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1999-06-28 第145回国会 参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月二十八日(月曜日)    午前九時二分開会     ─────────────    委員異動  六月十六日     辞任         補欠選任         山下 芳生君     吉川 春子君      高橋 令則君     入澤  肇君  六月十七日     辞任         補欠選任         佐藤 道夫君     石井 一二君  六月二十一日     辞任         補欠選任        日下部禧代子君     山本 正和君  六月二十三日     辞任         補欠選任         山本 正和君    日下部禧代子君  六月二十五日     辞任         補欠選任         太田 豊秋君     森田 次夫君      水島  裕君     木村  仁君      但馬 久美君     渡辺 孝男君      山本  保君     益田 洋介君  六月二十八日     辞任         補欠選任         木村  仁君     山下 善彦君      森田 次夫君     太田 豊秋君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉川 芳男君     理 事                 石渡 清元君                 大島 慶久君                 田村 公平君                 吉村剛太郎君                 朝日 俊弘君                 伊藤 基隆君                 弘友 和夫君                 富樫 練三君                日下部禧代子君     委 員                 阿南 一成君                 岩永 浩美君                 海老原義彦君                 太田 豊秋君                 狩野  安君                 亀井 郁夫君                 木村  仁君                 久野 恒一君                 佐藤 昭郎君                 清水嘉与子君                 田浦  直君                 長峯  基君                 畑   恵君                 森田 次夫君                 山下 善彦君                 脇  雅史君                 江田 五月君                 岡崎トミ子君                 川橋 幸子君                 輿石  東君                 高嶋 良充君                 寺崎 昭久君                 藤井 俊男君                 山下洲夫君                 益田 洋介君                 山下 栄一君                 渡辺 孝男君                 池田 幹幸君                 八田ひろ子君                 吉川 春子君                 大脇 雅子君                 照屋 寛徳君                 入澤  肇君                 星野 朋市君                 奥村 展三君                 菅川 健二君                 石井 一二君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     陣内 孝雄君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣     関谷 勝嗣君        自治大臣     野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政府委員        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局長       河野  昭君        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        内閣官房内閣安        全保障危機管        理室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障・        危機管理室長   伊藤 康成君        内閣官房内閣情        報調査室長    杉田 和博君        人事院総裁    中島 忠能君        人事院事務総局        管理局長     尾木  雄君        人事院事務総局        任用局長     森田  衞君        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        総務庁人事局長  中川 良一君        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛施設庁長官  大森 敬治君        防衛施設庁総務        部長       山中 昭栄君        防衛施設庁施設        部長       宝槻 吉昭君        経済企画庁国民        生活局長     金子 孝文君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 康宏君        科学技術庁研究        開発局長     池田  要君        国土庁大都市圏        整備局長        兼国会等移転審        議会事務局次長  板倉 英則君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済局長  大島正太郎君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省学術国際        局長       工藤 智規君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省道路局長  井上 啓一君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        志村 昌俊君        常任委員会専門        員        入内島 修君    参考人        日本道路公団総        裁        緒方信一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 〇内閣法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) 〇内閣設置法案内閣提出衆議院送付) 〇国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) 〇総務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇郵政事業庁設置法案内閣提出衆議院送付) 〇法務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇外務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇財務省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇文部科学省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇厚生労働省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇農林水産省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇経済産業省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇国土交通省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇環境省設置法案内閣提出衆議院送付) 〇中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律  の整備等に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) 〇独立行政法人通則法案内閣提出衆議院送付  ) 〇独立行政法人通則法施行に伴う関係法律の整  備に関する法律案内閣提出衆議院送付) 〇地方分権推進を図るための関係法律整備等  に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を開会いたします。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事日下部禧代子君を指名いたします。     ─────────────
  4. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、内閣法の一部を改正する法律案外十七案の審査のため、日本道路公団総裁緒方信一郎君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 吉川芳男

  7. 阿南一成

    阿南一成君 自由民主党の阿南一成であります。  私は、今回審議の対象になりました中央省庁等改革関連法案及び地方分権推進一括法案につきまして、基本的には提案の趣旨なり目的について反対をするものではありません。しかし、何分にもこれらの法案が国の行政機構のかなりの部分について今までにない大改革を行うことになるものであります。そして、この構想なり法案自体が大変膨大なものでありまして、その作成に当たられた方は別といたしまして、国民皆さんにも、また大半の議員の方々自体にしても、これだけうずたかく積まれた数多くのこれら法律案を今すぐ通すことが本当に国民のためになるものなのかどうかを判断する十分な情報を持っていないのが現状であろうかと思うのであります。  かつて瀬島龍三氏も新聞紙上で、内閣我が国中央組織改革、改編に取り組むとき、頼みとなるのは唯一国民の支援であり、せめて国民の七割程度の賛意が必要ではないかと感想を述べておられます。むしろ、日本経済失業者の増加を初め瀕死の重症にあるときでありまするので、経済再生の一点に全力を集中し、他のもろもろの改革日本経済が浮揚してくるまではしばらく打ちどめにすべきではないかという考えもあったと聞いております。  そこで、私は、この法律施行されるならば、国の政治行政がどのように変化をするのか、そして今までの行政システムに比べて具体的にどのようなメリット、デメリットがあるのかをしっかりと見据えることが重要であると考え、幾つかのことについて質問をさせていただきます。  まず、小渕総理にお伺いをいたします。  私は、この中央省庁等改革関連法案及び地方分権推進一括法案は二十一世紀日本の命運を左右する極めて重要な法案であるので、ぜひとも小渕総理に直接私の疑問を真っ正面から受けとめていただき、お答えをいただきたかったのであります。しかし、総理も極めて多忙であるとのことであり、残念ではありますが、理解をいたしました。そこで、同じく大変多忙を極めている野中官房長官にお出ましをいただき、総理不在の間は私の対総理質問に対してお答えをいただきたいと思っておるところであります。  私は、小渕総理の現下の最大課題は戦後最悪の不況から我が国経済を脱却させることであると思っております。  このようなときに中央省庁改革を強行することは、官僚士気の喪失と力の分散を招くことから好ましくないのではないか。また、地方分権の強行は受け皿である地方公共団体の多くの首長の皆さん人的整備を初めとする体制の問題を危惧しているのが実情ではないか。そして、多くの国民方々、特に年金生活者社会的に弱い立場にある高齢者、激しい企業リストラで家族、子供たちに不安を与えないように、職を失いながらも毎日定時にネクタイを締めて家を後にし、定時に家路につく涙ぐましいお父さんの姿もある昨今であります。私は、これらの企業の生き残りをかけた激しいリストラ、大量の失業者の出現、ホワイトカラーのモラルの崩壊等を引き金とした治安の悪化を見るとき、経済不況への認識政府は少し甘いのではないかというふうに思っております。  そこで第一点目でありますが、マスコミ等世論調査を見ても、民意中央省庁再編及び地方分権改革への関心度は決して高くなく、経済不況からの脱出を願っております。この際、財革法を一時棚上げしたときと同じように、これらの諸改革施行時期を政令にゆだねてフリーハンドにし、経済再生官民総力を結集すべきときではないかという考え方もあるのであります。  私は、この中央省庁再編及び地方分権大改革は、明治維新終戦に続く統治機構大改革であると思います。その間にあって、血気にはやる青年将校に敵とされ、成功を見なかった五・一五、二・二六事件もありました。しかしながら、これらの明治維新、五・一五、二・二六、終戦、いずれも単一民族である重臣、閣僚を初めとする多くの大和民族の血を流したものでありました。  それにしては、今回の大改革は、ひ弱なエリート集団である官僚側の抵抗は思ったほど強くなく、これほどの大改革小渕総理のもとで無血で達成されようとしております。自民党員の中にはパックン内閣とか、たらい内閣などと言いたいことを言っておる人もおるようでありますが、しかし私は、この大改革が成功するならば、小渕総理歴史に残る名総理として後世の歴史家が評価することは間違いないと思うのであります。  第二点目ですが、私は、新体制への移行に当たって政府として最大限配慮すべきことは、国民に対していささかの混乱不便を与えないということであります。そうして、人は石垣、人は城と風林火山の歌にあるごとく、どんな立派な組織をつくっても、そこで働く公務員士気が落ちるようでは成果が上がりません。政府としては、新体制への移行を急ぐ余り国民の不安に対して十分配慮しているのか、公務員士気に気配りしているのか疑問がないわけではありません。  世界列強は軍事における核戦略閉塞状態の中にあって、経済戦争を中心とする世界戦略に向かっているときであります。そのときに、我が国だけが行政改革をにしきの御旗にして官僚たたきだけをやっていて、世界戦略におくれることはないのか心配であります。特に、私は今、霞が関の頭脳集団にやる気を起こさせることが極めて重要であると思います。政治にすり寄る者を排し、真に国家国民のことを考える者が元気に頑張れる環境をつくることが重要であると考えております。  そこで、第三点目ですが、国民小渕政権期待する最大の願いは、一日も早く日本経済を回復させ、もうこれ以上失業者を出させないということであろうかと思います。  新聞によりますと、多発している一年間の交通死亡事故が一万人ちょっとであるのに、自殺者は三万人に達したと報じております。マスコミ世論調査を見ても、民意中央省庁再編及び地方分権改革にそれほど高い関心を示さずにおります。経済の復興を国民は願っております。この三年間、強力なリーダーシップを持った前内閣が、経済の実態に対する判断が甘く、その時期を誤って行財政改革に突き進んだことが今日の日本不況をもたらしたと解説してみせる向きもあります。  いずれにいたしましても、今日の我が国経済危急存亡の折に、なぜに中央省庁再編及び地方分権推進という大きな地殻変動を伴う大改革を初めとする前内閣から引き継いだ六大改革を同時並行的に強行しようとするのか、その基本的理念は何なのか。  以上、第一点目、諸改革施行時期を政令にゆだねてフリーハンドにし、経済再生官民総力を結集すべきときではないのか。第二点目、新体制への移行を急ぐ余り国民の不安に十分配慮しているか。そこで働く公務員士気に気配りをしておるか。第三点目、我が国経済危急存亡の折に、なぜ中央省庁再編及び地方分権推進を初めとする前内閣から引き継いだ改革を同時並行的に強行しようとしておるのか。その基本的理念は何なのか。これら三点お尋ねをしたいと思います。  なお、大変重要な法案であり、かつ大部でありますので、私の方も八十分いただいた時間の中でできるだけ多くの質問をいたしたいと思いますので、閣僚皆さんには大変恐縮でございますが、答弁はできるだけ要点を簡潔に願えればありがたいと思うのであります。
  8. 野中広務

    国務大臣野中広務君) 小渕総理が他の公務に出かけておりますので、おわびを申し上げます。  今、御質問を賜りました問題についてのお答えが、幅広く御質問でございますので十分お答えになるかどうかわかりませんけれども、とりあえず今御指摘のございました現省庁改革地方分権の両法案施行時期をフリーハンドでするべきでないかといったような主張について、基本的な考え方を申し上げたいと存じます。  経済再生につきましては、委員が今御指摘ございましたように、小渕内閣発足以来、内閣を挙げて国民議会初め関係皆さんのお取り組み全力の御協力をいただいて取り組んでおるところでございます。本格的な経済の回復へ向けましては、今まさに正念場にございまして、今年度のプラス成長を何とか確実なものにするように、引き続き不退転の決意で取り組んでまいりたいと考えておるわけでございます。  一方、委員が御指摘になりましたように、中央省庁等改革地方分権推進は、二十一世紀にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築するという内閣の最重要課題の一つでございます。政府が二十一世紀に対応した国民的な政策課題への取り組みに早く専念できるようにするためにも、これら膨大な作業を早急に終わらせまして、予定のスケジュールで改革を実現することが必要であると考えておるところでございます。  御指摘ございましたように、少子高齢化進展等社会経済情勢変化をいたしますとともに価値観多様化をしておる現在、世界流動化をする中におきまして、これらに迅速かつ的確に対応いたしますためには新たなシステムをつくり上げていくことがまた急務であると考える次第でございます。このような認識のもとにおきまして、中央省庁等改革を初め経済構造改革社会保障構造改革などの諸改革推進いたしまして、これにより戦後の我が国社会経済構造の転換を促し、自由かつ公正な社会の形成を目指すものでございます。  もとより、このような改革推進に当たりましては国民の不安や公務員士気にも配慮すべきことと認識をしておりまして、今後とも十分注意を傾けてまいりたいと思うわけでございます。  今、委員が御指摘ございましたように、変革には必ず不安とそして期待が相半ばするものでございます。省庁改革によりまして長期間続いてきた組織変革をされることにつきましては、そこで働く公務員諸君期待と不安が必ずつきまとっておるわけでございます。しかし、御承知のように、中央省庁再編につきましては既に基本法が成立をしておるところでございまして、今回の法案国会審議、実際面での準備が進むにつれまして、二十一世紀に向けての新しい行政の構築に前向きに取り組んでその意識が浸透してきているように認識をしておるところでございます。  中央省庁そのもの国民一般に不安を与えるようなことはないと思うわけでございますけれども、今後の行政のあり方につきまして国民が強い関心を持っていただくように我々も努力をしていかなくてはならないと思うわけでございますし、その移行期におきまして国民混乱不便が生じないように十分注意し、準備を進めていかなくてはならないと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、現在、非常に景気を初めとするさまざまな国民心配の一因は将来に対する不透明感であるわけでございますので、そのような中で中央省庁改革につきましても先延ばしをするということは、かえってその不安感を増幅することになりはしないかと思っておるところでございますので、早期にこれを実現することがこうした不透明感あるいは不安感を払拭することにつながるものと考えておるところでございます。
  9. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  さらに総理官房長官お尋ねをいたします。  今回のこの大改革を提言した行政改革会議の最終報告を読ませていただきました。「肥大化・硬直化し、制度疲労のおびただしい戦後型行政システムを根本的に改め、自由かつ公正な社会を形成し、そのための重要な国家機能を有効かつ適切に遂行するにふさわしい、簡素にして効率的かつ透明な政府を実現することにある。」としているのであります。もはや既存の一府二十二省庁という長年続いてきた体制では今日の変化の激しい内外の諸情勢に対応できなくなったと宣言をしております。この際、既存の府省の組織を解体し、官僚支配の既存の組織に生じた積年の宿弊を一掃しなければ自由かつ公正な社会の形成と簡素にして効率的かつ透明な政府は実現できない、このように断言をしております。  そこで第一点目でありますが、ここで言うところの肥大化したとは、また硬直化したとは、さらに制度疲労のおびただしい戦後型行政システムとは具体的に現在の中央省庁のどういうところにあらわれておるのか。  そしてさらに、ある学者をして言わしめるならば、価値選択のない理念なき配分や行政各部への包括的な政策委任の結果生じた縦割りの弊害や官僚組織の自己増殖、肥大化であり、省庁の専横的、領土不可侵的所掌システムによる全体調整機能の不全であるとまで指摘をしております。  確かに、一九四九年に施行されました国家行政組織法のもとにつくられた現行の行政組織は、年月の経過とともに若干の制度疲労を起こしていることは私も認めるところであります。したがって、英断を持って行政改革を断行する必要性のあることは私も十分に理解できるところであります。しかし、その時期が私は問題であると思っております。  何もかも同時並行的に強行して、国民に無用の不安を与え、消費の収縮を生み、未曾有の経済不況をもたらすことにはならないのか。そうしてさらに、現行の中央省庁に対する批判は言葉としてははんらんしておりますが、現行体制の悪というものがはっきりと国民の前にあらわれてこない現実もあります。  現行の行政システムについて、このように一方的な断罪を行い、泣く子と地頭よろしく行政側の十分な弁明を聞くこともなく、また良識ある国民に対する十分なパブリックコメントをとることもなく、これを今回の行革の出発点とすることに私は若干の疑問を覚えます。  そこで第二点目ですが、私は、行政システムは決して官僚の私物ではなく、国民のもの、公共財でなければならないとの信念を持つ者であります。そうして、国民は、自分たちの生活がよって立つところのこの行政システムに大きな信頼を置かずには安心して暮らしを営むことはできないのであります。  にもかかわらず、現在、我々がこのもとで暮らしている行政システムを制度疲労のおびただしい戦後型行政システムと単純に位置づけることにより、既存のシステムを変えることだけが自己目的化してしまい、我々は深い洞察なしに本来安定的であるべきシステムに手を加えようとしておるのではないか。そうして、このことが国民に無用の不安を与え、消費の収縮を生み、未曾有の経済不況の一因になっているのではないかと危惧する者であります。  第三点目、例えば福祉行政を減量化するならば、弱者を切り捨てることにならないか。また、今やり玉に上げられております護送船団行政自体が国益に資することもあったのではないか。私は、弱者も含め国民が安心して暮らしていける社会を維持するには行政にコストをかけることが必要である場合もあると考えております。  第四点目ですが、我々は、現在の行政システムの中にあって、世界列強経済先進国を相手にジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれたこともあったことを忘れてはならないと思うのであります。その意味において、私は、現行の行政システムをある学者が言うごとく一方的に断罪することには若干の疑問を覚えるものであり、また政治行政の側に反論の場を十分に与え、それに耳を傾ける謙虚さを持つべきであると考える者の一人であります。  以上、第一点目、行政改革会議の最終報告で言うところの肥大化したとは、また硬直化したとは、さらに制度疲労のおびただしい戦後型行政システムとは具体的に現在の中央省庁のどういうところにあらわれているのか。第二点目、今回の一連の改革国民に無用の不安を与え、消費の収縮を生み、未曾有の経済不況の一因になっているのではないか。第三点目、福祉行政を減量化するならば、弱者を切り捨てることにならないか。弱者も含め国民が安心して暮らしていける社会を維持するためには行政にコストをかけることが必要である場合もあると思うが、どうか。第四点目、これだけの大きな改革を行う以上、政治行政の側にも反論の場を十分に与え、それに耳を傾ける謙虚さを持つべきであると考えるが、今回反論の場をどのような形で十分に与えられたのか。第五点目、一番重要な点でありますが、これだけのエネルギーをかけ、社会的弱者や多くの国民に不安を与え、消費の収縮を生みながら改革を断行した新しい行政組織のどこが既存の組織に比べて理想的なものになるのか、またそこに民意はあるのか。  これら五点についてお伺いをいたしたいと思います。
  10. 野中広務

    国務大臣野中広務君) 非常に経験豊富な委員からの御指摘でございまして、的確なお答えにならないかもわからないわけでございますが、まず中央省庁の改革につきましては、我が国経済の活力のためにも不可欠の課題でございまして、内閣の最重要課題の一つとして取り組んでおるところでございます。  現在の景気が厳しい状況にあります原因の一つは、我が国経済社会の先行きに対する、先ほども申し上げましたように、不透明感にあるわけでございます。そのような中で、中央省庁改革につきましても先延ばしをすることなく、申し上げましたように、早期に実現することがむしろ今、先行き不透明感の払拭につながると考えておるところでございます。  また、今回の改革では、国の行政の果たすべき役割を見直しまして、規制緩和やあるいは官民分担を徹底することとしておるわけでございますので、ともすれば行政に依存しがちであった個人の意識の改革を促し、自由で活力のある経済社会の構築に資するものと考えておるところでございます。さらには、今回の改革の大きな柱の一つとして内閣機能の強化が挙げられるわけでございますが、これによりまして、政治主導のもと、経済運営を初めとする行政の諸課題に対しまして機動的、弾力的に対応することが可能となると思うわけでございます。  今日、少子高齢化が進行をいたします中におきまして、国民が安心できる社会を築いていきますために、国民に信頼され、将来にわたって安定的に運営できる福祉等の社会保障制度を構築していくことが重要でございます。今後、高齢化の進展に伴いまして給付の増大が見込まれる中で、高齢者介護や子育て支援といった国民の新たなニーズに的確に対応しながら、経済との調和がとれた、将来世代への負担を過重なものにならないように配慮していくことが重要な課題であると考えておるところでございまして、このような考え方に立って社会保障制度全体の構造改革に取り組んでいかなくてはならないと思っておるところでございます。  行政改革会議最終報告は、委員からその肥大化、硬直化、制度疲労のおびただしいシステムについてどのように具体的になっておるかということをお尋ねでございますけれども、行政改革会議最終報告では、各界を代表される学識経験者にお集まりをいただきまして、各省庁との意見交換を行いながら、国民各界各層の声を踏まえて議論を尽くし、取りまとめられたものと承知をしておるところでございます。  その後、この最終報告に基づきまして、政府部内において十分な検討を行った上で、中央省庁等改革基本法案を昨年の通常国会に提出し、成立をさせていただいたところでございます。  行政改革会議最終報告におきましては、制度疲労のおびただしい戦後型行政の問題点といたしまして、行政の責任領域や官僚組織の肥大化、個別事業の利害や制約に拘束された政策企画部門の硬直性、不透明な政策決定過程、各省の縦割り行政の中での全体調整機能の不全などが挙げられておるところでございます。  今回の改革は、このような問題点を打開いたしまして、行政に対する政治主導を確立いたしまして、内外の主要課題や諸情勢に機敏に対応できるよう行政システムを抜本的に改めますとともに、透明な政府の実現や行政のスリム化、効率化を目指すものでございまして、法律案において二十一世紀我が国にふさわしい中央省庁の具体的な姿をお示ししたものであると思っておるところでございます。本改革によります取り組みを通じまして、国民のより質の高い行政サービスの実現が可能であると思うのでございます。  先ほど申し上げましたように、改革には期待と不安が相半ばするものでございまして、今日、委員が御指摘になりましたように、この改革が結果として、この数年間官僚のバッシングが非常に大きく起きたり、またその不祥事がこの改革へのエネルギーとなったことを思いますときに、この改革を通じて官僚が萎縮をしたりあるいは不安を考えたり、そういうことのない新たなスタート、逆に政治が介入することによって派閥政治を生んだり中立性を行政が失ったり、そういうことがないように、私どもはこれを新たなスタート点として十分配慮していかなくてはならないと思っておるところでございます。
  11. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、有馬大臣にお伺いをいたします。  平成十年に当選した我々同期でつくっております十年会の代表といたしまして入閣をされております有馬文部大臣に、地方分権と教育の問題について一点お伺いをいたします。  教育は地域の人々の熱意や自治体の努力などによって支えられるものでありますが、また一方で、国には国民がその能力に応じてひとしく教育を受ける権利を保障する責務があり、教育には国の未来がかかっております。このような両面がある教育、とりわけ学校教育につきましては、ただ単に権限を地方に移譲すればよいというものではなく、国と地方のバランスをどのようにとるのかということが最も肝心な点であろうと思います。  ところで、広島県で外部からの不当な介入、圧力などによって校長先生が自殺に追い込まれましたのは去る二月のことでありました。この問題につきましては本院予算委員会でも取り上げられまして、地元広島出身で総理までお務めになられた宮澤大蔵大臣の抑制のきいた謙虚な御答弁に深い感銘を覚えますとともに、この問題の奥の深さ、そしてその困難さを再認識いたした次第であります。  私は、学校教育については国が責務として積極的な役割を果たすべきものと考える立場であります。今回の改正によって、広島県のような事態に対して国が対応しにくくなるという状況が生まれることはないのか、また学校教育が外部から不当な介入を受けたとき、国はどのようにして教育の中立性を確保しようとしておるのか、お伺いをいたします。
  12. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 三つの点について阿南先生から御質問がありましたので、一つ一つにお答え申し上げたいと思います。  一つは、地方と国との教育行政におけるバランスでございます。  教育行政におきましては、憲法で定められた国民の教育を受ける権利を保障するため、全国的な教育の機会均等を確保し、教育水準の維持向上を図るという観点から、国、都道府県、市町村がそれぞれの責任と役割を果たしながら互いに連携協力していくことが極めて重大なことであり、基本であると考えております。  このような考え方に立って、国は教育行政における基本的な制度の枠組みの制定や、全国的な基準の制定、必要な財源援助等の役割を担うとともに、都道府県及び市町村は学校や図書館等の教育機関を設置したり、生涯学習、文化、スポーツなど住民に身近な教育事業を実施する役割を担っていると思います。  次に、広島県で起こったようなことに対して国がどう対応していくかということについての御質問でございます。  広島県立世羅高等学校の石川校長が、今春の卒業式における国歌・国旗の実施をめぐる学校内外の厳しい状況のもとで深く悩まれ、孤立感を抱き、結果としてみずから命を絶つことになられたことはまことに残念であり、痛ましく考えておりまして、私といたしましても改めて哀悼の意を表させていただきたいと思います。  今回の法改正は、各地域において特色ある主体的な教育行政が展開できるよう、教育の分野においても国と地方の役割分担を見直して新たな連携協力体制を構築する観点から行うものでございます。  今御指摘でありました広島県における問題のような法令違反等の事態に対しましては、今回の法改正により地方自治法において必要な是正の要求を行うことができることとされております。また、地方教育行政法におきましても従来どおり指導、助言を行うことができることとされておりますから、これらを適切に行うことにより、国全体としての適切な教育の事務の確実な履行を確保してまいりたいと考えております。  最後に、外部からの不当な介入を受けた場合にどうするかというふうな御質問でございますが、学校教育は外部の不当な介入を受けることなく法令にのっとり教育の中立性を確保することが極めて重要なことであると認識いたしております。  文部省といたしましては、今後とも、我が国全体の教育の発展、充実を図る観点から、教育に関する事業の適正な実施のための指導、助言等を適切に行い、各教育委員会において教育の中立性を確保する取り組みが行われるように努めてまいりたいと考えております。
  13. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、財政・金融分離の問題について宮澤大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。  中央省庁等改革基本法で定めました新省庁名に対して反対意見が多く出されたことから、小渕総理は、私の先輩後藤田正晴元副総理を座長とする有識者懇談会を設置して再検討を諮問しました。  昨年十二月二十五日、後藤田元副総理から大蔵省の名称存続が答申をされたにもかかわらず、総理はその後態度を明らかにすることなく、四月に突如財務省への名称変更を決定いたしました。大蔵省は律令時代から続く由緒ある名称であり、国民にも長く親しまれてきました。また、財務省への名称変更は職員の士気の著しい低下を招くものではなかろうかと私は推察いたします。  したがいまして、私は名称変更には反対であります。宮澤大臣の率直な感想をお伺いいたしたいと思います。  さらに、総務庁、自治省、郵政省、公正取引委員会などを抱えた巨大官庁である総務省をつくる一方で、大蔵省の権限縮小だけを目玉としたような感じを受ける今回の省庁改革にも、国家戦略を考えるとき私は違和感を覚えるものであります。  第二点目でありますが、言うまでもなく財政と金融は我が国経済の根幹をなす重要事項であります。この重要事項を担当する行政機構をいかなる形で仕組むかという問題は、我々のみならず将来の世代まで影響を及ぼすものであり、これを審議する我々の責務は極めて大きいものがあると思います。少なくとも、今までの制度、体制の中にあって、優秀な人材が集中している大蔵省及び大蔵官僚に対して、単に大蔵省に帰すという魔女狩り的な感情論のみで、国家戦略もなく大蔵省の名称変更や財政と金融の分離を討論するようなことがあってはならないと思います。  第三点目ですが、私は、大蔵省の金融行政改革は、業界との癒着を断ち切ることや金融行政の決定過程を透明化することが重要であり、大蔵省から金融行政を独立させることではないと考えております。  第四点目ですが、先進主要国でも財政と金融行政の企画立案は同一の省庁が担当しております。しかも、欧州は現在単一通貨ユーロを発足させ、財政を含むダイナミックな経済政策の融合に向かっております。世界列強は軍事における核戦略閉塞状態の中にあって、経済戦争を中心とした世界戦略に向かっているときに、我が国だけが行政改革の目玉として大蔵省の力を弱めることのみに目を奪われて、財政と金融を分離してしまってよいものか、私は若干の疑問を覚えるところであります。  このようにして、大蔵省から金融行政の企画立案機能を分離してしまって、果たして国の金融破綻のときに素早い対応ができるのか。また、国際的な金融危機のときに機動的な対応ができるのか、私は甚だ疑問に思っております。  以上、第一点、財務省への名称変更に対する率直な御感想。第二点、財政と金融の分離の前国会からの一連の改革に対する受けとめ方。第三点、大蔵省の金融行政改革は業界との癒着を断ち切ることであって、大蔵省から金融行政を独立させることではないという私の考え方。第四点目、財政と金融を分離させて国内の金融破綻時に素早い対応ができるのか。また、国際的な金融危機のときに機能的に対応できるのか。  以上、四点について宮澤大蔵大臣の御所見をお伺いしたいところでありますが、第一点目、財務省への名称変更については既に決着がついていることでもありまするので、心の中のお思いはあろうかと思いますが、お立場上難しいということであれば答弁は御無理をなさらなくても結構でございます。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 省の名称につきましては、中央省庁等改革基本法に規定がございまして、その規定の趣旨に従いまして、閣内におきまして名称の決定は総理大臣の御決定にお任せするということを定めております。したがいまして、総理大臣が財務省と御決定なされましたことに異存ございません。  次に、財金分離に関する問題でございますが、大蔵省の金融行政について長いこと厳しい世論の批判がございました。それを受けて昨年、両院におきましていろいろ御討議がなされましたし、また関係各党の間で党首の御協議もございました。このたびの御提案は、それらの御協議の趣旨を踏まえまして御提案を申し上げたつもりでございます。  すなわち、まず財務省設置法につきましては、その「任務」の中で、第三条に定められておりますが、一切金融という概念を排除いたしました。したがいまして、金融は基本的に財務省の任務でないということになっております。  次に、金融庁設置法、「任務」の第三条におきまして、「金融庁は、我が国の金融の機能の安定を確保し、」「金融の円滑を図ることを任務とする。」と、すべて金融に関しては金融庁の任務であるということが定められております。  そこで、しかし、ただいま阿南委員が御指摘になられましたように、両方の問題は、危機管理等のところで金融庁に発しましたことがどうしても財務省の方に川の流れが及んでまいります。そして、それは財政、国庫あるいは通貨、外国為替の安定等々に必然的に関連をいたします。したがいまして、その点は、財務省設置法第四条に所管事務を定める中で、所管事務の五十五といたしまして、企画及び立案に関することは財務省の同じく仕事であるということで、いわばこの部分だけを共管と申しますか、基本的には金融庁でございますが、財務省もかかわるということを定めております。  こういう規定で、おっしゃいましたように国際的な流れというものは確かにございますし、その点は、財務省の所管事務の中でもそれにかんがみまして規定を置きましたが、要は金融庁と財務省がこういう問題が起こりましたときに密接に連携をしながら国益のために事を処理するということが大事なことでございますので、私どもといたしましても、恐らく金融庁も同様でございますが、そういう心構えのもとに新しい機構を運営してまいりたいと思っております。  なお、最後に言われましたことは、行政国民の信頼を裏切ってはならない、業界との癒着があってはならないということにつきましては、財務省はもとよりでございますが、金融庁におかれましても同様な心構えを持って行政を進めていかれることに間違いないと信じております。
  15. 阿南一成

    阿南一成君 次に、総理お尋ねをいたします。  長年の経歴を持つ総理に、私は一年生でありますが、多少行き過ぎがあるかもしれませんが、その点はひとつ御容赦を賜りたいと思います。  私は、教育というのは国家百年の大計で大変重要であるというふうに考えておるものであります。そこで、教育改革の方向性についてでありますが、個性を伸ばす教育、ゆとりある教育と高く理想を掲げて、小学校、中学校の教育内容を三割削減しております。  そこで第一点目、ゆとり重視の考え方の根底に、勉学を通じた競争を批判する考え方の問題があり、受験戦争の激しさが問題視され、熱に浮かされたごとく偏差値教育が魔女狩りの対象となり、絶対悪かのごとく言われて久しいわけでありますが、政府は、勉学を通じて競争することが我が国にもたらしたものを正当に評価しようとしたことはあるのか、甚だ疑問であります。終戦で灰になった我が国が奇跡の復興をなし遂げ世界第二位の経済大国にまでなったのは、教育水準が高く、勤勉な国民が死に物狂いで努力をした結果に尽きると私は信じております。戦後システムの制度疲労といった一方的な見方で片づけられる問題じゃないと考えております。  第二点目、昨今、教育批判、受験戦争批判、学歴批判、エリート批判がはやりでありますが、そうしたシステムを批判する場合は、こうしたシステムがもたらした利益とも比較考量する冷静さが政府には必要であると私は考えます。人材を選抜するための手法としては、試験システムは客観性や透明性が高い手法であります。これを単純に否定すれば、コネによる選抜など、手段として平等性に欠ける手法が出現し得ること、学歴を単純に否定すれば、家柄や親の地位や経済力といった物差しが用いられるようになるおそれがあること、つまり試験システムや学歴は、実は門戸が大きく開かれた相当に平等なシステムであると思うのであります。そして、我々日本人はその平等性に対する信頼を基礎としてここまで頑張ってこれたということを私は指摘しておきたいのです。  第三点目でありますが、アメリカのクリントン大統領それからイギリスのブレア首相、いずれも教育問題を政策の中心課題に置いて、国力、経済力の向上のために、教育水準の向上を教育政策の最優先課題としております。まさに日本とは逆方向へ向けた教育改革、教育政策であるわけであります。そのときに当たって、何ら資源のないマンパワーのみが頼りの我が日本が、日本の教育改革の方向性において、荒れる生徒に目を奪われてのボタンのかけ違えがなければよいがという不安を覚えるのは私一人ではないと思うのであります。  以上、第一点目、偏差値教育が魔女狩りの対象となっているが、政府は、勉学を通じて競争することが我が国にもたらしたものを正当に評価しようとしたことはあるのか。  第二点目、教育批判、受験戦争批判、学歴批判、エリート批判がはやりであるが、そうしたシステムを批判する場合は、こうしたシステムがもたらした利益とも比較考量する冷静さが必要であると思うがどうか。つまり試験システムや学歴は、実は門戸が大きく開いた相当に平等なシステムであり、我々日本人はその平等性に対する信頼を基礎として今日まで頑張ってこれたのではないかと思うがどうか。  第三点目、アメリカのクリントン大統領、イギリスのブレア首相、いずれも教育問題を政策の中心課題に置いて、国力、経済力の向上のために、教育水準の向上を教育政策の最優先課題としている。そのときに当たって、何ら資源のないマンパワーのみが頼りの我が日本の教育改革の方向性において、荒れる生徒に目を奪われてのボタンのかけ違えがあるのではないか。  第四点目、親や地域社会の責任を棚に上げて学校たたき、教師たたきが続く中、日本の学校教育は崩壊の道を歩みつつあると私は見ております。荒れる学級を前にエリート教育批判や官僚たたきが盛んでありますが、政府として二十一世紀を見据えた国家戦略を持っているのか。  第五点目、いじめによる児童生徒の自殺、校長先生の自殺、そうしてバタフライナイフによる女性教師殺害事件等が時の経過とともに風化をしてきております。政府は教育のこの負の部分に真っ正面から取り組むべきであると考えるが、どうか。  以上、五点について総理の御見識を伺いたいと思います。
  16. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 五つの点についてのお尋ねがございましたが、まとめて言って御答弁してはいかがかと思いますけれども、幾つかの諸点について考え方を申し述べさせていただきます。  まず、偏差値教育の問題でございますが、子供たちが勉学において切磋琢磨し、自分を磨いていくことは極めて大切なことであります。しかし、点数の多寡のみを競うことについての問題があることは承知をいたしております。  本人の努力によりまして学校に学び、能力を高めることによって社会で活躍するという考え方は、我が国社会の成長に大きな役割を果たしてきたことは否定できません。しかし、どの学校へ入学するかというようなことへの関心が高くなり過ぎ、過度な受験競争など問題を生み出していることも認めざるを得ないと考えております。これからの学校教育においては、子供たち一人一人がその長所を存分に伸ばすことができるような教育を進めていくことが重要であると考えております。  実は、偏差値教育というものにつきましても、私もその道は専門でございませんでしたので十分勉強しておりませんでしたが、ついせんだってテレビ番組でたしかこの偏差値問題を取り上げられました。偏差値をつくったと言われる中学校教師が、戦後、中学から高校に入るということで、まだその当時は進学率が五〇%を切っておった時代、今日はもう九三、四%になっておるんじゃないかと思いますけれども、そういう中で各校の生徒の進学に対して、どのような学校に推薦するかということについて、非常にまじめな先生がこれに取り組まれて偏差値というものをつくり出してきた。しかし、それが、以降、偏差値がつくられてきた所期の目的を超えて、偏差値がすべてであるというような形になってきたということを述懐されながらこの番組に登場されておったのをついせんだって拝見いたしまして、戦後の教育の中での偏差値問題の経緯、経過の中でのいろんな諸問題があったような気がいたしております。  いずれにいたしましても、すべての点についてでありますが、委員指摘のように、要は極度に一方に偏ってしまうということの問題があるんじゃないかと。ですから、要は果たしてバランスがとれておるのかと。偏差値の問題もそうでありますが、所期の目的から変じて偏差値そのものが一種の目的化してきておるというようなこともございまして、そういった点も含めまして常々反省を込めながら対応すべきものではないかというふうに考えております。  それから、教育改革の方向性と、荒れる生徒に目を奪われてボタンのかけ違え等があったのではないかということでございますけれども、我が国が二十一世紀において引き続き発展していくためには、教育の役割が極めて重要と考えております。我が国発展の原動力であった高い教育水準を引き続き維持させるとともに、行き過ぎた平等主義を是正し、個性や能力を伸ばすことを重視した教育を進めるという明確な方針のもとに教育改革を進めていかなければならないと考えております。  それから、いろいろ事件が起こりますと、事件を反省し、それを是正しようということで適正な対応は望ましいわけでありますが、事によっては非常にその是正を急ぐ余りといいますか、改善に対してどこまで進んでいったらいいかというような点について、行動について、やはりこれも検討すべきことがないかということをおっしゃられておるんだろうと思います。  いろいろ事件が起こっておることは残念なことであり、これを深刻に受けとめなければならぬと思っておりますが、結論から言いますと、子供たちが心健やかに育っていくために、家庭、学校、地域が一体となってこうした問題に取り組んでいかなければならないのではないかというふうに考えております。  日本の教育は、非常に熱心に親御さんもまた本人も努力をしてこられた。それを、ゆとりある教育という名のもとにそうした勉学の意欲というものをそぐことがあってはならぬということをおっしゃっておるとすれば、それはそのとおりだというふうに思いますが、我々の若き時代を考えましても、いわゆる蛍雪時代とかそういうことで、本当に能力の限界を何とか生かしていこうということで真剣に取り組んできた。その総合力が日本の教育を大きく進展させてきたということもこれまた事実でありますが、物は行き過ぎということで、余りにもそれが過ぎたるは及ばざるがごとしということになって、全く余裕のない、この時代をただ過ごすということであってはならない。それをどう調和させていくかというところに問題があるのではないかなという気が私はいたしております。  学歴偏重のことにつきましても、学歴そのものが確かに一つのメルクマールになることは事実でありますが、余りにもそれが、学歴であり、ある一定の名門校を卒業したがゆえにすべての人生を決定づけるというようなことがあってもならないということで、これまたある意味で、のりを超えたことは望ましいことではないのじゃないかと思います。  それから、外国の例を取り上げられました。なるほどイギリスにおきましてもアメリカにおきましても教育問題というものが今最大課題である。二十一世紀に向けてのそれぞれの国民、国家の繁栄を考えると、教育にいま一度大きな明かりを照らしていかなきゃならぬということは当然だろうと思います。  しかし、イギリス並びにアメリカその他の国もそうであろうと思いますが、やや国々によっては事情も異なっておるのじゃないか。例えば、アメリカあたりはいわゆる理科系の勉強をする人がだんだん少なくなってきているような点もあって、その反省もあるわけでございます。  我が国におきましては、我が国としてのあるべき教育の姿というものをきちんとこれから定めていかなきゃならぬということは、橋本前内閣におきましてもいわゆる六大改革という中にこの教育改革ということを大きく取り上げておるわけでございますので、我々も改めて教育改革の何ぞやということを真剣に取り組ませていただきまして、新しい世紀我が国にとってより立派な国民、国家であるためには、教育のあり方について、過去を振り返り、将来にわたっての方向性を定めていかなければならない、こういう認識で努力をいたしてまいりたいと思います。
  17. 阿南一成

    阿南一成君 さらに、総理お尋ねをいたします。  先般の本委員会におきまして、田村委員の与党にその身を置きながらの鋭い発言に、自民党とは懐の深い党であるなということを再認識させていただきました。  そこで、私も、いわゆる昨今の官僚バッシングについて若干触れてみたいと思います。  今は日本の国の浮沈をかけた重大なときであります。私は霞が関の特に若い官僚諸君に申し上げたい。君らを日本国及び日本国民は必要としている。一時の官僚バッシング等に惑わされて霞が関を去ることがないように、そして反省すべき点は反省をして元気に再出発してほしいと思うのであります。そして、今はやりの民間人の登用も、役所にない新しい発想を取り入れるために大いに必要なことではありますけれども、そのコアになって行政の継続性をしっかりと維持し、国民の幸せのために頑張るのは若い諸君たちです。自負心、自信を持って頑張ってほしいと思うのであります。  私は、官僚が国家安定の下支えの機能を果たしていることは、幾ら強調しても強調し過ぎることはないと考えておる者の一人であります。そして現在、官僚バッシングに熱心な方も、本当に官僚システムが崩壊することはないという暗黙の前提のもとに物を言われているような気がしてなりません。本当に官僚システムが崩壊することになったら、日本社会は大混乱に陥るはずであります。そう思って多くの人は黙って耐えているのが実情ではないのか。しかし、現代の若者は我々の世代と違ってどこまで耐性があるかということについては若干の心配を持っております。  そこで第一点目ですが、行政における政治主導を強調する余り、役人の人事権にまで政治が介入するようになれば官僚機構は弱体化するかもしれません。同時に、行政政治に対する中立性という極めて重要な性質が侵され、公務員の政党化、派閥化が進むことは目に見えております。そうして、政治にすり寄る公務員のみが生き残るようなことになっては日本の将来はなくなると思うのであります。その歯どめについて十分考えておく必要があると考えております。  第二点目、制度疲労のおびただしい戦後型行政システムというと、確かに言葉ではなるほどそうかなと思うところもありますが、具体的にどういう形態なり現象を言っているのかわかりません。また、そのことが、学者の方が指摘しているように、価値選択のない理念なき配分、行政各部への包括的委任の結果生じた縦割りの弊害や官僚組織の自己増殖、肥大化ということを指しているというならば、そのことを具体的に指摘し、そうしてさらに一体だれがそういう方向を示し、かじ取りをしてきたのか、具体的な事例で示すべきであると私は考えております。  そうして、もし仮にそのような状態が自由かつ公正な社会の形成を妨げたとして、この改革案によればそれが排除され、描かれておるような理想的な国家行政組織となって難しい情勢に対応できる機能を備えた機構ができ上がるということになるのであろうか。例えば、今までの機構を改革し、約七兆円に上る予算を持つ国土交通省という巨大省を出現させることに何ゆえに今指摘されているような予算や補助金のばらまきというような弊害が生じない行政ができることになるのか。もしそれができるというならば、今までの既存の組織、機構ではなぜできなかったのか、明らかにすべきであると思います。  第三点目、いずれにいたしましても、今日の日本国家の置かれている状態が、既存の霞が関の行政機構及びそこで日夜懸命に働いている官僚のみの責任にされることは大いに私は異議があります。  今日指摘されているような弊害の多くは、率直に申し上げましてむしろ政治世界からの指導や、時には圧力によってその方向づけがなされ、かじ取りもされた面もあったと感じてきておる者の一人であります。  第四点目、ともあれ、不祥事を起こした一部の省庁の官僚は問題外でありますが、その他の多くの国を思うまじめな官僚皆さんにとっては、今までの行政組織、そしてそれを動かしてきた官僚が大変間違ったことをしてきたかのように言われることについては心外でもありましょうし、残念なことだと思っているのではないでしょうか。  既存のシステムの弊害を強調し、改革がすべて善であるかのように世の中の事象をすべてわかりやすく二項対立的に位置づけることは簡単なことであります。しかしながら、我々政治家は、人々がその生活、生命を預けることになる現実のシステムを常に責任を持って提供し続け、安心してもらう立場にあるわけでありまするから、今回の中央省庁改革の基本理念が現行制度を悪とする白黒判定調の立場から出発しているかのような印象を与えることは遺憾なことだと思っております。  私は、今回の大改革を進めるためには、国民皆さんにはもちろん、行政組織の中に働く公務員の人たちにも十分に改革の理念なり方向性が理解されることが必要であると思います。そうして、今までの行政組織のよかった点、まずかった点をはっきり示すことが大切であり、特に行政改革会議が弊害だと指摘していることの具体的な事実をはっきりと示すと同時に、この大改革を断行することによってそれらのことがどのように改善していくのかを明らかにするべきであると思います。  以上、第一点目、行政における政治主導を強調する余り、役人の人事権まで政治が介入するようなことになれば官僚機構は弱体化するかもしれないし、同時に、行政政治に対する中立性という極めて重要な性質が侵され、公務員の政党化、派閥化が進むことになるのではないか。そして、政治にすり寄る公務員のみが生き残るようなことになっては日本の将来はなくなると思うがどうか。その歯どめについて十分考えておく必要があると思うがどうか。  第二点目、現行の行政システム官僚機構が制度疲労のおびただしい戦後型行政システムであり、価値選択のない理念なき配分であり、そして行政各部への包括的委任の結果生じた縦割りの弊害や官僚組織の自己増殖、肥大化であると言うならば、そのことを具体的に指摘し、さらに一体だれがそういう方向を示しかじ取りをしてきたのか、具体的な事例をもって示すべきであると考えるがどうか。  第三点目、いずれにしても、今日の日本国家の置かれている状態が既存の霞が関の行政機構及びそこで日夜懸命に働いている官僚のみの責任にされることには大いに異議がある。指摘されているような弊害の多くは、率直に申し上げてむしろ政治世界からの指導や、時には圧力で方向づけがなされ、かじ取りもなされた面もあったと感じておる者の一人であるがどうか。  第四点目、私は、今回の大改革を進めるためには国民皆さんはもちろん、行政組織の中に働く公務員の人たちに十分な改革の理念なり方向性が理解されることが必要であると考える。そうして、今までの行政組織のよかった点、まずかった点をはっきりと示すことが大切であり、特に行政改革会議が弊害であると指摘していることの具体的な事実をはっきりと示すと同時に、この大改革を断行することによってそれらのことがどのように改善されていくのかを明らかにすべきであると思う。この中央省庁改革によって霞が関は現在よりもどのように何が改善され国民のための行政になるのか。  以上四点についてお伺いをいたします。
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今次の改革におきまして行政における政治主導を強調し、役人の人事権にまで政治が介入するようになると政治的中立が侵されるのではないかということでございます。  今次改革におきましては、内閣の優位性を明確にするため、事務次官、局長等の幹部職員の任免につきまして閣議決定により内閣の承認を要するものとしたところでありまして、これら幹部職員を含め一般職の国家公務員国民全体の奉仕者として中立かつ公正な立場に立って職務に従事することが求められております。この基本的要請は公務員人事に関しても十分尊重すべきものと考えております。国家公務員法は、成績主義の原則に基づき、公務員の採用、昇任等の身分保障、そしてまた一定の政治的行為の制限などの仕組みを定めており、これらの仕組みの中で今後とも公務員人事の政治的中立性を保持していくことが重要であると考えております。  そこで、阿南委員の御指摘のように、行政政治的中立性ということの意味がちょっと私にもわかりかねるわけでありますが、要は、今申し上げたような、国家公務員法におきまして人事その他につきましての政治的中立性を保持していくということは法的にも確保されておるわけでございますから、そういった意味でこれが確認をされるということであれば、いわゆる行政ということの中で、大臣を含めまして政治がこれに対して影響力を行使するということまで否定をしますと、議院内閣制におけるこの政治のあり方というものの根本にもかかわってくることではないかという気がいたしております。  それから、戦後五十年を経まして、これまで有効に機能してきたシステム、意思決定の方向が時代に合わなくなりまして、そしてこれが足かせになっておることが少なくない。そうした意味で、この第三の改革という意味で政治行政経済すべての分野にわたる抜本的な構造改革が必要であるとしてきたところでありまして、本来行政のあり方、システムについては主権者たる国民の意思をいかに的確かつ迅速に行為に反映させるかという点ですぐれて政治の責任でありまして、また実際の行政の進め方についても政治の的確な指導性が問われておるものであります。  そうした考え方に立ち、私は、橋本前内閣が進められてきた中央省庁等改革をさらに具体化すべく政治主導で進めてきておるところでございまして、そういった意味におきまして、官僚のみにすべての責任を負わせてきたのではないか、またそういうシステムになるのではないかということでありますが、究極には政治の責任になるわけでありまして、でありまするがゆえに、今回、政治優位という立場をはっきりさせることによりまして、その責任の所在を明らかにしていくということが今回の改革の大きな目的だろうと思っております。  それから、若い公務員諸君のことにつきましてもお触れでございます。  私も、公務員の研修の場におきましてごあいさつ申し上げさせていただきましたが、役所をこれから背負って立つ方々には、当然のことながらモラルとモラールというものが実に大切なことであって、モラルをどう訳すかわかりませんが、いわゆる規律性のあるきちんとした責任、同時に、また国家を背負って立つという気概、すなわち士気というものがなければならない。  そういった意味で、そうした気持ちを失って官僚としての責任を果たしていくことができないということを考えれば、そういった気持ちを持って身分が保証されておる公務員としての責任をきちんと守っていかなきゃならぬ。これをいたずらに抑制し、あるいはまた士気を失わせるようなことがあってはならないと思いますが、それは最終的には政治の責任に帰する問題ではないかなという感じがいたしております。  そういった意味で、今回この法律を制定する機会にいろいろの御意見を今拝聴いたしておるわけでございますけれども、そうした考え方を十分承りながら新しい制度を確立し、その中で国家の行政の大きな役割を担う方々が元気を持ってその責任に当たれるようにしていくことができると、こう考えて今回この法律の改正をお願いしておる、こう御理解いただきたいと思います。
  19. 阿南一成

    阿南一成君 さらに、総理にお伺いいたします。  政府委員制度の廃止及び副大臣制の導入についてであります。  先般、国会に政府委員制度の廃止及び副大臣等の設置等に関する法律案提出をされました。この法律案は国会における政府委員制度の廃止、当面の政務次官の増員、政務次官廃止後の副大臣、政務官の設置等をその内容とし、国会における審議の活性化、行政機関における政治主導の政策決定システムの確立を目的としたものであると理解をいたしております。  そこで第一点目でありますが、確かに国会を政治家同士の活発な議論の場にするべきだという意見はもっともであります。また、行政機関の政策決定過程に国民の信託を受けた政治家がコミットすることも当然のことであろうかと思います。しかしながら、何ゆえに政府委員の存在が国会審議の活性化を阻害するものとなるのか、私には理解ができません。  そもそも、国会の主役は我々政治家であり、議論の活性化もひとえに主役である政治家の力量にかかっていると私は考えております。また、国権の最高機関である国会の審議から行政の持つ専門知識を全面的に排除することが、本当に国家国民に資することになるのか、甚だ疑問であります。政治家同士の通り一遍の議論のための議論になりはしないか、問題の本質を素通りすることにならないか、よほど政治家が専門ごとに振り分けられその分野に精通する必要があると思うのであります。  第二点目でありますが、副大臣、政務官の導入について、行政政治家主導にすることを目指しているということですが、本当に現行の制度のままでは各大臣、政務次官が各省を十分に統率することがなぜできないのか、私には理解できません。  また、政治だけが民意を背負える、政治だけが正しい政策立案を行えると過信することもこれまた余りに一面的であると私は考えております。  第三次行革審最終答申においても、「政治の果たすべき役割は、国益全体を見通した政策の大局的な方向付けである。行政は、その選択に沿って、具体的施策を効率的・効果的に構築しなければならない。」とされる一方、「新しい時代の行政に要請されているものは、政治からの中立性を保ちながら、制度・施策の安定的・整合的運営を確保していくことである。」とされております。行政の立案能力に信頼を置かず、政治ですべてを行おうとすることに対する戒めの言葉として私は聞いております。  第三点目でありますが、今回の省庁再編関連法案によれば、大臣以外に各省庁に副大臣二十三名、政務官二十七名が置かれるとのことでありまするが、これは現行の政務次官二十四名に比して二倍以上の数の政治家が行政組織に置かれることとなります。このように、多くの政治家が行政の政策決定過程に入ってくることは、行政の中立性という重要な性質が侵され、公務員の政党化、派閥化が進む可能性をはらんでいると私は見るが、いかがでしょうか。  第四点目ですが、一般論として、行政機関の政策決定に多くの政治家が入ってくることについてどのような問題が起こると考えておられますでしょうか。  かつて私の先輩は、選挙民は神様である、政治家に道徳を求めることは八百屋で魚を求めるに等しいと喝破したという話を聞いたことがあります。しかし、それは昔々の話であって、現在の政治家のモラルは国民意識の高まりとともに極めて高いものになってきておると考えております。  それはそれとして、副大臣・政務官制の導入が東京地検特捜部のお世話になるようなことのないようにしっかりと制度的にも手を打っておく必要があると私は考えております。そしてさらに、行政の中立性という観点にも十分な気配りが必要であると考えております。  第一点目、政府委員の存在が何ゆえに国会審議の活性化を阻害するものなのか。国会の主役は我々政治家であり、議論の活性化もひとえに主役である我々政治家の力量にかかっているのではないのか。国権の最高機関である国会の審議から行政の持つ専門知識を全面的に排除することが本当に国家国民に資することになるのか。  第二点目、第三次行革審答申は行政の立案能力に信頼を置かず政治ですべてを行おうとすることに対する戒めの言葉として聞くべきであると思うがどうか。  第三点目、多くの政治家が行政の政策決定過程に入ってくることは、行政の中立性という重要な性質が侵され、公務員の政党化、派閥化が進む可能性をはらんでいると思うがどうか。  第四点目、副大臣・政務官制の導入によって政策決定のプロセスはどのように変わると考えておられるか。そして、その際、政治家として心すべきことは何か。  以上四点についてお伺いをいたしたいと思います。
  20. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、政府委員制度の廃止の問題でありますが、これは国会における論議を与野党議員同士による政策論を中心にすることにより国会の権威を高め、国民に直結した政治に転換し、迅速な政策決定を行うことを目指したものでございます。  現在、与野党間の真摯な議論の結果、先般、衆議院に政策要綱が提出されたと承知をいたしておりまして、早期の法案成立を期待いたしておるところでございます。  また、委員会が技術的、専門的質問について政府職員を政府参考人として招致することとされており、円滑な国会審議の確保にも配慮がなされていると考えております。  また、内閣は、国会において内閣総理大臣その他の国務大臣を補佐するため、両議院の議長の承認を得て人事院総裁内閣法局長官、公正取引委員会委員長及び公害等調整委員会委員長政府特別補佐人として任命することができるものとされておるところでございます。  次に、第三次行革審最終答申につきまして御指摘がございました。  政治及び行政がそれぞれの果たすべき役割について述べておりますが、特に政治の役割については、二十一世紀に向けた行政改革行政だけで責任を担うべきものでなく、行政の大きなかじ取りを行うことは政治の責任であるとの認識のもとで、国会を議員による政策論議を行う場へ脱却すること、政務次官を副大臣的に活用し国会で答弁させることを提言しておりまして、このような問題意識は今般の副大臣制の導入と合致するものと認識をいたしております。  副大臣等の設置と行政の中立性に関しましては、日本国憲法は議院内閣制を採用し、内閣総理大臣は国会議員から国会が指名すること、国務大臣の半数は国会議員でなければならないことを定めているところであり、副大臣等はこの議院内閣制のもとで行政における政治主導の政策判断が迅速に行われるよう内閣により任命され、大臣の政治的な政策判断を助けるものであります。したがって、副大臣等の設置は、行政において政治主導の政策判断が迅速に行われるとの議院内閣制の趣旨に合致するものと考えております。  また、一般職の国家公務員については、全体の奉仕者として中立性、公正性を確保することが重要であり、これを担保するため国家公務員法は、成績主義の原則に基づく採用、昇任等身分保障、一定の政治的行為の制限などの仕組みを定めているところであります。今後とも、一般職の国家公務員については、これらの仕組みのもとで公務員人事の政治的中立性を保持していくことが重要であると考えております。  次に、副大臣、政務官の導入の問題でございますが、これは大臣の政治的な政策判断を補佐する機能を強化するため導入するものであり、副大臣は政策及び企画をつかさどることとされて、大臣の命を受け政策及び企画について、いわゆるラインとして大臣に次ぐ立場から関係部局を指揮監督し、必要な政策判断を行うこととなり、また政務官は、特定の政策及び企画に参画することとされて、大臣の指示に基づき特定の政策及び企画について、いわゆるスタッフとして大臣に対し助言を行い、大臣を助けることとなります。  副大臣等はそれぞれの立場で大臣を助けることにより、大くくり編成される各省において政治主導の政策判断が迅速に行われるようになるわけであります。副大臣等にはこうした重要な役割を求められるわけであり、国家と国民のために真に大局的な判断ができる見識を持ち、また同時に専門的知識と経験を有する各省の職員の能力を最大限引き出していく指導力を持つことが必要となると考えております。  そこで、委員がいろいろの問題点といいますか、危惧される点について御指摘がありました。  今回のことはまさに大改革でございまして、従来の内閣議会のあり方を初め、また行政の中における内閣の強化の問題を含めまして、また各大臣がそれぞれの役所における指導性を発揮する意味におきまして、副大臣なり政務官というものがそれに対してライン並びにスタッフとして協力をしながら、それぞれの役所を指揮監督していくという形のものをしていくということでございます。  そういう意味からいいますと、今回これが通過いたした場合に、将来どのようになってまいるかということにつきましては、長々と先ほど申し上げた趣旨によって行うことでありますが、これは予見しがたいことも正直申し上げてあり得るだろうと思います。議員が御指摘されましたように、いろいろそれぞれ過去における不祥事その他の問題についての御指摘もありました。要は、問題はそれぞれの新しい制度のもとにおいて、その任に当たる方々が改めてその責任を全うするための見識、そして知識、そしてまた指導性、さらにまた倫理性を持って対処するということがなければこれは成り得ないわけでございまして、大改革を実行するということの中には、議員がいろいろと御指摘をされたような点につきましても、当然のことながらこれを実行する段階におきましてはすべてこの点について改めて心して対処しなければならないということであります。  私は、この新しい制度のもとにおきましては、政治がその責任を果たすということは、強いて言えば国民皆さんに信頼をされる政治が行われる、その中には、危惧されるような諸点についてはこれを絶対に排除しながら対処するという中にこの制度が生きてくるものと確信をしておる次第でございます。
  21. 阿南一成

    阿南一成君 一年生の議員に大変総理から御丁寧にお答えいただき、ありがとうございました。時間でありますので、これで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  22. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 自由民主党の清水嘉与子でございます。  明治維新、戦後の改革に続く大改革と言われます今期の改正法案審議に、短い時間でありましても参加できますこと、大変幸せに思っているところでございます。  まず、総理にお伺いしたいと思います。  小渕総理、現下の厳しい雇用情勢の中で、七十万人を上回る緊急雇用対策、産業競争力強化対策をまとめられて今国会に法案提出されるというふうに伺っているわけでございまして、問題を先送りせずに次々に手を打ってこられる総理の姿勢に敬意を表したいと思います。  ところで、民間の雇用支援のために緊急雇用創出特別基金を積み増しして活用を図るなど、こういった即効性の高い政策ももちろんあるわけでございますけれども、国、地方公共団体にも雇用機会の拡大が求められるということになっていると思います。そして、現実には二年間、限定された期間、その間の雇用形態あるいは二年後の受け入れというようなことで、現場に多少戸惑いもあるように伺っているところでございます。  ただ、二年後には中央省庁改革関連法案が効力を発揮いたしまして、公務員のスリム化を進めなければいけないという厳しい情勢のもとではありますけれども、一方において思い切った官業の廃止、民営化あるいは民間委託、そういった官から民への業務のシフトが進む。そういうことによりまして、従来、官がやってきた仕事、その分野に非常に大きな雇用の機会を生み出すこともできるでしょうし、あるいはあらゆる分野の規制緩和を進めることによりまして民間の活力をもっと増すことができることになるのじゃないかというふうに思っているわけでございます。  ただ、一般国民から見まして、この法案が単に中央省庁の機構改革のような誤解を受けやすい点がございます。先ほど阿南先生の御質問にもございましたけれども、この景気の不景気なときに何でこんなことに精力をつぎ込むのかというような御指摘も多少ございますようですけれども、しかしやはり私は、この法案が成立することが日本経済社会に及ぼす影響は大きいのじゃないかというふうに考えているわけでございます。  今回の政府の緊急措置の関連で、この中央省庁改革関連法案の意義をどう考えていらっしゃるのか、まず総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  23. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 言うまでもありませんが、今回の中央省庁等改革は、内外の社会経済情勢の変化を踏まえ、国が果たすべき役割を重点的に担うことといたしまして、それを有効に遂行するにふさわしい簡素、効率的な行政組織にすることを目的にするものであります。民営化、民間委託等の推進は、民間における雇用の創出にも貢献するものであると考えております。  先ほど阿南先生の冒頭のお尋ねについて、実は私出席できませんでしたが、一つだけ、これだけをして次にその上に行くという考え方もわからないではありません。やはり前内閣の六大改革、教育改革はある意味では別の観点から考えなけりゃならぬかと思いますけれども、他の五つの改革というものは同時並行的に取り組まなければならない課題で、あえて言えば五つに分ける必要もないぐらいの問題であろうかなと思いますけれども、強いて言えば、行政改革、財政改革、その他社会保障改革等、それぞれに極めて喫緊の課題として取り組んできておるわけでございます。  そういう意味で、行政改革につきましては、時あたかも二〇〇一年というときを迎えるわけでございまして、その前にぜひ明治以来の改革として大きなこの行政機構改革というものをきちんと仕上げて対応しなければならない。時期的に言いますれば二〇〇一年一月一日までには、なぜその日かという御議論もあろうかと思いますけれども、やはり新しい世紀を迎えて日本行政のあり方をこの際きちんと定めて、そしてそれをもとにしてもろもろの問題もまた対処していくという原点の問題と考えておりまして、ぜひそういう意味で、今日この時点で御審議をお願いいたしておる、こういうことだろうと思います。
  24. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 それでは次に、国家公務員の定員削減の問題、太田総務庁長官にお伺いしたいと思います。  この問題は随分衆議院におきましても審議されておりまして、いろいろ大臣の御答弁も読ませていただきました。そこで、ちょっと確認させていただきたいんですけれども、政府が四月に発表されました「中央省庁等改革推進に関する方針」によりますと、国の行政機関の職員の定数については、十年間で少なくとも十分の一の削減を行うための新たな計画をつくる。それは、平成十二年十二月三十一日の定員をもとに十三年一月一日から二十二年度の間に実施するということで、府省編成前の適切な時期にこの計画は策定する。さらに、平成十二年度採用分から毎年新規採用を減らしていく。そして、公務員数を十年間で二五%削減するというふうになっているわけでございます。  そこで、定員削減の対象となりますのは、十一年度末の定員で言いますと百十四万三千人の国家公務員のうち非現業、現業職員八十四万六千人。ただし、郵政事業の三十万はやがて定員の網から外れるということで、実際には十年一〇%の削減計画を立てる対象というのは五十四万六千人だと。仮にこれが平成十二年末の定員ということになりますと、この一〇%を十年間の削減目標として、しかるべきときに削減計画をつくるということになるわけでございますね、それが基本法考え方。  また、現段階で将来独立行政法人に移行するということを予定されているのが七万三千人。そしてさらに、これから独立行政法人化を進めることによって五十四万六千人の二五%、十三万六千五百人。ここまで削減しなければならないというのが閣議決定で決まっている、こういう理解でよろしゅうございますか。  そしてまた、続けて御質問申し上げたいわけですけれども、もし間違ったらぜひ御訂正をいただきたいわけですが、そういうことになりますと、いずれにしても削減をしなきゃいけないということが非常に頭の中に強く残るわけでございますけれども、従来の四十三年からの定員削減計画をずっと拝見いたしておりますと、計画に対しては確かに削減の目標はほぼ達成されているというのはわかりますけれども、期間中の増員というのも結構あるわけです。そして、むしろ削減よりも増員数が多かった時期もあるわけでございまして、今回は一体この増員というのがどうなっているのか。実質増員なんということもあり得るのかどうか、その辺も含めて御回答いただきたいと思います。
  25. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 国家公務員の二五%削減につきましては、まず、今、清水委員おっしゃいましたように、基本法の十年一〇%ということは、独立行政法人化などがどうあれ、ともかくこの十年一〇%は法律によって達成しなければいけない目標になっております。そしてさらに、自自連立の合意によりまして二五%の削減、これも純減を目指すということになっておりますので、今おっしゃいましたように、増が起きるということはとても考えられないわけでございます。純減を目指して頑張る、努力をするということになっております。  そこで、二五%と今言う十年一〇%の間のギャップをどうするのかということでありますけれども、これが、例えば独立行政法人化でありますとかあるいは省庁の再編成をいたしまして局や課の数を減らすことになっておりますので、そのことや、あるいは政策目的の審議会は六分の一にすることになっておりますので、そういうことによって相当の定員の削減が可能であろうかと思っております。さまざまな改革を通じてその二五%と一〇%のギャップを埋めるということでございます。  そして、この十年一〇%につきましては、例えば途中で数万人の独立行政法人に行かれる方々が出れば、確かにそのことによって、総定員法で言う今おっしゃった五十四万八千人か六千人だと思いますけれども、その二五%というものが達成されるということは途中であり得るわけですけれども、そうであったとしても基本法の十年一〇%に引き続き制約をされるわけでございます。したがって、厳に新規採用については抑制せざるを得ないということになるわけでございます。
  26. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 これまでも非常に厳しい削減計画があったせいだと思います。現在の省庁の機構、これもスクラップ・アンド・ビルドの原則で貫かれた結果だと思います。こう見てみますと、かなり省庁別の局だとか課の人員配置に差がございますよね。  例えば、私が調べた範囲で、間違っているかもしれません。運輸省の航空局は五百四十五人で十七課から成っている。法務省の人権擁護局は十九人、三課で成っている。また、課だけのレベルで見ましても、警察庁の刑事局鑑識課は二百五十四人、法務省の民事局第五課三人、保護局の恩赦課三人。恐らくこれは業務量に見合った定数で配置されているんだろうとは思いますけれども、中央省庁の局長あるいは課長が掌握すべき職員の適正数というのもやっぱりあるのかなと思って、これだけ見るとちょっと奇異な感じもしないでもないわけでございます。  今回の改革でまた国土交通省のような巨大な省庁もできるわけでございまして、局の数も百二十八から九十六に、それから課の数も千二百から千程度にというふうに数だけは制約されたわけでございますけれども、いずれにしても業務が本当にうまくできるように配分されるのかということが大変心配なわけでございます。  そこで、どのような考え方でこの新省庁の職員の配置基準が考えられているのか、あるいは業務に見合った職員の適正配置というのは見直す仕掛けができているのかどうか、その辺をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  27. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 先生からただいま、現状、局によって非常に人数が多いところ少ないところがあるとおっしゃいまして、そのとおりでございます。  基本的に局の規模がどうあるべきかということは、その業務の内容に応じて局長の管理の適正なスパンということでございまして、非常に政策志向的なものであれば人数が少ないということもございますし、実務的なことであれば多いということもございます。  今回、新省になりまして、省、いわゆる内部組織の編成につきましては、現在、この法案をお通しいただけば早速にもその作業に移りたいと思います。そのときは、当然でございますが、基本法にございます、機能を強化すべきところは強化する、機能を縮小すべきところは縮小する、あるいは今回所掌事務を一部移行するところがございますので、そういうものを勘案して適正な組織内容、人員内容にしていきたいと考えております。
  28. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございます。  いずれにいたしましても大変厳しい状況のようでございますけれども、公務員が本当に生き生きと働けるようにするために公務員の制度の問題がまたあろうかと思います。  先週、人事院が公表されました国家公務員の白書、年次報告書によりますと、現に公務員の不祥事件が一章をつくるような状況になっております。特に各省の高級官僚の不祥事が、採用試験別の昇進ルートの固定化など閉鎖的な人事管理制度によって誤った特権意識を持たせてしまった結果ではないかというような総括もされているわけでございまして、また公務員制度調査会の答申におきましても、硬直化した公務員制度改革の具体的な方針も示されているところでございます。  こうした定員削減が進行する一方で、採用が制限されてしまう公務員でございます。ぜひこの行政機構が大きく変わろうとしている中で優秀な人をどうやってリクルートするのかということが大きな問題だし、またそれを本当に力が発揮できるような体制をいかにつくるのかという人事管理の問題が大きな問題かと思います。  そこで、人事院にお出ましいただいておりますけれども、いろいろと試験制度につきまして工夫もされていらっしゃると思いますし、また有能な人材の登用の面につきましてもいろいろと工夫をしていらっしゃるというふうに伺っておりますけれども、これからの新しい機構改革に合わせた人事改革のあり方につきまして御説明をいただきたいと思います。
  29. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) お答えします。  おっしゃいますように、これからの行政というのは非常に複雑、高度化してまいりますから、それに対応し得る公務員というものを採用し、これを養成していかなきゃならないということでございます。したがいまして、研修を充実することから始めまして、採用の段階におきましても多様な人材が採用できるように工夫していこうということで、いろいろな努力をいたしております。  そのうち二つを御報告申し上げますと、一つは、人物試験というのを充実いたしまして、柔軟な発想あるいはまた積極性というものを持っておる職員というものを採用していこうじゃないかということで、この人物試験の得点化ということを進めております。  第二番目に、専門的な知識というのは確かに十分持っておるけれども、とにかく幅広い視野から物を考える幹部公務員としての基礎的な素養というものを持っておる人間を選んでいかなきゃならないということで、試験区分の大くくり化というものも行ってまいりたいというふうに考えております。  なお、非常に変化が激しい時代でございますので、公務員世界の中で養成した人間だけでは対応できないこともあるというので、私たちは昨年から中途採用のシステムというものを整備いたしまして、この中途採用に基づきましてそれぞれの省庁で現在対応しなければならない問題に適切に対応できる職員を採用するようにいたしております。そのシステムに基づいてかなりの人数の方が金融監督庁とかあるいはまた公正取引委員会とか通産省等に採用されております。  いろいろな方の意見を聞きながら十分努めてまいらなきゃならないというふうに思います。
  30. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 人事院はそうした試験をし、そして人材登用のいろいろな基本的な考え方を進めるわけですけれども、具体的にそれを採用し、そして成長させていくのは各省でもありますし、総務庁のお考え方が非常に大きいと思いますが、総務庁長官のお話も伺いたいと思います。
  31. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 「中央省庁等改革推進に関する方針」というものを同時にお手元にもお配りしておりますけれども、そこでは「Ⅱ・Ⅲ種試験採用者等について、各省庁の実情にあった選抜方法を整備し、積極的な登用を進める。」というふうに定めております。また、平成十一年度における人事管理運営方針、総務庁の人事局が所管をしておりますけれども、人事管理運営方針におきましては、能力と意欲のある優秀な職員は、採用試験区分にとらわれることなく、昇進の節目等において将来の行政の中核的要員の候補として選抜し、計画的に育成することといたしたところでございます。  そのようなことで、有為な人材は採用区分にかかわらず抜てきをしていく、そういう土壌にいたしたいと考えております。
  32. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今までのようにⅠ種の試験を受けた人たちが特別なルートでさっと行くというような形から、またいろんな方々に、Ⅱ種、Ⅲ種の試験を受けた方にも門戸が開かれると。ぜひ女性にも目を開いていただきたいというふうに思います。  また、例えば研究者とか医者とか看護婦など、こういった専門家の採用をする場合には、これは各省がそれぞれ必要に応じて採用していると思います。これは閉鎖的な採用の仕方だというふうに思うんですけれども、最近では看護大学がたくさん出てまいりまして、大学の先生あたりからもっとオープンに自分たちの学生たちが公務員試験を受けられるようにしてほしいというような要望も出てきているところでございますので、ぜひ広くいろんなところから有能な人材を集められるようなことをお考えいただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  次に、国立病院と療養所の独立行政法人化の問題についてお伺いしたいと思います。  この国立病院・療養所につきましては、高度かつ専門的な医療センターあるいはハンセン病療養所を除き独立行政法人化の対象にするという方針が示されて、そのとおりに進んでいるわけでございますけれども、しかしその移行の時期がほかのところと少しおくれて平成十六年というふうになっているわけでございます。恐らくこれは国立病院・療養所の再編成計画との関連だというふうに思いますけれども、それはどうなんでしょうか。  また、その再編成計画というのも、実際には計画がありましても職員とか地元住民の抵抗があってなかなか計画が予定どおり進んでいないというふうに聞いているわけですけれども、現段階での再編成計画の進捗状況、またさらに今後どう進めていくのか、そのあたりも含めて御答弁いただきたいと思います。
  33. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 国立病院と療養所につきましては、今御指摘のように、閣議決定された基本計画におきまして、平成十六年度に独立行政法人に移行することとされております。  なぜそのようにおくれるかという点でありますが、これは移行に十分な準備期間が必要であるということでございまして、具体的には、幾つかの理由がありますが、一つは、企業会計制度を導入いたしまして財務会計のシステムでありますとかあるいは管理会計システムの構築に時間がかなりかかるということ。  それから二番目といたしましては、国立病院の土地、建物等資産の確定作業を行う必要がございますが、御承知のように旧陸海軍病院からの承継が非常に多うございまして、土地、建物の範囲、面積が不確定な施設が非常に多くて権利確定が非常に困難な状況にありますので、これらをクリアしていきたいというのが第二の理由。  それから第三には、今御指摘のように国の責任でこの再編成を実施する必要がありまして、独立行政法人への移行までに、これは昭和六十一年に二百三十九の施設を百五十三までしようということですから、かなりな数の整理統合、移譲が行われるわけで、八十六カ所ということですが、今まで達成しておるのは二十六でございまして、私どもとしては、そのうちかなりの部分を十二年度中にやりたい。そして残りの計画変更によって追加された部分、十二施設くらいございますが、これは十六年の独立行政法人までに完成をしたい。  そのようないろいろの事情がございまして、私どもとしてはできる限り早く独立行政法人化したいわけでありますが、物理的ないろいろの諸事情によってそのようになっておることを御理解いただきたいと思います。  それから再編の問題でありますが、これは六十一年度に二百三十九施設がございましたが、ただいま申しましたように、当初の計画では七十四施設を減少して百六十五とする計画を策定、推進してまいりましたが、現時点では、そのうち二十六施設が先ほど申しましたように整理をされておりまして、さらにこれを加速化していかなければいけない。  それから、ことしの三月に再編計画の見直しを行いまして、独立行政法人は政策医療を担うということでくくっておりますので、政策医療を担い得ないような十二施設についてさらに統廃合、経営移譲あるいは廃止を推進することといたしまして、最終的にはただいま申しましたように百五十三になるわけでありますが、いろいろ地方公共団体あるいは医療機関との調整、医師会との調整等も必要でございまして、精力的に進めてまいりますが、独立行政法人への移行までには大体完了できるように今最大限の努力をしておる、こういう現状でございます。
  34. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 かつて医療とか看護の内容も国立病院といいますと日本の上位ランクにあったというふうに思います。しかし、戦後の新しい今の状況になりますと、他の施設から大分差をつけられているというのが本当のところ、正直なところなんです。  統廃合によりましてセンターができて充実する、あるいは国立医療機関としての存在感が出てくる、平成十三年には四年制の看護教育もスタートさせるというような厚生省の取り組みがございまして、大変希望が持てるわけでございますが、しかしそれは本当に一部でございまして、多くの施設はまだまだ予算の制約だとかあるいは慢性的な人員不足だとか、あるいはがんじがらめの服務規程、今のままでは働く職員が夢が持てなくなるんじゃないかということを心配していたわけです。  そういうことから、独立行政法人化することによって夢を持ちたいのですが、果たしてどう変わるのか、職員は大変心配もしているわけでございます。どんなメリットがあるのかということをぜひ大臣の方からお伺いしたいと思います。
  35. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 独立行政法人は、一般論といたしまして、事前関与、統制を極力廃止いたしまして事後チェックへ移行するということでございますから、自主性とか自立性を高めた弾力的な運営を期するというところに基本的な考え方がございます。  そこで、通則法でありますとかいろいろ諸種の方針に従いまして計画的に評価をする、それから透明度の高い効率的な運営の仕組みを導入するというようなことでございますが、具体的に申しますと、組織・人事管理面では、現在法令等によって画一的な統制がなされておりますけれども、独立行政法人化することによりまして、内部組織については独立法人の長の裁量で決定するというようにいたしますし、国家公務員の定員管理の対象外となるということがございます。そして財務会計面では、独立行政法人化に伴いまして現在の官庁会計から企業会計に転換するということでございまして、国から使途が限定されない運営費交付金等を交付されるということなどによりまして機動的、弾力的な運営が可能になると考えております。  私どもとしては、独立行政法人化に当たりましては、独立行政法人制度の特色を最大限に活用いたしまして、時代が要請する役割にふさわしい政策医療に特化してこの責めを果たすようにしていきたいということで、いろいろのメリットもかなり生ずるのではないかと思っております。
  36. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 国立医療機関というのは非常に希望者も多いですし、優秀な人材が集まっていることも事実だと思います。  しかし、力の発揮できる環境にないという不満を持っている職員が今おっしゃったようなメリットを本当に生かせるようにするために、何といっても運営費の交付金の額にもかかわりますし、さらに大切なのは、これまでのように国から本当にはしの上げおろしから細かいところまで指示があるんじゃなくて、職員みずからが改革に参加できるようなそういう仕組みをつくることが大事だというふうに思うわけです。  伺うところによりますと、一つ一つの施設に法人格を与えるのではなくて全体に法人格を与えるというふうなことでございますけれども、ぜひ個々の施設が独自性を発揮できるような仕組みにしていただきたいということをお願いしておきます。  最後になりました。総理にお伺いしたいんですけれども、中央省庁の改革というのは恐らくこれから地方自治体の改革にもつながっていくことだというふうに思います。そしてまた、国民生活にもプラスの影響が出てくるというふうに思っております。  しかしまた、国家公務員の問題としては、行政機関だけでなくて司法とか立法の改革にも国民関心は当然広がっているというふうに思います。  司法改革というのが小渕内閣において着手されることになりましたけれども、あらゆる分野で公務員の働き方の見直しが必要になるんじゃないかというふうに思っておりますので、三権の長の会というのがあるのかどうかわかりませんけれども、ぜひ総理からもそういった面でそういう問題意識を発信していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  37. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 公務員制度改革中央省庁等改革の一環として重要な課題でありまして、行政における国家公務員の人事管理については、去る四月二十七日に中央省庁等改革推進本部が決定をいたしました「中央省庁等改革推進に関する方針」において、具体的改革の方針、方策を国家公務員制度改革として盛り込んだところでございます。  そこで、清水委員指摘の他の分野における点についてでありますが、立法府、司法府における国家公務員につきましては、三権分立の原則のもと、それぞれにおいて人事管理が行われているところでありますが、立法府、司法府、行政府を問わず、国家公務員の人事管理については時代の変化に対応した適切なものとする必要があるという認識をいたしておるところでございます。
  38. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。
  39. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 民主党・新緑風会の高嶋でございます。  私は、地方分権一括法案を中心に、総理並びに自治大臣に御質問させていただきたいというふうに思っております。  まず、地方分権の基本認識について総理にお伺いをいたしたいというふうに思います。  私は、地方分権というのは国から地方へ権限と財源を大胆に移すことだ、ただそれだけではなしに、それを移すことによって地方公共団体あるいは地域が自主性や自立性を発揮する制度を実現させていくんだという、そこのところを大切にしなければならないというふうに思っているわけであります。  そういう観点からいうと、分権とは仕事の分権とお金の分権という二つの分権がまさに車の両輪にならなければならないんではないかというふうに思っているわけですが、しかし残念ながら、今回の法案に盛られている内容は仕事の分権が中心であって、言ってみればお金の分権については先送りされたということになっているわけであります。そういう観点からいえば、今回の改革というのは第一次分権というふうに位置づけても言い過ぎではないんではないかなというふうに思っております。  総理はよく、明治維新あるいは戦後改革に次ぐ第三の改革だ、そう言われておるわけでありますけれども、第三の改革と言われる分権改革からすると、今回の法案そのものは道半ばというふうに評価せざるを得ないんではないか。六月十五日でしたか、本委員会の総括質疑で菅川議員に総理は登山で何合目だというふうに聞かれて、何合目だというふうにお答えになりませんでしたけれども、しかし頂上を目指しているんだと、こういうふうに答えられました。そういう意味では総理も、道半ば、私と同じ考え方ではないかなというふうに思っているわけでございます。  その観点からいいますと、早急に国と地方の税体系を抜本的に見直すという、第二次分権というふうにネーミングをしていいかどうかわかりませんけれども、第二次分権が必要だというふうに思うんですが、総理の見解をお伺いいたしたいと思います。
  40. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 地方分権の進展に応じまして地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことは極めて重要でありまして、今回の地方分権一括法案におきましても、法定外普通税の許可制度を廃止し、国の同意を要する事前協議をすること、法定外目的税を創設することなど、地方団体の課税自主権の拡充を図ることといたしておることは御案内のとおりでございます。  地方分権推進計画におきましては、「国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図る。」とされておりまして、今後の地方税財源の充実確保については経済情勢の推移や税制の抜本的改革の方向等も見きわめつつ、総合的に検討すべきものであると考えております。  委員指摘のように、一次、二次ということはありませんで、この分権をまず進めていくという形の中で財源についての御指摘でございますので、今御答弁申し上げましたように、これを中長期的に充実確保していくという方向につきまして今後全力を挙げて努力をしていかなきゃならないことは、これは当然と考えております。
  41. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 第二次分権というネーミングではやらないけれども、しかし税財源についての充実の方向性という観点でさらに努力をしていきたい、そういう答弁をいただきました。若干安心をさせていただいたわけであります。  経済状況等を総合的に勘案しという言葉を使われましたけれども、ではいつその税財源の改革をやるかというのはこれから非常に重要なウエートを占めてくる、こういうふうに思うわけです。  そこで、まずこの問題について自治大臣に伺って、最後に総理にもお尋ねをいたしたいというふうに思います。  この財源問題のいつやるかという時期の問題について、ある程度推察できる発言が先日ございました。それは、六月十四日、参議院の本会議において宮澤大蔵大臣がこのように答弁をされています。「例えば我が国経済が仮に年率二%ぐらいな成長軌道に乗ったと判断されましたときには、一番にしなければならないのは、地方ばかりでなく国と地方の行財政の再配分、それをどうするかということを検討すること」でありますと、こういうふうに答弁をされているわけであります。  その前段に自治大臣とも調整してという答弁だったというふうに思いますが、再度自治大臣にこの宮澤大蔵大臣の答弁に対する考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  42. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) これはたびたび大蔵大臣からも御答弁申し上げ、また私からも同趣旨の御答弁を申し上げておるところでございます。  それは、今日の時点は経済がまことに異常な状況にある、したがってそういう意味で国の税収も地方の税収も極めて異常な状況の中にある、そういう点で何としても国対地方というとらえ方というよりも国全体の経済をどう立て直すか、その上で国税、地方税を通じた税収というものを根本的にどう立て直すかということは共通の課題であり、共通のテーマでもございます。  その時期というのは、少なくとも経済がある程度ノーマルな姿ということを確保できるという、そのことによって経済の上で安定した税収が成り立つわけでありますから、そういう中で国と地方の税源の見直し、再配分の問題等について突っ込んだ検討を加えなければいけない。また、それなしに不安定な状況の中で、便宜的にどのように再配分の議論をしたとしても構造的な再配分の仕事はできないのではないか、そういう考え方の中からそういうことを申し上げておるわけでございまして、そういう意味で、まず経済がある程度安定したというものを、抽象論でなくて数字ということをもって言うならば、大体実質で二%程度というものが一つの参考になるのではないか。したがって、そういうことを申し上げておることでございます。  この点で、地方税という世界で申し上げますと、国と地方の間の税源の見直しということは今申し上げたとおりでございますが、地方税自身の中でできる見直しについては、必ずしもそれまで全部地方税に関する税についての見直しを先送りするというのではなくて、地方税の中でできるべきところは当然その仕事はしていかなければならないことである。特に、事業税等について今政府税調においても御議論いただいておるところでもございますし、もちろんこれらについても経済状況等ということをも十分念頭に置きながら、どう対応するかということは検討していかなければならぬと思いますが、今お尋ねの国税との関係で言えば、宮澤大蔵大臣の御答弁の御趣旨は全く私も同じような思いでございます。
  43. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 ありがとうございました。大蔵大臣の答弁と同じだということをお聞きして若干安心をいたしました。  そこで、総理お尋ねをいたします。  総理、今、地方自治体の関係者、もう地方財政が非常に厳しいと今大臣も言われますけれども、そういう中で仕事だけをもらっても大変だと、そういう苦悩というのはみんな持っているわけですね。しかし、分権推進というのは地方の自主性、自立性を高めるということですから、当然のこととして、金が来なくてもやっていかなければならないという大変な努力を今されているわけでありますけれども、そういう観点からいうと、地方六団体の皆さん方も地方の関係者も、財源移譲に非常に大きな期待を寄せられているというふうに思っております。  これは土曜日の朝日新聞の「省庁再編・地方分権 私はこうみる」というところのインタビュー記事であります。ここで静岡の石川知事はこういうふうに言っておられます。地方行政に携わっている者からすると、許認可制度に対する関心は二、三割だ、今度の仕事の分権についての関心は二、三割なんだ、財源には七、八割のウエートがあるんだ、その意味でこれが実現しないとうらみが残るという、表題も「「財源移譲なし」にうらみ」と、こういうふうになっていますが、そういう言い方をされています。もう一人、元内閣官房副長官の石原信雄さんは最後にどう言っておられるかというと、地方税財源の改革はほとんどされていない、大きな宿題を残したままだ、こういう表現を使われているわけであります。  小渕総理、どうでしょう。これだけ大きな分権改革の今回の法案は二、三割程度、これは菅川議員も十五日のときに二、三合目ではないか、こういう評価をされました。私もそう思います。そういう観点からいうと、第三の改革というふうに位置づけられる以上、ぜひ小渕総理の手で後の七合目を一気に登っていただくということが、さすが平成の大改革をなし遂げた小渕総理ということで、後世に残るんではないかな、こういうふうに思うのでありますけれども、早急にこの税財源の移譲について検討して実現をしていくという、そういう方向での決意をお伺いいたしたいと思います。
  44. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 地方税財源の充実確保につきましては、今後、経済の状況や国、地方の財政状況等を踏まえるとともに、将来の税制の抜本的改革の方向も見きわめつつ取り組んでいくべき重要な課題であると考えております。  今後とも、地方分権推進計画に沿って国庫補助負担金の積極的な整理合理化や事務権限の移譲などを推進し、地方税、地方交付税等の必要な地方一般財源の確保に努めるとともに、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら地方税の充実確保を図るべきと考えております。  今、高嶋委員お示しいただきました新聞の記事につきましては、私もそれを拝見いたしまして、今、委員が線を引いたところぐらいのところは線を引いておきましたから承知をしております。  しかも、石原さんにしろ石川さんにしろ、それこそ地方自治の真っただ中で御苦労されてきた方でございますし、石原さんは私が官房長官のときの副長官でございまして、そういう意味で、非常にいつもその言たるやよしということで、私はその御意見を拝聴するにやぶさかでないとは思っております。  ただ、先ほど来大蔵大臣の御答弁、また今、自治大臣から御答弁いたしましたように、日本経済全体が極めて疲弊しておる段階で、経済再生内閣、すなわち税収が増加をして、その上でいかに中央、地方の税源を配分するかという問題に帰着する問題でありまして、今、全力を挙げて経済再生を願っておるわけでございます。そうでないと、例えば国税三税における交付税の割合等につきましても、全体が法人税につきましても所得税につきましてもお許しをいただいて税率を引き下げておるというような中で、しかも経済がなかなか厳しい状況の中でのことでございます。  しかし、おっしゃられますように、地方は地方として実際分権をして立派な仕事をしていくためには財源がなきゃならない。権限、財源、人間とよく言われますが、まさにこれが十分達成されなきゃならぬという認識は常にいたしながら対処いたしていきたいと思っております。  今、御意見を拝聴いたしまして、ぜひ地方が立派な、分権の時代にふさわしい仕事が住民のために達成できるような税源というものを考えていくために最善を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  45. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 力強い決意をお聞きしました。ただ、時期がまだ特定をされておりませんが、これは経済状況等もあるでしょう。状況によれば成長率がことしにでも二%を突破するような状況も、小渕総理経済的なリーダーシップが功を奏すということもございますから、そういうことも前提にして、ぜひ総理の方からこの準備を始めろ、こういうことについては自治省を初め大蔵省、各省庁に御指示をいただきたいというふうに思っております。  次に参ります。  今回の最大の焦点は、先ほど申し上げました機関委任事務の廃止、それに伴う法定受託事務と自治事務に区分をしたということ、そしてそれらに対して国がどう関与をするかという問題、ここが最大の焦点だというふうに思っております。  そこで、これらの点を集中的に質問させていただきたいというふうに思います。  まず、自治大臣にお聞きをいたしますが、衆議院の審議で、国が法定受託事務の領域を広げようとしているのではないかという、そういう危惧する意見が多く出されたというふうに聞いております。そのこともあってか、衆議院において法定受託事務を限定していく方向で附則修正が加えられたこと、これはもう参議院の私どもも知っております。この点については、私どもも一応評価をしたいというふうに思っておるわけであります。  さらに、本委員会で修正案提出者の自民党の理事の方が、「地方分権の趣旨にかんがみれば、法定受託事務は極力限定すべきであると思料されます。」と、こういうふうに提案をされたわけであります。  さらに、附則修正の関係については次のように提案をされています。「第一号法定受託事務については、できる限り新たに設けることのないようにする」、「地方分権推進する観点から検討を加え、適宜、適切な見直しを行うものとする。」と、こういうふうに修正したということを言われました。  自治大臣として、この修正の趣旨にかんがみて、法定受託事務を今後どう縮小して、さらにまた新設しないようにどのような限定措置をとられようとしているのか、お聞きしたいと思います。
  46. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 修正の趣旨を踏まえてどう措置をするかということでございますが、それに先立ちまして若干この修正の背景について、あるいは法定受託事務を今後ふやそうとしているんではないかという懸念があったのではないかという指摘があったのですが、私どもは必ずしもそういうことではなかったように実は感じております。  若干誤解があったことも事実なので、大変恐縮ですが一言だけつけ加えさせていただきたいと思うんですが、それはいわゆる勧告の段階、それから計画の段階、法案の段階で法定受託事務の割合がふえたんではないかといういろんな話がございました。その点は、率直に言って、結論からいえば勧告の線をほとんど変えておりません。ただ、数え方の基準に若干誤差があったということは事実です。  都道府県の事務でいいますと、現在、この機関委任事務が都道府県の事務の七割から八割あるわけです。それが結果において、今回の作業によりまして法定受託事務というのは大体三割程度になったということですから、そういう意味で大幅に前進したということは事実だと我々は認識いたしております。市町村においては、機関委任事務が大体三、四割であったものが結果において一五%程度ということになったわけでございますから、機関委任事務の廃止に伴って大幅に法定受託事務も減ってきたんだということだけは客観的な姿としてぜひ御理解をいただきたい。このことは衆議院でもるる申し上げたところでございます。  長くなって恐縮ですが、その上で、なぜこういう修正がなされたかというと、今後いろんな法律がつくられていくような場合に、結果において法定受託事務、どんどんまたそっちの方がふえていくんではないかという懸念がある、したがって今後それをどうやってふやさないようにするか、そのチェックをどうするんだと。それから、現在この作業において法定受託事務とされているものであっても、なおそれを減らすような、自治事務に移しかえていくような努力をしなさいと、その趣旨でこの修正が加えられたものであるというふうに認識いたしております。  いずれにしても、将来にわたってこの法定受託事務を創設するということは厳に抑制されるべきものであると考えておりますし、この八項目にわたるいわゆるメルクマール、基準でありますが、この地方分権推進計画、これは閣議決定でありますが、法定受託事務にするか自治事務にするかという、これから法律をつくるに当たって政府部内における非常に厳しいそういう意味での規制基準ということでありますが、これは当然今後においても厳しく運用していくことになるわけですし、また法定受託事務にするかしないかは、まず国会におけるその新規立法の際に十分な審議チェックを受けなければならないテーマでもある、こういう認識をいたしております。  いずれにしても、冒頭申し上げましたように、今回の作業で法定受託事務というふうに区分されたものであっても、できるだけこれからの経済社会情勢の推移によって自治事務に移行させていくような見直しということは不断に行っていかなければならない、そういう趣旨から適宜、適切にという言葉で表現をされたことであるというふうに認識をいたしております。
  47. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 大臣の方から、創設は将来にわたって厳に抑制されるべきものだということを前提にしながら、このメルクマールの基準を厳格に運営する、運用していきたい、あるいは国会の審議チェックも受けるんだ、こういう答弁をいただきました。私はそれはそれで非常にいいことだというふうに思っています。  ただ、この附則修正にある適宜、適切というその意味が、大臣が言われているような意味で解するのか、それとも衆議院段階で民主党の方から修正要求的に提起をいたしました、三年ごとに見直しをして、そして国会審議に諮ってはどうか、こういう提起をしているんですが、その辺からいえば、附則修正でこの適宜、適切な見直しを求められたわけですから、当然のこととしてそれを実のあるものにしていこうということにするならば、三年程度の期限を切って、引き続き法定受託事務として必要があるか否かを再度国会で審議するということをやられてはどうなんでしょうか。  これは提言として申し上げておきますので、コメントがあればお伺いしたいと思います。
  48. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 発想としては私も十分理解をいたしておるつもりでございます。  ただ、現実に今回御提案申し上げております内容は、御案内のとおり、かなりの精力と時日を費やしまして分権推進委員会の先生方が長時間かけてかなり突っ込んだ議論をして、その上でこういう形で取りまとめができたわけであります。  似たような作業を三年に一遍ずつやるということは、なかなかこれは大変だと。そういう点で、どういうふうにこの後フォローアップしていくか、そういった体制も考えなければならぬと思っています。中には国家統治の基本にかかわるような事務というのはそうしょっちゅう基準が変わるような性格のものでもないというようなこともこれあり、全体を網羅的、一律に全部見直しの対象にすべきかどうかについて少し勉強させてもらいたいと思っていますが、まさに不断に必要な見直しをしていかなきゃならぬということは、これは当然のことでありますので、私どもも、まさに適宜、適切にというのは単なる抽象的な表現なのではないんだ、言葉そのものの意義に即して誠意を持って対応してまいりたいというふうに考えております。
  49. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 ありがとうございました。  衆議院の答弁ではこの問題については政令等では勝手にやらないということをきちっと確認答弁をされているようですから、これ以上突っ込みませんが、いずれにしても、最終的に国会審議でチェックをさせていただくというそのお約束だけはお守りをいただきたいというふうに思っております。  次に、国と自治体の関与の問題に移らせていただきます。  今回の改革最大課題というのは、よく言われておりますけれども、国の自治体に対する関与の改革だと、そう言い切られる地方自治体関係者や、あるいは国政に携わる皆さん方や、さらには学者の皆さん方もそういうふうに言っておられます。私も、先ほどからも申し上げていますけれども、関与を縮小することによって自治体に自己責任を持たせていく、おんぶにだっこではなくて、もう自治体は自分で責任を持つんだ、そのことが自治体の自主性、自立性というものを高めることにとって非常に重要だというふうに思っているんですね。  そういう観点からいうと、分権委員会の中心的な役割を果たされてまいりました西尾勝教授の「地方分権推進の基本戦略」、これは「ぎょうせい」で出している本の中に書いておられるわけですけれども、こういうふうに言っておられます。自治体の自己決定権を制約している国、都道府県による広義の関与を縮小、廃止をして自己決定権を拡充しようというのがこの戦略である、こういうふうに説明をされているわけです。  野田自治大臣も新進党時代から非常に政策通で分権問題に詳しい。盟友の現在の自由党の小沢党首も、地方分権基本法でも設けて地方に責任を持たせて、国は国家危機等の部分だけやればいいんだ、こういうふうに言っておられます。  いずれにしても、地方に自立性を持たせるという観点で、野田自治大臣の西尾教授の考え方について認識を伺いたいと思います。
  50. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 結論においては全く同じ認識をいたしております。  御指摘の西尾先生の、地方分権推進する基本戦略は大きく二つあると。その中で、一つは事務権限の移譲であり、いま一つは広義の関与の縮減である、こういうふうにしておられます。事務権限の移譲というのは、まさに事務事業をどこでやるかということであって、そういう意味で、一般住民からいえば申請していく窓口が変わっていくわけですから、非常にわかりやすい。しかし、その内容の決定において、やはり国からのいろんな関与があるということであれば、自己決定権ということにおいては問題だろうと。  むしろそういう意味で、機関委任事務の廃止など国の関与そのものをなくしていくという意味で、国の関与の縮減、廃止ということが、自己決定権という意味では本質的により大事なテーマなんだという認識であるように書物にもお書きになっているわけでありまして、この点は委員からも今御指摘があったとおりです。  地方分権ということの本質的な問題は、みずからのことに関しての自己決定権と自己責任である、これが一番大事な原点であります。そういう点からいえば、まさに事務権限の話は利便性等々の問題、もちろん自主性、自立性にも関係するわけでありますが、より大事な問題は、今御指摘の部分が非常に大事である。  そういう点で、今回の法改正が国の関与に関する機関委任事務の廃止を中心とする展開ということが大きな柱になっておるものですから、一般住民からした物の見方の中で、自分の実生活の中でどういうふうに大きく変わるんですかと問われた場合にわかりにくい面はある。しかし、非常に大事な第一歩の法案になっているんだということは御理解をいただけることであると考えております。
  51. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 認識が一致しているということですから心強いんですが、そこで、ではその認識は一致しているけれども、法案の読み方、見方はなかなか共通の認識に立てないという部分がございますので、それらについてお聞かせいただきたいというふうに思います。  私も、今、大臣が言われたように、事務権限の移譲であるとかあるいは関与の縮小、そして関与をある程度ルール化する、こういう部分については評価をしているんですが、しかし、一部のところでは関与が縮小されるどころか強化されている部分があるんです。これは衆議院でも非常に問題になりましたし、さらに参議院の本会議、そして十五日の総括質疑の中でも我が党の本岡昭次議員が質問を行っております。そういう部分の重複はできるだけ避けたいと思いますが、再度その部分について質問させていただきたいというふうに思っています。  それは、改正法案の二百四十五条の五の第五項、是正改善義務という内容についてであります。  先ほどの質問でも指摘をいたしましたけれども、本来、自治事務というのは自治体の裁量に任される、当然、関与は縮小、廃止していくことが必要だというのは、これは前提に立っておるし、これも共通認識だというふうに思うわけであります。  しかるに、二百四十五条の五の第五項では逆に国の関与が強化をされてきているというふうに私どもは受け取っております。次のように規定されているんですね。国が違法あるいは著しく不当だと判断した場合には自治体が改善義務を負う、こういうふうに定められたわけであります。  自治大臣、これは勧告ではなかったんですね。分権推進計画でもなかった。国による是正の要求までしか勧告では認めていなかったんです。国は是正を要求できる、だけれども改善義務という法的義務まで言及していなかった。しかし、今回の改正案では是正の要求にかかわる改善義務を明確につけられた、明文化をされた、こういうことです。勧告や分権計画になかったものがなぜ今回この法案で忽然とつけ加えられたのかということについてまずお聞きをしたい。  そして、数年かけて、あるいは分権計画をあれからつくられて一年、そこまではある程度の我々も含めて社会的合意が得られて我々も勉強してきたけれども、今回の法案審議のこの短さの中でそのことが社会的に合意が形成されると思っておられるのかどうか。  その二点についてお聞かせいただきたいと思います。
  52. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 衆議院でもいろいろ御説明申し上げたんですが、必ずしもすべての委員の先生方に理解を得られたかどうか、今御指摘があったようなことをおっしゃる委員があったことも事実でございます。  ただ、勧告になかったではないかという点につきまして、勧告では確かにそういう点で明示はしておりませんでしたけれども、特に第四次勧告におきまして、いわゆる国地方係争処理委員会、係争処理手続としてこの是正の要求の取り消しを対象にするということを勧告の中で述べておるわけであります。  つまり、そういう点で、これが法的義務がなければもともと取り消し訴訟、訴訟といいますかあるいは手続の、係争の対象にならないわけであります。そういう意味で、これはそれを前提にしているというふうに我々は考えています。  それからいま一つ、御言及があったかどうか、現行法の是正措置要求とよく比較されます。現行法の是正措置要求は、確かに法律上明文の義務規定は置いてはございません。中には学者によって違った意見があろうかと思いますが、一般的に私どもは、これも明文はないが義務を伴うものであるという認識で運用してきたことも事実でございます。そういう点で、この点はぜひ御理解をいただきたいことであると考えております。  それから、この是正の要求というのは、基本的に是正の指示ということではなくて、いわゆる個別の事項について言うのではなくて、必要最小限度の、しかも具体的な措置については自治体自身の裁量にゆだねられる世界のものであるということでもあります。  それからもう一つ、大前提として申し上げたいのは、この要求がなされる事態というのは、日常の業務、事務の中でそんなものがしょっちゅうあっては実は困るわけでありまして、もともと法律の運用違反であるとか適用違反であるとか、そういう重大なる影響、そのまま是正されないで放置されれば地元において大変な混乱が発生をするなり、法令の適正な執行がうまくいかないというような事態、そういう意味での異常な事態、異例な事態に初めて行われることである。  本来ならば、そういったことを国が要求する前に、まず自治体の中で、議会なりあるいは住民なり、そういう自立的な中で是正をされるというのが本来のあり方でありますし、当然それが基本的な、ノーマルな姿である。だから、臨時異例、そういう場合に、起こらない方がいいに決まっていますが、放置できないというときに初めてこの是正の要求というのが行われるものであるというふうに考えております。
  53. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 ちょっと納得ができないというか、ちょっと理解に苦しむ御答弁もあるので、私の考え方を若干先に申し上げておきます。  一つは、勧告や推進計画になかったものがなぜ書き込まれたのかについて今若干説明がありました。ただ、ではなぜ推進計画のときにそのことが議論されなかったのか。推進計画というのは閣議決定をされておるわけですね、政府が決めた部分なんですから。だから、そこの部分からなぜ変更したのかという御説明は、ただ、法案を出すときに内閣法制局が云々という部分がもしあれば別ですけれども、そこの部分。  それと、最後のところで大臣の方から支障など放置しておいてよいのかということが出されました。例外的だと。例外以前の問題では、このような問題が起きれば、これは自治体と住民あるいは議会とで自主的に解決するというのがこの法の趣旨ですね。しかし、例外もあるんだ、こう言われました。  しかし、僕は、例外があろうとなかろうと、最後まで自治事務について責任を持つのは自治体なんですから、これは国と自治体で解決をつけるということよりも、自治体が自主的、自立的に解決をつけるべきだ。そこの部分をやっぱりきちっとしておく必要があるのではないか。そうでなければ、いつまでたっても自治体は国の解釈あるいはマニュアルによって仕事をしていかなければならないという風潮が残るのではないか。そのことが逆に自治体の自主性、自立性を侵すことになるのではないかというのがまず一点であります。  それから、自治体の裁量に任されている、こう言われました。確かに、法的義務があってもその言うことを聞かなければそれで終わり、こういうことで、係争処理委員会にも持っていかなければ自治体は何も改善する必要がないんだ、そういう部分もあることは確かにある。しかし、今の国と自治体との関係からいって、自治体が国の言うままに措置しなかった場合、何回もこの問題が国から是正の要求が出されるというのは目に見えていますね。  そういう観点からいくと、裁量に任されているとは言われても、なかなか裁量に任されるということにならないのではないか。これは危惧する意見として申し上げておるわけです。そういう部分というのはまだ私は解明をされていないと思いますので、今後ぜひ議論をさせていただきたいというふうに思っております。  そこで、もう一点、衆議院段階ではそんなに議論になりませんでしたことについてお伺いしたいと思います。従来の是正措置要求と今回の是正要求との違いの関係についてであります。  私は二つ違いがあるということを先ほども申し上げました。一つは、今、大臣と議論になっております、是正措置要求に法的義務が明記されていなかったのを今回の改正案では法的義務を明記した、これが一つです。これは先ほどの議論の問題であります。もう一つは、関与の主体が総理大臣から各大臣に移された、ここが違いますね。この問題について御質問したいというふうに思っています。  総理、最後の段階で総理にも自治大臣と私のやりとりについて若干のコメントを求めたいと思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  一つは、関与の主体の問題についてでございますけれども、関与の主体については、今までは是正措置要求は各大臣が総理に請求をして、これは国家行政組織法の十五条の三項に載っていますね、総理大臣に請求をして、内閣総理大臣が行う仕組みだと、こういうことになっております。だから、これまで一度も発動されなかったという一つの理由にもなるんだろうというふうに思います。五十年間ですか、一度も発動されてこなかったわけですから。  しかし、今回の法案は、各大臣がみずからできると、こういうことになったわけです。二百四十五条の五の第一項ですね。そうなっているわけです。しかも、関与できる大臣は法令所管大臣ではないんです。事務を担任する大臣というふうに書いてあるわけであります。  だから、一つの問題で何人もの大臣が是正の要求をすることができるというふうに読み取れるわけであります。実際そういう事務があるかどうかは別ですよ、ある。ということは、法定受託事務は是正の指示と、こうなっているんですが、これは通常、一人の法令所管大臣しか関与しない、こういうことになっています。しかし、自治事務、まさに自治体の裁量に任されている自治事務については、逆に何人もの大臣が関与をすることが認められるという、これはバランスを失した制度ではないかというふうに思うんですが、その点について、まず第一点お聞きをしたい。  時間がありませんから、続けて申し上げます。  二つ目、何人もの大臣が是正の要求を行うということになれば、省庁によって内容の異なる是正の要求がもし出されたらどうするのかという問題であります。  例えば、これは是正の要求ではありませんけれども、これは大分前の新聞ですけれども、かなり問題になりました名古屋の藤前干潟の関係についてであります。この藤前干潟については、あの干潟に廃棄物処理をするということで埋め立てたいと。環境庁が反対して、あそこはだめだと、ラムサール条約等の関係もあって。ほかに行きなさいと。そしたら、代替地を県と市が今度は考えてきた。それがたまたま名古屋の港運、港に係る部分であって、今度は環境庁ではなしに運輸次官、これは運輸大臣もそうですけれども、懸念を表明するというんです。同じ問題で二つの省庁が違う。  ここがだめ、こちらはだめという、その種の問題があるでしょう。以前にもありましたけれども、公害問題をとらえて通産省と環境庁の言い分が違うという、自治体が困ったこともたくさんあります。これからもそういう問題、建設省と環境庁と違う指示を出すというような場合も出てくるわけであります。  今までは、そういうことをやろうと思えば閣内で統一をして、内閣総理大臣だけしかそれが出せなかったけれども、今度は各大臣がばらばらになるというと、そういうことがひょっとしたら起こるかもわからない。  それともう一つ、そういうことが起こるということと同時に、今までは内閣総理大臣だから一度も使われてこなかったけれども、各大臣がやるということは、これから頻繁に是正の要求が自治体に出されるということも想定をしなければならない。そうなると、国と自治体の係争、争いというものがどんどんいたずらにふえていくということになるのではないか。そういう日本の国家、国と地方の関係にしていいのかという、その点について私は御答弁をいただきたいと思います。
  54. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 私は、現実に複数の大臣が異なった内容の是正の要求をするという事態はちょっと想定できないんです。くどいようですけれども、是正の要求をするというのは、少なくとも法令違反なりそういったことが明らかであって、それが全然みずから自主的に是正されないという事態を踏まえたときにしかしないという前提であります。  したがって、何もないときからああしてほしい、こうしてほしいということを、いわゆる助言、勧告の世界で希望を伝えるということはあるかもしれません。だから、今御指摘のようないろんな発言というのはむしろそっちの世界なのではないか。したがって、是正の要求というのは、つまり法令違反なりそういったことが客観的事実としてある、それが全く放置されて自主的な是正がなされない、そういう異例な事態に、その担任する大臣という表現でありますけれども、基本的にはその法令の適正なる運用という中で初めて行われていくというのは当然のことだと考えております。  それからいま一つ、話がちょっと専門的で細かくなって恐縮ですが、是正の要求というのは、率直に言って、これは法的義務、是正しなければならないということでありますが、それでもなおかつ是正しなかったときにどうなるかという問題等も実はあるわけであります。  それから、今までの是正措置要求、現行法の是正措置要求、このところとの違いにも言及がありましたが、こちらの方は、いわゆる係争、国と地方の係争処理の対象にはなっていなかったという、ここが極めて大きなチェックポイントであるということは、ぜひ国と地方のかかわり方について御検討いただきたいといいますか、評価をしていただきたい。つまり、客観的な第三者のところにおいて国の要求が正しいのかどうかということの評定がなされるという、ここが極めて大事なポイントであるということもぜひ御理解をいただきたいと思っています。  それから、万々が一御指摘のような複数の大臣が、妙なと言うとなんですが、異なったことを直接自治体に云々という場合には、これはむしろ法律世界よりも政治世界の中で国として一体どうなのかということがあると思っています。  いずれにせよ、この問題は基本的に、くどいように申しましたが、国と地方の係争処理委員会をつくるという、つまり国と地方の関与のルールというものをより原則化し、いわゆるルール化し、透明度を高める、個別の通達とかそういうことでやるようなやり方ではもうやっていかないんですという中で、客観的に、国と地方のそういった意見の食い違い、法令違反の場合における意見の食い違いというような場合は、国と地方の間の係争処理委員会という第三者機関で判断をしてもらうという、こういう形をつくったものでありますから、そういう中でぜひ御理解をいただきたい。  それをやっていくには、やはり総理大臣というよりも各省大臣が直接係争処理委員会での一方の当事者としておやりいただくという方が法体系としては整合性があるのではないか、そういう判断からこういう形をとったということでございます。
  55. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 時間がもう四分になりましたので、言いっ放しの部分になるかもわかりませんが、聞きたいと思います。  今、大臣から発言がございましたけれども、いずれにしても紛争処理委員会があるからいいじゃないかというのは、私は、紛争処理委員会も最後のとりでという位置づけをされておいた方がいいんではないか、自治体と国がそんなに争うというようなことはやっぱり問題だというふうに思っています。  そういう意味では、五六年のときの答弁で鈴木俊一政府委員が、これは地方自治を守る最後の保障なんだというふうに旧法については言われています。ということは、まさに伝家の宝刀なんですね。総理大臣のあの権限があるから、核で言えばいわば抑止力として僕は存在していたという側面も否定されないと思うんです。  それが今度は大臣が日常茶飯事にそういう是正の要求を出してくるということになれば、それはもうすべて争おうじゃないか、こういうことになる可能性があるわけですから、そういう意味で是正の要求の発動について私はやっぱり慎重に取り扱っていただく必要があるんではないか。  そこで、もう答弁はよろしいですから、今まで言っておられる考え方を再度こちらの方から言いますから、イエスかノーかで答えてください。  是正の要求が発動される要件については、これは文字に書いていますが、法令違反、または著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害しているというふうに認められるとき、これは一ついいですね、それは書いているわけですから。そして、大臣が答弁をされています、違法な事務処理が自主的に是正されない例外的な場合、その結果、自治体の行財政運営が混乱し、停滞し、著しい支障が生じる場合、以上の条件に限定されるというふうに考えてよろしいですか。イエスかノーかで。
  56. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) イエスであります。
  57. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 では、最後に御要望申し上げておきます。  私は、総理、是正の要求について、これを否定しようというふうに申し上げているんではないんです。是正の要求そのものを行うこと自体は、これは最後の保障として今までもあったことですから、これについては必要だというふうに、あるいはやむを得ないと、そういうふうに思っております。  私が申し上げたいのは、従来の自治事務にはこのような法的義務を明文化した改善義務つきの是正の要求はなかったんです。それはこのとおりなんです。そして、各大臣が直ちに関与することもできなかったんです。しかし、今回、機関委任事務制度が廃止をされて、機関委任事務から自治事務になったものは、これはやむを得ないですよ。しかし、以前から、もとから自治事務であったものについてはこの二つの枠がはめられるわけですから、だれが見ても関与の強化、改悪になるというふうに言わざるを得ないというふうに思うんです。  そのことをぜひ総理に頭の中に入れておいていただいて、私は、自治の機能というのは、自治体の自己決定、自己責任、これは野田自治大臣も言われています、これが自治事務であって、その精神はやっぱり生かされるべきだというふうに思っております。これだけの大改革をする地方自治法なんですから、ぜひそのことを生かさなければならない。そのためにはこの二百四十五条の五の第五項についてはぜひ削除いただきたいということを強く申し上げて、質問を終わります。(拍手)
  58. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      ─────・─────    午後二時二分開会
  59. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、内閣法の一部を改正する法律案外十七案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  60. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。  きょうは、ケルン・サミットを受けましての雇用失業問題、それから男女共同参画会議について、人権について、最後に統合が予定されております厚生労働省の関係について伺わせていただきます。  最初に、ケルン・サミットで八カ国首脳の共同宣言が出されております。今回のケルン・サミットを拝見しておりますと、コミュニケの三には雇用促進、それから四には人々への投資、そして五には社会的セーフガードの強化、このような項目が並んでおりまして、雇用の課題が大変強調されたサミットであったというふうに思います。新聞各紙のタイトルもおおむね雇用創出サミットというような名前で呼んでいるところが多うございました。  そこで、サミットにお出かけになられます前に小渕総理は、六月十一日、緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について我が国の施策を発表されまして、それを持って出席なさったわけでございます。サミットのこうしたコミュニケと我が国の施策について、総理の決意をまとめて改めてこの場でお聞かせいただきたいと存じます。
  61. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ケルン・サミットのコミュニケにおきまして、失業問題を最も緊急な経済問題の一つとして、その解決のため、雇用拡大のための適切な政策形成の重要性が再確認をされたところでございます。  現下、世界に多くの問題は存在いたしますが、それぞれの国々におきましても雇用問題、言いかえれば失業問題を極めて重要な課題としてとらえておりまして、ただ、それぞれの国々だけで対処するということはもちろんいたしますが、あわせてグローバルな形で、特にG8といいますか、G7の国々におきましては重要な点と考えてこれをコミュニケにまとめさせていただいたわけでございます。  さて、我が国におきましては、御指摘のように六月十一日に決定をいたしました緊急雇用対策と産業競争力強化対策におきまして、雇用機会の創出を最大の柱として、民間企業による雇用の創出とともに、国、地方公共団体による臨時応急の雇用就業機会の創出等により七十万人を上回る規模の雇用就業機会の増大を図ることといたしております。今後、この対策の速やかな実施に全力で取り組んでまいりたいと思っております。  昨日の政治討論会等におきましても、いずれも雇用の問題を取り上げておられまして、そうした意味で喫緊の課題と心得ておりますので、国会も延長をお願いいたしまして、それにかかわるところの補正予算並びに各企業における競争力強化、これは結論的に言うとやはり雇用の問題にもかかわることでございますので、全力を挙げてその対策に取り組んでおるところでございます。
  62. 川橋幸子

    川橋幸子君 ただいま総理御紹介のように、今回出されました緊急雇用対策のポイントは、一つは新たな産業発展といいましょうか、雇用創出が期待されるような部門での雇用創出、これが強調されております。  その中の施策の柱といたしましては、もちろんたくさんございますけれども、ベンチャーへの支援、これを非常に大きな柱にされておりますこと、これが私には印象づけられている部分でございます。また、国、地方公共団体によります臨機応変の雇用創出、失業が出た場合にはその失業の対策に国、地方公共団体が責任を持つということが打ち出されております。ここも種々対策がありますが、先ごろから、あるいはこれから二十一世紀にかけて日本がその部分に大変力を入れることが望ましいと言われておりますNPOへの支援、これが新しい柱として出されているように私には印象づけられるわけでございます。  さて、ベンチャーといいNPOといいましても、片やビジネスであり、片やボランタリーな民間の生き生きとした活動と言われますけれども、両者は不可分であると私は思っております。例えば介護、それから保育のケアの部分ですとか、身近な日常生活サービスの部分につきましてはベンチャーがNPOと非常に協力しながら同じような機能を持つ、あるいはNPOで発足いたしましたものがペイするようになりましてベンチャーとして確立する、こういう生々発展のプロセスがあるわけでございます。  その中では女性の参入というのも非常に期待されているところでございまして、民主党の案ではデモクラット起業家支援、特に女性の起業家支援ということを打ち出しているわけでございます。  私に言わせればこうしたいわゆるニューディールというような手法の中で、今回の政府の対策を拝見いたしますと、ベンチャーにつきましてはパッケージプログラムと言いましょうか、まずファンドをしっかりと立てる。そこに国あるいは地方公共団体から資金が投入される。それから人材の育成も図られる。また、事業を立てますには労務の問題、あるいはさまざまな手続的な問題、そうした問題についてはインキュベーター機能と言うんでしょうか保育機能、企業としてふ化するための保育機能が必要だというようなことが強調されていまして、非常に包括的な姿が打ち出されておりますのに対しまして、NPOについてはこれがかなり単発的なような印象がぬぐえないのでございます。  NPOにつきましては、昨年でしたか、ちょっと記憶がはっきりいたしませんが、特定非営利活動の促進ということで、いわゆるNPO法がつくられたばかりでございます。  今回の国、地方公共団体によります臨時応急の措置といたしましてNPOに期待するとなっておりますけれども、一体、今回の緊急対策に盛られたような事業が遂行可能なNPOというのがどれだけあって、どこでどのように把握されているのか。この点について、まず経済企画庁にお伺いしたいと思います。
  63. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のように、NPOは昨年から登録を受け付けるようになりまして、現在、各都道府県及び企画庁の方で登録を受け付けている最中でございます。そういう意味ではできたてのほやほやのものでございますが、このNPO、ノンプロフィット・オーガニゼーションという定義もまたいろいろございまして、宗教団体、学校法人、医療法人等を含めた概念としてとらえますと、国民総生産の三・一%、十五兆二千億円ぐらいを提供しております。  ところが、いわゆるNPOらしきNPO、ボランティア団体ということになりますと、まだ非常に発展途上と申しますか、数も少のうございますし、組織もまちまちでございます。そして、それをやっておられる方々考え方もいろいろでございまして、政府にできるだけ干渉してほしくないという人もございますし、また地域に密着した方々もございます。  これを一律にどのように支援していったらいいのかということは申し上げるわけにもいきませんので、私どもとしては、その団体のやっておられます事業に着目して、団体の性格というよりもそれぞれの行っておられる事業に着目いたしまして、その事業が例えば自治体が協力できるようなものであるか、あるいは国ができるような国際的な問題であるか、そういったことによってこのNPOを活用し、雇用の問題にもつなげていけるんではないかと考えております。  残念ながら、まだその段階でございまして、具体的な例を挙げるには至っておりません。
  64. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは、労働大臣にお伺いしたいと思います。  事業に着目して健全に発展していくことが望ましい、そのような企画庁長官のお答えぶりでございますが、緊急雇用対策につきましては、補正予算の中で審議された後に直ちにできるところからやっていくという性格のことであるとすると、このNPOを通じましての雇用創出というものもそう先の話ではなく、現下の課題ではないかと思います。  労働省ではこの点はどのように把握していらっしゃいますでしょうか。
  65. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 今回の対策の柱に、先生御指摘のとおり、成長が期待される十五分野の前倒し雇用と、もう一つ、現在質問されている公的セクターによる雇用の創出、その公的セクターが委託する先として民間の企業であるとかあるいはNPOというのが挙げられているわけであります。  私どもといたしましては、雇用創出交付金というものを基準に従って都道府県に配賦する、そこで基金としてつくっていただいて、市町村が都道府県に対して申請をするという形になるんだと思いますが、余り細かな細目を決めるということはしないで、できるだけ自治体の主体性に任せようということを考えております。  仕事の例としては、教育・文化、福祉、環境・リサイクル事業等、緊急に実現する必要性があるかとか、あるいは一両年で終了する事業とか、新規雇用・就業を生ずる効果が大きい、こういう枠内に従って自治体がいろいろ洗い出していただいて、それで委託等をしていただければというふうに思っております。
  66. 川橋幸子

    川橋幸子君 地方分権がこの委員会で審議されている段階でございまして、自治体の創意工夫にまつということは非常に大切なことではございますけれども、むしろ、NPOというのはまだ地方ではそう出てきておらない、都市部の方が多いといたしますと、自治体に任せるといったものが、逆に自治体の下請化のような事態を引き起こすのではないかということが懸念されるのでございます。  きょう、この委員会の私の後ろにいらっしゃる岡崎トミ子さんが私ども民主党のNPO委員長でございますが、民主党といたしましては、安価な労働力吸収の場としてNPOをとらえて粗雑な支援策を導入すること、これは自立的なNPOの発展の可能性を阻害するのではないか、こういう懸念を発表しているところでございます。もちろんNPOが、NPOセクターとして公共部門それから民間部門と並んでこれから日本の発展を支える、こういう発想については賛成なのでございますけれども、そのためのパッケージプログラムがまだ十分練られていないのではないかという心配があるのでございます。  そうした心配に対しては、事業に着目するとすれば労働省ではどのような基盤整備を考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  67. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) これは委託契約を自治体とNPOが結ばれるわけでありますし、NPOは知事登録といいますか、認証を知事の分野で得られるわけでありますから、自治体が把握できると思います。  その委託契約を結ぶ際は、NPOの自主的な判断ですから、その仕事を受ける受けないはNPOの御判断にお任せするわけでありますから、そこで主体性が発揮できると思っております。
  68. 川橋幸子

    川橋幸子君 労働大臣心配ないという見解ではいらっしゃいますけれども、現にNPOのNPO、NPOをバックアップするという意味でNPOサポートセンターというNPOがございます。そこが、新たな社会理念への投資、NPOの雇用創出機能への提言というものを取りまとめる、そういう意欲を示しておりまして、ちょっと急でございましたけれども、午前中、労働省と企画庁の方に送らせていただきました。  ざっと私の読んだところでは、一つはまずお金、財政基盤が非常に弱いということでございます。NPOへの税制優遇措置につきましては、さきの法律ができます前に、二年以内に検討ということでペンディングになっているわけでございますが、ベンチャーに対してこれだけエンゼル税制等々の優遇措置がとられる、これの並びで考えましてもやはり税制優遇措置、寄附金の措置につきましては大蔵省に要求すべきではないかと考えますが、企画庁長官、いかがでしょうか。
  69. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) ベンチャービジネスの方はあくまでも株式会社を前提としております。したがいまして、これにつきましては一定額のものに対する初年度扱いの税制控除等、中小企業の創造的活動に関する臨時措置法という税制がとられております。NPOの方は公益法人扱いでございますので、営利目的の部分だけが課税対象になるというところで基本的に違っております。  御指摘のように、つくっていただきました法律で二年以内にこの活動の実態を見て見直すことになっておりまして、今いろいろと各都道府県、経済企画庁の方に登録していただいておりますNPO団体の活動の実態等をよく観察いたしまして、近い将来これを国民生活審議会にお諮りをして善処させていただきたいと考えております。
  70. 川橋幸子

    川橋幸子君 近い将来善処してくださるということで、ぜひそれはしっかりお願いしたいと思います。  NPOの場合も、例えばアメリカでもあるいはヨーロッパの国もそうではないかと存じますが、ファンドレイジングという言葉が使われておりまして、基金をまずしっかりつくり上げるということが重要だと言われております。そのファンドレイジングの中に寄附金の問題というのは非常に大きな要素を占めるわけですので、近い将来、今度の予算要求、税制要求の中でお願いしたいと存じます。  さて、もう一つNPO側で言っていらっしゃるのは、企業の場合は経営者が必要だということを言うわけでございますけれども、同じくNPOの場合も組織体でございまして、経営者ではないかもわからないけれども、運営者が必要だということが指摘されております。そうした運営のノウハウを持つ人材が非常に少ない、あるいはできたところで運営に当たる専従スタッフの賃金について非常に困難を来しているということがよく指摘されておるわけでございますけれども、今度の事業費補助の中にはそのような専従スタッフの賃金補助、事業費だけではなくて人件費も含めるべきだ、このような意見が強いのでございますけれども、労働大臣はいかがでしょうか。今回の事業にはそのようなものを盛っていただけますでしょうか。
  71. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 今回の委託事業というのは、その事業の中に事務経費というのを含んでおります。ですから、その事業を行っていくのに必要なスタッフの人件費は当然含んでおります。  ただし、NPOの専従職員がいまして、その委託事業と関係ない部分の人の人件費を含めてくれという話はこれは無理でありますし、それはおっしゃっていないと思うんですが、その委託事業を行っていくのに、その専従スタッフの例えば一人が監督者としてそれに専従というか専任するという場合はその人の人件費も含むという考え方になります。
  72. 川橋幸子

    川橋幸子君 前段と後段でややトーンが違ったかと思いますけれども、そちらの方向であるというふうに私は理解させていただきまして、その方向でお願いしたいと思います。  そもそもNPOというのはどこの省が所管になるのかというのが私の疑問でございます。それぞれの事業体に事業に応じてそれぞれの省が所管する事項があるのは当然かと思いますけれども、NPOセクターをこれからの第三セクターとして日本の中で発展を期待するなら、その健全な基盤整備ですとか健全な発展とか、どこかちゃんと目配りするところが必要な感じがいたします。  その点を企画庁にお伺いしたいのと、それから労働省の方には、先ほど御紹介いたしましたNPOの側からそうしたNPOの雇用創出機能に提言したい、こういう動きがあるわけでございます。地方公共団体に任せる前に、まず国レベルでNPOのネットワーキングが図られておりますNPOサポートセンターなどとお話し合いをしていただきたいと思いますが、そのあたりをお願いできるかどうか、労働大臣にそれぞれお尋ねしたいと思います。
  73. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) NPOはまことに内容が多様でございますので、この所管に関しましてはそれぞれの事業内容に応じて所管することになっております。  経済企画庁は特定非営利活動促進法といういわゆるNPO法を所管しておりまして、市民活動に関する調査分析、それからNPO活動を促進するための環境といいますか基盤といいますか、そういったものの整備を担当しております。今後ともNPO法の普及、これもまだ緒についたところでございまして知られていない部分もございますので、その普及、あるいは健全な育成や活動環境等を育てる、一般的なことをやっていきたいと思っております。  なお、御審議いただいております中央省庁改革関連法案の並びで申しますと、現在企画庁が行っておりますNPOに関する事柄は、中央省庁改編基本法に従いますと内閣府の所管になるだろう、こう考えております。
  74. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 今回、我が省の関係でNPOというのが出てきておりますのは、雇用創出交付金に関して、この委託先に例えばNPOも範疇に入り得るということでありますから、今回の事業に関しましていろいろと御意見を表明されたいということであるならば、その委託元であります自治体の部署に対してお話をされるのが一番適当かと思います。  それから、NPO活動全体のことについて、今回のことも含めていろいろ意見表明をされたいということであるならば、どちらかといえばNPO法を所管している経企庁、そちらとのお話が全体像としては一番いいのかなというふうに思っております。
  75. 川橋幸子

    川橋幸子君 きょうは盛りだくさんで余りとどまっていても最後まで消化できない危険が出てまいりましたが、でも今のような両大臣のお話を聞きますと、やっぱり総理から一言お伺いしたいと思います。  先ほどのNPOサポートセンターの提言の附属資料を見ておりましたら、連合と労働省とこのNPOサポートセンターとで「雇用創出におけるNPOの役割と可能性に関する調査研究」というのが現に行われているところでございます。  それから、今度の省庁改革では内閣府の役割に引き続きなると、企画庁の仕事がどうやら特定非営利、いわゆるNPO法と、全体の一般的なNPOと少し何か優先順位の置き方がでこぼこしているようでございますけれども、これはやはり内閣府全体の仕事として、内閣の総合調整機能のもとでしっかりとNPOの健全な発展を期していただきたいと思いますが、総理、いかがでございましょうか。──いや、総理に伺っているんです。
  76. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 決してでこぼこしているわけではございません。今、発足し初めでございまして、私どもの方に申請されてくるものもいろいろございます。程度も違いますので、これの基盤整備を整えまして、そして全体の国民の善意をくみ上げるような調整を、調整といいますか心のならし、準備をいたしました。NPOセンターの方とも私ども盛んに連絡をとらせていただいておりまして、その方に進んでおります。  去年の十二月から受け付けておりますので、準備期間をかけさせていただきますとある程度水準がならってきて、いい形に推進できるもの、あるいはNPO以外に株式会社になった方がいいか個人事業になった方がいいか、そういうことを皆さんにおわかりいただけるだろうと期待しております。その意味で、今回の交付金による雇用創出というのも一つの契機となってNPOを発展させられるんじゃないかと信じております。
  77. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 言葉が足りなかったかもしれませんけれども、労働省は別に拒否しているわけじゃありませんで、プライオリティーの問題をお話ししているのであって、法所管をしているところがまずお話を伺って、必要があれば我々も別にお話を伺うこと、意見交換をすることはやぶさかでございません。
  78. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) せっかくNPOの法律が制定されていることでございます。先ほど先生から御指摘のように、政府の下請という形ではないわけでありますが、アメリカの例を見ますると、まさに両々相まって国民のために大きな仕事をなし遂げておるということでございますので、今後、政府といたしましてNPOの存在について十分認識をしながら、政府とともに力を合わせていきたいという体制を整えてまいりたい、こう考えております。
  79. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。ぜひその方向で今回の失業対策を可といたしまして進めていただきたいと存じます。  ケルン・サミットでもう一点お伺いさせていただきたいと思います。  最貧国債務六百五十億ドルの削減というケルン・サミット債務イニシアチブが合意されているわけでございます。そもそもこの最貧国債務、俗に言えば棒引きでございますが、この言い出しっぺはNGOですとかキリスト教の組織ですとか、労働組合が構成しておりましたジュビリー二〇〇〇、そういうところからのグローバルな活動の提起を受けておったわけでございます。  そこで、このケルン・サミット債務イニシアチブ、我が国の対象額はどのようになるのでしょうかということと、次の質問もあわせて御一緒にお答えいただきたいと思いますが、日本のNGOであります債務帳消しキャンペーン日本実行委員会というのでしょうか、北沢洋子さんが代表をしておられますが、サミットの前に、どうも日本は消極的ではないか、こういう発言がございました。  対象額がどのようになって、今後政府はどのように対応していこうとしておられるのか、外務大臣にお伺いいたします。
  80. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 今回のケルン・サミットでの合意に伴い、理論的には三十数カ国に対しこのケルン債務イニシアチブが適用される可能性があるわけでありますが、実際の適用に際しましては、世銀、IMFの構造調整プログラムを受け入れるかどうか、債務救済措置を希望するか、新規借款を希望するかを確認いたしますので、実際に債務救済措置をとられる対象国は二十数カ国、対象債権額は三千から四千億円程度になるものと考えております。  今回の合意は、自助努力にもかかわらず重い債務を背負い極度の貧困に苦しむ国々の真の再生のため、また国際社会の平和と安定の確保のため債務救済が必要であるとの考えに基づくものであり、国民の皆様の御理解をぜひいただきたいと考えているわけであります。  我が国は、債務の超長期の繰り延べによる返済とその返済額と同額の無償資金の供与を行うことによって対応していきたいと考えているわけでございます。これによって財政負担が一度に生ずるわけではなくて、長期にわたり分散されることになるわけでございます。重債務貧困国の債務救済は国際社会の平和と安定を確保していく上で極めて重要な問題であって、世界最大のODA供与国である我が国といたしましては、この問題に主導的な役割を果たすべきものと考えておりまして、またそのようにしてきたつもりでございます。実際、これまでも我が国は国際協調のもと債務問題に積極的に取り組んできております。  今後、政府といたしましては、今回のケルン・サミットでの合意に従って自助努力を行う重債務貧困国に対してより一層手厚い債務救済を行うとともに、それを貧困緩和と社会開発につなげることによってこれらの国々の長期的な自立を支援していく考えであります。  日本としては、救済ということと自立性ということを両立させようと考えていろいろ工夫をし努力してきたところでございますが、その自立性と両立させるということについて、もっと一直線に救済せよというお考えが一部にあったことは事実でありますが、私たちとしては国民の理解が得られる範囲内で最大のことをやっていきたいと考えているわけでございます。
  81. 川橋幸子

    川橋幸子君 そこで、まとめて総理にこの件についてお伺いしたいと存じます。  日本はODAのトップドナーの国でございます。だから、金額が大きいからこそまたこの債務削減の額も当然大きくなるということで、その点については国民的な合意ができるように調和点を見出したいという外務大臣お答えでございますが、反面、よく金融問題の点については貸し手責任ということが問われていたように思います。自立性を促す援助が必要だから円借款なんだという話だったんですけれども、逆にそれが最貧国の農村部の女性や子供の命、健康等に非常に阻害要因を来すというようなことが指摘されているわけでございます。  途上国の自立支援として重要なのは、時間が短いので片仮名文字をそのまま使いますけれども、ジェンダーの視点から女性のエンパワーメントを図る、これが環境や人口や食糧や、そういうものとの調和を図るかぎであるということが言われているわけでございます。こうしたジェンダーの視点からの支援について日本としては力を入れるべきではないかと存じますが、総理の見解、姿勢をお願いいたします。
  82. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、重債務貧困国に対する救済につきましては外務大臣が御答弁申し上げたところでございますが、我が国としては、特に各国に対する協力については借款という方式をとっております。それは我が国の戦後を考えまして、我が国としてはIMFや世銀からの資金協力を得ながら国民が営々としてその返済の努力の過程の中で諸事業を達成していくというみずからの体験もございまして、各国にもそのような形で自立性を促してきたという点があったわけであります。  しかし、援助の方法については、そうした借款のような形でなく、その事象事象に対してなすべきではないかというようないろいろ議論もございまして、今般、G8におきましてもこの問題の決着を見ることにはなりましたが、いろんな問題を提起されたというふうに認識をいたしております。  この問題については、私は出発に当たりまして、先生も含めまして御要請をいろいろ直接いただいたところでありまして、それには適切に対応したと思っておる次第でございます。  そこで、今お尋ねの点につきましては、我が国は途上国の社会経済開発において女性は受益者であると同時に重要な担い手であるという認識のもと、ODAの実施に際しては途上国の女性支援、WIDを重視してきており、九二年に発表いたしました政府開発援助大綱の中でも開発への女性の積極的参加と受益の必要性につき明記いたしておるところでございます。また、九五年九月の第四回世界女性会議で発表されましたWIDイニシアティブに基づきさまざまな支援を行ってきておるところでございます。  我が国といたしましては、今後とも途上国自身及び他の援助国、国際機関、NGOとも協力しながら途上国の女性の地位の強化のために引き続き積極的に努力してまいりたいと考えております。
  83. 川橋幸子

    川橋幸子君 時間が短うございまして、大変恐縮ですが、総理以下閣僚の方の御答弁は短目でお願いできるとありがたいと思います。  さてそこで、男女共同参画会議に移らせていただきます。  このほど男女共同参画社会基本法施行されましたこととあわせまして、内閣府の中に男女共同参画会議が設置されますことは大変女性たちは評価しておるわけでございます。  さてそこで、この男女共同参画会議でございますが、内閣府に設置されます他の三つの合議体は総理が議長となられるのに対して、この会議は官房長官が主宰されるということで議長が官房長官となっておられます。しかし、今度成立いたしました基本法の前文、参議院の修正でつけ加えていただいた前文では、二十一世紀我が国社会のあり方に関して最重要課題と位置づけていただいたわけでございますが、最重要課題でありますならば総理が議長になられるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  84. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 男女共同参画会議につきましては、中央省庁等改革基本法においてそのように定められておりますのでということがまず第一でございます。官房長官と定めているわけでございます。そうして、特にこれから取り組んでいく問題でございますので、相当詳細な詰めが必要ではないかということもあるわけでございまして、こういうことになっているということであります。  なお、男女共同参画に関する施策の政府全体における推進のために内閣に置かれている男女共同参画推進本部の方は、引き続き内閣総理大臣を本部長として位置づけるということでございます。
  85. 川橋幸子

    川橋幸子君 大変いつもは明晰な総務庁長官ですが、ということになっておりますのでということでありますという御答弁のように伺いました。  さて、それでは一歩下がりまして、百歩譲りまして、官房長官が議長となられて男女共同参画担当大臣に就任されるといたしましても、大変多忙官房長官の場合は、これを補佐する専任の副大臣が必要ではないのかと私は思いますが、いかがでございましょうか。これも総務庁長官お答えいただきたいと思います。
  86. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) これは人事でございますので、副大臣三人をどのような分野で分担させるかということは、そのときそのときの内閣総理大臣が定めることでございます。
  87. 川橋幸子

    川橋幸子君 というと、必置ではないけれども副大臣が設けられる可能性があるということでとらせていただきたいと存じます。  さて、今度の男女共同参画会議でございますが、二十五名以内ということになっているわけでございます。各省大臣と学識経験者によって構成されるということでございます。今まで男女共同参画会議といいますと、諮問機関ということで政府の外に置かれる第三者機関でしたのでそう気にならなかったんですが、今回他の三つと並べてこの四つ目の会議が置かれた場合に、この会議の構成メンバーの中の、しかも大臣を除く学識経験者にだけ一方の性が四割を下ってはならないという四割ルールがしかれることになりました。ということで、改めて何か非常に奇異な感じが率直に言っていたします。総理には大臣はぜひ女性の登用をお願いしたいと存じますけれども、多分、現在の自民党さんの人員構成でいかれますと、男性の大臣が圧倒的に多いのではないかと思います。  男女共同参画会議、非常に男性色が強くなるような感じがいたしますけれども、この四割ルールはできれば他の三会議にも適用すべきではないか。あるいは三会議にとどまらず政府審議会全体にも適用すべきルールであって、ここにだけあるのはおかしいのではないか、そんな感じがいたします。  ただいま審議会への女性の登用のための積極的な措置、ポジティブアクションが政府の中でしかれておりまして、目標値は、遠い将来といいますか、二十一世紀初頭に三〇%ぐらいというような目標値しかないわけでございますけれども、もしこの四割ルールが政府全体にとって調和のとれたいいルールであるなら、目標値はむしろ四〇%に上げるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  88. 野中広務

    国務大臣野中広務君) ただいま御指摘がございましたように、審議会への女性の登用の積極的な改善措置につきまして、委員が御指摘になりましたように、我が国では指導的地位につく女性の割合を少なくとも三〇%までふやすというナイロビの将来戦略勧告を踏まえまして、国の審議会等の女性委員の割合につきまして国際的な目標である三〇%をおよそ十年程度の間に達成するよう引き続き努力を傾注したいと考え、当面平成十二年の末までのできるだけ早い時期に二〇%を達成するよう鋭意努めておるところでございまして、現在はこの目標に向けまして努力をしておるところでございます。  そういう実情にかんがみまして、これらの会議のうち男女共同参画会議につきましては、男女共同参画社会の形成を促進する基本的な方針等を調査審議する機関でございますので、現行の男女共同参画審議会と同様に、有識者である委員全体に占める男女の割合の均衡を保つことが大切であり、男女それぞれの視点からの意見をバランスよく反映させていきますために、特に男女それぞれ四割を下回らない範囲の措置をここに入れさせていただいた次第でございます。  委員の意見は十分承知するところでございますけれども、今日までの経過を思いますときに、最低ここで四割措置を加えたというところを評価いただきたいと思うわけでございます。
  89. 川橋幸子

    川橋幸子君 現状は現状だから仕方がない、わかるようにという御趣旨なのかもわかりませんが、もし四割ルールがよいと思うなら、せめてアクションプランの目標値は四割に上げてくださるように重ねて御要望をさせていただきたいと思います。  さて、きょうは大変欲張りまして大勢の大臣にお見えいただきまして質問がたくさんでございます。大臣せっかくお見えですので、各大臣お一言でも御発言いただきますように、質問が飛び飛びになってしまいますが、お許しいただきたいと思います。  さて、今度の男女共同参画社会基本法では、積極的改善措置を含む男女共同参画のための施策を講ずることが国及び地方公共団体の責務となっておるわけでございます。その積極的改善措置という中には、当然、国家公務員及び地方公務員の採用、登用におきますポジティブアクションというものが日本でもようやく法律の規定として盛られたというふうに評価されているところでございます。  そこで、総務庁長官、それから人事院総裁にもお見えいただいていると思いますし、それから自治大臣からも地方公務員のポジティブアクションにつきまして、それぞれ順にお答えいただきたいと存じます。
  90. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 総務庁といたしましては、男女共同参画社会基本法の趣旨にかんがみまして、男女共同参画推進本部と連携しつつ、女性国家公務員の採用、登用の促進等に着実に取り組んでまいる所存であります。  なお、平成十一年度における人事管理運営方針におきまして、ポジティブアクションにつきまして所要の検討を行うことを定めたところであります。
  91. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 基本法八条及び十三条に基づいてそれぞれ計画がつくられることになっております。その計画の中には先生がおっしゃいます男女の共同参画についての思想とか考え方が出てくる。我々はそれを踏まえまして、女性が国家の意思あるいはまた政策の決定に積極的に参画できるよう着実な歩みができるように努力してまいりたいというふうに思います。
  92. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 男女共同参画を推進する上で女性地方公務員の採用、登用の促進は重要な課題であるとまず認識をいたしております。  地方公共団体におきましては、これまでも地方公務員法の平等取り扱いの原則、成績主義の原則を踏まえつつ、女性地方公務員の採用、登用等の努力が継続してなされてきておりまして、地方公務員総数に占める女性公務員の割合は年々上昇しております。同時に、幹部職員に占める女性の比率も徐々にではありますけれども上昇しておるところでございます。  今国会で成立しました男女共同参画社会基本法におきましては、御指摘のとおり、地方公共団体は国の施策に準じ男女共同参画社会の形成の促進に関する積極的改善措置を含む施策を策定し実施する責務を有するとされておるわけでありまして、その中で公務部門における方策についても検討がなされていくものと存じております。  自治省としましては、そうした国における動向を十分見きわめますと同時に、これから個人の能力、適性を適切に判断をして職場配置、配置転換、研修などを行いまして、幅広い職務経験を男子と平等に積ませるということによりまして、地方公共団体における女性地方公務員の登用などに向けた取り組みが進みますように助言などを行ってまいりたいと考えております。
  93. 川橋幸子

    川橋幸子君 一言解説を加えさせていただいて、各大臣の御理解を促進させていただきたいと思います。  公務員法には成績主義、能力主義が書かれているので、今までは法のもとの平等は私は適用されていると思います。だけれども、制度上の平等だけではなかなか女性の能力は開発されない、あるいは開発した能力が発揮されないというところでポジティブなわけでございますので、そこのところをぜひしっかりと踏まえていただきたいと存じます。ちょっとおこがましいようですが、よろしくお願いいたします。  さて、せっかく法務大臣にお見えいただきましたので、人権の問題についてお尋ねさせていただきます。  法務省では、先ほどの国連人権教育の十年でございましょうか、そうした措置に沿いまして人権教育についての答申は出たようでございますが、これからさらにその施策を推進するためのさまざまな施策が審議会でも審議が進められている、このように明るいニュースは聞いておるわけでございます。しかし、どうも法務省の所管される人権擁護の中の人権というのが、現在ある法律を守る法の番人としてやや、ややというよりもかなり狭く行政の中ではとらえられているのではないかというのが私の危惧でございます。  そこで、法務省で所管されます人権擁護の人権の中身というのはどういうものなのでございましょうか。大臣にお尋ねいたします。
  94. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 法務省の所管する人権擁護事務の人権というのは、日本国憲法が定める基本的人権のことと理解しております。  なお、人権擁護事務の主なものは、人権啓発、人権相談及び人権侵犯事件の調査、処理でございます。
  95. 川橋幸子

    川橋幸子君 そういうお答えから、私どもは、どうも法務省が所管される人権というのは人権政策が含まれていないのではないかという危惧を持つわけでございます。  例えば、外務省では人権難民課という課が置かれまして、この課の所掌ではかなりグローバルな課題を人権問題の中で扱っているわけでございますが、法務省の人権と外務省の人権とは同じでございましょうか。法務大臣にお尋ねいたします。
  96. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 今、人権行政ということでお触れになりましたけれども、法務省の所管する人権擁護行政の主なものは、人権尊重思想の普及、高揚を目的とする人権啓発、人権相談及び人権侵犯、侵害の調査、処理でございます。先ほど御説明申し上げたとおりでございます。したがって、人権擁護行政は人権にかかわる行政の中で人権そのものの擁護のために重要な役割を担っておるというふうに考えております。  なお、外務省の所掌事務として人権に関する事務を行っているということでございますが、私の方から御答弁する立場ではないと思います。
  97. 川橋幸子

    川橋幸子君 外務大臣お尋ねさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。  基本的人権、憲法に定められた人権だということでございますけれども、憲法の中には個の尊厳からさまざまな人権に関する規定があるわけでございます。それから、国連の中では、特に九〇年代に入りましてヒューマンライツ、例えば女性の権利も人権である、北京行動綱領の中ではウイメンズライツ・アー・ヒューマンライツというキーワードが生まれたところでございますが、外務省で考えられている人権は法務省で擁護するという人権と同じなのかそうでないのか、いかがでございましょうか。
  98. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 法務省が擁護しようとしている人権と、外務省が世界の中で、グローバルの中でいろいろ対応していきたいと考えている人権の問題というのは、これは人権そのものは憲法の言うところの人権でありまして、私は基本的には同じことだ、こういうふうに考えております。
  99. 川橋幸子

    川橋幸子君 総理に簡単にお伺いさせていただきます。  人権という言葉には、理想としての人権、それから法律上の人権、それから法律の中でも憲法のように理想、プログラムとしての人権を実際に実定法上の権利でやっていく、いわゆる法務省などが中心としておられる法律に基づく実定法上の人権、三つのものがあると私は思います。それらを内閣府の総合調整機能の中で今度は日本も人権大国として推進していく、こういう姿勢が問われている現在ではないかと思います。  今回の省庁再編において人権をそうした内閣府の総合調整機能のもとに置くべきではなかったか、総理お尋ねさせていただきます。
  100. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 人権擁護は政府内閣として取り組むべき課題でありまして、その充実強化につきましては中央省庁等改革基本法でも特に明記されておるところでございます。  その推進に当たりましては、基本法に基づき、人権啓発や人権侵犯事件の被害救済を所掌することとなる法務省初め関係行政機関が十分協力していくべきものであり、これを一括して内閣府の所掌事務とすることは基本法の趣旨に必ずしも沿うものではないと考えております。
  101. 川橋幸子

    川橋幸子君 対人地雷の条約に大変お力を振るっていただきました総理から伺う言葉にしては大変私は物足りない気がいたします。またいずれ質問させていただく機会もあるかということで、最後に、厚生大臣にもお見えいただいておりますので、一問だけ。  介護休業についても育児休業と同様に休業期間中の、つまり休んでいる間ですから賃金は雇用保険から二五%補てんされるだけでございます。休業期間中の雇用保険料の本人負担は免除されておりますが、本人負担が社会保険料については免除されていない。これは整合性を欠くことではないかということでお尋ねさせていただきたいと思います。
  102. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 育児休業は一年間二五%の休業手当が支給されます。一方、保険料につきましては本人負担を免除してございます。我々は、今の改革の予定法案では企業負担も免除しようとしています。  一方、介護保険につきましては、三カ月を期間として二五%の給付は行われますが、この保険料については、厚生年金の保険料等につきましては、育児の場合には将来保険を担う人たちの問題でございますが、介護は社会的責任でやるということでございますから、本来家庭介護を社会的な責任でやるという建前にございますので、その趣旨も違いますし、またちょっと言い方が適当かどうかわかりませんが、介護保険の方は育児と違いまして将来の保険者を育成するというような機能もございません。そんなことで差異を設けさせていただいておるということでございます。
  103. 川橋幸子

    川橋幸子君 時間切れでございますが、三十秒だけ。
  104. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) もう時間です。
  105. 川橋幸子

    川橋幸子君 介護休業中の本人負担については、もうこれは死ぬ方だから保険料は取れないから本人負担は免除しないという、あるいは介護については社会化されて今度介護保険のもとで公的サービスが行われるから家族のサービスは要らないではないかというふうに誤解されて聞こえるということだけ申し上げさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  106. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。  中央省庁再編関連法案並びに地方分権推進一括法案に関連しまして質問させていただきたいと思います。  まず、本題の質問に入る前に総理にお伺いしたいんですけれども、ケルン・サミットの後、六月二十二日にアイスランドのレイキャビクにおきまして北欧五カ国の首脳と会談し、経済を中心にグローバリゼーションが進む中、二十一世紀を人間の尊厳を保障する人間中心の社会世紀にする必要があるということで共通認識を持っていることを確認し合った、今後北欧五カ国と対話、協力を強化していくことになったということであります。  公明党としましては、ヒューマニズムの政治を目指しておりますので、非常に関心の高いテーマでございましたので、総理に人間中心の社会の実現に関して、北欧五カ国の首脳の考え方日本を代表する総理のお考え方、共通点が多いと思うんですけれども、もしまた共通点以外に相違点もあった場合にはその点も含めましてお話をいただければと思います。
  107. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私は、かねてから人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威に対し、二十一世紀を人間が創造的で価値ある人生を築いていくことができる平和な人間中心の社会世紀にすべきであると考えてまいりました。  今回の日・北欧首脳会談におきまして、北欧首脳の方々にもこの信念を共有していただき、今後その目的に向けて協力推進していくこととなりました。そして、その旨を北欧諸国との共同プレスリリースにおいて発表いたしたところでございます。  やはり北欧諸国というものは、かねてそれぞれの歴史等も拝見し、また今日のいろんな行動を見ていますと、福祉の問題あるいは男女共同参画等の先進的な取り組み、また軍縮あるいは平和維持、開発援助等の国際貢献につきまして、目指すべき一つの国家モデルとして評価できるのではないかということでございました。  たまたま五カ国すべての首脳がお集まりでございまして、国家としては人口もほぼ五百万程度でございまして、もちろんアイスランドは三十万に満たない国ではございますけれども、そうした高い目標といいますか志を持って国家運営をされ、そして世界に貢献している。こういう姿というものはやはり我々も学ぶべき点は学んでいく必要があるんじゃないか、こういうことでお話し合いをいたしまして、日本といたしましても、こうした五カ国がとっておる世界に貢献していくそうした姿、行動については、ともどもに相協力していくことが必要ではないかということで合意を見たところでございました。
  108. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 やはり北欧五カ国、福祉の先進国であるということで我が国も非常に参考になる点があるんじゃないかと思います。今後とも協力をしていっていただきたい、そのように考えております。  総理は、その前日、六月二十一日に日英首脳会談も行っておりまして、旅行する青少年に滞在費用を賄うための就労を認めるワーキングホリデー制度を日英間で始めることで一致した、そのような報道もありました。これは日英両国の青年の国際交流を深める意味でも有意義であるというふうに思いまして、大変評価しておるところであります。  英国の話題になりましたので、今回の本題であります中央省庁再編関連法案並びに地方分権に関しまして、英国の例を引いてちょっとお尋ねしたいと思います。  英国では、政府が重要な政策を打ち出す際にはまず問題の所在を示し、これに対する政府の基本認識や改善案をまとめましてグリーンペーパーとして発表し、その後に各界、関係者の方から意見の聴取を一定期間行うということでありまして、またその意見を参考にして政府の最終方針を決定してホワイトペーパーという形で発表する。これが英国の重要政策決定の手続の基本形であるというふうに言われているわけであります。  そこで、総理にお伺いしたいんですけれども、この英国のスタイル、すなわちグリーンペーパー、それから国民の意見聴取、最終的なホワイトペーパーの発表、これに匹敵する日本の重要政策決定の基本形というものはどういうものなのか、これをお伺いしたいと思います。
  109. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、渡辺委員指摘のイギリスの例、すなわちグリーンペーパーにつきましては、最も有名なのは一九八五年六月、サッチャー政権が社会保障制度改革につきましてこれを世に問うたグリーンペーパー、こういうことになっておるわけでございますが、政府としては、従来から重要政策等の形成に当たりまして国民各界各層の御意見や御議論を求める努力を払ってきておるところでございます。また、当然のことでありますが、国会における御議論等も大変大切なものと考えております。  そこで、今回の中央省庁等改革では、これらに加えまして、国政に関する基本方針等の形成に当たり、内閣及び内閣総理大臣がリーダーシップをより発揮しやすい仕組みを整えることとしており、その一環として、新たに設ける内閣府に経済財政諮問会議等の四つの重要政策に関する会議を設置しまして、民間有識者を正規の構成員として法定いたしておるところでございます。このような民間有識者の豊富な学識や実務経験の活用により、より適切な政策形成がなされていくこととなると考えております。  もとより、英国のグリーンペーパーからホワイトペーパーに至る間のいろいろ民意の吸収の仕方というものも参考になるかと思いますが、日本日本として、今回の法律によりましてはそうした形で、よりギャランティーをされた形での意見の集約を図る機関としてこうしたものを設けて民意の吸収に努めていくことがよろしいのではないかということでまとめさせていただいたということでございます。
  110. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 今、英国のスタイルに対しましての総理の見解、お考えを聞かせていただいたわけでありますけれども、日本日本のスタイルでやっていくということで、民間の有識者の意見を今まで以上に聴取できるような形で今回中央省庁等の再編の中で行っていくということでございます。  民間有識者の方の御意見ということとはまた別に、いわゆるパブリックコメントという形で一般の国民からも意見を聞いていくということも非常に大事な点だと思うんですけれども、そういう一般国民から、あるいはいろんな法律関係する関係諸団体からの意見も聞いていく、そういう手続を今後総理としてはどういう形でさらに拡充していくつもりなのか。その点に関しましてお伺いしたいと思います。
  111. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 国民生活に与える影響が大きく、一般の関心も強い規制の設定または改廃についての意見提出手続、いわゆるパブリックコメント手続でありますが、これにつきましては去る三月二十三日に閣議決定をいたしたところでございます。  今後は、同手続を適切に実施していくとともに、その執行状況を踏まえつつ、この仕組みの一層の活用及び整備を図ってまいりたい、こう考えております。
  112. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 今の政府の立場、お話しありましたけれども、今パブリックコメントの方を政府としても有効に活用していこうということで、この間の二十三日の閣議決定の方を見させていただきますと、基本的な政策の方向性等についてということと規制の設定または改廃に係るものと、大きくそういう二つの項目になっておりました。イギリスの場合もパブリックコメントを求めるのはある程度重要な政策に絞っているわけでありますけれども、アメリカの方はより広範な範囲で意見を求めていく。国によっていろいろスタイルは違うようなんですけれども、日本としましては、先ほど述べられました二つの大きな項目以外にも、今後非常に効果がある、国民の意見がよく反映できるということであれば、さらにそれを拡充して用いていくというような方向にあるのかどうか、もう一度確認させていただきたいと思います。
  113. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) パブリックコメント手続は、今までのところ、政令までの改廃などについて国民に広く意見を求めるということに限定をいたしておりまして、法律そのものについてはまだ踏み切っていないという段階でございます。ここで政令などについていろいろ試みをいたしまして、その後に法律なども対象にしてまいりたいと考えております。  審議会とこのパブリックコメントの違いというのは、申すまでもないことでございますが、審議会はこちらの方から、特に担当しております大臣がこの人の意見を聞きたいという人をこちらから探してお願いすることでございます。それに対してパブリックコメントは、広く不特定多数の方々に御意見があればということで意見を言いたい方を探すというか求めるのがパブリックコメント手続でございます。そういう違いがあるわけでございます。  両方相まって広く国民の意見を、しかも掘り下げた意見も聞くことができる、補完的な関係ではないかと考えております。
  114. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 今お話がありましたけれども、審議会というのはどちらかというと政府の方からメンバーを求めていくというような形で、パブリックコメントの場合は国民から広く意見を聞いていく。  多様性、いろんな考え方を持っているのが今の日本国民であると思いますので、政府の方が意見を聞きたいというのも一つの大きな流れかと思いますけれども、やはり国民からいろんな意見を聞いてそれを参考にして合意を得ていくというのがこれからの大きな流れではないかなというふうに思いますので、パブリックコメント制度も有効に使っていけるようにお願いしたいと思います。  話はまたちょっと英国のスタイルに戻ります。具体例を挙げてお話しさせていただきたいと思うんですけれども、英国では総合保健戦略というものを決めておりまして、ザ・ヘルス・オブ・ザ・ネーションというのを策定しております。その大目標としまして、寿命を延ばすこと、それから寿命を健康に生きること、これらの両者の実現による国民健康の持続的向上、これを大目標として掲げております。  日本でも、英国と同様に、単なる寿命の延長ではなくて健康寿命というものを大目標とした健康日本21を策定しているということでございますけれども、このようにこの健康政策をつくる場合にはやはり広く国民の意見を聞いて具体的な目標を立てて政策をつくっていっているわけでございます。  日本の場合は、別な観点からいきますと、生涯現役社会をも目指しておりまして、現在のさまざまな生涯学習プログラムを充実する方向にあるわけでございます。今後、健康長寿をいかに過ごすかというクオリティー・オブ・ライフ、すなわち生活の質が大きく問われる時代に入ってくると思うんです。例えば、健康長寿で長生きして元気であるという場合に、芸術の創作活動に力を注ぐ、あるいは今後共生・共助社会の一員としてボランティア活動などに貢献していく。そういう意味で、健康長寿をどのように生かしていくのかというのが非常に大事な時代になると思うんです。  やはり生涯現役という観点から、私としましては創造活動を行っていけるような創造長寿というものも大きな目標として掲げていくべきではないかというふうに考えるわけでありますけれども、その点に関しまして総理大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  115. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 来るべき本格的な少子高齢社会を健康で活力あるものとしていくために、生涯を通じた健康づくりを進めていくことは極めて重要な課題であると認識をいたしております。  このため、寝たきりなどの状態にならず健康に生活のできる期間、いわゆる健康寿命の延伸を図ること等を目的として現在厚生省において二十一世紀における国民健康づくり運動、健康日本21計画の策定を進めております。健康あって初めて生涯を通じた社会活動、ひいては創造的な生活が送れるものではないかと考えられ、そのためにも厚生省で現在策定中の健康日本21を推進していくことが極めて重要であると考えております。  今、委員指摘のように、生涯現役、クオリティー・オブ・ライフ、そうした言葉は全くそのとおりにならなきゃならぬと思っております。この長寿というのも大変世に批判がありまして、単なる長命社会ではないか、命があるだけという世界では余りにも寂しいと。したがって、もちろん長く生き、そして楽しむ一生涯でなけりゃならぬという意味で、そうした人生を送れるようにということで、委員がおつくりになったお言葉かと思いますが、創造長寿、この目標というものは私も全く賛意を表しており、そのためにも努力をしていきたいと考えております。
  116. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 長寿で創作活動を頑張っていったという葛飾北斎の例が有名でございますけれども、葛飾北斎の場合には、富嶽三十六景の後に富嶽百景というものをかいております。その奥書の中で、七十歳までかいたものにはろくな絵はない、七十三歳になってやっと生き物の本当の形や草木の生きている姿がわかるようになってきた、だから、八十、九十、百、百十歳になればもっと進歩してどんなものでも生きているようにかけるようになるんではないか、そういうことを述べておられます。  また世界でも、化学賞と平和賞の二つのノーベル賞を単独で受賞したライナス・ポーリング博士も、九十四歳で倒れる前まで現役で活躍されていた。博士の考えでは、人間は将来だれもが百歳、百十歳まで病気に苦しまず、何の不自由もなく生きているようになってくるだろう、そういう将来の予測をしているわけでありますけれども、そういう意味で、長生きをしながら創造活動に励めるということが一番理想的であるわけでございます。  そういう面で、今後日本は長寿社会になるわけでありますけれども、一番の問題は痴呆症をどうするのか、これを防いでいかなければ長寿をもってしても創造活動にいそしむことはできないということでありまして、やはり痴呆症の対策が非常に大事になってくるんではないかというふうに思うわけであります。  それで、厚生大臣にお伺いしたいんですけれども、日本としましては、少子高齢化で長寿化がどんどん進んでいくわけでありますけれども、世界の模範になるような長寿社会であって、しかも創造長寿の社会である、そういう模範になるような社会を築く健康政策というのが必要なのではないかと思いますので、その点に関しまして厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  117. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員のおっしゃる健康長寿あるいは創造長寿というようなことは大変重要な視点だと存じます。  ところで、高齢化社会を迎えますと痴呆性の高齢者がふえることは、もうこれはやむを得ない事情でありまして、痴呆の予防、治療に関する総合的な研究を委員指摘されるように強力に推進していくことが重要であると考えております。  痴呆につきましては、その発症原因に未解明の部分が多うございますので、長寿科学総合研究という研究課題で、痴呆を含めた老年病の原因解明についてかなりの予算を投じて私ども研究をしております。  そしてまた、本年三月に国立病院・療養所の再編計画の見直しをいたしましたが、その中で、国立療養所中部病院、これは大府市にございますが、これを長寿医療のナショナルセンターとして整備することといたします。これは計画中でございますが、これによりまして老化機能の解明でありますとか、痴呆症も含む高齢者に特有の疾病の原因解明と予防診断、治療の確立というようなこと、それから高齢者社会的、心理的諸問題の解決を図るというような幅広い視点から、総合的、包括的にこの検討を進めてまいりたいと思っております。  こうした取り組みを通じまして、痴呆の予防や治療に関する研究成果を上げまして、同時に国際的な貢献も果たすように努力をしてまいりたいと思っております。
  118. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 痴呆症の一番の原因疾患となるのはアルツハイマー病でありますけれども、科学技術庁が専門家に行ったアンケート調査では一九九七年の第六回技術予測調査というのがございまして、アルツハイマー病の発症機構の解明が二〇一二年ごろではないか、有効な治療法が開発されるのは二〇一三年ではないかということを発表されているわけでありますけれども、早くそういう有効な治療法が開発されますように政府としても一生懸命取り組んでいただきたい、そのように考えております。  質問の時間がなくなってきましたけれども、イギリスの例を引いてちょっとお話しさせていただいたんですが、イギリスの場合には、そういう健康政策をする場合にもきちんと目標を掲げて、具体的な数値目標というものをきちんと置いて政府として努力しているわけであります。政策を打ち出すためにはやはりきちんと客観的に数値目標が示されていかないと政策評価というのができないということでありまして、公明党としましても、そういう行政評価法というのを定めて、これから行うべきそういう政策がきちんと実際に効果を持って実現していくのかどうかをチェックしていく、それが非常に大切ではないかというふうに考えております。  その行政評価法を制定していくのかどうか、また公明党もいろいろそういう提案をしているわけでありますけれども、その点に関しまして総理の御見解をお聞かせいただければと思います。
  119. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 公明党のお考えかと承知していますが、事前、中間、事後の政策評価を組織的に行うのに数値化された具体的目標を政策中に掲げる、それで法律、すなわち行政評価法等の制定をお考えと聞いております。  御指摘考え方も一つの考え方ではないかと思いますが、今回は国家行政組織法の改正法案等において各府省がみずからの政策を評価することを新たに規定いたしたところでありまして、まずこのシステムの構築を進め、これを着実に実施していくことが重要であると認識をいたしております。  政策評価に関する法律につきましては、中央省庁再編後、各府省における実施状況も踏まえ、速やかに法制定の実現に向けて検討してまいる所存でございます。
  120. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 きちんとやはり行政評価が日本でも根づいて、非常に効率的でよりよいような政策を実現できるようにしていただきたい、そのように思います。  別の質問に入らせていただきますけれども、新しく新省庁下で行われます公正取引委員会について質問したいと思います。  総務庁長官の方にお尋ねしたいんですけれども、政府は、公正取引委員会の位置づけにつきまして、「固有の行政目的の実現を任務とした特定の府省で行うことを適当としない特段の理由がある事務の遂行」を主要な任務とする総務省の外局としたと。文書で読んでもわかりにくいのですけれども、要するに総務省の外局として公正取引委員会を置くことにしたということでございます。しかし、いろいろ内外からも指摘がありますように、放送・電気通信事業といった特定の産業を担当するところがまた総務省でございますので、ここに公正取引委員会を置くと、やはり独禁法の対象となる行政部門を抱えておって利益相反が懸念されるということで、本当に公正取引委員会の独立性が保たれるのかどうかという懸念があるわけでございます。  この点に関しまして、総務庁長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  121. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 公正取引委員会の委員長及び委員の職権行使の独立性や身分保障が独占禁止法上明らかに定まっておりますということと、それから委員長及び委員の任命は両議院の同意を得て内閣総理大臣が行うわけでございますので、大変に強い独立性を持っております。  一たん任命をいたしました後は、総務省ができて総務大臣といえども口を挟むことは一切できないという関係になっておりますので、その御懸念はないかと思うのであります。
  122. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 どうしてこういう懸念が出るのかといいますと、一つの例としましては、昨年の十一月に公正取引委員会が勧告を行いました郵便番号読み取り区分機に関する入札談合事件に関しまして、公正取引委員会の方では郵政省にもそういう談合が行われないように入札の情報管理のあり方について要請を行ったわけであります。  郵政大臣の御発言はいろいろあるんですけれども、どうもその必要はないのではないかというような趣旨の御発言がありましたので、やはり同じ省に、総務省にそういう二つの利益相反が起こるようなものを抱えていると本当に独立性が保てるのかどうかという懸念があるということでございますけれども、この点に関しまして総理の御見解をお聞きしたいと思います。今のスタイルで絶対独立性が保てるんだという……。
  123. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) もう一回念のために申し上げますと、今、総務庁で、例えば総務庁は行政監察という事後チェック型の大変重要な仕事を持っておりますけれども、ついこの間も行政監察局が行政管理局に対して強い勧告を行いまして、行政管理局が行政手続法について周知徹底するという仕事を怠っておったということで勧告をしたわけでございます。  こういう事後チェック型の省庁においては特に気をつけて、身内に対して厳しいということを守って、そのような伝統を守ってきたところでございます。その意味で御懸念の点は御心配ないかと思うのでございます。
  124. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 総務庁長官がそのように強調しておりましたので信用するということで、今後きちんとしていただきたいなというふうに思います。  次に、自治大臣の方に行政書士法の改正に関して質問したいんですけれども、今回、行政書士法の改正案が地方分権推進のための一括法案の中に入ってきているわけであります。  行政書士は、御存じのとおり、法制定以来五十年間、国家資格者として国民の最も身近な法律事務者として広範多岐にわたる法律事務を遂行してきておりまして、国民の利益を守り、また権利を擁護してきた、そういう歴史があるわけでございます。  地方分権、地方主権の確立のための機関委任事務を地方事務に転換することに関しましては何ら異議のないことでありますけれども、この行政書士法の一部改正案には、行政書士会の会則からの報酬規定の削除という地方分権、地方主権の確立とは直接関係のない法改正も紛れ込んでいると言っていいのか、そういう表現していいのかどうかわかりませんが、入っている。これはどういう理由からなんでしょうか。
  125. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 今御指摘のとおり、現行の行政書士法では、「行政書士会の会則を定め、又はこれを変更するには、都道府県知事の認可を受けなければならない。」ということになっておりまして、実際に認可が行われるのは二年ごとの報酬規定の改定に伴うものがほとんどであるわけです。これはある意味では都道府県の事務負担ということもあるわけです。  今回の改正で報酬規定が会則事項から除外されるということによりましてその会則変更認可の事務は減少するということは当然のことでありまして、そういう意味で都道府県の事務の簡素化に資するということは言えるわけであります。  地方分権推進計画におきましては、地方公共団体の事務の簡素合理化を通じた行政体制整備ということは分権推進と並んで重要なテーマの一つでもあるわけであります。そういう意味で、一括法案という中で行政書士法の改正も盛り込むということは、これも一つそういう意味での脈絡というのは当然あるわけです。  それからいま一つ、この分権一括法ということのみならず、今回のいわゆる中央省庁の再編あるいは規制緩和、そういう意味では今日の我々が抱えている大きな時代的な課題というものが、国から地方あるいは官から民、その規制緩和、言うなら民間が自分たちでやれるようなことはできるだけ自由裁量の余地を残していく、余分な干渉はしていかないという一つの中で規制緩和というものがあるわけです。そういう脈絡の中で、やはりこれもあわせてとらえていただきたいことだというふうに考えております。
  126. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 この点に関しましては、衆議院の方では附帯決議がなされておりまして、「行政書士制度に関する報酬規定の取扱いは、今後、他の公的資格制度の規制緩和と併せて、そのあり方について検討すること。」ということでありまして、やはりほかにもいろいろ公的資格制度はあるわけでございます。その規制緩和と一緒にすべきではないか。それは何ゆえ今回行政書士の方の規制緩和が先行したのかということが裏にあるわけでございますけれども、やはりそういう公的資格制度の規制緩和とあわせてそのあり方を検討すべきではないか、私はやはりそういう形ですべきではないかというふうに思うわけでありますけれども、自治大臣としましては、その衆議院の附帯決議を受けまして、御所見といいますか、それを受けて今後どういうふうにしようかということをお聞かせいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
  127. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) この問題について、御指摘のとおり、衆議院におきまして行政書士の報酬規定の問題についても御議論をいただきまして、結果として御指摘のような項目が附帯決議で盛り込まれたわけであります。したがいまして、その御趣旨を十分尊重してまいりたいと考えております。  公的資格制度全体の報酬規定のあり方等について、御指摘のとおり、今後、行政改革推進本部の規制改革委員会において審議される予定であり、その議論の動向をも踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
  128. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 よろしくお願いしたいと思います。  最後のテーマに入らせていただきますけれども、内閣府に置かれる総合科学技術会議について質問させていただきたいと思います。  新設される内閣府には、重要政策に関する会議として、合議体の形をとる総合科学技術会議が置かれることになっております。この会議は、内閣総理大臣の諮問に応じて科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策について調査する、あるいは内閣総理大臣または関係大臣の諮問に応じて科学技術に関する予算、人材等の資源配分の基本方針や国家的に重要なプロジェクト等についての評価を行うことを任務としているということでございます。二十一世紀日本の目指すべき姿の一つとしまして科学技術創造立国があります。そういう意味で、この総合科学技術会議は非常に重要な会議になると思います。  この総合科学技術会議に関しまして総理大臣に質問をしたいんですけれども、この総合科学技術会議が発足すると現行の科学技術会議は廃止されることになるわけでありますけれども、現行の科学技術会議と今回設立される予定の総合科学技術会議とでは何が変わりどこが改善されることになるのか、総理大臣にお伺いしたいと思います。
  129. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 現行の科学技術会議は国家行政組織法第八条に基づく審議会でございますが、総合科学技術会議は、科学技術政策の重要性にかんがみ、内閣府のみに置かれる重要政策に関する会議として位置づけております。また、科学技術会議が内閣総理大臣の諮問を受けて答申することを任務としているのに対して、総合科学技術会議は、科学技術に関する総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策、予算の配分の基本方針等について調査審議し、内閣総理大臣または関係大臣に対し諮問を待たずにみずから意見を述べることができることとするなど、会議の自主性、機能の強化を図っておるところでございます。
  130. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 引き続き総理にお伺いしたいと思うんですけれども、二十一世紀日本が重視している科学技術には、情報通信それから生命科学あるいは宇宙・海洋開発、環境保全、知的ロボットの開発などがありますけれども、この総合科学技術会議で当面取り組むべきテーマ、どういうものをお考えになっているのか、もし御所見をお伺いできれば披瀝していただきたい、そのように思います。
  131. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 総合科学技術会議は、その時々の科学技術に関する重要課題を、先ほど申し上げましたように内閣総理大臣または関係国務大臣の諮問に応じ、あるいは自主的な判断で取り上げることにいたしております。そういった意味で、科学技術というものは大変広いものでございまして、基礎から応用にわたりまして大学、研究機関、産業界の幅広い主体性によって担われていることから、その振興を図るための課題は多岐にわたると考えられます。  総合科学技術会議自体におきましても、同会議が二十一世紀我が国の科学技術政策の展開に主導的な役割を果たすべく、適切なテーマを取り上げることを期待いたしておるところでございます。  また、環境分野に関して科学技術が果たすことのできる役割にも大きなものがあると考えておりまして、総合科学技術会議におきましても、そういった意味から環境問題なども重要な課題の一つとなるのではないか、こう考えておるところでございます。
  132. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 私も、日本は環境立国ということも一つの二十一世紀の姿として目指しておりますので、環境問題に対してもこの総合科学技術会議がテーマをきちんと決めて解決に向けて重要な役割を果たしていただきたいなと、そのように願っております。  次の質問総理にしたいと思うんですけれども、生命科学技術の発展は、医療・福祉分野、そのほか農林水産業の分野、それから環境関連分野、その他製造業分野など、さまざまなところで新産業創出に大きな貢献をするものと期待されているわけであります。とりわけ、遺伝子分析あるいは遺伝子組みかえ等の技術やそれから発生工学などの分野では先進諸国もしのぎを削っているわけであります。  しかし、科学技術の発展には、やはり人類の平和と繁栄に直接結びついている光の部分ばかりではなくて、原子力の利用でも明らかなように、人類が今日でも核兵器の脅威におびえなければならないという影の部分も生み出しているわけでありまして、そういう苦い経験も忘れてはいけないというふうに思うわけであります。  そういう意味で、生命科学技術も、その利用の方向を誤れば人類の生命や他の生物及び地球環境に対して大きな脅威をもたらすことにもなりかねないということでありまして、そういう不安は日本ばかりでなくて、世界の人々が同じような不安を持っているんではないかというように思うわけであります。  そういう意味で、この総合科学技術会議として即刻取り組むべき課題の一つに、生命科学に関する研究、技術開発及びその応用に関する倫理面を含めました総合的なあるいは包括的な基本指針といいますか、それをやはり法律として制定することがいいのではないかということで、私はそう考えているわけでありますけれども、そういう面での研究もしていただきたいなというふうに考えるわけであります。  クローン技術を例にとりましても、人への応用は、科学者、研究者等の個人の良心、倫理規範でしないということになっているわけでありますけれども、やはり法律できちんと規制がなされる方がいいのではないか、そういう時代にも入ってきているのではないかなというふうに思いますので、そういう倫理的な面での法律というものをつくるための検討もしていただきたいなというふうに考えるわけであります。  この点に関しましての総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  133. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 生命科学は、生命とは何かを明らかにする重要な基礎研究分野であると同時に、その成果は保健・医療、環境、農業等の幅広い分野で応用が可能な二十一世紀において最も重要な科学技術の分野であると思います。  他方、この推進に当たりましては、生命倫理への十分な配慮が必要であり、また脳科学や脳・精神疾患の病態解明や、脳に学んだ新たな情報処理システムの開発等を通じて医療の向上や新産業の創出等にもつながる重要な分野であると考えます。  生命科学及び脳科学は総合科学技術会議において議論するにふさわしい分野と考えられますが、具体的にどのような課題を調査審議するかについては、諮問権者であるその時々の内閣総理大臣及び関係国務大臣や総合科学技術会議自身が判断すべき問題であると考えております。    〔委員長退席、理事石渡清元君着席〕  なお、先般、サミットにおきましてもこうした問題もいろいろと問題提起されておりまして、極めて重要なものだという認識をいたしております。  今申し上げましたように、結論的に言えば、この問題もそのときの諮問権者がこれを発議するといいますか、諮問するかに尽きるわけでございますが、きょうこうして当委員会におきまして委員から御指摘のあったこと、時の総理大臣にもよくお伝えもいたしたいという気もいたしますが、いずれにいたしましても極めて重要な問題だという認識は私自身強くいたしております。
  134. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 これは、総務庁長官と、文部大臣科学技術庁長官を兼任されている有馬大臣の方にお伺いしたいんです。  今回の中央省庁等改革法案では、文部省と科学技術庁が合流して文部科学省になる予定であります。ただいま総理がおっしゃいましたような脳の研究というものも、今までは両方の省庁で研究をしていた。そういう共通テーマで扱っていたわけでありますけれども、このような共通のテーマというのはいろいろあるんじゃないかなというふうに思います。このような共通テーマを両省庁が統合されるに伴ってどのように効率的に再編成されるのか、その点に関しましてお伺いしたいと思います。
  135. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 大学を中心とする学術研究機関と科学技術庁所管の研究機関等の関係省庁間で連絡をとりつつ、脳の研究につきましてもこれまでは行ってきたというふうに聞いております。  このたび、学術の振興と科学技術の総合的な振興を任務の一つとする文部科学省が設置されることによりまして、まさに学術及び科学技術関係の業務をあわせて行う局編成が行われ、大学と文部科学省所管の研究機関等において、研究交流や人事交流を通して密接な連携のもとに研究開発の実施が可能となるわけでございます。まさにこういうことが目的で文部、科学両機関が統合されるということでございます。  そして、学術及び科学技術行政に関し、明確な目標のもとに総合的、積極的かつ計画的な取り組みを強化するとともに、学術及び科学技術研究の調和及び総合性の確保が図られ、脳の研究などの幅広い分野にまたがる研究の推進体制の一層の効率化、強化がなされるものと考えるわけであります。
  136. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 多分、今度の行革の中で一番円滑に、そして望まれる方向に動きやすいのは文部省と科学技術庁の統合による研究体制の確立だと私は思っております。既に、今御指摘の脳の研究は大いに両者が協力をいたしております。  さらに、一般論といたしまして、もう既に準備体制に入っております。両方を合わせて新しい文部科学省の設置に向けまして、文部省と科学技術庁との間では昨年以来、共通するテーマなどにおきまして両省庁で協力して連携事業を推進していく。それから、両省庁間でやはりかなり文化が違っていたり考え方が明らかに違っているところがたくさんありますので、そういう意味で、相互認識や相互理解を深めるための審議官級の職員を初めとした人事交流を大いに図っていく。  こういうことで、特に科学技術の上での新しい研究体制、教育体制が確立していくと思っているところでございます。
  137. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 これは総理にお伺いしたいんですけれども、今、陰湿ないじめや青少年の犯罪の増加とか、あるいは児童虐待、麻薬、覚せい剤の汚染の拡大の問題、そしてまた今回、自殺者が過去最大となりまして三万人を突破したというように、現在、日本におきましては非常に心がすさんでいる状況もある、あるいは心の荒廃というふうに言ってもいいんじゃないかなと思うんですけれども。  学校の教育分野では心の教育ということが切実な問題になりまして、今研究テーマともなっているわけでありますけれども、科学的な知見から見ますと、やはり心と脳の働きは密接な関係があるということで、世界各国でも、二十一世紀を脳の世紀あるいは脳と心の問題を追求する科学の世紀というふうにとらえて研究が進められているわけであります。やはり総合科学技術会議のテーマとしてもこれを大きなテーマとして取り組んでいただきたい。  そして、そのような心の荒廃の問題に対しましてもいろんなアプローチの仕方はあると思うんですね。教育的なアプローチ、心理学的なアプローチ、社会的なアプローチ、またそういう脳科学的なアプローチ、さまざまなアプローチはあると思うんですが、それらを総合的に結合して、いい解決方法、改善方法を探っていくべきではないか、そのように考えるわけでありますけれども、その点に関しまして総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  138. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 正直申し上げまして、今の渡辺委員の御質問十分お答えするだけのものを持っておらないと思いますが、一般的に言えば、脳、脳科学というものと心の問題、あるいはもっと具体的に言えば子供のいじめの問題等とも相通ずるものが必ずあるのではないかと。  そういう意味で、二十一世紀、脳科学というものが非常に発展して、そうした心の問題にまでわたりましてその問題解決の端緒を切り開くことができるということであれば、すばらしい、まさに人類が科学技術に寄せた大きな貢献になるのではないかというふうに考えており、そのことをある意味では大変夢を持って期待をいたしておるところでございます。
  139. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 各論的に、心の問題に関する文部省の対応、厚生省の対応をお聞きするつもりでおりましたけれども、時間がなくなってしまいましたので、最後に総理にお伺いして、質問を終わりたいと思うんです。  総理は、富国有徳ということを掲げまして国政をリードしているわけでありますけれども、その意味で、総合科学技術会議のこれから果たすべき役割、関連しましてどういうふうな役割を期待しているのか、その点に関しましてお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  140. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 二十世紀をどうとらえるかでありますが、民族紛争とか戦争の世紀であったということも言えますが、他方、科学技術の時代だという認識もされるわけでありまして、これをより発展させることによりまして豊かな二十一世紀を目指していかなきゃならない。そのため、我が国といたしましても科学技術に対しまして、今度のこの会議を通じまして、我が国のみならず人類のためにもより貢献できるようないろいろの方策を打ち出していただくことができれば、今回こうした会議をつくったゆえんのものがあろうか、こう考えておる次第でございます。
  141. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 ありがとうございました。(拍手)
  142. 池田幹幸

    池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  私は、省庁再編法案に関しまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。  さて、太田総務庁長官は六月十六日の本委員会で、「省庁再編に伴う改革によって」「国民の利益を忘れた政官財癒着の構造にメスが入るのか、」、こういう質問に対して、「今回の省庁改革においては、政官財の癒着構造という言葉が適切であるかどうかは別として、考えております問題意識はそこにありまして、今回の改革においては、政策の企画立案をするセクションと実施機能というものを分離いたしたい。」、このようにお答えになりました。実際、今度の企画立案と実施部門の分離というのは省庁再編法案全体にその柱として貫かれております。  そこで、私は、こういった分離がどういうことになるのかということについて、既に行政組織改革のいわばはしりというふうに柳沢再生委員長はそういう言葉を使っておられますが、金融行革、これが既に実施されていっていると。このことを例にとって考えてみたいと思うんです。  大蔵省の汚職が明るみに出てから、金融機関とそれを検査・監督する大蔵省の汚職構造に対して多くの国民の怒りが沸き起こりました。その処分が発表された直後の昨年六月に金融監督庁が設置されて、さらに十二月に再生委員会が設置されました。そこで、政策立案部門と検査・監督部門が見事に確かに分かれたわけなんですけれども、問題は、これによって金融行政がねらいどおり変わったのかということであります。そのことについて考えてみたいと思うんです。  具体的に、破綻した長銀について聞きたいと思います。  周知のように、長銀は、三月決算で不良債権の実態を隠ぺいするため粉飾決算をやっていたということがわかって、大野木元頭取など三人が逮捕されました。長銀の破綻から元頭取が逮捕されるまでの間に次々と乱脈な経営が暴露されて、そして、もう何ということだということで、何でこんな腐り切った長銀が今まで続いてきたんだということで、長銀の乱脈ぶりに加えて金融行政の先送り体質といいますか、そういったものに対して国民は怒りを覚えてきたわけですが、改めてその怒りが沸き起こっているという状況にあるんだと思うんです。  そこで、私は総理に伺いたいんですが、総理は昨年の八月二十日、宮澤大蔵大臣野中官房長官、金融監督庁の日野長官らと相談なさって、住友信託の社長を首相官邸に呼ばれた。そこで、最大限の支援をするからと言って住友信託に長銀との合併を要請されました。総理は、長銀が不良債権をダミー会社に飛ばしていることや償却が不十分なことなど、こういった財務内容を承知した上でこういった合併を進められたんですか。
  143. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 当時としては、与えられた情報といいますか、金融機関に対するその時点におきまする検査の内容以外のものを承知する立場にはございませんでした。当時としては、これだけの長銀のような大きな金融機関がかりそめにも倒れるということになりますと大きな事態を生ずるということでありまして、そのために、再建計画というものが示された機会に、合併というような方式によりまして金融機関としての責任を果たし得るのではないかということで、そうしたことに対して合併への方向について両行の責任者にそのようなことを申し上げたわけでございます。  当時としては、御承知のように、言うまでもありませんが、金融二法というものが成立を見ておらない段階でございまして、その当時における金融機関として、でき得べくんばそれぞれ立派な経営に立ち戻っていくために合併という手段も必要ではないかということでお話をさせていただいたということでございます。
  144. 池田幹幸

    池田幹幸君 今では長銀の粉飾決算というのはもう明らかになっているわけですが、当時についてはそれは御存じなかった、こういうことですね。  しかし、おかしいと思うのは、その長銀の不良債権、大変な乱脈ぶり、こういったことも知らないで、そういう実態を知らないで合併を進めたと。最大限の支援をするという約束までなさったわけでしょう。これはおかしいじゃないですか。そうしますと、この合併話というのは、全く無責任な形で進められたとしか言いようがない。いかに金融システムの安定云々という大義名分があったにしても、当時の金融機能安定化緊急措置法、これに基づいてもおかしかったじゃないですか。
  145. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほど申し上げましたように、長銀の内容については、当時の公的なそれぞれの調査機関が示されておる数字そのものを信頼する以外になかったわけでございまして、私とて、当時の長銀の内容について、今にしていろいろ不良債権を含めて実態が明らかになりつつありますけれども、承知をしておらなかったことは、これはやむを得ないことではないかと思っております。
  146. 池田幹幸

    池田幹幸君 これだけ大きなことをやむを得なかったと言えるのはどういう神経かと私は疑うんですが、今おっしゃったように検査の実態を知らなかったとおっしゃるけれども、昨年の七月十三日から金融監督庁は検査に入っているんですね。これをやられたのは八月二十日、検査結果がほぼ公表される寸前ですよ。全然知らなかったんですか。
  147. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ちょっと局外者で申しわけございませんが、昨年、衆議院の委員会で御答弁をした記憶によりますと、監督庁としてはその段階まで長期信用銀行は債務超過と考える特段の理由がないというふうにおっしゃっておられましたので、総理大臣としてもそういう判断に従っておやりになったことと思います。
  148. 池田幹幸

    池田幹幸君 そういう経過があったことは事実です。しかし、監督庁がそういうのを全然知らなかったというのはまず考えられないんです。  といいますのは、検査中であったとしても、ともかくその時点では長銀が関連ノンバンク向け不良債権を甘く査定しておる、それから不良債権の飛ばしに使った受け皿会社の存在も把握していた、こういうことを当時から既に言われておるわけです。  とりわけ、それよりさらに前、九六年の大蔵検査の際に、長銀は回収不能債権が一兆円を超すということを既に内部調査で知っておって、自分で確認して、大野木元頭取が金融検査官室長に、宮川という人ですが、回収不能債権を圧縮するように依頼したと。結果的に長銀の回収不能債権は二千億円と査定されて、八千億円もの不良債権隠しが、結局これが積もり積もって九八年の粉飾につながったと言われているわけですけれども、このことも金融監督庁はつかんでいたんですよ。これは大蔵省の検査部から受け継いでおるということだったんです。結局、長銀が何のためにこんな不良債権を甘く査定したりするのか。これはもう不良債権隠しそのものが目的だったといって間違いないと思うんです。  そうしますと、総理はそういう長銀の実態、これはもうお構いなし、とにかく公的資金で合併させると。個別銀行の合併話に総理が乗り出すというのは異例中の異例だというふうに聞いておりますけれども、これが結果としては不良債権隠しの合併を進めようとした、そういうことになるのであって、この責任については重大だというふうにお考えになりませんか。
  149. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 当時の経過につきましては、金融監督庁長官もお見えでございますから、改めて御答弁もいただけたらと思いますが、当時としては、日本の金融システムが崩壊をするのではないか、ということは、これだけの金融機関がかりそめにもばたばたと倒れるというようなことになりましたら大変なことになる。それを救済するといいますか、それに対応する手法としての二法がまだ成立しておらない段階におきまして、あらゆる手段でそれぞれが生き延びていくということが必要であるということは、これは手をこまねいてそのまま御勝手にというわけには責任ある立場の者としては言えないわけでございます。  当時、長銀としては、申し上げたように金融機関としての再生のためにあらゆるリストラ策を講じていくということの方策を指し示しておりましたので、その方策に相呼応して金融機関同士の協力によってその事態を乗り越えることができればということで申し上げたわけでございまして、私がすべての事情を承知した上でこの問題について取り組んだ、こうおっしゃられるとすると、それはそうでないと申し上げる以外にないわけであります。監督庁長官からその時点における検査内容についてすべて公表されておらないことは委員も御指摘をされたとおりでございまして、公表されておらないことを総理大臣といえどもすべて掌握しているなんということはあり得ないことでございました。
  150. 池田幹幸

    池田幹幸君 私は、すべて知っておってやったというふうに言っているんじゃないんです。お答えが知らなかったということだったから、知らなかったことがこれは極めて重大だと言っているんです。  なぜなら、今お話ししたように、既に九六年の時点から長銀がそういうようなことをやっておるということは聞こえてきている。そうしますと、昨年の段階でももう既に債務超過ではないかということはこの国会でもやられていたんです。そういうことを全く考えないで、ともかく金融危機だ、金融システムの安定だ、大変だと。  それでは、債務超過があってもそういうことをあなたはやろうという考えでやられたのですか。債務超過だったらできないでしょう。だったら、債務超過かどうかもう一回きちっと調べろと、今検査をやっているんだと、なぜそういう指示をしないんですか。そういう指示もしないで、安易に、債務超過じゃないと聞いているから、それだけじゃないですか、あなたが言っているのは。そういう安易なやり方が問題じゃないかと私は伺っているんです。
  151. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) ただいまの長銀が債務超過かどうかということのお尋ねとして私たびたび国会でも御答弁申し上げさせていただいておりますが、八月二十日当時は、長銀の自己査定によりましても、あるいは既に行われておりました日銀の考査によりましても、債務超過であるといったような証拠といいますか、そういったものはございませんでした。  現に私どもが検査をさせていただきました結果、その結果は十月十九日に通知をしておりますが、十年の三月末における自己資本の額は五千百二十四億円ございまして、仮に当時の含み損益千六百八十四億円をここから差し引きましても、三月末時点では、バランスシート上もオフバランスの上でも債務超過ではございません。資産が超過でございました。  また、当時長銀問題がいろいろ論議されておりましたので、私どもといたしましては、三月末からさらに半年繰り下げまして九月末時点でも検査をさせていただきましたが、そのときも、オンバランス上は、自己資本額が大変薄くはございますけれども千六百億円ございまして、資産超過という状態でございました。  ただ、当時の株式市場その他を反映いたしまして、含み損益が約五千億円ございましたので、オフバランスを計上いたしますと、確かにこれは債務超過という状態になりますが、これはオンゴーイングを前提といたしませんで、長銀がみずから再生法の適用を申し出てまいりました結果、銀行法の規定によりまして、オフバランスも見るということから、清算価値といいますか、そういう観点から有価証券の含み損益五千億円を計上した結果は、清算価値としては債務超過になったということでございまして、少なくとも八月二十日の時点では、まだ私どもといたしましては債務超過というような認識は所有しておりませんでしたし、総理にもそういったことで私どもは御報告をしてきたわけでございます。
  152. 池田幹幸

    池田幹幸君 その答弁は、昨年の十二月、ことしの一月でも同じことをずっと答弁されているのでもう十分承知していることなんです。私が言っているのは、そういう形でいつまでもいつまでも債務超過でないと言い続けてきた。結果はこれ、粉飾決算だったということについてはっきりしたんですね。  あなた自身がずっとそういうことを言ってきて、合併まで推進しようとして、それに失敗してさらに公的資金をつぎ込んで国民の税金を大変むだ遣いさせておるということについて、今の総理の答弁だと、そのとき知る由もなかったんだから仕方ないんだと、これで国民に申し開きできるんですか。余りにも責任や反省がなさ過ぎるんじゃないですか。
  153. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 当時としては、日本の金融システムを何とか崩壊させないためにあらゆる手段を講じていかなければならないということは、むしろ責任ある立場の者としてはとるべき態度であったというふうに思っております。与えられた法律をもって現行のように処置をするという段階ではなかったわけでございまして、手をこまねいて成り行き任せというようなことはとるべきことではなかったと思っております。
  154. 池田幹幸

    池田幹幸君 それだと、超法規的な行動でもやりかねないように私には聞こえるんですよ。  先ほど言ったように、既に法律はあった。あの当時の法律からいきますと、債務超過だったらこれは公的資金を出せないわけですよ。だから、債務超過でない状態にしなけりゃならぬかったということでしょう、考えておられたのは。だから、余りにも暴き過ぎて債務超過ということになっちゃうと、これはもう公的資金をつぎ込めない。また長銀の側からいえば、要するに公的資金を受けるために結局粉飾決算までやったと。  結局、今の制度もそうですけれども、そのときにやった緊急措置法、金融機能改革緊急措置法ですか、これにしても、公的資金をつぎ込んでやるよということがあるから、銀行の側がそれを当てにして粉飾決算までやる。こういう形でモラルハザードを引き起こしてきているという面もあるんです。  そういうことももろもろ考えますと、今の答弁は、ともかく金融システムの安定のためには何をやってもよかったんだというふうにしか聞こえないんですが、そんなことが許されるはずないでしょう。もう一回あのときにきちんと調査をして、債務超過だったらどういうことをやらなけりゃいかぬのか、この先送り先送りで物すごく傷が深くなっちゃったわけですよ。国民の税金で負担する部分も膨れ上がったわけです。そういうことをあなた全然反省しないんですか。仕方なかったんだと、そういうお答え変化ありませんか。
  155. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 何も仕方がないと言って責任を放てきしているわけじゃございませんで、当時としては、今、金融監督庁長官が答弁申し上げましたように、債務超過になっておらないという状況の中で、先ほど申し上げたように、長銀のような金融機関が仮にも倒れるというようなことは大変大きなパニックを起こしかねないという中で、一体どうしたらいいかということを考慮したときに、長銀自身も生き延びるためには身を削って本当にリストラをして、そしてきれいな形で他の金融機関と合併していこうということを信頼したと。  信頼をいたしましたけれども、今日的にその結果が、検査あるいは考査の結果がこのようなことになり、かつまた現在は刑事事件にまで発展しておるということを考えると、まことに遺憾のきわみであると思いますが、当時として、長銀の内容について、不良債権が幾らあるか、そして債務超過にはなっておらないという監督庁の報告を得られれば、それを私としては信頼して対処するということは、これはいたし方のないことだと思っております。
  156. 池田幹幸

    池田幹幸君 結局だまされたと、だまされたのは仕方がなかったんだということですね。信頼した部下もだまされていたんだということじゃないですか、それだったら。だまされていただけで許されるんですか。  私は、もうこれ以上この問題をやっていたって仕方がないので次へ進みますけれども、本当に今の御答弁は納得いきません。  そこで、金融行革なんですけれども、国民が金融行政に求めている、このことについては結局金融の公共性、これを発揮させるために監督庁が金融機関の不正や不当な振る舞いをチェックして、権限を発揮して必要な指導を行うこと、今はそういうところにあるんじゃないかというふうに思うんです。    〔理事石渡清元君退席、委員長着席〕  そこで、今大きな焦点になっておる問題に貸し渋りの問題があります。金融被害への対策も問題になっております。これらに対する金融監督庁、金融再生委員会の対応はどうかということなんです。貸し渋りの問題と消費者保護の問題、この二点にわたって伺いたいと思います。  まず、貸し渋りです。貸し渋りの解決は何とか景気を回復させたいという国民の願いにこたえる上で欠くことのできない問題ですが、我々もこれは国会で何度も取り上げてきました。  政府は、二十兆円の保証協会の特別保証制度を設けるなどしました。しかし、銀行は一向に貸し渋りをやめない。それどころかますます強めるばかりで、四月に続いて五月も銀行の貸し出しが最大の落ち込みを記録しました。これは日銀の速報です。銀行を監督する立場の金融監督庁の責任が厳しく問われておるわけですが、もう十七カ月連続で貸し出しを減らしている。中には、前年比で一〇%以上も減らしている銀行すらあります。  こんなことをしている銀行に、これまで金融監督庁は具体的にどういった指導をしてこられたんですか。
  157. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) いわゆる貸し渋り問題につきましては、政府におきましてこれまで、ただいまお話のございました信用保証協会等の信用補完制度の拡充、早期健全化法による新たな資本増強制度の創設、あるいはまた政府系金融機関による中小・中堅企業等に対する融資制度の拡充などの措置が講じられてきたところでございます。  そこで、金融監督庁においてどういうことをやっておるかというお尋ねでございますが、まず私どもといたしましては、金融機関との間の情報交換会などを通じましてトップに対しまして貸し渋り防止の要請を行っております。また、金融関係団体における苦情相談窓口の周知あるいは相談窓口における苦情相談状況の報告徴求を行っております。また、銀行や信用金庫に対する債権管理体制、信用保証協会の保証つき融資の実態等につきましての報告徴求も行っております。またさらに、都道府県単位での金融関係団体、商工会議所等の中小企業団体、政府系金融機関等を構成メンバーとする地域融資動向に関する情報交換会などを開催しておりますし、またさらには金融に関する相談電話というものを設置いたしまして円滑かつ迅速な処理を行うための音声自動応答システムの運用を開始して、そういった措置を講じているところでございます。
  158. 池田幹幸

    池田幹幸君 再生委員会が求めておる経営健全化計画、これのフォローアップは監督庁じゃなしに再生委員会がやっておられるんですか。今の答えになかったですね。
  159. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) これはどちらがやっているかというと、細かいところは監督庁が監督の一環としてやってくれている部分もありますが、当然に我々再生委員会の方もそのような資料を見て今後のいろいろな施策について検討するという意味では責任を担っている、こういうことでございます。
  160. 池田幹幸

    池田幹幸君 そうしますと、そのフォローアップについて伺いたいんですが、三月末に七兆四千六百億円の公的資金注入をやりました。今の時点で、この注入を受けた銀行が貸し渋りを減らした、もうほとんど貸し渋りはなくなったと言える状況にあるのか。四月、五月の実態はいかがでしょうか。
  161. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 今、池田委員からは四月、五月の実態はどうかと、こういうお話でございましたけれども、今この健全化計画のフォローアップとして私どもが報告を徴求いたしましたのは、この計画のスタート時点である三月末の計数でございます。  それによりますと、ちょっとお聞き取りいただきたいわけでございますけれども、中小企業向けの貸し出しに限って申しますと、当初、この計画のスタート時点である三月末の残高見込みに達し得なかったということでございます。全体で百十四兆千百七十七億円の見込みに対して百十三兆四千二十三億円ということで七千百五十四億円の未達と、こういう結果でございます。なお、比率にいたしますと〇・六三ということでございます。  この中身を申しますと、ある一行が非常に未達の金額が多うございました。その内容を私ども聞いたわけでございますけれども、前期、つまり十年度の上期の実績で非常に中小企業向け貸し出しが伸びたものですからそれと同じような基調でもって伸びを見込んだ、ところがそこまで達し得なかったということでございます。  そういうようなことで、私どもの健全化計画としては、いわば四月以降が私どもの計画の範囲とも言えますので、この一カ年度間に当初資本増強した十五行については三兆円の中小企業向け貸し出しの増加を見込んでおりますので、これの確保に向けて私どもとしては今後の足取りをきっちりウオッチしてまいりたい、このように考えているところです。
  162. 池田幹幸

    池田幹幸君 七千億円見込みより減った、少なかったと。これは後でちょっと伺いますが、四月、五月の数字は出ていないということなんですが、これはいつ、どれぐらいの間隔で銀行から報告を求めているんですか。
  163. 森昭治

    政府委員(森昭治君) お答え申し上げます。  半期に一度報告を徴求し、公表することとしております。
  164. 池田幹幸

    池田幹幸君 それでは余り役に立たないんじゃないですか。中小企業は本当に貸し渋りに遭って、きょうのあすにも金を借りたいというようなところすら、我々のところにまで助けてくれと言ってきている状況ですよ。半年間に一回調査しておったんじゃ、その半年後の調査が公表されるのはどうせまた三、四カ月後でしょう。そうでしょう。六カ月後にとって、その場ですぐ出るわけじゃないでしょう。そうすると、六カ月よりさらにまた後ろへずれ込むわけですよ。こんなことをやっておったんじゃ本当に間尺に合わないということを申し上げたいと思うんです。もうその答弁はいいです、そういうものなんですから。  それで、先ほどの答弁について伺いたいんですけれども、七千億円のことについて伺いたいんですが、六月二十一日の報道では何か五千億円ぐらいということだったんですけれども、正確には大体七千百数十億ということなんですね。  それでは、こういうふうな未達成の銀行の数というのはどれぐらいあったんですか。
  165. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 池田先生、一言だけ、先ほどの質問について。  私どもの委員会の報告徴求、これは法律に基づく報告でございますが、これは今、事務局長が述べましたように半期に一度という公式の書類によらざるを得ませんからそうなっておりますが、他方、監督庁は、先ほどちょっと私が触れましたように、よりきめ細かいモニタリングをいたしておりますので、そのモニタリングは三カ月に一度というように私はちょっと記憶いたしておりまして、そういうような過程の中でヒアリング、別に形式を整えた報告書ではなくてヒアリングという格好でこれらの問題についてもフォローをしてまいりたい、このように申し上げておきます。  なお、未達の銀行、金融機関の数でございますが、八行でございました。
  166. 池田幹幸

    池田幹幸君 十五行のうちの八行ですから半分以上ですね。その八行に対してどうするかという問題なんですが、約束どおりふやせなかったわけですね。約束どおりふやせなかった銀行に対してはどうするんですか。ペナルティーか何か科すんですか。
  167. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) これはどういうふうに申し上げたらいいか、私どもがお願いしておる計画の対象としてはあくまで四月以降ということで、その四月以降の一カ年度間に三兆円の中小企業向け貸し出しをすることによって計画を完遂し、またいろいろな各方面の計画の充足を図っていく、こういうことでございます。収益を上げて私どもの回収の原資を積み上げていく、こういったような計画になっておるということでございます。
  168. 池田幹幸

    池田幹幸君 ですから、半期ごとに法律上見て、来年三月という時点で何とか考えましょうということでしょう。それは遅過ぎるじゃないですか。第一、ことしの三月のことについても、先ほど言われたように既に去年の三月に比べてふやす計画を持ったわけでしょう。それは一時期、少な過ぎるからちょっとふやしてくれという指導までしてふやしてもらったでしょう、銀行に要請して。その数字が今度わかった。ふえていなかった、八行にわたって未達だったということですよね。ちょっと間違っていたら言ってください。
  169. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) これから計画をスタートさせるそのスタート時点の見込み数を聞いてあった、これが未達であった、こういうことを申したということでございます。計画の対象期間はあくまでも四月以降である、こういうことでございます。
  170. 池田幹幸

    池田幹幸君 それにしても、それぞれの銀行から大体目標を出してくれということでとってやったわけでしょう、ことし三月のスタート時点の見込み数字は。それを達成していなかった。達成していなかったならもうこれで何も問題ないんですか。全然問題にしないんですか。だったら、今度、来年になって、ことしの三月に比べて来年の三月また未達の銀行が出てきた、あるいは半年間でもいいですよ、未達の銀行が出てきた、どうするんですか。
  171. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) この計画の発足時の未達についてどこまで私どもがとがめ立てをするかということについては、私どもとしては、理由がしっかり説明できればそれはそれで、それをそのスタートとして計画の実現を求めていくということでございます。何となれば、私どもは三月末の決算というものに適合するような資本増強を行ったわけでありまして、その増強された資本金を使って計画の実現を求めていくというのが私どもの立場でございます。  したがって、これからいろいろフォローアップをして計画の実現を求めていくわけですが、これは何も借り手である中小企業の立場からだけその実現が求められるということよりも、金融機関自体がそこから収益を上げ、そして私どもにとりましては回収の原資を積み上げていくという必要性から求められていることでありまして、私どもとしてはこれは無関心ではいられないということで、そのような状況が現出する場合にはできる限りそこに一番適合した措置を今後とっていく、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  172. 池田幹幸

    池田幹幸君 後者のことについては、それは銀行なんだから当たり前で、自分からもうけるためにやらなけりゃいかぬことですよね。今、これをやろうとしているのは貸し渋り対策なんですよ。中小企業への貸し渋りを減らそうじゃないか、中小企業への貸し付けをふやしてくれ、ふやしなさいということでやっていることなんですから。スタートの時点でもう、今非常に経済が大変なときだからこそスタートの時点でもう少しかさ上げしようとやってきたわけでしょう。それを達成しなかった。達成しなかったらそれはそれで仕方ないなということで終わるということは、私が先ほど質問したのは、そういう姿勢だと、ことしの三月に比べて来年四月あるいは半年後、未達だというときにはどうするんですかと伺ったんです。達成しなくてもおとがめなしですか。何にもそれを規制する手だてはないんでしょう。そんなことだったら、幾らこれをやったって、言うことを聞かなければ、はいそれはそのままということになってしまうじゃないですか。余りにルーズじゃないですか。
  173. 森昭治

    政府委員(森昭治君) お答え申し上げます。  先ほど委員長が御答弁なされましたように、この三月末に比べまして来年の三月末、十五行合計で約三兆円の増額、各行の見込みの合計がそうなっております。  今の御質問の趣旨は、それが各行ごとに達成されなかった場合にどうなのかという御質問と理解いたしますけれども、基本的には我々はそれを達成さすべくフォローアップの過程において努力を促していくということでございます。  仮にも達成されなかった場合にはどうなのかという御質問かと思いますけれども、それはそこに至る原因と申しますか、どういう過程をたどって達成できなかったかということについて我々は究明させていただきます。それが経済全体の予想しない落ち込みによる資金需要の減とかそういうやむを得ない事由であるのか、あるいは各行がその努力を怠ったのか、それによる違いをも我々は考慮しなければならないと考えております。
  174. 池田幹幸

    池田幹幸君 何にも答えていないじゃないですか。天変地異か何か知らぬけれども、各銀行の個別の理由に属さない理由によってなったんじゃなしに、要するに個別の銀行の理由で中小企業向けをふやさなかった、そのときどうするかと聞いているんですよ。何にもやる手だてがないでしょう。それじゃ余りにもルーズじゃないですか。
  175. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 今、先生のお話の前提は、計画経済でございましたらそれはそういうことも可能かと思います。しかし……(発言する者あり)いや、私どもは、計画の未達が私にとって納得のいかない事情からきている、今まさに先生が指摘するような、貸し出しの増加が期待できる環境でありながらそういうことをしていないという場合には、我々には我々のいろいろな手段がありますから、法令上の許された一番適切な手段を講じていく、こういうことを申し上げている次第であります。
  176. 池田幹幸

    池田幹幸君 法令上でやるといったってやりようがないでしょう。健全化計画に盛り込んだ、達成できませんでした、どうされるんですか。やりなさい、あるいはペナルティーをかける、何かできるんですか。  もう時間がなくなったからいいです。ともかく、計画経済とかそんなんじゃないんですよ。それだったら、何で経営健全化計画を出させるんですか。余りにもばかげた答弁ですよ、そんなのは。そういう答弁は私は答弁としては受けません。  もう時間もなくなってきましたので次に進みたいんです。まだもう一つあるんです。要するに、分けたことがどうかということについての、さらに次の問題に移っていきたいと思います。  次に、消費者保護の問題です。  消費者保護についてはいろいろトラブルが起こって大変な状態になっております。さまざまな金融商品による消費者被害問題が深刻になってきているわけです。これからビッグバンが進んでいきますと、ますます新しい金融商品が出回って被害者もふえてくるということが予測されます。  そこで、金融行政にも消費者保護の視点が求められているわけなんですが、大蔵省が金融行政を所管していた当時、金融被害の対応については法律ではなしに通達でやっていたわけですね。通達は、大蔵省の地方窓口、財務局で金融機関に対する苦情を受け付けたときは、金融機関に対し取引内容について説明を求め、申し出られた苦情についての見解等を聴取する、金融機関側に行政指導基準等に照らした不公正な取り扱いを行っていると認められる場合は金融機関を指導して是正させる、こういうふうになっておりました。  この通達について、今どのような取り扱いになっておるでしょうか。
  177. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  金融機関に関する苦情相談につきましては、自己責任原則のもとに金融機関みずからが適切に対応すべきものでございまして、金融機関やあるいは金融機関の協会等の窓口における苦情相談体制整備していくことが必要と考えているところでございます。  こういった観点から、金融監督庁といたしましては、昨年九月に「金融機関に関する苦情相談窓口の周知等について」というものを発表させていただきました。ここで、金融監督庁といたしましては、所管金融機関の協会についての苦情相談窓口の一覧を財務局等を通じて頒布するほかインターネットに掲載する、あるいは各協会に対しても傘下金融機関等を通じて苦情相談窓口の広報を求める、金融監督庁としては各協会から毎月苦情相談の実施状況についての結果報告を求める。それから、先ほども御答弁申し上げましたが、苦情の円滑かつ迅速な処理を行うための音声自動応答システムというものを設置させていただきました。  先ほど、通達はどうなっているかというお尋ねでございますが、これは大蔵省当時に、昨年六月になりますが、この六月の通達が改正されまして、金融機関に関する苦情相談を受けた際には、当局として個別取引に関して仲裁を行う立場にないことを明確に伝えるとともに、必要に応じ金融機関及び金融関係団体の相談窓口を紹介するという、そういった事務ガイドラインが定められたところでございます。金融監督庁といたしましても、このような考え方をそのまま引き継ぎまして、現在苦情相談対応を行っているところでございます。
  178. 池田幹幸

    池田幹幸君 三分お答えになったんだけれども、前の二分は先ほどの話で全然関係のないこと、残りの一分だけでちゃんとしたお答えをいただいた。これは私は非常に残念なんです。もう時間が少ないのでそういうお答えはやめていただきたいのです。  要するに、大蔵省通達はなくして金融監督庁がこういう新たな通達を出しました、こういうことですね。  そこで、結局、今言われたように、監督庁になってからはもう受け付けない、個別の苦情は。来たら金融関係機関の相談窓口に行け、こういうことですね。  この金融機関の相談窓口とはどういうものかというと、これは銀行よろず相談所という形で設けられております、銀行協会に。設けられておりますけれども、結局ここに消費者代表なんかは入っていないんです。銀行側の方だけなんです。だから、貸し渋りをしている銀行に行って貸し渋りするなと言ったって、そんなもの相談に乗ってくれるわけないじゃないですか。そういうところに行けというのが今の金融監督庁のやり方なんです。きれいですね、言葉は。自己責任の貫徹ですか、自己責任。金融被害を見ても、消費者の方は本当に情報が少ないわけですよ。取引関係だって対等平等の取引なんて言えないです。プロとアマの関係ですから、赤子の手をひねるようにやられているわけだ。そういうことで、相談に行く、行ったら受け付けてくれない、こういったことが今起こっているわけです。金融監督庁はまさにそのとおりの指導をしているわけです。  大蔵省の時代はこういうことがあったわけです。しかし、実際にやってきたかどうかは、これは別問題ですよ、実際にあったかどうかは。これは実際に調べてみますと、金融機関による被害救済を大蔵省に訴えていってもほとんどまともに聞かれなかった、金融機関への指導もやろうとしなかったという声が聞かれます。しかし、少なくとも体制上はこれはあったわけです。苦情を受け付けて訴えに基づいて調査をする、それから是正の指導を行うと。ちゃんと決めていた。今度はそれをなくした。結局、国民にかかわるサービスを切り捨てる。これがいわゆる小さな政府行政改革の本質です。これがここに本当によくあらわれていると私は思います。  いろいろ聞きたいのですけれども、次の問題もあります。この問題はそれで終わらせたいと思うんですけれども、不良債権の先送りとか貸し渋り、消費者保護と、こう見てきたわけですが、結局、国民が金融行政改革に求めているのはこういった銀行甘やかし行政ではなくて、政官財の癒着を断ち切ること、銀行を厳しくしつけるということだと思うんです。しかし、やってきたことは今言ったようなことで、全く甘い、甘やかしもいいところだというふうに思います。しかも、公的資金まで投入してやる。これでは結局金融監督庁が金融庁になっていったとしても同じようなことが起こるんじゃないかと思うんですね。  大体、柳沢さんなんかは、まだ長官になる前、二年前の九七年には、この金融監督庁が設置されるときに質問して、企画部門と実施部門の分離よりも、それも大事だけれども検査と監督を分ける方がもっと大事だという主張をしておられました。この検査・監督はちゃんと分かれてきたけれども、金融監督庁ができた、再生委員会ができた、しかし何も進んでいないじゃないですか。もう今話したような形ですよ。金融監督庁なんてやることもやめちゃったというわけです。大蔵省がやっていたことすらやめちゃった。せっかく監督を分離して、分離したらよくなるのかと思ったら、そこでやらなくなっちゃったというんでしょう。こんな現象が起きているわけですね。  今度、金融庁ができる、そこに企画立案が行く、こうなると、柳沢再生委員長なんか自己矛盾じゃないですか。今度は企画部門までくっついちゃう、検査も監督もくっついちゃう、全部くっついちゃうじゃないですか、一つに。それが今度の省庁再編にあらわれている金融庁問題です。  それはちょっと余談なんですけれども、結局そういうことになってしまうということで、なぜこんなことが起こるのか。私はやっぱりその背景に太田総務庁長官が言われた政官財癒着の問題、ここにメスを入れなけりゃだめだと。  ともかく分離はいいでしょう、分離は。しかし、分離しても個々に癒着しておったのでは同じことになるわけですから、やはり個別立法で、私たち日本共産党が言っているように、政治献金の禁止、天下りの禁止、こういったものがあわせてやられなければいけないだろうというふうに私は思います。  最後に、総務庁長官においでいただいて全く聞かないということは申しわけないので、一つだけ伺っておきたいと思います。本当は経済財政諮問会議の問題について私ちょっとやりたかったんですけれども、時間がなくなりましたので簡単に聞かせていただきます。  まず、最終報告で、「本来国民の利益を守るべき施策や規制が自己目的化し、一部の人びとの既得権益のみを擁護する結果を招いたり、」云々というのがありまして、そういうふうなことになっちゃいかぬということが書いてあります。これはそのとおりだと思うんですね。  今度この諮問会議というのはわずか十名の議員でやるわけで、そしてその議員は全部総理大臣が選びます。民間から四名以上。半分、五〇%占めてもいいわけですね。それ以上でもいいということになっております。選ぶのは総理大臣なんですね。こうしますと、一部の人々の利益を代表するような人を選ぶ、そういう結果を招くおそれはないのかということなんです。仕組み上はそれは防げないでしょう。
  179. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) まさにそこが総理大臣の政治責任で行うことであって、結局、総理がみずからこの人の意見を聞きたいという人を各界から探してそこの委員になってもらうわけでありますから、そのときにだれを選んでくるかということでまた総理の見識も知られることになるし、そしてそこで議論されることもみんなが注目することになるわけでありますから、それがまさに全国民を代表する国会で指名された総理政治責任そのものであるということになります。
  180. 池田幹幸

    池田幹幸君 これは内閣機能の強化、それから総理のリーダーシップを強めるというそちらの方針で出されてきたことなんだけれども、しかしこの経済財政諮問会議というのは余りに大事なことをやるんですね。経済、財政の運営の基本、予算編成の基本方針等々、最重要な経済施策課題を全部ここでやるわけです。ここで案を作成して閣議にかける、こういう形になるわけです。閣議にかけるときには、議長が総理大臣なわけだからまさにそのまま通っていっちゃう、ほとんどそのまま通ることになりますね。  今、総理大臣のリーダーシップと言われたけれども、結局、法的には総理の権限だからどんどんできる。そうすると、総理が高潔な人物であれそうでない人であれ、仕組みの上で勝手な選び方ができないようにしておくというのが民主主義の必要なことだと思うんですよ。  それは閣議で決定すると。それはいろいろありますよ、国会でのチェック機能をまた別につくっておこう、いろいろあるでしょう。しかし、これは最終報告でも言っているけれども、いろいろなところで、いわゆる抑制均衡のシステム、こういったものはつくっていかなければいかぬのだと、あなた方の最終報告でもこれを言っている。  そういうことを見るときに、このやり方でいくと、結局私は財界からの人をどんどんどんどん入れていくことになるんじゃないか。特に、私が非常に注意したのは行革会議、ここでこれを決めてきたわけだけれども、つい最近の「経団連くりっぷ」を読みますと、そこでは大変なことを自画自賛しています。経団連の産業本部長が書いているんだけれども、中央省庁再編法案は経団連の豊田名誉会長が参加した行革会議でやったし、今井会長がこれをリードしてやってきた、その監視のもとにこれをやってきたと言って、そして今度、議員の構成の面でも産業界に配慮されることになったと、こういうふうに堂々と書いているんです。  これは、総理が選びますと、一方的に財界に偏った人を選びませんと衆議院の答弁でも言っています。しかし、選ばれる側の財界はやっぱり財界代表という気持ちでこうやって出てくるんですよ。こういった選び方ということはする。小渕総理、二〇〇一年に総理をやっておられたら、まずあなたが最初に選ぶわけだ。
  181. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 時間でございます。
  182. 池田幹幸

    池田幹幸君 終わります。最後にそれだけ御答弁してください。どう考えますか。
  183. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 議会制民主主義の中で選ばれた責任ある内閣総理大臣として見識を持って対応されると思います。
  184. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。何点か質問をさせていただきたいと思います。  まず、お忙しい中、官房長官沖縄開発庁長官もおいででございますが、開発庁長官に対する質問は一点のみでございますので、それに関連する防衛庁長官への質問から先にやらせていただきたいと思います。  去る三月二十五日に嘉手納弾薬地区七十六・八九ヘクタールが返還をされました。ところが、去る六月二十四日の関係地主への引き渡し期日になって、環境基準をはるかに上回る有害物質が検出をされた、こういうことで大変大きな問題になっているわけでありますが、防衛庁長官、この嘉手納弾薬地区の返還地域における有害物質の検出調査、どういう手法でどういう業者に依頼をしてなされたのか、そしてその結果の詳細についてまずお教えいただきたいと思います。
  185. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ただいま委員が御指摘になりましたとおり、三月二十五日に返還された嘉手納弾薬庫地区の一部土地につきまして、私どもは返還後の跡地利用に支障が生じないように、原状回復の一環として、米軍による施設の使用実態を考慮し、土壌分析調査、油分の含有量調査及び不発弾探査を実施した次第でございます。  土壌分析調査の過程におきまして、返還土地に所在する油送管のバルブボックス、これは二カ所ありますが、その二カ所のうち一カ所から土壌環境基準を超える六価クロムが検出され、もう一カ所から同基準を超える鉛が検出されたため、さらに詳細な調査を実施し、当該箇所の直下部及び周辺部をボーリング調査した結果、いずれも物質は検出されなかったという経緯であります。  検査を委託しましたのは専門業者の南西環境研究所でございまして、まず油送管部分の二カ所のバルブボックスの底辺の土壌、これは深さが十五センチぐらいでありますが、ここから土壌基準を上回る鉛、これは環境基準が一リットル当たり〇・〇一ミリグラムでありますけれども、検出されたのは〇・一二二ミリグラムであります。六価クロムは環境基準が〇・〇五ミリグラムでございますが、検出されたのは〇・〇七ミリグラムでございます。  そこで、ただいま申し上げましたとおり、この深さ十五センチのところだけではなくて、直下部分と周辺部分を詳細にボーリング調査した結果、いずれも有害物質は検出されなかった次第でございます。一部報道にカドミウムが出たという沖縄の新聞記事がございましたが、これは六月二十四日でございますが、カドミウムは全く検出されていない。報道が誤りであったのであります。  また、油分の含有量調査について、油分は検出されませんでした。また、不発弾探査についても、不発弾は発見されなかった次第であります。  なお、調査で採取した汚染土壌につきましては、土壌分析調査を依頼した南西環境研究所が現在保管しており、今後環境庁の環境基準に基づき適切に処分することと相なっております。
  186. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 長官、環境調査の結果、防衛施設庁は六月初旬にも報告を受けておった、しかしながら引き渡しをするその当日まで沖縄県や地元の読谷村や、それから関係地主に一切連絡をしなかった。なぜ連絡がおくれたのでしょうか。そのことを端的にお教えください。
  187. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 那覇防衛施設局は、今、委員が御指摘の六月初旬じゃございませんで、六月十七日に調査を受注した業者からバルブボックス底部で土壌環境基準を超える六価クロム等が検出された旨報告を受けましたので、もっと詳細な調査をしよう、こういうことでボックスの下の部分とそれから周辺部分につきまして詳細な調査を行う必要があると判断し、翌十八日、受注業者へ再び調査を依頼したのであります。この業者は二十日、二十一日に詳細な調査を実施し、二十三日に分析の結果が判明したわけでありますので、その翌日、引き渡し予定日である二十四日に公表することとなったわけであります。
  188. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 野中長官に一点お伺いをいたします。  地位協定四条によりますと、返還される軍用地をもとどおりにする義務も、それから補償する義務もアメリカ軍には課されていないわけであります。したがって、かねてより沖縄県では、国の責任で返還軍用地の事前の環境調査を実施して、そして環境浄化を確認して返還実施計画をつくるべきであるというふうに言っております。そして、今回のいわゆる軍転法の改正の中にもその趣旨を盛り込んであるわけであります。  問題は、今度の嘉手納弾薬庫地区の返還に際して、地主は再調査を今防衛施設庁に要求して、そして返還の受領を拒否しているわけです。受領書を提出していないわけです。しかしながら、防衛施設庁は、もう返した、しかもこれ以上再調査の必要もないのだ、こういう言い分でございまして、既に軍転法による補償期間の三年の期限の始期が始まった、到来した、こういうふうな立場のようでございますが、沖縄開発庁長官として、地主や県や当該読谷村が不安に思い、再調査を求めている件についてどのようにお考えなのか。それから、受領をまだしていない段階で軍転法の補償期間が過ぎていく、開始されるということについてはどういうふうにお思いになっておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  189. 野中広務

    国務大臣野中広務君) 先ほど嘉手納の弾薬庫地区の一部返還の土地におきます土壌汚染問題につきまして、防衛庁長官から詳細に御報告、御答弁があったところでございます。今回の調査の結果、有害物質調査につきましては、米軍による施設の使用実態を考慮し所要の調査を適切に実施したものでありまして、再調査を行う必要は私どもとしてはないと考えておるわけでございます。  残念ながら、防衛庁長官からも話がありましたように、返還を行うためのいわゆる軍用地主との会合を二百十八名の皆さんに御案内申し上げ、百五十名の皆さん出席をしていただいたその朝、沖縄タイムスが御承知のようにこの中にいわゆる一切なかったカドミウムが含まれておったといったような報道がありましたために、地主間に動揺が起きたことは私どもも承知をしておるわけでございます。しかし、那覇防衛施設局がこの調査結果を資料をもって詳細に説明いたしました結果、この返還地を引き渡すことについて一応の御理解がいただけたと承知をしておるところでございます。説明会におきます他の地主の個々の要望につきましては、引き渡し後の原状回復措置の中で適切に対応をしていかなくてはならないと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、米軍基地の返還に伴いまして生ずる環境問題等につきましては、関係者の不安が解消されるよう誠意を持って適切に対処していくことが重要なことであると認識をしております。
  190. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは総理に、基地問題それからサミットの問題等について質問をいたします。  総理は、ドイツのケルンにおける日米首脳会談で、アメリカのクリントン大統領と沖縄の基地問題についてもお話をされたというふうに思いますけれども、クリントン大統領と在沖米軍基地の問題についてどのような話し合いがあったのか、お教えいただきたいと思います。
  191. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先般、ケルンにおきましてサミットの折、日米首脳会談を行うことができました。この際に、沖縄の基地問題につきましては、私からSACOの最終報告の着実な実施について引き続き日米間で緊密に協力していきたい、普天間飛行場の移設・返還問題についても、これまた緊密に協議していきたい旨発言を申し上げました。これに対しクリントン大統領から、来年のサミットが沖縄で開催されるのは大変結構なことである、基地問題に関しては進展を期待しているとの趣旨の発言がございました。
  192. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 総理がお帰りになるまでの間、多くのマスコミ報道によりますと、その際にクリントン大統領は総理に対して、沖縄サミットまでに普天間飛行場の移転などの大幅な進展を求めた、あるいは迫った、こういうふうに各紙が、各マスコミが報じておったのでありますが、それは事実なんでしょうか。
  193. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 各マスコミの報道ぶりについてすべてを掌握しているつもりはありませんが、今私が申し上げたような趣旨でございまして、私としては、この沖縄の基地の問題については、申し上げたようにSACOの最終報告を目指して政府としては努力をしておるということでございました。それに対してクリントン大統領は、そうした方向についてさらに日米間で緊密に話し合いをしながらその努力を多としていきたい、こういうことでありました。
  194. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 きょうの本会議でも、私は緊急にクリントン米大統領の去る二十五日の記者会見における発言を取り上げましたけれども、ケルンにおける日米首脳会談で、クリントン大統領が沖縄に行くことを楽しみにしている、そして沖縄開催を決定した総理の英断を高く評価をした、こういう報道がございました。そして、先ほど申し上げましたように、沖縄サミットまでに普天間飛行場の移転などの大幅な進展を迫った、こういうふうなこともあったわけであります。ところが、二十五日の記者会見では、基地問題が未解決な状態で沖縄に行きたくない、要するにサミットまでに普天間飛行場の移転問題に決着をつけるように、こういうふうなことを大統領が述べたと。つまり、サミット出席のために沖縄に到着するまでに残るすべての問題解決ができるように希望した。見方によっては、アメリカ政府が来年の七月の沖縄サミットを普天間飛行場の移設・返還問題の事実上の期限とみなした、こういうふうにも受けとめられるわけであります。  今、このクリントン大統領の記者会見における発言をめぐっては、開催予定地の名護市長も大変驚き困惑をしている、こういうことをマスコミに語っております。多くの県民がそういう思いをしておるのではないかと思うわけです。サミットを機に沖縄から世界に平和を発信したい、こういう県民の願いが、この発言によって、またぞろ基地とサミットがリンクをするような、そういうふうな大統領の発言で今大きな混乱を招いているわけであります。  改めてお聞きしますが、普天間飛行場の移設・返還問題、これについて事実上の期限を付した、こういうふうにはお思いになっていないんでしょうか。またそうであれば、このサミットと普天間飛行場返還問題について現段階で政府としてはどのような基本的な考え方を持っておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  195. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) クリントン大統領は普天間の問題が解決しなければ沖縄に行かないなどということを先生どこでお聞きになったか、どこでごらんになったか知りませんが、さようなことは私は一切お聞きをしておりません。  先ほど申し上げましたように、SACOの問題について日本政府としても最大限努力をしておるということでございますし、米国としても、そうした方向に向けてよき方向が生まれることは望ましいと、こう申し上げておるわけでありまして、今、先生のようなお話をされたということを前提にして世論が形成されるということになると大変な私は誤りになると思っております。その点については、クリントン大統領のその後の記者会見について今日先生からも本会議でお尋ねをいただきました答弁のとおりでございまして、普天間飛行場の移設・返還問題を含めまして沖縄の基地問題について、明年のサミットの沖縄開催との関係はなく政府といたしましてはその早期の解決に努めてきているところでございまして、クリントン大統領が沖縄サミットと引きかえに普天間問題の解決を迫ったなどということは全く我々は解釈をいたしておりません、記者会見につきましても。
  196. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 これは、総理、もちろん私が記者会見の場に同席していたわけじゃありませんよ。ところが、この問題についてはもう連日のように地元紙でこの記者会見における大統領の発言要旨含めて詳細報道されているわけですよ。現実に、またそのことによって県やそれから名護市なども非常に困惑をしているわけです。  私は、沖縄の基地問題の解決というのは、県民感情を無視して日米両政府で頭越しに決着を図れるような問題じゃないと思うんですね。そういう意味でも、もしそれが一方的なアメリカ大統領の発言であるというのであれば、やはり県民、国民含めて納得できるような私は毅然とした政府の対応を強く求めておきたいというふうに思っております。  次に、沖縄で来年七月二十一日からサミットが開かれるわけでありますが、御承知のように沖縄県は明の時代から中国と四百年ないし五百年にわたる交易、交流の深い歴史を刻んできたわけであります。それで県内でも、この九州・沖縄サミットを名護市で開催するときに中国をオブザーバーとして招待することについて日本政府が積極的に働きかけたらどうだろうか、こういう意見が多数あるわけでありますが、中国のオブザーバー参加、招待ということについて総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  197. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) サミットは共通の価値により結ばれた主要な民主主義工業国の集まりでありますが、外の世界に向かって閉ざされてはならず、これまで我が国はサミット前後に中国との対話を実施してきたところでございます。  他方、中国のサミット自体へのオブザーバー参加につきましては、中国が希望するか否かの問題もありますが、一般論として申し上げれば、参加国の拡大につきましては、オブザーバー参加も含めメンバー間の議論や政策協調の有効性を基準として細心の検討が必要と考えておりまして、現時点におきましてはそのようなことを考慮することにはならないかと存じます。
  198. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 外務大臣に一、二点お伺いをいたします。  先ほどはサミット開催、普天間基地の移設問題との関係でクリントン米大統領の発言を取り上げましたけれども、斉藤駐米大使が六月二十二日の記者会見で、来年の九州・沖縄サミットの沖縄県名護市における開催と関連して、サミットが近づかないうちに普天間飛行場返還問題の実質的な進展を見たいと希望している、こういう発言をされた。すなわち、沖縄サミットの前に普天間問題の大幅進展が図られることに強い期待感を表明したというふうな趣旨の新聞報道が地元紙でも大きく報じられておりました。また、クリントン発言と絡んで、斉藤大使の発言こそが日本政府の本音ではなかろうか、こういうふうに論ずるマスコミもあるわけでありますが、この斉藤駐米大使の発言について、大臣はどういうふうに受けとめていらっしゃるんでしょうか。
  199. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 二十二日の斉藤大使の記者会見でありますが、その記者会見におきまして斉藤大使が述べていることでありますが、基地の話と沖縄サミットは直接には結びつかない話だ、それが日米両政府考え方だ、サミットがあるなしにかかわらず、基地問題の解決、特にSACOの合意の早期実施に向けて全力を挙げてやっていくべきであり、今の日米政府間の行うべき作業の最も重要なものの一つだと認識している、こういうふうに斉藤大使は明確に述べているわけであります。  これがまさに日本政府の本音でありまして、普天間飛行場の移設・返還問題につきましては、政府としてはこれができるだけ早く解決できるよう努める等、SACO最終報告の着実な実施に向けて全力で取り組んできたところであります。そのような意味で、普天間飛行場の移設、返還問題は、来年の九州・沖縄サミットの開催と直接関連するものではありません。  政府といたしましては、今後とも稲嶺知事を初め県や地元の御理解と御協力を得つつ、本問題の解決に向けて最大限努力していく所存でございます。
  200. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今、外務大臣の御答弁をいただきましたけれども、地元の県やそれから市町村や多くの県民は、このサミットと普天間飛行場の移転問題がリンクをして、そして早目に早目に決定するようにということで県に対して圧力が一段と強まるのではないか、こういうふうに心配をしているわけであります。フォーリー駐日大使も、ことしじゅうに普天間飛行場と那覇軍港問題で目に見える進展を達成できることを望みたい、こういうふうな趣旨のことを毎日新聞とのインタビューでも述べておられるわけですね。  私は、せっかく沖縄で今世紀最後のサミットが開催をされるわけでありますから、基地問題と絡めることがあってはいけない。そして、世界の首脳に基地沖縄の実態をつぶさに見ていただいて、沖縄の歴史や文化や人情に触れていただく。その中から、沖縄から世界へ向けて平和が発信できるようなそういうサミットにするべきである、してほしいということを強く申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので先に進みますが、情報収集衛星の問題について、どなたか担当者は来ておりますか。──それじゃ情報収集衛星、いわゆる偵察衛星の受信局の建設問題についてお伺いをいたします。  まず、この情報収集衛星の計画、それからこの衛星の目的、機能、受信局を何カ所つくるのかなどについて御答弁ください。
  201. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) お答えをいたします。  情報収集衛星は平成十四年度末を目途に現在計画中でありますけれども、まずその目的とするところは、専守防衛を旨といたします我が国に対する安全、これの脅威をできるだけ早く察知をする、そういったいわゆる安全保障上の観点、さらにまた、いわゆる大規模な災害等の危機管理、こういうものの情報収集をするということが目的であります。  そこで、今考えております仕組みでありますけれども、現在考えておりますのは、情報収集衛星四基の打ち上げを今検討いたしておりますけれども、この四基の情報収集衛星と、いわゆる地上のシステムといたしましては、まさにこの衛星を管制、さらにまた運用、画像分析、こういうものをいたします中央センター、そしてこれを支援するサブセンター、このほかに、情報収集衛星というのは周回衛星でございますから、できるだけ幅広くこの衛星と直接通信をするという必要がございます。したがいまして、日本列島の南北に受信局を一つずつ置きたい、こういうことを今考えておりまして、現在その用地、どういうところが適当であるか、さらにまた適当であってもコストがどのぐらいかかるのか、そういうことを総合的に検討しておる段階でございます。
  202. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 この二カ所つくるという受信局の一つが沖縄を予定している、こういうことはありませんか。
  203. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) 今申し上げましたとおり、幅広く直接衛星と通信できるというのが望ましいわけでありまして、そういう意味では南北のそれぞれ、これはと思うところはどういうところがいいか、まさに検討調査をしておる段階でありまして、まだどこと決めたわけではございません。
  204. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 これまた防衛庁の事務次官が六月十四日の記者会見で、沖縄が候補地の一つだということは言える、こういうふうな発言をされたというふうに言われております。  ところで、この衛星なんですけれども、これは軍事面での情報収集、それから災害監視や密入国や不審船に備える沿岸警戒、こういう目的を有していると思うんです。それで、軍事面での情報収集ということになりますと、偵察衛星の受信局で受信した情報というのは日米が共有をして軍事行動に利用される、こういうことはありませんか。
  205. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) この情報収集衛星は、我が国が自主的に開発をして、まさに我が国の判断で運用管理するものでございます。
  206. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、この情報収集衛星の受信局建設で沖縄が候補地に挙がっておる、こういう報道があって、県内、これは県当局を含めて多くの人が非常に不安を抱いているわけです。ただでさえ在日米軍の七五%の膨大な米軍基地を強いられて、その上に、この受信局は軍事面での情報収集ですから、いざ有事の事態になれば当然このような施設が真っ先に攻撃を受ける、こういう可能性をはらんでいるわけであります。  私は、単に地理的な有利性だけが本当に建設の理由になっているんだろうか、これは災害監視だとか密入国や不審船に備える沿岸警戒という目的もあるのであれば、災害の多い地域かあるいは密入国の事件が多発しているところが適当ではなかろうか、それをなぜ沖縄なのか、こういうことを考えているわけであります。  防衛庁の事務次官が、沖縄が候補地の一つだということは言える、こういう発言をしたということですが、防衛庁のどなたか担当者、防衛庁はこの受信局の候補地として沖縄を具体的に考えておるのでしょうか。
  207. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今、内閣の担当者から御説明があったわけでありますが、この情報衛星につきましては内閣を中心に関係省が大変多岐にわたっておりまして、今私どもの次官がどの場でどういう発言をしたか私は詳細を知りませんが、そういうことを含めて、まだどこにどういう物を設置するかということは全く協議の場にのっておりません。私も全く聞いておりません。  今の委員の御意見も参考にしながら、これから政府関係者で十分協議してまいりたいと思っております。
  208. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今の防衛庁長官のお話ですと、長官がよく詳細を知らないうちに事務次官が、沖縄が候補地の一つだということは言える、こういうふうな趣旨の発言をするということは、私はどうしても納得できない、許しがたいなと思います。ぜひ詳細な調査をされて、県民の思うところは、沖縄への建設はやめていただきたい、中止をすべきである、これ以上基地機能の強化、負担を県民に強いることがあってはならない、こういうことでありますので、ぜひ防衛庁におかれましてはその点を私は真剣に受けとめていただきたいと思います。  あと、海兵隊の苫小牧東部地域開発地区への移転問題等も通告してありましたが、時間でございますので、またあした引き続いてやらせていただきたいと思います。  終わります。(拍手)
  209. 入澤肇

    入澤肇君 私は、今までの衆参両院の議事録を十分に読ませていただきましたので、できるだけ重複しないような視点から質問申し上げたいと思います。  まず第一に、全体の法文を読ませていただきました。幾つかの感想がございますので、そこをまず申し上げます。  一つは、行政組織というのは一カ所に権力を集中しちゃいけないという視点から、チェック・アンド・バランスという機構、機能を内部に内在しなくちゃいけないというふうに思うのであります。この点につきまして、今度は内閣府という非常に強大な組織ができます。それから巨大官庁国土交通省もできます。このチェック・アンド・バランスという視点から十分な装置が内在しているかどうかという観点でございます。  二つ目は、省際的な業務につきまして、例えば土地問題、水問題、大都市問題、これにつきまして十分な調整機能が付与されているかどうか。国家行政組織法第十五条が新設されまして形式的な機能の権限が明定されましたけれども、従来国土庁や環境庁が持っていました設置法の中のやわらかな形での総合調整という文字は消えております。そういう意味では、省際的な業務につきまして十分な調整ができるかどうか、若干疑問であります。  それから三つ目は、内閣府という新しい組織国家行政組織法の外につくってしまった。このために、内閣法国家行政組織法、各省設置法、さらにそれに加えて内閣府という、非常に複雑な国家行政組織関係法律になってしまった。この点は私はまた後で詳しく質問しますけれども、問題があると思います。  それから四つ目は、二十一世紀を目指した新しい国の形をつくるのだということであれば、国際社会の中で名誉ある地位を占めるという視点がなくてはいけない。そのためにはどうして防衛庁を国防省に昇格するような規定を置かなかったのか。それからさらに、経済協力につきましても、従来から四省庁体制だとか、あるいは十省庁か十二省か知りませんけれども、体制だとかというふうなことで、あいまいに、ある意味ではいいかげんにやっていたと私は思うんですけれども、そういうことじゃなくて、経済協力の担当の省あるいは大臣を置くようなことがあっていいのではないか、これは二十一世紀に向けて我が国の形を新しくするために必要な措置じゃないかと私は思っております。  五つ目は、先ほどもある委員質問をしていましたけれども、制度はそれを動かす人によっていろいろと変わっては困るんだと。制度は御承知のとおり極めて理想的につくりますけれども、それを動かすのはそこに任命された役人であります。その場合に、どの人が座っても、どの人が任命されても円滑に運用されるという装置が内包されなければいけない。  こういう五つの視点から私は若干の疑問を持ちましたので、いかにこの制度が行政を効率的に進めていく上で、運用するに当たって留意すべき事項は一体何かという視点からこれから具体的に御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、内閣府設置法を国家行政組織法の適用除外としたのは一体何なのだろうか。例えば、十三条で「内閣府に、副大臣三人を置く。」、十四条で「内閣府に、政務官三人を置く。」、十五条で「内閣府に、事務次官一人を置く。」、こういうふうなことを一括して国家行政組織法に規定すれば済むのではないか。内閣府を各省横並びではなく一格上位に位置づけるという説明がなされておりますけれども、これも国家行政組織法の中にその旨を明記すればいいのであって、今、内閣法というのが国家行政組織法と別にあるからといって内閣府を国家行政組織法の別に定めるという積極的な理由はないんじゃないかと思うんですが、この点についてまず御説明願いたいと思います。
  210. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 私の理解では、内閣府は内閣官房を助けて内閣の補佐、支援を行う機関であって、時々の国政上の重要事項に柔軟かつ弾力的に対応できるようにするために内閣官房長官や特命担当大臣等を置き、トップマネジメントの充実を図る、そしてまた経済財政諮問会議などの重要政策に関する合議制の機関を設置するなど、他の行政機関と異なる組織の編成を行うということが必要であるというふうに判断をしてこのような扱いになったものと考えます。  いわゆる他の省庁とは違う形をとる以上、それを同じ法律の中で処理しようとすると国家行政組織法の方がボリュームが大きくなってしまうというふうなこともあったかと思うのでございます。
  211. 入澤肇

    入澤肇君 どうもこの点は、私はだれがこういうふうなことを発明したんだか、あるいは考えたんだかわかりませんけれども、国の法律、特に組織に関する法律というのは簡素でだれが見てもわかりやすいものでなくてはいけない。今回質問するに当たりまして、国家行政組織法内閣法内閣府設置法、それから各省設置法、その中でも特に総務省設置法を読ませていただきましたけれども、あちこちに条文が飛んで非常に複雑であります。内閣府に規定されることの大部分は国家行政組織法の中に規定すれば十分なのでありまして、私はもっと簡素効率的な規定ぶりをするべきじゃなかったかと思うのであります。  そこで、次の第二の質問ですが、しかし既に出された法律ですからそういうことを是認したといたしましても、なぜ改めて国家行政組織法第二条を改正して、国の行政機関は「その政策について、自ら評価し、」という規定を置いて、また横並びで内閣府につきましても「その政策について、自ら評価し、」という規定を置いたのはどういう意味なんでしょうか。  これはだれが考えたのか知りませんけれども、「自ら評価し、」ということ、今まで官僚組織がみずから評価して十分客観的な評価が得られるだけの調査結果があったかどうか、これは過去のいろいろな事例を見てみればわかるんじゃないかと思うんです。官僚組織とは違いますけれども、例えば金融機関の自己査定、これも金融機関の中の官僚組織がやったものであります。その結果につきましてはみんな惨たんたるものであります。  この「自ら評価し、」という意味と、それからこれはどういうふうなことをねらって書いたのか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  212. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 後から事務局の方からも答弁させますが、私の理解は、そもそも今までの各省庁は、企画立案をし、そしてその所管分野を監督するということでまっしぐらに前に進むばっかりであったけれども、その役所自身が冷静にみずからを顧みるという機能を中に持っていなくちゃいけないということで、私はこの「自ら評価し、」という言葉になったんだというふうに理解をいたしております。ちょっと詳細については事務局長の方から。
  213. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 先ほど先生から御質問ございましたが、この立案過程におきまして内閣府につきましては、組織法を準用すべきか、あるいは適用すべきか、あるいは別に書くべきか、いろいろと法制上の議論はあったわけでございます。その中で、御承知のように国家行政組織法はいわゆる内閣の統括のもとに置かれる機関の組織規定を決めたものでございます。  先生にも内閣府設置法をお読みいただいているわけで御承知と思いますが、今回の内閣府といいますのは、一部いわゆる内閣の統括のもとに置かれる行政事務を実施する部門と、それからより重要な部分は内閣官房の補助事務、いわゆる私ども内閣補助事務と言っております、そういうものを所掌するわけでございます。  その内閣補助事務を所掌するということに伴いまして、組織上も内閣府の組織が大変特色のある、例えば特命担当大臣の規定でございますとか、あるいは審議会等と別の重要政策を審議する合議体の規定、そういうものもあるわけでございます。したがって、全体をどう規定するかという問題があるわけでございますが、そういう内閣府の組織の特殊性に着目しまして、別途内閣府は内閣府としての組織の規定を設けたということでございます。  それとの関係でございまして、したがいまして、国家行政組織におきましては組織法のもとでの機関についてみずから評価すると、それから内閣府につきましても、いわゆるその内閣の統括のもとに行われる事務につきましてはやはりみずから評価すると、同様の規定を置いたわけでございます。  先生がおっしゃいますように、第三者評価というのが非常に重要であることは重々認識しているわけでございますが、御承知のように、従来我が行政組織、まあプランの偏重と言われまして、どうしてもシーというのが、評価というのがおろそかになったと。そういう反省が行革会議でも行われまして、少なくとも一時的にいわゆる企画立案する部門がやはりみずから評価して、その評価の上で企画立案すると、そういうサイクルを今回確立すべきであるということで、このような規定ぶりになっているわけでございます。
  214. 入澤肇

    入澤肇君 今、御説明になっているような評価というのは、当然新しい政策を出すときには各省やっているんですよ。従来の政策を十分批判しなければ、あるいは吟味しなければ新しい政策はできないんであって、今さらそういうことを促すために「自ら評価し、」なんということを書く必要は全然ない。第三者評価をきちんと受けなくちゃいけないということを義務づけるんなら別ですけれども、みずから評価して、じゃこの評価結果というのは発表するんですか。
  215. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 各省が実施しました評価というものについては、結果というものは当然それは公表すべきものと考えておりますし、政府部内の第三者評価としましては、別途総務省に第三者的な評価機関を設けまして、そこでいわゆる別途の評価も行うということでございます。
  216. 入澤肇

    入澤肇君 今の第三者評価は、従来の総務庁の中の行政監察局がやっていた評価を恐らく踏襲してやるんだと思うんです。今度は内閣府、これは上位官庁ですね。その上位官庁の仕事について、総務大臣は第三者評価をやることができるんでしょうか。これはいかがですか。
  217. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 先ほど申しましたが、今度内閣府につきましては二種類の任務を持ち、二種類の所掌事務を持つということでございます。一種類は内閣の補助事務、もう一種類は例えば栄典でございますとか等々、いわゆる他省庁と同じレベルの内閣の統括のもとに行う事務であります。したがいまして、総務省の評価もこの後者の部分、他省庁並びのいわゆる行政事務については評価が及ぶということでございます。
  218. 入澤肇

    入澤肇君 他省庁並びのことについては分担管理事務、これについては評価が及ぶのはわかりますけれども、他省庁並びでない部分については一切の評価はだれもできないんでしょうか。
  219. 河野昭

    政府委員(河野昭君) ここで申します評価といいますのは、各省庁の事務がいわゆる内閣の統一的な政策のもとに行われているかどうかという観点からの評価でございます。したがって、内閣の補助事務についてはそういう意味での総務省における評価は及ばないということでございます。なお、それ自体についての当然内閣府の中で評価は御自分で行われるかもしれませんが、少なくとも総務省の評価は内閣の補助事務には及ばないということでございます。
  220. 入澤肇

    入澤肇君 ここで注意しなくちゃいけないのは、私は内閣府というのは国家行政組織法と別に制定されて、しかも上位官庁であるということで、しかも評価が及ばない権能を持つということになりますと、この組織は運用の仕方いかんによっては大変強大な権力を持つようになる。  今まで大蔵省が大きな力を持っていたというのは、大蔵省に主税から主計から国税からいろんな権限が集中していたということで、それが長い間継続しているうちに各省が頭を下げて、要求官庁が調整官庁に対していろいろとおべっかを使わなければうまく予算がとれないというふうなことで、そういうことで官僚組織がおかしくなってしまったということだと思うんですけれども、これは私も自分でやってみたから、そういう経験があるからわかるんです。  だけれども、今度のように組織規定で全く別世界をつくってしまうということになりますと、これは大変なことになる。これは、例えば内閣府の役人の任命におきまして、今、内閣官房副長官の事務担当は、長い間のいろんな経験から大蔵省出身、通産省出身のようなところから置かない、厚生省や労働省から置いて中立的に公平にバランスをとって事務処理をするんだということであのような人事が行われているというふうに石原元副長官自身がおっしゃっているわけです。  今回は、こんなに強力な権限を持った内閣府を設置されるとすれば、内閣府に配属される人事、これは相当な意を用いなければ大変なことになる。総理大臣のリーダーシップを発揮することは今だってできるんです。今の内閣法だって私は十分に発揮できると思うんです。  今度は新聞報道によりまして、私はその新聞報道と設置法とを比べてみたんですけれども、新聞報道で、改めて内閣総理大臣が閣議で発議できるなんて書いていますけれども、そんなことはないので、内閣法を見れば内閣総理大臣はいつだって全権を持っているわけですから、いろんなことを発議できるわけです。今度新聞で出されているのは、内閣府に係る主任の行政事務について、つまり内閣府設置法の第七条第二項に書いてある事務について発議するということがつけ加わっただけで、これは従来だってやっていることなんです。  要するに、殊さらに内閣総理大臣の権限を強化ということが言われていますけれども、今だって大変な権限を持っている。その大変な権限を持っているのをさらに事務組織において別の権力が及ばないような組織をつくってしまって、これについては運用に非常にこれから問題があるんじゃないかと思うんです。  ぜひ人事とか役人の任命について、もしお考えあったらお聞かせ願いたいと思います。
  221. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 今、入澤委員が言われる点はないわけではないと私は思います。  ただ、そういう自明のことであるというふうに言い始めると、例えば今度、国民主権の理念ということをわざわざ内閣法に盛り込んだわけでありますけれども、なぜそんなことに執着したかといえば、憲法に書いてあるから当たり前のことだ、そうなっているはずだと、こういうふうに言うけれども、そこは、改めて具体的な法律の中で確認をしておかないとその法律の精神はそのようにならないということが私はあると思うのでございます。  総理大臣の権限にいたしましても、内閣法の書きぶりというのは、私はそんなにすっきりしていない、大変何か奥歯に物の挟まったような文章が随所に出てくるわけでありまして、それを全部すっきりした形にすればいいけれども、それはまた思いを持っておられる方もたくさんいるわけでございますから、全部がそうはならない。そうすると、この発議権をなぜここで入れようとしたのかというときに、例えば閣議を経なければ内閣行政権を行使できないと、何でそんなことを書くんだろうかと私はそこを思います。  そうしたら、内閣総理大臣の権限の行使についてさまざまな制約的な言葉遣いがなされている中で、あえて発議権というものをそこで書く、そして、その発議権の内容を立案するのを助けるために内閣府というものをつくる、そしてその内閣府にほかの省庁とは違う一格上の強い総合調整の権限を与えるというのは、確かに何も問題がないわけじゃないけれども、その気持ちは何か非常にわかるんです。
  222. 入澤肇

    入澤肇君 気持ちはわかるんですが、組織というのは特に厳正にきちんと書かれなくちゃ私はいかぬと思うんです。そういう意味では、この内閣府設置法に基づいて、これからどのような人事をなされ、どのような仕事がなされるかにつきましては、これは行政監視委員会等で十分な監視をし続けることが必要不可欠であるというふうに私は思います。  それから、非常に細かいことでございますけれども、今度の内閣府の条文を読んでいまして、ついでに内閣法を読んでみました。国家行政組織法と別に定めるものだから、ダブって書いていますね。ダブって書いている中で、どうしても論理的に整合性がない、あるいは論理的に間違っていないけれども十分整理されていない部分が残るんです。  一例を申し上げますと、答弁は結構ですが、各庁職員通則、これは昭和二十一年の勅令第一八九号、これの第一条で、各省に事務官を置く、技官を置く、あるいは研究員を置くと書いてあるんです。我々が例えば農林省に入る、農林事務官というのはその昭和二十一年の勅令第一八九号によって辞令を受けるわけです。内閣それから内閣府だけは、それぞれの設置法に事務官を置くと書いてありまして、そこで辞令を受けるんです。内閣官房には技官を置くと書いていない。そういうふうなことを国家行政組織法、設置法の体系の中で処理すれば、ダブって書いたり、あるいは調整が十分になされ、見落としのないような書き方ができると思うんです。  もう一つ申し上げましょうか。  法務省設置法、今度直されましたけれども、相変わらず第八条、第十二条で婦人補導院という言葉が出ているんです。これは、売春防止法に基づく婦人補導院の規定です。それを法務省設置法の方できちんと運用しているわけです。この婦人という言葉は、従来一斉に女性という言葉に改めましたね。ここだけ残っているんです、婦人という言葉が。これらも、細かいことですけれども、直したっていいんじゃないか。  要するに、設置法そのものを厳密に、余り複雑にしちゃうものだから見落としもある。私は、設置法というのは国の形をあらわす一番大きな目玉でありますから、かがみでありますから、これは簡素、明快であってしかるべきじゃないかと思うんです。  それから、連日質問しますから、きょうは時間が来ています。次の質問に入りますけれども、調整規定、これは非常におもしろい。国家行政組織法十五条で、「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の任務を遂行するため政策について行政機関相互の調整を図る必要があると認めるときは、その必要性を明らかにした上で、関係行政機関の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求め、並びに当該関係行政機関の政策に関し意見を述べることができる。」という規定が新たに入りました。これで各省間の調整ができるとお思いでしょうか。  私は、この規定は発動要件が極めて限定的で、国家行政組織法第十五条の規定に基づき、何々大臣は何々大臣に意見を求めるなんということは恐らくなされないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  223. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 例えば、私がモデルにするのは、日ごろ総務庁は行政監察局の監察結果に基づいて勧告をいたします。そして、それに対する一定期間後にそれがどうなったかということを報告を求めるわけでございます。ある程度これはこの行政のあり方をつかさどる省庁としては有効な手段を持っておるというふうに考えております。  ただ、それがやや、十分であるかどうかということになりますと、あるいはタイムリーに、あるいは人によってそれが十分に使いこなせるかどうかというのはまた別な話があると思いますけれども、またあわせて事務局の方のあれもお聞きをいただきたいと思います。
  224. 河野昭

    政府委員(河野昭君) もう先生よくこれも御承知の話ですけれども、戦後の行政組織を見ますと、やはりいわゆる総理府の本府の外局といういわゆる総合調整官庁というものが次々に設置されまして、閣僚数もふえてきたということです。ただ、今回行革会議の議論を見ますと、そういういわゆる総合調整官庁が本当に機能したのかどうかという反省もあったわけでございます。  今回の省庁改革はそういうこともありまして、基本的にはそういういわゆる本府の外局というものはなくして、そして、例えば環境庁は環境省ですし、それぞれ大くくりの省にする。したがいまして、今まで外局がやっていた総合調整というものをそれぞれ省ごとに調整をしていく。そういうことで、今回の設置法の中にもございますが、それぞれの事項ごとに調整の中核ということを省を決めまして各省間でやっていく。  そこで、調整の仕組みでございますが、実は、最終報告には単に協議という言葉が書いてございましたが、単に法律上協議という場合、非常に不明確なわけでございます。したがって、説明を求め、資料を求め、あるいはそれに対して意見を言うというような協議の具体的な中身を書いたわけでございます。  なお、これでも不十分なことはお話のとおりでございまして、先般四月二十七日に本部決定いたしましたこの方針の中では、今後具体的に省庁調整システム、これを何らかの文書で具体的に確定していくということを規定しております。
  225. 入澤肇

    入澤肇君 時間が来ましたので、後日また続けて私の御意見を申し上げたいと思います。  終わります。(拍手)
  226. 奥村展三

    ○奥村展三君 先日も総理にこの場でお伺いをいたしました。  今、環境問題は大変なグローバル的な話でございますが、衆議院の委員会等でも附帯決議でなされましたように、政治主導で環境省の体制充実強化を図るということでございますが、このことについて総理の御決意のほどをまずお伺いをいたしたいと思います。
  227. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) このたび環境庁から環境省に格上げと申しますか、組織体に相なりました。これは、我が国のみならず世界地球環境を考えましても、その大きな役割を担っていくと期待されるわけでございまして、環境省にふさわしい体制をつくり上げていかなけりゃならない、このように考えております。
  228. 奥村展三

    ○奥村展三君 先日のG8でも環境問題が大変大きなことになったと仄聞をいたしております。  そしてまた、私は六月十六日、ここで総理にその組織、定員等についてお伺いをいたしましたときに、総理は、組織、定員等について環境省にふさわしい体制を整えると一歩前進した御答弁をいただきました。  しかし、現在、千人体制というように環境庁はなっているようでございます。本庁で四百五十八人、そして公園事務所等なんですが、これが二百九十三人、研究所等で二百九十六人、ざっと合わせますと千二十人ほどの体制でございます。お国柄はいろいろと違うと思うんですけれども、アメリカでは一万八千人、フランスでは四千五百人、ドイツでは二千九百人、お隣の韓国では千六百人というように調査をいたしましたら出てまいりました。  ふさわしいというお言葉を総理からいただいたわけでございますが、少なくとも私は韓国並みになるような、環境省に格上げをされるわけでございますから、そのぐらいの規模になってほしい。そして、定員をしっかり確保しながら、国民皆さんのいろんな不安を取り除くように先進的にどんどんと日本独自で環境の整備をし、そして環境立国としての基盤を整えていただきたい、そんな思いでいっぱいでありますが、このことについて総理の考えはいかがでしょうか。
  229. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 改めて御答弁申し上げますが、具体的な編成については現在検討中であります。したがって、具体的な人数を申し上げることはできませんが、いずれにせよ、環境省にふさわしい体制を整えるよう十分努力をしていきたいと思っております。  今、委員が御指摘をされました各国の体制でございますが、例えばドイツは環境・自然保護・原子力安全省も含めましてこの組織体があるようであります。しかし、米国は今おっしゃられましたように環境保護庁だけで一万八千人、予算にして円に直しまして八千二百億円、本省でやっておられるわけでございまして、これから我が環境省におきましてもそれにふさわしい体制を整えなきゃならぬと思っております。  ただ、いたずらにと言っては大変語弊がありますけれども、数をふやせばいいというものでもないことも事実であろうと思うんです。やはり環境省にふさわしい人材を確保しながら、我が国の環境に対しての国民的な理解、また後世に課題を残してはならぬという意味で、また将来にわたってのすばらしい環境行政も含め、あるいは環境的な種々の研究がなされるような人材を集めて、まさに環境省にふさわしい体制をつくり上げることが大切ではないか、このように考えております。
  230. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  確かに、数ばかりが論点になってはなりません。中身の問題だと思います。先日もお願いをいたしましたように、国立研究所やあるいは官民一体となった環境政策がどんどんと推し進められていくように、ぜひ強力なスタッフ、強力な組織ができますことをお願いしておきたいと思います。  次に、地方分権についてお伺いをいたしたいと思います。  先日、通告をさせていただいておきながら、野田大臣との質疑ができなくて大変申しわけなく思っております。  実は私、先日も申し上げましたが、滋賀県の五十市町村の首長さん全部にアンケートをファクスで流してくださいということで出しておきました。五十市町村のうち四十六返ってまいりました。そのほとんどが財政をどういうように確保してくれるかということと、もう一つ、自立自立とおっしゃいますが、どうも今のこの流れでいきますと、地方そのものを市町村なりに考えてみますと、受け身で、どんなグランドデザインをつくったらいいのか少しもわからないと。確かに国ではいろんな議論をしていただいておる、それはよくわかるんだけれども、何か受け皿としてなかなかつかめないところがある、こんな思いのことがここにいっぱい実は書かれているわけであります。  そういう流れを考えますと、私はやはり、国とかあるいは県、市町村の公務員、そしてさらには地方の議員さん、そして住民の皆さん方の意識改革というものが非常に大事になってくると思います。よく言われる三ゲン、人間、権限、財源というこの三ゲンをやかましく言われますが、やはりそういう受け皿の意識というものをしっかりと改革して受けとめていただかなければ、この地方分権というのはなかなか進んでいかないのではないかなというように思っております。  いろいろ知識で大体こんなものだろうなというようなことを皆さんお思いかもわかりませんが、しかし、二十年も三十年も行政指導で国の一つの大きな流れの中に地方はあったわけであります。上下関係、主従関係と言ったらおかしいかもわかりませんが、そういう流れであった地方の公務員皆さん方や議員さんあるいは住民の方々が、そう簡単に変われるものではないなというような思いでありますから、やはりしっかりとした理解を求める、そういう意識改革の対策が必要と考えますが、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  231. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) まことに仰せのとおりでありまして、制度をいろいろ改革し、システム改革をやってきても、それを動かすのは結局は人間であります。そういう意味で、その制度を運用する側、したがって自治体の職員なりあるいは地方議会の議員なりあるいは住民自身が、やはり今まで長い間の、惰性と言っては失礼かと思いますが、特に明治以降、中央集権型のシステムを構築してそれなりの成果を上げてきたわけです。  同時にまた、戦後、憲法上地方自治の本旨に基づいて行われなければならないという規定はできたものの、現実には機関委任事務という、これは完全に国の、言うなら行政の下請機関といいますか、はっきり位置づけをなしてきたわけで、戦後五十年余りずっとそういう中で、それが当然の前提としていろんな包括的な、指揮監督権を初めさまざまな通達を中心とする行政が行われてきた。  その結果、ややもすれば、先ほど御指摘もございましたが、財源的な裏打ちが十分でないということと相まって、結局、何らかの意思決定をしていこうという場合に、ついつい、大体国の方の考えはどうなのかということをまず知りたがる、そして大体その指図どおりに動いていれば間違いはないというような形で、そういう自主性なり自立性ということにおいて、みずから決定できる範囲の事柄であっても、ややもすればそういう、依存心と言うと言い過ぎかもしれませんが、多少そういう惰性があった嫌いもなくはない、そんな思いもございます。  しかし、それらをいろいろ言ってみても仕方がありません。そういう意味で、今回、抜本的にその仕組みを、上下の関係から対等、協力関係に構築をする、それから、国と地方の間の、特に国が地方に対する関与の仕方についてはっきりした基本原則、ルール化をしていく。もしそれに対する何らかの不服がある場合には国地方係争委員会という形で公正な第三者の機関において判断をしてもらうという、言うなら公正、透明度の高い形でのかかわりにしていこう、こういう形で機関委任事務の廃止を中心としての事務の流れを決めたわけであります。  そういう点で、これから切りかわっていくということでありますが、やはり長年の間のそういった意識というものをあしたから突然百八十度切りかえろといっても、なかなかしんどいのかもしれません。  しかし、これは、私たちも精いっぱいこの意識改革を並行して行っていくということの大事さを大いにPRといいますか訴え続けていかなければなりませんし、地方自治体の運営そのものにおいても、そのことにさらなる自覚を高めていただくように要請もしてまいりたいと考えております。
  232. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  意識改革をもとに財政確保といいますか、そこはもう今仰せのとおりでございますが、特に今審議をさせていただいておりますが、これが法制化になりますと、やはり地方の議会としてはことしの十二月議会までには全部受け入れといいますか、今の体制を整えて条例で進めていかなければならない。しかし、今、大臣も申されたように、私も申し上げましたように、どうも中身がもう一つグランドデザインが描けないままに受け入れをしなければならないというような思いがあるわけですから、ぜひここらをしっかりと自治省を中心に意思の疎通を図っていただけるようにお願いをしておきたいと思います。  特に、今もお話をいただきましたが、地方分権委員会の答申に明記をされておりますように、円滑な推進によって何よりも財政措置が肝要であるということがこの分権委員会でも言われたわけであります。そういうように言われておりますように、今回のこの法律施行に伴う財政措置は明記がされていないわけでございまして、総理とか大蔵大臣自治大臣等も財政措置はやっていかなきゃならないということははっきりいろんなところで申していただいておりますが、今申し上げたこのアンケートの中で一番多いのは、やっぱり財源措置がどうなるんだろうというのが一番の思いでございます。  今、地方自治体そのものも厳しい財政のときでございますし、ここらを規制緩和あるいは権限移譲だけによって財政の裏打ちのないようなことになりますと、一層私は市町村のそれぞれの格差ができてくると思います。後ほど市町村合併についてもお伺いいたしますが、今の状況の中で進めていこうとすれば一段と格差が出てくるのではないかなというように思いますが、いかがでしょうか。
  233. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおり、地方自治体がみずからの責任において自己決定していくということをどうやって実効性を伴うものに持っていくかといえば、財源的な裏打ちがなければうまくいかないというのはそのとおりでございます。  そういう点で、たびたび申し上げておりますが、本来ならば地方自治体の歳出規模、大体それに見合うものは地方税で調達できるという形が一番望ましいわけでございます。しかし、なかなかそういった形が十分にできない。これにはいろんな原因がありまして、一つは国、地方を通ずる経済の今日の現状からして税収が国も地方も不足してしまっているということも一つございます。  それからいま一つは、税源の偏在をどういうふうに乗り越えてやっていくのか。そのためには、国と地方の間の税源の見直しといいますか、そういった作業もやっていかなければならない。これはこれで、たびたび申し上げておりますとおり必ずやっていかなければならない事柄ですし、大蔵大臣からもたびたび御答弁を申し上げておるところであります。  それから同時に、今度は地方税自身の中でやはりきちんとした見直しをしていくということが必要である、これもそのとおりでございます。さらに、地方税だけでうまくいくわけはないということもある。そういう意味で、地域間のアンバランスをどういうふうに埋めていくかという意味で地方交付税という仕組み、これについて地方の一般財源をどう確保していくかということも、これもやらなければなりません。  それから、いま一つのテーマは、第二次分権計画で述べておりますけれども、いわゆる補助金のあり方なり、そういったことをどういうふうに見直ししていくかということも大事なテーマでございます。できるだけ個別の補助負担金というものはなくしていく、できるだけ一般財源化していくということと同時に、そういう交付金を含めた直轄の見直しということだけでなくて、いわゆる公共事業の施行に関するそういった計画を含めたあり方をどうしていくのかということもあわせて検討していかなければならない大事なテーマでありまして、両々相まって、地方の財政に関する自主性、自立性を高めていくための改革を引き続いてやってまいりたいと考えております。
  234. 奥村展三

    ○奥村展三君 たびたび大臣もお話しのように、確かに税の仕組みそのものを一度考えていかないと、これは従来の流れの中にいろんな枠組みを変えていくわけですから、やっぱり公正で簡素な税体系を整えながら地方に権限移譲をし、あらゆる問題の中に税がしっかりとそこにタイアップしていくというようなものに、ぜひこれはみんなが議論をしながら変えていく必要があろうと思います。  実は、地域改善向け住宅等の下水道だとか、地域改善事業で住宅は建てていただいたんですけれども、この譲渡をうまく進めていかないと、今物すごく地方の財源に支障を来しているところが多いんですね、全国的にも。私の滋賀県もそういうところがありまして、大変な特例的な町村があるわけであります。地方分権と同じだけれども、とてももうやっていけないということで、あす、奈良県におきまして、これの全国ベースの協議会が発足をなされます。そういうふうなことで、これは自治省だけではなくて建設省にも大きなまたお力をかりないと進んでいかないわけでありますが、こういうようなこともひとつ話題としてお考えをいただければというように思います。  それと、三ゲンのうちの人間、組織なんですが、今までの限られた人員あるいは組織の中で移譲事務をどんどんと効率的に執行していこうといたしますと、従来の感覚、従来のそのような形では、冒頭に申し上げました意識改革もそうですが、受け皿として組織がうまくいっておりません、いかないと思うんです。  私、ここらを自治省のあたりからどんどんと、定員の管理指導だとか、これはまた国がということになるかもわかりませんが、人材育成という面からぜひこういうような支援をしてあげてほしいなと思うんですが、いかがでしょうか。
  235. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) この点について、地方分権が進んでまいりますということであればなおさらのこと、御指摘のとおり、地方自治体の事務事業を担っていく人材が今まで以上に重要でございます。  そういう意味で、行政の簡素効率化に努めると同時に、専門的な仕事にも十分たえ得るような人材をどうやって育てていくのかというこの人材の育成の問題について、これは既に今までもそれぞれの自治体において、特に市町村の人材については都道府県がいろんな形で一緒に、例えば採用なり研修なりいろんな形でやってきてはおりますけれども、なお一層、広域的な対応でやったり、いろんな形で人材の育成に努めてまいらなければならないと考えております。  いま一つ、冒頭に御指摘がございましたが、それに関連して、いわゆる市町村の合併といいますか、そういう形で自治体自身の財政力、組織力、そういった基盤を強化していくということもまた極めて大事なテーマでございます。そういういわゆる行政体制整備していくという形の中で人材育成をしていくということもあわせて考えていきたいと思っております。
  236. 奥村展三

    ○奥村展三君 市町村合併もいろいろと議論を呼ぶところであります。明治二十二年に大合併がありました。そして、昭和の大合併といいますと昭和二十八年から三十二年ぐらいだったと思いますが、全国でそれぞれ市町村合併もなされてきたわけでございます。これがいいか悪いか御検討いただければいいんですが、私は最近よく思うんですけれども、農協、JAが、不良債権の問題だとかいろんなものがありましたけれども、しかし日本の農業の基盤をなすためにいろんな形で地域合併をしていただいて広域連合的にしっかりとした基盤をつくろうと今頑張っていただいております。そして、青年会議所が全国のいろんな地域で今アンケート調査をやったり、あらゆる努力をいただいています。  こういうことを喚起しながら、ある意味ではJAのああいう方向、方式を一つの参考にしながら市町村の皆さんとお話をしていただき、あるいはまた市町村で審議会をつくっていただいたりして進める中で、市町村合併の機運もある意味ではそういうところから盛り上がってくるのではないかなというような思いであります。  今、大臣から合併の話も一部触れていただきましたが、私は十五万ではちょっと体力が弱いな、最低二十万はないとと思うんですけれども、なかなかその二十万になるまでが大変な地域もたくさんあろうと思うんですけれども、体力、基盤をしっかりと確立するためにぜひひとつ合併の方向についても指導をお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  237. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 市町村の合併というのは、今御指摘がございましたように、地方分権を進めていく受け皿として、その体力、基盤強化をする上で極めて大事な一つのテーマであると考えておりまして、今回の法案におきましても合併特例法の改正を盛り込んでおります。  なお、この点についてぜひ御理解いただきたいのは、昨年の地方分権推進計画の閣議決定を基本として法案化をしておるわけですけれども、小渕内閣になりましてこの合併のメリットといいますか、さらに推進力をきかせなければならぬということで、地域審議会の設置、それから合併特例債、これは今までにない強力な財政的な支援対策になるであろうと私は考えております。これらはいずれも法案の段階で盛り込むことができておるということは申し上げておきたいと思っております。  合併のメリットについてでありますけれども、時間の関係がありますから多くを申し上げられませんが、先ほど申し上げたとおり、市町村合併によって、まず第一に専門的な職員を確保することができ高度な住民サービスの提供が可能になること。第二に、財政規模の拡大による重点的な投資が可能となり基盤整備が進展すること。それから第三に、広域的観点に立って町づくりを効果的に展開することができる。第四に、公共施設の効率的な配置、利用が可能になる。第五に、利用可能な窓口の増加により住民の利便性が向上する。第六に、合併により管理部門の経費の削減が可能となり、それにより新たな住民サービスに対応することができる等々の効果が期待されるわけであります。  そういったことをさらにぜひ住民の皆さんにもよく御理解いただいて、押しつけがましいというよりも、できれば住民自身の中からぜひ合併していきたいというような機運が出るような努力をさらにしてまいりたいと考えておりまして、この法案を成立させていただいた後、都道府県の協力も必要でありますので、合併に関するガイドラインを早期に策定して都道府県の協力を要請してまいりたいと考えております。
  238. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 奥村君、時間が参りました。
  239. 奥村展三

    ○奥村展三君 ぜひ機運が盛り上がりますことをお願いして、終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  240. 石井一二

    石井一二君 二院クラブ・自由連合の石井一二でございます。  総理また自治大臣におかれましては大変お疲れと思いますが、ラストバッターでございますので、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、中央省庁等改革論議というものがどんどん進みまして、独立行政法人の設立や既存の特殊法人等の改革と、この霞が関かいわいも非常に大きな変革を遂げる気配というものがあるわけであります。  こういった中で見てみますと、一般論としてですが、特殊法人や外郭団体と言っているものが非常に大きな赤字を出しておる。そして、財投ほか公的資金を何らかの形で仰ぎ、その負担は国民に乗っかかってくる。ところが、その傘下の公益法人や納入業者等、特にそこへは何らかの形で親の省庁から天下っておる、こういったところが黒字でいい目をしておる。こういう中で、天下り、高い退職金、特殊業者との癒着、こういうことがなかなか国民には理解できない一面があろうと思うわけであります。特に営業努力をせずに競争力もなしに毎年高利益を得て業務を独占すると、仲間内でも甘い汁を吸うということに対する世論というものが今非常に厳しいものになってきておると思うわけであります。  例えば、傘下の株式会社の過半数の株式を保有している公益法人は現在百八十八とも言われておりますが、この中で十社以上の会社の過半数の株式を保有している法人は、例えば郵政省関係では電気通信共済会とか郵政弘済会、また建設省では日本道路公団の傘下にあります旧道路施設協会、あるいは厚生、運輸省では鉄道弘済会などが挙げられておるわけであります。このすべてについていろいろ検証していくだけの時間もございませんので、きょうは道路施設協会あるいは日本道路公団に絞って若干質問をさせていただきたいと思うわけであります。  まず、この日本道路公団のバランスシート、貸借対照表等を見ておりますと、償還準備金である収益から費用を差し引いて、そしてそういうところへ納めてもらわなきゃならない、こういったものが全然たまっていないわけであります。結果として、国と地方自治体よりの追加出資を織り込んでみたり、また将来の交通量等をどう考えてもそんなに大きくならないはずなのに大きく見積もって出しておる。その場を繕い、二、三年たつと償還計画をまた改定して、結局順番に理事長、総裁等がかわりますのでだれも責任をとらない、こういうような状態になっておると思うわけでございます。  ところで、日本道路公団ですが、例えば累積債務というのが今幾らぐらいになっておるのか。二十三兆円ぐらいかなと思いますが、それと同時に、今申した道路施設協会から受け取る土地の占用料は年間大体四十五億円ぐらいかと思いますが、この数字はほぼ正しいですか。時間の関係で、正しかったらもうそこで正しいと言ってください。違えばおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  241. 緒方信一郎

    参考人緒方信一郎君) 大体正しいのでございますけれども、ちょっと注釈をつけ加えさせていただきます。
  242. 石井一二

    石井一二君 簡単にやって。
  243. 緒方信一郎

    参考人緒方信一郎君) はい。  私どもは、要するに有料道路制度で道路をつくりましてそれを料金収入で返済する、そういう運営をしておりますので、いわゆる債務の残高と申しますのは民間でいいますと銀行の借入金の総額みたいなものでありまして、累積債務を棚上げしている赤字とは全然性質が違うということをまず御理解いただきたいと思います。  今、先生がおっしゃいました二十三兆ぐらい、二十二兆三千二百五十四億円、平成九年度に高速道路の建設等に用いました借入金の残高がございます。これは収支差額が八千六百一億円、平成九年度ございますので、これで償還いたしまして、償還の累積額は六兆九千八百七十五億円を既に償還しておりまして、大変順調に償還が行われておるというふうに私どもは考えております。  それから、道路施設協会の占用料でございますが、平成九年度の占用料は四十五億円でございました。これに対しまして、いろいろ各方面の御批判がございまして、収益をもっと一般に還元すべきではないかという強い御意見を受けまして、制度を改正いたしまして、平成十年度には五割アップの約六十五億円を占用料として徴収しておるというところでございます。
  244. 石井一二

    石井一二君 ここに二、三の雑誌のコピーがありますが、例えば「道路施設協会 公益法人改革「所有株売却」は口ばかり」とか「特殊法人・公益法人の犯罪」として「天下り用の子会社で膨大な利益の独占へ」ということで日本道路公団の名前も出ておるわけであります。これはテーミスの九九年七月あるいは四月のあれでございますが、総裁が衆議院の事務総長というお立場からそちらへ行かれて、かっぱがおかへ上がったとは言いませんが、今まで御経験のない分野でひとつ十二分な御検討をお願い申し上げたい、そのように思っておるわけであります。  ところで、平成九年十二月に決定された政府方針に基づいて所有株式の処分というものが旧財団法人道路施設協会に課せられておると思います。それで、こういったことを聞きたいと思って参考人招致をお願いしたんですが、民間人ということでそうもいかぬということでございますので、総裁、まことに申しわけありませんが、この第三者株主が保有している株式の三六%、こういったあたりを今既に終えたということを聞いておるわけでありますが、特に決定期限の本年九月ということを頭に入れて、どの程度の数字になっておるか、もし今数字をお持ちであればひとつ御開示をお願いしたいと思います。
  245. 井上啓一

    政府委員(井上啓一君) 道路施設協会が保有していた株の処分状態でございますが、平成八年九月の閣議決定に基づきまして、現在十年の九月末までに公団が管理業務を受注している五十六社の株式はすべて処分しているところでありまして、あと十社につきまして、期限であります十一年九月末までに処分する予定でございます。
  246. 石井一二

    石井一二君 今質問で第三者株主が保有する株式はその段階で何%ぐらいになるのかということもお聞きしたと思いますが、その数字はお持ちじゃございませんか。追加通告で通告いたしておりますが。
  247. 井上啓一

    政府委員(井上啓一君) 申しわけございませんが、今ちょっと手元にございません。
  248. 石井一二

    石井一二君 では、もし三六%という数字が正しければ、なぜこれが五〇%を超えたものにできないのか、そういうような懸念、疑問を私は持っておりますので、そういう意見があるということも踏まえてひとつ今後前向きに対処していただきたいと思います。  次に、総理にお聞きいたしたいと思いますが、私は、政府の見解やあるいは既に決まった方針等を見ておりまして、そのほとんどは正しいものであろうと思いますが、時々これは変えた方がいいのじゃないかなと思うものがございます。ところが、政府という立場、いやそうはいかぬ、なかなか変えるわけにいかぬのだ、メンツもある、こういうことをおっしゃると思いますが、例えば先例として、昔、経済企画庁長官が船田元さんであったころ、畑議員も今おられますが、そのころに景気底打ち宣言というのをなしたけれども、数カ月たって、あれは誤りであったということを宣言されたことがございます。  例えば、今非常に世論高きものがございます郵政事業についても、先般の行政改革会議の中間報告では、例えば「簡易保険事業は民営化する。」、あるいは「郵便貯金事業については、早期に民営化するための条件整備を行う」、このようになっておったわけでありますが、行政改革会議の最終報告、これは座長はあなたじゃなかったかと思いますが、そこでは総務省に「郵政事業庁を置く。」とか郵政事業庁を「新たな公社に移行する。」、そしてはっきりと国営化するというようなことを述べておられる。こういうように都合のいいときにはどんどん変えていっておられるわけであります。  そういう中で、私は総理がいろいろ発表されておる中でどうもこれはよくないなと思うのが、最近起工された総理官邸であります。これは私は大いに結構だ、いいものをつくっていい仕事をしていただきたいと思うんですが、そういういろいろひっくるめて七百億というような数字も出ております投資をして、しかもずっと前に決まった首都機能移転をどうしてもやらなきゃいかぬ問題かと。もしあれだけのお金を使うのであれば、大幅な減税をして消費を喚起した方がいい。公共事業型の景気回復策というようなものが功を奏さないということはかなりの論議を得、我々の総意的なものにすらなりつつある。こういう中で、もう一度総理の強い決意と指導力というものを示す意味で、この問題をじっくり考えていただきたいと思うのであります。  もし私が今あなたに答弁を求めたら、恐らくネガティブなことをおっしゃると思いますので私は答弁を求めませんが、考えておいていただきたい、そういうことであります。  今ここへ来る途中で玄関の横を通っておりますと、伊藤博文、板垣退助あるいは大隈重信といった方の銅像がありましたが、一つあいております。こういうことをおやりになることが、非常に低い支持率でスタートしたけれども、今五〇%になんなんとする高支持率に及び、日ごとに男前が上がっておるというか男を上げております総理の存在というものが高く歴史に評価をされるものである、そのような気がしてならないわけでございまして、ぜひぜひ御一考を賜りたいと思います。  党議で拘束したりなんかしておりますけれども、今もし党議フリーで国会議員の中で投票したら、これは地元の人の意見も踏まえて、むしろやめておこうというような意見の方が強くなる可能性のある問題だ、そのように思うわけであります。  今、私は政府の見解や方針の途中変更は難しいということを言いましたが、もう一つだけ例を挙げてみますと、経企庁が最近GDPの一・九%プラス成長ということで景気回復宣言をなされましたけれども、私はこれはなかなかそんな易しいものではないという感覚で物を見ております。  今出たばかりの週刊誌が、例えば「小渕政権の「GDP一・九%上昇」はやっぱり粉飾決算だった」ということで、人気取りだとかいろんなことを言われておりますが、私はこれは船田元経企庁長官じゃありませんけれども、早いうちに訂正をされておいてしかるべき筋合いのものではないかというように考えるわけであります。この途中からの政府見解や方針の変更について総理はどのようなお考えを持って臨んでおられるか、お聞きしたいと思います。
  249. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 明治の元勲のお名前を挙げられましたが、比べるべくもないと思っております。私は、戦後の政治はやはり多くの民意をくみ上げながら決定していくものであり、その特徴とするところは衆参両院における議員各位の考え方を十分承って最終的結論をつけていくべきものだろう、また与党たる自由民主党のいろいろな話し合いの中で結論が導かれるものと。  幾つかの例を申し上げられましたけれども、時間がありませんからすべて逐一申し上げませんが、やはりそうした過程の中で与党の政策担当の皆さんを含めて最終的には考え方を取りまとめ、時においては前に決定をいたしたことも修正することあり得べし。改むるにはばかることなかれということもありますから、それはそのときにおいていろんな決定がなされていくことであって、一たび決定したことすべてこれを遂行しなきゃならぬということでもなかろうと思います。それぞれの事象において、その時点において民意を吸収し、最終的な判断をいたしていくことが必要ではないかというふうに私は考えております。  それから、最後にお話しされましたGDPの一・九%のことでございますが、今ここに週刊誌のコピーが参りました。私は拝見しておりませんでしたが、少なくとも経済企画庁において、特に堺屋長官が参られまして以降、みずから申されておりますように、真実をできる限り明らかにして不測の予見はいたさないということをしばしばここでも答弁しております。そういった意味で、この推計の公表に当たりましては、決められた統計を利用してこれまでと同様の方針によって推計いたしたと承知いたしております。したがって、こういう週刊誌に出ているような希望的観測あるいは推計結果にいろいろの要素が入り込む余地はないと信じておりまして、できれば一―三月のこうした数字を四―六においてもできるようにということで昨年来いろいろな手だてを講じて努力をしてきたつもりでございます。  そういう意味で、我々としてはできる限り国民に真実を明らかにしながら、数字その他につきましてもこれを明らかにしていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  250. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 石井君、時間がなくなりました。
  251. 石井一二

    石井一二君 特に前段については、総理であると同時に自民党総裁であるというお立場でひとつ今後御検討をいただきたいと思います。  後段については、また六カ月ないし八カ月たって、あなたの言うことはやっぱり違っていましたよということをどこかで言わせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  252. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は明二十九日午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十六分散会