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1999-04-20 第145回国会 参議院 国土・環境委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十日(火曜日)    午前九時二分開会     ─────────────    委員異動  四月十六日     辞任         補欠選任      鶴保 庸介君     泉  信也君  四月二十日     辞任         補欠選任      岡崎トミ子君     今井  澄君      佐藤 雄平君     内藤 正光君      奥村 展三君     堂本 暁子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松谷蒼一郎君     理 事                 市川 一朗君                 太田 豊秋君                 小川 勝也君                 福本 潤一君                 緒方 靖夫君     委 員                 上野 公成君                 坂野 重信君                 田村 公平君                 長谷川道郎君                 山下 善彦君                 脇  雅史君                 今井  澄君                 北澤 俊美君                 佐藤 雄平君                 内藤 正光君                 弘友 和夫君                 岩佐 恵美君                 大渕 絹子君                 泉  信也君                 堂本 暁子君    国務大臣        建設大臣     関谷 勝嗣君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        地方分権推進委        員会事務局長   保坂 榮次君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        林野庁長官    山本  徹君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省住宅局長  那珂  正君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    参考人        林野庁森林総合        研究所東北支所        保護部長        自然環境保全審        議会臨時委員   三浦 愼悟君        日本獣医畜産大        学獣医畜産学部        獣医学科野生動        物学教室専任講        師        羽山 伸一君        財団法人日本自        然保護協会保護        部長       吉田 正人君        財団法人世界自        然保護基金日本        委員会自然保護        室員       草刈 秀紀君     ─────────────   本日の会議に付した案件 〇鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する  法律案内閣提出) 〇住宅品質確保促進等に関する法律案内閣  提出)     ─────────────
  2. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただいまから国土・環境委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十六日、鶴保庸介君が委員辞任され、その補欠として泉信也君が選任されました。     ─────────────
  3. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、四名の参考人方々から御意見を聴取することといたしております。  参考人は、林野庁森林総合研究所東北支所保護部長自然環境保全審議会臨時委員三浦愼悟君日本獣医畜産大学獣医畜産学部獣医学科野生動物学教室専任講師羽山伸一君、財団法人日本自然保護協会保護部長吉田正人君、財団法人世界自然保護基金日本委員会自然保護室員草刈秀紀君でございます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人方々には忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の会議の進め方について御説明いたします。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人方々意見陳述は着席のままで結構でございます。  それでは、まず三浦愼悟参考人お願いをいたします。三浦参考人
  4. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 林野庁森林総合研究所三浦です。よろしくお願いいたします。座ったまま陳述させていただきます。  今回の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部改定について、私は野生動物管理の視点から、基本的に賛成の立場から意見を述べたいと思います。  現在、周知のとおり各地でシカやイノシシ、猿などの農林業被害が極めて深刻であります。最近の統計によれば、哺乳類による農業被害は八万ヘクタール以上、例えば北海道では約五十億円、林業被害は六千ヘクタール以上に達しています。もちろん、農林業被害面積被害金額などについては、その算定根拠評価法には必ずしも明確なルールが確立されているとは言えませんが、大きな減収と生産意欲を損なう甚大な被害が起きていることは紛れもない事実であります。全国的なアンケート調査によれば、近畿、中国、東海地方では、中山間地域耕作放棄理由一つとして、一〇%以上の世帯が野生動物による被害問題を挙げています。農林業被害は、生産意欲どころか定住意欲さえ奪う深刻な事態に立ち入っていると言わなければなりません。  こうした被害問題を回避するには、防護さく電気さくなどの防除手段を講ずることが重要でありますが、その一方では、増加した個体数を適正な数へと導く個体数管理施策が不可欠であります。なぜなら、防除手段はやはり対症療法にすぎず、その設置にはいわばイタチごっこの宿命が待ち受けているからであります。さく設置によって排除された野生動物はほかの場所へと移動し、そこで新たな被害問題を惹起し続けることになります。  では、延々とさくをつくり続ければよいのでしょうか。それは野生動物生息地を根こそぎ奪うことにつながり、野生動物保全からはかえって逆効果であるばかりでなく、自然生態系国立公園への進出は自然植生の退行や更新の阻害などを招き、生態系保全から新たな問題を引き起こすことにつながります。そして、何よりも、農林業とは本来張りめぐらされるさくの中で展開されるべきものではないのではないでしょうか。  個体数調整に関しては、従来この法律の中でうたわれている有害鳥獣駆除という制度が運用されてきました。しかしながら、この制度の欠陥は、捕獲数にかかわる目標や基準が存在しなかったことにあると考えられます。この結果、個体数調整は、生息密度が極めて低いレベルに達するか被害が解消するまで惰性的に続けられることが多かったと言えます。しかも、駆除根拠となる被害状況把握は主に被害者の申告に頼り、駆除意思決定は往々にして市町村担当者に任されてきたというのが実情でありました。  今回の改定導入される新しい計画制度、すなわち特定鳥獣保護管理計画制度は、加害鳥獣現状生息数把握と誘導すべき個体数密度目標の設定、個体群被害量の継時的モニタリング、そして種の生態被害状況に応じた個体数調整法の適用など、一定科学性計画性枠組みの中で個体数調整を行うことを求めている点で、野生動物管理立場からは極めて妥当であり、大きな改善と評価できます。  また、これまでの市町村ごとのばらばらな対応から、少なくとも都道府県レベルでの広域的で統合的な計画を作成する点でも大きな前進と言えます。同様に、隣接した関係地方公共団体との連携、これは一歩進めて複数団体による共同計画の作成に発展すると考えられますが、これを求め、野生動物管理単位を広域的な地域個体群ごとに設定するよう要請している点でも画期的なことと評価できます。  さらに、この計画制度は、一方では急速に減少したクマ二種など普通種保護繁殖を図るために、生息域保全、確保すべき生息環境配置整備、そのための調査研究を求めていますが、このことは、ほとんど模索に近い保護管理しか行われてこなかったクマなどにとって、ようやく科学の光を当てた保護管理が展開できる端緒になるという意味で大きな飛躍と言えます。クマなどのアンブレラ・スピーシスである高次消費者保護管理は、その生息地の中に生息する他の中・小型野生動物保全に着実につながると言ってもよいと言えます。  ところで、野生動物管理先進国である欧米では、ワイルドライフバイオロジストと呼ばれる研究者専門研究機関や大学に多数配置され、行政連携しながらシカなどの野生動物の分布と生息状況が常にモニタリングされています。これらの調査研究に基づき、生息地管理狩猟管理、必要な場合には個体数調整を含む個体群管理が日常的に展開されています。  現在アメリカでは、主要な国立公園、例えばイエローストーン国立公園では、シカを含むすべてのものに対しナチュラル・レギュレーション・ポリシー、すなわち自然放置政策がとられています。このため、山火事なども放置されていることはつとに有名でありますが、しかしこれは全体から見れば一部にすぎません。これ以外の地域では、連邦政府の方針のもと、各州政府個体群管理政策を採用しています。  この放置政策をそのまま我が国に適用することは現実的ではありません。なぜなら、例えばイエローストーン国立公園面積は約九千平方キロメートルで、これは青森県の面積にほぼ匹敵します。それは別の意味大変羨望対象でありますけれども、つまり放置できる自然の余力を十分に残しているからであります。それでも公園内ではシカ増加によって一部の植生が退行するなどの影響が見られ、この政策見直し論議が現在行われつつあります。  したがって、我が国のような稠密な人口と高度な土地利用の中で野生動物との共存や共生を実現していくためには、常に第一次産業との調整を図ることは避けがたい課題と言えます。その意味で、今回の新たな計画制度創設は、科学的で合理的な野生動物管理の新しい枠組みをつくる第一歩として評価されてよいと考えられます。  次に、この計画制度に当たり、幾つかの点を要望したいと思います。  一つは、何よりもこの計画制度が本当の意味で機能するには、高度な専門性を維持しつつ、施策継続性目標への到達責任使命感の醸成が重要でありますが、このような専門行政官地方行政の中では適正に位置づけられていないことであります。多くの地方行政担当者は任期は通常二、三年で、業務内容把握し、エキスパートになったころには異動してしまいます。これでは得られた知識や経験はむだとなり、高い専門性は確保できないのであります。この点、計画制度を採用する地方自治体には専門職の採用など格段の配慮お願いしたいと思います。  また、これと関連しますが、個体数管理野生動物個体群絶滅エンドポイント、すなわち絶対回避点とする一種のリスク管理であり、そこには常に不確実性や非定常性がつきまとい、計画実施はある程度試行錯誤とならざるを得ないのであります。このため、その実施体制には、結果や実績を常にモニタリングし、必要な情報を収集、分析し、それらを評価し、再度目標を設定し、計画を修正するというフィードバックシステムが存在しなければなりません。私はこのようなシステムを責任ある試行錯誤と呼びたいと思いますが、この点では、今回の計画制度ではモニタリングの配置を求めていることは評価できます。また、計画制度創設に当たり作成される予定と聞くガイドラインの中には、ぜひフィードバックによる評価システム導入を織り込んでいただきたいと思います。  さらに、このフィードバックシステムが真に有効に機能するには、行政官と合議し、意思決定に参画できる野生動物専門研究者配置が不可欠であります。このことも特段の配慮お願いしたいと思います。とりわけ野生動物関連研究は、これまで公的林業試験研究機関が主要な役割を果たしてきており、これらの活用を適正に進めることなどが重要と考えられます。  第二に、個体数調整被害防除施策は車の両輪で、どんなに個体数密度が少なくなっても、絶滅させない限りは被害はある程度発生せざるを得ません。この点では、防護さく電気さく設置など防除整備は引き続き極めて重要な施策であります。その意味で、これまで主に防除事業を進めてきた農林行政部局との連携を維持していくことが重要であります。また、農林業被害が深刻な地域では、個体数調整防除事業の一方で、野生動物が異常にふえるような土地利用森林施業、例えばシカについて言えば、生息地の中で原野の造成や伐採など、これらはえさ量を飛躍的にふやし、個体数増加の引き金になると考えられますが、こうしたことを行うことは控え、自然林の維持や広葉樹施業、長伐期施業に切りかえることが必要と考えられます。この点でも農林部局との施策のすり合わせあるいは連携が極めて重要な課題と言えます。  最後にもう一点、合意形成の問題を取り上げたいと思います。計画制度導入に当たっては、利害関係人による公聴会の開催と法定審議会である自然環境保全審議会への諮問が義務づけられています。野生動物は国民の共有財であるという認識が広く浸透している現在、より広範な人々を対象情報公開意見徴集を行うことが大切だと思われます。  以上の点を強く要望しつつ、私は総じて、一定計画性科学性を担保した新たな野生動物管理枠組みをつくり出す第一歩として、つまり野生動物管理体制をつくり出す制度整備の一環として、この法律改定に賛意を表するものであります。  大変ありがとうございました。
  5. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  次に、羽山伸一参考人お願いをいたします。羽山参考人
  6. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) 御紹介いただきました日本獣医畜産大学羽山でございます。座らせていただきます。  まず、自己紹介をさせていただきたいと思います。  私は、一九八二年から野生動物管理に関する研究に従事してまいりました。最初に取り組みましたのは北海道のゼニガタアザラシという、これは絶滅に瀕した野生動物でして、環境庁レッドデータブックでも危惧種としてリストされておりますが、漁業被害が非常に大きいということで、一九七四年には文化財保護審議会で天然記念物として指定すべしという答申をいただきながら、いまだに二十五年間放置されているという、そういった野生動物ですけれども、その被害の問題に取り組みました。  その後にニホンザル研究に従事しまして、これは農業被害が非常に問題になっておりますけれども、これの個体群管理について研究をいたしまして、これで博士号を取得しております。  それから、その後神奈川県の丹沢山地というところで、これはシカ林業とのあつれきが非常に大きいということで、それからさらには自然植生に対する影響が非常に大きいということで、その問題について取り組んでまいりました。こうした被害の問題についてさまざまなものを見て現在に至っております。  本日は、これまでの経験を踏まえまして、まず野生動物被害問題に対する私の現状認識を御説明して、最後に今回の鳥獣保護法改正案に対する評価を述べさせていただきたいというふうに思います。  そもそもこの法律は、鳥獣保護がうたわれておりますけれども、何しろ古い法律なものですから、保護とは一体どのような状態を指すのかということが書かれてございません。もっとも、広く野生生物保護あるいは自然保護というのがどのような状態を指すのかというのを明らかにするのは現代の学問の非常に大きな課題となっているわけでございます。  最近の世界の潮流を見ますと、御承知のとおり生物多様性保全ということが非常に大事なんだと、これが保護具体的目標になっているということで、我が国でも生物多様性保護条約を批准いたしまして、生物多様性国家戦略というのを出しました。この中で、「生物多様性保全のためには、その地域に本来生息・生育する種が普通に見られる状況を今後とも維持するよう十分な配慮が必要である。」というふうに書かれております。  したがいまして、こうした状況を実現するには野生生物本来の姿を知る必要があるのではないかということで、きょうは今話題のニホンジカについて考えてみたいというふうに思っております。  スライドを見ながら御説明したいと思います。(スライド映写)  この写真は、有名な奈良公園ニホンジカの姿でございます。遠くでごらんになれない方がいらっしゃるかもしれません。この辺にシカがたくさん草をはんでおりますけれども、こういうのを我々現代人が見た場合、シカとは山の生き物だという常識がありますので、これは非常に特殊な光景だというふうに思っております。ここは奈良の市街すぐのところでございますので、例えば東京でいえば明治神宮ですとか新宿御苑シカがたくさんいるという状況と同じなわけですけれども、ただ問題は、記録によりますと、これは特殊な、つい最近のことではございませんで、もう千二百年前からこうしたシカたちはここに居続けているわけです。実はシカという生き物は、我々が今思っているように山の上にいる動物ではなくて、本来平野にいる動物だったということがさまざまな研究からわかっております。  これは地球観測衛星ランドサットがとらえた関東平野写真でございますけれども、この関東平野平野部一帯というのは実はシカの天国であったわけです。正確なことはかつてのことですからわかりませんが、恐らく数万頭あるいは十数万頭というシカが北関東から湘南海岸あたりまでを行ったり来たりしていたんだろうというふうに考えられまして、実際に多摩丘陵一帯では縄文の遺跡でシカの落とし穴がたくさん見つかります。ですから、恐らくここで大移動していたんだろう。  ところが、こうした状況というのはいつなくなったのかといいますと、十八世紀ぐらいまでは東京二十三区内、このあたりシカがたくさんいたという記録がございますので、有害駆除もやっておりました。明治に入ってから急速に乱獲が始まりまして、平野部一帯シカはことごとく絶滅していきます。これはシカだけの問題ではございませんで、多くの動物絶滅していきます。最後に残りました房総丘陵、あるいは丹沢、多摩地域、それから日光、こういったところに閉じ込められてシカたちが生き残っているということになっているわけです。例えば、日光というのは比較的大きな個体群ですけれども、北側は岩手県五葉山まで、ここまでは全くお隣がありませんで、また房総丘陵ではここに閉じ込められていて、こうした遺伝子の交流というのは我々が存在する限りは全くもう再び起こらないだろう。非常にかわいそうな状況になっているわけです。  シカというのは種を存続させるために森林を草原に変えていくというような動物でございます。ですから、例えばこれは丹沢山地標高千メーター以上にあるウラジロモミという希少な植物でありますけれども、この樹皮をかじって木を枯らしていく、そういう状況になって枯れては困りますので、ボランティアの方々がこうしてネットを張って守っているわけです。こうした環境収容力の小さな高山帯にこのような大食漢の大型草食動物を閉じ込めたわけですから、当然のことながら植生が破壊されるというのは起こり得ることで、本来あるべき自然の姿を残すためにはもう一度彼らを山からおろさなければならない、そういうふうに考えまして、現在この丹沢山地では神奈川県によって標高の低い地域シカ生息地を誘導する試みが始まっているところであります。  ただ、今すぐに平地に彼らを戻すということ、我々が土地を明け渡すということは不可能でございますので、一方で自然林の下にはこうした杉、ヒノキの人工林中腹一帯に広がっておるわけです。このスライドのように、放置された人工林というのは非常に今たくさんありまして、下草が全然生えられない、エロージョンを起こしてがけ崩れ寸前状態である、当然シカにとってもえさがない、こういう状況が広がっておるわけです。この現実こそが我々人間がワイルドライフマネジメントを行わなければならない最大の理由となっております。  しかし、管理をする以上、いつかは彼らに本来のすみ場所を明け渡せることを目標にすべきであると考えます。野生動物管理の基本というのは土地利用計画であると考えております。限られた土地野生動物たちとどうシェアするのか、その理念なしに管理をすれば単なる数合わせの殺りくを繰り返すことになりかねないわけです。  その一例を申し上げますと、これは中部地方以西に現在広がっております猿を一網打尽にする捕獲おりです。  これは巨大なおりの中にえさをたくさん置きまして、猿の群れをえづけするわけです。ここである日突然一網打尽で捕獲するんですが、五十頭、百頭の群れですから、そんなに一度にはとれない。ここに丸太が渡してあります。下に金網があって中で仲間たちがおいしいものをたくさん食べている。ですから、当然自分も食べたい。猿がもう少し賢ければいいんですが、ここから伝わって中に飛び込んでしまう。最終的には群れが根こそぎとられてしまいまして、最終的に皆殺しをされるものですから、これは別名地獄おりと呼ばれております。こうしたおりが実は補助金でどんどんつくられまして広がっている状態なんです。  これはそこに立てかけてあったこん棒ですが、ここに血のりがついておりますので何をするのか御想像にお任せします。  ニホンザル狩猟動物ではありません。国際的には絶滅危惧種にリストされておりますし、また環境庁レッドデータブックでもヤクサル東北地域個体群というものは絶滅のおそれがあるというふうにされているわけです。しかし、現実には年間六千頭から一万頭近い猿たちが無計画駆除されているわけです。私たちは、これを中山間地域方々のせいだというふうに申しているわけではございません。こうした凄惨な光景が日常的に見られているということを、むしろ問題なのは被害者と猿という弱いもの同士がいじめ合っている構図、これが解決策を見出せない状況で放置されているということであると考えております。  過去の日本人たちがどうしていたのかということで考えてみました。縄文以来、日本人野生動物というのは戦いの歴史であります。人間世界野生動物たちから守るためにバリアで囲うということはどうも普通に行われていたようです。  実はきょうこの会場にいらっしゃる文化庁の花井先生の論文から引用させていただきましたが、これはかの司馬江漢が現在から百七十年前に静岡県天竜市付近で描いた山村の風景です。これを見ますと、畑がすべてさくで囲われているというのがわかります。それから、ここには見張りの番小屋というのがあります。ここで寝ずの番をして、収穫期鳥やけものを追い払った。この番小屋というのは万葉集にも出てまいりますし、最近では昭和三十年代くらいまでは地域によって使われておりました。恐らくこれは日本全体に広がっていた一つ防除のやり方であったのではないかなというふうに考えられます。  ちょっと暗くて見えにくいかもしれませんが、これは現在長野県で復元された江戸期のしし垣です。大分埋まってしまいましたけれども、ここに本当は深い溝があって、こちらが野生の世界、こちらが人間世界という境界線になっているわけです。こうした状況というのは、当時として好きこのんでやっていたとは到底思いませんけれども、ただ、野生の世界に対するすみ分けの思想というのがどうもあったように私は感じられます。  当時こうした鳥獣被害対策への投資というのが極めて重要でして、記録によりますと村の財政の一割以上をこのようなしし垣の建設あるいは有害駆除の追い払いの人件費などに充てていたということがわかります。翻って、現代我が国の支出されている野生鳥獣の対策予算の額というのは御承知のとおりでございます。  もちろん、もう一度江戸に返れということを言っているわけでは決してございませんで、また現在の中山間地域での高齢化あるいは過疎化の中で同じことをやるということは全く無理な話であります。ただ、こうした先人の知恵とそれから現代科学技術のハイテクというものを組み合わせるような新たな挑戦というのが現実に始まっている地域があるということは事実であります。  これは東京都の檜原村の集落ですけれども、ちょっと見えにくいかもしれませんが、山のへりにすべて電気さくを張りまして、これで集落全体を囲っている。これは昨年つくりました。余談ですが、これは大体一集落数百万の単位の予算でできることなんですが、現在、七兆円を超す国家財政規模の東京都ですら、こうした予算は国の補助金を得なければできないというのが現実でございます。  これは拡大図です。  それから、これは下北半島の脇野沢村、北限の猿で有名なところですが、お金がもっとありますと非常に立派な囲いができて被害が防げるという状況です。  きわめつけがこのフェンスでして、これは日本道路公団が開発いたしました猿よけのフェンスで、一メーター当たり二十万円から三十万円程度かかりますけれども、これは非常に効果絶大であるということで、公共工事にはお勧めである、まさに現代のしし垣と言えるんではないかというふうに思います。  最後に、こうした法改正のきっかけというのは野生鳥獣の被害問題であったと聞いておりますけれども、鳥獣保護法の基本的性格が野生鳥獣被害を軽減するための個体数コントロールであるということから、当然のことと思われます。一方で、現代の一次産業の構造的変化あるいは生物多様性保全という社会的要請にこの鳥獣保護法自体が時代おくれのものになっている、まさに抜本的な改正が求められているということも事実であります。  この改正案に先立った審議会答申というのは、こうした状況を踏まえて、すぐれて現実的で今後のあるべき方向を示している必要な改正点を指摘されたと思います。この改正の策定に当たられた三浦先生初め審議委員方々にはこの場をおかりして敬意を表したいというふうに私は考えております。ところが、この改正案には答申の肝心な部分が触れられていない、反映されていないということで、私としては極めて残念な内容であるというふうに考えております。  私の意見陳述は以上でございます。ありがとうございました。
  7. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  次に、吉田正人参考人お願いをいたします吉田参考人
  8. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 日本自然保護協会の吉田と申します。  当協会はこれまで野生動物保護問題に関して、昭和三十八年の法改正のときにも意見を述べてまいりました。また、昭和五十年代のカモシカ問題の際には、カモシカ保護基金を設置いたしまして、カモシカ食害防除学生隊というボランティアを滋賀県、岐阜県、長野県などの被害地に派遣して食害防除カバーの取りつけを行うなど、農林業に従事する方々とも一緒になって野生動物と人との共存の道を探ってまいりました。また、その後、野生動物委員会設置して、「野生動物保護 二十一世紀への提言」という報告書をまとめ、国の野生動物保護政策に提言してまいりました。  今回の鳥獣保護法改正に関しては、昨年十二月の審議会答申を受けて「「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」改正に関する意見書」を内閣総理大臣、環境庁長官、農林水産大臣にあて提出いたしました。国土・環境委員会調査室資料の百ページ以下にその全文が掲載されておりますので、ごらんください。趣旨は以下のとおりでございます。(OHP映写)  (1)国は生物多様性条約の締約国として、重要な生息地や希少な野生生物だけでなく、国内の全ての野生生物とその生息環境保全する責任がある。したがって鳥獣保護法には、野生動物保護に関する最終的な責任が国にあるということを明文化すべきである。  (2)野生動物保護管理をすすめる地方の体制が整わない状態で、捕獲許可権限を地方自治体に移すべきではない。環境庁は自ら野生動物保護体制を整えるとともに、地方自治体における野生動物保護の基盤作りを援助すべきである。  (3)野生動物保護農林業被害の問題解決を両立させるには、個体数管理を中心とした「科学的・計画的な保護管理」を優先するのではなく、環境行政農林業行政とが連携して生息地保全被害防除に重点を置いた施策を実行すべきである。  さて、今回の鳥獣保護法改正の目的として、農林業被害への対応とそれから地方分権への対応の二つが挙げられます。  農林業被害を防ぐには、先ほど三浦さんのお話にもありましたように、防護さく等の被害防除では不十分であり、科学的知見及び合意形成に基づいた科学的、計画保護管理、ワイルドライフマネジメントが必要だということです。もう一つは、地方分権推進委員会の勧告に従って、国と地方との役割分担を整理する必要があるということで、これには捕獲許可権限の大部分を都道府県や条例をつくった場合には市町村に移譲するという内容が含まれています。  問題は、この政策を同時に実行しようとするところに矛盾が生じるということです。科学的、計画保護管理を進めるためには、国と都道府県が協力して実施体制を整えなくてはならない。一方で、保護管理の主体を都道府県に移し、さらに市町村に移すということになりますと、これは大きな矛盾です。  先ほど三浦さん、羽山さんの参考人意見で、科学的、計画保護管理がいかに大変なものかということは御理解いただけたかと思いますが、問題は、科学的、計画保護管理実施する体制が現段階ではほとんどの都道府県には整っていないということです。  シカに関して科学的、計画保護管理を進めている北海道、岩手県、栃木県、千葉県などの情報を集めますと、これらの県ではシカ対策専門の行政担当者を置いたり、野生動物研究機関を設置したり、少ないところでは三千万円、多いところでは北海道では十億円もの予算をつけて取り組んでいます。現在、これらの道県には国からも資金的な補助がありますが、特定鳥獣保護管理計画の主体が都道府県知事ということになると、これだけのことができるかどうか心配です。ましてや、これを全国の都道府県に広げて科学的、計画保護管理ができる体制をつくるには、国が十年ぐらいかけて重点的に援助を行わないと無理だと言わざるを得ません。  一方で、国と地方の役割分担ということで、捕獲許可の権限が市町村までおろされる。これには大変な危惧を抱いています。既に三十道県では一部の種あるいは全部の種について市町村におろしていますが、法改正によってこれが加速することが予想されます。市町村には野生動物を担当する部署もなく、専門官がいるところはほとんどありません。  審議会答申では、「狩猟及び有害鳥獣駆除における科学性計画性の充実」がうたわれていますが、ツキノワグマなどに関しては有害鳥獣駆除が事実上猟期外の狩猟許可となっており有害鳥獣駆除でとったクマの胆が六十万から七十万ほどで売買されています。市町村に捕獲許可権限がおろされると、科学的、計画的な有害鳥獣駆除からはますます遠いものになってしまいます。私が訪れたある東北地方の村の担当者は、もし市町村の事務となったら野生動物を撃ってしまえという声に抗し切れないと心配していました。  以上のことから、もし科学的、計画保護管理と地方分権の二つの施策が同時に実行されたとするとどういうことが起こるでしょうか。恐らく、ほとんどの都道府県では十分な予算、人員が割けずに、理想からはほど遠い特定鳥獣保護管理計画がつくられるか、あるいは条例をつくって市町村に権限移譲し、狩猟団体にますます依存した有害鳥獣駆除が行われることになるでしょう。クマ、猿などは科学的な知見が不十分な動物ですので、市町村による有害鳥獣駆除となるおそれが強くなります。  このような状態になることを防ぎ、都道府県が科学的、計画的な保護管理ができる体制をつくるには、千葉県や栃木県のように市町村への捕獲許可権限の移譲を行わず、国と都道府県により実施体制をつくる以外にありません。  次に、科学的、計画保護管理の中で個体数調整が非常に注目されているんですが、個体数調整では農林業被害は解決しないということをお話ししたいと思います。  昭和五十年代にカモシカ問題が発生したときに、日本自然保護協会は文化庁の委託を受けて全国のカモシカ生息地を調査しましたが、林業被害が甚大な岐阜県では生息密度が平方キロメートル当たり二頭前後でした。東北地方の原生林での生息密度、平方キロメートル当たり八頭前後の四分の一程度の密度にもかかわらず被害が甚大であったのは、拡大造林によって被害の発生しやすい生息環境になったためだと考えられます。  これはエゾシカ被害が甚大な北海道十勝支庁の足寄郡の植生図です。この植生図、ちょっと白黒では見づらいのでカラーで示します。  これは一九七九年の植生図で、灰色の部分が針広混交林、自然林です。そして、ちょっと茶色くなっているところが針葉樹の人工林です。次に、これに一九九一年までの十二年間で改変された部分を重ねてみます。今重ねましたこういった部分、つまり残されていた針広混交林、自然林が針葉樹の植林地に変わってしまったことがわかります。  十五日の本委員会環境庁自然保護局長さんが、道東のエゾシカの適正頭数は昭和四、五十年代に安定して生息していた当時の数である六万頭と答弁されましたが、生息地がこれだけ変化していると六万頭でも被害は続く可能性はあります。生息環境をもとのように回復しない限り、個体数だけ減らしても農林業被害はなくなりません。  最後に、鳥獣保護法を改正するならばこういう課題が残っているという話をしたいと思います。  昭和三十八年の鳥獣保護法改正当時、既に狩猟をなりわいとしている人はいなくなっていたにもかかわらず、狩猟は有害鳥獣駆除という社会的使命を持ったスポーツという位置づけをしたため、狩猟者に依存した有害鳥獣駆除が行われることになりました。  しかし、有害鳥獣駆除と狩猟は本来目的が異なります。この最も大きな矛盾点は、有害鳥獣駆除でとったクマの胆が売買されているということでしょう。今回の改正では、乙種免許者が丙種免許を持てるという規制緩和が盛り込まれていますが、このような規制緩和をしても狩猟者の減少はとまりません。また、地元の猟師で足りないからといって広域的参加を求めれば、地元の事情を知らないハンターが多くなり、危険も増大します。もともと公的な任務であった有害鳥獣駆除が、私的娯楽である狩猟に依存していること自体が問題であったのです。有害鳥獣駆除を適正に行うためには、一般の狩猟者の減少を防止するよりも、有害鳥獣駆除のできる技術、モラルを持った専門家を養成すべきです。  また、昭和三十八年の鳥獣保護法改正時には、狩猟鳥獣、狩猟期間の限定はできましたが、狩猟地域の限定をすることはできませんでした。これだけ人口がスプロール化した現在でも、鳥獣保護区、休猟区、銃猟禁止区域以外では土地所有に関係なく狩猟は可能です。しかし、農林業従事者、野外活動者の安全のためには、狩猟地域を限定すべきです。  狩猟者の数は、一九七〇年代をピークに半減しておりますが、それにもかかわらず狩猟事故はふえております。これは狩猟者登録者数の推移ですが、七〇年代をピークに五十万人ちょっとありますが、今は二十二万人ほどに減っております。  狩猟事故のグラフをこれに重ねます。狩猟事故の数は途中まで減っておりましたが、八七年からまたふえております。今、年間百二十件ほどの狩猟事故がございます。狩猟事故の数は、狩猟者の高齢化による狩猟者自身のけがもふえていますが、住宅地や農地の近くでの狩猟による事故もふえています。  例えば、平成五年には札幌市のハンターが阿寒町でシカを狩猟中に過って引き金に触れ暴発し、付近の国道を走行していた乗用車の運転手の腹部を貫通させ、重傷を負わせた事故が発生しました。また、兵庫県ではシカ猟をしていたハンターが正月用のササとりに来ていた主婦をシカと間違って撃って死亡させた事故、香川県ではキジを捕獲しようと散弾銃を発射し、ビニールハウス越しに農作業をしていた女性に傷害を与えた事故などが発生しています。  これは埼玉県が狩猟者に配布している鳥獣保護区等位置図というものです。それから、こちらは自然公園利用者に配布している自然公園配置図です。これが狩猟者に配布しているもので、これが鳥獣保護区、それから休猟区、銃猟禁止区域を示しています。  こちらは自然公園で、緑に囲まれたところが自然公園、赤いところが特別地域です。都市近郊では市街化区域がほぼそのまま銃猟禁止区域になっていますが、自然公園などでは必ずしも特別地域やハイカーがよく歩く場所鳥獣保護区、休猟区、銃猟禁止区域にはなっていません。ハイカーはこの地図を持って歩いていますので、自然公園の特別地域だから狩猟はしていないだろうと思って安心して歩くととんでもないことになってしまいます。  この狩猟者が持っている地図を重ねてみます。この特別地域、この特別地域、この特別地域鳥獣保護区になっています。それから、この特別地域は銃猟禁止区域になっていますが、一番大きいこの特別地域は何の規制もありません。ですから、ここの関東ふれあいの道というのを歩いていきますと、狩猟はしていないだろうと思って安心して行くと弾が飛んでくるという危ないことになってしまうわけです。この狩猟者に配布されている地図には「注意一秒・事故一生」と書いてあるんですね。怖いことが書かれているんですけれども、こういうことは自然公園を歩く人のところにも書いておかなくちゃいけないということになります。野外レクリエーションが盛んになってきた今日、安心して自然が楽しめるようにしていただきたいものです。  また、鳥獣保護法改正によって、都道府県ごとに狩猟期間が異なるという事態になってくれば、尾根を挟んで猟期が異なるという、そういうまた怖い事態になります。鳥獣保護区、休猟区、銃猟禁止区域以外ではどこでも撃てるという現在の体制から、可猟区でのみ狩猟を許し、それ以外は原則狩猟禁止とすべきであると思います。これは昭和三十八年の改正時の課題であると同時に、昭和五十三年の自然環境保全審議会の答申の課題でもあります。  結論として、日本自然保護協会は、現行の鳥獣保護法は以上のような問題を抱えており、大幅な改正が必要だと考えます。しかし、今回政府から出された改正案は、これらの問題を解決できないばかりでなく、地方分権に対応した改正案と同時に実施されれば、一部の地域を除き、今より悪い状態にしかねないものだと懸念します。したがって、当協会としては、今回の改正案には反対の立場です。  御清聴ありがとうございました。
  9. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  次に、草刈秀紀参考人お願いをいたします。草刈参考人
  10. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) WWFジャパンの草刈です。座らせて陳述させていただきます。  私は、財団法人世界自然保護基金日本委員会、WWFジャパン、御存じのように、あのパンダのマークのWWFジャパンの自然保護室に勤めております。  WWFは一九六一年に設立されました世界最大の民間の自然保護団体でございます。スイスに本部がございまして、世界に四百五十万人と約一万社または団体の会員や寄附によって支えられております。世界二十七カ国に各国委員会がございまして、五カ国に提携団体、二十二地域にプログラムオフィスがございます。今回、そのWWFを代表して、私の経験談を交えて意見陳述をさせていただきます。  まず、WWFとしては、今回の改正案については反対でございます。  当会がこの改正案に対する反対の理由でございますが、先ほど自然保護協会の吉田さんがほとんど網羅されておりますので、改めて細かいところには触れません。野生生物保護管理を進める地方の体制が整わない状態で、自治体に十分な受け皿がないまま捕獲許可権限を移すべきではないということでございます。  WWFジャパンはその事業の一つとして、国内の草の根の団体や研究者などの自然保護活動に対して助成金を出しております。WWFジャパンが助成しております団体が事務局をしております鳥獣保護法改正を考えるネットワーク、そのアンケート調査で今回の改正案の問題点がほぼ明らかになりました。(OHP映写)  このネットワークが全国の都道府県の担当部局にアンケート調査をしまして、すべての鳥獣保護業務を都道府県レベルで行うことは二十八件が困難であると。その理由としては、財政的、人員的、調査能力的に非常に難しいという回答が出ております。  すべての鳥獣ということですが、これは環境庁の資料ですけれども、これからは地方分権一括法で、今までは五百六十五種が、六十三種、都道府県知事という形が、今後地方分権が行われますと、五百三十一種が都道府県知事の対象というふうなことで、すべての鳥獣を都道府県に任せていくことになると言っても過言ではございません。  さらに深めて、市町村レベルでやることはということについては、実に三十八件が困難であると。それも先ほどと同じように、財政的、人員的、調査能力的にも難しいというアンケートの回答をいただいております。  では、既に今やっているところでどういった駆除個体についての情報をとっているかと。とっているところは二十三件あるんですけれども、そのとっているところというのは、ヒグマとかシカとかツキノワグマとか猿とかそういった部分だけでありまして、ほとんどの鳥獣についてはデータをとっていないという状況でございました。  それから、担当部局に野生鳥獣の生態や分布、被害の実態について総合的に把握している専門家、担当官はいるかということで、担当官がいるというのはわずか三件でありまして、ほかは、十件は委託しているとかそういった状況でございます。  では広域的な調整の仕組みができているかというふうなことでも一つ挙げてありますが、できているというのはわずか八件でありまして、十二件ができていない、二十件が検討中である、そういったアンケートの結果が出ました。  ということでございまして、個体数管理を中心とした科学的、計画的な保護管理を優先する被害防止を駆除に頼った改正案では、農林業被害等の問題の根本的な解決にはならないと思います。また、駆除にかかわる捕獲技術者が専門官ではなくスポーツハンターであることは、野生生物保護の観点から望ましいことではないと思います。  先ほど吉田さんが指摘されたように、都道府県の権限による猟期の延長や捕獲数増加などにより人身事故が増加する可能性もございます。また、野生生物保護保護管理に対する国や自治体の責任が明確になっていないという問題点もございます。改正案には農林業者の経済的損失を解消するための被害補償制度もありません。さらに、十五日の審議でもございましたが、散弾銃や鉛弾による鉛中毒が問題にされている中、空気銃の規制緩和という、さらに鉛を自然界に放出することは到底容認できません。今回の改正案等については、アメリカのシエラクラブやレインフォレスト・アクション等の環境NGOも反対を表明しております。  さて、全国的に保護管理計画を進めるというふうなことで動いておりますが、一つ例を取り出しまして、四国におけるシカ保護管理計画について、その可能性について先日保護管理を進めている専門官のコメントをとりました。四国には、徳島を中心とした個体群と高知を中心とした個体群生息しております。四国は地形が複雑であり、広葉樹林は調査しにくい環境にあります。各県に林業試験場があり、被害が大きいところは担当者を置いておりますが、専門的なことがやれない状況にあり、モニタリングは無理とのことでございました。したがいまして、四国における保護管理計画策定については、地方自治体が自前の研究機関を持たない限り、地域に根差した野生生物保護管理業務はできない、現状では大変難しい状態であり、全国的展開で論議をする必要があるという答えをいただきました。  さて、反対のもう一つ理由でございますが、それは合意形成についてでございます。  まず、これまでの改正案が出てくる流れの中での合意形成の問題点でございます。  平成九年六月から平成十年四月まで環境庁は、クローズド、非公開の検討会、鳥獣管理・狩猟制度検討会を七回にわたり行い、平成十年四月にその報告書をまとめました。その間、非公開で、一切NGOに対する意見は求められておりません。また、この検討会のメンバーの中にはNGOが入っておりますが、それは鳥類に関する団体でありまして、哺乳動物保護の観点から意見を述べられる団体は入っておりません。また、同検討会の報告書を踏まえて、平成十年五月から十二月まで、自然環境保全審議会野生生物部会が三回、同部会内に設置された野生鳥獣保護管理方策小委員会が六回開催されました。その結果が十二月十四日の答申にまとめられました。しかしながら、その間、一般の傍聴は認められましたが、NGOに対する意見を聞く試みは一切されませんでした。  さらに、つけ加えさせていただければ、昨年八月二十七日と二十八日、これもクローズドなワークショップとしてニホンジカ保護管理ワークショップ、これは自然環境研究センター主催で開かれましたが、全国の鳥獣保護行政官研究者が主体で、これに呼ばれたNGOは自然保護協会とWWFジャパン、野鳥の会だけでありまして、他の団体や一般の方々が聞けない状況でした。  さらに、今回出された改正案にある合意形成の問題点でございます。  聞くところによると、既に特定鳥獣保護管理計画策定のためのガイドラインの作業が進められているようですが、これについて何らコメント、助言は求められておりません。また、特定鳥獣保護管理計画策定に当たって合意形成機関が従来の公聴会しか位置づけられておりません。  ことし六月、環境影響評価法が施行されますが、今までなかった方法書や準備書に対する国民からの意見が反映され、先進的に行われているところでございます。環境影響評価法の第八条に、環境保全の見地から意見を有する者に意思決定過程に参加する権利が与えられておりますが、本改正案には利害関係者としか位置づけられておりません。  このようなわけでして、合意形成がない背景でさまざまなことが進められ、改正案が出てきたわけでございます。なぜ事前にさまざまな方面から意見を取り入れる場がなかったのか残念でございます。  しかしながら、現実には野生鳥獣により農林業被害が起こっていることも事実でございます。私自身これまで野生鳥獣の林業被害に関与してきておりまして、経験談ではございますが、昭和五十年代に長野や岐阜、滋賀県といった地域で特別天然記念物であるニホンカモシカが植林木の苗木を食べることで社会問題として取り上げられ、先ほど吉田さんが話されましたカモシカ食害防除学生隊に参加しました。中央の団体が日本の天然記念物であるニホンカモシカを守れと一方的に言うのではなく、ニホンカモシカも守り日本林業も守る方策はないかと検討したわけでございます。  ニホンカモシカによる食害は主に冬場に発生します。下草刈りをした植林地に雪が降りますと植林木だけが出ております。植林地に出てきたカモシカがこれを食べるわけでございます。杉やヒノキといった木はその成長点、先端でございますが、これを食べられない限りは木が真っすぐ伸びるということで、苗木一本一本にポリネットといいまして、キオスクで売られているミカンとかが入っているポリエチレンのネットでございますが、このネットをかけてビニタイ、針金の入ったビニールのひもでございますが、それでとめるわけでございます。これを秋にかぶせに行って春に外すという作業をボランティアで行っておりました。同時に、被害状況の調査も行っておりました。被害防除ネットで被害が防げることがわかったのでございますが、人手の少ない地域では有効ではないという問題がございました。  また最近では、ツキノワの会、これもWWFジャパンが助成している団体でございますが、埼玉県の秩父で広葉樹の植林や国有林における被害対策をボランティアで活動しております。これも私が手伝いました。植林や被害防除作業は、急峻な日本の山間部では苗木の束を担いで斜面を上りおりする、これは大変な作業でございます。埼玉県の国有林はシカによる被害が出ております。ほとんどの植林が丸坊主の状態で、いわゆる被害の激甚地でございます。実際には、植林をした後、被害が出てあわてて防除作業をしている状況でありまして、埼玉県ではポリネットやツリーシェルターというプラスチックの食害防止のチューブを使って防止をしております。現実問題として、被害が出て防除しているというモグラたたき的なことをやっております。効果的に被害防除をするシステムができていないのでございます。植林をして翌日このツリーシェルターをすることによって九割食害が防げるのでございます。  さて、提案でございますが、法改正反対といっても、実際には多くの農林業被害が出ており、今回の改正につきましては、審議員の方々や多くの研究者方々が努力されてきているわけでございます。保護管理の重要性もわかりますが、私としては次の提案をしたいと思います。  今回の改正案を見送りとして、環境庁が音頭をとって、例えば農林業及び野生生物保護のための方策検討会をつくって、その検討会には官民、NGO、まさにここにおられる環境議員の方々農林業者の代表、環境NGO、環境庁、林野庁、農林水産省、文化庁それから都道府県の関係者、研究者、文部省等の教育関係者がひざを交えて、今回の改正案を土台として十分な合意形成を図りつつ再検討することでございます。鳥獣保護法を狩猟法と野生動物保護法に分け、抜本的な改正の中に鳥獣保護管理計画も位置づけるのでございます。  このように一、二年後の鳥獣保護法の抜本的な改正を目指して検討することこそ、将来環境省となる環境庁のためにも禍根を残さない最善の方法と考えます。それまでは現行法内で保護管理計画を進め、被害が出ているところはやむなく有害鳥獣駆除で対処するしかないと考えます。  長くなりましたが、鳥獣保護法改正について世界に恥じない公正な判断をしていただきたいと思います。  また、本日、参考人として推薦していただきましたことをこの場をかりてお礼申し上げます。ありがとうございました。
  11. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 田村公平

    ○田村公平君 田村公平でございます。  四人の参考人の先生方、きょうは朝早くからありがとうございます。大変貴重な御意見を聞かせていただきました。  ちょっと風邪ぎみなものですから、声がよく通らない場合はお許しをいただきたいと思います。  今、草刈参考人の方から、この際この改正案を一度やめて、もう一度検討した方がいいというお話がありましたけれども、現実問題、農業被害はどんどん出ております。検討検討と言っている。僕ら、自分の田舎がシカそれからニホンザル被害が非常に顕著な高知県でございます。今、急峻な山というふうに言っていただいてありがとうございます。まさにそのとおりで、私、山岳部で一応国体まで出ていまして、登山の方は専門家に近い。それでも遭難したことがありまして、救助される。  そういう急峻な山で、実際問題どれぐらいの数がいて、どういうふうになっているかというのを調査研究するというのは、私自身の体験で言うとこれは不可能に近いんじゃないかなと思います。ただ、山番という職業がありまして、山を管理する、僕らの田舎では山番と言っておりますけれども、そのベテランの方に聞きますと、これは民有林を管理しているわけで、山をしょっちゅう見回っていますけれども、シカに関しては、嶺北地方というところですけれども、とにかく自分たちが山番をやり始めたときに比べたら、嶺北地方だけで三十頭ぐらいシカがいたかな、それが三百頭ぐらいにはなっているんじゃないかと。ただし、じゃその根拠はと聞きますと、勘で、皮膚感覚で言っている。  そういう現状があるわけですけれども、そこいらのことについては草刈参考人はどのようにお考えになりますか。科学的データということです。
  13. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 科学的データについては、四国については野生動物保護管理事務所というところで研究者が何度か現地調査をしておりまして、科学的、計画的にどのようなことができるかというふうなことを進めていると聞いております。  そういうわけで、今回の、先ほど最初に申されました、私が述べましたことは、一度見送り、このままこれを廃案にするわけではなくて、今まで行ってきたものを土台として、新しいもっと包括的な保護検討はできないかというふうなことを提案したわけでございまして、現行法でも鳥獣保護管理施策を進めている都道府県はございますので、このような場で言うのもなんですが、皆さん、田村先生も、いかにしていったらいいかというふうなことをお互いに討議しながら、一方では保護管理の調査を進める。一年後、二年後とか、そういったところで日本全国の野生鳥獣を包括的にどうやって守っていくか、日本農林業をどうやって守っていくかというふうなことを検討していくのが一番いいのではないかということでございます。
  14. 田村公平

    ○田村公平君 三浦参考人にお伺いします。私が見る限りにおいては、イノシシとかシカというのは食べ物があったら、もう物すごい大食いでして、どんどん食べていきますけれども、それで、えさを備蓄する、えさをためておくという習慣がないように思うんですけれども、どんどん食べてどんどん個体数がふえていくというのはどういうことなんでしょうか。
  15. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 先ほど羽山参考人の方から、もともとシカというのは山奥の動物ではありませんで、我々林縁の動物というふうに呼びますけれども、かなり明るい開けた草原と森林がモザイクになるような状況のところを好んで分布しております。  したがって、そういうところのえさ量増加すると、これは伐採に伴ってシカえさ量がどう変化するのかということなんです。(OHP映写)伐採の後、非常に多くの下草が生えてくるんです。こういう攪乱、人間の作業、特に最近の林業施業で言いますと小面積伐採をやっています。その小面積伐採そのものは非常にいいことなんですが、かつてのような大面積伐採をやめているわけですから小面積伐採はいいことなんですが、それをモザイクにやるということは、こういうシカにとってのえさを豊富につくり出すという効果があります。こうなりますと生理的な条件も変わってきますので、シカですと、それまでは二年に一遍とかと子供を産んでいた個体も、えさ条件がいいと毎年繰り返し繁殖できるというようなことがあります。  したがって、こういう条件をつくり出すと、シカ個体数がどんどんふえていくという状況になります。
  16. 田村公平

    ○田村公平君 そうすると、どんどんふえていくというのは、森林を伐採して下草ができる、そうするとシカの本来の習性であった草原が部分的に出現する、そこへ実は我々は広葉樹を植えようとして苗木を植えるんですけれども、それも実は食べられてしまう。これは、ではどうすればいいんでしょうね、そのイタチごっこというのは。済みません、三浦参考人
  17. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 森林施業の観点からいいますと、シカの分布と重なるような地域においては、私先ほど述べましたように草地を造成するとか攪乱を与えていくということをなるべくやめるような、だから自然林の施業とかあるいは長伐期施業といったような、森林施業で言えばそういう方向に切りかえていく、こういうことが非常に重要なのではないかというふうに思います。
  18. 田村公平

    ○田村公平君 草刈参考人に同じような趣旨で、これをどういうふうにしていったらいいと思いますか。そういうさっきの、もともと平原にいたシカが山に閉じ込められて、それで山が一時的に平原になっている、そうするとふえるということについて、対応策はどういうふうに考えておられるでしょうか。
  19. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) どういう方法がいいか、林業者ではないのでちょっと詳しいことはわかりませんが、例えば森林伐採をするときに、あらかじめ周りにフェンスをつくった上で森林伐採をするとかすれば、そこにシカは入ってこないわけです。伐採した後で慌ててフェンスをしていることがよくあります。ですから、伐採をする前にもう被害が起こることはわかっているわけだから、どういうふうにしていったらいいかというふうなことを検討していく方が可能性としてはいいのではないかという気がします。
  20. 田村公平

    ○田村公平君 私もいろいろ現場を見ながら考えてみましたら、電気を通した防護さくなりフェンスなりで人間の住むべきところと野生動物がすむべきところをもう完全に万里の長城のようにやった方が一番理想的だということはわかったんです、何となく皮膚感覚で。  それで、これは吉田参考人にもお伺いしたいんですが、しかし考えてみたら、山あり谷ありで登山道も整備されていないし、実際上予算面からいっても、それから人間のそういう現場に入っていってネットを張ったり防護さくをやったりする技術的な力というのも、平場の作業じゃありませんので、谷を渡るためにはワイヤを張って滑車で運ぶとか、そういうところばかりが僕らの住んでいる四国山地です。そういうことを考えたときに、折衷案というんでしょうか、折衷案というのは何かというと、やっぱりふえ過ぎたと思われる被害を及ぼすものを殺すというか、捕獲していくしかないと思うんですけれども、それについて吉田参考人はどういうふうに思われますか。
  21. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 先生おっしゃいましたように、被害対策としてさくだけではないと思います。さくなどの防除というのは短期的な被害対策でしょうし、それから個体数調整というのは中期的な被害対策でしょうし、一番重要な長期的な被害対策は、生息地被害を出さないような環境に持っていくということだと思います。それができないと幾らさくをやってもイタチごっこということになるわけです。  ただ、問題としましては、例えば、私も先ほど羽山先生のスライドの中に出てきました青森の脇野沢村なども見ているわけですけれども、今まで少額しか出せなかったときにはかなり被害が出ていたのを、今、農水省、文化庁、環境庁、それぞれがお金を出しましてかなりしっかりしたさくもできるようになってきますとある程度の防除効果は出てまいります。ですから、ある面ではそういった予算のかけ方というものが問題ではないかという感じもいたします。農林業の中で土木事業にはかなり予算がついておりますが、これから野生動物と共存を図っていくためには、野生動物と共存するための防除さくというものにもっと予算がついてもいいのではないかと私は思います。
  22. 田村公平

    ○田村公平君 最後に、それぞれ四人の方々にお伺いしたいのでありますけれども、個体数管理を実際的にできる人は猟友会しかないと僕は思っています。山を一番知っていますし、動物の特性も知っておる。私が幾ら今狩猟免状をもらって鉄砲を持って行ったって、それはとてもじゃない、シカとかイノシシを追うこともできない、イノシシを追い出すためには追い出す犬の訓練から始めなきゃだめですから。  だから、ハンター以外、つまり猟友会を想定していなくて保護管理個体数管理をしている場合はどういう人たちを想定しているんですか。
  23. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 現状でいえば、先ほど皆さん御指摘のとおり、確かに猟友会の方の中にはモラルに欠ける方もいらっしゃいますけれども、その推移を見ますと、個体数と言ってしまうと怒られますけれども、減っているのです。それと年齢構成が非常に偏っている。(OHP映写)これは動物個体群ですと確実に絶滅する年齢構成になっていまして、したがって、そういう意味で言いますと、ハンターもまた絶滅危惧種みたいになっております。  したがって、健全なスポーツあるいは公的な有害駆除というような、そういう位置づけでもう一度やはりハンターの方を中心にそういうリオーガナイゼーションするといいますか、オリエンテーションをしていくことが非常に大切なのではないか、そんなふうに思います。
  24. 田村公平

    ○田村公平君 十五分までですから、済みません、三十秒程度でそれぞれぱっぱっぱとお願いしたいと思います。
  25. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) まさに三浦先生と全く同意見でございます。  公的な仕事を担うわけですから、やはり野生動物管理を職業としていかないとこれから先共存は難しいというふうに考えておりますので、そういう制度化をするということを期待しております。
  26. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 先ほども申し上げましたように、有害鳥獣駆除というものは狩猟とは違う。撃ち方も違いまして、被害を出す個体を特定して、きちんと半矢にしないように撃たなくてはいけない。ですから、そういった専門家がやるべきだと思います。その途中経過としては、今の狩猟者がきちんと行政の担当官の指導のもとで撃っていくという途中経過はあるかと思いますが、理想的には狩猟者ではなくて専門家が実施すべきだと思います。
  27. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 山をよく知っているハンターの方がおられるというふうなことで、やはり先ほど皆さんが言われたとおり、特定鳥獣保護管理官のような制度を持って、ちゃんとしたライセンスを与えてやってもらえる方がいいのではないかという気がしています。
  28. 小川勝也

    ○小川勝也君 少しおくれて来まして大変失礼をいたしました。  まず、羽山先生にお伺いをしたいと思いますけれども、最後に、答申から改正案作成までの間に肝心な部分が抜け落ちていると、こういう御指摘をいただいたわけですけれども、一体どの部分なのか。何が抜け落ちたのか、お答えをいただければと思います。
  29. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) お答え申し上げます。  申し上げたいことはたくさんございますけれども、五点に限って御指摘させていただきます。  まず第一点は、被害管理、それからモニタリングといったようなこと、あるいは調査研究、こういったことが答申の中ではかなり強調されてございますけれども、それに対して改正案というのは文言で読み取れる部分がございませんで、恐らく「其ノ他」という項目に丸め込まれてしまったのではないかというふうに思われることです。  それから第二点目、生息地管理というのは、環境庁土地利用計画権がございませんので、むしろこういったことを所管している農林水産省あるいは建設省といった生息地管理に関する省庁の所管する法律、関連する法律の改正が伴っていないということ、これが非常に大きい問題です。  それから第三点目、これはもう全員の方の御意見にございましたけれども、野生動物専門官というものが全く位置づけられていないということ。  それから第四点目、これは草刈さんが御指摘されたように、合意形成というのは環境アセス法とは全く違うものである、民主的なものというのが野生動物管理システムの中で非常に重要であるということを指摘されておりますけれども、それが裏づけられていないということ。  それから第五点目、個体群というのが審議会答申では非常に強調されております。我が国では種の保存法は種というものを規定しておりますけれども、個体群の存続については一切保障できない。これが地方分権という形になっていきますと、個体群絶滅をどうやって防いだらいいのか、それが担保されていない。この法案の中でその位置づけが不明確であるということについて非常に危惧を覚えますので、その点について御指摘したいというふうに思います。
  30. 小川勝也

    ○小川勝也君 私は地元が北海道なものですから、すべての参考人にお伺いをしたいと思います。  一説によりますと、道東だけで十五万頭のシカ生息していると言います。北海道は、御案内のとおり他府県に先駆けましてさまざまな努力を進めながら、今実効ある計画とその実行に移っているところであります。最終的に農業被害がどのくらいまで少なくなるのかというのは別にいたしまして、最終的に北海道のエゾシカは何頭ぐらいが適正な規模なのか、わかる範囲で結構でございますが、順次御意見をお伺いしたいと思います。
  31. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 大変な難問をいただきました。(OHP映写)  これがエゾシカ管理概念図であります。現状十二万とか十六万というレベルに達しております。これをどうするのか。これは非常に大きな被害と、それから自然林への破壊が大きく進んでおりますから、これを今のところ総量規制という格好で、密度を下げるという格好になっております。約半分にしようと。  野生動物個体群というのは動的に変化しますから、これを固定するわけにはいきません。しかもなおかつ、例えば十六万から六万にするとしても、十万頭の個体数をとるわけです。これは百キロ近いエゾシカですから、たんぱくの量としても非常に大きい。今、オーストラリアなんかですと、牛の数よりアカシカの数が多くて、それをヨーロッパへ輸出しているという現状がありまして、一部日本に来ておりますけれども、こういう動物資源としても悪くないものはやっぱり資源的な管理で振れさせていくのがいいのではないかというのが北海道環境科学研究センターの研究者の皆さんの意見であります。したがって、個体群絶滅させないようなレベルに維持しつつ、今後持続的な資源として収穫できる、そういうレベルに振れさせるということが一番いい選択肢なんではないかということです。このポリシーでエゾシカ管理を進めるという方針に聞いております。  ただ、この資源的管理を、じゃ、本州全体で各地域でどうなのかというのは、これはまた違う問題でありまして、個体数レベルも、本州のそれぞれ地域個体群レベルも違いますから、そういうことを言っているわけではありません。ただ、北海道ではこういう管理戦略が採用できるということであります。
  32. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) お答えする前に、まず言葉の問題を一つ確認させていただきますけれども、適正という言葉は、あるいは先ほど来ふえ過ぎたという形容詞が使われていますけれども、この言葉自体はあくまでも社会科学的な概念であります。ですから、生態学的に適正という言葉が日常的には使われていない。つまり、人間がどう許容できるかという問題について適正頭数というのがまず出てくるわけでして、ですからそうしたことを考えますと、個体数管理だけで被害を防いでいこうとするのであれば、非常に数を減らさざるを得ないということであるというふうに考えております。  ただ、私も北海道の大学を出ておりますので、状況は目で見ておりますが、シカ自体が起こしている農業被害の大部分が牧草被害です、エゾシカに関しては。そうしますと、エゾシカをふやす要因となっているのも牧草であります。ですから、当然のことながら、それを絶たなければ現在の爆発的な増加というのはとめることはできないだろうというふうに考えますので、まずそこをバリアを張るというのが基本ではないかというふうに考えております。
  33. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 私も生態学的に適正頭数というのは非常に難しいと思います。生態学的には環境収容力、キャリングキャパシティーという言葉がございます。どれだけ生息できるかというそういう数ですね。これはその生息地状況によって変化するわけでございます。(OHP映写)先ほどちょっとOHPでごらんに入れましたけれども、一九七九年にはある程度こういう自然林も残っておりました。これがこういう形で植林地に変わったわけですけれども、現在は、植林地というのは植えたばかりのときはシカの食べるえさがたくさんあるわけです。ですから、今は一時的に環境収容力は高まっております。ですけれども、これが林になってきて、うっ閉した林になれば、環境収容力は今度はまた下がってしまうわけです。  ということで、ちょっとお答えにならないかもしれませんけれども、環境収容力というものはそのように時間的に変化するものでございますので、今六万頭まで減らして大丈夫だと思っても、その何十年か後にはその数で大丈夫なのかどうかということもまた別問題になってまいりまして、その適正頭数というのを決めるのは非常に難しい。ですから、手探りで撃ってみてはその影響がどうであったかというモニタリングを常にやりながら決めていくしかないんだろうと思います。
  34. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 道東にエゾシカが何頭が適正かというふうなことですが、なかなか難しい問題で、何頭ということもなかなか言えない、数値のひとり歩きが出てしまいますので。科学的な面では、三浦さんも何頭かという科学的側面で言われていますけれども、道民の方々にエゾシカの環境教育的な側面でいろいろ話を聞いたところによると、やはりエゾシカがたくさんいた方がいいとかというふうなことを答える道民もいますので、それはやっぱり研究者と道民が、では何頭ぐらいが適正かという、その環境教育的な側面も含めて何頭が一番いいのかというようなことを検討していくことが一番いいのではないかと思います。
  35. 小川勝也

    ○小川勝也君 また四人の参考人の方に簡単にお答えをいただきたいんですが、今回の改正でいわゆる農業被害を受けている方々、あるいはその方々に関係する国会に議席を持つ人たちが今回の改正に期待をしております。今回の改正で農業被害はある程度少なくなるのでしょうか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  36. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 私の意見は、農林業被害を防ぐためには、基本的には防除の手段を、さく等の設置を一方で進める必要がある。しかし、これだけでは今のところ大きな増加、これは分布域の増加も伴っていまして、この一方の行き着く先は、例えば尾瀬なんかに、これは自然生態系の非常に重要な地域でありますけれども、かつてはシカのインパクトがかかっていない地域でしたけれども、こういうところにも発生する。それから、国立公園の非常に大きな森林生態系として重要な地域、これは阿寒も日光もそうですけれども、そういうところの森林更新まで大きく阻害するという格好になります。したがって、そういう点からいえば、やはりもう一方では一定個体数調整が必要だというふうに思います。  農林業被害を起こさないような密度は一体どれぐらいなのかということです。これは、ゼロにしないと農林業被害というのはゼロにならないわけですから、その施策を徹底して追求するということは、これは野生動物保全の観点からいうとナンセンスであります。したがって、これは各地域生息地状況や、あるいは人間側の土地利用状況をかんがみながら、人間の利用地域は手探りで平方キロ当たり一頭ないし五頭といったような、これは当然幅をとるはずですけれども、それぞれを当てはめていって、そういう数にこれを一応の、生態学的な意味の適正密度という意味ではなくて、人間との共生密度と言った方がいいかもしれませんけれども、そういう密度に落としていくという施策がもう一方では絶対必要なことだというふうに私は考えています。
  37. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) 今回農家の方々が期待されているというのは、今以上に捕獲ができるようになるという規制緩和の問題だと思うんですが、これに関して、現在の狩猟法で捕獲頭数の規制がかけられているというのは、哺乳類に関していえばシカぐらいなものであります。ですから、それ以外の動物について果たして効果があるのか、現在でも個体数管理はやっているわけでございますので、今回の改正だけを期待されるというのはむしろ難しいんではないかということが指摘できます。
  38. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 農林業被害の防止ができるかということでございますが、先ほど申し上げましたように、長期的には生息地管理がきちんとできないと被害はなくならない。残念ですが、鳥獣保護法は生息地管理まで含んだ法律ではありませんので、この改正だけでは農林業被害を防ぐことはできません。
  39. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 農林業被害が少なくなるかと。すぐに効果はあらわれないと思いますが、具体的な予算措置とかその防止体制とか、そこがうまくリンクしないといけないと思いますが、そもそも農林業被害の算定基準等についても問題があるというふうなことが出ております。例えば、WWFジャパンが近畿地方の野生ニホンザル地域個体群の実態調査というようなことで近畿のサル研究会に助成金を出しておりますが、被害が出たというふうなところでこの研究者が実際現地に行ってその被害をいろいろ聞いてくると、いや、被害はないとかというふうな答えが出てきたりとかというふうなことでして、被害の算定基準なり何が被害かというふうなことも明確にしない限りは、被害が減るかどうかというのははっきりは言えないのではないかと思います。
  40. 小川勝也

    ○小川勝也君 ありがとうございました。
  41. 福本潤一

    ○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。  今、小川委員から、今回の法改正で農林業被害が減ると思われるかという総体的なお話がありました。先ほど、私はもともと都会に住んでおる人間でございますのでこの鳥獣保護法の法案自体も余り詳しくは知りませんけれども、法案の結論として、草刈参考人からさまざまな御意見をいただいた上で結論として提案が一つありました。  具体的な中身の質問をする前に、その提案は今回は見送りして、農林業被害対策を、具体的に長期の展望を立てて十分な合意形成をしてという、その方がよろしいのではないかという提案がありました。  ですので、最初にそのほかの三名の参考人に、その提案に対してどう思われるか、それをお伺いしたいと思います。
  42. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 私は原則として賛成の立場意見を述べさせていただきました。それで私自身は、草刈さんも含めての注文を幾つか出しています。  この法律の非常に重要なポイントは、現状ではできないと、農林業被害を抑えるためには防除である、それからやはり一定個体数も必要だということは多分お認めなさるだろう。ただ、現状では地方公共団体ではできないのではないか、それからモニタリングシステムフィードバックシステムが機能しないのではないかといったようなところが批判のポイントだったような気がします。  私の意見のポイントは、今、野生動物管理体制をつくり出す制度整備をこの法律はねらっているということがこの法律の位置づけの重要なポイントではないかと。そういう意味で、私は原則として賛成したい、ぜひこの機会にお願いしたいという意見を述べさせていただきました。
  43. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) 私自身改正することに対して反対という意見ではございませんけれども、例えば今国会で改正した場合と次期国会で改正した場合どこが大きく変わるのかということを考えたときに、今よりさらに農業被害の問題に対しての抜本的な見直しに取り組もうという姿勢がもし先生方にあるのであれば、よりよいものが期待されますし、一年の余裕というのはあるのではないかというふうに考えております。
  44. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 私は、この法律改正案が地方分権に関係します捕獲許可等の地方公共団体への権限移譲と同時に実施されますと、この法律がねらっております科学的・計画保護管理がきちんとできずに安易な方に流れるという心配がございますので、同時に実施されるのであれば反対でございます。
  45. 福本潤一

    ○福本潤一君 そこで、科学保護管理ということで、私も前回、環境庁、農水省に対してさまざま質疑をさせていただいたわけでございます。そのときにワイルドライフマネジメントという話をさせていただいて、そのときの答弁で、改正の中に、上限と下限というような形で考えたときに、下限のときに環境庁から千頭というのが一つ出ました。今回は狩猟法の意味合いと保護法の意味合いと両方あるようなので、保護の方の観点にちょっと絞って考えさせていただきます。  最初に三浦参考人に、生態系の話ではない、社会科学的な話だという話がありましたが、生態的な意味で生殖関係も含めて千頭いないと保護できないんだというお話がありましたけれども、これに関して御見解を伺いたいと思います。
  46. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 千頭という数は、存続可能最少個体群サイズという、生物学的に遺伝的な多様性を失うとか、数が少なくなると近親交配が進むとか、そうすると近交弱勢が起こる、あるいは雌ばかり生まれて繁殖できないとか、そういう集団の揺らぎの中で絶滅していく可能性があるわけです。(OHP映写)  では、最少でどれぐらいいたらいいのかというこの定義は、今後百年先に九九%あるいは九五%が生き残る確率という格好で定義されます。ただし、これは最低限でありまして、これを捕獲の目標にするということでは決してありません。これは地域状況によって違うものでありまして、この数は、遺伝的な中身がどう変化していくのか、これは現在非常にホットな研究テーマでありまして世界じゅうの皆さんが研究なさっていて、実ははっきりした回答が出ていません。  ただ、現状を言いますと、国際自然保護連合、IUCNが、種の基準として千頭以下は絶滅危惧の対象である、こういうことを暫定的に決めております。これは種を対象にしておりますけれども、種の絶滅地域個体群ごとに起こるという観点からしますと、やはりこの数を暫定的に採用するのが今のところ妥当なのではないかということで、IUCNの基準に従って千頭という数が出てきたものと言えます。  繰り返しますが、この数にしろという数ではありません。本州、北海道の各個体群が一律千頭ずつになるということは、私自身は長い間シカ研究対象にしてきましたので、一律千頭にしてもらってもこれは困ります。ただ、絶対にここを踏み外してはいけないというラインであります。  ちなみに千頭という数は大人の数でありまして、繁殖できる大人の数でありますから、千頭という数は、例えば半分の雌が翌年全部子供を産むとすれば翌年は千五百頭になるわけです。千頭それ自体も非常に振れているラインであります。そういう数であります。
  47. 福本潤一

    ○福本潤一君 そうすると、今の存続可能最少個体群という数でいくと、クマというのをちょっと取り出してみますと、クマやなんかは現状はもうとれる数ではないとは言いながら、将来的に保護不可能な状況に入っている状態なのかどうか。そこのところをお伺いしたいと思います。
  48. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 私は、岩手の五葉山というところで個体群管理個体数調整防除を含んだ岩手県の管理計画に参画しております。  それの最終的な目標は千頭ではありませんで、これは生息地のサイズそれから保護地域のサイズそれぞれを勘案しまして、トータルで二千頭以上ということを目標にしております。千頭にするということではありません。それは地域によって大いに違うはずであります。
  49. 福本潤一

    ○福本潤一君 クマのケースでお答えいただきたかったんですけれども、これにかかわり続けるとあっという間に十五分終わりますので、若干ほかの質問もさせていただきたいと思います。  羽山参考人、先ほど土地利用計画とかかわっているということで、法案の中身でいうと、野生動物保護のためには農水省また建設省絡みの考え方も必要だということでありました。  明治時代から比べると、明治時代の人口は三千万人ぐらいでずっと増減が余りないまま移行しましたけれども、今一億二千万人ですね。それで、一億二千万人の人間がほぼ江戸時代の大名、将軍の生活レベルは維持しておるぐらいの大変なエネルギーを使っている文明時代に入っておりますので、なかなか動物との共生というのは難しいと思いますし、猿と農林業被害の人との関係という単純な話ではいけないと思いますけれども、土地利用計画の中で我々として提案として聞いておきたいなというお話を伺いましたので、ぜひともその面からお話をいただければと思います。
  50. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) 日本野生動物あるいは生物の多様性を丸ごと残すのにどのぐらいの面積が必要かということを大ざっぱに経験則で御指摘いたしますと、大体日本列島の場合ですと約一万平方キロから数十万平方キロぐらいのオーダーであろうと。ですから、このぐらいのまとまった天然の生息地というのがあれば、それ以外は人間は何をやっても大丈夫だろうというように考えております。  ただ、そういった場所が現在どこに残っているのかというのを考えますと、東北地方、これは日光から北側、それから中部山岳地帯と、もうこれだけであります。ほとんどのところが生息地は分断されておりますし、天然の林というのが失われております。ですから、もう既に残し得ない状況まで来ているんだという前提で物事を考えていかざるを得ない。  ただ、どうも聞いたところによりますと、女性が子供を最近産んでくれないということで、人口は二〇〇七年だか八年をピークにどんどん減っていくんだそうです。あと百年か二百年ぐらいすると人口が半分くらいになってしまうのではないか。そうなったときに初めて土地が返せるんだろうというふうに私は考えております。ですから、あと二百年、どうやって現在の生物たちを遺伝的多様性を保ちながら残し得るのかという視点で生息地を残さなければなりませんし、動物たちとの管理をやっていかなきゃいけないというふうに考えます。  お答えにならないかもしれませんが、許していただきたいと思います。
  51. 福本潤一

    ○福本潤一君 人口問題というのはもう一方の大きな問題でもありますし、中国のように産児制限とかいう形で法律制限するわけにはなかなかいかない状況で進んでおりますので、また詳しいことは別個に伺いたいと思います。  今回来ていただいた吉田参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほどから農林業被害とその防除等の話が出てきておりますけれども、狩猟という観点しか有害鳥獣駆除の方法はないのかなというのがむしろ素人的に出てきた考えでございますけれども、狩猟以外または狩猟者に頼らないで何とかこういう対策ができないかなと思いますけれども、吉田参考人、長年の経験の中からその面に関しての御意見をお伺いしたいと思います。
  52. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 狩猟者に頼らずに専門家で対応しているという外国の事例はたくさんございます。狩猟管理官のようなものを置いたり、ゲームウォーデンと言っておりますが、そういう専門家が撃ったりというところもございます。狩猟者が減少していくということを考えると、将来的にはそういった専門家が行うということも考えていかなくてはいけないと思います。  一つの事例を挙げますと、一番先を行っておりますのは小笠原村で、小笠原の中には六人しか狩猟者の登録者がございません。ヤギが自然植生を破壊するということで、今は殺さずにとっておりますけれども、最初にそれを撃ってとろうと思ったときに、島内の狩猟者では足りないというので島外から狩猟団体を呼んできたんです。でも、地形にもふなれなものですから、島の山のでこぼこした地形を歩けない、それから弾を撃っても当たらないということで、ヤギが全部海の中に落ちてしまって、それをサメが食べてたくさん血が流れて、そこの漁業がしばらくできなかったということもございます。  そういった形で、狩猟者頼りでは有害鳥獣駆除はできないという時代はだんだんと近くやってくるんだろうと思います。それに備えてそういった専門家をちゃんと養成していくということが必要ですし、それまでの間、例えば千葉県などが実施しておりますように専門家のもとで狩猟者が撃つ、そういう形にしなければいけないと思っております。
  53. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 本日は、参考人の皆様には大変お忙しい中ありがとうございます。  まず最初に三浦参考人に伺いたいんですが、奥日光のシラネアオイがシカの食害を受けて、弥陀ケ池近くの大群落はほとんど全滅をしたと言われているわけですが、九三年に電気さく設置した栃木県側ではある程度回復してきているけれども、九五年に対応した群馬県側はまだ復活をしていない、二年の差というのが決定的だったというような話があるわけです。  それから、先ほど草刈参考人からお話があったんですが、植林をした後、被害が出て慌てて防除作業をしているということではなくて、植えたらすぐにちゃんとツリーシェルターをやればかなり被害は防げるのではないかというような話も具体的にあったわけです。  そういう問題について、やっぱり被害を最小限に防ぐためにやっていかなきゃならないことがあるし、それだけの努力が本当に全体的にされているんだろうかということを伺いたいと思います。
  54. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 御指摘のとおりだと思います。  それで、今の防除対策というのは、やはり科学的な根拠経験を十分に踏まえたような格好ではなくて、それも専門家がいないところが非常に大きいだろうと思います。そういう専門家を固定して地方自治体の中に置くということは非常に重要なことだと思います。  御指摘の日光のシラネアオイですが、これはやはり根茎を食べてしまうまでに至れば回復が遅いし、可及的に対応した栃木県側は電気さくによって回復が可能であったということです。  ただ、話は脱線しますけれども、日光のこういう地域でシラネアオイという非常に目立つ群落だけを対象防護さく設置していくのがいいかどうか。シラネアオイを守ることそれ自体は重要でありますけれども、そのほかにも植物の多様性、これは非常に原生的な自然環境ですから、そういうところのさく管理をどう進めていくのか、これは国民の合意といいますか一つの選択だと思います。国立公園内の自然生態系をどう守っていくのか、被害とは違う観点からの管理というこれからの大きな課題を提起しているだろうと思います。  それから、長くなって恐縮ですが、先ほどのツリーシェルターの件ですけれども、例えばシカという動物は、若齢の、若い植栽したばかりの木から、それから壮齢木、これは角こすりによって起きますけれども、角こすりによって幹がはがれるという、造林の各成長段階でそれぞれに被害を起こす動物です。そういうものに対して、若齢造林地が対象であるツリーシェルターだけをかけるというのはいかがなものか。  これについては私は決して反対しません。これが非常に有効な場合、例えばカモシカ被害に対してはポリネットだとかツリーシェルターが非常に有効です。というのは、カモシカというのは葉っぱの先端を食べるという格好で被害を起こします。したがって、口の届かない高さ、つまり若齢木が高さにすれば一・五メートル以上になれば成長点を食べませんので、それ以降、つまり二齢級以降になればカモシカ被害はないのであります。したがって、それまでの段階、約五年プラスマイナスぐらいの間にポリネットやツリーシェルターをやるということは非常に効果的であります。  だから、動物生態や加害状況に応じて防除制御を行っていく、そういう工夫がこれから非常に求められるんだろう、そんなふうに思います。
  55. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 私が伺ったのは、今言われたみたいに非常に各地域、あるいは相手が農作物であったり森林であったり、あるいはシカであったり猿であったり、いろいろ違っていると思うんです。そういう違う動物を相手にどう対応していくかということが今求められているわけですが、駆除だけで本当にいいのかというのが皆さんから出されているところですね。生息地保護だとかあるいは専門官の配置だとか、そういう問題も要望として出されました。  では、この法律を今たちまちやった場合に、おくれている部分があるわけですね。生息地の確保だとかあるいは保護管理だとか、そういう体制がおくれているように皆さん言われるし、私も現地へ行ってそう思います。そういうことで、駆除だけが先行していくんじゃないか、本当にそういう点大丈夫なのかということについていかがですか。  ちょっと時間がないので簡潔にお願いしたい。
  56. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 私は、確かにそういう生息地を確保するとか保全するということが非常に重要な施策だと一方で思います。ただ、現状の場合、やっぱり個体数調整というのが非常に大きな選択肢の一つである。私も動物と長い間かかわってきましたので、一律にジェノサイドをやれという意味ではありません。  それで、シカについては、群れで生活する動物ですから、密度を全体に落とす必要があるというので、当面総量規制として密度を低下させる。一方、カモシカなんかは一頭一頭が孤立して生息しているわけですから、そういう加害を起こしている個体レベル個体数調整をやるべきだというふうに考えます。それから猿についても、これも全体に一律にとっていけという話ではなくて、人間をも襲うような、人の家に入ってくるような、それから人間がいてもおどすような、そういう猿集団に対してはやっぱり捕獲というのを先行させなければならない。こんなふうに種によってその対応も、個体数調整と一律に言っていますけれども、これは大いに違うということであります。
  57. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 羽山参考人に伺いたいんですが、ちょっと参考人が書かれたものを読ませていただいたんですが、この中にEUのデカップリングという所得補償制度を紹介されているわけですけれども、そのことについて簡単に教えていただきたいというふうに思います。
  58. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) 現在EUで進んでおります農業と環境の調和という政策の中で、実際には、スイスの山岳地帯の酪農の景観といいますか、そういったものを保存するために山から都会に出ないでほしい、景観を守ってほしいというところで所得を補償する、給料を払ってそこで農業をやっていただくという制度が最初と聞いておりますけれども、そういった観点で、現在さまざまな野生生物生息地土地管理者が保全する活動そのものに対する所得をサラリーとして提供する、補償というのは被害というマイナスイメージではなくてギブ・アンド・テーク、野生生物のために働いた場合についてはそれに対する当然の見返りを支払うという、そういう制度が始まったというふうに聞いております。  私自身は、そういった発想をマイナスイメージの被害ということではなくて、むしろプラスイメージとして自然保護のための所得の減収に対するサラリーという発想の転換が必要なのではないかという意味で買ったというふうに思います。
  59. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 先ほどゼニガタアザラシの話がされました。それから、この法案審議の際にジュゴンの問題もあるわけですけれども、こういう言ってみれば海獣というんですか海の獣を守っていくために一体どうしたらいいのかということについて、もし御意見があればお話しいただきたいと思います。
  60. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) 基本的にこれは私の意見としてお聞きいただきたいんですけれども、例えば水生生物に関しては農林水産省の水産庁所管になっておるわけです。ところが、水産庁の所管する法律の中で、例えば種の保存に関する法律というのはございませんし、それからこういった鳥獣保護法に匹敵するような野生生物そのものの保護を志向した法律というのはございませんので、やはりそれを整備していくということがまず第一かと思います。  むしろ環境庁というのは、こういった各土地計画官庁に対して野生生物をきっちり保護しなさいという監視の立場が望ましいのではないかというふうに思います。
  61. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 吉田参考人草刈参考人にお伺いしたいと思いますけれども、海外ではいわゆるワイルドライフマネジメントというのがきっちり行われていて、ハンターが駆除するということであっても狩猟管理官が一緒についていって行動する。きちっと計画に従ってやるし、それから生態系も保護するし全体の保護管理もうまくいっているという実例がよく話されるわけですけれども、そういう実態について少しお話をいただいて、その実態と今度の法律との違い、このままいったら一体どういうふうになっていくのかということについてお話をいただきたいと思います。
  62. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 私はそれほど詳しいわけではございませんけれども、この鳥獣保護法の今回の改正、十五日の審議の中で環境庁長官からドイツを模倣したものであるというお話もございましたが、ドイツでは、そういった狩猟管理官、ゲームウォーデンという専門家をきちんと面積当たりに配置して、その専門家のもとで狩猟が行われ、その統計もちゃんととられてフィードバックされるという体制ができているというふうに聞いております。ですが、今回の鳥獣保護法改正の中では、そういったフィードバック体制それから専門家の配置というものはございません。そういったところが大きな違いかと存じます。
  63. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) ワイルドライフマネジメントというのはゲームウォーデンがいろいろやるわけですけれども、その仕事の中に一つ重要なものがあるということをちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。  国立公園とかそういったいろんなところに来る観光客に対して、いかに野生鳥獣が重要かというような環境教育的なことも作業としてやっているわけでありまして、そこはやっぱり大変重要な点でありますので、今後ともそういった環境教育的な側面もできるような管理官を養成する必要もあると思います。
  64. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 もうちょっと時間がありますので、草刈参考人に伺いたいんですが、野生鳥獣保護でNGOがどんな役割を果たしているのか、それから今後どういう役割を果たしていかれようとしているのか、その点について伺いたいと思います。
  65. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 先ほどの意見陳述でも述べましたが、WWFジャパンで助成事業を全国の草の根NGOにやっておりますが、過去三年間の助成事業の一覧表が手元にありますので、ちょっと触れさせていただきます。  先ほど申しました近畿地方の野生ニホンザル地域個体群生息実態調査、これは近畿のサル研究会。それから、クマの森プロジェクト「クマの畑」をつくるというふうなことで、これはツキノワグマと住処の森を守る会というふうなところで、畑に被害が出ているから被害が出ないようなところにクマが食べられる畑をつくってやろうじゃないかというようなことをやっていたり、また東北地方のニホンザル保全のための研究会公開講座、東北ニホンザルの会。それから、野生生物保護に係わる法体制の検討というふうなことで移入生物の規制問題を。それから、奥多摩山地において問題を起こしたツキノワグマへの学習付け後の移動放獣の試み、奥多摩ツキノワグマ研究グループ。それから、里山の動物と共生するための調査研究および普及啓発事業、これは社団法人の高知県生態保護協会。それから、奄美大島、徳之島における希少鳥獣の生態調査、これは奄美大島希少鳥獣研究会。それから、大規模草地を利用するエゾシカ生態的特性と狩猟圧強化が地域個体群におよぼす影響、これは北海道大学の修士課程の研究者。それから、森林施業自然保護管理のあり方、大雪山国立公園におけるケーススタディー、これは大雪山国立公園森林生態研究グループ。山形のカモシカ保全生物学的研究、これは山形カモシカ研究グループ。さらに、鹿により改変された生態系の保全に関する研究、これについては宮下さんという研究者。  このように当会の助成事業でも、今回の法改正にかかわるさまざまな地域のNGOに対してわずかでありますが資金提供をしながら、いかにしていったらいいかというふうなことである面では協力しているというふうなことでございます。
  66. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 参考人の皆さんには、大変貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございます。  三浦参考人にお伺いをいたします。  草刈参考人の方から地方自治体へのアンケート調査ということで参考意見が述べられまして、地方にはまだこの法律が施行されてもなかなか受け皿がないのではないかという御意見が寄せられておりますけれども、私どもの手元に来ます意見の多くも、地方への移譲は時期尚早であるとか、自治体の人員、予算、技術、研究施設等の充実あるいは鳥獣保護体制整備をしてからでないとこの法律の改正が難しいのではないかという意見が随分と寄せられておるところでございます。  三浦参考人は、この法律の施行によってその体制がつくられていくんだというふうにお考えになっているように私自身は聞いたわけですが、それでよろしゅうございますでしょうか。
  67. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 私自身はそう位置づけております。  少ない経験ですけれども、岩手は管理計画をつくった後、モニタリングやフィードバックシステムがいかに重要かを認識し、専任の担当者を置き、来年度には研究機関を人数は少ないですけれども曲がりなりにもつくるという方向に行っています。  だから、それぞれの管理計画をつくりそれを県で適正に位置づけていただく、草刈さんの御指摘は私も読ませていただきまして今のところ非常に心配はしておりますけれども、そういう大きな契機になるということとして私は位置づけております。
  68. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 現行法でもそういう体制づくりが可能だということに対しては、どうお考えでしょうか。それではできなかったから、よりプッシュをする、押す力としてこの法律が必要だというふうにお考えでしょうか。
  69. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 御指摘のとおりだと思います。  それで、計画制度の中に目標とそれからそれへ向けてのステップ等々をつくるという、管理計画をつくるということがそれへの大きな寄与になっているわけでして、現状のように有害駆除をただやっていくということであれば、この改定がなければそういうことになるわけですけれども、やはり法律に支援されてそういう計画をつくるということが大きな飛躍につながるのではないかというふうに思います。
  70. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 吉田参考人、今の続きになりますけれども、もしこの改正案が通りますと、有害鳥獣駆除の方が先行されてしまって保護する方の対策がおくれるというふうにお考えのようにさっきお聞きいたしましたけれども、どうでしょうか、体制を整えてからということの方が私はよりいいのではないかというふうに考えますけれども、お考えをお聞かせください。
  71. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 有害鳥獣駆除に関しましては、もう既に実質上市町村がやっているんだから何も変わらないのではないか、そういう御意見もございます。ただ、そういった悪い状態に固定してしまうということが非常に問題でございまして、一方できちっとその予算もつけて人員をつけてという決意を持った都道府県はきちんとやっていかれるでしょうけれども、かなり多くの自治体がそこまではできないので、地方分権で権限移譲された形の有害鳥獣駆除という道を選ぶという、そういう心配が強いのではないかと私は懸念しております。
  72. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 羽山参考人にお聞かせいただきたいと思います。  私は新潟県に住んでおりまして、佐渡のトキが絶滅するということを非常に残念に思っている者の一人でございますけれども、かつてトキは有害鳥獣の中に位置づけられておりまして、佐渡では日常的にトキを捕獲するというようなことが行われておったんですね。ところが、気づいてみたら、もう何羽しか残っていないという状況に追いやられてきてしまっているということが歴史的にあるわけです。  環境庁は、今回の鳥獣法の改正に当たっても、私たちへの説明には、すべての野生動物について個体群管理を充実させていくので種の保存というのは大丈夫だというふうに言っているんですけれども、私自身は、先ほどの遺伝子の問題もありますし、環境庁個体群管理だから大丈夫だと言っていることに対して、羽山参考人の考え方をもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
  73. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) さっきも指摘いたしましたけれども、今回の主な規制緩和の部分で各自治体が、言い方は悪いですけれども、飛びつくとすればシカについてだけだというふうに考えます。  私が非常に今回の改正案で残念だったのは、特定計画が任意の制度である、義務づけられなかったということにあると思います。それは今御指摘された個体群絶滅を引き起こす原因をむしろ防ぎ切れないのではないかという意味づけなんです。  これはもう少し誤解を恐れずに申し上げますと、例えば猿について、私がもし農家の方の立場に立つ非常に職務に忠実な行政官だとした場合、自分の県内にいるニホンザル個体群はやはり早く絶滅させるという選択肢をとると思います。それは現行法では、種の保存法にも触れませんし、鳥獣保護法にも抵触しないというふうに私は考えております。  これを防ぎ得るのは、まず種の保存法で個体群というのをきっちり位置づける。それからこの鳥獣保護法の中で、特に絶滅に瀕する、環境庁レッドデータブックに載せているような種に関しては特定鳥獣計画を義務づけるということをしない限りは、早い者勝ちで絶滅させるという選択肢がとり得るということでございますので、非常に危惧しております。
  74. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  草刈参考人にお伺いいたします。  環境庁の説明の中に、尾瀬沼にシカが入り込んで、非常に尾瀬の植物保全をしてきた地域シカによって荒らされる被害が出ていることを危惧するというようなことが言われております。雪の降るところには普通は生息しない、そういう地域に、尾瀬というところは雪深いところというふうに思いますけれども、そこに夏場だけシカが入り込んでくるということでございます。  これらについて防御できるというか防ぐような何かいい方法はないのでしょうか。防護さく等々尾瀬じゅう全部にさくをめぐらさなければ入り込むことを防ぐことはできないのかどうかということを、草刈先生のお考えをお聞かせいただけませんか。私はそれは何とか防ぎたいなというふうに思うんですけれども。
  75. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 尾瀬のシカ現状については、私も直接現地へ行っていませんので、具体的なところはちょっと言えませんが、夏にシカが入ってくるというふうなことで、尾瀬というのは国立公園で多くの観光客が当然入ってくるわけでして、例えばその観光客がこの地域シカが入ってきましたよとかというふうな、観光客にも一緒に手伝ってもらってシカが入ってきたらシカを排除するような、そういう体制づくりができればいいのではないかなというふうにちょっと今思ったんですが。
  76. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 三浦さんでしたか、さっき尾瀬のシカのことに触れられていたので、何かお考えがございますか。いい案がありませんでしょうか。
  77. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) これは、やはり国民全体の一つの選択肢だろうと思います。尾瀬という生態系をどういう方向へ持っていくのか。  一方で、関西の方で大台ケ原というところがありますけれども、そこにもシカがいて、非常に貴重な群落であるトウヒが皮を剥皮されて絶滅に至りつつあります。そこを一般のハイカーの方はシカに出会える環境ということで非常に喜んでいるのでありますけれども、ここの環境がトウヒ群落がなくなるとともに非常に単純なササ群落に変わりつつあります。これは多様な生態系を守るという観点ではいかがなものか。  尾瀬についても同様でありまして、ここには非常に貴重な植物群落がたくさんありますし、それが採食圧が高ければ芝群落へ移行する可能性を持っていますけれども、そういうものとして我々が了解するかどうか、それが多数の国民の意見だろうと思います。一つのサジェスチョンとしては、やはり動物のインパクトを受けていない厳正な生態系というのもこれは貴重な生態系として保存されるべきだというのが私自身の考えであります。  したがって、ここに出てくる個体群については、やはり集団そのものを除去するというのが私は大きな選択であるというふうに考えます。
  78. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。
  79. 泉信也

    泉信也君 きょうはどうもありがとうございました。  国民の多くの方々のこの法律に対する関心は、一方では大変かわいそうだという発想からの意見と、農業等に従事しておられる方にとっては大変腹立たしいあるいは収入の減少につながるという思いからの議論だと思っておりますが、きょうは高い立場からの御意見をいただきまして本当にありがとうございました。  先ほど羽山参考人から、弱い者同士のいじめ合っている状態だと、まさにそういうことが今この問題の根っこにあるんだと思うんです。そこで、私はこの状態をどうやって脱皮するかということで、今回のような科学的なあるいは計画的な管理ということが大変重要であるというふうに思っております。ただ、お話を伺いますと、研究の途上にあるとか、なかなかつかみづらいというようなのが実態だということもよくわかりました。  そこで、先ほど御質問がございましたけれども、国と地方との管理の問題で、地方にもう少し責任を持ってもらおうということが今回の法改正の目玉になっておるわけです。  羽山先生、まず国とか県でやれば十分な状態でないことはもう先生現状は御承知だと思いますが、モニタリングが必要だとかあるいはフィードバックが必要だという諸先生方の御指摘からしましても、できるだけ現地を知っておる実態に近い人たちがその責任を負ってやる方向に向かうべきではないかというふうに私は思うんですが、いかがでございましょうか。
  80. 羽山伸一

    参考人羽山伸一君) 先生御指摘のとおりだと思います。  野生動物管理というのは、地域に根差すというのが極めて大事な視点でございますけれども、問題は、野生動物管理に必要なのは資金とそれから人材であります。これが確保されるという前提がこの法案の中で読み取ることができないということが多くの方が危惧されているところでして、個体群管理そのものについて反対しているということではむしろないのではないかというふうに私は考えております。
  81. 泉信也

    泉信也君 今の心配は確かにそうです。  しかし、では国が十分今関係省庁にその予算を配分できておるかというと、これまた不十分だということが私はあると思うんです。  そこで、基本的には地元でやっていくという、今、羽山先生がおっしゃいましたような予算とか人材とかということは当然大きな課題でありますけれども、そのことについて草刈参考人吉田参考人、どういうふうにお考えでございましょうか。
  82. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 確かに資金と人材、お金がないというところはありますが、私も陳述で言ったように、今多くの国民がアウトドアブームで山に入ろうという気持ちはありますし、広葉樹の植林をしようとすれば、わずかなお金でもボランティアで入ってくれる人はたくさんおります。  ですから、全国的なレベルでいかに森をよみがえらせるかというのは、ある程度の予算とかいろんなものがあるかもしれませんけれども、わずかな予算でも効果的なことというのはできるわけです。私どもとか自然保護協会とかでも日本全国に会員の方々がおられますし、そういう地方のNGOの方々とか、NGO総覧を見れば四千団体もNGOがあるわけですから、そういうふうな一般市民の力をかりることというのはこれからの選択肢としてはどうしても重要なことではないかというふうな気がします。
  83. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 今、先生がおっしゃった地方でということでございますけれども、やはり資金、人材の面が一番大事なことかと思います。特に人材に関してなんですが、ではゲームウォーデンに匹敵できるようなのは条文の中に見当たらないかというと、実は鳥獣保護員という制度が中に書いてあるわけです。  この鳥獣保護員がどういう現状かといいますと、全国に三千名以上の鳥獣保護員がいるわけでございますけれども、先日、大渕先生の御指摘で八割ほどが狩猟者である、そういうこともありました。なぜそうなっているかといいますと、一年間で百三十日以上巡視しなければいけない、そういう義務が課されておりますが、それに対して一年間で七十万円程度の謝金しかないわけです。これではボランティアでやってくれということと同じようなことでして、結局、狩猟に出ているような方あるいは自由業の方とか、そういう方しかできないわけでございます。  ですから、やはりここにはきちんと専門家を位置づける。それができないと、先ほどから話題になっております科学的、計画的な保護管理というものは実現できないんだろうと思います。鳥獣保護員についても謝金を十倍ぐらいにすれば、日本も本当にフィードバックができるような科学的な管理はできると思います。
  84. 泉信也

    泉信也君 ありがとうございました。  そこで、鳥獣保護員の方々の今後の対応も今御指摘のように非常に重要なことだと思います。  さらに、三浦参考人先ほどおっしゃいました、ハンターに公的な使命を与える、そういうことも大変重要なことではないか。これは、私がハンターの方々のお話を聞きますと、熊が出たといっては呼び出される、何かあったとすれば招集がかかる、ほとんど実質的にはボランティアみたいな活動をやっておるという状態のお話を伺いました。  今回の法改正の中で幾つか問題点を先ほど来指摘されましたけれども、まずやらなきゃならないこと、そういう人的なバックアップ体制で何が一番決め手になるか、何かお話を伺うことができますでしょうか。
  85. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) 私自身も野生動物管理というのは常に研究調査と並行なものであります。したがって、今の現状の中でこれの全く体制がないという御指摘のとおりだというふうに思います。  ただ、計画制度を実際に運用していく中で、一体何が重要なのか、何が必要なのか。これは地方自治体なりに十分考えるだろうし、それから、いいかげんな管理計画実施は、たくさんのNGOの監視の中で展開されるわけですから、そこで一体何が必要なのかというのをこれはつくり出してくるだろうし、理想を言えば最初からそういう体制をつくって出発させるのが一番いいわけですけれども、現状ではそういうことが非常に無理であることは残念ながら指摘せざるを得ないので、管理計画そのものを出発させ、それで何が必要かということを出す、そういう体制整備していく重要な支援といいますか、そういうものだろうというふうに今回の法律改定をとらえております。
  86. 泉信也

    泉信也君 先ほども、制度整備第一歩だろうというふうに位置づけていただいたと私は思っております。  もう一点だけ。先ほどスライドで御説明ございました存続可能最小個体群地域によって動物の種類によって違うということでございますが、これはどの程度という御説明をお願いするのも恐縮ですが、専門家としてこのレベルまで行けば大体管理計画論として成り立つなというお思いの中で、今何割ぐらい達成しておるというか、どんな状況なのか、お聞かせいただけませんか。
  87. 三浦愼悟

    参考人三浦愼悟君) MVP、先ほどの最低の数というのは絶対目標ではありません。(OHP映写)  例えば、これは岩手の五葉山という場所でありますけれども、ここが五葉山の保護地域であります。ここは自然生態系を乱さないような密度レベルにしようじゃないか。それから、ここは猟区になります。猟区はある程度のシカがとれた方がいいというのでこの程度の数、平方キロ当たり十頭ぐらいの数がいいのではないか。それから、一般の農林業地域では被害を起こさない、でもゼロにはしない、ゼロにしてしまったらこれは生息地そのものがなくなってしまうということでゼロにはしない。暫定的に一頭と決めてありますけれども、私は二、三頭でも構わないんじゃないかと思います。これで実際の生息地面積案分して目標をつくり出すという格好です。これがさまざまな地域地域状態が違っていますし、農林業地域面積も違うし、保護地域として設定できる地域も違うということで、こういうことで目標を決めていくということがまず大事だろう。  実際の段取りでありますが、この地域の集団を被害問題との兼ね合いで急速に個体数を落としていく必要があるのか、あるいはほどほどに一定の収穫を得ながらその収穫物を利用するといったような、どういう方針をとるかによってとり方が違ってきます。  それで、五葉山の場合は急激に個体数を落とす必要がある。一九九三年に我々はヘリコプターのセンサスをやりまして、六千頭プラスマイナスという状態にありました。これは非常に高い生息密度でありますし個体数です。これを落としていくわけですけれども、ではだらだらと個体数を落とせばいいのかということになりますと、例えば雄ばかりをずっととってきたという歴史がこれまで、我々が計画をつくる前まではありました。総計で一万頭の雄をとってきました。  しかしながら、個体群増加は続き被害もずっと続きました。これはシカが一夫多妻で、少数の雄を残しても雌の繁殖活動に関係ないわけですから、雄を幾らとっても、その分だけは減りますけれども、繁殖活動を抑えないという効果があります。ということになりますと、これは急速に密度を落とす必要があるということになれば、合理的に効率的に雌をとるという選択肢がこの局面では必要になってきます。それ以降、雌をとりました。  それで、二年前に個体数の調査をしました。とっても産み出していくというのが一方で続いていますから、個体数としては四千頭です。これはシミュレーションをやりまして来年に二千頭になる予定になっておりまして、これも実際に来年にヘリコプターのセンサスをやって二千頭になるかどうかというのを調べる予定になっております。  それで、個体数の総量規制を今のところやっていますけれども、個体数の減少とともに被害量は、これは七年までの統計ですが、八年を経過して九年は一億九千万、ピークは七億近かったのでありますけれども、一億九千万まで落としてあります。  管理計画というのは、とり方も工夫しながら、個体群のモニタリングとそれから被害状況のモニタリングを進めながら目標に持っていくという、こういうプログラムであります。
  88. 泉信也

    泉信也君 どうもありがとうございました。終わります。
  89. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席を賜り、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時二十六分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  90. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただ今から国土・環境委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、岡崎トミ子君が委員辞任され、その補欠として今井澄君が選任されました。     ─────────────
  91. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  92. 田村公平

    ○田村公平君 参議院の国土・環境委員会調査室につくっていただきました資料、大変よくできておりまして、その五ページに、「地方分権推進法に基づき設置された地方分権推進委員会においては、わが国に生息する野生鳥獣の保護管理について国と都道府県が適切に役割分担すべき旨の勧告が平成八年および平成九年になされている。」、こういう記述が「本法律案の背景および提出経緯」という中に出ております。  そこでお尋ねをしたいんですが、地方分権推進委員会、これはけさ参考人の方のお話にも分権ということで出てまいりました。整理をしてお教えいただきたいと思います。
  93. 保坂榮次

    政府委員(保坂榮次君) お答えいたします。  地方分権推進委員会におきましては、鳥獣保護に関しまして、第一次勧告から第四次勧告におきまして、機関委任事務の廃止に伴いまして、一点として、国設鳥獣保護区内における鳥獣の捕獲許可等の事務については国の直接執行事務とすること。第二点といたしまして、現行の都道府県知事による鳥獣保護区の設定及び鳥獣の捕獲許可等の事務、鳥獣保護事業計画の作成などを都道府県の自治事務とすることなどについて勧告いたしました。  また、権限移譲につきましては、一点といたしまして、鳥獣の捕獲等の許可などを市町村へ移譲し、この場合移譲する事務の範囲等については都道府県の条例で定めるものとするとともに、都道府県は市町村に対し広域的な観点から必要な指示を行うことができること、そして、国は渡り鳥等の急減などの緊急時には都道府県が市町村に対して必要な指示を行うよう指示することができるものとすること。第二点といたしまして、猟区の設定に当たっての国の認可は都道府県に移譲することを勧告したところでございます。  これらの勧告は、地方六団体の要望をも踏まえ、関係省庁と協議の上、勧告したところでございます。
  94. 田村公平

    ○田村公平君 地方六団体とよく称しますが、関係省庁との協議というお話が今ありましたが、二、三で結構ですけれども、具体的にこの法律に関してどういうふうな協議がなされ、どういう問題点があったか、おわかりでしたらお答えください。
  95. 保坂榮次

    政府委員(保坂榮次君) お答えいたします。  当委員会の勧告につきましては、勧告時に施行されております法律対象として地方公共団体の事務区分の再構成などを行ったものでございまして、実は現在当委員会において審議中の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案には、この地方分権推進委員会の勧告に係る部分は含まれていないということを承知しております。
  96. 田村公平

    ○田村公平君 含まれていないとしますと、含まれておるのはどこへ行ってしまっているんでしょうか。
  97. 保坂榮次

    政府委員(保坂榮次君) 今国会、政府から地方分権の推進を図るための関係法律整備等に関する法律案、いわゆる地方分権一括法案が提出されておりますが、この地方分権一括法案において、地方分権推進委員会の勧告を受けまして、昨年五月二十九日に政府において閣議決定されました地方分権推進計画に基づいた鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の所要の法律改正が行われるものと承知しております。
  98. 田村公平

    ○田村公平君 「本法律案の背景および提出経緯」ということで「地方分権推進法に基づき」という文言があって、そういうことで地方分権推進委員会に今お尋ねをいたしましたが、背景がよく理解できたと思います。ありがとうございます。  それで、林野庁というよりも農水省にお尋ねしたいんですが、この前の質問のときも被害についていろいろ出ました。その中で、私は特にヒノキとかトチノキとか山桜だとか杉、ヒノキもわかれば教えてもらいたいんですが、苗一本は大体幾らぐらいしますか。
  99. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 苗一本当たりの価格でございますけれども、高知県を例にとりますと、杉、ヒノキで六十五円程度でございます。
  100. 田村公平

    ○田村公平君 この六十五円というのは、実は農林省の方で研究所、施設等があって品種改良等もやっていただいておるように聞いておりますけれども、これは林業者が手に入れる価格として六十五円というふうに承知してよろしいんでしょうか。
  101. 山本徹

    政府委員(山本徹君) そのような性格の価格でございます。
  102. 田村公平

    ○田村公平君 そうしますと、物部村を例にとらせてもらって話をさせていただきますけれども、林業に従事しておる人たちの現金収入というのは、自分の労働力を入れてなおかつ植林して、間伐をやって伐採して、それの間に五十年とか六十年という時間がかかって、それまではお金あるいは労力が出ていくばっかりです。五十年、六十年のサイクルで、切り出して原木市場に出した時点で初めて現金収入になってくる。これは実は、南洋材というか外材がいっぱい入ってくるものですから、山が荒れておるというのは、間伐材もほとんど商品価値がない。そういうことで、林業というものは経済的にもうからない産業というか事業になっております。  この六十五円の苗をしょいこに目いっぱい担いだとしても大体五十本ぐらいが限度だと思います。なぜかといいますと、一つには、高齢化率が高い。それから山が急峻である。そこに植えます。植えて、シカがそれを食べてしまう。そうするとまた一本当たり六十五円お金を出して買って、また山に入って植えます。そのことの繰り返しの結果が、この前の十五日の委員会でも言わせていただきましたけれども、六ヘクタールに及ぶ山が全滅をしております。  その前に、実は森林火災がありまして、物部は大変林業の盛んなところだったんですけれども、植えざるを得ないし、そして今環境の問題もありますから、杉、ヒノキよりも広葉樹を植えて複層林にしていくということをやっておりますけれども、そこいらがうまくサイクルが立ち行かなくなった。それから、山で働く人たちがやる気がなくなってきております。  その物部村の被害の実態等についてはどのようになっているか、この前明確に答えをいただけませんでしたので、林野庁がもしおわかりでしたら教えていただきたいと思います。
  103. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 被害の実態は先生の御指摘のとおりであろうと思います。  大変肝心なことは、先生ただいまお話しございましたように、山に住んで、国民にとって大切な緑、森林を育てる人たちが本当にやる気を出して山を育て管理していただくことだと思っております。私ども、そのためにいろんな面で努力していかなければならないと思っております。  被害現実に発生した場合には、被害地の造林事業ということで、おおむね国の補助率で五割程度あるいはそれ以上の補助をもって造林地の復旧のお手伝いをさせていただいております。また、いろんな鳥獣害等につきましては、防護さく設置や忌避剤の散布等々について、特に平成十一年度から造林の公共事業の補助対象に加えるなどして、鳥獣害の防止対策にもできるだけお役に立つような工夫を私どもさせていただいております。  それから、火災についても、これも未然に火の用心をしていただいて、山、特に森林を利用される方などの不注意でこういう事態が発生する場合があるわけでございますけれども、山火事の予防を呼びかけ、また火災が発生した場合には、これをいち早く発見するための森林の巡視の制度等についても、これは自治省とも御相談しまして森林組合や市町村に森林巡視員といったようなものを置けるように平成十年度から措置いたしました。また、実際に火災の被害については災害復旧を行うことにいたしております。  できるだけさまざまな点から、物部村の林業森林を担っておられる方に御支援をしてまいりたいと考えております。
  104. 田村公平

    ○田村公平君 何でこういう質問をしておるかというのは、後で森の回廊とか森の案内人養成講座ということに関連してきますので、しばらく林野庁につき合ってもらいたいんです。  昨年の参議院選挙後に、全国に三百ちょっとあった営林署を約三分の一に統廃合いたしました。それで、私どもの高知県に唯一国の出先機関の局として存在しておった営林局も四国森林管理局というふうに名称が変わり、それも統廃合の一環であります。  全国に三百あった営林署を三分の一にしてしまった。そういう中で、鳥獣等の被害あるいは森林被害の調査、僕は、猟友会の方々はそういう意味では山を知っておる貴重な一人だと思います。営林署に昔から勤務しておって現場を歩いておる方々も、自然と山に関係している仕事をしています。まさに「森の回廊・四国」では「人間と生物の共生をめざして」というサブタイトルまでついているわけで、もしこの法律が成立したときに、いろんな計画を立てていくときに協調してやっていただける非常にいい機関だというふうに思っております。  それが三分の一に出先機関が減っておるという中で、林野庁自身の本業プラス環境庁や都道府県との連係プレーというのを考えたときに私は不安感を持つものですけれども、それについて林野庁はどういうふうにお考えでしょうか。
  105. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生御指摘のように、営林署、営林局については、本年三月に、昨年成立させていただきました国有林の改革法に沿いまして整理統合させていただきました。これは、行政改革が現在重要な課題でございまして、私どもそういった点から組織を見直し、組織の徹底した合理化、縮減を図ったものでございます。また、この改革に当たって、伐採、造林等の現場の事業につきましては全面的に民間に委託することにいたしましたので、国有林の機関はこれを発注する業務、それから森林管理等の業務が中心になります。  鳥獣被害等についてでございますけれども、森林管理所の出先の機関として全国に千二百五十六カ所の森林事務所がございます。ここには森林官が配置されておりまして、この森林官が鳥獣の被害等についても被害状況把握いたします。その結果に基づいて、シカやカモシカ対策等に必要な防護さく設置とか忌避剤の塗布等についてはこれを適切に実施することといたしております。
  106. 田村公平

    ○田村公平君 森林官というのは、ドイツでは大変歴史と伝統がありまして、戦争が終わると貴族の退役軍人を森の番人として森林官に任命したという長い歴史の中で、ドイツの人たちは職業としての森林官に大変誇りを持っておりまして、子供が就職を希望する人気の高い職業の一つであります。我が国では、国有林野の管理者としての森林官という制度は新しいように私は思っております。何もドイツをそのまま見習えという意味ではありません。我が国には、我が国に合った国土、風土があると思います。  それらの教育や仕事の使命といいましょうか使命感のようなもの、どういうふうなものか教えていただきたいと思います。
  107. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生御指摘のとおり、ドイツでは森林官は大変国民的にも尊敬されている職業でございます。私どももこういった例に見習って、国有林の森林官についても地域の住民の方々に尊敬されるような、信頼されるような国有林の管理、また国有林の管理だけではなくて地域の山村のさまざまな森林や緑の問題、あるいは地域の活性化、振興の問題等についても適切にアドバイス、御指導、御相談に応じられるような専門家として育っていくことを期待いたしております。  私どもも、国有林の職員、行革のもとでこれから少数精鋭でいくことになるわけでございますけれども、研修等にはこれまで以上に力を入れていきたいと思っております。また幸い、最近森林、緑に対する国民の皆様の理解が深まって、こういった森林管理、緑づくりに一生をささげたいというような新卒の応募者もたくさんおりますので、私ども、職員の資質の向上、また国民、地域住民に期待される業務への取り組みについて、先生の御指摘のとおり研修なり研さんに一層努力してまいりたいと思っております。
  108. 田村公平

    ○田村公平君 ここでちょっと森の回廊ということについて、森の回廊というのは余り知らない人もいると思いますので、自分なりに要約して読ませていただきます。  かつて四国はほとんどがシイとかカシを主体とする天然林に覆われておりました。いわゆる広葉樹林であります。その中には、多くの動植物が生息して安定した生態系を維持しておったと考えられております。考えられておるというのは推定であります、記録が全部残っているわけではありませんので。現在では森林は四国全土の約七四%を占めていますが、そのうち約六四%が杉、ヒノキを主体とした人工林に姿を変えております。いわゆる人の手の加わっていない昔ながらの原生林というのはもうわずか一%にも満たなくなっています。そういう急激な変化。  私は、この前も言いましたけれども、自分がそういう体験の中に育っています。かつて森林は僕らにとっては、木材を生産するだけではなくして、薪を拾ったり炭を焼いたり、あるいはわなをかけたり、狩猟等によって得た貴重な動物たんぱく源として、もちろんキノコもそうですけれども、いろんな恩恵を受けておりました。  やがてうちの田舎にもプロパンガスが配達されるようになり、電気もつくようになり、また、僕なんかには山は石鎚山に象徴されるように信仰の場所でもありました。しかし、現実には、ガスや電力にエネルギー源は置きかわり、食料は大部分が輸入されるようになり、さらに森林は開発の対象となってきまして、人間と森とのかかわり合いは極めて薄くなりました。そういう意味では、今、動植物の絶滅、減少、生物多様性の低下、樹木に対する食害の発生など、深刻な形が自分たちの生活圏の中にあります。  例えば高知県であれば、トサカンランが非常に盛んなところでありますけれども、そのカンランが貴重なランであるがゆえに採取されて、貴重だから値段がつく。そういうことを含めて、植物二千三百八十五種のうち絶滅のおそれがあるものが八百十二種、生息可能な哺乳動物四十五種のうち絶滅のおそれがあるものが十七種という深刻な状況になっております。また、シカ、カモシカ等による新しい苗木の被害は特に深刻でして、先ほど申し上げました物部村のみならず、かつて林野庁に王国とまで言われた魚梁瀬杉のある魚梁瀬地域では苗木はほぼ全滅しております。これが全部食害です。  それは、かつてはシカやカモシカ生息地であった天然林が、きょうの午前中の参考人のお話にもありましたけれども、大規模に伐採されてその跡に杉、ヒノキが植栽された結果、伐採した跡は下草、やわらかい草や灌木類が生い茂る、そうすると苗木も一緒にシカが食べてしまいます。そうすると、子供の死亡率が低下して個体数がふえていくという因果関係になります。  そのような森林生態系の変化がもたらした生物たちの危機的な状況と、そのことによる人間をも含めた生態系のバランスの崩壊に対処するために、この四国に森の回廊と呼ぶ構想を打ち立てて人間と生物との共存を可能とするような森林状態をつくり上げていきたいということで、既に平成十一年三月でございますが、「森の回廊・四国」準備会、四国森林インストラクター会というのができておりますけれども、こういうことについて環境庁及び林野庁は承知をしておりますでしょうか。
  109. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 今、先生お話しの四国山地を対象に地元の関係者によって提唱されております森の回廊構想につきましては、長期的な生物多様性保全を図る上で重要な取り組みであるというふうに認識いたしておりまして、環境庁といたしましても大きな関心を持っているところでございます。  特に生物多様性保全という国家戦略、閣議決定されておりますが、これにおきましては、まとまりのある比較的大きな面積地域保護地域として適切に管理されて相互に有機的な連携を図ることを長期目標にしておりまして、国土規模での生態系ネットワークの形成を目指しておりますが、その際に緑の回廊といったような生物の生息域の連担ということは大変重要な視点であるというふうに理解しているところでございます。
  110. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 林野庁におきましても、先生御指摘のとおり、高知県の森林インストラクター会あるいは高知県の職員の方々等の有志の方で、四国山地における野生生物生息地とそれを樹林帯で結ぶ緑の回廊の御提唱は、私ども承っております。
  111. 田村公平

    ○田村公平君 この森の回廊の計画を実際に計画案としてつくっていくのは二〇〇二年ぐらいを目途にしておりまして、これは足摺岬からずっと黒尊山塊、そして愛媛の石鎚山系、それから四国の中央構造線沿いにずっと行って室戸岬まで、つまりわかりやすく言うと石鎚山から三嶺、剣山、そこをうまくつないで、もちろんその間には通常の民有林もあれば国有林もあります。人工林もありますけれども、なるたけ本来の原生林に近いところをネットワークして、そこの中に鳥獣がすんでもらうようにする。うちは鳥獣被害が大きいものですから、里になるたけおりてこないように共生をする。  だけれども、それがもし計画おりいったとしても、二百年ぐらいのサイクルを見込んでおるような計画です。二百年後は当然私は生きておりませんから、本当にそれがもしでき上がったとしても人と動物との関係がうまくいくかどうかというのは、これは壮大な実験のスタート段階でありますけれども、そういう努力をしておるということも当委員会の同僚議員の皆様方にも知っていただきたい。  僕は、けさ、小川議員のお話を聞いておって、北海道のエゾシカの話は、何か僕らのように、もちろん北海道にも山はいっぱいありますけれども、急峻な山の話じゃないような感じを受けた。あれだけの頭数がいて、一頭が百キロぐらいとして、それを撃ったとしても道路のあるところまで持ってくるというのは、百キロというと人間一人じゃ持てません。非常に頑健な人が三、四人がかりで運ばぬといかぬ。これを駆除するといったって大変だなと思って、それに比べたら四国は恵まれているのかなと思ったら、今度は地形的には余り恵まれていない。  そういう実験というか、いいことをしようと思っていることがぜひ成功して本当の意味での、まさか我々、また炭や薪を拾ってきてランプで生活する、夜明けとともに起きて働いて、日没とともに寝るような生活には戻れぬわけですから、そこでやっぱり英知を出し合ってやっていきたいというものの一つだと思っております。そういうことでちょっと披露させていただきました。  この企画も、私の山を登る仲間に県庁の職員で塚地君というのがいまして、彼の非常に超人的な努力によって各行政関係や市民団体の方々が一緒になってこういう案をつくっていっておるんです。それともう一つ、これは当時の高知の営林局に大変お世話になって、塚地君や営林局の方々、もちろん出先の営林署の方々も一緒になってもらいまして、森の案内人養成講座というのをやってまいりました。これは、平成八年が六百人、平成九年が六百五十人、平成十年が三百五十人。ことしは第一回目の講座がきのう開かれたと思います、大方町というところで。ことしは幡多郡という西の方に講座の場所を動かしたものですから百五十人ということです。  そういうことで、農林水産大臣公認の森林インストラクター資格取得者の養成を目指すためにこういう森の案内人養成講座というのをやっておりまして、これも森の問題だけじゃなくして動物保護等々の環境問題を含めたことをやっておりますけれども、環境庁はこういうことは知っておりましたか。
  112. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 森林とのつき合いということを進めるということで、高知県が文化県構想の中で、県民の方が森に親しみ、安全で豊かな暮らしをしていくということで、アドバイザーである森の案内人を養成するということをやっておられることは十分承知いたしております。  今後とも、その充実につきまして、環境庁としてもお役に立てることはしてまいりたいと思っております。
  113. 田村公平

    ○田村公平君 林野庁の方には庁舎の会議室を貸していただいたり、スタートのときからお世話になっております。  営林署が三分の一に少なくなっていったりする中で、御案内のとおり私も一生懸命今たばこを吸っておりまして、林野庁の赤字の一助になっているんじゃないかと思います。財政的にも厳しい中で、直接的に木がお金に化けるわけじゃない、直接的な対価が出てこない地道な運動なんですが、これを引き続きやっていく気があるかどうか、お尋ねします。
  114. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生御指摘の森の案内人、毎年六百人あるいは三百人というような多くの方々を高知県民の皆様が森林に親しんでもらうためのリーダー、アドバイザーとして養成していただくことは、私どもも心から敬意を表している次第でございます。  私ども、ことしの二月に中央森林審議会というところで答申をいただきました。森林というのは木材生産の場でございますけれども、あわせて今、地域の住民の方、国民の方にとって大変重要なのは、健全な青少年の育成の場、野外教育、自然教育の場としての森林を提供するということ。それから、若い方、お年寄りの方も含めて健康づくり。森林に入るということはさまざまな人間の生理、心理にいい影響を与えると言われておりますが、健康づくりあるいはレクリエーションのための山登りや森林の散策、こういった場所として森林を提供すること。さらに、ボランティアの方々の森づくりへの活動、それからもちろんさまざまな鳥獣の生息の場としての場所の提供等がございます。  そういった目的のために森林整備し、また国民が利用していただくためのフィールドを整備するということが重要であるとされておりまして、森の案内人の養成というのはこういった森林教育や山登り、森林のレクリエーション的な利用のリーダーとして大変重要な役割を持っておられると考えております。  森林インストラクターの制度を今お話しで、これの資格取得も目的としておられると承っておりますが、森林インストラクターはまだ全国でも七百七十名、高知県は十八名でございます。ぜひ森林インストラクターの資格をどんどん取得していただいて、国民や高知県民の方々に広く森林教育あるいは健康づくりの場としての森林を利用していくためのリーダーとして育っていただくことを心から御期待申し上げ、また私どももそのためのできるだけの御支援はしてまいりたいと思っております。
  115. 田村公平

    ○田村公平君 どちらかというと、建設省は公共事業主体型で自然をどんどん破壊するというふうに昔言われたことがあります。しかし、建設省が第十一次道路整備五カ年計画を策定したときに、その中に景観だとか修景ということがうたわれました。それと同時に、高速道路やあるいは大型の四車線とか、一般国道のみならずそういう道路を開く場合にはなるたけ生態系に影響を与えないように、けもの道も穴をあけてつくるとかいうことをやってきたのがヒントになりまして森の回廊とかいうことを考えるようになったわけです。ただ、これには大変時間がかかります。  私は、高知県に生まれ育った人間として、そういう体験を持つ者として、そして十五日にも発言をさせていただきましたけれども、地元新聞に「よさこい談話室」というコラムというか、取材のあれがちょっと出ました。  金曜日、土曜日、日曜日と、十年以上かかりました愛媛県に抜ける寒風山道路の落成式に行っておりまして、そこでいろんな人に会いました。それから、窪川町というところでもいろんな人に会いまして、シカ被害やイノシシの被害をよく言ってくれたと。猟友会の支部長さんもおりました。よく言ってくれたけれども、駆除に当たって、おまえら悪いことをしておるんじゃないかとか動物がかわいそうじゃないかということで、被害があって判こをつきたいんだけれども、町の人にそういうふうに言われると、被害は中山間地域で山の方で、判こをつくのにも勇気が要る、何か悪いことをしているみたいに言われると。  大体、中村市の猟友会の支部長さんをやっておられる方は、竹屋敷とかいいまして私も林野庁の分収育林ホの十班を五十万円で持っておる山奥でございますから、そこらで出た被害について、中村市は人口三万人程度ですけれども、中村市の中にもいわゆる市部と郡部があるわけです。被害は山の方の郡部で起きておりますから、そうするとなかなか判こをつけない、そういうことをぜひわかってほしいと。そういう当面の問題についてきちっとした対応をしていただかないと、冒頭申し上げましたように、物部の例も言いました、魚梁瀬の例も言いました、今中村の話をしました。これは清流四万十川の河口部分に位置する中村市です。だんだん人がやる気がなくなってくる。  この前も言わせてもらいましたけれども、イノシシなんというのは米が実ったときに出てきます。そして、食べるだけ食べておいて、そのほかの稲も全部ごろごろぐるぐるひっくり返りながら荒らすものですから、田んぼが全滅します。全滅してから、やれ防護さくだ何だという駆除の話になります。そうすると、稲が実ってくる、イノシシがおいしいなといって食べに来る手前で猟友会でずどんとやってもらうと被害が免れるんじゃないか。なぜかといいますと、高知県は減反は一〇〇%達成しているんです。その中でつくった中山間地域の米が全滅するということは死活問題であります。そういうことをきちっとしていただきたい。  そろそろ時間ですから、最後に林野庁、農水省の中でも特に林野庁になると思います。そして環境庁、この法律の趣旨に基づいていろんな方の御意見参考人の方にもありましたし、猟友会の猟師に悪い人もいるとかいう話もありました。私はそうは思っていませんけれども、いろんな見方がある。  そういう中で、先ほどの市民活動じゃないですけれども、森の案内人とか森の回廊とか、そういう役所間の壁を超えた林野庁の森林官という制度も活用して、役所全体が地域の人々とともにいい環境ができるような連係プレーをできることの決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  116. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 貴重なお話を賜りまして、まことにありがとうございます。  自然生態系の悪化あるいは農作物被害に対して自然の生態系と野生鳥獣とのあつれき、また地域住民、地域社会と野生鳥獣とのあつれきをいかに解消するかということが大きな課題でございまして、地域住民と野生鳥獣の共存を目的として、地域ぐるみで野生鳥獣の適正な保護管理がいかに進められていくかということにつきましての具体的な事例のお話を賜りまして、私ども環境庁として推進しております野生鳥獣の保護管理対策、今法案として特別な保護管理計画を内容とするものでございますけれども、既に多くの県でこの端緒が始まっております。  それらに対して、この法改正を機運として、計画の策定あるいは事業の推進、人の配置等が一層弾みがつくように今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  117. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先ほど森の回廊のお話がございました。私どもも平成八年の森林資源計画や昨年十二月の国有林の基本計画で、野生生物の自由な移動の場、また生息、繁殖の場としての緑の回廊の積極的な造成、設定に努力することにいたしておりまして、高知県の御提案を十分承りながら、高知県の実情に沿った緑の回廊を整備してまいりたいと思っております。  また、鳥獣保護被害防止については、常時環境庁の方とは私ども協議、連携をとりながら実施いたしておりますが、先生御指摘のようなさまざまな問題に適切な対応ができるように、これからも環境庁とも御協力、御相談しながら努力してまいりたいと考えております。
  118. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 田村先生のお話を伺いながら、地方分権推進委員会の答申を受けた対応であり、ただ思いつきばったりの法改正でないとの背景のもとに今日の法改正が求められてきたわけであります。  被害状況の報告を受けますと、私も同じ四国に育った人間としてその痛ましさが目の当たりに浮かんでまいるわけであります。こういう措置は何とかしなきゃならぬ。幾ら木を植えても、それがすぐ野生鳥獣の被害に遭って、植えても植えても撲滅するような形ではいけない。これに対応していかなきゃならないけれども、二分の一補助程度のことでは、幾ら林業を糧としてやっていこうと思っても生活の糧にならないというような感じもいたしたわけでありますし、また林野行政の中でもそういうことを考えてやっていこうということでありますから、農林、環境ともどもに力を合わせてこの目的を達成しなきゃならないんじゃないだろうかと思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、人間がこの世の中に生きていくわけでありますから、野生鳥獣との共存ということは言うをまちませんけれども、野生鳥獣と人間との接点を十分理解した上で今回の法改正がなされていかなきゃならない。すべてが完備されたから、さあ法律をつくろうといってもできないわけでありますし、また小川先生の北海道と四国の高知県とではやはり地域差があるわけであります。地域の実情にたけた分権委員会の中で、大変な知識を持った、また経験を持った方々がおられるわけでありまして、その意見を体しながら事の処理に当たっていかなきゃならないという使命感に打たれたわけであります。  感想を漏らしまして、答弁とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  119. 小川勝也

    ○小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。  この法案、いろんな方からいろんな御意見を私どもにもいただきまして、いろいろ勉強してまいりました。そして、環境庁方々にも再三にわたり御説明を伺いました。わかってきたりわからなくなってきたり、さまざまないきさつを経ながらきょうを迎えたわけですけれども、実はいろんなことがわかってきたんじゃないかと思うんです。その中で議論がかみ合わない部分がたくさん出てきました。  なぜかなと思いますと、この間も少し申し上げたんですが、鳥獣をどう保護していくかということと有害駆除をどういう形で行おうかということ、あるいはスポーツとしてのハンティング、これが一つごっちゃになって議論されていること。それから、北海道の一部に見られますように、爆発的に増加している動物もいれば、あるいはこのままでいくと絶滅してしまうんではないかという声さえある動物まで一緒に議論されておる。そんなところに問題があるのかなというふうに思っています。  もっと分けて、こういう場合にはこういう対策、あるいはこういうときにはこういう解決の方法があると、細々と話し合いをしていくことによって議論がもっとかみ合うんじゃないか、こんな感想を持たせていただきました。  結論から申し上げますと、そんな配慮や、今、田村委員とのやりとりにあったように、他省庁との協議とかもっと力を合わせてこんなこともできるんじゃないかということが少しおろそかになっているんではないか。地方分権することに対して一〇〇%反対するわけじゃありませんけれども、分権することによって物すごく心配なことがある。あるいは準備ができていないんじゃないか、お金の問題はどうなのか、さまざまな問題がある。そんな観点から疑問を持ってこの法案を現在までのところ見させていただいております。  今、長官からも少しありましたが、この法改正、なぜ今の時期にこの内容の法改正なのかなというふうに考えてみますと、いろんな方がいろんなことを言いますので私の言っていることがすべてだというふうには思いませんけれども、いま一つ、例えば鳥獣によります農業林業被害を持っておられる地域の選出の国会議員が、そういう悪いやつらをもっと駆除できる方向で何とかならないものかという相談をする議連をつくった。そして、それに相まって、先ほど議論がありました地方分権推進委員会の方で、環境庁としても何か分権しろと。そういった議論がミックスして今回の法改正になったんではないか、そんな感想を持っています。御答弁をお願いいたしたいと思います。
  120. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 今回の法改正につきましては、平成六年に環境基本計画が閣議決定されておりますけれども、そこにおきまして、野生動物保護管理の一環といたしまして、適正個体数管理などを適切に実施する、またクマや猿などについて保護管理計画の策定、実施を進めるという考え方が示されておりまして、かねてから私どもとしても検討課題と考えてきたところでございます。  加えまして、その後、栃木県その他の府県におきまして、保護管理計画策定の機運が出てまいりました。  私どもといたしましては、できるだけそれを支援していこうということで、管理適正化事業と申しておりますけれども、人と野生鳥獣とのあつれきが深刻化している場合において、地域住民と野生鳥獣がいかに共生をしていくか、地域ぐるみでいかに野生鳥獣の適正管理を進めるかにつきまして、生息状況調査あるいは保護管理計画生息数管理あるいは生息環境の改善あるいは防止さく整備、そういった管理適正化事業につきまして、平成八年度から、環境庁としては一生懸命でございますけれども、合わせて二十の都道府県に助成をし、それによりまして何とかその各府県におきまして保護管理計画の策定が進んできているところでございます。  いわば人と野生鳥獣とのあつれきをいかに解消し共存を図っていくかということにつきまして、私どもとして年数をかけて具体的に検討をしてきた結果、やはり法改正、法律上の根拠がないと各府県における対策あるいは体制整備がなかなか進まない、また地方自治体におかれましても国の考え方を求めているということがございまして、私どもとしてはぜひこの法改正をお願いしたいというふうなことでございます。  加えまして、地方分権につきましては、いわば基本的な枠組みとして、国が鳥獣保護事業計画の策定の基準など基本的な基準をつくり、具体的な実施につきましては都道府県、またそこから委任される市町村ということでやってまいっております。  特に今回の地方分権推進委員会の御論議は、機関委任事務、本来国の事務であるけれども地方で実施している事務につきまして、それを仕分けして一定の全国的に行うべき事務については国の事務、これは国設鳥獣保護区の管理、許可等でございますが、それからその他都道府県が実施している機関委任事務につきましては原則として都道府県の自治事務、そういったようなものに仕分けをする作業が中心でございます。  鳥獣の場合は、従来から国と都道府県の権限関係が多少錯綜しておりますのでそれを明確にするというふうな要素もあわせまして入れておりますけれども、これまでの国と都道府県の役割分担ということをより明確にするということの改正でございまして、私どもとしてはむしろ積極的に進めてまいりたい内容でございます。
  121. 小川勝也

    ○小川勝也君 答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。今のような答弁があるからだんだんわからなくなってくるわけです。  それで、保護管理をしたい。北海道と栃木県が例に出されました。それは、有害鳥獣がふえていて駆除しなければならないということが明らかになっていて、この法改正がなされる前に各道県で独自に計画をやってもううまくやっているところなんです。  では、鳥獣の保護という法律ですので、何県の何という動物保護したいんですか。
  122. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 現在、各都道府県でいろいろ対策について検討しておりますのは、シカクマ、猿、イノシシといったようなものでございます。
  123. 小川勝也

    ○小川勝也君 この法律によって駆除をしやすくすることによって保護をする、こういう流れになるわけですね。だから非常にわかりにくくなると思うんですが、その辺をもうちょっと補足できますか。
  124. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 全体として計画的に生息状況を踏まえて、その望ましい地域個体群を設定し、それとの関係で生息環境整備防除対策とあわせて個体数管理を行うというものでございまして、駆除をするために計画をつくる、あるいは駆除をするために法を改正するというものでは決してございません。
  125. 小川勝也

    ○小川勝也君 科学技術とか研究とかいろんな言葉がありますが、自然鳥獣というのは手が加えられていないから自然なんであって、どこまで研究が進んでいるかわかりませんけれども、すべて人間管理するというのは非常におこがましいことだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  126. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 野生鳥獣と人とのかかわりにおきましては、先生おっしゃるとおりでございます。人間の側が緊張関係を持ち一定の距離を置くというのが野生鳥獣と人とのかかわりの基本だろうというふうに専門家、研究者等から私どももお聞きいたしております。  ただ、何もしないで放置しておけばよいというものでもまたないということも私どもはよくお話を承っているところでございます。
  127. 小川勝也

    ○小川勝也君 たまたま北海道日光周辺でシカとの共存が大変な課題になってきたので研究が進んでまいりました。しかしながら、今お話しになりましたそれ以外のイノシシとかクマとか猿とか、具体的な例が非常に乏しいと思います。そして、広くあまねく日本全体にそのことがわかる専門家がいるという状況には今はないと思います。それなのに、なぜ分権なのか。  例えば、今まで環境庁が八百数十億の予算全体の中で鳥獣保護にかけてきた予算というのは、年間どのぐらいだったんですか。
  128. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 環境庁におきます鳥獣保護関係施策の予算は、調査費、普及啓発費、保護管理事業費、国設鳥獣保護管理費、また施設整備・維持管理費等、合計いたしまして平成十一年度で十億一千万円ほどでございます。
  129. 小川勝也

    ○小川勝也君 北海道が今までこの法改正に先駆けましていろいろやってまいりました。午前中の参考人意見にもありましたけれども、北海道はどのぐらいお金を使っていますでしょうか。
  130. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 北海道だけの数字が手元に正確なものはございませんが、十五、六億円だったと聞いております。
  131. 小川勝也

    ○小川勝也君 環境庁が十億円しか使えないのに、各四十七都道府県にその考え方を押しつけて、北海道はもう進めていたからいいですけれども、ほかの県もそれに基づいて専門家を配置して各動物ごとに研究して、この動物はあと何頭撃っていい、この動物はもう撃たない方がいいということを決めるというのは大変大きな負担になると思うんですが、いかがでしょうか。
  132. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 現在、各都道府県におきまして狩猟並びに有害鳥獣の駆除ということを通じまして野生動物管理をやっておるわけでございまして、その中で特に著しい増加が見られる鳥獣、また急速に減少している鳥獣につきまして生息地管理被害防除、それから個体数管理を行うというのが今回の特定保護管理計画のねらいでございまして、対象となる鳥獣の種類につきましては現在までのところかなり絞られてまいっているところでございます。  各都道府県におきまして財政が大変厳しい状況でございますけれども、できるだけ体制整備も図りつつございます。そういう中で、研究者あるいは実務担当者もいわば業務を通じてだんだん専門家に育ってまいりまして、それぞれ何とか調査を進めているというところでございまして、かなりの対策が可能だというふうに考えているところでございます。
  133. 小川勝也

    ○小川勝也君 この委員会でも議論になりましたとおり動物はここから先は何県だという地図を持っておらないわけでございますので、もしそういう形で各県が保護管理計画をやるということになりますと、四十七の都道府県すべてに専門家がいないと成り立たないと私は思うわけであります。先般来の議論で言うと、いやここまでふえているけれどもまだ全部ではない。これは、例えば県境を共有している県が相談ができるようなところまで行かないと、四十七都道府県におろしてはならない課題だと私は思います。  それで、田村委員の発言とちょっと異なることを申し上げなきゃいけないかもしれませんが、ハンターのモラルの問題です。  私は、あえて申し上げますと、かつて秘書をやっておりましたときに京橋猟友会という、東京の中央区ですけれども、猟友会の名誉会長に私のついておった代議士がついておりましたものですから、総会に参加をしたりあるいはその後の懇親会で懇談をしたりと、非常にフレンドリーな関係でございました。その人たちが、これから申し上げるようなモラルハザードを起こしたようなハンターだったとは到底信じられないわけでございますけれども、今回の法案の審議に際しまして、いわば内部告発的なものまで含めまして相当の情報が私のところにもたらされております。状態状況をどの程度把握されておられるかなと思って質問したいと思います。  死体放置がたくさんある。特に北海道は、御案内のとおり撃った頭数がもう莫大なわけであります。そして、爆発的にふえているという報告もあります。一日に何頭も撃つことができたりするわけでございます。ある報告によりますと、報奨金をもらう関係で、証拠となる耳だけ持って帰ってお金をもらう、あるいは一番おいしい肩ロースのところだけはぎ取って帰る、あるいはこの前堂本委員から発言がありましたように鉛弾を放置して帰るなどという問題もあります。  この死体放置の問題をどの程度把握しておられますか。
  134. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 平成十年度に北海道庁が狩猟者の方にアンケート調査実施いたしました。それによりますと、そのまま搬出、搬送したという方が二七%、解体して搬出したという方が六%、先生おっしゃる解体して一部を持ち帰り、不要部分を埋めたという方が四〇%でございますけれども、解体したもののそのまま放置したという方も二四%おられます。  そういう意味では、七割程度の方が現場から搬出あるいは解体した後、不要部分などを埋めておるわけでございますけれども、全ハンターの方がそういったようなことを励行されているということではございません。一部のハンターの方につきましてのそういったモラルの高揚をお願いするということはございますけれども、ただ全般的にハンターの方のモラルが低下しているというところまでは言えないのではないだろうかと認識をいたしているところでございます。
  135. 小川勝也

    ○小川勝也君 私もすべてのハンターのモラルが低下しているとは全然思っておりません。保護あるいは駆除、それから当然ハンティングを楽しむ人たちもたくさんいるわけですから、これをすべて猟友会任せにしていいのかという懸念がございます。  今の死体放置の問題は、直接今回の法案には関係ありません。次からが問題であります。  クマ寄せの儀式を御存じでしょうか。
  136. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 文献で承知いたしております。
  137. 小川勝也

    ○小川勝也君 どういうことかといいますと、これは北海道だけだと思いますけれども、よく何々地区にクマが発生しましたというニュースがすぐ流れるんですね。ところが、僕はハンターではないものですからよくわかりませんけれども、クマを撃ちたい人はたくさんいるらしいんです。それもただ撃つのではなくて、クマが出てきてそれを射とめたハンターとなるとヒーロー扱いされるわけです。  これは内部告発の文書ですけれども、クマ寄せの儀式というのは何かというと、人が通りそうなところにハチみつやにおいの強い魚の干物などがばらまかれてわざとクマが出てくるようにするわけです。そうするとテレビがすぐ騒ぐものですから、あんな民家の近くにあるいはあそこは小学校の通学路じゃないか、あんなところにクマが来るようでは大変だということで猟友会の方に連絡が行く。猟友会の方はそれじゃ仕方ないなということで、やおら出ていってバンと撃つ。それで何人かで行くんでしょうけれども、小学生がかまれたら大変だったのに、撃ったAハンター、ありがとうございました、大変でしたね、こういうふうになるんだと、こんな話でございます。  これは当然すべての方がそうだというわけではありません。何が問題かというと、今の保護や有害鳥獣の駆除すべてが猟友会主導で行われているということであります。これは田村先生の先ほどの発言と相反するわけですけれども、私は、その中にやっぱり別な第三者なり、御発言がありました山をよく知っている方でもいいです、第三者のしっかりとした監視人が各エリアにいないとモラルの低下が甚だしいと思います。  いろんな文章があります。例えば、眠っているクマをわざわざ起こして撃つこともないじゃないか、こんなこともあります。あるいはわなはやめてくれ、こういう議論もあります。  私はなぜそんなことを申し上げたかというと、やっぱり爆発的なふえ方をしているエゾシカ、これは爆発的かどうかわかりませんけれども、ある程度駆除は仕方ないと思います。それどころか西日本一帯で言いますと、クマはおろかほかの動物も物すごく減っていると思うんです。ハンターの方々からもいろんな情報をいただきました。北海道のエゾシカと栃木県の一部のニホンジカを除いていうと、総体的に動物は減っているのじゃありませんか。局長、お答えをいただきたいと思います。
  138. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 北海道と栃木以外の動物が減っているのではないかということでございますけれども、私どもで保護管理的な計画を策定し、また生息調査を実施するといったようなことで、そういった事業をしております二十ほどの都道府県、もちろん西日本クマにつきましては生息域は分断され、なおかつ個体数を減らしておりますので、その対策も大事でございますが、それ以外につきましておおむね分布域が広がっておりまして、当然ながら個体数増加しておるということを聞いております。  したがって、ほかは全部減っているのではないかということは、少なくとも私どもの知る限りにおいてはそういうことはないというふうに考えております。
  139. 小川勝也

    ○小川勝也君 今、局長はふえていると言ったんですね。  私も自分で山を歩いたわけじゃないので、局長と論争するわけにいきませんけれども、東北から九州、中国地方、いろんなハンターの方から情報が入ってきているんです。「山から動物が消えている」なんという表題がついているのもあるんです。大体の人が山から動物が減っていると言っています。それから、この間私が触れました疥癬という病気ですが、これはイノシシにも多いのだそうです。そんな話もつけ加えておきます。  私は、この鳥獣保護法が出てきたときに、やっぱりツキノワグマが減ってきたのでクマ保護する法律かなと、こういう印象も受けたんですけれども、今答弁でしっかりあったように、ツキノワグマというか西日本クマ保護することも大切ですがと、何かわきに置いているんですね。やっぱりふえてきた動物を撃つことに主眼がある法律だなということが今はっきりいたしました。  それで、有害駆除の実態というのも大変なことだと思います。きょう午前中の審議にもありましたように、ハンターがいわゆる絶滅危惧種だと言うのですね。免許を持った方が二十二万人まで減ってきている、そしてその人口分布からいうと、何とかしないとその種が保存できない。そこまで来ているわけでございますし、その方々に頼り切りの鳥獣行政なんです。  そして、現場がどういうふうになっているかといいますと、詳しく調べたわけじゃありませんけれども、いわゆる山の入猟税がある、それからハンターの人たちは、猟友会として有害駆除に出かけたときもらうお金とか報奨金でぐるぐる回しの実態だ。これは、私はその場しのぎだと思います。  鳥獣保護をしっかりやって、今おっしゃるような保護管理をするということであれば、もっと別なところからしっかりとしたお金が私は必要だと思うわけであります。局長、いかがですか。
  140. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 入猟税につきましては都道府県の鳥獣保護行政の重要な財源でございますけれども、鳥獣保護行政の経費につきましてはそれのみでなくて一般財源からも充当されているところでございます。  また、絶滅のおそれのある狩猟者依存ではないかという御指摘でございますけれども、有害鳥獣の駆除といいますのは、市町村が実施主体となって、いわば地元の猟友会等に捕獲作業を委託して実施いたしております。また、猟友会あるいは狩猟者の方におきましても、数が減っている中で広域的な駆除隊を編成していただくとかいうことで、できる限りの協力をお願いしているところでございます。これらにつきましては、今後とも協力体制の依頼等推進を大いに図ってまいりたいと思っております。
  141. 小川勝也

    ○小川勝也君 現場ではなあなあになっているというのですね。これはある方の御意見を聞きますと、  過去の歴史の中でいろいろと利害がからみあったり、その利害を知らん顔をして利用していたり、それに知らん顔して乗っていたり、野生鳥獣との付き合い方の遅れがあったり、なあなあでして来たところがあったり、行政がまったく進歩しない事があったり、一〇〇%人間側の一方的な押しつけである有害駆除と言う概念の意識改革がまったくなされない事があったり、猟友会の運営費のウェイトが有害駆除費におんぶにだっこの泥沼に漬かりっきりであったり、有害駆除がある事で余分に遊べる事があったりで、 と。これは都合のいいところだけ読んだので問題ありますけれども、そういうなあなあの段階のところで、特に狭いエリアだとそうなんです。やっぱりしっかりとだれかが見張っていないと、ここにあるような泥沼になると思うんです。  この狩猟の現場に、もう一つ指摘しますと、例えば有害鳥獣駆除許可申請というのがあるんです。これが大体白紙でもらっておいて、事後報告である現場が相当多いというのは、局長どう把握しておられますか。
  142. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 適正に実施されているというように承知しております。
  143. 小川勝也

    ○小川勝也君 これは知らないでやっているんじゃないですか、局長。だらしないよ、これは。  大体、クマが出ました、では危ないから役場に行ってちょっと申請をもらってくるかといってやったんじゃ間に合わないんです。それに、有害だと思っているかどうかわかりませんけれども、クマをとりに行ったっていつもとれるわけじゃないんです。だから、いつも紙はもらっておいて、撃ったら事後に書くんです。それが大体日本全国の現場の実態だそうです。それは、猟友会に世話になっているからそれしかしようがないじゃないですか。  それともう一つ、地方分権も結構ですけれども、私は、今回の改正に当たって環境庁が言っています適正な保護管理あるいは個体数管理なんというのはお金がたっぷりかかるんだと思います。下世話な言い方をしますと、地方分権も何も必要ないんです、お金さえあればできるんです。そのお金がどこからも与えられなくて、やりなさいということだけ地方にやられてうまくいくわけがない。現状も泥沼のように猟友会に頼りっ放しです。猟友会のすべてのハンターがモラル低下しているとは言いませんけれども、この人たちは獲物が減ってきた、もっと撃ちたいと思っている人も中に抱えているわけです。そんな実態もわからないで能書きだけで地方分権だなんて言ったって、我々は納得できません。このように思うわけでございます。  それで、きょうの午前中の参考人質疑の私が決めたまさにハイライトだったんですけれども、この法改正で農業被害はなくなりますかという質問にお答えをいただいた。そうしたら、大体三・八人の方はなくならないと答えました。局長、どうでしょうか。
  144. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) きょうの参考人の先生方の御意見は、共通して農業被害をゼロにすることはできない、農業被害をゼロにしようと思ったらそれは野生鳥獣をゼロにすることだ、こういうことだと承知いたしました。  そういう意味におきましては、農業被害はなくならないものでございます。    〔委員長退席、理事太田豊秋君着席〕
  145. 小川勝也

    ○小川勝也君 私も全くそのように思います。現状から農業被害をなくそうとすれば、最後の一頭まで撃たなきゃだめだと思います。それ以外のことが大事なんであって、それ以外のことが欠落しているから賛成できないんです。  それと同時に、これはちょっとわき道にそれますけれども、今回の鳥獣保護法、今まだこの委員会に属していない議員はなかなか認識がうまく進んでおらないと思うんです。例えば、これは身内の話ですけれども、民主党の部会で反対が決まったよと言ったら、おれのところの地元も猿の害がひどいんだ、この一言で終わっちゃうわけです。ということは、この法律を改正すれば農業被害がなくなるような幻想を与えて説明をして回ったんじゃないですか。  私のところは御案内のとおり北海道ですので、シカの害は最もすごい、農業被害額も物すごい。私は何度も現場にその視察に行っている。私がやっているので、おまえ選挙区大丈夫かとよく言われる。それなのに私はこの法改正を疑問視しなきゃならない。もっとうまくつくってくれればいいじゃないかと僕は思うんです。  それと、おこがましいですけれども、私どもの民主党は自然環境を保全する党だと言われている。逆の観点からいうと、自然保護法じゃなくて鳥獣保護に関する法律を反対できるのかと。こういういわゆる二枚舌的な説明を受けながら戦々恐々としているわけでございます。  この間から申し上げているとおり、野生鳥獣を保護することと鉄砲で撃つことを混同しながら一本の法律に混在しているというのは、今までの現状が、私が指摘しましたとおり、いわゆる有害駆除の現場が猟友会と町役場がなあなあで、それでいいというならば私はそれでも結構かなと思いますけれども、新しい時代の鳥獣との共生とかあるいは有害駆除とか、そういうものを模索しようとするときには、おのずから限界があると思います。もし何か御答弁したいことがあれば。
  146. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 自然生態系と野生鳥獣とのあつれきをいかに解消するか、また地域社会と野生鳥獣とのあつれきをいかに解消するかということにいろいろ苦心をした結果、地域ぐるみで野生鳥獣の適正な保護管理を進めるということがいわば野生鳥獣の保護管理につながり、また地域社会におけるあつれきの解消になるということで、各府県において適正な保護管理ということでの推進がされておりまして、それに対する法的な根拠づけをお願いしているものでございます。  狩猟者依存というお話でございますけれども、現在いわば野生鳥獣とのかかわりにおきましては、非常に知識を持っている方々一つが狩猟者でございます。それから自然保護研究者、これも数は少のうございますけれども、最近数を、各府県における対策の推進に合わせまして、現場訓練を取り入れまして、非常に専門家もふえてまいっております。  したがって、そういったような方々とよく連携をとりながら、この対策の推進に努力してまいりたいと思っております。
  147. 小川勝也

    ○小川勝也君 次の質問に行きたいんですけれども、ちょうど思い出したことがあったので、通告していないんですが聞いておこうと思います。  きょう午前中の参考人質疑の中で、答申が出される前の検討会が非公開で行われた、そこに自然保護を代表する方々が入っていなかった、そんな話がありましたが、実態はどうだったんでしょうか。
  148. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 環境庁の検討会の中には、ちょっと今名簿は手元にございませんけれども、自然保護団体の方も入っていただいております。
  149. 小川勝也

    ○小川勝也君 なぜ非公開にしたんですか、今どき非公開というのは余りはやっていないんですけれども。
  150. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 審議会はもちろん公開でございますけれども、基礎的なかつ内部的な検討をするということで、当時は非公開としたというふうに承知いたしております。
  151. 小川勝也

    ○小川勝也君 まだ疑問は尽きないわけですけれども、それで私が先ほど申し上げました足りなかったことというのと、あと動物ごとにさまざまな解決方法があると。  シカの場合には、先ほどの午前中の質疑でも明らかになったように、元来山奥にすむべき動物じゃなかった。それに比べまして、例えばクマとか猿においては山の奥の方に適切なる広葉樹がまじった居場所があれば里におりなくなるという科学的なデータもそろっているようであります。今回の法律の中にも若干触れられているように感じますけれども、ここの部分が非常に足りないんだと思うんです。  きょう午前中の羽山参考人も指摘をされておりました。駆除が前面に出ましてほかの大事な観点が欠落している。例えば生息地をどういうふうに管理していくか、あるいはつくっていくか、このことが非常に欠落していると思うんです。  特に、山奥に猿がすめるような場所をつくる、あるいは熊がすめるような森をつくるということになりますと、これはまた人的資源もお金も大変だと思うんですね。この辺はどのように考えたらいいでしょうか。
  152. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 生息地保護整備につきましてのお尋ねでございます。  まず、環境庁といたしましては、鳥獣保護区あるいは休猟区などの適切な設定あるいは管理によりまして生息域保全していくということが大事だと考えております。また、鳥獣の生息に適した樹種の植栽、育成ということで生息環境整備を図っていくことが必要だと考えております。  これらにつきまして、環境庁管理適正化事業におきましても、いわばモデル的なケースとしての広葉樹の植栽あるいは果樹その他を植えるといったようなことで生息環境整備調整をしているところでございます。
  153. 小川勝也

    ○小川勝也君 これは、法改正された後はだれが主体となってその事業を行うんですか。
  154. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 計画策定主体であります当該都道府県でございます。
  155. 小川勝也

    ○小川勝也君 環境庁が十億円しか予算がなくて、各県にそれを全部投げて保護管理生息地をちゃんと管理してくださいなんと言って山奥に広葉樹あるいは果樹を植林するなんて、これは大変なことだと思います。ちゃんと予算の裏づけがないと、どの都道府県だってあっぷあっぷしているのに、環境庁法律をつくったらすぐ実行できるんですか。
  156. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 一部の鳥獣がふえてその保護管理対策に努力しております府県におきましては、財政事情が大変苦しい中で精いっぱいのことをやっておりますし、また鳥獣保護関係予算全般といたしましては、都道府県全体で四十億円余りの枠も現にございます。  さらに、先ほどもお話が出ましたような関係省庁との連携ということで、国有林につきましても複層林施業その他、いわば鳥獣保護区に指定をされているところその他の生息地につきましていかに野生鳥獣の生息環境として望ましい整備をしていくかということは、各府県の保護管理計画の裏打ちでございますので、その保護管理計画の策定過程、また策定結果を受けて都道府県における努力、また関係省庁における支援ということで努力をしていくものと考えております。
  157. 小川勝也

    ○小川勝也君 私は、改正をされた後は各都道府県が実施主体だと聞きました。各実施主体が他省庁と相談するんですか。他省庁と相談するのは環境庁でしょう。私はそう思います。  各県におろして、その各県が各省庁と相談しろと言うんですか。そんな斜めの相談なんというのはおかしいんじゃないですか。
  158. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 保護管理計画のうちの生息地保全につきましては、土地利用に関係いたしますので、各都道府県内における土地利用の言ってみますれば調整問題の一つでもございます。県庁内における自然環境部局とそれ以外の部局との調整もその段階では可能でございます。  また、環境庁との関係におきましては、保護管理計画について私どもとしても内容を承知いたしますので、環境庁を通じて関係省庁にも必要な協力を依頼することも可能でございます。
  159. 小川勝也

    ○小川勝也君 先ほど田村委員林野庁長官もお呼びになっておりましたけれども、私はあきらめてきょうはお呼びしませんでした。この前の質疑のときに全然打ち合わせができていないなというのが十二分にわかったからです。本当は環境庁がきちっと農水省なり林野庁と話をつけるべき問題であって、各都道府県に投げてから林野庁とも相談しろなんというのは責任放棄で何やっているんだという話だと思います。  それで、まず縦割りの弊害がこの法案に顕著に出ている。私が指摘したいのは、いわゆる開発の反省です。シカの場合はちょっと特殊なので外しますけれども、例えば高速道路あるいは林道、ダム、ゴルフ場、スキー場などができたことによって、動物が大変に迷惑をこうむったんです。そのことを全然顧みていない。建設省さん、ダムの開発はもうやめてくださいと言いましたか、言っていないと思います。それに、農水省にも林野庁にも、もっと広葉樹を植えるわけにはいかないでしょうかね、うちの猿たちも広葉樹がないと生きていけないんですよと、そういう打ち合わせをちゃんとやらないで、自分たちはもうできないし、予算は八百億しかないからといってぼんと都道府県に投げたのが今回の改正です。こんな改正じゃ私はだめだと思います。  それと同じように、農水省に対してはもう一つあります。  私は未来永劫とは言いません。時限を区切って、この法案の趣旨が具現化されるような四十七都道府県になるまでの間、私は農業補償の問題は欠かせないと思う。農業補償は絶対に必要だと思います。このことで強く農林水産省と話し合いをして、絶対の粘りでかち取ったなんという話は聞いていないですから。  その農業補償は必要かどうかということではいかがでしょうか。きょうは、参考人方々からはみんな必要だという意見を私は聞いたつもりでいます。
  160. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 都道府県が策定する計画に対して私どもはガイドラインをつくって示すというふうに考えておりまして、決して都道府県の事務であるから何も関与しないということではございません。  また、農業補償といったお話でございます。それは、個別に見てまいりますと、私ども、例えば鹿児島出水のナベヅル、マナヅルの場合には、農地へ生息域が広がるという関係で、農地を借り上げるとかいったようなことで個別に対応してまいっております。  また、農業補償問題につきましては、各種の共済保険の仕組みその他があるわけでございます。これらにつきましてはいわば個体数管理ということで、この対策をとりながら、今後関係省庁とも相談をして具体的に検討してまいりたいというふうに考えているものでございます。
  161. 小川勝也

    ○小川勝也君 先ほど、動物ごとにいろいろ特色があるという話がありました。そんな中で専門家がいる県といない県があるということで、いない県は、先ほど申し上げたような事情から猟友会の方々あるいは農業被害被害者方々、この人たちの声が非常に大きくなると思うんです。  例えばその地域のAという動物は、本当は少ないのに畑に出てきて食ってばかりいる。農業被害者は早く撃ってくれ、猟友会もわかった、撃つよと言ったときに、そのAという動物はそのまま撃たれてしまうんです。そんなことが生じることを私は物すごく懸念しています。  だから、四十七都道府県に、それは四十七都道府県に一人じゃ足りないと思いますけれども、人がちゃんといないでこのままずるずるの延長でこの改正を行うと禍根を必ず残すことになる、そんな確信を持っていますが、今のケースの場合はどうでしょうか。
  162. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 四十七都道府県全部にこの計画の策定を義務づけるという性格のものではございません。著しく増加し、あるいは急速に減少している鳥獣に着目しての特定の鳥獣についての保護管理計画でございます。  また、仮に鳥獣保護行政全体として専門家が不足しているという御指摘でございますならば、それはこれまでの行政の中で反省をされるべきものと思いますし、その中で、各都道府県におきましては職員の中から現場の体験を経て専門家としてかなり養成をしてまいっておりますし、また地元の研究機関あるいは大学等との連携によりまして、専門家となるべき方々のアドバイスも受けて対策を進めているというふうにも聞いているところでございます。
  163. 小川勝也

    ○小川勝也君 今いみじくも局長がおっしゃられたように、やっぱり今までの努力が足りなかったと言わざるを得ないんじゃないかと思います、先ほど私が申し上げた現状が当たり前だと思われているわけですから。  それは、鳥獣保護法が環境庁ができたときに農水省から受け継がれてきて、そのまま何もしないできたから猟をするハンターの数まで激減してレッドデータブックに載らなきゃいけないようになったし、山は荒れ放題だし、動物たちはすみかを失ったし、ハンターのモラルも問われてくるようになった、そういう反省をちゃんと謙虚にしてほしいと思います。  それと、大事なことなんですけれども、非常にお金がかかる施策というのがいろいろあると思うんです。例えば、木を植えたら食われないようにシールドをかぶせるとか、あるいは山に果実や広葉樹を植林するということ、これは非常に大変なことだと思います。もっとボランティアとかNGOの方々の協力を得る道はないのかなと思いますけれども、局長、いかがでしょうか。
  164. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) きょうの午前中の参考人方々も、NGOにおきます広葉樹、ドングリの木を植えるとかいったようなことで現に参画をしているように拝聴したところでございます。  特定保護管理計画の策定後の生息環境整備におきましても、いわば行政あるいは事業としての植樹に限らず、ボランティアの方々によりますそういったような生息環境整備も大変大事なものだと理解をいたしております。
  165. 小川勝也

    ○小川勝也君 どの動物がふえたか減ったかというのは、専門家がいる、いないという話になりましたが、ふえたらわかりやすいんです。ところが、減ったらわかりにくいんです。鳥獣保護法というのは何が大事かといいますと、ふえた方じゃなくて、むしろ減った方が大事だと私は思うんです。ところが、この法律というのはふえた方に合わせて全国一律になる。だから、減ったというのがわかるのは、ハンターの方もそうでしょうけれども、僕はやっぱりそれ以外の方の専門的な意見というのが必ず必要になってくると思います。  そんなこともそうですし、例えば北海道や栃木県はこの法改正がなくとも各道県で努力をして、あるいは専門家を育成してお金を使ってやっているわけです。北海道はもう、これはいいか悪いかは別として、あと何万頭撃たなきゃいけないというふうにちゃんと計画までつくってあるわけです。そういうところはこの法改正を本当に待ち望んでいるわけじゃないと私は思います。ほかの影響を受けそうな、あるいはエゾシカ以外の動物を抱えているところでどううまく調和を図っていくのかというのが問題なのであって、大丈夫なところを例に出して、やらなきゃだめだやらなきゃだめだというやり方は非常に問題があると思いますし、午前中のお話にもありました、鳥獣から農業被害を守るためにフェンスとかさくをつくったのはずっと昔からなんです。ある時期減ったのでそのことを忘れていただけなんです。  だから、もっとフェンスを張るとかあるいは補償制度を確立するとか、そしてその間に、もっと山と鳥獣を守るようなシステムを、もっと予算をとれるような環境庁を目指しながら、私はもっと後世の子供たちに胸を張って、一九九九年か二〇〇〇年かわかりませんけれども、改正をしたと言えるような鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の改正にしたいと思います。  今回の法改正はまさに拙速で、鳥獣保護という名前が泣いてしまうということを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
  166. 福本潤一

    ○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。  けさ、参考人からさまざまな意見を聞き、また今回二度目の質問をさせていただくわけでございます。今、小川委員からもありましたように、この法案は鳥獣保護法と略称されておりますけれども、かなり狩猟の色彩が強いということで、省庁の縦割り行政の中ではとらえ切れない問題がある。  特に、保護というものと狩猟というものが同時に併存してくる法案でございますので、私はこの問題に関してはほとんどこの法案審議に入る前は知っておりませんでしたけれども、具体的にルーツの面でちょっと事前に投げた質問以外にもお伺いさせていただきたいと思います。  大正七年に第三次狩猟法ができて、さらには昭和三十八年に狩猟法から法律の名称変更がありました。この鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律となったときの具体的な変化、これは何があったんでしょうか。
  167. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 昭和三十八年に狩猟法が鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に改正をされましたときの改正内容につきましては、鳥獣保護事業計画実施あるいは休猟区の新設、鳥獣保護員の設置あるいは都道府県鳥獣審議会の設置等が定められたものでございます。
  168. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう意味では、その以前の状況に新たなものが加わったときに、ここの混在が非常にこの法案をわかりにくくしているという意味では、我々の部屋にも環境保護関係の団体、NGOの方、かなりたくさんの方が申し入れをされておられまして、そして我々も納得いく理屈を聞かせていただいておるわけですけれども、環境庁の御答弁がなるほどと納得できるような答弁では今までの議論ではなかったということがあると思います。  そういう意味では、環境庁ができて、農林省、林野庁から環境庁に移管されたということでございますが、これは大臣、農林省から環境庁へ移管された、その法案がそういう形で混在してきているということで若干重荷になっておるのではないか、むしろ林野庁に所管がえをしてもらった方がいいというぐらいに思っておられるんじゃないかという考えを持ったりしますので、これは投げておりませんけれども、環境庁長官の御答弁をお願いしたいと思います。
  169. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 省庁再編成に当たって、林野の部門も環境の分野に同席すべきではなかったかという感じを私は終始持っておるものであります。ですから、今はある意味で過渡期的な対応しかできなかったんじゃないだろうか。  先ほど来論議を聞いておりまして、林野行政の中で産業としての林野を位置づけた時代はもはや行き去ったわけでありまして、今後環境保護のもとに、人間と環境の共生の中に森林のメリットを人間が享受していかなきゃならないわけでありますから、その辺の整理がいまだ十分できていないというのが現況じゃないだろうかと思っておるわけであります。今度の再編成に際しましても、共同の一つ管理事務というような形で置きかえられようといたしておるわけでありますけれども、その辺の事情等について、まだはっきりした体制が固まっておりませんので、ひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。  なお、先生がおっしゃいますように、これはどちらが管理しましてもこれから環境にも大きくかかわってくるわけでありますから、今回思い切った対応でもって環境行政の中でこの鳥獣保護法が議論されておる、ある意味においては環境行政のこれからの行く末を占っていただいておる、こう理解をいただいて御協力賜ればと思う次第であります。
  170. 福本潤一

    ○福本潤一君 今回の中央省庁再編法案、二〇〇一年には環境庁も環境省になるという中で所管というものの移管等々も起こってまいりますが、廃棄物行政、焼却炉関係、これが厚生省から環境庁に移管になる。  ある意味では、今までの環境行政は予算も少ないですし、他省庁がやっている環境の残ったところを環境庁が扱っておるというようなところで、省になるに当たって所管がたくさんふえるというのは二十一世紀に向けての環境行政で非常に大切なことだと思っております。ということで、水道行政等も厚生省から環境庁へ持っていったらどうかという質問主意書を昨日出させていただいたわけでございます。こういう再編の中で担当したものが、予算の規模、また管轄内にたくさんふやすこと以外に、やはり環境先進国としてでも対応できるような、環境行政をやれるような所管もまた権限も含めてこの二〇〇一年の中央省庁再編に当たっては考えていただければと思います。  それで、具体的な話として、やはり狩猟と保護というのが同時に絡んできて、これを計画的にワイルドライフマネジメントでやることでございますが、前回の質問では総務庁の北海道の監察結果に基づいて質問させていただきましたけれども、十二万頭おるシカのうち六万頭を殺す。ジェノサイドという言い方はしませんけれども、シカにとっては、えさが足りないから食べにいった、そうしたら殺されるということでございまして、ある意味では過剰防衛じゃないかという言い方をシカ立場に立ったら言えないわけではないという計画が県レベルで進む、また道レベルで進むということでございますので、そこの過剰防衛じゃないか、ほかの方法があるんじゃないかという考え方に対しての環境庁としてのお考えも聞かせていただければと思います。
  171. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先生も御案内のように地球の温暖化が叫ばれておるわけでありまして、その防止対策をいろいろと講じておるところであります。全国的に見ましても、昨今の気象状況も異変が起きておるんじゃないだろうか。  きょうの新聞にも出ておりましたように、二、三日のうちに十度も気温が変化するような毎日が続いておる地域も随分ある。東京でもそういう現象が見られておるわけでありまして、そういう温暖化された中に自然の生態の大きな変化が生じておると思うわけであります。昔は雪がたくさん降って、例えばシカの場合は自然淘汰がなされたわけでありますけれども、その自然淘汰がなされない状態になったわけであります。  かてて加えて、過疎現象が生じておりまして、今まで農家で管理しておったカキやクルミやクリなんというのがもう放置された状態になっておる。そうすると、そのところまでシカおりてくる状態になってしまって、その地域の作物が一瞬に荒らされるというような状況になっておるわけなんです。もう一つには、やっぱり杉やヒノキを植栽したために、クルミやクリという樹木が伐採され、また繁殖場所を失ってしまった。いろんな生態の変化の中に今日の状況が生じてきたんじゃないだろうかと思うわけであります。決して野生鳥獣を駆除するというような目的ではないわけでありまして、人間と野生鳥獣との接点がどこにあるかというところに思いをいたしてこの問題の整理に当たっていかなければならないと思っておるわけであります。    〔理事太田豊秋君退席、委員長着席〕  ですから、その接点の見出し方が非常に難しゅうございまして、例えばクマのような減少傾向にあるものはちゃんと管理していかなければならないということで今回の法律の中にもうたってあるわけでありますし、シカというような非常に繁殖力の強いものにはそれなりの制限を加えていかなきゃならない。ですから、先生がさっきお話しになりました北海道におけるシカの十二万頭を六万頭に半減させなきゃならないというのは、自然の他の現象を踏まえての私は処理策じゃないだろうか、こう思っておるわけです。
  172. 福本潤一

    ○福本潤一君 今、人と野生の鳥獣の共存ということで理念、哲学的なものを述べていただきましたけれども、その意味での答申が出て、けさほどの参考人の質疑の中で、五項目あるけれども、この方針が今回の法案には盛られていないというところが現実の大きな問題になっておるわけでございます。五項目の中を全部やっていると時間が長くなり過ぎますけれども、一つは例えば個体群の種の保存等の関係の中身におきましても問題を残している。ほかにも午前中の参考人意見の中に具体的に出ておりますので、よくよく読んでおいていただければと思います。  この法案の中に具体的に、議論の中に出てきているのはクマシカ、あと猿等々が中心でございますが、全体の類で言いますと鳥類、獣類、具体的にどういう種類についてこの法案は扱っているのかというのを、また基本に戻りますけれども、お伺いさせていただければと思います。
  173. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 著しく数をふやしている地域個体群に着目しているわけでございますが、具体的な対象鳥獣といたしましてはシカ、イノシシ、猿、クマなどが考えられます。
  174. 福本潤一

    ○福本潤一君 これは、狩猟のときに狩猟の制限、鳥類二十九種類、獣類十八種類、四十七種類だと書いておるんですけれども、これを具体的に言っていただけますか、時間を差し上げますから。
  175. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) これは鳥類が二十九種類、ちょっと長うございますが、ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ウズラ、コジュケイ、ヤマドリ、キジ、コウライキジ、バン、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラスの二十九種類でございます。  獣類につきましては十八種類でございますが、ノウサギ、タイワンリス、シマリス、クマ、ヒグマ、アライグマ、タヌキ、キツネ、ツシマテンを除くテン、オスイタチ、ミンク、アナグマ、ハクビシン、イノシシ、シカ、ヌートリア、ノイヌ、ノネコの十八種類でございます。
  176. 福本潤一

    ○福本潤一君 その中で、まず最初に、クマ保護なのかそれとも狩猟の側なのかということと、あと鳥類で保護すべき側と狩猟すべき側になるのかというのを、ガイドラインをつくられておったということですから、具体的にあれば明確に言っていただければと思います。
  177. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) クマの中でヒグマにつきましてはこの獣類の十八種類に入っております。それから、それ以外クマということで入っておりますが、実際問題として西日本のツキノワグマにつきましては、生息域が大変分断をされ、それぞれの地域個体群の数が減少しておりまして、その中で人里へ出て駆除対象になるというものもございますけれども、できるだけその数を減らして奥山放獣ということで山へ返すといったようなことを保護対策として実施しているところでございます。
  178. 福本潤一

    ○福本潤一君 今の四十七種類の鳥獣類が法案に入っているということはわかっておるわけです。  だから、要するにクマの場合は法案の対象であるということじゃなくて、捕獲側の状況になっているのか、それとも保護する側になっているのか、そこの点でございます。
  179. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) クマにつきましては著しく個体数を減らしている獣類ということで、特別保護管理計画対象、すなわち生息環境整備し、それから防除措置を講じる等によってむしろ生息数を回復させていく、恐らくそういったような種類に入るものと考えております。
  180. 福本潤一

    ○福本潤一君 ですので、ワイルドライフマネジメントの中で、今の状態では今後の長き存続が続かないという状態であるという認識だと思います。  そうしますと、そういうガイドライン、北海道ではこの法案ができる前に地方の具体的な計画ができたということだと思いますが、このガイドラインはいつつくられたものなんですか。
  181. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 北海道シカ保護管理計画につきましては、最終的な計画ができたのが直近だというふうに承知いたしておりますけれども、シカにつきましては策定をした、クマにつきましては北海道ではそういったものは策定をしておらないと承知しております。
  182. 福本潤一

    ○福本潤一君 先ほどの小川委員のときにも、事前にガイドラインというものもつくっておられましたと誇らしく言われたわけでございますから、いつそういうガイドラインまでつくられたのかという時期を聞いておるわけです。
  183. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 私どもが各都道府県におけるこういった特定の野生動物保護管理対策に対してお手伝いをしてきておりますのは、生息数の調査ですとか保護管理計画策定経費、生息数管理、そういったようなことを行う事業について助成をしてまいってきておるものでございます。
  184. 福本潤一

    ○福本潤一君 いや、時期はいつつくったのか、そのガイドラインは。
  185. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 失礼しました。  特にツキノワグマの個体群管理につきましては、平成六年にマニュアルをつくってまいっております。
  186. 福本潤一

    ○福本潤一君 こういうふうに簡単なガイドラインの時期と言っているのに、全然答えられない状況でこの法案を我々の中に審議していただきたいと出してきたところ自体が私は問題だと思うんです。  一貫して、基本的に法案に関して、事前に県計画のためのガイドラインをつくっていると。その時期すら、そんなものは別に事前に質問を投げなくても投げていても、すぐ即座に常識以前に答えられる状態のものに対しても、ある意味ではこの法案を出してきたときは本当に自分のところは所管したくないのじゃないかという、最初の質問はそこなのでございます。本気で通そうと思っていないのじゃなかろうか。また、ガイドラインをつくっているということは、逆に法案が通ると簡単に思って事前に県計画のガイドラインをつくっていたんじゃないかという問題がありますので、大いに反省していただいて、この法案というものがどうあるべきかというのを本気で再考していただきたいと思います。  具体的な話にもう入らせていただきます、聞いていたら何回も投げ返しばかりになりますので。  動物を狩猟するときに、具体的な話として人身事故が起こっている。猟区で人身事故が起こっている具体的な例がどういうふうになっているのかというのが私どもは非常に気になるわけでございます。というのは、私は何でもかんでも自然保護という考えははっきり言って持っていません。例えば瀬戸内海で人間がサメに食われるという事件がありました。それで泳ぎができない。いや、人間がサメに食べられるのも自然だなと言うた人もおりますけれども、やはりそういうときはきちっと対応しないといけないという考えを持っております。  そういう狩猟をしたときに人身事故の発生した件数と対策、また補償、具体例があればお伺いしたいと思います。
  187. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 過去五年間の猟銃などによります事故発生件数は、平均して六十三件でございまして長期的には減少の傾向にございますが、猟場での事故の大半は転倒などによる暴発事故でございますが、誤認による発射事故も見られます。  環境庁におきましては、狩猟に伴う事故防止ということで警察庁との連携を図りながら、都道府県、関係狩猟団体を通じて銃器の取り扱いに細心の注意を払うよう指導してまいっているところでございます。
  188. 福本潤一

    ○福本潤一君 もちろん、銃器の取り扱いについて細心の注意等々を言われるというのは当たり前のことですし、狩猟というものにおいて六十数名の人身が傷ついたと、非常に重いことだと思います。  その亡くなられた方には補償とか補償費とか民法上していくのかもしれませんけれども、具体例を私としては知りたいという思いがありまして、その対策と補償に関する具体例をお伺いさせていただきます。
  189. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 猟銃によります事故につきましては、大変不幸でございますけれども、猟友団体におきまして保険制度がございまして、そこから支払われているというふうに聞いております。
  190. 福本潤一

    ○福本潤一君 余り詳しくわかっていないのかなという一般的なお話だけでございますけれども、参考人の中には具体的な生々しい実態も聞いたわけでございます。  こういう人身事故が起こるときに、参考人の中にも基本的に土地利用の問題だというお話がありました。我々から見ますと、ここは禁猟区だとか可猟区だとか具体的な形で狩猟をしないとやはり今後も必ず起こるだろうと。要するに、動物を狩猟して将来の生態系を保存するんだと、そこの問題もありますけれども、ここは猟ができますよというところを可猟区という形で指定したり、猟区と猟期間を具体的に指定するというような形で狩猟を行うことができないのか、これを具体的にお伺いしたいと思います。
  191. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 狩猟の考え方につきましては、今先生お話しの点につきまして、かつて自然環境保全審議会においても検討された経緯がございますけれども、さまざまな議論が出まして集約に至らなかったという経緯がございます。  その場で出た大きな流れといたしましては、第一は、禁猟区のみを定める現行制度を基調にすることが適当であるという御意見。また第二には、可猟地域を指定する、ただし入猟については特別の規制あるいは許可を要しないというもの、また第三には、狩猟のために管理された猟区においては個別の入猟許可を行い狩猟を認めることが適当と、こういう大きく三つの流れの意見が出たわけでございます。  現在のところ、捕獲禁止の場所につきましては、鳥獣保護区、休猟区のほかに公道その他がございまして、これらの狩猟の場のあり方につきましては、今後の野生鳥獣の保護管理におきます一つ課題というふうに認識をいたしておるところでございます。
  192. 福本潤一

    ○福本潤一君 今後の課題ということで、三つの中で一度審議されたことがあるということでございますが、まさにそこのところの問題でございまして、人間の生命でございます。誤って撃たれたその家族、また当事者にとってはいかほどかと思われる問題に関して、日本で基本的には禁猟だと。銃刀法から見ても、我々日本はアメリカと違って銃を持たないことによって悲惨な人身事故、銃刀による事故というのは少ないと言われております。  基本的に禁猟にして、ここだけはいいよという形で定めるという形のやり方が一番こういう事故を発生させないことだと私など素人的にも思うわけですが、なぜそういう形で決定できなかったのか、そこの理由をお伺いしたいわけです。
  193. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 昭和五十三年当時、今、先生お話しのことも一つの案でございますけれども、幾つかの案がございまして、議論が百出して集約できなかったというふうに承知いたしております。
  194. 福本潤一

    ○福本潤一君 いや、そこのときに法律をつくる、また改正するときにこういった問題に関しては一つの方針としてこうこうこうだからこのときの議論を踏襲してやるんだという、こうこうこうという理由が聞きたいわけです。審議しました、決まっております、今回の段階では一切考えておりませんということではなくて、そこのところがあるから先ほど人身事故の具体例を新聞記事で一行二行で書かれる、本来はそんな問題ではないと思うんです。  それをなぜ基本的に禁猟という形にして、きちっと可猟区、ここはできますよというところだけを指定して、一般的にはだめだという形にできないのかと、理由を聞きたいわけです。
  195. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) そういったような禁猟区を原則にするという仕組みにつきましては、当然ながら一般の地域での狩猟が制限されるという面がございます。  従来、いわば一般の地域での狩猟につきましては特に制限を設けず、むしろ具体的な保護区等における禁止をしているというこれまでの経緯にかんがみまして、その考え、現状を大きく逆転するということにつきましては、むしろ今後の狩猟対策のあり方あるいは狩猟のありようを大きく変える問題であるということで十分な結論が得られなかったものと承知しております。
  196. 福本潤一

    ○福本潤一君 今の質問の答えでもそうなんですけれども、今回の法案、本当にある意味では非常にずさんな答弁だと思います。目的があってそうしたいというときに、大義名分をつくって、理由づけするときでももっとましな理由をきちっと考えるんです、普通は。それが答えていないというような状態、またもしくは本気で考えているのかなというような答弁になっているということをこの際自覚していただいて、この法案は慎重にやっていかないと生命にかかわることでございますし、また人命にまでかかわることでございますので、ぜひとも姿勢を正した上で、今後の質疑、質問にはお答えいただきたいというふうに思います。  以上で終わります。
  197. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただいまの福本潤一君の指摘のとおり政府委員におかれましては、よく勉強して、落ちついて答弁をしてください。  なお、今、福本潤一君の指摘もありますので、できますれば環境庁長官より御答弁いただければと思います。
  198. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 福本先生の御指摘はもっともでございまして、私も禁猟区であるとか可猟区であるとかいう区別をしっかりわきまえてハンターに事に臨んでいただかなきゃならないと常々思っておりますし、また誤射ということも私の県でもあった事実であります。  そういう点におきましては、誤射のない対策をいかように加えていくかということに心してこの問題に取り組んでいかなきゃならない、こう思う次第であります。
  199. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  午前中の参考人質疑は大変有意義で、また審議を深めていただいたなと、そう思っております。そういうことを踏まえて質問させていただきます。  鳥獣保護狩猟法は、たびたび指摘されているわけですけれども、狩猟等に依存して農林業被害を防ぐ側面が非常に強くて、野生動物保護に関しては不十分であるということです。同時に、我が国では、種の保存法とか文化財保護法とともに野生動物保護につながる数少ない法律であることも確かです。  自然環境保全審議会答申は次のように述べております。「野生鳥獣は自然環境を構成する重要な要素の一つであり、」「永く後世に伝えて行くべき国民共有の財産である。」、生物の多様性を確保することにとっても必要だ、こういうことですね。ところが、鳥獣保護狩猟法には、野生動物保護に関する最終的な責任が国にあるというその非常に大事な点、このことが明確でないと思うんです。きょうの午前中の参考人質疑でもこの点の指摘がありました。明文化すべきではないか、私はそのように思います。  今回の個々の改正のことを一つ一つ聞く大前提の話として、国の責任についてどう考えるのか、大臣にお聞きいたします。
  200. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 野生鳥獣というのは、我が国は六百以上の種類があるわけでありまして、それをいかに管理していくかということが問われるわけであります。今回のこの野生鳥獣の保護に関する改正にいたしましても、そういう観点に立って事の処理に当たっていかなきゃならない。  先生今御指摘の今回の法改正の趣旨はということになりますが、やはり今回置かれた人間とそしてまた鳥獣との接点を模索しながらこれらの問題を処理していかなきゃならない、こういうふうに考えておる次第であります。
  201. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 そういう観点に立ってと言われるんだけれども、その観点がないということがやはりこの間ずっと問題になってきた。国の責任、とりわけ私は環境庁の責任、そのことがやはり非常に大事な点だと思うんですね。ですから、私はこのことをまず最初に指摘しておきたいと思います。  国が責任を負うという点でも、条文というだけではなくて、やはりその実際の体制としても極めて弱い、これが現状だと思います。例えば、種の保存法を見ると、第二条には、第一項では国、第二項では地方公共団体、第三項では国民の責務、これをそれぞれはっきりと明文化しているわけです。さきの答申でも、個々の種や地域における個体群の維持が生物の多様性の確保にとって必要と述べており、希少性の有無にかかわらず、すべての野生生物保護し引き継いでいくのが国の責任である、この趣旨のことを述べているわけです。非常に大事な点なんです。  答申は、「国と都道府県との役割分担の考え方を法制的に明確なものとする方向で対処する必要がある。」としているわけですけれども、これは国の責任を国設鳥獣保護区や希少性の高い野性動物種のみに限定する、このように私は言わざるを得ないんじゃないかと思うわけです。地方分権に伴う改正では一層そうなるわけです。今度の内容を見てみますと、都道府県知事の権限対象種数は、現在の一割が何と八割に拡大するわけです。それで、環境庁長官の権限対象種数はどうなるかというと、九割から二割に激減するわけです。  そうした中で何が起こるかというと、国立公園内の野生生物に関する権限までも都道府県に移譲するということになるんです。私は、これを聞いて改めて驚いたんですね。国立公園内の野生動物について、国が責任を持つんじゃなくてこれも都道府県に全部移譲してしまう、これでいいのかなと、私は率直にそう思います。私は、国立公園野生生物事務所、これが国立公園内の野生生物はもちろん、広域的な野生動物保護のコーディネーター役を果たす、そういう役割がきちっとあってしかるべきだと思うんです。  これまでそうなっていたわけですから、やはり私はこういう形で都道府県に国立公園野生動物のそういう問題まで、権限まで移譲してしまう、それでいいのかと思いますけれども、大臣、その点はいかがですか。
  202. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先般、私も栃木県の中禅寺湖畔に参りましてその現状について見せてもらったわけでありますし、また知事さん初め関係者の皆さんの御意見も伺ったわけであります。  野生鳥獣の保護等々を見ましたら、やはり地域の問題として掌握しないと国全般の掌握という形にはならないと私は思うわけであります。ですから、地域の実情というのはその地域の人が一番よく知っておる、またそこに多くの専門家も育っておると思うわけでありまして、環境行政の中でこの問題を取り上げるならば、そのアウトガイドラインをしっかりと定めて、今後このような問題が起こったときにはこうしますよというところの施策を示しておくことが私は必要じゃないかと思っておるわけであります。  ですから、一つ一つ国の方で全部を掌握して云々というのはその限度にしていただいて、各地域地域性を重んじた対応をこの鳥獣保護法の中で、法としての執行をしていただきたい。決して権限を放棄したり、また全面的な移譲をしているわけではなくて、その地方の権限を生かして鳥獣保護というものがより完全なものになっていくように努力したいということで今回の改正をお願いいたしておるわけでありまして、機関委任事務にいたしましても、さように事の理解をしていかないと、全面的にそれじゃ委任したかといったらそうではないわけでありまして、その必要性があって機関委任事務という形になっておるわけでありまして、その辺の一つの仕分け、見分けをしていただければと思うわけであります。
  203. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 責任放棄にならないかどうか、私はやはりその点で大きな問題がある、そのことを指摘しておきたいと思うんです。大所高所から環境庁としてきちっとした形で指導する、そういう趣旨のことを言われたと思いますけれども、私はやはり非常に心配が残る、このことを指摘しておきたいと思います。  国の責任を国設鳥獣保護区や希少性の高い野生動物種のみに限定する、そういうことになりますと、これは国際条約との関係も出てくると思うんです。生物多様性条約、この絡みでどうなるか。私はこの精神に反することになりかねない、そう思うんです。それと、本当の意味での野生鳥獣保護になっていかないと思います。  この条約には、「生物の多様性の保全のための基本的な要件は、生態系及び自然の生息地生息域保全並びに存続可能な種の個体群の自然の生息環境における維持及び回復である」、そのことに留意すべきだということが明確に書かれているわけです。かなり具体的に生息環境保全、このことが言われているわけです。そして、締約国にそのことを勧告しているわけです。  生物多様性条約に指摘されているこういう内容を踏まえて、日本における野生動物保護を進める、このことこそ重要であって、この立場行政を進める、そうしたときに果たして今度の法案の改正という線が出てくるのかどうか、私はそこが非常に大きな問題だと思いますけれども、この条約との絡みについていかがですか。
  204. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 条約におきます多様な生物の保全を図るということを踏まえまして、鳥獣保護法におきましては、いわば狩猟対象となる鳥獣の指定でございますとか鳥獣保護事業計画の基準の策定、あるいは国設鳥獣保護区の設定といったような鳥獣保護制度の根幹にかかわる部分につきましては国が実施をする。そういった国の方向づけに基づきまして具体的に都道府県等が実施をし、相まって生物多様性が損なわれることのないようにしていくということでございます。  国としての役割をしっかりと果たして、生物多様性保全に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  205. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 その根幹にかかわることというのは、先ほどから話があるように、まさに国から都道府県に体制のないまま移管するというそういう中身だと思うんです。  私は、一つお尋ねしたいのだけれども、環境庁の資料によると、都道府県が想定する特定鳥獣、これについてシカとか猿とかクマなどとされていますね。日本哺乳類学会によると、今や日本の哺乳類の三分の一以上が絶滅の危機にさらされていると言われております。国による全国的調査で、これら猿、シカクマの頭数はどう把握されていますか。
  206. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 猿、シカクマの頭数でございます。  まず、シカにつきましては、それぞれの府県におきます保護管理計画等の策定状況を踏まえまして、それぞれの地域個体群現状把握されてまいっております。それらをベースにいたしますと、大体二十万頭からそれ以上ということでございます。それから、猿につきましては、各地域個体群がそれぞれございますけれども、全国の合計数という数字の集計までには至っておらないわけでございます。クマにつきましては、特にツキノワグマでございますけれども、全国で一万ないし一万五千頭という数字が報告をされております。
  207. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 頭数の把握というのは非常に難しいということはよく理解しておりますけれども、そういう頭数について猿についてはつかまれていないでしょう。それから、全面的にその数も把握されていないわけです、それぞれの地方の個体群の数等々で。ですから、私はまずこういう法律を出すときにはそういうことをきちっと把握する、調査する、このことが肝心ではないかと思うんです。やることがやっぱりあべこべではないかと思います。  特に種の保存法の第二条では、国の責務として「野生動植物の種が置かれている状況を常に把握する」、このことが決められているわけです。野生鳥獣というのは生態系の構成者であって、こういうことを正確につかむことなくして生物の多様性の維持、そういう点は図られないと思います。  そういう点で、やはり私は環境庁として大臣が責任を持ってこういう調査をきちっとやって、それで全体を把握してこういう法律を出す、それが順番だと思うんですけれども、今からでもそういう調査をきちっとやっていただく、このことを約束していただきたいと思います。大臣に。
  208. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 野生鳥獣の頭数調べということになりますと、これはなかなか建築で言う設計監理するような形で掌握することが難しいわけであります。しかし、大方の数の把握はしておかなきゃならないと思って、それは掌握をいたしておるわけでありますけれども、果たしてその掌握の中からどういう対応策を講じていくかということは今おっしゃったとおりでございます。  環境庁としてもそのような取り組みはしておるわけでございまして、その辺の理解が十分得られていないようでございますけれども、その点については事務当局の方からお答えをさせます。
  209. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 いいです。  私の理解が不十分なんじゃなくて、環境庁の調査が不十分なんだということを申し上げておきたいと思うんです。そういうことをきちっとやった上でこういう法案を出してみんなの理解を得るという、これが当たり前のプロセスであって、そのプロセスが今回欠けているわけで、私はそのことを指摘しておきたいと思います。  それで、私はつくづくこれまでの質問、審議を聞いて、今回の特定計画を設定する必要性、緊急性がどれだけあるのか、はっきり言ってそう思うんです。これまでだって法律があって仕組みがあって、そしてそのもとで都道府県でさまざまな形で計画が五年ごとに見直される等々が行われてきたわけです。ですから、なぜこういうことになるのかということを疑問に思うわけです。  私は、そこでちょっとお伺いしておきたいのは、やはり国の責任と都道府県の関係なんです。この問題で特定計画に掲げられている事項は、この法案を見ますと七項目ありますね。そこには優先順序は特に与えられていないと思うんですけれども、個体数調整もあります。それからまた、生息地保護及び整備も入っております。こういうことで、それを各県でどうぞ独力でやってくださいとおろしますね。そうすると、どういうことになっていくかというと、多くの都道府県が個体数調整に偏重していくだろうと思うんです。  なぜかというと、生息地保護とか整備、これは非常にお金もかかるし、それから体制も必要だからです。個体数調整というのはこれまで実施してきた鳥獣の狩猟とか駆除を強化すればいいわけです。ところが、生息地保護とか整備、これは都道府県に特別の予算があるわけじゃない、しかもそれに取り組もうとすると本格的な経験がない自治体が相当数だと思うんです。予算上の問題もある、土地利用に関する行政との調整の問題もある、土地利用者等々の調整もある。大がかりで非常に事務量が多い、そういう問題を抱えるわけです。  したがって、ほっておくと、今回の問題というのは国際条約で言われているような生息地保護とか整備、そういうところに行くんじゃなくて、専ら鳥獣の駆除、そういう方向に進んでいくと思うんです。私は、その点で今度の法案というのはやはり狩猟とか駆除で鳥獣を減らす、そういう点が非常にはっきりとあらわれているのではないかと思うわけです。  その点で私が述べておきたいのは、そういう問題点はやはりみんなで議論すればいろんな形で多面的に明らかになるわけです。きょうの参考人の質疑もその点で非常に有益だったと思うんです。ところが、いろいろ聞いてみると、きょうも話がありましたけれども、審議会の答申は民間団体から意見を聞いていない。それからまた、そういう審議の過程でも哺乳類動物保護に専門的にかかわっている団体は入っていない、したがって意見を聞いていない。そういうことが明らかになったと思うんですけれども、その点、そうですね。確かめておきます。
  210. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) いろいろ御指摘になった後、審議会の委員構成についてのお尋ね……
  211. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 構成はいいです。団体から聞いているか。
  212. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 審議会につきましては、公開でいろんな保護団体の方も傍聴に参加しております。また、意見につきましては……
  213. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 傍聴はわかっていますよ。意見を聞いているかと言っている。
  214. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 意見につきましては、先ほどの森林総合研究所の三浦部長さん、哺乳類についての専門家でございますが、その方の意見も聞いているところでございます。
  215. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は団体と聞いたんですが。専門家は入っているかもしれませんけれども、やはり団体。そういう点で言うと、大臣、これからのことを私は非常に考えるわけです。これから特定計画策定が行われていくでしょう。公聴会も開かれるでしょう。そのときに利害関係人意見をよく聞くということがあるわけですけれども、その対象として、今回の鳥獣保護法改正に当たっても活発に啓蒙活動をしたNGO、民間団体、こういうところに入っていただいて意見を聞く、これが私は当然のことだと思いますし、それがやはり民意の合意をつくっていく道だと思いますけれども、その点、大臣にお伺いいたします。
  216. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 今回の法律におきます公聴会利害関係人につきましては、関係行政機関、農林業団体、自然保護団体、狩猟者団体、こういったところから団体を選任して参画していただくということでございますし、公聴会利害関係人に選任されなかった方につきましても傍聴人として意見を述べることができることとされているものでございます。
  217. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、今言いましたように各地でいろんな形で行われると思いますけれども、その中に民間、NGO、そういう団体が入っていろんな活動をやっているわけですから、そこにしかるべき意見が反映される、その仕組みが非常に大事だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
  218. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) それぞれの果たす役割があるわけでありまして、私どもかねてよりNGOの活用というものについての指摘をしておるところでありまして、必要な場合はぜひそういう方たち意見も伺いたいと思っておるし、また民意というものを反映するならばそれらにかかわる団体からも意見を聴取すべきである、こう思っております。
  219. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ありがとうございました。  それで、農林業被害、これが非常に大きな問題になっておりますし、またその立ちおくれも言われております。東京でも奥多摩なんかでは猿害、伊豆大島ではリスの害があって、これも大きな問題になっていて、私も視察いたしました。こういう問題を考えたときに、野生鳥獣の農林業への被害の対応としては農水省の関係になるんですけれども、単に窓口になっている農産園芸局とか林野庁の一部局という対応では済まないだろうと私は思うんです。やはりこれは林野庁全体で取り組むべき非常に大きな課題だと思います。  私は、そこで農政改革大綱、農政改革プログラム、こういうのを勉強させていただきました。この中にはしっかりと「農業生産の振興と農業経営の体質強化」、その中に「鳥獣被害の防止技術の確立と防止施設の整備」、これが掲げられているわけです。ですから、さっきから農水省と環境庁の関係がいろいろ出ておりますけれども、私はこの問題についていえば農水省が責任を持って対応する、予算もしっかりつけていく、このことがどうしても避けられないと思うんですけれども、その点、農水省にお伺いいたします。
  220. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 農政上の対応についてのお尋ねでございます。  今御指摘のありましたように、農政改革大綱にもきちんと位置づけております。それから、対応の体制といたしましては、三年前、平成八年に鳥獣害対策推進省内連絡会議というものをつくりまして、単に窓口ということでなくて、農産園芸局が中心になりまして関係局とよく相談をし、どういう対策をすれば有効であるか、また実際にどうするかということを論議の上、今御指摘のございましたように予算要求に結びつけて現実の執行に当たっている、こういう体制でございます。
  221. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 その対策、対応をもっと充実させるべきだというのが私の強い考えなんです。ネットやさくにどれだけの予算を割いているかということについても、前回の委員会で額も含めて答弁がありましたけれども、私はもっとそれを充実させていく、これが大事だと思うんです。農水省は、例えば構造改善局というところなんかでは膨大な予算を使ってむだと言われるような事業もやられている、そういう批判を招いているわけですけれども、その予算をちょっと割けば、本当に農民が困っているそういう対策に充てられるわけです。ですから、私はそのことを特に要求しておきたいと思うんです。  私は、今回、日本自然保護協会が出した意見書を非常に興味深く読ませていただきました。どういうことが書かれているかというと、野生動物による農林業被害防除のための基盤整備に対して公共事業予算の一部を振り向けるべきだ、こんなことを言われている。私はもっともだなと思いました。それからもう一つ、先ほどから議論になっておりますけれども、野生動物による農林業被害に対する保険制度の充実、損失補てん制度の検討を急ぐべきだ。私はこれはやっぱりぜひやっていただきたいと思うんです。  その点、御見解をお伺いしたいと思います。
  222. 高木賢

    政府委員(高木賢君) この被害対策の予算につきましては、基本的にはメニュー事業といいますか各種補助事業の中のメニューということで位置づけられております。したがいまして、それぞれの地元の方が事業の中でメニューとして選択して実行できる、こういうシステムをとっております。これは、非公共事業だけではなくて、今お話しのありました公共事業の中にもメニューを設けておりますので、地元でいろいろな御調整はやろうかと思いますが、そういった要望がある場合には対応できる、こういうシステムをとっておるところでございます。  それから、被害対策につきましては、農業共済事業の対象になっておって、ほかの自然災害と同じルールに従いまして被害があった場合にはこれで対応する、こういうことにいたしております。
  223. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 その対策の強化を特に求めておきたいと思います。  それからもう一つ、専門家の配置の問題がきょうの午前中も議論になりました。地方にはほとんどいない。そしてまた、では国はどうかというと、やはりこれも大変な御努力があると思いますけれども、非常に限られている。  聞いてみますと、農水省の鳥獣被害対策研究研究機関というのは二つあるそうです。森林総合研究所と農業研究センター。そこでやっている研究者の数をお聞きいたしますと、森林総合研究所は、支所も含めて四百八十四人のうち二十五人。これは割合にして五%。農業研究センターは二百人のうちたった三人で一・五%。私は、それぞれの研究者は非常に努力されている、そのことは聞いておりますけれども、やっぱり数がそれでいいのか、そういう体制でいいのか。それから、ますます地方に移管する中で、国が指導する際に、環境庁がタイアップしてそういう研究が生かされる必要があると思うんです。  その点で、そういう体制の充実についてお伺いしたいと思います。
  224. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 鳥獣被害に関する研究者の数は先生の挙げた数字のとおりでございます。直接責任を持つ研究者はそういうことですが、今の鳥獣害対策につきましては、網とかさくとかいろいろなことがあるんですが、なかなか現実問題として、動物が賢いとかあるいはコストがかかるとかいろんな問題がありまして、研究としてはあらゆる面から総合的に研究する必要があるという段階だと思っております。  そういった意味で、例えば農業研究センターはたった三人という御指摘でございますが、平成十一年度からの研究には、動物の繁殖制御ということもありますので畜産試験場の専門家三人、それから生態系の管理という意味では農業環境技術研究所の生態の専門家三人、こういったような研究者を有機的に動員して当たっているわけでございます。  これからもかなり難しい研究問題がふえてきて、そういういろいろな専門家による総合的な対策も必要でありますし、それから他省庁、特に環境庁の適正管理研究、あるいは先ほどお話がありました農水省、林野庁で取り組んでいるいろいろな対策、そういったものと連携をとって研究に取り組んでいきたいというふうに思っております。
  225. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、この法案の問題については、やはり農水省に非常に大きな責任があると思っているんです、農業被害の問題等々についても。そしてまた同時に、環境庁が非常に情けないと私はずっと思っているんです。答弁も情けないけれども、しかしこういう法案を環境庁が出してきたということ自身が情けない。環境省に格上げされる環境庁の存在理由を示していただきたい、そういう気持ちをずっと持ってまいりました。  ですから、そういう点で言いますと、先ほど委員長から異例の注意があったと思いますけれども、そもそも環境庁が今度の法案を準備するに当たって徹底的に勉強が少ない、そしてまた調査も少ない。ですから、私はこの問題についてはやり直すべきだということを改めて痛感する次第です。国民の十分な合意を得る、そういう方向でしっかりとやり直すということが必要であって、調査のないままでこういう法案が出される、これはあべこべだと思います。  そのことを指摘して、私の質問を終わります。     ─────────────
  226. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、佐藤雄平君が委員辞任され、その補欠として内藤正光君が選任されました。     ─────────────
  227. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 人間と鳥獣の共生については大変重要な課題であるというふうに認識をしながら、その鳥獣の保護をどうしていくかという法律、そしてそれに伴って、増加し過ぎた動物についてどう保護管理をしていくかという観点で今回の法改正がなされているというふうには承知していますけれども、非常に保護の面があいまいであることは前回の委員会でも指摘をいたしましたし、きょうの参考人質疑を伺う中でもそのことを改めて確認したところでございます。  この法案の改正に至った経過と背景について、手短にお話しください。
  228. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 一部の鳥獣の増加あるいは著しい減少ということに着目して対策を講じている府県の中で、私ども管理適正化事業と申しておりますけれども、生息状況の調査あるいは生息数管理をする、そういったような事業を活用して保護管理対策が進んでまいっております。それによりましてかなりの組織、人員の整備も進んでまいっておりますけれども、やはり法的な根拠がないということが対策の推進のかなりの制約になっておるということをよく聞くわけでございます。  加えまして、人と野生鳥獣とのあつれきをいかに解消して地域住民と野生鳥獣との共存を確保していくかということは大変難しい問題でございまして、国としての具体的なガイドラインを示しながら、特定の個体群についての長期的な保護繁殖を目的とした保護管理計画の策定が必要であるというふうに考えまして、平成六年の環境基本計画以来、予算措置、調査事業等を実施してまいっております。それらをまとめまして、ぜひ今回の特定鳥獣保護管理計画の法改正をお願いしたいということで、今、検討会あるいは関係の審議会の答申をいただきながら改正案の作成に至った次第でございます。
  229. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 平成八年六月十日に「第八次鳥獣保護事業計画の基準について」という通達が出ていますけれども、第八次と銘打ってありますから当然第七次まであったというふうに思いますが、第七次、第八次の保護事業計画の基準ということで通達を出し、生息調査もしてきたのにもかかわらず、先ほどの同僚委員の質問に対しても、なおまだシカの頭数とか猿の頭数とかあるいはツキノワグマの頭数などは明快に把握をされておらない。三十何年間もやってきていてまだ何も実態調査ができておらないじゃないですか。環境庁、何をやっていたんですか、これまでの間。これらの反省がない限り、幾ら新たな法律をつくったってまた同じことの繰り返しです。  この第八次の事業計画の基準について出されて、その後のフォローをどうやっているんですか。
  230. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 個別の鳥獣の生息数調査につきましては、自然環境基礎調査で分布調査をいたしております。それぞれの単位面積当たりの生息数生息の有無が基本でございます。  それで、数の調査につきましては、これは本当に難しい調査でございます。最近になりまして、特に数をふやしている鳥獣に着目した地域個体群の調査が何とかできるようになってまいったものでございます。  第八次鳥獣保護事業計画につきましては、七次までの成果を踏まえて、八次における重点的な課題等を入れながら対策の推進を図る必要があるということで通知をさせていただいておるところでございます。
  231. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは、八次計画においては順調に計画おりできていると認識してよろしいですね。
  232. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 特に、渡り鳥等につきましても定点調査を拡充したりいたしまして、できるだけの個体数把握に努め、その成果も出てまいっておるところでございます。
  233. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 この八次の基準に従って、鹿児島や北海道や広島などではそれぞれの地域に対応した、いわゆるふえ過ぎたもの、それから保護しなければならないものという状況の中でそれぞれ計画が策定をされて、今まさにその実施がされている最中じゃありませんか。  ようやく緒についたところ、環境庁が示された基準に沿って新たな計画が策定をされて、そしてどう保護管理をしていこうかということでスタートしたばかりです。その成果も見ない中で今回の法改正に踏み切るという、ここが私はよくわからないのです。環境庁は自信を持って今回の八次の基準というのを示し、指導もしてきたんでしょう。そして、ようやくそのことが把握できるような状況ができ、削減すべきは削減するということで、北海道などは着実に十二万から六万に減らしていこうということで実施がされておるという状況なんでしょう。  それでは、現行の事業計画で新たな法改正によって補充される部分というのは何なんですか。
  234. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 保護管理計画の策定手順あるいは内容につきましての一定の水準を確保するということはございますが、特に一度任意の計画ができた場合におきましても絶えずモニタリングが必要でございまして、捕獲状況あるいは被害状況を見ながらその生息数管理を絶えず見直していくということが大事でございます。  この計画で新しい法律に基づくものといたしましては、そういった地域の実情あるいは生息動向に応じて機動的に対応できるような計画にしていくというものがお願いをしている法改正の内容でございます。
  235. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 地方自治体に専門官もいない中で、地方自治体にその権限をおろしたからといって機動性を確保するとは思えないんですよ。これは環境庁が専門でしょう。環境庁が専門なのに、専門家の皆さんがやってもなおかつ機動性の確保というのはなかなか難しいわけでしょう。そして、今基準の中にある環境庁の権限となっているものが市町村におりていった場合に、本当に実態の把握ができるとは私は思えないんです。  どんなにいい文書を書いておろしたって、自治体のところでそれを受けられるものがなければ、それはもう全く絵にかいたもちになってしまって、今よりもさらに困難になってくる。環境庁が力を抜いた部分だけ、力を抜いたと言ったら悪いかもしれない、権限を移譲した分だけ、もっといわゆる有害鳥獣の駆除の方に力点が置かれて、農林被害が起こるたびに駆除をするという悪循環が繰り返されて、そして最後にはトキのようになっていくんじゃないかというふうに私は懸念をするんですけれども、本当に大丈夫なんでしょうか。
  236. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 各府県の組織、人員体制につきましては、今の任意の計画の策定過程の中で一般の職員が経験を積んで専門家になったり、あるいは県内の研究所に専門家を配置したりということで、逐次体制整備が進んでおりますけれども、県内の理解をいただくという意味におきましても法定計画としてこれを立ち上げていく、見直していくということも勢いをつけるという意味で大変大事でございます。また、駆除中心というお話でございますけれども、中山間地域ではその駆除を担うマンパワーの確保もおぼつかない地域も多うございます。  また、国が手を抜くかというお話でございますけれども、北海道からお話の出ました高知の大変地形の急峻なところまで、地域の実情あるいはその地域の山岳状態の実情というのは、やはりその地域を所管しておられる都道府県知事さんあるいは都道府県の部局が一番よく知っているわけでございます。  私どもとしましては、国として大枠を示して、その大枠に基づいて各都道府県で具体的な計画を策定して見直していただく、その際のレベル一定以上にしていただく、手続も審議会あるいは公聴会といったようなことで、できるだけ広い意見を聞くような手続を担保するということでお願いしているところでございます。
  237. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 率直に聞きますけれども、各都道府県が計画は立てたけれども実際にはうまく推進できないというネックは一体どこにあるんですか。お金が足りないからじゃないんですか。
  238. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 私どもの管理適正化事業ということで、各府県で少ないところは二百万とか多いところは五百万とか使っていただいて管理計画、あるいはヘリコプターを飛ばしての生息数調査等を実施いたしておりますけれども、先生お話しのとおり、やはり先立つもの、財源の確保は大事でございます。  こういったような法改正によりまして、おかげさまでマスコミも随分関心を持っていただいておりますし、山の中の出来事をこういった国会の場で御論議いただくことで地域の限られた財源をある程度はここに集約するという効果もございます。御論議いただくこと自体が中山間地域に生活しておられる方々にとっての大きな励みでございます。  また、そういったことを受けて、各都道府県におきましても、保護団体と被害農家あるいは地域住民との調整は大変難しい問題でございます。できれば逃げたいという府県も少なくないわけでございますけれども、やはりそこはあいまいにせずに、科学的な知見に基づいて地域社会の合意形成を図っていく手段ということでぜひこの法律を使っていただく。国の枠組みが決まりますならば、それをいかに地域に当てはめるかという問題が残るだけでございますので、それに必要な財源措置をより強化していくことによりまして、現在以上に地域保護団体からも納得のいただけるような計画あるいはモニタリング、あるいはまたフィードバックということが可能になるだろうというふうに確信をいたしております。
  239. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 けさほどの参考人質疑の中でも岩手県の五葉山のシカ駆除計画についてスライドを見せていただきまして、それは計画おりきちんと実施をされてきている経過を見せていただきました。確かに農業被害もそれに伴って減っているというのをグラフでも見せていただいたわけですけれども、それだけでは農業被害というのは減らない。もう皆さん委員の質問の中にも、農業被害絶滅しなきゃだめだということになるわけです。  そうではなく、計画が着実に実行されていくためには一定程度の財政の確保というのは必要だということを今お認めになりました。その財政の確保が、今まで環境庁では通達を出して計画は立てるけれども、適正な財源がおりていかなかったという状況の中で、今度の法改正によってより明確に特定鳥獣の保護管理計画をつくらせる制度をつくる。その制度ができることによって大蔵省からの財源が確保できるということなのでございますか。
  240. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 御指摘のとおりでございます。  法定計画を担保するという意味におきましては、現在でも管理適正化事業ということで予算措置でわずかながら助成をさせていただいておりますけれども、きちっとした法律に基づく事業に対する助成ということで、私どもにとりましては財源確保の大きな後ろ盾になるものというふうに考えております。
  241. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 最初にお聞きしたときに、その法案を出してくる背景の中でそのことをなぜ言わないんですか。そこが第一の原因でしょう。実際にこの法律をつくりたいと思っている環境庁の一番の根本はそこでしょう。  そうだとするならば、今二十一世紀を目の前にして環境保全ということがどれほど政治の大きな課題になっているかということは、小渕総理大臣もよく御存じのとおりでございます。  そういう中で、環境庁から環境省へ格上げをするこの時期に、環境保護の観点に環境庁みずからが目を覆うような形で法律改正に踏み切るということ自体、私は納得できません。それだったら、大蔵省に対してどうして今まで、この八次計画を実行するためには予算の措置が足りないんだということを明快に資料を出して、どの地域に有害な生物が何頭いる、これを半分に削減するにはどれだけの予算が必要なんだということをきちんと出して大蔵省と折衝すべきです。それができれば策定された計画がきちんと実行できるし、皆さんが思っているように、地方自治体の受け皿がないところで地方自治体に全部を移管していくというようなこんな拙速な法案にしなくても財政措置というのはできると思います。  私たちも野党の立場ですけれども、そのときに本当に予算が必要であるならば、そのことを率直に言って資料を出していただければ、大蔵省とも堂々と折衝をしながら予算の確保をしていきたいというふうに思っています。そのことがない中で、本当に拙速で、駆除すればいい法律が先行するという、これは私は本当に問題だというふうに思っております。  今回の法改正はもう少しやっぱり時間をかけて、環境庁そのものももう少し根本から勉強し直し、八次の事業計画の基準が出された七次までの反省点というのをきちっと網羅して、そしてさらにどういうことが必要なのかということを私たち委員にもわかりやすく提示しない限りこの法改正には臨むことはできないと私は思いますが、何かございますか。
  242. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 激励をいただきまして、大いに予算要求に頑張りたいと思っております。  特に、現在の有害鳥獣駆除におきます課題が幾つかございます。透明性の確保、あるいは多様な意見をいかに調整するか、それから明確な目標に基づく計画的対応をいかにしていくか、多様な保護管理手段をいかに総合的に適用するか、モニタリング調査の実施フィードバックをどうするか等々大きな課題がございまして、それらにつきましては、この計画制度において枠組みとしては対応するように考えております。  したがいまして、この計画、この改正法をバックにいたしまして、ぜひ来年度の予算要求から大いに頑張ってまいりたいと思っております。
  243. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今回のこの法律改正に当たりまして、たくさんの自然保護団体、NGOの皆さんから要望書が寄せられております。それぞれ一つずつ全部質疑をしながら答弁を引き出してそれの要望にこたえるべきが私たちの筋というふうに思うのですけれども、限られた時間の中でそれぞれの政党が部分部分に皆網羅をして触れてきているという状況でございますので、私自身もそこにゆだねていかなければならないというふうに思っております。  最後に、環境庁長官、この法改正は、環境庁側から見たら予算確保の面で法文化をすることが本当に必要だというふうに思っておられるかもしれませんけれども、まだまだ勉強不足というふうに思っておりまして、もう一度考え直して、この法案はこの法案としてどう処理するかは後の問題ですけれども、もう一度検討をし直す必要があるのではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  244. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 大臣として、立場上、出した以上は皆さん方の御審議をいただいて御協力いただかなければならないわけであります。  しかしながら、この問題につきましての環境庁側の対応が不足であるということは否めない事実でありまして、どうも法案審議になれない点もございましてもたつきがあったということを私も担当大臣として痛み入っておるところであります。その精神というものは問題のある精神でないわけでありますから、その精神をぜひできるだけ生かしていかなきゃならない、こう思っておるわけであります。  私は、田村委員の先ほど来の質問を聞いておりまして、環境庁の言わんとするところの意見も出していただいておるなと。また、小川委員からも、立場立場ということもありましょうけれども、北海道被害というものも大きいものがあってそれらに対する対策を講じなけりゃならないという意見については、私は同じような方向性を持っておるんじゃないかと思っておるわけであります。ただ、その対応のための手段というものが私の方の一つの答弁劣りという形になってあらわれたんじゃないかと思っておるわけであります。  そんなことで、環境庁としては出した法案、わずかな法案でございますけれども、懸命に取り組んでやっておるというその姿を見届けていただいて、今後皆さん方の御指導、御鞭撻をお願いいたす次第であります。
  245. 泉信也

    泉信也君 環境庁は、人間の生存にかかわる植物、動物を含めた生態系の問題をいかに守っていくかという御努力をしてこられたと思っております。時には行き過ぎがあったかなと思うこともございましたけれども、大変御努力をいただいて環境省への昇格という話も出てきておると理解をするものです。  けさほどの参考人の御発言の中でも、整備第一歩だという評価をしていただいたわけでございまして、私も今回の法改正は決して百点満点ではない、先日来の御議論の中にもございますような幾つかの問題点は抱えておるけれども、第一歩として改正を実現すべきであると思っております。  そこで、農水省、林野庁の方にお尋ねをいたしますが、いわゆる森林あるいは農産物被害についてどういう具体的な意見が関係者から寄せられておるんでしょうか。全部というわけにはまいりませんが、もし幾つかお話をいただければ聞かせてください。
  246. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 私の方から、まず農作物の方の被害につきましてお話を申し上げたいと思います。  被害についての感じといいますか御希望は大別して三つぐらいあるのかなと、ややこれは私の独断にわたる部分がございますが。  一つは、先ほどからお話が出ていますように、自分たちが丹精込めてつくっておる農地へ来てもらいたくないというのがやはり大半を占めているんじゃないかという感じがいたしております。それから、生活がかかっておるわけでございますから、危ないと思えば防御という措置を講じないといけないので、できるだけその防御について効果的な方法がないだろうか。やはり、動物とは言いながら相当学習効果が上がったりするということもございますので、何か効果的なそういう手法がないか。三つ目は、万が一そういう被害があった場合に何か対策があるかどうか。  関心としては、おおむね三つぐらいに分けられるかなという感じがいたしております。
  247. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 林業関係の被害で申し上げますと、新しく植えました例えば杉、ヒノキの苗木、あるいはそれが何年かたった比較的まだ小さい段階でシカ等のけものが新芽を食べてしまったりあるいは皮を食べてしまって結果として植えた木が育たない、枯れてしまうというような被害でございます。  それから、山村で、私どもの担当しております特用林産物、シイタケ等のキノコ類あるいはタケノコ等についても例えば猿が食べてしまうとかというようなものが具体的な例でございまして、林業関係では鳥ではございませんで獣害が中心でございます。
  248. 泉信也

    泉信也君 被害金額とかあるいは面積等ということは既に資料をいただいておりますけれども、生産者にとってみれば大変腹立たしい問題であるということは間違いないと思うんです。これもけさほどの参考人の方のお話の中で、この問題は弱い者同士がいじめ合っておると。非常に扱いが難しい課題だと思うんです。一方だけに力をかせば済むというような話じゃないことは百も承知の上で議論をさせていただかなきゃならぬと思っております。  そこで、農水省、林野庁の皆さん方はこの法改正について環境庁にどういう注文をつけられましたか。何か際立った注文があったんでしょうか。
  249. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 私どもが承知をしております限りでは、審議会にこういう対応を諮問された後、さまざまな情報交換あるいは私どもで知っております例えば被害の実態とかそういうものをお聞きになったときに、情報提供等々で連携をしているといいますか、そういう対応をしたということは承知いたしております。
  250. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先ほど質疑にもございましたけれども、農水省の関係機関の森林総合研究所という機関に鳥獣保護関係の専門官もおりまして、環境庁の方でこの改正案を御審議になるに当たってそういった専門の研究者の御意見も聞いていただいたようでございますが、私ども鳥獣保護なり自然保護行政万般にわたって常時環境庁との連絡協議は行っております。  そういった中で、私ども格別に具体的な条文等について御意見を申し上げたというようなことはございませんけれども、私ども林業に対する被害を防止するために有効な手段を、鳥獣保護という視点との調和を図りつつ実現していただくことを御期待申し上げ、そういった視点からさまざまな意見交換をさせていただきました。
  251. 泉信也

    泉信也君 大変遠慮ぎみにおっしゃっていただいたと思いますが、私も山合いに育ったものとして自分の畑が荒らされることについては大変悔しい思いをした一人でございます。ですから、やはり農水省あるいは林野庁のお立場でどうやって被害を防ぐかということを生産者の立場に立ってこれからも発言をしていただきたい、こんなふうに思います。  けさほど来、三浦さんにおいでいただきまして貴重な御意見をいただきましたけれども、いろんな研究をしていただかなきゃならない。岩手での一つの例を挙げて御説明いただいた成果などは、私は随分研究の成果が上がってきておるな、それで十分だとはもちろん思いませんけれども、そういう評価をさせていただきました。この法律の改正を機会に関係の皆さん方、個体管理の問題あるいは生息地管理の問題等について一層研究をしていただきたい、こんな思いを持っております。  そこで、実はNHKの番組に「きょうは何の日」という放送がございますが、ちょうど先日の四月十七日という日は日本書記の中で鳥やけものの狩猟制限を行ったという記述があるんだそうです。これは西暦六七五年の記録であるということでございました。ですから、日本人の気持ちの中にはそうした思いがずっとあったのではないか、あるいは仏教伝来の影響を受けたのかもわかりません、あるいはお犬様みたいなばかげた話があったのかもしれませんが、日本人の心にはそういう優しい心があったんだと思うんですね。ですから、今回の法改正も基本的には決して狩猟だ駆除だということが先に立っておるのではないというふうに私は思っておるわけです。  そこで、具体的な実施をしていく上において権限を都道府県知事におろしていくということが今回法改正の一つの眼目になっておりますが、具体的に移されるもの、そしてその結果がどういうふうに影響してくると環境庁は読んでおられますか。
  252. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 現在の鳥獣保護、狩猟の行政につきましては、基本的な内容につきまして国が関与し、また実施につきましては都道府県の事務というふうに仕分けをしておるところでございまして、今回都道府県におりる事務といいますのは、この改正法によりまして新しくできます特定鳥獣保護管理計画の策定事務でございます。  またそれに加えまして、従来、国と都道府県の捕獲許可につきまして必ずしもその関係が明確でないというふうなことがございまして、今回整理いたしましたものを地方分権一括法におきまして、いわば絶滅のおそれのある種の捕獲許可あるいは国設鳥獣保護区の捕獲許可等につきましては国の事務、それ以外につきましては都道府県の事務というふうに整理をしているところでございます。これらによりまして、整合的な鳥獣保護管理計画実施がされるものと考えております。
  253. 泉信也

    泉信也君 条例の制定によって市町村に捕獲許可権限がおろされるというふうに伺っておりますけれども、このことが実は乱獲というか行き過ぎにつながるのではないかというようなことを心配される方があるのじゃないかと思うんです。  その点については、どのような見解を持っておられますか。
  254. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 現在、都道府県の事務になっております捕獲許可の一部につきまして、都道府県の規則によりまして市町村に委任をいたしておるところでございます。それが今回の地方分権法におきましては、条例を定めて市町村にその事務を処理させることができるということで、規則に基づく委任の事務を条例に基づく事務というふうに変更するという内容でございます。
  255. 泉信也

    泉信也君 法的な仕組みについては局長が今お答えいただいたとおりかと思うんです。しかし、専門家がいないとかあるいは鳥獣保護の意識が徹底していないという中で、今の段階ですぐ市町村までおろしたならば行き過ぎが起こるのではないかということについての歯どめみたいなものは何かお考えですか。
  256. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 現在、都道府県が市町村におろしております事務は、スズメ、ドバト、カラス、こういったようなものの捕獲の許可、駆除を中心として、府県によって若干出入りございますけれども、それらの事務につきましては都道府県が基準をつくりまして、それに基づいて市町村が捕獲の許可をするということで、都道府県の基準という担保がされておりますし、また渡り鳥等非常に重要なものにつきましては、環境庁からの緊急の指示ということで担保するようになっておるのでございます。  これらを通じまして、適正に事務が実施されるものと考えております。
  257. 泉信也

    泉信也君 けさほども私は申し上げましたが、こういう業務を自治体にお願いしていくということは、ある意味では理にかなっておることだというふうに思っております。  ですから、今問題なのは、人材がまだ十分でないのではないか、あるいは予算的に不足をしておるのではないかという、こういう問題が危惧されておるわけでありまして、方向性としては私は間違っていない、こんなふうに思っております。  そこで、この後こういうことをやっていって懸念されること、この法改正の先にまだこういうことをやらなきゃならないのではないかというようなお考えは、何かございますか。
  258. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 流れといたしましては、平成六年の環境基本計画、それから平成八年からの管理適正化事業によります各都道府県の中で、任意の生息数を調査した保護管理計画の策定の動きという流れがございまして、その不十分さをこの法改正によりまして担保していただこうというものございまして、私どもとしては先にというのは思い浮かびませんけれども、この問題につきましては生息環境整備個体数管理、それから人間の側の被害防除施設の設置という三つのものをバランスをとって、それぞれが大事でございます。  いろいろ御指摘されましたような過剰駆除といったような懸念はございませんけれども、万が一にもそういったようなことのないように明確な計画を策定するということが課題だと思っております。
  259. 泉信也

    泉信也君 生息地管理等三つ挙げていただきましたが、ぜひそういうことを環境庁が中心になって、農水省、林野庁の方とよく御相談をしながら進めていただきたいというふうに私は思います。  それで、先ほど来議員の御発言の中にもありました予算の確保等については、これは一環境庁にだけ押しつける問題ではない。当委員会がその必要性を認めるならば、先ほど大渕先生おっしゃいましたように、先頭に立ってやはり要求していくということを各委員も腹を決めて対処すべき課題だと私は思っております。いろんな意見がありましょうけれども、ぜひ環境庁はこの法案を通して、さらに鳥獣保護にもメスを入れていただきたい、このことを申し上げて、終わります。     ─────────────
  260. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、奥村展三君が委員辞任され、その補欠として堂本暁子君が選任されました。     ─────────────
  261. 堂本暁子

    堂本暁子君 前回に続きまして、私は鉛中毒の問題について質問をさせていただきたいと思います。  大臣、前回は、小渕総理大臣がロシアから来るオオワシやオジロワシを日本絶滅させるようなことはしないとおっしゃったということから質問を始めさせていただいたんですが、先日、紀宮様が、十八日が三十歳のお誕生日でコメントをなさった。その中で、鳥の研究をしていらっしゃるからでしょうが、鉛中毒のことを心配しているとおっしゃったんです。  御感想はいかがでしょうか。
  262. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先生、大変熱心に猛禽類の鉛中毒の問題について御指摘をいただいておるわけでありますけれども、私も先生のお考えと同感であります。紀宮様の御発言の中にもそういう趣旨があったということでございますが、やはり鳥類に哀れみの気持ちを持って人間と共生していく対策を講じるならば、鉛散弾による被害を早くなくしていく、それがための代替案を考えていくということに思いをいたしていかなければならないんじゃないだろうかという気持ちでいっぱいでございます。
  263. 堂本暁子

    堂本暁子君 鉛散弾についてはおっしゃるとおり本当に環境庁も御努力くださって大分前向きに対応してくださっているんですが、今問題になりますのは、やはりエゾシカを撃つライフル銃の弾、それから空気銃の弾、これについてはまだ何ら手が打たれてないわけなんですね。前回も申し上げたとおり、ワシは鉛が毒だということがわかりませんから食べちゃうわけです、カラスももちろん食べますが。  ですから、鳥獣保護法をもし改正するのであれば、今度は規制を緩和するわけですから、緩和するのであれば、一方できちっとライフル銃並びに空気銃に使う鉛弾は散弾と同時に規制するのでなければ不公平なんです。片方で緩くしておいて、どんどん使えと言って使わせておいて、そして一方で、環境庁は種の保存法もありますし、文化庁の文化財保護法もあるわけです。日本法律でそれだけ貴重な種だと、しかもこれは外国からの渡りの種であり、象徴的な鳥たちでもあるわけですね。鶴だって死んでいるわけです、タンチョウヅルだって。それから、東北やそういうところでも死んでいる。やはりそういうものを、ここでこの法律を改正することをおっしゃるのであれば、これは二〇〇〇年からでももう絶対に使わないと。人間の都合ばかりを大事にできないわけです。アメリカの方は輸出すると言っているわけですから、企業が。ですから、ぜひとも禁止していただきたい。  この間は私がたまたま出会った一羽だけをお見せしたんですが、こういう調子なんです。見てください。(資料掲示)  この調子です。すごいでしょう。これは北海道の釧路市にある野生生物保護センターで撮影したもので、三年間で解剖したオオワシとオジロワシ。この写真に写っているのは十九羽ですけれども、ほかにいっぱい死んでいるということです。  ここで大臣に注目していただきたいのは、ここにブルーの標識をつけています。このブルーの標識というのはロシアでつける標識です。この間たまたま私が会ったのは、これは環境庁の標識がついています。ここです。環境庁がつけた標識のワシも死んでいるわけです。環境庁はこういう標識をわざわざつけているわけですから、そのワシが死んでいることは環境庁は当然わかっているわけです。そして、一方、今のブルーの大きいのはロシアの方でつけている標識です。  それで、日本の総理大臣は日本絶滅させないと予算委員会で答弁されたわけです。だけれども、ロシアが標識をつけているのは、全部ロシアから来ていると思いますけれども、これは少なくともロシアから来たことは間違いない。ブルーの標識をつけています。これはSの9という番号がついているわけですから、だから証拠があるわけです。ロシアのにしても日本環境庁がつけた標識も両方ともある。  だけれども、それがこういう形で人間が見られるのはほんのわずかです。北海道の山は本当に広いですから、その中で私たちの道路からずっと先の方で死んでいる、山の奥に落ちている鳥は一体何羽いるのかわからないんです。  これはたまたま偶然にシカの死骸のところにオオワシが三羽、それからワタリガラス。(資料掲示)これはことしの二月十五日に知床で撮影されたものです。こうやって雪の中で食べているところです。これも背中にXの8という黄色い標識をつけておりますが、これは去年の夏、マガダン州で標識をつけたロシア人の研究者がこの写真を見て大変ショックを受けたという標識です。これはわずか半年しかたっていない幼鳥、まだ子供の鳥です。ですけれども、こうやってちゃんとここにつけて、これは生きていますけれども、シカを食べているわけです。これもシカの方は鉛弾で撃たれていることが確認されています。ですから、この鳥も鉛弾を食べなければ別ですけれども、食べたらいずれは死んでしまうということです。  それでは、これはシカの死骸です。(資料掲示)これは一月に阿寒湖の飽別の林道に放置されていたエゾシカをボランティアの方たちが回収しているところですけれども、これはワシ類鉛中毒ネットワークというNGOの人たちが軽トラックで半日で三十頭分集めたわけですけれども、ほとんどに鳥に食べられた跡があったそうです。骨と皮だけになっていた。この日はさらに、シカを一日で四十頭分をトラックに載せて回収した。そして、阿寒町に設置されているケージに捨てたそうです。これはNGOの人たちがそこへ行って死骸をトラックに載せるんですけれども、本来はこれを撃った人が載せることが規定されているんですけれども、それをやっていないわけです。ですからみんな死んでしまうということで、私はやはりこういうようなことが起こっては大変まずいと思うんです。  この鳥獣保護法を改正するのであれば、それはもう前々からみんなそのことを環境庁には陳情して陳情し抜いてきているところだと思いますけれども、私は、もしこれがきちっと決まらないのであれば法律は通してほしくない。さもなければ、みんな、鳥だけではないんです。どうしてもまたこれだけ鉛弾を撃って、いろんな意味で鉛弾が私たちの生活の周りにばらまかれてしまう。こんな恐ろしいことはとても許せないので、何としてもこれはきちっと、私は散弾と一緒ぐらいでいいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  264. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) オオワシやオジロワシの猛禽類に対して対策を講じなければならないというのは、先ほども答弁いたしましたように先生のお考えと全く同一でございます。  早くその鉛散弾を防止しなければならないという気持ちでいっぱいであるわけでありますが、私も何とかならないかということを事務当局に命じたわけでありますけれども、今使っておる銃をすぐ買いかえる余裕等々もないというようなこともあってハンターの反対等もあるというようなことも聞いておるわけでありますけれども、こういうものはもう一刻も早く対処していかなきゃならない、こう思うわけであります。  そこで、話を最後まで聞いてください。人の話を聞かずに笑ってばかりいたのでは私は答弁できませんから。  それで、私もこれは二年以内に処理できないかということを事務当局に命じたわけであります。それが危険とするならばその間に懸命な努力をして処置できるようにいたしたい、こういう返答もいただいたわけであります。  私がいつまでも大臣をやっておるわけではありませんけれども、一応ここで二年以内というものが区切れるならば、それは一歩前進したことじゃないだろうか、かようにも思っておるわけであります。  ですから、先生の意を体してやっていくと同時に、この委員会としてもいろいろ御指摘をいただいておるわけでありまして、委員会の御意見に従った対応を私は講じていこうと思っておりますので、今後御指導方よろしくお願いしたい次第であります。
  265. 堂本暁子

    堂本暁子君 大臣、散弾が二〇〇〇年からなんですけれども、それと一緒ということでよろしゅうございますね。
  266. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) ライフル弾の切りかえといいますのは世界的にもまだ例がほとんどないわけでございます。性能試験等まだ国内でも必要でございます。幸いにして、輸入体制につきましてはある程度の可能性がございます。今、北海道で鋭意そういった道を探っているわけでございます。  したがいまして、二年を目途にということでありますならば、何とかその二年というターゲットを念頭に置きながら努力してまいりたいと考えております。  加えて、余計なことでございますけれども、死体の処理の問題、鉛のライフル弾の破片が残っておらないエゾシカでありましても、本来オジロワシ、オオワシといいますのはいわば海のそばで主として魚類をえさにしている生態がございます。そのオオワシ、オジロワシが山の方で生息をするというのは、これはいささか、環境変化をオオワシ、オジロワシがどう受けるかということで、生態への影響もあるわけでございます。本来のあり方としては、死体の処理を適正に行うということが基本かと考えております。  それから、それまでの間におきましても、ライフル弾の鉛の破片による影響を何とか早く解消していくということにつきましても努力してまいりたいと考えております。
  267. 堂本暁子

    堂本暁子君 局長の御答弁だと、目途にということで、二年を目途と。散弾の場合も、来年を目途目途でずっと五年も六年もかかったわけです。ですから、今散弾は二〇〇〇年の秋から実行するとおっしゃっているので、はっきり何年のいつごろからかということを伺いたいんです。
  268. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 大臣命でできるだけ早くということでございますから、二年以内ということで、それはもうできるだけ早い、一年なら一年というような形で事を進めさせていくように指示いたします。
  269. 堂本暁子

    堂本暁子君 そういたしますと、今九九年の四月ですから、二〇〇一年の春にはということでよろしゅうございますか。
  270. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) その目標に向かって努力してまいりますので、御了承いただきたいと思います。
  271. 堂本暁子

    堂本暁子君 いろいろ御努力いただいたり、大臣が御決断くださったことは大変敬意を表したいと存じますが、なおかつ、今まで環境庁がもう一年延ばしにずっとなさった過去の経緯があるものですから、なかなか信用と言ったら申しわけないんですが難しくて、できればやはり本当にこれは附則ででも法律の中にでも書き込んでいただいた方がいいというふうに私は思っております。  なぜといいますと、今までは鳥獣保護法を改正する前の状態だったわけですが、改正されて、ですからことしになって爆発的にふえたわけですね。ですから、やはりそこはどうしても一刻も早くそれをやらなければいけないというふうに思います。  それから、もう一つは、今おっしゃいました死骸の方ですけれども、北海道の人に聞きましたら、耳一つ持っていくと四千円とったことの御褒美にもらえるそうで、これはNGOの人たちが死骸を集めているんですけれども、中には掘り起こして耳だけどんどんちょん切ってそしてそれを道庁へ持っていってお金をもらう。十頭で四万円ということになるわけです。今やそういうことすらしている。やはり大変にそこのところの北海道庁の方の監督も私は行き届いていないんじゃないかと思うんです。  ですから、死骸をまず処理するということを義務づける、撃つ方にだれか監督する人がついていくような形をきちっととるぐらいにまで厳しくしない限りは、これから二年間、今二年を目途にとおっしゃったわけですが、その二年間の間をどうするかということの次の対策が大事だと思います。やはり日本でこれは絶対絶滅させちゃいけないと思いますので、その二年間はどうなさるでしょうか。
  272. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 最初の質問でございますけれども、大臣が二年以内ということで一年以上のところでも頑張ってやっていこうということを命じると言ったのでありますから、先ほど総理が総理がと言っていますけれども、総理は大臣を任命したんです。字のごとく任せたわけですから、だから大臣が最高の決定機関であるわけでありまして、総理がどう言おうが大臣がこうだと言ったらその大臣の命に従うのが当然であり議院内閣制であるわけで、だから私が言ったことに対して不信感を持たれるようでは、この意が通じないわけでありまして、その点は十分ひとつ御理解をいただきたい、こう思うわけであります。  この大臣の言というのはおもしであります。
  273. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 死体の処理につきましては、北海道におきましても回収ステーションを急増させまして、できるだけ山の近くで回収できるようにしておりますので、そういったものの増設をさらに進める。それから、有害獣駆除といいますのは市町村が実施をいたしておりますので、市町村がお願いをして駆除していただくということで、それのいわば死骸の処理につきましても適正に市町村の責任でやっていただく。それから、狩猟につきましては、狩猟者を督励してその死体を放置することのないように、先ほどのお話がございましたときに調べたものでは、七割のハンターはちゃんとやっている、しかし二、三割のハンターが少しマナーがいかがかということのアンケートもございます。それの督励をぜひやってもらいたいと考えております。
  274. 堂本暁子

    堂本暁子君 大臣を信用しますのでというか、大臣がそこまで強くおっしゃったので、二年以内にこれは禁止になるというふうに考えさせていただきます。  それまでの処置ですけれども、そういうふうに道なり市町村なりに環境庁からきちっと何か指令をお出しになるとか命じるということをこれはもう絶対監督していただきたい。なぜなら、今七割とおっしゃいましたけれども、そうだったら三百メートルの間に二十九頭も死んでいるというのはちょっとおかしいわけなんです。私も実際にこの目で見ました。いっぱいあるわけです、死骸が。とても七割のハンターが持って帰っているというふうに思いにくいです。ですから、指示を局長名なりなんなりで必ずお出しくださいますか。
  275. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 北海道におきます鳥獣の管理の中で、エゾシカ保護管理というのは大変大事な問題でございますので、北海道庁も計画をつくってやっているわけでございますけれども、いかんせん、大変膨大な対象でございますのでいろんな問題が生じているわけでございます。よく連携をとりながら、私どももいろんな通知を必要があれば出すようなつもりでございます。きちっと連絡をとってしっかりやってまいりたいと思っております。
  276. 堂本暁子

    堂本暁子君 あと三十秒ありますから、その間に。  連携だけでは物足りない、やはりこういった実際に市民の方たち北海道で動いていらっしゃるわけです。その方たちにも環境庁としてはこうやって責任をとったんだということがわかるような、ただ電話で連携をとったとかそういうことではなくて、紙の上でもきちっとこういう指令が出ているということがわかれば、ハンターの方にもこういうのが出ているじゃないか、おかしいではないかと現場で言えると思いますので、きちっとした対応をしていただきたいと思いますが、局長、いかがでしょうか。
  277. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) お話でございますけれども、国と地方とのかかわりにつきましては、やはり地方自治ということで、それを基本的に尊重しながら共同でやっていくという時代でございます。したがって、環境庁北海道で一緒になって対策を進めていく、あるいは協力をしながら対策を進めていくということでありまして、こちらが指示をしていわば守らせるとか、そういうふうなものではなくて、道庁も一生懸命やっているわけでありますから、どの辺に問題があるかよく聞きながら、さらに技術的な指導ができることであれば私ども専門家とも相談しながら必要な指導もしてまいります。  大変緊急な対応ということで、北海道としても状況を総体につかみにくい中での対応だと思っております。きちっとした科学的な対策がとれるように私どもとしても行政機関の職員、知識が不足であれば専門家の応援も得ながら、どういう点でお手伝いができるか、しっかりと見届けてまいりたいと思っております。
  278. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。
  279. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  280. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 次に、住宅品質確保促進等に関する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。関谷建設大臣
  281. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) ただいま議題となりました住宅品質確保促進等に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  住宅に対する消費者の意識が高まる中、欠陥住宅問題等の住宅に関するトラブルが増加しており、建築に係る関連の諸制度連携をとりながら、住宅購入者等と専門業者の間の住宅に関する情報格差を是正していくことなどにより、良質な住宅ストックの整備を推進することが重要な課題となっております。  この法律案は、このような課題を踏まえ、住宅品質確保の促進、住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図るため、必要な措置を講ずるものであります。  次に、その要旨を御説明申し上げます。  第一に、建設大臣は、住宅の性能に関する表示の適正化を図るため、日本住宅性能表示基準を定めなければならないこととしております。  第二に、建設大臣が指定した住宅性能評価機関が日本住宅性能表示基準に基づく住宅性能評価を行い、標章を付した評価書を交付することができることとし、評価書が契約において交付された場合等には、表示された性能を有する住宅を完成させ、または引き渡す契約がなされたものとみなすこととしております。さらに、日本住宅性能表示基準に基づく評価について、業務の効率化を図る体制整備するとともに、日本住宅性能表示基準が予想していない評価方法について特別の定めをすることとしております。  第三に、住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図るため、指定住宅紛争処理機関などの紛争処理体制整備することとしております。  第四に、住宅の新築に係る建設工事の請負契約及び新築住宅の売買契約において、請負人または売り主は、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵を十年間担保する責任を負うこととするとともに、契約によって期間を伸長できる特例を設けることとしております。  その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  282. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十八分散会