでございますし、さらに問題があればこれは修正する、こういうことでございます。
  71. 櫻井充

    ○櫻井充君 コンピューターの診断にこれだけこだわりますのは、実は、先ほどは二次審査がありますよと、二次審査の中で人の目で考えてくださいというふうにおっしゃっていますけれども、厚生省がこうやって配っています支援体制の中に不適当事例集というのがございます。不適当事例集というのは、二次審査の際にこういうような状態の場合には全部状態を変えちゃいけないという縛りがございまして、この縛りを見る限りにおいてほとんどの人たちが変更することができないような状況になっております。  例えば、その不適当事例集の中に「かかりつけ医意見書に、介護を要するとの記載があるので変更する。」と。かかりつけ医が介護を必要だとしているのにもかかわらず、それで変更しちゃいけないと言っているわけですね。ここにそう書いてあるわけです。  それから「かかりつけ医意見書に、「パーキンソン病のため、薬を服用しているが、薬を指示通り内服していなければ、多くの介護量を要すと考えられる。」との記載があったので、重度に変更する。」と。例えば、パーキンソンなんかの場合には、薬をやめた場合には悪性症候群といって極めて重篤な病気になるわけです。  こうやって、かかりつけ医がこういうことが必要なんですよというふうなことを記載したとしても変更しちゃいけないと言っているわけです。ですから、コンピューターの診断が非常に大切になってくるんだというふうに私は思っているんですけれども、この点に関していかがでしょうか。
  72. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 介護に要する時間を必要とする、こういうふうな具体的な事例があれば当然変更できるわけでございますけれども、主観的に介護が必要であるとか、こういうふうな意見だけでは変更はできない、こういうことでございます。
  73. 櫻井充

    ○櫻井充君 不適当事例集、先ほどの薬のことに関してはきちんとした理由があるからここに記載されているわけです。それもできないと今おっしゃった。そういうことも言っているじゃないですか、厚生省は。  それから、例えば「寝たきり判定の程度はよいが、痴呆の程度は重い。徘回、異食行動があり、幻覚、幻聴がよくあるので、重度に変更する。」、これもいけない。それから「介護を要する程度は低いと判断したが、本人・妻ともに高齢であり、介護者である娘が同居していない点を考慮して、重度に変更する。」、これもいけない。「介護者が高齢であり疲労しているため、重度に変更する。」、これもいけない。  血も涙もないような不適当事例がずっと並んでおります。これでどうやって二次審査できちんとした形で審査できるというふうに言えるんでしょうか。
  74. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 基本的な考え方といたしましては、まさに介護を要する時間数を客観的に決める、こういうことでございますので、その方の年齢でございますとか、あるいは家族の介護者がいるかどうかとか、こういったような話につきましては、これは直接的に介護を要する時間に関係ない、こういう基準で変更を認めない、こういう事例をお示ししているわけでございますが、この中でも恐らく不適当な事例もあろうかと思いますので、さらにこれについては精査いたしたい、こういうふうに思っております。
  75. 櫻井充

    ○櫻井充君 もう一つ、これは仙台の老人ホームで実施されたことなんですけれども、入居者五十名中、自立が九名、要支援十名ということになっております。ですから、五十名中十九名はもう出ていかなきゃいけない。それから、デイサービスを受けている九十九人のうち自立が二十五名です。ですからこの人もサービスは受けられない。このぐらいの判定がついているわけです。  こういうふうなコンピューターの判定がついて、二次審査でもほとんど変更ができないというような厚生省のマニュアルなわけです。こういうふうな状況で、国民の方々が納得し、満足した介護保険が受けられるとお考えでしょうか。
  76. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) いろいろ御指摘がございますので、当然修正すべきところは修正するわけでございますけれども、あくまでもこれは私どもが不適当な事例を限定してお示ししたわけでございまして、審査委員会の専門家の先生方の裁量が大部分については当然あるわけでございますので、それが全部制限されているんじゃないか、こういうふうな誤解を招いた、こういうこともあるわけでございます。そういうことでございますので、その趣旨を十分徹底すると同時に内容自体につきましても見直しをしたい、こういうふうに考えております。
  77. 櫻井充

    ○櫻井充君 プログラムにしてもそれから二次判定の不適当事例集にしても、見直ししていただけるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  78. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 基本的には、先ほど申し上げましたような、介護に要する時間と直接関係ないものにつきましては当然排除することになろうかと思いますけれども、そういう考え方と相矛盾するような事例が出ていますとすればこれは適正に修正したい、こういうふうに考えております。
  79. 櫻井充

    ○櫻井充君 適正に修正していただくことを要望しておきます。  それと、本来コンピューターの判定が果たして私は必要なのかどうかという疑問を抱いているところがあります。といいますのは、八十五項目のチェック項目があります。調査をしに行きます。調査をした後、それをコンピューターにかけた後で介護の時間数なり値段を決められるというような状況になって、その値段の枠の中で介護を受けなさい、サービスを受けなさいということです。  しかし、基本的にはこれこれこういう介護が必要なんだと。例えば、食事がとれない人には食事の介護に行きましょう、それから掃除のできない人には週に一回掃除に行きましょう、それを合わせて大体どのぐらいの値段になるんですよというふうな形に決めるのが普通のやり方じゃないかと思うんです。それをコンピューターで無理やり、あなたは何十万円の介護ですよ、さあ、あとはその何十万円のお金を上げるから自分で好きに組み合わせなさいと。発想が逆じゃないかというふうに思いますけれども。
  80. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 介護保険制度は、社会保険方式によりまして標準的な介護サービスの水準を定めているわけでございまして、この水準を全国的に保障しよう、こういう考え方に立っているわけでございます。そのために、介護サービスの利用に当たりましては、要介護度に応じまして標準的に利用されるサービスの種類とか量を設定いたしまして、これを踏まえて支給限度額を決めているわけでございます。従来のような出来高という形はとらない、こういうことでございまして、その枠の中で介護サービス計画をつくっていただきまして効率的な利用をしていただく、こういうふうな考え方でございます。
  81. 櫻井充

    ○櫻井充君 それはもう重々承知しております。ただ、そのシステムがおかしいんじゃないかというふうに言っているわけです。コンピューターがこれだけ誤ったといいますか不適切な判断を下してきている中で、包括払いにします、全国一律でこういうふうなことでやりましょうと。納得できない部分があるわけですね。  それともう一つは、手間暇から考えたときでも、例えばそこの調査に行ったときにもうそこでプログラムが立てられるわけですよ。つまり、八十五項目チェックして、この人はこれが食べられないから食事の手伝いに来ましょう、掃除をやりましょう、ふろに入れましょうと。そういうふうにすれば、もうそこの時点でプログラムが立てられるわけです。それを二次審査なら二次審査のところでやればおのずと時間も短縮できるし、皆さんにきちんと合った介護ができるんだというふうに私は思うんです。  ですから、そのシステムとして出来高払いがいいのか包括払いがいいのかということになるんだと思います。その点について厚生省は、包括払いの方がいい、その方が患者さんというか国民の方々にとっていい介護が受けられる、そういうふうにお考えなんですね。
  82. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 私どもは、いろいろやり方はあろうかと思いますけれども標準的な介護サービスのサービスの水準、これを念頭に置きまして介護保険制度ができているわけでございまして、これにさらに上乗せするか、これに足りないものをふやすか、保険料に反映いたしますけれども、それを決めるのは地方だと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  83. 櫻井充

    ○櫻井充君 私が聞いているのは出来高払いと包括払いとどっちがいいかということです。どちらがいいと考えられているんですか。
  84. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 私どもは、標準的な介護サービスの水準でございますし、全国一律の公平な負担ということになりますと、やはり現在の私どもが提案しているものがいいと、こういうふうに考えております。
  85. 櫻井充

    ○櫻井充君 ちょっと考え方が違うので、先へ行かせていただきます。  二号被保険者の場合において、特定疾患の患者さんでなければ保険が受けられないというような状況になっておりまして、十五種類の病気が示されております。ここの中に心臓病の患者さんが入っておりませんが、なぜ心臓病の患者さんが入っていないのか、その点に関して説明いただきたいと思います。
  86. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 特定疾病の関係でございますけれども、これはいろいろな統計を使わせていただきまして科学的に決める、こういうことで、専門的な見地から検討していただいたわけでございます。  その中で二つ要件が決まったわけでございます。一つは、四十歳から六十五歳未満の年齢層においても発生が認められまして、罹患率とか有病率等について加齢との関係がある、こういう疾病、なおかつ三カ月から六カ月以上継続して要介護状態または要支援状態になる割合が高い、こういう二つの要件に該当するかどうかということで、統計的な情報をもとに検討をしていただいたわけでございます。  一つの要件として、加齢に伴って発生する、これにつきましては心臓病については認められたわけでございますけれども、要介護状態が三カ月ないし六カ月にわたりまして継続して持続するという明確な統計的な結果が得られなかった、こういうことで特定疾病にならなかった、こういうふうに承知いたしております。
  87. 櫻井充

    ○櫻井充君 こういうふうな患者さんたち、今、心臓病に関しては加齢との因果関係はあるということなんですね。そうしますと、ではこれらの患者さん以外の患者さんたちが介護が必要な状態になった場合にはどういうふうな形で介護を受ければよろしいんでしょうか。
  88. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 指定をされました患者さん以外の患者さんたちがどのようなサービスが受けられるかということでございますけれども、その方が医療が必要な在宅患者の方であれば、例えば医療機関や訪問看護ステーションから訪問診療あるいは訪問看護が受けられますし、またその方が入院して医療が必要だということでの判断になれば、医療保険からの入院給付がされるという形になります。  また、その年齢層で在宅の方々で介護が必要な身体障害者という形のお取り扱いをさせていただく場合には、身体障害者福祉法に基づきまして各種の介護サービスが提供されるということになります。その充実のために障害者プランに基づきまして整備充実を図っております。  また、そのほかに特定疾患調査研究事業という形で、いわゆる難病の対象につきまして百十八疾患と慢性関節リウマチの疾患に対しましての介護サービスをやっておりますので、こういったサービスの提供というようなことが考えられるということで、いずれにしましても、そういった在宅、入院を含めまして、医療・介護サービスについてそれぞれから適切に提供されるようにということでやってまいりたいと思います。
  89. 櫻井充

    ○櫻井充君 医療を受けられるのは当たり前であって、その患者さんたちにとってみれば納得いかないところが出てくると思うんです。ある人は介護を受けられる、ある人は介護を受けられない。特に私なんかが思うには、心筋梗塞なんというのは脳梗塞と全く一緒だと思うんです、動脈硬化で起こってくるわけであって。そういう患者さんがなぜ外れなきゃいけないのか、その点についてもう少し明確に話していただけないでしょうか。
  90. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほども申し上げましたように、加齢に伴うものと、それから三カ月ないし六カ月の継続して介護を要する状態にある、こういうふうなことで条件設定をされておりますので、その継続期間の三カ月なり六カ月が認定できなかった、こういうことでございます。これからさらに医学的な見地から検討されて、それが必要であるということであれば追加というのは当然あり得るということでございます。
  91. 櫻井充

    ○櫻井充君 加齢ということをおっしゃっていますけれども、例えば九番に気管支ぜんそくが入っています。気管支ぜんそくなんて加齢なわけじゃないですよ。生まれたときからは極端にしても、もう三カ月ぐらいからぜんそくの発作を起こしている子供たちもいるわけです。アトピー型の子供たちなんというのは、まさしく加齢なんかによって起こってくるものではございません。それから、糖尿病にしても若年発症のものに関しては加齢と全然別個でございます。ですから、そういうふうなものも含まれているにもかかわらず、加齢で起こってきて、なおかつ重度の心筋梗塞の患者さんの場合には寝たきりになっている方もいらっしゃるわけです。  ですから、そういうふうな人たちをなぜ除外しなきゃいけないのか。要するにこういう特定疾患なんかつける意味がないんじゃないかと。つまり整合性がないわけです。あるものに関して言えば加齢は関係ない疾患も入れておきながら、しかも期間からいったって、果たしてその期間だけ、三カ月から六カ月介護が必要だというふうなことが考えられないような疾患も入っている。そして、逆のことを言えば、必要な患者さんなんかは残されている。そういうことから考えれば、こういう特定疾患をつける必要はないんじゃないかというふうに私は思っているんですけれども、その点に関していかがでしょうか。
  92. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 介護保険制度はまさに高齢者を対象とする制度でございまして、四十歳から六十五歳未満の方は二号被保険者という形に位置づけられているわけでございます。したがいまして、四十歳から六十五歳未満の方のどのような救護をするかということで、これは法制定当時から大変な議論がございました。  いろいろな議論の経過を踏まえまして、加齢に伴う疾病でなおかつそういう状態が持続する、こういうものを指定したわけでございまして、法の建前いろいろあろうかと思いますけれども、これは法律上はそういうことになっておりますので今後の検討課題だと、こういうふうに考えております。
  93. 櫻井充

    ○櫻井充君 介護保険法の中には、介護保険法の意義といったところだったかと思いますけれども、要するに介護の必要な人たちに対して社会がかわって介護をする、そういう概念だったんじゃないでしょうか。ですから、高齢者に対して介護をする、高齢者が受けるからそのお金を払うというのではなくて、むしろ例えば私なら私の、うちの親が動けなくなった、私がこういう形で勤務しているから自分が介護できないのでどなたかにお願いして介護していただくと。そういうふうなことから考えれば、加齢だ何だということではないんじゃないか。  要するに、介護を受ける人がいる、その人たちに対してどういうふうないい介護をしてあげるか、することができるかということが本来の介護保険法の趣旨ではないかというふうに思うんです。  これは質問通告をしていないので大変申しわけないんですけれども、厚生大臣、今のやりとりを聞いていて、かなり僕は問題点があると思うんですけれども、この点について少し感想をいただければと思うんです。
  94. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 介護保険制度として制度を定立する場合の基準、仕分けの仕方については、今、局長から答弁したとおりでございます。  介護の分野と医療の分野との境界の問題を御指摘になっていらっしゃると思います。心疾患の例を引かれて今言われておられますが、一応介護保険としては加齢というような要因を中心に据えながらも、しかも医療で継続的に、医療給付でやるという方を全部取り入れるということになりますと医療と介護との関係の領域が非常に不明確なものになりますので、一定の基準を設けて、そして十五の疾病について介護状況にあるものというように、これは制度としては仕組んだわけでございます。  今後、介護と医療給付との関係というのは非常に大きなポイントになるかなという、今お教えを聞いておりまして感じをいたしました。
  95. 櫻井充

    ○櫻井充君 どうもありがとうございます。  ある程度やはり、ある程度というか、僕は問題点が多いと思いますし、自分自身はやはり必要な制度だと思っています。国民の方々に納得していただけるような整合性を持った形で決めていただければなというふうに思います。  時間がなくなりました。ちょっとダイオキシンの方、急いで二、三だけ質問させていただきます。  まず、今回の予算に関してですけれども、今回、厚生省のダイオキシンの対策費として八百二十五億円が計上されていますけれども、果たしてこれで十分なダイオキシン対策がやれると政府はお考えなんでしょうか。
  96. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) ダイオキシン問題に関しましては、国民の健康にかかわります重要な問題でございます。厚生省といたしましては、廃棄物焼却施設につきまして、廃棄物処理法に基づきまして既にダイオキシンの排出規制を強化するなどの対策を講じてきたところでございます。  具体的には、新設の焼却施設につきましては、既に平成九年十二月一日より基準の強化を図っておりますし、既設の施設につきましても平成十四年十二月一日から厳しい基準を適用することといたしております。こうした規制措置にあわせまして、私どもといたしましては助成措置も実施をいたしているところでございます。  平成十一年度予算案におきます廃棄物処理施設整備費につきましては、厚生省計上分といたしまして千五百三十三億、対前年度比五・〇%増を計上いたしております。その中でダイオキシン対策といたしましては、対前年度比一八・三%増の七百三十二億円を計上いたしました。特に、一般廃棄物焼却施設の整備につきまして、平成十二年度までの緊急、特別の措置といたしまして、ダイオキシン規制に対応いたしました焼却炉等の設置、改造に加えまして、これらと一体的に行います建物部分の設置、改造に要する費用を国庫補助の対象とすることとし、市町村の施設整備を支援したいと考えているところでございます。  厚生省といたしましては、施設の規模等によりましてその整備に要する費用は異なりますが、市町村の要望におおむねこたえられる予算が確保されたものというふうに考えておりまして、今後とも国民の皆さんが安心して暮らせるよう排出基準に適合した一般廃棄物焼却施設の整備促進を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  97. 櫻井充

    ○櫻井充君 要望しているものが果たして正しいか。正しいというのは大変失礼かもしれないけれども、改築しなきゃいけないごみ処理場なんというのも全国にかなりあると思うんです。  今、全国のごみ処理場の中で、少なくとも今の環境基準に合わないもの、そして平成十四年に向けての環境基準に合わないものが幾つぐらいあって、そしてそこを改築するためには大体幾らぐらい必要だというふうに厚生省は見込んでいるんでしょうか。
  98. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 先ほど申し上げましたように、廃棄物処理法を改正したわけでございますが、廃棄物焼却施設につきましては、先ほど申しましたようなダイオキシン類の排出規制のほかに、改正前は一日当たりの焼却能力が五トン以上としていたわけでございますが、改正後は一時間当たりの焼却能力が二百キログラム以上の施設と改めたところでございます。いわゆる規制を強化したわけでございまして、規制前の産業廃棄物焼却施設につきましては約三千というふうに考えておりますが、この規制の強化によりまして二千ほどふえまして約五千程度が規制の対象となるというふうに考えております。  しかしながら、昨年十二月一日から既設の焼却施設につきましてダイオキシン削減に関する規制が強化をされまして、これに対応できない施設の中には廃止した施設も多いと予想されますことから、現在の正確な施設の数につきましては都道府県を通じて調査をいたしております。  また、この調査ではあわせて排ガス中のダイオキシン類の濃度や年間の焼却量についても調査をいたしておりまして、これらの結果につきましては本年度中に取りまとめ、公表する予定でございます。  なお、産業廃棄物焼却施設につきましては、昨年の夏までに都道府県が把握をしておりますデータを調査いたしましたところ、三百十六施設のうち八十ナノグラムの基準を超えた施設はこのうち約一%の三施設でございました。  一方、市町村の設置いたします一般廃棄物焼却施設につきましては、昨年六月までにダイオキシン類濃度の報告を徴収いたしておりまして、この調査時点で稼働中の施設は千六百三十五施設ございますが、現時点では八十ナノグラムを超えた施設はございません。  なお、これらの新設、改造の全体の事業費のお尋ねでございますけれども、現在、都道府県を通じましてごみ処理の広域化計画の策定及びそれに基づきます処理施設の整備ということで、都道府県に市町村と調整の上、計画をつくっていただくようにということでお願いをいたしておりまして、現在の時点で総費用は幾らかかるかという推計は、こういった計画との絡みで申し上げますればなかなか難しいと考えております。
  99. 櫻井充

    ○櫻井充君 果たして十分な額なのかどうか、もう少し御検討いただきたいと思います。といいますのは、環境庁の方から、ダイオキシン分析体制の整備を目的に、当初五億六千万円予算を組んでおりました。これは、環境庁の方は大体五カ所だろう、五つの地方自治体ぐらいから申し出があるだろうというふうに思っていたところが、実際は二十五の自治体から交付の要望がございました。ですから、これを満たすためには、今年度の五億六千万の五倍の予算をつけなければいけないわけですけれども、環境庁としては予算をふやす意思はおありなんでしょうか。
  100. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 地方公共団体においてダイオキシン類を常時モニタリングをお願いしていかなきゃいけないわけですから、この整備というのは大変重要と考えております。  先生おっしゃいますように、補助をしてまいったわけですが、平成十年度は五地方公共団体に補助をしております。平成十一年については、当初、平成十年六月の調査では二十四ございました。そして、今回また調査をしておりまして、具体的にこの機械を入れたときの人員、それからそれを扱うことができるのかどうかということも頭に置いておりまして、それを調査しました結果、十四カ所という形で来ております。  そして、これについて予算的に見ますと、補助率がそれぞれ三分の一、一般的に。それから公害防止地域は二分の一ということになりますので、約九億円の金がかかるかというふうに思っております。そして、現在持っております予算の中で考えていきますと、今後のこともございますが、ある程度満たせることが可能かというふうに思っております。  いずれにしても、機械については単純に機械が備えつけられるのじゃなくて、精度管理上ございますので、研修等も含めてこの整備をお願いしているというふうに考えております。
  101. 櫻井充

    ○櫻井充君 そうしますと、新聞での報道によりますと、一つの自治体当たりの補助額を引き下げるというふうな報道がされていたんですけれども、そうではなくて満額満たされるということなんですか。
  102. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) なるべく満たすべくお金を配分したいというふうに考えています。
  103. 櫻井充

    ○櫻井充君 予算案はまだ決まっていないんですから、取る気になれば取れるんじゃないですか、その点についていかがでしょうか。
  104. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 現在要望しております予算を確保して、地方自治体に十分それをかなえていきたい、努力をしてまいりたいというふうに思っています。
  105. 櫻井充

    ○櫻井充君 要望しているというのは、後から地方自治体が申し込んできたその額に満たすということですか。
  106. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) そうではございませんで、現在提出しております予算五億六千万の要求、そして今持っておりますお金、具体的には環境監視調査等補助金というのがございます。その中での問題も含めて十分地方自治体の意に沿うよう努力してまいりますということでございます。
  107. 櫻井充

    ○櫻井充君 大体、銀行救済に七兆五千億円入れているわけです。たった何億円の金を引っ張ってくるのは簡単なことじゃないですか。
  108. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 今、予算を提出しているわけでございまして、五億六千万を十分取っていきたい、努力をすることが一番の目標かというふうに思っております。
  109. 櫻井充

    ○櫻井充君 政府にとって、小渕首相を筆頭としてダイオキシン対策はもう政府の一番重要な事業だというふうにおっしゃっているわけですから、本来であれば満額認めるような予算措置をとるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  110. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 具体的にダイオキシンの分析機器だけのお金ではない部分もございますので、全体的にそのことを先生のおっしゃる意味を踏まえて地方自治体に迷惑をかけないような形で整備をお願いするよう努力してまいりたいと思います。
  111. 櫻井充

    ○櫻井充君 済みません。本当はあと幾つか質問があったんですが、時間になりましたので、これで終わらせていただきます。
  112. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  残された時間の範囲内で、同僚議員からも御質問させていただきました介護保険の施行の準備状況にかかわって、先日十日の予算委員会で大臣には幾つかお答えをいただきましたけれども、その時間の中で十分できなかった部分を補足的にきょうはお伺いしたいと思います。  ただ、本題に入ります前に、先ほど櫻井議員と厚生省とのやりとりを聞いていてつくづく思ったんですが、これは意見としてお聞きいただければと思うんですけれども、要介護認定を介護にかかわる時間で分類しましたよね。あの発想というのは、確かにいろいろ現場の皆さんの御意見などもお聞きした上での手法だと思うんですけれども、意外と医療関係者からすると物すごくなじみにくい発想なんです。どうしても医療関係者は、疾病がどういう疾病で、状態がどういう状態で、それに対するどういう行為が必要でというふうに考えるんですね。そういう意味では、その状態とかどういうサービスの種類が必要なのかということは一応棚上げして、とにかく介護にかかわる時間が何時間か何分かということで認定をされていくということのギャップがかなりあると私は思っています。  ですから、これは要望ですが、あと半年後には要介護認定の作業に入るわけで、一気に医療サイドの皆さんの発想と福祉サイドの皆さんの発想とがぴたっとうまく一致するかどうかわかりませんけれども、少なくともそういう発想のギャップあるいはずれがかなりあるということを十分認識して、そこを埋める作業あるいはつなぐ作業というか、共通認識を持つ作業をぜひ丁寧にやっていただきたいなと。そうしないと、認定をめぐっても、あるいはその後のサービス提供をめぐっても妙なところでぎくしゃくして、結局迷惑をこうむるのは利用者ですので、その辺のことは重々認識されているんだろうと思いますが、どうも局長お答えぶりを聞いているとまだそこはちょっと十分でないなというふうに思いますので、余計なことかもしれませんけれども、気がつきましたのであえて意見として申し上げておきます。  その上で、きょうは介護保険制度に基づく施設サービスに限ってお尋ねしたいと思います。  介護保険制度のもとでは、三種類の施設サービスが提供をされるべく用意されている。それは、介護という言葉をつけて、介護老人福祉施設、これは従来の特別養護老人ホーム、それから介護老人保健施設、これは従来の老人保健施設、それから一番ややこしいのが介護療養型医療施設、この三種類だというふうに説明を伺っているんですが、これがどうもよく理解できないところがあるので、この三つの施設類型についてはどういう違いがあるのか、サービスの内容面でもどう違ってくるのか、改めてできるだけわかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  113. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 御指摘のように、介護保険施設は三種類ございます。  一つは、指定介護老人福祉施設でございまして、老人福祉法上の認可を受けました特別養護老人ホームであることが前提になっておりまして、その上で介護保険法上の指定を受ける、こういうことが一つでございます。二つ目が、これは介護保険法上の施設になりましたが介護老人保健施設でございまして、介護保険法上の許可を受けて介護老人保健施設になるわけでございます。それから三つ目が指定介護療養型医療施設でございまして、これは医療法の許可を受けました病院または診療所であるわけでございまして、その上で介護保険法上の指定を受ける、こういう三つがあるわけでございます。  それで、特徴的なものでございますけれども、介護それから看護職員の配置でございますけれども、各施設とも入所者数対比で原則三対一という形にする予定でございますが、それぞれの施設の機能にかんがみまして、介護老人福祉施設では介護職員が手厚く割合が多いという一方で、介護療養型医療施設では看護職員の割合が多いということで、老人保健施設はこの中間だということでございます。また、老人保健施設では機能訓練を推進するということで理学療法士や作業療法士を配置いたしておりますし、療養型の施設では医師の配置、こういうことであるわけでございます。  それから、居室の面積でございますけれども、老人福祉施設では生活の場としての位置づけでございますので十・六五平米以上とする一方で、老人保健施設では八平米以上、それから療養型では六・四平米以上、こういうふうな形で人員配置それから居室の面積に差があるというのが特徴でございます。
  114. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ちょっと確認しておきたいんですが、介護老人福祉施設は老人福祉法に基づく施設で特別養護老人ホームである、それで介護の指定を受けると。そうすると、介護指定を受けない特別養護老人ホームもあり得るのかどうか。もう一つ、療養型医療施設についても、これは基本医療法である、医療法に基づいてつくられている病院もしくは診療所、療養型の病院、それで改めてその介護の指定を受けると。そうすると受けない場合があるのかどうか。この両方をちょっとお聞かせください。
  115. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 介護老人福祉施設でございますけれども、観念的には指定を受けないという場合も想定されるわけでございますけれども、実際上は全特別養護老人ホームが介護老人福祉施設になるであろうというふうに考えております。それから、介護療養型の医療施設でございますが、これは医療法上の許可でございますのでまさに病院、診療所でございますので、これは医療施設として残る場合と、それから介護保険法上の指定を受けまして介護保険対象になる、こういうケースが両方あろうと思います。  大部分が介護保険の方にいらっしゃると思いますけれども、一部は医療施設という形で医療保険対象となる医療、治療等を行う施設として残るであろう、こういうふうに想定いたしております。
  116. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 済みません、もう一つそこで確認したいんですが、では療養型医療施設については、多くは介護の方に来ていただけるだろうけれども、一部医療の方で残るだろうと。そうすると、残った療養型病床群と介護の方に来ていただいた施設とは何がどう違うんですか。全く一緒ですか。
  117. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 指定になりました介護療養型医療施設はまさに介護保険対象になるわけでございまして、要介護認定された方につきましては介護報酬が支払われるわけでございますが、指定を受けなかった療養型の医療施設につきましては、これは医療保険世界になるわけでございまして医療保険診療報酬が支払われる、こういう形になるわけでございます。
  118. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 それは当然そうなると思うんですけれども、結局入っている人の年齢が違うというだけになるのかな。要するに、二つのそういうことがあると。  そこで、ではお伺いします。その三つの施設類型がとにかく少なくともスタートの時点ではあると。それぞれに今御説明があったような形で根拠法も違えば人員配置基準も違えば施設構造基準も違うと。どちらかといえば、より医療にウエートを置いた施設と中間的な施設とより福祉にウエートを置いた施設、こういうふうになると。  こういうふうに理解をした上で、ではそれぞれの介護報酬についてはどういう考え方で設定していくのか。いつごろそれをお決めになるのかも含めて、今の段階では幾ら幾らとは言えないでしょうから、いつごろどういう考え方に基づいて決めていくのか、ちょっとお聞かせください。
  119. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) この介護報酬でございますけれども、施設サービスの種類ごとに要介護度あるいは施設の所在地等を勘案いたしまして算定されます施設サービスの平均的な費用を勘案して設定するということになっておりまして、現在実態調査を行おうとしているわけでございます。その実態調査を踏まえまして、地域差はございますが平均的な費用の額を勘案いたしまして設定する、こういう考え方をいたしているわけでございます。  介護報酬につきましては、先ほど申し上げましたように、入所者三人に対しまして一人の看護・介護職員の配置でございますとか、食堂とか浴室などの介護にふさわしい環境の整備などに共通的な部分を入れたいと思っておりますので、実態を把握した上で決めたいというふうに考えております。まだ日程的に確定したものはございませんけれども、予算とも関連いたしますし、物理的な事務処理等もございますので、本年末から来年の年明けに場合によってはずれ込むかな、こんなような感じで今作業を進めているところでございます。
  120. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 確認をしておきたいんですが、いつでしたか、費用試算に用いる暫定的な平均利用額という数値が発表されましたね。施設介護サービスについては、特養が三十一・五万で老健が三十三・九万で療養型が四十六・一万という、この数字がそのまま介護報酬になるというふうに理解をされている方があるんですが、これはどういう数字ですか。
  121. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 昨年暫定的にお示ししたわけでございますが、これは保険料を試算するということで、あとの介護サービスをどういうふうに整備していくか、こういうふうな参考にしていただくと。そのときに数値がないと保険料の試算ができませんので、そのために暫定的な額という形でお示ししたものでございます。  原則といたしまして、十年度の診療報酬、それから措置費等の単価、その見込み額を用いてございます。したがいまして、この額は地域差もついていないわけでございますし要介護度別の差もつけていないわけでございますので、極めて大胆に推計した暫定的な数値ということで、当然これから審議の上で変わってくるものでございます。
  122. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 どうも気になりますね。極めて大胆に推計をしたということなんだけれども、要するに現在の平均的にかかっている費用はこれくらいですよ、これを参考にして介護費用についてちょっと計算してみてください、こういうことなんでしょう、多分。まあいいです。  そうすると、三十一・五万、三十三・九万、四十六・一万、この数字と、それからこれからそれぞれの地域における費用を計算してみたり、あるいは要介護度と組み合わせてみたりして出してくる介護報酬とは大きく変わることがあり得ますか。
  123. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) これから実態調査を行いますので当然変わってくると思いますけれども、これが大幅に全体を揺るがすほど大きく変わるということはないんではないかと思いますけれども、予断を与えるわけでございますので、これからの検討結果によって決まると、こういうことでございます。
  124. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今の段階ではそれ以上お答えにくいと思いますが、先ほど大胆な推計をしたというふうにおっしゃったものだから、ということは大きく変わるのかなというふうにちょっと聞いたんですが、どうもそういうことではなさそうだと。  さて、それで、もう時間がなくなってきましたので幾つか質問をはしょりますが、この間、新ゴールドプランで特別養護老人ホームについての整備目標、それから老人保健施設についての整備目標、これをずっと決めてきたわけですね。特別養護老人ホームについて言えば、目標を上回る形で補正予算で上乗せしたりしてきていますね。ところが、よくわからなかったのが、つまり今までどれくらいの形で整備が進められてきていたのかよくわからなかったのがこの療養型病床群です。  そこで、この療養型病床群、これは先ほどの御説明ですと必ずしも全部介護療養型になるわけではないというお話ですが、この療養型病床群について、全国で今施設数あるいは病床数はどれくらいになってきているのか、直近の数字、あるいは来年の四月、二〇〇〇年にはどれくらいになるのか、ちょっとお聞かせいただけますか。
  125. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 介護療養型医療施設の対象としては療養型病床群が主体となりますが、平成十一年一月一日現在の療養型病床群の開設許可数を見ますと、施設数で三千二百五十七施設、病床数で十五万八千二百十床となっております。  また、医療計画制度におきましては、介護保険制度が施行される平成十二年度当初を目標時点として要介護者のための整備目標を各都道府県において定めることとしておりますが、各都道府県においては昨年十二月までに整備目標の作成を終了しておりまして、その集計値は約二十二万床となっております。
  126. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今、数字的には御説明いただいたんですが、ちょっと答えにくいかもしれないんですが、私は最近の動きからするとそれはふえるんじゃないかという感じを持っているんですが、お答えできる範囲でちょっとお答え願えませんか。ふえそうな気がするんですけれども。
  127. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 今、先生もっとふえるのではないかとおただしでございましたが、まず今の開設許可数というのはまだ建設ができていないものも入っております。また、実際には開設許可をいただいてからつくられて、その後、使用検査、使用許可をして実際に患者さんが入る、こういう形でございまして、実際建物が全部できているということで十五万八千床あるというわけではまずございません。  それから、今、各都道府県が整備目標を約二十二万床と考えられたのは、実は国の方で介護保険法の審議の過程で十九万床という整備目標を出したわけですが、その十九万床というのを各県では自分のところで、じゃ実際に具体的に数字をはじいたら幾つになるかといって各県が計画をつくったところ、二十二万床になったということでございます。  それで、問題は、二十二万床が全部その先生方が介護指定を目指されたのかどうかという確認ははっきりとれないのでありますけれども、基本としてはやっぱり十九万床を見て、実際多くの先生方が手を挙げられて、介護指定を目指して多分整備を進めていらっしゃるものだと思っております。そういうことからいきますと、二十二万を超えてもっとそれ以上に行くのかということについては定かではございませんけれども、多分私は二十二万を皆さん目指して頑張っていらっしゃるのではないかなと、こんなふうに思っております。
  128. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。  それでは最後に、ちょっと大臣の御意見を伺いたいと思うんですが、私がなぜそんなことを今お尋ねしたかといいますと、介護にかかわる総費用は、施設サービスに傾けば傾くほど、そして施設サービスの中でもこの療養型の比重が高まれば高まるほど介護総費用は増嵩せざるを得ない。そうすると、それを頭で割った保険料もどうしても高くならざるを得ない。さて、そういうことになっていいのだろうか。  先日、予算委員会のときにもお尋ねしましたけれども、できれば各地域で三つの施設類型がバランスよく整備されていると大変いいんだけれども、なかなか現実はそうはなっていなくて、県単位で見ると、幾つかの県はかなり療養型の医療施設に偏っているというかあるいは比重が高い県がある。そういうところで総介護費用を計算してみると、そして一人当たりの保険料を計算してみると、当初厚生省が試算をした一人二千五百円程度という数字を大幅に上回る推計が出てきているわけですね。この辺のことについて大臣はどのように御認識をされているのか、そして何らかの対応をお考えなのかどうか、そのことを大臣から伺って、質問を終わりたいと思います。
  129. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 施設サービスにつきましては、御指摘のように今の三つの施設の類型がございまして、そのうちで療養型病床群が一番コストがかかるというのは、これはもうこちらも説明申し上げておりますし、そうなっております。したがって、療養型病床群等の多い市町村における保険料はそれを反映して今御指摘のように高くならざるを得ないということは否定できません。しかしながら、保険制度でございますから、将来的には、今、委員のおっしゃられるように、この特老あるいは老健施設あるいは療養型病床群等が適正に配置されていくことがやはり非常に必要なことではないかと思います。  そういう意味で、府県で介護保険の事業指導計画等をおつくりになられるわけでありますから、現実の問題として今直ちに変えるわけにいきませんので、それを是認した上でスタートさせざるを得ないと思いますが、将来的には御指摘のようにやはり調整しながらレベルアップを図っていくということがぜひ必要だと思います。  なお、私の私見では、療養型病床群が医療との関係で全く同じような基準が今適用されておりますので、これも介護保険の範疇の問題としてはやはり検討した方がいいのではないかなという感じがいたします。そして、平準化を図って保険給付を公平に行うということがぜひとも保険制度としては必要なことだというように思っております。
  130. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今、幾つか介護施設を中心に質問させていただきました。余り施設サービスに傾くのではなくて、当初、在宅サービスにもっと力を入れようということで取り組んできたといういきさつもあったと思います。ぜひ改めてその方向での御努力をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  131. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時三十六分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  132. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管及び環境衛生金融公庫を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  133. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。  早速質問に入らせていただきます。  最初は、血液製剤のアルブミンについてお伺いしたいと思います。  循環血液量不足あるいは熱傷あるいは低たんぱく血症等の重篤な病態での血液製剤アルブミンの使用は、他の輸液を使用した例に比して死亡率を高める危険性がある、そのような報告が英国のコクラン研究報告ということで昨年七月にブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに掲載されました。それに基づきまして、英米及び我が国では本情報医療関係者報告するとともに、アルブミンの適正使用を改めて呼びかけるとともに、また一方では、厚生省はコクラン研究報告の妥当性を評価するための専門委員会を設けて検討を進めている、そのように聞いております。  そこで、厚生省の方にお伺いいたします。  現在、専門委員会によるこれまでの検討結果がどのようになっているのか、その点に関しましてお示しいただきたいと思います。
  134. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 先生指摘のコクラン報告でございますが、これによりますと、重症の熱傷、やけど等の重篤な病態の患者に対して、アルブミンを使用した場合とほかの輸液を使用した場合とを比較すると、アルブミン投与例の死亡率が六%高かったという報告でございます。これは、過去に発表されたさまざまな論文を集積し、その論文に掲載されているいろんな臨床成績を統計学的に処理し、分析したものというふうに承知しております。  厚生省といたしましては、この論文を受けまして、先生指摘の中央薬事審議会に専門委員会を設けまして御検討をお願いしたところでございます。  これによりますと、コクラン報告におけるアルブミン投与と輸液投与の比較については、条件設定の幾つかに問題があるのではないか。すなわち、対象となった症例数が少ない、あるいはアルブミン投与前の対象患者の合併症や疾患の重症度に関する記載がほとんどなく死亡にこれらの疾患が影響を及ぼしているのかどうか、そういった状況がわからない、あるいはアルブミン投与群と輸液投与群においてそれぞれの対象患者選択に偏りがある、こういう評価でございまして、中間的な報告でございますが、アルブミン使用が他の治療法に比べて必ずしも患者の死亡率を高めているということは言えないのではないかという結論が出されているところでございます。  ただ、この問題についてはさらに情報収集と検討を続けて、その結果を踏まえ、医療関係者に対して情報提供するとともに、医療機関においてアルブミンの適正使用推進を図っていくことが現状では適当であるという指摘をいただいておるところでございます。
  135. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今のところ、厚生省のいろんな検討では、そのコクラン研究報告が正しいかどうかまだわからないということでありました。しかし、やはりその結果が出るまでは、もしこれが副作用だとすると回収等もしなきゃならない可能性もあるわけですが、当座はアルブミン製剤の回収などの措置はとらず、最新の治験に基づく適正使用推進することが適当である、そのような中間報告であったというふうに解釈しております。  そこで、厚生省に伺うわけですけれども、このコクラン研究報告後、日本では循環血液量不足あるいは熱傷、低たんぱく血症等の重篤な病態でのアルブミン使用というのは、医療機関報告を行った後、抑制されているのかどうか、その点に関して確認したいと思います。
  136. 中西明典

    政府委員(中西明典君) コクラン報告の内容につきましては、医薬品等安全性情報を通じまして医療関係者に対して情報提供し、注意喚起をしたところでございます。  現在、病院等を対象といたしまして血液製剤の使用実態調査を行っておるところでございます。この中には、アルブミンの使用状況についても調査しておるわけでございまして、この結果がことしの秋を目途に取りまとめられると考えておりますので、血液製剤特別部会の専門家の先生方とともに調査結果をしっかり分析し、また必要とあれば対策を講じていく必要があるというふうに考えております。
  137. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 皆さんもう周知のことと思いますけれども、日本ではアルブミンの使用量が世界的に見ても多いということであります。一九九三年のデータでは、人口百万人当たり、フランスでは三百五十キログラム、ドイツでは四百キログラム、アメリカでは四百六十九キログラムを使用しているのに対し、日本では六百十五キログラムと、それらの諸国に比べまして三割から七割も多く使用している。しかも、国内の自給率というのは四分の一にすぎませんで、四分の三を輸入に依存している。そういう点では、国際的にも問題視されているわけであります。  このように、外国から多くのアルブミンを輸入しながら、もしそのアルブミンを投与した場合に死亡率を上げてしまうというような副作用が実際起きてしまった場合には、日本にとって本当に大きな問題になるんではないかというふうに考えるわけであります。  本問題に対して、世界では今検証がなされているところと聞いておりますけれども、世界的に最終的な結論が出るまでは、これまでも何度か指摘されているところでありますけれども、アルブミンの適正使用をさらに徹底して、使用する症例を極力限定した方がよい、そのように考える次第でありますけれども、厚生省考え方をもう一度お聞きしたいと思います。
  138. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 先生指摘のとおりでございまして、我が国のアルブミン使用量は国際的に見てかなり多消費という実態でございます。  コクラン報告につきましては、先生指摘のとおりイギリスやアメリカでも現在検討が行われておると聞いておりますが、こうした報告が出たという事実も踏まえて、私どもといたしましては、現在、中央薬事審議会の血液製剤特別部会でアルブミンを含む血液製剤についての新たな使用指針に関する検討を行っておるところでございまして、コクラン報告指摘された重症のやけどについてのアルブミンの使い方も含めて、近々その使用指針を公表する予定にいたしております。  今後、その使用指針を医療関係者に周知徹底いたし、アルブミンを含む血液製剤一般の適正使用に最大限尽力してまいりたい、かように考えております。
  139. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 このアルブミン、やはり適正使用を徹底するということと、やはり国内自給体制ができるように早急に検討していただいて、今後の血液事業法の見直しもあることと思いますので、そういう方向で見直しを行われるような形にしていくべきであるということを訴えたいと思います。  次に、高齢者痴呆介護研究センターについてお伺いします。  平成十年度の第三次補正予算において、高齢者痴呆介護研究センターが全国で三カ所整備されることになりました。この三カ所、箇所づけができているかどうかまだわかりませんが、この施設を建設するにふさわしい地域の条件といいますか、そういうものに関して厚生省の考えをお聞きしたいと思います。
  140. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 高齢者の痴呆介護研究センターでございますけれども、この運営に当たりまして、他の研究機関とか大学等の教育機関と十分な連携が図れるというのが一つだと思います。  それから二番目といたしまして、広範な地域の施設の職員あるいはヘルパーに対しまして研修を行いますので、交通の便がよいところがいい、こんなようなことで考えているところでございます。
  141. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 また、この高齢者痴呆介護研究センターでどういう研究が行われるのか、その内容についてのもう少し詳しい情報をお聞きしたいと思います。
  142. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 高齢者の痴呆介護研究センターでございますけれども、痴呆性の高齢者に対する介護、これはまだよくわからないことが多いわけでございまして、一つは痴呆の進行をおくらせる環境とか介護のあり方に関します実践的な研究、それから二つ目は研究成果を施設の指導者向けに研修をするというのと、それから国際的な人材の交流でございますとか情報収集、情報発信、こういった介護水準の向上を図る事業を他の研究機関でございますとか協力大学等と連携をとりながら進める施設にしたいというふうに考えているわけでございます。
  143. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 新聞報道によりますと、この高齢者痴呆介護研究センターでは、音楽療法とかあるいは動物介在療法等が現在話題になっておりますけれども、そういうものも研究していくというような新聞報道もありましたので、我が党としましては、全日本音楽療法連盟などが推進している音楽療法、ここに沢委員もいらっしゃいますけれども、沢委員、浜四津議員等が応援して音楽療法士の国家資格化を目指して今検討中でありますけれども、そういう音楽療法の実践的な効果判定あるいは研究等もやはりその中で行っていってはどうかなというふうに考えます。  また、つい最近、私もちょっと内容をお聞きしたんですけれども、日本動物病院福祉協会などが啓蒙活動を行っております動物介在療法、これは動物がいるとその痴呆症の患者さんも興味を示して元気になっていくというような研究発表もありまして、こういう動物介在療法等も実証研究をしていったらいいんじゃないか。  そのほかにも痴呆性疾患に対して効き目があるんじゃないかということで、絵画療法とか園芸療法等も考えられているわけでありますけれども、こういういろんな治療法等をやはり研究していただいて、痴呆性疾患を患っている方に対して、いろんな意味で今まで考えられなかったような効果が出てくれば本当にすばらしいなというふうに思うわけでありまして、大変期待しているところであります。一生懸命すばらしい計画をつくって実施していただきたいなというふうに考えております。  一つお伺いしたいんですけれども、もしこういう高齢者痴呆介護研究センターがうまく事業が成果を発揮するようになった場合に、どのような形で全国のそういう痴呆性患者さんを扱っている現場の方に情報を発信していくのか、その点に関しましてお伺いしたいと思います。
  144. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) このセンターで研究された成果をどのように普及するかということでございますが、先ほども申し上げましたように、このセンターでは全国の介護施設とか在宅のサービスの現場で働く職員のうちで指導的な立場にある方に対しまして実習を伴った研修を行いたいということで、こういう人たちを通じての普及が当然あるわけでございます。  それから、現在でも各県に痴呆性の高齢者の介護技術研修のための拠点となる施設を指定してございます。こういった拠点施設との連携体制を組みまして情報交流を行いたい、こんなような考え方を持っております。
  145. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 まだ成果がはっきり、これから始まる事業でありますので、成果について云々するのはちょっとまだ早いのかもしれませんけれども、やはりこういう研究センター、三カ所だけでは足りないんじゃないかなというふうに自分の印象としては持っておりまして、少なくとも各地方に一つぐらいは必要なんではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、もしそういう立派な成果が出るようであれば、今後この研究センターをさらにふやしていくような計画のもとに行われるのかどうか。この点、厚生大臣の方からお考えをお聞きしたいと思います。
  146. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 痴呆性の高齢者の増加は今後予想されますので、今御議論いただいておりますセンターは平成十年度の第三次補正予算で計上させていただきました。今議論のありますように、いろいろ有用な多様な機能が予想されるわけでございますので、私どもとしては、まずこの三カ所の充実を図ってきちっとしたものにすること、それからその実績を踏まえまして必要であればさらにその充実を図っていきたい、こう思っております。
  147. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今後さらに痴呆性疾患の患者さんはふえていくと思いますので、しっかりとこの研究事業も進めていっていただきたい、そのように考えております。  では、次の質問に入らせていただきます。  ティッシュ・エンジニアリングの事業を行おうとしておりますベンチャー企業に関連しての質問になります。  愛知県内の医療機器メーカーや大手製薬メーカーなどが中心となりまして、ヒトの細胞組織を培養あるいは加工などをして作成した移植用の皮膚を製造供給するベンチャー企業、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングを設立しまして、厚生省の特別認可法人医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構、略称で医薬品機構というふうに呼ばれておりますけれども、この医薬品機構に対して十億円近い融資を求めているというふうな報道が本年の二月にされました。  そこで、厚生省の方にお伺いしたいんですけれども、この融資に関しまして、医薬品機構としましてはどのような対応をする方針なのか、お聞きしたいと思います。
  148. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) お答え申し上げます。  今、先生指摘のヒト組織を培養する企業のジェイテックとは、培養した皮膚組織を患者さんのやけど等の治療材料として将来商品化することを目的とした研究開発を行う企業でございます。このジェイテック社から医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に対しまして研究開発資金の融資の申請がなされておりまして、現在その審査中でございます。  厚生省といたしましては、企業の研究開発が倫理面及び安全面に適切な配慮が行われているものであるかどうかといった点につき十分審査を行うよう指導しているところでございます。
  149. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 報道によりますと、このジェイテック社は、将来、自家培養皮膚ばかりでなくて、他家培養皮膚や自家培養軟骨、自家培養骨の製品の開発を行う方針である、そのように発表しておるようであります。  現在のところ、他家移植用製品の開発研究は皮膚だけにとどまっておりますが、厚生省としてはこの他者の細胞、組織を使って培養、加工した組織を医療材料として製造、販売することに対しましてどのような方針で今後臨まれるのか、その点に関しまして考えをお聞きしたいと思います。
  150. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 仮に、今後、ヒト組織を医療材料として製造、販売しようとする、そういった事態が出てきました場合には、申請者は薬事法によりまして医薬品あるいは医療用具としての規制を受けることとなるわけでありまして、その際、有効性、安全性等に関する十分な資料を添えて申請を行い、厚生大臣の承認を受けるというのがルールでございます。  ただ、ヒト由来のものにつきましては、医療上の必要性というものをやはり十分検討する必要があるとともに、感染因子等のリスクが存在する場合もあるわけでございまして、例えばドナースクリーニングの方法でありますとか不活化等を含めた製造工程がどうなっているか、あるいは原材料や製品の品質検査方法がどうなっているか等々を含めて、その特性を踏まえて厳格な審査を行い、その上で判断していく必要があるだろうと、かように考えておるところでございます。
  151. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 自分の皮膚組織などから培養組織を取りまして自分の治療に役立てるために自家移植をするということは現状でも特に問題なく可能であると、そのように厚生省の方はお考えでしょうか。その点に関しましてお聞きしたいと思います。
  152. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 自分の皮膚組織を採取してそのまま自分自身に移植することについては、現在でもごく一般的な医療として既に広く普及をいたしております。もちろん、皮膚組織以外でも、静脈をとってきて心臓のバイパス手術に使うとかということも、自分のものである限りは特に問題なく現在行われているわけであります。  それで、先生指摘の、皮膚組織を採取してまいりましてそれを培養してふやしてから移植するという点でございますが、これは従来の治療方法と異なっておりますけれども、基本的に、医療の実施に当たって医師等の医療の担い手が治療法の効果や危険性について十分な説明を行い、患者との信頼関係に基づき実施しているということであれば特に問題がないと、このように思っております。
  153. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 このティッシュ・エンジニアリング、組織工学は、バイオテクノロジーの分野では遺伝子治療とともに二十一世紀の医療に大きな貢献をすると期待がかけられている領域でもあるわけでありますが、しかし新しい技術なので、安全性のチェックとか患者さんに対するインフォームド・コンセントも重要となりますし、医療機関及び製造企業の倫理委員会での承認とか審査あるいはプライバシー保護を配慮した上での情報公開というものもやはり今後必要になってくるんではないかなというふうに私自身は考えるわけであります。  次の質問になりますけれども、ヒトの組織、細胞を使って培養、加工した組織を製造、販売すると予定しておりますジェイテック社のような企業に対して原材料となる細胞、組織を提供する場合、個人で提供する場合もありますでしょうし、医療機関提供する場合もあるし、あるいはまた別の企業提供するというようなことも考えられるわけでありますけれども、このような原材料となる細胞、組織を提供する場合のガイドラインといったものを厚生省として今後つくる予定があるのかどうか、その点に関してお伺いしたいと思います。
  154. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 今回の研究に関してでございますが、ジェイテック社に口腔粘膜を提供する医療機関であります名古屋大学医学部は、同医学部倫理委員会の審議の結果、口腔粘膜の培養の研究に限定し、培養された粘膜は適正に廃棄することを条件に口腔粘膜の提供を承認したところでございます。また、名古屋大学医学部口腔外科は、口腔粘膜の提供者に対し、書面で本研究の趣旨説明し、同意書を得るなど、インフォームド・コンセントの徹底を図ることとしていらっしゃいます。  このように、本件については口腔粘膜について提供する医療機関において独自に検討されたところでございます。今後、ヒトの細胞、組織の培養技術の研究開発についての状況を注目してまいりたいと思っておりますが、現在はまだ研究段階でありまして、商品化されていないという段階でございますので、細胞、組織の提供のガイドラインについて現在のところは必要がないのではないかなと、このように思っております。
  155. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ジェイテック社の方は、今回の医薬品機構に融資を申請する際に、自分たちの社内の中にも倫理委員会を設置して、倫理面、安全面それから情報公開などに努める、あるいは倫理委員会の半数以上を社外の弁護士、報道関係者、学識者、専門家とすると、そのような倫理委員会の基本事項といいますか、そういう形でやりますよというような発表をされているようであります。  最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、今後、ヒト細胞や組織を培養、加工して第三者に移植用医療材料として広く提供するためには、安全性や倫理上の問題をクリアしなけりゃならない。また、企業とか提供者がオーケーすればいいんだというような問題ともまたちょっと違う観点も必要なんではないか。そういう意味では、国民のコンセンサスを得るような必要も出てくるんではないかというふうに私自身考えるわけでありますけれども、厚生大臣はどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、その点お伺いしたいと思います。
  156. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) このヒト細胞や組織を医療材料として製造、販売することにつきましては、それがなければ治療が非常に困難な患者さんや、またそれによってすぐれた治療の恩恵を受けることができるような患者がおるとすれば、ヒト由来であるということのみをもって必要以上に制限することは適当ではないと基本的に思います。  しかしながら、今御議論いただいておりますように、ヒト由来のものにつきましては、感染因子等のリスクに関する安全性の問題があるということのほか、ヒト組織を提供する際の倫理上の配慮等の問題もありまして、これらにつき慎重な対応が必要であると認識いたしております。  このため、ヒト組織を利用した医薬品また医療用具について承認を行うに当たりましては、専門家の御意見も聞いて、有効性、安全性について厳格な審査を行うとともに、審査基準等について公表するなど、透明性をより高めながら取り組むことが重要ではないかと考えております。
  157. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ちょっと時間がなくなってきたので、一つだけ最後質問させていただきたいんです。  別な質問になりますけれども、平成八年の厚生省のがん検診の有効性評価に関する研究班の報告では、乳がん検診は視触診だけでは有効性の評価には不十分である、マンモグラフィーを加えることを検討すべきというふうにされております。欧米諸国ではマンモグラフィーを用いた乳がん検診が一般的でありまして、米国では乳がん検診にはマンモグラフィーを使うとの条件つきで乳がん検診の有効性を評価しているわけであります。  日本においても、今までも何回も指摘されているところでありますけれども、このマンモグラフィーを用いた乳がん検診をぜひとも早期に確立して検診の精度を上げるべきだ、そのように考えておりますが、厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  158. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) がん検診につきましては、平成十年度からは交付税措置という形で市町村が地域の実情に即してやっているということでございます。  乳がん検診につきましては、現在ほとんどすべての市町村におきまして実施はされておりますけれども、その大半は視触診という形で実施しているわけでございます。  御指摘のマンモグラフィーによります検診といいますのは、五十歳以上の方に関しましては乳がんによります死亡減少効果が視触診よりも高い、こういう研究成果も出ているわけでございまして、幾つかの市町村では既に実施をいたしております。  こうした状況を踏まえまして、厚生省といたしましては、平成九年からマンモグラフィーによります検診を実施するために必要となる条件等を含めまして乳がん検診のあり方について検討いたしているわけでございます。その研究成果もある程度出てきておるわけでございまして、今後、その成果をマニュアルみたいな形でお示しして市町村に情報提供したい、こういうふうに考えております。
  159. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 乳がんは今の日本でも毎年ふえてきているということで、平成七年度では七千七百六十三人が乳がんで亡くなっている。平成九年度には三万人の方が乳がんに罹患するであろうというふうに言われております。今までの視触診だけの検診では余り効果がないということでありますので、マンモグラフィーを導入して、そういう乳がんで悩まれる方を少しでも減らしていくことが大事だと思いますので鋭意検討していただきたい、そのように考えます。  以上で質問を終わります。
  160. 沢たまき

    ○沢たまき君 私は、介護保険制度について伺いたいと思います。  今日、関係者によって準備が進められておりますが、来年四月からの実施が混乱なくスムーズに行われるためにはまだ多くの課題が残されていると思っております。公明党は、三千三百の市町村を初め福祉等の関係者が苦慮されていることを知って、本年の二月十六日、実態調査を踏まえて、介護保険制度の安定運営の確保に関する緊急提言をまとめて、厚生大臣にも要請させていただきました。  まず、厚生大臣に伺いますが、公明党のこの緊急提言をどのように受けとめていただけているでしょうか。
  161. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 来年四月からの介護保険制度の円滑な施行というのは私どもの最大の関心事でございまして、そのためにいろいろ体制整備も行っており、また市町村の施行準備等にも配慮しておるところでございます。  先般、公明党さんから貴重な緊急提言をいただきました。この内容は非常に細部にわたっておりますが、それぞれの項目について非常に適切な御助言、見解が述べられておりまして、大変貴重な御提言だとして受けとめさせていただきます。今後、公明党さんのこの御提言を十分に検討させていただいた上で、来年の円滑な施行に向けて、できるものをどんどん反映していきたいというように思い、大変高く評価しております。
  162. 沢たまき

    ○沢たまき君 ありがとうございました。  二つ目なんですが、三月十二日の東京新聞に作家の高見澤たか子さんがオランダの公的介護保険制度を四回にわたって取材したという報告の記事が出ておりました。一言で申し上げまして、オランダでは徹底した利用者中心の制度で高齢者の希望を反映する仕組みになっておる、そういう記事でございました。  そのために、窓口を一本化して、そこで相談と申請、サービス提供、それから住宅の改造まで手がける。また、施設での介護ではなく住みなれた地域でケアつき住宅に入居し、家事援助、介護・医療サービスを受けることができるようになっておりました。ここではこのケアマネジャーという制度はございませんでした。もともと発想が、高齢者をケアするというのではなく高齢者にケアをお届けするという、利用者のためにというすばらしい発想になって行われておりました。  日本の訪問調査とかコンピューターの第一次判定、審査委員会で第二次判定するということを話しますと、異口同音にそれは無理と声が上がったそうでございます。現場の医師とか看護婦、ソーシャルワーカーが話し合ってその人に合ったケアの方針を決めれば済むことでしょうとあっさり言われてしまったとその記事には書いてございました。  私が感じますのは、日本の介護保険制度は利用者にとって余りにも複雑で、先ほど櫻井議員もおっしゃっておりましたが、コンピューターによっての審査が果たしてそれでいいのかなという懸念も持ちますし、私は公的介護保険もあくまでも主役は人でなくてはならない、こういうふうに心配しているんですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  163. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 新しいシステムが日本でもできるわけでございまして、コンピューターを使って判定するというのは日本で初めてということでございますが、確かに現場の方にはまだわかりづらいし、利用者の方にもまだなじみがないということで当然とまどいはあろうかと思うわけでございますが、国際的にもこういう形でやるということについてはかなり注目を浴びているわけでございます。  やっぱり新しい試みとして日本としてやっていく必要があると思いますし、大量の申請者に対しまして客観的公平にやるということで、そのたたき台といいますか、人間が行う審査、判定のたたき台の前段階の処理をすると。しかも、これは統計的な処理でございますから完璧ではないわけでございますけれども、これを人間の目で見て修正していただくと。こういうやり方というのは、大量の対象者を対象にして、しかも客観的公平に決めるということからすれば、やはりこういう仕組みをとらざるを得ないんじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  164. 沢たまき

    ○沢たまき君 ありがとうございました。何度も申し上げますが、介護を受ける方は人でございますので、何とぞよろしく御配慮願いたいと思います。  さて、では具体的にお聞きいたしますけれども、何といっても保険者の市区町村が確信を持って実施できる体制をつくることが大事だと思います。介護保険法は御承知のように三百を超える政省令にその成否がゆだねられておりますが、複雑でございますし、焦点が多くなっているので、いずれにしても実施する主体である市区町村は政令が定まらないと動きがとれないと思うんです。また、定まったとしても各市区町村が抱える状況はいろいろだと思うんですが、一刻も早く制定をすべきだと私は思うんですが、どうなっておるのでございましょうか。
  165. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先生指摘のように、たくさんの項目につきまして政省令あるいは告示で決めなきゃいかぬということで、現在精力的に審議を行っているわけでございます。主な政令につきましては昨年十二月に制定をいたしたわけでございまして、本委員会にも御報告したとおりでございます。  それから、主な省令、告示につきまして現在諮問をいたしております。ただいま現在、審議会も行われている最中でございまして、これの答申を得まして、三月末、三月三十一日になろうかと思いますけれども、主な省令、告示につきましては決めたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  しかし、まだ残っているものもあるわけでございまして、平成十二年度予算とも関連するとか、あるいは物理的になかなか間に合わないものも含めまして十一年度中に決めるものも残っておるわけでございますけれども、公開の場でございます医療保険福祉審議会の場におきまして基本的な考え方は逐次もう既に出しているわけでございますし、今後とも前広に検討状況についてお示しをすると同時にできるだけ早く制定する、こういうことで精力的に頑張ってまいりたい、このように考えております。
  166. 沢たまき

    ○沢たまき君 なるべく早くよろしくお願いします。  また、介護保険制度の成功の可否はすべての方に差別なく公平に、そして安定して受けられる制度でなければならないと思います。私たちの提言の中で、低所得者に対して三点について要請をしております。  そこで、まず高額介護サービス費の水準をどうするか。厚生省は高額介護サービス支給要件についての考え方を昨年の十月二十六日に医療保険福祉審議会にお示しでございますが、今日までのその審議の回数と審議状況を御報告いただきたいと思います。
  167. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) まず、審議の回数でございますが、高額介護サービス費につきましての医療保険福祉審議会の老人保健福祉部会での審議でございますが、十年の八月二十四日とそれから十年の十月二十六日の二回開かれております。まだ今回の諮問には間に合っておりませんので、これから精力的に審議をお願いしたいというふうに考えておるわけでございます。  それで、今までの審議の中身でございますが、この高額介護サービス費によります利用者負担の上限額の設定ということになるわけでございますが、現在の医療保険制度等の高額療養費との整合性でございますとか、あるいは長期にわたりまして継続してサービスが行われることが一般的に想定されるという介護の特殊性、こういったものを踏まえて検討していただいているわけでございます。  具体的には、所得が低い方には通常の負担上限額よりも低い額を適用するとか、あるいは今の医療保険の高額療養費制度での過去一年間に三回以上高額療養費の支給を受けますと自己負担額の上限額は低くする、こういうふうな特例措置がございますので、これとの均衡を図るべきではないか、こういうふうな形で議論をしております。  具体的な額につきましてはまだ決まっておりませんけれども、こういった医療保険の高額療養費あるいは介護の特殊性、こういったものを踏まえて設定したい、こういうふうなことで御審議をお願いしているところでございます。
  168. 沢たまき

    ○沢たまき君 五カ月に二回の審議会というと少ないのではないか、何かのんびりしていらっしゃるなという感じがいたします。  介護の高額介護サービス費と医療の高額療養費は切り離して設定されるのでしょうか。
  169. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 医療保険と介護保険制度は別々という形になってございますし、事務的な理由もございますので別々に設定する、こういう考え方でございます。
  170. 沢たまき

    ○沢たまき君 医療の高額療養費が現行では六万三千六百円、また多数該当時は三万七千二百円となっていますが、これに高額介護サービス費が加わってくると負担する側は大変だと思うんです。今、審議中とおっしゃっていらっしゃいましたのでこれ以上は申し上げませんけれども、医療の高額療養費の負担も頭に入れていただいて、低所得者の方々に配慮した額を定めていただきたいとお願いしたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  171. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 現在の仕組みではほとんどの方が高齢者でございますと定額の負担ということになっておりますので、もともと高額療養費はないわけでございまして、四十歳から六十四歳の方にそういう事例というのは若干あろうかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように事務処理上の難しさということもございましてなかなか合算するというのは難しいのではないのかな、こういうふうに考えている次第でございます。
  172. 沢たまき

    ○沢たまき君 余り時間がなくなったんですが、老齢福祉年金受給者は現行の措置方式ですと特別養護老人ホームに入っても年金額の範囲で足りております。逆にお小遣いさえ少し出るくらいで、ある施設長さんは月に一回のお買い物の日を決めて入っていらっしゃる方もそれを楽しみにしているということも私は知っておりますので、老齢福祉年金受給者の高額介護サービス費については少額でも残額が残るよう御配慮いただけたらなと思いますが、いかがでございましょうか。
  173. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 老齢福祉年金を受給されている方はもう非常に少数になっているわけでございまして、非常に低額な年金額でございますので、現在の私どもが考えているものの一番下の段階で、さらに配慮すべきではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  174. 沢たまき

    ○沢たまき君 厚生大臣にお願いでございますが、低所得者の方が無理なく介護が受けられるように十分考慮をしていただきたいなと思いますが、いかがでございましょうか。
  175. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 先ほど提言のお話がございましたが、公明党の提言でも低所得対策の充実ということが保険料の問題と同時にトップの方に掲げられております。  介護保険制度を本当に円滑に施行するためには、低所得者のサービス利用という問題はこれはもう私ども除外するわけにいかないわけでありまして、今御議論いただいておりますように、高額介護サービスの設定の負担上限額の問題とかあるいは施設入所の際の食費の老人負担額等を設定する場合等におきまして、より低い額の利用者負担となるよう配慮しなければならないと考えておりまして、現在、局長が申されたように、具体的な額等については今後の審議会の議論を踏まえつつやることになりますが、適切に設定し、低所得対策の充実に欠けることのないようにしていきたいと思っております。
  176. 沢たまき

    ○沢たまき君 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。  あと一分でございます。最後に伺います。  特養ホームに入居している方は、現行の制度の中では入院時は三カ月と経過措置を定め、入院三カ月以内であれば再び特養ホームに優先入居できることになっております。新しい制度でもこれに準ずる取り扱いにすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  177. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 同じような仕組みで、三カ月の間に戻ってきた場合には特別養護老人ホームで再び受け入れる、こういうふうな形で考えております。  どの程度の必要な介護報酬をするかということについては今後の課題でございますけれども、仕組みといたしましては、人員、設備及び運営基準という形で現在諮問しているものの中で、三カ月以内に戻る者については入所を継続する、こういう形で盛り込んでいるところでございます。
  178. 沢たまき

    ○沢たまき君 最後に、東洋医学のメカニズムの研究について伺います。  提言の中で東洋医学の活用について要請をいたしております、あんま、マッサージ、指圧師、はり、きゅう、柔道整復師をリハビリテーションに係る指定基準医療職に加えるべきだと思っております。  アメリカでは病院での医療費と同じぐらいに民間での医療費が使われていると言われております。アメリカのハーバード大学では、オルタナティブ・メディスンセンターというところでいわゆる代替医療センターがつくられていると伺っております。これは、アメリカでも三人に一人が代替医療医療所を訪れた経験があるという事実からだそうでございます。  本来であれば、日本には東洋医学が最も身近にあるわけでございますので、率先してこの研究に取り組んでいただきたいと思いますが、厚生省としては取り組むお考えはおありでしょうか、おありでないでしょうか。
  179. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) あんま、はり、きゅうなどの東洋医学は、我が国において西洋医学が定着普及している一方で、長く国民の間で受け入れられていると承知をいたしております。一方、その効果の程度や作用機序には科学的な解明を待たなければならない点も多いと考えられるわけでございますが、今後こうした点の調査研究が進められることにより、医学全体の発展に資することになるものと考えております。  厚生省の方では、厚生科学研究というまとまった研究費がありまして、いろんな先生方が自分で研究をしたいといって応募をされて、それを評価して、競争率は大分高いんですが、その中で研究の効果が認められるとか、または研究が後々に影響するものが大きいとかというような判定がされますと、それは国の方でも研究費は出すことができると、こういう仕組みがあるところでございます。
  180. 沢たまき

    ○沢たまき君 終わります。  ありがとうございました。
  181. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  私は、予算委員会の集中に続いて、介護保険の問題を質問したいと思います。  きょうは、特養ホームの問題を中心にお聞きしたいと思うんですが、介護保険の老人ホーム施設長アンケートというのが行われました。これを見ても、九百六十一人の回答のうち八四%の方が経営が厳しくなっているというふうに答えておられます。きょうは、入所者の処遇と同時に、介護保険移行後の特養ホームの経営の激変、これにどう対応していくのか、そういう視点からお聞きをしたいというふうに思います。  まず第一に、医福審の合同部会の諮問で、先ほどもちょっと御議論がありましたけれども、入所者が医療機関入院した場合の話であります。こういう場合、三カ月以内に退院が見込まれる場合は再入所を施設側に義務づけた、そういう諮問がされました。ところが、問題は経済的な裏づけがあるのかという問題なんです。この辺について具体的にはどういうふうにしようと考えられているのか、お尋ねします。
  182. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 特別養護老人ホームの入所者の入院でございますが、三カ月以内に退院することが明らかに見込まれた場合には、施設に対して退院後円滑に再入所させるよう義務づける方向で検討しております。  したがって、今御指摘のように、このような義務づけを考えた場合には、入院した場合の空き病床の取り扱いとか介護報酬上の評価があるわけでありまして、これは私ども何らかの措置が必要であると考えておりますが、今後、具体的には医療保険福祉審議会意見等を聞きながら検討してまいりたいと、こう思っております。
  183. 小池晃

    ○小池晃君 ショートステイで待つのはなかなか難しいというのは、現場からは声として出ております。都市近郊にある場合はいいんですけれども、非常にへんぴな場所のところが多い。ショートステイだともう連れていくだけで大変で、そういったところだとなかなか難しいのではないかという声も出ています。  今、大臣お答えいただいた中で、介護報酬設定上何らかの手を打ちたい、考慮するというお答えでしたけれども、もう少し踏み込んで、施設の方には再入所を義務づけたわけですから、一方、入院する人が出ても経営に支障を来さないような報酬で考慮している、そういうような方向で考えているというような、そういう配慮が必要ではないかと思うんですけれども、もう少し踏み込んでお答えいただけないでしょうか。
  184. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ただいま申しましたように、具体的な数値等につきましては申し上げる段階ではございませんが、基本的な考え方としては委員のおっしゃるような方向だろうと思います。
  185. 小池晃

    ○小池晃君 続きまして、介護保険移行時の運転資金の問題というのも施設の側からは出されております。  私がお聞きした、これは札幌市のかりぷあつべつという特別養護老人ホームなんですけれども、今までは措置費で前もって入っていた、それが保険請求というふうな形で二、三カ月おくれて入ってくるという中で、四月から六月までの運転資金、人件費も含めて、そして六月の賞与なども含めると、ここは八十人の施設なんですけれども、大体運転資金としては八千七万というような計算が出されております。これをどうするか。  大臣は、二月十日の衆議院厚生委員会で「金融資金等が不足するようなことがあれば、それは当然いろいろの点で配慮といいますか活用方をサポートしていくべきものだ」と、そういうように答えておられます。  特養ホームの現場からはこういう声も上がっています。無利子、無担保、無期限の融資、これが必要だと、そういう声も上がっている。そのくらいなんですね。ぜひ、この経営環境の激変緩和のための措置を何とかできないものか。大臣、衆議院厚生委員会でも御答弁いただきましたけれども、もう少し踏み込んで、特別な事情を考慮した融資、そういったものが考えられないものか、その辺についてお答え願いたいというふうに思います。
  186. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今までの老人福祉法に基づく措置費でございますと介護サービスを提供した当月に支払われるということでございますが、介護報酬になりますと介護サービスを提供した月の翌々月に支払われる。これは事務的な都合上そうなりますが、介護保険がスタートする十二年四月前後に二カ月程度の資金の支払いが行われなくなるという事態は十分予想されます。  したがって、介護保険制度の施行に向けまして特別養護老人ホーム等の運営に支障が生じることのないように、短期のつなぎ融資であると思いますが、これは考えていきたいと思っております。制度として、現在、社会福祉事業団等の活用が考えられるわけでございますが、そうした点で短期融資は考えてまいりたいと思っています。
  187. 小池晃

    ○小池晃君 それから、きょうも何度か取り上げられている問題でございますけれども、要介護認定のあり方の問題です。  コンピューターによる認定では非常に問題があるのではないか、あるいは今年度のモデル事業の結果が、これは私は参議院予算委員会の総括でも取り上げましたけれども、低く結果が出ているのではないか、こういう指摘がされて、モデル事業の結果からは、市町村から多数の問い合わせ、苦情も出ているという問題です。  その中の一つの問題点としては、要介護時間を算定するためのタイムスタディーのそのデータに施設入所の方のデータしかない、在宅の方のタイムスタディーのデータが含まれていないということも一つの問題ではないかというふうに考えているんですが、いかがでしょうか。
  188. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 介護認定は要介護者の態様に応じてこれを類別するといいますか認定をする制度でございますので、これが在宅であろうとあるいは施設介護サービスを受けようと、それにかかわりなく、この人はこれだけのサービスが必要だということであれば、それぞれの基準に応じて認定していくべきものだ、このように思っております。
  189. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 補足させていただきますと、大臣のおっしゃるとおりでございますが、タイムスタディーに在宅のデータがないのではないか、こういう御指摘もあろうかと思います。この関係でございますけれども、確かに現在のシステムでは施設介護のタイムスタディーを使っておるわけでございます。  確かに在宅サービスもあればそれは一番いいわけでございますけれども、残念ながら現段階では、専門家が従事している施設サービスと比較しましてサービスの提供方法に非常にばらつきがございます。それから、現時点で基盤整備に地域格差が非常にございまして、どの地域をとるかによって非常に格差がある、こういう事情もございまして、十分確度の高い推計値は得られない。こういう現状認識のもとで施設介護のデータを使わせていただいておりますけれども、在宅サービスの関係は将来の課題と、こういうふうに考えております。
  190. 小池晃

    ○小池晃君 将来の課題、データがあればいいというお話だったんですけれども、私が理事を務めております全日本民主医療機関連合会、全日本民医連という組織がこのたび要介護老人の実態調査を行いました。  その結果がここにあるんですけれども、調査対象二万九千六百四十五人、うち在宅の方が二万四千百二十四人というデータであります。厳密なタイムスタディーとして調べているわけではないんですけれども、ただデータがないというふうにおっしゃるのであれば、これは医者や看護婦がボランティアで調べ調査ですので、普通にやろうとしたら物すごいお金がかかる調査ではないかと思うんです。  そういう意味では、やはり一つの、これをそのままデータとして使えというわけではありませんけれども、これからの要介護認定を考える上での一つの参考になるのではないかなというふうに考えておるんですが、いかがでしょうか。
  191. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先生指摘調査は、調査対象の大半が在宅のサービスを受けていらっしゃる方でございまして、ただ調査対象によります自計調査とか聞き取りの調査でございますので、タイムスタディーというほど精度は高くないんじゃないかと思っております。したがいまして、これを直に要介護認定基準に使うというのは無理だと思っておりますけれども、高齢者の実態に関します調査結果の一つと、こういうことで参考にさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  192. 小池晃

    ○小池晃君 ありがとうございました。  それでは、介護保険の問題を終わって、硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病の患者さんの被害者の救済の問題について御質問したいと思います。  現時点までに厚生省の方で把握されている、今までに判明した硬膜移植によるヤコブ病の感染者の数は何人でしょうか。
  193. 伊藤雅治

    政府委員(伊藤雅治君) 平成八年五月に緊急全国調査研究班を設置いたしまして、その時点までの患者発生状況調査をいたしました。その後の発生動向につきましては、平成九年二月に公衆衛生審議会の中に専門委員会を設置し、クロイツフェルト・ヤコブ病等類縁疾患調査を行いまして実態把握に努めてきましたが、この二つ調査を合わせまして、平成十年十二月末現在で六十一例を把握しております。
  194. 小池晃

    ○小池晃君 被害者の方は医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構、いわゆる医薬品機構による救済、これも求めておられますけれども、これは医薬品機構の方は応じていない。なぜでしょうか。
  195. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 現在、医薬品機構が実施主体となって行っております制度医薬品の副作用被害救済制度でございまして、これは医薬品企業が共同して拠出を行い、この拠出金を活用して医薬品の副作用による健康被害を迅速に救済していこうという趣旨のものでございまして、医療用具でありますヒト乾燥硬膜によるとされる健康被害は制度的に救済対象とならない、こういったことでございます。
  196. 小池晃

    ○小池晃君 一方、先ほど御質問にありました、今、医薬品機構は、ジェイテックという企業による生体材料を利用した研究に対する助成一億二千万、五年間で九億八千万という融資が検討されているわけであります。硬膜移植による被害者に対しては、これは医療用具だからということで救済の対象にならない。一方で、医療用具の開発に対しては同じ医薬品機構からその出資がされる。これはやはり被害者の方にとってみれば非常に理不尽な話ではないかというふうに思うんですね。  ヤコブ病は非常に予後の不良な疾患であります。被害者の一人である大津の患者さんのケースなどは、本当に御主人が献身的に介護をされて存命されているというケースではないかというふうに思うんです。  今、裁判されているということもありますけれども、裁判の結果を待ってから対応するということではやはり被害者の方は救われない。薬害エイズのときの教訓を生かしていただいて、一刻も早い救済の手を差し伸べるべきだ。そういう点で言うと、医薬品機構が、被害者の方が求められておりますけれども、ぜひその救済の手を差し伸べるように指導すべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  197. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 繰り返しになりますが、医薬品機構が行っています医薬品の副作用による健康被害につきましては、医薬品が適正な目的に従い適正に使用された場合においても、医薬品の本来の性質から副作用というのが不可避的に生じ得る、そういった医薬品本来の性質に着目して製薬企業が共同して対処していこう、そういう趣旨のもとに創設されたものでございます。  他方、医療用具につきましては、医療用具そのものが非常に多種多岐にわたる、体温計、メス、エックス線のフィルム、分析用や診断用の機器からペースメーカー等々に至るまで多岐にわたるという問題、それから医療用具による事故の大半が用具そのものの欠陥あるいは使用方法の誤りによるものと考えられるということでございまして、用具について医薬品と同列に議論し、同様の制度を創設するのは非常に困難ではないかと。  いずれにいたしましても、仮に医療用具の欠陥による健康被害が生じたということになりますと、製造物責任法に基づいて原則として製造業者が製造物責任を負い、必要な損害賠償を行う、そういうことになろうかというふうに考えております。
  198. 小池晃

    ○小池晃君 ちょっと別の角度から聞きたいと思うんですが、大臣は二月十日の衆議院厚生委員会で、一九八七年の時点では、乾燥硬膜とヤコブ病の発生の関係、これは世界で一例しか報告されていない等の当時の医学的、薬学的知見から、関連を予知することは不可能であったというふうに述べておられます。しかし、その既に十年以上前からこれは警告があったんですね。  一九七四年には、角膜移植によるヤコブ病の感染症例が報告をされている。七七年にはガイジュセック、この人はクールーやヤコブ病の研究でノーベル賞をとった人ですが、ヤコブ病感染者からとった器官及び組織は移植に使用してはならないと警告している。八五年九月にはポール・ブラウン、そういった人たちが、ヒト成長ホルモンに関する論文の中で、組織移植によるヤコブ病感染を危惧するものの一つとして硬膜というのを例示しております。今言った論文というのは、全部ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに掲載されている。これは世界でも最も普及している医学雑誌の一つだと思うんですが、掲載された。また七八年にはギブスとガイジュセックらが全米科学アカデミーの報告書にガンマ線放射線ではヤコブ病の感染力は低下しないという報告を載せている。ちなみに、日本で使われた硬膜、商品名ライオデュラ、これはガンマ線滅菌と。その上に、八七年のアメリカFDAの安全警告が出る。  ですから、大臣答えられたように、八七年の時点で初めて一例だったからというのではなくて、それ以前からヤコブ病の研究者は注目していたし、そういう意味では厚生省も注意を払っておくべき問題であったのではないか、そういうふうに考えるわけです。  こうした個々の事実、個々の問題は別にして、生体材料を介したヤコブ病感染の危険性あるいはそういった感染力というのが容易に除去されないという事実、こういうことは八七年以前から指摘されていたのではないかというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。
  199. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 今、先生指摘のヒト乾燥硬膜移植によってCJDを発症したという主張のもとに民事訴訟が国、輸入販売業者を相手に展開されております。御指摘の国の予見可能性という問題につきましては、これらの訴訟の中で最終的には裁判所の判断を仰ぐべきものというふうに考えております。  ただ、国といたしましては、この訴訟の中で、第一症例報告前、今、先生が御引用になりましたそういった指摘に関する文献につきましてはヒト乾燥硬膜とCJD発生の直接的な関連を示唆するものではなく、これらの文献の存在をもってヒト乾燥硬膜の移植によるCJD発症の危険性を予見することは到底不可能であった旨の主張を行ってきているところでございます。  個別文献ごとの評価につきましては、今後の訴訟の過程におきまして国が見解を明らかにしていくこととしておりまして、答弁を差し控えることとさせていただきたいと考えております。
  200. 小池晃

    ○小池晃君 私の質問は、硬膜の予見可能性の問題を聞いているんじゃなくて、生体材料を介した感染の可能性は以前から指摘されていたのではないか、そういうことをお聞きしているんです。  大臣も答弁されていますのでぜひお答え願いたいと思うんですけれども、一つは、医薬品機構が一方で医療用具の開発に出資をしながら被害者救済にはお金を出そうとしないというのはやはりおかしいのではないか、そういう率直な被害者の声にどうこたえるのか。そして、今私が指摘したように以前からこの危険性は指摘されていたわけですから、裁判の結果を待つと言わずに救済の手を差し伸べる、やはりそういう一歩を踏み出すべきときに来ているのではないかというふうに考えるわけです。  イギリスでは、昨年五月に上級裁判所の判決が下されて、ヒト下垂体由来の成長ホルモン投与によるヤコブ病感染については一九七七年以降の使用について国の責任を認める、そういう判決が出されているんです。  薬害エイズのときのように裁判の結果を待ってということではなくて、一刻も早く行政の側からその一歩を踏み出す、そういう姿勢が求められているときではないかというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。直ちにその誤りを認めて、患者、家族、御遺族に謝罪するなりあるいは救済措置をとるなり、そういう方策をとることが厚生省に求められているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  201. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) まず、被害者の救済機構と研究開発のための融資の問題、それから補償の問題でございますが、これは制度がそれぞれ政策目的を異にしておりますから、一概にこちらがやったからこちらもやるべきであるというようなぐあいにはいかないということを申し上げさせていただきます。  それから第二番目の問題は、CJDとの関係では今訴訟が起きておりまして、先ほど局長から答弁をされましたように、私も予算委員会等で答弁いたしておりますが、繰り返しになりますけれども、世界で一例しか報告されていない等の当時の医学的、薬学的知見から、ヒト乾燥硬膜とCJDとの関連を予見することは不可能であり、したがって当該事案に係るヒト乾燥硬膜移植手術までに厚生大臣がヒト乾燥硬膜の使用禁止等の措置を講じなかったことが国家賠償法上違法ということはできない旨の主張を行っておりますが、裁判が行われている段階ではただいま申し上げたとおりでございます。
  202. 小池晃

    ○小池晃君 今、政策目的が違うというふうにおっしゃいましたけれども、やはり被害者の方からすれば、同じ機構から一方で医療用具に出て一方で医薬品には出ないということは、これはどう見てもおかしいという声が上がるのは私は当然だと思うんです。  今そういうふうにおっしゃいましたけれども、裁判の結果を待つというのではなくて、やはりそれに先立って足を踏み出すというのが薬害エイズのときの教訓ではなかったかというふうに思いますので、引き続きぜひ前向きの対応をしていただくことを要請しまして、私の質問を終わります。
  203. 井上美代

    ○井上美代君 私は、日本共産党を代表して、質問をいたします。  介護保険の実施を前にしておりますけれども、これが実施されますと六十五歳未満の国保の加入者については国保料に介護保険料が上乗せされまして、そして一括して徴収をされるということになります。今日非常に厳しい情勢のもとにありますので、そういう意味で国民健康保険証の取り上げがいろいろありまして、きょうはそういう問題で質問をしたいというふうに思っております。  まず、少し今の現状についてお話をしなきゃいけないというふうに思うんですが、年間の国保料は全世帯平均で十五万二千五百十八円、これは九六年ですけれども、そして所得に対する負担割合は六・九%です。これを健康保険組合の三・七%の負担と比べてみたときに、国保が非常に高い負担になっているということがわかります。  こうした中で、国保料の滞納者が大変ふえております。一九九二年に二百三十六万世帯だったのが、九七年には三百三万世帯というようにふえているのであります。この滞納者の急増の原因はどこにあるかということは、既に九七年十一月に質問があって、厚生省保険料の値上がりと経済状況の低迷にあるというふうに答弁をされております。  こういった状況の中で、今、資格証明書だとか短期保険証の発行が大変ふえておりまして、私はまずその中で資格証明書の発行について取り上げたいというふうに思います。  この資格証明書というのは、医療機関で一たん医療費を全額支払った後で滞納金を支払わなければお金は戻ってこないというものであります。風邪にかかっただけでも五千円だとか一万円だとかというふうに取られてしまうわけなんです。滞納者はお金がないから滞納しているのであって、こんなお金を払えるはずもないような人たちなんです。まさにこの資格証明書というのは、医療を受ける権利を奪ってしまう中身であるというふうに思いますし、国民の命を切り縮めるものにほかならないというふうに私は思います。正規の保険証を取り上げて、そして資格証明書を発行するというこの件数が、九八年には七万三千百六十三世帯、九〇年からすれば二・四倍というようにふえているのであります。  私のところに何とかしてほしいと言ってこられる方たちがたくさんいらっしゃいます。全国商工団体連合会だとか、そのほかあります。今やはり倒産などがありますので、事業がうまくいかないので保険料を滞納していたが、切りかえのときに保険証が交付されずに、十五万円持ってきたら渡すぞと、こういうふうに突然役所から電話で通告されたと、そういう声も寄せられております。また、別の例では、夫と経営をしていたコンピューターのグラフィックの仕事がことしに入ってから全く仕事がなくなってしまって、家族四人の生活を支えるのにサラ金を借りてしまった、そして国保料も滞納してしまったと。保険証の切りかえのときに役所から、せめて一カ月分、一万五千七百円納めないと保険証は出さない、こういうふうに言われたということで相談があっております。  このような幾つもの相談があるんですけれども、私は、保険証を取り上げることによってこういった国民の命を刻むような思いにさせるということはあってはならないことだと思っているのです。だから、そういう意味で、この資格証明書というものの発行をやはりやめるべきではないかというふうに思っているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  204. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 国民健康保険制度というものは、お互いに助け合いの精神に基づきまして維持されている社会保険制度でありまして、制度運営を維持していくためには保険料の徴収は欠かせないものでございまして、言うまでもなくこの徴収には最大限の努力をお願いしたいと考えておるわけです。  御指摘保険料を支払う能力がありながら特別な理由もなく滞納している悪質な者については、今お話しのように被保険者証を返還していただきまして、それにかわって被保険者資格証明書を交付いたしております。この被保険者資格証明書は、もちろん悪質な滞納者に対しまして被保険者証の返還を求めまして、これにかえて交付いたしますが、今お話しのように医療機関で現物給付は受けられません。窓口では患者が一たん診療費の全額を支払っていただいて、後日、保険者からの償還払いということに相なっております。こうした措置は市町村における収納確保のための必要な施策であるというように考えております。  なお、災害とか事業の休廃止等やむを得ない事情によりまして保険料を納付することができない場合には、被保険者証の返還を求めないこととされております。また、被保険者証の返還を求める場合には、事前に十分な納付相談や指導を行いまして、各世帯の具体的な事情を把握した上で実施するように指導しておるところでございます。
  205. 井上美代

    ○井上美代君 滞納をなくすという側と、そしてまた非常にいろいろな嫌がらせをされながらお金を払えと迫られた側と、やはりそこのところの問題をきちんととらえていくことが大事なのではないだろうかというふうに思います。  今、大臣が答弁してくださったんですけれども、一九八六年十二月に厚生省から通達が出ておりまして、ここの中には「実際の運用に当たっては、納付相談・指導を通じて滞納者の実情等を十分に把握し、その実情を勘案すべきものであること。」ということが明記してあります。この通達の中には、国保料滞納者に対する措置の取り扱いということなんですけれども、納付相談・指導に一向に応じようとしない人というような四つの項目がありまして、それらと分けてきちんと実情を勘案すべきであるということが書いてあります。  私は、特に不況の厳しい折でもありますので、この納付相談そして指導を丁寧にして滞納者の実情を十分に把握するという、この通達のこの部分が大事であるというふうに思っているんですけれども、いかがでしょうか。
  206. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 大臣お答えを申し上げました、国民健康保険保険料を滞納され、支払う能力がありながら特別な理由もなく滞納しているという悪質な方に対しての被保険者証の返還ということで設けられた制度でございます。その運用に当たりまして、先生お挙げをいただきました通知を出して指導いたしておるところでございます。  この通知の内容につきましては、全体としてやはり非常に私ども大事な視点であるというふうに考えております。したがいまして、いわゆる実情に即してという点も、例えば納付相談や指導を十分行うこと、こういったこともそれぞれの実情に応じた工夫の中の一つでございましょうし、そのほかにも、納付相談・指導を通じても対応が不可能であることを認められるような場合に行うというような点もそうでございましょうし、先生お挙げをいただいた納付相談なり指導を通じて滞納者の実情等を十分に把握してその実情を勘案すべきものであるということも同様に重要であります。そういう意味では、総合的にこれらのことを十分踏まえた運用がなされるように指導いたしておりますし、そのことが大事だというふうに考えております。
  207. 井上美代

    ○井上美代君 私は、今の御答弁を受けて、もう一つの短期保険証というのがあるんですけれども、今度はこの短期保険証について質問をしたいというふうに思います。  短期保険証は、九八年度、二十五万九千三百三世帯、五年前と比べて三倍にふえております。いろいろ悩みがいっぱい寄せられるんですけれども、ある女性の方、これは業者の方です。九月に一度保険料が払えなかった、十月に入って保険証をもらいに行ったら短期保険証だったと。保険証というのは、病院で使うだけではなくて、毎年学校にコピーを提出するし、そしてまた子供たちが修学旅行にも持っていくということで非常に悔しい思いをしたというふうに言っておられるんですけれども、私は自分もやはり保険証を子供たちに持たせてやったりした経験もあるものですから、この短期保険証についてお聞きしたいわけなんです。  これについても指導監察が毎年厚生省から出されております。そうした中で、厚生省は滞納者対策として納付相談の機会をふやすために活用せよということで、たびたびお金を持ってこさせて、そこで指導をしておられるというのがあるんですけれども、これがやはり非常に今日、国民が大変な暮らしになっている中で危険な役割を果たしているというのが出ております。大阪の摂津市の事例なんですけれども、短期保険証のサラ金のような取り立てをしている、そういう手段に使っているというのがあります。  私は、今ここに証明書を持っております。これが短期保険証の証明書なんですけれども、ここには資格取得の日にちが去年の十二月三十日と書いてありまして、有効期限は一月二十三日までというふうになっておりまして、二十五日間というのがその期限になります。そのほかにも一週間の期限、それから二週間というような、期限が非常に短いものがあるわけなんです。  もう時間もたくさんありませんので紹介はできないんですけれども、一週間のものをもらった人は、これでは本当に保険証が役に立たないということを言っておられますし、やはり正規の保険証が欲しいということを言っておられます。三カ月間、月々一万円出しなさいとか、そしてまた二週間後に五千円払いなさいとかということを言われながら、払えなければもう保険証が使えないわけなんです。だから、滞納を何とか払っていかなければいけないのはそのとおりなんですけれども、なかなか保険証がもらえない。  そういう中で、そういう方々が放置されているという今日の現状を考えますときに、私はこのままではいけないのではないだろうかというふうに思っております。特に、一つ保険証の取り上げということについて、やはり短期保険証を出してやっていくということについて問題があると思いますし、そしてまた一週間しか保険証の期間がないという問題もあるというふうに思います。  それで、私は、厚生省がこの実態をぜひつかんでほしい。そして、滞納者はたくさんいらっしゃるんですけれども、この実態をつかんで指導してほしいというふうに思うんです。そういうことで、まず御答弁をお願いしたいというふうに思います。
  208. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 冒頭、大臣からもお答え申し上げましたように、国民健康保険制度は社会保険制度でございまして、保険料がいわば制度運営の根幹でございます。これが崩れてまいりますと国民の健康確保もおぼつかないということにもなりかねないわけでございますので、それぞれの保険者が保険料収納に最大限の努力をするというのは、ある意味からいうと、制度を維持し、ひいては国民の健康を確保していくために非常に大事な視点であろうというふうに思います。  そうしたことの中で、先ほど資格証明書のお話が出ました。また、今、短期被保険者証についての御議論がございました。御指摘の短期被保険者証につきましても、保険料の滞納が続いている被保険者の方々については、なかなか本人と接触ができないというような困難なケースというのが結構ございまして、市町村等も大変そこを苦労いたしておるわけであります。そうした場合に、通常に比べまして更新期間が短い被保険者証を交付しまして、その期間についてはそれぞれの保険者によって設定をいたしておりますけれども、それぞれ納付相談等の機会をそれによって確保して、被保険者の実情に応じた収納が図れるようにということでやっているわけであります。  このような保険料収納確保に係ります市町村のさまざまな工夫や努力は私どもとしても尊重していかなければならないということで、実情に応じたということは必要でございますけれども、保険料負担の公平を図る、あるいは国民健康保険財政の運営を何とか安定的に確保するという観点から、これはやはり今後とも必要なものであろうというふうに考えておるところでございます。
  209. 井上美代

    ○井上美代君 今、この滞納をなくす立場からはどうしてもそれが必要だというお話がありました。私は、やはり保険制度ということは非常に大事だというふうに思います。だから、制度を崩さないようにやっていくということは、取り立てを強化していくだけではなくて、もう本当にこれから国保料は、言ってみれば法律が変わりましたね。介護保険法が実施されるようになると、長期滞納者の保険証の返還は、今までできるものとするとなっていたのが、今度は義務に変わって返還するものとするというふうに法律も変わっているわけなんです。そして、介護保険保険料を上乗せして一括徴収していくわけです。  そういう点で、払えない人が本当にたくさんになったならば、この制度が私は崩されていくと思うんです。だから、その辺の強制的に徴収していく問題と、そして払えないために制度が崩れるという問題と、私はそこをきちんと考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。  こうした滞納については、これは愛知のある自治体の例なんですけれども、納付のために納付誓約書を書かせているというようなこともあります。そういうものを書かせてでも取り立てていくということをやっているんですけれども、やはり払う意思がある人、そしてまた滞納の事情をきちんと説明する人、それから自分の支払いのプランを持って分割払いをする人、こういう人もいらっしゃるわけですから、そういう人に対しては私はきちんと正規の保険証を出していくべきだというふうに思うんですけれども、大臣いかがでしょうか。
  210. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この保険料の納付につきましては、先ほど来御議論のありますように、滞納者の指導その他が大変重要でございます。したがって、今申された点は制度としてそうせよというような御意見かと存じますけれども、そういうことを含めまして、私どもとしては、資力のない方が納められないという場合もありますから、そういう点は十分納入者の事情を勘案してやるべきものだとは思います。  しかし、基本的には保険制度でございますから、加入されている以上、保険料をとにかくいろいろな形において、分割でも何でもそれは場合によると必要かもしれませんが、納めていただくという前提で制度が構築されていますから、そういった趣旨で運用してまいりたいと思います。
  211. 井上美代

    ○井上美代君 介護保険の導入を前に、やはり短期の発行が大変ふえているということで、神奈川県でも一昨年と比べて二・五倍というようなところも出ておりますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。  次の質問に移ります。  資格証明書だとかそれから短期保険証の発行がやられるんですけれども、これは自治体の数もふえておりまして、資格証明書を発行している自治体は六百五十九自治体あるんです。そして、短期保険証は一千二百七十二の自治体で行われております。これはあくまでも自治体の裁量で決められているんだというふうに思いますが、それでよろしいですね。
  212. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お尋ねのことにつきましては、現在の法制下におきまして申し上げますと、一つ個々の事例における被保険者資格証明書に関する取り扱いにつきましては、法令の規定に基づきまして各保険者の判断によって実施されている。また、短期被保険者証の交付につきましては、保険料収納確保のための工夫の一環として各保険者の判断により実施をされているということでございます。  ただ、先ほど先生もお挙げになりましたけれども、介護保険導入後におきましては、国民健康保険とともに介護保険、やはり被保険者全体の相互扶助で成り立つ社会保険でございますので、その財源となる保険料の収納確保が制度を維持していくいわば根幹であるということで、そういう観点から、平成十二年度における介護保険制度の導入を機に、保険料を払う能力があるのに理由なく滞納しておられるというような悪質な国保保険料滞納者に対する実効的な対策を講じるという観点から、一定の要件に該当します悪質滞納者に対しては、被保険者証にかわり被保険者資格証明書を交付することを市町村に対し義務づけることとしたところでございます。  したがいまして、お尋ねのことで言えば、今日ただいまの状態とそれから十二年度後における状態につきましては、今申し上げたように若干法的な度合いを異にしておるということでございます。
  213. 井上美代

    ○井上美代君 一括でまた集めていくことになるので、その点はぜひいろいろ注意をして、よろしくお願いしたいというふうに思います。  次に、今のことともかかわってくるんですが、二月五日に国保の課長会議が開かれております。その中で厚生省の国保指導室長補佐が述べられているんですけれども、滞納者と面談の機会を確保する観点から、短期の被保険者証を交付し効果を上げている保険者もあるので、未実施の保険者に対して対策の一つとして検討いただいて実施をお願いするなど御指導をお願いするというのがあるんです。今御答弁された中身と重なるんだというふうに思うんです。  私は、この資格証明書を現在発行していない自治体もかなりありますので、指導として全部の自治体にやらせるというようなことをしないでほしいというふうに思っているんですけれども、そこのところはいかがでしょうか。
  214. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先ほど来申し上げておりますように、国民健康保険制度を支える根幹はやはり保険料でございます。そうしますと、これはひとりそれぞれの保険者がそれで保険料が集まらなければ困るよということだけではなくて、我が国全体として必要な国民に対する医療の確保という観点からも、医療保険制度を支えていくという観点からも、滞納者対策をやはりきちっとしていただくということは、私どもとしても大いに各保険者に対して御指導を申し上げなければならないことでもございます。  また、あわせまして、今、それはそれぞれの自治体の裁量に任すようにというお話ございましたが、資格証明書に関しましては、先ほど御答弁申し上げましたように、平成十二年度からは、法制的にも国会の御承認を得ました介護保険法の改正の際にあれしましたように、資格証明書の交付については一定の要件のもとに交付を義務づけるという法制的なことも行われておりますので、そうしたことの中で私どもも指導を行ってまいらなければならないというふうに考えておるところでございます。
  215. 井上美代

    ○井上美代君 私は、この国保の課長会議の中身を見たり、そしてことしの三月十一日に出ました監察など、通告を見まして、本当に驚いているんです。こんなふうにして取っているということについて本当に疑問を持ちます。大変ひどいです。それはもう本当にひどいと思います。  だから、悪質ないろんな人もいらっしゃると思うんです、大勢の中に。しかしながら、私はもっと調査をしてほしい、現場を調べてほしいというふうに思います。そして、指導を強めていただいて、私は厚生省はもっと前向きな通達を出していただきたいというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。このままで、介護保険も、そして国保も、重ねて一括して徴収していくというのは非常に国民の側からいえば大変だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  216. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 制度が介護保険制度としてできるわけで、そしてまた国民医療保険があるわけでございますので、これは徴収の便宜その他を考えて同時にということだったと思います。それなりの合理性はあると思います。  ただ、具体的な事例の中で、本当にやむを得ない事情のある方もあるいは委員のおっしゃられるようにあるかもしれません。そういった点については十分配慮をして、徴収の猶予、その他分割納付とかいろいろの手がございますから、そういった配慮も必要ではないかと思いますが、基本的にはこの制度を維持していくということは国民全体の利益にもかなうことでございますから、委員のおっしゃるような前向きなという意味はそれなりに受けとめさせていただきますけれども、今後この制度を維持するための根幹として保険料徴収をきちっと対応していきたいと思っております。
  217. 井上美代

    ○井上美代君 制度維持という立場から、私は払い切れない人がこれ以上ふえていくということについて憂いて質問をしておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  最後に、私は介護保険、特に在宅高齢者保健福祉推進支援事業について質問をさせていただいて、これで終わりたいと思います。  要介護認定で自立と判定された人は介護サービスを受けることができないということになりますが、東京都内の十八の自治体の協力で昨年秋に行われました要介護認定モデル事業で在宅のサービスを受けている人の中で自立と判定された方、この方たちがどういうサービスを受けているかということを調べてみました。  そうしましたら、自立と認定された四十八のケースのうちホームヘルプを受けている人は十八人でした。そのうち、月に四回から五回が十一人、月八回以上は五人、その中で一人は月十二回でした。この人たちは、介護保険が始まるとホームヘルプなど介護保険のメニューが何も受けられなくなってしまうのです。  それで、例えばひとり暮らしの男性の高齢者など、体は動くけれども買い物や調理ができなかったり、生きる意欲がないというのでホームヘルプを必要とする人がいらっしゃいます。この推進事業の中にホームヘルプを入れて生活支援をきちんとやるべきではないかというふうに思います。  また、調べた中でも、配食サービスについては今大変需要が伸びているんですね。介護保険が始まってからもこの配食サービスなどは伸びておりますので、介護保険対象になろうとなるまいと補助金の事業の中で配食サービス、これが受けられるようにすべきではないかなというふうに思っているんですけれども、いかがでしょうか。御答弁をお願いします。
  218. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 時間が過ぎておりますので、手短に御答弁ください。
  219. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) すべての高齢者が生きがいを持って安心して暮らせる社会というのが我々のモットーでございます。  したがいまして、介護保険制度対象とならない寝たきり予防の施策とか、独居老人等を対象とした配食などのサービスについてもその推進を図る必要がございまして、平成十一年度予算で御指摘の在宅高齢者保健福祉推進支援事業というものを創設いたしまして、百億円を計上してございます。今後さらにこうした保健福祉サービスの支援を増強していくことは必要であると考えておりますので、充実を図ってまいりたいと思っております。
  220. 井上美代

    ○井上美代君 どうもありがとうございました。
  221. 堂本暁子

    堂本暁子君 きょうは委嘱審査なので、厚生省予算に関連して質問をさせていただきたいと思います。  前回は省の縦割りの中でスポーツのトレーナーの資格の制度について伺ったわけですが、きょうは厚生省内の予算について伺いますが、縦割りであるがゆえにむだがあるんではないかと考えます。政策の統合によって効率化していくことが可能なのではないかというふうに思っております。  大変関心を持っております例えば健康日本21なんですけれども、これも保健医療局地域保健・健康増進栄養課という非常に長い名前の、もう局の中からずっと課のところまで来て、そのところで担当しておられる。それから一方で老人保健福祉局、こちらは三兆余りの予算を上げていらっしゃいますけれども、そういったところ、しかしその中には例えば地域のリハビリ一億五千四百万を計上されていますし、それからもう一つは例えば生活習慣病の対策の推進というものに四十九億、予算案の概要の中にございます。  これらの中身を見ますと非常に共通しております。みんなそれぞれ食べ物の問題、運動の問題、そしてしかも重点は高齢者ということなので、ここの統合という形にしますと、効率化するだけではなくて、例えば施設を共通して使うとか、それから同じような方針を貫いてやっていけるというようなことで、政策を実行する現場の方もよくなるでしょう、やりやすくなるでしょうし、それから実際にサービスを受ける一人一人の高齢者なり国民なりが大変いろいろなサービスを効率的に利用することができると思いますが、この点について、大きいところで大臣はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。
  222. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員の御指摘のように、縦割りといいますとこれは省庁間だけの話ではございませんで、省庁内の運用の問題であることも御指摘のとおりでございます。  具体的に厚生省の方では、健康づくりとして健康日本21計画というのを今検討しておりまして、二〇〇〇年から数値目標を定めて策定しようとしておりますが、同時に、今御指摘のように老人保健事業、ヘルス事業もやっております。これは、それぞれのねらいとか目的は大体同じでございますが、手法その他を異にしておりますのでこうした二つの事業が併存する形になっていると存じますけれども、私どもとしては、この両者は非常に関連の深いものでございまして、やっぱり有機的に同じ省内でやる話でございますから、それらがそれぞれのすみ分けをして効果的にこれらの事業が推進できるようにしていくことは大変重要な課題だと思っております。
  223. 堂本暁子

    堂本暁子君 ぜひともその方向で、むだをなくすということ以上に、より積極的にいいサービスが受けられるような展開をしていただけたらうれしく思います。  同時に、高齢者になるまで若いときがあるわけですが、例えば今生活習慣病と申し上げましたけれども、生活習慣病でも四十代からなる人もある。ところが、今は、行政は縦割りですけれども、私どもサービスを受ける方は年齢割りなんですね。六十五歳以上は高齢者、それ以下で行政的には線がありますけれども、人間の側からしますと、一人一人がずっと縦にフォローされることがとても大事です。  ですから、四十代のときの疾病であったり四十代のときのリハビリテーションとか、それが六十代、七十代、八十代、事によったら九十代までずっとフォローアップされるような形でシステムができたらば、もっとこれも、イロハのイから説明をしなくて済むとか、むだを省くとか、何度も同じ検査をしなくて済むとか、いろいろな効用があると思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  224. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員の御指摘は非常に基本的な問題について、あり方について御指摘でございまして、私もそう思います。六十五で何も突然変わるわけではないわけでございまして、連続性を持っておるというのは事実でございます。  しかし、制度を定立する場合は一つの区切りごとにこの制度を構築しようという建前をとらざるを得ない面も御理解いただけると思いまして、そういう面で今の区切りができていると存じますが、この保険制度というものは一生を通じての話でございますから、そういった視点はぜひ失わないようにやっていかなければならないと思います。
  225. 堂本暁子

    堂本暁子君 私は、これは情報公開の問題じゃないかと思うんです。希望する人は、本当に自分の健康に関心のある人はいろいろな身体検査やなんかのデータを自分で管理して持つ、行政の方で管理するのではなくて個人個人が自己管理をする、そして自己責任、自己努力だと思いますので、それをやりやすくするためにその情報を公開し、それぞれが例えば自分で書き込んでいくとか、そういうことができるようなシステムがあれば、やりたくない人はやらなければいいんですけれども、自分で自分の健康に責任を持ちたいと思う人は大変便利になるというふうに思いますので、その辺もいずれ考えていただけたらいいんではないかと思います。  次に、社会福祉基礎構造改革について伺います。  今、作業が進んでいるようですけれども、決まってから申し上げるのは困りますので、今のうちにいろいろ伺っておきたい。  やはり、福祉のサービスというのは基本的には公的な責任があると思います。いわゆるナショナルミニマムが何よりも大事だと思います。事業が十分に継続的に運営できるような、そういった制度改革であっていただきたいと願っているわけなんですが、今進んでいるのは規制緩和というようなことで、いろいろな福祉事業全体に対しての参入要件をこれからどうやって広げていくのかということが大きな問題になると思います。  例えば、小規模作業所あるいは保育所なんかがその例だと思っているわけなんですが、そういったところで、今、社会福祉法人というのは一億円というような、そういったけたのお金を必要とする。それから、先日国会を通って施行されましたNPO法では、十分な最低基準のようなものがつくられているわけではありません。その間と申しますか、その辺のところについてもう少し、実際にそういう事業がしたいという人たちができる、あるいは利用したいという人たちが利用できるような規模の法人があってもいいんではないかというようなことについてはいかがお考えでしょうか。
  226. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 今、先生が御指摘されましたように、これからの社会福祉サービスの量の増大、また多様なサービスが必要となってくるという状況を考えますと、いろいろな主体の方々に質のよい適切なサービスを提供していただくことが望ましいことだろうというふうに思っております。社会福祉基礎構造改革も、社会福祉全体についての公的な責任というものは当然大前提としながらも、そういう多様な主体の参入というものを促進したいというのが私どもの基本的なねらいでございます。  そこで、今、先生お尋ねの社会福祉の供給主体のNPOと社会福祉法人をどのようにすみ分けたらいいだろうかということでございますけれども、私どもは両者それぞれの長所があるんじゃないのかなと。NPOは、それぞれ公の規制が比較的緩やかでございますから自発的な活動をされるというよい面もございましょう。一方、社会福祉法人になられますと、いわば社会的な信頼感、信用力、また社会福祉事業を行うことに当たっての税制上の優遇措置という問題もございますので、社会福祉法人が大いに活躍していただく余地が多いんじゃないだろうかというふうに思っております。  そこで、私どもは社会福祉法人になりやすいように規制緩和というものを現在検討しているところでございます。先生が例に挙げられました、社会福祉施設を行わない場合、一億円の資産要件をかけておるわけでございますけれども、これの緩和ということも現在検討しておるところでございます。
  227. 堂本暁子

    堂本暁子君 NPOというのは、別に保育所をやったりそういった要件を満たしているわけではないので、法人格はありますけれども、全く法人格を市民団体に付与するという法律でございまして、そこで保育園とかそれからある種作業所とか乳児院とか、そういうことができるというふうには私は考えていません。ですから、今おっしゃった一億円というものをもう少し緩和したい、どのぐらいまで、額をおっしゃるのは難しいかもしれませんけれども、数千万のけたなのか数百万のけたなのか、その辺のめどというのはついているでしょうか。
  228. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 結論から申しますと、現在まだ検討の過程でございまして、まだ結論が出ておりません。  結局、社会福祉法人という場合、これはある程度社会的な信用力、また従来の社会福祉法人がなぜ一億円の資産要件を要件としたかということを調べてみますと、そこからの運用収入というものも一応期待したようでございます。そういう側面もあると思います。それから、社会福祉法人は本来公益法人の財団というところから派生したものでございますので、全く資産がないということもいかがだろうかと思います。そういうことを勘案して現在検討しているところでございまして、めどというのは正直のところ今まだ持っておりませんので、お答えを控えさせていただきます。
  229. 堂本暁子

    堂本暁子君 ぜひこれから十分に検討していただきたいと思うんです。  私は、たまたまベビーホテルのキャンペーンというのをやりまして、野放しになっていることの危険性は嫌というほどこの目で見てまいりました。しかし同時に、もう社会福祉法人もいささかマンネリ化しているという事実も見てまいりました。  これから二十一世紀に向けての新しい法人のあり方というのは、保母さんなりなんなりきちっと資格を持った人たちがいる。それから必要な要件、子供たちにとって安全であるとか、それから、今、日本の保育所というのは遊ぶところと御飯を食べるところが一緒になったりしていますけれども、どこか広いところがあるのであればできるだけそういった広いところも必要である。それが例えば廃校になった小学校でもいいんじゃないかと。  アメリカに行ったときに、廃校になった学校で保育所をやっていました。今新しく建てるなどといったらまた何億とかかる。しかし、もっとそういう形で小規模保育所などというのを自由にもう少しできる、しかしきちっと資格とか最低の要件は満たしたもの、最低基準をきちっとある種満たしたものでなければいけないということも事実だと思うんですね。  その辺のところで、そんな数千万というようなお金になるとだれもできなくなってしまうということもありますから、実際に本当にやる気のある人ができるような範囲でぜひ御検討いただきたいと思います。それなりのやり方を工夫すれば、さっきの縦割りじゃありませんけれども、いろいろ学校とかそういったところを使えば私はできるんじゃないか。ですから、大変効率のいいやり方で、今までどおりではないやり方でそういうことを可能にしていただきたい。  それから最後に、これは質問もしたかったんですがお願いをしておきたいのは、児童の養護施設あるいは乳児院、それから母子生活支援施設、こういったところは措置対象になっています。公的責任を残している部分ですね。しかし同時に、保育園のように乳児院なんかでも利用できる、そういった選択ができるということも大事だと思います。ですから、今まで乳児院なんかは二番目の子供が生まれるときに一週間お母さんが上の子供を預けられるようなことになっていますけれども、同じようなことで必要のあるときに、せっかく施設があるわけですから、措置と利用というようなことが一緒に使えるようなこともまたこれからの検討課題ではないかと思いますので、その辺のところもぜひ検討して新しい制度への改革をやっていただきたいというふうに思っております。  それでは、これで質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  230. 入澤肇

    ○入澤肇君 私は最初に、質問というよりも一言だけ確認させていただきたいと思います。  参議院の予算委員会で他党の議員が質問しているのを聞いていまして、もう少し答弁の仕方を変えたらば誤解が生じないのになと思ったことがありました。それは、特別養護老人ホームの入所者につきまして、介護保険制度が導入されると、要介護と認定されない限り五年間の経過措置が終了するまでには特別養護老人ホームを退所しなければならないという説明がありました。  ところが、私も知っていますが、特別養護老人ホームの入所者というのは、もう生活の拠点を自分の家から施設へ移転しているケースが大部分なんですね。移転するに当たってきちんと市町村の認定を受けているわけであります。したがって、特別養護老人ホームの入所者のうち要支援ないし自立と認定された者は、五年間の経過措置が終了した時点で路頭に迷うことになるのじゃないかというふうな誤解が生じている。これに対して、厚生省はもっと前向きに、そういうことはないんだという温かい答弁をされたらいかがかと思うんですけれども、どうでしょうか。
  231. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 五年の経過措置の終了した時点で施設から出ていただくという問題になりますけれども、私どもとしては、受け入れ施設を十分整備して、そして皆さんの心配のないように安心できるような体制はきちっとやっていきたいと思っております。具体的ないろいろ手法については省略させていただきますけれども、そのことは大変重要なことだと考えております。
  232. 入澤肇

    ○入澤肇君 ありがとうございました。今のお言葉で一般の国民はまず安心するんじゃないかと思います。  それでは、質問を続けさせていただきます。  最初に、少子化対策につきまして御質問申し上げます。  子供を産まないのは豊かな社会で楽しみたいからだということをエッセイストの木村治美さんが書いております。こういう見解があるのは事実であります。しかし、いずれにいたしましても、少子化が国の発展のためによくないことは間違いありませんでして、女性が一人何役もやっている状況から解放することは極めて必要であります。そういう認識のもとに、少子化対策について国全体で取り組もうじゃないかということで議員連盟までできたわけでございます。  そこで、この対策といたしましては、まず女性の役割分担を少しでも軽減させようじゃないかということで保育所の施設の整備であるとか、あるいは子供を育てるのにお金がかかり過ぎるからということで子育て減税だとか奨学金の拡充だとか児童手当の拡充だとか、いろんなことがなされてきたわけであります。  そこでまず第一に、保育所の立地につきまして一体ニーズに合っているのかどうか。無認可の保育所を何か悪いことをしているように報道する例があるんですけれども、認可基準というのは別に法律に書いてあるわけじゃないんでしょう。恐らく補助金の通達かなんかで、交付基準かなんかでやっているんだと思うんですけれども、地域において一定の条件を満たした場合にはどんどん認めていくというような積極的な姿勢が必要じゃないかと思うんですが、その点につきましてはいかがでしょうか。
  233. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 保育所の認可につきましては、省令によりまして施設や職員に関する最低基準を定めておりまして、例えば保育士の数が乳児で申しますと三対一、一、二歳児については六対一、三歳児については二十対一、四歳児以降については三十対一というふうな人数の基準がございます。それから施設につきましても、どういう施設を設けること、あるいは一人当たりの面積基準というものが決まっております。それから設置主体におきましては、原則地方公共団体または社会福祉法人というようなことになっております。それから定員が原則六十名以上だということで、ただし都市部ですとか僻地におきましては三十人以上というようなことで取り扱い方針を示しまして、それに基づきまして都道府県が認可をしているというような状況でございます。  これの基準の緩和につきましては、一昨年に児童福祉法の改正による保育所の改正を行ったときに最低基準を緩和いたしまして、例えば調理なんかでございますと、内部で行うのを原則にいたしておりましたのを外部委託を認める、それからそれに伴って調理員の必置規制も外す、あるいは配置基準上今までは保育士については全部常勤ということを原則にしておりましたけれども、非常勤の保育士も二割限度認めるとか、あるいは定員要件についても分園方式を認めるとか、さまざまな思い切った緩和を行っているところでございます。  また、今後につきましても、例えば規制緩和委員会等から社会福祉法人以外の参入も認めるべきであるというような御意見もいただいておりまして、こうした点につきましては、福祉構造改革の一環として私どもとしてもどういった対応が可能か検討をしているところでございます。
  234. 入澤肇

    ○入澤肇君 問題は子供の安全が確保されるかどうかということが基本でありまして、それが必要十分な条件を満たしていれば弾力的に私は設置を認めていくべきじゃないかというふうに考えますので、一層の規制の緩和について検討していただきたいと思います。  それから、三つ目の要因といたしましてどうしても欠かせないのが安全かつ良質な食品の確保なんですね。この間、アメリカへ行って帰ってきた友人は、お土産にというんで亜鉛の錠剤を持ってきました。アメリカの国内では無精子症あるいは精子が少ない男性がたくさんいるというんで、亜鉛の錠剤を飲んで精力増強を図っているなんということでお土産に買ってきたんですけれども、そういうふうなことが行われるということは、もともとやっぱり食品が相当問題じゃないかと。  私ども日本においても、私もいろんな勉強をしましたけれども、日本の食品が十分な栄養素を持っているかどうかについてかなり疑問の持たれるようなデータがございます。厚生省としてどうしても安全かつ良質な食品の確保ということについて今まで以上に前向きの姿勢をとって指導していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  235. 真野章

    政府委員(真野章君) 先生指摘のとおりでございまして、今後とも食品の安全、衛生に最大限の留意を払うべき必要があると思っております。
  236. 入澤肇

    ○入澤肇君 これは私が議員になって初めてのこの委員会で注文をしておいたんですけれども、ぜひ野菜類、肉類、魚類の栄養素の分析、特に野菜の栄養分析を厚生省が主になってやっていただきたいんです。日本の農地の土壌が荒れていまして、ビタミンでも、例えば同じトマトでも二十年代に含まれていたビタミンの量が今は五分の一だとか四分の一だとかいうデータがかなりあるんです。繊維の量もかなり減っていると。そういうことでありますので、これは相当の調査費がかかるんですけれども、基本的なことでございますから、ぜひ厚生省でやっていただきたい。農林省でやろうとしてもなかなか難しい。やっぱり厚生省に専門家がいるわけですからやっていただきたいということを要望しておきます。  それから四つ目、これも問題なんですけれども環境ホルモン、こういうこともやっぱり少子化にかなり影響しているんじゃないかというふうに言われております。これについてはどんな対策をとっておりますか。
  237. 真野章

    政府委員(真野章君) 突然の御質問で大変恐縮でございますが、環境ホルモンはいわゆる俗称でございまして、内分泌攪乱化学物質と申しておりますが、それと先生おっしゃられる出生率との関係についてまだまだ明確な治験はないというふうに私ども考えております。  ただ、いわゆる環境問題についての対策というのはこれはまた必要なことでございまして、出生率との関係云々はまだこれからでございますが、そういう内分泌攪乱物質についてもきちっとした対応をとっていく必要があるというふうに考えております。
  238. 入澤肇

    ○入澤肇君 突然の質問で申しわけなかったですけれども、少子化対策というのは、ともすれば保育所をたくさんつくればいいとか、あるいは児童手当を拡充すればいいとかいうことで終わりそうなので、あえてこの食品の問題とか環境ホルモンの問題をつけ加えたわけでございます。しかし、ここら辺はなかなか難しい面を含んでいることは私も承知していますが、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  そこでもう一つ、今度は別の意味で確認しておきたいんですけれども、日本で出生率が最高なのは国民所得が最低の沖縄県だということで、これはデータがあるわけですね。厚生省からもいただきました。所得と出生率について何か定見がありますか。どうしてこういう状況が起きるのか、いろんな説はあると思うんですけれども、御意見がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  239. 真野章

    政府委員(真野章君) 端的に申し上げますと、まだまだ所得と出生率との間の関係についてきちっと整理がされているという状態ではないというふうに思います。  ただ、先生指摘のように、都道府県ごとの一人当たり県民所得と合計特殊出生率の相関関係を見てまいりますと、一人当たり県民所得の高い東京、愛知、埼玉、神奈川というところでは合計特殊出生率が比較的低い、一方、一人当たり県民所得の低い沖縄、宮崎、鹿児島、島根、そういう地域で合計特殊出生率が比較的高い、そういう傾向は見られます。  しかしながら、県民所得のよって来る要素もまさにさまざまでございますし、それから出生率のよって来るところもさまざまと。また、産業構造や一人当たりの部屋面積等の、一昨年、人口問題研究所がこの合計特殊出生率と社会経済指標の相関関係を研究いたしました。しかしながら、どうもこれではないか、ここに手を打てばというようなずばりの答えは残念ながら得られなかった。その中でも県民所得というのは割と、そういういろんな要素を加味した中では逆に言いますと逆相関という格好が出ているということでございます。
  240. 入澤肇

    ○入澤肇君 一人当たりの県民所得から見ても、それから私が調べました生涯所得が都道府県別にかなり異なっていまして、一番高いのはもちろん東京都で三億四、五千万、低いのが二億一千万から二千万、沖縄ですね。日本の平均が大体二億五千万ぐらい。余談ですけれども、二億五千万というのは、ちょうど高等学校を出て林野庁に入って営林署長で退官する人の生涯所得なんですよ。生涯所得と出生率が非常に比例しているんですね。  ですから、私はこういうことにつきまして、昔「菊と刀」のルース・ベネディクトがやったようなああいう総合的な調査研究をやってみることが必要なんじゃないかと思うんです。少子化対策、いろんなことをやれといっても、私は特効薬はないと思うんですね。こういう基礎的な調査研究の成果があって初めて具体的な対応策が出るのであって、ぜひこれは厚生省としてやっていただきたいというふうに要望しておきます。  もう一つ確認しておきたいのは、かつて鳴り物入りで児童手当が導入されました。児童手当がその後、少し下火になってきましたけれども、あの児童手当の効果というのは子供をふやすのに役立ったんでしょうか、効果があったんでしょうかどうでしょうか。
  241. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 児童手当制度は四十七年に創設されまして、当初は第三子以降ということでございましたけれども、その後二子、現在におきましては一子、ただし年齢が三歳未満というような形で支給されております。この間、何次にもわたりまして制度改正が行われまして、年齢なり給付額も変わっております。  それがどのように出生率に影響したかという点につきましては、これはなかなか測定が難しいということで、はっきりと数字的にお示しすることは困難でございます。
  242. 入澤肇

    ○入澤肇君 一部に児童手当をさらに強化して少子化対策に備えろという議論もあるわけです。ところが、今までやったことが効果があったかどうかはわからないというのじゃ、そういう手を打つことはなかなかとりにくいと私は思うんです。ぜひこれも具体的に分析をしておいていただきたいと思うのであります。  次に、国民医療費についてお伺いします。  九八年度は前年度より一・一%少ない二十八兆八千億円にとどまるとの予測があったわけであります。しかし、最近の数字を見ますとこれより高い水準で推移しておりますけれども、その要因は一体何なんだろうかということであります。特に、昭和五十九年十月の健保法の改正のときでも一年程度で医療費水準がもとに戻っておる。これを厚生省では構造的戻り現象というふうに言っているらしいんですけれども、これは一体どういう意味なのか、ちょっと教えてもらいたいと思います。  まず、九八年の医療費が高い水準に推移してきたその要因は何か、それから構造的戻り現象が起きたというその意味はどういうことかという、その二点をお伺いしたいと思います。
  243. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 医療費の伸び等についてのお尋ねでございます。  まず平成十年度、一九九八年度の医療費の伸び率についてのお尋ねでございますけれども、年度当初の医療費の伸び率の見通し、先生お話しございましたように前年度対比で一・一%の減少という見込みを立てておったわけでありますけれども、現在のところでは平成十年度は十一月までのところで見ましてプラス一・八%というような形で推移をいたしております。特に、九年九月に制度改正をいたしまして患者一部負担等の改正をしたわけでありますが、それが一年経過をいたしました十年九月から十一月までの伸びというのがプラス三・六%という形で高目に推移しております。  しからば、この高目に推移していることは何であるかということでございます。さまざまな要因が関連をしていると思いますけれども、要素的に見ますと、医療保険全体における受診率が、十年九月から十一月までの平均伸び率がプラス二・八%であるということで、制度改正前の伸び率に、ほぼ高い水準に戻ってきているということが現象面としての一つの大きな要因でございます。  それで、さらにこの要因が出てきたゆえんのものは、やはり基本的には、高齢化の進行等によりまして現在高齢者の医療費がそれ以外の世代の一人当たりで五倍と言われている、そういった基本的な高齢化の大きな流れ、大きな趨勢というものがこれに大きく影を落としているんだろうというふうに思います。そういった意味で、今後とも医療費適正化が大変大事だということにもなろうかというふうに思います。  今お挙げになりました二点目の、五十九年十月の健保法改正に絡みまして構造的な戻り現象というようなものについて、これは何であるかというお話でございます。  先ほど申し上げました平成九年の改正のちょうど一年後もそういった現象が今回また起きたわけでございますけれども、患者の一部負担率を引き上げますと軽度の疾病等の受診が手控えられるといったようなことから、健保法改正後一年間程度は受診率や医療費の対前年伸び率は低い水準にとどまるわけでございます。  しかしながら、当然のことでございますけれども、一年をちょうど一めぐりいたしますというと、受診率だとか医療費の対前年同月伸び率は比較する方も制度改正後のものになるわけであります。そこへもってきて、受診率等が人口の高齢化に伴い伸び続けているという構造面がございますというと、一たんは下がりますけれども、そこから同じ伸び率で伸びておれば、やっぱり一年たちますと同じ伸び率になってくるということで、基調的に言えば、そういった基調的な伸び圧力というようなものがどのようになってくるかということで、今後ともやはり抜本的な改正、構造的な改正をしていかなければならないゆえんもそこらにあろうというふうに考えておるところでございます。
  244. 入澤肇

    ○入澤肇君 そのような状況が続きますと、今度は拠出金も、九九年度予算では対前年度比七%アップの増加が見通されていると言われていますけれども、医療保険の加入者は健康保険料の負担増を迫られる可能性が大になるんじゃないかと思うんですが、これに対する対応はどうでしょうか。
  245. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お話しのとおり、老人保健拠出金が先ほど申し上げました老人医療費の増加ということによりまして増加をいたします。その一方で、特に今の経済局面は大変景気が悪うございますから保険料の伸び、これは所得にリンクをいたしますので、所得の伸びが低迷をしているということからも保険料の伸びが非常に低迷をいたしております。  ただ、より長期的に考えましても、今後はそう高度成長ということは見込めないとなれば、保険料収入が定常状態になりましても安定的な伸び以上のものはなかなか難しいであろう。そうしますというと、やはりそこをほっておきますとその間のギャップというものが大きくなります。特に、老人につきましては老人保健拠出金が増加をするということの中で、なかなかそこらの保険料の引き上げが難しいという状況がだんだんに出てくるということで、医療保険制度が厳しい財政状況になっているわけでございます。  もちろん、そういった負担をいかに公平に負担していくかという視点は大事でございますけれども、あわせまして、医療費の伸びと経済成長との不均衡が拡大をしていく中で、将来にわたって安定した医療保険制度を確立いたしますために医療費のむだだとかあるいは非効率といったような部分を排除する、そういった制度全般にわたりまして、今、医療の高コスト構造と言われているような点についてさらに構造的な取り組みをしなければならない、それがまた抜本改革ということの一つの大きな課題であろうというふうに思います。  そうしたことに取り組んでいかなければ根本的な解決はなかなか難しかろうというふうに思いますので、そういった抜本改革への取り組みをいたさなければならないというふうに思っております。
  246. 入澤肇

    ○入澤肇君 今のお話はわかるんですけれども、医療費を分解してみますと大体三つですね、受診率と一件当たりの日数とそれから一日当たりの医療費、こういうふうな三つの要素に分解できるんじゃないかと思うんですけれども、この三つの点についてどのような削減策といいますか改善策を念頭に置いているか、お考えがあったらお聞かせください。
  247. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 医療費の三要素と言われているもの、受診率、一件当たり日数、それから一日当たり医療費、このいわば積として医療費は出てまいります。  現在のところ、医療保険全体の受診率の伸びを見ますというと、最近のところで、平成十年九月から十一月までの間の直近のところで申し上げますと、受診率でプラス二・八%、一件当たり日数で見ますというとマイナス〇・八%、それから一日当たり医療費で申しますと直近のところではプラスの一・三%というような形で実は伸びております。  しからば、そのどこにメスを入れるべきかということだろうと思います。やはり結論的に申せば、それぞれの部位について、いわば効率的になされているかどうか、あるいは見方を変えれば高コスト構造になっていないかどうかということをもう一回全部洗うという視点が大変大事であろうというふうに思います。
  248. 入澤肇

    ○入澤肇君 それぞれの要素についてメスを入れるのは当然でございますけれども、医療費削減のために基本的なスキームをつくらなくちゃいけないと。  そういう状況下で、もう一つ、午前中も質問がございましたけれども、薬価基準の定め方について各団体がいろんな意見を述べておりますが、この定め方がどうなるかによって医療費の削減が、あるいは改善が、増嵩をストップするかどうかという非常に大きな要因となると思うんですけれども、どのようにお考えですか。薬価基準、これの今後の改定についての現時点での考え方を教えてください。
  249. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) まず薬価制度、現在の薬価基準と言われる形でやられている現行制度については抜本的に改革をすべき問題を抱えておるというふうに基本的に認識をいたしております。  そのゆえんは、現在の仕掛けは、一つ一つの銘柄をいわば国が公定するという形で薬価が決まり、それが保険で払う価格として決まる。それが、今度はそれぞれの医療機関の購入の際にはそれを下回る価格で購入をされる。その差が薬価差という形で事実上医療機関の経営の原資になっているということの中で、やはり薬の使われ方もそういった意味での薬価差の大小というものがインセンティブになりやすい構造になっている。そのことがまた、薬の製造というような側面でもそういうことになりがちであると。また、薬価差というものがあるがゆえに多剤を投与するというようなインセンティブが働きやすい仕組みになっておるというような構造的な問題がございます。  そのことは、それぞれの医療なりあるいは薬の開発活動のいわばゆがみということでありますし、それの結果としてまた医療費の非効率ということにもつながってくるというような観点でございますから、手法という面では今いろんな案がございます。厚生省一つたたき台を出しております。また、いろんな方面からございますけれども、今申し上げましたような基本的な問題に対する対応になり得る案をいかに求めていくかということが現在段階における一つの大きな流れ、いずれの案を最終的にまとめるにいたしましても、今言ったような問題点にメスが入るような案にまとめていきたいということで鋭意努力をしているところでございます。
  250. 入澤肇

    ○入澤肇君 これはぜひ、価格決定の透明性、それからバランス、公平性、特許等新技術開発を促進するようなインセンティブを与えるような仕組み、さらにこの問題について医師会がかなり過敏でございますから技術料についての考え方、これらを十分にまとめて、そして早目に案をつくっていただきたいと思います。特に、自民党はかなりきつく厚生省の案に反対しているというふうに関係の雑誌とか新聞には出ていますので、早目に対応策を講じていただきたいというふうに要望しておきます。  それからもう一つ、この医療費削減のための基本スキームの一つとして、もちろん三割ちょっとを占める老人医療費の縮減が大事なんですけれども、当然このことは福祉サービスのあり方と関連しているわけです。  外国の例を見ますと、民間が完全に施設ケア及び在宅ケアを、いずれにしましても民間が施設をつくって対応する。それから、北欧みたいに全面的に公的機関によって地方自治体が対応しているケース。それから、社会保険による費用負担を主軸といたしましてこれに公費負担を組み合わせるドイツ。いろんな型があるんですけれども、一応我が国はこれらの中で三つ目に述べましたドイツの型に近いようなことで制度が仕組まれておりますけれども、福祉と医療の連携、これは私は必ずしもまだ十分ではないというふうに感じております。  特に、田舎に帰って聞きますと、一番感じますのは訪問看護婦の制度です。訪問看護婦さんが非常に少ない、一体今、訪問看護婦さんはどのくらい働いているのか、あるいはこの人たちに対する予算措置はどうなっているのかということにつきましてお聞きしたいと思います。
  251. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 今後の老人福祉サービスとの関係でございます。これは介護保険制度ができた趣旨になるわけでございますけれども福祉と医療との連携、こういうふうなことで必要な介護サービスは保健サービスも福祉サービスも総合的、具体的にやっておる。こういうことで、具体的にはケアプランというふうな形で居宅介護サービス計画という中で福祉の関係者それから医療関係者、専門職の方が集まって議論をして、この人の計画はこういうふうにした方がいい、こういうふうな話し合いのもとでやっております。その中でホームヘルパー、今、先生指摘の訪問看護はやはり非常に大事だということでございます。  これにつきまして、数字でございますけれども、十年の十二月末現在の訪問看護ステーションは三千百三十九カ所ございます。訪問看護婦の数は、ちょっと古いのでございますけれども、平成九年の七月一日現在でございますが、一万二千三百五十七人でございまして、そのうちの常勤が六千三百三十六人、非常勤の方が六千二十一人ということで大体半分、こういう形になっております。これは今後ともふやして、今後の老人福祉サービスの中で大変重要な役割を果たすであろう、こういうふうに期待しております。
  252. 入澤肇

    ○入澤肇君 老人医療費の削減のために在宅ケアに重きを置くということは当然でありまして、在宅ケアの中でも特に訪問看護婦の役割はこれからますます重要になってくるのではないかと思います。これらにさらに一層の御努力をお願いしたいと思います。  その次に、新聞を見ていますと、健保組合が解散するというのが相次いでおるような報道がございます。一体その理由はどういうことなのか。それからさらに、解散すると今度は国が運営する政府管掌の健康保険に移管するというんですけれども、どういう条件で移管を認めているんでしょうか。
  253. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 御指摘のように、昨今、景気の低迷によりまして母体企業がそもそも倒産をしたとか、そういう形で健保組合が解散するケースが相当ふえております。さらに、母体企業は存続をしているけれども賃金水準の低迷による保険料収入の伸び悩みだとか、あるいは先ほど申し上げました老人保健拠出金等の増加によりまして経営基盤が脆弱化したという健保組合も相当見られるところでございます。  前者の倒産をしたというような場合について、これはもうやむを得ませんので、それは権利義務は政府が承継をする形で解散をしていただく、具体的には政管が引き受けるわけであります。後者の方の母体企業は存続しているけれども経営基盤が脆弱化したというようなケースにつきましては、もちろん健保組合としての財政安定の努力をできるだけしていただくということでございますけれども、そういった観点から努力を続けていただきますが、しかし日本全体の被保険者に対する医療の確保という観点から政管健保で引き受けた方がいいという場合については、それを今後は必ずしも全面的に否定をするということではなくて、それぞれのケースに応じた対応をしていこうということで、一応そういう姿勢に転じまして、目下その具体的な要件等を詰めておる段階でございます。  ただ、そうは申しましても、やはり基本的には医療費保険料収入とのギャップが続く限りにおいては、いかようになろうとも、そこは健保組合のみならずでございますけれども、健保組合も立ち行きがならなくなるものがふえるということになりますので、先ほど申し上げました医療費保険料収入とのギャップというところにどうメスを入れていくか、そういう意味での抜本改正がやはりこれも基本的には大事なことになるだろうというふうに思います。
  254. 入澤肇

    ○入澤肇君 最後に、三点御要望を申し上げて質問を終わります。  一つは、各地にこの委員会で行ったり、それから私も個人で視察したりしますと、特別養護老人ホーム等あるいは知的障害者の施設の維持管理費の助成が十分でないので非常に困っているという要望を聞きます。この維持管理費は、確かに施設をつくると維持管理費までなかなか補助金の対象になるのは難しいところはあるんですけれども、維持管理費についてひとつそれぞれの方々が苦労している要望にぜひ応じていただきたいということが一つあります。  二つ目は、予算委員会でも申し上げたんですけれども障害者の小規模の共同作業施設、これに対する施設整備をもっと前向きに取り組んでいただきたい。特に、予算がなかったら、この前ちょっと赤い羽根のお金を使わせてもらったらどうかということを申し上げましたけれども、満遍なくというのは、国体だってそれから植樹祭だって四十七都道府県が満遍なく一年に一度ずつやって五十年に一回でも満遍なくということでやっているわけですから、別に法律の解釈にとらわれることなく、重点的に計画的に小規模の共同作業施設の整備をやっていただきたいと思います。  三つ目は、これは新聞にも出ていまして非常に結構だと思うんですけれども、小学校からの教育課程の中で全体としての医療費を削減するスキームの一つとして基礎的な健康管理技術を小さいときから教え込もうと。昔はよくやっていましたよね、小学校や中学校でも。血圧のはかり方だとか水泳の後の対応策だとか、いろんなことをやっていました。ぜひみずからの健康はみずから守るんだという基礎教育をきちんとマニュアル化して導入していただきたいと思います。  以上でございます。
  255. 清水澄子

    ○清水澄子君 社民党の清水澄子です。  大臣に過疎地の保育と子育て支援についてお尋ねします。  全国社会福祉協議会が昨年十二月にまとめられました過疎地域における保育所の実態調査によりますと、公立も民間も非常に苦しい経営状態で、半数が四、五年以内に経営困難に陥ると言っているわけです。これは、人口構造の高齢化が背景にあって、さらに市町村の財政が厳しくなっている、その上に介護保険を初めとする高齢者保健福祉への歳出の圧力がかかってくるという状況にあると。過疎地では、子育てをする親の方も、それから子供自身も同世代が少ないわけです。ですから、人間の生活として非常にみんな孤立をしていると思うんです。  私は、過疎地における保育所のあり方とか子育て支援については、都市部とは違った観点から特別の対策が必要だと思うわけですが、これについてどのような具体策をお持ちでしょうか。大臣、お願いいたします。
  256. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 先生指摘のとおり、過疎地におきましては子供が非常に少ないという状況がございます。こうした過疎地における保育の確保という点につきましては、普通の保育所の場合ですと六十人以上の定員というのが原則になっておりますけれども、これを緩和いたしました小規模の保育所の設置、あるいは施設や職員の基準を緩和いたしまして、両親が就労していない子供の場合も入所できるような僻地保育所というものを設置することに対して補助を行っておるところでございます。  また、最近におきましては、過疎化が進みまして保育所の廃止に追い込まれているところもございますが、そうしたところに対する保育の確保ということも考えまして、分園方式の導入あるいは通園バスの利用というような形での規制緩和を実施いたしまして、過疎地における保育の確保に努めているところでございます。  また、放課後児童健全育成事業でございますとか、あるいは老人福祉施設を一緒に合築するというようなことも認めまして、過疎地における保育の確保を図ってまいりたいというふうに考えております。
  257. 清水澄子

    ○清水澄子君 分園といいましても、例えば熊本県矢部町というのは、矢部町だけで面積は神戸市と同じ、しかしそこに七つの保育所ですから非常に距離が遠くて、子供ですから遠いところにバスでというのもなかなか大変なので、本当にいろんな工夫を、特別に今後は力を入れていただきたいと思います。  次に、宮下大臣は、少子化への対応を考える有識者会議の提言を受けられて、少子化対策は各種の総合的な基盤整備が必要だ、エンゼルプランの充実等を図るほか、予算で可能なことを実現していきたいと述べておられるわけですから、私はその御意思はぜひ貫徹していただきたいと思います。  少子化というのは小手先の対応ではできない、本当に総合的な対策が必要だと思います。特に親と子供自身のニーズにこたえる支援体制の確立のためには、本当にさまざまな工夫、創意が必要だと思うわけです。  そういう中で、エンゼルプランというのは九九年度までとなっているわけですから、これは「緊急」という言葉はぜひ外していただいて、次年度もずっと、まだまだ対応がおくれておりますから、この保育対策事業というものをさらに継続発展させるということについて大臣の御決意をいただきたいと思います。
  258. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 少子化対策につきましては、総理の諮問機関であります今御指摘の有識者会議等で総合的な御提言をいただいておるところでございまして、まさに少子化対策というのはいろいろな施策を複合的に講じて初めて可能になると思います。雇用の問題もありますし、教育の問題もあるし、保育所の問題もありますし、さまざまな領域の総合化されたものでなければならないと思います。  厚生省の方としては、特に緊急保育対策五カ年事業ということで、このエンゼルプランの中で物的な施設整備等を図ってまいりましたが、これは十一年度まででございますので、今後、少子化対策というものは国民運動まで展開しなければいかぬなというように思っておるところでございまして、当然それに即応した体制を十二年以降もとるべきものだと考えております。
  259. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、子供の虐待の対応なんですが、来年度予算でようやく児童養護施設における被虐待児童に対する心理療法の導入というのが盛り込まれております。しかし、虐待された子供のケア、リハビリについては専門的な人材が決定的に不足をしていると思うわけです。九七年の全国児童相談所の統計によってもこの児童虐待件数というのは五千三百五十二件ある。しかし、これは訴えた人の数ですから、潜在化している数は専門家は五万件を超すだろうと言っているわけです。  このような中で、児童相談所が家裁に対する被虐待児童の保護申し立てからすべてをやるというのは大変無理なんじゃないかと思うんですね。児童相談所が介入から治療までやるというのは非常に責任範囲が広過ぎるのではないかと思います。このような状態下では被害を受けた子供の方は十分なケアを受けられないと思うわけです。ですから、子供をめぐる状況というのは、新しい問題が出てきているわけですから、公的機関は施設やプログラムづくりをもっと促進して、そして人材の育成というものにもっと力を注いだらどうかと思います。  そういう意味でもやはり仕事を、児童相談所一カ所にしないで、本来の児童相談所事業ですね、その事業はもっと親の教育からいろいろしないと、虐待をしている親が自分がこれが虐待と気がついていないところがあるくらい、やはり親にも教育をしなきゃいけない。それから、その虐待を受けた子供のケア、リハビリは、これはまた専門の施設が必要になってくるし、そういう対応のできる人材が必要だと思うんですね。ですから、この仕事をやはり分けて、そしてもっと充実させるということをぜひやっていただきたいと思うんですが、お答えください。
  260. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 御指摘いただきましたように虐待に関する相談件数、平成二年は千百件ぐらいでございましたのが平成九年には五千三百件ということで、五倍にもふえているという状況でございます。  こういった児童の虐待につきましては従来から児童相談所が中心に対応しているわけでございますが、これも御指摘いただきましたように児童相談所は全国で百七十四、五カ所ということでございまして、一県当たり三カ所程度ということで、必ずしもきめ細かなところまですべてのケースについて対応するのはなかなか難しいといった状況もございます。  こういった点につきましては、私ども、児童相談所を中心としつつも、できるだけ身近なところでも相談が受けられるということで、昨年度から児童家庭支援センターの配置を進めておりまして、十一年度におきましても十年度の十カ所からさらに十五カ所程度の整備をお願いしているところでございます。  それからもう一つ、虐待児童等についてケアをする施設として児童養護施設というのがございますが、ここにおきまして、単なる入所だけでなくて、近隣の家庭等の相談にも応じられるような形での家庭訪問、あるいは心理的なケアを必要とする児童についての対応をするための心理療法を行う職員の配置というのを十一年度にもお願いしているところでございます。  それからさらに、この虐待の場合につきましては、予防と早期発見、早期対応が重要であるということで、私ども、主任児童委員というのが全国に一万四千名ほどおられますので、こういった方を活用いたしまして、できる限り地域ごとの虐待防止のためのネットワークを整備していく必要があるのではないかということで、十一年度におきましては、そうした主任児童委員に対する研修等を行いまして、児童相談所との連携の強化を図ってまいりたいというふうに考えております。  また、虐待防止のための啓発ビデオ等も作成いたしまして、地域住民の啓発にも努めてまいりたいというふうに考えております。  その他関係機関、保健所でございますとか医療機関あるいは学校等とも連携をとりながら、地域が一体となってこの問題について取り組めるような体制の形成を図ってまいりたいというふうに考えております。
  261. 清水澄子

    ○清水澄子君 NPOとか市民グループとか、そういう人たちとの連帯といいますか協力も得て、地域に根づくファミリーサービスセンターのようなものをつくっていくというような形で、ぜひもっと新しい考え方で強化していただきたいと思います。  次に、食品中のダイオキシンに関する問題ですが、ダイオキシン摂取の九八%は食品であるということで、私は妊婦や子供を持つ親のことを特に問題にしたいんですけれども、やはりみんな迷っております。  厚生省は、一日の食品からの摂取量は二・四一ピコグラムで安全な水準である、こういうふうに言っているわけですけれども、WHOが昨年見直したTDIの最大値である四ピコよりは下回っているわけです。WHOでは十二種類のコプラナPCBを含めているわけですけれども、厚生省調査対象はコプラナPCBは三種類しか入っておりません。しかも、二・四一ピコというのはあくまで通常の摂取量の全国平均値でありますから、やはりこの地域差というのを重視する必要があると思います。  私たちは平均で食事をとるわけではありませんので、やはり地域ごと、食品ごとにもっときめ細かな実態調査を行っていただいて、それをぜひ情報公開してほしい。そして、乳幼児を持つ親たち、妊婦はこういうことはやっぱり注意した方がいいという情報をぜひ公開していただきたいと思います。  大臣、よろしくお願いいたします。
  262. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 食品を通じてのダイオキシンの問題は、食品衛生上大変重要な問題でございます。  過般の所沢市における事案につきましては、これは廃棄物焼却施設が集中的にありまして、そして一部マスコミの報道によりましてこれが問題化されたということで、この地域のダイオキシン濃度の問題を精密に調査しようということで今やっております。  食品一般につきましては、流通範囲が非常に広域化しておりますし、特定地域で生産された農産物が国民のダイオキシン摂取量にどの程度影響しているのか、食品衛生上の観点からはなかなか判定しにくい問題がございます。  私どもとしては、平成四年度から調査をやっておりまして、平成八年度からはトータルダイエット調査、今御指摘の二・四一ピコグラムというものでありますが、これを実施して、その安全性を確認しておりますので、今後ともこれの基礎になる数値についてさらに精査、拡大調査をやっていく必要があると思いますけれども、基本的にはこの水準はコプラナPCBを入れたとしてもWHOの言う主要先進国における摂取量の中に大体入っておるというように思っております。  なお、こうした食品におけるダイオキシン濃度の問題は重要な課題でございますから、過般、閣僚会議を設置いたしまして、早急に基本方針をつくり、対策を講じていこうということでございます。WHOから提言のありました四ピコグラムの標準値についても、これを取り入れる科学的根拠を明確にした上で対応していこうというようなことで、総合的に今取り組ませていただいております。
  263. 清水澄子

    ○清水澄子君 EUでは、ヨーロッパは食料というとやっぱり牛乳とか乳製品が多いですから、そういうもののダイオキシン濃度については、ドイツなんかは、〇・九以下を目標値にします、三以上は発生源の特定と消滅対策を立てます、消費者に提供しないように農家に勧告しますとか、五以上の場合には流通を禁止しますとか、そういう非常に具体的な対策、ガイドラインが決められておるわけです。  日本では、食品からの摂取量の六割を魚介類が占めておりまして、特に近海魚の濃度は国際的な濃度よりも一けた高いと言われているわけです。その上に、葉野菜の汚染というのも心配されているわけですので、私は日本の特性というものを厚生省はやはり重視していただきたいと思うんです。ぜひ食品の安全基準というものを早期に設定していただいて、もちろん消費者は情報公開されることの中で自分の生活も自衛しなければなりませんが、もっと行政と生産者と加工業者が迅速に対策を立てていくというようなガイドラインをつくるべきだと。  食品衛生法は、魚介類とかそういうものになると、農産物は農水省ですから、その辺の日本の縦割り行政の弊害というのをもうこの辺で、食品については厚生省がやりますという強い形でひとつ臨んでいただきたいと思いますが、大臣、一言でいいです、決意を述べてください。
  264. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) おっしゃるとおりでございまして、ダイオキシンの問題は食品を通じて私どもに影響するわけでございます。農林省は農産物の生産奨励とかその他はやりますが、結局は人間の健康に関することでございますから、これはやっぱり厚生省主体になって食品についてのダイオキシン濃度その他はイニシアチブをとってやらなければいけないというように私も思います。
  265. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、ピルの安全性とその対応についてなんですけれども、中央薬事審議会は、避妊薬である低用量ピルについて九年間に及ぶ審議を重ねてきたわけですけれども、厚生省はその審議を経て六月にも使用を承認するということが報道されているわけです。  現在、治療用のピルを使っている人は、大体二十万人と聞いていますけれども、どのくらいおられるか。それと、これまでの審議を経て医薬品としての有効性と安全性という形で報告をされておりますけれども、ピルを承認することによるメリットとデメリットというのはどういうことがあるのかということを御説明ください。
  266. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 現在、いわゆる中高用量ピルというものが承認されておりますが、これは月経困難症を適応として承認しておるものでございまして、避妊を目的として使用することを前提として承認されているものではございません。  どの程度適応に即して使われておるか、あるいは適応外でお医者さんの判断で処方されているかというのは私どももつかんでおりませんが、十数万人ぐらいいるんじゃないかということは世上言われておるところでございます。  それから、安全性の問題につきましては、ピルを避妊薬として使う場合、健康人が服用していくわけでございますから、副作用の問題については中央薬事審議会において特に慎重に審議が行われてきているところでございまして、昨年の十二月には常任部会におきましてピルの安全性についての中間取りまとめが行われまして、これを審議終了後に公表したところでございます。  これによりますと、副作用として、子宮頸がん、乳がん等のリスクが上昇するといった問題があるほか、特に静脈血栓症を初めとした心血管系に関するリスク、脳卒中でありますとかあるいは心筋梗塞、これらのリスクが高くなるといった問題が指摘されているところでございます。
  267. 清水澄子

    ○清水澄子君 ピルの解禁、現在の治療用のものが使われているというのはよくないということで、選択肢の一つという形で迷いながら私も議員たちと一緒に署名はしているわけですが、実際のところははっきりわからない、不安の方が大きいわけです。  一九九五年にWHOが経口避妊薬の使用と静脈血栓症に関して報道しておるわけですが、WHOの運営委員会は、さらなる情報が得られるまでは第三世代ピル、つまりデソゲストレル及びゲストデン以外のプロゲストゲンという黄体ホルモンを含む卵胞ホルモン用経口避妊薬が望ましい、第三世代ピルというものに入っている成分のものは使わないようにという形で勧告を行っておりますね。  結局、デソゲストレルまたはゲストデンを含んでいるもの、そのピルがいわゆる第三世代ピルと言われていると思うんですが、それを受けてヨーロッパの諸国、特にドイツ、デンマーク、ノルウェーなどでは、第三世代ピルの一部に対して常用すると血栓症を起こす確率が高い、そういう疑いが大きいということで処方制限を出していた経過があります。  きょう入った資料ですが、ニュージーランドでも一九九三年から九八年までにこの第三世代ピルの使用者で少なくとも六人が血栓症で死亡したということで、ヨーロッパやそういう国は早くこれを使い出して、その後のいろんな問題が今ようやく出てきているわけです。  そういう中で、ノルウェーなんかも九五年の十二月二十日に第三世代ピルのマーベロンの使用を一時禁止するという形が出ているわけです。ところが、現在日本に認可申請をしている九社の十六品目の中には問題となっている第三世代の低用量ピル、マーベロンが入っておりますね。  この薬品をめぐる問題について、厚生省はそれらについてどういう調査をなさったか、また審議会では第三世代ピルについてこういうものを一緒に認可するという話になっているのか、それから女性グループや市民団体からいろいろな意見が出ていると思うんですけれども、そういうものに対してどのように対応なさっているかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  268. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 先生指摘のとおり、第三世代ピルにつきましては、一九九五年、WHOが第二世代のピルに比べて血栓症のリスクが高い、したがってさらなる調査結果が得られるまで第三世代以外のピルの使用が望ましいという結論を示しております。その際に、この調査結果にはバイアスや偶然の関与の可能性もあり得るという指摘がございまして、さらなる調査が必要という見解を出しておるところでございます。  その後、欧州委員会の医薬品委員会の経口避妊薬臨時部会においては、臨床的関連性は不明であるとして、特別な制限を加えることは必要としない、あるいはイギリスの医学雑誌ランセット等に発表された疫学調査の解析結果によると、第三世代と第二世代の服用者間で差が見られないといったような報告もございます。また、先生指摘のとおり、ノルウェーやニュージーランド等においての第三世代ピルに対する別途のアクションというものが存在することも私ども承知いたしております。  それらにつきまして、そうした議論を含めてこの第三世代ピルについてどう対応していくかということについて、中央薬事審議会においてもこれまで議論がなされてきているところでございます。これは添付文書上の扱いを変えるということにするのかどうかも含めてきちっとした取り扱いがなされますよう、私どもとしては引き続き審議をお願いしているところでございます。
  269. 清水澄子

    ○清水澄子君 昨年出されたWHOの報告書「心血管系疾病と、ステロイドホルモン」の中でも第三世代ピルは従来のものよりも血栓症のリスクを高めるという結論をつけておりますね。ですから、そういうリスクがあちこちで出ている以上は、これについてはやはりもっと徹底した究明をしていただきたいし、それからそういう問題については、日本でそれを認可するなんというのは大変なことになりますから、ぜひそれについては慎重な対応をお願いしたいと思います。  厚生省は、この薬品だけの問題とすれば、薬品の有効性と安全性という審査になるのかもしれません。有効性ということになれば、避妊の目的については他の製品に比べて効率が高いとは言われておりますね、避妊そのものだけは。  しかし、私はいつでも疑問なんですが、女性の健康にとってそれが安全なんだろうかというところをもっと考える必要があるんじゃないかと思うんです。異性間の性交渉のために女性が毎日ホルモン剤を飲み続ける、五年、十年、十五年と飲み続ける、そして常に妊娠している状態に体をコントロールしておくという、そういうことが人間の自然の体としてそれが普通かなというところはとても気になるところです。  そしてその上に、日本は他の国のように子供のときから学校で体の教育とか性教育、そういう健康教育、避妊教育というのはないんです。他の国ではやっぱり年齢に相当した性教育というのがあるんですね。だから、ある程度自分の知識と判断、それから自己決定権というのを持っているんですが、日本の場合は非常に無防備です。そして、医者の方も意外と、これ一粒二千円ぐらいですね、どんどん売っている状況もあるんです。ですから、そのままこれを承認するということになったら、日本の中ではいろんな問題が起きてくる。  私は、厚生省というのは、保健所の体制も非常に古めかしいのですけれども、学校教育とかそういう点でも、避妊それから自分の体についての知識、そういうことをもっと指導していくというんですか、教育、啓発、そういうことをやらないと、現在の日本のような性風俗のもとでは逆にHIVの感染症の問題もやはり一面では非常に心配になるところがあると思います。  その上に、環境ホルモンとの関係でも、いろんな科学者、女性グループが非常に心配をしています。今、ダイオキシンを含めて環境ホルモンの問題が化学物質の関係で論じられているわけですから、これからの新しいテーマになっていく。そのときに、これとの関係というのは今すぐわからないことがあるかもしれませんが、やはりこれは分析調査する必要が非常にある問題かなと思います。  私がいつも不公平だなと思うのは、なぜ女性の体にだけいつも負担をかけて避妊をしなきゃいけないか。これは、教育の面でもっと男性にも本当は性教育を、子供のときから男女に性教育があれば、お互いにそういう問題について責任を持つ、知識を持つというお互いの協力の関係がなきゃいけないんですけれども、最近の状況の中ではむしろ非常にいろんなリスクが出てくるんじゃないか、そういう意味で非常に心配な側面があります。  ですから、そういう点は徹底してきちんと、医者に対しても処方の仕方、その後の追跡、それから薬剤師にもそうです。それから、厚生省だけの範囲じゃないかもしれませんが、学校教育等もあわせて女性、男性の教育、そういうものも含めた社会的な問題意識としてとらえていただきたい。  それから、環境ホルモンとのことはぜひ今後も研究を続けていただきたいと思いますが、ひとつこれに対して明確に安心できるお答えをいただきたいと思います。
  270. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 非常に多岐にわたった御注文でございまして、私ども承認審査を担当する部局といたしましては、今現在中央薬事審議会で、先ほど先生お触れになりましたHIV等を含む性感染症拡大の問題について、承認審査の立場から何をなし得るかという話、それから環境ホルモンの問題についての今現在段階での見解につきましては、先般の常任部会で取りまとめをお願いいたしまして、これを公表したところでございます。  中央薬事審議会としては、ピルを仮に承認するとした場合、お医者さんがピルを処方するか否かを判断し、また副作用等の情報を服用者に適切に提供していただく、あるいは時宜に応じて検査をしていただく、そういったための添付文書を含む医師向けの情報提供資料や、あるいは副作用、それからHIVを含む性感染症に関連する情報をわかりやすく平易な言葉で記載した服用者向けの情報提供資料、これは承認するとすれば必ず必要であるという中央薬事審議会の御判断でございまして、審議会としては現在これらにつき精査を行っている段階でございます。  それから、性感染症一般の対策につきましては、新しい感染症の予防法が施行されますので、その中で保健医療局を中心として、サーベイランスの問題も含めて、公衆衛生審議会から中途の段階意見も出されておりますので、性感染症蔓延を防止していく対策というのは当然とられるべきものというふうに考えております。
  271. 清水澄子

    ○清水澄子君 時間がもう来ましたので、次の質問はまた次に回しますけれども、安全にこれを飲める人は逆に非常に少ないと言われていますね。身内に高血圧の人とかそういう人たちがいるともうだめだとか、そういうリスクの面、デメリットの面をもっともっと研究していただいて、そしてそれを自分がちゃんとそういう問題について認識できるような、そういう対策を立てていただきたいと思うんです。そのためには余り急いで、今すぐということじゃなくて、やはり安全ということはとても重要だと思いますから、ひとつその点をよろしくお願いしたいと思います。  終わります。
  272. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願いいたします。  まず、本日、私の方からは、交通事故などで脳に障害を受けて記憶障害などが起こる高次脳機能障害についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、この高次脳機能障害という障害の内容について御説明からお願いいたします。
  273. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) まず、高次脳機能障害という言葉でございますが、これはいわゆる医学用語といたしましてはまだ定着をしておりませんで、必ずしも一義的に御説明することはできないわけでございますが、高次脳機能障害を定義するといたしますと、委員指摘のように、頭部外傷でありますとか、あるいは脳血管障害などの後天的な脳の器質障害によって生じるところの記憶だとか注意力、思考力などを含む認知機能、身体機能などの種々の障害を総称して高次脳機能障害と、あえて定義すればこのようになろうかと思います。したがって、子供の発育期の脳機能障害、これによって伴う発達障害から、老年期の痴呆あるいは頭部外傷の後遺症など幅広い対象になろうかと思います。  厚生省におきましては、これらのうちで十八歳以上六十五歳未満のいわゆる老人福祉施策や知的障害者の福祉施策の対象から外れてしまっている方々、こういった方を指していわゆる高次脳機能障害者として使っておるところでございます。
  274. 西川きよし

    西川きよし君 そこで、本日はこの高次脳機能障害を持つ患者さんの御家族からお手紙をいただきました。三十九歳の主婦の方からいただきました。読ませていただいて、そしてお聞きいただいて、一つ一つ質問を進めたいと思います。よろしくお願い申し上げます。   私は大阪府に住む三十九歳の主婦です。   私の主人の弟のことなのですが、平成六年に交通事故をおこし脳に多大な損傷を負い、その後、高次脳機能障害と呼ばれる後遺症に本人はもちろん家族全員が悩まされております。   症状としては記憶力が全くなく弟の場合は知能の低下が著しく左半身に軽度の麻痺があり努力、やる気が起こらず社会復帰は一〇〇%望めません。私たちだけではなく全国に弟のような障害を持つ方は解っているだけで三万人ほどいらっしゃるようです。   一番、私たちがつらいのは社会復帰も全くできず子供のようになってしまった弟なのに障害者手帳をもらえないという福祉の現実なのです。母と二人で福祉事務所、保健所ありとあらゆる場所へ出かけましたが同情はして頂けるのですが現状の福祉では無理な話だそうです。   今、現在、弟はかわいそうですが精神病院に入院しております。弟は子供のようになったと申しましたがすることは大人でかくれて飲む酒の量が増え暴れ大声でわめいたり煙草は一日に何箱も吸い手がつけられないころもありました。   弟を母と同居する私たちが引き取ったのですが、地獄のような日々がはじまりました。そんな日々が続き家族も眠れない日々が続いたのでこのままだと家族が共倒れになると家族、親族で話し合い精神科への入院となったのです。しかし、弟の場合は精神科の患者さんとは症状が異なりもちろん投薬もなく只、寝起きさせて頂き食事付きの毎日です。   病院は本当に良くして下さってケースワーカーさんも看護婦さんも皆さん親身になって下さるのですが行政は何もしてくれません。手帳もなく障害者作業所への入所も認めてもらえません。このことを是非知って頂きたく筆をとりました。 というお便りをいただきました。  このお手紙、読ませていただいて、ぜひ大臣から感想だけ一言いただけたらと思います。
  275. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 交通事故によります外傷性の高次脳機能障害の病態にある弟さんのお話でございます。お手紙を書かれました方々及びその御家族の方々の御労苦は大変なものだとお察し申し上げます。  高次脳機能障害というのは、はっきりした症状が出ないということでございますが、今のお手紙にもありますように、実態がよく把握されておらないし、またニーズに対応する福祉政策のあり方も明らかではないということでございます。十分な相談や援助を提供できない状況にありますので、保健福祉制度のいわば谷間になっておるというようにも感じます。  厚生科学研究におきましてその実態と必要なサービスに関する調査研究を行っておりますが、私としては、本日のお手紙からいわゆる高次脳機能障害者に対する対策の重要性というものを改めて認識させていただきましたので、今後さらにその検討を進めて対応に万全を期してまいりたいと思います。
  276. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございます。  この方のように、頭部の外傷あるいはクモ膜下出血などによる脳の損傷が原因で、身体機能にはほとんど後遺症は残さず、見当識や記銘力障害など高次脳機能にのみ問題を来している、このような方々は現行の身体障害者福祉法の対象ではない場合が多いわけですけれども、利用のできる福祉サービスが、今、大臣もおっしゃったようにほとんどない、やむを得ず精神病院に入院する、お世話になったということです。あるいは家族だけにより支えられているケースが全国的にも多いということもお伺いしております。  こうした実情について、ただいまのところ厚生省ではどういうふうに把握をしておられるか、お伺いしたいと思います。
  277. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) いわゆる高次脳機能障害者の中で、例えば痴呆症状があってなおかつ意欲低下があるとかあるいは徘回があるとかといった精神症状の激しいケースにつきましては、精神病院等で入院の治療をする場合が当然あろうかと思います。  一方で、必ずしもそのような症状ではなくて、比較的目立ちにくくて、例えば今御指摘のございました場所がわからないとか家族がわからないといった失見当識、あるいはさっき言ったことをもう忘れてしまっているというような記銘力障害、こういった障害につきましては、それを取り巻く方々から必ずしも必要なニーズが把握できにくいということが言われているとも聞いております。その結果として、必ずしも適切な施設の選択が行われないとか、あるいはニーズに対して的確な相談、指導、援助が受けられないといった場合がある、このように聞いております。  こういった現場の声を聞きながら、先ほど大臣の申し上げました考え方に沿いまして、その充実に今後努めていくべきであろうというふうに考えております。
  278. 西川きよし

    西川きよし君 このように病院に入院されている方もいつまでも入院ができるということではもちろんございませんし、その後、家族だけで介護、そうすると肉体的にも精神的にも負担が重いということは言うまでもないわけです。  せんだってもこういう問題を質問させていただきましたが、例えば親にとってみれば、親亡き後、その後の生活、例えば生活の施設も見出し得ない状況が多々あると思うわけです。そうした中で、お手紙にもありましたように、福祉事務所や保健所、ありとあらゆるところに相談に出かけたものの、相談、援助が全く得られないということでございます。それが現状なんですけれども、人によっては外見的やその場面ごとの会話では障害が本当にわかりにくいということもございます。  こういう相談、情報提供が受けられる窓口を早々につくっていただく、こういうことが急務であると思いますけれども、再度厚生省にお伺いします。
  279. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 失見当識でありますとか記銘力障害のように外見的にその障害がわからないようなケースの場合に、結果としてニーズの把握ができない、そのことが必ずしも適切な相談や援助を行うには必ずしも十分な体制ができているとは言えないという御指摘かと思います。  現在、厚生科学研究におきまして、いわゆる高次脳機能障害の実態、それからそのニーズに基づく保健福祉施策のあり方について研究を行っております。この成果を踏まえまして、まず関係機関の相談、援助のためのノウハウ、これをしっかりとして提供する必要がありますし、それを踏まえて相談体制等の充実を図るべきではないか、このように考えております。
  280. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願いします。  この高次脳機能障害については、精神障害者保健福祉手帳の中の器質精神病に該当するとされております。いろいろ難しい名前がいっぱい出てくるわけですけれども、しかし仮にこの手帳を取得したとしても、現状では日常生活面での援助につながる具体的なサービスをなかなか受けることができないのが実情でございます。  この点について、平成九年十二月に身体障害者福祉審議会などの合同企画分科会において取りまとめられた中間報告の中で「身体障害を伴わない高次脳機能障害については、精神保健福祉法において必要な福祉サービスを充実すべきである。ただし、当面、精神薄弱者に類似した障害の状態にある者については、精神薄弱者施設等の利用を行えるようにする」、こういうことも検討すべきであるという指摘が行われております。  この前段の「精神保健福祉法において必要な福祉サービスを充実すべきである。」というこの指摘に対して、今国会に提出されている精神保健福祉法の改正ではどのように対応されていかれるのか、もう一度厚生省の方からお伺いしたいと思います。
  281. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 身体障害を伴わない高次脳機能障害者に対します福祉サービスは、御指摘のように基本的には精神保健福祉対策の中で対応することといたしております。  精神障害者の福祉施策につきましては、他の知的障害あるいは身体障害に係ります福祉施策に比べてその取り組みが非常に浅いということ、あるいは老人や他の障害者のための福祉施策と比較して、特に在宅の精神障害者に対する福祉施策が不十分である、このような指摘をいただいております。  このため、今国会に提出をさせていただいております精神保健福祉法の改正案におきましては、まず在宅の精神障害者の相談などを行います精神障害者地域生活支援センター、これを設置すること、それから在宅の精神障害者の食事等の介助を行うためのホームヘルプ事業を行う。これもこれまで精神障害者にはなかった事業であります。さらに、精神障害者の介護を行っている家族が病気などになったときに、短期間その方を精神障害者社会福祉施設などに入所させるいわゆるショートステイ事業、これらを法定化することといたしております。  身体障害を伴わない高次脳機能障害者を含めて、地域で生活する精神障害者及びその家族を支援する方策を講ずるという観点から法案を提出させていただいている次第でございます。
  282. 西川きよし

    西川きよし君 どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、当面の対策ですが、後段にあります知的障害者施設等の利用を行えるようにする、この指摘に対しては厚生省内で検討が行われているということでございますけれども、具体的にどのような検討が行われているのか、そして結論はいつごろ示されるのか、その部分もお伺いしたいと思います。
  283. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 平成九年十二月に出されました三合同企画分科会の中間報告におきまして、身体障害を伴わない高次脳機能障害について、当面、知的障害者に類似した障害の状態にある者、これについては知的障害者の施設等の利用を行えるようにする方途も検討すべきである、それから授産施設などにおいて精神障害者施設と他の障害者施設の相互利用を進めるべきだ、このような提言が示されたところでございます。  精神障害者の施設とそれから知的障害者の施設について相互利用を行うことについては、まず平成十一年度、来年度になりますが、通所授産施設とグループホームにおいてこれを実施したいと考えております。今後もその他の施設について相互利用が推進できるか、一層の検討を進めてまいる所存でございます。
  284. 西川きよし

    西川きよし君 次に、労働省にお伺いしたいと思います。  このケースについてもまさにそうなんですけれども、職業生活において、そしてまた家庭生活においても責任のある年代でこの病気が出てくる、発症することが多いわけですけれども、この場合に職場復帰できるかどうかということは大変切実な問題になっているわけです。  この問題につきまして、労働省の方で研究と支援のあり方について検討をただいまされているということをお伺いいたしておりますが、研究報告の概要、現状をぜひお伺いしたいと思います。
  285. 村木厚子

    説明員(村木厚子君) 労働省としても、高次脳機能障害の方々の円滑な職場復帰というのは大変大事な課題だというふうに受けとめております。労働省の方で発症後長期間にわたって高次脳機能障害を伴うことの多い中途脳血管障害者の方々を例にとりまして、その方々の職場復帰について平成六年から平成八年にかけて専門の方々にお集まりいただきまして研究を行ったところでございます。  その結果によりますと、脳血管障害は、上下肢の運動麻痺のほか失語症や記憶障害等の高次脳機能障害を伴うことが非常に多く、職業の継続に大きな影響が生じているものでございます。こういう方々の円滑な職場復帰を可能とするためには、企業関係機関とも連携をして職業リハビリテーションの実施を行うとともに、職場での援助者の配置でございますとか職務の再設計、それから配置転換などさまざまな形の職場の条件整備を早い時期から計画的に行うことが非常に大事だというふうに指摘をされているところでございます。  この研究の成果を踏まえまして、労働省で来年度から新たに高次脳機能障害を有する方々のための職場復帰支援プログラムというものを実施する予定でございます。  これは、高次脳機能障害を有するに至った方々とその方がお勤めの事業主、双方に対して支援をするものでございまして、御本人に対してはきめ細かな能力評価ですとか職業指導を行う、それから事業所の方に対しては、事業所と協力をしてその方の職務の再設計をしたり、あるいは実際にその事業所を活用して職場復帰のためのリハビリテーションを行っていくというような形で、もとの企業で雇用をそのまま継続していただけるような方向に持っていこうというプログラムでございます。  こうしたプログラムを来年度から実施しながら、さらに医療や福祉の機関とも連携をして、こういった方々の職場復帰を円滑に進めるための施策の充実に努めたいと思っております。
  286. 西川きよし

    西川きよし君 御丁寧に御答弁いただいて本当にありがとうございます。  全国的には差もあれば人数が少ないのじゃないかと思われがちな部分があるかもわかりませんけれども、決してそうではなしに、本当になかなか届かない声というんでしょうか、小さな声をしっかりと僕たちは受けとめて、お願いすることばかりですが、半歩でも一歩でも前進するようによろしくお願い申し上げます。  先日、厚生大臣にも予算委員会で知的障害と身体障害との重複障害者施設について質問をさせていただきました。あるお父さんのお便りでございました。「娘より三日間長生きしたい」という本を送っていただいて、それについて大臣に質問をさせていただきました。  重複障害に垣根のない施策をという親御さんの気持ちを僕は質問させていただいたのですけれども、法律と法律の谷間、そしてまた福祉と福祉の谷間に置かれて大変な苦労をされている方々が全国にはたくさんいらっしゃいます。そういう話がなかなか届かない、いい答えがもらえない、難しいことがいっぱいあるわけですけれども、できる限りきめ細かな施策の推進に取り組んでいただきたいと思います。  きょうもいろいろとお願いをし、また質問をさせていただきましたが、最後厚生大臣に御見解をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  287. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 障害の種類にかかわらず障害者の立場に立った施策を推進して、今お話しのように制度の谷間に置かれることのないようなきめ細かな施策を推進することは、今後の福祉政策で重要な課題であると認識いたしております。  現在、いわゆる高次脳機能障害に苦しむ患者さん方については、精神保健福祉法に基づきまして社会福祉施設やグループホームが利用できるようになっておりますし、また身体障害をあわせ持つ場合には、身体障害者福祉法に基づきまして身体障害者手帳の交付とか介護サービスが提供されることになっております。さらに、きめ細かな施策を推進するために、平成十一年度予算におきましては、今御指摘のように精神障害者と知的障害者が相互に施設を利用できるような事業を行うことなどを実施しようとしております。  今後は、先ほど御説明申しました研究の成果も踏まえながら、いわゆる高次脳機能障害の症状、介護の方法等についてガイドライン等を作成いたしまして、医療及び福祉関係者、都道府県の関係機関等に周知するなど、引き続きいわゆる高次脳機能障害に苦しむ患者さんやその家族が法律や制度の谷間に置かれることのないよう、きめ細かな施策の推進に努めてまいらなければならないと思います。  委員のように福祉、介護、いろいろな問題について非常に温かい関心を示しておられますことに改めて敬意を表しつつ、こうした谷間の解消は本当に私どもは気をつけなければならない課題でございますから、十分その意を体して今後対応してまいりたいと思っております。
  288. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。
  289. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 以上をもちまして、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管及び環境衛生金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会