○渡辺秀央君 かなり長時間の
議論でありますから、いつものことですけれ
ども、問題点は大分出尽くしているわけです。しかし、一応一通りのことは申し上げなきゃならぬと思うので、若干ダブる面もあるかと思いますし、あるいはまた同じ問題点を意識の違う角度から申し上げることもあろうと思うので、そういう点は重複してもひとつ御容赦願いたいと思います。
先ほど来の話にもありましたように、私も実はこの法律については、今の段階でこの
日本の
経済・
産業、そしてグローバルな視点から考えて、これは必要最小限度、やらざるを得ないかなと。しかし、本質的に自由主義
経済、そしてまた私もかつて通産行政あるいは商工政策として
産業政策に携わってきた人間として、どうもこの種のことで今慌ててここでまとめてこの法律をという
感じも実はしないわけじゃないんです。これが正直な私の実感なんです。もう少し
議論を尽くして、あるいはまた省内的にもあるいは
政府の内部においてももう少し
議論を尽くし、あるいは現在の
産業の実態をつぶさに掌握した上で
本当はやっても遅くはないのではないかという
感じもしないわけでもない。
しかし、だけれ
ども、連立政権だからというわけばっかりじゃなくて、私は場合によっては連立政権内においても反対があったっていいことだとは思うんですけれ
ども、特に参議院においては良識の府として、衆議院のコピーだ、コピー以下だなんて言われているようなことよりもはるかに、新しい
議論あるいはまた政治家としての行動があっていい、本来的には私はそう思いますよ。
そういうことをいろいろ考えた中でも、最小限度、私が要望し主張した中小
企業問題について法律的に担保していただいた
感じもありますから、結論として私はこの法律には賛成はいたします。しかし、この法律の
実効性あるいはまたこの法律のこれから上げてくる効果、
効率性ということについては、これから私はよくよく自分の政治家としての視点から監視をしてみたいということを
冒頭に申し上げておきたいと思います。
というのは、最初に申し上げたように、実は法律ができ上がるときに私はこれほど疑問を持ったことはいまだかつてないんです。物すごい納得と物すごく必要性と緊急性ということをあるときには覚えたことはありますけれ
ども、今日においては実はこういう気持ちで、この法律というのは私は今までの政治活動をやっている中で余り実は
感じなかった。
そういう
意味で、しかし今日的には最小限度のものとして今の
産業・
経済政策を進める上で必要であるということであるとするならば、そこは了として、今申し上げたように、今後のこの法律の
実効性と
効率性、効果性をしっかりと見きわめてまいりたいということを前提に置いて、時間も三十分しかありませんから、あと二十分ぐらいしかないようですけれ
ども、問題点を申し述べてみたいというふうに思います。
しかし、余り自分の
感じだけ申しておりますと時間を失ってしまいますから、若干今までとなぞることかもわかりませんが、まとめてきたことを申し上げたいと思います。
この法律のねらいは、先ほど来の話のように、
バブル経済崩壊後の
過剰設備、
過剰雇用、過剰
負債のいわゆる三K問題に対処するために、
我が国の
産業再生に向けて
企業のリストラを国が
支援しようとするものであると私は
理解しております。この
過剰設備の問題も、私は、
日本の
設備は既に十年以上
設備更新をしていない、陳腐化している、これも大きな問題ですぞということもかつてこの場で
指摘をしておきましたが、しかし、そういうことがこの法律の中に含まれてきて、
一つの精神として入っているだろうと
理解をしております。
かつて第一次、第二次の石油危機に端を発した構造不況
産業を救済するために制定された特定不況
産業安定
臨時措置法や特定
産業構造改善
臨時措置法、そして昭和六十年のG5以降の急激かつ大幅な円高に対応して制定された
産業構造転換
円滑化臨時措置法などの法律とよく似た法体系であることも否めない事実だと思います。
私もかつて衆議院においてこの問題に
関係してきた一人として、これらの法律の制定に携わった経験を踏まえながら、その時々の
経済情勢の変化に対してとられた
通産省の
産業政策の効果はどうであったのかといういわゆる
通産省の
産業政策の
評価、精査をしておく必要もあるというふうに思います。さっきも若干の話がありましたが、三年前の
日本の
経済・
産業の
現状の分析は
通産省の誤りであったことは事実である、そういうことを踏まえて、あえて今の段階でこのことをこれだけの法律として持ち上げてくる、そこには前提としたものがなければならぬということを私も申し上げておきたいというふうに思います。
昭和四十八年の石油危機を契機として
経済成長が鈍化する中で、需給ギャップが拡大して構造変化に対応し切れない平電炉、アルミニウム製錬、繊維、造船業、化学肥料などいわゆる構造不況業に対しては
立法措置を含めた政策的対応がとられたことは周知のとおりです。すなわち、このような構造不況
産業の
過剰設備の処理に対しては、
通産省は、
事業者の自主的努力によっては構造改善に必要な
過剰設備の量の処理を進めることができないこと、または独占禁止法に基づく不況カルテルでは十分対応が困難であることから、指示カルテルを含む新たな法的
措置を講ずる必要があるとして、昭和五十三年に特定不況
産業安定
臨時措置法、いわゆる特安法が提出されたわけであります。
その法律の趣旨は、
主務大臣の策定する安定基本計画に基づき対象
事業者の
過剰設備の処理を実施するとともに、業界の自主的努力だけでは進まない場合に共同行為の指示ができることとし、その指示カルテルの発効要件として
公正取引委員会の同意を必要とすることとしたのであります。
当時の商工
委員会においては、この法律に対してはさまざまな問題が出されましたが、私も記憶をたどってみて、特に
議論が
集中した点は、今回の
産業活力再生特別措置法案と同様に
雇用問題であったのも
一つです。構造不況
産業における
過剰設備の処理は、言うまでもなく、今までも
質疑が交わされてまいりましたけれ
ども、
雇用に相当な影響を及ぼすとともに、工場閉鎖によって関連中小
企業に及ぼす影響が懸念されました。
雇用問題に対してはこの法律には、
事業者は
労働者の
失業の予防など
雇用の安定に配慮する旨の規定がされましたが、議員
立法で特定不況
業種離職者
臨時措置法も制定されたことは記憶しておられると思います。しかし、単なる訓示規定では
雇用問題は解決できないという
指摘が
委員会で相次いだことから、当時私も自由民主党におりましたが、
日本社会党、公明党、民社党などの共同提案で、「目的」に「
雇用の安定」を加えるとともに、安定基本計画にも
雇用の安定及び関連
中小企業者の
経営の安定について十分考慮されなければならないとの修正を行ったのであります。
特安法施行後、平電炉、合成繊維、造船、化学肥料など十四の製造
業種が構造不況
業種に指定され、また、合成繊維、化学肥料など八
業種について指示カルテルが実施されました。その結果、ほとんどの構造不況
産業の
過剰設備処理は、先ほ
ども局長が答えておりましたが、ほぼ目的が達成され、その反面、
通産省所管の十三
業種における
労働者数は、法制定前には二十四万人ぐらいおったのであったが、この五十七年に二十万人と四万人も減少して、予想されたとおり
失業者の大幅な発生を食いとめることはできなかったのであります。
また、
過剰設備処理のための共同行為は、生産数量カルテルや価格カルテルなど多様なカルテルを誘発してしまいました。本来なら自然淘汰されるような
企業も温存させ、
産業内部の合理化を阻害するというマイナス面ももたらしたことも事実である。当時の
公正取引委員会の
委員長は高橋さんでありましたが、
過剰設備の処理が
生産性を考慮しない一律方式であったため、必要以上の
設備の新増設の制限や禁止が行われ、
産業の
競争力向上にはつながらない面があったと
指摘しております。
こうした点を考えるならば、必要以上に
過剰設備の処理に対して国が
支援することは、
企業努力の足りない
企業を延命させ、結果的に
我が国企業の
国際競争力を弱めるという、この
法案の趣旨に反する結果が出ないとも限らない。
事業再
構築計画の認定に当たってこの点をどのように考慮してやっていかれるおつもりか、ちょっと御意見を賜っておきたいと思います。