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1999-05-12 第145回国会 参議院 国会等の移転に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十二日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松田 岩夫君     理 事                 国井 正幸君                 平田 耕一君                 長谷川 清君                 加藤 修一君     委 員                 大野つや子君                 太田 豊秋君                 久野 恒一君                 末広まきこ君                 鈴木 政二君                 山下 善彦君                 郡司  彰君                 佐藤 雄平君                 山下洲夫君                 木庭健太郎君                 緒方 靖夫君                 渕上 貞雄君                 水野 誠一君    政府委員        国土庁大都市圏        整備局長        兼国会等移転審        議会事務局次長  板倉 英則君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    参考人        東京大学教授   大西  隆君        上智大学教授   猪口 邦子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国会等移転に関する調査     ─────────────
  2. 松田岩夫

    委員長松田岩夫君) ただいまから国会等移転に関する特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国会等移転に関する調査のため、本日、参考人として、東京大学教授大西隆君及び上智大学教授猪口邦子君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松田岩夫

    委員長松田岩夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 松田岩夫

    委員長松田岩夫君) 国会等移転に関する調査を議題とし、参考人から御意見を賜ることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙のところ当委員会に御出席賜りまして、まことにありがとうございます。  本日は、忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人からそれぞれ三十分程度意見を述べていただき、その後六十分程度委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御意見及び御答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、大西参考人からお願いいたします。大西参考人
  5. 大西隆

    参考人大西隆君) 御紹介いただきました大西と申します。  お手元に「国会等移転の今日的意義と移転あり方」と題しましたメモを配付させていただいておりますが、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。  私は、結論的には条件つき賛成派というようなレッテルが張れるのかなというふうに思いますが、そういう立場からお話しさせていただきます。控室では猪口先生と論争が始まって、やや押されぎみでしたが、二人で立場が違うということであります。  最初に申し上げたいのは、一九七七年の三全総からこの議論が始まっているというふうに普通整理されるわけでありますが、二十年余りの議論の過程の中で幾つか大きな注目すべき点があるのではないかという、総括といいますか整理をしてみようというのが第一点であります。  かいつまんで三全総以降重要な方向づけについて振り返ってみると、三全総では均衡ある国土利用を図るということが非常に大事だということで、首都機能移転、再配置を国土総合政策の重要な課題とするべきだというような提案をしたわけであります。  それから十年たって四全総がそれを受けるわけでありますが、この間は議論低迷期でありまして、余り活発な議論が行われてはこなかった。三全総では四十行にわたってこの移転問題について触れているわけでありますが、ここでは四行に要約しております。これが四十数行にわたって書いてありますが、四全総ではたしか三行か四行に縮小されております。しかし、それでも遷都問題は東京一極集中への基本的対応として重要であって、引き続き検討するというふうに述べてあるわけであります。  この間は、今引用しましたように、均衡ある国土利用とか一極集中への対応ということで、国土人口、諸機能東京に集まっている、それが問題だということで、首都機能移転に着目したということであります。  大きく転換するのは九〇年の皆さんの国会決議でありまして、ここで衆参両院で、「一極集中排除し、さらに、二十一世紀にふさわしい政治行政機能を確立するため、国会及び政府機能移転を行うべきである。」というふうに非常に明瞭な語尾で決議を結んだわけであります。  この中でも、明示的には一極集中排除ということがうたわれております。あわせて、やや中身がはっきりしないという面はありますが、二十一世紀にふさわしい政治行政機能を確立するということが述べられたわけであります。  これ以降、非常に活発な、つまり国会移転を行うべきであるという決議をされたことに基づいて、その具体化を検討するという格好調査会ができたり審議会ができたりして議論が今日まで続いているということでありますが、非常に重要なポイントになるのは、次に法律の制定であります。  九二年に法律ができたわけでありますが、この中では一極集中排除ということと地震等規模災害に対する脆弱性克服ということを大きな目的として掲げたわけであります。ここで新しく明示的に地震等の大規模災害に対する脆弱性克服国土防災性向上ということが移転目的として掲げられたという点は注目すべきであろうというふうに考えております。  九六年に法律の改正が行われるわけでありますが、前年に阪神淡路大震災があったこともあって、前文防災体制重要性が追加されております。災害対策中枢機能を確保することの重要性前文に挿入して、防災性向上ということが強調されたということであります。  これらを受けて、一番最新の重要な方向づけは昨年の五全総であります。五全総では、国土構造改編政経分離によっておのおのの機能がより一層円滑に発揮されるということと、それから危機管理機能を初め国土災害対応力向上させるということ、国土構造の再編ということが均衡ある国土利用ということになると思います。それから、次の政経分離云々というのが諸改革を推進するということに関連していると。さらに、国土防災力向上ということで、大きく移転目的三つ整理したというふうに考えることができると思います。  以上のエポックメーキングな議論を経て今日に至っているということでありますが、あわせて私は、五全総の中では国土軸ということが提起されて、この中では四つの国土軸ということが述べられて、そのうち西日本国土軸といういわゆる太平洋ベルト地帯については、東京一極集中へとつながってきたベルト地帯であるということから、むしろここ一軸に集中する構造から他の三軸を重視するという方向に転換する必要があるということが述べられたことも注目に値するのではないかと思います。  このように経過を振り返ってみると、一つ重要なことは、やはり九〇年の国会決議を契機にしてこの問題が非常に具体的に進むようになったという意味では、国会主導国会等移転議論が進んできているという点であります。それから二つ目に注目すべきことは、移転目的が五全総に見られるように三つ整理されて、一極集中是正、国のシステム改編防災性向上という三つ整理されながら、振り返っていくとその強弱が変わってきているというふうにも読み取れる。当初のころは一極集中是正というのが中心であったわけですが、次第に国のシステム改編とか防災性向上ということが移転理由として強調されるようになってきたというふうに考えるわけであります。  以上、歴史的な整理を簡単にした上で、直面する問題は何かということを次に述べさせていただきたいと思います。  まず一つは、そもそも何のために移転するのかという移転目的論がやはり絶えず問い返される必要があるということであります。今見たように、強弱の変化がこれまでの二十四年の経過の中でもあるということでありますから、首都機能移転するとなると、それ自体少し先の話ですし、それ以後新しい場所首都が置かれ長い歴史が始まるわけでありますから、非常に長期のスタンスに立った目的をしっかり持つことが大事だと思います。  その意味で、移転目的について改めて点検をしますと、まず一極集中是正ということであります。  日本国土東京圏に一極的に集まっているということで、東京においても生活の質が高くないということを初めとする過疎過密問題を含めたひずみが生じているということは、戦後一貫して指摘されていることであります。その問題はまだ解決されていない。  けさも満員電車に私が乗っておりましたら、ちょうど横にいた人が、たまたまその日に珍しく満員電車に乗った御婦人で、男の人は毎日こんな電車に乗って通勤しているのか、自分の娘はとても電車で通学させられないという会話をだんなさんとしていましたけれども日本人でもびっくりするような通勤ラッシュというのはまだ続いているわけであります。そういうことを考えると、一極集中の問題というのはまだ続いている。  しかし、二〇〇七年に日本人口ピークに達するということが推計されております。ピークに達した後は急速に減少するわけであります。そういうことを考えると、少なくとも一極集中のもたらす弊害のある部分については急速な人口減少の中で緩和されていく可能性はあるということで、十年前、二十年前にこの問題を考えたころの深刻さに比べるとやや緩和される見通しがあるのではないかというのが一極集中問題に対する私の認識であります。  二つ目が、国のシステム改編というのを首都機能移転目的に含めようという主張であります。  これは五全総等でもそういうふうに述べられているわけでありますが、しかし考えてみると、今論じられている改革というのは政治改革あるいは行政改革規制緩和分権、たくさんあります。私どもの大学についてもエージェンシー化が必要であるということが議論されたりしているわけでありますが、そういう議論というのはもうちょっと早く決めて実現してもらいたいというのが恐らく多くの国民意識ではないかと思います。  つまり、実際に国会移転されるというのは早くても十年以上先になるわけであります。そういう非常にある意味長期議論を今首都機能移転ではしているわけであります。そういった二〇一四年とかそういう時期のはるか前に分権化規制緩和民営化エージェンシー化などの議論に決着をつけてやるべきことはやるということが必要であって、首都機能についてもそうした改革の中でスリム化される部分があると思いますが、スリム化された状態移転させるということが問われているんだろうと思います。  その意味では、国のシステム改編は必要であるけれども、これは首都機能移転以前に行われるべきもので、これと首都機能移転が抱き合わせにされるというのはやや納得できない面があるというのが二つ目の点に関する私の意識であります。  三つ目目的が、特に阪神淡路大震災以降重視されてきた防災性向上ということであります。  我が国は、地震災害を初めとする自然災害に絶えず警戒、対応しなければいけないという立場にあるわけでありますが、特に大震災大都市東京都で起こった場合に、中枢的な機能がきちんと維持されるということが非常に大事であります。その意味では、国会あるいは行政府といった首都の重要な機能というのが大震災危機にさらされているという状態は望ましくない。しかし、かといって、国の中で絶対に安全だという場所があるかというと、これも疑問であります。  神戸地震は大きな被害をもたらしたわけですが、あの地震のちょっと前までは神戸は御影石の岩盤で一番安全な場所だというふうに言われていたわけであります。そこですらああいう被害が起こるということでありますから、今議論されている首都機能移転候補地のどれをとっても絶対に安全だというふうには言い切れない面があるわけであります。  そこで、知恵を働かせる一つは、同時に被災しない、つまり重要な場所は一カ所ではなくて二カ所に分散させておいて、その二つが同時に被災しないということが次善の策としてとられるべきなのではないか。防災性向上というのはそうした同時被災を防ぐという観点も含まれるというのが私の意識であります。  そうやって整理しますと、移転目的三つあるわけですが、やはり最後に申し上げた防災性向上というのは、首都機能移転というのを本格的に議論した以上は避けて通ることのできない大きな目的でありまして、この目的一点のためにも移転が必要だと言えるのではないかというふうに考えます。もちろん、一極集中是正というのも引き続き重要でありますので、それも目的として含まれる。国のシステム改編はできれば移転論議の前に大きな整理が行われることが望ましいというふうに考えます。  それから次に、二十数年にわたって議論を続け、国会決議以来もう数年になるわけでありますが、積極的な検討をしていくという現在の法律上の合意というのは国民的な合意なのかどうかということであります。  現在、五十六万人、八千五百ヘクタールに十二兆円の費用をかけて全面的に首都機能移転するということを枠組みとして移転審議会が採用しているわけでありますが、一方で霞が関を見ると、新しい政府のビルがどんどん建っているわけであります。したがって、国民、特に東京に住む人から見ると、本当にまじめに移転論議が行われているのかという感じもあるわけであります。したがって、私は、必ずしも今の五十六万人の規模、八千五百ヘクタール、こういう大規模移転国民合意だというふうには考えにくいというふうに思っております。  世論調査でこういうことについての調査が行われておりますが、九七年に行われた世論調査では賛成が五四%であります。これはその前の世論調査に比べるとポイントが下がっています。したがって、やや賛成が減っているわけであります。しかし、実は、私ども研究室がこの一月に行った調査では、全国調査でありますが、七五%が賛成でありました。世論調査に合わせて同じようなことを伺ったわけですが、七五%が賛成でした。東京都でも五〇%以上が賛成でありました。  その理由は、私ども調査世論調査ほどしっかりできないわけでありますから、ある程度サンプルにバイアスがある。どういうバイアスかというと、比較的このことについてよく知っている、情報を持っているような人に聞いたということであります。つまり、首都機能移転がなぜ必要か、あるいはどういう計画が行われているかということについての情報がきちんと伝えられると賛成する人が多いということが私ども調査から言えるのではないかというふうに考えています。  しかし、現状はやや国民に対する周知度が低くなっていて、反対あるいは賛成が減っている。加えて、東京都や東京圏の自治体は首都機能移転反対をしています。それから、候補地以外の道県候補地はたしか十一程度の府県にまたがっていると思いますが、それ以外の道県関心が低いということであります。もし仮に候補地の中から一つが選ばれたときには、それ以外のところが賛成に回るか反対に回るかもクエスチョンマークだということも言われていて、地域的に見ても関心を持ったり賛成するところが必ずしも多くないということも認識をしていく必要があるのではないかと思います。  したがって、この点から合意形成については現状やや不安があるということでありまして、このまま審議会結論を出して、国会でもう一回法律として移転が決まるというところにいくプロセスの間には国民的合意をきちんと図っていく手続というのが不可欠ではないかというのが私の認識であります。  それでは、以上の歴史現状認識を踏まえて、首都機能移転についてどうあるべきか、私の考えを述べさせていただきたいと思います。  一番大きな点は、現在審議会の前提になっている全面移転論全面移転論というのは、最終的には五十六万人、八千五百ヘクタールに、国会衆参両院を初めすべての本省、本庁、加えて最高裁判所が全部移転する、これが全面移転論というふうに私が言っているものであります。この枠組み審議会は今場所を探しているわけですが、ここから脱却することが必要ではないかというのが大きなポイントであります。目的対応してもう少し柔軟な移転形態というのを考えるべきではないかということであります。  目的一つ一極集中是正ということがあります。このためには、東京にある非常に重要な国の中枢管理機能の少なくとも一部を移転するということが必要だ、少なくとも国会等の一部を移転する国会都市を建設するということが必要だという結論が出るのではないかと思います。  それから、目的の中には均衡ある発展、これはつまり全国地域が疲弊しないということが目的一つとしてあると思いますが、ある一カ所に国会都市ができても他の都市には余りプラスの影響がないということも事実であります。  したがって、ぜひエージェンシー化を進めて、エージェンシーになった国の機関各地分散的に配置する分散的分都というのが必要になるのではないか。これは英国とスウェーデンで先例がある方法であります。地域振興のために国の機関の一部をかなり多くの都市にそれぞれ移転させたと。今でもその政策が続いているというふうに聞いております。  それから、三つ目目的としては、これは一番重要かもしれませんが、防災性強化という目的があります。これについては、さっき申しましたように、同時被災を避けるということが非常に重要でありますから、中枢機能を二重にする、都でいえば重都を考えるべきではないかというのが防災性強化から出てきます。  先例としては、まだ先例とまでは言えませんが、ドイツの例ができつつあります。ドイツではいろんないきさつがあってベルリンボン政府機能が分かれる。ドイツの場合には、御承知のように国会あるいは行政ボンにあったわけでありますが、最高裁とかあるいは連邦中央銀行は別な都市にありました。ボンにあった機能ベルリンにすべて移るのではなくて、行政機関でいうと人数的には半々に近い格好ボンベルリンに分かれるということであります。つまり、先進国で重都をつくるという先例ができるわけであります。  重都の場合には、ある程度距離が離れておればこれは同時に被災をしないということになるわけでありますから安全性は非常に高まる、いざというときには片方が首都機能をつかさどることができるというメリットがあるのではないかと思います。  それから、諸改革の推進ということも目的の重要な点でありますが、これについては地方分権規制緩和ということを進めて、地方自治体やあるいは民間企業等に、あるいは民間の一般の方々に権限が移譲されるという意味で見えざる首都移転が行われる。  今述べたような国会都市の新設、あるいはエージェンシー分散、重都の整備、あるいは地方分権規制緩和という、こういうものが総合的に今日の首都機能移転中身を構成するのではないかというのが私の意見であります。  それでは、その場合、特に場所が重要となる新しい国会都市あるいはエージェンシー立地先はどうなるんだと、場所の問題でありますが、エージェンシー分散的分都については、できるだけ多くの都市に立地させるということをぜひ考えるべきだと。英国ではエージェンシーが九十程度できたというふうに聞いておりますが、それが全国各地に立地しているわけであります。そうした先例を十分に参考にして、エージェンシー各地に立地させて、民間企業がなかなか立地しにくいような都市活性化に役立てるということがぜひ必要だと思います。  それから、重都であります。私の言っている重都は、東京ともう一カ所、国会あるいは行政中枢が立地する場所ができるということでありますが、実は現在の移転審議会議論スキームでもこういう状態が起きるわけであります。  現在のスキームでは、このまま議論がまとまっていけば、二千十何年かに国会都市国会ができるということでありますが、そのときの国会都市というのは約十万人規模というふうに想定されているわけであります。最終的なゴールが五十六万人でありますから、それに比べるとはるかに小ぶりな国会都市がまずできる。そこで国会が開かれるわけであります。  最終的に五十六万人になるのがいつかということは明示されておりませんので、かなり長い間国会都市が一方にあり、他方で東京行政機能が少なくとも一部は残っているという状態が続くわけであります。国会運営行政国会あり方も変わっていくかもしれませんが、お互いが密接な連絡をとり合うということは恐らくその時点でも必要でしょうから、両都市の間の行ったり来たりが非常に頻繁に行われる可能性があるわけであります。  まさにそれは重都の状態でありまして、我々は、そういう意味では現在のスキームにおいても、あるいは私がここで申し上げるスキームにおいても、重都についてもう少し真剣に取り組む必要があるのではないか。どういう機能が新しい国会都市に行くべきなのか、新しい国会都市東京との間の関係というのはどうなるのか、交通の利便性はどの程度必要なのかということについて真剣に議論するべきではないかというふうに思います。特に、どういう機能国会都市に立地でき、どういう機能東京に残ることができるのか、この辺がきちんと、国会都市中身がはっきりしていないということは非常に大きな問題ではないかというふうに思います。  それを場所選定ということに引きつけて考えますと、やはり東京との行き来というのが重要になりますので、現在の新幹線で二時間程度というような選定基準よりはもう少し厳しい選定基準、一時間程度新幹線あるいはより高速な鉄道での到達時間というのが条件になるのではないかというふうなことも考えるわけであります。  次に、新都規模でありますが、分散的分都については、エージェンシーがそれぞれの都市に立地するということでありますので大規模なものにはならない。それぞれの町で一部の開発が行われるということであろうと思います。現在、各地で行われている中心部活性化などに含まれるようなプロジェクトかなというふうにも考えます。  重都は、新規国会都市をつくるということであります。しかし、その際にも、住宅等については既存の都市を活用するという考え方が必要であって、新規開発部分というのはできるだけ縮小することも可能ではないか。それをもってゆとりのある新都を形成していくということが可能ではないかというふうに考えます。  以上、結論的に述べますと、エージェンシー化分散的分都を図り、東京から一時間圏程度国会都市を建設して行政都市東京と重都にして同時被災を防ぐ、全国にも活力を与え東京とも共存するという選択肢があり得るのではないか。これは現在の審議会議論スキームとは異なりますので、審議会議論を踏まえて国会主導でぜひこうした合意形成が可能な方向についての議論が求められるのではないかというふうに思います。  ちょうど時間になりましたので、以上で私の話を終わりにさせていただきます。
  6. 松田岩夫

    委員長松田岩夫君) どうもありがとうございました。  次に、猪口参考人にお願いいたします。猪口参考人
  7. 猪口邦子

    参考人猪口邦子君) よろしくお願いいたします。猪口です。  まず、本日、このような重要な課題を調査する非常に大事な委員会の場に参考人として出席して、こうして発言の機会が与えられましたことを感謝申し上げます。私は都市計画とかあるいは国土計画の専門家ではなく、専門は国際政治学でありますので、この議論に直接的に貢献するという、そういう力量は持ち合わせていないと思いますが、にもかかわらず私を招いてくださったということは、やはり国会等移転という重大問題について、広くさまざまな観点からの意見を集約して審議していこうという、そういう先生方の御理解ゆえであると思いまして、感謝申し上げます。  私は、都民として長く東京に暮らしてきました。また同時に、海外で長く教育を受けてまいりました。幼稚園は日本で終わりましたが、小学校は父の赴任先でありましたブラジルのサンパウロで卒業しており、中学は日本で、高校は米国で、大学は日本で、大学院は米国でというぐあいに交互に日本と海外で教育を受けてまいりました。子供のころ建設途上のブラジリアに父に何度か連れていってもらったことは記憶に鮮明でございます。御質問がありますれば、ブラジリアがブラジル経済にどういうことをもたらしたかについていろいろと御議論することもできるかと思います。  また、職業生活に入ってからは、またその面でも海外での共同研究の機会が多く、オーストラリアの首都キャンベラにかなり滞在しておりました。実は昨年の夏もずっと子供たちを連れてキャンベラで暮らしており、私自身はオーストラリア国立大学という唯一のキャンベラにあります大学において共同研究に携わっておりました。  このような体験に基づきまして、また国際政治における二十一世紀日本の役割と競争力という観点から、私は首都機能移転につきまして慎重な立場に立ってここで発言させていただきたいと存じます。  幾つかの論点を用意してございますが、まず第一に、東京の世界都市としての競争力強化日本国として全力を尽くすべきであるという観点から少し論じてみたいと思います。  冷戦後の世界は大競争時代を迎えたと言われているわけでございます。どの分野でもグローバルプレーヤーをどの程度輩出できるのか、これが今問われているのであります。企業でも金融機関でも学者でも芸術家でも、あるいはNGOでも、皆ポイントはグローバルな競争力を有していて、グローバルな勢力として機能できるか、このことが今既に重要になりつつありますけれども、二十一世紀にはかつてないほど問われるようになると思うわけであります。  都市もまた同じであるわけです。日本はグローバルプレーヤーとしての都市、これを有することができるかというところに今来ているのだと思います。世界にはたくさんの国がありますが、大半の国家は世界都市を有してはいません。世界都市を持つ国家というのは非常に数が少ない、そのメンバーに日本がなり続けることができるかということが問われているのであります。  グローバルプレーヤーとしての都市あるいは世界都市というのはいろいろな条件があるでしょうけれども、例えば高度文明社会におきます都市生活のパラダイムを世界に示し、その水準をリードするというようなこと、あるいは二十一世紀には深刻になります各種の都市問題への先駆的な解決手法を提案する能力、そういうものを有しているかというようなこと、あるいは西太平洋地域での国際会議や経済活動が競って展開される情報集約的で求心力のある、そういう強い世界都市であるかというようなこと、このような機能を持つ都市として東京が生き延びることができるのかどうかということこそが今国家レベルでは非常に重大な問題ではないかと思います。かつて、東京にそのような機能が期待され、ほとんど実現しつつあった時期がありますが、バブル崩壊以降、今日の景気低迷期に入りまして、その競争力については楽観できないというふうに感じております。  ですから、東京がそのような都市としてこの西太平洋地域で生き残ることができるかどうかというのが私の心配でありまして、二十一世紀においてこの地位を標榜するこの地域の他の都市の中には、例えばシンガポール、シドニー、ソウル、香港、上海などが含まれると思います。日本が国際的な魅力の面で競争力を失うことになれば、日本首都は国際的にただのローカルな町になってしまうわけです。その場合に日本全体がこの西太平洋地域において情報集約的な求心力を失うのではないか。そして、訪日する人々、インバウンド人口と言いますが、そういう人々も減り、全般的な活力の低下と国家の国際的な地位の低下につながるのではないかということが私の懸念であります。  新首都を建造し、東京からある程度マンパワーを吸い出しても十分に大丈夫と、東京の魅力は十分にある、競争力は強いという楽観主義は、私はこの大競争時代にあって国際社会においては敗北主義になりかねないと懸念いたします。日本には今後競争力低下につながりかねないようなことをやる、そういうリスクをとる余裕というのは少子高齢化に向かう中で絶対にないのではないかというふうに考えます。それがまず第一点です。  第二点は、これは私の言葉でちょっと表現させていただきたいと思いますけれども、要するに、行き詰まれば地理的に移動する、首都移転するというこういう発想、これはかつては許される選択肢であったかもしれませんが、地球的規模のさまざまな環境問題が重視される今日では、行き詰まりを別の土地に移るという地理的移動によって解決するという手法は、どこかアジア的焼き畑農業を思わせ、次世代への教育面で好ましくない影響が懸念されます。  つまり、これからの人間社会は限られた資源を大事にリサイクルし、そして、どんなことがあっても自分たちが育てた地域とか自分たちがそこにもたらした結果ということと折り合いをつけて生きていかなければならない。つまりそこから脱却、そこから地理的に逃げてしまう、別の新天地に移って事足りるという考え方ではなく、やはり宇宙船地球号にロックインされているのであるというそういう認識が必要ではないかというふうに思います。  ですから、やはり自分たちがもたらした結果についてしっかりとそれと折り合いをつけながら改革への努力を続けるというのが、要するに二十一世紀における人間としてのいろいろな問題への対面の仕方であると思いますし、次世代に対してさまざまな問題と直面したときにそういうふうに対峙すべきである、対応すべきであるというふうに教え続けたいというふうに存じます。  それから第三の点ですが、今地球的規模の環境問題との関係で論じましたけれども、環境との関連におきましてはエネルギー消費の面でも不安があります。  新首都の建造時のエネルギー消費とその後の都市全体のランニングコストはもちろんのこと、先ほど大西先生もおっしゃいましたとおり、無数の人々が東京と新首都圏、及び出身地と東京と新首都圏という非常に広範な地域を往復する、あるいは三角形を描きながら移動するという環境負荷を永久にもたらすことになりかねない。それは私たち個々人の人生にとっても大きな時間的な負荷ももたらすことになりかねないというふうに思うのであります。  第四の点としては、この首都機能移転論につきまして人心一新論というのがありました。首都機能移転で人心を一新するという考え方ですが、そもそもそのような観念は極めてあいまいな情緒的なものでありまして、国家のこれほどの重大な決定の理由にすべきではないと考えます。あえて人心一新効果が必要であるというのであれば、これは大西先生も御指摘なんですけれども、現在進行中の行政改革は、私は首都機能移転にかわる人心一新効果をもたらすものではないかと思いますし、もたらすような方向で断行されなければならないと考えます。  つまり、行革とは霞が関世界の機能や官僚の権限のあり方と官民分担の再検討をすることそのものであるわけです。そして同時に、内閣府設立などにより強い政治的リーダーシップの構築、これを課題としているものでありまして、このようなことについて真剣に取り組みがなされるのであれば、土地を移すよりはるかに構造的な、また効果的な人心一新効果を生むことができるのではないかと考えるのであります。  それから第五に、防災の観点から首都東京での大地震などを想定して重都が必要であるという御意見大西先生も表明されたわけですけれども、その観点から新首都を建造するという見方があります。その観点から、むしろ私から見て必要と思えますことは、これは既にいろいろなところで論じられていることですが、例えばあらゆる行政文書のCD—ROM化でありますとか情報通信化というようなことで、二十一世紀先進国においては情報化が一気に進むと予想されまして、重複して国家レベルの情報を保存したり、いろいろな機能を実現していくということにつきましては、新首都の建造というような非常に大がかりなことをしなくても、要するに電子化を行えばいいという面が非常にあると思いますし、それについての積極的な取り組みがむしろ必要であるというふうに考えます。主要な複数の都市にバックアップの電子化された情報集積を行い、また東京が司令塔として機能不全に陥った場合には他地域のそのような電子化した司令塔がどういうふうに機能していくのかというソフト面でのシナリオ研究と実際の訓練などこそが必要であるというふうに考えます。  ですから、防災ということを考えるのであれば、一つの新首都をつくるより複数の電子首都が必要といいますか、バックアップする電子都市が必要であるというふうに思います。新首都建造のために必要な予算をむしろ日本国全体を電子化する、コンピューター化するために費やすべきであろうと思いますし、電子化した日本、電子日本をニュージパングとして世界に印象づけていくべきであろうと思います。日本は、非常に統合性の高い国家でありますから、他国に先駆けてそういう新しい国家パラダイムを提示していく立場にあると思いますし、その場合の日本の国際的に獲得できる地位というのは非常に高くなるというふうに思います。  つまり、その場合、即電子化された世界ネットワークの中の中枢国家となり、また東京はメインフレームとしての中枢機能を担っていく。そして、バックアップのための電子化集積のある他の複数の都市、これは十も二十もあってもいいかもしれませんが、そのようなところも等しくグローバルネットワークにおいて極めて水平的に同資格で参加することが可能になる、こんな方向性をやはり二十一世紀においては検討していただきたいと思うのであります。  それから、第六についてであります。  これは、私、早口ですから、時間が大分あるかもしれませんので、最後に詳しく論じてもよろしいんですけれども、しかし本論とはちょっと外れますので、今ここではただその項目だけを挙げさせていただきます。  私は、日本には他国と比べると新首都を建造する国家的理由が余りにも希薄であると思います。つまり、ブラジルやアメリカやあるいはオーストラリアの場合、政治的に別都市を設けるという非常に歴史的に重い理由がありました。その理由について後に述べたいと思います。  第七に、このほか私は、漠然と一市民として不安に思うことは、十八歳人口低減期に入る我が国におきまして、若い労働力を新首都建造といったことに集中的に配分してしまってよろしいのだろうか、それによって日本の国力は産業競争力その他低下しないだろうかということであります。それから、新首都におきましては、少なくとも最初の数十年、集積効果が薄いためにやはり単身赴任家庭などがふえるのではないかという不安、あるいは女性の職業的機会が東京よりもはるかに制約されるのではないかというような不安も一市民としてはなきにしもあらずであります。  また、最後に、私は今予見し得る未来において安全保障面で考えますと、安全保障上日本が極端なリスクにさらされることはないと考えたいと思います。そういうふうに信じておりますが、しかし、予見し得ない遠い未来において万が一そのようなリスクが発生したときに、政治機能のみを民間機能から地理的に分離しておくことは、皆様方いろいろなニュースで御存じのとおり、極めて安全保障上危険であるという新しい理解も必要であるということを指摘しておきたいと思います。ベトナム戦争以降、民間施設は爆撃してはいけないということは新しい戦時規範になっているわけであります。政治機能のみを分離しておくということは非常に危険ということも言えるかと思います。  それでは、時間が少しありますので、他国においてどのような非常に重い新首都建造の必要性があったのかということについて、先生方よく御存じなのでありますけれども、時間が残りましたので若干説明させていただきたいと思います。  まず、私が子供時代を過ごしたブラジルとブラジリアの例でありますけれども、ブラジルの首都はリオデジャネイロでございました。三大美港の一つ、非常に観光資源が豊か、経済中枢でもあり、私が住みましたのはサンパウロで、そこから飛行機で一時間弱で、主要経済集積のあるところ、南米随一の経済集積のあるところでございました。  そのような政治と経済中枢の接近して国際的にも非常に評価の高いところからなぜ内陸のブラジリアに首都を移す必要があったのかということについての大変重い歴史的な経緯は、ブラジルの歴史を御存じの方はよく御理解できるのでありますけれども、これはかつての帝国主義政策の時代の結果であります。  かつて、この地域に植民したヨーロッパの人々は沿岸開発だけに興味を持ったわけです。それは内陸から金銀を採掘し、後には鉄鉱石を採掘し港町から本国に積み出す、そのためだけにこの国この地域は重要であり、それ以上の価値を持たない地域として認識され、そのために沿岸開発のみをやった。その後ブラジルが独立し、さまざまな苦悩を経験しながら国民国家形成にいそしみ、そのプロセスにおいて、国民国家形成のために、やはり帝国主義の歴史をみずから脱却するためにその象徴として沿岸だけを開発し続けるという帝国主義の時代の残照からみずから脱却したいという気持ちがとても強かったということであると思います。ですから、帝国主義者たちが見向きもしなかった内陸に、それは紛れもなく自分の国なのであるから開発していこうというこの政治的な意味、これがとても強かったと思います。  日本は経済国家ですから、このブラジリアの開発についてもその内陸の経済効果を開拓するためにという経済的理由のみが述べられることが多いのですけれども、実際にブラジルの深いところで見てみますと、内陸の経済的開発というよりもやはり国民国家形成と政治統合に向けた象徴的な意味が非常に大きい。したがって、どのようなコストにおいてもそれを決行するということであり、そのコストは覚悟されたコストであり、またそのコストは実にリアルなものとして今日実現しているわけです。  リオデジャネイロはかつては非常に美しい安全なところでありましたが、御存じのとおり、今日では治安が極端に悪化したところとなって非常に残念であります。その後ブラジルは何十年にもわたり経済的負担の中で国家形成をしなければなりませんでしたし、一時期は重債務国家として大変苦悩していた時代もあります。ブラジルの経済苦悩については、最近は民主化以降よろしいのでありますけれども、やはりこの新首都建造のくびきの重さというものはあったのだと。しかし、それを理解した上で、それでもかつ実現しなければならない国家目的があったということであります。  日本の場合、東京はみずからの手で開拓し建造した町であります。なぜそれを放棄する必要があるのかということは他の国の事例がどれほど重い歴史を背負っているかということとの比較において理解すべきであると思います。  オーストラリアの場合は、シドニーが経済中枢あるいはメルボルンが経済中枢であり、両都市が競ったので中間をとったという説明もありますけれども、それは非常に一般的に理解されやすい説明として取ってつけたような説明として発表されているものでありまして、先生方も御存じと思いますけれども、キャンベラの位置は冷戦期において独特の地理的な位置でありました。それは、そのところからのみ偵察できる、冷戦期におきます対立陣営のプロジェクションがとれたわけです。ですから、キャンベラは隠れた軍事都市としての機能を担っていたことは御存知のとおりなのであります。そのような機能を担っていましたので、やはり特別の都市として位置づけられ、一般の人々が極端にアクセスしにくい工夫がされているというようなところもございます。  冷戦が終結し、このような新しい時代となり、地域の中でしっかりと平和的に根をおろしながら発展していくという我が国の立場を考えると、それに似た機能目的は全く発見できないということでもあり、キャンベラの建造は参考にならないと思います。  アメリカのワシントンDCの建設、これはどのようにして実現したのかということでありますが、御存じのとおり、アメリカはそもそも建国時において強い王権から逃れて新しい形を持つ国をつくりたいという人がつくった国であります。ですから、強い中央政府、強い政治権力からいかに経済中枢を自由にするかということこそが課題であり、その意味で経済中枢、大半の人が大事に考えているところから遠い離れたところに、もし政府をどうしても置かなければならないのならば置いてやろうというぐらいの気持ちでつくったところであります。これも連邦国家としてのアメリカの国家形成の歴史、そしてそのように強い中央政府から逃れてつくった国家の歴史を考えれば、どういう点においても日本はその国の経験は参考にすることはできないというふうに思います。  日本は全く違う国家形成の歴史を持つのであり、今申し上げたようないずれの国家の首都移転あるいは新首都建造のケースも参考にできないということであります。  先ほど議論がありましたボンについてでありますが、これはまことに不幸な分断国家の現実という中でボンは建造されたのであり、そのような悲劇を経験することを免れました我が国においては、やはりボンの経験も全く参考にならないということであります。  今日、ベルリンにその機能をすべて移すわけにはいかないという判断がありますのは大西先生のおっしゃるとおりでありますけれども、一九九九年のことしはその意味で特別に思い出すべき年でありまして、これはベルリンの壁の崩壊から十年目であります。一九八九年、ベルリンの壁が崩壊し、翌年ドイツ統一がなされました。そこから十年目です。つまりたったの十年であります。ベルリンというのは、地図でごらんのとおり、それはそれはボンから見れば要するにウエスタンヨーロッパの辺境にあるわけです。その不安感、それはやはり否めないと思います。  そのような固有のドイツとしての悲劇の歴史の中にボンは建造され、また統合はかなったけれども、果たして本当にこれから百年安全であろうかという不安感の中にドイツはあるということです。冷戦期において主戦場として何度もシナリオ研究がされ尽くしたドイツの安全保障上の不安を思えば、ウエスタンヨーロッパの地理的範囲に深く入るボンにある程度行政機能を残しておきたいというのは、冷戦終結十年目にして当然の判断であろうと。このような数々の不幸を背負う国家と我が国は大変違う立場にあるというのが私の考え方であります。  ですから、いろいろ申し上げましたけれども、最もお伝えしたかったのは第一の点であります。  日本はさまざまな点で大変恵まれた立場にあります。国家形成の歴史においても、背負ってきた歴史においても、恵まれた中で江戸、東京を建造し、アジア地域において初めて世界都市が世界システムの中に参入した。それを生み出した国でありますから、そこをどう地盤沈下しないように大事にさらに育てていくかということこそが課題であり、そのように日本の全体のパイが広がりつつあれば、その他の地域は必ずその中で潤うことができる。しかし、どういう求心力も失ってしまったところでは、たとえより分配が平等になったとしても、分配されるべきものが余りにも少なくなり、全体が窮乏化する危険性が出てくる、既にそういう兆候がなきにしもあらずということで、不安が残ります。  私は一研究者で、国際政治の分野でありますから、一般的に論じられていることとは違うことを申したかもしれませんが、せっかくの機会でありますので、私の分野に照らして申し上げなければならないというものを申し上げさせていただきました。この機会をいただき、ありがたく思います。  ありがとうございました。
  8. 松田岩夫

    委員長松田岩夫君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者を定めませんで、委員には懇談形式で自由に質疑応答を行っていただきます。質疑を希望される方は、挙手の上、委員長の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。また、委員の一回の発言時間はおおむね三分程度とし、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  9. 加藤修一

    ○加藤修一君 お二人の御説明を伺って非常に参考になるところがございました。特に、慎重派の意見を聞く機会が今までございませんでしたので、今回非常に新鮮な気持ちでお伺いいたしました。  猪口先生からは、首都形成の歴史、そういったことを考えなければいけないという観点から、日本東京については地盤沈下を含めてのやや懸念した意見が出されたわけです。そのほか八点にわたって意見陳述があったわけですけれども、この八点の中でも、第一点目のグローバルプレーヤーの関係、これは非常に私は大事な観点だと思っているんです。大西先生からはこの辺の関係についての陳述がなかったように思うんですけれども、控室の方でホットな議論があったと伺っておりますので、この辺についても含めて、できれば猪口先生の全体的な御意見、それに対する感想等、とりわけ一番目のグローバルなプレーヤー、大西先生は主に国内的なアプローチから述べられていたように私は思いますので、その辺についてぜひ御答弁いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
  10. 大西隆

    参考人大西隆君) 今の点でございますけれども、私は、説明でも申し上げたように、首都機能というのを、東京を捨てて別な都市をつくるというふうに思っているわけではないんです。むしろ、東京にある機能のうちの一部を、日本全体の活力というのは損なわずに、過密な場所からちょっと別な場所に移す、あるいは防災性向上のために少し離れた場所に移す、その両者が緊密な関係を維持し続けるということで、全体としての機能は損なわれないようにするということが非常に大事だというふうに考えているわけです。ですから、国際社会の中で日本がどういう役割を果たしていくか、その役割を増していくべきだということについては全くそのとおりだというふうに思います。  私は、国際社会の中で東京が第一級の競争者で、他の国際都市に打ち勝つ、世界都市に打ち勝つのは東京だけだという競争的な関係で国際社会を必ずしもとらえていなくて、むしろ共生的な、共に生きるというような視点の方が日本にとってはふさわしいのではないかというふうに思っております。  加えて、世界都市論というのは実は四全総のときに私たち随分議論して、四全総は世界都市論ということでつくったわけでありますが、結果としてはその世界都市論にふさわしい機能を全部東京につくろうとしてバブル経済が発生したというようなところもあるわけであります。そこで、五全総の中では世界都市論という言葉は一つも恐らく出てこないと思います。明示的に否定されたというふうには言い切れないけれども、余りそれを支持する人がいなかったわけであります。つまり、国際社会の中で日本が役割を増すのは必要なんだけれども一つには、それは東京だけではない、もっといろんな都市がその役割を発揮するべきだということももう一つ議論だと思います。  それらを総合すると、東京が特に果たさなければいけない機能は損なわずに、いわばそのパートナーとして重都である新しい都市も加える、両者が一体となって国際社会の中で役割を果たしていくということが必要だと。加えて、国際的な交流、あるいは国際関係の中での役割の増加という点ではもっと多くの都市がその中に加わるべきだというのが私の見方であります。  以上でございます。
  11. 末広まきこ

    末広まきこ君 全く同じ点が聞きたかったわけでございます。  確かに、東京というのは今とても魅力的な都市であると思うんですが、足りない面もあると思うんです。もっと世界の中で東京が世界都市東京という役割を果たし得るには何が欠けているのか。地理的移動をせずに、今のところを逃げないでもっといい解決策を東京の中で積極的に見出していこうというその案は一考に値すると思うんです。だからそのためには何が必要なのかということ、これは両方の参考人にお聞きしたいなと思います。
  12. 猪口邦子

    参考人猪口邦子君) それでは、お二人の先生方から重要な御指摘をいただきましたので考え方を述べさせていただきます。  控え室で大西先生と御議論申し上げたのは、私はやはりグローバルプレーヤーが一人は必要であるという考え方なんです。それで、その人がやはり国際的に何らかの役割を担ってくれるからその他のメンバーはしっかりとローカルなところでまた役割を果たすことができるだろう、全員ローカルになってしまっては国際的な競争力がなくなり、情報、人、資本、あらゆるものが来なくなってしまうということなんです。  ですから、大西先生は日本独自の個々の都市の魅力がそれぞれ発展すればよろしいのではないかというふうにおっしゃって、もちろん私はその考えには賛成なんですけれども、しかしその中で少なくとも一つ都市は、一人は国際的に競争力の面でマッチできる機能を持っていないと全体的な地盤沈下になってしまうという見方なんです。  ですから、すべての都市が非常に国際的な機能を担わなければならないとか、そういう方向で画一的にまた走る必要もないんですけれども、やはり東京固有の独特の役割を薄めてしまう方向では動かない方がよろしいのではないかということです。  東京が世界都市として成功していけば具体的にどういうことが起こるのかということを考えてみたいんです。  これは末広先生の御指摘にもつながるんですけれども、世界都市となるとまず人がたくさん来ます。大体今までの近代四百年ぐらいの歴史の中でアジアに重要な拠点が置かれるということはついこの四半世紀以内のことだと思います。アトランティックコミュニティーという言葉がありますけれども、大体大西洋社会ですべて事が進んでいたわけです。例えば大きな国際会議を開くときに、アジアで開こう、アジア太平洋地域で開こうなどということを世界が思ってくれるようになったのはここ最近のことだというまず理解が必要だと思うんです。  つまり、この地域は依然として世界システムの非常にペリフェリーにある、ですから頑張らなければだめなんだという理解なんです。せっかくその中からグローバルプレーヤーが出てきたときにはもう全員一致でそれを支えていかなければだめだ、その足を引っ張るようなことをしては地域全体としてやっぱりアトランティックコミュニティー中心の世界システムに舞い戻ってしまうわけです。  学会でもオリンピックのように数年に一度世界大会が開かれます。大体すべてのそのような国際会議はアトランティックコミュニティーのどこかで開かれていますが、最近はアジアで開こうというようなことがあります。そういう場合に東京にそれを誘致できるかどうか、これは大変な競争であるわけです。共生という、もちろん私も賛成したい理想的な部分もありますけれども、実際の世界の動きの中ではどこで開くかというのは択一的なものになります。  それから、金融機関でもあるいは情報機能でも、例えば通信社であるとか新聞社であるとか、世界的なそのような機能が極東に一つコレスポンデントといいますか駐在所を置く、あるいはアジア本店を置くというようなときに、東京にそれが立地されるかどうかというようなことなんです。  かつてはそういう流れも出てきていたんですけれども、ここ十年ぐらいの流れの中では、一たん日本に開店したり駐在所を置いたりしたんですけれども、皆シンガポールあるいはシドニーあたりに動いてしまっている。日本のニュースをカバーするのもシンガポールからカバーするんです。何か日本で大きなことがあると飛行機に乗って取材に来るわけです。東京に特派員を置いていない世界の大きな新聞社、通信社は残念ながらあるわけです。  ですから、そのように考えますと、共生だけではちょっとうまくいかなくて、とにかくある程度の競争には勝った上での共生であるという、そのような余り楽観的でない自己認識が必要ではないかというふうに思うのであります。というのは、ほかの都市がそのような競争関係でいろいろ誘致合戦をやる、あるいは資本、経済活動についても求心性、集約性を獲得してきているからであるということであります。  そこで、では東京に何が欠けているかということを考えますと、これは逃げていった特派員や金融機関の方たちに東京で何がまずかったのかということを聞いてみると一番よろしいんですが、察するところ、まずは住宅事情がよろしくない。それから、やはり内外価格差が依然として是正し切れていない。それから、交通も含むソフトの面での不便さがある。しかし、その点については公共交通が東京は非常に発展していて、都市の渋滞もその他のアジア都市と比べると相当よろしいというようなむしろ評価がある場合が多いですが、やはり住宅関係それから規制緩和が十分にその時点では展開していませんでしたので、企業活動にとっても、あるいは新聞記者がいろいろ情報をとりに行くというような活動におきましても、非常に動きにくい現実があったということだと思います。  ですから、住宅政策のようなハードウエアのところも含めて、最も根幹的な規制緩和を推進するといったソフトの面での改革行政改革と一対のような改革をむしろ徹底的に実現することが必要であるというふうに思います。ですから、何らかの形で再開発をしやすいような工夫をしていくということを局限的にちょっと進めてみるということも考えられなくはないと思いますが、再開発をあきらめてほかの土地に新天地を求めるという考え方は、一層日本のどこにも特派員も世界の金融機関も来てくれないという国家的結果を招くだけではないかと思います。
  13. 大西隆

    参考人大西隆君) 世界都市ということを考えたときに、東京に何が欠けていて、首都機能移転がそれゆえに必要なんだというところですが、私は生活の質がやっぱり東京に欠けているというふうに思っているわけです。  これはたまたま持ってきた国土庁でつくった首都機能移転の最新のパンフレットですが、これをごらんになっておられると思いますが、見るとトンボ釣りをしている写真があったり魚釣りをしていたり、非常に牧歌的な絵が多いんです。何をのんきなというふうに感ずる方もいると思うんですが、ある意味ではここに新しい町をつくるいろんな思いが込められていると思うんです。つまり、生活の質がやはり東京ではどうしても高くできないという大きな問題があると思うんです。  実は、私は七、八十年前につくられたニュータウンに住んでいるんです。一橋大学を中心にした学園都市なんですけれども、当時二百坪で売り出したニュータウンであります。ところが、もう現在はそれが切り刻まれて売られているんです。私もその切り刻まれた一画を買ったわけです。  日本のニュータウンは、すべてイギリスのニュータウンをモデルにしてつくったわけです。ちょうど百周年ということで日本でも今いろいろ紹介されておりますが、その第一号というのはロンドンの郊外にあるレッチワースという町であります。時々私も行くんですが、当時のロンドンの労働者階級を集めてつくった町ということで、そんなに裕福な町、ぜいたくな町ではないんですけれども、当時のたたずまいがそのまま残っているわけです、区画なんかが。つまり、敷地というのはそんなに細分化されていない、全く細分化されていないと言った方がいいと思うんです。原形をとどめているわけです。むしろ、必要があればそういう町をまた別のところにつくるということで、住宅に関する生活の質というのを維持しながら暮らしてきた。日本ではそうではなくて、代がかわるたびに細分化されて、だんだん小さくなって、ウサギ小屋というふうに言われているわけですが、立体化するとハト小屋になっているわけです。  さっき交通混雑、ラッシュのことを申し上げましたけれども、生活の質というのはやっぱりある意味で発展とトレードオフ、人口の増加とか何かとトレードオフの関係にあって、一カ所に人が集まればどうしてもスペースは貧しくなるんです。まさに東京はそういう状態で、ここ数年多少緩和されたといってもまだまだ厳しいわけであります。ですから、日本がより活力を高めよう、あるいは外国人にももっと住んでもらおうというふうに考えるときには、やはり活力を発揮する場を広げるということが非常に大事だというふうに私は思っているわけです。  世界都市論を十年前に我々が議論したとき、その発想は間違っていない、世界の中でもっと役割を増そうというのは間違っていないと思うんですが、東京だけに投資を集中したのが大きな間違いだったと思うんです。そういうときに、東京以外に拠点になるところをきちんとつくって、お互いが連携して、少なくともスペース、懐の広い中で国際的な都市というのをつくっていくんだ、生活の質も整ったそういう都市をつくっていくという発想が要るんではないかというふうに考えているわけです。  そういう観点でこのパンフレットなんかを見てみると、非常に含蓄のあるといいますか、牧歌的なものが、余暇をこうやって楽しむのが人間的な生活なんだということがわかってくるような気がするわけですが、その観点からも首都機能移転が必要ではないかというのが私の意見であります。
  14. 山下八洲夫

    山下洲夫君 両先生に意見を交えながら若干質問させていただきたいと思うんですが、私は日本でも大変熱心に誘致活動をしております岐阜県のしかも東濃の出身でございます。その上に立ちまして、私の考え方といいますと、どちらかといいますと大西先生に似ているのかなというような気がしているんです。  選挙のときも、地方分権を徹底的に進めて、そしてできれば私は環境庁と科学技術庁を東濃に誘致すべきだという選挙公約をしたんです。なぜかと申しますと、今は行政改革もどんどん進められている、あるいは地方分権もこれから二十一世紀までもっともっとどんどん進めなくてはいけない。その一方、国会改革も大いにやらなくてはいけない。また、国会の中では今、副大臣制をつくって政府委員制度はなくそうと、こういうような流れも一つあるわけでございます。  そういたしますと、私は個人的には、国会機能東京に置いて、それ以外、大蔵省以下すべての役所を日本じゅうにもうばらまいても差し支えないだろうと思う。だから、分散型分都と言うのかなと思ったりするんです。東京には、都道府県会館というのが最近平河町に大変立派なものがまた改築されたわけでございますが、霞が関には省庁会館とでも言うんですか、そういうものを一つ建てまして、そこへそれぞれの省庁の一部分中枢を残していく、あとはもうすべて地方に分散したって何ら困ることはないだろうと思うんです。  なぜかといいますと、先ほど猪口先生からもちょっとお話があったんですが、今は高度情報化社会でございますし、あと十年もすればもうパソコンの使えない国会議員は役に立たない窓際族になるだろうというふうに思うんです。そうしますと、資料にいたしましてもすべて簡単に取り寄せることができますし、情報だって自由にとれるわけです。あるいはテレビ会議だってできるわけです。  そういうことを考えますと、先ほどグローバルプレーヤー、今現在政治も経済もあるいは行政もこれだけ東京集中して、しかも人間はもう関東圏にまではみ出すぐらい集中してもグローバルプレーヤーとして認められていない。こんな弱い東京なんですから、それならもっと強い東京にするというより強い日本にしていくということを考えた方がいいんではないかなというような気がしているんですが、その辺について特に猪口先生の御意見をお聞きしながら大西先生の御意見もお聞きしたいなというふうに思っています。
  15. 猪口邦子

    参考人猪口邦子君) 既にさまざまな業務機能についていろいろ展都型の移転がなされております。それをもう少し積極的にまた広範囲に進めるべきではないかというふうに理解すれば、それはあり得る方向性かしらというふうにも思います。ただ、そうすると、国会行政府とを事実上分けて立地させるということに先生の御意見だとなりますが、情報化をすればそれは問題ないという結論にもなるかとも思います。  具体的にそのように各役所をいろいろなところに分散する、本省庁を分散するということのシナリオについてちょっと考えたことがございませんでしたので、私がもし考えるといたしますれば、いろいろな国がいろんな経験を積んでいますので、自分がやる前にほかの人がやったことをまずよく調査、調べるという、まあ研究者らしい発想なんですけれども、まずは経験的にその例があったのか、その結果がどうだったのか、これを調べることで自分のリスクを最小化できると思いますので、それをちょっとやってみたいと思います。  エージェンシー化については大西先生がおっしゃったような部分がありますが、エージェンシーというのは実施機関で、企画立案部門ではありませんので、企画立案部門が要するに議会から遠く地理的に離れて分散しているという場合をちょっと私は思いつかないのであります。大西先生のおっしゃったイギリスのような場合は、ロンドンはイギリスの首都でありますからこれは全く不動のもので、どういうふうにエージェンシー分散して地域振興を図っても首都ロンドンの重さは変わらないということなんです。ですから、地域振興の観点からは、私も地域振興については非常に重い思い入れがございます。私は東京出身そのものではないので、強い思い入れがございます。しかし、それは東京が健在で国際的に競争力があってこそ可能かしらというふうにも思いますし、またほかの方法でいろいろと工夫することができるというふうに思うんです。  例えば、先生の御質問に直接ではなくて申しわけないんですけれども、私の経験する分野で、例えば国際学会などを東京へもし誘致することに成功しますと、最近ではこういうことをやるわけです。まず東京で総会は開く、それでサテライト会議方式で全国の主要な国際会議場のあるところで会議を開くんです。ですから、そもそも東京が国際会議を誘致できれば、その他十の都市で国際会議が開けるんです。でも、もし東京が誘致することに失敗すれば、それでその学会の何十年の歴史の中でアジアで開くのは初めてというような場合が多いわけです。大抵フランクフルト、パリ、ロンドン、世界はそういうところで動いてきたわけです。ですから、アジアで開いてみようかと思うようになったこと自体先ほどから申し上げるように大変なチャンスですから、このときこそ日本は頑張らなければならない。でも、そのときに、アジア太平洋といってもアジアはちょっとどうかわからないからシドニーで開こうというぐらいの決着になるのが、もし日本が努力しなければ一番あり得る結果なんです。そのときには、日本の地方都市だって何の会議も開かれないということになります。  ですから、とにかく日本に人をきちっと、あるいは資本なり情報なりを持ってくるような、そういう大きなアンテナ機能も果たし、また受け皿としての強い中枢が必要で、日本行政機関分散して各地に持っていき、かつ国会自身が東京にあるという形をとったときに、日本のそういう機能が弱体化しないかどうかというのはちょっと心配なんです。  私は、先生のお考えほど根本的ではないんですけれども、あるときこういうことを考えたことがあったんです。霞が関の地域だけが非常に集中的に集まっていますので、もう少し東京の再開発ということも考えて、またよく言われるのは、山手線の中の利用の密度がとても日本の場合薄いということも言われますので、それを考えあわせて、山手線の主要な駅の上に一省庁ずつ置いたらどうかというふうにも考えました。  つまり、霞が関から行政機関をもうちょっと分散していくんですけれども、しかし山手線のところでやると。そうすると、東京の中の地域地域がまた発展するかもしれませんし新しいダイナミクスが渦巻くかもしれませんというようなことを考えたこともございました。ちょっと今のは思いつき程度の不規則発言なのですが、しかしせっかくの機会ですので、何か考えるきっかけとしていただけるとよろしいのではないかと思って申し上げたのです。  やっぱり霞が関に余りにも集中してしまっているのでそこに閉塞感があるとか、丸の内、霞が関一帯の再開発もどう手をつけていいかわからないし、また実際にはもう丸の内の地盤沈下も始まっているしというようなことでお悩みであれば、一気に全国に環境庁や厚生省を分散してしまうという前に、もう少し東京の再開発をねらったような妥協的なところを考えてもいいのではないかというふうに思います。  私が主として申し上げたかったのは、さっき言ったサテライト会議方式に見るように、一たん東京に世界の魅力的なものを持ち込むことさえできれば、必ずその他の都市もまさに共生的に潤うことができると。そうでなければオーストラリアだとか中国とか、ほかのところがそういう共生的な発展をするのであって、日本はそのゲームから抜け落ちてしまうというところなんです。ですから、何とか東京が国際社会の中で地盤沈下しないようにというふうに願っております。
  16. 大西隆

    参考人大西隆君) 今の委員からの御質問では、省庁をむしろ分散させて国会東京に残すというやり方もあるのではないかという御指摘ですが、実は私も同じようなことを考えて文章を書いたりしたこともあるんです。その後、ただいま猪口先生もおっしゃったように、世界でそういう例があるかというのを調べたんです。  そうすると、やはり一つ都市の中で歩いて行けない範囲に省庁が散っている、例えばパリなんかもミッテランが随分動かしたものですから、大蔵省もかなり離れているとか、建設省もグランアルシュの中にあるとかいうことでちょっと離れているわけですが、しかし、旅行しなきゃ行けないというほど離れているのは例がないんです。  省庁の一部が離れている、別な都市にあるというのは、イギリスとかスウェーデンにあるんですが、大臣は国会とともに一カ所にいる。今度ドイツベルリンにいない大臣が出てくる見通しですから、初めてそういう試みがあるのではないかというふうに私は思っているんですが、あるいは見落としている例があるかもしれません。  そういうことを踏まえて、私が今考えているのは、省庁のかわりにエージェンシーというような、定義は必ずしも厳密ではありませんが、省庁の一部が各地に存在するということならあり得るのではないかと思います。  振り返ってみると、日本首都機能移転というのは三回目、筑波移転、筑波学園都市があって、今実行している行政省庁の一部移転というのがあって、その次に首都機能移転になるんですが、これで本体を丸ごと動かそうというのが今の計画ですけれども、その間にエージェンシーという独立行政法人ができたら、それの立地場所を考えるというのがもう一つ入るのではないかというふうにも考えているわけです。  ですから、それがさっき申し上げた分散的分都になるんですが、しかしその場合にも本体は残るわけです、国会行政省庁のトップが。それで、重都というのはその一部を移してしまおうということになるわけですから、御質問の点の大臣が同じ都市にいない、総理大臣と担当大臣が別な都市にいる、そういうことが問題なくできるかどうかという、そこであります。  私はテレワーク学会というのをつくろうとして、テレワークという情報通信を使った働き方というのは大事だということで考えているわけですが、今までの例からすると、電子メールだけで政策の重要なことが決定されるというのはやはり信頼性が低いという感じは率直にするんです。  したがって、大臣が重要でないということなら別ですが、重要だから大臣におなりになっているわけですから、やはりそれが閣議で一堂に会して頻繁に意思の疎通を図るというのは不可欠なのではないかということで、今採用している案はエージェンシーであるということで、大臣については余り分散しないで二カ所に分かれることがあり得るというふうにしています。  移るのが国会ということなんですが、これはそもそも国会が移るということを決議したわけですから、やはりそこを尊重しないと議論そのものがもう成り立たなくなるんではないかというふうに考えておりまして、国会が移るというふうにしているわけであります。  そこのところを逆にするといいますか、国会は残ってある機関が別なところへ行くということもあるいはあり得るのかもしれませんし、あるいは国会二つの会議場を持って会期ごとに使い分けるというようなこともあるのかもしれません。  以上です。
  17. 平田耕一

    ○平田耕一君 猪口先生都市間競争ということなんですけれども、それはやっぱり日本の経済の経験で、みんなが同じ方向で競争をするということが結果バブルということになるんだろうと思うんです。だから、それをいかに脱却するかということで、先生のおっしゃる競争の終着点とは何なのかなというのがもう一つわからないんです。  それから、日本という国がどんどん海外から資本を集めてこちらで繁栄というか、混雑的な繁栄、そして富を向こうへ持っていかれるというよりも、むしろ我々はこれから日本の経済というのはどんどん向こうへ、外へ資本を持っていって稼いでこなきゃいけない、富を持ってこなきゃいけない時代じゃないかなという気がするんです。その辺はどうお考えなのか。  そういう人が集まる混雑的なにぎやかさというのは海外へどんどん行ってもらってもいい。でも、何らかのパイプでどんどん富は持ってきて、我々は個々にスペース的にもゆったりした生活環境を各地につくっていく、そして豊かな、別に人が多いとか少ないとかということじゃなくて、一人一人が快適に暮らせるような形をどんどん日本の中ではつくっていくんだということの方が究極的には一つ抜けた違う路線の競争になるような気がするんですけれども、いかがでしょうか。
  18. 猪口邦子

    参考人猪口邦子君) 先生のおっしゃるポイントはよくわかります。  今まで直接投資の形で海外に随分資本投資をしてきているわけです。しかし、ここに来て、特にこの景気低迷期の中で思いますことは、やはり資本の流れも両方向にしないと必要な情報、最先端の競争力に必要な経営ノウハウも含めた広い意味での情報が入りにくくなっているのではないかということなんです。  日本は長年フォーリン・ダイレクト・インベストメントのようなものを、直接投資を日本の中にはできるだけ入れないで、自分たちは投資するんだけれども、できるだけ外資はという立場が戦後復興のプロセスの中では随分あったかと思います。しかし、ここに来て日本がグローバルプレーヤーとして生き延びるには何としても直接投資をたくさんしていただいて、それは資本が来るというよりも人と情報とノウハウが来る、それから刺激が来るということです、グローバルスタンダードについての。  これからはあらゆることをグローバルスタンダードで開発しない限りどこかでもうその投資が全部むだになるような大変な競争市場になりつつあるので、その双方向性が私は資本の移動について必要だと思うんです。日本は経常黒字国ですから、資本そのものが不足しているわけではないんですけれども、資本というよりもそれに伴ってくるいろいろな刺激が日本の経済の活性化のために必要であると思うんです。  さらに、今日のこの景気低迷期においてはやはり失業率がふえています。ですから、一時的なことかもしれませんけれども、やはり外資、資本のある程度の流入によってそれなりの雇用が確保されるということも視野に入れていく必要がある時代になったかなと。なぜならば、日本は大量の直接投資をし、たくさんの雇用を国内から海外に移転したわけです。ですから、ある程度、特に知的なレーバーについて日本の国内で外資によって提供される雇用機会というのがあっても、非常にこれは日本として大事にしていくべきではないかなと。とりわけ就職困難に直面しているたくさんの女子学生を私は教えておりますので、そういう観点からももう少し幅広いさまざまな雇用機会があって、それをきっかけにまた日本の企業の方もいろんな刺激を受けて競争的に発展していくという流れをつくっていただければというふうに思っております。  それから、バブルの原因についてはいろいろな問題を既に先生方よく御理解のところでございまして、全般的な金融システムの改善によって東京を世界都市として発展させていく、それもたくさんの公共事業、建築活動、建造をやるというよりも、もっとソフトウエアの面での連携のよさとか、部分的に再開発はもちろん必要でしょうけれども、それが目的東京強化ではないということを考え、バブルがそれだから再来するというふうには考えたくないと思います。バブルがなぜ起きたかということについては、またちょっと別途の分析も必要かしらというふうに思います。
  19. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、この委員会の中では慎重派といいますか、数少ない慎重論者だと思うんですが、猪口先生のお話は大変心強く受けとめました。  私自身、東京に住んでいるというだけではない意味で、やっぱり東京の再活性化といいますか、再整備ということをしない限り幾ら国会機能を移しても本質的問題は解決しない、こういう考え方なんです。  ただ一つ東京が本当のグローバルプレーヤーになり得るか、あるいはハブ都市になり得るかという基本的問題の中に飛行場の問題、つまり成田がアジアのハブ空港たり得るかという問題というのはどうしても避けて通れない問題ではないかなと。  そこで、羽田の再開発の問題とかいろいろ空港問題というのはあるんですが、これは首都機能あるいは国会機能をどこに移しても同じ問題というのはついて回るんじゃないかと思うので、この点については二人の参考人から、そういう世界へのアクセスという点での空港問題というのをどういうふうにお考えになるか、これを伺いたいということが一つです。  それからもう一つは、大西参考人に伺いたいんですが、分散的分都あるいは重都という考え方、これはこれで非常に意味はよくわかるんですが、私も行政改革の中でかなり根本的な行政のリエンジニアリングをやらない限り日本行政というのは変わらないということを盛んに主張してきた一人でございまして、今のリストラ程度の行革ではだめだという意見を非常に強く持っております。そういうことから考えていったときに、国会機能を例えば東京から一時間圏内に移して、しかも行政東京と両方に置くような形になったときにかえって肥大化していくと。つまり、引っ越しをすることによって身軽になるという理論というのは前々からあるわけですが、そうではなくて、東京と新しい新国会都市の双方に役所ができてくると効率も悪くなる、非効率化が起きるという問題がどうしても出てくるんじゃないかなというふうに思うんです。これはエージェンシーの問題とはまたちょっと別の視点からその辺についてどうお考えになるか、この二点について伺いたいと思います。
  20. 猪口邦子

    参考人猪口邦子君) では、簡単にお答えします。  成田のアクセスはもう劇的に改善する必要がある、全く先生のおっしゃるとおりだと思います。ですから、リニアでも何でもまずは東京—成田間に敷設してはどうかというふうに思います。東京—成田間を十五分で行き来できるようなところにするということが高度技術国家である日本にでき得る選択ではないかと思いますし、そういうことのための財政的な措置についてぜひ積極的に考えていただきたいというふうにも思います。ハイウエーは通っているわけです。鉄道でもアクセスできるんですけれども、もうちょっと利用者の便宜をちゃんと考えていただきたいと思います。  例えば、箱崎で荷物は、ラゲージチェックインできますけれども、鉄道で行く場合にはそれを持っていかなきゃならないですよね。ですから、鉄道で行く場合も東京でラゲージチェックインができるとか、それから東京のいろいろな駅、それから地方の駅はもうまさにこの点を私は申し上げたいんですけれども、もう少し海外に行き来する人のことも考えて、それはもちろん高齢者の方あるいは乳幼児を抱える女性のためもそうなんですけれども、駅における昇降装置、エレベーター、エスカレーターを上り下り両方で徹底化する必要があります。海外に行く人は重いスーツケースを持って、鉄道で行けばチェックインもできずということで、地理的な距離のみでなく非常に心理的な距離が成田まで遠いという感じがいたします。こういうことは技術的に解決できることであり、そういう発想とエンジニアリングのノウハウをぜひ集中的に投入していただきたいというふうに思います。  それから、私も、一時間と先ほど大西先生がおっしゃったことについておやと思ったんです。そういう結論になりつつあるというのはちょっと知りませんで、これは防災の観点から見ると非常に矛盾したことではないかと思います。つまり、一時間のところは同じに地震の影響を受けるでありましょうから、防災ということで考えるならば、例えば九州であるとか、もう本当に別のところを考えた方がよろしいわけです。  やはり、実際に司令塔として、いざ東京機能不全のときに機能できるかどうかというようなことを考えれば、必要なのはやはり情報集積がきちっとあるということですから、先ほど申し上げたような電子国家日本にしてしまえば、それは九州にも四国にも近畿にも東北にも北海道にも司令塔として機能し得る電子的なバックアップがあるというふうにすればよろしいし、そういうソフトの面での公共事業といいますか、そこを一気に拡大して、これこそ地域活性化につながるのではないですか。光ファイバーで全都市を結び、地域のベンチャービジネスなども若い企業家を養成する形で発展させ、これこそ若い人たちがみんな東京に来るのを防ぐというようなことも可能かと思います。  それから、ちょっと発言のついでに、先ほど大西先生が指摘されましたこのパンフレット、先生方もごらんなんですけれども、小さなことでこれは速記にも残していただきたくないことを申し上げるんですが、これを見ると、女性がどういうふうに描かれているか、新首都では女性がどういう役割を担うかが非常によくわかります。  女性が積極的に男性との関係で描かれているのは、まず二十五ページにお父さんが二人の男の子とゆっくりいすに座って遊んでいるところにお母さんがお茶を持ってくるという、やはりこういう役割として描かれています。それから、女性が仕事をしている場面があるんですが、これはナイトクラブのようなところで懐石料理のメニューを出しているというところでございまして、先ほど言ったように、男女共同参画時代にふさわしいような高度プロフェッショナルとして女性の職場が確保されるビジョンはこのパンフレットには拝見できなかったということで、ぜひパンフレットをおつくりになるときもそういうところも注意された方がよろしいかと思います。
  21. 大西隆

    参考人大西隆君) 二点御質問ですが、まず空港の問題については非常に重要な施設だと思いますので、現在の選定候補地というのは国際空港から四十分というのを一応基準として選んでいると思うんです。西の方の中央地域と称される地域については、中部新空港ができるということを前提として考えるとかなり強力な空港が利用できるということになると思うんです。北東地域にも候補地があるわけですが、ここについてはそれぞれ空港問題は解決できるという主張ですが、もしこちらにする場合にはもう少し強力な空港整備ということが考えられる必要があるかもしれないというふうに思います。  言葉じりをとらえるようですが、ハブ空港ということでは必ずしもないのかなというふうに私は思っています。ハブ空港というのは要するに乗りかえ空港ということで、そこで乗りかえてそれぞれの目的地に行くと。ですから、首都機能のような最終到着地として重要な機能がある場合にはそこに目的を持って行く人が利用できるということが第一であって、それ以上の乗りかえ客のためまでのキャパシティーは要らないのかもしれないということで、必要最小限度余裕を見て確保するということが必要だと思います。  それから二点目の御質問の、東京と重都にするとかえって行政機能が肥大するおそれはないかという御指摘であります。この点は、重都というのは私の提案にも含まれておりますけれども、現在のスキーム国会都市という最初の段階というのはこれが重都状態なんです。だから、国会都市と今言っている中身は何なのかということはぜひはっきりさせなければいけない問題であって、その中身を特定することが今の問題と大きくかかわってくるのではないかと思うんです。  本質的には、もちろん国会がもっと政策立案機能を高めていく、つまり国会都市というのはいわばシンクタンク都市になる。政策立案のブレーンと国会議員というのが中心となって構成される都市だということになるんだろうと思いますが、そうなれば政策執行というのが、エージェンシーと呼ぶかどうかは別にして、必ずしもそこにいなくていいという局面はふえてくると思うんです。現在の行政改革で言われているような地方の局等を充実していこうというのも一つそういった流れに乗せて考えることができると思いますが、そういう文脈で考えていくと、大枠の整理、つまりだれが政策を決めるのかというのはやっぱり国会都市中心となって決めるんだということは明瞭になると思うんです。あとは行政の人員をどういうふうに考えるかであります。  ただ、一つだけつけ加えさせていただきますと、イギリスの首都機能移転について私いろいろ研究をしたわけですが、イギリスはずっと戦後首都機能移転をいろんな格好でやっているんです。ところが、エージェンシー化もやっているわけですが、イギリスに今公務員は七百万ぐらいたしかいるんです。人口日本の半分よりは多いと思います。日本の公務員は全部あわせて四百五十万ぐらいであります。これは、人口比からすると先進国の中では相当低いグループなんです。ですから、そういうことを考えると日本に公務員が多過ぎて困るということでは必ずしもなくて、むしろこういった変革の時代で公務員が適切な仕事をするというような再配置といいますか、そういうことが問われている、質的な問題なのかなというふうに考えております。  以上でございます。
  22. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 どうも本日は御苦労さまでございます。  大西先生は大まか首都機能移転については賛成、ただし条件があるというお考えのようです。  そこで私はちょっとお伺いしたいんですが、首都機能移転をしないと考えた場合に、今の首都東京にあるべき首都機能のために何を補わなければならないのか、同時にあわせて何を改善すべきなのか。こういうところがもはやだめだからもう移転しなさいというのか、そういうものが認められれば移転しなくてもいいというのか。そのところの条件というんでしょうか、条件がだめならばといったときにどういうふうに先生はお考えになるかというのが一つ。  それから、猪口先生にお伺いしたいんですが、今の首都機能移転することはむだとは言いませんけれども非効率的ではないか、しかし再開発をすべきだというふうに言われているので、逆に首都機能移転することによって先生が主張されている国際競争に勝ち残れる都市をどうつくっていくのか。都市開発の場合も一遍にさっといかないわけです。新しいところにもすぐ全部が移転できるということでもないので、お互い徐々にやっていかなくてはならないと思うんです。したがって、主張と全く別なお答えを求めたいというふうに思っているところなんです。  以上でございますけれども、よろしくお願いします。
  23. 大西隆

    参考人大西隆君) 第一点は、首都機能移転をしないでそれが目指すべきことを東京の中で実現するにはどうすればいいかという御指摘だと思うんですが、首都機能移転目的一つ防災性向上ということです。  ですから、首都機能移転はしないで防災性向上するということは、防災性をどんどん高めていく、頑丈な国会なり行政省庁をつくるということになると思うんですが、防災という分野の一つの教訓は、やっぱり想像を超えたことが起こるということなんです。ですから、経済性を考えながら構造物をつくるわけですからどうしてもぎりぎりの構造物をつくる、いろいろ安全性を考えながらもぎりぎりのものをつくるということになるので、そういう発想ではなかなかカバーし切れない災害というのが起こるから災害と言われるんだというふうに思います。  ただ、もう一つは、大きな災害ほど局地的だというのも経験からわかることであって、新幹線等で一時間というのはそういう意味では同時にひどい災害が起こらない範囲ということになるんだろうと思うので、その程度にとにかく離して重要な機能を置く。端的に言えば、国会議員の方々が東京国会に来られなくなったときに、別の場所にきちんと集まって緊急時の審議ができるということが一番大事ではないかということであります。  それからもう一つは、分散ということも必要、地域振興ということも必要だということなんですが、これについては、例えばエージェンシー全国に移すとかいうようなことである程度果たせるというふうに思います。逆に言えば、重都、ある場所首都を移しても、そこはそれなりに繁栄するかもしれませんけれども、それ以外のところには余り影響がないということもありますので、この地域振興というのは別途考えなければいけない問題も含んでいるだろうというふうに思います。  以上でございます。
  24. 猪口邦子

    参考人猪口邦子君) 再開発首都移転によってむしろ進むのではないかという面があるのではないかという御指摘なんですけれども、要するに再開発するには、ある程度今までそこにあった機能がどこかに動いていってくれればそこを再開発できます。それは首都移転という形ではなくて、要するに先ほど申し上げた電子化をすると、民間のいろいろな機能が、例えば土地も高くて非常に過密化しているところにしがみついている必要もなくなるわけですから、もう自動的に出ていく可能性があるんです。そういうところをきちっと再開発して、より公共的な役割のものとか、みんなにアクセスがよい便利なものを重点的に配備することができると思うんです。  首都機能というのは非常に政治的な判断で強制的に移動させるということなんですけれども、そうではなくて、市場のメカニズムに乗って一定地域が密度の面ではかなり楽になっていく、そういうことが可能だと思います。  では、その仕掛けは何かというと、やはり電子化と、それからやはり業務核都市になっているようなところあるいは全国の主要都市情報通信化。つまり、そこで仕事をしても似たり寄ったりの効率のよさが獲得できるという実態をつくっていく、そうすることによって私は最も根本的な地方振興ができるというふうに信じておりますし、また東京の再開発もその結果出ていく人たちの跡地をきちっと利用してできるというふうに思います。もう既に本社を郊外都市移転したりいろいろなことをやっているわけですけれども、その跡地の再開発がそういう意欲と意識を持ってなされているかの問題がまだ残っていると思います。
  25. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  猪口先生にお聞きいたしますけれども、先生は首相官邸の設計の委員をされているということを伺っております。それで、首相官邸を建てるということは当たり前なんですが、首都機能移転ということと結びつくと、何で引っ越しをするときに新しい家を建てるのかという批判がいつもあったと思うんです。そういう批判にこたえて、結局政府の方で、東京政府機構を半分残し、そして新しい首都に半分というふうにして、一つの省庁を半分に分けると。これはどういう形で分けるか、政策と実務と分けるか、そんなこともいろいろ言われましたが、そういう形になってきたわけです。  そうすると、先ほどから話が出ておりますけれども、こういう一つの省庁を二つに分けて距離を離して分散させるということがどういうことを生むのか、それからまたそういう例があるのか、先ほどからグローバルな視点で御意見をいただいておりますので、その点を一つお伺いしたい。  それからもう一点、これは国内問題にも関連しますけれども、財政危機あるいは行革を推進するという点から、私はやはりこういう点は、むだ遣いということを一言でよくわかりやすく言われますけれども、私はそういう点が非常に強いと思うんです、はっきり言って。その点から先生はどうお考えか、お伺いしたいと思います。  それから、大西先生にお伺いしたいのは、よく政治機能を切り離して東京を国際金融経済都市にしていく、徹底してそういう方向で仕上げていくという議論があるわけですけれども、先生がお考えになっている東京像、それがどういうものか、それをお伺いしたいと思います。  それからもう一点、先ほど国民合意の形成という点でやや不安があると先生がおっしゃられましたけれども、その点で私はちょっと、例えばきのうの産経新聞の社説に「「首都移転」は白紙に戻せ」というのがありまして、それでその中では、首都移転について、「国民的コンセンサスも確かな展望もないままの新首都建設は、かえって地方行政国民生活を混乱させるだけである。新首都建設は白紙に戻し、二十一世紀のあるべき「国の姿」についての論議を深めることを国会に求めたい。」、そういう結論を書いているわけです。  私は、これはこれで非常に正論だと思うんです。また同時に、国民の世論をかなり反映したものだと思うんです。確かに先生が言われているように国会が決めたわけですけれども国会では議論を全く抜きにいきなり国会決議が衆参で上がって決まったという経過なんです。ですから、これは国会でやり直すということが私の主張なんですけれども、その点で国会決議があるからということに余りこだわらないで、私は、産経新聞の社説が言っているように白紙に戻してもっと議論をするということがやはり今の国の姿にとって大事なのかなということを痛感しているんです。  その二点についてお伺いいたします。
  26. 猪口邦子

    参考人猪口邦子君) では、簡単に申し上げます。  まず、首相官邸の新築についてですが、これはかなり純粋に防災機能強化という観点から必要であったというふうに考えます。  御存じのとおり、非常に老朽化していますし、それから阪神淡路大震災のときの初動態勢の不十分さ等も含めて、やはり危機管理を行おうとするときに十分なスタッフをそこに物理的に常駐させることができない構造になっております。このことはやはり重大問題であろうという理解でありまして、新官邸は二つ機能を特別に重視して設計していただいたというふうに理解しております。一つは徹底的な耐震構造で、これについては最新の技術を導入できたのではないかと考えています。それからもう一つ危機管理機能で、かなりのスタッフが寝泊まりも含めてでき、長期間の司令塔として機能できるように、これは御存じのとおり、最初の二十四時間だけでは事が済まなかったわけで、その後にかなり長期的なフォローアップが必要な大災害、大震災などが想定されますので、その部分機能が必要であったということです。  あと、私も個人的に思ったことで、多くの方が思ったことなのですけれども、やはり新世紀に向けて、今の官邸はライトという海外の方の設計によるライト風といいますか、そういう時代でもなかろうという理解でありまして、やはり日本を感じることができるような新しい首相官邸を持って新世紀に向かっていきたいなということで、設計について私たちの委員会で相当議論して、専門家にもいろいろと注文をつけました。ごらんのとおり日本的な建築というのではないんですけれども、しかしそこに立ったときに日本を感じることができるような、日本からのメッセージを世界の建築界に投げかけることができるような、そういうものをやはりここにおいてつくっておくことの意味はあるのではないかということでございます。ただ、当時の総理大臣の強い指導のもとに、もう徹底的に予算的には抑えたという限界がございましたけれども、それは今、先生御指摘の財政危機への対応の中で非常に質素にして日本を感じられるものということでありました。  しかし、それはつけ足しの部分でありまして、防災と危機管理については、どういう首都機能移転の展開になっても、東京日本最大の都市でありアジア太平洋地域最大の都市でありますから、そこにおいて耐震機能の最強のものを持って危機管理ができる、ある種の本部機能が実現できる建物は必要であろうという理解であります。それは重都になろうとやはり東京はそういう機能を持っていなきゃならないということです。  財政危機の問題については、私は先生の御指摘のとおりであると思います。これからはやはり財政均衡を目指す節度というもので日本の対外的な信頼度も影響を受けますので、その節度を持つことが重要であり、また必要な支出の部分が紛れもなくあるわけですけれども、それは一つにはやはり福祉のような分野、これから少子高齢化に向かう中で福祉の分野、それからもう一つ日本を最先端に導くハイテク、電子化及び先端産業の分野というようなところに手厚く、それですべての日本の地方がその恩恵は受けることができるというふうに思います。福祉の充実も先端技術の充実もこれは東京だけに集中するものでは全くないということで、そういうことについては重点的にやっていただきたいというふうに思います。
  27. 大西隆

    参考人大西隆君) 御質問の最初の東京像というのは、首都移転後のというふうに考えてよろしいでしょうか。首都移転にこだわらずに……
  28. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 はい、こだわらずに、どういう東京になるか。
  29. 大西隆

    参考人大西隆君) 私の場合にはその像を実現するのに首都移転という政策も必要だということになるんですが、一言で言えば生活都市として拡充していくということが非常に大事だと思っています。  例えば、ニューヨーク、パリは東京に並び称される大都市でありますが、ニューヨークの中心のマンハッタンには、マンハッタンというのは大体都心三区プラス新宿区ぐらいの広さですけれども、たしか百五十万ぐらい居住人口があるんです。東京のさっきの区に比べてはるかに多いんです。パリも、大体パリの区部で職住がバランスしているということで、生活の場に都心部がなっているわけです。  東京の場合には、やはり遠くからとにかく通勤する、ラッシュがひどいし、往復の通勤時間も非常に長いということが大きな問題であって、生活の快適性、さっき住宅についてお話ししたんですが、そういった通勤を緩和したり生活の場としても拡充していくということが非常に東京の将来にとって重要だと思います。  ただ、もちろん機能的に東京が、他に生活をする都市というのはたくさんあるわけですから、それと比べて何が違うかといえば、国際金融だとかそういう活動が非常に活発だということにはなるんだろうと思います。  それから、二点目の合意形成ということですが、さっきちょっと私ども研究室で昨年末からことし初めにかけてアンケート調査をやったということを申し上げたんですが、実は世論調査をここ一、二年ほどやっていないということで気になっていて、つまり九七年の世論調査で五四%なんですが、その前の世論調査ではもう少し多かったんです。ですから、その二つ世論調査を比較すると賛成が減っているわけです。だから、うがった見方をすれば、だんだん減っていくので怖くなって世論調査がやれないのではないかというような気もして調査をしてみたわけです。もちろん研究室調査ですから限界はあるんですが、非常に高い賛成率だったんです。  それで、それを整理しながら考えたことは、やはりこの問題について非常に理解をしている人は首都機能移転が必要だという判断をしているのではないかと。それは大きな理由としては一極集中問題と防災の問題であります。そういうことを考えていくと、今のままではいけないのではないかということを考える人がかなり多いのではないかという気がしたわけです。  しかし一方で、今御指摘のように財政の問題なんかもあって、余り壮大なプロジェクトというのが今の時代にふさわしいのかどうかという疑問は当然あるわけです。したがって、もう少しスリムな、いわば既存都市をうまく活用したような首都機能移転を模索するということが合意形成の道なのではないかというふうに考えております。  その意味では、国会決議にはどういう形態、つまり何人が動くとかいうことを具体的に書いてあるわけではなくて、国会及び政府機能移転を行うべきだというふうに書いてあるわけですから、この中身を現代に即して詰めていくということをぜひしていただくのが現実的な合意形成に向けての道なのではないか。その意味で私は国会決議そのものは尊重したいというふうに考えております。
  30. 松田岩夫

    委員長松田岩夫君) 御意見も尽きないようですが、予定の時間が参りましたので、参考人に対する質疑はこれにて終了させていただきます。  この際、参考人に一言お礼を申し上げます。  両参考人におかれましては、大変お忙しい中、当委員会のため貴重な御意見をお述べいただき、また質疑に対しましては御懇切にお答えいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時散会