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1999-06-30 第145回国会 参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月三十日(水曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  六月二十九日     辞任         補欠選任         佐藤 昭郎君     斉藤 滋宣君      益田 洋介君     加藤 修一君      渡辺 孝男君     松 あきら君      高橋 令則君     入澤  肇君  六月三十日     辞任         補欠選任         山下 栄一君     益田 洋介君      宮本 岳志君     小池  晃君      大脇 雅子君     山本 正和君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉川 芳男君     理 事                 石渡 清元君                 大島 慶久君                 田村 公平君                 吉村剛太郎君                 朝日 俊弘君                 伊藤 基隆君                 弘友 和夫君                 富樫 練三君                日下部禧代子君     委 員                 阿南 一成君                 岩永 浩美君                 海老原義彦君                 太田 豊秋君                 狩野  安君                 亀井 郁夫君                 久野 恒一君                 斉藤 滋宣君                 清水嘉与子君                 田浦  直君                 長峯  基君                 畑   恵君                 脇  雅史君                 江田 五月君                 岡崎トミ子君                 川橋 幸子君                 輿石  東君                 高嶋 良充君                 寺崎 昭久君                 藤井 俊男君                 山下洲夫君                 加藤 修一君                 益田 洋介君                 松 あきら君                 池田 幹幸君                 小池  晃君                 八田ひろ子君                 大脇 雅子君                 照屋 寛徳君                 山本 正和君                 入澤  肇君                 星野 朋市君                 奥村 展三君                 菅川 健二君                 石井 一二君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣     有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        運輸大臣     川崎 二郎君        労働大臣     甘利  明君        自治大臣     野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局長       河野  昭君        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        警察庁交通局長  玉造 敏夫君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        総務庁人事局長  中川 良一君        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        環境庁長官官房        長        太田 義武君        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        国土庁長官官房        長        久保田勇夫君        国土庁防災局長  林  桂一君        大蔵大臣官房審        議官       福田  進君        大蔵省主計局次        長        坂  篤郎君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文化庁次長    近藤 信司君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        林野庁長官    山本  徹君        運輸大臣官房長  梅崎  壽君        運輸省自動車交        通局長      荒井 正吾君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        建設大臣官房総        務審議官     小川 忠男君        建設省河川局長  青山 俊樹君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省財政局長  二橋 正弘君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        志村 昌俊君        常任委員会専門        員        入内島 修君     ─────────────   本日の会議に付した案件 〇公聴会開会承認要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件 〇内閣法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) 〇内閣設置法案内閣提出衆議院送付) 〇国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) 〇総務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇郵政事業庁設置法案内閣提出衆議院送付) 〇法務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇外務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇財務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇文部科学省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇厚生労働省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇農林水産省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇経済産業省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇国土交通省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇環境省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律  の整備等に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) 〇独立行政法人通則法案内閣提出衆議院送付  ) 〇独立行政法人通則法施行に伴う関係法律の整  備に関する法律案内閣提出衆議院送付) 〇地方分権推進を図るための関係法律整備等  に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会開会いたします。  公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣法の一部を改正する法律案外十七案の審査のため、七月五日午前九時に公聴会開会することとし、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立
  3. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 多数と認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  4. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣法の一部を改正する法律案外十七案の審査につき、神奈川県及び大阪府において意見を聴取するため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 吉川芳男

  8. 海老原義彦

    海老原義彦君 おはようございます。自由民主党の海老原義彦でございます。  本日は、農林水産省設置法案に関し、林野行政について専ら質問いたします。  林野行政は、昨年秋の第百四十二国会で抜本的な改善がなされました。言うなれば、行政改革先駆者となったわけでございます。この改革重要性というものは、従来、生産主体だった森林関係行政公益を重視するということに切りかえたところにあるわけでございまして、生産林二割、公益林八割というような構成に持っていこうという非常に画期的なものでございます。  この意義につきましては私からちょうちょう申すまでもないわけでございますけれども、実は去る六月十四日に伺いました中央省庁等改革関連法律案提案理由説明でございますけれども、この提案理由説明、私の聞き落としかと思って刷り物を読んでみましたところ、やっぱり刷り物にも書いていないんです。この林野行政に関しましては専ら生産のサイドだけを着目しておりまして、森林生産力増進というようなことを言っておりますけれども、森林自体の健全な保育培養といったようなことについては、農林水産省任務として設置法に書かれておるにもかかわらず、これは総務庁長官の御説明にはなかったわけでございます。  それは単なる事務的な間違いだろうと思うんですけれども、ここで改めて、そういった新しい林野行政というものも十分踏まえて今回の行政改革を考えておるのだという言明総務庁長官にお願いいたしたいと思います。
  9. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  今回御審議願っております農林水産省設置法案におきましては、農林水産省任務といたしまして「森林の保続培養」を明記したところであります。これは、森林公益的機能維持増進を旨とする管理経営への転換を図ることとした国有林改革の考えと整合性のとれたものとなっていると考えております。
  10. 海老原義彦

    海老原義彦君 その言明を伺って私も安心したわけでございます。  さて、それで話を進めていきますけれども、この地球環境という見地から、森林の果たす役割は極めて大きいわけでございます。CO2の固定化、その他いろいろあるわけでございますが、これについて農林水産大臣及び環境庁長官からそれぞれその重要性認識について伺いたいと思います。
  11. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) お答えさせていただきます。  森林は、先生指摘のように生産財木材生産ということだけではなくて、国土保全あるいは水源の涵養、あるいは先生指摘のように二酸化炭素吸収炭素の貯蔵といった地球温暖化防止、あるいは貴重な野生動植物生息地としての生物多様性保全等、いわゆる多面的な機能を果たしております。  一方、森林はほうっておきますとこれは大変荒廃するわけでございまして、例えば年間世界じゅうで一千百万ヘクタールの森林減少しておるということで、決してほうっておけば維持できるというものではないわけでございます。  そういう意味で、植林あるいは保育間伐の実施等々、持続可能な資源とするために多大な努力が必要なわけでございまして、公益的な観点あるいは経済財観点から、森林林野行政を一元的に管理する農林水産省林野庁といたしまして、関係省庁、特に環境庁ともよく連携をとりながら、森林の果たす役割の持続的な発展に努力をしてまいりたいと考えております。
  12. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 今、中川農林大臣から御答弁いただきました点と重複するかもわかりませんが、先生地球環境の面からいかがかというお話でございますので、限定して答弁をさせていただきたいと存じます。  森林は多様な野生生物種生息地となっているために、生物多様性保全観点からその保全は極めて重要であると認識をいたしております。また、地球温暖化原因となる二酸化炭素吸収、固定することから、地球温暖化防止観点からも極めて重要であると認識をいたしておるところであります。  先般来、中国洪水であるとか、またエルニーニョ現象が露呈いたしておりますけれども、それらの原因もこの森林伐採から起きたとも言われておるわけでありまして、それらの大きな災害に対する防災的な役割も果たしておる、こう思っておるところであります。
  13. 海老原義彦

    海老原義彦君 今、両大臣からるるお話のありましたとおり、私も森林重要性というものは非常に大変なことだろうと思っております。最後に環境庁長官からのお話の中に出ましたように、中国洪水というような、あれを防止する治山治水的な面、これも非常に大事だろうと思うんです。  この治山治水ということに関してさらに地球環境的に見ていきますと、炭素を保有するという作用と同時に水を保有するという作用もあるわけでございまして、地球温暖化に伴って北極の氷が解けて海面が上昇するというようなのは、結局地上水が海へ入ってくることでありまして、地上の水をたくさんとどめることが海面上昇を防ぐということにもなるわけでありまして、そういう意味合い一つある。治山治水と同時に、その森林保水力というのは、地面の保水力だけでなくて木それ自体がほとんど水でできているようなものでありますから、そういった地上の水をふやすという意味合いもあるんだと。  今、地球の全陸地は非常に荒れ地が多くなっておるときでございます。そういった荒れ地に対して森林をふやしていくということ、これは農水大臣お話にもありましたように、森林を保養、持続していくということは非常に大事だろうと思うのでございます。  さて、日本森林の全国土に占める面積は一体どれぐらいの割合なのか、それは国際的に見てどうなのか、これはひとつ、御専門でないかもしれませんが、環境庁長官からお答えいただきたいと思います。
  14. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 環境庁資料でお答えをさせていただきますけれども、我が国国土に占める森林割合は六七%であります。これは世界平均の約二七%と比較して非常に高い値であるわけでありますけれども、六五%のブラジルなどと並び世界有数森林国になっておるわけであります。  ちなみに、森林率の高いところを申し上げますと、一番がパプアニューギニアで八二%、韓国が七七%、三番目の日本が六七%、それにフィンランドが六六%という数値になっておるわけであります。
  15. 海老原義彦

    海老原義彦君 日本が上から数えて非常に上の方になっておるなという感じがするわけでございまして、例えばドイツなどは森林の国だと言われておりますけれども、私の手持ち資料ではわずか三一%しかない。カナダとかロシアとかこういう国だったら森ばかりだろうと思うけれども、カナダが五四%、ロシアが四五%というようなことで、日本の方がむしろ多いんだと。  しかも、日本では先ほど農林大臣がおっしゃいましたように天然林に対して人工林、一生懸命森をつくっておるというその作業が非常に大変なことでございますが、人工林が四割以上を占めて、天然林五割強と比べてほぼ同じぐらいになっておる。これだけ大変な努力をして、いわば日本林業環境産業であるとすら言えるわけでございます。  そういったことを、環境庁長官、ひとつ世界に対して地球環境日本はこんなに森林の面で貢献しているんだということを胸を張って言っていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  16. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 胸を張って言うのがいいのか悪いのか、いろんな複雑な気持ちになるわけでありますけれども、我が国亜熱帯林から亜寒帯林に至るまで多様な森林を有しておりまして、そこに生息する生物多様性も非常に豊かなものになっておるわけであります。また、森林二酸化炭素吸収源としても重要な役割を果たしておることは、先生今おっしゃったとおりでございます。  このような我が国の豊かな森林を守ることは地球環境保全する上で大切なことであり、種々の国際的な議論の場において森林保全重要性を訴えておるわけであります。昨年の暮れに中国江沢民主席一行が来日されましたけれども、そのときにも黄河の洪水に対しまして森林伐採が大きな因であった、こう言われておるわけでありまして、それがためには植林に励んでいかなきゃならない。日本としても大変協力をいたしておるわけでありまして、各民間団体からも植林のために育苗を奨励いたしまして、その育苗に対する資金援助もいたして森林伐採の跡地に植樹させていただいておるわけであります。  世界各国においてそういう傾向がございまして、まさに先生が胸を張って物を言えというようなことは所々方々で繰り返しておるところでありまして、それも高く評価されておる、こう思うわけでありまして、これからも胸を張ってそういう発言ができるように体制固めをしていきたいと思っておるところであります。
  17. 海老原義彦

    海老原義彦君 いいお話をありがとうございました。  今のお話で私も思ったところがあるわけでございますけれども、中国にNPOが木を植える運動をしておる。私も、中国に桜を百万本植えるんだという運動を岩手県を中心にやっておるグループがありまして、それに参加したこともございますけれども、そういった海外での植樹ということも非常に大事かと思います。  翻って日本の国内の状況を見てみますと、それだけ立派な林業が一体これからどうなるんだろうかという問題があるわけでございます。我が国林家経営状態というのは方々で非常にこれはやっていけないんだという話を耳にいたします。その実情はどうなっておるのか、ひとつ農水大臣、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  18. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現在の例えば林家所得規模別に申し上げますと、二十ヘクタールから五十ヘクタールの林家は二十一万五千円、これは平成九年の年間所得でございます。五十から百ヘクタールが五十二万七千円、百から五百ヘクタールが百九十八万円で、平均三十八万五千円ということで林業だけで専業としてやっていくのは非常に厳しい状況になっております。  この原因といたしましては、外材の安価な輸入、そしてまた戦後、さっき先生お話にも少しありましたが、我が国は二千五百万ヘクタールのうち戦後を中心に一千万ヘクタールを植林しておりますけれども、まだまだ適齢伐期に来ていないという木が大宗でございまして、材としての価値としてはまだまだもう少し時間がかかるということ等もございます。いわゆる林業木材の利回りという言葉を我々使うわけでありますけれども、非常に低い数字になっていて、日本の山を守る中心的な存在の一つであります林業経営というものの状況は非常に厳しいというのが現状でございます。
  19. 海老原義彦

    海老原義彦君 今の大臣お話にもございましたけれども、やはり一番の根本原因木材価格低迷ということじゃないか。木材というのは結構相場の立つ商品でございまして、上がったり下がったりしているわけでございますけれども、ここ数年来長期低迷が続いておる。そういうような状況をひとつ農林大臣からもう少し詳しくお話しいただきまして、あわせてそれに対してどういう対策を考えておるかということをお話しいただきたいと思うんです。
  20. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 原因といたしましては、先ほど申し上げたような外材あるいは景気の動向にも影響されますが、特に住宅着工戸数減少といった状況が複合的に林業経営を厳しくしているという状況だと思います。  外材との比較で申し上げますと、昭和五十五年を一〇〇とした平成十年の材価は、国産杉丸太が四九、米ツガが七三ということで、国産材下落率の方が大きいということでございます。これには、実は国産材がまだ適齢伐期に入っていないと先ほど申し上げましたが、これに加えて国産材の製品が乾燥材率が低いという、品質面で立ちおくれている、それから小規模分散的な供給体制で、大量に入ってくる外材住宅メーカーが利用するということに対応し切れていないというような状況もございます。  したがいまして、何としても山そして林業を守っていくために、一方では労働力減少高齢化といったまた厳しい現状もございますけれども、材としてもあるいは山そのものに対しても、子供たちも含めた国民のニーズにこたえる山そして林業というものを維持していくために、生産性の向上、経営支援のための諸施策、あるいは森林組合等森林施業の担い手の育成、そして木材需要の拡大といったような施策を総合的に講じております。  さらには、山のあり方そのものあるいは林産業あり方そのものの基本的な課題、中長期的な課題につきまして、現在、検討会を開きまして、いろいろな立場の専門家皆様方の御意見をいただきながら、一つの中長期的な方向性施策として取りまとめていかなければならないというふうに考えております。
  21. 海老原義彦

    海老原義彦君 御丁寧な解説で、いろいろな問題を一つずつ当たって考えていっているんだという状況はよくわかるわけでございますが、やはり一番の基本的な原因は、日本木材、杉にしろ、ヒノキですらも質的にどうなんだろうか。外材割合高くなって、価格堅調で推移しているというお話もございましたけれども、やはり外材に比べてどうしても国内産の杉は品質が少し悪いのではないかということが根本にある。私は、その根本の問題をもう少し深く考えてみますと、日本木材産業林業はいわば米づくりと同じだと思うんです。米は本来熱帯の作物でありますけれども、今や北海道まで品種改良によりつくれるようになって、なかなかいいものができます。しかし、大変な手間がかかる、米づくりというのは大変なことであるということはもう日本国民みんなわかっておるわけです。  さて、日本の杉というのは、戦争中、お山の杉の子という歌がありまして、はげ山に杉を植えようという運動が起こって、戦後も引き続き杉をどんどん植えてきた。はげ山さえあれば杉を植えたと。杉というのが日本の山林なんだと、そういうふうに考えてきた。そこにやはり間違いがあったんじゃないだろうか。杉というのは本来ある程度どこにでも生育しますけれども、しかし適地適産ということがあるんじゃなかろうか。そういう問題をもう少し考えていったらどうなんだろうかなと思うわけでございます。言うなれば、環境条件に合った無理のない樹種をこれからは植えていくべきだ。杉一本やりということを改めていくべきじゃないか。かなり無理な条件のもとで杉を植えておるということ、これが日本林業の非常に手間がかかる、また材質も余りすぐれたものにならないという一つの要件ではないのかなという気がいたすわけでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  22. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 戦後の約五十年間の植林で一千万ヘクタールという大変な森林資源を国民的な運動の中でやってきたわけであります。  確かに先生指摘のとおり、一つの区切りとして振り返ってみますならば、杉というのは比較的全国どこにでも植えられる、あるいは成長が比較的早いということのメリットは当時としてはありましたけれども、やはり山として、あるいは材として新たな工夫が必要なのではないか。例えば複層林施業でありますとか長伐期施業でありますとか、これも財源とか手間がかかるものですから、なかなか間伐がきめ細かくできないことによって、材として、木としての品質というものに影響が出てくるわけでございます。  そういったようなことも含め、今申し上げたようなことを初めとして、例えば広葉樹を重点的にこれからは植えていくとかいうこと、そして立派な木をつくり、そして木材としても品質の高い、付加価値の高い材をつくっていくように、文字どおり川上から川下まで一貫した森林あるいは林業体制というものを改めて検討し、また反省点も幾つかあると言わざるを得ませんので、先ほど申し上げたような基本的な懇談会の御議論の場も含めまして、当委員会の先生の御指摘も含めまして、我々としても検討していかなければならないというふうに考えております。
  23. 海老原義彦

    海老原義彦君 適地適種ということを考えていきます場合に、日本の林というのは本来どんなものであったんだろうか。いわば人間の手が入る前の、例えば縄文時代にはどうだったんだろうかと。縄文時代には東北地方でもトチだクリだというような広葉樹があって、それを食って生きていたわけでございます。  日本というのは南北に非常に長い島でございますから、南は亜熱帯から北は亜寒帯まで、中間が暖帯、温帯といったような、そういったそれぞれの地帯に応じて昔から生えていた在来の木というのはやはりその土地に一番適したものではなかろうか。そういうことを考えて環境に合ったものを植えていく。  もちろん、昔からあった木が全部何でもいいかというと、それは生産性などの面でいろいろと考えていかなきゃならぬということもあるかと思いますけれども、これは私が云々いたしますよりも、せっかく林野庁の大専門家が来ておられると思いますので、亜熱帯林、暖帯林、温帯林、亜寒帯林といったものの、我が国でのどの辺の地理的位置がそういうところなのか、そこにある代表的な本来の樹種はどんなものなのか、ちょっと御説明をいただきたいと思うんです。
  24. 山本徹

    政府委員山本徹君) まず亜熱帯林でございますが、位置としては九州の種子島、屋久島以南及び小笠原諸島でございまして、代表樹種がマングローブ、ガジュマル等でございます。  それから暖帯林でございますが、これは中部以南、九州、中四国、近畿、それから東北の南部以南が暖帯林でございまして、代表樹種としてはシイ、カシ、タブでございます。  それから温帯林、これは主として本州の北部でございまして、中部・関東地方の丘陵、山岳、それから東北、北海道西部まででございますが、代表樹種がブナ、ミズナラでございます。それから、亜寒帯林は北海道の中部、東部、それから本州の山岳地帯の山頂部周辺でございますが、代表樹種はエゾマツ、カンバ等でございます。
  25. 海老原義彦

    海老原義彦君 今の御説明のように、比較的南の方では常緑広葉樹、いわゆる照葉樹が本来の木であると。それで、中ぐらいへ行きますと、落葉広葉樹、常緑広葉樹、いろいろまざっておると。もっと北の方へ行きますと、今、代表樹としてエゾマツとカンバをお挙げになりましたけれども、北海道ではセンノキなどというのも広葉樹として有名な木のようでございます。また、今お挙げにならなかったもので、南の方で言えばクスノキというようなものも有名なものだろうと思うんです。  そういったいろいろな樹種を杉にこだわらないで植えていくことによって、日本林業はもっと環境に沿ったもの、環境に沿ったというのは育てやすいということ、それと同時に生物多様性を満たしていくというような地球環境的な意味も出てくるのかなと思うわけでございます。  具体的に申しますと、先ほど農林大臣もちょっとお触れになりましたけれども、複層林といったような構想あるいは長伐期林といったような構想があるわけでございます。  複層林というのは、例えば現在杉の林であるというところを、大きいものを一本残して周りに、本来土地柄が落葉広葉樹の土地であるならば落葉広葉樹を植えていくというようにして、さらにその下草というような、何層にもなった複層を私はイメージしているわけでございますが、農林大臣、そんなような考え方でよろしいのでございましょうか。
  26. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生の御指摘のとおりだと思います。  いろいろな樹種、それから伐期をずらしていくということを中心にして、文字どおり山林の持つ力が最大限発揮できるようにしていこうということでございます。
  27. 海老原義彦

    海老原義彦君 長伐期林というのは、これはある程度木を太く大きく育てていく、そのためには、植え方ももっと今よりも間隔を広げて枝を張れるようにして、枝を張れば根も張るわけでございまして、土が流れるというようなことがないようにしっかりと根が張れる。これは地崩れ防止とか砂防とか、そういったものにも大事なことかと思うわけでございますし、また保水力も増すということ、そういったようないろいろなメリットがあるのが長伐期林だと、そういうふうに漠然と理解しているわけでございますが、そういったことでよろしいのでございましょうか。
  28. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) おっしゃるとおりでございます。  一つだけ加えさせていただきますならば、材としての質もよりよくなるというふうに理解をしております。
  29. 海老原義彦

    海老原義彦君 さて、そうやってなるべく天然に近いような人工林を造成していくということがこれからの一つの行き方として大事でありますが、それと同時に、天然林そのものも残していかなければならない。やはり種の多様性とか遺伝子プールとかそういったことを考えていく。そういう地球環境的な問題だけでなくて、林業自体としても、天然林でうろのあるところでなければフクロウはすまない、フクロウがいなければネズミが繁殖し鼠害が起こるというようなこともあるわけで、そういった生物循環を維持していくためにも天然林を保護するということも重要かと思いますが、いかがでございましょうか。
  30. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 一千万ヘクタールの人工林以外のものを我々いわゆる天然林というような大ざっぱな言い方をしておりますけれども、日本は木とともに歩み森林空間を大事なものとしてまいりましたので、そういう意味で、天然林的なもの、厳密にどこまでが天然林かというのは何回も何百年もの間にやっておりますからなかなか難しいところもあるかもしれませんが、いわゆる天然林としてやっているものにつきましては、これは当然そこの植生あるいは森林を守っていかなければならないということで、この部分につきましては、自然公園法あるいは鳥獣保護法等のいろいろな法律もございまして、特に環境庁と密接な連絡をとりながらこの天然林の持続的な維持、そのための管理というものに十分注意を払っていかなければならないというふうに思っております。
  31. 海老原義彦

    海老原義彦君 天然林の保護管理については環境庁の所掌でもあるかと思いますので、これは環境庁長官からも一言、天然林の問題についてお話しいただけませんか。
  32. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 先ほど来先生から御質問がありましたが、動物の生息なんかが随分変化しておるということでありまして、昨年も中国に参りましたときに、長江の周辺には水害の後ネズミが大量に発生しておる、そして他の動植物が絶滅状態にあるということで、ネズミ退治をしなければならないというようなお話も伺ったわけであります。そういう生態系の変化ということについてやはり注目して対策を講じていかなければならないのでないかと考えておるわけであります。  そこで、天然林は多様な動植物をはぐくむ重要な生態系であるとともに、山岳とか河川と一体となって美しい自然景観を形成しておるのは御承知のとおりでございます。これらの天然林の保護、育成を図ることは、生物多様性保全、すぐれた自然景観の保護、さらには人と自然との豊かな触れ合いの観点からも重要である、こう考えておる次第であります。  そして、環境庁におきましても、従来より自然環境保全地域や国立公園などの指定によりすぐれた天然林の地域の適切な保全を図ってきたところでありますけれども、今後とも、これらの施策等を通じまして天然林の保護育成に取り組んでいきたいと思っておるわけであります。先生の御指摘のような天然林の保護育成について、万般の策を講じていきたいと思っておるところであります。
  33. 海老原義彦

    海老原義彦君 次に、林業に携わってきた人々、国有林野の労働者もそうでございますし、そうでない周辺の民有林の方々にしても、こういった方々はこれからやはり仕事の内容が変わってくるんだろうと思うんです。今までの単層林の施業と全く違う施業をこれからやっていかなきゃならぬ。また、それはどっちかというと労働力を余り要さないことが多くなってきて、反面、守備範囲は大変広くなってくるという気がするんです。  そういった転換ということについて、林野庁として積極的に進めていかなければならないと思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  34. 山本徹

    政府委員山本徹君) 先生指摘のとおり、これまで杉、ヒノキを中心とした人工林の育成に努力してまいったわけでございますけれども、森林国土保全、環境保全等の多面的な機能国民から求められるようになっておるわけでございまして、このために、御指摘のとおり天然林保全整備する、またこれまで以上に広葉樹を重視した施業を行う、また施業でも一斉造林、一斉皆伐から、大臣も御答弁申し上げましたように複層林の施業あるいは長伐期の施業あるいは針葉樹と広葉樹の混交林の育成といったような新しい施業の方法に取り組んでまいらなければなりません。  私ども、こういった新しい施業について、行政や試験研究機関あるいは現場の普及機関等とも一体となってこれに取り組み、国民のニーズに沿った多様な役割を果たすような森林の育成に今後一層努力してまいりたいと思っております。
  35. 海老原義彦

    海老原義彦君 次に、もう少し天然林の方まで頭に置いて考えてみますと、環境を保護するための施業というのはなかなか難しい問題でございまして、林のことをよくわかっている人がいなきゃいけない。そういう場合に、古くからやっておられる林家方々の御協力をいただいて、天然林保護という面でも今まで林業に従事してきた林家方々の御協力というのも非常に大事かと思います。  また、今度は逆の方の観点から、新しくそういった環境問題に目覚めて協力しようというNPOの方々、これは知識はないけれども熱意があるというような方々の御協力も必要かと思います。  そういったことについて、とりあえずこれは農林大臣にお答えいただきたいんですが、農林省としてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  36. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今度の国有林改革で、国有林の八割が公益的機能、二割が経済林としての位置づけというふうになりましたけれども、山全体をきちっと管理していくということについては責任の大きさを引き続き感じておるわけでございます。  そういう中で、いわゆる普段の枝打ちとか間伐、林道等につきましては民間に委託するということになるわけでございますけれども、やはり山全体をきちっと林野庁のプロの職員が見ていくと同時に、いわゆる先生指摘のボランティアやNPOによる森林づくりというものは、これは国民的な理解を深めるという意味でも非常に大事でございますし、繰り返しになりますけれども、先ほども申し上げました子供たちに山に親しんでもらうということも非常に大事でございます。  そういう意味で、森林ボランティアあるいは森林子供たちが見ていくときのインストラクターといったものを林野庁としても養成しておりまして、情報提供と同時に技術研修の実施等の支援策を、今文部省あるいは環境庁と連絡をとりながら、人材の育成、そのための技術研修というものに取り組んでおるところでございます。
  37. 海老原義彦

    海老原義彦君 今の問題について、環境庁長官、もし何かおっしゃることがあれば、一言お願いいたします。
  38. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 環境庁でも国立公園等々の管理のためにいろんなボランティア活動をお願いいたしておるところであります。近郊で、例えば箱根周辺でボランティア活動の皆さん方の募集をいたしましたところ大変な数の人に応募していただきました。我々が期待しておる以上にたくさんの人の関心を集め、そしてまた協力をいただけるということはまことにありがたい限りだと思っておるわけでありまして、その人たちの活用の場をいろいろとつくってまいらなければならないと思っておるわけであります。  このところ、NPOにしてもNGOにしてもボランティア活動の盛んな状態になりつつあるわけでありまして、私は、この傾向は非常にいい傾向じゃないだろうかと思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、自然との親しみ、そしてまた自然を美しく保持していくためにはどのような対策を講じたらいいか、それを日々考えながら問題の処理に当たっていきたいと思っておるところであります。
  39. 海老原義彦

    海老原義彦君 どうもありがとうございました。  農林大臣、十時から委員会でお忙しいようでございますので、まとめて農林大臣に最後にひとつお伺いいたしたいと思います。  国有林野事業の問題でございますけれども、昨年秋の法律成立で抜本的改革が緒についたわけでございます。まさに今年度から平成十五年を目指してやっていくということでございますが、その現状と今後の方向、方策といったものについてざっとお話しいただけませんでしょうか。膨大な中身でございますので、時間もございませんから、ざっとお話しいただいて、次の委員会にお出になっていただくということにいたしたいと思います。
  40. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 昨年御審議をいただきまして十月から新しい法律がスタートしたわけでございます。その中で、ポイントを簡潔に申し上げさせていただきますならば、先ほど申し上げた公益的な機能八、そして経済林的な役割を二ということで、それまでの公益林四五、経済的な役割五五というものを完全に逆転した位置づけにしたわけでございます。  それと同時に、事業の民間委託化をしていくということ等によりまして、職員の大幅な減少ということも一定の条件のもとで労使間で合意ができまして、実質、国有林の現場としては今年の三月一日からスタートをいたしました。大幅な森林管理事務所の削減等々、役所としての役割も合理化、統合ということにいたしました。  これは何を目的にしているかというと、やはり国有林野行政というものをきちっとやっていく、あるいは日本の全体の山をきちっと管理していくという最終目的のために、当時三兆八千億円ありました累積債務を独力で返せる、五十年かけてという大変長いタイムでございますけれども、材の公売あるいは林野庁の所有地の売却等で五十年かけて一兆円を自助努力で返していく、二・八兆円については一般会計の方にお願いをいたす、そしてまた一兆円分の利子については一般会計の方から充足をしていただくということで、三兆八千億のうちの一兆部分につきましては自助努力で五十年をかけてこの累積債務を解消していこうということでございます。  これと並びまして、国有林あるいはまた公有林、民有林との一体的な事業というものも民間業者も含めましてやっていくことによって、長期的な計画ではございますけれども、先ほど申し上げたように、これから適齢伐期の木が生えてくる、それから林業をめぐる環境も何としてもよくしていかなければいけないということで、山そのもの、あるいは森林空間、あるいはそこに住む人々、そしてまた森林木材産業、全体が持続的な発展ができるようにしていこうということで国有林野等の抜本的な改革を行い、現在平成十五年の集中改革期間までにスタートの方向性をつくっていきたいというふうに考えているところでございます。
  41. 海老原義彦

    海老原義彦君 農林水産大臣、どうもありがとうございました。あとは総務庁に対する質問でございますので、大臣、御退席いただいて結構でございます。  総務庁に対する質問でございますが、林野庁と環境省との間で林野行政に関して所掌がどうもダブっているというのは、よく読めばダブってはいない、だけれども個々の具体的な事例で考えていくと一体これはどういうふうに考えたらいいんだろうなというような問題があるので、ひとつこれは初めに具体的な問題を提起いたします。  森林計画というものを林野庁で立てます。全国森林計画あるいは地域別森林計画、流域森林計画といったようなものがあると思うんですが、その森林計画というのは森林に関する計画でございまして、そうすると環境庁が所管する森林に関する計画とこれはどういうふうに違ってくるのかなということ、ここら辺ひとつ事務局長さんから明快な御説明をお願いしたいと思うんです。
  42. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 流域別の森林計画であります全国森林計画についてでございますが、これにつきましては、森林の保続培養森林生産力増進任務とします農林水産大臣が引き続き策定することとしております。  そこで、環境省とのかかわりでございますが、これにつきましては基本法の規定の趣旨に沿いまして、まず全国森林計画の作成に当たっては農林水産大臣が環境大臣に協議すること、また環境基本計画との調和をするという規定を森林法に盛り込む、そういう措置をとることを先般の四月二十七日に決定いたしました方針で明らかにしております。  また、全国森林計画の下位計画であります国有林の地域別の森林計画につきましても、これは林野庁森林管理局長が策定する際には環境省と実務レベルの連絡調整を行うこととしております。
  43. 海老原義彦

    海老原義彦君 大変明快な説明でよくわかりました。  しかし、やはり基本的な疑問として残っておりますのは、いわばこれからの林業というものは環境産業的な面が非常に強くなってくる、そうすると、林野庁というものの所属は農林水産省でよろしいのか、それとも環境省にすべきなのか。環境産業的と申しましても、やはり中山間農村の場合にはどうしても農業と林業の一体性という問題もございますし、大変難しい問題でございます。ここら辺をとりあえずはすっきりと今のような体系にお分けになって総務庁では考えておられるわけですが、将来見直すとかそういった場合にどういうふうにお考えになるのか。  いずれにせよ、この林野行政というものはせっかく改革が始まったところでございまして、一体となってやっていくということが大事だろうと思いますので、そういった公益的な林野行政、環境的な林野行政にプラスになるような方向でお考えいただきたいと思うわけでございますが、総務庁長官の御答弁をお願いいたしまして、これで最後の質問といたします。
  44. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 農林水産省森林の保続培養森林生産力増進をその任務とし、森林資源の確保、森林整備、国有林野の管理経営などをその所掌事務としております。一方、環境省は、環境の保全任務とし、森林保全に関しては環境保全観点からの基準、計画の策定などをその所掌事務といたしたところであります。  それで、これは今回の中央省庁改革における基本法をベースにした考え方でありますので、それ以上のことは本来私が言うべきことではありませんが、私も政治家として日ごろから環境あるいは森林政策のあり方については非常に委員と同じような考え方を持っておりますのであえて申し上げますと、結局国がさまざまな市場で取引されるべき、つまり業として成り立ち得る世界ではなくて、そこで国が何か手を差し伸べなければ維持できないような産業というものは、これは一時的に手を差し伸べることであればよいのですけれども、未来永劫ずっとやっていかなくちゃいけないということについては、それを超える政策目標がなければそれを続けることは許されないわけでございますから、永久恒久的な政策目標は何かといえば、それは今おっしゃるいわゆる公益的機能というのはつまるところは環境政策のことでありますから、環境政策というものが将来のひとり林野だけではなくて農林水産全体について一つの柱になり得ることは、そういう日は来るというふうに考えております。
  45. 海老原義彦

    海老原義彦君 大変踏み込んだ御感触をいただいたわけでもないようでございまして、よく考えてみると当然のお話でございますけれども、いずれにせよ一歩詳しくお話しいただきまして、ありがとうございました。  終わります。(拍手)
  46. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。引き継ぎまして質問させていただきたいと思います。  今回の中央省庁の行政改革は、明治以来連綿と続いてきた官僚機構に大きなメスを入れるものであり、大変厳しい事業ではないかと思います。国の内外からも注目されておる事業でございますけれども、ぜひとも成功させなければならないと思います。こうした大改革のときに国会議員の一人としてこの審議に参加できますことはまことに望外の幸せと感じ、微力ながら全力を尽くして頑張らなければならない、そう思っておるわけでもございます。  今回の行政改革は、第一は行政機能の強化であり、二つ目は行政組織の減量化、効率化でございます。最初の行政機能の強化につきましては内閣の権限強化等、これは大きく言えば行政府の中の問題でございますから、そこで決めていけば何とかできると思いますけれども、二つ目の減量化の問題につきましては、相手があることでございますので、なかなか難しい問題がたくさんあろうかと思うわけでもございます。そういう意味では、私も民間企業に長くおりまして、また地方の議員もさせていただきました。そういう経験をもとにいたしまして、特に地方分権の問題につきましては教育の問題についてお伺いしたいし、そしてまた減量化の問題については独立行政法人の問題について中心お話を聞きたいと思うわけでもございます。  まず最初に、教育の問題でございますけれども、教育は私が言うまでもなく子供一人一人をいかに育てていくかということであり次代を担う人材の育成でございますから、大変大切なことは言うまでもないわけでございます。それだけに教育に果たす国の役割というものは大変大きなものがあろうかと思うわけでございまして、そういう意味では地方分権という形で権限を地方に移していくということに果たして全部なじむのかということでは、なじまない部分もたくさんあるように私は思うわけでもございます。  そういう意味では、教育の地方分権という問題に対して、どのような観点から国の役割というものを考えられ、実行しようとしておられるのか、大臣にお聞きしたいと思います。
  47. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) お答え申し上げます。  教育行政におきましては、憲法で定められました国民の教育を受ける権利を保障していかなければなりません。そういう意味で、今御指摘のように、全国的な教育ということが問題でございまして、全国的な教育の機会均等を確保する、それから教育水準の維持向上を図る、こういう観点が非常に大切でございます。そこで、国、都道府県、市町村がそれぞれの責任と役割を果たしながら互いに連携、協力していくことが基本であると考えております。  こういう考え方で、国は一体何をやるかということでございますが、国は、教育行政における基本的な制度の枠組みの制定、それから全国的な基準の設定、必要な財源援助などの役割を担っていると思っております。また、国といたしましては、我が国全体の教育の発展充実を図る観点から、必要な指導、助言、あるいは是正の要求等を通じまして、地方公共団体における教育事務の適正な実施を確保することとしております。  文部省といたしましては、今後とも、このような国の責任と役割を十分果たすべく努力をしてまいりたいと思っております。
  48. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 大臣のお考えはよくわかりました。  実は、私、広島の出身でございますけれども、昨年四月、この参議院の予算委員会におきまして広島県の教育現場のありようが明らかになりました。早速四月には文部省から、異例のことでございますけれども、広島県に調査団を派遣していただき、そしてまた五月には十数項目にわたりまして是正勧告をしていただいたわけでございます。  こういうことを契機にいたしまして、広島県の教育も四十年来手がつけられなかったと大蔵大臣の宮澤先生が言われたように、大変厳しい中にありましたけれども、ようやく手がつき始めたという状況ではないかと思います。そうした中で、残念ながら去る二月二十八日には世羅高校の校長先生がみずから命を絶つという事件も起こりました。非常にまだ厳しい状況にございます。  そしてまた、去る五月二十一、二十二日には、自由民主党の参議院の政務調査会の方々が調査団を派遣していただきまして、そして現地におきましていろいろと力強い御指導をちょうだいしたということで、ようやく動こうかとしております。  このように、まだまだ文部省や中央の力をかりなければ教育の現場の風土の改善ができないということは本当に残念な限りでございますけれども、しかし、これがまた広島県の教育の現実でもあるわけであります。特に広島県の教育の場合には外部の団体、具体的には解放同盟でございますけれども、それの強い介入を受けました。そういう意味では、学習指導要領をいかに実施するかではなしに、いかに守らないかということに一生懸命やっている、言うなれば、ある意味では解放区になってしまっている教育現場もあるわけでございます。  こういうふうな状況の中で、なすすべのない市町村の教育委員会の実態を直接見ますと、教育、特に初等中等教育につきまして、私は大幅な権限を地方に移譲してしまうことが果たしていいんだろうか、正しいんだろうかというふうに思わざるを得ないわけでありまして、地方分権についても大変な危うさを感じておるわけでもございます。  そういう観点から、今回の改正につきまして幾つかの項目について具体的に御意見をちょうだいしたいと思うわけでございます。  第一が、第四十三条の改正でございますけれども、第四十三条では、県教委は、従来、市町村の教育委員会に対して県費負担教職員の服務の監督につきまして、「一般的指示を行うことができる。」と決めてありましたけれども、今回はこれが「技術的な基準を設けることができる。」というだけに変更になったわけでございます。  教員の服務につきましては非常に大きな問題があるわけでございまして、特に広島県の場合は、同和教育研究協議会への参加やら、あるいは教職員組合への参加等、職場で自殺するケースも非常に多くて問題もあるわけでございますが、そういう意味では、学校の秩序を回復するにはやはりこの服務の監督というものが大事なわけでございます。これを、指示を行わないで技術的な基準を設けるだけで県の教育委員会は市町村の教育委員会なり学校現場を指導できるんだろうかと思うんですが、この辺、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  49. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 県費で負担をいたしております教職員であります市町村立の小中学校の教職員は、その勤務する学校を設置する市町村の職員としての身分を有する者でございます。したがいまして、その服務監督につきましては市町村の教育委員会が行い、任免、分限、懲戒等の身分取り扱いなどいわゆる人事につきましては市町村教育委員会の内申をもって都道府県教育委員会が行うこととなっております。  こういう県費負担教職員制度の特殊性にかんがみまして、県費負担教職員の任免その他の進退を適切に行うため、現行の地教行法第四十三条においては、例えば都道府県へ提出する事故報告書や内申の様式等について、都道府県が市町村に対して一般的指示を行うこととされているところでございます。  今回の改正におきましては、地方分権推進計画を踏まえまして、今後は、地方公共団体の自治事務に関し国または都道府県は指示を行わないという一般原則に基づきこの一般的指示に係る規定を廃止するものでございますが、新たに服務監督等に関して都道府県教育委員会が技術的基準を設けることができるということになっております。これによりまして、今後とも、都道府県教育委員会と市町村の教育委員会が協力して県費負担教職員の身分取り扱いを円滑に行い、服務基準を確保できるものと考えております。
  50. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ただいまのお話でございますと、県の教育委員会と市町村の教育委員会が一体となって服務の監督はやる、やれるんだというお話でございましたけれども、そのように理解させていただいてよろしゅうございますね。  それでは、そのように理解させていただきまして、次の質問に移らせていただきます。  次は、同じように第四十八条の、これは指導、助言、援助の問題でございますけれども、従来は文部大臣は都道府県や市町村に対しまして「事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うものとする。」と決めてありましたけれども、今回は「行うことができる」と一歩下がった表現になっておるわけであります。同時にまた、第四項では、県市町村長は文部大臣に対しまして必要な指導、助言、援助を求めることができるということが新設されておるわけでございます。  この二つを考えてみますと、町からの要請があったときだけに文部大臣が必要な指導、助言、援助ができるんではないかというふうな読み方にもとれるんですが、そのようにとられますと大変なことになるわけでございます。その意味では、大臣が必要と判断した場合にはいつでも指導、助言、援助ができるという形でのこの「必要な」という意味なのか、あるいは先ほども申し上げましたように、文部大臣は求められたときのみ必要な指導、助言ができるのか、二つの解釈が対立するわけでございますけれども、どちらの解釈に文部省としては立っておられるのか、御指導願いたいと思います。
  51. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) ただいまの御質問に対して、簡単にお答えすれば、両方できるということでございます。  もう少し詳しく申し上げます。  地教行法第四十八条の改正は、地方分権推進計画及び中央教育審議会答申を踏まえまして、各教育委員会が地域の需要に応じ主体的かつ積極的に教育行政を展開することができるようにするという観点から、地方公共団体の判断を過度に制約することのないよう指導等のあり方を見直すものでございます。  具体的には、第一項につきましては、指導等を「行うものとする」との規定を「行うことができる」と改め、御指摘のとおりでございますが、従来、指導等について、文部大臣の責務として考えられていたものを文部大臣が必要と認める場合にその主体的な判断により行うことができる旨を明らかにしたものでございます。  なお、第四十八条第四項は、文部大臣または都道府県教育委員会が主体的な判断により行う指導等とは別に、地方公共団体の長または教育委員会が文部大臣または都道府県教育委員会に対し指導等を求めることができると規定したものでございます。  そういう意味で、御指摘のように都道府県教育委員会や市町村教育委員会の求めがあって初めて文部大臣が指導等を行うことができるというのではございませんで、求めがない場合でも文部大臣は第一項の規定に基づきましてその主体的判断により指導等を行うことができるというものでございます。
  52. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ありがとうございました。今の大臣お話でちょっと安心いたしました。  第四十八条一項は、必要な場合には文部大臣ができるんだということですから、従来の「行うものとする」と実質的には変わらないんだというふうに理解していいんではないかと思いますが、よろしゅうございますね。わかりました。  それでは、第三点目でございますけれども、第四十九条でございます。  これは、都道府県の教育委員会が管理運営の基本的事項につきまして教育水準の維持向上のために必要な基準を設けることができるとありましたけれども、これが今回全面削除されたわけでございます。そういう意味では、各学校間いろいろとアンバランスがあっても困るということもございましてそうした形での基準を決めることができたわけでございますが、今度はこれができないということになりますので、現場で混乱が生じやしないかということも危惧されるわけでございます。  そういう意味では、都道府県教育委員会の教育水準の維持向上のための努力を否定されたような感じがせぬでもないわけでございますし、同時に、市町村に対する県の指導力が弱まりはしないかということを懸念するわけでございますけれども、文部省はこれにつきましてどのように対応すべきだというふうにお考えでしょうか。
  53. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 結論的には、特段の問題が生ずることはないと考えております。  もう少し詳しく申し上げます。  現行の地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十九条は、市町村立学校等の組織編制等の管理運営の基本的事項について各都道府県教育委員会が必要な基準を設けることができるものとしているところでございます。今回、地方分権推進計画において、従来地方自治法において都道府県の事務とされてまいりました市町村の事務の処理に関する一般的基準の設定など統一的な処理を必要とするものについては廃止されることから、本条の事務についても廃止することとしたものでございます。  しかしながら、各市町村においては学校の管理運営の基本的事項について学校管理規則が定められており、本条に基づく各都道府県の基準等が廃止されても特段の問題が生ずることはないと考えております。  都道府県は、今後とも、広域的な教育事業を実施するとともに、学校の管理運営など市町村における教育事業が適切に行われるようこれを支援するという役割を持つものでございまして、地教行法第四十八条により、市町村教育委員会に対して必要な指導、助言等を行う権限を有するものでございます。
  54. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ただいまの大臣の御説明で、基準の設定は削除されるけれども、事実上そういう意味ではこれからも大丈夫だというお話でございますね。安心いたしました。  それから次は、第五十二条の措置要求の問題でございますけれども、従来は、文部大臣は、教育に関する事務の管理、執行に関し、法令違反または著しく適正を欠き、教育本来の目的達成を阻害していると認めるときは、違反の是正または改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができるとあったわけでございまして、非常に強い権限のように思ったわけでございますが、これが全面的に削除されたわけでございます。また、従来は第二項では文部大臣が必要と認める場合は市町村に対してみずから当該措置を行うことができる、県の教育委員会を飛ばしてやることもできるんだというふうな形で文部大臣のリーダーシップが非常に強く決められておったわけでございますが、これが今回全面的に削除されるということになったわけでございます。  そういう意味では、文部大臣の地方公共団体に対する指導権が大幅に弱められたような気がしてならないわけでございますけれども、文部大臣の指導性というものは今後どういう形で維持しようとされているのか、お尋ねしたいと思います。
  55. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 地教行法第五十二条は、内閣総理大臣による措置要求を定めました地方自治法第二百四十六条の特例といたしまして、教育事務に関して文部大臣から都道府県、市町村の長または教育委員会に対して同様の措置要求を行うことができることとしております。  今回の地方自治法の改正案におきまして現行の総理大臣による措置要求制度は廃止することとされており、これを踏まえまして地教行法の改正案におきましても文部大臣の措置要求制度を廃止することといたしたものでございます。  今後は、地方自治法の改正規定に基づきまして、地方公共団体における教育に関する事務の処理について、それが法令の規定に違反していると認められた場合、または著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害していると認められる場合には都道府県または市町村に対し是正の要求または是正の指示を行うこととなります。  文部省といたしましては、改正後の地方自治法の規定に従って適切に対処すると考えておりますし、地教行法第四十八条の指導、助言等を通じまして各都道府県及び市町村における教育事務の適正な執行の確保に努めてまいりたいと考えております。
  56. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ただいまの文部大臣お話を聞きましてちょっと安心したわけでございますけれども、そういう意味では法令違反があったり不適正な状況が続いたり、あるいは公益を害しているというふうなことが教育現場で続けば、これについては断固とした姿勢で地方自治法に従ってやるということでございますので安心いたしました。  このことをこうしてしつこく聞きましたのは、教育現場ではなかなかうまくいっていない点が多いものですから、そういう意味でこれについての解釈を大臣の口から公の場でお聞きしたいということであったわけでございまして、どうもありがとうございました。  それでは、引き続きまして独立行政法人の問題についてお尋ねしたいと思います。  行政の減量化あるいは効率化の大きな手段として、今回独立行政法人という方法がとられることになったわけであります。簡単に言いましたら、自治省を中心とした機関が行政組織の外に出ていくということでございまして、民間企業のリストラ等で使われる分社化に似たような手法ではないかと思うわけでございますし、今回の定員削減のまた大きな目玉でもあろうかと思うわけでございます。  しかし、よく見ますと、民間企業の場合と違いますのは、独立行政法人が独立採算を必ずしもねらわないで、別法人化されると言われながらも国の丸抱えの法人であるということでございます。そういうことでございますので、一つ運用を間違えれば形だけの定員削減ということになってしまって国民をだましたことになりかねないということにもなりますので、ここら辺についてはやはりしっかりした形で、ぜひとも国民の期待に沿う形でこの独立行政法人の運用をしていかなきゃならないだろうと私は思うわけでございます。  そういうことにつきまして二、三お尋ねしたいと思うわけでございます。  まず、基本法を読んでみますと、基本法では「独立行政法人のうち、その業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他当該独立行政法人の目的、業務の性質等を総合的に勘案して」「国家公務員の身分を与える」ということで、いわゆる特定独立行政法人の設立を認めておるわけでございます。  そういう意味では、何か一般の国家公務員の身分を与えられない独立行政法人が一般で、例外的にこういう場合は与えるんですよという言い方なものですから、例外的だろうと思って読んでおったんです。しかし、実際よく見ますと、八十九機関の約七万四千人でございますが、そのうちの何と八十五機関七万三千人ということで、人数にすると九九%が全部特定独立行政法人になってしまっている。一般のいわゆる国家公務員の資格を与えられない独立行政法人はたったわずか四機関で八百名ということでございまして、一%程度ということでございますので、そういう意味では、この形だけ見ますとまことに奇異に感ずるわけでございまして、主客転倒と言ってもいいんではないかと思います。  また、個別の機関をずっと見ますと、研究所やあるいは病院、印刷関係が多いわけでございまして、第四十条で特別に国家公務員の資格を与えましょうと言っているような条件に見合う、簡単に言うとストライキその他によって業務がストップしたら国民生活に大変大きな影響を及ぼすような仕事というのはどこにも見当たらないわけでございます。それなのに国家公務員の身分を与えられるというのは何か矛盾を感ずるわけでございますが、よくよく見てみますと、四十一条に、これまでの良好な労働関係に配慮するという項目がございます。ははあ、これだな、これを考慮されまして、その他の総合的に勘案してやるという弾力規定を適用されて、この特定独立行政法人に八十五の機関が適用されたのかなと、これは私の推測でございますけれども。  もちろん、労働組合との関係配慮がこうした組織を変えるときに必要なことは十分よく了解しております。しかし、民間の場合でしたら、既得権を保障するという形でその分だけは現在の人は全部保障するけれども、新しく採用する者にまでということは普通は考えられないわけでございますが、今回の場合は、その人にも全部公務員の身分を与えるということになっておるわけでございます。そうしますと、その分だけ経営の弾力性を欠くことにもなるんじゃないかということで理解に苦しむわけでございますけれども、こういうことになった経緯について、大臣、御説明いただければと思います。
  57. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  まず、十年一〇%の話でありますけれども、十年一〇%というのは基本法に書いたことでありまして、それの中には当然独立行政法人のことが入っているということは言えないわけでございます。  そして、今は十年二五%の削減ということを目標に掲げているわけでございますけれども、この中には独立行政法人化というものが入るわけでございます。  そして、この辺について、まやかしだとかペテンだとかいうことを言われるわけでございますけれども、小渕総理が自由民主党の総裁選挙で十年二〇%削減という目標を掲げたことは、これはまさに小渕総理のお考えでありますし、また小渕総理を、当時の総裁候補を支えたブレーンの方々のお考えでありますから、その方々がどういう気持ちで言われていたのかということが大切でございます。  そして私も、総務庁長官に就任をいたしまして行政改革担当大臣になりまして一週間後に、この点については総理のところに行って詰めてきたわけでございまして、それは独立行政法人化ということを含めて二〇%であるというふうに言明をされましたので、以後は、八月の初旬以降は一貫して、私は、二五%の中には独立行政法人が入っておりますということを言っているわけでございます。  残念ながら、そのことを正しく報道していただけないから、何か当初からごまかしたようなことを言われるわけでございまして、当初から正確に私の申し上げているとおり、あるいは小渕総理が申し上げたとおりに報道がなされていれば、何らそういう誤解はなかったはずでございますということをまず最初に申し上げたいわけであります。  続いて、国家公務員の身分の話でございますけれども、これはどういうことかといえば、私ども、この作業あるいは独立行政法人の意義づけというものの中で、それが国家公務員の身分を持っているか持っていないかということはそんなに大事なことなのだろうか、むしろそんなに大事なことではないというふうに考えております。  なぜならば、それは組織としてこの独立行政法人はみずから企業会計原則にのっとってディスクローズをするわけでございますし、また一般の民間の企業と同じようにある規模以上になりましたらば外部の監査を受けるわけであります。そして、しかもその独立行政法人の長、特に役員の中でも長の方々は国家公務員の身分を持たない、国家公務員でない、国家公務員の特別職になるわけでございまして、その実績次第で任期途中で交代をさせられるということがあり得るという、いわゆる民間の経営者と同じような立場に置かれるわけでございます。緊張をして経営に取り組まなければいけないということになるわけでございますので、従来の親方日の丸の国家行政機関とは全く違ったものになるわけでございます。  そういうことになりますので、国家公務員であるかないかということはそれほど大事な問題ではないというふうに私どもは考えてまいったわけでございます。  そこで、このときに独立行政法人の職員の身分についてどういう基準でやったのか。これは法律に書いてあることは基本法の四十条でございます。「業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他当該独立行政法人の目的、業務の性質等を総合的に勘案して必要と認められるものについては、法令により、その職員に国家公務員の身分を与える」、つまり「その他」というところに多くの独立行政法人の条件がこれを適用させたということでございます。必ずしも良好な労使関係だけを考えてそういうことをいたしたというわけでもないわけでございます。  そんなことで、先ほど申しましたいわゆる国家公務員型ということが何か従来の国家公務員の身分をそのまま守るというふうに御理解をいただかないようにお願い申し上げたいわけでございます。  なお、一たん一つの独立行政法人を特定独立行政法人というふうに決めたらば、そこは新規採用される職員も同じように国家公務員の身分を与えるということはそのとおりでございます。そこはまだ工夫の余地がないかということは私も最後まで検討いたしたところでございますけれども、今のところなかなか難しいということでございます。ただ、ほかにまだその本質を損なわないように工夫の余地があるのではないかと考えております。  それから、定員の管理については、明らかに独立行政法人は先ほど言いました特別職の役員が責任を持つわけでございますので、内閣が直接に定員管理について責任を持たないわけでございますので、国の総定員法の視野で物を考えるときには定員管理から外すというのは、これまた当然のことだと考えております。
  58. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 大臣の方から私が質問しないことを随分お答えいただいたんですけれども、予定しておったところをいろいろとお話しいただいたんで随分効率がよくなったわけでございます。  ただ、今の大臣お話の中で、国家公務員の身分を与えることが大したことないんだから気にせぬでいいじゃないかと、こうおっしゃるんですけれども、いかがなものでしょうか。  国民の立場に立ちますと、国家公務員の身分を与えるということに私は随分関心を持っているのが実態だと思うんです。それだけに、国家公務員の身分を与えるということでせっかくこうしていい制度をつくりながら、その大勢の方々をそういう組織を外してそんなにされながら、結局、数字の上のつけかえだけじゃないか、変わっていないじゃないかと。  実際は、大臣がおっしゃったように、会社の経営内容は違ってくるわけでございます。しかし、これはまだやってみなきゃわからないわけでございます。本当にそのようになればいいと思いますけれども、しかし、国家公務員の身分を与えたということによって、こうした仕事の場合に果たして大臣がおっしゃるような活力のある組織に生まれ変わっていくだろうかというふうに私は思うわけです。  仕事の性格から、地味な仕事ばかりでございますから、そういう意味では、国民の目にはなかなか変わったなという形では見えないんじゃないかと思うわけです。それだけに、この国家公務員の身分を与えることについては十二分な検討がなされたろうと思ったわけでございまして、そういう意味では、その他だとおっしゃったんですが、「その他」を考えるにいたしましても、やはり国民生活あるいは社会経済に大きな影響を及ぼしはしないかということを考えてスト権の防止等、そういうこともあったんだろうと思うんです。そういうことでこのことがやられたんだろうと思うんです。  それで、引き続いて今のことに絡みましてですけれども、国家公務員の身分というのは大したことはないと大臣はおっしゃったんですけれども、身分を与えられた会社の人間と与えられなかった会社の人間、具体的にどういうところが違ってどういうところが違わないのか、ちょっと具体的にお教えいただけませんでしょうか。
  59. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 前もって御通告いただいたことにはなかったわけでございますので、後ほど事務局からも補足をさせますけれども、結局は、国家公務員の身分があるかないかというのは、労働基本権に対する制約があるかどうかという問題に尽きるかと思います。したがって、給与については、人事院勧告で行われる、あるいは中労委の裁定で行われるというふうなことの違いになろうかと思います。  身分保障のあるなしというのは、独立行政法人の設計段階で身分保障をどうするかということは個別に盛り込むかどうかということになるわけであります。当然、その待遇あるいは身分保障についても、例えば民間の企業でも本人の意に沿わず簡単にやめさせることはできないわけでございますので、それは契約の内容でありますので、それほどの本質的な違いとは言えないと思うのでございます。  ちょっと補足を事務局、よろしいですか。
  60. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 今、大臣から御答弁いたしたとおりでございますが、ちょっと順番に申し上げますと、まず国家公務員の身分を持つ者と持たない者との違いで一番大きなのは、争議権がないかあるかということでございます。  それから、二番目の身分保障につきましては、国家公務員の身分を持つ者は法令の定める事由でなければ免職できないということでございます。それに対して、国家公務員の身分を持たない者については就業規則等において規定されるわけでございます。  それから、服務等でございますが、兼業の制限等々につきましても、国家公務員の身分を持たない者については就業規則等によって決められる。一般的にはこちらの方がより緩やかになるというふうに考えております。  また、定員管理につきましては、先ほど大臣から御答弁がありましたが、これはいずれも行政機関の定員管理から外れるということでございます。
  61. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 今お話を聞きましたように、結局、争議権があるかないかが基本的には違うので、身分保障だとか服務だとかその他につきましては、国家公務員であろうがなかろうが基本的には差がないわけでございます。  そういう意味では、そうした場合に、この八十五の機関をこういう形にしたことについては理解に苦しむわけではございますけれども、いろいろな組合の問題等あってやられたんだと思いますから、今後、国家公務員の身分があるということにこだわらない形で、大したことはないんだという大臣のお考えのとおり、自由な形でできるだけこの会社が運営されるようにしていただきたいと思うわけでございます。  それに絡みまして、新しいこの会社ですけれども、できるだけ弾力的に、それから活力のある形でやるためには、一つは実態的に民間の活力を活用する必要があろうかと思うわけでありますから、採用した人間を別な会計にはできないかもしれません。一般的にはできないにしましても、特別なテーマだとか臨時のテーマだとか、そういったものについては、それに適した有能な人材を期間を限って雇うとか、いろんな形での弾力的なものはやらなきゃならないんじゃないかと思うわけでございます。  そういう意味では、別個の雇用形態もあわせて考えていただく必要があるのではないかと思いますし、また、法人のいろいろな仕事を民間業者に委託するとかというような形でできるだけ民間の力を活用していただくようにして弾力化、減量化を図っていただきたいと思いますけれども、これについては大臣いかがでしょうか。
  62. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) まさにおっしゃるとおりでございまして、独立行政法人は自己責任であって、弾力的な業務運営を行わせる一方で、厳しい事後評価と見直しを行うことによりまして業務の効率性、質の向上を図り、透明性を確保することを目的にして設立させるものでございますから、当然、今、委員がおっしゃいました民間委託というのは、設立の後、最も意を用いて効率化に努める手段であろうかと考えております。  特に、独立行政法人が新規採用についてどうしているのかということは最も注目されるところであって、安易なことでやっておれば、当然それは独立行政法人の評価の際に厳しい判断を下されることになると思います。
  63. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 次に、独立行政法人の業務の評価の問題についてお尋ねしたいと思います。    〔委員長退席、理事大島慶久君着席〕  基本法第三十九条で、独立行政法人の業務の実績を評価するために評価委員会を置くことになっております。そういう意味では、評価基準作成やら具体的な実績評価等、非常に難しい問題、重要な問題を担当するわけでございますけれども、この委員の人選は非常に重要だろうと思います。  と同時に、さらに総務省に設けられます独立行政法人評価委員会という評価委員会は、各府省に設置されます評価委員会の評価結果について意見の表明を行ったり、あるいはまた独立行政法人の事務事業につきまして改廃の勧告等ができるわけでございますから、大変重要な機能を持っている評価委員会でございます。  そういう意味では、この委員の選任につきましては、他の府省の評価委員委員と同じような形での選任とは違って、何かもっと重いものにする必要があるのではないかと私は思うわけでございます。具体的には、国会の承認等をやってもいいのじゃないか、それだけ重い仕事で、責任を持って行政に対する評価をやっていっていただきたいな、こう思うわけでございますけれども、この選任の問題については、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  64. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) これは、委員の言われますように、通常の審議会と同様に総務大臣の責任のもとで人選を行うということになっておりますけれども、それはどういうことかと申し上げれば、恐らく総務省が最も国民から注目をされる任務がまさにこの政策評価にあるわけでございまして、それこそこの人選というのは国民が広く注目するところでありますので、代々のこれから就任される総務大臣そのものの政治家としての真価が問われる場面でございますので、それは責任を持って総務大臣が人選をするということになるわけでございます。  人に任せるわけにはいかない、まさに本質的な総務省の仕事でございますから、自分の責任でもって選んで、それを国民の皆様から見ていただくということでなければいけないのではないかと思います。
  65. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 委員の人選の問題につきましては、今お話しのとおり、総務大臣がやられるんだと思いますけれども、そういう意味では十分慎重に選んでいただきたいというふうに要望いたします。  次に、評価の問題に絡みまして、特殊法人の評価の問題についても一緒にちょっと御提案、お話ししたいと思うわけでございます。  特殊法人は行政に関連する公的事務を遂行するために特別の法律によって特別の設立行為をもって設立された公団や事業団、公庫等でございますが、多種多様あるわけでございます。時代の変遷によりましてその役割、位置づけもだんだん変わってきているということで、これの見直しにつきましても基本法の第四十二条で整理合理化を進めたい、進めるんだという旨が記載されております。  そういう意味では、独立行政法人につきましては、そういった反省に立って評価委員会を設けて節目節目に評価して、そして次に進んでいくというふうな形になっておりますので、特殊法人で指摘されているような事業運営の非効率性の問題だとか経営内容の不透明性あるいは組織、業務の自己増殖等いろいろな問題がございますけれども、こういう問題は回避されることになっております。今回の評価委員会の設置を機にいたしまして、各府省で担当している特殊法人につきましても、この評価委員会で独立行政法人だけじゃなしにこうしたものについても評価できるようなことを考えてみたらどうだろうかということを御提案するわけでございます。  もし、それがどうしてもできないのであれば、新たにこういった特殊法人の評価システムというものを御検討いただく必要があるんではないか、その方が望ましいのではないかと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  66. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  特殊法人につきましては、従来から業務、組織の肥大化や民業圧迫を防止する事後評価の仕組みの不十分さという問題を指摘されてきたところであります。  そこで、内閣におきましても、累次の閣議決定に基づいて整理合理化、運用改善、そして整理、統廃合の法案を今国会中も幾つも成立させていただいているところでございます。そういう今までの枠組みでの改革努力をいたしてきたところでございます。  そして今回、独立行政法人制度を新しく設けて、それもまた今、国会に御提案しているわけでございますから、それが受け入れられた、それが成立をしたという段階で、特殊法人の問題点を解決しなくちゃいかぬということで独立行政法人を立案したわけでございますので、それは新たな枠組みのもとで、では独立行政法人と比べてどうかということを、新しい物差しを特殊法人についても当てることになるわけでございます。  したがって、民営化あるいは事業の整理縮小、廃止なども進めるとともに、存続が必要なものについては、独立行政法人化がいいか悪いか可否も含めてふさわしい組織形態、業務内容となるように検討をいたしたい。  また、政策評価について言えば、政策評価というものは各省の政策そのものを対象とするわけでございますから、各省の密接な監督下にある特殊法人も当然その視野に入ってくるわけでございます。
  67. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 よくわかりました。  今回の行政改革の大きなポイントは、そういう意味ではプラン・ドゥー・シーを回していこうとしておられる点が非常に評価されると思うので、今のシーの部分についての、評価についてのお考え、よくわかりました。  そういう意味では、各省庁の業績についてもやはり評価をする必要があるんじゃないかと思いますので、そういう意味では行政評価法等を考えて、いろいろとこれからも御検討いただければいいんではないかと思います。  時間がございませんので次の質問に移らせていただきますが、独立行政法人の統合、一元化の問題でございます。  八十九ありますけれども、百名以下が二十九、百一から三百名までが三十五、三百一名から五百名までが十五ということで、五百名以下の機関が八十あるわけでございまして、大変多いわけでございます。これの統合につきまして、もちろんもうやっておられるんだと思いますけれども、最も研究機関の多い農水省関係ではどのように御検討されているか。特に農林水産関係の研究所等につきましては、私農村出身でございますし、農業問題についての非常に大事な機関でもございますので、これについてどのようなことを考えておられるのか、お知らせ願いたいと思います。
  68. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) お答えを申し上げます。  農林水産省関係の試験研究は、例えば作物品種の育成のように、大変時間を要しリスクが高いといった特性を持っております。その中核を担う国の試験研究機関の独立行政法人化に関しましては、こうした国が行うべき研究を着実に推進する体制を確保しながら、独立行政法人制度の持つ研究機関の自立性あるいは弾力性を高めることを通じまして研究全体の効果、効率の一層の向上を図ることを基本方針としております。  具体的には、連携効果の大きい分野の関係機関の大くくり化や、あるいは長期的なリスクの高い研究や基礎的研究についても中期目標や中期計画の設定等について適切な方法はないかという面で鋭意検討を進めております。
  69. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 まだ現在検討中のようでございますので、これからも今のお話のような形で十分検討していただきまして、頑張っていただきたいと思います。  では次に、研究所の関係でございますけれども、この八十九のうち五十が研究所でございます。しかも、人数は一万二千二百四十二名、しかしその中でいわゆる研究職というのは七千九百八十五名、約八千名で、三分の二が研究職で三分の一が事務管理の仕事をやっておられる方だと思います。予算が千六百三十四億ということでございますので、日本のナショナルスタッフとして、研究スタッフとして八千名の研究員が約千六百億の研究費を使ってやっているということでございます。  この人数なり金額が多いか少ないかについてはいろいろ意見があろうかと思いますが、しかし日本の電機メーカーや自動車メーカーのトップメーカーの研究費がどれぐらいかといいますと、三千五百億円前後でございます。三千億超しているわけでございますから、日本の企業でこの国の予算の千六百億を超している会社はたくさんあるわけでございます。  そういうような状況の中で、これからまたこれが新しく法人化されるわけでございますけれども、この人たちというのは研究機関といたしましても基礎研究に近い応用研究をやっているということで非常に大事な研究をやっておりますので、これをおろそかにしてはならないと私は思うんです。  ただ、会社の場合でもそうなんですけれども、合理化だとか何かそう言いますと、えてして研究スタッフが削減の対象になるわけでございますので、今後こういうことがないように、独立行政法人化した後もこうした研究スタッフについては十分な配慮をしていただきたいと思いますけれども、これに対して大臣はどのようにお考えでしょうか。
  70. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 独立行政法人制度は、国民生活及び社会経済の安定などの公共上の見地から見て確実に実施されることが必要な事務及び事業を効率的かつ効果的に実施することを目的としたものであります。  そして、まず御心配の点は、恐らく評価はどのようにするんだろうか、あるいは事業予算というものがどういうふうに確保されるんだろうかということかと思いますけれども、これは運営交付金の予算措置において各独立行政法人が担っている業務が確実に実施されるように十分配慮するわけでございます。そして、この細目について予算要求をするのではなくて、渡し切りの交付金、地方公共団体に渡せる交付金のような形で渡すということでございます。  結局、三年から五年の間に中間的な目標を設けてその目標を達成したかどうかということを評価するわけでございますから、目標の設定そのものが大切でありますし、またその研究機関の代表者、つまり役員の方々国民に対する説明努力というのが大変強く求められているものであります。
  71. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 研究関係の問題につきましては、ただいま大臣お話のように、特別な御配慮をこれからもお願いしたいと思いますけれども、ただ研究所の研究結果の評価につきましては大変難しい問題があります。そういう意味では、正しく評価してこの部分を充実強化していく必要があろうかと思います。  ただ、評価の一つの柱として、物差しとして特許があるわけでございますが、一九九七年の出願件数を見ますと、日本全体で三十九万一千件、約四十万件申請がされておりますけれども、役所の申請はわずか一千五十九件ということでございまして、〇・二%ということですね。役所の関係での特許出願が極端に少ないわけでございます。  これは予算面その他あるんだろうと思いますけれども、しかしこれを評価基準に入れるとかいう形でもっともっと知的財産を国の財産として守っていくように、またいいものであればこれは金になるわけでございますから、そういう形で指導していただきたいと思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。これは要望にとどめておきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。  それから、大臣が最初おっしゃった例の目標人員の問題でございますけれども、あれは何回聞いてもよくわからなかったんですけれども、きのう事務局の人に聞いてよくわかりましたのは、二五%になったと。二五%の中にはもちろん十年一〇%ということは入っているんで、これは必ずやっていくということですね。それに加えて、この特別行政法人等の合理化人員も入っていくんだということで、トータルでどうなるかということですね。しかも、そういう意味では随分大きな人数になりますから、それだけで達成できるかもしれないし、また国立病院までやりますと達成率は四〇%ぐらいになるけれども、そういうような考え方でやるんだというお話でございました。  どうもありがとうございました。(拍手)    〔理事大島慶久君退席、委員長着席〕
  72. 山下八洲夫

    山下洲夫君 民主党・新緑風会の山下八洲夫でございます。どうぞよろしくお願いします。  本来なら官房長官に冒頭御質問を数点行いたかったわけでございますが、何か記者会見のようでございまして、直接ではございませんが、総務庁も今度は総務省になりますし、総務庁長官も総務大臣になられますので、間接的には関係ございますので、まず総務庁長官自治大臣に冒頭お尋ねさせていただきたいというふうに思います。  これまでも何回も、明治維新、あるいは戦後の第二次改革、今回を第三次大改革と盛んに言われているわけでございますが、私は今回のこの法案、地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案、この提案説明は、読みますと大変すばらしい説明がなされているわけでございます。特に全部は読みませんが、「地方分権推進は、二十一世紀を迎えるに当たって新しい時代にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築しようとするものであります。」。それから、「これまでの行政システムは、全国的統一性、公平性を重視したものであり、」「今日においては、国民の意識や価値観も大きく変化し、生活の質の向上や個性的で多様性に富んだ国民生活の実現に資するシステム」を構築する。その次に、「国は本来果たすべき役割を重点的に担い、」と。私は全くそのとおりだと思います。  国は重点的にどういう役割を担うのかなというふうに私なりに考えますと、外交でございますとか、あるいは防衛でございますとか、全国統一でないと困ります通貨でございますとか、あるいは道交法のような社会的規制かなと、東京都と千葉県が左側通行と右側通行では車は走れませんので。  そういう意味では、全国的にどうしても統一しないといけないもの、そういうものを重点的に担って、あとは、この後にも書いてございますとおり、「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねる」、この精神でございます、この理念でございます。これから見てまいりますと、最近盛んに地方分権地方分権と、カラスは鳴かなくても地方分権は鳴いているという状況だと思うわけでございます。  私は、そういうことから考えますと、本当に今回そのように、第三次の大改革と言われるほど省庁再編を含めてなされているのかというと、大変な疑問を持っております。同時に私は、地方分権ではなくて、逆に地域主権とかあるいは地域主権の確立、こういうふうに法案名を変えるべきではないかなというふうに思います。  なぜかといいますと、中央対地方、あるいは国対地方、常にお上意識が抜けないんですね。この地方分権推進というのにも私は疑問を感じております。地域主権の推進なら、やはり地方と国・中央がある程度対等、協力関係ということの精神も入ってくるわけでございますが、まだお上意識が抜けないというふうに思っているわけでございます。  それぞれ基本的な考え方をお伺いさせていただきたいと思います。両大臣、お願いします。
  73. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えをいたします。  まず、中央省庁改革を初めとして、明治維新、それから戦後、以来三度目のということをたびたび総理もおっしゃるわけでございますが、そこはちょっと私は意見が違っておりまして、戦後の昭和二十二年のころの我が国状況はどうだったかと。あのときに日本人自身の手によって自主的に改革をするというものがあったんだろうかと実は思っておりまして、日本人自身の手によって改革をしようとするのは私は百三十年ぶりのことだろうと思いますので、ぜひ委員におかれましても、同じお気持ちでもって参加をしていただきますようにお願いをいたしたいわけでございます。  それと、今おっしゃった点はまさに目からうろこの落ちるような気がいたします。地域主権推進法ではどうかということは、まさにそれは本質を突いた問題の提起であろうと思っております。  そして、それに関連して申し上げると、私は、国の方の立場として分権ということを言うのと同様に、現在ある都道府県とか市町村の方からみずからの権利を当然、自分たちの自己決定権をよこせという運動がもっと盛り上がってよかったのではないかなと思っております。局部的に私は逆の陳情を受けることがあったものですから、それもぜひ覚せいを期待いたしたいところでございます。
  74. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 主権という言葉、政治的に使う場合はそういうことでもいいのかもしれません。つまり、私どもも実は自由党の中で議論しているときに、あえて地方分権という言葉ではなくて主権というぐらいのことで考えるべきだということを大いに議論したことがあります。ただ、厳密に法律的な世界の中で主権と言うなら、やはり主権在民という、つまり統治概念と無縁のものではない。  そういったことの中で、現行憲法の中で地方自治の本旨ということも書いてあるわけですが、やはり法律、国権の最高機関たる国会の決めた法律ということが上位概念になっているというようなことから、余り法律論の世界の中でそういうものを持ってくるのはいかがなものかというところは、そういう思いはあります。ただ、考え方として、従来の、ただ単に何か分けてやるというような発想ではなくて、その地域の自己決定権あるいは自己責任というものをより強固にすべきであるという言葉の意味において、地域主権という言葉を山下議員がお使いになることは、大変一つの見識を示す言葉だと私は理解しております。  今日までの経緯の中で、明治以降、終戦直後、今日という三つの大きな変動期と言っていいと思います。そうした中で、特に国と地方との関係については、何といっても明治以降の西欧の植民地化されてはたまらぬという思いの中で、一刻も早くこの日本国というものを近代化させて、そしてまさに諸外国に負けないそういう国に仕立て上げなければならぬと。国土の均衡ある発展という言葉もまさにそのうちの一つかもしれませんが、短期間の間に効率的に近代化を果たさせていくという、あらゆる分野において仕組みを変えるんだという中で、中央集権型の行政システムというものが極めて強固に構築されてきたことは事実であります。  戦後、新憲法下になりまして地方自治の本旨ということが入りましたが、やはりそういった培われてきた考え方がまだまだ残っていたのではないか。そういった意味で、今回、特に機関委任事務というものを廃止するという、明らかに行政機関としての位置づけを、いわゆる上級官庁対下級官庁という、国と地方との関係を上下の関係で位置づけておりましたこの規定を根本から改めて廃止するということは、非常に大きな私は前進したことであるというふうに考えております。
  75. 山下八洲夫

    山下洲夫君 総務庁長官が、確かに自前で改革をされるのは私も今回が初めてだと思うんです、百三十年ぶりではないかと。私は、明治維新にしましても黒船がかなり影響したのではないかなというふうに理解しております。その辺はもう御答弁は結構でございます。  機関委任事務の廃止で、確かに私はそういう意味では一定の評価はしているんです。だが、よく言われております国と対等、協力関係、こういう形にはまだまだなっていないんですね。ですから、大改革ではなくて、まだようやく大改革へ向かって第一歩、一合目を登ったかなという程度しか私は率直に言って評価しておりません。もうこの答弁は結構でございます。  大蔵大臣に、特に税財源の移譲の問題についてお尋ねしたいんです。  今度これだけ大改革と言われながら、私はそういう認識はしていないんですが、今もちょっと議論になったわけですが、長年の課題でございました機関委任事務制度の廃止など、地方公共団体に対する国の関与の縮小あるいは地方公共団体の自主性、自立性を高めるという意味では、一定の評価は私もさせていただいております。しかしながら、今回の法案では、税財源についてはほとんど私は触れられていないと思っているんです。  今回、何兆円ぐらい税財源が地方に移譲されるんでしょうか。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) お尋ねの問題意識はよく私にもわかっておりまして、これから大きく中央と地方の関係が変わらなければならないときに、税の方の問題、財源の問題をどうしているのかという、基本的にはそういうところに帰着するお尋ねですが、前にも申し上げましたように、今、国の財政、地方の財政、あるいは日本の経済と申し上げていいかと思います、極めて異常な状態でございまして、国の税収はちょうど昭和六十二年のところへ逆戻りしております。地方もそうでございますから、これが正常化、すなわち日本の経済が正常化いたしました成長過程にはっきり乗ったときには、どうしてもただいま御指摘の基本的に国と地方の行政、財政の再配分をしなければならない。  それはもう私は必至であると考えておりますから、ただいまの段階で、分権法によりますとこれだけ地方に仕事が移った、それだけの財源は渡さなければならない、当然のことだと思っております。したがいまして、大きな改革というものは必ずしなければならない問題でありながら、しかし今の日本でそれを行うことが不適当と申しますか、多分近い将来には必ずしなければならない問題だと、こう考えております。
  77. 山下八洲夫

    山下洲夫君 現在、もう今さら私が大蔵大臣に申し上げるのは釈迦に説法でございますが、歳出純計に占める割合は三対二、そして今度は租税総額に占める地方税の割合は逆の三分の一と。今御答弁ございましたとおり、仕事は与えるけれども、その仕事の裏づけになるお金は、経済情勢の推移を見てとか、あるいは今までにも年率二%ぐらいになったら検討できるのではないかとか、いろいろな答弁もございます。今もそのような御答弁であるわけでございますが、私はこういう財政が厳しいときでもやはり一定のものは、見合ったものは政治決断をしてでも移譲すべきだというふうに考えますが、その最小限の部分についてもその決断はできないんでしょうか。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今年度の予算を編成いたしますときに、一番問題が深刻でありました一つの問題は、やはり地方財政の問題でございました。したがいまして、ごらんのように今度の予算編成におきましては幾つかの異例な措置をいたしておりまして、これは中央、地方云々というよりは、もうそうしなければ地方財政というものはやっていけないという極めて異常な状況にございました。  したがいまして、まず交付税、地方の財源不足の対策として中央の減税がございましたから、それに従いまして交付税が影響を受けます。その部分についての地方の負担は国と地方が折半をする。それから、たばこ税を一部中央から地方に移しました。それから、法人税に関しましては交付税率の上乗せを実はいたしております。それから、不交付団体が非常に財政的な痛手を受けておりますから、地方特例交付金の創設をいたしました。  かなり無理と申しますか、いろいろなやりくりをいたしておりまして、このような状況が変わらない限りは来年度においてもこういうことはしなければならない。そういう意味では、国としてはできる限りの財政的な、支援といいますとちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、地方と合意をして処理をいたしております。このことは、また権限が移りますと当然それだけの財政需要が出ますから、そういうことでは少なくとも対応していかなければならないと考えております。
  79. 山下八洲夫

    山下洲夫君 平成十一年度の予算につきましては、国もそうですけれども、地方も財政が悪化しているための財政措置でございまして、この分権にかかわる措置ではございません。  せっかく、私はあえて地域主権と発言をさせていただきますが、進めるためには税財源の移譲が最も私は重要だと思っております。金は力なりと。金があれば権限は余り来なくてもかなりの権限も発揮できるというふうに思っているんです。同時に、今大変経済状況あるいは景気が悪い、こう言われていますが、こういう悪いときこそ税財源を逆に地域に渡すことによって地域がそれぞれ独自の発想で活性化する、そういう発想も生まれてくるんではないかなというふうに思っています。  ですから、私は一つの案としまして、現行の所得税の一〇%を地方に回したらいいんではないかなと思ったりしています。あるいは、現行の所得税から十兆円を地方に移譲してもいいなというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ちょっと長くなりますが、お許しいただけますか。  先ほど申しましたようなことで、やがて中央、地方の行財政を再検討しなければならないということはもうはっきりいたしております。その際にどのような行政の再配分が行われるかによりまして財源の再配分も変わってくるであろうと思いますが、その時期には恐らく少なくとも国税はやはり抜本的な改正をしなければならないだろう、地方税も私はそうではないかと思いますが、その中の一つ所得税に関係をいたしておると思います。  今、所得税は分けたらどうかという話がありました。今の段階で考えますと、所得税というのは、ちょっと理屈のようでございますけれども、国全体における所得の再配分という機能を持っておりますから、これはやはり基本的に国がしなければならないのではないか。あるいはまた、所得が都会において偏在いたしますので、これをナショナルベースで行いませんと財源の偏在が起こるだろうというようなこと等もございます。  いずれにしても、その問題はやはり基本的な国税体系の見直し、例えば所得税について申しますならば、少なくとも今非常に課税最低限が高い、そして最初の税率が低いというふうなことから、中の所得層は非常に国際的には負担が低いわけでございます。同時にまた、ことしの国会では児童手当について、これを税の控除でやるか、あるいは歳出でやるかという御議論もございました。それらのことが所得税自身についてございますので、したがいましてそういう問題については少なくとも将来の抜本改正のときに考えなければならないのではないかというふうに思っております。
  81. 山下八洲夫

    山下洲夫君 所得税は偏在がおありだというお話ございましたが、私はその点は認めさせていただきます。  私が申し上げたかったのは、もうまとめて申し上げますが、交付税法の六条の一、今三二%に交付税はなっていますね。これをせめて五〇%に、たったの二文字改正すればいいんですから、すればいいなというふうにも思ったりしているんです。なぜか。さっき十兆円とか一〇%とか申し上げましたけれども、アバウトで申し上げますと、交付税法の六条の一の三二%を五〇%にしますと、国と地方が大体一対一ぐらいの財政になるかなというふうに私なりに感じているわけです。  大改正するなら、本来なら地方が三分の二仕事をすれば三分の二の税財源は欲しいんですけれども、百歩ぐらい譲ってせめて五〇%ぐらいにこの際ならぬかなという気持ちで発言をしているわけでございますが、そこはもうなかなかガードがかたいようでございますので御答弁は要りません。  せめてお涙ちょうだいではございませんけれども、昨年秋の臨時国会で国鉄清算事業団等の特別委員会がございました。あのときに、十一年度でいいますと約二千六百億円強になるんですけれども、たばこ税が引き上げられまして、林野事業と清算事業団の赤字補てんに使われるということになったわけでございます。その分を除きますと、大体十年平均してみますとたばこ税というのが年間大ざっぱに二兆円、酒税も同じように年間大ざっぱに二兆円、こうなっているわけです。たばこのうちの半分は地方税でございますけれども、半分は国が持っていっている。この半分は一兆円ですから、もうこの際思い切って地方にゆだねたらどうか。これは割と偏在性がないんです。それから、酒税も今は国税になっているわけです。酒税も二兆円でございますから、これも偏在性がないんです。これもこの際思い切って、せめてそれぐらいは地方税に移してもいいのではないかなというふうに私は強く感じております。  お酒は、最近道端を歩きながら飲む人はいませんし、大体重いですから、買ったってなるべく自分のうちから近いところで買って自分のうちへ持って帰って飲みますから、偏在性はたばこ以上にないんじゃないかなというような気もいたします。その点から見ますと、まだ酒税は、お酒ではないけれども絞ればもうちょっと税が出るんじゃないかなという気も私はしているんです。  特に、昨年秋のあの特別委員会のとき、なぜたばこ税かと大蔵大臣にお尋ねいたしましたら、これは嗜好品だからと、こういう答弁がなされました。お酒は嗜好品でないんだろうか、お酒も嗜好品のうちに入るのではないのかなと私は思います。お酒の好きな人はつらいかもわかりません。私は酒もたばこも、好きと言っておきましょうか、この際ですから。  そうやって見ますと、日本酒の上級で一七・九%の税率です、ウイスキーで二一・九%、しょうちゅうの高い方、甲類で三五・八、ビールが一番高いのですけれども四六・五%なんです。それに対しまして、たばこは何と六一・三%、これが税金なんです。マイルドセブンでいいますと、一箱二百五十円でございますけれども、二百五十円のうち百五十三・三円は税金なんです。  これから見ますと、まだお酒はうんと絞れば液のように税も出ますので、せめてこの税率をちょっとアップすれば、今言いますと四兆円ぐらいはせめて地方税にこの際移せるのではないか。それぐらいなことは、わずかなことでございますから、大蔵大臣、ぜひ決断をしていただきたいと思いますが、その辺についてお考えをお願い申し上げます。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かにたばこ税につきましては、昨年、国鉄事業団の処理のときにいたしましたし、それから今年度の地方財政対策におきましても国の税率の引き上げ分を地方にお渡しいたしました。これは千百十三億円でございました。ですから、そういうことはあることであると思います。  ただそこで、実はここから先は、またああ言えばこう言うというふうにおっしゃられるかもしれないんですが、もう一つ、たばこ税の課税権あるいは酒税の課税権、それを地方に渡してしまうかということになりますと、これは議論のあるところと思いますが、このようなものの値段が地方によって違い得るということになるわけでございます。課税権を渡しましたら、税率は地方が決めますから。  そうしました場合に……
  83. 山下八洲夫

    山下洲夫君 そんなことはない。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いや、そうでございましょう。そうでなくてよろしいのなら、税収を分けるということであれば、それは現にやっておることですから。酒なんかは庫出税でございますから、酒税でいきますと、その地方だけが税収を得ることになりますので、その辺をどう考えるか。
  85. 山下八洲夫

    山下洲夫君 確かにたばこは庫出税じゃないんです。出口なんです。今お話ございました酒税は、それは兵庫県は蔵が多いからがばっと入るかわかりません。そうではなくて、あれもたばこと同じように出口にすればいいんです、蔵出しを変えて。そうすれば、お酒の偏在性が全国的にありませんから、沖縄だって、沖縄の何というのですか、マオタイですか、(「泡盛」と呼ぶ者あり)泡盛ですか。余りお酒を飲まぬものですから申しわけないです。  ですから、そういう意味では、私は、考え方を変えればこれはできるわけでございますので、もう御答弁いただきますと時間がなくなってまいりますので、できるということだけ申し上げておきたいと思います。  もう税の問題はこれぐらいにいたしまして、次へ移らせていただきたいと思います。  今回の法案によりまして、地方自治法の第一条の二、この第一条の二も大変すばらしいんです。これがやはり冒頭申し上げました地方分権の一番の柱ではないかというふうに思っております。もう時間がございませんので、読み上げません、改正案は。  国と地方の役割分担の規定が盛り込まれているのは当然でございますが、私は、これから国の仕事はできる限り、先ほどもちょっと触れましたけれども、スリム化をして地域に大いにゆだねていくべきであると。同種の規定は地方分権推進法で設けられておりますし、憲法制定とともに定められて、国会法などと同じく憲法附属法典であるわけでございます。  そのことから考えますと、この地方自治法第一条の二の趣旨に沿って、くどいようでございますが、私は税や財源を移譲しないといけないというふうに思っています。  今までの税財源の移譲について、特に自治大臣、やりとりの感想をお聞きしたい。自治大臣として、この一条の二を遂行するためには税財源は欲しい、大蔵大臣にせめてたばこ税と酒税ぐらいよこせという答弁を私は期待しているんですけれども、いかがでございますでしょうか。
  86. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 地方財政を心配していただいて、大変ありがたいと思っております。  これは既に本委員会でもたびたび大蔵大臣答弁で申されております。私も事地方財政のことだけ目を配っておればそれでいいということではありませんで、やっぱり今の日本の異常な経済の状況を反映して、国の財政も地方財政も同じように傷みに傷んでおります。これを何とか立て直さなければ、これは共倒れの状況になり得ると思うんです。  そういう意味で、まず経済が安定軌道に乗ること、そしてその上でどういう税収が、つまりどういう税源をもとにしてどういう税収がどれだけ入ってくるのか、安定的な状況でどういう歳入構造になるのかということをきちんと踏まえた上で、国と地方の間のそういった税源の再配分、見直しということをやっていかないと、ちょっと今個別のところだけやるとしても、必ずこれは当然のことながらまたどうせやり直さなければなりません。  私は、それよりか、さっきも御答弁がございましたが、特に平成十一年度におきましては恒久的減税を地方税においても行いました。あるいは、国税における減税のはね返りによる交付税の減収部分もあって、そういったもろもろの今回の減税措置にまつわる事柄に関しては、あるいはたばこの世界であり、あるいは法人税の交付税率の引き上げであり、当面の措置としてではありますけれども手当てをしていただいて、結果において、本年度においては地方税及び交付税を含めた一般財源という世界においては、これだけ厳しい環境の中でありますけれども確保できた。地方財政のトータルとして、個別の自治体が厳しくはあるけれども運営に支障を来さない手当てはできたものだと考えております。  いずれにせよ、分権との関係におきましてどんどん権限移譲がなされていく、そういったことで地方自治体の事務量そのものが増大をしていく。もちろん、一方で簡素合理化、効率化に努めていただいて行財政そのものの健全化ということを図ってもらわなければなりませんが、それにしても、事務量が増大していく、その部分に応じて当然のことながら財源面においても地方に移譲されなければ、これはバランスを失するわけであります。  結論においては、やはり先ほど来御指摘がありましたが、トータルとしての税収入の中で、今現在、国が約六割、地方が約四割、こういうことであります。一方で、歳出規模からいえば、九年度の決算ベースでいえば、おおむね地方が六五%、国が三五%ということであろうかと思います。  できるだけこの乖離が少なくなるような、地方税及び交付税の世界においてきちんとした対応措置をとっていかなければいけない、これが財政面における自主性、自立性を裏づけていく大事な柱であるという基本的考え方は全く同感でございます。
  87. 山下八洲夫

    山下洲夫君 時間がございませんので先へ走りたいと思いますが、感想的に申し上げますと、権限移譲にしましても私はまだまだ不十分だと思います。特に税財源につきましては大変不満を持っております。  きょうの委員会でも、余り権限を地方、地域へ移すと心配だというような質問もございましたが、私は、何といっても国民が主役であって、国民あって国があるわけでございますから、そういう意味で申し上げますと、まず地域も十分大事にしていただきたい、そのように考えております。  ですから、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、極論的にあえて申し上げますと、国で行うことは外交でございますとか防衛でございますとか通貨でありますとか、あるいは社会的規制が必要な道交法のような問題でありますとか、あるいは教育にいたしましても憲法に権利義務のことがきちんとうたわれているわけでございますからその範囲で後は地域に思い切って任せていく、やはりこれぐらい国が行うことによって大改革だなというふうに思われますので、これは意見として申し上げておきたいと思います。  そして、地域主権を進めるためにはどうしても私は市町村合併を進めざるを得ないと思っております。住民に最も身近で基礎的な地方公共団体でございます市町村の権限をいろいろと大きくしていかないといけないわけです。それと同時に、住民サービスを充実させなくてはいけない。そうしますと、今の三千三百の規模でいいか。これは皆さんはいいとは思っていないと思います、率直に申し上げまして。そういう意味では、一定の規模の団体が必要になってくるのは当然のことであろうと思うんです。  ただ、市町村合併をするのも、あくまで地域の住民が主役になった、住民の声を聞きながら自主的に解決、決定をしていく問題だと私は思うんです。  今回の一括法案の合併特例法の改正を見ますと、都道府県知事による合併協議会設置の勧告が盛り込まれているわけでございます。地域における自主的な取り組みを無視して、その裏では国が都道府県を通じて市町村の合併の推進を図ろう、そのような意図があるんではないかなという気がするわけです。そういうことをなされると地方分権、地域主権に反するんではないかと思いますが、自治大臣、いかがでしょうか。
  88. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 基本的な考え方は、今御指摘がありましたようにそれぞれの地域の住民が主役でありますから、そういう意味で自分たちがまさに合併したことのメリットということをよく御承知いただいた上で、できれば本当は住民運動なり、あるいは自治体が基礎になってそういう合併協議会が形成されていくということが一番大事なことだと考えております。そういう意味で、本法案におきましても、住民の発議権をより重視するような形の改正も今回は改正案の中に入っております。  ただ、ではそれだけで十分な形が期待できるのかというと、今回いわゆる合併特例債なりいろんな形でのさらなる財政的な支援措置も盛り込んだわけでありますが、やはり市町村の合併ということであればどうしてもその地域を一番わかっている都道府県が、もちろん地元の市町村の意向を無視して強権的に、あるいはその市町村の意向とは全く違った合併構想を持ちかけるということはとてもとても想定できません。しかし、自治体が、市町村が合併のためにいろいろなことをやろうとしても、実際問題、都道府県の協力がなければ成果が上がらないということも現実問題でございます。  そういった点で、本法案を成立させていただければ、できるだけ早期に合併に関するガイドラインをお示しして、その中でいろんな合併のパターンの類型などをお示ししながら自主的な合併が推進できるような方策を、そしてそれを都道府県が協力してもらうというような形をぜひ構築していきたいと考えております。
  89. 山下八洲夫

    山下洲夫君 現行法で市は五万以上とされているんです。特例で今四万人になされているわけでございますが、三万以上五万未満の市は百五十三団体ございます。三万未満が六十九団体、合計二百二十二団体あるわけでございますが、一たん五万をクリアして、今特例で四万をクリアして市になりますと、もうこれが三万になろうと二万になろうといつまでたっても市でいることができるんですね。こういうことですから、またなかなか住民が中心になって市になろうということにはならないと思うんです。  ですから、私はある意味ではペナルティー的なことを考えてもいいのではないか。五万の市の要件を満たした、満たしたならば、例えば五万を割ったということになれば、これは五万を割ったからすぐ市を取り消しますよというのでは余りにもむごいですから、やっぱり五万を行ったり下がったり行ったり下がったりするようなこともあるでしょうから、三年ないし五年ぐらい猶予期間を持ちまして、その間にずっと五万を割っていますと町になりますよと。そうすれば、そこの市の行政側の皆さんもあるいは住民の皆さんも、これはもう町になってもいいじゃないかという議論の結論でなられるかもわからない。いや、町になるのは格好悪い、やっぱり市でいたいよと言って住民が騒いで、では隣の町と合併しようかと。こういう住民が主体になって合併して、また市を維持していく。そういうことになれば、少しずつでも合併が住民主体で促進するのではないかなと思いますが、そういう考えについていかがお考えでしょうか。
  90. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) よく御理解をいただいている上での御議論をしていただいていると思っております。率直に言って悩ましい問題であります。  町村の合併を進めていこうということであれば、ある程度人口規模が五万ではなくても四万でも市として扱うという特例措置をやりましょうということによって町村の合併を促進しようという考え方がございます。これはもう既に現に行っている措置であります。  一方で、一たん五万という市ができたものの、その後どんどん人口が減少して三万を切っている市もございます。そういったところがむしろ周辺の町村とさらなる合併をしていくようなインセンティブを与えるべきではないかという今の発想法であります。そのことをももちろん考えておかなければなりません。  ただ、今現在は、少なくとも市ということによって認められたいろんな行政サービス上の職員構成等々、そういったところから、それを人口が減ったことによって、ではサービスをレベルダウンしていいかというとそういうわけにいかないということもあって、そのまま市としての存続ということになっているわけです。そういったところももう少し突っ込んで見直せ、インセンティブを与えるようにしろという今の御指摘でございますが、なお検討し勉強させてもらいたいと思います。  いずれにしても、趣旨は、市をやめて町村にさせるということ自体にこのお話のねらいがあるのではなくて、むしろ合併を促進しよう、小さな市は周辺の町村と合併をできるように、そっちにアクセルを踏んでやったらどうだという意味でのお話であると受けとめまして、これから都道府県に示す、先ほど申し上げました合併のいろんなパターン、いろんな例示の中にそういったことをも念頭に置いた検討をさせていただきたいと考えております。
  91. 山下八洲夫

    山下洲夫君 現在は市町村合併だけにちょっと目が向いているなというような気もいたしております。特に自治大臣は、私の目からあるいは耳からの範囲では、何となく道州制をイメージなさり、そして全国三百団体ぐらいがいいんではないか、そういうイメージを持たれた大臣だろうというふうに私は思っております。  それで、市町村合併ですら大変難しいんです。これが都道府県、県の合併になりますともっともっと難しいんではないかなというふうな気がいたしております。四十七都道府県、これで本当にいいんだろうか、これもある意味では合併したっていいんではないかな、逆にまた促進させてもいいんではないかなというような気がいたしております。  それぞれの関係の議員さんには勝手に県名等を出しますので御容赦いただきたいと思うんですが、例えば四国四県でざっと四百万の人口です。あそこはひょっとして二つの県に、二県ずつ合併してしまいますと本四架橋も三本も要求しなかったんじゃないかなと。二本で済んだのかもわかりません、正直言いまして。一県だけはどうしたって瀬戸内海を向いていないものですから、かけようがないものですから三本で我慢したのかなと思ったりしているんです。  あるいは島根県と鳥取県、これはもともとは一県だったんです。それが分かれちゃったんです。一県にしたっていいじゃないか。  あるいは大臣の九州、沖縄県はああいう島がたくさんございますから別にしまして、沖縄県を除きます九州七県、九州七県で人口が一千三百万人なんです。そして面積が四万二千平方キロ。北海道は、あれは道と言っていますけれども一つの県です、行政的には。あれは八万三千平方キロで、そして人口が五百七十万なんです。そうしますと、思い切って九州も二つぐらいに分けて、四対三がいいのか別にしまして、これも合併を促進したらいいんではないか、こういうような気もいたしております。  もう時間がございませんので次へ進んでいきたいと思いますが、それを合併させるためには、今、政令指定都市ですよ。政令指定都市は五十万以上の市はできますよといって政令で定められているんです。それが、行政指導だと思うんですけれども、八十万から百万にならないと政令指定都市になれない。ひょっとしまして、熊本市は六十数万人の人口でございますので、熊本市を政令指定都市にすれば、熊本県の県知事はちょっと力が落ちますけれども、残念ですけれども、じゃ熊本県も合併しようかというような気持ちになるかもわかりません。  あるいは、今この関東では埼玉県でもめていますね、大宮市と浦和市が。とにかくあの周辺を合併して政令指定都市になろう。私の感じでは、大宮には新幹線がとまるから市庁舎を置くんだ、浦和には県庁があるから浦和に市庁舎を置くんだ、どうもこんなけんかをしているんじゃないかという気がしてなりません。そんな面倒くさいことではいつまでたったって合併できませんよ。そうしましたら、例えば大宮と隣の上尾とかあるいは浦和と隣の与野が合併して二つの政令指定都市にしちゃえばいいんですよ。  人口五十万以上で見ますと、それこそ、現在二十市あるんです。そのうち十二が政令指定都市ですが、あと八つはもう自動的になるんです。四十万から五十万の人口というところは二十市もあるんです。そうしますと、これはちょっと隣と合併すればみんな政令指定都市になれるんです。そうすることがある意味では市町村合併の促進にもつながりますし、あるいはもう一方では、都道府県といいますか県の合併促進にもつながると思うんですが、その辺についていかがお考えでしょうか。
  92. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 中長期の視点の中でどういうふうなやり方がいいか、いろんな考えがあろうと思います。そういう中で、今の四十七という都道府県の制度、これをもう少しどうにかならぬのかという議論が確かにあります。ただ、この点は地方分権推進委員会においても、都道府県の合併ということも視野に入れて地方自治の仕組みについて中長期的に検討を行うということで、引き続き検討課題であると。しかし、当面この問題と市町村合併問題は切り離しをして、まず市町村合併を全力を挙げてやっていかなきゃならぬというこのテーマがあると思います、今御指摘のとおり。  そこで、それらがある程度進んでいく過程の中で、だんだんそういった都道府県の合併という問題に関する関心と、そういった問題がどこまで高まっていくのかいかないのかということは十分見ておく必要がある。  ただ、いろいろ事情はあったにせよ、明治以降今日まで百年以上、この都道府県は現在かなり定着しているんです。そういう意味での県民意識というのは結構政治的にも実態的にも定着している。その住民意識を無視して、余り国の方からこことここはこう切りなさい、こことここ、県と県はこうしなさいということをちょっと私の立場から言うのは、それこそ地方主権に反するではないか、こういう議論にもなりかねないので、私はそのことはもちろん頭の中から捨てるわけじゃありません。道州制の話もございます。  しかし、そういったことは、今申しましたとおり、若干中長期的な検討課題ということにしないと、何か基礎工事と内装工事と、あらゆるものを同時にやったらみんな壊れてしまうということだってあり得るわけですから、まずここは着実に前進をさせていただきたい、こう思っております。
  93. 山下八洲夫

    山下洲夫君 私もそんなに大臣と考え方は変わらないと思うんですが、私自身も合併というのは、一つはできるところからどんどんやった方がいいだろう、そのための環境づくりをしていくべきではないかなと。ですから、政令指定都市の問題も例示として挙げさせていただいたんです。五十万以上を政令指定都市にどんどんしてしまえば、間違いなく団体は若干は減ってくると思います。そうすると、今度は県も、大事なところをすぽすぽ抜かれれば、こういう状態でいいのだろうか、そういう考えも県知事さん、多く出てくるんじゃないかな、そういうところからまた合併の促進が生まれるかもわかりません。  私もいろんな方から聞かれます。大体日本国民というのは、どこの出身と。有名な市で育っている方は別にしまして、私みたいに岐阜の田舎の中津川で生まれていますと、中津川と言ってもわかりませんので、岐阜県ですと。大臣のおっしゃったように定着しているんです。ですから、なかなか難しいんです。難しいから国民のあらゆる階層で議論をしていく、こういう場をどんどん与えていく、このことが私は合併促進になっていくというふうに思います。  首相の諮問機関で、道州制検討の経済審部会報告、これを本格的な議論の契機にという。この中には難しいことばかり書いてございます。結論を言いますと、できませんということを書いたのと同じだなというふうに読みました。それだけ難しいんですから、まず国民世論を喚起していく、そういうことをぜひお願いしたいなというふうに思います。  まだたくさん残っているわけですが、お忙しい中、せっかく官房長官においでいただきましたので、官房長官に最後になろうかと思いますが、質問をさせていただきたいと思います。  冒頭、若干質問いたしたわけでございますが、今回の省庁再編、そして地方分権一括法、明治維新あるいは戦後の二十二年以来だとか第三の大改革だと言われているわけでございますが、特に官房長官は、何といっても地方分権と申しますか、地方自治あるいは地方税財政を含めて地方のことはもう何でも御存じの官房長官でございます。あらゆることを経験なさっていらっしゃるわけでございますから、地方への思いというのは大変お持ちであろうというふうに思うんです。  そういう中から、確かに機関委任事務等が廃止をされたり、一定の前進は見ているというふうに私も一定の評価はいたしているわけでございますが、権限移譲その他から見ていきますと、私はまだまだ大変な不十分さがあると。特に、税財源については一つも移譲してもらえないんですから、地方というのは、仕事だけよこして、そして金は力なりの力は全然、元気薬は一つもくれないというふうに思っておるのではないかなというふうに思います。  そういう意味では、長年地方自治にも携わっていらっしゃいます官房長官、この地方分権法が成立してこの法律が動き始めますと、地方というのは力も出て、元気も出て、やる気隆々となってくるかどうか、御感想をいただきたいと思います。
  94. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 先ほど来委員が御指摘になり、また野田自治大臣からも御答弁がございました。明治以来、第三の改革と言われる大きな変革、地方主権と言われるこの変革が来るわけでございますけれども、私は、今回の中央省庁あるいは地方分権一つの段階だと思っておるわけでございます。  特に、先ほど来お話がございましたけれども、私がこういう立場で御答弁申し上げるのがいいかどうかわかりませんが、立場を離れて、私の経験を通して話をせいということでございますので率直にお話をさせていただきますと、明治二十二年、市町村制がしかれて以来、第一に、この市町村という階級的呼称が全然矛盾も考えられないで今日に及んでいるというのは、私はまことに地方自治を歩んできた一人として恥ずかしく思い、そしてみずからそのことにチャレンジできなかったことをまた恥ずかしく思っておる一つなのであります。  かつては、市町村というのは、ある意味において人口規模とかそこに中心となる官公署が所在するとか、一つの核となる定義があったわけでありますけれども、今は何にもなくなっている。そして、先ほど委員が御指摘になりましたように、人口五万、四万の規模を切って、北海道なんかは炭鉱が去って一万を切ったところもなお市として存在をする。それは住民サービスに本当に役に立っているのかどうかと考えたら、この市町村という階級的呼称というのはどうしてもこれから考え直していかなくてはならないのではないか。  もう一つは、お話しになりました府県と政令指定都市の関係でございます。これもまた非常に問題があると思うわけでございまして、税源は府県が持ち、そして交付税によって政令指定都市は存立をしておるわけでございますけれども、そこにおります県会議員の数は、政令指定都市の人たちを入れた人口規模において県会議員の数があるわけでございまして、政令指定都市内の県会議員は、まあ交通信号の増設を頼みに行くぐらい、何一つ権限を持たないという、その人たちが数が多いという、こういうやり方をぜひ改めなければ私は地方主権にはならないと思っておるわけでございます。  一昨日以来、阿南議員がおっしゃいましたように、中央省庁の再編におきましてもこれが道を誤らないようにしなければ、いわゆる官僚が行政の中立性を失ったり、あるいは政治が過度に介入することによって行政がゆがめられていったり、あるいは派閥化するような、そして官僚が伸び伸びと我が国の政策について仕事をしていくということを阻害するようなことになってはならないというようなことを思いながら、これから中央省庁の再編やら地方分権というのは、あくまでこれはこの時代における三改革一つの段階であると受けとめて、そしてこれからさらに問題点を大胆に改革することによって、地方主権の道を見出さなくてはならないと思っておる次第でございます。
  95. 山下八洲夫

    山下洲夫君 ありがとうございました。(拍手)
  96. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  97. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、内閣法の一部を改正する法律案外十七案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  98. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 民主党・新緑風会の岡崎トミ子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず冒頭に、大変な西日本の大雨によって、殊に九州北部、中国地方では死者が広島で十四人、岡山、山口そして福岡、長崎でも亡くなられたということで、心からお悔やみを申し上げます。そしてまた、行方不明の方もいらっしゃいますので、一刻も早い救出をお願いしたいと思っております。また、負傷者の皆さんや、家屋の全壊、半壊、一部損壊、床上・床下浸水ということで被害に遭われていらっしゃいますので、一刻も早い作業をお願いしたいと思いますし、一刻も早く安心な生活が取り戻せるようにお祈りしたいというふうに思っております。  ところで、今回の行革の一つのモデルとしてイギリスの例が検討されたというふうに聞いております。サッチャー首相の財政、政治的効果をねらった行革手法を見直して、公共サービスの質の向上を目的とした市民憲章、シチズンチャーターを、メージャー首相が実際にはそれを推進したわけなんですけれども、この結果、市民はそれまでの政治の主体から経済の主体と位置づけられて、公共サービスの質の改善をして、そして選択する権利を持つもの、つまり行政権を官僚機構から国民の手に戻すことを根本理念として、その原則とメカニズムが市民の皆さんたちに提示されたということでございます。  イギリスの行革について、少なくとも市民が公共サービスの主権者である、こういう考え方は私たちも共通に持つべきではないかというふうに思っております。この市民憲章を太田総務庁長官はどのように考えて行革に生かそうとしていらっしゃいますでしょうか。
  99. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えをさせていただきます。  中央省庁改革は、行政改革会議の最終報告の内容にのっとって行うものであります。この行政改革会議における審議の過程におきまして、諸外国の行政改革の動向について説明聴取が行われまして、この中でイギリスのシチズンチャーターについても紹介があり、議論をされたというふうにお聞きをしております。  したがって、英国において、シチズンチャーターで示された行政サービスの質や効率性の向上といった理念を実現するために民営化や民間委託の拡充、情報の開示などの改革が行われたわけでありますので、今回の中央省庁改革では、内外の主要課題や諸情勢に機敏に対応できるように行政システムを抜本的に改め、官民の役割分担の見直し等による行政のスリム化、効率化や透明な政府の実現などを目指すものでありまして、シチズンチャーターで示された理念と相通ずるものがあると考えております。  それだけではなく、私ども行政改革につきましては広く問題意識を持っておりますけれども、そのうちの一つの柱にはなっているということであります。
  100. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 シチズンチャーターは市民により多くの権力を付与するものである、国家の活動を広げる秘策ではない、人々が公共サービスについて情報をしっかり受けて、そして自己決定権というか自己選択をする、そういう権利を持っている。そして、公共サービスが市民から信頼していただけるようなものになりましたら、これは国民、公務員の皆さんたちのすべての誇りになるというふうな、そういう筋道になっておりまして、当時これを推進しましたメージャー首相も、ぜひ公務員の発想を転換すると、よく自治大臣もおっしゃっておりますけれども、官僚機構の改善、このことについて物すごく迫ったものなわけなんです。  市民憲章は日本の地方公共団体でも既に紹介されておりまして、それが本当に生かされなければいけない、それが迫られているというふうに思っておりまして、その信念の告白が市民憲章の中にあって、そしてこれを行革の中にもしっかり生かしていただきたいというふうに冒頭にお願いをしたいと私は思っております。  そこで、まず最初に、国土交通省についてお伺いしたいと思います。  関谷建設大臣国土庁長官は広島の方に向かわれたということでございますので、大臣に直接お伺いすることができませんけれども、質問は進めていきたいと思っております。  年間の公共事業の予算がおよそ七兆円、職員がおよそ七万人という国土交通省は、当時の行革本部長であった橋本前首相が寝ないで一晩じゅう考えて出された結果が国土開発省と国土保全省の二つ、これではどうかというふうに言われたわけなんです。そしてでき上がったのが巨大官庁なわけなんです。  当時の総理の考え方、中間報告では、まず建設省から河川局を分離して農水省をくっつける。それから、建設省の残りと運輸省、国土庁、北海道開発庁を合体して国土開発省をつくるというようなことで分離されたわけなんですけれども、そこから官僚と族議員の巻き返しが図られまして、結局は非常に大きな国土交通省が姿をあらわしたというわけなんです。マスコミも、国土交通省は非常に巨大である、当然そこには権限も集まってくるということで、これは問題点の象徴として扱っておりましたし、衆議院の議論の中でも批判されて議論が集中したというふうに思っております。  改めてお伺いいたしますが、政府は、この巨大官庁となります国土交通省について、デメリットを踏まえた上で、メリットがそれを上回ると判断されたんでしょうか。デメリットは巨大化に伴う支配力の巨大化と省庁間のバランスの問題、そしてメリットの方は総合政策の推進が可能になることと考えているであろうと私は思うんですけれども、どうでしょうか。
  101. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) これはたびたび国土交通省が巨大官庁であるという批判があるわけでありますが、今回の省庁改革の四本柱と私は言っておりますけれども、その一つが統合化、省庁の従来縦割りになっていたものを、内閣として、政権として、統一的な政策の整合性を図るということが一つの柱になっておりますので、そういう意味では、国土交通省ができたことは、従来の国土交通政策を一つにまとめて、そこで整合的な選択が広い範囲の中からできる、広い範囲の中から優先順位が決められるということは一つのメリットであろうと思っております。  それに対して、デメリットということを大変強調されるわけでありますけれども、七兆円の公共事業といっても、それは補助金などでほとんど八割方は地方自治体で事業を発注されるわけでありますから、巨大利権官庁というようなことはちょっと当たらない、適切な評価ではないというふうに考えております。
  102. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 総合的に幅広くできるであろうというふうに思っているだろうと思って私は先ほど申し上げたんですけれども、これにはやっぱり疑問を感じるんです。これまでの縦割りの弊害を解消して大くくりの効果を発揮するためには、現在の各省をまたいだ局の統合が必要だというふうに思うんです。  ところが、「中央省庁等改革推進に関する方針」というのを見ますと、新しい局の編成は既存の局の統廃合が目立っております。局の数の削減も現在の省庁の局同士の統合が目立っているということです。  例えば、海岸保全の点からいいますと、各省庁の縦割りの構造があることが非常によくわかったんです。建設省も総合的な水資源管理を今後の課題としておりますが、今度の省庁再編では総合的な水資源管理はどんなふうにやりやすくなるんでしょうか。現在検討中というその中身なんですけれども、建設省の河川局と運輸省の港湾局は一緒になりませんでした。一方、同じ国土庁の土地局と水資源部、これが一緒になって土地・水資源局になることが想定されているということなんです。なぜ河川局と港湾局と水資源部が一緒にならずに土地局と水資源部が一緒になるのか、これをお尋ねしたいと思います。
  103. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 先ほどお話がございましたように、ちょっと大臣が広島に参っておりますから、かわってといいますか事務方で答弁させていただきます。  確かに、考え方でございますが、御承知のとおり、水資源は土地とともに国土の基本的な資源でございまして、そういうことから多くの省庁に関係をすることから、現在、国土庁水資源部において省庁間の調整を図りながら行政を進めているところでございます。  そこで、省庁再編後ということでございますが、国土交通省では土地・水資源局、これはまだ仮称でございますし、おっしゃいました検討中の段階ではございますが、において水資源開発基本計画を初め水の需給に関する総合的かつ基本的な政策の企画立案、推進など多くの省庁との横断的な調整を必要とする業務を担当する、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、これによりまして、河川行政はもとより、厚生労働省の水道行政でございますとか農林水産省の農業水利行政など、個別の行政を担当する部局との連携を十分とりながらバランスのとれた行政を総合的に進めることが可能になるというふうに考えている次第でございます。
  104. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 私が指摘するまでもなく、これまでの報道の中にも、またこれまでの議論の中にも、局あって省なしの習性が身についている官僚の皆さんの縄張り争いであるとか、あるいは既得権益の維持に向けて族議員の皆さんたちが猛烈に反対する、抵抗するであろうということは想像にかたくない、これはマスコミの表現なわけですけれども、非常に心配されていたんです。総合性の確保という観点から見て合理的な統合計画ではないというふうに私はまだ納得をしていないんです。  そうしますと、その下の課とか室、その編成の際に大なたを振るおうというふうに実をとることになるのか、また予算配分のシェアの固定化についてどんなふうに取り組むのか、この点について一般論でも結構ですからお聞かせいただきたいと思います。
  105. 小川忠男

    政府委員(小川忠男君) お答えいたします。  現在、局の編成については御審議をお願いしている段階でございますが、そういうふうなことを受けながら、課につきましても機動的な業務執行が可能なような思い切った組み合わせというふうなものを検討していきたいと思っております。  それから、予算のシェア、配分の話がございました。長い目で見ますと、公共事業の配分、シェアというのも相当大きく変わってきております。また、単年度で見ましても、例えば私どもの予算でいいますと市街地整備みたいな分野につきましては単年度で五割増の予算を計上する、こういった努力もやってきております。また、中身につきましても、同じく、同じ予算でも投入する政策の中身というのはそれなりに重点的なめり張りをつけているつもりでございます。当然、国土交通省になりましても、やはり従来以上に世の中の流れといいますか国民のニーズといいますか、こういうふうなものを念頭に置きながら弾力的に執行させていただきたい、このように考えております。
  106. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 巨大官庁をつくることのメリットがしっかり生かされる、そして皆が納得できる、そういう形にしていただきたいというふうに思います。  政府は、地方の出先機関に権限を分けるということをもって巨大省庁にはならないというふうに言っているわけです。確かに、中央を上回る金と人が地方で動くことになりますけれども、この出先機関は、地方という名前はついておりますけれども、実質には中央直轄であろうというふうに思うんです。最終的に予算の責任を負うのが大臣でありますから、本省が査定して、大事なことはみんな本省で決めることになるのではないか、そういう心配がありますけれども、長官、いかがですか。
  107. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 国土交通省の公共事業につきましては、本省が企画立案、総合調整に重点化をし、地域の実情に応じた機動的、弾力的な事業の実施を可能とするため、地方整備局長が主体的かつ一体的に事務処理を行えるよう地方整備局へ予算の一括配分を行うこととしております。  なお、地方整備局長への大臣権限の移譲は訓令、大臣の命令でありますけれども、によりましてこれを明確に定めることというふうにしてありまして、今後の具体的な措置の検討に当たってもその趣旨が十分に生かされるものと考えております。
  108. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 今のお話を伺っても中央直轄だなということを思うんですけれども、今おっしゃった地方整備局ですね、住宅とか都市にかかわるもの、これまで地方建設局が持っていなかった許認可権も渡すんでしょうか。その分、それに対応する本省の組織はなくなりますか、スリム化につながりますか、お伺いいたします。
  109. 小川忠男

    政府委員(小川忠男君) ただいま御指摘のように、従来の地方建設局が担当してこなかった都市行政でございますとか建築行政、さらには土地収用、あるいは不動産等々の業行政、こういったものについても大幅に地方建設局に移譲する、こういうふうなことになっております。  ただ、現在具体的な細部についていろいろ検討を進めております。一方で、従来やってこなかっただけに、それを受けて立つ組織、体制の整備、これと裏腹になるわけでございまして、その辺の兼ね合いをにらみながら、具体的にどの権限をどのような形で、あるいはどういうふうな性格のものとして移すかというふうなことを鋭意検討しております。  ただ、根っこにございますのは、やはり本省のスリム化というふうなことも念頭に置きながら、地域に密着するようなものはできるだけ地方で自己完結的に業務が遂行できるように、こういうふうなものを根っこに置いて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  110. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 自治体の首長の中にも巨大省庁が出現することを恐れているという声を聞きますし、実際にこの心配を杞憂だというふうには言い切れないと思うんです。そうならないようにするためには制度的に担保すべきだというふうに思うんです。これは議会があるわけでもありませんから、それにかわるチェックの仕組みをどういうふうにつくっていくのかが大事だというふうに思います。そのチェックの仕組みができていない一方で、住民の皆さんたちの意見をどう吸い上げていくのか、これがなければいけない。二重支配になりはしないかということで私は大変心配なんですけれども、この国の出先機関の裁量性が高くならない、本当に分権につながっていくということをぜひ実行していただかなければいけないと思うんです。  政策担当部門と実施部門とを分けるということが今回の再編の目玉の一つだというふうに思うんです。地方支分部局という形になるかということなんですけれども、本当にそこのところがよく見えてきていないというのが非常に問題なわけですけれども、この地方支分部局の創設もこの流れの一つというふうに言われていて、ここを非常にわかりやすく説明していただきたいということが一つです。  裁量行政行政の問題として指摘されておりますけれども、特に中央と地方の関係、地方の担当者が中央の官僚から電話一本で指示に縛られることがこれまでに非常に多いというふうに聞いております。実際にそうだったと私は思うんです。  そこで、政策担当部門と実施部門の間のコミュニケーションは文書で行うべきだというふうに思います。そうすることで達成されるべき目標とか達成度合いをはかる尺度がはっきりしてきますし、期待される社会的成果が明示されますし、情報公開の対象にもなるだろうというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  111. 小川忠男

    政府委員(小川忠男君) 現実の行政の流れからしますと、中央省庁の組織だけではなくて、例えば別途御審議願っております地方分権の一般的な展開のありようですとか、そういうふうなものと深いかかわりを持つと思います。  ただ、私どもなりにできることというふうなことからしますと、やはりどういう権限を地方支分部局におろすのかというふうなことは、本省の指示ではなくて訓令というふうな形で、きちっとした形で組織体制をはっきりさせたいと思います。
  112. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ただいまのところで、文書でコミュニケーションを行うべきという、政策部門と実施部門の間のコミュニケーションの問題については。
  113. 小川忠男

    政府委員(小川忠男君) 一概に言いにくいとは思いますが、一つの地方支分部局ではなくて、全国に支分部局は幾つもございますので、基本的なことはやはり文書で指示をするというふうなことであろうかと思います。  ただ、現実の事案の処理に当たりましてはいろんな問題があろうかと思います。したがって、断定はしにくいんですが、基本はやはり文書で事柄を指示するというふうなことであろうかと思います。
  114. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 しっかりと明文化をして文書でやっていただきたいというのが私の方の願いです。よろしくその点お願いをしたいというふうに思っております。  行革会議の最終報告も、環境と開発というふうに、利益相反性への考慮、あるいは省間のバランス及び省間の相互調整、この必要性を指摘しておりまして、国土交通省という巨大な権限と規模を持った開発官庁ができる以上、環境を守る使命を持った環境省にも相応の力を発揮してもらわなければいけないというふうに思います。  そういう観点から環境省についてお伺いしたいと思いますが、最近、ダム開発でもってワシタカの生息が脅かされることが多い、間に合わなくて死んでしまったということもありまして、本当に脅かされている状況を多くのNGOの皆さんたちが指摘をされてまいりました。このNGOの指摘があって初めて環境庁が動き出すということばかりだったのじゃないんでしょうか。環境庁が先に動いたというのを私は聞いたことがないんです。実際に法律としては種の保存法があるけれども、これも必ずしも有効に機能していないという状況だと思います。対策が後手後手に回ることが非常に多かったわけなんですけれども、これでは貴重な種あるいは自然、環境を守ることができないだろうというふうに思います。  環境省になる以上、ワシタカ類の生息、生態に関する情報をまずは環境省の方が事前に把握して、そして情報を提供するシステムを構築すべきだろうと思いますし、開発官庁から相談があって動き出すのではなくて、まず勧告権、これをぜひ活用していただきたい。  簡単に本当にこれはできないだろうというふうに何か答えが想像できるんですけれども、ぜひそれを守るために積極的にワシタカ類の生息保全、生態系保全に取り組むということを力強く環境庁長官から、環境省に向けての決意も含めてお聞きしたいというふうに思います。
  115. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 環境省に対する期待と注文をいただいた、こう理解いたしておるところであります。  中央省庁の再編成によりまして、環境省の果たす役割というものが多岐にわたっておるわけでありまして、これらの問題に積極的に取り組んでいかなければならないという気概は人一倍持っておるわけでありますけれども、なかなか人手不足でございまして、そこまで対応ができていないというところもあるわけであります。  このたびのワシタカ等の猛禽類の問題等についても、それが今指摘されたところであります。その点に対しましては、環境庁といたしましてもいろんな対策を講じておるわけであります。  例えば、平成八年八月に「猛禽類保護の進め方」を公表いたしまして調査や保護対策の指針を明らかにしたところでございます。そして、環境庁としては、各種の事業においてこれを活用していただき、事業計画の早い段階から適切な調査や保護対策が講じられることが望ましいと考えており、さまざまな機会をとらえて指導助言を行ってまいる考えであります。  また、希少猛禽類の全国的な調査の推進や生態等に関する情報整備の強化についても積極的に取り組んでいき、開発に対する国民の理解を得たいと思っておるところでございます。
  116. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 この猛禽類の種の保存とか、それはもう当然のことなんですけれども、私がお聞きしたかったのは、今までダム開発、電源開発などによって本当に守られてこなかったということがありますので、いち早くこちらの方から勧告をして、これは絶対守るんだというその形がなければ、ちょっと私、今の答弁では守ることができないなというふうに思うんです。巨大官庁の建設省とかそちらをきちんと抑えて勧告ができるんだというような、今のことについてちょっと答えていただきたいんですけれども。
  117. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 環境庁の決意というものはかたいものがあるわけでありますし、積極的に取り組んでまいりたい、こう思っておるところであります。  例えば、今回の愛知万博の場所に関する問題意識も、そこを開発することによってそういうワシタカの生存が確認されたわけでありまして、それを事前にキャッチするというのは非常に難しいわけであります。しかし、生息状態が把握できたならばいち早くその問題に対して取り組んでいくという姿勢は環境庁として持ち合わせておるわけであります。これを発揮するか否かというところに大きな問題があると思うわけでありますけれども、今回の中央省庁の再編成によりまして省に昇格して、それにふさわしい人材を配置して積極的に取り組んでまいりたいと思っております。その気概は絶対負けないものを持っておるわけであります。
  118. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 省庁間のバランスですとかあるいは省益の調整ですとか、そういうことじゃないというふうに思うんです。政策の基本には環境があるんだ、そしてすべての行政の基盤に環境があるんだということで、各省に対して本当に環境省がしっかりとした指導ができる、そういう大きな力を持つということで、環境破壊をしてしまったらその後で何をしたって取り返しがつかないということで、環境がすべての行政の基盤だという哲学をお持ちだと思いますので、ぜひ実行に移していただきたいなというふうにお願いをしたいと思います。  それから、森林保全は環境保全の柱だというふうに思います。きょうも午前の質問の中でもしっかりと聞かせていただきましたけれども、そういう観点から森林保全は環境省に一元化すべきだというふうに私も思うんです。しかし、実際には環境省は森林保全に関する計画、基準、この共管にとどまってしまいました。これで十分な森林保全ができるのかというふうに大変心配です。  例えば白神山地ですけれども、自然環境保全地域と国有林の森林生態系保護地が重なっていて、これは本当に重複して指定されているんです。二重行政となっています。これは行政のスリム化に対しては逆行するというふうに思いますし、制度の実効性に対して本当に有効に機能しないんじゃないかというふうに思うんです。  今回の省庁再編でこうした問題は解決されますでしょうか。
  119. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 中央省庁再編成によって、環境省が独自に取り組むべき問題と、ともどもに共管してやるべき仕事があるわけです。  例えば、農林水産省森林行政なるものは共管体制に入るわけでありますけれども、段階からいいますと一元化が望ましいわけでありますけれども、今すぐ森林行政を環境行政の中に取り入れてやるというといろんな問題があるわけでありますから、いましばらくの間は共管体制にして問題処理に当たって万全を期していきたいということであります。  白神の問題に対しましても、この問題につきましては、防衛庁その他の省庁との連携のもとにしっかりとした対策を講じていくべく問題に取り組んでおるわけでありまして、これらの問題についても、環境省となるや、また環境庁としての仕事としても精いっぱいの努力をして期待にこたえていきたいと思っておるところであります。
  120. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 先ほどのワシタカの問題でも森林保全という問題でも、随分NGOの皆さんたちが先にいろんなことを調査もされたり、そして情報も提供されたり、白神山地ではまた新しくブナを植えようという動きが始まっているわけなんです。ですから、連携をするときに、省庁の中での人材の充実ということも大事ですけれども、NGOとの連携ということも本当に大事になってくるだろうというふうに思います。  もう一つ大事なことは、よく大臣も現地に足を運ばれていらっしゃいますね。藤前干潟ですとか、あるいはまた三番瀬にもいらっしゃっているわけですけれども、現場の実態を踏まえる、機動的に積極的に動くという環境省であってほしいというふうに思います。  大臣、みずから現地に足を運んで、みずからの目で実態を見るべきと。これまでもやっていらっしゃった大臣として、この点、御所見をお伺いしたいと思います。
  121. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 私は、就任以来、時間の許す限り各地を見て回っておるところであります。百聞は一見にしかずという信念を持って、各場所をつぶさに見て、その印象によって問題の取り組みに当たっておるところであります。  ちなみに、これまで大きな社会問題化した藤前干潟や所沢のダイオキシン問題への対応を初めとして、鳥獣保護法改正に際しましては日光の現状、そしてまた廃棄物リサイクル問題に関しましては、北九州市のペットボトルのリサイクル事業や、先般の市川の家電製品リサイクル工場の実態、また身近な自然との触れ合いの場としては横浜の舞岡の里地等も視察いたしました。また、雑賀崎の問題にありましても三番瀬の問題にありましても、現状を見せていただきまして、その保全のために何をすべきかということをいち早くキャッチいたしまして、それを施策の上にあらわしていこう、こう考えておるわけでありまして、私も積極果敢にこれらの問題に取り組んで国民の期待にこたえていきたい、こう思っておる次第であります。
  122. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これまでにも、諫早に行こうとしたら、どこかから何か横やりがあったかで現地に行けなかったとか、そのずっと前では、長良川でも各大臣に幾ら私が環境委員会でお願いしても絶対に足を運んでもらえなかった。過去にそのようなことがたくさんございました。それは、どこからか何か横やりがあって行けなかったというふうに聞こえてきている現実もございましたので、そういうことにめげることなく、足を運ぶということが大事だという今の長官のお話をこれからの省の中でもぜひ実行していただきたいなというふうに思います。  世論を味方につけるというか、そのことは環境庁ができましたときにも非常に大きな動きとしてあったというふうに思うんです。ところが、最近のところをずっと見てきておりますと、どうもそれが水面下で行われてきましたり、目に見えないところで、陰でもって闘っている。それで、新聞に出てきたところで、私たちには見えませんから、環境庁が唇をかんで悔しがっているとか、実際にどうなんですかというふうに聞いても、省庁間で実はこんな闘いをしているなんというのはなかなか聞かせてもらえない。そういうような現実もこれまでもたくさんございましたので、ぜひ初心に返っていただくということと、十二省庁の中で省で肩を並べるということと、それからPR戦略も十分に考えてということをお願いしまして、そして先ほど申し上げたNGOとの協力関係、このことを大事にしていただきたいなというふうに思います。  二十一世紀、環境庁が省になって、自然環境が取り戻せた、国民との信頼関係もできた、本当にすばらしいものだというふうに言えるようなことでお願いをしたいというふうに思っております。
  123. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 先生の御指摘のとおりでございまして、世界的規模の地球温暖化防止のための気候変動枠組条約の会合、いわゆるCOP3とか4とかいう会合にもNGOの皆さん方に積極的に参加していただきました。  しかしながら、そのCOP4の現地に参りまして感じたことでありますけれども、NGOの皆さん方が環境行政の中に一体となってその仕事に取り組むという姿勢がまだでき上がっていなかったわけであります。そこで、私は、NGOの皆さん方と現地でもお目にかかりましたし、また行く前にも環境庁でお目にかかりまして、その協力依頼をいたしたわけでありまして、その理解を深めるためのコミュニケーションを図っていくためにも、これから環境行政の中で考えていかなきゃならないと思っておるところであります。  NPOの皆さん方にしてもそうでございます。ボランティア活動を続けていくわけでありますけれども、そのボランティア精神を生かしていくということの大切さを環境学習なんかによって多くを知っていただいて、そしてともどもに仕事をしていこうということであります。ボランティア活動の皆さん方もその気概に燃えまして、このところパークレンジャーなんかにたくさんの方々が応募していただいておるわけでありまして、その人たちとのコミュニケーションを十分図って事の処理に当たっていきたい、こう思っておるわけであります。  いろんな問題が次から次へ発生してまいりますけれども、それに憶することなく果敢に挑戦して、先ほど申しましたように国民の期待にこたえられるようにしていかなければ環境省になったゆえんを存知してくれないんじゃないだろうか、こう思っておるわけでありまして、いろんな御指摘をいただきながら環境庁としても積極果敢に取り組んでいく決意を申し上げる次第であります。
  124. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ありがとうございました。  次に、政策評価の仕組みを取り入れたことは当然の措置だろうというふうに思っております。各省庁に政策評価を担当する課を設けるということなんですけれども、身内のチェックでは甘くなるのではないかというふうに心配されているわけです。  これは構成メンバーはどのように決めていくのでしょうか。それから、外部の人材が採用されるのでしょうか。また、厳正にチェックをした職員がきちんと評価をされることが重要だと考えますけれども、この点いかがでしょうか。
  125. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 政策評価を実効あるものとするために、中央省庁等改革推進に関する方針においては、人材の活用等に関しまして各府省の内部部局に置く政策評価担当組織については、原則として担当課を置き、必要な人材を集めることといたしております。また、「必要な場合等は、学識経験者、民間等の第三者の活用を図るもの」とわざわざ言っております。  それから、総務省は、「各府省の協力を得て、各府省及び総務省の政策評価を担当する職員に対する研修、人事交流等の推進について検討し、具体化を図るもの」といたしております。  今、最後に御指摘になりました評価担当職員について、努力をしたことが正当に評価をされることということは大切な指摘であります。だから、これは人事でございますので、何かルールに書くというようなことではありませんけれども、今後とも留意をしてまいりたいと思います。  いずれにせよ、政策評価が実効あるものとなりますように、各省庁連絡会議の場などを通じまして、相互に研究、研さんを深め、評価にかかわる人材の活用、能力の向上等について努力してまいりたいと思います。  先ほどから大変環境省のこと、それから他の省庁との御関係を御心配でありますが、そういうことに対しても、この政策評価という手法でもって、ダブっているとか、あるいは必要以上に大きいとかいうことについては他の省庁からもチェックが入るということになってまいりますので、大分変わった空気になるのではないかと思います。
  126. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 アメリカの各省庁の内部監察、考査をする監察総監、インスペクターゼネラルは政治任用なわけです。スタッフも監察総監のオフィスで独自に採用して、職員の人事評価も、どのぐらい不効率なところを効率よくしたかとか、不正を指摘したかとか、そういう観点から行われておりますけれども、その評価の基準や結果は公表するとされておりますけれども、この基準はどのようにつくられますでしょうか。
  127. 東田親司

    政府委員(東田親司君) お答え申し上げます。  政策評価の基準につきましてでございますが、中央省庁等改革推進に関する方針におきましては、「各府省は、政策評価の客観性を確保するため、評価の対象とする政策の性質等に応じた合理的な評価手法により評価を行うこととする。このため、評価指標の体系化や評価の数値化・計量化など合理的で的確な評価手法の開発を進めることとする。」としております。さらに、この各府省の評価基準の策定に資するために、総務省が標準的ガイドラインを策定いたしまして、各省に提示していくことを予定しております。  このように、各府省が政策評価を円滑に導入するに当たりましては全政府的な準備が必要でございますので、去る五月に私ども総務庁の行政監察局内に政策評価等推進準備室を設置いたしました。また同じく五月に、全省庁から成ります政策評価等準備連絡会議を発足させまして、評価手法等の検討、それから標準的ガイドライン案の検討に向けた作業に着手したところでございます。  総務庁といたしましては、残された期間は約一年半くらいでございますので、政策評価の円滑な実施に向けた準備を各省庁を巻き込んで進め、万全を期してまいりたいと思っております。
  128. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 基準づくりの段階から透明なプロセスで行われること、そして参加型でNGOの皆さんたち、例えば外務省でしたらば開発協力NGOですとか、また先ほどの環境庁に触れますけれども、環境庁ですと自然保護のためのNGOですとか、そういう第三者のチェックのところにNGOが入るということは大事だろうというふうに思います。そうした第三者機関の基準に照らして政策評価が機能するかどうか、そして公開がしっかりされるかどうか、これが必要だというふうに思います。  今、長官が総務省によるチェックということをおっしゃいましたけれども、複数の省庁が関係する政策、そしてまた国策上非常に重要な政策ということについては総務省がチェックをするというふうになっておりますけれども、この国策上非常に重要かどうかというのはだれがどういう基準で判断するんでしょうか。
  129. 東田親司

    政府委員(東田親司君) 新しい政策評価の発足に当たりまして、政策を所管する府省とそれから総務省との間に役割分担をいたしたわけでございますが、その際、総務省の方がどのような役割を担うかにつきましては、方針において四点掲記してございます。  一点目は、全政府的見地から府省横断的に評価を行う必要があるもの、二点目は、複数の府省にまたがる政策で総合的に推進するために評価する必要があるもの、三点目は、府省の評価状況を踏まえ厳格な客観性を担保するために評価する必要があるもの、最後に、その他政策を所掌する府省からの要請に基づき当該府省と連携して評価を行う必要があるもの、この四つのパターンにつきまして総務省が役割を担うという方針でございますので、この方針のもとに、今後具体的にどのような政策を取り上げるかにつきまして検討を進めてまいりたいと考えております。
  130. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 重ねてお伺いしたいと思いますけれども、環境あるいは人権、国際社会に対する責任、その時の政権の政策課題、あるいは政府の正当性、これは国民の信頼が得られるという正当性ですけれども、こういうふうなことにかかわる事項に照らして重要な課題について柔軟にチェックできる仕組みになっておりますでしょうか。
  131. 東田親司

    政府委員(東田親司君) 岡崎先生がイメージされている課題の具体的な姿は、私ども推測の限りでしかございませんけれども、先ほど申しました四点のうちで一点目、例えば全政府的見地から府省横断的に評価を行う必要がある、こういうものにつきましていわば全省庁を一斉に総務省がある特定のテーマに絞って政策評価を行う、こういうことを想定しているわけでございます。  それから二点目の、複数の府省というのは、全省庁ではないけれども一つの政策が例えば二つなり三つなりの省庁にまたがる、その政策の総合的な推進課題となっているというようなケースもあろうと思います。これが二点目でございます。  それから三点目の、府省の評価状況を踏まえ厳格な客観性を担保するために評価する必要があるというのは、イメージといたしましては、一つの府省が担っている政策である、しかしその府省の政策評価の実施状況を見ると厳格な客観性に欠ける点がある、もっと総務省の立場で厳格な客観性を満たした政策評価をやるべき余地があると、こういう判断をしたものについて取り上げるということでございますので、岡崎先生が御指摘課題はこれらの中のいずれかに入るのではないかと思っております。
  132. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 今、多分私の問題点はどういうふうなことで言っているのかとおっしゃっていたんですけれども、費用対効果で見ました、数字が出ました、それが本当に一体どちらの側の、経済的な効果ということなのか、あるいは自然というものが非常に守られたそういう政策の評価なのかということで、本当にやったということではなくて、結果がわかる、問題はそういう意味での実効性だというふうに思っておりますので、ぜひともわかりやすく柔軟にチェックして機動力を発揮していただくというようなことをお願いしておきたいというふうに思います。  次に、先ほどちょっと触れられたんでしょうか、評価委員会と評価連絡委員会というのは同じことなんでしょうか。評価委員会の役割なんですけれども、これは内実が伴えば本来は目玉になっているものですよ。まさに法律に盛り込むべきものだったというふうに私は思いますけれども、なぜこれは政令事項なんでしょうか。
  133. 東田親司

    政府委員(東田親司君) 総務省には、仮称でございますが政策評価・独立行政法人評価委員会を設置させていただくことにしております。この人選につきましては、総務大臣が広く民間有識者の中から適切な者を選任することとしておるわけでございます。  この設置根拠につきまして、なぜ政令かというお尋ねでございますけれども、まず一般的に、今回の審議会の整理に当たりましては、原則審議会は政令設置にするという基本方針がございまして、その中で特に、例えば国民の権利、利益に大きくかかわるような任務を持っているような審議会などにつきましては法律設置にする、こういう考え方で整理されたというふうに承知しておりますが、私どもの予定しておりますこの委員会につきましてはそのようなタイプのものには該当いたしませんので、政令設置として提案させていただいているということでございます。
  134. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 何本も似たような法律がある場合だったら私もそういう話を聞きたいと思いますけれども、今回は国の形を決めるという法律なんです。ですから、やっぱりこれは目玉商品というか目玉になっているのですから、法律にきちんと盛り込むべきだ、何を遠慮して政令としなければならないのかという気持ちがあるわけなんです。  そのことと、それから今度の政策評価委員会の権限、それから構成、どのようなものが想定されているか、時間がありませんので簡単にお答えいただきたいと思います。
  135. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) ちょっと私はうっかりしておりました。今おっしゃった意味は、評価委員会のことではなくて何か別のことをおっしゃっているんだと思いましたので、失礼いたしました。  評価委員会は政令で決めましたのは、まさに今度審議会のあり方について全体として整理をいたしましたのは、この評価委員会のような審議会は、それ自身に責任があるわけではなくて、そこでは客観的な立場から勧告とか意見の具申をいただくわけでありますので、大臣の責任において、その受けた結果を大臣が判断して各省庁に対して勧告をしたり、あるいはそれに至らない場合には総理大臣に対して意見具申をするという強力な権限を総務大臣が持つことになりますので、そこでやる、そこで責任を持つという考え方であります。
  136. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それではぜひそういう力を発揮してやっていただきたいなというふうに思っております。  最後に、独立行政法人についてお伺いしたいと思いますけれども、これは研究所ばかりが独立行政法人になったんです。一定の事務とか事業を国家行政組織から切り離して独立行政法人を設立する意義というのはどこにあったのかということと、国家の行政組織のままではできないけれども独立行政法人にすることで初めて可能になるのはどのような仕組みなのかということです。業務運営の自主性とはどういうものか、人事、定員、組織、会計、業務、その意思決定といった事項について、行政組織とはどういうところが違うのか、教えてください。
  137. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) まず、国は独立行政法人に対して従来のように、今おっしゃった人事、定員、組織、会計、業務については事前の規制をしてはならないということになっております。したがって、それらの今挙げられました各事項につきましては自己責任でやるということであります。  自己責任の内容は、たびたび申し上げておりますけれども、少なくとも独立行政法人の長は特別職でございますので、身分保障がありません。任期途中で実績次第で交代もあり得るという緊張した状態に置かれるわけでございます。というふうな自己責任の原則が貫かれるということが全く今までの行政組織とは違ったものになるということでございます。  したがって、その関係で、反射的なことでありますけれども、渡し切りの交付金ということで、地方自治体に対する交付金と同様に一括してまとめて渡し切りのお金を支出して、それをみずからの判断で使っていただくということになるわけでございます。
  138. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 どこかで国の方が影響するということであれば全く独立行政法人とは言えなくなりますので、自主性とか自己責任の原則が貫徹されなければいけない。そうでなければ本当に特殊法人とどこが違うのか、皆さんに理解を得られないと思いますので、ぜひその実行をお願いしたいというふうに思っておりますが、 今後はすべての特殊法人が独立行政法人となる方針でしょうか。
  139. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  特殊法人につきましては、これはよく質問を受けるわけでございますけれども、例えばNHKもJR各社も特殊法人であります。そういたしますと、JR各社のようにもう既に民営化している、全く株式公開しているところもあるわけでございますし、あるいはNHKの報道機関というものがすべてほかの独立行政法人のように厳しくディスクロージャーを要求されるのかということになるとちょっと疑問が残るように、すべて一律に扱えないところがありますので、特殊法人についてはこれからどうするか検討するということにいたしております。  したがって、特殊法人についても、今ここでもしお認めいただいてこの法案が成立をすれば、新しい独立行政法人という制度がスタートするわけでありますから、その新しい視野から特殊法人のあり方についても見直すことに当然なってくるわけであります。
  140. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 独立行政法人のメリットを情報公開に求めるとすると、例えば従来の特殊法人とどこが違ってくるのか。中期目標の設定、評価システムは確かに目新しいんですけれども、こういった仕組みによって今までになかった情報なのに何が公開されるのか。リストがおありだと思うんですけれども、ちょっと具体的な例を挙げて教えていただきたいというふうに思います。
  141. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) まず違いは、今おっしゃった透明性といいますか、ディスクロージャーということももちろん最大の柱でありますけれども、もう一つは自己責任ということでございます。さっき申し上げました、自分の責任でもって長が責任をとらざるを得なくなるという点であります。  それと、事後の評価ということであります。そういう事後の評価のために必要なデータは出さなければいけないということでありますので、例えば今までは単年度会計で大福帳でやっておったのを、大福帳ではなくて今度は複式簿記で、資産、負債も、ちゃんと貸借対照表もつくらなければいけない。その点では大分違ってまいりますし、それからまた民間の企業が、上場企業がやっておりますように、有価証券報告書に相当するものは出さなければいけないわけでございます。どういうふうにしてこれだけの実績を上げようとしている、あるいは上げたのかということを説明しなければいけないということでございます。  しかも、ある程度規模以上の独立行政法人に関しては外部監査を求めます。今の特殊法人にはありません。外部監査を義務づけることによって、公開している会社と同様の透明性を確保できるということになるわけでございます。
  142. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 時間が来ましたので失礼します。  ありがとうございました。(拍手)
  143. 松あきら

    ○松あきら君 公明党の松あきらでございます。  私は、まず来年四月から施行されますチャイルドシートについてお尋ねをしたいと思います。  道路交通法の改正に伴って、来年から六歳未満の乳幼児を乗せて自動車を運転する際はチャイルドシートが必要となるわけでございます。これに違反しますと減点一ということになるわけでございます。ですから、これからは子供を車に乗せるときはチャイルドシートを設置することが義務になったわけでございます。しかも、このチャイルドシートはかなり値段が張るわけでございます。大体、一台一万円くらいから十数万円。中には二千六百円なんという安価なものもあるそうですけれども、ちょっとこれはどうかなと思いますけれども、大体三万円程度が一番の売れ筋というところでございます。二人子供がいれば、平均的に見ても五、六万はかかってしまう。  少子化対策としまして、各地方自治体も知恵を絞りまして、申請をすると補助金を出すところ、そのものを貸し出すところ、いろいろあるようでございます。地方自治体によりましては、交通安全協会が来年の施行を見据えてレンタルを始めたところもあるようでございます。  私の地元の横浜市でも、財団法人横浜市交通安全協会が千台のベビーシート、チャイルドシートを用意しまして、無料貸出業務を始めております。千台というところがちょっと残念なのでございますけれども、六月二十五日締め切りで募集いたしましたところ、二千百二十七名からの応募があったと伺っております。ただ、返却がベビーシートで半年、チャイルドシートで一年。短いのが残念なわけでございますけれども、無償貸与の希望の多さには、市民の皆さんの悩みが深いなというふうに感じておるわけでございます。  小さなお子さんを持つお母さん方は、やっぱり何らかの行政側からの支援が欲しい、こういう声が強いわけでございます。少子化で一人でも多くのお子さんを産んでいただきたい、育てていただきたいと若い御夫妻にお願いしているわけですから、私は当然行政のサポートがあるべきだというふうに思います。  しかし、今このチャイルドシートについて何が一番問題かといいますと、ベビーシート、チャイルドシートは赤ちゃんの揺りかごではないんです。大切な命を守るための赤ちゃん用のシートベルトであるはずでございます。輸入も含めて十五社ほどの業者がつくっているそうですけれども、バックルの金具が高温になり、やけど。ベルトが首に巻きつく、これは四件の死亡事故にもなっております。走行中にきちんと取りつけていたにもかかわらずシートごと転落等々、本当に安全なチャイルドシートは実は半数以下である、こういう厳しい現実もあるわけです。  あるチャイルドシートを買いますと、注意書きがついていまして、急ブレーキ、急発進はしないでください、車の多く通るところは避けてください。それからおまけに、着用している場合は見ていてください。これはうそじゃないんです。こういう笑えないような注意書きがついているチャイルドシートもあるわけでございます。  ところで、このチャイルドシートは今までにどれぐらい普及しているんでしょうか。この五年間どれくらいの出荷台数があったのでしょうか。運輸省に伺います。
  144. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) チャイルドシートの最近五年間の出荷台数でございますが、年平均五十万台から、最近ではふえまして八十八万台でございます。  具体的に申し上げますと、平成六年五十六万台、七年五十七万台、八年六十万台、九年になりまして七十三万台、平成十年で八十八万台という状況でございます。
  145. 松あきら

    ○松あきら君 大変な台数が売られているわけでございます。しかし、半数にも上るものが不備な品があるというわけで、本当にこれは恐ろしい状況でございます。  しかし、このチャイルドシートの着用者と非着用者の致死率は、着用が非着用の四分の一という結果が出ておりまして、やはり着用の効果が示されているわけでございます。  ところで、お子さんが多い、三人も四人もいる、あるいは五人もいる、あるいはどうしてもやむを得ない場合についての政令を検討されているそうでございますけれども、それはどのようになっているんでしょうか。警察庁、よろしくお願いします。簡潔にお願いします。
  146. 玉造敏夫

    政府委員(玉造敏夫君) 法自体は五月十日に公布されたところでございまして、これを受けまして、現在政令につきまして検討を進めているところでございます。  内容的に言いますと、チャイルドシートの使用の義務づけの免除の場合でございますけれども、例えば座席にシートベルトがないこと等、構造上の理由でチャイルドシートを座席に固定してつけられないような場合、あるいは今御指摘のような、多人数を乗車させるために、チャイルドシートを座席に固定して使用しようとするとその余地がないような場合、あるいは医療機関等に緊急に搬送する必要がある幼児を乗車させる場合等でございます。  現在詰めておる最中でございます。
  147. 松あきら

    ○松あきら君 私もいろんなところからいろんな声が聞こえてくるわけです。チャイルドシートに乗せていても、子供によっては、小さいときからベビーシートから乗せているけれども、上の子はずっと何年たってもおとなしくちゃんとチャイルドシートにも乗る、しかし下の子は同じ状況で生後半年からベビーシートから始まってもう何年も乗せているのに、乗せるたびにぎゃあぎゃあ泣きわめいてどうしてもチャイルドシートに乗っからないという、お子さんのやっぱり性格もあるみたいです。そうすると泣きわめいている子供をちょっとだっこする、そのときに仮に捕まったりしたらどうなるのかとか、いろんな問題があるわけです。今いろいろ検討中とおっしゃいましたけれども、お母さん方が疑心暗鬼にならないように、細かく政令の徹底をお願いしたいというふうに思います。  先日もチャイルドシートの欠陥で製品の回収が報道されておりました。乳幼児を安全に車に乗せるための器具が欠陥でリコールをされている。とんでもない。こういう問題が起こるのは、やはり私はチャイルドシートの安全基準が実態と適合していないからではないかと思うわけです。記事にも載っておりました、先ほどのベルトが首に巻きつくチャイルドシートの死亡事故四件が十数万円もする製品であったという事実からも、やはり最低限の安全基準であってはならないというふうに思います。  現在、素材や形状、上半身の圧迫ぐあいや対衝撃性等についての安全基準が我が国にはないわけでございます。チャイルドシートの安全基準についてはどのように決められているのか、説明をしてください。運輸省、お願いいたします。
  148. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) チャイルドシートの設計、品質のふぐあいで委員が今おっしゃったような事故があったかどうか、また調査を別途いたすにいたしましても、安全基準の決められ方でございますけれども、道路運送車両の保安基準、運輸省令において決められておりますが、衝突時の幼児の安全性、ベルトの耐久性、バックルの乖離性等について決められておるところでございます。
  149. 松あきら

    ○松あきら君 何か余りわけのわからないような答えだなというふうに思いますけれども。つまり、チャイルドシートは自動車部品としての検査が必要だということですね。  道路運送車両法第三章及び省令の規定に適合したものでなければならないわけです。しかし、今回チャイルドシートの欠陥リコールが起きました。  チャイルドシートはどこでどのように検査が行われているんでしょうか。
  150. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) 基準が適合しているかどうかという検査でございますが、その試験は運輸省の交通安全公害研究所が行っております。  具体的には、衝突試験をして、先ほど申し上げましたような衝突の際の安全性あるいはバックルの安全性等を試験しておる実情にございます。
  151. 松あきら

    ○松あきら君 これは検査料というのはあるんでしょうか。もし検査料があれば、幾らに設定されているんでしょうか。それで、どういう基準でその検査料金が決まっているんでしょうか。
  152. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) 装置の型式指定をしていただく場合の検査料は、一型式当たり五万円でございます。  検査料の考え方は、基本的に実費をいただくというふうに考えて取っております。
  153. 松あきら

    ○松あきら君 型式検査でしたら一つの型式を試験するだけでしょうから、今後もリコール問題は起きる可能性があると思うんですね。昨年八十八万台売れたそうでございますけれども、道交法の改正に伴いまして対象の乳幼児は七百十六万人もいるわけでございます。そうすると当然競争も激しくなります、これだけのあれがあるわけでございますから。型式認定だけでは当然安全が維持できないんではないでしょうか。  先ほどちょっと衝突のようなことをおっしゃっておりましたけれども、私も、製品の抜き取り検査とともに、車にチャイルドシートを取りつけてぶつけるテスト、つまりアメリカのFMVSS、欧州のECEで定めているような衝突実験による傷害基準、こういうものを設けるべきと思いますけれども、運輸大臣、いかがでございましょうか。
  154. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) チャイルドシートの世界的基準といいますか、それがまだでき上がっておりません。御指摘のように、アメリカでのやり方、ヨーロッパでのやり方、いろいろ違いがありまして、そういった意味では早く統一基準というものをつくらなければならない、そのための努力を我々もしてまいりたい、このように考えております。
  155. 松あきら

    ○松あきら君 世界基準ができ上がっていないから日本でもまだだというお答えでございますけれども、ちょっと私は違うんじゃないかなと。本当に大事な子供の命を守るんですから、世界基準をできないから待っているんではなくて、今の日本の基準というのは非常に甘い甘い基準でございますから、これはアメリカであれ欧州であれ、ほかのチャイルドシートをしっかりとつけていらっしゃる国々の基準というものを早く見習って、だって来年からこれは義務で減点一でございますから。
  156. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 御指摘のように、試験をする設備は今現在すべてが整っておるとは言えない状況にございます。一方で来年から義務化という形で動き出す。したがって、平成十一年度末までに交通安全公害研究所に衝突試験の設備についてもきちっと整えた上で体制に入ってまいりたいと考えております。
  157. 松あきら

    ○松あきら君 では、今それを着々と準備をしていて、これが整い次第この基準をつくってくださると。これはもう大事なことでございますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。  法律でチャイルドシートの着用を義務づける以上は、まず安全なチャイルドシートをつくる指導を私はするべきではないかと思います。私もいろいろ調べましたけれども、そのものに欠陥があるものも随分あるというふうに聞いておりますし、実際私も見ました。いろいろこれはしっかりと調べていただきたいなと。  そしてまた、例えば製品がよくても取りつけ方が違ったら取りつけ間違いで事故が起きる、こういうことでは何にもならないというふうに思うんですね。今、二百五十種ぐらいですか、いろんな種類の車があるそうでございますけれども、全然チャイルドシートがつかない、ベビーシートがつかない車種もあるというふうに聞いておりますし、車によっていろいろやり方が違うわけですね。実は、事故の九〇%がユーザーの誤使用であるというふうにも言われているわけでございます。  私は、どの車種もどのチャイルドシートも取りつけ方を同じにしてほしいなというふうに思うわけでございます。そうしませんと、例えば車を買いかえたとなると、前の車でしたら今まであるチャイルドシートをつけられたけれども、車を買いかえたらつけられなくなっちゃった、また買いかえなければいけないのかとか、いろんな問題が起きてくるし、間違いも起きてくる。やはり規格、基準を一定にすべきと思いますけれども、これについては、大臣いかがでございましょうか。
  158. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 確かに今までいろいろな経過がございます。ただ、基本的には取りつけ方法等もある一定のものになっていった方がいいなと。これは、メーカーと私どものこれからの話し合い、そして自動車メーカーも含めたいろんな議論をしていかなければならないだろうと思っております。  特によくありますのは、自動車メーカー自身が、もちろんオプションで、しかしながら純正としておつくりになる、こういう形のものが極めて便利だろう。そうすると、オプションという形にしろ、メーカーがある程度打ち出したものが出てまいりますと、それに倣うように大体世の中はなってくる。それから、自動車自体の構造を取りつけられやすい形に変えていく。この二つをやはり努力で進めていくことによってかなり基準というもの、また取りつけ方も進歩をしていくんではなかろうか。そういった立場で努力をしてまいりたいと思っております。
  159. 松あきら

    ○松あきら君 ぜひそれは御指導をいただきたいというふうに思います。やはり指導していかないとなかなかそうはならないというふうに思うわけで、ぜひこの基準、規格を一定にする努力をしていただきたいというふうに思います。  子供の命は宝でございます。少子化で子供の数が少なくなっているわけですから、ますます大切に育てなければならないわけです。そういった意味で、道交法の改正は少子化対策支援とも言われるわけでございますけれども、したがって自動車に乗せる場合も十分に安全を確保しなければならないわけです。  しかし、このチャイルドシートが安全かどうかというのはお母さんにも、まして子供たちには全然わからないわけです。使い方、装着の仕方、また取りつけて大丈夫か、必ず販売する側に試着の義務と確認の義務を課す必要が私はあるというふうに思うんです。  今、売られているところはデパートや乳幼児のお店が主流と言われておりまして、またつくり手もベビー用品の会社などが多くて、必ずしも車の専門店ではないわけです。専門店だけがいいかどうかということもありますけれども、しかしきちんと取りつけの技術など顧客に指導できる体制ができなければいけない。この点に対する対策はとられていらっしゃるんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  160. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) これも今申し上げましたように、まずチャイルドシートをつくるメーカーの自己責任の問題、販売店の問題、それから自動車メーカーが主体的になってこういう啓発運動を進める、この三点がうまく折り合っていかなければならないだろう。まさに、先ほどから申し上げている来年義務化を前提としながら、私ども一層努力をしてまいりたいと思っております。
  161. 松あきら

    ○松あきら君 私は、試着の義務あるいは確認の義務をしっかりしていただきたい。やり方がわからない、間違ってしまったという事故が非常に高いわけでございます。どうぞよろしくその点はぜひお願いをしたいというふうに思います。  チャイルドシートは、先ほど申しましたように高いというふうに言われております。一般の家庭で、しかも六歳未満のお子さんがいる家庭はやはり若い世帯の家庭でございますから、平均三万円くらいのものを大体買っていらっしゃる、それも一人じゃない、二人だと六万円、あるいは三人だとどうなるか、非常にお金がかかるわけでございます。  もちろん、着用した方が事故が少なく安全であるということで、ぜひこれは着用した方がいいわけでございますけれども、やはり着用率を上げるインセンティブを働かすことも大切だというふうに私は思うわけでございます。シートベルトの場合でしたらわざわざ器具を買わなくても車についている、そういうことで新たに買ってつけるということがなかったわけでございますけれども、このチャイルドシートの場合は新たに器具を買わなければならない。来年の施行を前に全国の多くのお母さん方が一番悩んでいる点はお金の問題であるというふうに思います。  こういった動きに対しまして、少子化対策の一環として、先進的な自治体では乳幼児の事故防止観点からチャイルドシートの普及のため購入費の補助あるいは無償貸し出しの独自の取り組みが図られております。例えば、一万円を補助しますとか二万円を補助しますとか、自治体によっていろいろ考えてそういうふうにもしていらっしゃるわけです。そのものの貸し出しという制度ももちろんあるわけですけれども、先ほど申しましたように、車によっては取りつけられなかったり、貸していただいても自分の車と合わない場合があるから、やはりお母さん方にとって大事なのは補助金をいただくのが一番、ぜひこれは何とかしていただきたいという声が大きいわけでございます。  私は、自治省としても、こうした自治体での自主的な取り組みがより充実するように、少子化関連での地方財源措置をしっかりと図っていただきたいと思います。国と地方の財源配分の問題が種々午前中から論じられているわけでございますけれども、こういった点をかんがみてしっかりした措置をお願いしたいと思います。  自治大臣、いかがでございましょうか。
  162. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおり、それぞれ自主的に幾つかの団体でチャイルドシートの着用促進のために独自の努力をしておられるという市町村があります。これはチャイルドシートということだけでなくて、近年の少子化の進行に対してどうやってこの問題を乗り越えていくか。特に地方自治体にとって少子化が進むということは、まさにその自治体自身の問題としても大事な問題であるものですから、そういう点で、これからも自治省としては、そういった努力をしていかれる自治体の財政状況について十分に支援できるようなことをしていかなきゃならぬと考えております。  今、当面、子供を産み育て、働き続けられる社会の実現を目指していこうということで、緊急保育対策等五カ年事業ということで、平成七年から平成十一年度にかけての五カ年計画があるわけですが、これに伴う所要経費については起債措置なりあるいは交付税措置などで所要の財政措置を講じておるというのが現状でございます。
  163. 松あきら

    ○松あきら君 赤ちゃんはみずから自分を守ることができないわけで、生命確保のよりどころであるベビーシート、チャイルドシートの安全基準の徹底と補助金等のサポートをもう一度お願いして、この質問は一応終わらせていただきたいと思います。  きょうは有馬文部大臣にもいらしていただいていまして、一点だけ私は教育の問題について伺いたいというふうに思います。  今、健康学園が存立の危機に立っていると言われております。健康学園、聞いたことないなとおっしゃる方もいるかもしれません。健康学園と申しますのは、ぜんそくやアトピー性皮膚炎、肥満や病気による不登校など、さまざまな病気を抱える児童が、温暖な気候の中で運動や食事療法により健康を取り戻す全寮制の施設でございます。独立した学校ではなくて、区立小学校の分級という形になっているわけでございます。学習内容は区立小学校と共通で、体力づくりなどのカリキュラムが組み込まれているわけでございます。  ところが、東京では児童数の減少や財政難などで廃止の動きがここ数年加速していると言われるんです。ことし三月、渋谷区が廃園を決め、江東区が廃止の運動を起こしている。港区は存続を決めたようでございますけれども、やはり私はこれは大事だなと。  健康学園、実は定員四十名なんですけれども、子供たちの健康増進を図り学校教育を進めるということで、教員が六名、保母が七名、看護婦一名、栄養士一名、調理員三名、合計十八名いるわけです。ところが、少子化の関係もあると思いますけれども、今児童は大体十七名前後、もっと少ないところもありまして、減少してしまっているわけでございます。  財政の上からも廃止が提起されているわけでございますけれども、しかし昭和三十年代からこうした学園は、終戦後の栄養不良から高度成長期の公害病、ぜんそく、そしてアトピー性皮膚炎まで、子供を襲う時代の病をいやす受け皿となってきた、そういう歴史もあるわけです。この健康学園でどれほどの子供たちが健康を取り戻したか知れないわけです。本来は病気が中心でございましたけれども、今問題のいじめによる不登校児なども私は入園できるようにしてもらいたいし、また、まだまだその存在意義は十分にあるというふうに私は思うわけでございます。  しかし、区側としても、何といっても財政難がある。そこで、隣接区で共同利用したらという案も出ている。現に、そういうふうに申請したけれども却下されたということもあるんだそうでございます。子供の教科書や学籍の問題、職員の割り振りなど困難な点が多く、共同利用は難しいと区側は言っているわけでございます。  しかし、今回の地方分権推進法の意義からいっても、こういう論議は全く子供たちのことを考えていないんじゃないか。まさに縦割り、横割りの、本当に子供たちのことを考えていない行政のあり方じゃないかな。本当の子供のための教育を考えてあげられるように、国が手を差し伸べ、指導、応援していただきたい。  最後に、大臣、お待たせをいたしまして済みません、お答えいただきまして、質問を終わらせていただきます。
  164. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 健康学園は、今、先生おっしゃられましたように、ぜんそくなどの病弱児に対する指導を行うことを目的にいたしております。一部の特別区の教育委員会が都外に設置している病弱・身体虚弱特殊学級の一つでございます。近年、児童数の減少等により廃園となっているところもあるということをよく承知いたしております。  御指摘のいじめによる不登校児でございますが、一般的には今のままですと特殊学級たる当該学園の対象にはならないと思います。  それからまた、当該学園は特殊学級であるために、当該学級を複数の地方公共団体が共同で運営するためには当該学級が属する小学校自体を共同で設置する必要があるということであります。  いずれにいたしましても、当該学園をどのように運営するかにつきましては設置者たる区教育委員会等においてそれぞれの実情に応じて判断されるべきことでございまして、今のところ国が直接運営について言及することはかなり困難であると思っております。  しかし、御指摘のことはよくわかりました。
  165. 松あきら

    ○松あきら君 よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。(拍手)
  166. 加藤修一

    加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  私は、中央省庁の再編に関連いたしまして、五月七日に成立しました情報公開法について多少質問させていただきたいと思います。  中央省庁の再編がハード面の行政改革とするならば、情報公開というのはある意味でソフト面での行政改革であるというふうに思いますし、さらに両者については車の両輪のごとく非常に私は重要なものだと考えているところでございます。  中央省庁再編は平成十三年一月一日からのスタートが目標とされておりますが、情報公開法の施行期日は具体的にいつを予定しているのか、この辺について確認の意味でお尋ねしたいと思います。
  167. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) お答えいたします。  情報公開法の施行日につきましては、情報公開法の公布の日から、すなわち平成十一年五月十四日から二年以内で政令で定める日とされております。  この情報公開法の施行までの間にはいろいろな施行準備の作業が必要でございますが、実際に具体的な施行日につきましては、こういった施行準備作業の状況を勘案しまして確定するということでございまして、今の時点では情報公開法の具体的な施行日については確定をいたしておりません。
  168. 加藤修一

    加藤修一君 そういう答弁をいただいたわけですけれども、この情報公開法の施行期日については今幾つかの新聞報道では平成十三年四月一日からというふうになっておりまして、そういった点については有力な見方かなというふうに思っているわけです。  これと関連して、やはり新しく省庁がつくられる、その移行時の状況を考えていきますと、文書の伝達、事務の引き継ぎ等を含めて、その文書管理がどういうふうになるかということに非常に私は関心を持っているわけです。  この省庁再編という大事業が実際に行われる中にあって、やはり発足の前後については行政部内で混乱が生じるというふうに考えているわけですけれども、情報公開との関連で懸念されることは、移行の際に旧省庁の行政文書が駆け込みで廃棄される可能性も私は否定できないと思うわけです。こういった点について、総務庁はどういった形で未然にそういった面についての防止を図ることを考えていらっしゃるのか。  情報公開法によれば、文書管理に関する政令等を定めることになっておりますが、仮に平成十三年四月一日からという話になってくれば、一月一日との間に約三カ月ぐらいの差があるわけです。やはり私は、そういった未然防止をやっていく、さまざまな混乱の事態、文書管理の点について不法に投棄、廃棄される、そういった面を防ぐための文書管理についてのガイドラインのようなものを前倒しで制定すべきではないかというふうに思っているわけでありますけれども、総務庁長官はどのような御見解をお持ちでしょうか。
  169. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  情報公開法の対象となる行政文書は行政機関の組織において業務上必要なものとして利用、保存されるべき文書であって、各行政機関によって恣意的に廃棄されるものではないわけであります。  情報公開法では施行前の文書であっても開示請求の対象といたしておりますので、例えばそのルールに従って保存すべき文書が廃棄されていたということが判明いたしましたらば、それはなぜなのかということを問われるわけでございます。事後的なチェックが可能になるようにできておりますので、適正な管理が担保できるものと考えられるわけであります。  現に、こういう情報公開法がない時期に起こった防衛調達本部の事件でも、焼却をしたという関係者は大変厳しい国家公務員法上の懲戒処分の対象となっておりますので、それは今でも十分に恣意的な廃棄が行われないような歯どめがかかっているわけでございます。  なお、今の政令の話でありますけれども、今速やかに取りまとめるべく作業を進めている途中でございます。
  170. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、私が危惧していることについては一切問題はない、生じる可能性もないというふうに、システム的にもそういう対応をしているという理解でよろしいですね。  それでは次に、野中官房長官にお越しいただいておりますので、お尋ねしたいと思います。  環境庁が環境省に昇格するということで、私は環境省は充実強化を相当図っていかなければいけないというふうに考えておるわけであります。  衆議院の行革特で、附帯決議としてこういった面について、例えば環境についてでございますけれども、国民行政ニーズ、計画行政に対するニーズが極めて強い、あるいはさまざまな関係から、要するに組織のあり方、所掌事務、定員配分等について政治主導で見直す、こういう形になっております。  また、総理答弁といたしましては、環境省にふさわしい体制を整える、このように努力したいという旨の答弁がございましたけれども、これについて官房長官にその辺の御見解をお示しいただきたいと思います。具体的にお願いします。
  171. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 御指摘の衆議院の審議段階におきます附帯決議につきましては、今後の作業に当たりましてその趣旨を体しまして十分配慮してまいる所存でございます。  環境省を含め新たな府省の具体的な編成につきましては現在検討中でございまして、今具体的な人数を申し上げることは不可能でありますが、いずれにいたしましても、総理も申し上げましたように、環境省にふさわしい体制を整えるよう十分努めてまいりたいと考えております。
  172. 加藤修一

    加藤修一君 環境省にふさわしいという、その中身の問題なんですけれども、あるものとあるものがよくつり合っていることをふさわしいと言うわけですけれども、ふさわしいというのはどういったことを指してふさわしいというふうにお考えなのか、その辺についてもう少し具体的な御答弁をいただけると非常に私としてはありがたいと思います。
  173. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 総務庁長官からお答え申し上げるべきかもわかりませんが、今回の再編におきましては、府省全体の官房、局の総数を百二十八から九十六に縮減をしたわけでございます。その中におきまして、環境省は現行のとおり一官房四局をそのまま削減しないで置いてまいったわけでございます。  今後の環境省の体制につきましては、環境省に新たに付与されることになりました事務事業を含めまして、さらに新たに担うものとなるように、平成十三年一月の新省発足時には組織、定員等、体制の充実強化を図ってまいりたいと考えております。
  174. 加藤修一

    加藤修一君 環境庁長官にお尋ねしたいんですけれども、その前に、私は今環境庁の仕事場における条件というのが極めて厳しい、労働環境が極めて厳しいという認識でおります。  皆さんのお手元に資料を配付させていただいております。例えば一枚目でございますけれども、これは残業時間です。下の図が残業時間で、縦軸が何%いるかということと、横軸が残業延べ時間。これは一九九九年、ことし二月の一カ月分についてまとめたものであります。非常に私が驚いていることは、これは全霞が関の省庁と環境庁を比較した図でございますけれども、下の図で百時間を超す残業を行っているのは、霞が関全体を考えていきますと九・三%。しかし、環境庁を考えていきますと五三%に及ぶわけです。もう半分以上が百時間を超えてしまっている。これは、労働環境を考えていく場合に非常にゆゆしき事態だなという感覚でおります。あるNPOの方がおっしゃっていたわけでありますけれども、過労死で死んだ役人の方もいらっしゃる、そういった痛ましいことにもつながっている話であります。  一枚目の上の図を見ていただきたいんですけれども、百時間といってもなかなかイメージがつかめないかもしれません。退庁時間で考えていきますと、霞が関全体で考えていった場合は十八時台で帰る方が二六%、三〇%近いわけです。環境庁について考えていきますと、だんだん夜が遅くなるに従って相当残っている方がいらっしゃるわけです。  例えば二十三時台を考えていきますと二一・八%、翌日になる零時以降に退庁する方は三二・七%、両方合わせて五四・五%ということで、これは半数以上の方が実は二十三時以降に帰っている。逆に言いますとそれまで帰れないということですね。これは非常に厳しい労働環境だと思います。労働省にもお聞きしたいぐらいなわけです。  そういうことで、こういったある意味で劣悪な環境の中にいるというのは、これは職員数が基本的に絶対的に不足している、まず第一点にそういう言い方ができると思うんです。恐らくさまざまな試験を通ってきた方ばかりですから、非常に優秀な方ばかりいらっしゃると思います。しかしながら、なかなか仕事の量に対応して人員配置が明確になっていない、不足している、そう言わざるを得ないわけです。  環境庁長官、この辺の実態について御存じだったでしょうか、またこの件に関して御見解をいただければありがたいです。よろしくお願いします。
  175. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 私が就任いたしましてから、この現状を承知する段階で、人生には早寝早起きということが言われておりますけれども、やはり早く朝のうちに仕事を能率よくやろうじゃないかということで、役所では九時出勤といったら、ちょっと早いな、九時半から十時ぐらいが仕事にかかる段階だがというようなことであったわけでありますけれども、環境庁はもう九時には全部仕事につくようにという大臣令を出したわけであります。そして、夜は早い時間帯に、六時以降はできるだけ自分の趣味を生かしたり、いろいろ個人的な時間として有効に使うような時間割を考えてほしいということを指令いたしたわけであります。現在では大変それが励行されておりまして、朝の早い時間の仕事はもうどこの省庁にも負けない就業ぶりであるわけでありまして、それは私は自慢にできると思うわけであります。  ただ、仕事量の多さというのは、次から次へと新しい仕事が舞い込んできまして、それらに対処しなければならない。私はもう速戦即決というような形をとりながら仕事量をこなしていくようにという指示もいたしておるわけでありまして、このところそういうような形で仕事量もスムーズにこなせるようになったものの、絶対量の仕事が多いということで、何とか人をふやしてもらわなきゃならないという考えを持って、太田長官を初めとして今回の中央省庁再編に対応する関係大臣にもお願いをいたしておるところであります。  何とか省の昇格までに体制を整えたい、こう思っておるわけでありますけれども、おのずから公務員の採用限定というようなところにひっかかっておりまして、それも難しいわけでありますけれども、できれば他の省庁との比較検討をした上で職員数をぜひふやさせていただきたいと思っておる次第であります。  現場を見ていただかなければなかなかこのようなお訴えをいたしても皆様方には十分御理解をいただけないと思うわけでありますけれども、各省庁でもそのように一生懸命頑張っておるわけでありますけれども、頑張っておる方とそうでない、一生懸命やっておってもまあまあというところと比較が大きいようでありますけれども、ある意味においては環境省は全体的な仕事に取り組む時間が長いのじゃないだろうか、そんな感じもいたしておるわけでありまして、ぜひ先生方の御理解を得て、環境省にふさわしい人員と、そしてまたこれからやる気を起こせる環境省にしていただきたいと思っておる次第であります。
  176. 加藤修一

    加藤修一君 今度、環境庁が環境省になるに従って共管事務が十項以上ふえるという話も聞いております。そういった観点から考えますと、今でさえ不足の状況であるわけですけれども、定員について所掌しております総務庁長官の方から、今の実態を通しながらどういうふうに認識を改めるようなことになったかをお聞きしたいと思います。
  177. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 環境省を発足するまでにそれにふさわしい体制をとるということは、まさに総理がそういう強い御意思を持っておりますので、私もそのような方向で、これは総務庁としても努力をすることになると思います。    〔委員長退席、理事石渡清元君着席〕  ただ、今のお示しのありました数字でありますけれども、ちょっとこれは、それはにわかにコメントはちょっと、これが果たして、本当にサンプルが果たして、例えばこういうことが一つあるわけです。各省庁ともいわゆる現業の方々もおられるわけでございますので、ややそこはもう少し我々としてもよく調べてみたいと考えております。  ということでありますけれども、やはり全体としてスリム化を目標として掲げておりますので、そことの見合いでもって精いっぱいの努力をしてまいりたいということでございます。
  178. 加藤修一

    加藤修一君 一〇%のサンプルの抽出率なわけでありますけれども、私は改めて総務庁長官にお尋ねしたいわけですけれども、きょう配付しております二枚目の方でございます。  左側に書いてございます「官房の職員数の変化」ということで、現状と再編後の官房の数、職員数を見てまいりました。トータルで四千五百十人でございます。今度、省の数が減るわけでありますけれども、現在は一省庁平均で二百二十六人、それが一府省平均四百十人になると一・八倍になるわけであります。これもやはりある基本的な資源を活用するということを考えていった場合、例えばよくお母さんが言うわけですけれども、食事をつくるときに三人も四人も似たようなものだというような発言もあったり、あるいは合世帯になると基本的な例えば冷蔵庫なんか二つも三つも要らないという話でありますから、統合された効果、それはやはり官房のいわゆる人事とか総務とか会計、こういった面についての職員数の削減にも当然私はあらわれてしかるべきだと考えております。  そういった削減されて余剰が出るような人数について、やはりこれも環境庁の方へ異動させるとか、そういった余裕というか可能性というか、そういったことが私は出てくると思うんですけれども、この辺についてはどうお考えですか。
  179. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  それは、各省庁に対してはそれこそ環境省に対する以上に厳しい定員削減の目標を掲げ、そしてそれを守っていただかなければなりませんので、もしそういう余裕がこういうことで生ずるならばというよりも、そういうことが生ずることを前提にして定削計画を提示しているわけでありますので、恐らくどこに聞いたってそのために供出しようということにはならないと思います。それはいわゆる内閣全体のリーダーシップでやっぱりこなしていかなくちゃいかぬということだと思います。
  180. 加藤修一

    加藤修一君 十分考えていただいて、環境庁が環境省にふさわしい、そういう昇格になるような充実強化ということについて考えていただきたいと思います。  私は、先ほどの調査結果に基づきまして、例えば現在の霞が関の省庁全体の平均的な勤務パターン、これが当然あるわけですけれども、これを現在の環境庁に当てはめて考えてみます。  要するに、霞が関の全省庁、それの勤務パターンがある。それを環境庁の今の勤務パターンと考えた場合にはどれだけ人数が要るのか、職員数が要るのか、それをちょっと計算してみましたら、いろいろな計算の仕方が当然あるのでしょうけれども、全省庁の平均的な勤務パターンを念頭に置いて、それが適正規模と考えた場合には、環境庁全体としては、本省だけですけれども、五百六十人という試算が出てくるわけです。  現在、本省だけの人数が約四百五十人程度でありますから、四百五十人と五百六十人ということは、百十人不足している、こういう結果が出てくるわけです。つまり五百六十人で行う仕事を四百五十人で行っている。結果として激務になっている。過激な職場になっている。それが高じて過労死につながっているケースも間々ある、そういう判断をせざるを得ないわけですけれども、この辺についてどのように総務庁長官はとらえようと思いますか。
  181. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 何度も申し上げますけれども、今お示しをいただいたデータにつきましては我々もよく精査をしてまいりたいと思います。  過労死ということも言われるわけでございますけれども、本当に我々も気をつけなくちゃいけないのでありますけれども、相当過激な、過大な負担を、特に企画立案部門についてはどこの省庁に対しても過大な負担をかけていることは間違いがないと思っております。
  182. 加藤修一

    加藤修一君 どこの省庁に対しても過大な負担と言いましたけれども、全省庁の平均的なパターンに対応した形で環境庁の勤務パターンを考えていきますと、それでも百十名不足している状態である、環境庁という今でさえ百十名不足している、ここはきちっと認識していただきたいと思います。  それと、次に資料の二枚目でございますけれども、官房長官にお聞きしたいと思います。  二枚目の右側の図でございますけれども、これは「人口当たりの環境担当行政機関の職員数」ということで、ドイツ、韓国、アメリカ、フランスを比べたものであります。  近隣の韓国と比較しても、日本の環境行政機能は低いというふうに評価せざるを得ない。韓国は日本行政組織をまねてつくっているケースがございますので、例えば経済企画庁とかあるいは国土開発庁だと思いますけれども、そういったことから考えていきますと、環境部あるいは環境省ということについても、かなり中身については考えて、最終的に千六百人、人口規模に関して考えていきますと四・四倍という力の入れようなわけであります。  やはり私は、これから地球環境問題を考えていったとしても、さまざまな動向を考えていきますと、こういった面についての行政機能の強化充実を当然図っていかなければいけない、そういうふうに思っているわけですけれども、こういった今までの議論を含めて、野中官房長官はどのように御見解をお持ちでしょうか。ぜひ環境機能を高めていただきたいと思っております。
  183. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 私も、現在の千名程度の環境省ができ上がったとしても、我が国のこれからの非常に課題の多い深刻な環境行政を十分担っていけるかどうか非常に疑問に感じたわけでございますし、むしろ国土保全、環境等を考えますときに、林野部門等と一緒になって豊富な人材をもってやっていくべきでなかろうかと一人の政治家として考えたわけでございますけれども、先生御承知のように、既に基本法ができ上がっており、これによって省庁再編の法案をお願いする段取りになったわけでございますので、私どもといたしましては内閣の一員としてこの決められた枠の中でやっていかなくてはならないという選択をせざるを得なかったわけでございます。  ただ、今後大きな課題として、当初に申し上げておりますように、今回の省庁再編なりあるいは地方分権というのは一つの段階である、したがって今後この目的を十分達成するためにはさまざまな問題を検討して行政が果たす役割に遺憾なきを期してまいらなくてはならないと存じておるところでございます。
  184. 加藤修一

    加藤修一君 時間が来ましたので、これで終了いたします。(拍手)
  185. 小池晃

    小池晃君 日本共産党の小池晃です。  きょうは、中央省庁再編の問題について、独立行政法人と厚生労働省の問題を中心に質問したいというふうに思います。  独立行政法人化の定員七万三千人中四万五千人を占めている国立病院・療養所、この独立行政法人化の問題を取り上げたい。  国立病院・療養所は、もう皆さん御存じのように、地域医療を担い、障害者や難病、結核、精神、こういうかけがえのない役割を担っているわけであります。それなのに独立行政法人化ということになりつつある。多くの住民や自治体から不安や反対の声が寄せられているのは当然のことじゃないでしょうか。  そこで、どういう機関が独立行政法人に移行するのかについて、これは三つの基準があるということでした。すなわち、まず第一に、公共上の見地から確実な実施が必要であること、そして第二に、国がみずから主体となって直接に実施する必要のないもの、それから三点目としては、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの、独立行政法人に移行するにはこの三条件が必要だということですね。国立病院・療養所はこの三条件を満たしているというのが皆さん、政府の言い分であります。  一番目の公共上の見地から確実な実施が必要であること、これは確かに国立病院・療養所というのは患者、住民にとって不可欠の存在である。しかし、この二番目の条件、これはちょっと認められないんじゃないか。何で国立病院・療養所は国がみずから主体となって直接に実施する必要がないのだろうか、このことをお聞きしたい。  まず、厚生大臣に伺いますけれども、結核の患者数が三十八年ぶりに増加をしている。罹患率は四十三年ぶりに増加している。抗菌剤の効かないいわゆる多剤耐性結核、この問題であるとか、あるいは毎日最近新聞で報道されておりますが、学校などでの集団発生、院内感染、こういう問題があります。緊急の解決を求められている問題があると思うんですが、政府は、結核対策が国民の健康にとって極めて重大な問題である、そういう認識をお持ちでしょうか、お伺いしたい。
  186. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 最近、御指摘のように、結核の院内感染とか集団発生の増加傾向が認められております。  私どもとしては、結核は過去のものということではなしに、現在も非常に大きなウエートを占める疾病でございまして、この重要性にかんがみましていろいろの対応策を講ずべき必要があるということで、昨年から公衆衛生審議会の方でこの検討をいただきまして、公衆衛生審議会で検討いただきました結果をきょう会長の方から私に対しまして、「二十一世紀に向けての結核対策」ということで意見書を提出して、結果取りまとめをいただきました。  この意見書の中にも、結核院内感染の問題とか集団感染の問題が重要な課題として位置づけられておりまして、厚生省として、この事態の重要性にかんがみて結核緊急事態宣言を発して対策を強化する必要性が明記されております。  私どもとしては、院内感染とか集団感染への対応は緊急の課題であると認識しておりまして、同審議会の意見書を踏まえながら、対策の強化によってより一層結核対策の徹底を期してまいりたい、このように思っておるところでございます。
  187. 小池晃

    小池晃君 大変重大で緊急な課題だということであります。  そこで、お聞きしたいんですが、全国の結核病床の全体の数、そしてそのうち国立病院・療養所の持っているベッドの数、この比率、数字をお示しいただきたい。
  188. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 平成九年の調査によりますと、全国の結核病床数は二万九千四百八十八床でございまして、そのうち厚生省所管の国立病院・療養所は一万四千三百四十六床でございまして、全体の四八・七%を占めております。
  189. 小池晃

    小池晃君 大変大きな役割を果たしている、数の上でも半分近くを占めているわけであります。  そして、先ほどお話がありました公衆衛生審議会結核予防部会の意見書、案の段階のものですけれども、これはきょう案がとれたわけですね。これ、私も拝見をいたしました。十六ページに及ぶ中身になっていて、厚生省に対して結核緊急事態宣言を出すよう求めているわけであります。この十六ページのうちに、国立病院・療養所の役割というのは七カ所出てくるんですね。  どういう中身かというと、まず専門家の養成だと。それから、多剤耐性結核患者に対する診療ネットワークの中での役割。それから、多剤耐性、薬の効かない結核に対する相談窓口機能、ここでも出てくる。それから、精神疾患等を持っている患者さんの場合の合併症対策、これは国立精神療養所がそこで役割を果たすべきだと書いてある。広域圏の結核医療の拠点型医療機関としての役割。結核に関する情報の収集、分析と提供、公開。それから、再興感染症としての結核研究の推進。七カ所出てくるんですね。  これは、結核対策にとって国立病院・療養所が果たしている役割がいかに大きいか、結核対策の中心とも言える役割を果たしているということをまさに物語っているんじゃないかというふうに思うんです。  国立病院・療養所の結核対策における今まで果たしていた役割、そして、これからさらに大きな役割を果たすことが求められているというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  190. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ただいま申しましたように、公衆衛生審議会の会長からいただいた意見書の中には、委員の御指摘のように、国立病院・療養所の結核対策上の役割として種々な内容が明記されております。  今も御指摘のございましたように、治療が困難で死亡率も高い多剤耐性結核患者に対する診療を推進するために、国立療養所等を中心とした診療ネットワークを構築するということ。具体的には、都道府県域を越えた広域圏の拠点施設とか都道府県の拠点施設の整備をやってネットワークをつくる必要があるというようなこと。それからまた、国立精神療養所におきまして、精神疾患等と結核の合併症を有する患者の治療についての積極的な対応を推進する必要があること。それからまた三番目には、国立療養所のネットワークを活用した化学療法の大規模臨床試験等の蓄積を通じまして結核研究を行うべきことというようなことどもが多彩に記載されております。  一方、国立病院・療養所におきましては、既に再編計画の見直しを本年の三月に行いまして、多剤耐性結核等への対応を含む専門医療の実施体制の充実を図っていくことを決めておりまして、具体的な取り組みといたしましては、その中で、各分野の専門家を集めて行う集学的医療の実施のための都道府県域を越えた広域的拠点施設の整備とか、あるいは原則として都道府県ごとに一カ所とする施設の集約化を図るとか、あるいは国立療養所の近畿中央病院、これは堺市にございますが、これを頂点とする呼吸器疾患の政策医療ネットワークを構築すること等としております。  私どもとしては、今回の公衆衛生審議会の意見書の内容を十分踏まえまして、結核診療体制のさらなる充実強化を図っていく必要があると考えておりますが、ただ、エージェンシー化によってこうしたことが行われないのではないかということに対しては、私どもは十分効率的な対応ができるというように考えておることを申し添えておきます。    〔理事石渡清元君退席、委員長着席〕
  191. 小池晃

    小池晃君 今、全体として非常に大きな役割を果たしているということをおっしゃいました。ところが、これは独立行政法人にされる対象になっているわけです。今言われたネットワークの頂点に立つ近畿中央病院も、ここも独立行政法人の対象であります。  何でこれ、そうしなきゃいけないんですか。これほど重大な問題で、国は緊急事態宣言まで出すと言っている。これはまさに国が直接実施すべき事業だということを示しているじゃないですか。何でこれは国が実施すべき事業でないと言えるのか。明らかに、やはり国の厚生行政としての結核対策の後退じゃないか、責任が後退することになるんじゃないかというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。
  192. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) エージェンシー化によりまして移行される病院、療養所等は、国の政策医療を担当するという視点から整理をいたしておりまして、私どもは、エージェンシー化によって運営される病院、療養所等の役割は決して軽視するものではなくて、そのことの重要性はより一層高まってきている。しかも、エージェンシー化によっていろいろ管理会計あるいは企業会計原則も入れたりして合理化をしながらも、さらに一層効率化を高めて、そういったいろいろの政策医療の目的を達成できるというように思いますので、このような整理にさせていただいております。
  193. 小池晃

    小池晃君 国立病院のままでも独立行政法人になっても行政の責任は同じだというふうに言うんですか。独立行政法人になっても国の関与は変わらないんだ、ちゃんと責任を持つんだ、もしそういうふうに言うのであれば、国立病院のままでいいじゃないですか。何で独立行政法人にするんですか。そのことを聞いているんです。
  194. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 独立行政法人化の一般原則は独立行政法人の通則法で定められておりますけれども、これは、より弾力的効率化を図りながら運営の適正を期そうということでございまして、国立病院の場合は、エージェンシー化することによって国家公務員である身分も保障されておりますし、それから別に独立採算制を強要するものでもございません。今までの政策医療を重点的にやるという体制はより一層強化していくということでございまして、国の一般会計との関係でいいましても、今申しましたような独立採算制ということではございませんので、必要な経費等は繰り入れをしてやっていく。  しかし、それじゃ国立病院のままでいいのではないかという議論に直ちには私どもは直結しませんで、やはり独立行政法人化によって弾力的、効率的な運営も期することができるというように思いますので、この措置が妥当なものであるというように考えておるところでございます。
  195. 小池晃

    小池晃君 だから、国家公務員の身分を残すんだ、そして国も交付金を出すんだ、同じなんだ、同じなんだという話なんですよ。だったら、何で国立病院のまま残さないのか。  言っているのは、独立行政法人になると変わるというのは弾力化、そのことだけですか。それだけなんですか、理由は。
  196. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 国立病院の問題につきましては、独立行政法人化の問題と同時に裏腹をなしているのは統合、整理等々が行われることでございます。これは、観念的には独立行政法人化とこの統廃合の問題は一応別個だと言えますけれども、しかし結果として、やはり合理化をしながら、そしてそれを独立法人化という枠組みの中でこれを運営した方がより政策医療を担当できるというように考えております。  なお、政策医療といっても、高度のナショナルセンター的なものはこれはそのまま国立の機関として残すということを考えておりまして、そういう整理にいたしておるところでございます。
  197. 小池晃

    小池晃君 先ほどから、効率性、それから公開性というようなことも以前は言われていました。透明性の確保ということも言われていました。  ところが、これは総務庁の行政監察局の「国立大学附属病院に関する行政監察結果報告書」というのがあります。これを見ると、何と書いてあるかというと、国立病院というのはよくやっているんだと書いてあるんですね。「国立病院は、国立病院特別会計法に基づき、損益計算書、貸借対照表、その他の財務計算に関する書類を作成しており、」、「これらの財務諸表により、国立病院等は、病院の財務状況を把握することが可能となっている。」、そう書いてある。国立病院においては「経営を総合的に分析するための経営管理指標を広範囲に設定し経営管理に努めている。」、ちゃんとやっているというふうに書いてあるんですよ。評価されているんです。これ総務庁ですよ。  今まで言われてきたことを聞いても、私は全然納得できない。何で国立病院を独立行政法人にしなくちゃいけないのか。ちゃんとやっている、効率性も確保している、透明性も確保しているというふうに書いてあるんだから、国立病院でこのまま頑張っていけばいいじゃないですか。どうなんですか。
  198. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  独立行政法人化した方がよいという理由は、これは自己責任と透明性の確保ということでよいと言っているわけであります。何もなければしなければいいじゃないかということじゃないわけでありまして、我々はメリットがあると思うからやるべきだと言っておるわけでございます。  それから、国立病院と国立大学附属病院の比較でありますけれども、結局、それは国立大学の附属病院についても我々は同時に並行的に求めてきているところでございますが、まだ今その合意に至っていないというだけの話でございます。ひとしく求めております。  これは別に、国立病院を独立行政法人化することは何か罰のように、悪いことをしているからしてしまうんだというふうにおとりのようでありますけれども、我々は優秀な機関であればあるほど独立行政法人としてやっていっていただきたいと。独立行政法人は、効率性だけを求められるんではなくて、設置をした目的に対する適正性と効率性と両方を求めるということでありますから、これはどのような組織であってもそのような条件を満たしておかなければいけないと思うのでございます。
  199. 小池晃

    小池晃君 今、透明性がメリットだとおっしゃいましたけれども、私の言っていることをかなり曲解しているような気がするんです。  私は、これに書いてあるのは、透明性が確保されているというふうに評価しているじゃないですか、国立病院はちゃんと財務諸表が公開されている、経営管理指標も公開されている、そういうふうに評価されているのに、何でそれが透明性確保のためにわざわざ独立行政法人にしなくちゃいけないのか。総務庁の行政監察局の報告でもちゃんと透明性の確保ということはできているというふうに評価しているんじゃないですかと、そういうふうにお聞きしているんです。だから国立病院のままでいけばいいじゃないですかというふうに聞いているんです。
  200. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  イデオロギーの違いがあると思うのでありますけれども、要するに計画経済、何もかも国家の機関である方がよいという考え方なのか、それともなるべく自己責任、透明化した方がいいのかという考え方の違いがあると思うわけであります。  今の、よく、うまく、ちゃんとやっているからいいじゃないかと、私はそれは国立病院の経営者の方々は日ごろ大変な創意工夫を重ね、努力をしておられると思います。ですから、今度の独立行政法人化に対して自分のところならばやっていける、十分にその役割を果たせると思うから早い段階で独立法人化を受け入れていただいたものだと私は思っております。いいことだと思っております。
  201. 小池晃

    小池晃君 私は何もかも国立でやれなんという議論をしているんじゃないんです。あなた方は今まで大きな役割を果たしてきた国立病院をわざわざ独立行政法人にしようとしているんでしょう。それがなぜなのかというふうに聞いているんです。その理由が、根拠として言っているのが、透明性の確保とか効率性の向上とか言っているけれども、そういったことはあなた方の文書を見ても既に達成されていると言っているじゃないかと、それなのに何でやる必要があるのかというふうに言っているんです。  ちょっと別の側面からお聞きしたい。国立医療の果たしてきた役割というのは、もちろん結核の問題だけじゃないんです。  国立病院の役割ということでは、これは行政改革会議のヒアリングに対する厚生省が提出した文書です。これにはこうあります。「次のような政策医療の分野においては、国が自ら直接に果たすべき役割が存在している。」ということで、「国家の危機管理や積極的国際貢献における役割」。それから、「戦略的医療における役割」、これはがんとか循環器病。そして、「歴史的・社会的な経緯等により地方・民間での対応が困難な領域での役割」、薬害エイズ、スモン、結核、難病。そして、「国家的見地から重要な医療政策を実践する役割」ということで、診療報酬のモデル事業とか医薬品の治験とか、こういったことを例示しているわけです。これは、まさに国がみずから直接に果たすべき役割が存在しているというふうに厚生省は書いているわけです。  こういう結核以外の分野、さまざまな分野にも、まさに国がみずから直接果たすべき役割が存在しているんじゃないですか。国立病院のまま続けるべき大きな役割が存在しているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  202. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員の御指摘のように、この行政改革会議におきまして平成九年五月にヒアリングがございまして、そのとき厚生省が提出した資料がございますが、それは今御指摘のように、政策医療の分野におきましては国がみずから直接に果たすべき役割が存在している旨の記述でつづられておる意見書の提出がございます。  これはそれなりに私は正当な理由があると思います。しかしその後、行政改革の中の審議におきまして、政策の企画立案とか実施機能を分離するとか、あるいは実施部門のうち一定の事務事業を担わせるために独立法人格を有する独立行政法人を設立するとか、あるいは国立病院・療養所につきましては、民営化、地方移管、または独立法人化の検討をいろいろした中で、平成九年の行政改革最終報告におきまして、国立病院・療養所については、高度かつ専門的な医療センターやハンセン病療養所等を除き独立行政法人化を図ることを検討すべきこととされまして、昨年の六月に成立いたしました中央省庁等改革基本法にこの趣旨が盛り込まれて今日のような法案提出になっているわけでございます。  したがって、率直に申しますと、当時の弁明は、国立病院の果たしている役割は非常に大きかったわけでありまして、それぞれ先端的な医療面でも役割を果たしていたということを厚生省の当時の方々がみんな評価をしていることも事実であります。しかしながら、これが国の行政改革全体の中の位置づけとしてはそういう機能を重視しつつも、それを減殺するようなことがあってはなりませんが、そういう政策医療面その他の役割をさらに強化していくということによって、独立行政法人化をして、先ほど来申し上げているように合理化、効率化を図ったりして、さらに一層政策医療の果たす役割を集約的に行うことが適当であるというように考えて、今日の法案を提出している次第でございます。  そういう点で、率直に言えば、あのときはああ言って厚生省は評価していたのに今になって何だとおっしゃる趣旨だと思いますけれども、これは役所としてはやっぱり国立病院の機能、存在価値を積極的に評価していたことは間違いありません。しかし、今日の行革全体の大きな流れの中で総合判断をして、独立行政法人化し、そしてそれをさらに効率を高めようというのが今日の状況であるというように御説明申し上げます。
  203. 小池晃

    小池晃君 評価がその当時とちょっと低くなったというようなレベルじゃないんです。  今、ナショナルセンターの病院を残すというふうにおっしゃいましたけれども、この厚生省のヒアリングに提出された文書を見ると、さらにこうも書いてあります。国は、国の責任と役割を果たしていくために、その指揮命令の及ぶ形で医療施設を全国的な広がりをもって有することが必要である、ネットワークを形成する相当規模の施設群が必要だ、全国的に広がりをもった施設配置がなされていることが重要、こう書いてあるんです。  まさにこのとおりだと思うんです。国立がんセンターとか国立循環器病センターとかナショナルセンターだけ国立で残しても、国立医療としての役割を果たせないと思うんです。各地に、地域医療も担って、結核やいろんな分野の医療を担いながらネットワークとしてあるからこそ国立医療としての役割を果たせる。だからこそ国がみずから直接果たす役割があるんだ、このときこういうふうにおっしゃっていたんじゃないですか。  評価が低まったというような問題じゃなくて、明らかにその当時言っていたことと全く趣旨が違うんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  204. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 弁明を申し上げるわけではございませんが、当時の厚生省として国立病院の評価はただいま申し上げたような、また委員が今御指摘されたような見解であったと思います。ただ、国立病院といいましても療養所も含めて二百四十弱ございますから、それらの中で合理化を図るあるいは統廃合する、そして国立病院のあり方を厚生省の当時の見解のようにもっと特化してネットワークもさらに機能的にやろうというようなことが行われたとしても、これは別に当時の見解を否定するものではございません。  私どもとしては、当時の見解を尊重しつつも、なおさらに政策医療の機関として効率化を図っていこうということで、統廃合を含め、そしてまた独立行政法人化によって対応しよう、こう考えておるところであります。
  205. 小池晃

    小池晃君 国立病院の果たしている役割をもう少し別の側面からもちょっとお聞きをしたいというふうに思います。  国立病院・療養所附属看護学校というのがあるんです。昨年度の看護学校、看護婦さんの養成所の三年課程の入学定員数、これは全国で三万三千七百四十人です。そのうち国立病院の看護学校というのは四千四百八十人、一三%なんです。すなわち、全国の看護婦さんの七、八人に一人は国立の病院の附属の看護学校出身だということなんです。  例えば、佐賀県や宮崎県は三年課程の看護学校三校です。そのうち二校が国立病院・療養所附属看護学校。香川県は二校だけしか三年課程の看護学校はないですが、そのうち一校が国立です。島根もそんなような状態。こうした地域では国立病院・療養所の看護学校の果たしている役割というのも極めて大きいんじゃないだろうか。  同時に、看護学校というのは明らかな不採算部門になっているわけです。看護学校の会計を見ると、昨年度の予算で歳出は七十八億四千万円に対して五十六億四千万円の一般会計からの繰り入れがあります。これは国の事業だからこそできることなんじゃないですか。独立行政法人になったらこれは切り捨てられてしまうんじゃないかという不安の声が出ているのは当然だと思うんです。  やはりこういった部門からも、医療の面もそうだし、こういう看護スタッフ、医療スタッフ養成という点でも国立ならではの役割を果たしてきたんじゃないか、国がみずから主体となって直接実施すべき仕事ということになるんじゃないかと思うんですけれども、これはいかがでしょうか。
  206. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 医療給付に当たりまして看護婦の果たす役割というのは極めて大きいことは今さら申し上げるまでもございません。そのために、今、委員の仰せられたように、国立病院等で四千五百人くらいの看護婦の三年課程の養成をやっておりました。全国では三万三千くらいということであります。こうしたことによって経費もかかりますので、今言われましたように、歳出で七十八億かかるところを歳入は二十二億ということですからその差額を繰り入れしてこの機能を果たしてきているわけでございます。  今後、看護婦の養成人員につきましては、整理統合その他との関係がございまして、エージェンシー化した後におけるいわゆる療養所、病院の看護婦の養成はある程度課程を整理統合しても賄い得るということでございまして、私どもとしては多少養成所の学生募集停止等も考えながらやっておりますが、しかしエージェンシー化したからといってその収入と支出の差額を繰り入れないということではございません。エージェンシー化というのはあくまで独立採算制を前提としたものではございませんから、私どもとしては本当にこれからの政策医療を担うに足る優良な看護婦さんの養成というのは非常に重要なことでございますから、仮に多少の学生募集定員が縮小されたとしても、このエージェンシー化による国立病院・療養所の看護婦の対応に万全を期していけるだろうし、また期していかなければいけないというように思っているところでございます。
  207. 小池晃

    小池晃君 結局、今までのお話をお聞きすると、結核の医療の問題でも、それから難病やその他いわゆる政策医療と言われている分野、それから看護婦養成という面でも、国立病院・療養所の果たしてきた役割を後退させないと、これはちゃんとやるんだと、大丈夫だと、心配するなというふうに聞こえるんですね。それならば何で、ちゃんと金も出すし身分も守ると、それだったら国立で何で残さないのかと、そういう疑問はやはりますます深まるんです。  結局、国立病院・療養所が何で国立病院じゃなくされるのか、独立行政法人にされるのか。これは、まともな理由、説得力のある理由というのは何一つないじゃないですか。透明性、弾力性というような言葉を並べ立てるだけなんだ。  一方、独立行政法人とされた施設が、厚生省は、国立病院が独立行政法人となっても今までと変わらないんだと、大丈夫なんだと、住民の皆さんに心配かけるようなことはないんだというようなことをおっしゃるんですが、本当にそうなのか。  政府は、これは国として責任を持ってやっていく、国立病院のときと変わらないんだというようなことを言わんばかりですけれども、本当にそうなのか。そのことをちょっとお聞きしていきたいというふうに思うんです。  そこで、独立行政法人の三要件、先ほどありました。三番目の条件ですが、これは、民間の主体にゆだねた場合必ずしも実施されないおそれがあるもの、こういうことですね。これは一体どういう場合を指すのでしょうか。これを説明していただきたいと思います。
  208. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 今言われました、特に公共的な使命を求められていることに対してこたえるということが私立の機関であれば採算上なかなか難しいということがあり得るから、それに対しては、そういうものに着目をするということでございます。  先ほどからおっしゃっていることですけれども、要するに、私立大学の附属病院もあれば、私設の病院もあれば、あるいは財団法人のような病院もあれば、あるいは都道府県立の病院もあり、その中で国民の税金を使ってやるということは特別な理由がなければいけないわけであります。  そして、多くの患者さんたちがすべて国立の機関にかかれるわけじゃないわけでありますから、その中で特にそこを国立でやるという場合には、それは公共的な目的があるだろうと。では、その公共的な目的は果たすけれども、ほかに共通のものが幾らでもあるわけでありますから、同じように自己責任でもって、透明性のもとでやっていただこうというのは、納税者に対して我々が当然試みてよいことであろうかと思います。
  209. 小池晃

    小池晃君 今のお話を聞くと、何か独立行政法人に移される国立病院というのは国立としての役割を果たしてこなかったんですか。そういうふうに聞こえますよ。ちょっと今のお話はおかしいと思います。ナショナルセンターで残すところだけは国立の役割を果たしてきたというふうに聞こえます。おかしいんじゃないでしょうか。  今おっしゃいました三番目の条件は、民間の主体にゆだねた場合は必ずしも実施されないおそれがあるという話、これは採算の問題だということですね。  だとすると、独立行政法人になれば、これは先ほどからお話が何度もありました、非常に厳しくやるんだと、企業会計原則で効率性を厳しく追求するんだと午前中おっしゃっていました。企業会計原則で企業努力をしていけば、これは独立採算を前提としなくても採算がとれるようになる、結果としてそうなっていくじゃないですか。  すなわち、採算がとれるようになったらば、これは、民間では必ずしも実施されないおそれというのはなくなるということになるわけでしょう。すなわち、独立行政法人の要件を失っていく可能性があるという、そういうことになるんじゃないですか。  行革会議の最終報告を見ても、「民間の主体にゆだねることが可能なものについては、極力、民間の主体にゆだねる。」、そういうふうにされております。要するに、独立行政法人になるということは、採算を前提とはしないけれども、効率性を追求される中で採算がとれるようになれば民間に移行していくという条件になっていくんじゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  210. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) いや、これは委員のおっしゃっていることと私が言っていることは同じことを言っているわけでありまして、高度に公共的な役割を果たさなければいけないという場合には、一般には採算がとりにくいということでありますから、それで交付金を出してその目的を達成していただくということであります。それが、要するに民間化、市場化できる、市場でもって十分業として成り立ち得るということになれば、それは話は別であります。
  211. 小池晃

    小池晃君 それでは、具体的に国立病院・療養所の経営状態について聞いていきたいと思うんです。  厚生省にお聞きしますが、最近五年間の国立病院特別会計への一般会計からの受け入れ率の推移、これを示していただきたい。
  212. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 国立病院・療養所におきます直近五年間の一般会計からの繰り入れ状況でございますが、平成七年度におきましては二千四百八十六億円、八年度につきましては二千百九十六億円、それから九年度が千八百二億円……
  213. 小池晃

    小池晃君 受け入れ率だけでいいです。
  214. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 率で申し上げますと、七年度が二三・七%、八年度が二〇・六%、九年度が一六・六%、十年度が一三・四%、十一年度が一三・二%でございます。
  215. 小池晃

    小池晃君 これはどんどん減っているんですよ、五年間で二三・七%から一三・二%まで。額にすると一千億円も減っている。急速に低下しているんです。このペースが続くのであれば、国立病院の独立行政法人化が予定されている二〇〇四年、これまでには一般会計からの受け入れというのはもっと減るだろうというふうに考えても不思議はない。  何でこんなことになっているかというと、九二年に国立病院・療養所の経営改善懇談会がありました。業務改善命令が出されてすさまじい労働強化をやられているわけです。賃金職員の削減、処遇の切り下げ、二交代制の導入、こういったことが進んでいる。経常収支率一〇五%というような目標が現場では出されている。五%の上乗せというのは何かというと、施設整備費、いわゆる減価償却ですね、これも含めて完全独立採算を目指せ、そういう指導が現場ではやられているんです。その結果、かなりの病院で経常収支率が上昇して、国庫からの繰り入れというのは大幅に今減ってきている。これは私は容認するものじゃありませんけれども、こういう実態に今なっているんです。  さらに、病院ごとの収支率を見ると非常にくっきりとした傾向があらわれてきております。私は、厚生省から九七年度の各病院、療養所の経常収支率をいただきました。  これを四つに分けてみたんです。移譲の対象とされている、要するに独立行政法人になる前に自治体なんかに移譲される予定の病院、それから統廃合がありますね、統廃合のうち、なくなっちゃう方の病院、もう一つは統合されて残って、そして独立行政法人になっていく病院、そして何も手をつけられずにそのまま独立行政法人になっていく病院。こういう四つのグループに分けて、これは厚生省に計算していただきました。お配りした資料がそれであります。  それを見ると、移譲される予定の病院、療養所の経常収支率の平均は八五・一%。統合でなくなってしまう方の病院、療養所の経常収支率は八九・七%。統合で受け入れてその後独立行政法人になっていく病院、療養所は九八・七%。独立行政法人になっちゃう病院、療養所というのは一〇〇・三%なんですね、そのうち療養所を外して病院だけ見ると一〇五・四%です。もう採算はとれているんですよ。  この数字、間違いないですね。
  216. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 間違いございません。
  217. 小池晃

    小池晃君 この数字を見ると、経常収支率というのが、再編計画で一体どこを移譲するのか、どこを統廃合でつぶすのか、そして残した独立行政法人はどこを持っていくのか、経常収支率を一つの参考にして、それで判断したということは否定できないんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  218. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生の示された四分類の数字は、今、局長の申されたとおり間違いはございません。  しかしながら、国立病院・療養所の移譲、統合あるいは統廃合等に当たっては、経営的な経常収支の比率だけを見てこれを処理するということではございませんで、基本的にはやはり国が政策医療としてやっていく、それから地域配置その他全体を見まして判断をしているものでございますし、また移譲といっても受け皿がない場合も困りますし、いろいろ総合勘案して決めておるものでございます。  今、こうしてくくられてみますとそのような立論の基礎にされても仕方のないようなこの数字ではありますが、我々としては、決してこういうものを一つの目標値として経営の悪いところだけを切り捨てていくというやり方でないことは、これはもうはっきりしておりますから明確に申し上げさせていただきますが、結果としてこのようなことになっておると認めざるを得ないということでございます。
  219. 小池晃

    小池晃君 結果としてというのは噴飯物ですよ。どう見てもこれは意図的な分類ですよ。この数字から一体何が見えてくるか、だれが見ても明らかです。  そもそも、大きく採算を割り込んでいるところは独立行政法人にする前に自治体に押しつけてしまおう、移譲してしまおう、あるいは統廃合でなくしてしまおう、そして独立採算でもやっていけそうなところだけ独立行政法人に移行していこうという意図が、これはだれがどう見たってここから見えてくるじゃないですか。  つまり、独立行政法人化するとされている病院というのは、これから二〇〇四年に独立行政法人になると、三年ないし五年間、中期計画を経て評価委員会の評価を受ければ、これはもう民間の主体にゆだねても、採算性で判断するんですから、支障がないというふうに判断されて民営化されていくんじゃないですか。これは、民間の主体にゆだねることが可能なものについては極力民間の主体にゆだねるというふうに言っているわけですから、そうなるというのは当然だと、そうなる可能性は極めて高いと思うんですが、いかがですか。
  220. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) これは、まさに国の立場から見て実施される必要があって、民間では実施されにくい、そういう目的を持って設置されており、そのように事業をなされていると思えば独立行政法人として維持されるということになるわけであります。  これは、採算をとってはいけないんだ、とれたら間違いだ、とれたから悪いんだとか、そういうことでは決してないわけであります。先ほども申しましたけれども、我々から見ればよいことなんであって、よく頑張った、よくやったということが、あなたから見れば、これは弱いものであって被害者的な立場であるというふうにとれるわけでしょう。とり方の問題だと私は思います。
  221. 小池晃

    小池晃君 そんなことを言っているんじゃないんですよ。収支がとれそうなところだけ選んで独立行政法人にしているんでしょう、そして、それは民営化というのを見越されているんでしょうというふうに言っているんです。  今、必要性があれば独立行政法人であっても民営化というふうにはしないんだというようなことをおっしゃいましたが、では、お聞きしますけれども、独立行政法人になった後、この経常収支率が一〇〇%あるいは一〇五%、一一〇%に行くかもしれない、どんどんよくなっていっても、結核とか難病とか、政策医療の課題を担っているところというのは絶対に民営化しないと約束できますか、どうですか。
  222. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今度のエージェンシー化によっても国立病院・療養所の果たす役割は政策的な医療を重視していこうという建前でございますから、今、具体的におっしゃられたいろいろ政策医療として国が取り組まなければならないような分野は残しておいていくのは当然でございまして、私どもは、決してそれをいいかげんに採算ベースだけで線引きをしているものではございません。  そして、政策医療単位で病名ごとに基幹病院をつくり、そのネットワークを保持し、そしてそれが機能的に全体としてうまく動いていくように、研究も治療もうまくできるようにということを考えて再編成を考えているわけでございますので、この点は余り誤解をしていただかないように。私どもとしては、それは守っていくつもりでございます。
  223. 小池晃

    小池晃君 一般論を聞いているんじゃないんです。一〇〇%、一〇五%とどんどん経常収支がよくなったような病院については、住民あるいは患者にとって、地域にとって必要な医療を担っているということであれば、これは守るというふうに約束するのかどうかというふうに聞いているんです。そのことを約束できるんですかと聞いているんです。
  224. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 統廃合計画がつくられまして、ことし三月に修正しましたが、統廃合計画に基づいた残余のものについては、私どもとしては、政策医療の位置づけがきちっとできるわけでありますので、それは守っていくということであります。
  225. 小池晃

    小池晃君 そのことは見守っていきたい。  同時に、今、移譲されるところはもう前提のようにおっしゃいましたけれども、まさにこういう経常収支率の低いところ、採算のとれないところを自治体にどんどん押しつけるというやり方なんですよ。こういうことが果たして許されるのか。  結局、あなた方のやり方でいけば、不採算病院というのは自治体に押しつける、あるいは統廃合でつぶしてしまう。独立行政法人になったところはどんどん効率化を追求して、今しないというふうにおっしゃったけれども、民営化という方向も可能性としては必ず出てくる問題なんじゃないかなというふうに思うんです。  いずれにしても、やはり国の医療の後退という点では、これははっきりしているんじゃないだろうか。国の医療に対する責任を後退させる独立行政法人化は断じて認められない、そのことを申し上げて、次の問題に行きたいというふうに思います。  厚生労働省の問題ですが、この省の抱える課題は、雇用、労働条件改善、年金、医療、大変にいろんな問題がある。今でさえ十分な対応ができていないのに、厚生省と労働省が一緒になったら、さらに行政は後退するんじゃないか、こういう不安があるのは無理からぬことであります。  そこで、労働行政の面から聞きますが、労働基準法、労働安全衛生法がどれほど遵守されているか。毎年の定期監督での違反率、これを示していただきたい。
  226. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 全国の労働基準監督署におきまして、労働条件あるいは労働災害の面で問題があると認められる分野につきまして、計画的に定期監督を実施いたしております。  ここ三年間で見ますと、大体十四万から十六万件の事業所を監督するわけでございますが、その労働基準法、安全衛生法等の関連で何らかの抵触するものが認められる事業所は約五四、五%、こういう状況でございます。
  227. 小池晃

    小池晃君 ちゃんと労働省の「労働問題のしおり」に正確な数字が出ているんですから、まじめに答えていただきたい。五五・七%です。  法律ができて五十年です。この労働基準法、労働安全衛生法は刑事罰を伴う法律。刑事罰を伴う法律の違反率としては驚くべき高さです。  そこでお聞きしますが、法の執行に当たる労働基準監督官の数は何人でしょうか。
  228. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 平成十一年度現在で申し上げますが、労働基準監督官の数は三千五百四十五人でございます。
  229. 小池晃

    小池晃君 ヨーロッパ、例えばドイツ、フランスの労働基準監督官の数を示してください。
  230. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 諸外国の労働基準監督官につきましては、国によりましてその所掌する業務の範囲が日本の場合と異なっております。また、それらの機関に従事する職員の中から日本の労働基準監督官に当たる職員に相当する者を把握することは大変困難でございまして、正確な比較は申し上げられませんが、例えばドイツについて申し上げれば、各州政府の労働保護担当官庁に属している監督官の総数は四千五十人でございます。また、フランスにつきましては、監督業務あるいは職業訓練、雇用問題を所掌している県、州の雇用労働職業訓練局全体の職員数になりますが、九千九百十一人、そういった状況でございます。
  231. 小池晃

    小池晃君 今の数をもとに、監督官一人当たりの雇用者の数を比較すると、ドイツは六千七百十六人、フランス千三百七十人、日本は一万五千百四十人です。これでは日本の遵守率が低いのは当たり前なんです。  監督官が少なくてどういう事態になっているか。九七年の労基法の適用事業所数は約四百五十五万カ所。監督を実施した件数は年間十七万件。今の体制で全部の事業所を回ろうとすると一体何年かかるか。二十六年半かかるんです。行政需要に足りないことは明らかじゃないですか。大変深刻な事態であります。  それから、同時に失業の問題、きのう五月の雇用統計が発表されました。大変な事態になっている。今ほど雇用対策が求められているときはないと思うんです。  そこでお聞きしますが、労働省本省の職業安定局、県の職業安定主務課、職業安定所の定員、大体職業安定にかかわる数です。これを三十年前の六八年度と九七年度について、その推移、数だけ示していただきたい。
  232. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 本省と都道府県を含めました平成十一年度の職業安定行政機関の定員は一万五千二百七十三名でございます。これを約三十年前、昭和四十三年の定員と比較いたしますと、一千八百七十九名の減というふうになっております。
  233. 小池晃

    小池晃君 減ってきているんですよ。完全失業者数は、六八年は五十七万人、今は五倍以上です。雇用労働者数も二倍近くになっている。加えて、育児休業制度、介護休業制度で非常に業務が複雑化、多様化している。それなのに、労働行政はこれだけ後退をしている。さらに、ここに加えて人員削減などのスリム化が求められている。これでは労働行政は一層後退するのではないか、そういう国民の不安は当然だと思うんです。  労働大臣は、そうではない、大丈夫だと胸を張って言えますか。お答えください。
  234. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 単純に数字を比較しますとそういうお話になっちゃうんですが、先ほども局長が一部説明をしましたとおり、日本の監督官に該当する適切な数がはじけないんです。もっと幅広い営業法の一部とか、それからほかの分野までも担当している人の数を横並びにされちゃうとこれだけ違うじゃないかと。  それから、定期監督に関しましても、確かに年間十五、六万件でその違反率が五四、五%です。ただこれは、横からべたでやっていった数字じゃなくて、いろいろ情報が入るわけです。あるいはこういう業種は割と過去の経験からするときちんとしていない比率が多いというところをねらってやっていきますから、べたの数字でやっているわけじゃないんです。  行革の流れで人員の削減がなされる。私どももできるだけ必要な業務分野には濃淡、これから人員をたくさん割かなきゃならないところとそうでないところ、いろいろ精査をして効率的に配置をしていきたいと思いますので、もちろんもっといた方がもっとできるじゃないかという議論はどこの省庁にも当てはまるとは思いますけれども、限られた人員の中で効率よくやっていく工夫はこれからもしていきたいというふうに思っております。
  235. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 小池君、時間が参りました。
  236. 小池晃

    小池晃君 最後、簡単に。  数は問題じゃないと言いましたけれども、数は大切なんですよ。減ってきているんですよ。労働行政は後退しているのが実態なんです。それなのにこういう事態の中で厚生労働省という形で行政を統合する。国民の不安が高まるのは当然であるということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  237. 山本正和

    山本正和君 きょう私は、省庁再編、地方分権のこの委員会で特に文部大臣にいろいろと御質問をしていきたいと思います。総務庁長官自治大臣には質問がございませんので、ひとつごゆっくりとお聞きいただきたいと思います。  まず、文部省が文部科学省というふうに名前が変わるわけでありますし、科学技術庁がここで一緒になるということでありますが、ちょっとそのことに入るについて、実は私は、この省庁再編とか地方分権という流れの背景は、やっぱり日本の国が二十世紀から二十一世紀に変わる中でどうにもいろんなことが行き詰まってきて、あるいは新しく展開せざるを得ない課題が多くなってきてここに至ったと思うんです。私も旧自社さのときに随分自民党の皆さんとも議論いたしました。例えば環境庁の問題でも、これを環境省に昇格すべきだと随分強く主張してやってきた。文部省の問題も随分議論してきたわけであります。  ただそこで、特に文部省にかかわることの中で私が一番当時主張しておりましたのは、日本の国の今置かれている教育の状況はどうにもならぬぞということが盛んに言われてきている。そして、昔でいえば、それぞれ町あるいは村には小学校を中心とした一つの共同体的な感覚もあってさまざまな教育が行われてきた、地域を大事にしながら。しかし、それは明治以来の日本がとにかく列強に追いつこうという大変な努力をして富国強兵の道を選ぶ中で、国家としての役割が非常に教育に影響を強く及ぼしてきた、そこのところももっと含めて見直して、これからの文部省のあり方を考えるべきじゃないかというような議論をずっとしてきたと思っております。  ただし、そこでどうにも今の手のつかない問題は何かといえば、大学問題。特に今の大学の入試のあり方が日本状況になっている。要するに、選抜するための入学試験が、それがしかも機械化されてしまって、マル・ペケテストに変わって、今度はすべての問題を数字であらわすような偏差値教育に行ってしまっている。  実は、この前七十二歳になるじいさん連中の同窓会を、私もその一人ですが、やったんですよ。これは大臣も御承知とは思うけれども、三枝君という京都大学の高分子化学の大分世界的な権威らしいんですけれども、これともいろいろ話をしたんです。そうしたら、大学のあり方をめぐってちょっと議論もしたんですけれども、大学というところは確かに研究者としての役割が非常に大きい、と同時に教育者として自分たちが学生をどう教えるかということも知らなきゃいけないんだと。ところが、こんなことを言ったらおかしいかもしれないけれども、大日本帝国がよかったと言うんじゃないですよ、大日本帝国当時の大学、これは権威もあった。それから、こんなことを言ったらおかしいけれども、ノーベル賞の湯川さんなんというのは、これは大日本帝国の教育の中できちっと立派にやったわけです。仁科さんでもそうですよね。  ところが、戦後の今の教育の中でこれは果たしてどうなんだろうかという議論が随分出まして、二人でわあわあやっておった。そうすると、おい、先輩には向坊隆さんもおったなと。私どもの旧制中学の同期生ですからね。先輩になるんです、向坊さんは。それから衞藤瀋吉さんも私どもの中学の先輩ですけれども。多く大学人もおったけれども、みんな先輩はどんなことを考えているんだろうかというふうな話をしておったんです。大学が一体これからどうしたらいいかということについて、大学人が本当にどう考えているんだというふうな議論をしたんです。  私は、学者としての大臣を大変尊敬しているんですけれども、すばらしい業績。今は政治家でいらっしゃいますからちょっと立場は違いますけれども。それで、大学教育について大臣は今どうお考えになっているか、ちょっとこれは質問になかったんですけれども、お顔を見たもので、ちょっと一言お聞きしたいと思います。
  238. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 明らかに大学は変わりつつあります。その最大の理由というのは、先生指摘になられました戦前というと四十ぐらいしか大学はなかった、三年制の大学が。そして、そこに新制大学が発足いたしました当時においても全十八歳の人口のうちの六%ぐらいが行ったわけでございます。当時百五十から二百ぐらいの大学であったと思います。それが今は六百になっております。そして、その六百の大学に進むパーセンテージは三五%になっている。ですから、明らかに戦前に大学で教育を受けた人々と現在の四年制の大学で教育を受ける人々の間では、その割合がうんと今は大きくなっておりますので、そういう意味で学生諸君の質も変わってきていると思います。  したがって、それに対応する大学も、多分戦前の三年制の大学ですとやはり研究者志向と、それからまた自分の分野を継続していくような人を育てるというふうな意欲が非常に強かったと思いますが、今はやはり特に学部においては教育をしっかりしなきゃいかぬというふうな気持ちが強くなってきていると思います。  変わりつつあると申しましたのは、やはり大学の、私も教員でございましたけれども、その教員の間の気持ちというのは、やはり研究をまずやりたいというふうなことが強くあったと思いますが、このところ研究だけではなく、まず教育をやることが特に学部では重要であるという認識が強くなってきていると思います。  ただ、問題になりますのは、高等学校の先生までですと、教育課程においてどういうふうに学校で教えたらいいかという教育法を十分習うわけですね。大学の先生たちというのはどこの段階でもどう教育をしたらいいか全く習っていないわけです。ですから、黒板の書き方というふうなことも別に習わない、ただ先生がやってこられたのを見て、ああ自分もこうしようというふうな以心伝心でいわば身につけているわけでございます。  しかし、それも変わってまいりました。それは、大学院の学生が学部の学生に対してティーチングアシスタントという格好で授業にときどき参加したり、あるいは実験を指導したりするようなことが出てまいりましたので、大学院などでかなり学部を教える経験も身につくようになってまいりました。  こういう点で、お答えになるかどうかわかりませんけれども、大学の教員の気質が変わってきた点、その理由というのは進学者がずっとふえてきたこと、大学がふえてきたこと、こういうふうなことを今考えなければならない時代になったということを申し上げてお答えとさせていただきます。
  239. 山本正和

    山本正和君 私は、確かに大変な数の大学生に変わってしまいましたから戦前というふうな発想ではできないと思うんですけれども、ただ大学の教員が自分たちも教育者なんだという側面をもっと大事にしてもらわなければいけないんじゃないかという気がしてならないものですから、それでちょっと大臣にそれをお尋ねしたわけです。大臣も大学人としての大先輩として、大学に対するさまざまな改革大臣在任中にぜひひとつお取り組みいただきたいと思っております。  そこで、実は文部省という名前が今度は文部科学省に変わった、ところが随分議論がありまして、文部省という名前をなくしてしまえというふうな話も随分出ておったわけですが、最終的にはやっぱり文部科学省となった。文部という言葉には歴史的ないろんな意味がありまして、軽々しく変えるべきではない、私はこう言っておったんですけれども、おまえは守旧派と言われたんですが、実は文部という言葉には非常に深い意味があるわけですね。  その深い意味のある文部を科学技術庁と一緒にした。改めて文部科学省として出発する。となれば、文部科学省という省庁で働く人たちもそれ相応の一つの共同体意識を持たなきゃいけないと思います。やっぱり今までの文部省とは違うんですよ、また科学技術庁とも違うんです。となりますと、新しく立ち上がろうとしている文部科学省はこういうところに重点を置いていこうじゃないかという旗印を掲げなきゃいけないだろう。その旗印をどういうふうにお考えになっているかということをお聞きしたいと思います。
  240. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほどのお答えにつけ足してお話をいたしたいことは、やはり大学の教員は、先ほど申しましたように研究者であるという側面はもちろんあるんですけれども、やはり今日は特に教育者であるという自覚を強く持たなきゃならない時代が来たと思っております。このことを先ほどの答弁ではっきり申し上げたかどうかわかりませんので、つけ加えておきたいと思います。  それから、文部科学省という科学がついたことの意義についてのお尋ねでございます。  まずこの文部科学省が一体何をやるかということについてでございますけれども、今度の設置法案で三つ大きな項目が掲げられております。まず「教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成、」、それから二番目に「学術、スポーツ及び文化の振興」、三番目に「科学技術の総合的な振興」、こういう三つの面が主な任務として掲げられているわけでございます。  文部という言葉の中にはやはり学術とか教育、それからスポーツ、文化というふうなものは十分加えられていたと思いますけれども、今日のように科学技術が極めて重要な時代となったときに、文部だけで技術までぴしっと押さえられるかというふうなことが一つ議論の対象であったかと思います。一時は教育科学技術省というような言葉も使われていたことがございます。  そういう意味で、科学をつけ加えることによって文部はどう変わっていくかということでございますが、今までの科学技術庁が持っている能力を加えまして総合的に科学技術を積極的に推進していく、こういうふうな面が文部において強くなったと思います。すなわち、文部科学省となったことによって強くなったと思います。  ですから、文部科学省におきましては、二十一世紀に向けて我が国が創造的で活力を持ち、国際的に重要な役割を果たすという観点から、非常に広い範囲でございますが、教育、学術、科学技術、スポーツ、文化、これに関します行政を一体的に推進する役割が期待されていると思います。  今回の文部科学省設置法案及び地方分権一括法案において、教育における国と地方の役割分担を明確にしたところでございますが、新しい文部科学省においても、教育行政における基本的な制度の枠組みの制定、全国的な基準の設定及び必要な財政援助等の役割は引き続き担っていく必要があると考えております。  今後も、国としてこれらの役割を十分果たして、何といっても教育水準の維持向上に努めたいと考えております。
  241. 山本正和

    山本正和君 実は、科学技術特別委員会等で私もいろいろと当時の長官に質問をしたりしてまいりました。  問題は、各省庁にさまざまな研究機関があるわけですね。それからまた、それぞれ技術に関する大変な蓄積がある。各省庁はみんな持っているわけですね。本当からいえば、そういうものも一緒にしなきゃいけない。  例えば、通産省がクリーンエネルギーの開発あるいは原子力エネルギーをやっている。科学技術庁もそれをやっているわけですね。文部省の方も大学の中でいろいろそういう研究をやっている。そこのところがばらばらになっているものですから、本当からいうと、研究こそ集約すれば集約するほど効率的なんです。それは絶対に省庁が譲らないんですよね。通産省は絶対離さぬとやるんですね。運輸省あたりのあのすばらしい技術、例のリニアモーターカーですか、こんなものみんな本当は一体的にやらなきゃいけないものが、縦割りになってどうにもならぬ。本当はこれは文部大臣にお聞きするよりも、主管大臣総務庁長官の責任なんでしょうけれども。  その辺の問題も含めて、各省庁の研究開発、持っている蓄積もにらみながら、本当に文部科学省が日本の科学技術についてもきちっと掌握するんですと、しかもそれが教育という場でも生かされるんですよという、そういうものにしていくんだという気構えを持っていただきたい、こういうふうに思いますので、ひとつその辺について大臣のお考えがありましたら、どうでしょうか。
  242. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 大変重要な点を御指摘いただきまして、まことにありがとうございました。私も、さまざまな省庁にまたがっていろんな分野が散らばっているというようなことを心配することがありました。しかし、今回の文部省と科学技術庁の合併によって、一歩そこは新しい局面が開けてきたと思っております。  例えば、宇宙開発というのは科学技術庁が大いにやっていることでありますが、同時に文部省も宇宙科学研究所で盛んに基礎研究をやっています。こういうふうなものがより一層協力してやっていくことができると思います。それから加速器部門、こういうところでも随分文部省関係でも努力をしておりますし、科学技術庁でも大きな加速器を持っています。こういう面でも大いに協力ができるであろう。あるいは、原子力の御指摘がございましたけれども、大学の原子力の研究者、いわばボトムアップ型でいろんな研究をしておりますが、これと科学技術庁のトップダウン的な研究とが今後さらに協力体制を組むことによって、より積極的に原子力の基礎研究を進めることができると思っています。特に核融合などというのは、そういう点で新しい見地が開かれてくることを楽しみにしております。  したがいまして、科学技術庁と文部の合体ということは、科学技術の面で、特にその基礎的な面で大いに有効な効果を生み出すと思っております。  しかし、一つ忘れられがちなことを強調させていただきますと、理科教育に対するよい効果でございます。それは、文部省の理科教育のみならず、一般に教育を一生懸命やるのですが、特に理科離れが言われている現在において、理科教育が重要になってまいっておりますが、この点に関しては科学技術庁も随分努力をしてきておりました。ですから、こういうふうな科学技術庁の努力と文部省の努力が結びつけば、さらに一層すぐれた科学教育、理科教育が行われるようになろうかと思っています。  なおまた、いろいろな省庁、例えば気象の研究であれば運輸省であるとか、すなわち気象庁でありますが、あるいは先ほど御指摘の工業技術院、こういうふうなものとの協力ということは研究者の仲間では随分やっておりまして、さらにそれが積極的になることが日本の国の役に立つと思っております。  こういうふうな点に関しましては、新しい体制のもとで発足いたします総合科学技術会議において十分検討がされ、さらに有機的に多くの研究が行われるようになることを望んでいる次第でございます。
  243. 山本正和

    山本正和君 ひとつぜひ各省庁にまたがってお取り組みいただくようにお願いをしておきたいと思います。  そこで、地方分権という形でこれが文部行政にもこれからいろいろ出てくる。例えば、学級編制や学習指導要領なんかの扱いも相当地方にいろんな形でおろされていくというふうになっております。今までは国が義務教育については全責任を持つ、その中で市町村に、それぞれの市町村の地域の事情がありますから、なるべくそこの特色を生かしながらやっていこうというのが今までの文部行政の流れであったし、日本の義務教育制度の基本だったんです。  ですから、市町村によっては財政力に差がある、地域的に非常な格差がある、しかしそれを何とか、たとえ小さな村であってもきちっとした水準の教育を保障しようということで、国が義務教育はこれを無償とすると憲法で制定して、国の責任で一生懸命やってきた。これは明治以来の小学校の歴史を見ると、村が小さいもので財政力がなくて先生を雇えない、先生を雇ったけれども給料を払えない、中には学校建設でふうふう言ってお金の回りで苦しんで自殺された村長さんまでいる。こういうのが明治、大正以来の歴史なんです。  その中で、義務教育費国庫負担法ができて、そしてさまざまな意味で国が最低限のミニマムの保障だけしますということできているというこの基本の流れがある。義務教育はこれを無償とするという憲法の基本精神からあるんですけれども、これと今度の省庁再編、地方分権ということに対して、ここで間違えると大変だと私は思うんです。  ですから、義務教育はこれを無償とするという憲法の原則はあくまで貫いていくんだ、そしてミニマムの部分は国が責任を持つ、これは変わらぬと、このことを大臣にひとつ表明していただきたいと思います。
  244. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 大変重要な点を御指摘いただきまして、ありがとうございました。  少し横道に入って申しわけありませんが、アメリカの初中教育と日本の初中教育を比べます、高等教育を比べます。そうすると、高等教育は明らかに、特に大学院はアメリカの方がすぐれていると思うのですが、初中教育に関しては日本の方がすぐれていると私は思っています。その理由というのは、アメリカの場合は全部が地方でありますので、御説のとおり、非常に豊かな町の学校はいいのですけれども、貧乏な町の学校は非常に悪い、こういう点が日本ではないということは、先生指摘のとおり国が守ってきたからだと思っております。  そういう意味で、義務教育というのは国民として必要な基礎的資質を培うものでございまして、教育の機会均等と全国的な教育水準の維持向上を図るということは国の重要な責務であると考えております。このため、国は義務教育費国庫負担制度により、公立義務教育諸学校の教職員の給与費等について原則としてその二分の一を負担してきております。これがアメリカなどと違うところでございます。  昨年九月の中央教育審議会答申におきましても、地方公共団体に対する教育条件整備のための支援措置は今後とも国が担うべき役割とされているところでございますし、また地方分権推進委員会第二次勧告や地方分権推進計画においても、経常的国庫負担金の対象は義務教育等の真に国が義務的に負担を行うべきと考えられる分野に限定していくこととするとされているところでございまして、義務教育費国庫負担金についてはこれまで国と地方の役割分担、費用負担のあり方等の観点から検討を行い、見直してきてはいますけれども、義務教育費国庫負担制度の根幹につきましては今後とも堅持してまいりたいと思っております。
  245. 山本正和

    山本正和君 あと、少し専門的な部分になりますので、これは大臣じゃなしに文部省の政府委員の方でお答えいただきたいと思います。  一言余分なことを言っておきますけれども、私は今、国会で各党で論議している政府委員制度の廃止というのは本当は反対なんですよ。専門家が答えるということと大臣答弁されるというのは、基本にかかわる問題は大臣答弁されたらいいと思うんですが、専門的な分野は遠慮なしに政府委員答弁すべきだと私は思うんです。こんなことは余分なことですけれども、ちょっと一言言っておきます。  そういう意味で、政府委員、ひとつしっかり答弁をしていただきたいと思うんですが、今度の分権の流れの中で、各小学校、中学校、高等学校まで含めてでありますが、学校の運営を今までのように国からのいろんな規制という形、指導というよりも、地方に任せて地方でやっていこう。それで、学校の運営についても、例えば学校評議員というふうなものをつくってそこで十分に議論してもらおうという発想が今度の中に出ているんですね。  この学校評議員制度というものが中教審で提言され、今度の地方分権の精神に基づいて各地方もこれに一生懸命取り組もうとしているのですが、これについて、学校評議員という新しい発想は誤解が若干あるように思いますから、文部省としてはこういう経過の中でこの取り組みを地方にお願いしようとしているということを明確にひとつお答えいただきたいと思うんです。
  246. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 初等中等教育につきましては、文部省で学校教育法を定めたり、あるいは地方教育行政の組織及び運営に関する法律を定めまして、学校の基本的な制度、枠組み、そこに置くべき必要な教職員あるいはその定数等、基本的な枠組みを決めております。また、学校の教育活動の基準といたしまして学習指導要領を定めまして、この学習指導要領に基づいて学校教育活動をすべての学校で行っていただく、こういう基準設定等を行っているところでございますけれども、実際に小中高等学校におきます学校の事務は従来からそれぞれの学校の設置者であります市町村あるいは都道府県が責任を持って実施するという仕組みになっているわけでございます。  今回、そういった中でより地域の住民の方々の意向を学校運営に反映する、こういう観点から、昨年九月の中教審の答申におきましては、保護者や地域住民の協力を得て学校運営が行えるような仕組みを設ける、こういう観点から、校長が行う学校運営に関し幅広く意見を聞き、必要に応じ助言を求めるために、学校評議員の導入ということを提言されているわけでございます。  従来から学校と地域との連携につきましては、生徒指導の協力でありますとか地域懇談会、さまざまな形であるわけでございますけれども、この中教審の答申の趣旨は、従来あります地域と学校との連携のさまざまな組織とは違いまして、学校の運営をより開かれたものにし、地域の住民の方々の意向を学校運営自体に反映させていく、そういう観点から、学校の内部的な組織として地域の有識者の方々に入っていただき、校長の学校運営にさまざまな御支援、御助力、そういったものを行う、こういう観点から提言されているものと考えられているところでございます。  現在、これにつきましては、各校長あるいは都道府県や市町村の教育委員会等関係者の御意向も踏まえながら、具体的にどういう形で制度化するかということにつきまして文部省として検討をしているところでございます。
  247. 山本正和

    山本正和君 そこで心配なことが出てくるのは、どういう方がなっていくかということについての難しさが出てくるんじゃないかと思うんですね。その辺で、世代間あるいは男女別、さらに階層別、さまざまな要素を加味した中でこの評議員制度というものが進められるというふうに私は理解しているんですけれども、ひとつそういう意味で、地域の中でバランスがとれて、その地域の各層の人が学校に対して積極的に意見が言えるようなものを期待している、こういうふうに受けとめてよろしいですね。
  248. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 委員指摘の点につきましては、大変重要なポイントだと思っております。  今後、具体的に学校評議員の人数をどの程度にするか、あるいはその制限を統一的に設けるか設けないか、こういった点も含めまして関係者と詰めてまいりたいと思っておりますけれども、実際の運用におきましては、地域におきますさまざまな意見がバランスよく学校運営に反映されていく、それを校長が責任を持って判断していくというような運用が極めて大切であろうかと思っております。
  249. 山本正和

    山本正和君 実は、自分の県のことを自慢するつもりじゃありませんけれども、三重県では亀山だとかあるいは安芸郡だとかいろいろなところでかなり積極的に取り組んでおります。  日教組というといつも誤解をされて発言をする人が中にはおるので、ちょっとついでに言っておきますけれども、三重県の教員組合というのは一〇〇%入っているんです、幼稚園から高校まで全部入っているんだから。そうしたら、思想、信条、さまざまですよ。みんながそれでも入っているんです。その三重県の教員組合が何をやったかといったら、文部省から派遣されている指導課長と知恵を出し合って、それで学校協議会制度をつくって、全国でもまれに見るすばらしい地域協議会をつくって、どんどん進めているんです。そういうこともあるので、ひとつ日教組といったら悪いところかと思わずに、いいところはたくさんあるんだということです。皆さん方も理解しておいていただきたいと思うんです。  学校協議会を開きますと、本当に地域の人が学校に関心を持ちますし、私は、今の若い人たちの中には郷土のお祭りだとか古い習慣だとかあるいはお墓だとか、そういうものに対してだんだん関心がなくなってくる、もう非常に危険な気がして仕方がないんですね、自分が年をとったせいかもしれないですけれども。そういう地域でのさまざまなことを子供たちに伝えていくためにも、この学校協議会制度というのは非常に私はいいと思うんです。そういう意味で、ひとつこれは今後とも市町村とよく相談しながら、この地方分権に当たって目玉商品として頑張っていただきますように、これも要望しておきたいと思います。  それから最後に、もうあと六分しかありませんから、もう一問だけにいたしますが、学級編制の問題です。  これが非常に硬直的にとらえられておって、四十名学級というふうに今なっているわけです。四十名一年生が入ったら、これは一学級なんですよ。四十一名になったら二学級にしてよろしいと、こうなるんです。ところが、実際の話は、四十名でもあるいは三十八名でも一学級でもいい場合もあるし、それからその地域でいろんな条件がありますから、ことしはどうしても三十八名しかいないけれども二学級にせぬことには今のこの町の状況では困るぞというふうなときもあるんですよね。その辺で弾力的に扱うということをしなければ、もうぴしゃっと計算した数字でいって県の教育委員会に報告する、文部省がそれを見て査定するということで、窮屈でがちがちだったんですね。こういうことは、この弾力化の中では、地域の条件の中で裁量されるというふうに考えていいですか。
  250. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 昨年九月の中教審答申におきましては、現在、委員の御指摘がございました学級編制の標準につきましても、今後教育条件の向上を図る観点から特に必要がある場合には都道府県が標準法で定める学級編制の標準を下回る人数の学級編制基準を定めることができると、そういうふうな観点からの法制度の見直しも含めて弾力化を図るように御提言をいただいているところでございます。  現在でも、例えば年度の途中から一人ふえた、減ったといったような場合には、四十人が四十一人になりというような場合に、その学級を分割するかあるいはそのまま続けるかというような点につきましては、それぞれの都道府県と市町村が相談をいたしまして、その程度の弾力化を図れるということになっているわけでございますけれども、この中教審の答申を踏まえまして、とりわけ教職員の定数と配置にかかわってくる部分がございまして、財政的な負担の問題もございますので、現在、文部省におきまして、学級編制のあり方あるいはこういった弾力化のあり方あるいは定数の問題につきまして、専門家から成る協力者会議を実施しているところでございますので、ここでその点も含めまして十分検討してまいりたいと考えております。
  251. 山本正和

    山本正和君 ぜひひとつ、機械的、しゃくし定規な形じゃなしに運営できるんだよという格好で取り組んでいただきたいと思います。今の局長お話は大体そういう方向だと思って確認していいですね。そこでうなずいてもらったら結構です。──じゃ、そういうふうに確認いたします。  そこで、もうあと三分でございますが、今の問題に関連してちょっと申し上げておきたいのは、子供たち状況が非常に今の時代の中で大きく変わってきておって、例えばコンピューターを学校でどう扱うかとかさまざまな問題がどんどん出てきている。そういう中で、非常勤講師を活用しようという形でこの問題についても出ているんですね。  ところが、そうなりますと、この学級編制基準の問題なんかも絡めて、教職員定数における非常勤講師というのはどういう位置づけになるのか。非常勤講師の数がべらぼうにふえてしまうと、子供にその部分は教えるけれども、子供の学校生活全体について担任の目がなかなか行き届かないというふうに逆な傾向ができる。さまざまな問題がありますから、だから非常勤講師というものを学校で活用すると言っているその意味はそんなあれじゃないよということでちょっと説明をしておいていただきたいと思うんです。
  252. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 現在、学校におきましては、正式の公務員として採用しております教諭等のほかに、特に高等学校等を中心にいたしまして時間講師という形で非常勤講師が配置されているわけでございます。  現在、小中学校におきましても、僻地におきます免許外教科の担当であるとか、あるいは社会人の方々に地域の伝統、文化等についての御指導、あるいは道徳的なお話をしていただくというふうな形で、特別非常勤講師というふうな形で学校に来ていただく。これにつきましては、通常の教職員定数とは別途、文部省といたしましてもこういった活動を促進するという観点から、非常勤講師につきまして、若干でございますけれども都道府県に対しまして補助金を出す、こういうことでその活用を図っているところでございます。  今後、特に子供の選択の幅を拡大していく、あるいは総合的な学習等で生きた力を身につけていく、こうなりますと現有の教職員の定数ではなかなか機動的に対応できないといったようなこともございまして、地域の方々専門的な方々の活用を図るという観点が非常に重要になってまいります。昨年の中教審の答申におきましては、こういった新しい教育課程の実施ということも展望いたしまして、今後、地域や学校の実態に応じて、必要がある場合には非常勤講師を配置できるように制度化するとともに、その報酬につきましても国が負担できるよう義務標準法を見直してはどうかという御提言をいただいているところでございます。  先生指摘のどの程度にするかというようなところは大変重要な点でございますので、そういった提起も含めまして、先ほど申し上げました専門家の会議におきまして関係省庁等の御意見も伺いながら詰めてまいりたいと考えておるところでございます。
  253. 山本正和

    山本正和君 ありがとうございました。  時間でございますので、終わります。(拍手)
  254. 入澤肇

    入澤肇君 私は、一昨日、内閣府の権限につきまして御質問申し上げました。国家行政組織法の適用除外にするということ、さらに総務省の行政評価の対象外の部分も所掌事務として規定されているということ、これは非常に私はそれなりに新しい組織として評価する部分はあるんですけれども、運用いかんによっては大変問題なことができるんじゃないかというふうな気がしているわけであります。  官僚システムはそれ自身自己増殖していきますし、長い間かかりまして政治家がいかにコントロールしようとしてもコントロールできないような大きな組織になってしまう。これは旧内務省がよく指摘されておりますし、それからまた戦後の組織としては大蔵省が大変な権力を持ったというふうに一般的に言われております。  その意味におきまして、私は何らかの意味で内閣府の権限を常にチェックするシステムを用意しておかなくちゃいけないんじゃないかと思うのでございますけれども、まずその点につきまして、太田長官の御認識をお伺いしたいと思います。
  255. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  その件につきましては、私はこういうふうに解釈をしております。内閣府の主任大臣内閣総理大臣であり、そして総務庁のチェックを受けるその他の省庁はそれぞれの各省大臣がいるわけであります。今までの内閣法の考え方というのは、総理大臣が特段優越的な権力を持ってはいないというような扱いであったわけでありますけれども、今回は内閣法において直接そのように規定はしなかったけれども、結果として、省庁の関係といったってそれは結局は省庁の大臣の間の関係に最終的になるわけでありますから、そういうふうに内閣総理大臣のもとにある内閣府を位置づけたということではないかと思うわけであります。  結局、内閣府が実際どういう仕事をするかといいますと、いわゆる総合的な企画立案、総合的な調整という部分に限った話でありますので、他の従来の賞勲局とかいわゆる国民生活局、そういう仕事はほかの省庁と横並びだということになりますので、つまり実施部門が巨大なものを持っていて、それが企画立案部門とくっついて自己増殖するという可能性はやや少ないところではないかと考えております。
  256. 入澤肇

    入澤肇君 ぜひそのようにお願いしたいんです。  例えば、内閣府の総合調整するポストの役人が特定の省庁へ継続的に行く、要するに指定席になるというふうなことになりますと、いっとき大蔵省が八つぐらい事務次官のポストをつくりまして、例えば行政管理庁にもありましたし、環境庁国土庁、公取にも行く、そういうふうなことで、全体として影響力を及ぼして大きな権限を行使するということがあったわけです。今もあるわけです。ですから、私は、それと同じような、あるいは今度はそれ以上の上位官庁でありますから、大きな権限を振るう心配が出てくるんじゃないかと思うんです。  これはひとつ、国会の行政監視委員会等でも十分に監視しながら、バランスのとれた行政運営ができるようにやっていかなくちゃいけないと思いますので、長官におかれましても、ぜひこの点については十分念頭に置いていただきたいと思うわけであります。  そこで、今度の国家行政組織法あるいは内閣設置法、各省設置法のねらいの一つといたしまして、いわゆる官僚の裁量行政からの脱却ということで、設置法の中から権限規定を削除いたしました。それから二番目には、各省の縦割り行政を是正するというので、これは先回も問題にいたしましたけれども、国家行政組織法に新しく十五条という調整規定を入れました。この二つがどのように機能するかということについて、私は若干の御質問をしたいと思うんです。  現在の各省庁の任務、所掌事務、権限の規定ぶりを見ますと、これはばらばらでございまして、任務、所掌事務、権限というのを別々に規定している省は、法務省、外務省、大蔵省、文部省以下十一省あります。庁としては総理府、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁。それから、任務と、所掌事務及び権限ということで、所掌事務と権限を、これは文章を見ましたら全く同じなんですけれども、規定しているところが公害等調整委員会、総務庁、環境庁、沖縄開発庁、国土庁、金融監督庁でございます。それから、所掌事務及び権限のみを規定して任務を規定していない省、これは建設省と北海道開発庁。それから、任務についてのみ規定しているのが公正取引委員会。それから、所掌事務についてのみ規定しているのが宮内庁。こんなふうにばらばらなんです。  こういうことから考えまして、今回、権限規定を排除したというのは一つの統一基準で、私はそれなりに評価はしなくちゃいけないと思うんですけれども、任務と所掌事務というのは、おのずから裁量行為を否定するとは読めないんです。いわゆる行政指導、例えば通産省の有名な行政指導は何に根拠があるのかというので、設置法に根拠があるということで、公正取引委員会等でかなり議論があったことがあります。しかし、この権限規定を排除したからといって裁量行政を完全になくすことはできないと思うんです。  裁量行政を排除するということが一般に言われていますけれども、どのような考え方を持って行政の指針とするのか、ちょっと考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  257. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 先生、裁量行政とおっしゃいました。通常、行政活動の中でいわゆる行政の裁量というのは、一つは、法律の委任を受けまして政省令を策定する場合に、そこで行政の裁量の余地があるわけでございます。これについては、そこに過度な行政の恣意が働かないように、例えば今回の審議会の整理では法令施行型の審議会を活用するとか、あるいはパブリックコメントを活用するというような方法があるかと思います。  それから二つ目に、よく行政の裁量と言われますのは、まさに行政処分の段階でございまして、許認可の処分あるいは補助金の施行という場合でございます。これについては行政手続法で、例えば許認可については極力その許可基準というものを明確にするということで、その裁量の余地をなくそうということをやっているわけでございます。  それから三つ目は、今まさに先生が例に引かれましたが、今の国家行政組織法では各省の設置の基準としての権限規定ということで、これは決していわゆるドイツ風の行政官庁理論で言うような封建的な権限ではないわけでございます。ところが、現実の問題として、その権限規定を根拠に行政指導を行ったという事例があるわけでございます。  そこで、行政指導というのは、これは大原則が先方の任意の協力を得てという原則でございますので、その点については公務員各人がその原則を十分承知するということが重要であると考えております。
  258. 入澤肇

    入澤肇君 裁量行政について、あるいは行政指導についての考え方が今の答弁でかなり明確になったと思います。任務と所掌事務の規定で権限規定を排除したんだから何でもいいんじゃないかというふうな惰性に流れないようにぜひウオッチングをしていただきたいと思うのであります。  それから二番目に、縦割り行政の是正、これはおとといの質問で、従来の調整がどうも不十分であったために、改めて国家行政組織法に十五条という規定を置いて、各省大臣がこの十五条の規定に基づき資料の要求をしたり説明を求めたりすることができるんだという規定を置いたというんですけれども、私はなかなか行政内部でこういうふうにきちんとした条文に基づいて調整をするということはないんじゃないかと思うんですね。  私も国土設置法を書くときに参加したことがあるんですけれども、あのときの考え方を思い出しますと、例えば土地問題、水問題、都市問題になりますと、建設省も通産省も運輸省も農水省も、いろんなところで問題がかかわっているわけであります。省際的な仕事がかなりあるわけでございますから、そういうところからいろんなアイデアが出てくる。一省に独占させてしまうと、例えばそこに人がいない場合に臨機応変な対応策ができなくなる。そこで、各省からコンペでいろんなアイデアを出させて、それを国土庁が総合調整するんだということで国土庁の設置法が書かれていたわけであります。  今回、国土交通省の設置法を見ますと、土地問題、水問題、都市問題について、企画立案、推進という言葉は入っていますが、総合調整ということは入っていないんです。十分な調整ができなかったというのは、むしろ各省の寄せ集め部隊で人事配置とかということが問題なのであって、きちんとした人を配置していれば総合調整ができた、またそういうときもあったわけです。例えば土地基本法をつくるときなんかそうだったし、福田総理あるいは金丸元副総理、中曽根行管長官とか、大物がいたときには十分な調整がにらみをきかせてあったわけです。  要するにそういうことが問題なのであって、十分に調整ができなかったからこの十五条を入れたという説明は私は納得できない。むしろ、土地だとか水とか都市問題というのは、日常的に各省がお互いに意見を言い合って、出し合って調整するというソフトな調整の仕組みが必要じゃないかと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。
  259. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 一昨日、戦後できたいわゆる総合官庁についての調整能力の反省ということを申し上げたわけでございます。  ただ、今回第十五条を新たに設けましたのは、やはり各省がそれぞれの固有の任務を追求する上で、各省が主体になって、第三者の調整じゃなくて、各省の任務を遂行する省自体が調整をすることがより機動的、的確な調整ができるのではないか、そういう考え方で設けたわけでございます。
  260. 入澤肇

    入澤肇君 できるだけこの十五条が有効に活用されて、縦割り行政の弊をなくすように指導していただきたいと思うんです。  次に、行政組織の内容の改革につきまして若干具体的なことをお伺いしたいと思います。  まず、今度男女共同参画局という局が内閣総理大臣の決断で一局上乗せされて局の数が九十六になったというお話がございました。今、局とか課とかいうものを設置する場合の設置基準というのはどういうふうになっているんでしょうか。
  261. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) お答えいたします。  国の行政機関の骨格を定めておりますのは御承知のように国家行政組織法でございまして、具体的に中央省庁の内部組織につきまして、ただいま御指摘の局あるいは課といったものの設置根拠を定めておるわけでございます。  その考え方としましては、国の行政事務を大きくくくりまして、第一義的には府省に行政事務を配分し、そしてその中で、その府省のくくりの次に大きな政策単位としてくくるべきものにつきまして、恒常的に推進する機構としまして局を設置する。そして、その局をより具体的に推進するための機構としまして課といったものを、いずれもこれは政令で設置というような考え方で実施をいたしておるところでございます。
  262. 入澤肇

    入澤肇君 例えば一局をつくるのに四課が必要だとかあるいは二部が必要であるとか、いろんな総務庁が査定するときの具体的な基準がございます。  今度、共同参画局は、何かこれはよくわかりませんが、二課で局をつくるんだというふうなことが言われていまして、私はそれについてちょっと小さ過ぎるんじゃないかという感じもするわけであります。仕事の内容がこれから広がっていくことを考えますと、昔、国民生活局、物価局もありましたけれども、これはいずれも四課以上です。二課ということはなかった。最低の課の数をそろえなければ局というものはできないんじゃないか。分掌官として局長級を置くというのはこれは構いませんけれども、ラインのトップとして局を置く場合にはそれなりの基準があるのではないかと思っているんですけれども、いかがでしょうか。
  263. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) ただいま申し上げましたように、中央省庁の局と申しますのは、政府としまして重要な行政として対外的に先端の局をつくるということで一つの政府の姿勢を示すということもございます。重要政策ということで、国の行政組織の中に局という組織で位置づけるというような考え方によって設けられたものと考えております。  そして、具体的にその中に内部組織としてどういった課が必要かといったものにつきましては、それぞれの局の業務内容、量等によって判断されるべきものであると考えております。
  264. 入澤肇

    入澤肇君 基本的な姿勢というのはわかっているんです。ただ、新しく名誉あるポストとして局長のポストを例えば男女共同参画局としてつくるわけでありますから、他の伝統的なたくさんの部も課も抱えている局と並んで端っこに置かれるようなことのないような、きちんとした課の数を確保した局をつくるようにひとつ知恵を出していただきたいと私は思うんです。せっかく基本法もできて、総理大臣の決断で一局をふやしたわけでありますから、そのぐらいの配慮があった方がいいんじゃないかと思いますので、これはひとつ要望として出しておきたいと思います。  それから次に、国土交通省を初め、総務省もそうでございますけれども、巨大官庁のチェックシステム、これは私は特に公共事業を担当しているところは極めて大事になっていくんじゃないかと思うんです。  今、公共事業を担当しているところは内部的なチェックシステムがございます。各局で監査官の仕組みがございます。監査官が公共事業の執行状態を内部的に評価しています。しかし、これは必ずしも私は十分な監査が行われているというふうに言い切る自信がございません。  今度の例えば国土交通省、大部分の補助金あるいは予算は地方整備局ですか、ここに移管するとは言っていますけれども、第三者的な監査官が内部にいるんですが、その監査官を外に出して第三者的な監査委員会みたいなものを常時設けておく、それに会計検査院と総務省の行政評価委員会あるいは行政評価局ですか、これがダブルチェックをするというふうな仕組みが必要じゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
  265. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 先生がおっしゃっていますチェックといいますのは、いわゆる政策評価的なチェックとその合法性のチェックと両方あろうかと思います。  前者の政策評価については、これは各省それぞれに少なくとも課長以上のポストを置いて政策評価を行い、さらに総務省がダブルチェックするという体制になっております。  先生がおっしゃるのは、恐らくその合法性の方のいわゆる監査的なものかと思いますが、それにつきましても、現在、各省それぞれ会計部門には監査機能がありまして、私どもとしてはそこら辺の機能を充実していくべきではないかと考えております。
  266. 入澤肇

    入澤肇君 公共事業の執行手続だとか内部的な要するに補助金の交付の実態、実務につきまして内部監査システムはあるわけでございますけれども、これをむしろ表に出して少し客観性を持たせたチェックシステムが大きくなればなるほど必要じゃないかと思いますので、これは今すぐというわけじゃないですけれども、巨大官庁が発足してから業務の遂行状況を見て私は考えていくべき課題じゃないかと思いまして、あえて問題にしておきたいと思います。  もう一つ、実は巨大官庁を円滑に運営していくために一番必要なことは、技官の処遇の問題があるんじゃないかと思うんです。きょう資料要求したんだけれども出てこないんですが、キャリア、Ⅰ種で入りまして、各省の技官で課長級あるいは局長級の人間は全体の局長の数の中あるいは課長の数の中で一体どのぐらいの数を占めているかというのはおわかりになりますか。
  267. 中川良一

    政府委員中川良一君) 私ども、事務官、技官別に幹部職員の実数の把握というのは現在行っておりませんで、データとしては持ち合わせておりません。  今後の技官、事務官につきましては、その人事運用についていろいろ考えていかなければならない点がございますが、そういった中でその実態の把握についても今後検討課題とさせていただきたいというふうに思っております。
  268. 入澤肇

    入澤肇君 その実態を把握していないのは大問題だと私は思うんです。  要するに、事務官がゼネラリストで、そしてピラミッドの頂点につくと。建設省は技官と事務官が交代で事務次官についていますね。これは実は役所に長くいて良心的に仕事をする者にとっては非常に大きな問題なんです。例えば同じ同期で入っても、法学部を出ると指定職になったときに局長だと八号かなんか、そして次長だと同期でも三号か四号違うんです。退職金も違う、給与水準も違う。こういうことは今のピラミッド型の組織論の中からはやむを得ないかもしれないけれども、要するにポストに応じて給与水準が決まるわけですから。  ただ、そうじゃなくて、昔これは田中角栄総理が言っていたらしいんですけれども、私は台形組織論という新しい組織論を展開して、これを新しい省庁の再編成と同時に発足させていくことが必要じゃないかと思うんです。要するに、法学部を出たから給与水準が高くて、農学部を出たから一緒に歩んできているんだけれども給与水準が低いとなると、これは士気に影響するんですね。少なくともベースの給与水準だけは同じ、例えば十の六なら六、それに管理職としての職務手当みたいなものが上乗せされるのはいいけれども、給与そのものが大きく差がついちゃう、退職金にも大きな差がつく、こういう仕組みはそろそろ私は考え直すべきじゃないかと思うんです。  ニュージーランドに行きまして、ニュージーランドの林野庁の組織を見たんですよ。事務次官はフォレスターだった。局長はテキスタイル、繊維を専門とする女性の局長さん。そのほか理化学、それから生物学、そういう全然違う職種の人たちが集まって組織をつくっているんです。決して事務官だから、昔の東大法学部を中心としたヒエラルキーだからと、そういう組織になっていないわけです。  私は、二十一世紀に向けて新しい省庁の体制をつくるんであれば、その昔からの伝統を打ち破るぐらいの大きな決断を政府全体としてしてもいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  269. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  今の御指摘の点につきましてはずっと私どもも関心を持ってまいりまして、中央省庁等改革推進に関する方針におきまして、「技官について、キャリアパスの柔軟化を検討し、事務官と技官の別によるポストの固定化をできるだけ排し、適材適所の人事運用を推進する。」などと、技術系、事務系の別にとらわれない的確な昇進の管理を行うことを定めたところでございます。  これは、わざわざあえてこういうふうに書いているわけでありますから、総務庁としてはこれからもずっとこのことを念頭に置いて取り組んでいくということでございます。
  270. 入澤肇

    入澤肇君 ぜひこれは総務庁がひとつ音頭をとってやっていただきたい。  ただ、この等級別定員だとか組織については人事院が一つ絡んでいるんですね。まず、非常におかしなことに、おかしなことというのは、そういうわけでずっと習い性になっているんですけれども、等級別の定員要求をします。そうすると、人事院がまず査定する、総務庁が査定する、しかし最終的には大蔵省の主計局の担当部局が査定するわけです。最後に大蔵省の言うままになるわけですよ。  ですから、極めて事務官と技官との処遇の問題は大事でありまして、新しい組織、特に巨大な公共事業所管官庁が円滑に動くかどうかというのは技官の扱い方いかんにかかっていると思うんです。  この点をぜひ念頭に置いて新しい処遇改善の仕組みを早急に検討してつくっていただきたいということを要望いたしまして、きょうの質問は終わります。(拍手)
  271. 菅川健二

    ○菅川健二君 まず、緊急な事案といたしまして、昨日来の豪雨により、広島県を中心にいたしまして全国に大きな災害が発生しておるわけでございます。亡くなられた方々に対しまして心から冥福をお祈りいたしますとともに、被災者に対しましてお見舞いを申し上げたいと思います。  国土庁長官には、早速広島県の現地に飛んでいただいたようでございまして、敏速な対応に対しまして敬意を表したいと思うわけでございます。  そこで、まずこれまでの災害の発生状況につきまして国土庁の方にお聞きいたしたいと思います。
  272. 林桂一

    政府委員(林桂一君) 今回の豪雨につきましては、梅雨前線の停滞等によりまして六月二十三日ごろから続く長期の大雨となっているところでございます。これまでに九州、中国、四国、近畿、東海地方を中心に降りまして、二十九日の夕方には広島で、あるいは三十日には大阪や三重でそれぞれ一時間に百ミリ近い異常に激しい記録的な豪雨となっているところでございます。その後、大雨の中心は東日本あるいは東北に移ってきているという状況でございます。  この豪雨による被害の状況といたしましては、がけ崩れ等の土砂災害あるいは都市部におきます浸水被害等が発生しているところでございます。本日の十四時三十分現在の数字でございますが、人的被害といたしましては、広島県等におきまして死者二十三名、行方不明十三名、また重傷者五名、軽傷者十四名となっているところでございます。また、住家の被害といたしましては、全壊家屋二十四棟、半壊家屋二十四棟、一部損壊七十五棟、床上浸水三千四百七十二棟、床下浸水一万百八十六棟等となっているところでございます。また、道路、河川等の公共施設、鉄道、あるいは電力等についても各地で被害が生じているという報告でございます。  政府といたしましても、本日、関谷国土庁長官・建設大臣が最も人的被害の大きい広島県の被災状況調査のために現地に赴いているところでございます。また、関係省庁連絡会議等を開催しまして、行方不明者の捜索、救助等に全力を挙げること等、対策に万全を期するということを確認しているところでございます。
  273. 菅川健二

    ○菅川健二君 大変な災害が発生いたしておるわけでございますが、私の選挙区である広島県では、土石流の危険渓流が四千九百三十カ所、急傾斜地の崩壊危険箇所が五千九百六十カ所といずれも全国最高になっておりまして、過去幾たびか同様の災害があったわけでございまして、この防止対策の緊急性が叫ばれておりながら、その対策は全国ベースで見ましても整備率が二〇%程度にとどまっておる、遅々として進んでいないわけでございます。  公共事業の追加というのはいろいろなされておるわけでございますが、まさに人命、安全を最優先すべきだと考えるわけでございます。早急に防止対策を講じてもらいたいと考えるわけでございますが、建設省の方で強い決意で臨んでもらいたいと思います。いかがでございますか。
  274. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) 今お話しございましたように、全国の土石流危険渓流、地すべり危険箇所、急傾斜地崩壊危険箇所といった土砂災害危険箇所は約十七万七千カ所ございまして、そのうち広島県は土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険箇所では全国で一番数の多い県でございます。  今回の非常に痛ましい土砂災害、砂防事業の必要性、実現の必要性を強く感じているわけでございますが、これらの箇所の安全確保のために、この砂防設備等の整備推進とあわせまして、警戒避難体制の確立を図るための危険箇所の地域住民の方々への周知、また雨量表示板等の情報基盤の整備といった対策に取り組んでいるところでございまして、先生おっしゃるように人命の保全というのは最も大切なことでございますので、なお一層強力に土砂災害対策を推進してまいりたい、かように考えております。
  275. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ強力に進めていただきたいと思うわけでございます。これからもまだ梅雨が続いておりまして災害の発生のおそれがありますので、関係機関におかれましては、災害防止に全力を注いでいただきたいと思うわけでございます。  それでは、本題に入りたいと思います。  昨日、本委員会終了後、帰りまして日経新聞の夕刊を見ますと、こういった記事が載っておるわけでございます。「地方事務官の意外な味」「廃止後の穴埋め議論を」という論調でございまして、その中で、特に労働省関係の地方事務官について触れておりまして、「これから出番が一段と増えるという時に去っていく地方事務官。ヌエ的存在ではあったが一人二役の意外に味のある制度だった」という記述になっておるわけでございます。  私は我が意を得たりと思ったわけでございます。しかしながら、今回の法案によりますとこの制度が解体されるということでございまして、まことに残念に思うわけでございます。自治大臣には思いを新たにして修正、撤回をしていただきたいと思うのはやまやまでございますけれども、まず、この地方事務官制度が味のある制度であったということについて、自治大臣もお認めいただくことができるでしょうか。
  276. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘の記事は私も読みまして、意外な味というのはどう表現していいかよくわかりませんが、いずれにしても、今日まで地方事務官が、県が独自に行っております地域の雇用対策の仕事あるいは国家公務員としてのいわゆる労働省の出先としての仕事、若干そのつなぎ役的なこともあって両面の潤滑油的な役割を果たしてきたのではないか、こういう表現になっている。それを別の表現ではぬえ的存在という言い方で、余りぬえ的というのはいい表現ではないんだけれども、よく言えば味があるし、悪く言えばぬえ的だと、こういう表現になっていると思います。  いずれにしても、今日までの地方事務官制度というのは、人事上の任命権と職務上の指揮監督権が分離しているという組織原理上変則的な仕組みであって、責任の体制ということがやっぱりはっきりしていないというようなこともあって、今回この際はっきりさせよう、こういうことになったわけです。  ただ、それだけではなくて、今回そういうふうに地方事務官制度を廃止するということになりましたので、同時に今回の一括法案の中で雇用対策法の改正を行うということをいたしまして、国と地方公共団体との雇用に関する政策の連携関係がしっかりしなければいけないというので、その種の規定が新たに今回行われたわけであります。  いずれにしても、地方公共団体の独自の取り組みと国の職業安定行政との密接な連携関係というのは、この地方事務官制度の廃止後においてもなお引き続き確保されることが必要でありますし、特に現下の雇用情勢を考えますとこれは極めて大事なテーマであるというふうに考えております。  したがって、自治省としても、この地域雇用の行政が円滑に進められるということの重要性認識して、しっかりとバックアップをしてまいりたいというふうに考えております。
  277. 菅川健二

    ○菅川健二君 いずれにいたしましても、昨今の雇用対策というのは最大の内政上の課題でございますので、万全を期していただきたいと思うわけでございます。  そこで、これも昨日途中で切れたわけでございますが、総務庁長官に、また引き続きまして定数の二五%削減と独立行政法人についてお聞きいたしたいと思います。  二五%削減の内訳につきましてはまだ若干の数字が、パーセントが合わないわけでございます。ただ、昨日の総務庁長官は大変自信を持っておられた。私、その隠し玉というのは、より独立法人化することによって定数の枠外に持っていく、そういう策を練っておられるんじゃないかと思うわけでございます。  例えば、文部大臣おられますけれども、国立大学についてこれを思い切って独立行政法人化していくと、もうかなりの定数がそれから除かれてくるわけでございます。中には定数の枠内におると国立大学も定数削減に遭うから、ひとつ独立行政法人にならないのかというおどしの材料にも使われておるんじゃないかと危惧いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、独立行政法人というのは、私は前から申しておりますように、これはまさに行革のスリム化の観点からすれば意味がないことであるということを申しておるわけでございますが、それでは独立行政法人ということになりますと、そのスリム化というのはどういう観点からなされるのか、お聞きいたしたいと思います。
  278. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  独立行政法人化をすればそれがなぜスリム化になるかというお尋ねだと思いますのでお答えをいたしますが、それは、何度もお答えをしておりますように、独立行政法人化いたしますと、定員の管理について、そしてまた事業としての経営の管理についてはその行政法人の長が負うことになりますし、その独立行政法人の長は特別職でありますので、その実績によって任期途中でも解任をされることがあり得るわけでございます。当然これは最小限度の人数でやろうということになるわけでございまして、親方日の丸でやっておる場合とは全く違った形態になるわけでありますから、スリム化の実を上げるであろうということであります。
  279. 菅川健二

    ○菅川健二君 独立行政法人になると、数字的な目標はないけれども、システムそのものがそういった要因を含んでおるんだということでございます。それは制度の推移を見て判断させていただきたいと思います。  そこで、独立行政法人につきまして、午前中も亀井委員からも一部話がございましたけれども、現在予定されておる九十機関あるわけでございますが、その規模を見ますと、最低が十六名で、最高といいますか千名を超えるようなものもあるわけでございまして、業務ももとより千差万別、多岐にわたっておるわけでございます。  そこで、その九十の機関をそれぞれ細切れにして独立法人化を図っていくのかどうか。報道によりますと、通産省が工業技術院傘下の十五研究機関を単一の独立行政法人にする動きがあるというような報道もあるわけでございまして、私は、事業の効率的な執行から類似の事業を統合して一つの独立法人化をしていくということは、まさにそれをスリム化しかつ効果があることではないかと思うわけでございますが、その点、総務庁長官いかがでしょうか。
  280. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) お答えいたします。  それは、そういうことでありまして、統合を図った方がよいものについては統合を図るし、あるいは逆に地域別に分けてそれぞれの地域で自己責任化した方がいいということもあるでしょうから、今言った零細な独立行政法人を統合していくということは大いにあり得ることでございます。
  281. 菅川健二

    ○菅川健二君 そこで、典型的なものにつきまして、わざわざ農林水産大臣文部大臣においでいただいておるわけでございますが、それぞれにお聞きいたしたいと思うわけでございます。  農林水産省関係の試験場を調べてみますと、畜産、草地果樹、野菜・茶業、蚕糸・昆虫、家畜等多岐にわたっておるわけでございます。これらの試験場につきまして有機的な連携を図っていくということと、もう一つ私は非常に重要に思いますのは、蚕糸なんというのがまだ残っておるわけでございますけれども、時代の変化に応じて非常に農作物も変わってくるわけでございます。そうすると、試験する対象も変わってくるわけでございます。  そうしますと、それぞれ独立の行政法人にしますと、それぞれが自己増殖作用をなしますので余り効果が発揮できない場合もあるわけでございますが、それが一本化されて構造改善に役立っていくということになりますと試験場の意味も非常に上がってくるんじゃないかと思うわけでございます。この統合、一本化につきましてどのようにお考えでしょうか。
  282. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 農林水産関係の試験研究は、農林水産関係の生物、自然というものを主に研究対象にしておりまして、作目あるいは研究手法が多岐にわたっておりますし、また我が国の多種多様な自然条件に対応して、しかも地域性を踏まえた研究が必要であるということから、統合、一本化することは難しいと考えております。  農林省の独立行政法人対象の研究機関としては、品目ごとに八試験場、品目共通に四試験場、それから地域農試として六、それから林業が一、水産関係が地域別に九、そして養殖、水産工学とあるわけでございます。今、先生指摘の蚕糸につきましては、確かに産業としての蚕糸としては残念ながら非常に今我が国の規模は小さくなってきておりますけれども、日本の伝統的かつ代表的な生物、昆虫であり、そして生糸を生じる、しかも蚕のゲノムの研究というのが稲と並んで世界のトップレベルにあるということで、まさに世界共通しておるゲノム戦争の中で蚕糸の果たしている役割というのは非常に大きいということでございます。  なお、こういうふうに分かれた現状ではございますけれども、有機的に連携した方が効果的な試験研究につながるということであれば、一部統合も含め検討していきたいと考えております。
  283. 菅川健二

    ○菅川健二君 最低限相互の有機的な連携を図る意味からも、統合を前向きに検討していただきたいと思うわけでございます。  次に、文部省関係でございますが、文部省関係につきましては、博物館、美術館、上野の森にも幾つかあるわけでございますが、そういった文化施設につきましては規模的に見ましても十六名、国立国際美術館が十六名程度でございますが、その他でも数十名からせいぜい百名余りというような規模でございます。これらの文化施設につきましても、例えば人的には学芸員という形で同じような性格の研究員を持っておるわけでございまして、それから物的にもいろいろなものを交換することによってより効果を上げるというようなこともできるわけでございます。  そういった点から、一本化することが効果的だと考えられるわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
  284. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 御指摘のとおり、複数の国立博物館や美術館がまとまるということのメリット、いい点もございます。人事交流がやりやすいとか、展覧会実施の連携協力などが効率的に行われる、効果的な運用が可能になる、こういういい点も一方であると思います。  それから一方で、国立の各美術館とか博物館がそれぞれ違った場所にあったり、設置目的あるいは歴史的な沿革が非常に違っている、収蔵品も傾向が大変違う、運営方針も違っている、こういう面もございまして、各館ごとに独立行政法人化をした方が今後とも独立性のある発展を図ることができる面があると考えられます。  いずれにいたしましても、各独立行政法人の設立の単位などにつきましては、独立行政法人通則法を受けた個別法によって定められることとなっております。文部省としましては、各館が個性を発揮しつつ一層充実発展していくことができるよう、その設立の単位につきまして、利点、不利点などを十分検討してまいりたいと思っております。
  285. 菅川健二

    ○菅川健二君 それぞれお答えいただいたわけでございますが、これから検討していただくということでございますので、ぜひ前向きに検討していただきたいと思うわけでございまして、総務庁長官には、ひとつこれにつきましては積極的に促進方をよろしくお願いいたしたいと思います。  そこで、地方出先機関のスリム化につきましてお聞きいたしたいと思うわけでございます。  地方分権といいますか、地方団体の立場からしますと、この際、地方出先機関につきましてもスリム化して、地方団体との間のいわゆる風通しがよくなるということを期待いたしたわけでございますが、どうも実態としては必ずしもそうでないようになっておるようでございます。  例を二つ挙げてみますと、一つ国土交通省関係の地方整備局でございます。これは、本省の補助金等の権限をどんどん地方出先機関におろしていくということによって出先機関の権限を強化していくというようなことでもあるわけでございまして、むしろこの点は、先日来申しておりますように、こういった事務というものにつきましては基本的に地方団体に経由所を設けずにおろすべきだというふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、けったいなといいますか、ちょっと焼け太りに思うのは厚生省関係の地方医務局でございまして、この地方医務局というのは御案内のように国立病院の指導監督を行っておるわけでございまして、国立病院というのは独立行政法人化されるわけでございます。そうすると、地方医務局というのは役割をほとんど終えるような状況になるわけでございます。  そこで、恐らく厚生省の皆さんがいろいろ知恵を働かせたのじゃないかと思うわけでございますが、例えば府県の社会保険関係が持っております厚生年金とか国民年金等の指導監督事務を地方厚生局に引き揚げまして、無理に何とか仕事を見繕うと。麻薬の取締所まで一緒にくっつけまして、とにかく内容はごった煮になっておるわけでございますが、そういった仕事をつくりながら機関を保持しようというような動きもあるわけでございます。  これらの点を考えますと、果たして地方出先機関のスリム化について真剣に考えておられるのかどうか疑わしいこともあるわけでございますが、総務庁長官、いかがでしょうか。
  286. 河野昭

    政府委員(河野昭君) ただいま厚生省の地方厚生局に例をとってのお話でございました。  一般の方針としましては、極力一つの省の出先機関は出先でも一つにまとめよう、そういう方向でございます。  先生おっしゃいますように、確かに地方医務局は国立病院の監視をしているわけで、業務は減ると思います。ただ、依然その麻取というのはブロック機関として残るわけでございます。それからもう一つの方向としまして、検疫所の管理業務というのを集約していこうと。ここはまた簡素化が期待されるところでございます。それからさらに、医療監視、薬事監視等の業務は本省から出先に移していこうと。これはもう先ほどからお話が出ております企画と実施の分離という方向に沿ったものでございます。  したがって、私どもとしては、組織全体として大きくなるか小さくなるかは別にしまして、方向としては今回の改革に沿ったものだというふうに考えております。
  287. 菅川健二

    ○菅川健二君 いずれにいたしましても、基本的には地方出先機関というのは現業的な事務、例えば税務署とかあるいは工事事務所とか、そういったものは必要だと思うわけでございますが、その他の権限を持った地方出先機関というのは私はできるだけ廃止すべきだ、これは地方団体に権限を移譲すべきだというふうに思っておりますので、その点からぜひ引き続き地方出先機関のスリム化について検討をしていただきたいと思うわけでございます。  以上でございます。(拍手)
  288. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は明七月一日午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会