運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-05-27 第145回国会 参議院 経済・産業委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十八日     辞任         補欠選任      脇  雅史君     倉田 寛之君  五月二十六日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     武見 敬三君      陣内 孝雄君     山下 善彦君  五月二十七日     辞任         補欠選任      武見 敬三君     久野 恒一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 簗瀬  進君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 加納 時男君                 久野 恒一君                 小山 孝雄君                 末広まきこ君                 中曽根弘文君                 山下 善彦君                 長谷川 清君                 平田 健二君                 福山 哲郎君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障危機管        理室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障・        危機管理室長   伊藤 康成君        警察庁警備局長  金重 凱之君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        科学技術庁原子        力局長      青江  茂君        科学技術庁原子        力安全局長    間宮  馨君        外務大臣官房審        議官       小松 一郎君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省欧亜局長  西村 六善君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、脇雅史君及び陣内孝雄君が委員辞任され、武見敬三君及び山下善彦君が選任されました。     ─────────────
  3. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 長谷川清

    長谷川清君 民主党の長谷川でございます。(拍手)  盛大な拍手は初めてでございます。トップバッターというのも初めてでございますが、はなから調子が狂ってしまいましたけれども。  本改正案質疑に入るわけでございますが、この法案はもともとは原子力なるがゆえに存在する法案でございますし、その根っこのところについて、まずは大臣の方からお聞きをしたいのであります。  我が国エネルギーの中で、原子力はもう既に三六%を超えようとしておりますし、ベース電源としての存在になっております。しかも、これから二〇一〇年に向かいましてさらにそのウエートは高まるという計画政府は持っております。  そういう意味合いにおいて、現実原子力発電というものの必要性について、大臣からひとつ冒頭お聞きをしたいと思うんです。
  8. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) おはようございます。  御答弁申し上げます。  今後も世界エネルギー需要が増加していくと思うんですが、そういう世界エネルギー需要を考慮し、それから我が国社会が安定した発展を後世に向かって遂げていくためには、どうしてもエネルギー確保ということは重要で不可欠だと思います。食糧の確保エネルギー確保は何としても我々は確保する努力をしていかなければならないと思います。そういう点で、公害の防止、特に地球温暖化防止のために世界的に活発な取り組みが行われている中で、原子力発電というものが従来に増して重要な役割を演ずるようになると私は考えております。いずれにしても、今まで以上に地球環境へ配慮をしてエネルギー問題を考えていかなければならないと思っています。  こういうふうな状況に対応いたしますためには、いろいろなエネルギー源最適に組み合わせていくことが必要であると思っています。  まず、私は、新エネルギーというもの、特に太陽エネルギーというのは絶対今後開発していかなければならないと思っておりますが、同時に、風力であるとか太陽エネルギーというものが持っている絶対量における限界ということは私たちは正しく国民に知らせていかなければならないと思っています。そういうふうな新エネルギー考えに入れまして、エネルギー源最適に組み合わせていくことが必要であると思っています。  その中で、原子力の持っている意義ということを考えてみますと、供給が安定しているということ、それから発電過程炭酸ガスを発生しない、すなわち二酸化炭素を発生しない、温暖化の問題がないというふうな特徴があるということ、それから先生先ほど御指摘くださいましたように既に総発電電力量の約三五%を担う重要なエネルギー源になっておりますので、今後とも着実にその研究開発利用を進めていくことが極めて重要であると私は考えております。  今後とも、平和利用の堅持、それから安全の確保ということを大前提といたしまして、国の内外の理解信頼を得つつ、原子力研究開発利用の着実な推進を図らせていただきたいと考えております。
  9. 長谷川清

    長谷川清君 ただいまのお答えの中にもございましたような後世という問題、安定供給という問題やあるいは環境という問題、それらの問題についても後ほど具体的にまたお聞きをしてまいりたいと存じます。  化石燃料、これは石炭石油あるいは天然ガスウランも含めて、それぞれその寿命はあとどのぐらいのものなんでしょうか。
  10. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 現在確認をされております化石燃料の可採年数は、石油につきましては四十三年、天然ガスについては六十二年、石炭については二百十二年でございます。
  11. 長谷川清

    長谷川清君 ウランはどうでしょうか。
  12. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) ウランにつきましては七十三年でございます。
  13. 長谷川清

    長谷川清君 わかりました。  一キロワット当たりCO2排出量は、それぞれの資源ごとにどの程度のものになっていますか。
  14. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) アワー当たり炭酸ガス排出量でございますが、原子力、水力、太陽光あるいは風力についてはゼロでございますが、火力発電所炭酸ガス排出量は、平均をいたしますと、平成九年度実績キロワットアワー当たり百七十グラムでございます。さらに、これを内訳として見ますと、石炭が二百二十グラム、天然ガスが百二十グラム、石油火力につきましては、LPG等石油製品燃料としたものを含めて百九十グラムでございます。
  15. 長谷川清

    長谷川清君 化石燃料部分についてはそういう数字だろうと思います。太陽光風力波力あるいは原子力といった部分は今ゼロとお答えになりましたが、確かに燃料として発生する量はゼロでありましょうけれども、生産工程建設段階においてそれぞれCO2を発生することに相なりますから、現実問題はできているものをぽんとそのまま燃料としてやるのではない、その燃料をたく設備が必要なわけでございますから、そういう点で、現実にこの世にCO2を吐き出す量という意味におきますと、たしか太陽光は地上において三十三、太陽光家庭用においては十五に対して、原子力は五という数字になっているんじゃないかと思います。  そういう意味合いからいたしますと、LNGつまり天然ガスの場合は、水素が非常にたくさん含まれているがゆえに、その分炭素の量が少ないとはいいながらキロワットアワー当たり百六十二グラムぐらいは測定されているようでありますが、石炭のごときになりますと二百五十七ぐらい。そういう数字から、この原子力の五という数字太陽光の三倍であります。  そこら辺もひとつちょっと事実確認として、そのようなことでよろしいかどうかを確認しておきたいと思います。
  16. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) いわゆるライフサイクルから見た各電源二酸化炭素排出量でございますが、これにつきましては電力中央研究所平成七年に分析を行ったものがございます。この数字によりますと、原子力につきましてはキロワットアワー当たり六グラム、風力で三十四グラム、家庭用太陽光で十六グラムという数字がございます。これに対しまして、石炭火力が二百七十グラム、石油火力二百グラム、LNG火力百七十八グラムということで、先ほど申し上げました数字よりも若干上乗せになった数字でございますが、全体としてのバランスは今申し上げたものでございます。
  17. 長谷川清

    長谷川清君 今のお答えで大体数字の差は一から三ぐらいまでと、ちょっと私が把握していた数字とは違う部分がありますが、おおよそ、大筋においては大体確認ができたと思います。  年間原子力発電量をもし火力で発電した場合、その場合の原油必要量は大体どのぐらいと想定されていますか。
  18. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 平成九年度の原子力発電所年間発電電力量実績は三千百九十一億キロワットアワーでございます。  原子力及び火力発電原価につきましては、平成六年の電気事業審議会需給部会中間報告平成四年度耐用年発電原価という数字を出しておりますが、ここによりますと、原子力キロワットアワー当たり九円程度でございますし、また火力について試算をしますと平均十円程度でございます。  したがいまして、火力原子力コスト差が一円程度でございますので、先ほどの三千百九十一億キロワットアワーを乗じますと、年間原子力発電量火力燃料に置きかえた場合のコストの差は約三千億円と計算されます。
  19. 長谷川清

    長谷川清君 恐らくその差が石油に置きかえますと二十万キロリットル級のタンカーが約三百七十隻ぐらいの量に、今お答えになった量が匹敵をするということだろうと思います。  次に、原子力発電CO2を出さないいわゆる抑制効果というものは一体どのような程度のものなんですか。
  20. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 原子力発電につきましては、発電過程においては炭酸ガス排出をいたしません。  ちなみに、原子力から火力に置きかえた場合を想定いたしまして、火力発電過程において発生する二酸化炭素排出量相当を抑制するという考え方をとりますと、例えば平成九年度の実績、先ほどの三千百九十一億キロワットアワーでございますが、これから試算をいたしますと、これをすべて火力によって発電すると仮定をいたしますと、キロワットアワー当たり百七十グラムの炭酸ガスを出すとして、炭素換算約五千四百万トンの二酸化炭素が発生することになります。これは、平成九年度の我が国エネルギー起源二酸化炭素排出量総量の一七%に相当いたします。
  21. 長谷川清

    長谷川清君 原子力というものの正しい実情というものを知っておきたいと思っていろいろの角度から質問しておりますが、原子力という問題を考える場合には、私はやはり最大テーマは完全に平和利用に徹し切るということだと思うんです。  そういう点で大臣にもこれはひとつお答えいただければと思うんですが、国際社会の中にあって我が国原子力政策というものについて欠くことのできない最大の要因は、私はまず、我が国は憲法九条の問題と非核三原則の問題、これは一時的なものではなく、政府がいかにかわろうとも永久なものであるということ、この宣言と同時に、我々の行いそれ自身がそれを裏づけていくという日常の行為、そういうものなくしては、国際社会の中から、我が国における原子力ウエートが高まっているということに対する理解、あるいは世界ベストミックスというものにも貢献をしているという逆の評価、そういう視点から何かが欠落をしてしまうのではないか、そういう心配がございます。  私は、そういうことのためにも我が国におけるエネルギー戦略がなければならないし、いわゆるエネルギー基本法がなければならぬ、こう考えるのであります。ここの場合の質問としては、国際社会に対しまして、今はそういうものが我が国にはないけれども、そういう視点における常日ごろの、我が国核兵器を持つようなことをゆめゆめ考えている人は国内にはいないと思うんです。しかし、他国から見た場合には、日本資金力においても技術力においてもいつでも核武装ができる、そういう条件を持っているという目で見ていますから、非常に常にそこは用心してかからなければならない、こう思うのでありますが、その点についてはいかなる努力がされているか、これをお聞きしておきたいと思います。
  22. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 御説のとおりでございます。  何といっても日本は唯一の被爆国でございますから、国際的な核不拡散体制維持強化に特に努力すべき立場にあると認識いたしております。  このような観点から、まず日本みずからは、原子力基本法に基づき平和目的に限定して原子力開発利用取り組み、国際的にもNPT、すなわち核兵器の不拡散に関する条約などの国際約束等を誠実かつ確実に履行しているところでございます。  また、近年の核不拡散に関する国際的動向、すなわち平成七年四月のNPTの無期限延長の決定、平成八年九月の包括的核実験禁止条約、CTBTの署名開放平成九年五月の国際原子力機関、IAEAの保障措置強化効率化のためのモデル追加議定書の採択など核不拡散体制維持強化の動きに対しまして、我が国は積極的に対応してまいりました。  このような平和利用を堅持した我が国原子力研究開発及び利用に関する政策につきましては、国民に対してはもちろんのことでございますが、国際社会に対しても繰り返し説明をすることによりまして理解を求めていくことが必要と認識いたしております。そしてまた、努力をさせていただいている次第でございます。具体的には、諸外国との政策についての対話、国際シンポジウム開催等を行ってまいりましたし、また今後もこれを実行してまいりたいと考えております。
  23. 長谷川清

    長谷川清君 努力過程お答えとして私としては多少不満が残りますけれども、後ほどまたエネルギー基本法という問題についてのお考えはお聞きしたいと思います。  京都会議におきまして、これは環境問題とこの原子力発電ということに絡んでおりますけれども、国際公約をいたしました六%は、事実上今日は一〇%伸びていますから、加えて一六%を国際公約として実数で我々は果たしていかなければならない責務があると思います。  地球再生計画を提唱した我が国が国際的な信頼や信義というものを果たしていくために、これからいかにしてこの一六%を具体的に削減達成していこうとしているのか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  24. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 御指摘のございました京都会議での国際公約に基づきますと、二〇一〇年度におきましてとりあえずエネルギー起源炭酸ガスを九〇年度比安定化をまず図るということで、各種取り組みを行っておるところでございます。  この中で、需給両面の対応が必要なわけでございますが、需要面では、二〇一〇年度のエネルギー需要をほぼ現在と横ばいにするということでございまして、省エネルギー対策中心実施をするということでございまして、ことし四月から施行しております省エネルギー法改正部分トップランナー方式導入等措置が組み込まれているところでございます。  また供給面では、非化石エネルギー導入などに最大努力するというのがその中心部分でございまして、原子力については、立地対策の充実、核燃料サイクル推進、これに積極的に取り組むことといたしてございます。また新エネルギーについて、開発導入に対する支援、各種施策を充実しているところでございます。
  25. 長谷川清

    長谷川清君 次に、省エネのことについてお伺いしたいんですが、これの今用意されている施策をできれば具体的に教えていただきたい。
  26. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 省エネルギーにつきましては、先ほどの二〇一〇年までの炭酸ガスを九〇年レベルに抑制するという観点から、五千六百万キロリットルの省エネ総量を念頭に置いて計画をつくってございます。  この中で、全体の約半分ほどは先ほど申し上げました省エネルギー法改正によります強行措置によるものでございまして、トップランナー方式導入して電気機器などのエネルギー消費効率のさらなる改善を図る、また工場、事業場における使用合理化の徹底を図るということでございます。  また、そのほかに省エネに係ります技術開発、新しい技術導入の促進、さらには国民のライフスタイルの変革を促すための広報活動などを内容とした措置をとってございまして、例えば研究開発でございますと、産業部門では高性能ボイラー技術開発を行う、あるいは民生部門では高効率照明、高効率液晶ディスプレー技術開発を行う等々でございます。また、インフラの整備という趣旨で、物流の効率化交通対策等々を各省にも実施をしていただいているところでございます。  以上を含めまして五千六百万キロリットルという省エネルギーを実現するということで、努力を傾注しているところでございます。
  27. 長谷川清

    長谷川清君 私は、この省エネということは、我が国は特に資源がないくせに多消費型でございます。また、どの国よりも消費の量は断トツでございます。加えまして、消費の質から見ますると、全体の量が多いのに加えまして、一どきに人が動くというか、最大電力量世界断トツでございます。同じ資源のないドイツ〇・三に対して、我が国はこの瞬間の電力量、四・四であります。イギリスやアメリカ等々一・九とか、二まで行っておりません。  何かしら全体が、太郎さんも花子さんも手をつないでどこかへだあっと出かける。夏場になったら、一斉にクーラーをつけて甲子園のテレビを一斉に見る。そういったような量と質の内容というものは、私は、この省エネ人間の生き方にもかかわっている。つまり、消費があるから供給なんです。消費がなければ供給はゼロであります。  これまた詳しくは後ほどお聞きをしたいと思いますが、そういう点からすると、ここのところでは、私は、自然というものとの共生という理念がこの省エネには根本的になければならない。それはエネルギーのもとになっているものがすべて大自然の恵みばかりでございますから、それを扱う側の我々の関係、神経、そういうものにひとつ反省といいましょうか、問題意識が必要だ。またもう一つには、リサイクル社会を構築していくんだという考え方も基本的なものとして、これは日本の場合にまだまだ努力の余地を残している、これからの問題だと思います。  今、具体的な部分で多少の例が挙がりましたが、運輸関係建築関係、各家庭住宅においてもこれからはだんだん住宅さま変わりをするでしょうし、質と量も大きくなって高くなっていくと思います。人間に欲望がある限りは需要は減らないし、統計で見てみましても大体が年間で二%伸びる、こう予測をしているようでございます。  それに対する供給という問題、我々はそういう中にあって、CO2、いろんな悪さをする資源、悪さをしない資源、長短それぞれある中で、今は原子力を論じておりますけれども、そういう部分について、一方においては政府供給の責任を有しており、需要構造需要の質、量がどうであれ、今こうしている間じゅうにも瞬時たりとも需要関係供給し続けている。そういうことを考えてまいりますと、私はもっと真剣に省エネという問題を大きなテーマとして取り上げていく。  私が住んでいる近所の人から見ますると、過去の話でございますが、あなたは東京電力に勤めているのに、テレビを見ると電気節電で消してください、それからいろいろなスイッチは根っこから消しておいてください、節電です、普通だったら自分のところでつくっているものは買ってくださいと言うのに、あなたのところは変わっていますねと、こう言われます。  確かにそういう疑問があるのかもしれませんけれども、だからこそ私は、エネルギー需要供給という関係になっているから物ではないと。それを支えているのはただ単にしからば義務感だけで、供給義務がしょわされているから供給しているのかといえば、私は義務感だけで達成されるものでもない、公益に対する使命感、そういうものがあって初めて今日のエネルギーというものが支えられていると私は思うんです。  通産大臣にも前の審議のときにも申し上げました。昭和二十七年から今日までの間には、販売電力量は二十六倍になっております。また、発電設備は二十一倍になっております。それだけ需要が伸び、それだけ供給がされている。しかし、定員、従業員、人員というのは一定でございます。その間には第一次オイルショックもあり、第二次オイルショックもあった。繊維の構造不況もございました。鉄や造船のようなハード部門構造不況もございました。しょっぱなの、第一次の円高時代もございました。日本経済が大きな波をかぶるそのときでも、私は働く側の立場におりましたけれども、もうその時代から我々は働く側から生産性向上運動取り組み合理化機械化取り組み無人変電所をやったのは組合が提案したんです。都内にも全部三交代で変電所に勤務しておりましたが、それを全部無人にして制御コントロールにする、洗足制御所が初めてでございましたが、三年かけて組合が案をつくって、三年かけて交渉してそれは達成してきた。  私は、今日までの間、あの戦後の中でかなり混乱をしておりましたそういう事態の中でも、我々は働く者として当時、電力はそれまでは電産で電気を消しておりましたから、スト権もとられておりました。スト権は確かに私どもは取り返しました。しかし、そのスト権公共事業に働く我々として行使をしたことはございません。スト権を持っているということとスト権を行使するというのは、これはまた別問題であります。我々はスト権は持っていても、事務スト程度公共に迷惑をかけないという態度でずっとやってまいりました。  つまり、その年度年度、時代時代における自己改革を労も使も車の両輪のようにしてやってきたからこそ、そして今原子力を振り返りますと、先ほど申し上げたように、研究の段階からそして今やベース電源にまでなってきているという事実、そういう今日までにおける原子力というものの貢献は我々がこの机上で考えているような程度のものではなくて、並大抵のものではない。そういうあらゆる長所短所のある資源というものを大事に扱ってきた。私たちはそういう視点に立って今日までやってきたことを前回も通産大臣に、これはいわゆる国家的な財産ではないですかということを申し上げたんです。  大臣、ここでひとつ、いろいろと省エネをやっていく場合に、これから家をつくる場合にもできるだけ断熱性の高い住宅にしていくとか、効率性のあるエアコンを使っていくとか、そういったような部分に対するメーカーを含めた社会全体、国民の意識。今これからも、質問は用意しておりませんが、長期計画で二十基用意している原子力、まだ順調には進んでいないようでございます。政府が必要と認め、そしてそれを計画し、需要に対する供給が瞬時でございますから、机上では幾らでも夢物語が、計画がつくり得ますけれども、常に絶やしてはならない。しかも、建設は最低十年、今ある原子力をリフォームしようとしますと二十年かかるわけでしょう。水力でも太陽光でもあらゆる面で十年以上建設にかかるわけでありますから、瞬時とそれから中長期とこれからの次世代、そういうことを考えるのは一事業者なんでしょうか。私は、それは国でなければならぬと。  憲法では自由という言葉が九カ所も使われております。権利という言葉も九カ所も使われている。あの二、三ページの憲法のわずかな中にきら星のように自由と権利が保障されておりますけれども、しかし責任というのは一カ所しか使われていない。憲法十二条で、この憲法で国民保障する権利及び自由はみだりに乱用してはならない、公共の利益に利する責任を負うとあります。私は、この種の問題を論じていく場合には、好きか嫌いかではなくて、国民とそれから国の責任というものと本当に年々歳々それが接近していけるようなありよう、そういうものが非常に私は大事だと思っておりますので、そういう部分についてひとつぜひ大臣の御感想があれば、国の責任というものはどのように原子力についてお考えか、そこら辺をひとつお願いしたいと思います。
  28. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 先日、長計に対しまして、先ほど申し上げましたけれども、まず新エネルギーの可能性を十分検討し、そして長期的にエネルギー問題を考える、その上で原子力のことを考えろということをお願いした次第であります。  私は、省エネルギーということも非常に大切であると思っております。個人的には、通産省のお手伝いをいたしまして、年に何回か子供たちを中心にいかに省エネルギーをすべきかということをお話をしている次第であります。昨年も名古屋でやってまいりました。こういう努力を今後も続けていきたいと思っております。そして、今先生おっしゃられますように、国としても省エネルギーに関してしっかり考えるべく、今後検討していかなきゃならないと思っております。
  29. 長谷川清

    長谷川清君 私のところにお手紙をいただきましたが、元読売新聞論説委員の中村さん、元NHK解説委員の長岡さん、元朝日新聞科学部長の尾崎さんや元北海道大学工学部教授の石川さん、それぞれの皆さん連名のものであります。  読売新聞が四月六日付の朝刊で、埼玉県大宮市にある三菱マテリアル総合研究所で核燃料開発研究施設がウランやトリウムに広範囲に汚染されていると一面に五段見出しで報じていた。六日付の夕刊には一面トップでこれを続報した。ところが、調べてみると、そういう事実は全くないということで、七日の朝刊で放射能漏れはなく安全であるということを小見出しで出した。こういう事実。  もう一つは、北海道新聞四月四日付朝刊で、東京電力福島第一原発第三号機で、炉心の圧力容器内での部品交換作業中に百六人が基準値を超える被曝をしたと、これも大見出しで出しておる。抗議をして調べてみると、これも結局は訂正文が出ましたけれども、四日の福島第一原発三号機、炉心内作業で被曝の見出しについては誤りであり訂正しますというわずか一行にすぎない。  さっきも申し上げたように、私自身が経験した中にもあります。柏崎市長をされておりました飯塚さん。あの地域において、ここの野菜を食べると怖いよというのを原子力反対の事務局長さんがあるテレビ説明した。ここの魚を食べると放射能があるから怖いよと。もちろん、調査はするまでもなく、調査をしましたがその事実はないわけです。  私は、そのときにも言いました。飯塚市長の家にも行って、市長さんのところにおける本当にまじめに野菜をつくり農業にいそしんでいる人々がゆえなき理由をもって生活権を脅かされている、漁業の人もしかりであります。私は、そのときにも憲法の問題を言いました。確かに報道の自由は与えられているけれども、報道というのは責任はないんですか、公共の利益に利する責任。  私は、国じゅうにおいてやっぱりそういう、我々は労働組合で働く側でありますが、働く側にもちゃんと「勤労の権利を有し、義務を負う。」とあります。そういうわきまえを持ってすべて私どもは何十年の間従事をしてきたつもりであります。  そういう点について、特に原子力に関するこの種報道は、それで何かありましたら、ちょっとでもこすればもう全部事故扱いで、何百何十何件目の事故がまたどこで発生したという、こういう何といいましょうか、事実は事実としてとらえていく、あるべき題材があります、そういうこともあります。これはこれで厳しくやっていかなきゃいけません。それがあると、またそれを何か事実でないことまで改ざんだ改ざんだということが出たりいたします。  こういうものなどについては、残念なるかな我が国はまだ五十数年しか戦後たっていないデモクラシー社会でありますから、あらゆる意味においてぜいたくは言えないのかもしれませんが、そこで本気になって使命感に燃えて働いている人々のいることを、ことわざに水を飲むときには井戸を掘った人のことを思い出せという中国の言葉があったのを私は記憶するのでありますが、エネルギーを使うときにはあるのが当然のように使っている、そして一方においてはそこで働いている人に石が投げられるわけであります。  設備ウランがあっても原子力は運転できません。そこに技術と人がなければなりません。  そういう意味において、これまでやってきてなかなかにしてそういう社会的な傾向が衰えるどころかますます、それで飯を食っているような人たちもいるわけですから、いろいろな面においてこういう原子力という問題については正しい情報と状況判断がしかとできるように、本来ならば教育という分野においてもそういうものがちゃんと正しくわかるように、いい点、悪い点を明確にし、そして我々は憲法でもまた言っておりますような幸福の追求を権利として持っているんですから、そういうものについて人々にどう役立てていくのかという創意を凝らすべきだ、そのように私は思います。  この種のマスコミのゆえなき誹謗中傷等々に対して、これはなかなか言って回るわけにいかないんです、あれは違っていますよ、こうですよと一人一人に言って回っていけない。そういう憲法十二条というものの、特にマスコミが力を持っておりますだけに、影響力がありますだけに、そういう分野についてこれまでの経験の上で何かお考えがないか、いかがなものでしょう。
  30. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) この問題に関しましてはさまざまな面から思いがございます。  時間がございますので全部お答え申し上げることができませんけれども、まず、原子力に関しましては、正しい情報を流してくれということは常々新聞記者の方たちや報道の方たちと会うたびに言っていることであります。随分理解は深まってきていると思います。今後もさらに努力をさせていただきたいと思っております。  さまざまな思いというのは、例えばこの前のダイオキシン問題、あれも同じような問題でございました。それから、私自身が非常に長年苦労しておりますことは、ここで大変話が飛んで申しわけありません、委員長、お許しいただけますでしょうか。  テレビ、インターネット等における暴力的な映像、それからポルノまがいの映像が日本ほどひどく流れているところはない。アメリカではVチップというものを導入する、カナダも導入することになったと思います。こういうことで随分苦労をしている。日本で私は何回となくさまざまな場所でVチップの導入を図ったらどうかということを提案いたしました。ただし、それを直ちにできないならば、せめて自己規制をやってくれということをさんざん言ってきております。  しかし、常に出てくる答えは、わかっている、憲法によって報道の自由が与えられている、表現の自由というものが与えられている、言論の自由が与えられている。その言論の自由やそういう表現の自由を侵すことになるのであるということが反対の一つの大きな理由でございまして、常にこの点で私は敗北してまいりました。しかし、これは真剣にお考えいただかなきゃいけない、子供たちの教育のために本当に考えていただきたい。私は、報道人が自己規制してくださればいいと言っているわけです。  こういうことについて、せっかく原子力のことでお尋ねいただきましたけれども、少し横に入りましたことをおわび申し上げます。
  31. 長谷川清

    長谷川清君 この件はひとつ、私はエネルギーの分野に携わった一人として、自己コントロールがきき、使命感を持ち、そして社会のためだと。それが願わくばあらゆる分野においてそういうものが、戦後五十年、あと五十年もすればできるのかもしれませんが、そういうことをシステム的に教育という分野においてもこれからもまた求めていきたいと思います。  さて、具体的な問題についてこれから時間の許す限りお願いをしたいと思います。  まず、石油とか石炭とかを燃やしますと全部燃えてしまいますけれども、ウランを燃やした場合には、235が燃えますが、同時に238が中性子を取り込んできて、そしてそれがプルトニウム239を生み出していく、そういうことになるんです。  ちょっと事実確認だけをしていきたいと思うんです。一々お答えは要りませんが、私の言うことに間違いがあればひとつ御指摘をいただきたいんです。  そこで、239というプルトニウム、これが大体高熱を出して水蒸気をつくって発電していくという原子力の原理になっていく。その場合、これから問題になってくるのが、その燃えた状態のときに燃えかすが出るんです、燃えかすが出るのと、プルトニウムが大体一%ぐらいの分量そこに残る、燃え尽きなかったウランが少し残るぐらいで、これがいわゆる使用済み燃料と言われる中間貯蔵の対象物ということになるんだと思います。ここはいいですね。  中間貯蔵の中身、そういう使用済み燃料というのは、大多数の燃えかすと一%程度のプルトニウム239、それと燃え切れなかった多少残る若干のウラン235です。本来燃えるものが燃え切れなかったのもあるかもしれない、ないかもしれない。そのものがいわゆる使用済み燃料と称するものである、それを中間貯蔵すると、こういうことですね。この中間貯蔵をして、それをウラン235と混合すればこれがMOXになる、そこまでいいですね。  それを混合せずに、今は中間貯蔵して、今回、それを今度取り出して再処理する。再処理をするとき、そこがIAEAの査察の一番のポイントになるところです。それを再処理してプルトニウム一〇〇%に濃縮していけば、一歩間違えば、これが核兵器になっていく、我が国はそれはしないんですよ、まずここをきちっと明確にしなければならない。  そして、我々は、平和利用ですから、その中間貯蔵の一%のプルトニウムをさらに利用しようと。それを軽水炉でたけばこれはそのままたけるわけです。ただ、それを軽水炉でたくということは、一%の残っている熱を出すプルトニウムが燃え尽きればそれで終わりというものです。これをプルサーマルと呼んでいるんだと思うんです。  それで、もう一つそれを進めて、軽水炉でやるんじゃなくて高速増殖炉でやれば、燃えながら同時に中性子を取り込んできて、さらに新しいプルトニウムを生んで、六〇%、これはだから燃えながらいくんですから。  ここで質問なんですが、先ほどウランの寿命はどのぐらいですかと聞いたら、七十一年ぐらいだとお答えになりました。六十年という説もあるし、七十二年という説もあります。このもともとの、ウランといってもあれはウラン精鉱、いわば鉱石みたいなもの、中にウランが入っている。この寿命がもしそうだとして、高速増殖炉でそれを利用し、活用していった場合には、その寿命はどのぐらいになるのかをお聞きしたいんです。
  32. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  先ほどウランの寿命がどれくらいか、確かにいろいろあるわけでございますが、大体七十年というふうに言われておるわけでございます。その前提は、これは国際原子力機関、IAEAの評価でございますけれども、現在までに存在が知られておりますウラン資源量、いわゆる既知資源量と申しますのが大体四百四十万トンでございます。一方、現在、今時点におきましての世界年間ウラン需要量、これが約六万トンでございます。ということで、仮に現在の原子力発電をそのまま続けるということで、それで一方、新たなウラン資源が発見されないと仮定すれば、それを割り算いたしますと大体七十年ぐらいではないか、こういうことになるわけでございます。  一方、お尋ねのFBRで増殖をしながら天然ウランというものを使っていく。まさに先生御指摘になられました、天然ウランの中には〇・七%しかU235というのは含まれていない、燃えるウランというのは含まれていない。残りの九九・三%と申しますのはU238でございまして、これが燃えない。そこを高速増殖炉でもって高速中性子というものを当てまして、いわゆる燃えるプルトニウムに変えるということをやりながら発電をしていく、そのことを称しまして増殖と申し上げておるわけでございます。  そういう形で利用いたしますれば、今まで燃えない、使うことができないと言われておりましたU238というものを使い得ることになるわけでございまして、それをリサイクルして使う過程におきましては、恐らく処理工程におきましてのロスとかそういったものが出ますので、工学的に見ますと天然ウラン利用効率は今御指摘になられましたように大体六割ぐらいではないかというふうに見積もられておるわけでございます。  それを前提にいたしますと、まさに先ほど七十年ということでなくなってしまうではないかという数字が、これもいろいろな幅がございますけれども、大体千年オーダーといった量として使うことができるというふうに期待されるわけでございます。
  33. 長谷川清

    長谷川清君 ある意味においては、永遠にというかかなり長期に燃やし続け得る、何百年もこのエネルギーがさらなるエネルギーを生んでいくという構造が可能になる。  しかし、現実は「もんじゅ」で一つ問題がありましたから、むしろある意味ではそういう問題があるからこそ改善、改良ができるということだと思いますので、それは人々がそこに大きな期待を持つと思います。  したがって、本線はどちらかというと高速増殖炉ではないのか、そうあるべきではないか。そこにすべての英知を絞り、それが国民の皆さんが本当に安心して、これならと言えるものに行き着くように最善の努力をしなければならない、こう思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  34. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  確かにプルトニウムを利用するということを考えました場合に、そのプルトニウムの利用の形態といたしましては、技術論といたしましては、当然のことでございますけれども高速増殖炉、FBRで利用するという方がはるかに効率的、好ましいわけでございます。したがいまして、今先生がおっしゃられましたとおり、そういったことというものを一つの目標にいたしまして所要の研究を進めておるということでございます。  その研究開発の一環といたしまして、原型炉「もんじゅ」というものの建設をいたしまして、それを使いまして所要の実験を行い、データをとるといったふうなことを行おうとしておりましたその段階におきまして、二次系ナトリウムというものの漏えい事故を起こしまして、今時点におきましては「もんじゅ」は停止をしておるという状況にあるわけでございます。  そういった事故というものを経まして、FBRの研究開発の進め方ということにつきましては種々の議論が行われました。従前は、軽水炉からFBRへ持っていくんだ、軽水炉の先の本命炉としてFBRというのがあるんだと。技術論としてはそのとおりであろうと思うわけでございますけれども、諸般の情勢、経済情勢等から勘案いたしまして、そういう考え方、いわゆる一直線の硬直的な考え方というのはやはりとるべきではなかろうというふうな考え方に沿いまして、今時点におきましては、非化石エネルギー源の有力な選択肢のうちの一つとしまして、実用化の可能性というものを追求するための所要の研究開発というものを進めるべしというふうな方向が原子力委員会の方で示されてございます。  そのラインに沿いまして今研究開発というものを進めておる、今後ともそのラインに沿いまして着実な研究開発というものを進めていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  35. 長谷川清

    長谷川清君 私が一番心配しておりますのは、再処理をする考えがないのならいいんですが、再処理をするからにはちゃんとかくかく使いますよということがないと、どんどん中間貯蔵がたまる一方になります。そうすると、冒頭私が申し上げたように、諸外国から見ますと、IAEAから見ても、いつでも核兵器になり得るものがどんどんたまる一方だということになりますから、そういう事態というものにならないような状況をつくっていかなきゃいけない。だから、全部つじつまが合っていくようにしていかなきゃいけないと思うんです。プルサーマルでやる、あるいはそれは限度があるから高速増殖炉でやる、それなら再処理をしないとか、そこのことを鮮明にして初めてこれは信憑性を持つんです。  そこでお伺いしますが、中間貯蔵をしている使用済み燃料、これを再利用する場合、その回収するプルトニウムの利用計画というのを聞かせてください。
  36. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  我が国原子力政策の一番基本的な考えと申しますのは、原子力発電所から発電をした過程におきまして出てまいります使用済み燃料と申しますのは、これは再処理をしてそこから、先ほどちょっとお触れになりましたが、その燃え残りウランというのも残ってございます。それから、プルトニウムというものも生成されてございます。このようなものというのは有用なエネルギー資源でございます。そういうものを取り出しましてそれを再利用していく、これが我が国原子力政策の一番骨格的と申しましょうか、基本的な考え方でございます。  その考え方に沿いまして諸般の施策というものを進めてきておるわけでございますが、確かにおっしゃられるとおり、再処理工場から出てまいりますプルトニウムというものをどのように利用していくのかということにつきましての確たる見通しと申しましょうか計画というものがなければ、諸外国から要らぬ不信を招くとかいろんな問題が出てくるということでございます。  我が国におきましてのプルトニウム利用についての基本的な考え方は、まず余剰プルトニウムというものを持たない、これが一つの原則でございます。そういう原則のもとにおきまして計画的に進めるということで、まず当面の課題としましてはプルサーマル、いわゆる軽水炉でもって利用していくということが一つでございます。長期的に見ますと、FBRというものが効率的であるということは明白なわけでございますので、そういった可能性というものを追求するための研究開発を進めていく、そのために出てまいりますプルトニウムというのを使っていく。したがいまして、プルサーマルで利用すると同時に、FBR関係の可能性研究のための研究開発に使っていくというのがプルトニウムの利用計画ということでございます。
  37. 長谷川清

    長谷川清君 今、海外で再処理したものがどんどんまた日本に返ってきております。そういうこともありますし、これからどんどん年間ふえていくわけでございますから、そこら辺はひとつよく認識をしていただきたいと思います。  最終処分場というのは、現在一体どういうふうになっておるのか。原子力は、たく前から最後のお墓じゃありませんが、人が生まれたら最後は死んで墓へ入るんです。ですから、自分の最後のお墓もまだはっきりしない、こういう感じのところも一つの大きな不安を皆さんに与えると思うんです。その計画はいかにということをお願いいたします。
  38. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  使用済み燃料を再処理いたしますと、有用なものを取り出した後のもの、これが高レベル放射性廃棄物でございますけれども、この高レベル放射性廃棄物というものをいかに処分していくかということにつきましては、その基本的な考え方は次のとおりでございます。  すなわち、その高レベル放射性廃棄物につきましては、言ってみればまずガラスの中に閉じ込めると申しましょうか、ガラス固化体の中に閉じ込める。これは熱が出てまいりますので、三十年から五十年かけましてこれを冷却いたします。それを最終的には人間の生活から隔離された状況、そこまでの距離を置いた地中深くに最終処分をしていくということが基本的な考え方でございます。  この基本的な考え方に沿いまして、それをどう具体的に進めていくのかということにつきましては、昨年の五月でございますけれども、原子力委員会のもとに高レベル放射性廃棄物処分懇談会というものを設けまして、トータルとしての取り進め方というものの基本的な考え方が取りまとめられてございます。  そこで示された基本的な考え方、方針と申しますのを敷衍して申し上げますと、まず二〇〇〇年を目途に高レベル放射性廃棄物の処分を行います実施主体というものを設立していく。そして、実施主体が国の確認を受けるなど所要の手続を経まして処分地というものを選定していく。そして、二〇三〇年代から遅くとも二〇四〇年代半ばまでには処分事業というものを開始する。こういうふうな大きなスケジュールというものが示されておるわけでございます。  現在、このスケジュールに沿って三つの方向での具体的な活動というのが進められておる。すなわち、その実施主体のあり方でございますとか、それから当然のことながら費用が必要とされるわけでございますので、その費用の確保のあり方でございますとか、そういった問題につきましては、総合エネルギー調査会原子力部会におきまして調査、審議が進められておる。そして、今パブリックコメントに出されて議論がまとまったという状況だというふうに伺ってございます。  一方、安全規制という問題につきましては、これは原子力安全委員会におきまして調査、審議が進められて着々と進捗をしてございます。  一方、処分の技術信頼性等をきちんと明らかにしていく、そういう研究開発ということ、三つ目の問題でございますが、それにつきましては、核燃料サイクル機構が大学でございますとか地質調査所でございますとか関係機関の協力を得まして、サイクル機構が中心となりまして所要の研究開発を進めていくということになってございます。今、進捗途上にございますけれども、一つの節目と申しますのが二〇〇〇年を目途に出そうとしてございます第二次取りまとめでこの技術的な信頼性というものを明らかにしていく、その安全規制等の技術的なよりどころというものを確立していく、そういうためのベースとなりますいわゆる技術報告書でございますけれども、第二次取りまとめというものを二〇〇〇年までにつくり上げるべく今その作業というものが最終段階にある、こういう状況でございます。  今後とも国民の皆様方の幅広い理解、これが必要とされることであろうと思うわけでございますが、それを得ながら、高レベル放射性廃棄物の処分対策が円滑に進められるように関係機関一体となって取り組んでまいりたい、かように考えてございます。
  39. 長谷川清

    長谷川清君 時間の関係で質問が多少前後いたしますけれども、今も国民理解ということが答弁の中にもございました。私はこれが大事な点だと思うんです。実際やっていく場合のことを考えますと、この廃棄物というのがすなわち普通の一般のごみ扱いのような、そういう誤解というものを受けやすい場合もあります。そういうことのないように、国は前面に立って事前に国民の皆さんの理解を得る努力というものを、そして立地の候補地、その地域に対する理解活動等々について本当に国は汗をかいていくということの決意が必要だと思うんですが、その点いかがですか。
  40. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 中間貯蔵施設の立地についての御指摘でございました。  この立地につきましては、やはり地域の方々、国民一般の御理解、御協力が不可欠でございます。このため、国、電気事業者、中間貯蔵事業者、それぞれの立場で、この貯蔵の必要性、安全性、政策上の位置づけについて積極的な理解を得る努力を行う必要があるというふうに考えてございます。その際には、特に貯蔵施設の国内外の実績、安全性、貯蔵技術の情報を積極的に公開し、これを説明するということが大切であろうかというふうに考えてございます。  ちなみに、この中間貯蔵につきましては、原子力発電所における貯蔵の実績が三十年を超えてございまして、安全に貯蔵する技術、ノウハウを十分に蓄積していると考えてございます。これまでの使用済み燃料に関するトラブルを見ましても、使用済み燃料の取り扱いの際に生じたものが二十件報告をされてございますが、貯蔵中におけるトラブルは報告されておりません。また、この十年間では軽水炉における使用済み燃料の取り扱いにトラブルが報告されたものは全くございません。そうしたこの安全性の趣旨を広く御説明を申し上げたいと思います。  また、国として、この立地に係ります地元の御努力が地元振興にもつながるものとなるべく所要の予算を講じまして、地域振興の役割も果たし得るように努力をしようと考えてございます。
  41. 長谷川清

    長谷川清君 お答えを聞いておりますと、政府には国民に対して説明責任があるという、こういう自覚が感じられますから、そういうことでひとつぜひこれはやっていただきたいと思います。  それから、電源三法のことについてお尋ねをいたします。  立地に関する調査の段階から地域に対する支援策というものを講じていくべきではないかなと思いますが、この点は簡単にお答えいただきたいと思います。
  42. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) この電源三法に基づく交付金をいかに使いやすく、かつ地元での創意工夫、主体的対応をより可能になるようにするかという点はかねてより指摘をいただいている点でございまして、昨年、電気事業審議会需給部会で半年近くにわたる議論を行い、またこれには地元の代表の方々にも御参加をいただいたところでございます。  この結論として、平成十一年度予算におきまして、補助金の弾力化、統合を図る等々の改善を行いました。こうした中で、補助金あるいは交付金を基金として積み立て、その中から従来の施設整備に加えて維持運営費への充当を認めるというような改善策も講じたところでございます。  したがいまして、御指摘のような点を含めまして、今後さらにこれを使いやすくする努力をしたいと思っております。
  43. 長谷川清

    長谷川清君 平成九年十一月の衆議院の商工委員会でも、当時の堀内通産大臣が島津議員の質問に答えておりますが、地域のニーズを踏まえた利用しやすいものとなるよう電源三法の見直しを行いたいということの答弁がございました。  こういうことについて、現在そういう見直しというものがされているのか、余りされていないのか。現在の電源三法交付金制度というものそれ自身が複雑になり過ぎたりなんかしていて効果的な分野を欠いているという等々について見直しはされておるんでしょうか、いないんでしょうか。
  44. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 御指摘の当時の審議以降、先ほど申し上げました電気事業審議会需給部会での御審議を経まして、平成十一年に大きな二点の改革をいたしてございます。  一つの改革は、先ほど若干触れましたが、地元自治体の創意工夫、主体的対応がより可能となるように、電源三法制度の各種交付金、補助金の弾力化、統合を図るということでございまして、こういう形での改善を行いました。これは、御指摘のありました衆議院での審議の中でも触れられた点でございまして、三法交付金制度が非常に複雑化しているではないか、あるいは地元からの要望の強い運転終了まで自由に使える交付金制度をもう少しつくったらどうか、この点についても新たなタイプの交付金を用意いたしてございます。  かような趣旨で、御指摘のございました、特に地元の御意見をかなり踏まえた検討をして、現在まで各種の改善を行っているところでございます。
  45. 長谷川清

    長谷川清君 ここでちょっと諸外国のことについて、この中間貯蔵の現状とか、あるいは政策的な位置づけがどうなっているか、これも簡単にお願いします。
  46. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 諸外国におきましても原子力発電所外における中間貯蔵施設を建設、操業いたしてございます。具体的には、ドイツ、これはゴアレーベン中間貯蔵施設あるいはアーハウス中間貯蔵施設がございます。スウェーデン、これは使用済み燃料集中中間貯蔵施設を操業しております。スイスでもビューレンリンゲン中間貯蔵施設の建設が行われております。  各国のエネルギー政策、それぞれの国のエネルギー事情、環境問題への対応を考慮して進めてございまして、この使用済み燃料の取り扱いについてもそれぞれの国のエネルギー政策に応じて異なってございます。例えばドイツ、スイスというのは、これは電気事業者が使用済み燃料について再処理または直接処分のいずれかを選択するという形になってございまして、再処理までの間の貯蔵あるいは最終処分までの間の貯蔵としての位置づけとなってございます。スウェーデン、アメリカは使用済み燃料を直接処分する方針をとっておりますので、最終処分までの間の貯蔵としての位置づけになってございます。なお、フランスは再処理までの間の貯蔵であります。それから、イギリスは再処理または直接処分を選択する形、ドイツ、スイスと同じでございまして、再処理または最終処分までの間の貯蔵としての位置づけとなっております。
  47. 長谷川清

    長谷川清君 わかりました。  私はこれは意見として申し上げておきたいんですけれども、原子力の問題はやはりインターナショナルの問題でもありますから、こういう中間貯蔵等の問題やあるいは最終処分の問題等々については、国際的な貯蔵のあり方というようなものを中長期的に、それに適した北欧のような岩盤に恵まれたところがあります、そういうようなところと協議をするようなことはできないのか。そういう条件、状況を整えていく努力も必要なんじゃないかというふうに思いますので、これは意見としてとどめておきます。  それから、またもとへ戻ってくるわけですが、今、原子力は中間貯蔵が逼迫している状況もあると聞いております。恐らく福二のことを言っているんだと思うんです。この逼迫状況というのは、この制度化をすることによって今後は一体どう推移するというふうに今予測しているんでしょうか。
  48. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 平成十年九月末現在の発電所における使用済み燃料の貯蔵容量、能力は総計で一万二千六百トンでございます。貯蔵量は七千二十トンでございます。しかしながら、原子力発電所ごとに見ますと、平成十年に海外再処理工場への使用済み燃料の搬出が終わりましたために、幾つかの原子力発電所において具体的な逼迫状況にございます。このため、一昨年二月の閣議了解、「当面の核燃料サイクル推進について」以降の一年間で、全国の十六の原子力発電所サイトのうち八つのサイトから、発電所内の使用済み燃料貯蔵能力の増強に係る設置許可の変更申請が通産省に提出されたところでございます。発電所の内部でこの貯蔵能力を拡充するという申請でございます。このような当面の貯蔵能力増強の対策が順調に進んだといたしましても、多くの発電所で改めて対応が迫られる状況に直面することが予想されておりまして、二〇一〇年までに発電所外において使用済み燃料を中間的に貯蔵する施設を利用できることが必要という認識でございます。  この法律の後の問題でございますが、この法律によってまず環境整備をいただいた後、各般の努力をいたしまして立地を進めてまいりたい、かように考えてございます。
  49. 長谷川清

    長谷川清君 これは今現在でも年間九百トンふえてきている、これからも千トンぐらいずつふえていく、こういう逼迫状況等々は今始まったんじゃなくて、この逼迫状況は政府としては予測をできる立場にあったはずだと思うんです。なぜもっと早い対応というものをしなかったのか、すべきではなかったのか、こう思いますが、この点はいかがですか。
  50. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 資源の乏しい国でございますので、原子力発電を長期的、安定的に進めていくためには使用済み核燃料は再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料リサイクルを原子力政策の基本としているということには変わりございません。  使用済み燃料の管理に関しましては、現行の原子力長計、これは平成六年六月においてでございますが、「国内の再処理能力を上回るものについては、」「再処理するまでの間、適切に貯蔵・管理する」という方針を示しております。この方針に従いまして原子力委員会はさらに検討を進め、発電所敷地外における使用済み燃料の貯蔵につきまして平成九年一月に検討の方向を決定し、これを受けて同年二月閣議了解を行い、具体的な制度整備に関する検討を進め、今般、今後の使用済み燃料の発生量、再処理能力等を勘案いたしまして、従来からの発電所内での貯蔵に加え、発電所外の施設における貯蔵、すなわち中間貯蔵の具体化が必要であると判断し、法案を提出させていただいた次第でございます。  以上のとおりでございまして、中間貯蔵は我が国の核燃料リサイクル政策に沿って行ってきているものと考えております。
  51. 長谷川清

    長谷川清君 それはわかりました。  時間もありませんので次に行きますが、貯蔵をする技術開発、例えばアルミだけでは相当長い間かかりますとさびたりする。それに対して、新しい合金と合体させてアルミ合金に容器をしていっているとか、さらにそれをどのように開発していくか、そういった素材に至るまでの安全に対するたゆみない努力というものがこれは必要だと思います。  質問としては、定期検査というもので一年以上であって政令で定めるというふうになっています。その種の貯蔵されている金属キャスク、これは具体的には実際どのぐらいのものを考えているのか。確かに法案自身は中間貯蔵ということで非常に大なたになっているんです。あとは政令で細かく運用されるということになろうと思います。そういう部分においてこれからの運用は非常に重要になりますが、この定期検査の問題はどのぐらいを考えているのか。  それと、電気事業法で溶接検査というものがあります。この部分と、今回の規制緩和で本法で言っている溶接検査、この同じ言葉なんですが、ここはどういう差があるのか、この二点をひとつ質問しておきます。
  52. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 定期検査の頻度あるいは対象とする機器は、その機器の機能、重要性に応じて定めているところでございます。ちなみに、現在は、原子炉施設については十三カ月、その他再処理施設、廃棄施設については毎年一回というような決め方でございます。  今後、この期間は決めますが、そういう趣旨でおおむね一年というのを前提に念頭に置きながら今後の省令制定を検討したいと考えてございます。  それから、溶接検査についてのお尋ねがございましたが、電気事業法の溶接検査につきましては、技術の進展、民間事業者における品質管理能力の向上を踏まえまして事業者による自主検査を原則とするということで、国は事業者における自主検査の実施に係る体制についての審査を行うというような趣旨で、現国会におきまして通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律案として提出をさせていただいております。  他方で、この現在御審議をいただいております原子炉規制法の溶接検査につきましては、今次改正により追加されます貯蔵の事業が初めて行われるものでありますし、また現時点では、貯蔵業者による自主的な溶接検査にゆだねても十分な安全水準が確保し得るとの判断には至っていないということでございますので、他のこの炉規制法上の溶接の取り扱いと同じく、国による溶接検査が当面必要であるという判断をいたしたものでございます。
  53. 長谷川清

    長谷川清君 次は保障措置について、これはひとつ大臣からお願いしたいと思うんですが、恐らく原子力開発の透明性をより一層高めていこうという視点だろうと思いますけれども。
  54. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 国際原子力機関保障措置は、原子力平和利用確保するための手段といたしまして、国際的な核不拡散体制の維持及び安定に極めて重要な役割を果たしてきたものであると認識しております。  我が国原子力開発利用を着実に推進していくためには、国際原子力機関保障措置を適切に受け入れ、我が国の活動が平和目的に限られていることについて国際的な信頼を得ることが必要であり、従来より保障措置実施に対して積極的に取り組んできたところでございます。  また、今回の追加議定書によりますIAEA保障措置強化策につきましても、国際的な核不拡散体制強化が急務との認識のもとに取りまとめられたものであり、我が国といたしましても、その原子力活動の透明性の一層の向上を図るとともに、世界の核不拡散体制強化に貢献するとの観点より、今回の保障措置強化策に積極的に取り組む必要があると考えている次第でございます。
  55. 長谷川清

    長谷川清君 ありがとうございました。  IAEAが査察をしております。その査察について問題の指摘があったのか、あったとすればどういう点があったか。この点と、もう一つは、追加議定書を受け入れるということによって査察がふえていくという想定がされます。その場合、拡大されていく場合は、具体的にどういうふうに対応できるのか。この二点についてお願いします。
  56. 青江茂

    政府委員(青江茂君) まず、IAEAからのいわゆる不明用途への転用と申しましょうか、そういったことについての指摘と申しますのは過去ございません。また、そういったことが発生して特別査察というものをIAEAが求めてくるといった事態というのもこれまでございません。  それから、今度、追加議定書によりましてのいわゆる立ち入り場所が拡大をしてくるわけでございますけれども、そのふえる量、日本の施設事業者側からしますと、その受け入れ量と申しますのがどれくらいふえるかということにつきましては、これは従来の非常に定期的、機械的、一種系統的に行っておりますそういう通常査察と言われるようなものと全く異なりますので、これはどの程度に達するかということは現時点においては数値的な予測というのは立っておらないところでございます。  ただ、IAEAの事務局が今般こういう新たな業務というものを追加をしていく、そのときにIAEAとしてどれくらいな業務量がふえていくのかということにつきましては、従来の業務量の二%ぐらいの増加になるであろうという予測をしてございます。その数値から勘案いたしましても、我が国の受け入れということに伴います業務量の増大ということは非常に小さなものではないかなというふうに推測をいたしてございます。  以上でございます。
  57. 長谷川清

    長谷川清君 最後になりますが、日常の生活と放射能という点について比較をしてみますると、原子力発電所の目標にしている数値、これは年間で〇・〇五ミリシーベルトとなっております。これは恐らくこれ以下にとめなさいということですから、実数はこれを超えたことがないんだと思いますので、これ以下の実数だと思います。  大地で実際は〇・四八ある。宇宙からの線が〇・三九ミリある。飛行機で東京から大阪まで行くと〇・〇一ある。往復すると〇・〇二になる。羽田から九州まで行けば、片道で〇・〇二。往復すれば〇・〇四、これは一回往復するだけで。原子力発電所の設定値では年間で〇・〇五以下である。アメリカのデンバーは一・六ミリシーベルトだと言われている。ブラジルに行きますと一〇ミリシーベルト。地域全体で北海道から沖縄までで一番少ないところは神奈川の〇・八一、一番高いところは岐阜の一・一九、その間に四十七都道府県、すべての県が存在をしている。  こういったような、私は、日常の中であるいはまたテレビを何時間か至近距離で見ていればまたふえます。がんの治療ということになって、一回分は二〇〇〇ミリ放射能が出ていると。我々は常にこの放射能の中でそれを浴びながら生活しておりますけれども、この原子力というものの怖さは、さっき言ったような平和利用を本当にやり遂げていくということでなければ膨大な兵器になる、これを絶対にしてはならないということと、放射能、そういうものをどうやって閉じ込めるかということ。大事なところをきちんと押さえて、人々の利益というものにこれを役立てるという、そういう視点というものをこれからもぜひひとつ持ち続けて頑張っていただきたいと思います。  私は、もう時間になりましたのでこれはお答えは要りませんが、強いお願いとして最後に申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  58. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  今、長谷川委員からもさまざまな点から質疑がございました。重なっている部分もございますので、質問の順序を変えたいと思います。両括弧つきの二から両括弧つきの五、これは最後の方に回したいと思いますので、ほかの委員の方にはちょっと何を言っているかわからないかもしれませんが、よろしくお願いいたします。  それで、私は前回、四月二十七日ですけれども、原賠法の審議のときに、昭和三十四年の「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害に関する試算」ということで、科技庁が委託したもので、日本原子力産業会議が受託したと、総数二百四十四ページでございますけれども、これについて公表したのでしょうかと。私の質問が正確を欠いていたものですから国会等と言ったわけですけれども、国会に対してこれは提出しているか、あるいは公表という表現になっていいんでしょうか、その辺のことですけれども、どうでしょうか。
  59. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 御指摘の報告書についてでございますけれども、昨年の秋の段階でございますが、このときは山口哲夫前参議院議員からの資料要求のお話がございまして、その際に報告書の全文というものを御提出申し上げました。それ以降、幾つかのところからそういう資料要求等がございまして御提出をいたしたことはございます。  今、国会へ正式に提出を申し上げたかということにつきましては、私どもは、これは従来申し上げておりますとおり、別段隠すべき性格のものでも何でもございませんので、適宜対応させていただきたいというふうに思ってございます。
  60. 加藤修一

    ○加藤修一君 科学技術庁にとっては特段役に立つかどうかわからないという判断をしているようでありますけれども、国会の議員、国会にとっては、原賠法はまた十年後に見直しという話になる可能性も当然あるわけですから、参考資料としてつくったという経緯がございますので、やはり私は国会に提出すべきであるというふうにお願いしたいんです。
  61. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 御要請がございますれば対応させていただきたいというふうに思ってございます。
  62. 加藤修一

    ○加藤修一君 ではよろしくお願いいたします。  四十年前の試算では、最悪のケースで三・七兆円ということですけれども、前回も私は質疑したように思いますが、新しく試算をすべきではないかなと私は思います。当時の国家予算がほぼ一・七兆円でございますから、約二・二倍という話になります。  御存じのように、一九八六年のチェルノブイリについて、ベラルーシではその被害総額は国家予算の三十二年分だと、そういうふうに聞いておりますが、やはり私はシビアアクシデントの関係については新しく試算をすべきではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
  63. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  我が国原子力損害賠償制度、この制度をつくり上げる、制度設計というものを検討するに当たりまして、結論といたしましてはいわゆる無限責任、事故等を起こしその加害をいたしました事業者に対しまして無限責任というものを負わせてございます。  すなわち、言いかえますと、何か事故が起きる、それによりましてどれくらいな損害というのが発生するであろうか、それに対応してどういうふうな賠償の仕組みを用意するのか、あらかじめの賠償措置というものをどれくらい用意するのか、そしてどれくらいのところ以上のものは事業者に対して免責をするのか、欧州あたりでは多分そういうふうな考え方に立って有限責任というものをつくっておるのではないかというふうに思うわけでございますけれども、いずれにしましても、私どもの方は、冒頭に申し上げましたとおり、無限責任という考え方をとっておるわけでございます。損害が発生いたしますれば、損害のその量すべてにわたりましてその事業者が責めに任ずるという仕組みになっておるという関係上、そういう観点からいたしますれば、事故というものを想定し、その被害額がどれくらい出てくるであろうかということを検討することは、この制度設計上必要とされないものというふうに理解をいたしてございます。
  64. 加藤修一

    ○加藤修一君 今、制度設計の関係が出てきましたので、平成十一年度の予算総則第十条、そこには損失補償契約等の限度額、そういうふうに書いてございます。  区分のところには六つについての限度額が出ております。そのうちの一つが原子力損害賠償の関係でございますけれども、補償契約金額の合計額が一兆八千四百七十億円になっているわけです。一兆八千四百七十億円を計上しているわけですけれども、この金額になっている、この数字になっている根拠はどういうふうに考えたらいいですか。
  65. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  補償契約締結の限度額、これは政府が民間原子力事業者との間でいわゆる補償契約というものを結ぶわけでございます。この政府が結びます補償契約と申しますものは、民間の保険会社が保険契約を結ぶわけでございますが、民間ではカバーし切れないようなそういう性格のもの、地震、噴火でございますとかそういうものでございますけれども、民間のサイドではカバーし切れない部分というものを政府が言ってみれば保険会社と全く同じ機能を果たす、そういう意味におきましての補償契約を締結するわけでございます。  したがいまして、その補償契約を締結するこちら側の当事者は政府、相手方は原子力事業者になるわけでございますが、その契約を結ぶという形でもってあらかじめの補償措置というものを用意するわけでございます。それが、改正前におきましては三百億円の契約というものを結んでおきなさい、今度は、改正後におきましては六百億円の契約というものを結んでおきなさい、こういうことになるわけでございます。  その六百億円の契約を結ぶ人が、例えば東京電力でございますと二つの事業所を持っておるわけでございますから、そのワンサイト、ワンサイトで二つの契約を結ぶ、六百億円の補償契約というものを政府と結ぶ。そういったものが積み重なるわけでございまして、それをトータルとして足し上げますと大体一兆八千億ぐらいの契約金額、いわゆる補償契約でございます、補償のカバーする契約金額になるであろうというものを見通しまして、政府に対してそういう補償契約をその範囲内において締結してよろしいですよということを許しておるという性格の数字でございます。
  66. 加藤修一

    ○加藤修一君 どういう仕組みになっているかということは理解しましたけれども、なぜそういう仕組みを根拠にしているかという点についてはちょっとまだ定かに理解できないんです。民間保険会社の保険契約額を根拠にしているということだと思うんです。電力会社と保険会社との契約内容は一般的な事故に対する補償、保険である、一方、政府の補償は地震や津波など民間保険会社が保険の対象としない事故を対象としているわけです。  そこで質問なんですけれども、保険の対象が違うのになぜ保険会社の算定を根拠にしているのか。私は、むしろ地震などは一般的な事故より大規模になるわけですし、加えて人災より頻度が少ないかもしれないという点、そういった点を考えていくならば、民間準拠とするということについてはちょっと理解しがたいところがあるんです。その辺はどうでしょうか。
  67. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 今、先生御指摘になられましたのはいわゆる補償料、民間が契約の相手方に対して払ってもらうお金のことではなく、もし万々が一のことが起きた場合に政府が補償契約に基づいて契約の相手方にお払いをする金額、これが一契約におきましては六百億円ということになるわけでございます。  その六百億円というのは何でもって決まるかと申しますのは、これは法律でもって六百億円のお金をカバーできるものをあらかじめの賠償措置として用意しなさいということを要求してございますので、それに基づきまして民間事業者は六百億円の補償契約というものの締結を政府に対しましてお願いしますと言ってまいりますので、それに対応して政府は補償契約を締結する、こういうことになるわけでございます。
  68. 加藤修一

    ○加藤修一君 質問に対する答弁ではないと思っているんです。法律によってというお話ですけれども、法律の前の段階として、どういう根拠づけでやっているのかという話なんです。いわゆる民間準拠としてはなりにくい対象になっているところ、それをどうしてそういう形にしているんですかということなんですよ。私はこの辺については今の答弁では理解しがたいので、おかしいということだけ指摘しておきます。  次に、先ほどの答弁の中で三百億円なり六百億円、今度変わって六百億円という方向でありますが、これを決めるに当たって国際情勢を参考にしてというふうに言っておりますけれども、地震国と言われる日本に果たしてそういう考え方でいいのかなという点があると思います。前回、長官もこの辺については心配されていたと思います。といいますのは、地震が起こりやすい国にあって、やはりそういったものが原子力発電の事故につながっていく、それは、そういうふうになった場合も含めて大変心配だし大変重要な問題であるということを考えていきますと、国際情勢という言い方は私としてはちょっと理解しがたいのです。その辺はどのように考えていますか。
  69. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  いわゆる賠償措置額の三百億ないし改正後の六百億という数字は、事業者側にこれだけの範囲で責めを負いなさいと言っている数字ではないわけでございまして、あくまでも事業者側は損失が生ずればその損失をフルにカバーする責めに任じておるわけでございます。この六百億円という数字は、言ってみればあくまでも当座の金、何かありましたときに、万々が一のことがありましたときに即座に出てくるような、そういう基礎的なお金として用意をしておくべきもの、あらかじめ少なくともこれだけのものはきちんと用意をしておきなさいよという性格のものでございます。  したがいまして、そのときに保険という仕組みというものを活用する限りにおきまして、その保険契約の相手方である保険事業者というものがあるわけでございます。これはプライベートセクターでございますので、そのプライベートセクターが本当に引き受け得る数字でなければ、実態から離れましてうんと高い数字を設定いたしまして賠償措置というものを義務づけるということになりましても、これは結果的に制度としては空振りになってしまうわけでございます。  したがいまして、現実問題としまして、我が国の保険の方の引受能力といったものを考えなければならない。それで、もう一つの要素としまして、我が国で用意をさせておくべき賠償措置額というものが国際的に余りにみすぼらしいといいましょうか、貧弱なものであるということも、これは多分これから先いわゆる国境を越えるといったふうな問題というのも生じてくるわけでございますので、今後の問題といったことも勘案すれば、当然のことながら国際的に遜色のないものといったことも勘案しなければならない、そういったあたりを勘案しながら決めた数字というのが六百億ということでございます。  あくまで、リスクというものがある、そういうことに基づきまして一定の被害というものはこれくらいのものが想定されるだろう、それに対応して六百億というのがある、こういう性格のものではございません。
  70. 加藤修一

    ○加藤修一君 そういう性格のものでないということですから、逆に私はそういう性格にすべきだというふうに言っているわけです。当座のお金という話が答弁の最初の方に出てまいりましたけれども、いわゆる当面の措置ということだと思うのです。そういった面を考えていくと、非常に私は客観性に乏しいんじゃないかと思うのです。  次に、そういうことを踏まえてお聞きしたいわけですけれども、原子力損害賠償補償料収入というのがございます。これは昨年度で三億八千万円が出ておりますけれども、これの根拠というのはどういうふうにお考えですか。
  71. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 先ほど来申し上げてございますとおり、原発でございますればワンサイト当たり改正後でございますと六百億円の、言ってみれば保険と実質的には同じ性格のもの、もし何か被害が発生するというようなことがございますれば政府としまして六百億円までのお金はお払いしましょうということでもって契約を結ぶわけでございます。そのときの民間でいうところの保険料、政府との契約で申し上げますれば補償料と申しますのは、たしか一万分の五であったというふうに記憶してございますけれども、定額でもって推移をしてございます。
  72. 加藤修一

    ○加藤修一君 損害賠償額の一万分の五であるわけですけれども、一般に補償料や保険料というのは事故率とか死亡率とかそういったものを前提に徴収するということだと思うんです。先ほどそういう考え方ではないと言っておりますけれども、私はそういったことを基本的に考えていくことだと思うんです。やはり私は、補償額にしても補償料にしても根拠が極めて薄弱ではないかと思うんです。  そういったことから、重ねて申し上げますけれども、事故率あるいは事故が起きたときの被害額、そういったものを仮に計算して予算に計上すべきだ、そういった考え方が必要ではないかと思いますけれども、あえてまた再度申し上げます。
  73. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 大変恐縮でございます。繰り返しになってしまうのでございますけれども、一定の確率で事故が起きる、そしてその事故というのがどれくらいの規模で起きる、そしてどれくらいの被害というのを与える可能性がある、それに対応して賠償措置額というものを六百億円用意しておきなさいという性格のものではないということでございます。
  74. 加藤修一

    ○加藤修一君 財団法人原子力安全研究協会というのがございますけれども、そこが出している「原安協だより」、これは昭和五十一年十二月二十五日発行のものでありますが、その第三十五号のタイトルに「確率論的安全評価手法の開発必要性」というふうに書いてございまして、大学の先生がその中で述べているわけです。 十年ほど前から、確率論的安全評価手法の検討が続けられてきたが、将来わが国においても、ラスムッセン報告書の日本版を作る必要があるであろう。  わが国は、土地が狭く人口も多い稠密化社会であるので、ラスムッセン報告書と同じやり方をすると、あるいは原子力発電所のリスクが何倍かの大きさになるかも知れない。他方、天然災害や人為的リスクの方もその分だけ大きくなっているかも知れない。この研究を通じて、これらの問題を明確にすることが必要であろう。 こういうふうに書いてございます。  これについてはどういうふうに考えられますか。
  75. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) 今おっしゃいました資料につきましてちょっと確認をいたしておりませんので、後ほど整理をして御報告いたします。
  76. 加藤修一

    ○加藤修一君 同じ文章の中に、最後の結論ということで「確率論的安全評価手法とパブリック・アクセプタンスの問題に触れてみたい。」というふうに書いてございます。ラスムッセン報告書のようなリスク、以前ほかの同僚委員の方がおっしゃっていましたけれども、事故確率掛ける影響の大きさ、これがリスクになるわけですけれども、 リスク概念がパブリック・アクセプタンスにとってプラスになるか否かという点は議論の多いところである。というのは確率論というのはもともと公衆に非常に誤解されやすい側面を有しており、また、反対の立場の専門家に対しても多くの論争点を提供するからである。  しかし、安全の考え方そのものが確率論に準拠していることを考えると、かなりの混乱が予想されても、やはり正しいリスクの概念を前面に押出して公衆に理解してもらうことが将来のパブリック・アクセプタンスのためにどうしても必要と思われる。原子力の安全問題にとって確率論というのは避けて通ることのできない道であろう。そう考えるとわが国においても確率論的安全評価手法の確立のためにさらに大きな努力を続けることが必要である。 というふうに書いているわけでございますけれども、感想はございますか。
  77. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) いずれにいたしましても、整理をして御報告いたしますが、そこら辺につきましては原子力安全委員会においても意識の上ではいろいろ検討しなければいけないとは思っておりますので、それもあわせまして御報告させていただきます。
  78. 加藤修一

    ○加藤修一君 引き続いて、先ほどのものは昭和五十一年ということでかなり古いわけですけれども、「原子力アイ」という雑誌がございまして、これは一九九八年一月号でございます。その中で「事故発生の確率論 確率論的安全評価の活用について」ということで、「特集」「原子力開発利用における安全文化の確立」という特集の中に今のテーマの論文があるわけです。  「例えばシビアアクシデントのアクシデントマネジメントの効果的な立案にも使用されている。」。何が使用されているかというと、確率論的安全評価の関係なんですけれども、私ちょっとひっかかったのは、「シビアアクシデントのアクシデントマネジメントの効果的な立案にも使用されている。」ということですから、シビアアクシデントがありましたと、想定です、それに対応した形でマネジメントも当然立案されていますよという話になるわけですが、この辺のことについては我々は全然存じ上げていないわけですけれども、こういった面についての科技庁の内部資料はございますか。
  79. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) いずれにしましても、今の御議論の中でシビアアクシデントであるとかの確率論的な安全性ということがございますが、そこら辺につきましてはこれまでも一部議論はしてございますので、そういうものもあわせまして後ほど御報告させていただきます。
  80. 加藤修一

    ○加藤修一君 もう一つ、確認の質問をさせてほしいんです。  それは、今シビアアクシデントの話をしたわけですけれども、先ほどの科技庁が委託した件です、昭和三十四年だったでしょうか、あれ以降はあの種のものは一切やっていないという理解でよろしいですか。
  81. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 昭和三十四年に委託をいたしました以降、原子力損害賠償制度というものを考えるに当たりまして、繰り返しになりますが、無限責任という考え方をとる以上、そのような資料というものは制度設計上必要とされないということでもって一切行ってございません。
  82. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、エネルギー供給のあり方についてちょっと質問いたしたいと思います。  先ほど同僚委員からも話がございました、地球温暖化防止京都会議日本は温室効果ガス六種類の排出量を二〇一二年までに一九九〇年レベルから六%削減する、そういう国際公約をしているわけですけれども、通産省は私が知っている範囲では原発十六から二十基増設で切り抜けようとしている。そのほかのさまざまな施策もあるわけですけれども。  ただ、ほかのさまざまな資料を検討してまいりますと、世界の資料の関係もそうですけれども、どうも世界の事情というのは違った方向に進んでいる部分もあるかなと、そういうふうに判断せざるを得ない。例えばEUは、自然エネルギーを現在の六%から一二%に引き上げる、そういった目標を打ち出しております。それから、世界エネルギー利用量の伸び率を見てまいりますと、風力最大で二五・七%、太陽、地熱、天然ガスと続いて、原子力は最低の〇・六%という事実があるわけですけれども、日本はもっと世界のそういった趨勢を見ることも必要ではないか。そういった意味では、自然エネルギーへの政策的支援、これも行う必要があるのではないか、拡充していく必要があるのではないか。  原子力については、最近では高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウムの事故の問題、あるいは、本会議質問でも申し上げましたが、動燃のアスファルト固化処理施設の火災爆発事故、あるいは使用済み燃料の輸送容器のデータ改ざんの問題等々あるわけですけれども、やはり国民の間に安全性に対する不安というのが増幅している、そういった傾向も見かけるわけです。  原子力を今後のエネルギー供給の主役として位置づける、そういったことについて国民の合意を得るという意味では極めて難しい背景も存在していることは私は事実だと思うんですけれども、この辺について通産省はどのように見解をお持ちですか。
  83. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 委員御指摘のように、京都会議によります世界に対する公約のために、九〇年レベルでエネルギー起源炭酸ガスを二〇一〇年には安定化させるという目標のために需給両面の対応をとっておるところでございます。  この中で、世界の事情をよく考慮すべきだという御指摘がございました。まさに御指摘のとおりでございまして、今後も世界の、特に新エネルギー、自然エネルギーの動向については十分な注意をしながら、また世界における各種の助成制度なども十分に研究をしながら我が国のありようを考えていきたいというふうに考えてございます。  自然エネルギーへの政策的支援を拡充すべきではないかというお尋ねがございました。まさに自然エネルギーを含めた新エネルギー開発導入の重要性を認識して、平成九年六月、新エネ法が施行されておりますが、それに基づき民間事業者、地方自治体に対する支援を行っております。  また、技術の部門でも幾つかのプロジェクトを組んで研究開発を進めておるところでございます。内容は詳しくは申し上げませんが、十一年度予算においてもこうした延長線上で関連予算を盛り込み、努力を続けておるところでございます。  原子力発電所立地に係ります社会的背景に極めて難しいものがあるという御指摘でございました。我々もまさにそういうふうな認識を持ってございます。したがいまして、二〇一〇年までに六千六百万から七千万キロワットの設備容量が必要とされる原子力の建設について、目標達成は容易なものではないという認識を十分に持っておりますが、他方で、安全確保はもちろん、国民理解を求めるための各種の活動を地道に継続してございます。そうした努力の中でこの目標を達成してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  84. 加藤修一

    ○加藤修一君 稲川長官の、自然エネルギーに対して注意をしながら、あるいは助成制度についても積極的に考えていくと私は理解いたしました。ぜひ拡充の方向に向けて頑張っていただきたいと思いますけれども、よろしく、頑張ってください。  それで、二〇一〇年に向けて原発を立地させるのはなかなか容易ではないと。私もそういう認識をしております。電力会社十社でつくる中央電力協議会の電力長期計画、その中においては二〇〇八年まで原子力発電を十基程度増設というふうに書かれているわけですけれども、一方、先ほど答弁の中で、二〇一〇年まではそれ以上の増設という考え方が示されている。そういった意味では、当然シナリオによるわけですけれども、二十基増設というシナリオもあるわけで、非常に大きな数字の開きがあるというふうに認識せざるを得ないわけですが、この辺については、彼我のこういった格差、乖離というのはどういうふうに見解をお持ちですか。
  85. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 御指摘のございました中央電力協議会が公表しております電力長期計画は、電気事業法に基づきまして各社が通産大臣供給計画として提示をしているものの集計でございます。これによりますと、二〇〇八年度までに御指摘のございましたように運開を予定しているものは十基、さらに二〇〇八年を越えて二〇一〇年度ごろまでに運開を予定しているものは全部合わせますと二十一基という状況でございます。  この原子力発電所、当初の計画に比べまして具体的な立地手続が進行してまいりますごとに少しずつ後ろにおくれる傾向がございます。そういう意味で、二〇〇八年のあたりのところにそれ以前のものが少しずつ後ろ倒しになってここに固まっているという状況がございますが、いずれにしても、二〇一〇年度付近に運開を予定しているもの、全体として二十一基がございます。  他方で、先ほど六千六百万キロワットから七千万キロワットが二〇一〇年に必要とされる設備容量というふうに申し上げましたが、現在の稼働率八三%を前提とすれば六千六百万キロワット、また、平均的な過去の稼働率を前提にすれば七千万キロワット、すなわち十六基から二十基が必要な設備容量と考えられます。  これにつきまして、先ほどギャップという御趣旨で御指摘がございましたが、全体として二〇一〇年を目途としてこの必要容量の実現に向けて今努力をしているということでございます。
  86. 加藤修一

    ○加藤修一君 あえて確認したいんですけれども、二〇〇八年までは十基程度の立地、そして二〇一〇年までには二十基程度ぐらいになるかもしれない。そういった意味では、二、三年でさらにプラス十基程度というそういう理解になる。過密な状態ということですか、二〇一〇年近辺では。そういう意味ですか。
  87. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 御指摘のとおりでございます。二〇一〇年度付近に運開を予定しているものが多い計画となってございます。
  88. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、原子力発電所の災害対策の関係の質問になりますけれども、前回も私、質問しましたが、ロシア紙の新イズベスチヤの報道の中身を翻訳していきますと、チェルノブイリ原発事故の際、発電所から遠くない地点に三カ所の特別地震観測所が稼働していることを見つけ、ロシア科学アカデミー地球物理研究技術災害分析グループ長であるバルコフスキー氏が一九九五年よりその記録の解読を始めているわけです。  その解析によりますと、震源は発電所の地区で、四号炉の直下であったというふうになっております。震度十から十一、日本の震度で言うと六から七に達するということであります。  これは我が国にとっても非常に参考になる報告あるいは解析の中身だと思うんですけれども、ぜひ資料を前回も取り寄せていただきたいということだったんですけれども、あえて確認しておきたいと思うんです。
  89. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) 前回、先生の方から御指摘がございましたので、直ちに外交ルートを通じまして資料を取得すべく努力いたしまして、先日到着いたしましたので、現在、内容につきまして調査分析をしているところでございます。資料につきましては、当然御提出いたします。
  90. 加藤修一

    ○加藤修一君 ありがとうございます。  ちょっと無理なお願いになるかもしれませんが、今回こういった形でこの法案について審議しているわけですけれども、この法案審議、またもう一度あるやに聞いております。それまでに間に合うか間に合わないかわかりませんが、それは難しいですか、それまでには。
  91. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) いずれにいたしましても、努力はいたしたいと思っております。
  92. 加藤修一

    ○加藤修一君 では、よろしくお願いいたします。  次に、原子力災害について、地方公共団体としては、防災について国の対応をしっかりしてもらいたいという、協議会を含めてそういう声が多いわけでありますけれども、放射能に係る被曝の程度は個人的にはみずから判断できないわけです。  原子力の安全規制は国によって実施されておりますけれども、いわゆる原子力施設の事故の広がりの予測とか周辺環境に及ぼす影響の評価、そういった防護対策、それを講ずる上で必要な情報というのは国が持っているわけで、地方には相対的に言って少ないし、極端に言えばないと言っていいわけです。  被害は一つの地方公共団体を越えていく場合もあるわけでありまして、こういう理由から、やはり国が安全規制から原子力防災、そういったもの全体に対して一元的に責任を有するべきであると思っているわけですけれども、その辺についてはどのようにお考えですか。
  93. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 重要な御指摘だと思います。  原子力防災対策につきましては、災害対策基本法の枠組みのもとで必要な体制を整備しております。防災基本計画原子力災害対策編に従って、国、地方自治体、事業者等がそれぞれの責務と役割分担のもと、防災対策を実施することといたしております。  さらに、原子力安全委員会の防災専門部会におきましては、去る四月二十八日に報告書を取りまとめ、原子力防災対策の実効性向上について基本的考え方と具体的方策を提示したところでございます。  この報告書におきまして、地方自治体における専門的知識が乏しい現状を踏まえ、施設の安全規制に責任を持ち専門的な知見を有する国がより一歩前に出て、地方自治体の役割、能力が最大限発揮できるように配慮すべきであるとしております。その上で、国、地方自治体、事業者が連携して施設や地域の実態に合った防災システムを構築することを求めております。  国といたしましては、これを踏まえまして、今後さらに原子力防災対策の一層の充実強化に取り組んでまいりたいと考えております。
  94. 加藤修一

    ○加藤修一君 原子力災害のとき、万々が一ということなんですけれども、そういった場合にはやはり非常災害対策本部、そういったものを一元的に設けて危機管理体制をきちっとしくべきだと思うんですけれども、これについてはどうですか。
  95. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 原子力発電所等において事故が発生し、その影響が周辺に及びまたは及ぶおそれがある場合には、災害対策基本法等に基づきまして、中央におきましては国が事故対策本部等を、現地におきましては国、地方自治体及び事業者がそれぞれ対策本部を設置するなど必要な原子力防災体制を整えてまいりました。  原子力安全委員会防災対策専門部会が四月二十八日に取りまとめました報告書「原子力防災対策の実効性向上を目指して」においては、緊急時における指示・調整機能の強化を図るため、現地において、国、地方自治体、事業者が一堂に会する対策本部、いわゆるオフサイトセンター構想が提言されております。  国といたしましては、このような対策を講ずることによりまして、関係機関が一体となった防災体制が迅速に構築できるものと考えております。  今後とも、関係省庁、関係機関とも連携いたしまして、危機管理体制の一層の充実強化に取り組んでまいりたいと考えております。
  96. 加藤修一

    ○加藤修一君 前回も質問したわけですけれども、答弁の時間がございませんでしたので再度質問したいわけですが、地方公共団体には専門的知識を有する人材が相対的には極めて少ないと。国が現地に防災事務所を設置して、技術的能力とか専門的知識を持つ機関が現地の状況を把握して迅速な情報収集、被害予測、初期防護活動、そういった面での意思決定を行うようにすべきであると私は思います。  そういったことと同時に、原子力施設において事故が発生した場合の消火・救助活動、そういったものを担ういわゆる原子力レスキュー隊、そういったものの創設を図るべきだという意見もさまざまなところで聞くわけですけれども、これについてはどのような御見解をお持ちですか。
  97. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 原子力発電所等の緊急時におきましては、原子力災害の拡大を抑えるとともに、消火、救助、救命といった活動を迅速かつ的確に行うということが非常に必要でございます。原子力災害の影響を最小限にとどめることが極めて重要であると考えております。  このような認識に立ちまして、先ほども御報告いたしました原子力安全委員会防災専門部会の報告書においては、現場での防災実施機能の強化につきまして、まず第一に国の指導による事業者の防災体制の充実強化、第二に国の指導による事業者と関連防災機関との連携・協力の推進、第三に防災能力を付与した運転管理専門官等を現場に派遣することなどを含めた国の積極的関与を図ることが必要であると提言しております。これらを通じまして防災実施機能、先ほど御指摘のいわゆる原子力レスキュー機能のあり方を検討していくことが必要であるとしております。  国といたしましては、この提言も踏まえまして、今後とも関係省庁、関係機関と連携して原子力防災対策の一層の充実強化に取り組んでまいりたいと考えております。
  98. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど同僚の委員からも話がございました関係について、私も言いたいことがあります。  それはどういうことかといいますと、ある雑誌に出ていた内容なんですけれども、「私は原発で「放射線濃度」のデータを改ざんした」というショッキングな中身になってございます。  それをちょっと紹介申し上げたいんですけれども、六基の原子炉が稼働しているところらしいんですが、その「原発の元検査員A氏から驚くべき内部告発を得た。原発で生じた低レベル放射性廃棄物に関するデータを改ざんしていたというのである。」と。「ちなみに、低レベル放射性廃棄物は以下の三つに大別される。」ということで、「清掃時の排水や濃縮した廃液」云々、そういったものを第一点目、二つ目は「使用済みの作業着や手袋、」云々、そういったものがある、三つ目としては「雑固体廃棄物を千五百度の高温焼却処理したガラス状の溶融物(グラニュール)をドラム缶に封入したもの、である。このうちグラニュールは、比較的放射線量が高い数値を示すとされる。」ということで、これの保管の問題あるいは放射線量の測定の件が書かれているわけなんです。  「ドラム缶は原発内の固体廃棄物貯蔵庫に保管されるものと、青森県六ケ所村にある低レベル放射性廃棄物埋設センターに送られるものとに分かれる」。六ケ所村に送られるものについては、表面線量率がいろいろ色によって分けられて、色がついたドラム缶に入れられる、そういうふうに書かれてございます。「埋設センターに運搬する際は、運搬車両のコンテナの表面が最大値二ミリシーベルトでなければならず、それを超える場合は専用の遮断容器に入れなければならないことになっている。」けれども、その方の処置の仕方というのは、当然その「最上段のドラム缶は二ミリシーベルト以下でなければならないという規定がある。」にもかかわらず、「改ざんしていた」ということなんです。  これは、先ほど同僚委員との話の関係も含めて考えなければいけないわけですけれども、「検査のときは私と放射線管理主任の二人で測るのですが、「これくらいの値でどうだ」「ああ、いいね」などと話しながら数値を決めていました。しかも、二度めは八百本全部なんて測りません。ある程度測ったら、あとはだいたいこれくらいだろうという適当な数値を書いていました」というふうに書かれているわけなんです。これが事実とするならば非常に大変な話なんです。  マスコミは故意に中傷するという話もございましたし、先ほどダイオキシン類の話がございました。私もダイオキシン類については大変関心を持っております。あの報道について言うところは私自身なりに持っておりますけれども、私は大臣とはちょっと考え方が違うように先ほど来の話で聞いております。報道機関の自主規制という話も出ました。確かにそういった側面も必要だし、それから人権の問題を考えていきますと、やはり欧米に倣って第三者審査機関とか、そういったものを設けるべきだと私なんかは思っています。  これは事実かどうかわからないんですよ、雑誌を見る範囲においては。私はこれは非常に重要な問題だと思いますので、この電力会社の方のこれに対する見解も述べられております。やはり私は、これはきちっと実態調査をすべきだ。例えば、こういうふうに書いてあるんです。放射線管理手帳なんかが写真として出ておりまして、告発者のこの方が言うには、「現在では、半分以上の歯が抜け落ち、食欲もほとんどない」というふうに、かなりショッキングな書き方がされているわけなんですけれども、これは実態をきちっと調査すべきである。もし間違っていたならば大変だし、どちらにしても大変な話だと思うんです。これ十分対応をとるべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
  99. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 御指摘のございました写真週刊誌に、グラニュールを入れたドラム缶の表面線量の測定に係る記事が出ていたことは承知いたしてございます。  現在、この発電所にはグラニュールを封入したドラム缶は本年四月末現在で三千四百本ございまして、これはすべて発電所内で貯蔵、保管をされてございます。  三点申し上げますが、第一点は、報道でいささかの不安を惹起したこのグラニュールに関するドラム缶はこの発電所から一切六ケ所には送られておりません。それが第一点。六ケ所に送るためには、将来の問題としてさらにこれをコンクリートで詰め等々の措置をした上で送ることになりますが、現在時点ではこういうものは実績として送られておりません。  第二点は、六ケ所に送られているものはその他の可燃物を燃焼したものを処理して送っておりますが、これは全量全自動測定装置にかけられて送られておりまして、かつ全自動測定装置にかけられたものは科学技術庁さんの監督しておられます確認組織においてその数値を確認いたしてございます。人手による画策、改ざんの余地は一切ございません。  それから第三点目は、このグラニュールを入れたドラム缶の件でございますけれども、構内で放射線管理区域を外れて倉庫に移すという必要がございまして、そのときにこの処理をするために詰めるときとそれから倉庫に移すときの二度、表面の線量率等を測定いたしてございます。この測定はそれぞれ異なる企業で行われておりますので、違う企業が同時に改ざんを行わない限り、数字は違ってくるのは当然でございます。  当方といたしましては、昨日、本省の検査官を派遣し、また現地の運転管理専門官、二人をもちましてドラム缶封入に関する電力の保有データで法令の基準に係るものは全数を確認いたしました。その確認をした結果、先ほど申し上げました封入のときと輸送のときとそれぞれ異なる企業で行われておりますけれども、二回の測定結果は記事にあるようなレベルにはなっておりません。  先ほども申し上げましたように、二つの違う企業で測定が行われておりますので、改ざんが同時に行われない限り、この数字が似たようなものになることはあり得ないわけでございますが、二つの違う企業で行われている測定結果、それが記録として残っているものを突き合わせをいたしまして、そこに異同はありません。  それで、現在、東京電力において事実関係を詳細に調べておりますので、その調査結果の報告を受け、今後さらに疑義があらば、通産省として詳細な実測をすることを含めて当方として疑義を晴らす措置を断固として行うつもりでございます。信頼にかかわる問題であると思いますので、一切の疑義が晴れるように努力をいたします。  ただいま現在は、事実関係を東京電力がよく調べてございますので、その報告を待っております。報告は週内に来ると考えております。
  100. 加藤修一

    ○加藤修一君 今の報告書については、また後日改めてお聞きしたいと思います。  それで、最後の質問でございますけれども、前回、稲川長官にお聞きしたんですが、原子力の運転管理専門官、この関係でございますけれども、長官の答弁は「現在、全国十七カ所の原子力発電所すべてに運転管理専門官を派遣してございまして、総数は四十七名でございます。その業務は、原則的には保安規定の遵守状況の調査、原子力施設の巡視等の業務でございます。」と、このように答弁されております。  四十七名ということでありますけれども、私が調べた範囲では四十一名しか配置されていないわけです。柏崎は二名足りない、敦賀は一名足りない、大飯は二名足りない、福島も一名足りない。ちょっと事実誤認じゃないかと思いますけれども、どうでしょうか。
  101. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 五月一日現在、定員四十七に対して実員は御指摘のとおり四十一名でございます。ただし、これは極めて一時的な状況でございます。また、この定員に満たない事務所が十三事務所のうち四事務所ございますが、いずれも実員は四、五名の比較的大きな事務所でございますので、そういう意味での業務上の配慮を行ってございます。一時的なものと御理解賜りたいと思います。
  102. 加藤修一

    ○加藤修一君 最後に。  答弁はよろしいですけれども、要するにこの関係についてはまだ私は納得していない部分がありまして、どういう資格なのか、どういう権限でやるのか、これはスリーマイルアイランドの後につくられた、ヒューマンエラー、そういった面も含めて対処していかなければいけないということでつくられている制度で、非常に能力が必要とされる専門官だと思うんです。ですから、その内容について別の機会にまたお聞きしたいと思いますけれども、きちっとした制度にしていくことを考えますと、これは内規とかそういった問題じゃなくて、やはり法的にきちっと位置づける問題だとも私は思っています。  以上でございます。
  103. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ─────・─────    午後一時二十分開会
  104. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、武見敬三君が委員辞任され、その補欠として久野恒一君が選任されました。     ─────────────
  105. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 休憩前に引き続き、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  106. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  まず最初に、一昨日から報道がされているわけですけれども、当委員会が視察をいたしました東海第二原子力発電所、そこで電動弁の弁棒の破損が起こったというふうに報道されているわけでございます。本日、早速我が党の調査団が現地に入って調査をしているわけですけれども、政府として厳正な調査を行ってその原因を明らかにして再発防止の対策をきちっと御報告していただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  107. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 日本原子力発電東海第二発電所は、四月四日から定期検査を実施中でありましたが、低圧炉心スプレー系の注入弁の作動試験を行っておりましたところ、この弁の弁棒の動作にふぐあいが認められましたので、これを分解、点検をいたしましたところ、五月二十四日、弁棒が折損しているということが判明いたしました。これによる外部に対する放射能の影響はありません。  ただ、御指摘もございましたように、これは徹底した原因究明を行いまして、的確な再発防止対策を講ずるよう事業者をしっかりと指導してまいりたい、かように考えております。
  108. 西山登紀子

    西山登紀子君 ちょうど定期検査のときに見つかったということであったわけですけれども、もし稼働中にこういうことが起こるということであれば大変なことになると思うんです。  そこで、視察に参りましたときに、建屋の中に入っていろいろ御説明を伺っておりましたときに、事業者の方から、現在、十三カ月運転をして、定期検査は百日かけて実施をしているんだけれども、四十日ぐらいに短縮するような努力をしているというふうに説明をされたので、今回のトラブルが判明いたしまして、私はちょっと考えたんです。  私のもとにも定期点検の異常な短縮が心配だという陳情が来ているわけです。例えば、福島第一・三号機、三十六日間、大飯三号機、三十七日四時間四十分、これでは事故要因の見逃しになるんじゃないかという御心配が関係者の中から私の手元に届いているわけですけれども、効率を優先する余りこの定期検査の短縮を競い合うというような傾向がもしあれば私は大変だと思うんです。  安全第一ですし、十分に時間をかけて、人も技術もかけて、手抜かりのない定期点検を厳重に行うよう指導を強めていただきたいと思いますが、この点についてお伺いいたします。
  109. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 定期点検につきましては、これは十三カ月ごとに行っているものでございますけれども、安全性のもとでございますので、厳正にその確認を行いたいと考えてございます。  一般論として申し上げますと、定期点検のための計画停止の期間につきましては、年によっていろいろ差がございますけれども、ここ十年間、停止期間は減少いたしてございます。ちなみに十年前の数字で申し上げますと、例えば全体としては百五十日前後のものもございましたが、現在では八十日を切るような状況でございます。  この理由でございますが、長期間を要する改造工事が減少しているという事情が一つございます。例えば、PWRで蒸気発生器の取りかえでありますとか、同じくPWRで原子炉圧力容器の上ぶたの取りかえでありますとか、あるいはBWRにつきましては炉心周りの配管の取りかえとか、こういう工事が大体全体を一巡してまいりました。そういう趣旨で長期間を要する改造工事が減少している。さらに加えて、点検作業の効率化、作業環境の向上に努めたというような点もございまして、そういうのが短縮の理由でございます。  ただし、点検そのものの内容やレベルは当然に維持しておりますし、維持すべきものでございまして、この定期検査の内容、国が行うものについて計画停止の期間によって中身が左右されるものではないということでございます。引き続き適切に実施をしてまいりたいと思っております。
  110. 西山登紀子

    西山登紀子君 もちろん単純に日時が長いとか短いとかいうことだけを問題にしているのではなくて、効率を優先して定期検査の期間を短くする、何かそれを競い合うような傾向が各事業者とかそういうところに今あるようだ、起こりそうだ、そういう傾向がもし助長されていくならば非常に心配だという点を私のところに陳情される方もございますので、その点を踏まえてきちっと厳重な指導をしていただきたい。もう一度御答弁をお願いいたします。
  111. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 重ねて、これは安全管理のもとでございますので、定期点検の内容充実については十分な指導をしたいと思います。  電気事業者における定期検査期間中の停止の期間でございますが、無用に期間が過ぎることを避けて効率的に検査をしたいという趣旨は、それは当然のことでございますので、そういう意味での改善は我々も望むところでございますけれども、例えば、時間単位の工程管理の技術が最近非常に進んできておりますとか、入退期に非常に人が混乱をいたします。三千人、五千人というオーダーで人がたくさん出入りをいたしまして、そのときの時差出勤をうまくマネージする、あるいはほかの作業環境の改善をして混乱を避けるとか、いろんなノウハウが大分蓄積されてきたようでございます。  そういう効率化という趣旨で短くなるものについては当然のことだと思いますが、その期間の短縮が安全をないがしろにする、あるいは定期検査のレベルをないがしろにするようなものであってはならないのは当然でございまして、そういう点は我々は厳重に指導をいたします。
  112. 西山登紀子

    西山登紀子君 よろしくお願いをいたします。  原子炉規制改正案審議に入る前に、前回、私は当委員会で原賠法の改正案審議の際に、一九五九年に行われました「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」についてお伺いをいたしました。ちょうど昭和三十六年、一九六一年の原賠法の国会審議のときのことをお尋ねしたわけでございます。  実は、試算のごく一部、十八ページ、私は今ここにパンフレットを持っておりますが、これが十八ページのパンフレットでございます。この十八ページのパンフレットしか公表されないで、これが全文です、附録部分を含めた全文が当時公表されていなかったわけでございます。昨年の秋になってやっと公開をされたわけです。私の手元にも原本が届きまして、きょうはもう原本をお返ししましたからコピーを持ってまいりました。原本は赤のマル秘の判こが押してありますし、21、「保存用 禁帯出」という黒い判こも押されているわけです。これが全文です。  十八ページが公開されたわけですけれども、附録のAからGまでの重要な部分が全く今日まで全文公開をされてこなかった。そのことについて、青江原子力局長はその経過を調査するとお約束なさったわけですけれども、その結果をお聞かせください。
  113. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  私ども、古い資料を地下の倉庫にも行きまして探してみたのでございますけれども、いわゆる国会の議事録といった非常にオフィシャルなといいましょうか、そういう資料だけが残ってございまして、その間の、例えばパンフレットというものそのものも実は確認をすることができないという状況でございました。  一方、国会の方にも、どういうふうな形でもって当時の資料としまして提出がされておるのかということについても今調査をお願いしておるという最中でございまして、その間の経緯と申しましょうか、そこのところをまだ十分につまびらかにすることができないという状況でございます。大変申しわけございません。
  114. 西山登紀子

    西山登紀子君 議事録を読んだだけでも、恐らく私は十八ページのこれだと思います。  なぜこれかといいますと、日本共産党は七九年の四月に、ある科学者の方の御協力をいただきまして、赤旗それから「前衛」にほぼ全文に近いものを報道いたしました。しかし、この十八ページのパンフレットといいますのは、その後も、我が党の議員にも、それからほかの同僚議員が要求いたしましたときにもこの十八ページの分は出されています。つまり公開をされているんです。科学技術庁が責任を持ってお出しになっているのがこれでございます。十八ページ、つまりサマリーの部分なんです。  国会の当時の議事録を私もいろいろと勉強させていただきました。昭和三十六年当時の原賠法の質疑、非常に熱心な質疑がやられているんです。そのときに、岡委員がこの試算を提出するべきだということで提出されているのがこの十八ページのパンフレット、これしかないんです。だって、ほかは全部皆さんがこうしてマル秘だといって出さないよということで処分をしていらっしゃるわけです、その当時から。だからこれしかない。  この議事録をずっと読んでみましても、当時の原子力局長の御答弁で、「お手元に差し上げてございます資料のページで申し上げますと、五ページでございます。五ページをお開きいただきますと、」と、ずっと述べていらっしゃることは、まさにこのパンフレットの五ページです。ですから、この十八ページのパンフレット、これが当時、四十年前の国会に出されたもの、政府が公開しているのはこれしかないわけですから。その当時、国会で配られたのはこれしかない。  それから、質疑の中で五ページというところにも、このパンフレットの五ページを開けば原子力局長が引用されているところがきちっと出てまいります。ですから、これしかないんです。  私もこの間、問題にいたしましたけれども、このサマリーの部分というのは、この間お見せいたしました。ここの「目次」に、「まえがき」、「第1章」、「第2章」、「第3章」とありまして、「第1章」には「公衆災害を伴う大型原子炉事故の可能性」、「第2章」には「損害試算の基本的考え方と仮定」、「第3章」は「試算結果とその評価」ということで十八ページなんですけれども、私が前回申し上げましたように、実際の原本にはその後に附録のAからGまでついているわけです。その方が総量二百四十四ページ。  十八ページと二百四十四ページを比べてみたら、隠された部分が一体どれほど大きかったかというのはおわかりいただけると思います。隠された部分の大きさはページ数の大きさだけではないんです。内容の大きさが隠されていたということが私は非常に重大な問題だと思うわけです。  この試算の「まえがき」には、「本調査の目的は、原子力平和利用に伴う災害評価についての基礎調査を行い、原子力災害補償の確立のための参考資料とすることにある。」と明確に述べられているわけです。つまり、当時の政府原子力産業会議に委託をいたしまして、こういう試算をしてくださいといってお願いをして出てきた報告書が、実は全文がこれなんですけれども、実際、国会に出してきたのは附録の部分が全く公表されない短いサマリーの部分だけであったということなんです。  なぜ国会に出さなかったか、なぜ活用されなかったのかということをお伺いいたします。
  115. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 先ほど、つまびらかにまだでき得ていないということにつきまして御答弁申し上げましたが、まさに今先生がおっしゃられた、そのいわゆる十八ページのものだけなのか、それとも残りの二百四十四ページも全部含めて国会に提出されたのか。それは、まさに議事録を読めばわかるだろうとおっしゃられましたとおり、そういったことから私ども今の時点で推測をいたしますに、多分十八ページの部分のみであろうというふうには推測をしておるのでございますけれども、そこのところを最終確認といいましょうか、そういったことが今はできていないという状況でございます。  それがなぜ、そういうふうなことでもって伏せられていたのかという、その経緯ということにつきましても私ども調べておるのでございますけれども、当時の資料が現実には残っていないという状況でございまして、大変申しわけございません、そこのところを、なぜということにつきましての確認というのが今でき得ていないという状況にございます。  それから、その資料が活用されたのかということ自体につきましては、私は、結論といたしまして、活用されていないというふうに申し上げざるを得ないというふうに思っておるわけでございます。と申しますのは、これは再三申し上げてございますとおり、いわゆる制度設計に当たりまして有限責任というのをとらなかったということをもってして、その考え方というのは参考にされていないというふうに考えざるを得ないからでございます。  ちなみに、そこでの仮想事故におきましての被害想定、その金額が出てございますけれども、そこと、例えば事前に用意をさせておくべき賠償措置額との間にも全く脈絡を見出すことができないわけでございます。そういったことを勘案いたしますと、参考にされたかという御質問に対しましては、参考にされていないというのが御答弁であろうかというふうに思う次第でございます。
  116. 西山登紀子

    西山登紀子君 当時、七十六万円というと相当の額でございますが、わざわざ国費を使って、原賠法の法案審査のためにはどうしてもこういう試算が要るんだということで委託をしたわけでございます。  この「まえがき」にはこんなふうに書いてあるんです。先ほど引用いたしましたけれども、その後でございますが、「各規模の事故の起る可能性および第3者に及ぼす物的人的損害を理論的に解析評価したものである。」と、この調査は。  本調査の委託に当つてもこの米国の調査(WASH—740)の解析方法を参考とすることが指示されていた。従つて我々は時間的経済的制約の下で本調査を行うに当つて、できるかぎりWASHの解析方法などを利用しようとし、そのためにまずWASHの検討から手をつけた。しかし、WASHの研究が行われてからすでに3年を経過していること、また我国の特殊事情などのためにWASHをそのまま流用しうる部分は少ないことが判明したので、このような観点から現在の時点において我々に課せられた範囲内でできるかぎり科学的根拠をもつた解析をしようと試みた。 ということで、私はこの前の審議のときも申し上げましたけれども、この調査、試算をされた方々というのは、非常に使命感を持って科学的根拠を持った解析をきちっと行った。WASH七四〇でやりなさいと言われたけれども、それだけではなくて、日本のオリジナルな考えも入れてきちっとやったということをわざわざ書いているわけです。それも活用していない。  それで、サマリーの部分は出ているんですけれども、なぜ附録の部分を公表しなかったのか。今、局長は、十八ページが出たのか、それよりもっと出たのかというふうにおっしゃっているんですけれども、過去四十年間に出ているのは十八ページのこれしかないんです。というのは、九八年の秋までこれはマル秘だったでしょう、皆さん、マル秘にしてあったんですから。解禁されたのは九八年の秋なんです。全文、附録が全部出てきたのは去年の秋なんです、赤旗のスクープを除けば。  それで、お尋ねいたしますけれども、なぜ十八ページのサマリーの部分は出して、附録のAからGは出さなかったんですか。理由を明らかにしてください。
  117. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 繰り返しになりまして大変恐縮でございます。  なぜ出さなかったか、そこの表紙に「秘」という判を押しておると、こういうふうに御指摘になられましたが、そういうふうな扱いをしたのかということを、その判断に至りました根拠と申しましょうか、そのことにつきまして今資料に当たっておるところなのでございますけれども、見出すことができないということでもちまして、今私ども現時点におきまして、昭和三十四年当時におきましてどうしてそういう判断をしたのかということにつきまして、大変申しわけございませんけれども、その明確な御答弁をすることができないというところでございます。
  118. 西山登紀子

    西山登紀子君 その理由は、この議事録をいろいろ見ますと、この試算については頼んだけれども参考にしなかった、こういうふうにも言っていらっしゃるんです。それは、非常に額が大き過ぎると。ある委員の方なんかは、余りにも大きな額なので、その当時決まったのは五十億ですから。ところが、試算のこのサマリーで出している部分だけでも損害額の総額一兆円という額が出ておりますので、余りにも大き過ぎてもう考えられないということからこれは参考にしないというふうなことにしてしまったということですね。  附録のAからGがなぜ伏せられたのかということについてですけれども、照合していろいろ見てみますと、附録の例えばGの部分、最悪ケースの損害総額は三兆七千三百億円というふうになっているわけです。この公表されているサマリーの部分だけを見ますと、総額は一兆円。それでも当時、一九五九年度の一般会計の予算というのは一兆四千九百五十億でございますから、一兆円といったってそれはもう膨大な額でございます。被害総額が国の予算の三分の二。三兆七千三百億円ということになりますと、三倍を超える被害になってしまう。これが過酷事故の被害の深刻さだということで、この原子力産業会議に委託された科学者たちは、専門家の皆さんはリアルにそのことを御報告なさった。それも、これは過小ですよということを注釈をつけてまで出していらっしゃるわけです。  私が思いますのは、この試算の詳細部分、グラフもあれば数式もあればいろんな解析、いろんな限界はありますけれども当時の一生懸命つくっていらっしゃるのが全部出ております。ですから、このことを公表いたしますと、その内容が余りにも衝撃的で原発を推進していくという計画について国民の批判が高まることを恐れたからではないでしょうか。
  119. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおりであったのかどうなのかということを含めまして、今私どもとしましては資料をもって確認することができないという状況にございます。
  120. 西山登紀子

    西山登紀子君 去年の秋まで全文がマル秘だったというのは、これは科技庁さんの措置政府措置ですよ。ですから、これは科技庁が責任を持ってマル秘にしたんです。全文解禁したのは去年の秋なんですから、四十年前の国会にはこれは出ていないんです。附録は出ていない。パンフレットは十八ページしか出ていない。これは私も関係者の皆さんから聞いておりますけれども、十八ページしか当時は出ておりません。  当時の議事録をもう少し見てみますと、原子力委員会の安全基準部会にもこの全文は出されていない、出していないと当時の長官が答弁をしていらっしゃるわけです。なぜ出さなかったのかといえば、参考にならないと局の方が判断したので出していない、こういう答弁を当時していらっしゃいます。  私は、当時、四十年前の日本の国会で、過酷事故を想定した議論が十八ページという限られた資料ではあっても議論がされていたということは大変重要なことだと思います。重要だと指摘される専門家の方もいらっしゃるわけです。この試算というのは、過酷事故、つまり反応度事故、冷却材喪失事故、この二つの過酷事故を想定してやっているわけですけれども、いずれもその後、世界的な二つの大きな悲劇的な事故がありました。チェルノブイリとそれからスリーマイルアイランド、この二つの事故で起こっているわけです。  四十年前に日本の国会では過酷事故を想定した議論をしていた。しかし詳細については、当時の政府は七十六万円という国費を使って調査をしておきながら、国会と国民にその詳細を意図的に公表しないという措置をとったんです。これは原子力平和利用三原則を無視した態度として私は許されない行為だと思います。  そして、さらに長期にわたって去年の秋まで全文の公開を拒んできました。いろいろな方が、いろいろな団体が全文公開を要求してきたんですけれども、去年の秋にようやく解禁をされて、私の手元にもこういう全文が届いているわけです。  こういうことについて大臣はどのように認識しておられるか。そしてまた、今後このようなことは絶対に起こらないというお約束をしていただきたいと思います。
  121. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 公開原則というのは、民主、自主の原則と並んで原子力基本法の極めて重要な原則です。私は若手の研究者としてこの議論に加わった人間としてよく覚えています。  原子力開発利用に当たっては国民理解信頼を得ることが不可欠であります。このためには、核物質防護等に係る一部の情報を除き、これは国際法上許されませんが、原則としてすべての情報の公開と公開された情報の迅速かつわかりやすい提供を通じて透明性を高めていくことが重要であると私は認識しております。  今いろいろ御議論がありましたが、仮に公開に不十分な点があったのであれば、それは反省をしなきゃいかぬ。今後は十分に公開をしていくことに努めてまいります。
  122. 西山登紀子

    西山登紀子君 原本は先日お返しをいたしました。この試算について、専門家や研究者の方、いろんな方が入手をして研究してみたいという方々がいらっしゃいます。そういう方々に、例えば国会図書館に置いていただくなどして積極的に開示をして提供するべきだと思いますけれども、これはやっていただけますね。
  123. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  御要求がございますれば、私ども積極的に対応させていただきたいというふうに思っておるわけでございますが、国会図書館というふうなことも一つの方法論かと思います。国会図書館とも相談をさせていただきたい、かように思います。
  124. 西山登紀子

    西山登紀子君 ぜひそのように御相談をいただいて、実現できるようにお計らいをいただきたいと思います。  もう一つ、四月二十七日の審議のちょっと続きをやらせていただきたいわけですが、青江局長は賠償措置額六百億円について、これを超える分については自分が自己資産なりを売却して全部全うするのが大原則なんだと、自分というのは電気事業者の、こういう説明がありました。  そこで、具体的にお伺いしたいわけですけれども、今も取り上げました四十年前の試算、当時の金額で一兆円を超えるような大きな被害が想定されているわけですが、この金額は現在に置きかえますと数十兆円、もっとするだろうと。六百億円は保険金で賄いますけれども、全部全うするのが大原則だというふうに御説明があったんですけれども、それを超える部分については電力会社が資産を売却してでも賠償する、極端に言えば、場合によっては電力会社は解散をしてでも賠償するという、そういうことも含んでおっしゃったんでしょうか。
  125. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  例えば電気事業者が原子力発電所を運転する過程におきまして何らかの損害を与える、それに対する被害者に対して損害賠償の責めに任ずるというのは、再三申し上げてございますけれども、その被害が生じただけフルに責任を負うと。私どもの、日本の制度と申しますのは免責、一定上限を設けまして、それ以上は責任をとらなくてよろしいですよという仕組みをとってございません。それを称して無限責任と言っておるわけでございますが、それがいわゆる大原則。これは民法の法理にもあるわけでございます。  そういうことでございますので、それはどういうふうな状態であれ、まずその責めに任ずるというのが損害を与えた者の民事法上の責務であろうというふうに思うわけでございます。
  126. 西山登紀子

    西山登紀子君 国が損害を賠償した場合、電力会社に対して求償権というか、回収が終了するまで電力会社に請求し続ける求償権というのはあるんでしょうか。
  127. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  要するに、損害が生じただけフルに責任を負う。そのときに、例えば今の例でございますと、まず第一次的には電気事業者が保険を掛けておりますから、保険会社から保険金を受け取りましてそれをもって支弁する。そして、それを超えるような損害が万が一生じておるような場合でございますれば、それこそ原則としましては自己資金をもって対応していくというふうなことであると思うわけでございます。  今、先生が御質問になられましたケースというのは、そういったふうなことをさらに超越した状態としまして、原賠法の十六条では、万一賠償措置額を超える原子力損害が発生し、原子力事業者が全額を賠償できない等の場合には国が原子力事業者に対して援助を行う、こういう規定があるわけでございますが、その点をおっしゃっておられるんだろうというふうに思うわけでございます。  そのようなケースにおきまして、これは国側がそういう場合にどういうふうな援助を与えるか。これは電気事業者に与えるわけでございますが、それにつきましては国会の議決により政府に属せられた権限の範囲内において行うとなってございまして、どのような援助を行うかというのは国会の御判断でございます。したがいまして、国会での御判断に沿いまして行われる援助の形態によりまして、今先生がおっしゃられた求償とかそういった関係が律せられてくるんだろうというふうに思うわけでございます。  例えて申し上げますならば、その援助の方法が、補助金であるというふうなのが最も適切であろうというふうに国会が御判断なされば、補助金であるというそのものの性格から申しますと、これは補助でございますので国側へもう一回返ってくるというふうなことというのは論理的には考えられないわけでございます。それから、国会の議決によりまして低利子融資であるというふうな形態がもしとられたとすると、それは当然のことながら融資でございますから国の方に順次返ってくる、こういうふうなことになってこようかというふうに思います。
  128. 西山登紀子

    西山登紀子君 被害の額というのは、過酷事故が起こった場合には非常に膨大なものになる。当然六百億円を超える場合もあるわけですが、そういった場合に、補助金という形であれ国が全額出してしまう。これは税金でございます。国民の出したお金です。ですから、無限責任だといっても、最後は国民が実は支払う、償いをさせられるということになって、原発の被害もそれから被害の補償も国民は二重に出さなきゃいけない、受けなきゃいけない。俗に言いますと踏んだりけったりというか、そういうことになろうかと思うわけです。  私たちは、原子力の平和的な利用を将来にわたってこれは否定するものではございません。しかし、構造上非常に未完成な、危険を構造上持っている今の原発を今の政府のように推進、協力するという政策には反対でございます。見直しをすべきだ、こういう立場からも申し上げたいと思うわけでございます。  使用済み核燃料の中間貯蔵施設も今度改正された原賠法の対象施設に入りました。原賠法の対象施設に入ったということは、この施設によって原子力災害が発生する可能性があるということを想定して入れているわけです。どんな被害が想定されて、損害額はどれぐらいになるんでしょうか。
  129. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  原子力損害賠償制度の仕組みというものは、おおよそ原子力活動すべてのことをカバーした形でもってつくられてございます。この施設は可能性があるからとにかく用意をして入れておこう、この施設は可能性がないから入れておくまい、こういう性格のものではなかろうというふうに思うわけでございます。  それともう一点、要するに、どんな損害が生じどれくらい、こういうことにつきましては、これも累次申し上げておりますとおり、我が国原子力損害賠償制度の一つの前提としまして無限責任ということであり、そのよって来るところの考え方と申しますのは、その施設においてどういった事故というのが生じ、その規模がどれくらいのものであり、それがどれくらいの周辺に被害を与えるであろう、したがってそのボリュームに対応して賠償措置というものとかそういった賠償のスキームというのを用意しておこう、こういう考え方に立っておらない。あくまでも生ずるだけ、基本的に原子力事業者、その加害者に対しまして、本来的に申しますと加害者であるのかどうなのかというのも民法の原則からしますと疑義のある場合もあるわけでございますが、いずれにしましても、責任集中という形でもちましてその原子力事業者に責任を集中せしめましてフルに責任を負わせようという考え方に立っておるわけでございます。
  130. 西山登紀子

    西山登紀子君 よくわからないんです。  最高額というのはどれぐらいですか、その場合。
  131. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  今、先生がおっしゃられました最高額と申しますのは、賠償措置額の最高額のことをおっしゃっておられるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  それは、これもやや雑駁な言い方になるかと思うのでございますが、責任はフルに負う。六百であるか七百であるか八百であるかを問わず、生じただけ全部負う。そのときに、六百億というのは、少なくとも即座の金としまして保険会社から引き出せる、そういう被害者救済というものをより円滑に持っていくということにかんがみますれば、即座の金というものもあらかじめ用意させておこうじゃないかという趣旨に出るものとして賠償措置額というのがあるというわけでございます。
  132. 西山登紀子

    西山登紀子君 中間貯蔵施設の賠償措置額の最高額も六百億なんですか。
  133. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  中間貯蔵施設につきましての賠償額につきましては、これは政令で定めるということになってございます。政令で定めると、これからの議論としましてあるわけでございますけれども、本件を議論いたします、今回、法を、制度を改正して国会の御審議をいただくに先立ちまして、原子力委員会のもとに原子力損害賠償制度専門部会というものでもちましていろんな議論を行いました。その過程におきまして、中間貯蔵施設につきましては、ガラス固化体の輸送でございますとかそういったものにつきましては現行六十億円の措置額が規定されておるわけでございまして、そういったものと横並びでもって勘案するのがよかろうというふうに指摘を受けてございます。それに沿って考えてまいりたいというふうに考えてございます。
  134. 西山登紀子

    西山登紀子君 損害を補償する場合にどんな被害が起こるかということを御説明いただけないというのは大変奇異な感じがいたします。中間貯蔵施設を立地する周辺の住民の皆さんにこういう災害が想定される、その場合には皆さんにはこういうきちっとした賠償をお払いいたします、こういうふうに説明するんじゃないですか。どんな災害が起こるか全くわからないんだったら、それはもう大変不信をあおるだけです。
  135. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  今度の中間貯蔵施設の安全性の確保ということにつきましては、恐らくこれは通産省の方で十分お答えいただけることであろうと思うわけでございますが、そういったことが起こらないように十全な安全確保策というものを講ずるということであろうかと思うわけでございます。  ただ、そういったすべてのことを講じた上でも、万々が一のことというのはどういったことが起こるかわからない。しかしながら、起こったことすべてに対しまして原子力事業者に対しまして責めを負わせているわけでございます。要するに、この損害は事業者は免れますよ、この損害は事業者は負ってください、こういうふうなことも一切いたしていないわけでございます。量的にもそうでございますし、質的にもそうでございます。起こったことすべてにつきまして原子力事業者が責任を負うということになっておるわけでございまして、そこに免れるところというのは一切ないわけでございます。
  136. 西山登紀子

    西山登紀子君 この議論は、先ほどの試算との関係もあるんですけれども、四十年間試算というものを全然やっていらっしゃいませんね。原発の過酷事故が起こった場合の想定、試算も何にも四十年間やってこなかったわけです。だから、この中間貯蔵施設についても、どんな災害が起こるのか、どんな被害が起こるのかということについても、そういうことは考えてもいないし、試算もしていない、こういうことなんですね。  する必要もないということですか。考える必要もないということですか、どんな被害が起こるか。
  137. 青江茂

    政府委員(青江茂君) ちょっと繰り返しになって恐縮なのでございますが、原子力損害賠償制度というものをつくり上げるときに、無限責任という考え方に立ってつくり上げようではないかという判断をしたということは、とりもなおさず、これも繰り返しで恐縮でございますが、この施設につきましてどういう事故が起きて、どういう被害が生じて、それに対応してどういうふうに賠償のスキームというのを用意するのかというふうなプロセスでもって物を考えるんではなくて、起きたことすべてに対しまして責めを帰せしめる、その免れるところは一切なしということでもって対応するということでございますので、その制度設計という上におきまして、被害の想定がどれくらいになるかということを勘案する、考えるという必要性というものはないということを申し上げているわけでございます。
  138. 西山登紀子

    西山登紀子君 そういうお考えで、ますます私は疑念を強くいたしました。これは地域の住民の皆さんにも説明はできないだろうというふうに思います。  先に移りますけれども、取り扱い中の事故が非常に多く起こっております。使用済み核燃料の取り扱い中の事故、これが発生しているということを総合エネルギー調査会原子力部会の中間答申でも報告がされているわけです。  今度、サイト外に貯蔵施設を設置しようというふうになっているわけですけれども、原発から運び出して中間貯蔵施設に移して、また再処理のところに持っていく、こういう繰り返しの作業を行うということは、トラブルの発生の可能性を大きくするということになりませんか。
  139. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 我が国は、原子力発電所におきます使用済み燃料の貯蔵に関して三十年以上にわたる実績と経験を持っておりまして、使用済み燃料を安全に貯蔵する技術及びノウハウを十分に蓄積しております。  サイト内、外であるにかかわらず、サイト内でも輸送というプロセスがございますが、これまでの原子力発電所における使用済み燃料に関するトラブルについて御指摘がございましたけれども、使用済み燃料の取り扱いの際に生じたものが二十件報告をされておりますが、貯蔵中におけるトラブルは報告されておりません。また、この二十件のうち十一件は、平成十年三月で運転を停止した日本原子力発電株式会社東海発電所のガス炉において発生したものでございます。直近の十年間では、軽水炉における使用済み燃料の取り扱いに係るトラブルは報告されておりません。  いずれにいたしましても、今後、この安全性を確保すべく、改正法案に基づきまして万全の対策をとる予定でございます。
  140. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、繰り返しこの作業を行う機会に、サイト外に中間貯蔵施設をつくるという場合には、その回数がふえ、トラブルの発生、危険性が拡散されるというふうに思うわけです。  もともと使用済み核燃料というのは高レベルの放射性廃棄物を含んだ大変危険なものでございます。衆議院の審議の中で中島参考人はこのように述べていらっしゃるんです。  「この危険性は高レベル廃棄物の最終処分前の暫定貯蔵とほとんど変わりません。例えば現在、青森にフランスから返ってきたガラス固化体が貯蔵されておりますけれども、そういうものの危険性とほぼ同じだと考えておけばいいのではないかと思います。」。中島先生、御専門の方がこういうふうにおっしゃっていらっしゃる。そもそも使用済み核燃料そのものが非常に危険なものでございます。  また、全国原子力発電所所在市町村協議会の会長をなさっていらっしゃる河瀬参考人が衆議院の参考人質疑の中でこんなふうに述べていらっしゃるわけでございます。  「近年になりまして、廃棄物の保管場所が狭くなりまして、言葉をかえますと、」、ちょっと言葉は悪いんですが、「ふん詰まり状態になってからようやくその取り組みが始まったのではなかろうかというふうに感じております。」、「地元といたしましては、使用済み燃料がいつまでもサイト内に保管されるのではないかという懸念を持つのは当然ではなかろうかというように思います。 今、地方自治体といいますのは、放射能もないごく一般の家庭から出るごみに対しましても大変苦慮しているのが現状でございまして、そういう中で、放射性廃棄物等というのは地域のイメージダウンに、また地域の土地利用が長期的にわたりまして制限されるということから、これは忌避される性格を持つものだというふうに思っております。」、こういうふうに述べていらっしゃるわけです。河瀬参考人は「迷惑施設」という言葉までお使いになっていらっしゃる。  原発立地地域の皆さんの要望は、サイト内もサイト外もノーだと言っていらっしゃるんです。この意見はむちゃな意見だとお考えでしょうか。
  141. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 使用済み燃料についての危険性のお話がございましたが、文明のもとでの危険性というのはそれの管理可能性に係る問題であろうと思います。一言に危険であるという表現でこの使用済み核燃料についての議論をするかどうかという側面があろうかと思います。  むしろ、この使用済み核燃料につきましては資源としての有用性という側面がまた議論されるべきでありまして、それに伴う各種のリスクがあるとすれば、それの管理可能性をあわせ議論するものであろうというふうに考えてございます。  この中間貯蔵の必要性につきましては昭和六十二年の長計から認識をされておりまして、その後の検討を経て今回の法改正に至っているものでございます。  昭和六十二年、このときの長計におきましては、再処理の能力を、年産でございますが、従来の千二百トンから八百トンに下げたと。加えて、開始時期も九〇年から九〇年代の半ばというふうにおくらせたときでございますが、これに伴いまして、「再処理能力を上回る使用済燃料については、再処理するまでの間適切に貯蔵・管理する」というふうに規定をされました。長計の表現でございます。  その後、平成六年の長期計画で再び変化がございましたが、これは再処理の能力そのものは八百トンで変わりませんが、開始時期は九〇年代半ばから二〇〇〇年におくれました。この開始時期の見直しが行われたことに伴いまして、当面は発電所内で貯蔵することを原則とするが、将来的な貯蔵の方法についても検討を進めるというふうにされまして、使用済み燃料の発電所外における貯蔵の可能性についても検討を行うことを課題とすることを明確にしたわけでございます。  平成九年二月に閣議了解を行いまして、「従来からの発電所内での貯蔵に加え、発電所外の施設における貯蔵についても検討を進める。」という政府の方針が定まったところでございまして、これらを踏まえて今回の法改正を御提案申し上げているところでございます。
  142. 西山登紀子

    西山登紀子君 端的に答えていただきたいんです。  現在、原発立地地域の住民の皆さんは、サイトの中に使用済み核燃料がどんどん今たまっているわけです、そのサイト内にたまった分も最初からの約束じゃないというふうに言っていらっしゃって、どけてほしいと。じゃ例えば今の立地自治体にサイト外の中間貯蔵施設をつくるのかと、そのことについてもお断りをしたい、こういう陳述が衆議院の方でなされているんです。こういう意見というのはむちゃな意見と思われるのか、妥当な意見と思われるのかということをお聞きしているんです。
  143. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 初期の段階から原子力発電に御協力をいただいている立地地域を中心といたしまして、使用済み燃料の発電所内の貯蔵が不透明に長期化していることへの不安、懸念が表明されているところでございます。そういう趣旨で、この懸念、不安については我々理解するところでございます。  加えて、全国原子力発電所所在市町村協議会が平成七年二月に、発電所内の使用済み燃料貯蔵施設の増強にむしろ強い懸念を表明いたしてございます。  この短期的な対応として、既存のサイト内に使用済み燃料貯蔵施設の増強のお願いをし、幾つかについて設置変更許可もいたしてございますが、それぞれの地元の思いというものについては我々なりに理解するところがございまして、そういう意味で、今回、発電所外での貯蔵も可能となる方式を考えているところでございます。
  144. 西山登紀子

    西山登紀子君 今、地元の不安は理解をしているということを言われたんですが、地元の皆さんは、こういう施設というのはまさに忌避される、つまり迷惑施設だと言っているんです。  この長年原発のいろいろな負担なりをこうむってきた地元の地域の皆さんが迷惑施設だ、サイト内もサイト外もノーだと言っていることについて、今理解を示されたんですけれども、それでは、ほかの地域にこういう迷惑施設を持っていこうとしていることについては道理があるとお考えですか。
  145. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 地元の考え方にも理解できるところがあると申し上げたのは、先ほど申し上げましたように、使用済み燃料の発電所内の貯蔵が不透明に長期化することについて不安、懸念が表明されていることについて、それなりの理解ができるというふうに申し上げたわけでございます。  この原子力につきましては、再処理施設あるいは「もんじゅ」に係ります研究その他のものについて当初考えていたものとのタイムスケジュールにかなりの差がございます。その差が生じたことに伴って今後の原子力推進について地元での懸念のまた原因となっているところも理解しているところでございます。  そういう趣旨で、この中間貯蔵施設の立地につきまして、中間貯蔵施設の意義、安全性等々改めて十分な説明をし、御協力を得たいというふうに考えております。
  146. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 西山さん、時間が来ています。
  147. 西山登紀子

    西山登紀子君 短く。  長期化することに理解を示したんだというようなあれですが、これからサイト外に持っていく中間貯蔵施設もこれは長期化いたします。短なタームじゃないでしょう。もともとプルトニウムの循環を目的としたこの核燃料リサイクル方式そのものが非常に大きな危険を抱えた方式であると同時に、今その再処理がうまくいかずにリサイクル自体が破綻をして、ちょっと言葉は悪いですけれども、ヘルニア状態にあるというふうなことを言われる人もいらっしゃるわけです。使用済み核燃料の中間貯蔵施設はそれ自体が行き場のない破綻の産物だと思います。サイト内であれサイト外であれ、行き場のない危険の拡散になって、私は当然認めるわけにはいかないということを申し上げまして、きょうの質問はこれで終わりたいと思います。
  148. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 中間貯蔵施設のことを主に質問いたします。  現在、政府が進めております核燃料サイクルでは、原子力発電所において燃料を燃やし、燃やした後の使用済み核燃料は再処理を行って、燃え残りのウラン、プルトニウムを取り出して再度発電所の燃料として利用するということだと思います。  しかし、実際には六ケ所村の再処理工場の稼働というのはまた延期することになっており、二〇〇五年までは再処理ができません。したがって、使用済み燃料はどんどん発生するばかりでありまして、発電所内の使用済み燃料の貯蔵容量が足りなくなってきつつある。また、六ケ所村の再処理工場が仮に稼働したとしても、再処理能力は年間八百トンであり、片や使用済み燃料の発生量は年間九百トン、さらにまた発電量がふえていくに伴って使用済み燃料はますますだぶついてくる。  こういうことから、行き場のない使用済み燃料をひとまず発電所の外に貯蔵しておくということがこの法案の中身というか問題だと受けとめていいのかどうなのか、冒頭お聞きします。
  149. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  我が国原子力政策の基本的な考えといたしまして、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルというものを確立していく、ここのところが最も基本的な考えとしてございます。  このような政策というものを推し進めるというふうなことから、再処理工場の建設でございますとか諸般の施策というものを進めてきておるわけでございますけれども、そういう一環といたしまして、使用済み燃料の管理に関しましては、これは有用なエネルギー資源でございますので、行く行くは再処理をし使っていくということであるわけでございますけれども、国内の再処理能力というものが現実としてあるわけでございますので、その能力を上回るものについては、再処理するまでの間適切に貯蔵管理をするという方針で従来より臨んできてございます。それが現実的な問題としまして考えていかなければならないという状況に立ち至った状況を踏まえまして、今回法案の御審議をお願いしている次第でございます。
  150. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 では、私がさっき言っていることは何か違うことを言っているの。聞いていないの。言ったことを後でよく読んでまたあれしてください。  私はこの前、当委員会で委員長以下皆さんと一緒に東海第二発電所を見せていただきました。ちょうど定期検査のときですから、全部上から炉の中も見せてもらいまして、プール貯蔵の状況も少し見せていただいて、そして乾式でキャスク貯蔵をやるという敷地、大体五十メータープールの大きさだと考えていいんですが、くいを打っておりましたが、そこも見せてもらいました。そんなに土地が広く要るのではないなというのを見てきましたんですが、そこの辺はまた後で申し上げます。  いずれにしても、そのときに安全性とかそういう面でキャスクの寿命みたいなものを聞いたんです。これは百年とか何百年単位で考えられるのかと言ったら、四十年ぐらいだと言われた。キャスク、キャスクと言うからこれは半永久に地球が続く限り大丈夫かと思ったら、そうじゃないと。ですから、これはちょっと考え直さないと私はいかぬなというように思いました。  大体どういうようにキャスクの寿命というか安全性を考えて、どのくらいキャスクで中間貯蔵できるのか、改めてお尋ねします。
  151. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 委員が御指摘になられました四十年、これは現在の電事法上のキャスクの設計認可においても参考資料として提出をされてございますが、その趣旨は、これをつくりますメーカーの方での技術評価のために設定をした期間として、その四十年間は、例えばかなり過酷な条件のもとで使っても四十年は少なくとももつという計算をするために置いた期間でございます。法律上の制度としては容器の使用期間を制限しているものではございません。それが一つ。  それから、この貯蔵容器につきましては技術基準適合義務というのがございまして、定期検査によってその技術基準に合致しているかどうかを確認の上、次のサイクル使用許可をしておるわけでございます。それで、仮に委員御指摘の四十年を超す段階になって使えなくなる、技術基準にも合わなくなったとき、これはキャスクを置きかえるということが可能でございまして、違うキャスクでまた保存を継続することは考え方としては可能でございます。  したがいまして、申し上げたかったのは、キャスクが仮に四十年非常に過酷な使用の仕方をして寿命が来たから中間貯蔵はそれでできなくなるのかということでございますれば、それはキャスクを置きかえる、またキャスクはもう少し寿命の長いものであるし、また全体の安全性は法律のもとで厳重に審査をいたしたいと思っております。
  152. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それはそれとして、次に移ります。  この中間貯蔵施設をどうしてもつくる必要があるというのは、要するにマクロ的に使用済み燃料が貯蔵容量とトータルでどうかという判断をしたものか、それとも個々の発電所に事情があって、これはそこの地元の人がこんなにふえたら困る、こう言ってやり出したものなのか、そこは違いがあるのかどうなのか。
  153. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) お答えは、マクロで計算をして必要になったというものでございます。  軽水炉で現在七千二十トンの使用済み燃料が貯蔵されてございます。ほかに海外に持ち出したものが五千六百三十トン、それから旧動燃東海再処理に搬出したものが九百四十トンございますが、いずれにしても発電所内に七千二十トンの使用済み燃料が貯蔵されてございます。  非常に概略的に申し上げますと、年間九百トンがさらに毎年出てまいります。他方で、二〇〇五年から再処理工場が稼働すれば八百トンが消化されます。既にたまっております七千二十トン、これから毎年たまります九百トン、それから八百トンの処理をして、幾ら時間調整としての貯蔵をすべきかという数字でございます。二〇一〇年までで三千九百トンという数字が出てございますが、そういった数字を計算しながら中間貯蔵が必要であるという結論に達したものでございます。
  154. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私が聞きますところによりますと、あるところでは地元の反対が強いと。発電所の中で貯蔵するのは地元の反対の声が強いところもあると。やっぱりそこらが非常に全体の世論を動かしておると。マクロで判断したというのだけで、この問題をはいそうですかと言っていいのかどうなのか。どうですか。
  155. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) マクロで計算しました場合に、二〇一〇年で先ほど申し上げましたような数字の貯蔵が必要であるという計算でございますが、他方で、委員から御指摘がございましたように、個別の発電所ではもう少し手近で貯蔵スペースが逼迫するものがございます。そういう逼迫するものに対して、個別の短期の対応をそれぞれ行ってございます。ここ一年間で十六サイトで八基につきまして貯蔵容量を拡充するという措置をとってまいりました。ただ、そのときに、委員の御指摘のありました地元の声ということでございますけれども、使用済み燃料の発電所内の貯蔵が不透明に長期化していることへの不安、懸念が表明されております。  残念ながら、原子力全般につきましては研究のプロセスがおくれる、再処理のプロセスがおくれる、そういったことが具体的に事実として起きておりますので、原子力発電の初期から御協力をいただいている地元の方々からは、非常に長い三十年という歴史で見た中での全体の進捗状況、あるいは国の対応に対するある種の不信感があるものと我々は理解いたしてございます。  そういう意味で、この短期の対応をとるについても、マクロで計算して必要となる貯蔵量をサイト外に中間貯蔵施設としてつくるべきである、かような御主張が地元で強くなされてまいっておりまして、こういう状況も踏まえまして、サイト外においても貯蔵が可能な方途を開くべく、今回法改正をお願いしているところでございます。
  156. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は今、北海道から九州までの原子力発電所の一覧表、これは通産省が出した資料ですが、これを持っておりますが、大体管理容量とか使用済み燃料の貯蔵量とか、こういうのも書いておりますが、今言われた問題のある発電所というのはどこどこですか。言える範囲で。
  157. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 超過年、容量を超えてしまう年という意味で超過年という言葉を使わせていただきますと、超過年が二〇〇二年にも来るというのが福島第二発電所、また二〇〇四年にも来るというのが関西電力の高浜発電所等々でございます。
  158. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 その二つだけですか。  私が言っているのは、超過年という問題じゃなくて、地元の人が少し不安を感じて問題を指摘されているところはどういうところか、あれば教えてください。
  159. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 端的に申し上げれば、残念ながら、現在の原子力発電所立地市町村のほとんどから、声としては不透明な長期化に対する懸念が出されてございます。  具体的には、平成七年二月、全国原子力発電所所在市町村協議会から、これは全国の原子力発電所立地市町村長で構成されているものでございますが、発電所内の使用済み燃料貯蔵施設の増強、これに強い懸念を表明しておられます。  それから、「もんじゅ」事故を契機に政府に提出されました福井、福島、新潟の三県知事の提言がございましたが、この提言の中でも、使用済み燃料の将来的な貯蔵保管のあり方という言い方でこれを明確化すべきだという御指摘を受けております。  それから、今、福島第二、高浜発電所の二点を申し上げましたが、既に逼迫をしている発電所では、当面の発電所内の貯蔵能力の増強で短期的な対応をとっているわけでございますけれども、地元の了解を得るに際して、発電所外における中間貯蔵施設の実現を強く求められているところでございます。  かような次第であります。
  160. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 少し話がわかりました。  ただ、皆さんがやっておるときに今までの答弁をずっと聞いていましたら、これは中間貯蔵というのは全く安全だということで、もう皆さん、ああそうかそうかと、こうなるところなんです。それがやっぱり地元で問題があるというのは、実際問題として説明が足らないのか、あるいは何が一体原因なのか、その辺はいかがですか。
  161. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) いろんな意味での説明が足りないという御指摘、そのとおりであろうかと思います。  なかんずく、先ほども申し上げましたが、長い三十年、四十年の原子力の歴史の中で、当初考えておりました計画がかなり遅延をしていることは事実でございます。再処理工場の稼働もおくれておりますし、「もんじゅ」等々の増殖炉に向かっての道筋もいささか時間が遠のいていることも事実でございます。そういう歴史の中での遅延の事実について地元から不信感を持たれていることも我々として真摯に反省をすべきものであろう、かように思っております。  したがいまして、お話のございましたように、今後この新たな位置づけあるいは今後のスケジュール、そうしたものも含めて御説明を繰り返したい、地道に説明を続けたいと思っております。  なお、この中間貯蔵施設の安全性そのものについて疑問が提示されたということは幸いにしてございません。この安全性についてもあわせて説明を繰り返したいというふうに考えております。
  162. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 再処理工場の話が出ましたから、そちらにちょっと移りますが、私も当院の予算委員会か商工委員会のどちらかで六ケ所村を見学したことがあるんです。今から数年前ですから十分まだ中を見てはいなかったんですが、大体の勘どころはわかるんです。  この再処理工場が本当に計画どおりいき、さらに足らない場合に再処理工場が第二、第三ができるというのならこの核燃料サイクルというのは恐らく回るでしょう。しかし、六ケ所村の今の第一号がどうなっているのか、さっぱり見通しもつかぬ。それで、見通しがつかぬまま中間貯蔵をまずやると。大体、無責任な話が次々続いているんですが、再処理工場の今の見通しというのはどうなっているんですか。
  163. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  六ケ所の再処理工場、処理能力にいたしまして八百トン規模ということでもちまして今建設途上にございます。  運転開始の目標時期でございますけれども、その目標時期に関しましては、従前、二〇〇三年の一月というふうなことでもって工事が進められてきておったわけでございますが、先般、先月でございますけれども、それまでの工程の見直し等々を勘案いたしました結果といたしまして、三十カ月の遅延と申しましょうか、具体的には二〇〇五年の七月運転開始ということでもちましてその変更というものが事業者より発表になったところでございます。  今後は、この時期を目がけまして事業者によりましての建設というものが進められる、こういう状況にあろうかと理解してございます。
  164. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 二〇〇五年まで延びたということは、これは実際問題として大問題です。使用済み燃料がどんどんふえていってこういう話になっておりますから、こういう問題については責任は大体どこにあるんですか。
  165. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  それ自体大問題という御指摘がまず第一点ございました。その点につきましてでございますが、確かに再処理工場と申しますのは、核燃料サイクル政策、私どもは先ほど原子力政策の基本だというふうに申し上げましたが、この核燃料サイクル政策の一つのかなめになるような施設でございます。  この施設の竣工の時期というものがずるずるとおくれていくというふうなことというのは、これは決して好ましいことではないわけでございます。ただ、この点につきまして原子力委員会でも重要視いたしまして、事業者からも聞きまして検討いたしました。  まず、総じて申し上げますと、燃料サイクル政策推進というふうな骨格的な枠組みというものを基本的に変更するものではなかろうということが第一点でございます。  それから、ただ、こういった形でおくれていくということ自体につきましては、これは先ほど来資源エネルギー庁長官の方からも御指摘がございましたが、各サイトの周辺の皆様方等々、核燃料サイクル政策というものに対する一種の不透明な遅延、そういったことに対しての不信といったふうなことというのは、これが惹起せしめられるということになりましても非常に大きな問題でございます。こういったふうなことというのはどうしても避けなければならない、阻止しなければならないことであろうかと思うわけでございます。  そういう観点からいたしますれば、今後こういった再度の遅延といったことがなきよう、事業者の方々にさらなる努力というものを重ねていただかなければならないであろうというふうに思っておるわけでございます。その点につきましては、今般の延期ということを発表なさった際に、諸般の事情というものもお聞きいたしましたし、これから先の工程管理等々の問題につきましての決意もお聞かせいただきました。また、それに対する言ってみれば後見役とでも申しましょうか、そういう立場にある電気事業者からの決意、支援といったふうなことにつきましてもお聞かせいただきました。こういったことでもちまして、再度変更がないように今後取り組んでまいりたい。  したがいまして、最後の御指摘でございました遅延そのものということにつきましては、これは民間事業が、日本原燃という株式会社が事業活動としてなさっておられることでございまして、その事業活動の一環といたしましての施設の建設というものがおくれるということ自体につきましては、それは事業者の問題であろうかと思うわけでございます。先ほど来申し上げましたような、政策観点からの大きな枠組みの中におきましての位置づけということからいたしますれば、原子力政策観点から、今後ともきちんとここのところを監視し、指導していくというふうな決意でおるわけでございます。
  166. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私が聞いたのは、本当に最後の責任はだれにあるのか、これを聞いたんです。きょうは答えにくいでしょうから、この次また審議がありますから、この次までにそこはひとつ宿題として用意しておってください。前の話はそれはそれでお聞きしました。  ただ、今の処理工場が二〇〇五年の七月にできたとしても、これから原発がふえていくという流れの中で、第二、第三の処理工場というのをやらないともたないでしょう。恐らくつじつまが合わぬでしょう。長官は数学か物理かの先生か知らぬけれども、こんな簡単な数字の合わせが、あと燃料サイクルをやるというのは、一体どんなことをしてやるのか。そこが詰まっていて、これ一つだけやったって八百トンで、今まで既にある、どんどんたまっていく。  これは数字を言いますと、二〇一〇年、十年後には今の九百トンが千四百トン出るというんでしょう。二〇三〇年で千九百トン出るというんでしょう。だから、二〇三〇年は別として、二〇一〇年には千四百トンぐらいになる。だから、今の六ケ所のが仮にうまくいったとしても、これはあとは、イギリスやフランスはもう受け付けないと言うんでしょう。どう考えているんですか。
  167. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 簡明に答えてください。
  168. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 第二再処理工場につきましてでございますが、現在の原子力長計におきましては、その建設計画につきましては、プルトニウムの需給動向、高速増殖炉の実用化の見通し、高速増殖炉使用済み燃料再処理技術を含む今後の技術開発の進展等、総合的に勘案する必要があり、六ケ所再処理工場の計画等を考慮して、二〇一〇年ごろに再処理能力、利用技術などについて方針を決定することといたしております。ということで、二〇一〇年ごろ、今申し上げました諸要因というものを勘案いたしまして、どういうふうに持っていくのかということを固めてまいりたい、そのような考え方に立ってございます。
  169. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それなら、私は第二発電所を見ましたら、キャスクでやるのは、大体五十メータープール一つで二百六十トン出るんです。各発電所に敷地は相当皆ありますよ。五十メータープールぐらいのを二つや三つつくるのは各発電所にありますよ。そういうことを言うなら、その間、各発電所は自分のところの敷地の中に、五十メータープール一つつくれば二百六十トン貯蔵できるんだから、それをお願いすればいいじゃないですか。中間施設なんかつくらないでそれをお願いすればいいじゃないですか。そういう見通しの立たぬことを言うから話が……。
  170. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 発電所敷地内に土地の余裕があるかという御指摘であれば、恐らくあると思いますが、先ほど来申し上げておりますように、それぞれの地元における不透明な遅延に係る御不安、懸念がございまして、そういう不安、懸念に対応しながら、発電所外でも貯蔵できる手段を現在お諮りしているところでございます。
  171. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 この前、本会議で小渕さんが答弁したから、僕はちょっと不規則発言したんです。中間施設を群馬県へ持っていけばいいじゃないかと、総理大臣も三人も出ておる地域だから。だから、中間施設を持っていくところに、今ある発電所でも悪いというものをどこかへ持っていく、いいと言うところはあるんですか、見通しは。中間施設の規模、立地条件。  だから、もう少し国民的にわかりやすい議論をして審議をせぬと、決めたわ、もうあとはどうなれこうなれというような話では無責任だと思う。
  172. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 中間貯蔵施設を先ほどのマクロの計算から申し上げますと、二〇二〇年七千七百トンでございますから、五千トンクラス、先生の御指摘の五十メータープール二つぐらいのもの、あるいはキャスクでやりますと体育館が二つぐらいのもの、それが五千トンでございますが、それで七千七百トンでございますから、そういうもの二カ所ぐらいが大体二〇二〇年までに必要な量でございます。  そういう中で、各種の立地条件もございますが、原子力発電所初期から御協力をいただいている地元につきましては、先ほど来申し上げておりますある種の不信感からスタートをした、サイト外でという御要望があるわけでございます。こういう位置づけ、繰り返しでございますが、安全性その他を十全に説明してまいりたい、かように考えております。
  173. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 あと不足の分はこの次にまたやります。
  174. 水野誠一

    ○水野誠一君 参議院の会の水野でございます。  今回の原子炉規制法の改正は、IAEAの追加議定書の国内担保措置それから使用済み燃料の中間貯蔵のための規定の整備という二つの柱から成っておりまして、政府のこれまでの方針と照らしますと一見どちらも必要性の高い改正内容ととれるわけであります。しかし、特に使用済み燃料の中間貯蔵に関しては、これまでも各委員から重ねて指摘のあるとおり、政府が推し進めているプルトニウム政策と密接に関連したものでありまして、つまり原子力発電、再処理工場、プルサーマルを中核としたいわゆる核燃料サイクル構想の一部を担うものであるということでありまして、この中間貯蔵施設を新しく建設できるようにしたいということであることから、改めてこの構想全体というものを見渡して考えないといけないのではないかと思います。  日本はこれといった一次資源も乏しいわけでありますが、まさにエネルギーの輸入依存度が八割を超える我が国において原子力発電が果たす役割は確かに大きい、かように理解はしております。既に総発電量の三五%以上を原子力が賄っている、これにかわる政策もまだまだおくれているという中で、原発を頭から否定するのは確かに現実味に欠けている考えではないかと思います。しかし、この核燃料サイクル構想の将来というものを冷静に見詰めようとしたときに、多くの素朴な疑問やあるいは不安というものが完全に払拭し切れないでいるというのは、ここにお集まりの委員各位そしてまた高い関心をお持ちになっている国民にも共通の心情ではないか、かように思うところであります。  核燃料サイクルを構成するのは、天然ウランの濃縮工場から始まって、釈迦に説法になりますが、原子力発電所それから使用済み燃料再処理工場、高速増殖炉など、こういうサイクルになっていくわけでありますが、そして発電所と再処理工場の間に今回の法改正の後建設される中間貯蔵施設が入り、再処理工場の先にはこれから本格化すると言われるプルサーマルと、実現すれば本当に夢の高速増殖炉というものが位置づけられることになるわけです。  さて、これらの核燃料サイクルを構成する施設のうちに、既に稼働している、あるいは稼働スケジュールが明確に示されているものはどれなのかということが重要になってくるわけであります。先ほど梶原委員から青森県の六ケ所村にあります核燃サイクル施設のスケジュールということでの御質問がございましたが、この施設のうち既にウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの三施設が稼働している。一方、サイクルのかなめとなる再処理工場もここに建設中であるということで理解をいたしました。  地域振興と引きかえに原発や核燃サイクル施設の立地に協力してきた自治体の苦しみといった問題はまた後で触れたいと思うんですが、まず再処理工場の工事進捗率を伺いたいと思うわけであります。先ほどの質問の中にもあったんですが、数%にすぎないという指摘もあるんですが、実態はどうなのか。  そして、先ほど、二〇〇三年予定のものが三十カ月おくれて二〇〇五年になったというお答えがあったんですが、これは当初は九〇年代に稼働開始予定だったんじゃないかというふうに私は理解をしているので、二〇〇三年というのももう既におくれている、それがさらに三十カ月おくれるということでありまして、先ほどその責任はどこにあるんだという御指摘もありましたが、私はその責任のありか以上にその理由が何なのかということをまずお尋ねしたいと思います。
  175. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 工事の進捗状況でございますけれども、本年四月末現在におきましては一六%でございます。  それから、なぜおくれたのかという理由でございますけれども、まず一番間近な今回の三十カ月のおくれということにつきましては、一つは、建設工事の進捗というものの見通しというものが一言で申しますと甘かったという点が一点。それから、六ケ所の再処理工場の近くには三沢がございます。そこへ配備されます航空機、これの落下ということに対しましても安全対策上十分にとっておかねばならないということからいたしまして、新しい機種が配備をされた、そういったことというものも安全評価として新たに加えなければならないということが第二点。それから、いわゆる立ち上げ時期におきまして、より慎重な立ち上げというものに持っていくということでもちまして、その時間というものを非常に多くとるというふうに直したというのが第三点。この三点によりまして三十カ月のおくれということに立ち至ったというふうに承知をしてございます。  それから、従前のおくれということにつきましては、確かに御指摘のとおり、一番当初からかんがみますとかなりなおくれということが見えるわけでございますけれども、再処理の事業の指定を受けまして以降と申しますのは今回で二回目でございます。前回が平成八年におくれているのが発表されたわけでございますが、その際には、海外の施設、これは具体的に申しますとフランスのコジェマの施設でございますけれども、そこの運転実績というものを言ってみればフィードバックさせまして設計変更というものを部分的に行ったということでもちまして、それに伴うその設計変更及び安全審査ということによりましてのおくれというものがなされたというふうに理解をいたしてございます。
  176. 水野誠一

    ○水野誠一君 また、この問題については後日チャンスがあればもう少し突っ込んで伺いたいと思うんです。  次に、プルサーマル計画、これは政府ウラン資源、先ほど残存量はあと七十三年というお話もありましたけれども、こういう貴重なウラン資源の有効活用のためにプルサーマル計画を選択したということを理解しております。九七年に原子力委員会が、原子力発電所を有するすべての電気事業者が共通の課題として取り組み、二〇一〇年ごろまでに全電気事業者がプルサーマルを実施する必要があると決定したわけでありまして、これを踏まえて、科学技術庁長官通産大臣そして総理からも、福井、福島、新潟の三知事に異例の協力要請をした、こういう経緯を承知しております。その後、これらの自治体との協議はどのような段階に入っているのか。  プルサーマルは海外では約千六百体以上の実績もあるというふうに聞いておりますが、一方では安全性についてはまだ完成された技術ではない、またあるいは国際的な調査チームの指摘では、経済的なメリットもないのではないか、こういう指摘もあるわけでありまして、原発については長い歴史とフルMOX装荷可能な炉を持つ柏崎刈羽原発のある新潟県においても、プルサーマルの受け入れについては賛否両論の激しい議論があったと聞いておりますが、この点はいかがなんでしょうか。
  177. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 二〇〇〇年までに四基の計画平成九年二月二十一日に電気事業者から発表されております。  地元との関係で申し上げますと、関西電力高浜原子力発電所、三、四号機、安全審査の申請に関する地元福井県の了承が得られ、平成十年十二月十六日に原子炉設置変更の許可を行ってございます。具体的な装荷に関しましては改めて地元の了承が必要でございまして、現在、地元で御検討中でございます。恐らく、六月ぐらいまでにはお答えをいただけるのではないかというふうに思っております。  それから、東京電力福島原子力発電所三号機、柏崎刈羽原子力発電所三号機につきましては、地元の了解が得られ、現在、原子炉設置変更に関して安全審査を行っているところでございます。  それから、プルサーマルの安全性についての御指摘がございましたが、諸般の点がございますけれども、現在も原子力発電を行っているプロセスの中で三〇%ぐらいはプルトニウムが発生をし、それが燃え、現在の発電が行われているわけでございまして、このプルサーマルは、自然発生的なプルトニウムのシェア三割を人為的に四割、五割に引き上げるものでございます。  これを安全審査という観点から見ますと、軽水炉におけるプルトニウムの影響を考慮した炉心設計が既になされておりまして、そういう意味で安全性上の問題はないというのが我々の結論でもあり、またこれは安全委員会における御審査の中での結論でもあるということでございます。  また、経済性の御指摘がございましたが、原子力発電全体のコストに占める燃料のシェアは一割でございます。それで、このMOX燃料を行います最終的な全原子力発電所のシェアとしては三割でございます。そういう意味では全体の中のシェアが極めて小さい中での影響でございまして、例えばこのMOX燃料の値段が倍になったとしても、原子力発電所全体のコストに重大な影響を与えるような範囲のものではない。むしろ、今後のMOX燃料の規模の利益を追求したコスト低下等によって競争力ある内容たり得ると我々は考えております。
  178. 水野誠一

    ○水野誠一君 今の問題は後日もう少しこれも伺いたいと思います。  次に、いよいよ今回の課題でもあります中間貯蔵施設なのでありますが、今回の改正案では、使用済み燃料の中間貯蔵事業を行おうとする事業者は通産大臣の許可を受けねばならないものとされているわけであります。それにはいろいろな条件も加味されておりますが、実際にはどのような事業主体を想定しておられるのか。
  179. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) この実施主体は、従来の電気事業者の技術蓄積を活用する形で行われると思います。したがいまして、電気事業者がみずから行う場合とそれから電気事業者が第三者に委託する場合とに分かれますが、第三者に委託する場合には、さまざまな業者の民間企業という形が考えられます。  いずれにいたしましても、この法改正の条項に基づきまして、技術的な基礎、経理的基礎について審査を行いまして、信頼に足る者がこの事業を担当し、安全上の問題に遺漏がないよう取り計らいたいと考えております。
  180. 水野誠一

    ○水野誠一君 自治体との調整の手続というのは、これはどんなことになっているんでしょうか。
  181. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 現在の原子炉規制法に基づく設置許可申請を行うに先立ちまして、恐らく地元の理解を得た上での申請になるだろう、かように考えてございます。と申しますのは、当然、地元の御協力を得るために各般の御説明を地元でするわけでございまして、そうした手続を経た上で国に申請をしてくる、かように考えてございます。
  182. 水野誠一

    ○水野誠一君 何かちょっと今のところは歯切れが悪い感じがしますが、ほかにも伺いたい点があるので、またその点は少し後に回しまして、次に廃炉問題について伺いたいと思います。  これまでの答弁では、再処理工場やプルサーマルについてそれぞれの目標年次などの見通しが一応示されているものの、既に予定の先送りなどがされてきた経緯、あるいは今後関係団体との調整が難航する可能性などいろいろ考えますと、この原子力計画、原発計画というものはなかなか計画どおりに事が運ばない可能性があると思います。  例えば、六ケ所村に使用済み燃料を搬入するに当たって県と事業者の間に締結されました安全協定には、再処理事業実施が著しく困難になった場合には、使用済み燃料の搬出を含め速やかに必要な措置をとる、こういう覚書が加えられております。しかし、未完成の核燃料サイクルの輪のさまざまな段階から排出される低レベル・高レベル放射性廃棄物、これが年々増加しているということは各委員からもさまざまな御指摘があったとおりでございます。  また、さらに深刻な問題として私が今回指摘をさせていただきたいのは、昨年三月、約三十年にわたって稼働してきた日本原子力発電東海発電所が経済性などの悪さということを理由に運転を終了して、閉鎖されました。  日本原電の当時の説明によりますと、一言で廃炉といっても到底短時間に処理できるものではなくて、内部の使用済み燃料を取り出すのに三年半、次に配管内の放射性物質を洗い落として炉心の放射能が弱まるまでにさらに十年、つまり解体作業に入るのに十五年近くもかかる、こういう説明でございました。さらに、東海発電所のケースでは、廃棄物の総量は十六万トン、放射能汚染された廃棄物は約四万トンで、そのうち一万二千トンについては地下数百メートルにつくられる貯蔵庫に三百年から四百年寝かせるが、残り二万八千トンの放射性廃棄物についてはいまだ処理方法すら決まっていない、こういうふうに私は理解をしております。  今月十八日、総合エネルギー調査会から廃炉に伴う廃棄物の処分方法に関する中間報告が出まして、現在稼働中の大型軽水炉を解体した場合に発生する解体廃棄物の量や放射性廃棄物を地中処理するためにかかるコストなどが試算されているはずでございます。  この試算の結果と、コストを負担するのはだれなのか、また処分の遂行に責任を持つべき者はだれなのかということをお尋ねしたいと思います。簡潔にお答えをお願いします。
  183. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 廃炉をするためのお金は既に積み立ててございます。これは料金で負担をいたしてございます。  御指摘のございました先般の総合エネルギー調査会の結論は、それを処理、処分するために幾らかかるのかということをまとめたものでございまして、それぞれPとBに分けたコストを出してございまして、これを最終的に負担するのは電気料金の形で一般に負担をしていただくことになります。その電気料金への上乗せは次期料金改定のときを考えてございまして、そのための料金部会の審議を六月から開始しているところでございます。  それから、東海ガス炉に関しましては、これを解体しようとするときには解体届を通産大臣に出すことになってございまして、通産大臣は必要がある場合にはこの解体の方法の指定、核燃料物質等による汚染の除去等の安全確保のための必要な措置を命ずるということになってございます。平成十年三月に営業運転を終了しまして、御指摘ございましたように、三年半で使用済み燃料を搬出する計画になってございますので、早ければ平成十三年にも解体届の申請が出されます。  したがいまして、この解体届の審査基準につきまして、科学技術庁、安全委員会とも御相談をしながら、現在その中身を詰めているというところでございます。
  184. 水野誠一

    ○水野誠一君 私が聞くところでは、百十万キロワット級の軽水炉で解体廃棄物が約五十万トン、それから地中処分コスト、これが百七十億から百九十億円かかると、かように聞いております。  これをコストに算入していくという今のお答えであったわけですが、私はそこでやはり二つ問題が出てくるのが、それだけの膨大な廃棄物というものを本当に処理し切れるのかという問題と、果たしてこの百七十億、百九十億というようなコストを料金に乗せていったときに、今言われている一キロワット当たり九円、非常に合理的なエネルギーだと言われているコスト計算というものがどうも成り立たなくなるのではないかなと、この二点を大変私は危惧しております。  この点についていかがでしょうか。簡潔に願いたい。
  185. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) コストの点につきましてちょっと概略的に申し上げますが、Bで百七十八億、Pで百九十二億という数字でございますけれども、これを発電量で割り戻した単価で考えますと十銭前後でございます。したがいまして、九円というモデル計算をした料金の中でも十分考えられる数字でございますし、また料金に転嫁し得る数字であるとも考えてございます。  それから、五十万トンの中の解体廃棄物でございますが、このうち九七%、ほぼ全量に近い数字でございますが、これはコンクリート及び鉄でございます。鉄は鉄なりに使い方がございますし、それからほとんどクリアランスレベル以下のものでございますので通常の産業廃棄物としての取り扱いでございますが、これの有効利用を検討いたしてございます。例えば、改めてつくる原子力発電所の壁材に使うとか、もっと一般的にはコンクリートを路盤材、埋め戻し材、建築用コンクリート骨材等々に使えないかということで、これはこれでしかるべき予算を用意して研究を行ってございます。
  186. 水野誠一

    ○水野誠一君 具体的には、東海発電所でその残っている二万八千トンの放射性廃棄物の処理問題、これもまだ処分方法すら決まっていないというふうに聞いております。これは今後いろいろ検討されるんだと思うんですが、一般論として考えたときに、こういった状況というものを資源エネルギー庁はどう受けとめていくのか、そしてこの報告は原発を抱える地元自治体や住民の調整を経て出されたものなのかどうかという疑問、これも私は感ずるところであります。  また、時間がないので次に進めば、現在国内で稼働している軽水炉タイプで三十年以上にわたって炉の運転を続けた海外の例があるのかということをお尋ねしたいと思うんです。  と申しますのは、原子炉の寿命を世界の標準に照らして三十年と見積もっていきますと、日本も間もなく廃炉時代に突入するということであります。つまり、実際二〇〇一年までには三つの商業用軽水炉が三十年を迎えるということであります。先ほど超過年という言葉も出てまいりました。  ところで、電力各社からことし二月に、機器の補修や点検を適切に行えば六十年程度運転を続けても安全性に問題ないとする報告が通産省・資源エネルギー庁に提出されたということを聞きました。これについてはどういうふうにお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。
  187. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 先ほどの処理の問題のコストについては、広くパブリックコメントを一カ月間にわたって求めております。そういった過程で御意見は承っているものと考えます。  それから、海外の原子炉の例でございますが、三十年を超えた軽水炉はございませんけれども、我が国と同様に二十五年を超えたものとしてはアメリカで二十一基、ドイツで二基でございます。それから、三十年を超えたものはイギリスでガス炉が十八基ございます。  それから、諸外国の例としては、アメリカは四十年の運転認可制をとってございますが、これに更新認可によって二十年を延長するという趣旨で六十年をとっております。その他の国は日本を含めて運転期間に関して許可制というのはとっておりませんで、技術基準に合致していることを確認して次のサイクルの運転を許可するというものでございます。  最後に御指摘のございました原子力発電所の高経年化に係る問題でございますが、高経年化をしたものについての技術評価あるいは長期的な保全計画、これを電気事業者の方から報告を受けまして、これに関して専門家の意見を聞きながらその内容を評価したということでございまして、三十年を超したものにつきましては、十年間を区切りながら新たに保全計画をつくり補修計画をつくり、それでもってどの程度原子炉としての機能を安全に継続し得るかという評価を行ったものでございます。そのときに技術的な評価の尺度として六十年という数字を置いておりますが、六十年に向かってこの長期的な保全計画がよろしければ運転は可能であるという結論を出したものでございます。
  188. 水野誠一

    ○水野誠一君 今のお答えにもありましたように、欧米でもまだそういう事例がないわけでありまして、アメリカが運転認可期間を四十年と定めている、事業者の再申請によって六十年まで更新できるということを参考に六十年という、非常に私は楽観的なというか、かなり思い切った報告をしたのではないかな、提案をしたのではないかなと思うわけでありますが、これは何といっても安全性を第一に考えなきゃいけないということの中で、六十年運転というのは私はやはり大変リスキーなことではないかと思うわけであります。  しかし、この炉の寿命というのは大変未知の領域であるにもかかわらず、なぜこういった電力各社が六十年運転に踏み切ろうとしているかという背景を見ますと、きょう、いろいろ議論されておりますような炉の廃止で出るごみを放射性廃棄物かどうかを区別していくためのクリアランスレベルなどが法制化されていない問題、それからまさに廃棄物処理についての行政の指導あるいは施設の建設等々さまざまなものがまだまだおくれているようなことも含めて、廃炉をめぐる問題にまだ道筋がしっかりついていない、まさに三十年で廃炉すべきかどうかという選択が迫ってきて、これからどんどんそういう炉が出てくるにもかかわらず、まだまだ政府レベルでのそういう議論も十分ではないんじゃないかな、そういう感じを私は受けました。  今回、取り上げております中間貯蔵施設についても、核燃料サイクルの輪の全体像が描き切れないために、その必要性の論議が浮上した側面もあるわけでありまして、エネルギー政策、プルトニウム政策は国内問題であると同時に、海外からも理解されること、これも非常に重要な要点ではないかなと思います。  ともかく、先ほど来いろいろ議論がありますが、原子力をめぐる国民の不安を払拭し切れない問題というのは、やはり徹底的な議論というもの、それから本当に国民あるいは我々に対しての理解を図る努力というものがまだ十分とは言えないことに尽きるのではないか。原発の反対側そして推進側が共通のテーブルに着いて日常的に議論できる環境というものをつくっていく、こういう努力をもっと繰り返し行っていただく。それによって、後追い的な行政ではない、もっと問題を先取りすることによって問題の先送りということにはならない行政のあり方というものをぜひお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 今まで各同僚の皆さんからいろんな角度から今回の法案について、あるいはまたそれにまつわる諸問題についての質疑がございました。いつものことながら、同じ角度から、あるいはまた同じ問題点というのもいかがかという感じもいたしまして、私はきょうは少し角度を変えて、後ほど質疑をさせていただきます。  この原子力問題というのは、今も水野議員からの話もありましたが、これはこれでいいということはなかなか出てこない、あるいはまたこれで絶対に安全だという、科学技術庁長官は科学者であられるけれども、科学の世界で絶対なんということは一体あるのか。あり得るはずがないわけでありまして、我々が生活している日常、世の中で絶対という世の中はない。同じようなことだと思うんです。そういう意味では、より絶対安心に近いところにどう努力していくかということであろうと思うんです。  かつまた、限られた資源我が国の乏しい、ほとんど海外に依存している資源関係から考えれば、しかも工業立国、しかも世界最高の生活レベルを維持するというようなことを考えれば、これはもう電力ということを抜きにしては考えられない。火力発電があるじゃないか、水力発電があるじゃないか、まさにこれこそ公害やあるいはまた国土保全の上からいっても問題点が出てくる等々の問題で、結局はより絶対安全性を目指しながら原子力発電ということに我々は帰結したということだったと思うんです。なお、将来もっとすばらしいエネルギー開発されるかもわかりません。しかし、現状においてはそういうことかなと。  そういう意味では、私は、人間の生活、幸福と不幸というのはまさに背中合わせ、あるいはまた平和と緊張というのも背中合わせ、安全と危険ということも背中合わせかもわからぬのです。そういうことを踏まえながら、この原子力エネルギー政策というものを考えていかざるを得ないと思うんです。  そんな角度からいろいろな同僚議員の質疑をずっとお聞かせいただいて大変参考になりましたし、また日本の科学技術庁といえども、どうももう一つ歯切れのいい回答が出てこないという面も事実あった。これはいたし方のないことなのかもわかりません。しかし、この中間施設の問題は、これも現状において今日の経済活動と国民の生活レベルを維持していく上においてはやむを得ざるとりあえずの措置だ、こういうことであろうと思うんです。  そういう観点からこの問題は、私は与党の立場で、しかも原子力発電あるいは核エネルギー政策というのを推進してきた一人として余りこういうことを国会の場で質問してはどうかという感じも今まではあったんです。しかし、いろいろな角度から考えてみると、一度やはり私は、国民の前に今の段階でどうであるかということを政府に明らかにしておいてもらう必要があるだろうということで、原子力発電所におけるセキュリティーの問題について、きょうは中心に少し質問をしてみたいと思うのであります。久しぶりに時間を三十分いただいたものですから、油断して余計なことをしゃべってしまいました。  我が国年間発電電力量に占める原子力発電の割合というのは、御存じのとおり三五%、三分の一以上に及んでいる。私が国政の場に参りました二十数年前を考えると、まさに昔日の感であります。現在、我が国原子力発電所は五十一基にもなっている。認可出力は約四千五百万キロワット。米国は別として世界ではフランスと肩を並べるほどの規模になってきている。しかし、幸いなことにいまだ、三十一名の死者や二百三名の被曝者を出したソ連のチェルノブイリ発電や米国のスリーマイル原発のような事故は全くない。大変努力をしている。あるいはまた、真剣な日常作業をやっているということだと思うんです。  最近では、しかし、さはいうものの、「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故、あるいは動燃東海事業所のアスファルト固化処理施設の火災事故などが続いていますけれども、幸い人的被害はなかった。我が国の安全管理は十二分とは言えないにしても、ある程度うまくいっていることではないのかと言えると思うんです。その点からすると、我が国原子力発電所の安全性は確保されていると言っていいと私は思います。  問題は、冒頭申し上げたように、原子力発電、ましてや昨今の国際情勢やいろんなことを考えると、あるいはまた日本人はこれまで平和や安全というのを空気のような錯覚をしておりますから、そういうときに、危険というのはあるいは危機というのは突然起こることでありますから、私はそういう意味で、阪神・淡路大震災や地下鉄サリンなど、そういった問題と同時に昨今の北朝鮮の弾道ミサイル・テポドン、あるいはまたまさに私の郷土である新潟の沖に、ここには先ほども同僚議員の話が出ましたが、東洋一、世界最高の原子力発電所もある。そういうところに北朝鮮の不審船が領海を侵犯してくるというようなこともこれありで、危機管理対策として内閣官房の内閣安全保障危機管理室が中心となってことしの四月に、ここに私は手元にも持っておりますが、危機管理マニュアルを作成した。原子力災害についてもそのことが入っている。  そういう問題について、施設のテロ対策などはアメリカではある調査機関のアンケート調査によると、米国人の四分の三以上がテロリストは米国の都市に対して核兵器または生物化学兵器を使用する可能性があると信じているんです、世論調査で。  そこで、原子力発電所のテロ対策について、まずその前にちょっとお聞きしたいんですけれども、皆さんの中に「宣戦布告」という昨年ベストセラーになった本をお読みになった人はいますか。もしおられたらちょっと手を挙げてみてください。──結構です。  日本海から北朝鮮の兵隊が漂着して原発に侵入を試みたために警察や海上保安庁など関係省庁が押しつけ合いながら自衛隊を派遣しようかという議論が行われたり、どうするかというので政府全体が大パニックになったという模様を描いている。ただの小説とは思えないようなリアルなものだと思うんです。  折しも最近、先ほど言ったような問題が日本海に起こっている。日本海には福井の敦賀原発、新潟の柏崎刈羽原発というようなものが点在している。しかし、この「宣戦布告」に見られたように、いざこういう事態が起こった場合、警察が対応するのか自衛隊の派遣を要請するのか、危機管理体制がどうなっているのかはっきりしていないような気がするんです。はっきりしていればいいですよ。今度はこの官邸のマニュアルにしっかりできたということならそれで結構。本当にこういう事態を想像したときに、省庁間の責任の押しつけ合いを行って対応がおくれたということがないように、省庁間の役割を、きちんと迅速に適切に対処するようなシステムを整備しておく必要が、もうこの段階においては非常に喫緊の課題だと言わなきゃならない。  そこで、ちょっと細かいですけれども、そういう観点から具体的に聞きたい。余り想定していろんなことを言うと、地元住民やあるいは立地市町村の住民が不安を持ってはいけないということは十分に私は自分で考えながら質問をする、むしろそれだからこそはっきり答弁をしてほしいと思うんです。  資源エネルギー庁に伺いますが、一般的に言う事故の、こういった「宣戦布告」ではない、そんなことはあってはいけないことですが、原子力発電所でこういったテロ行為が行われたときの警備体制がどうなっているか。警察が常時パトロールをしているということもよくわかっていますが、現状は原子力発電所に対するどういう警備をやっているか。原子力発電所電力会社が警備をやっている、これも民間警備会社に頼んでいるというようなことで間に合うのかどうなのかということです、要するにテロ活動があった場合に。ここにも核物質防護に対する若干の施設、設備、こういうものが、いろんなカメラなんかが用意されてあるのもわかっていますけれども、どうもそれはまさに通常のことではないのかという感じがします。  今現状どういうふうになっておりますか。その実態について、一言でいいですよ。
  190. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 全体として三段階の対応をとっていると考えております。  第一段階については、既に委員御指摘の、核物質防護規定を定めて侵入センサーを置く等々、あるいはパトロールをする等々のお話でございます。  第二段階のところは、我が国が武器を一般に使用できない、所持できないという事情にかんがみまして、実際に発電所が襲撃をされた場合には、発電所の防護設備等の物理的な手段をもって攻撃を阻止、遅延させるというところまでが発電所の役割でございまして、その後、迅速に治安当局に通報をし対処をお願いする、一緒にやる。  この趣旨で、お話のございました最近の内外の動向にかんがみまして、治安当局との情報交換を密にする。これは地元、現場というところと東京というところと二つのところで治安当局にいろいろお話を伺い、お願いをし、また御相談をしているというところでございます。  第三段階目のところは、原子力発電所が全体として持っている各種の防護機能、特に、中央操作室に乱入をして恣意的な運転をしようとしたときにどうするか。これは、第三の地点に切りかえるということができる仕組みを持っておりまして、そういうことで設計上いろいろな防護措置をとっておるということでございます。  以上です。
  191. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 そういうことだろうと思うんです。しかし、テロがある程度成功して実際に一部が破壊された、放射能が漏れるというような場合、放射線防護服などは地元の警察なんかに配備されていますか。あるいは消防署なんかにそういうものが常備されていますか。
  192. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 発電所の方に防護の観点からある程度の、防護服を含めた備蓄をいたしてございます。
  193. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 だと思うんです。発電所じゃだめだと思うんです。それを僕は申し上げたい。だから、そういうところが、極めて小さなことですけれども、今後の一つの問題として検討しておいてみる必要があるのではないかというふうに思います。これは、もう一回言いますけれども、警察、それから地元の消防、発電所立地市町村のそういうところに、これは警察庁もそういう予算を見る必要があるなら考えるべきであるというふうに思います。  原発がテロ行為によって破壊活動に遭遇してしまった、そういう事態が発生した場合に、危機管理体制の構築が必要であって、また今現在、先ほど言ったようにできている、そのことはよくわかっておりますが、危機管理体制が具体的に内閣安全保障危機管理室においてどんなことに、このマニュアルは私も手元にありますが、極めて迅速にやらなきゃならぬことなので、そういうことについてはもう今日の段階で本当に心配ありませんということが答えられるかどうか、その答えだけでいいですから、ちょっとおっしゃってみてください。
  194. 伊藤康成

    政府委員(伊藤康成君) 先ほど資源エネルギー庁の方からもお答えがございましたように、いわゆるテロでもって放射能被害等々というものが起きる可能性は極めて少ないというか、ほとんどゼロであるというふうに私どもは報告を受けているところでございます。そういう意味での物理的な安全性というものは非常に高いと。これは先生も御承知のことだとは思いますが、そういうふうに聞いております。  ただ、そのような前提ではございますけれども、おっしゃられるようなテロとかあるいはその他の何らかの事故で外部の者が侵入するというような事態がありました場合、私どもとしましては、これは実は必ずしも原子力発電所ということで特化したわけではございませんが、一般に重要な施設にそういう問題があった場合にどうするかという研究はかねてからやっておるわけでございます。  その中で、まず第一の基本は、事案が発生した場合、総理官邸等への情報の連絡、これを今先生もおっしゃいましたようにできるだけ早く上げる、そして関係各省庁の連携をとって対処できるようにするということが基本でございますし、必要であれば政府の対策本部もつくらなければならない。また、警察とか海上保安庁等々が対応するのが、当然第一義的にやるわけでございますし、通常はそこで間に合うと思いますが、間に合わない場合は自衛隊も含めた対応といったことの検討というようなことをこれまで行っております。  こういう検討というのは、ある段階でこれでおしまいということではなくて、私どもとしては引き続き事態のいろいろな事情の変化に合わせまして研究を続けてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  195. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 おさおさ怠りないであろうということを承知しながら質問しているんです。実際にこういった問題というのは、起こってから後でそういうこともあり得るなというんじゃなくて、本当に具体的な対策ができるようなスキームをつくっておかなきゃいかぬということだと思うんです。理論的にはできても現実的にはできないというのが大体役所の今までのやり方なんです。そういうことでないように、ぜひ、地域住民の安全あるいは安心、そういうことの上から、私はむしろ、先ほど来の同僚議員のいろんな懸念された質疑の中にあるのはまさにそこなので、全然心配ないと、心配しないでくださいよということのPRをやる一つとしても、こういうセキュリティーがしっかりできているんだということを政府はPRすべきだということを申し上げておきたいので、あえて質問を申し上げたのであります。  ただ、原子力発電所というのは比較的海岸に多い。この間のような北朝鮮の不審船あるいは工作船が来て、もし変な菌を海水に注入したりなんかした場合に一体大丈夫なのかとか、そういったことまで考えるべきではないのかなというふうに思います。我々はすぐ近くに住んでいるものですから、なおさらそんな心配をいたしているところであります。  しかし、心配をしつつも、日本政府としては安全に怠りなく対策を講じているということももちろん承知いたしておりますし、より一層のいろんな研究が内閣安全保障危機管理室においてできたらどんどん地元にPRする。もちろん、機密のものは出しちゃいかぬけれども、大体こういうことでやりますから御安心くださいよということをおやりになることが大事ではないかというふうに思うんです。  それから、この観点と若干違いますけれども、同じく少し懸念される問題として、核拡散防止観点からロシアにおける核物質の密輸出の実態について伺いたい。これはちょっと古いかもわかりませんが、しかし今でもなおかつ懸念されている問題です。  米国のモントレー国際研究所核不拡散研究センターのウイリアム・ポッター氏が一九九六年三月に米国上院の政府活動委員会常設調査小委員会で口頭で表明された報告によると、ロシアの海軍や研究所から高濃度のウラン十五キログラム、プルトニウム三百六十グラムが一九九二年から九五年にかけてドイツ、チェコ、ウクライナなどに密輸出されている実態が明らかになっております。私が国の名前を今言いましたけれども、こういうことは実際にもっとほかの国もあるかもわからぬです。  こういう問題について日本の外務省はどういう対応をしているのか、また情報も十二分に的確に把握しているのか、あるいはそれに対してきちんと対応しているのかということを、これも安全の一つとして聞いておきたいというふうに思います。
  196. 西村六善

    政府委員(西村六善君) 今、先生がおっしゃられましたことは、もちろん我が国自身にとりまして大きな問題でございますけれども、同時に世界全体にとりまして非常に大きな問題でございます。したがいまして、そういう観点からでもございますけれども、いわゆるG8、先進国首脳会議のメンバー諸国におきまして取り組みが行われている次第でございます。特に、九六年のモスクワにおいて行われました原子力安全サミットにおきまして核物質密輸防止プログラムというものができ上がりまして、我が国もこの実施に協力をしているという状況でございます。  今、先生がおっしゃられました幾つかの具体的な密輸の事例につきましては、いろいろな情報がございます。冷戦後は、特にロシアにおきます核物質の管理の緩みがあったわけでございまして、その関係で密輸の事例というものもかなりあったというふうに承知をいたしております。  現在におきましては、事例の数といたしましては若干減っているというふうに承知しております。しかし、そのことは密輸自体がなくなった、あるいは少なくなっているということを示すものかどうかを証明するわけではないわけでございますので、外務省はもちろんでございますけれども、関係省庁と一緒になりましてこの目的のために協力をしていく、努力をしていくつもりでおるわけでございます。  さらに、核物質の関係、放射性廃棄物の関係でございますけれども、特に液体性放射性廃棄物の処理に関しましては非常に深刻な状況が極東ロシアにおいて起こっているわけでございます。これを処理する施設を我が国の資金によりまして建設するということが数年前から行われておるわけでございまして、これも、我が国のロシアに対します広範な協力をいろんなところでやっているわけでございますけれども、その重要な一部として位置づけて協力を進めている段階でございます。  現在、この建設はほぼ終了しつつある段階でございまして、しばらくすると稼働することができるのではないかというふうに考えております。
  197. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 ここにロシアの核物質の密輸状況というアメリカの政府活動調査小委員会で口頭陳述された資料があるんですけれども、実際に一九九二年から一九九五年に至るまでのそれぞれの細かなデータも出ています。どうしようもないといえばどうしようもないことですけれども、しかし注意をしておかなきゃならぬことだと、またそういう実態を把握しておかなきゃいかぬことだというふうに思います。  ぜひ軍縮管理という観点からも、これはエネルギー政策と若干違うにしても、しかし大義名分はエネルギー政策原子力発電ということで、あるいは引いているかもわかりません、ひそかに輸入しているのかもわかりません。そういう意味では、全然関係なしとは言えない。そういう意味で、この場で一言申し上げておきたかったので、あえて質疑を交わしたということです。  肝心な中間貯蔵施設の問題について伺うことは、この次もまた質問時間がありますから申し上げたいんですが、私は時間の許す限りちょっと一言申し上げておきたいと思います。  いわゆる電源立地交付金との関係でありまして、これも前回の委員会において私は申し上げたことがありますが、電源立地交付金というのは、もう余りいろんなことをエネ庁は考えないで、市町村にむしろ直接交付する。市町村の大きな計画あるいはまたいろんな企画等を全然見ないでいいとは言いませんけれども、そんな感じを先般は、少し言葉は強かったかもわかりませんが、私自身がやってきた一つの政策の反省として申し上げたのでありますが、もうそういう段階だろうというふうに思います。    〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕  そういう意味で、この交付金の、ことしの当初予算の中に市町村が中間貯蔵施設の設置のために広報する費用の補助を目的とするというようなものも含まれている。しかし、こんな広報なんというのは果たしてどういうものかなという感じがします。電力会社や国が責任を持って地域住民を納得させるようにすべきではないかと思うんです、こんな広報なんというのは。大体そういう努力が少し足りないから、私は電力関係にも小言を申し上げているわけです。    〔理事成瀬守重君退席、委員長着席〕 Aという電力会社が原子力発電のことをやっていればBという会社は全く素知らぬ顔をしている。そんなことでは原子力エネルギー政策なんというのは進められるはずがない。いつからそんなになったのかなという感じがいたしまして、先般来申し上げている点の一つです。  その交付金について、時間がないのではしょっちゃいますが、さっきも同僚議員の中に若干ありましたけれども、電源三法の交付金というのは、たしか出力によって単価を決めて、五百五十円だったと思うんですが、それが出力によって交付されている。使用済み核燃料を中間貯蔵施設に置く場合、長官、全く同じとは言いませんけれども、これは使用済み核燃料だから、再処理するまでの間のことだから、これは電源三法と同じようなことをやるほどではない、危険度も少ない、発電そのものよりも、そういう感じでこれを推進していくと、さっきから危険だとかなんとかいろいろ話があったけれども、しかし、言うならば政治というのは絶えずあめとむちですから、あめに関しては余り甘みの大きく違うあめをつくっちゃいかぬと私は思うんです。  だから、中間処理施設に対する交付金は電源立地市町村に対する交付金とそう違わない対応をされたらいかがか。もう時間がなくなったので大ざっぱな言い方で恐縮ですが、そんな感じがいたしますが、もし御意見があったらお聞かせをいただきたい。もしまだ固まっていないのならぜひ御一考をいただければという感じがいたします。
  198. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 概括的には委員の御指摘のような運用の仕方をすることを考えてございます。そもそもこの中間貯蔵施設の初期段階の立地を促す、これは原子力発電施設においても同じでございまして、初期段階の地域振興に資する各般のものに利用できるような形で運用をする、そういう意味では同様の運用をするということと御理解賜りたいと思います。
  199. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 もう時間が参りましたので終わりますが、結局、この間の東海村など行ってみた、あるいはまた聞いてみたりしますと、原子炉一基から生ずる年間の交付金は約三億円、固定資産税は年間十億円ぐらいなんです。こういうことを考えると、交付金というのは発電とは違うというとらえ方でなくて、やっぱり同じ痛みと、それから同じ心の負担をしていると。安全であることは間違いないんだから、そういう感覚で行政をやっていただければということを希望して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  200. 加納時男

    ○加納時男君 加納時男でございます。  けさ一番で質問に立たれました同僚の長谷川議員の質疑を通じて、大臣並びに稲川長官の回答に非常に私は大事な点があったような印象を受けました。  それは、エネルギー種別を、エネルギーを選ぶ場合の価値基準として三つほどきょう挙げられたような気がします。  一つは量、量的にどの程度賄えるのか。これは先ほどの数字でいうと三五、六%という表現でございましたが、全発電電力量の三分の一を日本全体で超えており、そしてまたところによっては四〇%を超え五〇%近いところもあるわけでありまして、量的にどの程度賄っているのか、将来的にも量的にほとんど期待できないエネルギーであるのか、期待できるエネルギーであるのか、量が第一に大事であるということ。  二つ目には、質の問題。風が吹いても吹かなくてもしっかりと発電できる、夜になっても太陽がいなくなっても発電できる、そういう意味でのお話だったと思いますけれども、供給の安定性、リライアビリティーというのが二つ目に大事で、質の問題だと思います。  三つ目が、環境に対してどの程度の適合性があるのかということで、きょうはたまたまCO2ということでお話があったようでございますが、先ほどおっしゃった数字を私なりに整理すると、ライフサイクルで私は見るべきだと思うんです。発電レベルでCO2を出さないというのは、これは原子力当たり前の話ですけれども、私は京都会議に代表として出たときにいろんな国の原子力反対の方々ともお会いしたんですが、市民の集会にも私は出ました。そのときに、反対する方は、原子力は発電段階でCO2を出さないと言うけれども、うそを言うな、原子力発電設備をつくるときやウラン燃料を掘り出したり加工するときにエネルギーを使っていてそのエネルギーの中に化石燃料があるではないか、したがってCO2を出しているじゃないかというのがありました。私は答えました。そのとおりである、したがってこれはあらゆる燃料について発電するときだけ評価するのは私はおかしいと思うと。  これは、揺りかごから墓場までではないですけれども、そもそもその設備をつくるところから、それから燃料をとるところから、加工するところから、そして発電するところから、これはダウンストリームと言っていますけれども、今度はそれが終わった後の廃棄まで、すべて一貫して揺りかごから墓場まで、社会福祉じゃないですけれども、こういうライフサイクルで見るべきだ。そうすると、原子力は間違いなくCO2を出すし温室効果ガスを出しているというのが私の持論であります。  ですから問題は、だからけしからぬとかなんとかじゃなくて、ほかと比べてどのくらいの量かということが大事であって、そういう意味ではきょうの質疑の中で非常に重要なことは、いろいろ数字をおっしゃったので私も全部覚えていませんけれども、ライフサイクルで見ると、例えば化石燃料でいうとキロワットアワー当たり大体百から二百グラム、カーボンベースですけれども。それから、きょう数字が出たのはたしか風力太陽光だと思いますが、風力で三十二、三とおっしゃったんですか、それから太陽光で十五ぐらい。  ですから、考えると、風力というのはすばらしくきれいなエネルギーだ、化石燃料に比べると七分の一ぐらいしか温室効果ガスを出さない非常にきれいなものだと私は思っています。太陽光はさらにきれいなものだと思っています。しかし、もっともっときれいなのが、CO2とか温暖化という面でいえばですけれども、原子力であることは、原子力が五ないし六グラムである、グラムカーボンですけれども。こういうことがきょう言われたということは非常に私は大事な御指摘だったと思っております。  日本として原子力のオプションは重要であるということがきょう朝言われたわけですけれども、次の加藤委員からも重要な御指摘があって、いやこれは世界の趨勢で見るべきだという御指摘があってEUの例が御紹介されたと思います。これも重要な御指摘としてしっかり私も勉強させていただきました。  そこで思いついたんですけれども、実は今週の月曜、火曜にパリでIEA、国際エネルギー機関の閣僚理事会が開かれたときのうの読売新聞に載っておりました。月曜、火曜できょうは木曜日ですから、時差はありますけれども、きのう水曜日にはもうコミュニケも日本にも届いているということで、先ほど私も英文のプレスリリース、コミュニケを拝見したところであります。  これについて、恐らく資源エネルギー庁は十分御存じかと思いますけれども、どのようにこのIEAの今回の閣僚理事会を評価していらっしゃるか、あるいは特徴は何か。その中で、きょう朝一番あるいは二番で議論された原子力エネルギー政策のオプションとして、原子力発電をやっていない国も入っている、あるいは反対している国も入っている国際エネルギー機関の閣僚理事会でどのようなことが議論され、結論としてコミュニケに載ったのか、その辺を教えていただければと思います。
  201. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 二十四日から二十五日にかけてパリでIEA閣僚理事会が開催をされまして、我が国からは保坂通産政務次官と町村外務政務次官が出席をされました。  大きな論点は三つございました。一つはエネルギー安全保障に係る点。それから気候変動問題。三つ目が規制制度改革への対応、いわば自由化の問題でございます。  エネルギー安全保障に関しましては、アジアのエネルギー需要の急増の可能性が認識をされた。二〇二〇年に向けて、増加分の半分はアジアでございますが、したがってIEAとして日本が尽力をしておりますアジアのエネルギーセキュリティーの確保に協力をしていくという点。こういったエネルギーセキュリティーの点が第一点でございます。  それから、第二点の気候変動問題に関する議論では、この対応のために原子力エネルギー利用政策上の重要な選択肢であることが確認をされました。それが二点目でございます。  それから、規制制度改革に関する議論、いわば自由化の議論でございますが、これについてはエネルギー安全保障あるいは環境保全に悪影響が及ばないように配慮して進める必要がある、ただただ自由化だけではないという趣旨の議論が行われました。  こうした中で共同宣言が出されたところでございます。我が国の意見も相当程度反映されたものと考え、有意義な会議であったというふうに評価をいたしてございます。
  202. 加納時男

    ○加納時男君 今、三点あるとおっしゃって、よくわかりました。エネルギー安保、グローバルウオーミングといいますか気候変動、それから規制緩和、自由化ということで、原子力利用が重要な選択肢になることを確認したと今言われたわけでありますが、私は、焦点はシェアードゴールズというのがIEAのいわば根本的な理念だと思うんです。これは九三年の閣僚理事会でかなり激しい議論をやって決めたものだと思うんですけれども、それが今回の会議確認されたのか、再確認されたのかどうか、今回現場に行っていないのでわからないのですけれども、これが非常に私は気になっていたところですけれども、これはどうでしょうか。
  203. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 御指摘の点は明確にコミットで再確認をされてございます。  参加大臣はこのIEAのシェアードゴールズ、共通目標について再確認をすると明文で記載をいたしてございます。  この共通目標、御指摘のように九三年につくりましたものでございますが、非化石燃料、特に原子力と水力、そういう意味での原子力でございますが、エネルギー供給の多様化に対して大きく貢献をするというのがシェアードゴールズの第一点、原子力に係るところでございます。  また、第二点は、原子力エネルギー炭酸ガス排出しないために、多くのIEA加盟国が利用可能な最高な安全基準に基づきその選択肢を温存する、維持する、改善する、そういう努力をすべきであるというふうな趣旨で書かれてございまして、この部分を明確に引用して再確認をいたしてございます。
  204. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  シェアードゴールズというのは非常に国際会議でも話題になるものでございまして、国の名前を出してはなんでございますけれども、原子力はやらずに隣の国の原子力を輸入しているような国も、原子力に対しては非常に冷淡な国も含めて議論をして、IEA全体として、例えばア・ナンバー・オブ・IEAメンバーズとかIEAカントリーズ・アズ・ア・グループというようなことで、IEA、先進国全体としてこの原子力環境適合性と供給多様化の観点から強力に支持するという非常に重要なものなんです。最近とかく原子力については、世界じゅうでもうやめているんじゃないかとか、日本では外国がやらないのになぜやるのかというような議論があるけれども、IEAが再確認したというのは私は非常に重要なニュースだというふうに今のお話を承りました。  もう一つ、きょう午前中の他の同僚委員の方の御指摘で写真週刊誌のがありましたので、急に話が変わって済みませんけれども、そちらに移ってみたいと思います。  写真週刊誌というのはフラッシュでございまして、六月八日号でございます。これは、「私は原発で「放射線濃度」のデータを改ざんした」というような見出しでございます。先ほど御披露あったとおりでございます。これはたしか加藤委員だったですね、御指摘があって、非常に重大な問題ではないかということで事実をただされて、答弁としてはエネ庁長官から事実を十分確認したいということと、それからもう一つ指摘があったグラニュールです。グラニュールというのは、要するにグラニュー糖みたいなもので、不燃性の放射性廃棄物の中でコンクリートですとか金属などを高温で溶かして、すぐに水で急激に冷やすとガラス状といいますか小粒のガラス状になっちゃうのでグラニュールと言っているものでございます。これについては先ほどの御回答では、三千四百本あるけれども六ケ所村には一本も行っていないということ、六ケ所に行くものは全量自動測定をしているということ、それから、構内輸送では二回測定をしているけれども、きのうですか検査官がデータを確認したところ、違う企業が別々にはかっているものがすべて低い値であったというような回答だったと思います。  私も気になったので記事を読んだんです。フラッシュを買ったんですけれども、これはほとんどの日刊紙にでっかな広告が載って、そこに大きな見出しが載っていたものですから、跳び上がって驚いたわけです。ということは、いろんな国民の方がこれを見ていると思うんです。ですから、週刊誌を読まなくても見出しだけは読んでいるというので、もし事実だとすれば私はこれは事実をしっかり究明しなければいけないと思うし、もし事実でないとすれば大変な誤報ではないか、誤報といいますか、ある意味では世の中を騒がせる大変な出来事ではないかということで、マスメディアに対する冒頭の長谷川委員の御指摘ともつながってくるわけなんで、私は事実を知りたいと思うんですが、これは調べているということですから、次回でも報告していただければと思います。  質問は、この記事を読んだときに不思議なことが書いてありまして、何か一ミリシーベルト以下にしなければいけないというのでデータを改ざんした、こう書いてあるんです。ちょっと私はこれは資源エネ庁でも科技庁でも伺いたいんですけれども、法令では一体何ミリシーベルト以下としているんですか。
  205. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 該当部分については二ミリシーベルト以下というのが規定でございます。
  206. 加納時男

    ○加納時男君 だと思います。私もそういう記憶が何となくありますけれども、私の記憶ではたしか法令ではドラム缶の表面線量は一時間二ミリシーベルト以下、そして一メートル離れたところで〇・一ミリシーベルト以下、こういうことがあるんですよ。だから、表面は二ミリシーベルトです。それを一以下にしなきゃいけないというふうに改ざんしたというのは、これは何のためにそんなことをしたのか全く理解できないのですけれども、これは通産省が改ざんしたわけじゃないので、通産省になぜかと聞いてもわからないと思う。本人に聞かなきゃ事実かどうかわからない。  問題は、一ミリシーベルトというのはどんな意味があるのかということを伺いたいと思ったんですけれども、一ミリシーベルト以下にしなきゃならないという理由は、なぜしたのかというのは全く理解できないのですが、そういうことは法令上からは今ないということを私は感じました。  次に、もう一つ承りたいのですが、記事の中に放射線を受けた量の記録、手帳の写真がありました。私はこれを見てさっと集計してみたんですけれども、一年間で一・一ミリシーベルトというふうに私は読めたのでございます。  通産省に対しての質問ですけれども、一年間で一・一ミリシーベルトというのはどういう数字でしょうか。これは自然界から受ける放射線の量が大体そのぐらいではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  207. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 人間が一年間に自然界から受ける放射線の量でございます。
  208. 加納時男

    ○加納時男君 そうだとすると、この写真週刊誌の手帳の写真の隣にキャプションが入っていまして、おどろおどろした表現だったんですけれども、この人は半分以上歯が抜けたり食欲がなくなったと書いてあるんです。これはきょう科学者の大臣もいらっしゃいますけれども、科学的に考えて、一・一ミリシーベルトというのは我々が自然界で食物からあるいは空気から、原子力発電なんかをやるはるか前から、太古の昔から受けているし、ごく自然の放射線の中で我々は暮らしているわけです。それが記録されていたから歯が抜けたり食欲がなくなるというのはちょっと理解できないのですけれども、資源エネルギー庁長官あるいは大臣理解できるでしょうか。
  209. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 大臣お答えの前に事務的な御説明を申し上げますが、構内放射線業務従事者、要するに構内で働いている人たちには二つの測定器がついてございます。これは全く自動で測定をされるもので何ら人為的操作に影響されません。フィルムバッジを胸につけておりまして、また一日当たり計画線量当量を超えたときには警報が鳴るというような仕組みのものがついております。  したがいまして、この写真週刊誌の人が三ミリシーベルトのところで一ミリシーベルト以下にいろいろ記録を書きかえるようなことをしたような環境の中で大変な放射線を被曝したかというと、彼が測定したものと全く独自に別の測定のものが彼の胸についております。そういう意味で、この記載のように記録を書き改めたがゆえに彼の健康に重大な支障が起きたというような環境はおよそ原子力発電所の中では考えられないというふうに思っております。
  210. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 今エネルギー庁長官お答えになったとおりでありまして、我々研究者でもそうですけれども、放射線のあるところに行きますとバッジを必ずつけていますね。それを見れば一遍にわかるわけです。そういう意味で、これは科学的に本人の調査をすればすぐ答えは出てくると思っています。したがいまして、東京電力がどういうふうな調査をされているか、この辺の調査の結果をお待ちしている次第であります。
  211. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。ぜひ調査結果をこの委員会でまた伺う機会があればありがたいと思っております。  何分、冒頭に申し上げましたように、ほとんどの国民の目に入るような広告の中の大きな見出しになっておりました。ですから、どうなっているのかということですけれども、その後ちょっと新聞をチェックしていたんですけれども、おととい、二十五日の毎日新聞の夕刊にべた記事、一段記事で、この件については「東電が全面否定」ということでるる書いてありました。ただし、べた記事ですからほとんど目につかなかったと思います。それからきょうの朝刊、読売新聞の地方版でございますが、「東電が抗議文提出 「一方的な情報」と反論」とあります。私は正直言って、今国会議員やっていますので事実はわかりません。ですから、本当に改ざんがあったのかどうかもわかりませんけれども、できる限り早く調べて実態を知らせていただくことを私は国民の代表の一人としてぜひお願いしたいところでございます。  これ以上のことはきょうは差し控えたいと思います。  いよいよ保障措置に入りたいと思います。  原子力平和利用とか保障措置ということで外務省の方にちょっとお伺いしたいと思っております。  新聞や雑誌の報道によりますと、五月二十日にアメリカの調査チームが北朝鮮の金倉里に立ち入ったということになっております。二十日ごろ入って二十四日に出たというので、きょうは二十七日ですから何か情報をつかんでいらっしゃるかどうか。私の伺いたいのは、どんな情報が今入っているかということでございます。
  212. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) ただいまお尋ねの米国の技術専門家チームの北朝鮮調査訪問でございますが、五月十八日に北朝鮮入りいたしまして、二十四日に出てまいりました。  私どもの知っている限りでは、そういう事実と、また北朝鮮側が本件チームの作業に対して非常に協力的であったということが表に出ている、現在ではその程度でございます。  この結果につきましては、日米間では、北朝鮮とアメリカとの交渉経緯等についてはこれまでも緊密に日本側に連絡をしてもらっておりますので、このチームの調査結果の評価等が行われた段階でしかるべき通報があるものというふうに考えております。  現段階では、先ほど申し上げた程度のものでございます。
  213. 加納時男

    ○加納時男君 これ、きょうすぐ返事をいただくというのは確かに無理かもしれませんというのはわかりました。  私の質問の要点をもう一回整理して申し上げますので、しかるべき機会に、またわかったときに教えていただければと思っております。  それは、5W1Hであります。5Wというのはフー、だれが行ったのか。アメリカではたしか十五、六人ぐらい、十四、五人ですか、行ったと思うんですけれども、どういう専門家が行ったのか。核疑惑に関する専門家、原子力の専門家が行ったのかどうか、非常に大事なところだと思います。特に核兵器の専門家、これは非常に大事な点だと思います。だれが行ったのか、フーであります。  それから、ホエン。これはわかりました。今お話があったので、十八日から二十四日ということでわかりました。  それから、ホエア。どこに行ったのかということであります。金倉里と言われていますけれども、先方が案内したところだけを見たのか、希望したところを見せてもらえたのか。前もってこことここと言って見に行ったならば、何か疑惑のものがあったら全部どかしているはずでありますから、そこへ行っても何もなかったという報告に恐らくなるだろうと思いますけれども、行った人がここを見たいと言ってそれを見せたのか、断ったのか、これがポイントだと思っております。  それから、ホワイということであります。何のためにということでありますけれども、当然のことながら核疑惑があったから行ったんだと思います。  それから、ホワットであります。これは一体何なのか。査察ではないと言うんです、北朝鮮は査察は拒否しているわけですから。そこで、立ち入りあるいは訪問。立ち入りというのは英語で何と言うんでしょうか、アクセスと言うんでしょうか、それから訪問というとビジットになるんですか、よくわからないんですけれども。御機嫌いかがと行ったわけじゃないんでしょうから、これは査察に準ずる重要な疑惑があったから行った行為だと私は思っているんですけれども、外交儀礼上非常に難しかったようでありますけれども、非常にここのところを知りたいわけであります。ホワットであります。何をやったのか。  それから、ハウであります。サーベイメーターを持っていったのか。それから、サンプリングはできたのかできなかったのか。そういうことが大事であります。写真撮影はできたかできないか。こういうことは、やっぱり日本がこれからも査察を強化してやっていくという議定書にもコミットしているわけでございますから、非常にここは気になるところでございます。  雑誌とか新聞の主張によると、北朝鮮が立ち入りを認めたというのは見返りが欲しいからで、既に安全となっているところを見せたのではないかといった非常に意地の悪い書き方もありますけれども、そういうことなのかどうかということであります。  私がちょっと気になっているのが、一九九四年に米朝間で合意して核開発を凍結しましたね。あのときは今回のところと割と近いんです。地図で見るとすぐわかるんですけれども、寧辺でした。寧辺というのは、五千キロワットの実験炉を建設する、それから五万キロワットの原子炉、それから再処理施設らしきものというので、非常にこれは核疑惑の典型であったわけであります。これの建設を凍結する、建設を中止するというふうに追い込んだというのが米朝合意の成果だと思っているんです。  今回はもちろん寧辺は行かないわけですね、もうわかっているから。御存じだと思いますが、寧辺と今回訪問した金倉里の実はちょうどその真ん中に泰川というのがあります。これが実は本命の核疑惑施設だというのが韓国筋の情報なことは御存じだと思うんですけれども、なぜそこを今回選ばなかったのか。相手がいいですよと言ったところにわざわざ行ったというのはどうにも合点がいかないんです。日本はこれでまだKEDOに協力しているわけでありますから、お金も出ていくわけであります。  私、北朝鮮を恨んでいるわけじゃなくて、冷静に事実をまず知って、国民に警鐘を鳴らさなきゃいけないことがあるのかどうかということであります。きょうはこういうことを伺ってもコメントは難しいかもしれませんけれども、何か御感想があったら一言伺いたいと思います。
  214. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 先生のお話の中にございました5W、ある程度の事実関係は行く前にわかっておりますが、先ほど申し上げましたように、結果がしっかりわかってから御報告申し上げたいと思います。  また、この調査訪問、北朝鮮は参観とかいろいろな表現を言っておりますが、実現するまで米朝間で大変アメリカ側としては忍耐強い交渉をやってきたわけで、その結果としてようやく実現したわけでございます。我々としては、アメリカのそういう外交努力、交渉努力をよい方向に向かっての第一歩だということで評価をしております。  北朝鮮は外から見ますとなかなかわかりにくい、透明度の低い国であることは御案内のとおりでございますが、この金倉里の施設に関して先生おっしゃったようないろいろな憶測、また報道もございます。行ってみたら何もないんじゃないかということはございますけれども、私どもといたしましては、北朝鮮が核施設を金倉里から別の場所に移したという確たる情報を持っているわけではございません。  米国側もそうだと思いますが、今後、核施設ではないかという疑惑のあるものについては引き続き調査が可能になるように北朝鮮との間でさらに交渉するように努力するというふうに承知しておりますので、そういう点で期待をしております。  今回、何で金倉里であって、先生先ほどおっしゃった寧辺と金倉里の間にある泰川ではなかったのかということについて、私ども技術的な理由は必ずしもつまびらかではございませんが、御案内のように、当初から寧辺以外でやっているのは金倉里ではないかと、これは周辺の状況等からまずそこに焦点が当てられたわけでございますので、とりあえずそこから開始したということはそれほど不思議なことではないというふうに思っております。
  215. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  きょうはそこまで伺うのが限界かと思いますけれども、これは非常に大事な問題なんで、ぜひウオッチしていただきたいと思っています。  私は、北朝鮮をただ敵視すればいいというのじゃなくて、まさに抑止と対話と両方必要だと思うんです。そういう意味で、対話という点では私は非常に一つ残念に思っているのは、北朝鮮とのパイプといいますか外交、正式機関はないわけでありますから難しいんですけれども、最もつき合いにくい国とつき合うのが外交だとよく外交官の一年生に教えていらっしゃるようでありますが、そういう意味では最もつき合いにくい国かと思いますけれども、日本の隣に現実にいるわけでありますから、単にこれを敵視したり、ただアメリカから情報をもらうだけであとはわからないというのでは非常に困るのであります。ぜひとも北朝鮮に我々も日本として、つき合いいいかつき合いにくいかは別として、隣人であることは間違いないわけですから、この隣人の気持ちをしっかりとつかみながら対話と抑止ということをぜひ進めていただきたいと思って、きょうはこの質問はここまでにさせていただきます。ぜひともこれからもウオッチして報告していただきたいと思って、これだけをお願いしておきます。  続いて、科技庁関係に入ってくると思うんですけれども、査察の問題に移っていきたいと思っています。  IAEAのセーフガード、保障措置というのは、御案内のとおり、平和利用のための核物質が核兵器に転用されないことを確認するというのが原点だと思うんです。これは当たり前のことですけれども、これをしっかりいつも押さえておかないと話が枝葉末節な議論になっちゃうので、この原則を頭に置きながら、具体的にやっているのは三つあるわけでございます。  一つは、計量管理。核物質がどのくらいあるのかというのを国に計量させる、あるいは国が事業者に計量させてIAEAに報告させるという計量管理。それから二つ目は、封じ込めと監視。要するにハッチなんかを封印しちゃう、そして監視カメラでもってずっとこれを監視するということ。それから三つ目が、査察。実際に立ち入ったりして確認しているということでございます。  そういう中で、いろんな問題が出てきたわけです。IAEA自体の問題として、IAEAのいろいろな議論なんかも伺っていますと、いろいろな変化が出てきた。一つは、原子力施設の数がふえてきた、したがって業務量がふえてきた。他方で核疑惑国が出てきた。北朝鮮だとかイラクだとかさまざまな国があって、今までの査察が必ずしも功を奏していないところもあったということなんです。  そこで九三プラス二。一九九三年に効率化、一方でコストダウンを図ってIAEAの費用をこれ以上ふやさない、そのための合理化を徹底してやっていこう、離れたところから計測ができるようなそういう装置もつくろうとかそれから自動化しようとか、いろいろな効率化コストダウンというもの。もう一つは、査察の強化、核疑惑を徹底的に洗い出そう、そのために査察方法を従来から一歩進めよう、相手がうんと言わなくてもともかく入れるようにしようとか申告していない施設でも見ようとか、どんどん強化をするというのと効率化するというのを二年間かけてやるので九三プラス二になったと私は理解しているわけでございます。  ところで、この査察なんですけれども、日本に対する査察が私は非常に多いような印象を受けるんですが、これは実態はどうでしょうか。
  216. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  IAEAの世界全体の査察量、年ベースで申しますと一万人日強、こういう状況でございます。そのうち、日本への査察量は二千人日強、こういう状況でございます。したがいまして、世界全体に占める我が国に向けられております査察業務量は全体の二割というところでございます。
  217. 加納時男

    ○加納時男君 世界で一番多いのはどこですか。
  218. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 絶対量として最も大きいのは日本でございます。
  219. 加納時男

    ○加納時男君 私は、これは非常に問題だと思うんです。  それでは日本は核疑惑を行っているのかと、核兵器をつくっているのかと。つくりゃしないですよ、大体日本の国会でもって核兵器をつくる予算なんて与野党一致して反対すると思いますよ。絶対できないと私は思っていますし、まさに広島、長崎、そしてビキニという、あの核兵器の悲惨さを味わった者として、与党とか野党とかを超えて核兵器は反対、原子力平和利用というのが日本国民の多くの方の御意見であって間違いないと私は思うんです。  現実にこれまで査察を受けてそれでは核兵器疑惑のようなことが日本にあったのかどうか。それにもかかわらず、北朝鮮だのイラクだのをほっぽらかしておいて、平和利用に徹している日本を何でそんなしつこく調べるんですかというのがどうもわからないんです。  それでは、ちょっとトーンダウンしますけれども、日本で査察した結果、指摘事項はどうなんでしょう。  きょう午前中の同僚議員の質問に対して何か指摘事項なしというふうに私はちょっと聞こえたんですけれども、指摘事項があるのかないのかということと、指摘まで行かなくても目標未達成というような項目があると思うんです、要するにバツじゃないけれども三角。目標未達成というのは私はIAEAで何かそういう話を聞いたことがあるんですけれども、日本はそういうのがありますよということで、その辺どうでしょうか。
  220. 青江茂

    政府委員(青江茂君) まず、きょう午前中に申し上げました、いわゆる核物質の転用に係るような問題点の指摘あるいは特別査察が求められるような事態、これはございません。  目標未達成という御指摘がございましたが、これは原子力発電所で例示を申し上げますと、クレーンとかキャスクの移動等によりまして、保障措置のために設けられました監視カメラの視界が一部妨げられたということとか、照明が一時的な未点灯ということでカメラが写らなかったとか、そういった事態でございまして、こういったことにつきましては後ほど追加的な検認活動を行うということでもってカバーし得ることでございまして、現実的にはカバーしまして何の問題も生じていないという結果に終わってございます。
  221. 加納時男

    ○加納時男君 私はこれはぜひ指摘しておきたいと思うんですけれども、要するにIAEAの核拡散の疑惑に関する指摘は一件もなかった、当たり前ですけれども、これをまず声を大にして確認してほしいと思うんです。  それから二つ目は、目標未達成というけれども、今伺っていると、かなり事務的な感じがします。視界がちょっと妨げられていたとか、それから監視カメラが故障したとか、フィルムがIAEAに届くのがおくれたなんというのも聞いたことがあるんです。それから、よく見えないと言うんですけれども、チェレンコフ光というのがあります。要するに、放射線が水の中を通ると青くなる。あれはきれいな色ですけれども、あれがあって、燃料棒がそれを通して見えるわけです。ところが、私もプールを見てきましたけれども、低燃焼で長期間冷却していると、放射線が出る量は少ないですから、当然のことながらチェレンコフ光というのは少なくなってしまう、薄くなってしまって余り出ないんです。そうすると、よく燃料棒が見えないことがあります。そういう指摘だとすると、これは私は、核疑惑とは全然関係ないことで十分解決可能だと。そうしたら、チェレンコフ光のあの弱いところの照明は、上をちょっと絞っておけば監視カメラでちゃんと写る話だし、物の陰になるというのは、陰にならないところにカメラを置くようにしてもらったらいいし、フィルムが切れているとかカメラのぐあいが悪いというのは日本の責任じゃなくてIAEAの責任ですから、冗談じゃないと思うんです。  それで、日本はやっぱり疑惑があるからやっているなんというのはおかしいので、日本に対する信頼をもうちょっと高めてもらって、もっと核兵器開発しているようなとんでもない国を早く摘発するようにIAEAに重点特化をしてもらいたいと思うんですけれども、こういうことは日本政府として努力しているんでしょうか、していないんでしょうか。
  222. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  IAEAの査察をどのようにかけていくのかと申しますのは、対象たる施設の種類でございますが、そこで扱います核物質の形態、こういったふうなことで非常にオートマティカリーに決まっていくというものでございます。したがいまして、確かに私どもも感情論としまして、今委員のおっしゃられるようなところというものは多分にあるわけでございますけれども、セーフガードをかけるに先立ちまして、一番最初にIAEAの査察官とどういう査察をかけていくのかということにつきましてのネゴを行いますが、その都度そういう趣旨のことを話をし、できる限りの合理化を図っていくというための努力というのは逐次なしておるわけでございます。まず大原則はオートマティカリーに、非常に形式的にまず当てはめる、そこのところに対しましての例えば国情に応じたバイアスをかけていくということというのは、今現時点におきましてIAEAの枠組みの中で取り入れている方途ではございません。  そういう状況にございますが、引き続き私ども努力をしてまいりたいというふうに思います。
  223. 加納時男

    ○加納時男君 私は、国会議員になる前にエネルギー関係の仕事もやっておりまして、IAEAにも行きました。そして、前事務局長のハンス・ブリックス、それからその後任のエルバラダイ、おととしの冬ですけれども交代したんですが、交代した後も行って会いました。  そして、いろいろな会議でも私はこの問題を実は提起したのであります。そのときに、事務局長はとてもよく話を聞いてくれて、よく考えましょうと言ってくれたんですが、下僚が日本は指摘事項が多い、こう言うんですよ。私も一瞬、指摘事項と言われて、核疑惑があるわけじゃないし何だと言ったら、いや、ともかく戻って調べてみてくれと言うので、今ちょっと気になってそれをたまたま思い出したんですけれども、そのとき私が調べたのでは、フィルムがなかったとかそんなことなので、フィルムがないというのは、IAEAのフィルムで向こうが入れるわけですから、冗談じゃないと、とても頭にきたんですけれども、この辺はぜひとも強く主張していただきたいと思います。何かバックアップできることがあったらしたいなと思いますけれども、そういうことでこれは非常に問題だと思っております。  さて、次の問題に行きたいと思います。また北朝鮮に戻ってしまって恐縮ですが、五月七日の朝日新聞を見ていましたならば、こんなことがありました。九四年の米朝合意の内容が明らかになっておりまして、北朝鮮は核兵器製造につながりやすい黒鉛減速炉の将来にわたる開発放棄の見返りに米国が軽水炉の供給を約束とあったわけであります。  この文章から一体何を感ずるかということですけれども、今KEDOでやっている軽水炉供与というのは、要するに、これはチェルノブイリ型も含めてですが、黒鉛型炉というのは、燃焼度の低い段階でもって運転中に燃料棒を取りかえて純度の高いプルトニウム、核分裂性の奇数番号のプルトニウムを取り出しやすい、だからこれは北朝鮮はやってはだめよ、そのかわり軽水炉ならば核兵器に転用は非常に難しいからこれをやりなさいというふうにアメリカが言ったというふうに感ずるんですけれども、この辺はどういうふうに理解していらっしゃるでしょうか。
  224. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 今、先生御指摘のポイントのとおりであろうというふうに認識をしてございます。  いずれにしましても、私どもは核兵器研究開発というのは一度もやったことはないわけでございますので、そこのところのデータをもってしてどうこうというお返事は申し上げられないわけでございますが、一般的技術論といたしましては、燃焼度の低い形でもって運転をしております黒鉛減速炉の方が核兵器開発という、その間の距離といたしましてはより短いものというふうに一般的に受け取られておるというふうに理解をいたしてございます。
  225. 加納時男

    ○加納時男君 ここは非常に大事なところだと思うので、何か折に触れてこの問題というのは出てくると思うんです。  要するに、軽水炉でも核兵器ができるんじゃないかというんですけれども、あの核拡散にうるさいアメリカが、より再処理をしても純度の薄いプルトニウムしかできないということで軽水炉をあえて推しているんだというふうにここのところは理解できるかと思いますので、そのことを確認しておきたいと思っております。  さて、少し事務的な話になって恐縮なんですけれども、今回、炉規法、原子炉規制法の改正案を見ておりますと、IAEAが特定する場所に国の職員が立ち会っている、そのもとでIAEA査察員の立ち入りが行えるよう必要な規定整備を行うということと、それから保障措置検査を内閣総理大臣が指定する民間機関に行わせることができる、そんなふうに読んだわけであります。  それで、後段についてちょっと伺いたいと思いますけれども、これは保障措置検査ということですね。これは定型化しても、民間機関に代行させて大丈夫かという国民的なやっぱり不安感があると思います。この辺についてどうお考えでしょうか。
  226. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  今回、指定機関制度というものを導入いたしました趣旨と申しますのは、今後ますます保障措置関係の関連業務と申しますのはふえてまいるというふうに予測されます。その業務に適切に対処するということだといたしますれば、国が国家公務員としてマンパワーを割くことができるのも当然のことながら事実上限界があるわけでございまして、今後は国でなければ行い得ないようなもの、これを国家公務員を擁して事に当たると。一方、技術的能力のある民間機関を活用し得るというふうな性格のものというのはそういうところにゆだねていくというふうな形で業務の効率化というものを図ろうという趣意に出るものでございます。  それで、今回そういう趣意から保障措置検査ということを指定機関に行わせるということにいたしたわけでございますけれども、この業務自体は、言ってみれば現場におきまして例えば記録をそのままの形で写し取ってくる、それから、現場にございますような核物質というものを一定の機器を用いましてそのままの形で測定してくるというふうな非常に事実確認という性格のものでございまして、いわゆる裁量というふうなものが入り込む余地というものはないものというふうに考えておるものでございます。そういう定型的な業務ということにつきましては、一定の技術的能力のあるところということをきちんと指定機関の審査に当たりましては見るわけでございますので、今御指摘のようなことというのはあり得ないことではないかというふうに思っているわけでございます。
  227. 加納時男

    ○加納時男君 その検査の費用はどうなるんでしょうか。今まで国が負担してやっていたんだと思うんですけれども、民間機関に委託するとなるとその費用は一体だれがどのような形で負担するんですか。
  228. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 保障措置に係る検査は、事業者からの申請によるものではなくて、国が原子力開発利用を進めるに当たって国際的に求められている国自身の責務であることから、検査費用を徴収はいたしません。徴収するような性格のものではないと考えております。  このため、指定機関が当該検査を行う場合であっても、これまで同様、国としてそれらの業務が適確に行われるよう、その費用を国が負担することといたしております。
  229. 加納時男

    ○加納時男君 大臣からお答えいただいて恐縮でございました。  今、お話を伺っておりまして、定型化しているもので国から委託してやっていけるんだということでありますが、国がやってきたからただ委託していくんだというのじゃなくて、私はやっぱり九三プラス二の精神、つまり査察の効率化強化、これを同時に実行していく上で合理化が必要だと思うんです。そういう意味では、例えばリモートモニタリングだとかいろいろな方法がこれからあると思うんです。ただ現場へ行って記録紙を写してくるんじゃなくて、それがもう自動的に送られてくる、電子装置、通信施設を使って送っていくとか、カメラも、一々何かフィルムが切れたとか切れないなどと、また目標未達成とかと変なけちをつけられるのはしゃくでございますから、そういうのはもう離れたところで自動的に記録されていくとか、そういうふうに技術革新をどんどん織り込んでいってほしいと思うんです。  私ちょっと総括的に今のを整理しまして、九三プラス二、つまり効率化と査察の強化保障措置強化ということを両立するための施策として具体的にどんなことをこれから考えていかれるのか、考えているのか、その辺を科技庁に伺いたいと思います。
  230. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  九三プラス二の過程におきましての議論の中で出てきてございますのは、一例を申し上げますと、今まさに先生が御指摘されましたリモートコントロール技術というものの活用でございます。これは監視カメラの画像というものを伝送によりまして、リモートコントロールの技術を使ってその実効性というものを確保していく、そして査察の合理化を図っていこうというものでございます。  そのほかに、監視カメラというものをもっと高性能化していくというふうなことというのが日本とIAEAとの間の共同開発という形でもって今進んでございます。これの具体的な適用ということも進捗しつつございます。  こういったふうなことに今後とも取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
  231. 加納時男

    ○加納時男君 今のは主として効率化の方のお話だったような気がするんですけれども、強化の面ではどうでしょうか。IAEAの議定書、そして中身を見ていくと二段階ぐらいあって、今のままでできるものと、議定書を結んでやるものは強化のその二ですね。その一としては現行のスキームでやれるもの、その二は、議定書を結んでさらに新しくやるものというふうに何かあったような気がしますけれども、その辺どうでしょうか。
  232. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 御指摘のとおり、二段階で、いわゆる協定、条約という形でもって対処しなくても十分できるものという形で、第一段階のものはもうスタートしてございます。そういう形で一部強化措置というのが講ぜられたわけでございますけれども、いわゆる条約を結んで、これがモデル協定になったわけでございますが、そのモデル協定をベースにしました条約を結びまして対応していくべきものというのが今回の追加議定書によるところのものでございます。非常に簡単に申し上げますと、今までは核物質というものがあるところのみを対象としておりましたものを、核物質のないところというもの、しかしながら機微な情報、機微な機器というものを扱うようなところというものもカバーの中に入れてセーフガードをかけていこうではないかというのが基本的な拡充強化のポイントであろうかというふうに理解をいたしてございます。
  233. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  それでは最後に、中間貯蔵の方に話を移してみたいと思います。  きょう同僚議員の質疑を伺っておったんですが、ちょっと気になったのは、中間貯蔵というのは何か迷惑施設だと、だからみんな嫌がっているというようなことで、確かにそういう動きがあることは私も理解しておりますけれども、本当に中間貯蔵というのは一体何なんだろうかというその意味合いをちょっと確認しておきたいと思います。  また初歩的な質問になって悪いんですけれども、中間貯蔵とは何のために何をすることでしょうか。
  234. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 中間貯蔵は、核燃サイクルを実施する上で、現在までに生じている現実の各パーツのおくれがございますが、そうしたおくれ、具体的には使用済み燃料の発生の状況と、これを処理する再処理事業の進捗を調整するための措置として、発電所内に加えて外でも貯蔵できることとすると、そういうものを核燃サイクルの中に位置づけるという性格のものと理解してございます。
  235. 加納時男

    ○加納時男君 わかりました。私も同感で、そのとおりだと思います。  つまり、これは原子力政策が先にあって、日本の場合にはやっぱり二つの方法、スペントフュエル、使用済み燃料と訳していますけれども、これをそのままもう捨てちゃうのか、それともそれを全量リサイクルして使っていくのかというときに、後者の全量リサイクルという路線をとっている、そのために使用済み燃料が再処理されるまでにどこにあるのかということが問題であって、それが炉の中にある、あるいは炉の外にある、それからそれ以外のところに行く、そういうことだろうと思うんです。  そうなってくると、例えば方法は何通りかあると思うんです。燃料貯蔵プールにそのまま入れておく、それから今度は貯蔵プールの容量をふやす、リラッキングと言っていますけれども、ラックの数をふやす、組みかえて燃料棒を余計プールの中で貯蔵すると。あるいは、この間我々委員として皆さん同僚議員と一緒に東海村に行って、原電の東海第二を見てきたわけですけれども、あそこでは乾式貯蔵を計画しているということで説明があって、工場敷地も見せてもらったわけでありますが、ああいう乾式貯蔵、ドライキャスクという方式もある、それからまた中間貯蔵というのもある、こういう位置づけだろうと思うのでございます。  それで、今も長官のお話の中にありましたように、核燃料サイクルが少しおくれているというのがやっぱり一つのポイントになっていると思うんです。再処理が、海外再処理に出したものと国内の再処理工場というので全量再処理するというシナリオであったにもかかわらず、そして海外再処理は一応全部搬出したわけでありますけれども、国内再処理の方が若干おくれているわけです。今回も三十カ月ですか、二年半ほど延びる。これ以上の変更はないというふうなこの間新聞発表ではございましたけれども、ともかくおくれているのは事実であります。そのために、使用済み燃料と言われているものが現在のサイトではいっぱいになってしまう、あるいは地元との約束を超えるところもあるというので中間貯蔵が出てきたのかなと思うわけでございます。  私の質問は、まず八百トンという今つくっている再処理工場のキャパシティーがありますね。これができて年間再処理量が八百トン、ところが年間の発生量は九百トンというと、もうこれだけで八百トンを超えちゃうわけです。百トンは余っちゃうわけであります。そしてまた、これからも原子力が拡充していくということになると使用済み燃料はふえてくるだろう。  これは、全量を再処理していくという方針の中で第二再処理工場をどうするのかというのは、前回の原子力長期計画の中にも若干触れておられましたけれども、今時点でどういうふうに考えていらっしゃいますか。  いろんなオプションがあると思うんです。海外再処理をやってくれということを海外から言われているのも事実と新聞に書いてありますし、それから第二再処理工場という考え方もある。そういう考え方がないと、これはまさにきょう同僚議員が非常に心配されたように、中間貯蔵施設が最終貯蔵施設になっちゃうんじゃないかと。これが一番同僚議員の心配のポイントだったと私は思うんですけれども、この辺はどうでしょうか。
  236. 青江茂

    政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。  民間の第二再処理工場につきましての今後の見通しでございますけれども、先ほどもお答えを申し上げたところなのでございますが、二〇一〇年ごろに再処理能力、利用技術などについての方針を決定するという方針で臨んでございます。  一方、今後の問題としての海外再処理につきましては、私どもは再処理は国内で行うという原則的な考えで臨んでございまして、海外の問題につきましては慎重に対処したいというふうに考えてございます。
  237. 加納時男

    ○加納時男君 これはこれから非常に大事な論点になってくると思いますので、ぜひこれからもウオッチして、お話を伺いながら進めていくのを見ていきたいと思っているわけでございます。  さて、私のもう一つの質問は、使用済み燃料という言葉に非常に私は疑問があるわけです。これは英語のスペントフュエルというのを直訳したんです。私は、原子力にとって非常に不幸なのは、訳が非常に拙劣だと思うんです。昔、明治時代に外国語を日本語に直すときに、私の尊敬している福沢諭吉先生は、エクスポジションという言葉を博覧会と訳したんです。今の日本語で直訳する官僚の方だったら、恐らく露出物と訳したんだろうと思うんです。露出物というのは恐ろしく気持ち悪いんですけれども、博覧会というのでみんな見たいということになって、エクスポジションですよ、エクスポーズというのは露出するという意味ですから、まさにそんなようなセンスがどうもあるようなことを今まで私気がつかなかったんです。国会議員になったら非常にこれは気になるようになりまして、恥ずかしい話で申しわけない、今反省しながら質問しているのでございますけれども、例えばスペントフュエルというのは直訳すれば確かに使用済みかもしれないけれども、中身は違うんです。  これは、まさに同僚議員もきょう指摘されましたように、未利用資源といいますか、まだ使っていないものがたくさんある。しかも、リサイクル可能な資源です。例えば、使用済み燃料というと、御用済み燃料、お邪魔虫、迷惑施設、こういう連鎖反応になる、連想ゲームになるんですけれども、これを例えばリサイクル燃料というと、貴重な燃料、生かして使おう、私のところにおいで、こうなるのではないかと思うんです。  こういう使用済み燃料という言葉について、私非常に疑問を持っているんですけれども、これは大臣か長官かにお答えいただけたらと思います。
  238. 稲川泰弘

    政府委員稲川泰弘君) 核燃サイクル路線というのは原子力政策の要諦でございますが、その趣旨は、まさにプルトニウムをリサイクルして使うというところに中心点がございます。この趣旨で、平成九年二月の閣議了解でこの中間貯蔵施設という方向が出ておりますが、これも使用済み燃料というものがプルトニウム等の有用資源を含むという点に着目をしたものでございます。  今回の法改正のために総合エネルギー調査会で御議論をいただきましたが、そこでも、使用済み燃料は再処理することによって、含有されるプルトニウム等を再度原子力発電燃料として利用することが可能な資源であるということから、リサイクル燃料資源と呼ぶべきであるというふうな御答申になってございます。  今回の法改正では、従来の法令との整合性がございますので、この使用済み燃料という単語を用いておりますが、趣旨においてはまさに委員の御指摘の未利用資源あるいは有用資源でございまして、その趣旨を今後よく積極的に説明してまいりたい、かように考えております。
  239. 加納時男

    ○加納時男君 今のお答えで私は十分だと思います。ぜひともそういう趣旨で、ただ趣旨でやっていくだけではなくて、名前もやっぱり変える勇気も持ってほしいと思っております。今から変えればいいと思うんです。変えられるわけです。  大体、濃縮という言葉もすごいですね。濃縮というと、何か一〇〇%濃縮ジュースというのがありまして、もうウランを何か爆弾みたいに物すごく一〇〇%近くやっているのを濃縮というふうに普通理解します。あれは、エンリッチメントという英語を訳したので、これまた普通に常識的に考えれば濃縮とは訳さないで、エンリッチメントだったら例えば富化、もうちょっと豊かにするという意味で富化だとか、もっと意訳すれば改質、質をよくする、改質というふうに言えば非常にわかりいいと思うんです。実態をあらわしていると思う。  濃縮と言うから一〇〇%かなと思うと、爆弾をつくるときにはまさに一〇〇%近く濃縮するわけですけれども、そうじゃなくて、実際に平和利用している場合にはせいぜい三%とかそんなものですから、これは三%というのは非常に薄いです。髪の毛の話じゃないんですけれども、三%というと非常に薄い話で、一〇〇%というのが濃縮だと思うんです。そういう意味では三%というのを濃縮と訳したところにも、やっぱり濃縮というと非常に怖い話だと思うんですけれども、そんな怖いことをやっていないと言うことも私は大事だろうと思います。  いろいろ脱線しちゃって済みませんけれども、エネルギー基本法という話もきょうございましたので、最後にこれについてちょっと触れてみたいと思います。  五月二十日付の毎日新聞を読んでいましたところ、電事連会長が定例会見で、原子力長期計画、長計に柔軟性を持たせるとともに、エネルギー基本法のようなものを策定して国が果たすべき役割を鮮明にすべきではないかというようなことを言っておられたというふうに新聞記事に載っておりました。  私が思うに、例えばこの原子力のバックエンドなんというのは、まさに中には放射性核種で非常に半減期の長い、数万年というものも入っているわけでございます。そういうものに対して民間企業が主体性を持ってやれといったって、これは国民が数万年とか数十万年先のことまで、その企業がいつまでも続くかどうかもわからないときに、企業だけに責任を負わせているというのは何か一つ信頼感を感じないと思うんです。  やはりこういう長期のエネルギーの安全保障に関するものについては、国がゼンメン、ゼンメンというと二つのゼンメンですけれども、前の方という意味の前面と、それから幅広いという意味、すべてという意味の全面と、ゼンメン的な責任を負うというか、国としての覚悟、姿勢というものを鮮明にする、そういう意味での基本法が要るのかなという感じもするんですけれども、これについて御見解を伺えたらと思います。
  240. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 実は、原子力委員会といたしましては、先日、十八日に新たな原子力長期計画の策定を行うことを決定いたしましたが、その際、新たな原子力長期計画については、将来にわたって堅持し、着実に実施しなければならない理念や政策と、情勢の変化に応じて機動的に対応すべき事項とを区別して検討するという考え方を示したところでございます。  今後の長期計画の調査、審議の過程においては、日本といたしまして、新エネルギーで一体どれだけエネルギーを賄えるのだろうかということを十分検討した上で、原子力必要性や位置づけを明確にしていくことが重要ではないかと考えている次第でございます。やはり、一体本当にエネルギーをどうするのかということを、原子力も含め新エネルギーも含め化石燃料も含めて私は率直に国民に対して知らせるべきだと思うんです。国民の誤解を招くことは極めていかぬ、どういうことが本当に可能かということを正直にきちっとお伝えしていかないといけないと思います。  それからもう一つ、私は、お言葉に対して批判を申し上げるといけませんけれども、リサイクル燃料は大好きなんだけれども、リサイクルという言葉が嫌いなんです。再利用でなぜいけないのか、再使用燃料というふうなことがあり得ると思うんです。我々ついつい片仮名言葉を使い過ぎますので、これは自然科学者として大いに反省いたしておりますので、一言申し上げました。
  241. 加納時男

    ○加納時男君 科技庁長官としては、バックエンドとかいろいろ片仮名もございますので、その辺もまた総合的にお考えいただきたいと思っております。  今の大臣のお話の中でちょっと一、二また伺ってみたいと思うんですけれども、今非常に大事なことをおっしゃったような気がします。誤解を受けてはいけないということがございました。具体的に誤解とはどんな誤解を大臣は気になさいますでしょうか。
  242. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 最近、少し新聞等々も注意深く書くようになりました。大変いいことだと思っております。何を言いたいかというと、何かそこいらじゅうに、風車と言っちゃいけない、風力発電機を置けば日本じゅうの需要が賄えるようなことをかつて言っていました。汽車なんかもそれで走らせればいいよと。それはもちろん風力は使った方がいいですよ。あれが一体どれだけ発電できるかというようなこと。それから、太陽は絶対使うべきだけれども、一体どのくらい発電できるか、幾らかかるのか、こういうふうなことをやはり十分国民の方々にお知らせして、その上で御判断いただくということが必要だと思うんです。  だから誤解というのは、そういうものを並べれば、もうあしたからでも化石燃料も要らなきゃ原子力発電もいかにも要らないかのごときユートピアの考えを与えることは私はまずいと思うんです。
  243. 加納時男

    ○加納時男君 何かきょうは大学で授業を受けているような感じでございますけれども、先ほど私はエネルギー政策で三つと申し上げたんですが、今のお話を伺うと四つになるようであります。  つまり量、量というのはどの程度の量です。それから質、どの程度信頼性があるのか。それから、価格というのはきょう午前中の議論ではなかったような気がします。今おっしゃったのはまさに価格だと思います。それから四つ目として環境適合性、こんなようなことでエネルギーを評価していかなきゃいけない。  私もエネルギーの中で太陽光とか風力が大好きで、今から二十五年前にアメリカに行って太陽にかぶれて帰ってきまして、日本テレビだとか新聞で、これからは太陽の時代だと、「太陽の季節」という人が知事になっちゃったんですけれども、これからは太陽の時代だということで夢中で宣伝をしてきて、事実、自分の仕事の中でもそれを実現したいと思って、省エネルギーと新エネルギーで未来をと思って夢を見てやってきました。  その中で、実際にビジネスで投資をして新エネルギーもやりましたけれども、おっしゃるとおり、実際この四つの要素で言うと、量の面ではごくわずかであったし、それから質の面では非常に不安定だったし、それから価格の面では高いし、環境面では、これはさっき申し上げたようにいろんな評価があります。そんなようなことで、私は大好きだし、これからもやっていきたいけれども、これのいいところだけ見てこれの課題を見過ごしてはいけないというふうに今大臣のお話を承ったわけです。  同じことは原子力にも言えるわけです。原子力もいいところだけ言って課題を一切言わないというのは私は間違っていると思います。原子力もいいところもあるけれども、同時に私は三つのリスクがあると思います。それは、事故が起こったら困るんじゃないか。特にチェルノブイリという大変な痛ましい災害がありましたから、ああいうものが起こらないような設計思想でやらなきゃいけないとか、それから廃棄物の問題、これは最終処分地まで含めてやっぱり明確にしていかなければ合意は得られないと思います。それから三つ目は核兵器への拡散。きょうのテーマでありました査察の問題、セーフガードの問題であります。  こういうことを全部クリアしていかなければいけないし、私は可能だと思っていますけれども、技術的に、社会的にこういったコントロールをしていく、そしてリスクがあるから拒否するんじゃなくて、リスクを正面から評価してこれをコントロールしていく、マネージしていくということが、片仮名で言っちゃいけないですが、リスクを、潜在的危険性を管理していくというふうに言いかえてもいいと思うんですけれども、こういうことによって生かしていく。自然エネルギーも、化石エネルギーのきれいな利用も、そして原子力もといった、そういう三つのエネルギーのそれぞれいいところを生かしながら課題を克服していくのが人類の知恵かと私は思うんです。そういうエネルギーの一種の多神教というものを夢見ているんですけれども、大臣、御感想はいかがでございましょうか。
  244. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 全く同感でございます。
  245. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  もう一つちょっと伺いたいことがあるんですけれども、先ほど、新しい原子力の長計をつくっていくときに二つのことがあると、一つは将来にわたって堅持していかなきゃならない政策理念、それからもう一つは情勢変化に対応すべきこと、これは私は大事なことだと思うんです。基本はしっかりして情勢に応じて見直していくということ。今までのはどちらかというと何か数値目標みたいなのをつくってやっていくような、具体的なプログラムにかなりこだわって議論して結論が出て、結論どおりいかないで批判を浴びるというのがどうも今までの長計にあったような私は気がしてしようがないんですけれども、その辺は何か今までの長計の、これは事務当局で結構でございますが、反省がありますでしょうか。それをどうやって今回の長計に生かしていくのか。
  246. 青江茂

    政府委員(青江茂君) 今般、原子力長計の改定に正式に着手をいたしたわけでございますけれども、実は、それに先立ちまして、昨年の秋から原子力委員会におきましては非公式な予備的検討というものを関係者の方々の御意見というものを聞きつつずっと進めてまいりました。  その過程におきまして、先ほどお触れになりました理念的な部分とか非常に基本的な政策部分、こういう部分と、それから情勢の変化に対応して機動的に対応する部分、ここのところは峻別して対応すべきではなかろうかというふうな考えが打ち出されてございます。  この点につきまして、例えば藤家委員長代理の言葉をかりますと、今までのようなスケジュール先行型ではなく課題達成型、どういうふうな課題というものがあるのか、それをどういうふうな形で解決していくのか、その非常に柔軟にしてしなやかな達成の方途というものを追求していくという形で長期計画というのはつくるべきではなかろうかというふうなことが今回意識として強くなされているところでございます。
  247. 加納時男

    ○加納時男君 例えば、FBRというのは私は今回も大きな論点になると思うんです。原子力長期計画、これからまさにつくっていくわけですから今答えをいただくというのはちょっと無理だとは当然思いますけれども、考え方としてちょっと確認しておきたいんですが、FBRについては世界じゅうでやめている国が多いというのは事実であります。イギリスがもうリタイアしちゃったし、アメリカは早目にやめちゃったし、ドイツも途中までできたものをやめちゃった。そういうことでありまして、フランスがスーパーフェニックスをとめて、そしてフェニックスの方をとりあえず動かしております。あとロシアがやっているという程度であります。  こういうときに、FBRを基本的にどう考えるのか。これは世界じゅうがやめているからやらないんだという考え方が一つある。それからもう一つは、きょう午前中に長谷川委員の質問に答えられた、たしかウラン燃料は七十年ぐらいとかお答えがあったような気がしますけれども、ほっておけば原子力はどんどん発展途上国を含め世界でふえてくるとウラン燃料は先が見えてくる。そうなると需給が逼迫することも考えられる。  そこで、再処理をしてリサイクル利用していくことが世界としては必ず必要な時期が来る。ならば今から技術開発をしっかりやっていこう。すぐ実用化しなくたっていい、五年、十年先はいいんだと。しかし三十年、五十年後を見て、今からFBRの研究は火を消さずにしっかりと続けていくんだという意見もあると思うんです。  こういうような方向性は、今の二つの問題でいくと、むしろベースとしてFBRのような路線を長期に展望しつつ、短期的にはウランの需給とか、発展途上国の動向であるとか、世界エネルギーあるいは世論の動向、いろんなものを見ながら柔軟に対応するというのが変化に対応する部分、例えばなんですけれども、そういう理解でいいんでしょうか。
  248. 青江茂

    政府委員(青江茂君) まさに御指摘のとおりでございます。FBRというものにつきましては、現時点におきましては、いわゆる有力な非化石エネルギー源の一つということでもって着実な研究開発というものを進めるべしというふうなことがなされておるわけでございますが、恐らく着実な研究開発というものを進めるということというのがかなり普遍的な部分に属するのではないか。その枠組みの中におきまして、どういうふうなステップをとりながらどういう手順でもって開発を進めていくのか、ここのところは非常に柔軟な対応というものをとるべきではなかろうか。そういうふうな整理ではなかろうかというふうに思ってございます。
  249. 加納時男

    ○加納時男君 原子力長期計画は非常に国民的な関心が高いテーマだろうと思います。そういう意味では、今申し上げたようなことをしっかりと織り込んでやっていただきたいと思います。  最後の質問、最後が長くなって済みません、これで終わります。  私は、今度の原子力長期計画をやるときに、これは希望なんですけれども、原子力をこう進めるんじゃなくて、なぜ原子力なのかという根本をやっぱり国民の前でわかるような形で、賛成派の方も反対派の方も入れて、目に見える形で議論してほしい。  その中で、私は、ほかのエネルギー、さっき大臣からは新エネルギーも含めてあらゆるエネルギーの長所、短所を出しますよというお話があったんですけれども、ぜひそれをやっていただきたい。そして、特に、原子力の光だけじゃなくて陰もしっかり、つまりさっき申し上げた潜在的危険性、これを逃げずに正面からとらえて技術的に社会的にコントロールできるかどうか。私はできると思っていますけれども、できないという方もいらっしゃるでしょうから、そこを国民の前でしっかり議論して、そして長計に反映してほしいと思いますが、このことについての覚悟を伺って、質問を終わりたいと思います。
  250. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 御指摘のとおりでございまして、原子力に関しましても、使用済み核燃料の問題、あるいはこれはリサイクル燃料とおっしゃっておられましたが、私は再利用可能な燃料というふうに言いたいところでありますが、こういうものをどうしていくか。それからまた、さらに廃棄物になっている分をどうしていくか。これも片仮名になってしまうんですが、こういうバックエンド問題というのはやっぱりきちっとやっていかなければならない。これは後処理問題でいいんじゃないかと、私の日本語は、後処理だと思うんです、その問題をやはりきちっと考えていかなきゃいけない。その点は率直に申しまして、世界じゅうの科学技術者はまだ十分な研究をしていないと思うんです。もちろん、現在、固化するとかいろいろやり方を考えていますけれども、またさらに工夫をしていかなければならない。こういうふうなことも考えまして、ひとつ今後さらに進めていかなくてはならない。  それからまた、私は、「もんじゅ」は絶対やらなきゃならないと思っています。なぜかというと、人類のためだと思うんです。要するに、あと五十年たったときに、石油はまだ残っているかもしれない。二倍のお金を出せばもうちょっととれるかもしれない。しかし、必ずや枯渇します。そのときにどうするか。核融合が起こると思うかどうかも一つ問題なんです。核融合はまだ五十年はかかる。基礎研究をしないといかぬ。研究開発していかなきゃ、これは絶対やらないといけないと思いますが、それと並行して、やはりウラニウム235も、五十年と見るか七十年と見るか、いろいろ議論がありますけれども、これもなくなる。そうしたときに、ウラニウム238は絶対生かさないといけない。これはプルトニウムにかえていって燃やすということでありましょう。  こういうふうなことを考えますと、人類の将来のためにやはり我々はエネルギーの問題を開発していかなければならない。それから、新エネルギーでいえば、もっと夢のある太陽エネルギーの使い方、南方諸国でもっと積極的に太陽エネルギーを使って、例えば水素を発生させ、その水素を日本へ持ってくる、こういうふうなことも含めて、やはり根本的に二十一世紀の半ばに向かって私たちは準備していかなければならないと思うんです。  そういう意味で、原子力の長計は、今までよりももうちょっと広く柔軟に考えて、いろいろな観点から、日本エネルギーそして世界エネルギーをどうしていくかというふうなことを検討を加えながら、原子力について日本政策を決めていきたいと思っております。
  251. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  FBRは、私は夢のある技術だと思っております。世界できょうあしたにすぐ要るものではないと私も確信しております。けれども、大臣がおっしゃるように、数十年先には世界が求めているものであり、それをやるには今から人と技術とお金が要るわけでございます。その人、技術、お金、これを日本がいわば分担して外国とも協力しながらFBRの研究開発を地道にでもいいですから進めていく。そして、情勢変化に応じて加速したり、またバリエーションがいろいろあるでしょうけれども、基本としてはやはり私は、そういう未来への夢のあるもの、核融合もそれからスペースパワーステーションみたいなものもこれからの夢だと思うんですけれども、何か夢のある長期計画をつくっていただけたらうれしいなと思います。  予定した時間をちょっと繰り上げて大変申しわけないかとは思いますけれども、きょうは朝からでございましたので、これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  252. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五十四分散会