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本岡昭次君 官房長官として、道義的責任か、そうであるのかないのかというところに踏み込んでいくことをちょっと逃げておられるようで、ここでまた押し問答しても肝心な
質問ができませんから、またそれは別の機会に譲ることにします。
私は、道義的責任というレベルでこの問題を解決しようとする限りいつまでもこれは続いていく、官房長官が二十世紀に起こったことは二十世紀できちっと片をつけようじゃないかということであるならば、私たち自身がそこに一歩踏み込まなければ問題は解決できないということを強く申し上げて、この問題はまた次の機会に議論をしたいと思います。というのは、きょうは
決算委員会でございますから、金目の問題に入らぬといかぬと思いますので、それでは
質問を変えていきます。
そこで、今、女性のためのアジア平和国民基金の事業が韓国、台湾、フィリピンを中心としてうまく進展しているのかどうかという問題なんです。
私が九年前に予算
委員会で
質問をしたときは、政府は、いや、そんなことは国はかかわっておりません、
民間の方がそういう慰安婦を連れ歩いてそういう慰安所をつくったということは聞き及んでおりますがということで完全に逃げたんです。
最初そこからスタートしたんですから。そうでないだろうと言って私が資料を集めてきて詰めて、海部総理がそれではもう一遍
調査してみましょうということで、一九九一年、九二年と
調査をして、先ほどおっしゃる当時の河野洋平官房長官がやはり
日本の軍隊が関与したということをそこで初めて明らかにして一歩前へ行ったんです。僕はそのときは高く評価したんです。
しかし、問題はそれから先が悪かったわけなんです。何が悪かったかというと、国が関与したけれ
ども、国の責任で処理できないから国民から募金をして、その集めた募金で償い金として慰安婦の
皆さんにお渡ししましょう、こういう政策を打ち出したことが、今度は、せっかくそういう国の責任を認め、国の関与を認め、事実をある程度明らかにして、
日本の政府として総理のおわびの手紙まで出してというところへいったにもかかわらず、被害者の方が受け取らない、あるいは各国の被害者の
皆さんを応援しているNGO等が拒否をして裁判に訴えてくるというふうなことになっておりまして、まことに私にしてもこれは不幸なことだと思うんです。その根源は何かというと、先ほど言った道義的責任を我々が乗り越えることができるのかどうかということにかかっているんです。
それで、国民基金がいろいろその後やってきました。一九九五年に政府は運営経費として補助金四億八千百四十八万円を計上しました。国民基金にです。
この
お金は、今も毎年四億八千万円台の
お金を国民基金を運営するために支出いたしております。そして、今度は、慰安婦の
皆さんにお渡しする償いの
お金は国民から集めた
お金で渡すというんです。それで、国民から集めた
お金は五億を切っておるんです。
簡単に言えば、この四億八千百四十八万円という補助金を出すならば、四億八千万、その
お金を慰安婦の
皆さんに渡せば国の
お金が渡ったことになるんですよ、渡す
方法を法律できちっと決めて。ところが、そういうごまかしをやってしまったんです。国民基金という財団法人を運営するための補助金は国から出す、慰安婦の
皆さんに渡す分は国民の基金だと。こういうことをやったものですから、うまくいかなくなってしまった。せっかく総理大臣のおわびの手紙も、恥ずかしいことに受け取らないというふうなことをされるような
状況になってきているんです。
そこで、政府はさらにこういうことをやりました。一九九六年七月から、一般会計の外務省予算から十年間で七億円
規模の
財政支出を国民基金
関係事業拠出金として行って、元慰安婦に対して、韓国、台湾の人には三百万円、フィリピンには百二十万円を償い金と同時支給する医療・福祉支援事業ということで、その実施を始めたんです。また、これは外務省を通して国の予算を一般会計から渡すんです。
ところが、それは
皆さん方に対する償いの
お金ということじゃなくて、医療・福祉支援事業というふうな回りくどいことをして、年がいっておられるからお医者さんに行くこともあるでしょう、助けましょう、年がいっておられて住む家がなかったらお困りだろうから、家を建ててください、また家を修理する
お金が要ったら渡しましょうというふうなことで渡したんです。
私はそのときも、七億円も出すのなら、なぜその
お金を従軍慰安婦の
皆さんにお渡ししないのかと言ったんですが、渡さない、同じ国から金が出ているのに。こういう間違いをやった。
そして、現在どうか。韓国、フィリピン、台湾、
調査によって約三百人の方が特定された。そして、この三百人に対して償い金と医療・福祉支援事業を進めてきて四年経過しました。
平成十一年の三月三十一日、やっと三百人のうちの百十七人の被害者が償い金と医療・福祉支援を受け取られたようでありますが、半数以上の方はこの受け取りを拒否されている。そして、さらにその上に、韓国では一九九八年四月、国民基金の支援を受けた七人を除いて、韓国政府自身が償い金と同額の
日本円に直すと二百万円のいわゆる政府支援金を元慰安婦の方に支給し、
日本政府に誠意ある謝罪と責任ある措置を求めて国民基金に事業中止を要求したんです。
だから、それ以上、韓国に対してできなくなってしまったんです。償い金の支給をしてもらっては困る、国民基金のその事業は中止してもらいたいということがあってできなくなった。そしてまた、その後、先ほど言った外務省が出してきていた医療・福祉支援事業の
お金も、韓国政府に対して、これを何とか使ってもらいたい、そしてこれは個々人に渡すというよりも、施設をつくって、そこをその人たちが使えるようにしてくださいということで、韓国の赤十字を通してそういうことを依頼していった。しかし最近、韓国の赤十字もそういうことはできませんといって拒否の返事が返ってきた。こういうふうにして八方ふさがりになっておるんです、国民基金のその方の仕事も。にもかかわらず、官房長官はまだこれを続けるとおっしゃる。
そして、同じように台湾でも、一九九七年五月に、償い金と医療・福祉支援事業を拒否されている元慰安婦、被害者の方々に、台湾当局が毎月六万円の生活支援金と、償い金同額を貸付金として皆にお渡しした。
日本政府と話し合って、その
お金がきちっと道義的な
お金じゃなくて、これはやはり国に法的責任があるという立場で
お金が出てきたら後で返してくださいという貸付金という名目で台湾の人にみんなざっと渡したんです。だから、台湾の方はそれをもらったからもうそれでいいと。それで困って、先ほど言ったように、何とか受け取ってくださいと広告を出したんです。私は、こんなのは
日本の恥の上塗りだと思うんです。
また、フィリピンでも一部の慰安婦の方は、フィリピンが一番たくさん受け取っておられるようですが、
日本国民の善意の償い金は受け取りますと、ありがたくいただきますと。しかし、あくまで
日本政府の公式謝罪と補償を要求するために総理のおわびの手紙は受け取りませんと言ってそれを拒否している、それで裁判に訴えている、こういうこと。
そして、フィリピンの人権
委員会というのが
国会の中にあるんですが、そこが
日本に対してきちっとした国の法的な補償をやってもらいたいというふうな決議を
国会の中で上げるという
状況に今動いてきているんです。
官房長官、今私が時間をかけて申し上げましたけれ
ども、これは事実なんです。私はこんなところでうそは言えませんから。私は私なりにきちっと
調査をした上でやって、だから明らかに国民基金の仕事は行き詰まってしまっているんです。できなくなってしまっているんです。にもかかわらず補助金を、毎年四億八千万近い金をずっと出し続けるのですかという問題が
一つあるんです。行き詰まったら、やはりその行き詰まりを打開して、問題が解決する新しい政策を提示するということでなかったらこれはどうにもならぬじゃないですか。
例えはよくありませんが、水を飲みたくない馬に飲め飲めと言っても飲みたくないものは飲まぬという例えがあるように、よかれと官房長官がおっしゃったように、精いっぱい
日本としてやれることはここまでですと言って出したけれ
ども、やっぱり受け取れない、受け取らないということで膠着状態をいつまで続けるんだと。事態はだんだんと悪くなるばかりなんです。
だから、この国民基金の問題解決のやり方というのはこのあたりで一遍総括をして、改めてその被害者の
皆さんと
関係国と、どうしたらこの問題が解決できるのかということを真摯にやっぱり話し合うというところから始めなければ、
日本がよかれとやっても受け取る側の人が受け取れないという場合は、これは話し合いにならぬでしょう。やはりどうすれば受け取っていただけるのか、どうすればこの
お金を受け取られるのかという受け取る相手側の気持ち、相手側の
考え方、条件、そういうものと、私たちならここまでできますというものが話し合う。補償といったらみんなそうでしょう、漁業補償にしたって農業補償にしたって一方的にこっちから突きつけるものじゃないんです。だから、そういうふうなことをやらないでやったからこういう問題が起こったんだから、もう一度ここは出直すべきだ。私は官房長官は物すごい勇気のある方だと思っているけれ
ども、やっぱりこういうことにきちっと出直す勇気が要ると思う。
官房長官、今すぐとは言いません。やはりお互いによく
考えてみなきゃいかぬことがあると思う。私も十年間近くこのことをほとんど私費でやってきたんです、あれはばかじゃないかなと言われながらも。だけど、これは
日本の正義です。アジアと
日本、これからの二十一世紀、長いおつき合いをせないかぬのに、この問題もよう解決せんとやれたものじゃない。
だから、一度これを見直すために
考える、話し合う、一遍踏みとどまられたらどうですか。がむしゃらにどっどっとできもしないことを、その中で御苦労いただいた原文兵衛元議長、理事長がお亡くなりになりましたけれ
ども、随分苦しまれたと思います。私も二度三度会いましたけれ
ども、
本岡君、苦しいんだといつもおっしゃっていました。これしかないからこれをやるんだと、理解してくれと。だけど、ここまで来ればもう
考え直すときではないか。
官房長官、一遍
考え直そう、話し合おうということになりませんか。もうぎょうさん言うているのに、私はまだたくさん
質問せないかぬことがありますので、ひとつ
一言だけこの辺で。