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1999-09-29 第145回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年九月二十九日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  九月二十八日     辞任         補欠選任      岡崎トミ子君     内藤 正光君      木俣 佳丈君     小川 敏夫君      福島 瑞穂君     谷本  巍君  九月二十九日     辞任         補欠選任      緒方 靖夫君     池田 幹幸君      八田ひろ子君     畑野 君枝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鎌田 要人君     理 事                 鹿熊 安正君                 中原  爽君                 佐藤 泰介君                 鶴保 庸介君                 岩本 荘太君     委 員                 岩城 光英君                 加納 時男君                 久世 公堯君                 佐々木知子君                 佐藤 昭郎君                 清水嘉与子君                 世耕 弘成君                 平田 耕一君                 松村 龍二君                 水島  裕君                 浅尾慶一郎君                 小川 勝也君                 小川 敏夫君                 川橋 幸子君                 佐藤 雄平君                 内藤 正光君                 益田 洋介君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 阿部 幸代君                 池田 幹幸君                 緒方 靖夫君                 畑野 君枝君                 谷本  巍君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       泉  徳治君        最高裁判所事務        総局人事局長   金築 誠志君        最高裁判所事務        総局経理局長   竹崎 博允君        最高裁判所事務        総局家庭局長   安倍 嘉人君    事務局側        常任委員会専門        員        島原  勉君    説明員        警察庁長官    関口 祐弘君        警察庁長官官房        長        石川 重明君        警察庁長官官房        国際部長     兼元 俊徳君        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        法務省民事局長  細川  清君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省矯正局長  坂井 一郎君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君        法務省入国管理        局長       町田 幸雄君        厚生省児童家庭        局長       真野  章君        労働省女性局長  藤井 龍子君        自治省行政局長  中川 浩明君        自治省財政局長  嶋津  昭君        会計検査院事務        総局第一局長   関本 匡邦君    参考人        公営企業金融公        庫総裁      持永 堯民君     ─────────────   本日の会議に付した案件平成八年度一般会計歳入歳出決算平成八年度  特別会計歳入歳出決算平成八年度国税収納金  整理資金受払計算書平成八年度政府関係機関  決算書(第百四十二回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成八年度国有財産増減及び現在額総計算書(  第百四十二回国会内閣提出)(継続案件) ○平成八年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百四十二回国会内閣提出)(継続案件) ○平成九年度一般会計歳入歳出決算平成九年度  特別会計歳入歳出決算平成九年度国税収納金  整理資金受払計算書平成九年度政府関係機関  決算書内閣提出) ○平成九年度国有財産増減及び現在額総計算書(  内閣提出) ○平成九年度国有財産無償貸付状況計算書(内  閣提出)     ─────────────
  2. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十八日、木俣佳丈君、岡崎トミ子君及び福島瑞穂君が委員辞任され、その補欠として小川敏夫君、内藤正光君及び谷本巍君が選任されました。     ─────────────
  3. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 平成八年度決算外二件及び平成九年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、法務省自治省警察庁裁判所及び公営企業金融公庫決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これら決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  速記をとめてください。    〔速記中止
  6. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  7. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 佐々木知子

    佐々木知子君 自民党の佐々木知子でございます。  きょうは、最初に警察庁に対して、最近の一連不祥事についてお伺いしたいと存じます。  昨夕の新聞報道によりますと、神奈川県警一連不祥事のうち、厚木署集団警ら隊五人の集団暴行及び相模原南署の元巡査長によります女子大生脅迫で、県警は六人全員銃刀法違反暴行窃盗罪などで立件する方針を固めたということでございます。  まず、ことし三月から七月にかけての計五回、厚木署員五人によるとされます集団暴行事案につきまして、現在捜査中とは思いますが、述べられる範囲でそれぞれの事案についてお述べください。
  9. 石川重明

    説明員石川重明君) 神奈川県警からの報告によりますと、御指摘事案は、ふだんは厚木警察署におきまして地域警察活動従事をしております集団警ら隊勤務員管区機動隊員として編成になりまして県外応援派遣になった際等発生をしたものでございまして、いずれもことしの事案でございます。  まず、群馬県警察派遣中の三月下旬の夜、派遣先宿舎で、分隊長ほか三名が飲酒中に隊員数人の体毛に火をつけたというものでございます。  次に、静岡県警察派遣中の五月下旬の夜でございますが、派遣先宿舎で、低周波治療器を使って我慢比べをしておった。その間、分隊長が後から入ってきた隊員後ろ手錠をかけてその治療器最大電流を流したというものでございます。  次は、千葉警察派遣中の六月下旬の午後のことでございますが、派遣先宿舎で、待機勤務中の分隊長が装着をしておりましたけん銃を取り出して隊員のみけんに銃口を突きつけるというようなことで畏怖をさせたというものでございます。  次に、千葉警察派遣中の七月初旬の午前のことでございますが、人員輸送車の中で、隊員同僚に対しましてバスの整備不良に腹を立てて顔面等を数回にわたってけり、左まゆに三針を縫う傷害を負わせたというものでございます。  次に、平成十一年の六月中旬と下旬の二回でございますが、厚木警察署内で、分隊長らが隊員らがだらしないということに腹を立てたということで同僚顔面等を殴打して傷害を負わせた、こういうことでございます。
  10. 佐々木知子

    佐々木知子君 その事案がいつどのような形で発覚することになったのでしょうか、これについてお答えください。
  11. 石川重明

    説明員石川重明君) 本件の発覚の経緯でございますが、ことしの七月中旬に、巡査部長から反省を態度で示せと言われた厚木署集団警ら隊員四名が丸坊主になりまして出勤をしたということから同署の幹部の知るところとなりまして、調査をした結果、一連のこの暴行事案等が判明したというふうに聞いております。
  12. 佐々木知子

    佐々木知子君 その関係者は、いつ、どのような処分をとられたのでしょうか。
  13. 石川重明

    説明員石川重明君) 神奈川県警察におきましては、ことしの八月五日付で、厚木警察署地域第一課集団警ら隊の二十八歳の分隊長たる巡査部長停職三カ月、それから二十六歳の同じく巡査部長分隊長停職三カ月、二十四歳の巡査二名に対しましてそれぞれ減給百分の十、三カ月と百分の十、二カ月、二十二歳の巡査に対しまして所属長注意ということで処分をしております。  また、監督責任といたしまして、小隊長であります三十五歳の警部補に対しまして本部長訓戒、三十二歳の警部補に対しまして本部長注意処分を行っているところでございます。
  14. 佐々木知子

    佐々木知子君 ただ、この件は警察庁には報告されなかったようですが、各県警で起こった不祥事警察庁に対して報告する基準というのはございますでしょうか。
  15. 石川重明

    説明員石川重明君) 警察庁といたしましては、警察職員に係る事件、事故についての実態早期に把握するという必要性から都道府県警察から発生時の報告を求めているところでございますけれども、警察職員刑事被疑事件警察信頼を失墜すると認められる事案等、こういう基準報告を求めておるわけでございます。  今回の厚木警察署集団警ら隊事案につきましては、事案の内容から見まして当然報告をすべきものであったというふうに認識をしておるところでございます。
  16. 佐々木知子

    佐々木知子君 どうも事案を見ておりますと、余りにもすさまじいというか、何と申しましょうか、機動隊ではこうした集団暴行が、今回はたまたま発覚しただけで実は日常的に行われていたのではないか、そういう懸念も一般には持たれているようでございますが、この点についていかがでしょうか。
  17. 金重凱之

    説明員金重凱之君) お答えいたします。  ただいま石川官房長からも御説明のありました本件暴力事案につきましては、まことに警察官にあるまじき行為でございまして、警察に対する信頼を根本から揺るがしかねないというふうに考えておりまして、厳粛に受けとめておる次第でございます。  そこで、今回の事案発生いたしました後、先生が今御指摘同種事案が潜在化していないのかどうかということにつきまして、全国機動隊それから管区機動隊実態の把握ということに努めてまいったところでございますけれども、現在の段階ではほかの隊においてはそうした暴力的な行為が行われているという事実は把握いたしておりません。  今後とも、隊員に対する生活指導ということも含めまして、各級幹部によりますところの各隊の適切な管理運営、これを徹底してまいりたいというふうに思っておりまして、同種事案の再発の防止に全力で取り組んでまいる考えでございます。
  18. 佐々木知子

    佐々木知子君 ちょっと漏れ聞いたところによりますと、この関係者全員二十代、大学を出てしばらくしたという程度の若者で、大学時代体育会系のクラブでこの種のことをやっていた乗りでやったんだということも聞いたことがあるんですけれども、その点について把握されておられますか。
  19. 石川重明

    説明員石川重明君) いろいろ言われておるわけでございますけれども、一部体毛を焼くといったようなことにつきましては、どうも学生気分と申しますか、学生時代いたずら心みたいなものが社会人になってもなお抜け切れずにそういうようなことをやったんじゃないかといったようなことは聞いております。
  20. 佐々木知子

    佐々木知子君 警察官に対しては、日ごろ、どのような教養訓練、また職業倫理の涵養などに努めておられるのでしょうか。
  21. 石川重明

    説明員石川重明君) 警察官につきましては、まず採用教養ということで、全寮制都道府県警察学校採用後直ちに入りまして、そこで法令関係を学んだり体力の向上を図るといったような教養訓練に励んでいるわけでございますが、その間において、人権の尊重とかあるいは職業倫理徹底といったようなことにつきましても、例えば学校学校長がみずから訓育をして警察官としてのあり方を教育する、あるいは部外の講師を招いて社会人としてのあり方を教育するといったようないろいろな形で、こうした社会人として備えるべき資質というものを涵養するように努めているところでございます。
  22. 佐々木知子

    佐々木知子君 続きまして、同様に昨年十一月に起こったとされます相模原南署証拠品持ち出し及び脅迫事案につきまして、事案概要をお述べください。
  23. 石川重明

    説明員石川重明君) 相模原南警察署事案概要について御説明を申し上げます。  この事案は、相模原南警察署刑事課の当時四十二歳の元巡査長多摩警察署派遣をされまして窃盗事件捜査従事中、窃盗事件被疑者を逮捕した際に被疑者宅において任意提出を受けましたネガフィルム整理しておったわけでございますが、その整理中、その中から本件被害女性に関する一部を抜き取りまして、平成十年十一月の下旬に女性を呼び出しまして、言うことを聞かなければこのネガフィルムマスコミに売るといったようなことを申し向けして、当該女性に金銭や関係を要求したというものでございます。
  24. 佐々木知子

    佐々木知子君 この事案は、いつ、どのような形で発覚したのでしょうか。
  25. 石川重明

    説明員石川重明君) この事案は、被害女性がその後弁護士を通じまして警視庁に相談をしたということでございます。警視庁から神奈川県警察へ連絡をされまして、神奈川県警察として認知をした。その後、神奈川県警察では直ちに調査を開始いたしました。そして、捜査にも移行いたしたわけでございますが、被害女性協力が得られないこと、また被害女性側事案公表を強く反対をされている、こういう事情がございまして捜査が行き詰まっていたというふうに承知をしております。
  26. 佐々木知子

    佐々木知子君 その結果、行為者である元巡査長は、いつ、どう処分されましたか。
  27. 石川重明

    説明員石川重明君) この事案に対する処分でございますが、平成十年十二月二十五日付でこの元巡査長懲戒免職処分にしたという報告を受けております。
  28. 佐々木知子

    佐々木知子君 証拠品を勝手に持ち出したということでございますが、証拠品管理というのは非常にこれは精緻にやらなければいけないものでございまして、一体全体管理はどのようになっているのかと思うわけですが、その点についてお答えください。
  29. 林則清

    説明員林則清君) 証拠品管理についてのお尋ねでありますけれども、犯罪捜査に関連して押収した証拠物件につきましては、その取り扱いには特に慎重を期さなければならないというのは当然のことでありまして、警察庁としても必要な指導を行っておるところであります。  特に最近では、平成七年九月に都道府県通達を発出しまして、管理体制の確立それから証拠物件保管場所保管方法それから証拠物件点検、こういったものを柱にした内規の制定ということを各都道府県警指導いたしております。  また、平成十年に実は発覚しました青森県警察警察官による証拠物件着服事案というのがございまして、これにつきましては警察庁としても事の重大性を非常に深刻に受けとめまして、同年十一月にやはりまた通達を発出いたしまして、証拠物件の受領、保管処分等実態に関する点検確認あるいは適正な手続というものの徹底の措置を指示しておるところであります。  こういった一連のことに基づきまして、証拠物件につきましては個人保管というものを禁止し、必ず定められた保管設備において保管し、管理につきましてもかぎの保管証拠物件の出納に至るまで定められた捜査幹部がこれをきちっと行う、組織的な管理体制を確立するよう指導しておるというところでございます。
  30. 佐々木知子

    佐々木知子君 この元巡査長につきましては、証拠品については目録を作成するわけですが、作成する前に抜き出したというふうに承知しておりますが、決して二度とそのようなことがないように厳重な指示指導を行っていただきたいと切に願っております。  今お述べになったような状況は、事件としては立件しなかったというわけでございますが、その点警察庁はもちろん承知しておられたわけですね。
  31. 石川重明

    説明員石川重明君) 平成十年十一月下旬のことでございますけれども、警視庁から事案移送を受けた神奈川県警察から初期調査で判明をいたしました事案概要報告を受けたわけでございますが、その際、警察庁としては早期に所要の捜査を行って事案全容を把握して適切な処理を行うことといった指導をしておるわけでございます。  その後、事案処理の推移を見ておったわけでございますけれども、十二月下旬に至りまして被害女性協力が得られなかった、またそういうことで捜査が行き詰まっている、進展していないという経過報告がなされたわけでございます。  この際におきましても、事件については捜査徹底して地方検察庁と協議をすること、あるいは監督責任についても検討するようにといったような指導を行っております。  したがいまして、警察庁としては、捜査は行き詰まってはいたものの継続をしておったのではないかというふうに考えておったところでございます。
  32. 佐々木知子

    佐々木知子君 警察官懲戒免職処分になった場合は公表するという基準になっていると思っているのでございますけれども、本件公表されなかった。その理由は何でしょうか。
  33. 石川重明

    説明員石川重明君) 一般的に申し上げますと、警察庁としては、懲戒免職されるような重大な不祥事案発生した場合には発表するようにということで都道府県警察指導しているわけでございます。しかしながら、不祥事案にはいろいろな態様がございまして、それぞれ固有の原因、背景がございます。その事案についての関係者のプライバシーやその時点における捜査上の必要性といったものを考慮するべきだ、そういうような要素もございまして、一律に論ずることはできないということについては御理解をいただきたいというふうに存じます。  今回の場合は、被害者協力が得られず、また被害者の方から公表について強く反対をされておった、そういう事情があったので県警において公表しなかったというふうに報告を受けているところでございます。
  34. 佐々木知子

    佐々木知子君 監督者処分についても継続中であった、処分するともしないともまだ決めていなかった、こういうことでございましょうか。
  35. 石川重明

    説明員石川重明君) ただいま申し述べましたとおり、この事案につきましては捜査が事実上進展をしておらなかったわけでございますが、その関係監督責任も問うに至っていなかったというふうに思われるわけでございます。  この点につきましても警察庁指導を行いまして、今回再捜査を実施しているところでございますが、事案全容が解明された結果、監督責任を問うべき者がいれば厳正な処分が行われるというふうに承知をしているところでございます。
  36. 佐々木知子

    佐々木知子君 事案についてはざっとお伺いいたしましたけれども、私自身、発展途上国はもちろんのこと、アメリカなどの警察腐敗、つまり汚職や被疑者などへの暴行がどれほどひどいものであるかということはよく承知しております。その点、日本の警察は非常に優秀であることはもちろん、腐敗がないとは言えないが、最も腐敗から遠い警察であろうということも承知しているつもりでございます。そうはいいましても、全国二十万人以上いる警察官の中にやはりふらちな者が何人かは出ることは残念だけれども避けられないかもしれない。どんな職種であっても、政治家であってももちろんそうでしょうし、避けられないことだというふうに思っております。  だから問題は、こういった不祥事が起きたということそのものよりも、むしろその後の上層部対応にあるのではないかというふうに思っておりますし、警察庁の方々もよく御存じのように、マスコミの論調もおおむねそのように推移しているようでございます。  その後の上層部対応についてこちらが把握した限りで述べさせていただきますが、もし違ったところがあれば後でお述べください。  九月二日午前十時三十四分、時事通信が厚木事案連続暴行警察七人を処分と配信した後の十一時十五分、報道各社二十人ほどが監察官室長の部屋にどかどかと入ってきて、室長は事実を確認しないまま、体毛けん銃手錠確認がとれなかった、隊員の負傷は転倒によるものと回答いたしました。だが、時事は、体毛を燃やし、みけんにけん銃を突きつけ、後ろ手錠をかけると配信し、これが昼のニュースで流れて初めて警察庁厚木事案を把握した。  翌九月三日午前十一時二十五分、時事相模原南事案巡査長証拠品着服公表せずと配信。昼ごろ、監察官室長、やはり各社なだれ込みに対応して、事実を確認せず、自己都合による退職、証拠品メモ帳持ち出し理由捜査目的、翌日返したと回答。この間、懲戒免職であったというふうには訂正いたしました。午後一時二十分、時事処分ないというのが一転、懲戒免職認めるというふうに配信いたしました。午後五時、警務部長が記者会見し、厚木事案について体毛けん銃手錠確認中、相模原南事案証拠品現像済みネガフィルムであると訂正、その旨配信されました。  翌九月四日午後十時三十分、警務部長が再度記者会見し、厚木事案について体毛けん銃手錠の事実はあった、隊員のけがは暴行によるものであると事実を認めましたが、相模原南事案については持ち出し理由調査中と回答いたしました。  翌五日、各朝刊が押収ネガの買い取り、交際強要報道した後の午前十一時、今度は本部長が記者会見して、ようやく相模原南事案持ち出し理由は恐喝、交際強要目的証拠品当事者合意の上で焼いた旨認めました。  こういう事実を総合いたしましても、県警幹部説明が二転、三転し、意図的に事実を隠ぺいしていたと思われても仕方がないのではないかと、残念ながらそう思わざるを得ないような感じがするわけなのですが、これらは一体本部長指示によるものなのでしょうか。お答えください。
  37. 石川重明

    説明員石川重明君) まず、今回の報道対応につきましては、委員指摘のような経緯をたどっているのはそのとおりでございます。  神奈川県警説明によりますと、一部報道が先行したということもございまして、それぞれの事案に関する事実関係の集約、情報の伝達、素材の提供などにつきまして一連対応にそごが生じた、その結果、事実と異なる説明をすることになった、こういうことでございます。  全体的に見まして、警察庁といたしましては、委員指摘のように今回の報道対応には不適切な点が多いわけでございまして、本部長以下の幹部責任は重いものというふうに認識をしているところでございます。
  38. 佐々木知子

    佐々木知子君 私は、本部長指示によるものかということをお聞きしたんですが、それについてお答えいただきたいと思います。
  39. 石川重明

    説明員石川重明君) 通常、こうした場合、部下の報道対応におけるやりとりの一言一句まで本部長が細かい指示を行うということは考えられないわけでございますけれども、ただいま申しましたように、今回の報道対応には不適切な点が多いわけでございまして、本部長以下の幹部責任は重いというふうに認識をしているわけでございます。
  40. 佐々木知子

    佐々木知子君 指示によったのかどうかはちょっとよくわからないんですけれども、各報道対応に当たって、警察庁はそのたびに報告を受けて適切な指示というのは行っていなかったんでしょうか。
  41. 石川重明

    説明員石川重明君) 警察庁といたしましても、今回の報道対応ぶりというものは逐次見ておったわけでございますが、またその都度、指導を行いました。しかしながら、現場でこういう事態になったということについて大変残念に思っておるところでございます。  警察庁といたしましても、今回の反省をもとに、さらに適切な報道対応が行われるように指導徹底してまいりたいというふうに反省をしておるところでございます。
  42. 佐々木知子

    佐々木知子君 反省しているということで、九月六日、警務部長を招致して指導を行ったようでございますが、どのような内容でしたんでしょうか。
  43. 石川重明

    説明員石川重明君) 先ほど来申し上げておりますとおり、この事案処理には不適切な点が認められるということで、警察庁におきましては、神奈川県警察の警務部長を招致いたしまして、さらなる再発防止対策を推進すること、当該不祥事案について捜査すべき事項があれば捜査を尽くすこと、関係者監督責任について検討すること、重大事案に係る警察庁への報告、連絡を徹底すること、報道対応について適正を期すことという五項目について指導をしたところでございます。
  44. 佐々木知子

    佐々木知子君 九月九日、全国警察に対して、不祥事案の未然防止と適正な処理について官房長通達を発出してやはり厳しい指導を行ったと、こういうことなんでしょうか。
  45. 石川重明

    説明員石川重明君) そのとおりでございます。
  46. 佐々木知子

    佐々木知子君 警務部長を招致して指導を行ったということで、それを受けて神奈川県警では再捜査を始めた。つまり、当時の捜査は甘かった、こういうことではございませんでしょうか。
  47. 石川重明

    説明員石川重明君) 神奈川県警察からは、厚木警察署事案につきましては、部隊行動の中で指導を逸脱したことを背景としておりまして、若年層の未熟な者に係るものでありますので指導によって是正できるんじゃないかと、そういう考えから立件をしなかった。また、相模原南署事案につきましては、先ほど来申し上げていますように、被害女性の意向あるいはプライバシーの保護などの事情から捜査が事実上進展をしていなかったというふうに説明を受けておるわけでございます。  警察庁といたしましては、県警事案対応の状態を全体的に見まして捜査を十分に尽くしたとは言いがたい面があったというふうに思いまして、県警幹部を呼びまして、先ほど申し上げましたような捜査すべき事項があれば捜査を尽くすように指導を行ったところでございます。  その結果を受けたという形で、現在では、同県警におきまして体制を整えて捜査を進めているというふうに承知しているところでございます。
  48. 佐々木知子

    佐々木知子君 再捜査によりましては、再度関係者を懲戒処分にするということはあり得るのでございましょうか。
  49. 石川重明

    説明員石川重明君) 現在実施中の捜査によりまして、事案の全貌を解明した上で新たに監督責任を問う余地というものはあろうかというふうに存じます。  ただ、既に懲戒処分された者に対して同一事実によって再処分をするということは原則としてできないのではないだろうかというふうに承知をしているところでございます。
  50. 佐々木知子

    佐々木知子君 九月九日、本部長警務部長監察官室長処分したようでございますが、その処分理由と内容につきましてお答えください。
  51. 石川重明

    説明員石川重明君) 九月九日の国家公安委員会による今回の事案に関する懲戒処分についてでございますが、まず本部長につきましては、厚木署事案相模原南署事案に対する組織管理の最高責任者としての監督責任一連不祥事案事案処理に適正を欠いて国民の警察に対する信用を失墜したということを理由に、減給百分の二十、一カ月の処分ということになっております。  また、現警務部長につきましては、厚木警察署事案についての服務管理上の監督責任とこの不祥事案事案処理に適正を欠いて国民の警察に対する信用を失墜したということによりまして、減給百分の十、一カ月の処分。  また、監察官室長につきましては、一連の不祥事案処理に適正を欠いたということを理由といたしまして、減給百分の五、一カ月の処分がなされているところでございます。  また、現在警察庁に勤務をしております前警務部長につきましては、神奈川県警察在職時の相模原南警察署事案についての服務管理上の監督責任によりまして長官訓戒という処分を行っているところでございます。
  52. 佐々木知子

    佐々木知子君 警察の監察制度というのはどういう仕組みになっているんでしょうか。もし、これが機能しないということでありましたら、外部の監視システムが必要ではないかと思われるわけですが。
  53. 石川重明

    説明員石川重明君) まず、警察の監察制度でございますけれども、警察庁におきましては、長官官房に首席監察官を置いておりまして、庁内、附属機関、地方機関に対する業務監察、服務監察等に当たるほか、各都道府県警察に対する業務監察の指導、調整を行っているところでございます。  また、各管区警察局におきましても、それぞれ監察官を配置いたしまして、局内の監察及び管区内府県警察の監察業務の指導、調整に当たっております。  都道府県警察におきましては、監察官室あるいは監察課という組織を設置いたしまして、それぞれの府県警察の規模によって異なりますけれども、監察官数名を配置いたしまして、業務監察、服務監察、予防監察といった業務を行っているところでございます。  これは、警察不祥事案といったようなものにつきましては業務管理に関連した部分が大変多いわけでございまして、それらの事案を迅速に解明するために厳正な調査を行う。その再発防止対策を有効に講じるためには、こうした内部管理に精通した監察機関が必要であるという考え方から、こういう監察制度を置いているわけでございまして、各都道府県警察にはそのための監察部門が置かれているわけでございます。  この監察部門は内部調査によって事案の解明を第一義的に行いまして、その行為が刑罰法令に触れるといったような場合におきましては、これを捜査部門に引き継ぎまして、捜査部門において捜査を厳格に行う、そして事件、立件ということになれば地方検察庁に送致をするといったような形で厳正に対処をしているわけでございます。  こうしたもののほか、ほかと申しますか今のお話とも関連するわけでございますが、御案内のように、都道府県警察管理する機関といたしまして都道府県公安委員会が設置をされておるわけでございます。  この都道府県公安委員会は、警察の政治的中立性の確保と警察の民主的運営を図るという本来の趣旨に沿いまして、各界を代表する豊富な経験と高い識見を有する方々によって構成されております。この公安委員会は、重要な事件、事故、あるいは警察の重要施策に関しまして都道府県警察の取り組みがどうかといったような点につきまして所要の報告を聴取しておりまして、適正に警察事務の運営が行われているかどうかをチェックするとともに、所管の例規等に関する決裁を行いまして、委員会としての意思を決定されているわけでございます。  この公安委員会に対しまして都道府県警察においては、重大な不祥事案発生したといったような場合には、その経過や処分について報告をいたしまして適切な指導を受けているというふうに承知しております。  今後も公安委員会の場でこうした適切な指導が受けられるように、また、そうした指導を受けてその内容を再発防止対策の業務に反映することができるように、警察庁としては都道府県警察本部長等を指導してまいりたいと考えております。  今まで申し上げましたようなシステムが両々相まちまして、十全な不祥事案の防止対策が推進できるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  54. 佐々木知子

    佐々木知子君 私自身も横浜地検に二年間勤務いたしましたけれども、どうも神奈川県警には不祥事が多いように、私自身が経験したというわけではございませんけれども思われるわけですが、これは同県警のずばり体質なのでしょうか。あるいは発覚しないだけで、どの県警でも大なり小なり似たようなことがあると、そういうふうにお考えでしょうか。どちらでございましょうか。
  55. 石川重明

    説明員石川重明君) 神奈川県警察において不祥事案が連続的に発生をいたしておりまして、国民の皆様の警察に対する信頼を失墜させたということはまことに遺憾に存ずる次第でございます。  ただ、多くの神奈川県警察の職員は日夜職務に精励しておるわけでございまして、これらの不祥事案はごく一部の職員の職業倫理意識の欠如に起因するところが大きいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、組織といたしましては、こうした不祥事案から個別具体的に反省・教訓事項を抽出いたしまして、こうした不祥事案が再度起こらないように再発防止対策を進めることが最も肝要だと、そのように考えている次第でございます。
  56. 佐々木知子

    佐々木知子君 神奈川県警のこの二つの事案は最近非常に突出したものでございましたけれども、最近これだけではなくて、これをきっかけとするかのようにあちこちで、まさにぼろぼろとといった形で警察不祥事が明るみになっております。こうした不祥事の再発防止策についてはどのようにお考えでしょうか。今までも述べられたかと思いますけれども、再度お答えください。
  57. 石川重明

    説明員石川重明君) 警察庁といたしましては、これまでも各種事案の反省・教訓事項といったものを踏まえまして、不祥事案の再発防止のために各都道府県警察指導してきたわけでございます。ただ、今回こうした事態になっているということでございまして、今回の事案というものを大変重く受けとめておるわけでございます。  九月九日でございますが、委員先ほど御指摘がございましたように、業務管理を初めといたしまして、職業倫理教養、あるいは身上監督、あるいは報道対応の適切といったようなことにつきまして、警察職員に対する指導教養をさらに徹底するようにという通達を発出いたしました。現在、全国警察においてこれに取り組んでおるところでございます。  また、管区警察局長会議等の各種会議においてもこの問題について協議、指示を行っているところでございまして、この種事案の再発防止と国民の警察に対する信頼の回復に向けまして一丸となって取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  58. 佐々木知子

    佐々木知子君 二つの事案のうち、殊に相模原南署事案は非常に私は重要なものだというふうに考えております。  警察庁もとうに御存じでございますけれども、先般の国会でようやく通信傍受法が成立いたしました。国民の中には警察がこれを悪用したらどうするのだと危惧を感じている者が結構いるのではないかというふうに思うわけですが、まさにその危惧を具現したかのような形の事案であったということで非常に残念でございます。  通信傍受法の適用につきまして、その適正確保に向けて警察はどのような方針をお持ちなのか、お答えください。
  59. 林則清

    説明員林則清君) 御指摘のとおり、通信傍受法の運用につきましては、国民からいささかも乱用の疑念を抱かれることがあってはならないわけでありまして、警察庁としては、さきの国会での御議論を十分踏まえまして、法の適正な運用を確保してまいりたいというふうに考えております。  このため、通信傍受法の施行までの間に、法の厳格な要件や手続と相まって、その適正な運用を担保すべく、傍受の具体的な手順でありますとか責任の所在を明確化するための仕組みについて検討し、国家公安委員会規則あるいは通達等において詳細にこれを規定して、組織としての業務管理が的確に行われるような制度というものを確立するとともに、そういった法の内容そのものや、規則、通達で規定した事項を各都道府県警察捜査員に至るまで徹底してまいりたいというふうに考えておるところであります。  さらに、警察庁としましては、通信傍受法の施行後におきましても、都道府県警察における業務管理体制や個別事件における傍受の実施状況について随時報告を求め、法の適正な運用が確保されるよう厳重に指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  60. 佐々木知子

    佐々木知子君 通信傍受令状の請求に当たりまして本部長の決裁を得るということにしても、これではチェック機能が働かないのではないか、こう批判された場合、それに対してはどのようにお答えになるのでしょうか。
  61. 林則清

    説明員林則清君) 通信傍受法におきましては、対象犯罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由があること、他の方法では犯行の状況を明らかにすることが著しく困難であること等、傍受の条件というものを非常に厳しく定め、裁判官がその要件が具備されていると判断した上で発付する傍受令状に基づいて犯罪実行関連通信等に限って傍受が行われるというふうに非常に厳格な手続が規定されているのは御案内のとおりであります。  警察といたしましては、傍受令状の請求に当たって、こうした厳格な要件が満たされているかどうかということについて組織的な検討を加え、最終的には警察本部長の決裁を得るという仕組みにすることによりまして、この傍受令状の請求の適正さというものを十分にこれでもってチェックすることができるというふうに考えておるところであります。  警察庁といたしましても、傍受令状の適正な請求を担保すべく、厳格な傍受の要件が満たされているかどうかについて十分な組織的検討が行われるよう、警察本部長を初めとする捜査幹部に対する指導も含めて都道府県を十分に指導してまいりたいと考えております。  さらに、警察庁としましては、個別事件における傍受の実施状況について都道府県警察から報告を求めて事後検証をしっかり行うとともに、傍受法の第二十九条の規定の趣旨を十分に踏まえて、国会に対する所要の報告でありますとか公表を行うことによって適正な担保に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  62. 佐々木知子

    佐々木知子君 傍受記録を警察官が悪用するかもしれないというそのおそれ、それを防止するための方策を、ちょっとお答えになったかもわかりませんが、いま一度お願いいたします。
  63. 林則清

    説明員林則清君) まず傍受記録につきましては、傍受記録の保管簿を作成した上で指定した捜査幹部の厳重な管理下に置くこと、それから傍受記録のコピーを作成する場合であっても、その作成部数については最小限度にとどめ、コピーをした場合にはさきに申し上げました保管簿に所要事項を記載すること、こういうことを徹底しまして適正に管理してまいる所存であります。そして、今申し上げましたことにつきましては、国家公安委員会規則、通達等で規定をし、万が一これが部外へ流出したり御懸念の捜査目的外に使用されることのないよう、都道府県に対して指導徹底していくことを考えております。  さらに、傍受記録等の内容を他人に漏らす行為につきましては、傍受法第三十条が規定する通信の秘密侵害罪による処罰の対象となることについても、あわせて捜査員に対して徹底していくことを考えておるところでございます。
  64. 佐々木知子

    佐々木知子君 万が一警察官による違法な通信傍受や傍受記録の悪用が発生した場合、どのように対処されるおつもりか、御決意をお聞かせください。
  65. 林則清

    説明員林則清君) 警察としては、御指摘のような事態が生ずることのないよう平素から捜査幹部捜査員に対する指導教養徹底することとしておりますけれども、万が一御指摘のような事案発生した場合には徹底した事実調査を行い、当該行為が通信の秘密侵害罪等の刑罰法令に触れる場合には厳正に捜査を尽くすということでございます。
  66. 佐々木知子

    佐々木知子君 昨夜九時にTBSテレビが、TBSテレビも最近不祥事続きでございますけれども、「凶悪犯罪マル秘ファイル!全国警察密着24時・99秋の大捜査スペシャル」と題して、宮城、京都、兵庫など全国十三の警察本部を取材して、多分神奈川県警は入っていなかったのではないかと思いますけれども、犯罪捜査や防犯活動に当たる警察官の奮闘ぶりを伝えておりました。  この番組を見ものとして日経新聞は掲げておりましたけれども、最後に、最近不祥事も目立つが、多くの警察官は地道に働いていることを忘れてはならないと心温かいエールを送っておりました。実際そのとおりでございまして、こういう不祥事が起きて一番迷惑するのは、日ごろまじめに社会のために国民のために懸命に働いている大多数の警察官でございまして、その警察官のやる気が損なわれるのが最も私は恐ろしいことだというふうに思っております。その意味でも、警察は鋭意信頼回復に努めてほしいということを願いまして、警察不祥事につきましての質問を終わらせていただきます。  次に、やはり警察庁にでございますが、これは昨夕からけさにかけての報道でございますが、「来日外国人犯罪 悪質・広域化進む」という報道がなされております。  ことし上半期、一月から六月に検挙された来日外国人による殺人や強盗、誘拐などの重要犯罪は百三十三件、百八十四人に上り、昨年同期より件数で二二%、人数で六八・八%も増加している。そして、中でも日本人をねらった強盗が急増し、これまでは結構同国人同士での強盗や殺人が多かったわけですけれども、昨年同期の二・三倍に当たる九十八人が摘発された。誘拐事件は八件で、検挙者は五・三倍の十六人と目立ったというような報道がなされております。  これは非常に憂うべき事態だというふうに考えておりますが、昨今の来日外国人犯罪の概況についてお述べください。
  67. 兼元俊徳

    説明員(兼元俊徳君) お答えいたします。  我が国の国際化の進展に伴いまして、今お話しのように来日外国人による犯罪が非常に深刻になっております。昨年の全検挙件数、これは刑法犯と特別法犯を合わせた数字から見てみますと、件数で三万一千七百七十九件、検挙人員で一万三千四百十八人でございます。ちょうど十年前の数字と比べますと、検挙の件数で約五・三倍、人員で約二・九倍ということで、相当なスピードでふえております。  ことしの上半期の検挙の状況を見ましても同じトレンドでございまして、検挙件数が一万五千七十八件、人員で六千三百六十六人と非常に高い水準が続いておりまして、被疑者、検挙した被疑者を国籍別に見ますと、ことしの上半期でアジアが約八五%、それから中国が全体の四一%という、ほぼ同じトレンドがこの九〇年代に続いております。  質の面から最近の犯罪の特徴を幾つか申し上げますと、今委員指摘のように刑法犯では凶悪犯が大変ふえておりまして、ことしの上半期では、複数犯による凶悪犯が五二%、それから昨年同期比で約二〇%というふうにふえております。  それから、もうこれは平成四、五年ごろから顕著なトレンドですが、集団密航事件が大変ふえております。この三年ほどは一年で千名を超える検挙が海上保安庁、それから警察の間で続いております。  それから、三番目は、薬物、特に覚せい剤の密輸事件がふえておりまして、いわゆる五十キロ以上を我々は大量覚せい剤密輸入事件と呼んでおるんですが、こういう事件が最近多発をしております。  そして、四番目の傾向としては、当然、犯罪が日本で行われた場合にお金が外国に送り出されます。これも氷山の一角だと思うんですが、組織的な地下銀行による不正送金事件の検挙が続いております。  こういった背景には、やはり不法滞在者の存在が大きいと考えられます。ことし前半の全検挙人員に占める不法滞在者、これは全体の約六〇%、凶悪犯で見ますと五二%、それから薬物犯罪で四四%ということで、不法滞在者が来日外国人犯罪の中核となっている、このように理解をしております。
  68. 佐々木知子

    佐々木知子君 今、不法滞在者が来日外国人犯罪の中核になっているというお言葉がございましたけれども、次に法務省に対しまして、不法残留者の最近の数値についてお聞きしたいと思います。
  69. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 平成十一年七月一日現在の不法残留者数は約二十七万人弱、正確に言いますと二十六万八千四百二十一人と認識しております。この数字は、平成五年五月に三十万人弱、正確に言いますと二十九万八千六百四十六人に達した後、徐々に減少してきている、そういうぐあいに認識しております。
  70. 佐々木知子

    佐々木知子君 退去強制させた者の数というのは、一方どれぐらいでございましょうか。
  71. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 平成十年におきまして、当局が退去強制手続をとった外国人の数は五万人弱、正確に言いますと四万七千三百七人でございます。
  72. 佐々木知子

    佐々木知子君 不法残留者が三十万人弱、最近減ってきて二十七万人弱いるというのに、退去強制者は本当はそれだけの数かけられないとおかしいわけで、五万人しかいないというのは、この間この人たちは泳いでいるということになるわけで、これが来日外国人犯罪のかなりのコアになっているだろうというふうに思われるわけで、これは適切に対処しないと、日本は世界一安全な国と言われておりましたが、かなり安全神話が今揺らぎつつあるのは皆さん周知の事実でございまして、非常に懸念されるべき事態だというふうに考えております。  まず、この種事犯に適切に対処するためには上陸申請時の審査というのを徹底的に行いまして、その上陸を未然に防がなければならないというふうに考えるわけですが、その審査によって旅券や査証の偽造などを発見して上陸拒否をしたケースというのはどれぐらいあるのでございましょうか。
  73. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 旅券、査証の偽造及び偽造申請書申請等の事由によりまして上陸を拒否した数は、平成十年には一万一千五百四十六人となっておりまして、なお委員指摘のとおり、海の港あるいは空港におきましては厳正、的確な上陸審査に努めているつもりでございます。
  74. 佐々木知子

    佐々木知子君 来日外国人は平成に入ってから非常に増加しているわけですけれども、それに比例いたしまして入国管理局の陣容というのはふえているのでしょうか、どうなのでしょうか。
  75. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 委員指摘のとおり、我が国の急速な国際化に伴いまして、我が国と諸外国との間の人的交流がますます盛んになってきておりまして、また来日外国人数についても近年急激な増加傾向を示しております。それに伴い、出入国審査件数、在留審査件数等の出入国管理行政関係業務に関しましても同様に著しい増加傾向を示しております。  例えば、外国人入国者数につきましては、平成元年は三百万人弱、二百九十九万人でありましたが、平成五年には三百七十五万人、平成十年には四百五十六万人、平成元年と比較しますと約五三%増と著しい増加傾向を示しております。また、外国人の在留目的の多様化に伴いまして、業務の複雑困難化も顕著となっております。  このような状況に適切に対応するため、入国管理局におきましては物的、人的体制の整備に努めてまいりましたが、例えば入国管理関係職員数は、平成元年には千七百六十五人でありましたが、平成五年には二千九十七人、平成十年には二千五百十二人と増加しており、さらに平成十一年度におきましては厳格な不法就労対策を推進するための体制整備等に重点を置いて要求した結果、入国警備官等の増員が認められまして、現在では入国管理関係職員は合計二千五百三十三人となっております。  今後とも、国家公務員の定員をめぐる厳しい情勢を踏まえながら、我が国と諸外国との円滑な国際交流を推進し、出入国管理行政に関する諸問題に的確に対応していくために最大限の努力をしてまいる所存であります。
  76. 佐々木知子

    佐々木知子君 来日外国人の増加に比例して、入国管理局の陣容はふえてはいないんですね。入国審査官、警備官等にほとんど占められておりますけれども。  入国審査官の数を適正にふやして、かつ鑑識技術をより精緻に高めることで上陸時の審査を有効に機能させる必要があると考えているわけですけれども、その点についての御見解はいかがですか。
  77. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 国際交流の活発化に伴いまして、我が国に出入国する外国人は今申しましたように増加傾向にあり、出入国審査業務につきましては量的な増大と質的な複雑困難化に直面しております。  一方、我が国の経済的地位の向上に伴いまして、我が国で不法就労する外国人は後を絶ちませんで、またその利益に目をつけた組織犯罪グループ等のブローカー組織の関与も相まちまして、空港の現場におきましては偽変造文書の行使が頻繁となっており、かつ巧妙化しております。  このような状況の中、入国管理局におきましては、国家公務員の定員をめぐる極めて厳しい情勢を踏まえつつ、偽変造旅券等を専門的に鑑識し、上陸審査の適正化を図る目的で、平成十一年度には東京入国管理局成田空港支局に偽変造文書対策室を設置し、また鑑識機器の積極的な導入を図るとともに、職員に対する偽変造文書等の鑑識技術の向上を図るための研修を実施し、迅速かつ厳正な出入国審査を図るための文書鑑識の体制整備に努めております。
  78. 佐々木知子

    佐々木知子君 それと同様に、犯罪が起こって退去強制させるというのではなくて、入国警備官を適切にふやし収容施設もまたふやして、未然に退去強制をさせて犯罪を防ぐことが私は必要ではないかと思っておりますが、これについての御見解はどうでしょうか。
  79. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 不法滞在、不法就労等入管法違反事件に対しまして退去強制手続を迅速かつ厳正に実施できる体制を確立するため、平成五年以降、東京、大阪、名古屋、福岡などに入国警備官の増員を先ほど申しましたように認めていただきまして、悪質及び摘発効果のある事案、例えばブローカーが介在するとか人権侵害を及ぼしているとか売春関係とか周辺住民に迷惑を及ぼしているような事案を重点的に摘発を行っているところであります。  また、収容施設につきましては現在全国に十八施設有しておりますが、平成五年の収容定員が千二百二十七人でありましたが、平成十年には二千二百十九人と施設の拡充を図っているところであります。  不法滞在者、不法就労者等が社会に及ぼす悪影響や危険につきましては委員指摘のとおりと考えておりますので、これを軽減、排除するために、可能な限り早期に違反外国人を摘発することが大切でありますので、抑止効果を最大限に発揮することができるように警備業務の処理体制を確立していきたいと考えております。
  80. 佐々木知子

    佐々木知子君 また、入国審査を経ない不法入国、つまり蛇頭などの組織犯罪集団によります密入国が、警察庁の方からも指摘がありましたけれども最近非常に目立ってふえているということで、これは警察や海上保安庁の管轄なのでございますが、入管局ともども各機関が有効に連携してこれら事案に総合的に対処するということが不可欠だというふうに考えております。  この点、どのように対処されておられるのでしょうか。
  81. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 当局は従来から委員指摘のとおりだと考えておりまして、関係機関との連携に努めております。その中で、例えば警察庁、海上保安庁のほか、検察庁、外務省、大蔵省及び労働省の七省庁並びに地方機関の実務担当者による入管法違反事犯及び摘発対策協議会を開催するなどして情報を交換するとともに、警察関係機関との合同摘発を推進するなどの施策を講じてきたところでございます。  当局としては、今後とも入管法違反事犯の効果的防圧を図るため、関係機関との連携をさらに密にして摘発等に従事してまいりたいと考えております。
  82. 佐々木知子

    佐々木知子君 続きまして、やはり法務省に対して、刑務所及び少年院の運用状況についてお伺いしたいのですが、全国に刑務所は五十九、少年刑務所は八、刑務支所は七とございますが、その運用について、収容者数、それから定員比としてはどれぐらいの割合なのか、それについてまずお答えください。
  83. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 行刑施設と申しますのは刑務所と拘置所を合わせた、要するに既決と未決を合わせた施設ということでございますが、本年七月末現在で両方合わせますと五万四千二百八十七人でございまして、刑務所の収容率ということで考えますと九三・七%という数字になっております。未決につきましては五四・五%とやや少ないわけでございますが、これは拘置支所等がございますものですから、そういうところを一律にしますとそういう数字になるということでございます。  現状を申し上げますと、施設七十四庁のうち二十一庁につきましては収容率が一〇〇%を超えているというようなことで、ここ数年の収容者の増加に伴って行刑施設も過剰収容の状態にあるということでございます。
  84. 佐々木知子

    佐々木知子君 何年か前は日本の刑務所は大体定員の八割から九割でかなり余裕があるというふうに伺っていたのですが、最近はそういうふうにふえているという状況を聞いて驚いているわけですけれども、一人頭の一日の経費というのはどれぐらいかかっているのでしょうか。
  85. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) この経費でございますが、人件費、営繕費等々を除きまして、いわゆる被収容者一人当たりにかかる一日の経費というものは千二百三十五円でございます。
  86. 佐々木知子

    佐々木知子君 そのうち食費は幾らでしょうか。
  87. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 食糧費は五百三十円でございます。
  88. 佐々木知子

    佐々木知子君 今、人件費を省かれましたので、こちらの方で矯正官署の項目の一部で主に人件費とそれから矯正収容費などから試算をいたしましたところ、平成十一年度の予算ベースで一人一年約三百万円近くかかるという試算になっております。  この今述べられた収容者数のうち、来日外国人の数はどれぐらいでしょうか。
  89. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 同じく本年七月末現在の数字で申し上げますと、いわゆる来日外国人の被収容者は二千五百四十四人でございまして、これはいささか専門的になりますが、F級と言っておりますが、日本語等を解しない、要するに日本の言語、習慣をわからない収容者ということになりますと、千三百七十四人という数字でございます。
  90. 佐々木知子

    佐々木知子君 食費等経費につきましては、F級も同じというふうに伺ってよろしいわけですね。
  91. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 同一でございます。
  92. 佐々木知子

    佐々木知子君 F級は大体府中刑務所に収容されていたわけですが、最近それではおさまらなくなりまして、大阪刑務所にも収容されるようになりました。今、来日外国人の数のうちF級ということで、日本語がかなりしゃべれればF級と認定せずに各地の刑務所に入れるという処置をとらなければ、もうどうにも間に合わないというぐらい来日外国人がふえている現状であるということを私の方から申し述べさせていただきます。  来日外国人の捜査に当たりましては、通訳が必要になります。英語が通じるというようなのは来日外国人の数の中でも大体三%とかその程度でございまして、それ以外の言語でございますと大体通訳が必要になる。通訳謝金というのはどれぐらいかかっているのでしょうか。
  93. 松尾邦弘

    説明員(松尾邦弘君) 警察捜査警察庁の方でやるかと思いますが、検察庁で申し上げますと、平成十一年度の予算額は約五億四百万円でございます。
  94. 佐々木知子

    佐々木知子君 裁判所でもやはり通訳謝金がひどくかかっているということで、最近はもう刑事事件の十分の一ぐらいは通訳が要るような事件になっているというふうに承知しております。  来日外国人がどんどんふえてくるとそれだけのいろいろ経費がかかってくるという状況でございまして、F級受刑者の国籍は既に四十カ国を超えているというふうにも聞いております。  例えば、イスラム教であるとかユダヤ教であるとか、そうしますと豚肉は食べない、それからハラールミートといって、ある礼拝を何か通ったものでないと食べられないとか、いろいろ制約がございまして、まず食べ物が非常に難しい。同じ食費の中でやりくりして各刑務所でやっているわけですが、これは献立に物すごく頭を悩ませるというふうに聞いております。  文化、風習その他さまざまに違うために、日ごろの処遇はもちろん、出す手紙の内容もやはり検閲しないといけないわけですから、ここも通訳や翻訳やその他の経費がかかる。面会の立会にもやはり同じようなことだと。職員の物理的かつ精神的な負担はもちろん、経費が非常に膨大である。以後、来日外国人犯罪がふえ続けることを考えますと、対策は非常に急務であるというふうに私は考えております。  日本の刑務所は非常に処遇がよ過ぎて、殊に発展途上国から来ます外国人には犯罪抑止力になっていないという批判がございます。実際に、府中刑務所に連れていきますと府中ホテルというふうに発展途上国の人たちは呼んでおります。ペルーの大使は、これはフジモリ大統領の義理の兄弟でございますが、府中刑務所に見学に行って驚いたと。ペルーの囚人に話をしたら、余り待遇がよくて、これはペルーでは五つ星ホテルである、もう私はペルーには帰りたくない、ここまで言っていると、こういうようなことを言われまして私は笑えもしなかったんですけれども、そういうような状況である。  刑務所は文化を映す鏡でありますから、刑務所の処遇がいいということはその国の文化の力があるということであり経済基準が高いということでありますから、誇ることではあるかもしれませんが、犯罪抑止力になっていないというのではこれはいかがなものかと正直に言って考えざるを得ないところであります。かといって、日本人と外国人の処遇をそこの出身国別によって、経済基準によって変える、こういうことにももちろんいかないわけでございましょう。  ただ、日本人やそれから日本に永住する外国人というのは出所後この社会に戻ってくるわけですから、ただ自由を拘束するだけではなく以後の更正というものを日本の社会のためにも考えて処遇をしていくわけですけれども、来日外国人というのは出所後は本国に退去強制させるものでございます。だから、同じ処遇といっても性質がおのずから異なってきて当然なのでございます。  これはことし四月の新聞記事でございますけれども、日米間におきまして受刑者移送条約を締結することを検討するという旨の記事が出ておりました。もちろん法務省はよく御存じでございますが、例えばタイなどはいろんな国と受刑者移送条約というのを結んでいるというようなことは知られていることでございます。ほかにもたくさんそういう国がございます。  この検討をするという記事が出ておりましたけれども、その後の動向が何かあれば教えてほしいこと、また他の国との間において受刑者の移送をするというようなことについては考慮されていないのかどうか、その点についてもお答えください。
  95. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 矯正局長から答弁させていただきたいと思います。  先生御指摘のとおり、外国人の受刑者は釈放後は本国に帰るわけでございますし、それからその受刑者の社会復帰ということを考えますと同じ文化土壌の中で矯正教育を行う方が望ましいということでございますので、我々といたしましても、将来的には受刑者移送条約を締結してその受刑者の社会復帰を促す措置を講ずるべきであろうということで、現在、法務省内部あるいは関係省庁と検討しているところでございます。  まだその方向は十分に決まってはおりませんけれども、先生御指摘のような事情もございますし、我々としても鋭意検討を進めたいというふうに考えております。
  96. 佐々木知子

    佐々木知子君 では、少年院の運用についてお伺いいたしますが、少年院は全国に五十四ございます。その収容者数と定員比の状況についてお答えください。
  97. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 本年七月末現在の少年院における被収容者数は四千二百二十一人で、その収容率は七六・七%ということになっております。
  98. 佐々木知子

    佐々木知子君 一人頭の一日の経費というのは幾らでしょうか。
  99. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 先ほどと同じでございまして、人件費等を除きましてその収容に係る費用ということだけで申しますと、千九百八十二円ということが一日の費用でございます。
  100. 佐々木知子

    佐々木知子君 少年院の収容者数は最近ふえる傾向にあるというふうに聞いておりますが、そのとおりでございましょうか。
  101. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 平成七年を底といたしましてその後は毎年ふえ続けておりまして、それが七月末で四千二百二十一ということでございますが、例えば平成七年末を見ますと三千九人ということでございますので、その後、平成十一年の先ほど申し上げました数からしますと千二、三百人増加しているという傾向にございます。
  102. 佐々木知子

    佐々木知子君 それは少年事件が最近凶悪化していることの反映なのか、それとも裁判所処理が非常に厳しくなっているからなのか、その辺の分析はされておられるんでしょうか。
  103. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) ここは、この分析はなかなか難しいところがあるかと思いますので一概には言えませんけれども、一般的な傾向としては、少年犯罪は凶悪化し、従来では見られなかったような事件が増加しているということが大きな原因だというふうに我々はとらえております。
  104. 佐々木知子

    佐々木知子君 少年院の収容期間というのは別に少年法に規定があるわけではございませんが、少年院処遇相当と裁判所が判断する場合には、短期処遇か長期処遇か、一応短期の場合は三、四カ月程度、長期の場合は二年をめどということだったんですが、神戸の事件が起こってから以後、少年院の収容期間が少し延びて三年をめどというふうになったというふうに伺っておりますけれども、その運用状況というのはいかがでしょうか。
  105. 坂井一郎

    説明員(坂井一郎君) 先生御指摘のとおり、例の神戸の事件がございまして、それまでは原則として二年、長くても三年というふうに思われていたわけでございまして、そしてその三年を超えてさらにまた延長するということは原則としてしないというような取り扱いになっておりましたが、例の神戸の事件がございまして、平成九年の九月に通達の一部改正をいたしまして、原則は二年ですけれども、三年を超える収容も可能であるというふうに取り扱いを改めたところでございます。  平成九年にこのように通達を改正いたしましてから本年九月まででちょうど二年を経過いたしましたが、この間で二年を超える長期の収容期間を設定した少年は全国で三十七名おりまして、そのうち三年を超える収容期間を設定された者が三名いるというのが実情でございます。
  106. 佐々木知子

    佐々木知子君 続きまして、最近非常に話題を集めております被害者支援・保護についてお聞きしたいと思いますが、被害者支援・保護といいましても三つの側面がございます。まず金銭的な支援、そして刑事手続における地位の向上、そして被害者の心のケアでございます。  まず警察庁に対しまして、昭和五十六年、犯罪被害者等給付金支給法が施行されたわけでございますが、その運用状況についてお聞きしたいと思います。あわせて、財団法人犯罪被害救援基金の運用状況も簡単にお述べください。
  107. 石川重明

    説明員石川重明君) 運用の状況について御説明する前提といたしまして、ちょっと制度のあり方について御説明を申し上げたいと思います。  犯罪被害者等給付金支給法に基づく犯罪被害給付制度は、本来加害者が補償をなすべきところを、何らかの理由でそれがなされないという場合に、被害をそのまま放置いたしますと国の法制度に対する信頼が失われるといったようなことが考えられる重大な被害につきまして、社会の連帯共助の精神にのっとって、国が見舞金的性格のものとして給付金の支給を行っている、こういうものでございます。こうした観点から、被害者が死亡または死亡に準じる重障害を負った場合を対象としているわけでございます。またその額につきましても、損害賠償とは異なる観点から定められております。  そこで、運用状況でございますが、平成十年中、二百二十八人の方に対しまして約五億八千万円を給付しております。これは、昭和五十六年の制度発足以来、平成十年末までの累計で申し上げますと、三千九百六十二人に約九十二億六千万円が給付をされている、こういう状況にございます。  また、この法律制定時の衆参両院の附帯決議を受けまして、同じく昭和五十六年五月に、被害者の遺児等に対する奨学事業等を行う法人といたしまして、御指摘の財団法人犯罪被害救援基金が設立をされたわけでございます。この基金では、平成十年末現在、小学生から大学生まで三百五十四人の遺児等に、入学一時金のほか、月額九千円から二万九千円までの奨学金を給与しております。この基金では、設立以来でカウントいたしますと、延べ千三百六十八人の遺児等に対しまして総額約十二億三千万円の奨学金を給与している、こういう状況にございます。
  108. 佐々木知子

    佐々木知子君 警察庁は、平成八年、被害者対策室を設けて以後、被害者支援に積極的に取り組んでいるというふうに私も評価しておりますが、どういうことをやっておられるのか、箇条書き程度で結構でございますが、お述べください。
  109. 石川重明

    説明員石川重明君) 委員も先ほどお述べになられましたが、犯罪の被害に遭われた方々、特に殺人事件などの凶悪事件あるいは性犯罪の被害に遭われた方々は、身体、財産などの直接的な被害のみならず精神的にも大変大きな打撃を受けるわけでございまして、そういった意味で社会からの支援を必要としている、こういうふうに思われるわけでございます。  こうした被害者の厳しい現実にまず最初に接するのが現場で活動しております警察でございまして、しかもそこでの対応いかんが被害者の立ち直りに大変深くかかわってくる、こういうことでございます。このため、警察庁におきましては、平成八年二月に全都道府県警察に対しまして被害者の方々に対する精神的な支援をも含んだ被害者対策の基本方針を示しまして、現在、全国警察を挙げてこれに取り組んでいるところでございます。  箇条書き的にということでございますから、具体的施策を簡単に述べさせていただきますが、一つは被害者への情報提供、さらに相談カウンセリング体制の整備、捜査過程における被害者の負担軽減措置、被害者の安全確保等でございます。とりわけ、被害者のニーズが高い情報の提供に関しましては、刑事手続等をわかりやすくまとめた「被害者の手引」を作成、交付いたしましたり、また殺人、性犯罪等の身体犯、あるいはひき逃げ事故、交通死亡事故の被害者や遺族の方に対しましては、捜査状況等の適切な連絡を行うための被害者連絡制度を実施しているところでございます。  また、警察業務各分野におきましてもこうした施策を展開しているところでございまして、特に性犯罪被害者への対応といたしましては、女性警察官を配置いたしまして事情聴取を行う、被害者の心情に配意をした捜査活動を行う、性犯罪被害相談窓口を開設する、女性警察職員によるカウンセリングを行う、あるいは警察と産婦人科医の方々とのネットワークを構築するといったようなことを推進しているわけでございます。  また、このほかにも被害少年への支援活動、悪質商法の被害者に対する相談活動、暴力団犯罪にかかわる被害者への対応、交通事故被害者への対応といったような形で組織的、総合的に推進をしておるところでございます。
  110. 佐々木知子

    佐々木知子君 次に法務省にお伺いしますけれども、ことし、全地検において希望する被害者、目撃者に事件処理結果や公判期日などを知らせるようになったということで通知制度が完備されたというふうに聞いておりますが、今後さらにどのような点におきまして被害者の地位の向上を図るおつもりか、箇条書き程度で結構ですが、お教えください。
  111. 松尾邦弘

    説明員(松尾邦弘君) 委員お尋ねの被害者等通知制度でございますが、本年の四月一日から全国の検察庁におきまして実施しております。これは、被害者その他刑事事件関係者に対しまして、事件処理結果あるいは公判期日あるいは刑事裁判の結果等を通知する統一的な制度ということでございまして、毎月数千件程度の通知をしているという実情でございます。  さらに、国民の間で犯罪被害者やその親族等に対する配慮をもっとすべきではないかという声が一段と高まりを見せているところでございまして、現在、法務省でも何点かにわたりましてそうした声を反映させる制度を設けるべきではないかということで検討をしているところでございます。  若干個別的に、箇条書き程度ということで申し上げますが、例えば性犯罪の被害者につきまして、現在告訴の期間制限がございますが、これについてはもう少し期間制限を緩める、つまり期間を延長する方向で検討する必要があるのではないかとか、あるいは実際にそうした性犯罪の被害者が法廷で証人に立つということが多くあるわけでございますが、非常に心理的な負担が大きいわけでございます。そうした者に対しまして、例えば証人の姿を遮へいするという方策、あるいはビデオリンクと言っておりますが、別室にビデオを利用した機械を装置しまして法廷における証人尋問にかえるというような制度、あるいは被害者の年齢が幼い場合につきましては、これに付添人をつける制度を設けてはどうかというようなことも検討しているところでございます。  そのほか、犯罪が起こりますと、刑事事件と並行しましていわゆる民事的な示談ということがよく行われますが、判決が出てしまうとこの示談、例えば賠償金を幾ら払いましょうというような約束があってもそれを履行しない者が時々おるわけでございますが、そうした民事上の和解について刑事手続でこれを手続上で認知するような形にして、履行しない場合には直ちに強制執行できるような方策は考えられないかとかというようなことも検討しております。  また、検察審査会というのがございますが、審査申し立て権者の拡大ということも検討すべきではないかというようなこと、そのほかまだ何点か検討事項がございまして、今検討している最中でございます。  以上でございます。
  112. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 佐々木君、時間が来ております。
  113. 佐々木知子

    佐々木知子君 時間がございませんので、司法改革につきましては要望だけで回答は結構ですという形で述べさせていただきます。  司法改革につきまして、殊に裁判の促進は非常に重要な問題であるというふうに承知しております。ただ、だからといって法曹をふやすというのでは質の低下が避けられないので、これは念入りに考えていただきたいというふうに思っております。実際、弁護士の不祥事も最近非常にふえております。  先進諸国と比べて日本の法曹数は少ないと、よくそれだけをマスコミは載せられますけれども、確かに弁護士はことし四月一日時点で一万七千二百八十三人。これを例えば、アメリカはもう百万人近い数字でございますから、ちなみにアメリカの受刑者数も百万人を超えておりますけれども、確かに非常に少ないと言うべきですけれども、アメリカは弁護士一人当たりの国民数が三百人以下と、他の国と比べて異常なほど弁護士が多い訴訟社会でありまして、まず比べるのはそもそも誤りであろうというふうに考えております。  ちなみに、アメリカにはタックスローヤーと言われる、要するにアメリカには日本で言う税理士も司法書士も行政書士もいないというふうに承知しておりまして、そういう業務をすべて弁護士がやっている。タックスローヤーというのはつまり税理士であると、そういうふうなことで、法廷に立たない弁護士が大勢いるわけですが、日本には、パラリーガルと言ってよろしいのかどうかわかりませんが、税理士は約六万四千人、司法書士は約一万七千人、行政書士は約三万五千人、合計約十一万六千人おりまして、実質をとらえれば弁護士数は約十三万人もいるというふうに言えるのではないかというふうにも考えられまして、そういう事実も含めて正確に国民に知らせていただきたいというふうに考えておりますので、その点も要望して、私の質問を終わらせていただきます。
  114. 岩城光英

    ○岩城光英君 ただいま佐々木委員から警察庁に対しまして一連不祥事に関しての質疑がございました。私の父親が警察官であったものですから、今回の件は非常に残念に思っております。今後、信頼の回復に向けまして全力を挙げて取り組んでいただきたい、こう考えております。  さて、来日外国人による犯罪についてでありますけれども、これも佐々木委員より質疑があったとおりで、私から重ねて申し上げません。不法滞在者の割合が多い、そしてそうした犯罪が起きる前に対処することが大切だということが明らかになったものだと思っております。  ところで、ことしの三月二十四日に、福島県の太平洋岸の北側に相馬港という港がありますが、大量の密航事件発生いたしました。アジア系外国人九十二人、女性十七人が含まれていたわけでありますけれども、こうした一度に九十二人も逮捕される事件は東北六県では初めてのケースであったと伺っております。  いろんな新聞報道がなされましたけれども、若干気になる点もございました。こういう内容であります。密入国者の多くは東京など首都圏を目的地としているが、密入国の出発地となっている中国福建省などでは、東京周辺や日本海側は警備が厳しい、東北の太平洋沿岸なら警備も手薄で入りやすいし、東京へ移動するのに新幹線で二時間であるという話が広まっているということでありますけれども、実際こういった傾向にあるのでしょうか。
  115. 兼元俊徳

    説明員(兼元俊徳君) 御指摘事件、本年の三月二十五日に福島県の相馬市の漁港で発生をした事件であると承知しております。  詳細は省略いたしますが、集団密航事件は昨年、一昨年と検挙者が千人を超えるという状況で多発の傾向にありまして、本年も九月二十六日までに七百五十八人を検挙しております。この福島県の検挙はここ十年間では初めての事件でございますが、全国的に見ますと密航者の上陸場所はふえております。昨年が二十四都道府県、本年は九月二十六日現在で二十都道府県と拡散の傾向が御指摘のとおり見られておりまして、東北地方においても、平成八年以降五県下で六件の集団密航事件を検挙しております。  警察の方ではこういった集団密航事件の多発、特に全国への拡散を極めて深刻に受けとめておりまして、全国都道府県警察に対して沿岸警備対策の強化を指示するとともに、東北管区内の各県の警察においても海上保安庁等の関係の機関と連携した訓練を行ったり、あるいは沿岸の地域住民の方々への協力の要請等の各種の施策により水際の対策を強化しております。  さらに、密航者の大部分が、大体八割から九割が中国からでございますので、この関連で中国側に密航の取り締まりの強化を申し入れる一方、中国の捜査機関との積極的な情報交換等を行って検挙に努めております。
  116. 岩城光英

    ○岩城光英君 ありがとうございます。  法務省の方に質問させていただきます。  平成九年当時、私は福島県いわき市の市長をしておりました。小名浜港という重要港湾を持っておりました。平成九年の五月の末に突然新聞に、ことしの末に仙台入国管理局の出張所が郡山に設置され、それに伴いまして小名浜港出張所がこれに統合される、こういう報道が突然ありまして、私どもびっくりいたしました。と申しますのは、外貿コンテナ航路を開設しようと地域を挙げて運動していた時期でもありますし、また小名浜港のステータスの問題にもかかわる、こういうことから、県初め仙台入国管理局、法務省に対し存続の要望活動を行ってまいりましたが、結果的にはその年の十二月に郡山に移転し、小名浜には郡山から出張して係官が対応してくれる、こういうことになったわけであります。    〔委員長退席、理事鹿熊安正君着席〕  その一連の経過の中での御説明が、この郡山移転については、行革の実施でありまして、また入管の管理体制を海の港から内陸部へ移す、こういう方針があるから御理解いただきたいという御説明でございましたが、全国的にそういった整理統合が進められていると思われるわけでありますけれども、これまでの経過と今後の計画につきましてお伺いいたします。
  117. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 地方入国管理局の出張所は、その多くが海の港に寄港する外国人の船舶の乗員あるいは乗客を主たる審査の対象として設置された、そういう歴史的事情を背景に、その大半が全国の海港、海の港近傍に所在しておりました。  しかし、国際間の主たる輸送手段が船舶から航空機に移り、また、就労、勉学、日本人配偶者等との同居などを目的として長期間我が国に在留する外国人が増加し、その外国人の多くが内陸の都市部に居住していることによりまして、入管の業務も、海港における出入国審査中心の業務から空港における出入国審査業務と主として内陸の都市部に居住する外国人にかかわる在留審査業務というものに重点を置いた審査体制に移行する必要性が生じております。こうした行政需要の変化に対応できる体制整備が急務であると認識しております。    〔理事鹿熊安正君退席、委員長着席〕  当局におきましては、こうした状況にかんがみまして、また行政改革の一環としての国の機関の整理統合に関する閣議決定の趣旨をも踏まえまして、海港出張所の整理統廃合を進めるとともに、地方空港や在留外国人の集中する主要都市に出張所を設置して集約化を図るなど行政需要に的確にこたえるべく体制整備に努めてきたところでございます。  委員の御指摘になりました出張所につきましてもそのような考え方に従ってやったわけでございますが、このように今申しましたような行政需要が変わらない限り、当局といたしましては中央省庁等改革において、「中央省庁等改革の推進に関する方針」に「地方入国管理局出張所について、海型から内陸型への再編を進めるとともに、縮減を図る。」との方針が盛り込まれましたことにもかんがみまして、引き続き海港出張所を対象とした整理統合を進めて内陸型への再編を図っていく必要があるものと認識しております。
  118. 岩城光英

    ○岩城光英君 御苦労につきましては十分に承知はしているつもりでありますけれども、内陸部に中心を移していくということについても理解できないわけではないんですが、だからといって先ほどの不法入国とか密航という、こういった事例等を見ますと水際が軽視されてよい状況ではない、こんなふうに考えておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  119. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 委員が市長さんとしてお取り組みになっていたということで、大変今大事な御指摘をいただいておるわけでございますが、入管局長から御説明申し上げましたように、港湾からの入国よりも空港からの入国の方がふえてきたということ、あるいはまた在留者が都市におるというようなことで、その在留業務の点から考えまして、現下の行政改革の中ではまことにやむを得ないということで御理解を賜りたいと思うわけでございます。  ただ、これも委員指摘のように、船舶を利用した集団密航事件が多発しておる。そしてその形態も、蛇頭組織等によって非常に組織的な犯罪が悪質化しておるということでございますので、こういう問題については厳正に対処する必要があるというのは当然のことでございます。  したがいまして、統合等によりまして集中管理をし、十分情報を管理しながら機動的に適時適切に効果的な入管業務、あるいは不法入国の対応ができるようにしなければならないということでございますので、今御指摘のような点を踏まえながら、なお一層そういった組織体制あるいは運用の充実に努めてまいりたいと思っております。
  120. 岩城光英

    ○岩城光英君 行政改革につきまして、先般ある新聞にこんなコラムが載っておりました。存在意義を失った省庁の役人の数を思い切って削減し、本当に必要な仕事に重点的に投入するというめり張りのきいた定数配分をという内容でありましたけれども、まさにそのとおりでありまして、まだまだ重要な課題が山積しておりますけれども、こういった点につきましても十分御検討いただければと思っております。  そこで、港での入管の事務は特例上陸と言われる船の係留期間、これを原則とした許可が中心のようであります。整理統合の対象となった港では、船舶代理店に大きく事務依存した取り扱いが現状のようでありますが、問題はないのでしょうか。
  121. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 委員の御質問にあります特例上陸につきましては、御承知のとおり幾つかの類型がありまして、実務的に見ますとその九五%近くが船の乗組員、乗員に関するものでありますところ、船舶等の乗員である外国人につきましては、乗員の国際間の移動の円滑化を図るため簡易に上陸を認めるのが国際間の慣行となっております。そういうことから、入管法はこの慣行に基づいて船長ないしは運送業者に重い責務を課した上で簡易に上陸を認めるという考え方に立って立法されております。  また、残りの約五%の大部分は乗客の寄港地上陸と言われるものでございます。これもやはり有効な旅券を所持していることを前提に、先ほど申しましたように船長あるいは運送業者に重い責務を課して、入管への協力義務とか、あるいは旅券を持っていない人を上陸させてはいけないとか、あるいは上陸拒否された者は自分の船で連れて帰るとかいろいろ重い責任を課されているわけですが、そういう運送業者に対しましてその業者の申請のもとに上陸を認めるというふうな制度になっております。  そういうような制度でありますので、船舶の乗員等の特例上陸許可につきましてはその申請が船長または運送業者により行われることとされておりまして、従来から船舶代理店等運送業者の協力を得て処理しているのが実情でございます。  しかしながら、先ほど御指摘のありました密航者が乗船している等の情報を得ている場合はもちろんのこと、過去に不法上陸させたことがあるとか、あるいは薬物事犯にかかわったことがある船であるというようなことについての情報がある、そういう問題のある船舶の乗員等につきましては、入国審査官が船舶に乗り込みまして厳正な審査を実施しているところでございます。  今後も引き続き適正な審査を行ってまいりたいと考えております。
  122. 岩城光英

    ○岩城光英君 郡山に統合する前に、通常の業務においては代理店に迷惑をかけないという当然のことながら説明があったわけでありますが、例えば書類がおくれるということはやむを得ないことにしましても、問題船への対処、このおくれがあります。  と申しますのは、例えば乗組員が出航予定まで帰船しないケース、脱船者と言うのだそうですが、この脱船者が発見されても郡山から入管の方がお見えになるまでは代理店がその身柄を拘束しておかなければならないとか、こういう問題点もございます。また、先ほど不審船のお話がありましたけれども、問題となりそうな船舶が来まして小名浜の海上保安部とか税関支署などが船内検査を実施しますが、入管はそれに立ち会うことができないとか、こういった問題が現実問題としてありますので、今後配慮をいただきたいと思います。  それから、空港におきましてはパスポートの提示といわゆる面通しと言われる本人確認が行われております。同じようなことは港でも行われていると常識的には考えますが、いかがでしょうか。
  123. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 特例上陸許可につきましては、船長または運送業者からの申請に基づきまして、有効な旅券または乗員手帳の有無、上陸目的、上陸拒否事由該当の有無等について審査をいたしております。しかしながら、密航者が乗船している等の情報を得ている場合はもちろんのこと、過去に不法上陸等の違反が発生するなどの問題がある船舶につきましては、乗員乗客について、入国審査官が船舶に乗り込み直接当該乗員等に面接するなどして厳正に審査をいたしております。  以上のとおりでございます。
  124. 岩城光英

    ○岩城光英君 先ほどもお話がありましたけれども、これから入管の体制を強化することはもちろんでありますが、密航とか不法入国に備えまして、税関、そして入管、また海上保安庁、そういった警察など関係機関と連携して水際作戦を一層強化していく必要があろうと思います。法務大臣にその辺の御見解をお願いしたいと存じます。
  125. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 法務省におきましては、従来から警察庁、海上保安庁等の各機関と集団不法入国事犯に対しての対応策について協議の場を持ちまして、また警察庁、海上保安庁のほか、検察庁、外務省、大蔵省及び労働省の七省庁並びにこれらの地方機関の実務担当者による入管法違反事犯の防止及び摘発対策協議会というものを開催いたしまして情報を交換するとともに、その効果的な活用を図るなどして成果を上げているというふうに承知いたしております。  法務省といたしましては、今後も水際における不法入国事犯の効果的防圧を図るため、情報の提供、利用を含め、関係機関との連携をさらに密接にしていく所存でございます。
  126. 岩城光英

    ○岩城光英君 時間の関係がありますので要望にさせていただきたいと思いますが、CIQという体制がございます。税関は大蔵省ですし、出入国管理法務省、それから検疫は厚生省と農水省にそれぞれ分かれております。私ども地方自治体でありますと、今の時代ですからこういったもの、縦割りを廃止しまして総合的な窓口を設置するというのがもう常識になっておりますけれども、国においてもこういったことにつきましても今後御検討いただきたいと、こんなふうにお願いをさせていただきます。  それでは、自治省の方に質問をさせていただきます。  まず、地方の財政についてでありますけれども、これはどの市町村長さんにお会いしましても大変だというのが今どこでもお伺いするお話であります。景気対策として地方におきましても公共事業、この展開が求められ、その推進に当たってまいりました。そういったことからでしょうか、平成四年度の自治体における借入金残高、これが七十八兆九千億円だったのに対しまして、平成八年度には百三十九兆、平成九年度には百四十九兆、そして十一年度末には百七十六兆円に達する勢いになっていると伺っております。  また、個々の自治体を見ましても、例えば公債費負担比率では、財政運営上、警戒ラインと言われる一五%以上の地方団体は平成九年度決算で千八百五十三団体、全団体の約六割にも及んでおります。こうした状況に対しまして、平成十一年度には公債費負担軽減のための臨時特例措置として三つの対策が講じられ、地方団体からは非常に喜ばれているわけであります。  そこで質問ですが、今回の公債費負担対策は十一年度限りの臨時特例措置と、このようにお伺いしているわけでありますけれども、地方団体の切実な声を踏まえまして、来年度も何らかの対策を講じるべきであると、こんなふうに思いますが、いかがでしょうか。
  127. 嶋津昭

    説明員(嶋津昭君) 今、委員から御指摘ございましたように、地方財政の状況、特に公債費が累増しているということは事実でございます。  ただ、政府資金は、ことし繰り上げ償還対策を特別な措置として講じていただいたわけでございますが、郵便貯金、公的年金等を原資にしているという性格から、一般的な制度としてこれを続けることはなかなか難しいということでございます。しかし、今委員指摘のような地方財政の非常に厳しい状況にかんがみまして、起債制限比率が一五%以上の団体あるいは公債費の負担が特に重い団体に限りまして、平成十一年度の臨時特例措置を講じました。  しかしながら、そのときにあわせて、御指摘ございましたように三点の公債費負担対策のセットで行いましたが、その他の二点の公営企業金融公庫資金の繰り上げ償還措置、あるいは公営企業の借換債等あるいは高利の地方債に対する公債費負担適正化計画を策定していただきまして、その公債費負担の減少に、健全化に取り組んでいこうという団体、それに対しての地方財政措置、交付税措置につきましては、これはできれば今御質問ございましたように平成十二年度以降もこれを講じていけるように考え、検討していきたいと考えております。
  128. 岩城光英

    ○岩城光英君 大臣にお伺いいたします。  地方分権についてであります。  さきの国会におきまして地方分権一括法が成立いたしまして、具体的に一歩踏み出したわけであります。ただ、権限と財源と人間、いわゆる三ゲンのうちの財源と人間につきましてはこれからの課題になっております。とりわけ国と地方の税源配分のあり方あるいは地方税財源の充実、こういった問題につきましては、総理、それから自治大臣、そして大蔵大臣から次のような答弁がございます。現在は異常な状態である日本の経済が正常なサイクルに入り、すなわち好転し、そして国、地方とも財政基盤が安定した暁に、中央と地方を通じての行財政の再配分に取り組むというお話でございましたが、正常なサイクルに入ることと仮定しまして抜本的な見直しに今から取り組んでいくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  129. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) まずは、さきの通常国会で地方分権一括法について熱心な御審議をいただいて成立させていただき、おかげさまでいよいよ二十一世紀の基礎としての地方分権のさらなる前進の礎を築くということができましたことを、まずもって御礼申し上げたいと思います。  そういう脈絡の中で、三ゲンのお話が今ありましたが、そのとおりであります。その中で、特に財源について、残念ながら今回十分な対応を講ずることができませんでした。その点では非常に大きな宿題が今後残されておるわけです。  これは、法案審議の際にもたびたび申し上げましたので繰り返すこともはばかられますけれども、ともかく今の異常な経済状況を前提として、そこから生ずる税収、その税収を前提とした国と地方の間の税財源の配分問題、いわゆるルールづくりということになりますと、必ずしもノーマルな姿の中における税収構造とは違った姿になるわけでありまして、そういう点でそういう基本的なルールづくりというものは、ある程度の安定した税収構造というものが、どういう税目においてどういう税収が上がってくるかということを踏まえてルールをきちっと決めなきゃなるまい、こういうことでございます。  しかし、では勉強そのものはそのときにやればいいのかというと、もちろんそういうわけではございませんで、当然のことながらその前にもやるべきこともある。例えばのことではありますけれども、事業税について、これはプロパーの問題でもありますし、この点についてより安定した形での税収を求めていくということは、現在余りにも率直に言って無残な姿に地方財政はなっております。そういう点を頭に置いた、その前に見直しをするという作業があってしかるべきことでもある、私はそう思ってもおります。  どうぞ、これからもよろしくまた御指導、御鞭撻のほどお願いを申し上げたいと思います。
  130. 岩城光英

    ○岩城光英君 ありがとうございます。  次の質問も大臣からちょっとお考えを伺いたいと思うんですが、地方議会の議員の定数の問題であります。  これまでは法定定数制度と申すのでしょうか、人口に応じて法定数が決められておりまして、条例でそれを減ずることができたわけでありますが、今回の改正で条例定数制度、人口規模に応じました上限を設けまして、条例で基本的に決めていくということに、改正になったわけであります。  私は一歩前進だと思っておりますが、究極的には、これは今すぐの話ではないんですが、将来的には地方自治といった観点からは、全く白紙の状態から地域の住民が自分たちの代表である議会の議員の定数は決めていく、これが基本的かな、こんなふうに思っております。それがまた住民の自治意識を高めることにもつながっていくのではないか、こんなふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  131. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 基本的な理念、考え方としては、御指摘のとおり、それぞれの自治体の議会の構成について、基本的に自己決定、自己責任という原則からすれば、条例において自主的に定められるべきことが望ましいことであると考えております。  この点は法案審議の際に国会で、衆参両院で附帯決議がなされたわけでございまして、「自治体議会の議員定数の上限制については、改正後の制度の運用状況を踏まえ、自治体議会の運営をできる限り自己責任のもとで行うという観点に立って、必要に応じ見直しを行うこと。」、こういうふうにも決議がなされております。  したがって、今後、必要に応じてそのあり方について検討を行わなければならないというふうに考えております。  もう御承知のとおり、現在の情勢下においては、それぞれの地方議会が現行制度下において採用しておられます実質的な議員定数を勘案した上で、法律で人口区分ごとに上限数を設けるということをしたわけでございます。
  132. 岩城光英

    ○岩城光英君 ありがとうございました。  将来的にはそのようになっていくことが理想的だと思っておりますので、今後ともよろしくお願いしたいと存じます。  次に、市町村の合併、広域行政、こういったお話をさせていただきますけれども、地方分権といいますのは、本当の意味では市町村にとっては非常に大変なことになるわけだと私はとらえております。決していいことずくめではございません。ほかの町との競争の時代に、自治体間の競争の時代に入っていくわけでありますし、首長の責任はそれはそれは大きくなってくるわけでありますし、また行政マンの政策形成能力、これも高めていかなければいけませんし、またその地域にお住まいになる住民の方々の意識の高揚、これも大事だと思っております。  そんなことを考えますと、市町村の数が現在三千二百三十二あるんでしょうか、面積的にも人口的にもさまざまな規模がございますが、これで果たしていいのか、最終的にはやはりある程度の合併、どうしても合併という形をとらざるを得なくなっていくのではないか、こんなふうに考えております。  そういったところ、さきの国会におきまして、いわゆる合併特例法が改正されたわけであります。いわき市というところは昭和四十一年に五市四町五村が合併して誕生いたしました。面積が千二百三十一平方キロメートルで、これは神奈川県の二分の一です。四国の香川県の三分の二です。シンガポールの二倍の面積を持っております。国土の面積の三百七分の一であります。人口が三十六万人で、これは日本の総人口の三百四十三分の一という、一つのモデル的なエリアかなと思っております。  合併当時、市会議員が三百三十三人おりました。これが現在、法定数で四十八、それを四名削減して四十四名で議会を運営しております。合併当時から歴代の市長さんが苦労しましたのは、その大きないわき市をどうして一体化させるか、そのために心血を注いでこられました。  私は就任しましてから、それは基本的に大事でありますけれども、いわきを構成する、海もあり、山もあり、中心市街地もある、こういったそれぞれの地域の特性を生かしてその地域の振興を図ること、それをまた大きないわき市の発展につなげていきたい、こんなふうな施策を進めたつもりであります。  いわき市を一言で例えるなら、アメリカ合衆国の合衆をとりまして、いわき合衆市と、こうも例えることができると思いましたし、交流ネットワーク都市、こういうスローガンを掲げてさまざまな施策を進めました。そういった経験からいいまして、やはり私は合併推進の立場をとりたいと思っております。ただ、市町村の適正規模、これを一律に論ずることはできないのかな、無理があるかな、こんなふうに思っております。  例えば、離島や山村などは合併の効果があらわれない地域もあります。そういった地域にはほかの手だてを考えていく必要があるのではないか、こんなふうに思っております。同時に、合併しようとする地域の将来のビジョンを明確に持たないとなかなか合併につながらない、こんなふうにも考えております。  そこで、平成七年に広域連合制度、これが創設されまして、来年四月からの介護保険制度の導入等もありまして、ここに来て急激な増加を見ております。ただ、広域連合制度ですが、どうしても各自治体の思惑、これが優先されまして、利害が一致する課題、それのみに限定されることになります。したがいまして、地方分権の受け皿として、また多様化する国民のニーズや価値観、そういったものに対応するためにはやはり広域合併を促進した方がより有効ではないか、こんなふうに考えております。  そこで、質問でございますが、これも大臣にお伺いいたしますが、広域連合や一部事務組合、こういった事務の共同処理方式による広域行政の推進と市町村合併の推進との関係につきましてどのようにお考えか。そしてさらには、広域連合が市町村の合併推進の妨げになっている部分もあるのではないか、こんなふうに思われるわけでありますけれども、この点につきましてはいかがでしょうか。
  133. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおり、今市町村の行うべき仕事の中で、非常に広域化の要請といいますか広域的な対応が必要となってきている。それについて、特定の事務に関して一部事務組合を初めいろんな広域的な共同処理の方式をとって対応してきておることは御指摘のとおりでありまして、その点においては、あるいは病院であったり消防であったりごみ処理であったり、それぞれの分野ごとに一定の成果を上げてきておるということも事実でございます。  しかし、一方でまたそれぞれ連絡調整等の時間を要する、あるいは複数の自治体が関与しているわけですから、そういう意味での意思決定について、迅速さ、的確さということについて若干どうかというところもなくはない。だから、いいばかりのことではないということも事実です。  さらに最近は、社会福祉等々さまざまな問題もありますけれども、さらなる広域的な対応を要求されておるだけでなくて、内容の充実した行政サービス、いわゆるレベルの高いサービスを要求されるというようなことがあります。  そうなりますと、人材をどういうふうに確保できるのか、それからその地域の課題、そういう意味で特定の分野を幾つかいろんな面でそれぞれの広域的な特定分野の組合をつくってやるような対応よりも、より包括的、総合的に責任を一元化してやっていくという点で言えば、やはり合併をしていくというそのことの方がより処理体制の責任の明確化、迅速さということにもつながっていくということであると考えております。  今行われておりますいろんな一部事務組合等を通じて、あるいは広域連合を通じて合併への機運が醸成されていくということになれば大変結構なことではないかというふうには思っております。  ただ、なかなか時間にも限りがありますし、そういう意味で私どもはできるだけ市町村の合併を推進してまいりたいということで、先般の合併特例法の改正も分権一括法の中でお願いをして実現していただいたところであります。これをもとにしてさらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  134. 岩城光英

    ○岩城光英君 今回の合併特例法に盛り込まれましたさまざまな支援策、これにつきまして私も評価するものでありますが、さらに合併を推進するためにもっといろんな創意工夫が必要かと思います。市町村等の意見も私自身もいろいろお聞きしながら提言していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと存じます。  最後の質問になろうかと思いますが、広域的な合併を促進する観点から、現在、広域の市、主に市が抱えている問題の中で、広域的な財政需要につきまして認めていただきたいという観点の質問をさせていただきたいと思います。  地方交付税の基準財政需要額の算定は、多くの費目では人口を測定単位として、一人当たりの財政需要額にそれぞれの市の人口を掛け算する方法を基本に算定しております。このような方法ですと、人口が多いほど各都市の基準財政需要額は多額になるんですが、一方、人口だけではどうしても捕捉できないものもあるんです。ですから、広大な面積を有する都市は、人口が同じ規模の都市よりもその面積の広さゆえにはるかに多額の財政需要を生じることもございます。  そこで、現在、地方交付税の算定上、このような面積の広大さに起因する財政需要についてはどのように反映される仕組みとなっているか。また、このような財政需要が一層的確に反映されるよう工夫すべきと考えておりますが、いかがでしょうか。  それとあわせまして、例えば森林なんですけれども、これも広域の自治体というのは、特にいわき市の場合はそうですが、三分の二が森林に当たるわけであります。そうしますと、その森林の公益的な役割を担っているという観点から、地方交付税の算定におきましても森林とか山村対策、こういった財政需要の算入につきましても充実を図っていくべきだ、こんなふうに思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  135. 嶋津昭

    説明員(嶋津昭君) お答えいたします。  今、委員の御指摘は、委員が市長時代から全国の広域な都市の方々と協力しまして、いろいろな行政需要、こういう行政需要があるんだというような勉強なり研究をした上で我々自治省に対していろいろな活動をしてこられたわけでございますが、そういうものの延長線上の御質問であるわけでございます。  御指摘のように、交付税の配分は人口あるいは面積、そういうものを指標にしてなるべく簡素化すべきだという御主張がある一方で、委員の御指摘のございますように、それぞれの個別団体の事情をよくその需要に反映させるべきだという御主張が一方であるわけでございます。  面積の広大さに起因する財政需要をどういうふうにつかまえるかといいますと、いわば面積を測定単位とするというのが直接的でございますけれども、市町村の行政経費の中で、いわゆる河川行政とかあるいは国土保全行政とか、そういうような事業費に関しましてはその他諸費という費目で面積を測定単位として算定しているわけでございます。  それ以外にも、委員からお話がございましたように、人口を指標とする場合にも、面積が非常に広いと人口が希薄に点在するわけでございますから人口密度が低くなる、密度が低くなりますと、例えば消防費なんかを測定しますと、どうしても消防署に分署をつくらなくちゃいけない。今の委員指摘の合併市なんかの場合には、もともとの団体の消防署があるわけでございますので、そういうものを統合したりしてみても相当の分署をつくらなくちゃいけない、出張所をつくらなくちゃいけない、あるいはいろいろな公民館の数をたくさん持たなくちゃいけない、そういうようなことがございますので、人口密度を使いまして補正をしているわけでございます。  これからもそういうもののあり方を研究しまして、特にいろいろな団体で研究していただきますので、今度の分権法の中でも地方団体の意見を交付税の算定に反映する、意見の申し出制度をつくったわけでございますので、それぞれの団体が具体の財政需要に基づいて出していただく意見につきまして、積極的に我々の方でも地方財政審議会等とも御相談をしながら反映させていきたいというふうに考えております。  それから、いわゆる山林あるいは森林等の水源涵養とかあるいは国土保全的な観点から、森林の機能を、今までは民間の山主の人に非常に努力をしてきていただいたわけでございますけれども、最近はそういうことがなかなか経済的にもできにくくなっているというようなことに着目しまして、今御指摘ございましたように森林・山村対策に関する経費につきまして、こういうようなものを交付税の需要に反映すべきじゃないかという議論がここ数年来ずっとあるわけでございます。  平成五年から新たに公有林の適正な管理あるいは森林整備のための担い手対策に対する経費につきまして基準財政需要額に算入しておりますし、平成十年度からは、農山漁村が果たしている国土保全のための多面的な機能の重要性にかんがみまして、市町村の特性に即して、田畑、森林面積を指標といたしまして国土保全経費というようなものを行政需要に算入することにしているわけでございます。  今後とも地域の実情に合わせて、面積の広大さ、あるいはその反対として都市的な行政需要というような御指摘もございますが、そういうようなそれぞれの地域の財政需要が的確に反映されるように努力をしてまいりたいと考えております。
  136. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  137. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成八年度決算外二件及び平成九年度決算外二件を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  138. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。  きょうは、法務省所管分を中心に伺いたいと思います。  さきの通常国会で男女共同参画社会基本法が成立いたしました。この席にも同席しておられる清水嘉与子同僚議員を含め、女性議員が超党派で前文の修正をしていただいた。その前文の中には、男女共同参画の課題というのは二十一世紀の我が国の最優先課題の一つということをうたっていただいた、そういう法律でございます。大げさに言えば、長年の悲願とも言うべき私どもの願いがこもっておりまして、それを野中官房長官、男女共同参画担当大臣でいらっしゃいますけれども、熱意を傾けていただきまして、その法律が成立したわけでございます。  さて、この法律ができる前から、行政上の措置といたしましては、総理大臣が本部長をやっております男女共同参画推進本部というものがございまして、さまざまなアクションプログラム、行動計画のもとに施策を推進してまいったわけでございます。しかし、行政上の措置と法律にのっとった措置というのは、やはり国の責務というのも一段と重くなる、このような認識でございます。  そこで、この法律が通りましたのを機に、法の番人と言われております法務省等の課題についてお伺いさせていただきたいと思います。  まず、今までのアクションプランの中でも、審議会委員への女性の登用促進を図るということが政府の課題になっておりました。去る七月二十三日、国の審議会等に占める女性委員の割合がことし三月末時点で発表されまして、一八・六%、こういう数字が発表されております。この発表に際しまして野中官房長官は、このままでは二〇〇一年三月末までに二〇%を達成するという政府目標が実現できなくなるのではないかという危機感をお述べになったそうでございまして、各省庁には一段の努力を要請された、このように伺っております。  さて、法務省の所管審議会におきます女性委員の割合を拝見しましたところ、これが大変残念なことに全省庁平均の一八・六%よりも低い一六・〇%、ランキングで申し上げますと全省庁のうち下から数えて六番目、こういうランキングになっております。平均以下でそういうランキングだということでございます。  また、女性委員がいない審議会というのはさすがに少なくなりまして、九割を超える審議会が女性委員を任命しているわけでございます。法務省の場合は、審議会の数が少ないこともあるんだと思いますけれども、また性格もあるかと思いますが、七審議会中三審議会に女性が全くおられない、ゼロ審と私ども申しておりますが、これが全省庁中トップ、こういうことでございます。  陣内法務大臣としましては、野中官房長官の要請を受けられて、法務省としての格段の努力をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  139. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 委員の御尽力もありまして、本年六月二十三日に男女共同参画社会基本法が制定されたわけでございますが、その第五条におきましては、政策等の立案及び決定への男女共同参画の機会確保が規定されております。審議会等における女性委員の登用促進は、政策方針決定への女性参画拡大の具体的な取り組みとして大変重要視されているわけでございます。  法務省におきましても、各種審議会等委員の候補者選定に当たりましては、これまで審議会委員の団体推薦を行っている団体に対しまして女性委員の推薦要請を行うなど、その登用について努力してまいったのでございますが、男女共同参画社会基本法の趣旨を踏まえた上、今後とも引き続き審査会等への女性登用に積極的に努力してまいりたいと考えております。  今、委員指摘のような状況にはございますが、さきの国会において設置をお認めいただいた司法制度改革審議会、これにおきましても既に二〇%を上回るような女性委員の登用でございます。  なお、ゼロ審ということで御指摘いただきました例えば検察官特別考試審査会とかあるいは副検事選考審査会、これはポスト指定になっておりまして、現在のところおっしゃるようなゼロ審にはなっておりますけれども、これもこれから改善していく課題の一つではなかろうかと考えております。
  140. 川橋幸子

    川橋幸子君 充て職の場合はなかなか推薦母体から女性が出てこない、そういう問題があるわけでございますけれども、ゼロ審の中に衆参の議員が就任する審議会が目につきました。現在は民主党の方も男性の先生がついておられるようでございますが、行政の立場から政治に対してもこれは要求されて当然のことではないかと思いますので、これは一例でございますけれども、推薦母体の方にもそのように御依頼していただきたい。午前中の審議では元検事の佐々木委員も活躍されておりますし、参議院の中には法曹界出身の、弁護士出身の女性の先生方もたくさんおられるわけでございます。御努力いただきたいと思います。  また、法律といいますと法律の専門家という感じから、学術といいましょうか学識経験者が推薦されてくるのでございましょうか。拝見しますと、東大名誉教授から始まりまして各国立大学の先生方がぞろっと並ばれる。民法部会でもそのような人選になっております。今の民法で言われておりますのは、ライフサイクルが変わってくるとかライフスタイルが変わるとか、結婚観、家族観が変わってくるという国民生活の非常に大きな転換期だといたしますと、むしろ象牙の塔の方あるいは法曹界の方、それぞれ生活実感をお持ちの方もいらっしゃるとは思いますけれども、よりこういう問題で活躍しておりますNGO等々の推薦、任命について御努力をいただきたい。これは私の要望でございます。  審議会委員同種でございますが、法律に基づいて配置されている相談員等の問題がございます。  法務省の所管の中では、人権擁護委員と保護司という二つの委員名を挙げられまして統計がとられております。これもかねがね指摘させていただいているわけでございますが、まだ人権擁護委員は二八・七%、保護司は二三・三%ということで、昨今の人権侵害の問題等々から考えますと、もっと女性の割合を高めていただきたい、相談者のニーズにぴったり合ったような任命にしていただきたいというふうに思うわけでございます。  それから、女性比率が低いということに加えまして、これもかねて指摘されているところでございますが、年齢が高いのですね。人権擁護委員の場合、ちょっとその年齢構成を計算させていただきましたら、五十代以上が八割を超えておられる、こういう状況でございます。人生経験豊かな、そういう相談員が欲しいということもあるかもわかりませんけれども、総理府の広報室がやっております世論調査によりますと、やはり五十代、六十代ぐらいの相談員に相談したいという、こういう調査が既に出ているわけでございまして、年齢構成についても再度しっかりと見直していただきたいと思うわけでございます。  過去のこの制度ができましたときからのいきさつ、背景等があってなかなか現行制度のもとでは改革が難しいというお話もあろうかと思いますが、その場合はむしろ、今、人権擁護施策の推進全体の見直しが審議会で始まったというところでございます。任命または制度のあり方を含めて抜本改革する、こういう時期に来ていると思いますが、いかがでございましょうか。
  141. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 人権擁護委員制度に関しまして、女性委員の比率や年齢構成について、委員ただいま御指摘なさいましたような御批判があることは承知いたしております。  人権擁護委員会制度の活性化を図るためには、人権擁護制度について御指摘のような点についての改善が必要だと思いますが、この方策としまして、積極的な活動が期待できる委員が推薦されますように、法務省といたしましてはその推薦の任に当たっていただいておる市町村理事者に対しまして日ごろからそのような要請をするなどいたしまして、女性委員の拡大、委員の若年年齢の推進等に努めてきておるところでございます。  なお、人権擁護委員制度の充実方策につきましては、法務省に設置されています人権擁護推進審議会において調査審議されることとなっており、その審議結果が出た際にはその結果をも踏まえましてさらにこの制度の充実に努めてまいりたい、このように考えております。
  142. 川橋幸子

    川橋幸子君 人権擁護委員に関連いたしまして、総務庁所管の行政相談委員の件について伺わせていただきたいと思います。  男女共同参画社会基本法の十七条に、個人の人権救済について所要の措置を講ずるという、そういう文言が盛られましたし、また行政につきましては苦情処理についても一段とその法的根拠を持った制度の推進を図るということが法律上明記されたわけでございます。  しかし、十月十一日からが行政相談週間ということでございますけれども、地方から私どもに上がってまいりましたまさに苦情といいますか、モニターのような役割を私たちは果たさせていただいたわけでございますが、その行政相談週間の一日所長さんの職業、経歴が上がってまいりました。昨年の取り組みによりますと、半数以上がミス何々さん、何々娘さんと。行政相談が非常に身近で親しみやすくなってほしいという、そういう配慮はあるのかもわかりませんけれども、基本法十七条では既存の相談委員の活用を図る、苦情処理、オンブズパーソン的な機能も含めて活用を図るという、こういう官房長官の答弁でございましたが、一日相談所長さんの任命の仕方については、やはり行政相談委員の役割にふさわしい方になっていただく、これが最も必要なことではないかと思うわけでございます。  野中官房長官に七月の初めに私ども申し入れをさせていただきましたら、野中官房長官は、早速担当の総務庁を通じてきちんとしたいと答えてくださったわけでございますけれども、この件についてどのように総務庁はフォローアップしておられますでしょうか、お尋ねいたします。
  143. 東田親司

    説明員(東田親司君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、毎年秋の行政相談週間におきまして、関係の各役所に集まっていただきまして合同行政相談所というのを開設しております。これの開催に当たりまして、行政相談制度の理解と利用の促進を図るという観点から、一日相談所長さんというのを任命しているわけでございますが、その際、一日所長さんの趣旨から、できるだけ広報効果の期待できる人という観点で委嘱するようにということを私ども本庁から各出先機関に指示してきたわけでございます。  出先機関は本庁のこの指示を受けましていろいろな工夫を行って選考しているわけでございますけれども、その際、固定的にミスだれだれ、ミス何々という人方を対象にするのだというふうに考えて取り組んできたわけではございませんけれども、現地では、どうしても広報効果の高い人というとなかなかたくさんいるわけではなくて限られているといった事情もございまして、結果的には、ミスだれだれというのが先生御指摘のとおり昨年度の場合約六割になっていたものでございます。  今年度の選考に当たりましては、先ほどの先生の申し入れもございましたので、改めて適切な人材を幅広く選考するように出先機関に指示したところでございまして、その結果、現在段階において集計いたしましたところ、全体の約三分の一ということで、昨年の実績に比べましてほぼ半減している状況でございます。  いずれにいたしましても、一日所長さんにどのような方がふさわしいかにつきましては、現地の実情に応じまして幅広く選考していくことが肝要だと考えておりますので、引き続きそのように指導してまいりたいと思っております。
  144. 川橋幸子

    川橋幸子君 早速御努力いただきましたことはありがたいと思いますけれども、ちょうだいいたしました八月二十七日付の地方に対する依命通知を拝見いたしましたら、今御答弁のありましたとおり、「広報効果の期待される適切な人材の幅広い選考」となっておりまして、ここに人権ですとかさまざまな苦情処理、そうしたことにふさわしいというのが「適切な」で読めということなのかもわかりませんが、これを見るとやはり広報効果の期待されるところにぐっと傾いているような感じがいたします。こういう制度が本当に活用されますのはふさわしい人材がいてからこそと思いますので、それでは、来年は残っておられます三〇%の方々についてもぜひ御検討いただきますようにお願い申し上げます。  それでは、もう一度法務省所管の話に戻らせていただきます。  これもかねて何回も委員会等で指摘されていることでございますが、法務省所管分の中に売春防止法の規定に基づく婦人相談員の問題が検討課題として残っているわけでございます。ここ数年、入所者がゼロであるにもかかわらず定員は、定員といいますか、職員の配置は六名ですか、あるいは立派な施設が建てられているということでございます。それから、婦人という言葉は若い女性を対象としないというようなことがありまして、婦人から女性へと言葉が改まっているわけでございますが、なぜかこれだけは唯一残っているということでございます。  同僚議員円より子さんの質問に答えられまして陣内大臣は、去年の十二月から省内で検討を始めているということをお答えいただいております。円より子さんあるいはほかの女性議員の方々が申しておりますのは、最近の女性への暴力の対策にこれを転用できないか、既に東京都等自治体では相談所をシェルターのようなそういう役割に転用しているところが多いわけでございますが、そうした要望も含めまして、去年十二月からの検討結果というのはいかが相なっておりますか、伺わせていただきたいと思います。
  145. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 婦人補導院についての具体的な検討作業につきましては、現在までのところ事務当局内でさらに検討を進めております。法務省関係部局との調整作業を経た後に結論を出したい、このように考えておるところでございます。  これまでの検討の中においてどういうことが言われているかということをちょっと御紹介いたしますと、今後も収容者が皆無ということは言えないではないだろうか、本来の補導処分対象者用として一定の収容区域を確保する必要が依然としてあるかもしれないと。首をかしげていらっしゃいますが、売春防止法がある以上はこういうことも一つのやっぱり重要な視点だろうと思います。  それから、女性への暴力対策においては、このような女性に対し心のケアをどのようにするかということも重要な要素でありますので、これは一法務省にとどまる課題かどうかということも十分検討してみる必要があるだろうと思います。  また、婦人補導院の大半の建物は、隣接する八王子少年鑑別所と共用を前提につくられておりまして、現に同所が平素から使用しており、全く使用していないのは居室等の一部であるということでございます。私も先般視察いたしまして、その辺の状況をつぶさに見てまいったわけでございます。院長、職員、これはすべて八王子の少年鑑別所の職員と兼務されているということでございますので、その辺のこともお含みいただく必要があろうかというふうに思っておるところでございます。  今後とも、さらに多角的に鋭意検討を進めていきたいと考えております。
  146. 川橋幸子

    川橋幸子君 全く空になっていて税金がむだになっているわけではないとおっしゃるその趣旨はよくわかりますけれども、やはり法務行政といいますのも時代の要請に適合いたしますように、売春防止法の規定に基づいていることは私も存じておりますが、それに基づく、貧困から売春に走って、その社会復帰のための保護を求める人が今後ふえる、あるいは一定程度そういう方がいらっしゃると。ちょっとこれは、過去の一日平均収容人数のところ、ここ数年ゼロと申し上げましたけれども、平成四年以降一人というところが平成七年に一年あるだけですね。あと全部ゼロですね。そういう現実を踏まえて対応をお願いしたいと思います。  陣内大臣におかれましては、大変私は期待させていただいておりまして、このまま留任していただければ引き続きということかと存じますけれども、ぜひ組閣の際には次の大臣に、この問題はそもそも中村大臣からお引き継ぎなされたというふうに伺っておりますので、引き継ぎをお願い申し上げたいと思います。  さて、次は人権擁護施策について伺いたいと思います。  去る七月三十日に人権擁護推進審議会の人権教育・啓発の推進についての答申が出されました。そこで、人権フォーラム21という武者小路先生が会長をやっていらっしゃる人権NGOの方から、あるいはこの人権フォーラム21という団体だけではなくて、ほかにも同和関係の二団体の方々が、この答申をまとめるに当たっての意見募集が非常に形式的であった、募集期間が短かった上に、その締め切り日から事務的に取りまとめたのが四、五日だったんですか、しかも、その取りまとめたものが審議会の中で審査されることもなく会長一任となってしまったと。その意見は非常にたくさん寄せられて、一本しか引かれていなかったファクスが満杯状況になっていたということのようでございます。意見は、短い期間にもかかわらず一万八千余の意見が寄せられた。その大半が、やっぱり人権問題については法的措置を講じてほしいという意見だったようでございます。  そういうことで、非常に民間の中からこのパブリックコメントの手続、これは行監のおっしゃるいわゆるパブリックコメントではなくて、民意をよく反映させるという意味の意見募集でございましたが、こういうNGOからの抗議が出ていることにつきまして、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。
  147. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 審議会におきましては、答申案に対して寄せられた意見も踏まえた上で審議がなされ、答申の取りまとめがなされたものと承知いたしております。  ただ、今回の意見募集の手続に関しましては、今委員が御指摘なさいましたような御批判があったことは承知いたしております。今後の審議会の運営においては、このような御批判のある点も含めて今回の意見募集の経験が生かされていくのではないか、このように考えております。
  148. 川橋幸子

    川橋幸子君 ちょっと時間が足りなくなりましたので少々質問を飛ばさせていただきますが、この審議会におきましては、教育、啓発についての答申を出しました後、これからはいよいよ人権侵害の救済措置についての検討に入っていくわけでございます。  そこで、少々私はアイデアを提供させていただきたいと思いますので、一つずつのお答えは結構でございますので、そのような方向でぜひ対応していただきたい、その方向につきましての御答弁をちょうだいいたしたいと思います。  人権侵害の救済措置につきましては、先ほど男女共同参画社会基本法の十七条の件を申し上げましたが、特に女性への暴力に対する問題については、こちらの方の審議会の中でさまざまな検討が進んでおります。男女共同参画審議会の方からは女性への暴力の答申がほぼこれと時期を同じく出されておりまして、しかも法的措置も含めて検討するという、そういう答申になっているわけでございます。また、総理府の男女共同参画室の方では全国的な調査も実施するということでございますので、こうした他省庁の作業、成果物を十分この中で生かしていただきたい。それが検討を一から始めるよりも効率的であると同時に、他省庁との連携を強化する方法、方策になるのではないかと思っております。これが一点でございます。  それから次は、国連の人権委員会から日本政府に対するさまざまな見解が示されているわけでございます。ちょうど一年前の指摘でございましたでしょうか、人権擁護委員制度が、その国際基準、パリ原則に照らすと行政から独立した第三者機関としての機能を果たすに至っていないというような感じのものを初めとしまして、るる指摘がございまして、中には、強く要請するとか再度要請するとか勧告するとか、表現が日本政府に対してきついといいますか、グローバルスタンダードになっていないという感じの指摘があるわけでございます。  今度の人権の審議会におきましては、こうした人権委員会の日本政府に対する見解に示された問題というものを審議していただいて解決の方向で御努力いただきたい、そのように審議会に要請していただきたいと思うわけでございます。次回、日本政府がこの勧告に対して、最終見解に対して政府報告を出しますのが二〇〇二年十月となっているわけでございます。ちょうど人権審議会の検討期間とぴったり一致いたしますので、グローバルスタンダードについて、あるいは国連の指摘について十分審議していただきたいという要望でございます。  それから三点目は、先ほど申し上げましたようなパブリックコメント制度を効果的に活用していただく、あるいは人権関係のNGOの意見を聞いていただきたいということでございます。  以上、こういう方向で審議会の検討をお進めいただけますように審議会に要望していただきたいということを要望させていただきます。
  149. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 現在、審議会においては、本年九月から諮問第二号の人権侵害の場合の被害者救済施策の基本的事項について本格的な審議を開始しているところでございます。  その開催に当たりまして、法務省といたしまして補足説明を行いましたが、諮問第二号のもとで検討をお願いしたいと考えている事項として、救済の基本的理念と救済の対象について、救済手段等の救済措置のあり方について、調査手続権限のあり方について、救済機関の組織体制のあり方について、この四点を提示したところでございます。  審議会の運営は審議会がお決めになることでありますけれども、審議会においては、今後とも人権に関する我が国の諸情勢を踏まえて、二十一世紀にふさわしい人権救済制度の確立を目指してさまざまな角度から総合的な検討をしていただきたいと考えております。今、委員が御提案になられましたことも大事な方向の一つだと思っております。
  150. 川橋幸子

    川橋幸子君 少々早口で、お聞きしたいことを詰め込んで慌ただしくお聞きしてしまいました。残された時間を、実は本当に法務大臣に十分御配慮いただきたいという問題に集中させていただきたいと思います。  きょうは傍聴席にも当事者の方々のうちの何人かがお見えでございますけれども、いわゆるオーバーステイの方々、不法在留外国人の方々の在留特別許可をお願いしたいという案件でございます。  午前中の委員会では、不法入国といいましょうかあるいは密入国といいましょうか、さまざま犯罪にかかわる問題が憂慮されるような御質問が多かったわけでございますが、日本にオーバーステイとなってしまわれた人々にはいろんな方々がおられるわけでございます。  九月三日の朝日新聞の論説でもって紹介させていただきたいと思いますが、「訴えに耳を傾けたい」、こういうタイトルの論説でございます。不法滞在を続けてこられた外国人労働者とその家族の方々二十一人が在留特別許可を求めて入管に一斉出頭されたということです。これはある意味では大変危険なといいますか、場合によっては強制送還の危険も覚悟の上であえて出頭された方々でございます。  外国人労働者の問題は、バブルのころには本当に三K職場に日本人が働きたがらないということでさまざまふえることが多かったわけでございます。今はそれが減るということではございますが、そのころに入ってこられた方々がちょうど滞在十年ぐらいになられて、結婚されたり、あるいはお子さんが学校に上がられたりということで生活の根がおりているということでございます。  私の住まいは板橋でございます。大臣、板橋のことを御存じかどうかですが、大山という商店街がありまして、とてもにぎやかな庶民的な町でございます。そういうところにイランの方とかミャンマーの方とかバングラの方とか、そういう方々が地域社会に根づいて、もうそれが自然の形で善良な市民として生活しておられる。もちろん犯罪を犯すような方々のことを言っているわけじゃなくて、日本の地域社会の中に生活をしているということでございます。  外国人労働者というと、いつも労働力というふうに私どもはとらえてしまいがちでございます。労働力不足だとか過剰だとかいうことで考えてしまいますが、やっぱりこの方々は人間、人でございますので、恋もなさるでしょうし結婚もなさるでしょうし、お子さんが生まれればそのお子さん方の将来のことも心配される。ちょうどそのお子さん方が学齢期もかなり過ぎてきますと、今後の就職まで含んだ子供たちの一生のことも考えなければいけない、こんな状況になるわけでございます。  両親の方々は、日本の法律を犯していることが悪いというのは十分にわかっている、でも子供たちの将来のために日本に残りたいということで、何とか法務大臣の裁量によります在留特別許可を求めたいということで、いわば子供のためにということで捨て身の覚悟で出てこられたわけでございます。  こうした実情を私たち日本人がどこまでよく知っているのか、それからそういう訴えにちゃんと耳を傾けるべきではないかというのが、私がきょう質問させていただきたいと思っている趣旨でございます。  子どもの権利条約というのがありまして、あえて申し上げるまでもなく、子供の利益は最優先で考えなければいけないというのがこの条約の趣旨でございます。数年前に私どもも国会審議をいたしまして、これを批准したわけでございます。  それから日本国憲法、平和憲法でございますけれども、平和に生きる権利、人権というのは日本人のためだけの人権ではなくて、外国人の人権もしっかりと守るというのが日本国憲法の規定でございます。  こうした問題について、定着という新しい段階を迎えているこういう事実、これを法務省というよりも私たち日本人自身が、同じ地域社会に住む一人一人がそれをどうやって受けとめていくんだろうか、こういう課題を私は突きつけられていると思っております。法務大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
  151. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 御質問の不法残留外国人二十一名の方々のこの問題は現在調査中でございます。  これらの人々に対する在留特別許可の許否につきましては、これは個々の案件ごとに在留を希望する理由あるいは経歴、家族関係、生活状況、素行、内外の諸情勢その他諸般の事情を総合的に勘案して慎重に判断し、適切な結論を得なければならない、このように考えております。
  152. 川橋幸子

    川橋幸子君 一般的なお答えしかいただけないのかなとは思いましたけれども、ぜひこの問題も次の大臣にしっかりと申し送りしていただきたいと思います。  この御家族の中には、ここに書いてあるイランの方の小学校六年生の長女の方のようですが、「私はイランのことは何もわからず、日本の文化に親しんできました。仲の良い日本人の友達もいっぱいいます。このまま日本に残りたい」。日本語しか話せないというお子さん方もいらっしゃるわけですね。  日本人というのはとかく異質なものを受け入れるというのが下手だと言われている人間でございますけれども、こうした問題を前向きに考えていくそういう時代に来ているのではないかと思います。少々文化論になってしまいましたけれども、そういう観点からのお考えを一言お聞かせいただけるとありがたいと思います。
  153. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) お話を承りました。大変参考になるお話だと受けとめております。  ただ、一方では法をどう守っていくか、あるいは社会正義をどう実現していくかということも大事な問題でございます。そういったものを総合的に勘案しながら適切に対応していかなきゃいかぬのかなという印象を強く持ったところでございます。
  154. 川橋幸子

    川橋幸子君 もちろん法律は法律でございます。法律がそぐわなければ法律の方を変えなければいけないのでございますけれども、現在のところ、訴えに耳を傾けてほしいといいますのは、そこまでちょっと待てない、あるいは個別事情をよくお考えいただきまして御判断いただきたいという、そういうやむにやまれない訴えであるということを最後につけ加えさせていただきたいと思います。  時間がなくなってしまうからということで少し質問をすっ飛ばしてしまいましたので、ちょっとまた前に戻らせていただいてよろしいでしょうか。どうも恐縮でございます。それとも、せっかく自治大臣がいらっしゃいますので、通告はしておりませんですけれども、今のやりとりを多分お聞きくださったと思います。  自治省所管部分でも、定住外国人の地方参政権の問題ですとか、あるいは地方公務員への採用に当たっての国籍条項の問題とか、日本はこれまでとかく血統主義というんでしょうか、国籍を初めといたしましてさまざまな市民権について血統主義が強かったと思います。しかし、これだけ国際化が進んできておりますこの日本で、そうした時代の変化については、自治省所管の守備範囲のお答えで結構でございますので、御答弁いただけるとありがたいと思います。
  155. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 定住外国人の参政権問題、今地方選挙への参政権がテーマになっておることはもう御案内のとおりです。この辺について、もう既に議員提案もなされておることでありますし、かなり各党間で御協議をいただいております。  率直に申し上げていろんな問題があることはもう御承知のことと思います。私どもも鋭意検討いたしておりますが、かなり政治的な議論、これはやっぱり各党会派の中で少し詰めていただいた上で対応をさせていただきたいというふうに考えております。今かなり進んでおるように承っております。  それから、地方自治体の職員として、これはいろいろ全国の中でも具体的な採用の事例が出てきております。ただ、それが可能な分野とそうでない行政分野とそれぞれあろうかと思います。そういう点では、何が何でも排他的にしていいというものではないと思いますが、しかし何でもかんでもウエルカムというわけにいかないということも事実でありますので、内容に即した対応をしていかなきゃいけないというふうに考えております。
  156. 川橋幸子

    川橋幸子君 突然の質問で大変申しわけございません。でも、いいお答えをいただきましてありがとうございました。  それでは、数分残っておりますのでもう一問伺わせていただきたいと思います。  先ほどの人権擁護施策の件でございますが、今回の人権擁護推進審議会の答申は、法的措置は必要でない、そのような取りまとめであったように私は理解しております。パブリックコメントの中では法的措置を求める声が大きかったわけでございますけれども、そうした問題については行政措置で十分だというような審議会の中でのおまとめであったと存じます。そうしたパブリックコメントの中での要望、審議会が御判断することでございましょうから審議会の見解を尊重するということになるのかもわかりませんけれども、これからの人権施策について法的根拠、法的措置を講ずることについて大臣はどのようにお考えになられるか。  それから、今回の答申では、教育・啓発の推進については財政的な裏づけが必要だということは言っておるわけでございますけれども、予算要求の時期でもございます、概算要求の中ではどのように御努力くださったのか、この二点について伺いたいと思います。
  157. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 人権教育・啓発を総合的、効果的に推進するという施策につきましては、速やかに所要の行財政措置を講ずることによってそれを実現していくべきだ、こういう答申をいただいておるわけでございます。その趣旨を最大限尊重するということが大事でございまして、これを踏まえて、来年度予算におきましてその線に沿った概算要求をいたしております。  具体的に申し上げますと、人権啓発関連施策の予算として、対前年度二十三億六千万円の増、したがって合計で三十五億一千万円というふうに約三倍増の大幅な予算をお願いして、審議会の答申に沿うよう最大限の努力をしてまいりたいと思っております。
  158. 川橋幸子

    川橋幸子君 法的措置の方は。
  159. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) この人権教育・啓発に関する答申の中では、ただいま申し上げました行財政措置でもって対応をすることが適切であるという答申をいただいております。  しかし、引き続いてお願いしております第二回の諮問に、つまり人権救済措置についての諮問の中で幅広く論議が行われると思います。そういうものを踏まえながら、これからの対応が必要じゃなかろうかと思っております。
  160. 川橋幸子

    川橋幸子君 どうもありがとうございました。  終わります。
  161. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 同僚川橋委員に続きまして、質問をさせていただきます。  私は、神奈川県民でもございますし、午前中佐々木委員あるいは岩城委員からもお話がありましたが、若干警察関係の件で質問をさせていただきたいと思います。  まず冒頭に、今回、神奈川県警察の不祥事ということだけではないのかもしれませんが、特に神奈川県の不祥事マスコミ等で報道されまして、多くの県民がまことに残念、遺憾に思っておるということで、ぜひ警察の皆様方に威信回復に努力をしていただきたいと思いますということを申し上げさせていただいて具体的な質問に入らせていただきたいと思います。  そこで、果たして最近になって不祥事がふえているのかどうかという点から質問させていただきたいと思います。  まず、具体的な数字でお答えいただきたいんですが、本年度、きょうまでの件数で結構ですが、きょうまで懲戒処分された人数、あるいは諭旨免職された人数、戒告処分をされた人数を人数ベースでお答えいただきたいと思います。それからまた、それを比較のために、例えば昨年度のそれぞれ懲戒、諭旨、戒告の人数をお答えいただきたいと思います。
  162. 石川重明

    説明員石川重明君) 今、懲戒免職その他数字についてのお尋ねでございますが、まず、懲戒免職処分を受けて逮捕された警察官の数がふえているのかどうか、こういう観点に絞ってお答えしたいと思うわけでございますが、全国懲戒免職処分を受けて逮捕された警察職員はことしは既に十三名となっておりまして、遺憾ながら増加傾向にございます。過去の数字と申しますか昨年の数字で申しますと、免職になった者は私どもの集計では十六人でございまして、諭旨免職になった数が四十五人でございます。  以上でございます。
  163. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ことし懲戒免職で逮捕された方が十三名ということで、昨年が十六名、懲戒免職で逮捕された方ということですね。
  164. 石川重明

    説明員石川重明君) 懲戒処分として免職になった数が昨年は十六名でございます。  先ほどの十三名と申しましたのは、逮捕をされてそれで懲戒免職になった数を申し上げました。
  165. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そうすると、逮捕はされていないけれども懲戒処分されている方がことしいらっしゃるということで、その方を足されると何人になりますか。
  166. 石川重明

    説明員石川重明君) 先ほどの平成十年の十六人と申しますのは、逮捕、逮捕されずにかかわりませず懲戒免職になった数でございます。そういう数字でございます。
  167. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ですから、ことしの数字は何人でしょうか。ことし逮捕されていないけれども懲戒処分された方。
  168. 石川重明

    説明員石川重明君) この数字、今手元に持っておりませんので、後ほどお答えしたいと思います。
  169. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、多分逮捕されていないけれども懲戒処分をされている方がいられるということだと思います。例えば、話題になっております相模原の巡査長をされていた方も、まだ逮捕はされていないと思いますが、懲戒免職になっているということですから、十三名に加えて何名かが免職になっているということだと思います。  比較のために、昨年の十六名のうち逮捕された数字というのはお持ちですか。
  170. 石川重明

    説明員石川重明君) ただいまその数字は持っておりません。
  171. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 非常にふえているということなんだと思うんです。その十六名のうちの何人かが恐らく逮捕されていなくて、しかし懲戒で免職されていると。  例えば、神奈川県警の場合でも、逮捕されていないけれども懲戒免職になっている。どういう基準懲戒免職されるのか。先ほど諭旨免職、昨年は四十五名とおっしゃいましたが、どうも私なりにばっと見ている感じでは、言葉が適切かどうかお許しいただいた上で、迷惑行為、痴漢行為をした場合には諭旨免職である、それから何か金品を盗んだりした場合には逮捕、懲戒ということになるのかなということなんですが、その基準が余り明らかにはなっていないということなんです。そういった客観的な基準警察庁として各都道府県警察に出されている基準というのはあるんでしょうか。
  172. 石川重明

    説明員石川重明君) 特に明確な基準というものはございません。  ただ、懲戒免職というのは懲戒処分でも最も重い処分でございまして、退職時の退職金が支払われないとか、そういうことでありますから、非違行為によって許されざる行為を行ったという者について懲戒免職にする、こういうことでございます。
  173. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私は、それはいろいろ議論があるかもしれませんが、客観的な基準をつくられて、そして内部統制を図られた方が世間にも受け入れられやすいんではないかなというふうに思います。  また、別の観点から申し上げさせていただきますと、どうも基準がないということは場合によっては、勘ぐれば仲間がかばえるうちはそういうような余り厳しい処分はしない方がいいんじゃないかというふうにとらえてしまうんじゃないかなと。それは多分本旨は違うところにあられるんだと思うんですが、そういう点から、客観的な基準をつくって、それをむしろ世間に発表された方が信頼回復につながるんではないかなと思います。  この点については長官に伺った方がよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
  174. 石川重明

    説明員石川重明君) 私の勉強不足かもしれませんが、よく調べてみたいと思います。  それから、基準についてもはっきりした形で処理をしていきたいというふうに思っております。
  175. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) ただいま懲戒処分につきましての基準云々というふうなお尋ねだったと思いますが、御案内のように、懲戒処分としましては免職、停職、減給、戒告というふうな段階になっているわけでございまして、それについて明確な基準というものを私ども持ち合わせておりません。  ただ、私ども、残念ながら過去に幾つかのそうしたものがございます。そうしたもののいわば積み重ねと申しますか判例法と申しますか、言葉は適切かどうかわかりませんけれども、そうしたものを一つのメルクマールとして処分いたしているということでございます。  そして、そんなことではばらばらになってしまうんじゃないかということでございますけれども、各県におきまして本部長におきましてそうした統一的な処理をしておりますし、それから事案によりましては警察庁の方へ、私どもの方へ相談に来るというふうな事案もございます。そうした全国的な統一という斉一性を期するというような観点で始終御相談にも乗っているということでございます。  したがいまして、私どもはそれなりに適正な処理を行ってきているというふうに考えているところでございます。
  176. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今のお答えを伺っていますと、警察庁としてガイドラインはつくらず、個別案件に応じて各都道府県警からの相談に応じて過去の例と比較考量して大体こんなところだろうというふうに聞こえるわけですが、そういうことでありますと非常に客観性に欠けると思います。また、今回の神奈川県警のケースが問題になっている半分ぐらいの理由というのは透明性に欠けるということが批判を受けているわけだと思いますので、重ねて長官に御検討をお願いしたいと思いますのは、客観的な基準をつくられて、そしてそれを全国の各都道府県警通達を出されるということなのではないかなと思います。  加えて、説明をさせていただきますと、性善説に立てばそんなことはないんだから必要ないという御答弁もあろうかと思いますが、先ほどの官房長のお答えでも、どうも正確な数字をいただいておりませんけれども、これはまた別途いただければと思いますが、ふえているということは間違いないということでありまして、きょうの午前中の質疑でも、犯罪そのものが全国的にふえているわけですから、望むらくは警察組織はそこから無縁、絶縁のものであるということを望みたいわけですけれども、そうでないということであるならばやはり客観的な統制手段をつくられたらいかがですかということを重ねて申し上げさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。
  177. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 委員の御指摘もむべなるかなという感もいたすわけでございますけれども、事案というのはいろんなケースがございます。それにつきまして一つの基準というもので果たして整理できるかどうかということが非常に難しい問題かなというふうな感じもいたしているところでございますけれども、私どもいろいろな工夫なり努力というものをさせていただきたいというふうに考えております。
  178. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 一点だけ確認をさせていただきたいんですが、いろいろなケースがあるということであればそれはそういうことかもしれませんが、例えば逮捕をされた場合、あるいは逮捕はされないけれども起訴をされた場合というものについてはすべて懲戒処分をされているのか、それともそういう場合でも諭旨免職という形をとっておられるケースがあるのかどうか、もし手元でおわかりであればお答えください。
  179. 石川重明

    説明員石川重明君) 先ほど事案事案に個性があるということで申し上げているわけでございますけれども、例えば懲戒処分ということでございましても、勤務放棄をみだりに行うといったようなことで懲戒処分を行ったりするようなこともあるわけでございまして、そういうようなものは懲戒免職になっておっても逮捕はされない、また逮捕をされた場合においてもその事案事案の軽重というものはあろうかと思います。よく研究をしてみたいというふうに存じます。
  180. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私の理解では、少なくとも逮捕に至るということはそれなりに重い事案だと思いますので、それで逮捕に至っているにもかかわらず懲戒になっていないケースがあるとするならばそれは問題があるのではないかなと。問題がないとするなら何か理由があるのだと思いますので、それはぜひ、今手元に資料がないのであれば結構ですけれども、お答えいただきたいと思います。
  181. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 委員指摘の逮捕された事案あるいは起訴された事案というふうなものにつきましては、私どもの記憶ではまずまず懲戒免職という形になっていると思います。ただ、正確ではございませんけれども、おおむねそんな形で処理がされているということで御理解をいただきたいというふうに思います。
  182. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 きょうは、その警察警察法上で管理すると定められております国家公安委員会の野田国家公安委員長にもお越しいただいております。  警察法上は、国家公安委員会は警察庁管理するというふうに定められておりますし、国家公安委員会は都道府県公安委員会と常に緊密な連絡を保たなければならないと定められております。  警察に対する信頼を回復する一つの手段、方策として、国家公安委員会の管理の度合いを強めたらどうだろうかという議論も幾つかの新聞の社説で述べられておるところでございます。  そこで、少し具体的な質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、公安委員会として警察庁の職員でない事務をつかさどる人というのはいない、要するに、公安委員以外はすべて警察庁の職員であるという理解でよろしゅうございますか。
  183. 石川重明

    説明員石川重明君) 国家公安委員会は五人の委員の先生方で構成されているのは御承知のとおりであります。国家公安委員長がおられる。その管理のもとに警察庁が置かれております。そして、その警察庁の職員というのは、国家公安委員会の事務局の立場で事務を処理している、こういう関係になっております。
  184. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今お答えいただいたとおりだと思いまして、多分五人の国家公安委員以外は事務もすべて警察庁の職員の方がやっておられるということだと思います。  それは先ほど申し上げました性善説、性悪説ということなのかどうかは別として、内部統制ということを国家公安委員会に期待をする場合に、私はむしろ国家公安委員会専属の事務局があった方が、あるいはそれがもし不可能だとしても先ほど話がありました監察官、監察官は組織上は多分警察庁の場合は官房長のもとにあって警察庁長官と直結はしていないということなんだと思いますが、そこを公安委員会と直結をさせた方が内部統制にもつながると思いますし、また信頼も高まるんではないかなというふうに思います。  具体的にちょっと例をかえて申し上げさせていただきたいと思いますが、恐らく警察庁にいられる監察官あるいは各都道府県警本部にいられる監察官は警察の職員の方であり、異動を伴うんだと思うんです。だとするならば、通常の人情として自分の同じ職場の仲間に対して厳しく当たるということはなかなか難しいんではないかなというふうに思います。  その観点から、きょう野田国家公安委員長がお越しでございますので、恐らく野田大臣は事前規制よりも事後規制に世の中の流れを変えるという議論を昔されておられたと思いますし、そういう論調の方だと思いますが、そうした中でやはり警察といったものも透明性を高めるためには別の統制機構が必要なんではないか、こういうふうに思います。  公安委員長として選択肢は二つあると思います。一つは、公安委員会の中に直属の監察官、それは警察と人事交流を伴わない監察の人を置くという選択肢か、あるいは直属にはしないけれども警察庁長官のすぐ下に独立した監察官を置くといったような形で、何らかの統制を高める方策を考えられたらよろしいんではないか、いかがかなと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  185. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) ただいまの御提言については一つのお考えとして承りました。  ただ、これはなかなか難しい部分がございます。それは警察の世界のみならず、いわゆる国家公務員、いわば監察なり内部監査といいますか、そういったものをどういう形で仕組むのか、あるいは税務行政の職場なりあるいは郵政の職場なり、あらゆる公務員の職場においてそういった部内をどうやって監察するか、これをどういう仕組みでやるのか、それを全部外部監察的に持っていくのかという組織論というものは一方であろうかと思います。それはそれで勉強させてもらいたいと思います。  今回の問題については、本当にあってはならぬことでありますし、まことに遺憾な事態でございました。私は、この問題と公安委員会の制度という問題とは必ずしも直結しない部分なのではないかというふうに考えております。私自身、就任する前にイメージしておりましたより以上に、各公安委員の先生方も本当に毎週毎週きちんとした責任ある職務遂行をしていただいておりますし、そういう姿を見るにつけ、十分機能をしておるというふうに私は考えております。  もともと公安委員会という制度は、そういう意味で警察行政の民主的な運営ということを主眼としてつくられておるという背景も実はございます。この問題と監察という問題とを直結させるのはちょっといかがなものかと。また、果たしてそれだけの対応能力、委員会としてそれだけの事務体制なり執行体制というものが伴うのかどうかという逆の心配も一方で感ずるものですから、これは勉強させていただきたいというふうに思います。
  186. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 重ねて申し上げさせていただきたいと思いますが、警察法上、国家公安委員会は警察庁管理する、都道府県公安委員会は都道府県警察管理するというふうに書かれております。  本件のようなことが再発しては困るわけでございまして、まさに再発しないような大綱、方針を都道府県あるいは国家公安委員会が定めるのだと思いますが、では、現状で十分再発防止の大綱を定められる体制があるとお考えになられるか、それともそこは少し工夫をして、あるいは人員の増員も含めてでしょうけれども、考える余地があるのかどうか、重ねて御答弁をお願いいたします。
  187. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) このところいろいろ不祥事案が表面化してきている、あるいは発生しているということで、非常に残念な状態にございます。  今回、一連神奈川県警に関連する不祥事案が出まして、私の承知いたしておりますところでは、直ちに警察庁として県警本部を呼んで具体的な五項目にわたる指示をし、そして必要な処分も私どもとしても行ったところでございますが、同時に、全国警察に対して改めてきちっとした通達を発出いたしました。そういう体制の中で、今回の事件を契機に、神奈川県警のみならず全国都道府県警察に改めてきちんとした対応の見直し、そういった通知を発出して見直しをいたしておるところでございます。  私としては、襟を正して、気持ちをもう一遍引き締めて対応していただく、これに尽きると思っておりますし、いろんな各レベルにおける会議を、管区警察会議をやったりさまざまな会議を重ねて、警察官教養等に対しても徹底した対応、浸透を今やらせているということでありますので、私はその成果を期待いたしたいと考えております。
  188. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ちょっと私の質問がわかりにくかったのかもしれませんが、申し上げたかったのは、何かが起きた後の事後体制として襟を正すということはもちろん必要だと思いますが、起きないような体制を考えていただくのが多分公安委員会のお仕事だというふうに思いまして、そのためにどういう施策をとられるおつもりかということを改めて、どういう組織体制にしたらこういったようなことが起きにくいのかということを考えられるかどうかということをお答えいただきたいと思います。
  189. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 組織体制という角度ではなくて、今回の事案発生を契機として改めて教養等の徹底を今行っておるということは申し上げたところです。  組織体制として、そういうような形での対応をどういう対応にすればいいのかということについては少し研究させてもらいたいと思いますが、あえてそういうことを否定するつもりもありませんが、ただ、組織論という形の中で解決できるのかできないのかという問題もあるわけでありまして、実際どんな組織をつくっても動かすのは人間でありますから、そういったことを踏まえて対応していかなきゃならぬ。組織的体制をどうするかということについては、なお勉強させてください。
  190. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 警察庁長官もお越しでございますので、警察庁として全国都道府県警察に対する、事後の対応ということではなくて、再発防止策として何かお考えであるかどうか、その点をお答えいただきたいと思います。
  191. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) このたびの神奈川県警察におきます不祥事案を初めといたしまして、最近全国警察におきまして不祥事案が相次いで発生しているということをまことに遺憾に存ずるところでございます。  特に、神奈川県警察における一連不祥事案発生につきましては、警察庁としてもこれを重く受けとめているところでございまして、去る九月九日付で「不祥事案の未然防止と適正な処理について」という官房長名の通達全国警察に対して発しているところでございます。  その内容でございますけれども、その一つとしましては、不祥事案の未然防止を期するために、各級の幹部がそれぞれの段階で十分なチェック機能を発揮して業務管理というものを徹底するということ。そしてその二は、すべての職員に警察は国民のためにあるという基本理念に基づいたところの職業倫理教養徹底するということであります。そしてその三つ目には、部下職員の身上監督を徹底するということ。その四としまして、事案発生の場合の適正な処理。五番目には、取材に対する真摯な対応等適切な報道対応に努めることというふうなことを警察庁の方針として示したところでございます。  警察庁としましては、こうした方針に基づきまして全国警察指導しているところでありまして、各都道府県警察におきましては、これを受けまして全力を挙げて不祥事案の未然防止というものに取り組んでいるところでございます。
  192. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 時間の関係で次に移らさせていただきたいと思いますけれども、先ほどの官房長の御発言でもありましたけれども、どうも不祥事全国的にふえておるという中で、重ねて申し上げさせていただきたいと思いますけれども、不祥事をなくしましょうという形の訓示はもちろん大事だと思いますが、それに加えて、ある面、起きるものだという観点に立って、どうしたらそれがより起きなくなるような体制になるか。要するに、訓示型の行政ではなくて、チェックができるような体制というようなこともぜひ警察庁としても御検討いただきたいということを申し上げさせていただいて、次の質問に移らせていただきたいと思います。  そこで、警察の問題から今度は法律の問題に入らせていただくわけでございますが、現在盛んに司法制度改革ということが議論をされております。  今、事後管理の行政といったようなことを申し上げさせていただきましたが、規制がなくなる、規制が撤廃されるに従って、どうしてもルールに基づいた行政に変更していく必要性がある。ルールの解釈については、民事は、場合によっては参加当事者がそれぞれが言い分があろうというケースがふえてくるでしょうと。そうすると最後は、この決算委員会の中にも多くの専門家の方がいらっしゃいますが、法曹の場において解決をしていくということがかなりふえていくのではないかなというふうに私自身も思っております。それが理想的な社会かどうかという議論は別として、そういうケースがふえてくるであろうという感じを持っております。そうした中で、それに対応するための司法制度改革というふうに理解をいたしております。  そこで、二つの観点から質問をさせていただきたいと思います。  一つは、では最後にどうしても法曹の場において決着をつけなければいけないということになった場合に、資力のない方、余りお金を持っておられない方でも裁判を受けられるようにしておいた方がいいのではないかなというふうに私自身は考えるわけでございます。現行、法律扶助制度というものが恐らくあって、これをかなり拡充していくということを今法務省としても御検討されておるということでございますが、その拡充の概要について、簡単で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  193. 横山匡輝

    説明員(横山匡輝君) 法務省では、この民事法律扶助制度の果たす役割は非常に重要であるということで、これまでも財団法人法律扶助協会が行う民事に関する法律扶助事業に対しまして補助金を交付し、特に近年では毎年補助金を増額するなど本制度の充実を図ってきたところでございますけれども、さらにこの制度、裁判を受ける権利を実質的に保障するという非常に重要なものということでありまして、現在、法制度化を含めてさらに一層の拡充をしてまいりたいと思っております。
  194. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 裁判を受ける権利を含めて法律の中でうたわれることを検討されておるという理解でよろしいんですか。
  195. 横山匡輝

    説明員(横山匡輝君) ただいま申し上げましたように、民事法律扶助制度を充実させるため、現在、民事法律扶助に関する法案を次期通常国会に提出すべく鋭意検討を進めているところであります。  その概要といたしましては、御指摘の裁判を受ける権利の実質的な保障の視点も踏まえまして、民事法律扶助事業の実施主体の事業運営の方法やその財政等に対する監督などについて定めまして、この事業の運営体制が統一的に整備され、全国的に均質な事業遂行ができるような制度にしてまいりたい、そのように考えておるところであります。
  196. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 その民事裁判について、きょうは裁判所の方もお越しいただいていますので、少し御質問をさせていただきたいなというふうに思っておるのでございます。  民事裁判、最近とみに複雑な案件もふえておるということだと思いますが、そのときに、あってはならないことだと思いますし、恐らくそういうことはないんだと思いますが、例えば法律扶助を受けられるような方というのはどちらかというと資力が乏しい方である。したがって、なかなかそういう人たちが言っていることを、その人たちがだれと争うかというケース、具体例が今手元にありませんからわかりませんけれども、例えばそういったような人たちが社会的にエスタブリッシュされた、確立された会社と争った場合に、どうも私の感じでは、何となくエスタブリッシュされた人の方に、お仲間も多いでしょうし、そちらに何となく同情をしたりシンパシーを感じたりする部分もあるのではないかなというふうに思います。そういうことがあるかないかということをお聞きしても、そういうことはあってはいけないことですから、ないというふうにお答えになられるんだと思いますが。  そこで、裁判官と弁護士ということでいえば、弁護士さんの方が一般論で言えばより世間の人と接しているケースが多い。裁判官は、むしろ裁判官であるうちは接しない方が客観的に見られるということもあろうかと思います。そういう観点から、司法制度改革の一環として法曹一元化、弁護士の方が裁判官になるケースがふえてくるのかなというふうに思いますが、その点についてどのように計画をされておられるのか、あるいは考えておられるのかお伺いしたいと思います。
  197. 金築誠志

    最高裁判所長官代理者金築誠志君) 法曹一元についてお尋ねでございますが、御承知かもしれませんが、法曹一元制度につきましては、昭和三十九年に臨時司法制度調査会の意見書というものが出ておりまして、法曹一元の制度はこれが円滑に実現されるならば我が国においても一つの望ましい制度であるとしました上で、その制度が実現されるための前提として弁護士の地域的分布の平均化などのいろいろな多くの条件を掲げまして、これらの諸条件はいまだ整備されていないというふうにしたわけでございます。  今日におきましても、今申しました弁護士の地域的分布の平均化などの条件についてはなお整備すべき課題があるものと思われますが、これに関連いたしまして最高裁の方で進めております施策といたしましては、いわゆる弁護士任官ということをやっておるわけでございます。  弁護士の経験を持たれた方が裁判所の中で裁判官として活躍していただくということは有意義でありますことから、弁護士から裁判官への登用を積極的に行うことが望ましいということで、今から十一年余り前になりますけれども、昭和六十三年三月に判事採用選考要領というものをつくりまして、広く弁護士から裁判官任官希望者を公募することにしたわけでございます。  その後、平成三年十月に選考要領を改正いたしまして、選考の対象を、五年以上弁護士の職にあって裁判官として少なくとも五年程度は勤務できる者であればいい、年齢も五十五歳ぐらいまでというふうに対象を拡大いたしまして、任期とかその他の採用条件についても柔軟に対応することにいたしました。その結果、この選考要領に基づきましてこれまで合計で四十名弱の方が任官しておられます。  必ずしも多い数とは申せないと思いますけれども、現在のところは、弁護士事務所の共同化が進んでいないというふうなこととか、弁護士から裁判官に転出するということが仕事の中身の上でもなかなか難しいという点がございます。  その点、具体的にちょっと申し上げますと、弁護士任官された方の任官後の状況を見ておりますと、人にもよりますけれども、裁判官として職務に習熟するのにかなり時間がかかる。長年弁護士として活躍された方であっても、審理の進め方とか判決についてなかなか苦労されておられる方の例も少なくないように聞いております。  したがいまして、要は優秀な人材がどれだけ裁判官への任官を希望されるかということになるわけでございまして、最高裁といたしましては、できるだけ多くの裁判官にふさわしい方が任官を希望されるように期待している、そういうことでございます。
  198. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございます。  時間の関係で次に移らせていただきますが、きょうは自治大臣である野田大臣にも、国家公安委員長兼務でございますが、お越しいただいておりますので、ちょっと市町村合併と地方交付税制度について伺わせていただきたいと思います。  新年度の予算の中でも要望されたというふうに伺っておりますが、市町村合併をされた場合にボーナス的な地方交付税の制度を考えておられるということですが、その点について簡潔にお答えいただければと思います。
  199. 嶋津昭

    説明員(嶋津昭君) お答えいたします。  先ごろ成立させていただきました分権一括法の中におきます市町村合併特例法の改正におきまして、合併における環境整備といいますか障害除去、それから合併に向けての環境整備という観点で交付税の重要な改正を三点しております。  その三点は、まず第一に、合併市町村について交付税の算定をばらばらにする、合併前の算定をしてそれを合計したものと、それから合わせて新しい一団体として合併をしますとその交付税の総額は変わってくるわけでございまして、その有利なものをとれるという意味で、事前の、合併する前の団体の総合計をとることができるという、合併算定がえと申しておりますけれども、その制度を、今まで五年間でございましたのを十年間に延長すること、それが第一点でございます。  それから第二点は、合併する場合には、庁舎をつくることから始まりまして、市町村の一体性を確立するためにいろいろな行政投資が必要となるわけでございまして、いろいろな施設整備をしたりするために地方債を発行いたします。それを合併特例債と申しておりますけれども、それの元利償還金の一部につきまして、これを基準財政需要額に算入すること。  さらに三点目でございますが、合併直後に必要となる行政の一体化とか、あるいは端的に申しますとコンピューターを入れかえるとかいろいろあるわけでございますが、そういうような事務的な経費につきましても、新たに合併補正というものを設けまして普通交付税の基準財政需要額に算入する。  こういうふうなものを主な点とする三点の交付税の算定の変更をいたしまして、改正をいたしまして、今委員指摘の、さらに来年度の予算におきまして、我々といたしますと、そういう合併を準備する市町村あるいは合併をする市町村に対する国としての交付金のようなものを予算要求したいと考えて現在準備を進めているところでございます。
  200. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 地方分権が進みまして、なおかつ今のように市町村合併が進んでいくと、中には中核市、政令市のような形で大きな都市ができていきますと、今度は都道府県といったようなものも、すぐにはないとしても近い将来において機能を考え直すべきときが来るのかなと。  それはもちろん住民発議だと思いますが、都道府県合併について、近い将来ということでなくて遠景で結構でございますが、自治大臣、何かございましたら御所見をいただきたいと思います。
  201. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおり、これからさらに地方分権が進んでいく、あるいは市町村の合併も進んでいく、さらにそういった中で都道府県自身の合併についても視野に入ってくるのではないか。私は御指摘のとおりだと思います。  現在の都道府県は明治二十一年以来、基本的に変更はないままで今日に来ております。そういった点では、地方分権推進計画、これは昨年の五月に閣議決定されました計画でありますが、この中でも、「都道府県合併も視野に入れ、地方自治の仕組みについて、中長期的に検討を行う。」ということでありまして、これも十分視野に入れてこれからさらに検討を進めなければいけないというふうに考えております。
  202. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 その都道府県合併あるいは市町村合併の中で議論になります地方交付税について。  財政力が均衡ではない、財政力の弱いところもあるし強いところもあるから地方交付税があるんだということがあると思いますが、その財政力ということに関して、時間の関係で最後になってしまうかもしれませんが、ちょっと一つだけ伺いたいんです。  例えば、私がおります神奈川県では、今、法人が大変赤字であるということで外形標準課税といったようなことを神奈川県としては非常に検討したいということを申しておるわけでございますが、企業について外形標準課税といったような応益的な課税があるとするならば、自治省として一つの可能性として研究されているのかどうかわかりませんが、個人について、例えば均等割という部分がありますが、それを拡充するとか、要するに法人ではない自然人に対する応益課税というものをどのように考えておられるのか、最後に伺いたいと思います。
  203. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 基本的な考え方として外形標準課税という言葉が個人に関していいかどうかという問題はありますけれども、少なくとも、おおよそ住民としてその自治体からいろんな行政サービス、便益を享受する立場にあるわけですから、負担分任という意味からもやっぱり均等割という役割を私は軽視してはならないと考えております。ただ、これが余り過重ということになりますと、また一方で担税力という側面の問題も出てこようかと思いますが、やはり適時適切に見直していくというスタンスは必要なことである、私はそう考えております。
  204. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 終わります。
  205. 山本保

    ○山本保君 公明党の山本保です。  最初に、もう各委員からお話がございましたので、私は簡潔に、この神奈川県警不祥事につきまして、警察庁長官は、先ほどからお伺いしておりましても、これはただいま調査中であってまた厳正に対応するということでありましたので、それは当然そうされるということで、お聞きはいたしません。  先ほど浅尾委員の方からもお話が出ましたように、警察行政といいますのは国民に直結しなければならないということで、ほかの官庁と違いまして合議制の行政委員会である国家公安委員会が設けられているわけであります。今回、国家公安委員会また地方の、県の公安委員会につきましても、はっきり申し上げて、本来果たすべき役割といいますか、少し弱いのではないかなと思っておるわけです。まさに警察庁長官以下の専門家の行政に対しまして、国民の代表である自治大臣国家公安委員長を中心とする行政委員会が、国家公安委員会がきちんと直接に管理を行うという体制にあるはずでございます。  また、先ほど来いろいろ任免についての議論もありましたけれども、このような任免についての基準というようなものについてはまさに国家公安委員会の担当ではないかというふうに私も承知しておるわけでありまして、野田国家公安委員長はこの辺につきまして政治家としてどのような所見をお持ちなのか、お話しいただきたいと思います。
  206. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) このたび神奈川県警察において一連不祥事発生をしたことはまことに遺憾でありまして、残念なことでございます。この不祥事案発生ということもさることながら、それらの事案への対応のまずさ、あるいは適正を欠いたということがまた国民の信頼を失墜させたということも重く受けとめなければならぬと考えております。  したがって、そういう状況でございましたので、国家公安委員会として、この事態を招いた神奈川県警本部長以下の幹部に対して九月九日付で、現在の人事院規則による懲戒の体系の中で、今日までの警察監督責任といいますか管理、そういう懲戒という対応の中で一番重い処分という形をとったところでございます。  同時に、神奈川県警のみならず、この問題は全国警察に対してもこの機会に改めてそういう教養ということの徹底をしなければいけないということもございまして、先ほど警察庁長官も申しましたが、九月九日付で全国警察に対して官房長名で通達を発出して徹底を図ったところであります。  警察管理する公安委員会の役割として果たして今の体制で十分かどうかということについて、率直に言って、多少問題が指摘されたりいろいろあるわけですが、しかし現時点において公安委員会という制度の中で、警察庁と別の独自の枠組みの中でそういった監察部門をみずから直接やっていくという体制におのずから無理があるだろうと私は考えております。そういった点で、やはり内部規律というところをより厳重に、その使命の重さということを痛感をして、改めて組織管理ということで警察庁が全責任を負うて管理徹底していく、それを国家公安委員会として指導し督励をしていくという体制をやっていくということではないか。改めてその責任の重さを感じておるところでございます。
  207. 山本保

    ○山本保君 しっかりお願いしたいと思います。  現場の方といいますか専門家の方で決められた人事の発令をするだけの役所というような形になっては困るわけでありまして、まさに戦後の警察行政の一番大きな特徴であります公安委員会でございますので、どうぞ大臣がおっしゃられたような形できちんと起こる前に、国民の側に立った警察行政という枠組みをもう一度見直していただきたいということを重ねて私もお願い申し上げます。  それで、きょうは私は主に子供の人権の擁護という立場から、昭和六十三年、一九八八年につくられました画期的な養子制度、特別養子縁組制度につきまして、ちょうど十一年たちました。  これまでの養子縁組といいますのは、先生方は御存じだと思いますけれども、家制度という中で運用され、つくられてきたものでありまして、養子縁組になりましてももとの実親との関係は切れずに二重の関係を持つというようなのが現行の養子制度であります。この中で、子供の福祉のため、子供の利益のために特にということで実親との法的な関係を絶ち、そして新しい親子関係を法律的には実親と同じ関係にしようというものでございます。  これについてさまざまな観点から、いろいろ現場の方から私の方にもいろんな意見をいただいております。私も実はこれを制定するときに担当の一人でございまして、いろいろやらせていただいたこともございますから、ここでお聞きしたいと思っております。  法務大臣、この特別養子縁組制度の現状、またその意義づけなどにつきましてお答えいただきたいと思います。
  208. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 今、委員お話しのように、この制度の法制化に当たりましては委員が大変御尽力なさったということは承っております。  実の親子関係と同様の養親子関係を創設するということがこの特別養子制度の内容でございます。したがいまして、子の福祉を図るための制度として発足当時から画期的な制度として高く評価されておるわけでございます。  その後の運用につきましては、家庭裁判所、福祉関係関係者の御努力によって、施行後十年以上を経て国民による理解も進み社会全体に定着している、このように認識しております。
  209. 山本保

    ○山本保君 それでは個々にお聞きしながら、今の大臣のお話について少しずつ検証していきたいと思っております。大臣にも時々お聞きいたしますので、もしよろしければその都度お答えいただきたいと思っております。  まず最初に、この養子縁組制度、関係者にとっては当然御存じのことでございますが、特徴がございます。その中の一つでありますが、養親は二十五歳以上でなくてはならない、また子供については原則六歳未満の子供さんでなければならない、こういう規定があるわけでございます。これはつくられるときの経緯などを見ますと、全く今まで日本になかった制度であって、特に実の親子関係というものを一つのモデルとして、それにより近いような制度にしようということでこのように、たしか私の記憶では限定的に法で規定したんではなかったかなと思うわけでございますが、大臣おっしゃいましたように相当定着してきたと。  こうなりますと、諸外国の例などを見ましても未成年という規定の国が多いようでありますし、また親子関係につきましても二十五歳でなくちゃならないというのはどうもどうかなと。例えばこれは成人の夫婦ということにすればいいのではないかと思いますし、子供の方については例えば小学生、十二歳ぐらいまでにというふうに緩和といいますか幅を広げて、そしてその分裁判所の審判の中で実際に合った運用をされるような改正をされたらどうかなというふうに考えるわけでございますが、いかがですか。
  210. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) この特別養子制度というのは、普通養子制度と違って養子関係、親子関係を解消できないわけでございます。したがいまして、そういう大きな制約のあるもとでの制度でありましたから、今御指摘のように二十五歳以上の成年でなければ養子縁組ができないということになったのだろうと理解しております。  また、子供においても実の親子関係ということを重視するということになりますと、ある程度幼少の時期にこの制度を適用するということがその後の円満な、円滑な特別養子制度の運用につながっていくというようなことからこういう制度が組み立てられたものであろうと思うわけでございます。  ただ御指摘のように、現在、社会経済情勢がいろいろ変わってきております。国民の価値観、意識も変わっておりますので、今委員がおっしゃったようなこともこれから検討する上で大事な視点ではなかろうか、こういうふうに思います。
  211. 山本保

    ○山本保君 民法の改正となりますとなかなか大変だとは思いますけれども、大臣から今積極的なお答えをいただいたというふうに認識しますので、どうぞ御検討いただければと思っております。  次に、これは具体的にこのような事例があるというお話を聞いておるわけでございます。といいますのは、いろいろございますが、まず一番重いところから行きます。  実はこの特別養子縁組ができますと、それを戸籍に書いていただかなくてはならない。さまざまな工夫がしてありますが、その中で特に届け出を出すときに、審判書というんですか、そういう謄本、本物ですね、このコピーを書類として言うならば役所の戸籍係の方へ持っていかなければならない。  ところが、これは先ほど軽く私もお話ししましたけれども、実際こういう特別養子になりますような子供さんといいますと、例えば最近問題になっておりますような実の親から虐待を受けておりますとか何らかの重い理由で実親関係を何とか切ってそして新しい親子関係で子供の福祉、権利を守ろう、こういう趣旨でありますのに、もちろん審判の正式の書類となりますと、なぜこのような形でこういう特別養子縁組をしなければならないかということがるる書いてあるわけでございます。言うならば、こういうものを第三者であるといいますか、ほとんど関係のない役所の吏員の方に出さなければならないとなりますと、実際にはそのことで何か事故が起こったというようには聞いておりませんけれども、しかしそのこと一つで新しい養親の方にとっては何か非常にやりにくい、嫌だというようなことも聞いているわけであります。  私は、こういうお役所の方というのは、形式的な審査権を持っておられるのであって、裁判所がきちんとやったんですよというものさえあれば、もし何らかの不審な点があればそこでその個別事例としてお聞きになられればよろしいわけで、そういうことを抜きに最初から全部審判書を置かなくてはならない、持っていかなければならないというのは、ちょっとこれは現場のといいますか国民の側に立っていないのではないかというふうに思うわけでございますけれども、最初に、裁判所の事務局としましてこの辺についてはどのような対応をされておるのか、お話しください。
  212. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。  ただいま委員指摘のような問題があることにつきまして、私ども、家庭裁判所においてもその問題性を十分認識しているつもりでございまして、事案の内容によりましては理由を省略した審判書謄本を当事者に交付する、こういった扱いをしていると承知しているところでございます。  以上でございます。
  213. 山本保

    ○山本保君 事情に応じてということでそのような例もあるようでございますけれども、どうもそれは余り徹底されていないように思います。  私としてはもっときちんとそのことは当事者にわかるようにしていただきたいと思うわけですが、法務省としては、例えば審判確定の証明書というようなものが出されれば、それだけでいいのではないか。法律にありますからこれは法律改正ということになるかもしれませんけれども、そういうことも含めて法務省としてはどのようにお考えでございましょうか。
  214. 細川清

    説明員(細川清君) 現行の戸籍法では、届け書に審判書の謄本を添付するということになっているわけでございます。  これはなぜかと申しますと、やはり審判が法律に従って確定している、その要件を満たしているということを判断するということになるわけでございまして、ですから一般的にすべて理由がないというのはちょっと問題がございます。  ただいま最高裁の家庭局長から御答弁がありましたように、御指摘のような問題の部分、生々しい部分は省略して謄本をつくっていただくということで対応できるのではないかと思っていますし、もう一つ申し上げますと、市町村の吏員は守秘義務を負っておりますから、この謄本というものは担当者以外一切見ることができないものでございます。
  215. 山本保

    ○山本保君 今、最高裁とそれから法務省からお答えいただいたわけでありまして、省略した内容でいいのだということ、これはこの委員会で今お答えいただきましたので、ぜひ全国の方にもこういう旨知っていただければと思っております。  それでは、次の問題でございますが、それとも絡みます。もう少し原則的なことですが、特別養子縁組におきましては、今までの養子縁組ですと戸籍を見れば全部わかってしまう、これでは何も新しくする意味がないので、そこで子供さんを筆頭にした単独の戸籍をまずつくって、その戸籍から今度は新しいところへ持っていくという、細川民事局長は実は当時参事官で一番中心でやっておられましたからこの辺のことはもう本当によく御存じだと思いますが、私もこれは当然こういうことで動いていると思っておりましたら、どうもそれが抜けているような例があるんじゃないかというような声も聞くのでございます。この辺は、まさかそんなことはないと思いますけれども、もう一度その意義についてお話しいただければと思います。
  216. 細川清

    説明員(細川清君) 原則的処理はただいま山本先生がおっしゃったとおりでございます。  ただ、非常に例外的な場合がございまして、例えば女性が非嫡出子がいて別の男性と結婚した、その子供を特別養子にするということがございます。そういう場合には、その子供はもともとその女性の戸籍にありますものですから、母親がまた母親になるということでございますので、扱いとしては法律の明文の規定がございまして、そこでそのまま特別養子の記載がされるということになります。
  217. 山本保

    ○山本保君 外国の例でも実親がまた養親になるという例もあるようでございますから、今のお話ですとそれほどトラブルは起こらないのかなとは思いますけれども、この辺引き続いて国民の側に立った取り扱いについて徹底していただきたいと思っております。  次に、これは実は私も当時からといいますか、いろんな専門家からも、私も児童福祉論をやっておりましたから、子供さんが保護された段階で実親の持っておる養育に関するいわゆる親権を外国のようにストップさせるというようなこと、もしくは実の親御さんが施設に入れっ放しにして全く対応がない場合にはその時点でというようなことをやはりやるべきではないかという理論的な問題があったわけでありますけれども、児童福祉の関係、また民法の関係でなかなか難しいということで実際にはできておりません。  私も、これは自然の親子関係というものの重要性を考えますとなかなか難しいところがあるなという気もするわけでありますが、この特別養子縁組については、特別養子縁組を申し立てて、そしてそのとき必要がありますと、実親とのトラブルを避けるために実際的な新しい親の候補、まだ決まっていませんから候補の方が親権もしくは監護権を持ったり、またはもとの親御さんの親権については一時的に停止をするというような保全処分というものができるというふうに聞いておるのでございます。  ただ、余り現実的には知られていないような気もするわけでありまして、この辺につきましてどのようなことができるのか、また、今どのように使われているのかについてお答えいただきたいと思います。
  218. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) ただいま御指摘ございました審判前の保全処分と言われる手続でございますけれども、これは本体の審判が終局的な判断を得るまでの間、暫定的に一定の安定状態を確保したい、こういった趣旨から設けられている制度でございまして、特別養子縁組成立の事件につきましても二つの類型の保全処分が予定されているところでございます。  一つの類型は、申立人、つまり養親となろうとする方が子供の監護者に仮に選任される、こういったパターンでございまして、子供を試験的に監護されている状態を安定させよう、こういった趣旨によるものでございます。  いま一つの類型は、これは実親の側の親権の乱用等を防止したいという観点からのものでございますが、親権者あるいは後見人の職務執行停止または職務代行者選任の保全処分というものがございます。この手続をとりまして、実親の側の不当な乱用等を防止して安定を図りたいと、こういった趣旨で設けられた制度でございます。ただ、現在のところ、運用といたしましては、事件の申し立ては少のうございまして、十分活用されているとは言えない状況があろうかと思っておるところでございます。  以上でございます。
  219. 山本保

    ○山本保君 私も実は今回改めて勉強し直して知ったようなところがございます。というのは、当時、特に特別養子ではなくして、まさに虐待されるような親御さんの親権喪失という手続が非常に日本は難しいことになっておりまして、現場で困っておりました。そうしたときに、その親権喪失の裁判を起こすときにこの保全処分というのがあって、そしてそこで仮に親のも事実上停止できるということが当時初めてわかりまして、それを弁護士さんたちが何件か行い、そして最近では割と使われるようになってきたというふうに私は承知しております。  この特別養子縁組制度につきましても同じような保全処分があるということをもう少し現場の方に知っていただければと思いました。ぜひその辺につきましても裁判所の方でもう少しPRしていただければなと考えております。お願いしたいと思います。  それからもう一つでございますが、きょうは実は国際養子についてもお話をと思っておったのですが、ちょっと時間的に難しくなりましたので、その入り口だけを。  先ほどもちょっと国際的な問題が出ておりましたので、入り口だけでございますが、子供さんが日本国籍ではない、またはどうもわからないというような子供さんを特別養子にしたいということも当然あるわけであります。子供さんの本当に福祉のためには大変いいことではないかと思うわけですが、何かそういう子供さんを特別養子に申し立てをしたときに、まず先に帰化をさせなさいよというような話があったというような例を聞いたりしておるのでございます。  その辺につきまして、まず国籍がない子供さんを連れていったときに、裁判所では特別養子縁組の申し立てを受理しないというようなことがあるのでしょうか、制度的に。どうでございましょうか。
  220. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 今御指摘の点につきましては、国籍があるかないか、あるいはどの国籍を有しておられるかということは、適用する法律をどうするかという問題にかかわることだけでございますので、家庭裁判所事件を受理するにつきまして、国籍があるかないか、あるいは不明であるかどうかということは要件にならないと考えている次第でございますので、当然そういった場合でもお受けできると考えている次第でございます。
  221. 山本保

    ○山本保君 わかりました。  その次に、今度は明らかにといいますか、はっきりと無国籍であったという方を特別養子縁組にしたとき、このとき日本の国籍を親としては当然取らせたいと思うわけでありますが、当然にそのまま日本国籍を取るというふうにはなっていないと思いましたが、特別養子縁組の場合、これだけきちんと、当然お互いだけのことではなくて裁判所の審判によって法的につくられた関係でございますから、特別養子縁組になった子供さんについては日本国籍を取得するときに一般の養子縁組よりはもう少し優位にといいますか配慮がなされていいのではないかなと思うのでございますけれども、この辺の制度とその可能性についていかがでございますか。
  222. 細川清

    説明員(細川清君) 特別養子になられた外国人あるいは無国籍のお子さんの国籍の問題でございますが、現行の国籍法ではそういう場合に国籍を取得する方法としては帰化という方法しかないわけでございます。  ただ、日本人の養子につきましては、一般の場合と要件が法律上緩和されておりますし、特別養子になったという事情がございます。ですから、法律上の要件は一年以上日本に住所があるということでございまして、試験養育等で一般に先に住んでいるのが普通でございますから、ほとんどの場合は問題なく帰化許可ができるというふうに思っております。ですから、私としては、担当局長としては、申請があれば積極的に帰化を許可するという考えでおります。
  223. 山本保

    ○山本保君 それでは次に、今度は少し関連をしまして厚生省にお聞きしたいわけでありますが、今、民事局長からも試験養育期間というお話が出ました。この制度のもう一つの特徴は、親子が連れ立っていってすぐその場でというふうにはならずに、その間最低六カ月間の養育期間を経て判断をするというふうに法律に書いてある。その六カ月間というのは、勝手にやっていただくというわけにもいきませんので、家庭裁判所の審判官そして調査官ですか、の方に受けて行うわけですが、実際には児童福祉の方の児童相談所に仕事が任されまして、そして里親という今度は児童福祉法の関係、措置ですが、今で言うサービスを受けるということが割と多いようであります。  この辺につきまして少しお聞きしたいわけでありますけれども、里親制度というのは、これも私がおるときに実は相当直しましたんですが、本来非常にお金もありそして特別な立派な方が子供さんを受けていくんだというような認識が、実は昭和二十年代にできたときには主にそんな制度でありました。ですから、例えば小さな子供を受けたときに、もうけて実際の子供がいるときに、例えば保育園へ入れたりとか、またはいろんな障害を持っておられてそのための専門の施設に通うというようなことは現在では当然普通のことなんでありますけれども、実際には里親制度というのはそういうことをするような方は本来里親にはなるはずがないというような意識でつくられておったわけであります。  大きく改正がありまして、その辺はそういう里親さんは受けた子供さんを保育所へ入れたり、また専門の施設に通わせたりすることができるというふうには制度は昭和六十二年の改正でたしかつくったのでありますけれども、実際上なかなか運用が難しかった。  というのは、里親というのは県の仕事でありますし、そのほかの例えば保育園などは市の仕事になるというようなことで、そのお金をどういうふうに負担するのかというようなことで困っていたという声も聞いていたわけであります。何か最近その辺について対応されたというふうに伺っておりますけれども、どのような形で行われたのでございましょうか。
  224. 真野章

    説明員(真野章君) 先般、八月三十日に児童家庭局の家庭福祉課長外三課長の連名通知を出しまして、先生今御指摘がございました里親委託中の児童の保育所利用の円滑化を図るということから、里親が就労します、または同居の親族の介護などの理由によりまして里親に委託されております児童が保育に欠けることとなった場合に、当該受託児童が保育所を利用しながら引き続き当該里親家庭で養育されることが可能となるようにその取り扱いを定めました。  また、逆のケースでございますが、夫婦ともに就労している場合であっても、保育所を利用しながら里親として児童を受託することができるというふうにその取り扱いを定めたものでございます。  昭和六十二年に、先生御担当のときに里親の運営要綱を御改正いただきまして、その道は開けておったわけですが、今御指摘いただきましたように、具体的な方法論が明示されていなかったというところを今回明示をして、里親の積極的な活用を図りたいということでございます。
  225. 山本保

    ○山本保君 それでもう一つ、今度は特別養子縁組制度について関連してお聞きするんですが、先ほど児童相談所が主に試験養育期間を指導するんだというふうに言いましたけれども、実際にはそれ以外にも社会福祉法人などでそれを行う団体があるということであります。  この辺の実態でございますけれども、十一年たちましてどのような形で行われているのか、実績等について御説明いただけますか。
  226. 真野章

    説明員(真野章君) 養子縁組の成立のために必要な例えば連絡、紹介等の媒介的活動を反復継続して行うという行為は、社会福祉事業法の「児童の福祉の増進について相談に応ずる事業」に該当するというふうに考えておりまして、都道府県知事に届け出を行っていただくことになっております。  平成十年度現在でございますが、この養子縁組あっせん事業の届け出数は九事業者で、この事業者のあっせんによりまして平成十年度内に成立をいたしました普通養子縁組は二十四件、特別養子縁組は百四十九件となっております。
  227. 山本保

    ○山本保君 この実態で、個々の方たちが一生懸命やっておられるということを前提としてお聞きしておるわけでありますけれども、例えばこういう団体は、児童家庭局の方からたしか通知が出まして、実費以外は取ってはならないと。例えば児童の権利条約にも、養子縁組とかこういうことについてお金を動かすようなことはならない、たしかそんな条文もあったわけでありまして、当然のことではあるんですが、しかしながら、特に国際になってきますと物すごくお金が要りますし、そうでなくても、国内にしましてもさまざまな形でお金が要ります。また、そのための専門のケースワーカーを雇っていなくちゃいかぬわけでありますが、どういうふうにこの方たちが、経営と言ったらおかしいですが、仕事ができるのか、この辺、私、非常に不備なままではないかなという気がするんです。なかなかお答えにくいところだとは思いますけれども、二点ちょっと申し上げます。  例えば、お金を取ろうというわけにはもちろんいきませんので、それでしたら、例えば国の方から補助金を出すというような形も考えられていいのではないかなというのが第一点でありまして、これはもちろん私どもの方で、またみんなで考えていくことかと思います。  第二点は、もう少し現実的な対応としましては、このような事業は、今お話にもありましたように社会福祉事業でありますから、本来、社会福祉法人という特別の優遇された団体が行えばいろんな面でやりやすいわけでありますが、ところが、社会福祉法人は今一億円の基金がないと認めないというようなことで、とてもこういう団体ではできないわけであります。  それで、介護問題、介護保険のいよいよ実施ということを前にしまして、社会・援護局の方ですか、今、社会福祉の構造改革の話が進んでいる中で、社会福祉法人を小型化すると。私、前からこれを何度も厚生大臣には申し上げているところなんですけれども、もしこれが可能であるならば、その中にこの養子縁組のあっせんの事業も当然入れていただくというようなことができれば、これは一般の社会福祉法人としてきちんと仕事ができるのではないかなというふうに思っているわけであります。  局長、もし可能でありましたらその辺について、児童家庭局長としてもきちんと対応していただきたいと思っているんですが、その辺、所感いかがでございますか。
  228. 真野章

    説明員(真野章君) 先生御指摘のとおり、営利を目的としてあっせんを行うというのは禁止されているわけでありまして、私どもの通知でも、実費またはそれ以下の額の徴収ということは差し支えないということで表現をされております。そういう意味では、この問題の費用の負担をどうするかというのはなかなか難しい問題があろうと思います。  また、そういう意味では、逆に言いますと事業を行っていただくところにかなりの財政的な基盤が必要と。これにつきましては、私どもは、できるだけ社会福祉法人または少なくとも民法法人をお願いしているというところでございますが、九つございます事業所のうち、社会福祉法人は一カ所でありますし、民法法人はまだ二カ所ということで、なかなかその指導が進んでいないのが状況でございます。  社会福祉法人につきましては、今先生御指摘のとおり、今回の基礎構造改革におきまして、社会福祉法人の設立の規制の緩和という議論を行っております。これは、主として在宅のサービスを担当する事業所を念頭に議論をいたしておりますが、この九事業者の実態その他も十分勘案をいたしまして、できるだけ安定的な基盤の上に立ってあっせんができるような状況をぜひ考えていきたいと思っております。
  229. 山本保

    ○山本保君 ありがとうございます。どうぞ忘れないようにお願いしたいと思っております。    〔委員長退席、理事鹿熊安正君着席〕  次に、労働省の担当の方に来ていただいておるわけでございますが、今るるお話がありましたように、特別養子縁組になりますと、まさに実子、実の親子と同じような形で、特に現在では非常に小さな子供さんが家庭に来るわけであります。働いておられる方にとって、その子供さんを育てる、ここでまた親子関係をつくる。本当の親子の場合ですと、それこそ妊娠中からずっとおられるわけでありまして、そういう面ではもう準備というかレディネスできているわけですけれども、まさにこの養子縁組はなかなか難しい。  育児休業という制度があるわけでありますけれども、育児休業の中にこの特別養子縁組についてもぜひ取り入れて対象としていただきたいという要望が非常に強いわけでありますけれども、労働省としてはいかがでございましょう。
  230. 藤井龍子

    説明員(藤井龍子君) 育児休業制度というのは、働いている方々が一歳に満たない子供を養育するために請求すれば事業主が与えなければいけない休業制度ということになっておりまして、この場合の子というのは、労働者と法律上の親子関係があれば実子、養子を問わないということでございます。  したがいまして、特別養子縁組によって養子縁組された場合につきましても、養親は育児休業を請求することができるということになっております。
  231. 山本保

    ○山本保君 確かにこの辺は、育児休業というのは男性の方がとってもいいわけでありまして、おっぱいをあげるとかあげないとかいうことではなくて、まさに親子関係ということに着目すれば、おっしゃったとおり養子縁組ができた場合にそれを対象とすると。  ただ、問題は、先ほどからお話ししましたように、この特別養子縁組というのは最低六カ月、その前の手続も含めれば一年近くといいますか、例によってはもう一年以上実は確定するまでに親子関係のための実際に生活をしておるわけなんですよ。ですから、この間が実は一番大事なときで、しかもそのときに、家庭裁判所調査官とか児童福祉の専門家が本当の親子関係にしていいだろうか言うならば見るわけであります、評価するわけでして、その結果によって確定するかどうかという大変重要な時期なんですね。今の局長のお話ですと、そのときはだめなんで、そしてそれが済んでしまってからといいましても、もう一年過ぎちゃっている、実質何もならないということになるんじゃないかと思うんです。  ですから、確かにこの法律、育児休業法は出生から満一年でしたか、一歳に満たない。これを親子関係ができてから一年というふうに読みかえるというふうなことができないのかどうか。もしくは、できないとなったらこれはもう法改正するしかないわけだと思うんですけれども、その辺についてどうお考えですか。
  232. 藤井龍子

    説明員(藤井龍子君) 育児休業法で一歳に満たない子を養育するために休業を与えるということになっておりますのは、一歳までの間はやはり親がいろいろ手間がかかるというような実態にあるということ、それから一歳に満たない子供の乳児保育といいますか、それの枠との関係もいろいろありまして、そういうことで一歳に満たない子を養育する場合に請求することができるということになっておるものでございますので、一歳を超えた場合に一年間というような形にこの制度を変更するのは大変難しいかと存じております。    〔理事鹿熊安正君退席、委員長着席〕
  233. 山本保

    ○山本保君 時間がないのであれですが、超えた場合というのじゃなくして、そうすると二年間ということになりますから。そういう意味ではなくて、それも勝手に入ったのではない、裁判所の言うならばちゃんと命令といいますか、その監督下で実質的にもう親子関係の試験に入っているわけですから、勝手に子供を連れてきたわけじゃないんですね。ですから、その期間ぐらいは、その一年、生まれてから一歳というものをこれで読んだって私はおかしくないと思いますし、外国ではそういう例もあるようでありますから、ここはぜひ今言われたような、しゃくし定規のと言っては申しわけありませんが、解釈ではないようにしていただきたいということを申し上げているんです。これについてはまた改めていろいろ検討したいと思っております。  何か、よろしいですか、どうでしょう。
  234. 藤井龍子

    説明員(藤井龍子君) 今申し上げましたように、法律上の親子関係がある場合をなぜ根拠にしているかということでございますが、育児休業というのは事業主が拒めない大変強い権利を与えておりますので、やはり法律上の親子関係があるという場合、親の権利かつ義務である民法上の監護、こういうものを前提に考えてこういうような解釈をさせていただいておるわけでございます。つまり、御指摘の試験養育期間というのは、法律上の親子関係が生じていないから認められないというようなことになっているわけでございます。  しかしながら、特別養子縁組を成立させる場合には、必ず六カ月以上の試験養育期間というものを設けて、その間の監護の状況を考慮することになっているというのをただいま十分承っておるところでございますので、私どもといたしましては、そこの特別養子縁組制度の仕組みを、運用の実態も含めましてよくよく勉強してまいりたいと考えておるところでございます。
  235. 山本保

    ○山本保君 もう時間がないんですが、今大変重要なことを言われましたね。つまり、監護の関係が法的にあればいいんだということであれば、先ほどお話がありましたように、すべてではありませんけれども、場合によっては法的に監護者に選任されまして、そして実親の方は事実上、事実上といいますか法的に執行が停止され、そして新しい親の方に監護というものが権限が移っている場合があるんですよ。今の局長のお話だと、その場合だったらいいというふうに読めるというふうな御返事だというふうな気がしました。  ここで結論は出ませんが、もし育児休業というものがおっしゃるような意味で、実際的におなかから出てくる出てこないではなくして、法律的なものだというふうに解釈されれば、これも当たるというのはどうも可能なような気がしましたので、思っていなかったんですが、それならばぜひ検討していただきたいと思います。  もう一つ実は用意しておったんですけれども、時間が参りましたので、またの機会にしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  236. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代でございます。  警察内部の集団暴行事件だとか、押収品であるネガフィルムを使ってそこに写っていた女性を脅迫したり強要したり、あるいは警察手帳の遺失だとか、あるいは痴漢、あるいは万引き、傷害などなど、何でもありの神奈川県警と言ってもいいような神奈川県警不祥事を初めとした警察不祥事が相次いで、国民の不信が強まっているところだと思います。  きょうは、私は、特に人権じゅうりんが著しい初めの二件について質問したいと思います。  九月十三日の神奈川県議会防災警察常任委員調査会で神奈川県警中林警務部長報告をしています。この報告によりますと、厚木警察署集団警ら隊暴行事件については、群馬県警派遣中の本年三月六日、宿舎で飲食中、分隊長ほか三人が新隊員の四人の体毛にライターで火をつける等の暴行を加えたこと、静岡県警派遣中の五月二十九日、宿舎分隊長が新隊員後ろ手錠をかけて暴行を加えたこと、千葉県警派遣中の六月二十七日、宿舎分隊長が実弾入りのけん銃の銃口を新隊員のみけんに突きつけたこと、千葉県警派遣中の七月四日、バスの中で隊員が複数の新隊員を殴って暴行を加えたこと、七月三日、バスの中で隊員が副運転員の隊員をけって左まゆに三針縫うけがを負わせたこと等が報告されています。また、七名の処分も明らかにされています。  また、女性に対する脅迫と強要に関しては、相模原南警察署刑事課防犯係の巡査長が昨年十一月二十二日、暴力団員宅から押収した女性が写ったネガフィルムを持ち出して、翌日その女性ネガフィルムの買い取りと交際を要求したこと、この巡査長懲戒免職処分とされたこと等が明らかにされています。  こうした事実報告に間違いはありませんね。
  237. 石川重明

    説明員石川重明君) そのとおりでございます。
  238. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 念のために、刑法第二百四条には、「人の身体を障害した者は、十年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」とあります。同じく第二百八条には、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」とあります。また、二百二十二条には、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」とあります。  一般論としてお聞きしたいのですが、体毛にライターで火をつけたり、手錠を使って暴行を加えたり、実弾入りのけん銃をみけんに突きつけたり、殴るけるの暴行で三針縫う暴行を加えたり、これらは刑法の傷害罪や暴行罪、脅迫罪などの対象になるのではないでしょうか。これは法務省にお聞きします。
  239. 松尾邦弘

    説明員(松尾邦弘君) 御指摘の件は、現在警察において捜査をしているということでございますので、具体的事案における適用法条等について述べるのはいたしかねるところでございますが、一般論というお尋ねでございますので申し上げますと、二百八条の暴行罪における暴行というのは、一般的な解説では人の身体に対する不法な有形力の行使であるというふうに理解されているところであります。  また、御指摘の二百二十二条第一項の脅迫罪における脅迫ということですが、これは相手方に恐怖心を起こさせる目的で生命、身体等に害を加えることを告知するということで、告知とは何かということがまた問題になるわけでございますが、告知の方法については制限がない、態度、動作によるものもこの告知に含まれる場合があるというふうに理解されております。  また、刑法二百四条の傷害罪における傷害ということにつきましては、これは実は議論がいろいろありまして、一つには、人の生理的機能に障害を与えることが必要だと、つまり健康状態が不良になるということが必要だという説もあります。それから二番目には、人の身体の完全性を害すればいいんだという説もございます。それからさらには、人の生理的機能に障害を与えると同時に身体の完全性に重要な変化を加える、これが要求される。つまり、学説でも三つに分かれているところですが、判例は、今申し上げた中の一番初めの、人の生理的機能に障害を与えればいいという考え方に立っているというふうに理解されております。  いずれにしましても、具体的な事案における犯罪の成否は証拠に基づいて判断されるということでございますので、今の御説明もあくまで一般論ということで御理解いただきたいと思っております。
  240. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 体毛にライターで火をつけたり、あるいは手錠を使って暴行を加えたり、実弾入りのけん銃をみけんに突きつけて畏怖させたり、殴るけるの暴行で三針縫うようなけがを負わせたり、これらは明らかに刑法に触れる犯罪行為たり得るという、そういう認識というのはあながち間違っていませんね。
  241. 松尾邦弘

    説明員(松尾邦弘君) 例えば三針縫うということになりますと、それはもう先ほど言ったどの説をとりましても傷害であることは間違いございませんが、一つの犯罪が認定できるかどうかというのは、先ほど申し上げましたように、具体的な証拠によります。  例えば、三針縫うといっても故意犯、過失犯ということもございますので、一般論と申し上げてもいろんな場合が想定されることでございまして、単にそれだけ取り上げて傷害罪が成立しますというふうになかなかお答えしにくいということでございますので、その点も御理解いただきたいと思います。
  242. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 そもそも手錠けん銃はどのような取り扱いがされなければならないのでしょうか。これは警察庁
  243. 石川重明

    説明員石川重明君) 手錠及びけん銃でございますが、これはもちろん職務遂行上必要であるがゆえに、警察法第六十八条の規定によりまして警察官に貸与されておる装備品でございます。したがいまして、手錠及びけん銃は職務遂行の際に有効適切に使用すべきものでありまして、職務遂行と無関係にみだりに使用してはならないということは当然のことでございます。  特に、けん銃の取り扱いにつきましては、警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範という国家公安委員会規則がございますが、そこにおいて使用及び保管等の規定がなされております。これらの規定を遵守して適正に取り扱わなければならない、こういう性格のものでございます。
  244. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 極めて限定的に取り扱うように規則で決まっていると思います。警察官同士が軽はずみに使うようなそういう性格のものじゃないというふうに思います。  次に、押収品の中の女性が写っているネガフィルムを持ち出して、翌日にそのネガフィルムに写っている女性に対して、言うことを聞かなければこのネガフィルムマスコミ等に売る、こんなふうに言って買い取りと交際を要求するなどというのは、脅迫罪、強要罪はもとより恐喝罪の対象にもなるのではないでしょうか。強要未遂罪、恐喝未遂罪というのもあります。  念のために、刑法二百二十三条には、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。」とあります。また、第二百四十九条には、「人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」とあります。一般論として言えば、脅迫罪、強要罪、恐喝罪、また同未遂罪、これらの対象になり得るのではないんでしょうか。これも法務省にお願いします。
  245. 松尾邦弘

    説明員(松尾邦弘君) あくまで一般論としてまた御説明するということになりますが、刑法の二百二十二条一項の脅迫罪は、相手方に恐怖心を起こさせる目的で生命、身体、自由あるいは名誉または財産に害を加えることを告げることというふうに理解されております。  また、二百二十三条一項の強要罪ですが、強要というのは、脅迫または暴行を手段として人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害するということがその要件と理解されております。  また、二百四十九条一項の恐喝罪でございますが、恐喝というのは、相手方に対してその反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫を加えて財物の交付を要求する行為であると理解されているところでございます。  なお、強要罪及び恐喝罪については、御指摘のとおりその未遂罪も処罰の対象となります。  いずれにしても、具体的な事案における犯罪の成否は、先ほども申し上げましたが、捜査機関が収集した証拠に基づいて、これらの一般論を踏まえて判断すべきものであるので、これ以上なかなか具体的な事案に立ち入ることはしかねるところでございます。
  246. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 法務省は極めて厳密に法技術的に物を言っておられると思うんですけれども、国民はどういうふうに見ているか、紹介したいと思います。  産経新聞、九月七日号の社説ですが、「かたや暴行傷害、かたや脅迫・恐喝にあたる、れっきとした犯罪行為ではないのか。」、こう指摘していますし、読売新聞、九月七日付社説、「常識的には脅迫や強要罪に問うべきだろう。」、こう言っています。  こういう厳しい、ごく当然の指摘があるということですが、警察庁もこれらの警察官行為は刑法上の犯罪行為たり得る、そういう少なくとも見方をして捜査を進めていますね。
  247. 石川重明

    説明員石川重明君) 今御指摘の件についてでございますけれども、警察庁といたしましては、県警の事態に対する対応というものを見まして、捜査を十分に尽くしているとは言いがたい面もある、こういう認識でございます。そうしたことで、県警幹部を招致いたしまして、捜査すべき事項があれば捜査を尽くすようにということで指導を行ったわけであります。  これに基づきまして神奈川県警察におきましては、その後、捜査体制を整えまして、現在捜査を進めているというふうに承知をしておるところでございます。
  248. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 報道によりますと、九月四日午後十時三十分の記者会見で中林警務部長は、集団暴行について、仲間内で起き、銃は構えて向けただけですぐやめているので、そこ、つまり刑事処分や刑事罰の対象ということですね、そこまではいかないとか、処分は十分に重いものだ、刑事事件の扱いはしないと言っていました。  五日午前の記者会見では、深山本部長は、押収したネガフィルムを使った女性に対する脅迫、強要、恐喝とも言うべき行為について、女性に実質的な被害はなく、総合的に勘案し、直ちに犯罪行為に当たるものではないとして、懲戒免職処分は済んでおり、改めて捜査するつもりはないと言い切っていました。  私は驚くべき人権感覚の欠如だと思うんです。長官、どのようにお考えになりますか。
  249. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 御指摘神奈川県の警察本部長あるいは警務部長の記者会見がどのようなものであったか、私、その内容の細部につきましては承知をしておりませんけれども、ただいま御指摘のような厚木の事案あるいは相模原南の事案につきまして、それぞれ本部長あるいは警務部長が会見をしている中身、その一部について私なりに考えてみますと、相模原南の問題でございますけれども、本部長一連事案についての会見の中で相模原南署事案につきまして、犯罪行為に該当しない、あるいは実質的な被害が云々というふうな発言をしたという点でございますけれども、これは被害女性の意向なりあるいはプライバシーの保護などの事情から捜査が事実上困難となっていたということであったというふうに思います。  それからまた、厚木署の問題でございますが、神奈川県警の当初段階の措置というのは、やはり内部の指導教養の行き過ぎと申しますか、そうした見方でとらえておりまして、捜査が必ずしもそこまで及んでいないという状況ではなかったかということでございます。  そのいずれの事案もそうでございますけれども、その後私どもが知るところとなりまして、神奈川県警警務部長を招致いたしましていろいろ状況を聞き、その上で、ただいま官房長が申し上げたとおり、やはり捜査すべき点があれば捜査を尽くせということを強く指示したところでございます。  先ほど法務省の刑事局長の御答弁にもありましたけれども、警察としてはどんな事案につきましても法と証拠に基づきまして厳正に対処するということが基本であろうというふうに思います。そうした立場で今回の二つの事案につきましても一つ一つ綿密な捜査をして、それが犯罪になるのかならないのかきわめなければいかぬというふうに考えているところでございまして、現在、神奈川県警におきまして鋭意その捜査を進めているというふうに承知をしているところでございます。
  250. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 長官、私は警察人権感覚を問題にしているんです。人間が人間に、仲間内だからといって、銃は構えて向けただけ、こんなふうに扱っていいんですか。女性は弁護士に相談し、警視庁にも訴えているんですよ。それなのに、実質的な被害はなくと、こんな認識でいいんですか。驚くべき人権感覚の麻痺だと私は思うんです。その人権感覚について問うています。長官、どう思いますか。
  251. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 今の御指摘でございますが、当初の神奈川県警対応というものは、いろんな配慮をしたと申しますか、被害者の意思なりなんなりというものを尊重する余りに捜査が進展をしない云々という状況になったというふうに聞くわけでございますが、今私が答弁申し上げましたように、やはり翻ってこの事案がどういう事案だったのかということをきわめていかなければいかぬ、そうした捜査を通じまして、人権の擁護と申しますか、そうしたことも果たしていかなければならないというふうに考えているところでございます。
  252. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 神奈川県警対応人権感覚の欠如、そういうふうに私は思うんです。ここが今大問題なんですよ。長官はそう思わないんですか。
  253. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 何度も御答弁申し上げましたとおり、当初の神奈川県警の判断と申しますか、そうしたものは私ども十分ではなかったということをはっきりと今申し上げました警務部長を招致した段階でもきつく言っているわけでございます。そこできちんと捜査をすべきことがあればやりなさいということを指示しているということで、御理解をいただきたいというふうに思います。
  254. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 国民にとって最大の関心事は、これらの本来なら刑事罰の対象にもなるような違法な人権じゅうりんの数々が警察内部の処分懲戒免職で済まされようとしていたことなんです。極めて重大だと思うんですけれども、長官はそう思いませんか。
  255. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 遅まきながらということで、言葉は悪いかもしれませんけれども、私どもとしては、捜査を尽くして国民の皆さん方の前に明らかにしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  256. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今回の一連不祥事について、徹底した全容解明と、それから刑事事件としての捜査関係者の厳正な処分、さらにその真相を国民に明らかにしていただきたいと思います。  次に、神奈川県警並びに警察全体の秘密主義の体質について質問いたします。  神奈川県警の九月二日から五日の四日連続の記者発表、これにおける二転三転ぶりは県警の秘密主義体質を浮き彫りにしたと思うんです。  暴力事件について、初めけん銃を突きつけたり後ろ手錠をかけたりした事実を否定。押収品のネガフィルムを持ち出して女性を脅迫し強要した件について、初め持ち出したのはネガフィルムではなくてメモ帳であるとしたり、ネガフィルムを訂正したときも、捜査目的で持ち出し返却したと言っていました。この事件処分された元巡査長についても、三日の午前中には自己都合による退職としていたのを、午後になって懲戒免職と訂正しました。  こうした説明の二転三転は、事実を隠すためにうそをついていたとしか思えないのですが、そうではありませんか、警察庁
  257. 石川重明

    説明員石川重明君) 今御指摘のように、神奈川県警一連対応のそごを来して説明が二転三転をしたということでございまして、警察庁といたしましては、これは極めて不適切な対応だった、こういうふうに考えております。  従来から、報道対応に当たっては真摯かつ正確性を旨とするようにという指導を行っているわけでございまして、今回もその都度そうしたことを伝えておるわけでございますけれども、現場でこういう事態になったということはまことに残念に思っている次第であります。
  258. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 日本語というのはなかなか微妙なんですけれども、正確さにおいて不十分であったと。そういうことではなくて、私は物事は単純で、けん銃を突きつけたのかどうか、後ろ手錠をかけたのかどうか、ネガフィルムだったのかメモ帳だったのか、自己都合による退職なのか懲戒免職なのか、いずれも二つに一つなんです、そんなに複雑なことではなくて。ですから、正確さにおいて不十分だったというより、やはり客観的には事実を隠すためにうそをついたというふうに認識せざるを得ません。  しかも、記者会見の席で中林警務部長は、けん銃手錠使用について否定してきたことについて、四日の夜ですけれども、うそではない、あくまで事実関係確認不足と誤解を生じさせる用語法であった、こう言っていましたし、深山本部長は、ネガ以外は捜査のために使っている、全体から見ればうそとは言えない、言葉のあやだ、説明が正確ではなかったと言っていました。  いずれも虚偽の発表自体を否定していたわけです。うその発表も、うその発表であることの否定もすべて森貞監察官室長、中林警務部長、深山本部長らの事前了承と協議の上でなされたのだと思うんですけれども、違いますか。
  259. 石川重明

    説明員石川重明君) 報道対応に当たりましては、基本的には事前にいろいろなことを協議するとは思います。思いますが、具体的に報道の場において、その対応といたしましてどういうことをその都度言うかというような点についてまでは細かい指示なり指導なりというものはなく、それぞれの段階で判断をしてその場で対応している、こういうふうに理解をしております。
  260. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 一言一句という言葉がありますけれども、一言一句すべて打ち合わせできるものではないということを前の委員の質問にも答えておられたようですけれども、余り難しいことじゃないんです。警察というのは事実捜査が得意でしょう。ですから、けん銃手錠を使ったのかどうか、ネガフィルムなのかメモ帳なのか、自己都合退職なのか懲戒免職なのか、事実はどっちなのかという極めて単純なことで、これらは当然打ち合わせ可能なわけです。  実際、神奈川県警の深山本部長は九月十三日、神奈川県議会で、厚木警察署及び相模原南警察署事案につきましては報道対応に当たり不適切があり、問題を一層深刻化させてしまい、県議会、県民の皆様に御心配をおかけしたことをまことに申しわけなく思っております、こう謝罪しておられます。また、中林警務部長は、これも県議会で、あってはならないことだが、事実でない説明をすることになった、こうおっしゃって、うそをついたことを認めています。  長官にお聞きしたいんですけれども、こういう県警ぐるみの事実の隠ぺい、つまり秘密主義の体質と虚偽の体質というのは極めて重大だと思うんですけれども、そう思いませんか。
  261. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 御指摘のような事案についての答弁、先ほど官房長も申し上げたとおりでございますけれども、今回の神奈川県警不祥事につきまして、県警幹部報道関係者との対応に当たりまして説明内容が二転三転をしたということ、不適切のそしりを免れないものであろうということを考えるわけでございまして、まことに遺憾でございます。  これらの点につきましては、今委員指摘のように、本部長ないし警務部長神奈川県議会で説明をしたというふうな話もありましたけれども、国家公安委員会におきましてもこれらの責任を問うべく懲戒処分が行われたところでございます。  こうした状況でございまして、委員指摘のような秘密体質云々ということでございますけれども、そうしたものが仮にあるとするならばこれは直していかなきゃいかぬし、私どもとして全国警察指導しておりますのは、事実を正確に把握して、その事実に基づいて、即して適切な対応をするということが何よりも基本であるということを常々言っているところでございます。  その適切な対応という中には、先ほど委員指摘の刑事処分という問題もありましょう、あるいは行政処分という問題もありましょう、さらには、現在のこれだけの情報化社会という中におきまして、国民の皆さん方に、それは報道機関を通じてということでありましょうけれども、事実関係説明する、明らかにするということも含めての適切な対応ということが大変重要であるというふうに考えているところでございまして、そうしたことで全国警察をさらに強く指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  262. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 事実の隠ぺいということがどうして起こるのか。私は、警察の秘密主義の体質、虚偽体質というのは根が深いんではないかと思っているんです。  「日刊警察」という新聞があります。資料として配られたと思いますが、この新聞には関口長官の全国警察本部長会議における訓示なども載っています。日本新聞雑誌調査会の「日本新聞雑誌便覧」によりますと、特色は警察官のための教養専門紙で、発行部数は四万五千部とあり、国会図書館でも閲覧できるようになっています。この新聞は御存じですね。
  263. 石川重明

    説明員石川重明君) 「日刊警察」については存じております。
  264. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 この新聞の九七年六月六日号に、「警部昇任試験問題と解答 島根県」というのが掲載されているんです。「隣接する警察署の次長から、自署員による飲酒運転の交通事故が発生したとの通報があった。 次長としてとるべき措置について考えるところを述べよ。」という問題で、百点満点の配点になります。念のために、飲酒運転は道路交通法第六十五条で禁止されており、違反すれば二年以下の懲役または十万円以下の罰金か三月以下の懲役または五万円以下の罰金となります。  警察官の飲酒運転による交通事故はどのように取り扱われるのか。この問題の「解答例」によりますと、初めに「通報受理時の措置」とあって、「報道関係者事案察知の有無を確認し、察知されていなければ広報を控えるよう依頼する。」としています。また、四番目に「事実の真相把握」とあって、「当方に有利な情報の収集(相手方の過失等)にも努める。」とあります。五番目の「被害者対策」では「正直に身分を明かすとともに秘密の保持について協力をお願いする。」、六番目の「報道対策」では「組織に対するダメージを最小限にとどめるのが、この種事案処理の目的でもある。」「秘密の保持に細心の注意を払わなければならない。」とし、八番目の「措置上の留意点」でも「発生所属に対しても、保秘に留意」とあります。  試験問題の解答例で八項目のうち四項目に秘密主義が貫かれているというのは、これが警察の方針だということだと思うんですけれども、違いますか。
  265. 石川重明

    説明員石川重明君) お尋ねの「日刊警察」の記事に出ております「警部昇任試験問題と解答」ということでございますけれども、この昇任試験問題が実際に島根県警察において出されたと現時点で私承知をしておりません。また、この解答例なるものがだれによって書かれたのかといった点についても承知をしておらないわけでございます。  ざっと今御指摘の点を伺っておりますと、随所に首をかしげざるを得ないような点があるというふうに感じるわけでございます。
  266. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 では、これは警察の方針ではないんですか。
  267. 石川重明

    説明員石川重明君) 私ども、先般来の不祥事関係全国に再発防止あるいは事案処理の適正ということで通達を発出したということは先ほど来申し上げておるところでございますけれども、その中に、報道関係の問題について、不祥事案発生時においては事実関係を正確に把握した上で対応を行うことが重要である、取材等に対する真摯な対応、国民がその実態を把握できる適切な報道対応ということに努めて、不祥事案報道あり方について国民の不信を招くことのないようにすべきである、こういうような中身の指示を行っているところでございますし、また事案の適正処理という観点からも、こうした事案を認知した場合には速やかに事実関係を把握いたしまして適正に処理をしなければならない、厳正な事件捜査、厳正な懲戒処分等について配慮して、事案処理ということに問題を残さないようにといったような中身のものになっておることを御理解願いたいというふうに思います。
  268. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 私が秘密主義を貫くというのは警察の方針だということですかと言ったら、そうじゃないとはおっしゃらないんですね。  実は、警察の秘密主義を裏づけるものはほかにもたくさんあるんです。「警察公論」という雑誌があります。これは警察専門誌の中では部数、内容とも群を抜いていて、読者は警察学校生から警察署長まで、また現場の警察官から判事、検事及び学者などが執筆をしています。  この雑誌の中を紹介したいと思うんですが、例えば「法学・実務論文予想問題 セレクト一〇〇」では、「職務執行不適切事案発生時における基本的な配意事項」として、「(4) 保秘対策の徹底」が挙げられ、「保秘対策を徹底する。」、「相手方の理解が得られた場合においても、保秘の点を十分説明し納得を得る。」等としています。国民の人権、プライバシーを守るという秘密じゃないんですよ、警察不祥事を秘密にするということです、これは。  もっと紹介します。九八年の「昇任試験問題と答案」では、ここでは警察官が交通取り締まり中、一時停止違反をした少年にけがをさせたという問題ですが、この事案についても、解答例、答案の中で「秘密の保持」、「秘密の保持に細心の注意を払う」、こういうことが言われているわけです。  それから、九九年の「昇任試験問題と答案」でも、これは警察官が飲酒運転で交通事故を起こした事例なんですが、「保秘の徹底」、それから「報道発表する時期については、組織としてのダメージが小さくなる時期をみて行う必要がある」。さらに「報道対策」として、「保秘を徹底するとともに、報道関係者からのあたりがあった場合の対応について、本部主管課等と意思の統一を図っておく。」こととされています。  もうちょっと紹介します。九七年八月号ですが、「警察職員不祥事故を起こしたときの基本的な考え方について述べなさい。」という問題の答案、この3で、「具体的な対応策」の「(1) 事案発生には大きく構えて小さくまとめるという基本スタンスをもっていなければならない。」とまで言っています。  「大きく構えて小さくまとめる」とはどういうことか、要するに警察不祥事を小さく見せる、できることなら隠してしまおうと、そういうことですよ。これではまるで警察の秘密主義的な体質を育成しているものじゃないんでしょうか。
  269. 石川重明

    説明員石川重明君) 警察にも不祥事発生をするわけでございますから、当然その対応ということがあるわけでございますけれども、そうした場合に、関係者のプライバシーに配意しつつも、公表すべきものは公表するというのが基本的なスタンスでございます。  例えば、飲酒運転により警察職員が逮捕されたというような場合には、当然一般人と同様に公表をするのが原則でございますし、また逮捕されない場合においては、一般であれば原則不公表といったような取り扱いになる場合であっても、警察職員の場合にあっては、その職責と申しますか位置づけから、個々具体的なケースの内容にもよりますけれども、公表するか否かについてはより厳しく取り扱う、こういうような指導をしているのが実態でございます。
  270. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 秘密主義を貫くという、そういう物差しを当てたときに、神奈川県警というのはいわば優等生だったんですね。  こうして、秘密主義の体質というのは神奈川県警のみにとどまらず、結局、警察全体の問題になると思います、育成しているんですから。ですから、今回明るみに出た神奈川県警一連事案は氷山の一角で、こうしたことが日常茶飯事化しているのではないかと国民が疑念を抱くのは当然だと思いませんか。これは長官に。
  271. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 神奈川県警におきまして不祥事案が連続して発生をし、国民の警察に対する信頼を失墜させたということ、まことに遺憾に存ずるところでございます。  これらの不祥事案発生したことは、一部警察職員職業倫理意識の欠如に起因するというふうに思われるところでありますけれども、組織としてこれら不祥事案からの反省教訓事項というものを抽出をし、緻密な業務管理や身上監督の徹底職業倫理教養の推進などを重点といたしまして再発防止に努め、一日も早く国民の信頼を回復することが何よりも大切であろうと考えているところでございます。
  272. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 秘密主義を貫くというテストで百点満点をとるべく頑張ってきた警察官が、実際それを実行してしまったら、あなた個人の問題だ、そういうふうに言われるのはこれは国民には通用しない理屈で、長官、やはり秘密主義の抜本的な改善が必要だと思うんですけれども、どうですか。
  273. 関口祐弘

    説明員(関口祐弘君) 今、委員秘密主義というふうな点で警察全体にそうした体質があるというふうな御指摘でございますけれども、私は決してそうは考えておりません。やはり治安の維持というものは国民の皆様方と警察との強い信頼関係があってこそ成り立つものであろうと思います。そうした国民の信頼、期待というものにこたえていくためには、私どもとして、あらゆる警察活動につきまして広く国民の皆さん方に情報を提供する、そして国民の皆様方からも幅広く意見を聞く、それを私どもとして真摯に受けとめるということが何よりも大切なことであろうというふうに考えているところでございまして、そうした方向で私ども進んでまいりたい、都道府県警察をまた今後指導してまいりたい、かように考えているところでございます。     ─────────────
  274. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、八田ひろ子君及び緒方靖夫君が委員辞任され、その補欠として畑野君枝君及び池田幹幸君が選任されました。     ─────────────
  275. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 参議院の会の岩本荘太でございます。  議事進行が図られましていつもより早い時間に質問の時間が回ってまいりました。最後の質問者でございますので、よろしく。自治大臣もお見えですので、私、きょうは地方分権の推進について少々質問させていただきたい、こう思っております。  申し上げるまでもなく、野田自治大臣並びに自治省を中心といたしました関係者の多大な御尽力で、さきの国会で地方分権の一括法案が成立したわけでございまして、いよいよ来年、平成十二年四月から施行という運びになったわけでございますが、その御努力に対しては敬意を表する次第でございます。今後この地方分権がさらに推進することを、今までの私自身の経歴からいいましても、推進の立場を貫いてきたものでありますから、ぜひその方向で進みますことをこいねがうものでございます。  そこで、確かに一応一括法ができまして、法整備ができて来年スタートするわけでございますが、今までの検討の過程といいますか、私の理解の不足かもしれませんが、どちらかといいますとやはり官主導、国主導といいますか、そういう検討がずっとなされてきたような感じがいたします。当然いろんな地方の御意見等を地方をお回りになってお聞きになったということはわかりますけれども、地方の立場からいたしますと、まだ全然自分の身に降りかかってきていない時点でございますので、地方分権、どちらかというと国が何かをくれる、自分らにいいことをくれるというような立場で見てきたのが正直なところではないかなという気がいたします。  ところが、来年施行されますと、今度は地方にそのバトンが渡されてといいますか、地方が新しい法制度の中でそれを使ってどうやっていくかということの段階に入ったんじゃないのかなというふうに思うわけです。そういうことを考えますと、今度のこの地方分権というのは地方の立場から見れば検討の緒についた、これから地方がいろいろ物を言える、実際にやってみていろんな影響といいますかいろんな問題が出てくる、こういう段階ではないのかなと、私は地方分権というのをそういうふうに理解しているわけでございますけれども、大臣の御所見をぜひお聞かせ願いたいと思っております。
  276. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 認識につきましては、まことに御指摘のとおり私も認識いたしております。  今回、地方分権一括法、おかげさまで成立をいたしました。しかし、これはこれをもって地方分権の体制が完結したということではなくて、まさに第一歩が始まったといいますか具体的な実行の段階に入ったということであって、それをさらに中身をしっかりと整えていく。つまり自己決定、自己責任というこのことを本当に地方自治体が具体的にそれを実践していく、そのための体制をどうやって強化するか。そのためにはまだまだ残されておる課題もたくさんございます。時間の関係でもう多くは申し上げませんが。  そういう意味で、今回、これは緒についたという表現が今ございましたが、私も緒についたというか第一歩を踏み出したと。しかし、審議の中で私はレールのポイントの切りかえみたいなものだということを申し上げたんですが、やはりこれは切りかえがないといつまでもだめだったんですが、これから時の経過とともにさらなる自治体自身の御努力、そういったことも両々相まって必ずやその実が上がっていくというふうに私は期待をいたしております。
  277. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 私の申し上げたことに御同意いただきまして、大変意を強くした次第でございます。  それと同時に、今、大臣ちょっと漏らしました自治体の自主性といいますか、これは私自身も思うんですが、地方が口をあけて待っているというのでは絶対に進まない。地方が自分なりの物の考え方をはっきりと言って、それを進める姿勢を示さないといけないというような気がいたすわけでございます。  ただ、そうは申しましても、実際に来年から進んだ場合に、当面の問題として、先ほども岩城先生の御質問にもありましたけれども、いわゆる財源、人間といいますか人材の問題があるわけでございます。私もかつて代表質問のときに総理にもお伺いしたわけですけれども、三位一体といいますか、三つがうまくかみ合わなければいけない。今はどちらかというと権限の問題が先行しているような気がいたします。そのほかの問題も必ずしもやってないとは申し上げませんが、どうもそれが先行している。ただ、これが実行に移りますとすぐさま財源の問題、人間の問題が出てくる。これは地方も考えなきゃいけませんけれども、やはり国にあっても、国を構成している皆さん方それぞれは地方の、地域の人間でございますから、一緒になって考えなきゃいけないなというような気がいたすわけでございます。  財源の問題は、先ほど税収配分等についてのルールづくりはこれはノーマルな状態になってというようなお話がございましたが、それはそれで、私も今後のスケジュールをお聞きしようと思ったんですが、それでお答えは同じだろうと思いました。  ただ、一つ心配になりますのは、来年実際に今回の法案で動き出して地方の方は財源の問題、人材の問題について何ら支障がないというふうにお見通しになっているのかどうか、自治省、事務局でも結構でございますから、その辺の御判断をお聞かせ願いたいと思っております。
  278. 中川浩明

    説明員(中川浩明君) 地方分権時代の自治体におきます人材の育成確保についてお答えをいたします。  地方分権の進展によりまして地方公共団体の権限が拡充強化されてまいるわけですが、それに適切に対応して地域づくりを進めていくためには、御指摘のように、今後一層企画力であるとかあるいは政策形成能力などを持った意欲ある職員、人材を確保育成していくことが重要でございます。  こうした中で、地方公共団体におきましてもいろいろな工夫をいたしております。例えば、採用試験の面、あるいは職員研修などを共同で実施することであるとか、さらには地方公共団体間で人事交流を進める、社会人であった経歴の方の中途採用を図るなど、従来見られなかった新しい試みをしている団体もかなり見られているところでございます。  このような取り組みを支援していきたいという趣旨から、自治省といたしましても人材育成に関する基本方針を策定するための指針をお示しいたしまして、各地方公共団体におきまして人材育成に努めていただきたい、具体的な内容を盛り込んだ指針を定めていただきたいということをお願いいたしているところでございます。そのために人材育成等のアドバイザーの派遣あるいは一部財政措置等も行っているところでございます。  来年、いよいよ一括法に基づきます分権新時代を迎えるわけでございますので、それに合わせて人材確保の面でも各地方公共団体において適切な対応を準備を怠りなくやっていただくようにお願いをいたしております。そのような取り組みも各地方公共団体で順次見られているところでございます。  今後、それを実際に地方自治の場面で生かせるような、そういう方向にさらに持っていっていただくように今後ともお願いをしてまいりたいと思っております。
  279. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 わかりました。  ただ、端的に言って、いわゆる地方自治体の首長さんが心配されるのは、実際にお金の面、人の面は大丈夫かなという漠然とした不安があるわけですね。それが、今抜本的にそういう問題も検討されなければいけないというのはわかりますけれども、当面、来年から動く、そのものについて、それは自治省がどうするということじゃなくて、当然地方自治体が工夫することかもしれませんが、そういうことについて自治省の方ではどういうふうにお見通しになっているかということをちょっとお伺いしたかったんです。
  280. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 人材の面は行政局長から今御答弁申し上げました。  財政面、これは先国会でも申し上げたんですが、できるだけ早く抜本的な国と地方の間の税財源の配分をきちんとやり直すということが一番大事なんですが、今の経済情勢ではなかなかそこまでは立ち至らない。しかし、それまで何もしないで手をこまねいて放置していいかというと、そういうわけにはまいりません。  そういう点で、それまでの当分の間の措置ではございますけれども、少なくとも平成十一年度の税制改正において、国税、地方税の大幅減税等もこれあり、とにかく一般財源をどうやって確保するかということが最大の課題でございました。そういう点で、一つは交付税、特に法人税についての配分を交付税率を引き上げるという形をとり、たばこについての国と地方の間の配分割合を地方に高めるという措置をとり、そしてまた、さらに足らざるところは特例交付金という制度をもっていわば一般財源を確保する、トータルとして確保するという形で対応をいたしたところでありまして、この措置は当然のことながら来年度以降においても続けられると、これは当然のことでございます。  そういう意味で、一般財源が不足する、そのために地方行政、財政が停滞をするということのないようにしなければいけない。特に分権が促進をしていくということでございますので、それを裏打ちするだけの一般財源の確保ということについて我々も全力を挙げて対応してまいる覚悟でございます。
  281. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  自治省としても、要するに心配していると、その辺は十分考えて対応する、こういうふうに地方自治体に申し上げていいと、こういうことでよろしゅうございますね。
  282. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) はい。
  283. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 それでは、次の質問なんですけれども、では推進していくときにどうなるのか、地方分権を推進していく立場、地方の体制がどうなるのか。先ほど研修とかなんとかいろんな人材育成の面で言われたわけですが、個々の問題でなくて、分権が進むには地方全体がそういう意識にならなきゃいけない。  ところが、分権については随分自治省も御努力されて、いろんな面のPRもされておられますけれども、現実を見ますと、一般住民の方というのはなかなか理解できない。地方分権という言葉は理解しても、ではそれが一体どういうものなのか、権限がどこにあるかというのは、一般住民の方が何かの関係で関与されたときに、例えば農地転用の面積で国が関与するのは二ヘクタールとか、いろいろそれでは大きいとか小さいとかという議論があっても、そういう問題に関与された方が初めてこれは国でやっていて非常に時間がかかるとか、こういうものは県でやらせたらいいのじゃないかというような面にぶち当たるわけでございまして、それ以外の方はなかなかわからない。わからないけれども、何か世の中のムードとしては地方主権といいますか、地方の個性のある社会をつくりたいというあれがあるわけですから、これをよくマッチングさせなきゃいけないというのが今の大きな課題だと思うんです。  したがって、これは自治省に国の機関としてお聞きするというのも酷なわけでございまして、地域地域がそれぞれどうしたらいいかということを自分で考えなきゃいけないわけだとは思います。私もそういう面でどうしたらいいか地方行政をやっている面で考えたことがございまして、例えば一般住民の方はわからなくても、行政に関与している役人の人、そういう人ならある程度わかるだろう。それも年をとった人はなかなか融通がきかないけれども、若い人だとおかしいなという疑問も生じてくるのじゃないかということで、そういうグループづくりをやろうとした経緯もございます。その結果は全然まだ出てきてはおりませんけれども、何らかの努力をしてその辺までのことは仕組んであげないと本当の分権というのは出てこないのじゃないのか。  これは大変言うはやすく難しい問題だと思うんですけれども、大変失礼なんですけれども、大臣も国政をつかさどる、巷間言われております今回の内閣改造で大臣もまた継続されるかどうかわかりませんが、少なくともこの先、国政を進める上で大変重要な役割を果たされる方だと私は信じておりますので、そういう意味で分権を、国政の場ばかりでなくて一地域人としてその辺の御所見が何かございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  284. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 確かに住民レベルで見ると、いわゆる権限の移譲という問題、分権の問題はなかなか実生活の中でぴんとこない部分があろうかと思います。  例えば障害者手帳の交付について、これが市なら市の権限に移行する、中核市になればそういうことになるわけですが、そうしますと、今まで一々国、県まで上げたり、そういうような形で二十日間かかったのが十日間で交付できるようになるとか、それに関連する部分の人はある程度少し期間が短くなったかなというのがわかったり、いずれにしても国と地方の間の権限の問題ですから、そういう意味で一々国にお伺いを立てなければ処理できなかったことが今度は自己責任処理ができる、まさにそこが一番大事なところでありまして、これは住民から見るとなかなかわかりにくいところがあることは事実です。  しかし、そのことをしっかりお話ししなきゃいけない。できれば、本当は電話の回数も減るのでしょうし、出張の回数だって減るのでしょうし、そういったことが少し定量的に把握できればまたわかりいいのかもしれませんが、なかなかそういったことを定量的に把握するということも難しいのかもしれぬ。何か知恵があればいろいろわかりやすく説明できるようなものをしていかなきゃいかぬと思っています。  しかし同時に、まさに岩本委員指摘ございましたように、一番大事なのは意識なんですね。自己決定、自己責任、地方分権ということは言うはたやすいけれども、本当にみずからの責任で決定するということになれば足が震えるほどの重みというものは当然あるわけです。そういったことが、まさに主体的な発想転換というものをどうやってしていくか、そういう依存心を捨てていくということは非常に大変なことだと私は思います。そのことによって本当の意味でその地域その地域が主体的な展開ができるのだと。それをどうやってバックアップするか。今まではそういうことを口では言っても、実際には権限の行使にしても財源面にしてもそれをやりたくてもできないようながんじがらめの仕組みをつくっていた。だから今回はその仕組みを主体的にやろう、意欲のあるところが主体的にやろうというところをどうバックアップできるか、そういう意味での国から地方に対するある種の規制緩和であると。権限の移譲ということはまさにそういう発想でとらえていいのではないか、私はそう思っております。
  285. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 私、今の質問は、大臣に直接こんなことを言っていいかどうか疑問に思った上でのことでございますので、あえて追及するというような代物ではございませんので今ので満足させていただきますけれども、確かに今言われたできるところからやるというのも大事じゃないかなというような気がいたします。全国一律にやるというのもなかなか難しいから、できるところからどんどんやって、それを見せて、こんなによくなるんだぞということが一つの推進の大きな手じゃないかなと、今お話をお聞きしてちょっと感じた次第でございます。  それで、時間もなくなりましたけれども、そういうことによって地方主権といいますか、自主性を持った地方行政がこれからどんどん確立された場合に、今はどちらかというと全国画一の権限を全国画一的にやっているわけですけれども、日本国全体の中で地域性というのは、それは例えば産業を中心にするところ、それも農業を中心にする、あるいは商工業を中心にするとか、あるいは文化・伝統を中心にして観光を大事にするとか、地形的に見ましても、平野部にあるのか山岳部にあるのか、いろんな面をその地域地域で持っていると思うんです。  そうした場合に、実際に自分のところの個性を発揮するにはどうしたらいいかということを真剣に考えてこうだと言ったときには、全国必ずしも横並びにならないんじゃないか、県によってはあるいは市町村によっては全然別の要求が出てくるんじゃないかなと。むしろそれが地方分権じゃないかなというような気がいたすんですが、これは想定の問題であれなんですけれども、今後そういう問題といいますか要求が出てきたときに、やっぱり中央の省庁として自治省が何らかの格好で受けとめていかなきゃいけないんだと思うんですけれども、その辺の今後の受けとめ方についての御認識についてお話を伺えればと思っております。  大臣に御答弁いただければ、大臣よろしくお願いします。
  286. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) その前に局長の方から一応事実関係を言って、大臣からは締めくくりのお話をしていただく、こういうことでどうでしょうか。
  287. 中川浩明

    説明員(中川浩明君) 特に現在の地方自治制度の中で、都道府県制度については原則としてほとんどの都道府県に特別の扱いをしているものはございませんが、市町村につきましては、御承知のように現在でも指定都市の制度、中核市の制度がございまして、他の市町村と区別をした事務権限を執行している実態にございます。  今回、一括法におきまして地方自治法上新たに特例市の制度も設けることといたしまして、現在の指定都市、中核市、一般市の中に特例市という制度を新たに加えることによりまして、できる限り市の実態に応じた権限の移譲を進めるということで、地域の特性にもマッチした制度になるように配慮したところでございます。  今後につきましても、いろいろな検討を加えまして、できるだけ地域実態にマッチした仕事がそれぞれの市においてできるような制度、運用を考えていくべきものだと考えております。
  288. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおり、まさにそれぞれの地域によってニーズは異なっておると思います。そういう意味で、地域の個性に合わせたやり方でそれぞれ主体的に取り組んでいただく、そういう姿をどうやってバックアップするか。それにはやはりある程度それに伴う財政的な自主性といいますか、それが背景についておらないと結果としてやりたいことも全部できない、こういうことで画一的なやり方になりがちであります。  そういう意味におきましても、税財源をきちんとしたルールに基づいて配分をする、そしてそういう主体的な自主財源を背景として主体的な事務事業をそれぞれの自治体の責任において実施していただくという体制が必要だ、そういう認識であります。  そういう意味でも、御指摘が冒頭ございましたが、国、地方の税財源の配分の見直しということは極めて大事なことでありまして、現在の歳出規模と地方税収入の余りにも乖離があるという現状を容認するわけにいかない、一刻も早くこの是正をしなければいけないというふうに考えております。
  289. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  この質問は抽象的なものにもかかわらず大変いい御答弁をいただいたわけですけれども、これからもっと具体的なものが出てまいりましたら、またさらに議論を深めさせていただきたい、こう思っております。  きょうはどうもありがとうございました。
  290. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 他に御発言もないようですから、法務省自治省警察庁裁判所及び公営企業金融公庫決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明三十日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会