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1999-04-06 第145回国会 参議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  二月二十四日     辞任         補欠選任      斉藤 滋宣君     世耕 弘成君      谷林 正昭君     小川 勝也君      高野 博師君     渡辺 孝男君      益田 洋介君     加藤 修一君  二月二十五日     辞任         補欠選任      加藤 修一君     益田 洋介君      山本  保君     福本 潤一君  二月二十六日     辞任         補欠選任      益田 洋介君     山本  保君  三月一日     辞任         補欠選任      八田ひろ子君     橋本  敦君      福島 瑞穂君     菅野  壽君  三月二日     辞任         補欠選任      清水嘉与子君     金田 勝年君      福本 潤一君     益田 洋介君      橋本  敦君     八田ひろ子君      大脇 雅子君     福島 瑞穂君  三月三日     辞任         補欠選任      加納 時男君     常田 享詳君      金田 勝年君     清水嘉与子君      益田 洋介君     魚住裕一郎君      菅野  壽君     大脇 雅子君  三月四日     辞任         補欠選任      常田 享詳君     加納 時男君      川橋 幸子君     福山 哲郎君  三月五日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     櫻井  充君      福山 哲郎君     川橋 幸子君      魚住裕一郎君     益田 洋介君  三月八日     辞任         補欠選任      佐々木知子君     溝手 顕正君      佐藤 昭郎君     市川 一朗君      櫻井  充君     木俣 佳丈君  三月九日     辞任         補欠選任      市川 一朗君     佐藤 昭郎君      溝手 顕正君     佐々木知子君  三月十日     辞任         補欠選任      山本  保君     高野 博師君      八田ひろ子君     須藤美也子君  三月十一日     辞任         補欠選任      高野 博師君     山本  保君      須藤美也子君     八田ひろ子君  三月十五日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     柳田  稔君      益田 洋介君     高野 博師君  三月十六日     辞任         補欠選任      柳田  稔君     木俣 佳丈君      高野 博師君     益田 洋介君      八田ひろ子君     宮本 岳志君  三月十七日     辞任         補欠選任      宮本 岳志君     八田ひろ子君  四月五日     辞任         補欠選任      岡崎トミ子君     伊藤 基隆君      鶴保 庸介君     平野 貞夫君  四月六日     辞任         補欠選任      福島 瑞穂君     田  英夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         久世 公堯君     理 事                 鹿熊 安正君                 鎌田 要人君                 中原  爽君                 佐藤 泰介君                 岩本 荘太君     委 員                 岩城 光英君                 加納 時男君                 佐々木知子君                 佐藤 昭郎君                 清水嘉与子君                 世耕 弘成君                 平田 耕一君                 水島  裕君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 川橋 幸子君                 佐藤 雄平君                 益田 洋介君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 阿部 幸代君                 緒方 靖夫君                 八田ひろ子君                 大脇 雅子君                 田  英夫君                 平野 貞夫君    国務大臣        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣     関谷 勝嗣君        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君         ─────        会計検査院長   疋田 周朗君         ─────    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        人事院事務総局        管理局長     尾木  雄君        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        総務庁統計局長  井上 達夫君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 康宏君        科学技術庁科学        技術振興局長   田中 徳夫君        科学技術庁研究        開発局長     池田  要君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房審        議官       福田  進君        大蔵省主計局次        長        坂  篤郎君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        文部省学術国際        局長       工藤 智規君        文化庁次長    近藤 信司君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省基礎        産業局長     河野 博文君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        運輸省自動車交        通局長      荒井 正吾君        郵政大臣官房長        事務代理     鍋倉 真一君        郵政省郵務局長  濱田 弘二君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        建設省河川局長  青山 俊樹君    事務局側        常任委員会専門        員        島原  勉君    説明員        国際平和協力本        部事務局次長   嶋口 武彦君        会計検査院事務        総局次長     深田 烝治君        会計検査院事務        総局総務審議官  白石 博之君        会計検査院事務        総局第一局長   関本 匡邦君        会計検査院事務        総局第二局長   諸田 敏朗君        会計検査院事務        総局第三局長   大和 顕治君        会計検査院事務        総局第四局長   増田 裕夫君        会計検査院事務        総局第五局長   小川 光吉君     ─────────────   本日の会議に付した案件平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度  特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金  整理資金受払計算書平成年度政府関係機関  決算書(第百四十二回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書(  第百四十二回国会内閣提出)(継続案件) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百四十二回国会内閣提出)(継続案件) ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度  特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金  整理資金受払計算書平成年度政府関係機関  決算書内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書(  内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書(内  閣提出)     ─────────────
  2. 久世公堯

    委員長久世公堯君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月二十四日、谷林正昭君、斉藤滋宣君及び高野博師君が委員辞任され、その補欠として小川勝也君、世耕弘成君及び渡辺孝男君が選任されました。  また、昨五日、鶴保庸介君及び岡崎トミ子君が委員辞任され、その補欠として平野貞夫君及び伊藤基隆君が選任されました。  また、本日、福島瑞穂君が委員辞任され、その補欠として田英夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 久世公堯

    委員長久世公堯君) 平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 平田耕一

    平田耕一君 よろしくお願いいたします。  八年度と九年度決算につきまして、大蔵大臣の御見解をお尋ねいたします。  八年度一般会計決算におきまして、七年度に続き二年連続の税収増ということでございまして、四千四百億の純剰余金発生をしております。しかしながら、その純剰余金発生は十一兆円を超える特例公債を発行した上でのことでございまして、財政状況が好転したものではないというふうに思うわけであります。  八年度決算につきましての大蔵大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
  5. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの点は平田委員の御指摘のとおりだと考えております。  八年度におきましては、特例公債実額で十一兆余り発行いたしております。税収は当初五十一兆三千億円を見込んでおりましたが、結局五十二兆一千億円という税収になりました。したがいまして、形の上では純剰余金が四千四百四十二億円出ておりますけれども、他方で十一兆円余り赤字国債を発行いたしておりますので、財政的にはこの年は剰余が出たのではなくてマイナスであったことは御指摘のとおりであります。
  6. 平田耕一

    平田耕一君 それに続きまして、九年度一般会計決算も一兆六千億円の決算上の不足、いわゆる歳入欠陥を生じておるわけでございまして、その処理のために国債整理基金から相当額を借り入れまして決算調整資金を経由して一般会計不足分を穴埋めしておるわけであります。  その分を繰り戻すために十一年度当初予算処理する措置を講じておられるわけでございますが、いわゆる歳入欠陥は、昭和五十六年、平成四年、五年に続きまして戦後四回目でございますが、歳入欠陥に至りました責任につきまして、大蔵大臣の御認識を続けてお伺いいたしたいというふうに思います。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平成年度という年は、御記憶のように、我が国の財政あるいは経済にとりまして非常に変化の大きな年でございました。  前年度平成年度経済成長GDP成長が後に改定されまして四・四%あったと記憶されておりますが、九年度もしたがって一・九%のGDPのプラスの成長を見込んでおりました。結果といたしましては、これがマイナス〇・四%という久しぶりのマイナス成長を記録いたしました。これは御記憶のように、年度の途中におきまして、まず東南アジアでタイを初めとする通貨危機が八月にございました。それから、十一月になりますと三洋証券あるいは北海道拓殖銀行、山一証券等々の倒産がございまして、にわかに国民経済に対する危機感が年末になって非常に高くなったわけでございます。  しかるところ、この年には前年度経済が好調であったこともございまして消費税率の引き上げをいたしております。あるいは特別減税中止等をいたしまして、俗に九兆円の国民負担の増があったと言われている年でございます。その年に経済の内外の急変が起こりましたために、一貫した財政政策というものが事実上途中から不可能になったようなことでございました。  したがいまして、この年の当初予算税収見込みは五十七兆八千億でございますが、結果といたしましては五十三兆九千億になっておりまして、大幅な歳入欠陥を生じております。他方で、国債発行額は十八兆五千億でございますが、その上で決算上の不足が一兆六千億円余りございました。  この九年度という年は、御指摘のように、ただ決算不足があったばかりでなく、大幅な歳入欠陥を生じた年でございまして、八年度にもそういう傾向はございましたが、形の上でこれだけ九年度にいわば無残な財政の結果になりましたことは、これはかつてなかったような出来事であったというふうに考えております。
  8. 平田耕一

    平田耕一君 九年度が一兆六千億の歳入欠陥ということで御説明をいただいたわけでございますが、続きましてお尋ねいたしますと、十年度税収見積もりが当初予算に比較をして補正予算で八兆五千億減額という極めて厳しい状況になっているわけでありますが、十年度税収見通しにつきましてひとつ御見解をお尋ねしたいというふうに思うんです。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 十年度は三次まで補正をいたしまして、三次補正後の税収見積もりは五十兆二千億円でございます。当初は五十八兆五千億円を見込んでおりましたから、まことに大幅な歳入減を当初に比べますと見込むことになったわけでございます。  したがいまして、ただいまの平田委員のお尋ねは、この五十兆二千億円という補正後のターゲットが果たして実現可能であるかどうかということになるわけでございますが、この二月まで数字はわかっておりますが、二月まででございますと、普通、法人税申告所得税がそれから後の時期に収入の大きな部分で入ってくることもございまして、二月末の過去における進捗率は昨年あたりで申しますと、ほぼ七割というところでございます。  したがいまして、申告所得税は三月、四月に過去のウエートでございますと五八%が残っておる。それから、法人税は三月期決算法人が中心でございますから、五月に三七%余りが残っておる。こういう状況で、二月というのはほぼ繕いまして七割程度が、昨年もそうであったようですが、現在、進捗割合は七一・三でございます。この七一・三は、昨年度でございますと七二でございますから、まあまあ順調に進捗しておると申し上げてもよかろうと事務当局は申しております。  しかし、問題は、三割余りのものは残っておるわけでございますから、これからその動向というものが果たしてどうかということはただいま正確には申し上げかねておる。事務当局はここまでのところはほぼ税収動向の基調は余り狂っていないと申しておりますけれども、申告所得税はともかくといたしまして、法人決算動向などを見ておりますと、かなり今リストラの進行、あるいは雇用問題等々、大中法人、小もそうでございますが、思い切ってここでうみを出してしまおうという方針がかなり一般化しておるように思いますので、三月期の決算というのはしばらく前に考えたよりもあるいは悪いかもしれない、平田委員の御心配の点はそこらあたりではないか。  私も実はそういうことを心配しておる一人ですが、これは現実の問題としては、五月の連休の後ぐらいになりませんと実際のところはわからない。正直申しまして、最後にわかりますのが法人は六月の中ごろでございますので、なかなかわかりませんということを申し上げざるを得ないと思いますが、ただいままでのところは事務当局は予想されたラインに乗っておる、こう考えておるようでございます。
  10. 平田耕一

    平田耕一君 今、ようやく景気見通しといいますか予測も底を打ったかなという報道も出てくるようになっております。しかし、期末決算につきましては私も同じような懸念を持っておりまして心配しておりますけれども、今は次の景気浮揚に向けて一生懸命一丸となって景気浮揚に邁進するべきだというふうに思っておりますので、そういう点でひとつよろしく御指導をお願い申し上げたいというふうに思います。  では、実は私どもが平成七年に初めて議席をいただいたすぐの問題で住専という問題がございましたので、それに端を発して大きく不良債権という問題が実際には今日まで処理がまだ手つかずのような状況で国全体にあるわけなのですけれども、そのことでお伺いをしておきたいと思います。  八年度決算財政資金が六千八百五十億円ということでございまして、そのうちの六千八百億が住宅金融債権管理機構助成をされているわけでございます。これは当時も議論がありまして、この助成金はいわゆる住宅金融専門会社を整理する際に発生する一次損失だということでございまして、関係金融機関負担処理をする以外の部分処理に充てられたものであって、特定住専から譲り受けた債権回収額状況次第では二次損失が出るということでありましたが、それは含まれていないわけでございます。  会計検査院の八年度決算検査報告におきまして、譲り受け債権の中に取得金額を上回って回収されたものがある一方で二次損失発生をしていない、したがって損失補てん助成金は交付されていないということでございますが、これは今後もそういう傾向で続いていくものかどうか。九年度、十年度の譲り受け債権回収実績、そして二次損失発生の有無について大臣の御見解、お見通しをお伺いいたしたいというふうに思います。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府委員からお答えすることをお許しいただきたいと思います。
  12. 伏屋和彦

    政府委員伏屋和彦君) お答えさせていただきます。  今言われました先生の話で、住宅金融債権管理機構平成年度回収実績は六千四百五億円、平成年度回収実績は、二月末まででございますが、五千七百三十億円でございます。設立以来の回収実績累計は一兆四千八百九十一億円でございまして、これは譲り受け貸付債権総額四兆六千億円の約三二%に当たるわけでございます。  そこで、先ほども御指摘がありましたが、債権回収金額取得金価格を下回ったことなどによりまして生じますいわゆる二次損失の額は平成年度につきましては二百五十二億円でございました。なお、平成年度の二次損失につきましては、現在集計中でございます。  そこで、先生も言われましたとおりなのでございますが、住管機構におきます二次損失補てんにつきましては、昨年四月の住専法の一部改正によりまして、国庫納付または国庫補助の基準となる住管機構による譲り受け債権等回収に伴います利益または損失につきまして、それぞれ各事業年度の、先ほど御指摘がありました上回った場合の回収益と二次損失の二分の一相当額を相殺することとされているわけでございます。  その状況がどうなっているかということでございますが、八年度におきましては二次損失の二分の一相当額を超える回収額があったわけで、その差額が九年度に、約九億円でございますが、預金保険機構に、国庫に納入されております。九年度におきましても二次損失の二分の一相当額を超える回収益が見込まれるものでございますので、したがってこれは国庫補助の要件は満たさない見込み、むしろ国庫納付可能性があるということで、十年度は先ほど申し上げましたようにまだ集計中ということでございます。
  13. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございます。  不良債権は、住専ばかりではなく、今日、金融機関全般の問題となっているわけでございます。去る一日に、さきに申し上げました破綻金融機関不良債権の買い取り、債権回収を行う整理回収機構が発足しておるわけでございますが、そのうち、破綻金融機関全般不良債権処理について公的資金との関連も含めてお伺いをいたしたいというふうに思うんです。  まず一つに、整理回収銀行住専管理機構より債権回収実績が上がっていない、もちろん不良債権がどうなのか質の問題もあると思いますけれども、上がっていないように聞いているわけでございますが、両者の十年度までの回収実績を比較していただきましてどんな差が生じているか、原因対策等を御説明いただきたいというふうに思います。  二つ目に、こういう回収事情を踏まえまして、整理回収銀行財務が厳しくなっているわけでございますが、八年度以降の欠損金動向、そして回収機構への移行に伴いまして欠損金が整理されることになると思うわけでございますが、公的な資金も投入されております預金保険機構や日銀の財務にどのような影響があるのか、概観を大蔵省金融再生委員会にお伺いいたしたいというふうに思います。
  14. 伏屋和彦

    政府委員伏屋和彦君) お答えいたします。  御質問の整理回収銀行住管機構の十一年二月、最新時点の二月末までの回収実績でございますが、整理回収銀行は二千六百五十七億円、住管機構が先ほど言いました一兆四千八百九十一億円となっております。これを譲り受け債権総額、いわゆる簿価に対する比率で回収率を見てみますと、これはちょっと注意をして聞いていただかなければならないと思うんですが、十一年二月末現在で単純に計算いたしますと、整理回収銀行が一一・六%、住管機構が三二・七%という数字になっております。  ただ、先ほど先生が言われました原因ということで言いますと、この回収実績に差が生じておりますのは、住管機構は八年七月に設立されまして、四兆六千億円の債権をその当時一括して譲り受けて、その後回収に励んでいただいているわけでございます。他方整理回収銀行金融機関が破綻した都度債権を譲り受けておりまして、したがって平成七年以来、現に最近では十一年の、ことしの一月にも破綻した金融機関につきまして債権を譲り受けたわけでございます。そういう意味では、回収期間におのずと差があるものですから、このような数字の差が出ているかと思います。  ちなみに、住管機構は三年目に入っておりますけれども、さっきの三二%でございますが、整理回収銀行につきまして譲り受け後一年以上経過した債権について計算いたしますと、おおむね三〇%という数字が出ております。  そういうことで、一つはやはり回収期間に大きな原因があると思いますので、今後、先ほど先生が言われました、両社の合併によりまして発足しました整理回収機構が一体となって不良債権の早期かつ効率的な回収が行われるものと期待しております。  それから、もう一つの整理回収銀行財務状況でございますが、整理回収銀行財務状況は、平成年度決算で五百八十六億円、九年度には拡大いたしまして九百六十億円、十年度中間決算では千百億円の欠損金が出ております。これらは整理回収銀行が承継しました貸出債権が劣化しておるとか、地価の下落だとか、貸出先の企業の信用・財務状況の劣化が不可避であった等の事情が存在していると思われます。  なお、昨年の秋の国会におきまして与野党間の合意がありまして、住宅金融債権管理機構整理回収銀行が合併することになって、法律で定められておりまして、この三月に預金保険機構整理回収銀行の株式を時価で買い取ったところでございます。そのときの買い取り価格は一株当たり額面五万円に対して八千八百七十二円となっておりまして、五万円に対して八千八百七十二円でございますので、その分は含み損を抱えることになるわけでございます。
  15. 森昭治

    政府委員(森昭治君) お答え申し上げます。  金融再生委員会にもということでございますので、一言お答えさせていただきます。  整理回収銀行住管機構との回収率の差及び整理回収銀行欠損金の及ぼす影響につきましては、ただいまの大蔵省見解と同一の見解を有しているものでございます。  ただ、一つ、整理回収機構に四月一日から移りました際に、金融再生法のもとで整理回収機構にもう一つの役割が加わることになりました。すなわち、一般の金融機関からも不良債権を買い取ることが可能になりました。こうした資産買い取り制度を活用することで金融機関不良債権を資産から切り離す、すなわち不良債権の最終処理を行いまして、整理回収機構によりそうした不良債権につきまして回収のノウハウや罰則つきの調査権を活用いたしまして積極的な回収が行われることにより、金融システムの安定化が一層図られることを期待しているものでございます。
  16. 平田耕一

    平田耕一君 ちょっとその前の御答弁で、五万円の株を八千何がしで購入して、どこがどこに対して含み損を持ったのか、ちょっとそこだけ確認をさせていただきたいと思います。
  17. 伏屋和彦

    政府委員伏屋和彦君) 先生の今言われました点は、預金保険機構が保有しておりました千二百億円の整理回収銀行の株式につきまして、これは額面五万円に対して八千八百七十二円でございますので、引き続き整理回収機構の株式として預金保険機構が保有することとなるわけでございますが、今言いましたように実質的に額面との差額分の損失預金保険機構が抱える状態になるということでございます。
  18. 平田耕一

    平田耕一君 わかりました。不良債権につきましてはそこまでにいたします。  政府系金融機関不良債権も民間レベルの不良債権公表基準に近づけるべきであるという意見があって、六年度検査報告で報告をされているわけですが、そのことにつきまして会計検査院の御見解をお伺いしておきたいというふうに思います。
  19. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答えいたします。  私ども会計検査院では、従来から政府関係機関あるいはその他の団体につきまして、その収入支出決算、損益等はもちろんのこと、延滞債権にも注目して検査を行ってきているところでございます。その結果、決算検査報告におきまして政府出資の状況あるいは延滞債権等状況につきまして記述しているところでございますが、この延滞債権額につきましては、現在、弁済期限を六カ月以上経過して延滞となっている貸し付けの元金残高を検査報告に記述しておりまして、政府関係機関等の報告に基づいてこの数値は作成したものでございます。  会計検査院といたしましては、今後の民間レベルの不良債権の開示基準の動向などを十分に把握いたしました上で、政府系金融機関の延滞債権の開示の今後のあり方につきまして検討いたしまして、監督当局あるいは個別の政府系金融機関とも十分に協議をいたしまして、決算状況についての情報開示に努めてまいりたいと考えております。
  20. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございました。  官房長官がお見えでございますので、移りまして、決算審査の充実につきましてお尋ねをしておきたいというふうに思います。  斎藤議長の諮問機関でございます参議院制度改革検討会の報告を受けまして、我が党を初め各派の積極的な取り組みも相まって、昨年一月召集の百四十二回国会から常任委員会の再編、行政監視委員会の新設、押しボタン方式の導入が行われまして参議院改革の実績を上げつつあるわけでございますが、決算審査の充実につきましては、決算の早期提出、それから懸案の検査官任命同意に関する衆議院優越規定の削除など、決算審査をめぐる法制度的な問題はいまだに解決しておらないわけでございます。そこで我が党は、昨年九月に鎌田先生委員長にいたしまして参議院改革に関する委員会を設置し、当面は決算審査の充実を中心に議論を深めてまいったわけでございます。  ここで、残されております検査官任命同意に関する衆議院の優越規定について官房長官にお尋ねをしたいというふうに思うわけでありますが、この問題につきましては、過去に当決算委員会で計四回の質疑があったわけでありまして、特に平成九年一月の野沢決算委員長質疑に対しまして、橋本総理でございますが、決算委員を代表する意見として重く受けとめるという旨の答弁がございますし、また同年の五月と九月には、梶山先生から官房長官というお立場で前向きな発言があったわけでございます。  この問題に対しまして、野中官房長官のお考えと御認識、またできましたらこれまでの答弁の御確認も含めて御見解をお尋ねしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
  21. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 参議院におかれましては、参議院制度の改革のために非常に熱心にお取り組みをいただき着実な実績を上げていただいておることを私どもも議会政治の活性化の上で非常に重く受けとめ、今御発言のございました会計検査院の衆議院優位の問題につきましては、御指摘ございましたように、平成九年一月の野沢決算委員長の質問に対しまして橋本前総理がそれを重く受けとめるという答弁をいたしております。その後、それぞれ関係の皆さん方の御指摘に対し、梶山官房長官も誠意ある対応を、答弁をさせていただいてきておる経過は今御指摘をいただいたとおりでございます。  そもそもこの問題は昭和二十三年ですか、それぞれ公取、人事院等の問題は、旧憲法下における衆議院優位の取り扱いを訂正されたにもかかわりませず、会計検査院の欠員についてはそのまま改正されることなく推移をしてきたような状態を私も認識したわけでございます。今後の決算審査のあり方につきまして、十分御指摘をいただいた点を踏まえながら、私どもといたしましても、当時の橋本内閣総理大臣あるいは梶山官房長官が答弁をいたしておりますとおりに、基本的には立法政策にかかわる問題であると考えておるところでございますが、平成九年三月、参議院の下稲葉議運委員長から政府に協力を要請する事項といたしまして、検査官の任命同意に関する会計検査院法の改正という要請があったわけでございまして、これは政府に対して同様、衆議院に対しても同様の要請がされたと聞いております。  本件につきまして、衆参で十分打ち合わせをいたしまして対処されるべき問題と考えておりますが、いずれにいたしましても、梶山官房長官といたされましても議運委員長にこの旨を伝える旨答弁をされておりますので、私も衆議院とも十分協議をして対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  22. 平田耕一

    平田耕一君 官房長官、ありがとうございました。ぜひひとつ、その検査官の任命同意に関する衆議院優越規定とそしてまたやっぱり大きな問題であります決算の早期提出が実現しますように強く要望をいたしまして、その関連は終わらせていただきたいと思います。  次に、ちょっと話が変わりますが、中小企業対策についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  皆さんもう御承知でありますけれども、なおかつ中小企業というのは大変苦しいわけでございまして、貸し渋りというのが厳然としてたくさんあるわけで、自分自身もたくさん、前にも申し上げましたが、自分で相談を受けた件数が地元で百社を超えて、いろいろなところへお願いをしているわけでありますが、今なお厳しいものがあるというわけでありまして、そのことにつきまして通産なり中小企業庁なりに御見解を賜ればと思います。
  23. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 中小企業をめぐります貸し渋りの状況というのは、一昨年の末から大変厳しい状況が続いてきております。  ただ、昨今の倒産状況を見ますと、昨年の十一月以降、倒産件数が大幅に減少しているところであります。昨年十月一日以来実施をいたしております貸し渋り対応特別保証制度を初めとする各種の貸し渋り対策に一定の効果があったものと考えております。  私ども、毎月約四千社以上の中小企業に関しまして調査を行っております。その結果を申し上げますと、いわゆる貸し渋りを受けている中小企業の割合は、昨年の十一月以降、本特別保証制度の実行の効果等もありまして、わずかながらでありますが五カ月連続減少しておりまして改善の兆しが見られます。ただ、依然としてそのレベルは三割近くの中小企業の方々が貸し渋りを受けておられるということでございまして、中小企業への貸し渋りの状況というのは依然厳しいものがあると認識をいたしております。
  24. 平田耕一

    平田耕一君 一遍に御答弁いただいてもよかったんですが、その特別保証制度の具体的な消化枠と、それで足りるか足りないか、追加が必要であればどうされるのか。  それから、これはちょっとおわかりになりますのでお尋ねをいたしますが、本当に必要な運転資金として特別保証枠のお金も行っておりますが、間もなくそれぞれの借入会社が五年という短期で返済が始まりますので、月々の返済という計画返済的借り入れにふさわしくない借入制度を特別保証枠で設定したということでありますが、その辺のミスマッチといいますか、要するに特別保証枠の消化の度合いと追加の枠と、それからその特別保証の性格といいますか貸し付けの性格につきまして、今後、例えば通常の運転資金のように借りかえ資金のような形の要望が相次ぐし、そういう対応をしなければ本当に多くの中小企業が困るだろうというふうに思うんですが、それにつきましての御見解ということで三点お尋ねをしたいと思います。
  25. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 三点御質問をいただきました。  第一点の貸し渋り保証制度の実績でございますが、制度発足以来六カ月を経過しました先月末までの保証承諾の実績というのは、件数で約七十五万四千件ございます。金額にいたしまして約十四兆四千億円ということで、中小事業所の十社に一社あるいは中小企業者の六社に一社ぐらいが利用されているという結果になっていると思います。  枠の追加の話でございますが、残り約五兆五千億円ぐらい残っておるわけでございますが、最近の月別の実行率というのは約一兆円弱程度になっておりますので、今後五カ月強はもつのではないかと、単純な計算ではそういう見込みを出しております。  ただ、先般、総理の御指示もございまして、この二十兆円の枠につきましては、制度自身が来年の三月まで有効期間がございますので、不足することが必定ではなかろうかという前提に立ちまして、必要な額を必要な時期に適宜適切に追加をするという意図表明をいただいております。今後とも、中小企業者の資金需要の動向とかあるいは本制度の利用状況を見ながら、機を見て適切に対応していきたいと考えております。  最後の御質問にございました保証の期間の問題でございますが、設備資金については七年の融資に保証をつけまして、委員指摘の運転資金については五年物についての保証ということになっております。うち据置期間が一年間ということになっておりますので、昨年の十月に保証を受けました運転資金融資につきましては、元本の返済はこの秋ぐらいから始まるということでございます。  これについてはいろいろな対応が考えられますが、基本的に政府関係金融機関の融資と同じように、個別の中小企業者の資金繰り、返済能力を見ながら個別に返済猶予等の措置をとるべく昨年末以来各機関に指示をいたしておりますので、同じラインに沿って個別の事情を見ながら判断していくということになろうかと思います。
  26. 平田耕一

    平田耕一君 おっしゃるとおり、個別の対応しか仕方がないと思いますので、よろしくどうぞひとつお願い申し上げたいと思います。  金融上の対策は別にしまして、中小企業に対しまして、ベンチャー企業に対しての助成制度というのは随分あるわけでありますけれども、既存のいわゆる従来型の業種の中小企業への支援策というもの、これは業種そのものに対するいろんな考え方があると思いますけれども、日本が中小企業立国であるということは現実でございますが、既存の業種の中小企業への支援策につきまして大まかな考え方をお伺いしておきたいというふうに思います。
  27. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 委員指摘のように、ベンチャー対策あるいは新規開業対策という点につきましては、さきの臨時国会でも新事業創出促進法という法律をつくらせていただきまして、その中で各種の新規開業、ベンチャー対策をやらせていただいております。  本通常国会におきましては、そのベンチャー対策も必要でありますが、既存の中小企業の方々の活性化というのも当然大きな意味を持っているわけでございますので、去る三月二十四日に中小企業経営革新支援法という法律をつくらせていただきました。これは、従来からございます業種別の中小企業一般対策であります中小企業近代化促進法とかあるいは新分野進出円滑化促進法、そういった法律を発展的に解消いたしまして、具体的に経営革新法の物の考え方といたしましては、業種もすべての業種を対象にできる、また組合にとどまらず、個別の中小企業あるいは組合形態をとらない任意の企業連携グループというものも助成の対象にできるというような仕組みにいたしまして、各般の経営の向上を図る中小企業者に向けまして、金融信用補完、税あるいは一般会計から補助金等々の助成措置を用意してございます。  本年七月の施行に向けて鋭意準備を進めておりますが、この法律に代表されますように、既存の中小企業の方々の経営革新ということについても今後とも意を用いていきたいと考えております。
  28. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございました。中小企業関連は以上にします。  公共事業についてお尋ねをしておきたいと思います。  平成年度よりダム事業等の見直しを進められまして、十年度から公共事業の再評価システムを導入してダム事業につきましても一定の見解を出された、こういうことでございますが、そのこととあわせて、利水、治水等においての国民のニーズというものについてどのように今後新規事業に反映させるのかの御見解を建設省にお伺いしたいというふうに思います。
  29. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 委員指摘のように、ダム事業の見直しにつきましては、平成年度より、当該事業の目的とか内容につきまして地域の意見を的確に聴取することを目的に、十四事業についてのダム事業等審議委員会を進めてまいっておりますし、平成年度からは事業再評価システムを建設省全体の事業に対して導入しているところでございます。  そういうようなことによりまして、平成年度要求では、稲戸井調節池総合開発などの四事業を中止いたしまして、白老ダム事業等の三事業を休止にいたしました。また、平成年度要求では、日野沢ダム等六事業を中止いたしまして、矢田ダム等十二事業を休止いたしております。そして、平成十一年度要求では、丸森ダム等の七事業を中止いたしまして、江戸川総合開発等十二事業を休止してきたところでございます。  そういうようなことで、ずっとダムにつきましては見直し等々も行っておるわけでございますが、現在、ダムの事業を実施中でございますのが全国で三百三十六ございます。ございますが、この三百三十六の大部分が、治水、利水対策の推進ということで地元の方より大変強い促進の要望が出てきているのが現状でございます。  ですから、平成年度から十一年度までの間で、それまでに十年たっても全然進んでいないとか、そういうものが結局洗い直されて中止になってきたということでございますので、今後は私はそう大きな中止のダムであるとか休止のダムというものは出てこないのではないかなと思うわけでございまして、平成年度から十一年度の間に、今までいろいろな周辺環境あるいは状況の変化でなかなか進めることが難しかった、促進していくことができなかったダムというのは一応そこでスクリーニングされたといいましょうか、洗い直されたものと思っておるわけでございます。  ただ、しかし今後とも新しい事業採択後におきましても必要に応じて再評価というものは行いつつ、適時に実施をしていきたい、そのように考えております。
  30. 平田耕一

    平田耕一君 農水省にも聞いておきたいと思います。  三重県の木曽岬干拓、地元でありますけれども、そのことにつきまして、地元の意向もあると思いますけれども、農業用地でありますのでやっぱり農業をやるべきだなと思っているんですが、農水省の御見解大臣からお伺いしたいというふうに思います。
  31. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生指摘の木曽岬干拓事業につきましては、平成八年九月にいわゆる県境問題が解決をいたしまして、また社会情勢の変化を踏まえまして、土地利用計画の早期作成に向けて検討してまいりました。  県民の皆さんの御理解、あるいはまた民間専門的立場からの御意見を踏まえて、どういう利用方法がいいのかということで木曽岬干拓地土地利用検討委員会というものを設置し、過去四回御議論をいただいたわけであります。土地利用の基本的な考え方、あるいは現状の地盤高を前提とした当面の利用計画案について検討を加え、今後、盛り土を前提といたしました将来の高度利用について議論を進めることとし、早急に第五回の委員会が開催されるということが確定をし、そして土地利用計画案を策定していくこととしております。  農林水産省といたしましては、両県に早期決着するよう強く要請、指導してまいりたいと考えております。
  32. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございました。  参議院らしく上品にやると以上で終わりでございます。ちょっと早いんですが、終わらせていただきます。
  33. 水島裕

    ○水島裕君 自民党の水島でございます。  決算委員会の趣旨に合う範囲で、せっかくですから私の専門を生かして御質問させていただきたいと思います。  テーマは、主として研究開発関係の予算決算ということで、なぜこれを取り上げるかと申しますと、専門に近いこともございますが、額としてもこれは非常に大きくなってきたということ、それから今の日本を救うためには科学技術におけるジャンプがぜひ必要だということであります。  趣旨は、額は大きくなってきたんですけれども、果たして研究開発関連の予算というものが使いやすいようになっているか、適切に使われているか、必要なところに行っているかということを取り上げていきたいと思います。  と申しますのは、建築、道路工事、ほかの分野は余り言うのもあれですけれども、と違いまして、研究というのはやってもゼロということがしばしばあるわけでございますので、研究費の予算をつけると同時にそれを上手に運営する、そのための環境をつくるということが極めて大切だからでございます。  そのことは、もう皆様御存じのように、日本の戦後の復興が、自動車、家電、それから精密機械、エレクトロニクス、こういうことによって日本が繁栄したわけでございますので、二十一世紀は、ほかのものもございますけれども、やはりこれからはバイオで、ライフサイエンスで国を立てていかなくちゃいけないというのも一つのねらいでございます。  まず最初は、年間でこういう科学技術研究関連の予算の総額がどうなっているか、それからバイオ、ライフサイエンスに関してパーセントはどのくらいか、アメリカ、イギリスあたりと比較していかがかということを御質問させていただきます。
  34. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 平成十一年度の政府予算案で、科学技術関係経費というのが約三兆一千五百億円でございまして、前年度は約三兆三百億円でございますので、伸び率で約四・一%の増でございます。  なお、ライフ関係につきましては、ちょっと別途説明させていただきます。
  35. 池田要

    政府委員(池田要君) ライフサイエンス関係につきましての政府におきます研究費でございますけれども、関係各省の経費を合わせますと、平成十一年度予算におきましては約二千百十六億円余りでございます。  以上でございます。
  36. 水島裕

    ○水島裕君 その詳しい計算の根拠ということについてはきょうはお尋ねいたしません。科学技術基本法からいきますと、その三兆何がしというのは当然でございますけれども、私は大体その三分の一ぐらいはライフサイエンス、バイオ関係に使われているんじゃないかと思いますので、今の御答弁はちょっと何か計算がおかしいと思いますけれども、それでも私は日本の場合は少ないと思うんです。  例えば米国を例にとりますと、これは戦争、そういうのがなくなってからということもあるでしょうけれども、NIHの予算が圧倒的に一番多いわけですね。NIHはバイオ、ライフサイエンスの研究費を主として出すところでございますので、アメリカではそれが一番大きくて、これからのアメリカの科学、経済もそれをにらんでいるということでございますから、日本もぜひ内閣を挙げてそういうことを考えていただきたいと思います。  きょうの趣旨の、使い方というわけですけれども、その前に、日本の研究開発というものにどこが問題点があるかということを私なりに考えて申し上げますと、そういう研究開発というのは一つのリング、輪だと考えますと、日本は大きく三つ欠落している。欠落と言うとちょっと大げさですけれども、かなり弱いところがある。  一つが、本当の根幹となる発明、発見がない。もちろんモデルチェンジとかそういうのは非常に上手ですけれども、物すごい根幹となるものが特にバイオの関係では少ないというのが一つ。  それからもう一つは、あるそういう事実が見つかったときにそれを大きな研究、大きな企業に渡す間のところが欠落している。これは何かというとベンチャーでございます。ですから、外国で言うベンチャーの仕事をするところが日本はない、それで全体がうまくいかない。  それから三番目は、仮にバイオ関係の半分ぐらいの目標が医療のためだとしますと、そのものは最終出口は臨床の研究をしなければいけないわけでございます。ところが、日本はその臨床研究が今非常にやりにくくなっている、あるいはおくれている状態であります。  ですから、この三つを政府として国として対策を立てない限りは、一生懸命科学技術基本法に基づいて研究費を出しても進んでいかない、むだに使っているということになりますので、これは予算をつけると同じように重要なことでございます。  そういう私の意見についても御答弁いただければ、特に有馬大臣は私どもと同じ学者の出でいらっしゃいますからきっと同じような見識をお持ちだと思いますけれども、そのことについても御回答をいただきたいのでございます。  一つ一つ申し上げますと、まずは人件費ですね。特にバイオ、ライフサイエンスの研究、特に臨床がかった研究にしますと、これは人が一番大切、人がいなくてはいけない。ところが、一般的に日本の研究費から人件費というのは非常に使いにくい。枠が決まっているとか融通ができないとか、それから定員枠の職員の給料には回せないとか、いろんなことがございます。  一つの例を申し上げますと、私の知っている大学なんかでも、セルソーターという細胞を分ける一つ一億円ぐらいする機械でございますけれども、それを入れるけれどもそれを管理する人のお金がつかないので結局使われていない。そのうち研究費が当たったからといってまた買ったりなんかして、三つや四つあるけれども実際に稼働していないというようなばかげたこともあるわけなのでございます。  ですから、二つに分けて質問をさせていただくと、一つは人件費をもっと認めるような方向にする、それからもう一つは実際に今働いている人の給料の一部も研究費で賄うようにする、ちょっと難しいかもしれませんけれども。研究をしている人は研究費もとれるわけでございますから、いい研究をすればお金は入ってくるのでありますので、それを自分の給料とか何かに使うと、いい仕事をする人は給料はどんどんふえる。それから逆に、いい仕事をしない人は給料が、研究費が入ってこないものですから研究者としてはもう食べられなくなってしまうというぐらいの競争心をつけないといけないんじゃないかと思いますので、主としてその二点について御意見をいただきたいと思います。
  37. 田中徳夫

    政府委員(田中徳夫君) 私の方から先に、人にかかわります予算についてお答え申し上げたいと思います。  人への投資あるいは予算の額が大変大事なことと認識しております。  まず第一に、研究者の方々の処遇の改善が当然基本でございます。それからまた、すぐれた若手研究者の方を育成するための制度というのがございます。いわゆるポストドクター一万人計画ということを関係省庁が一緒になって始めておりまして、これは平成十一年度で一万百八十七人ということで、予算的にはこれが達成されることになっております。  また、人ということで、国立試験研究機関でいわゆる研究支援体制を整えるということが大事かと思います。  一つには、重点研究支援協力員制度というものを拡充して、研究内容に合わせた研究支援者を確保しているところでございますし、あるいはいわゆる人当研究費で実験補助者等の費用も確保しております。また、平成八年十二月に、労働者派遣事業法の政令改正によりまして研究関係の技術者の積極的な活用が可能なようになったわけでございます。  それから、御指摘の第二点目にかかわるところでございますけれども、いわゆる研究費の中にいろいろ人件費等を自由に使える予算ということで、例えば科学技術振興事業団で行っております戦略的基礎研究推進事業でございますけれども、これは新しい技術あるいは新産業創出を目指して行っておりまして、平成年度に発足いたしました。これは、研究代表者がみずからの研究構想を実現するために必要な研究チームを編成いたします。そこにお金を渡しますので、かなりいろいろな、人件費関係も自由度を持ったあるいは柔軟な対応が可能になってきておるわけでございますが、こうした費用につきましてもできるだけ拡充していきたいと思っております。
  38. 水島裕

    ○水島裕君 各論の方に進んでしまいましたけれども、私も人件費が使えるようにだんだんいい方向に進んでいるというのはよくわかっております。特に、文部省は去年法律を出されまして、研究費、謝金、それから旅費、こういうのをどういうふうに移行してもいいと、後で出てまいりますけれども、いろいろなっておりますので、各省庁も大切な人件費を研究費の中からもっと出せるように工夫していただきたいと思います。  もちろん、研究する側も、人件費としてもらったものを余り働いてもいない人に渡してしまうとか、営利のみで行っている民間の企業の手伝いにそういうお金を使うとか、そういうことは決してあってはいけないわけでございますので、それは研究する側も十分注意しなくちゃいけないことでございますけれども、やはり大切なのは人で、その人に研究費が使えないというのはぐあいが悪いわけであります。  このことについてもう少しお尋ねしたいわけですけれども、その前に、せっかくこれの関連の文部、科学技術、厚生と通産の大臣が来ていらっしゃいますので、あるいはお答えいただく予定になっていないとは思いますけれども、日本の研究開発というのに大きなそういう問題点があるということについて、もし御意見があったらお聞かせいただければ幸いでございます。
  39. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 科学及び技術の発展の上での三つの問題をおっしゃっておられました。特にバイオをお取り上げになって、根幹となる発明、発見が少ない。それから、それを企業化していく上での努力が足りない、特にベンチャー的な起業的な考えが弱い。それから、医学で言うと臨床医学が弱いと、これは全く同感でございます。  そこで、今この根幹となる発明、発見が少ないという問題でございますが、私はやっぱり戦前と戦後で随分違っている。戦前の方がむしろあった。ですから、戦後の考え方、科学や技術に携わる人々の考え方を根本的に変えていかなければならないと考えております。  そういう意味では、文部にしても科学技術庁にいたしましても通産にいたしましても、技術移転ということに対して今非常に熱心になっておりますので、そういう意味では第二番目の問題、起業を促進していくという点では今後大いに改善されるだろうと思っております。  それから、私が一番心配していることの一つをおっしゃられた。それは研究を維持していく上で必要な補助者、技術を援助してくれる人々のことを御指摘になっておられました。この点私は非常に頭が痛いことでございまして、どういうふうに人件費をそういう人たちに向けるようにできるか、これは大変難しい問題でございまして、一方では定員削減のようなことがございますので、さらにこの問題は厳しくなっていくだろうと思います。  したがいまして、いろんな方法で技術を支援してくれる人々をふやすというふうな方向に向けて努力をしていかなければならないと思っております。
  40. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生の御指摘の特に三点目でございますか、医療の臨床実験を重視すべきだという意見は同感でございます。医学の場合には基礎医学と臨床と両方あると思いますけれども、人間の病気というものがいろいろ進んでくるといいますか新しい分野がどんどん出て、感染症その他が出てまいりますから、臨床というのはかなり力を入れていかなくてはいけないと思います。  しかし、同時に基礎医学の方もやっぱりこれを軽視してはならないわけでございまして、両々相まって医学の進歩に寄与するのではないかなというような感じを持たさせていただきました。
  41. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 私も先生と全く同意見でございまして、いろんな技術分野で発展する可能性のある分野はあるわけですが、中でもバイオは非常に将来有望であると思っております。バイオについては、アメリカが日本を大分リードしておりますが、これに追いつく方法というのはわかっているわけですから、ここに人と資金をつぎ込めばいずれは日本は相当のレベルまで行ける分野だと私は思っております。  したがいまして、通産省でも、昨年十二月にお認めいただいた補正予算の中には、バイオ関係の予算も相当重点的に確保してございます。ただ、通産省だけでこういうことをやっていけるのかといえば、それは厚生省とか農水省、文部省、科学技術庁、こういう五つの役所がきちんと手分けをして、ある一定の方向にバイオ研究をどんどん進めていく、そういう体制も一方では必要であると思っております。
  42. 水島裕

    ○水島裕君 日本の科学技術のレベルは非常に高いわけですね。それで、経済的にもまだ実力はあるわけでございます。  それで、文部、科学、厚生、通産、これの関係の大臣が、私の言ったことにほぼ同意見だ、しっかりやらなくちゃということになっているわけでございますから、絶対これはうまくいかせなくてはいけないわけでございます。  ところが、やはり問題点は、これからも申し上げますように非常に多いわけでございます。何でも説明伺いますので、ぜひこれは日本のために解決していただきたいと思います。  今、有馬文部大臣から人件費はなかなか難しいというお話で、これは確かに難しいんですけれども、アメリカの例を申しますと、例えば研究をしている医療機関の手伝いをする、我々クリニカル・リサーチ・コーディネーター、CRCと言っておりますけれども、その人の給料がどういうふうに出ているかというのは本人たちも知っているんです。ある病院に属している、私の給料が仮に一年で五百万円とすると、二百万円は病院からもらっている、それから百万円は国のNIHから来ている、それから二百万円は今実際に研究をやっている会社の方から来ているというふうになっているわけでございます。ですから、そういう研究ができなかったりちゃんとアピールしてそういう研究が来なかったりすると、その人は二百万円で一年過ごさなくちゃいけないということになっているわけであります。  日本はどうかというと、研究してもしなくても五百万円、五百万円はちょっと安いかもしれませんが五百万円来るわけでございますから、なるだけ危なっかしいことなんかはしないでおいても五百万円来て、遊んでいても五百万円くれるという状態で、これはどっちの国が勝つかといったらわかり切っているわけでございます。アメリカは何も五百万円以上もらったって構わない、仕事をたくさんすればいいわけでございます。日本も直ちにそういうところに行けるというのはなかなか難しいと思いますけれども、やはり方向はそういう方向を考えて、ぜひ検討していただきたいと思います。  与謝野通産大臣は、四月三日の日経の朝刊を見ますと、理系の大学教授、助教授は会社のいろんなものを兼ねてやるのも非常にメリットになるんじゃないかというようなことが出ておりますけれども、そういうことを基本にして全体をよく考えていただくといいんじゃないか、そういうふうに思います。  それでは次に進みまして、研究費の融通が日本はうまくいかないというので、文部省は昨年も法律をつくって融通できるようにいたしましたし、それから、これまでほとんど使えなかった外国に行く旅費、つまり今は国際性が非常に出てきましたので、いろんなことを研究しているとちょっと外国へ行って相談してすぐ帰ってくる。私もそういう研究活動をやっていたときは年に四、五回ぐらい行って相談して帰ってきたこともございますけれども、そういう費用に研究費は一切使えなかったのが今度使えるようになったというようなことでございますので、その辺も含めて文部省からお答えしていただければと思います。
  43. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 文部省で、大学の基礎研究、いわば研究者の方々のボトムアップの研究を振興する中心的な経費として科学研究費補助金があるわけでございます。おかげさまでいろんな方々の御支援をいただきまして毎年増強させていただいているわけでございます。  この科研費につきましては、できるだけ研究者の方々の使い勝手がいいようにということで年々改善してきてございまして、ただいまお話のございました外国旅費の関係につきましては、これまで研究種目で国際学術研究という分野につきましては外国旅費に特化してかなり自由な使用を認めていたわけでございますが、先般御審議いただきました十一年度予算案に当たりまして、十一年度からすべての種目について、研究に付随する外国との行き来等に必要な経費については研究の必要性に照らしまして自由に御使用していただけるようにしてございます。  そのほか、御案内のとおり、出資金を活用いたしました未来開拓学術研究推進事業という事業も学術振興会で行ってございますけれども、これにつきましても外国旅費について特に制限なく御使用いただくような仕組みにしてございます。
  44. 水島裕

    ○水島裕君 誤解があるといけませんが、そういうふうにいろいろ融通していただいたときは研究者側もきちっとしなくちゃいけない、それからやはり最終的には研究の評価をきちっとやるということがあくまでも条件ということでございます。  文部省も、数年前、私が少なくとも議員になる前はどうも本当に頭のかたい省で困ったものだという感覚はあったのですけれども、ここ数年はとてもそういう点ではいい意味での改革をやっていただきまして、きょうの趣旨は、文部省に倣って科学技術庁、厚生省、それから通産省はそれほどあれでしょうけれども通産省、いろいろ研究費の変な決まりみたいなものを取るように、ひとつ下の方に相談するように命令していただきたいというのがきょうの大きな趣旨の一つでございますので、よろしくお願いいたします。  例えば、厚生省を一つ例にとりますと、私どもの大学でも臨床研究を行う、先ほどのCRCというのを十人ぐらい雇っているわけなんです。それは大学として雇っているんです。でも、その給料は、いろいろ仕事を頼まれた会社とか何かから、その仕事をするわけですから、そのための給料を大学に入れて、その大学からその人たちの給料を半分ぐらいとか出しているわけなんです。  ところが、厚生省の研究班、いろいろございますけれども、今やっておりますのは難病の研究班で、例えばこの薬とこの薬のどっちがいいかというのを国でも評価したいからということで、国としてそういう研究を今やっているわけです。それを私の関連する大学でやっている。ところが、先ほどの臨床研究を手伝う人、CRCの給料にはそれは使っちゃいけませんと。もうすごくおかしいんです。そのために雇っている人、それで厚生省の研究テーマが全くそれと同じなんです。そのための研究、その人たちが働く研究を厚生省が依頼なさって、それをやっているわけでございますので、その人たちは厚生省の仕事のために働いているわけなんです。ところが、その人たちの給料には厚生省の研究費は使ってはいけませんと。もう明らかにおかしいんです。  おかしいところがあちこちにありますもので、細かく出せと言われればお出しいたしますので、ぜひ少しずつでもいい方向に直していただきたい、そういうふうに思います。  それから次が、ベンチャーのことに入ります前に、もう一つそれと関連する研究費に関して、もちろん基礎研究で真実を見つけるとかそういう研究も大切だし、先ほど厚生大臣が言われたように、それが将来また実用化に役立つこともございますけれども、でも多くの研究はやはり実用化のため、人類の役に立つように、それから日本の産業のためになるようにということでございますので、ある程度の研究ができたらこれは特許をとっていなくちゃいけないわけです。  ところが、今は、私どもみたいにそういうことになれている人は特許をとりますけれども、よくわからない人は特許をとらない。それでは、だれかが、じゃ研究費で特許の費用を出していいかと言ったら、それは出しちゃいけない。研究費から特許の費用とか何かを出しちゃいけない。日本は二、三十万円ぐらいでできますけれども、外国の特許というのは五、六百万円ぐらいないと特許を出せませんし維持もできないので、そういうのは研究費から出せない。  ですから、研究費から出せるようにするのも一つの手ですけれども、最近はそれにかわるいろんなシステムがあると聞いておりますので、そのことについて易しく御答弁していただければと思います。
  45. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 国立大学の研究者の場合は、まさに先生御存じのとおり基礎研究でございますので、必ずしも実用なり特許を目的として行っている研究というわけではないものが多いのでございますが、昨年国会で御審議いただきまして、TLOと称してございますけれども、大学等の研究成果を技術移転するための特別の仕組みをつくらせていただきました。  通産省と協力して行わせていただいているのでございますけれども、昨年末に既に認定のTLO機関四機関が東大初めつくられてございまして、今まで大学の研究が必ずしも技術移転されていない原因は幾つかございますけれども、一つには大学の先生方の特許マインドと言いましょうか、意識の問題がございました。それからもう一つには大学の研究成果が世の中に見えにくいということもございましたので、せっかくお認めいただきましたこの仕組みを活用いたしまして、大学の成果がうまく民間企業に伝わりますように、しかもその特許等を初めとするいろんな手続や御相談でございますとか、あるいは仮にうまく収入が上がりましたときにそれを大学等に研究費として還元するような仕組みで、私どもこのTLO機関を通産省等関係機関と御相談しながら育てていきたいと思うわけでございます。  他方で、いろんな大学の成果がございますけれども、予期せぬといいましょうか、たまたま目ざとい企業等がありますとうまく実用化につながるわけでございます。こういう例でいいのかどうかはありますけれども、先ごろお亡くなりになりましたが、ノーベル賞をもらわれました福井謙一先生、化学の分野での純粋の基礎研究の研究者でございますけれども、御本人が意図したとは思いませんけれども、たまたま福井先生の研究成果をもとにしまして日本の企業がリチウム電池を開発し、この分野では世界の市場、マーケットの過半を占めているとお聞きしているわけでございまして、研究者が必ずしも意図しなくても、うまくマッチングしますとそういう例も出てくるのではないかと期待しているわけでございます。
  46. 水島裕

    ○水島裕君 TLO法案その他、もちろん大変結構だと思いますけれども、実際はなかなかよくわからない人がいるし、そういうことをやっていない大学もございますので、私はそういう特許でもとろうと思った人が気楽にとれるシステムにしておいたらいいんじゃないかと思います。  きょうは御答弁は結構でございますけれども、日本ではわずか二、三十万円、その研究費の中から使えば特許を出せるわけでございますので、それで一年の間にきちっとした会社を探したりTLOでやれば、外国の特許は一年以内に出せば有効なわけでございますので、そんなことを探したりなんかしているうちに、特にアメリカなんかはこういうのはかなり厳しいものですから、一月おくれぐらいで大きな特許を逃してしまうということもあるので、ぜひその研究費でも特許申請ができるように考えても私はいいんじゃないかと思います。  現に、こういう研究の話をしていると皆様方は余り関係ないかとも思いますけれども、我々いろいろ研究したりなんかしていても、特許というのはほとんどアメリカが今持っているんです。ですから、例えば遺伝子の犯人捜しにしましても何にしましても、遺伝子を使うと一つやるたびに半分ぐらい、ちょっと半分が正確かどうかわかりませんけれども、今半分以上アメリカに特許料として払っているんです。  ですから、日本でどんどんやるのはみんなそういう特許の関係でアメリカに払っているということでございますので、ちょっと一月おくれただけでもう十年ぐらい特許料をずっとその後払わなくちゃいけないということになりますので、これはぜひおっくうがらないでもとれるようなシステムに変えていただく。通産大臣も今特許の議連をやっていらっしゃいますので、そういうところでもぜひそういうことも御検討いただけたらと、わずかなところで日本が大損しないようにということを考えていただけたらと思います。  それでは次に、ベンチャーに入りますので、この方が一般的にわかりやすいかと思います。  もちろんバイオばかりではありませんけれども、バイオベンチャーを例にとりますと、今アメリカでは千三百バイオベンチャーがあって、そのうち二百五十が一般公開、上場しているベンチャーであります。年間に大体四千億円そういうものに投資がされている、つまりリスキーマネーがアメリカでは四千億円動いている、そのおかげで新しい学問とか新しい産業が生まれてきたわけでございます。  特に重要なのは、四千億円のうち一般投資家、エンゼルと言われているものが一番多くて、その次がベンチャーキャピタル、それは国のものも入っているわけでございます。これに比べて、日本はその点非常に少ないのじゃないかと思います。私なんかが見ると、バイオベンチャーが日本はゼロみたいな気がするんですけれども、そうでもないらしい、結構あるそうなのでございますので、それも含めまして、日本のバイオベンチャーはこれからどうしたらいいか。やはりハイリスク、ハイリターンという趣旨にとって、日本は今投資していても証券会社とか銀行なんかが多いわけですから、やっぱり危なっかしいところには投資しないということにもなって、そのハイリスク、ハイリターンにも合っていないのが現状じゃないかと思います。  逆に、韓国なんかですと、ソウル大学の中にバイオベンチャーもつくって、大学の人がベンチャーをやる、シンガポールでもそうだそうでございますけれども、そんな状態になっているのに日本だけ余り進んでいないような感じでございますので、まずその辺からお答えしていただければと思います。
  47. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 日本でベンチャーがなかなかしにくい、特に大学や国立研究所等々でしにくいということは先生指摘のとおりでございました。しかし私は、でしたと過去で申し上げました。  その理由は、先ほど学術国際局長から御答弁申し上げたように、大学にTLOというふうなものがつくられるようになってきた、技術移転機関がどんどんつくられるようになってきた、これがやがてベンチャーに伸びていくと思います。それから国立研究所でも、例えば今、科学技術庁としては、政府についている政府関係の研究開発でございますが、随分それをベンチャーの方に向けるよう努力をいたしておりますし、特にベンチャーあるいは特許に関しましては、科学技術振興事業団などで特許主任調査員というふうなものを置いて、そして、こういうものは特許にしたらどうか、ベンチャーをやったらどうかというふうなことを大学や国立試験研究機関等に行っていろいろ指導しているというか、アドバイスしているという状況でございます。ですから、徐々に先生の御心配の点はよくなってきていると思います。  ここで、もう一つ申し上げておきたいことは、今アメリカは、大学関係、国立研究所で非常に起業精神が盛んであるし、特許精神も盛んなんですが、これは一九八〇年に始まるわけです。要するにベイ・ドール法というのが一九八〇年にできて、これでもっと大学関係はベンチャーマインドを持ちなさいということを盛んにアメリカで言い出す。それが一九八〇年から十年たった後、一九九〇年になってやっと利益が出てきた。スタンフォード大学にしてもカリフォルニア大学にしてもやっと出てきて、そして今、もう二〇〇〇年になりますが、そこで初めて大きな利益を上げ、それが基礎研究にまた戻っていくというふうな状況ができてまいりましたので、私は、ことし、去年あたりのこの日本の国のやり方というものがやがて大いに国立研究所や大学の起業精神を刺激いたしまして、二〇一〇年、二〇二〇年には必ずや大きな成功を生み出すものと思っております。  それからもう一点、ちょっと気になりましたことを申し上げておきますと、人件費の問題でございます。  アメリカの大学と日本の大学の根本的な違いがあるわけですね、先生御承知のように。アメリカは十カ月しか給料をくれないわけです。あとの二カ月というのは自分で勝手に稼いでこいと、稼がない限りそのところは夏休みみたいなものとしてとれと、こういうことでございますので、私もアメリカの大学に長く勤めておりましたけれども、夏休みの二カ月の給料をもらうためにNSFであるとかあるいはDOEなどに対して研究費を要求して、それをもらって研究しながら、同時に給料もそこから出すというふうになっておりました。ただ、アメリカでも国立研究所にも勤めていたことがありますけれども、そこでは十二カ月給料でありますので、外部から給料をもらうということは非常に難しかったのでありました。  だから、そういう意味で日本の大学をアメリカのような格好で十カ月給料にするというようなことが考えられないわけではありませんけれども、これはしかし国家公務員、教育公務員でありますのでそうはいかない。そのときに、どういうふうに自分たちの給料をふやす方法があり得るか、これはかなり慎重に考えなければならないと思っております。ただ、科学研究費等々で手伝ってもらう人々に対してはお金が出せるようになりましたので、これは随分前進してきていると思っております。
  48. 水島裕

    ○水島裕君 ベンチャーの将来予想、それから今の人件費、そういう方向に向かっているということは確かでございますけれども、もう一つ外国と日本が違うのは、日本は国立が多いわけです。ですから、やりにくいというところもありますので、私の意見は、やはり私立からでもこういうことを一生懸命やり出したらどうかというふうに思っておりますけれども。
  49. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 国立研究所や国立大学がすぐにそういうことができるかどうか、いろいろ問題がございますが、TLOなどでは随分努力をしているということは先ほど申し上げたとおりでございます。  ただ、特殊法人理化学研究所、私は例は理化学研究所しか詳しく知りませんが、そこですと、これは出資金でやっているものですから、その中の一部をベンチャーに回してどんどん努力をするというふうなことができました。したがいまして、私が理事長時代にベンチャーを六つ立ち上げ、そしてまたその後もう一つできたようです。その中にはバイオ関係、特に遺伝子関係のベンチャーも含まれております。そういう意味で、特殊法人などでは努力をすればできるということを申し上げておきたいと思います。  それがさらに国立大学とか国立研究所でやれるようになるか。これは、これから大変慎重に考えなきゃいけないことでございますが、方向といたしましては、TLO等々でそういう方向に向かいつつあるということを申し上げておきたいと思います。
  50. 水島裕

    ○水島裕君 その辺は全く賛成でございます。  先ほどのベンチャー、日本は相当よくいって将来見込みがあると言うんですけれども、私はやはりどうしても危惧を持っているわけです。日本はどうしてもそういうのに向かない。これは、ベンチャーに大切なのは、とにかく能力のある人がやらなくちゃいけない。それからもう一つ、そこでちゃんとお金ももらわなくちゃいけない。それが、日本はなかなかそういう人材がいない。  つまり、一口で言いますと、何も大学ばかりじゃないと思いますけれども、大学の例えば助教授クラスみたいな非常に優秀な人がいるときに、その人がベンチャーをやってもらうのには一番適任なんですね。その人が責任を持って自分の仕事をやる。ところが、そこを一回出て行っちゃうともう教授には戻れないということがございますので、これは人事院、私学からやっていって公務員ということでもいいんですけれども、人事院の方も来ていらっしゃるのでぜひ御意見を聞きたい。  一口に言うと、公務員制度をできるだけ弾力的に扱うことが必要なんです。先ほどのをもう一回わかりやすく申しますと、ある大学の助教授が仮にベンチャーに行くとする。ベンチャーみたいな仕事をやりたいという気持ちがある人はたくさんいるんです。ところが、今の世の中でそんなところへ一回出て行っちゃったら、仮に失敗でもしたらもうそれで終わり。大学からもあいつ変なところに行きやがってというので、ベンチャーはしたいけれどもアドベンチャーはしたくないという人が日本はすごく多いんです。  ですから、そういうベンチャーをやりたいという人がそんな危険を冒さないでそこへ行って成功しても失敗してもまた大学に戻れるとか、そういうことも含めて公務員兼業もある程度はしていいと。いろいろなことを決めることは必要でしょうけれども、そういうこと。  それから、先ほどの給料。これもなかなか難しいかもしれませんけれども、給料の一部はそういう研究費からもらってもいいとか、いろんなことも含めて、仮に研究職の半分の給料をほかの研究費で賄えということにすると半分人員削減したことになるわけですね。ですから、今もうほとんど役に立っていない人の給料まで払っておいて人員削減削減と言ったって本当に困るわけでございますので、そういうことも含めて、きょうすぐには無理でしょうけれども、公務員制度を弾力的にいろいろなことを考えてみないかということで人事院の方に御質問いたしたいと思います。
  51. 尾木雄

    政府委員尾木雄君) 公務員制度というものを、国民の期待にこたえ得る公務員を確保し、その能力を十分に発揮できるようなそういう仕組みにしていくということは大変重要なことであると思っております。現在、国際化、情報化等さまざまな環境の変化がございまして、そういう中で公務員が時代の要請にこたえていくということも極めて大事であると思います。  公務員というのは基本的に全体の奉仕者であるという性格のもとで勤務しているわけでございまして、その公務員の役割や果たすべき働き方、そういうものについても国民一般の中でさまざまな考え方があろうと思います。人事院としては、そういう公務員の働き方、役割についての社会全般の意識、時代の要請等を踏まえながら、今先生が御指摘の具体的な問題についても考えていきたい。  ただ、こういう状況でございますから、人事院としてはかねてから、例えば研究公務員につきまして弾力的な任期つき任用あるいは処遇、裁量労働等を可能とするようなそういう新しい仕組みも既に設けてきているわけでございまして、公務員制度を運営する上で弾力性、柔軟性というのは一つの大きな要素であるというふうに考えております。本年三月の規制緩和に関する閣議決定におきましても、今御指摘の大学の教官等の兼業の問題について規制緩和の観点から検討するようにという閣議決定がなされている状況でございまして、この問題についてさまざまな視点から十分な意見をお聞きしながら検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  52. 水島裕

    ○水島裕君 残念ながらと申し上げていいかどうか知りませんけれども、今、日本は優秀な人が公務員に結構いるんです。結構じゃなくて、公務員に非常に多いわけでございますので、何とか公務員にうまく働いてもらわないといけないわけでございます。今、公務員は時代の要望にこたえる義務がある、こたえるということをおっしゃいましたけれども、今の日本で時代の要望は何かと申しますと、やはり新しい科学技術の学問を進めて、それによって産業も発展さすというのが本当に日本の今大きな要請でございますので、それができるように公務員制度を弾力化していっていただくというのが非常に大切なことではないかと思います。  それでは、次に移りまして、若干評価ということですが、その前にちょっと質問を忘れましたので、恐縮ですけれども、あと研究費で今非常に困っていることは年を越して使えないということなんです。これは予算の性質上なかなか難しいんですけれども、どうしてもというときは、いろいろ面倒なことを書けばそういうこともできるんですけれども、やはり研究というのはある一定期間までに終わるというものじゃないわけでございます。  一般的にどういうことが起きるかというと、お金もまだ残っているし、研究もまだやり残している、やらなくちゃいけないことがたくさんある、特に一月とか二月ごろ予算が来た場合なんかにそういうことが起きるわけです。ですから、そういうときに、次の年にもその研究を続けて、その予算を次の年にも使えるようにするということでもってどれだけ研究の効率がよくなるかわからない。今はどうかと申しますと、もう返すのももったいないから何でもかんでも買ってしまえとかといっていろんなものを買っちゃったりなんかするというような例が幾つかあるわけでございます。  ですから、これもきょうのお答えで解決はできないんでしょうけれども、その辺について今後検討していただけるかどうか、御答弁いただきたいと思います。
  53. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 文部省の関係で申し上げますと、科学研究費補助金につきましては、少なくとも、研究所の方々の御要望を受けまして、審査手続等をできるだけ迅速にしてございまして、遅くとも六月までには補助金を交付するような仕掛けにしてございますので、先生がおっしゃいましたように二月になってから、もうあと一、二カ月しかないのに補助金をやっていくことは考えられないことでございます。  できるだけ年度当初からお使いいただけるように交付の内定も早くしてございまして、しかも二年以上にわたる研究について積極的なサポートをしてございます。そのためにかなりの研究課題が大体二年以上にわたりまして、長いのでは五年、あるいは必要に応じてその後さらに延長も認めるような仕組みで研究者オリエントの審査、配分対策をしておるわけでございます。研究課題で二年以上にわたる継続案件につきましては、予算の御都合もございますけれども、四月当初からお使いいただけるように私どもは研究者の立場に立ってできるだけ柔軟な取り扱いでさせていただいているところでございます。
  54. 水島裕

    ○水島裕君 特に、最初から国の予算の場合はある程度しようがないと思いますけれども、自分たちで稼いできたものとかそういうものも次の年に使っちゃいけないということになっているわけでございますので、文部省ひとつ、これは大蔵省と御相談するかどうかは知りませんが、これだけ解決していただければ文部省は百点に近いぐらい努力なさっていると思いますので、きょうの点は宿題にさせておいていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
  55. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 大学の研究者の方々がお使いになります研究費は、科学研究費補助金のほかに国立学校特別会計で御用意しておりますお金、それから今先生がおっしゃいましたように外部からの受託研究あるいは奨学金等のお金、いろいろございます。  特に外部からのお金につきましては、これまで幾つかの予算の種目に分かれて行いましたけれども、これを近年産学連携等研究費という形で項を統合いたしまして、その執行の上で弾力的にできるようにするほか、できるだけ研究者の御要望に沿って改善の努力をしてございます。  ただ、今で完全無欠であるかといいますと、そうでない部分もございますので、引き続き関係方面と御相談しながら改善の努力を続けてまいりたいと思います。
  56. 水島裕

    ○水島裕君 こちらの言わんとすることをおわかりで、よく理解されていると思いますので、ぜひ検討していただきたいと思います。  それでは、あと、時間の関係である程度言いっ放しになってしまうかもしれませんが、せっかく研究費を出しても、研究のある分野が日本ではうまくいかないということを二つ申し上げたいと思います。  一つは、これはむしろ政府というよりはマスコミに申し上げた方がいいのかもしれませんけれども、本当に大切なもの、つまり生命にかかわる研究とか倫理に関係ある研究とか、そういうことをやりますと、どこかで何かちょっと問題が起きるとそれでストップしてしまう。日本の企業も、そんなことを冒してまでしたくないというようなこともあって、例えば医療器械で言いますと、関節とかその辺はいいけれども、ペースメーカーは万一何か起きるとやばいから、あれは外国のを使おうとか、臓器移植もそうでございましたし、これからクローンあるいはES細胞とかいろんなことがありますけれども、言葉は悪いですけれども、何となくやばいのはみんな外国にやってもらおう、外国へ行ってやろうとかということになっております。  これは国としては十分認識されていると思いますが、最近この方面もきちっとやっているということがございましたら、お答え願いたいと思います。
  57. 池田要

    政府委員(池田要君) 先生がただいま御指摘のES細胞でございますとかクローン技術につきましては、確かにこういう研究が急速に進んでまいりまして、人の命を直接操作できるというようなことでございますとか、あるいはそれによって夫婦ですとか家族、そういった制度につきましてもいろいろな影響を与えることになりますところから、その研究のあり方につきましても、世界的にも必要な規制の枠組みを設ける方向にあることは事実でございます。  ただ、先生指摘のように、こういう研究がいろいろな可能性を含んでいるものですから、そういったこともあわせまして、現在我が国におきましても、科学技術会議の生命倫理委員会におきまして、クローン技術、それからES細胞、ヒトの胚性幹細胞という、これは神経、筋肉、いろいろな細胞に分化できる可能性を持つ細胞のことでございますけれども、こういう細胞につきましても、生命倫理の観点から必要な規制のあり方について検討を行ってございます。  これらの結果を踏まえまして、今後の研究推進に必要な体制の整備といった観点からこういう検討に取り組んでいるところでございますし、その答えを踏まえまして、先生の御指摘のような研究を阻害することのないように十分配慮して取り組みたいと思っております。
  58. 水島裕

    ○水島裕君 それでは、駆け足になりますけれども、次は評価のことについてお伺いいたしたいと思います。  会計検査院から、科研費で報告書がおくれたり、決算の報告がおくれたりするという例が結構あるというふうに聞いたんですけれども、また、そういうところにも次の研究費が行っているとかという話を聞きました。その辺、事実関係はいかがでございましょうか。
  59. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 御心配をおかけして申しわけございませんが、平成年度会計検査院決算検査報告によりまして御指摘をいただいたわけでございます。  ただ、若干御説明させていただきますと、科研費というのは補助金でございますので、補助金適化法に基づきます適正な処理が必要なのでございますが、補助金適化法に基づきます実績報告書というのはすべて適正に処理されているのでございます。  科研費というのは基礎研究でございますので、その研究の成果を一般に公開して国民の財産にしたいということで、幾つかの報告書を私どもの限りで求めているのがございます。  一つには、いわゆる研究成果報告書というものでございまして、これは研究テーマによりまして、幾らか薄いものから電話帳ぐらいにわたる非常に厚いものまで、いわば冊子体でございまして、こういう本をつくりまして国会図書館に納本し、一般の閲覧に供するというものがございます。このほかに、研究成果報告書の概要版でございますとか、それから英語版でのアブストラクトでございますとかいうことをお願いしてございます。簡単なものにつきましてはお出しいただいているのでございますが、冊子体のものにつきましては、特にグループ研究などになりますと、それぞれの研究者の方々で幾らか研究の御都合でおくれたりということがございます。  検査院の方からの御指摘で、この研究成果報告書の提出がおくれている部分があるではないかという御指摘なのでございますが、これは別に補助金が不適切に行われているということではございませんで、先生方の研究の御都合によってやむを得ない部分があるものでございますので、私どもは今まで余り目くじらを立てていなかったのでございますけれども、これを機会に、せっかく御指摘いただいたものでございますから、研究者に御迷惑をかけない範囲で、厚くなくてもいいので、できるだけ出せるときに出してほしいということで督促あるいは意識喚起などをお願いしているところでございます。  いずれにしましても、会計検査あるいは補助金適化法上の処理は全く不適切なことはございませんで、そういう意味での御指導をさせていただいているところでございます。
  60. 水島裕

    ○水島裕君 研究者にとって一番困るのは、額が少ない割に申請書類とか報告書を物すごく要求されることなのでございまして、厳しくするというのがそういうことにはね返らないように気をつけていただきながら、しかし報告はきちっとしていただかないと、研究費をまたこんなに出してむだに使っているということにもなって非常にマイナスにもなりますので、やはりその辺は十分両方の面から注意していただきたいと思います。  それでは、もう時間もございませんので、申し上げたいことだけ二つ申します。  先ほどから臨床研究が非常に進んでいないと。  せっかく厚生大臣が来ていらっしゃいますので、私が一つビデオを持ってきたのは何かと申しますと、私どもが一緒にやっております臨床研究ですけれども、日本では本当にうまくいかないんです。うまくいかないのでこれをアメリカに依頼しましたら、予備試験をしたら非常にいい成績が出たということもあって、FDAも非常に乗り気でございます。  そうしましたら、これがNBC放送のイブニングニュースでございますけれどもアメリカ全土に流れまして、こういう研究が日本で行われている、非常にいい成績がある、アメリカでやってもいいというのがニュースでありました。その後に、これはコマーシャルもしていいということになっているので、こういう病気で悩んでいる人には非常にいい結果が出ると思われるので、この研究を今アメリカとしてやっている、この研究に参加したい人は何番に御連絡ください、あるいはここの住所に御連絡くださいと。これをNBCのイブニングニュースでやっているわけであります。  その後どうかというと、もちろん自分たちがよくなるということもあって、患者さんの協力でアメリカでは非常にこの臨床研究が進んでいる。日本は、こんなことを宣伝したらもう厚生省からお目玉を食らうということで、できないわけでございます。だけれども、国力も今違って、いろんなところで、なおかつこういうことも違うのでは日本とアメリカではすごい差がついてしまうというのは、もう当然大臣もよく御理解していただけることだと思います。  それからもう一つは、有馬大臣もいらっしゃるので申し上げたいのは、やはり臨床研究が日本は進まないということで、これは文部省もこの間景気対策で、もしも通るんでしたらということで日本に臨床生命科学センターというのをつくろうということである程度計画を立てられたわけでございますが、どうしても最初は国も援助してそういうものを一つつくるということが大切でございます。予算何十兆のうちの三兆円、四兆円を科学技術のために出していて、その重要な出口の臨床研究、そこがうまくいかなかったら本当に何もしようがないという分野が随分あるわけでございます。  ですから、日本で一つでいいと思いますから、そういう臨床生命科学センターですか、そういうものをぜひつくりまして、私の希望ではそこで基礎研究、臨床それから審査というものを一体として行って、本当に日本で生まれたすぐれたものを少しでも早く患者さんのため、国際貢献のためになるようにすればいいということを最後に申し上げて、終わりにしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  61. 久世公堯

    委員長久世公堯君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  62. 久世公堯

    委員長久世公堯君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  63. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 それではよろしくお願いします。  まず、きょう私は、九年度決算報告について伺いたいというふうに思います。  平成年度決算報告の指摘件数は、前年度よりわずかに減少したものの総指摘金額が二十二億円の増加で、過去十年間で二番目の大きな額となっていると聞いております。本来は、会計検査院の活躍する場がなく開店休業の状況で適正に予算が執行されていることが私は基本であると思っております。この間の少ない職員で役務を果たされている会計検査院に敬意を表したいと思っております。  さて、防衛庁の装備品等の調達に係る問題、郵便物の新型区分機等の調達の問題、石油等の探鉱投融資事業問題、航空タービン燃料の調達に係る過大請求問題など、連日の新聞紙上の掲載があると、検査院の検査項目の目次を見る習慣ができてしまったほどでございます。  社会経済状況の変化に即応しながら競争による経済的調達が行われたか、国民の関心の高い問題を初め多岐にわたって会計検査をされていると思いますが、まず会計検査院長に九年度決算報告の全般的な特徴について説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  64. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答えいたします。  ただいまは、私どもの検査活動に対しまして深い御関心をお示しいただきまして、まことにありがとうございます。  先ほどの平成年度決算検査報告の全般的な特徴ということでございますが、私ども会計検査院といたしましては、国あるいは政府出資法人、都道府県、市町村、もろもろの幅広い検査対象がございますけれども、これらの分野の会計経理につきまして合規性、経済性、効率性、有効性、こういった多角的な観点から検査を行うよう努めているところでございまして、その検査活動の成果であります決算検査報告には、毎年各種の事態を掲記するように努めているところでございます。  平成年度決算検査報告の主な特徴といたしましては、おおよそ次のような四点になるのではないかと考えております。  まず第一点は、防衛庁の航空タービン燃料の調達において十分な競争が行われていなかった事態など、競争原理に基づいて適正な契約が締結され経済的な調達が行われているかというような視点からの問題提起を初めといたしまして、防衛装備品等の有償援助調達あるいは大規模地域開発事業、さらには石油探鉱投融資事業に関する問題など、国民の関心の高い問題につきまして引き続き積極的に検査を実施いたしまして、その検査結果を検査報告に掲記したことがございます。  それから二番目といたしまして、行政改革等に寄与する検査が求められております中で、経済性、効率性さらには有効性の観点からの検査に力を入れました結果、科学研究費補助事業あるいは国営かんがい排水事業の効果が十分発現していない事態など、幾つかの指摘事項を掲記したことが挙げられようかと思います。  それから三番目といたしまして、不正、不当な事態に対する厳正な検査が求められております中で、検査の基本であります会計経理の合規性の検査の一層の徹底を図りまして、教育関係事業等における架空経理の問題など、不適正な事態を多数指摘したことが挙げられようかと思います。  それから最後になりますが、一昨年国会法が改正されまして国会が会計検査院に対して特定の事項について検査を要請できることになったわけでございますが、昨年その初めての検査要請を受けまして検査を実施いたしました公的宿泊施設の設置運営について、その検査状況を掲記したことも一つの特徴かと考えております。
  65. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ありがとうございました。  検査方針に基づいて経済性、有効性、効率性、そして国会での指摘状況を踏まえての検査、あるいは不正、不当、多岐にわたって国民の関心の高い問題を指摘された点について大変評価をいたしますけれども、その中で一点だけお伺いをしたいと思います。  特定検査状況の一つとしての「防衛庁における装備品等の調達に係る会計検査について」でございます。  競争性、経済的な調達等を重視し、かなり踏み込んだ点が見えることは、これは私も評価する点でございますけれども、過大請求が明らかになった時点で、会計検査院は適正な返還金額の算定に必要となる基礎的資料が入手できなかったなどのため、調達実施本部のとった処置を不適正なものと断定するまでに至らなかったと掲記されていますが、過大請求を現状の検査体制では発見できなかったという点について院長としてどのように考えられておりますか、その点についてお伺いしたいと思います。
  66. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 防衛庁の装備品等の調達に係る過大請求問題につきましては、会計検査院といたしましてもその適正な返還金額等を検証すべく努力したところでございますが、ただいま委員指摘のように、必要な基礎的資料を入手できなかったことなどのために事態を十分解明できなかったものでございます。  今回の事案をこのように未然に発見できなかったことにつきましては、私ども会計検査院といたしましても重く受けとめているところでございます。  今回のような事態を踏まえまして、防衛装備品等の調達に関する効果的な検査のあり方を総合的に検討いたしたところでございまして、例えば原価検査を担当する専従班を設置いたしましたり、あるいは原価計算に詳しい調査官を重点的に配置したり、この種の研修を強化したり、こういったことなどによりまして検査体制の充実強化を図ってきているところでございます。
  67. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 今の御答弁は、もう一度聞きたいなと思っていた項目です。今後のあり方ということで、検査体制を一層充実強化されていくということですけれども、具体的に調査体制そのものを再編成していくのでしょうか、あるいは今言われたように原価計算のできる人を加えていくという形なのか、そこのところをもう少し補足いただければと思います。
  68. 諸田敏朗

    説明員(諸田敏朗君) お答え申し上げます。  ただいま院長が答弁したところでございますが、原価検査を担当する専従班、これを防衛検査課に設置したということで検査体制の充実強化を図りましたほか、従来、調達先の会社につきまして、調達実施本部職員の立ち会いのもとでいわゆる肩越し検査という形で検査を実施してきたところでありますが、今後は、必要と認められる場合には、会計検査院法第二十三条によりまして検査指定を行い直接検査をする権限も認められておりますことから、これを発動いたしまして、調達先の会社に対しまして直接検査を実施することを考えております。  また、平成十一年度予算には非常勤職員手当が増額計上されておりますので、これによりまして外部の専門家を活用するということも考慮することなどいたしまして、今後の検査に万全を期していくというところでございます。
  69. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ぜひそんな体制をしいていただいて、二度とああしたことがない、指摘できるように会計検査院として努力をお願いしたいと思いますが、十一年度からそのような体制をつくられるわけでしょうか。
  70. 諸田敏朗

    説明員(諸田敏朗君) 十一年度からでございます。
  71. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ぜひよろしくお願いします。  次に、大蔵大臣伺いますけれども、九年度決算報告について、検査院の総指摘金額が二十二億円の増となったことや、今、会計検査院長からの説明も含めて税金のむだ遣いに対する国民の目が厳しい中、全体的に大蔵大臣としてはこの九年度決算報告についてどんな評価をされておみえになるのか、どんなような御認識をされてみえるのか、御説明をいただきたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回に限りませんけれども、毎年会計検査院から多くの不当事項の指摘を受けてまいりまして、もう一言で、まことに申しわけないことであります。まことに遺憾なことでございます。  それはきょうに始まったことでございませんですけれども、大蔵省では、各省各庁の適正、効率的な予算の執行によりまして指摘事項を減らすしかないと考えておりまして、大蔵省会計検査院の担当者との間の連絡、あるいは各省庁の予算決算担当者会議等々あらゆる機会に、予算の効率的な執行、それから指摘事項を周知徹底させる等再発防止の指導を行ってきているわけであります。やはり、それでもなかなかこういう指摘事項がなくなりませんで、各省庁の予算の執行に当たる職員のモラルの欠如あるいは関係者の不注意等によるところが多いと申し上げるしかありません。  したがいまして、そういう意味で、各省庁の連絡、あるいは過ちを犯さないようにお互いに注意をしながら各省庁一体になってこういう指摘事項を減らしていくということを申し上げるしかない。なかなか同じようなことを長いこと申しているではないかという御指摘がきっとあるに違いない、まことに私もそう思いますけれども、そういうふうに自粛自戒するしかないというふうに考えております。
  73. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 私が言おうとしたことをあらかじめ言われちゃったわけでございますが、あえて言わせていただくならば、不適切な表現かもしれませんけれども、不当事項として新型というか新登場というのがそう毎年出てきては困るわけでございます。新型とか新登場といったものが、今も話がありましたように九年度の中にも過去に指摘された懸案が再登場している。同じような指摘が繰り返されている事項もある。  この点については、なかなか難しい、連絡をとりながらというようなお話がただいまありましたけれども、国民にとっては、そうした税金がむだ遣いされるというか不当な指摘を受けるということに対してはますます厳しい状況になってきていると思いますので、やっぱりモラルの欠如、不注意だけではちょっと済まされないんではないか。もう少しその辺を、各省庁が連絡をとり合う、あるいはモラル、不注意を正していく、そうしたことをやって類似事件の再発防止、そして適切な執行をしていくということでございますけれども、ただいま大臣も言われましたように、同じようなことを繰り返してというようなことがございました。  そういうことが起きないような、これは仕組み上といいますか制度上といいますか、これからの時代に向けての新たな対策といいますか、そんな点はどんなふうにお考えになっておられるでしょうか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、端的に申しまして執行する者が不心得であるということに結局尽きると思いますが、モラルが落ちたにしてもあるいは不注意にしても、そういう指摘がありましたときに各省庁で部内でも厳しく考えていく、そういう習慣をつくっていくということが大事なことであるかもしれないと思っております。
  75. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 これ以上この問題をやりとりしてもあれだと思いますので、予算担当局として同じようなことが繰り返されないように、これも各省庁と連絡をとりながら予算執行担当者等に大蔵省としてもさらなる指導といいますか、やっぱり不注意とかモラルで税金がむだ遣いされたということでは国民になかなか納得していただけないのではないかというふうに私は思いますので、ぜひ次の報告までにはそうした類似の指摘とか再発とかいうものを極力少なくしていくような御指導を大臣にお願いして、次の質問をさせていただきたいと思います。  会計検査院にもう一度お伺いしますけれども、会計検査院の職員の身分についてお尋ねをします。  現在、会計検査院の職員は国家公務員法ではどのように位置づけられているんでしょうか。
  76. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答えいたします。  会計検査院は憲法上の独立機関でございますけれども、このうち大半を占めております事務総局の職員は一般行政庁と同様に国家公務員法の適用を受けておりまして、一般職とされているところでございます。
  77. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 私は、会計検査院が独立性を確保することは絶対に必要であり、会計検査院の主体となる検査官の特殊性から、独立した人事管理や検査院機能を十分に発揮させるためには早急に国会職員あるいは裁判所職員と同じように特別職にしなければならない、このことが国民の期待にこたえ、そうした不正をただしていくことにもつながっていくと感じております。  このことについてどのように思われますか。また、そんなことを院長として今後も要望され、働きかけていくお考えがあるのかどうか、この点についてお伺いをさせていただきたいと思います。
  78. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) ただいま委員がおっしゃいました特別職へ移行するかどうかという問題でございますけれども、かつて私ども会計検査院といたしましても昭和四十年代の後半に実は真剣に検討したことがございましたが、その当時以来、先ほど委員がおっしゃいましたような国会、裁判所の職員と同様に特別職へ本院職員を移行するということにつきましてはいろいろデメリットの点もございます。  例えば、職員を採用するための独自の採用試験を実施しなければならなくなりますこととか、あるいは職員の不服審査等に伴います公平審査部門を新たに設置しなければならないとか、さらには独自の俸給表を毎年つくっていかなければならない、こういったようないろいろな問題点もございます。  そういったことで、本院といたしましては、当面現状のままで事態の推移を見守るということでここ二十数年間そのような状態でまいったわけでございますけれども、今後、公務員制度全体の御議論の中でさらにこの問題については会計検査院として真剣に検討を続けてまいりたい、このように考えております。
  79. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 私は、特別職にして検査がより十分にできるような体制を望むわけでございますけれども、今お話がありましたようにそれにはデメリットも伴うということでございますので、それらを十分に踏まえてさらに検討を重ねられて、そして会計検査がより充実できるような体制で今後進められるような検討をさらに推し進めていただきたい、そんな要望を申し上げ、次に、会計検査院には最後の質問でございます。  会計検査院の基礎的資料は例年どおり既に実施されていると聞いておりますが、検査院にこの基礎的資料での強制的な調査権がないためか、ある省では資料がないなどの理由でなかなか資料の提出を受けることができないというような話も聞いております。ちなみに、お茶の一杯も出ないというような話も漏れ伺っておりますが、それはそれといたしまして、その他検査院の皆さんのそうした頑張りに私は敬意を表しております。  会計検査院長として、各省庁に予算執行に関して今後どんな点を望まれるのか。各省庁に対して予算執行上どんな点を会計検査院長として要望といいますか望まれる、そんな点がございましたら最後にお伺いをしたいと思います。
  80. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 私どもの検査対象になっております各省庁を初めといたしまして、公団、事業団あるいは地方公共団体におかれましては、予算の執行に当たり、当然のことではございますけれども、適正な会計経理の実施に努めておられることと受けとめているわけでございますが、会計検査院といたしましては、引き続きそのような御努力に期待しているところでございます。  これまでの検査結果などを踏まえましてあえて申し上げますと、法令や予算に従って適正に会計経理を処理するということはもちろんのことでございますけれども、さらに一歩進めまして、事務事業を経済的、効率的に実施すること、あるいは事業が目的を達成し効果を上げているか、こういう観点から適時適切に事務事業の見直しを行うことなどにつきまして一層の御配慮をしていただきたい、このように考えております。  また、その際には、私ども会計検査院のこれまでの指摘事項も参考になると思われますので、毎年度の検査報告に掲記されました事項を十分活用していただきたいと考えております。  なお、私ども会計検査院といたしましても、検査報告掲記事項につきましてはより広く一層の周知徹底を図っていくことに努めてまいる所存でございます。
  81. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 済みません、最後と言いましたが、もう少し聞かせてください。  指摘事項を繰り返されないようにということでございますけれども、確かに同じ省庁で繰り返されるということは少ないわけですけれども、ここの省庁で行われたようなことがもう一つの省庁でまた行われるというような、そんな類似指摘もございますね。そうした点については、会計検査院としてはどんなふうに考えておみえになるんでしょうか。
  82. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 私どもが検査報告で指摘いたします事項の中には、確かに一見しますと同じような指摘が毎年続いているというような感じを持ってお読みいただく向きも多いかと思いますけれども、その中をよくよく検討してみますと、先ほど委員がおっしゃいましたように、ある省庁で指摘がありまして同じような間違いがまたほかの省庁でも指摘されるというケースもございますし、それからまた一方で私どもの方で多少視点を変えまして新しい見方で検査を行いました結果、指摘事項がやはりあったというような結果が出るものもございます。  委員が先ほどおっしゃいましたように、全く同じような指摘が毎年毎年ほかの省庁に出てくるということにつきましては、私どもも非常に遺憾なことであると考えておりまして、先ほど御説明申し上げましたように、私どもの検査報告の指摘結果を幅広く御説明するなり御理解をいただくなりいたしまして再発防止に努めていただき、また私どももそういった点に努力をしてまいりたい、このように考えております。
  83. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 済みません、もう一点伺いますけれども、それは全省庁のそういう予算執行担当者を集めて決算報告が出るとそういう説明をやられるということでございましょうか。  それから、大蔵省の方もそういったことはやられるんでしょうか、各省庁集めて、指摘事項の。そんな点をちょっと。
  84. 坂篤郎

    政府委員(坂篤郎君) お答えいたします。  大蔵省の方でございますが、先ほど大臣から御答弁がありましたとおりでございますが、若干具体的に申し上げますと、私ども毎年やっておりますが、従来から例えば大蔵省の主計局とそれから会計検査院の担当者の方々、大体課長さんレベル、私どもの方は主計官という形、それぞれの担当ごとにいわば分科会みたいな感じにいたしまして、毎年その報告をいただきましたり、あるいは予算ができたころ、大体年二回ぐらいやっておりますが、例えばことしの予算はこういうふうですという御説明会計検査院にしたりすることもありますし、会計検査院から検査の結果こういう問題もあったよということを伺ったりするといったようなかなり綿密なお話し合いをいたします。  それから、文書によって要請をしたりといったこともまたいたします。  それから、あと、各省庁の予算あるいは決算の担当者の方々にお集まりいただいて、これまたかなり詳しくいろいろなお話を申し上げたりといったこともいたします。あるいはやや基礎的な話になりますが、会計事務につきましていわば会計を担当される方は知っておいていただかなきゃいかぬことというようないろいろなルールがございます。そういったことについて、各省の御担当の方あるいは特に新しく担当になられた方たちにおいでいただきまして、研修所で、私どもから詳しい人間が行きまして詳しく解説をするといったようなこと等々いろいろと努力いたしておるということでございます。  今後とも、さらにそういった努力を続けていきたいというふうに考えております。
  85. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 予算当局であります大蔵省との関係につきましては先ほど主計局次長の方からお答えがございましたので、そのほかに私ども会計検査院として再発防止対策をどのようにとっているかということについて、簡単に御説明申します。  まず、年末に検査報告を内閣に提出いたしました後、年明け早々でございますが、各省の会計課長の皆様にお集まりいただきまして検査報告の説明会を開催いたしております。  それからまた、公団、事業団、こういった政府出資法人の監事、監査役の皆様方にもお集まりをいただきまして検査報告について説明をいたしております。  それからさらに、私どもの研修機関といたしまして群馬県安中市に研修所を持っているわけでございますが、そちらで都道府県の職員の事務講習会あるいは地方公共団体の監査委員事務局職員の皆様に対する講習会、そういったいろいろな講習会を開催いたしておりますが、その際には必ず私どもの検査活動の一環であります検査報告の内容につきましてできるだけ詳しくお話を申し上げて、再発防止に努めているところでございます。
  86. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ありがとうございました。  私は、決算委員は初めてでございますので、そこまでの取り組みを大蔵省会計検査院もされながら同じような指摘が出てくるということは、さらにそういった取り組みを一層充実していただいて、国民の期待にこたえるような形になるように強く要望をしておきたいというふうに思います。  それでは、次の質問に移らせていただきますけれども、昨年の十二月十七日にも若干質問をさせていただきました郵便番号区分機について重ねてお伺いをさせていただきます。  去る三月五日に、公正取引委員会で、株式会社東芝及び日本電気株式会社に対する独占禁止法第二条六項に該当し、同法第三条の規定に違反する件に関する審判が改めて開始されましたが、これは入札談合にかかわる問題でございますけれども、大臣としてこの審判が開始されたことについて、今どのような御認識でございましょうか。
  87. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) ただいま先生が御指摘になりました公正取引委員会における第一回審判が三月五日に開始されたことは承知しております。ただいま係争中でありますので、郵政省としての発言は差し控えさせていただきたいと思います。  また、区分機に係る情報管理に関する公正取引委員会からの要請等につきましては、真摯に受けとめているところでございます。
  88. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 今の答弁は、メーカー側の問題であるという認識を郵政省はお持ちであると、そんな理解をさせていただいていいですか。
  89. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 重ね重ねになりますけれども、係争中ということで、このことについてはコメントを差し控えさせていただきたいということでございます。
  90. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 それでは、ちょっと観点を変えますけれども、区分機の契約についてでございます。契約の形態の推移についてお尋ねをしたいと思います。  昭和四十三年から六十一年まではどのような契約の形態でしたでしょうか。
  91. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) お答え申し上げます。  郵便番号制は昭和四十三年から始まっておるわけでございますけれども、六十一年度までは随意契約でございました。そして、政府全体のアクションプランを受けまして六十二年度から指名競争入札に移りまして、そしてまたさらに政府全体のアクションプランを受けまして平成年度から一般競争入札に移行したところでございます。
  92. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ありがとうございます。  この随意契約、指名入札は東芝、日電の二社のみだったと思いますが、一般競争入札に形態の変化があったのが今話がありましたように平成年度からでございますけれども、平成七年、八年は、一般競争入札に移行してもこの二社のみで契約がされたと思います。この二社以外に新たに参入した会社は、いつから、何社でございましょうか。
  93. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 若干、簡単にでございますが敷衍させていただきたいと思いますけれども、我が国の場合に、手書きの郵便番号を読むだけではなくて、漢字とか片仮名、平仮名、これを区分機がOCRという技術で読む必要があるというところの技術開発が非常に難しいということで、先生指摘のように、かねて東芝、日本電気の二社の体制であったわけでございます。  私どもといたしましては、平成四年から、七けたの新郵便番号制の基礎研究を始めたときでありますけれども、三社目、四社目のメーカーの参入をこいねがいまして、いろんなメーカーに働きかけを行ってきました。しかしながら、技術上の難易度というのが極めてきついものですから、先生指摘の日立製作所が技術上の基準をクリアされましたのが平成九年の十一月でございます。それで、クリアされましてすぐ平成十年二月の入札から応札をされてきた経緯がございます。
  94. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 公取委が問題にしているのは七、八、九年だと思いますので、その辺に限って御答弁をいただければありがたいわけですけれども、一般競争入札に移行した七年度以前の随意契約、指名入札と同質の行動で、一般競争入札に移行してもその二社に限られた入札が行われたということについては、今、若干技術的な問題の話がありましたが、そのことについて郵政省はどのように考えておみえでしょうか。
  95. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 平成四年の新郵便番号構想のときに、郵政省の中で慶応大学の石井威望先生を座長といたします十何人の先生方にお集まりいただいて研究会を設けました。そのときには、日本電気、東芝だけじゃなくて、日立製作所を含め内外のメーカー八社に呼びかけまして研究に参加していただいたところでございます。  しかし、先ほど申し上げましたけれども、日本の場合に漢字とか平仮名、片仮名、手書きのものを読み取らなければならないという技術上のハードルが非常に高くて、私自身感じておるんですが、今のところ正直言いましてもう外資系はギブアップというような段階でございます。そういう中で日立製作所が四年から技術開発をあきらめないで続けてくれまして、そしてやっと平成九年十一月にOCRの基準をクリアされて入札に参加していただきまして、現在三社体制になっておるところでございます。  したがいまして、先生指摘の七年度、八年度というところでは日本で郵便区分機の技術を持っておるのは二社しかなかったという実態があるわけでございます。
  96. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 二社しか技術がないということは理解をしますが、応札が二社のうち一社しかない、これは多分事実だと思いますけれども、二社が入札してきたということは多分ないんだろうと思います。  技術的に二社が応札できる状況にあり、具体的な応札、入札あるいは契約になっていく、その場合に一社しか、どちらかしか入札、応札してなかったということについて、この点は会計検査院も私指摘しているように思うんですけれども、郵政省は七年度以降一般競争入札に変わっても一社しか応札しなかった点について、どのように考えておみえになるでしょうか。
  97. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) お答え申し上げます。  どの入札案件にメーカーがどのような価格でもって入札をされるかというのはひとえに当該メーカーの営業上の戦略もあるでしょうし、また受注能力もあろうかと思います。一社応札というのはメーカーの判断による結果だというふうに理解をいたしております。
  98. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 またその点については後で触れさせていただきたいと思いますが、一社の応札時点での全契約の予定価格と落札比率をわかりましたら教えていただけますでしょうか。
  99. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) この点については、会計検査院の今度の決算検査報告にも掲示されておるのが一部ございます。  先生指摘の点でいきますと、平成年度では落札比率が平均いたしまして九九・九八%、そして九年度は九九・四三%というふうに私どもも承知をいたしております。
  100. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 大変高い落札比率になっている、一〇〇%に近い状況だと私は思いますけれども、公取委がこの入札談合を指摘し始めたのは、独占禁止法違反の発端の原因は、私はそれ以前の昭和四十三年、旧型区分機導入以来、東芝、日電が旧型区分機の受注を独占し、全国的には二社がすみ分けをし、保全のためのネットワークを形成して、その補修会社の役員に郵政省OBの天下りを迎えていた。そのような二十五年間の郵政当局と東芝、日電の癒着の体制が問題だと私は考えております。  平成年度、一般競争入札が導入された後も、それ以前の随意契約あるいは指名入札と同質の構造で落札していたのではないかと、この点を八年度では公取委も着眼しているわけですけれども、私はこのように考えておりますので、今質問をさせていただいておるわけでございます。  もう少し説明をお願いしたいと思いますが、メーカーに対して、指名競争入札から一般競争入札に移行することについての説明をされたのでございましょうか。
  101. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 私は、昨年着任しておりますので直接の当事者でないわけでありますけれども、先ほど申し上げましたけれども、政府全体のアクションプランによりまして、一般競争契約、これをふやしていこうということで、郵便区分機につきましても、平成年度から従来の指名競争入札から一般競争入札への移行を図ったものでございます。  したがいまして、これはそういうものであれば、区分機に限らないことであろうかと思いますが、一般的に競争形態が変わるわけですから、関係の皆さんにはしかるべくお話をされるのが普通ではないかというふうに考えております。
  102. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 説明はされたということですが、いつどこでそのことを説明されたのか、そしてメーカー側はそのときどんな反応であったのか、この点について説明をしてください。
  103. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 今お答え申し上げましたけれども、一般論として入札の形態が変わるわけですから、関係の皆さんには区分機に限らずそうした場合には御説明されるだろうというふうに申し上げたところでございます。
  104. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 そうした説明のときの資料とか、そうしたものは残っていないんですか。一般的な話はありましたけれども、郵政省が東芝あるいは日電に説明をされたときのそうした資料的なものはないんでしょうか、一般的な話としては理解しますけれども。
  105. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 先生は、あるいは公正取引委員会がメーカー二社に出されました勧告を援用されておられるのかもしれませんが、もしそうだとすれば、大臣からも御答弁申し上げましたとおり、もう既に公正取引委員会におきまして係争中の事案になっておりますので、その辺についてのるるコメントは私の方からは差し控えさせていただきたいと思います。
  106. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 私も、その公正取引委員会のを読ませていただいて今そんなことを伺ったわけでございますが、それを見ますと、平成六年四月十五日、郵政省の省内において勉強会と称する会議が開始されたと、出席者は調達事務担当官及び日電、東芝の部長級の者数名で、その中で平成年度から始まる一般入札についてが説明された。この事実はあったのかなかったのか。あるいは平成六年九月二日についてはどうか。平成七年一月二十六日についてはどうか。  今、審判中の問題なので中身は答えることはできないかもしれませんけれども、その三日間郵政省内で行われたと、このように言っているわけでございますので、それは事実なのかどうか。そのことだけ確認をさせてください。
  107. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) お答え申し上げます。  先生指摘の内容というものは、先ほど申し上げましたけれども、公正取引委員会がメーカー二社に出されました勧告書の中にあることを恐らく御指摘されておるんじゃないかと思います。そういうことでありますれば、具体的内容にかかわる話でございますので、先ほど来るる申し上げておるところでございますけれども、具体的なコメントは現時点で差し控えさせていただきたいと思います。
  108. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 なかなか慎重なお答えです。  では、次に平成年度の件についてお伺いします。  東芝、日電が平成八年も十二件の契約を分け合う状況となって、これまでと同質の行動で二社が落札しているのではと考えざるを得ませんけれども、この平成年度の全契約の落札率はどれぐらいでございましょうか。先ほど七年を聞きましたので、八年度でございます。
  109. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 私の方は、先ほど八年度で九九・九八%というふうにお答え申し上げたところでございます。
  110. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 では、もう一度聞きますが、七年度説明していただけないんですね。
  111. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 七年度につきましては九九・九五%ということでございます。
  112. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 では、九年度について伺います。  日立が新しく応札しましたが、四十五件二百二十八台の契約中、四十四件二百二十七台が二社で落札して日立は一件一台だと思いますけれども、このときの全契約の落札比率はどれくらいでございましょうか。
  113. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 今、佐藤先生指摘のものは、平成十年二月二十七日に行われました九年度国債にかかわる入札ではなかろうかと思いますけれども、このときの落札比率、これは会計検査院の方で掲記されておられるわけでございますけれども、九五・二六%というのが平均であるというふうに私どもも承知いたしております。
  114. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 日立が参入して若干下がっているということでございますけれども、この落札比率というのは、国債とその年度の歳出と全体を平均した数はないですね。
  115. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 冒頭に近いところで申し上げましたけれども、全体平均いたしました九年度の合計は九九・四三%でございます。
  116. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 新型区分機が導入されてからでも全契約の落札比率は、今お聞きしたように九九・幾つというように大変一〇〇%に近い落札比率になっていると、こう思うわけですけれども、それを日常的に継続してきた郵政省の体質が、昨年の異例の公取の郵政省に対しての要請で、入札執行前に郵務局職員から、区分機類の機種別台数、配備先郵便局に関する情報の提示をもって本件違反行為を行っていた事実が認められる、ちょっと真ん中を略しますが、今後、本件違反行為が再び行われることのないように入札に関する情報管理等について検討するよう要請した、このように言っています。  公取委の指摘は、この構造が独禁法違反の元凶であると指摘しているとも言えると思います。この指摘について、郵政省としてはどのように認識されておみえですか。
  117. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 勧告は公正取引委員会の名前で行われたものでございますが、ただいまのものは公正取引委員会事務総局の審査局長から発せられたものでございます。  いずれにいたしましても、入札に係る情報管理等について検討するよう要請するというペーパーでございまして、私どもとして、この審査局長の要請については真摯に受けとめたいと思っておるところでございます。
  118. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 前回の委員会でも質問させていただきました。真摯に受けとめて、予算執行の適正化に関する委員会をつくられて点検作業を実施している、そんな答弁をいただきましたが、その予算執行の適正化に関する委員会、どんなメンバーでどんな回数開かれ、これまでの点検状況の内容、そして結果について説明していただけますか。
  119. 鍋倉真一

    政府委員(鍋倉真一君) お答えいたします。  先生指摘の点は、私ども物品調達点検委員会というふうに言っておりますが、これは郵政省におきます調達手続の点検及び改善策の検討を行うために設置したものでございます。  開催状況でございますが、平成十年九月二十九日に第一回委員会を開催しまして、その後九回、合計十回にわたる委員会、部会における検討を経まして、同年の十二月二十五日に大臣に点検結果について御報告をしたところでございます。  内容でございますが、区分機の調達につきましては、生産可能性の問い合わせは区分機の配備計画策定上必要とする区分機の生産が可能かどうか確認のため行ったものであるということで、その際、生産可能性の問い合わせは発注を約するものではなく、発注は入札の結果によって決まることを付言していたという点検結果を得ております。  それから、そのほか区分機の調達期間については、点検の結果、特記すべき事項は見受けられませんでしたし、また調達に当たっては、郵政省としましては、従来から内外の多くの企業による区分機調達への参入を図るための施策を実施してきたという点検結果を得ております。  なお、構成メンバーでございますが、構成メンバーにつきましては、委員長に官房長の高田でございます。それから、副委員長に官房の財務部長の是枝と官房の施設部長の田代、そのほか委員は各部局の次長クラスで構成いたしております。  以上でございます。
  120. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 適正検査委員会を設置されて、公取の指摘も受けながら今後はそうした適正な予算執行をしていくということでございます。言葉は悪いかもしれませんけれども、逆な言い方をすれば、七年度、八年度はそういう適正な委員会がなかった。不適切だとは言いませんけれども、若干疑惑を持たれてもしようがないのではないかというふうに私は思います。  そういう事態を踏まえて、さまざま国民の目が厳しい中で、郵政省内だけでそうした適正委員会をつくられることについてどんな認識をされているのか。私はむしろ、第三者的な調査委員会をつくるつもりはないのか、これは政治判断として大臣にお伺いをしたいと思いますが、どうでございましょうか。
  121. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 私も、調達手続点検委員会の報告を受けまして、より一層透明または公正な調達を行うために、今委員指摘ございましたけれども、その報告の中にも、専門的な第三者機関を活用したり、仕様書の中立性を確保するなどの取り組みが必要ということを言われております。区分機につきましても、そういう報告を踏まえて、引き続き透明、公正な調達を行ってまいりたいと思っています。  さらに、先ほどの生産可能性の問い合わせにつきましても、やはり必要な場合があるということで、口頭で通常行われたものに関してもそういう疑いがないように文書等記録の残るような形でやってはどうかということも私の方から指摘を申し上げたところでございます。
  122. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ありがとうございます。ぜひ今の大臣の決意をこれからの予算執行の適正化の中に生かしていっていただきたいということを要望しておきます。  それでは、官報の新型区分機の入札公告に関してお聞きをしますが、郵政省関連の他品目の入札公告よりも強調されている部分があります。  それは、入札の対象となった場合に「提出した書類について説明を求められたときは、これに応じなければならない。」の(3)に「当該物品を納入後、修理、点検、保守、その他アフターサービスを納入先の求めに応じて速やかに提供できること。」の提示があります。  郵政省が入札公告にしたものでこのような項目は他に郵貯ATMの入札公告にしかなく、両件とも、前件については二社が、後者は一社が保守を独占し、多くの郵政OBがこれらの保守会社に天下りをしている。私は、先ほど申し上げたと思いますが、これが癒着の構造だと言われても仕方がないのではないかというふうに思っておりますが、いかがでございましょうか。  その上、この関連会社を含めて四社が本年、東京国税局の税務調査を受け、一億二千五百万円の申告漏れを指摘されています。このことについてはどう認識されておみえでしょうか。
  123. 鍋倉真一

    政府委員(鍋倉真一君) 先生今御指摘のありました区分機あるいはATMの保守会社が国税庁の告発を受けたという点でございますけれども、私どもこれらの会社、民間の会社でございますので、郵政省としましては監督の立場にはないわけでございますが、税の申告漏れが報道されたということで、区分機の保守会社である日本自動機器保守株式会社、それからNECポスタルテクノレクス、それからATMの保守会社であります日本オンライン整備株式会社の各社に照会をいたしました。そうしましたところ、申告漏れと指摘された事項は経理方法についての税務当局との見解の相違によって生じたものであるということでございます。  今後は、税務当局の見解に沿って適切な対応が行われるものというふうに考えております。
  124. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 確かに一般の会社だと言ってしまえばそれまでですが、先ほど申し上げたように入札にかかわるある種の関連会社であるわけでございますので、そう簡単にこれは一般の会社だということだけでは済まされないのではないかというふうに思いますので、十分にそうした点への配慮といいますか、郵政省としても責任を感じていただかなければならないというふうに私は思います。そのことを申し上げて、次の質問に移ります。  もう少し入札公告について尋ねますけれども、平成年度の納入で、三月十九日に官報で十件の契約、グループ分けにしたものでした。このグループ分けをする理由について説明をしていただけますか。
  125. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 区分機の調達に際しましては、先生指摘のようにグループ分けをいたしております。一つは機種の別。これは新型区分機とかあるいはバーコード区分機等の機種の別。そしてまた、右流れ、左流れの流れの別。そしてまた、区分コース。二百口とかあるいは大きいものでは三百五十口等あるわけですが、これらによりまして、同じものを一つのロットとして、そして契約単位で入札公告を行って契約に持っていくということで、落札をされたメーカーの方もこれによって非常につくりやすくなるというふうな考えでもって、効率的な調達を行う観点からもこうしたことは必要であるというふうに考えておるところでございます。
  126. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 今の答弁でございましたけれども、平成年度では、旧型区分機が東芝製であった場合、新型区分機が日電製になった郵便局はあるんでしょうか。また、旧型が日電製であったものが新型が東芝製になった郵便局があるんでしょうか。あるいは右流れ、左流れ等言われましたけれども、郵政局単位の発注かもしれませんけれども、グループは同じ旧型区分機を使用し新型区分機を導入している。このことについて私は聞いているんですけれども、この点はどうでしょうか。  いわゆる旧型のものは、新型も同じようなグループをつくり、日電と東芝が分け合うような形があったのではないかというふうに私は思います。先にメーカーの入札のしやすいようにグループ分けをしておいたのではないかというふうに思うわけですけれども、こんなことが本当に許されるんでしょうか。
  127. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 契約単位に分けておりますのは、先ほども言いましたけれども、メーカーも、入札をしてそして落札をされた場合に非常に平準化をしてつくれるというところで、これは調達側からいたしますとできるだけ安い価格でもっての調達も可能になる、そういう観点からやっておるところでございます。
  128. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ちょっと時間がなくなってまいりました。もう少し聞きたいことがありますので、それはそれとして、次に行きます。  先回も予備部品のリストの中での搬送用のベルトの規格について伺いましたけれども、九年度歳出による調達では、予備部品の調達を新型区分機等の調達契約の中であわせて行っており、その際、仕様書の添付文書である予備部品のリストの中で搬送用ベルトについて規格を示していました。しかし、新型区分機等に用いられる長さが最長の搬送用のベルトの幅は、東芝製の区分機は四十ミリ、日電製の区分機は六十ミリとなっている。製造会社が特定されていないとこうした搬送用のベルトの幅を示すことはできないのではないか。  この点について先回は、国債分で説明されて、それはないということでしたけれども、九年度歳出の分についてはそうした四十ミリ、六十ミリという記載がされて、製造会社が既に特定をされていたのではないかと思いますけれども、この点について説明をしてください。
  129. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 昨年十二月の本委員会におきまして、先生の同じ御質問に対してもお答えしておるところでございますけれども、予備部品につきましては区分機の機能を維持するためのものでございまして、仕様書の添付文書である予備部品のリストというのは予備部品の規格を例示的に示したものでございます。したがいまして、予備部品リストの規格をもってメーカーを特定するものではございません。  そもそもが予備部品というのは一式で数十万円程度のものでございまして、これによりまして億単位の区分機本体のメーカーを特定するということは常識的にはあり得ないというふうに考えております。
  130. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 続けて質問をさせていただきます。  郵便自動選別の連結の件に関してですけれども、例えば取り出し口の位置、高さ等、機械サイズ、電気的インターフェースの合致が必要ですけれども、仕様書には連結が可能であることのみが記載されているだけで、その詳細は明記されていません。  これでは、入札以前に落札会社が確定していなければ落札することができず、結果として他の会社が受注することはできない。これについてはどう思われますか。
  131. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) お答え申し上げます。  区分機の入札につきまして、押印機のメーカーでないところから区分機を入札したいという場合には、郵政省に対しまして押印機の技術情報の開示をしてもらいたいという申し出がございます。それを受けまして、私ども、押印機のメーカーに技術情報の開示を求めまして、そして入札希望のところに提供するということでございます。  最近の例でございましても、つい先月、三月十九日の入札におきまして、区分機メーカーでないところが入札をし、そして落札をしておるというのが複数ございます。
  132. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 きょうは聞きたいことだけまずずっと聞かせていただいて、またの機会に今の問題について私なりの考えを申し上げていきたいと思います。  平成年度の最初の入札はいつ行われましたか。
  133. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 平成年度の入札は、平成九年五月十六日だったというふうに記憶いたしております。
  134. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 平成年度に、先ほどお聞きした入札前につきまして、平成九年五月十六日以前に、入札する新型区分機のメーカーを確定した通達が出されています。  それは、九州郵政局の郵務部輸送企画課郵便システム係から、五月十六日の入札前、五月八日付、入札直前の博多郵便局に対するもので、表題は「新型区分機の配備について」が出されています。その中で新型区分機が東芝製であることを明確にしています。内部関係者の説明も入札前、五月十日にしております。これは事実ですか。説明してください。
  135. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 先生の今の御指摘にかかわるところ、簡単に御答弁申し上げさせていただきたいと思います。  本省から全郵政局につきまして、九年の前の年でございますが、平成八年十二月十二日に東芝、NEC両メーカーの区分機諸元表を送付いたしております。  そして、今先生指摘の九年でございますが、九州郵政局の場合、本省から二月二十五日に、例えば博多局、これは会計検査院で御指摘のところでございますが、博多局には新型区分機三百五十口のものが行くという通達をいたしております。もちろん入札前でありますので、メーカーが決まっておりませんので、メーカーの名前は言っておりません。これを受けまして、九州郵政局では、当時として入っておる区分機がみんな東芝だったものですから、先ほどの八年十二月十二日の本省からの資料送付と、そして九年二月二十五日の新型区分機三百五十口というのを結びつけまして、思い込みによりまして通達に新型区分機の型番を記入したということでございます。
  136. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 それについては後でもうちょっと聞きます。  二つ目ですけれども、信越郵政局郵務部輸送企画課情報機械化推進係から出された四月十三日付通達で、表題はこれも「新型区分機の配備について」ですが、が出されています。その中で新型区分機が東芝製であることを明確に記載しています。新潟中央郵便局、事前に関係者に資料を配付して説明がされています。その上に、新型区分機導入のための電源工事等を行う上での仕様書を示し、この仕様書も東芝製を示している。これも入札前のことでございますけれども、説明してください。
  137. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 信越郵政局も同様でございまして、私ども、信越郵政局に対しまして八年十二月十二日に東芝、NEC両メーカーの言ってみればすべての区分機の諸元表を送付いたしております。そして信越郵政局には、先ほどの九州郵政局と同じ日でございますが、二月二十五日に、例えば会計検査院指摘にございます新潟中央局について申し上げますと、新型区分機三百口のものが行くという通達を出しておるところでございます。  信越郵政局では、当時としては管内に入っておるメーカーは東芝だけだということで、先ほどの十二月十二日の資料とそして今回の二月二十五日の本省通達を合わせ読みいたしまして、思い込みによりまして、これは電源工事仕様書の中に記述されておるものでございますが、メーカー名を入れておるということでございます。
  138. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 今、この通達に関しても報道がされましたが、一部の郵便局の思い込みによるものの理解というのが共通した答弁でございますけれども、思い込みによって事前にまだ決まっていない機種が決められたり、あるいは電源工事がされたり、これはちょっとおかしいんではないかというふうに私は思います。単純な思い違い、間違いでしたら、この思い込みの通達は重大な、入札制度の根幹問題です。  思い違いで電源工事をされたり、思い込みで機械が入る、このようなことがされたのでは入札問題の根本にかかわる問題ですけれども、そうした思い込みをされてどんどん進められていくことについて、名前は伏せますけれども、入札前に通達を出した者にそれなりの処分があったんでしょうか。それをお答えください。
  139. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 新潟中央局の場合でございますが、電源工事仕様書の中にそういうメーカー名が記述されておったということでございますが、まだ本省段階において入札も行われておりません。したがって区分機も決まっておりません、配備もその先でございます。そうしたところで、先生の御認識、ちょっとそごがあるのではないかというふうに私今思っておるところでございます。もし私の方が間違っておりましたら訂正させていただきたいと思います。  いずれにしましても、一部の郵政局でございますけれども、先生指摘のように、また会計検査院から御指摘いただきましたように、思い込みとはいえこのようなことになってしまったということは、これはやはり私どもとして重く受けとめております。これまでも職員に対して指導を徹底してきたつもりでございますが、今後とも十分配意してまいりたいというふうに思っております。
  140. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 入札前にそういうことが各郵政局で行われていくということは、私は最初に申し上げたように、一般競争入札になりながらも癒着構造がずっと続いて、地方まで続いて、もう思い込みで大体ここは東芝が来るんだ、だから電源工事もしておくんだ、そして通達も出るんだ、次に入るのは東芝だよと。  これが七年以前ならともかくも、一般競争入札になった以降もそういう体質が郵政省に残っていること自体を私は指摘をしておるんですよ。そうでしょう。濱田さんと私と、思い違いかどうかは知りませんけれども、ずっと来たものが一般競争入札になったならば、そんな思い込みは払拭されないといかぬですよ。不注意では済まされないですよ。そういう体質がずっと今まで続いてきたんではないですか、大臣
  141. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 今郵務局長が事実関係について御報告させていただきましたが、私としますれば、今回のミスを、事務的とはいえ、深く真摯に受けとめまして、今後このようなことがないように徹底的に指導に努めてまいるつもりでございます。
  142. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 次にお伺いします。さきの決算委員会でお聞きしたんですけれども、確認をさせていただきます。  旧区分機はどれくらいの期間でつくれるのか。さきの委員会で、濱田局長は、入札公告上の最短距離は五十九日、八年の八月は五十四日、九年一月も五十日というようになっていますとお答えをいただきました。これは間違いないと思いますけれども、関連して伺います。そうした新型区分機をつくるのにどれぐらい期間がかかるのでしょうか。
  143. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) 昨年十二月も御答弁させていただきましたけれども、十年六月の入札契約の例で申し上げますと、二百五十口の新型区分機でございますが、契約から四十五日で納入されておるものがあるというファクトがございます。
  144. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 もっと早いのもあるんですね。平成九年一月三十日に落札し、平成九年二月二十六日に玉川郵便局に入っているんです。一月三十日に落札して、次の二月二十六日、約二十七日で新型区分機が入っているんです。  納入されたのだから製造ができるのだ、それが新型区分機をつくるに要する日数だという論理だと私は思いますけれども、私が両社にこのことを調査したところ、区分機の製造は部品調達から六—八カ月は要すると。また、公取委の答弁書の中でも六—八カ月はかかると。これが二十七日や今言われた五十何日で納入されるわけです。そうすると、入札以前にもう生産にかかっていないと間に合わないんじゃないでしょうか。そうは思いませんか。
  145. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) これは区分機だけではございませんが、郵政省の場合に、ある一定の金額を超えるものにつきましては、年度当初に予定の数量とかあるいは予定の入札公告時期などを官報に公示いたします。そしてまた、郵政省では政府調達セミナーというものも開いております。  そしてまた、ただいまは契約から納入までの日数を申し上げたわけでございますが、先生御案内のように、WTOにかかっておる案件でございます。したがいまして、入札公告から入札までは最低五十日という期間もあるところでございます。
  146. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 そういう答弁だとは思いますけれども、やはり入札されて納入、企業はそんな部品を前から蓄えて準備を進めるということは私はないと思いますよ。それなりに、もうここはここですよということが従来の慣行の中で決まっているから、公告が出ればそうしたことが行われて生産に入り、納入がそんな短期間で間に合うようになっていく。このことが私は事前の情報提供があったのではないかというふうに理解をいたしておりますが、これを聞いてもまた同じような答えしか返ってまいりませんので、私の意見だけそのように申し上げておきます。  次に、今も申し上げましたけれども、製造日数に関する郵政省とメーカーの認識の違いが私はそこに浮き彫りにされているというふうに思っています。東芝、日電に対して情報を流して製造させておかなければ納入ができないんです。普通、メーカーは一日でも早く先に製造台数を確定しようとします。契約できないで在庫を持つわけにはいかないのです。そのためには、落札価格を低く抑えるようにしても落札しようとする経済的競争原理が出てきます。  しかし、平成八年、九年についてはその原理さえどこにも見られないのです。この入札に関する競争原理が働いたのは平成十年からです。入札の結果の対比で明らかになると思います。平成九年、平成十年、各社の区分機一台に対する落札額平均と前年度比何%の増減かをわかりやすく説明してください。
  147. 濱田弘二

    政府委員(濱田弘二君) ただいまの御質問の前に、先ほど私、平成十年六月の入札で四十五日の納入期日が契約からあると申し上げましたけれども、これはもう三社体制になってからの話でございます。  それから、ただいまの御指摘でございますけれども、平成年度と十年度の各社別、区分機別落札価格ということで、九年度、新型区分機でございますが、東芝につきましては六十五台百九十一億円、日本電気七十五台二百二十億円、日立一台三億円。十年度でございますけれども、東芝四十八台百八億円、日本電気三十二台八十一億円、そして日立三十台四十七億円というのがございます。これは新型区分機でございまして、このほかにバーコード区分機もあるところでございます。  それで、平成年度の平均一台当たりの落札価格ということで対前年度比というお求めかと私は受けとめましたけれども、先生御案内のように、一口に新型区分機と申し上げましても、区分口数が二百口とか二百五十口とか三百五十口と相当違います。したがって、単純な時系列での比較は難しいわけでございますが、それを前提に割り切って申し上げますと、九年度で新型区分機の場合に二億九千四百万円、十年度は二億一千五百万円ということで、二六・九%価格がダウンしております。  バーコード区分機でございますが、九年度八千七百万円、十年度七千八百万円ということで、やはり一〇・三%価格がダウンしてきておるところでございます。
  148. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 だから、九年度まではやはり従来の慣行で来て高い区分機が納入されたんだと私は思います。口数その他でいろいろあると言われましたけれども、三百口の例でとれば、東芝、九年度二億九千四百万、十年度二億三千百万、六千万の減です。日電でいえば、九年度三百口、一台が二億九千三百万、十年度二億一千九百万、約七千二百万の減です。もっと極端な例もありますよ。三百口、東芝、九千三百万というのもあるんです。九年度のときには東芝か日電かどちらかしか応札していないんです。  十年度になったら、東芝、日立、日電、三社が応札しているんです。ここで経済的な競争が発揮されて、いわゆる区分機の価格が下がってきているんです。郵政省も赤字を今抱えてみえるわけですから、改善されてきていることは評価をしますけれども、従来の慣行の中でそのようなむだ遣いが行われていたと私は思っております。  したがって、なお一層こうした経済的な調達ができるように、そして税金のむだ遣いがされないように、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。  時間が来てしまいました。それじゃ、あと言いっ放しで終わりにさせていただきますけれども、最初に質問させていただいた説明の会議、これは東芝、日電、三日とも認めたことは認められない、審判中だからと。また、さまざまなことが十分に情報が公開されていない。生産が可能かどうかという問い合わせをしたと、その問い合わせはもう事前の情報提供になるのではないかと。思い込みで電源工事までした。こうしたでたらめが一体許されていいのでしょうか。情報をやっぱり隠し回るのが郵政省の体質。十年度以降はかなり改善されたことは私は認めます。  冒頭でも申し上げましたように、旧型区分機導入以来二十五年間、郵政省と東芝、日電の癒着構造がこの公取委の指摘、この事件を生み出していると思っております。公取委の独占禁止法違反も、日電、東芝だけではなく郵政省も含んだ形のものが正確なこの事件の実態だと私は思っております。私が述べてまいりましたこの問題が郵政省改革の一助になればと思っております。  大臣には、政治力を駆使しこの改革に向かっていただければと思っております。大臣から決意をお伺いして、私の質問を終わります。
  149. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 区分機に関しましては、先ほど来局長から、平成年度からその構想が立ち上がりまして、かなり難しい条件のもとで、高い技術を要するということでメーカーさんには取り組んでいただきまして、東芝、NECそして日立というふうに参入の企業がふえてきて、ようやく競争の成果の拡大が始まっているところでございます。  私としましては、ますます新たな参入が実現されることを期待しているところでございまして、御指摘の点につきましては今後とも、今までもきちっと透明、公平にやってまいりましたけれども、さらに身を引き締めて取り組んでまいりたい、そうお約束申し上げたいと思います。
  150. 佐藤泰介

    佐藤泰介君 ありがとうございました。
  151. 山本保

    山本保君 公明党の山本保です。  私は、前半決算または会計検査に関連する事項について全般的に少しお聞きしまして、その後最近の問題に関連した事項についてお聞きしようと思っております。  最初に、これはきょう午前中に平田委員の方から質問がございまして、同じことを用意しておりましたので簡単に、事実関係をはしょった上で官房長官にちょっとお聞きしたい。  といいますのは、会計検査官、これが会計検査院法第四条で、衆議院、参議院の同意が要る、ただこの場合、両方の同意が違った場合にはまさに憲法で定める内閣総理大臣の指名に準ずる形で衆議院の決定が優先される、こういう条文がある、こういうわけでございます。  それで、午前中、官房長官は非常に微妙な言い方をされまして、衆参で検討して対処されるべきだと思うが私も努力するというような言い方をされたのかなと思っておるわけでございます。これは、もちろん衆参の議院の問題でもありますが、今申し上げましたように実は憲法とも少し絡むような考え方もできます。戦前の流れがあるわけでございます。また、この法律自体もちろん政府の方の責任を持って出された法律でもある、こういうわけでございますが、官房長官、この場合、官房長官としては、衆参は何をやっているんだ早くやれ、こういうふうにおっしゃっているのか、いやまず内閣の責任だから急いでやりましょう、こういうふうに思っておられるのか、この辺についてお聞きしたい。
  152. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 御指摘の問題につきましては、午前中、平田委員の御質問にもお答えをいたしまして、私自身、衆参十分打ち合わせをいただきながら対処をいただきますとともに、本委員会での質問を受けまして、昨年来の経緯もございますし、その後調査をいたしましたら、二年前斎藤参議院議長から、参議院改革につきまして、決算重視の問題について、検査官の問題につきましても御指摘をいただいておるということが判明をいたしましたので、直ちに中川衆議院議運委員長のもとに赴きまして、この問題についての御審議を賜るようにお願いをしてまいりました。  中川議運委員長からは、衆議院議長の私的諮問機関といたしまして議会制度に関する協議会が設けられておるようでございまして、一応、ほぼ十四日に憲法問題その他協議をすることになっておるので、その機会にぜひ今御指摘がございました会計検査官の問題に含めて議論をさせていただきたいというお返事をいただくことができましたので、衆議院側におきましてもお取り組みをいただくと思いますし、そのことにつきまして岡野参議院議運委員長にも先ほど御報告を申し上げたところでございます。
  153. 山本保

    山本保君 よくわかりました。ありがとうございます。  次に、またこれも午前中に少しお話があったことでございますが、今度は大蔵大臣にお聞きしたいわけでございます。  決算調整資金の問題でございますが、平成年度決算では一兆六千億円もの歳入欠陥があったのだと、大蔵大臣は午前中は非常に客観的といいますか、極めて実際の物事だけをおっしゃいましたけれども、私ども野党としましては、まさにこの歳入欠陥は当時の内閣の失政であるというふうに思っておるわけでございます。そのように厳しく追及しなければならないと思っております。  さて、そのとき、憲法上といいますか法律上、この決算調整資金からの組み入れというのはどのような位置づけになるのかということについて、大蔵大臣に少しお聞きしたいわけでございます。  憲法八十三条に財政処理の権限については国会の議決に基づいて行われるということがございますし、また八十七条ですか、ここでは予備費については事後に国会の承認を得なければならない、たしかこういう条文があったと思うわけでございます。入りの方の、まさか優秀な大蔵省歳入欠陥があるなどということは多分想定もしなかったのかもしれませんが、全くそういう規定がないようでございますけれども、財政に関する憲法の原則の中でこの決算調整資金というものはどのように位置づけられているというふうにお考えなのか、大蔵大臣、お答えいただけますでしょうか。
  154. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 決算調整資金に関する法律によりますと、この法律は、「予見し難い租税収入の減少等により一般会計の歳入歳出の決算不足が生ずることとなる場合において、この資金からその不足補てんする」、そして「収支の均衡を図る」ということが書いてございます。  これに対しまして、いわゆる予備費の使用につきましては、憲法八十三条に「国の財政処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と書いてございます。この点を私どもは、歳出につきまして国会のお許しを得なければいけない、こういうふうに理解をいたしておりまして、したがいまして、予備費を内閣の責任で支出をいたしますときにはこれは国会の御承諾を得なければいけないというふうに考えているわけです。  決算調整資金の場合には、歳入の補てんでありますので、歳出自身は既に認められておりますから、歳入の補てんであるという意味で予備費の使用とはこれは歳出の問題でございますから異なると。予備費の場合には歳出を国会のお許しを得ないでしてはいけないということが憲法にございますが、歳出が決まっておってそのための歳入をどうやって賄うかという決算調整資金については、予備費の場合とは違って国会の事後の御承認を得る、こういうこととして考えております。  もちろん、決算調整資金を必要とするような事態というのは、国の歳入見積もりに誤りがあったということでございますから、歳入欠陥を生じたということでございますから、この政治的責任は極めて重い、このことを何でもないことというふうには決して考えておりません。おりませんが、歳入が不足いたしましたときに、国会で認められました歳出を満たすためにその歳入を決算調整資金で調達するという部分は、歳出そのものについての行為ではございませんので、こういうふうに扱っていいものであろうというふうに考えておるわけでございます。
  155. 山本保

    山本保君 大蔵大臣、ありがとうございます。  なかなか細かいところについては微妙な状況といいますか、規定になっているんだなということがわかるわけでございます。  ここで、委員長にお願いでございます。  実は、昨年の十二月にも鎌田委員の方からもお話があったとおりでありますけれども、参議院の決算委員会の所管事項にはこの部分が抜けている、衆議院と比べまして。鎌田委員の方からもこの辺については早急に整備すべきではないかというお話がございました。私もそのように思いますので、先ほどの、最初の検査官の国会同意人事、ここら辺についてと同じように、これについても議院運営委員会等に積極的に働きかけていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  156. 久世公堯

    委員長久世公堯君) 委員長といたしましては、ただいまの点につきましては、本委員会におけるこれまでの質疑を踏まえ、理事会で協議の上、適切に対処いたしたいと思います。
  157. 山本保

    山本保君 ありがとうございます。  次に、国のさまざまな調査、統計についてお聞きしたいと思っております。  現在、国の調査、統計というものについては大変な数がなされているというふうに聞いておるわけでございます。総務庁の統計局ですか、ここでいろいろお話も伺いましたけれども、指定統計でありますとか承認統計、届出統計というような分類があって、またこの場合、各都道府県、公共団体を初め、そればかりか民間の各企業などにも大変いろいろ御協力をいただいているということだそうでございます。  国がどのような基準で統計を行うのか。その場合、また特に、指定というようなことで大変重要なものから、各省に責任を持たされているようなものについて、どのような区分が本来なされるべきであるのかということ。また、これは新聞報道などを見ますと、これまでの統計の対象などが現在に合っていないとか、またその分析手法などもおくれているというような指摘もあるようでございますけれども、総務庁としては今申し上げたようなことにつきましてどうお考えなのか、お聞きいたします。
  158. 井上達夫

    政府委員(井上達夫君) 国の統計調査にどのようなものがあるかというお尋ねかと思います。  今先生御紹介いただきましたように、統計法、統計報告調整法という法律がございますが、これに基づきまして、統計法によっては指定統計という制度と届出統計という制度、それから統計報告調整法に基づきましてはいわゆる承認統計という三種類がございます。  このそれぞれの統計の内容といいますか、仕組みでございますけれども、指定統計調査は国の政策決定に必要な基本的な統計で、経済社会活動や国民生活にとって重要なものとして総務庁長官が指定したものを作成するための調査ということになっております。これを実施する場合には総務庁長官の承認を受けるということになっております。一番大きな調査としましては、総務庁が実施しております国勢調査が指定調査でありますし、農林業センサスであるとか、あるいは工業統計調査であるとか、いろいろなものがございます。  また、二番目のカテゴリーの承認統計調査は、国が行う統計調査の中で指定統計調査以外で総務庁長官の承認を受けて行われる統計調査という定義になっております。具体的には、経済企画庁が実施しております法人企業動向調査でありますとか、厚生省の社会福祉施設等調査、その他もろもろございます。  三番目の類型としまして、届出統計調査というものがございます。これは、各省庁が地方公共団体を調査対象として実施する統計調査を言うということになっております。これを実施する場合には総務庁長官に届け出ることとなっておりまして、具体的には、総務庁で実施している住民基本台帳人口移動調査、あるいは自然公園等利用者数調というようなものがございます。  これらについて、どのような形で調整を図られているかというお尋ねがあわせてあったところでございますが、今御紹介しましたように、各調査につきまして総務庁長官への届け出あるいは承認という手続がございますので、その過程において、重複の排除あるいは申告者の負担が大きくならないような形での措置、不要不急になったものの整理というようなことをやっているわけでございます。
  159. 山本保

    山本保君 今お聞きした限りでは、全く効果的、機能的に調査、統計がなされているというふうにお聞きするわけでございますが、例えばこの二月、経済団体連合会から意見書が出され、それは「わが国官庁統計の課題と今後の進むべき方向」という細かい各経済界からのアンケート調査も含めた、それに基づいた意見が出ております。  これを見ますと、不要不急の統計でありますとか、または、今おっしゃったのは総務庁統計局で把握しているものだけれども、それ以外にも、こんな言葉はどうか知りませんが、やみ統計というようなことで、実際には役所の統計として、国の統計としてそれに協力義務といいますか、協力も言われるし、大変忙しいんだというようなものもあると、こういうふうになっております。  この辺については、総務庁としてどういうふうに対応されるわけでございましょうか。
  160. 井上達夫

    政府委員(井上達夫君) 今先生から御指摘がございました経団連からの要望書は見させていただいております。その中でやみ統計という言葉がございましたけれども、必ずしもどういう内容かわからないところもございますが、先ほど言いましたように、統計の種類が三種類に分けられておりますので、おっしゃられるやみ統計というのは、各省庁が先ほど御説明しました総務庁長官の承認等の手続を経ないで実施するものを言っているものかと思います。各省庁に対しましては、統計行政の調整官庁としまして、このような調査を実施することがないよう厳に指導しているところであります。  例えば、具体的にこれがやみ統計だというような届け出が経団連等からございますれば、適切に対処してまいりたいと思います。
  161. 山本保

    山本保君 じゃ、ちょっと細かくお聞きしますけれども、届け出というのはどういう形で、私もこの統計の大きな本を、総覧ですか、拝見しました。各年度を繰ってみますと、何か非常に似ている統計があると思うんです。これは私も実は経験がありますけれども、承認においてなかなか厳しくチェックされるということはよくわかりますが、届け出というのは、もし仮に同じようなものがあったとして、一体この場合に総務庁はどういう権限をお持ちなんでしょうか。
  162. 井上達夫

    政府委員(井上達夫君) 統計の種類の一つとして先ほど届出統計というのがあるという御説明をいたしました。これは、数からいいますとそう多い数ではありませんし、先ほどの説明の中にも入れておりましたけれども、各省庁が地方公共団体を対象に、調査の客体として行う調査でございます。したがいまして、一般の企業なりあるいは世帯の方々に対しては承認という手続になっているわけですが、これは届け出という手続でやっていると御理解いただきたいと思います。
  163. 山本保

    山本保君 私の理解が悪いのかどうもはっきりしませんけれども、少なくとも届け出の方にはないんだと。となれば、各省庁が届け出もせずにやっているところに問題があるということを言っておられるのかなというふうにお聞きしました。細かいことについてはまた具体的に例を取り上げながら追及といいますか、お聞きしたいと思っております。  会計検査院では、こういうむだな統計があるのではないか、調査があるのではないかというようなことについては、どういうスタンスをとっておられるのか、お聞きします。
  164. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答えいたします。  私どもが行っております会計検査の活動につきましては、主に合規性の観点、経済性、効率性の観点、それから有効性の観点から検査活動を行っているところでございます。今委員がおっしゃいました各省が行っております統計調査のたぐいにつきましても、相当な予算が執行されるわけでございますので、同様の観点で検査を行っているわけでございます。  会計検査院といたしましては、検査対象機関における事務事業の規模あるいは内容、それから内部監査の執行体制、過去の検査の状況や結果、それから私どもの検査要員なども十分に踏まえながら、必要に応じて各省が行っております統計調査のあり方についても多角的に検討を行っていく所存でございます。
  165. 山本保

    山本保君 先ほど少し出ました統計報告調整法という法律があって、その第二条には、総務庁長官は「関係行政機関の権限を不当に侵害しないように留意し、」と。変わった法律ですね、法律のところで不当に侵害することがないようにという条文を初めて見ますけれども、こういう注意がついている。専ら統計上の見地から調整しなさいということで、まさに統計技法の上からというふうに申しております。そうなりますと、内容については調整権限が会計検査院しかどうもないような、しかしこれはちょっとおかしいのではないかなという気もしておるわけです。  この問題はここまでにしますが、これに関連しまして、経済企画庁長官、以前、三月二十八日ですか、日経新聞に「経済統計のクセを直せ」という記事がありました。それから、日銀短観について、きょうは急なものですから日銀は呼んでいないんですけれども、きのう発表になった。  それで、朝、テレビを見ていましたら、DIですか、業況判断指数というものが、まだマイナスは大きいけれども何か改善の兆しがあるんだと。ところが、四月三日の読売新聞を見ますと、今回の日銀の短観は調査対象を大きく変えているんです。これは私まだ裏をとっていませんが、その新聞記事を見ますと、去年の十二月の短観をその新しいもので見直してみると、既にこのDIがもうマイナス二ぐらい動いているんだと、こういうのもあるんです。けさ見ますと、まさに二ポイント、三ポイントの改善だというようなニュースをやっておりました。  大蔵大臣にお聞きしてもいいんですが、経済企画庁長官にこの辺についてどうお考えか、お聞きしたいんです。
  166. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) まず、前半の方の三月二十八日付の日経新聞、十三面でございますが、この点についてお答えさせていただきます。  この記事は結構長い記事でございまして、二つの部分がございますが、一つは、統計にいろんな癖があるということを書いております。これは統計のとり方等によりましてやむを得ないものがございまして、そういう癖を見ながら判断するというようにしております。  もう一つは、統計を早く出せということがございまして、統計見直しや早期公表ということも書かれております。これからますます国際化が進み、知恵の時代が出てまいりますと、こういう経済社会の知的なインフラというのは大変重要になってくると認識しておりまして、統計でいろいろと御迷惑をかけている点もありますが、できるだけこういうものの蓄積を厚くして、そして早期に発表したい。  アメリカあたりに比べますと日本の統計は正確だけれども遅いということがございます。それで、私どもといたしましては、昨年十月、動向把握早期化アクションプログラムというものを公表いたしまして、現在その実施に当たって努力をしております。アクションプログラムによりまして、景気動向指数につきましては昨年十月より二週間早く出せるようになりました。  また、動向把握早期化委員会を設立いたしまして、各方面の有識者、専門家を集めまして、消費動向の早期化、的確化、あるいは地域経済の情報収集、一次統計の充実、公的部門の動向把握などさまざまな事項を目下研究しております。さらに、経済研究所におきましては、GDPのさらなる速報化について検討するためGDP速報化検討委員会を進めております。当庁の所管統計ではございませんけれども、消費動向を把握する上で重要になります家計調査、これは総務庁で行っていただいておりますが、これにつきましても勤労者世帯につきまして翌月の月内に報告できるようにする、そういうような早期化あるいはくせの是正についてやっております。  それから、後半の方のお尋ねのDIでございますが、これは今まで主要企業ということでとっていたんですね。ところが、主要企業の中で栄枯盛衰がございまして、主要企業でないものが出てまいりました。それで、大企業、中企業、小企業とその都度の売り上げで把握するという形にいたしました。そういたしますと、だんだんと主要企業から外れてくるというのはやはり業績が余りよくない、伸びない部門でございますから、暗い方が入っておりまして、その点が委員指摘のとおりの、前回と違ったという結果になってまいります。    〔委員長退席、理事鹿熊安正君着席〕  これは、統計の連続性と現状に合っているものとの組み合わせをどうするかという問題でございますが、私どももそういう変更を留意しながらやはり現状に合わせて変えていくのが正しいんではないか、こう考えております。
  167. 山本保

    山本保君 きょう発表になった、けさ方ですので詳しいのはまた次回にしたいんですけれども、その変化で改善が多少あったというようなものは、まさに今回の対象見直しの変化による程度のものではないかなというどうもおそれを感じます。  それでは次の問題で、これと関連しましてひとつ景気についてお聞きしたいわけでございます。  景気は下げどまりであるとか底を打ったというふうにおっしゃっておりますけれども、先日、二月度四・六%の失業率で、失業者三百十三万人と、こういう状況が出ております。先回、予算委員会でお聞きしたときに、たしか大蔵大臣はちょっとおくれるかもしれませんがというような留保を少し入れておられましたけれども、経企庁長官は非常に自信を持って景気は上向きであると言われたと思うんです。失業率の停滞というよりも増加しておるわけですが、悪化についてどういうふうにお考えでございますか。
  168. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 前回お尋ねいただきましたときにも、また発表しております景況判断におきましても、下げどまりしつつあるという表現を使っておりまして、悪くなるものよくなるもの今渦巻いている状況だと。雇用はその中でおくれて動く傾向がございます。これも統計の一つの重要なポイントでございまして、雇用がよくなるためにはまず企業が利益が上がると見越して設備投資をし、雇用をふやしていかなきゃいけない。まことに残念ながら、これからまだリストラが進みますと恐らく失業率は上がるのではないかという危惧を抱いております。現状におきまして二月の失業率は四・六%でございまして、三百十三万人の完全失業者がありました。  多少言いわけをいたしますと、非自発的失業者、要するに会社を首になったとかお仕事がつぶれたとかいうのじゃなしに、自発的失業者の方がふえているという意味では、やや景気に明るさが見えてくるとよりいいところを求めてやめる人も出てくるというような傾向もございます。まだ雇用につきましては夜明けの前が一番暗いという状態でございますけれども、残念ながら御指摘のように数字は悪化しておりますし、決して楽観は許せない状態にあると思っております。
  169. 山本保

    山本保君 夜明けの前は黎明で明るくなってくると思うんですけれども。しかし、経済企画庁としてタイムラグだとおっしゃっていますが、労働大臣、これは労働省としてはそうのんびりしたことも言っておられないと思うわけです。大臣が一生懸命雇用対策をやっておられることは知った上で、しかしこの数字、本心としてはそろそろ改善があってしかるべしと思っておられたのじゃないかと思うんですけれども、この結果についてどのようにお考えでございますか。
  170. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 一月に比べまして十五万人失業者がふえました。要するに、より心を引き締めて抜かりなくさらに雇用対策に取り組んでいかなきゃならぬということは思っております。  ただ、経企庁長官からお話がありましたように、今景気が下げどまるか、そしてその次に反転攻勢に出なくちゃならないときでありますから、この数字だけで消費者の不安をいたずらにあおらないで、どう正確に把握して対処するかということに心を砕かなければならないと思っております。  今のお話にもありましたとおり、非自発的失業は四万減りました。自発的失業が六万ふえて、それからいわゆる新規参入者と申しますか、これが十二万くらいふえています。数字の関係で十五万という数字になっておりませんが、重立ったところはそういうことであります。もう一つの我が省が所管しております指標で、有効求人倍率は〇・四九が二回続いております。この底は十月の〇・四七です。まだ予断を許さないのでありますが、あと一、二カ月見て有効求人倍率がさらに改善をしてくるようであれば、遅行指標としての一時的な数字の拡大、失業率の拡大というふうに言えるんだと思うんですが、まだ断定はできません。  ですから、ここはそう不安を抱かないでいただきたい。やることはやっていきますという感じで今取り組んでおります。
  171. 山本保

    山本保君 もちろん、変な不安をあおるようなことをやってはならない、言うとおりでありますが、しかし万が一のことを考え先に手を打っていくのがまた大臣の仕事だと思いますので、どうぞその辺をよろしくお願いしたいと思います。  次に、話が変わりますけれども、今度は厚生大臣にお願いしたいわけでございます。  先日、私のところに国会見学をしたいというお話がございまして、お会いしましたら、中途の難聴者という方だそうでございます。実はきょうも傍聴に来ておられます。  いわゆる聴覚障害の方といいますと、私も含めましてまずすぐに頭に浮かびますのは手話ということで、子供さんのときからそういう教育があるわけでございますけれども、最近、特にお年寄りでありますとか事故などで途中から耳が聞こえなくなってくるという方がたくさんおられるそうでございまして、そういう方にとっては手話というのを勉強するのは大変であるということから、そういう方のために要約筆記者、要約筆記の奉仕員制度というようなものがあるそうでございます。先回国会においでになったときには、衛視さんには大変親切に対応していただきましたけれども、やはり時間もかかりますし、また説明なども大変手間がかかるようでございます。  この辺は国会としてどうするかということは、また私どもの責任として検討しなければならないと思っているわけでございますけれども、厚生省としてはこういう方たちに対して、また中途難聴の方に対してさまざまな形で、ノートに書かれたりボードに書かれたり、またはパソコンを使われたりと、こういう方たちがおられるわけでございますけれども、この関連する施策の充実というようなことについてはどのような手を打っておられるのか、お聞きしたいと思います。    〔理事鹿熊安正君退席、委員長着席〕
  172. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今委員の御指摘のように、中途で難聴になられるとか、そういう障害をお持ちの方は手話通訳をなかなか身にすることができないという状況にございますので、今お話しのように、都道府県とか市町村におきまして要約筆記奉仕員といいますか、そういう方々によって障害者の方々の情報支援をするとか生活訓練をやる、あるいはスポーツ振興等の事業を行うということで補助をいたしております。  その数は必ずしも十分であるとは思いませんけれども、今都道府県、市町村におきまして要約筆記奉仕員に関する講習会等も実施いたしておりますし、その修了者を要約筆記奉仕員として登録しておりますが、平成年度におきましては全国で約六千五百名の要約筆記奉仕員の方々が活動しているという状況でございます。これからも厚生省としては、非常に有用だと言われておりますので、そういう対策を充実していきたいと思っております。
  173. 山本保

    山本保君 きょうも、実は東京都の中途難聴者の協会の方たちもおいでになっているわけでございます。  先ほども申し上げましたように、手話のできない方が八〇%以上おられるということを私も実は今回初めて、恥ずかしい話でございますけれども知ったわけでございます。今のお話では、まだまだ人数も足らないように思いますし、またその身分でありますとか、資格でありますとか、保障をどのようにするのかとか、その事業をどのように広げていくのかというような課題が大変多いかと思いますけれども、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいというふうにお願い申し上げておきます。  次に、また厚生大臣にお聞きしますけれども、不妊治療についてお聞きしたいのでございます。  これもたくさんの方から実は要望をいただいておりまして、既にこの委員会、国会でも何回もいろんなお話があったと思いますけれども、私の方からも、一部の治療については保険が適用されているというふうに聞きましたが、全体的にはなかなか大変なお金もかかり手間もかかる、何回も行かなくてはならない、しかし保険の適用になっていないということだそうでございます。これは保険適用ということをできないものでしょうか。または、これは保険という概念に当たらないとすれば、まさに少子時代の対策として何かそれにかわるような対策ができないものかというふうに思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  174. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ホルモンの異常とか子宮卵管の機能障害などで母体が異常であるということで不妊の治療が行われておりますが、これは保険給付をいたしておるところでございます。しかしながら、人工授精とか体外受精のように受精そのものを人工的に行う処置につきましては、成功率が非常に低い、それから安全性にも課題が残されておる、医学的に確立された技術とは必ずしも言えないというようなこと、それから受精そのものを人工的な手法により行うことの妥当性について社会的合意が十分得られておらないのではないか等の観点から、現在のところ保険給付の対象としてはいたしておりません。また、公費の負担医療にも該当しないということで補助をいたしておりません。  こうした処置に対する保険適用とか公費負担医療による補助につきましては、成功率、安全性といった医学的な観点とかあるいはこうした治療法に対する倫理的な観点等をも踏まえまして、関係者の意見を聞きながら慎重にやっていきたいなというように思っておるところでございます。  ちなみに、私も外国でどのような事情になっているかをちょっと調べさせていただきましたが、これは医療保険制度そのものが必ずしも各国同一でございませんけれども、施設を限定して公的保険の適用としておる国もございます。例えばイギリス、フランス、オーストラリア、スウェーデン等でございます。米国につきましては、御承知のように民間保険でございますが、民間保険は適用されているということでございますが、給付の有無につきましては契約内容によるというようなことが報告されております。  いずれにいたしましても、これから医学の進歩でそういった問題が課題になることは必至でございましょう。そういった点から、慎重な検討を必要とするというように思っております。
  175. 山本保

    山本保君 大臣、もう一言。これはお調べになっていないかもしれませんが、私今思いますのに、この分野について情報が非常に足らないんじゃないかという気もするんです。つまり、確かに厚生省として応援もできないんだからということになりますと、安全性にせよ、また費用の面につきましても、お聞きすると大変差があったりする。もちろんこれはまさに自由な取引のようなことになってくれば余計に心配があり、また危険も出てくるんじゃないかという気もするものですから、できましたら、ぜひ最低限、まず大至急この辺について厚生省としてきちんとした情報提供をお願いしたいというふうにひとつここでお願いいたしますが、いかがでございましょうか。
  176. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この問題は、私の郷里であります下諏訪におきまして産婦人科医が実施をいたしまして、日本産婦人科学会から除名されている事実もあるわけです。そういったことどもがございまして、まだまだ医学界におきましても確実なものとして評価がされていないのではないかという疑念もございます。  しかし一方、技術の進歩によっていろいろこれから、クローン人間までできるという状況の中でございますから、安全性あるいは倫理性の問題等も考慮しながらやっていかなくちゃいけない、そのためには厚生省としても実態を把握しておくことは必要だと思いますから、これは督励をして、実態把握だけはしておくようにいたしておきたいと思います。
  177. 山本保

    山本保君 時間がなくなりましたので、もう一つ考えていたんですが、厚生省分はそれで終わりまして、最後の時間、一問だけお願いします。  これも障害を持った方、またお年寄りからの要望なんですけれども、ある市で、いわゆる低床バスというんでしょうか、床の低い、また乗りやすいバスが大変少ないんだということで、私も、ではということで、担当の方に来ていただいてお聞きしましたら、全国にあるバスのうち、そういうバスはまだ〇・何%というような状態だそうでございます。今後、こういうバスをどのように、どのぐらいの目標を持って進めていくのか。各地方自治体などが行うことかもしれませんけれども、運輸省としてどんな方針を持っておられるのかということが第一。  もう一つ、特に団地でありますとか、またお年寄りの多い地域では、道もそんなに広くない生活道路が多いわけです。ですから、そういうところではお年寄りが手を挙げればとまるフリー乗降というようなことも、これは交通上の問題もあるとは思いますけれども、進めるべきではないかと思っておりますので、その二つを最後に、時間がなくなりましたけれどもお聞きいたします。
  178. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) お答え申し上げます。  低床式バスといいますのは、バスは大体三段ぐらい上がりますので九十五センチぐらい上がらなければいけないわけでございますが、一段でございますと三十五センチぐらいということで、高齢者に乗りやすいバスでございます。  普及状況でございますが、今全国で約千台を超え、千百台ぐらいございます。全体として乗り合いバスは六万台ございますので、二%弱の普及状況でございます。  バスは、高齢者にとりまして、外が見えるとか階段が少ないとかという、町の移動手段として大変乗りやすいものだと思いますので、今後、地方公共団体と協力して普及に努めたいと思っております。現在、補助制度、税制がございますが、そういうことを活用して普及に努めたいと思っております。  さらに、フリー乗降、高齢者の方が町を移動されるときにできるだけ自由な乗りおりということは大変いいことだと思いますが、逆に道で危ないということもございますので、最近はコミュニティーとして路線をお年寄りの方なんかに選んでいただいて、乗りやすいコミュニティーのバスをつくろうという動きがございますので、フリー乗降も一つのアイデアだと思いますが、地域に乗りやすいバスをつくるという観点から指導、努力をしていきたいと考えております。
  179. 山本保

    山本保君 終わります。
  180. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代でございます。  きょうは、都心から三十キロメートルの地点にある埼玉県の三芳町を中心に広がっている三富新田、三富農業の保全策について質問したいと思います。  八千分の一の航空地図を見ますとよくわかるんですけれども、三芳町、所沢市周辺に短冊状の地割り景観が広がっています。(図表掲示)こちらが三芳町になります。こちらが下富です。これを見てください。短冊状になっています。森が最後にあって、ここが道路です。(「見えない」と呼ぶ者あり)後でじっくり見てください。  質問したいんですけれども、こういう規模の大きい短冊形の地割り景観の例というのはほかにあるでしょうか。文化庁か農水省にお聞きしたいんです。
  181. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 文化庁ではこのようなものを対象とした全国的な調査は行っていないものですから、他の事例については現在のところ把握はしておりません。  しかしながら、三富新田は非常に古いというか、江戸時代の、約三百年ぐらい前の新田開発当時の地割りや農村集落などの景観が、その利用形態とともに今なお残っている数少ない貴重な事例と承知しております。大変きれいに残っているようです。
  182. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生指摘の三富新田は、戦前までは落ち葉、稲わら、菜種かす等を土壌に還元して、自然型ということで全国で行われておりました。この三富新田は、一六〇〇年代の末に柳沢吉保、当時のお殿様の時代につくられたわけでございますけれども、近くの狭山市の堀兼地区にも似たようなものがあると聞いておりますが、いずれにしましても、五ヘクタール規模のこういう農法の農地というのは現在では極めて珍しいというふうに認識しております。
  183. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今お話がありましたけれども、私の調べでは、江戸時代に新田開発がこの武蔵野台地にまで進んできまして、類似の開拓はあったらしいんですけれども、小平市とか立川市とか青梅市とか、こういう地域のものは都市化の波で全部消滅してしまったんですね。それで、三富新田はいわば最後に残された開拓地割遺跡として全国にも類を見ない貴重なものになっています。  この開拓地割りについて少しお話しする必要があると思うんですけれども、御存じの方も多いと思うんですけれども、武蔵野台地というのは、関東ローム層といいまして火山灰とそれからその下の砂れき層とから成っていまして、地下水位も非常に低くて水を確保することもできない不毛の土地だったんですね。ススキの原野です。  そこを開拓したのが、今農水大臣がお話しになったとおり、三百年前の川越藩主の柳沢吉保でした。六間道路をまずつくらせて、その両側に屋敷地を確保させて四十間、奥行き三百七十五間、つまりおよそ五ヘクタールの開拓をさせて、一番奥に森をつくらせたんです。人工林です。自然の植生でいいますとヤブツバキといって常緑樹の地域に入るんだそうですけれども、ここには落葉樹が植えられているんです。当初は畑の面積二に対して山の面積一だったそうです。つまり、たくさんの落ち葉が堆肥として使われて火山灰を肥やしていった、こういう関係になります。  注目してほしいのは、私は、この平地林なんですね。帯状にずっとまだ残っている平地林なんですけれども、今私が話したとおり、落ち葉を堆肥として使うということで、この人工平地林はまさに農業に不可欠のもの、農業と一体のものだったと思うんです。そこにこの開拓地割りの特徴があると思うんですけれども、農水大臣、そうお考えになりませんか。
  184. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今まで、戦後の農業は食糧増産という観点から化学肥料の投入等環境の負荷というものがあったわけでございますけれども、現在、農水省の農政の基本としても、環境に配慮した持続的、自然循環型の農業を推し進めていくことが重要であるというふうに認識をしております。また、海外に対してもそういうような主張を今しておるところでございます。  三富新田で行われている農法を含め、自然循環型の農業というものの重要性を改めて考え直し、またいろいろな諸施策の中で、こういう自然循環型の農地、それから先生指摘になりました平地林の維持という観点からも、森林保有者の方々の森林の適切な維持管理のための支援措置等も今講じておるところでございます。
  185. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 農水大臣、いろいろ調べてお話しくださっているんですけれども、今おっしゃったとおり、今でも三富新田では落ち葉を堆肥として使っています。特に、サツマイモ、ニンジン、大根、里芋など根菜類にはこの堆肥がとてもよいのだそうです。中でもサツマイモには、特に落ち葉でつくった苗床、ここに醸熱材として落ち葉が使われるんです。また、大根とかカブとかホウレンソウは、年に三回ないし四回つくられるために化学肥料だけですと連作障害を起こすのだそうです。そのために落ち葉の堆肥が不可欠になっています。  こうした平地林の落ち葉を堆肥として活用する循環型農業というのは、持続可能な地球環境の保全を進める上で大変大きな役割を果たすのだというふうに思います。つまり、二十一世紀に向かって、また世界に向かって発信できる要素を持つものとして注目されてよいのではないかと思います。農水大臣からもそういう趣旨のお話があったように思います。  そこで、今度は文化庁、文部大臣にお聞きしたいんですけれども、文化、カルチャーの語源はたしかカルチベート、耕すだったと思うんですけれども、かつて昭和三年にこの地域は三富開拓地割遺跡として埼玉県史跡に指定されたことがあります。その後、昭和三十七年に埼玉県旧跡に指定変更され今日に至っています。そうした経緯を見ましても、文化財的な値打ちがあると見てよいのではないかと思うんですけれども、どのようにお考えですか。
  186. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 御指摘のように、埼玉県が三富開拓地割遺跡として昭和三年に県史跡指定、その後、指定地が現在も農地等として利用されていることから、昭和三十七年に県旧跡に指定を変更しているようです。  問題は、現在耕作されている、それから利用されている農地とか緑地の保全とか農法のあり方につきましては、基本的には農業政策等において取り扱われるべき事柄になっております。  三富新田につきましては、景観を含めて地割遺跡に歴史的意義が認められるということは私ども重々認識しております。しかしながら、文化財としてすぐに史跡や名勝に指定できるだろうかという問題でございますが、今申しましたように、現在使われているというふうなことがございましてなかなか保存することが困難であるということが問題でございます。  そこで、具体的な保全のあり方については、地元の埼玉県及び所沢市、三芳町の農地や緑地の保全を含めた取り組みを踏まえて慎重に検討する必要があると考えております。
  187. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今おっしゃるとおり、この地域は埼玉県の指定旧跡三富開拓地割遺跡としていわば緩やかな保全が図られ、また開拓にかかわる文化財もお寺とか寺子屋とかいろいろあるんです。こういうものも県や町によって保全が図られています。  ただ、このままでは維持できなくなるということが懸念されているわけです。三百年前から今日に伝わる開拓地割りと循環型農業をアグロフォレストリーとして活用しながら保全していく。私は農業文化財と名づけてみたんですけれども、こういう農業文化財とでも言うべき国の新しい事業の枠組みをつくることも含めて、何らかの保全策を検討していただきたいということなんです。  実は、三芳町では、上富開拓三百年、新たな開拓・町づくりへ向けて開拓地割遺跡を活用した町づくりのあり方に関する調査研究というのがつい最近行われていまして、九四年三月に報告書がまとめられているんですけれども、このときの委員長は当時の文化庁次長なんです。三芳町、また住民とも十分相談の上、文化財的な価値のあるものとして保全策を考えていただきたいんですけれども、文部大臣、どうでしょうか。
  188. 近藤信司

    政府委員(近藤信司君) お答えいたします。  今地元の所沢市あるいは三芳町におきましては近世開拓史資料館、これは仮称でございますが、周辺地割遺跡保全検討委員会の報告書というものが一九九八年一月に出されております。これは一番新しい報告書かと思っております。  いずれにいたしましても、先ほど大臣からお答えいたしましたが、この問題につきまして地元埼玉県あるいは所沢市、三芳町でこういった研究が進んでおるわけでございます。文化庁といたしましても、そういった地元からの要望があれば、またいろいろとお知恵を出すといいましょうか、御協力できるものがあれば御協力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  189. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 済みません、御要望もないのに立って申しわけないんですが。  今後のあるべき農政の機能として、まず三富新田は現に農業として森林と農業がうまく循環しているから持続可能になっておるわけであります。そういう意味で、そこをもう何もするなということになると、果たしてこのすばらしい農地景観が守られるかということだろうと思います。  したがいまして、自然循環型農業を進めることによって、文化的側面もさらにパワーアップさせていこうということが今度の新しい農業・農村基本法の中にもはっきりうたわれておるところでございまして、そういう観点からも農業を進め、文化的あるいは教育的観点の部分でも文部省と協力しながら推し進めていきたいというふうに考えております。
  190. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 次に、極めて現実的な問題になるんですけれども、税制上の問題点について質問いたします。  持続可能な循環型農業を進めていく上で農家にとって最大の障害となっているのが、平地林が農地ではないために相続税を負担し切れないでいるということなんです。そのために、平地林の売却が続き、このままでは三富新田を保全することができなくなる、こういうふうに心配されているわけです。現地に入って、私も心配しています。  営農の意思が非常に強い人たち、経営努力も非常によくやっている人たちなんです。その方たちが相続税対策で平地林を売却せざるを得ない。こうした状況を放置しておいてはいけないんだというふうに思うんです。大蔵大臣、どうですか。
  191. 福田進

    政府委員(福田進君) お答え申し上げます。  相続税の考え方でございますが、釈迦に説法でございますが、相続税は財産課税でございまして、いわば取得した財産価値そのものに対して税負担を求めるものでございます。したがいまして、すべての財産を平等に取り扱うということが課税の公平上どうしても必要になってくるわけでございます。  ただ、先生お話しございましたように、農地につきましては相続税の納税猶予制度がございます。これは税制上極めて異例の措置でございます。なぜこういう制度が設けられたかということを申し上げますと、一つには、農地といいますのは所有と経営が不可分である、つまり農業を経営している人がその土地を持っていることが最も適当であるという農地法上の位置づけがございますと同時に、農業政策上の観点から極めていろいろな規制等がございます。  ただ、今お話のございました雑木林のような問題でございますけれども、実はそのような位置づけがなされていないわけでございまして、税制上どのようなものを特例的に配慮するかという位置づけを税制でやることはなかなか難しいということを御理解いただければと存じます。
  192. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 埼玉県からいただいてきた資料なんですけれども、都心から三十キロ圏の都市近郊地帯の「平地林売却に係る相続税の実態」という資料なんです。九一年一月、平地林の課税評価額四億九千六百万円の方が平地林を三千平方メートル売却。九二年十一月、同じく課税評価額十三億二百万円の方が八千平方メートル売却。十二月、同じく課税評価額五億九百万円の方が三千六十六平方メートル売却。九六年六月、同じく課税評価額四億七千二百万円の方が五千三百二平方メートル売却。九六年九月、同じく課税評価額一億一千九百万円の方が二千四百九十九平方メートル売却。九六年十一月、同じく課税評価額四億九千七百万円の方が千九百三十九平方メートル売却しています。  こういう形でどんどん売り払われて、そこに実は産廃処理施設がつくられたりしていくわけなんです。産業廃棄物の処理施設です。埼玉のこの地域の光と影の、私はきょうは光の方を取り上げているんですけれども、ダイオキシン銀座と言われる地域がここにつくられてきてしまっているんです。  自治体からは、こうした実態を踏まえて、緑地の保全対策としての税制上の要望が出されていると思います。相続税の軽減措置もその一つです。それから、今後、三富の平地林を現行法制の枠組みで保全するとして、保全緑地の公有地化に係る譲渡所得の特別控除額、これを現行二千万円をさらに引き上げてほしいという要望。あるいは地方公共団体等が交付する緑地奨励金など、こういうのは現行雑所得として課税対象になっているんです。協力者の善意にこたえるために非課税にしてほしい、こういう要望も上がっているはずなんです。  これらについて前向きな検討をしていただきたいと思うんですけれども、大蔵大臣、どのようにお考えになりますか。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 大変さわやかな話をお伺いしているので意外なんですけれども。  結局、皆さんがそういう一つの文化財的な価値を認めてこれを保存していきたいとお考えになっている。地方の県なりなんなりも何となくそういうことを考えているように今お話を伺いましたし、文部大臣も農林大臣もそういうものはなかなか珍しいものだということを言っていらっしゃるんですが、税というようなことから申しますと、皆さんが一緒になって、それではひとつ県なりが責任を負って、住民の協力も得てこういうことをするんだと、そして文化庁の次長はひとつ知恵をかしてもいいとおっしゃいますから、何かそういうものができ上がっていくようになりますと、それでもお役人は容易なことじゃありませんが、それだったら何か税の方でも考えてあげられるのかなというような方に、そういう手順になっていかないと、今おっしゃるのは、ほっておくとだんだん縮まっちゃってできなくなるから税の方を先にちょっとまけないかというお話は、なかなか後先になりますとうまくいきませんですね。  ですから、何かそういうものがつくり上がっていくんだということを、そういうふうに運んでいただきませんと、どうもなかなか色よいお返事ができないということだと思います。
  194. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 現行法制度の体系の中で都市緑地保全法とかあるいは首都圏近郊緑地保全法とか、そういうものがあるんです。保全緑地に新増築するとか、そういうときには知事の許可が要るとか、規制がかけられてくるわけです。そういうところにやっぱり地権者の協力も得るわけですよね。いざとなったら自治体買い取りという形にもなるんですね。今現にやっているそういうところに応援をしてほしいという質問を私は今したんです。  それについて言えば、今言いましたように、保全緑地の公有地化に係る譲渡所得の特別控除額は現行二千万なんです。これを五千万とかに引き上げてほしい。それから、地方公共団体が緑地奨励金を協力者に出すわけです。そういうものが今度は雑所得として課税対象になっているというんです。そんなものは課税対象にしないで非課税にするぐらいの協力をしてもいいじゃないか、こういう下からの要望なんです。どうですか。
  195. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはよくわかっておりまして、そういう要望があってこういうものを大体これからみんなでやろうと、県も責任持ってつくろうというような話になってきますと、それなら何か税が考えられるかと。なかなかそれでもおいそれと、うんとは言わぬと思いますが、そういうふうにして持ってきてくださらないと、税が先に飛び出していくというわけにはどうもいきそうもない、こう申し上げているんです。
  196. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 終わります。
  197. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。  私は、まず徳山ダムについて質問をいたします。  日本一の貯水量を持つダムとして建設の準備が進められていますが、この巨大ダム建設の目的について簡潔に御説明を願います。
  198. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) 徳山ダム建設事業の目的でございますが、四つございます。  一点目は、揖斐川流域における洪水被害の軽減を図る洪水調節でございます。二点目は、揖斐川の既得用水の安定取水や、河川環境の維持のための河川流量の確保、さらにそれのみならず、木曽川水系の他河川でございます木曽川、長良川にも異常渇水時に緊急水の補給を行う流水の正常な機能の維持、これが二点目でございます。三点目は、岐阜県、愛知県及び名古屋市の水道用水としまして最大毎秒七・五立方メートル、また岐阜県及び名古屋市の工業用水といたしまして最大毎秒四・五立方メートルを取水できるようにする新規利水。四点目は、電源開発株式会社、中部電力株式会社が建設する発電所におきまして、合わせて最大四十二万四千キロワットの発電の目的を有しているわけでございます。
  199. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 多目的ダムということで、建設省などでつくられましたこのパンフレットを見ますと、今真っ先に言われました治水の問題で、ここに水害の写真が載っております。(資料を示す)  揖斐川の主な洪水として、牧田川のはんらん、あるいは牧田川よりも下流のところ、揖斐川の最下流の洪水の部分が載っておるんですけれども、河口から九十キロ、最上流のこの徳山にダムがありますとこういう洪水が本当に防げるのかどうか、洪水対策についての建設大臣の御見解伺います。
  200. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 御指摘の、河口まで相当の距離がある、それで実際に洪水が防げるかどうかということでございますが、私は土木の専門ではございませんので専門的にはどうこうということは答えられませんけれども、先生の御質問で、役所で伺いますと、それはもう十分にそういうようなことが対処できる、そのために、今地元の方々の御要望に従って進めておるというように伺っておるわけでございまして、この徳山ダムは、そういうようなことで一億立方メーターの洪水期におきます水を確保する計画となっていると伺っておるわけでございます。  先ほど先生も少し触れていらっしゃいましたが、揖斐川では昭和五十年の八月に計画高水位を超える大洪水があったようでございまして、上流の横山ダム、これは昭和三十九年に完成されたようでございますが、それによります洪水調節と必死の水防活動で辛うじていわゆる破堤を免れるという、最悪の事態を逃れることができたというような経験も持っておるようでございます。  そういうようなことで、地元の方々は洪水の恐ろしさを十分に知っておるがゆえに、横山ダム上流の徳山ダムの完成を心から期待しておる、待ち望んでおるというふうに私は伺っております。
  201. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 最上流部にダムをつくっても、災害時の集中的な降雨場所がその集水域になければ役割を十分果たせないのは、私も素人ですがだれが考えてもわかると思うんです。  このパンフレットによりますと、昭和四十年九月の洪水時には、徳山雨量観測所で二日間で九百八十四ミリ雨が降りました。河口から四十・六キロの万石地点では毎秒三千六百立米、昭和五十一年九月のときには、徳山では二百八十二・七ミリですが、同じ万石地点で毎秒三千八百立米。要するに徳山で三・五倍雨が降ったときに、五十キロ下流では逆に流れる水の量が、あるいは観測水位も低いわけです。つまり、このパンフレットを見ましても、徳山に降る雨の量だけで洪水をはかることができないというのがわかります。  ですから、この徳山ダム、洪水量三八%をこれで調節するなどという異常に大きい役割なんですけれども、ダムができてもこれでは大丈夫とは言えないというのがパンフレットからもわかります。  次に、利水についても私は伺いたいんですが、徳山ダムの総事業費、八五年ベースで二千五百四十億円、国も負担しますが、地方自治体の負担にもなります。そのための借金が今問題になっています。そこで、岐阜、三重、愛知、名古屋市の利水計画と、治水も含めた財政負担分を簡潔にお示しください。
  202. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) まず、先ほどの洪水調節の問題について若干補足させていただきたいと思います。  今大臣から御答弁ございました五十年八月は、上流の横山ダムの洪水調節と必死の水防活動で辛うじて破堤を免れるという状態があったわけでございますが、それは横山ダムも河口から八十キロほど上流にあるダムでございまして、河口から離れているからといって決して洪水調節に支障を来すというものではないということを申し上げておきたいと思います。  また、お尋ねのございました徳山ダム建設事業の利水計画でございますが、これは下流の岐阜県、愛知県及び名古屋市の都市用水といたしまして新たに毎秒十二トンを取水できるように計画しているところでございますが、徳山ダム建設事業審議委員会というものがございます。その審議の過程におきまして、岐阜県及び愛知県の都市用水、それぞれ毎秒五トン、毎秒四トンは計画どおり確保するが、名古屋市は工業用水については計画どおり毎秒一トンですが、水道用水は毎秒五トンのうち毎秒二トンを確保するという各自治体の意向が示されました。  徳山ダム建設事業審議委員会におきましては、渇水に強い木曽川水系とするために、新たに渇水対策容量というものを確保することとしまして、名古屋市の水道用水を毎秒三立方メートル減量する分に相当いたします容量を充当することが妥当であるとの意見が取りまとめられたところでございます。毎秒三立方メートル分につきましては、渇水対策容量として活用すべしとの意見でございます。  また、現時点の徳山ダム建設事業の費用負担割合につきましては、関係者の合意のもとに定められておりまして、治水が全体の四四・四%、利水が三六・八%、発電が一八・八%でございます。  また、国と地方の負担割合につきましては、治水については国が十分の七、地方が十分の三という負担割合でございます。利水につきましては三六・八%のうち水道用水が六一・一%を占めまして、その内訳としまして、岐阜が一八・二、愛知が四八、名古屋市が三三・八%。また工業用水といたしましては六一・一%の残りの三八・九%でございますが、岐阜県が七七・六、名古屋市が二二・四%となっております。
  203. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 名古屋市が返上したけれども全体の計画は変わらない、大きな負担があるわけですね。実際に水は余っているんじゃないかということなんです。  この木曽川水系では長良川河口堰がつくられたんですが、愛知県は、工業用水の需要がないということで一般会計から負担をしておりますし、名古屋市も水需要が見込めません。その上に、この徳山ダムから今お示しがあった水を買うことになりますと、必要でない水を買わなければいけない。名古屋市でいいますと、長良川河口堰と徳山ダム関係でこれまで六十億円負担をしています。これから利息分も合わせて一千億円支払わなければならないという試算が出ています。名古屋は徳山ダムの水は一滴も使わない、必要でないんですね。  こういうような利水計画は過大ではないか。建設大臣、どう思われますか。
  204. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 事実そういうようなことがもしもあるならば、いわゆる審議委員会というのもセットされておるわけでございまして、これは平成年度から各般にわたります調査を行って、必要ないものであるならば休止もいたしましょうし、その後の環境変化もない、需要もないというようなことであるならば中止をするというようなことは、先生御承知のようにずっと今日までやってきておるわけでございます。今約三百四十カ所ぐらいダムを進めておるわけでございますが、そういうようなことで、今の時点では、あらゆるところ、地元の方々のいわゆる治水、利水でぜひ進めてほしいという回答をいただいておるところでございます。  この徳山ダムも、伺っていますと、長期的視点から見ても、中部地域ではこれから第二東名あるいは中部新国際空港等の大規模プロジェクトが実施されておりまして、この地域の振興を図る上でも水資源の確保というのは必要であるというふうに伺っております。  また、平成六年の渇水を初め、この十年間で六回も取水制限が行われておるということでございまして、データで見てみますと、一人当たりのダムの貯水量というのは全国で三十二立方メーターということになっておりますが、中部では十八、私の松山は大変ひどい状態でございまして十五立米というようなことでございます。ですから、余っておるというふうには私は伺っておりません。
  205. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 この地域の工業出荷高は、予測に対しまして九六年度実績でも六六%です。二十一世紀を考えますと、日本の経済は右肩上がりばかりでない。必要でなくて売れない水、それなのに開発に要した莫大な借金があるという、こういうことは見直しが不可欠だと思うんです。  次に、環境について伺いますが、このダムの計画地は、イヌワシやクマタカなど大型の猛禽類も多数生息します。それだけに生態系が豊かなんです。  建設省に伺いますが、環境アセスはどうなっておりますでしょうか。
  206. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) 徳山ダムにつきましては、昭和五十一年四月から事業を実施しておりまして、昭和五十九年の閣議決定に基づく環境影響評価や本年六月より施行される環境影響評価法の対象とはなっておりません。  しかしながら、徳山ダムでは、昭和五十一年度、五十三年度の動植物関係の専門家によります現地生物相調査の実施とか、平成年度以降の専門家によります現地生物相調査の実施、また平成年度からの大型猛禽類調査、さらに昭和五十四年からの水質調査等、各種環境調査を行ってきたところでございまして、さらに平成年度からは、徳山ダム建設事業審議委員会の意見及びその環境部会の報告を受けまして、生態系に関する調査、貴重種調査等を、地域の環境に精通した専門家から成ります徳山ダム環境調査会やワシタカ類及び地域の事情に精通した鳥類の専門家から成ります徳山ダムワシタカ類研究会の指導、助言をいただきながら、継続して徹底的な調査を行っているところでございます。  これらの調査結果を踏まえ、実施に当たっては地元関係者の御理解も得ながら、流域全体の環境に配慮しつつダム事業を進めてまいりたい、かように考えております。
  207. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 イヌワシが四つがい、クマタカが十四つがい生息しているということであります。  先日、第十八回日本環境会議名古屋大会が開かれまして、そこで決議が上げられました。その一つがこの徳山ダム建設事業中止を求める、いま一つが長良川河口堰の運用中止を求める決議で、今ならまだ本体工事に入っておりませんのでこれらを守ることができる、見合わせるべきだというふうに思います。  そもそもこの徳山ダムは、七三年に閣議決定をされました水資源開発基本計画に基づく事業です。これはあと二年で改定期を迎えるわけですけれども、私は、ぜひこの機会に本体工事に入らずにやめるべきであるということを申し上げたいと思います。  次に、藤前干潟に関して質問いたします。  環境庁長官、先般の予算委員会一般質問でラムサール条約の締結に相なっているというふうに答弁をいただきまして、名古屋市長も市議会でラムサール条約登録は意義あるものである、こういうふうに答えていますけれども、名古屋市のこういう方向を環境庁として積極的に御支援いただける、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  208. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ラムサール条約の登録問題につきましては、まず国設の鳥獣保護区等の指定を受けなければならないわけであります。環境庁としましては、この問題につきましては愛知県の方に連絡をとってあります。現在、愛知県としまして代替地の問題等々いろんなものが検討されておるようでございまして、それらの検討を待って国設鳥獣保護区の指定に向かって努力していただきたいなと、環境庁もそのようなつもりで準備をいたしておるところであります。
  209. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 ありがとうございます。  ラムサール条約のデルマー・ブラスコ事務局長も非常に歓迎をして、五月のコスタリカで開かれます第七回の会議に藤前に関する報告があれば議題に加えたいと報道されていますが、環境庁はぜひ積極的に参加をし、推進していただきたいと思います。  この事務局長は、藤前の決断のすばらしさは市民も鳥も満足させる解決法を模索しているからだと、別の処分場を探すだけでなくごみ減量に取り組む姿勢も評価しています。この藤前の問題はまさに根本がごみでありまして、ごみ減量化の目標を数量的に設定することが不可欠だと思います。  厚生省は、ごみ減量化の目標を設定する、またごみ行政を担っている地方自治体への支援措置をお考えのようですが、いかがでしょうか。
  210. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 御指摘のように、廃棄物の排出を抑制いたしますとともにリサイクルを推進していくということは、廃棄物処理行政を進めていく上で非常に重要な課題というふうに認識をいたしております。  三月三十日にダイオキシン対策関係閣僚会議におきまして決定されましたダイオキシン対策推進基本指針におきましても、まず半年以内に廃棄物の減量化の目標量を設定すること、また容器リサイクル法に基づきます施策等を推進すること、また廃棄物の再生利用、再生資源の回収利用あるいはリサイクルの推進、また国民がみずから価値観あるいはライフスタイルのあり方そのものを見直していただきまして廃棄物の発生の少ない生活様式に転換をするというふうなことを重要な課題として挙げているところでございます。  厚生省といたしましては、この基本指針を踏まえまして、関係省庁と連携をいたしまして、ごみの減量化あるいはリサイクルの推進といった施策を推進いたしますとともに、引き続きましてリサイクルプラザあるいはリサイクルセンターといった市町村のリサイクル関連施設の整備に対します支援にも努めてまいりたいと考えているところでございます。
  211. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 藤前干潟の問題でも今埋め立ての代替地が話題になっていますけれども、原点から発想を変えてごみ行政をごみ減量、リサイクルの方向に転換すること、発生源対策が非常に大切だと思いますし、厳しい安全基準を設定することが大事で、こういったごみ減量が藤前干潟での最大の教訓だと思います。国としてもぜひこういった方向を従来型でなく抜本的に強化するよう強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  212. 大脇雅子

    大脇雅子君 私は、一九九九年三月二十四日、ユーゴスラビア連邦共和国に対するNATOの空爆が開始されたことにかんがみ、コソボの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  我が国政府は、三月二十五日早朝、高村外務大臣の談話として、いわゆるユーゴ政府のかたくなな態度により今回の空爆という状況に至ったことは残念であるけれども、人道上の惨劇を防止するため、やむを得ずとられた措置として理解を示すというような見解を述べられております。  しかし、コソボにおける人権侵害の状況があったにしても、NATOの空爆は、いかなる武力によっても民主主義をつくり上げることはできないという真理への挑戦ではないかと私は思います。持続的な解決は政治的な、平和的な手段による解決しかない、その視点に立って、この見解が出されたときに、現在多くの難民が流出している現状、そして今回非常に困難な状況に陥っているいわばバルカンの状況について、どういう御理解のもとにこの見解は出されたのか、お尋ねをいたします。
  213. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) いわゆるバルカン地域の中でも特に旧ユーゴスラビア地域が複雑な民族問題を抱えており、それが地域全体の不安定要因となり得ることは認識をしていたわけでございます。  それがゆえに、国際社会はコソボ問題の政治的解決を目指して、昨年三月以降、国連安保理、G8等の場で外交努力を重ねてまいりました。また、本年に入って、欧米諸国がランブイエ、パリで和平会議を開催したのもこのような外交努力の一環であります。しかしながら、そのような外交努力にもかかわらず、ユーゴ政府はコソボ問題解決のための和平合意案をかたくなに拒否し、他方で国連安保理決議に反した行動をとり続けたわけでございます。  NATOによる武力行使は、このような中でさらなる犠牲者の増加という人道上の惨劇を防止するためにやむを得ずとられたものと理解をしたわけでございます。現在、事態の推移を重大な関心を持って見守っているところでございます。  私の当時の感じといたしましては、この空爆によって、できればその前に和平合意案をユーゴスラビアにのんでもらいたかった、空爆によって一刻も早くのんでもらえる事態が来ればいいなと、万々が一にも民族浄化が進むようなことがあっては困るなという、まさに祈るような気持ちであったことは事実でございます。
  214. 大脇雅子

    大脇雅子君 しかし、現在の状況の中でこのNATOの空爆が最良の道であったのか。将来展望が欠けていたという批判もあります。とりわけ、非加盟国の内政問題に介入したのではないか、独立国家への介入ではないか、そして国連決議なしに行われたこのNATOの空爆は、国際社会がより簡単に人権問題ということに藉口して軍事介入ができるという原則を打ち立てた初めての例ではないかとさまざまに批判をされております。  我が国ではこの国際法のルール違反という考え方に対してどのような検討をされたのでしょうか。
  215. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 今回のNATOの行動でございますけれども、ユーゴスラビア政府が和平合意案をかたくなに拒否し、他方で、国連安保理決議に反しコソボにおいてユーゴ軍及びセルビア治安部隊による過度な武力行使が続く中、ぎりぎりの外交交渉がとんざし、このまま放置すれば多数のさらなる犠牲者が出ることが必至という人道上の惨劇を防止するためにやむを得ずとられた行動であると理解をしたわけでございます。今回のNATOの行動が安保理決議を根拠とするものであるか否かにつきましては、第一義的には安保理が判断すべきものと考えているわけでございます。  この点に関連して、去る三月二十六日に開催された安保理公式会合では、ロシアが今回のNATOの武力行使を国連憲章違反とした上で、NATOの武力行使の即時停止と交渉の再開を要求する決議案を提出したわけでありますが、賛成三、反対十二、棄権ゼロの大差で否決されたという事実があるわけであります。  いずれにいたしましても、我が国は今回のNATOの行動の当事者ではなくて、また作戦面を含むNATOの軍事行動に関する詳細な情報を有していないので、安保理決議上の根拠を含め、今回のNATOの行動につき我が国として確定的な法的評価を下すことはできない、先ほど述べましたように、第一義的に安保理が法的評価をすべき立場にある、こういうことだと思います。
  216. 大脇雅子

    大脇雅子君 一九九八年に行われました安保理の決議一一九九というものは、確かに和平、停戦ができない場合の追加的な措置とか、さらなる行動というのを求めておりますけれども、これから直接的にその空爆を妥当するものではなく、国連決議それ自身、安保理の決議がないということも含めて、各国が極めて批判的な行動をとっているということは重要であろうと思います。  我が国が理解を示すというふうに言われておりますことは、より中立的な表明なのか、あるいは肯定的な表明なのかという言い回しの中身について問題になりますが、その点はどのように理解したらよろしいのでしょうか。
  217. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 私が談話で発表したとおりでございまして、それ以上でもなければ、それ以下でもないというふうに御理解をいただければありがたいと思います。
  218. 大脇雅子

    大脇雅子君 アジアでは特にNATOの空爆に対する批判が強いというふうに考えられますけれども、アジア諸国におけるNATOの空爆に対する考え方はどのようになっておりますでしょうか。
  219. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) アジアといってもどこからどこまでアジアだかよくわかりませんが、ロシアもアジアがあります。  ロシアは、御存じのように、政治的解決の努力が継続されるべきであるとして武力行使に反対をしているわけであります。中国は、そもそもコソボ問題は内政問題との立場で、武力行使に反対の立場を明らかにしております。他のアジア諸国については、私が承知している限りでは、合意案が受け入れられずに武力行使という状況に至ったことは残念としている国、これは韓国がそうであります。それから、インドが国家主権は尊重されねばならないと言っております。パキスタンは支持をしているようでありますが、さまざまな立場があるというふうに承知をしております。
  220. 大脇雅子

    大脇雅子君 多民族的、多言語的、多宗教的、多文化的な性格を反映した今回の紛争は、民族の数だけ正義があると言われるだけに、やはり非常に慎重にならなければならないと思います。  国連決議がない状況下において、今後、我が国としてはNATOに対する湾岸戦争のときのような資金協力や物資協力は一切許されないと解しますが、政府の見解をお伺いいたします。
  221. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 今回のNATOの行動に関する安保理決議上の根拠につきましては、先ほども申し上げたように、我が国として確定的な評価を下すことはできない、こういうことでございます。  いずれにいたしましても、NATOに対する我が国の資金協力、物資協力は行っておりませんし、また検討もしておりません。
  222. 大脇雅子

    大脇雅子君 この点は非常に重要なことだと思いますし、国際社会における我が国のスタンス、平和的解決に向けての憲法を持った国としての慎重なる断固とした態度が必要だと思います。  次に、朝日新聞の社説でも今回問題になりましたが、主要八カ国のG8を開くようにとか、あるいは国連の安保理会議を開くようにとか、あるいはプリマコフ首相の調停の第二次案を検討したらいいのではないかということで、今ロシアの下院議員団がユーゴに出かけているとか、さまざまな平和的な解決に向けて検討が始まっております。  一般的な論調は、ミロシェビッチ大統領個人の問題だという見解と、そうではなくて、まさに民族と国家の尊厳と名誉の問題なのだという考え方が対立して、バルカンのベトナム戦争化の兆しだという警報が出されています。  我が国としては、長期化し泥沼化するようなこうした戦争に対して、平和的な解決のイニシアチブをとっていただきたいと思いますが、こうした動きに対して、今後政府はどのように働きかけていかれるのか、お尋ねいたします。
  223. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 先日もロシアのカラーシン外務次官ともちょっとお話をしたわけでありますが、私の方からは、ロシアはユーゴに対して影響力があるのだから和平案をユーゴスラビアが受け入れるように説得してほしい、こういうことをお願い申し上げたわけであります。国際社会それぞれが政治的解決のために動いているということは私としても評価しておりますし、その動きが本当に和平に結びつく、和平の達成に資するようなものであれば私たちも支持していきたい、こういうふうに思っております。  まさに、旧ユーゴスラビア、ボスニア・ヘルツェゴビナも同じでございますけれども、大変難しい問題ですから、ただ善意で手を挙げて出ていけばいいというものでもないわけで、本当にお手伝いができれば何でもしたいという気持ちはありますが、今具体的に本当に効果的なイニシアチブを日本がとれるかどうかということは私は非常に難しい話だ、こういうふうに思っております。  ただ、先ほど申し上げたように、この平和的解決に資するような動きがあれば日本政府としてそれを支持していく考えでございます。
  224. 大脇雅子

    大脇雅子君 ぜひG8の会議を積極的に推進していただきたい。ロシアの主導に対して、ドイツ、フランス、イタリア、イギリスもこのG8の会議の開催に賛成だということでありますし、何よりも増して、今広がりつつある戦争反対の傾向というものを私どもは第二次大戦の経験から真摯に受けとめるべきではないかと思います。  ローマ法王のもとでは三万人も参加してミサが行われておりますし、ギリシャやマケドニアでは反戦運動が起きております。イタリア議会の停戦の決議もあり、米国の国防省内ですら批判があります。ドイツでも歴史を無視したスキャンダルだという批判や、イギリスの労働党の長老も犯罪的な悪行だと言って辞任をするなど、さまざまな動きが世界各地で起きているわけです。  冷戦への逆戻りということはありませんけれども、力の道による世界の一極化というものは実現不可能であり、我が国が今こうした問題に対して品格のある、しかも平和的な国家としてのアイデンティティーを確立し、そうしたメッセージを世界に送り続けることが私は大変大切だと思います。  次いでお尋ねをいたしたいのですが、UNHCR、国連難民高等弁務官事務所に対する日本の援助についてお尋ねをいたします。  今どのような援助がなされており、将来どのような援助をするつもりか、お尋ねをいたします。
  225. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 我が国は、コソボにおきましてアルバニア人に対する大規模かつ組織的な攻撃が続いており、大量の難民、避難民が発生していることを重大な懸念を持って受けとめております。  我が国といたしましても、このような状況に迅速に対応することが国際社会の責務であると強く認識するものでありまして、このような観点から、先般、コソボの難民、避難民に対する支援策として、食糧、医薬品、生活必需品等を提供するため、UNHCRを通じて千五百万ドルの協力を行うこと及びテント一千張を譲渡することを決定いたしました。  以上に加えまして、あしたから現地調査団を派遣して、マケドニア及びアルバニアの現地情勢、現地の難民の状況、現地のニーズ等を調査することといたしました。この調査団の調査結果を踏まえまして、我が国としてのさらなる貢献の可能性を早急に検討してまいりたいと思っております。
  226. 大脇雅子

    大脇雅子君 総理府に伺いたいのですが、このテント一千張というものは既に発送されたのでしょうか。いつごろ現地に届くのでしょうか。
  227. 嶋口武彦

    説明員嶋口武彦君) テント一千張をアテネに向けて発出するよう今最大限努力しているところでございます。まだ発出しておりません。できるだけ早く、今週の週末ぐらいまでには何とかアテネに着くように最大限努力しているという状況でございます。
  228. 大脇雅子

    大脇雅子君 阪神大震災の私どもの経験からすれば、仮設住宅のノウハウというものは非常に豊かに持っていると思われますし、医療チームの派遣とか食糧の援助等、でき得る限り早急にその支援をしていただきたいと思います。現地調査団の成果ができるだけ早く上がりまして政策化することを心から祈るものであります。  さて、その難民がコソボへどのように帰還するか、平和的に帰還をするか。NATOの地上軍の護送で戻っては私はさらなる緊張を激化させるだけだと思います。もはやバルカンの平和の維持ではなくてバルカン紛争の拡大の阻止へ向けて戦略的な目標が変わってきたと言われるほどであります。とりわけ、このコソボへの難民の帰還について外務大臣のお考えを聞きたいと思いますが、いかがでしょうか。
  229. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) おっしゃるように、平和的に解決してそして平穏に帰れれば一番いいんだろうと、こう思いますが、それはいずれにしても最終的にはミロシェビッチ大統領がイエスということを言ってもらわないとそれはできないわけでありますから、何とかそういうところに到達するように日本政府としても努力をしていきたい、こういうふうに思っております。  日本政府とすれば、当初から和平合意案をユーゴ政府が受け入れてほしいというメッセージを発出していたわけでありますが、残念ながらそれができなかったと。そういう中で、さらに話し合いが始まり、それが平和解決に資するものであれば日本政府としてもそういった努力に参加していきたい、こういうふうに思っております。
  230. 大脇雅子

    大脇雅子君 ミロシェビッチが必ずしもコソボへの難民の帰還に反対をしているという情報は新聞紙上でもないようでありますし、BBCとかCNNのメッセージなどによりますと、コソボへの帰還というものは肯定しているというふうに受け取られますので、我が国でも、情報が非常に少ない中で政策判断は難しいかもしれませんが、でき得る限り情報を公正に収集されまして、この問題を解決をしていかれるのに努力していただきたいと思います。  さらに、追加してお尋ねしたいのですが、ユーゴスラビアへのNATOの空爆で民間の被害が拡大しているというふうに言われておりまして、被害はユーゴ軍の十倍ぐらいだと。戦争の被害というものは女性や子供たちやそれからお年寄りに最も大きな被害を与えるということで、四月二日には子供たちのために空爆をやめてという日本での集会も行われておりますが、これについてはどのように把握しておられるのか、お尋ねをいたします。
  231. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 我が国は、NATOの加盟国ではないわけでありますので、NATOの軍事行動や現在の戦況について詳細な情報を有しているわけではないわけであります。  ただ、NATO軍の空爆は、目標の軍事的意味を吟味し、一般市民の犠牲を局限するために注意深く目標を抽出して行われていると聞いております。コソボにおける大量の難民、避難民の発生につきましては既に昨年秋以降、国際社会の懸念を引き起こしており、まさにこのような人道的惨劇を防止し、国連安全保障理事会、G8によるコソボ紛争解決のための粘り強い外交努力が払われてきたわけであります。  私も空爆が終わってほしいと思いますが、その前提として、ぜひユーゴ政府がまさに民族浄化と言われるような行為はやめて、国際社会が納得するような和平案を受け入れてもらいたい、そういうふうに切に願っているわけでございます。
  232. 大脇雅子

    大脇雅子君 私も、ともかく平和的な解決ができるように国連とか国際組織とか人道組織、NGO、すべてが力を合わせる時期だと思っております。我が国政府の積極的なイニシアチブを期待いたしたいと思います。  さて、残りの時間に私がお尋ねをしたいのは、現在設置されております小渕総理の私的な懇談会と言われる産業競争力会議についてであります。  通産大臣にお尋ねいたしたいのですが、本会議の目的、そして経済戦略会議との関係、そしてこの産業競争力会議の委員の選任の仕方というものについてお尋ねしたいと思います。
  233. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) まず、経済戦略会議との関係についてお尋ねですが、経済戦略会議は約七カ月間にわたりまして議論を行いました。その成果として「日本経済再生への戦略」と題する答申を取りまとめた場でございます。その答申は、政府が経済再生を図っていく上での基本戦略となるものと考えております。これに対しまして、今般の産業競争力会議は、答申を取りまとめる場ではなく、産業競争力の強化に向けて官民のトップが自由な意見交換を行う場でございます。無論、本会議においても経済戦略会議の答申を踏まえて議論をしてまいりたいと思っております。  次に、委員の選任でございますが、本会議の趣旨は生産性の向上による産業の競争力強化でありますが、これは産業界と政府がそれぞれの役割分担に従い協力して初めて解決できる問題でございます。すなわち、産業界においては過去のしがらみに拘泥することなく各企業がおのおの真に競争力を有する分野、これを認識した上で生産性の向上に努めることが要請されます。他方、政府の役割は、規制緩和等を含めまして産業が競争優位を確保できる環境を整備することでございます。  したがいまして、本会議は産業界、政府のそれぞれの担う役割について双方向で意見交換することが不可欠であるとの認識で設立されたものでございまして、このためメンバーを政府側と産業側から選定いたしたわけでございます。
  234. 大脇雅子

    大脇雅子君 この会議の一つのテーマとして、過剰な設備投資とか雇用を軽くしていくということが言われていますが、労働界の代表が全く入っていないというのは何か理由があるのでしょうか。
  235. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 入っていないことは事実でございますが、個々の政策を推進する際には、当然のことながら関係各方面の意見を聞くことが予定されております。特に雇用の関係については、政労使雇用対策会議等の枠組みを活用してまいりたいと考えております。
  236. 大脇雅子

    大脇雅子君 この産業競争力会議によりますと、経団連の今井会長など、失業率は一時的に高まっていくだろうというような発言をしておられます。今般、失業率は四・六というふうにじりじりと上がってきているわけですが、こうした会議の方向などを踏まえてこれからの失業率がどのように展開していくかという見通し経済企画庁長官にお尋ねし、かつ雇用のいわゆるリストラというものに対して労働大臣としてはこの産業競争力会議でどのようなスタンスで臨んでおられるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  237. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のように、二月末で失業率が四・六%に上昇いたしまして、完全失業者という数字では三百十三万人というように増加いたしました。これから産業が再生していく段階では一部の企業でリストラが進むことはやむを得ないことでございまして、このためにある程度失業率が上昇するときもあろうかと思います。  今回の増加内容を見ますと、非自発的失業者、つまり会社を解雇されたとか事業が閉鎖になったとかというような方はむしろ減っておりまして、自発的な失業者がふえております。経済が回復するときに必ずこういう現象が起こるのでございまして、さらに有利な職場を求めて自発的に失業する人が出てくることもございます。  こういうことを踏まえて、政府といたしましては十分な雇用対策の予算を緊急経済対策でもとっておりまして、これを適時発動しながら失業をできるだけ抑えて、経済の再生、産業の再生に導いていきたいと考えております。
  238. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 時代時代でその時代を担っていく産業、主役というのは交代をするわけでありまして、時代的役割を果たしつつある企業からこれから新しい時代を担っていく企業に適宜適切に優秀な労働力が移動するということは、労働政策上も担保していかなければいけないわけであります。  ただし、企業の競争力を回復していくために、いろんな選択肢がありますけれども、一番最後にとられる選択肢が雇用調整だというふうに考えております。その雇用調整も、企業の競争力をつけていくために労働者が労働能力をバージョンアップしていくということもそれ自体競争力をつけていくことになるわけでありますから、いろいろな手法を使って競争力をつけ、そしてできる限り雇用は守っていくという姿勢をぜひ経営側には貫いていただきたいというふうに思っております。
  239. 大脇雅子

    大脇雅子君 時間が終わりましたので、ありがとうございました。
  240. 平野貞夫

    平野貞夫君 決算全般的質疑の中でございますが、憲法問題、わけても憲法改正の手続制度の整備につきまして質問をさせていただきたいと思います。  最初に、法制局長官に集中的に御答弁をお願いしたいと思いますが、まず憲法改正の手続の第九十六条を読んでみます。   この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。   憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。 こういう規定でございますが、長官、この規定は改正の手続を規定したものでございますが、同時に、国民に提案してその承認を経るという、いわば国民の憲法制定権という国民主権の根本の規定といいますか、根源をなすものだというふうに理解してよろしいか、ちょっとお教えいただきたいと思います。
  241. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 憲法の制定自体とその制定された憲法の規定に基づく改正行為との間には、国民主権との直接性では若干距離があるのではないかとは思われますけれども、基本的には委員指摘のとおりでございまして、ただいま御指摘になりました憲法九十六条自体におきまして、全国民を代表する者で構成される議院がまず賛成をしてそして国会がこれを発議する、そして主権者である国民に提案してその承認を得る、こういう規定をしているわけでございますから、主権が国民に存することを宣言した憲法前文などの規定とともに憲法における国民主権の原理を体現したものであるという点においては、おっしゃるとおりであると考えます。
  242. 平野貞夫

    平野貞夫君 わかりました。  次に確認したいことは、現実の憲法の改正がこの規定だけで可能かどうか。すなわち、この規定は直接法律をつくれということは書いていませんが、例えば国会で発議される場合あるいは審議される場合、それぞれ今の国会法のままでは無理があると思いますし、国会法の整備を必要とすると思います。あるいは国民投票という制度は明らかにこれは権利義務関係にかかわると思いますが、この辺について、国民投票法とかあるいは国会法の改正がどうしても要るものではないかと思うんですが、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  243. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 御指摘のとおりであると考えます。すなわち、例えば国民投票の投票日をどうするとか、投票権者の範囲をどう定めるとか、あるいは投票方法をどう定めるとか、このような国民投票の詳細につきましては憲法は規定していないわけでございますが、現実の運用としてはどうしても不可欠の事柄でございますので、法律でこれを定める必要がある、現行法制だけでは動かないという点は、御指摘のとおりでございます。
  244. 平野貞夫

    平野貞夫君 非常に明快なお答えでございまして、よくわかります。といたしますと、国民投票法とか国会法の整備というものは、いわば憲法体系の一環あるいは憲法と一体のものだ、この規定と一体のものだというふうに理解いたします。  さて、憲法改正にかかわる国民投票法あるいは憲法改正の審議にかかわる国会法というものが整備されていません。憲法が制定されまして半世紀以上たちます。間もなく五十三年になると思いますが、本来なら、これは制定と同時あるいは制定直後速やかに整備されるべきものだと思います。諸外国で、憲法を定めて改正の手続を必要とする法律の整備を半世紀も放置しているケースは私の調べたところではありません。  そこで、長官にもう一つお聞きしたいのは、この実態は憲法体系の不備というふうに認識していいのか、あるいはいろんな政治情勢がありましたから仕方がないことというふうに思うべきか、このまま放置していいのか、整備すべきものなのか、そこら辺について法制局としての御意見を承りたいと思います。
  245. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいまのお答えでどういう言葉を使うのが適切か、ちょっと戸惑うわけでございますけれども、現在なぜ国民投票その他、憲法改正手続法が整備されてこなかったかということの理由を考えてみますと、内閣としては、国の基本法である憲法改正の具体的内容についての国民の合意が形成されてはいないというふうに今まで考えてきた、今も考えているはずでございます。  したがいまして、現段階で憲法を改正するという考え、正確に申しますと、内閣の立場からは国会に対して改正の原案を提出する、議案を提出するという、正確にはそういうことでございますけれども、そういう考えは持っていないということは、その時々の総理が本会議その他の答弁で申し上げてきたとおりでございます。こういうことから、憲法改正が具体的な政治日程にのせられるには至らなかったということがあったと思います。  したがいまして、現段階ですぐに整備するかどうかということにつきましては、憲法改正に関する国会での御議論、これはどうも伺うところによりますと、まさにそれが行われようとしているやに漏れ聞いておりますので、その御議論を踏まえて検討されるべき問題であろうというふうに考えております。
  246. 平野貞夫

    平野貞夫君 私は、この問題を政治的あるいはイデオロギー的に取り上げようとしているわけではございませんでして、憲法を改正しようという国民の機運があるとかないとかということじゃなくて、憲法そのものの体系の整備として当然必要なものではないか、あるいは学者の先生方の本には、国民の憲法制定権の整備として国民投票法なり国会法の改正が必要じゃないかと論理的に取り上げているわけでございますが、ちょっとそこら辺、私は、憲法改正の動向とこの問題をくっつけて考えたくないという意見を持っております。  そこで、五十年以上、半世紀以上この問題が放置されていたことは、憲法改正の機運がないということじゃなくて、日本の法体系、国家統治機構のシステムの欠陥だと思いますし、その責任は政治にあると思います。法制局にあるとは思いません、政治にあると思いますが、こんな五十年以上も放置してきたということは、もちろん国民全体の問題もありますが、まず九十九条の憲法を尊重擁護する義務に反しているのじゃないかと思うんですが、その点はどうでございましょうか。
  247. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 九十九条の憲法尊重擁護義務に反するのではないかと、こう言われると非常につらいわけでございますけれども、先ほど申しましたように、現在、憲法改正手続に関する法制が整備されてこなかったのは、先ほど申しましたようなやはり憲法をめぐる政治情勢というものがあったことは、これはもう事実であろうと思うわけでございます。  したがいまして、現在その法制をどうするかということにつきましては、やはり憲法改正に関する、今まさになされようとしている国会の御議論を踏まえて検討すべき問題であると考えておりまして、いまだその整備がなされていないからといって、今までの経緯を踏まえますと、それが憲法九十九条の憲法尊重擁護義務に反するものであるということには当たらないんではなかろうかと思うわけでございます。
  248. 平野貞夫

    平野貞夫君 長官、私は論理として議論したいんですが、憲法改正の気運が盛り上がる、そういうことがいろいろ議論される中で手続の整備をすればいいというのは、ちょっと私は政治的意見が入り過ぎていると思っています。私はそこを切断して、論理で答えてくれということでございます。  それから、憲法を尊重しろということは憲法の目的の実現に努力する義務もありますし、憲法の実施を確保するために努力する義務もあると思います。そういう意味では、率直に言いまして、私は大変な欠陥をそのまま日本国家というのは放置しているものだという問題意識を持っているわけであります。  そこで、過去、法制局として憲法改正手続の整備について、これは制定されてからで結構でございますが、内閣とか総理大臣に何か意見を申したことがありましょうか。昭和二十七年から八年にかけて吉田内閣のときにこの整備の準備をしたということは私も承知しておりますが。
  249. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 文献資料によりますと、昭和二十七年ころに自治省におきましてそういう憲法改正国民投票法案の草案的なものが立案されたというような文献がございます。しかし、それが国会に提出されなかったことは事実のようでございます。  また、これも文献で恐縮でございますけれども、その前提として選挙制度調査会の答申が内閣に対してなされたということもあったようでございます。しかし、それを踏まえまして内閣法制局において現実に国会への提出を踏まえて正式の審査をしたということは記録には残っておりません。もう随分前のことですから、記録に残っていないということで御容赦いただきたいと思います。
  250. 平野貞夫

    平野貞夫君 内閣法制局設置法三条第三号には、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」という規定がございます。私は、この規定は、聞かれなくとも、憲法との矛盾とか憲法の欠陥とかあるいは法律の解釈、調整等について、内閣法制局というのは意見を積極的に述べるという規定だと思います。  そういう点からいいますと、憲法の欠陥について五十年も黙視していた、政治の厳しいところはあったと思いますが、その点については私も内閣法制局にはそれでよかったのかなということを言いたいんです。これは答弁は要りません、時間があと六分しかございませんから。  そこで、野中官房長官にお尋ねいたします。  端的に申し上げまして、これからは政治論になります。昭和二十年代の終わりごろ、極端な再軍備論がありました。それが結局憲法改正の整備をさせなくしたと思います。そして、その後占領体制の後遺症がなかなか抜けなくて、また教条的な護憲論もあって、私はこの半世紀以上憲法の欠陥の部分は封印をされたままになっているのが実態じゃないかと思います。これをそのまま放置しておけば、私は大変な問題、すなわち国民が憲法を制定するという権利が行使できないままになる、こういう重大な問題だと思います。これは、ある意味では戦後問題の最大の問題だと思っております。  野中長官はしばしば、戦後問題は今世紀中に処理したいということをおっしゃっておるんですが、大変大事なことだと思うんです。この憲法改正の手続の整備、すなわち国民の憲法制定権が行使、発動できる制度をつくることこそ一番大事な対処法じゃないかと思うんですが、そのための調査なり検討なりを関係方面に御指示する御意向はございましょうかどうか。
  251. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 憲法改正につきまして、法整備のあり方につきまして、今、平野委員から切断した論理というものをお伺いし、また改正と法整備のあり方というものをお伺いいたしました。  ただいま大森内閣法制局長官からもお答えをいたしたわけでございますけれども、現在、内閣といたしましては、国の基本法でございます憲法の改正の具体的な内容につきましての国民の合意が形成されているとは考えておらないところでございます。そういう現在の段階におきまして、憲法を改正するという考えは持っておらないところでございます。これは平野委員もよく御承知の上で法整備の話をしていらっしゃるわけでございます。  また、過去におきましても、法制局長官から申し上げましたように、基本的にこうした認識のもとに、内閣において憲法改正を政治日程にのせることはしてこなかったものと私は承知をいたしております。  御指摘の法整備につきましては、憲法改正に関する国会での御議論なども踏まえて検討をされるべき問題であると考えております。いまだその整備がなされていないということをもちまして、九十九条の憲法尊重義務との関係でむしろ問題があるのではなかろうかと思うわけでございます。  国会等におきましても、憲法はそれぞれ各条項に基づきまして自由に検討され、そしてそういう中において国会の御議論の集約や国民の合意が得られていくものではなかろうかと思っておるわけでございます。
  252. 平野貞夫

    平野貞夫君 ことしから与党になっておりますので、これ以上お尋ねはしません。  最後に、宮澤大蔵大臣、総理経験者として御感想をお聞かせいただきたいんですが、最近の世論調査ではいわゆる平和原理あるいは基本的人権、そういう国民主権の基本原理を発展させて生かすという前提の上での憲法の見直し論はもうほとんど五〇%以上になっておるんです。そういう状況の中で、やはりこの際、早い機会に、今世紀中にこういったものは整備しておかなきゃならないというふうに私は考えておるんですが、ちょっと御感想をお聞かせいただきたい。
  253. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前段の法制局長官との質疑応答でございましたが、確かに平野委員の言われますことは、日本国憲法の法体系としてこの九十六条に基づく所要の法はつくっておくべきであった、本来そういうものであろう、私はそういう御議論、純粋にはそうかもしれぬと思っております。  実は、憲法がつくられまして五十年でございます。大体私は法を知っておるつもりですが、その五十年のいかなる段階においても、きょうはなおさらそうでございますが、この九十六条の法整備をしようと、国民投票とか国会法とかということを提案いたせば、恐らくこれは必ず憲法改正をするしないという議論に今となってはつながらざるを得ないだろう。お互いに法律を冷たく考える立場からいえばそんな理屈はないわけですけれども、今までないものを何でここで整備するのかねということは、やっぱりやる気があるんだろう、そうでなきゃ要らないじゃないかという議論を恐らく呼び起こすことは多分間違いない。余り合理的なことでないと思いますが、私は政治論をすればよろしいわけですから、そういうことになるだろう。そうすると、その法律そのものが通るか通らないかという問題になりかねないのではないか、実は法律的には関係のない話であるかもしれませんが、そういう心配を私は持ちます。  それから、後段におっしゃいましたことは、確かにそういうふうに最近微妙な変化があると思います。あると思いますが、しかし、そういうことで改正を議論することになりますと、必ずそれに合わせて九条の問題が出てくる。これはどうも不可避である。としますと、実態はいろんなところを変えたいことは確かにあるんだが、しかし、九条をそこから除外するということができませんので、現実の議論としては。その憲法改正の論議というのが再び大変なことになるのではないだろうか。  今ここのところは静かになっておるといいますか、かつてのようなことではない。国民が感じられていることはほかの、公害だとかいろんなことにあるんですけれども、しかし、憲法改正が一度議論になれば九条というものにさわらないで通るということはできないのではないか、私はそういう感じを持っております。
  254. 平野貞夫

    平野貞夫君 一言お願いします。貴重な時間、恐縮でした。  私は、この憲法の欠陥をそのまま放置しておることが今日の日本国家の衰退の原因だと思っております。ですから、極めて深刻な問題だと思っております。  それだけ申し上げて、終わらせていただきます。
  255. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 参議院の会の岩本荘太でございます。本日、一日目の最終の質問予定者でございます。時間も大分詰まりましたが、ひとつ最後までよろしくお願いをいたしたいと思います。  私は、財政構造改革といいますか、凍結されたわけでございますけれども、国の予算のいわゆる赤字国債依存体質というものに関しまして、何点か質問させていただきたいと思っております。  この問題につきましては、もう昨年来いろいろ議論を尽くされ、今回の予算委員会等でも盛んに議論されたかとは思います。この先は、あとは実行あるのみといいますか、結論を待つのみという議論もあろうかと思います。私もかねて総理並びに大蔵大臣にもこの問題について御質問させていただきました。ニュアンスはそれぞれ違いがございますけれども、この問題は大変大事な問題であるという認識はいただいたわけでございます。そういう意味で現下の大事な問題であるわけでございます。  私は昨年参議院議員に当選したわけですが、その際に、今の政治が何となく一般国民にわかりづらい、このわかりづらいところを何とか橋渡しをしたいということで、そういうことを公約にして出てきたものですから、ぜひその点で、国会で議論されたということ以外に一般国民にわかりやすいように教えていただきたい。私を一般国民というようなことで御答弁いただけたらと思う次第でございます。  一般国民から考えますと、この財政問題、世の中大変だという声は盛んに聞くわけですけれども、一般の皆さんが見えるのは、例えば平成十一年度末で累積の残高が国で三百二十七兆円ですか、地方と合わせて六百兆円という数字だけであるわけでございまして、何ら痛みを感じていないというか、痛みは感じさせられていないわけでございます。  当然これは税金等で取られるわけでないですから、数字だけの問題で、大変だなという認識だけだと思うのであります。今現在の生活が変わるわけではないというのが実態ではないのか。そんなものがあるから、赤字だ赤字だと言ってもたたけば出るんじゃないかというような認識から、景気対策やら赤字国債を出して景気景気だと、こういう状況になっているのではないのかなというような気がしてならないわけでございます。  その辺で、先ほど申しましたように、わかりやすいようにいろいろ分析したいのでありますが、私も能力がなくてなかなかできませんし、いろいろとお聞きしてもわからない面もございますので、この辺、私なりにまとめて私なりの解釈で質問をさせていただきたい。  まず、その点で、赤字国債というのが後年度に具体的にどんなふうに負担が課せられてくるのか。予算のベースですと、利率が違うからとかシンジケートをどう組むかとか、なかなか出せないんだというようなお答えばかりなんですが、決算の方であれば、平成年度は約十八兆円、十八兆四千億国債を出されたわけでございますので、これの具体的な返済計画というのが年次的にどうなっているのか。十年度でいうとその後がどうなっているのかということを教えていただけると思うんですが、その点をまずお聞きしたいと思っております。
  256. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 平成年度特例公債発行額は八兆五千百八十億円でございますが、これらにつきましては平成十一年度に六千四百億円、平成十三年度に六千九百億円、平成十五年度に九千二百億円、平成十九年度に五兆四千六百八十億円、平成二十年度に八千億円の償還を予定いたしております。  国債の返済につきましては、特例国債でありましても建設公債と同様、基本的には六十年償還ルールに基づきまして償還期限の到来したものから順次その一部を現金償還するとともに、残額については借りかえを行っていくことといたしておりまして、平成年度特例公債につきましても、ただいま申し上げました償還期限が到来した際に原則として六十年償還ルールに基づいて借りかえを行うこととなっております。
  257. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  私は、建設国債も合わせて十八兆と申し上げて、今特例国債が八兆円という数字でございましたが、御説明の中でも取り扱いは同じようでございますので、同じように考えていいんじゃないか。  そう思いますと、八兆円であったものが二年後に六千億円、今のお話の経緯でずっといっているわけです。そうしますと、例えば、平成十一年度の国債三十一兆円というのはほぼ四倍、そのぐらいの数字になってこの先ずっと続いていくんじゃないかと思うんです。四倍といえば今お聞きした計算では約二兆円になるんですか、このぐらいの後年度負担ということになるんだと思うんです。  一方、これは税収の増大あるいは歳出の切り詰めで賄うことになるんだろうと思うんですが、財政再建をするためにはそういうものに依存せざるを得ないと思うんです。  成長率はことしは〇・五%を予想されているというようなお話でございますが、一般的に二%の経済成長で約一兆円の増収、四%で二兆円、こういうようなお話で、先般の経済戦略会議でも日本の潜在的な経済成長率は二%というようなお話でございましたが、二%であればとても単年度の国債を返すにも足らないんじゃないかなというような事態が現実ではないか。そうしますと、日本の持っている実質成長率でもなかなか回復しないということは、このまままた来年度赤字国債を発行せざるを得ないんじゃないか。  これは先般、大蔵省のホームページでちょっと資料をとらせていただきましたら、中期財政試算というのを出されておりまして、いわゆる予算の伸びのパーセント、あるいは名目成長率一・七五%と三・五%というようなことを書かれておるわけでございます。  それにしましても、平成十五年度、二〇〇三年度までいわゆる公債費に期待されているのがことしと変わらない。例えば零%の予算の伸びでもやっぱり三十兆円ぐらいの国債に頼らなきゃいけない。こういうような状態であるわけでして、恐らく国民の方々も、これはホームページですからわかる人も見ているかもしれませんけれども、この辺がよくわからないと思うんです。  例えば十五年度は、その先はよくわかりませんが、この資料によりますとこういう数字でございますけれども、大体平成十五年度まで今の状態でいけば同じような公債依存になるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  258. 坂篤郎

    政府委員(坂篤郎君) お答えいたします。  ただいま御指摘の中期財政試算というものでございますけれども、これは私どもが作成いたしまして国会に提出させていただいたものでございます。それをまたホームページにも載せているわけでございますが、これは中期的な財政運営を進めていく上での手がかりの一つと申しましょうか、そういったものとして、さまざまな仮定を置きまして極めて機械的に計算をしているというものでございます。  実は二つ、二枚ございまして、片方が名目成長率一・七五%を前提にした場合、もう一つの方が名目成長率が三・五%というのを前提にした場合というふうになっておりまして、そもそもこういうふうに二つ置いてあるということからして、その性質もおわかりいただけるかと思います。  また、先生今御指摘になりましたように、一般歳出の伸び率につきましても、一般歳出の伸び率をゼロ%、つまり今後平成十五年まで一般歳出をふやさないというケース。十一年度が四十六兆八千億円強、四十六兆九千億円ぐらいでございますので、それをずっと横ばいにしていくケース。それから、一%ずつ伸ばしていくケース、二%ずつ伸ばしていくケースといったぐあいに仮定を置いた場合にどうなるかということでございます。  あるいは、税収などにつきましては、原則として名目成長率に弾性値一・一、つまり名目成長率が一・七五でしたらそれの一・一倍のパーセントで税収が伸びると。ただ、これも年によりまして今からもうわかっている事情というのがございまして、そういったものは勘案して計算をしてございます。  そういうわけで、先ほどのお答えでございますが、そういういろいろな機械的試算であるということがございますので、さまざまな政策的な措置とか、あるいはどういった措置をこれからとるかといったことは入っておりません。  したがいまして、十五年度になりましたら国債の発行額がそのとき幾らになるかということは、絶対こうなるというものでは必ずしもないんですが、機械的に試算すればこうなるということでございます。
  259. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 そのとおりだと思います。  ただ、機械的にということは、事務方として今考えられる一番可能性のある仮定ではないかと私は思っているわけでございまして、それをどうするかというのは、これはまさに政治の問題であろうと思います。このような状況の中で、ただ、これもやっぱり数字の問題ですので、こういうことを言っても、本当にそれでも大丈夫じゃないかなと国民が考えるとそういうムードが広がっちゃうわけでございます。  何がいけないのか私なりに考えますと、赤字がずっと続く、どんどん膨らんでいくということが国民が考えても一番わかりやすいことじゃないのかなというような気がするわけでございます。  私は借金しちゃいかぬとは言いませんし、国民個人個人も住宅を買う際は年収の何倍かのローンを組んでやるわけですが、それにしてもいつかはゼロにするという大まかな考え方を持ってローンを組んでいるのが実情ではないかなと思うわけでございます。そういうことは国の財政でも当然考えなければいけないことではないのかなと。  したがって、今お話のありましたいろんな仮定があるかもしれませんが、まさに政治の方から膨らんでいくものをどうにかして減らすという考え方を導入しない限りはなかなか国民が納得しないんじゃないか。  その辺で、これからの返済といいますか、赤字体質をどう増加から減少に持っていかれるのか。経済戦略会議等では、プライマリーバランスというんですか、十年先ぐらいにそうしたいというようなことを読ませていただきましたけれども、それが具体的にどうなるか、私の不勉強のせいもあってよくわからないんですけれども、その辺を大蔵大臣にちょっと明快にお話しいただけたらと思っております。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘の点は承ってよくわかりました。ごもっともだと思います。  もちろん借金はない方がいい。基本的には借金なしで済めばこれにこしたことはないというところはもう明らかでございますけれども、現実にはそういうふうにまいりませんから、殊に我が国の今日のような状況はそうはまいりませんから、大きな国債を出しておるわけでございます。したがって、将来の負担もふえてまいりますが、幾つかのことが申し上げられると思います。  それは、我が国の今日の経済力あるいは将来を展望しての経済力でどのぐらいの国債発行あるいは国債の累増に耐え得るかという問題でございます。極端な例は、EUをつくりましたときに、毎年の国債がGDPの三%を超えてはいけないとか、あるいは累積は六〇%であるとか、非常に厳しいことをとにかく入学試験のようにいたしました。とてもああいうわけにはまいりませんが、しかし我が国のこれだけの経済力でどこまでの毎年の赤字公債の発行あるいは累積に耐えていけるかという問題でございますけれども、今の日本及び将来を展望しまして、少ない方がよろしいには決まっておりますけれども、耐えられないような借金をしつつあるというふうには私自身は考えておりません。  それには幾つか理由がございますが、基本的には我が国のこれからの経済力というものを考えているからでございます。  よく個人の場合の借金と国の場合の借金とが議論されるわけでございまして、将来子孫に負担を残すという話がございますが、ここはよほど注意して申し上げなければならないのですけれども、文字どおり我々の同胞の子孫に残すのであって、外国人に残すわけではございません。そして、子孫で申しますと、自分はおやじから二億円の国債を相続したということについて恐らく文句を言う子孫はいないだろうと思います。金融資産として二億円の国債をもらったということは決して迷惑には我々の子孫は考えないだろう、その国債が十分値打ちを持って、また利払いが行われている限りは。そういう意味では、個人の借金というものとは実は分けて考える必要があるであろうということが一つございます。  ただ、そのためには、その国債が十分に市場価値を持ち、かつ金利が払われているということが前提でございますから、これは一番大事なところでございますが、今我が国に関します限り、国債を三十一兆円出そうとしておりますが、国債の発行は余り困難をいたしておりません。むしろ、イールドで申しますとパーバリューよりは低い、つまり国債の価格の方が高いというふうに取引されております。  これはただ、現在民間の設備投資の意欲がないものでございますから、そういう意味で楽をしておると申しますか、国債だけが出ておるということで、競合いたすようになりますと当然高い金利を払わなければならないことになりますし、民間の経済活動を圧迫することになりますから、これはそれ自身で問題があることになろうと思います。ただいまは大変低い金利で、一・八とかいうような全く、めったにないような金利で借金をしておりますから、市場での流通にも問題がございませんが、民間の資金需要が出てくればこう簡単にはいかないということだと思います。それが一つでございます。  それからもう一つは、これは大事な点でございますが、おっしゃいましたように、毎々予算に国債費というものが当然あるわけでございます。それは大体経験的に歳出の二割ぐらいでございますから、大蔵大臣の立場で申しますと、全体の歳出の中で二割は国債の利払いに、償還に使わなきゃならないということは、これが丸々あったらなあと考えることはもうそれはまことに本当にそうでございますから、そういう意味ではつらいところがございます。プライマリーバランスというのは、それとその年の国債発行が同じになればいいではないかということと思いますけれども、ただいまは金利が非常に低いものでございますから、これだけ出しても国債費というのは意外に大きくなっていない。それは実は金利が低いということに助けられておるわけでございます。  それから、もう一つ申し上げた方がいいと思いますが、大体そんなところが申し上げるべきことかと思います。
  261. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 どうも御丁寧にありがとうございました。  私も、子孫に残すということについてはそれほど危惧は、危惧といいますか、それほどの認識はないんですけれども、子孫に行く前に……
  262. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと失礼いたしました。もう一つお答えさせていただきます。  お答えをするつもりで忘れておりましたのは、これだけの国債がどんどん大きくなるのかという問題については、私はやっぱり経済成長がプラスになっていきまして少しずつ税収がふえる。ただ、四十七兆の税収でございますから、先ほどのように二%の成長が仮にできたとして、弾性値を一・一としますと二・二でございますから、幾らも自然増収というものはない。ただ、マイナスにはなりませんから、私はその限度において国債発行額を少しずつでも減らしていける、そういう経済運営が大事なのではないか。  失礼いたしました。
  263. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 もう時間も参りました。まだ質問があったんですけれども、大変御親切に御説明していただきましたので、またよくかみしめまして、また次の質問ができれば質問させていただきます。  きょうはこれで終わります。
  264. 久世公堯

    委員長久世公堯君) 本日の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明七日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十九分散会