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1999-08-05 第145回国会 参議院 経済・産業委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月五日(木曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員異動  八月三日     辞任         補欠選任      久野 恒一君     倉田 寛之君  八月四日     辞任         補欠選任      加納 時男君     阿南 一成君      倉田 寛之君     斉藤 滋宣君      森田 次夫君     佐藤 昭郎君  八月五日     辞任         補欠選任      佐藤 昭郎君     脇  雅史君      福山 哲郎君     川橋 幸子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 簗瀬  進君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 阿南 一成君                 小山 孝雄君                 佐藤 昭郎君                 斉藤 滋宣君                 末広まきこ君                 中曽根弘文君                 脇  雅史君                 川橋 幸子君                 長谷川 清君                 平田 健二君                 福山 哲郎君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        通商産業大臣   与謝野 馨君        労働大臣     甘利  明君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政府委員        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      山田 昭雄君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁国民        生活局長     金子 孝文君        経済企画庁調査        局長       小峰 隆夫君        大蔵大臣官房審        議官       福田  進君        通商産業大臣官        房審議官     林  洋和君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省基礎        産業局長     河野 博文君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        特許庁長官    伊佐山建志君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        中小企業庁次長  殿岡 茂樹君        労働大臣官房政        策調査部長    松崎  朗君        労働省労政局長  澤田陽太郎君        労働省労働基準        局長       野寺 康幸君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君    参考人        アサヒビール株        式会社名誉会長  樋口廣太郎君        日本労働組合総        連合会事務局        長        野口 敞也君        東北大学未来科        学技術共同研究        センター教授   大見 忠弘君        日本SOHOセ        ンター理事長   花田 啓一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業活力再生特別措置法案内閣提出、衆議院  送付)     ─────────────
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、久野恒一君、加納時男君及び森田次夫君が委員辞任され、斉藤滋宣君、阿南一成君及び佐藤昭郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業活力再生特別措置法案の審査のため、本日、参考人としてアサヒビール株式会社名誉会長樋口廣太郎君、日本労働組合総連合会事務局長野口敞也君東北大学未来科学技術共同研究センター教授大見忠弘君及び日本SOHOセンター理事長花田啓一君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 産業活力再生特別措置法案を議題とし、参考人から意見を聴取いたします。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本法律案につきまして、皆様から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず樋口参考人大見参考人花田参考人野口参考人の順にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、樋口参考人からお願いいたします。樋口参考人
  6. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) アサヒビール樋口でございます。よろしくお願いいたします。  私からは、政府提案産業活力再生特別措置法案につきまして、経済戦略会議議長並びに産業競争力会議委員、また、少し前でございますが、ニュービジネス協議会の全国の会長をやりました立場から、所見を申し上げさせていただきたいと思います。  昨年の八月に経済戦略会議が創設された際、私は委員十名の互選をいただきまして議長を拝命したわけでありますが、本年二月、御案内のように、十人の委員の一致した意見といたしまして「日本経済再生への戦略」と題する答申を取りまとめ、総理に御提出いたしました。この答申には合計二百三十四に及ぶ提言が盛り込まれておりますが、産業再生策に関しましては、第四章「活力国際競争力のある産業再生」におきまして四十二にわたる提言をさせていただいております。  こうした経緯もございまして、本年三月に通産大臣の御発案による産業競争力会議が創設され、私も経済戦略会議を代表する形で委員に選出されましたのでございます。私自身経済戦略会議提言がこのような形で早期に政府、財界を含めて幅広く論議され、具体的な法案の形で御審議されるに至りましたことをまことに喜んでおる次第でございます。  先生方のお手元資料にあると思いますが、経済産業委員会調査室参考資料経済戦略会議答申に盛り込まれた各種提言に対する政府検討結果」、その八十四ページにその内容が掲載されておりますのでごらんをいただきたいと思うのでございます。ごらんのように、ほとんどが「実現する方向で検討するもの」というAの評価となっておりまして、一部、税制にかかわる提言が「内容について、よく検討した上で結論を出すもの」とBということもありましたが、これについても今回の法案にかなりのものを盛り込んでいただいているわけでございまして、私といたしましても大変評価している次第でございます。  そこで、改めて産業再生に関する経済戦略会議の論議を御紹介することで、私の基本的な認識考え方を申し述べたいと存じます。  産業再生にかかわる経済戦略会議の基本的な認識は次の三点でございます。  第一は、経済再生のためには金融再生だけではだめで、金融産業日本経済を引っ張る車のいわば両輪として活力を取り戻す必要があるという認識であります。  こうした認識から、産業再生に向けたフレームワークといたしまして、第一に過剰設備処理支援、第二に成長分野での設備投資の促進、第三に情報化の強力な推進、第四に経営組織の革新の四点を提言させていただきました。  これらの中で、設備廃棄に伴う各種税制面での支援措置や、デット・エクイティー・スワップの活用分社化などにかかわる法整備税制措置などが今回の法案の中に織り込まれております。  こうした措置は、日本企業が不採算事業からの撤退や新規有望ビジネスへの進出などの形で事業構造を再構築するために不可欠の施策であります。我が国では、リストラというと、ともすれば経営体質財務体質スリム化、あるいはより直接的には雇用削減を意図する減量経営と同義と考えられている向きもほんの一部にございますが、リストラとは本来リストラクチャリングの略で、後ろ向きのものだけではなく、前向きの経営戦略展開を含む幅広い言葉でございます。  一部では、御承知のように、過剰債務過剰設備、さらには過剰雇用解消策という側面のみが強調されてきておりますが、もちろん、こうした改革はそれぞれの企業みずからが積極的、主体的に取り組んでいかねばならぬものでありまして、政府役割はそのための環境整備というふうに私ども認識しておるのでございます。それは本来、くどいようでももう一度繰り返しになりますが、個々の企業の自主的な判断と自己責任を大前提とするものでありまして、政府措置はあくまで自助努力を円滑にサポートするものと位置づけるべきと思うのでございます。  御案内のように、アメリカ企業が近年目覚ましい躍進を続けている背景には、まず人、物、金の経営資源を最も収益性の高い分野に素早く振り向ける戦略、いわゆるリエンジニアリングやあるいはフォーカシング戦略が奏功したと思われます。  現在、低収益に悩んでおります日本企業に求められていることは、単なる借金の棒引きや過剰設備廃棄、ましてや雇用削減ということではなく、潜在的な需要、消費者ニーズ、ウオンツに的確に対応した商品・サービスを提供すべく、ニーズのある分野経営資源を素早く集中し、スピーディーに事業構造の再構築を図ることであります。  その意味で、今回の法案の中に幾つかの重要な税制改正措置が年末改正を待たずに盛り込まれましたことは、産業界立場からも高く評価させていただきたいと存じます。  戦略会議基本認識の第二は、新規産業ベンチャーなどを創出するための起業支援が極めて重要であります。改めて申すまでもなく、我が国産業活力を取り戻すためには、既存企業活性化だけではなく、新たな雇用機会を生み出し、経済活力基盤となる新規事業をいかに創出するかが大きなかぎであります。  戦略会議では、このような認識から、起業支援策として、まず税制面からのサポート、二番目に店頭市場改革などの規制緩和、三番目にマイクロビジネスの育成を目指した創業資金に対する政策融資事業助成などが必要であると提言いたしました。  今回の法案でも、こうした戦略会議認識を受ける形で、創業者及び中小企業による新規事業開拓のための支援措置が盛り込まれましたことは、高く評価させていただきたいと思う次第であります。  ただし、戦略会議提言しております創業者利得の特例、言い直しますと公開三年前から保有していた株式の譲渡益の圧縮であります、の拡充や、エンジェル税制損失繰越控除制度拡充強化ベンチャーキャピタル支援税制、これは具体的には損失準備金制度の創設などでございますが、税制面でさらに一段の配慮が必要不可欠であり、今回の措置に加えて、年末の税制改正に向けた前向きの御検討を切にお願いしたいのでございます。  戦略会議基本認識の第三は、二十一世紀を先導する、リードする産業創出するために、技術開発人材基盤知的基盤整備規制緩和国際標準の確保など、あらゆる側面にわたって国家戦略を策定し、大胆に実施していく必要があるということでございます。  今回の法案では、国の委託研究開発にかかわる特許権の扱いの弾力化、すなわち開発者特許権保有を認めることや、技術移転機関いわゆるTLOの特許料の軽減などの措置が盛り込まれており、評価できると思います。  ただし、あえて言えば、こうした単発の措置ではなく、二十一世紀日本経済をリードする新たな産業として、例えば情報通信、医療・福祉、バイオ、流通・物流、金融環境といった戦略産業が自律的に立ち上がるよう、国家的なプロジェクトとして規制法整備税制、予算のあらゆる面から総合的かつ戦略的な視点で新規産業創出を図っていくことが極めて重要であると思う次第でございます。  以上、いろいろと申し上げてまいりましたが、今回の法案は、我が国産業活力再生新規産業創出のために極めて重要であり、一刻も早い成立が望まれております。  そして、さらに重要なことは、産業再生策が今回の法案で尽きているわけでは決してございません。さらに第二弾、第三弾として追加策が必要だということでございます。  新しい会社再建制度導入はもとより、会社分割法制整備税制面の手当て、連結納税制度導入起業支援税制拡充国家的新規産業創出計画の策定など、やるべきことは山積しているのが実情でございます。  議員の先生方におかれましては、このような状況に深い御理解と御尽力を賜りますようお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  7. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) どうもありがとうございました。  次に、大見参考人にお願いいたします。大見参考人
  8. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) 東北大学大見でございます。  お手元に横長のA4の資料が届いていると思うんですが、「産業再生強化策 新産業創出 科学技術創造立国を目指して」、こういうタイトルになっております。  現在、私は、東北大学の中に去年四月九日に発足した未来科学技術共同研究センターに所属しております。このセンターは、これまで大学役割は新しい学問技術をつくり上げるということが役割だったわけですけれども、新産業創出ということがメーンのターゲットになった、大学では初めてのセンターではないかというふうに思っております。  次のページを見ていただきたいと思うんですが、私自身の紹介も兼ねて、産業強化あるいは新産業創出といったことにおける大学役割を中心に御紹介したいと思います。  私自身専門は、半導体エレクトロニクス半導体集積回路。この技術は、二十一世紀のかなめの産業になる情報通信であるとかバイオ技術、すべてのこういった最先端産業基盤になる技術であろうというふうに考えております。  大学役割が新しい学問技術創出であるということを考えますと、大学が持つべき能力あるいはインフラの技術、そういったものがどういうものであるかということを簡単に御紹介したいと思うんですが、新しい学問技術というのはまず一人の研究者の頭の中に芽生えてきます。着想内容が新しければ新しいほど、そのことが正しいか否かを判断できる人は世界じゅうにだれもいません。この着想が正しいか否かを判断できるのは、正しく行われた実験結果だけがその正否を判断いたします。どういうことかと申し上げると、現在の常識、定説から考えていかに不自然、奇想天外に思えても、百回やって百回とも同じ結果が出ればその着想は正しいと言わざるを得ないんだろう、こういうことになります。  そうすると、次のページへ行っていただきたいんですが、何だかわけのわからない要因で結果が左右されない完全な再現性を有する実験技術、計測や分析技術を含みますけれども、こういった完全な再現性を有する実験技術というものを持たない限り、新しい学問技術創出は不可能だということになります。  大学が備えるべき要件としては、世界じゅう、だれも正しいかどうかわからないことを完全に実証できる完全な実験技術を備えるということが不可欠の要件になってまいります。これは実験環境を完全に制御するということが必然的に要求されます。  私どもの場合には、結果として、ごみであるとかあるいは分子上、原子上の不純物を完全に除去し、静電気であるとか磁場変動だとか、ちょっと専門的で申しわけないんですが、あらゆる変動が結果に影響を与えるものですから、そういったものを全部排除したスーパークリーンルーム技術というものが必要になってまいります。  スーパークリーンルームというのは、材料から始まってその加工技術表面処理技術、あるいは材料部品を組み合わせた施工技術、新しい部品、新しいシステム、こういった総合技術典型例になってまいります。  ここら辺に今、大学のありようというのが問われているんだろうと思うんですが、従来型の学部学科体制大学というのは編成されているものですから、すべての学問技術分野に及ぶ横断的な広い分野技術というものをどういう形で学生たちに伝えていくか、そういう問題を抱えているだろうと思います。  このスーパークリーンルーム技術東北大学で全く新しいコンセプトのものでつくり上げたわけですが、結果として、この技術最先端半導体産業であるとか液晶ディスプレー産業あるいは磁気記録産業などの基盤技術になっていきました。  東北大学でつくられたこのスーパークリーンルーム技術というのは、その後のこういった分野世界のお手本になっております。典型的な例は、一九八〇年代の半ばにいわばつぶれかかっていたインテルが全面的にこの東北大学技術導入して五年後には世界のトップに躍り出る、今のインテルの強さというのはよく御承知ではないかと思うんですが、そういう役割を果たしております。    〔委員長退席理事成瀬守重着席〕  次のページへ行っていただきたいんですが、産業競争力強化という上で産学連携が本当の意味で必要になった時代が来ているということを申し上げたいと思います。  まず、研究開発体制の劇的な変化ということを御認識いただきたいと思うんですが、今世紀の前半から一九七〇年のころまで、これはリニアモデルと言われる時代で、まず基礎研究が行われて、その基礎研究をベースにして応用研究を展開して、実用化研究を経て実用化事業化というのがなされます。これが比較的長い間続いたものですから、今でも多くの大学人あるいは企業研究者がこのリニアモデルにとらわれている。実際は一九七〇年のころから研究開発体制ががらっと変わっております。  下に書いてございますが、実社会の非常に強いニーズに対して最適解を最短時間で与えるというために、必要とあらば基礎研究応用研究実用化研究も同時並行的にやっていくんだという形に変わっております。ですから、かつて基礎研究をやる人たちは人里離れたところでこっそり研究をしていればそれでいいよという時代が長いこと続いたんですけれども基礎研究そのもの実社会の非常に強いニーズが直接反映するという形をとらないと今の世界体制には到底追いつかない、そういう状況になっているということの認識日本ではまだ大変薄いのではないかというふうに感じております。  次のページへ行っていただきたいんですが、このスタイルが、アメリカ、ヨーロッパで今非常に強くあらわれている典型的な研究開発ひな形です。  まず、実社会要求に対する最適解を与えるターゲットといったものを掲げる、名前がなかなかいい名前がないものですから、映画のプロデューサー等に匹敵する、プロデューサーという名前が書いてございます。    〔理事成瀬守重退席委員長着席〕  こういうものが五年後、十年後、二十年後に必要になるぞということを洞察して、新しいターゲットを掲げて、その目標に至る必要な技術を全部まとめ上げて、この研究開発課題をやり遂げる人並びに資金を調達してくる、実際に仕事を実施するという役割をこのプロデューサーが負います。  ここで非常に大事なことは、五年後、十年後、二十年後の実社会要求社会構造産業構造はどうなっているのか、どうあるべきなのかということを予見、洞察する能力、先を読むということが非常に大事だということです。読み間違ったらこの研究開発プロジェクトは全滅になります。  次のページへ行っていただきたいと思うんですが、同じく産学連携必然性ということが書いてございますが、大学企業役割が書いてございます。  非常に役割が違っているということを強く認識すべきだと思うんですが、企業はまずお客さんへの供給義務というものを負っておりますから、毎日毎日必要なものをつくり続けていかなければなりません。そういう状況の中では、現在の技術現状技術に頭がとらわれるという物の考え方になります。結果として、多くの企業研究開発者たちは、現在の技術から将来を見るという物の考え方にどうしてもなるんです。そうでなきゃまた困るわけです、毎日物をつくってお客さんに届けてもらわないといけないですから。結果として、技術体系トータル、パラダイムが転換するようなときには企業は対応が難しいということにならざるを得ません。  一方の大学ですけれども大学の大きな特徴は二つあります。一つは、十八歳の学部学生から講義をしなければいけません。どんなに研究に忙しくて、もう徹夜で研究をしていようとも、週に何回かは学部学生講義に私どもは出かけてまいります。学部学生諸君に教えることというのは、その学問分野の定石、原理原則を教えることになります。結果として、大学人はいつでも原理原則にのっとって物を考えるということが日常化しております。一方、お客さんへの供給義務ということがありませんから、現状技術に一切拘束されないで、将来の理想の姿とか極限の姿、あるべき姿というものを理論的に考える能力を日常的に持っている人たちになります。  これはどういうことを意味するかというと、パラダイムシフトを伴うような新しい学問技術創出というのはほとんどやはり大学から起こってくるということです。歴史的に見ても、ほとんどの新技術というのは大学周辺から生まれているということは間違いございません。やはり国トータル科学技術創造立国といった大きなグランドデザインを描くときには、もちろん例外はありますけれども、新技術創出というところを主として大学人に担当させて、実用化事業化というところを企業がやっていくということが最も効率のいい姿だろうというふうに思います。  次のページへ行っていただきたいんですが、さらに産学連携必然性というところで、現実問題として、実際に今つくられ続けている最先端の製品というものは理論極限にほとんど近いところのものを大量生産でつくるということを要求されます。結果として、経験と勘に基づく生産技術では到底対応できない。学問に裏づけられた科学的な生産技術というものがない限りは、コスト競争世界に勝っていくということができない。こういうことから産学連携というのはもう絶対に必要だということになります。  産学連携ということをやっていくときに、企業側のことをこれは書いてございますが、そのアイテムを実施するか否かの決断の速さが絶対的に必要になります。  これはどういうことかというと、時代が進めば進むほど私ども活用できる技術内容は豊富になってまいります。コンピューターの例を頭に描いていただくと自明だと思うんですが、十年前のコンピューターと今のコンピューターでは全く性能が違います。これはどういうことを意味するかというと、ある研究開発ターゲットを立てたときに、それを具現化するまでの時間が時代とともにどんどん短くなるということです。決断がおくれればもう勝負にならない。ここのところが先ほど樋口会長が言われていた経営の刷新その他ということにつながるんだと思うんです。  結果として、こういうことを言うとしかられるかもしれませんが、大企業は新技術開発事業化にほとんど役に立たない。決断が遅いからです。大企業の稟議書などを一度見ていただけるといいと思うんですが、A4の紙に判こを押す枠が五十も六十もあって、稟議を書く部分の方が三分の一ぐらいしかない。そういう稟議書が世の中に出回っていて、これはおかしいと思うセンシティビティーを失っているんです。やはりベンチャー企業というのは非常に重要だというふうに考えております。  次のページへ行っていただきたいんですが、我が国産業競争力強化ということは、もう言うまでもなく、日本が持っている資産を、特にここは「知的資産」と書いてございますが、有効活用することだと。  二つ目に括弧書きで、長い間これはアメリカから日本に言われたことなんですが、「ハイテクあって、ハイテクビジネス無し」と。ビジネスは全部アメリカが生み出してくるもののしっぽにくっついてビジネスをやりますよということになれてきてしまった。やはりビジネススコープ、ビジネスマインドを持った人材を積極的に活用していくという制度が非常に重要であろう。  同時に、悲観してばかりいる必要はないので、国内にすべての産業を持っている国というのは日本アメリカ、ドイツ等、世界でもごく限られた国しかありません。こういった総合力を有効活用すれば非常に強い国になっていきますというふうに思っております。  思い出していただきたいことが下に三つ書いてございます。一九八〇年代なんですが、アメリカを中心とする諸外国から日本が袋だたきに遭った代表的な三つのイシューが書いてございます。基礎研究ただ乗り、産業育成というようなものを政府支援するのはダーティーワークだ、日本人は働き過ぎ。これに残念ながら日本は完全にひっかかったというふうに私は思います。個人的な感想を言うと、国際的な謀略ではないかという気がしております。  今回の法案に関しては、私どもは大変喜んでおります。非常に決定の早かったことに心から敬意を申し上げたいというふうに考えております。  私の近いところの、研究開発活性化ということに関してだけ意見を申し上げたいと思うんですが、今の大競争時代というのは世界じゅうの知恵比べなんです。いかに物を考えて早く手を打って具現化するか。日本版バイ・ドール法と言われる、国の資金で誕生したパテントをそれにコントリビュートした企業に持たせるという法案ですが、私どもは大歓迎でございます。  今の時代はもうすべてスピードが勝負ですから、国が絡むというようなことになるとどうしてもミスをしないミスをしないという発想の方々が多いものですから、スピードが遅くなります。私も一緒に産業界と仕事をしながら、でき上がったパテントは大概の場合、持ち分五〇、五〇でやってまいりました。理由は簡単です。自分たちのものだと思わなければ必死になって事業化しないということです。  もう一つ大事なことは、先ほども申し上げたように、新しい技術事業化ということになると大きな企業よりも小さな企業がほとんど手がけます。そういう人たちが死に物狂いで努力したときに、事業を乗っ取られちゃうというようなことでは困るものですから、お金をたくさん持っている強い企業から特許で守ってやるということが非常に大事ではないかということで、特許の重要性を認識しております。  今でも大学には産学共同研究制度というのがあるんですけれども、ほとんどの企業はこの制度を使いたがりません。どういうことかというと、特許が自分たちのものにならないから、結果として制度があっても生きないということなんです。  時間をオーバーしておりますが、この日本版バイ・ドール法というのは私どもにとってはもう待ちに待った法案ではないかというふうに考えております。  それから、TLOの特許料軽減等に関して、科学技術創造立国というのは簡単に言うと、新しい産業の源流になるような基本特許をたくさん確立することだと思います。前半に申し上げたように、新しい技術というのは大学からほとんど出てまいりますから、その技術を民間に移転するTLOにこういった措置をとっていただくということは、大学のアクティビティーが大変高くなるという意味で、ぜひとも即刻進めていただきたいというのが私ども大学人からのお願いでございます。  時間を超過して大変申しわけありません。
  9. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) どうもありがとうございました。  次に、花田参考人にお願いいたします。花田参考人
  10. 花田啓一

    参考人花田啓一君) 日本SOHOセンターの花田です。本法案につきまして、SOHOの立場からの意見を述べさせていただきます。  お手元資料にもあるかと思いますが、私ども日本SOHOセンターという団体は昨年の十一月に設立されたものでして、SOHO自身によるSOHOのための支援団体で、非営利、いわゆるNPOの形で活動しております。  このSOHOとは何かということにつきましては、現在ではかなり多くの方が御存じではあろうと思いますが、いわゆるスモール・オフィス・ホーム・オフィスの略でありまして、小規模オフィスもしくは自宅をオフィスとする個人事業の形態であります。法人格を持つSOHOもございますが、おおむね四、五人程度の小さな規模というふうにお考えください。  では、従来の中小企業や個人商店とどのような違いがあるのかと申しますと、一言で言いますならば、パソコンやインターネットに代表されますようなIT、いわゆる情報技術というものが最大限に活用されているという前提でビジネス展開を図っていくというふうにお考えくだされば結構だろうと思います。今のところ、日本においてはSOHOというものに対する統一的な定義がまだないのでありますが、雑駁にそのように御理解ください。  このSOHOという新しい概念、新しい働き方、生き方、これが現在かなりの注目を集めているわけでありますが、このSOHOの持つ可能性というものが、私たちは、今日のこの日本が陥っております閉塞状況経済産業の苦境を打開するための大きなかぎの一つになるのではないかというふうに考えております。  今日、会社もしくは組織という従来型の価値観が行き詰まっているということが言えるのではないかと思います。いわゆる護送船団方式でこれまでやってきたものが、現在その限界が顕在化してきているのではないか。この状況を打ち破るために今必要なものの一つとして、個性を大事にしたSOHOという働き方、生き方、個という単位でビジネス展開を進めていくSOHOではないか、これがまさしく産業活性化のポテンシャルを持つものだというふうに私たちは考えております。  この法案に対しまして、SOHOにいる現場の身として申し上げたいことが幾つかございます。  この法案の事業再構築という部分がありますが、もちろん現在のこの難しい状況リストラクチャリングという形で環境整備していくということは必要なことだろうと思います。これは基本的にはあってしかるべきことだろうとは考えております。しかしながら、リストラという言葉が巷間伝えられている意味合いは、やはりそこには雇用削減を伴うものである、むしろ雇用削減イコールリストラというふうにとらえられているのではないかと思います。  今回の法案につきましても、それがやはり基本的に雇用削減につながっていくものではないかというふうに考えられると思います。確かに、今説明がありましたように、日本版バイ・ドール法など一部に評価すべき点もございますが、しかしながら、こういう法案を進めることによって政府もしくは国がリストラをあおる、従業員の雇用削減にお墨つきを与えるといった側面は否定できないのではないかというふうに考えます。  しかしながら、私は何もここで絶対的に雇用を守れというようなことを申し上げたいわけではないわけです。過剰な設備はやはり廃棄しなければならないと思いますし、余剰の人員も整理しなければならないでしょう。しかし、その過剰とか余剰をつくり出した責任は一体どこにあるのかという点であります。つまり、経営側にも責任はないのか。リストラされる従業員の中にもそれはちゃんとした仕事をしないという意味においての責任はあるのかもしれませんが、経営側には責任がないのか。世界市場で生き残れる強い体質をつくるんだというようなことが言われておりますが、弱い体質にしてしまったのは一体だれなのか。このあたりの視点が欠けているのではないかと考えます。  ですから、例えばかの山一の倒産の日に、従業員は何も悪くないと泣きじゃくった社長のあの絵が日本の国の中である種の共感を覚えられたように私は思いますが、あれはなぜかといえば、やはり従業員だけが悪いんじゃない、経営者側も悪いんだということが暗黙の了解として国民の中にあったんではないかというところが考えられると思います。  経済活力再生するというネーミングにもかかわらず、この法案を見ますと、今申し上げたように、経営者側にも血を吐くような痛みを伴うようなそんな抜本的な改革という部分がいささか足りないのではないか、安易にリストラという、言ってみればカンフル剤を打とうとしているのではないか、こういうふうに考えられる部分があります。  もちろん、カンフル剤も必要な場合があります。瀕死の重症を負っている人間に適切な処置をするという意味においてはカンフル剤も必要かもしれません。しかしながら、この経済再生という部分のネーミングからしますと、やはり一時的に危機的な状況があった場合にそれを助けて、その人間が言ってみれば退院をしてもとの日常生活に戻っていく、そこまでケアして初めて再生ではないだろうか、こういうふうに考えるわけです。そうすると、どうしてもこの法案の中からはその辺の再生のシナリオが見えにくい。どうしてもカンフル剤的なところしか見えてこないというふうに私は考えます。  そこの、いや違うんだ、ちゃんとした再生のシナリオは打たれているんだという部分について想像しますに、新規事業の育成というような部分、先ほどの説明の中にもありましたが、そうしたものが出てきていると思うんですが、ここが本当に再生のための大きな柱だとしたら、私はこれはとんでもないことではないかというふうに考えます。再生のための新規事業の育成というものどころか、今の非常に危ない状態の日本経済にもしかしたら引導を渡す結果になりかねない、そんな危惧を私は抱いております。  どういうことかというと、つまり、新しく事業を起こすときに融資というのは確かにありがたいものです。ビジネスの立ち上げにはやはりお金が必要ですから、ないよりはあった方がいい。しかし、誤解を恐れずにあっさり申し上げれば、ある程度のスキル、技術能力、やる気、意欲、そういうものがあれば開業、独立というものは基本的にそれほど難しいものではないということです。一部の業種に関しましては最初に投下資本がかなり必要なものがあって、融資を、かなりのお金を必要とするものもあるかもしれませんが、しかしながら、この情報化時代において起業する場合、まさしくいろいろな情報が入手できるような時代になってきているわけです。  現実にパソコンも安くなっておりますし、インターネットを使えば、文字どおりインターネットというのは情報の宝庫でありますから、世界じゅうからいろいろなデータや情報が得られるわけで、これにかかる費用も例えば五年前に比べれば相当安くなっているわけです。ですから、莫大な投資を必要とするものではない状況が生まれてきているにもかかわらず、相変わらず創業段階で融資、無利子で一千万とかそういうことになっている。これではやはり足りないのではないかと。  こういった問題を考えてみるときに、先ほど来もアメリカとの比較がありましたが、アメリカでの開業率は高いのになぜ日本の開業率は高くないのかというふうなことを考えた場合に、こちらにビジネスの方もいらっしゃるので先輩を差しおいてなんですが、つまりビジネスというものは継続しなければ意味がないと思うんです。立ち上げるだけなら、今申し上げたようにある種の意欲さえあれば立ち上がるんですが、それを四年、五年、十年と続けていくための、継続は力なりという名文句がこのビジネス界にありますけれども、そこだと思うんです。ですから、この継続をしていくというときに実はいろいろな問題が中小企業、特に小規模の事業、それから個人事業主の間にはあるんだということを私はここで指摘しておきたいと思います。  それはどういったことかというと、お手元資料の中に私どもが申し上げております「本当に必要なSOHO支援策」というものが十九項目にわたってありますので、一つ一つ申し上げている時間はございませんので詳しくはその中を見ていただきたいんですが、例えば一つ申し上げれば源泉の問題がございます。  お手元資料の中で言えば、三ページ目に第三番目の項目として出しておりますが、源泉の問題。これは法人格を持った企業の場合は全然気にすることはないんですが、個人事業主の場合はいや応なく報酬の一〇%を源泉として取られるわけです。これが事業です。個人とはいえ事業を行っているわけです。確定申告もするわけです。なのになぜその売り上げの一〇%をあらかじめ源泉という形で前納しなければならないのか。例えば個人商店で肉や魚や野菜を、例えば一本百円でニンジンを売っている。その百円のうちの十円をあらかじめ源泉として取られるということがないように、私どもの個人事業主がその報酬の一〇%を源泉としてあらかじめ納めなければならないというのは、やはり個人事業主に対する考え方としていささかその活動を阻害するものではないかというふうに考えます。  そのほかいろいろなことがあるわけですが、こういった一つの問題を取り上げましても、個人もしくは小規模で事業を行っておりますと実はいろいろな問題が発生しているわけです。なかなか想像しにくいかもしれませんが、支払いの遅延、不当な未払い、不払い、そのようなことはまさに残念なことではあるんですけれども、個人もしくは小規模で事業を行っていると日常的にこれは発生するわけです。消費税が転嫁できないということも決して珍しくありません。そうした問題が実はあるわけなんです。支払いサイトが長過ぎるという問題もあります。ですから、資金の回転に苦労するという問題もあります。  そうしたいろいろな問題に加えて、福利厚生の問題もこれは見逃せない事実だと思います。最近では会社員だってつらいんだというような論調が目立ちますけれども、しかしながら会社員はまだまだ恵まれていると思います。個人事業で仕事を進めている場合には、会社員の時代にあった福利厚生というものは一切なくなる。その中で、個人として仕事をしているんだという現実をできる限りやっぱり直視すべきではないだろうかと思います。  そういったアンフェアな状況が厳然としてある。現実にある。そういう状況の中で起業家支援だというふうにおっしゃられても、そうそう人は業を起こそうとは思いません。いろんな方に私たちはお会いしていますけれども、才能のある方、スキルがある方こそむしろ会社員でい続けたい、会社員でなくなったら全部自分でやらなくちゃいけなくて大変だと、そういうことをおっしゃられます、訴えられます。  しかしながら、先ほど、独立は簡単だという言い方をしたときに、多少なりともスキルややる気がありさえすればそんなに難しい話じゃないと申し上げましたけれども、ここで今発生している問題は、非自発的な退職者、本人が望まないにもかかわらずリストラされてしまうということです。本人が望んで退職して独立、開業してもいろんな問題が山積しているのに、本人が望まないで独立、開業した場合にどのような問題が起きるかは火を見るより明らかだろうと思います。  そういった問題を考えていきますと、確かに目の前の失業率は五%を前後して、これ以上高くなるだろうということで問題は生じておりますけれども、しかしながら、この失業率の問題をとらえて、失業者になるぐらいだったら開業させる、起業させる、そうしたら失業率は下がるかもしれません。しかしながら、そのために資本金を、最初の創業資金を国や行政が支援する。そうしたら一年、二年、三年はもつかもしれません。しかしながら、四年、五年、十年たつとどうなるでしょう。いや十年どころじゃなくて四年、五年で十分だろうと思いますが、この人たちは基本的に起業家マインドがない人間たちですから、これがばたばたと倒産するのは火を見るより明らかだろうと思います。  倒産したらどうなるか。もはや失業者ではないわけです。失業保険がないわけです。どうするか。自殺するかホームレスになるか犯罪に走るか、それしかないわけです。企業に再就職するという道も残されていないわけです。そういった現実を招きかねない安易な創業支援起業支援は、二年、三年、四年後にそういった事態を招きかねないということを私は声を大にして申し上げたいと思います。  ですから、むしろ社会的な基盤整備することにお金や知恵や手間暇をかけていただきたい。今いろいろ申し上げた中で、幾つもの実行できることがたくさんあります。そうしたことを、社会的な条件整備基盤整備していけばある程度の人は今さら起業だ何だと言わなくてもほっといても独立、開業していきます。四年、五年続けていったときにいろいろな問題が生じるでしょうから、そういうときに融資の枠のことを考えていただくとかいうことをすれば、継続していって、その先にそうした人たちがたくさん出てくることによって、その中から自分は将来は店頭公開だ、一部上場だと考えるような人も出てくるわけです。そうした中から第二、第三の本田のようないわゆるベンチャーの旗手と呼ばれるようなものが出てくる可能性があるわけです。  つまり、ベンチャーというのはいきなり出てくるものではなくて、その中には当然個人もしくは小規模で事業展開をしている豊かな土壌がなければならないわけです。そうしたものとして起業をとらえていただきたい。単なる失業対策として業を起こすことをとらえていただきたくない。ここは声を大にして申し上げたいところです。  全国津々浦々にはいろいろな個人、小規模で事業を展開していらっしゃる方が現実にいます。現実にいろんなところにいろんな人がいます。そういう人たちに対する支援こそが次の日本の新しい未来を築くものだと私は信じて疑いません。日本は資本主義の国だと言われながら、しかしやゆ的に非常に成功した社会主義の国だと言われることもありますが、今まさに本当の意味での資本主義革命が起きているのかもしれません。地方にはそうした一生懸命仕事をしている人がたくさんいます。そうした人たちに少しずつでも地方自治体の枠の中でいろいろな支援をしていただければ、そうした中から第二、第三の本田が生まれるのではないかと私は信じて疑いません。  まさしく今こそ草の根資本主義というものがこの国に問われている問題ではないでしょうか。そうした観点からすると、この法案に足りないものがまだまだたくさんあるというふうに私は感じております。  ありがとうございます。
  11. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) どうもありがとうございました。  次に、野口参考人にお願いいたします。野口参考人
  12. 野口敞也

    参考人野口敞也君) 連合の副事務局長の野口でございます。  政府産業活力再生特別措置法案に関しまして意見を述べる機会を与えていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。また、若干おくれてまいりまして、陳述の順番を変えていただきまして、委員長の御配慮に感謝申し上げたいと思います。  この法案は、御案内のように企業事業構造改革あるいは事業革新の活動につきまして、これを事業再構築活動といたしまして、商法上の手続あるいは金融上、税制上の支援を与えることになっております。また同時に、創業者の事業あるいは中小企業の新事業開拓を支援しようというような形でさまざまな政府支援を行う中身になっております。  まず、この法案がこれからの経済あるいは私ども雇用や生活にどういうような影響を与えていくか、この点について意見を述べさせていただきたいと思います。  御案内のように、現在の経済状況は、一—三月期は前年比GNPの伸び率が一・九%というような状況でありましたが、この四月—六月がどうであったか、あるいはこの夏がどうなるだろうか、大変心配されているところであります。果たして景気の底を打つことができるのか、回復に向かって進んでいくのか、ひとえにこれからの民間の設備投資あるいは個人消費にかかっているというふうに考えております。しかし、現在見るところ、企業設備投資はなかなか期待できるような状況にございません。そういう意味で、個人消費の行方が大変景気にとっては大きな心配事になっております。  こういう中で、雇用状況でありますけれども、二年続きのマイナス成長の中で、特にこの九八年度の雇用者数は戦後統計上初めて前年よりも三十九万人減ったというような状況であります。第一次オイルショックのとき、大変な経済低迷がございまして、たくさんの倒産が起こりましたし、失業も高まりました。しかし、あの当時でも雇用は一九七四年度に十三万人ふえております。今回、いかに雇用状況が危機的な水準にあるかということがうかがわれます。  そして、この雇用減は、九八年度におきましては最初は従業員五百人未満の中小企業で起こり始めております。これは一つ重要な点でございますが、これが九九年度に入りますと、大企業、中堅企業に草原の火のように大きく広がっていくわけであります。  その結果、失業率が急激に高まりまして、九八年四月には四・一%と四%台を超えました。残念ながら、この六月には四・九%とさらに最悪の記録を更新しているような状況でございます。景気低迷には消費不振が大きな影響を与えておりますけれども、この消費不振はやはり将来に対する雇用の不安、そしてまた生活の不安が根底にあるということが指摘されておりますし、そのとおりであるだろうというふうに思います。  このような中で、今回、産業の構造転換を促すこの法律が国会の中でかかっているわけであります。確かに、産業の構造転換、とりわけ中小企業活性化創業者の育成ということは極めて重要だろうと思います。しかし、この法律の中身を詳しく見ますと、ベンチャー企業の育成あるいは中小企業新規事業の開拓、こういうような支援策は必ずしも十分であるというふうには考えません。これをもって企業が新たな事業拡大をしていく、あるいは新産業をつくり上げていく、こういう方向で一斉に努力をしていくということは十分に期待できないというふうに考えます。  その反面、私どもが一番大きな問題と考えておりますのは、大手企業を中心にしまして、設備の廃棄あるいは施設の縮小、廃棄、そしてまた企業再編によりますさまざまな事業の縮小を生み出すということであります。特に、この法律自体はこれに対して大きな優遇策を与えているわけであります。先ほど九九年度に大手企業雇用減というのが非常に目立ってきたと申し上げましたけれども、さらにこの法案の政策の実施によりまして急速にこれを拡大する、雇用不安の引き金になるおそれがあるというふうに考えます。とりわけ、現在、大手のリストラ策が毎日のように新聞をにぎわせております。しかも市場はこの人員削減というのを評価して、削減計画を発表した会社の株価が一遍に引き上がる、このような状況になります。  このような中で法律がリストラ支援策を出すということは、本来であれば自己のリスクと責任において過剰設備については廃棄すべきでありますが、全体がやる中で、みずからの企業経営者の責任というものも感じずに一斉に安易に企業の縮小をやる、同時にまた人員の削減をやるというおそれがあります。赤信号、一緒に渡れば怖くないという言葉がございますけれども、まさにこの心境で、いっときに全体の事業削減、同時に雇用の縮小、こういうことを招くということに対して非常なおそれを持っているわけでございます。したがって、この法律によってさらに景気の回復をおくらせるということにつながる、これに対して大変懸念をしておるところであります。  第二の問題は、そういう意味で、雇用不安、雇用の縮小ということをこの法律の実施に当たっていかにとどめるかということが大きなポイントになるだろうと思います。具体的にこの法案の中身を見ますと、「雇用の安定等に配慮しつつ」と目的の中に書かれておりますが、具体策としましては、事業再構築計画の認定要件としまして第三条六項の六に次のような表現がございます。「当該事業再構築計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と。「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」ということにつきましては、さきの衆議院商工委員会での議論の中でいろいろと内容が明らかにされつつありますけれども、しかし、これをもって失業をとどめるということにはならないというように考えます。とりわけ、第十八条で「その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、当該労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と。つまり努力義務を定めております。私どもは、この努力義務が遂行されることを期待するものでありますけれども、残念ながらそこに信頼を置くことはできません。それらの意味で、法案の中身については雇用の安定について次のように修正をしていただきたいというふうに考えております。  一つは、三条六項の六の認定要件について、当該事業再構築計画について雇用に影響を生ずる場合には、労使協議を行い労使合意が成立していることということを要件にすべきだというふうに考えます。また、第十八条においても、労働組合もしくは従業員の過半数を代表する者との協議、これを義務規定としていただきたいというふうに考えます。この点についてぜひ御検討を賜りたいというふうに考えます。  さらに、計画の実施経過に当たりまして、雇用にどう影響しているか報告を求めることができるというような規定がございます。これは報告を求めることができるでなくて、きちっと報告を求める、このようにしていただきたいというふうに思います。  第三番目の問題としまして、認定基準そのものについて大変抽象的である、裁量の幅が大きい、私どももそのように考えますけれども、既にさまざまな御議論がなされておりますので、きょうは中身については省略をさせていただきたいと思います。  最後に、一つ新たな法律の策定をこの際お願い申し上げたいと思います。  この法律の中では、分社化あるいは合併あるいは営業譲渡など、さまざまな企業組織の変更が予定されております。同時に現在、法制審議会では新型再建手続法、これに関する取りまとめが行われております。また、法制審議会では商法の改正の中で会社の分割について新たな改正案を次の臨時国会ないし来年の通常国会で提案することが予定されているというふうに聞いております。  こういうような会社の分割あるいは分社化、さらに合併なり企業・事業の譲渡、これらの会社の構造の変革につきましては、従来からあります雇用契約、そしてさまざまな労働条件にかかわります協定、そして労働組合の地位につきまして新たな譲り渡し先にこれらが包括的に移譲されますような法律をぜひつくっていただきたいというふうに考えます。私ども、これは企業組織変更にかかわる労働者の保護法と呼びたいと考えておりますけれども、既にヨーロッパではこれが確立をされております。ぜひ、経産委の先生方の御理解を賜りたいと思います。  終わりに当たりまして、雇用は物ではございません。過剰だからといいまして新しい職の手当てなしに企業の外に排出いたされてはたまったものではございません。とりわけ四十歳以上の人にとりましては、失業は本人にとっても家族にとっても絶望そのものを意味いたします。本法の運用によりまして新たな失業が生じないように、国会の諸先生方、またこれを運用します関係省庁の方々、そして経営者の皆さんに慎重な配慮を心からお願い申し上げまして、陳述を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  13. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 福山哲郎

    福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。  本日は、参考人におかれましては、本法案の審議に際しまして、御多用の中お時間をちょうだいいたしましてまことにありがとうございます。時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。  まず、樋口参考人にお伺いをしたいと思います。  樋口参考人は、住友銀行から昭和六十一年にアサヒビールに行かれまして、そしてこの十数年間アサヒビールのリーダーとして業績の伸長に際しまして本当に力を振るってこられた。私どもも大変尊敬をさせていただいており、なおかつ今回、経済戦略会議議長、また産業競争力会議委員としてこの法案の最初の絵図面をかいていただいたということに対して、まずは敬意を表したいと思います。  そこで、素朴な疑問でございます。  樋口参考人は恐らく、先ほども言われた自助努力、それから自己責任という中でアサヒビールの中で仕事をずっとされてこられたと思います。そして今、過剰設備過剰債務過剰雇用といういわゆる三Kが議論になっておりますが、過剰設備過剰債務過剰雇用があるから経済産業の競争力が落ちてきて日本の景気が悪くなったのか。僕は、順番は逆なのではないかと思います。  過剰に設備をするというのは、経営判断の中で、この設備投資をすることによって次の企業の利益を生むという判断があったから設備投資をされたはずだろうし、過剰雇用の問題も人が将来的に要るだろうということで雇用をされた。さらには過剰債務の問題も、これはバブルがはじけて、ひょっとしたら本業に関係のない土地や不動産に手を出した企業もあったと思います。その中で、経営者の責任、我々は自由主義、資本主義のマーケットの中で生きていて、これから本当に二十一世紀大競争時代に入るというときに、この三Kがあるから経済の力がなくなっていっているのではなくて、そこの経営者の判断なり、まずそこの部分の言及が必要なのではないかというのを私は本当に素朴な疑問として思っています。  だから、例えば今回の法案で、再生をするために国民の税金や優遇措置を使って救いましょうというスタンスが、これまで経済界が言われた規制の緩和や、余り政府は口を出すな、それから裁量行政はもう勘弁しろと言われていた流れと、どうも私はここの部分がおなかに落ちてこない部分があります。  私は、日本経済がよくなること、産業再生していくことを否定する気は毛頭ございませんが、その部分で樋口参考人の御意見、御所見を伺いたいと思います。
  15. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) お答えいたします。  福山先生の御質問、まことに的確なところを突いておられるわけでございますが、もともと経済情勢の変化というものの中で私どもはよく考えなきゃいけないのは、過剰設備あるいは過剰債務、それから過剰労働力という、過剰という言葉は果たして何に対して過剰かという一つの定義からやっていかなきゃいけないと思います。  企業はそれぞれ自主的な判断をいたしているわけであります。私の方のことを申し上げて大変恐縮ですが、十三、四年前に私がアサヒビールに行ったときは、その前に五百人の人員の肩たたきもやったわけでありますが、最初に言ったことは、私は一人の退職者も出さない、一人もやめさせない、そして必ずその五百人は帰ってきてもらうということで、その後三年間にわたって約半数以上の方に帰ってきていただきました。そして、実際上、雇用は大体二倍半にふえたわけでございます。それは皆さんのおかげ、消費者のおかげでございます。  そのとき、つらつら考えてみますと、私たちが十三年前には、ルックイーストと申しまして、アジアの経済の中で日本の持っているポジションは、日本側は大体七五というラフな数字を使っておりますが、要するにアメリカその他は七〇という数字を使っております。その中で七〇のシェア。今日、例えば中国がかつてアジアのシェアの中で七%台、それが今一三%に上がってまいりました。あるいは韓国が大体六%ぐらいから七・八%に上がってまいりました。アジアの国が全部ルックイースト、日本を見習おうということで、日本の商社がこれをお手伝いしたことも事実でありますが、アジアが日本に向かって輸出をしなければ自分たちはやはり日本のように繁栄しないということで世界経済状態、かつてアメリカだけの間に貿易摩擦がございました。それが前川レポートになってあらわれたわけであります。  その情勢と違ったのは、アジアの中においていわゆるアジアの国々が非常に立派に動いてきた。そこで初めて過剰設備という問題があらゆる産業において出てきたと思うのであります。ただし、運送に非常にコストがかかる、あるいは運送している間に品物が毀損するというようなものは非常に保護されているわけでありますが、確実に競争にさらされている業種というものは、情勢の変化がやはりアジアの国々の大いなる発展のために非常に大きく変わってきたというのは、先生御指摘の要素の中の一つにぜひ入れていただきたい。本当に変わってきたということをしみじみ感じるわけです。  したがって、老朽設備とかいろんなことを言っておりますが、もうはるかに隣国の国々の生産コストの方が何分の一か安いものは、例えば横浜のそういうところへ見に行かれたり、神戸へ行かれますと非常に安いものがぼんぼん入ってきている。それらの産業は決してサボったわけでもなければ、社会的に反社会的なもの、非道徳的なものをつくっているわけではないんですけれども、やむを得ずやめざるを得ない、あるいは縮小せざるを得ないということが現実の問題であります。もっと言えば、日本の繁栄の中にかつて輸出したものが確かに返ってきているわけでありますが、そういう問題というものは構造的に出てきているという点を私は頭の中に入れてお話しさせていただければいいと思うのであります。  そういうことは、先生のお話は当然私たちがきょう御質問いただくことを予定しておりましたが、あらゆる要因の中で一番大きいのは、当面のアジアの国、ウイズアップ、ともに共生していくという段階においてこの問題が起こったということを率直に申し上げさせていただきたいと思います。
  16. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。  構造的な問題というのは、確かにそのとおりだと思います。ただ、議論になっています今回の事業再構築計画を提出してそれを認定する、それは通産大臣が認定をするわけですが、その基準等が大変あいまいになっている。例えば、今、樋口参考人が言われたような構造変革の中で、これはいたし方ないから廃棄をしていかなければいけないという問題なのか、先ほど言われた老朽化の問題等もあります。  しかし、私が申し上げたように、経営判断を間違った、言葉は悪いですが、しりぬぐいを国に頼って税金を使ってくださいというような話の場合に、私はきのう実は日債銀の集中審議を予算委員会でやりました。やはり金融の問題もある意味でモラルハザードがある、それが産業界にも広がることによって、これまで我が国が培ってきた技術力やそれぞれの労働者の一人一人の、逆に言うと勤労に対する姿勢のよさや、それこそ日本がこれまでよかったと言われていた日本型の経営みたいなものの根本を実は揺るがしていくのではないかという危惧が実はこの法案であります。  そして、参考人が言われたように、逆にそういったものをきちっとフォローしていく法案なら、スピードは大切だと思いますが、なぜこのような形の、ある意味で言うと不十分な中、先ほど花田参考人がおっしゃられたように、これからの時代絶対に必要だと言われている要はコンピューターやインターネットやIT産業の部分のSOHOというような分野についてはほとんどこの法案は見ようとしていないのか、もしくは見なかったのか、そこはわかりませんが、つまりそういったことに対する法案自身のあり方みたいなものに対して実は私は少し残念に思っています。  逆に、樋口参考人のような方には、日本の経営者しっかりせいと、こんなのに頼るぐらいやったら自分のところの責任は自分で見ろと、もう少ししっかりして、もうちょいいいものをつくっていこうやないかというようなことも含めて、ほかの参考人の方にもお伺いしたいので短目にもし御意見をいただければ、お願いします。
  17. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) 発言させていただきます。  いわゆる失敗したとか判断を誤った経営者で、現在なおのうのうと許されるような今は社会じゃない。特に、株主訴訟あるいはそういう判断や大株主の問題、特に外国の株主の追及は極めて厳しいものがございまして、そういう人で現在存続している人を私は実は知らないわけでありまして、経営責任をとってやめているわけでございます。当然、退職金その他についてもそういう人たちは、辞退といったらおかしいですけれども、もらっているケースは非常に少ないということを申し添えたいと思います。
  18. 福山哲郎

    福山哲郎君 大見参考人にお伺いをいたします。  これまで象牙の塔と言われてきた大学が表へ出ていかなければいけないという御指摘をいただきまして、大変わくわくしながらお伺いをしていたんですが、一つ具体的な話になります。  要は、ターゲットに向かって目標に到達するためのプロデューサーの存在というのが必要だというふうに御指摘をいただいたと思っております。私もそのとおりだと思いますが、このプロデューサーの存在というのが実は今の日本には余りないんだと。そうすると、ここのプロデューサーを育てるシステムなり機関なりが先生の言われる絵図面とは別の部分でやっぱり非常に必要になってくるのではないかということをお話を伺っていて感じまして、こういうプロデューサーを育てる育成等について何か具体的な御所見があれば、お伺いをしたいと思います。
  19. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) これからの日本にとって極めて大事な御議論だと思うんです。どういうふうにするとこういう人たちが育つのかという定式は、まだ残念ながらないと思います。  私どもが具体的にやっていることは、こういうプロデューサーのような役をやると、ターゲットそのものを自分で決めて、人もお金もそろえて仕事をしないといけませんから、全責任が自分にかかってまいります。ほとんどの場合が世界じゅうにどこにもない新しい技術ですから、プロデューサーがお考えになったターゲットが正しいか否かすらなかなか保証がされない。非常にこれはもう不安で焦燥感に駆られる毎日を送らないといけないんです。極めて強い技術的な判断力と経営判断と非常に強い精神力が要求されます。  そういうものをどうやっていくかというのはぜひお考えいただきたいと思うんですが、私自身がやっていることは、大学あるいは産業界と一緒になった大きなプロジェクトの中で、どんなプロジェクトでも新しければ新しいほど随所でデッドロックに乗り上げます。そういうときに、ほとんどの場合、私からこういう方向に歩こうという指示を出すんですが、それぞれの場所でそれぞれの時点でみんな自分ならこうするということをテークノートしておきなさい、理由を書いておきなさい。  何カ月かすると、私が出した指示と若い人たちが考えたものがどこにずれがあるかということがわかってきますから、そういうことを何回か繰り返していって、自分の読みが十回続けて十回当たればだれもやったことのないことに挑んでいい資格が出てくるんじゃないですかというような形で若い人たちの指導を私自身はやっておりますが、どういうふうにやるといいかという制度だけではなかなか片づかない問題があると思うんです、完全に個人の能力にディペンドしますから。
  20. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。本当はもう少しお伺いしたいんですが、時間がないので。  花田参考人、今、大見参考人のお話の中で、能力の問題、それから制度だけではない問題、それが何回も失敗する、ぶつかっていってもなおかつやる技術力の問題というのがあって、少し視点は変わるかもしれませんが、現在SOHOセンターの理事長として花田参考人が先ほど言われたみたいに、SOHOを今スモールオフィスもしくはホームオフィスでやろうとしている人というのは、まさに先ほど言われたように環境整備がない中で自分の自己責任の中でビジネスをスタートさせた。それは、今まで日本にあったような中小企業、いわゆるお父さんがいてお母さんがいて、もう少し大きい中小企業を興していこうというのとは多分形態がかなり違う新しい事業で、これも先ほど言われたように実はある一定のスキルと能力と決断が要るというふうに思うんです。  そういうことに対する日本の風土ができていないというふうに先ほど言われたのですが、具体的に今SOHOをやられているビジネス、さっきITと言われましたが、なかなか見えてこなくて、一体どういう形で仕事をされていて、その人たちのリスクというのはどんなものなのかというのを、本当に一分か二分でお答えいただければ非常にありがたいと思うんです。
  21. 花田啓一

    参考人花田啓一君) 極めて難しい質問をされてしまいましたが、基本的には先ほども申し上げましたようにパソコン及びインターネット、そうしたものを使って仕事をしているというふうなものがSOHOであるという認識で構わないと思います。それは形態的なものでして、御質問に答えられるかどうかわからないんですが、要するにSOHOというものは個人もしくは極めて小規模で仕事をするんだという基本的なマインドがあるわけで、これは人間にいろいろな考え方があるように、価値観があるように、まさしく多様化している価値観の結果だろうと思います。  ですから、私は会社員がいいという人も当然いらっしゃるでしょう。会社員の中でも、九時から五時まで働くだけで給料はそんなに上がらなくていいよという人もいらっしゃる。もちろん、一生懸命エリートとして出世したいという方もいらっしゃる。同様に、会社員という形ではなくて自分でビジネスをしたいという方もいらっしゃる。人間にはそういったいろんなタイプのベクトルがあると思うんです。ですから、そういった中で個人という形で自分の力を信じて仕事をしていくという部分だと思うんです。  実際の職業としては、デザイナーですとか翻訳業ですとかプログラマーですとか、いろいろな形がありますが、プログラマーをやっているからその人がSOHOかどうかということは実は非常にわかりにくいことでして、その人自身がいわゆるSOHO的マインドで自分自身の力を信じてやっていくんだという気持ちがあればプログラマーの人でもSOHOと呼べるかもしれませんし、いや一時的に今SOHOなんだけれども、実は私は会社員になりたいんだという人は余りSOHOとは呼びたくないなという気分があります。  同様のことは例えば農業においても、農業というものは第一次産業ですが、自分の畑で耕したものを、まさしくホームオフィスですが、インターネットを使って販売したい、産直したいというような考えをお持ちの農業の方はSOHOと呼んでもいいのかもしれない。  事ほどさように、業種でSOHOというものをくくるのは非常に難しいので、質問にお答えできたかどうかわかりませんが、業態としてのSOHO、そしてある種文化的な側面、マインドの問題としてSOHOというとらえ方をしていただければ幸いです。
  22. 福山哲郎

    福山哲郎君 本当に時間がなくて恐縮なんですが、今のSOHOのお話というのは新たな業態です。  それとは逆に野口参考人は、いろんな過剰な設備と言われながら、でもそこで一生懸命働いている労働者の雇用をどう守るんだ、過剰設備が廃棄されるからそのまま人員も廃棄されるというようなことでは困るということで今大変御苦労されていると思います。  先ほど陳述をいただきましたいろんな法案の細かい点は、もちろんこれからも審議の中で努力をしていかなければいけないと思うんですが、でも現実に産業再生をするためにいろんな形で日本が構造改革をしていかなければいけない。その中で組合と経営者との関係というのもいろんな形態が変わってくると思っているんです。  ですから、この法案に対する問題点と、そういう今後の組合がどのようにこれからの構造改革に向かおうとされているのか、本当に一分しかないので恐縮なんですが、簡単に御意見をいただければと思います。
  23. 野口敞也

    参考人野口敞也君) 構造改革に関しまして我が国もさまざまな法律をつくってまいりました。最初は石炭でありますけれども、これについては雇用に最大限政府は配慮したわけです。  それから、一九七八年に特定不況産業安定臨時措置法というのができておりまして、鉄鋼それからアルミ、造船、それから繊維、こういう構造転換をやりました。このときは安定基本計画というのをつくりまして、労働組合に意見を聞かなければならないとはっきりありまして、実は私はそのときゼンセン同盟という繊維の組織におりまして、その中心になっておりました。具体的に設備の廃棄量を決めましたが、これは当時の通産省の原料紡績課長でありますが、この方と、それから化繊協会あるいは紡績協会の専務、それから私の三人で最終的な廃棄の数字を決めました。同時にそのときに、雇用に対してどういうような処置をするか、とりわけ経営の多角化ということについて力を入れていこう、こういう意思確認をやりました。  現在、繊維産業再生して何とか残っておりますが、やっぱりそのときの政労使にわたります合意というのが大変重要であったと思います。それが時代を経て、その後も構造改革の円滑化法というのができますが、このときは労使協議を努力しなきゃいけないというような形になっておりました。今度は、いよいよ「労働者の理解と協力を得る」というような言い方に変わってきています。  しかし、経済成長を見ますとどんどん悪くなっているわけです。高度成長時代から、今ゼロないしマイナス成長の時代になってきている。それにもかかわらず、労働組合との協議あるいは労働組合だけでなくて従業員との納得する話し合いというのが法文上ではどんどん軽くされている。全く逆行しているんです。やはり政府支援をしながら構造改革を進める、それだけ働く者への配慮が必要である。一方では、雇用の安全のネットワークというのは少しも改善されていない。現実にほうり出されたらどうにもならないというのが実態であります。  労働組合としてこれからどうするかというのですが、やはり協議をきちっとやる、そして法律上これをさらに強化させていきたい、このように考えております。
  24. 福山哲郎

    福山哲郎君 どうもありがとうございました。
  25. 畑恵

    ○畑恵君 参考人皆様方におかれましては、本当に早朝から大変貴重な興味深い話を聞かせていただきましてありがとうございました。自由民主党の畑恵でございます。  いろいろと学ばせていただくところがたくさんあったんですけれども、中でも私はきょう、先ほど福山議員の方からわくわくという言葉が出ましたけれども、そういうときめきを覚えましたのは、樋口参考人大見参考人がおっしゃられた話の底流に流れている哲学というか目指すべき本質的な社会のあり方というのは非常に近い、ある意味で同質じゃないかなと思いましたところが非常に興味深かったですし、またこういう方たちが日本をリードしてくださるとそういう世界が実現するんだろうなという希望の光も見えまして、大変ありがたかったと思います。  私は言葉でそれを具現するには大変能力がないので、そのあるべき社会の姿というのが、私がいつも思っております、日本がつくっていかなければいけない、私ども政治家がつくっていかなければいけないなと思っているある一つのシステムと符合いたします。  それは、適正な評価システムの構築ということで、評価のあり方ということをこのごろ考えるにつけ、ある意味で頭が小さいものですから袋小路に入ってしまう。要するに、評価すべき人、評価する能力がある人が評価をするそのシステムを構築すればいいと思うんですけれども、なかなか日本というのは、このごろ大変評価ばやりで評価評価と言われるんですが、どうも評価すべき人がしていないところがある。ある意味で、評価してはいけない人とか、はっきり言うと評価する能力がない人というのが評価をしている。それがある意味で、先ほど大見先生が御指摘になった五十も六十も判こが押されている稟議書が回る。何で評価しなくてもいい人とかする能力のない人が判こを押して評価したということをしなきゃいけないかというと、結局これはリスク分散じゃないか。責任回避とは言いませんけれども、限りなくリスク分散して、ある意味で雲散霧消してしまうような体制というのを日本というのは今まで温存して、それによってプラスの面もあったと思うんですけれども、明らかにそうしたこれまでのあり方というのは瓦解をしている。  長くなりましたけれども、まず経営の方から樋口参考人の方に伺いたいんです。いただいた資料を読ませていただいた中で、やはり一番は、顧客のニーズ、顧客の要望ということに謙虚になって、それにどれだけ対処できるかということ。例えば、瓶が汚れているというような苦情が来たら、いや隣の会社だって同じですよと言うのではなくて、ああそうですかということで一生懸命対応する。経営の場合には、評価する人間、評価する者というのは結局ユーザーであったりコンシューマーであると思うんですけれども企業が大きくなると評価システムというのはなかなか難しい。恐らくそこのところを非常に見事にクリアされたので、アサヒビールの大躍進という、トップ奪還ということがあったと思うんですけれども、この点についてはこれまでの中でどういうふうに具体的になさってきたのでしょうか。
  26. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) 今、畑先生のお話、一番大事なところを突いておられると思うのでありますが、評価というのは、昔からよく言われたのは、神の行うところを人はこれをやるべきじゃないという言葉は宗教的にはあるわけですが、やはり評価しなければ世の中は進まないわけであります。  何のための評価をするかということのまず一つが、評価の必要性あるいはそのニーズということ、このためにこれの評価をするのだということ。それから二番目は評価項目、それから評価に対する点数の重点の置き方、この三つが一つの判断基準だと思うのであります。  そこで問題は、今の企業の実態、流れを見ますと、執行役員制というのがしかれているわけであります。二つの大きな事例がございました。一つは、執行役員制を真っ先にしいたのはソニーその他の会社でございますが、これは極力責任体制をはっきりする、そして最後に決断する人間は少数で決める、しかしそこには必ず社外の役員に入ってもらう、七、八名から十名の中に入ってもらうということでございます。一方、日産自動車の場合は、全員の役員が責任をとるということで、全員の役員の合意ということに決めたわけであります。  結果的に結論は出ておりませんけれども、二つの両極端の形があったわけでありますが、世の中の流れを見ますと、執行役員制という少数によってやはり決めていく。しかしながら、これは国会でもあるいは各党でも同じだと思うんですけれども、最終結論はやはり全員の合意を得る。執行役員制だからといって必ずしも全役員の、あるいは物によっては、物によってはというと野口さんに怒られるかもしらぬけれども、物によっては労働組合との協議は必ずやる、こういう問題は私、出てくると思うんです。そういう問題の判断ができるかどうかということであります。  そこで、これが形になって今あらわれてくるのは格付ということでありますが、格付ということが勝手格付ということでアメリカの格付会社によってやられている。これに対して非常に情けない思いをしているわけですが、これに対して毅然として闘った例を申し上げますと、トヨタ自動車が格付を落とされる。あれだけの立派な業績を上げてなぜだと。一つは、最初はさくら銀行が非常にある時期にピンチに陥ったときに増資をしなきゃならない。長い間お世話になったということでトヨタ自動車は増資に応じますと言ったところで、格付会社が三日後に、そういう内容も調べずにすぐ増資に応じるような会社は格付を一格下げると。格付が下がるということは、長期資金の調達に金利が高くなるということです。  続いて起こったことは、トヨタは終身雇用ということを厳守している。労使協約によって決めた終身雇用を永久にやっている。終身雇用を決めている会社はもう一格下げるということに対して、奥田君以下は断固として、冗談じゃない、そういうものによって下げられるなら下げてみろということで、トヨタの調達力というのはあると。  こういうことが一つの格付という大きな面において、評価というものの原点に非常にそういうものが出てきている、恣意的なものが出てきている。その辺を今、畑先生がおっしゃるとおり、この問題に経済社会だけじゃなくて全社会が向かっていかなきゃいかぬ。公平な公正な、しかもその国の特殊事情がいろいろありまして、我々が絶対にいい慣行だと思っていた終身雇用自体も壊そうとしてきている。こういう問題も考えながら評価という問題は考えなきゃいけないと思っております。
  27. 畑恵

    ○畑恵君 どうもありがとうございました。  確かに、評価の基準を設定するのに、どこかの覇権を握りたい国か何かにその基準のスタンダードをとられてしまうというのは、非常に日本にとって危機だと思いますので、大変貴重なお話をありがとうございました。  同じ評価という話なんですけれども、先ほど、何が本当に伸びるのか、それを見きわめるのが一番大事だけれども一番難しいというお話をいただきました。科学的にある意味で客観的な基準があると思いますけれども、実証されていくまでには時間もかかる。  そうした中で、大学の中では一つの評価基準として、例えばどれだけ年次を積まれたかというようなことですとか、そういういわゆる日本の一つのこれまでの評価基準というのが残っている部分というのはあると思います。それと先ほどのグローバルスタンダードの評価基準あるいは客観的な基準をどのように融合させて、これからあるべき評価の姿というのが研究開発世界にはございますのでしょうか。
  28. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) 日本は今まで評価をするということは意識的に避けてきた国ではないかと思うんです。大変難しいという理由で、だからやめましょうというふうな方向に動いた国だろうと思うんです。これは、一つにはコンセンサス社会だとかそういうことと全部リンクしていると思うんですけれども、なかなかよくわからない事柄をなるべく定量的に表現するという努力を日本は怠ったと思うんです。  アメリカあるいはヨーロッパは、そういうなかなか定量化しにくいものをなるべく客観的にみんなが認めるような数値にしていきましょうという努力をし続けてきたと思うんです。例えば日本なんかの場合で、最近は多くなってきたんですけれども、アワード、各種の賞、これもなかなか日本ではつくれないですね。よし悪しの判断が非常に難しいからというので、難しいということでやめましょうという方向に行っちゃうんです。  このアメリカやヨーロッパと日本の差が結局、混沌としていてまだもやもやしている状況の中から新しい社会の構造であるとか産業の構造であるとかというのをつくり上げていくときの非常に大きな差になるんです。不十分であろうと何だろうとまず定量化を努力してみる、まずいところがあれば次々と是正する、そういう努力をし続けてきた国と逃げまくった国の差が今出ているんだと思うんです。  樋口会長が今おっしゃられた、アメリカ側から格付をされたときに何をと思うことが日本人には多々あると思うんです。これはそれぞれの民族で全然風俗習慣が違いますし、やっぱり狩猟民族、肉食系の諸君と農耕民族の草食系の人間では非常に違うところがあります。ですから、そういうときに、このやろうと思っても、我々はこういうものがいいですよというカウンタープロポーズができないときには世界の議論のテーブルに乗れません。もやもやしたものをいかに定量化するかということが新しい学問をつくる道であり、新しい社会構造をつくる道であり、新しい産業構造をつくる道なんです。結果として、ハイテクはあってハイテクビジネスはないよ、こういう国になっているんだと思うんです。  そういう評価のイシューをしっかり、しょっちゅういろんな人からけちょんけちょんにしかられますね。しかられると逃げまくるということが日本人には多いと思うんですけれども、そういう御批判を全部吸収しながらブラッシュアップを続けていく、こういう努力をしないと強い国にならないと思います。
  29. 畑恵

    ○畑恵君 どうもありがとうございます。  やはり欧米などは民族、文化が違う人たちが集まって、いかに標準化して共通言語をつくり出していこうかという、そこが違って乗りおくれていると思います。貴重なお答えをありがとうございました。  確かに、大見先生のおっしゃられたところというのは、日本人は何とかしなきゃいけない。ただ、本当に日本というのは、君だめだよと言われたら、もうそれで人生終わりというようなところがございます。  時間が限られているので、樋口先生と大見先生だけになってしまうかもしれないんですが、大変申しわけございません。  もう一度その評価をされる。君はだめだよ、確かに失敗をした。でも、もう一度リターンマッチがあるし、別に失敗は恥ずかしくもないし傷でもない。むしろ、それこそシリコンバレーを中心としたアメリカなどは勲章で、失敗していない人間は危ないからあいつには投資をするなというようなことさえ言われている。  ここのギャップというのは、非常に日本人のメンタリティーの深いところに根差していると思うので、いつもこれはどうしたらいいんだろうと頭を抱えるんですけれども、この部分をどのようにお考えになるか、あと三分ぐらいしかないんですが、樋口参考人大見参考人の方から一言ずついただけますでしょうか。
  30. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) 今の問題は、まさに評価をするためのしっかりした項目、イシューをつくり上げていない国で、君はだめだよと言われると全人格否定になっちゃうんです。それで、評価項目がしっかりしている国では、ここが君はだめだ、こっちはいいんだけれどもここはだめですという形で敗者復活が可能なんです。敗者復活が可能になるためには、失敗の中から徹底的な教訓を身につけた人でない限りは敗者復活はないと思います。そういう人が選ばれて復活していると思います。
  31. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) 私どもはいつの間にか、経済戦略会議でも書きましたが、頑張っても頑張らなくても結果は余り変わらないというような社会に少し行き過ぎたんじゃないかという感じでございます。そういう面で、頑張った人が非常に報われるという社会にしないと意味がないんじゃないかというのが経済戦略会議の一つの流れでございます。  しかしながら、そこにおいてセーフティーネット、先ほど野口さんからのお話で安全の網というものは当然しなきゃならない。その場合に競争原理というものを、一つの基準というものをはっきりして、その結果出てきた敗者といいますか負けた人に対してセーフティーネットをどう張るか。それは、やはり世間が納得するセーフティーネットをやや多目に張るべきではないかということでございます。その場合に、今後の敗者という者に対しては、暗黒の海に出るんじゃなくて、海図を持ったやり方をやらなきゃいけない。だから、一つの基準というものはつくらなけりゃいけないんじゃないかという感じを持っております。  それから、バウチャーというものを導入いたしまして、そしてその選択制の幅を広げていくということが一番大事じゃないかなと考えております。
  32. 畑恵

    ○畑恵君 どうもありがとうございました。  バウチャー制は会議の中でも強く御要望いただいていて、私どももぜひ実現に向けて頑張りたいと思っております。  多少時間が残っておりますけれども、全体が押しておりますので、これで質問を終わらせていただきます。お二人の残りの参考人の方々、申しわけございませんでした。
  33. 海野義孝

    ○海野義孝君 公明党の海野でございます。  参考人皆様方には、きょうは早朝からお出ましいただきまして、今回の産業活力再生特別措置法案に関しての審議に際し、多大なる高邁なる御議論を展開していただきまして大変参考になりました。ありがとうございました。  そこで、最初に樋口参考人にお教えいただきたいと思いますけれども、先般来、経済戦略会議議長あるいはまた産業競争力会議委員等を通じて、バブルの始まる前からバブル後に至る我が国の動乱の日本経済産業界にあって、御自分のまさに確たる経営者としての力を示された。これは私は、今回の経済戦略会議、この会議というものが、具体的に言うと民間から多くの方が出られて、そして官民一体となっておやりになりましたけれども、その中心となって今回議論をまとめられて、それを基として今回の本法案の審議に入っているということじゃないか、こう思うわけでございます。  そういったことで、私がつらつら考えますのに、従来、私はこの世界に入ってくる前には、日本経済は一流である、このように言われたわけでありますけれども、どうもここ十数年の間に日本の地盤沈下というのは大変厳しいものがある。過去のことをとやかく言ってもしようがありませんけれども、これについてはアメリカのレーガン時代以降、カーター、レーガン、あるいは今日に至るまでの中でのいろんなそういう改革というものを通じて、もう一つはやはり国民の自主性というか、そういったものが大変すぐれていた。この辺で彼我の差は大きいんじゃないか、こう思います。  そうした中で、今回せっかくこういった法案ができますけれども、私はこの経済戦略会議の中で一つ落ちていたことがあるんじゃないかという気がします。  これも議長が身をもって、議長になられたということでわかるかと思うんですけれども、いわゆる経営者の責任という問題が問われていないというか、これが私はやっぱり一番大きな問題じゃないかという気がするわけなんです。そういう意味では、経営者の質の改善ということについて、これを何か触れておくべきじゃなかったかという感じがするんです。  そこで、若干これは私が言うのは皮肉にとられるかもわかりませんけれども政府支援策に労働者の職業教育とか人材派遣業の支援とかそういったものと並んで、いわゆる経営者の教育対策とか経営者の人材バンクとか、こういうようなことに対する支援策ということをつけ加えるということの必要があったのではないか、こう思うんですが、その辺について、経営者としての御所見をお聞きしたいと思います。
  34. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) まさに海野先生のおっしゃる点はそういうことでございまして、実はこの論議の中の六人は当然経営者でございました。戦略会議の十人の委員の中の六人が経営者でございますから、結果的にはその人たちは責任をとられるようなことがなくて出てきたわけでございます。しかしながら、やはり責任をとる問題として一番最初に出た問題が、司直の手を経てそれが出てきたということは経済界として全く残念なことであります。  だから、そこで問題は、監査役制度もあり、外部の公認会計士制度もあり、そういうものがどうして機能しなかったか。そして同時に、ある程度お互いに経営者のトップに近いところの行動というのはわかるはずだということが一つございまして、まさに御指摘のとおりでございます。触れませんでしたけれども、実際にはそれ以上のパワーとスピードを持って司直の手が動いたということは事実でございます。そういう点からいって、それが一段落した段階で我々が八月二十四日に戦略会議を始めたわけでございますので、あるいは少しそれを避けたかもわかりません。その点はひとつもう一度、今なお戦略会議は続いておりますので皆と相談したいと思います。  なお、自己責任等いろんなことをお話しいただきましたが、アメリカにおきましてもやはりこういう問題が出てきたのはギングリッジ氏の百の提言、これは下院の議長でありまして、非常に若いときから代議士生活をやられた方であります。その方が百の提言というものをやったわけであります。百のこういうものを直してほしいと、それに伴う立法をやった。それに輪をかけてやったのが、ヒューレット・パッカードの会長をやったヤングさんのヤング・レポートでございます。  そういう問題で、自分みずからの手でやるということをここで参考に申し上げます。ヤング・レポートがなぜよかったか、ギングリッジの提言がよかったかというと、それを改革したのは一体だれだったか。それはゴア副大統領が確かに形式的には座長でありましたが、やったのは二百五十人の役人がそれぞれのポストにおいてみずからのことを検証したわけであります。十名の弁護士あるいは十五名の公認会計士の方が参画いたしましたが、全員が役人でありました。そして、今約八年間かかっておりますが、二三%の人員の整理、それから十六万八千ページ、これは法律だけじゃなくて政令を含めてこういうものをカットすべきだ、直すべきだということを提言した、みずから直したということが一つの大きなポイントになっております。  それに刺激されまして、どういうことかというと、大統領はハンマー賞というのを出したわけであります。クリントンさん初め、みずからの手によって自分たちのやったことを判断して直した勇気に対して、チームと個人に出したわけです。それに対するアメリカ企業一般の反応はどうだったか。そんなに自分のことを自分で検討してやる人間については高給をもって抱えたいということが殺到して、従来よりも平均三八%の増収でみんな転出していった。  確かに、日本の官僚制度は終身であります。一方、片や、大統領がかわると高級官僚がほとんどかわるという状態でありますから違うことは違うんですが、みずからの手でやるというのはそういうことなんだということで申し上げたいと思います。
  35. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうも大変ありがとうございます。  もう一つ、樋口参考人にお聞きしたいんです。  今、我が国はこういう大変厳しい状況にありまして、政官民問わず国民が血を流して、そして新しい二十一世紀に向かってチャレンジしていかなくちゃならない、こういうことだと思うんです。そういった中で、今回の法案を通じて、ここにはいろいろなサポートするという部分はありますけれども、これは日本のこれからの企業あるいは経営者にとりましても新しい警鐘を乱打されたのではないか。  私がお聞きしたいのは、二十一世紀に向かって日本企業が生き残っていくための課題とか条件とかそういった点、先ほどもちょっとお触れになったような気がしますが、時間が限られていますので簡単にひとつ。先般もある雑誌を読んでおりましたら幾つか御指摘になっておられたように思いましたので、簡単にひとつお願いします。
  36. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) 今、海野先生のお話の中で、血を流してという言葉が非常に大きなポイントでございます。  まず、金融の問題について申し上げますと、新聞その他におきましても公的資金の供与という言葉が出ておりますが、あれについて実は国民の血税であるということの認識度が、供与というのはただで上げるんじゃなくて貸し金であり、大体十年を最長としておりますが、恐らく私どもの見通しでは三年半ぐらいで返ってくるだろう。しかも政府は、かなり株価の上昇によって、今既にもう金融機関の株は三十何%上がっておりますから上昇は見込めるだろう、収益はあるだろうと私どもは思っておるわけであります。  やはり問題は、サポートというものを今度の法案において受けた以上は、その責任というのは当然出てくるわけです。その問題は、精神的規定じゃなくて、そういうものについては倫理的な問題を、極端に言えばこの産業再生法案の恩典に浴してそして立ち上がれた人たちは、それに対して何を返すべきかということを個々に考えるべきではないかと、私はそう思うんです。  だから、これは具体的な問題として、例えば雇用の問題あるいは環境問題、あるいはいろんないわゆる利益を生まないような仕事に対する貢献とか、そういう問題に対する責任は私は当然出てくるだろうと思います。  それで答えになっているかどうかわかりませんが。
  37. 海野義孝

    ○海野義孝君 野口参考人にちょっとお聞きしたいと思います。  今回の法案に基づいた事業再構築計画というものが言うなれば雇用リストラということになるのではないかと大変懸念されるわけでありますけれども、そういう対象になるような企業あるいは経営者に雇用されるような労働者の方は大変お気の毒だと私は思うんです。  そこで、こうした後ろ向きの姿勢しか示さない経営者、それを抱える企業の労組の場合は、単なる雇用確保だけの労使協議ではなくて、経営の立て直しとか革新につながるような積極的な経営改善の提言を行う中で雇用の確保を図っていく必要があるのではないか、このように思うんですけれども、こうした場合の労使協議の実態、それから今後のあり方、こういったことについてはどのようにお考えですか。
  38. 野口敞也

    参考人野口敞也君) 今回の法案がそもそもどのような経緯でできたかということを考えました。先ほど樋口会長経済戦略会議について触れましたけれども、それは経営者あるいはエコノミスト、これらの方々の一方的な考え方企業にとって今何が一番いいかという判断の中だけでしか議論されていなかった。そういう中で出てきた政府に求める施策、それがそのまま法案になって出てきているわけです。  私は、今までいろいろと産業構造の転換に関する政府の事業なり法律なりを見てまいりましたけれども、こんなに一方的なやり方というのは初めてだと思います。いろんな議論というのはかなり幅広い土俵の中で今までなされてきました。当然、雇用問題についてもいろいろ議論されました。しかし、今回はまさに企業ニーズだけに基づいてこれが出てきている。しかも、先ほど大見教授はスピードこそ勝負だと言われましたけれども、私どものこの参考人の決定にもあらわれているように、すさまじいスピードでこれが今仕上げられようとされております。  そういう中で、先ほども述べさせていただきましたけれども雇用について私たちは大変危惧を感じているんです。ただ、ここで考えなければならないのは、いずれにしても雇用がどこにあろうとも、その生活にかかわるコストというのは社会全体でどこかで担わなければならないわけであります。企業がそれを離しても、それはまた税金あるいは雇用保険のような形でこのコストを負担しなければならないわけであります。だから、どういう形でこの雇用を社会の中で維持していくのか、キープするのかということについて私はもっと深い議論をしていかなければならないんじゃないかというふうに思っております。  そういう意味で、全体の計画を進めるに当たって、これは行政の立場からもその辺について配慮していただきたいと思いますが、当然のことながらそれぞれの企業においてこれを考えなければならないと思うんです。政府支援があって設備を縮小する、これはやられるでしょうし、それを円滑化していくのがこの法律の目的ですが、しかし雇用削減するのがこの法律の目的ではないわけであります。とはいいながら、一方では過剰設備過剰雇用過剰債務という三Kばかりで、全部を減らさなければならないというような言い方がなされておるので非常に危機感を感じます。  お答えになっているかわかりませんが、私どもはもう一度やっぱり今の低成長の中で雇用をどう維持していったらいいかという議論をさらに深める努力をしてまいりたいというふうに思います。
  39. 海野義孝

    ○海野義孝君 もう一人御質問したいと思うんですが、大見参考人にお願いしたいと思います。  我が国大学では、依然として教授を頂点とした徒弟制的な色彩を有しているところもあるというふうに聞くんです。これもある面では重要なことかと思うんですが、そうした場合に、埋もれている人材とか研究が相当程度存在しているんじゃないか。もしそういうことであるならば、そういった埋もれた人材とか研究を発掘して活用していく必要もあるんではないか、このように思うんですけれども、先生はかなり積極的に弟子の教育であるとか、あるいはまたいろいろな企業をつくられるとか、いろいろおやりになっているそういう現場のお立場として、この辺についてどのようにお感じになっているか。  それからもう一点は、逆に、大学研究成果を使う側の企業から見ますと、企業ニーズに対応した研究とか成果の移転の促進が望まれるわけですけれども、そういったための産学官のネットワークという点での仲介としてのTLO、これが今後一層求められると思うわけでございます。そういった点で、東北大学の場合は、日本のTLO、大学の中でも幾つかの中の一つとしてかなり先進的な役割を果たされていると思いますけれども、現場のお立場でその辺についての御意見をお聞きしたいと思います。
  40. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) まず、大学における人の育成が徒弟制度的になっていますよという御指摘がありまして、今でもそういうやり方で人を育てている大学あるいは学部が多いんではないかと思います。  先ほどもちょっと申し上げたように、私どもが目指している育てるべき人というのは何かというと、プロデューサーをやれるような、あるいは本当の新技術研究開発の指導者をやれる人たちを育てたいと思っています。これは、将来を見抜いていく、あるいはそれに近づいていく仕事の仕方、そういったものを身につけないといけないものですから、オン・ザ・ジョブ・トレーニングでしかなかなかそれは身につかないので、徒弟制度的にやらないと、若いときはやっぱりやりたくないことはやりたくないよという人が多いものですから、プロデューサー役割というのは、ターゲット要求することは必要なことは全部やらないといけませんから、好きなことだけやっていて嫌いなことは嫌ですという人はこれはもともとなれないんです。そういう意味で、私は、ある分野によってはそうでない方がいいものはあると思いますけれども、徒弟制度というのはやはり非常に大事だというふうに思っています。  埋もれた研究、人材が出る可能性があるのではないかという御指摘ですけれども、指導に当たる教授が可能な限りたくさんの成果を世の中に出して国民の役に立ちたいというふうに思っておられないと、若い人たちと競争しちゃったりして、よくできる人をいじめるということは残念ながら起こります。ですから、大学の教授の方々のミッションを、なるべくたくさん仕事をして社会の役に立ちなさいということを明確にしていただけると、徒弟制度の中で人をいじめていたんじゃ成果は出ませんから、どんどん若い人を活用してくださるんではないかというふうに思います。  それから、新しい産業をつくっていくあるいはこの国を強くするという意味の産官学連携に関しては、先ほども申し上げましたように、もう絶対に必要だと私は思っております。  東北大学でも、TLOをスタートさせていただいて、今までなかなかパテントなどをお書きにならない教授の先生方が、このシステムができたことによって、私も書いてみますというような雰囲気になってきた。東北大学もパテントをたくさん出している大学として非常に有名なんですけれども、実際に出している先生方というのは十人に満たないんです。結局十人ぐらいの人たちがせっせせっせとやると世間からはよく目立つという例でもあるんですけれども、やはり知的資産を有効活用するという意味で、たくさんの先生方がパテントを出していく、産業界にそれを渡していくという雰囲気が出てきているという意味で、TLO設立は非常に意味が大きかったというふうに思っています。  どんどんこれを活用して、文字どおり大学が発信した技術で新しい産業が興るというような実例をどんどんつくっていきたいというふうに考えております。
  41. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  終わります。
  42. 山下芳生

    ○山下芳生君 お忙しいところ、参考人先生方、ありがとうございます。日本共産党の山下芳生です。  まず、樋口参考人にお伺いをいたします。  樋口参考人は、今回の法案が単なる企業の借金の棒引きであるとかあるいは単なる設備の廃棄であるとか、ましてや人員の削減ではなくて、消費者ニーズがある部分にスピーディーに経営資源を移動することが目的なんだ、そうしなければならないという趣旨のことをおっしゃいました。私は、そういうことになるなら、これはあながち捨てたものでもないのかなという気分があるんですが、しかしそうなる保証がどこにあるのかなというふうに心配するわけです。  樋口参考人企業はそうならないんであろうと。私も参考人企業の主力商品を愛飲しておる者の一人でございますので、本当に蒸し暑い日本の夏の中で、ああいう切れのある味、ああいうデザイン、これはやっぱり消費者ニーズをつかむ商品だろうなと思っております。  しかし、それをつかんだ企業はいいんです。つかむまでが大変であろうと。多くの企業はまだつかめていない。つかめていない中で苦しんでおるわけですよ。そういう企業の経営者が、参考人がおっしゃったように、単なる借金の棒引きであるとか単なる設備の廃棄であるとか、ましてや人員削減に走らないで本当に済むだろうか、その保証がこの法案が実施されてあるんだろうか、これを非常に心配するんですが、いかがでしょうか。
  43. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) 非常に明快な御質問をいただいたわけでありますが、企業のというお言葉がありましたが、私どもの頭の中にあるのは、日本経済あるいは日本の生活というものがあって、長くそういうことをやってまいりましたが、企業ということは、現在の私の頭の中には、戦略会議をやるときにおいては実は余り考えておりません。企業もその中の一つ、雇用問題もその中の一つ、それから社会福祉もその中の一つと、日本全体がバランスのとれたいい国になるということを考えておるわけであります。  そういう点からいきまして、私どもの会社のことをえらく褒めていただいたわけですが、果たしてうまくいっているかどうか、これはわからぬわけでありますが、そういう面で申し上げますと、それではこの法案が通ったらそういうことになるという保証があるかと。御存じのように、やってみなきゃこれはわからぬわけですから、そのために実は、恐らくこの問題は日本にとっては先例がないことをやっておるわけです。  要するに、私どもの提案の中には、例えば即日閣議了承、閣議決定というものは実はございませんでした、戦略会議の中のもので。したがって、逆に閣議報告ということになりまして、それでなお今続いているわけでございますが、そういう面は、やはり新しいことに挑戦していく。しかしその段階で、決めたからといって突っ走るんじゃなくて、この法案をずっと読んでみまして、私、十回ぐらい法案を読んでいるのでありますけれども、非常に短い時間でできた割にはよくできた法案かなと私自身思っております。正直言って、法案の策定ということについて批判するよりも、やっていると。  しかし同時に、やはり途中で問題が起これば、さらにこの法案を補強するなりあるいは訂正するということは十分可能ではないかというような書き方になっているんじゃないか。したがって、先生のお話の保証という点はかなりできるんじゃないかなという感じがします。  改めるにやぶさかじゃないということを考えれば、法案をつくってまたすぐ訂正するというようなことは非常によくないことですけれども、とりあえず日本経済再生するということで、産業界というものを即日本経済と考えていただく。企業と置きかえるとどうも、企業はそんなに、やはり自己努力だってやらなきゃならぬと思っていますから。  これでお答えになりましたか。
  44. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  やってみぬとわからぬということなので、そういうことかなと思いました。  そこで、やってみないとわからないというほどやっぱり非常に不安だという声が出ているわけです。
  45. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) しかし、成功するだろうということですよ。
  46. 山下芳生

    ○山下芳生君 それはそれぞれの認識でございますから。  野口参考人に関連してお伺いします。  参考人は、この法案が逆に一層雇用不安の引き金になるんじゃないか、こういう御認識をお示しいただきました。私もその認識というのには同意している者の一人なんですが、ただ政府は、この法案はそうなるんじゃないかと私どもが聞きましても、大量の人員削減がこれで起こるということは私どもは想定しておりませんと明快に否定されるんですよ。  ぜひ野口参考人に、なぜ雇用不安の引き金になるおそれを抱いていらっしゃるのか、労働界の実態、雇用の現場の実態を踏まえて少し語っていただければと思います。
  47. 野口敞也

    参考人野口敞也君) 過剰設備という言葉に代表されますように、やはり大競争時代の中で、とりわけアジア経済の不振の中で、相当マーケットの量が変わってきているんだろうと思います。  そういう意味で、一つは、企業はかなり企業形態そのものについて柔軟性を求めていくということで、合併ですとか譲渡あるいは分割というのをやりやすくする、こういう制度を求めているんだろうというふうに思います。そのこと自体がいろんな意味でまず雇用問題を発生するだろうと思います。  とりわけ、過剰設備ということを考えますと、例えば合併が装置産業の中で起こってくる、あるいは求めていくという形になると思うんです。国内だけでなくて、それはもう海外との提携の中でも進んでいっているわけです。お互いに不得意な分野は廃棄、縮小していこうと。これがこの法案によってそういうムードが非常に促進されるだろうというふうに思います。  片一方で、企業形態を柔軟化させながら、雇用労働の問題については雇用市場をまさに柔軟化させる、こういう対応によって雇用問題をなるべく少なくしようと、こういう動きがあります。しかし現実に、これは樋口会長企業はわかりませんですが、大企業はほとんど新規採用しかやっていないんです、新規学卒の採用しかやっていない。しかもそれは三月ごろから、あるいは前の年からもう始めているわけです。実際に解雇されました中高年を雇おうというところは上場企業の中では極めて少ない。とりわけ製造業は少ないわけであります。    〔委員長退席理事成瀬守重着席〕  そういうような意味で、特にこれからの動きについては、投資家の基準というのが大変厳しくなっているというお話がありましたけれども、そういうものにもかなり刺激を受けて促進されていく。いろんな意味で、市場の環境あるいは投資家たちからの評価の基準、そういうものが全部一緒になって思い切った事業削減を求めていく。そういう意味で、それが即人員削減につながってくる、こういう危惧をしているわけでございます。
  48. 山下芳生

    ○山下芳生君 そういう意見が出ておるんですが、樋口参考人、何か御発言がありましたら。
  49. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) ただいまのお話について、ちょっと私の実体験的なことを申し上げたいと思います。  鉄が非常な不況産業になりましたときに、新日鉄広畑が大幅な人員整理をやりました。人員整理といいましても、整理という言葉はマスコミの言葉で悪いんですけれども、非常な努力をされて新しい受け入れ先を本当に必死に探されたわけです。たまたま私の方は吹田でガラスの工場をかなり大きくやっていた。公害問題その他もありまして、機械をもう根本的にかえようということで姫路に移りました。そして広畑の労働者を百五十人採用させていただきました。そして、非常に成果を上げたわけでありますが、さらに三十人追加をするという了解をいたしました。新日鉄がある面で再建されたときに、その人たちに意向を聞いて、そしてその人たちが帰る者は帰るということで、なれた仕事をやりたいとまた広畑へ百名ぐらい帰ったわけであります。    〔理事成瀬守重退席委員長着席〕  そういう事例がございますので、やっぱり地域とか、あるいはそういう働きかけが、熱心さがあれば必ずおさまる、ほうってしまうとだめで、先ほど来野口さんがおっしゃっているように、労働協約というのは普通のまともな会社は必ずそういうものが入っていると私は思うんですよ。全部が全部行けるとは思いませんけれども、そういうことで私はかなりのものが防げるんじゃないかと思います。
  50. 山下芳生

    ○山下芳生君 野口参考人にもう一回お伺いしますが、参考人は、法案の三条六項、「従業員の地位を不当に害するものでない」と、こう書いてあるんだけれども、これをもって失業を防ぐことはできないんじゃないかと、こう危惧を表明されました。そこのあたりをもう少し、なぜなのか、職場の実態も紹介していただきながら、こういう規定だけではやはり非常に不安だということを御説明いただけますでしょうか。
  51. 野口敞也

    参考人野口敞也君) 今の法律の表現は、日本語としては何を意味しているのか極めてわかりにくい表現なんです。労働、雇用について触れた表現ではありますけれども、不当に従業員の地位を汚すというようなものが何だろうかと。例えばほかの法律用語で使われているかというと、ないわけなんです。従業員の地位というのは何だろうと。それは、地位が失われることなのかどうなのか、つまり首切り、要すれば解雇になる意味なのか。必ずしもそれが解雇、解雇であれば解雇とはっきり書いたらいいわけなんですけれども、そう書かれていない。  その辺について、産業立法という特殊性があって非常にあいまいになっております。あいまいがゆえに、これについて実際に計画を実施する経営者において、この文言にとらわれるかというと、とらわれないで進めてしまう、こういうおそれがあります。そのために、私どもとしては、雇用に影響のある場合には労使協議、それから合意というような明確な文言を入れていただきたいというふうに考えております。  今の表現については、ぜひこの参議院におかれましてももう少し中身を詰めていただいて、具体的に施策的に何を経営者に考えさせるのかということをはっきりさせていただければというふうに考えます。
  52. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  続いて、花田参考人にお伺いをいたします。  参考人は、SOHOやあるいは起業家を支援するというなら、例えば支払い遅延であるとか未払い、不払い、こういう実態があることをもっと直視せよと、消費税が転嫁できないということもあるんだと、こう提言していただいたんですが、非常に大事な問題だと思うんです。もう少し実態を詳しく御紹介いただくのと、それに対してこういう対策が必要ではないかという御提言がございましたら御紹介をお願いしたいと思います。
  53. 花田啓一

    参考人花田啓一君) 実態というのは、現実的には非常にたくさんあってどれを紹介していいのかわかりませんが、私ども日本SOHOセンターに現在会員の方から寄せられている相談の一つに、デザインの仕事なんですが、しましたと。これに対してクライアント側から言ってみれば難癖をつけられて支払いがうまくいっていないという相談があります。  これは、よくよく話を聞いてみますと、私の解釈では難癖なんですが、そのデザイナーの方が個人でやっているということでクライアント側が甘く見ているのではないかと。ですから、最初に相談を寄せられてきたときには、このデザイナーの方は非常にろうばいしておりまして、どうしていいかわからないという状態だったんですが、実際に話を聞いて、会員である以上、私どものJSCという団体がバックをしますよ、私どもには顧問弁護士もおりますので、いざというときには裁判でも何でも出ましょうと。  実はクライアント側が、いざというときは裁判に行くぞというおどかし方をするわけです。当事者がいらっしゃらないので欠席裁判的な言い方になって恐縮なんですが、裁判に出てしまいますと個人事業主というのは面的に仕事ができなくて、その時間をとられます。大きな企業の方であれば法務部なりなんなりがあって対応されて営業には差し支えないかもしれませんが、個人事業主の場合は裁判費用を含めて全部いろいろな手間暇がかかってしまうわけです。ですから、自分が正しいと信じていても、裁判に出ることによって自分自身の仕事がかなりの影響を受ける。率直に申し上げてほとんど崩壊寸前に至るわけです。ですから、そういうおどかし方をされた場合は泣き寝入りするしかないという状態があるわけです。  ただ、そういう相談を受けたときに、これは泣き寝入りさせてはいけないと私たちは判断いたしまして、いざというときは裁判に出ましょう、私たちも応援しますし弁護士もいますしということで強気に出た結果、結局この話はクライアント側の方がぐずぐずっと折れていって、結局なしになったといいましょうか、一応ちゃんとした結末が今のところ迎えられているというような事態もあります。  ですから、個人というものは、企業企業でもいろんな闘いはあるかもしれませんが、個人対企業になった場合に限りなく個人の方が弱いという実態が未払い、不払い、不当な支払い遅延などを実際に生じていると思います。こうした問題に対して、私たちのような団体があることで応援できると。仕事のスタイルとしては一人もしくは小規模を選びましたけれども、やはりそういった人間たちがネットワークを組むことによってそういった不公正な状況を一つ一つ是正していくということが必要じゃないか。そうしたら安心して個人でも仕事ができるようになるというふうに考えております。
  54. 山下芳生

    ○山下芳生君 非常にJSCの貴重な存在意義ということも理解させていただきました。ありがとうございました。  最後に大見参考人にお伺いをいたします。  参考人は、これからの産学連携必然性ということの中で、実社会ニーズ最適解を与える、しかも最短時間で与える、そのために必要なことをすべて実施することが大事だというお考えをお述べになっていただきました。  私は、そのお考えを聞いておりまして一つ心配なことがございます。それは、実社会ニーズとは一体何か。これが例えば狭い意味での市場のニーズということになっちゃうと、ある意味で人権でありますとか環境でありますとか、あるいはその地域で安心して働き住み続けられる社会をつくる観点でありますとか、そういうものが後方に追いやられてしまって、そのための学問研究というものがどうも日の当たらないところに追いやられることはないのか、そういうふうに思うんですが、この実社会ニーズというものをどうとらえることが大事なのか、お考えがありましたらばお願いいたします。
  55. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) 具体的な話として、例えばかつてあったような垂れ流しで世間に御迷惑をかけるというようなことを意味されたんじゃないかと思うんですけれども、そういうことは実社会ニーズとはかけ離れていますね。そういうことは。そういうことは一切しないということがこれに入っています。最適解というふうに書いてございます。世の中がちゃんと受け入れてくれるものでないとこれは絶対受け入れてもらえませんので、簡単に言うと、上流から下流まですべて完全に一貫したものにして、どこかだけをやってどこかはやりませんよということは絶対にしないということです。  それ以外に、長い間大勢の方々から受け入れていただける、あるいはいろんな国の方々から受け入れていただける新しい技術体系にはなりませんので、そういうことを全部イシューとして書き上げて、それを研究開発していけるプロデューサー役割というのは非常に大事なんです。ですから、なかなかプロデューサー役割をやれる人というのは育たないんですよ、非常に広範な分野のことを理解しないといけないものですから。  そこのところをどういうふうに育てるかという先ほど御質問をいただいたんですけれども、やはり大学が中心になるんだろうと思うんですが、産官学連携の中で新しいものに挑んでいくその過程の中で、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで人を育てることになるんだろうというふうに考えています。
  56. 山下芳生

    ○山下芳生君 どうもありがとうございました。
  57. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 きょうは四人の参考人先生方の貴重なお話を聞きまして、本当にありがとうございました。時間の関係で、四人の方にそれぞれ簡単に先にお聞きをして、ずっと答えていただきたいと思います。  樋口参考人、本当にスーパードライが当たってよかったと私は思います。あれが当たらなければ、今そこにおれないんだろうと思っております。ことしは夏も暑いことだし、希望があると思います。やっぱり台所がちゃんとしていなきゃ国家戦略も語れない。  ただ、経済戦略会議というのは首相の諮問機関でありまして、国会は関与していないんです。私的諮問機関というのは極力少なくしてもらいたいというのが国会の意向なんです。何人か勝手な人が集まって勝手な方向を出して、それが世論を形成してやるというのは、やっぱり過去の反省からも。  それはそれとして、いいものはいいわけですから、ただ、野口参考人からお話がありますように、このメンバー十人の中身は経営者と学者です。本当に被害を受ける労働組合、労働者の代表が戦略会議の中にあって、これはあなたが選んだわけじゃないけれども、あなたは議長ですから、今、野口参考人だけじゃなくて花田参考人からもお話がありましたように、弱い人の立場、そういう者を入れて初めて調和がとれるわけですから、そのことをぜひ頭の中に入れていただきたいと思います。それが一つ。  それからもう一つは、国際競争力とか生産性ということをあなた方はよく使っておりますが、これはバブルと経済政策の失敗、そういうものが根底にあって、そして総需要が冷え込んでおる、個人消費が落ちておる。総需要が落ち込んでおるがゆえに、企業の稼働率が落ち、生産性が落ち、コストが高くなる。特に労務費の占める割合なんかがどうだと、こうなるわけでありまして、私は、総需要抑制政策をもっと真剣に考えないと、枝から先に入ったんじゃこれはやっぱりよくない、このように思うんですが、その点はいかがお考えなんでしょうか。  それからもう一つ、これからその延長線上に恐らく貿易の黒字がどんどん続くと思います。経済摩擦がまた出て、だから究極は内需拡大に落ちついてくると。その点、御意見をお聞かせいただきたい。  それから、実質賃金が上がり過ぎた、引き下げるというのが根底にどうもあるようでありまして、これもちょっとどうかと思うんですが、その点、考えられることがあればお聞かせいただきたいと思います。  それから大見参考人、スピードのことはよくわかりました。真の幸せというものはスピードだけで得られるのかどうか、スピードと本当の人間社会の幸せというものについて、科学者の立場で何かコメントがあればお聞かせいただきたいと思います。  野口参考人、よく趣旨はわかりましたが、こういう重要法案をつくるときに、恐らく通産省も相当あなた方に相談をしていると思うので、法律をつくる前にどういう相談があったのか、それがなぜ入らなかったのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。  それから花田参考人、開業率の問題で、景気がいいときに開業率が高いのか、あるいは今のような不況のときに開業率が高いのか、そういうような傾向があるとすれば、お考えを聞かせていただきたいと思います。  以上、よろしくお願いします。
  58. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 時間の関係もありますので、お一人三分以内でひとつお願いいたしたいと思います。樋口参考人からお願いします。
  59. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) お答え申し上げます。  梶原先生の御指摘の点について、一つ一つ申し上げます。  まず、プライベートな審議会、これは実は従来、この種のものは中曽根内閣のときの前川委員会、これは確かに私的な諮問委員会でございました。しかしながら、非常な成果を上げられまして、新前川レポートで貿易摩擦の問題が終わった。二番目は平岩レポートで規制緩和の問題でございまして、これは現在の宮内君、その前は飯田さんに続いているわけでございまして、今回が三回目でございます。  実は、私どもは初め総理の私的諮問機関と思っておったんですが、行政組織法の八条機関になったわけでございまして、そのために委員をやめたという人もおります。非常にかた苦しいということと縛られるということでありましたので、我々は伸び伸びした意見を出せないということでしたが、逆にそんなことは構わぬから何でも言ってくれということでございましたから、気持ちは私的諮問機関のような感じであり、同時に責任感は国家行政組織法の八条機関です。しかしながら、時限的なものでございますということをまず申し上げておきたいと思います。  それから、先生のお話の大きなポイントは、やはり経済界というものは、全体的な視野で見ながら、社会一般の流れを見ながらやっていかなきゃいけないんじゃないか、企業のことだけを考えていたんじゃだめじゃないかという御指摘ととってよろしいでしょうか。
  60. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 総需要。
  61. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) 総需要拡大ということでありますが、総需要拡大というのは今回の一番の眼目でありまして、アメリカのレーガン政権が双子の赤字で苦しんでいたときに一番言われたのは需要の喚起でありまして、そのために減税をやったわけであります。だから、そういう点は我々は頭の中に置きながらこれをやったということを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、実質賃金の問題でありますが、実質賃金が上がるということは、こんなすばらしいことはないと私は思っております。  終わります。どうもありがとうございました。
  62. 野口敞也

    参考人野口敞也君) 通産と事前の話し合いを持ったかどうかということですが、現実には持たせていただきました。  ただ、私は、いろいろな意味でこれからの法律というのは、通産なら産業だけの立場から考えてはいけないので、かなり幅広い視野で法律というのはつくっていくべきだろうと思います。そういう意味で、先ほども申し上げてきたんですが、前提になる会議であるとかが非常に不十分であったというふうに思っております。  現実に、私どもとしましては、今回の法律におきまして、先ほどから要請させていただいています労使協議の義務づけの問題、さらに雇用へどういうような影響があるのかということで、とりわけ認定に当たって、新規事業と今までの既存事業の撤退、縮小とをどういう比率であれば認めるのか、恐らくこのままいってしまうと後者の部分が大部分なのに認められてしまうことになるのでないか、それでは困りますというような話。あるいは解雇の場合の条件。最近、こういうような形で一般に人員削減が常態化してきますと、今まででき上がってきた判例上の解雇の原則についても非常にあいまいなものになってしまうおそれがあります。それに対する配慮。さらに、一番最初に主張させていただきました分割、分社化あるいは譲渡、こういう際に関します雇用あるいは労働関係の包括的移転、そんなものを要請してまいりました。  しかし、ほとんどの部分において実際には法案の中では実現しなかったというのが実態でございます。
  63. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) 御質問の要旨は、スピードと人間社会の幸福の相関関係というふうな御趣旨ではなかったかと思うんです。例えばこの委員会でも企業の人員削減の問題が取り上げられていますけれども、人を減らさないでじっと全員抱えていてすべての会社が全滅するのがいいのか、つらいことではあるが、やはり国際競争力に打ちかっていくためにある程度の人たちはやめてもらわざるを得ない、でも企業は存続して税金は入ってくる、どっちを選びますかという問題なんだろうと思うんです。  ちょっとこれは今の御質問とは違うんですけれども雇用の問題のときに人材流動化ということが同時に言われていて、国際競争という立場から見たときの日本の今の企業の欠点は、終身雇用制から起因するモノカルチャー化なんです。海外の企業が非常に多様なフィロソフィーのもとに運営されているときに、日本はモノカルチャーの企業になっているものですから対応ができないんです。非常に弱さの裏返しの表現になっているだろうと思います。いろいろな人たちがいろいろな企業を渡り歩くような、モノカルチャーにならない、そういう企業をつくっていくことが非常に大事じゃないかなというふうに私は思っています。積極的に人は動くべきだという立場です。  スピードの問題なんですけれども、一つは、経済的な豊かさをある程度ギャランティーするということが人間の幸せの原点ではないかと思いますので、エネルギーも食料もほとんど海外に依存しなければいけない日本では、やはり非常に強い産業を興していかざるを得ない、競争力を上げていくためにはスピードが非常に大事だというふうに思います。  例えば、日本のこれからの社会の高齢化の進むスピードなんというのは、欧米に比べて圧倒的なスピードで進んでいるわけです。否やを問わず、やはりそれに対応する構造に変えていかざるを得ない。例えば、二十年前に比べて今生まれてくる子供の数は半分ですから、なおかつ高齢者の数が何倍かになっていますので、今の日本の繁栄をキープしようとすると、これからの若い人たちは多分私ども時代の平均値で四倍、五倍という仕事をしなきゃいけない、そういうことを当然要求されてくるわけです。  私ども大学院重点化という大学に九〇年代の前半に変えたんですけれども、そのときの頭書きにも、これからの大学役割は若い人たちの才能を平均値で二倍以上にしないといけませんというのを書かせていただきました。そんなことできないとおっしゃる方がたくさんおられたんですけれども、私はできると思っています。  どういうことかというと、コンセンサス社会であるがゆえに、私どもずっと今まで仕事をしてきた中で、前向きのことに使える時間というのは二〇%から三〇%、ほとんどが後ろ向きのことに時間を使わされました。これをひっくり返せば、十分これからの若い人たちがたくさんの仕事をしてこの国を繁栄させることが私はできるだろうと思います。そういう社会構造に一刻も早く変えないと、豊かさという最も人間の幸福にとって大事な原点をキープできないんじゃないかというふうに思っております。やむを得ないんじゃないかなという気がするんです。
  64. 花田啓一

    参考人花田啓一君) お答えいたします。  開業率の高さと景気との関係という御質問ですけれども、基本的に日本の場合はずっと低い状態で、今も低くなりつつありますので、景気との関係は直接ないだろうというふうに考えております。  これはなぜかというと、先ほども申し上げましたように、開業したときのリスクを予感しているから開業したくないという人間がいる以上、景気の問題とは直接リンクしないであろうというふうに考えるからであります。しかしながら、今後は、これは景気が上昇するかどうかは別といたしまして、開業率は上がっていくだろうというふうに考えております。  なぜならば、基本的に失業率を下げるための開業促進という側面があるからでありまして、このことは私が一方的に申し上げているのではなくて、私がせんだって通産省のマイクロビジネス研究会にオブザーバーとして出席いたしましたときに、通産省の官僚の方が明言されております。要するに、何ゆえマイクロビジネスを、いわゆるニアリーイコールでSOHOなんですが、促進しなければならないのかといったら、失業率がどんどん上昇しているからだと。このままでは失業保険、いわゆる雇用保険ですが、国家財政がただでさえパンクしかかっているのに、失業保険の支払いで完全にパンクする、その先には生活保護が待っている、これでは国家はたまらないと。ですから、通産省としてはマイクロビジネス支援するんだということを明らかに宣言されておりますので、これはもう明らかにこれからどんどん開業率は上がっていくだろうというふうに考えております。
  65. 水野誠一

    ○水野誠一君 参議院の会の水野誠一でございます。きょうは皆さんありがとうございました。  まず、樋口さんに伺いたいと思うんですが、きょう、お話の中でリエンジニアリングという言葉が出てきて、大変私は我が意を得たりという感じがいたしました。  と申しますのは、リストラという言葉が、本来はそういう意味ではないと思うんですが、削減という意味に使われてきている。過剰設備過剰債務過剰雇用削減という意味で、非常にリストラという言葉が刺激的な響きを持ってきちゃっている。  それで、リエンジニアリングというのは、私の解釈では、人的資源を含めてあらゆる資源をむだにせずにもう一度因数分解して組み立て直して再活用する、再活性化するということだと理解をしております。  実は私、第二次橋本内閣のときの財政構造改革会議でも、国がこれからリストラをやるというのはおかしい、そうじゃなくて、リエンジニアリングをやるべきだということを発言させていただいたんですが、恐らくほとんどの方はおわかりいただけなくて、無視をされて大変寂しい思いをいたしました。それからいきますと、本当にこれから必要なのはリエンジニアリングだと、こういう理解をしております。  そこで、特に樋口参考人金融界にも詳しくていらっしゃるわけですが、産業のリエンジニアリングの中で一番重要なのは資金調達構造、これを変えていくということではないか。事実、金融の直間比率というのを見てまいりますと、大分改善はされているというものの、まだ日本というのはアメリカと比べますと三倍程度の間接金融、つまり銀行借り入れ依存というのがあるわけでございまして、これを変えていくと。  それから、あるいは日本金融システムではまだ土地本位制と言われるぐらい土地担保というものの比重が高い。それから、日本ではいわゆる金融側の自己責任であるノンリコースローンというものがまだなかなか普及しないというような問題、これをやはり変えていくということが本当の競争力を再生していくための最大のリエンジニアリングではないかなと私は思うんですが、その点についてぜひ御所見をお伺いしたいと思います。
  66. 樋口廣太郎

    参考人樋口廣太郎君) お答えいたします。  まさに水野先生のおっしゃるとおりで、非常に変わりつつありますが、銀行、間接金融がまだ味をしめている。ということは、やはり企業人たちの勉強不足ということが非常にありました。同時に、その勉強不足を金融機関が割合に利用したという点はあると思います。  しかし、今回の金融再生委員会あるいは金融監督庁の動きを見ていますと、大きな流れを立てて、近くかなり大きな、もうほっておいても直間比率が変わるような事態が起こるだろうと私は思っております。  それから、融資のあり方につきましては、私ども、根本的に日本金融機関が間違っていたと思いますのは、反省を込めて言うならば、土地本位制、担保がある、こういうところに土地があってこれだけの評価があるということ、それからあの家は何代も続いている家だ、あの会社は有名な会社で明治以来ある会社だ、そういうことの基準で貸していた。そうじゃなくて、プロジェクトファイナンス、私どもは、あのプロジェクトはいいんだから、あの人間はいい人なんだから、経営能力があるんだから、あるいはマネジメントの力があるんだからお金を融資して必ず返してもらう。  今想起いたしますと、世銀が、日本が高速道路をするときに、日本側の要求は東京から厚木の間を最優先するということでしたが、その席に参加いたしました私どもが非常にびっくりしたのは、ノーと、それは名古屋から始めて神戸にしてほしい、なぜなら東京と厚木の間では米軍の住んでいる人たちは非常に快適だけれども、返してもらえないと。世銀は、お金が返ってくるのが我々の原則だと。名古屋と神戸の間はたくさんの都市がある、そして自動車の往来が今でもかなり多い。だから、返してもらうということが基準でなければいけないということで、プロジェクトに対する融資、プロジェクトという物の考え方が抜けていたんじゃないかということが一つのポイントであります。  そこで、私、この問題で水野先生のおっしゃることで申し上げたいと思うのは、今私どもの頭の中にあるのは二つございます。  一つは、ボストン近郊のルート一二八というところ、これは御案内のように、一時日本産業界あるいは学者もみんなすばらしいと。ボストン大学あるいはハーバード大学のビジネススクール、そういうものを中心にできまして、今大体七十万から八十万の人口があります。輝く工業都市だと言われていた。我々も見てまいりました。  しかし、今やどうでしょう。終身雇用で、そして全部我々と同じように背広を着てネクタイを締めて、そして特許料などは全部会社が吸い上げている。そのために非常に衰微している。本来、予定人口が五百万だと言われていたのが衰微している。  一方、シリコンバレー、これはスタンフォード大学が初めてその構想をカリフォルニア州と発想したときに、あんなものはだめだと言われたわけです。それが今は七百万から八百万人になっている。行ってみて一番感心することは、そこにいる人はほとんどがポロシャツにジーパン、そして一番驚くことは、勤続年数を調べますと、五年間で何回職場がかわっているか、三・六回かわっているわけです。しかも、駐車場は何回かわっているかというと、ほとんどかわっていない。同じ駐車場で会社がかわっている。それはどうしてそういう現象が起こったか。要するに、アフターファイブのときにディスカッションをする、そして、自分の考え方を生かすには会社はかわっていこうと。こういうような感覚で、今や七百万人になっているわけです。  日本におきましても、御案内だと思いますが、NTTが横須賀に研究所を移しました。その結果、世界じゅうの通信の研究所がほとんど今横須賀地区に集中して、それに伴って企業も入ってきた。同時に、水野先生は慶応に関係しておられるわけですが、慶応の湘南へ私も行って教えておりますけれども、あの近辺の変わり方というのはすごいわけです。それから本庄、早稲田大学が約二十八万坪持っている。これが今変わらんとしつつある。これは郵政の衛星を中心に変わらんとしつつある。  そういうような動きを我々は考えながら、参考になるもので、もし先生方で視察団を組んでいただくならば、アメリカのニューメキシコのサンタフェ、このいわゆる研究所の集落、あるいはインドのバンガロール、そういうところをぜひ見ていただいたら、経済再生というか国の再生というのはどういうものかということが、見ていただいている方もあると思いますが、ぜひ見ていただきたい。  要するに、少なくとも今すぐにでも横須賀のNTTの研究所を中心とした発展、それから同時に湘南の動き、慶応の湘南学舎というのを見ていただくとともに、できればアメリカへ行かれたときは、くどいようですがサンタフェあるいはバンガロール、特にインドなんかのはいわゆる十進法じゃなくて二進法で、そういうものが集中しておる。それが今アメリカのシリコンバレーを支えている人間でありますから、そういうことを考えて、少し大きな視野でぜひ産業再生ということをお考えいただければと、私のお願いでございます。  ありがとうございました。
  67. 水野誠一

    ○水野誠一君 次に、野口さんに伺いたいんですが、リストラではなくてリエンジニアリングを目指していくという考え方になったときに、恐らく労働組合側もいろいろ選択肢がふえていくんじゃないか。つまり労組自体というのも、リストラをするわけにはいかないけれどもリエンジニアリングだったら大いにできるんじゃないか。そしてまた、そこには経営者だけに知恵を任せるのではなくて、労組としても知恵を出さなければいけない、こういう時代だと思うんです。  簡単で結構でございますが、労組側がどういうふうにこれから変わっていくのか、その辺の展望について簡単に一言お答えいただければと思います。
  68. 野口敞也

    参考人野口敞也君) 今の御質問ですけれども、先ほどの樋口会長のお話にもありましたけれども、かなり思い切った人材資源を使いながら新しい方向を目指して変わっていかなきゃならないというお話、そのとおりだと思います。  とりわけ日本の場合を考えますと、次から次へと新しい企業が出てきてそういうものを推進していくのかというと、決してそうでなくて、日本の特徴は、従来の企業がいろんな新規産業を求めて発展をしていく、そこに非常に特徴があるだろうと思います。  新しい事業のエネルギーというのが何から出てくるのか。もちろん経営者が利益を求めて新機軸を追求していくというのもありますが、片一方では、まさに過剰雇用を抱えながらそれをどう活用するかということで新規の事業をやっていく、経営を多角化していく。それが今までもかなりいろんな意味でパワーを発揮してきたんじゃないかと思います。そういう意味で、労働組合も経営者と全く同じでなくて、やっぱり別の視点を持ちながら、これと協議をしながら新しい時代に挑戦していく必要があると思います。  それと同時に、先ほどから感じておりましたのは、これからいろいろな意味で直接金融がふえてくるだろう。ただし、それについては海外からのいろんな企業評価がある。しかし、日本は今申し上げましたものと、また先ほどからお話がありました長期雇用なりいろんな特徴を持っております。それがついこの前までジャパン・アズ・ナンバーワンを育て上げた力の源泉でもあるわけです。  そういう意味で、もっと外に対して発信をして、日本企業の力の源泉は何か、日本企業の第三の道は何であるか、こういうものを世界的に訴えていって国際的な評価基準というのを変えていかなければいかぬ。また、そういう力を持っておりますのは主として大手企業であるわけであります。そこではかなりきちっとした労使協議の体制がしかれておりますし、いろんな意味で資源を生かすシステムがあるわけでありますが、これをどう日本中小企業レベルまで広げていくかというのが大事なことだろうというふうに思います。  現在、中小企業そのものが先ほど申し上げましたように縮小の段階に入っておりますけれども、もっと元気づける、今までの日本のシステムは決してマイナスばかりではない、そういうイメージを労使挙げまして、あるいは政府もそれをリードしながら勢いのあるものをつくっていく必要が一番あるのではないかというふうに思います。
  69. 水野誠一

    ○水野誠一君 次に、大見さんに伺いたいと思います。  先ほどお話がありました、リニアからネットワーク型に研究開発の体系というのが変わっていく、これは全くこのとおりだと思うんですが、さらにその中で、産々学々という言い方をされているわけです。単なる産学ではなくて、もっとマルチな企業、マルチな学校が一緒に共同研究をしていく。  これは、特に今インターネットの時代になってきて、我々もインターネットでいろいろ見ていると、さまざまな研究論文を我々でも簡単に読ませていただくことができる。こういう時代になれば、相当バリアというのはなくなっていくんじゃないかなという感じがするんですが、その中でもさらに何か阻害要因というのがあるのか、その辺、簡単で結構でございますけれども、お答えいただきたいと思います。
  70. 大見忠弘

    参考人大見忠弘君) 水野先生がおっしゃられるとおりで、これからのありとあらゆるメディア情報といいますか、情報はほとんどがインターネットプロトコル型のコンピューターネットワークを介してやりとりされると思うんです。  ここで私、最後のページに産々学々連携の重要性というのを書かせていただいたのは、今、表だけ見ていると、アメリカは絶好調で日本はもう圧倒的に不利という状況に見えるんじゃないかと思うんですが、アメリカの売ってくる商品の中を見ていただくと、キーになるコンポーネントというのはほとんど日本製なんです。九〇%を超えているだろうと思います。ところが、実際は日本に一〇%もトータルのお金が入ってこない。なぜかというと、全体のシステムを制御するヘッドクオーターに当たるプロセッサーの部分の開発で残念ながら日本はまだちょっと負けているんです。いわゆるトータルシステムの制御部分、ヘッドクオーターの部分をつくるこの仕事をやっていく、新しいシステムトータルの概念を世界に出すということになると、一人二人の教授では無理なんです。当たり前のことですけれども、どの大学現状では一つの専門分野に一人の教授しかいません。そうすると、複数の大学で非常に違うフィロソフィーでやっておられる先生方の連携を強く組まないと、本当の意味のシステムトータルの新概念というのは出せない。それで学々連携です。  同時に、それは事業化産業化しなければ意味がありませんから、複数の企業とのまた連携になってきます。そういう組織をつくっていくときの一番大きな障害というのは、今は文部省と通産省に分かれていますので、省庁間をまたがった非常にフレキシブルな組織を、しかもスピード豊かにつくっていくというところをやれるようにしていただけると物すごく仕事が進むんじゃないでしょうか。  最後に一言だけ追加したいと思うんですけれども、情報家電、デジタル家電というのが二十一世紀の決戦場になると思います。これは、カラーの動画像と音声、データを全部取り扱えるシステムになると思いますけれどもアメリカはパソコンから情報家電に攻め込もうとしています。日本はゲーム機から攻め込もう、こういう戦略です。ゲーム機の中に入っている最近のソニーや東芝がつくっているものとかそのプロセッサーは、動画像を処理するというようなことになるとインテルのペンティアムよりはるかに性能の高いものができてきています。それから、今私どもがやっている大学間連携の研究で、それをさらに千倍超えるようなものとか、そういうものが生まれかかっています。私は、ゲーム機からデジタル家電、情報家電に攻め込むという日本戦略が勝つだろうと思っています。大変おもしろい勝負がしばらく続くんじゃないかと思って楽しみにしているんですけれども
  71. 水野誠一

    ○水野誠一君 時間がもうなくなってまいりましたので、花田さんに一言伺いたいと思います。  おっしゃるように、まさに起業する、創業するときは自己資金も含めて何とかできる、しかし四、五年目、三年、四年たってきて、伸び盛りになってきて資金がなくてどうしても苦しいと、こういう状況があると思うんです。ですから、そういうときに、いわゆるスタートアップのベンチャーファンドではなくて、四、五年目ぐらいにお互いに助け合うようなベンチャーファンド的なものを何か花田さんが中心となってお考えになるようなことというは、これはあるんでしょうか。SOHOセンターとしてそういったビジョンをお持ちかどうか、それだけ伺いたいと思います。
  72. 花田啓一

    参考人花田啓一君) 御指摘のとおり、創業のスタートアップでなくて、それを継続していくときの資金不足に対する手当てというものが必要であろうと思いますが、私どもとしては特別それを考えているわけではありません。そういうものは、やはりある種の公的な資金というかシステムとか、そういう応援体制ができ上がってくれば結構なことだろうというふうに考えています。  先ほど来申し上げているように、やっぱり継続していくということが必要で、そしていろいろなSOHOのスタイルが継続していけば、その中から今御指摘のあったような新しい技術を生み出す力が出てくるし、生み出す人も出てくる、いろいろ個性あふれる人がその中から出てくるだろうということに大いに期待したいと思っております。
  73. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。
  74. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 以上をもちまして参考人に対する質疑を終わります。  この際、参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は、御多忙のところ当委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表し、厚く御礼申し上げます。  この際、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  75. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、佐藤昭郎君及び福山哲郎君が委員辞任され、その補欠として脇雅史君及び川橋幸子君が選任されました。     ─────────────
  76. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 産業活力再生特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  77. 海野義孝

    ○海野義孝君 公明党の海野でございます。  一昨日、質問させていただきましたけれども、きょうまた時間をいただきましたので、一昨日も与謝野大臣には幾度となく御答弁いただきまして大変感謝申し上げますけれども、きょうも冒頭にまた大臣にひとつお聞きしたいと思うんです。  この産業活力再生特別措置法案、きょうも午前中に参考人の方がいらしていろいろと貴重なる御意見等を承りましたけれども、経営を担ってこられた方、TLOにも絡んで現場の第一線で指揮をとっておられる大学の先生、あるいはまたベンチャーといいますかスモールビジネス、そういったところで活躍をされている方、あるいは組合関係の方と、それぞれのお立場で大変よく理解できる、また大変刺激になるようなお話を賜りました。  そういったことを踏まえて、改めてきょうまたこれから御質問いたしますけれども、今どうして産業活力再生特別措置法案かということでございます。ある面でいうと、産業界に大変インセンティブといいますかインパクトを与えるような重要な意味を持っているということでございますので、改めて大臣にもう一度お聞きしたいと思います。  一連の、日本経済活力再生とか産業競争力の再生とか、いろいろなそういったことに絡みまして、その背景にいわゆる三Kと言われる問題があるということ。これを解消していくという大変難しい問題を抱えているわけですが、それと投資とか雇用のミスマッチというような問題もあって今日のこういった事態がある。これを早期に払拭しなくてはならないということで、平成十四年までという時限を切って、それまでにとにかくスピードアップしてやろうということでありますけれども、そういった三K問題、あるいは投資、雇用のミスマッチとかベンチャー支援など、こういった問題については、たしか私の記憶では平成五年でしたか、産構審の答申の中でも指摘されていたことでございまして、もうかれこれ五、六年になるわけでございます。  これを契機にして、政府としても、前総理のころに六つの改革の中で経済構造改革というようなことを決定され、これまでいろいろな環境下にありますけれども進めてこられたということなんですが、依然としてといいますか、なお今日、より深刻な状態でこういった三Kの問題を抱えるということでございまして、本法案については、同僚委員の方のいろいろな御指摘があるように、雇用などの懸念される事項も含みつつ、待ったなしの大変緊迫した中で改革の必要に迫られている、こういうように理解するわけでございます。  改めて、今回のこの法案の審議に当たって、大臣のこれに対する取り組みの姿勢と申しますか、今後これが成立した暁にはどのようなお心でこれを進めていかれるかというようなことについて、再度きょうお聞きしたいと思います。
  78. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) ちょうどバブルがはじけましたのは平成三年でございますが、そのころはバブルが崩壊したという意識は日本人の間にほとんどなくて、多分、日本銀行が金利を上げたので景気がスローダウンし始めたんだと、そういうことで、景気が悪くなってきたのは循環的な要因だというふうに考えている方が経済専門家を含めて非常に多かったと私は思います。  その当時、政府・自民党がやりましたのは、補正予算を組んで需要を創出しようということで、古いケインズ的な考え方で財政の出動をしたわけでございます。にもかかわらず、景気ははかばかしく回復していかなかったんですが、循環的な物のとらえ方というのはその後しばらく続きまして、その後、構造的な要因で不況になっているのではないかということに気がつき始めまして、複合不況などという言葉が使われたわけでございます。  その後もずっと当初予算並びに補正予算で財政支出を続けましたけれども、昔のような高い経済成長率というものはもう達成できなくなった。いわば日本経済が成熟したというふうにも言えるわけですが、一昨年から始まりました不況というのは、循環的なものではなくて、非常に心理的な要素も大きかったし、また金融システムの不安からくる不況の部分も多かったし、国民が将来に対する非常に不安を持ち始めたということも大きな原因だったわけでございます。  したがいまして、去年からことしにかけて政府・自民党が国会にお願いしてまいりました一連のこと、これは予算にしろ、あるいは法人税、所得税の減税、住宅関連税制、あるいは情報関連機器の特別償却税制等々、すべて需要を喚起するための措置というふうに考えることができます。  また、金融システムについては、六十兆になんなんとするお金を積むということにして、デフレギャップあるいは金融システムの不安からくるいわゆるパニック状態を脱却しようという努力は、一応今までのところほぼ考えたとおりに進んできたわけでございますが、ことしに入りましてからやはり構造的な部分に手をつけなければならないということで、その部分はサプライサイドの改革という呼び方をしているわけでございます。  この構造改革の方は二つに分けてお考えをいただきたいと思いますし、私自身は考えております。  それは、バブルがはじけた後、相変わらず未解決になっている問題、これは三つの過剰と言っておりますけれども、そういう問題にどうしても過去の清算として果敢に取り組まなければならないという部分と、それだけでいいのか、二十一世紀日本というものを豊かにするためには本当に国際競争場裏で立派に立ち行く日本経済というものをつくらなければいけないということで、将来に向かってのことも考え始めなければならない、そういう考え方がこの法案の中に入っております。  ただ、この法案は、そういう二十一世紀に向かってのいろいろな構造改革の第一歩でございまして、法制度として整備をしなければならないもの、税制として整備をしなければならないもの、あるいはまた国の科学技術政策としてどういう分野に重点的に政府の投資を行っていかなければならないかとか、まだいろいろなことをやらなければならないわけですが、私どもは、二十一世紀に向かって日本経済を本当に国際競争力のある、世界のどこに出しても生産性が十分あるという経済にしていくための第一歩であるというふうに認識をしながら、先生方に御審議をいただいているつもりでございます。
  79. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。大変重要な御提起でございますし、容易ではないという御覚悟のほどがうかがえるということでございます。  次に事業革新法、これは今回の法案が成立しましたならば、過渡的な措置は続けるとしましても、一応廃止になるというふうに伺っているわけでございますけれども、この事業革新法について少しお聞きしたいと思うんです。  これも、今回の法案のような企業の再構築ということに関しての促進策として平成七年に成立したわけでございますけれども、そして今日までこれが運用されてきているということでありますが、調査室の資料を拝見しますと、これまでに百二十八社がこの事業革新法の対象になったということでございまして、いろいろなデータがそこには載っておりましたので見ましたけれども、これまでの事業革新法の結果がどうであるかということについてお聞きしたいと思うんです。  私の知る限りでは、雇用者のリストラといいますか、これは相当進んでいるというふうに見受けるんですけれども、肝心の事業の革新については目覚ましい進展というものは本当にこれまでどうも見られないというふうに私は思うんですが、これまでの事業革新法の成果をどのように評価なさっているか、お答えいただきたいと思います。
  80. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 事業革新法でございますけれども、今先生おっしゃいましたように、平成七年に成立をいたしまして、我が国の製造業が空洞化の懸念があるということで、構造不況業種を対象にしまして事業革新を推進するということで、金融とか税制措置を講ずるという仕組みでございます。  これまで四年余りたったわけでございますけれども、今御指摘のように、承認の件数で百二十七件、企業の数ですと複数で申請した数もございますので百五十七社ということになっております。それらの実績を見てみますと、国内における新しい商品の開発ですとかあるいは新しい生産方式を導入するということに大変真剣に取り組んでいるということでございまして、この法律によりましてそうした動きを促したというふうに私ども評価しております。  今御指摘の従業員の問題でございますが、確かにこの間非常に経済環境が厳しかったということがございまして、承認の対象になりました企業雇用数が減っているものが多いわけでございますけれども、ただ、全体的に見てみますと、対象になりますそれぞれの業種でほかの同じ業種と比べますと、事業革新法の対象になった企業雇用数の減り方というのは平均に比べて相当少なくなっているということでございます。つまり、こういう事業革新に取り組んだ企業は、雇用の減少についても相当ブレーキをかけるといいますか、少なくて済んだということが言えるのではないかというふうに評価をしております。
  81. 海野義孝

    ○海野義孝君 今の問題については私も十分なデータを持っておりませんので、御指摘のようにはそのままはちょっと受け取りかねますけれども、一応効果はそれなりにあったということはそのように一応受けとめたいと、このように思う次第です。  なぜこれが今回廃止という形になってという点は、もっと大きな総合的な取り組みの中で、制度上もあるいは法的にも税制上ももっと大きな形で今後のそういう事業の再構築を図っていくんだということで、言うなれば発展的にこれを解消していくということと受けとめたいわけですけれども、これまで通産省がいろいろと法案をおつくりになってきたのを見ますと、名前が変わる、呼び名が変わる、書き方が変わるというようなことであって、抜本的になかなか、こういう環境が長期に続いておりますからそれなりの即効性が出てこないという面は理解できますけれども、今回のこの法案によって本当にそれなりに産業再生日本経済再生の引き金になるようなことを念願する次第でございます。  次に、国がこういった産業競争力の強化ということにつきまして今回いろいろな面でバックアップをされるわけでありますけれども、具体的に競争力といいますか生産性の向上に貢献する、寄与するものとしては、私はこういった法案もさることながら、国家的技術開発プロジェクトの促進とか、あるいはまた公共事業におきます情報とか物流、都市インフラなどの整備強化といったことが産業、事業を支援していくということになろうかと思うわけでございます。特に公共事業につきましては、従来型の土木関係とか地方重点型といいますか、そういう整備ではなくして、長期的な観点からやっぱり配分を見直して産業競争力強化の観点からそういった公共事業を重点的に推進するということが急務ではないか、こう思うわけでございます。  第二次補正によってさらに需要サイドからの景気の押し上げの必要性とか、あるいはまた、いよいよ平成十二年度の予算概算要求とかそういったことが差し迫ってきているわけでございますけれども、そういったことを含めてこれについての大臣の御所見というか、お考え方をお聞きしたいと思います。
  82. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 私も先生の考え方にほぼ全面的に賛成でございます。  今は財政支出をやるにいたしましてもしょせんは国債を発行して借金をして財政の出動をやっているわけでございますから、仮にそういう財政出動というものが経済を運営する上から必要であるとしても、借金を返す人たちに将来褒められるようなお金の使い方をしたいものだというふうに私は個人的には思っております。  先生がお尋ねの国家的な技術開発プロジェクト、こういうものをやって産業競争力を強化する、これは私は必要性は大いにあると思っております。かつて米国においてもアポロ計画あるいは情報ハイウエーなどの構想が立案されまして、これが現在の米国の活況の一因になっているのではないかと私は思っております。  日本においては、二十一世紀を目前に控えた今、国民に明るい展望を指し示し、産業創出を図るため、小渕総理の発案によりましてミレニアムプロジェクトを創始することといたしました。これは情報化、高齢化、環境対応の三分野における複数年度・省庁横断的な戦略的官民共同プロジェクトでございまして、政府は先ほど閣議了解しました平成十二年度の概算要求方針においても、このミレニアムプロジェクトを初め、我が国経済を新生させるために特に資する非公共事業の施策のため経済新生特別枠、これは二千五百億円でございますが、これを設定いたしました。  産業競争力強化の観点からの公共投資の重点配分については、同じく平成十二年度予算の概算要求方針において、御指摘の物流効率化、情報通信、町づくりのほか、環境を含めて、公共投資の一層の重点化を図るため、経済新生特別枠、これは二千五百億円以内でございますが、これを設定するとともに、生活関連等公共事業重点化枠三千億円内を設定いたしました。  これらの措置により、生産性向上のための政策の推進の一つとしたい、そのように思っているわけでございます。
  83. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  次に過剰設備問題について、これは企画庁ですか、お聞きしたいと思うんです。  これまでも、一昨日も、あるいはきょうの午前中の参考人のときも、過剰設備の問題ということもちょっと出ているんです。私は、具体的にどのぐらいあるかとかそういったことではなくて、これは実は平成七年、八年の経済白書におきましては、バブル期の過剰設備というのは、当時、一時的に景気が上向いた時期が一、二ありましたけれども、当時の景気の拡大基調を根拠にしてこの過剰設備の調整というもの、ストック調整が進むことが見込まれるというふうなことをたしか白書で読んだような記憶があるんです。間違っていたらこれはちょっと申しわけないんですが。たしかそんなようなことで、設備の問題に対する認識は今日とはちょっと違っていたような感じがするように思うんです。もしこれが当時御指摘があったとするならば、今日までかなりストック調整は進んでいるんではないかという気がするんです。民間の設備投資もここ数年かなり落ち込みをしている、前向きの投資ができないというか、調整が進んでいないわけなのでございます。  しかしながら、今回のこの法案におきましては、設備の廃棄とかそういったやや後ろ向きの部分もあるわけですが、私は、後ろ向きのものが足かせになっていて思い切った前向きのそういった中核的戦略に基づく投資ができないというようなことについて、これを何とかというようなことがやはり本音ではないかなという気がするのであります。  ここでさらに国がそういったバックアップしていかなくちゃならない必要性のある設備の過剰ということについてはどのような御認識をお持ちになっているか、その辺を企画庁にお聞きしたいと思うんです。
  84. 小峰隆夫

    政府委員(小峰隆夫君) 先生御指摘のように、平成七年度の経済白書で、「設備投資のストック調整にもめどがついてきた」という判断をいたしております。事実、その後、平成七年、八年、設備投資はかなり増加をいたしておりまして、平成七年が七・八%、平成八年が一一・七%も設備投資がふえた。こういった状況の中で、バブル期以降の設備過剰の状態はかなり解消していたというふうに考えられます。  問題はその後でございまして、九七年以降かなり需要が落ち込む、それから最近に至りまして企業の期待成長率がかなり低下をしている。ことしの一月の調査では、今後三年間の平均で〇・八%しか成長率を見込んでいないという状況になりまして、そういった中で企業に相当大きな過剰設備がたまっているという状況になっているというふうに認識をしております。  その総額につきましては、一つの試算でございますが、ことしの三月末現在で三十五兆円から四十一兆円ぐらいという試算をいたしておりますが、そういったマクロのレベルでかなり設備の過剰が残っている、この調整がやはり経済にとってはかなり大きな課題という認識をしております。
  85. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  その辺の設備過剰の実態、中身という問題、需要の減退という面なのか、あるいはまた過剰の設備の上にさらに、近年の設備投資はかなり前向きの今後の日本産業再生に直結するような部分ではないかと思いますので、そういった面がフルに効果を発揮してくるような需要サイドの対策というものを引き続きお願いしたいと思います。  次に、事業の再構築の問題に関して、これと雇用の関係でございますけれども、これも午前中、連合の方がおいでになりましていろいろとお話しなさっておりまして、よく理解できました。この法案におきましても、労務に関する問題が事業再構築計画の必要事項となっています、特に認定条件の中にもありましたけれども。  この認定におきまして、事業の再構築が従業員の地位を不当に害するものでない、これが認定条件の一つにされておりましたけれども、本法案に基づくところの事業再構築の支援がその反面でいたずらに雇用不安をあおってはならないということは当然のことなんですが、事業の再構築が雇用労働者の地位を著しく不安定なものにして、また労使関係にいたずらな緊張をもたらすことのないように、企業に対して十分留意させるということが大事だと思うんです。  政府におきましてもその点で適切な措置をとることが必要ではないか、このように思うんですけれども、これまでお聞きした範囲ではどうも余り具体的な面が受けとめられないのでございますが、改めてこの点をお聞きしたいと思います。
  86. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 企業が事業再構築の計画策定、実施を行う場合には、その従業員の雇用の安定等に努めるべきことはもう言うまでもないことでございまして、雇用にしわ寄せをすることなく事業再構築を進めるとの観点から、国が事業再構築への事業者の取り組みを支援する際にも、雇用の安定等に十分配慮していくことが必要であると考えております。  こうした観点から、本法案においては、第一に法目的、第二に事業再構築計画の認定要件、及び第三として事業再構築の実施における認定事業者や国等の責務において雇用へ配慮する内容を規定しているところでございまして、当該計画が労働者の理解と協力を得つつ推進されるよう、適切な指導を行ってまいりたいと考えております。
  87. 海野義孝

    ○海野義孝君 ひとつよろしくお願いします。  次に、減価償却のことについてちょっと考えていることを申し上げたいんですが、減価償却に関しての我が国税制のあり方というものは、産業再生我が国の生産性の向上、つまり国際競争力強化という点から見てこれは私は大変重要な問題ではなかろうかと思うのでございます。  つまり、本法案におきましては、新規投資を進める観点から、事業再構築に伴っての新規の設備投資について税法上の特別償却を認めているわけでございますが、これは大変時勢にかなっていることだと、このように評価するわけでございます。  アメリカでも、八〇年代のレーガン政権下におきまして、例のサプライサイド政策におきましては、資産区分の簡素化とか耐用年数の短縮化、こういったことが功を奏しまして早期償却による設備更新が急速に進んだと、このように理解しているわけでございます。さらに、かかる税制改革がその後の技術革新の素地になったという評価も聞いているわけでございます。  我が国税制にありましても、この減価償却制度の見直し、これはやはり急がなくちゃならない、このようにも考えるわけでございます。そのためにも検討が早期に開始されることが期待されるんですけれども、これについてどのようなお取り組みであるか、お聞きしたいと思います。
  88. 福田進

    政府委員(福田進君) 御案内のように、減価償却制度は、期間損益を適正に計算する観点から、固定資産の取得価額を使用期間にわたって費用配分するものでございます。法人税におきましては、この減価償却をどのような手続によって実施するかにより課税所得に大きな違いが生じますことから、減価償却の方法やその基礎となる取得価額、耐用年数、残存価額等について詳細な法令の定めを置いているところでございます。  減価償却制度につきましては、平成十年度におきましても、例えば建物の償却方法を定額法に限る、あるいは耐用年数を見直す等々の改正を行ったところでございますけれども、今後とも、費用の期間配分が適正に行われることを確保するとの基本的な観点に立って、必要であれば所要の見直しを行ってまいる所存でございます。  なお、御指摘のアメリカの加速度償却制度に関してでございますが、御案内のように我が国におきましても、投資の促進等の政策目的に応じて、初年度に取得価額の一定割合、例えば三〇%といったもの、そういったものの減価償却費を上乗せする等の特別償却制度を租税特別措置として認めているところでございます。  今後とも、これらにつきましても、政策目的等を踏まえて、先ほど申し上げましたような基本的な観点に立って、必要であれば所要の見直しを行ってまいる所存でございます。
  89. 海野義孝

    ○海野義孝君 この問題につきましては、平成十一年度法人税等の引き下げといったこととも絡めまして、一方ではいろいろな特措法関係、そういったものについての見直しを行うとかいうようなことが言われておりますけれども、私は、国家的な経済再生というような重要な命題を抱えている今日におきましては、その点についての財政当局の前向きの御検討をお願いしたい、このように思います。  次に、一昨日も出ておりましたけれども、債務の株式化という問題につきまして、これは大変わかりにくいというか、どうしてこんな手法を導入するかという理由がよくわからないんですが、その点、明快にお答えいただきたいと思うんです。  つまり、過剰債務問題に関して債務株式化の手法による取り組みというのが提唱されているわけなんですけれども、例えばこの手法の場合、銀行などの債権者側から見ると、かわりに取得する株式は流動性が低い、当面の配当も期待できない、実態としては債権の無償放棄に等しい、こういうふうにも感じられるという点。それから、そのために株主からも資産管理にかかわる経営責任を追及されるおそれがある。それから一方では、債務者側から見ましても、債務の免除にも近い形で対外的な支援を仰ぐからには、減資による当座の欠損補てん等を通じて株主責任も明確にしなくてはならないという点。それからまた、株式公開会社の減資は株式市場全体に悪影響を及ぼすということが考えられる。  こういうようなことから見まして、債務の株式化の実現に向けたハードルというのは私はかなり高いものじゃないか、こういうふうに思うんです。特に、債務の株式化については、銀行等が公的資金導入していることに対する国民世論の動向とか利害関係者間の合意醸成という点でも慎重に見守っていく必要があるということでございます。  この手法を導入された理由とこれによる効果、これは具体的にどういったことをお考えになっているか、御説明いただきたいと思います。
  90. 林洋和

    政府委員(林洋和君) 債務の株式化でございますが、私ども、これが打ち出の小づちで、世上言われております過剰債務問題の解決の特効薬になるとは思っておりません。  諸外国の例、例えばメキシコの例などを見ますと、債権放棄をして債務を株式にすることによって株式の値上がりが見込まれる。現に、たしかメキシコなんかの場合には、債務免除をした額と株価の値上がりでプラマイを見てみると、二割方得をしたというような米銀の実績だったろうと思っております。  そういう意味では、まさに先生御指摘の、債権者から見るとその株価の値上がりが見込まれるというケース、例えば、これはいい例かどうかわかりませんけれども、ある特殊な要因によって債務がふえてしまった、例えば環境問題の賠償とかPLの賠償とか、そういうようなことで借入金がふえてしまった。ただ、核になる収益を上げられる事業がある場合などは、その過剰債務をきれいにしてやれば継続的な収益も期待できて、会社としての価値が高まるというようなことがあろうと思っております。そういう意味では、債権者、債務者ともに、債務をある程度免除して株式にかえることがお互いに意味があるんだというケースに限定されるのではないかなというふうに思っております。  ただ、先ほど申し上げましたように、米銀を中心にしたメキシコの例とか、あるいはアメリカ国内でも幾つか成功例がございます。そういう意味では、過剰債務問題の解決の一つの選択肢を提供するというふうに私どもは考えている次第でございます。
  91. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  私は、このケースというのは余り出てこないんじゃないかと思います。  それで次に、中小・ベンチャー企業の育成の問題についてちょっとお聞きしたいんです。  これは実は通告してなかったんですが、けさテレビのニュースを見ておりましたら、我が国のIIJというインターネット接続関係の企業、これがいきなりNASDAQに昨日上場したということでございました。  今回のこの法案に絡んでの企業の育成の中に、株式による市場からの資金調達の拡充ということで、未公開株式市場の実現、店頭市場活性化といったことが挙げられているんですけれども、実はこのIIJという企業は、いきなり海を越えて向こうで上場を果たして、しかも、このところNASDAQ市場においては公開したときよりも現在の株価が下がっているというような企業が多い中で、この会社は大変初値が高く生まれたということで、そのことが出ております。  ちょっと申し上げますと、日本のインターネット接続大手のインターネットイニシアティブという会社が四日に、アメリカの店頭株式市場、NASDAQに株式を公開したと。初日の終わり値は公開価格を三六%上回る三十一・三ドルということで、米国のマーケットでは五月以降ネット関連銘柄というのが調整色を強め、取引初日の終わり値が公開価格を下回るケースが多発している中で、IIJは順調なスタートを切ったということで、日本の株式市場を素通りしてのNASDAQ公開の初の事例として注目されていたんですが、大変そのスタートは良好であるということでございます。  このIIJというのは、九二年に設立されてからわずか七年で千五百億円を超える市場価値を実現したというようなことが出ているわけです。  一方、これもきのうの新聞を見ていましたら、「ベンチャー企業の株式公開先」ということで、日本でも二〇〇〇年中にナスダック・ジャパンの創設とかあるいは東京証券取引所の新市場開設計画とかいったことがありまして、代表的なベンチャー企業のアンケート結果では、日本ベンチャー企業の株式公開先についてはその選定を見直すというようなところが大変ふえている、こういうことでございますけれども、今回のこのIIJのこういったケースからしまして、大変刺激的なことになるのじゃないか、こう思うわけでございます。  我が国におきましては、ベンチャー企業についてはいろいろなことがありますけれども、創業時におけるそういった資金の問題、ベンチャーの場合は言うなれば無担保というようなことでございますから、ベンチャーキャピタリスト、目ききのそういった者が日本には余りいないというようなことで、なかなかベンチャーキャピタルも思い切ってベンチャー企業に出資するとかそういったことをしない傾向があるということなんです。  今回のこのことは、今後の我が国ベンチャー企業のそういった直接金融市場、資本市場から株式調達をする上での大変大きな刺激的な事柄ではないかと思うんです。このことも踏まえて、エンジェルの問題もありますけれども、今後のベンチャー育成に対する取り組みについてどのようなお考えをお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  92. 林洋和

    政府委員(林洋和君) お答え申し上げます。  今回、IIJがNASDAQに直接上場するというのは、私はある意味では積極的に評価できるのではないかと思います。といいますのは、やはり日本の証券市場、東証、大証あるいは店頭にしても正直なかなか競争原理が働かないと申しますか、ニューヨークであればニューヨーク・ストック・エクスチェンジとNASDAQが、いい会社があると言えばお互い競争して私どもの方に上場してくださいという営業活動までするわけですけれども日本の東証にしても店頭にしてもそういうことはなかなかやらない。一部大証が積極的なことをやっておりますが、そういう意味では、ほうっておくといい会社が日本を素通りしてニューヨークに直接上場するかもしれないというのは、競争原理を刺激する意味でいいことではないかと思います。  ナスダック・ジャパンをつくるというのも出され、その結果として新たな東証の市場をつくろうかとか、大証でもまたいろんな改革を考えようじゃないかということになっているわけでございまして、直接金融市場の充実という意味では、複数の選択肢ができて、お互いいいベンチャー企業を取り込もうとして努力していくという意味では大変すばらしいことだと思います。  それからもう一点、ベンチャーキャピタルの問題でございます。  御承知のように、アメリカでは創業時からせいぜい五年以内ぐらいにリスクマネーが流れるわけでございますけれども日本の場合は平均的に見ると安定して十年を超えてからお金が流れるというようなことで、よりアーリーステージでベンチャーキャピタルのお金が流れるようにできないかということで、私どもベンチャーキャピタリストの育成あるいは中小企業事業団から投資組合に出資をするというようなことを通じて、今申し上げたようなアーリーステージでお金を流せるような仕組みを積極的に考えていきたいというふうに思っております。
  93. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  日本版のバイ・ドール条項というもの、TLO絡みですけれども特許権企業とか大学に譲り渡すことによって、国の資金による研究開発活性化あるいは成果の民間企業における活用に貢献するということが期待できるわけです。ただ、この研究開発の過程で得られる知的財産権は特許権に限られたものではないわけでございまして、例えば中小企業であればむしろ実用新案権でしょうし、サービス業なんかの場合にはむしろデザインを保護する意匠権、こういった面が重要と考えられます。  情報サービス産業について見れば、ソフトウエアの開発によっていわゆるプログラム著作権を得る場合も多いわけであります。それから、将来の発展が見込まれるバイオ分野におきましては種苗法上の権利も重要だということで、特許の問題等につきましても、知的財産権というのは特許権に限られない、かなり広範だろうと、こういうふうに思うわけです。  そこで、これらの知的財産権というものを広く特許権の対象にするという必要があるんじゃないか、こういうように思うんですけれども、この点についての御見解はいかがでございますか。
  94. 林洋和

    政府委員(林洋和君) 私どもこの法案の第三十条におきまして、「特許権その他の政令で定める権利」というふうにしております。ただ、先生御指摘のように、今回のこの条文の目的は、政府資金による研究活動を活性化して、その成果を事業活動において効率的に活用するということを目的としております。そういう意味では、できるだけ広範な知的財産権を対象とすることが望ましいと考えております。  今御指摘の点も踏まえ、政令の制定に当たっては、できるだけ広範な知的財産権を対象とすることができるよう、関係省庁と政令作成段階で十分調整をさせていただきたいと思っております。
  95. 海野義孝

    ○海野義孝君 もう一問最後にお願いいたします。  技術移転機関活性化の問題についてお聞きしたいと思うんですけれども、TLO関係、きょう午前中、参考人のお話の中でも東北大学大見先生からもお話がありましたが、大学の先生でもそういったやる気のある方とない方がいらっしゃるようですし、どれだけ多くのそういった人材を育成していくかというようなことに大変情熱を傾けている先生と、どちらかといったら大学は比較的そういった飢餓意識がないということで余りそういったものに対しての取り組みは、例えば日本なんかの場合はいろいろな研究発表等、特許を押さえる前に研究発表してしまうというようなことで、割合特許については鈍感だとか、いろいろなことが言われています。  アメリカにおきましては、いわゆるプロパテント政策のもとで政府資金によっての研究成果の民間移転を認めるバイ・ドール法が八〇年にできたわけですが、我が国でもおくればせながら今回これが去年の八月ですか、スタートしているわけです。  日本版のTLOの現状と定着状況、それから発展のためのネック、そういったことにつきまして、これから克服すべき課題はいろいろあると思いますけれども、これについてのお取り組みはどうかという点、最後に一つお聞きしたいと思います。
  96. 林洋和

    政府委員(林洋和君) お答え申し上げます。  TLOに関する法律が昨年五月にできました。これまでに東京大学東北大学関係のTLO等六機関が承認されておりまして、私ども聞いておりますところでは、さらに二十以上の大学等でTLOの設立が検討されていると聞いております。  この大学技術移転促進法の中では、承認を受けたTLOに対して助成金を交付するとともに、債務保証などを実施することとしております。ただ、TLOが十分な数の特許権等を確保できないとかあるいは財政基盤が弱いとか、いろいろなボトルネックが存在しているのも現状であります。したがいまして、今回私ども、そこの財政基盤が弱いというところに着目いたしまして、特許料あるいは特許出願の審査請求料の負担軽減措置を講ずることとしたところでございます。  この措置だけでTLOが一〇〇%うまくいくというわけではございません。先ほど言われましたように、大学の閉鎖性の問題とか、あるいは、これは直接関係ございませんけれども、例えば私どもで提案公募型の研究費を大学に流しておりますけれども、これを調べてみましたところ、約九五%が四十代以上の方に行っておられて、二十代、三十代の方にはなかなかお金が回っていないというようなこともございます。  そういうような周辺の部分を含めていろいろなネックがあるのが現実だろうと思います。一つ一つ努力をしてつぶしていきたいというふうに考えております。
  97. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  以上です。
  98. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 既に一昨日と、それから今、公明党の海野議員、そして午前中は参考人の質疑を通じてさまざまな議論が交わされておりますので、若干ダブるかもしれませんが、大事な部分をお聞かせいただきたいと思います。  一つは、現在の産業経済の実態を考えるときに、今度出されました産業活力再生特別措置法というこの法律、先ごろの補正予算の中では雇用問題を中心にした五千億を超える予算が組まれたわけでありますが、果たしてこの内容で現下の日本産業再生できるというふうに通産省としてはお考えなのかどうか。  私はもっと傷が深いんじゃないかと。傷が深いというのは、私は一番傷が深いのは実は経営者の姿勢の問題じゃないかという感じがしてならないわけです。つまり、今の日本のこういう経済に陥った一つの大きな原因というのは、例のバブルを境にするバブル期の処理の問題、これがやはり大変大きかったんじゃないかというふうに私は思います。  特に、これは日本の経営者に共通する部分があるんでしょうが、景気が悪くなって、とにかく企業の経費を削ろうという話になると、まず真っ先に目をつけるのが労務費あるいは交際費、そして研究開発費といったところに手をつけるというのが日本の経営者の共通するやり方なんです。私も長年組合におりましたので、そのことについては嫌というほど知っています。  実は、バブルの時期にさまざまな本業以外のところにまで手を出して破綻をしていった。最たるものがつい三年ほど前から話題になった例の住専の問題です。六千八百五十億円の税金をつぎ込まざるを得なかった。そして、近年になって、銀行や証券やさらには生保にまで税金をつぎ込む。最近の日債銀の問題でもしかりであります。  つまり経営者自身がバブル期を境にしてさまざまな経営の失敗を行政あるいは立法によってこれを何とか助けてくれという、こういう無責任さが実は今、日本産業の中では一番私は傷が深いんじゃないか。この傷を今のこの法律で本当に治せるのか、救えるのかという感じがするんですが、この点について通産大臣の御所見を伺いたいと思うんです。  私は、例えば補正予算にしても今度の再生法案にしても、極めて短期間に準備をしなければならなかったということから、例えば商法の見直しの問題ですとか、さまざまな議論があったことは承知しています。したがって、そういうものとセットで考えていくというんであれば、一体どんなことをこの後考えておられるのか、臨時国会なりあるいは次の通常国会でどんなことを考えておられるのか、そのことについてもこの段階でお話しできる内容があったらひとつお聞かせをいただきたい、このように考えます。
  99. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 日本産業活力再生を図るためには、まずは企業自助努力が重要でございまして、個々の企業がみずからの経営判断により生産性の向上に向けた努力を行うことが前提であると考えております。  しかしながら、我が国経済現状を見ますと、効率性の低い設備等の経営資源が多く存在していることも事実でございまして、このまま放置をすれば、我が国全体の生産性が低迷し続けるとともに、新規投資が阻害をされ、経済全体の自律的成長が妨げられてしまうとの懸念がございます。  このような認識のもと、本法案は、生産性のより高い分野への経営資源の移動を促すため、事業者自身の手による企業の構造改革を円滑に進めるための環境整備するものでございます。  もちろん、本法案のみで我が国経済活力再生が実現できるとは考えておりません。我が国経済の中長期的な活力基盤を形成するためには、本法案を新たな第一歩としつつ、規制緩和や各般の制度改革などの経済構造改革に一層強力に取り組むとともに、中小・ベンチャー企業をさらに守り立てるための資金面、制度面での対応や長期的なリーディング産業創出するための戦略的な技術開発の推進等について引き続き強力に取り組んでいく必要があると考えております。  これらによりまして、我が国産業が一日も早く再生されるよう万全を期してまいりたいと考えております。
  100. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 最近、ここ五年、あるいは十年ぐらいと言った方がいいのかもしれませんが、労働組合の春の賃金交渉の際に、経営者側の方から生産性が今、日本は非常に低くなっているんだという指摘がよくありまして、私も交渉をやっていたときに随分悩まされたものなんです。  今度の再生法案の要約、概要の中の法律の制定の目的の第一に生産性の低下が挙げられているんです。今、大臣からもお答えをいただきましたし、あるいは一昨日のこの委員会での趣旨説明あるいは本会議での趣旨説明の中でも、生産性が低いという現状、特にOECDとの比較で指摘をされ、これを生産性の高い分野にシフトさせていくという指摘がされています。  そこでお伺いをしたいんですが、実は調査室の方でおつくりいただいたこの参考資料の百三十一ページに、「全要素生産性の国際比較」という数字と、それから「全要素生産性の伸びの推移」という二つの数表とグラフが出ているんです。  私はこの数字を見ていまして、ひとつ通産省に解明をしていただきたいんですが、日本の場合の一九八七年から九三年の数字が〇・八%だというのは、これはもうこれまでも何度も通産省の方からも説明をお聞きして承知しています。  それでは、経済白書等からとりました、日本で計算をしてはじき出した対前年比の全要素生産性の伸び率、例えばこれは七八年から九六年まで出ていますが、私の見る限りでは、少なくとも一%を下回っている年は、調査を始めた七八年と八四年、八六年の二回、そして九四年以降だけであります。としますと、少なくともこの平均値の数字が、通産省がおっしゃる、いわゆるOECDの数字を引用されていますが、〇・八%という数字とどこで結びついてくるのか。少なくとも、どう計算をしても一%を下回るような生産性の数字は出てこないという感じがするんですが、この数字についてのちょっと解明をしていただきたいと思います。
  101. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 我が国の全要素生産性の伸び率でございますけれどもごらんいただいている資料にも出ておりますけれども、五〇年から七三年にかけまして年平均四・六%と、OECDの平均の二・七を相当大きく上回っていたわけでございます。それから、八七年から九三年になりますと〇・八まで低下したと。この時期のOECDの平均を下回るということになったわけでございます。  それから、九三年以降でございますが、九三年以降はOECDのデータが実はなくて比較ができないんですが、アメリカとの比較は可能でございます。九四年から九七年の期間を見てみますと、日本の伸び率は年平均で〇・四%というところまで落ちております。アメリカはこの期間ですと〇・七ということでございまして、要するにこの最近の数年間をとってみると、非常に日本はさらに落ちてきているということでございまして、ここに出ておりますのは九六年までですが、さらにもう少し低い状態が続いているということでございます。  こういう状況を踏まえまして、私どもとしては、今後の日本経済の成長ということを考えますと、資本の投入量あるいは労働の投入量ということを余り期待できない、つまり人口構成の高齢化ということを考えますと、そういうことに余り期待できないわけでございます。そうしますと、生産性の向上ということしかないわけであります。  そういうことで、そういう考え方に基づきまして今回こういった法案を御提案させていただいているということでございます。
  102. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 細かい数字を事前に申し上げておかなかったのですぐにお答えになれないのはわかるんですが、この法案の一番の柱なんです。OECDが〇・九で日本が〇・八で、生産性が著しく下回ったと。したがってということでこの法案はできているんです。その数字の根拠がどこにあるんですかということを聞いているわけです。日本の数字とOECDの通産省が引用されている数字の違いについて解明をしておいてほしいと言っているんです。
  103. 江崎格

    政府委員(江崎格君) OECDの数字はここにありますように、九三年までしかないわけであります。それ以降の日本の数字が非常に下がってきておりまして、最近の、先ほど申し上げましたように九四年から九七年をとりますと、日本の場合に〇・四%まで下がってきているということでございます。アメリカはこの間〇・七ということで、最近日本が非常に下がってきているわけでございます。この九三年までの三つの区間に分けましたのは、ここの表に出ているとおりでございます。
  104. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 答えになっていないんですよ。  私が申し上げているのは、OECDの年次でいいんです。八七年から九三年までの期間のOECDの数字は〇・八になっているけれども日本経済白書や何かをもとにした数字は一%を下回っている年はないじゃないですかと言っているんです。どう平均をしたって一%を下回る数字になってこないんです。  そうすると、〇・八というOECDの数字の計算式なり、あるいは全要素と言っているからには範囲は同じだと思うんです、基本的には。何が違うんですかということをお聞きしているんです。九三年以降、確かにバブルが崩壊して今生産が低迷していますから、生産性が低下しているというのは、これは今までもお聞きをして承知をしているんです。問題は、この大事な部分がどうしてこう違うんですかということをお聞きしているわけです。
  105. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 至急調べまして、先生の今の御質問の時間にお答えいたします。
  106. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 OECDの場合も、あるいは日本の場合も、全要素生産性という計算式でやる場合には基本的に同じなはずなんです。  私は、この法案が最初出てきたときから、〇・八の数字と〇・九の数字がやけに強調されるので、ある意味ではこれが根幹なんだから、根幹の数字の狂いというのはこの法案全体の狂いにつながってくるんですよ。ですから、解明をしていただきたいというふうに今申し上げたんです。  確かに、日本の場合は製造業以下それぞれ数が出ていますからある程度計算ができるんですが、OECDの細かい中身は、数字はわかりませんから、後ほどぜひ具体的な数字、中身を検証していただいて、数字としてこの委員会に提出をしていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思います。  そこで、私は、この法案の中で生産性の問題がかなり強調されていますので、逆らうわけではありませんが、あえて生産性とこれからの日本経済産業のあり方について見解をお聞きしておきたいんです。  例えば、今新しい産業として興していかなければならないと言われている福祉ですとかあるいは医療だとか、そういう分野というのは必ずしも生産性だけでは律し切れない分野があると思います。もちろん、新しい雇用の受け皿として大きな期待を寄せられているのもこの産業です。こういう分野を生産性生産性ということで律し切れるんだろうかという思いがあります。  それから、例えば新しい技術の開発や新しい設備を導入した場合、これまでの経験から申し上げれば、場合によっては十の研究をしたけれども全部だめだったというケースもあるいはあるかもしれません。あるいはたまたま一回やったらうまくいったというケースももちろんあるんでしょうけれども、ある場合には生産性を度外視してやらなければいけない。ところが、生産性生産性というふうに言われますと、より確実な、よりもうかるものあるいはより生産性の上がるものにシフトしていくというのは、日本人のさがみたいなものがあるんです。それを通産省が後押しするというのは私はいかがなものかという感じがするんです。  もちろん、アメリカやあるいはヨーロッパとの競争に勝たなきゃならぬというのは私は頭から否定をするつもりはありませんけれども、これまでのようないわゆる十九世紀型の発想ではなくて、二十一世紀のあるべき姿というものを出す役割として僕は通産省にそれなりの期待をしているんですが、今回の法案の基本がそういうところに置かれているというのは、私としては甚だおかしいんじゃないですかという提起をさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。
  107. 江崎格

    政府委員(江崎格君) この法案を御提案している思想でございますけれども、必ずしも効率のよくない経営資源あるいは休眠しているような経営資源、こういった経営資源につきまして、新しい事業の発掘あるいは新しい生産方式、こういったことを通じまして潜在的な生産能力を引き出そうということでございまして、これによりまして限られた経営資源を有効に使いまして、我が国全体としての生産性を上げていこうということでございます。  そういう前提のもとで、この第二章で御提案しておりますような事業再構築の円滑化、これは事業者みずからの判断によりまして、現に生産性の高い分野あるいはこれから生産性が高いと見込まれる分野に資源を集中する、そのための取り組みを促進するということでございまして、これは短期的には必ずしも収益が直ちに高まるというわけではないものもあるわけですが、将来的に新しい事業とかあるいは雇用機会創出につながるというふうに見込まれるわけでございまして、こうした行為を促そうというのが第二章の趣旨でございます。  それから第三章で、創業とか中小企業による新事業開拓への支援各種支援する措置を講じているわけでございますけれども、これから創業を始めようとする人あるいは新しい事業分野に挑戦しようという中小企業、こういう人たちに対するリスクの補てんというものを抜本的に強化しようという趣旨でございまして、いわば未利用の技術とかあるいは人材資源の活力を引き出すことによりまして、これも将来的に高い生産性が期待される新事業とかあるいは新産業を生み出すチャンスの増大を図ろうということでございます。  それから、第四章の研究活動の活性化、これも国とかあるいは大学の有します技術資源を最大限に活用しまして、産学官が相互に協力しながら技術開発を効率的に行おうということでございまして、これによって我が国の生産性の向上のための施策というふうに位置づけているわけでございます。  こういうことで、この法案の基本的な思想としましては、経営資源の有効活用による生産性の向上ということでございまして、これは決して企業の短期的な収益性の追求という意味で用いているわけではないわけでございまして、今委員もおっしゃいましたような雇用の確保、創出、あるいは新しい事業の創出とか研究開発といった、将来に向けた取り組みをも含んだ非常に広い考え方で御提案をしているわけでございます。
  108. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 今、先生が前段質問された、福祉とか医療の分野の生産性ということを言われましたが、これは生産性ということから考えるのではなくて、やはり国民負担率との関係で効率性はどうなのかということはどうしても考えなければならない視点だろうと私は思っております。今回の産業の生産性とか競争力という考え方とは別の視点からやはり考えられるべきものだと私は思っております。
  109. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、大臣の方からお答えしていただいた部分は、実は後ほどの再構築計画の認定のところでちょっとお聞きしたいと思っていますので、後ほどまたその続きは私の方の意見を申し上げたいと思います。  そこで、今局長の方からお答えをいただいた中で、確かに私も生産性は低くていいなんと言っているつもりじゃもちろんないんです。基幹産業として生産性の問題についてさまざまな議論があります。ある意味では、ここで言われているような全要素生産性とか、あるいは付加価値生産性であったり、あるいは労働生産性であったり、さまざまな指標でいろんな議論をしてまいりました。  今回のこの法案が全要素生産性をベースにして議論をされているものですからあえてお聞きをしたいんですが、この再生法が期待をしている、例えば先ほど〇・八という数字、これは後で検証していただきますが、どの程度改善をされるというふうにお考えでしょうか。それについてお聞かせをいただけませんか。
  110. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 認定基準の相当程度の生産性の向上というのがございますが、ここで用いる指標としては、マクロ的な全要素生産性というのではなくて、例えば従業員一人当たりの付加価値がどのぐらい伸びるかとかあるいは株主資本利益率がどのくらい伸びるか、そういった指標を考えております。  そういったものの数値化をしたいというふうに思っておりますが、それがどの程度かということなんですが、これは絶対的な水準で、ある生産性をクリアしていなければ認定の対象にしないとかそういうことではなくて、それぞれの事業者が事業の再構築によって現在に比べてどのぐらい生産性が上がるか、その努力の度合いといったものを認定の基準に織り込みたいというふうに思っております。  ですから、一概に、生産性が高いものを認定の対象にするとか、低いものは対象にしないとかいう決め方ではなくて、業種ごとに生産性というのはばらばらですから、それぞれの事業の計画でどの程度それが改善するかというところに数値化した指標を適用したい、このように思っております。
  111. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、局長がおっしゃったように、生産性とかあるいは経常利益率、純利益率を含めまして、さまざまな産業によってこれはかなりの違いがあります。  したがって、そういう数字を議論する場合には、例えばこの法律の場合は、これまでの説明の中で特定の産業企業を指しているわけではありませんというふうにお答えをいただいているので、それならば、今私が質問をしましたように、全産業で考えた場合に、くどいようですが、全要素生産性を使っておられる以上は、それに対する期待値みたいなものは当然おありになるんじゃないかという気がしたので、先ほどあえてお聞きをしたわけです。  それでは、今度のこの法案が仮に通ったという場合に、金融やあるいは税制を含めて活用される、あるいは事業再構築計画を提出してくるであろうと想定をされる企業数をどのくらい見込んでおられますか。あるいは、例えば税制面でそういう企業の数がどのくらいになって、どの程度の予算措置といいますか、これは予算関連法案ではありませんけれども税制上の優遇をするという以上はある程度のそういう予測というのがあると思うんですが、それについてはいかがですか。
  112. 江崎格

    政府委員(江崎格君) この法案活用する企業はどのぐらいあるかというお尋ねだと思いますけれども、一例を申し上げますと、経営資源を有効に活用しながら前向きに取り組んでいる事業者を支援する事業革新法、あるいは創業者支援する新事業創出促進法というのがございまして、これはそれぞれ平成七年と十年に制定されたわけでございますけれども、以来、事業革新法では約三百八十件、それから新事業創出促進法、これはまだ施行四カ月余りでございますけれども、創業助成金制度に五百五十件の申請がなされているわけです。  このように、事業革新とかあるいは創業等への支援制度に対しまして非常に世の中の関心が高いというふうに私どもは考えておりまして、例えば、我が国では年間平均約十二万の個人創業あるいは四万の会社の設立というのが最近のトレンドですと行われているわけでございます。こういうことを考えますと、この法案についても多くの利用が見込まれるわけでございますけれども、本法に基づく税制上の措置で考えてみますと、私どもの試算では年間で延べ約千二百件程度というふうに考えております。  こういったことから、この法案によりまして、供給サイドの体質強化を図り、自律的な経済成長が達成されるのではないか、そして創業活動も一層活発になるのではないかというふうに考えております。
  113. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 先ほどお聞きしたのは、予算上といいますか、税の優遇措置を受ける、そのことによって税金が使われるのはどのくらいですかというふうにお聞きをしたんです。
  114. 林洋和

    政府委員(林洋和君) 大蔵省が減税規模を計算いたしますと、これは設備廃棄に伴う除却損とかあるいは買いかえ特例等は除いてでございます。なぜならば、そういう制度ができることによってどこまで使われるかというのが決まってくるので減税はできないというので、恐らく特償と登免税だけを大蔵省が計算すると四十億円でございます。私どもが推計をいたしますと、全部で約三百億円ぐらいではないかなというふうに考えております。
  115. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 推計の議論のところに立ち入って、四十億と三百億というのはえらい違いなんです、今ここで解明をしようとは思いませんが、あくまでこれは推計でしょうから、そういうふうに受けとめておきます。  それにしては、私は、例えば税の優遇措置については今局長は千二百件とおっしゃいましたか。千二百件ですね。日本の会社は今六百万か七百万社ぐらいあるんですか。そうですね。そうすると、非常に限られた、ほんのわずかな、六百万から七百万社と言われている中の千二百社ぐらいしか税の部分だけで申し上げますと使われないという制度で、本当にこれ、日本産業再生につながるんですかという最初の疑問にまた立ち戻っちゃうんですよ。  この議論は堂々めぐりになりますので、具体的な事業の再構築計画の部分についてお聞かせをいただきたいと思うんです。  私は、通産省は政府のすべての省庁の中でも最も規制緩和については熱心な旗頭だというふうに思っていたんですが、どうも方針が変わられたようでありまして、改めて新しい規制を設けられるといいますか、許認可の事業を一つふやされるということは通産省としていかがにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思うんです。  ただ、この法律の中で、企業分割等々で、分社化等でさまざまな商法上の手続の簡素化というのが盛り込まれているというのは、そういう点では確かに、中身の審査はきちっとやっていかなければなりませんが、手続の簡素化という点については、私は行政のスリム化の点では大変結構だというふうに考えています。  ただ、これは法律全体にかかわることなのかもしれませんが、民間の経営に国がかかわることについての可否の問題。あるいは、つい先般来も大きな問題になりました、例えばアメリカとの通商摩擦の中で鉄鋼摩擦がございました。事実上、アンチダンピング提訴の結果がクロというふうに認定をされたわけですが、アメリカあたりからこういった国が民間企業の経営にかかわることについての非難というのは当然出るのじゃないかというふうな感じが実はいたしています。  先日、経済企画庁の方から経済白書を私も見せていただいたんですが、これは堺屋長官の署名が入っていますから堺屋長官自身がお書きになったのかもしれませんが、この中で、「三つの過剰」について「より大きな理由は、高度成長期からバブル景気の時期まで、経営の効率よりも業界シェアの拡大を志向してきた企業経営の価値観にある。」というふうに言われ、なおかつ、下の方で「過剰設備も多くの場合は債務と雇用を背負っている。これを整理しても、企業は負債の返済を免れず、雇用の縮減を考えねばならない可能性が高い。それが一般化すれば雇用問題を一段と深刻化させるおそれもある。また、政府過剰設備過剰債務処理を促進するとなれば、民間経済への過度の介入につながらないか、という危惧も禁じ得ない。二十世紀の歴史では、不況を契機として、官僚が経済や生活に介入した例は多いからである。」というふうに書かれています。  堺屋長官は民間から閣僚になられていますから、通産省やなんかとの考え方の違いがあるのかもしれませんが、このことについての大臣の所感がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  116. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 今のは一つの見方だろうと私は思っておりますが、今回、商法、税法の特例を使うわけですから、特例を使うにふさわしいかどうかということはやはりだれかが判断をしなければならないというふうに思っております。  ただ、これは役所側がああしろ、こうしろという世界ではなくて、商法、税法の特例を使うについてのある種の基準を設けます。基準はもちろん大変透明性の高い公開された基準をつくりますので、それと適合しているかどうかといういわば形式的な審査に近いものと私は考えておりますし、そういう審査も必ず一カ月以内に結論を出すように迅速にやりたいと。  したがいまして、行政裁量がいけないという意見がありますが、行政というのはもともと裁量の一定の幅を持ったものを行政と私は呼んでおりますので、行政判断がある種の裁量の幅を持っていなければならないとは思っておりますが、このケースにおいては恣意性というものは一切排除された行政判断になるというふうに確信をしております。
  117. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 堺屋長官と大臣との見解の違いみたいな議論、これ以上私は追及するつもりはありません。そういう見方もある。  ただ、私ども大変気にしていますのは、今回の法律が、これまでも委員会やあるいは衆議院からずっと議論されてきたのは、リストラを事実上促進するんじゃないのかという疑問になかなか答え切れていただいていないという部分があるんです。  二、三、そういう点での疑問についてお答えをいただきたいと思うんです。  一つは、今の大臣のお答えの中にもありましたように、通産省で出された「大臣認定の客観化と法運用の透明化について」というペーパー、私も昨日いただいて読ませていただきました。客観的基準を設けて恣意性のない透明な運用を行うということ、あるいは具体的な運用に当たっては、運用基準、特に数値的指標について明らかにして、しかもこれは専門家や場合によってはパブリックコメントを経た上で作成をするということ、あるいは先ほどお話がありましたように、申請から認可までの期間というのも一カ月以内とするという迅速性という点も担保しますというお話がありました。  私は、今度の法律の中で、今、新しい再構築計画の認定というのは非常に大きな柱になっている内容ですから、少なくともこれらのある程度の基準といったものを法律提出に当たって出すのが本来の筋なのではないかという点が、約束として行われていなかったという点については極めて残念であります。  そこで、この問題について、これから恐らく具体的な指標づくりが進むと思いますので、一つだけお聞きをしておきたいんですが、先ほども申し上げました、大臣の方からもお答えがありましたけれども、ほとんどの全産業を対象にするということになった場合に、どんな具体的な数値がつくれるんでしょうか。私は不可能に近いんじゃないかというふうに思います。  例えば、これまでの設備の中で極めてもう陳腐化をしているとかあるいは遊んでいてむだだと、したがって新しいいわゆる将来性のある事業に転換をしたいというのはさまざまな産業であります。先ほど申し上げたように、製造業もあれば、非製造業、非製造業の中でもサービス産業もあればあるいはこれから成長が期待をされている福祉や医療といったさまざまな産業があるわけです。これらに共通する数値的な指標がつくれるというふうな自信がおありかどうか、その点について一つだけお聞きをしておきたいと思います。
  118. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 数値的な目標のつくり方というのは、私ども大変注意を払ってつくらなきゃいけないというふうに思っております。先ほど来御議論になっております生産性の問題につきましても、これは現に業種によって非常に生産性に差があるわけでございます。したがいまして、一定の絶対水準などをもとにしてこれを認定するということになりますと、非常に大きな不公平といいますか偏りが生じるというふうに思っておりますので、私どもは、経営資源をいかに有効に使うかという、それぞれの業界に求められることを頭に置きまして、努力の程度、これを何か数値化した指標ではかりたいというふうに思っております。絶対水準ではなくて努力の程度、つまり生産性をどの程度向上させるかという、その幅といいますか、そういうものを何かうまく評価できるような指標を考えたい、このように思っております。
  119. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 時間がありませんので、これ以上この問題に深入りをしても、結局今のような抽象的な議論にしかならないんです。ぜひ政省令、この後、基準をつくられて、認可の基準について恐らく示されるんだろうというふうに思いますけれども、まさに先ほど大臣もおっしゃったように、ある部分では裁量といいますか、この部分がある部分と、裁量があってはならない部分、これがあるわけです。その点はきちっとしていただきたいというふうに思います。  この問題と実は若干関連をするわけですが、今度の計画策定に当たっての要件の中で、これは何度もこの場でも議論をされてきましたから、あえてまた蒸し返しをするようで大変申しわけないんですけれども、なぜこの法律の中で、例えば過剰設備の廃棄もあり得るわけですね。とすれば、設備の廃棄というのは必ず雇用に結びつきます。必ずと言っていいほど結びつくわけです。それが社内での吸収であるかあるいは人員整理であるか、さまざまな手法はもちろん企業によって違ってくるかもしれません。しかし、間違いなくそこに働く労働者の地位を害する可能性というのは十分あり得るわけです。  とすれば、そこの事業所における労使協議というのを明文化しなかった理由をもう一度教えてください。
  120. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 雇用の問題は、事業再構築計画の記載事項の中に労務に関することということがございまして、そこで事業再構築を始める前と後においてどの程度従業員が変わるかとか、そういったことをまず記載していただきます。それで、それを見まして、雇用に影響があるということになった場合に、認定の基準の「従業員の地位を不当に害するものでない」という条項に照らしまして見るわけでございます。その中で具体的に考えておりますことというのは、要するに労働者と十分話し合いをしたかどうかということでございます。  その具体的な中身としては、例えば協議をすることになっていることはちゃんと協議をしたかどうか、あるいは同意を要することになっていたものについてはちゃんと同意を得たかどうかといったようなことを確認するために十分な話し合いをしたかどうか、あるいはすることになっているかどうかということ。それから、先ほどもお話に出ていましたけれども、出向によるとかあるいは社内の配置転換に努めるとか、あるいは場合によっては職業の再訓練に努める等、そういった雇用の安定にきちっと配慮しているかどうか、こういったことを確認するということでございます。  それで、法文に協議ということを書かなかった理由は、今回御提案しております法律というのは、必ずしも事業の縮小一点張りということではなくて、むしろ前向きの取り組みをするということを念頭に置いておりまして、税の支援措置などはそういうことを条件にしているわけでございます。したがいまして、非常に広い範囲のものを含む。その事業再構築の行為の中にはいわゆる経営権に属するようなことも含まれるわけでございまして、すべてのことを一律に協議ということを義務づけるというのはどうかというふうに思いまして、それで運用、つまり具体的には告示にしたいと思っておりますが、告示において先ほど申し上げましたように協議すべきことはちゃんと協議したかどうかとか、同意を必要としていることは同意を取りつけたかといったようなことを確認する、こういう運用にしたいというふうに思っているわけでございます。
  121. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 三条六項の中には、従業員の地位を害するおそれのないことというふうに書かれているわけです。十八条の方では、「努めなければならない。」ということで、みんな努力規定なんです。私は、目的の柱の中に従業員の地位を害さないことというふうに書いてある以上は、今局長は後ろ向きなあれじゃないんだというふうにおっしゃっていますが、この目的の中に今申し上げたような従業員の地位を害さないということが明記をされている以上は、それを担保するのは企業内における交渉なんです、あるいは協議なんです。  私は、労働組合のあるところというのは余り心配をしていません。往々にして労働組合の責任なんです、これはある意味では。ところが、労働組合のないところ、日本の場合には労働組合のないところで働いている人たちというのは少なくとも四分の三を超えているわけです。そういう人たちのことを考えますと、すべての経営者が悪いとは私は言いません。例えば百社に一社かあるいは千社に一社でも、もし恣意的にやろうという経営者がいると、こういう法律ができたからということでやられる可能性があるから歯どめをかけてほしいというふうに申し上げているわけです。  今、局長は告示というふうにおっしゃいましたけれども、私は、大変大事な、しかもそういう疑問がこれまでの議論でずっと出てきているわけですから、解明されていないんです。ですから、少なくとも法律の中に明記をすべきだということをあえて申し上げているんですけれども、この段階で修正という形になりますと、これはまたいろいろの議論が起きるでしょう。少なくともこれは省令できちっとそのことを明記して、それをクリアしていない場合には認定の条件を欠いているということができないかどうか、この点について明確なお答えをいただけませんか。
  122. 江崎格

    政府委員(江崎格君) この法案におきましては、先ほど申し上げました認定の基準、それから計画の実施段階における十八条、こういったところで雇用の問題については十分配慮を払うようにということからこうした規定を設けたわけでございますが、仮に事業再構築を行う場合に、雇用に影響が生ずるということがわかっているものにつきましては、関係の労働組合あるいは労働者の代表、こういったところと十分話し合いをしたかどうかといったようなことを計画の前の段階でも、あるいは実施の段階におきましても十分確認をし、またそういうことをするように私どもとしては企業を指導してまいりたいというふうに思っております。  それから、今申し上げましたようなことにつきまして、告示できちっとはっきりさせたいというふうに思っております。
  123. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 私は告示が軽いとは言いませんけれども、少なくとも、先ほど認定の幾つかの基準について具体的な客観性のあるものを公表するというふうにおっしゃっているわけですから、こういった数字の基準、あるいは例えばどのくらいの期間でやりますよと、そういうものと同様の扱いをして、労使協議の問題についても入れるべきではないかというふうに思うんです。もっときつい言い方をさせていただきますならば、お上がつくる法律で自分たちの首を切られたのではたまらないという声があるんです。  先ほど、通産省の試算では三百億、大蔵省では四十億とおっしゃっていますけれども、これは税金ですから、もちろん今度の事業再構築計画の中のある部分なのかもしれません。部分なのかもしれませんけれども、そのことによって自分の雇用に影響が出てくるということになれば、自分の納めた税金で自分の首を切られるということにもなりかねないわけです。とすれば、その可能性の芽を少しでも摘んでおいてほしい。  したがって、大臣告示というんではなくて、少なくとも省令で、先ほど認定の基準を明らかにされるとおっしゃっているんだから、そのことについてぜひ御検討をいただきたい。いかがでしょうか。できれば大臣にお答えをいただきたいと思うんです。
  124. 江崎格

    政府委員(江崎格君) この法案は、解雇とかそういうものを促進するということは決してないわけでございまして、まず、法律で考えております事業の再構築というのも、基本的には前向きの取り組みということでございますし、それから、この法案はこれまでの各種の労働法制それから判例あるいは労使慣行で確立しております各種の労働関係のルールにつきまして、何かこれを変更するということでは全くないわけでございまして、この事業再構築に係る行為についてもすべてそういったルールは従来と同じようにかかるということでございます。  私ども、こうした認定を求めてくる事業については、そうした従来の労働法制を初めとする各種のルールについて守って申請を出してくるというのは、これは当然の前提だというふうに考えております。それを確認するために先ほど申し上げているような認定の基準ですとか、そういったところでちゃんと労働者ときちんと話をしたかどうか、あるいは組合と十分話をしたかどうかといったようなことを外形的に確認をするということでございまして、これによってそういった労働者に厳しいような情勢が促進されるということは私どもは考えていないわけであります。  それから、担保の仕方としては、告示によりまして私ども十分だというふうに考えておりまして、かつ企業に対して従来の労働法制に関するルールあるいは判例で確立されたルール、こういったものをきちんと守るようにということは当然私どもとしては指導していきたいというふうに思っております。
  125. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 実はこの法案が衆議院を通過する際に、委員会で附帯決議が行われまして、これの第三項をごらんいただきますと、「事業再構築に伴う失業の予防等雇用の安定に万全を期するため、事業者による事業再構築計画の作成及びその実施に当たり、当該計画が雇用に影響を及ぼす場合には関係労働組合等との必要な協議を行う等、雇用労働者の意見を十分聴取し、関連中小企業等の労働者を含めた雇用の安定に最大限の考慮を払い、その理解と協力を得つつ当該計画が推進されるよう適切な指導を行うこと。」、こういう決議がなされておりまして、これに対しまして、法の施行に当たってはこの附帯決議を尊重してまいりますというふうに私は答弁をしておりますので、今読み上げました決議は全部ではございませんが、既に決議と答弁という形で先生の御疑問には答えているんではないかと私は思っております。
  126. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 衆議院の段階で、今大臣の方からお答えをいただいたような決議がなされているということも十分承知をしています。あるいは、今局長の方からも、いや、これは後ろ向きじゃないんだというお話もありました。それから、さまざまな法制上の整備もされているというお話もありました。  しかし、これまでの議論の過程を通じてでも、先ほどちょっと申し上げましたが、設備廃棄が伴うということだって必ずあり得るわけです。法律上では認めているわけです。なおかつ、労使協議をしなさいとおっしゃっているわけですから、そのことをより明記してほしいというのが私たちの主張なんです。  もちろん、先ほどから申し上げておりますように、法律本文あるいは政省令あるいは大臣告示、さまざまなレベルがあるわけですけれども、私は法律本文に入れてほしいということを申し上げているんですが、現実的な、これは時間の関係もありますから、もし難しいとするならば今後省内できちっと議論をいただいて、できれば私は、省令の中でこの部分については衆議院の決議も含めて議論をいただいて明記をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  労働大臣に、大変お忙しい中、御出席をいただきましてありがとうございます。余り時間がありませんので、この後、川橋議員の方からも質問が用意をされているようですから、私の方からは一つだけ大臣の所見をお聞かせいただきたいと思うんです。  今の日本的な労使関係に対する見直しの議論が起きていると。確かに戦前あるいは戦後を通じて、特に戦後つくり上げられたいわゆる日本的労使慣行といいましょうか、終身雇用制やあるいは年功序列賃金や、あるいは企業内組合というのはつくり上げられたと言っていいのかどうかわかりませんが、日本における三種の神器とも言われたことがありました。ところが、最近は経営者の皆さん方から、どちらかというとこのことを否定する議論が横行をしている。どうしてなんだろうか。  確かに、以前のようにA社に入った、つまりどこどこの会社に入ったということから、どういう仕事をやっているというふうに意識は変わりつつあります。仕事にある意味では価値観を見出すようになったといいますか、そういう今の日本の大きな流れの中では、愛社精神という言葉はあるいはもう古くなったのかもしれません。しかし、そのよさを本当に捨て去っていいんでしょうかという思いが一つはあります。  それから、これはほんの一部なんでしょうけれどもアメリカの経営者の中で日本の終身雇用制のようなものを見直したいという声が起きているというふうにも聞いています。  私は日経連の方とも以前話をしたことがあるんですが、例えば年功序列賃金というものは、入社をしたときにはまさに初任賃金からスタートをして、ある意味では定年までほとんど一直線とは言いませんけれども階段を上がっていく。もちろん入社時の仕事のレベルというのはまさにゼロに近いわけですから、そこそこの賃金でも私はやむを得ないと思います。しかし、ある仕事のレベルに到達したら、本来はその仕事に見合う賃金を払うべきなんです。  ところが、年功序列賃金というのは、あなたは普通に勤めておられれば六十歳なり、あるいは昔は五十五歳だったでしょうが、定年まで雇用をある意味では保障しますよという長期契約のもとでの仕組みというのができ上がっていたんです。ですから、若いときには多少賃金が安くても、いずれは、年齢が高くなったときにそれ相応のものは保障される。例えば社会的な生活サイクルも全部そうなっているんです。  ところが最近の議論は、いただいた参考資料の中にもありますが、これは恐らく経営者の調査なんでしょう、雇用の過剰感の中で、一番余っているというのは五十歳代です。五十歳代がなくなってくれれば会社にとってはこれにこしたことはありませんね。若いころは安い賃金で使って、給料が高くなった、最近は団塊の世代が一番ねらわれているそうですけれども、もうそろそろお引き取り願いたい、過剰雇用ですと。ちょっと虫がよ過ぎやしませんかという感じがしてならないんです。  もちろん、今度の産業再生法案の中にこのことが含まれているとは思いたくありません。思いたくありませんけれども、経営者側の皆さん方のさまざまな調査の数字を見ていますと、何やらそんなことをねらっているんじゃないのかという疑念が消えないんですよ。果たしてこういうことでいいんだろうかという思いが実はあるわけです。  先ほどから通産省の方には、今度の法律の仕組みの中でこういった不安についての担保をきちっとしてくださいというふうにお願いをしてきたんですけれども、こういう今のさまざまな社会的な環境の変化あるいは過剰雇用だと言われている条件の中で、労働大臣としてはどんなお考えで、この法律についても恐らく主務大臣は通産大臣ということになるんでしょうが、非常に重要な意味で労働省、労働大臣もかかわられたわけですから、ここに流れているものと労働省が考えられておられるものについて、お考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  127. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 日本式の雇用慣行と一口に言われますけれども、終身雇用、年功賃金、これにつきまして、今、このままでは立ち行かない、あるいは日本雇用慣行、経営システムが崩壊した等々いろんなことが言われますが、今までの歴史の中で果たしてきた役割は多いと思いますし、いいこと悪いことという区分けで言えば、私はいいことの方が多いんじゃないかと思います。  それは、既に今までも御指摘があったと思いますけれども企業にしてみても長期的な戦略が立てやすい、それから一括していろいろな対応ができる、あるいは雇用者、労働者にとってみても生涯設計が割と具体的に立てやすいということ、それから使用者と雇用者の間の信頼関係というのも構築しやすいんだと思います。いろんな意味でいいことの方が私は多かったんだと思います。  これからも今までのやり方で全く問題がないかというところに実はこの議論がされているんだと思います。それは企業が、主役がある程度交代の大きな節目にあるんだと思いますし、新しい産業が育っていくために経営資源が効率的、効果的にそこに投入をされなければならない。それは資本であり労働力であるわけであります。  一方、二〇〇五年をピークに日本の労働力人口は減少してまいります。つまり、今までのように新たに産業に投入される労働力がふえていくという潤沢な時代から、これからは企業間あるいは産業間で経営資源の融通をしなければならない時代に入ってくるんだと思います。もちろん資本と労働の移動には、例えば労働でいえば能力開発というのが適宜適切にかんでいかなければならない、産業を支え得る優秀な労働力が育っていかなければならないわけでありますが、そういう新しい時代に向けて、一つのチャンネルだけじゃなくて複数のチャンネルが用意されていることが必要である。  働く側にとっても、最近のマスコミによく報道されていますけれども、ミスマッチというのが随分あります。学卒の新卒者が就職したはいいけれども自分のやりたい仕事では実はなかったと。しかし、いわゆる終身雇用でがちがちの世界でありますと、学校を出たときには自分の生涯を決めてしまう、次に選択しようと思ってもそれは社会の脱落者になってしまう。実はそうであってはいけないんで、自分がやりたい、生きがいを感じるものに職業生活としての身を投ずるというチャンスがなければいけないんであって、それは労働移動へのチャンネルがちゃんと用意をされているということでなければならない。これは働く側にとっても労働移動のチャンネルは必要であろうと思います。  そういうもろもろの経営者側の事情あるいは働く側の事情、あるいは世の中の変化あるいは社会的な情勢の変化に対応して複数のチャンネルをちゃんと用意する。自分はこつこつと一つの会社で勤め上げたいという人にはそういう道もあるし、いろいろ能力を試したいという人にはそういう道もある、そういう多チャンネル化というのが大事なんであろうと思っております。  ですから、今日まで築き上げてきた日本型の雇用慣行というのは決して悪いものではないですけれども、それでコンクリートしてしまっていると世の中の変化に柔軟に対応できないということだと思っておりますし、今回の法律も新産業を生み出していくための環境整備、つまり前向きな政策であります。ただ、影の部分が出てくるのをどう対処するかということをいろいろと御議論いただき、あるいはお手当てをいただいているものだというふうに承知いたしております。
  128. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 一言だけ。  大臣がおっしゃったように、企業というのは株主やあるいは資本家や経営者だけのものではなくて、従業員のものであり、あるいは場合によっては地域のものであるということになれば、新しい事業に転換をしていく場合には、まずそこに働いている従業員をどう扱うのかという視点が私は大事だと思うんです。  国の法律によってお墨つきをいただいてさまざまな事業をやっていこうなんという発想の経営者は正直言って情けないと私は思うんです。むしろ経営者の自己責任を放棄したことになるんじゃないか。そういう経営者の免罪符にこの法律がならないように、これからつくられる政省令の中できちっとぜひその辺は担保していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  129. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。  私は労働・社会政策委員会に所属している委員でございまして、甘利労働大臣とはたびたび議論をさせていただいておりますが、また、この席上、我が会派には労働のベテランもたくさんいらっしゃるんですけれども通産大臣労働大臣が仲よくそこにおいでになられて、緊密な協力関係をつくっていただく、通産・労働両省の幹部がこの問題を縦割りではなくて十分に競争力強化雇用の安定とを両立させていただく、それを態度でお示しいただくといいましょうか、風景でお示しいただけたらありがたいということで、本日、私もこの場にしゃしゃり出させていただいたわけでございます。  用意した質問は、労働大臣、労働省にお伺いするものが大部分でございますけれども通産大臣はもし御発言がありましたら御自由に割って入っていただきたいと思います。お退屈なさらないように、どうぞ御発言いただければありがたいと思います。  さて、滑り出しは初めに通産大臣にお伺いしたいと思います。  三つの過剰が非常に強調されておるわけでございます。ですけれども、一般国民、働く人々にとっての認識というのは、去年のうちは金融システム不安から債務の過剰が非常に強調され、その際は、製造業は非常に身を削るような合理化努力をやってきている、日本の製造業はそういうことで国際競争力もつけていると。非常に言葉が悪いんですが、怠け者の金融業に比べれば健全な製造業という、こういう印象の話が多かったのでございますけれども、年が明けまして、このところ設備の過剰が言われるようになり、そして雇用の過剰が言われ、逆に雇用の過剰が温存されるから古い設備が過剰となって、そのまま競争力をダウンさせるようなことで存在している、こんなふうに非常に大きく認識が変わってきたような気が一般国民にはするのではないかと思います。少なくとも私はそう思うのでございます。  債務の過剰といい設備の過剰といい、私は、企業がもたれ合っている、お互いに株を持ち合うなんというのはまさにそのもたれ合いなのではないかと思います。メーンバンクという言葉は和製英語だそうでございまして、日本の護送船団方式というものが金融にもあるしまた製造業にもあったんじゃないかと。これは行政指導、行政の側だけが悪いのではないと私は実は思っております。ある種、日本の社会的な体質の病気ではないかと思います。  そこを、今回、改めて競争力をつけていきたいという、そういう法案であるわけでございますけれども、やはり見るところ、お上頼みの産業再生、また同じような護送船団方式での産業再生をねらっていらっしゃるような気がいたしまして、同じ失敗の轍を踏むのではないか、こういう感じがするのでございますけれども通産大臣、いかがでございましょうか。
  130. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 私は市場原理主義者でもございませんし、また国が計画経済的に物事をやっていくことがいいとも思っておりません。  今回の法案は、一つは制度を改革するという側面もございますし、この制度改革をきっかけに経営者の意識も変えていただいて、二十一世紀に国際競争場裏で十分立ち行く日本経済にしたいという思いを込めて法律を提案しているわけでございます。  日本の製造業は、確かに今でも力を持っております。おりますけれども、マクロで考えますと、通常の簡単な製品、例えば自転車であれ最近はビデオデッキであれ、こういう技術が発展途上国に拡散をいたしましたものについては競争力を失ってきているわけでございます。  また、非常に先端的な分野での技術分野でもやや立ちおくれの感がございますので、そういう意味では先生にはぜひ二つに分けて考えていただきたいのは、やはり過去を清算するという意味では、過剰設備を初めとして私どもが持っているものの中でよそに移さなければならないものは、この際、思い切って移す、そういう考え方が必要なのではないかと思っております。  私は、企業がもたれ合うというのはどういう意味で使われているのかわかりませんが、今は独禁法も大変やかましくなっておりますし、そういう企業がいわばもたれ合いながら生きていくというよりは、むしろ競争の中でそれぞれの企業が生き抜いているというのが現実の姿である、そのように思っております。  ただ、この法律は法律として一つのきっかけをつくるわけでございますから、そういう中で経営者あるいはその会社で働く従業員の方々のいわば二十一世紀経済もまた厳しい国際競争の中にさらされる。そのために今改革を行う必要があるんだという意識の芽生えというのが必要なんだろう、私はそのように思っております。
  131. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  さて、ことしの経済白書はメディアでは大変好評に報じられているようでございます。ハードランディングですとかリスクテーキングですとか片仮名文字がどうも多過ぎるような気もいたしますけれども、わかりやすい思い切ったメッセージを国民に送っているという、こういう評判だったように思います。  ところで、経済白書の第一章は日本経済の分析をしているわけでございますけれども、「三つの不況の環」があると、そういう書きぶりでございます。それは通常の需要不足からくる「不況の環」、それから昨年大騒ぎいたしました「金融システムを通じた不況の環」、それから「家計不安を通じた不況の環」と三つの「環」を指摘しているわけです。  それで、通常の「不況の環」につきましては、さまざまな政策効果があらわれてきて明るい材料が出てきているとか、あるいは金融システムについてもあれだけの公的資金を投入したわけでございますけれども、一応危険は去った、デフレスパイラルの危険は後退したというふうに分析されておりますが、しかし「家計不安を通じた不況の環」については非常にまだまだ懸念が大きいという、こんな分析でございました。  わかりやすく言いますと、「家計不安を通じた不況の環」というのは、雇用や賃金について労働者が展望が持てなくなる、あるいは若い人が老後不安、年金不安等から消費を手控えるというようなことから、家計不安については、もしここで企業を元気にするためのさまざまな競争力強化策が行われたとしても、企業が元気になっても賃金、雇用に不安が生ずる、あるいは老後不安の問題が解消されないということである限りマクロ経済は悪化するだろうと、難しい言葉で合成の誤謬ということを述べておられるわけでございます。  さてそこで、日本経済はこれからどうなるのでしょうかという質問を経済企画庁の方にさせていただきたいと思います。
  132. 河出英治

    政府委員(河出英治君) ことしの経済白書は先月の十六日に公表したわけでございますけれども、ただいま先生の御指摘のとおりに、家計の不安が高まったということを述べているわけでございますが、それと同時に、家計の将来に対するコンフィデンスがどうなっているかということにつきましては、水準はなお低いものの、昨年の末ごろから下げどまりつつあって、「家計不安を通じた不況の環」は緩和しつつあるということを指摘しているわけでございます。  しかしまた、これも今先生が言われましたように、消費の回復力が非常に弱い中で、収益性を重視して雇用や賃金の調整圧力を強めるのは個別企業にとりましてはまさに合理的な行動であるとしても、今後の雇用情勢によっては家計不安を通じた悪循環に再び陥るリスクも否定ができず、個々の企業が立ち直ってもマクロ経済が悪化していわゆる合成の誤謬に陥る懸念もあるということを指摘しているわけでございます。  それで、現在のマクロ経済、景気がどうなっているかということでございますけれども、現在の景気でございますが、民間需要の回復力が弱く厳しい状況になおあるわけでございますけれども、いろんなこれまでとってきた政策効果が浸透して、このところやや改善しつつあるというふうに判断をしているところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、景気の先行きにつきましては、現在そしてこれからが非常に重要な時期でございます。ことしの一—三のGDPは六期ぶりにプラス成長になったわけでございますが、十一年度の成長率の帰趨に重要な影響を持つ四—六月の動向が判明するのは九月中旬でございます。そういったことで、これからこういったものを待ちながら、これからの一日一日の情勢を一層注視しつつ、引き続き機動的、弾力的な経済運営を行っていくということが重要であるというふうに考えているところでございます。
  133. 川橋幸子

    川橋幸子君 局長、どうもありがとうございました。  そこで、今おっしゃられたようなことは経済白書が出る前に、これは六月ころの甘利労働大臣の新聞のインタビュー記事ですが、肝心なことだけ申し上げますと、短絡的に結びつくとその会社にはプラスでも経済全体ではマイナスになる、これが合成の誤謬でございまして、合成の誤謬というような難しい言葉は使わなくても短絡的に結びつけるとこういうプラマイでマイナスになるというだけでございます。  さてそこで、労働大臣にお伺いしたいと思うのですが、企画庁の経済白書によりますと、過剰雇用の推計値二百二十八万という数字がございます。それから現在、最新値で三百二十九万ですか、これだけの失業者数があるわけです。足し上げると五百五十万近くになる。現在、四・九%の完全失業率で過去最悪と言われているわけでございますが、仮にこの過剰雇用が失業となって顕在化すると五%どころか九%近くになるわけです。これは仮に仮にの話で現実はもっと違うわけでございますが、そういうことになるわけでございます。  勤労者、一人一人の国民が考えるのは、これから日本経済が体質改善して変革をして二十一世紀はいい社会になっていく、その夢は信じたいと思うとして、失業の不安とかあるいは失業した場合にはもう一回再就職の問題とか、個人がリスクをテークしろというようなことも白書は言っているわけでございますけれども、どの程度のそういうリスク負担、雇用不安というところでリスク負担があるのか、その見通しを明らかにするという説明責任がやっぱり雇用の問題について責任を持たれる労働大臣に求められるのではないかと思います。いかがでございましょうか。先行きがはっきりすれば、そこまでは我慢できる、何とかしのげるというのが一般国民の理解と協力を得るという一番肝心なところではないかと思います。
  134. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 過剰雇用が二百何十万という話は私も時々耳にするのでありますけれども、それはいろんな前提を置いて計算をされているんだと思うんです。日本は好不況の変化を、いきなり労働力を外に吐き出したりあるいは内に取り入れたりという方法ではなくて、比較的内に支えたまま対処をするという方式でやってきました。しかもそのために、雇用調整助成金というのは景気変動がダイレクトに本体を揺るがさないようにという仕組みであるわけですし、各種職業訓練システムというのは、今はともかく、いずれ必要ならばそれに備えようと、いろんな仕組みが組み込まれているのであります。  ですから、そういうふうに言われている数字がそっくり過剰雇用として外部労働市場に出るんだというのは、これは無用な不安をかき立ててしまうと思いますし、私はそういう事態にはならないと思います。  ただし、産業が競争力をつけていく過程において、三つの過剰感について雇用にだけは全くメスが入らないと約束できるかと言われると確かにそうではないわけでありまして、いろんな手法はかませますけれども、つまりほかの二つの過剰と違って雇用というのは能力アップ、バージョンアップが容易である、設備機械は置いておいてどんなに一生懸命磨いても部品をかえても能力が急激にアップするということはないでしょうが、雇用というのは職業訓練をしっかりと受けてもらえればバージョンアップ、性能・生産性アップが容易なのであります。そのことにも着目をしていただきたいと思いますし、あるいは雇調金というものをうまく使って来るべき時代に備えてもらいたい、あるいは今度労働移動がより使いやすくなるような支援金といいますか抜本改革もいたしました。ですから、その辺のところをうまくかみ合わせていけば、巷間言われているような雇用の過剰感がそっくり外部に出るということでは全くないということを主張したいのであります。  でありますから、どのくらい外部労働市場に出される過剰雇用があるんだというのは余計はじきづらいのでありまして、その間多少なりとも影響が出るかもしれないということに対しての受け皿として短期、臨時、一時的な雇用の場、機会を補正予算で設定させていただいたところでありますし、あるいはそういう観点から見ると、臨時、一時的な雇用の場ではないですけれども、前倒しということで正規雇用につながっていくための措置というものも仕組ませていただきました。  ですから、産業が本来の雇用の受け皿になるように体力を強化する、あるいは全く新しい分野雇用の受け皿になる産業が育っていく、その間出てくるであろう衝撃をできるだけ受けとめるための臨時、一時的あるいは将来につなげる措置を同時並行的に組み合わせ、この衝撃とタイムラグをできるだけ小さくしようということで対処させていただいているところであります。
  135. 川橋幸子

    川橋幸子君 三つの過剰を解消する、整理する、マイナスの遺産を整理する、その副作用を最小限にするための環境整備をこれだけやります、だから失業は怖くありませんよ、あるいは失業しても再就職ができますよ、この説明責任といいますか、この政策手段をしっかりとやっていただくのはもちろんなんですけれども、実は雇用情勢についてはもうちょっと厳しい見方を私本人はしております。大臣の方がそう心配しないでもいいよと言われれば、大臣の方のおっしゃる言葉をどうやら世の中の人は信用すると思いますので大丈夫かと思いますけれども、私はこの際、日本の置かれている事態というのはもうちょっと大変な事態なんじゃないかということを逆に心配している人間でございます。  さて、今回の法案の問題点でございますが、先ほど来といいますか、もうさきの委員会でも、「従業員の地位を不当に害するものでない」というこの認定基準の問題、あるいは事業再構築計画の実施に当たっての労働者の理解と協力とかいうところでは、労使協議を本文に明記すべきではないかというような、働く人々からの不満からくるさまざま要望意見がたくさん出ているわけでございまして、それは議論されているわけでございます。  そこで、この三条の認定基準の問題、それから労働者の理解と協力の問題について、労働行政のスタンスから見ても大丈夫、認定基準の具体化については労働省としても責任を持つ、あるいは施設処理や施設廃棄の場合は労使協議、これは法律本文はもういまわの際では無理でしょうけれども、これでしっかり労働省としては労働行政のスタンスから確保していけるんだという、そういう自信はおありでしょうか。
  136. 澤田陽太郎

    政府委員澤田陽太郎君) まず、第三条の「従業員の地位を不当に害するものでない」ということに対応するものとして、これまでもお答えをいたしておりますが、事業再構築計画の認定段階におきまして労働組合等と必要な協議を行うことなど、労使間で十分な話し合いを行うことを事業主に確認するということを先ほど来告示レベルで明確にいたすことにしております。  さらに、労働省といたしましては、法第三十六条で、主務大臣及び労働大臣の連絡、協力という規定がございます。これによって事業再構築計画について主務大臣から労働大臣の方に連絡があった場合には、先ほど申しましたような趣旨が十分行われているかについて労働省といたしましても主務省庁と連絡をとって担保していきたい、こう思っております。  それから、十八条の点でございますが、「労働者の理解と協力を得る」ということにつきましても、実施段階で具体的に労働組合等と必要な協議を行うなどによって十分な話し合いを行ったかどうかということも、先ほど申し上げましたことと同様に、三十五条、三十六条の関連で主務大臣からお話がある場合には十分連携をとって対応していくということにしておりますので、先生の今の御質問の点につきましては労働省としても十全の対応を図る所存でございます。
  137. 川橋幸子

    川橋幸子君 労働行政の使命にかけてしっかりとお願いしたいと思います。  もう一問、確認的にこれは大臣の方からお答えいただきたいのでございますけれども、たびたび出ている問題でございますが、やはり一度大臣の口からお答えいただきたいという趣旨で伺わせていただきます。  企業の組織変更に伴いまして、労働者の権利義務の承継というのが非常に不明になることがございます。最近の一番わかりやすい例では、JRの国鉄時代の年金積み立て不足ですか、結局たばこ税などで対処されました。私は実はたばこをいただく方なのでございますけれども。こういうことは事前のルールの中でしっかりすべきことでございます。たばこは余計な話でございましたが、これからはこの法案に限りませんで企業の一部譲渡とか分社化とかさまざまな組織変更がふえていくと思われます。  EU諸国では、EU指令に基づきましてそうした場合の労働関係、労働協約の承継あるいは組織変更を理由とする解雇の禁止などを国内法で手当てしているわけでございます。この際、日本でも何らかの法整備検討していく時期に来ているのではないかと思いますが、簡単で結構でございますので一言確認的な御答弁をいただきたいと思います。
  138. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) EU諸国と我が国では企業における労使関係の実情であるとか雇用労働市場の状況等が異なるものでありまして、また企業の組織変更の際の解雇とか労働条件の変更等につきましては労使間でよく話し合われるべきものでありますから、EUの労働者保護のルールを我が国にそのまま導入するということについては適当でないというふうに考えております。  いずれにしても、企業の組織変更が労働条件の大幅な変更につながることについては、これはもう労組法においてもちゃんと労使で話し合い、団交の要件の中に入っているわけでありますから、適切に労使間で話し合いが持たれるものというふうに理解をいたしております。
  139. 川橋幸子

    川橋幸子君 衆議院の附帯決議は御存じでいらっしゃいますね。衆議院の附帯決議にあるように、法的措置をも含めこの件については検討を行う、これに対応していただけますでしょうか。これは法律の主管大臣である通産大臣にお伺いした方がよろしいのでしょうか。
  140. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) ちょっと手元に附帯決議がないので正確な文章は覚えておりませんが、その中にはたしか立法化を含めてというふうに言っておりますので、これから政府部内でも各党でも御協議になるという方向で物事が進んでいくものと私は承知をしております。
  141. 川橋幸子

    川橋幸子君 労働市場、労働慣行が違うのは当たり前の話でございますので、日本日本で必要な法的措置をぜひ急いで検討していただきたいと思います。
  142. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) その点につきまして、労働省といたしましても、衆議院の附帯決議にありますように、労使の意見等も踏まえつつ、企業組織の変更に伴う労働関係上の問題への対応につきまして必要な検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  143. 川橋幸子

    川橋幸子君 両大臣そろってお答えいただきまして、ありがとうございました。  予定した質問が大分むだになりまして、本当に関係者の方には御迷惑をかけますが、最後に一問だけぜひ聞きたいと思うことを労働大臣にお尋ねしたいと思います。  先ほど前川議員の質問にもございましたことと関連いたしますが、ちょっと早口で申し上げますと、かつて日本が誇った日本的経営、終身雇用の真価、これは労使の信頼関係を維持する努力、こういう努力にあったのではないかと思います。今こそその真価の発揮が必要なときではないでしょうかということなんです。  具体的には、雇用の問題が非常に深刻な事態にあると私個人は認識しております。金融システム不安のときにルービンさんは、センス・オブ・アージェンシーが日本では欠けているというふうなことを言われたようでございますが、私もこの際はやはり日本雇用の問題、失業というのは、人間の誇りを傷つけたり生きる気力を失わせたり、あるいは日本の勤勉と言われている文化にも非常に大きな影響を与えるものではないかと思います。こういう事態であるとすると、むしろワークシェアリングを雇用調整でやるかあるいは賃金も含めてやるか、そういう話し合いをするべき時期に来ているのではないかと思います。  五十年春闘当時に福田総理が所得政策を、日本的なものという形で政府が話し合いのテーブルをつくる、そういう場を設定なさったことがございます。今回は、そういう意味ではむしろ終身雇用日本的経営のよい真価を維持するためにもそうした話し合いの場を、介入するのではなくて、テーブルをつくることを政府が今やるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  144. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) ワークシェアリングは、基本的には賃金シェアリングにつながる話だと思います。その問題に関しまして言えば、労使でまず話し合っていただく、その合意のもとにそれから先の進め方があるというふうに基本的に理解をいたしております。もちろん、賃金がそのままで仕事だけたくさんの方に渡っていけば、そんないいことはないのでありますけれども、現実的にはそういう方向には行かないと思います。やはり雇用者にとってみればいろいろ生活設計の問題もありますから、そこはよく話し合っていただいて個々に結論を出していただくのが一番いいかというふうに思っております。
  145. 川橋幸子

    川橋幸子君 時間が来ておりますけれども、三十秒だけ。要望させていただきたいと思います。  私が申し上げたかったのは、わかりやすく言いますと、賃金を抑制するとかカットするなんという話になったら、組合の幹部の方だってとても苦しい立場になります。それから、企業経営の方も、これから市場圧力が強まるとすれば、株価の問題もあるとすれば、むしろ話し合いよりもドラスチックな手段をとっていく、こういう企業が多くなることも私はやむを得ないんじゃないかと思うんです。そこで、むしろ日本的経営のよさ、労使の信頼関係を維持したいと思うなら、話し合いのテーブルを今は政府全体がつくるべきだということを申し上げたかったんです。  以上で終わります。
  146. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  まず最初に、八月三日の当委員会で我が党の山下議員が質問をいたしましたが、その質問の関連について数問お伺いをしたいと思います。  本法案のスキームに大変よく似ております事業革新法、その法の承認を受けるための申請の計画書の中に解雇という言葉が入っているのでこれを外すべきだという趣旨の質問をいたしました。  それに対して江崎産業政策局長は、そもそも整理解雇というような事態を念頭に置いて法律をつくっているわけではございませんと答弁いたしましたので、山下議員から、念頭に置いていないというのならなおのことこの計画の中から解雇という言葉を外すべきなんだけれども、この通産省の解説の中に入っているのはおかしいとさらに質問いたしましたところ、林政府委員はその答弁で、解雇については必ずしも整理解雇だけではなくて労使合意の解雇もあります、こういうふうに答弁をいたしまして、したがいまして、今ある事業革新法では事業革新に伴い出向または解雇される従業員数を書いてもらうことにしていますということで答弁をしたわけでございます。  そこで、労働省にお聞きしたいわけですけれども、労働基準法上の解雇というものは、「労働法コンメンタール」によれば、「労働契約を将来に向かって解約する使用者側の一方的意思表示である。したがって、労働関係の終了事由のうちでも、労使間の合意による解約、労働契約に期間の定めがある場合の期間満了、労働者側からするいわゆる任意退職等は、解雇ではなく、」、こういうように書かれておりますけれども、どうです、そのとおりですね。
  147. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) そのとおりでございます。
  148. 西山登紀子

    西山登紀子君 通産大臣、お聞きのとおりでございますので、やはり労使合意の解雇なんというものはあり得ない話なんです。しかも、整理解雇を念頭に置いていないという御答弁もなさっているわけですから、この解雇を入れるべきではない。つまり計画申請書の中に解雇の人数を書きなさいという欄を、これは新しい法律をつくるということでもありますから、今回は外すというふうに明確に御答弁をいただきたいと思います。
  149. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 本法案における事業再構築は、それ自体が人材の有効活用、新たな産業雇用創出に向けた前向きな取り組みであり、整理解雇を念頭に置いたものではないと申し上げたのも、整理解雇等人員整理を支援しようとするものではないとの趣旨からであります。  したがって、計画に解雇が含まれている場合であっても、労使間で十分に話し合い、企業内配置転換や関係会社への出向等の措置により雇用の安定に十分な配慮を行ったものであれば、事業再構築計画の認定の対象となり得るものであります。  なお、御指摘のように計画の記載事項から解雇に係る事項を削除した場合には、かえって事業再構築が雇用に与える影響を正確に把握することが困難となり、事業者が雇用の安定に十分配慮しているかどうかを判断できなくなるおそれがある点にも留意する必要があると考えております。
  150. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、御答弁の中でも、この新しい法律でリストラクチャリング、再構築を計画するというのは前向きの計画なんだと。解雇というのは、もうそれこそ整理解雇四条件ということですから、本当に大変な状態に陥っている会社ですよ。ですから、局長の答弁でも、そんなものは念頭に置いて法律をつくったわけじゃないとおっしゃっているわけですから、もともとそういうふうにおっしゃっておきながらいまだに解雇を入れる。しかも、労使合意の解雇というのはあり得ない。一方的通告なんです。先ほどおっしゃったように、解雇なんというのは一方的な意思表示なんだ。通告、意思表示だということなのでございますから、実際、申請もそういうのを、解雇を書いてきた申請書というのも今までゼロだと、ありません。そして、過去に行われた解雇というのは懲戒解雇一回だけ。懲戒解雇なんというのは計画的にあるものじゃありませんから。  ということからすれば、実態的にもこの解雇という言葉を入れている意味もありませんし、また法律の趣旨からいっても、それではこれは解雇をむしろ承認していくための法律なのかという懸念を生むわけでございますから、私は国会で二度も指摘をしているわけですから検討するべきだと思いますが、大臣の御答弁を求めます。
  151. 江崎格

    政府委員(江崎格君) この法律で考えておりますことは、決して解雇を奨励しようとかそういうことではないわけでありまして、先般も私が申し上げましたけれども、整理解雇などを念頭には置いていないわけです。  ただ、個々具体的な事業再構築の中で、解雇が含まれているようなものは一切それは認定の対象にならないかというと、必ずしもそれは限界的な場合としてはそうではないというふうに思っておりまして、要は労使間で十分な話し合いが行われたかどうかということが大事でありまして、そういった認定の条件を満たすものであれば解雇が含まれているものであっても認定の対象になることはあり得るわけであります。したがいまして、解雇についての情報を一切得られなくなるということになると、かえって私どもとしては問題があると思っておりまして、この部分を削除するというのは好ましくないと思っております。
  152. 西山登紀子

    西山登紀子君 整理解雇を念頭に置いていないと前回御答弁されているんですけれども、今回は念頭に置いているということですか。
  153. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 事業の再構築で想定しておりますことというのは、基本的には経営資源を生産性の高い部分に移していって有効活用しようということでございまして、その中にはもちろん従業員も入っているわけでございます。ですから、解雇をしてどんどん人を減らすというようなことは基本的に念頭に置いていないわけでありますけれども、ただ、解雇が一つでも含まれたらだめかという限界的な仮定の質問とすれば、それは認定の要件にさえ適合していれば解雇が含まれている場合でも認定の対象になることはあると言わざるを得ないわけであります。
  154. 西山登紀子

    西山登紀子君 それでは、解雇というものをやるという計画も認定要件の中に入るということですか。
  155. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 三条の認定の要件を満たしていれば認定の対象になることもあり得るということでございます。
  156. 西山登紀子

    西山登紀子君 これは非常に論理の矛盾だと思うんです。  もともとこの事業革新というのは、新しい事業を起こしていくとか、そういう前向きの計画に対する認定です。解雇というのは、それこそもう倒産寸前というふうなときに整理解雇というのはあるわけでしょう。念頭に置いていないと言いながら、いや、実はそれは書いてもらわなきゃ困るというのでは、大変これは論理矛盾でありますし、この問題で今ちょっと時間をこれ以上使うわけにいきませんけれども局長の御答弁というのは、解雇の要件を書いてあっても認定をすることもあり得る、こういうふうに受けとめていいんでしょうか。
  157. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先ほど労働省から御答弁を申し上げましたように、解雇権というのは、法律でもあるいは判例上でも解雇権の乱用というのはできないことになっているわけですから、ここに書いてあるかどうかということで物事が決まるんではなくて、もともと本来経営陣が持っている解雇権というのは一体どういう場合に使われるのか、どういう場合に使われてそれが社会的に認められるかということは、実はこの法律によって決まっているのではなくて、既存の労働法制または積み上げられた判例の中から決まってくることでございまして、この法律によって経営者が解雇権を手にしたというふうに考えてはいただきたくない、そのように思っております。
  158. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、そういうことはわかっているんです。だけれども、認定要件というか、申請書の計画書の中に出向の数、解雇の数を書きなさいというふうになっていれば、これは解雇を認める計画書でもいいんだな、それでもお墨つきを与えるんですねということになりますよ。  私は、論理矛盾を起こしているし、また過去にだってそういうことは例がないと言うんだったら、新しい法律をつくるときに、これだけ指摘をしているんですから、外すという方向で検討をするという御答弁をして当たり前じゃないですか。そうでなければ、これはそれこそ人減らし、解雇奨励法というそしりを免れないと思うんです。
  159. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) ここに書いてあります解雇という言葉も、その解釈と定義は従来の労働法制、今まで積み重ねられてきた判例によって定義づけられている解雇という言葉でございまして、この法律の記載事項に解雇ということが書いてありましても、従来の解雇とか解雇権とかいう言葉の解釈を一切変更したものではないと私は考えております。  したがって、論理は矛盾していないんだろうと思っております。
  160. 西山登紀子

    西山登紀子君 本当に解雇を念頭に置いていないというのであれば、それは外したっていいわけです。外すべきです。これだけ言っても外さないということは、やっぱりそれを考えているのかなと、そう思いますよ。こんなことぐらいお認めになって外すとやるべきです。  次に行きます。  もう一つあるんです。雇用調整助成金を出す場合の要件に関して前回労働省に質問したときに、ちょっと不正確な御答弁がありましたので、改めて確認をしたいと思います。  雇用調整助成金を出す場合には、在籍出向であっても労使の出向協定のほかに本人同意を要件としていると思いますけれども、間違いありませんか、労働省。
  161. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 雇用調整助成金の支給対象になる出向ですけれども、これは雇用保険法施行規則で「出向をした者の同意を得たものであること。」という要件を課しておりまして、その出向には在籍出向といわゆる転籍出向の両方を含んでおります。
  162. 西山登紀子

    西山登紀子君 ということでございます。  それで、労働大臣にきょうお越しいただいておりますのでお聞きをしたいわけですけれども、この雇用調整助成金を出す場合には在籍出向であっても本人の同意を要件としているわけです。つまり、一般とは違って、一般には労働組合あるいは労働者側の代表の合意があればいいわけですが、本人同意を必要としない在籍出向であっても雇用調整助成金がつく場合は、雇用維持のための助成金を出すというときには厳密に本人の同意を要件として認めているわけです、本人同意をちゃんとしなさいよというふうに認めているわけです。  ですから、本法案も、事業再構築計画の認定を受けて企業税制上の優遇措置を受けるわけですから、出向における本人同意の取り扱いについては、一般的な適用ではなく、出向の数だけ見るんじゃなくて本人の同意があるかどうかをより厳密に認定の要件にすべきだということが一つ。少なくとも、実施段階では本人の同意があるかどうかを見て執行すべきではないでしょうか。  労働大臣の御見解をお伺いします。
  163. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 雇調金の仕組みをつくりました当時、昭和五十年だったでありましょうか、当時、最高裁の判例でこういうふうにあります。労働協約や就業規則に出向することがあり得るというようなことが書いてない場合は本人の同意が必要であると。つまり逆に言えば、書いてある場合には本人の同意は必要ないということなのでありますが、当時、出向に関しましては、企業がとり得る経営形態の中でまだそう一般的ではなかったと思います。社会的な無用の不安というのも起こしたんだと思います。  そこで、この判例に単に従ってやっていくことになりますと、就業規則を持ってきてくれとか、あるいは労働協約はどうですかということを窓口で一々全部チェックしていかなきゃならない。要するに、無用の不安をあおらないようにということで、一律本人同意の必要性ということにしようと、非常にかたくやったんだと思います。  今般の場合は、そういう場合と若干時代的背景や法案の中身も違いますので、そこでこれと同一視して同じ対処をするということの必要性はなかろうというふうに思っています。
  164. 西山登紀子

    西山登紀子君 少なくとも、公的な優遇措置を与えるということから見ても、厳密な要件として本人の同意を入れるべきじゃないかというふうに思いますので、これはやっぱり検討すべきではないかというふうに思います。そのことだけ申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。  二日の本会議で私の質問に対しまして総理は、私が本法案が大企業による人減らしを進めるものだというふうに指摘いたしますと、このようにお答えになっています。「本法案は事業再構築のための環境整備雇用創出効果の高い創業への支援策を講ずることを通じて経済の自律的発展を図るとともに、良好な雇用機会創出を実現するものであり、御指摘の点は当たらない」ということが一つ。  もう一つは、「企業の事業再構築は、合弁や事業提携、子会社の設立等による新分野進出など多種多様な内容を含み、一概に雇用の縮小を伴うとは言い切れないと考えます。」。  私が大企業による人減らしを進める法案だというふうに指摘をいたしましたものにつきまして、こういうふうにその点の否定をしていらっしゃいます。  また、通産大臣も一昨日の委員会で山下議員の質問に対しまして、人減らし法案と決めつけるのは我々の意図に反する、こういう御答弁をしていらっしゃるんですけれども、いろいろな議論がされ続けているんですが、私はこれが大企業リストラ競争促進法だという懸念をぬぐえないんです。  そこできょうは、この法案の中身とそれから事実でその点を見てみたいと思います。  今度のこの法案には現行の事業革新円滑化法というのが引き継がれる、取り込まれるというわけですけれども、その理由、その内容をどのように引き継ぐのか、教えてください。
  165. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 先生御指摘の事業革新法ですけれども、これは平成七年に、我が国の製造業が当時空洞化の懸念があるということで、国内の生産活動の活性化を図るということを目的にいたしまして、いわゆる構造不況業種に属する事業者が取り組む事業革新につきまして政策的にこれを支援しようということでできた法律でございます。  今般、我が国経済の生産性の低迷が非常に顕著になっているということで、供給サイド全般の体質強化が必要になっているという認識を持っているわけでございます。その認識に照らしまして、まず第一に、事業革新の取り組みの必要性というのが、従来の革新法で言っておりますような製造業だけではなくて、すべての産業にとって生産性の向上の取り組みというのが求められているというのが第一点。  それから第二番目としまして、供給サイドの体質強化のための取り組みとしまして、従来の法律による事業革新だけではなくて、事業構造の変更を含めたより幅の広い事業再構築というとらえ方が必要だという認識が第二点。  それから三つ目に、必要となります施策も、金融とか税制面だけではなくて、企業の組織変更に必要な商法の手続の簡素化などを含めた対応が必要になっている。  こういう幾つかの要因を勘案いたしまして、今回御提案しております法案では、事業革新法に基づく措置を実質的に引き継ぎながら、かつ支援内容につきましても商法の特例などを拡充することによりまして、事業革新法を取り込みましてこれを発展的に解消しようということでございます。
  166. 西山登紀子

    西山登紀子君 結局、今度の法案というのは、事業革新法をさらに拡大して内容をうんと濃密にしたという関係と受けとめますけれども、それでよろしいですか。
  167. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 対象の業種を限定せずにすべての業種を対象にしたということと、供給サイドの体質強化のための取り組みとして従来以上に幅広い事業再構築というとらえ方をしたということと、それから支援内容としましても税とか金融だけに限らずに商法の特例なども織り込んだこと、簡単に要約すればこういったことでございます。
  168. 西山登紀子

    西山登紀子君 それでは、この事業革新法の運用実績はどうだったのかということを見てみたいと思うんです。事業革新計画の承認の実績、企業数及び件数は何件ですか。
  169. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 平成十一年六月末でございますが、承認の件数百二十七件、対象になりました企業は百五十七社でございます。
  170. 西山登紀子

    西山登紀子君 その中で、大企業中小企業の比率はどうなっているでしょうか。
  171. 江崎格

    政府委員(江崎格君) この中で中小企業の数は十七社、百五十七社に対しての比率ですから約一割強ということでございます。
  172. 西山登紀子

    西山登紀子君 つまり、大企業が残りの九〇%ということですね。先行して行われております事業革新法の承認を受けている企業数というのは百五十七であり、その大半、九〇%は大企業だ、一〇%が中小企業、こういうことでございます。  それでは、それらの承認を受けた企業の従業員の数は計画の開始と現在でどのように変化をしているでしょうか。
  173. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 私どもの確認できるデータとしましては、承認しました計画に記載された従業員の数の推移をマクロ的な数字と比較して考えるしかないわけでございますけれども、全体の正確な数は把握しておりませんが、雇用者が減っているかどうか、こういったことは確認できるわけでございます。  計画の最初とそれから終了した時点の計画に記載された数でございますが、合計で計画の初めの時点で六十五万九千人余り、それが計画の終了時点では約五十万人であるという計画でございます。
  174. 西山登紀子

    西山登紀子君 減っているということですね。
  175. 江崎格

    政府委員(江崎格君) そのとおりでございます。合計で十六万人近くが減るということでございます。
  176. 西山登紀子

    西山登紀子君 この数の掌握については、実は昨日まではつかんでいないとおっしゃっていたんですよ。急にわかったんですか。
  177. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 今申し上げましたように、これは出された計画に記載されている数でございまして、実際の従業員の数は私どもフォローしておりませんのでわかりません。
  178. 西山登紀子

    西山登紀子君 それはどういう意味ですか。計画の最初と最後で百五十七社の従業員の数がどのように変化をしているのかという私の質問でございます。
  179. 江崎格

    政府委員(江崎格君) どのように変化する計画であるかというのを私どもは見ておりますが、実際にその計画が済んだ時点で何名になったかということまでは確認できていないわけでございます。
  180. 西山登紀子

    西山登紀子君 私がきのう、それこそこういうことをお聞きしますというふうに言ったときには、この従業員がどのように変化をしたのか、つまり最初に計画書を出して承認を受けた、その後その企業がどのように従業員の数をふやしたのか減らしたのか、それを聞きますよと言ったら、その数はつかんでいないと言ったんです。通産省は、調べないとわかりません、聞かないとわからない、調べる体制もないと、そうおっしゃったんです。そうしたら、今出てきたのは六十五万で五十万、この数は一体何ですかと言ったら、申請した企業の計画の数の合計ですか、こんなことは聞いていませんよ。
  181. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 申請された計画に書いてある、従業員の数がどういうふうに変動するという計画に書いてある数でございまして、実際にそれぞれの事業計画でどのように従業員が推移したかというのは私ども今把握できていないということでございます。
  182. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、今最初の御答弁は国会を愚弄するものだと思いますよ。わかり切って、それこそ数のマジックというのでしょうか、そういう数を、聞いてもいない数を、つかんでいないと言われたら困るから、数としては出したということじゃないですか。  大臣、私が聞いているのは、今大事なことは、この法案が、国がお墨つきを与えて承認をした企業が、私たちは人減らし、ところが政府の方はそうじゃないというふうに言うから、それではこの法律ができる前の既に先行して行われている事業革新法ではどんな実績になっているのかということをここに数字を出して議論しましょうと言っているんですよ。そうしたら、そんな子供だましのような数を国会に報告するというのは私は本当にまじめな態度じゃないと思いますよ。そうじゃないですか。
  183. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 実績は把握していないというのは、正直申し上げてそういうことでございます。  ただ、最初そういう計画が出てまいりましたときに記載されていた現在の従業員と、それから計画を遂行した場合の最後の従業員数というものを非常に単純に足し合わせますと、先ほど局長が先生に御報告した数字になるわけでございまして、計画での従業員の変化ということを申し上げたので、実績を申し上げたわけでもございませんし、実績は実はつかんでいないというのが正直なところでございます。
  184. 西山登紀子

    西山登紀子君 実績をつかんでいないということも問題だし、それではこういうことですか。企業は最初、計画のときにはこれぐらいの従業員でいく、そしてこの事業革新がうまくいったらこういうぐらいの人数になりますと、合計をすると十六万人減る計画に全体としてはなっているということですか。そういう理解でいいんですか。
  185. 江崎格

    政府委員(江崎格君) そのとおりでございます。
  186. 西山登紀子

    西山登紀子君 それは非常に問題でしょう。だから人減らし法案だと言っているんです。そうじゃないですか。その事業革新法ですよ、実績は。
  187. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 法律で規定しております認定の要件に照らして、それに適合しているものはその認定をしたということでございます。
  188. 西山登紀子

    西山登紀子君 問題は見えてきたように思うんです。  一つは、私は、どういうふうに経過として、結果的に今どうなっているかということをお聞きしたんですけれども、御答弁は、計画段階から終わったときに十六万人減らす計画になっている、初めと比べれば十六万人減る計画になっているということが一つと。  それから、大臣はお認めになりましたけれども、経過としてどうなっているか、計画遂行はどうなっているかという数字はつかんでいらっしゃらないということをおっしゃったわけでございます。これは国が承認を与えて、いわば国民の税金で優遇策なんか与えている、公的資金なんかを与えている事業でございます。それをどうなっているかも調べないというのは、これは無責任なことじゃないでしょうか。  大臣、これは調べていただきたいと思います。調べもしないでさらに事業革新法を拡大するというような、優遇策もさらに濃密にするような法案を今回出してきているわけですよ。計画でも減っているけれども、今実態はどうなっているかというのは、大臣、調べるべきじゃないでしょうか。
  189. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 私ども、事業革新法の十八条に基づきまして、計画の実施状況につきまして報告徴収を行っているわけでございます。  従業員の数の推移の問題ですが、これは数字の内容自体が計画の中で「事業革新に伴う労務に関する事項」というふうに記載されているわけでございまして、事業革新そのものの内容ではないという理解でございますので、事業者の負担ですとかあるいは行政側の体制ども考えまして、毎年の報告の中にはこの従業員の数については報告を課していないところでございます。
  190. 西山登紀子

    西山登紀子君 それはやっぱり含めてやるべきじゃないですか。
  191. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 先ほど申し上げました理由で、「事業革新に伴う労務に関する事項」ということなものですから、これまでの判断としては私どもは報告徴収の対象にしていないということでございます。
  192. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、これは検討していただきたいと思います。  計画をとるときには従業員の数とか、それこそ書かなくてもいいような解雇の数までとると言っておきながら、報告を受けるときには数は要らないと。これはやっぱり筋が通らないんじゃないですか。きちっと報告をとる。計画に沿って、それこそ従業員が減らされるというような計画になっているとすればそれは重大ですから、それも含めて報告の中に入れるべきだというふうに思います。  大臣、お答えください。
  193. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 実は、この事業革新法の計画が出てまいりますときには、もう既に働く方々の理解と協力を得ながら、また従来のその会社の労使の慣行に基づいて労使の間で話し合いが行われてこういうものが出てくるわけでございます。  そういう意味では、今回出しました法律の中にも、労働者の権利を不当に害するものではない、害してはいけないという趣旨のことが書いてございますが、それと同じ精神で実は事業革新法の計画も出てきているわけですから、事業革新法に基づく計画が出てきますときには、労使の間で話し合いが行われてきたということは当然の前提としてあるというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  194. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、大臣はお答えいただいていないと思うんです。  こういうお墨つきを与えて優遇を図った以上、その企業がその計画どおりやっているのかどうか、その計画の是非は別ですよ、やっているかどうかというのをきちっと行政はつかめないと、それは国民に対する責任を果たすということにならないんじゃないかということを言っているわけです。  これは当たり前のことじゃないですか、そういうことをやるのは。それをつかんでいないと言うんですけれども、ぜひこれはやっぱり検討してきちっと把握をする、そういうことをやらないと、これから新しくこの法律をつくった場合にも、承認を与えて後はもう知らない、どうとでもやっていなさいということになるのかなと思いますよ。
  195. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 仮に、今回の法律でそういう計画が出されて、それに承認を与えた後に何らかのトラブルが現場で発生しているというような場合には、通産省も積極的に従業員数の変化等を掌握する必要があるということは、私はその必要性は認めます。
  196. 西山登紀子

    西山登紀子君 十八条の報告の中に、そういう内容も含めてぜひやっていただきたいと思います。  そこでお伺いいたしますけれども、この法案に先行して行われている事業革新法でも非常に実際的に、これは調査室から出していただいている百七ページ資料でも、上場企業六十社でも五万七千人減っております。中で増員されているのはわずか四社しかありません。千二百六十六人しかふやされていない、九五年から九八年の間ですね。これは調査室から出していただいている資料でございますが、そういうふうになっている。まさに人減らしが行われてきたという客観的な事実は動かせないと思います。  次に、六月四日に日本鋼管株式会社、NKKの分社化計画が承認をされていますけれども、簡潔にその内容について説明をしてください。
  197. 河野博文

    政府委員(河野博文君) NKKから申請のありましたエヌケーケー鋼板株式会社でございますけれども、これは御指摘のとおり、新事業創出促進法により適用される事業革新計画として承認を行ったわけでございます。  このエヌケーケー鋼板株式会社は、NKKの京浜製鉄所水江地区の設備等を活用いたしまして、今後発展することが期待し得る表面処理鋼板製造事業及び建材分野向け薄板販売事業を行うというものでございます。
  198. 西山登紀子

    西山登紀子君 分社化ということで承認をされているわけでございますが、この分社化というのは一体実態はどうなのかということで、私は日本鋼管の労働者の方に会ってまいりました。お仕事が終わった後、何人かの方に直接お会いをいたしまして聞いたわけでございますけれども、こういうことなんです。  私は理解が不十分だったと反省をしておりますが、分社化というのは何か新しい会社をどこかにつくってそしてそこに新しい雇用も生まれる、そういうふうに理解をしていたんですけれども、実は分社化されてそこに出向を命ぜられた労働者のTさんという方は、これは新しいエヌケーケー鋼板よりも前に既に行われている新会社に出向されている方だったんですが、四月一日から丸ごと出向を命ぜられた。丸ごとというのは、百五十人全体が出向を命ぜられた。しかも、別のどこかの会社に行くのじゃなくて、それまでずっと仕事をしてきた同じ職場、同じラインで何にも仕事は変わらない。変わったのは、作業服とヘルメットが変わっただけだ。同じ仕事、同じ場所、そういうことだそうです。  そして、四月一日丸ごと出向したその人たちの中で、私がお聞きしたのは六月ですが、三カ月、七月一日からその中の五十五歳以上の方は出向から全員転籍、つまり日本鋼管からは首を切られる、こういうことでございました。Tさんはこれに同意をしなかったんですけれども、多くの方々が一人ずつ呼び出されて、ほぼ二回で落ちるというか無理やり判こを押させられているわけですが、押させられた労働者の方が、日本鋼管で定年を迎えたいというふうに思っていたのにと、非常に残念な思いをしているということでございました。  五十五歳以上の出向者全員といえば、対象者は六十人もいるということでございました。年齢の高い人だけではなくて、百五十人ですから中には若い人もいらっしゃるわけで、若い人は、日本鋼管に勤めが決まったのにいきなり今度分社化で違う新会社に出向を命ぜられるということで、わけがわからないと。奥さんも含めて大変困惑をしているという御報告もありました。  七月一日から分社化される新会社のエヌケーケー鋼板というのは、これは百二十人の労働者で五十五歳以上は三十五人いらっしゃるんですけれども、出向する人を全部集めて説明会をやられた。その中で、賃金は三割ダウン、労働時間は年間にすると五十八時間もふえるような状況に変化をするということで、労働者の中では非常に困惑が広がっているということがございました。ある方は、行く先では自分の賃金が半分に査定をされたということから、誇りが傷つけられたということで大いに憤り、頭にきて判こを押してしまった、こういう状況なんです。労働者の出向の同意というのも、こういう状況の中で一人一人ほぼ強制に近い状況で出向が行われているわけです。  もう一つ驚いたのは、分社化をして新しい会社に出向を命ぜられますと、ほぼ三カ月で次はそこを離籍ということに、首切りということになるわけですが、分社化がさらに孫会社の分社化をする、そして最後は外注化ということで、NKKの関連会社に丸ごと転籍という形で首が切られていくというような実態。それはすさまじいものでございました。  事業の革新ということで承認をしたわけですけれども、とても前向きの希望が持てるようなものではありませんでした。お話をお伺いしている私の方が本当に気持ちが重くなる、話をしていらっしゃる人も顔が曇っている、そういうものでございました。つまり、人減らしと賃下げ、そして下請に対する押しつけ、こういうことが実態でした。  大臣は、この実態が前向きの対策、こういうふうに思えますか。
  199. 河野博文

    政府委員(河野博文君) 今お話しのエヌケーケー鋼板のケースについて申し上げさせていただきますけれども、この新会社では、市場ニーズに迅速に対応できるような製造体制導入する、あるいは柔軟な生産体制の構築を図るということで、きめ細かくユーザーに対応していこうということが一つの分社化のメリットというふうに承知をしております。  また、それをすることによりまして、NKK本社の方におきましても、新会社向けの製品とか素材の販売の規模拡大が期待でき、事業基盤強化が図られる、こういうねらいがあるという理解でございます。
  200. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、どうですか。こういう、私が直接行ってお伺いをしてきた、仕事のラインは変わらない、変わったのはヘルメットとユニホームだけ。それで新しい事業が生まれるというふうに思えますか。
  201. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 本法案においては、分社化は事業再構築の一形態として挙げられているところでございますけれども、当然のことながら、分社化を計画内容とするものはすべて認定するということではなく、当該行為が事業再構築に該当し、さらに計画の目標として生産性の相当程度の向上が明らかである等の認定要件を満たす必要がございます。したがいまして、御指摘のような事例が本法案との関連において支援すべきものか否かについては、仮定の問題となり、お答えは困難であります。  ただ、一般論として申し上げれば、事業者を取り巻く競争が一段と厳しさを増す中で、かかる取り組みによって当該事業が維持され、将来の発展が可能になるのであれば、それは当該事業者にとって必要な経営努力であろうということであります。  いずれにせよ、政府による支援については、各支援措置の趣旨等をもとに個別に判断していくべきものと考えております。
  202. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は一般的に問題にしたのではなくて、六月四日に政府日本鋼管、エヌケーケー鋼板の分社化をいいことだといって承認しているんです。承認をしている会社がこういうことをやっていていいのか、しかもそれは前向きだというふうに言えるのかということで、それこそ具体的な問題として大臣にお伺いしているんです。  どんな分社化でも承認するわけではないとおっしゃったわけですが、実はこのNKKの社長さん、下垣内さんという方が鉄鋼新聞にこんなふうに書いていらっしゃるんです。  「今期黒字転換、経常益二百億円」「「大幅改善見通し」 根拠を聞く」という見出しになっているんですけれども、「人員削減は三千九百人で二百四十億円の圧縮を見込んでいる。京浜の表面処理鋼板事業の分社など四事業の分社で約九百人減。さらに、出向促進、早期退職制度、転籍制度などに基づく削減計画であり、間違いなく実施できる。」。さらには、京浜などの「アウトソーシング費用で今期中に二百三十億円の削減を外注先に要請しているがすでに合意している。主な削減要因はやはり労務費の削減によるものだ。当社は今期、一七%程度の労務費削減を実施するがグループ会社や協力会社にも一三—四%の削減を要請、それを受け入れてもらった。」、こんなふうに六月二十一日の鉄鋼新聞に、「いける、すでに大半はメド」、こういう見出しで書いているんです。  つまり、労働者の首切りのめど、それから賃金コスト削減のめど、下請企業に対する犠牲のめど、これはついた、それで経常益は二百億円黒字になる、こういうふうに社長自身が言っているんです。これは一般論の話ではありません。しかも、本法案に先行する事業革新法でまさに政府がお墨つきを与えた日本鋼管がやっていらっしゃることでございます。  これからも、新しい法律のもとでもこれはずっと承認し続けるということでしょうか。大臣、それだったら、個別にNKK、日本鋼管に承認を与えたわけですが、承認を与えたら取り消しができないわけではありませんでしょう。一度調べてください。
  203. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 今のは社長の談話だろうと思いますけれども、自慢げに物を言っているのではなくて、むしろそれは個別企業の経営の苦しさ、生き残りということを語っておられるのではないかと私は理解いたします。  個別企業はそれぞれ生き残りをかけていろいろ努力しなければならないわけでございまして、そういう中でも日本の労使慣行というのは、先進諸国のようにレイオフをいきなりやるとかそういうことではなくて、労使の間でよく話し合いが行われ、労働者の理解と協力を得ながら穏やかに着地点を見出すように労使双方努力しているという、そういうことの結果であると私は思っておりまして、何か社長が得意になって物をしゃべっているというふうには私は今お伺いしておりませんでした。  むしろ、歴史と伝統のある会社がそこまで物を言わなければならないという事態自体は大変悲しむべきことだろうと思いますし、社長もそういうことをお話ししながら、内心じくじたるものがあったろうと思っております。
  204. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、これが鉄鋼新聞でございます。(資料を示す)社長は笑っているんです。深刻な顔なんかしていませんよ。それで、「いける、すでに大半はメド」という大きな見出しなんです。だから、大臣が思っていらっしゃることと日本鋼管がやっていらっしゃること、社長が思っていることとは違うんじゃないですか。笑っているんですよ、この写真は。だったら、調べなきゃだめでしょう。
  205. 河野博文

    政府委員(河野博文君) 先ほど御指摘のエヌケーケー鋼板の分社化のプロセスは、労使間でも十分話し合いが行われて、確かに当初、約百八十名だと思いますけれども、この従業員の皆さんは今までいたNKKの職場からここに出向されるということでございます。これも労使間のさまざまな話し合いの結果というふうに私は理解をいたしております。  今後、その百八十名の方の中で転籍という問題が生ずる方もおられると思います。これもしかし、出向先、それから親元、そして御本人、そういった方々の話し合いの中で理解に沿って行われる。また、その場合の諸条件もそれなりに考えたもので対応するというふうに伺っているのでございます。  事業革新的な側面で申しますと、先ほどちょっと言葉足らずでございましたけれども表面処理鋼板は一般的には自動車などの大口ユーザーに使われているケースが多いわけですが、この京浜製鉄所では比較的小口ユーザー、建材などに使われる分野を担当しているものですから、大企業体質のままではなかなか営業あるいは製造のプロセスなどがよくなかろうということで分社化に踏み切った、そういった意味での革新性があるというふうに聞いております。  それから、個別の企業の経営状況でございますから余り申し上げるのはどうかと思いますけれども、今の経営者はマーケットから常々さまざま監視を受けているような状況でございまして、経営動向についての自信ある発言というものがマーケットから求められている、そういう立場に置かれているようにも思っております。
  206. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 時間が過ぎております。
  207. 西山登紀子

    西山登紀子君 はい。  どこまでも大企業の弁解をしたり擁護をしたりという御答弁なので、私はこのきょうの質問の続きを明日またやりたいと思います。きょうは時間が切れましたので、労働大臣、申しわけありません、せっかくお聞きしようと思っていたんですけれども、終わります。
  208. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 きょう、午前中に参考人意見を聞きました。その中で、アサヒビール会長であります樋口廣太郎さん、これは経済戦略会議議長です、この人の話もちょっと聞いたんですが、経済戦略会議の位置づけとして、私どもは前に国会で審議会のあり方、私的諮問機関のあり方について随分議論をしてきました。これが、政令で定める総理府本府組織令第十八条というのが法的根拠になって国家行政組織法第八条の位置づけにされているわけなんです。  私は、皆さんが議論をしている中で一番抜け落ちている雇用問題、あるいは労働法制、雇用問題がなぜ後退したのか、特安法や産構法や円滑化法に比べまして落ちているんです。これはなぜ落ちたのか。よくよく考えてみますと、一昨日産業政策局長の答弁にも経済戦略会議答申を尊重したというような答弁がありましたが、そうだろうと今思ったんです。  これは十名の委員なんです。西日本旅客鉄道の井手会長、あるいはトヨタの奥田さん、それから東京大学の竹内さん、アートコーポレーションの寺田さん、東京大学の伊藤さん、イトーヨーカ堂の鈴木さん、慶応大学の竹中さん、一橋大学の中谷さん、森ビルの森社長、アサヒビール樋口さん、六人が財界の人です。四人が学者なんです。あした総理に質問しようと思っておるんですが、こういう審議会をつくる場合に国会でも議論をずっとしてきた、大体偏らないメンバーで、労公使というような形でメンバーを選ぶのが、これが審議会のあり方なんです。これが八条にのっとったといっても、好きな者ばかり、大体似たような者ばかり集めて議論をしている。だから、雇用問題等は法律をつくる段階ではほとんど意見が入っていない、こういう心配です。  これは小渕内閣の性格だろうと私は思うんです。ですから、小渕内閣総理大臣がこういう偏ったことを平気で知らぬふりしてどんどんやっていた、それをもとにしてできた答申を受けて法制化している、こういうことに対していささか私は不満がありますから、答弁は要りませんが、あしたまた続きは総理にしたいと思っております。そのことだけは言っておきたいと思います。  そこで、最初に通産大臣に所感をちょっと聞きたいんですが、京セラの稲盛会長、今は京都商工会議所の会頭らしいのですが、稲盛和夫さんが、ことしの五月二十七日に「わが国の産業再生策についての意見」という記者発表をやっている資料があるんですが、ちょっと読んでみます。  前文の中に、「特に過剰設備の廃棄を促す優遇税制と債務の株式化につきましては、真の競争力の強化につながらないばかりか、公正な競争と自己責任の原則を一層歪めるものではないかと、大変危惧しております。」。ちょっと飛ばしまして、「安易な優遇策が単に一部の企業救済に止まり、逆に真の競争力強化の芽を摘む結果になり得ないかとの大きな疑問があります。 対処すべき課題を先送りしてきた企業が大きな恩恵を受けることになれば、自己の経営責任により事業の再構築を図ってきた企業との公平性を欠き意欲を削ぎ、真の自由競争を阻むものとなります。」云々、こうやっておるんです。  こういう貴重なことを言っている人の意見というのは、こういう人が戦略会議のメンバーに入っておれば私はいいなと思うんですが、稲盛さんのこういう意見に対して大臣の所感を承りたいと思います。
  209. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 御指摘の京都商工会議所の稲盛会頭の御意見については、私としても既に承知をしており、こうした御批判も念頭に置きつつ、今般の産業再生特別措置法案を提案させていただいたところでございます。  この法案は、事業者自身の手による企業の事業再構築を円滑に進めるための環境整備するものであり、市場原理と自己責任原則については本法案の大前提であると考えております。  また、本法案は、あらゆる業種に属するあらゆる規模の事業者による事業再構築を支援対象としており、具体的な支援措置内容も、欧米諸国で広く取り入れられている会社組織の見直し手続や税制措置であり、基本的にはグローバルスタンダードの範囲内であると考えております。したがって、モラルハザードを招いたり自己責任原則をゆがめる等の御懸念は当たらないものと考えております。  加えて、稲盛会頭からは、新規産業を育成することの重要性についても御議論をいただいているところでございますが、私としても、我が国の競争力を強化するためには、創業や中小企業者による新事業の開拓や技術に関する研究開発等を活性化することが不可欠であるとの認識のもと、本法案ではこれらについても抜本的な支援策を講ずることとしております。
  210. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 できればノー原稿でやってもらいたかったんですけれども、次に移ります。  私は、もう一昨日質問しましたから、余り小さいところまでは時間の関係で入れないと思うんですが、きょうは二つのことを言うことになると思います。一つは、企業集中合併がどんどん将来進んでいくんじゃないかといったときに、日本はどういう社会になってくるのかという不安。これは後で質問いたします。  そこで、皆さんからお話があった労働者雇用の問題なんですが、もう一回繰り返しますと、四・九%の失業率、約三百三十万人の失業者数、うち百十八万人が非自発的な失業者数。そして、その大半が、大半というか四十歳以上の人の最近失業者の数が非常にふえている、こういう状況。それから、それに非常に関連して、警察庁の資料によりますと、一昨年の自殺者の数は三万二千八百六十三人、史上最大の規模。そして、特にそのうちに、経済とか生活面のそういうものが原因になって自殺した人が六千人を超えておる。特に四十歳以上の中高年の男性の数がふえておる。  そういう失業者数がどんどんふえておる。そして、非自発的失業者がこれからどんどん出よう、それから自殺者もふえると。これは、幾ら小渕さんがのんきでも、もう少し国民の前に謙虚であって、そして真剣にこれを考えてもらわないといけないと思っておるんです。  そこで、これ以上言ってもしようがないですから、もう一回、第一条の「目的」のところに、「雇用の安定等に配慮」、配慮というのはよくわかるが、雇用の確保ということをしっかり位置づけてもらいたい。  それからもう一つは、特安法や産構法や円滑化法において労使協議というのが義務づけられておりましたけれども、今回の十八条においてもここをしっかりと位置づけることがこれはもう最小限必要ではないか、このように思いますから、大臣、これは修正はなかなかできぬとすれば、大臣の答弁で、以降これでしっかりいくと、そういうような答弁をお願いしたいと思います。
  211. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 今回のこの法律というのは、いろいろ事業の再構築をやっていくわけですが、雇用面にしわ寄せをしないという思想は、大事な思想としてこの法案を立法するに当たっての我々の考え方でありますし、従業員の雇用の安定に努めるということはもう言うまでもないことでございます。  特に、これまでも労使協調ということはあらゆる側面日本の労働慣行の中で深く定着してきておりますから、こういう時代こういう時期にあっても、やはり従来の労使協調という路線で日本は進むべきだろうと私は思っております。  簡単にレイオフができるような、いわゆるハードランディング路線というのは日本の社会には私はなじまないと思いますし、長期的な雇用安定ということもまた大変大事でございまして、これは会社にとっても大事ですし、また従業員の生涯設計にとっても私は大変大事なことだろうと思っております。  こうしたいろいろな考え方を念頭に置きながら、目的規定を読んでいただくと書いてございますが、「雇用の安定等に配慮」ということを明記しております。また、関連中小企業とか下請とかにもきちんとした配慮をするようにということを書いてございまして、私どもとしては、従業員あるいは下請中小企業への配慮も行いながら物事を進めていくという一貫した態度をとっているつもりでございます。  また、事業再構築計画が出てまいりましたときも、認定要件の一つとして、従業員の地位を不当に害さないものであることということも書いてございますので、我々としては雇用への悪影響をできるだけ防止するという考え方でこの法案を書いたわけでございます。  先生の御指摘の雇用の安定の確保については、現下の厳しい雇用情勢を考えますと、本法案自体が我が国全体としての雇用の安定の確保に資するものであると考えておりますが、本法案の枠組みに加えて、より広範な角度から政府として全力を挙げて取り組んでいくべき課題であると思っております。
  212. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 認識がちょっと、労働省も前提がお互いに違うんじゃないか。  一つは、日本の場合は労使の問題を考えた場合に、組織率がもう二一%ちょっとでしょう。そうしますと、もう圧倒的多数は無権利状態です。労働組合がないんです。無権利状態。そして、二一%の労働組合があったとしても、なかなか今のような厳しい経済情勢のもとでは労働組合がストライキまでかけてやれるような状況ではない。会社がつぶれると言われると、おおっと言って後退せざるを得ないようになっちゃう。そんなに労働組合というのは強くないんです。また、圧倒的な労働者は無権利状態なんです。だから、ここは法律できちっと労働者保護あるいは労働法制で位置づけるようにしないと、労働省もうサボっちゃだめだと思う。  だから、フランスやドイツへ行って話をすると、法律できめ細かくそこはきちっとしておかないと、これは善意だけじゃどうにもならぬということですから、もういろいろ言ったって、これは今できるものじゃないんでしょうが、そこのところの前提を、ただ労働組合と書けばいい、済むものじゃないんだ。やっぱり実質の勝負。労働省、局長、何か考えることがあれば一言言ってください。
  213. 澤田陽太郎

    政府委員澤田陽太郎君) 今、梶原委員から労働組合のないところは無権利状況だというお話がございましたが、日本におきましては労働組合のあるところないところ通じまして、労使が意思疎通をよく図って事に当たるという物の考え方はかなり定着しているものと私ども思っております。  そうした意味で、EUのいわゆる既得権指令の問題を御指摘いただきましたが、EUにおきます企業内労使関係の実情、あるいは彼らの国とこちらとの雇用労働市場の状況の違い等々というものはベースとしてあるだろうと思っております。したがいまして、直ちにEUと同じようなルールという問題については大変議論のあるところでなかなか難しいものがございますが、日本として日本企業内労使関係、あるいは労働市場、雇用状況等を踏まえて、今後の企業組織の変更等の状況の中でどういうことが必要かということについては労働省としても十分検討してまいりたい、こう思っております。
  214. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もうそれをやらなきゃ労働省は要らぬのじゃないか。本当は未組織労働者の数が圧倒的に多いんだから、法律でやっぱりきちっと位置づけてやらないと困ります。  それから次に移りますが、第五条において、主務大臣は、必要があると認めたときは、公正取引委員会に対して申請書の写しを送付するとともに、意見を述べることとなっております。この必要があると認めたときというのは、私は読んでみてもなかなかわかりにくいんですが、これをひとつ説明してください。
  215. 林洋和

    政府委員(林洋和君) 必要があると認めるとき、具体的には二以上の事業者の申請に係る事業再構築計画が独禁法上問題を生じ得るかどうか明らかでない場合、例えば大型企業同士の合併計画、こういった場合を想定しております。
  216. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 主務大臣が事業再構築計画を承認した後に、主務大臣と公正取引委員会の間において、今回の産業法制とこれまでの産構法、事業革新法などとは非常に異なっておりますが、これはどういうような取り扱いをしようとしているのか。そして、これは以前の分に対して、今回の公取のこの位置づけというのはどうなのか。
  217. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) お答えいたします。  今回の法案では、先ほど来お話しでございますように、あくまで市場原理のもとで個別の事業者がそれぞれ自主的に事業再構築に取り組む、これに対して国が支援するということとしておるわけでございまして、二以上の事業者による事業再構築計画も独占禁止法の枠内で認められるというものでございまして、主務大臣と私どもとの関係のスキームもこの範囲内で規定したものである、このように考えております。  先ほど先生から産構法その他の法律の手続とは違うというお話もございましたが、産構法等におきましては、二以上の事業者が共同して実施する事業提携計画につきまして、主務大臣が認定した後に公正取引委員会が独禁法に違反する事実があると思料するときは主務大臣に対してその旨を通知する、またそれに対して主務大臣が意見を述べるというようなことが規定されていたわけでございますが、今回の法案におきましては、主務大臣と公正取引委員会との間で相互、緊密に連絡をとる、こういう規定になっているわけでございまして、この方がより適切である、このように判断しておるわけでございます。
  218. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は、これは何年かこういうことを繰り返していくうちに、日本産業というか企業は非常に集中合併が進み独占化が進んでくる。韓国も財閥がありまして、この財閥が幾つかこうやっておったけれども、これは最近見直されつつあるが、逆に日本の場合は集中合併がどんどん進んでいくような社会。逆にそれは何年かしますと、自由な競争を制限し国民にプラスにならない、こういうことだってあり得るわけです。  最近の集中合併の事例をお願いしてあると思うんですが、いかがですか。
  219. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 最近の集中合併、大型の合併の事例はどうかという御質問でございますが、平成十年度におきましては、合併等の届け出報告の対象範囲の縮減の法改正をしていただきました。平成十年度における合併の届け出件数でございますが、改正法施行がことしの一月一日でございまして、平成十年四月から十二月までで千四百七十件、施行後のことしの一月から三月期で四十四件でございます。  また、この主要な企業結合例というのを私どもは公表させていただいておりますが、主な例といたしましては、トヨタ自動車によるダイハツ工業の株式取得、あるいは旭化成工業及び三菱化学のポリスチレン樹脂の事業の統合、秩父小野田と日本セメントの合併、大阪商船三井船舶とナビックスラインの合併、日本石油と三菱石油の合併等がございます。  また、改正法によりまして、外国事業者間の企業結合等で我が国市場に影響を及ぼすものにつきましては、届け出なりあるいはこの審査の対象になっております。最近、そういうような事例も非常に多くなってきておるところでございます。
  220. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 企業の集中合併というのは、これは理屈を言いますと、資本主義が過度に発展をしていく過程の中で今回のような大不況に陥る。すると、カルテルはなかなかやれない。カルテルをやれなきゃ幾つかに集中合併をしてくる。それで、産業界で幾つかの企業がカルテルの場合はどこかで話し合ったり、証拠が挙がればすぐあなた方はちゃんと始末をしますが、そういう独占企業が集約されますとお互いにウインクするだけでもう操業の規制をやってみたりあるいは販売価格を決めてみたり、そういうことが進んでいく社会にどんどん突き進んでいきつつある。この法律は、どっちかというとそれを促進するような内容になっていると思うんです。  そこらに対して、公取の目というのは光っているのか光っていないのか、お答え願いたい。
  221. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 合併とか営業譲り受けなどの企業結合につきましては、私ども独占禁止法の第四章という規定がございまして、合併あるいは株式取得、営業の譲り受け等につきまして、一定の取引分野における競争の実質制限なるものについてはこれを禁止しているわけでございまして、合併等が市場支配力を持つようなものになるかどうかということを審査しておるわけでございます。  その審査につきましても、ガイドラインを出しまして、できるだけ事業者の予測可能性を高める、そういう手だてもしているわけでございます。  いずれにいたしましても、今後とも合併の審査におきましては、国際的な市場における競争環境を考慮するなど市場の実態を十分踏まえまして、独占禁止法の迅速、透明で適切な運用を図ってまいりたい、このように考えております。
  222. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 市場の実態等を勘案しながらということですが、今、秩父小野田の話が、小野田と日本セメントがこの前合併しましたね、太平洋セメント。これはたしか三九%ぐらいセメントの市場占有率、こうなるんですね。昔は二四、五%ぐらいで、これは一つの共通した製品で二五%も超えていれば大変だ、こう言っていたけれども、公取も随分その条件を緩めてきたんじゃないか。そこのところは大丈夫ですか。
  223. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) お答えいたします。  時々、二五%ということが合併の禁止の一つの基準であるかのように言われておるわけでございますが、実はことしの一月一日から施行いたしました改正法前は、すべての合併を私ども公正取引委員会に届け出るということになっておりました。これは企業にとっては非常に過重な負担にもなる等の理由から、総資産が百億以上の会社が総資産十億以上の会社を合併する等の場合について届け出を必要とするということになったわけでございます。  すべての合併等について届け出をするという際に、重点的に審査する場合の一つの基準、メルクマールとしまして合併後のシェアが二五%という基準を持っておりまして、それらは重点的な審査をする、いろいろの参入の容易性でありますとかあるいは市場圧力、あるいは海外からの輸入圧力等々を重点的に審査する、そういった場合の一つのメルクマールとして持っていたわけでございまして、必ずしも二五%以上であればこれを禁止するというものではなかったわけでございます。  しかしながら、先生御指摘の点は、市場支配力が生じたり、あるいは寡占的な行動がしやすくなるようなそういったところには公取はもっと目を光らせろという御指摘だと思います。これについては厳正なる法の執行に当たっていきたい、このように考えております。
  224. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 最後に通産大臣に。  私は、この法律で今の状況を全部救ったり、これでよくなるというようなところまでは到底いかないと。どこか債務保証をする場合も、どうも何か五十億が限度だと言っているんです。だから、そういう通産一流の宣伝、小さくやって大きく宣伝しているという部分もありますが、これは今後どうして日本経済を立て直していくかということも考えて、いろいろともう少し知恵を出していった方がいいだろう、このように強く感じておりますから、所感があれば述べていただきたいと思います。
  225. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) この法案日本産業再生の第一歩であると考えております。
  226. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 午前中の参考人質疑でも、特に産業競争力会議のメンバーの経済界代表の参考人も申しておられましたが、今の質疑のちょっとつなぎになりますけれども、やっぱりこれは第一弾として、第二、第三を期待したいということを言っておられました。    〔委員長退席理事成瀬守重着席〕  私は、こういう民間の企業活動に政府の一つの裁量権というものが余り発揚されていいんだろうかということを実際に財界人として活動している方に本当は聞いてみたかったんですが、時間がなかったので残念ながら聞けなかったんですが、やっぱりそういう感じはします。  しかし、この法律の、私は一昨日も若干の疑問は言いましたが、きょうの質疑を聞いておりましても、雇用者、勤労者の人たちに対する問題が提起され、そしてまたそこで働いて生活の場としている、生活の場を提供する起業家の問題、あるいは起業というものの考え方というものがどうも若干不足の感じがいたしました。  同時に、もう一つ言うならば、中小企業というのは事業数の九九%もあるわけですが、三分の二の雇用者数を持っているにもかかわらず、どうも中小企業の関係というのが、今も若干同僚議員の話がありましたように労働組合をつくれない、あるいはまた組織化されていない、そういうところの人たちの問題というのもこれは本当に避けて通れない問題で、あるいはまた置いてきぼりにしてはいけない問題で、中小企業、小規模事業者こそむしろ日本の今日までの産業あるいは経済の大きな重要な役割を果たし、あるいはまた重要な地位に今日まであるということを決して忘れてはならないと思うんです。    〔理事成瀬守重退席委員長着席〕  絶えず中小企業庁にそういうことを申し上げてまいりましたし、中小企業、小規模事業というものの基準あるいはまた今までの政策の精査、これからの新しい方向性ということを昨年の暮れから申し上げて、ことしは長官のところで勉強しているということですからいずれ出てくるんだろうと思います。きょうはそのことはいいにしまして、期待はいたしておりますけれども中小企業あるいはベンチャー支援策というのがこの法律の中でどういうことになっているのかということで、私は自由党として、この中小企業問題がしっかりと明記されていない法律はいけない、もっとはっきりしてくださいという希望を申し上げたのであります。  十九条に規定をしていただきましたが、中小企業に関しての施策を考えているとおっしゃっておられます。各般のことを考えておられると思うんですが、時間も余りありませんので、こうやってしゃべっていると私はすぐ二十分ぐらいしゃべってしまいますから、ちょっと大臣にそのことを、いわゆる税制の問題、優遇なんということじゃなくて、大企業あるいはまたいろんなものに認定されることに当てはまるような企業はまだいいのであって、そうでないところの人たちに対して、あるいは起業家に対して、どういうふうに今後考えていくか。  税制優遇政策も一つでしょう、あるいは設備投資等における税率の効果を出せるぐらいな思い切った措置を講ずるとか、そういうことについて意欲のほどを若干、冒頭に一回だけ聞かせていただいて、あとは事務当局と質疑しますから。
  227. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) この法案では間に合わなかったわけでございますが、我々が中小企業政策の中で課題としておりますのは幾つかありますが、中小企業基本法の見直しも中小企業の定義を初め各般の施策に関してやらなければならないと思っておりまして、これはできれば秋ころには一定の方向を見出して、また国会で皆様方に御審議をいただきたいと思っております。  それからもう一つは、税制上の問題としては、既に法人税は中小企業等に低い税率がかかっておりますけれども中小企業の中で例えば商店などの承継というのがなかなか難しくなってきているという意味では、事業承継税制というのはやはりこれからの中小企業問題としては一つ大きな問題だろうと思っております。  それからもう一つは、中小企業技術力を高めるということは中小企業自体ではなかなか単独ではできないことでございますので、やはり国としていろいろな研究開発を行う。これは、大学であれ国の研究機関であれ委託研究であれ、相当の規模の研究開発費というものを使いまして、そういう中から生まれてくる派生技術等を活用していただいて中小企業が新たな事業展開を行う。ただアイデアだけの勝負というよりは、やはりしっかりとした技術とか科学的基礎を持った産業を我々はつくらなければならないと思っております。  中小企業施策につきましては、既に金融税制等で考え得ることはほとんどやっているつもりでございますが、また信用保証制度等でも中小企業対策を一生懸命やっておりますが、まだまだ我々が見落としている点があるのではないかということをいつも考えながら中小企業政策に取り組んでまいりたいと、そのように思っております。
  228. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 ぜひひとつ、中小企業問題は今、例えば松下幸之助という人ももう古い歴史上の人になったような感じもしますけれども、まさに中小企業あるいはまた個人企業から始められたわけで、それはその間は時代的な変遷もいろんなこともあったでしょう。しかし、これからはベンチャーということにおいて、政策の中で、行政の中でこれらが大いに企業として新しいまた起業、そういう意欲が出るような政策を、この法律を審議していき、かつまた執行していく、そういう段階から新たにまたさらなる考えを、ぜひ通産省として、中小企業庁として考えていってもらいたい。特に、中小企業庁の可能な範囲での支援を行っていくべきだろうというふうに思います。  昨年、通産省の新事業創出促進法を制定したわけですが、資金面の支援を含む創業支援をこのときに開始いたしました。この執行状況がどのようになっているか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  229. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 昨年の十二月に、新事業創出促進法を制定させていただきました。その関連で幾つか施策がございますが、特に中小・ベンチャー企業への資金面からの支援を図るために幾つかの対策をとっております。  一つは、中小企業総合事業団による中小・ベンチャー企業が行う新事業の開拓に対する助成金の交付でございます。また、投資有限責任組合に対する出資制度も創設をさせていただきました。これらについての法施行後の実施状況でありますが、助成金につきましては、つい最近、第一弾として百件ばかり採択の実績が出てきております。また、出資事業につきましても十億円の出資が既に行われているところでございます。  また、資金面以外といいますか技術面対策といたしましても、いわゆるSBIR、中小企業技術革新制度を創設させていただきました。国や特殊法人の研究開発補助金等の中小企業者等へ向けました支出の増大を図るという制度でございますが、十一年度については支出目標を百十億円というところで閣議決定し、現在その目標を満たすべく頑張っておるところでございます。
  230. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 中小企業信用保険に新事業創出関連保証、今おっしゃったわけですが、新たな国の財源措置創業者保証枠を設けてありますけれども、国の財源措置がないという不満があった。今回の法案で無担保保険に一千万の創業関連の保証を設けた。昨年の新事業と合わせて二千万円となる。  この財源手当て、昨年の保証枠と同じで、積極的な活用をされることを期待されていますけれども、昨年創設した貸し渋り保証枠二十兆円、この二十兆円の活用というのはお聞きすると十六兆消化されている、まだ四兆残っているというふうに聞いております。だから、この保証枠はもう十分だというふうに考えていいんだろうか。私はそういうふうには実は考えない。まだこれからがむしろ大変なのではないかというふうに思います。実際に、ことし返済の状況に入ってくる。中小企業は年末になったら返済はしなければならない、あるいはこの年末の不況の中において資金繰りは困難になる、こういう事態が起こると思うんです。必ず起こってくる。ことしは昨年よりももっと厳しいような感じがします。  そういう意味では、この点を中小企業庁として、今のこの法案と直接の関係はないが、しかし間接的に影響するところもあるわけですから、ぜひ万全たる措置を講じていくという、今の大臣がいろいろ心配しておられることもこれあり、中小企業庁長官としてこの措置をどう考えるか。一言で、時間は要らないです。
  231. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 昨年の十月に発足をいたしました貸し渋り特別保証制度、七月末時点で約九十万件、十六・四兆円の保証承諾がなされております。余すところ三兆六千億ぐらいあるわけですが、最近の足取りは、もう先生も御承知のように四千億から五千億円程度の月別の流れになっております。もちろん、三月十七日の予算成立時に総理みずからが、必要な額については必要なタイミングで追加をするということを言っておられますので、我々この後この足取りを見ながら適時適切に対応していきたいと考えております。  今回のベンチャー保証制度につきましても、この二十兆円の特別・特例保証制度を活用しておりますが、その点につきましても必要な枠については必要なタイミングで追加するということで慎重にウオッチをしてまいりたいと思います。
  232. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 これはぜひ油断なくやってほしいと思います。この場で要望いたしておきますが、年末の返済時期に向けた新たな措置が必要である、このことについて、大きな問題になってからでなくて事前の措置を講じてもらいたいということを申し上げておきます。  今話のあったベンチャーの関係がもう一つですが、ベンチャー支援の切り札は個人投資家の所得税の優遇ということだろうと思います。こういう措置を講じておかなければならないと思うんですが、いわゆるエンジェル税制であります。  アメリカの今の好況というのは何なんだということをよく言われますけれども、さかのぼってみるとアメリカには個人の資産家が多い。だから、思い切ってベンチャー関係に投資することが、あれだけの三つの、何といいますか、悪い子供を持ったなんと言われたような時代もあったんですけれども、しかしそれを克服したというのは、一つにはやっぱり個人的な資産家が多かった。それがこのベンチャー関係に投資を十分にでき、またそのことを許した環境整備されておったということだろうと思うんです。  中小企業庁、通産省もそうですが、これは政策局長も口でばっかり言わないで、ベンチャーを大いに奨励します、あるいはまたベンチャー産業というものは重要ですと言っていないで、具体的にベンチャーが育っていくような土壌をどういう方面からつくっていくか、あるいは育てていくかということをぜひ今考えていかないと、この法律はこの法律としていいとしても、本格的にしかも抜本的あるいはまた思い切った措置を個人投資家の所得税に関して講ずるべきであるというふうに思います。  創業支援のための人材育成ももう一つの大きな柱であろうと思いますが、そういう意味でぜひ中小企業庁のこの問題についてのもう一つ決意をお聞きしておきたいと思います。両方順番にやってください。
  233. 林洋和

    政府委員(林洋和君) エンジェル税制でございます。私どもは平成九年六月にいわゆるエンジェル税制というのを設けさせていただきました。アーリーステージのベンチャー企業に投資を行った個人投資家が株式の譲渡などにより損失が発生した場合、翌年以降三年繰り越せるという、ほかの株式譲渡益と損益を通算可能なものとしたものでございます。  他方、米国等には一般所得と通算をするという、たしか五万ドルまでだったと思いますが、ございます。  私どもは昨年、源泉分離課税の廃止とあわせて、株式譲渡損失を一定の範囲内で他の所得と損益通算することを可能とするという要望を行いました。御承知のように、源泉分離課税が十三年三月三十一日ということになりました。そういう意味では、源泉分離課税の廃止を含めた金融関連税制の見直しを踏まえながら、一層のエンジェル税制のあり方について検討していきたいと考えております。
  234. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) エンジェル税制については今お話を申し上げたような点でございますが、特にベンチャー育成のためのソフト面の支援について我々としても力を入れる必要があるということでございます。  具体的には、六月十一日に産業構造転換・雇用対策本部から産業競争力の強化対策が出されましたが、その中でも中小・ベンチャー企業の立ち上がり及び成長支援として人材のネットワークの整備などの必要な施策を盛り込んでいるところでございます。  我々としましても、中小企業総合事業団を活用して総合的な中小企業ベンチャーの成長発展支援の枠組みを今つくろうと努力しております。
  235. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 ちょっと時間が迫ってきましたから、その問題はぜひ、大蔵省の主税局と一緒になってちびちびしたことを考えないで、もう少し思い切って、この際、基礎をしっかりつくっていくということでやっていくべきだと思っております。希望いたしておきます。  昨年八月のTLO法施行後、TLOの設立は順調でありまして、既に六件が承認されておりますことを承知しておりますが、民間への技術移転契約に至った案件も出てきておるようです。技術シーズの集まりも期待以上との声があるようでありますが、しかし大学研究成果の民間移転をめぐる環境整備はいまだ緒についたばかりで、幾つかの改善の指摘がなされているわけであります。  その第一は、国有特許の扱いでありますが、今回の法案で、国の委託研究につき特許などが開発者に帰属することができることとした日本版バイ・ドール法と言われる規定を導入し、前進したものだと私は評価しております。これは大分長い間懸案の問題でありました。  ただ、法文上、一定の要件に該当する場合には、国が受託者から特許権などを譲り受けないことができると回りくどい言い回しになっております。原則は国に帰属すると読めますが、このような規定に至った背景と、要件に該当しても必ず受託者に帰属するわけではないと言っているわけで、どのような場合に認めないのか、基本的な考え方をお示しいただきたいと思います。認めないばかりで、せっかくの規定が十分生かされないようなことにならないか、これは特許庁に確認しておきたいと思います。  それから、時間がないので簡潔に長官から答えていただきたいんですが、そんな回りくどい説明はいいです。  研究成果を特許に結びつける上において、弁理士の偏在も問題だろうと思うんです。これは高度な専門性が要求され、多数の弁理士の中から各研究成果にマッチした専門家を選ぶ必要があるにもかかわらず、弁理士は東京に集中しています。地域の研究開発活性化の観点から、ぜひともこれに対する対応策を講じなければならないのではないかと思います。  私も特許特別会計をやらせていただいた一人として、今ここが正念場ではないかという感じがいたしますから、例えばインターネットでネットワークを活用することにより解決する施策が考えられる。それには費用も要る、いろんな問題があると思います。しかし、弁理士が大都会に集中している、地方の研究家なんというのは比較的このごろまじめにやっているんですから、そういうことも本格的にぜひ考えていただきたい。  以上の点について、長官に。
  236. 林洋和

    政府委員(林洋和君) バイ・ドール法について、回りくどい書き方であるという御指摘でございます。  私ども、これは委託者である国と受託者との間の契約の問題として設定をいたしました。私ども通産省としては、原則、受託者から譲り受けないようにしようと思っております。受託者から見れば、自分たちが特許権がとれるということになれば、そういうものにいい人材、いい技術を出してくると思っております。そういう意味では、他省庁も私どもについてきてくれるだろうと思っております。  ただ、幾つか要件を二号とか三号のところで書いておりますけれども、そう無理なことではございません。アメリカなんかにあるものと同じでございます。そういう意味では、今申し上げたように、私どもが率先してこの三十条をほかの省庁あるいは都道府県等にも広めていきたいというふうに考えております。
  237. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 以前にも御指摘いただきました、弁理士が東京に偏在し過ぎている、地方に十分なサービスが行われていないという点につきまして私どもも大変心配いたしております。  その後、御指摘いただいた後、我々内部でも議論してまいりまして、一つは、例えば弁理士会はこれまでも無料で出張サービスといったようなことをやっておりますが、この回数をふやす。それから、この七月からはインターネットを通じまして、どういうふうなところにどういう方がおられるかということが実は公表されていなかったものですから、それをインターネットで公表するようにいたしております。さらに、どの分野が自分の得意であるかということについても、インターネット情報でお流しするようにいたしております。  私ども特許庁といたしましても、都道府県あるいは通産局とも相談し合いながら、今後さらに情報の提供の分野でも、実は電子図書館というのをつくっていただいたわけでございますが、これがなかなか難しい部分もある。コンピューターを余りいじったことのないような方々にとってみますと、それは宝庫であるといいましても必ずしも十分に使い切れていないということがわかりましたものですから、各都道府県にございます知的所有権センター専門家を派遣させていただきまして、その人が御要望を、中小企業の方々あるいは個人の研究者の方々、こういう方々を念頭に置きましていろいろとアドバイスする。これは常駐させていただくことによりましてそういうサービスも今年度から発足させていただいておりまして、具体的にはこの秋にその人選が終わりますものですから、十二月ないし一月からはそういうサービスも受けられるような形になるということでございます。  今あります手段というものを最大限活用しながら、可能な限りのサービスの増強を図りたいと思っております。
  238. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 時間内に終わろうと思ったんですが、おとといの質問で取り残している点だけ、私の気になるところだけもう一、二点お願いをしますが、簡潔に答えてください。  研究成果を商品として販売するマーケティングが必要だと思う。研究や特許出願の能力とは異なるけれども技術マネジメント能力を整える人材の育成も必要と思うが、この人材育成に関してどういうふうに考えているか。  それから、国家公務員である国立大学の教官が私企業の役員を兼業することは認められていないわけで、かつて私は高等教育問題と取り組んだときに、日本産業技術のエネルギーが非常に発揚されていないということを言ったことがございます。しかしなかなか難しい問題です。これは、文部省も来ていませんけれども、TLOの役員になれずに、研究者の主体的な課業がなく、せっかくの技術シーズが生かされないという指摘がありました。  そこで、例えば、これは通産省の考えでいいんです、場当たりでいいんですけれどもベンチャー企業のため一定期間の休職も認めるとか、年間のうち日数を限って兼業を許すとか、何か工夫があるんじゃないか。この機会に通産と文部省と事務当局同士でちょっと話し合ってみたらどうか。かなりこれは意欲が出てくる問題だというふうに思います。  研究成果の活用に関連して、我が国の特許出願を見てみますと、休眠特許が多い。これはこの間、話も出ておりましたが、平成九年に発足した日本テクノマートの未利用特許のデータベース化を行ってきているようでありますけれども、二万件を超える特許が公開されているにもかかわらず、内容を簡単にも紹介しないものだから、中小企業などが活用しようにもどんな役に立つのかさっぱりわからぬというのが実態なんです。もったいない話だと思います。これは私の郷里でも同じです。活用されるためには何が役に立つかという情報が非常に必要なわけで、データベース化はいいけれども、こうした未利用特許の活用促進のための施策が有効に生かされない、中途半端な結果になっているのではないか。どうせこういうことをやるんなら、もっときめ細かく有効に生かされる施策をしたらどうか、こう思います。  ちょっと所見を伺って、質問を終わりたいと思います。簡潔でいいです。
  239. 林洋和

    政府委員(林洋和君) 国立大学教官の私企業役員の件でございます。  本年六月に総理の指示で連絡会ができております。私どもの担当課長もそこへ出ていきまして、例えばアメリカのいろいろな州でどういうことをやっているのか、先生御指摘の五日間のうち一日だけであればいいとか、それから所得の問題とか、いろんなことを調べて、まさにそういう議論をしております。  ただ、おわかりいただきたいのは、やはり慎重な意見も他方にはあるというのも現実でございます。
  240. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 未利用特許の件でございますが、私どもこれも若干遅ればせながらでございますけれども、どういう方々がどういう専門分野技術をチェックできるということを御紹介するとともに、大企業が開放してもらっています内容につきましてインターネットで、こんなところまで出ています、これはこういうふうな使いようがあり得ますというような事例をつけまして、それで情報を流すようにいたしております。  したがいまして、これから多分そういうふうな利用がふえるんじゃないか。現実の問題といたしまして、まだ数は限られておりますけれども、七十一件でございますが、幸いにして、具体的に取引が行われて大企業から中小企業に具体的な未利用特許が移転されたというようなことも事例として出てきております。
  241. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 終わろうと思ったのですが、林君、私があえて申し上げたのは、そういう会議はできても、実際にはなかなか難しいんですよ。今度、しかしちょうど、民間人を公務員に交流するという、規制緩和の一環でしょう、公務員と民間との人的交流にもなるわけでしょうけれども、その法律をやったわけです。だから、そういう絶好の機会だから、あえて説明しなかったんですけれども、今までのような感じでなくて、具体的にそういうやれる環境ができてきつつあるなら、通産省としてはそれを逃しちゃいかぬ、そういうことを言いたいわけです。ぜひ御理解いただきたいと思います。  以上で終わります。
  242. 水野誠一

    ○水野誠一君 今いろいろ各委員からも御質問があったわけですけれども、大変厳しい雇用状況の中でハイテク関係の雇用創出、これに期待が集まっている、こういう状況ではないかと思います。  郵政省が九七年に電気通信審議会から二十一世紀ビジョンを発表しておりまして、そこでは二〇一〇年時点のマルチメディア市場、これは市場規模としては百二十五兆円、雇用規模は二百四十四万人の雇用創出する、こういうシミュレーションを発表しています。これは計算の前提によってかなり幅が出るとは思うんですが、いわゆるマルチメディア関連または情報通信産業雇用創出効果について、私の記憶では通産省からも同じようなデータが同じころに出ていたと記憶しておりますが、どんな試算をなさっているか、御説明いただきたい。
  243. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 平成九年の五月でございますけれども経済構造の変革と創造のための行動計画というのが閣議決定をされておりまして、その中で情報通信分野雇用につきまして、一九九五年に百二十五万人というものが二〇一〇年には二百四十五万人に増加するという試算を出しております。
  244. 水野誠一

    ○水野誠一君 これは郵政省、通産省、今のお答えだとほぼ同じぐらいの数になるんですね。私の記憶ではもうちょっと何か通産省の数字の方が大きかったんじゃないかなと思っていたんですが、記憶違いかもしれません。  しかし、いずれにしても、これは相当な雇用創造ということになる。つまり私は、マルチメディアとか通信関係というのは人の雇用をそんなに生まない、むしろ省力化する産業だというふうに思っておりましたので、果たしてそれだけの雇用創造力というのがあるのかなということでは多少疑問も持っているんですが、このビジョンどおりに新しい雇用が生まれていくということになれば大変結構なことだと思います。  実は、七月三十一日の朝日新聞の記事に、経済白書からの引用だと思うんですが、日米比較として、パソコンなどのOA機器が導入されることによって生産性が向上して、それによって雇用がどういうふうに変化したかという大変興味深い比較が示されておりました。  これによりますと、九〇年から九七年で情報化機器が雇用に置きかわったのが日本では百九十四万人、アメリカでは二百四十八万人。すなわち、これだけの余剰人員が情報化によって生まれた。しかし、一方で情報化による雇用創出効果、これはどうだったかという数字を見ますと、日本では百七十二万人、アメリカでは何と五百八十八万人という数字なんです。つまり、差し引きをしますと、日本ではマイナス二十二万人が余剰人員となる。アメリカではむしろ雇用が三百四十万人ふえる。これだけの差が出ている。これは先ほどの試算とは違って、実際に九七年までのデータなんです。  これは、私はどういう計算方法でこの数値が出されているかということはわからないんですが、何ゆえにこれだけの差が出てくるのか、この点について伺いたいと思います。
  245. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 御指摘のような数字を私どもも存じております。この差についての御質問でございますけれども、初めに情報化による雇用代替効果というのが出てきてしまったわけですけれども、もう一つ大事なことは、また情報化投資による新しい雇用創出のところがあわせて出てくるということだろうと思うんです。アメリカの数字はまさにそこを物語っていると思うんですけれども、そこのタイムラグが実はあるんではないかというふうに考えております。  実は、先ほど申し上げました二〇一〇年の二百四十四万人という雇用におきましても、情報通信全体で申し上げましたけれども、その中でもソフトウエアサービスとかコンテンツとかマルチメディアとか、あるいは情報システム化によるいろんなITSのサービスとか、モバイルオフィスのシステムとか、そういうものが大変雇用創出効果が大きくなっておりまして、そういうものが出てきやすいような環境を早くつくっていくということが非常に大事なのではないかというふうに考えております。  したがいまして、今私ども情報化推進のための環境整備だとかベンチャービジネスの振興だとか、あるいは新規産業創出といったようなことを急いでやらせていただいているところでございます。
  246. 水野誠一

    ○水野誠一君 それだけの効果がこれから上がっていって、この差が埋まっていくということを大いに期待したいと思うわけであります。  同じ記事の中でこういう文章がございました。「日本企業を苦しめている三つの過剰」、いわゆる三Kです、「のうち「過剰雇用」の中心はホワイトカラーだ。政府のアンケートでも企画・管理部門は今後三年間で年平均三・三%の雇用調整が起きると見込まれている。」とあります。またあわせて、この記事の中では、「日本はメカトロニクス化と呼ばれた生産現場の情報化で、雇用を減らさず生産性を高め、輸出と設備投資を拡大し、成長につなげた。しかし、ホワイトカラーの世界は事情が違う。技能訓練は遅れているが、そもそも業績に貢献する仕事と、無駄な仕事の判別が難しく、「無駄を省く」という効率化の発想だけでは効果が上がらない苦しさがある。」という指摘もございました。これはよくわかるところであります。  アメリカでも、見てまいりますと、既存の大企業を中心にホワイトカラーの削減というのが実は相当厳しく激しく行われた時期があったわけであります。そして、雇用調整というのはまさに企業内での配置転換ということではなくて、一度解雇されて新しい職場に移るという、外部市場での調整が大きく機能したというふうに理解しております。  そこで、どんな業種がこれを吸収したのかということを見てまいりますと、野村総研の調査資料がありまして、これでは九〇年代のアメリカにおける雇用増加上位二十業種、これを並べています。  ベストテンを見ますと、一位が人材派遣、これはまさにアウトソーシング化にもつながる人材派遣というのが一位の伸びである。それから二位以下は、レストラン、病院、レクリエーション、ホームヘルスケア、看護といった業種が挙げられておりまして、ハイテク関係は九位にコンピューターソフトというのがやっと一つ出てくるということなんです。  これは私、これを見て非常に意外な驚きがあったわけです。それと同時に、また今の社会といいますか今の時代をよく反映したデータかなと。これからもそうですが、ハイテク関係の雇用吸収力というのはこれからますます大きくなっていくとは思うんですが、これを大きく上回って、社会ケア、あるいは家事や企業の外部委託サービスを中心とするこういった一種のサービス産業、ケア産業と言ってもいいかもしれませんが、この役割が極めて大きいということをこのデータから読み取ることができると思います。  特に、情報化に伴う雇用創出効果、ここでやっぱり一番問題なのは、企業から排出されてくる人材、これが情報化産業あるいは情報ベンチャーの中に吸収される人材とイコールではない。つまり企業で要らない人材、特に高齢者の人材というのは実は新しいハイテク産業でも雇用されない人材であるというそのミスマッチ、これがどうしてもこれからの深刻な問題になっていくという中で、私は通産大臣にぜひ伺いたいなと思うのでありますが、今後の新規事業創出に当たって、今とかくこういうハイテク、ベンチャーなど情報産業支援が中心になってきているということで、これが重要なことはもう間違いないんですが、雇用の吸収力という観点においては、先ほど申し上げたベストテンにも見られるような、それ以外の意外な職種、こういうニーズというもの、ましてこれから高齢社会になっていく中ではこれが非常に重要なんじゃないか。  そこで、今まではどちらかというと郵政省なんかと一緒にこういったハイテク関連の事業創出ということに非常に力を入れておやりになってきたんですが、これから厚生省とか労働省あるいは文部省といったもっと広い省庁と連携した施策というものが必要になっていくんではないかなというふうに考えますが、この点について大臣の御所見をお聞きします。
  247. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先生の御議論のとおりだと思います。情報化が進むと、皮肉な結果、会社での仕事の効率がよくなって、その結果、一定の人間の仕事が機械に取ってかわられるということは事実あったわけですし、また、情報化自体はやはり物事を能率よくやってまいりますから、人手を省くという方向にどうしても物事が動くんだろうと思うわけです。  私は、雇用の吸収というのは、実は最大のものというのは多分今まで我々が既に知っているような産業雇用吸収力というのが一番強いんだろうと思っております。ただ、そこであわせて考えなければならないのは、やはり国全体としての富あるいは経済のパイということ自体を大きくしていくためには何をするのかというまた別の考え方が必要でして、そのためには情報産業とかバイオとか環境に関する科学、技術とか、我々が今まで手がけてきていない分野に相当国全体としてのいわばリソースを振り向けなければならないという段階に私は来ていると思います。  そうしませんと、今みたいにほとんど鉱工業品に関しては関税ゼロの世界というものをつくっている日本経済社会では、輸出競争力も減退をしてまいりますし、また国内で消費をするものも圧倒的に外国の製品が優位性を持つということもありまして、そういう意味ではやはり競争力とか生産性というものを大切にしていくということは、日本経済が二十一世紀もまた豊かな繁栄する時代を迎えるために必要な条件であろうと私は思っております。  先生の御質問の趣旨は、意外に情報産業というのは雇用吸収力というのが思ったほどないんではないかという御指摘であれば、我々はそういう雇用吸収力に関しまして情報産業だけに過大な期待を寄せるというのは多分間違っているんだろうと私は思っています。
  248. 水野誠一

    ○水野誠一君 情報化というものを大いに生かしながら、新しい雇用創出というのは多分これからニーズのある高齢者マーケット、市場、そういうものにどれだけ新しい雇用を見つけられるかということもあわせて考えていく必要があるだろうと思います。  次に、労働省にちょっと雇用調整助成制度について伺いたいんです。  この雇用調整助成制度というのは、非常に有効な制度であると同時に、むしろ労働者が他の産業企業に労働市場を通じて速やかに移動することを妨げる要因になっているという指摘も一方ではあるわけです。  単純にこの制度を悪いとかあるいは縮小すべしとは私は考えませんが、大事なことは、景気循環要因に対する助成金の役割と構造改革期における役割、これを混同しては雇用調整助成金に対する批判は免れられないのではないかと思うわけでありまして、今後の雇用調整助成金のあり方について見解を伺いたいと思います。
  249. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 雇用調整助成金制度ですけれども、今御指摘がありましたように、本来は、一時的な景気の変動に対応してすぐ解雇というようなことではなくて、企業はできるだけ雇用を抱えていただく、そういった趣旨で設けられているものでありまして、本年六月現在で約二十四万人くらいの労働者がこの助成対象となっておりまして、雇用の安定という面ではかなり大きな役割を果たしている制度だと思います。  ただ、おっしゃいましたように、一時的な変動要因ということではなくて、どうも先行きを見ても業績が明るくなるという見通しがなかなか立たないというものについても、現在そういったものが支給対象になっているという面は確かにあるわけでございまして、そういったものを国の助成で雇用を抱え込むということになりますと、それは企業にとっても当該労働者にとっても幸せなことではないのではないかというように思います。  今般の緊急雇用対策におきまして、企業が事前に訓練をしまして失業を経ないで労働者の就職のあっせんをするというふうなときに、その訓練の経費とかあるいは採用していただいた企業への賃金助成の制度とかそういったものを設けたわけでありまして、雇用調整助成金と移動の助成金をうまくかみ合わせながら雇用の安定を図っていく必要があると思います。  この雇用調整助成金につきましては、現在審議会におきまして、本来の趣旨に沿ったような形にする、重点化をするということで検討をいただいております。そういったことも、検討結果を見ながらさらに検討を続けていきたいというふうに思っております。
  250. 水野誠一

    ○水野誠一君 今まで日本が、戦後のキャッチアップの時期あるいは成長期というとき、非常に日本の失業率というのは低く抑えられていた。しかし、これは、成熟経済の仲間入りをするとともに、不況時には市場を通じた過剰雇用の調整、流動というものが必要だという、ある意味では他の先進国ではもう既に経験済みの、あるいは当たり前となっている状況に今我々は直面して、非常にいろいろな学習をさせられている、そしてまた知恵を要求されている、こういうタイミングなんだと思うわけであります。  そういうことを前提として考えたときに、個人が企業に余り依存し過ぎることなくみずからの努力でみずからの市場価値を高めていく、これは競争と自己責任というところに帰着すると思うんですが、やはりそういう努力が今非常に厳しく要求されている時代でもあるというふうに考えます。  その前提の中で、教育訓練給付制度というもの、これは昨年から労働省がおやりになっているんですが、私はこれは高く評価をしておりますが、経済戦略会議報告の中でこれを拡張した能力開発バウチャーという提言がございます。これについてお教え願いたい。  もう一つは、緊急雇用対策にあるバージョンアップ・フレックス・プランという大変難しい名前のものがあるんですが、これはバウチャーの趣旨を酌んだものだと言われていますが、この具体的なイメージというのは何か。それからもう一つは、緊急雇用対策にNPO人材バンクというのがございますが、これはどんなものなのか。  簡潔で結構でございますから、お答えいただければと思います。
  251. 日比徹

    政府委員(日比徹君) ただいま御指摘の点でございますが、まず能力開発バウチャーにつきましては、今御紹介がございましたように、経済戦略会議におきまして教育訓練給付を拡充して云々、そしてそのポイントを拝見しますと、失業者に対していろいろ自由な形で教育訓練を受けられるようにという御趣旨であろうと思います。  そこで、私ども考えましたのは、教育訓練給付というのは在職者の方がむしろ主体となっておりますので、教育訓練給付を拡充してとはございますけれども、御指摘の点を生かすとしますと、失業者にできるだけ幅広の教育訓練をという点であろうということで、緊急雇用対策におきまして自主選択制を導入したい。  つまり、現在は離職者の訓練につきましては、私どもの方でコースを用意してその中で選んでいただくということにしておりますが、今後におきましては、中高年の方々等を念頭に置いておるわけでございますが、民間でいろんな講座が開かれております。教育訓練コースもございます。その中から離職者の方々にみずから選んでいただいて、そういうものについて受けていただく。それをバージョンアップ・フレックス・プランと、愛称のようなものでございますが、そう呼んでおって、それを実施しようと。こうしますと、能力開発バウチャーにつきましては実質的な内容におきまして十分おこたえできておると思っております。  なお、教育訓練給付につきましても、大学大学院の活用等の問題がかねてからございました。教育訓練給付につきましても、できるだけ多様な教育訓練コースがメニューに入ることが望ましいということで、こちらの方についても大幅な拡大という方向で考えております。  それから、NPO人材バンクについてでございますが、NPO人材バンクにつきましては東京と大阪を念頭に置いておりますが、NPOのボランティア活動を希望する人材の方々、またNPOそのものにつきまして登録を行い、それらの情報提供を十分に行うということで、そういう機能を果たすものとしまして人材バンクということで、現在、実は東京と大阪には勤労者ボランティアセンターというものがございますが、その中にそういう人材バンクを設けたいということで考えております。
  252. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう少し詳しく伺いたいのですが、時間がないのでまた別の機会にいたします。  きょうは堺屋長官にお越しいただいておりますが、九九年度の経済白書、これは長官みずから筆を振るわれたということで、大変評価の高い、近年まれなる評価の白書ではないかと思うんです。  その中で、「リストラの背景と実態」について第二章で真っ正面からの分析を行われている。そして、第三章では「新しいリスク秩序の構築に向けて」ということで、これからの時代には戦略的な試行錯誤が大変重要である、家計においてすらも自己責任に基づいたリスクマネジメントが重要だ、また、結果として貧富の差は現在より大きくなる可能性があるが、前提としてすべての人に公正な機会が与えられていて、かつ失敗した場合の再挑戦の可能性が確保されている限りは挑戦とそれに伴うリスクに対応する報酬は正当な評価であって、それによる格差は是認される必要があるという非常に踏み込んだメッセージを発しておられます。  私は、このリスクアセスメント社会という点について非常に印象深く読ませていただいたわけでありまして、先日の代表質問でも総理に所見を伺ったところでございますが、ぜひこれを直接御担当になった堺屋長官の言葉で所見を伺えればと思います。
  253. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘の経済白書の部分は、我々の熱心なスタッフが分析していただいたところでございまして、私自身の書いた部分はその前の前文のところでございます。  この中で我々が述べようとしておりますのは、日本がこれから景気を回復して本格的な景気回復段階になりますと、産業の競争力を高めて新しい産業社会をつくっていかなきゃいけないということであります。そのためには、当然、産業競争力を高める供給面での改革を進めますと、雇用問題も出てまいります。これを極力緩和、解決していく必要があるのでございますが、そのためにもやはりリスクを冒して新しい業を起こすということが大切でございます。  先生御指摘のように、家事アウトソーシングとか企業サービスとか、いろんな分野に新しい起業の可能性がございます。そういうものに挑戦していくとなりますと、その経営者はもちろん、またそれに投資する人もリスクを冒すわけでございまして、この危険に対して成功すれば正当な報酬、そして社会的な名声が与えられるべきではないかということを考えているわけです。そのために、経営者として、業を起こす人としてみずからリスクを冒す人と、それに対して投資し融資する、これが社会的に巧みに管理されている、分散されているということが必要でございまして、そういった金融市場をつくっていくことも大変重要だと思っております。  これからの知恵の時代ということになりますと、いろいろと変化が大きい時代雇用についても流行についても製品についても技術についても変化の大きい時代でございますので、そういった時代日本が生きていくためには、リスクをとりながら新しい企業を起こす、そして失敗した人々が安全ネットに支えられて再挑戦もできる、また競争社会にハンディを負っている人もやはり人間としての尊厳あるいは人格というものは維持されなきゃいけない、そういう二重の安全性とリスク性というものがとれる社会を構築すべきだということをこの白書で述べておるところでございます。
  254. 水野誠一

    ○水野誠一君 今、まさに知恵が必要な時代になってくるというお話もございました。その中で、先ほど来いろいろ伺っている構造改革雇用確保という問題を二律背反ではなくて両立させていく知恵が私はどうしても必要だということで、これも代表質問の際にいろいろお尋ねをさせていただいたわけです。  先ほど労働省から御説明があったNPO人材バンク、私は、やはりこれからの時代というのはボランタリー経済、第三の経済とも言われる新しい経済行為の仕組みというものもつくっていく必要がある。その中で、アメリカではNPOの雇用規模というのは、いろんな説がありますけれども、数百万人、それから生み出す経済価値もGDP比で六・三%とも言われている。そういう数字がよく引き合いに出されるほどアメリカ経済の中におけるNPOの役割というのは非常に確固たるものができてきている。すべてアメリカに倣えということでは当然ないんですが、日本もやはりこれからの時代においてこういったNPOの雇用あるいはボランタリー経済的な仕組みを前向きに考えていかなければいけない時代になるんじゃないか。そのときに何が必要なのか。特に、どんな施策が必要なのか。これは優遇税制的なものなのか、あるいはもっと違う抜本的な政策なのか。その辺も含めて、長官のお考え、御所見を伺って、私の質問を終わらせていただきます。
  255. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) NPOにつきましてはいろんな定義がございまして、その定義をどれぐらいにするかによってすごく変わります。先生御指摘のものは、恐らくアメリカのジョンズ・ホプキンス大学が調査したものと思いますが、これによりますと、アメリカでは、公益法人、医療法人など非常に幅広い範囲で見ますと七百十三万人が雇用されて職を持っており、そこでGDPの六・三%が産出されている、こういう統計が出ております。同じ調査によりますと、日本のNPO、これも医療機関とか教育機関を含んでおりますが、それで大体百四十四万人、GDPで三・二%を占める、こう言われております。  なお、ついでに申しますと、その調査ではイギリスは四・八%、ドイツは三・六%、フランスは三・三%でございまして、大体日本と似たような規模でございます。  ただ、違いますところは、日本の場合は教育、医療というような非常にはっきりした分野が多いんですけれども、外国の場合には、コミュニティー開発とか、本当にいわゆるボランティアらしいものがかなりの比重を占めています。それに対しまして、日本はそういう分野だけをとりますと非常に小さくなりまして、いわゆるボランティア、市民活動ということになりますと恐らく三百億円ぐらいにすぎない。GDPで申しますと十万分の六、〇・〇〇六%というような数字になっております。  これから世界がグローバル化し、高齢化がどんどん進んでまいりますと、みずからの好みで奉仕をしよう、そういう善意の世界というのが大きく広がってくる。受ける側も務める側も必要だと思います。そういう意味では、第三の部門と言われるNPOは今後重要な役割を果たすと思います。  企画庁では、特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法でございますが、これの普及に努めるとともに、NPOの活動を促進するための環境整備に今後とも努めて、国民生活審議会においてNPOの役割と政策対応のあり方について検討しているところでございますが、確かに税制も重要でございます。ぜひ寄附税制等について考えなきゃいけないということがあります。  それからもう一つ、先ほどの業を起こす、創業と同じで、社会的にそういう活動を尊重するような雰囲気というものを教育の場から、社会教育、学校教育の場から教えていく、そういう社会ムードも大事なことじゃないかと考えております。
  256. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。
  257. 畑恵

    ○畑恵君 いよいよラストバッターになりました。朝九時からの審議でかなりお疲れだと思いますし、また予定時刻を十分近く押していますので、なるべく審議促進に努めたいと思いますので、恐縮ですけれどもお答えの方も簡潔にお願いできればと存じます。  今回の法案でございますけれども、けさの参考人の方々、そして経済界のトップの方々、皆さん一様に一番評価されているところはやはり対応の速さということであると思います。グローバル化、情報化が進む昨今でございますので、スピードというのは何よりも肝要なポイントだと思いますので、そういう意味ではぜひ通過というのも早くと思って、早く成立することを心から願っております。  その立場から申し上げるんですが、やはり速さということを第一に置きますと当然完璧は求められないわけでございまして、私としては若干の積み残しがあったのではないのかなという気がいたしております。特に三本柱の中の新規事業創出という部分に関しましては、もう一段もう二段の思い切った決断をこの時点でしていただけたらありがたかった。この時点でできないのであれば、なるべく今後また早急にその手当てをとっていただきたいと願っておりますので、きょうはその点について何点かまず伺わせていただきたいと思います。  新規事業創出の一番目の点として、資金支援の話をまず伺いたいと思います。  こちらに関しては今回さらに拡充をされたということで、無利子融資ですとか債務保証の対象も拡大してありますし、また要件も大幅に緩和してあって、評価されることだと思います。また、アーリーステージというお話が先ほどありましたけれども、それ以前のスタートアップをこれからするという方々にまで支援を拡大しているということ。それから、創業五年以内の企業まで創業者と認めるということで、そういう意味での拡大というのは大変評価しているところなんですが、実際これに充てられる予算規模はどれぐらいと見積もっていらっしゃるか、教えていただけますでしょうか。
  258. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 創業者向けの信用保証制度あるいは無利子融資制度を本法案の中に盛り込ませていただいているわけですが、第一点の特例保証制度につきましては、御承知のように二十兆円の残枠を活用させていただくということでございますので、具体的にその裏打ちとなります一般会計予算についていいますと、二十兆円全体につきましては一兆円を前提に考えておりまして、信用保証協会に二千億円の補助金を既に出してございます。  もう一点の無利子融資制度、これは設備近代化資金貸付制度でございますが、今回、創業者を対象に加えました。それから、償還期間を五年から七年に延ばして、また別途、貸付金額につきましても四千万を六千万に引き上げるべく今財政当局と検討しているわけでございます。こちらの予算上の金額ということなんですが、設備近代化資金制度全体といたしまして約五百億円の規模がございまして、我々の見込みではこのうちの二百億円は貸付に回せるんではないかというように見積もっております。
  259. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  非常に効果があったということで、昨日、加納時男議員からも指摘がありましたけれども、またさらに増額が必要というときには遅滞のない形で進めていただきたいと思っております。  では二番目、税制の話を伺いたいんですが、税制に関しては実は三項目ほど、今回なぜ盛り込まなかったのか、盛り込んでいただきたかったなという面がございます。  先ほど渡辺議員の御質問に大臣がお答えになって、中小企業についてはやるべきことはすべてやっているというお言葉でございました。これは、やるべき努力はすべてやっているけれども、なかなか結果がそう全部出るわけではないということに私は読ませていただいたんですが、ぜひなるべく早い時期に結果の方も出していただけるようにお願いをしつつ、まず大臣に、先ほどの繰り返しになりますけれどもエンジェル税制拡充、株式譲渡益等の損失通算のみではなくて、ぜひ所得との通算というのを認めていただきたい。  先ほどこれは審議官の方から、源泉分離課税との兼ね合いがあるんだ、その廃止ということで検討するというお言葉がもう既に出ましたけれども、私はここで年末の税制改正に向けて大臣の力強い一言をエンジェル税制拡充につきましてはぜひいただきたいと思います。お答えをいただけますでしょうか。
  260. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 私が先ほど答弁申し上げましたのは、こういうことをやらなきゃいけないということを気がついていることはできるだけ今までやってきたつもりだけれども、何か見落としはしていないかということをいつも念頭に置きながら中小企業政策をやってまいりたいということを申し上げたわけでして、今までやってまいりましたことが万全だとは決して実は思っていないわけでございます。  それから、エンジェル税制については、もう先生御指摘のように、所得税制全体の中で考えなければならないことでございまして、そこにはやはり所得税の体系の公平性というのが維持されるということが大事でございます。もちろん私ども通産省としては、税制当局にエンジェル税制拡充要求いたしますけれども、それにつきましては、税制を持っております当局もいろんな考え方がございますので、私どもの主張は主張として述べますけれども、先生も御理解を賜っておると思いますが、所得税制はいろいろな仕組みになっておりますので、そういう中に整合的に当てはまるような税制を目指してまいりたいと思っております。
  261. 畑恵

    ○畑恵君 もちろん、エンジェル税制を一方で求めながら、その一方で源泉分離課税の廃止は嫌よというようないいとこ取りというのはできないわけで、大臣がおっしゃるとおりに、一本化というのがいかに難しいか。それに向けてどれだけの努力を表でも裏でも通産省の方がしていらっしゃるのかよく存じ上げておってのさらなるお願いなのでございますが、そうした非常に裏の御苦労といいましょうか、整合性をとるための苦労があって、こういう部分があるからエンジェル税制がなかなかうまくいかないんだというところは、ある意味でもう少し外に出した方がよろしいんじゃないのか。なかなか説明しても難しいところなのかもしれませんけれども、これだけ苦労しているのに実現しないという、源泉分離課税の問題というのはなかなか一般の方々に理解されていないところがありまして、いつも突き上げはある意味で私どもも受けますので、何かそういう意味での戦略も年末に向けて考えていただきたいと思っております。  二番目としましては、キャピタルゲイン課税の軽減でございますが、これも、米国が七八年には三五%の最高税率を二八%に下げて、八一年には二八%からさらに二〇%までキャピタルゲイン課税の最高税率を下げております。このような形でベンチャーへの投資の促進ということに寄与してきた軽減措置なのですけれども、このことについてはどのように考えて、今後の見通しも含めてお願いできますでしょうか。
  262. 林洋和

    政府委員(林洋和君) 委員、御承知のように、我が国は二六%の申告分離課税が原則でございますけれども、譲渡代金の一・〇五%を徴収する源泉分離課税という課税方式も選択可能となっております。また、公開前の企業に投資した場合、公開前三年以上保有した株式については、その株式を公開一年以内に売却する際には、源泉分離課税の選択は認められておりませんけれども、申告分離課税の対象となる譲渡益の二分の一相当額を非課税とする、いわゆる創業者利得の特例がございます。  先ほどのエンジェル税制とある意味では源泉分離というのが同様に問題になるわけでございますけれども、この源泉分離の経過措置を見きわめつつ、引き続きキャピタルゲインに対する課税についても適正になるように検討してまいりたいと思っております。
  263. 畑恵

    ○畑恵君 全部絡んでくる話なので大変だと思いますけれども譲渡益課税の一本化ということで、ぜひ年末に向けて頑張っていただきたいと思っております。  三番目の税制の問題ですが、留保金課税の撤廃ということで、これもいろいろ俎上に上るんですけれども、なかなか認められないということがございます。  ベンチャーの経営者たちと話しますと、新規事業をあなたたちは育成すると言っているじゃないか、それにしては自分たちが寝食も忘れてといいましょうか時間を削りに削って、汗水垂らして利益を上げた、それを留保金と名づけて横から持っていく。それは留保ではなくて、投資のためのお金だよ、これでどうやって事業拡張するのというような、非常にわかりやすいんですけれども、悲痛な訴えをよく受けるんです。この留保金課税の撤廃というのは今後何とかならないものでございましょうか。
  264. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 今、委員が御指摘になりました留保金課税制度でございます。  今、中小企業者の苦渋に満ちた御発言があるというお話だったんですが、制度自身委員も御高承のように、間接的に配当支出を誘引するという効果を持ちますし、法人形態による税負担と個人形態による税負担の差を調整しまして、税負担の公平を図る観点から昭和三十六年に設けられた措置でございます。  本制度のあり方につきましては、中小企業庁といたしましても具体的には昨年も要望を出させていただいております。また、今後につきましても中小企業の自己資本の充実という観点をも踏まえた検討がされていくと考えております。
  265. 畑恵

    ○畑恵君 昭和三十六年にという話、私は三十七年生まれでございまして、いかに古いかというのがよくわかります。その時代にはベンチャーという言葉もありませんでしたし、本当にお父ちゃん、お母ちゃんとおばあちゃんか何かでやっていたという、そこで考えれば確かに留保と言われてもしようがないのかもしれないですけれども時代が変わりましたので、ぜひ即時撤廃ということで頑張っていただきたいと思っております。  税制はこれぐらいにしまして、日本版SBIR、こちらの拡充について伺いたいと思います。  もう何人かの議員の方からSBIRのお話は出ておりますけれども、先ほど鴇田長官がおっしゃられたように、創設されたというのはこれは確かに非常にエポックメーキングなことだと思います。しかし、やはり米国との彼我の差というのは非常に大きくて、米国では平成九年度の実績は既に約千四百億円、八三年からの累積だと一兆円を超えている。ところが日本は、今回できて初年度ですけれども、平成十一年度の要求額というのは百十億円ということでございます。米国も始まった当初はこれぐらいだったというお答えを何度かいただいたんですが、だからいいということではなくて、米国にキャッチアップするためにつくったのに何で始まりがその何年も前の米国と一緒なのか。むしろそこまでの米国のSBIRのストック、かけた今までの一兆円というものがあるわけですから、キャッチアップするためには初年度は今の米国の同じ年度よりもさらに上積みしてしかるべきじゃないのか、普通の理解だとそうなるんじゃないのかなと私は思うんですけれども、なぜ百十億円のままとどまっているのか。ぜひ増額していただきたいという気持ちも込めまして、これはぜひ大臣にこの増額ということでお話を伺いたいんです。
  266. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 畑先生は大変SBIRに御造詣が深くて、かつ多大な関心を抱いていただいていまして、この点、感謝を申し上げたいと思います。  先ほど言われましたように、米国の制度は八二年に法律ができて動き出しております。約十五年ぐらい先輩になります。当時、初年度に、私の記憶では百二十億円という規模でスタートをしたと思います。十五年をかけて九八年には約千四百億円の規模まで達しております。  我々としても、もちろんジャンプをいたしまして早急に追いつきたいということで努力をいたしておりますが、いずれにしましても、中小企業がある程度担えるような分野研究開発予算、これは私ども政府全体で持っておる予算の中にあるわけでございますが、当然のことながら最初から潤沢にあるわけではございません。  今後、各省庁の新規予算も含め、あるいは既存の予算も中小企業が使えるような、そういった分野、テーマを広げていただくという過程を経ながら徐々にこれを膨らませていきたい、今後とも一層の努力をしたいと思います。
  267. 畑恵

    ○畑恵君 今、鴇田長官から各省連携という話がありました。これは本当にほとんどの省庁にまたがって予算も出さなければいけませんし、またそこに貢献することもあるということでございますので、ぜひそういう意味で政治家のお立場から大臣に、一言だけで結構でございますので、意欲のほどを。
  268. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 小さく産んで大きく育てるというのもありますから、ぜひ御期待をしていただきたいと思っています。
  269. 畑恵

    ○畑恵君 ぜひ大きく育てていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  最後に、技術革新支援の方にも一言だけ触れさせていただきたいと思います。  今回、日本版バイ・ドール法と言えるものが盛り込まれました。これは非常に画期的で、ずっと私どもも要望を出し続けて、実現がかなうということで期待をいたしております。また、TLOの特許料の軽減ということも同時に盛り込まれて、やはりいかに研究開発、その成果をきちんと知的財産権として保護して活用していくか、そこにすべてが包括されていると。  そこで一つ思いますのは、国内の体制はこうやって着々と整っている。ところが、今は学問世界でも、ましてや産業になりましたらば全くボーダーレスですし、日本の中だけで知的財産権が認知されて保護されても余り、意味がないことはないでしょうけれども、やはりもう一段世界で認知をされて保護をされて、そしてそれがデファクトスタンダードをとっていかなきゃいけないと思います。  その意味で、日本でのものがすぐ世界で共通に知的財産権、特許として認められるような、先日こちらの審議の中でマドリッド条約のを通させていただきましたけれども、あれは商標ですが、マドリッド条約の商標を特許にまで広げるような、そのような措置というのはなされるんでしょうか。
  270. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御案内のとおり、現在ございます国際的な特許制度といいますのは、百余年前にでき上がりましたパリ条約に基づいたものでございます。パリ条約におきましては、特許制度の制度そのもの、それからその運用につきましてはそれぞれの各国にゆだねるという形になっておりますので、これまでのところは、出願の方式にいたしましても、保護の要件といったようなところにつきましてそれぞれの国の法制度になっている、したがって国別に違いがあるというのが実情でございます。  もちろん、その後、国際経済全体の環境が一変しているわけでありまして、御指摘のとおり、グローバル化が進み、それに合わせた形で貿易面でありますとか投資面では世界的なハーモナイゼーションというものが進んでおります。私どもの関係します知的財産権、特に特許制度というものももう少しそういう実態に即した形の制度に組みかえるべきじゃないかというのは、これは私どもそのとおりだと思っております。  その一つの成果といたしまして、一九九五年から始まっておりますWTOのTRIPS、十分な制度のハーモナイゼーションがここで実現されているとは言いがたい部分がございますので、これを一つのベースといたしまして、現実的な対応をすることによりまして制度面、運用面でせめて主要国間で共通のものにならないかというような工夫をいたしております。  具体的に簡単に申し上げますと、制度面につきましては、御案内のとおり、アメリカの場合には公開制度というものをとっておりません。そういうこともありますので、ぜひせめて、先発明主義を直ちに変えられないのであれば、公開制度ぐらいはきちっと共通のものにしてほしい。  それから、対象の範囲にいたしましても、バイオテクノロジーといったような先端技術分野につきましても、実は各国によって若干の差があるという実態がございますので、この辺につきましてもハーモナイゼーションの必要がある。  運用面につきましても、御指摘のとおり、通常、今日の企業家のビヘービアといたしまして、日本で特許をとるような場合にはアメリカでもとる、ヨーロッパでもとるというような形になっておりまして、いわば一つのことを各国が寄ってたかって同じような制度を設けて、それで料金を取り、時間をかけてやるというような形になっています。これについてもう少し工夫の余地があるのではないかということで、むしろ私どもも積極的にアメリカ、ヨーロッパに声をかけまして、私どもの言葉で言いますと、先行技術をサーチする、そういう部分でありますとか、あるいは特許性があるかということについて審査する、そういう段階につきましてお互い審査官同士が情報を交換し合う、審査官同士が同じようなデータベースを使うという形によって、時間も短縮する、経費も削減できるというような形になるんじゃないか、これを時間を切ってぜひ実現しようじゃないかというようなことを議論いたしている最中でございます。  テストケースも昨年から具体的に始まっておりまして、かなりいい成果が出ておりますものですから、これを一つの励みといたしまして、私ども、いろいろな国際的な場あるいはバイの場で実現に努力してまいりたいと思っております。
  271. 畑恵

    ○畑恵君 今のような動きは国際舞台で伊佐山長官がリードしていらっしゃるというようなことも読ませていただいております。ぜひ頑張っていただきたいと思うんです。  何か三極で相互認証できるような形が、めどとして二〇一〇年という話を伺いました。いろいろ難しいことがあると思うんですが、ぜひ促進していただきたいということと、そこまでの間、やはりこれは日本国家戦略にとって大事だというような特許については国がその特許申請をサポートする、補助金を出すとかそういう手当てというのも考えていただいて、ぜひグローバルに進めていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  272. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時八分散会