運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-05-31 第145回国会 参議院 行政監視委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月三十一日(月曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員異動  五月十七日     辞任         補欠選任      阿南 一成君     有馬 朗人君  五月十八日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     阿南 一成君  五月二十七日     辞任         補欠選任      阿南 一成君     有馬 朗人君      脇  雅史君     亀谷 博昭君  五月二十八日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     阿南 一成君      亀谷 博昭君     脇  雅史君      田名部匡省君     水野 誠一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         続  訓弘君     理 事                 大島 慶久君                 塩崎 恭久君                 田村 公平君                 千葉 景子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君     委 員                 阿南 一成君                 海老原義彦君                 加藤 紀文君                 坂野 重信君                 馳   浩君                 脇  雅史君                 小川 敏夫君                 小宮山洋子君                 輿石  東君                 櫻井  充君                 長谷川 清君                 堀  利和君                 大森 礼子君                 松 あきら君                 岩佐 恵美君                 小泉 親司君                 富樫 練三君                 梶原 敬義君                 高橋 令則君                 石井 一二君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君    参考人        政策研究大学院        大学教授     下村 恭民君        読売新聞社解説        部次長      杉下 恒夫君        NGO活動推進        センター常務理        事・事務局長   伊藤 道雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○行政監視行政監察及び行政に対する苦情に関  する調査  (政府開発援助等に関する件)     ─────────────
  2. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) ただいまから行政監視委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五月二十八日、田名部匡省君が委員辞任され、その補欠として水野誠一君が選任されました。     ─────────────
  3. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事水野誠一君を指名いたします。     ─────────────
  5. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  行政監視行政監察及び行政に対する苦情に関する調査のため、本日の委員会政策研究大学院大学教授下村恭民君、読売新聞社解説部次長杉下恒夫君及びNGO活動推進センター常務理事事務局長伊藤道雄君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、行政監視行政監察及び行政に対する苦情に関する調査を議題といたします。  政府開発援助等に関する件について参考人方々から意見を聴取いたします。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人皆様から政府開発援助等に関する件について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず参考人方々からそれぞれ十五分程度意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  それでは、まず下村参考人からお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。下村参考人
  8. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 下村でございます。このような貴重な機会を与えていただきまして大変ありがたく思っております。  ODA現状と今後の課題ということにつきまして、日ごろ考えておりますことを申し上げたいと思いますが、時間の制約もございますのでポイントを絞って申し上げたいと思います。  レジュメがお手元にわたっておりますが、全体としまして、今後の世界、今後の日本あるいは今後のODAというものについて本当にざっとお話しした後で、そういう状況のもとで今後のODA改善していくために何が必要か、特にどういう制約条件の克服あるいはどういう環境整備が必要かということについてお話をしたいと思います。  まず、二十一世紀初頭の世界を考えますと、途上国にとっての国際環境が極めて厳しいものになるというか、一段と厳しいものになるということが言えると思います。  二つの面があると思いますけれども、これまでもいろいろ指摘しておりました地球規模課題、グローバルイシューがいよいよ多角化すると同時に深刻化するであろうというふうに思われます。また、近年急速な勢いで進展しておりますグローバリゼーションマイナスの面が途上国にとって大きな負担になるだろうというふうに思います。  これは二つの側面があると思いますが、まず第一は途上国の中で発展段階の低いいわゆる後発途上国、LLDCがこのグローバリゼーションのもとでの世界経済社会活性化から疎外されていくという面がございます。しかし、疎外されない途上国がそれでは問題ないかというとそうではなくて、そういう途上国はいわゆるエマージングマーケット、新興市場ということでグローバル資本主義のもとでマネーゲームにさらされて非常に大きな金融リスクに直面するということは既に東アジアを初めとして経験されているところでございます。  こういう社会日本が何をメッセージとして発信すべきか。これはもちろんいろんな考え方があると思いますけれども、私は、日本の持っている比較優位ということを考えたときに、やはり途上国の人々との連帯ということにアイデンティティーを求めるということが一番適当なのではないか、日本のいろんな条件に合っているのではないかと思います。そうではなくて、単に豊かで開かれて効率的な社会を目指して内向きの社会を築くということではやはりまずいのではないかと思います。  そういうことではございますが、しかし日本メッセージを発信し途上国が直面している問題について対応していく上で決していい条件がそろっているわけではありません。まず、こういう問題に対応するについて最も中心になります途上国に対する援助はやややせ細りぎみでございまして、日本に限らず各国とも援助疲れという症状が出ているということがあります。  他方、援助が伸び悩んでいれば民間の活力を生かせばいいということで一時は民活による途上国問題の改善、非常にバラ色イメージで描かれた時期もありますが、その後東アジア金融危機等を経過してわかったことはグローバリゼーション世界では非常にリスクが高いということで、とても民活アプローチリスク負担をしていくのは難しいということが民間部門自体に非常にはっきりわかってきたということではないかと思います。そこで、これからは、お互いに問題を抱えているというか難しい面はありますが、政府民間NGOとかいろいろな経済協力参加者、アクターが支障のない範囲で連携を強めていくということが重要になると思います。  ODAに絞りますと、こういう課題あるいは責務に対応していくためには二つの重要な問題があると思います。  一つは、もっと重点化する必要があると。その際、鮮明な理念を打ち出して、それに基づいて重点化する必要があると思います。御案内のように、国ごとの、分野ごとの、あるいは援助形態ごとのシェアの固定というのは非常に今深刻な状態にありまして、こういう硬直的な状態ですととても責務を果たせないわけでございますが、何を重点化するかということになりますと、これもいろいろな意見があると思いますが、レジュメの二ページの上にありますように、私の感じではやはり日本の比較優位が一番発揮できるのは環境保全型の援助という面ではないかと。そこで、環境ODA中期計画を打ち出すことでも結構ですし、あるいはアジア植林五十カ年計画というようなグランドデザインでも結構ですが、地球環境問題に焦点を当てて日本ODAの特徴を出していくということが必要ではないかと思います。  さらに、これまでにいろいろ行われたODA効果把握とそこで浮かんできた問題点を総合的に判断して今後の改善努力を引き出していくということが必要だと思いますが、一口にODAと申しましても、あるいはODA効果と申しましても、個別の事業レベル、あるいは分野ごとテーマごと地域ごとレベル、あるいはもっと大きくマクロ的な経済社会に対する影響、それぞれその手法も違ってきますし、特にマクロ的なレベルでの効果把握はまだ手法的にも非常に未開発で、これから大いに経験を積み、また試行錯誤を繰り返していくという必要があると思います。こういうことを具体的に経験していかないと、今ODAが役に立っていないとかあるいは評価されていないとかいう議論が随分ありますが、非常に感覚的な点があると思います。  具体的に申し上げますと、そのプラス面マイナス面を双方総合的に見て行われる議論というのは非常に少ない。あるいは、日本ODAの問題を取り上げるだけでほかのドナーはどうしているのか、何となくほかのドナーはうまくやっているけれども日本ODAだけに問題があるというようなイメージがありますが、それぞれほかのドナー世界銀行でもアメリカでもドイツでも途上国では悪戦苦闘しているわけで、いろいろ問題も起きております。そういう点で国際比較の観点が必要かと思います。  さらに、後ほど申し上げますが、制約条件を抜きにして問題点議論してもやはり限界があろうと。人員とか予算などの制約条件についても視野に入れる必要があると思います。  そこで、政府の方もいろいろ最近は問題意識を打ち出しておりますけれども、その方向はおおむね適正かと思いますが、これまでに議論されている点を踏まえて日本ODAがさらに援助効果を発現するためにどんな環境整備、どんな条件整備が必要かという点について私の意見最後に申し上げたいと思います。もうこれは本当にいろいろあるかと思いますけれども、その中から時間の制約もございますので三点取り上げてみたいと思います。  まず一つチェックアンドバランス仕組みをもっと強化する必要があるということでございまして、日本ODAがもっといいものになるためには、あるいはODA大綱の運用がもっとより透明になりそれぞれの時点での政策判断議論され、具体的な事業効果が浮き彫りにされるためには、国会中心として外部の専門家あるいはマスメディアなどの多様な視角から、いろんな視点から政府と共同で総合的なチェックが必要だと思います。  その機能的なチェックアンドバランスがあれば、いろいろな問題点を単に問題だということで取り上げるだけではなくて、今後どうしていくかということについての議論もより建設的に出てくると思いますし、特になぜうまくいかないのかというときにどんな制約条件があって、あるいはどういう構造的な問題があってうまくいかないのかということをより建設的な視点議論する場がもっと出てくるのではないかと思います。  ただ、政策判断とかあるいは政策実施についてやはり機動性弾力性が必要ですから、それを阻害することのないようにできるだけ事前承認またはそれに準ずる仕組みというのは避けて、事後にどういう問題があったかということを掘り下げて議論するということがベターなのではないかと思います。  それで、さっき構造的、制度的な制約条件ということを申し上げましたが、いろんな制約条件があります。例えば、単年度主義というような財政法の具体的な制約条件も深刻ですけれども、やはり一つ挙げるとすれば人員予算が十分に配賦されていないということが、ODA改善という問題が重要である割には機構とか人員とかあるいは経費予算の手当てが十分に行われていないという点があると思います。補給を欠いて精神論だけで、あるいは理念だけでODA改善議論するということは現実的でないと思いますので、ぜひ構造的な制約条件についての議論をもっと盛り上げていただきたいというふうに思います。  それから、最後に「「ひもつき指向体質からの脱却」ということを書きましたが、最近やや矛盾する問題提起が並行して行われているように思います。一方ではODA効果をもっと上げ、効率を上げ、あるいは不祥事あるいはスキャンダルを防ぐ、これは重要だと思いますけれども、もう一方で国益をもっと重視し、日本の税金を使っているわけだから納税者にもっと還元する必要があるということで、ひもつきタイ援助とかあるいは一定割合日本企業は受注する必要があるというような声が根強く出ておりますが、私はひもつきタイ援助を指向するということとODA効果的にする、より効率的にするということはかなりの程度矛盾があると思います。この二つを単純に並行して達成しようと思うとそれは現実的でないということが言えると思います。それは効果を上げ、効率を高め、特に腐敗、汚職を防ごうと思えば競争が何といっても不可欠なわけで、競争を確保するためにはやはり国際的な競争の場、競争条件を整備するということが重要です。日本企業だけで競争してくださいといってもこれはいろいろな難しい問題がありますから、それはなかなか達成できないということがございます。  それから、念のために申し上げておきますと、今でも日本企業は十分に受注していると私は思います。一般に言われている日本企業受注率が二七%あるいは三〇%弱という数字は非常に少ないように見えますが、これは何に対しての二七%であるかということが十分に認識されていないわけで、分母は、これは円借款の話ですけれども、円借款のもとでの調達の結果ですが、その調達の中にはもともとローカルの小さな現地の企業しか関心を持たないようなものがかなり含まれております。それは草の根型の援助がふえればふえるほど、社会セクターに対する援助がふえればふえるほどそういうものがふえてきます。そこで外貨部分、外国からの輸入の蓋然性があるという部分だけに限ってみますと四割ぐらい日本企業は受注しておりますし、さらに大型の入札、例えば十億円以上の入札ということでとってみますと三分の二ぐらいは日本企業が受注しているというふうに聞いております。  そこで、既に今でも十分に受注しているわけですし、日本黒字大国ですから、この上さらにタイド化あるいは日本企業にこれだけの部分は受注すべきだという議論はそもそもおかしいと思いますが、それ以上にやはり効果効率を志向し、不祥事を防ぐということであれば国際競争は不可欠だというふうに考えております。  以上でございます。
  9. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) どうもありがとうございました。  次に、杉下参考人にお願いいたします。杉下参考人
  10. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 委員長、きょうはお招きいただきましてありがとうございます。  私は、毎度こういうところで呼んでいただくたびに何年間ODA専門にやっている珍しい記者ですと自己紹介しておるんですが、今回はついに十年にわたり経済協力というものを、だけでもないんですが、専門に書いている記者と自己紹介するようになりました。  そんな中で、最近のODA現状というものをずっと長いこと見ておりまして、非常に日本ODAはさま変わりしてきたなというのが私の実感でございます。その要素としては、皆様も御承知のとおり、財政構造改革法などによる予算の削減、それからアジア経済成長、それからその後の経済危機、または下村先生からも今お話があったような他の援助国援助疲れ、いろいろな要因が日本経済協力の周りを取り巻いて、その結果日本経済協力というものの姿も大きく変わったんじゃないかというふうに認識しております。  現在の日本ODAの姿を船に例えて言えば、そのまま改造改造を重ねて非常に大きな船になった、ところが燃料がちょっと足らなくなっちゃって出力が落ち始めた、しようがないから余分、いわゆる質の向上という名前で船に積んでいる要らないものを海に投げ捨てて何とか速力を維持しながら走っているのが現在の日本政府開発援助の姿かなというふうに見ています。  ここで問題なのは、今行こうとしている方向が、どこの港に寄港しているかということがはっきりしていないんじゃないかというのが私は一番現在の日本経済協力の危惧しているところでございます。少なくともアメリカに指示されたり、何か経済日本黒字還流とか何かの目的、寄港地を持って走っていた船が現在どこへ走ろうとしているのか、何をしようとしているのか、かじをとっている政府自体模索しているのではないかと。この方向がとんでもない方向へ行ってしまったら、せっかく援助機関実施者たちが苦労しながら速力を維持し大きな船を運んでいるのにとんでもない方向に行ってしまったら全くのむだになってしまうということを今大変心配しているのが外から見ているODA現状のざっとした私の感想です。  それで、現状をもうちょっと細かく申し上げますと、日本ODAというのは最近になって噴き出してきているようなインドネシアのああいったリベートの問題のような、それ以前はマルコス疑惑といったようないろんな問題をたくさん含んできていたと思います。しかし、八九年に日本世界一の援助国という名前をいただいてからいろいろマスコミ、それから国民関心も高まったことにより、援助機関または政府もかなり改善を重ねてかつてのようなともかく予算消化といったような援助というものは大分なくなってきて、もちろん一〇〇%は行っていませんが、しかし八〇年代までと比べて九〇年代からのODAというものはかなり改善されているというふうにまず前向きの評価をしたいと思います。  どういうところがいいかということを見ていますと、昔いろんなODAの現場へ行きまして、先生方も行かれたかもしれませんが、停電ばかりするようなところに相手が欲しいと言うから非常に高度な高価なコンピューターを置いてみたり、ほこりが舞っている部屋に電子顕微鏡を置いてみたり、ともかく要請があれば余り相手状況といったものを正確に把握したりまたは調査しないで送ってやったというようなことも多々あったのですが、そういったことは最近は大分なくなりました。要するに、この国はどういうものが欲しいのか、この国にはどういう規模のものがいいのか、いわゆる国別アプローチ、そういったものが大分しっかりするようになって、やはりその国のニーズに合ったもの、その国のニーズ把握の仕方というものが大分改善されたということが一つ改正点だと思います。  また、昔日本ODAの代名詞であったような箱物と言われたものが箱物だけから知的支援、いわゆるソフト支援政策支援とかそういった分野にも幅を広げてきているようになりました。こういったものの分野改善も大分大きいと思っています。  それからもう一つ、今の箱物とともに、一つプロジェクトで大きな予算を消化しようという、ともかく巨額な予算に対して余りにも少ない人間、余りに少ない知恵ということから出ていた一個のプロジェクトに巨額の金をつぎ込んで消化してしまうといったものから、最近は、手間も人もかかりますが、いわゆる草の根無償みたいな小さなプロジェクト円借款でいえばマイクロクレジットみたいな小さな、手間もかかるけれども小さな、相手のひだに飛び込むようなプロジェクトが多々見られるようになってきたこと、特に草の根無償は非常に執行も早いし、かなり効果を上げているというふうに私は解釈しています。  それからまた、いわゆる人が足らない、さっき申し上げたように、実施機関の人が足らないということもあるんですが、国民参加型の援助という言葉を使うことによってNGOとか地方自治体とかまたは学界、それから民間企業、こういった人たちの力をかりて非常に多様なプレーヤーたち援助をするようになってきたということも言えると思います。  最後にもう一つ、いいことばかり並べますが、日本ODAというのはともかく戦略がない、何のためにやっているか先ほど申し上げましたように方向性がはっきりしないのが日本援助で、顔がない援助と言われるのはいわゆる日本のポリシー、理念相手国に伝わっていないことが最大の原因だったと思うんですが、やや最近は日本援助にも戦略性または政治というものが、外交というものが少しは見られるようになった。例えば、インドやパキスタンの核実験の後でとった日本措置、いろんな批判もありますが、従来の措置に比べれば、その対抗措置というものは一応理にかなったものであろうと。中国なんかの核実験のときのような対応、相手国規模も違いますが、そういうものに比べれば日本対抗措置のとり方といったものにも日本政治というものが見えてきている、外交というものが見えているんじゃないかと。  また、中国の問題でいいますと、五年まとめてやっていたような円借款を第四次から三プラス二、三年と二年に分けたり、四次の後の五次以降は単年度で話し合う、いわゆるその都度日本から中国政治姿勢とか民主化の問題とか対日外交姿勢とかそういったものにいろいろクレームをつける機会をつくろうというような、こういう考え方も前向きのものだろうと。これは非常にまだ効果として足らないものもあるし、とても歯がゆいものがありますが、そういう姿勢を見せるようになったということが評価していいことかなというふうに思っております。  逆に課題ということを申し上げますと、これは時間内で言えないぐらいあると思うんですが、課題としては今申し上げた改正点というのがすべてまた課題にもなると思うんです。というのは、まだ一〇〇%改正されているわけじゃないので、これをさらにまず完璧なものにしていかなきゃならないということが一つ課題。  それにつけ加えて、どうしてもこれは政府だけじゃなくて国会政治家先生方にもお願いしたいことなんですが、今後政府開発援助、これを、今一般に、我々マスコミも使いますが、日本が独自に切れる唯一の外交切り札、カードと使いますが、本当に今後も経済協力日本外交切り札一つとして使っていくのかどうか、日本外交のツールとして何を日本外交のツールにされるのか、そういった国の外交政策におけるODAの位置づけというものを私はもっと明確にしてもらわなきゃならないと思います。  ということは、ですからもし従来どおり日本の重要な外交政策としてODAを今後も維持していくのなら財政改革というのは非常に重要なことですが、やはり論議が余りなされないうちに予算が簡単にぱたっと切られてしまったというような事態は私は日本におけるODA外交政策における位置づけが不明確な結果じゃないかと。要らないのならやめてしまえばいいんだし、要らないのならまた別の外交ツールを探せばいいんだし、やるのならちゃんと重要な政策としてやはり優先順位を与えておくべきじゃないかというのが私の一つのこれは政府及び政治家先生方にぜひ注文したいことだと思っております。  それから、もうちょっと具体的にやらなきゃならない問題を幾つか申し上げますと、まずどうしてもやらなきゃならないのは援助実施体制の一本化ですね。これは行政改革を機会にぜひ。今現在、例えば技術協力が十八の省庁にもまたがっていて、技術協力の実施機関であるはずのJICA、国際協力事業団が五〇%以下しかやっていない。五〇%以上は十八の省庁がそれぞれ独自にやっていて、大蔵省の主計局も全体の像を把握していないといったように重要な日本の技術協力をばらばらでやっていて、まさに不透明という意味では一番不透明です。我々が少しでも見ることができるのはJICAがやっている技術協力だけであって、各省庁がやっている技術協力というものは本当に不透明で私もいまだに何をやっているかわからないという状態をぜひ何とかしてもらいたいということが一つ。  それから、余りにもいろんな省庁が足を突っ込み過ぎている経済協力、例えば専門家のポストが省庁の人事の中に組み込まれちゃっていて、本当にやりたい人材が来ているのか、それともたまたま順番が来たから来ているのかというような人たちが多々見られるような人事というものが行われるのも余りにも各省庁間の多様化している問題の弊害だと思います。  それから既得権益の構造、これはやっぱりODAというのは賠償から始まって長いことずっと続いてきている問題で、ODAにおいても例えば国別援助というのが毎年上位国に来るのがほとんど変化がない。それから、分野別も日本の公共事業と同じように橋とか道路とかそういったものが、農村でいえばイリゲーションみたいなものがずっと同じような比率で来ているということ、これがやっぱり既得権益だと私は見ているんですね。日本ODA改造したい、改革しなきゃならないなら国だって、例えばアメリカのように去年一位だった国がベストテンから外れてしまうような、そこまで激しくしなくても、やはり重要な施策、重要なプロジェクト、そういったものに対しては毎年見直して、毎年のインプリメンテーションというか、そういったことをぜひ避けてもらいたいということですね。  それから、いわゆる単年度主義、これはしょっちゅう先生方も耳が痛いほど聞いていると思うんですが、やはりODAというのは特に単年度でやっているとむだが大きいに決まっているわけです。その年に終わってしまうような相手国もあれば、事業は自然とか人間を相手にしていることが多いので、そういうものを単年度で全部処理してしまうということは適当にお金を使って処分してしまうということの理由にもなるわけです。  あともう一つ、今回コソボの問題なんかでも日本の顔が見えないとか援助が足らないとか、我々マスコミの現地に行っている人間からもそういう原稿を送ってきます。私はそういう原稿は全部没にしちゃうんです。なぜかといったら、日本がコソボまで一番大きな顔をして先頭に立ってやれる問題じゃないわけですね。日本世界じゅうの問題を全部旗を振って先頭に立ってやれと言われたって、予算の限界も人員の限界もあるわけでして、NATOが仕掛けたそういう紛争に対してまで日本がやる、もちろん難民支援とか後方支援、そういったものに対するお手伝いは必要かもしれませんが、日本の顔が見えないとか日本援助が足らないと、そういったことを知っている必要はないわけです。要するに、援助をする国の絞り込み、日本はどこの地域をやらなきゃならないのか、どういう国をするのか、また援助をするプロジェクトの絞り込み、例えば日本は環境とか人権とか食糧問題とか、何かそういった人間にかかわる問題を重点的にやっていきますよと。何でもかんでも、インフラ整備から始まって教育から人権から環境から全部日本がやるということは当然資金量の限界がある中でできないわけですから。日本という国は何をするのか、そういう中で私がぜひやっていただきたいと思うのは環境とか教育、人づくり、こういった分野援助日本は重点的にやりますと、そういった国とプロジェクトの絞り込みをしてもらいたいと思います。  あともうちょっと、時間が過ぎそうですが、駆け足で申し上げますと、三つ注文がございます。これは大きな注文で、一つは、これは下村先生の話ともダブりますが、ODAの監視機能を強化しなきゃいけないと。  これは今既に外務省やJICA、OECF、外部による評価というものをやっていますが、私も何度かそういった評価を依頼されてやったことがあります。しかし、どんなことをやっても、一週間や二週間駆け足で見ていってODAの本質というのは見えるわけがなくて、相手に与えられた資料をチェックして、数字が合っているか合っていないかを見て帰ってきて、それで人がたくさん入っているか入っていないか、そういったことをすることによって評価と称しているんですが、私はそういう評価は全く評価じゃないと。ショーウインドーを見せられているだけで帰ってきてもだめなわけですね。何とかODAプロジェクトの評価方法をぜひ改正していただきたい。  その中で重要なのは、やはり国会による監視の強化です。これは事前評価というか、途中でやるということはかえって手間になると思うんですが、事後評価を先生方に見てもらうということは事前にちゃんとやっていなかったら当然事後評価はよくないわけです。いいかげんなプロジェクトを適当につくって事後に行っていいわけがないわけで、国会議員による事後評価の強化、こういったものもぜひやってもらいたいなと。当然、我々マスコミも努力してやりたいと思いますが、やはり持っている機能とか権限とか、そういったものも限界がありますし、ぜひそういったODAの監視機能の強化に国会の介入というのを提言したいと思います。  それからついでに、ついでというかそれに絡みますが、ODA基本法というものを、国会経済協力に対する介入とか口出しということじゃなくて、やはりODAを見る一つの手段としてぜひ基本法というものの制定も視野に入れていただきたい。  あと、これもさっきとちょっとダブりますが、国民参加型の援助の円滑な執行。というのは、国民参加型の援助ということを政府は言っていますが、どうしてもこれは政府主導の国民参加援助なんです。国民参加型の援助というのは政府NGOも対等の立場に立たなきゃ実現しないわけです。現在のように情報とか資金を全部政府が握ってNGOを、横にいる伊藤先生に怒られちゃうけれども、下働きみたいにして使っている限り国民参加型の援助というのはできないわけでして、この辺のまさにイコールパートナーとしての国民参加型の援助の実現。  最後になりますが、情報公開ですね。これも我々マスコミの立場としては非常に歯がゆい思いをしているんですが、どうしても情報公開が足らない。それはもちろん、さっき最初に申し上げたように、八〇年代に比べて日本ODAというのは随分情報公開がなされています。ある意味ではこれほど情報公開がなされている国の施策はないということも言えるんですが、非常に見にくくてわかりにくい。専門家が見ればちゃんと読めるんですが、読めない人が見たら全然わからない。  またもう一つ、今度のインドネシアの問題のように、ODAというのは基本的には国と国の援助であって、そして渡したお金は相手国の責任でもって使うわけですから、相手国政府日本民間企業と何か起こしても、これについて正論としては口出しもできないし、これは先は責任はないんですが、そういったことによって今までずっと逃げてきたことがODAの透明性をゆがめてきたわけですね。ですから、こういった分野にまでやはりもっと口を出す。制度だからしようがない、国の問題だからしようがないという逃げ方じゃない、何かそういった先の透明性まで高めるような努力をしなきゃならないと思っております。  長くなりまして済みません。  以上です。
  11. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) どうもありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人
  12. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) NGO活動推進センターの伊藤です。きょうはどうもお招きいただきありがとうございました。  ODAを見るときに一番大事なのは、どの目線でODAを見ているのかということじゃないかと思います。  これまではどちらかというと、日本側もそれから援助受取国側もエリート層がODAを扱っていたというふうに思っています。それが過去十数年にわたりまして日本国内にもNGOが育ち、それから援助受取国側にもNGOが育ってきまして、非常に草の根レベルでの交流、協力が活発になってきています。そういった中で日本政府開発援助もそのあり方が変わりつつあるように認識しています。  私はODAのよって立つところはどこなのかといろいろ勉強したんですが、日本国憲法の前文に、既に皆様にお渡ししてあると思いますけれども、「全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という前文があります。まさに日本ODAはこの精神に立っているのではないかというふうに考えます。  そして現在、世界を見ますと、最も貧しい貧困層二〇%の所得割合が一九六〇年に世界所得の二・三%でありましたのが一九九四年には一・一%にその比率が下がっている、それから最も豊かな二〇%の層が一九六〇年に七〇%であったのが一九九四年には八六%に増大しているという状況。過去何十年間にわたって政府開発援助がなされているにもかかわらずその貧富の差が開いているという非常に不思議な現象が起きているわけです。  そういった中で日本開発援助を考えた場合、課題の点を主に申し上げますけれども、かといって必ずしも日本政府開発援助課題ばかりじゃないというふうに思っています。成功している事例がたくさんあると思います。  実際に私、二十年ほど前からNGO活動をしておりますけれども、当時、田中角栄首相がジャカルタを訪問したときに反日暴動が起きましたけれども、その学生運動のリーダーだった人がその後大学の教授になられ、学部長になられましたけれども、彼が日本政府開発援助のおかげでインフラができて、そしてインドネシアの経済発展があったのだというような評価をされていたのを覚えています。したがいまして、日本政府開発援助もいろいろな面におきまして東南アジアの発展に寄与したのではないかというふうに思います。  しかしながら、ミクロの世界を見ますと非常に大きな問題も残されているというふうに思います。  それは一つには、ここに持ってきましたけれども、一九九五年に開かれました北京の女性会議に出席した元ジャーナリストの松井やよりさんが書かれた本、「女たちがつくるアジア」の中にいろいろな事例が書かれてあります。それは北京で会った女性たち、リーダーにその後フィリピンとかインドネシアとかタイ等を訪ねてインタビューされていますけれども、その中に例えばフィリピンのバタンガス港再開発の事例が紹介されております。  それはフィリピンを二〇〇〇年までに新興工業国にするというラモス政権のフィリピン二〇〇〇年計画の目玉のカラバルソン開発計画の一環なんですが、このバタンガスというマニラから南の方に約百キロ行ったところですが、そこでバタンガス港の拡張が行われたと。その拡張のことを住民は知らされていなかったということで、強制退去を住民が命じられているわけです。そのときに町長であったテルマさんという方が次のように語っているということです。  「まるで戦場のようでした。何百人もの武装警官や強制執行団が来てどんどん家を壊し始めた。発砲されて住民の一人が負傷し、催涙弾が打ち込まれて子どもや老人が病院に運ばれ、二人が心臓発作で亡くなりました。突然家を失った数千人の住民に三日分の食料しか配給がない。一体どうしたらよいのか、町長としての責任の重さに私はほとんど発狂寸前でした」と。その後も彼女は日本に来まして、「バタンガス港の開発日本をはじめ多国籍企業のためです。それで日本政府ODAを出すのです。日本の市民の皆さん、あなたたちの政府が私たちの生活を破壊し人権を侵害しているのです。そのために皆さんの税金が使われていることは納税者である皆さんにも責任があるのではないでしょうか。このような融資をストップして下さい。破壊された私たちの生活の再建を支援して下さい」と。  そのほかにもいろいろ、南コタバト開発計画とかタイでの開発計画の事例がここに紹介されていますけれども、いずれにしましても日本政府開発援助が向こうの本当に社会の最底辺で生活している人たちに大きなしわ寄せをしているという事実に目をつぶることはできないと思います。  そういったことがどうして起きるのかといいますと、日本のようにかなり開かれ、そして市民が物が言える社会ですといいんですが、東南アジアのある一定の国では強圧政権でありまして、住民の言うことは余り聞かないという中で日本政府開発援助が行われているということなものですから、直接の受益者である住民と政府との間にギャップがあるということを認識しておかなくてはいけないのではないかと思います。  それから二番目に、日本ODAが果たして国民にどれだけ理解され、サポートされているのかということについて問題提起したいと思います。  それは一九九七年に国民の意識調査が行われた結果が出ていまして、ODAを知っているというのが四一・六%、知らない人は五八・四%、女性の中では知らないという人が七一・六%に上っているわけです。しかし、知っているという四一・六%に限りましても、果たして政府開発援助の中身がどうなっているのか、仕組みがどうなっているのか、例えばODAが十九省庁、現在十七省庁になりましたけれども、にまたがって運営されている、これは実はNGO活動をしている私でも数年前まで知らなかったんですね。政府開発援助は外務省だというふうに思っていましたら、全予算の半分ぐらいしか外務省は担当していない、他の省庁に関しては外務省すら余り把握していないということを聞かされまして唖然としたわけです。  そういったような現実を日本国民がどこまで知っているのか。すなわち、表面的にODA世界でナンバーワンだとかあるいは喜ばれているんだというようなことは認識しているかもしれませんけれども、果たしてそのプロセスがどうなっているのか、それが現場でどう使われているのかについては国民は知らない、また知らされていないのではないかと思います。  次に、私は東南アジアアジア、アフリカ等をよく回りますけれども、日本ODAについてやはりビジョンが欠けている、一体日本ODAはどういった将来ビジョンを持っているのか、どういう目的で何を達成していくのかということがよくわからないということを聞かされます。それは日本政府開発援助が真に貧困撲滅を図り公正な社会をつくろうとしているのか、ともに生きる地球社会をつくろうとしているのか、あるいは援助受取国社会の体制派とかエリート層の経済活動の支援なのか、それから日本の食糧、資源の供給先の開発をしようとしているのか、要するにはっきりとしたイメージが伝わってこないという批判をよく耳にします。  草の根無償援助の話も先ほど隣の杉下さんから出ましたけれども、私が経験する限りでは、FASIDという外務省の外郭団体がありますが、そこが調査した結果によりましても、南のNGOにとっては草の根無償のあり方について非常に批判がある。今なおハードが中心であり、一体その目的は何であるのかよくわからないということ等、いろいろその理由が述べられています。そういった意味において、日本ODAはもう少しメッセージをはっきりと、これをもってどういう社会をつくりたいのか、どういうことを達成したいのかということを伝えるべきだというふうに思います。  それから、非効率援助行政ということにつきましては、私も本当につい最近までODAは外務省、JICAあるいはOECFが行っているというふうに認識しておりましたけれども、現在十七省庁が関与しているという中で、だんだんと勉強すればするほどODAそのものがばらばらになっているということがわかった次第です。  ここにお持ちしたのは、最近、「論座」で草野厚先生、慶応大学の教授ですが、「闇に包まれた一兆二千億円 ODAの情報公開を急げ」というふうにあります。この中で草野先生は次のような御紹介をされています。  すなわち、九七年度ODA予算一般会計でいきますと一兆一千六百八十七億円、このうちの技術協力費は三千六百四億円、さらにそのうちのJICAが担当している技術協力費は一千七百九十五億円で約半分、残りは他の省庁だと。それで、他の省庁についていろいろ研究していきますと、実は他の省庁の外郭団体、すなわち公団とか傘下の公益法人によって実施されている。五つ以上そういった公益法人とか公団を持っている省庁というのは、経済企画庁が五、環境庁が十四、文部省が十六、厚生省が六、農水省が二十六という形になっていますが、こういったところのプロジェクトをずっと見ていきますと、あちらこちらでかなり重なっているわけですね。  それで、こういった公団とか法人に天下られた方々は、例えば農林水産省の場合ですと元事務次官だとかあるいは課長さんだとかあるいは局長さんだとか、そういった方がそこに天下っている。そういった中で、私は誤解しているかもしれませんけれども、そういった他の省庁が自分たちの勢力の存続、あるいは拡大のためにODAをとろうとされているのではないかというふうな危惧も持たざるを得ません。  また、実はNGO関係におきましても、NGOが積極的に政府に要請しなくても各省庁からばらばらに補助金を出してあげましょうという形でアプローチがあるわけです。それは結局もらえばそこの省庁の外郭団体が仕事がふえていくということになりまして、そういった意味においては一体どこが窓口で全体のNGO支援に対する調整もしているのかわからないということで、我々もある意味でありがたいような迷惑なような感じであるわけです。  それからもう一つ、私が十何年外務省、それからその他省庁とおつき合いして感じましたのは、局長、課長、それから担当官の方が目まぐるしくかわっていく、二年ごとにかわっていく、かわるたびにもう一遍ゼロからオリエンテーションしながらおつき合いしていくという形をとっているわけですけれども、どうしてこういう形で援助行政がなされるのかと。やはり、その援助担当の方は相手の国の人々、それから我々NGOとの信頼関係をつくっていくためには最低でも四年、五年はそのポジションにいていただきたいというふうに思っています。  それから最後に、最近東南アジア、アフリカ、中南米ではNGOが非常に育っています。日本NGOが足元にも及ばないような能力を持ったNGOが、バングラデッシュとかインドネシアとかフィリピンとかタイとか、そういった国々で育っています。そういった国々のNGO日本政府開発援助はもっと結びついていくべきだと思っております。以前は、日本政府も遠慮されてか、NGOにコンタクトをとるとその国の政府に嫌がられるということで遠慮されたと思うんですね。ようやく日本の外務省、JICAを初め、あるいはOECFも最近はそういう動きがありますけれども、NGOに直接コンタクトをとって協力活動を展開されようとしているように思います。  そういった意味において、ただそういったことだけじゃなくて、日本政府がDACの新開発戦略、これは一九九六年五月に発表されましたけれども、そのときに非常に強いリーダーシップを発揮されたというふうに聞いております。例えば目標値を立てるのに、二〇一五年までに貧困人口の割合を半減させるとか、あるいは二〇〇五年までに初等・中等教育における男女格差を解消するとか、その他二〇一五年までに乳幼児死亡率を三分の一に削減する、こういった数値を設定する上において日本政府が非常にイニシアチブをとったということです。こういったイニシアチブをとったことを必ず約束を守って日本政府開発援助は行っていただきたいというふうに思います。  以上です。
  13. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑形式ですが、総質疑時間は二時間程度、おおむね午後四時までとし、まず大会派順に各会派十分質疑を行います。全会派一巡後、残余の質疑時間についても各会派均等に割り当て、再度大会派順に質疑を行うことといたします。  会派内における質疑者はあらかじめ特定いたしませんので、質疑を希望される方は、挙手の上、委員長の指名を待って御発言されますようお願いいたします。  なお、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、自由民主党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  14. 脇雅史

    ○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。  本日は、三人の参考人先生方、貴重な御意見をありがとうございました。  まず最初に、下村先生にお尋ねしたいんです。  下村先生お話しになられた前半のストーリーといいましょうか、私も全く共感をするところが多かったわけでありますが、最後の最近よく言われておりますタイド、アンタイドの問題、ひもつき援助部分でございます。トーンとして日本が出した援助のお金で日本企業がとるのはどうも悪いことだという前提が国民の間にもあるような気がしているわけであります。少し単純なナショナリズムからいえばよその国、アメリカやイギリスやいろいろな国がありますが、それぞれの国の方がおとりになってもいいんですけれども、全くフェアな格好で結果として日本企業がおとりになるのであれば、これはこれで同じ日本国民として結構な話で、問題はとったその仕事が相手国援助国にきっちりと評価をされるような立派な仕事ができるかどうかということではないか。そして、参加するときの対応が本当にフェアになされているかどうか。  さっき、同じ国だけでは公平な競争関係ができないし、競争がないとどうしてもまずいという御意見もありました。それはそれで理解できないわけではないんですが、国によってはむしろ日本にお願いをしたいという、そういうふうに思っておられる国がアジアでは実態としては特に多いんですね。ただ、最近は日本は人件費その他何でも非常に高くなってきましたから、同じお金でやれば日本はとってもらえないというような状態もあって必ずしも相手国の意向に添えないという面も逆にあるのではないかなと。  ですから、余り過度に日本企業が海外で仕事をすること、それは悪いことだ、国民の税金を使って外にまで行って悪いことをしているという、そういう悪しきとらわれ方には私は少し疑問を感じていまして、結果として相手国の意向、それから仕事をするまでのさまざまな契約等の手続関係さえしっかりしていれば、それは胸を張ってやっていいんだというふうに思った方が私はいいのではないかと思うわけでありますが、下村参考人の御意見を若干お伺いしたいと思います。
  15. 下村恭民

    参考人下村恭民君) ありがとうございました。  今、脇先生が言われたことと半分は全く私も同じ意見だということは、既に申し上げましたように、フェアに競争が行われるということが問題だということですね。国際競争入札が行われて日本企業が落札する、これは大変結構なことで喜ばしいことだと思います。ですから、問題は、私のレジュメにも書きましたように、最近の東アジア危機に伴って生じた特別円借款、九八年の十二月に出ておりますけれども、これがタイドになっていますが、これはいろいろな筋から日本政府に対して税金を使って援助をしているのであれば納税者に恩恵が還元されないのはおかしいという非常に強い声があって行われたというふうに新聞記事等では書かれておりますが、そういうふうに無理に競争を制限することがおかしい、あるいは無理に競争を制限するといろいろな不祥事の温床になるということを申し上げただけでございます。
  16. 脇雅史

    ○脇雅史君 どうもありがとうございました。  やはり外国でいい仕事をしようと思うと、日本でもそうなんですが、ある程度継続性といいましょうか、人と人のつながりも大事ですから、とれたりとれなかったりという状態はお互いの国にとっては余り幸せなことではない。しかし、余りにも継続を前に押し出しますと、またそれで問題が出てくるということがあって痛しかゆしなんですが、ですから日本企業がとってはいけないということが国民の間に定着してしまうということに問題意識を私は持っております。  それから次に、杉下先生にお伺いしたいんです。  また先生の御意見に全般的に共感を覚えるんですが、体制の問題であります。外務省経済協力局に調整機能を一本化する、もちろん先生は十分に御理解の上でお話しされているわけで、調整機能と書いてあるところに意味があると思うんです。私も役人の現役のときに国内の仕事を持ちながら技術協力というのをやったんですね。全く国内の仕事で手いっぱいなんですけれども、海外協力は大事だから技術協力をやってくれという話があって、それは断れません。一年間に三十日ぐらい外国へ出かけてダムの技術指導、フィージビリティースタディーに至るような仕事をするわけですが、非常に厳しいんですね。日常の仕事で手いっぱいの上に外国の仕事が入ってきまして、それを夜中に一生懸命勉強して、外国へ行って初めてお会いする方々と意思を通じながら相手国の実情を理解して、三回や四回の短期の出張で仕事を進めていかなければいけないという非常に厳しい状態、それは各省とも多分一緒だと思うんですね。  それならばそういう人材を別に置いておけばいいかというと、そうもいかなくて、やはり技術協力というのは人材の問題ですから、実際に毎日そういう仕事をしている人が外へ行って初めてその技術を供与できるわけであって、ずっと、生まれてからとは言いませんが、ある程度の年になってからそういう部署にだけいて提供すべき技術が持てるかどうかというと非常に難しいわけで、やはり国内でもいろいろな技術にタッチし、仕事にタッチしながら自分の技術能力を高めて、それを相手に提供するわけですから、まさに本当に忙しい人が行くことが一番いいんですが、非常に厳しい状況です。  建設省なんかでいいますと、こんなことでは相手国に対して失礼だというふうに私も省内では申し上げて、少なくとも省の中ではきっちりとある程度の人材をプールしながら、現場とのやりとりをしながらそういう業務をすべきではないかということを申し上げたことがあるんです。  これは先ほど下村先生もおっしゃられていましたが、国会予算と組織をきっちり見るべきだというお話、まさに役所の中だけではそれを言っていてもできないので、本当にいい技術協力をしようと思うとその人を育てる、人を育てるということは、国内でも一生懸命活動している人で、さらに外国へも何度か行けるという。また、外国へ行くのでもある程度の現地の方との面識といったようなこともありますから、非常にこれもまた二律背反みたいな問題なんですが、極めて困難な中でやらなければいけないという実態があると思います。  したがって、それぞれの仕事をお持ちになっておられる省庁にそういった窓口といいますか、協力するのが分散しているのはある意味では当たり前で、それを全部一本化するというのはできないので、ですから窓口の調整機能を一本化しろというふうに言われていると思うわけであります。それにしても、全部一本化しちゃうと、いろんな重層的な海外との協力関係がある中で、全部外務省に言ってくださいと、電話してもだれも出てくれないというようなことになると、逆に外国からしたら日本という国は何だと、全然受け付けてくれないというようなことにもなるわけで、これまた二律背反的な話で、どっちか一方がいいとか悪いとかとそう単純には言えないんじゃないかなと。  ですから、調整は大事なことですけれども、実態としてそういう部分があるということを十分に把握した上でないと、すべて各省がやっているのはばらばらでおかしい、これまた縄張り争い、縦割り行政だとすぐそっちへ行きたがる方が多いんですが、もちろんその弊害が全くないとは私は申しませんが、実態としてはやむを得ない面がかなりあるというふうに思うわけであります。  少し長くお話しして恐縮でしたけれども、杉下参考人の御意見をお伺いします。
  17. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 委員長、最初にちょっとアンタイドの話についても触れてよろしいでしょうか。下村先生に対する質問が脇先生からあったのですが、ひもつき援助の話がちょっと出たんですが、それについてもお答えしてよろしいでしょうか。
  18. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) どうぞ。
  19. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) それでは、ちょっと最初にそれについても私の考えを述べさせていただきます。  アンタイド、タイドの話なんですが、私はやはりアンタイ化という問題についてここまでする必要があるのかどうかとちょっと疑問を感じている方です。特に、ODAの場合、国民参加援助といった場合に民間企業の協力というのは非常に大きな部分がございまして、例えばプロジェクトのファインディング、何か見つけるとき、これまで商社なんかの力が非常に大きかったわけです。なかなかいい案件を探してきていいプロジェクトを形成するまで大変手間がかかる仕事を民間がやってくれていたのですが、最近のようにアンタイ化しちゃうと、ビジネスとして利益のないものに対しては、企業ですから当然の話でして、そういうものに関心を持たなくなると。そういった分野で非常に日本ODAの力を少し弱めている一つの要因になっているかと思います。  それから、やはり日本の税金または公的資金を使う政策ですから、ある程度私は日本企業に受益する方策があってもいいかなというふうに考えております。  私に対する御質問に対してですが、先生のおっしゃるとおり、私は外務省に調整機関としての機能を持たせると言っておりますが、正直言って外務省にそれだけの力があるとは思っておりません。現在、外務省にそれを全部やらせろといってもまずできないでしょうし、また農水省とか建設省の協力なくして技術面での執行というのは難しいということもよくわかっております。ですけれども、やはりどこかで調整機能を持たせないと、一本化してほしいと。理想を申し上げますと、これは行革に反することですけれども、どこか援助庁みたいなものをつくってやっぱり一本化することが一番理想ではないかと考えております。
  20. 脇雅史

    ○脇雅史君 どうもありがとうございました。  終わります。
  21. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、民主党・新緑風会所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  22. 櫻井充

    ○櫻井充君 民主党の櫻井充です。  実は、前々回のこの行政監視委員会の中で参考人質疑の要求をいたしましたのは私でございます。きょうは三人の方々から貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。  どういう経過で参考人の要求をしたかといいますと、読売新聞に一連のODAのリベート問題が掲載されておりました。外務省に質問した際に、知らない、それから調べているけれども今のところないの一点張りでございましたので、実際その新聞紙上の報道が正しいのかどうかまずこの場で検証しましょうという、私はそういう感覚で委員長に要求いたしました。  まず最初に、この記事というか連載がありましたけれども、この連載を行った意図について杉下さんにお伺いしたいんです。
  23. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  私は読売新聞の社長でもないし編集局長でもないので全部知っているわけではございません。また、これは縦割りかもしれませんが、社会部が行っているキャンペーンというか記事に対して解説部の記者が一々介入してああせよこうせよと言うこともできません。私も昔若いころは社会部にいたことがございまして、そういった関係から、おいどうなっているんだという程度の話でございます。  ですから、こういう公の場で、正式な話かどうかは知りませんが、私の知るところでは、先生方ももう御存じかもしれませんが、前にインドネシアでODA絡みのある問題がございまして、そこに取材に行った記者が当地の人たちから、それは日本人、インドネシア人含めてああいった話があるということをいろいろと情報、資料提供を受けてああいう記事になったのではないかと。これは読売新聞代表というのじゃなくて全く非公式の私の考え方でございます。そういう情報が入れば動き出していくのは記者としては当然のことで、裏をとりながらああいうキャンペーンにつながったというふうに解釈しています。
  24. 櫻井充

    ○櫻井充君 再度杉下さんにお伺いしたいんですけれども、外務省はとにかく知らないと言っているわけですが、これはくどいようですが事実を確認されて記事にされているわけですよね。
  25. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 記事にするときには少なくともその段階において、何段階かのチェックをしながら、記者が書いたものは先輩がチェックして、デスクがチェックして、社会部長がチェックして、編集局長がチェックしてやっておりますので、これに関しては読売新聞としては事実と確認したから報道していることと思います。また、いろいろな情報提供者からの資料も得ていると聞いています。
  26. 櫻井充

    ○櫻井充君 済みません、くどいんですけれども、そうしますとこれを外務省が知らないということになれば外務省の調査が足りないというふうにこちら側は指摘して構わないことでしょうか。
  27. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  私の聞くところ、彼らは外務省に資料を渡していないと思います。外務省からそういうコンタクトがあったとも聞いておりません。彼らは別のしかるべきところに資料を渡したとは聞いていますが、外務省からのコンタクトもなかったと思いますし、外務省は資料は持っていないので知らないというのも当然かなという気もします。
  28. 櫻井充

    ○櫻井充君 新聞社にコンタクトがないだけではなくて、彼らは一応調べたというふうな話をしていて、調査したけれどもないんだと。ですから、そうなると外務省の調査の仕方にも問題があるのかと思いますが、その点に関してはいかがでしょうか。  つまり、読売新聞社に聞いたとか聞かないとかではなくて、彼らは彼らの方法で調べたというふうな話なんですが、そこの時点で今のところ何もないというようなコメントなんですが、そうすると調査の方法の差によって事実が判明している新聞社と事実が全くわかっていない外務省がいるというふうに理解してもよろしいんでしょうか。杉下さん、お願いします。
  29. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  そうだと思います。さっきちょっと私の意見を述べたときに申し上げたように、建前というか公式論でいきますとODAの問題は政府政府の問題でして、そこから先の渡した資金の流れは、それが日本企業であろうと今度はインドネシア政府民間とのコントラクトということになりますので、外務省が建前というか外交上そこから先みずから手を突っ込むことはできないということは仕方がないことかと。  以前もやはり我々読売新聞がフィリピンの同じような二KRという食糧増産援助のときにお金が一部ある政治家の選挙資金に流れたというような原稿を書きまして、やはり今回のように二、三回続けたことがあるんですが、そのときの外務省の見解も、大統領府に再三にわたって調査を依頼したけれども、大統領府から何ともありませんという返事が来た限り、これは外交上もうこれ以上手を突っ込めないと。  今回も、私は最終結果は聞いていませんが、やはりインドネシア政府調査を依頼しても、そこから先、日本相手国の司法権に対する介入ということまではできないのが建前で、ある意味では、悪く解釈すればそれによって逃げた、または実際できないというふうに解釈しています。
  30. 櫻井充

    ○櫻井充君 済みません、ちょっと不適切だったかもしれないのでおわびしておきます。  ODAチェックに対して国会の関与というふうなものが必要だということはお三方お考えかと思いますけれども、ここから先なんですが、国民の税金が使われていて、そして相手国、被援助国のところに行ったお金がどのような形で使われているのかがはっきり判明できない場合もございます。これについて日本の国としてどこまでチェックできるだろうというふうにお三方はお考えなのか、一言ずつできればお願いしたいんです。
  31. 下村恭民

    参考人下村恭民君) ちょっと事実関係についての認識ではっきりさせておいた方がいいと思うことが今のお話を聞いていてありますけれども、援助のお金が不正な形で、あるいはほかの目的に使われたということと援助に関連して適切でない行動が関係者によって行われたということとは別なことだと思います。それで、まだ援助のお金が不正な形で使われたということは全く確認されていないと思いますし、私が読んだ限りでは読売新聞の記事もそういうふうには必ずしも読めないというふうに思います。  そこで、援助のお金が適切に使われるかどうかというのは、そのチェックの仕方を、手続をもし問題があるということがありましたらもう一回見直すということでもありましょうが、一般的に言いまして、私も現地に三回駐在しておりますが、いろんなビジネスの関係でもしお金を払う必要があるのであれば、それは援助のお金とは全く別に恐らく使われているだろう、それが普通のビジネスマンの考えることじゃないかと思います。しかし、それはいいことだというわけではなくて、それにはそれなりのそういうことに対してのチェックがある、それは現在の援助のいろんなチェックシステムとは別に考えるべきことであろうかというふうに思います。
  32. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  私は、今の下村先生お話も全くそのとおりでして、一種の商行為と考えたっていいんじゃないかと。それからまた、ああいうことをしないアメリカなり欧米の企業でも、特に途上国ビジネスというのはああいうことが行われているというのは、私も決して認めるわけじゃないけれども、今外国の我々の記者仲間、特派員仲間なんかと話してもそういう見解はあります。もちろん、それを認めるわけじゃございません。そういうのを直していかなきゃならないということでしゃべっているわけです。  それから、最初に申し上げたように、外交問題だからといってそこから先はもうだめなんだということがまかり通る限り、ODAの透明性というのは私は絶対高まらないと思うんです。ですから、ここはやはり外交問題である、相手国政府民間企業のコントラクトがあるといっても、やはり日本の資金が出ている限り、日本がそこに対して調査したり介入するシステムというものをつくらないとODAの透明性というのは永久に高まらないと考えています。
  33. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 杉下さんと全く同じです。やはり最後までその責任を相手国政府に追及すべきだと考えます。
  34. 櫻井充

    ○櫻井充君 どうもありがとうございました。
  35. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、公明党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  36. 松あきら

    ○松あきら君 公明党の松あきらでございます。  きょうは、お三方の参考人先生方、本当にお忙しいところお出ましいただきましてありがとうございます。  私もいろいろ聞かせていただきまして、まさに日本ODAは、今までのあり方が大分変わってきたとは申すものの、まだまだ本当にこれからではないかというふうに思います。それに、特にNGO方々が本当に世界で活躍してくださっている、これは非常に敬意を私はあらわしたいというふうに思っております。  とにかく、現地の方々がどういうことを望んでいるかということ、先ほど杉下参考人でしたか、大分改善されてきたようなお話をちょっと伺いましたけれども、しかし現実にNGO方々お話を聞けばまだまだじゃないかというふうに私は感じるわけでございます。  曽野綾子さんのあれも読みましたら、コンピューターをアフリカに持っていったら、砂あらしが来る三時間前にコンピューターがとまっちゃって使えない、こういう現実をどうするのかと。あるいは、ハノイに水道管を引いたらば、水道料金を払いたくないから家の前まで管は来たんだけれども要らないよと。本当にその現地のきちんとしたことを把握しないと、お金を出すのはとてもいいことだけれども、それが本当に役に立つのかという視点が私は大事だというふうに思うわけでございます。  まず、下村先生にお伺いをしたいと思います。  先ほど下村先生ODAの硬直化しているところを重点化すべきであると。そして、それを見直すとしたら私はどのような視点で見直したらいいかなとお伺いしようと思いましたけれども、先生は環境問題が非常に重要であるということもおっしゃっておられるわけでございます。日本の対外援助は総花的であるという批判も強くあるわけです。一九九二年の地球サミットで我が国は五年間で九千億円から一兆円の環境ODAを供与する方針を明らかにして一年早く達成したということでございますけれども、環境のほかに特に見直すとしたら先生はどのようなものを挙げられますでしょうか、お伺いしたいと思います。
  37. 下村恭民

    参考人下村恭民君) もちろん国によって違うと思いますし、今、先生が言われたように、現地のそれぞれ個別のニーズの確認なしに理念だけが先行するというのは危険だと思いますけれども、それは別にしまして、環境以外にもう一つ挙げるとすれば地域格差、これは経済原理からいえば経済発展とともに拡大せざるを得ないという宿命にあるわけですけれども、その地域格差拡大の悪影響を少しでも緩和するためにきめ細かく援助していくと。  これはいろんなアプローチがありますし、いろんな手段を総合的に使わなければいけないと思います。また、ODAだけでは限界があるわけですから、私のレジュメにも書きましたように、いろんなアクターの間の連携というものもかぎを握ると思います。
  38. 松あきら

    ○松あきら君 ODAとして環境問題もとても大事ですけれども、私は麻薬の撲滅というのも非常に大事じゃないかなというふうに思います。今、かなり日本の国にはいろんなところから麻薬が入ってきているということでございまして、特に麻薬の生産地に対して、厳しい現状があるということで、ODAとしてどのように対応したらいいか、これをお三人の参考人にそれぞれ伺いたいと思います。
  39. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 麻薬の問題は、最終的には、今申し上げた地域格差とも関連いたしますけれども、生計手段を立てることが非常に難しい地域、あるいはそういう境遇に置かれた人々にどれだけ就業機会を与え生計手段を用意して、どれだけ適切な形で彼らの持っている潜在力あるいは資源を前向きな形で使ってもらえるようにするかということだと思います。  ただ、当然、麻薬を生産している地域というのは条件が非常に悪いわけで、そこには行政の網もなかなか及んでいないということですから時間がかかるかと思いますけれども、基本的には私がさっき申し上げた所得格差の是正のための総合的な経済協力ということを粘り強くやっていくしかないというふうに思います。
  40. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  私も下村先生とほぼ同じ考えなんですが、結局、諸悪の根源にあるのはやっぱり貧困だと私は認識しているわけです。麻薬の問題も貧困をまず撲滅しない限りなくならない。要するに、悪いと知っているか、知らないこともあるんでしょうけれども、まず知っていたとしても、ともかく食べるためにやっているんだと。そのためにはやはり食べる手段を考えてあげなきゃいけない。これは大変大きな枠でやっていかないと、麻薬だけをピンポイントで撲滅しようとしてもできないことであって、まず農業開発、農村開発、それから作物の流通とか、いろんな総合的な問題でやっていかないと解決しない、一つのパッケージでやる問題じゃないかと考えています。
  41. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) とりたてて杉下さん、下村さんの御発言以上に言うこともないんですけれども、タイのケースでも私たちNGOの仲間で麻薬患者の方を対象にした社会復帰のための研修事業を行っているグループもあります。麻薬中毒になってからでは遅過ぎるので、杉下さんたちがおっしゃるように、やはり事前に貧困をなくすということかと思いますけれども、ただ麻薬の問題は貧困だけではなくて、またそういったことでお金をもうけようという考えの人もいますから、その辺までは私たちも手が回らないんじゃないかと思います。
  42. 松あきら

    ○松あきら君 ありがとうございました。  まさに例の黄金の三角地帯に日本がソバを植えさせて、それは現地の方が食べるようにということなんですけれども、やはり換金、つまりお金とかえられなければ違う作物を植えても、むだではないですけれども、また結局麻薬に戻ってしまうというような、本当に根本的なことを、先ほど参考人のお三人の先生方お話を伺っていて、それぞれ十七省庁でありJICA、つまりみんながまとまって話し合う、そういった機関をつくらなければまさにだめであるというふうに思います。  ありがとうございました。
  43. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、日本共産党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  44. 富樫練三

    ○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。  三人の参考人の皆さん、きょうはお忙しいところ本当にありがとうございます。  最初に杉下参考人に伺います。  四月八日付の読売新聞で参考人の署名入りの記事が出ておりまして、インドネシアのODAリベート問題に絡んで、「問題は、日本当局が、どこまで海外要人への贈賄を解明出来るかという点だ。これまでもODAを巡って、相手国政府の高官を巻き込んだ疑惑が幾つも浮かんだが、国境の壁を崩せなかった。」「リベート疑惑は、高官への贈賄が事実とすれば日本ODAの基本理念に反するものであり、政府は積極的に調査を行わなければならない重大な問題だ。」というふうにおっしゃっております。私も全く同感であります。  そこで、私が感じるには、日本政府はみずからこれらの問題を解明するという姿勢が非常に弱いというふうに、この間何度か外務省を初め経済企画庁も含めて質疑をしてまいりましたけれども、解明する姿勢が弱いというふうに率直に感じました。  杉下参考人の率直な御意見をこの件に関してお聞かせいただければと思いますが、よろしくお願いします。
  45. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 私も富樫先生と同じ考えです。非常に弱いと思います。ともかくこれは日本外交に共通して言えるんですが、弱腰ということはこういうところにもあるんじゃないかと。非常にプロトコルばかりを重視して、本当に本音を聞き出そうとしない、そういう日本外交の弱さがこういうところにも出ていると思っております。
  46. 富樫練三

    ○富樫練三君 ありがとうございました。  この点に関していろいろ調べてみましたら、政府には開発援助大綱というのがあるんですね。その中で原則として開発途上国における民主化の促進ということがうたわれておりますし、OECFの調達ガイドライン、この中では経済性、効率性、透明性、非差別ということがうたわれておりますし、円借款供与のときの交換公文、その中でも合意議事録という形でお金の適正使用について相手国の了解をとっていると、こういうふうに報告されているわけなんです。  こういう決まりやお互いの約束事というか、こういうことはたくさんあるんですね。たくさんあるんだけれども、守られなければこれは一片の紙切れにしかすぎない、こういうことになってしまうというふうに思うんです。これらを実効性のあるものにする、これが今必要ではないかというふうに感じるわけですけれども、そのために受注の契約内容あるいは受注までの経過、あるいはODA全体についての情報公開が大きなポイントになるのではないかというふうに思うんです。  最近、情報公開が徐々に進んではいるんですけれども、しかしまだまだ国民にはわからない部分が多過ぎるというふうに率直に感じているわけです。この情報公開がなかなか進まない原因はどの辺にあるのかという点、もし感じることがありましたら杉下参考人にお願いしたいわけです。
  47. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  最大のネックは、最初から何度も申し上げているように、やはりODAというものが国対国の一応外交として行われているということだと思います。ですから、一たん渡ったお金は形式的に言えば日本のお金ではない、相手国にちゃんと渡されたお金はもう相手国のものである、変な言い方をすればそれをどう使おうと本当は相手国の自由であるということが政府開発援助というもののまた一つの公式論だと思うんです。  もちろんそんなことであっちゃいけないわけでして、いろいろ日本政府としても言っていると思うんですが、我々が記者として取材していてもどうしても限界は、相手国政府に行ってしまったらここから先は、私がインドネシアの警察庁に強いのか、知っている人がいるのかいないのかといっても、ほとんどそれは私は取材できないと思うんです。その辺で消えてしまうことが一番大きいと。  それで、さっき下村先生も言っていたように、ODAのお金の使途というのは、相手国に渡るまでがきちっとしていれば、そこから先のことについては、またそのあたりの商行為についてまで当然関与できる問題じゃないので、その透明性というかODAの範疇をどこまで持っていくかによってもろもろの疑惑というのは付随してきているところにあると思うんですね。そういうものもどこまで介入できるようにするか、やはり制度を変えなきゃだめじゃないかと感じます。
  48. 富樫練三

    ○富樫練三君 そこで、このリベート問題も含めて、実は国税庁の方が幾つかの日本企業に対して追徴課税の請求をしたわけなんですね。これらの経過を踏まえて、会計検査院が今度OECFに検査に入るということが新聞でも報道されているわけなんですけれども、国税庁は、日本企業の側を調べた結果として、リベートとして使われたお金は経費ではないということで追徴課税の対象にしたと。これは国内の企業を調べることによって、国境の壁があるわけなんですけれども、国境のこちら側の方でそこまで調べ上げたわけなんです。  今回、会計検査院が検査に入るということになった場合に、会計検査院がインドネシア政府に対して検査の力があるかといえば、やっぱり国境の壁というのが恐らくあるだろうと思うんです。そうした場合に、国境のこちら側でも日本企業を検査することによってかなりの部分まで明らかにすることはできるのではないかというふうに実は私は期待をしているところなんです。今回、会計検査院が入るということについて大きな効果を期待していますけれども、杉下参考人の率直な感想がおありになりましたらお聞かせいただきたいと思うんです。
  49. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 新しい法律もできましたし、その方法はいいかと。  それから、私、そこの先生のお手持ちにある原稿にも書いてあるんですが、世界的な風潮として、特に世界銀行あたりがそういったODA経済協力などにつきものだった不正というか不明朗な点を解明しようと。特に新しいウォルフェンソン総裁はNGOをやっておられる方ですし、非常にそういうことに対しては熱心な方で、世界的な風潮としてやはり経済協力援助の中にある不透明な部分を解明しようという動きがあると思います。そういう中に乗ってやはり日本もしかるべき行動をとるべきだし、今回のような会計検査院の検査も非常に有効な手段じゃないかと思います。  ただ、一つ心配するのは、これは経済協力だけじゃなくて、やはり商社とか何かはODAが絡まない事業においてもいろんなことがあると思うんです。こういうものまでどうやって入っていくのか、この間の会計検査院の話を聞いたときちょっと疑問を持っています。
  50. 富樫練三

    ○富樫練三君 伊藤参考人に伺いますけれども、NGO関係の皆さんの活躍に大変期待もし、さまざまな資料も読ませていただきまして感謝をしているわけなんですけれども、先日コタパンジャン・ダムの建設に関してこの委員会で問題を取り上げたんですけれども、そのときに、ダム建設によって多くの皆さんが水没させられるというか移転を余儀なくされる、そういう状況が生まれて、その移転のときの承諾に対して地元の住民が十分納得いかないまま無理やり移転させられるという状況があって、この問題について報告書を見ますと、軍隊や警察の威嚇の中で移転させられたり、あるいは移転後の生活水準が移転前よりもはるかに低くなっているということとか、現地の皆さんがどういう状況になっているかということが実は日本国民にはなかなか知らされていないというのが実情だというふうに思うんです。この辺はODAを考える上で非常に重要な問題だというふうに思っているんです。  先ほどちょっとお話がありました現地の政治体制というか、政府と現地の国民との間ではかなりの開きがあって、政府に対して援助するんだけれども住んでいる住民については必ずしもプラスになっていないという、そういう状況も生まれているというふうに伺っていますけれども、リアルな状況がなかなか知らされない、ここが一つの問題だというふうに思っているんです。これが日本政府の側から知らされないというところは何が問題だというふうにお感じなのか、この辺感じていることがありましたらお知らせいただきたいんです。
  51. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) このケースについて私直接関与しているわけではなくて知りませんけれども、インドネシアの例えばNGO連合体からよく耳にするわけです。そのほかにもタイとかフィリピンでもそういったケースがよく紹介されますけれども、なぜ日本政府開発援助がそういった地元の真の住民の声を聞けないのかというのは、一つはそのプロセスにおいて日本政府開発援助はどうしても相手国の中央政府とか援助受入機関を通して行われますので、私はそのときに為政者がそういった住民の声を聞くリーダーなのかどうかということにも影響されると思うんです。大概はやはり日本政府開発援助が直接住民の中に入ってヒアリングをするということは余りないんですね。JICAなんかが予備調査ではときどきされると思いますけれども、やはり政府開発援助のプロセスとしては政府政府の関係ですから。それが一つ。  それからもう一つは、言語の問題があると思うんです。やはり地元住民というのは多くの場合英語ができない、それから報告書をまとめてつくるような体制にないという状況の中で彼らが常に声なき民衆という形で置かれっ放しになっていると。そこへ実は地元のNGO連合体あるいはNGOが接点を持つ、あるいは住民から訴えがあるという中でNGOがその情報を聞いてくる、そのときに実は日本NGOにそういう情報が伝わるんですけれども、たまたま日本NGOも残念ながらそういった声をきちんと日本で広めるだけの能力を持った団体がまだ少ないという現状があるわけです。  したがって、そういった体制、それから言葉の問題、それから彼らがやはり意見をまとめて政策決定過程に反映させることができない状況に置かれているというのが原因じゃないかと思います。
  52. 富樫練三

    ○富樫練三君 終わります。
  53. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、社会民主党・護憲連合所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  54. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は社会民主党の梶原と申します。  お三人の参考人の方が共通して言われています日本ODAにはビジョンがない、顔がないとか、あるいは質的変化の時代じゃないか、こう言われていることにつきまして同感であります。  そこで、一つはハードの援助中心になっておるわけですね、そういう流れの中でも。これはまだ必要があるのかないのか、私はもう絞った方がいいと思っているんですが、お三方のお話を承りたいと思います。  それからもう一つは、援助の仕方としては食糧の生産とか増産に役立つような援助、あるいは環境、食品の話も出ておりましたが、そういう面に絞る。  それからもう一つは、人材の育成、もうこれは私も大分議論を外務省ともやっているんですけれども、明治政府ができまして以降、日本でミッション系のスクールがあちこちにできまして、これが近代日本の発展のためにはやっぱり大きな役割を果たしたんだと言う人がおりますが、まさにそうだと思うんです。それで、私はODA中心は人材の育成、現地で人材を育成する方法もあろうし、あるいは留学生をもっと日本に来てもらうような制度をもっと十分考えることが必要じゃないかと。この点について、人材育成について特にどのような考えをお三人ともお持ちなのか、お聞きしたいと思います。
  55. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 今おっしゃいましたことはそのとおりだと思います。人材育成が必要だということは恐らくかなりの程度途上国側でも認識されていると思いますけれども、なかなか進まない。進まないことについて二つほど考えておかなければいけない。つまり、我々先進国にいてなかなか実感のできない制約条件があると思いますけれども、一つは初等教育を受けさせることについてのメリットが親にとってほとんど感じられないとするとなかなか初等教育をする場に子供をやるというのは難しいと思うんですね。ということになりますと、家に置いて仕事をさせる、あるいは町に行かせてちょとしたお金を稼いでこさせるということになります。  そこで、初等教育が順調に進むためには、教育そのものを支援するだけじゃなくて、先ほどから出ている貧困の解消、あるいは特に農村地域での総合的な生活水準の改善、これが伴わないといけないと思うんです。  もう一つは、やはり人材育成のうち特に女性について集中的に、あるいは重点的に援助をする必要があると思います。これは女性教師の育成ということも特に回教国では重要になると思いますので、そういうふうに重点を絞って行う必要もあるかなと思います。
  56. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  最初のハード中心援助が必要かということでございますが、確かにハードというのは環境破壊とかいろんなことを起こしたりもするんですが、ただ冷静に考えて、途上国経済開発というものをするときに、やはりエネルギーがなくては経済開発はできない、道路も必要だ、運輸関係、また通信、どうしても全くハード部分が要らないということは言えないと思うんです。途上国だって当然経済開発をしたいわけですから、成長したいわけですから、エネルギーもなくて経済成長せよといっても無理な話でして、ですからどうしてもハードというものを全面否定してはいけないと。ハードとソフトの半々という形で、ハードに特化するんじゃないけれども、やはりハードというものを私はやっていかなきゃならないと。環境とかそういうものに配慮しながらも、ハードの援助というのは必要だと思っております。  それから、二つ目の人材育成、これはもう全く先生と考え方は同じでございます。やはり人づくりは、ミッションスクールの話じゃございませんけれども、二、三年前に出た共同通信の記者が書いた本でありましたけれども、戦時中に大東亜共栄圏の実現のために来させられた学生たちですら当時日本にいたということで大変な親日家になって、いまだに当地における指導者として対日の友情のかけ橋になっているというような例もございますし、やはり教育、人づくりに支援するということは大変援助の中でもいい援助だと。  最初に先生がおっしゃった顔が見える援助という言葉にかわって私が最近あちこちで言っている言葉、心に残る援助というのが重要じゃないかと。やはり日本で勉強したり、日本の支援で留学したりした人たちに対する援助はきっとその人たちの心に二十年も三十年も残って両国のいい関係を結び、またお互いに世界というか地球全体の役に立つことになるんじゃないかと。ですから、私が最近あっちこっちで言っている言葉、心に残る援助というのをぜひ実現したいと思っております。
  57. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) ハードのニーズはあるのかどうかということですけれども、私も杉下さんと同感でバランスが必要かと思っています。  ただ、まだまだハードに偏っていると思いますけれども、その背景には、私の勝手な理解ですけれども、やはり日本予算制度の中にあるのではないかと。すなわち、予算を要求する各省庁が大蔵省を説得するときに形に見えるもの、そういったものを出さないとなかなか受け入れてくれない。我々NGOでも実は外務省に補助金申請する場合にはそういった傾向が非常に強いわけです。目に見えないもの、写真に撮れないようなものはなかなか対象になってこないということです。  それからもう一つ、会計制度の中にも問題がある。すなわち、形にならないようなものというのは表現がしにくいところがありますけれども、 結局きちんと領収書を取りつけて出す、こういったシステムが非常に日本では強い傾向があって、やはり形を要求される。それはマスコミにもちょっと責任があるのではないかというふうに私は思うんですが、結局会計の面だけを非常に追及していきますから、そうすると会計のところで何か問題があったときにそれをセンセーションに取り上げる。それは国民に対する責任だ、それで国会で追及される。そうすると、ますますきちんきちんと形のあるものだけを援助対象にしようとする傾向が背景にあるようにも私は思います。  人材育成に関しましては、私は基礎教育に力を入れるべきだと。すなわち、東南アジアでもアフリカでも中南米でもエリート層は欧米や日本に負けないような能力を持った人がたくさんいるわけです。国際会議に出れば日本人顔負けの議論を展開する人がたくさんいるわけです。しかし、基礎レベルにおける人たちが育っていない。そういった意味において、余りにギャップが激しい中でどんなに援助をしてもそれが効果的に展開されないということで、私もやはり初等教育を重視すべきだというふうに思っています。  中間教育のところは私の理解ではJICA等が技術教育だとか技術研修をかなり進めているのではないかというふうに思っています。
  58. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 終わります。
  59. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、自由党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  60. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 自由党の渡辺秀央でございます。  きょうはどうも大変御苦労さまでございました。  お三人の参考人の皆さんのお話を承っておりまして、私どもが今までこの委員会で質疑をしてきた問題意識に大体共通しているように思いまして、しかもまた参考人の皆さんから大変整理されたお話を承ることができて、今後の質疑にも非常にプラスになる面が多く、ありがたく御礼を申し上げたいと思います。  そこで、幾つかのことをもう同僚議員が重々質疑もございましたが、私はODAあるいはまた日本の国際的な開発途上国に対する援助協力等々をひっくるめた形の中で、ODAに絞らずにちょっと失礼ですけれども、もし御意見を承ることができれば承りたいと思うんです。  我が国の対外的なそういう援助活動というものが非常に窓口が広過ぎる、言うならば外務省はODAあるいはまたJICAを中心にやる、あるいはまた文部省は文部省でやっている、農林省は農林省で農業技術の援助をやる、場合によっては厚生省は医療に対する協力援助も指導もするというようなことで、ひいては私など昔郵政大臣をやらせていただいたときにボランティア貯金ということまで実施をしている。私は草の根外交とまで実は郵政省で言ってきたんですが、そういった問題などを考えてみますと、NGOの関係は若干抜きにいたしましても、一つに我が国の諸外国との理解、信頼というようなことを考えて、何も恩着せがましくではなくて、本当に素直に受け入れられることを考えていくということになるとむしろ行政改革の今さなかでもあるので窓口を一本化したらどうかという感じがするんです。これは全くアバウトな感じかもわかりません。  皆さん、お三人とも対外的な援助活動等々について非常に真剣に精査されてこられたお立場から、今のこういう状態で、このままの形で日本の対外援助協力というような形が一体ノーマルなものであるか、あるいは二十一世紀もこういうようなことでいいのかどうかということについてお三人の皆さんから若干の意見を承らせていただければということが一点であります。  もう一点は、もしやるとしました場合に、余り窓口をこれまた広げない方がいいのではないか。先ほどのお話もございましたね。重点的な援助というような時代に量よりも質というお話も承りました。  私は、我が国として取り上げて、特に開発途上国に対してやっていかなきゃならないという面もありますが、例えば隣のお国の中国などをとらえてみても、環境問題などについて相当な協力をしないと、今に韓半島も日本もこれはもう大変なことになると。これは事実のことであって、中国の首脳自身もそのことは認めておられる。  であるとするならば、ほかのことではなくてむしろ環境問題なら環境問題、あるいはまた人道的な問題、風土病その他の問題がございます。そういうことについて、それならそれに重点的にやる、日本としては五年間はこの問題に取り組む、こういうむしろわかりやすい援助の方がはるかにいいのではないかと。余り欧米先進国あたりに追従したり、あるいはそこら辺の援助をやっていることに補完的なことをやるよりも、補足的なことをやるよりも、日本主導の、あるいはまた日本の本来あるべき援助計画というものが三年計画あるいは五年計画というような形で行われていくことがむしろ効果あるいは理解、信頼を得ることになりはしないかなという感じがいたしまして、皆さんの御見識の中でどんなふうなお感じであるか、承らせていただければと。  この二点、とりあえず承らせていただきたいと思います。
  61. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 体制の一本化、それと重点テーマ、この二点をおっしゃいましたけれども、全く同感でございます。  ただ、同感ではございますが、問題はなぜこれが恐らく多くの人々に認識されながらも今まで改善できなかったのかということではないかと思いますので、その辺の制約条件をきちんと掘り下げて対応を考えないと、こうあるべきだということについてはみんな意見が一致してもそれ以上進まないということになるのではないかと思います。  とりあえずやれることとしては、先ほどもほかの方からもお話がありましたが、技術協力についての調整機能の一元化、これはとにかく緊急のテーマだと思います。  それで、重点テーマにつきましては政府が出す国別援助方針とか、あるいはこれからの援助方針とかを見てもどうしても総花的になるんです。総花的になるというのは結局各省の間の調整プロセスが非常に難しいということだと思いますので、これは国別援助戦略をつくる作業を今までのようなコンセンサスづくりに時間をかけるやり方ではなくて、今おっしゃったような、とりあえず五年はこの国についてはこれを重点テーマでやってみようということについて意見がまとまらなくてもその中心になる調整業務を担っているところがイニシアチブをとると。  では、どこが調整のイニシアチブをとれるのか、あるいはとるべきなのかということについてもう少し国会も含めて議論をいただかないとなかなか前に進まないかなというふうに思います。
  62. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  最初の御質問はさっきの脇先生の御質問にも通じるかと思うんですが、私は一本化ということは賛成でございます。具体的にどうするかということは、私の今のところの意見は外務省の機能強化をすることによって一本化しないとむだが多くなるだろうということです。その一本化は、どういう形になるかはともかく、一本化ということに対しては私も大賛成でございます。  それから、間口が広過ぎるというか、援助のメニューというか、プロジェクトのメニューが多過ぎるということは私もこれは感じております。  ともかく、日本の今後の経済協力の資金量というものには限界があるし、人材にも限界があるし、やはり何かやっていかなきゃならない。その中で、今、先生のおっしゃるとおり、日本の比較優位、ほかの援助国に比べて何が得意なのかを考えますと、やはり環境、日本という国は他の、特にアジアの諸国のように同じような急成長を遂げて、環境問題を起こして、一応克服してやってきた国であるとか、それから、まだこれは完全ではございませんが、高齢化の問題、いわゆる雁行型と言われているアジアの諸国が日本とつながってきたような同じような問題でこれからつながっていく。そういった場合、日本がやはり比較優位という部分で非常に有効な援助ができるんじゃないかと考えていますので、援助メニューを絞って得意な分野にしなければ、これはもう今までのように何でもかんでもというわけにいかないと思っております。
  63. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) お答えする前に私自身の国際協力の日本社会における位置づけをお話ししたいと思うんです。  これまで内務省的な省庁が非常に力を持っていたと思うんですが、これからは外務省、要するに世界に窓を開く外務省が力を持つべきだというふうに私は思っております。というのは、世界とともに歩む日本というものをイメージしていく必要がある。すなわち、日本の国益というものは世界の中の信頼をかち取らなくては日本は生き延びていけないのじゃないかというふうに思っております。したがいまして、開かれた意味での、啓発された意味での国益追求のために国際協力を重視する必要がある。そういった考えのもとに立ちますと、窓口の一本化というのは私は非常に必要だと思っております。  私は、ODA改革懇談会の委員として参加しましたけれども、そのときに国際協力庁の設立を提案しました。しかし、行政改革の中で非常に難しいということになって、現在、ODA総合政策協議会という仮称ですけれども、そういった政策レベルでの調整をしようということになっておりますけれども、私は外務省が調整権を与えられたとしてもその成果については疑問を持っています。  といいますのは、恐らくこれは非常に日本人的な発想で、他の省庁との関係においても、出た案をいろいろ調整することがあるかもしれませんけれども、リーダーシップを発揮して外務省がこれが大事だ、あるいはつくられるかもしれない国際協力庁がこれが大事だという形で強いリーダーシップのもとで援助行政ができるかどうか私は疑問に思っています。したがって、可能ならば国際協力庁というものができることが望ましいと。  それから、重点分野につきましては私も全く御両人と同じ意見で、やはり日本のユニークな経験を土台にして国際協力を進めるべきであると。私も環境、それから教育、教育は初等教育と技術教育がいいのではないかと思っています。それから保健医療ですが、保健医療も日本人たちが非常に関心を持つ分野です。それから最後に、私は、日本の中小企業の発展の経験を踏まえて、世界に通用する中小企業の育成のための国際協力を推進すべきだというふうに思っています。  もう一つ最後に申し上げたいのは、ただ重点分野だけじゃなくて、現在の単年度制というものを直さないと、いつまでたっても日本は長期的な戦略援助計画ができないというふうに思っております。多年度制の方向へ向ける必要がある。そして、五年、十年計画を立てながら達成する目標をはっきりとさせる。そして、その道筋において戦略をきちんと立てる。そのプロセスにおいては相手国の責任者ととことんまで話し合って信頼関係のもとでこれを進めていく。できれば地元のNGO、我々NGO関係者もそのプロセスに入ることができればありがたいというふうに思っております。
  64. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 どうもありがとうございました。
  65. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、参議院の会所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  66. 水野誠一

    水野誠一君 参議院の会の水野でございます。  今、お三人の参考人の方から日本ODAというものが大分基本的に進化してきているという視点でのお話をいただいたのではないかと思うわけですが、同時に大きな問題点もまだまだ残されている。私は、歴史的に見ていきますと、途上国へ対するODA、それがややもすると過去には一部の権力者の権力増強のためにその資金が使われるというような側面というのもあったと思います。  そういった視点から見たときに、ODAというものがどれくらい進化してきているのか、これは非常に重要な視点だと思うんですが、例えば最近のことでいえば国の内紛、こういうものがODAに対して与える影響、これは大変政治判断として難しい問題があると思います。  例えば、中国では天安門事件以降、資金援助あるいは円借款が一時凍結された。それがまた再開される。それから、昨年は民主化問題を抱えているミャンマーの空港整備が再開をされるというようなことで、そのときも国会でもいろいろな議論がございました。天安門の場合はかなり国際社会での同調といいますか、足並みをそろえてという感じもあったわけですが、ミャンマーの場合というのは、アメリカは非常に反対の立場を貫いている中で日本がそれを再開するというような状況がありました。こういうODAをする相手国の国内政治ODAのあり方というところで非常に難しい判断が迫られる状況というのは恐らく今後も出てくるんじゃないかと思うんです。  そこで、お三人の方にそれぞれお答えをいただきたいと思うんですが、そういう意味での日本ODA外交力というものは進化をしてきているのかどうか、かなり力がついてきているという判断をしていいのかどうか、その辺について皆さんの率直な御意見を伺えればと思います。
  67. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 今おっしゃいました点は非常に基本的な重要な点であろうかと思いますけれども、私は二点ほど申し上げたいと思います。  一つは、ODA大綱が九二年に導入されて以後、こういう問題について、つまり相手国政治情勢あるいはもう少し広くとって社会情勢に日本ODAの供与方針をどういうふうに関連させるかというリンケージについてかなりコンシステントな、体系的な対応がとれるようになったという点では私はそれ以前に比べると大変な進歩があると思います。これはやはり評価していいことだと思いますので、日本ODAの歴史上ではかなり重要なヒットだと思います。  もう一つ、それではどういうふうにそのリンケージをしていったらいいのかということですが、これにつきまして私がやや気になりますのは、最近援助をする側が問題意識を持つとかなりの程度自分の信条に基づいて途上国状況に踏み込めるという、思い上がりとは思いませんが、援助を使って介入しようというやや安易な姿勢が国際的に特に一九九〇年代になってから出てきているような気がいたします。  そこで、重要な問題があれば援助を凍結する、あるいは減額する、あるいは延期するということは不可欠だと思いますし、必要だと思いますけれども、そういうアクションをとれるだけの状況かどうかということについては決して感情的にならず、感覚的な議論に走らずに相当客観的なバランスのとれた議論をした上でないといけないと思います。ともすると正義の味方で、援助をてこにして、途上国といってもちゃんとした主体性を持った独立国なわけですから、その辺の相手国の主体性を尊重しながら、しかし説得を加えた後で目に余る状況になれば、あるいは説得をする余裕もなしに目に余るような状況があれば指導せざるを得ないと。その辺の冷静な議論というのはもうちょっと行われる必要があるかと思います。
  68. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 大変難しい質問というふうに受けとめております。  さっき伊藤さんからもお話が出ていたけれども、ODAというのは視点によって非常に違うものであるんです。私はODAというものを、人道面、経済面という視点もあるんですが、ほとんど政治行為というふうに解釈して見ているわけです。そういう視点で見てみますと、今やっていることというのはかなり理解できる部分があるんじゃないかと。  例えば、今非常に問題になっております、何人かの先生方から質問ございましたインドネシアの問題にしても、もちろんスカルノ、スハルトという独裁軍事政権を支えるということは本意じゃないんですが、では逆の歴史として、インドネシアの独立後の歴史に、少々問題があるけれども、安定した政権というものが今日のインドネシアの、アジアの奇跡と呼ばれる国の一カ国にまでつながったのはやはり安定した政権があったということが大きな要素だと思うんです。  ですから、政治行為として、共産党が非常に躍進して、九・三〇というクーデターの後起きてきたスハルト政権というものを支えなかったら、インドネシアという国は今後いろんなイデオロギーによる混乱とか民族による混乱とかということもあったかもしれない。そういう政治的な視点から見て少々問題がある政権であることはもう最初からわかっていたんですが、それをある程度側面から支えて安定化して、そして中産階級を育ててハビビにつなげ、さらにもっと民主的な政権が生まれるということならば、政治行為としてのODAのあり方というものはいろいろ我慢しながらも私は認めなきゃいけないかなという感じも持っております。  また、そういう意味で政治行為としてのODAというものを見れば、ミャンマーの問題にしろいろんな手段として使うべきであって、確かに強引にこうしろああしろという問題じゃなくても、日本としての意見日本の国としてのポリシーを相手国に伝える手段としてODAがあってもいいかと。  現在、力がついたかという御質問について考えますと、確かにかつてに比べれば、例えばイランなんかは昔からアメリカと違うチャネルを持って、ODAをいろんな対話のチャネルにもしていましたし、最近では失敗しましたけれどもアフガンの和平交渉をしようとかそういったことまで、それから中東和平についても経済協力を使って何がしかの貢献をしようとしている面で力はついてきているのかなというふうに解釈しています。
  69. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 杉下さんからODA政治的な観点からごらんになっているという御発言がありましたけれども、私はNGOの立場から、理想を追求する世界でありますので、政治的観点のみならず、未来志向型の考え方でいきたいというふうに思っています。  日本ODAを使って新しい地球社会をつくっていくんだという見解に立ってリーダーシップを発揮すべきだと思っております。憲法の話もしましたけれども、日本国憲法は「全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあります。これをやはり実行していきたいというふうに思っています。  それで、先ほどのミャンマーのケースですけれども、やはり理想的には相手国政府が本当に国民、住民から支援されているのかというのを徹底的に調査して、そしてODAを出すか出さないかを決めるべきだと思っております。もちろん、そのプロセスにおいては政治的判断もあると思いますが、やはりそういった意味において判断は大事かと思うんです。後でひっくり返るような政府かもしれませんので、その辺はよく注意をしておかなくちゃいけません。  それからもう一つ、やはりこれからの世界においては社会正義というものを追求することによって、最後社会正義が勝つという信念でもって進める必要があるんじゃないかと思います。  それから、もし現実的なアプローチを考えれば政府と違うチャンネル、多様なチャンネルを開発しておく必要があるのではないかというふうに思います。  アメリカの例を見ますと、政府との関係はまずくなっても民間財団とかあるいはNGOレベルにおいて非常に相手国援助対象国とかっちりとつながっているということで、その辺は日本政府開発援助もこれから展望するときにそういう多様なチャンネルを開発する、そういう努力はしておく必要があるんじゃないかというふうに思います。
  70. 水野誠一

    水野誠一君 終わります。
  71. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、二院クラブ・自由連合所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  72. 石井一二

    ○石井一二君 三人の先生方、御苦労さまでございます。自由連合の石井一二でございます。  私は、立て続けに三つ、お一方ずつに一つずつ質問をいたします。と申しますのは、だれかが長い答弁をされるとほかの方に聞けなくなりますので、四分ほどまずそれに費やしたいと思います。  三カ月ほど前のことでございますが、全日空ホテルで日本国際フォーラム主催のODAに関するシンポジウムがございまして、私、出席しておりましたが、六人の超一流の専門家がほとんど同じことを言われるんです。それは、こういう財政難の折でもODA予算だけは増額すべきだということ、タイドはだめだ、それから贈与をどんどんふやせ、この三点が主流なんです。私はげっそりして帰ってきたんです。専門家だからもうちょっと違った角度から物を言ってほしいなと、そういうぐあいに思いました。  そこで、下村先生にまずお聞きしますが、これは質問じゃありませんので意見として持って帰っていただきたい、質問はもう一つ後でいたしますから。  あなたのおっしゃっている、タイドがどちらかというとよくないので公正な国際入札をやるべきだというお考えですが、私はこれに反対で絶えずタイド論者なんです。と申しますのは、要請主義をとり、いいプロジェクトをその国から上げてこようと思うと、商社なりコンサルが長年にわたっていろいろやってくる、そういうものがぱっとした一発の入札で消えるということになると一生懸命努力をしなくなるという面があるのと、国際入札をやったからといって腐敗が防止できるものではない。なぜならば、最低金額がこれぐらいまでだったら大丈夫よというような金額を教えたりいろんな方法がかえって起こりやすいわけでございまして、正当な価格でいい仕事をするという観点から、また今の不況下の中で国益を考えて、私はそれ一辺倒の論理というものに対して反対的な意見を持っておりますので、そのことを申し上げておきたいと思います。  ところで、下村先生に対する質問ですが、あなたが「国際金融」九七年六月十五日号に論文として書いておられる記事の中で、円高になった場合の返済が困難だから返済の一部を現地通貨建てにすべきだというような意見を述べておられるんですが、ちょっと言葉は荒っぽいですが、私はこれは暴論だという気持ちでこれを読みました。なぜならば、そんなことを言うと三流、四流国家が印刷機をどんどん回して自分のところで紙幣を印刷して、それを持って帰ってくる。その国は通貨供給超過でインフレになってくる。ますますその国の通貨が弱くなる。その次に、ほかで使いようのない金だから、それを受け取った国は次のODAのとき、もらったお金を現地で使う。国として何らメリットがなくなってくると思うんですね。これに対する御反論をお願いします。  それから、杉下先生にお伺いしたいんですが、我々マルコス事件とかスハルトさんの問題とかいろいろ経験をしてまいりました。それで、外国公務員への贈賄防止条約が昨年の十一月にOECDで締結されておる。ことし日本は二月から不正競争防止法が改正されて、外国の公務員に対して賄賂を送った日本人に対する処罰が可能になったとこういうことで、これはあなたが多分お書きになったと思いますが、本年一月十三日の読売新聞にこの関連の記事が出ておる。ところが、私はこれは全然効果がないと思うんですが、あなたの所見をお伺いしたい。  と申しますのは、外国の公務員なんというのは出てこないんですよ。元首が出てきて、その周りのプライベート企業なり私設秘書が出てくるんですね、こういうときに。それと、外国企業に対する取り調べ権限が保障されていない中においてこの法律というものは抜け道だらけのざる法だと思うんですが、実効性についてあなたがどうお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。  それから三番目に、伊藤先生にお伺いしたいんですが、いろいろNGOのお立場で平素の御努力に対して敬意を表します。  私は、ますますNGOが活躍していくためには特定非営利活動促進法で保障されていない団体に対して税制上の優遇措置と寄附金控除、こういった問題なり政府のレギュラーな補助金、こういうものがないとやっていけないと思うんですが、具体的に何かこれらについて御提言があれば承りたい。  以上三つです。あと六分ありますから二分ずつお答えをいただきたいと思います。
  73. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 御意見として承ったことについてもちょっと話させていただきたいと思いますが、公正な国際競争入札をやって日本企業が努力して仕込んだプロジェクトが落札できないということではいい案件も出てこなくなる、日本企業の意欲もなくなるということですが、そういう前提が非常に問題だと思うんですね。要するに、民間企業に頼るのではなくて、政府ベースでJICAの開発調査とかあるいはUNDPの開発調査とか、ほかのドナー開発調査でも結構ですけれども、意欲的にくみ上げて援助事業を構成していくということでなければいけないと思いますし、やはり国際競争入札をやるのと日本企業だけの競争をさせるのとでは決定的な差があるというのは私の長い経験からの全く揺るがない実感でございます。  それから、現地通貨建ての返済ですが、おっしゃるとおり、いろいろ問題があると思います。ただ、例えば八五、六年から八〇年代後半にかけて起こったような円の価値がドルに対して二倍になるというような状況が起こったときに円建てで返済させるというのは非常に難しいわけです。それじゃ債務の救済をするかと。それもモラルハザードが起こりやすいということで、現地通貨建てで返済させてプールしておけば、その管理をどういうふうにモニターするかということはございますが、いろんな形で活用ができます。例えば、現地で民営化をやるときにその原資に使うとか、あるいは貧困救済あるいは何か経済危機が起こったときの社会的に弱い人たちの生活を助けるためのファンドにそこから資金を出すというような形で、これは現地ですから簡単にできるわけでして、そういうふうな機動性を持った柔軟な資金の使い方ということも途上国の主体性を高めるという意味で意義があるかと思います。
  74. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  最初に、日本国際フォーラムのシンポジウムで声をそろえていたうちの一人は私じゃないかなという気もして、確かにこの問題、この世界は割と狭いのでいろんなフレッシュな意見がこれからは必要かなといつも痛感しているわけでございます。それは反省しております。  それから、不正競争防止法の問題でございますが、これは確かに現在政府の方も民間の方もどう動くのか非常に疑心暗鬼というか不安を持っている状況で、私のところなんかにも一体どのように使われるのか、どうされるのかというようなよく相談に来る方もいらっしゃいますが、私自身、どうなるかよくわからない、またどういうふうにこれが効率を発揮してくるのか私自身がお答えできない状況でいます。先生おっしゃるとおり、確かに基本的には相手国にまできちっと踏み込めないことにはこの法律もほとんど意味がなくなるものになってくる心配を持っております。  ですけれども、こういう場合、この前の御質問のときにお答えしたように、世界じゅうでこういった問題に対して改正しようという動きがある中で、やはり世界、特に援助をする側、またこの援助問題だけじゃなくてこれは恐らく入札問題も絡んできますので、そういった商取引の中においてもアメリカ中心にこういった途上国の不正という問題に対して真剣に取り組む姿勢があると思いますので、やはりその中で一緒に相手国に対しても改正をお願いというか迫っていけば少しは効果あるものになるかと思いますが、正直言って私も疑問を持っております。
  75. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) お答えする前に一つアンタイド化についてちょっと私の意見を簡単に。  私はアンタイド化に賛成です。それは、要するに日本企業のためという意味じゃなくて、その開発目的、援助目的を達成するに最大効果を発揮する企業で結果が日本企業だったらそれでいいというふうに私は思います。やはりそういった意味において自由経済、自由競争の中でよりすぐれた適正な企業が選ばれるべきだというふうに思っています。  税制上の優遇措置の件ですけれども、我々NGO関係団体はやはり一日も早く税制上の優遇措置が欲しいと思っています。残念ながら、今回できました特定非営利活動促進法においてはそれが保障されておりません。  現在、日本全国に八万六千団体ぐらいの市民団体がありますが、そのうちの四百から五百団体が国際協力に対する市民活動団体、世にNGOと言われていますが、そういう数です。この数はアメリカに比べても遜色のない数であります。ただ、多くは非常に小さいという状況です。そのうちの約一〇%、四十から五十ぐらいが国際的に海外に事務所を持ったり、海外で五十人、百人のローカルスタッフを雇って活動しているという状況です。この点につきましては、実は寄附金控除の資格が獲得できれば一番いいと思いますけれども、その寄附金控除の獲得のために我々も今努力しております。  それから補助金につきましては、現在補助金が、先ほども言いましたけれども、外務省のみならず七つから八つの省庁がNGO側が依頼しなくても自発的に補助金制度をつくり上げてきたわけですけれども、非常に使いづらいものになっている。すなわち、一つは単年度制である。申請を出しても決まるのに四月が終わってから数カ月かかる。そして、できれば補助金ですから目に見えるものを期待されるハードが中心になってくる傾向があります。それから三つ目は、精算払いになっていますから一年間、半年間立てかえる能力のある団体でしかそれがもらえない。したがって、NGOの中にも南北格差が広がっていまして、もらえる団体はどんどんと大きくなる、利用できる団体は大きくなりますけれども、小さな団体はいつまでも小さいままにあるということです。  それから最後に申し上げたいのは、日本NGO課題は担い手にあると思うんですね。だから、その担い手の部分、すなわち事務管理費、人件費に充当できるような、専門性を高めることのできるような担い手の環境整備が必要かというふうに思います。
  76. 石井一二

    ○石井一二君 ありがとうございました。  終わります。
  77. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 質疑が一巡いたしました。  再度大会派順に各会派五分質疑を行うことといたします。  それでは、自由民主党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  78. 脇雅史

    ○脇雅史君 伊藤先生にお伺いしたいんですが、NGOで大変御苦労いただいておりますことに私も敬意を表したいと思います。  国際協力を進めていく上で、政府という立場とその政府を離れた市民的連帯意識といいましょうか、そういった立場から車の両輪のように両者が相まっていくということは極めて大事だと思うんです。そういうことを日ごろNGOでやられている伊藤先生がお話の中で最も国家的存在というか憲法を持ち出されて、その憲法の前文を言われたということに何か非常におもしろい感想を持ったわけでありますが、ある意味では非常にすばらしい憲法の前文を我々は持ったんだなというふうにも受け取れるわけなんです。  市民的な意識という立場で世界的に活動されることは非常に意義があるんですが、だれしも国家を離れてどこかの国民であらざるを得ないというわけで、非常にそういう意味では実際に活動されている方もいろんな意味での心理的な御苦労も多いのかなと思うわけです。私は、国とそういった市民意識みたいなものが両方うまく働いていくためにどうあったらいいのか、市民の側もそうですけれども、国の側も非常に広い意識を持って政府が動いていかなければいけないと。例えがいいのか悪いのか、孫悟空の話をすれば市民活動が孫悟空みたいなもので、それを支える非常に大きな手のひらを持ったものが国家であるといったような関係がいいのかなというような気がするんです。いずれにしても、やはり一人一人が正しい国民意識といいましょうか、そういうものが持てる国でありたいし、一人一人持ってほしいと思うわけであります。  これは先生のお話を聞いて単なる感想で申しわけないんですが、こういう話を聞いて伊藤先生も何かありましたらお願いしたいと思います。
  79. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 私は次のように考えます。  大げさに言えば人類の歴史が非常に変わりつつあると思うんですね。ちょうど徳川時代に藩に分かれて日本国ができたように、現在は国境を超えた通信、それから人間の流れ、物資の流れがある。そういった中において、実はもう国家、政府を超えた形で企業も多国籍企業がどんどん活躍しており、そしてNGOも国家を超えて、国籍を超えて国際協力に携わっている。今や地方分権化が始まり、地方自治体も中央政府を越して直接世界とつながろうとしている、こういう中で私は残念ながら国家、政府というものはその役割がだんだん縮小されていく方向にあると思います。  したがって、新しい地球社会世界をつくり上げていくために今こそ日本ODAを使って新しいビジョンを提供して、そして日本が引っ張っていくという形が必要かと思っています。  私自身、別に国家に盾突くとかそういう意味は全然ありませんけれども、日本人、日本社会の国益を考えた場合には時代の流れというものを読み取っていく必要があると思うんです。恐らく三十年、五十年後には国籍、国家という認識は非常に弱くなっているというふうに私は予測しています。
  80. 脇雅史

    ○脇雅史君 ちょっと離れたお話をして恐縮だったんですが、そうは言いましても国家という枠組みは当分なくならないでしょうし、やはり国家というものに対する意識、認識というものを世界に通用する格好できっちりと持っていかないとだめなのではないかなと、長期的にどうなるかは別といたしまして、当面そんな気がしたものでちょっとお話をいただきました。  ありがとうございました。  終わります。
  81. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、民主党・新緑風会所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  82. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 民主党の小川敏夫です。  お三方に御意見をお尋ねしますが、今の日本援助プロジェクトを進めるときにはさまざまな角度から検討がされるんですが、プロジェクトが終わった後、そのプロジェクトが実際にその地域にどのように有効に運用されているか、あるいは効果的にいい影響をもたらしているかということの評価検証する部分が欠けているのではないかと思うんですが、その点の御認識と評価検証する上において具体的ないいプランがありましたら教えていただきたいと思います。
  83. 下村恭民

    参考人下村恭民君) おっしゃるとおりだと思います。  それで、まず決定的な制約要因になっているのは評価をするだけの人員が投入できない、あるいは現地に十分な期間張りついてモニターをし、あるいは事後評価をするだけの経費予算がないということが制約になっていると思います。  もちろん、これは一遍に解決できる問題ではないので、しかし徐々にその辺の改善がされていかないとなかなか理念だけではこの点の改善は難しいと思いますが、それを克服するためにやはり重要なのは第三者の専門家による評価だと思います。これもしかし、第三者の専門家といいますが、実は途上国できちんと評価業務ができる専門家というのは日本でまだまだ不足していると思いますので、その辺も経験を積みながら人材育成を、人材開発をしていくしかないというふうに思います。
  84. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  全くおっしゃるとおりなんですね。私も事後評価というのは重要だと思っています。私は一九九三年ごろ自分一人でODAプロジェクトがその後どうなっているかを長時間かけて、四カ月ほどタイに住んでやってみたことがあるんですが、そのときJICAの人たちなんかに頼んで現地の事務所の人に、二年、三年じゃなくて十年前のプロジェクトの方がどうなっているかが重要なので、それを見たいと言ったら、どこにあるかも知らない、もう若いスタッフは日ごろの忙しさで、名前を聞いたことはあるけれども、どこにあるかも知らないと。全く手が離れているんですね。  ですから、事後評価というのはプロジェクトが終わった直後にされるケースが多いんですが、私は、十年もたったODAプロジェクトこそ評価すべきであって、それがどう生きているのか、死んじゃったのか、非常に拡大して貢献をしているのか、そういうことまでしなきゃならないと思っています。  それにはどうすればいいか。ともかく時間とお金と人をかけなかったら私はいい評価はできないと思うんですが、現行の制度において制限がある限り、先ほどもちょっと申し上げたように、やっぱり国会先生方による事後評価というのは非常にインパクトが強いですから相手も一生懸命やりますから、国会ODAに対してどういうふうにコミットするかという一番いい方法は事後評価を先生方にやっていただくことだというふうに考えています。
  85. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 私も第三者による評価メカニズムができる方がいいと思っております。ただ、そのときにはできるだけその地域住民の視点から見た評価基準、評価手法というものがあっていいのではないかというふうに思っています。もちろん、評価の中には住民のエンパワーメントあるいは地域住民の参加、それから自立、自助、そして自分たちの力でその事業がそのまま持続、発展できるかどうかというような基準が入るかと思います。  ただ、評価も大事ですけれども、私は徹底的に事前調査をして安心できるような形で事業が進められるような形をとるのもとても大事ではないかというふうに思っております。
  86. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 終わります。
  87. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、公明党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  88. 松あきら

    ○松あきら君 私も、まず質問を申し上げて、それぞれお答えいただきたいと思います。  まさに私が伺いたいことをそれぞれもう伺っているわけでございますけれども、まず伊藤さん、NGOを育てるためには具体的に何が一番大事か、必要かということを伺いたかったのでございます。それには担い手が大事ということも伺いましたので、では担い手を育てるには何が必要か、この点もお伺いしたいと思います。  また二点目は、フィリピンの例のダムの心痛む事例をお話しいただきましたけれども、ほかに援助の矛盾についてこれは絶対に言っておきたいという例がありましたら、援助の矛盾の例がございましたら伺わせていただきたいということでございます。  それから、これは私もまさに事後評価が大事であるという点で実は下村先生に伺おうと思ったんですけれども、この大事な事後評価あるいはチェックシステムをこういうふうにしたらいいという御提案があればお願いしたいという点でございます。  それから杉下先生には、イギリスは援助の目的を環境、貧困に絞ったということでございますけれども、例えばどんな効果が上がっているのか、つかんでおられればお話を伺いたいと思います。  以上でございます。
  89. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 日本NGOの担い手をどう育てるかということですけれども、日本NGOを担っている人たちは今大ざっぱに言って六千人から七千人ぐらいいると思います。その半分以上がボランティアの形で、すなわち無報酬で活動をしております。給与が払われていたとしても普通の人たちの半分から多くて三分の二、六割、七割ぐらいの給与レベルかと思っております。  そういった中で担い手が、最近非常にNGO、NPOという言葉がマスコミで普及していますので、就職先として今我々の方に若い人たちが押し寄せてきています。中には企業のOB、それから企業のまだまだ現役でされている方が企業よりもNGOで自分の能力を発揮したいと訪ねてこられます。  そういった中で、我々としてはそういう人たちに対して安心して仕事ができるような給与体系あるいは福利厚生等を用意ができていない。したがって、今NGOを担っている大半の人は冒険やろう的に、それこそ自分の生活は無視してでも、犠牲になってでも地球社会世界における最貧困層あるいは飢餓等で苦しむ人たちに何かしたいという人たちが集まってきているわけです。したがって、そういった動機においては非常に美しいものがあります。しかしながら、人間も生活しなくちゃいけませんので、そういった意味において日本NGOの担い手を育てるためには最低その生活が保障できるようにしていきたいというふうに思っています。  ただ問題は、こういうNGO、NPO活動というのは基本にはボランタリー精神、ボランティア精神がないといけませんので、それを超えて、そういったものを無視してまでそういった面を充実させるのはどうかと思いますけれども、いずれにしましてもこういったボランティア精神、愛他的な精神で世界を見るような人たちが今多くなっていますので、そういう人たちに対して資金的な手当てをしたい、それが一つ。  それから二つ目には、適正な研修、これは従来の研修じゃなくて、やはり若者を現場に送って、現場の人たち、すなわち貧困で苦しむ人たち、それから農民、漁民、そういう人たちと一緒に生活しながら自分たちの日本を見詰め直すことができるように、そして新しい世界をつくり上げていくにはどうしたらいいかというような、そういった場の提供が必要かというふうに思っています。  二番目の御質問につきましては、時間の関係もあって、省略させてください。
  90. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 今お話しありました事業効果を確保するためのチェックシステムの改善ですけれども、私は恐らく今の制度のもとで一番効果的なのはJICAのフィージビリティースタディーからOECFで円借款が出る前の審査、それから実施されて完成した後の事後評価、これをできるだけ同じ関係者が継続的にやれるようなシステムを開発する、あるいは確保するということが重要だと思います。またそれが一番効果的なチェックができると思うんです。  それで、私自身も自分でOECFで仕事をしておったときにかかわった重要な事業についてはできるだけ後で何らかの形で評価をするように努めておりますが、やはり自分がやったことは間違ったこと、至らなかったこと、よくわかるわけですから、それが非常に改善のポイントを生むんじゃないかと思います。  ただ、もちろんこれは逆のこともあるわけで、自分たちがやったことだからひた隠しに隠すという動機も働くわけですけれども、そこは第三者を入れるとかあるいはでき上がった報告書について厳正に評価すればおのずからそういうものは淘汰されていくだろうと思います。
  91. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) イギリスの国際援助省、DFIDと申しますが、これは御承知のとおり、ブレア内閣ができてからそれまでのODAと言われていた海外援助庁を省に昇格してイギリスの経済協力に対する姿勢世界にアピールしたものなのでございますが、ブレア政権ができてそう長いわけでもないので、しかもその後ODAが国際援助省に昇格してからもそうまだたっていません。それから、そういうプロジェクトを特化してからもまだそう長くないので、環境とか人づくりといった分野は足の長いプロジェクトですので、どこでどう効果が出たということはないと思います。  それから、イギリスの場合、御承知のとおり、ODAとしてカウントされる額が日本の三分の一ぐらいしかないわけで、これはいやでも特化しないと日本みたいに広い意味での援助というのはできないわけで、そこで特化した。その特化した分野がイギリスのフィロソフィーに合っている分野ということになっているわけです。ではどこの国の環境がよくなったかという数字は、あるのかもしれませんが、私はちょっと認識しておりません。
  92. 松あきら

    ○松あきら君 ありがとうございました。
  93. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、日本共産党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  94. 富樫練三

    ○富樫練三君 最初に下村参考人に伺いたいと思います。  ODAの今後のあり方の問題について、きょうお配りいただきましたレジュメの中で最後のところに「「ひもつき指向体質からの脱却」というのがあります。このひもつきの原因として社会基盤の整備、いわゆるダムの建設や道路や橋、こういうものがどうしても重点になっている、その結果そういうことになっているのではないかという疑問が一つあるんですけれども、この点はどうかという点なんです。  あわせて、むしろ今後環境や教育やあるいは人権問題、こういうところを重点的にかつ貧困の克服というふうにいった場合に、政府企業NGOがそれぞれの立場から力を出すという協力体制というか、こういう体制が必要かというふうに思うわけですけれども、先ほど中小企業や保健の問題についても触れられましたけれども、こういう政府企業NGOがそれぞれ力を発揮するためにどういうことが必要なのだろうか、この点、もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。  次に、伊藤参考人に伺いたいんですけれども、レジュメの最初のところで憲法の前文、「全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」という前文でありますけれども、恐らくこれは日本ODAを考えていく一番の基本姿勢だろうというふうに感じるんです。あわせて外交の基本でもあるだろうというふうに思うわけですけれども、先ほどからNGOの活動は大変重要な活動をされていらっしゃるということを感じております。  その上で、政府の方がいわば相手国政府を通じて開発援助をする、NGOの方は相手国の住民の側から接近をするという関係で、これは敵対するものではなくてむしろこの両方が相まってしっかりしたODAができるものだろうというふうに感じるんですけれども、この評価、特に事前でいえば計画段階からNGOが参加あるいは意見を述べる機会を確保するとか、事後評価では先ほど住民の側からの評価ということを申されましたけれども、事後評価でもNGOがここにきちんと参加できるような体制をつくるとか、こういうことはどんなものだろうかというふうに思うんですけれども、この点について御意見がございましたら聞かせていただきたいと思うんです。  以上です。
  95. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 二点おっしゃいましたけれども、基本的に全く同感でございます。  まず、ひもつき指向の話ですが、おっしゃったインフラ重点ということに加えまして不況という問題も恐らく大きな重要な要因になっていると思いますので、その部分は一過性のところがあるかなと思います。  それから、協力体制ですが、政府民間部門、あるいは政府NGO、これが状況状況、テーマとか地域とか、あるいは起きている問題に応じてテーラーメードで最適の協力体制を組むということが重要だと思います。特に政府NGOにつきましては、政府あるいは行政の手が及ばないところを草の根援助がちゃんとおりるためにNGOにやってもらうという姿勢ではだめなのであって、現地でどういうふうにすれば一番ニーズに合うのか、あるいはどういうふうにすれば一番効果的に実施できるのかということについて立ち上がりの準備の段階からパートナーとして意見交換をしながら並行して進めていくというふうにする。既にその芽は出てきておりまして、フィリピンのパラワン島という小さな島でエコツーリズムといいますかサンゴ礁の観光資源を大事にしながら生活水準を上げていくという、開発についてはそういうことが始まっておりますが、これをどんどん広げていくということが重要じゃないかと思います。
  96. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 今の議員の方の御意見に全く賛成です。  政府政府レベルにおける関係をお持ちだと思いますし、またNGONGO同士の関係を持っています。したがって、国内でいけば日本NGO日本政府、それから相手国政府相手国NGO、この四者がパートナーシップを組みながら活動ができれば非常に理想的な展開になるのではないかと思っています。  近年、我々NGOの方にも外務省あるいはJICA等からの声もかかっております。実際にはもう既に我々の仲間が案件形成のミッションに参加をするというふうなことも始まっております。  それから、ちなみに我々NGO・外務省定期協議会というものを一九九六年四月から行っておりまして、三カ月に一回ずつ開いて両者の間のテーマを中心議論を展開しています。その一環としまして、実はNGOと外務省の相互学習と共同評価というプロジェクトを二年前からスタートさせまして、一昨年度はバングラデシュ、昨年度はカンボジアということで共同評価を行って、忌憚ない合同ミッションでそれぞれのNGO側の事業、それからODA側の事業を評価しております。  それから、昨年の十月からはNGO・JICA協議会というものをつくりまして、そこではコントラクトアウト、すなわち開発パートナーシップ事業と言われていますけれども、NGOがJICAからコントラクト、一括委託を受けるに当たってもNGO側の言い分を聞いてもらえるような形でこの数カ月間交渉を進めています。  そのほか、多国間金融機関に関しましては、NGOと大蔵省の協議会というものが設けられていまして、我々の仲間がその定期協議を進めておりますし、最近におきましては、政府だけじゃなくてそういった政府との関係を応援していただこうということで国際協力NGO活動推進議員連盟というものを先週つくっていただきまして、そこでもっと効果あるODAのプロセスに我々NGO側も参加していきたいというふうなことでスタートしたばかりです。
  97. 富樫練三

    ○富樫練三君 ありがとうございました。
  98. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、社会民主党・護憲連合所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  99. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 梶原です。  これは質問というよりまたお考えを承ることになると思うんですが、日本の農山村といいますか、私は大分県ですが、選挙でよく村の奥地の方も入っていくんです。今起きている状況というのは、本当に過疎現象が激しい。高齢化、そしてだんだん一軒家が廃屋になって村がつぶれていくような状況。そしてまた、跡取りがおったとしても今度は四十過ぎても嫁さんが来ない、そして農業収入は低い。まさに不安というか恐怖、そういう状況が本当に山間地、奥の方は続いておるわけです。  だから、これは外に対するODAも大事だけれども、そこに予算をつぎ込むとかあるいは上下水をやるとか道路をよくするとか、なかなかそういう見通しのないところにはやらないような困難な状況が今存在しているわけです。  私どもODAを考える場合に、大事な税金や予算は本当にしっかり有効に使ってもらわなきゃいけないと思っているんです。ところが、ODA全体はどうも外交の手段というか、金を使いながら外交をやっているような姿勢が、長年見てきて何かそこに締まりのないものを感じてならないんですね。  そういう意味では、今のODAのあり方に対する先生方のこれで本当にいいのかという点でお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  100. 下村恭民

    参考人下村恭民君) そういう今おっしゃったような国民感情が非常に強まっているというのはまことにそのとおりだと思います。そういう声に対応するためにも私は、どういう効果があったのか、あるいはうまくいかなかったのかということについての個別の話をもうちょっと具体的に事例を取り上げて、本当にこれだけの予算を張りつけておくだけの価値があるのかということをこういう場で議論していただくということが結局原点になるのではないかと思います。  ただ、日本日本状況が悪化しているといって援助をやめる、あるいは相当大幅に削減するということ自体はそれ自体が国際的にあるメッセージを出すわけですから、そういうメッセージを出すということが日本にとって今得策なのかどうかということも総合的に判断する必要があると思います。
  101. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 先生のような意見、私もさっき言ったように十年もODAのことをやってきたけれども、女房がうちの方が貧乏なのになんて言っていますからよくわかります。そういう気持ちがあるのは理解できるんですが、やはりきれいごとで言えば、日本よりもっと貧しい国がいっぱいあるということ、それから日本は非常に不況とはいえ、決してあすの生活に困るような国にはまだなっていない、一国繁栄だけでいいのか、世界にはもっと、さっき伊藤さんからもあったかもしれませんが、地球上には十億近いあすの生活ができない人たちがいっぱいいるという事実、こういったものも日本国民が理解しなければいけないことではないかと。  それから、情けは人のためならず、情けを受けるためにやっているわけじゃないんですが、ODAを使った援助が結局は回り回って日本という国を取り巻く国際環境をよくして、そして高齢化に向かう日本という国を周りが温かい目、尊敬する目で見てくれる国家になるというような理想もあるわけです。もちろん、執行方法については多々直さなきゃならないことがあることは先ほど申し上げたとおりですが、基本的な理念としてはやはりそういうことでODAというのはやっていかなきゃならないし、やっていくべきだと思っています。
  102. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 私は今の議員の方の御質問は非常に大事なポイントかと思っています。  日本の国際協力を考えた場合、日本で過疎化した村、地域社会、実はこの地域社会、それから村が開発協力と結びつくことができるのではないかというふうに思っています。それは農山村における伝統的な知恵、技術、例えば炭焼きの技術だとかあるいは有機農業、こういったものが実は生きてくるわけです。国際協力というのは大学を出た頭のいい人だけ、あるいは英語ができる人だけの世界ではないと私は思います。すなわち、日本の国際社会における貢献というのは英語もわからない、世界に出たこともないようなところに実は宝のような知識、技術があると思うんです。  そういった意味においては、我々NGOの役割というものはそういう人たちを農山村から引っ張り出し、あるいは世界途上国の人を連れてそこで交流する、農民同士の交流を行う、そういった中において協力体制が生まれていく。実際にNGOの中でそういうことを進めているグループもかなりあります。そういった意味で、ぜひこれから私たちの展望もそういった地域社会開発途上国開発事業との結びつけというものを進めていきたいというふうに思っています。  こういうことによって、先ほどの自民党の方の御質問にもありましたけれども、やはりこれから地域を超えてともに歩む地球社会というものをイメージする、すなわちそういう交流が始まってフィリピンからタイからお嫁さんが来る、そしてまたそこに魅力のあふれる農山村ができていけばそこにエネルギーがまた出てくるようになるんじゃないかというふうに考えています。  以上です。
  103. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、自由党所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  104. 高橋令則

    ○高橋令則君 自由党の高橋でございます。  今、梶原先生とちょっと関連があるなと思ってお聞きをしているんですけれども、お三人にお願いしたい。  実は、外交に関する世論調査を見ていますと、二十年ずっとODAに対する国民関心が下がっているんですね。もう時系列的にはずっと下がっている。ODAの重要性から見てこれは心配だというふうに思って、その分析はどうだということを外務省に話を聞きましたら、外務省はこう言っているんです。ほかの国でもいろいろあります、その中でも日本はまだいい方ですという評価なんですね。  私は、果たしてそうかなと、心配しながらそうかなと思っているんですけれども、お三人はそれぞれ専門皆様ですから、感想とこれでいいのかという私の心配に対するお考えをいただきたいわけです。
  105. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 国際的に見て日本国民が依然として一番ODAに理解を示しているということは恐らく間違いがないと思いますが、だからそれに安住していいということではないわけで、やはり私はODAというコンセプト、あるいは援助というコンセプトが非常に新鮮味、魅力を失っていると思うんです。これが例えば東アジアの危機があって緊急支援をするとか、あるいはルワンダでもコソボでも難民が出て緊急支援をするとか、そういうことになると恐らく余り抵抗はないと思うんです。  やはり、ODAあるいは援助というコンセプトが非常に日常化してしまったことによるだれといいますか、停滞というものは見逃せない要因だと思います。それはなぜ起きているのかということは単純に分析できない問題だと思いますけれども、目先の問題で言うとコンセプトをがらりと変えるということが一つの解決策になるのかなと思います。
  106. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) 私も日本ODAの支持率の高いことには驚いています。ついこの間までは現状維持またはふやせというのを合わせると恐らく七割近い支持率があったかと思うんですね。最近はもうちょっと落ちたと。それにしてもかなりの数がその二つのところに入っていると思うんです。このことを外国の記者仲間なんかに言いますと驚きますね、こんなに日本人というのは経済協力関心のある国民なのかと。これは異常なほどの高さだと思うんです。  この原因は、まず一つ日本ODAというのは、先ほど私は政治行為と言いましたけれども、国民の認識の仕方は人道的な面が非常に強いと思うんです。青年協力隊とかどこかの緊急支援とか、そういった分野が非常に印象が強くて、いいことをしているという判断が支持になっていると思うんですが、やはりODAの本質を知って、そして支持率につながるということが必要じゃないかと思います。  それから、下がってきた原因というのは、これはもう簡単に言うと私はやっぱり不況だと思うんです。自分のところの懐もちょっと苦しいのに、人のところはいいじゃないかと。それからもう一つは、七年連続世界一の実績額を持っているということで、日本援助はもう十分やっているんじゃないか、これ以上はやらなくてもいいんじゃないかと。この二つが、特に国内の問題が一番国民ODAに対する支持率を下げている要因だと思っています。
  107. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 私は、ODAの支持者というのは、冒頭にも申し上げましたけれども、真に理解して支持しているのかどうかは疑わしいというふうに思っています。できればその支持者の理解を深めて、真にODAを支持してくれる人たちをふやす必要がある、すなわち経済不況になってもこれが必要なんだと思う国民をふやしていきたいというふうに思っています。  私は、ODAというのは、先ほども申し上げましたけれども、これから新しい世界をつくるための投資というふうに考えているわけです。それからもう一つは、地球社会に生きる市民としての税金であって義務であるというふうに考えております。そうした税金として、義務として投資をする、そうした中において日本が生きやすい、こんな勝手なことを言ってはいけませんけれども、貧困層の撲滅を図り、そして公正な社会をつくることによって安定した社会の中で日本人も世界の人とともに繁栄できる、そうした社会をつくるべきだというふうに思っております。そうすれば、恐らく日本国民は、日本市民はサポートをしてくれるのじゃないかというふうに思っています。
  108. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、参議院の会所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  109. 水野誠一

    水野誠一君 先ほどODAの中で大切なのは時間と人と金という三つの要素だというお話が出まして、私は大変これは意味深い三要素だなと思いました。金というのはまさにわかりやすい話でありますが、時間というのは恐らく継続力ということで、単にお金を使ってもその質が伴わなければいけない。その質というのは、顔が見える援助という言葉がさっきから何度も出ておりますが、やはり継続してきちっとした戦略を立てて、そのお金をいかに有効に使うかというまさに質の問題につながるのかな、かように思いながら拝聴しておりました。  もう一つの要素の人ということでございますが、特に人の面、これは質だけではなく量の問題も含めてやっぱり人の問題というのが一番大きな要素になるのかなと。私が前にちょっと伺ったところによりますと、JICAあたりでも担当者一人当たりの扱うODAの額というのは数百億みたいなことで到底一人ではそれを全部見切れないというようなことを伺ったこともあります。今、大分それは改善されているのかどうか、その辺も伺いたいところであります。  それに対して、そうなればなるほどNGOの役割の重要性というのは出てくるわけでありまして、先ほど伊藤先生からのお話では六千人から七千人が、しかもその大半の方はボランティアで、無償でやっておられるということ、これは他の先進国と比べて多いのか少ないのかという問題、これも非常に重要な関心事でございます。  それで、私は数年前にベトナムのホーチミン市を訪れたときに、そこに立派な総合病院があって、それは日本ODAによって建てられたんだということで現地の役人に御案内をいただいたことがあるんです。国の政治レベルではもちろんこれは日本が建てたということはよく御存じです。ところが、一般市民はそこでどういう人たちが働いているかということによってODAイメージというのが大分できるということを痛感いたしました。そこでは北欧から来ているスタッフがやたら目立つというか、数的にも大変多い、もちろん日本からもそういうスタッフが来ているわけですが、そうすると市民は北欧諸国がこの病院を支えてくれているというイメージが非常に強い。ですから、日本からももっとそういった意味でのスタッフが出てきてくれるとありがたいんだけれどもというようなお話をそのときに、非常に非公式な話でありますが、伺った経験があります。  そういうことから、日本NGOの顔が見えるというかそういう要素、非常に皆さん地味でまじめに六千人、七千人の方が活躍をされているわけでありますが、やはりもう一つ何かその中で工夫が必要なのかなという感じがいたしました。  そのNGOの活動をさらに活発にしていくためにはどういうことが必要なのか、今度は伊藤先生からお三人の方、それぞれ短いコメントで結構ですが、伺えればと思います。
  110. 伊藤道雄

    参考人伊藤道雄君) 御質問に順序立ててお話しできるかどうかわかりません。  まず一つはJICAのスタッフの数の問題、これは私は少ないと思います。外務省もそうですけれども、世界ODA、例えばUSAIDだとかCIDAだとかそういった世界の欧米諸国の援助機関に比べて非常に少ないと思います。これはもっと数をふやす。それから職場環境も、私たちが見ていましても、東南アジア相手方になるような人たちの事務所の方が立派だというケースが間々あります。そういった意味においては、日本政府関係者の方はちょっとお気の毒な職場環境で夜遅くまで仕事をされているというふうに思っています。  それから二番目の日本NGO世界に比べてボランティアの形で働いている数字が多いのかどうかということですが、これは数の上においては欧米の方が多いと思いますが、比率からいえば有給で活動している人は欧米に比べて非常に少ないということになります。  ちなみに、日本NGOを担っている社会的背景を御紹介しますと、六つのグループに分かれますけれども、一つは宗教的精神を持った人、クリスチャンあるいは仏教徒といった人たち一つの流れを構成しています。二つ目は若い人たち、すなわち情熱でもって国際協力に携わっている人たち。それから三つ目が時間のある人たち、すなわち企業のOBの方あるいは家庭の主婦、お母さん方、こういったグループ。四つ目が大学の先生、それからお医者さん、弁護士、こういった方。五つ目のグループが企業の従業員でありながら日曜日、祭日を利用してやっておられる方。六つ目のグループが地域の活性化に取り組む人たちが国際協力に携わっている。  こういった形で非常に国民的にすそ野が広がっていますけれども、ケース・バイ・ケースで考えていく必要があると。すなわち、どこの担い手はもっと専門性を必要とする、ボランティア精神でも十分だと。やはりボランティア、アマチュアリズムでもこういった運動は必要かと思っております。そして、私は国際協力というのは日本人の人材育成の場であると。JOCV、青年海外協力隊もありますけれども、NGOの場合ですともっと自然に中に入っていって現場の人たちと一緒になって仕事ができるということでNGOは人づくりの場でもあるだろうというふうに思っています。  何が日本NGOを育てる課題なのかということですけれども、これも先ほど言いましたけれども、やはりNGOで少なくとも三年、五年はその場にとどまって仕事ができるというような環境をつくっていく、そのためにはそこにお金が流れ込むような状況をつくらなくちゃいけない。また、NGOに来る人たちはえてして企業あるいは行政との関係が弱い人が多い。そういう点においては、企業行政等々ともっと交流を図って、人的な交流をセクター間でやる必要があるというふうに思っております。  以上です。
  111. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 先ほど水野先生がおっしゃった人の面、JICAのケースを挙げられましたが、JICAだけでなくてOECFについても全く同じだと思います。  一方で、今、日本の若者で十分な情熱と知識と語学力を持っていて何らかの形で途上国に対して役立ちたいと思っている人がその場を見つけるというのは非常に大変なわけで、そういう意味で結局は定員の問題になってしまうんですけれども、現実的には結局スクラップ・アンド・ビルドをしながらの行革というものがどこまでできるか、重点化指向をしながらの行革というのがどこまでできるかという、結局政治の問題になっていくと思います。
  112. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  まず、スタッフの不足の問題ですが、JICAとかOECF、特にロジスティックな分野でもっと現地の人を採用して協力してもらうことが一つの具体的な手段かなと。  それから、NGOを育てる課題、これは、伊藤さんの前で悪いんだけれども、NGOとか青年海外協力隊というのは何か聖域化されちゃって、性善説でもういい人いい人、マスコミでもNGOはいい人、協力隊はいい人ということになっていますが、私は、必ずしも全部がそうじゃないし、協力隊もNGOも改めなきゃならない点がいっぱいあると思うんですね。  ですから、我々マスコミの立場としてNGOにちょっと批判させてもらえば、基本的に日本NGOの問題というのはどうすれば育つかというと、まずプロ根性がないと。これは決して慈善活動ではないと思うんですね。非常にいいことをやっていることは確かなんだけれども、慈善活動ではないと。どうも日本人の場合、NGOを聖域化しちゃって慈善活動家と見るから育ちにくいし、やる方もやりにくいと。やっぱりNGOというのはいいことをやるプロだという考え方NGOに対する日本人の見方、こういうものを改正することがNGOを育てる一つの道かと考えています。
  113. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 次に、二院クラブ・自由連合所属委員で質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  114. 石井一二

    ○石井一二君 石井でございます。  ラストバッターですから、きょうの論議を通じて、御発言の確認をひとつさせていただきたいと思います。  杉下参考人ですが、聞き間違いかもわかりませんが、ODAで一たん出した金はどう使われようと相手の自由であるというような御意見があったように感じたんですが、実はマルコス疑惑があったときにこれと同じことを当時の平泉経済企画庁長官が言われました。渡辺秀央先生も本会議におられたはずですが、これは物議を醸しまして、本会議場で陳謝して発言の訂正をされたという経緯があるんですが、このあたりについて、私の聞き間違いかもわかりませんのでちょっともう一度お考えを聞かせておいていただきたいことが一つ。  それからもう一つは、お三方ではなしにだれか一人だけの御答弁で結構ですが、ODAに関して省庁が多岐にわたっておる、これを一本化すべきじゃないかというような御意見があったと思うんですが、そういう意見があると必ず出てくるのが経済協力省でもつくってというような今の行革に相反することが多いんです。  予算を見てみますと、大蔵省資料では外務省と大蔵省の二省だけでODAの八八%ぐらい年々使っているわけでして、ほかは何か多いような気がしますけれども実に微々たるものであると。しかも、専門知識を要することであるから、それをまた今度どこか一カ所に絞ってそこへ説明に行ってというようなことになると、ドメスティックな政治との関連性という面もあるし、必ずしもうまくいかないのではないかと思うんですね。  それと、御承知のように、海外の出先機関を見た場合、大使、公使、参事官ぐらいまでは外務省ですけれども、あとは皆各省庁全部一等書記官、キャリアを出しているんです。一つの特定の国でなくてもその地域に必ずそういう人がおるし、またその省庁のODAがあると特にそういう人を回していますからね、その省庁のOBを。私は現体制でいいというように考えておりますが、この二点に関してどうですか。杉下先生、固めてあなたから御答弁をお願いしたい。
  115. 杉下恒夫

    参考人杉下恒夫君) お答えします。  非常に難しい質問が回ってきちゃったんですが、私の認識するところでは、やはりODAというものは、政府開発援助というものの公式的な図式でいけば、政府政府の契約があってお金が渡された段階で、基本的にはこの金をああ使え、こう使えと言うことは全く大原則としてはないんじゃないかと。もちろん、日本の金ですからその段階においてはいろんな注文はつけられることは確かですが、本当の政府開発援助というものの大筋論だけでいけばなかなか口出ししにくい、形式論としては。ただし、現実にはいろいろとつけていると思います、つけられると思いますが、建前上は逃げようと思ったらそれで逃げられるんじゃないかなというふうに私は解釈しているんです。  それから、二つ目の一元化の問題ですが、確かに行政改革にはまさに反する援助庁という結論。理想論としては援助庁というものはつくらなきゃならない。しかし、現実に予算の問題以上に各省庁にそれぞれ深く入ってしまっている経済協力、農水省、建設省、どこにも深く入っているものをどこでほじくり出すのか、まさに神経を一本一本出すみたいな作業が必要なわけでして、それを理想論として援助庁にまとめろと言っても大変難しい問題で、これは現実に難しいんじゃないかと思っております。  ですから、調整機能ということですね、今、先生もおっしゃったとおり、各省庁、プロジェクトを持っているところにはそれぞれの担当の技術的な方も入ってやっておられますから。しかし、どこかで何か言えないか。例えば専門家の派遣について、なぜこの人を出すのですかというようなどこかでチェック機能が、例えば農水省はこの人を次のポストに出します、はい、そうですかじゃなくて、この方がどうしてこういうところに、どういう順序でこういうふうになっているんですかとか、どこかでチェックする機能がないと、調整まではできないかもしれなくても、チェックする機能ぐらいは外務省に持たせているべきじゃないかと。嫌がるんですよね、大体どの省庁も外務省がチェックするということを。せめてそのぐらいをすることによってある程度の筋は通るんじゃないかというふうに考えます。
  116. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 予定の時間が参りましたので、以上で参考人に対する質疑は終了いたしたいと存じます。  参考人皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、また質疑に対して御懇切なお答えをいただきまして、まことにありがとうございました。  ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。  本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  本日の調査はこの程度にとどめることとし、これにて散会いたします。    午後四時十三分散会