○
参考人(村
千鶴子君)
日本弁護士連合会の
消費者問題対
策委員会で副
委員長をしております弁護士の村と申します。
日弁連の方では、お
手元に
資料として配らせていただいているんですが、一九九三年一月に、「継続的
サービス契約の
適正化に関する
意見書」という名称で、
継続的サービス取引について早期立法化を図る必要性があるという
意見を申し上げ、そしてことしの三月四日に、この法案が上程されるということについて、「
訪問販売法・
割賦販売法の
改正に対する緊急
意見書」というものを取りまとめさせていただいておりますので、この
二つの
意見書に基づきまして日弁連として今回の
法律改正について御
意見を申し上げたいというふうに思っております。
まず、一九九三年一月の
意見書なんですけれ
ども、これは今回、継続的役務
取引についての
適正化を図るための
法律改正ということで
訪問販売法と
割賦販売法の
改正という運びになっているわけですが、実は
平成四年に、
継続的サービス取引、その中でも家庭教師派遣、
エステティックサービス、学習
指導、外国語教室などが倒産するという事態が発生したわけです。
たくさんの
業者が倒産をいたしまして、そのときに、長期間、何年間にもわたる
契約を一括して結んで現金で支払っている
ケースと、それから七、八〇%以上が分割払いのクレジットを組むという形で
契約をしているお客さんが多かったわけなんです。そのときに、
サービス業者が倒産をしてしまって、もう
サービスの
提供を受けることができないという事態になったにもかかわらずクレジットの
支払いは続けなければいけない、一括払いで払ったお金も戻ってこない、極端な方の場合には、三年間ぐらいの
契約をして、
契約をして一カ月もたたないうちに倒産して、お金は戻ってこないやらクレジット会社からの督促はずっと続くやらという深刻な事態が発生をしたわけです。
その背後に隠れまして、こういった長期にわたる、あるいは多数回の
契約を一括して結ばせるものであるために、途中でやめたいという事態が発生をして、ところが
中途解約が認められない、あるいは
中途解約をしてもほとんどお金が戻ってこないという事態が多発をしておったわけなんです。
そういう
状況のもとで、日弁連といたしましては、
継続的サービス取引を
適正化するために早期の立法化対策が必要であるということで、九三年一月に
意見書をまとめまして通産省等に執行させていただいているわけなんです。
ところが、その後も、通産省の方では四
業種について
自主ルールをつくらせるという
指導をされまして、立法化には手をつけないということでやってこられたわけなんですけれ
ども、先ほど
東京都の方からも御報告ございましたが、それ以後もこの
継続的サービス取引についての被害、苦情というものは増加を続けている、しかも金額が非常に高額化する、そういう
状況が生じてきているわけです。
そういう流れの中でございますので、今回の
継続的サービス取引についての立法化対策ということで
法律の
改正をするということは、これはもう緊急課題になっている、早急にしていただく必要があるというふうに日弁連としては考えているわけです。
それにつきまして、
内容的なことと、それからもう一つ
継続的サービス取引に関連をして、今回
割賦販売法の一部
改正ということも提案されておりますので、そこの部分について少し
意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず、
継続的サービス取引についてなぜ問題が起こるのかということで、長期間にわたる
契約を一括して結ばせる、そして一括払いで払わせる、それだけの
支払い能力がない人が多いわけですから、分割払いのクレジットを組ませるということが実は被害が発生する一番大きな根底にあるわけなんです。
ここで、
継続的サービス取引ということで被害がたくさん起こっております
サービスの中身というのを見てみますと、教育関連
サービスとかあるいは
美容関連
サービスとか、そういうたぐいのものに圧倒的に被害が多いというのが実情でございます。もともと、この手の
サービスというのは、例えば教育関連の
サービスですと月謝
制度というのが普通だったわけです。
契約するときに入会金か何かで少し払って、そして毎月月謝を払うと。そして、通い切れない事態が起こったり、あるいはその
サービスの中身が自分の
ニーズや能力に合わない、あるいは体質に合わないということになった場合には途中でいつでもやめられる。そうすると、やめたところからは月謝はもう払わなくてもよくなる、こういう形のものであったわけです。
美容関連の
サービスですと、一回
サービスの
提供を受けるごとに支払って、気に入ればそこに何度も通って対価を払うというものが普通だったわけです。
ところが、そこにクレジット
産業というものが盛んになりまして、もともとは形のある商品の売買を中心にクレジットというのは結ばれておったわけなんですけれ
ども、
昭和五十年代になりまして、目に見えない
サービス取引にも提携関係をとる、加盟店
契約をとるというクレジット関連
業者というものが非常にふえてきたわけです。特に、いわゆる
信販会社とかクレジット会社とか言われるもの以外に、そういう大きいところが提携関係をとりたがらない小さな
サービス業者などについてはサラ金な
ども参入をするという事態が起こってきたわけです。
そういうクレジット、サラ金
産業、
消費者信用
取引というふうにこういうものをまとめて申しますけれ
ども、
消費者信用
取引産業の
発展とそれから
業務の
拡大ということが背後にありまして、そしてまとまって多数回の、あるいは長期間の
契約を結んで一括で代金を取るということが現実的に可能になっていったというわけなんです。
一回幾らとかあるいは月謝で払うとかいうものと違って、数カ月先、ひどい場合には二年先、三年先に受ける
サービスの対価を今現在払うという形になるわけなんですが、
消費者信用
取引を利用いたしますとそれに大変高い手数料がかかるということで、将来のものを
前払いするときになぜ高い手数料を払わなければいけないかという問題も
消費者信用
取引の部分から見ますとあるわけなんですが、そういった
産業の
発展の中でこういった
継続的サービス取引というものが非常に
多様化し、繁栄をするという
状況が生じてきたわけです。
そういったものの矛盾が出てまいりましたのが
平成に入ってからということで、
平成四年に大変大きな問題になった。そのときには立法化はされないで、行政
指導による自主
規制でという
状況になっていったわけなんですが、それではとても
対応し切れない、全国の
消費生活センターにも年々被害、苦情がふえてくる、そして
消費者苦情があってもなかなか解決が難しいという実情があって今回の
法律改正ということになったわけです。
それで、まず、「
訪問販売法・
割賦販売法の
改正に対する緊急
意見書」という、ことしの三月に日弁連の方で出させていただいた
資料をごらんいただきたいと思うんです。そういうことがございますので、冒頭に申し上げましたように、
継続的サービス取引、役務
取引についての
適正化を図る
法律というものは早急に立法化していただかないと事態はより一層深刻になっていくことはもう目に見えているということが基本的な考え方でございます。
それから
二つ目に、
継続的サービス取引ということで
平成四年に大問題になりまして、通産省が
指導に取り組んだのが
外国語会話教室と
エステティックサロンと
学習塾、それから家庭教師派遣の四
業種だったわけなんですけれ
ども、実は
継続的サービス取引ということで、こういった同種の問題を起こしているものはほかにもございます。
ちなみに、一九九三年の
意見書の三ページをごらんいただきたいと思うんですが、ここにもう既に、六年前ということになりますが、これだけの
継続的サービス取引というものが被害をたくさん発生させている。これは三ページ、四ページ、五ページ、六ページ、七ページに詳しく書いてございますので、後ほど御
参考までにお読みいただければと思うんです。
そういう
継続的サービス取引の中でも非常に被害が多い、増加しているものとしては、ことしの三月の
意見書をごらんいただきますと、例えば資格取得講座、これは国家資格を取るための講座とか民間資格を取るための講座というもので、教室に通うものもありますし、通信講座のようなものもありますけれ
ども、これは被害、苦情が大変多いものでございます。それから、結婚
情報サービスとか、学習
指導つきの教材の販売、これは例えば中学生、高校生に三年間分まとめて
契約をさせるとか、小学校に入ったばかりの子に六年間分の
契約をさせるとか、あるいは幼稚園に行っている子に小学校、中学校分、九年間分まとめて
契約させるとか、そういうかなりむちゃな
契約被害が発生をしている部分なんですが、こういうものとか、それから、最近被害がだんだんふえてきて
社会問題になりつつありますけれ
ども、自己
啓発セミナーとか、こういうものも大変被害が多うございますので、今回の政令指定で
適用対象の役務について
検討いただくときには、ぜひ被害実態を踏まえて、取り込むということについて御
検討いただきたいというふうに思っております。
それから、具体的に立法の中で盛り込んでいただく必要があるであろうと私
どもが考えておりますのが(3)でございますけれ
ども、一つは
書面交付義務ということです。
今回の法案では、
契約を締結する前の概要
書面の交付義務と、それから
契約を締結後速やかに
契約内容を明らかにした
書面を交付する義務とが必要だというふうにされておりまして、これは大賛成でございます。
それから、
クーリングオフ、これは十分なじっくり考える余裕がない中で
契約をしてしまう、あるいは
契約内容が複雑で十分理解し切れないで
契約をしてしまったというときに熟慮期間を設けるというものなんですけれ
ども、
クーリングオフ制度は当然必要であろうと。これは、四
業種につきましては
自主ルールの中で各
業界とも
クーリングオフは必要だということでやっておられますので、それを立法化の中に取り込んでいただくということでございます。
それから、勧誘
行為の
規制ということで、欺瞞的な勧誘、うそをついたり重要なことを隠したりするような勧誘とか強引な勧誘というものは、これは
禁止していただく必要があるだろうと。
それからもう一つ、これは非常に大事なことなんですけれ
ども、多数回の
契約をまとめて結ばせる、あるいは長期間にわたって一括した
契約を結ばせるときに、
サービス取引の場合には、特に
美容関係とか教育関連とかいうようなものにつきましては、受けてみないと自分に合うかどうかわからないという要素というのが非常に強うございます。ですから、そういう
意味で、
中途解約の
制度というものを明確に設けて、そして
中途解約の場合の精算
条項というものを合理的なものにしていただくという必要があるだろうということでございます。そういうことですので、
中途解約については、理由を問わず
消費者からの
中途解約はすべて可能であるというふうにするべきであろうと考えます。
それから、
中途解約の精算につきましては、既に受けた
サービスの対価については、これは債務不履行がない限りは当然支払わねばならない。それから、
解約に伴う事務手数料として一定金額ぐらいは
消費者の必要な負担であろうと思いますけれ
ども、それ以上のものについては取るべきではないというふうに考えております。各
業種では
自主ルールでそのあたりについての一つの考え方を示しておられますので、これを
上限という形でお考えいただいて盛り込んでいただく必要があるだろうと思っております。
それから、四つ目でございますけれ
ども、これは
前払いを一括してさせるということによって、例えば倒産をしたときにお金が戻ってこないとか、それから
中途解約をして精算をするときにも精算ができないとかいうようなことが起こると大変困りますので、前受け金保全措置の
制度をぜひこれは設ける必要があるだろうと思っております。
今回の法案の中には前受け金保全措置の
制度は入っておりません。通産省の方の
説明によれば、
書面の記載事項として前受け金保全措置の有無を書かせるということと、それから財務帳簿等の謄本請求権を
消費者に与えるという形で担保をしますということで
説明をしておられますけれ
ども、前受け金保全措置というのは必要であろうというふうに考えておりますので、今回の法案では無理としても、今後やはり
検討課題ということでぜひ御
検討いただければありがたいというふうに思っております。
それから二番目に、
割賦販売法の
改正なんですが、今回の
割賦販売法の
改正につきましてはポイントは
二つあるということで、一つは、今まで指定商品
制度であったものに指定役務、指定
権利も
対象にするということで、政令指定
対象を
拡大するということと、それから今まで割賦購入あっせんにだけ認められていた抗弁権の対抗というものをローン提携販売にも可能にするという
二つでございます。
継続的サービス取引の
適正化のための
割賦販売法の手直しとしてはこれでかなり賄えるのではないかというふうに考えております。ただ、それ以外にも、クレジット
契約だとか
消費者信用
取引というものは今大変
多様化をしておりまして、
消費者信用
取引全般の
適正化というものをきちんと吟味をして全体的な立法化を図るということは大変必要なことだというふうに日弁連としては考えております。今、統一
消費者信用法について必要ではないかということを日弁連としては内部で議論をしているところでございます。
したがいまして、
割賦販売法の
改正につきましては、今回の
改正で十分だということではなく、これは
継続的サービス取引の
適正化の手当てとして最小限必要なものというふうに御理解をいただいて、
消費者信用
取引全体の
適正化ということで統一
消費者信用法を
制定する必要性があるんだという取り組みというものをぜひ今後していただきたいというふうに思っております。
それから、今回は
継続的サービス取引ということで、
平成に入りましてから大きな
社会問題になっていた部分について、かなりおくればせながらの立法化ということで、緊急課題でこの範囲ということは大変評価できるのですけれ
ども、
消費者契約全体について、
情報の格差の問題だとか交渉力の格差の問題だとかいうようなことで、あらゆる分野にわたってたくさんの被害が起こっております。
ですから、ことしの一月に国民
生活審議会の方で
消費者契約法の必要性についての最終答申を取りまとめられておりますけれ
ども、今回の
法律だけで全体がカバーできるわけではありませんので、ぜひ
消費者契約法についても立法化をしていただきたいということを最後に申し述べさせていただきたいと思います。
以上でございます。