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1999-04-15 第145回国会 参議院 国土・環境委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月十五日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  四月十四日     辞任         補欠選任      奥村 展三君     堂本 暁子君  四月十五日     辞任         補欠選任      泉  信也君     鶴保 庸介君      堂本 暁子君     奥村 展三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松谷蒼一郎君     理 事                 市川 一朗君                 太田 豊秋君                 小川 勝也君                 福本 潤一君                 緒方 靖夫君     委 員                 上野 公成君                 坂野 重信君                 田村 公平君                 長谷川道郎君                 山下 善彦君                 脇  雅史君                 岡崎トミ子君                 北澤 俊美君                 佐藤 雄平君                 弘友 和夫君                 岩佐 恵美君                 大渕 絹子君                 泉  信也君                 鶴保 庸介君                 奥村 展三君                 堂本 暁子君                 島袋 宗康君    国務大臣        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        林野庁長官    山本  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    説明員        農林水産大臣官        房審議官     大森 昭彦君        農林水産大臣官        房審議官     城  知晴君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 〇鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する  法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただいまから国土・環境委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十四日、奥村展三君が委員辞任され、その補欠として堂本暁子君が選任されました。     ─────────────
  3. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案の審査のため、来る四月二十日午前九時、本委員会林野庁森林総合研究所東北支所保護部長自然環境保全審議会臨時委員三浦愼悟君日本獣医畜産大学獣医畜産学部獣医学科野生動物学教室専任講師羽山伸一君、財団法人日本自然保護協会保護部長吉田正人君、財団法人世界自然保護基金日本委員会自然保護室員草刈秀紀君、以上四名の方々を参考人として出席を求め、御意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 小川勝也

    小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案について質問いたしたいところでございます。  この法案、私どもは略して鳥獣保護法と言っております。しかしながら、どこが鳥獣保護なのかなという疑問が素直にわいてきます。法律の沿革を調べてみますと、狩猟法から特化した法律である、こんな勉強もさせていただきました。狩猟法というのはあくまでも鳥獣を撃つ法でありまして、鳥獣を撃つ法律鳥獣を保護する法律一つになっている、このことが今国会におけるこの法案改正を非常にわかりにくくしている、そのことをまず指摘したいと思います。  私どもこの法案質問準備等を始める前に、どんな与件を持ってこの法律を持っていたか。北海道が私の選挙区でございますけれどもシカがふえ過ぎて大変な状況である、農業被害林業被害あるいは交通事故にまで発展をしているので、そのシカを少しでも適正に撃って殺してシカの数を減らすことによって、さきに挙げたさまざまな問題をなくしていこう、こういうふうにとらえておったんですけれども、なかなか奥が深くて、あるいは先ほど申し上げたような問題からも、もしそうであれば鳥獣保護法なんという名前はやめてほしいな、そういうふうに素直に思いました。  いろいろといきさつを聞いてみますと大変な御事情もあったかと思いますが、なぜ今この改正をするのか、端的にお答えをいただきたいと思います。
  7. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 先生お尋ねのとおり、鳥獣保護及狩猟法昭和三十八年までは狩猟法でございました。いわば日本天然資源でございます鳥獣につきまして、その増分を狩猟によって管理コントロールするということで、加えて狩猟自身がその鳥獣の存続を持続させるものにするというねらいで鳥獣保護及狩猟法ということに相なった次第でございます。  今回お願いしております法律改正につきましては、一部の野生鳥獣大変増加をいたしております。それにつきまして適正な保護管理計画が必要である。また、一部の鳥獣につきましてはその生息数を著しく減らしているところでございます。それの生息環境整備も大事でございます。それらの内容につきまして、いわば今日的な視点に立ちまして、狩猟あり方、また鳥獣保護あり方を踏まえた上でこういったような改正案をぜひ御審議願いたいということでお願いした次第でございます。
  8. 小川勝也

    小川勝也君 野生鳥獣生態がどこまでわかっているかということに関しては、私は非常に疑問があると思いますし、例えば今国会改正案に盛り込まれているようないわゆる地方分権の概念が加わってきますと、環境庁にさえも少ないのに、各都道府県にその専門家がいてほしいなと私は思うわけでございます。なのに、なぜそんなに急ぐんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  9. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) いわば野生鳥獣、特に我が国で現在草食獣というものが大変注目をされており、マスコミ等でもかなりの扱いを受け、例えば「シカの食害から日光の森を守れるか」といったような、県の自然環境課で五年ほど手がけて何とか管理する仕組みができつつあるような、そういったような時代でございます。  草食獣といいますのは、いわば自然、森林生態系の中では肉食獣によってコントロールをされているのが通例でございますけれども、残念ながら日本の場合はニホンオオカミが既に絶滅をいたしております。そういう意味では、全体としての草食獣につきましてこれまで主として狩猟圧等によってのコントロールがされてまいったわけでございますけれども、さまざまな要因温暖化によりますいわば環境変化、あるいはえさ条件が大変よくなってきたこと、その他等によりまして大変一部の地域でそういった草食獣増加が目立っております。シカ繁殖力は旺盛でございまして、森林を食べ尽くすということまで言われているところでございまして、いわば自然の生態系への影響あるいは生態系の攪乱というのが大変著しいということでございますし、また農産物への被害ということもあるわけでございます。  私どもとしましては、鳥獣保護あるいは野生動物保護といいますのは、そういった生態系バランスの中で位置づけられるべきもの、またやはり人とのあつれきをできるだけ少なくして、人と野生鳥獣との共存が図られるべきものというふうに考えてお願いしている次第でございます。
  10. 小川勝也

    小川勝也君 だらだらと答弁しないで、言われたことだけ端的に答えてください。  何を守るための改正でしょうか。
  11. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) いわば人とのあつれきをできるだけ減らす、また地域自然生態系バランスを維持する、こういったようなために一定の地域個体群の長期的な保護繁殖を図るための個体数調整、また生息地域管理等目的とするものでございます。
  12. 小川勝也

    小川勝也君 端的に答えてないじゃないですか、全然。  先ほど来私も指摘したとおり、局長も言ったとおり、今回の法律改正は、ふえ過ぎてしまった野生鳥獣自然環境へ及ぼす影響がある、いわゆる農産物を食ったり、木の皮を食ったりするのでそれを駆除するための法律でしょう、局長。では、何で鳥獣駆除法にしないんですか。
  13. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) いわば人とのあつれきを防止する意味におきましては、防除措置が大事でございます。また、野生鳥獣生息地確保という点においては生息地管理が大事でございます。また、個体数調整というものが大事でございまして、その三つを主たる内容とするものでございます。
  14. 小川勝也

    小川勝也君 きれいごとを言ってごまかしたってだめですよ。オオカミがいなくなって草食動物がふえ過ぎて、それを駆除して彼らの適正な生活エリアを守ると言ったんでしょう。駆除することが目的なんじゃないでしょうか。
  15. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 草食獣につきましては、えさのある限り繁殖を続け、森林を食べ尽くし、やがては大変なクライシス、群れの死滅へつながるといったような問題がございます。野生鳥獣の安定的な維持ということで、個体数調整ということも必要なものと考えております。
  16. 小川勝也

    小川勝也君 この法案を心配して、ある協会に属する理科先生が私の議員会館の部屋を訪ねまして、私に何を見せたかといいますと、理科教科書です。中学校の理科教科書生態系のところで、すべての生物はふえたり減ったりする、大きくふえると必ず減るんだと、そういったことが教科書に載っておりました。唯一の例外は人間だそうでございます。  そのことは御理解いただけますでしょうか。
  17. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) ふえたら必ず減るというお話でございますけれども、それはいわば環境制約要因の中で大変破滅的な群れの死を迎えるということは各種の調査が報告をされているところでございます。
  18. 小川勝也

    小川勝也君 例えば、北海道においてシカがふえます。激減する要因は何だと思いますか。
  19. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 先ほど来、環境庁局長の方からの答弁が少し要領を得ないようでございまして、私が補足させていただきますけれども昭和三十八年までは狩猟法で事の処理に当たってまいったところであります。  先生も御承知のように、戦後の日本状況というのはやはり社会経済発展というところに重きをなしておったわけでありまして、北海道にも諸所人口分布があったわけでありますけれども、御案内のように過疎化し、都市に流出する人口が多くなったわけであります。それがために、その過疎化した地域にはいろんな採餌というか食餌場があったわけでありますが、そういうえさ関係の場が広がるに従って動植物が増殖、増加したわけであります。  そんな状態が継続されておったものでございますので、それではということで、それからの歴史もございますけれども、今回の鳥獣保護法改正に至っておるわけであります。鳥獣保護法と申しまして……
  20. 小川勝也

    小川勝也君 答えになっていない。質問答えていないから、端的に答えてください。
  21. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) いや、先ほど来の答えの補足をさせていただくために、当初のことを申し上げたわけであります。  ですから、今こういう状態になっておるというのは、まさにシカがふえ過ぎたということでありますけれども、ふえ過ぎた原因というのは今も申し上げましたような原因もありますけれども地球温暖化したために、例えばシカの場合雪害によって死亡するということが多かったわけでありますけれども、その雪害による死亡が少なくなってしまった。そして、それがもう御案内のようにウラジロモミなんかの木を傷めてしまうというような結果になって、そこにはやはり人間シカとの調整をしていかなければならないということの必要性を感じたわけであります。  私も、先般、中禅寺湖へ行ってその様子を見てまいったわけでありますが、地元の知事さんを初めといたしまして関係者の皆さんが出てきて、何とかこれは調整していかなきゃならない。まさに人間動植物との共生の場をつくっていく必要があるということで、今回のこの鳥獣保護法改正が必要であるということを訴えられたわけであります。その間の事情を申し上げた次第であります。
  22. 小川勝也

    小川勝也君 端的に聞いたことだけ答えていただかないと質問権の侵害になると思いますので、委員長、御注意願いたいと思います。  私は、今の大臣答弁の中で、シカ大雪によって多く死んできたと、そのことをお答えいただきたかったわけでございます。人間動物の生命とその数を管理するということには限界があるということを申し上げたかったから、この質問をしたわけであります。  なぜかといいますと、何頭シカが生きているかということを数えることは私は難しいと思いますが、もし万が一できても、雪を降らせることが人間にできないからであります。今までは自然の摂理の中でふえ過ぎたシカは、えさがなくなったり、自然環境変化、例えば数年に一度の大雪なんかで激減をするわけであります。そういう自然の中に任されてきた野生鳥獣個体数管理を今回は生態系の頂点にある人間が神にかわって行おうとするゆゆしき改正であるから、そのことを指摘したいと思ったわけであります。  では、私はちょっと今大げさに言いましたけれども、さはさりながら、私はその個体数管理考え方もすべて否定するわけではありません。  それでは、例にお聞きをしたいわけでありますが、本州キツネタヌキ激減をしているという情報があります。どのように原因を分析されておられるでありましょうか。
  23. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) キツネタヌキ生息状況につきましては、環境庁といたしましては、自然環境保全基礎調査分布変化把握いたしておりますけれども先生お尋ねのその数を減らしているということにつきましては、私ども調査の限りにおきましては、必ずしもそのような傾向は見られないところでございます。
  24. 小川勝也

    小川勝也君 本州におけるキツネタヌキ疥癬という皮膚病が蔓延しているということは把握しておられるでしょうか。
  25. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 承知いたしております。
  26. 小川勝也

    小川勝也君 その疥癬という皮膚病から動物たちが肝機能障害に陥って、生息がかなり困難な状況に陥っているという状況把握されておられるでしょうか。
  27. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) そこまで把握しておりません。
  28. 小川勝也

    小川勝也君 では、別な観点から聞きましょう。  今国会に提出されておりますこの改正の中において、希少種と呼ばれる動物はどういうものを挙げておられますでしょうか。
  29. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 希少種につきましては、鳥獣分離範囲の中におきましては、一番数が少ないのはトキでございます。現在、三羽になりました。また、アホウドリ等は先般一千羽に回復したということでございます。タンチョウも七百羽に回復いたしました。  また、獣につきましては、イリオモテヤマネコ等百頭、ツシマヤマネコも九十頭程度といったようなことでございます。
  30. 小川勝也

    小川勝也君 いろんな人の話を聞きまして、私もすべてそれをうのみにしているわけではありません。環境庁は、日本に住んでいるすべての動物を自由に撃ち殺して、トキのように最後の一羽になったら膨大な金をかけてそれを保護するんだ、こういうやゆも聞かされております。  先ほど来、少しお話がありましたが、北海道シカがふえているのは、先ほど長官に御答弁いただいた内容だと思います。私なりに把握してみますと、例えば草地開発、特に北海道の東部は昭和三十年代にわたって酪農事業の開拓が行われましたので、いわゆる自然の原野であるとか小高い山がすべて牧場になりました。牧場になったということが、先ほど長官の御答弁にもありましたように、牧場に生えている牧草が彼らの格好のえさになってしまった。あるいは、地球温暖化影響もありましょうけれども北海道において大雪の回数が減ってしまった、そういうことも影響するでありましょう。もう一つは、減っているかふえているかということじゃなくて、山の奥にいて我々の目につかないところにいたはずのシカが出てきてしまったのではないかなという説もあります。  これは承知しておられますでしょうか。
  31. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 山の奥のシカが出てきたということは、私どもとしては承知いたしておりません。
  32. 小川勝也

    小川勝也君 いろいろなことが考えられます。例えば、原生林的な広葉樹林の中では、そこから与えられます木の実、ドングリ等シカえさになっている。しかしながら、日本全体でそうなったように、森林産業として、特に針葉樹を植えてそれを産業として成り立たせようとしたときに、彼らの食生活の場所である広葉樹が奪われて、その影響によって里に出てきた、こういう考え方があります。  これも把握、理解はできないのでありましょうか。
  33. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) その点につきましては、広葉樹林の方が針葉樹林よりも野生鳥獣生息につきましては条件がよろしいということは承知いたしております。
  34. 小川勝也

    小川勝也君 そうしますと、広葉樹を含んだ山があって、それを人為的に針葉樹林にしてしまったためにシカが里に出てきた、こういう考え方はできないでしょうか。
  35. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) シカ繁殖力は五年で倍増するほどの大きいものでございまして、いわば、逆にツキノワグマ等広葉樹の中で生息しておりますけれどもえさがないために里へ出てくるということはよく承知いたしておりますけれどもシカえさがないために里へ出てくるというようなことは私どもとしてはちょっと跡づけができておるものではないというふうに承知いたしております。
  36. 小川勝也

    小川勝也君 先ほどもちょっと触れましたけれどもシカ何頭いるかということを数えるのにいろいろなところから莫大なお金をかけてやっておると思います。  例えば、聞いたやり方で言いますと、単位面積当たりシカ頭数を数えて、あるいは望遠鏡で見たり空から見たりして、それで広い面積シカの数を類推、把握する、こういうやり方が行われているようでありますけれども精度はいかがな自信のほどでありましょうか。
  37. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 先生お尋ね航空センサスによる方法だと思いますが、それは通常、紫外線カメラを装置いたしまして、それに並行して目視を行いまして、目視の度合いと、紫外線カメラでいわば木陰に隠れているといったような鳥獣把握されますので、その単位面積当たりの比較をいたしまして全体としての数を推定するという方法がとられておりまして、それはかなり精度の高いものだというふうに理解いたしております。
  38. 小川勝也

    小川勝也君 それでは、北海道全体に何頭ぐらいいると把握されておりますか。
  39. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) これは北海道庁の調査でございますが、十二万頭プラス・マイナス四・六万頭というふうに聞いています。
  40. 小川勝也

    小川勝也君 それで、北海道ではこの法律改正される前から北海道独自で行動いたしておるように把握しております。北海道独自に、サービス的な言い方をすれば、この改正が待てなくて北海道独自のシステムを動かしてきたわけですけれども、それまでに何頭ぐらい駆除を行いましたでしょうか。
  41. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) お答え申し上げます。  平成五年から考えますと、合計で、平成五年が二万六千頭、平成六年が二万八千頭、平成七年四万頭、平成八年四万六千頭という数字でございます。
  42. 小川勝也

    小川勝也君 合計するとすごい数字になるわけですけれども、それで農業被害額は減りましたでしょうか。
  43. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 主として農業統計でございますけれども被害面積を中心に集計しておりますと、被害面積は拡大いたしております。
  44. 小川勝也

    小川勝也君 農業被害を少なくするためにやむなくシカ駆除する、こういうことであれば何とか理屈もつくのでありましょうけれどもお金をかけてシカ駆除してそれでなおかつ農業被害面積が広がっている、これはどう解釈したらいいのでしょうか。
  45. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) タイムラグの要素が多かろうと考えます。
  46. 小川勝也

    小川勝也君 今、十二万頭いるシカの数が多いか少ないかという議論は別にしまして、これは環境庁の方のお話にも出てくるわけですが、一度味を覚えてしまった、こういうフレーズがあります。そうしますと、すみにくい、えさを探しにくい山にいるよりも、牧草地牧草を食べたり、ビート畑ビートをほじくったりした方が安易にえさにありつけるわけですね。そういったときに、何万頭であれば農業被害がなくなるかというと、それはゼロにすることはできないと思うんです。  北海道で言うと、適正なシカ頭数何頭把握されていますか。
  47. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 北海道計画としては、当面の目標は六万頭に置いておると聞いております。
  48. 小川勝也

    小川勝也君 六万頭になったら農業被害が減る、そういうことですね。
  49. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 著しい被害額が生じなかった時代のおおむねの数字というふうに位置づけをいたしておると聞いております。
  50. 小川勝也

    小川勝也君 私は、北海道個体数管理というか生態把握の部分で先進地域だと思うんです。先進地域でさえも大変にノウハウがない中、やっとここまで来たわけであります。そして、四十七都道府県に権限を移譲するということで、物すごい危惧を持っておられる方がたくさんいると思います。  まず、専門家がどのぐらい育っているのか、この数字をお聞かせいただきたいと思います。
  51. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 各都道府県におきましてそれぞれ自主的な計画策定という動きがございますが、現在、二十ほどの都道府県計画をつくるということが進んでおります。  したがって、現在半分程度都道府県がそういう力を持っているということでございますけれども、そこにおきましては、いわば専門家養成確保、また大学等研究機関との連携ということで、科学的、計画的な保護管理を進めるための基盤整備を進めているところでございます。
  52. 小川勝也

    小川勝也君 では、各都道府県で個別にレッドデータブック的なものを持っている県はどのくらいあるのでしょうか。
  53. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 現在、十都県で府県版レッドデータブック作成済みでありますけれども、さらに二十九の道府県で作成作業中でございまして、合計いたしますと八割以上の都道府県作成済みあるいは作成中という状況でございます。
  54. 小川勝也

    小川勝也君 専門家がこれから育っていくように私は思っていますし、環境自然保護に対する考え方もここ近年急速にいい方向に向かっていると思うんです。ですから、専門家がもう少しふえてから、あるいは四十七都道府県に広く押しなべて配置が完了してから、あるいはレッドデータブックにあらわれるような希少動物をいろんな意味で配慮していかなきゃならないという気持ちが各県に全部出そろってから、本法律改正が行われればいいんじゃないかなと思うわけですが、それはなぜそうしないでこの場で急ぐのでありましょうか。
  55. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 自然の生態系の破壊といったようなことで、大変野生鳥獣増加が著しい傾向がございまして、一日も早くこういったような保護管理計画が策定できる法的な根拠をいただきたいと念願する次第でございます。
  56. 小川勝也

    小川勝也君 鳥獣保護、保護ですね。保護というのは駆除につながるのかどうかというのは私はわかりにくいですけれども、何か自然保護局長がやっていることは農業や林業を守る立場に立っているんじゃないかなというふうに聞こえてならないんです。農水省が農業を守って環境庁まで農業を守っていたら動物はだれが守るのか、こういう話になるわけであります。  それで、一つ、簡単な方法と言っては語弊がありますけれども、農業が大変な被害に遭っているわけですから、それはシカを担当する局長が、うちのシカが大変御迷惑をおかけしましたと農家の方におわびのお金をお支払いするのが本当のシカ鳥獣のために立った行政だと思うわけであります。  これは極論でありますけれども、そういう農水省に対する働きかけ、要請は行われたのでありましょうか。
  57. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 野生鳥獣に対する損失対応問題ということでございますけれども、農林業被害の増大で生じているものでございますので、まず農作物被害を減少させるということで対応し、その成果を見ながら損失対応問題についての検討を進めることが現実的だと考えておりますが、今後、都道府県、市町村等既存の事例を踏まえながら、農水省を含む関係省庁間で具体的に検討を進める必要があると考えております。
  58. 小川勝也

    小川勝也君 では、農水省にお伺いをします。  鳥獣等の被害から農作物等を守るために、どのぐらいの予算をどのように使っていますでしょうか。
  59. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 実は鳥獣によります農林業の被害、これにつきまして私どもはかなり前からいろんな防止策といいますか、それをみずから防ぐということの観点に立った対策を講じてきております。例えば防護さくを設置するとかあるいは鳥の被害から防鳥ネットで守るとか、そういうことをやっておるわけでございます。  そこで、そのような事業にかかる予算といたしまして、これは実はいろんな総合的なメニュー事業の中で、そういう被害が非常に顕著なところについては今申し上げましたようなさくとかネットが設置できるというふうな、そういう総合事業の中で対応しております。そういう総合事業の予算を積み上げますとこれは非常に大きなもの、例えば一千億とかそういう事業費になるわけですが、そういう中で、実際平成九年度にこれらの事業を活用いたしまして、今申し上げましたようなさくあるいはネット、こういうことで対応いたしました金額は十六億二千万円、それぐらいの水準でございます。  そういうことで、現地の実態なり地元の要望を踏まえまして、そういう総合事業の中にメニューとしてあるものを活用してそのような被害防止の対策を講じておる、こういう状況でございます。
  60. 小川勝也

    小川勝也君 鳥獣による農業被害等に対する補償的な政策はどういうふうになっているか、お伺いしたいと思います。
  61. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) これは農業という経済活動の中で、実は自然に生息しております鳥獣による被害でございまして、こういうものを直接だれがどういう形で補償するかというのは非常に難しい問題になるわけです。  一つは、農作物被害等につきましては共済制度というのがございまして、自然災害等によります減収被害、こういうものにつきましては共済制度があるわけでございますが、これらの鳥獣被害につきましてもこの共済制度の中で対象といたしておるところでございます。ただ、これは農家の方があらかじめ作物を特定して共済金を払って共済制度に加入していないといけない、そういう点がございますが、一つはそういう対応がございます。
  62. 小川勝也

    小川勝也君 今聞きましたら一千億円というお金ですね。環境庁の年間予算より大きい金額が農業等を守るために使われていて、それにもかかわらず環境庁は、シカ野生鳥獣を保護する立場ながら、農業がこんなに被害に遭っているんだと言われるとあっさりとその動物たちの命を差し出す。そして、北海道においては六万頭のシカを減らしたい、こういうことを言っております。  ここでちょっと引用をさせていただきたいわけですけれども、この参議院に議席を持っておりましたアイヌ民族の萱野先生。我々アイヌ民族は、自分たちが食べる分、それだけしか動物を殺しちゃいけない、こう教わってきた。そして、今回、この法案のことを心配して私の部屋に参りましたアメリカの少数民族であります北シャイアン族のワンブリさんという方。動物を殺していい場合、それは自分たちが食べる場合、そして逆に自分が食べられそうな場合、この二点だと、こういうふうに聞いた、こういう話がありました。いとも簡単に人が動物の命を奪っていくということをこの国会で決めていいのだろうかという大きな疑問があります。  それともう一つ、これもワンブリさんから聞いた逸話ですけれども、アメリカ五大湖にスペリオル湖という湖があります。そこに浮かぶ無人島に、たまたまある年に湖が凍って、ヘラジカというシカがどおっとその島に入っていった。それを追いかけてきたオオカミがいた。そして、その島にシカとオオカミが閉じ込められて氷が解けてしまった。研究者の方がどんな現象が起こるんだろうかというふうにかたずをのんで見守る中、オオカミたちはシカを最初は物すごい勢いで食べていたわけですけれども、全部は食べないで残しておいた。そして、おなかがすいても野ネズミをつかまえたりほかのものを食べたりして、シカ繁殖するのを待っていた。オオカミというのは賢いな、こんな印象を受けました。それに比べて人間はこんなことしかできないのかなと、本当に悲しくなる思いでこの法律改正案を読ませていただきました。  では、どうしたらいいのか。農業被害が非常に顕著なのもよくわかっています、私は北海道の選挙区でありますから。シカが丹精込めてつくった作物を荒らすので大変なものだ。先ほど私は農業補償の問題を申し上げましたけれども、一年かけて育てたものが食われたということは、これは金を出せば済むだろうという話じゃないこともよくわかっています。  そして、先ほど理科先生の話。子供たちにこの話をすると、子供たちの目から涙がこぼれてくる。これは、動物人間もみんな一緒に住んでいこうじゃないか、我々が二十一世紀に向かうときに、さまざまな反省を込めながら思っていかなきゃいけないことなんじゃないかな、そんなことを思っています。  それで、本改正、非常に苦しいわけですけれども、私なりにどんな考え方でこの大きな問題に取り組んでいったらいいだろうかなというふうに考えたものをまとめてみましたので、最後にお話をしたいと思います。  一つは、山を少しでも動物にとって住みやすい環境にする。これは先ほど申し上げて、すべての御理解をいただけませんでしたけれども日本針葉樹を商業的にたくさん植えてしまったので、少しでも広葉樹林を復活させて、クマを初めとするけものたちが住みやすい世の中にする。それから、先ほどお答えがありましたフェンス、さく、あるいはネットなど、動物たちが農地その他に入ってこれないように工夫をする。それから、これはすべての場面についてうまく適用されるわけじゃありませんけれども、実例があります。山の奥に鳥獣が好むえさ人間が運んで、そこの農地に来て農作物を食べないでそのえさを食べてくださいというふうにえさ場をつくる。こういうところには今まで以上に、例えば小中学生であるとかボランティアの人たちとか、いろんなネットワークの人たちの力をかりられると思います。  それから、これも実践されていますが、林野庁長官にも後でお伺いしたいと思いますけれども、苗木や木に動物たちが食べないようにシートを巻いたりする。日本全国に何万本の木があるかわかりませんけれども、非常に苦しい道のりですけれども、そんな努力もしている人たちがいる。  それから、今申し上げたように、農業補償を何とか制度として確立できないであろうか。  それからあとは、例えば今育っておられる最中だと思いますが、専門家日本全国に配置する。これは山のことも動物のこともよくわかっている人が広くあまねく日本じゅうにいる。  それから、猟をすることに関しまして私は否定するつもりはありませんので、例えば欧米に見られるようなワイルドライフマネジメントとかゲームウオーデンという本当に知識を持った人たちがそれをマナーを含めて管理する。そして、すべてとは理解できませんけれども、学術的、科学的に個体数管理していく。  そして、また後で質問が出ると思いますけれども、猟に使われるときの鉛の弾の問題、こういう問題を真剣に議論した後で、ぎりぎりまで来たんだということでこの改正案が出されたときには、私はもっと今以上に別な気持ちでこの委員会審議に臨めるんじゃないかというふうに思います。  何か拙速で、例えば地方分権の部分で言うと、地方分権推進委員会から何か吐き出しなさいと言われたんじゃないかなとか、あるいはこの法律案の提出のきっかけが自民党の議連で鳥獣被害が大変なので議員立法を出すぞと言われてつくってきたんじゃないか、そんな懸念があります。二十一世紀を目前にして、子供たちに日本という国はこういう国なんだ、こういう暮らしをしているんだ、動物も生きているんだ、鳥も生きているんだ、そんなことで子供たちに胸を張れるような国会審議にしたいと私は思っています。  今度の質問のときにまた続きの質問をさせていただくことを申し上げて、佐藤議員にバトンタッチをしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  63. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 同僚の小川議員が極めて的を射た話をしておりますので、大分重複するかもわかりませんけれども、私なりの表現でひとつ質問をさせていただきます。  この地球、それから自然、これは当然人類だけのものでもありません。かといって、また鳥獣その他の動物だけのものでもありません。未来永劫それぞれの生き物が共存、共生しなきゃいけない。自然を大事にしながらそれぞれお互い相関関係の中で生きていかなきゃいけない。  今度の鳥獣保護法等についていろいろ読ませていただきますと、お互いにもたれ合いながら行かなきゃいけない中で、ある一部ふえたり減ったりする。そういう中で、私は、それぞれのある意味では役所の立場があると思うのですけれども、そういう中で環境庁がこれから環境省になっていく。しかも、戦後五十二年間それぞれ今日まで来ているわけでありますけれども、物質文明が先行して、自然また精神文明が後退している。  そういうふうな中での環境庁の意義づけ、環境庁のイニシアチブ、本当にこれから二十一世紀に大事な役割を果たしていただかなきゃいけない、ある意味では人類の存亡にもかかわるような意義づけがあるのではないかなと思うんですけれども、このたびの鳥獣保護法等についての環境庁としての基本的な考え方大臣にお伺いしたいと思います。
  64. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 先ほど来、小川先生、佐藤先生お話を伺いまして、私も同感する面が非常に多うございます。人と野生鳥獣の共存を図っていく環境行政の中で何が大切かというようなことに思いをいたしながら、この法案提出に至ったわけであります。そこで、この法案をいかようにして処理していいか、それを模索する中において今回の鳥獣保護法改正案をお願いいたしたわけであります。  先ほどお話し申し上げましたように、私も先般中禅寺湖に参りまして、雪の降る中でございましたけれども、知事さん初め関係者の皆さんとその問題についてよくよく議論もし、また話し合いもいたしたわけであります。  栃木県といたしましては、やはりシカが非常に増殖した、非常に農産物被害も多いし、また樹林に対する被害も多いわけなんで、その被害を受けたところには植樹も先ほど小川先生が申しておるようにしておりまして、ネットをかぶせてやる。そのネットをかぶせるのもボランティアの皆さん方の協力を得て全部植樹したという現地も見せていただきました。そうしながら、自然を大切にする気持ちは皆さん同じだ、こう思うわけであります。  ただ、その中において、中禅寺湖畔の景観がシカの害によって大変損なわれておる。もうほとんどの大きい樹木というのはかじられてしまって、それはもう一、二年のうちに樹液が絶えて枯死してしまうんだ。これを何とか守っていかなきゃならぬということで、大事な樹木に対してはさくをつくって保護しておるところも見せていただいたわけであります。  そうしながらも、少しシカの数が多過ぎるんじゃないだろうか、これを何とか調整していただけないだろうか、それが今回の法案を提出されておる理由だろうな、またそうしてほしいなという願望を出しておったわけであります。私もその辺のことに胸を痛めながら、この法案というものがよりよい法案であってほしいなということを願望いたしておる次第であります。
  65. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 今の長官の話もわかりますけれども、それぞれ人に対する、また植物、農産物に対する被害はわかるんです。我が福島県はそれほど被害はありませんけれども、それぞれ町村長さん等に聞いてみると多少なりとも被害がある。  しかしながら、いわゆる有害鳥獣に対しての対応は本当に現況のままでやっていけるか、それとも改正しなきゃいけないのかというと、現況のままでも即座の対応はできないまでもやっていけるということもあるんです。それなのになぜ今度の鳥獣法の改正があるのか、現行のままでも十分駆除できるような状況であるというふうな話も聞いている中で、その背景、なぜ法改正をしなきゃいけないのか、この辺についてのお伺いをしたいと思います。
  66. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 計画的な保護管理、ワイルドライフマネジメントという、いわば個体数管理し、それから生息地整備し、また防除措置を講じ個体数調整をしていく、そういった三つの柱に基づきます科学的な野生動物保護管理をする必要が出てきたということでございます。
  67. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 その科学的な話はわかるんですけれども、一部聞くところによると、要するに農産物に対する有害鳥獣、だからもう全体的な鳥獣に対しての科学的な保護管理というのはわかりますけれども、ややもすれば農産物被害が今度の鳥獣保護法改正の大きな要素になっているんではないかという話を聞く。しかしながら、一方ではそれは現況の中でも十分やっていけるという、これは自治体の町村長からの話なんです。  この辺については。
  68. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 農産物被害は無論でございますけれども、むしろ自然生態系バランスという点を考えますと、例えば日光では、今、大臣が申し上げましたようにいろんな大きな樹木が倒れている、またそれが一部尾瀬まで進出をしている、また奈良の大台ヶ原等ではトウヒの大変大きな大木への影響があるといったようなことで、いわば自然の生態系の攪乱ということが出てまいっておるわけでございます。  加えて、野生動物を保護するという立場からするならば、やはり人とのあつれきというのはできるだけ少なくしていくという要素も必要かと思っております。人と野生鳥獣が共存するということは大変難しい問題だと思います。難しい問題でございますけれども、そこは人の方も節度を守り、また野生鳥獣にとっても人とのあつれきをなくしていくような姿が必要でございますけれども、いわば上に立つ肉食獣がいないということで科学的な保護管理という世界の流れといいますか、ということを我が国でも導入しつつございまして、ぜひこの改正でスタートをいたしたいということでございます。
  69. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 管理制度を創設するわけですけれども、現実問題としてそれぞれの都道府県が著しく増減すると、知事が著しく増減した鳥獣についてという文言があるわけですけれども、著しく増加、減少したというその基準、判断、この辺は何に基づいたものなのか。  そしてまた、いわゆる保護管理する技術者、専門家、これも去年、ことしということでそれぞれ養成しているわけでありますけれども、こういう方にいわゆる総合的な保護計画をつくっていく上でのいろんな知識が必要だと思うんですけれども、そういうふうなものはその技術者に対してどういう教育をしていくのか、この辺についてお伺いしたい。
  70. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 著しく増加、減少する判断につきましては、個体数ですとか生息密度の増減あるいはこれを反映いたします目撃頻度の推移といったデータが基本でございますけれども、これを機械的に判断するのではなくて、その地域自然環境あるいは生態系の悪化、さらには農作物被害等の状況を踏まえて総合的な見地から判断さるべきものというふうに考えているところでございます。  また、科学的、計画的な保護管理を行う専門家の育成につきましては、環境庁といたしましても野生鳥獣管理技術者育成事業というものを平成十年度から実施いたしておりまして、各都道府県、市町村におきます科学的、計画的な保護管理を担当する組織、人員の整備に貢献をしているところでございます。それらにつきましては、主として生物学あるいは獣医学、さらには農学といったような専門知識をベースにして現場のオン・ザ・ジョブ・トレーニング、職業についてからの訓練等によりまして科学的な調査ができるような能力を身につける専門家を養成するということで進めているところでございます。
  71. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 仮にこの法律が施行されたとする。先ほど小川議員からもありましたけれども、現実問題として各都道府県また各町村にそれだけの専門家がいるのかということになると、これはもう本当に数少ない中で、その保護計画はつくれるような状況じゃない。  そのときに、環境庁としては、各都道府県にきちっとした数値目標的な、またその増減に対する極めて具体的な一つの判断するガイドライン、そのようなものを提示していくのかどうか。
  72. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 各都道府県におきます専門家も逐次拡充をされているところでございますが、そういった方々を中心とします特定保護管理計画の策定につきましてのガイドラインにつきましては環境庁で策定をするということで検討いたしております。  その中身につきましては、生息数調査、適正な生息数保護管理の目標の設定、個体数調整生息環境の保護と整備、モニタリング調査あり方等の事項についての基本的な考え方あるいは技術的な手法を盛り込んでいくというふうに考えているところでございます。
  73. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 これは都道府県がそれぞれ独自の保護計画を立てていくわけでありますけれども地域状況に応じたとあります。この鳥獣は、先ほど尾瀬の話がありましたけれども、しょっちゅう実は動いているわけです。例えば尾瀬の場合というのは、新潟、群馬、福島、栃木、四県にわたる。そういうふうな広域的にわたっている中でのシカのいろんな移動がある。仮に新潟県と福島県で別々に鳥獣個体数を数えた。時差があって、数えたときに重複する場合もあるだろうし、またある意味では十頭のシカがそれぞれ別々に数えると四十頭になったりするし、また逆の場合もあり得る。  そういうふうなことを考えると、各都道府県で原則的にはやると言いながらも、自然とか鳥獣生態系全体を見ると、どうしてもやっぱり広域的な中で環境庁がどういうふうな形の中でその全体を見ていくかということが必要であろう。  ですから、何県かにまたがる鳥獣等の保護管理については、いわゆるまとめ役、総合的な判断をする機関というのはどういうふうなところに求めていくのか、この辺についてはいかがでございますか。
  74. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 先ほど申し上げましたガイドラインにおきまして調査の手法等を定めますとともに、隣接する複数の都道府県にまたがって分布する個体群につきましては、一番理想的には一斉調査が望ましいわけでございますけれども、それに限らない場合であっても、移動状況把握することによりまして相互の入り繰りが判明できるものでございます。  その場合に、隣接の都道府県と協議をするという旨を特定鳥獣保護管理計画を策定する際には定めておりまして、環境庁といたしましても、隣接の都道府県間で適切な調整が図られて適正な保護管理施策が実行されるように、広域的な視点から必要なアドバイスをしてまいろうというふうに考えております。
  75. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 保護管理計画の中で「特定鳥獣ノ棲息地ノ保護及整備」とありますけれども、これは具体的にはもうやっていると思うんですけれども、どんなことをやっているのか。しかも予算的な話も当然出てくると思いますし、また他省庁との整合、この辺についてお伺いしたいと思います。
  76. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 特定鳥獣保護管理計画計画事項でございます生息地の保護整備に関する事項につきましては、第一に鳥獣保護区などの適切な設定、あるいは管理等による生息地の保全を図る。第二に、鳥獣生息に適した樹種の植栽、育成等によります生息環境整備を図るということを記載内容とする考えでございます。  環境庁といたしましては、現に野生鳥獣管理適正化事業という事業を実施いたしておりますけれども、これの重点配分等によりまして、生息地の保護整備を含む野生鳥獣保護管理が適正にされますようにより一層の支援を図り、また関係省庁とも連携してまいりたいと考えております。
  77. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 すんでいるところはある意味では林野であり、場合によっては田地であるということで、基本的なその辺の所管はまた農林省であったり林野庁であったりするわけでありますから、これは他省庁との関係の中で、先ほどお話ししましたように、環境庁としては他省庁に指導するぐらいのそんな気持ちを持ってやっていかないと、なかなか鳥獣につけ自然保護につけ保護管理ということはやっていけないと思います。  その辺についてのまた新たなる決意というか、その辺ももう一度お伺いしたい。
  78. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 特定鳥獣保護管理計画の策定につきましては、特に審議会とか公聴会という手続で、いわば幅広い関係者、関係行政機関あるいは自然保護団体あるいは狩猟団体等から人選をして進めるようなことを考えているところでございます。  これらの実施に当たりましては、当然ながら地域における関係者の理解と協力を進めることが大事でございますけれども環境庁におきましても、関係省庁とも十分連絡をとりながらその基盤となるように協力してまいりたいと考えております。
  79. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 今、次の質問答弁をしていただきまして、ありがとうございました。次の質問答弁だったんですけれども。  特定鳥獣は、本当に少なくなって絶滅に瀕するような鳥獣がそれぞれありますけれども、その中での保護管理は今議論されている鳥獣と違う、いわゆる絶滅に瀕している。この辺が今後都道府県にそれぞれ保護管理が移管されていく中で、日本に数羽しかいないとか言われているようなものも将来的には環境庁がきちっとやっていくのか、それともまた場合によっては都道府県にお任せしようというようなことになるのか。この辺についてはいかがお考えですか。
  80. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 希少種につきましては、種の保存法という法律に基づきまして、国内希少種ということでさまざまな数の少なくなったものが指定されておるところでございまして、国内希少種の保護、繁殖という必要性からするならば、重ねて特定鳥獣保護管理計画を策定する実効性は乏しいと考えております。
  81. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 この法案の施行に当たっての現状認識、これはまた重複するかもわかりませんけれども都道府県、市町村、本当にある意味では人材不足というか養成をまだなさっていない。場合によっては、先ほどの話にもありましたけれども、ハンターの方に頼るところが相当あるという話も聞いている。ハンターと鳥獣の関係、また自治体、さらにまた環境庁のそれぞれの関係等を見ている中で、客観的なものの施行というのがこの中で最も大事であろう。そういうふうな中で、各都道府県はこれから人材養成をきちっとしなきゃいけない。  そんなことをかんがみると、何かこの法案を施行していくということについてはまだ時期尚早かな、そんな思いがするわけでありますけれども、現状認識と、さらにまた将来のいわゆる管理計画を立てる人材育成等についての考え方お尋ねしたいと思います。
  82. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 専門家の育成が大変大事でございまして、既に半数近い都道府県保護管理計画の策定の意欲がございまして、そういうところでは、各県内の研究機関あるいは出先機関等を含めまして専門家としての職員の養成も進んでいるところでございます。  人材の養成が一番大事でございますけれども、私どもとしましてはかなりそれが進んできているというふうにも考えておりまして、この法改正を機会にいたしましてさらにそれが一層促進されるというふうにも念願しているところでございます。この法改正は、人とのあつれきの問題でございますので難しい面もございますけれども、いわば都道府県における関係者の真摯な議論を通じましての計画の策定等によりまして、効果的な実施がされるように期待しているところでございます。
  83. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 これはハンターの問題になるのか、一つの常識論にもモラルにもなってくるのかと思いますけれども、鉛の害の問題がいろいろ問われているわけであります。これはそれこそ鉛にかわるもの、ハンターがいることは間違いないし狩猟法というのがあるわけですから、それぞれやっているわけですけれども、いろんな害が出ている。  これについては代替品、そんなものの開発というか指導はどのように今なさっているのか。
  84. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 鉛弾、特に鉛散弾による野生鳥獣への影響は、特に水鳥への影響が明らかでございます。このため、鉛以外の代替散弾への切りかえを検討しているところでございまして、切りかえにつきましては、代替の散弾を使用する場合の銃の安全性の問題、買いかえ等による狩猟者の負担の問題がございます。  このために、こういう問題に対応しながら、平成十二年度の猟期から、一部の地域からの段階的な代替散弾への切りかえを実施する方向で、現在、具体的な方法、手順等につきまして関係省庁、関係団体と鋭意調整を進めているところでございます。
  85. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 私は福島県出身でありますが、意外と地方の子供というのは、動物園なんかは東京などは比較的あるところで、動物に触れ合う機会というのが都市部の子供の方が多いのかなという感じがしております。今、モータリゼーション等で余り歩くということもしない。そういうふうな中で、動物愛護ということを考えると、今の地方の子供がそういうふうな機会がないということで薄らいでいるような状況もある。せっかく大自然の中で、けものはまた別としても、かわいい動物もたくさんいるわけでありますが、国立・国定公園の中でそんな一つの子供たちが触れ合うような適当な指定場所、そんなことを環境庁としては考えておられるか。  それから、時間も迫ってきておりますけれども鳥獣全体の中で、私はいろいろ考えてみましたが、いわゆる地方分権等、鳥獣を各都道府県にお任せするというのは、何か地方分権よりもむしろ総合的な、北海道から九州までのいわゆる生態系鳥獣も含めた全体を見ることの方が、地方でそれぞれ保護管理するよりも大事なことではないかなと思うんです。そういうふうな中で、これからややもすれば都道府県任せになってしまう、ある意味では市町村任せになってしまうようなことも懸念されるところもあります。  そういうふうな中で、この分権というのは道路づくりとか橋をつくるいわゆる独自のものというふうなことではなくて、やっぱり全体主義の中で見ていかなきゃいけないことであろう、そんな思いがするわけであります。この法案がどうなるかわかりませんけれども、しかしながら私は、環境庁はむしろ自然保護に関してはもう本当に総花的に全体を見ながらこれからやっていってもらいたい、そんな要望をするところであります。  先ほどの子供が動物に親しむ件と、それから分権に伴う自然保護について、それぞれ局長長官からのお話を伺いたいと思います。
  86. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 先ほど来の先生お話をお聞きいたしまして、全体を見て各都道府県の指示もしなきゃならないという意義も十分理解できると思います。  ただ、私も現場を見まして感ずるのですけれども地域地域にはそれぞれの専門家がおりまして、我々に多くの示唆を与えていただきました。そこで、そういう方々の集いを持って、各都道府県の現状を踏まえて対策を講じていかなければならないんじゃないだろうかという感じがしてならないわけであります。全国には六百種類ほどの瀕死の野生鳥獣が存在するわけでありますけれども一つ一つ地域によって変化があるわけでありますから、その変化の中でこの野生鳥獣はどうしたらいいかという知見を得て事の処理に当たっていってほしいなという感じもいたすわけであります。  いずれにいたしましても、人と野生鳥獣との共存という中にあって、環境行政をいかにしていくべきかというところに思いをいたして問題の処理に当たってまいりたいと思うわけであります。  あとは局長の方から御答弁させます。
  87. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 国立公園あるいは国設の鳥獣保護区等におきまして、野鳥あるいは小動物等の観察施設を整備するといったようなこともございます。例えば、野鳥保護の集い等を開催いたしまして、野鳥と親しむ、あるいはまた野鳥保護思想の普及啓発も行っているところでございます。これらは人と野生鳥獣との共存を図っていく上で大変大事なことでございますので、推進をしてまいりたいと考えております。  また、地方分権におきましては、いわば国立公園あるいは国設鳥獣保護区といったような全国的な観点から、国が担うべきものにつきましては国の関与を強化してまいりたい。また、都道府県単位での鳥獣あるいは狩猟制度の展開につきましては、都道府県の自治にゆだねるということで整理をしていくことが適当だと考えておるところでございます。
  88. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 終わります。
  89. 福本潤一

    ○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。  先ほどから、今回の法案目的も含めて、目的と相応している改正なのかどうかという観点も含めて質疑が続いております。その中で、小川委員が、動物を殺すのは自分が殺される場合と食べる場合だという格言を引用されておられます。    〔委員長退席、理事太田豊秋君着席〕  それで、最初にまずお伺いしておきたいのは、狩猟数というのは年々増加しているようでございます。なおかつシカがさらに増加しているということでして、狩猟数がかなり増加しているにもかかわらずシカ増加し、また猿も増加しているという原因を一言お伺いしたいと思います。
  90. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) シカ、猿の増加要因でございますけれどもシカにつきましてはオオカミなどの天敵の不在、また雪が少ないことによる死亡率の低下、土地利用の変化によるえさ条件の好適化、あるいは狩猟者の減少による捕獲数の減少といったような要因が考えられるところでございます。  猿につきましては、例えば中山間地域におきます居住者の減少、耕作放棄などの人間活動の減退、また、観光地等におきましては過度のえづけ等による人なれといったことも原因と考えられるところでございます。
  91. 福本潤一

    ○福本潤一君 それはもう先ほど質問で聞いたわけです。その天敵に当たるようなものとして狩猟というものが現実に行われていて、捕獲数も増加しているじゃないか。それでもやはりシカ、猿はなおかつ増加している。捕獲数も増加しているわけですね。そこのところの原因です。
  92. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) シカの捕獲数につきましては、全国的にも増加をいたしております。
  93. 福本潤一

    ○福本潤一君 私が増加していると言ったら、増加していると答えられても、何の答えにもなっていないわけですけれども、要するに、シカの捕獲数を超えてさらにもっともっと圧倒的に増加しているということなんでしょう。捕獲数はふえているんですから、そこの確認です。
  94. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 草食獣、特にシカの場合はえさのある限りふえ続けるという傾向がございまして、捕獲数を上回る増加ということが十分見込まれているところでございます。
  95. 福本潤一

    ○福本潤一君 今回大変な問題もあり、また自然保護団体関係、かなり我々のところにも来ていただいております。それで、この改正意味は何かなと私なりに考えまして、西欧ではワイルドライフマネジメントというのが定着している。それも調べてみました。  ただ、そのワイルドライフマネジメントというものと今回の改正というのはまだまだかなり差があるという気がしております。西欧では狩猟国、狩猟してそれを食べるというような目的、背景がありました。日本は稲作文化で、狩猟国というよりも、野菜、また米、こういうものが主食でございますが、西欧では狩猟、要するに食用として食べる、ハンターというのが森林にも定着して昔からおられたという中で出てきたのがこのワイルドライフマネジメントというものでございます。  ですので、このワイルドライフマネジメントをどういうふうに把握しておられて、なおかつそれを環境庁長官はどういうふうに評価されておるか。どういうふうに実態を認識しておられるかというのは局長さんでもいいですけれども、評価は環境庁長官にお伺いしたいと思います。
  96. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 前半でございますが、先生お話しのとおり、欧米では野生鳥獣を適当な密度水準にコントロールする保護管理ということで、ワイルドライフマネジメントという考え方が広く一般的に行われております。  例えば旧西ドイツにおきましては、シカの一種、アカシカにつきまして個体群が環境収容力に見合った適切な密度、性別構成になるように年間の増加数を間引くといったような個体数管理が実施され、またその手法として狩猟が活用されているといったような報告がございます。
  97. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) まさに今回の法律改正は、特定鳥獣保護管理計画の制度はドイツに模倣したものである、こう言っても過言でないと思っておるわけでありまして、そういう点につきましては先進的な対応をしておるのじゃないだろうかということであります。ワイルドライフマネジメントの考え方に沿った法改正である、こう申してもいいと思います。
  98. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういうふうに説明されたり書かれているのもありますが、文化的な背景というのはかなり違いますが、ここにシカ以外にも猿というのがある。  先ほどの確認に戻りますが、クマの場合は襲われるというようなことがあったりしますけれども、殺されるときと食べるときに狩猟というのが行われる。そもそも、これが狩猟法だったという背景はあるかもしれませんが、その中で、猿とかシカ日本で食用資源として具体的にハンティングされておるのかというのをお伺いしたいと思います。
  99. 城知晴

    説明員(城知晴君) お答えいたします。  シカ肉につきましては、まず生産量なり輸入量あるいは消費量の統計もございませんが、私ども関係者から得ました情報を総合いたしますと、年間三百トンないし四百トン程度の消費が行われているのではないかと思っております。なお、具体的な消費の形態といたしましては、ステーキなり鍋なり、あるいはシカ刺しといって刺身なり、そういうもので使われているようでございます。  この三百トンないし四百トンの量でございますが、これにつきましては輸入量が従来よりやや減りまして百トン程度、それから国内生産が二百トンないし三百トン程度、このように聞いております。  我が国は、現在、全体で年間約十万頭のシカが捕獲されておりまして、これを食肉に換算いたしますと、約一千トンを超える食肉を供給すること自体は可能ではなかろうか、このように考えておりますが、現在出回っております量といたしましては二百トンないし三百トンではないか、このように思っております。  なお、猿の方につきまして、我が国の食習慣といいますか食文化からいたしまして、これを食用に供するということはちょっと考えられない、そのような状況でございます。
  100. 福本潤一

    ○福本潤一君 先ほどのライフマネジメント、猿は全然食用でもないけれども、捕獲はかなりしているということでして、ドイツのワイルドライフマネジメントというものをきちっと説明いただけませんでしたけれども、一定数、繁殖の下限というのと、これ以上ふえるといかぬというところに日本ではシカと猿があって、一定数いる繁殖下限の下に現在クマがあるというような認識の状況ですけれども、適正頭数というのがあるだろうと思うんですね、そういうドイツの方式ですと。  その適正頭数にするために、例えば北海道で考えたときに、具体的な計画を先進的に、先ほど北海道は先進圏だとありましたけれども、エゾシカ六万頭を捕獲するという考え方なのかどうか、確認したいと思います。
  101. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 北海道のエゾシカ生態系への影響農産物被害等に対応するということでつくられました保護管理計画におきましては、六万頭ということを当面の目標にしているというふうに承知いたしております。
  102. 福本潤一

    ○福本潤一君 ですから、そこの見積もりというのがなかなか大変な上、なおかつ文化背景が少ないので、先ほどからそういった計画を立てられる能力があるのかという問題、科学的知見に基づいているのかという問題が大いに出てきていると思います。  そこで、最初に聞いておきたいのは、総務庁が、行政管理庁でしたけれども北海道の行政監察局が北海道のエゾシカによる農業被害等の防止に関する主要監察結果というのを出しております。  具体的に、今回の計画にかかわるもの、北海道道東地域エゾシカ保護管理計画に関して監察されて、問題点を指摘しておられるということがありますので、総務庁、それについて御報告いただければと思います。
  103. 東田親司

    政府委員(東田親司君) ただいま先生御指摘のとおり、私どもの出先の北海道管区行政監察局におきまして、エゾシカによる農業被害等の防止に関する地方監察というのを実施しております。この結果、改善を要する問題が見られましたので、昨年の十二月十一日に北海道知事宛に調査結果を通知しておるところでございます。  主な内容といたしましては次の三事項でございますけれども、このほかに事務手続の改善の関係もございますが、省略させていただきます。  まず第一点につきましては、北海道庁が作成いたしましたエゾシカ保護管理計画に基づきます雌ジカの捕獲目安頭数の市町村別の配分の問題でございます。  これは、北海道庁の方から各支庁を通じまして市町村に駆除の目安頭数を配分しているところでございますけれども、各市町村におきましては、エゾシカの進入防止さく等の諸対策を進めておりますので、この進捗状況を余り勘案せずに過去の駆除実績をもとに配分しておりますために、実際に駆除が必要な頭数と配分された目安頭数との間にずれが生じているという問題でございます。  所見といたしましては、したがって捕獲目安頭数の配分に当たりましては、農業被害駆除実績の増加傾向、進入防止さく等の設置状況等を踏まえて配分頭数を算出するようにという通知をいたしました。  二点目はエゾシカの死体処理の問題でございます。  鉛中毒死いたしましたオオワシとかオジロワシが見られまして問題になっておりますが、これは捕獲したエゾシカの死体を山林等に放置している結果と見られました。したがいまして、有害鳥獣駆除の許可証を申請者である市町村等に交付する際の指示事項として、エゾシカ死体等の適正処理について明記するなどの啓発を図ること。それから、実際に駆除従事者が駆除期間終了後に報告をすることになっていますが、報告する内容にエゾシカの死体の埋設場所等を具体的に記載させるよう通知いたしました。  それから三点目でございますが、エゾシカによる農業被害把握方法につきましての指摘でございます。  これは、環境庁及び農水省の方から被害面積被害金額、被害量等の報告が北海道庁の方に求められておりますけれども北海道庁における取り扱い状況を見た際に、もととなっております農家の申告状況を私どもの出先が調査いたしました結果、実際の被害金額よりも過大と推測されるもの、あるいは逆に過小と推測されるもの、両様のものが見られました。これはどうしてこういうことになっているかと申し上げますと、私どもの局が申告農家を抽出いたしまして、その農家の方が実際に農協へ農作物を出荷した実績と、申告された被害量、被害金額を対比した結果、過大あるいは過小と推測されるということでございます。  以上、三点が主要な内容でございます。
  104. 福本潤一

    ○福本潤一君 主要な三点が問題点として指摘されておるわけでございますが、これを受けて北海道は対応を含めて考えるわけですが、監督官庁の環境庁、農水省、今の三点に対してどういうふうにお考えか、お伺いします。
  105. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 北海道の場合は、道庁が定めた取り扱い量等に基づきまして被害面積被害金額を算定しているところでございますが、それに当たりまして、過大あるいは過小と見られる事例があったという指摘等でございます。  野生鳥獣保護管理を進めていく上での大変重要な情報でございますので、客観的なものとなることが必要と認識をいたしております。
  106. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) ただいまの被害状況把握の件でございますが、私どもといたしましても、道庁を通じてできるだけ現地に精通した方の知見を加えて御報告をいただくようにお願いしておるわけでございますが、ただいまのような指摘があったわけでございます。そういう意味で、確かにこの農林業被害につきましても適切な対策を講じるということの前提がまさにより的確な実態把握ということでございますので、これについてはより精度の高いものをこれから目指していかなきゃいけないというふうに思うわけでございます。  そういう点におきまして、これまで全国的にずっと継続してきております被害状況調査につきまして、これまでの蓄積を踏まえてできるだけ定型的な形にして、それぞれの各現場でこれを把握いただく際に一つのパターンで制度がきっちり確保できるような、そういう形の調査にするように、今回、全都道府県に対しまして改めて通達をしておるところでございます。    〔理事太田豊秋君退席、委員長着席〕
  107. 福本潤一

    ○福本潤一君 三点について具体的にお伺いしていきますけれども、その前に総務庁、北海道は具体的にどういうふうに対応されたかという結果は、お伺いできますか。
  108. 東田親司

    政府委員(東田親司君) 私どもの方から十二月に通知いたしました後、北海道知事さんの方から私どもあてに御回答をいただいております。御回答の日付は一月二十九日でございます。  ただいまの農業被害把握方法につきましては、把握に当たりまして特に取り扱いがはっきりとしていなかった点といたしまして、被害を受けた後、再播種あるいは再移植、こういう場合の被害額の取り扱いが不明確だったわけでございますが、これにつきまして、「三月を目途に野生鳥獣被害調査取扱要領を改正し、市町村等に周知徹底を図るなどして的確な被害額把握に努めて参りたい。」、こういう御回答を一月二十九日付の公文でいただいたところでございます。  それで、先生の御質問がございましたのでこの三月の要領の改正が実際に行われたかというのを急遽調べましたところ、三月三十日付で道の環境生活部長さんから各支庁長さんあてに先ほどの取り扱いにつきましての改正が通知されております。具体的には、被害を受けた後に再播種、再移植をした場合は、再播種、再移植に要した費用、すなわち種苗代、機械経費、労務費等、これらを被害金額として記載するように、こういう内容改正がなされたということを確認したところでございます。
  109. 福本潤一

    ○福本潤一君 今の被害額の算定に当たるだけでもさまざまな問題があったという具体的な指摘、改正されたとはいいながら、もう少しそこのところを具体的に聞きたいと思いますが、被害額の算定方法について、基準というものは具体的にどういう基準があるのかということを農水省にお伺いしておきたいと思います。
  110. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) これまでの私ども被害調査、これは全国的に実施をしておりますものにつきましては、まず被害面積把握を第一義的にお願いしてまいっております。そういう中で、北海道につきましては、特に面積、それに加えまして金額的にどれぐらいになるかということでこれまでもずっと数字を出していただいてきておる、こういうことでございます。  そういう意味で、全国的には私ども面積としての把握を一義的に行っておりまして、今回、先ほど申し上げました通達の中におきまして、これまでの一部の県の実績を踏まえて被害額についてもこれからしっかり出していただくような方向で指示をしておる、こういう状況でございます。  具体的には、被害面積に対しましてどれぐらいの被害を受けたかという、その被害の基準量、ここの算定がこれまで非常に難しい面があったということでございますが、これまで実施してまいりました県の蓄積等を踏まえて、全国的な会議等において検討した結果、それらのノウハウを生かしながら今後は被害額についても全国的に把握をしていこう、こういうことにしたわけでございます。
  111. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう意味では、被害額被害面積、それに応じて具体的に面積の方から概算値で出して被害額を出すという方法と、いろいろ錯綜しておる中で問題が起こっているということでございます。  具体的に、先ほど農水省は被害防止のための予算、一千億ぐらいかけて、なおかつ中身は防護さく等々の具体的なものは十六億二千万円と言われましたが、被害額という額で言うと幾らですか。
  112. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) これにつきましては、先ほども申し上げましたように、全国的な数値として被害額が何億という形の把握が実はできていないわけでございます。一つの例として、北海道につきましては被害額を算定していただいておるわけですが、それが平成九年度におきましては約五十億、こういう水準になってございます。  そこで、先ほどの一千億という予算額でございますが、これは実は土地の基盤整備から、あるいは集出荷施設の整備というふうな農業の各種基盤、あるいは施設整備等を行う総合的な事業の総額の経費でございまして、そういう中で、あわせて被害の甚大な地域につきまして防護さくあるいは防鳥ネットという形でこれをメニューとして取り組むことができる、こういう仕組みになっておるわけでして、その部分が先ほど申し上げました十六億という数字になっておるわけでございます。
  113. 福本潤一

    ○福本潤一君 それで、一つは、農業被害の関係からワイルドライフマネジメントをやるのではなくて、むしろ生態系の破壊とかというような形も含めてやっておられるのだとは言いながら、ある意味ではこういうワイルドライフマネジメントの基礎になるわけでございますので、農水省以外にも聞いておきたいと思います。  林野庁、また附属の研究所、あと環境庁、この被害防止の予算の規模はどの程度になっておるわけですか。トータルしていただければと思います。
  114. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 先ほど申し上げました十六億二千万という数字の中に、研究開発費といたしまして一千四百万ほどが入ってございます。これは国の研究機関、私どもつくばにございます農業研究センター、ここに鳥獣関係の研究室がございますし、それから森林総合研究所、これもつくばに本所がございまして、あと各地にブランチ、各ブロックごとに支所がございますが、それらの支所におきまして鳥獣関係の研究室がございます。そういうところがネットワークを組みながら、効率的ないわゆる防止さく、これを研究しておるのが一千四百万、そんな数字でございます。  それから、十六億の一千四百万を除いた数字、これが農業と林業の合わせた防止さくの総額でございます。
  115. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 環境庁でやっておりますのは、生息地整備も含めまして被害防止対策、合計一億二百万円でございます。
  116. 福本潤一

    ○福本潤一君 では、環境庁自身のこの農業被害に対する費用は。
  117. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 生息地管理等も含めまして被害防止対策、合計一億二百万円でございます。
  118. 福本潤一

    ○福本潤一君 環境庁所管の法案でありながら、農業被害に対しては一億二千万、農水省全体は一千億、多いとは思いますが、その中で十六億という形での対応をしておるわけでございます。そういう意味では、農業被害に対して具体的に効果が上がっているのかというのが一番被害額を出しているときの問題でございまして、四十六億被害があって、今トータルするだけで対策費十八億出しているということでございますが、これは農業被害の対策が動物を殺すということ以外にもさまざま私はあると思うんです。  これだけ費用をかけてうまくいっておるというふうに認識しておられるかどうか、農水省、環境庁にお伺いしたいと思います。
  119. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 防止さくですとかネット、こういう物理的に排除をいたします構造物につきましては、非常に限られた面積においては高い効果が期待できるというふうに思うわけですが、ただ、こういうものにつきましても設置の経費等がかなり高額なものになるものですから、これをどんどん広げていくということについてのなかなか難しさがあるというふうな状況にございます。  そういう中で、先ほど申し上げました研究開発費、この中ではさらに効率的な防除方法につきましてただいまネットワークを組んで研究をいたしております。そういう中には例えば早期警戒システムのようなものを構築して、入り込む前に何とかそれを撃退するとか、そういうものも含まれておりますが、そういう面での研究開発にも力を入れておるところでございます。
  120. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 生息環境の改善と被害防除とまた一定の個体数管理という三つの柱によります特定鳥獣保護管理、これを都道府県が実施能力をつけるという目的先ほど申し上げましたような事業を実施いたしておりまして、着実に成果を上げてきているというふうに考えております。
  121. 福本潤一

    ○福本潤一君 それで、やはりワイルドライフマネジメントにかかわるわけですけれども北海道で今六万頭、例えばシカを殺したら具体的にこの被害は減るという、そういう根拠はどこにあるのですか。
  122. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 生態系被害、また農作物被害の著しくなかった時代における生存数を六万頭というふうに理解しているということで、したがって六万頭水準が達成された段階では生態系への被害あるいは著しい農作物被害というのがかなり軽減されるだろうというものでございます。
  123. 福本潤一

    ○福本潤一君 では、かつて六万頭だった時代被害はどの額だったのですか。
  124. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) ちょっと不正確でございますが、一億円とか二億円ぐらいというふうに統計から読めるものでございます。
  125. 福本潤一

    ○福本潤一君 それは昭和何年で、具体的に言っていただければと思いますが。
  126. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 昭和四十年代後半から五十年ごろでございます。
  127. 福本潤一

    ○福本潤一君 金額的にはそれぐらいの額、金銭換算するとまた倍ぐらいとか三倍ぐらいとかあると思いますが、そうするとその被害額自体は種々の要件があると思います。今四十六億にまでなっている。これは同じ考え方で、昔は一億、二、三億、今四十六億と考えていいという数ですね。この四十六億と比較できる数ですね。確認です。
  128. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 数億円と四十六億円ということで、その比較は二十倍とか、あるいはその前後かと思っております。
  129. 福本潤一

    ○福本潤一君 そのときに、先ほど長官はワイルドライフマネジメントをまさに考えて一つ計画をつくるのだというふうに言われました。  人員の問題、先ほどから問題としていますが、と同時にこの上限の数、また下限の数、もちろん被害額だけから決めるのじゃないと思います。今回の法案が通りますと県におりて、一人か二人しかいないというような県も具体的な担当者がおるわけでございますが、この上限と下限というのを具体的にどういう科学的な知見、根拠に基づいて定めるのか。これがないと計画も立ちませんしということで、そこの明確な上限の需要限界、下限の一定数いないと繁殖しないという数を定めるのかということを聞いておきたいと思います。
  130. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 野生動物の場合、大体千頭というのがその個体群を維持する最低レベルというふうに言われておりまして、北海道におきましてはさらに豪雪等の影響も考えまして、五千ないし六千頭というものを下限というふうに考えているようでございます。  また、上限につきましては、先ほど申し上げました六万頭というものを上限に考えているということでございます。
  131. 福本潤一

    ○福本潤一君 その千頭と考えた根拠を聞いておるわけです。六万頭と考えた根拠が全然わからない。そうしないと、各地でこの計画をいろいろな形で定める、またシカだけでない猿だけでないクマだけでない、さまざまな形でこういったものを考えない限り、西欧のワイルドライフマネジメントまでいかないにしても、それの模倣だと。模倣なら模倣、もう全然違うものだというような話になるとまずいですので、それを定める根拠をやはり科学的にしていただかないと、私らでも、六万頭、そうかな、それは環境庁が言ったから従えとか言われたって困るわけでして、環境庁がそう定めた根拠をお願いしたいと思います。
  132. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 下限の水準といいますのは、いわば千個体というのが一番最小単位だと。それに加えまして、それぞれの地域状況によりましていわば環境容量というものがございます。したがって、その中でその地域地域に応じて適正な最低許容限度というものが算定されるものだと理解いたしておりますが、それが一千頭を下回るということになりますと、その個体群の維持が危うくなるというものでございます。  それから、上限につきましては、北海道の場合は、天然林への食害など深刻な社会問題になる前の安定した数字ということで、比較的その地域における生息数が安定的に推移していたレベルでございまして、これも地域の広がりによりましておのずから違ってまいろうかと考えております。
  133. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう計画の先進地の北海道ででも、これが安定的に推移していく数というのが今言われた上限値の根拠ですね。下限値、千頭です。また、これが具体的に、今言われたのはちょっとよくわかりにくいですけれども、もうちょっと下限値の方を教えていただけますか。
  134. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 生息域によりまして健全に生息できる、いわば適正存在数というものをどこまで下回るかということになりますと、それは最低が一千頭である。さらに、天然林の中でどのような存在が可能かということもありますし、そういった生息域の環境容量を踏まえて定められるものだというふうに考えております。  最大限につきましては、先ほど申し上げた考え方一つの目安だろうかと思っております。
  135. 福本潤一

    ○福本潤一君 やはりよくわからないです。適正容量でない数を下限値だと言っておるわけですね。では、適正容量というのは具体的にどういう数なんですか。
  136. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) いわば目標水準といいますのは、気象変化によります変動でも許容の下限水準を割り込まないレベルというふうにされているところでございます。
  137. 福本潤一

    ○福本潤一君 よくわからないので、また後ででも私の方へ届けていただきたい。適正容量というのが具体的に定まらない限り、若干地方へ持っていっても考え方が恣意的になって、ある意味では殺すわけですから。また、保護するときにはその保護する数というのは定めるという形になるわけですから、具体的にその根拠、ある意味では万人が納得するような形の数じゃないと、その地域計画する人にとってもこんな数とんでもないというような数を計画の中で出さなければ計画にならないわけですから、そこのところをきちっとやっていただくようにお願いしたいと思います。  と同時に、被害の補償制度の問題、鉛の問題があともう一個ありましたけれども専門家がおられますのでそちらでまたやっていただくとして、被害補償制度を具体的に今後確立するための検討の状況、これをお伺いしたいと思います。
  138. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 被害補償といったような損失対応問題につきましては、まず生態系被害あるいは農作物被害等を減少させて、その成果を見ながら損失対応問題についての検討を進めることが現実的だと考えております。  今回の法改正によります特定の鳥獣を適正に保護管理する計画制度を創設いたしまして、損失対応に係る諸課題につきましては、その新制度の成果を見ながら必要に応じて対応できるように検討を進めてまいりたいと考えております。
  139. 福本潤一

    ○福本潤一君 私も頭が悪いと思っているわけじゃないんですけれども、悪いのかどうか知りませんけれどもお答え方が悪いかもわかりませんけれども、よくわからないんです。せっかく答申があるわけですから答申を読んでいただいて、また後で具体的に、まだきょうは賛否をしないでも済みますので、私も後できちっと聞かせていただこうと思います。  その中で、もう一個。六万頭と決まったときに、その六万頭を各地域、例えば北海道で言うと網走とか根室とか支庁がいっぱいありますね。そういう配分するというときの配分計画、ここらを若干、総務庁の話の中では具体的にそこらのところの問題点も指摘しておるようでございますので、どういうふうにして配分するのか、これもお伺いしておきたいと思います。
  140. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 通常、基礎的な区画単位を設定いたしまして、そこにおける生息密度というものを考えていくものでございまして、それに照らして目標数と生息数との乖離を前提にして対応されるものと考えております。
  141. 福本潤一

    ○福本潤一君 適切に対応されるというお言葉でしょうけれども、それが適切にされなかったのでそこらの配分の問題の指摘を受けておりますので、これはまたきちっとよくよくこの監察を見ていただいてやっていただこうと思います。  最後になりましたけれども、この前も野鳥やなんかの環境ホルモンの問題がありましたが、逆に人間だけが被害を受けているわけではない。ダイオキシンを初めとする環境ホルモンが、今、野鳥を含めて鉛のみならずいろいろな形で、鉛は別として、環境ホルモンという形で影響を与えている。雄ばかり、一方の性ばかりになったりいろいろしておりますので、PCBを含めて農水省の掌握している環境ホルモンの野生動物に対する影響、これを最後にお伺いしておきます。
  142. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) いわゆる環境ホルモンと申しますか、あるいはダイオキシンを含む有害物質の問題、最近非常に重要な課題になってまいってきておりまして、政府全体での取り組みも非常に加速してきておるわけですが、私ども農林水産省におきましては、これから農林水産生態系の中におきますこういう物質の循環あるいはそのメカニズムということにつきまして、今年度からこれをしっかりとらえるような研究プロジェクトをスタートさせておるところでございます。  そういう中から、農林水産関係の動植物のみならず、その周辺からの影響ということも、あるいは周辺に対する影響ということも含めまして、全体のメカニズムの解明、実態解明ということについてこれから、大きくは十年計画でございますけれども、その中で取り組んでまいりたいというように思っております。
  143. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  144. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただいまから国土・環境委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、泉信也君が委員辞任され、その補欠として鶴保庸介君が選任されました。     ─────────────
  145. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 休憩前に引き続き、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  146. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 まず、野生鳥獣保護についての基本的な考え方についてお伺いをしたいと思います。  自然環境保全審議会の答申では、野生鳥獣について、自然環境を構成する重要な要素であり、人間の生存の基盤となっている自然環境を健全なものにするものであり、国民の生活環境を改善する上で欠くことのできない役割を果たすものと位置づけています。  こういう立場からすれば、大正十一年の狩猟法の枠組みを手直ししただけの法案では、自然保護野生生物保護が大きく叫ばれている今の時代に逆行するものと言わざるを得ないと思います。九七年には生物多様性条約が締結をされています。こうした時代の要請に見合った日本野生鳥獣保護をどう確保していくのかということを基本にした法体系が私は必要だというふうに思いますけれども長官の御所見を伺いたいと思います。
  147. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 法改正に対する基本認識のお尋ねでございますけれども、現在、野生鳥獣をめぐって生じている自然生態系の悪化や農林業被害個体群の地域的な絶滅のおそれの深刻化は、いずれも緊急の対応が必要とされております。  そこで、人と野生鳥獣の共存を図っていくための管理方策を緊急に講じるために、狩猟の適正化のみならず、科学的な個体数管理や、生息地管理被害防除などを連携して講じる制度を設けるべく、今回の法改正に取り組んだ次第であります。現行の鳥獣保護法は、人と野生鳥獣の共存ということを基本的な理念としているものを考えておりますが、今後中長期的な観点から検討をしなければならない課題も残されておると考えております。  そこで、御指摘の点については、今後の我が国の野生生物保護における長期的な重要課題として受けとめさせていただきたいと存じます。
  148. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今回の改正は、個体数が大きく増減している特定鳥獣について知事が保護管理計画を策定することにしています。環境庁長官がかかわるのは国設鳥獣保護区にかかわる場合と、環境庁長官が捕獲の許可権限を持っている種だけであって、その他の野生鳥獣については判断は都道府県任せとなっています。  野生鳥獣というのは、本来貴重種だから大事だ、それ以外はいいんだという、そういうものではないというふうに私は常々思っているんです。都道府県計画を策定するとしても、国として、国全体の生物多様性の確保あるいは種の保存に最終的な責任を負うのが当然だというふうに思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  149. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 鳥獣保護狩猟の行政は国と都道府県が行っておりますけれども鳥獣行政の根幹にかかわる部分、すなわち鳥獣保護事業計画の基準設定あるいは国設鳥獣保護区の設定などは今後とも国が実施をいたします。  この都道府県の事務となります今回の改正によります特定鳥獣保護管理計画の事務は、鳥獣保護事業計画との整合性を図る必要がありまして、国として策定をする鳥獣保護事業計画作成の基準を通じまして、生物多様性の確保、種の保存といった観点も含めて、野生鳥獣保護管理全般に係る国の基本的考え方を反映できるものと考えております。
  150. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ガイドラインをつくってやっていくということになるんだろうと思うんですけれども、それはもう法的な根拠のないもので、単なる参考指針にしかすぎないわけです。  絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律では、国に野生動植物が置かれている状況を常に把握するということを求めているわけですけれども、国は全国の野生鳥獣生息実態を把握しているんでしょうか。また、各都道府県はどうなっているんでしょうか。
  151. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 環境庁では、おおむね五年ごとに自然環境保全基礎調査を実施いたしておりますが、その中で野生鳥獣を含めて動物分布調査を実施し、また生息状況変化把握を行っております。特に保護の必要性の高い種につきましては個別に生息状況調査等を実施して、生息状況把握を行っております。  各都道府県におきましても、このような調査に準じた調査をそれぞれ実施しているところでございます。
  152. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 しかし、実際は限られた種以外というのはごく大まかな状況しかつかんでいなくて、結局全体を把握できていない。そういう状況のもとで駆除だけやりやすくするということになると、これはもう非常に大きな問題になるというふうに思います。  適正な保護管理計画をつくるためには、例えば群れ数とか個体数とか年齢構成とか食性とか生息地域、行動範囲、繁殖率、寿命等のデータをつかむ必要があります。英国スコットランドでは、四十年前からシカ生息調査をして間引く割合を決め、森林保護と生息数の維持を図っているわけです。  野生鳥獣生息数調査、これは多くの人手と時間がかかる、これはもう当然のことです。財政難の自治体に本当に対応できるのか、被害防止策というよりも低コストのいわゆる駆除に走っていってしまうんじゃないか、乱獲が進むおそれがあるんじゃないか、こういうことが心配されるわけですが、その点はどうですか。
  153. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) そこは、各都道府県におきます野生鳥獣保護管理をするための生息状況調査で大変大事なところでございます。  逐次、各都道府県における専門家増加をしてまいっておりまして、そのような専門家の方が、各都道府県調査研究機関、現在三十五カ所配置されておりますけれども、そこにおきまして各種の計画的な保護管理を担当する調査事務等に従事いたしておりまして、それによりまして科学的、計画的な調査並びに管理が可能になってまいると考えております。
  154. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今お話がありましたように、計画の策定には専門機関と専門家の体制が不可欠なわけです。ところが、保護管理計画に関する環境庁の通達に書かれていた保護管理体制の整備、この項目が法案保護管理計画の事項から落ちてしまっているわけです。本当に現状において都道府県レベルで科学的、計画的な保護管理を行える状況にあるのかという点が非常に疑問になってくるわけです。  環境庁調査でも、十七県には公的な調査研究機関はない。哺乳類の専門家は全部で四十一人で二十四県はゼロ。鳥類専門家は全部で三十三人で三十一県がゼロ。民間の調査研究機関があるのも十五県だけ。  鳥獣保護法改正を考えるネットワークが都道府県に対して行ったアンケート調査では、自治体に野生鳥獣調査研究機関があると答えたのは十九、担当部局に野生鳥獣生態分布被害実態などを総合的に把握している専門の担当者がいると答えたのはわずかに三つしかありません。委託を含めても十三だけ。  本当にこんな状況で科学的、計画的な保護管理計画などやれるんでしょうか。
  155. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 保護管理計画の策定を進めております各道府県、いろいろな試行錯誤を経ながら体制の整備が進められておりまして、まず専門家の素質のある基礎的な学問を習得した職員を現場の担当に派遣するとか、そういったようなことで現場の事務を通じて訓練をいたしてまいっておるように承っております。また、それにあわせて、連携のある大学における研究者等の指導も得ながら、また現場におきます各種の調査を担当するボランティアの方の協力も得ながら効率的な調査体制を組んでいるということでございます。  これらの専門家につきましては、まだまだ現在十分ではございませんけれども、今後ともその充実を図っていくということで対応してまいる必要があると考えております。
  156. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今、自治体は財政難ということで、本当にそれをやっていけるのかという疑問は払拭できないわけです。  私は、この法案審査に当たって千葉県に行ってまいりました。比較的よくやっていると言われる千葉のシカ保護管理ですけれども、ここでは房総のシカ調査会という任意団体に調査などを委託しているわけです。ボランティアやアルバイトなど二十人くらいで山に入って全域のシカのふんを数える、これは本当に手間暇がかかる仕事だというふうに思います。そして、各ユニットごとに頭数あるいは増減、被害状況、土地や森林状況などを調べる、そういう調査を行っているわけです。  たまたま博物館の研究員が業務外で熱心にシカ調査会をやっているから比較的しっかりした調査が行われているというふうに思いますけれども、まさに個人の努力と善意、そういうものに過度に私は依存している実態だというふうに見えて仕方がありません。調査会への県の委託費も、シカはある一定被害が鎮静化した、イノシシが大変だというふうになると、今度はイノシシの方に予算が行ってしまうということでシカの方が大変になってしまう。要するに、科学的、計画的な保護管理を系統的に行う、そういう確保というのは、進んでいるところでさえ非常に大変な事態だということなんです。  ネットワークのアンケートに対して、すべての種の鳥獣保護業務を都道府県レベルで行えるということで回答したのは香川県だけなんです。長官の県だから、やっぱり法案を通したいという一念でお答えになったのかよくわかりませんけれども、六割近い二十八都道府県が困難であるというふうに回答しているんです。ですから、全都道府県でやれるのかどうか、この疑問というのは、私は依然として実態を見れば見るほど払拭できないということなんですが、いかがですか。
  157. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) アンケート結果を私も拝見いたしましたけれども、その結果の分析の中で、NGOの方も少し誤解を受けてしまったというふうな記述があったやに拝見しております。  結局、都道府県レベルに聞いたすべての種に対する業務の実施の可能性を尋ねたところ、都道府県の中では、多くが絶滅のおそれのある希少種まで含まれて対応できるかという問いであったというふうに考えまして、困難と回答したものが多かったというふうにも伝え聞いているところでございます。  現在、有害鳥獣駆除その他野生鳥獣保護管理の実務、かなりの部分が都道府県において実施されてきておりますけれども、これをさらに科学的、計画的な保護管理の適正な推進ということで進めるためには、生息情報の整備あるいは鳥獣生息調査研究の推進といったような保護管理を支える科学的な知見、技術の整備体制のより一層の整備が肝要であることを十分認識しているところでございまして、そういったようなところの体制の整備について、引き続き支援をしてまいりたいと考えております。
  158. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 各都道府県は絶滅危惧種について自分たちが全部管理しなければいけないというふうには思っていないと思うんです、それは国の仕事だと思っているわけですから。そのアンケートに答えたときにそこまで間違えたというのは、それは非常に認識が行っていない方はあったかもしれないけれども、全体としてはそういうことはないというふうに私は思います。  今回の法案は、こうした状況で、特定鳥獣狩猟制限緩和あるいは狩猟期間の拡大、特定鳥獣の数を調整するための捕獲の権限、これを知事に任せることになるわけです。  日本自然保護協会は、有害鳥獣駆除申請に対して都道府県職員が現地調査を行っているのは半分にも満たない現状だと、こういうふうに指摘をして、このような状態のもとで捕獲許可が地方自治体の事務になれば、ツキノワグマ、ニホンザルなどの野生生物について、国が実態を把握しないうちに地域個体群が危機に陥るおそれもある、そう警告しています。  野生生物の保護管理を進めている地方の体制が整わない状態で捕獲許可権限だけを地方自治体に移すというのは、これは問題だというように思います。環境庁は、みずから野生動物保護の体制を整えるとともに、地方自治体における野生動物保護の基盤づくり、これを援助すべきであるというふうにこの自然保護協会は提起しているわけですけれども環境庁は地方の野生動物保護の基盤づくりについてどのような見通しを持っているのか、どんな具体的な援助をするということなんでしょうか。
  159. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 環境庁におきましては、平成十一年度から予算計上いたしまして、野生鳥獣保護管理基盤整備費ということで野生鳥獣分布あるいは生息密度情報の整備、特定個体群の保護管理計画に関するガイドラインの策定などの技術的な支援を行う予定にいたしております。  また、都道府県保護管理計画に関する調査の実施に関しまして、この整備費のほかに、野生鳥獣管理適正化事業補助金の配付等によりまして財政的な支援を進めてまいりたいと考えております。
  160. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 お金をちょっと出したからとか、それからガイドラインを示したからということですぐやれるというものじゃないと思うんです。要するに、自然保護協会が求めているのは、適切な保護管理計画をきちんと実施できる地方の体制の確立をまずやるべきだ、それが大前提だということを主張しておられるわけです。  特定鳥獣保護管理計画そのものについてですけれども、これまでの有害鳥獣駆除、これは被害が起きたときや被害のおそれがある場合に行うということになっていたわけですが、今度の法律では、直接的な被害の訴えがなくても、一定の生息数を目標にして駆除を行うことができるようになるわけですけれども、その点はどうですか。
  161. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 被害がなくてもということでございますけれども、むしろ保護管理計画を策定して適正な捕獲数を設定するということによりまして個々の捕獲はその枠内で行われるわけでございまして、個別の有害鳥獣駆除で対応する場合とを比べまして過剰捕獲となる懸念というのはより少なくなるのではないかと考えているところでございます。
  162. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 要するに、目標をどう立てるかということによって全体が変わってくるわけです。目標を立てるには体制がなければいけない、研究がなければいけないということになるわけです。それがないのに、目標が立てられてずさんなものであったら重大な事態になるというのは、これはもうだれが考えても明らかなことじゃないですか。  千葉のシカの場合ですけれども調査会の報告に基づいてシカ生息地全体を四十四のユニットに分割して、そのうち二十七のユニット、これは被害防除を目的とした農業優先地域としている、十七ユニットは個体群の維持を目的とするコアエリアとしているわけです。しかし実際には、農業優先地域で高い狩猟圧を加える駆除が実施されていて、コアエリアでの管理目標の検討とか生息地管理、これはほとんど行われていないのが実態だということです。  先ほどから局長は、防除、生息地管理個体数調整、この三つの柱に基づく個体数管理が必要だと、こういうふうに強調されているんですが、非常に進んでいると思われるところでも実際はなかなかそうはいっていないという状況なんです。房総のシカ調査会が一生懸命やっている、そういうところでもこういう実態ですから、現在の不十分な体制のもとではたとえ計画に「保護」という文字があったとしても結果は捕獲中心、保護には手が回らないということになるのは当然なんじゃないでしょうか。  房総のシカ調査会は、保護管理計画は、個体数調整だけではなく、生息地管理被害管理を一体とした総合的な計画にすること、これを主張しています。そして、生息状況等のモニタリング調査をして翌年の計画にフィードバックする、このことが絶対に必要だというふうに強調をしていました。  この点でも、法案では、被害予防対策の項目あるいは生息動向調査、これが計画項目から欠落をしているんですね。どうですか。
  163. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 改正法の中におきます特定鳥獣保護管理計画計画事項の中でそれらも読めるように記載をされております。  具体的には、「特定鳥獣ノ棲息地ノ保護及整備ニ関スル事項」あるいは「其ノ他特定鳥獣保護管理ノ為必要ナル事項」ということでございまして、これらの具体的な内容につきましては、国で定めるガイドラインにおいて具体的に定めてまいりたいと考えております。
  164. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 要するに、今まで指針できちっとやってきた生息動向等の把握だとか被害予防対策だとか、そういうものが落ちてしまって、その他で読んでくれ、こういう話になっているわけです。  これは、ガイドラインというのは、さっきから言っているように、ちゃんとした法的な裏づけのあるものではないわけですから、今までは通達である程度きちっとやってきたものが何で今度の法律で落ちてしまうのかというのが疑問な点ですし、これはもう重大問題だというふうに思うんです。  環境庁が定めている有害鳥獣駆除取扱要領では、「有害鳥獣駆除の許可は、」「被害等防除対策によっても被害等が防止できないときにのみ行うものとする。」と、こう明記をしているわけですね。被害予防対策をしっかりやって被害を防げるかどうか、こういうことで個体数の目標も違ってくるというふうに思います。被害予防対策を計画的に行うことは保護管理計画にとって不可欠です。  その点でちょっと農水省に伺いたいと思うんですけれども野生鳥獣による農作物被害林業被害について、どういう調査をしてどういう方向で解決をしようとしていかれるのか、その点について簡潔に伺いたいと思います。
  165. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) まず、農作物被害状況につきましては、これは毎年都道府県を通じまして市町村に依頼して調査を実施しております。そういう意味で、現場に精通した方による被害の実態を報告してもらっている、こういう状況にございます。  それから、いわゆる森林被害状況につきましては、民有林については都道府県が市町村森林組合などの協力を得て実損面積把握しておりますし、また国有林につきましては森林管理署が調査した結果を報告してもらう、こういう形になってございます。
  166. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 農水省は、毎年、鳥獣類による農作物被害状況の報告、これを都道府県から出させているわけですけれども、これはちょっと伺って驚いたんですけれども、項目が植物防疫法に基づくものなんですね。そういうことで報告をとっているわけです。そうすると、鳥獣類というのは病害虫と同じレベルの話になるのかなというふうに思ったんです。  やっぱりそういう意味で、農水省が野生鳥獣との共存を本当に図ろうとしているのかどうかというのが大変その扱いから疑問になってくるんですね。ばい菌と一緒にされたんじゃちょっと鳥獣も困るんです。  そういう点で、先ほどから農水省の防護さくあるいは防護ネットの予算というのが十六億二千万円、これは地元の要求があったところに防護さくをつくるというふうになっているんです。  私は千葉へ行ってもちょっと気がついたんですけれども、要するに声が出るとそこに防護さくをつくります。どんどんそういうのをふやしていきます。毎年毎年一万メーターぐらいずつやるんですけれども、そこの地域の全体を、農業をどうしていくのか、あるいはそこにいるシカや猿とどう共存していくのかということを考えて、農水省としては、ぼんとこれだけの予算で全体計画を逐次やっていきますというものではなくて、要求があればそこで手当てをしていくというやり方になっているわけです。  私は、これはやっぱり問題だと思うんですね。野生鳥獣人間活動、これを全体としてどう考えるか、農作物保護のためにどういう手だてをとっていったらいいのかということをもっと総合的に明確にしてやっていく必要がある。野生鳥獣との共存を目指した森林整備あるいは被害防止システム、この整備を、適正な保護管理指針の策定とあわせて立てることが必要だというふうに思うんです。ところが、農水省の予算、詳しく見せてもらったんですが、十六億二千万円の大部分が防護さく等で、森林整備費というのはわずか四億ぐらい、非常に少ない額なんです。  被害がふえているのは、個体数生息数環境とのバランスがとれなくなってきている、そのあらわれだというふうに思いますが、個体数調整という方法だけではなくて、生息地環境整備で周辺の被害を減少できる、そういう場合もあるはずだというふうに思います。  そういう点で、後追い的な防除だけじゃなくて、野生鳥獣生息地自然環境の保全、あるいは先ほどからも議論がありましたけれども針葉樹林から広葉樹林への転換、生息地の孤立をさせないで連続させるというようないわゆる連続性の確保など自然環境整備、これを計画的に実施するということが農水省、林野庁の仕事だし、私はそういう責任があるというふうに思うんですね。特に減少が著しい個体については、一定の被害は補償しても保護すべき、保護しなければいけない、そういう場合もあると思うんです。  ですから、野生鳥獣の保護というのを環境庁に任せるだけではなくて、農水省としても、さくをつくればいいということではなくて、ちゃんと総合的に、日本の農業をどうするんだ、その地域の農業をどうするんだ、それと野生動物とどう共存していくのかという大きな視点に立って考えていく、そうでないと救われないというふうに思うんです。  私も農家の皆さんの被害というのを直接、もう陳情も受けましたし現場も行きました。とにかく猿などは、全部リンゴ丸ごとちゃんと食べてくれるならまだしも、ちょっととって一口かじったらぱっと捨てる、それで次のおいしそうなのにまた行って、汗水垂らして育てたのに本当にもう泣くに泣けない。だけれども、猿もかわいいしどうしよう。撃ちたくない、猿は鉄砲を向けると何かこういうふうに拝むんだとかいって地元の猟師さんも嫌がるとか、そういうことを言われました。  いずれにしても、人間の方がずっと知恵があるわけですから、やっぱり農水省としても、騒いでいるところに場当たり的にやっていくんじゃなくて、きちっと対応するという姿勢が必要だと思うのですが、どうですか。
  167. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 御指摘のとおり、野生鳥獣の生育環境に配慮した森林整備、これは大変重要だと私どもも考えておりまして、具体的にそのために環境庁とも御相談し、また連携しながらさまざまな努力を行っております。  具体的な内容を申し上げますと、私ども持っております森林整備の目標がございます。終戦直後には、これは早急な国土の緑化、また不足する木材需要に対応するために針葉樹を中心とした人工林の整備を重視いたしておりましたけれども、最近の鳥獣保護の御要請等に沿いまして、天然林の保全整備、また複層林といった新しい形での森林整備に重点を置くことにいたしております。    〔委員長退席、理事太田豊秋君着席〕  また、昨年十月に成立させていただきました新しい森林法で、民有林の林業家の方々も天然林や広葉樹林整備を推進していただくための施業計画の制度を創設させていただきましたし、また国有林につきましても、昨年の国有林改革法、十月に成立させていただきましたが、この法律に基づきます国有林野の管理経営基本計画、これは昨年秋に三十日間公告縦覧をいたしまして、この計画案を広く国民の方々にお示しし、御意見を承って十二月に決定いたしたものでございますが、この中でも、野生動植物の生育環境としての森林の保全整備、また緑の森林動植物繁殖生息に都合のいいような回廊、コリドーの整備等も行うことにいたしております。  さらに、予算面でも、野生鳥獣共存の森の整備事業とか、あるいは広葉樹林整備のための特別の事業というようなものを推進させていただいているところでございます。
  168. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 農水省、林野庁は非常にお金を持っていますから、屋久島などでも私もちょっと見させていただきましたけれども、山の中に自然に残しておけばいいのにというような地域で、公園だということで立派な建造物をつくったりいろいろすごいお金をかけたりしているわけですね。そういうお金をもっと別のところに、例えばシカの害があるならばいろんな対応を、自然保護団体の皆さんが山の中に行ってネットを張ったりとか、それから何か木にプラスチックのようなものをかぶせたりとかといろいろしているようですけれども、そういうところにもっとお金を使っていけばいいのにというふうに思いますが、そういう点も要望しておきたいというふうに思います。  次に、改正では特定鳥獣の捕獲の禁止・制限の緩和、あるいは狩猟期間の拡大、特定鳥獣個体数調整のための捕獲許可などを知事に任せ、あわせて地方分権法で鳥獣等の捕獲許可などの権限を市町村に移譲できるということになっています。  欧米のワイルドライフマネジメントでは、鳥獣駆除には専門の狩猟管理官が同行する、テレビでもやっていましたけれども、その指示のもとに駆除を行うということになっていることです。ところが、日本ではそうした体制はないのですね。  地方の鳥獣保護員はどのくらいいますか。
  169. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 現在、全国で三千二百名の鳥獣保護員がおります。
  170. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 その鳥獣保護員なんですが、多くは猟友会の会員なんです。  きのう環境庁に全国の資料をと言ったのですがなかなか出していただけないで、一応、九県の資料を出していただきましたけれども、九県全体で千二十人配置をされていて、そのうちの七百五人が狩猟免許所持者。この人たちが鳥獣保護員ということで活動している。高知県では全員が狩猟免許所持者であるし、鹿児島県は八四・九%、岡山県が八〇・八%、千葉県でも七四・五%です。いわゆる自然保護団体の会員とかあるいは研究者は九県全体で三割にすぎません。恐らく全国的にも同様だと思います。狩猟免許所持者がすべて問題だというふうには思いませんし、そう言えないと思いますが、しかしハンターに依存していて本当の野生鳥獣保護管理が行えるのか、私は到底行えないのではないかというふうに思います。  実は、千葉県で九一年に猟友会の自主規制という形で狩猟解禁をしたことがあるそうです。ところが、大混乱になってやめちゃったということなんですが、入山申請状況が、例えば町によって違うんですが、最高倍率十七倍とか十三・二倍とか九・二倍とか、解禁したらわっと狩猟希望者が押し寄せてきて、そして規制に対する反発が非常に強いとか、あるいは規制破り、危機防止のための経済的、人的負担が大きいということで、千葉県はそういうことはやめてしまったというようなこともあります。  ですから、私はこういうハンター依存の鳥獣保護あり方、これは改めていかなければいけない、本当に自然保護あるいは鳥獣関係の専門家を育てる、あるいはそういう方々に活動してもらうというような体制に改めていかなきゃいけないと思いますが、どうですか。
  171. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 徐々に鳥獣保護を中心とする業務になってまいっていると思っておりますけれども、あわせて狩猟の適正化を仕事にいたしておりまして、狩猟の場、あるいは狩猟鳥獣についての知見を有する者がその中で委嘱されているという点を御理解願いたいと存じます。
  172. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 御理解願いたいと言われても、実際の数字からいって、今の法律で私たちが言っているのは、これは狩猟法じゃありませんかと。狩猟法で保護がないじゃないですか。実際にいろいろ調べていくとこういう実態なんですね。鳥獣保護員が三千二百七十人全国にいるというから、これは結構いるんだなというふうに思って中身を調べていくとこういう状態なんです。それも、環境庁に何度も何度も言って、なかなか割合の数字も出てこないということで、その出し渋りも本当にすごかったんですけれども、そういう実態のもとでこの法案が施行されていくわけですから、御理解を願いたいと言われても、ちょっと難しいんですね。そういう本当に疑問を持つわけです。  それで、最後になりますが、改正案では狩猟の免許の条件緩和をやりますが、銃による駆除、これが生態系の破壊を招いている重大な問題、これは先ほどから言われている北海道自然保護課。ここの調査では、エゾシカ猟に伴って死骸を食べたオオワシやオジロワシが九七年、八年度に鉛中毒で二十三羽も死亡している。調べた死亡個体の約七割だということです。  二月に開かれたオオワシ・オジロワシ国際シンポジウム、私も参加しましたけれども、ここでも鉛中毒のために五十年後にはオオワシ、オジロワシが半減する、そういう研究結果、シミュレーションが報告をされています。見つかったデータだけをもとにしているので、実際にはもっと深刻だろうというふうに言われています。日本で越冬するカモ類の十数万羽が鉛中毒という環境庁調査結果もあります。もう大問題だと思います。  ところで、環境庁は指定地域の水鳥について、鉛の散弾については二〇〇〇年から禁止する方針だということですが、ライフル銃の鉛弾については使用禁止をしようとしていないわけですね。鉛弾はライフル銃も散弾も、水鳥だけではなくてすべて規制をしていく必要があるというふうに思います。  実は、関係者の方から言われてちょっと調べていったら、大日本猟友会に環境庁自然保護担当の幹部が天下りをしていたということがあります。元自然保護担当の参事官、元野生生物課の鳥獣担当の室長、こういう二名が天下りをしていました。今はやめているわけですが、こういう関係がハンター依存、あるいは駆除優先、そういう鳥獣保護対策になっているのではないか、そういう疑いを持たれたら、これはもう大変なことですね。そういう疑いが持たれてはいけないと思うんですが、しかし全体として見ていくと何か不安になるわけです。  長官、そういう意味で決してそういう癒着はありません、そんなことはないんです、鉛の弾についてもちゃんとやりますということで、この鉛弾については規制をきちっとやっていかれますでしょうか。その点について伺います。
  173. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 私も、在任は浅いわけでありますけれども、その件につきまして伺いましたところは、そういう癒着関係はないということでありました。  鉛から銅へと散弾を切りかえていかなきゃならないということはいろいろ言われておるわけでありますけれども、しかし今、先生が言われたような懸念がないように対処していかなきゃならない、こう覚悟を新たにいたした次第であります。
  174. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 終わります。
  175. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今回のこの鳥獣保護法改正ですけれども、有害鳥獣対策が大変その原動力になっていて、今回の改正野生生物の保護という観点が極めて希薄であるということをまず指摘をしておかなければなりません。  絶滅のおそれのある野生鳥獣の種類が増加をしているというふうに聞いていますけれども環境庁の認識はどうでしょうか。
  176. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 環境庁におきましてはレッドデータブック作成いたしておりますけれども、その中で、鳥類につきましては移動性が高いということで、おおむね種の中で一三%程度が絶滅のおそれがあるということでございますが、動物類、特に哺乳類等につきましては約二割が絶滅のおそれがあるということでその種の数が出てまいっているところでございます。
  177. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その二割の哺乳動物の種類というのはわかっていますか。
  178. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 典型的なものは、大変数を減らしておりますツシマヤマネコですとかイリオモテヤマネコ、それからアマミノクロウサギ、そういったようなものがございます。
  179. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そういうものは私たちも資料でわかっておりますけれども、普通生息をしている野生動物ですね。狩猟対象になっている野生動物の中で絶滅の危機に瀕しているようなものはあるのじゃないですか。そこらが問題なのですけれども
  180. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 狩猟鳥獣につきましては適宜見直しをいたしておりますが、絶滅のおそれのあるものを狩猟鳥獣にするということは一切ございません。ですから、狩猟鳥獣の中で絶滅のおそれのあるものはございません。
  181. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 絶滅のおそれがあるようになってから禁止をしても遅いということを今までの経験の中でわかっていただかなければなりません。  ツキノワグマなどの生息についても、ツキノワグマを保護したいという団体の皆さんからも非常に大きな要望が寄せられておりまして、個体数は確実に減少している。特に生息地帯が乱開発によって荒らされる、ゴルフ場の開発あるいは森林の伐採、それから植林、針葉樹林にだけ変えていくという状況の中で、生きていく生態系そのものがもう随分と減少してきている。クマの場合は、自分が越冬して、そしてさらに春妊娠をして出産ができるだけの食糧の確保がないとその年は出産をあきらめるというか妊娠をあきらめるというような習性もあるということで、新しく生まれてくる命もその年の食糧によって決まるというふうに言われておるそうです。  私はよくわかりませんけれども、専門の方にお話を聞くとそういうことですが、そういう中で、日本の自然体系が非常に生息するのには適さなくなっておるという状況の中で、ややもすると人里近くにあらわれてしまう。そうしますと、有害鳥獣ということですぐに捕獲される対象になってしまって捕獲をされてしまうというようなことが行われている。山に帰すということも二割ぐらいはやられているらしいですけれども、近年は帰すということよりもやはり捕獲をしてしまうということの方が多くなっているというふうに聞いていますけれども、そこらの環境庁の対応というのはどうなっていますか。
  182. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 先生お話しのとおり、主として西日本におきますツキノワグマの生息環境生息域が分断をされておりまして、それぞれの地域個体群の数が大変前と比べて減っているということでございます。  私どもとしては、奥山放獣、一たん里に出てきたツキノワグマにつきまして、里に出てくるといわば環境といいますか雰囲気が悪い。例えばコショウをかがせたり、そういった人間のところへ来ると怖い目に遭うといったような体験をさせてそれで奥山に放すといった奥山放獣というのをかなり意欲的にやっております。その結果、従来いわば駆除せざるを得なかった頭数もその地域においてはかなり減ってきているというふうにも聞いております。こういったものを随時してまいりたいと思います。
  183. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 二国間渡り鳥条約の対象種になっている鳥が狩猟種に入っているのですけれども、これらも禁止をすべきではないのでしょうか。そこらはどうでしょうか。
  184. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 渡り鳥の多くは狩猟鳥獣ではございませんけれども、渡り鳥の中には大変数が多い、特にカモ類といったようなものがございまして、膨大な生息数が数えられ、かつ渡来をいたしております。これらにつきましては狩猟の対象となっておるものでございます。  これにつきましては、いわばこの狩猟鳥獣の中で個体数が減ってまいったものについては狩猟鳥獣から外していくということをやっておりますけれども、現在のところはいわば数をむしろふやしているといったようなものもございます。
  185. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 外していくときに本当に科学的知見によって調査が行われるのですか。ふえているとか減ってきたというのはどういうことでわかるのですか。
  186. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 渡り鳥調査というのを私どもかなり長期的にやっておりまして、全国で数百カ所のポイント数で春、秋、渡来状況調査いたしておりまして、それによりまして、その秋あるいは春の渡来数を見て、それが傾向的に非常に増減があるという場合には、例えば仮に狩猟鳥でありましたら外すといったようなこともやってまいっております。
  187. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その野生動物のすめるところを回復していくという観点が必要だというふうに思うのですけれども環境庁からこの資料を私はいただきました。(資料を示す)これは奈良県の大台ヶ原の資料、これがシカの食害によってこうなってきたというふうに説明をいただいているのですけれども、それに間違いございませんか。
  188. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 大台の場合も、それから奥日光の場合もシカによる影響かどうかということが長い間疑問視をされておりましたけれども、最近比較試験ということで、シカが入らないさくをつくりまして、その中における植物の状況を比べますと、一年あるいは二年小さなさくで囲っただけでかつてのような植生が戻ってまいりますということを考えて、まず増加したシカ影響によるものだというふうに推定して間違いないといったふうに専門家の間でも評価をされておるところでございます。
  189. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 自然保護団体は、ここの大台ヶ原の、私は現地にまだ行ってないので行ってみたいと思っていますけれども、現地を見まして、それは違うというふうに指摘をしています。  これは、人間がここに入ってきたために、あるいはその森を覆っていたヒノキが切られて、そしてそれはそのまま放置をされる。ヒノキを切った場所は今度は日が当たりますから、そこはコケが植生できなくなります。コケのかわりにササが生えてくるという状況、これはどこの森もそうなのですけれども、日当たりのいいところはササが植生をしてきますけれども、そういう状況が放置をされる、その上にドライブウエーがつくられて、そして排水のための溝、側溝が切られてしまった。この山自体はかつては非常に保水能力の高い山だったわけで、そこにコケが生えて、そしてこういうきれいな景観を保っていたのですけれども、それが人間の道路建設あるいは観光客が入ってくるというような乱開発によって山の性質そのものがもう変わってしまっていて、保水能力そのものが下がっていくという状況の中でコケにかわってササが生えてきているという状況。  このことまでもがシカのせいにされていて、シカの捕獲をしなければならないという論議に、こういう写真、しかも国会議員に配られる写真にまでこういうことがされているということは問題であるという指摘があり、むしろ、これをもとの生態系に戻していくためには、その乱開発を直ちにもとに戻すというようなことは手当てがされない限り絶対に戻っていかない、シカ駆除したぐらいではならないのだということを、この間国会に見えられて強く要望されていかれましたけれども、この資料をシカのせいということで配ったことは極めて不認識だというふうに思うのですけれども、いかがでございますか。
  190. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 原因者の特定は先生おっしゃるとおり大変慎重にされねばならないと思いますけれども専門家調査を十分実施してこれまでもかなり解明してまいったと思います。  いわば、全部開発の手によるものは全くないということはあるいはないかもしれません。したがって、どこが何による影響なのかということは保護管理計画等を作成する場合には一番大事なことでございますので、そこはきちんと科学的に調査する必要があると考えております。
  191. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 調査する必要があるとかしなきゃならないとかとは言っていますけれども、本当はほとんど環境庁の陣容では手がつけられないというのが実態ではないかなと私自身は思っているところでございます。  野生動物野生生物と共存できる自然をどう再生させていくかというのは、これからの環境庁にとって大変大きな仕事になっていくというふうに思いますけれども自然保護協会やWWFの方々が広葉樹の植林などをボランティア活動として呼びかけますと、多くの市民が参加をして手伝っていただける状況にあるということを私はお聞きしています。環境教育の観点などから、こういう広葉樹林を育てていくあるいは実がなる木を植えていくというようなことを環境庁が率先してやるべきだろうと思うし、今までもやってこられているのかもしれません。  今後、さらにそのことのために予算を大幅に獲得して積極的に取り組む必要があると思いますけれども、御決意を聞かせてください。
  192. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 環境庁の財団、幾つかの認可法人でもそういった広葉樹、ドングリを植えるボランティアツアーなどをやっておりまして、私どもも実は参加をいたしたりしております。  先生がおっしゃるような環境教育の重要性がございますので、平成十年度の三次補正で全国四つの環境教育モデルゾーンを設定しまして、その中で十五の県にまたがりますけれども、今、先生がおっしゃったような自然林に戻すようなことも入れながら、そこに子供たちが行ってドングリを拾い、実生になったものを植えていくといったようなことも含めてモデル事業的に進めていくということもやっておるところでございます。
  193. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 戦後植林をされた針葉樹林はそろそろ伐採期に来ている部分というのはあると思うんです。  これは林野庁の管轄で、ちょっと通告していなかったのであれなんですけれども、思い切って広い範囲を伐採する、そこはもう広葉樹林帯として次の針葉樹林は植えないというようなことが行われて、針葉樹林帯と広葉樹林帯とが、野生動物、哺乳類の大きさによっても違うでしょうけれども、行動する範囲の中に広葉樹林が新しくできてくるような大胆な発想で、日本地図の中に野生保護のための林をどう保護していくかというようなことを地図上に落として、そして長期的な視野の中でそういう計画を立ててやる必要がある時代が来ているんじゃないかというふうに思います。  伐採期が来ている針葉樹を切るときにはそういう観点でやられたらいいのではないかなというふうに思っておりまして、きょうは林野庁の人にも来ていただいているはずなんですけれども、見えていますでしょうか。農水省が全部代表で来ているんですね。ちゃんと答えられる人にと言っていたわけですけれども、どうでしょうか。
  194. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 森林につきましては、その整備に当たってはやはり野生鳥獣の保護といった自然環境の保全に十分配慮することが大変重要な視点だというふうに考えておるわけでございます。  そういう点からいたしまして、広葉樹林等の造成による樹種等の多様な森林整備、こういうことにつきましては各種の事業等を通じて取り組んでおるところでございまして、そういう中から野生鳥獣共存の森整備事業、こういうものも実施させていただいておるところでございます。  今後とも環境部局との連携を確保しながら、森林の機能の発揮と野生鳥獣の共存、こういうことを目指した多様な森林整備を推進してまいりたいというふうに考えております。
  195. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 続いて農水省にお尋ねしますけれども先ほど来農水省の農作物被害に対する予算をどう使われているのかということを各党の皆さんが聞いておりまして、十六億二千万円余りというふうに言われています。緊急の予算枠の中では一千二百億円ぐらいの予算枠があるわけですけれども、これを農作物被害の方にもっと大きく振り分けていくということはできないのですか。
  196. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 先ほど来一千億と申しておりますのは、これは総合的な事業、つまり基盤整備ですとか施設の整備とかも含めまして、この鳥獣対策がメニューとして入っております事業の事業費の総額を申し上げておるわけでございます。  そういう中から、それぞれ地域の実態に即しまして総合的な整備をする地域が決まってまいりました際に、その中で鳥獣に対する対策が必要なところについてこういう予算の中からそのような施設の整備等に充当していく、こういう実は事業の執行方式になっておるわけでございます。そういう中で、先ほど来申し上げておりますように、事業として取り組んでおります地域の中で鳥獣対策を実施したところでの実績が十六億と、こういう数字になっておるわけでございます。  つまり、こういう鳥獣被害につきまして、これらの経費すべてがそういう形で充当されるということについては、現在の予算の仕組みからなかなか難しい面がございますが、ただこういう事業を通じて、地域の実態を踏まえまして、やはり緊要度の高いところ、鳥獣被害に非常に苦しんでおられる、重要な被害が発生しておる、こういうところにつきましては、これからさらにこの事業等を活用して的確に被害防止が図られるように、これは実際の事業の計画あるいは運用という中で取り組んでいく余地はあろうかというふうに考えております。
  197. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 自然の生態系を保持するために中山間地で農業を営むということ自体が地球環境自然環境の保全のために重要な役割を担っているということで、近年デカップリング政策が大きく取り上げられている時代になっています。こういう野生生物が出没するようなところは本当に奥山であり山間地であるというふうに思います。  そこで、中山間地で農業をやっている皆さんに直接所得補償をする制度というのはやっぱり早急につくっていくべきだろうと思います。そういう中で、作物の被害はあるけれども、しかしそこは野生生物と共存をしていく、共生をしていくという人間の優しい視点というのは必要だろうと思います。それでもなおかつ農業で頑張っている皆さん方に所得補償をするこの制度というのはやっぱり必要になってくるだろうというふうに思いまして、近年そのことに積極的に取り組もうということで農水省でもやっておられますし、農水委員会でも議論になっていることは十分承知していますので、この問題も含めて、ぜひこの鳥獣法、狩猟法から鳥獣法に返ってくる間に、かつては農水省の管轄の法案であったわけですから、その中で特にこの法の目的に農林水産業の保護ということがうたわれている、目的のまず第一条にそこがあるわけです。  そういう中で、農水省の関与というのは避けて通れない。鳥獣被害を出しているんだから環境庁、おまえが補償しろなんてことは口が曲がっても言えないはずなんです。それを何かこの法案改正しなければ農水省は環境庁に対して、では動物被害に対して環境庁、おまえさん面倒を見れるのか、見れないのなら法律改正しろよ、こんなような圧力がかかっていないですよね、農水省。
  198. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 農業自体が、林業も含めまして、いわゆる環境と調和しながらこういう活動が持続的に展開されていくということは非常に重要な視点でございます。  これからの新しい政策展開においても、そういう視点を重視しながら政策を展開していくということが今非常に重要なところに来ておるというふうに認識しておりますので、御指摘のような形で、何か一方的に被害者としての立場だけではなく、私どももこの地域をどういうふうにしていくかというふうな視点でいろいろと今の鳥獣の面あるいは環境面からの施策との連携を図る中から、私どもとしてはやはり農林水産業発展あるいは地域発展ということを考えていきたいというふうに思っておりますので、そのような立場で取り組んでいきたいというように思っております。
  199. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 環境庁のこれからの役割なんですけれども、国や都道府県の研究施設に対して被害防除技術の開発のために重点的な予算を割くべきであるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  200. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 被害防除対策の予算につきましては、私ども野生動物保護管理事業の中で、いわば生息環境整備と並んで被害防除技術の開発に資するような事業の助成を行って、野生動物保護管理計画策定を推進するためのモデル事業的な性格でございますけれども、それを通じまして効率的なかつ適正な野生動物管理を進めるように働きかけをしているところでございます。
  201. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ことしの予算、それに使われているのは幾らぐらいですか。
  202. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 本年度は七千九百万円でございます。
  203. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 農作物の被害に比べると極めて小さい金額と言わざるを得ないなと思います。新しい技術、さまざまな分野で多分研究なさっている方があると思いますから、そこらを最大限駆使しながら、農水省とも相談しながら、農水省にもその技術開発の予算を出させて、両方でやっていただきたいなというふうに思います。  それでは、今回のこの法案の中で狩猟の免許の規制緩和ということが行われていますけれども、これを実施するメリットは何でしょうか。
  204. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 装薬銃の免状を持っている方が空気銃をそのまま使えるということで免許制度の合理化を図っているところでございますが、これは現在狩猟者の数が減ってまいっておりまして、いわば有害鳥獣駆除への参画等負担が求められておりますので、できるだけ狩猟者の減少を少なくしていこうといったようなことをねらいとするものでございます。
  205. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それを併用できることによって恩恵を与えてさらに狩猟免許を持っている方たちの減少を食いとめようとするところはわからぬではないんですけれども狩猟によって発生している事故が非常にふえているという資料もいただいております。  発生事故件数、もう時間がなくてこれは聞いていられませんけれども、年々ふえています。九五年が百十五件、それから九四年が百八件というぐあいでだんだんふえていっています、事故件数。そうすると、空気銃それからライフル銃両方使えるわけになりますけれども、使ったことのない者についても使えるようになるということでさらに事故がふえるのではないか。そしてさらに、有害鳥獣駆除の場合は猟期の後とか先とか猟期以外のところでやられるわけですから、さらに事故がふえるのではないかということで大変懸念をしておりますけれども、それらについても十分気をつけて指導して、厳しい指導をして、こんなに多くなっている事故件数を減らしていく努力をするべきと。  こういう資料が私たちの資料に入っていないのはおかしいですよ、政府が配る資料の中に。そのことを私は申し上げ、もう時間がないので済みません。  それで、現行法でも、言ったような駆除とか計画が立てられて、市町村に全部通達がおりて市町村の権限で実行できるようになっているんですね、今現在でも。それと今現在やられていると同じことをやるために法改正をするという極めて私は理解に苦しむ今回の法改正であるというふうに思いますが、こんな小手先だけで野生生物が守れるはずはないのでありまして、本当に野生生物の保護の観点からの基本法をつくるという前向きな姿勢こそ環境庁に最も求められる姿勢であり、その中の下の法律として狩猟法があるという私は位置づけにしなければならないと思っています。保護と駆除が同じ法案の中に一体に入ってくるというこれは極めてわからない法改正。  今回はこれは一度見送っていただいて、新たに保護の観点の基本法がちゃんとできたところで駆除の方の法律整備をしていくというのでいいんじゃないでしょうか。今までの法の立て方でこの資料を、私は苦心の作品を見させていただきますと、今の法律の中でも十分に通達によって都道府県計画を立て、その計画に従って市町村が駆除もできるという状況になっていまして、シカなどは一頭でだめだから二頭、二頭の中に雌ジカも入れるというようなことが近年もどんどん行われてきておりまして、六万頭を目指して今北海道は着実にやっているんです。  なぜ今この法改正が必要なのかということを最後に大臣にお聞きしまして、終わります。
  206. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 中長期的に立てば、先生がおっしゃるような取り組み方が大切だと私も認識をいたしております。  ただ、現在、自然生態系の悪化やまた農林業の被害個体群の地域的な絶滅のおそれの深刻化等々を踏まえて、これらの問題をどのようにして処理するかということが求められておるわけでありまして、それがためにということで今回の法改正をお願いいたしたわけであります。  いずれにしても、この問題については長期的な取り組みが必要なので、先生の貴重な御意見は私はしかと受けとめて対処していきたい、こう思っております。
  207. 堂本暁子

    堂本暁子君 今、大渕委員の言われた結論は私も全く同感でございまして、環境庁がどちらかといえば自然を守る、野生動物を守るという立場にもしかしたら逆行しかねないような法律をなぜここでやるのかということについては非常に疑問を持っております。きょうは同僚議員から同じような質問、保護計画その他については出ましたので、ダブらない範囲だけで私は質問を申し上げたいと思います。  それは鳥獣保護法改正なんですが、狩猟の規制緩和をするものという立場のものですが、この改正とそれから鉛玉の全面使用中止を求める立場、これが一つです。それから、二番目の立場は、まさに野生動物の長と言っていいんですけれども、オオワシですとかオジロワシが今、鉛散弾で中毒死しています。その野生動物の方の視点、野生動物を保全する側の視点。そして、三つ目に、この同じ問題で先日、予算委員会で小渕総理大臣質問をいたしましたところ、小渕総理は最後にこう答えられたんです。  これは、ロシアからオオワシやそれからオジロワシが飛んでくるわけですが、日本鳥獣保護法改正でロシアから飛んでくるオオワシが絶滅するようなことになったら、総理、困るんじゃないんですかということを伺ったところ、総理はこう答えられました。「渡り鳥もあるんだろうと思いますが、日本に来て種が絶滅するようなことがあってはならぬということは当然のことで、日本としては、日本に飛来したものはこれを積極的に保護いたしていくべきものと考えます。」と。これは長官もおられたのでお聞きになっている部分ですが、総理大臣日本に飛来したオオワシ、オジロワシについては日本では保護すべきだということを結論としておっしゃいました。この視点と、この三つの点から質問をしたいというふうに思っています。  この三月十日の質問の前に、私は北海道の釧路から知床の方、斜里町というところですが、ずっと参りました。途中、本当にあちこちでシカを撃ってもいますし、それからシカの死体があちこちにあるわけです。  それだけではなくて、やはりあるところまで来ましたら、さっき持ってきたときは生きていたんだけれども、もう死にましたといって、これはこの前予算委員会でも見ていただきましたけれども、オオワシです。(資料を示す)羽を広げますと、ちょうどこうやりますと二メートルもあります。これはライフル銃で撃ったシカの鉛中毒で死んで、まださわったときは動いていました。ですから、私がそこへ着くまでのほんの三十分ぐらい前に死んだワシなんです。やはり私は、本当にワシが私に何か言っているような気さえこのときしたんですが、本当にこれは間違ったことが起きている。  と申しますのは、北海道は規制を緩和したためにどんどんライフルで撃っています。途中で、ちょうど撃っている農民の方に出会いました。有害駆除という腕章をかけておられた方ですが、ぽんと撃ったら本当に空いっぱいにカラスとワシが寄ってきた。その音を合図に知っているわけです。ライフルの音がしたら、その下に自分たちのえさがあるということをワシは知っているわけです。それから、渡り鳥のカラスも来ていました。  ほかのシカの死んでいるところへ行きましたら、もう黒いと言っていいぐらいワシやカラスがシカを食べている。そして、ちょうど私のこの横にいますのは、食べられたシカの死体です。(資料を示す)こういう形で本当に骨だけが残るような形で食べるわけです。ところが、鳥ですから、やはりくちばしでつっつくのに一番つっつきやすいのは傷のついているところ、そうするとそこには鉛の弾が入っている。だから、いやが上にも鉛の弾を食べちゃうわけです。ですから、たちまち中毒になって、こういうことになる。  斜里町に着きましたら、今度は斜里町の博物館にもやはり運ばれてきていました。それは生きていましたけれども、ワシというのは雄々しい鳥ですから、普通は頭を上げているんだそうです。ところが、肩を落として、ワシがこんな情けない格好と思ったんですが、ワシが来ていました。そのときは死んでいませんでしたけれども、二日後にそのワシも死んで、鉛中毒だということがはっきりしました。  四月十三日現在で十二羽がもう死んでいる。これは人間の見えるところで死んだワシの数です。ですから、北海道の山は物すごく深いです。私も山登りをしますから、日高の山も歩いたことがありますけれども、あんな深い山のどこに死んでいるかわからない。何十羽死んでいるかわからないんです。たまたま人間の目につくところで死んだワシが十二羽いたということです。これは大変なことだと私は思っています。  環境庁が散弾について御努力されたことは存じておりますし、二〇〇〇年からこれを禁止していこうということも知っています。しかし、今北海道で農民の方や、それから猟師さんが使っているのはライフル銃なんです。散弾ではないんです、ライフル銃です。そして今度のこの法改正の中で、今、大渕さんからも質問がありましたけれども改正案ではライフル銃の免許取得者、乙種といいますけれども、それが軽い空気銃の使用をできるように改正してあるわけです。ということは、空気銃も実は鉛を使っています。こうやってどんどん撃つということは、ぼんと撃って、一々ワシに、さあこれから鉛で撃ったシカを食べに来なさいと言っているようなものです。それで、みんな鳥が来てどんどん死んでいる。そうすると、総理がおっしゃったロシアから来た渡り鳥を守るということからいえば、日本は守れないわけです。ですから、私はもう即刻これは禁止すべきだと思う。  それで、環境庁はこれは今鋭意やっていますというふうにおっしゃっているんですが、それからこれは法律改正しなくてもできるというふうにおっしゃっているんですけれども、実際には散弾の場合ももう六年ぐらい前からお願いをして、来年できる来年できると、結局もうここまで来てしまいました。私は、これを改正するのであれば、人間の都合よりもやはりワシの都合を、このオオワシはワシの都合も考えてくれと、そう言っていますよ。人間の都合だけじゃないんです、この世界は。  だから、私はもう何が何でもきょうはどうしてもここで質問させていただきたかったのは、そんな細かいことで技術的なことはどうでもいい。これでオオワシが絶滅したら、きょうはどなたかの御質問で、オオカミも絶滅しているからシカがふえているんだ、そういう話も出てきました。もう本当に生態系というのは微妙なバランスの中でできていて、私たち人間だって哺乳類の一つの種でしかないわけです。ですから、すべての野生動物の長と言われているオオワシが日本で絶滅したら、それはいずれは私たち人類だって絶滅のふちに立たされる、そう言っても過言ではないというふうに思うんです。  ですから、人間の都合とか、それから法律の都合とか、そういうことだけではなくて、もう超法規的な形でこれをやらないとすれば、私は環境庁は何のためにあるのかわからないというふうに思いますが、局長、いかがでしょうか。
  208. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) オオワシ、オジロワシの猛禽類の鉛中毒防止、これにつきましては、北海道と連携を図りながら、当面の措置として、やはり死体の適正処理、それから無毒性のライフル弾の積極的な使用の指導ということが大事でございます。  今お尋ねの無毒性ライフル弾への早期切りかえのためには、いわばその弾の安定供給ということが必要でありますので、北海道と連携を図りながら、鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
  209. 堂本暁子

    堂本暁子君 私は、鋭意ではなくて、即刻決めていただきたいというお願いをあえてきょうはさせていただいております。  なぜならば、ロシアへ戻るはずのオオワシが現時点で北海道の東部にまだ数十羽も残っている。結局飛べないんです、中毒になっちゃったら。もう本当にふんが青いような色になっちゃうんですが、それはだからワシを見る人はすぐわかるんですね、専門家は。  非常に興味を持ちましたのは、斜里町というところは禁猟しているんです。だから、私たちは車で行っても斜里町まではみんなシカはばっと逃げますけれども、斜里町に入るとみんなシカはこうやって人の顔を見て、すぐそこまで来ます。そして、斜里町はじっと我慢して、シカがふえたらふえっ放しにしている。さっき地元出身の小川さんからも話がありましたけれども、雪で死ぬわけです、シカの子供が。そうすると、そこへもまたずっと寄ってきて、これは鉛じゃないから、これは自然の食物連鎖なんです。そういうところで食べる分にはいい。しかし、オオワシは飛べますから、奥の方で、斜里町以外のところで銃が撃たれればそっちへ移動しちゃうわけです。  だから、みんなどんどん北海道の内陸部へ行ってしまって、そしてきょうずっと答弁のあった六万頭ものシカを撃っていれば、わずか千五百羽しかいないと言われている、絶滅に瀕している、そして環境庁の種の保存法でも希少種に指定されているオオワシを守る責任が環境庁にある。これは、きょうは農水の方がいろいろいらっしゃいますけれども、農水省でもどこでもない、野生生物の保護は環境庁以外にどこにも我が日本国においては所轄している役所はないんです。  だから、これは環境庁以外のどこの役所にもできない仕事なので、環境庁がやらなければいけない。しかもそれが、例えば日光ですとか岩手県の五葉山とか、そこでもみんなシカをワシ類が食べている。そして、その緑便の報告があるということで、これは一北海道の問題だけではありません。そして、鉛は有害物質ですから、人間については明確な環境基準があるわけなんです。人間についてでも慢性の神経障害が起こる、それから生殖機能も障害を受けるということで、今シベリアでのワシの生まれ方がどんどん減ってきていると言われています。    〔理事太田豊秋君退席、委員長着席〕 それから、飛べなくなるのは、そういった神経障害を受けるためにワシは飛べなくなるわけです。ですから、遠くへ行かれなくなってしまう。人間についてはこれだけきちっと厚生省で環境基準をつくっていながら、こうやって鉛を食べなさいというような形の法改正が一方で行われているということは余りにも大きな矛盾があるというふうに私は思います。  ですから、いろいろ計画の問題その他がありますけれども、こういった改正を国として、特に閣法として環境庁がお出しになるのであれば、少なくとも鉛弾を使わないということだけはきっちりした上で改正案を出すべきだというふうに私は思います。  二月以降は、北海道の有害駆除で、釧路付近では三百メートルの間に二十九頭ものエゾシカの死体があったそうです。この死骸をちゃんと片づけるのが仕事だと決められているんですけれども、年をとった猟師さんたちがこの重い、私も重いんですけれども、私の倍ぐらいありますこの重いシカをえっちらおっちら担いであの雪の山の中をどこか燃やすところまで持っていくなんということはできない。ましてや猟期の間だけしかあけていないとか、もう本当に矛盾だらけです。これではワシはどうにもならないんです。  私は、どういうふうに環境庁お答えになるかということも大体わかっているような気がしますので、これは行政的に言えば運用でできるというふうにおっしゃるんですが、運用で六年間やっていましたら、その間にワシは絶滅してしまう。総理大臣がおっしゃったように、ロシアから来たワシを日本では絶滅させないという総理の答弁に私は反すると思うんです。だから、少なくとも行政庁としては、きちっと総理の答弁を実行するその責任が私は環境庁にあると思います。  ですから、環境庁がおっしゃるのは、私が聞いた説明によりますと、銅弾を使うためにはライフル銃を買いかえなきゃいけないそうなんですが、そんなことはないんです。アメリカでは銅弾というのは、これは銅弾ですが、もうできています。それで買いかえなくてもいいと、どうやって輸入するかという問題です。ですから、例えば十六億もの農水省の予算というものを伺いますと、農業被害のためにはそれだけの私たちの税金を使いながら、一方でワシのためには使わない。でも、ワシのために使わないということは、結局私たち人間のためでもあると思っています。  アメリカのバーンズ社は、全銅製弾と言うそうですが、銅でできた弾というのを提供することができる、そして火薬類もセットされている、こういうのがあるわけなんです。こういったウインチェスター社はいずれも日本向けにバーンズ社製の弾を供給するといって、そう答えているそうです。これはきちっと私はやるべきだというふうに思っています。  そのことで、もう御答弁をいただくということの意味は私は余りない。なぜなら、ずっとこの間、附帯決議ぐらいでおっしゃっておいてください、これは法律には入れられませんということをずっとこの一週間言われているので、同じお答えしか環境庁からは出ないというふうに思っております。できることなら、本当はこの法律が通らないで、むしろ先ほどからおっしゃっていたように野生動物の保護とそれから狩猟法というのは法律を分けるべきだ。相矛盾するものが入った法律というのは非常におかしな法律なので、本来なら日本法律としてはそれを分けるべきだというふうに考えますが、日本の政治というのは不思議な政治で、これが通ってしまうかもしれない。  そうしますと、その場合に私がぜひとも法律に書き込んでいただきたいのは、「鉛弾を用いる銃猟その他の鳥獣の保護蕃殖に重大なる支障があるものとして環境庁長官が定める猟法によって狩猟鳥獣の捕獲をすることができないものとすること。」、これは要するに鉛弾を使わないということです。どうしても法律に書き加えることができないとおっしゃるのであれば、附則として、「政府は、この法律の施行後二年以内に、銃猟により鳥獣を捕獲する場合における鉛弾の使用に関する規制の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。」ということをぜひとも入れていただきたい。  附帯決議などでは私はだめだと思います。今までにも何度も環境法律で附帯決議の中に入れても、六年と五年、結局は実行されないケースがありました。  私は、温暖化の場合でも思うのですけれども、カリフォルニアでCO2をゼロにしなきゃいけないという法律ができて、そしてトヨタは逆にハイブリッド車をつくったということがあるわけですね。法律が先か、それから調整が終わってから初めて法律に書くのか。後者は日本やり方です。しかし、生態系を保全するとすれば、どうしてもこれは法律を先につくること、附則に入れるということはそんなに難しいことではないと思います。二年というのも長過ぎると思っておりますけれども環境庁は二年あれば調整がつくというふうにおっしゃっているので、その二年というスパンを置きましてやるということだったら余り無理ではない。しかし、それが書き込まれなければ、二年ではなくて、これが散弾と同じように三年、四年、五年、六年となっている間に、このワシたちはわしは待っちゃいられないということで絶滅してしまうかもしれない。  ですから、私は、ここは長官に御答弁というとまたネガティブな御答弁なのであえて答弁を求めないことにいたします。一方的にここは高圧的なやり方ですけれども、一国会議員としては、やはりワシだけではなくすべての生物たちと人間が共生をしていくことの重要性を考えたならば、どうしてもここのところではこういった法律の修正なりそれから附則をつけるということでやっていただきたい。さもなかったら、私は本当に北海道で見たあの光景、北海道出身の方はよく御存じですけれども、それを思うと、東京でそのことをきちっと主張することが私の責務だというふうに思っております。  斜里町がえらいのは、小さい町ですけれども、保護員のような獣医さんを二人と、アルバイトの人も結構いましたけれども、そういった自然の保護管理をする人を町の予算の中できちっと雇っている。だから、あそこの町はそれが可能なわけです。知床の森を守った続きでそれをやっているわけなんです。ですから、やろうと思えば道の単位でも国の単位でもできないはずがない。それは町長の決心であると同時に、やっぱり私たち国会議員一人一人の決心の問題ですし、それを受けてどれだけ役所がやってくださるかということです。  総理大臣がこれだけ前向きの答弁をなさった以上は、環境庁長官答えてくださいというのは大変しんどい立場でいらっしゃると思うけれども答えてくださるのはうれしいですけれども、私としては、委員長、この委員会は本当に大事な曲がり角だと思うんですね。小さいことのようですけれども、やはり世界が見ています。国際的に、オオワシを日本で絶滅させたと。しかも、こういったお金のかかるとか、十六億に比べたら本当に比較できないほど小さなけたの予算です。  総理官邸へ行くと、正面にばんとオオワシの絵がありますね。この間、総理に申し上げた。総理大臣、オオワシが官邸の正面にあるじゃないですかと、そうなんだ、あれは横山大観かだれかが書いたそうだと。そのオオワシが、横山大観の時代には存在しても私たちの世代で日本からいなくなったということは、私たち一人一人の国会議員にとって物すごく恥ずかしいことです。  やはり、そのようなことが、すべての人間とそれから生物、自然との共生という本当に大事な、これから二十一世紀に向かっての政策の中できちっと決められていくことが、小さいようですけれどもとても私はここは大事な局面だと思いますので、もし長官から前向きの御答弁をいただけるならいただきたいし、そうじゃなかったらもうこれで結構でございます。
  210. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 前向きになるのか、その評価は皆さんにゆだねなければならないわけでありますけれども、今、堂本先生の切々たる訴えに私も胸を打たれた一人でございます。何といっても、鉛弾は禁止しなきゃならないという気持ちでいっぱいであります。  それで、これは私は浅学なもので十分理解もしていないんですけれども、世界の中では鉛弾を使っておる国がほとんどではないかと思って、一部アメリカで禁止されておると聞いておるわけでありますけれども、世界に呼びかけなきゃならない大きな私は問題じゃないかと思っておるわけであります。ですから、この環境委員会で十分御論議いただいて、委員会の決定に従うというぐらいの決意でもって処理していくべきじゃないだろうか、こんな感じを持っておるわけであります。  決して環境庁が悪いわけではございませんで、環境庁も精いっぱいやっておるわけでありますけれども、それに対する認識というか意識というものが十分でなかったという点についてはおわびを申し上げます。しかし、こういう問題について、委員の皆さん方が一致協力した体制をつくってやっていくという委員会の性格を私はとうとんでいきたい、こういうふうに思っておる次第であります。
  211. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。(拍手)
  212. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今、堂本先生質問を拝聴いたしまして、非常に胸を打たれる気持ちでこの重要な法案を審議する立場にあるわけであります。  私は、質問に入る前に、実は二十年ほど前に大阪府の箕面公園に行ったことがあるんですけれども、箕面公園のことについて書かれた文章がありますので、読んでみたいと思います。  一九五四年に大阪市立大学の川村俊蔵博士の生態研究でえづけされ、人と近くなった、これは猿のことなんですけれども、翌年に箕面山自然動物園が開園しさらに距離が縮まり、五六年には国の天然記念物となった。猿は観光資源として人気を集めた。だが、人なれした猿は観光客の弁当やおやつをねらうようになり、トラブルがふえた。  七七年には、観光客が引っかかれたりかばんをとられたりの苦情や事故が、届けがあった分だけでも年間三百件を超えた。同年十二月に、市は箕面山猿調査会、これは猿の保存をするための調査会でありますけれども、猿を自然に帰すという運動を始めたようであります。そういったことによって、百八十度の方向転換をし、観光資源扱いをやめたわけであります。箕面市の観光パンフレットから猿のイラストも消えた。  七八年から滝付近にあったえさ場を山中に移した。えさを与えるのは、箕面山の周囲が人工林やゴルフ場、住宅地に囲まれていて、自然のえさでは足りないといったようなことで、一匹あたり小麦を六十グラム与えるとか、そういったふうな手を尽くしても、今、猿が箕面公園から姿を消しているというふうなことであります。  それでもなおかつ猿は観光客に対していろいろと、先ほど言ったようなかっぱらいをするとかといったような現象が起こるようであります。私たちは猿によってある意味では危険あるいは恐怖も与えられたような状態だったけれども人間の考えようによっては、これが百八十度転換できるというような自然環境に戻すということが非常に問われているというふうに私は一面この文章を読んで思ったわけであります。  私があの当時、二十年前に見た箕面公園そのものが現在変わってきているなというふうな感じを受けながら、質問させていただくわけであります。  法律内容についてお伺いしたいんですけれども、今回の改正法案において、特定鳥獣保護管理制度という新しい制度が創設されることになっておりますが、本制度が創設されようとするに当たって、環境庁長官の基本的なスタンス、そして考え方をお聞かせください。  また、本改正法案に対してはかなりの反対意見や懸念も表明されております。私どものところにはたくさんの意見を持ってこられた方もいらっしゃいますので、そういったことから考えますと、非常に厳しい法案だなというふうに考えておりますけれども環境庁長官としてはどのようにお考えなのか、お聞かせください。
  213. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 実は先日、日光国立公園を視察してまいりました。ふえ過ぎた野生鳥獣が自然の生態系を破壊するというような状況を目の当たりにいたしたわけであります。  ちょうど雪の日でございましたけれどもシカが随分戯れておりましたし、またシカによる被害状況もつぶさに拝見させていただいたわけであります。やはりそういうのを見てみますると、野生鳥獣の適正な管理というものが必要であるという認識を持った次第であります。  また一方、クマ等については地域によっては個体数が減少してその存続が危ぶまれるところもあるわけでありまして、これは何としても保存していかなきゃならないというような感じも持ったわけであります。両々相まったわけでありますけれども、これらを適正な数で、整合性のある対応をしていかなければならないというのが今回の法律改正案であるわけであります。  そして、この法律案の中には、個体数調整とか生息環境管理とか被害防除対策とか、やらなければならない問題を抱えておるわけでありまして、その問題にどう対応していくかというのがこの法案の中に盛り込まれておるわけであります。  そういうことを主にした法案でありまして、ただいま各党からいろんな御意見が出たところでありますけれども、長期的に見れば、これらの問題についてまだまだ改正しなければならない点が多々あると思いますけれども、当面求められておるそれらの問題についてこの法律で何とか処理できないだろうか、こういうことを考えた法案であると御認識いただけたらと思う次第であります。
  214. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 非常に難しい問題でありますけれども、要するに今日まで、戦後この方ずっと開発行為を行って、ある意味においては動植物のすみかを人間が侵してきたというような、これまでの問題提起をこれで整理できるのかどうかというのは非常に大きな課題だというふうに私は思っております。そういう意味で、これはこの法律が、今長官がおっしゃるようなことで本当に国民が納得するかというふうな点では非常に疑問が出たり何かするわけでありますけれども、私ども慎重に審議していかなくちゃいけないというふうに思っております。  そこで、農林業被害の実態について、その状況及び過去十年間の被害の推移について数量的に御説明いただきたい、このように思います。
  215. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 鳥獣によります農林業の被害につきまして、最近十カ年間で見てまいりますと、まず鳥類によります農作物被害につきましては、大体十四万から二十万、これは毎年でございますが、そういう形で年次変動が大きいというふうな特徴がございます。そういう中で、九年度におきまして十九万八千ヘクタールに及んでおりまして、これは果樹、野菜等比較的高価な作物を中心に大きな被害を与えているところでございます。  また、獣類によります農作物被害でございますが、これは中山間地域を中心として近年増加傾向にございますが、九年度におきましては八万二千ヘクタールに被害面積が及んでおりまして、特にシカによる作物被害増加しておるという状況にございます。  また、森林被害面積でございますが、これは最近十カ年間ではシカによる被害が約二千ヘクタールから四千ヘクタールへと倍程度に拡大している、こういう状況にございます。
  216. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 被害防除対策の現状及び課題についてどのようになっているか、お伺いします。
  217. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 鳥獣によります農林業被害の防止対策でございますが、まず農作物被害の防止を図るためには、確実に被害を防止できる技術の確立と、そういう技術の普及が重要であるというふうに認識をしております。  そういう中で、被害防止に係る先進技術の開発、確立と、またその実証ということがまず重要でございますし、またそういう実証されたものにつきましては、各種の補助事業等にメニューとして取り込みながら被害防止施設の整備への助成等を実施している、こういう状況にございます。  そういう中で有害鳥獣被害の防止に一定の成果を上げている地域もあるわけでございますが、総じて見ますと、このような努力を上回る個体数増加あるいは生息環境変化により、被害を減少させるに至っていないというふうな地域も多いわけでございまして、そういう観点から、やはり今後個体数調整あるいは生息環境管理の対策とあわせまして、より効果的な、または経済的な被害防止対策というものを着実に実施していくことが重要であるというふうに考えております。
  218. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 本改正法案は、平成十年十二月十四日の自然環境保全審議会野生生物部会の答申を受けて法案化されておると思います。  同答申においては、都道府県の「一部において、保護管理計画の策定手順や内容に関して一定の水準が確実に保証される仕組みになっていない、」との指摘及び「地域の実情や生息動向の変化に応じた保護管理都道府県が主体性を持って機動的に行い難い場合がある等の問題が指摘されて」おります。  都道府県の現状がこのような状況である中で今回の制度創設がなされようとしていることについて、いささか危惧の念を抱かざるを得ないのであります。この点について、環境庁としてどのようにお考えか、お聞かせください。
  219. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 各都道府県におきましては、この保護管理計画のための体制整備につきましては大変重要な問題だと認識をいたしておりますけれども、いまだいわば任意の計画であるために、各都道府県内部でなかなか十分な理解が得られにくいといったようなことが寄せられているところでございます。  この計画策定を必要とするような密度の高い保護管理というのは、地域の実情をよく知っている都道府県が策定するということでございますけれども、この改正によりまして、保護管理計画の策定手順あるいは内容に関する事項が法律に位置づけられるということになりますので、各都道府県におきまして一定の水準が確保された計画の策定が進むものと考えておるところでございます。
  220. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 都道府県が策定する計画鳥獣保護事業計画制度の体系との整合性は確保されているのかどうか、確保されているとすればどのように確保されているのか、お伺いいたします。
  221. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 鳥獣保護事業計画が全体計画でございまして、そのうちの特定の鳥獣につきましての保護管理を担うのが特定鳥獣保護管理計画でございます。  いわば鳥獣の保護、繁殖のための基本的な計画であります鳥獣保護事業計画の実行手段の一つとして、今回御審議いただいております保護管理必要性の特に高い特定の鳥獣についての保護管理計画を体系的に策定するということでございまして、その計画鳥獣保護事業計画に適合しなければならないというように定められているところでございます。
  222. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 「計画の策定及び変更に当たっては適切な情報公開の下に合意形成を」図る必要があると指摘がなされておりますが、この点についての制度上の保証はどのようになされているのか、お伺いします。
  223. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 生息状況調査につきましても、それをベースにした適切な情報公開のもとで関係者の合意形成を図ってまいる必要がございますし、また特定鳥獣保護管理計画を策定したときには、これは都道府県自然環境保全審議会に諮問するとともに、公聴会を開いて利害関係人の意見を聞く策定手続がございますけれども、その計画の策定をしたときには遅滞なく公表するということが定められておりまして、こういった手続によりまして公正で透明な過程によります特定鳥獣保護管理計画の策定が確保されるものと考えております。
  224. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 計画の対象とする個体群が都道府県の行政界を越えて分布する場合に、計画の策定及び実施に当たり関係都道府県間で必要な調整が実施されることとされておりますけれども、その点についてはやはり国がイニシアチブをとるべきじゃないかというふうなことを指摘したいわけでありますけれども、その辺についてはどうお考えですか。
  225. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 生息地域が隣県にまたがる場合には、その都道府県との調整が必要でございまして、特定鳥獣保護管理計画を策定する際にもその隣県であります関係地方公共団体と協議をする旨定められておりますが、国としてもこれらの間の調整が円滑に行われますよう必要な助言、勧告を行ってまいりたいと考えております。
  226. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今の件ですけれども、例えば境界のところでお互いに責任のなすり合い等いろんなトラブルが起きると思いますけれども、そういうふうなことが想定された場合に、国として積極的になさるのか、あるいは県のそれぞれの立場で調整したものをさらにまた国が関与していくのか、その辺の問題等についてはどういうふうに基本的にお考えですか。
  227. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) まず、隣県同士の調整が第一かと思いますけれども、この鳥獣保護事業計画が樹立されますと、必要な勧告を行う旨の規定がございますので、国としても必要な勧告等を行ってまいりたいと考えております。
  228. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 個体群の動向、捕獲実態及び被害推移にかかわるモニタリングはどのような手段、仕組みで、だれが実施するのか、お聞かせください。
  229. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 特定鳥獣保護管理計画の策定実施主体である都道府県があわせて鳥獣生息数被害状況等のモニタリング調査を実施するように考えております。
  230. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 この仕組みはいわゆる環境庁が主体になってやるのか、あるいは市町村に任せていくのか、その辺はどうなんですか。
  231. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) かなり広域的な計画と考えられますので、都道府県が策定をするということでございますが、環境庁といたしましてはいわば鳥獣生息数についての調査手法の検討、開発によりましてガイドラインを作成するなどいたしまして、適切な生息数調査あるいはモニタリングが行われるように指導してまいりたいと考えております。
  232. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 国の都道府県計画策定に対する助言、勧告の仕組みは確保されているのかどうか、お尋ねいたします。
  233. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 現在、予算措置として野生鳥獣管理適正化事業が七千九百万円予算がございますが、この事業の重点配分等を行うことによりまして、特定鳥獣保護管理計画の策定、実施に関して支援を行ってまいりたいと考えております。
  234. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 計画の策定及び実施に関するガイドラインの策定等による技術的指導、生息動向等の調査計画の策定及び計画の実行に関する予算的支援はなされるのかどうか、その辺についてお聞かせください。
  235. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 計画の策定、実施に当たりましての技術指導に加えまして、特定鳥獣保護管理計画の策定実施に関する事業の円滑な実施のための支援を行ってまいりたいと考えております。
  236. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 提案理由によれば、「都道府県知事は、特定鳥獣保護管理計画の達成を図るため必要がある場合には、」「環境庁長官が定める特定鳥獣についての捕獲の禁止又は制限に代えて当該特定鳥獣について捕獲の禁止又は制限を定める等の措置を講ずることができる」としております。  一方、「環境庁長官は、鳥獣保護繁殖を図るため緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対して特定鳥獣に関する捕獲の禁止又は制限等に関し必要な指示をすることができる」としておりますけれども、この両者の関係、権限は矛盾するように見えますけれども、その点はいかがですか。
  237. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 特定鳥獣保護管理計画を策定した都道府県において機動的かつ主体的にこの計画の実施ができるということで都道府県知事の事務を定めたものでございますけれども、あわせて鳥獣生息数等が急激に減少するといったような新たな事態が発生する場合に備えまして、環境庁長官から都道府県に対しての必要な指示をすることができるという旨を定めているところでございます。
  238. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 終わります。     ─────────────
  239. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、堂本暁子君が委員辞任され、その補欠として奥村展三君が選任されました。     ─────────────
  240. 田村公平

    ○田村公平君 田村公平です。  午前中から皆さん方のいろんな質疑を聞いておりましたら、私が質問通告してあった部分を大分先取りされていろんな御意見が出たもので、答弁する方に質問通告にない部分が入ったりするかもしれませんけれどもお許しをいただきたい。わかる範囲で結構でございますから、お答えをいただきたいということをまず冒頭お断りしておきたいと思います。  参議院の国土・環境委員会調査室の資料等を見ておっても、「都道府県による保護管理計画等の策定事例」なんというところに四国四県は全然入っておりませんし、私の生まれ育った高知県は、実は私はまさに中山間地域の山の中に育ったものですから、イノシシもそれからシカもイタチも、ありとあらゆる動物に囲まれてともに生きてきた。本州ではどういう呼び方をするか知りませんが、ハミというのがおりまして、マムシを言うんですけれども、それなんかもちょうど春先になりますとフキノトウのところにとぐろを巻いておって、それをとってきてしょうちゅうにつけて、しばらく一カ月ぐらい生きておるんですけれども、全く自然とともに生きておりました。  今考えると、いろんな法律を読んでみますと、僕もかなり違法行為をやっておったと。どういう呼び方をするかといいますと、こぼてというのがありまして、カシの幼木ですけれども、雑木の山に入って、肥後守でそこをちょっとちょん切って、ちょうどこういう形にしならせるんですけれども、カズラというのがありまして、それを通して、またになった木で押さえ込んで、クチナシの実とかそういうものを入れて鳥の通り道へ置くわなの一種なんです。  それから、うちは馬も飼っておりましたけれども、馬が死んだものですから、近所の農家の馬小屋に忍び込んで馬のしっぽをちょん切って、竹のひごでたこ糸を張って馬のしっぽでわなをつくる。そういう貴重な動物たんぱく源をいただいてきたのが、僕なんかの子供のころの実態でした。  考えてみたら、ツグミもヒヨもヤマドリも捕獲をしておったわけで、今だったらこうなる話かなと思いながら、最近というよりもこの前、統一地方選挙がありまして、大豊町だとか本山町あるいは物部村、いろんなところを山奥まで入りました。  子供のころ、はっきり言ってシカにお目にかかるのはかなり深い山に入らぬとおらぬかった。カモシカもおるんですけれども、クマもツキノワグマもおりますけれども、奥へ入らないといなかったのが、最近やたら平場というか里に近いところにいっぱいおります。  何でこんなことになったのかなと考えてみると、僕なんかの子供のころには、山に入ってタケノコを掘ったり、ジネンジョ、山芋を掘ったり、山で遊ぶことが多かったし、おやじも炭を焼いていたり、自分も炭焼きの手伝いをした。今、子供はテレビゲームばかりやって全然山に入らなくなっている。  実は、平成七年におやじが死んだときに、うちの墓山は家のずっと奥の方にあったんですけれども、もう山道が人が入らないから通れなくなっていまして、年をとった母親が墓参りに行くのも大変だということで、墓も平野の方におろしてきました。うちが墓をおろすと近在の人もみんな墓を下へおろしてきまして、考えてみたらそういうことで山が荒れてきたんじゃないか。そういう中で、本来、奥にすんでおったイノシシやニホンジカが、小川先生の選挙区はエゾシカだと聞いていますが、下におりてきて悪さをするというか、物すごい悪さをするんです。  僕はいのしし年生まれですから余りイノシシの悪口は言いたくないんですが、イノシシというのは非常に賢くて、僕は頭が悪いですけれども、うちは減反政策達成率一〇〇%で、山の棚田に本当に三ちゃん農業よりももう今や一ちゃん農業になっているんですが、限られた制約の中でおいしい米をつくろうと。米が実るころになるとイノシシが出てきて、その米を食べる。食べるだけならまだかわいらしいのですけれども、イノシシというのはもうシラミからダニみたいのがいっぱいおるものですから、毛繕いというか、かゆいものですからそこの山の棚田でごろごろ暴れるものですから、田んぼが全滅するんです。大体一反から八俵から九俵とれればいい田んぼなんですけれども、それが全滅してしまう。そういうことは地元の新聞社の人が取材に行っても、なかなか田舎の人は口が重いものですから、余りニュースにもならない。  実は、私は高知県の社団法人高知県生態系保護協会のメンバーでもありまして、めだかトラストだとか、子供のころにいたものがどんどん失われていくのが寂しい思いがして、自然保護の方にも興味を持っております。  先ほど堂本先生もおっしゃっていましたけれども、一応山登りもして国体選手もやっておったものですから、自然とのかかわりの中で人間はどのようにして生きていくのか。人間もやっぱり哺乳類のヒト科の動物ですから、そういうことを考えたときに、これは環境庁の方に教えてもらいたいんだけれども、何で急にシカとかイノシシがいっぱいふえたんでしょうね、高知県あたりで。昔はおらぬかったんだ、そんなのは。
  241. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 田村先生と同じ四国の人間で、私も山村の中で育った者の一人として、今のお話、もう子供のころの情景が目の当たりに浮かんでまいるわけであります。  なぜこんなになったんだろうかという疑問でございますけれども、これはやはり田村先生もそうだったように、田舎の人たちが都会の方に来られるということで、人口の都市流入が大きな因をなして過疎化が進んだのではないか、その過疎化の因がそういうことをあらしめた一因じゃないか、こう思っておるわけであります。  その大前提として考えられることは、地球温暖化じゃないだろうかという感じがいたすわけであります。地球温暖化して、まさに南極の氷が随分解けておるという実情も聞かされておるわけでありまして、全体がその温暖化の中に失われていくものも多いんじゃないだろうかという感じがしてならないわけでありまして、そういう生態系変化が今、先生が御質問になられるような状態になってきたのかなという感じもいたすわけであります。  いろいろな事柄が多いと思いますが、いずれにしても、日本は農耕民族であって狩猟民族との違いがあるわけでありますから、農業とか自然とかを大切にする国民だと私は位置づけておるわけでありまして、その位置づけの中に行われる生態系との共存ということを考えて物事の処理を図っていかなきゃならない。ただ、目先のものでいいとか悪いとかというのではなくて、そういう大局的な立場に立って事の処理に当たっていくべきではないだろうか、こんな感想を持っておるものでございます。
  242. 田村公平

    ○田村公平君 それで、うちの、国道三十三号線といいまして、高知から松山まで走っている国道から十分ぐらい山のふもとに入ったところにゴルフ場があるんですけれども、この前選挙で回っていましたら、そのゴルフ場も有刺鉄線でぐるぐる巻きにしてある。どうしてかと言ったら、イノシシが出てきてコースを荒らしまくる。それで、どうしてそんなところまでイノシシが出てくるのかと言うと、とにかくふえてふえて困っておるというんです。  これは農林省に僕はお願いしてあったんですけれども先ほど島袋先生の方からも農林被害がありましたが、顕著に被害がある例を具体的に教えていただきたいんですが。
  243. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 被害の大まかな動向は、先ほど来申し上げておりますように、特にシカ被害増加とかそういうものがあるわけでございます。  例示的に申し上げてみますと、ただいま先生お話にもございましたが、高知の物部村周辺におきましてもシカ、イノシシといったものによる水稲の被害とかそういうものもあるようでございますが、全国的に見てまいりますと、シカにつきましては、小麦、ビート、あるいは飼料作物、芋というふうな農作物被害が、これは特に北海道で発生が多いという状況にございます。それから、イノシシにつきましては、これは四国、九州での被害が多いということでございまして、水稲、豆、芋、大根、スイカというふうな野菜類にまで及んでいるという状況にございます。  それから、鳥類の方でございますが、ヒヨドリ、ムクドリ、これは全国的に各地で見られておりますが、とりわけ鳥類の被害は、果樹あるいは野菜、豆、こういうものにつきまして多発している、こういう状況にあるというふうに認識をしております。
  244. 田村公平

    ○田村公平君 ヒヨドリというのは、僕なんかがわなをかけてとるときに一番捕まりづらい鳥だったんです。ところが、最近、ふえ過ぎてふえ過ぎて、うちはブンタンとか新高ナシとか、東京へ送り出すと一玉二千円から三千円する大変付加価値の高い果物をつくっておるんですが、それをつんつんやって欠陥商品にしてしまって、もうお百姓さんは怒り狂っておるんです。  それから、ムクドリなんというのは、人口三十一万の高知市の空が本当に真っ暗になるぐらい、ヒッチコックの「鳥」じゃないけれども、ぶわあっと、本当に急に雨が降るんじゃないかと。雨じゃないんです、ふんがばらばら降ってくるんです。鳥というのはすぐ出してしまいますから、ふんを。  何でこんなにふえたのかなと思って、これは高知県だけが特異な例なのかなと思っておるんです。さっき物部村の話がちょっと出ましたけれども、高知県の森林面積は八四%なんです。それで、物部村は人口が三千三百人で、高齢者、六十五歳以上が三六・四%を超えています。それで、農林業に従事している人が千二百四十七人。  実は、きのう村長に、間違っておったらいかぬというので、友達だからよく聞いたんです。ここで高齢化率が大変高いということはお年寄りが多いということなんですけれども、山火事があったりしまして、一生懸命植林をしています。それが今、大体六ヘクタールぐらいシカに食われておるんです。しょい子で苗を背中にしょって植えていくわけです。この次に見回ってきたら、それが食われている。また苗を金を出して買って山に植えたいというけれども、情けなくてだんだん働く意欲がなくなってきています。  それから、この物部村の特産品の中にタケノコがあるんです。タケノコずしというのがありまして、僕もよく食べるんですが、都会の人は握りと言うけれども、タケノコを握りずしにしておるんです。タケノコというのは、勝手に生えてくるのもありますけれども、やっぱり堆肥をやって手入れして、それでタケノコがいっぱい出てくるんです。土がちょっと盛り上がるころに唐ぐわで掘って、タケノコの缶詰工場に売ったり、日曜市に出したり、農協に出したりするんです。  そのタケノコがまだ土の中にある間に、イノシシは鼻がいいものですから、おいしいところを全部食べてしまう。そうすると、山の人は公共事業の仕事に行くか、そういうタケノコだとかイタドリだとかワラビだとかゼンマイをとったり、あるいは林業でお金を稼ぐしか方法がない。そこで、イノシシやシカに、ニホンジカにやられてしまう。ニホンジカというのは、猟師が鉄砲を向けますと、大体五、六頭で一つの家族をつくっていまして、雄ジカが盾になるんです。種の保護というか保存の本能で雌ジカを必ず守る。雌が残っていきますから、雄もそれは撃たれて死ぬシカもおりますけれども、雄も残っているわけですから、どうしても繁殖率が高くなっていく。  そういう意味で言うと、この法律でそういう個体管理をして、人間に害を与える部分は駆除していっていただくというのは、僕は守るべきものと。ですから、さっきのワシの話じゃないですけれども、うちにはワシがおらぬものですから、守らぬといかぬものと、それから余りふえ過ぎて有害なものはやっぱり駆除していただきたいと思っておりますけれども、今回の法改正がそういうきちっとした機能をするのかどうか。例えば、この物部村では、乏しい村政の中から、シカ、イノシシ一頭をしとめてきたら一万円お金を払わぬといかぬ。つまり、報奨金を出す。  この中にイノシシを撃ったこと、イノシシの猟へ行ったことがある人はおりますか。多分役人の人にもおらぬと思うんです。イノシシをやるためには、もう何年も前から犬を飼わぬといかぬのです、シシを追うために。今はトランシーバーがありますから、最低でも三組、鉄砲を持って、シシ追い専門の犬を連れて、尾根の奥から谷へ犬で追うわけです。大体犬はシシのきばにはねられて死ぬんです、全部死ぬわけじゃないですが。それで、無線で連絡をとりながら、おりてきたところで待ち構えておってズドンとやる。  昔は、高知県は人口比率で猟師という、猟を業とする職業としての猟師が人口比率では一番、二番、三番を占めていました。今、そういうこともする人がいなくなりました。はっきり言えば、飯が食えないから。  そういう中で今度こういう法律ができて、本当に有害鳥獣駆除というか適正な管理をこの法律をつくってちゃんとできるのかなという気もするんですけれども、どうでしょうか。
  245. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 先生お話しのような地域、どうしても人が少のうございまして、かつては勢子等も確保できたのが、非常に勢子の確保もできなくなったといったような話も漏れ伝わっております。  この特定鳥獣保護管理計画は、都道府県が策定することによりまして、その地域の社会資源を総結集していこう。これは、保護をする立場、また被害を受けた立場、両方ございます。そういう立場の方々の意見を十分聞き入れながら、その中で科学的な管理をしていけないだろうかというものでございまして、その目的とするところはいわば野生鳥獣保護管理でございますけれども野生鳥獣生息するためには、人とのあつれきというものが激しくなっているという状態では存続ができないというふうなこともございます。  したがって、人とのあつれきを防止し、それから科学的な保護管理をすることによって、その中には防除対策、生息地管理がありますけれども、また問題のあります個体数調整につきましては、要するに殺さない方法がないのかどうかということは各地でも論議がありますけれども、やはりそれは一つの手段としてやむを得ないものと考えておりまして、そういったような総合的な手段を講ずることによりまして所期の目的が達せられるものと考えておるところでございます。
  246. 田村公平

    ○田村公平君 ニホンカワウソというのが高知県に昔いっぱいおりまして、ここずっと環境庁とか県とかで調べるんですけれども、カワウソは消えてなかなか出てきてくれないんですが、佐賀町というところがニホンカワウソの生息地だということで、だから鳥獣保護法に関係あるかなと思っていろいろ調べてみたら、ニホンカワウソは鳥獣保護法の対象でなくて文化財保護法の特別天然記念物と。  これは文化財保護法、これは質問通告を全然していないのでごめんなさいね、この法律と、つまりニホンカワウソというのは文化財保護法の中に入っておるということになると、そこいらの役所が違うでしょう。文部省になるのですか、文化財保護法。そういう違う役所と違う法律との、昔はうちなんかプールないですから、川で泳ぐのが普通にプールのかわりでしたから、カワウソもおるわけです、子供のころ。それがいなくなった。多分もう絶滅しているんじゃないかと思うんですけれども、そっちの法律との関係なんかはどうですか。
  247. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) ニホンカワウソは文化財でもありますけれども、同時に絶滅したかあるいは絶滅のおそれのある動物でございまして、私ども従来からいわば生息地保護、生息地管理というものをやってまいっておりますが、具体的には果たして四国にニホンカワウソがまだ生存しているかどうかといったような調査を実施してまいっております。  現在までのところ、カワウソの生息が確認をされておらない状態でございますけれども法律関係におきましてはいわば文化財保護法の体系とそれから種の保存法の体系両方がかぶっているものでございます。
  248. 田村公平

    ○田村公平君 ちょっと教えてもらいたいのは、日本全体で免状を持っている猟師、猟友会等所属している人を含めて、過去十年前と今どれぐらいの人数になっているか、教えてください。
  249. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 狩猟者の方は実はピーク時が昭和五十年代、五十万人おられましたが、十年前、昭和六十二年には約二十八万人でございまして、現在は二十二万人ということに減少をいたしております。
  250. 田村公平

    ○田村公平君 そうすると、環境庁長官から都道府県に権限を移譲して計画的な保護及び駆除をやっていく場合に、わなをかけてとる方法もあるかもしれないけれども、基本的には鉄砲だと思うんです。乙種の者は丙種の空気銃を持ってもいいということもこの法案の中に書いてありますけれども、大体空気銃なんというのは当たらぬのです。風が吹いたらすぐに弾がそれますし、スポーツとしてやっているエアライフルとかというのは別でしょうけれども、無風状態のところできちっと黒点に何発と決められた時間でやる。そうじゃなくして、猟をするのに空気銃でやるというのはなかなか、僕もやったことあるんですけれども三十メーターぐらいが有効射程かと。風が吹くと弾がそれます。  そういう免許の拡大、鉄砲を持っている人に空気銃を持たせるという意味もわからぬことはないんですが、ピーク時五十万人ぐらいいた猟師の方が二十二万人。計画を立てて本当に実行ができるんですか。そこいらを教えてください。
  251. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 大変現場としては厳しい状況を承っておりますけれども、従来は同一市町村内における狩猟者に駆除を依頼するということが多かったのでありますが、最近は広域駆除体制をとりまして、広域的に狩猟者が集まってきて協力していくという体制がとられているところがふえてまいっております。  加えまして、けものを撃つことを好まない水鳥撃ちの狩猟者におきましても、駆除をするときにはけものを撃っていただくといったようなことで市町村が依頼するということで要員の確保に努めているように聞いております。
  252. 田村公平

    ○田村公平君 高知県なんかでも、イノシシが来ないように電気でバリアを張ってびりびりと来て追い出すお金を二分の一の補助率で予算化していますけれども、ふだん猟をしないけれども鉄砲の免状を持っている人にお願いする。当然弾代も要るだろうし、弾は高いですから。それで、仕事を休むので日当みたいなものを何か上げないと、ふだん猟はしたくない、スポーツとしてのクレーをやったり射撃をやる人、そういう予算的なことは全部各都道府県の負担になっていくんでしょうか。
  253. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 都道府県の負担という面がございますけれども、あわせまして、入猟税、狩猟税等を財源にいたしまして有害鳥獣駆除費にも充当をいたしておるところでございまして、いわば特別財源というものを充当しているところでございます。
  254. 田村公平

    ○田村公平君 僕は、自分の生まれ育った環境がそういう猟師の人が身近におりますし、現実問題、人口六百三十人の大川村の村長さんも猟友会のメンバーであり、イノシシを撃たせたら人口六百三十人ですから村で一番うまいというので、去年の十一月十五日過ぎた後もシシ撃ったからと十キロぐらい分けてもらったんです。うちの高知県の猟友会の人たちは、ウズラも自分たちでお金を出し合って養殖して山に放鳥して、随分山を守るというか保護もいっぱいしておるんです。ですから、山を一番よく知っているのが猟友会の人たちなんです。  そういう保護管理という観点からいって、猟友会のことはもっと、環境庁、人手も足りない、予算も少ないのであれば、それは環境省になるからという意味じゃないんですけれども、もう少し猟友会を何とかするというんでしょうか、一番実態よくわかるんです、しょっちゅう山に入っていますから。そこいらどういうふうな取り組みを考えておられるか、もし知恵があれば教えていただきたい。
  255. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 猟友会さんと今一番御縁がありますのは鉛散弾の規制についての協力を依頼しているところでございますけれども、あわせて、野生鳥獣の今の駆除対策におきます駆除の担い手という役割が大変多うございまして、かつ狩猟者の数が減っておりますので、その協力体制を維持していくということでございます。  加えまして、狩猟をしたことの統計を都道府県に集めて出していただくということによりまして、逆に鳥獣生息状況調査にも貢献できるという面がございますので、この法律の施行に当たりましては、そういったハンターズマップといったような、どこでどういう鳥獣がとれたかといったようなことを報告していただくこともぜひ検討したいと考えております。
  256. 田村公平

    ○田村公平君 僕は自分が社団法人高知県生態系保護協会に入っているから言うわけじゃないんですけれども、こういう民間のボランティア活動、ふだんは仕事をしておるんですけれども、ツキノワグマの生息調査に山の中に入っていったり、そういう普通の市民の人は、山の中といっても千八百メーターぐらいありますから、素人さんと言っちゃ悪いですけれども、かなり危険を伴う。だから、なれている人じゃないと行けないわけです。  そういう市民活動をやっておられる方々やさっき言った猟友会、そういう方々とうまくネットワークをつくっていかないと机上の空論というんでしょうか、権限は移譲した、実態がわからずに本来は守らなきゃならないものを殺してしまうとかオーバーキルになったり、そういうことをきちっとやってもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  257. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 本来、狩猟の役割といいますのは、その鳥獣増加分を狩猟の対象にするということによって個体数を安定的に維持するという役割もあるわけでございます。  加えまして、大変現場にも詳しいということでございますので、そういったような野生鳥獣保護管理の担い手としての役割も持っていただき、適正な狩猟活動というものの位置づけも必要かと考えております。
  258. 田村公平

    ○田村公平君 何でそういうことを言うかといいますと、僕もかすみ網というのを子供のころ持っていたことがあるんです。  ここに新聞切り抜き、「法改正も効果なし 食文化、悪習慣 かすみ網で一網打尽」という見出しで、これは岐阜県の人ですけれども、飲食店経営者(四十六)に罰金五十万円と。この飲食店というのは、自分が焼き鳥屋さんか何かやっておってかすみ網でどんどんとってきて、これによると、ツグミ一羽三千五百円から四千円で商品として提供しているから、ただでとって仕入れ原価ゼロで、それで天罰下って罰金五十万円と、こうなっておるわけですけれども、そういう利益を追求する人は欲に目がくらんでいますけれども、本来の僕なんかが知っている猟師さんなんというのは、山もよく知っているし、自分の生活が脅かされること、それから散弾でも鉛弾でもそうなんですけれども、イノシシを撃つ弾は自分でつくりますからね。炸薬の詰め方を間違えたら自分の方へ飛んできて、下手すりゃ死ぬかもしれない。だから非常に慎重にやっています。  僕は、くどいようですけれども、ここにもいっぱい実はファクスもらって、何を言いたいかよくわからぬようなこんなのがいっぱい来ておるんです。「森の中を血だらけにするこの法は恐しい生態系の破壊を引き起こし、農林業にたずさわる方々を最後は取り返しがつかない不幸におとし入れてしまいます。冷静になってこの法案の狂気を見抜いて下さい。」と。この人は本当に山へ入ったことあるのかなと。本当に入っておったら悪いですけれども、僕のファクシミリというのは歳費から天引きされていますから、ファクスがどんどん送りつけられて給料はどんどん減っていく。だから、こういうのを一方的に送りつけられてくるのは僕はちょっと失敬じゃないかという気もしておるんです。  そういう意味で、本当にまじめに取り組んでおられる方々とさっき言ったように猟友会なんかにすると、都道府県に移管するのであればきちっとしたネットワークづくりをやってもらわないと、霞が関の発想で言っていると本当にかすみ網みたいになってしまいますから、よろしくお願いしたいと思います。その決意を聞かせてもらいます。
  259. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 保護管理計画策定に際しましては、自然保護団体のみならず、狩猟者団体また農業団体その他地域団体の方々にも参画していただいて十分議論を尽くすというプロセスになろうかと思っております。  加えまして、お言葉を返すようでございますけれども北海道の萱野先生ですとか、あるいはアメリカの先住民の方々のいわば動物に対するお考えというのも、これまた一つのお考えだろうと思っております。したがって、いろんな方のお考えを持ち寄りながら、その中で現場に即した計画をつくっていただくということが一番必要かと。多くの方が納得いただくようなものをつくっていく。また、それは生き物が相手ですので大変変動もございます。その都度モニタリングで見直しも必要でございます。  そういったようなことで、情報公開もあわせて一つ一つ合意を形成しながら進めていくことでございまして、ぜひ努力してまいりたいと考えております。
  260. 田村公平

    ○田村公平君 うちはウサギも飼っていましたし、羊も牛も馬も飼っていましたから、ウサギを飼うというのは物すごく難しいんです。あれはぬれた葉っぱを与えると死にます。よくテキ屋さんというか夜店なんかでウサギを売っていて、それで子供が困る。最初は、かわいいかわいいなんです。それで、学校へ持っていって、しようがないから学校で飼う。大体町場だと野良犬がやってきたり、食いちぎられたり、完全に飼育できなくて死んでしまう、かわいそうだと。  だから、この法律のことでもそうですけれども、かわいそうだ論みたいな。シカだって近くで見たらあのつぶらなひとみで、あんな悪さするとはだれも思わない。実際に悪さしたところはすごくすさまじいものがあるんですけれども、そういうかわいそう論みたいなことのないようにきちっとした、さっき言ったようにペット的な発想、かわいそうだと。僕なんかは、子供が犬を飼いたい、猫を飼いたいというけれども、コンクリートの箱に住んでいますから、とにかく僕の生まれ育った田舎の家なら犬飼ってもどんどん散歩にも行けますけれども、コンクリートの箱の中で飼って、現実問題、ふんを始末するための道具を持ちながらコンクリートの道を犬を追っていくのは犬にかわいそうだと思うので、僕は子供に絶対ペットは飼うなと言ってあるんです。  そういう愛玩動物的なものとこの問題が一緒の土俵で論議されたりしないような方策をきちっととっていただきたいと思うんですけれども、そこいらはどういうふうなことをやっていくつもりですか。
  261. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 基本的な事柄といたしましては、野生鳥獣と人とのかかわりの問題につきましては、残念ながら我が国におきましては、猿のえづけあるいはえさやりとか、場合によってはヒグマにまでえさをやるようなことで、野生動物と人との緊張関係あるいは野生動物とは一線を画する、距離を置くという教育といいますかが大変弱いというのが問題でございまして、人なれした猿がさらに人から物をとるといったようなことで猿害も生じているところでございます。そういった野生動物と人とのかかわり方については、やはり自然教育といったような場で十分基盤を提供していく必要があろうかと考えております。  また、ペットにつきましては、子供の心の発育過程においては大変大事な役割も担っておりますし、お年寄りがペットによって心を開いたといったような話もございますので、それなりのまた役割もございます。ペットと野生動物とは違うということもまた認識が必要だと考えております。  この法律は、いわば野生動物を科学的に保護管理するということで、そのペットあるいは愛玩というようなことと離れて拡大調査をし、必要な生息環境整備防除措置に加えて、一定数の個体数調整ということを総合的に実施していくということで進めていくものでございます。
  262. 田村公平

    ○田村公平君 高知県に大月町というところがありまして、そこに猿がいっぱいおるんです。二十年ぐらい前は車が行ったら逃げておったんです。ところが、足摺岬に近いものですから観光客の方が来られて、それで結果的にえづけしてしまったわけです。だんだん猿が横着になりまして、大堂海岸というすごくきれいな海岸があるところに猿がいっぱいおるんですけれども、車が通れば何かくれると思っていますから、出てきて悪さするわ、ちょっと車の窓をあけてあったら入ってきてそこいらじゅうを引っかき回す。それから、実は大月町というのはたばこ生産をやっていまして、たばこの苗を引っこ抜いたりするんです。人間が怒るのを見て楽しんでいるというとんでもない猿軍団になってしまいました。  僕はだからはっきり言うと、田舎に都会の人が来て、自然がいっぱいあると満喫。こっちは自然が満ちあふれて迷惑しておる。都会の人間が来てから、猿がいてかわいいわねなんということで変なお菓子やったり果物上げたりしてもらいたくないと。これは一体どこがそういうことを、普通の人間ならモラルの問題で片づくかもしれないけれども、ちょっとさっき言ったように、野生と愛玩用のものとは完全に違う世界ですし、イノシシなんというのも、手負いのシシなんというのは本当におっかないですし、僕の友達なんかでもここをぶすっときばで突かれて、救急車で運ばれて、動脈を切られたとか。それから、イノシシも僕は確かに食べますけれども、あれを五右衛門ぶろへほうり込んだらこれぐらいの厚さに虫が浮くんです。ダニからわけのわからぬ、病害虫の親玉みたいなものです。  だから、猿にしたって、大月町の猿、ほかの人のところの猿は僕はようわからぬのですけれども、やっぱりかなりおっかないものなんです、ひっかき回すし。そこらの教育というか啓蒙ということも、こういう法律を所管している以上はしてもらいたいなと思うんです。  迷惑するのは地元におる人間なんです、観光客は一過性ですから。大体、評論家みたいな人が多いんです。四万十川がきれいだとやってきて、きれいだきれいだと言うけれども、四万十川というのは実は名うての暴れ川なんです。一たび荒れたら大変な迷惑を受ける。だけれども、最後の清流なんと言うものだから、来てからもうそこらじゅうで、百十円で買った缶は捨てていくわ、四駆で走り回るわ、おまけにキャンプファイアで人のうちの戸板をはがして火は燃やすわ、そういうことが動物の世界にも及んでくるので、きちっとしたことをやってほしいんです。
  263. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 屋久島の猿の場合に、一群は大変人と緊張関係がありまして人が近づくと逃げてしまうんですが、別な一群はむしろ寄ってくるということで、そういった屋久島といったような世界遺産の地域におきましても、野生動物、ニホンザルの生態変化が始まっているように聞いております。  また、日光におきましては、栃木県、日光市が共同して区域を三つに分けまして、一区は猿の生息場所を非常に豊かにしていく。もう一つは、観光土産物屋等を中心として、そこに主として土産物をとることによってえさにしている猿は除去する。中間地帯にある猿につきましては、代表となっているボス猿の雄ないしは雌をつかまえて懲らしめまして、それをまた群れに放しますと、人間の世界に近づきたくないということで本来の生息地に戻っていく。中間地域におきましては、いわば猿の教育をすることによりまして本来の生息地に戻すということを栃木県、日光市では既に始めておるところでございます。  そういったように、猿自身に対する教育も大事でございますが、加えまして国立公園におきましては、猿にえさを上げないでくださいといったような看板をたくさん立てまして、訪れる方々に協力、理解を求めているところでございます。
  264. 田村公平

    ○田村公平君 それで、これは猿だけじゃないですけれども、結局僕は自然というのは確かに、山でも何でもそうですけれども、ある程度人間の手が加わらないと自然は本当の意味での維持ができないと思います。  なぜかというと、それは道路もあれば林道もあるわけですから、そこが崩れたりしたら困るから人工の手が加わらぬと自然は維持できないわけで、山へ入って間伐するのもそうです。そういうことをしなくなったためにイノシシやシカが里へどんどん出てきたんじゃないか。物すごくふえていますから、減っているところはそれはきちっと守らぬといかぬのですけれども。  それで、農水省は今十二億円ちょっとだというふうに、一千億円の中で対策費もいろいろ講じておるというんですけれども、それはもちろん農災やら保険金が掛けてあれば農業被害なんかは面倒を見てくれるんです。そういう制度以外に、農作物や人的被害が出た場合の補償制度みたいなのはほかにも考えておるんですか。全然ないんですか。
  265. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 損失補償につきましては、考え方といたしましては、このように被害が増大しているというふうな事態に着目して被害の軽減を先に進めて、その成果を見ながら損失補償のあり方について関係省庁とも連携しながら検討してまいるというふうに考えておるところでございます。
  266. 田村公平

    ○田村公平君 せっかくこの法律、ほかの先生方のあれだと何か拙速過ぎるじゃないかとかいう話もあるぐらいですから、この法律改正していくのであれば、省庁間の壁も取り払って、一体化、一元管理ができるような形を僕はとった方がいいと思いますけれども、それについてどう思いますか。
  267. 丸山晴男

    政府委員丸山晴男君) 特に生息地管理につきましては私ども鳥獣保護区という保護の仕組みがございますけれども、あわせて森林地帯におきましては、お話に出ておりますような複層林作業といったようなことで生息環境整備も大事でございます。そこは森林行政を所管しておられる林野庁との連携は大事でございますし、被害調査等につきましても農水省あるいは林野庁との連携も大事かと思っております。  そういうことで、よく十分連携をとりながら進めてまいりたいと考えております。
  268. 田村公平

    ○田村公平君 本当に連携をとられておるかどうか、これは農水省に聞きますけれどもシカの大好物はヒノキの苗木というか、ヒノキが好きなんです、針葉樹が。それで、最近、シカ広葉樹も食べるんですけれども、知っていますか。
  269. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) 私自身、シカの食害、食性といいますか食べる習慣といいますか、そういうことにつきまして十分な知見を持ち合わせておりません。  こういう被害調査を通じていろいろと把握しておりますのは、例えば果樹なんかの芽とかこういうものは好んで食べるというふうなことですとか、あるいは林木につきましてそういう皮に食害を与えるとか、その程度のことは承知しておりますが、ただいま先生質問広葉樹についての知見は、私自身は持ち合わせていないところでございます。
  270. 田村公平

    ○田村公平君 山火事でひどい目に遭って、それで今、木をいっぱい植えておるわけですけれども、混合樹林というか複層林にするためにトチノキとかヤマザクラをいっぱい植えたんです。これをシカが全部食べてもうパアなんです。  だから、結局農水省というよりも林野庁の問題になるかもしれないけれども、そういう農林被害のことも環境庁とよく相談して考えていかないと、せっかく真鍋長官の香川県からドングリの苗木をいっぱいうちの早明浦ダムのところに植えてもらっても、それをシカが出てきて食べてしまったらまた香川県は水不足になる、そういうことになるわけですから、これは長官御自身の生活圏が脅かされるみたいな話でもあります。林野庁の方というか農水省ももっとシカが何を食べるとかそれぐらいのことはわかっていないと、幾ら林業試験場でいい苗をつくってどうのこうの言ったって、あるいはシカが嫌う薬があるんです、白い強烈なにおいのする、ペンキの缶みたいのに入れて苗に塗っていくけれども、そんなのは雨が降って流れたらそれで終わりです。  そういうことも考えておかないと、連携にならないと思いますが。
  271. 大森昭彦

    説明員(大森昭彦君) きょうは林野の方の専門家も後ろに控えてございますが、ただいまそのメモによりますと、これはケヤキ、ヤマザクラ、こういうものの造林も積極的にやっておるところがあるわけでございますが、実はそういうところにおきまして植えたばかりの苗、そういうものにつきましてやはりシカ、野ウサギ等による食害というものが発生しておる事例が多々生じておる、こういう状況にあるようでございます。  先生御指摘のように、こういう耕境といいますか耕地と林地との境、あるいは自然環境といわゆる営農地との境といいますか、こういうところで今回はいろいろと生じておる現象でございますので、しっかりそういう環境部局との連携、これは非常に重要な点だと思っておりますので、十分連携をとらせていただきながらこの問題に対処してまいりたいと思っております。
  272. 田村公平

    ○田村公平君 私は、九一年にオーストリアとチェコスロバキアとドイツの国境地帯にあるドイツ側にリンゲライという小さな村がありまして、そこへ十日間ほど泊まり込みました。それで、森林官というのがいまして、営林署の署長さんはそこで十七年間ずっと署長をやって転勤がない。日本の役所だったら出世の道がなくなって大ごとだねと言ったら、その質問した意味がわからない。なぜかというと、私は誇りを持って山を愛しておるから転勤がない方がよろしい、森林官という職業にも誇りを持っていると。  そういうところでどういうことをやっておるかといいますと、これは環境庁にも林野庁にも関係する話ですが、もちろん十日も山の中におりましたから、僕も枝打ちやら下草刈りやら間伐の手伝いもさせてもらい、植樹も手伝わせてもらったんですけれども、その中でやっぱりシカの害は向こうもあるんです、同じように。薬を一緒に塗ったりしましたけれども、すぐそこにシカがおったり、あれはイノシシに近いような、ドイツ語でどういうふうに言うか知らぬけれども野生動物はいっぱいおるんです。  ドイツのすばらしさというのは、森林学が学問として二百年ぐらいの歴史を持っています。それで、僕の子供のころ林間学校とか海浜学校というのがありましたけれども、十日間ぐらいの単位でベンツの新入社員がその山の学校へ研修に来ておるんです。それで、山を守るということはどういうことなのかということを、栄養士さんももちろんついていますけれども、自炊しながら営林署の人と一緒に体験学習をやっている。なおかつ、あなた方ベンツ社の社員は公害をまき散らしておるんだから、よく山のことも考えろという教育もしながらやっています。そういう中で、自然と人間とのかかわりについて、では公害を出すベンツの社員はどういう気持ちで山に対して、あるいは山で生活している人に対して、林業に対してという教育をしておりました。  そういうことを、ちょっと法律の趣旨とは離れますけれども、今度は環境庁も学校をつくっていろいろやるという、あるいは建設省においては川の学校なんというのもやっておるんですけれども、そういう野生動物だけじゃなくて、自然と人間とのかかわり合いというのを、ともすればメディアを含めて、新聞が売れればいい、高い聴視率を上げればいい、おもしろおかしく軽佻浮薄に流れる嫌いがあるんですけれども、もう一度、人間というのは、ある意味で強いけれどもある意味では自然の中では弱いものだという、災害に対してもそうですが、そういう取り組み方を。  今ちょっと僕が、シカが何を食べるかと聞いたら、専門家じゃないから林野の専門の人に聞いたらわかったと言うけれども、もう少しグローバルというのはおかしいんですけれども、ユニバーサルというのか、考えたらどうなのかと思いますが、どうでしょうか。
  273. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 今、田村先生お話のドイツの例でございますけれども、私もこの間G8の会議がありましてドイツに参りました。  例えば、高速道路の周辺二十メートルなら二十メートルのところは民家がない。そしてまた、その周辺には植林をしておる。植林をしても、伐採方法にもいろんな方法があって、森林浴ができるような植樹をしておる姿を見せていただきまして、都市計画というものもこうやっていかなきゃならないし、また各市町村においてもそういうものが完全に導入されて実施されておる姿を見て、ああ、こういうふうな対応をしていかなきゃならないのかなという参考にもさせていただきたい、こう思ったわけであります。  そこで、ベンツ社にも参りましていろいろ聞いてみました。非常に自然環境に優しさを求めておりまして、車もかくあるべしというふうなことをじゅんじゅんと説いておりました。そして、毎年環境関係に費やす資金も多大なものがあるということを聞きまして、車だけを売ってもうけるのでなくて、やはり還元と申しましょうか、もうけた金は自然を愛好するような形で投資していかなきゃならないんじゃないだろうかということで、企業の周辺を見ましても、まさに森の中に企業があるかというような感じを見せられたわけであります。自然に優しさを求めてやっておるということは日本も学び取っていかなきゃならないんじゃないだろうかと思っておるわけでありまして、まさに一つの範たる姿がそこに見られたわけであります。  先生が自然との調和ということについてるるお話をなさっておるわけでありますけれども、やはり人間は自然の中に生かされておると言っても過言ではないわけでありまして、そのバランスをしっかりととっていかなきゃならないと思っておるわけであります。  今回の鳥獣保護法の問題でございますけれども、ある一面からいえば、先ほど来各党の皆さん方から御質問のありましたように、まだ法整備は早いんじゃないだろうかというような御意見ももっともだと思うわけでありますけれども、はてさて今生じておるような問題を整理するにはどうしたらいいんだというと、もう待ったなしの態勢下にある人たちの気持ちを思うと、何としてもこの鳥獣保護法というものは通していただかなきゃならぬのじゃないだろうかという感じもいたすわけでありまして、それぞれのお立場に立って御意見を述べられておるわけでありまして、こういう面での判断をしかといただきたい、こう思っておるわけであります。  先生お話を聞いた一つの感想でございました。
  274. 田村公平

    ○田村公平君 僕は予定によると四時四十二分までということだけれども、朝からもう皆さん質問がダブってしまっておりまして、そろそろ締めくくりたいとは思っておりますけれども小川さん、大丈夫でしょうかね。  都道府県に権限を移していく過程の中でそれぞれの地域の特性があると思います。私ども地域のように中山間地域は害の方が非常に多いものですし、人口自然減がもう六年も続いている県です。そういうところで精魂込めてつくった農作物が全く収穫ゼロになっていく、あるいは丹精込めて植林したものが被害に遭っていく。そういうところに対してはきちっとした計画を持って、駆除するべきものは駆除していただきたい。守るべきものは、やっぱり人間の生命、財産が最優先だと思います。また、守るべき、残さなければならない個体については、それはもう一生懸命まさに保護をしていただきたい。感情論に流されることなしにきちっとした運用をされることをお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  275. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は来る二十日午前九時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会