運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-05-12 第145回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十二日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      輿石  東君     前川 忠夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         久保  亘君     理 事                 長峯  基君                 成瀬 守重君                 平田 健二君                 山本  保君                 畑野 君枝君                日下部禧代子君                 阿曽田 清君                 松岡滿壽男君     委 員                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 田中 直紀君                 中原  爽君                 日出 英輔君                 堀  利和君                 円 より子君                 沢 たまき君                 山下 栄一君                 西山登紀子君                 清水 澄子君    政府委員        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君    事務局側        第二特別調査室        長        村岡 輝三君    参考人        昭和大学医学部        教授       矢内原 巧君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民生活経済に関する調査  (次世代育成と生涯能力発揮社会形成に  関する件)     ─────────────
  2. 久保亘

    会長久保亘君) ただいまから国民生活経済に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月十九日、輿石東君が委員を辞任され、その補欠として前川忠夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 久保亘

    会長久保亘君) 国民生活経済に関する調査を議題とし、次世代育成と生涯能力発揮社会形成に関する件のうち、少子化要因対応について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、参考人として昭和大学医学部教授矢内原巧君に御出席をいただき、御意見を承ることといたします。  この際、矢内原参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  矢内原参考人におかれましては、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております次世代育成と生涯能力発揮社会形成に関する件のうち、少子化要因対応について忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、まず不妊治療実態について参考人から二十分程度意見をお述べいただきました後、参考人及び政府に対し四十分程度質疑を行っていただきたいと存じます。  質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていただきたいと存じます。質疑を希望される方は、挙手の上、会長指名を待って質疑を行うようお願いいたします。  また、時間が限られておりますので、質疑答弁とも簡潔に行っていただくようよろしくお願いいたします。  なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、矢内原参考人にお願いいたします。
  4. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) 矢内原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日、不妊治療実態についてということで話をするように御要望を受けました。近年の生殖医療の進歩、その治療多様化対象患者のそれに伴う拡大等で、現在、社会的にも倫理的にも、またある意味では法制の問題上幾つかの問題点が生じております。  限られた時間でございますので、本日、ポイントを四つぐらいに絞って、資料に従ってお話をさせていただきたいと思います。  資料説明でございますが、テーマ、項目に従いまして四つに分けてみました。一番目は不妊治療を受けている患者数推定でございますが、これは資料一になっております。二番目に不妊原因及び治療ということで、資料二の一、二、三という三枚を用意させていただいております。三番目の項目といたしましては、不妊治療にかかわる費用ということで、これは資料三の一、二というところに記載をしております。また、不妊治療の現在の問題点幾つか列記してみました。それを資料四とさせていただいております。  また、話の中で幾つか専門的な用語が出てまいりますので、その他の参考資料といたしまして三枚用意させていただいております。一つ略語でございます。たくさん書いてございますが、上の四つほどを知っていただければ大体の話はおわかりいただけると思います。それから、参考資料の二番目は、これは用語の解説でございます。いろいろ配偶子組み合わせ、また出産する母親の組み合わせ、現在の生殖医療の中では考えられる組み合わせはたくさんございますので、それを書いてみました。また、参考資料の三番目は、いわゆる生殖補助医療ARTと申しますけれども、体外受精を中心としたものの現状を簡単にまとめてございます。数値平成八年度分の報告でございます。  それでは、最初の項目からお話をさせていただきます。  まず、不妊治療患者数推定でございます。  一般には結婚した夫婦の十組に一組ということが昔から言われておりますが、その根拠は、二年間通常の性生活を行った場合に九〇%が妊娠をするということからそう言われております。ただ、我が国の実態におきましては明らかないろいろな報告がございません。  本年の二月から三月にかけまして、厚生省科学研究費補助金厚生科学特別研究の中に生殖補助医療技術に対する医師及び国民の意識に関する研究班がございます。主任研究者として私がやらさせていただきまして、分担研究としては山梨医科大学の保健学第二講座の山縣然太朗先生に集計その他をお願いいたしまして、それによった不妊治療を受けている患者の推計でございます。  これは一般国民約四千名を対象にいたしました。回答率は七〇・四%ですので、二千五百六十八名からの回答でありまして、その結果から、年代別に書いてございますので、人口にその率を掛けて患者数推定いたしました。  二に結果が書いてございます。一つカラムがありますけれども、横のカラム治療を現在受けているというものであります。これは重複がございます。ただ、縦のカラム、現在治療を受けている、また過去に受けた、治療して子供が生まれたというものは重複をしておりません。これから考えますと、現在治療を受けているという一番上のカラムの一番右側数値、二十八万四千八百名という数が推定されます。  この数は二つの点でかなり信憑性のあるものではないかと思っております。  一つは、体外受精児平成九年度までの累積出生数というのが出ておりますが、これは学会登録の中で報告をしていただいておりますが、平成八年度まで、これは参考資料三に書いてありますが、二万七千二百六十一名体外受精児が生まれております。それから、昨年度、一昨年度では約七千名ほど生まれておりますので、その二年分を足しますと四万近い、三万九千ぐらいの方が生まれたということになります。それが根拠一つであります。  もう一つは、厚生省心身障害研究の中に不妊治療在り方に関する研究というものがございますが、平成九年度の報告で、三百二十七施設、これは生殖医療を専門にやっている施設医育機関対象にしたアンケートを行いました。百六十六施設から回答がございまして、その一年間の受診者総数は十一万七千余名ということであります。そのときの体外受精を施行した数から逆算いたしますと、その倍プラスアルファの数がその推定患者数ということになります。そうしますと、約二十三万から二十四万ということになります。したがいまして、現在ほぼ三十万近い方が不妊治療を受けているということになります。  二番目でございます。その不妊原因治療でありますが、資料二の一をごらんいただきたいと思います。  妊娠の条件といたしましては、御存じのように、男性側障害がある場合と女性側障害がある場合と二つございます。男性側としては、性交能力があるかないか、または精子の量及び質が問題になります。また、女性の側といたしましては、妊娠に必要な排卵、それから卵を輸送する卵管、そして妊娠した卵が着床する子宮というふうな分類が一番多く用いられておりますが、その男女両方がぐあいが悪いという場合とか、免疫学的に精子を拒否するというようなことも原因に含まれております。  これも先ほど申しました心身障害不妊治療在り方というところの十一万七千名からの分析でございますが、男性のみに原因がある場合が二五・九%ということになっております。女性のみに原因がある場合が六五・三%。そして、両方とも検査した限りにおいては原因がわからない、これを機能性不妊という言い方をしておりますが、これが二一・五%を占めております。男性側女性側両方原因がある場合が重複しておりますので、この値は重複ありということになります。  下段カラムにそれぞれの頻度を書いておりますが、女性側原因としては排卵障害が最も多く、三三%を占めているということになります。この値は、WHOが一九九六年に七千名のカップルからの報告書を出しておりますが、男性のみの原因が二四%、女性のみが四一%という報告に非常に近い値でございます。  資料二の二に移ります。  不妊検査治療でございますけれども、いろいろな検査を行いまして、そして原因を究明した後で治療方針を決定しております。上段男性不妊下段女性不妊というふうに書いておりますが、矢印の先が検査の結果行う治療でございます。それぞれ下の段のところに星印がついておりますが、これは保険診療ではございませんで、現在のところ自費診療ということになっております。AIHIVFAIDというような略語が書いてありますが、AIHは御主人精子を用いた人工授精であります。IVFというのは体外受精であります。また、AIDというのは御主人以外の男性、つまりドナーの精子による人工授精を指しております。  下段の方の女性不妊ということでありますが、これも同様に基礎的な検査がいろいろございます。基礎体温から始まって子宮内膜日付診、組織の検査でございますが、こういうものを一通り行いまして、その原因がどこにあるかということを検査いたします。さらに特殊検査としては、子宮鏡腹腔鏡等がよく用いられております。  それぞれの原因がわかりました場合に、これも矢印の先に示してありますが、一番左方卵管性の下を見ていただきますと、マイクロサージェリー、機能回復を行う手術でございますが、卵管が詰まった場合の手術方法、または卵巣性でありますと、これはほとんどが卵巣を調節しております中枢、つまり脳から出てくるホルモンの異常によることが多いのでありますが、その場合の排卵誘発、それから子宮に奇形があった場合にはその手術等治療法に移行いたします。  そして一番下段に、これも最終的にこういう方法ではだめな場合に行うIVF体外受精または人工授精等が書いてございます。これも自費診療になっております。  ここで注意していただきたいのは、従来、先ほどから出ております体外受精胚移植、つまりIVFETという手法は、本来はこの卵管性不妊に関して適用があるものであります。ただ、日本産科婦人科学会の基準といたしましては、難治性、つまりどうしてもこれらの従来の方法妊娠しない場合にはIVFETを使ってもよろしいというガイドラインができております。  資料二の三に移ります。これは体外受精胚移植手順を示しております。かなり専門的になりますが、御参考になればと思って出させていただきました。  左方採卵というところがございますが、その前に排卵誘発というプロセスがございます。これが十日から二週間ほどありますし、採卵そのものは、精子の採取と違いまして女性の体に負担のかかることでございます。採卵から胚移植まで全部で約二日間時間がかかります。この手法は、外来で行っている場合と、それから入院して行う場合と、それぞれの施設によってどちらでも行っているところがあるようでございます。詳しくなりますので、ここは参考だけにさせていただきます。  三番目の問題でございます。不妊治療にかかわる費用、これは大変最近問題になってまいりました。と申しますのは、自費診療が多いからであります。  検査または排卵誘発及び体外受精ということで、資料三の一は保険診療項目を挙げてあります。また、資料三の二には自費診療項目を挙げてございます。もちろん、これ以外に先ほど検査の中にありました基礎体温表等がございますが、主なものを列挙して保険点数から換算した費用右側に書いてございます。  この中で排卵誘発及び体外受精という二番目の大きな項目がありますが、その中の下の方に超音波検査という項目がございます。これは三千五百円掛ける三と書いてございますが、間違いでございまして、第一回目は五千五百円、そして第二回目、第三回目、三回だけ一周期で施行することが保険診療上許されておりますが、第二回目と第三回目は四千九百五十円ということになります。したがいまして、超音波を使った場合に若干のこの値の費用の修正がございます。  いずれにいたしましても、保険診療排卵誘発を行った場合には約二万円程度お金がかかるということになりますし、その方法によっては、その下段に書いてありますhMG、これは排卵誘発剤でございますが、それを使った排卵誘発では約三万八千八百円、四万円ほどのお金がかかるということになります。  また治療法の中には卵管形成術卵管機能を回復する手術でありますが、これは十二万九千円と書いてございます。保険適用になっております。この値は片側だけでございますので、両側閉塞の場合にはこの倍ということになります。最近では腹腔鏡下手術がこれに加味をされております。約十五万円ほどかかります。もちろん、これらの費用以外に入院、麻酔、投薬等が加わることになります。  その二に行きます。  これは自費診療で、現在の生殖補助医療技術の場合には、かかわる費用はほとんど自費診療ということになってございます。一番上に人工授精AIH、御主人精子を用いた人工授精でありますが、再診料から精子処理料まで入れますと、これは施設によって幅がございますが、私どもの調査によりますと約二万円から三万数千円の費用がかかります。  体外受精の場合には大変金額がはね上がります。自費診療ですので、それぞれの施設によって費用が違ってくることは当然でございますけれども、一応ここに書いてありますGnRHとかhMG、これは薬剤の名前でございますが、保険診療点数に換算した値段を書いてございます。  体外受精の場合には、まず採卵をしなければなりません。つまり卵をとるわけであります。そして、精子と試験管の中で受精をさせまして、そして胚移植受精卵を今度子宮に戻すという手順を踏みます。その総額、これは大変幅が大きくて恐縮なんですが、調査したところでは約二十二万円から五十二万円ぐらいまでの幅があると思います。これも外来で行った場合と入院してこれらの処置を行った場合では違いますので、当然入院費用入院した場合には加算をされてくるということになります。  さらに、精子の数が非常に少ない場合には、顕微授精といって、卵を一つ取り出しまして、その中に精子一つ卵の中に直接入れる方法があります。一般にICSIという方法が最近一番用いられておりますけれども、そういう精子の数または質が悪いと判定された場合にはこの方法体外受精加味をされてまいります。  そういたしますと、その値段が約五万円から十五万円ぐらいの幅がございますので、顕微授精による体外受精を行った場合にはトータル三十三万円から約七十万円までの幅ということになります。これは一周期にかかわる、つまり一周期というのは一カ月と考えていいのでありますが、それにかかわる費用であります。  それ以外に、最近は余剰胚、つまり受精卵をたくさんとることができますので、それをすべてお母さんに戻すわけではありませんで、凍結して次の周期に使うというような凍結保存ということが行われております。いわゆる胚の保存であります。それを行った場合には、次回は採卵処置をしなくてもそれを用いることができます。その費用が書いてございます。これもどのくらい保存しておくかということによって値段も違ってくると思いますが、調査した段階では約十万円から三十万円ぐらいの幅があるようでございます。  いずれにいたしましても、これら自費診療ARTを行っているという金額は、かなりの金額治療を受けておられる方は負担しているということになります。  最後に、不妊治療の現在の問題点を挙げてみました。資料四をごらんいただきたいと思います。  問題点二つに分けて考えてみました。一つは社会的な問題でありますし、これには法的な問題も一部絡んでございます。また、二つ目は医学的な問題であります。  まず、医学的な問題の方から御説明をさせていただきます。  第一に挙げましたのは、排卵誘発体外受精胚移植による多胎増加であります。参考資料三を見ていただくとおわかりになると思います。  下段グラフが載っております。三本の線が載っておりますが、一番上の線、一九七五年から一九九五年までの間に、ちょうど一九八六、七年を境にいたしまして急激に多胎が、三胎以上、三つ子以上の多胎がふえていることがわかります。  真ん中の線は、これは生殖補助医療実施施設でございます。これも一九八五年から九五年までの間に非常にたくさんの施設本邦では登録をされております。ちょうどこの二つが極めてよく並行しているということであります。  一番下段の三本目の線がこの医療によって生まれた子供の数でございます。この数値は、上段参考資料グラフの上のカラムの中に書いてありますが、平成八年度、これは昨年、平成九年度に報告されたものでありますが、一年間に七千四百十名の子供が生まれているということになります。また、本邦でこの技術が導入されてからの累積出生児数は二万七千二百六十一名ということになっております。年々増加をしているとともに、問題点一つとして多胎妊娠が、特に三胎以上がふえているということに御注目をいただきたいと思います。  これに伴いまして、卵巣刺激を行うために卵巣過剰刺激症候群ということで腹水がたまったり血液が濃縮したりして、時には非常に重篤な状態になる場合もございます。また、多胎になりますと、生まれる子供が早産になったり、非常に体重の少ない未熟児が生まれるということになります。これを回避するために、問題になっております減数手術、または減胎手術と申しますか、そういうことが一つの社会的な、また医学的にも問題になっております。  医学的な問題の二番目でございますけれども、これは昨年、一昨年と大変問題になりました。遺伝的な疾患を回避、重篤なものを回避するという目的を含んでおりますけれども、体外受精胚移植の胚を移植する前に遺伝子診断を行って移植するということ、また、生まれる前にダウン症候群その他を含めた児の状態を診断しようといういろいろな手技が行われております。この適応または応用について今議論を呼んでいるところであります。  最も私が気になっておるところは、いわゆるART生殖補助技術適応とその臨床応用であります。現在ではあたかもこれが最良の治療法であるかのごとく言われておりますし、そのような方向に進んでいることも事実であります。適応をしっかりしているかどうかということを医師または施行者が自覚をしなければいけないということであります。それに伴いまして、現在、学会ではこれらの施設の認定と臨床報告の義務づけを行おうとしておりますし、さらに将来には諸外国にありますようなクオリティーコントロール、施設の質の調査ということもしようかと思います。  最後の問題は、これはいろいろありますが、現代の医療技術がどこまで進むかわかりません。したがいまして、それをいかに臨床応用にまで持っていくかということが今後の大きな課題になっていると思います。それには一番目の社会的、倫理的、法的な問題が加味されております。  最後になりますが、社会的、倫理的、法的な問題としては、そこに書いてありますように、昨今問題になっておりますこれらの生殖補助技術を用いました配偶子や胚の提供、それに関しましては、出児の権利、出児を知る権利提供者または依頼者権利、これらなどがまだ決まっておりません。また、これらの不妊治療商業化をしていくということも大きな問題かと思います。本日の話の中の三番目にありましたそれにかかわる費用、これも大きな問題になろうかと思います。  限られた時間でございましたので言葉足らずなところがあったかと存じますが、以上、私の報告を終わらせていただきます。
  5. 久保亘

    会長久保亘君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人及び政府に対する質疑を行います。  質疑は、少し時間がずれておりますので、午後二時過ぎごろまでをめどとさせていただきます。質疑を希望される方は、挙手の上、会長指名を待って質疑を行うようお願いいたします。  なお、先ほども申し上げましたとおり、時間に限りがございますので、質疑答弁は簡潔に行っていただきますよう重ねて御協力をお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  6. 西山登紀子

    西山登紀子君 いつも後の方で意見を述べますので、きょうは……。  私は、娘が二人おりまして、男の子が一人、子供三人なんですけれども、こういう不妊の問題は子供たちの周辺で大変話題になることが多いものですから、私、親としても大変心配な面もありますし、また政治の面でどういうことが問題なのか大変関心がありますので、少しお話をお聞きしたいと思います。  いただきました資料をいろいろ見ておりまして、私、過去に不妊治療を受けた方が百四十三万四千九百人、そしてその治療によって子供を得られた方が六十一万人、大変数が多いというふうに思いました。  やはり、不妊治療によって出産が可能になったということによって受診率も確かに上がってくるということだと思うんですが、問題は母体の安全ということなんです。  先ほど少し重篤な場合とおっしゃいましたけれども、この不妊治療を受けることによって、もちろん子供にもリスクがないとは言えない。母体の場合、若い母体の場合にどのようなリスクがあるのか。重篤とおっしゃったけれども、今までに死亡したような例というのはないのかどうかというのが一点です。  それからもう一つ。いただきました資料で、先生の論文の中に外国施設、例えば英国は六十四、ドイツは百施設日本は五百という数が出ておりまして、非常に多い。多いことは受診の機会が多くなるということでいいことというふうに素朴に考えていいのか。しかし、そう言ってはいけませんけれども、例えばここにありますように、その多くが周産期管理を行わない診療所と考えられているというふうにおっしゃっておりますし、果たして数が多いということを手放しで喜んでいいのかどうか。  もっと厳密な、例えばガイドラインのようなものがあって、こういうものをクリアしないとそういう施設には認められないというようなものが外国なんかにはきちっとあるのかどうかということ、これを教えていただきたいのが一つです。
  7. 久保亘

    会長久保亘君) できるだけ簡潔にお願いします。
  8. 西山登紀子

    西山登紀子君 それから、今、電話帳なんかを見てみますと、不妊治療というふうにわざわざ明記してある施設が非常に多くふえているような気がいたします。そこで、選ぶ側としては、安全な病院を選ぶ場合の先生のお考え、それの中で選んでいるわけですけれども、ある意味では何か広告が大きいところを選んだり、そういうようなこともあるようなんです。そういう点では、今の現状の中でできるだけ安全なところを選ぶにはどうしたらいいかということも教えていただきたい。  この三点。
  9. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) 今の三点のことについて、私の考えを入れながらお答えいたしたいと思います。  まず第一点の、女性排卵誘発生殖補助医療を用いた場合の安全性、また肉体的な負担、合併症ということでございますが、先ほど例に挙げました卵巣過剰刺激症候群、これは非常に軽度なものを含めますとかなりの頻度がございます。ただ、ほとんどが入院加療を必要としないものでありまして、重篤なものというのは百例に二、三例あるかどうかという程度だろうと思います。  ただ、現在までの死亡例ということでございますが、これは三年ほど前に問題になりまして、私の知る限り本邦では一例の死亡、それから一例の非常に重篤な後遺症というのが報告になっていると思います。  第二点でございます。施設数の多いことがよいことか悪いことかという御指摘でございます。  現在、日本産科婦人科学会では登録制をとっておりまして、これは認可制ではございません。したがいまして、軽い審査がございますが、これはその中のクオリティーを調べるものではありませんで、経歴または学会員であるのかどうかというようなことで登録施設になっております。したがいまして、ある意味では無制限というような形を取らざるを得ないということであります。  施設数がふえてきたことでありますが、今日の四の医学的な問題点の中で挙げさせていただきましたように、登録した施設は、今まではボランティアベースでありましたが、本年度よりその成績を報告する義務ができました。したがいまして、施設数のクオリティーコントロールというのがこれから出てくると思います。  また、施設の内容でありますが、現在まで延べ五百三施設ほど登録をされてきておりますが、実働では四百五十六施設が本年度末の施設数であります。  そこの内容については、諸外国と比べますと非常に厳密な調査がされて登録されているわけではございませんで、例えばエンブリオロジスト、基礎の学者は卵を取り扱う、胚を取り扱う資格というのもございませんし、さらに、これも問題になると思いますが、女性不妊を訴えられていらっしゃる方々に対する心理的なサポート、コンサルテーションということが非常に大切なポイントでありますが、そういうものや施設もすべてが整っているわけではない。まして、ほとんどが体外受精診療所で行われているところが多いために、周産期の設備がなくて、それによる妊娠の結果生まれる子供のケアという、つまり、悪い言葉で言えばつくりっ放しというところがございます。これは、施設数が多いということは決していいとは私は思っておりません。  三番目の問題でございます。病院を選ぶのはどういうふうにしたらいいかということでございますけれども、これもある意味では自費診療ということがございますので、いろいろな一般の雑誌に経営上の問題も含めて過剰な広告が出ているということは事実でございます。広い意味で言うならば、一つ商業化、企業化になっているということがあります。  したがいまして、これは学会一つの責任でもあると思いますが、そのクオリティーコントロールをどういう形で国民に公表して、病院を選ぶのは患者さんが選ばれるわけですから、その成績または設備等を、現在、学会のインターネットを通しまして、また機関誌を通しましてどんな施設があるかということはわかりますけれども、その内容も含めた施設数の選定、基準というものを何らかの形でつくらなければいけないと思っております。  以上でございます。
  10. 西山登紀子

    西山登紀子君 どうもありがとうございました。
  11. 山本保

    ○山本保君 時間もないようですので、ちょっと順序が先になってしまうかもしれませんが、きょう厚生省も来ておられるようですから、主に行政的な点についてお伺いしたいと思います。もし専門的なことでフォローをいただければ矢内原先生にもお願いしたいと思っております。  各党、また私どもの党も何回もこの問題については取り上げておりまして、私もこの前一番近い決算委員会で厚生大臣と直接やりとりさせていただきました。  大変なニーズがある、しかもお金をかければできるということは結構なことなんだけれども、やっぱり不公平といいますか、お金がなければ子供はできないということにもなる。片や、保険というのはみんなで出し合うわけですから、そういうときに欲しい人またはそれにたくさん費用を使った人だけにお金が使われるというのもまずいかなという気もする。何らかほかの方法があるのかもしれない。  先日、私はその中で、今もお話が出たと思うんですが、この問題についての情報をきちんと厚生省が示していないのがまず大きな問題ではないか。一体、危険性、またどれぐらいのお金をかければ成功するものなのかとか、また適正な技術というのはどういうものを言うのかというようなことについてある程度示し、その上で例えば今ある保険制度に加味していくというような方法が考えられるのではないかなという気がするわけなんですけれども、厚生省の方では、こういう制度として、これはどんなことが問題点で、しかし何らかの形で対応せざるを得ないと思うんですけれども、その辺についてお考えをお聞きしたい。
  12. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 体外受精等の生殖補助医療技術の問題につきましては、先ほど矢内原先生の御指摘にもありましたように、倫理面、社会面、医学的な面、いろいろな点から問題があるということで、現在私ども、厚生科学審議会の中に生殖補助医療技術に関する専門委員会を設置いたしまして、さまざまな分野の方に御参加いただきまして御議論をお願いしているところでございます。  私どもといたしましては、この問題に対する対応もこれらの報告書等を踏まえまして検討してまいりたいというふうに考えております。  また、実態、情報等につきまして、今回この専門委員会を進めるに当たりましても、先生の御紹介にも若干ございましたように、一般国民あるいは専門家を対象にいたしました意識調査なり費用調査を行ったところでございまして、こういった報告がまとまり次第、広く公表いたしまして情報を提供してまいりたいというふうに考えております。
  13. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) ただいまの御指摘の中に治療成績という言葉がちょっと入っておったと思いますので、参考までに体外受精胚移植を用いた成功率がどのくらいかということを申し上げたいと思います。これは毎年学会誌に掲載されてございます。  端的に申しますと、移植つまり受精卵を母親に戻した、そこまでは大体八〇%ぐらい成功しておりますが、戻したものに対して実際に子供を抱いてうちへ帰られる方の頻度は、方法によって幅がありますが、約一五%でございます。新鮮胚としては一五・七%、それから凍結胚を用いた場合には、これは最近もっと上がっていると思いますが一〇%、また顕微授精の場合には一七%、平均いたしますと一五%ということで、百回治療をして十五回ということで、これは高いか低いかは別といたしまして、また適応の問題もございますから一概には言えませんけれども、報告ではそういうことになっております。
  14. 山本保

    ○山本保君 ありがとうございます。
  15. 長峯基

    ○長峯基君 きょうはどうもありがとうございます。  先生にちょっとお伺いしますけれども、不妊というのは、過去に比べて医学が発達したからこういうふうになってきたのか、それとも、例えば環境ホルモンで精子が少なくなっているとかいろいろマスコミが報じておりますが、何かそういう不妊が非常に最近ふえてきた原因というか、そういう客観的な状況はあるのかどうか、一点お伺いしたい。  もう一つ厚生省に、つまり保険でどこまで見られるのかということがあると思うのですけれども、私はやっぱり少子社会を解決するには積極的に保険でこの不妊治療は見るべきだ。つまり、終末医療には膨大な金を使って、生まれてくる子供に対しては全然お金を使っていないわけですから、私は保険でも積極的にこの不妊治療に投資すべきだという考えを持っているのでございますけれども、厚生省はどのようにお考えになっているか。  一点ずつ質問してみたいと思います。
  16. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) お答えいたします。  不妊患者がふえているかどうかということでございますが、これは最初に申し上げましたように、不妊治療を受けている方々の数がどのくらいいたかという報告がございませんので昔と比較することはできません。ただ、もしふえているということになれば、二つの点が挙げられると思います。  一つは、いわゆる女性の社会進出によって結婚する年齢が高くなってきたということが大きな原因になっております。これは客観的なデータがございまして、本日手元にございませんが、結婚の年齢、そして最初のお子さんができる年齢がともにこの十年間で非常に高くなってございます。それが一つでございます。  それからもう一つは、環境ホルモン等の御指摘がございましたが、これに対する具体的なデータはまだ発表されてございません。関連あるだろうというふうに騒がれております。  最後に、もう一点加えるならば、これは御指摘がございましたように、いろいろな治療法と申しますか、検査法を含めた我々がわからなかった疾患がたくさん出てきているということがあります。代表的なのが子宮内膜症でございまして、これは診断法によってふえてきたのか、実際にいろいろな環境ホルモン等を含めたものでふえてきたのかわかりませんが、そういう患者数がふえているということは、不妊に関連した疾患がふえていることは事実であります。  以上でございます。
  17. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 不妊治療につきましての保険適用についてのお尋ねでございますが、先ほど参考人先生の方からもお話がございましたように、不妊治療のうちでホルモンの異常でございますとか、あるいは子宮卵管の機能障害といったような母体の異常に起因をします不妊治療につきましては現在も保険給付の対象といたしておりますが、人工授精あるいは体外受精というように受精そのものを人工的にやるという技術につきましては、まず事実関係としては、現在のところは保険給付の対象にいたしてございません。  そこで、今の人工授精体外受精といったことについてどのように考えていくのかということですけれども、現在そのように対象にしていない理由、それはまた今後においてもそのところを慎重に検討しなければならないという理由にもなるわけですけれども、これも先ほど参考人お話にございましたように、成功率というものが必ずしも高くないというような点、さらに、母体の安全性の確保という意味で、先ほども御議論がございましたけれども、こういったようなところについての課題というものがまだ残っておる。さらに言えば、受精そのものを人工的に行います技術の種類によりましては、やはり社会的な合意というものが十分に得られていないというような点もございます。  そういったもろもろ、医学的あるいは社会的、法的な問題も含めましてさまざまな問題の解決というものがございますので、そういった点を踏まえての総合的な慎重な検討が必要であろうというのが私どもの現在での考え方でございます。
  18. 円より子

    ○円より子君 民主党の円でございます。  私は、先ほど矢内原先生がおっしゃったように、この問題は、倫理や法律の面も含めましてこの調査会で慎重に、しかししっかりと議論しなければいけないことだと思っております。きょうだけじゃなく、これからもいろいろ議論を進めていきたいものだと思っております。  ただ、医学が進歩いたしますと、もちろんそれによって恩恵を受ける方、福音を受ける方がたくさんいらして、子供を欲しいのに産めない方にとってはとてもいいことだとは思うんです。臓器移植のことやこういった不妊治療のことは、人間が常に欲望のままに生きて、医学やさまざまな科学がそれを満たしていくということはいいんですが、その前提になるところをやはりしっかり考えなければいけないということでひとつ御質問させていただきたいんです。  日本では、特に女の人は結婚すると子供を産むのが当たり前、結婚したらすぐにだれでも、悪意はないんでしょうけれども、お子さんはいつということを聞くというような状況がありまして、子供を産めない方たちがとても肩身の狭い思いをしていらっしゃる。そして、マスコミであちらこちらでこういうことによって子供を産めたなんという話が出てきますと、やはり治療に行かなきゃいけない、産まなきゃいけないという気持ちに駆り立てられるのではないかという気がしております。  そこで、いらした患者さんたちにまずきちんとした、先ほど医学的な母体への危険性とか減数手術を施すことの倫理的な問題とか、多胎妊娠をするんですよ、そういうときには減数手術はどうなるんですよとか、またその成功率はどうですよというような医学的な問題とは別に、本当にその人にとって子供を持つこと、またそのカップルにとって、その人生にとってそれが必要なことなのか、そういったことも含めての、法律的な問題も含めて、カウンセリングというものがきちんと行われているのかどうか。また、そういったことのガイドライン、カウンセリングを厚生省の方でもつくっていらして進めていらっしゃるのかどうか。それについて両者にお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  19. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) 大変重要な御指摘だと思います。  先般行われました調査で、国民子供を持とうという意識、また子供がない生活も一つの生活じゃないかというような意識の違いが年代によってあります。したがいまして、一概に現在の日本の社会でどの程度の意識を、お子さんを持っておられる方、また持たれない方があるということに関しては、数値としてあらわすのは非常に難しいと思います。  ただ、御指摘がありましたカウンセリングということは大変重要なことでございます。医学的なインフォームド、インフォメーションを与えるというだけではなくて、それに伴う患者さんが持っている負担、それは心身ともの負担、両方込みで十分なカウンセリングを不妊治療の中に入れていかなきゃならないという声は大変強うございます。  蛇足でございますけれども、私、本年度の日本不妊学会を開催させていただくんですが、そのプログラムの中にワークショップをつくりまして、不妊治療とカウンセリングという項目をつくらせていただきました。今後こういうことが非常に大切になってくるものと考えております。
  20. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 不妊治療に対するカウンセリングの問題でございますが、先ほどから御指摘いただいております経済的な負担の問題のほかにそういった精神的な問題があることは事実でありまして、私ども、こういった問題につきましては、不妊専門相談センター事業というのを平成八年度から始めておりまして、都道府県等における大学病院あるいは公立病院等を活用いたしまして、不妊に悩む夫婦なりその家族に対するカウンセリング事業を実施いたしております。  現在まだ十カ所しか整備できておりませんけれども、本年度におきましては二十四カ所ということで倍増を図る計画でおりまして、こういった面につきましても私ども今後充実してまいりたいというふうに考えております。
  21. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございます。
  22. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 参議院の会の松岡です。御苦労さまでございます。  少子化対策として、不妊医療の実情についてお伺いしようということできょう御足労いただいておるわけですけれども、過去において少子化対策として政策的に不妊医療の問題を進めてきた、そういうケースが世界の中であるんでしょうか。それが一点。  もう一つは、現在の不妊治療に対する世界じゅうのレベル、どの国が一番進んでいて、日本がどの程度のレベルに達しているのか。その辺の知識が私ども全くないものですから、その辺の感覚をお教えいただきたいということ。  それから、通常の妊娠によって生まれた子供たち不妊治療でできた子供とのいろんな状況の差というものがあるのかどうなのか。統計的には非常に難しい問題だろうと思うんですけれども、その辺、わかる範囲内で結構ですからお教えいただきたいというふうに思います。
  23. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 最初の御質問でございます少子対策としての不妊治療の各国の例ということでございますが、諸外国でいろいろな制度なり法律を持ちまして生殖補助医療技術についての規制等をしているところはございますけれども、これと少子対策との関連につきましては、私ども、現在十分承知していないところでございます。
  24. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) 御質問の中の後半の二点についてお答えをいたします。  一つは、世界のレベルと日本のレベルにどのような違いがあるかということであったと思います。もう一点は、こういう生殖補助医療不妊治療というのを生殖補助医療というふうに読みかえさせていただきますと、それによる児のその後のフォローアップということだと思います。  第一点の世界のレベルでは、日本の成績は世界の成績に非常に近うございますけれども、まだ成績としてはやや劣っているところがございます。ただ、これは先ほどお話の中にもありましたように、適応ということの問題がございます。つまり、非常に難治なものと、それからそうではない、正常に近いような方にもし応用した場合にはかなり成績がよくなってくるということもございますので一概に比較をすることはできません。  ただ、我々の中で話をしているのは、そのクオリティーのコントロールということ、つまり諸外国では登録制ではなくて認可制をとっているところがございますので、その施設のセンター化をしている国が多うございます。そういう意味では、その一つ一つ施設技術が非常に高く、またよくコントロールされているということからしていい成績になっているのではないかという指摘を受けてございます。  第二点でございますけれども、これは現在のところ詳しい結果は出ておりませんが、通常の体外受精胚移植に関しましては、児の予後はそれほど悪くはございません。正常の出生児と変わらないということになっております。  ただ、最近の論文の中では、顕微授精に関しまして、卵を取り出した中に一つ精子を入れるという話をいたしましたけれども、そういう顕微鏡下の細かい操作に関しましては、これは児に障害があるんだという論文も出てございます。そういう意味で、まだ時間をかけなければ児の安全性ということに関しては結論が得られないというところでございます。
  25. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ありがとうございました。
  26. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田ですが、ちょっととっぴな質問をいたします。  先ほど長峯先生からもお話がありましたが、九州の男性二十代、三十代の精子数を調べたら一億二千万、関東、東京ですけれども、ここでやはり二十代、三十代の成年の精子数を調べたら五千三百万、約二・二倍の差があるというデータがせんだって朝日新聞に出ておったわけです。これは環境ホルモンのせい云々と、こう出ておったような記事の記憶があるんですが、なぜそんなに差があるかというようなことは厚生省でも検討されておるのかどうか。  また、私の友人で四千万しかない者がおりまして、とうとう子供ができないんですよ。どれくらいの数が出ていれば大体心配要らないのかというところを先生に教えていただきたいと思います。  また、精子が二・二倍以下であるならば卵子も恐らくそれに並行した形で東京周辺は少ないんじゃないか、そんな非常に単純な比較論でありますけれども、どのようにとらえておられるか、事と次第じゃ非常に重大な問題に発展するんじゃないかなと思いますので、時間が余りましたのでお尋ねいたします。
  27. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 朝日新聞に掲載された記事等の関係でございますが、ダイオキシンと男性精子等の関係につきましては、私どもの局、直接ではございませんが、生活衛生局等の調査におきまして研究をいたしているところでございます。
  28. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) 精子の数の点でございますけれども、私はその朝日新聞のニュースを知らなかったので今伺って驚いたんですが、これは精子の数の測定法の統一をとらなければいけないということ、その条件を一緒にしなければ二倍や三倍の違いはすぐございます。つまり、二回目の射精を行って、その期間が短ければあっという間に精子の数は半分になります。
  29. 阿曽田清

    阿曽田清君 一人じゃなくて、集団で。
  30. 矢内原巧

    参考人矢内原巧君) はい、集団で、同じでございます。母数の条件によって違っております。これに関しましては、現在、厚生省の班研究、科学研究の中で新しく男性不妊の問題ということで調査を昨年度から始めてございます。  今、具体的な精子の数が出ましたけれども、御友人の四千万というのは私は立派な数であろうと思っております。と申しますのは、WHOその他の基準によりますと、一㏄当たり二千万というのが精子減少症の下限になっております。また、例によっては一千万であっても妊娠している例がございます。  したがいまして、現在、医学的には二千万以上あればよろしい、また運動率は五〇%であればいいということになってございます。
  31. 久保亘

    会長久保亘君) 以上で参考人及び政府に対する質疑は終了いたしました。  矢内原参考人には、お忙しい中、本調査会に御出席をいただきましてありがとうございました。  本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査参考にさせていただきます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  32. 久保亘

    会長久保亘君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  33. 久保亘

    会長久保亘君) 引き続き、国民生活経済に関する調査を議題とし、次世代育成と生涯能力発揮社会形成に関する件について意見表明及び委員相互間の意見交換を行います。  本調査会は、設置以来これまで次世代育成と生涯能力発揮社会形成をテーマに調査を進めてまいりましたが、本年度の中間報告書を取りまとめるに当たり、本日は、これまでの調査を踏まえ、委員各位の御意見を伺いたいと存じます。  議事の進め方でございますが、まず各会派から一名ずつ大会派順にそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただきました後、一時間程度委員相互間で自由に意見交換を行っていただきたいと存じます。  なお、御発言はすべて着席のままで結構でございます。  それでは、御意見のある方は順次御発言願います。
  34. 長峯基

    ○長峯基君 私は、自由民主党を代表して、本調査会の一年間の調査活動を踏まえ、調査テーマに関し幾つかの意見を申し述べます。  まず、少子化対策についてであります。  二十一世紀最大の課題である少子化対策について、我が国の合計特殊出生率は、一九七四年に人口の置きかえ水準を割り込んでから四半世紀が経過しており、このままの出生率が続けば、平均寿命の伸長と相まって、我が国社会を急速に高齢化させることとなります。こうした事態は、二十一世紀の我が国の経済社会及び国民生活に極めて大きな影響を与えるものと危惧されるのであります。  ところが、現在、国民少子化の進行に対して危機意識を持っているとは言えないのが実態であります。このため、本調査会は、少子・高齢化社会への対応策を示すとともに、出生率の低下を食いとめる方策について早急に国民的な合意の形成を図ることが必要であると考えるのであります。  しかしながら、少子化の問題は、結婚や出産という個人の自由な選択による結果であり、社会が強制できるものではありません。次世代を担う子供を安心して産み育てることができる環境と社会を形成することが、我々政治の場にいる者の責務であると考えます。  まず、制度的な課題から述べることといたします。  第一に、雇用環境の整備についてであります。  最初に、女性が結婚、出産、育児を経て就業を継続できること、つまり育児休業制度が十分活用されるよう制度の利用促進を図るとともに、休業期間設定の多様化を図るなど制度の柔軟性促進等について検討していく必要があります。  後ほど心の教育の問題についても触れますが、育児について、三つ子の魂百までという意見もあります。幼児期に母親と触れ合い学んだことは、個人の人格形成や生活習慣に大きな影響を与えると考えられます。補完的に保育サービスの充実も必要ですが、本来、母親が就業を継続しても、その母親や家族が自分たちに望ましい育児のあり方を選択できる環境が必要であると考えるのであります。  次に、出産・育児で退職した女性が再就職を希望する場合の支援策について、一部の先進的な企業で実施されている出産・育児による退職者の再雇用を普及させること、希望者には必要に応じた技能訓練を行うなど、再就職活動の支援が必要であると考えます。  なお、企業に対して仕事と育児が両立しやすい労働慣行や職場づくりのための啓発活動を促進し、企業の社会的責任を自覚させることも重要であると思うのであります。  次に、保育サービスの充実について、現在、政府においてはエンゼルプランの一環として緊急保育対策等五カ年事業を推進しておりますが、都市部では待機児童も少なくなく、いまだ十分であるとは言えない状況であります。また、ゼロ歳児保育、延長保育等、女性の生活実態に応じた利用しやすい多様な保育サービスの提供を促進することが重要であります。これらを実現するためには、保育所の設置や運営に関する基準等の大幅な規制緩和も必要となります。  ところで、本年四月に自由民主党、自由党及び公明党は緊急少子化対策の基本方針をまとめました。その中にも保育サービス多様化の促進等が盛り込まれており、来年四月からの実施に向け、財政的な面も含め準備を進めているところであります。  次に、経済的支援についてであります。  出産をためらう原因一つに、高額の育児費用や一人二千万円とも言われる子供の教育費の問題があります。既に児童手当の支給要件緩和措置、市町村レベルでの乳児医療費の無料化、奨学金の貸与条件緩和措置、所得税の扶養控除額の引き上げ等が行われていますが、実情に合わせてこれらの措置をなお一層拡充する必要があると考えます。  次に、育児不安の除去について、近年、我が国では核家族化、都市化が進み、出産・育児は家族や地域の人々からの支援が受けにくくなっています。このことが特に子育てを担っている女性にとって精神的、肉体的な負担を増す原因となっています。その解消のためには、子育て支援センター事業を活用して、地域の育児拠点とネットワークづくりを推進し、育児の社会化を図る必要があると考えます。また、父親の子育てへの参加を促す方策を官民挙げて検討すべきであります。  次に、先ほど専門家の方から御意見を伺いました不妊治療について、その技術進歩は目覚ましく、また限りないとの感を抱きました。こうした技術により、これまで産みたくても産めなかった方々が子供を産むことができるようになることは大変喜ばしいことであります。今後、技術開発の支援、倫理的ガイドラインの作成、治療を受ける人の経済的、心理的負担の軽減を図り、安心して治療が受けられるよう環境を整備することが必要であると考えます。  次に、少子化対策の体制づくりについて、少子化問題は小渕総理も施政方針演説等で必ず触れており、今や我が国のキーワード的課題となっています。したがいまして、政府全体での取り組み体制を整備するのは当然ですが、本件に関して国会も常に関心を持ち、行政全体の動向を少子化対策の観点から注視していく体制づくりが求められていると思うのであります。  続いて、次世代の健全育成について、少子化の進行により、次の世代を担う子供たちの健やかな成長は大変重要な課題であります。次世代の健全育成を図るためには、教育のあり方を見直さなければなりません。今日の教育は、進学率の上昇に伴う過度の受験競争、いじめや不登校問題、さらに青少年非行の凶悪化等、かつてないほどの危機的な状況にあります。  ここでは、子供の教育に関しての課題について申し上げます。  まず、心の教育について、教育の基本は、社会の基本的ルールを身につけさせ、国や郷土、家族を愛する心、周囲の人と健全な人間関係を形成できる心を育てることですが、そのためには家庭、学校、地域が一丸となった取り組みが必要であります。また、学校カウンセラーや養護教員を活用し、子供の悩みを気軽に相談できる体制を強化するとともに、子供の悩みを受けとめ得る実践的な力のある教員の養成が強く望まれるのであります。  次に、地域における教育についてであります。  現在、文部省においては、豊かな人間性をはぐくむ教育、生きる力を育成する教育の充実を図っています。こうした施策が実効あるものとなるためには、地域における異世代、異年代間の交流を行い、体験を通じた教育を重視すべきです。調査会の中でも議論されたように、生活体験学校、域内交換留学、地域でのアルバイト体験というのも一つですし、ボランティア活動を奨励することも有効であると考えます。  最後に、二十一世紀の我が国社会が個人がそれぞれの能力に応じてその役割を果たせる社会であるためには新しいシステムが必要です。その幾つかについて触れておきます。  まず、個人の職業能力の開発については、企業内教育とは別に、本人の自発的意志により、外部のさまざまな教育・訓練機関において必要な知識、技能等を身につけようとする動きが出てまいりました。こうした積極的な労働者にはいろいろの給付金が雇用保険から支払われるようになりましたが、引き続き拡充していくべきです。そのための制度的検討も必要であると思います。  さらに、今後とも活力ある社会を維持するためには、新たな活躍の場や雇用分野を確保する上で、ベンチャー企業等の発展成長が不可欠であります。その発展を促すためにも、資金調達の方途や税制面での優遇措置について検討すべきであります。また、高齢者、女性の雇用環境を整えることは言うまでもありません。  最後に、個人が生涯を通して社会の一員であることが実感できる生活を実現するため、ボランティア活動等がしやすい労働環境や社会環境の整備を図ることも必要と考えます。  このように、二十一世紀はさまざまなライフスタイルを選択できる社会でなくてはなりません。自己の選択により、その能力を最大限に発揮できる社会形成のための努力が重要であると考えます。  以上で意見発表を終わります。
  35. 円より子

    ○円より子君 民主党を代表し、意見表明をいたします。  私たちは、昨年、テーマを確定して以来、政府からの説明聴取、参考人からの意見聴取を中心に調査を進めてまいりました。本日は、これらを踏まえ、残された問題の指摘を含めて、論点を絞り意見を述べたいと思います。  まず第一は、本調査会調査に取り組むに当たっての問題意識でもありますが、二十一世紀を間近に控え、明るく豊かな国民生活をどうしたら展望できるかということです。  本調査会は三年を一クールとしておりますが、三年目は二十一世紀に入っております。しかし、今日の我が国をめぐる状況は決してバラ色ではありません。戦後、国民のたゆまぬ努力と工夫によって築き上げた諸制度は、右肩上がりの経済社会には有効でしたが、これからの経済社会はこれまでと同様の成長は望めず、時代の要請に合わせ大胆に見直す必要がございます。  また、二十一世紀は社会の大変動が予測されています。少子・高齢化、情報化、国際化等々、いずれをとってもかつて経験したことのない規模と速度で我が国社会に多大な変革をもたらそうとしています。特に、少子・高齢化の急速な進展は我が国の経済社会に深刻な影響を与えることが懸念されております。  このような世紀末とも見られている状況をどう打開して明るい展望を持つのか、私たちの調査会はこの点に光を当てていかなければなりません。  当調査会としては、以上のような問題意識のもとに、焦点を社会の担い手である個人本人に当て、次世代育成と生涯能力発揮社会形成について検討してきたものと承知しております。この点を再確認して、次の論点に移りたいと思います。  第二は、社会の変動の中でもとりわけ重要な少子化についてです。  少子化経済社会に与える影響は、既に申し上げましたように大きいものがあります。しかし、影響には影の部分ばかりではなく、日の当たる部分もあります。例えば、我が国は超人口過密国であり、近代国家になってから移民を出したことはありますが、受け入れたことはありません。人口の減少は超過密状態を緩和するものと考えられます。人口の減少下において豊かな国家を建設していくことは我が国にとって初めての経験ですから軽々しいことは申し述べられませんが、今後、このような観点からの検討も必要ではないでしょうか。  次に、少子化子供に与える影響について報告がありました。  少子化により子供社会が成り立たず、子供同士で切磋琢磨する場がない、また、核家族化の進展もあって、これまで自然に体験することができた親の出産・育児等人生のいろいろな場面を子供があらかじめ経験できないといったことです。そういったことが子育てへの不安、ひいては少子化にもつながっています。このような点は人為的に考えていかなければならず、テーマとの関連からいっても見逃してはならない点かと思います。  また、現在の少子化の現象は国民が決して望んで生じたものではないとの指摘もされておりますが、それへの対応は産めよふやせよ方式では国民に到底受け入れられません。少子化を進行させている原因を十分に検討し、国民の望んでいない阻害要因を除去することを考えるべきです。  その阻害要因の最たるものは、出産・育児に大きな役割を果たしている女性のライフスタイルの選択肢が限られている問題です。例えば、仕事を持っている女性が出産・育児のため一たん離職し、再就職しようとしても採用時の年齢制限等により思うような職業につけないでいる現状があります。この年齢制限は、女性の働きやすい職種である幼稚園や保育所の保母、学校の教師等にも事実上実施されており、大変大きな問題かと思われます。  また、働きながら育児をしている場合は、保育所等の託児施設の設置場所やサービスが必ずしも女性の生活実態に合ったものではなく、女性の就業継続の阻害要因一つになっております。託児施設やサービス内容の改善に向けては、政府もエンゼルプラン等により着手しておりますが、まだまだ不十分です。  さらに、規制緩和の名のもとに、女性や母性保護に逆行するかのような労働条件の改正問題、シングルマザーに対する社会的偏見や法制上の不利益問題もあります。これら制度的なものについては早急に対処し、女性が多様なライフスタイルを選択できるようにすることが少子化の進行を食いとめる上で重要なことであると思います。  また、参考人から、親離れ、子離れをしていないことが少子化を促進しているとの報告がありました。したがって、子供の自立を図り、よりよい国民生活が送れる経済的基盤を整える政策が必要だと思います。後者のためには、若い世代の住宅事情を改善する政策の実施、男女を問わず仕事と家庭生活が両立でき、ゆとりを持てる労働環境の整備等が課題であります。そのためにも真の男女共同参画社会の形成が重要です。子供の自立を促すことにつきましては、次世代の健全な育成が重要となります。  そこで、第三に、次世代育成についてです。  今申し述べましたように、少子化は次代を担う子供たち育成に大きな影響を与えております。年輩者はよく今の若い者はと言います。しかし、時代は変わり、社会は変わっております。私たちの若いころも当時の年輩者からそのように言われてきたわけです。問題は、社会がどのように変わってきたかでしょう。子供は社会の鏡と申します。大人社会も変わり、子供社会も変わってきています。このような社会の変化にどのように対応していくか、この点が重要です。  不登校、学級崩壊、いじめ、青少年の自殺等次世代育成をめぐるさまざまな問題状況は、参考人から報告のあったように、社会のひずみから聞こえてくる子供たちのSOSとも言えましょう。もちろん、手をこまねいていてよいというわけではありません。制度的問題は制度的に解決していかなければならないと思います。  例えば、次世代育成について重要な役割を担わなければならない学校については、小学校から高等学校の全課程において、学級定員、教職員の業務量及び配置数にゆとりを持たせることが必要です。我が党はこの点に関し、今国会、本院に法案を提出し、その実現に向け努力しています。学校教育にゆとりが生ずれば、今求められている児童生徒の個性に応じた多様な教育が行われ、豊かな心を生み出す場所として楽しい学校づくりができるものと確信します。そうした学校は、個性豊かで自立心あふれる子供たちを育てる基礎ともなるでしょう。  また、親社会の問題は家庭や地域で解決していかなければなりません。そのためには、家族を血縁のみに偏った硬直的なとらえ方をするのではなく、他者との豊かな関係性を築く中で家庭や地域の教育力をもう一度見直し、学校との協力関係をどのように構築していくか、社会のひずみをどう解決していくかということをいま一度見詰め直していく必要があるでしょう。さらに言えば、さまざまな年代や職業の人々が暮らす地域の多様なネットワークを新しく構築する中での次世代育成を考慮する必要があるのではないかと思います。  最後に、生涯能力発揮社会についてであります。  この点に関しては、文部省は生涯学習社会を提唱し、労働省は生涯能力開発を標榜しております。また、厚生省は生涯現役社会といった状況でございますが、これらの省庁からヒアリングしても、御自分たちのやっていることは説明してくれますが、生涯を通じた能力の発揮という観点からの報告はありませんでした。  さらに、私が調査会の審議で指摘いたしましたが、特に中高年の方々が個人の努力によって身につけた知識や能力を生かす場をどのように確保していくかという問題についても明らかになっておりません。このことがまず問題点を明示しております。生涯能力発揮社会形成といった重要な問題について、政府で一体的に取り組める状況にないということであります。この点で、今国会に法案として提出されている省庁再編の問題は絶好の機会でありますので、この点についても十分な議論が必要と考えています。  少子・高齢化の進展により、少ない人口で従来以上の生産性を上げなくては経済的に豊かな国民生活は保障されません。しかし、成熟社会においては、経済的なものだけが豊かな社会とも言えません。同時に、どうすれば経済的にあるいは精神的に豊かな生活を送ることができると、だれかが保障することもできないでしょう。したがって、これからの社会においては、自立した個人が自己の責任において選択しながら生きていく以外にはないように思います。それが個人の幸せと社会の発展を調和させていく仕組みであろうかと思います。  その場合、選択の場は競争原理が働く社会が前提となります。もちろん、だからといって私はひとり勝ちを容認する裸の弱肉強食社会を想定するものではありません。そこには一定のルールがあり、出発点の平等が保障されていなくてはなりません。また、選択は一回限りではなく、やり直しのきくものでなくてはなりません。そのためにはセーフティーネットも必要でしょう。それは、努力すれば報われる社会であり、再チャレンジの可能な社会でなくてはなりません。  このような社会については、これまでも幾つもの提案があります。いわく、生涯学習社会であり、生涯能力開発であり、生涯現役社会であることは既に申し上げたとおりであります。こういったものをもう一度見直し、二十一世紀の社会のあるべき姿、生涯能力発揮社会をどのように構築していくか、この点を今後さらに総合的に検討していく必要性を指摘して、私の意見の開陳を終わります。
  36. 山本保

    ○山本保君 私は、きょうは各論ということではなくて、これはこれからいろいろまた話し合っていくということから、理念について三点ほど申し上げたいと思っております。  一つは、少子社会において子育てというものはどういう考え方で進めるべきかということでありまして、二番目は、もう少し大きな子供さんといいますか、いわゆる大人に行くところの人的な発達保障という問題であり、三番目は、それを通じた全体の政策論はどうあるべきかということなんです。  まず最初に、子育ての理念なんですが、今お手元に少子社会における子育て支援に関する基本法という法案を資料として参考のために配らせていただきました。これは二年前、私が中心になりまして、実は非常に短期間で、私自身がこういう仕事をしてきましたので、そのまとめの意味も込めて法案として出した方がいいんじゃないかという当時の先輩の勧めもありまして、国会最終盤のところで急遽出したというものでありまして、ほとんど、もちろんほかの党派の方にはまずお目に触れていないと思いますし、また議論されていなかったと思います。非常に簡単な法案でありますけれども、ここに子育ての基本の理念を少し書いてございますので、少しそれを紹介させていただこうかと思います。  ちょうど今子育てのこういう少子対策についての疑念があり、そこで法案がもうほとんどまとまった、近く出されるのではないかというふうにお聞きしておりまして、先日それを見せていただきましたところ、偶然といいますか、私がきょうお見せしたものとほとんど体裁といいますか章立て等も同じでありまして、もっとより詳細な中身にはなっておりますけれども、私としては何らかの貢献をなしたのかなと思っているものでございます。  そこで、まず第一条のところをちょっと見ていただきますと、ここに書いてある基本といいますのは、最後のところでございまして、「子どもの健やかな発達と社会経済の健全な発展に寄与すること」と、二つの目的を私はきちんと明示すべきだと思っているわけなんです。  一般的にどうしても大人また為政者として見ますと、社会のために子供をどう育てるのかという観点が中心になってきます。これは、制度論またいろんな行政論として考えたときにはそれが中心になることは一面やむを得ないわけでありますけれども、しかし、子供自身がいかに健やかに力を発揮させるかとか、また意義のある人生を送るように応援するのかということが一番欠けてはいけないことだと思いましたので、この二つをはっきりと書いたということであります。  二番目でございますが、次のところに、ではそれを具体的にどうするのかという考え方でございます。  これはもう既に先ほど長峯先生からもお話があったとおりでございまして、つけ加えることはございませんが、言うならば、今まで社会のための子育てというような言い方がよくされるわけでございまして、もちろんそれも大事ですけれども、私は子育てのための社会づくりという観点が重要であるということでございます。ですから、決して子供のない人、実は私もないんですが、プレッシャーをかけるようなことではなくして、楽しく子育てができるような社会制度はどのようにつくったらいいのかということ、目的と方法がちょうど逆転している。どうしても大人、行政としては、社会のために、人類のために、ためにために子供を育てる、こういう人間、こうなるのではなくして、まさに人間のために社会をどうつくるのか、この観点が第一でございます。  第二は、実はこれはまだいろいろ議論がされているところではありますが、皆さん御存じだと思いますが、国連で結ばれ、また日本も批准しております子どもの権利に関する条約の理念でございます。たくさんあるわけですけれども、ここには一番簡単に子供の利益が最大限に尊重されるという言い方をしておきました。これについてはまた時期を改めて一度私の方からも少しお話をさせていただこうと思っておりますけれども、きょうは簡単に条文の数字だけ挙げて、また今後の参考にしていただければと思います。  ここに書いてございます子供の利益、ベストインタレストというのが権利条約の第三条にたしかありまして、大事なことは、ベストインタレスト、子供の最善の利益という言葉は、実は三十年前の子供の国連の憲章にしましても、それから第一次大戦以前のジェノバ条約という最初の子供権利宣言がございますが、そこにも出てまいります。  実は、最善の利益ということのためにもちろん仕事をしているわけでして、そのことだけを取り上げても余り意味がありません。一体何が最善の利益かということでありまして、これが余り論じられておりません。もちろん、日本の場合、教育や裁判などの場合で非常に子供権利がまだ侵害されている例がある、だからそれを回復するべきなんだと。これはそのとおりなんですが、しかしそのことだけ言っていたのでは実は将来目標になりませんし、理念にはならない。  権利条約をよく読んでみますと、実はこういうことが書いてあります。第六条には、子供の最大限の発達が保障されなければならない、英語ではマキシマムのディベロップメントという、そういうマキシマムという言葉が出てまいります。これは今までほとんど使われたことがない言葉でして、例えば憲法でも二十五条でしたか、社会的な権利を書くところには「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と書いてありまして、英文ではミニマムであります。国が保障すべき権利というのは、こういう人間のものにかかわることについてはミニマムという理念が現実の憲法でもありますけれども、この権利条約には初めてマキシマムの発達という概念が出てまいります。ここは非常に重要だと思っております。  それからあと二点言いますと、例えば子供はどういう健康状態を与えられるかというのが二十四条にございまして、そこにはザ・ハイエストの健康、最も高い、そういう健康が子供には与えられる権利があるという言葉が出てまいります。それから二十九条には、子供の能力開発というのはフルエスト、これは日本語としてなかなか訳しにくいんですが、フルエストにその能力が開発される権利があると。  私は、この三点、マキシマムでありハイエストでありフルエストである、いわゆる最大級表現ですけれども、この最大級の子供権利、発達というものが初めて宣言されたのが権利条約である、こういうふうに思っております。またこれについては一度ゆっくりお話をさせていただこうと思っております。それが第一点です。  第二点は、これは円先生からも今少しお話があったことでございます。私ども、この題を理事会で決めますときに、生涯能力発揮社会、こういうちょっと耳なれない言葉にしてございます。これは、先ほども細かく御紹介ありましたように、一般的には能力開発という言葉であったり生涯学習とか生涯教育という言葉で言われていることですが、私どもたしかあのとき皆さんで相談したときに、何かそういう機械的な、また何か一方的にやられるというものではなくて、もっと自主的、自発的に人生を豊かにするような言葉はないだろうかということから、ちょっとまだこなれてはいませんけれども、生涯能力発揮社会という言葉を造語したわけでございます。私どもは、この辺のところを今後進める場合にも重視すべきだということを申し上げます。  三番目には、今のまとめにございますけれども、これも先ほど長峯先生から政策論が少し出てまいりまして、今、例えばメガコンペティションですか、大競争の時代であるとか、また金融とか日本の行政制度とかいろんなことが確かに課題になっていますが、考えてみますと、日本の人口、子供の数が減ってきたということこそが今行わなければならない一番の与件といいますか条件、避けることのできない条件ではないかと私は思っているわけなんです。  ですから、例えば特に人材形成といいますか、人的能力の形成という供給面だけについて言えば、これまでの教育制度というものは、子供が次々と、若い能力のある人間が次の世代次の世代とたくさんふえてくるんだということを前提としているがゆえに、あのような機械的な学校教育制度でどんどんと生涯の早期のとき、早いうちにもう決めてしまって、その後社会の各具体的な分野で分けるなんというそういういろんなことがまつわって面倒くさくて大変なことは避けてしまって、全部大学、学歴でやってしまえなんということが行われているというのは、まず私は子供がどんどんふえてくるということを前提としていると思っておりますし、また労働の雇用状況なんかにしましても、そういうことで会社は伸びていくし経済は進んでいくし人間はふえていくと。まさに今これを変えなければならない時代になってきている。  橋本総理大臣はいろんな改革を言われましたけれども、私はその一番根本は少子社会ということをもっと国民に、長峯先生とこの辺は同じなんです、もっと一番強く言うべきであった。それをもとにして我々は政策をつくっていく必要があるんではないかなというふうに思っております。  以上、三点でございます。
  37. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 日本共産党を代表して、意見表明をいたします。  人口問題審議会では、今の出生率が続くと日本の総人口は二〇五〇年には一億人、二一〇〇年には現在の約半分まで減少していくと報告されています。このような急激な少子化は世界に例がありません。子供を産むかどうか、何人子供を産むかというのは個人の権利に属する問題ですが、日本の社会全体として異常かつ急激に子供の数が減るというのは重大な問題です。  その解決のためには、やはり子供を産み育てやすい社会、特に女性が働いていても安心して子供を産み育てていける、そういう社会をつくっていくことに私たちは本気で力を入れていく必要があると思います。  日本の女子労働力率を年齢別に見た場合、二十代後半から三十代にかけて率が下がっていき、三十歳から四十歳の層が谷になっている、いわゆるM字カーブを描いているわけですが、これは女性にとって出産・育児と労働、就労の両立が困難であることを示しています。他の先進諸国には見られない日本の特徴であると言えます。  OECDやILOの統計を見ると、かつて七〇年代にはイギリスで、六〇年代にはスウェーデンでもM字カーブが見られ、アメリカやカナダでも同様の現象はありましたが、これらの国では女性の就業を進める施策で既にM字はなくなり、出生率も日本より高くなっております。ところが日本では、これが九〇年代の終わりになってもまだ克服できておりません。先進国でM字が残っているのは日本だけということで、女性が働くことと子供を産み育てることの両立を困難にしている状況をいまだに残していることに問題があると思います。ここにメスを入れない限り少子化を克服することはできないのではないでしょうか。  また、人口の減少とともに労働力人口も減っていきますが、これを克服するためにも、女性の労働力率を上げることと子供を安心して産み育てられること、この二つが同時に進む社会に変えていかなくてはなりません。  この基本的な考えに立って、日本共産党の意見を述べていきたいと思います。  日本では、長時間・過密労働に加え、一方的な配転、不規則勤務、夜間労働の常態化、単身赴任など、こういった家庭生活を犠牲にすることを当然とする労働就業形態が広げられております。子供を産み育てるという当たり前の生活の一番の障害となっている。日本の労働条件は、国際比較で見ても異常な状況です。統計上、数字で出てこないサービス残業さえございます。世界でも異常な日本の労働のあり方を、女性はもちろん、男性も改善していかなければ少子化は解決できません。男女とも労働時間の短縮を、当たり前の八時間労働を、これが少子化対策の上でも求められていると思います。  一方、雇用の流動化、規制緩和といって終身雇用制や年功序列を障害とする論がありますが、イギリスやスウェーデンが、終身雇用制をなくして女性の労働力を上げてM字を解消したのかといえば、そうではありません。安定した雇用、育休が終わってももとの職場に戻れる制度、つまり、働きながら安心して子供を産み育てられる制度を進めてきた結果です。  ところが、日本のやり方を見てみますと、この調査会でも就業女性は困難を抱えたもとで出産しているという報告がありましたが、ことしの四月から女子保護規定が撤廃され、ますます安心して子供を産み育てる環境からは遠くなっています。また、雇用のミスマッチをなくすためといって派遣労働が拡大されようとしていますが、これでは劣悪な労働条件と不安定な雇用のもとで子供を産み育てる条件と意欲はますます失われていくばかりです。  世界の統計を見ると、女性の就業率が高い国ほど少子化の傾向が少なく、男女の賃金格差が小さい国ほど子供が多いと言われています。育児休暇制度を初め、両親の仕事と育児が両立するよう社会的な支援を充実させることが各国で真剣に論じられているのもそのためです。  少子化というのは、今の日本の社会のゆがみ、病理がそのままあらわれている現象と言えます。第一には労働問題。男女ともに家庭的責任を果たし、人間らしい生活を送ることができるようにしていくことが大切です。そして、教育の問題、医療費や住宅といった経済問題、環境問題など、子供を産み育てることに大きな障害となっている問題を一つ一つ取り除いていくことが求められています。  安心して子供を産み育てられるように子育て支援の政策を思い切って進める必要があります。  先ごろ厚生省が発表した全国子育てマップでは、全国で四万人もの保育所の入所待ちがあることが明らかになりました。とりわけ要望の多いゼロ歳から二歳までの待機児童二万六千人を直ちに解消すること、学童保育への公的補助を充実させること、妊娠、出産、不妊治療などにかかる費用の軽減、乳幼児医療費助成を国の制度として創設する、また、今の自治体独自の制度のもとでも所得制限の撤廃や対象年齢を拡大する、育児手当の拡充など育児にかかる親の費用を軽減する、教育費用の負担軽減、非婚化、晩婚化の原因にもなっている住宅問題の解消、安くて快適な住宅の大量供給など、この調査会の中でも述べてきたことを含めたこれらの対策は、以前から国民の皆さんの要求が強いものであり、少子化を克服するという観点からも一日も早い導入が待たれているものだと思います。  次に、子供の健全育成について申し上げます。  二十一世紀に向かって日本社会の未来ある発展と存続を考えるならば、子供の健全な成長の条件をつくることはその基本的課題の一つです。  一つは、子供の成長と発達を中心に置いた学校教育の抜本的な改革です。受験のための詰め込み教育ではなく、自然と社会の仕組みを考えさせる本当の意味の知育、社会を構成する人間にふさわしい市民道徳を身につける徳育、基礎的な体力の増強とスポーツ精神を体得させる体育、そういうものを中心に据えることが今求められています。  そして、子供の自主性を尊重した学校運営、施設の整備や学校給食の充実、養護教諭の複数配置や、カウンセラーを初め教職員をふやし、三十人あるいは二十五人などの少人数学級の実現を目指すことなどは不可欠の課題だと思います。  こうした点で、今お話もありました子どもの権利条約を進めることは大切だと思います。国連の子どもの権利に関する委員会も、日本政府に対して、子供が高度に競争的な教育制度のストレスにさらされていること、及びその結果として余暇、運動、休息の時間が欠如していることにより発達障害にさらされていることについて懸念する、さらに登校拒否の事例がかなりの数に上ることを懸念する、過度のストレス及び登校拒否を予防し、これと闘うために適切な措置をとるよう勧告しております。  また、テレビや雑誌などの文化面で社会の自己規律を確立することも必要です。当調査会でも暴力とメディアの関係については多くの意見が出たところです。  最後に、将来世代の負担ということで一言意見を申し上げます。  十五歳から六十四歳を生産年齢として、六十五歳以上の人口との比較で、今は四・四人で一人を支えているが、二〇二五年には二・一七人で一人を支えることになると言われていますが、これについては異論を述べておきたいと思います。総人口における労働人口を見ると、現在も二〇二五年も一人が一人を支えることに変わりはありません。ですから、人口構成が変わることを理由にした税制変更、特に間接税を高くしようという論は成り立たないと言えるのではないでしょうか。  以上を申し上げまして、私の意見表明を終わります。
  38. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 社会民主党・護憲連合の日下部禧代子でございます。  二十一世紀に向けて、今、時代は大きく変わろうとしております。平均寿命の伸び、出生率の低下という人口構造の変化は、私たちの生き方についても変容を迫っております。子育て後、定年後の人生はもはや余生とは呼べないほど長くなり、むしろもろもろの義務や強制から解放された一生で最も主体的に生きられる時期だと言うこともできます。それは同時に、肩書とか学歴、社会的地位に依存しないで、個人としての魅力や人間的な豊かさが問われることでもあります。男性女性がともに自立した生き方が求められているということでもございます。  人生八十年時代を主体的に生きるには、個人の人生観、生き方を変えるだけでは不可能であり、それを支える、それを実現するための社会のシステムが変わらなければなりません。また、新しい社会の仕組みができるためには、社会の価値観が改められる必要がございます。  日本は、現在、世界で最も平均寿命の長い国でございます。しかしながら、少子化、高齢社会の到来は、多くの国民にとって、将来への希望、コンフィデンス、確信をもたらすものではなく、その逆に、暗いイメージと不安を増大させる要因となっているのが現状であります。長生きすることは、病気や寝たきりになることへの不安につながり、男女ともに余暇を楽しむには、職場と家庭、地域社会におけるバランスのとれた生活時間や生活空間を望むことは難しいのであります。性別による役割分業からも脱却したとは言いがたいのであります。  子供を安心して産み育てるための環境整備も不十分でございます。前回、子育て施策に対しての具体的な提案につきまして述べましたので、今回は割愛させていただきます。  一方、子供たちの置かれている状況につきましても、明るい面より問題がますます複雑化していく、問題がますます強まる傾向にございます。家庭における幼児虐待、学校ではいじめ、校内暴力、不登校、高校中退者の増加、学級崩壊等の病理現象が増加しております。  かつて学校は、学問、知識、文化の発信の場として、あるいはまた教師、友達との交流を通した人間形成の場として、感動と魅力にあふれた存在だったはずであります。しかし、皮肉なことに、一九七〇年代の半ば、高校進学率が九〇%を超えたころから、言葉をかえますと日本の近代化とともに進んできた学校教育の量的拡大がピークに達したころから子供たちの学校教育への不満が爆発し、子供たちの学校からの逃走が始まったのであります。  生活水準の上昇、都市化、情報化、消費社会の進展による生活様式、価値観の多様化といわゆる学校化との矛盾がさまざまな学校病理を生み出しているのであります。これは日本だけではなく、先進工業国に共通する深刻な問題であります。アメリカのクリントン大統領、イギリスのブレア首相が教育改革を重要な政治課題のトップに位置づけていることもそのことを示しているのであります。  アメリカのコロラド州の高校で銃の乱射事件がございました。その直後、私はワシントンにおりました。死者が十五人、負傷者は二十人を超えるという事件でございました。アメリカのテレビは毎日この事件を報道しておりました。今、アメリカは非常に好景気であります。大人の犯罪は少なくなっていると言われています。ところが一方、教育の現場では高校生の銃の乱射事件、昨年五月にはオレゴン州でも起きております。  クリントン大統領は、私がワシントンにおりますときでございますが、けん銃所持の年齢制限を十八才から二十一才に引き上げるという銃規制法案を発表しております。  一体何が問題なのかわからない、そこが問題なのだ、人間は月に行くこともできるようになった、しかしながら一番肝心である人間の価値を子供たちに教えることができていないのだ、そういう深刻な言葉を多くのアメリカの知識人あるいは一般の方々から聞いたことでございました。  テレビやインターネットを通じまして、自分の部屋にいながらにして世界じゅうの情報をたちどころに手に入れることができるという今日、学校あるいは授業で子供たちの知的興奮を満足させるということは容易なことではございません。価値観がこれだけ多様化し、急速に社会構造が変化する中で、学校の役割は相対的に低下しつつあることは否定できない事実であります。  このような現状の中で、二十一世紀に求められる学校像とはどういうものか。それは、時代の変化に対応できる、時代を先取りできる学校であります。学校の閉鎖性を打破し、地域社会に開かれた、地域社会とともに生きる学校であることが今問われているのであります。一言で言うなれば、教育行政の地方分権化であります。中央集権による均質で画一的な人材養成を必要とする大量生産、大量消費の時代は終わったのであります。  イギリスの初等中等教育の現場においては、コミュニティーサービスと呼ばれる時間が設けられております。自分の住むコミュニティーの一員であるという自覚と責任感、連帯感をはぐくむと同時に、お年寄りや障害を持った人あるいはまた異なった民族の人々などとの接触を通して、立場の違う人、異文化に対する理解を深めていこうという目的であります。子供たちのコミュニティーサービスを効果的に行うためには、地域のさまざまな人々、さまざまな団体の協力、参加が当然必要となってまいります。学校が子供たちを通してコミュニティーの人々のきずなを結んでいく重要な核となっているわけであります。  イギリスの初等中等学校には、校長、教員、地方教育局の職員のほかに、保護者や地域のメンバーから構成される学校理事会というものがございます。人件費を含む予算の運用権、人事権も与えられているわけであります。このような学校理事会というものが存在して初めてコミュニティーサービスと呼ばれる地域住民参加のカリキュラムが実践できるのであります。  初等中等教育にとどまらず、二十一世紀に向けて、高等教育も大きな転換のときを迎えております。今後も大学の進学率は上昇いたしますが、少子化の進行に伴って、文部省の試算によりますと、平成二十一年には進学率が五八・八%、大学進学志望者に対する収容力は一〇〇%になると言われております。大学が若い人たちだけの教育の場ではなくなる時代が日本にも訪れるのであります。  日本よりも早い時期から人口の高齢化が進んだスウェーデンにおきましては、既に一九七〇年代の初めから高等教育のアダルティフィケーション、日本語に訳しますと成人化が政策として取り入れられております。リカレント教育という言葉でも言われております。例えば二十五歳以上の人で最低四年間労働経験、これは家事労働でも結構でございます、の経験を持つ人を積極的に入学させようという政策がその一つであります。機会の平等と社会的な公正と公平を実現するための社会政策であると同時に、また時代に対応できる、時代を先取りできる人材養成のための労働政策でもあり、また経済政策でもあります。  平均寿命が延び人生が長くなったというだけではなく、目まぐるしいスピードで日進月歩するハイテクの時代、若いころに習得した知識や技術だけでは到底間に合うわけはございません。スウェーデンに限らず、アメリカ、イギリスなど先進工業国においては、大学や大学院の学生の平均年齢は日本に比べてはるかに高いのであります。さまざまな職業経験を持った人々が学生であることは、教育現場を活性化させ、より刺激的にする効果がございます。それは、学生にとっても教員にとっても社会にとってもまた重要なことではないかというふうに思うわけであります。  初等中等教育における学校が開かれた学校であると同様に、高等教育においてもまた開かれた大学、大学院であることが今後ますます要求されると思うのであります。大学が若い人だけのものでなくなるということは、入学試験のあり方も変化するでありましょうし、当然企業のあり方も変わらざるを得ないのであります。  二十一世紀に向けて政治に求められているのは、いかにしてやり直しのできる人生を可能にするのか、敗者復活のシステムをいかにしてつくるかということではないかと思います。高等教育を受ける機会、就職の機会、また結婚の機会も含めて、適齢期は一度ではない人生をだれにとっても可能にするための条件整備、そのビジョンと政策を示すことは、将来の生活に対する国民の希望、確信を取り戻す、そしてまた同時に、バブル崩壊後の長い不況から我が国が抜け出す力強いインセンティブとなり得ると思うのであります。  さきに本調査会で議員立法いたしました高齢社会対策基本法、そして本調査会報告書に盛られました提言が、真に豊かな二十一世紀の日本社会の創造を約束するものとなることを期待いたしまして、私の意見表明といたします。  ありがとうございました。
  39. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田清でございます。  今まで六回にわたります調査を振り返って、私の意見並びに自由党としての取り組みについて述べたいと存じます。  調査の内容を顧みますと、人々の社会創造に不可欠な次世代育成というテーマを取り上げてまいりましたが、課題としては少子化現象をいかにして克服するかという問題が一番にクローズアップされるところであります。  言うまでもなく、少子化現象は、女性が生涯に産む子供の数が少なくなったことであり、合計特殊出生率が平成九年で一・三九にまで低下しているという事態にあらわれております。しかし一方で、詳細に見ますと、結婚された女性は二人を超えるお子さんを産んでおります。つまり、少子化現象は未婚化、晩婚化に要因があります。特に未婚の方の増加こそが問題であり、それは婚期を迎えた方々の結婚、出産、育児や生活への不安を親の世代が十分把握し、対策を立てなかった点に見出せるかと思います。  育児の不安については、男性女性に任せたままという状況が報道され、欧米との相違が指摘されております。一方で、世代社会の変化については、戦後を三期に分け、産業社会や住環境、さらに居住世代の変転に絡ませ、興味深い分析が参考人よりなされたことに深い関心を抱いております。  これは、人々の生活ペースが、年中行事中心のゆったりした村の生活に包まれてきたものが、サラリーマン世帯の増加とともに子供たちが月決めの給料に合わせた小遣いをもらうようになり、サイクルが月単位となり、さらにテレビが出現し、習い事をし始め、手帳を備えて週単位の生活を行うようになったという分析です。また、教師の生きがいも変わって、学校の悪い側面も病理的に深刻になっているというものであります。  私は、子供には子供の社会があり、大人の社会の影響を受けながらも独自に世代社会をつくるということは認められるべきだと思います。  参考人の三期に分けられた変化も、個別に見れば、徐々に縦のつながりが薄れて横のつながりばかりになり、肝心の世代間のきずなが弱まっているのではないかと思います。そのことの方が問題にすべきであると考えます。本来、親から子へと伝えられるべきものがそれがために失われているという事実に目を向けるべきだということであります。  参考人がおっしゃるように、生きるテーマを語れず、また生きる方向性についても社会が語らない。そういう状況に少年少女を置いたままでいることがよいこととは思えません。といって、ともすればこうした課題については、学校や公の教育により解決するという議論に流されがちです。しかし、事の本質は間違いなく学校以前に家庭や地域社会の問題であることに思いを至らせるべきであると考えます。親が親らしく、父があるいは母が父親あるいは母親らしく成長していく生涯教育の場が家庭や社会に失われていることに問題があり、遠回りであってもさまざまな政策により包み込むような政策展開こそが望まれることであると思います。  また、参考人お話は都市部での変化に着目したものですが、農村部でも同様に青年学級の消失などが見てとれます。伝えられるべき文化が失われていくことにこそ、私は、次の世代が社会をつくる際の弱さにつながるのではないかと考えます。  少子化の問題については、我が党は、政府・与党として、他党とも協力して、議員立法により少子化社会に的確に対処するための基本理念や、国、地方公共団体の責任において広範な協力体制をしく法律を提出することとし、政府においても今月中に関係閣僚会議が発足することになっております。  また、具体的施策としては、自由、自民、公明の三党で緊急少子化対策の基本方針を取りまとめ、保育所待機の解消、駅前保育所の設置など保育環境の確保、保育ステーションの設置、公共施設子供のスペースの整備などの既存設備の内容の充実、さらに硬直的に運用された分野での規制緩和を進めるといった内容となっております。  こうした政策に盛られました自由党の問題意識は、私の意見と根を同じところに持つものであります。もちろん、設備の充実だけを訴えるにとどまるものではありません。まず、教育の問題については、我が国のよき伝統を教育の現場で明確に伝えることができるよう教育基本法の改定などを最優先に訴えております。  私は、農業政策においても、この考えに基づき、農村文化の継承法を訴え、あるいは都市部と農村の交流の活発化を促進することを主張しております。失われつつある自然の循環サイクルにどのように生活を合わせ、ともに喜怒を表現してきたか、各地の祭りや伝統芸能にはそうした芽吹きがあらわれております。大人の社会の改善が子供によい影響を与えることはもとよりのことであります。  少子化対策については、家族のきずなを大切にし、流動化する雇用の安定感をいかに保つか、家庭と仕事が両立できる職場環境づくり、あるいは居住環境の整備といった課題に取り組むことが、ともすれば閉塞感の漂う現状を打開していくことに大いに役立つと考えております。  なお、さきに述べました少子化対策基本法の制定も昨年の参議院選の公約の実現の一端でもあります。  長期にわたる調査がまとめられるまでにはまだ時間を要し、私の勉強の至らないところも痛感いたしますが、一年の区切りを大切にし、今後の会議に臨む決意を述べさせていただき、私と自由党の意見といたします。  終わります。
  40. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 昭和五十九年でしたか、国民生活経済調査会、この高齢化問題を二、三年検討するという会にずっと私も加わっておりまして、十四、五年たって少子化問題のこの調査会の中で、六回にわたりましてそれぞれ参考人先生方のお話を聞くことができ、また、先ほど来先行議員の方からそれぞれの党のお考えも伺うことができました。  考えてみますると、高齢社会と少子化社会というものは、これは同じものであろうというふうに思うわけであります。急速に人口が減少してきているということでありますが、参考人お話を聞きますと、例えば、ローマは百万人いた人口が二、三百年で三万人になったと。これは異常な現象ですよね。我が国の場合は、参考人お話ですと、関ケ原のころがちょうど千二百万人、それから徳川吉宗のころが三千万人、明治維新のときが三千五百万人、そして今が一億二千六百万人。ちょうど私の子供のころでよく覚えているんですけれども、大陸に出ていかれる皆さん方の話を聞いていると、中国には四億の民がいる。それが今、十三億という形になってきておるわけです。そういう歴史をいろいろひもといてみると、参考人の御意見を伺うまでもなく、経済の発展期には人口はふえる。それから、停滞期そして衰退期には人口が停滞し、また減少していく。これは歴史が示す現実であろうというふうに思うわけであります。  戦後五十年たって、さまざまな問題のうみが出るように、政治、経済、社会、いろんな病理現象が出てきている。そういう状況を考えてみると、それでは今まで五十年間やってきたことと逆のことをやればいいのかという議論にもなりかねないわけでありますが、ことし正月にたまたま人から薦められて「國破れてマッカーサー」という本を読みましたし、ヘレン・ミアーズさんの「アメリカの鏡・日本」という本も読ませていただいて、やっぱり戦後というのはこういうものだったのかなと。いわゆるマッカーサーの占領下における日本国憲法あるいは教育勅語の廃止、そういうものから戦後がスタートしていろんな問題が出てきている。それをどうするかといったって、今さら非常に難しい状況になってきておるわけです。  今、ガイドラインを審議していただいておるわけですけれども、日本が有事のときにどうするかという法整備すらされていない段階でアメリカとの共同作戦はどうするかという、非常に木を見て森を見ずというような議論をせざるを得ない状況でずっと戦後が流れてきている。それをどうするかということがはっきりしないまま経済的にも非常に難しいところへ来て、経済構造も変革しなきゃいかぬという状況の中にある。  そして、教育の基本というのは、人のために役に立つ人でなきゃならぬというのが教育の基本であるはずだけれども、ずっと自分さえよければいいという教育を戦後せざるを得なかった。その中でボランティア団体がいろいろな努力をしてきたけれども、それが十分に実り得ない状況、そういう中にこういう人口の減少という残念な事態が出てきている。  厚生省の人口予測が当たったためしは余りありませんし、それを期待するしかないんですけれども、百年たつと六千万から八千万になるだろう、千年たつと、お互いにこの世にはいないと思いますけれども、ゼロか百五十人かという状況になってきている。これをどうするかということだというふうに思うわけであります。  そういう状況をいろいろ考えてみると、今回私は非常にショックを受けたのが二つあるんですが、一つは、やっぱり女性に頑張ってもらわなきゃこれはどうにもならないわけです。この十年間で二十五歳から三十四歳までの女性の未婚率が二八%が四八%になった、倍になったということが非常に大きなショック。もう一つは、山田先生でしたか、パラサイト・シングルという言葉が出てまいりました。ぬくぬくとして家庭から出たがらない、そういう男女が実は適齢期で一千万人いる。これをどうするかということで、私は不用意に独身税ということを申し上げたら怒られまして、両親同居税とかそういう形をとるべきじゃないかという御指摘を参考人からいただいたわけでありますが、この二つが大変なショックでありました。  先行の各政党からおっしゃいましたように、男女雇用機会均等法の中で、女子が子供を産みそして育てる、職場復帰も非常に簡単にできるし、そして子供をきちっと保育所に預けられる仕組みというものをサポートしていくということが非常に大事ですけれども、まず、日本全体を見渡したときに、若い世代の人たちが、どういう日本を担っていくんだろうか、その先が見えない、どういう国になるんだろうかという不安感。  今度の問題でも、ちょうどタイミング悪く、私ども議長のお供をして中国へ参りましたら、李鵬前首相から、私が参議院議長だったら三重野さんや吉川さんの姿勢をとるんだというような話が出たようでありますが、結局、どういう国づくりを、国を守るのは一体どういうシステムでいくのか、あるいは自分たちが高齢になったときにどういう年金制度になっておるのか、そういうものがさっぱり見えない。既にもう六百兆からの国、地方を通じての借金だらけでありますから、そういう非常に見えない状況になってきている。  公務員を目指していた連中も、省庁一括法が出てくる、省庁の統廃合の問題、それから地方分権推進一括法という形になってくると、どうしようかというような話になってきている。  世紀末から新世紀にかけてすべてが非常に見えない状況になってきている。そういう点についてもっと政治がリーダーシップをとって、こういう日本の社会をつくるんだということを見せる。各党が議論した中で、そういうことが一つ大事だろうと思う。  同時に、教育の基本的なあり方。先ほど申し上げた、人のために役に立つ存在にならなきゃいかぬ、人間にならなきゃいかぬということを徹底してやるためには、ガールスカウトとかボーイスカウトとか緑の少年団とか、そういうものに積極的に参加できる仕組みを子供たちにもつくる。私もびっくりしたんですが、子供たちが学校に行って友達ができない、どうやったら友達ができるだろうか、どういうことをしたら楽しいだろうかということすらわからない状況になってきている。そういう迷路に我が国が入り込んでいるということを、今回の少子化問題を研究する中で、各参考人の御意見を伺う中で非常に感じました。  それだけに、少子化対策の基本法というものをきちっとつくり、同時に、今までエンゼルプランであるとかあるいは子どもセンターとか各省庁ばらばらにいろんなことをやってきているけれども、その情報が的確にそれぞれの市町村、地方に伝わることをやらなきゃいかぬという思いがいたします。  同時に、今、地方が非常に元気がなくなってきている。地方分権一括法が出たってなかなかうまくいきません。だから、労働力も不足しているわけですから、農耕型社会に日本を戻す。都市は都市政策をやりながら、農村も若者たちにとって魅力ある、子供や孫が継がなくてもよそから新しい労働力ができるような、そういう地域社会づくりといいましょうか、農耕型民族の精神を復活して元気を出していくということが日本のこれから残された道であろうというふうに思いますし、そういう方向に向けて我々も勉強し、ささやかでありますが参議院の会も努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。  以上です。
  41. 久保亘

    会長久保亘君) 以上で各会派の意見表明は終わりました。  これより委員相互間の意見交換を行います。  おおむね一時間程度といたしたいと思いますが、御発言のある方は、挙手の上、私の指名を待って発言されますようお願いいたします。  それでは、御意見のある方は挙手をお願いいたします。
  42. 日出英輔

    ○日出英輔君 昨年七月に当選しまして、この調査会に置かせていただいております自民党の日出でございます。  私は、実はこの調査会を積極的に選んできたわけでございます。といいますのは、少子化の問題を勉強するというふうなことを聞いたからでございます。会長や理事の方々がいろいろ御工夫をされて、私どもが通常伺ったことのないかなり幅広いお話も伺えたということで、個人的にも大変な収穫があったように思うわけでございます。  きょう、この中間報告書骨子案を見せていただいたわけでございますが、ただ私は、この六回のいろんな参考人の方々の全体的なお話を伺ったときに、少子化について、一体どうしてこういう少子化が起きているのかという議論が何か非常に型どおりの一般論であったような気も若干いたしております。  あるいは、ヨーロッパの例をすぐとりますが、私の記憶では、たしかドイツやイタリア、スペインなんかは日本よりも出生率が低かったような記憶、これは間違っていたら訂正をしていただきたいのでありますが、そういったところで一体その社会がどういう形で動いているのかといった議論も、実は私も一回欠席しておりましたのであるいはそういう議論もあったのかもしれませんが、何か世界全体と特殊な日本の状況みたいな対比したような形の少子化要因についての議論が少し狭かったのではないかという率直な印象がございます。ちょっと言葉が過ぎておりましたら御容赦いただきたいと思っております。  そこで、少子化の場合にも、都市における少子化あるいは地方における少子化、あるいは職業別あるいはいろんな要因によってこの少子化、あるいは出生率の数字そのものと言ってもいいかもしれませんが、大分違っております。したがって、日本の平均の一・三九という出生率だけで議論するというのは非常に画一的な、一律的な議論をすることになるのではないかということでございます。  そういう意味で、言いっ放しで恐縮でございますが、これから報告書をおまとめになりますときの少子化要因なり対応のところにつきましては、なるべく画一的ではなくて、やはりこういった違いがあるということを前提にした記述でないとなかなか世の中に訴え切れないのではないかという印象を持ちます。  二つ目は、少子化が今進んでおりますから、これも一部是認をしなきゃいけないという面もあろうかと思います。そういう意味で、この次世代の健全育成と生涯能力発揮社会形成といったテーマは、ちょっとあけすけに申し上げれば、少子化というものをある意味で是認した上でどうするかというふうにも聞こえるわけでありますが、それはそれで大変大事なテーマだとは思いますけれども、今国レベルで議論をしなければいけないのは、少子化を前提にしたいろんな整理というよりは、やはり少子化要因をぎりぎりと詰めて、これに対して一体どういうふうに対応するのかというようなことを詰めるところの方に重点を置くべきではないかという個人的な感じがいたします。  先ほど自由党の阿曽田先生から、今の少子化の話で未婚化とか晩婚化ということを挙げられましたが、確かに労働問題とかいろいろありますけれども、基本的にはこういった未婚化とか晩婚化の進行というのが一つの若い男女の物の考え方の中にあって、これを変えていくのが、経済状態が悪いからこういうことが進んでいるのではない、別なファクターで進んでいるような感じがいたしますので、なかなかこれに対する対応というのは難しいだろうと思いますけれども、ここにこれから先の我が国の二十一世紀の活力ある社会ができるかどうかというところの大きなかぎがあるのではないかというふうに思っております。そういう意味で、この第三章、第四章の取りまとめというのはどういう形でなさるのかわかりませんが、ぜひとも積極的に少子化というものについて何とかしていかなきゃいけない。  これは山本先生がおっしゃったような子育てのための社会づくりという意味ではなくて、社会は地域でもあるし家庭でもあるし国でもあるわけでありますが、子供がだんだん少なくなり一つの民族が千年たったら消えていくというのは、いかにも病気としては非常に重病でありまして、これは大いに検討した上で対応策を詰めなきゃいけない問題だろうと思っております。  そういう意味で、お取りまとめをされる理事や会長の御苦労は何となく大変なテーマであるということでよくわかるのでございますが、やはり今の時点で調査会でこういうことを取りまとめるときには、少子化を是認した形で、さあどうするかというところが余り出過ぎると、私は今の時期における議論の整理とすると少しずれているのではないかということを国民が受け取るような感じがいたしておりますので、ちょっと言葉に不穏当なことがありましたらお許しをいただきたいのでありますけれども、とりあえず個人的な意見を述べさせていただきました。  ありがとうございました。
  43. 西山登紀子

    西山登紀子君 一時間ぐらいのディスカッションでうまくまとめを全体としてどういうふうにつくっていくのかなという気はするんですけれども、各党いろいろな意見表明がありましたし、一致する点もあれば、少しニュアンスが違うという点もあるかと思います。  私も六回ほど参加をいたしまして、テーマとしても非常に関心の高いテーマでございますし、積極的な意見も申し上げてまいりました。資料の提出も幾つか求めてまいったんですけれども、中にまだ出ていない資料もあるんです。そういう問題、資料の提出はひとつどうするのか。  例えば、女性の深夜労働と母性保護との関係がどうかという資料を求めたんですけれども、まだこれはないということで出てきていないので、この四月一日から深夜労働は解禁になったわけですが、大変心配です。そういう意味では、やっていないのであればぜひやっていただきたいし、やってこの調査会に出していただきたいということを私は意見として申し上げたいし、提案もしたいなというふうに思います。  それから、求めて出されてまいりました資料、大変興味深い資料幾つかございました。一つは、働く女性と出生率の関係がどうかということで求めましたら、やはり働いている女性の出生率というのは働いていない女性の出生率よりも非常に低いという事実が資料として出てまいりました。  しかし、一方で当調査会でのいろいろな議論の中で、では女性の労働率が高い国は出生率がうんと低いかというと、世界の国でいえばそうじゃないということ、それから保育所が多い自治体では出生率が高いということもいろんな事実としてここの調査会で出てまいりました。  私は、少子化というのは必然で解決不能の問題だというふうなことではなくて、やはり女性の社会進出と、それから産みたい人が子供を産んでいくという、そういう社会をつくるというのは可能だということが議論の中でも出てきたのじゃないかなというふうに思っております。そういう方向でのまとめがされれば大変ありがたいなと思っています。  もう一つ、生まれてきた命をどうするかという問題で、乳幼児医療の無料化の資料を出していただきましたが、これも非常に全国的な状況がよくわかったんですが、通院の関係でいえば、二つの自治体を除いてすべての自治体で乳幼児医療の無料化がなされている、三歳未満は八割がやっている。こういう状況でございますので、これは国がやらないということはちょっと社会の要請にこたえられていないのじゃないかなということなんで、こういう点もリアルに本調査会での議論をもとにしたまとめをやっていくべきじゃないか。  この調査会といろいろな議員立法、いろんな努力がされている少子化に向けての少子化対策の基本法案との関係をどういうふうに考えていったらいいのかということももう少し詰めなければいけないというふうに思いますけれども、いずれにしても六回精力的にやってきたこの調査会の議論が役に立つような形でやっていかなきゃいけないなというふうに思っています。
  44. 久保亘

    会長久保亘君) 各会派からの御意見もいただきましたし、お二人から御意見がございまして、今伺いましたところ、きょうのところは御意見の開陳の御希望も少ないように思いますので、ただいまお話のありましたこと、各会派の御意見のありましたところを中間報告として取りまとめる上で参考といいますか、反映できるようにいろいろと取りまとめてみたいと考えております。  なお、この中間報告の骨子案につきまして、皆様方の御了承の上、この骨子案に沿いまして中間報告の草案的なものをまとめましたら、またこの会において御意見をいただきたく思っております。  なお、今国会において提出いたします中間報告は、調査会が進めております調査の、それこそ三年間にわたります調査の第一段階の中間報告でございます。そういうことで御了解をいただいて、この骨子案に沿います報告草案を会期中に調査会で御検討いただくことにいたしたい、こう思っております。よろしゅうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 久保亘

    会長久保亘君) 以上で委員相互間の意見交換を終了いたします。  委員各位には貴重な御意見をありがとうございました。本日お述べいただきました御意見は、後日作成いたします中間報告書案に反映させていきたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十二分散会