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1999-08-03 第145回国会 参議院 経済・産業委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月三日(火曜日)    午前十時四分開会     ─────────────    委員異動  七月三十日     辞任         補欠選任      岩瀬 良三君     陣内 孝雄君      仲道 俊哉君     小山 孝雄君  八月二日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     久野 恒一君      陣内 孝雄君     山下 善彦君      平田 健二君     川橋 幸子君  八月三日     辞任         補欠選任      山下 善彦君     森田 次夫君      川橋 幸子君     平田 健二君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 簗瀬  進君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 加納 時男君                 久野 恒一君                 小山 孝雄君                 末広まきこ君                 中曽根弘文君                 森田 次夫君                 山下 善彦君                 長谷川 清君                 平田 健二君                 福山 哲郎君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        通商産業大臣   与謝野 馨君    政府委員        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      山田 昭雄君        経済企画庁国民        生活局長     金子 孝文君        法務省民事局長  細川  清君        文部省学術国際        局長       工藤 智規君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        通商産業大臣官        房審議官     林  洋和君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省基礎        産業局長     河野 博文君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        特許庁長官    伊佐山建志君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        中小企業庁次長  殿岡 茂樹君        労働大臣官房政        策調査部長    松崎  朗君        労働省労政局長  澤田陽太郎君        労働省労働基準        局長       野寺 康幸君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○産業活力再生特別措置法案内閣提出、衆議院  送付)     ─────────────
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、仲道俊哉君、岩瀬良三君及び倉田寛之君が委員辞任され、小山孝雄君、山下善彦君及び久野恒一君が選任されました。     ─────────────
  3. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 産業活力再生特別措置法案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣
  4. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 産業活力再生特別措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  我が国経済を自律的な成長軌道に乗せるためには、需要面での対策のみならず、経済供給面体質強化に取り組むことが不可欠であります。しかるに、我が国経済供給面における現状を見ますと、経済の潜在的な成長力を大きく左右する生産性伸び率が近年大きく低下しており、国際的に見てもOECD加盟国平均を下回るなど、憂慮すべき状況にあります。  その最大の原因は、我が国企業の多くが効率性の低い設備負債等を抱え収益性低下させていること、さらには、失業率が依然高水準にあること等に見られるように、景気低迷長期化に伴い、労働技術などの経営資源が有効に活用されていない状況が生じていることにあります。加えて、国際的産業再編の進展、資本市場による企業評価の一層の厳格化会計基準国際基準への変更など、企業を取り巻く環境が一層厳しくなっており、こうした状況を早急に打開する必要があります。  そのためには、各事業主体がその営む事業についての選択集中を進め、経営資源生産性の高い分野に重点的に投入することを円滑化するとともに、創業中小企業者による新事業開拓に対する支援を抜本的に強化することにより、十分活用されていない経営資源の発掘と有効利用を図ることが不可欠であります。さらに、事業者が新たな事業の種となる技術に関する経営資源を最大限活用できるような事業環境を整備することにより、事業者による研究活動活性化を図ることも我が国生産性向上にとって極めて重要であります。  以上のような認識のもと、我が国生産性向上のための一連の施策を講じ、我が国産業活力の速やかな再生を実現するため、本法律案を提案した次第であります。  次に、本法律案要旨を御説明申し上げます。  第一に、事業者選択集中を進めるために行う合併、分社化等組織再編や新商品開発等事業構築としてとらえ、その円滑化のための措置を講ずることとしております。  具体的には、事業構築に係る計画について、主務大臣の認定を受けた者に対し、会社設立等に際しての検査役調査、一定の要件を満たす子会社の取締役や使用人に対するストックオプションの付与、営業の全部譲り受け等について商法上の特例措置を講ずるとともに、金融税制面からの支援を行うこととしております。あわせて、事業構築によっても活用できない経営資源を有効に活用して事業を行おうとする者に対しても支援措置を講ずることとしています。  第二に、創業者及び新事業開拓を行う中小企業者に対して、信用保証制度拡充、都道府県による無利子融資制度拡充などの金融支援措置を講ずるとともに、行政機関中小企業支援団体によるソフト面からの支援官公需における配慮等措置も設けることとしております。  第三に、技術に関する研究活動活性化し、及びその成果を効率的に活用することを促進するため、国等委託研究開発から生じる特許権等受託者に帰属させることを可能とするとともに、大学における研究成果民間事業者への移転を促進するため、大学技術移転機関に対する特許料減免等措置を講ずることとしております。  なお、このような新たな制度が施行されることにあわせて、現行の特定事業者事業革新円滑化に関する臨時措置法を廃止することとし、所要の経過措置を講ずるものとしております。  以上が本法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 簗瀬進

    簗瀬進君 民主党の簗瀬進でございます。(拍手拍手をいただきましてありがとうございます。  昨日も本会議質問をさせていただき、またきょうも続けて委員会質問させていただくという大変ありがたい機会をいただけました。冒頭大臣三つの過剰問題についての議論を若干させていただければと、このように思っているわけであります。  今回の産業活力再生特別措置法案、大変重要な法案であるというふうなことで、通産省が私ども説明に来たとき、一番先に持ってきていただいたのがこの「産業競争力強化に向けた産業界現状と課題」、大臣もこれはごらんになっているだろうと思うんです。  そこに「産業界現状」という整理がなされております。そこにクローズアップされているのが、まずは「低迷する生産性上昇率」、我が国生産性成長率国際比較の中でOECD平均よりも落ちてしまった、こういうふうな話も冒頭に出されておりまして、その後、過剰債務問題あるいは過剰設備問題、そして過剰雇用問題、こういうふうな運びになっており、そしてその後、「事業構築の動き」ということで世界状況が示されております。  このような論の運びを見ていますと、結局通産省の御認識としては、我が国国際競争力低下については、過剰債務過剰設備過剰雇用、この三つの問題が大変大きなポイントである、こういうふうな認識が率直にあらわれていると私ども思うわけでございます。  しかしながら、過剰雇用設備そして債務、こういう三題ばなし的にぽんとこれが投げかけられますと、何となくこれは非常に構造問題のようなイメージを我々は自然に持ってしまう。そして、この三つの問題を解決すれば自動的に競争力が回復をするのではないのか、こういうふうな印象が何となく強くなってくる、こういうような気がするわけであります。  しかし、ちょっとその見方を変えてみますと、果たしてそうであるのであろうか。いわゆる原因と結果、この因果関係をしっかりと認識をしていなければ、立てられる対策実効性も出ないわけであります。  こういうふうに考えてみると、むしろ過剰な設備や過剰な債務過剰雇用というのは、競争力低下原因ではなくて結果なのではないか。好況になれば、過剰雇用といいながら、これは人手不足に当然なってくるわけでございます。また、経済が活況を呈せば、過剰設備と言われていたものも実はフル稼働する。こういうふうに、その経済状況によって相対的に動くのがこの過剰債務過剰設備過剰雇用の問題なのではなかろうか。  こうして考えたときに、この問題にだけ焦点を当てて対策をとったとしても、本当意味日本経済再生の大きなターニングポイントをつくり出すことができるのだろうかということについては、私自身ちょっとやっぱり首をかしげる部分があるわけでございます。この辺についての大臣認識をまず冒頭にお聞きしたいと思います。
  7. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 問題を整理する意味で、過去の問題と将来の問題と二つに分ける必要があるのではないかと思っています。一つは、過去を清算するという意味では、我々の目の前には過剰設備過剰債務過剰雇用という問題が現にあるわけでございます。ただ、この三つを解決すれば明るい日本の将来があるのかといえば決してそうではなくて、これは明るい将来を築くためのまずは乗り越えなければいけない最初のハードルだろうと私は思っております。  やはり何といっても将来の力強い日本経済を築き上げていくためには、日本が持っている資本労働というものを、世界のどこに行っても日本のものは大したものだということで、売れる製品、商品というものを供給できるような、そういう国際的な競争力を持った経済をつくり上げる必要があると思っています。  過剰設備がなぜ発生したかというのは、先生おっしゃるとおり、一つバブル時代生産性の低い分野に投資をしたという結果こういうことになったということのほかに、例えばある業種、例えば自転車というようなものをとってみますと、自転車をつくることに関しては日本人は大変うまかったわけでございます。日本人日本人だけで自転車をつくりましたら恐らく十万円近い商品になるのじゃないかと思っています。ただ輸入は、実際に商品として売っておりますのは、自転車はもう三万円を切っている、場合によっては一万九千八百円でも買えるということで、そういう意味では発展途上国の追い上げに負けているという面で不必要な設備になっているという面もあって、必ずしも経営者が間違った方向に投資した結果出てきたのではなくて、構造的に他の国に負けてしまうという産業日本産業には出てきた、特に労働集約的な産業においてはそれが顕著にあらわれているというのが現在の日本経済状況ではないかと思うわけです。  ただ、現に現象として出てきております過剰設備過剰債務過剰雇用という問題をどう解決していくかというのは、まず二十一世紀の新しい経済をつくるためにくぐり抜けなければならないいわばトンネルでございまして、このトンネルをどうしてもくぐり抜けないと明るい世界に出られないという意味でございますから、むしろこれは過去の清算を行うというふうに、私は理解しやすくするために自分ではそのように理解をしております。
  8. 簗瀬進

    簗瀬進君 今、大臣お話にもあらわれておりましたように、バブルによって必要以上に過剰な部分が出てきた、こういう要因はこれは間違いなくあるだろうと思います。その部分については、バブル自体がある意味一つのトレンドであったことは間違いありません。  しかし、その中でやっぱり過度にそれにのめり込んでしまった経営者とそうでない非常に落ちついた形でやられた方、あるいはのめり込むどころかバブル紳士と化してしまったようなそういう人たちもある。という形になりますと、その過剰の中にも相当人為的な責任の問題が入ってくるだろうと。  それから、その次におっしゃられた構造問題についても、構造変革というようなことをしっかりと予感しながら手当てをしていった非常に賢明な経営をなさった企業と、非常に漫然とその構造変革の波を座視して、言うならばそれによってだんだん状況が悪くなっていく、その部分でもやっぱり人為の部分が出てくるんではないのか。  まさにそういう意味では、三つの過剰の問題に対処するときに非常にデリケートなのは、人為的な部分と、それから構造的で、まじめにやったんだけれどもどうしようもなかった、こういう部分が混在をしている。これを一緒くたにして整理をしてしまうと、ある意味では、日本経済本当意味での立ち直りをするための自助努力といいますか、自立する力といいますか、それを逆に低下させてしまう結果になりはしないか、これを私は非常に恐れるわけであります。  今回のこれから質問する法案について、まさにその辺の分析がなされているかどうかということが一つの大きなポイントになるだろうと思うんですけれども、この点は大臣、いかがでございましょうか。
  9. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) この法案に流れる思想というのは、何から何まで国が助けるという思想はどこにもなくて、やはり過去を清算しながら将来の発展を目指す、そういう意欲を持った経営者の自主的な判断を助ける。助けるというのは、直接お金で助けるとかそういうことではなくて、税制を初めとしたいろいろな政策手段でそういう経営者の自主的な判断がしやすい環境を整備するという思想で成り立っておりまして、バブルでみずから苦況に陥ったようなところをとりあえず助けるというような思想は実は立法の過程では我々全く考えておりませんでしたし、その結果もまた法案には反映されていないというふうに思っております。
  10. 簗瀬進

    簗瀬進君 実は、今の御答弁をいただいた上で、昨日の本会議の私の質問に対しまして、過去の経営責任について問うべき法案ではない、このような御答弁をなさっていたように記憶をいたしております。まさに今大臣みずからおっしゃられたことというのは、過去の経営者経営判断についてのミスをどういうふうに評価をするのか、その人為的な失敗の部分をやみくもに救うわけではないんだよ、こういうふうな御説明をなさったわけでありますけれども、まさにそれは経営責任を実はしっかりとお考えになっているということではないんでしょうか。昨日の本会議答弁とその辺の整合性を若干疑ってしまうわけでありますけれども、いかがでございましょうか。
  11. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 狭い意味での経営責任というのは、経営者が株主及びその会社で働いている従業員に対して持っている責任だろうと私は思っています。今回、事業構築をすることについて経営者責任云々ということは余りにも抽象的過ぎて、そのようなことを問題にしますとかえって物事が進まなくなると思っております。  経営判断というのはいろいろあって、ベストを尽くして経営判断をやったけれども結果的に間違えたという場合もあるでしょう。あるいは、バブル時代に多くの日本人が犯したような錯覚に陥って苦境を招いたという場合がありますが、大体はそういう責任者はみずから責任感じて既に会社の第一線の経営から身を引いておられるというケースが私は非常に多いんだろうと思っております。
  12. 簗瀬進

    簗瀬進君 いわゆる遊休資本という言葉がございます。この法案の中でも、今企業が抱えている遊休資本、これを例えば過剰雇用とか過剰設備とかととらえながらそれに対処していこうという対策がなされていると思うわけでありますが、この点は大臣お認めになりますか。
  13. 林洋和

    政府委員林洋和君) 経営資源、人材、技術あるいは経営ノウハウ設備、もろもろの集合体だろうと思います。  私ども、この法案立法いたしましたときの一つ問題意識としては、一昨年来いろいろな破綻等がございましたが、ああいうものを見ていまして、今申し上げた経営資源が雲散霧消して、資源として全く有効利用されない形でばらばらに散っていったという問題意識がございます。そういう意味で、今委員指摘のように、集合体としての経営資源というのをできるだけ有効活用したいという思いは当然この立法の背景にございます。
  14. 簗瀬進

    簗瀬進君 すなわち、集合体の中にあるものの中で生きていないものを生かしていきたい、こういうふうなお話だろうと思うんですけれども、例えば私ども説明をいただいたこの通産省のペーパーの四ページにも「工場跡地売却は進展せず」というふうなことがあるわけであります。例えば、工場跡地売却を進展した方がいい、そのための施策もこの法案の中にあるというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
  15. 林洋和

    政府委員林洋和君) 直接的にはございません。
  16. 簗瀬進

    簗瀬進君 また、きょういただいたこの資料の中にも「過剰設備の動向」ということで、それぞれいろんな業種によって抱えている過剰設備の内容が入っているわけでありますけれども、この法案はそういう意味では、例えば遊休土地等の再利用というようなことについてもプラスになるような、そういうことをねらった部分はあるんでしょうか。
  17. 林洋和

    政府委員林洋和君) 直接的にはございません。
  18. 簗瀬進

    簗瀬進君 この問題は後でまた取り上げさせていただくことにいたしまして、先ほど三つの過剰と申し上げましたけれども本当に過剰なのだろうかというふうな疑問も実はあるわけでございます。  きょういただいたこの参考資料の百十ページをごらんになっていただきたいと思うんですけれども、(4)のところに「主要国資本係数の推移」、こういうようなものがございまして、イタリア、イギリス、カナダ、日本、フランス、米国、こういうふうなグラフがあるわけであります。これは恐らく過剰設備的なものについての国際比較としてこの参考資料がここにつけられているんではないのかなと思うわけでありますけれども、これを見ると、日本過剰設備というのは本当にそんなに過剰なんだろうかという感じもするんですが、いかがでございましょうか。
  19. 江崎格

    政府委員江崎格君) 過剰設備試算というのはさまざまな機関が出しておりまして、機関によっていろいろ非常に数字がばらついております。  一つ原因は、先ほど委員も御指摘になりましたけれども景気変動といいますか循環的要因による部分と、それから構造的な要因による部分によりまして違っているわけですが、それを一緒に合わせて試算しているもの、それから片方だけで試算しているものというのがございまして、違いがございます。  例えば、幾つか出ておるものの中で循環的な要因と構造的な要因を合わせたものですと、小さい数字ですと三十五兆円から八十六兆円、その中でも、例えば経済企画庁試算ですと三十五兆から四十一兆円という試算がございます。それから、構造的要因だけを試算したものですと、これもいろいろばらつきがございますが、例えば五十兆から七十一兆円というような試算がございます。  それらの中で、先ほど委員おっしゃいましたように、過剰設備の中で相当部分というのは循環的な要因が含まれておりますから、景気がよくなればその部分相当部分は解消するというようなものがございますが、ただ他方において構造的な要因もございます。それを截然と区別して、この部分循環的要因、この部分構造的要因というふうに分けて数値であらわすというのは大変難しいことではないかというふうに思っております。
  20. 簗瀬進

    簗瀬進君 同じく、過剰雇用ということについてお尋ねをしたいんです。  今、過剰設備について聞きましたが、過剰設備についても極めて相対的な観念である。ただ、こちらの資料を見ますと、過剰設備についてはそれなりに各国比較的なものもついているようでありますけれども過剰雇用については過剰感感じとして過剰だ、こういうふうな資料が目立つ程度で、本当意味雇用が過剰かどうかということについての比較、あるいは絶対的にこれだから過剰であってこれだから過少であってというふうな、そういうメルクマールというのは実はないんじゃないですか。
  21. 江崎格

    政府委員江崎格君) 私ども、やはり雇用についても過剰な雇用が存在しているというふうに考えております。と申しますのは、失業率だけではなくて、例えば労働省の出されております白書などによりますと構造的な失業というのがございまして、構造的失業率が三・二%で過去最高になっているというような試算もございます。  こういうことで、雇用についても構造問題、それから景気変動による部分というのがあるんだというふうに私ども認識しております。
  22. 簗瀬進

    簗瀬進君 同じく過剰債務についても聞かせていただきたいんですが、これもまたまた世界の横並びの比較というのは実は難しい話でして、例えばそれぞれの各国の言うならば企業資金構成によって、直接金融間接金融関係とか云々の話が必ず出てまいります。という形になりますと、日本過剰債務であるかどうかというようなことについては、きちんとこれは明らかに過剰であるというようなことを断言できるのでありましょうか。
  23. 江崎格

    政府委員江崎格君) 一つの指標としまして債務残高負担率というのを私どもとっておりまして、これは負債営業利益に比べてどのぐらいの倍率になっているかということでございますけれども、八〇年代の後半ですとこの債務負担率が大体十八倍ぐらいでございましたけれども、九〇年代の終わりぐらいにはそれが三十二倍になっているということで、現在その高どまりの状態が続いているということでございますので、債務についても過剰なものがあるというふうに考えております。
  24. 簗瀬進

    簗瀬進君 私は、そういう意味では、どうも過剰の三点セットがことしの一月あたりからある意味ではマスコミ等で非常に活字が躍った、これはどうも相対的なものを構造的なものであるかのように印象づける、こういうふうな一つの意図があったのではないか、私個人的にはそのように感ずる部分もあるわけでありますが、それについてはそれぞれの印象の話でありますので議論はいたしません。  ただ、お聞きしたいのは、三点セットのように過剰雇用過剰設備過剰債務、過剰の三つと、こういうふうにいつも言われているわけでありますけれども、その三つを同列に論ずることは私は非常に危険ではないか。やっぱり、設備の問題と、それから債務の問題と、そして人の問題、これは大いに違う。過剰雇用というのは、まさにそれは例えば遊休資本整理する、あるいは非常に過重な債務整理する、そういうことと人を整理するというのはこれは全然意味が違います。人は生きている。生身の人間です。そしてその上で、その人だけではなくて家族もそこにいるわけであります。  でありますから、過剰雇用過剰設備過剰債務、この三つを三題ばなしのようにぱっと一緒に言ってしまうということについて私自身は極めて抵抗を感ずるわけでありますけれども、この点について大臣はどうでしょうか。御感想を聞かせていただければと思います。
  25. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 三つを同列に論じるということは非常に難しいと私は思っています。過剰設備は非常に難しい問題が含まれていまして、今のように貿易が自由であるというような場合には、日本設備過剰を解消しても外国の設備過剰が押し寄せてくるという問題があります。しかし、現に大変生産性の低い分野での設備というのは既に国際競争力を失っているわけでございますから、そういうものを稼働し続けるということのマイナスというものはやっぱり生じるんだろうと思っております。  それからもう一つは、過剰債務というのは、バブル時代は大変いい時代で、銀行もすぐにお金を貸してくれましたし、社債はすぐ消化できましたし、時価発行増資もできましたし、エクイティーファイナンスはそのように企業にとっては大変都合のいい資金入手手段としてあったわけでございます。そういう中で、どうしても経営者はお金の手に入りやすい状況という中での経営判断というのはその当時はやはり気がついていなかった、我々を含めて気がついていなかったわけですが、後になってみれば、あの時代はこういう時代だったなということで、実際、過剰債務が借り入れあるいは社債というような形で発生しているわけでございます。  これをこのまま放置いたしますといわゆるデッド・オーバーハング・エフェクトという債務のしかかり状態という状態が発生をいたしまして、経営者が新しい分野に出ていこうという意欲を喪失させてしまうような効果があって、やはりそういう過剰債務が持つある種の効果というものを取り除かないと、新しい分野での設備投資とか新しい分野での事業というものが起こりづらいというのが一般的な理屈であり理論であろうと私は思っております。  それからもう一つは、過剰雇用というのは、先進諸国でのリストラといいますとすぐレイオフというような話になりますけれども日本は終身雇用ということを前提に雇用体系が成り立っていたわけですし、それから働く方々の給与は毎年昇給していくという、いわば見通しのついた労働環境というものがあったわけです。これは一挙になかなか変えられないものだし、また終身雇用とか日本が持っている労働慣行というのは長年日本人が工夫して積み上げてきたものであって、先進諸国のように過激な過剰労働の解消方法が日本の社会の土壌に合っているのかといえば、多分私は違うんだろうと思っています。  しかし、これは会社でやっております仕事の種類を変えるということはせざるを得ない。他の分野に進出してそちらの方に移るとか、そういうことは、生産性の低い部分から生産性の高い部分労働力がスムースに移動するということは過剰雇用の場合にはどうしても必要なんだろうと思っています。  ですから、ベストの方法というのは、衆議院でたびたび申し上げたんですが、その就職した会社で他の分野に進出をする、そこで自分の職場が会社内でかわるという、その雇用の吸収というのがベストであろうと思いますし、また同じ会社でなくてもその会社の子会社とか極めて資本関係が強い関連会社とか、そういうところで雇用関係を継続していくということが私は大変望ましいことだろうと思っております。  ただ、極端な話をしますと、それもできないというようなケースにはどうするのかという問題が当然あります。それに関しましては、雇用保険、これは失業保険プラス雇用調整助成金ですが、そういうような社会的なセーフティーネット、あるいは雇用関係の予算も成立をさせていただいて、そういう中で解決できるものも多少あるでしょう、やむを得ない場合にはそういう社会的セーフティーネットを使わざるを得ないケースも出てまいります。  基本的には、我々が目指しているのは、失業者が出るというのは当然だというような考え方はこの法律を立案する過程では一切考えておりませんで、むしろマクロで見た資本労働の移動がスムースにいくということを念頭に置きながらこの法案を書いたわけでございます。
  26. 簗瀬進

    簗瀬進君 今、大臣お話の中でも、雇用の大切さ、そしてそれを十分に守っていきたい、こういうふうな決意は感じ取れました。ただ、その決意があるのであるならば、もう一つ踏み込んだ規定の内容をなぜつくっていただけなかったのか、これを大変残念に思う。  確かに、この産業活力再生特別措置法の各条項を見ますと、まず第一番目の第一条のところですか、そこに、「雇用の安定等に配慮しつつ」、それから三条あるいは十八条というふうなところで、それぞれこの部分について配慮するというふうな規定が置かれた。しかし、それらはすべて努力義務といいますか期待をするというふうな言葉であります。  確かに、我が国は計画経済の国ではないと言えますけれども、それであっても、例えば労働政策はこれは社会的な立法であるということで、かなり強行規定を置きながらこの労働関係を守ってきた、こういうふうな伝統があるわけであります。そういう伝統の中で、私は、努力義務をちゃんとした義務規定に改めてほしい、こういうふうな立法論的な提言は昨日の本会議でさせていただきましたので、この点については答弁を求めません。ただ、解釈の中でこの点を最大限に配慮することができるのではなかろうか。  例えば、三条三項の四号というものがあります。「事業構築に伴う労務に関する事項」、事業構築計画に必ずこの労務に関する事項を記載しなければならない、このようになっているわけでありますけれども、この労務に関する事項の内容として、計画前、計画後の雇用数、それも部門ごとの雇用数、これを明らかにするというふうな形で御指導いただくことはできないか。  あるいは三条の六項六号というものがあります。「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」というのが三条の六項六号にあるわけでありますけれども、この「従業員の地位を不当に害するものでない」という文言の解釈あるいは運用ということについて、例えば雇用労働条件に影響が出るときは必ず労働組合ないし従業員の代表者と協議を行うように指導をする、このような配慮が必要なのではないか。あるいは事実上従業員雇用維持、労働条件について労使合意が成立していることをこの六号の内容として読み込めないのかということをお尋ねしたい。  さらにもう一つ、十八条一項というものがございます。ちょっと十八条を開いてみます。この十八条一項の文言の中に、「その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、当該労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」、ここら辺が書き込む限度だと通産省の方はお思いになっているかもしれませんけれども、この一項の「労働者の理解と協力を得る」との解釈、運用ということで、労使協議及び労使の合意を成立させる方向で対処する、こういうふうに解釈あるいは運用を指導するということはできないのか、こういうふうに考えるわけであります。これをしっかりとやっていただければ本当意味で、確かに文言的には努力規定ということで非常に不十分である、しかし従業員あるいは労働者の皆さんの本当の安心といいますかセーフティーネットをしっかりとこの法案が持つことになるのではないのかなと思うわけでありますけれども、この解釈、運用の可能性についていかがでございましょうか。
  27. 江崎格

    政府委員江崎格君) 今、委員から三条三項の四号の問題、それから同条の六項六号の問題、それから十八条の一項の問題、御指摘がございましたが、まとめて順にお答えをさせていただきます。  まず、三条三項の「労務に関する事項」ということでございますけれども事業の再構築計画に記載すべき内容といたしまして私ども考えておりますのは、事業構築の開始の時期それから終了の時期における従業員の数、それから事業構築に充てる予定の従業員の数、それから事業構築に伴う新規の採用あるいは出向者数などを想定しております。  これによりまして、事業構築に伴う雇用者の数の変動をまず把握いたしまして、これが雇用に影響を与えるということをまず判断するわけですが、その上で、雇用に影響を与えるということがわかった場合には、労使間で十分に話し合いを行ったかどうかとか、あるいは労働者に対する配慮を十分行って計画を実施しようということかどうかということを確認するわけでございます。  三条の六項六号、「従業員の地位を不当に害するものでない」ということでございますけれども、これは事業構築計画の認定に際しまして、事業構築に伴う失業の予防など雇用の安定に万全を期するために、事業者による事業構築計画が雇用に影響を及ぼす場合には関係労働組合との必要な協議を行うなど、雇用労働者の意見を十分聴取いたしまして、雇用の安定に最大限の考慮を払い、その理解と協力を得ながら当該計画を進めさせるというように適切な指導を行ってまいりたいと思います。  雇用の維持とか労働条件に関することにつきまして、労使の話し合いで処理されるべき問題だというふうに考えておりまして、この法文では一律に労働者に合意を得ることまでは義務づけてはおりません。  それから、十八条一項の「労働者の理解と協力を得る」、これは計画の実施の段階でございますが、この具体的内容としまして、雇用に影響が及ぶ場合には、事業構築を実施するに当たりまして労働組合などと必要な協議を行うこと、それから労使で必要な合意を成立させることなど、労使間で十分な話し合いを行うことでありまして、その旨を主務大臣告示におきまして明確化いたしますし、労働者の理解と協力を得ながら当該計画が推進されるように、私どもとしまして適切な指導を行ってまいります。  以上でございます。
  28. 簗瀬進

    簗瀬進君 私ども指摘を正面から受けていただきまして、大変明快な御答弁をいただき、ありがとうございました。  せっかくそこまで言っていただけるのだったら、きのうの本会議でも共産党の西山議員からの御指摘もあったように、例えばEU等の大変な経済激動が起こっているところがございます。そういう中にあって、このような企業の組織がどんどん変わっていく、そして外部的な要因の中で働く人々が大変不安になる、そういうことをしっかりとおもんぱかった上で、企業組織の変更における労働者保護法、一般的なそういう保護法というようなものをこれはそろそろしっかりと考えていくべき大変重要な歴史の節目に来ていると思うわけであります。  きのうの本会議でも若干この点については質問をさせていただいたわけでありますけれども、もう一回改めて、具体的に前向きにこの法制に取り組んでいきたい、立案に取り組んでいきたい、こういうふうな御答弁をいただければ大変ありがたく思うわけでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  29. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) この法案が衆議院でまず御承認をいただきましたときの附帯決議というのがございます。今、先生の御質問部分について附帯決議がどう言っているかといいますと、こう言っております。  「企業の組織変更が円滑に実施され、かつ、実効あるものとなるためには、従業員の権利義務関係等を明確にする必要があることにかんがみ、労使の意見等も踏まえつつ、企業の組織変更に伴う労働関係上の問題への対応について、法的措置も含め検討を行うこと。」。これが衆議院での附帯決議でございまして、私はこの附帯決議を受けて、これを尊重してまいりたいということを最後に御答弁申し上げたわけでございます。  今後、企業分割等の企業組織の変更に伴って検討すべきさまざまな課題、それの一つだろうと思っておりまして、今読み上げました附帯決議の精神というのは、当然我々がこれからこの法律を運用していく上での大事な立法者の意思だというふうに考えております。
  30. 簗瀬進

    簗瀬進君 ありがとうございました。  願わくば、それをどこかの条文の片隅に置くというようなことではなくて、正面からそれをとらえてずばっとしたそういうタイトルを持った一本の法律をつくっていただきたい、このようにお願いをする次第であります。  それでは、この件については話題をそろそろ変えさせていただきまして、私は今回、過剰設備問題があって、そして今回の法案の柱立てを見ますと三本になっているわけであります。一つ事業構築をしていく、それからもう一つは中小企業あるいはベンチャーの創業、そして三本目が言うならば産学協同等の技術開発の推進、こういうふうな三本の柱になっているわけであります。  その一本目の柱で、事業構築、その会社の組織を例えば分社化するあるいは合併する等で選択集中をさせていく。これは本当に必要だろうと思いますし、この法案が通ることによってある程度の動きは出てくるのかもしれませんけれども、本来、組織変更というのは、ある意味では、先ほどの原因と結果の話でありますけれども、やっぱりどちらかというと結果の話なんではないか。結果として経済的な動きがいろいろとあって、例えばこの部分に大変目覚ましく伸びている分野があるから、それに特化をするために分社化をしていく、こういうふうなことがあって初めて分社化の意味が出てくるわけです。  ということになりますと、選択集中の言うならば企業の組織いじりと言ったらしかられるかもしれませんけれども、このことだけでは経済再生のインセンティブはつかないんだろうと。これと同時に、経済自体がもっともっと活力あふれるようなそういうインセンティブをつけられるような、そういう施策をさらに進めていかなければならない。そのような認識を私は強く持っているわけでありますが、大臣の考え方を聞かせていただければと思います。
  31. 江崎格

    政府委員江崎格君) 今回この法案で御提案しておりますうちの特に事業の再構築部分の問題なんですが、私ども産業再生ということを考えました場合に、今回御提案しておりますこの事業の再構築だけで日本産業再生するというふうに簡単に考えているわけではございません。政府としましては従来から、こうした考え方に基づきまして、規制の緩和とか撤廃あるいは持ち株会社の解禁ですとか株式交換制度の導入の促進など、各種の制度的な改革を提案してきております。それから、特に経済構造改革の行動計画などによりまして、非常に広範な構造改革もこの産業再生ということを念頭に置いたものでございます。  したがいまして、今度の御提案というのは、中長期的に我が国産業活力を取り戻すためのいわば第一歩でございまして、中小企業などの事業の再建手続法制をさらに今後検討して政府として導入するとか、あるいは会社の分割制度を新しく創設するですとか、あるいは税の面で連結納税制度も極力早期に導入するとか、あるいは企業の会計制度も極力早期に変更しまして国際的な会計基準に合わせていくといったような環境整備が必要だと思いますし、それからもちろん従来以上にさらに規制緩和を進めるといったようなことを総合的に進める必要があると思っております。  それから、今御指摘のインセンティブというお話がございましたけれども、伸びる部分を伸ばすということで、ベンチャー企業ですとかあるいは中小企業をさらに守り立てるための資金面とかあるいは制度面での対応とか、あるいは長期的なリーディング産業をつくり出していくための国家的な技術戦略、こういったような問題も必要だというふうに思っておりまして、こうしたことを総合的に進める必要があるというふうに思っております。
  32. 簗瀬進

    簗瀬進君 まさにそのとおりだと思います。言うならば、双方が車の両輪のごとくになってダイナミックに動いていくというような状況を早急につくり出すということが私は必要だろうと思うんです。  私は、ずっと通産の政策を見ていますと、一生懸命やっているのはわかるんですが、かなり長期間にわたってぽつぽつだらだらと法案が続いてくるんです。私は、これは非常にある意味ではもったいないと。きのうも、フルコースを小皿料理で出すようなことでは料理のだいご味はわからない、こういうふうなことを言わせていただきましたけれども、でき得るならば、例えばベンチャー育成といったらベンチャーを育成する施策を一挙にどんと出す、そしてまさに網羅的な出し方の中で国民に対して大変強烈な印象を与えて動機づけていく、こういうふうな法案のつくり方といいますか出し方というようなものが非常に必要である、このようにずっと思っておるわけであります。  残念ながら今回も、かなり入ってはいますけれども、やっぱり肝心なものが抜けている。例えばベンチャー育成の中でエンジェル税制をもっとしっかりと拡充をするんだとか、あるいはいただいたこの法案資料の中にも出ておりますけれども、ベンチャーを見たときに何が一番足らぬかということでこの資料の中でしっかりと出ておる。一つは敗者復活。この資料の百八十ページと百八十一ページに見事に出ているわけでありますけれども、これは中小企業庁の資料でありますが、百八十ページの「(3)米国と比較したベンチャービジネスの問題点」として「敗者の復活できる社会的風土がない」というのが一番、それから、隣の百八十一ページの第五番目でエンジェル税制拡充がやっぱり足らぬよと、こういう要望が一番強い、こういうふうなことが出ている。  この肝心なものが今回入っていないんです。なぜこれを一緒にやってくれなかったのかなと。後で出す、今検討中であるというのは結構ですけれども、せっかくベンチャー支援、中小企業の起業家をどんどん高めていくんだ、こういうふうな提案をするときにこの肝心な部分が二つとも欠けているじゃありませんか。「敗者の復活できる社会的風土がない」というのは、これは今準備中と聞いておりますけれども、言うならば再建型の新しい会社整理法的なものをつくるんだと、こういうふうな準備をしているようでありますし、エンジェル税制も次の通常国会あるいは臨時国会で出されるかもしれませんが、出されようとしているのはわかります、一生懸命やっているのはわかるけれども、でき得るならば一緒に出していく。  私は、日本の政治に欠けているものというのはいろいろあると思いますけれども、その最たるものが統合的にインテグレートしていく、こういうふうなことが非常に下手くそだと。その辺は、アメリカは大統領がみずから、例えばきのうも話した、ケネディが人類を月に送ろう、あれは物すごくすばらしい考え抜かれた私はビジョンだと思うんです。まず第一にアメリカ人の魂を揺さぶるわけですよ。アメリカ人は一番が好きなんです。人類を月に送ろう、アメリカ人が一番に月に行くんだと。これによってアメリカの人々の魂をぐっと引っ張る、誇りを非常に刺激する。そして、人類を月に送るためにどれだけの科学技術を動員しなければならないか。宇宙工学から情報工学から含めて全部それに統合されていく。まさにこれが政治のダイナミズム。  私は、政治において一番肝心なのは、人々の勇気を奮い起こしながらぐっとそれに引っ張っていって、そしていろんなところに統合的な付加価値を相乗効果的につけていけるような、そういう法案の出し方というのが必要なんだなと、このようにずっと思っているわけであります。残念ながら今回の法案についてはまだ画竜点睛を欠いているのではないか、このように指摘せざるを得ないのでありますけれども大臣の御所見をちょっと聞かせていただければと思います。
  33. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 大変短い準備期間でございましたので、その間できることは全部やったつもりでございますけれども、先生御指摘のように、エンジェル税制拡充などは実際要望が強いわけでございますし、また中小企業が市場から直接資本がとれるような方法というのはないのかと。これは若干研究の余地があるわけでございます。  それからもう一つは、ただお金があればベンチャーができるというわけではありませんで、やはりそれは広大な技術的な背景というものに支えられなければならないわけですから、そういう面では将来に向かっての科学や技術に対する広範な投資、それからまた、それを中小企業がアクセスできると。そういう意味では、この法案競争力強化に向けての第一歩でございまして、今後、機会あるごとにそういうものを整備していかなきゃいけないということは先生がおっしゃるとおりだろうと思っております。
  34. 簗瀬進

    簗瀬進君 くどくなりますけれども、やっぱりこの問題は非常に重要な問題で、私は同じ質問をきのう小渕総理にさせていただいた。総理は、ミレニアムという何か難しい言葉の中で、千年紀というような言葉を出すわけでありますけれども、ビジョンのビジョンたるゆえんとは何かと言えば、魂の部分を揺さぶる、そういう目標というようなものがなければならない。精神的な誇りに訴えながら、そしてしかもそれが経済的な大変なインセンティブを両方持っている。  まさにケネディが人類を月に送ろうと言ったときは、それは精神的な揺さぶる感動の部分と、もう一つ、それが確実に、もしかしたらアメリカの今の経済というようなものも、ケネディの人類を月に送ろうというところから例えばコンピューターはどんどん発達していったかもしれない。そういう意味で、両方が両々相まって、魂とそれから経済的なインセンティブと、この二つが合体して、こういうビジョンというようなものをぜひこれは与党としてしっかりと考えていただきたい。この点を指摘させていただきまして、次の質問に移ります。  第十四条、産業基盤整備基金。これが言うならば認定事業、あるいは後で質問させていただきます特定認定活用事業等についての債務保証、あるいは資金の出資、これに対しての一つのバックグラウンドになるわけでありますけれども、まずちょっとお尋ねしたいのは、産業基盤整備基金の現状がどれぐらいになっているのか。  それで、この第十四条の一号、これでは、認定事業者または認定活用事業者が「社債及び当該資金の借入れに係る債務の保証を行う」、債務の保証をこの基金の中からやるよと。  それから、後で質問させていただきます「特定認定活用事業者が認定活用事業計画に従って事業を行うのに必要な資金の出資を行う」、これは保証とかあるいは融資とかというようなことよりも、出資というのはもっと直接的なことなんですね、自分も一種の参加をするというようなことでありますから。これは後でちょっと聞かせていただきたいと思うんです。  この二つ、まず産業基盤整備基金の現状、規模とそれから財務状況がどのぐらいになっているんだということ、それと債務保証あるいは資金の出資、この法案が成立したらその枠組みみたいなものはどの程度の規模として考えているのか、ここら辺についてのちょっと質問をさせてください。
  35. 林洋和

    政府委員林洋和君) まず、産業整備基金の概要でございますが、産業整備基金は昭和六十一年度にできております。産業政策の実務機関として、民活法、新規事業法、事業革新法など、合計十五の法律に基づく債務保証、出資等の金融面の支援措置の実施等を行っております。これらの業務を行うために、国や政府金融機関等からの出資金を初めとして、現在約九百五十億円の自己資本を有しております。  それから、債務保証の保証残高でございますが、合計で約二百八十億円保証残高がございます。  それから、保証の枠、限度というお話がございましたが……
  36. 簗瀬進

    簗瀬進君 今回のね。
  37. 林洋和

    政府委員林洋和君) はい。この法案に基づきます産業基盤整備基金の債務保証、現在詳細を検討しておりますが、現行の事業革新法にも倣って、一件当たりの上限を五十億円程度にする方向で検討をしております。  それから、出資について問題があるではないかというような御指摘がございましたけれども、私ども、この出資については、日本的な雇用慣行を考えましてこの出資の規定を盛り込もうというふうにいたしました。  それはどういうことかと申し上げますと、例えば大企業の一関連部門であるあるいは大企業の子会社であるという場合に、もうそこの部門なり子会社が成り立っていかない、したがってつぶすと言われたときに、当該部門長なりあるいは子会社従業員なりが自分たちでその事業をやりたいといった場合には、日本的な雇用慣行を考えると、つぶすよりはやる気のある部門長なり従業員の方にやっていただくということがいいことなのではないかということで、こういう仕組みを講じた次第でございます。
  38. 簗瀬進

    簗瀬進君 この十四条の一号のところに括弧書きがありまして、「第二条第二項第一号ロのみを行うものを除く。」というふうな規定がありますけれども、これはどういうことですか。
  39. 林洋和

    政府委員林洋和君) 専ら設備廃棄を初めといたしました事業の縮小あるいは廃止、このための資金は将来資金回収の見込みが立ちにくいわけでございます。したがいまして、通常、融資の対象とはならずに、事業者の手持ち資金で手当てされるべきものであると考えております。  したがいまして、このような資金の借り入れに対する債務保証についても、廃棄費用のみの計画について付保することは困難でございまして、そういう意味で、この第二条第二項第一号ロのみを行う計画については除外をすることとしております。
  40. 簗瀬進

    簗瀬進君 ちょっと質問の順番で先にこの条文を聞かせていただいたんですが、聞きなれない活用事業というようなものが出てまいりました。私も実はこの活用事業については余り意識していなかったんですけれども、読んでみると実に不思議な条文でございまして、第六条という条文がございます。  ちょっとそのまま読んでみますと、「認定事業者経営資源であって、当該認定事業者が認定事業構築計画に従って事業構築を実施することによっても有効に活用することができないものがある場合において、これを活用して事業を行おうとする者」、有効に活用できないものを活用する、これは一体どういうことなんだと。  それで、六条の二項の方を見ますと、「活用事業計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。」ということで、ここに「活用しようとする認定事業者経営資源の内容」、こういうようなものがある。ここでもまた「活用」というのが出てくるんです。  有効に活用することができないものを活用しようとするというのは一体どういうことなんだと。論理矛盾じゃないでしょうか。活用できないものを活用するということを事業化していく、これは一体どういうふうに理解をすればいいのか。  そしてさらに、もう一つ読ませていただくと、第六条の一番最初、一項の「有効に活用することができないもの」と。普通、法律で書く場合は、モノというのは物質の物か人間の者なのか、者か物か、これを明らかにするんですけれども、これはあえて平仮名になっているんです、「できないもの」。これは一体何を意味しているのか。  そして、その上で、先ほどあえて十四条のことを言わせていただきましたけれども、十四条の二号で特定認定活用事業者、まさに有効に活用することができないものを活用して事業を行う者、それで認定を受けた人たち。特定のというようなのがついていますけれども、それは、その十四条の「主務省令で定める要件に該当する」というようなことで特定になっているんでしょうが、本体は、有効に活用することができないものを活用して事業を行う者、それに対して必要な資金の出資をする。  それは、先ほどの御答弁では大変いい感じに聞き取れたわけなんだけれども、まさに総合的に読んでみますと、例えば「できないもの」の中にバブルのときにバブルに浮かれて買っちゃった不動産なんか入るんでしょうか。そして、そういう不動産が全然死んでしまって、それをもう持っていてもしようがないから、例えばそこにアミューズメントの何か施設をつくろうとか、倉庫なんかをコンサートハウスにするとか、新しい事業をやって無理やり有効に利用できるような、そういうことに対して資金の出資をするなどというようなことが読めるんじゃないのか。  まさにそうなってきますと、先ほど私が質問させていただいた、バブルに浮かれて遊休資本、それをこの活用事業というようなことで処理をする余地というようなものが出てくるんじゃないか、こういうふうに読めるわけでありますけれども、いかがでございましょうか。
  41. 林洋和

    政府委員林洋和君) まず、第六条の一項、有効に活用することができないものを活用するというのは論理矛盾ではないかという御指摘でございます。  この点につきましては、例えばある特定の事業者が有効に活用することができないけれどもほかの事業者がかわってやればできるというもの、まさにこの法律で考えております選択集中というのはある意味ではそういう概念でございます。  大手電機メーカーが自分が持っているATM部門を自分ではうまくできないけれどもよその会社に売ると、よその会社はATMが得意だからその部門を拡充するということもございます。他方、ある商社がつぶれた場合に、その商社の子会社従業員が共連れでつぶれるのは嫌だと、おれたちの力でその経営をやりたいというようなケースもございます。  そういう意味で、主体によって活用することができるかできないかというのは変わってくるものだというふうに考えております。  第二点目の「もの」でございますが、これは経営資源でございます。  それから、第三点です。  その「もの」が経営資源であるという前提でどういうようなことを考えているかという御説明でございますけれども、私どもでこの法案で活用事業者支援することといたしましたのは、事業の再構築の過程で人材、技術設備等、価値ある経営資源をいたずらに毀損させることなく積極的に有効活用することを促進するためのものでございます。  有効に活用するという具体的内容でございますけれども、認定事業者雇用されていた従業員の受け入れ、あるいは認定事業者との共同研究等による技術の活用、こういったことによって認定事業者の有する経営資源の価値や能力を十分に発揮するような形で事業を行うものであるということを想定しております。  なお、バブル遊休資本等のお話がございましたけれども、土地や設備などの遊休資本については、単なる資産の移しかえというものは対象とするつもりはございません。ただ、この第六条第四項に定める承認基準に合致するものであれば設備等も対象になることはあるというふうに考えております。  それから、最後でございますが、この特定活用事業者、どんなような要件を考えておるかというような御質問があったかと思いますが、十四条第一項第二号で認定事業者経営資源を特に有効に活用するものとして、認定事業者の役員あるいは従業員を相当程度雇い入れる、こういったことを要件として定量的に定めたいというふうに考えております。
  42. 簗瀬進

    簗瀬進君 大変えんきょくな言い方をなさっていますけれども、私の指摘は否定なさっていない。すなわち、そんなバブルのときに買った土地をそのままほったらかしにしてペンペン草を生やしている人もいるけれども、無理やり利用して非常に利用効率が悪い、そういう不動産だって当然あるわけですよ。それは当然こんなのは遊休資本の中に含まれてくるんです。それをさらに活用しようとしたときに、これもまた、ただで売り払うなんてそんな単純なことをする人はいませんよ。やっぱり何かに利用して、この制度を使おうとするに決まっているじゃないですか。  だから、最初に、その遊休資本を、何といいますか、有効に活用することができないものになっちゃった、そういう設備というようなものをどういうふうに入手したのか、それをどういうふうに利用してきたのかということをチェックしない限り、今ですら一生懸命やったって効率が悪い、さらにそれを切り離してそれに特化して事業化しようといったって、こんなもの、うまくいくわけないじゃないですか。  それに対して出資までするんですよ。融資じゃない、保証でもない、出資なんですよ。それは十四条二号で出資できると書いてあるじゃないですか。そうなったら、結局、前も使い方が非常に悪くて余り効率が上がっていなかった。さらに今度独立させてやってみたら、また効率が悪い、つぶれた。そうしたときに、出資金だからもうこれは回収できないですよ。貸し金だったらまだいろんな余地はあるけれども、出資だったら死なばもろともになるんです。これはどうですか。
  43. 林洋和

    政府委員林洋和君) お答え申し上げます。  出資については、いわゆるMBOあるいはEBO、マネジメント・バイ・アウト、あるいはエンプロイーズ・バイ・アウトのケースだけでございます。  先ほど申し上げましたように、このMBO、EBOの要件として、省令で、例えばもとの企業の取締役、従業員が一定以上の議決権を持つとか、あるいはもとの企業従業員の自主的判断に基づき実施されるとか、あるいは、十四条一項二号の出資の要件であれば、認定事業者従業員を何人以上雇うとか何%以上雇う、こういったものにする考えでございます。
  44. 簗瀬進

    簗瀬進君 先ほど私が指摘した、いかにしてその設備を入手したのかとか、そういう過程は問題にならないんですか、以前の入手経路とか。
  45. 林洋和

    政府委員林洋和君) 経営資源全体としての判断でございますので、特定の土地、設備がどうなっていたかというのはチェックをする仕組みにはなっておらず、この第六条四項の承認基準に合致すれば認定の対象となるものと考えております。
  46. 簗瀬進

    簗瀬進君 まさに問題じゃないですか。過去のことは全く問うていない。国民のお金を出資して、出資をする際に、なぜ活用の度合いが下がってきたのかということの分析なんかを出されずに、今全体的に見てどうだという、それだけでお金を出すと、こういうふうなことをやっていいんでしょうか。  もう結構です、これは押し問答になりますから。まさに、こういうふうな内容であるからモラルハザードをさらに助長するのではないのかなと、これは指摘せざるを得ません。結構です。  次の質問をさせていただきたいと思います。  私は、最後に、研究活動活性化ということについて聞かせていただきたいと思います。  先日、イネゲノムの勉強につくばの農業生物資源研究所に行ってきました。随分いろんな示唆を得てまいったわけでありますが、道々非常におもしろい話を聞きまして、イネゲノムというのは今実は大変世界から注目をされている。なぜかといえば、イネの塩基構造、ゲノムと言われておりますけれども、その塩基構造はイネだけに通用するかなと今まで世界は思っていた。ところが、研究を進めたら、イネは実はトウモロコシに通ずる、さらにイネの基本的な構造は小麦にも通じていた。  まさにそういうふうに考えてみると、スーパーシーズなんというふうに言われている穀物戦略とイネゲノムというのはある意味では真っ向からぶつかるような、そういう状況になるということがわかってまいりまして、今、アメリカのこういう関係は、どうも今まで余り注目をしていなかった日本のものが一躍先に行っているというふうなことに気がつきまして大変焦っている、こういうふうな話も聞いてまいりました。  その道々、もう一つのゲノムとして注目をされているヒトゲノムというのがあるわけであります。人類の病気とか健康とかというようなものを遺伝子の部分で解明をしていこうというヒトゲノム。ところが、実はもうヒトゲノムの方はアメリカは戦々恐々するどころか、日本のヒトゲノムはこの程度のものかというふうなことで余り当てにされなくなってしまった。こういう同じゲノムでもイネとヒトで非常に両様分かれ道になっていると。  こういうふうな話を聞いたときに、こういう一つの大きな戦略ということに関してはやっぱりナショナルセンター的なものが必要なのではないのか。それが実はイネとヒトの違いでございます。イネは農水省の生物資源研究所、あるいはSTAFFと言われている先端技術研究所が中心になってやってきた。ところが、ヒトは大学とか病院とか非常に分散的なアプローチをしてきた。この差というふうなものが随分出てきているのではないのかなと思います。まさにそういう意味では、このような先端的なものについては国が一つのリーダーシップをとって統合的に進めていくといった動きが必要なのではないのかなと思っておりますけれども、これは文部省の関係の方、もしいらっしゃったら御答弁いただければと思います。
  47. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) いろいろ御心配いただいて恐縮でございます。  アメリカと比べた場合の問題というのはいろんな切り口があるわけでございますけれども、ざっくばらんに申しますと、何といいましてもアメリカはマンパワーも資金もかなり豊富でございます。それとゲノム研究につきましては、ビジネスチャンスをうかがいながら、アメリカの場合はかなりベンチャー企業も参画していると聞いているわけでございます。  ただ、そうはいいましても、日本の研究者もいろいろ努力しておりまして、文部省関係では東京大学の医科学研究所にヒトゲノム解析センターというのがかねがねあるわけでございますが、そのほかに、これは科技庁の所管でございますが、理化学研究所のゲノム科学総合研究センター等、いろいろ拠点を設けながら研究の推進を図ってきているところでございます。  研究の推進に当たりまして、先生のおっしゃるようにナショナルセンターというのも一つの構想かとは思いますけれども、他方で適切な役割分担と協調ということも必要でございまして、日本の場合に関係省庁それぞれで連絡会を設けたり、あるいは当初から科学技術会議のもとにヒトゲノム関係の解析懇談会、今ではゲノム科学委員会と言っておりますけれども、そういう連絡調整機関を設けながら、それぞれの研究者が協力、協調しながら対応しているところでございます。  また他方で、解析いたしましたゲノムの情報につきましては、日本の場合には国立遺伝学研究所が日本全体をカバーしながら、ヨーロッパのEMBLあるいはアメリカのジーンバンクのデータとそれぞれ日欧米で協調しながら連携をとって対応しているところでございます。  したがいまして、御提案ではございますけれども、今後とも関係省庁あるいは関係研究機関、それぞれ連携協力を密にしながらさらに積極的に取り組んでまいりたいと存じております。
  48. 簗瀬進

    簗瀬進君 これ以上の質問はいたしませんけれども、ナショナルセンターを一方でつくって統合的に進めているイネゲノムはむしろアメリカに恐れられる存在になっている。ところが、ヒトゲノムの研究状況というようなものを見ると、アメリカは日本はもう余り当てにならないなといったようなことで、同じゲノムなんだけれども植物の方と人体の方で非常に画然とした差がついちゃっているということ、これはぜひともなぜそうなっているのかという状況についてはしっかりと分析して進めていただきたいとお願いをいたします。  そこで、通産大臣、今お戻りになられましたので、新しい知的戦略についての議論なので、むしろこれは特許庁というよりも通産大臣にお答えいただきたいと思うんですけれども、これも実はイネゲノムに絡む話でございます。  特許戦略は非常に重要です。しかしながら、今までの特許戦略というのは、できるだけ早く研究をまとめてできるだけ早く申請して特許を取っちゃって自分のところで囲い込む、こういうふうな発想で早い者勝ちでやってきた。早い者勝ちのひとり占めなんです。しかし、こういう発想ではこれからの本当意味での知的財産権の戦略としては非常に不十分になってくるのではないのか、私は実はイネゲノムの話でそう感じたわけであります。  イネゲノムは今、第一期の研究を終わって第二期の研究に入っています。第一期で大体の、四十三億ぐらいだったと思うんですけれども、そういうゲノムの解析が、遺伝子の地図をつくり終わって、第二期としてそれぞれの塩基の中でどういうふうな特色を持っておるのかという個別の、言うならば大きな地図の中での鉱脈を発掘するという、そういうレベルになっているわけであります。  そうしたときに、実は最初、ジャパン・バッシングが起こりそうになった。地図を先に日本に特許で登録されてしまったらこれはたまらぬというようなことで、日本にある意味ではバッシングが来た。そのバッシングをどういうふうに切り返したかといいますと、基本的な地図の部分については実は特許をむしろとらないで全部オープンにする、そしてみんなでそれを使えるようにしてしまう。そういう意味では、公開あるいは共通情報をつくった。そして、その上で、個別の分野については先に地図をつくった人間が鉱脈の掘り方は一番わかっていますから、その点では個別の自分の権利というようなものを取得する。まさに、このイネゲノムの国際戦略というようなものを見ると、公開、協調、そしてその上で自分の権利を先付で守っていこうと。でありますから、言うならば競争と協調といいますか、公開あるいは協調しながらオープンにする。ベーシックなものは全部見せてしまって、その中で個別のものを守っていくという大変バランスのとれた戦略を立てた。  私は、今、例えばヤフー等の新しい情報の世界においても、むしろ特許をとるんじゃなくて基本的なものは全部共有にしてしまう。特許をとって自分で囲い込むというんじゃなくて、みんなに先にオープンにしてしまって、その上で事実上自分の先行的な利益というようなものを守っていこう、こういう戦略をとっているような感じがするんです。  まさに、これはこれからの日本の知的財産権の戦略として、言うならば協調と競争のミックスといいますか、基本的なものは公開をし協調する。ただし、基本的なものをどんどん先にやらなきゃだめですけれども、その上で公開をしていく。そして、第二段階として自分の先行利得を先に確保していく。こういうふうなミックスした戦略が必要なんじゃないのかなと思いますけれども、もしよければ大臣の御見解をいただければと思うんです。
  49. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本もイネのゲノムばかりでなくヒトのゲノムも相当一生懸命読んでおりますけれども、読まなければならない塩基配列というのは膨大なものでございまして、ヒトのゲノムに関しては、むしろDNAを全部読むというよりは、今、cDNAの方を読むことを一生懸命やっております。  これの研究開発体制ですが、文部省、農水省、厚生省、手前どもと科技庁で、閣僚レベルで五者でこれからは政策の整合性を図っていこうというようなことがことしの春からできました。  こういう中で、やはりバイオの技術というのは、いわば医学の分野で人間の生命にかかわることでもありますし、また食糧を初めとしたいろいろな人間が生きていく上で必要な技術を提供する、私は非常に将来性のある分野であると思っておりますので、小渕総理が提唱されておりますミレニアムプロジェクトにおいてもバイオというものを相当重点を置いてやっていただきたいと思っておりまして、これはこれから努力をするつもりでございます。  そこで、ゲノムを読んだときは、ヒトのみならずイネのゲノムその他の生物のゲノムに関して知的所有権は一体だれのものかという大問題があります。一般的に、ただ塩基配列だけを読むということが果たして特許法とかあるいはその他の知的所有権の対象になるのかというと、そこのところは私はただ読むというだけではならないんだろうと。やはりそのあるDNAの一部分が一体どういう機能を果たしているのか。例えば、がんの遺伝子なのか、ある種の人間が生きていくために必要な作用をする遺伝子なのかという、いろんな解析が必要なわけでございまして、その点についての知的所有権はどうあるべきかというのは基礎産業局長の方からお答えをさせていただきます。  ただ、我々が気がつかなければならないのは、この分野というのは非常に地平線の広いところでございまして、こういう分野日本が相当力を入れませんと二十一世紀の日本の科学技術というものは世界から大きく立ちおくれるのではないか。また、こういう分野というのは、将来いろんな企業というものを発現させ得る可能性のある分野ですから、我々は心してこの分野に力を入れていかなければならないと思っております。
  50. 簗瀬進

    簗瀬進君 答弁は結構でございます。最後の質問一つ残しておりますので、これをさせてください。申しわけございません。  いわゆるTLO、言うならば大学等の高等研究機関技術を民間に移転していこうという動きでございまして、この点について最後にちょっと質問させていただきたい。  今、お手元の資料の百八十七ページにも挙げられておりますけれども、全国にいろいろなTLOが昨年の立法化を受けてぽつらぽつらできつつあります。その中で、一番上の方に東京大学の先端科学技術インキュベーションセンター、CASTIというものが出ております。平成十年八月三日、設立形態は株式会社。実はどんな株式会社かといえば、東大の先生方が百万円ずつ十人で拠出をしてつくった資本金一千万円程度の会社だと、こういうふうに聞いております。大学の先生はそんなに給料は高くはないだろうと思うんです。お一人百万円ずつ出したということはこれはなかなか大変なことだったのではないのかと。この程度の支援ではやっぱりちょっとかわいそうだなと。学者の先生もお笑いでございますけれども。  そしてもう一つ、例えば研究をする、今度、日本版バイ・ドール法ができた、その研究成果を自分のものにすることもできるとなったときに、例えば日本だけじゃなくてアメリカ、EU、それぞれの世界のいろんな影響あるところに特許申請したい。それを安く見積もっても、全世界の重立ったそういうところに申請をすると大体一千万から二千万円ぐらいの間かかってくる。それが手当てされていないと、どんなにこのTLOの立派なセンターをつくったとしても、研究を積極的に海外に出して、そして自分の特許にしていこうと、こういうインセンティブが起こらないだろうと思うんですよ。  だから、こういう意味での資本の援助とかあるいは特許申請をする際にもうちょっと何かバックアップできるようなそういう手当てができないものか、ちょっと最後に聞かせていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  51. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 時間が過ぎていますので簡潔にお願いします。
  52. 林洋和

    政府委員林洋和君) はい。今回、日本の特許庁に出します特許料あるいは審査請求手数料負担軽減措置を講じますが、外国における特許出願はなかなか難しいのではないかと思います。  ただ、TLOに対して現在年間二千万を上限とした助成金を交付するとともに、債務保証等の支援措置を行っているところでありますので、日本の特許庁に対する軽減措置とこの助成金、これは一年限りではなくて何年間か続けたいと思っておりますので、そういったものを通じてTLOを支援していきたいと考えております。
  53. 簗瀬進

    簗瀬進君 どうもありがとうございました。
  54. 海野義孝

    ○海野義孝君 公明党の海野でございます。  限られた時間で本法案につきまして御質問したいと思います。  我が国経済再生産業再生ということが急務でございまして、これまでも八次、九次にわたるいわゆる需要サイドでの経済対策景気対策、こういったものが打たれてまいりましたけれども、なかなかその効果がただいま現在まだ十分には顕在化していない、こういう状況であります。このデマンドサイドと供給サイド、サプライサイドのこの両面から経済産業再生活性化を図るということはまさに車の両輪であろう、このように思うわけでございます。  これまでアメリカにおきましても、七〇年代の後半のカーター政権における規制緩和あるいはキャピタルゲイン減税等による創業ベンチャー支援策、あるいは八〇年代前半のいわゆるレーガン時代の減税、規制緩和等、言うなればサプライサイド政策というものがここで出てきているわけですけれども、こういったレーガノミックス、さらには九〇年代前半の戦略的な技術開発支援策等、職業教育の強化等による雇用流動化政策、こういったものを推進したクリントノミックス、こういった一連の政府主導型によるインセンティブを与えて産業経済活性化というのが進んできたわけでございます。こういったアメリカの経済再生と本法案との関係といいますか、そういったことについて最初に大臣にまずお聞きしたいわけであります。  今回の産業活力再生特別措置法案でございますけれども、この中では三つの柱立てになっておりまして、第一点が事業構築円滑化、それから第二点が創業及び中小企業者による新事業開拓支援、第四章が研究活動活性化というようなことでございます。  さっき冒頭に申し上げましたように、アメリカにおきましては、レーガン政権によりましてこうした同様の政策がこれまでも実施されてきたわけであります。レーガン政権以降のアメリカの政権が行ったサプライサイド政策につきまして大臣はどのように評価されていらっしゃるかという点、特にアメリカの産業競争力の復活、こういった要因についてもあわせて御所見というか、お考えをまずお述べいただきたいと思います。
  55. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 米国においては、先生今お話しくださいましたように、八〇年代、大胆な減税と規制緩和を中心とした、我々がレーガノミックスと呼んでおりますが、レーガノミックスの取り組みと並行いたしまして、技術開発推進策、ベンチャー企業育成等の施策を展開してまいりました。  個々の施策についての評価はさまざまでございますが、八〇年代後半から民間企業競争力強化への取り組み、国際化、情報化への柔軟な対応等と相まって、これらの施策は現在の好調な米国経済を招いた一因と考えております。  この我々が出しております法律も、法律自体の直接的な効果のほかに、この法律を通すことによりまして企業家一般のマインドが時代に対応するように変化していくということを我々は期待しているわけでございます。
  56. 海野義孝

    ○海野義孝君 まさに今大臣指摘のとおりで、今回の産業再生のこの法案によりまして、民間産業のまさに一つの起爆剤となって、これまでいわゆる日本産業界は、自律的にといいますか、そういった活性化というような面の動きというのがこのところ余り見られなかったということでございますが、これを一つのインパクトとして産業活性化が進む、起こるということを期待したいわけでございます。  そこで、次の点でございますけれども企業事業の再構築ということにつきましては、その計画を出す主務官庁におきまして、閣僚において認定をする、こういうことになっているわけでございます。これについて巷間言われていることは、いわゆる公的な面での裁量、行政の裁量というふうなことがよく言われるわけでありまして、行政の過度の介入とかあるいは恣意性を排除するというふうな観点から、可能な限り認定基準というものを具体的に提示するということが肝要であろうということでございます。もうこれは当然のことなのでありますけれども。  この法案が成立したならば十月にも施行されることになるわけでございますけれども通産省におかれては、九月中旬までに専門家とか民間の意見を聞いて十分に取り入れて、そして数値指標を定めた客観的な基準を作成する、このように承知しているわけでありますが、現在の作業状況という点。それから、これについてはこれまで認定の七条件というものについていろいろないきさつがあったように思いますけれども通産省としては恣意的な運用の入る余地のない透明なものにしたいと、このようにおっしゃっているように承知しているわけであります。  現在の具体的な作業の状況と、今回の基準についてガイドラインですか、これをお決めになるに当たって、特に力点というか留意されている点について改めてお聞きしたいと思います。
  57. 江崎格

    政府委員江崎格君) 今御指摘主務大臣による認定の制度でございますけれども、極力客観的な基準を設けまして、恣意性を極力排除する透明なものにしたいというふうに思っております。  例えば、生産性の相当程度の向上というような認定基準もございますけれども、これにつきましては例えば株主資本利益率ですとかあるいは従業員一人当たりの付加価値ですとか、そういった極力数値化した目標にして基準を当てはめたいというふうに思っております。  具体的な数値をどのぐらいに設定するかというのは、これは経済の実態を十分踏まえたいと思っておりますし、また専門家の御意見、あるいは関係する省庁とも相談をしたいと思っておりますし、また、インターネットなどを通じまして一般からのパブリックコメントも求めたいというふうに思っております。こういった手続を経まして、告示という形で細目を公表したいというふうに思っております。  作業の状況ですが、現在内部で作業をしておりますが、近く、今申し上げましたような手続を経まして、九月のできるだけ早い時期に告示にまでこぎつけたいというふうに思っております。
  58. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  昨年秋の金融法案の成立によりまして、その後、金融機関におきましては公的資金の導入等によってその金融システムの安定、確立のために今努力をされているわけでありますけれども、ああいった中でも、早期是正措置の問題について、国際的な業務を行っている金融機関については自己資本比率八%、国内業務のみの金融機関については四%というふうなことに対して、国内についても八%というふうなことを言っているような向きも行政側にあるように聞きます。  こういった問題について、恣意性というか、そういったもののないようにオープンなものをきちんと最初に確立していただくということが、まさにこの行政の裁量というものが今回のせっかくの法律によって日本再生に向かって産業界が踏み出していく中で問題を後々残すことになるのではないか、このように思いますので、そういった点でも今回の基準の設定につきましては厳格に、また透明にそれを設定していただくことをお願いしておきます。  次に、事業構築支援につきましては、大企業偏重のそういう政策、施策であり、結果としても限界的な業種、限界的な企業の温存というようなことにしかならないというような論調があるやに思うんですけれども、そうであってはならない。今回この法案を見ますと、対象企業は特に限定されていないということでございまして、中小企業が行う事業構築もひとしく支援対象となる、このように私は理解するわけでございます。  広く我が国経済全体の活力再生を目指すということであるならば、本法案による施策の適用についても中小企業にも特段の配慮を払うべきである、このように考えますが、具体的な内容についてはその点いかがでございましょうか。
  59. 江崎格

    政府委員江崎格君) 私ども、中小企業我が国経済に果たしております役割にかんがみまして、この法案に基づきまして中小企業に対して講ぜられる施策につきましても特に配慮するということで、この十九条に「中小企業者への配慮」という条文を設けたわけでございます。  この法案に基づきまして中小企業者に対して講ぜられる施策に加えまして、他の法律などによります支援対象に該当する場合もあわせて、融資ですとか保証とかあるいは税などに係ります支援策を総合的に展開していくことを考えております。  具体的に申し上げますと、中小企業者支援するための施策としまして幾つかあるわけでございますけれども、この法律に基づくもののほかに、中小企業経営革新支援法に基づく支援措置、あるいは中小企業創造活動促進法に基づく支援策、それから新事業創出促進法に基づく中小企業技術革新制度、これはSBIRと言っているわけですが、あるいは中小企業総合事業団によります新事業開拓への助成など、それぞれの趣旨においてさまざまな制度が用意されております。こういったものを総合的に活用することによりまして、中小企業者に対してかなり手厚い支援策が講ぜられるというふうに思っております。  それから、特に税制でございますが、税について具体的に申し上げますと、今回の税制改正でもちろん欠損金の繰り越しですとかあるいは繰り戻し、それから買いかえ特例など、すべての税目で中小企業者に対しましても適用されるわけでございますけれども、特に中小零細企業者に対しましては、まず第一に新規設備の投資減税でございますが、中小零細企業の場合に限りまして特別償却と税額控除を選択できるようにする。それから、その中で中小零細企業の方々が特に特別償却を選択された場合には、大企業に比べて二割から六割ぐらい特償の割合が高い三〇%という率を設定することにしております。  それから、対象の設備でございますが、これも大企業の場合には設備を特定するわけでございますけれども、中小零細企業の場合には機械装置であれば種類を問わないということにしております。  それから、買いかえの特例、共同出資子会社に対する現物出資の特例の適用でございますが、これも業種指定の際に、特に中小零細企業性の高い業種については配慮して指定をする、そのようになっております。  以上でございます。
  60. 海野義孝

    ○海野義孝君 後ほどまたお伺いしようといった点もございましたけれども、今、大分お答えいただいて、ありがとうございました。  次に、雇用問題についてちょっとお聞きしたいと思います。  この本法案につきましては、企業組織の改編などを通じました事業の再構築を積極的に支援しているというような点があります。しかしながら、過剰設備の廃棄に企業組織の改編を加えた急激な企業の合理化という点では、やっぱり雇用の維持という点で大変大きな不安という面が伴うということが危惧されるわけでございます。  企業労働力というものにつきましては、まず第一点としては同一企業における新規設備投資により吸収をする、二つ目は分社あるいは営業譲渡、合併等を通じた企業再編による効率改善の中で吸収をする、第三点は新規産業の振興による新規雇用の創出により吸収する等、今後はマクロの面でダイナミックな労働移動といったことも期待できなくはない。現下の情勢から見ますとなかなかそれも希望でありますけれども。  本法案の実施に当たりましては、雇用への配慮に万全を期するという必要が当然大事なわけでございまして、この点についての通産省の考え方はどうであるか、また本法案の認定を受けた場合にどのような雇用支援策が適用されるか、こういったことにつきましてお答えいただきたいと思います。
  61. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) この法案におきましては、雇用にしわ寄せをすることなく事業構築を進めるという観点から、まず第一に法目的、第二に事業構築計画の認定要件、また第三点としては事業構築の実施における認定事業者や国などの責務において雇用へ配慮する内容を規定しているところでございます。  具体的には、事業構築計画の認定要件の一つとして、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」を設けまして、雇用に影響がある場合には、労使間で十分に話し合いを行ったかどうか、労働者に対する配慮を十分に行って計画を実施しようというものであるかを確認することとしております。  また、認定事業者事業構築を実施する際にも、当該事業者労働者の理解と協力を得るとともに、失業の予防など雇用の安定に努めることとあわせて、国等も必要な支援措置を講ずることをその責務として規定しているところでございまして、人材移動特別助成金等、緊急雇用対策に盛り込まれた施策等を最大限活用して、雇用面での配慮に万全を尽くしてまいりたいと考えております。
  62. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  企業事業構築、これが軌道に乗っていくかどうかという点では、この雇用の問題が極めて円満にといいますか、安定した形の中で事業構築が推進されるということで、こういった法の運用についてはひとつ厳格にお願いしたいと、このように思う次第でございます。  次に、バブル崩壊後の企業事業構成の見直しの中で、分社とか営業譲渡あるいは合併等々が大変ふえてきているということは御承知のとおりかと思います。この法案の中でも、そうした企業組織の改編ということにつきまして事業構築の重要な手段とされているわけでございまして、商法等の企業法制についてさまざまな特例が設けられているわけでございます。  本法案では、商法の特例としては、会社設立の際の検査役調査の簡素化、あるいは簡易営業譲り受け制度の創設、ストックオプションの付与対象、付与限度の拡大等の措置が講じられているということで、これは大変適切であると、このように思います。これらは、言うなればグローバルスタンダードに合致したそういう企業法制の構築の観点からしましても大変重要と、このように判断いたします。  問題は、今後はそうした措置が一般企業においても適用される、つまり今回の事業構築の認定を受けたそういった企業等ということではなくて、広く一般企業においても適用されるように商法の見直しを含めた検討ということが私は必要ではないかと、このように思うんですが、法務省からおいでいただいておりますか、その点についてちょっとお答えいただきたいと思います。
  63. 細川清

    政府委員(細川清君) お尋ねの第一点の現物出資等の検査役調査についてでございますが、これは会社資本充実等の観点からこの制度が認められておりますので、何らの代替策なく一般的に廃止することは適当ではないと考えております。  そこで、本年の七月七日でございますが、私どもが公表しました会社分割法制の創設を内容とする商法等の一部を改正する法律案の要綱中間試案というものにおきましては、合併の場合と同様に、分割により設立する会社資本の額を分割する会社から承継する財産の額により制限することにより資本の充実を確保するということにしておりまして、この結果、その場合には検査役調査は要らないということになるわけでございます。  この制度利用いたしますと、現在は営業の現物出資による分社については、検査役調査を要しない会社は分割により行うことが可能になるというふうに考えております。  それから、御質問の第二点の、簡易な営業譲り受け制度の新設の問題でございますが、商法上営業の全部の譲り受けについて株主総会の特別決議を経なければならないということになっておりますのは、これは既存の株主の利益に大きな影響があるからでございます。  しかしながら、営業の全部の譲り受けの場合であっても、その対価によっては必ずしも譲り受け会社の株主に重大な影響を及ぼさない場合がございます。このような場合には、株主総会の特別決議を要しない簡易な営業譲り受けの制度を認めることが企業の再編成のための法制度の整備をより充実させるという観点から適当であると考えております。  そこで、先ほどの要綱の中間試案におきましては、一定の要件のもとに特別決議を要しない簡易な営業譲り受けの制度の創設についても提案しているところでございます。  第三点目のストックオプションにつきましては、これは会社の業績が向上すれば取締役、使用人がその値上がり分の相当額の利益を得ることができるので有能な人材を確保できるということでございます。  そういうことでございますので、今御審議中の法案で認められているような特殊な場合に子会社の使用人に拡大することは適当だと考えておりますが、商法上の一般的な制度としてその付与の対象を子会社の取締役にまで拡大する、あるいは発行できるストックオプションの額をふやすということはもう少し検討する必要があるだろうというふうに思っております。  ですから、最初に申し上げました二点につきましては、次期通常国会に商法改正案を提出いたしたいと考えておるところでございます。
  64. 海野義孝

    ○海野義孝君 次に、ベンチャー企業に関しての御質問をいたします。  ベンチャーによる新事業開拓支援につきましては、さっきもちょっとお触れになりましたけれども、資金供給に加えて、経営面のサポートなどソフト面での支援も必要であるわけでございます。また、新事業開拓には、既存の中小企業者に加えて、大企業からスピンアウトした人材、あるいは学生、主婦等の新たな人材の事業参加も不可欠であろうと、このように思うわけでございます。  資金の支援やソフト支援等の公的な支援施策についての一層の普及啓発という点が必要ではないかと、このように思うわけでございますけれども、具体的にこれについてどう今後お取り組みになるか、あるいは現在取り組んでいらっしゃるか、その点についてお聞きしたいと思います。
  65. 林洋和

    政府委員林洋和君) お答え申し上げます。  通産省といたしまして、創業者あるいは中小・ベンチャー企業に資金、人材、技術、いろいろな支援をしております。例えば、信用保証等を除きましても、今御指摘のソフトでございますけれども、六月十一日の産業構造転換・雇用対策本部において決定されました中に、「経理面、法務面等からサポートする人材のネットワークを整備する。」というようなこと、あるいは資金支援、今審議していただいております法律の無利子あるいは信用保証制度、こういったこともやっております。  ある意味では、なかなかアメリカと違って日本ではいろんな制度をつくっても、創業あるいはベンチャーが進まないという社会そのもののあり方あるいは国民性そのものにかかわる問題であるがゆえに、私どもとして今御指摘の点も含めて、常に言い続けて支援をできるように努力していきたいと思っております。
  66. 海野義孝

    ○海野義孝君 次に、TLO関係研究活動活性化に関する章について、時間が限られておりますので一問だけちょっとお聞きしたいと思います。  この法案におきましては、研究活動活性化の一環としまして国立大学等の研究開発成果の民間移転を促進する措置、つまりTLOに対する支援を講じているわけでございます。  TLOは、大学の外郭組織といってもその位置づけは民間機関でありまして、先ほども同僚委員からも株式会社としてそういった機構ができているというお話ですが、現在の位置づけは国立大学の教官、研究員による役員兼任は現行では禁止されているわけでございます。TLOによる研究成果の民間移転、つまり事業化をする、それを推進するためには国立大学の教官等の役員兼任規制の見直しといったことがやはり不可欠ではないか、このように思う次第でございます。これに対する現在の取り組み状況はどのようであろうかといった点をお聞きしたい。  もう時間があれですから、これは文部省の方かと思いますが、もう一点だけ申し上げたいのは、アメリカにおきましては、現在、TLOはその役割を大きく変えて、単に技術ライセンスだけでなくて地域におけるハイテクベンチャー企業創出の中心的な役割を果たし始めているといったことを聞いているわけでございます。そういった意味で、我が国での今後TLOの活動ということにつきまして、こういったことを踏まえて今後の展望というか、そういったこともあわせてお聞きできればと思います。  よろしくお願いします。
  67. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 役員兼業の話でございますが、国家公務員としてのその公僕性との関係で種々議論がございまして、御心配をおかけしているわけでございます。今、人事院を初め関係省庁とも御相談しておりまして、TLOで株式会社立もあるわけでございますけれども、少なくともTLOの役員兼業につきましては、来春、平成十二年四月から実施すべくスケジュールを立ててございまして、この九月末までにいわゆるパブリックコメントの開始手続を行いながら、その要件を今協議中の段階でございます。  それから、今後のTLOを初めとする地域の産学連携のあり方についての御質問でございますけれども、おかげさまで私どもいろんな仕組みを整備させていただいておりまして、ここ十年間で産学連携の実績としましても共同研究で六倍、あるいは受託研究で八・五倍、それから各地域におきます大学の研究者と地域の民間企業等、産学官の連携のための共同研究センターの設置もこの十年間で十八倍近くふえているという状況でございます。私ども、この地域研究センターなどをさらに充実させながら、かつ、今のせっかくのこのTLOというのは研究者の独創性に基づくいろんな研究成果をうまく技術移転する仕組みでございますので、この活用を通産省とも御相談いたしながらさらに積極的に取り組んでまいりたいと思っているところでございます。  なお、アメリカとの関係で御心配いただいてございますけれども、アメリカのバイ・ドール法というのは一九八〇年に制定されたものでございまして、その成果がやっと昨今出てきている。ここ二十年近くかかっているわけでございますが、日本の場合にさらにそれを加速させて、さらにもう少し短いタームで一定の成果が出ますように私ども関係省庁ともさらに協力してまいりたいと思ってございます。
  68. 海野義孝

    ○海野義孝君 時間ですから、これで結構です。
  69. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  私は、雇用確保についてまず最初にお伺いしたいわけですけれども、先ほど同僚委員からも三つの過剰の問題が出されておりましたけれども企業過剰設備の処理等に伴ってやはり過剰雇用を解消しようとするならば、失業率は言うまでもなく一層高まることは目に見えているわけであります。  平成十一年度の経済白書では過剰雇用が二百二十八万人と推定しておりますが、現在では既に三百万人を超えている。あわせて、今後を考えていくならば五百万人を超える雇用対策が必要なわけでありますけれども、緊急雇用対策及び産業競争力強化対策の中では雇用創出効果としては七十万人程度というふうに言われているわけであります。これは焼け石に水と言わざるを得ないわけですけれども、この辺について労働省はどのように考えていらっしゃるわけですか。
  70. 松崎朗

    政府委員(松崎朗君) 今回の緊急雇用対策におきましては、従来からの雇用の維持安定を中心といたしました対策に加えまして、雇用機会の創出を最大の柱といたしまして、特に厳しい雇用情勢の影響を強く受けております中高年の非自発的失業者等の方を重点に置きまして、七十万人を上回る規模を対象として雇用就業機会の増大策を実施するということ、さらに従来から行っております就職支援策の対象を十万人拡大して実施し、再就職促進に取り組んでいくということにしております。  今回の補正予算は、緊急雇用対策を実施するために必要な経費の追加を行うというものでございまして、今後その迅速な施行によりまして確実に効果があらわれるものというふうに考えております。
  71. 加藤修一

    ○加藤修一君 小渕総理が五月にアメリカに行ったときに、シカゴ大学の学生とのいわゆるディスカッションミーティングで、総理はこういうふうに答えております。「企業内に多くの失業者を抱えては競争力がなくなる。残念ながら失業率は、若干また増加せざるをえない」、こういうふうに述べておりますけれども、これは聞きようによっては競争力回復のために雇用情勢の悪化には目をつぶるというふうに受け取られる発言であるように私は思いますが、総理がそのような認識ではちょっと困るわけです。国民の将来生活に対する不安はこういったことからも増幅につながるわけでありますし、やはり我が国経済再生に希望を持たせる言い方をしていただきたいわけであります。  当然のことでありますけれども、この雇用の確保については経済政策の最重要課題として取り組むべきであると思っております。通産大臣の御認識を伺いたいということでございます。  あわせて、新規産業の新展開、これは当然今後力を入れてやっていかなければいけない話だと思いますけれども、成長十五分野、とりわけどの分野について重点を置かれて考えていらっしゃるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  72. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 我が国経済活力を維持し、良質な雇用機会を確保するためには、新規産業の創出、中小・ベンチャー企業の新規事業機会の拡大等を図ることが必要でございます。  通産省としては、経済構造の変革と創造のための行動計画において医療・福祉、情報通信、バイオテクノロジー、環境などの今後成長が期待される十五の産業分野を挙げ、関係省庁との密接な連携のもと、抜本的な規制緩和、技術開発、人材育成等の施策を推進しております。  加えまして、産業活力再生特別措置法案においては、中小・ベンチャー企業等に対する設備資金の無利子融資制度拡充信用保証制度の特例等を盛り込むとともに、これによって資金調達の多様化、円滑化の観点からの中小・ベンチャー企業支援策の一層の充実を図っているところでございます。通産省としては、こうした取り組みを通じて、引き続き新規産業の創出及び良質な雇用機会確保のための環境整備に努力をしてまいりたいと考えております。  なお、総理のシカゴでの発言は、結局、こういうふうに構造改革をしてまいりますときに、生産性の低い部分に張りついている資本労働をマクロ的には生産性の高いところに移動させなければならないという作業はどうしても避けがたいことでございます。しかし、かといって乱暴なやり方で資本労働を移動させるということなのかといえば、この法律の根底に流れております考え方は、雇用不安を起こさないとか、あるいは労働者の理解と協力を得ながら物事を進めるとか、そういうことが幾つか書いてございまして、やはり労働力もスムーズに円滑に移動していくということが望ましいことは言うまでもございません。  ただ、過渡期の現象として、会社から会社に移るという現象は多分起きてくるだろうということ、部分的にはそういうことが生じるということは正直に申し上げていいのではないかと思っております。
  73. 加藤修一

    ○加藤修一君 冒頭、十五分野について情報、環境等の話もございましたけれども、やはり日本経済をリードするために新しい産業を国家プロジェクト並みに考えて育成していく必要があるということは言うまでもないことだと思います。  例えば、情報通信分野についてはソフトウエア産業が大変おくれているというような認識を私は持っておりまして、かつてソフトウエアの危機ということで通産省が音頭をとりまして、四十数万人プログラマーが足りないということで全国各地に専門学校等をつくったわけであります。  それにしても非常に腑に落ちないことは、ソフトウエアの輸出入を考えていきますと輸出が一に対して輸入が一七〇という割合なんですけれども、この辺については通産省はどういうふうにとらえていらっしゃるでしょうか。
  74. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本は、ハードウエアも相当優秀ですし、ソフトウエアも多分優秀だろうと思います。  ただ、ここ十年ほどで起きたことは、いわば米国のOSが世界的な独占を果たしたという中でのソフトの開発でございますから、インターフェースなどのことを考えますと、同じ能力を持っていてもどうしても後発組になるということでございます。  例えば、日本のワープロソフトを開発する優秀な会社があります。ところが、新しいOSが世間に発表されてからそれとのインターフェースを持ったワープロを開発するということでございますが、そのOS自体を供給する会社が先回りしてワープロ機能を開発しておりまして、そういう意味では日本独自のOSを持っていないことのマイナスということを私はしきりにみんなに言っておるんですが、そこがなかなか皆さんに理解をしていただけないことであると思っております。
  75. 加藤修一

    ○加藤修一君 OSの話はともかくとして、インドとか中国とかマレーシア、韓国なんかを考えていきますと、デファクトスタンダードに匹敵するようなソフト製品が出始めている、急速に伸びているということを考えていく必要があるのではないかと私は思うんです。それと、日本の流通の形態がオーダーメードでつくられている。そういった面を考えていきますと、デファクトスタンダードの方向に流れづらい、今パッケージが主流でありますから。  また、特定産業のサービスの統計を考えてみますと、プログラマーの比率が平成三年は二九%、六年で二二%、九年で一九%という形で最近非常に減ってきているわけなんです。私は、ある程度のプログラマーの人材層は必要だと思うんですけれども、その部分だけを育成するというのは極めて偏っているのではないかと思うんです。  それで、デファクトスタンダードが出るような形の仕組みをぜひつくっていくべきではないかと思います。オーダーメードの世界に安住するような形ではいけない。世界のトップのプログラマーはこういうことを考えているんだということがまだまだ日本のプログラマーのリーダーの中に浸透していない。そういった意味では、意識を覚せいさせる必要があるのではないかと私は思うんです。  そういった点から、明治のときにお雇い外国人制度というのがございましたけれども、それに匹敵するような平成のお雇い外国人制度、スーパープログラマープロジェクト、こういったことでインターネットを中心としたコアの技術に関して教えを請う、そこまで日本の情報処理関係のプログラムの開発についてはおくれている、そういう認識でおりますので、こういうプロジェクトを推進すべきだと私は思いますけれども、どうでしょうか。
  76. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 特に、インドの方なんかのお話を伺いますと大変すぐれている。ソフトというのは何十万人でやる仕事ではなくて、一人の優秀な発想を持った人がいて、その方と何人かでグループをつくるとソフトというものができてしまうわけです。  ただ、今のソフトというのは、一般的に売っておりますのはウィンドウズに乗るようなものばかりでございまして、そういう意味では、最近はリナックスとか、あるいは日本人が発明しましたトロンとかというものも大分利用されてきておることは大変望ましいことでございます。  先ほど申し上げましたのは、ウィンドウズに乗るようなソフトをつくること自体は相手からインターフェースを教えてもらわないとなかなかできないという問題があって、実はそういう意味ではOSを持っていないことの不利というようなことは大変大きいと私は思っております。
  77. 加藤修一

    ○加藤修一君 時間がないから次に参りたいと思います。  雇用の創出あるいは受け皿として考えていくものの一つとして、最近は報道なんかされておりますけれども、NPOの関係でございます。  産業連関分析で新ゴールドプランなんかを考えて分析していきますと、介護の社会化ということで、福祉における付加価値が高いということから雇用にはね返ることが公共事業なんかに比べると高いというふうに言われているわけですけれども、NPO自身も雇用創出機能というのは十分私はあり得ると思っていますし、アメリカはGDPの七%に匹敵するというふうに言われているわけであります。  NPOの促進と雇用機会の創出、こういった観点についていかなる御認識をお持ちかということで経済企画庁にお尋ねしたいと思います。
  78. 金子孝文

    政府委員(金子孝文君) NPOといった場合にいろんなイメージがありますので、そこの辺をはっきりさせることがまず第一かと思います。  私どもは広義のNPOと言っているわけでございますけれども、広義のNPOというのは、これまであります公益法人、さらに医療法人、学校法人、こうした非常に広い範囲のNPOでありまして、これは当庁が平成九年度に調査したわけですけれども、それによりますと付加価値で十五兆円、GDP比三・一%ということであります。さらに、今申しましたように医療とか教育、さらには福祉がありますから、今後もその雇用効果は非常に大きなものがあるのではないか、こう考えています。  それから、これは私どもがやったわけではございませんけれども、先ほど先生がおっしゃったのもその一環かと思いますが、ジョンズ・ホプキンズ大学がこうした広義のNPO、この雇用がどのぐらいかという推計をしていますけれども、それによりますと、日本の場合には百四十四万人ということになっております。そういうことで、その広義のNPOとしては非常に大きな雇用があるのではないか、こう考えています。  ただ、私どもが現在所管しております十二月一日から施行されましたNPO法、それを狭義といいますと、これについては現在のところ申請が約千件、そのうち認証したものが三百九十四件ということになっています。  その母体というのが一体どういうものかなんですけれども、これこそまさに狭義のNPOでありますが、それは私ども調査したところでは八万六千ぐらいあるのではないか、こう考えています。かなりのところはボランティアですから、それが一体どのくらいの雇用があるのか。これは推計するしかないわけですけれども、この規模自体が余り、つまり狭義のNPO自体は、別途私どもが推計してみますと付加価値としては三百億円、これはGDPの〇・〇〇六%という非常に小さいものですから、雇用についても今申しましたようにボランティアがかなりのものを占めるということになりますと、これ自体の雇用は現在のところ一万人ぐらいなのかなということであります。  したがいまして、狭義のNPOの雇用効果、これはどんどん拡大していきますからその拡大率は大きいと思いますけれども、その全体の雇用に占める貢献度というか、そこはまだ限られたものだと思っています。しかしながら、今後NPOがさらに活発化して雇用の面においても長期的には相当な役割を果たしていくのかな、こう考えている次第であります。
  79. 加藤修一

    ○加藤修一君 次の質問についての答弁までいただきましたけれども雇用の視点から、NPO法に基づいている業種について、将来どのぐらい伸びるかということも含めて、実態調査を踏まえた形での将来の見通しをきちっと立てるべきではないか、私はそう思うんですけれども、それについてはどういうお考えをお持ちですか。
  80. 金子孝文

    政府委員(金子孝文君) 先ほど申しましたように、母体としては八万六千ぐらいあるわけですから、それでその八万六千がすべて法人化するわけじゃないと思いますけれども、十二月一日から始めて一千ぐらいが申請してくるということですから、かなりふえてくると思います。しかし、それが一体どのぐらいになるかということを私どもとしては明確な形で申し上げる段階ではないと思います。
  81. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは次に、NPOとエコマネーの関係について認識を伺いたいわけですけれども、NPOがより拡大していく方向で運営がなされるという点ではエコマネーというのは極めて重要な位置を私は示していると思うんです。このエコマネーについては、例えば地域交換取引制度あるいは地域経済信託制度ということでローカル・エクスチェンジ・トレーディング・システム、LETSということが引き合いに出されるわけですけれども、このような仕組みが欧米では二千地域以上あるというふうに伺っているわけです。  こういったことについて、こういったことについてというのはNPOとエコマネーとの関係についていかなる認識をお持ちか、ちょっと時間がないので手短に質問してしまいましたけれども、よろしくお願いいたします。
  82. 金子孝文

    政府委員(金子孝文君) NPOは福祉、環境保全、地域づくりなど、いろんな面において今後一層積極的な役割を果たしていくということが期待されていると思います。それで、NPOといった場合にいろんな見方があるわけですけれども、やはり基本は、重要な要素は自主的なボランティア活動ではないか、こう考える次第であります。  それで、今先生御指摘のエコマネーですけれども、これはいろんな言い方があると思いますけれども、結局、ボランティア活動をポイント化いたしまして、そのポイント商品やサービスに交換できる仕組みである、簡単に言えばそういうことであります。そういうような仕組みをつくることによって先ほど申しました地域づくり、環境保全、高齢者福祉などのボランティア活動を一層活発化させようという仕組みではないか、こう考えています。  こういうことで、NPO活動を活発化させるためにさまざまな手法を今後考えていくのではないかと思いますけれども、このエコマネーについても、NPOが自主的に取り組むということはやはり活動の活発化のための有効な手法ではないか、こう考えている次第であります。
  83. 加藤修一

    ○加藤修一君 NPOの活動については、財政的な面とか税の面で支援をしていくべきだと私は思っていますけれども、NPOの所管である経企庁として、このエコマネーの活用例とか導入例、そういったものについての実態調査を私はすべきではないかと思いますけれども、手短にお願いします。
  84. 金子孝文

    政府委員(金子孝文君) 現在のところ余り調査はしていません。今、私どもが一生懸命やっていますのは、NPOが一体どういう活動をしているのかということをしっかり把握するということが役割だと思いますので、この面についてもしっかり把握していきたいと思っております。
  85. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、資源エネルギー庁長官にお尋ねしたいんですけれども、これは日本環境産業にかかわってくる話であります。今、私は、自然エネルギー産業についてこれから大きく伸びていく可能性があると思っていますので、その基本的な量として、例えば自然エネルギーの太陽光とか風とか、風については陸域、海域含めてですけれども、あるいはさらには波力とか小水力の関係、木質系バイオマス、そういった面における潜在量、これはどのぐらい想定しているか、推計しているか、その辺について御答弁を願えればと思います。
  86. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 自然エネルギーの潜在量につきましては、自然条件、社会条件、経済コストなど前提条件の設定で試算の値が大幅に変化をいたします。また、条件を合わせた統一的な調査は今のところございません。  ただ、風力発電につきましては、平成九年度にNEDOが、これは主には事業性に着目をした調査でございますけれども、各種の条件をつくりまして、その上で、単純に申し上げますと、毎秒七メートル以上の風が年間を通じてあり得るという場所につきまして、現在の余剰電力購入メニューの買い取り条件でほぼ事業性が成立するというものが二十万キロワット、また、この風速の条件を六メートル以上と緩和した場合、これは補助が必要でありますけれども、含めまして百二十万キロワットという数字が出されてございます。また、秒速五メートル以下で事業性の可能性はないというものまで含めれば二百二十万キロワットという数字が出されております。  海上に設置する風力発電所の潜在量につきましては、今のところ調査はございませんので、今後調査を行いたいと考えてございます。  それから、太陽光発電につきましては、住宅、産業施設の建築物が導入箇所となりますが、平成九年にNEDOが行いました調査によりますと、二千万から七千万キロワットという幅のある数字になってございます。これは、建物の強度とか日照時間とかの差を要件として置いたものでございまして、経済的コストに関する制約条件は考慮に入れていない数字でございます。  それから、小水力に関しましては、千キロワット以下の規模について約三十万キロワットの開発潜在可能量があると考えております。水力全体では今後千二百万キロワットという数字がございます。  それから、波力、バイオマス等については、今後の有望なエネルギー源でございますが、現在のところ精密な調査結果はございません。
  87. 加藤修一

    ○加藤修一君 統一的な調査をお願いして、私の質問を終わります。
  88. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ─────・─────    午後一時二十一分開会
  89. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、産業活力再生特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党の山下です。  六月の完全失業率は過去最悪の四・九%を記録しました。完全失業者数も三百二十九万人ということで、一年前よりも完全失業者数は四十五万人ふえたということになっております。  この数字を見て、小渕総理大臣がこういうコメントをされています。「厳しく受け止めている。数字をよくするため、あらゆる方策を検討する」と。  与謝野大臣も総理と同じ認識でしょうか。
  91. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 失業というのは社会不安の中でも最も大きなものでございまして、戦後は右肩上がりの経済成長の中で、先進国の中では失業者数というものは例外的に我々は低い数字を享受してきたわけでございます。ここのところその数字が五%に近づいておるということは、政治としては大変憂慮すべきことでございまして、我々は雇用不安あるいは実際の失業というものを改善していくためにあらゆる政策手段をとるべきであろう、そのように考えております。
  92. 山下芳生

    山下芳生君 もう一遍確認しますけれども数字をよくするためにあらゆる方策をとりたい、首相はこう言っておりますが、それはどうですか。
  93. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 私が申し上げているのは、失業というものは、働いている方々はそれぞれ扶養家族も持ち、家族もその収入を頼りに生きているわけでございますから、社会不安の中で最も大きなものの一つだと思っておりまして、単に見かけの数字ということを総理もおっしゃったんではなくて、失業というものを減らしていくというのはやはり政治が目指す一つの大きな方向であるということを申されたものと私は理解をしております。
  94. 山下芳生

    山下芳生君 いや、総理は数字をよくするためにあらゆる方策を検討するとおっしゃっているんで、これはもちろん単なる数字ということじゃないでしょうけれども、結果としてやっぱり数字もよくするために努力するということだと、これは読めばそう私は理解できるんですが、与謝野大臣数字はよくならなくてもいいということなんですか。
  95. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 失業者数が減りますと数字もよくなるということでございますから、そこで、数字をよくするというのは失業の統計にあらわれてくるものを指しているわけですが、実際は、実態として失業者数を減らす、失業の問題を解決していくということの必要性を総理は強調されたわけでございます。  私は、先生と言葉の遊びはしたくないと思いますけれども失業自体をなくすということをどう表現するかということは、失業率という数字をよくするというふうに表現するのか、失業者数を減らしていくように努力するというのか、それは表現の仕方によって違いますが、雇用に対して小渕内閣が持っております懸念とか憂慮とかまた心構えというのは極めて厳しいものであるというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  96. 山下芳生

    山下芳生君 では、次に進みます。  今の完全失業者数三百二十九万人のうち、リストラなどによる非自発的離職者が百十八万人となっておりまして、これも過去最高であります。これは一年前と比べてみますと二十八万人増ということになっております。ですから、一年前から完全失業者数が四十五万人ふえた中で非自発的失業者、離職者が二十八万人ふえている、半分以上の割合になっているわけです。  私は、こういう数字を見ますと、失業の増加の最大の原因というのはやはり企業のリストラ、人減らしにあると思いますが、この事実を大臣、お認めになりますか。
  97. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) ミクロで見ますと、それぞれの企業が苦しくなって雇用を維持できなくなったということでございますし、マクロで見ますれば、経済が好調でないためにそれだけの労働力が過剰になって、それが社会に出てしまったということだろうと思っております。
  98. 山下芳生

    山下芳生君 ですから、ミクロの問題で結構なんですが、数字にあらわれている失業の増加の原因で、これは非自発的離職者が最大のふえ方をしているわけですから、この事実はお認めになりますね。
  99. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 企業が倒産という形で廃業になった場合もあるでしょうし、企業が実際、大中小を問わず立ち行かなくなって企業の存立をかけて従業員の数を減らした場合もあるでしょうし、またリストラという名前のもとで会社自体をスリム化して将来に備えるというような場合もあるでしょうし、いろんなケースがありますが、ミクロに見れば、それぞれの企業雇用を維持できなくなったトータルがその非自発的失業者のトータルの数字だろうと思っております。
  100. 山下芳生

    山下芳生君 非自発的離職者がふえているということは、これは認めざるを得ません、数字ですから。  ところが、今審議されております本法案は、分社化やあるいは合併、不採算部門の売却など、事業構築、リストラというものがやりやすいように政府環境を整備するという法案であります。この法案が実施されると大量の人員削減が進むおそれがあるという指摘がありますが、私は、この法案が実施されれば今の非自発的離職者の増大による雇用環境の悪化がさらに加速されるんではないか、雇用悪化をさらに招くんじゃないか、失業増大をさらに招くんじゃないか、こう思いますが、この点の認識はいかがでしょうか。
  101. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 多分、先生も現状のまま行けとおっしゃっているのではないと私は思っておりますが、現状を打開して新しい経済を目指すためには、労働力のスムースな移動ということが必要であります。それは、社内で移動する場合もありますし、分社化あるいは子会社をつくってということもありますし、いろんな移動の方法がございます。また、会社をかわって転職せざるを得ないような場合もあるでしょう。  しかし、いろいろな場合を含めまして、私は、労働力をなるべく社内及びその社の関連企業、グループ企業の中にとどめておいていただいて、社会に出すということは避けていただきたいということが実は本音でございます。本音でございますが、仮に外に出ざるを得ないという場合には、いろいろな社会的なセーフティーネットを用意するというのが我々の責任であろうと思いますし、またこの法案の中では、事業構築をする場合には労働者の理解と協力を得てそういうことを行う、あるいは雇用不安を起こさないように十分な配慮をするということがうたってございまして、この法律をもって失業者が増大する法律だというふうに決めつけていただくのは少し我々の意図とは反しているなと思っております。
  102. 山下芳生

    山下芳生君 政府の意図がどうあるかというのを私は聞いているんじゃないんです。実際にこの法案が成立して実施される段階になったら、これは人員削減がさらに大量に進むおそれがあるんじゃないかという危惧をたくさんの方がお持ちなんです。政府はそうならないでほしいと願っている、大臣は特にそう願っているというのはよくわかりましたけれども、私はやはりもっと現実を直視する必要があるというふうに思うわけです。  例えば、日経新聞が七月三十一日に発表いたしました調査結果によりますと、株式公開企業大手九百十社の人員がどうなっているかという調査がありました。九五年度から九八年度末までの三年間で一社平均で約百九十人、人を減らしております。九百十社全体では十七万二千九百人減らした、これまでの三年間です。しかしこれで終わりじゃない。九九年度は一年間で一社平均五百六十六人、九百十社全体では五十一万五千人も減る見通しだと。さらに二〇〇〇年度は一社平均百九十六人、全体で十七万八千二百人、つまりことしと来年合わせますと七十万人がリストラで人員削減されるという、九百十社だけでもそういう見通しがあるわけです。  今度の法案というのは、そういう企業のリストラ、分社化や合併、不採算部門の売却などを支援する法案ですから、これはこういう計画、人を削減しようという計画を持っている企業からすればまさに渡りに船になるわけです。  人減らしがされることは明らかだ、こう思うんですが、これでもそうはならないとおっしゃるんですか。
  103. 江崎格

    政府委員江崎格君) 先ほどから大臣も申し上げておりますように、この法案というのは、生産性の低いところに張りついている経営資源生産性の高いところに移転させることをスムーズにしよう、そのための環境整備ということを考えているわけでして、専ら縮小することだけということを想定していないわけです。  ですから、ここで用意しております税制措置などについても、前向きの取り組みとあわせて行わないと税制支援措置の対象にならないというふうにしているわけでございまして、理念も手段もそういう方向に使うということでございますから、そういうような大量の人員削減がこれで起こるということは私どもは想定しておりませんし、法律上もそういうようなことについてはないように私どもとしては考えたつもりでございます。  それから、先ほど日経新聞のデータを引用されましたが、私、その記事を見ておりませんからわかりませんが、個々の企業従業員の数というのは、確かに企業の単体で見ますと減っているケースも幾つかあるわけでございますが、先生も御指摘になりましたように、ここのところ企業というのは大いに分社化をしたり子会社をつくるとか、いろんな形態をとりながら事業の再構築に向かって努力をしているわけでございます。  したがいまして、そこで働いている従業員の方もいろんな形で、自社内の配置転換だけではなくて、分社化したところへ行くとかいろいろな形でやっておりますから、グループ全体で見ると違った結果が出てくるのではないか、このように思っております。現に私ども、先般本会議議論になりましたけれども競争力会議のメンバーの企業を調べてみますと、グループで見ると必ずしも減っていないという結果が出ております。
  104. 山下芳生

    山下芳生君 それはいろんなとり方があると思うんです。しかし、グループ全体で見たら、新日鉄、トヨタ、日立、これは本体だけじゃなくて、グループ全体でも大幅な人員減になっております。そういう企業だって主力企業であるわけです。  それから、グループ内で抱えられたとしても、出向や転籍に伴って、これも私、去年でしたか、質疑の中で紹介させていただきましたけれども、これは単に雇用が守られたにとどまらない、やはり三割程度の賃金のカットだとか労働条件の低下というのが必ず伴って配転とか出向というのはやられるわけです。ですから、雇用さえ守られればそれでよしとするというのもいかがなものかということを私は指摘しておきたいと思います。  それからもう一つ質問に答えていただいていないんです。  一概にこの法案雇用を縮小することにはならない、そのつもりはないとおっしゃるんだが、企業の今の人員に関する意識動向からいえば、先ほど日経新聞で紹介したように、ほとんどの企業がこれから人を減らそうとしている。しかしそうならないと言うんだったら、通産省としては事業構築計画が提出されたときに、その計画を見て人員が縮小されるということがあれば承認しないという態度で臨むおつもりなんですか。
  105. 江崎格

    政府委員江崎格君) この法案の認定基準のところに「従業員の地位を不当に害するものでない」という条項がございまして、この基準に従いまして私ども、例えば雇用に影響のあるような計画の場合に、労働組合と十分な協議を行うなど必要な話し合いを十分行っているかどうかというようなことをチェックいたしまして、雇用の問題についても十分配慮した計画であるようにということを確認することにしております。
  106. 山下芳生

    山下芳生君 人員が減らされる、雇用が縮小されるという計画があれば承認しないということなんですか、承認する場合もあるということなんですか。
  107. 江崎格

    政府委員江崎格君) 個々の事業構築計画で、雇用が減る場合でも承認されるケースはあり得ると思います。ただ、その場合も、ここにございますような第三条六項の認定基準に適合する場合がございまして、これに適合する場合に、従業員の数が減っている場合というのが対象になることもあり得ると思います。
  108. 山下芳生

    山下芳生君 結局、人減らしの計画が入っていても承認することもあるということなんですよ。  私は、先ほど紹介したように、これは今、人を減らそうという企業が大半なんです。そういう企業に対して、こういう法案が法律になった場合には、やはりこれを利用してさらに人を減らそうと。解雇とか、そういう中身は別ですよ。しかし、人を減らそうという方向に働くのは当たり前じゃないか。  そうしますと、今の厳しい雇用状況雇用環境を少なくともこれはプラスに持っていくと大臣冒頭におっしゃいました、今の失業状況というのを数字も含めてよくさせていきたいと。総理も言ったし、大臣も意は一緒だと。しかし、この法案を通されて実施されたら、それと逆行するじゃありませんか。雇用はやっぱり減る、数字もさらに悪化するという方向にならざるを得ないと私は思うんですが、いかがでしょうか、通産大臣
  109. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本経済を立て直していくためには、過去のいろいろな過剰設備過剰債務過剰雇用というものを解消していかなければならないわけでございまして、私は、雇用に関しましては注意深くソフトランディング路線でやらなければならないと思っております。また、先進諸国の雇用慣行というのは、レイオフというような過激な、我々にはよく理解できないような方法をとっておりますが、私どもとしては、日本労働法規上もまた判例上も、また労使の慣行上も、労使がよく話し合って、その理解と協力のもとでいろいろな物事が進められてきているというのが日本の労使の関係であろうと思っておりまして、この法律もそういう範囲内で物事が進むことを願っておりますし、またそうでない方向で法律が書いてあるわけではございません。
  110. 山下芳生

    山下芳生君 やっぱり今のは机上の空論というふうに私には聞こえるんです。  いろんな方の御意見がありますが、例えばアメリカとよく比較されます。八〇年代以降、急速なリストラが進んだアメリカでは、情報関連産業やサービス産業などの分野の新企業が大量失業の受け皿となった。しかし、アメリカでは、全企業数に占める新規企業数の比率である開業率が、その当時既に一四%近くなっていて廃業率を大きく上回っていた。しかし、今の日本状況というのは、開業率は四%弱、廃業率の方が上回っているわけですから、職場というのは減少傾向にあるわけです。  ですから、アメリカは確かにリストラが進んでその受け皿が十分生まれ始めていた。しかし、今の日本はそうじゃない、廃業率の方が大きいというのが今の実態ですから、そのもとでこういう法律を施行して、また人を減らしたいと大半の企業が思っている中で、それがこの法案によって加速されることになれば、これはえらいことになる。受け皿がないのに失業が加速されることになるんじゃないのかということを心配しているわけです。  私は何遍聞いても、希望はわかるんだけれども、そうならないとは思えない。いかがでしょうか。
  111. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生は、その当時のアメリカの失業率数字もあわせて考えていただくともう少し事態ははっきりするのではないかと思っております。  その当時のアメリカの失業率というのは我々の考えられないような高い数字でございますし、ヨーロッパの経済の中でも失業率が一〇%をはるかに超えている国が幾つかあるわけでございます。そういう中で、我々としては、冒頭に申し上げましたように、雇用の問題というのは社会問題としては最大の問題であり、雇用不安あるいは失業という問題は我々が考え得る社会不安として最も大きなものの一つでございますから、そういう意味では、この法案をつくる過程でも、労働省とも相談をしながら雇用の問題には細心の注意を払ったつもりでございます。  ただ、先生のお話を伺っていると、物事をダイナミックにとらえないで非常にスタティックにとらえているという印象がございます。これは、やっぱり日本経済も社会も変わっていかざるを得ないわけでございまして、過渡的ないろんな現象に対して我々はいろいろな社会的なセーフティーネットを用意し、またそういうものがなるべく起きないようなソフトランディング路線をとっているということは、ぜひ御理解をしていただきたいと考えております。
  112. 山下芳生

    山下芳生君 日経新聞に、土志田征一日本経済研究センター理事長、御承知のとおり経済企画庁出身の方ですが、この方がこういうことを書いております。「気にかかることもある。新しい秩序や仕組みの構築にはかなりの時間がかかると思われ、それまでは経済再生は達成されない。その場合、景気回復はどうなっているのか。」と。ダイナミックに経済が動くというのは私たちも否定しておりません。しかし、今、雇用を確保できる状況にないのにそういうことをやってどうなるんだろうか、景気回復はその場合どうなるのか。経済再生が達成できない間の雇用の問題はどうなるんだろうかという心配です。  それからまた、日経のこの解説記事も、「リストラはどのくらいの期間、どの程度の力で景気を下押しするのか。経済対策によってようやく底入れした景気はそれに耐えうるのか。」と。  だから、今こういうことをダイナミックにおやりになると言うけれども、ダイナミックにやって新しい経済あるいは構造が生まれるのか。生まれる前に日本経済がさらに打撃を受けるんじゃないのかということを元経企庁の官僚の方もおっしゃっている。そういうことをたくさんの国民の皆さんが心配しているということを一言つけ加えておきたいと思います。  次に、大丈夫だ大丈夫だという雇用問題について法案に則して聞きたいと思うんですが、まずこの法案のスキームによく似た法律として事業革新法というのがございます。これでも構造改革ということが随分うたわれて、幾つかの企業がその承認をされて構造転換を図ったわけです。  そこで伺いますけれども、この事業革新法の承認企業の中で、人員削減はあったと思いますが、解雇はあったでしょうか。
  113. 江崎格

    政府委員江崎格君) 私どもが調べたのは、かなり大きく雇用数を減らした企業について調べたわけでございますけれども、ここに持っておりますデータで見ますと、千人前後あるいはそれを上回る雇用者の数が減った企業の中で解雇というものがあったのはたしか一社だけでございます。
  114. 山下芳生

    山下芳生君 本来、こういう事業構築だとかあるいは事業革新というものは、これはよく委員会答弁でもあるんですが、経営の危機ということとは直接はかかわりない、後ろ向きじゃないんだということをよくおっしゃいます。ですから、それをすることによって新たに事業を再構築して、その企業また経営を上昇させていくということが目的なんだということをよく答弁されます。そうなりますと、解雇というのは本来あってはならないと思うんです。  労働省に伺いますが、解雇が合法的であるための四要件というのは何でしょうか。
  115. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 整理解雇というふうに申し上げますけれども、いわゆる整理解雇の四要件、それは過去の裁判例によりまして大体確立されておるわけでございます。  順に申し上げますと、まず人員削減の必要性、それから人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性、それから解雇の対象者の選定が妥当であるという妥当性、それから解雇の手続の妥当性、これらを申しまして、正確には四要件と言っております。
  116. 山下芳生

    山下芳生君 つまり、今の四要件がすべてクリアされなければ合理性を持つことにはならないということになっているわけですね。そうすると、役員の報酬を減給するというのはもう当然ですが、その前に、自然減による不補充でありますとか配転や出向、希望退職の募集などあらゆる努力をして、それでも人員削減の手段として解雇がやむを得ないとしたときだけしか解雇というのはやってはならない、合理性を持たないということだと思うんです。  そこで、そう考えますと、私は今度の法案というのは、これはやはり事業の再構築経営の危機ではありませんから、初めから整理解雇というのはこの中に含まれるはずがない、含まれていいはずがないと思うんです。事業構築計画というのは整理解雇を当然含むべきじゃないと思いますが、いかがでしょうか。
  117. 江崎格

    政府委員江崎格君) 整理解雇の問題ですけれども事業構築というのはそれ自体が人材の有効活用ですとかあるいは新たな産業雇用の創出に向けた前向きな取り組みでございまして、そもそも整理解雇というような事態を念頭に置いて法案をつくっているわけではないわけでございます。  いかなる事業者も仮に整理解雇を行うという場合には、今御議論がございました整理解雇の四条件を遵守していくのはもう当然でございまして、この点については私どもの法律でわざわざ確認するまでもないというふうに思っております。  整理解雇が実際に行われた段階で今の四要件というものが守られるべきかどうかということがわかるわけでございまして、私どもとしては認定の段階でこれを確認することはできないわけであります。いずれにしましても、その問題というのは司法の判断に任されるべきでありまして、認定の段階では確認のしようがない、まだ解雇も何も行われていないわけでございますから、そういった判断は認定の段階ではできないというふうに考えております。
  118. 山下芳生

    山下芳生君 今度の法案では整理解雇というのは念頭に置いていないという御答弁です。  ところが、今度の法案によく似たスキームである「事業革新法の解説」というものをとってみますと、この中に「事業革新計画に係る承認申請書」というのがあるんです。幾つかの事項があって、「労務に関する事項」というのもこの事業革新法の中にもございます。  その中に、いろいろ要件があるんですが、「事業革新に伴い出向又は解雇される従業員数」と。解雇される従業員数ということがちゃんと解説書の中に書いてある。これはおかしいんじゃありませんか。解雇を念頭に置いていないといいながら、解雇される従業員数が通産省の解説の本の中に書かれてあるというのは、これはいかがでしょうか。これは私は削除すべきだと思いますが、江崎局長いかがですか。
  119. 江崎格

    政府委員江崎格君) 事業の再構築の場合に、従業員が一切減らないということはないというふうに思います。減る場合もあるし、ふえる場合もあるというふうに思っております。  今回の法案で、計画に記載する事項として「労務に関する事項」というのがございますが、ここで私ども記載していただきたいと思っていることは、事業構築を始める前と終わった段階での従業員の数、それから再構築に充てる予定の従業員の数ですとか、あるいは事業構築に伴う新規の採用ですとかあるいは出向者の数というものをこの労務に関する事項ということで記載をしてもらうことを考えております。  ですから、解雇といいますか、従業員が減るというのが一切ないというわけではないということは考えております。
  120. 山下芳生

    山下芳生君 私も従業員が減ることが一切ないようにしろということを言っているんじゃないんです。さっき言いました解雇ということ、解雇というのはあってはならないはずです。念頭にないとおっしゃった。ところが、この革新法の解説書にはそれがあるんですよ、解雇される従業員数というのが。おかしいじゃありませんか。  これを削除し、今度のこの新しい、今審議している法案の解説の中には解雇される従業員数なんという記述は、念頭にないんだから、当然これは盛り込まれるべきじゃないと思いますが、いかがですか。
  121. 江崎格

    政府委員江崎格君) 従業員の数が減る場合として、例えば定年で減るとか、そういった自然減もありますし、あるいは採用を控えるというのもありまして、いろんな形態で従業員が減ることがあると思います。それぞれの要因についてまでこの労務に関する事項ということで記載するということは考えておりません。
  122. 山下芳生

    山下芳生君 では、解雇という言葉が入っていてもいいということですか、これ。念頭にないといいながら解説書の中に入っているんですよ。
  123. 林洋和

    政府委員林洋和君) 私ども雇用に対する影響を把握するために、今申し上げているようなことを書いてもらおうと思っています。それから、解雇については必ずしも整理解雇だけではなくて、労使合意の解雇もあります。  したがいまして、今ある事業革新法では、事業革新に伴い出向または解雇される従業員数、これを書いてもらうことにしています。
  124. 山下芳生

    山下芳生君 では、解雇というのは整理解雇以外にも解雇があるんだ、だから書いているんだということですが、これは私は通らないと思いますよ。それだったら、何の前向きでもないですよ。雇用に対する歯どめがあるんだ、安心してくださいと言っても、この先発の法律に基づく解説書の中に解雇というのがある。今度もそれを外さないというんですからね。これは大変な問題です。  次に聞きたいと思いますが、本法案では事業構築計画に書き込む内容について、三条第三項の「事業構築に伴う労務に関する事項」を定める必要がある。それから、第六項では「従業員の地位を不当に害するものでない」ということを定めております。  そこで、まず伺いたいんですが、「事業構築に伴う労務に関する事項」という場合に、事業構造変更ということはいろいろ種類があると思うんです。合併、事業の譲り受け、譲り渡し、設備の撤去及び廃棄、事業の縮小、廃止。ですから、これはそれぞれの内容に沿った労務に関する事項が出てくると思うんです。  私は、大きく言って二つに分けて伺いたいと思うんですが、一つ事業合併・譲渡に関する場合であります。この合併・譲渡の場合には従業員の承継というものが問題になってまいりますが、法案に「従業員の地位を不当に害するものでない」ということを明記している以上、私は、原則として従業員は全員承継されることが前提となるべきだし、労働条件についても従前のまま引き継がれることが原則であると考えております。  労働省に伺いますが、こういう事業譲渡される場合の労働者の労働条件について幾つか判例があると思うんですが、播磨鉄工事件の判例を紹介していただけませんか。
  125. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 御指摘の播磨鉄工事件は、昭和三十八年三月二十六日、大阪高裁で出た判決でございますが、会社の運輸部門を廃止いたしまして、当該部門に係ります事業が新しくできた会社に包括的に譲渡されたといったようなケースでございます。この場合、従業員雇用関係が新しい会社に継続されたというふうに判決が出ております。  なお、営業譲渡に伴いまして雇用関係が当然に譲り受けた企業に承継されるという判例がございます一方、他方で、営業譲渡に伴いまして譲り受け企業が所定の採用手続を定めた場合におきまして、その手続に従わなかった者を採用しなかったことが認められた裁判例や、あるいは営業譲渡の際に、労働者が労働契約の不承継を主張いたしました場合、譲り受け企業におきまして退職金を請求し認められた例のように、営業譲渡に伴います雇用関係の継続につきましては、労働者の同意を要するといったような裁判例もございます。
  126. 山下芳生

    山下芳生君 幾つか判例を紹介されました。多数意見は、今読んでいただいた播磨鉄工事件、従前の労働契約は当然新企業主体に承継されたものと解するのが相当であるというふうに言われております。  そこで聞くわけですけれども、今度の法案で、この事業合併・譲渡の場合、私は原則として従業員は全員承継、そして労働条件も従前のまま引き継がれることが原則とされるべきだと思いますが、これはどうでしょうか。
  127. 江崎格

    政府委員江崎格君) 今おっしゃられたような従業員の地位の承継とかそういったものというのは、まず基本的には労使を初めとする関係者の間でよく話し合われるべきものだというふうに思っております。  この事業構築計画の認定の要件の中で、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」というふうになっているわけでございますけれども、これは計画の認定時点におきまして、事業者事業構築を行う際に雇用の安定に配慮して行っているかどうか、あるいは労使間で十分な話し合いを行ったかどうかということを確認するわけでございまして、今の承継の問題とかそういったことが労使間で十分話し合う対象になっていれば、そういったことが話し合われているかどうかということを私どものこの認定に際して確認をするということでございます。
  128. 山下芳生

    山下芳生君 「従業員の地位を不当に害するものでない」ということをわざわざ法案に明記しているわけですね。にもかかわらず、今、判例を労働省から紹介していただきましたけれども事業譲渡の場合は基本的に新しい企業がその労働契約を承継する、これは多数意見というふうになっておりますよ。ですから、そうすべきであって、それ以上のことをするのがこの法案にわざわざ「従業員の地位を不当に害するものでない」ということを書いた意味じゃないんですか。いかがですか。
  129. 江崎格

    政府委員江崎格君) この認定でそういう「従業員の地位を不当に害するものでない」ということを書いた意味というのは、これは告示で明らかにしようと思っていますけれども事業所における労働組合と必要な協議を行うというようなことを中心にした、労使間で十分な話し合いを行うことということと、それから事業の再構築の実施に際しまして雇用の安定などに十分配慮を行うかどうか、そういう計画であるかということを確認するわけでございます。  いずれにしても、この法律によりまして労働法制、あるいはこれまでの判例等で確立しております労使の慣行について、これを特に変更を求めるものではないわけでございまして、それらについてはその事業構築計画に伴う事業者の行為についてもそういった規制あるいはそういったルールは当然適用されるということでございます。
  130. 山下芳生

    山下芳生君 どうも結局、いろいろ聞いても、従業員の地位を不当に害しないということをわざわざ明記した意味がよくわからない。  では、角度を変えて聞きますが、法案にある労務に関する事項でありますとか、従業員の地位を不当に害しないという条項ですが、この法案に言う事業構築計画の認定によらないリストラ、これは現在広く行われているわけですし、法案成立後も多くはそうなるでしょう。そういう一般のリストラの際に、今局長がおっしゃいましたけれども、一般的にあるこの労働法制を上回って従業員の地位を不当に害しないという制約はありますか。労働省でいいです。
  131. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 一般の解雇あるいはそれに関する事例の場合には一般原則が適用されるわけでございまして、例えば労働基準法上の制限、あるいは男女雇用機会均等法上の制限、あるいは先ほど引用させていただきました整理解雇の四要件といったような過去に確立されました法律、裁判例等によります一般原則が適用されるわけでございます。それ以上のものはございません。
  132. 山下芳生

    山下芳生君 だから、別に承認されないリストラだって、これは労働者の地位を不当に害してはならないんですよ。そういう点でいうと、承認企業であろうがあるまいが従業員雇用に配慮するのは当たり前なんです。  しかし、承認企業になったら、あえてわざわざこの法律で従業員の地位を不当に害しないと定めるわけですから、これはやはり認定計画に基づくリストラの際には、認定計画に基づかないリストラよりも労働者の地位を不当に害さないような厳しいチェックがないとおかしい。今聞いても、認定計画に基づくリストラとそうじゃないリストラの間に違いがあるのかないのかよくわからない。どこが違うのかということになると思うんですよ。  もう一遍聞きますけれども、解雇禁止なのか、それから同意条項を一般のリストラよりも厳格に適用するのか、あるいは教育訓練を義務づけるのか、再就職先が確保されるまで人員削減に手をつけないということなのか。私は、そのぐらいやって初めて認定計画とそうじゃない一般のリストラの違いが出ると思うんですが、ここをはっきりさせていただけますか。どこが違うんですか。
  133. 江崎格

    政府委員江崎格君) この労働者の地位を不当に害さないというのを入れた意味でございますけれども、これはその計画が政策的な支援の対象にするのにふさわしいかどうかということを判断するための規定でございまして、雇用にしわ寄せをせずに事業の再構築を進めるという方針のもとに、産業活力再生法の法目的に照らしまして、支援の対象とするのは雇用の安定などに十分配慮された事業構築であることを確認するわけであります。  具体的には、事業者に課せられた労働法制上の法的義務だけではなくて、労使間の合意ですとかあるいは労使慣行といったものを遵守することが事業者の責務であることを明確にしたわけでありまして、そうした責務を履行していること、必要なプロセスを経たものであるということを確認するための趣旨でございます。
  134. 山下芳生

    山下芳生君 どうもプロセスにすぎないという気がしてならないんですけれども、もう一つ聞きたいと思います。  今度の法案によりますと、事は、まず、国が事業構築計画を承認することから始まるわけですね。  労働省にもう一回聞きますけれども、出向についてですが、出向については一般に本人同意は必要でしょうか、必要でないんでしょうか。
  135. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 幾つかのケースが考えられますけれども、出向の場合であっても、転籍の出向の場合には、もとの労働契約関係を終了させて新しい労働契約関係に入るわけでございますので、この場合には労働者の同意が必要であるというふうに考えております。
  136. 山下芳生

    山下芳生君 雇用調整助成金を出す場合には、転籍じゃない場合、在籍出向でも本人同意を要件としていると思いますが、これは間違いありませんか。
  137. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 雇用調整助成金に関しては、本人の同意というよりもむしろその労使の合意ということで、労働組合あるいは労働者側の従業員の代表の同意といったような形でございます。
  138. 山下芳生

    山下芳生君 その同意を必要としている理由はなぜでしょうか。
  139. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 雇用調整助成金の趣旨というのが、一たんは外に労働者を解雇するかもしれない可能性がある企業が、その雇用調整助成金をいただくことによりまして、いわばその労働者を内部に抱えて、そして場合によっては将来に備えるといったようなことを目指しておりまして、そういった前向きの部分につきまして助成をするものでございます。  したがいまして、これは労使の間で十分合意がなされた上でやられることが望ましいという考えからそういった要件にしているわけでございます。
  140. 山下芳生

    山下芳生君 前向きの支援だと、したがってということですが、私は、同時に、これは国が具体的に資金を支援するわけですから、そういう点でいいますと、国が計画を認定して便宜を図るわけですから、認定する計画については、転籍とか出向というものは本人が同意したとしても本来あってはならない、ない方が望ましいわけです。  しかし、国が雇用調整助成金というものを出すと、出す以上、それを出すことによって本人が望まないのに雇調金が出るんだからという形で出向が逆にどんどん加速されるようなことになってはならないという趣旨も私はあるんだと思うんですが、この理解はどうでしょうか、労働省
  141. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 先ほど申し上げましたとおり、前向きの企業の対応というものを期待して、そこについて、その前向きの部分について助成するという制度でございますので、先ほど申し上げたとおりの趣旨で御理解いただきたいと思います。
  142. 山下芳生

    山下芳生君 だから、逆に言えば、前向きに利用しなければならないということですね。  そうしますと、今度の法案支援というのも、るるずっと御答弁ありましたように前向きの支援なんだというわけですから、事業構築計画の中に含まれる雇用に関する事項というものについては、労務に関する事項と、これは一つ一つやはり本人の同意、合意というものが前提になるべきであると、国がかかわるわけですから、私はそう思います。そういう形で本人同意の原則が図られなければならない。そのぐらい厳密にやる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
  143. 江崎格

    政府委員江崎格君) その事業を再構築する企業の中の労使間の協定ですとか労働協約等におきまして、労使の合意を要するとなっているような事項についてもし変更する場合があれば、それは当然合意を要するということを確認するわけであります。この法律で労使合意の対象になっていないことまで合意を義務づけるとかいうところまでは考えておりません。
  144. 山下芳生

    山下芳生君 私は、今一つ一つ聞きましたけれども、やはり国がこれを支援するということになりますと、労働省は直接はお認めになりませんでしたけれども、前向きなんだということが前提になっているわけです。後ろ向きで雇用を削減して今の難局を乗り切ろうという、単なるそういう計画は承認されるべきじゃない、支援されるべきじゃない。  そうであるならば、やはり本人の同意というものが原則であり適用すべきだと。そうでなければ、これが逆にリストラ支援、そして新たな雇用不安ということを招きかねないという懸念を、いろいろ御答弁を聞きながらもぬぐい切ることができません。  そこで、最後に伺っておきたいんですが、まず、そもそも過剰雇用という問題についてであります。  これは、私はこの間、去年の十二月のこの委員会質疑の中で当時の通産大臣に御答弁いただいたわけですが、当時の産業構造転換円滑化臨時措置法が廃止されるときの質疑の中で、その廃止をする理由を聞いたのに対して、こういう通産省の御答弁があるんです。「特定事業者過剰設備の処理については一段落するとともに、その稼働率が向上しております」と。失礼しました。これは去年じゃなくて、九六年四月十一日の商工委員会、当委員会の御答弁です。  そうしますと、過剰設備の処理は一段落したんだと当時おっしゃっていたわけですが、九六年には過剰設備の処理は一段落したと言い、今日、今になってまた、過剰はバブルの負の遺産が今でも残っているからと言うというのは、私はこれは矛盾するんじゃないかと思うんですが、これはいかがでしょうか。
  145. 林洋和

    政府委員林洋和君) 当委員会でも三つの過剰ということでいろいろ御議論がございますけれども、正確に申し上げますと、私どもは、どの産業が何トンぐらい、あるいは何%過剰かというようなことではなくて、まさにこの法律の第一条の目的に書いてございますように、生産性の古い設備が多くなっている。ちょっと正確な数字は覚えておりませんが、設備の年齢というのを調べてみますと、たしか二、三年前が八年強であったのが、今や十年を超えております。そういう意味で、老朽化した生産性の低い設備がこの二、三年の間にふえてしまっている。この生産性の低いものからより高いものに移さなければいけない、こういう趣旨でこの法案はできているということを申し上げたいと思います。
  146. 山下芳生

    山下芳生君 ちょっとおかしいですね。九六年には、鉄鋼だとか繊維、これはもう過剰設備は処理が一段落したんだと言っていたんですよ。それで産転法を廃止するんだと言っていた。ところが、今の答弁は、この二、三年のうちにまた古くなったと。そんなことを言っていたら、これはいつまでたっても設備というのはずっと過剰ですよ。私は、それは認識は間違っているし、説明として合理性がないと思うんです。  今、設備が過剰になったともしするなら、その後何かが起こったんですよ。私どもは、九七年、九兆円の負担増を国民に押しつけたことにより消費が冷え込んだ、需要が減った、その結果設備が過剰になったという説明が一番合理的なんですね。そのことを不問にして、設備が過剰だ過剰だということをまた三年たったら言い出して、そしてさらに雇用不安、消費不況を招きかねないこういう法案を持ち出してくるというのは、私は納得できないということを申し上げて、質問を終わります。
  147. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 衆議院で七月二十二日から審議に入りまして、九日間であっという間に参議院に送ってこられました。これを今議論を始めたんですが、ゆうべ遅くこの委員会をやるということになって、私も夜読んでみたんですが、なかなか問題の多い法案でありまして、きょうはそのさわりの部分だけになるかと思いますが、独禁法と公取の関係とか、あるいは労働問題、あるいはベンチャービジネスの支援、こういう問題について後日また整理をして質問していきたいと思っております。  経済白書も目を通してみましたし、通産省局長答弁等も聞いておりまして、三つの過剰、設備、人、それから借金、これらの問題がいろんな角度から議論をされておりますが、私は今度のこの三つの過剰というのは、今もお話がありましたように、総需要が冷え込んで落ち込んでおる、したがってそこからすべてが出ておる、このような認識に立った方が正しいだろう、このように考えています。  それで、なぜこういう状況になったかという原因政府あるいは経企庁も経済白書でぴしっと指摘をしていない。通産省もその点は非常にあいまいにしておる。  第一は、これはやっぱりバブルなんですね。かつてバブル時代は、この狭い日本列島の土地を金で計算しますとアメリカの五倍ぐらいの金の価値になっておったというわけなんです。そのバブルをだれが一体つくり出したかというと、大蔵省や日銀にも大変責任がありますが、金融機関がノンバンクをつくりましてどんどん貸し込んでいった。不動産やレジャー関係やあるいは証券、こういうところにどんどん貸し込んでいって、ひところは恐らく随分もうかったんじゃないでしょうか。最後にばばを引いたのが金融機関である。そして、山一がつぶれ、拓殖銀行がつぶれ、長銀やあるいは日債銀がつぶれる、こういうような非常に大きな不安な状況というのが打ち続いておるわけであります。  そこで、通産省も、私はよく覚えているんです、これはプラザ合意以降、総需要、内需拡大せにゃいかぬということで議論してきました。通産省が非常にバブルをあおったんです。どういうことかというと、民活、民活といって民間活力を出していくということでどんどんあおりました。覚えておると思いますね、通産省の皆さんは。  同時に、リゾート法という法律までつくって、私の九州のところなんかそういう計画があって県も動きかかって、途中でつぶれておるのが幾つかあります。それも御承知だと思います。通産省もあおったんです。  こういう政府や、我々も国会で議論してそれを阻止できなかったことについては反省をしております。これはおかしいぞ、こんな狭い国がアメリカの土地の五倍にもなるというのはおかしいと、こう言いながら我々は国会がそれを阻止できなかったことに反省をしておりますが、通産省もこのバブル形成についてはあおっていったんですよ。この点については通産省も、バブルに対する責任というものはやっぱり国民の前に明らかにしてもらわなきゃいかぬ。戦争に負けたときに、戦争責任というのははっきりしなきゃならなかった。そのように、今度のバブルというのは、しかし大蔵省も日銀も通産省も、我々に責任があるということは国民の前に一人も言っていないんです。そういう状況が今日の経済の不況の根底にあって、その後どうしたか。  村山総理のときには、三%、五%、ちょっと景気がよかったんですけれども、どうも浮かれて、ここで財政緊縮をやろうということで、これは橋本内閣になりまして非常に厳しい議論がありましたが、総需要抑制政策に入りました。さっき話がありましたように、減税の分の二兆円をカットいたしました。薬代や医療費の二兆円、それに消費税の二%アップをそのまま乗せていった。これはもう経済がおかしくなってきておるのにもかかわらず総需要抑制政策をとっていったというところに、私どもも反省をしなきゃいけないが、やっぱり今日の経済の混迷を招いている。そこがすべてである。  同時に、昭和二年の不況のときに鈴木商店がつぶれ、台湾銀行がつぶれて金融恐慌になった、それと似ておりますが、山一証券をつぶし、それから拓殖銀行をつぶし、長銀、日債銀と、こういった状況というのは、これはやっぱりいやが応にも国民の不安、個人消費を拡大しようという気にはなかなかなれない。そして、さらに追い打ちをかけたのが雇用不安であります。人員整理をどんどんどんどん。  私は、総理大臣がシカゴでああいう話をしたり、気になりましたから、もう何回か前の委員会のときに通産大臣にこの雇用の問題について、企業雇用責任があるじゃないかと通産大臣の意見を聞いたわけですが、通産大臣企業雇用責任をやはり私は全うしてもらわなきゃいけないと、こういう答弁があったから安心をしたんですが、この法案を見ます限り、なかなか通産大臣の思うようにはなっていない。その点について大変気がかりでありますので、通産大臣の御意見を承りたいと思います。
  148. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本の労使の慣行というのは、もう私が発言するまでもなく、大変長い時間をかけて日本人がつくり上げたものであって、終身雇用というのは私は実はいいなと思っております。終身雇用ですと、労使の間での信頼関係も醸成できますし、企業で働いている方も自分が会社をやめるまでの相当長い期間にわたっての人生設計もできますし、一部の論者が欧米流の自己責任とか最近はやりの市場原理主義とかいろんなことをおっしゃいますけれども、私はやはり日本人が築き上げてきたものは価値があるんだろうと思っております。そういうことを考えますと、現に働いておられる方の職場が守られるということは私は大変大事なことだということがまず第一でございます。  しかし、その職場におりましても、世界的な競争の中でその分野からその企業が撤退せざるを得ないというときには、同じ会社の中でも別の分野に移らざるを得ないということも当然起きてくるわけですし、またその会社の中でそういう雇用が吸収できないような場合には、分社化したものあるいは子会社あるいは関連グループの中の企業等に職場を移さざるを得ないということは避けがたき現実として、世界の中で経済で競争していればそういうことが起きてくるだろうと思っております。  そういうときに、私は、社会的コストあるいは社会的痛みをなるべく少なくするというのがやはり政治の責任でありますし、仮に会社そのものあるいは関連会社雇用の場が確保できないというような場合でも、社会的なセーフティーネットの中で、次の職場に移動する間のことについては失業保険あるいは雇用調整助成金等々もろもろの労働省関連のセーフティーネットもございますし、また職業の再訓練というものもありますし、そういう全体としての労働力の移動というのはソフトランディングをしながらやっていくということが大事であろうと思っております。  経営者も、今はオーナー経営者というよりはむしろサラリーマンとして入社して昇任をしていってついに経営者になったという方がほとんどでございますから、恐らく経営者の心理も雇用は維持したいということは私は基本的にはそう思っていただいていると思うわけでございます。  今回の法律について一言申し上げますと、この中ではやはり雇用を維持する、あるいは事業構築をやる場合にも、労働者の理解と協力を得てやる、あるいは労働者の立場を不当に害さないという幾つかのことが書いてございまして、我々としては、過剰設備過剰債務についてはハードランディングがあり得ても、過剰雇用についてはハードランディングというものは絶対に避けるべきだというのがこの法案の根底に流れている考え方でございます。
  149. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 その辺の問題につきましてはまた後でお尋ねすることになると思いますが、ちょっと前に返りまして、今、経済対策景気対策をどうするかというのは、私は通産省の若い局長や皆さん方に若干不満があるんです。  高橋是清さんが、一九二九年、アメリカの大恐慌のあった十一月に日本で「緊縮政策と金解禁」という演説をしているんです、有名な花見酒の経済。これをちょっと読んでみます。これは比喩をもって説明したと書いてありますが、  例へば茲に、一年五万円の生活をする余力のある人が、倹約して三万円を以て生活し、あと二万円は之れを貯蓄する事とすれば、其の人の個人経済は、毎年それだけ蓄財が増えて行って誠に結構な事であるが、是れを国の経済の上から見る時は、其の倹約に依て、是れ迄其の人が消費して居った二万円だけは、どこかに物資の需用が減る訳であって、国家の生産力はそれだけ低下する事となる。故に国の経済より見れば、五万円の生活をする余裕ある人には、それだけの生活をして貰った方がよいのである。  更に一層砕けて言ふならば、仮に或る人が待合へ行って、芸者を招んだり、贅沢な料理を食べたりして二千円を費消したとする。是れは風紀道徳の上から云へば、さうした使方をして貰ひ度くは無いけれども、仮に使ったとして、此の使はれた金はどういふ風に散ばって行くかといふのに、料理代となった部分は料理人等の給料の一部分となり、又料理に使はれた魚類、肉類、野菜類、調味品等の代価及其等の運搬費並に商人の稼ぎ料として支払はれる。此の分は、即ちそれだけ、農業者、漁業者其の他の生産業者の懐を潤すものである。而して此等の代金を受取たる農業者や、漁業者、商人等は、それを以て各自の衣食住其の他の費用に充てる。それから芸者代として支払はれた金は、其の一部は芸者の手に渡って、食料、納税、衣服、化粧品、其の他の代償として支出せられる。即ち今此の人が待合へ行くことを止めて、二千円を節約したとすれば、此の人個人に取りては二千円の貯蓄が出来、銀行の預金が増えるであらうが、其の金の効果は二千円を出でない。  然るに、此の人が待合で使ったとすれば、その金は転々して、農、工、商、漁業者等の手に移り、それが又諸般産業の上に、二十倍にも、三十倍にもなって働く。故に、個人経済から云へば、二千円の節約をする事は、其の人に取って、誠に結構であるが、国の経済から云へば、同一の金が二十倍にも三十倍にもなって働くのであるから、寧ろ其の方が望ましい訳である。茲が個人経済と、国の経済との異って居る所である。  これは一九二九年で、ケインズが投資乗数の理論というのを一九三六年に発表しているんですけれども、それより前に高橋是清が国会で演説しているんです。  ですから、私は、何か小さいところをこちょこちょいじればいいんじゃなくて、やっぱり知恵を出して、私はそう思うんです。総需要が拡大しない限りこの三つの過剰というのは本当に不幸なことになって、これはいっときして、過剰で廃棄したらまた今度需要が伸びてくる、伸びてくればどこかがもうけ過ぎるほどもうかってくる、寡占の体制が進んでいく、そういうような状況だって、国家国民にとってはマイナスになるようなことだって起こる。  そういう意味では、高橋是清さんがそんなに昔にいみじくも指摘しておりますように、もっと基本的には個人消費、内需をどのように拡大するかという方向に知恵を使っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  150. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) これは、一人の家族の家計を合理化して倹約に相努めますと、まさに需要というものは全体として減っていくわけですから、節約運動というのはいわば不況運動にもなるということを高橋是清蔵相はおっしゃったんだろうと思います。私はそれは合成の誤謬という言葉で申し上げました。  先生の御質問の趣旨は、私なりに理解をいたしますと、国民経済の中に占めます個人消費というのは六二%ぐらいになっております。政府が一生懸命お金を使いましても公的な資本形成というのは全体の八%ぐらいですから、その八%の部分で頑張ることももちろん大事ではありますけれども、六二%のところで個人消費が拡大していくということがやはり景気を支える一番大きなゆえんだろうと私は思っているわけでございます。  貯蓄というのは、日本人は昔から大変貯蓄性向が高いわけですが、貯蓄性向が高くてそれが意味のある時期というのは、国内に投資機会が非常に多い場合は貯蓄率が高いといろんな資本形成ができるわけですが、今のような場合ですと、国民が今貯蓄をしてもむしろマクロで見ますと資本は海外にどんどん出ていっているというのが私は現状ではないかと思っております。  したがいまして、我々は、こういう産業の再構築あるいは競争力の高い経済を目指すということは、これはある意味では国民の所得を減らさない、むしろふやすという方向で努力をしようということでございまして、一つ一つ会社の例をとりますと、会社で合理化と申しますか、経費を節減すればするほどむしろそういう不景気運動になるということは昔も今も余り変わらないんだろうと思っております。  しかし、質の高い、生産性の高い競争力のある企業というものがないとやはり二十一世紀になりましてから日本人が生活の糧を得ることができないということもございまして、消費奨励ということだけではなかなか物事はうまくいかないんだろうとも思っております。
  151. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  問題は、競争力をどう見るかというのは議論のあるところであります。第一次オイルショック、狂乱インフレの後非常に長い間苦しかったわけです。私も国会で随分そういう議論をいたしました。  ただ、どういうことになったかというと、あのときに、昭和五十三年に特安法をつくって、五十八年に産構法をつくりましてそんな議論もしました。結果的にどうなったかというと、輸出がどんどん伸びた、そして貿易摩擦にどんどん火がついた。だから、今度もこれはこういうやり方でどんどんいきますと、貿易摩擦に火がついてこれはまた大変な問題。  だから、私は、基本的には内需を拡大し、そうすることによってその企業の操業度、その稼働利益率も高くなって生産性も上がるということになるわけですから、やっぱり大もとをどうするかということに真剣に配意をしてもらわないと、何か役人が責務上型をつくるというようなことでは、これは今までもそういう例で来ているわけですから否定されても困るんです。そう思うんですが、いかがですか。
  152. 江崎格

    政府委員江崎格君) 今、先生、産構法、特安法の例を御説明になりましたけれども、特安法というのは、あるいは産構法もそうですが、設備の処理を主として目的にした法律でございまして、それぞれその目標としたものをほぼ達成して、それなりの効果を上げたわけでございます。  今度の法案というのは、設備処理を全く排除するわけではないんですが、むしろそれよりも主として生産性のこれから伸びそうな部分経営資源を移そう、それによって日本産業再生を目指そうということでございまして、法目的がかなり違っているわけでございます。  何もこれは私どもがこの職にある以上、何か形をつくらなきゃいかぬというようなことで法案を提出しているわけでは決してなくて、これはことしの一月に決めました産業再生計画の考え方、あるいはその後に開催されました産業競争力会議などで議論されまして、まさに経営資源を伸びる部分に移さなきゃいかぬということが産業界からも非常にニーズの高いテーマとして提案されたわけでございまして、そうした方々の意見を踏まえて私ども今回の法案を提出しているわけでございます。
  153. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 その総理のもとの、今言う産業競争力会議の答申みたいなものを全部ゆうべ読ませていただきました。ただ、アサヒビールの会長以外はそう実務というか、本当に学者が書いた文章でしょうけれども、私は言われるように全部これが絶対正しいということにはならないと、そのように見ながら読ませていただきました。  少し先へ行きますが、労働省、今の雇用失業状況説明と、わかれば自殺者の状況を、今日どうなっているのか教えてください。
  154. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 先般、本年六月の失業率等が発表になりましたが、この六月の失業率は四・九%で、これは過去最高の水準というふうになっております。また有効求人倍率も〇・四六倍で、これも過去最低水準で推移しているというふうな状況で、雇用をめぐる情勢は今大変厳しい状況にあるかという認識をしております。  自殺者の方ですが、これは平成九年が二万三千四百六十五人でありましたものが、平成十年は三万一千七百三十四名と、かなり急増しているというふうな状況でございます。
  155. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そして、その一家の柱の人が自殺をしている数というのは六千人を超えたと言われているんです。一家の柱になる人が自殺をしたというのが六千人を超えているんですよ。これは大変な状況で、どこかに火をつければ暴動が起こるような内容になっているんです。小渕総理はなかなかけろっとしておりますが、非常に深刻な状況だと思います。  私、東京のあるところで、トイレにいた二人が話しているのを聞いたんだけれども、恐らく経営者で、人事を扱っている人でしょう。お互いに大変だなと言っているんですよ。それで、まあ大体しかしやらなきゃしようがないと。一回肩をたたけば大体みんなほとんど落ちるけれども、それでやめない人は二回嫌がらせをやったら大体やめますよと言うんですよ。今から二、三カ月前。聞いておりまして、私はもう本当に人権というか、人間がこういうように扱われていいのかなと、ぞっとするような気持ちで本当に憂うつなんです。  それで、しかも組織率でいいますと、労働者の組織率は今落ちていまして、たかだかいって二二%ぐらいでしょう。だから、大半が未組織の、無権利状態の労働者なんです。これが今までずっとやられて、その数字がさっき言いましたように非自発的な離職者が三百二十九万のうちの百十八万、ここに出ている。  労働組合があればいいんです。しかし、最近の労働組合も、これはなかなかそうはいっても、私は昔、旗を振ってやっていましたよ。それはやっていました。経営者のところまで押しかけていって、よそのけんかも買ってやりましたよ。だけれども、今なかなかそういう状況でもない。だからこの法案を、フランスにしてもドイツにしてもこういうときには法律できちっとやっているんですよ、ああいうところは。  だから、結論を言いたいのは、第一条のところは、雇用の安定を配慮しつつというところを、衆議院でも議論があったんですが、これは雇用の安定を確保ということに、配慮を確保にしたらなぜ悪いのか、これが一つ。  それから十八条ですね。そうはいっても労働組合はあるし、あるいは職場の友誼団体の代表がおるでしょうし、労働組合と労使協議を行うと、十八条のところは。そして、労働組合のないところはその過半の労働者の同意を得ると。ここをきちっとなぜ位置づけられないのか。だから私は労働省にも不満がある。こういう法律を議論するときに、日本の今の失業雇用の情勢というのは一番よく知っている。何でしっかり通産省と激しく渡り合わないのか。ふわふわっとしたような法案になってくるのか。もう心外でならない。通産省当局と労働省の意見を聞いて、終わりたいと思います。
  156. 江崎格

    政府委員江崎格君) 事業の再構築を行う場合には、事業者雇用面にしわ寄せをしないように従業員雇用の安定に最大限注意して行うというのはこれは当然でございまして、そういったことを明らかにするために、まず法案の目的に雇用の安定に配慮ということを書いているわけでございますし、認定の要件の一つ従業員の地位を不当に害さないとか、あるいは十八条においては「労働者の理解と協力」というようなことを責務としてはっきり書いているわけでございます。  法律そのものが、雇用確保のための法律というよりは事業の再構築というものを、あるいは生産性向上による日本産業再生ということを目的にした法律でございますのでこういう書き方をしているわけでございますけれども雇用の問題を決して私ども軽視しているわけではないわけでございまして、そうした事業の再構築あるいは生産性向上をするに際しても雇用の安定には十分配慮しなきゃいけないということで法目的に書いているわけでございます。  それから、第十八条の方の問題でございますが、これは特安法とか産構法では労使協議という条文になっておりましたけれども、先ほども申し上げましたが、これらの法律というのは設備の廃棄というのを直接の目的とする法律でございまして、今回の御提案しております法律というのはもっと広い経営資源の円滑な移動ということを目的にしているわけでございまして、その中には前向きな取り組みというのが入っておりまして、中には、ですから純粋にその経営権に属するというようなことも入っているわけでございます。  したがいまして、一律には法律で協議というのは義務づけなかったんですが、ただ労使の話し合いで協議しなきゃいけないこと、あるいは同意を取りつけなきゃいけないことということについてはそのとおりやるようにということで、それを確認するためにこの認定の基準にも入っているわけでございます。  それから、理解と協力を得てという意味も、協議すべきことは協議する、同意を取りつけなきゃいけないことは同意を取りつけるという趣旨で、そういったことを私どもとしては事業者に対して指導していきたい、このように思っているところでございます。
  157. 澤田陽太郎

    政府委員澤田陽太郎君) 先生の、十八条の問題について、多少繰り返しになるかと思いますが、労働省としての考えを申し述べさせていただきます。  十八条第一項で、今産政局長答弁いたしましたような規定がありますことを私ども十分踏まえまして、実施段階でどうするかという点について通産省と十分話をいたしました。その結果、計画の実施段階におきまして労働組合等と必要な協議を行う、あるいは場合によっては必要な合意まで得る、そのことを含めて労使間で十分な話し合いを行うということを実施段階において事業主に明確に求めるということについて通産省と意見が一致しておりまして、こうしたスタンスでこの条文の施行、運用に臨んでいくことになるものと考えております。
  158. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ちょっと時間が過ぎて済みませんが、二つあります。  三条の六項については、認定の条件はわかりました、わかるんです。読みました。しかし、認定基準というのはこれからつくるんでしょう。認定基準を今もうちゃんとつくっているような答弁だったから、それは次の委員会までに出してください。  それから、労働省、特安法と産構法のときには労使協議をするという項目が入っておったが、なぜ落ちたか。これについてこの次に教えてください。
  159. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 かなり長時間の議論でありますから、いつものことですけれども、問題点は大分出尽くしているわけです。しかし、一応一通りのことは申し上げなきゃならぬと思うので、若干ダブる面もあるかと思いますし、あるいはまた同じ問題点を意識の違う角度から申し上げることもあろうと思うので、そういう点は重複してもひとつ御容赦願いたいと思います。  先ほど来の話にもありましたように、私も実はこの法律については、今の段階でこの日本経済産業、そしてグローバルな視点から考えて、これは必要最小限度、やらざるを得ないかなと。しかし、本質的に自由主義経済、そしてまた私もかつて通産行政あるいは商工政策として産業政策に携わってきた人間として、どうもこの種のことで今慌ててここでまとめてこの法律をという感じも実はしないわけじゃないんです。これが正直な私の実感なんです。もう少し議論を尽くして、あるいはまた省内的にもあるいは政府の内部においてももう少し議論を尽くし、あるいは現在の産業の実態をつぶさに掌握した上で本当はやっても遅くはないのではないかという感じもしないわけでもない。  しかし、だけれども、連立政権だからというわけばっかりじゃなくて、私は場合によっては連立政権内においても反対があったっていいことだとは思うんですけれども、特に参議院においては良識の府として、衆議院のコピーだ、コピー以下だなんて言われているようなことよりもはるかに、新しい議論あるいはまた政治家としての行動があっていい、本来的には私はそう思いますよ。  そういうことをいろいろ考えた中でも、最小限度、私が要望し主張した中小企業問題について法律的に担保していただいた感じもありますから、結論として私はこの法律には賛成はいたします。しかし、この法律の実効性あるいはまたこの法律のこれから上げてくる効果、効率性ということについては、これから私はよくよく自分の政治家としての視点から監視をしてみたいということを冒頭に申し上げておきたいと思います。  というのは、最初に申し上げたように、実は法律ができ上がるときに私はこれほど疑問を持ったことはいまだかつてないんです。物すごい納得と物すごく必要性と緊急性ということをあるときには覚えたことはありますけれども、今日においては実はこういう気持ちで、この法律というのは私は今までの政治活動をやっている中で余り実は感じなかった。  そういう意味で、しかし今日的には最小限度のものとして今の産業経済政策を進める上で必要であるということであるとするならば、そこは了として、今申し上げたように、今後のこの法律の実効性効率性、効果性をしっかりと見きわめてまいりたいということを前提に置いて、時間も三十分しかありませんから、あと二十分ぐらいしかないようですけれども、問題点を申し述べてみたいというふうに思います。  しかし、余り自分の感じだけ申しておりますと時間を失ってしまいますから、若干今までとなぞることかもわかりませんが、まとめてきたことを申し上げたいと思います。  この法律のねらいは、先ほど来の話のように、バブル経済崩壊後の過剰設備過剰雇用、過剰負債のいわゆる三K問題に対処するために、我が国産業再生に向けて企業のリストラを国が支援しようとするものであると私は理解しております。この過剰設備の問題も、私は、日本設備は既に十年以上設備更新をしていない、陳腐化している、これも大きな問題ですぞということもかつてこの場で指摘をしておきましたが、しかし、そういうことがこの法律の中に含まれてきて、一つの精神として入っているだろうと理解をしております。  かつて第一次、第二次の石油危機に端を発した構造不況産業を救済するために制定された特定不況産業安定臨時措置法や特定産業構造改善臨時措置法、そして昭和六十年のG5以降の急激かつ大幅な円高に対応して制定された産業構造転換円滑化臨時措置法などの法律とよく似た法体系であることも否めない事実だと思います。  私もかつて衆議院においてこの問題に関係してきた一人として、これらの法律の制定に携わった経験を踏まえながら、その時々の経済情勢の変化に対してとられた通産省産業政策の効果はどうであったのかといういわゆる通産省産業政策の評価、精査をしておく必要もあるというふうに思います。さっきも若干の話がありましたが、三年前の日本経済産業現状の分析は通産省の誤りであったことは事実である、そういうことを踏まえて、あえて今の段階でこのことをこれだけの法律として持ち上げてくる、そこには前提としたものがなければならぬということを私も申し上げておきたいというふうに思います。  昭和四十八年の石油危機を契機として経済成長が鈍化する中で、需給ギャップが拡大して構造変化に対応し切れない平電炉、アルミニウム製錬、繊維、造船業、化学肥料などいわゆる構造不況業に対しては立法措置を含めた政策的対応がとられたことは周知のとおりです。すなわち、このような構造不況産業過剰設備の処理に対しては、通産省は、事業者の自主的努力によっては構造改善に必要な過剰設備の量の処理を進めることができないこと、または独占禁止法に基づく不況カルテルでは十分対応が困難であることから、指示カルテルを含む新たな法的措置を講ずる必要があるとして、昭和五十三年に特定不況産業安定臨時措置法、いわゆる特安法が提出されたわけであります。  その法律の趣旨は、主務大臣の策定する安定基本計画に基づき対象事業者過剰設備の処理を実施するとともに、業界の自主的努力だけでは進まない場合に共同行為の指示ができることとし、その指示カルテルの発効要件として公正取引委員会の同意を必要とすることとしたのであります。  当時の商工委員会においては、この法律に対してはさまざまな問題が出されましたが、私も記憶をたどってみて、特に議論集中した点は、今回の産業活力再生特別措置法案と同様に雇用問題であったのも一つです。構造不況産業における過剰設備の処理は、言うまでもなく、今までも質疑が交わされてまいりましたけれども雇用に相当な影響を及ぼすとともに、工場閉鎖によって関連中小企業に及ぼす影響が懸念されました。  雇用問題に対してはこの法律には、事業者労働者の失業の予防など雇用の安定に配慮する旨の規定がされましたが、議員立法で特定不況業種離職者臨時措置法も制定されたことは記憶しておられると思います。しかし、単なる訓示規定では雇用問題は解決できないという指摘委員会で相次いだことから、当時私も自由民主党におりましたが、日本社会党、公明党、民社党などの共同提案で、「目的」に「雇用の安定」を加えるとともに、安定基本計画にも雇用の安定及び関連中小企業者経営の安定について十分考慮されなければならないとの修正を行ったのであります。  特安法施行後、平電炉、合成繊維、造船、化学肥料など十四の製造業種が構造不況業種に指定され、また、合成繊維、化学肥料など八業種について指示カルテルが実施されました。その結果、ほとんどの構造不況産業過剰設備処理は、先ほども局長が答えておりましたが、ほぼ目的が達成され、その反面、通産省所管の十三業種における労働者数は、法制定前には二十四万人ぐらいおったのであったが、この五十七年に二十万人と四万人も減少して、予想されたとおり失業者の大幅な発生を食いとめることはできなかったのであります。  また、過剰設備処理のための共同行為は、生産数量カルテルや価格カルテルなど多様なカルテルを誘発してしまいました。本来なら自然淘汰されるような企業も温存させ、産業内部の合理化を阻害するというマイナス面ももたらしたことも事実である。当時の公正取引委員会委員長は高橋さんでありましたが、過剰設備の処理が生産性を考慮しない一律方式であったため、必要以上の設備の新増設の制限や禁止が行われ、産業競争力向上にはつながらない面があったと指摘しております。  こうした点を考えるならば、必要以上に過剰設備の処理に対して国が支援することは、企業努力の足りない企業を延命させ、結果的に我が国企業国際競争力を弱めるという、この法案の趣旨に反する結果が出ないとも限らない。  事業構築計画の認定に当たってこの点をどのように考慮してやっていかれるおつもりか、ちょっと御意見を賜っておきたいと思います。
  160. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 生産性の低い分野にある経営資源をより生産性の高い分野に移動させることによりまして我が国全体の経済生産性向上させることは、我が国産業活力再生を図る上で必要であると考えております。  このような基本的な考え方に基づきまして、本法案事業構築計画に係る認定事業者への措置も、生産性のより高い分野への経営資源の移動を図り、既存の中核的事業の拡大・効率化や新たな商品や生産方式の導入など、将来へ向けた経営上の努力を行う事業者に対して行うものであります。  また、具体的な措置の内容も、欧米諸国でも広く取り入れられている会社組織の見直し手続や税制措置であり、基本的にはグローバルスタンダードの範囲内であると考えております。  このような本法案の基本的な考え方、支援対象、措置内容にかんがみても、本法案によりいわゆるモラルハザードを招くようなことはないものと考えております。
  161. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 そういうことだろうと思うんですけれども、時間がなさ過ぎますのでしり切れトンボになりますけれども、次の委員会の機会に重ねて質問をさせていただくことにして、若干問題点だけ申し上げていきたいと思います。  私は、この過剰設備の問題について、やっぱり基本的には経営者が自立心を持つというか、当然責任を持ってやっていかなきゃならぬことであって、自由主義経済の中でいかがなことかということがもうどうしても頭からぬぐい去れません。  第二次石油危機時の経済情勢に対応して制定された特定産業構造改善臨時措置法の問題から、少し質疑をしてみたいと思うんです。  昭和五十三年、第二次石油危機によって、基礎素材産業は再び設備の過剰が生じ、経営不安に陥るなど構造的問題が顕在化しました。そこで、本来五十八年までの時限立法であった特安法を、特定産業構造改善臨時措置法、いわゆる産構法と名称を改めてさらに五年延長したわけでありますが、その内容は、特安法の指示カルテルを残しながら、新たに事業連携計画を作成し、共同生産、共同販売、合併などによって事業の集約化を促進しようとするものでした。また、この事業者の作成した事業連携計画に対しては、独占禁止法上の問題が生じないよう主務大臣と公取委員会との意見調整規定が新たに設けられた。  さっきも若干あったと記憶していますが、今回の法案では、公正取引委員会との関係において、第五条では、主務大臣公正取引委員会は、認定事業構築計画に従ってする行為が適正な競争関係を阻害することのないよう相互に緊密に連絡する旨の規定が設けられておりますが、産構法にないこのような規定がなぜ盛り込まれたのか。さっきの質問にもあったと思うんですけれども、ちょっともう一度その理由について。
  162. 江崎格

    政府委員江崎格君) これは、認定された事業構築計画に従いまして事業者が行う行為が独占禁止法との関係で問題が生じないようにしようということを目的にしているものでございまして、計画の認定前とそれから計画の認定の後におきまして、必要に応じまして、主務大臣、それぞれの業所管大臣公正取引委員会と密接に連絡調整を行うということでございまして、先ほど来委員が御指摘になっております産構法ですとかあるいは円滑化法、あるいは最近の事業革新法、これらにおきましても同様の規定が置かれているところでございます。
  163. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 産構法は、昭和六十三年、第百十二回国会で廃止された。その間の政策評価について、業況が改善し、相当程度成果が上がったというふうに聞いています。しかし、中には化学肥料や合金鉄のようにいまだ十分な構造改善の成果を上げられずに業況が低迷している業種もあったようであります。  今回、このような指定業種の計画認定という形をとらずに、いわゆる重厚長大産業のみならず、先ほど申したように私自身も強く主張してきた中小企業あるいはまたサービス産業、サービス業まで含めた幅広い産業を対象として、それらの国際競争力を引き出す方向で計画は認定されていると私は理解したいのでありますが、そういう認識でいいんでしょうか。
  164. 江崎格

    政府委員江崎格君) 今回の法案の体系というのは、特定の業種を指定するとかそういう格好ではなくて、個々の事業者判断によりましてこうした事業の再構築によって生産性向上を図りたいという、まさに自主的な判断によりましてそういうことをするのに対して、それをやりやすい環境をつくっていこうということでございますので、従来の法律よりもより一層企業の自立性を尊重する、あるいは市場原理を尊重するという格好の法案になっているというふうに私ども認識をしております。
  165. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 時間があとわずかですから、もう一問だけにしたいと思いますけれども、あとは次に譲りたいと思います。  昭和六十二年の第百八回国会に提出された産業構造転換円滑化臨時措置法、いわゆる円滑化法の問題です。  当時、我が国経済は、昭和六十年九月のG5以降に急激かつ大幅な円高の進行によって産業構造の転換を余儀なくされ、これに伴い事業規模の縮小による雇用問題が発生しました。地域経済も悪化いたしました。  一方、我が国産業構造は、特安法や産構法などに基づく産業調整政策によって基礎素材産業の体質改善が図られ、また加工組み立て産業はハイテク化による生産性向上により国際競争力を強化しました。加えて、為替レートの円安傾向のもとに我が国は加工組み立て型産業を中心とした輸出主導型の経済成長を遂げてきました。しかし、その結果、貿易収支の黒字幅は年々拡大し、アメリカやEC諸国との間に貿易摩擦が発生するに至ったことは周知の事実であります。  このため、内需主導型経済構造への転換が当時から言われてまいりまして、政策課題として、昭和六十一年には中曽根総理の私的諮問機関である国際協調のための経済構造調整研究会からいわゆる前川レポートが公表され、内需重視の国際協調型産業構造への転換の必要性が強調されたわけであります。  こうした経済背景のもとで制定されたのがいわゆる円滑化法です。この趣旨は、鉄鋼や繊維などの過剰設備処理や事業転換を支援するとともに、これらの業種への依存度の高い地域に対する活性化対策を講ずることを目的としたもので、昭和七十一年までの時限立法でありました。産構法と異なる点は、共同生産、共同販売、合併など、先ほど言いましたが、そのまま引き継がれましたけれども、指示カルテルに関する規定は盛り込まれなかったのであります。  この法律の廃止期限が平成八年に到来する。通産省は、過剰設備の処理は一段落し、特定地域の経済動向についても、法制定時に生じていた経済及び雇用の悪化という事態については他地域と比較しておおむね解消し、所期の法目的はほぼ達成されたとして廃止されたわけであります。しかし、この法律で指定された特定設備の稼働率は、セメントのように大きな成果を上げた設備もありますけれども、中には半分近くしか稼働率が上がっていない設備もある。必ずしも所期の目的を達したとは言い切れない点もあったと思います。  この法案では、附則の第二条で、平成十五年三月三十一日までの間に廃止を含めて見直し規定が置かれている。今から廃止云々を言うとしかられるかもわかりませんが、しかし、廃止するか否かの基準としてどのような点を考えているか、どういうことを想定しているか、もし答えられたら答えてください。  また、平成十五年三月末日までに事業構築計画が提出され認定を受けた場合には、商法の特例措置はいつまで活用することができるのか。仮に廃止されずにこの法律が存続した場合、その期間、支援を受けることができ、他の企業との間に競争上のアンバランスが生ずることがありはしないか、私は疑問に思います。本来なら、商法の特例措置は一般化してすべての企業がその適用を受けられるよう、これは本来商法を改正すべきではないかと思いますが、どうでしょうか。法務省の見解も聞いておきたいというふうに思います。
  166. 林洋和

    政府委員林洋和君) お答え申し上げます。  私ども、計画の認定期間を十五年度、十五年三月三十一日としておりますが、これは施行が十月一日からといたしますと三年半でございます。この三年半の間に、いわゆる選択集中というものを各個別企業に自主的に、集中的にやっていただきたいということでこういうふうにしております。  附則のところで廃止を含めて見直すというのがございますが、どういう経済状況、あるいはどういう出来事がその時点で起こるかもわからないということでこういう形にしておりますけれども、物の考え方としては、バイ・ドール法のような恒久的なものは恒久法として残したい。  それから、他方、この事業構築とかそういったものは、特段の経済状況の変化がなければこの三年半の間に集中的にやりたい、こういう物の考え方でございます。
  167. 細川清

    政府委員(細川清君) 法務省におきましては、企業の再編のための法制度の整備ということで、平成九年には合併法制を整備しまして、今国会には持ち株会社創設のための株式移転・株式交換のための商法改正法案を提出しているところでございます。次期通常国会には会社の分割法制のための商法改正法案を提出したいと考えておりまして、本年七月七日にこのための試案を公表しまして、現在一般の意見を求めているところでございます。  その中に幾つか御指摘の問題が入っておりまして、まず、現物出資等の場合の検査役調査の問題でございますが、これは合併の場合と同様に、分割によって設立する会社資本の額を分割する会社から承継する財産の額によって制限することによって資本の充実を確保することができるということから、この制度利用しますと検査役調査を必要としないで分社化ができるということになるわけでございます。  次に、分社化の場合の債務の承継の問題ですが、民法の場合には、いわゆる免責的債務引き受けの場合には個別に債権者の同意が必要であるわけですが、これにつきましても、これを公告いたしまして、債務承継会社の分割の内容について開示しまして、異議があれば一定の期間内にこれを述べることを債権者に対して催告して、異議を述べなかった債権者については分割を承継したものとみなすということによって分割手続を円滑に進める。  それからまた、合併の場合の簡易合併の制度は平成九年に設けましたが、それと同じように、営業譲渡の場合、譲り受けにつきまして、一定の要件のものについては株式会社の特別決議が必要ではないという改正を考えております。  これをこういったことを取りまとめまして、次期通常国会に法案を提出いたしたいと考えているところでございます。
  168. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 あと二、三分だと思うんですが、実は一番肝心の中小企業・ベンチャー支援策のところを質問いたしたいと思ったのですが、あるいはまた、先ほども一部耳にいたしましたが、エンジェル税制、同時にまた、研究開発の活性化について特許との関係質問したいと用意はいたしてきたんですけれども、ちょっと時間が足りませんので、次の機会に譲りたいと思います。  いずれにしましても、一つの法律が出るときには必ず相対する不安というのは出てくるわけで、あるいはまたこの法律の恩恵に浴せない者も当然あるわけでして、なかなか一つの法律を、しかもこれだけ大きな土俵というか問題意識の中でやっていくとなると、行政的に大変難しい問題が私は実際上出てくると思うんですよ。  だから、先ほど申し上げたように、この法律が本当に所期の目的の達成ができるように、雇用の問題であれあるいは資本の移動であれ、あるいはまた、新しい中小企業の起業者が本当に今度は国がこういうことを支援してくれると、大きな精神的担保を得て新しい事業意欲が持てるような、そういうような意欲を出させるのは私は法律の活字じゃないと思うんです。やっぱり通産省の皆さんが、地方通産局というものを持っているわけですから、本省が何ぼ考えて何ぼいいことを言ったって、地方通産局が現場の事業家あるいは企業家、そういう製造業者あるいは小規模事業者人たち本当にこの法律の精神、あるいはまたその人たちがやっていこうとする気持ちが大きく助長されるように、まさにそこが本当の行政指導だろうと私は期待をしたい。  時間がちょうど参りましたから、以上、質問と希望を申し述べて、あとは後日に譲りたいと思います。
  169. 加納時男

    ○加納時男君 自由民主党の加納時男であります。  けさの通産大臣提案理由を伺っておりますと、生産性という言葉が非常に大きなキーワードになっているようであります。経済の潜在的な成長力を大きく左右する生産性伸び率が近年大きく低下している、国際的に見てもOECD加盟国平均を下回るなど憂慮すべき状況という認識のもとに、我が国生産性向上のための一連の施策を講じ、我が国産業活力の速やかな再生を実現するために本法律案を提案するんだという御説明がありました。  その後の同僚議員との質疑の中で繰り返しおっしゃったことは、生産性の低い分野からより高い分野経営資源を移動していくことがこれの目的だと。私は、この問題意識は非常に共感をするところであります。  そこで、その上での質問でありますけれどもOECD諸国と比べて我が国のいわゆる全要素生産性、トータル・ファクター・プロダクティビティーとも言っておりますが、このTFPが低下しているという指摘がありますけれども、実態はどうなのか、実態が下がっているとすればどのように下がっているのか、なぜ下がったのか、その辺に触れていただけたらと思います。
  170. 江崎格

    政府委員江崎格君) 全要素生産性の実態でございますが、我が国の場合に近年大幅にこれが低下してきております。八七年から九三年の平均生産性上昇率でございますが、OECD平均が〇・九でございますが、日本の場合は〇・八ということで、OECD平均を下回っているという状況でございます。  それから、そういうふうになっている理由でございますけれども一つバブル期に行いました非常に過大な投資によりまして、我が国企業の多くが過大な負債あるいは設備などを抱えて収益が低下したままになっているということが第一点でございます。それから、もう一つの要素は、バブル崩壊後の景気の低迷が非常に長期化しているということでございまして、設備労働などの経営資源が有効に活用されていない事態が長く続いているということかと思います。
  171. 加納時男

    ○加納時男君 今のお答えでちょっと二つほど疑問があるんですけれども一つは、一九九三年にOECDは〇・九%、日本は〇・八%で、OECDを下回ったと、これは事実だと思います。ところが、これまでのところ、日本とアメリカを比べてみますと、五〇年から七三年でも、七三年から八七年でも、今引用された八七年から九三年においても、一貫して日本の方が高いんです。これは私も、今のお答えでこれをちょっとチェックしてみると不思議に思うわけです。  OECDが〇・九、日本が〇・八というと、確かにOECD平均よりか低いんですけれどもOECD〇・九の構成要素というのは、ヨーロッパの国々が一を超えていてアメリカが〇・六で、それを合成して〇・九だと思うんです。私は、むしろ九三年以降に問題があるんじゃないかということで質問したつもりだったんですけれども、その辺どうだろうかというのが一つ。  それから、もう一つ私がよくわからないのは、全要素生産性、TFPという概念はちょっとわかりにくい概念ではあるんですけれども、GDPの伸び率から資本ストックの伸び率労働ストックの伸び率を引いたものですから、何が出てくるのかというと、技術革新ですとか経営革新ですとか社会システムの改革等が反映されていると思うんです。これで見て、日本は九三年まではアメリカをともかく上回ってきて、それ以降急激に落ち込んだということだと私は非常に理解できるんですけれども、そういう理解でいいんでしょうか。
  172. 江崎格

    政府委員江崎格君) データに制約がございまして、九三年以降のOECD加盟国平均値というのは算出できないわけでございますけれども、アメリカとの比較というのはできるわけでございまして、これまで日本は米国の伸び率を上回っていたわけですが、九四年から九七年というのを見てみますと、日本がこの期間〇・四%の伸びになっております。それに対してアメリカは〇・七ということで、アメリカの上昇率の方が最近の期間をとってみると上回っているという状況でございます。  それから、生産性向上の問題と雇用の増加の問題でございます。  アメリカにおきましては、生産性の上昇率が、今申し上げましたように、九四年から九七年で年平均で〇・七というふうに改善しているわけですが、雇用について見ますと、八七年における失業率が六・二%でございましたけれども、最近の九七年において見ますと、これが四・九%というふうに大幅に改善をしております。  一方、雇用成長率への寄与度が最も高いと言われておりますいわゆるサービス業でございますが、生産性の伸びで見ますとサービス業は必ずしも高くないという状況でございまして、そういう意味では業種ごとに必ずしも相関があるわけではないということがわかると思います。
  173. 加納時男

    ○加納時男君 今、私の二回目の質問で答えていただいたのが実は聞きたかったことなんです。九三年までのデータは公表されているんですが、九四年以降非常に気になっていたものですから、非常に明快なお答えをいただいてありがとうございました。  今のお答えの二つ目のところに関係してでございますけれども生産性向上というのと雇用の増加というのがくっついて議論されるのは私はおかしいと思うんです。  アメリカの場合、今おっしゃったとおり、業種ごとに非常に跛行性がありまして、例えば製造業の分野は非常に生産性が上がった、しかし雇用効果はそれほどではない。一方、今おっしゃったサービス業ですとか小売業、それからソフトでありますとか人材派遣業はアメリカは非常に伸びています。こういったところは生産性の伸びは低いけれども雇用増加が非常に大きいというので、分業体制ではないんですけれども生産性をうんと稼ぐ分野とそれから雇用をうんと稼ぐ分野がうまくかみ合ってきたのが最近のアメリカの好調の背景かなと思うんですけれども、そんな理解でいいでしょうか。
  174. 江崎格

    政府委員江崎格君) おっしゃるとおりだと思います。
  175. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  というところで、通産大臣一つ伺いたいと思うんですけれども、アメリカの経済再生してきた、このきっかけにはいろんなものがあったと思うんです。さっき大臣がお触れになった法人税の減税による投資意欲の促進、あるいは規制緩和による競争の刺激、これが非常に大きかった。さらに創業、アントレプレナーでございますが、これが、もともとあったフロンティアスピリットに加えて、アメリカ固有のベンチャーキャピタルがある、それに加えてSBIRも伸びてきた。そしてまた、これはほとんど議論されていないんですけれども、私はNAFTAが非常に影響があったんじゃないだろうか。  私もアメリカでNAFTAのことを少し勉強していたのでございますけれども、あれは大変なアイデアでありまして、結局アメリカとメキシコとカナダとそれぞれの生産要素を広域的に利用し、かつ市場を拡大するという非常に革命的なシステムだと思うんです。ほとんどそれは今回の産業再生法の議論のときに私はなされていなかったような気がするんです。  こういったような四点ほどあるような気がするんですけれども、こういったことを踏まえて、日本はアメリカの成功から何を学び今回の法律に反映し、何を学ばなかったのか、あるいは今後研究するのか、いろいろあったと思うんですけれども大臣の御所感を伺えればと思います。
  176. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 八〇年代、製造業の低迷に悩む米国においていわゆるレーガノミックスと呼ばれる政策がとられまして、歳出の削減と大胆な減税、積極的な規制緩和を中心とした施策が展開をされたわけでございます。  個々の施策についての評価はさまざまでございますけれども、八〇年代後半からの民間企業による事業構築の取り組みを経て、これらの施策は現在の好調な米国経済を招いた一因と考えられます。  我が国としては、こうした例も参考としながら、経済構造の変革と創造のための行動計画を策定し、企業税制を含む諸制度の改革、抜本的な規制緩和、新規産業の創出等に取り組んできたところでございます。産業活力再生に向けた今回の法案もこうした経済構造改革の一環でございまして、政府としては引き続き大胆かつ速やかに経済構造改革に取り組んでいく考えであります。  なお、さらに一言つけ加えさせていただければ、今後、我が国経済の新たな活力をつくり出していくためには、本法案による施策を含め、創業や新事業開拓を大いに盛り上げていく必要がありますが、これについては、制度面における対応を図ってまいると同時に、米国のよい点を参考とし、広くは起業家精神の涵養のための教育や、事業に一度や二度失敗しても再起を期す者を許容するという社会的風土の形成が必要でございまして、こうした幅広い視点から私どもは取り組みが必要であり重要であると考えております。
  177. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  今、大臣がおっしゃったところで、アメリカの創業あるいは新規事業、あるいはアメリカの大胆な政策は参考にしていきたいということであります。そういう意味で、SBIRについてその後の状況を承りたいと思います。  この委員会でも去年、日本版SBIRを議論して、法律も成立したわけでございます。新事業創出促進法という名前でたしか十二月に成立したと思いますけれども、これは技術開発力を有する中小企業活性化し、独自性を有する事業活動を支援することでありますとか、関係の五省庁が連携して目標額を設定して中小企業者への支出の機会を増大させるということで、私は非常に大胆な施策としてこれは期待しているわけであります。  きょう伺いたいのは、去年十二月に成立して約八カ月ぐらいたっているわけですが、その後の状況日本政府全体としての目標額の設定ですとかあるいは応募状況、手ごたえがどのくらいあるのか、これを伺いたいと思います。
  178. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 中小企業技術革新制度、いわゆる日本版SBIR制度でございますが、これは昨年の十二月に成立をしました新事業創出促進法に基づき創設されたものでございます。今、委員が御指摘ありましたように、関係省庁が連携をいたしまして、国の研究開発補助金等の中小企業者への支出の機会の増大を図る、また同時にその事業化までも一貫して支援をする、そういった制度でございます。  御質問の平成十一年度における進捗状況でございますが、五省庁、これは科技庁、厚生省、郵政省、農水省、それに通産省の五省庁の所管する三十八の特定補助金を指定いたしております。  その中小企業者等に対する支出目標、十一年度版は、四月二十日、閣議決定を見ておりますが、トータルで約百十億円とすることに定められております。現在、これらの特定補助金等につきましては、それぞれにつきまして公募による申請案件の審査とか採択決定等が行われているところでございます。  今後の課題的なものといたしましては、今年度の百十億円の額につきまして、できるだけそれを上回るような達成実績を上げられるように努力をしたいと考えております。
  179. 加納時男

    ○加納時男君 よくわかりました。  私は、SBIRはこれは非常に日本経済再生についても刺激的なシステムだと思うんです。というのは、アメリカの実績を見てみますと、八五年からの十年間でSBIRの適用を受けた企業は、例えば雇用の面ではほかの類似の企業に比べて四倍にふえている、それから売り上げも三倍を示しているということで、非常にこれが効果があったということです。何でもアメリカで成功したら日本で成功するとは思わないけれども、ともかく今回非常に日本風に工夫したものが去年この委員会でも議論されたわけですから、ぜひこの成功を期待を持って見ていきたいと思います。また次の機会でも成果を伺いたいと思います。  話を変えまして、これも経済戦略会議等でも議論されましたコーポレートガバナンスについて触れてみたいと思います。  コーポレートガバナンスというのは、よく企業統治とか何か日本語の拙劣な訳がつくものですから全然意味不明なんですけれども、私は、コーポレートガバナンスというのは、企業はだれのためのものかというふうに訳すと非常によくわかると思うんです。  先ほども同僚委員から御指摘があったように、日本経営者労働組合出身、ちょっと変ですけれども会社へ入ったときは労働者として入って、サラリーマンとして、そしてたたき上げて、切磋琢磨して経営者になってというようなケースが多いわけです。初めから資本家というのは余りいない。  そういうこともあって、企業はだれのものかというと、まず顧客のもの、お客さんのもの、これはだれでも思うんですけれども、それと同時に、非常に頭の中を大きく占めているのは従業員のこと、雇用を守らなきゃいけない、従業員は宝だと。これまた、私決して悪いと言っているんじゃなくて、それが日本経営の特徴だったと思うんです。これは日本的な独特の経営システムでもあった、よさもまた発揮してきたと思うんです。それから、最近ではそれに加えて、地域社会のものであると。  これも私、大事だと思うんですが、どうも肝心なことが完全に抜けていたのは、企業は株主のためのものでもある。株主だけのものというのはややアメリカ風なんで我々も違和感を持つんですけれども、株主を無視した、兜町を無視した経営従業員を守っていけばいいんだといって会社全体が沈んでしまうというのは私はとんでもない話であって、やはり企業というのは生々発展しなきゃいけない。そして、その中で従業員の福祉もそれから地域への貢献もやっていくんで、やはり株主のためだという根本のところがどうも抜けちゃっているんじゃないか。ですから、配当率も非常に配慮が少なかったということが日本経営者に対する国際的な批判もあったと思うんです。  そこで質問なんですけれども日本経営が大胆な改革を行えない一つ原因として、執行体制と監視体制の未分離があるんじゃないだろうか。つまり、従業員から上がってきた人が取締役になって、それからまた代表役員が出ていくといったようなことが余りにも多過ぎちゃって外部の目が生きていない。  そういう意味では、最近、日本の中でも特に先端的な企業ではCEOとかCOOとかといった、執行役員と企業経営全般を客観的な目で監視をする役員、いわば監視取締役、これを分離するという動きが出つつあるわけです。  私もアメリカのフィラデルフィアでこういった実態をいろいろ調べてきたんですけれども、中には悪口を言うのがいて、いや、社外役員といったってあれはCEOの友達だよ、それが半分占めているなんという変なデータも出てきちゃったんですけれども、それはそれでもいいと思うんです。友達といってもほかの企業で大をなした方、成功した方、あるいは学者として、評論家として大をなした方であります。  こういうようなこともやっていく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、この辺は今回、通産省の方でこの法案をつくる過程で、あるいは経済戦略会議等を通じてどんなふうな印象を持たれたでしょうか、議論があったんでしょうか。
  180. 林洋和

    政府委員林洋和君) 委員指摘のように、我が国においていわゆる取締役が業務の執行も兼ねるということが多くて、果たしてその業務執行が適切に行われたかどうかというチェックが不十分ではないかというような指摘があったのも事実だと思います。  私の記憶によりますと、何年か前に例えばココム違反というものがあったときに、社内のコンプライアンスはどうなっているのか、あるいは直近では、金融機関の融資に当たっていろいろございまして、たしかことしの三月に金融監督庁が出したガイドラインでそのチェックのあり方というのが一つの大きな論点になったと思います。  そういう状況の中で、最近のグローバリゼーションというのを反映して、まさに私どもが今回法案の中の一つの重点にしております企業組織の変更をスピーディーにやる、スピーディーな意思決定が求められている状況の中で、我が国会社もかなり執行役員制の導入を行いつつございます。監視体制と執行体制の分離に取り組んでいる企業も多く出てきております。こういう流れを大切にしながら、経営の透明化、効率化が図られることを私どもは期待をしている次第でございます。
  181. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  それでは、この問題はここまでにしまして、次に、同僚委員も大分触れられました過剰設備の問題に違った角度から一言触れてみたいと思います。  過剰設備というのは確かに私は存在すると思うんです。これは、バブルの時期に甘い見通しがあったとか、収益を度外視したシェア獲得競争があったとかいった指摘もあるわけであります。これも同僚議員が指摘されたもので、私も非常に考え込んでしまったんですが、設備投資だとか設備を廃棄するというこの判断は、まさに経営者の自己責任の範疇ではないだろうかという気がします。  きょう、同僚の簗瀬委員からも遊休土地資産について鋭い指摘があったと思うんですけれども、こういうものについて一体どう考えていったらいいんだろうか、何か経営の失敗を国が面倒見るんですかといったような批判もあったかと思うんですけれども、これについてはどういうふうに答えられますでしょうか。
  182. 林洋和

    政府委員林洋和君) お答え申し上げます。  私ども、今回の法律の基本的考え方は次のようなものであると考えております。  一つは、自主的判断の尊重、民間企業の個別判断であるということ。二番目は、市場原理を尊重するということでございます。この点は、従来のように共同行為的手法によって設備廃棄を行わないということでございます。  この二つの大原則をもとに、今回の法律では大きく二つの道具立てを整えました。一つは商法の特例でございます。もう一つ税制でございます。この商法の特例、税制とも、細かい比較はできませんが、基本的にはグローバルスタンダードだと思っております。グローバルスタンダードにのっとった商法の特例と税制という道具立てのもとに各企業が自主的に設備を廃棄するかどうかというのを決めてもらう、これが私どもの今回の法案の基本的な物の考え方でございます。
  183. 加納時男

    ○加納時男君 これまでも、先ほどの御質問の中にもありましたように、特定産業過剰設備については一九七八年以降まさに切れ目なく臨時措置法が続いてきたと思います。  今回、大きく変わったところ、今二つの点をおっしゃいました。グローバルスタンダードということと税制と二つの柱をもってやったんだとおっしゃって、従来のような共同行為とは一線を画したんだと言いますが、繰り返しのようになりますけれども、一番違うところはどこでしょうか。
  184. 江崎格

    政府委員江崎格君) 特定不況産業安定臨時措置法などの過去の過剰設備問題への対応でございますが、これらは、過剰設備を特定の業種に属する企業に共通の問題だというふうにとらえておりまして、業種全体としての廃棄を促すという法律だったわけでございます。  今回御提案しておりますこの法案ですが、これは過去の特定業種過剰設備問題への対応とは違っておりまして、個々の企業にとって非効率な設備の処理あるいは企業間の資源の円滑なシフトというようなことをねらっているわけでございまして、これらを通じて経済全体の資産の効率的な活用を図るということでございます。つまり、これまでのものは業種としてとらえる、業種としての過剰設備を共通の問題としてとらえるということでございましたが、今度は企業ベースでそれを判断する、こういうことでございます。
  185. 加納時男

    ○加納時男君 非常によくわかりました。ありがとうございました。  では、次の項目に行きたいと思います。  次は、デット・エクイティー・スワップについて伺いたいと思います。  これもきのうの本会議で出た話題でございますけれども企業過剰債務を解決する手段としてデット・エクイティー・スワップ、いわゆる債務の株式化と言っているものがございます。今回の法案でも十三条で、認定事業構築計画に従ってみずからの債務を消滅させるために債権者に対して株式を発行するものであって、債権者との間で合意を得た場合、無議決権株式発行限度枠を発行済み株式総数の三分の一から二分の一に引き上げるというふうに私は理解しております。  何でもアメリカだけ多くて済みませんけれども、アメリカの例で見ますと、有名なクライスラーの再建がありまして、あのときにデット・エクイティー・スワップを活用して成功したというふうに伝えられているわけであります。思い起こすと、アイアコッカが就任したときに、大胆なリストラを実施するとともに、政府保証融資を受け、一九八一年に生保と百五十の金融機関からの借入金を株式と交換した、債務の返済圧力を逃れて再建に成功したということが思い出されるわけであります。  そこで、質問なのでございますけれども、このクライスラーの成功がデット・エクイティー・スワップにあったことは事実でありますけれども、このデット・エクイティー・スワップというのは成立要件があるんじゃないかというのが私の質問であります。これは、これをやった方がいい、つまり債務の株式化を適用した方が得だと債権者が判断するということが重要なポイントだろうと思うんです。(「そのとおりだ」と呼ぶ者あり)ありがとうございます。  デット・エクイティー・スワップは、いわば昔で言うと打ち出の小づち、今で言うとドラえもんのポケットと私は呼んでおりますけれども、そういうものではないんだと思うんですが、今回の法案で、デット・エクイティー・スワップの成立要件なりあるいはこれの評価をどのように通産省は考えているでしょうか。
  186. 林洋和

    政府委員林洋和君) まさに委員指摘のように、債務の株式化というのは、事業の再構築を円滑に進めるための財務体質の改善が必要不可欠な場合に行われる一つの手段、手法だと思います。債権者から見れば、債権を株式にかえて、株価の上昇によってそれは穴埋めされるという判断があるわけでございます。  そういう意味では、この法案における債務の株式化の要件といたしまして、当然、債権者、債務者間の合意を求めることといたしております。
  187. 加納時男

    ○加納時男君 確かに、株価が上がればこれは非常にハッピーなんですね。    〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕  問題は、私が非常に気になるのは、キャッシュフローを生み出す体力の乏しい企業があります。どの会社とは言わないけれども、ゼネコンですとか流通企業の一部であるとか、大手のあるもののメーカーさんだとか、こういったところにも適用すべきなのかどうかということは非常に私は不安があるわけです。ということは、再建可能な企業に限定しないと、まさにその会社がこけまして株価が下がっちゃって株式市場の底割れが懸念されるんじゃないか。  また、私の質問は、デット・エクイティー・スワップの適用を受ける企業の株主は責任をとって減資すべきではないか、減資に応ずべきではないかと思うんですけれども、この辺はどうでしょうか。
  188. 林洋和

    政府委員林洋和君) 第二番目の減資の点からお答え申し上げますけれども、私どもは減資など既存株主の責任に係る事項が当然求められるものというふうに思っております。  それから、株式市場の底割れというお話でございます。例えば、二千億円の債権を二百円で株にいたしますと十億株出てまいります。そういう意味で、このデット・エクイティー・スワップというものが有効に使われるケースというのは、今申し上げたように十億株が一挙に株式市場に放出されるということは現実にはあり得ないことでありまして、私が思うには、当然、減資が行われて債権を株式にした場合に、収益を生み出す中核的事業というものがきちっとあって株価が上昇していくだろうという期待を関係者が持てるようなケース、あるいは親会社が子会社の再建を行うようなケース、さらには何らかの理由で過少資本になっているようなケース等、有効に使えるケースというのはおのずと限定されるのではないかというふうに考えております。
  189. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  次のテーマに移ってみたいと思います。  これもきょう、同僚議員から御質問が昨日に続いてあった事業構築の認定の問題であります。事業構築の認定については、第三条の第六項で七つの認定要件が書いてあるわけであります、繰り返しませんけれども。この七つはすべて私は妥当なことだと思うんですけれども、全部抽象的なんですね。生産性を相当程度向上させるとか、経営資源有効利用されるとか、国際経済環境との調和を阻害しないとか、非常にいいんですけれども抽象的でよくわからない。これは逆に言うと裁量行政になるんじゃないかという批判が衆議院でもありました。    〔理事成瀬守重君退席、委員長着席〕  その後、通産省の方ではメモを出されまして、「大臣認定の客観化と法運用の透明化」というものを出されました。それも拝見しました。客観的基準を設けて恣意性を排除することであるとか、適用基準は告示で明確化するとか、数値目標をつくりますと、経営実態や専門家の意見も聞いて省庁間で論議しますとか、認定までは一カ月としますとか、パブリックコメントを受けますとか、非常にいいことを言われました。  きのうの本会議大臣答弁をずっと私は注意深く伺っていたんですけれども、非常に明確に、手続は簡単に、認定は客観的に、そして時間は短くという、大変すばらしい回答があったんですが、よく考えたらまだ若干抽象的なんで、それをもう少しきょうは伺いたいと思うんです。  例えば数値目標として、数値目標は私はとてもいいと思うんです。ROEだかよくわかりませんが、数値目標として例えばこんなようなものを考えているよとか、それからきのうの答弁の中であった最小限とするというお話があるんですね、最小限のチェックにすると。最小限というのはどのぐらいかちょっと私は頭の中で整理できないので、イメージがわくような答弁をもし大臣にお願いできればと思います。
  190. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) この法案はあくまでも事業者の自主的努力を促し、企業事業構築が円滑に実施されるような環境を整備するものでございます。本法案における計画認定もこのような事業者の自主性を前提とした上で、法令に定める基準に照らし当該計画が各種措置を受けるにふさわしいものであるかを確認するためのものであり、必要な制度であると認識をしております。  ただし、計画の認定基準については客観的かつ明確である必要があると考えており、今後、告示にて明確化したいと考えております。その際、基準に掲げる数値目標については、事業者が目標とすべきメルクマールとして明確に示す必要があると考えており、例えば生産性の相当程度の向上につきましては株主資本利益率、すなわちROEや従業員一人当たりの付加価値額等の指標を考えており、幾つかの具体的な指標を数値基準で示すことを考えております。  これらの具体的数値基準については、今後、経済実態や専門家の意見を踏まえつつ関係省庁間で十分協議を行いつつ策定し、公表したいと考えております。  計画の認定に当たっては、かかる客観的かつ明確な基準に基づく必要最小限のチェックにとどめることにより、恣意性のない透明かつ迅速な運用に努めてまいる所存であります。
  191. 加納時男

    ○加納時男君 御回答としては、非常に私は立派な回答だと思います。特に、今、ROEでありますとか、それから一人当たりの付加価値額とかいう具体的なものを、例示でしょうけれども言っていただいたのは勇気のある御答弁だと思っております。  私は非常に悩んでいることがありまして、この認定というものはそもそも企業として本当に望ましいことなのか。私は、企業にとってはある意味ではルビコンを渡るような、何か経営ポイントになるようなことをお伺いを立ててお墨つきをもらってやるというのは経営者としては非常に恥ずかしい話ではないかなと、そこまでしてでもやらなければ再生できないのかなというのが第一の悩みです。これは御回答は特に、してもらってもちょっとつらいと思うんですけれども、私自身が悩んでいるということで申し上げたいと思うんです。  もう一つの悩みというのは、今大臣がおっしゃったことを聞いていて余計悩んじゃうわけですけれども、非常に客観的な透明な基準、だれが見てもわかるような基準というのは非常にいいと思うんですが、他方、先ほど来雇用の問題でもあったように、血も涙もあるようなことをやってくれと、中身をよく見てくれというと、若干これは恣意性に走っちゃうのかなと。血も涙もあるということと透明性というのは、非常にやるときには難しいと思うんです。難しいことであっても、今の大臣なら私はできると思うので、期待しておりますのでぜひともやっていただきたい。これは答弁は結構でございますから、そういうことをお願いしてこの問題は終わって、また若干専門的な質問に移らせていただきたいと思います。  次は、MBOについて伺いたいと思います。  企業事業構築計画を決定するに当たりまして、有効活用し切れない経営資源があると思います。これを当該企業以外の者が活用する場合には活用計画をつくる、これをつくったならば支援するというのが今回の法律にあります。そのうち、役員とか従業員、これは特定活用事業者という言葉がついていますけれども、これが主体となってやる場合、これはアメリカではよくMBOと、マネジメント・バイ・アウトの略でありますが、こういうことで我々は承知しているわけであります。  この法案では、MBOに対して非常に手厚い支援策が今回、日本の場合講じられているのは私は非常に結構だと思っています。ストックオプションの特例、十分の一から四分の一に引き上げるとか、それから議決権なき株式の発行限度枠を三分の一から二分の一に上げる、それから産業基盤整備基金による債務保証・出資とか、中小企業信用保険法の特別枠の創設だとかいろいろあって、私は非常にこれは踏み込んだ勇気のある施策だと評価したいと思っています。  いつも褒めた後で意地の悪い質問をして悪いんですけれども、これは実はいいんですが、ちょっと気になることは、日本の場合、このMBOはのれん分けのようなことをすぐ連想します。これだと中小企業では経験があるわけです。ところが一方、大企業にとってはなじみ薄だ。今回出てきているのを見ますと、MBOへの支援条件として活用事業計画をつくれということになっています。活用事業計画をつくるのは大企業はお手の物だけれども、大企業はこれは余りなじまないだろう。一番なじむ中小企業は活用事業計画をつくりなさいと言ったらひるんでしまうんじゃないかというのがまた悩みなんですけれども、この辺はどういうふうに工夫されますか、伺いたいと思います。
  192. 林洋和

    政府委員林洋和君) 私ども、法律の十九条に、「国は、活力ある中小企業者事業構築が」云々ということで、中小企業者事業構築がうまくいくための規定を設けております。  そういう意味で、大企業のみならず中小企業がこの計画をぜひ使ってもらいたいという思いでございまして、例えば活用事業計画の申請書類につきましては事業者の負担をできるだけ軽減するために極力簡易なものにしたい、あるいは申請様式の記載事例などを載せた説明書などをつくりまして広く中小企業者に啓蒙普及を行いたいということを考えております。
  193. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  今回のMBOの支援策、今いろいろ工夫されていることも伺ったんですが、私は手厚さは非常に評価したいと思うんです。  ところで、MBOもそうなんですけれども、いろいろ政府が中小企業に対して支援をしていくといった場合に、出資ですとか融資ですとか保証をすることが多くなってきます。こういった場合に大事なことは、これは本当に大丈夫だろうかといった出資先、融資先、保証先に対する審査能力といいますか目のきき方、目ききとよく言いますけれども、これが政府系の支援機関等にあるのかどうかということを伺いたいと思うのです。  というのは、目ききがないままにもう要請があればどんどん出資します、融資します、あるいは保証していきますということは、非常にある意味ではリスキーなんですね。これを目ききがないままにやっていくと、まさに御用聞きになってしまって、その結果焦げつきになってしまうというようなことも気になるわけです。この目ききの強化ということについて、今回どのようなことを考えておられるでしょうか。
  194. 林洋和

    政府委員林洋和君) 今回、MBOに対して出資、保証等を行うに当たりまして、まさに目ききの能力が重要であるということは御指摘のとおりでございます。  今回、私ども債務保証とか出資を行うあるいは融資を行う者として想定しておりますのは、産業基盤整備基金あるいは日本開発銀行等でございます。こういったところは、従来から新規事業法などで出資や保証や融資を行ってきております。そういう意味では、経験はあるというふうに思っております。  ただ、私どももベンチャー支援をこの十年ぐらいやってきて、なかなかうまくいかないじゃないかという御指摘がございます。これは人によって受けとめ方は違いますが、私は個人的には、一つは組織を離れる勇気がない、二番目にはリスクマネーという、リスクという概念が日本にはない、三番目には技術なり事業評価する目ききがいないということを言っております。そういう意味では、欧米などと比べると、この目ききの能力なり幅の広がりというのがないというのも事実であろうと思います。そういう意味で、中小企業庁などで目ききをふやすべく対応策を講じているところでございます。
  195. 加納時男

    ○加納時男君 きょうの産経新聞の朝刊に今のお話関係した記事があったような気がします。目ききの養成として、ベンチャーで成功した人をコンサルタントのようにして目ききを教育してもらうという非常にいいアイデアが載っていたような気がします。  可能性が多いか少ないかというのはやってみなきゃわからない。日本人の一番の欠陥は、失敗したら困るということでみんな引っ込んじゃう。やってみる、やってみて失敗してもまた出直す、一回浪人しても二回目に受かればいいという、そういうベンチャー精神が私はすごく大事だと思います。  脱線しないでまたもとに戻りますと、Mの次はアルファベットでいくとNなんですけれども一つ戻って、今度はLでございますから、LBOについて伺いたいと思います。  これはレバレッジド・バイ・アウトということでございまして、起業家が新設する会社を担保にベンチャーキャピタルだとか金融機関から投資、融資を受けるものであります。これはアメリカなんかでもありまして、企業買収でよく使われる手法でございます。将来のキャッシュフローを担保に調達するところに特徴があるわけであります。これは実は非常にハイリターンなんですけれどもハイリスクなんです。創業間もない会社を担保にいわば多額の資金支援をするというのですから、非常に危険だと思うんですけれども、今回の法案ではこのLBOを議論されたと私は理解していますけれども、結果はどのように生かしているんでしょうか、生かしたらいいんでしょうか。
  196. 林洋和

    政府委員林洋和君) 私ども今回、MBOを中心にEBO、LBOを議論いたしました。その中で、先ほども申し上げましたけれども日本的な雇用慣行というものを考えると、EBOというものを特に念頭に置いて手厚い措置を講じるべきだと、幾つかそういう例も出てきているということで、EBOを主として念頭に置いているのは事実でございます。  では、LBOについてどうかというと、一九八〇年代後半にアメリカを中心に成功した事例あるいは失敗した事例等、まさに御指摘のハイリスク・ハイリターンのやり方でございます。このLBOについて、私ども、LBOだからいけない、LBOだからいいと言うつもりはございません。むしろ、この法律の活用事業計画が所定の要件を満たすかどうかという点で判断していきたいというふうに思っております。  恐らく、このLBOというのは、お金の集め方から経営の仕方からかなり特殊といいますか独特のものが出てくると思います。したがって、そういう意味で、ある程度は個別のケースに応じて判断はしていかざるを得ないし、一概にこうするということを申し上げるのは若干危険かなというふうに正直思っております。
  197. 加納時男

    ○加納時男君 それでは最後に、中小企業支援対策として今回の対策の中で新事業に対して伺ってみたいと思います。  今回の法案でベンチャー型の中小企業による新事業開拓への支援を強化することになっておりますが、特に重点を置いておられる項目で結構ですが、信用保証とか、そういうことでちょっと触れていただければと思います。
  198. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 我が国産業活力再生を速やかに実現するため、本法案におきましては、中小企業者による新事業開拓に対しまして幅広くかつ強力な支援策を特別に措置しているわけでございます。  具体的には、都道府県知事から経営資源活用新事業計画の認定を受けました新事業開拓を行う中小企業者につきましては、まず第一に各種信用保証枠の倍額化、別枠化を図り、制度的には貸し渋り特別保証制度二十兆円の保証枠を適用する特例措置を講じております。  第二には、設備資金につきまして無利子融資を都道府県から受ける制度がございますが、これにつきまして計画認定を受けた者については融資割合の引き上げ、二分の一から三分の二にするなどの措置を講ずることとしております。  また、中小企業創造的事業活動促進法等の各種の中小企業・ベンチャー支援法の既に対象になっている方については、本法の知事の認定を受けたものとみなして先ほど申し上げた支援措置が受けられるという便法も講じてございます。
  199. 加納時男

    ○加納時男君 今のお話の無利子の設備近代化資金の条件ですけれども、比率については二分の一から三分の二と言われました。期間もたしか延ばしたような気がしますけれども、今たしか五年ですね、これを今度どれぐらい延ばしますか。
  200. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 償還期間については通常五年でございますが、七年まで延ばすことになっております。
  201. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。よく配慮していると思います。  同様な質問なんですけれども創業者による新事業開拓への支援強化ですけれども、これについてはどんなようなことを織り込んでおられますでしょうか。
  202. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 同じく本法案におきまして、創業者につきましては、まず保証の世界では無担保保証の限度額を従前の一千万円に加えまして、トータルで二千万円まで可能としてございます。また、制度のベースといたしましては、貸し渋り特別保証制度二十兆円の保証枠をやはり適用する特例の措置といたしております。  また、設備資金の無利子融資につきましては、創業者については従来から対象になっておりませんでしたが、この対象にするとともに、償還期間を五年から七年間に延長するなどの措置をとっております。
  203. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  先ほどのお話の中で二十兆円という言葉が出てきました。この私ども経済産業委員会でも、去年、中小企業金融対策を同僚議員と真剣に議論して、法律もあるいは運用も随分改善できたということをともに喜びたいと思うんですが、この二十兆円の特別保証枠が決まってから十カ月たったわけであります。  そこで、特別保証枠の実施状況、どのくらいの数の応募があった、あるいは貸し付けの実績があった、金額はどのくらいかとか、そういうことを伺いたいと思います。
  204. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 昨年十月に発足をいたしたわけですが、中小企業金融安定化特別保証制度につきましては、ちょうど十カ月目の昨月、七月いっぱいまでに九十万六千件の利用実績がございます。また、金額的には十六兆四千億円と多くの中小企業の方々の御利用をいただいております。
  205. 加納時男

    ○加納時男君 これはすごい数字だと思うんです。中小企業というのは何件あったですか、六百万か七百万か。だとすると、一五%ぐらいの方が応募されたということでしょうか。私は大変に効果があったんじゃないかと思います。  この効果として、一つの指標として倒産件数、特に運転資金が詰まってしまって、経営はいいんだけれども運転資金の融資を断られたのでつぶれるというのがこの席でも随分議論されて、これを防ごうということで導入されたというふうに私は理解しているんですが、その効果として例えば倒産件数はどのようになっているでしょうか。
  206. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 本制度の効果の一つでございますが、昨今の倒産状況を見てみますと、本制度が発足しました十月の翌月の十一月から対前年比で倒産件数が九四・六%、六九・二%、以下ほぼ前年比三割減程度で推移をしてきております。  こういった面については、特別保証制度はかなりの効果を上げたのではないかと考えております。
  207. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  私は、この二十兆円の保証枠というのは日本としても大変画期的な政策だったと思っておりますし、今のお話を伺うと、その効果として倒産件数が激減をしてきたというのは非常に大きく評価したいと思っているわけでございます。  これまではいい話ばかりですけれども、この先、二つほど心配があるわけです。  一つは、二十兆円の枠がいっぱいになってしまったらどうするんだと。これは既に閣議で決定して、追加をしますよということでクリアされたと私は思うんです。  もう一つの話というのは、去年の十月から、ともかく中小企業を救わなきゃならないという一心で、信用保証協会の仲間なんかに聞いても、連日徹夜みたいな状況で仕事を処理して、お客さんもわっと来られて本当に大変な状態だったと。そこで、ともかく早く貸そうということでやったんですね。私はいいと思うんです。  しかし、その結果、これから例えば事故率が上がってくる、それから代位弁済率がふえてくるといったようなことが出てくるんじゃないだろうかという心配があるんですけれども、この辺の実態はどうでしょうか。例えば、代位弁済率が落ちついているのか若干上がりぎみなのかとか、お手元にある資料でわかる範囲で結構です。
  208. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 本制度設計に当たりましては、ネガティブリスト方式を採用する等、できるだけ迅速に保証実行がされるように配意したところでございます。実績がこのように上がってきたということで、それなりの効果を上げたものと考えております。  ただ一方、代位弁済、いわゆる事故の件数の推移については私ども大変関心を抱いております。  私の手元にある数字では、十一年六月まででございますが、十月以来、保証を承諾しまして実際に事故が起きて代位弁済をした件数はちょうど千件になっております。金額的には二百三十一億円ということでございまして、この数字が何を意味しているかという点で申し上げますと、約八十六万九千件、六月末時点での保証実行ですが、この千件というのは割合で約〇・一二%になります。これは、数十年やっております信用保証協会の保証制度の初年度に保証をしてその年度内に事故が起きている割合からいいますと、過去〇・一三%というこれを上回る数字もございましたので必ずしも安心はできませんが、この〇・一二%自身は異常に高い数字にはまだなっていないということでございます。  ただ、二、三年後に事故が起きるのが通例でございますので、今後とも慎重に推移を見守りたいと思います。
  209. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。よくフォローしていただきたいと思っております。また、この委員会でも折に触れてこの問題を取り上げていきたいと思っております。  非常に勇気のある、若干リスクは負ったけれどもやったと。事故率は、あのときたしか二%ぐらいだったのを一〇%まで見ようよというような議論もしたと思うんです。与野党じゃなくて、これはまさに国会議員として、皆さん真剣に中小企業のために議論をし、通産省もよくそれを具体化してくれたと本当に感謝しているわけであります。ただ、これからのそういう代位弁済率の推移等は慎重に見ていく必要もあるだろう。一番心配しておりました初年度の発生率、今伺うと過去の初年度と幾らも変わらないですから、これはちょっとほっとしたところでありますけれども、これからも油断なく見ていただけたらと思っております。  時間が若干残りましたので、最後に通産大臣に御所感を伺って、終わりたいと思っております。  今の問題に関連して、過日、私は東京商工会議所に参りました。実は、中小企業金融問題をこの委員会でもやるということで、私は、絶えず中小企業の方々、経営者の方々あるいは商工会議所の方々、信用保証協会の方々、いろんなところと直接お会いして生の声をずっと伺っているんですけれども、この間お会いしたときに非常に感激する話を聞きました。  それは、今まで国に、政府に中小企業としていろんなことをお願いしてきた、いろいろやってはくれてきたけれども、今度の二十兆円の特別枠の保証を初め、今度ぐらい国が迅速に的確に行動してやってくれたことは初めてです、本当に感謝しますと言われました。と同時に、その次が大事なんですけれども、国がここまでやってくれた、ここから先は私たち経営者企業者の責任ですと。私はこの言葉を聞いて感激いたしました。  通産大臣に伺いたいのは、この一点なんです。今、日本経済はいろんな施策が大事であります。けれども、やはりすごく大切なことは、夢というのも大切でありますが、同時に独立自尊といいますか、自分のことは自分で責任を負う、人様を当てにしない、あるいは自分がちょっと悪くても人のせいにしないということだと私は思うんです。教育の問題、教育が荒廃している。日教組が悪い、文部省が悪い、教育委員が悪い、だれかが悪い、自民党が悪い、旧社会党と言ったらきついですね、それが悪いとか、そういうことを言って、自分はいい、関係ないというところに日本の根本の根本がある。子供というのは親の子供ではないかというのがポイントだと思うんです。  同じようにして、日本経済政府が何とかしてくれよ、政府がだめだからおれがこんなに不幸になったじゃなく、自分の力でやっていく、自分のことは自分で責任を負う、人のせいにはしない。そしてその上に、社会のために自分ができることは一つでもやる。これはだれが言ったのか。明治三十三年、西暦一九〇〇年に「修身要領」という本の中で福沢諭吉さんが初めて使われた言葉が独立自尊であります。来年は独立自尊百周年であります。  そういうときにこの産業再生法が出てきたというのは非常に意味がある。産業再生法はいろいろ議論をした。経済界の意見も評論家の意見も、いろんな意見を聞いた。真剣につくってくれました。しかし、根本の根本は独立自尊である。企業は自分のことは自分でやるという当然のことを一番根本に据えたいと私は思うんですけれども、通産大臣の所見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  210. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 今回の法律も、やはり企業経営者自身の自己責任と申しますか、自分で立つ、自立ということが根本的な考え方であって、私どもが国会にお願いしておりますのは、そういう自助努力がよりよくできるような環境整備のためのいろいろな制度面あるいは税制面で皆様方に御討議、御審議をいただいているわけでございまして、いわゆる依存的な体質を助長するということはこの法律の目標ではございませんし、またそうあってはならないと思っております。  また、保証枠の点についてお話がございましたが、これも昨年の異常な状況、すなわちデフレスパイラルに入るかもしれないという非常に大きな懸念もございましたし、金融機関が本来果たすべき融資機能が金融システムが不安定になって銀行自体が生きるか死ぬかというところまで行って、特に立場の弱い中小企業が運転資金すら手に入らない、そういう異常な事態でとった措置でございまして、また日本経済が平常時に戻りましたら、それはそれでやはり原理原則に基づいたいろいろな経済行為が行われる、そのように私は考えております。
  211. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  終わります。     ─────────────
  212. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、山下善彦君が委員辞任され、その補欠として森田次夫君が選任されました。     ─────────────
  213. 水野誠一

    ○水野誠一君 最後のバッターとなりまして、大部分質問というのはもう既に各委員から出ております。私は、その中から幾つかさらに詳しくお答えいただきたい、あるいはお答えの中でまだ十分に理解できない点についてお尋ねをさせていただければと思っております。  昨日も代表質問をさせていただいたんですが、バブル崩壊後、景気回復という期待を抱いて、政府企業本当の構造改革、これが先送りされてきた。しかし、そのツケが今ここにきて大きくのしかかってきている。その背景には、私は、市場の競争のグローバル化の進展というものがあるんではないかと思うわけであります。我々は、失業の増加、これは大変大きな懸念でありますが、こういった社会不安につながらないように十分に片方では配慮しつつも、一方で産業構造を果敢にかつ迅速に転換を進めていかなければいけない、こういう極めて高度なテクニックを今要求されている。そこには、きのうも申し上げましたけれども、やはり知恵のある政策、これが要求されていることだと思います。  そういう中で、今回の法案は、いわば政府による企業産業界の自己改革への支援プログラムである、そしてまた今日の厳しい状況をかんがみるに必要最低限の措置であるというふうに認識しております。  今回は、主に産業再生法案から漏れている諸施策について幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  まず一つは、規制改革委員会報告について伺いたいと思います。  政府が行うべき競争力強化策の柱は、主に三つに集約されているという指摘がございます。一つはマクロ経済政策を間違えないこと、それから二つ目は大幅な規制緩和、そして三つ目は企業の構造改革を後押しする環境の整備、この三点であります。当然、相互に関連の深い要素であると思いますが、ちょうど先週末に政府行革推進本部の規制改革委員会から新たに今年度取り上げる検討テーマが公表されているわけでありまして、これについて伺いたいと思います。  伺いますと、幅広い検討テーマが挙げられているようでありますが、これらのうち通産省関連にはどんなものがあるのか。今回の産業再生法案に盛り込まれている論点も一部見られるようでありますし、また年内に出されるという規制改革委員会の提言を待つことなく検討を進められているテーマも多いはずであります。規制改革委員会の公表テーマに示された論点について、通産省として積極的に検討を進めているものと思いますが、この点についてお答えをいただければと思います。
  214. 江崎格

    政府委員江崎格君) 規制改革の問題でございますけれども、この問題は個人や企業が創意工夫を高めまして、競争の拡大による効率化をもたらすということを通じて全体として経済活力を高めるという、構造改革を考える場合に非常に重要な柱の一つだというふうに私どもも位置づけております。  今御指摘の七月末に公表されました規制改革委員会の論点公開でございますが、私どもの関連の項目としては、一つは民事的救済制度、いわゆる私訴と言われていますが、それの検討。それから基準・認証制度の見直し、資格制度の見直しといったようなことが取り上げられております。実は、この項目の中では既に措置がなされたものも含まれているわけでございますけれども、いずれにしましても、規制緩和の推進に向けまして私どもとして今後積極的にこうした指摘も踏まえて検討を行っていきたいというふうに思っております。
  215. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。大いに期待をしているところでございますので、しっかりとお進めをいただければと思います。  それから次に、日本版SBIRの実施状況に関連してお尋ねをしたいと思います。  産業再生法案三つの柱のうちの一つは、中小・ベンチャー企業の育成ということであります。今回の法案には盛り込まれていませんが、今後充実の方向にある施策として中小企業技術革新制度、いわゆる日本版SBIRが挙げられておりますので、これについて伺いたいと思います。  昨年末の緊急経済対策の一環として創設された制度であるということで、我々も当委員会審議が行われたことを明確に覚えております。技術力のある中小企業を育てて、新産業創出や雇用吸収を目指して政府研究開発予算の一定額を無償供与する制度であるというふうに理解しておりますが、これはアメリカのSBIR、これがモデルとなっているわけでありますが、アメリカでは九八年度の助成額が約一千六百億円に達していると聞いております。  昨年十二月の審議の際に、私が日本版SBIRでは補助金の額はどれくらいになるか質問をさせていただいたわけですが、本予算が通った後に各省から中小企業向け特定補助金を積み上げて支出目標とするので、まだその時点ではわからないというふうに御答弁をいただいたことを覚えております。  日本版SBIRの初年度であります九九年度予算では結局どれくらいの規模の予算となっているのか、それからまた執行状況は一体どういう状況なのか、どんな研究開発事業にこの制度が生かされようとしているのか、この点について少し詳しく御説明をいただければと思います。
  216. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 昨年の年末成立をいただきましたSBIR制度、中小企業技術革新制度につきましては、平成十一年度、本年度が実質的な初年度に当たります。  先生も御記憶にありますように、中小企業者向けに補助金、交付金、委託費というものが年間どのぐらいを支出目標とすべきかという交付の方針というのが四月二十日に決定を見ております。その中では、中小企業向け支出目標といたしまして約百十億円がございます。  具体的に申し上げますと、五省庁、科学技術庁、厚生省、郵政省、農水省、それに通産省の所管する三十八の特定補助金等につきまして、そのうち約百十億円を今年度内に中小企業向けに交付しようという方針決定がされたところでございます。  具体的に、これらの交付の進捗状況でございますが、トータル三十八ございます。現在までに採択決定済みのものもあれば、採択未決定、審査中のものもございます。大まかに申し上げまして、三分の一強ぐらいが採択決定が済んでいると言えると思います。  御質問の中にありました、具体的にどのようなテーマが採択されているかということでございますが、これは特定補助金等の一つに課題対応新技術開発事業という中小企業総合事業団が委託をいたします制度がございます。提案が二百七十四参りまして、分野的には材料・プロセス、機械システム、電子情報処理、バイオから海洋関連、流通・物流と大変多様な分野について提案が公募されてきております。  具体的に採択事例が幾つかございます。  一つございますのは、プラスチックの材質を判別する大変簡易なそういった機器の開発のテーマがございました。これは具体的に採択をされておりまして、産業廃棄物処理、一般ごみの焼却場等についての分別に活用できるだろうという点がございます。  二つ目の例では、高齢者向けのひざ関節症、ひざ関節が大変痛む方用のジョイントの開発というのがございます。あるいはダイオキシン類を連続測定する、そういった測定器についての開発テーマもございます。  総じて言いますと、大変多岐にわたったテーマ、分野になっておりまして、今非常に関心を集めております環境とか高齢者関係、そういったテーマも多々出てきておるというのが現状でございます。
  217. 水野誠一

    ○水野誠一君 アメリカと比較して、単純な比較はできないと思いますけれども、アメリカでは千六百億、日本では百十億ということでありまして、経済規模からいけばまだまだ頑張ってこの額はふやしていかないと、とりわけハイテク分野でアメリカの技術を追い越していくということはなかなか難しいのではないかと思うわけであります。  それからもう一つは、アメリカのSBIRにある制度の中で、一億ドルを超える研究開発予算を有する連邦政府機関は予算の一定割合を中小企業向けに割かなければならないというルールがございます。十二月の審議の際にも、日本版SBIRではこの一定割合に相当する数値がないということを指摘させていただいたんですが、その答弁は、比率よりも金額を掲げる方がわかりやすい、また補助金の性質によって中小企業にふさわしいものから大企業にふさわしいものまでいろいろあって、比率を掲げることは逆に障害となる可能性があるなどの御説明がございました。  また、アメリカのSBIRには、政府がニーズ、資金、マーケットを三点セットで提供するという点と、基礎調査、具体研究、商業化という三つの明確なステップを踏んで企業支援するという重要な特徴があるということも指摘させていただいております。  今後、日本版SBIRの充実強化を図っていくに当たっての視点はどういうことなのか。それから、予算規模の拡大のみを想定するのではなく、その中身の内容的な問題をしっかりと見ていくということが私は必要だと思うんですが、いただいた資料の中で、私はそういう視点から見てちょっと気になる点が幾つかあるんですが、「日米SBIRの制度比較」というのがございます。この中で、例えば評価方式、これはアメリカでは外部評価パネルの活用、そして評価基準は明確かつ商業化可能性を重視ということになっていますが、日本ではこれが省庁内の評価である、そして評価基準は今後明確化、こういう違いがあるわけでございます。その辺が私は、一定率をどうするというこういうルールを、アメリカの方式をまねする必要はないと思うんですが、評価方式ということにおいては、この省庁内の評価ということが実際に行われているとすると、まさに裁量行政ということにつながる危険性があるのではないかと思うんですが、その点はいかがでございましょうか。
  218. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 臨時国会で御審議をいただきましたときに、今先生御指摘の点についていろいろお話を申し上げた記憶がございます。  今後の課題は幾つかあるわけですが、当然のことながら参加省庁数をふやしていきたい、特定補助金についても数をふやしていきたい、百十億円という交付の目標額についても漸次膨らましていきたいという希望を持っております。彼我の差、日米間で十五年の時差、おくれがございますので、できれば四、五年のうちには経済規模なりあるいは研究開発費、予算の規模に応じたレベルでのキャッチアップをしたいと考えております。  実際の審査の評価基準の話でございますが、今、五省庁に分かれて三十八の補助金あるいは委託費になっております。私ども通産省としてやっております例えば中小企業総合事業団の課題対応新技術研究調査事業あるいは開発事業、これは十一年度予算からいただいているわけですが、これらにつきましては、内部審査機関と先生おっしゃいましたけれども、約六十名の専門家の方々に審査委員会をつくっていただいております。例えば材料関係、機械関係、電子関係、バイオ、医療、環境、それぞれ大学の先生であるとかベンチャーキャピタルの専門家であるとかあるいは商社マン等の実業家であるとか、そういった方々の審査を仰ぎながらなるべく客観的に処理をしたいと思っております。  ただ、三十八の特定補助金すべてについてこの仕組みが導入されているわけではございませんので、今後ともこういった方向で各省とも話をしていきたいと考えております。
  219. 水野誠一

    ○水野誠一君 ほかにも、知的所有権の帰属方式、これはアメリカでは全面的にベンチャー企業に帰属するということに対して、日本では補助、委託別や省庁ごとに異なる知的所有権が帰属ということで多少違いもあります。これはどちらがいいかというような議論を今後いろいろ運用する中で決めていかなければいけない、判断していかねばいけないポイントだと思います。  私は、この日本版SBIRというものを大いに期待して今までも何回か御質問させていただいているところでありまして、こういう制度が実効力を持っていく、効果を上げていく、いただいている資料の中でもアメリカではもう明確な効果が出てきているというデータもあるわけでありまして、ひとつそういう視点から運用の適正化をぜひ図っていただきたいと思います。  次に、エンジェル税制について伺います。  現行では、一定の要件を満たした企業に投資した個人に対して、株式投資で生じた損失を譲渡益と差し引いて三年間の繰り越し控除を認めているわけですが、どうも十分に機能していないんじゃないかという話がございます。確かに大蔵当局との調整も大変難しい点ではないかと思うんですが、過去には宮澤蔵相がエンジェル税制現状について、役に立たないとは言わないがかなり消極的なものだ、与謝野通産大臣と相談しながら何か考えられないか真剣に探りたい、こういう発言をしております。また、通産省としてもこの点は積極的に検討なさっているはずでありますが、今後の見通しはいかがでございましょうか。
  220. 江崎格

    政府委員江崎格君) エンジェル税制でございますけれども、これはベンチャー企業の場合に、アーリーステージでなかなか資金調達が難しいということに着目いたしまして、そこに民間資金というものを投入させるような仕組みということで平成九年の六月にできたわけでございますけれども、今の制度というのは、他の株式の譲渡益との損益の通算ということになっているわけでございます。一定の制約がございます。  実は、昨年の平成十一年度税制改正要綱という中で、私どもは源泉分離課税の廃止というものにあわせまして、株式の譲渡損失を一定の範囲の中で、他の株式譲渡益だけではなくて、他の所得と損益を通算することを可能とするという要望を大蔵省にいたしました。  結果として去年実現しなかったわけでございますけれども、いずれにしましても、私どもは今後このエンジェル税制につきましてさらに措置を充実する必要があるかどうかということを十分検討いたしまして、源泉分離課税の廃止を含めた金融関連税制の見直しも踏まえながら、そのあり方について今後もさらに検討していきたい、このように思っております。
  221. 水野誠一

    ○水野誠一君 ぜひ、実効性のあるシステムにしていただくということは大事だと思うんですね。  それからもう一つ、先ほど来質問が出ておりますけれども、目ききという言葉でございます。これは、目きき機能を有するベンチャーキャピタリストの育成支援というメニューが示されているんですが、これは私は大変重要なことだと思うんですけれども、実際どうやるんだということは私もよくわからない。  これは、前も私はこの委員会でちょっとお話ししたことがあるんですが、九二年にアメリカで創業、起業されたベンチャーの追跡調査をしたデータがありました。五年間追跡調査をした。そうしますと、その企業の残存率を調査しましたところが、ベンチャーキャピタルが入っている会社は八割残っている。ところが、ベンチャーが初期、アーリーステージで投資をしていない会社というのは逆に二割しか存続していないというデータがありまして、これはベンチャーキャピタルが金を入れたから存続しているという見方もありますが、私はそうではなくて、やはり明確にベンチャーキャピタルの目ききというのが非常に有効な役割を果たしているということだと思うわけです。  この方法です、先ほども質問があってお答えがあったんですが、よくわからないんですが、なかなかこういうものというのは簡単に育てられるものでもないんじゃないかと思うんですが、いかがなものなんでしょうか。
  222. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 数年来、通産省・中小企業庁としてベンチャー対策、中小企業対策を打ってきているわけですが、ベンチャーというものに対する評価、目ききというのは最も重要なポイントであるということは我々としても認識しているわけでございます。ただ、その持っておる新技術あるいは経営の将来成長力、そういったものを評価するのは大変難しい問題だと思います。聞くところによりますと、欧米といいますか、米国を中心にそういったベンチャーキャピタリスト、目きき能力を持った者が多数輩出をされているということであります。  私ども通産省としましても、例えば海外のベンチャーキャピタルにオン・ザ・ジョブ・トレーニングでトレーニーを派遣するとか、あるいは中小企業庁におきましても中小・ベンチャー企業支援機関に対する助成策を開始する等いろいろやってきております。特に、六月十一日に決定されました産業競争力強化対策におきましては、目ききができて手づくりで企業の成長を支援できる真のベンチャーキャピタリストの育成が必要であると言われております。  中小企業庁としましては、本年七月に中小企業総合事業団が発足をいたしましたが、その業務の大きな柱に新事業開拓を促進するための事業ということを中核的な事業として位置づけしておりまして、事業団から投資事業組合に対する出資ができる、あるいは実際にベンチャー企業に対して助成ができるといった積極的な支援のための手だてを用意してきているところでございます。  先ほど申し上げましたように、やはり具体的にリスクマネーを自分の判断でベンチャーに振り分けるという、そういうオン・ザ・ジョブの訓練によってこういった目きき能力を持ったベンチャーキャピタリストというのが生成してくるんだと思いますので、こういった事業団の出資業務、あるいは昨年十一月から発足しております有限責任投資事業組合制度、そういったものを活用しながら公的なお金も活用して、こういったオン・ザ・ジョブ・トレーニングも力を広げていきたいと考えております。
  223. 水野誠一

    ○水野誠一君 先ほど加納委員がおっしゃいましたように、経験を積み重ねていく、あるいはみずから起業をした人間の勘みたいなもの、こういうものを大切にしていくということは大事だと私は思うんです。  アメリカなんかでも、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストの中には、みずから企業を起こして経験をした人たちというのは大変多いということからも、やはり私は、これはじっくりとそういう経験を積みながら育てていくよりしようがないんじゃないか。オン・ザ・ジョブ・トレーニングで育てられるかどうかという点については多少疑問を持っているところであります。  それからもう一つ日本のベンチャーがうまく機能しない理由の中に、金融機関の融資の際の日本独自の習慣というのがあるんじゃないかと思うんです。資本主義は、本来、株主に有限責任しか負わせないという特権が認められている制度ですが、日本金融システムでは、担保が大幅に値下がりしたときには担保物件を譲り渡してもなお借金の返済義務は消えないといういわゆるリコースローン、これが中心になっている。  それに対して欧米では、一般的にノンリコースローンというのが使われている。すなわち、担保以外に債務の弁済を求めることができない仕組みになっている。つまり、例えば担保にしておりました不動産価値が幾ら値下がりしたとしても、返済のかわりにその担保を提供してしまえばそれで貸し借りなしになる、こういう制度でございます。つまり、担保の将来価値を見誤ったのは金融機関責任、つまり金融機関の負うべきリスクなんだから、債務者に対して担保以上の請求はできないというルールがそこにあるわけであります。  日本の場合、事業の失敗とは何の関係もない担保価値の下落によって負債が膨らむ。最悪の場合は、生涯立ち直ることができなくなってしまう。まさに起業者、創業者にとっては恐ろしいリスクがどうしてもそこにあるわけであります。  これは新たな起業を阻害しているのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、欧米で一般的に行われているノンリコースローンについてどうお考えか、お聞きしたいと思います。
  224. 江崎格

    政府委員江崎格君) ノンリコースローンですけれども、私ども、こうしたベンチャー企業といいますか、こういう伸びる企業に対して多様な資金供給のルートをつくらなきゃいけないということで、今おっしゃったような特徴のあるノンリコースローン、日本でもどんどんこれが広がるということが重要だというふうに思っております。  もう既に、例えばIPPに対して政府系の金融機関から一種のノンリコースローンのようなものが実施されておりますけれども、今の資金供給のルートを多様化するということで、ノンリコースローンはもちろんですし、それから例えば特許権を担保にするとかあるいはソフトウエアのようなものを担保にする等いろんな融資の形ができるのが、特に事業者のニーズにこたえてそういうものができてくるというのは非常に大事だというふうに思っておりまして、これからも金融機関などに私どもとしても働きかけをしていきたいというふうに思っております。
  225. 水野誠一

    ○水野誠一君 今のノンリコースローンの問題について、大臣からお考えを伺えればと思います。
  226. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) これはいわゆる戦後営々としてやってまいりました土地だけを担保にして融資する、土地は右肩上がりに永久に上がるといういわば神話に支えられていた金融機関の業務というものを、やはり金融機関が独自に企業の将来性を判断する、ある意味ではリスクをとる、そのかわり金利もいただく、そういうことは一つの融資の形態として私は大変重要な形態である、そのように思っております。
  227. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。
  228. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会