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1999-03-09 第145回国会 参議院 経済・産業委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月八日     辞任         補欠選任      長谷川 清君     今泉  昭君  三月九日     辞任         補欠選任      今泉  昭君     長谷川 清君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 簗瀬  進君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 上野 公成君                 加納 時男君                 倉田 寛之君                 小山 孝雄君                 末広まきこ君                 中曽根弘文君                 今泉  昭君                 長谷川 清君                 平田 健二君                 福山 哲郎君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        通商産業大臣   与謝野 馨君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政府委員        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁国民        生活局長     金子 孝文君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        岩田 満泰君        通商産業省貿易        局長       佐野 忠克君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君        通商産業省基礎        産業局長     河野 博文君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        通商産業省生活        産業局長     近藤 隆彦君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        資源エネルギー        庁石油部長    今井 康夫君        資源エネルギー        庁石炭・新エネ        ルギー部長    北畑 隆生君        特許庁長官    伊佐山建志君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○経済産業貿易及び公正取引等に関する調査  (ものづくり基盤技術振興基本法案に関する件  )  (通商産業行政基本施策に関する件)  (経済計画等基本施策に関する件)     ─────────────
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、長谷川清君が委員辞任され、その補欠として今泉昭君が選任されました。     ─────────────
  3. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 経済産業貿易及び公正取引等に関する調査議題といたします。  今泉昭君から委員長手元ものづくり基盤技術振興基本法案草案が提出されております。  内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、まず提案者から草案趣旨について説明を聴取いたします。今泉昭君。
  4. 今泉昭

    今泉昭君 ただいま議題となりましたものづくり基盤技術振興基本法案草案につきまして、その趣旨及び内容概要を御説明申し上げます。  ものづくりという言葉で象徴される製造基盤技術及びその担い手である労働者は、国の存立基盤にかかわる重要な経済的・社会的役割を果たしておりますが、近時、経済の多様かつ構造的な変化による影響を受け、製造業衰退が懸念されるとともに、ものづくり基盤技術継承が困難になりつつあります。  我が国経済が、国の基幹的な産業である製造業発展を通じて今後とも健全に発展していくためには、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する社会的機運を醸成しつつ、ものづくり基盤技術の積極的な振興を図ることが不可欠であります。  こうした理由から、ものづくり基盤技術振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、本法律案を提案することとした次第でございます。  次に、本法律案内容を御説明申し上げます。  本法律案は、第一に、前文で、ものづくり基盤技術国民経済において今後とも重要な役割を果たしていく旨を宣言するとともに、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する社会的機運の醸成、ものづくり基盤技術の積極的な振興等法律運用基本理念として示しております。  第二に、ものづくり基盤技術とは、工業製品の設計、製造または修理に係る技術のうち汎用性を有し、製造業発展を支えるものとしております。また、ものづくり基盤技術振興のため、ものづくり事業者ものづくり労働者等に対し、研究開発振興産業集積促進雇用確保等必要な施策を講ずることとしております。  第三に、政府は、ものづくり基盤技術振興に関する施策の総合的かつ計画的推進を図るため、ものづくり基盤技術基本計画策定しなければならないこととしております。  以上が本法律案草案趣旨及びその内容概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 本草案に対し、質疑、御意見等がございましたら御発言願います。
  6. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党山下でございます。  我が党は、ものづくり基盤技術衰退の懸念、継承の困難を生み出している最大要因である大企業の身勝手な行動を民主的に規制し、地域経済への貢献、雇用確保、あるいは公正な取引など社会的責任を果たさせることが必要であると考えております。法案にはそうした観点は入っておりません。しかしながら、法案趣旨であるものづくり基盤技術振興、これは極めて重要であり、その実効性確保する立場から幾つ質問をさせていただきます。  第一に、ものづくり基盤技術の多くは中小企業者、中でも従業員二十人以下の小規模企業者に支えられております。例えば、金属製品一般機械器具電気機械器具輸送機械器具精密機械器具など主な五業種で見ますと、小規模事業所数は全事業所の八二%を占めております。この法案では、小規模企業者中小企業者であるものづくり事業者に含まれ、支援対象になると理解してよろしいでしょうか。  それからまた、私は、人間の五感による経験体験を通じて会得した技術的能力である技能継承がとりわけ重要だと考えます。旋盤加工技術技能者の方の話を聞きますと、旋盤で削るというよりもなめるという表現をされる、そういう技能法案で言う技術には含まれていると解釈してよろしいでしょうか。  この二点についてまずお伺いしたいと思います。
  7. 今泉昭

    今泉昭君 我が国のいわゆるものづくり産業を支えるところのものづくり基盤技術の多くが中小企業、中でも今先生御指摘従業員二十名以下の小規模企業に存在しているのは全くそのとおりだというふうに私ども理解をしております。特に中小企業におきましては、幾つかの、複数の基盤技術を擁する経営者並びにそこに働く労働者がその技術をさらに向上させているということもまた実態ではないかと思いますし、特にこれらの方々は、恵まれない労働環境の中で、いわば光が当たらないようなところでたゆみない努力を実はしてくださっているわけでございまして、これらの方々が戦後の我が国製造業を今日まで発展させてきた大変大きな要因であっただろうというふうに私ども理解をしております。  そこで、本法律対象となるものづくり事業者は、起案者といたしまして規模の大小を全く問うておりません。本法目的そのものものづくり基盤技術振興でありまして、企業規模にかかわらない問題だからというふうに理解をしております。ただし、御指摘のように、ものづくり事業者の大部分中小企業によって占められていることにかんがみて、我々としましては、第十五条で上乗せ的に中小企業のみを対象とする施策を講ずることが必要であるというふうにしているわけでございます。このような本法趣旨から、御質問小規模企業者中小企業者ものづくり事業者に当然含まれるとともに、支援対象になるものというふうに考えているところでございます。  それから、次に御質問いただきました技能の問題でございますけれども、いわゆる経験体験を通じて会得したところの技能継承を重視すべきということは当然だというふうに私も考えております。ともすれば、みずからの体と手を駆使いたしましてものをつくり出す能力、すなわち技能が一般的に一段低く見られているという風潮が我が国に存在しているわけでございまして、これはものづくり教育というものが大変手薄な現在の学校教育影響を多分に受けているのではないだろうかというふうに考えているわけであります。  したがいまして、この法案で言うところの技術というものには、技術経験により身体化した能力、すなわち技能も当然含まれておりますし、技能労働者社会的評価の向上を最も重要視していることをつけ加えさせていただきたいというふうに思っております。
  8. 山下芳生

    山下芳生君 次に、法案ものづくり基盤技術と同様の定義をしております現行法特定産業集積活性化法は、基盤的技術産業としまして現在二百四十九業種を指定しております。しかし、製造業におけるそのシェアは事業所数で四七%、従業員数でも五〇%、製造品出荷額でも四六%とほぼ半数を占めるにすぎません。指定業種の中に食料品、飲料・飼料、製糸業、網、衣服等、木材・木製品、家具装備品、紙・紙加工品などが含まれておりません。  法案基本法でありますので、私は、中小企業ものづくりを全体として守り継承していこうという視点が必要であると考えます。したがって、政令で定める基盤的技術産業範囲を広くとるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  9. 今泉昭

    今泉昭君 本法律案によるところの対象となっているものづくり基盤産業というものは、ものづくり基盤技術を主として利用して行う事業が属する業種でございまして、製造業等に属するものの中から政令で定めるものと実はしているわけでございます。この定義の仕組みというのは、御指摘いただきましたように、特定産業集積活性化法基盤的技術産業定義の仕方に実は倣って組み立てたものでございます。  しかしながら、同法律定義が「海外の地域における工業化の進展による影響を受けている業種関連性が高いものに限る。」というふうな限定をつけているのに対しまして、実はこの法案ではそのような限定を設けておりません。本法案は、産業空洞化対応策としてのみではなくして、ものづくり基盤技術自体振興目的とするものでありまして、今御指摘いただいたように、ものづくり基盤技術に関する産業はなるべく広く施策対象としてその振興を図ることが適当であると実は考えたからでございます。  御指摘いただきましたこの法文に載っていない産業、具体的に述べられました家具であるとか紙であるとかの製造業でございましても、実は汎用性を有して製造業発展を支えるものづくり基盤を主として利用して行う事業が属する産業であれば、ものづくり基盤産業として指定することができるものと私たちは考えているところでございます。  本法は、ものづくり基盤技術振興のため政府基本計画策定を義務づけております。基本計画策定によりまして、政府において、ものづくり基盤構築のため総合的、計画的に施策を推進する体制が確立されるものと期待しているわけでございます。この基本法制定が、我が国のあらゆる産業基礎であるものづくり産業基盤構築出発点となることを強く期待しているところでございます。
  10. 山下芳生

    山下芳生君 最後に政府にお伺いします。  こういう法案議論が今されているわけですが、政府ものづくり基盤技術に関する現状認識と、その振興への決意について伺いたいと思います。
  11. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 通産省としては、今後我が国経済発展のために、ものづくりを支える基盤的技術振興は極めて重要であると認識をしております。これまでもそのためにさまざまな施策を講じてきているところでございます。  具体的には、一昨年六月に施行されました特定産業集積活性化に関する臨時措置法に基づき、全国で二十五地域基盤的技術産業集積活性化計画承認し、基盤的技術高度化を積極的に図ろうとする事業者支援地域振興整備公団による賃貸型事業場整備等を進めているところでございます。  これらに加えまして、労働省の地域雇用開発等促進法に基づく高度技能活用雇用安定地域での人材確保政策との連携など、各省庁との政策連携により、ものづくり基盤を強化するための支援を講じているところでございます。  さらに、経済構造の変革と創造のための行動計画を踏まえ、技術者高齢化や若者の製造業離れに対処して、ものづくりを支える優秀な技術者技能者確保育成を図るため、地域産業界等で構成するものづくり協議会による体験教室等に対する支援等施策を推進しております。  通産省としては、ものづくり基盤技術振興基本法案が成立すれば、その趣旨にのっとり、基盤的技術高度化や優秀な技術者技能者確保育成に向けて各省とも連携をしつつ、これらのものづくり施策の充実に努めてまいります。
  12. 山下芳生

    山下芳生君 終わります。
  13. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 他に御発言もないようですから、本草案ものづくり基盤技術振興基本法案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、本会議における趣旨説明内容につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  16. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 次に、通商産業行政基本施策に関する件及び経済計画等基本施策に関する件等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  17. 前川忠夫

    前川忠夫君 民主党・新緑風会の前川でございます。  質問に入ります前に、お礼といいますか、感想を一言だけ述べさせていただきます。  今、委員会としての御承認をいただきましたものづくり基盤技術振興基本法案、私も三十数年前にメーカーの職場で機械を使っていた立場から考えますと、こういう法律が必要な世の中になるということは実は想像もしませんでした。本来であれば、それぞれの企業の中で努力をしなければいけないんでしょうが、世の中の移り変わりの中で、やはり国としてこういうものをしっかり守っていくということの必要性について各党会派皆さん方あるいは各官庁皆さん方の御協力もいただきながらこの法案ができましたこと、同じ会派からということではなくて、この問題について同じ関心を持つ一議員として心から各関係皆さん方最初お礼を申し上げたいと思います。  なお、通産省の方にもお願いをしておきたいと思いますが、この基本法かなりの広範囲にわたる官庁皆さん方がかかわることに多分なるんだろうと思います。ぜひそれぞれの官庁間の、お役所の間の縄張りといったものの弊害がないような形でこれに基づくさまざまな施策がとられることを私の方からも最初お願いをし、最初発言をさせていただきます。  それでは、きょうは与謝野通産大臣あるいは堺屋経済企画庁長官がお見えですから、これまで予算委員会の中での議論やあるいは先般大臣あるいは長官の方から御発言がございました内容について、最初景気現状やこれからの景気にかかわる問題について、大変関心が強いものですから、多少繰り返しになる点があるかもしれませんが、ひとつ質問をさせていただきたいと思います。  既にこれまでもたびたび議論になりましたが、昨年の特に三、四月ごろから景気悪化が深刻だということでさまざまな手が打たれました。いわゆる緊急経済対策として、昨年、つまり九八年度だけでもたしか四十兆近いお金が経済対策としてつぎ込まれたと思いますが、今現在その効果はどういう形であらわれつつあるのか。最近の経済企画庁のさまざまな経済指標を見ますと、従来とは若干違った表現に、これは作文だけでは実は困るのでありますが、変わってきているように見受けていますけれども、その辺についての経済企画庁長官の御見解をまずお聞きしたい。  あわせて、現在の景気判断の中で、経済企画庁として重視をしておられる指標の一番大事な点といいますかポイントをどの辺に長官は置いておられるのか。といいますのも、実は金融機関公的資金投入にかかわるニュースが非常に大きくけさの新聞でも報道されておりました。金融の問題が解決をすればまさに反転をするというふうに考えていいのか。あるいは、よく言われますように、消費がまだら模様であるとはいうものの、やや底がたさが出てきたという見方も一部にはあります。消費にこれからの大きな期待がかけられるのかどうか。企業設備投資やあるいは最近の為替の傾向等々さまざまな要因があると思いますが、長官としてはどの辺が一番大きな材料になるとお考えか。また、最近の景気先行指数あるいは一致指数を見ておりますと、大変幅が、振れが大きいんです。これは一体何が原因というふうにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。  それから、これは予算委員会での議論になったことでもありますが、この場で議論をしてお答えをしていただくという性質のものではないかもしれませんが、予算編成段階での経済企画庁の一%と通産省の〇・五%の経済成長論議。確かにマクロ段階で見た場合に、〇・五という数字は、大臣おっしゃるようにまさに誤差の範囲だという言い方も私はあながち否定をするわけではないんですけれども、少なくともGDPの全体の枠から考えますと〇・五という数字は大変大きな数字になってくるんです。  それから、マクロで見た場合に、これは私の経験でありますけれども、あるタクシー会社の方とお話をしておりましたら、前川さん、バブルのころに銀座タクシーを拾おうと思っても、めったに銀座なんか行きませんけれども、ほとんど空車はなかったでしょうというお話がありました。そうですねと。最近はどうですかと言うから、まさに明かりのついた車ばかりですねと。タクシーの場合には実車率と言うんだそうですが、実車率の違いはどのくらいだと思いますかと。バブルのころでさえもせいぜい五二、三%。今がどのくらいですかと、せいぜい四七、八%、わずか五ポイントの差でしかないんです。見た目ではもっともっと空車の率が多いのか、実車率がもっと低いのかと思いました。あるいはバブルのころはもっと一〇〇に近いのかと思いましたら、こういう数字というのは全国平均で出てくるんです。  ですから、僕は、GDPの場合でも〇・五という数字は、日本経済の実勢からいきますと、せいぜい高くても今の段階考えれば二、三%が限度でしょう。それから昨年の経済成長を見ても、マイナスといってもせいぜい一から二。このわずかの幅の中の〇・五というのは非常に大きいんです。しかも、影響が大きいだけに、この数字の扱いについてはこれからもぜひ慎重を期していただきたいということを私の感想として申し上げておきますので、もし御所見がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) いろいろ広範なお尋ねがございました。  まず最初に、景気対策四十兆円という話がございましたが、昨年の四十兆円というのは、まず四月に決定いたしまして六月に国会を通していただきました第一次補正予算、これが事業費として十六兆円、それから十一月に決定いたしまして十二月に通していただきました第三次補正予算、これが二十四兆円、総事業規模及び減税を加えて二十四兆円ということになっておりますので、その合計金額委員は指しておられるのかと思います。  これがどの程度の効果を上げたかでございますが、まず最初の第一次補正の十六兆円でございますけれども、これが地方議会等関係がございまして本当に実効を上げてきたのは九月以降、十月に入ってからでございまして、この間、参議院選挙内閣がかわったりいたしましてかなり空白がございます。この間に景気かなり落ち込みがあったのでございますけれども、秋になりまして各地方議会承認を得て実行されるようになりまして、かなり下支え効果があらわれてまいりました。数字で申しますと、この間に特に社会資本政府固定資本形成というのが、公共工事出来高という数字で見ていただきますと十―十二月で前期に比べて七・五%ほどふえておりまして、これが景気下支え効果をなしたと言えると思います。  次に、十一月に決定いたしまして十二月に国会で御承認いただきました第三次補正予算でございますけれども、これは一部の府県では一月、大部分のところでは二月の地方議会にかかっておりまして、今これから発注されるというような段階になるんではないかと思いますが、こういったことが景気下支えになりまして、秋になりますとやや下降の傾向がとどまってきた。十二月になりますと、一部には変化の胎動も生まれてきたというような効果がございました。そういう意味では、全くむだではなくて、予期したとおりの効果を上げたと言えると思います。  次に、現在の景気判断の中で何を重視するのかというお話がございました。  これはなかなか難しい問題でございまして、どれを重視するかというのは一概に申せないところがございます。経済は生き物でございますから、そのときそのときによって重要な指標も変わってくるわけでございますが、概して申し上げれば、一方においては生産、出荷数字、他方におきましてはやはり一番大きな需要でございます消費数字、この二つが重要だと思うのでございますけれども統計上これが出てくるのは少しおくれます。統計が出てきてからそれに対応して何らかの政策をとるとなりますと、政策実行までにまた時間がかかり、そしてそれが効果をあらわすまでにまた時間がかかる。だから、統計を見て動いていたのでは遅いということがよく言われるわけです。  今の補正予算でも、昨年、橋本内閣のころですが、大変景気悪化ということを感じて補正予算を組まれたのがもうぎりぎり、本予算が上がってすぐ組まれて、四月でございましたが、国会で通って六月で、実行されるのが九月、十月ということになるわけですから、非常にずれが出ます。  したがいまして、我々といたしましては、統計数字だけに頼らずに、ヒアリング、業界のヒアリング地域ヒアリング、それから今委員指摘になりましたようなタクシーであるとかトラックの荷物の運送量でありますとかあるいは百貨店やスーパーマーケットのような比較的早くとれるような数値なども入れまして、これらを勘案して景気判断考えます。  また、金融というのも非常に重要でございまして、金融の貸し付けもございますし、マネーサプライの量、これも比較的早く出ます。それから、株式市況とか金利の動向なども重要な指標でございます。  そういうものを総合して、最後に判断をするのは何かというと、まあこう申し上げると批判がございますけれども、結局、勘だということにならざるを得ないのでございまして、いろんな指標を読んで、最終的に人間の判断が行われるというような形になっております。  三番目に、DIについて、先行指数一致指数という判断について、これは非常にぶれるというお話がございました。  これまた事実でございますが、このぶれる理由はいろいろございますけれども、早く言いますと、この指標でとっておりますのが十ないし十一ぐらいの数をとっております。それで、できるだけ早く出すためにそのうちの八つぐらいがわかった段階で発表しておるんです。そういたしますと、一つか二つ変わることによってプラスが五割になったり四割になったりするというようなずれがございます。そういう景気判断で非常にマイナスになったりプラスになったりすることが多いという御批判がございますが、これも先ほど申しましたように、いろんな指標の一つとしては有効なものだと思っております。  ちなみに申し上げますと、先行指数として割合と先に出てくる、これから三カ月ぐらいの後の経済実態を反映していると思われるような項目、これが十一でしたか、あるのでございますけれども、それで見ますと、九月が六三、十月が四〇、十一月が六〇、十二月が五〇、一月が四三というような変動が出てまいります。一月はまだ部分しか出ておりませんから、これはまた逆転する可能性があります。  一致指数というのは、現在の景気状況を経営者が受けとめた感じのものを比較的出すんですが、それを見ますと、九月が六三、十月が五五、十一月が三五、十二月は何と一〇でございまして、ほとんどの人が悪いと言ったと。数字が少ない方が悪いんです。それで、一月になりますと急に六三になるというような動きを示しております。これだけでは何とも申せませんけれども、その背景をいろいろと調べまして、私どもの方ではできるだけ修正をしてぶれのないような数字を出させていただいております。  そういうような統計上の限界というものがいろんな面にあらわれているということでございます。  次に、〇・五%か一%かという御質問がございました。  これは、私ども経済企画庁が〇・五%と言ったのに対して、通産省の方が一%ぐらいは大丈夫だと、こういうお話でございましたのですが、これは非常に見通しとしては微妙な範囲に入ってまいります。したがって、誤差というのは言葉としては正しくないでしょうけれども、感じとしては、ちょっとこの見方を変えるとその範囲ぐらいの違いが出てくることは事実です。マクロ経済というのは、特に海外要因など一定の条件を全部当てはめます。  例えば、現在の〇・五%という見通しを出したときは、為替は一ドルが百十九円二十五銭でしたか、調査の前の月の平均値ぐらい出すわけですが、これはそう決めておかないと、また人間が判断するとそこで恣意的になるというのでそう決めておるわけですが、今はたまたまそれに近い数字になっておりますが、実際の為替は変動する、それだけによってもかなり変わるわけでございます。  そういう性格を持った見通しでございますので、必ずしもコンマ以下の数字で正確に出すことは困難でございますが、私どもといたしましては、小渕内閣の公約といいますか、公にしておりますもので、しっかりとしたプラスというのが一番基本でございます。〇・五%でもこれははっきりプラスの数字経済状態にしたい、二年連続のマイナスをプラス成長にしたい、こういうことでございます。  だから、委員指摘のように、部分によっては、それによって、ある業界、ある地域をとりますと相当差が出るかもしれませんが、私どもとしては、マクロとしてはしっかりとした、はっきりとしたプラスという意味でおとりいただければ幸いかと存じております。
  19. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 〇・五と一%の違いということでございますが、経済予測というのは、すべての人々の意思決定と行動の総合として経済現象というものは成り立っているわけでございます。また、諸外国の動向も一つの要素でございます。  戦後発達しました経済学の中で、計量モデルを使って経済の予測をしようという手法が各国でとられました。我が国でもそのような試みが行われ、通産省通産省経済モデルを持って将来の予測に当たっております。したがいまして、経済のモデル自体がいろいろな研究所等が使っているモデルと完全に一致しているかといえばそういうことはなくて、それぞれの若干違うモデルを使っているということがございます。そこでまず一つの違いが発生いたします。  それと同時に、モデル計算を行いますときにいろいろなパラメーターをそのモデルの中に入れます。これは非常に客観的なパラメーターもありますが、将来の予測にかかわるようないろいろな数字も入れなければならない。例えば今、堺屋さんが触れられました円レートということは将来にわたる話でございますから、その段階では一つの予想が入ってきてしまうわけでございます。そういうことでモデル計算をいたしますので、その結果は、ある種の前提と幅を持った結果しか出てこないということになります。  パラメーター自体がいろいろな変数であるわけですので、そういうものを総合してやりますが、堺屋さんは勘とおっしゃいましたが、勘よりはもう少し科学的なものだろうと私は思っております。すぐれた勘を持った方が予測されますのは結構だと思いますけれども、我々普通の者は計量モデルを頼りに経済予測をしているわけでございます。これは、例えば選挙の世論調査でもプラス、マイナス何議席という誤差の範囲が表示されておりますように、こういうモデル計算をいたしますとどうしてもいろいろな考え方によって上下の差は出てまいります。  しかし、今回経済企画庁といろいろお話をした中で、やはり小渕内閣経済再生内閣であると宣言した以上、断固プラスの方向に経済成長率が動くんだという意思表示をする、そういう考え方が基礎にございます。また、それはほっておいてそうなるということではなくて、やはりプラスの方向に経済を動かすという意思と施策が必要なわけでございます。  そういう意味で、堺屋さんは〇・五と言い、我々は一と申し上げましたが、しょせんそれはいろいろな考え方の違い、またモデルの違い、パラメーターの投入の違いから出てくる誤差というのが正確な言葉でございまして、そういう中でいろいろ議論をいたしましたが、〇・五と一というのは厳密な数学的な意味では誤差の範囲だろうと。  ただ、前川先生おっしゃるように、それは全体のGDPの中の二兆円を超える部分だよというふうな御指摘は当然私はわかるわけでございまして、私どもとしては、プラスの方向に経済を持っていく、そういう強い意思表示をしたかったということが前提にあったということをぜひ御理解いただきたいと思っております。
  20. 前川忠夫

    前川忠夫君 私の質問内容が幅が広かったせいでお答えの時間が十五分ぐらいありまして、私の持ち時間は五十七分でありますので、後の質問は私の方も短くしますので、ごく簡潔にお願いをしたいと思います。  実は今の話は、内閣の姿勢、あるいは政治的な判断というと差し支えがあるかもしれませんが、プラスにするという意味でそういう判断をされるということは僕は否定をしていないんです。政治というのは場合によってはそういうものですから。  ただ、問題なのは、内閣といいますか、同じ内閣の中の通産省経済企画庁が違った数字のとり方でやっているんじゃないかという疑念を生むわけです。政治的な判断がそこに入っているんだというのであれば、これは例えば通産省通産省役割がある、経済企画庁経済企画庁役割があるというのであれば、それはそれでいいですし、それから小渕内閣としてはこうなんだという決意を表明される。結果については、当然そのことに対する責任というとオーバーになりますが、ありますよということを私どもは申し上げているわけですから、それはそれで私は結構だと思います。  ただ、一つの内閣の中でそういう違いが出る、あるいは官庁の間に違いが出るというのは、事が大事な問題だけに、これからもひとつ精査をしていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  それから、公共投資の話が先ほど長官の方からも出ましたが、私は公共事業というのを悪だというふうに決めつけるつもりはありません。ただ、昨日も本会議の中でも議論がありましたように、地方財政の今の逼迫の状況から考えますと、地方自治体における公共事業にかかわるお金の使い方というのはますます厳しくなってくる。政府景気対策だからといって幾ら金をつぎ込んでも、一〇〇%国の事業ばかりであればいいんですけれども、そうではない。それから、ある地方へ行きましたら、もうほとんどインフラの整備は終わっているよ、だけれどもここで切るわけにはいかないと。それはなぜかといいましたら、地域産業がなくなってしまった、したがって地域雇用対策としてこれは切れないという話をよく聞くんです。  そういう意味で、昔の公共事業と現在における公共事業というのはさまざまな変化があります。ところが、公共事業にかかわる予算の割り振りというのはほとんど同じなんです。多少ずつ違いは出てきていますが、配分の割合というのはそう大きな変化はほとんどないんです。  これは我々も前々から申し上げてきたことなんですが、大胆な見直しをしていかないと、本来の公共事業効果というのはますます下がっていってしまうんじゃないかという感じを私どもは持っているんですが、長官の御見解があればお聞きをしたいと思います。
  21. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 地方財政との関係でございますけれども、先ほど第三次補正予算で二月が多いと言いましたが、議会では十二月に通していただいたのが多いのでございますけれども、特にこの次の十一年度予算になりますと単独事業等が減っているということは事実でございます。私たちの〇・五%というような、これは小渕内閣全体として政府見通しをそうさせていただいたのでございますけれども、これには地方財政の逼迫、それに対する地方交付税率の引き上げ等のことも勘案した上のことでございます。  ずっと同じことをやっておるから効果がないではないかと御指摘がございましたけれども、このたびの公共事業の選定には、即効性、波及性、未来性という三つの条件を当てはめて選択をさせていただきました。その中でどういうのが旧来型かというのは一概に言えないと思うのでございますけれども、現に進行している即効性のあるものもやはり取り上げておりますし、それからそれができれば民間投資を呼ぶというような波及性のあるもの、そして新しく未来性のものをかなり取り上げております。空間倍増戦略プランあるいは産業再生プラン、さらには二十一世紀先導プロジェクト、四つのプロジェクト等も取り上げておりまして、そういう転換も考えております。  各省別だけで見ていただくとそう違いがないんじゃないかと思われるかもしれませんが、内容的にはかなりそういう先端的なものも加えて進めようと考えている次第でございます。
  22. 前川忠夫

    前川忠夫君 公共事業の問題は、私たちは、今の国が三分の二から一対一にして、将来的には少し地方の判断でできる、地方に財源を移したらどうですかという提起をしています。政府の方も全く頭からこれは否定をしておられるわけではなくて、将来的にはそういう姿も当然考えられるんだと思います。地域において自主的にできる事業というものをもう少し拡大する方向でぜひ御努力をいただきたいと思います。  そこで、景気のもう一つの柱、消費の問題なんですが、先ほど長官関心を持っておられるというふうにお話がございましたが、今度の予算の中のいわゆる減税の問題。  私は、民主党の案、もう既に出してございますから、これとの比較で申し上げても、一番厳しい生活を強いられている層といいますか中堅層が、今度の政府の減税案ではむしろ特別減税との比較では結果的に増税になるという指摘を実はさせていただいておるんです。  これは、本会議予算委員会の総理の答弁の中でも、特別減税と恒久減税と比較されると困るんだというお話をよくされます。私は、なぜことし減税をやるんですかというふうに逆に聞きたくなるわけです。こういう厳しい経済環境を何とか打破したい、再生したいという願いを込めた減税であれば、特別減税と恒久減税との比較をすることも当然必要ですし、緊急対策としてはそういう性格を持った減税にしなければならないという立場からも、私は今度の政府の減税案というのは少し的外れな減税案じゃないかという気がしてならないんです。  実は、ちまたの声を聞きますと、例えば減税という形で今まで取られていたものが少なくなったとします、懐にふえたとしましても、将来に対する不安は依然として解消されていない。年金の問題や医療の問題、さまざまな場所で議論をされています。ほとんど先送りになっておるわけです。とすると、今あるお金は使えないじゃないかという話があるんです。  ですから、景気対策というのはセットで出すべきであって、なおかつ一番肝心な政府がお金を使わなきゃならない減税であるとすれば、最も効果的な的を射た減税をしなければならないんじゃないかというふうに私は考えるんですが、この政府の減税案の消費に対する影響というのをどのように判断されておるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  23. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) これは本会議予算委員会でも議論されたところでございますが、まず昨年の特別減税、これは合計四兆円になりました。金額でいいますと、ことしの恒久的な減税と言われている所得課税と似たような数字、同じような数字になっているわけでございますが、昨年の特別減税は景気対策上慌ててやった。慌ててやったという言葉は語弊があるかもしれませんが、緊急非常にやりました。その結果、税率の計算その他に時間がないということで定額減税をやったんです。これはあくまでも緊急避難的なものでございまして、これと今回の減税案とを比較していただくといささか問題が混乱すると思います。  その結果、昨年は定額減税をやりましたので、子供二人の標準家庭で四百九十一万七千円まで無税になりました。この形態がいいか悪いかということでございますが、これでございますと、二百万、三百万の年収の方も四百九十万の方も同じく所得税は負担しない。これは縦の公平から見ても余りに差があるんじゃないか。諸外国で見ますと、イギリスなんかの数倍、アメリカの二倍ぐらいまで税金がかからない、この形は問題ではないか。  したがいまして、この特別減税というのをちょっとおきまして、その前のあるべき一つの姿、平成九年度の姿と比較していかなる減税が日本にふさわしいか。これを考えて、一番適当だろうと思われる税制をとったのが平成十一年度の税体系、定率減税というものでございます。したがいまして、緊急非常にとりましたものと比べると、三百七十万ぐらいから三百八十万ぐらいになりますか、今回の教育減税その他引きますと三百八十何万になりますが、それと四百九十一万円との間の方は去年は税金がかからなかったのにかかるということになります。  しばしばここで議論になりますのは、それが景気対策上どうかという問題でございます。一般には所得の低い人々に減税をする、つまり所得の低い人々の可処分所得をふやすとそれが使われる、所得の高い人は貯金をする率が高い。したがって、低い人に減税した方が景気対策効果があるんじゃないか、こう言われるわけでございます。  日本も昔はそうでございましたし、一九八〇年ごろを見ると、所得の低い層の消費比率は非常に高くて、所得の高い層へ行くほど低いという形があったんですが、最近になりますと比較的所得の低い人々も貯金の率が高くなっている。特に限界消費性向と言われるものがございまして、今一万円余計に所得がふえたら、その一万円のうちで幾ら消費に回すか、こういう数字を見ますと、所得の低い層が高いとは限りません。一九九〇年から九七年の間で見ますと、一番限界消費性向が高いのが所得の第四階位と言われる、二〇%ずつ分けまして上から二番目の層だと。  なぜそうなのかということについてはいろいろ論争がございますが、この層がやはり年齢的に見ても家族的に見ても四十前後の中堅層で、お金のかかることが多いのであります。逆に、三百六十万と四百九十万の間の人というのは、年齢、家族構成層から見て割合と限界消費性向の低いところが多いんです。  だから、それだけで世の中が変わったんだ、こういう説が天下の公式だというわけではありませんけれども、そういうようなことも勘案して、今の提案させていただいております税制の方がいいのではないか、景気対策の上からもいいのではないかというように考えております。  また、恒久的な減税だということは、来年もこういう程度の税制になる、税金になるということが予想できますから累積的な効果がございまして、一時的な特別減税よりも景気対策上の効果があるというのは、これは一般に言われているところでございます。そういうところもあわせて御理解いただければ幸いかと思います。
  24. 前川忠夫

    前川忠夫君 余り時間がないので、今の議論もっとやりたいんですが、ちぐはぐなところがありますよ、長官のおっしゃっていることは。今、地域へ行きますと、いわゆる地域振興券、あれとの整合性もなくなるんです、今の話を突き詰めていきますと。これは、長官地域振興券に対する評価も時々お聞きをしておりますのでこれ以上言いませんけれども、今の議論はつじつまが合わなくなる部分というのがあると思うんです。特別減税というのは特別減税なりのいわく因縁がずっとあってやってきたわけですから。  確かに、昨年の四兆円の議論はいろいろあるかもしれません。それから、恒久減税をなぜことしやるんだ、これだけ財政が厳しいときにという議論もあるんです。はっきり申し上げて、やっぱり景気対策なんです。だけれども、今までのやり方でできないから恒久減税としてやったわけです。恒久減税で将来にもあるべき税制というのだったらばまだまだ問題がありますよ、この税制は。それは事実、政府の方もある部分ではお認めになっているわけです。  ですから、この議論をやりますとちょっと時間が足りなくなりますから、きょうはこれ以上はやりませんが、かなり問題があるということだけは申し上げておきたいと思います。  そこで、もう一つ、景気の一番大きな柱は雇用の問題があると私は思うんです。  つい先ごろ政府の方の緊急雇用対策本部が七十七万人の雇用創出計画というのを出されました。昨年十二月にこの委員会で私は労働省の方にお聞きをしたときには、その当時は百万人だったんです。年がかわって三カ月ほどたちましたから、景気がよくなって少し上がって、失業率がよくなって少し落としたというなら話はわかるんですが、この辺の違いがどういうことなのか。きょうは労働委員会もやっているものですから、労働省の方はお呼びをしていないんですが、これは政府で出された数字ですから、できれば通産省の方から、今の雇用の状況についてどんな感じをお持ちになっているのか、数字の違い等も含めてお答えをいただきたいと思います。
  25. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 確かに緊急経済対策においては百万人規模雇用の創出、安定を目指しておりますが、具体的には雇用創出効果を三十七万人以上とし、雇用安定効果を六十四万人程度としているところでございます。  このうち雇用創出効果については、経済対策GDP押し上げ効果に基づき、一定の前提を置いたマクロ的な試算を行ったものであり、期間については対策実施後一年間としております。  他方、産業構造転換・雇用対策本部における七十七万人との試算は、成長が期待される各分野の雇用創出規模を個別に算出したものでございまして、期間についてはおおむねここ一両年としているところでございます。  したがって、この二つは、算定の前提や期間などが異なっているため単純に比較対照することができないものでございます。これらは政府の各般の施策が幅広く雇用の創出の効果を有していることを示したものと考えております。
  26. 前川忠夫

    前川忠夫君 実は、この雇用の問題というのは、確かに政府がさまざまな手だてをしなければならない、創出計画あるいは新しい産業を興すとか。そういう側面があると同時に、最近のあれを見ていますと、政府みずからが雇用問題を演出しているんじゃないかという感じさえするんです。  一つは規制緩和の話です。それから、中央省庁を含めた行政改革、十年間で二五%削減ですか。もちろん首を切るとはおっしゃっていないんです、公務員の数を減らしますと。独立行政法人や何かに移すのはこの数に入れていないんでしょうと思いますけれども、いずれにしてもやっぱりリストラなんです。  それから、先ほどちょっと触れました銀行です。これは各行のあれを聞きましたら、四年間で二万人ぐらい削減をされるという話です。片方にはそういう話ばかりあるんです。それで、片方でふやしましょうという話です。減らしなさい、減らしますよと言っているのはどうもほとんどが政府なんです。  もちろん、規制緩和もやらなきゃならない、行政改革も必要だ、あるいは公的資金を投入するために銀行にもリストラを求めるというのはマクロとしてはわかります。だけれども部分部分を見てみますと何かちぐはぐな感じがしてならないんです。  私は、今度の雇用問題というのはこれからも大変大事な問題なものですから、改めてこの委員会の中であるいはほかの委員会でも結構なんですがやらせていただきたいと思う。きょうはこれ以上この問題で時間をとるのはちょっと避けたいと思います。  そこで、通産省の方に、これからの経済あるいは産業活性化にかかわる何点かお伺いをしたいんです。余り時間がありませんので、事前通告した質問内容を少し飛ばさせていただきたいと思います。  実は、今度の国会の中に中小企業経営革新支援法案というのが出ています。これは、新しい産業の育成やあるいはベンチャー支援というのは確かに大事だけれども、現在の中小企業をどうされるんですかという点をこれまでもたびたび私も御指摘をしてまいりました。その点は今度の法案の中ではそれなりの配慮をしていただいたということや、それから中小企業総合事業法案というような形で、これまでの幾つかの仕組みを改組されて集約化をされる、これもこれまでも指摘をしてきたことですから、私はそれなりに評価をさせていただきたいと思います。  そこで、一つだけお聞きをしたいと思うんですが、なぜ今日本がさまざまな手を打ってもなおかつ、お金はあるんです、資金力というのは多分まだあると思うんです。それから優秀な労働力もあります。技術もあります。なぜ行き詰まっているんでしょうか。  大変素朴なお聞きの仕方をしますけれども、この後の質問との関連がありますので、一言でというのはちょっと難しいかもしれませんが、長官感想で結構ですから、お聞かせいただきたいと思います。
  27. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) いろんな問題が山積しておるわけでございますけれども、一言で言いますと、やはりバブル時代にかなりの投資を行いまして生産・供給力が大きくなりました。それが現在の需要を上回る供給力過剰という現象を起こしておるのが一つであります。そして同時に、新しい産業がなかなか興ってこない。それぞれの分野で、先生御指摘になりました規制の問題もございましょうし、終身雇用の問題もございましょうし、あるいは日本社会全体に意気が沈滞しているということもございましょうから、そういう新しい産業がなかなか興ってこない。したがって、供給過剰部門がそのまま残されてきた。そして銀行の方も大量の不良債権を抱えておりますから、新規産業に大胆な貸し出しをしない、いわゆる貸し渋り現象かもしれませんが。  そういったバブル崩壊以来の大きなツケがいまだに解消されないで残っている、これで日本の力の動きが阻害されている、一言で言えばそういうことだと思います。
  28. 前川忠夫

    前川忠夫君 実は今アメリカからも内需の拡大が、これは最近だけじゃないんですけれども、常に言われているんです。消費者の心理ということを考えますと、もう既に四年ほどたちますか、PL法というのができました。それの車の両輪として今度は消費者契約法について経済企画庁が所管で議論をしておられる。私は今度の国会に出てくるのじゃないかという期待をしておったんですが、どうやら業界団体のさまざまな意見があって、反対とは言いませんけれども先送りをされたという話をお聞きをしています。  私は、消費者の心理あるいは今のさまざまな生活の中身を細かく精査をしていきますと、何か新しいものが出れば飛びついて買ってくれるという昔のような時代ではないわけです。そうなりますと、さまざまな消費者のニーズにこたえていくために業界自身がやっぱり発想の転換をしていかなければいけない。業界自身が責任を持つといいますか、ついせんだってもNHKで今成長している産業について特集で何日間かやっておりましたけれども、それを見ておりましたら、つくる側の論理ではなくて、使う側あるいは買う側の論理で物を考えるというふうになっているんです。  もし業界がまだ頭の切りかえができていないならば、それをやるように働きかけるのが経済企画庁であり通産省役割だと私は思うんです。ぜひこの問題については早急に結論を出すようにしていただきたい。間違っても余り骨抜きにならないように、ひとつこれは要望としてお願いをしておきたいと思います。後ほど経過がありましたら長官の方にお答えをいただいてもいいと思います。  そこで、もう一つは、今の問題とも関連をするんですが、もう日本の国内だけで仕事をする、商売をするという時代ではないということもありまして、金融とか情報通信、あるいは最近では自動車等でもまさに国境なき合併といいますか、そういう動きが進んでいます。  私は、今のこういう動きにこれまでの通産省のさまざまな施策や対応というのが本当に追いついていけるんだろうかという心配を実はしているんですが、この辺についての直近の対応策等がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  29. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御指摘のように、昭和三十年代の後半から自由化ということをずっと進めてまいりまして、WTOの合意等もございますし、また金融ビッグバンもあって、いわば経済というのはほとんど同じようなルールで世界じゅうで運営をされております。  そういうときに通産省がどう対応していくかということでございますが、一言で言いますと、やはり日本経済が持っている競争力を確保すると申しますか、回復するということに私は尽きるんだろうと思います。  昔ですと、設備過剰がありますと、国内で設備の調整をいたしますと供給力がそれなりに調整できましたけれども、今のように国境のない経済ですと、例えば設備調整をいたしましても、国境を越えてその商品が入ってくるということでございます。したがいまして、根本的な療法というのは、やはり競争力を維持、回復するという一点に尽きると私は思います。  競争力の源泉たるものは何かといえば、先生が今言われましたような経営者の発想の転換であり、また、新しい技術日本の持っている独創的な発想、そういうものを生かした企業展開である、そのように思っております。
  30. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 消費者契約法について申し上げますが、昨年一月に国民生活審議会の方から消費者契約法のような一般的な法律をつくるようにというような勧告をいただきました。その後、二十八業種五十二団体と協議をいたしました。  この消費者契約法は、私は大変必要な法律だと考えておりまして、これができることによって新しい業態、新しい流通・サービス業態に対して国民的な信頼を与えることができる、そういう点では大きな進歩につながる問題だと考えております。消費者を保護するだけではなしに、新しい業種、業態をつくり出す上でも重要だと考えております。  これを法定していきますために鋭意作業をいたしましたが、重大な問題が幾つか出てまいりました。その第一は、記載すべき重要事項とは何であるか、あるいは不実記載とは一体何であるか、これはことごとく裁判の問題になることが想定されるから、きちんと決めなきゃいけません。それからもう一つは対象でございまして、消費者とは自然人に限るべきか、そして事業者とは一体どこまでを言うべきか、宗教はどうなのか、学校、国立学校はどうなのか、一つずつ大問題がございます。  私といたしましては、ぜひともことしじゅうにこれを各業界に御納得いただけるようなものにいたしまして、できるだけ早い機会に実現したいと思っておりますが、かなり大きな問題を含んでいることも御理解いただきたいと思っております。ぜひこれは実現したいという気持ちでございますけれども、そういう問題をこれから鋭意解決して実現させていただく。諸外国でも、今我々が用意しておりますほど包括的な消費者契約の一般保護法を持っている国はまだございません。部分的には相当ございますが、全般にはございません。したがって、日本がこれを先駆けとして立派なものをつくっていきたいと考えている次第でございます。
  31. 前川忠夫

    前川忠夫君 ぜひ、長官の決意だけで終わらないように御努力をいただきたいと思います。  そこで、先ほど通産大臣の方からお話がありました。つまり、競争力という問題ですが、実は最近あらわれた事象として、日米の鉄鋼摩擦の問題。  昨年の九月に、アメリカの鉄鋼メーカー、それから労働組合からアンチダンピング提訴がされて、まだ決着がついていない。近々ダンピングマージンについての仮決定がされるというふうにお聞きをしております。実は、また年が明けましてからも、今度は厚板についても同様の動きが出てきている。  私は鉄鋼の皆さんともいろんな話をする機会があるんですが、日本の鉄鋼産業というのはまさに血の出るような合理化をコストの引き下げを含めてやってきたわけです。アメリカは景気がよかったものですから、しかも鉄鋼の生産力が追いつかないということで日本から輸入したわけです。それでふえたわけです。ふえたらアメリカの鉄鋼メーカーの経営に影響がある、簡単に言ってしまいますとこういう言い分です。私どもから言うと、まさに理不尽としか言いようがないんです。しかも、これは大統領まで巻き込んでの話になっているわけです。日本が一生懸命努力したら結局こういう問題が起きる、一体これはどうなっているんですかという思いが業界の人たちには強いわけです。  もちろん、通産省大臣もいろいろな動きをされているという情報を私もいただいていますし、鉄鋼課の皆さん方もいろいろやっておられるというのはわかっているんですが、解決の見通しがこれでつくんだろうかという思いがありますので、その辺について一つはお聞きをしたい。  これももう一つ似たような話で、昨年成立をしました省エネ法に基づく例の自動車の燃費の問題、今度はアメリカとヨーロッパを巻き込んだ問題にどうも発展をしそうだというニュースがここ最近出ているんですが、この問題のこれからの通産省としての対応等についてもございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  32. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) まず、鉄鋼の問題でございますが、政府としては冷静に対処をしてまいりたいと思っております。  先生まさに御指摘のように、日本からアメリカに対して鉄鋼の輸出は確かにふえました。しかし、これは米国市場の旺盛な需要を反映したものでございまして、日本が洪水的な輸出を意図を持ってやったということはございません。  しかし、米国内には米国内のいろいろな社会的、政治的状況もあるというふうなこともございまして、通産省が言ったわけでもありませんし、各社で相談したわけでもございませんけれども、鉄鋼各社は自主的にまさに各社ごとに輸出に関しては大変用心深くやっておられるように伺っております。  ただ、我々としては、輸出、輸入に関しては国際的なルール、その代表的なものはWTOでございますが、そういうものがあるわけですから、いかなる措置もやはりWTO整合性ということが大事なんだろうと思っております。  第二点の燃費の問題でございますけれども、これはWTOの中にTBTというのがございます。これは、技術の問題である種の貿易の障壁となるというような項目について議論をするわけでございますが、日本としては、アメリカ、ヨーロッパ、こういう自動車の主要生産国に対してある種のメッセージを送りました。これに対してアメリカ、ヨーロッパから意見が出てきたわけですが、これは普通のプロセスでございますから、アメリカ、ヨーロッパの意見も十分聞きながらこの問題に対処していくということで、これも冷静な対処ということが望まれるんだろうと思っております。
  33. 前川忠夫

    前川忠夫君 時間がもう残り少なくなりましたので、要望だけ申し上げておきます。  確かに、大臣がおっしゃるように、一つ一つのこういう事例をとらえてヒステリックになる必要はもちろんないと私は思うんです。ただ、その業界にとってみれば、まさに血のにじむような、先ほども申し上げましたけれども、鉄鋼業界もそうですし、例えば自動車業界もそうです、燃費の改善やあるいは排ガス規制、さまざまな問題をクリアしようということでさまざまな努力をしているわけです。ある部分クリアをしたと思ったら、今のような問題がまた出てくる。  これもある意味では産業界、経済界の必然だと言ってしまえばそれまでですし、その点はある意味では割り切れる部分があるんですが、国家間のあるいは地域間のこういう問題に発展をした場合の行政の役割といいますか、政治の役割と言った方がいいんでしょうか、というのは大変大事だと私は思うんです。  例えば、今鉄鋼メーカーの皆さんも、それから鉄鋼労連の委員長も近々アメリカの方へ行きましてUSWAの会長とお会いをして、できれば鎮静化をするような努力をするというふうにおっしゃっていますが、これはぜひ国としてサポートしていただかないと、これは産業界の問題だからというだけじゃ済まないわけです。ぜひその点については、さまざまな努力をされていると思いますけれども、ひとつ一層の努力お願いしたい、このように考えています。  それから、質問の通告をしておりましたエネルギー問題については、ちょっと時間がありませんので意見だけ申し上げておきたいと思うんです。  最近、昨日ですか、中央環境審議会の中で、例のいわゆる地球温暖化対策に基づく原子力発電所の設置計画の問題等について議論されて、一定の方向が出たというふうにお聞きをしておりますが、その過程をめぐってさまざまな議論、行ったり来たりと言った方がいいんでしょうか、議論があったというふうに聞いております。  私は、原発の問題についてヒステリックに議論をする立場には立っていません。  しかしながら、これまで原発の問題というのは、計画を立ててはずれ、計画を立ててはずれ、今度も核燃の廃棄物の問題で法案が科学技術庁と共管で出てまいりますが、あの法案の中にも盛られているさまざまな経過を見ますと、やっぱり国民の理解というのがまだ必ずしも十分ではない。それだけに、エネルギーの長期需給計画の中で、原発二十基という計画そのものも私はほとんど不可能に近いのじゃないかと。なぜそれだけこだわられるんだろうという思いが実はしてならないんです。  そんな思いもあるものですから、今度の法案はどこで審議されるかまだ最終決定していないようですから、改めてその場で原子力発電の問題等を含めたエネルギー問題については議論をさせていただきたい。大変強い関心を私ども持っていますので、環境問題からの視点での原子力の必要性というのは否定していません。しかしながら、国民の中にある問題がまだクリアをしていない状況の中で、計画だけに固執をされるということについてはやはり見直しをする必要があるのじゃないかという、きょうは問題提起だけひとつさせていただきたいと思います。  時間がありませんので、これで結構です。ありがとうございました。
  34. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤でございます。  衆議院から情報公開法案が送られてきておりますけれども、特殊法人についても国民に大きく情報開示をしなければいけない、そういった時代になってきているわけです。にもかかわらず、そうでない部分が非常に多い。  前回、所信の中で大臣は、「環境・エネルギー制約への挑戦」ということで第七番目の課題として取り上げておりますけれども、その中で、石油公団の関係につきまして透明性を確保する云々の話がございました。  私は、きょう、その石油公団の問題とエネルギー問題について取り上げたいわけでありますけれども、石油公団については一連の報告がございます。  私は、その中身を検討していきますと非常に大きな疑問がございまして、場合によってはもう一度調査をすべきではないかというふうに考えております。  その前に、前石油公団総裁の退職金の問題でございますけれども、今回の二月二十五日の報告書の最後においてこのように書いてございます。「国会をはじめとする各方面の指摘を受けるまで、事業の十分な見直しが行われず、対応に迅速さ、的確さが欠けていたことは否めない。」、こういうふうに指摘されているわけです。  このように問題が客観的に評価された以上、公団の総裁以下役員に経営上の責任があることは否めない。それでも資源エネルギー庁は、単に高齢等の理由により依願退職されたと解釈する考え方なのか。あるいはさらに退職金についてでございますけれども、既に支払いが終わっているのかどうか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  35. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 石油公団には退職金に関する規程がございます。その規程に基づいて石油公団の総裁が判断をされると思っております。公団の総裁は具体的なことについてはまだ決めておられないと思います。
  36. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、キャッシュフロー分析の結果について質問したいわけです。私は結論的に言いますと、実際は相当悪いにもかかわらずよく見せているような感覚でおります。  限られた提出資料の中での判断でありますけれども、第一番目にキャッシュフロー分析がすべての石油開発会社を対象としていないことだと思うんです。特に、財政状況が厳しい探鉱段階の六十八社のうち四十九社が対象外になっている。これは、実質的には開発会社全体の営業支出がこれ以上に大きくなる可能性が含まれていると思うんです。  そこで、なぜこの四十九社を対象外としたのか、まずその辺について伺いたいと思います。
  37. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) キャッシュフロー分析につきましては、現在生産を行っている会社、これにつきましては将来の生産計画が立てられますものですから、それを踏まえて計算をしたというわけでございます。また今般、と申しますのは、昨年九月の通産省がまとめました報告書におきまして、会社を整理する方針のものにつきましても、これは損が確定いたしますので、それについてはその損を計算したわけでございます。  ただ、現時点で探鉱中の会社というものにつきましては、最終的にそれが成功するのか、また失敗をするのかということがはっきりしないものでございますので、それについてはキャッシュフロー分析という概念になじまないということで除外してございます。これにつきましては、私ども考え方は、他のキャッシュフロー分析を行った会社と同じような傾向をたどるのではないかということで対象外にしたものでございます。
  38. 加藤修一

    ○加藤修一君 九月二十九日の報告書の三十七ページに今言ったようなことが書いてあるわけですけれども、「これらの会社以外の石油公団の出融資先会社の見通しと同様の趨勢をたどるものと見ることができるため、今回の分析の対象からは除外した。」というふうに言っております。今の答弁と同じですけれども、これは意味がわからないんです、どういう意味ですか。
  39. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) キャッシュフロー分析の対象としたものには、ナショナルプロジェクトを中心とした非常に厳しい状況に陥っている会社と、また一方で非常に利益を上げている会社がございます。  それで、現在探鉱中の会社につきましては、これが将来成功するかまた失敗するかというのは、実は現時点では個々のプロジェクトについては判定できかねる問題でございます。私どもはたくさんプロジェクトが成功してくれることを祈りますけれども、現時点では判断ができないものでございますので、他のキャッシュフロー分析を行った会社の損益とおおむね方向が一致してくるのではないかということを考えて、このキャッシュフロー分析の外に置いたわけでございます。
  40. 加藤修一

    ○加藤修一君 今、最後の話をそのまま受けて考えますと、ある意味では一つの前提のもとにキャッシュフロー分析に繰り入れてやっていくことも可能ではないかという、一つのシミュレーションとしてはできるのじゃないでしょうか。それについてやって、提出すべきだと思いますけれども
  41. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) まだ探鉱中のもの約五十社につきましては、私どもはこれが成功することを祈って期待しておるわけでございますけれども、これが現実的に、探鉱段階でうまく成功しない、それから今度生産段階に入りました後、それがどの程度の利益を上げるのか、かつかつでいくのか、そういうことについて現時点では判断ができないということで私どもは計算外にしたわけでございます。  この全体の金額が八百六十億円で、石油公団の貸し付け、出資、債務保証額の全部の約六%でございますので、その意味でこれが残りの九四%とおおむね同じ方向で今後趨勢をたどるということを念頭に置いて計算の外に置いたわけでございます。
  42. 加藤修一

    ○加藤修一君 ちょっと理解できないんですけれども、ここにとまっているわけにいきません。  次に、四枚目の資料の方を見ていただきたいんですけれども、これは資源エネルギー庁から出していただいた資料で、多少我々の方で見やすくするために文字だけはつけ加えてございます。  この分析の中身を見ますと、代位弁済額が今後ゼロになっていたり、保証残高、これが二〇〇五年以降一定になっているわけです。これは過去の実績と比較してかなり乖離があるように私なんかは理解しているんですけれども、これはどういうふうに見解をお持ちですか。
  43. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) このキャッシュフロー分析につきましては、それぞれの会社が二〇二〇年までどういう収益を上げて、どれぐらい生産をして、それに為替レートと油価を掛けますと手取りの収入が出るわけでございますけれども、それから操業費などを差し引いた後、債務の返済に充てられる金額が計算されるわけでございまして、それを債務の返済でございますとか債務保証の解除だとか、そういう形でそれが使われていくという形になりますとこのような姿になるという私どもは計算をしたわけでございます。
  44. 加藤修一

    ○加藤修一君 石油公団の求償権の推移を考えていきますと、平成五年から平成九年まで決算額については百十四億円、百五十一億円、百九十二億円、平成九年度二百三十四億円ということで代位弁済の関係で求償権を持つに至った推移の金額を書いております。一九九八年まで書いていますけれども、それ以降、一九九九年以降は全部ゼロですよ。  それから、先ほども申し上げましたけれども、二〇〇五年以降の保証残高については百八十八億円ということでずっと同じ値が入っているんです。非常に不自然な形でこれは非常にわかりづらい。 これ、説明できますか。
  45. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) この表は、こういう仕組みでできております。  今現在、石油公団が出資したり貸し付けをしたり債務保証をしたりしている金額がまず大前提にありまして、そこから幾ら返済の回収が行われるか、それから債務保証の解除が行われるかということでございます。  それで、先生お挙げになりましたこの保証残高のところが一九九八年までが四百八十四億円、それが徐々に減ってまいりまして、確かに二〇〇五年から百八十八という数字がずっと並んでおります。ちょっと私、今この細かいバックデータは持っておりませんけれども、これは恐らく、ある会社がその時点で債務保証残高を残したまま終了するということだと思います。  これは、なぜこういうことを計算化したかと申しますと、このキャッシュフローを計算するに当たって、このケースでいいますと十社でございますけれども、十社で保証残高を結局幾ら最終的に保証せざるを得ないかという数字を出したものでございます。それが百八十八億が保証残として残る、すなわち石油公団の負担として残るという数字がこの百八十八ということでございます。
  46. 加藤修一

    ○加藤修一君 代位弁済の方は。
  47. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 代位弁済につきましては、結局、保証残高をある段階で保証すれば代位弁済ということになるわけでございますけれども、この計算はあくまでも石油公団の最終的な収支がどうなるかということでございますので、保証残が、結局百八十八億円保証せざるを得なくなったということがここではっきりいたしますので、それは最終的には代位弁済という形になって求償権となりまして、求償権が取り立てられないということになるわけでございますけれども、計算上保証債務が百八十八億残る、保証残が百八十八億残るということで、この分だけ石油公団が損失になると。  すなわち、これは結果として、その具体的な行為としては代位弁済が行われるということでございますけれども、この計算上は百八十八億が石油公団の負担として残るということでここに記載させていただいておるわけでございまして、その意味でここにゼロと書いてあるのは、言ってみれば百八十八億代位弁済が行われるというふうに考えていただいてもよろしいかと思います。
  48. 加藤修一

    ○加藤修一君 それなら、ゼロと書くのがちょっと理解できないんですけれども。ちょっと時間がないから次の機会にまたその辺について明確にしたいと思います。  二月二十五日の報告書の中には、報告書の十ページでありますけれども、「前提条件である為替レート及び原油価格について幅を持った見方をしていること、」云々、これは「評価できる。」というふうになされているわけですけれども、これは幅を持った見方は評価できると言っているだけだと思うんです。要するに、前提条件自体の妥当性については一切触れていないように私は思っていますけれども、この辺はどういうふうにお考えですか。
  49. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 二月二十五日の石油公団開発事業委員会報告書は、第一人者に集まっていただいて中立的な形で議論していただきましたものですから、また大臣からも事務局は書記に徹するようにということで御指示がございましたので、私どもがこの議論について参画したというわけではございません。  ただ、その議論の経緯を申し上げますと、先生おっしゃるとおりでございまして、この委員会におきましては、キャッシュフロー分析の手法、考え方、手順、これについては適正であるということ、それから情報公開の観点からまたは石油公団の現状を示す観点からさまざまな幅を持った見方をとったということ、それから一ドル油価が動きますといかほど石油公団の収支が変わるのか、そういうことについて具体的に私どもが九月に行った報告書で明示したことについては評価できるということでございますが、その油価それ自体についてこの委員会が御評価されておるわけではございません。その点、先生おっしゃるとおりでございます。
  50. 加藤修一

    ○加藤修一君 その九月二十九日の前提条件についてですけれども幾つかちょっとトリッキーなやり方をしているように私は思うんです。  その第一番目を考えていきますと、例えば楽観的なケースとか悲観的なケース、それぞれ一番目、二番目の紙に書いてございますけれども、楽観的なケースについて例えば過去のほぼ最善に近い値を想定しているにもかかわらず、悲観的なケースについては過去の平均的な値を採用しているにすぎない点が私はあると思うんです。ここでちょっと何かトリッキーだなと私は思っているんです。  例えば原油価格について考えていきますと、楽観的なケースにおいては、過去五年間における六カ月平均の最高値を考えている、こういうふうに報告書に書いてあるわけですけれども、その結果一バレル二十・七ドルを想定しているわけです。悲観的なケースにおいては、これは理由がちょっと明確でないんですけれども、どういう理由でこういう方法を考えているかわからないんですけれども、過去の三年間または五年間の平均値の低い方という条件をあえて設定しているんです。楽観値と悲観値の方で同じ設定の仕方じゃないんですね。楽観値のケースと同じようなやり方を考えていきますと十六・一ドルにならないですよ。計算していきますと、十三ドルになってしまうんですよ。  ですから、この報告書に記述されている感応度分析に基づいて、この十六・一ドルじゃなくて十三ドルで公団の最終損益を試算してみますと約五千億円の赤字となるわけです。これはレポートの二千四百九十億円の赤字の倍以上になりますよ。少なくとも倍にはなりますね。こういうことについてはどういうふうにお考えですか。
  51. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 二〇二〇年までの予測でございますので、油の価格及び為替のレートにつきましての予測は大変難しゅうございます。それで、ここで行いました、先生おっしゃられました三年または五年の平均のうち低い方というもの、このケースでいうと厳しい方のケースでございますけれども、これは一般的に石油産業が石油開発に当たって今後の油価を算定するときの厳し目のケースに相当いたします。また、過去五年間において連続して六カ月の高い方というのはプラス、より条件が緩やかな有利な形に相当いたすものでございまして、私どもはベースにはそういう考え方でこの計算をはじいたわけでございます。  ただ、そういたしましても、為替及び油の価格が今後どの程度動くものかというのは非常に議論のあるところでございます。したがいまして、議論ができるような形でレポートを提出したいということで感応度分析を行ったわけでございます。一ドル違えばいかほど収益が変わる、為替が十円違えばいかほど収益が変わるということについて、そこを可能な限り明確に明示して議論をしていただく、国民にこれが明らかになるような形で私どもとしてやったつもりでございますが、前提となります二つのケースにつきましては、従来石油開発においてとられてきた考え方を踏襲したわけでございます。
  52. 加藤修一

    ○加藤修一君 質問に正確に答えていないように私は思います。要するに、悲観的なケースの方において理由が不明で、あえて過去の三年間または五年間の平均値の低い方なんというのは、これはどういうことですか。
  53. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 通常、これは日本だけではなくてメジャーなども行っていると聞いておりますけれども、今後、例えば石油開発を行う、探鉱する場合に、プロジェクトの採算性をはじく場合に油の値段を将来どう見込むかということでございますが、それは、それぞれの油種について過去三年間の平均値または過去五年間の平均値をとりましてその低い方を基準にする、そういう形で、それを将来の油価、予想される油の値段として計算をしているのが今までの通例でございます。  また、通常の場合はそれに三%とか二%のインフレ率を掛けます。そういう形で計算されるのが通常でございますので、私どもはそれに従って行ったわけでございます。
  54. 加藤修一

    ○加藤修一君 ちょっと私はまだ理解できませんが、二つ目のトリッキーな面を考えていきますと、報告書で想定している為替レートと原油価格の組み合わせ、これについてもちょっと理解できないんです。過去の実績に基づいて考えていきますとちょっとわかりづらい。  例えばどういうことかといいますと、報告書における楽観的なケースでは、先ほど申し上げましたように原油価格が一バレル二十・七ドルです。そのときの為替レートとしては一ドル百四十五円が想定されているわけです。この為替レートと原油価格の組み合わせ、これは過去五年間に一度もこういうことは存在しておりませんよ。存在し得ない、非常に現実性がないやり方をしているように私は思うんですが、どうですか、これは。
  55. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) これは二〇二〇年までの長期的な想定でございますので、これが正しいかどうかという議論になりますと、これはなかなか難しいところでございます。  その意味で、感応度分析というのをつけ加えていろんな形で議論をされる。そんなに甘くないという議論もございますし、この委員会でも議論がありましたけれども、油価はもっと上がるんじゃないかという議論もいろいろあり得ようと思います。それを議論ができるような形で外に透明度を上げるというのが、私どもが九月につくった、御報告申し上げました報告書の趣旨でございます。
  56. 加藤修一

    ○加藤修一君 なかなか理解できないんですけれども。この組み合わせというのは、確かに過去五年間には一回だけ、グラフを見ていただければわかると思いますけれども、一九九六年十月前後に一バレル二十ドル程度のときがありました。その当時の為替レートは一ドル約百十四円なんですよ。先ほど言いました百四十五円、そういう形で計算しているということとは著しく違っているわけなんです。ですから、この百十四円で仮に計算していきますと、試算を試みてみますと、公団の最終損益というのは報告書の試算で出てきた三千七百六十億円の黒字とは大幅に違う。約一千六百億円の黒字にとどまってしまう。つまり半分以下です。  私は、この組み合わせは非常におかしい。マルコフ連鎖過程とかあるいは同時生起確率とかといって、言葉としてはそういうのはありますね。同時に起こることがあり得ないやつを起こったかのように前提条件として置いて試算をしていくこと自体、それはちょっとおかしいんじゃないですか。全然おかしいと思いますよ。
  57. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 実は、油の値段と円レートというのは、数学的に言えば独立変数でございまして、この二つの独立変数で物事を計算していくというのはなかなか手法としては難しいわけでございます。  これはいずれにしても、いっぱいお金が入ってくる、非常に極端に少なくしかお金が入ってこないという両極端を実は想定をしております。たくさんお金が入ってくるのは、油価も非常に高いところに行く、あるいは為替レートも円安に振れる、こういう場合には公団の経理は一遍によくなるということは先生すぐおわかりいただけると思います。  それでは、最も悲観的なケースはどうかといえば、これは円レートが非常に高くなって、また油の値段も低くなってと、こういう本当に両極端のケース、いい場合の極端と悪い場合の極端というものの間に物事が存在するだろうということを前提に物を考えているわけでございます。  確かに、バレル二十ドルのときには百十四円だったろうとか百四十五円のときにはこうだったろうとかいろんな過去の経緯はございますが、これはあくまでも将来を予想するという話でございますから、将来、物事がどういう幅の中におさまっていくだろうかということを計算するときには、過去経験した円レートの幅、それから原油価格の幅、これの両極端をとって、多分その中に将来入っていくだろうという、これは前提を置いた予想でございまして、こういうことが起きるということを言っているわけではないと。あくまでも予想として、二つの独立変数をどの範囲内に置くかということを前提に物事を試算しているということはぜひ御理解をしていただきたいと思うわけです。
  58. 加藤修一

    ○加藤修一君 確かに二つの独立変数だと思いますけれども、両極端のケースが過去起こり得なかったような想定を考えること自体に私は無理があると思うんです。  先ほど、ほかの委員質問に対して、パラメーターが云々とかそういうモデルの話がされたと思いますけれども、そのモデルだって、過去のトレンドに基づいてやっていくケース、それからパラメーターそれ自体が変数になる場合も当然あると思いますよ。しかし、このケースというのは起こり得ないケースです。例えば雨が降ってかつ雪が降るという、そういう同時的に生起するようなことをおっしゃっているようにしか思えないんです。こういうやり方をすると国民の方としては非常にわかりづらい。あたかもなるべくよく見せるようなことをやっているとしか見えない部分もあるわけなんです。これは私は善処すべきだと思います。  もう一度、例えば少なくとも現在の為替レートと石油価格で評価していくということも一たん試算してみて、それを示すことが私は必要であると思うんですが、どうですか。
  59. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) この二月二十五日にちょうだいいたしました石油公団開発事業委員会の結論におきましても、条件が大きく変化した場合には、このようなキャッシュフロー分析を見直すこと、また毎年それを見直してその前提条件も明示した上で、前年に比べて何がどのように変わったのかということも対外的に明確にすべきであるということを御指摘いただいております。  私どもは、その方針で今後キャッシュフロー分析を行い、それからそれを情報開示する、その場合に、先生がおっしゃいましたいろんな諸前提につきまして、それがどのように変わるのか、どういうふうに見通すのかにつきましても明確にした上で今後取り組んでいきたいというふうに思っております。
  60. 加藤修一

    ○加藤修一君 そうしますと、キャッシュフロー分析について年次報告的に明確にやるということですね。我々がいただいている情報を考えていきますと、それだけではなかなか確認のしようがないんですよ。だから、確認ができるような資料も添付して私は年次報告的に公表すべきだと思いますけれども、それについてはどうですか。
  61. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 先生との関係で、昨年来私ども、個々の会社の産油国との関係の守秘義務というのがございますので、それに触れないような形でさまざまな資料を提供させていただいております。また、先ほど申し上げましたように、この新しくちょうだいした報告書におきましても、可能な限りの情報公開を行えというのが前提でございますので、その意を体しまして可能な限り情報開示を進めてまいりたいと。それはこのキャッシュフロー分析についても同様でございます。
  62. 加藤修一

    ○加藤修一君 可能な限りというのは、やっぱりそれなりの基準が必要だと思いますけれども、そういった件についても明確にしていただきたいんです。そういうふうに抽象的に、定性的に言われてもなかなか我々としては、はいそうですかと言うわけにいかないわけですから。
  63. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 今般のこの石油公団開発事業委員会におきましては、すべての資料を開示して、産油国の秘密に係るものにつきましても開示をして議論をしていただいたところでございます。また、それのうちの一部分につきましては、この委員会及び私どもの判断で外には出せないということでございますが、基本的な資料はすべて公開をいたしておりますので、それに準拠して私どもとしては今後とも進めてまいりたいというふうに思っております。
  64. 加藤修一

    ○加藤修一君 今の答弁に関連して、石油開発会社の情報開示の関係で、報告書の中でも述べられておりますが、有価証券報告書並みに行うことが適当ということなんですけれども、これについて、有価証券報告書並みということじゃなくて、これは税金も当然入っているわけですから並み以上に考えていくべきだと思うんですけれども、その辺についてはどういうふうに見解をお持ちですか。
  65. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) まず、公団や特殊法人の情報公開がどうあるべきかという原理原則の問題でございますが、私は、公社公団等のあるいは特殊法人の情報はなるべく内容は透明性の高いものを公開すべきだと思っております。  ただ、現在、情報公開法が衆議院の審議が終わりまして参議院に回っております。その中では、やはり情報公開法の今回の対象からは特殊法人等が除かれておりますが、特殊法人等についても情報公開をすべきだという機運が高まっておりますから、特殊法人すなわち公団公社等の情報公開が制度的に整備されるということは間違いないわけでございます。  しかし、石油公団についてはそれに先駆けて公開しても、産油国との合意に反しない限りにおいては私どもとしては、先生が御指摘のようになるべく多くの情報を国民に提供するということは今後していかなければならない、そのように思っております。
  66. 加藤修一

    ○加藤修一君 情報公開法云々のことじゃなくて、ぜひやはり率先して特殊法人の大きい位置を占める石油公団がやっていくべきだと思います。  それと、産油国の話がございましたけれども、合意に反しない限りという話がありましたけれども、その合意の中身についても、やはり日本国民がこういうことについては非常に関心を深くしつつ、そういう厳しい時代になってきているんだということで、合意の中で出せるものについては、こういうことについてはどう思うのか、何とかしてほしい、こういうことについては出すべきであると考えていると、そういったことも向こうの相手国政府というか相手側に今後要請をしていく必要も場合によってはあるんではないかなと思います。  それと、今回の二十五日の委員会報告書の中身についてなんですけれども、「本報告書において提示されている意見は、委員全員の了解のもとに委員会の意見とされたものであるが、専門性の強い事項に関しては、特定の委員の意見であることを示す形で記述してある部分もある。」と、これは二ページに書いてございます。  これは非常にとらえ方が難しいんですけれども、例えば「キャッシュフロー分析の手法を用いて石油公団の長期的な損益見通しを検討するという再建検討委員会報告書の考え方は妥当である。」と、これは十ページに書いてございます。これは、委員会の見解であるように記述されている部分委員会全体の意見であるように書いてある部分と、「キャッシュフロー分析の具体的手順及び内容について、」、「適正なものと評価できるとする委員の報告があり、委員会としてこれを了承した。」というように、特定の専門家の見解に全面的に依存しているように解されるわけですけれども、総意と特定の者の見解はやはりそれぞれ違うこともあると思うんです。その点、どういう認識でその辺を考えていらっしゃいますか。
  67. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) この報告書につきましては、委員会で細部まで文章をおつくりになった関係もございますので、私は経緯を申し上げます。  この中で、このような指摘があったというふうに書いてある部分がございます。それにつきましては特定の先生の御意見でございました。それから、そういうふうに一般に書いてあるものにつきましては、これは委員会全体の意見でございます。  今、先生の御指摘部分につきましては、非常に大部でございましたので、キャッシュフロー分析の方法論などにつきまして委員会議論をした上で、特定の先生にサンプル調査を含めて研究をしてみてくださいということでございました。委員会としてはその報告を受けて、それではこれ全体を委員会の結論にいたしましょうということになりまして、ここにありますような「適正なものと評価できるとする委員の報告があり、委員会としてこれを了承した。」という表現になったというふうに理解しております。
  68. 加藤修一

    ○加藤修一君 いや、もう時間がないですから追って質問することは考えておりませんが、いずれにしても、別の機会に質問いたしますけれども、キャッシュフロー分析の前提条件についても非常にわかりづらい、もっともっとそれについてはわかりやすくしていただきたいということと、やはり設定の仕方がどう考えても常識的に考えられない、そういうところがたくさんございますので、別の機会にその辺については明確にしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  69. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党山下です。  まず、通告にはなかったんですが、堺屋長官に一つお聞きしたいと思います。  先ほどの議論の中で、昨年とことしの減税のあり方について交わされました。私どもも、去年の特別減税を打ち切ってことしの減税方式に改められることによって中低所得層の多数の皆さんが差し引き納税額が多くなる、増税になる、これは本当に景気対策としてやるべきじゃないという立場です。どうも長官お話を伺っておりますと、どの階層に減税をすることが消費の拡大となってより多く返ってくるのか、反映されるのかというのは今複雑なんだと、限界消費性向もるるお述べになってそういうことをおっしゃいました。  しかし、私は、その考え方を聞きますと、たとえ中低所得層で消費が減ったとしても、その分高額所得層で消費がふえればトータルとして消費が減らなければいいんだと、日用品や衣料品などを買う人が減っても、高額な商品を買う方がふえれば、トータルとして消費が変わらないからいいんだというふうな、そういう思想にもつながっているんじゃないかと私は思うんですが、長官、この点いかがでしょうか。
  70. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 景気対策という観点から消費議論されますと、まさにそのようになると思います。  ただ、重要なことは、私があるいは政府が申し上げておりますのは、三百六十万、今度教育等を入れますともうちょっと上がることになりますが、三百八十万と四百九十一万円との間の層をどうするかという問題でございます。ずっと低所得の三百六十万以下の層につきましては、以前も今回も変わりません。  この四百九十万円、四百万円台の層、この層を見ますと、かなり年齢構成その他家族構成等を考えますと、限界消費性向の低い層である。これをより低い人々と同じように扱うのが本当にいいことかどうか。四百万円台の所得を持たれるほどの方は、率は八%に下げましたけれども、幾らかやはり国家の財政にも御貢献いただくべきではないか、そういう発想がございます。  低所得者と言われますから、いかにも非常に低いところから今回増税したように思われますけれども、平均世帯で三百八十万円ぐらいまでの層は同じように無税になっておりまして、その層の消費にはかかわりはございません。このいわば四百万円台の層をどう見るかということなんです。  景気対策として申しますと、繰り返し申しますように、第四階位、ちょうどお子様が高校、大学へ行かれるようなサラリーマンの多い層が非常にきついということで、その層に減税があっていいんじゃないか。  それからもう一つ重要なことは、今、日本では業を起こす人が非常に減りました。日本国民全体に期待のない、希望のないような状況がございまして、努力をし、かけをして、かけをしてと言うのは語弊がありますが、やはりリスクを冒しても業を起こした人々に成功の報酬があるということがこれからは必要なんじゃないか、そういうようなことを種々考えまして、諸外国の例等も考慮いたしますと、定額減税よりは今回の定率減税の方がよりふさわしい税制であろうかと考える次第でございます。
  71. 山下芳生

    山下芳生君 私は、どの層に減税をすれば消費にはね返る量が大きいのか小さいのかという議論を、やはり今全体として見てやるべきではないと思っているんです。圧倒的に中低所得層の方が今不況の長引く中で大変苦しい生活を強いられている。ですから、やはりそこにどう手厚い支援をするのかということこそ景気対策としても、またあるべき政治としてもやるべきではないかというふうに思っているのが国民の多くの皆さんだと思うんです。ですから、全体として限界消費性向を出して、どこに減税するのが消費が多いか少ないかという議論は、私は今やるべきではないというふうに思っております。  続いて、貸し渋りの問題について伺いますが、与謝野通産大臣は所信表明の中で、「貸し渋り対策に引き続き万全を期してまいります。」とお述べになりました。しかし、金融機関の貸し渋り、貸しはがしは残念ながら一層強まっております。数字を見ますと、金融機関中小企業向け貸出残高、これが昨年十二月の末で前年同月と比べてマイナス四・五ポイントまで落ち込みました。貸し渋り倒産も昨年、九七年一月からの累計で一千件を超えております。  まず大臣に、この中小企業への貸し渋り、これは是正されているのか、その現状認識について伺います。
  72. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 全体から申しますと、昨年の中ごろよりは状況は緩和されているとは思います。それは、金融システム全体が昨年の前半から秋にかけまして大変不安定になりました。銀行は自己防衛のみに走るという状況の中で、中小企業の皆様方は必要な資金確保ということが大変困難をきわめたわけでございます。しかし、金融安定に関する幾つかの法案国会で成立しました以降、若干その状況は、若干でございますけれども、私は改善されたと思っております。  加えまして、昨年十月一日から始まりました保証制度の中の特別枠、これも随分幅広く御利用いただきまして、これも中小企業の資金繰りに若干貢献をさせていただいたんではないかと思います。また、中小企業関係政府金融機関も、それぞれ中小企業に対しては丁寧親切、懇切丁寧に対応しております。そういう意味では、姿勢の問題としては我々は万全を期しているつもりでございますが、なお中小企業の中には資金繰りに困窮をきわめているというところもあるわけでございますので、私どもとしては貸し渋りに対しては政府のとり得る手段の中で万全の対策をとってまいりたい、そのような決意でおります。
  73. 山下芳生

    山下芳生君 金融機関全体で見た数字を私、先ほど紹介したんですが、これを規模別に見ますとくっきりするわけです。特に大手銀行、都銀、長信銀、信託銀行が中小企業への貸し出しをかなり減らしている。数字を紹介しますと、この都銀、長信銀、信託、大手銀行で見ますと、九七年十二月と九八年十二月を比べて中小企業への貸出残高が八兆四千億円減っております。地銀、第二地銀、信用金庫、信用組合は、同じその期間の間に、これでこぼこありますけれども、プラス四千億円ですから、維持ないしふやしている。大手銀行が中小企業向けへの貸し出しを減らしている。  それから、昨年の十月から特別保証が始まりました。これは多くの中小企業が利用されております。しかし、この特別保証が開始された去年の十月以降だけ見ましても、大手銀行、先ほど言いました業態別に見ますと五千億円、去年の十月の時点と比べても中小企業向け貸し出しが減っているわけです。私は、これはやはり昨年の三月に公的資金を投入されたこういう大手銀行が中小企業への貸し出しをむしろ減らしているということについては、これは通産省としてしかるべき監督庁なり通じて指導をさせるべきだと思いますが、この点いかがでしょうか。
  74. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 私どもとしては不当な貸し渋りということは社会的に許されないというふうに思っておりますが、昨年の金融システムが大変不安定になった以降、銀行が自己防衛にのみ走ったという状況は大変憂慮すべきことだろうと思っております。  ただ、行政としてあそこに貸せここに貸せということはまた言えないはずでございまして、これは純粋の民間の企業間同士の取引、金銭消費貸借契約でございまして、そこまでは私ども政府として言うべき立場ではないと思いますけれども、全体としてはやはり金融機関が本来持っている使命というものを関係者がよく自覚をしていただいて、円滑な資金を供給することによって日本経済のかなめとしての位置にあるんだという金融界全体の私は自覚を促したいと、そのように思っております。
  75. 山下芳生

    山下芳生君 全体もそうなんですが、やはり私、大手銀行、公的資金の投入ということを受けるわけですから、とりわけその社会的使命は高いというふうに思うわけです。けさのニュースでも、大手十五行、七兆四千六百億円注入される、貸し渋り対策としても効果が期待され、各銀行から出された経営健全化計画の中にはそれぞれ中小企業向けの貸し出しをどれぐらいふやすのかと数字も挙げて書かれているということも報道されておりました。  しかし、一方で、本当にその中小企業向け貸し出し増というものが実行されるのか、大変な懸念も聞こえてまいります。経団連の会長、今井氏はある新聞のインタビューに答えてこう言っております。民間銀行は不良債権処理と収益力向上を求められており、そもそも貸し渋りをやめろということにも無理な面があるのだ、二律背反するようなことを言われていてなかなか無理なことなんだと。これはなかなか現状を一面ではあらわしているというふうに思っております。  同時に、その懸念をさらに加速させようとしているのが金融監督庁が先日中間取りまとめとして発表した金融機関の検査マニュアルであります。私も見せていただきましたけれども、この監督庁の検査マニュアル原案によりますと、まず、貸出先の査定について、実質債務超過を解消するのに今後二年超を要する場合は破綻懸念先へ認定をする、そういう検討をされている。それから、二期連続赤字企業は原則として要注意先として認定をするということになっている。それに加えて、金融再生委員会が一月に示したガイドラインによりますと、破綻懸念先に対しては七〇%、要注意先に対しては一五%の引当率を実施しなければならないとされようとしている。  中小企業金融公庫の調査によりますと、中小企業は九八年五月から赤字企業の割合が黒字企業の割合を上回るようになった。こういう状況のもとでは、先ほど紹介したような新しい検査マニュアルあるいはガイドラインが実施されると、一層金融機関が融資の回収や貸出金利の引き上げを検討するのではないかという危惧であります。実際、金融機関の側では、もしこのマニュアルが原案どおり実施されれば、融資の回収、金利の引き上げなどを検討せざるを得ないという声も聞こえているわけであります。  これらに対して、日本商工会議所が「金融検査マニュアル検討会「中間とりまとめ」に関する意見」ということで意見をお出しになっております。「提示された本基準案をそのまま適用し、自己査定、引き当て等を行えば、現下の厳しい経済情勢のもとでは、破綻懸念先等に該当する中小企業が増加し、貸し渋りや資金の回収が拡大する恐れがあり、」と。それから、全国商工会連合会も、「「中間とりまとめ」に示された債務者区分の基準どおりに債務者区分が行われることとなれば、金融機関の判断次第で、多くの企業が破綻懸念先に区分され、貸し渋りが一層深刻になることも懸念される。」、「金融機関の本来の役割は、信用創造にあるべきであり、そのためには、企業技術力や営業力、経営者の資質等といった定量的には表しきれない要素をいかに評価し得るかが重要である。 金融機関が社会的に果たすべき役割を充分に踏まえた基準の策定が必要である。」と、こういう形で意見が出ているわけです。  通産省として、このマニュアルあるいはガイドラインに対してどういう認識をされ、どう対応されようとしているのか、伺いたいと思います。
  76. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) このようなマニュアルをつくった方というのは、マニュアルというのは実際にはもうちょっと弾力的に運用されるんだというようなことをおっしゃる方もおられるんですが、実際は現場に行きますと恐らくマニュアルが機械的に適用されるという世界をつくり出すのではないかと私は懸念をしております。  先生が今読まれました商工会議所の意見というのは、私は正当な意見だろうと思っております。やはり企業というのは、中小企業は現時点で苦しくてもやっている仕事が有望であるから、ここ二、三年を乗り切れば将来展望が開けるというものも結局は見捨てるというようなことになってしまいますと、その中小企業にとっても不幸でございますし、従業員あるいは家族も大変なことになりますし、日本経済自体にとってもそれは損失であるわけでございます。  私は、こういう検査マニュアルというものがまだ完全な形に、中間取りまとめになっておりますけれども中小企業に関すること、あるいはその他の中堅・大企業を含めまして、検査マニュアルが会社の経営ということにいかなる影響があるかということについては我々は懸念を持っておりますし、金融監督庁に対しましては、今までも意見をきちんと申し上げてまいりましたが、今後も我々は中小企業などの立場に立って、このマニュアルと企業経営ということに関しまして十分意見を申し上げたいと思っております。
  77. 山下芳生

    山下芳生君 通産省も実は意見を表明されているんです。これに対する金融監督庁側からの回答はあったんでしょうか。
  78. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 今、委員指摘のように、既に意見は出しておりますけれども、実はそれについてまだ内々いろいろ議論もしているところでございまして、これからもさらに議論を続けるというつもりでございます。
  79. 山下芳生

    山下芳生君 こういう企業のいわば数字の面でしかあらわれないところを見て貸す貸さないというやり方をやるべきじゃないと大臣おっしゃる点は、その点は私も一致しております。  そもそも銀行の体力をまた自己資本比率などで、これはもう学校教育で言うと偏差値のようなものです。それだけで一面的にはかってその金融機関の経営が健全かどうかということも、これまた判断するのはいかがか、やるべきじゃないと思っております。やはり金融機関の社会的使命を果たさせるという、これは行政としての指導が今後ますます重要になってくるということを表明しておきたいと思います。  次に、特別保証制度について伺います。  大臣は、これも所信の中で、「旧債振りかえ問題については、対策の本来の趣旨が歪曲されないよう、断固たる対応をとってまいります。」と、こうお述べになりました。金融監督庁の調査では、九八年十月から十二月の三カ月で三千九百三十五億円の旧債振りかえがあって、悪質な銀行には業務改善命令などを行政指導したとのことであります。  中小企業庁は、悪質なケースについては融資保証分を代位弁済しないということをお決めになって、制度が悪用されている事態を重視して聞き取り調査を強化するとの方針だと理解しておりますが、どういう調査をされ、その調査した結果はどうだったのか、またどう対応しようとされているのか、伺います。
  80. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 今、委員の方から金融監督庁の調査の結果のお話がございましたが、私どもといたしましても全国の信用保証協会を通じて実態調査をいたしました。十月―十二月につきましては、二十七協会から回答を得まして、トータルの保証承諾実績六兆二千六十三億円のうち旧債振りかえの形で回収に充てられたものは千八百七十七億円、約三%程度と認識をしております。また、ことしに入りまして、一月、二月につきましては、全協会から回答を受けておりまして、一月につきましては、保証承諾実績九千七百六十六億円のうち回収に充てられたものは百八十九億円、二%弱でございます。また、二月につきましても、九千八百三十三億円のうち回収に充てられたものが百四十七億円、これも一・五%程度で、漸減をしてきていると考えております。こういった調査につきましては、引き続き私ども全保証協会に対して今後も実施をしてまいりたいと思っております。  今お尋ねの調査、フォローアップでございますが、私どもといたしましては、一つには、本年一月に政府金融機関とかあるいは中小企業団体を通じまして、中小企業者から本旧債振りかえに対する御不満についてのアンケートをとらせていただきました。この中で、御協力をいただける中小企業方々につきましては、その後どういう不満についてどういう金融機関とどういうことがあったのか、現在鋭意フォローアップ調査をいたしているところでございます。  基本的には、私どもといたしましては、信用保証協会の窓口におきまして、特に金融機関経由で保証の申し込みが入ってくるものにつきましては、個別に当該中小企業者の御意思を確認するということを今徹底いたしておりますし、中小企業者の方にも旧債振りかえというのは原則は禁止されておって、特に当該中小企業者のためになる場合にだけ認められるものであるという点についての周知徹底もいたしているところでございます。  今後、調査、フォローアップを継続させていただきまして、特に悪質なケースが出てくる場合については代位弁済をしないとか所要の措置をとっていきたいと思っております。
  81. 山下芳生

    山下芳生君 額は相当減っておりますけれども、もともとこれは保証の額が減っているわけですから、率が三%から一・五%、しかしまた、これは半分、一・五%旧債振りかえがあるということ自体が大問題ですので、厳しくこれは指導もしていただきたいと思います。  それから次に、私、同時に、今問題になっておりますのは、保証協会による保証渋りということも話題になっております。長引く不況の中で、貸し渋り対策としてつくられた二十兆円枠の制度の陰で、保証を拒否されたり断念した中小零細業者が泣かされている、そういう記事も出ておりますし、私も大阪府や大阪市の信用保証協会の審査が厳しいという声を随分聞いてまいりました。この信用保証協会の保証渋り、これについてまず認識を伺いたいと思います。
  82. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 昨年、本制度を発足させるに当たりまして、我々、制度設計をする点で一番意を用いた点につきましては、今委員指摘のような保証について迅速、簡易に実行されるという点でございます。したがいまして、委員も御高承のとおり、積極的な保証をさせるためにはその審査条件、要件というものをできるだけ明確化しないと時間もかかりますし、結果的に保証が受けられないというケースもあるということで、一方で中小企業者あるいは信用保証協会のモラルハザードも回避しようという観点から、ネガティブリスト方式ということで、十項目から成るそういった審査の基準というものを明示的に定めてございます。  具体的に例を挙げて申し上げますと、例えば破産、和議、会社更生の手続中の場合等、事業継続の見通しが立たないようなケース、あるいは既に信用保証協会の保証制度を利用されておりまして、過去において代位弁済をされてその求償債務が協会に残っているような場合、あるいは大幅な債務超過に陥っておりまして今後事業継続が危ぶまれる場合というように、できるだけわかりやすいネガティブリスト形式で運用をしていただいております。  私ども、また別途その審査基準以外にも、できるだけ迅速に一週間とかあるいは十日以内に理由を明示してお断りをしろとか、あるいはお断りをする場合には役職者が特に対応しろと、きめ細やかな指導を今までもやらせていただいております。  今、委員指摘がございましたが、保証渋りそのものについては、私ども中小企業庁あるいは各通産局、県に苦情相談窓口というものを設けてございます。私どもだけの知り得る情報でございますと、こういった保証渋りの苦情なり相談の件数というのは大変少なくなってきておりまして、激減をしているというのが実態だと思います。
  83. 山下芳生

    山下芳生君 私が聞いたところによりますと、ネガティブリストが基準になっているんだけれども、それが本当になぜこれで保証が受けられないんだという、保証を申し込んだ側の中小企業の皆さんが納得されない状況がかなりあるんです。その保証を渋るといいますか、私はそう理解しておるんですが、その背景に保証協会の財政が逼迫しているという事態が一つあると思うんです。大阪府では保証協会の資金不足を補うために民間金融機関の出捐金を要請したりしておりますが、保証協会としてこの財政問題がシビアにならざるを得ない。  ですから、私は、ここできちっと必要な資金については保証するということを各保証協会が積極的にできるようにするために、閣議決定で決められているもともとの貸し渋り対策大綱、「臨時異例の措置として、各信用保証協会に経理を区分した特別の会計を設け、基本財産として新たに必要となる所要資金については、国から全額補助する。」、これを本当にちゃんと最後まで手当てしてくれるんだろうかということも保証協会の関係者から大阪だけではなくて全国で聞いております。  大臣、こういうことはしっかり最後まで約束を守るから、きちっと必要な保証については積極的にやりなさいと、全額これは補助するということをもう一度明言すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  84. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 保証協会が行っているということは、いわば借り入れを行った方が支払い不能に陥った場合にこれを代位弁済するということですから、いわばほとんどお金を貸しているということと同じような状況であるわけでございます。一応特別枠をつくりましたときには、無条件で全部保証するというわけにはまいりませんでしたので、どういう場合に貸せるのかということを決めたわけではなくて、どういう場合には保証できないのかということを決めるという意味でネガティブリストという言葉を使っておりますが、それは相当条件は緩和したと私どもは思っております。かてて加えまして、保証協会が保証を行う場合には、貸し倒れあるいは代位弁済をするのが保証した額の大体一〇%ぐらいだろうということも一応想定して制度設計をいたしました。  ただ、保証したものを代位弁済した後に、過去もそうですが、やはり保証協会としてはなるべく回収をしなければならない。これはやはり公のお金を使って代位弁済をしたわけですから、それは回収に努力するということは通常必要なことだろうと私は思います。過去においては、代位弁済をしましたものに対して約半分が回収できたというのが実績としてございます。私どもとしては今回も、代位弁済したものに対しては半分ぐらいのものを回収するということを前提に制度を設計しております。  我々は、もちろん全国の保証協会にこういう特別枠という制度を発足していただいた以上、回収できないものに対しては保険公庫を通じてそれを補てんしていくということは当然でございまして、もしその補てんをするのかしないのかと言われれば、それは当然のこととして政府は約束を守り、保険公庫を通じて保証協会に補てんするということは制度として当たり前のことでございますから、その部分は安心していただいて結構だと思います。ただ、特別枠といえども、代位弁済が将来発生した場合には、その回収の努力をするということもまた保証協会としての当然の義務であり責任である、私はそのように思っております。
  85. 山下芳生

    山下芳生君 最後に、特別小口保険について伺いたいと思うんです。  特別小口保険を受ける要件というのがあります。二つありますが、そのうちの一つに、これは納税の基準というのがございます。ところが、この基準が昨年の特別減税によって、納税の能力は実際にあるんだけれども納税額がゼロになる人々が生まれるという事態が生じます。国税庁の税務統計から見ますと、申告納税者のうち営業所得者が二百十三万人いらっしゃる。そのうち、今回の特別減税で課税額はあったけれども納税額がゼロとなる方々は約どれぐらいになるのか聞きますと、六十万人だとおっしゃるんです。これまでの特別減税と比べて、定率ではなくて定額ですから、これはかなり納税額ゼロになる方が多い。そうしますと、こういう方々が特別小口保険に対応する無担保無保証人融資や保証が受けられないことになってしまう。これは私は、政府政策として行った特別減税によって納税額がゼロになった、それによってこういう無担保無保証人融資が受けられなくなることなどはあってはならないことだと思うんですが、これはきちっとフォローすべきではないでしょうか。
  86. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 特別小口保険につきましては、委員も御承知のように、昭和四十年に従来ありました普通保証、無担保保証に加えまして、特に零細な中小企業者、小企業者であって担保も出せない、第三者保証もとれないという方につきましては、現在、一千万円を限度ではありますが、迅速、簡易に保証のできる制度として極めて政策的に設定された制度でございます。  その場合に、当然のことながら、その返済可能性につきまして、ある程度外形標準でわかる簡易な客観的な基準を定めようということで、居住要件とか納税要件、委員がおっしゃったように既に設定をいたしてございます。その基準ということがあることによって、逆に特別小口保険の運用が非常に簡易、迅速化されているというメリットについても御理解をいただきたいと思います。  定額特別減税によってこの客観的、形式的な要件が欠けてくるという今の御指摘につきましては、私どもも、実際六十万人、六十万社あるのかどうか現時点では具体的に承知をしておりません。したがいまして、そういった影響の実態あるいは過去に類似の事例があったのかどうか、そういった点について十分研究をしながら引き続き検討していくべき性質の課題だと認識をしております。
  87. 山下芳生

    山下芳生君 これは最後に大臣にちょっと御意見を伺いたいんですが、政府景気対策として必要だということで実施した特別減税、それは減税の恩恵にはあずかったわけですが、これで一方で納税額がゼロになって特別小口保険が受けられなくなる。これまでもいろんな減税によってそういう事態が生まれてきたわけですが、それは定率減税だったということもありまして余り大きな問題にならなかったと私は承知しております。  今回、今、確定申告中でございますけれどもかなり量的にもこれは大きくなる。それから、特別保証のニーズもこれからまた年度末あるいはこれから融資を返済していくということになると大きくなる。だから、これはかなり大きな問題になると思うんです。これは政府政策によって発生するわけですから、これは何らかのやはり対応を検討するべきだと思いますが、最後に大臣の見解を伺いたいと思います。
  88. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) いろんな制度を改正してまいりますと、制度の中で衝突が起きるということはあり得るわけでございまして、今後通産省では少し研究をしまして、またどのぐらいの方が影響を受けているかということも全体割合を勘案しまして研究をさせていただきたいと思っています。
  89. 山下芳生

    山下芳生君 終わります。
  90. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 両大臣には、もう昼も大分過ぎておりますが、お疲れでございます。私は持ち時間が二十分でありますから、後で提案したいことも幾つかありますので、答弁の方は要点をまとめてお願いをしたいと思います。  最初に、堺屋経済企画庁長官に所信表明演説につきまして質問したいと思うんですが、冒頭、堺屋長官、一生懸命頑張っておられることにつきまして心から敬意を表します。  その堺屋長官の所信演説でありますが、一、二どうしても言っておかなきゃならないひっかかるところがあるんです。一つは、今日の深刻な経済状況には、短期循環、長期波動、歴史的発展段階の転換という三重の波が重なり合っておる、九七年初期を頂点として景気は下降局面に入っております、こう言いながら、最後にこの件につきましては、これらの三重の波は相互に絡み合っており、現下の経済困難から脱出するには、これら三重の波を同時に解消していかなきゃならない、こう言われておるんです。  九七年に、我々も与党の端におったんですが、橋本内閣消費税を二%上げました。そして、特別減税の二兆円を打ち切って、医療費と薬剤費を上げて、これが二兆円、合計九兆円、これを国民所得を切ったわけです。まさにデフレ政策をとった。そのデフレ政策をとった背景には経企庁の経済に対する読み、今経済はいい、悪くないという経企庁の判断あるいは大蔵省の判断、そういうものが根底にあって橋本総理は、我々も経済は大丈夫かといって議論したんですが、やっぱり切っていったわけです。  この点について経企庁が犯した誤り、こういうものが、ここでさらっと客観的な書かれ方をしておりますが、やっぱり反省が足らないんじゃないか、これが一つ。  それからもう一つは、バブルの後遺症です。これがずっと後を引いておる。いわば第二次世界大戦で負けた日本の損失額と同じような損失を国民はこうむった、こう言われておりますが、この点についての反省がどうも足らないんじゃないか、これが二つ目。  それから三つ目に感じたのは、「需要喚起政策」というところで、「税制面では、六兆円を超える個人所得課税、法人課税の恒久的な減税に加えて、個人の住宅取得等に対する特別措置」云々と、こうなっております。  先ほどから議論されておりますように、私が申し上げたいのは、民間の就業労働者の数でいきますと、八百万円以下の給与所得者の数が全体の八六%を占めておるんです。圧倒的多数なんです。言いたいのは、ここがマイナスに、ここの所得が落ち込むわけです。特に私の県なんか田舎の県ですが、大分県なんですが、平均所得額というのは恐らく五百万いっていないんじゃないですか、県民所得は。その個人所得の五百万のところの人がことしの二兆円二兆円の十三万七千円の減税があったのを、これを切って累進税率にするということによりまして、この層が一番響くんですが、九万三千二百五十円、年間これは増税になるわけです。要するに、この減税というのは税の公平さ、そういうものを一気に高額所得者の税率を下げたというところにどうも最大の目的があって、景気対策目的じゃないんじゃないか。これを心配するんです。  雇用の問題もありますし、もし景気がうまくいかなかった場合にはやっぱりここらが相当出てくる可能性がある。だから、私はその辺は、消費性向云々と言いましたけれども、ごく一部の者が消費性向が高くても、もっと圧倒的大多数が上がらない場合はこれは何にもならない。国内で国民消費の六割を個人消費が占めております。圧倒的多数の勤労所得の実質所得、可処分所得が上がらないとこれは何にもならない。だから、ポイントを外した議論をされても、宮澤さんもよくやるんですが、あの人もよくやるんですが、本当に核心から外れたところの議論を正当化するようなやり方というのはちょっと困る。私はそう思うんです。これはよく考えていただきたい。  だから私は、もうこうした以上はしようがないから、あとは通産大臣と経企庁長官が頑張っていただいて、緊急にあとプラス二兆円の定額減税をことしは緩和措置として導入すべきだと。これは今から補正を組む準備なりをして二兆円の定額減税をやるべきだと。なぜなら、先ほど言ったように、圧倒的多数のところが増税になりますから、そのことを最初に申し上げたいと思います。  短い時間で答弁していただきたいと思います。
  91. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 広範な御質問をいただきまして、短時間で答えるのは大変難しいのでございますけれども、まず第一に、この三つの波という中で、特にこの九七年の増税といいますか、消費税等を引き上げたとき、このときの経済企画庁の判断は、まことに申しわけございませんが、やはり誤っていたと言わざるを得ないと思います。  それは、誤ったのも理由がございまして、その前々年度が三・〇%、そしてその前の年が四・四%というかなり高い成長をしたんです。だからもう安心だと思ったわけなのでございますが、委員指摘のように、やはりバブルの後遺症という第二の波が非常に大きくかぶっていたこと、それからもう一つ、この成長期にちょうど携帯電話とか家庭用ファクスとかヒット商品が並んでいたことが一時的な押し上げ効果があった、この辺の構造的な見方が甘かった。これは国民に対して経済企画庁として陳謝せざるを得ない誤解があったということはそう思っております。  そして、私も、さらにバブルの問題につきましては、昨年の暮れに出しました「平成十年経済の回顧と課題」と題するもので再び分析をいたしまして、このバブルの傷跡の重みということを申し上げております。詳しくはそれの百七十六ページからのところをお読みいただければ私どもの反省があらわれていると思います。  さて、そういうことを前提にして、税制の問題でございますけれども、四兆円の特別減税というのは非常に緊急的に行われたもので、税の縦の公平さから見て、四百九十一万円余の方まで、平均世帯でそれぐらいの方まで無税にするのは本当に公正だろうかどうか、これは非常に議論の分かれるところでございます。その程度の所得がある方でございますれば、国に対しても幾らかやはり納税していただく方がいいんじゃないか、そうでなければ三百万、二百万の本当に低い人との差が出てこないという問題もございます。  それで、経済の対策といたしましてどうかという点も、これもまた種々考えました。先ほどから申し上げております限界消費性向の問題もございますし、それから年齢的な問題で、例えば最近はコンピューターの技術者とかあるいは為替のディーラーとか技術関係の方、芸能・スポーツ関係の方で一時的に所得が高くなって、後どかっと落ちてしまうような方に上がった瞬間だけかけていいのか、あるいは中高年でやっと所得が上がってくると子育てのときに一番税金が高くなる、そういう形がいいのか、いろんなことを検討いたしまして、恒久的に考えるとすれば、今日お願いしておりますような定率減税で、諸外国に比べれば相当高い最低課税標準、教育減税等を入れますと三百九十万円ぐらいになるのでございますけれども、それぐらいから上の方は税率を下げまして八%にしてお願いするのが一番適切ではないか、そういうことをいろいろ考えました。  二兆円の戻し税のことでございますけれども、これは財政事情等もございまして、目下今の予算審議していただいているときに次の補正予算の話はちょっと私としてもお答えいたしかねるので御勘弁いただきたいと思います。
  92. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もういろいろ言いませんが、消費の大宗を占める層が上がってこなきゃ、一部の人たちを幾らしてもこれはよくならない、そのことを申し上げて、次に移りたいと思います。  私は、もう一つの消費というんですか、通産大臣が所信の中で三本柱、こう言って、情報と自動車と住宅ですね。私は、景気対策は公共事業とそれから住宅と減税、ここが大宗を占めると思うんですが、この通産省の言っている情報、自動車、住宅。私は、住宅は相当手を尽くされましたから、我々もずっと主張してきたんですが、これは相当効果は出ると思いますが、もう一つ何かを加えないとこれは先行き大変心配で、特に雇用面で、この四・何%がさらにこれが悪化するということになりますと、だれかがどこかに火をつけたら暴動が起きますよ、不満がどんどん個人に行き渡り出すと。だから、雇用失業問題というのは非常に大事ですから、ここで何とかやらなきゃ、もう一つの消費を。  そこで、住宅に匹敵する、我々が生活する上で次に時間をその中で消費するのは車ですね。車ももう相当買いかえの時期が来ているけれども、皆さん辛抱しているんです。ですから、機械情報産業局長も来ていますが、もうちょっと知恵を出して、本当に快適な車社会を迎えるために減税措置とか何かをもう少し考えて、燃費のいい、そしてもう少し乗り心地のいいような車に国民が、この不況な際、自然に切りかえられるようなそういう政策は急いでとれないのか、この不況な折に、そのようにひとつ思うんです。  何かありましたら。
  93. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 御指摘のとおり、自動車というのは生産誘発効果も大変大きなものでございますので、私どももこれの景気対策考えまして、実は今年度自動車についての税制を相当拡充させていただいて、今、国会で御審議お願いしているところでございます。  具体的には、低燃費の自動車あるいは低公害車の普及ということで、自動車取得税の軽減措置を拡充していただくということ、それからトラックの購入を促進していただくということで、中小企業の投資促進税制の中で、トラックはこれまで三・八トン以上のものにつきましては対象になっておったわけですけれども、これを三・五トン以上のトラックについて対象にするということで、その投資促進税制の対象にしていただきまして、このようなことでかなり景気の面からもいい効果が出てくるのではないか、こう期待しているところでございます。
  94. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そこはわかるんですが、もう一つ国民、労働者がいい車に買いかえやすいような、異常な時期ですから、そういうような知恵をこの際、期限を切っても出す必要があるんではないかということを訴えたいんです。よろしく検討していただきたい。  それから、次ですが、この際、両大臣が閣議あたりで、渋滞箇所の解消を、これをやったらどうかと、こういう提案をしていただきたいんです。  これはもう前から言われておりますように、渋滞による時間損失というのをお金にかえますと十二兆円。私はちょっと資料を探したんですが手に入らなかったんですが、渋滞している間に燃費の消費量というのはどんどんふえます。これは環境にも悪いし、この部分を入れますと大変な金額になりますからね。景気対策でここを重点に今急いで当てるようなそういう方向を展開できないものか、このように思うんですが、いかがでしょうか。
  95. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘の点、十分配慮しておりまして、今回、公共事業におきましても都市の問題をかなり重点を置いております。  例えば、空間倍増計画あるいは地域戦略プラン、そして小渕総理の提唱になります二十一世紀先導プロジェクトの中には、都市の国際競争力を高めるために、効率性を高める交通、生活条件を改善するというような案も出されております。また逆に、高齢者に住みやすいように歩いて暮らせる町づくり、安心、安全、ゆとりの町づくりというようなプロジェクトも加えております。  できるだけ委員の御指摘のとおりのことを実現したいと思っております。
  96. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 都市といっても、地方都市でも相当渋滞のところがありますから、東京だけじゃなくて地方都市のことも。  どういうことかといいますと、川が流れますように、地方都市でも通勤道路があります、国道があるんですが、支線からずっと人が集まるんです、町村道から。そして、だんだん町に、働き場に来る。ところが、途中から町まで、二車線なら二車線、一車線なら一車線、道路が変わらないんです。川の流れというのは、だんだん支流から水が集まったら、海の近くに行ったら川幅が広くなるんです。道路は広くなっていないんです。ここに問題があるわけですから、そういう意味で、景気対策としてぜひ急いで検討してもらわなきゃ、やっぱりこのままでは大変だという観点から申し上げておるのであります。  次に、太陽光発電です。  太陽光発電は、今回若干国の補助率がよくなり、予算も少し上がっておりますが、私が知っている地方の太陽光発電の施設を世話している人が見本市みたいなものをやったら、二日間ぐらいの見本市でつけたいという話が十八件あったそうです。本人自身がびっくりしているんです。  だから、やりようによっては太陽光発電というのはもっと広がる。だから、もう少し積極的に通産省も力を入れたらいいんではないか。今度補助率も少しよくなりましたが、この点、いかがでしょうか。
  97. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 実際に住宅の屋根に太陽光で発電できる装置をつけるということは、私はエネルギー問題として大変有望なものだと思っております。  これは、立ち上がりの段階でなかなか普及しません。みんなが試してなかなかいいというところまでなりませんと、すべての方がそれを利用しようという気持ちになりませんので、立ち上がりのところを通産省としては支援をさせていただいて、徐々に普及していって、あるところまで行くと自動的にそれが普及していくだろう、広がっていくだろうという考え方に立っております。したがいまして、ことしもそれを支援するための予算もふやしました。  私は、個人個人の家庭においては、将来のエネルギー問題を考え、コストも考えますと、有望なエネルギー源としてやはり今後とも日本の国内でより多くの住宅がこういうものを利用してくださるということが大変大事だと思っておりまして、この普及のためには今後とも通産省、エネ庁とも力を尽くしてまいりたいと思っております。
  98. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時二十分まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ─────・─────    午後三時二十分開会
  99. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、今泉昭君が委員辞任され、その補欠として長谷川清君が選任されました。     ─────────────
  100. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 休憩前に引き続き、経済産業貿易及び公正取引等に関する調査議題とし、通商産業行政基本施策に関する件及び経済計画等基本施策に関する件等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 今まで同僚各位は主として国内の産業政策あるいは景気問題などを中心に質疑を交わし合ってこられたように思いますが、私は、国内産業政策ももちろん極めて重要な問題でもありますし、若干の関連性を得ながらも、特に通商政策を中心に質疑を交わしたいと思っております。  いずれ、次の機会に経企庁長官やあるいはまたエネルギー政策中小企業政策等々について、それぞれの法案の中で質疑はさせていただく所存であります。きょうはそういう意味で、時間もわずか二十分でありますので、どうぞ大臣には極めて簡潔に、しかもまた要領を得た御答弁で、質問も短くしますから答弁もひとつ大体一人一回二、三分程度で簡単にお願いをして、問題をお互いに認識し合うということの意味で大臣の過日の所信に対する質疑にいたしたいというふうに思います。  与謝野大臣の所信では、我が国と密接な相互依存関係にあるアジア経済の再生も我が国にとって重要であり、三年間で六千億円の特別円借款、政策金融貿易保険及び技術協力も活用して、アジア経済の構造改革をできる限り支援すると述べておられました。  そこで伺うのでありますが、アジアに対する政策金融として、私は、昨年九月三十日だったと思うのですが、当委員会で小渕総理に、日本経済再生はすなわち金融の再生にもつながるけれども、同時にいわゆる国内経済の再生という意味で一つの問題提起をいたしたのであります。  それは、国際的視点から日本の国内経済の再生も考えていかなければならないと思う。たしか大臣もそのとき同席しておられたと思うのでありますが、そういう意味でアジアの金融経済の安定は欠かせない喫緊の政策であると。したがって、経済安定化ファンド、あるいは私はあのときたしか小渕ファンドと表現したと思うのですが、思い切ってそういう骨太の政策を創設してアジアに対してアピールをしたらどうか、そう申し上げましたのでありましたが、大変恐縮ながら、総理から直ちに反応をいただきました。大蔵省からも反応をいただきました。  十月三日のG7、ワシントンでの会合で、大蔵大臣から三百億ドルの新宮澤構想として発表されました。さらに、十二月には小渕総理はベトナムのハノイで優遇金利の特別枠の特別円借款を実行すると述べておられる。いずれも非常に時宜にかなった適切な施策であり、決断と実行力に私は敬意を表するところでありますが、恐らく通商政策の一環として与謝野大臣初め通産省のいろいろな努力のたまものであったというふうにも思います。  そこで、新宮澤構想への支援要請が今日さらにタイとかあるいはインドネシアなどから寄せられていると報じられていますが、インドネシアの安定化という方向も見ながらということでありましょうが、この問題について現状はどのようになっているか。あるいは、また特別円借款への要請もどうなっているのかということを、現状について全く事務的にちょっとお聞きをしておきたいというふうに思います。それが第一点であります。  二点目として、その宮澤構想なりあるいは特別円借款による各国支援経済的な効果はどうなっているか、いわゆる効果です。  とりわけ、具体的に効果の上がった国としては、平成九年十二月にIMFとの協調融資で百億ドルを支援した韓国だと私は思うんです。最近では、韓国においては国民が一人一人大変な努力をして、ドルを持ち出しあるいは金を供出したりして国家に貢献しているのは耳新しいところであります。産業界は財閥の構造改革を推進し、金融業界は韓国では統合再編成の合わせわざで、見事ないわゆる政治主導の形が日本のそういう協力と相まって効果を上げてきているというふうに思います。  私は、そういった韓国の状況が我が国努力あるいは協力によって順調にいっていることは大変な喜びでありますし、また、最も近い国に幾ばくかのお役に立てたことは日韓両国の関係をより一層緊密にすることで大変に結構なことだと思っております。過日も、日韓議員連盟あるいはまた両国の議員同士の日韓サッカーの試合などでお見えになられた朴泰俊総裁がその席々でこのことを大変感謝しておられました。  私は、景気回復基調の韓国においても、そうはいうものの確たる景気回復にはあともう一歩ではないかというような感じもいたします。しかも、そういう中であるにもかかわらず、昨日だったと思うんですが、国際決済銀行の調査によると、日米欧の主要国の銀行がアジア、中南米などから資金を引き揚げる動きが加速していると報じています。韓国とタイなど経済の立て直しが比較的進んでいる国からも資金流出が続いていると報告されているようであります。  こうした状況を考えると、今一番大事なときに日本の資本が引き揚げるようなことになったら、日韓両国あるいはアジア各国との本当の信頼関係が再び崩壊していくのではないか。一番懸念されることがどうも今日あらわれようとしているような感じがしてなりません。特に、日韓両国の再出発のためにぜひひとつやり直そうとしておいでになった金大中大統領の基本姿勢に日本側からブレーキをかけることになるようなことにならぬか、そんな懸念もするわけであります。  私は、日本の国内は、きのう金融機関に七兆四千五百九十二億円の公的資金を導入しているわけで、全く整合性がないように思うんです。このあたりで少し通商政策あるいは外交あるいは国内政策はそういう整合性を持ってやっていかなければならないと思うんですが、どうも日本の国力が総合的に合わせわざで行えるような状態になっていないような面が見られるので憂えている一人であります。私は、そういう面から考えてみましても、今はアジアに対し、あるいはまたせっかく軌道に乗ってきた各国の経済状況をにらんで、むしろファンドを増額する、あるいは円借款など多様な協力をしていくという時期ではないのか、逆にそんなふうに思うんです。  経済閣僚として、与謝野大臣の御見解を簡潔に承りたい、こう思います。
  102. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 二点簡単にお答えを申し上げますと、まずアジアにおける経済危機、これは通貨危機はタイから始まって各国に伝染いたしましたが、これはとりあえず終息して、現在は金利が低下し、貿易黒字増加など明るい材料も見られるようになったと考えております。しかしながら、信用収縮や雇用不安増大など、実体経済の低迷は深刻化しているのが実態でございます。  こういうことをきちんと理解をした上で、次のような政策に取り組んでおります。  まず、アジアに対しては、昨年九月末までに表明した四百三十億ドルの支援に、新宮澤構想による輸銀融資、円借款等の支援やアジア通貨危機支援資金、十一月の緊急経済対策で表明しました一万人研修等、さらに十二月に表明した特別円借款を加え、総額八百億ドル強に上る支援を表明し、着実に実施しているところでございます。  また、アジア経済を回復させるために、我が国経済の再生が重要であるとの認識に基づきまして、経済再生の施策等を着実に実行することによりまして、一刻も早く我が国経済を成長軌道に乗せるよう全力を尽くしてまいりたいと思っております。  次に、日本、米国、欧州の銀行からアジア、中南米に対する融資残高が減少していると、こういう御質問でございますが、確かに昨日発表されました国際決済銀行の四半期報告によれば、昨年九月末までの主要先進十八カ国の銀行のアジア、中南米向けの融資残高は減少しているというふうに承知をしております。  通産省といたしましては、民間銀行による対応だけではアジア経済の安定化を実現することは困難であることにかんがみまして、これまで累次にわたってアジア諸国の現地日系企業等に対する資金支援に取り組んでまいりました。  具体的には、中小企業金融公庫などによる本邦親企業経由の現地子会社向け融資制度の創設、第二には貿易保険の積極的な引き受け、第三には日本輸出入銀行による投資金融やアンタイドローンの拡充、この三点に現在取り組んでいるところでございます。
  103. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 私が先ほど申し上げたように、要するに国内で金融対策をやっているにかかわらず、民間金融機関がせっかく軌道に乗ろうとしている各国から資本を引き揚げるということ、しかもそれは政府が、通産省がそういう保険とかあるいはそういう協力をやっているから、それに甘えて民間が引き揚げてしまうというんじゃこれは何にもならないので、そのことを申し上げているのであって、ぜひそれは通産大臣から大蔵大臣あるいはまた外務等々ともそういう点についての協調、あるいはまた国内政策と国際政策、アジア政策との整合性等々によってぜひ強力に推進していただくようにお願いを申し上げ、期待を申し上げたいと思います。  次に、少しアメリカとの問題について、私、せっかくの経済産業委員会ですから、時間がなくなってきましたが、少しこの場でいわゆる対米関係について我々も議論をしておかないといけないと思うんです。  それは、通産大臣が単身で行って、国内で、議会でバックアップのない通商政策などというのはあり得ない。そういう意味で、少し苦言も入るかもわかりませんが、あえて私は申し上げておきたいと思います。  我が国の主要な貿易相手国の貿易政策の問題点を明らかにして、通産省は当該国に対して撤廃、改善を促すために、一九九二年以来、毎年不公正貿易報告書を公表しているが、特に米国に関する不公正貿易についてどのような改善が見られるか、まずお伺いをいたしたいと思いますが、これを言うと時間が長くなりますので、多少私の方は承知しておりますから、その点については答弁は結構です。  また、我が国は昨年の十月、米国の規制緩和に関する日本政府の要望事項を米国政府に伝達している。その中で、米国について改善すべき問題が指摘されています。  そのほか、毛織物の関税率については、米国が九八年、現在三一・七%と、我が国の九・六%に比べてはるかに高く設定。これは日米繊維交渉のときからもう依然としてこの格差は縮まっていない。  私の郷土新潟県は、この繊維産業が盛んなところでありまして、その大きな犠牲に今日まであえいできているわけでありますが、いつまでたってもなかなか是正されない。化合繊維織物は一六・二%に比べて我が国は六・四%。合繊ニットなどはアメリカで三三・三%の関税であるというような状態でありまして、これは化合繊維織物はほとんど輸出できない。あるいはまた毛織物も輸出できないというような状態になっている。しかし、この間アメリカでは、日本のあるいは開発途上国も含めてでしょう、そういうところの輸入規制を米国としては図っていながら、自分の国の産業を再生化させる。その時間の余裕の中で、アメリカの繊維産業は壊滅したんではないかと言われているのが、いつの間にか再生している。  こういう状況であって、私は、このウルグアイ・ラウンドで徐々に下げてきていることはわかっていますよ、毎年下げてきているのはわかって言っているんです。しかし、その下げ率は問題にならぬということを言っているんです。だから、これは日本政府として強力に申し入れられたらいかがかと。日本のことばかりアメリカはいろんなことを言ってくるけれども、私は、どうも自分のことを棚に上げて相手の問題のみ攻撃してくるアメリカのやり方に対しては、余り納得できない。という意味で、実は大いに激励を申し上げて、世界におけるアメリカの姿勢を少し正していかれたらいかがかと。日本は被害者の一国でもあるということを申し上げておきたいと思うのであります。  そういう意味で、日米間において、さらには経済問題としては、これは若干耳が痛いことがあるかわかりませんが、私の記憶で、一九六〇年代の今言った繊維、鉄鋼の通商問題から始まったと言ってもいいだろうと思うんですが、その後、我が国からの工作機械、自動車、ビデオ、半導体などの輸出について多くの交渉が持たれて今日に至っております。  日米の全体的な枠組みの交渉としては、一九八〇年代のMOSS協議、九〇年代の日米構造協議、そして現在は日米包括経済協議という場が設けられていることは御存じのとおりであります。この包括協議の場で、知的所有権の問題を初めとして政府調達、板ガラス、金融サービス、保険、航空問題など、あるいは私自身もかつては携わったことがありますが、半導体、NTT調達問題など、まさに経済全般が包括的に協議され決着を見てきていることもこれはよく承知をいたしております。  そして、今から三年前の九七年のデンバー・サミットの際の日米首脳会談において、規制緩和及び競争政策に対する対話と努力が強化されることが決定され、そのために上級会合と専門家会合が設置されることになったと承っております。この上級会合には、日本側から外務省の原口審議官、米国からフィッシャー通商代表部次席代表が議長として、また専門家会合は双方から関係省の代表によって構成されていると聞いております。  ところで、先刻申し上げたように、一九八六年の日米半導体交渉のとき、当時の通産省の幹部は、対米交渉の全般にわたってその最前線で大変な活躍をいたしました。タフネゴシエーターと言われたような経緯もありました。こんなことはお互いに記憶に極めて鮮明なわけであります。  私の偏見やあるいはまた断片的な見方かもわかりませんが、今回の専門家会合における通商産業省の参加の仕方を見ると、規制緩和、競争政策など、作業部会における競争政策及び流通などの構造的問題だけしか関与しておらないように見られてならないのであります。それも、外務省、大蔵省、運輸省、公正取引委員会との共同議長にしかすぎないと言っても過言ではないのではないかと懸念される。関係各省にまたがる分野横断的問題であることはわかるけれども、これで果たして対米交渉、通商交渉が通産省として強力にやれるのでありましょうかということを申し上げたいのであります。  その作業部会の取り扱う問題のうち、透明性及び他の政府慣行に関連する問題については、日本側は外務省、米国側は商務省となっている。米国側が日本通産省に当たる商務省で、日本側はなぜ通産省でなくて外務省なのか。その点もこれはもう外務省と通産省の年来のいろんな問題があることもわかって私はあえて申し上げているんですが、しかしそれはもう全般的にそんなことを言っている段階ではない。実際の当事者が前に立って外交をやらなかったら迫力も欠ける。特に与謝野大臣は語学も堪能ですから、遠慮しないで大いに前に出ておやりになったらどうかという意味で、このままでは少し懸念される、アメリカに足元を見られて交渉の場ではどうも一方的に押しまくられてしまうのではないかと私は危惧いたします。米国と対等の立場で交渉しようとするなら、かつての半導体交渉の代表的な例のように、外務官僚に全部任せないで通商産業省が率先して通商産業政策をぜひひとつしっかりと対米交渉に反映していったらいかがかということを激励かたがた申し上げて、御意見を承って、時間でありますから、終わりたいと思います。
  104. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日米の間にはいろいろな日米関係がございますが、通商関係もその大事なものの一つでございます。とは申しましても、過去いろいろ日米両国間で解決しなければならない問題もあったことも確かでございますし、これからも日米間で解決をしなければならない問題も出てきております。  我々の態度というのははっきりしておりまして、日米友好関係を崩さないということも一つでございますし、またWTOを初めとした各国で参加している通商に関する国際的なルールを守っていきながら日本立場を主張するということも我々の原則的な立場でございます。これはもうアメリカもヨーロッパも日本も同じ立場であろうと思いますが、やはりそれぞれの国にはそれぞれの社会、経済、政治的な状況もございまして、それぞれのテーマによっては交渉の仕方も違いますけれども、我々としては、日米関係も守り、なおかつ国際ルールも守り、そういう中できちんとした日本立場を主張してまいりたい、そのように思っております。
  105. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、大臣の所信表明に沿って幾つかお尋ねをしたいと思っております。  大臣が所信表明で挙げられました諸課題、これはそれぞれ非常によく吟味され整理された諸課題であると理解をしておりますが、一方ではこういった項目が本当にどれだけ実現されていくのかということが非常に重要だと思っております。  なぜならば、平成十一年度予算案、これの全体を見ますと、一般会計八十一兆円、伸び率五・四%という大変積極財政を、しかも前年度当初予算の二倍の三十一兆円の公債発行の上に積み上げたという、こういう予算になっております。  大蔵省はめり張りのきいた予算配分であるということを強調しておりますが、一方、市場の反応を見ていくと、長期金利の上昇などにも見られますように、必ずしもこの予算あるいは今後の経済政策のあり方に対して経済、マーケットが期待感を本当に持っているのかどうか、この辺についてはやや私なりの不安を持っているところでございます。  そこで、私は、通産大臣の所信表明の中で、特に第七の課題として述べられました「環境・エネルギー制約への挑戦」という部分、ここに注目したいと思います。循環型経済システムの構築を目指し、地球温暖化問題へ取り組む、リサイクルシステムの構築を一層推進する、こう言われているわけでありますが、その具体的なイメージをもう少し伺ってみたいと思います。  二十世紀というのを振り返ってみた場合に、私は、どういう時代か、一言で言うにはどんな表現がいいのかということを考えてみたわけですが、確かに二十世紀というのは科学技術の進歩の時代、原子力あり、宇宙開発ありと非常に多彩な進歩があった。  しかし、最後の十年間に限っていうならば、コンピューターの進化による、つまり情報通信技術の飛躍的な進化、これが二十世紀最後の特徴的なことだったんじゃないかなと私は思うわけであります。しかし、我々が振り返るこの十年間で見てまいりましても、日本というのはどうしてもハード志向、ハードでは大変なすぐれた技術を発揮するけれども、ソフトの面では残念ながらやはりアメリカにおくれをとっている、通信技術におけるデファクトスタンダードというものを日本が本当に手中におさめることができなかった、こういう反省が私なりにあるわけです。  そこで考えますと、では二十一世紀というのは何の分野で本当に競争すべきかということなんですが、私はもちろん、情報通信というのはまだまだあきらめてはいけない一つの重要分野だと思うんですが、それ以上に重要なのは環境技術じゃないか。すなわち、環境経済、この分野において我々は世界のデファクトスタンダードをとっていく、あるいは環境先進企業として世界に大きく売り込んでいく、こういうことがやはり現実的課題として一番重要なテーマではないかと思うわけであります。もちろん、二十一世紀というのは、人口問題あり、食糧問題あり、あるいは宇宙開発、エネルギー開発問題ありという、いろいろな課題があるんですが、これはすべて環境問題ということに帰着するんです。  そういう意味からも、本当に大蔵省がめり張りのある政策だということを言うのであれば、また通産省が本当にめり張りのある政策を今後お考えになるということの上では、ぜひ環境技術開発というところにもっと力を入れていただきたい、こういう希望を持ってお尋ねしたいと思うわけです。  私は、最近特に大事なことは、エコロジーとエコノミーとよく言われますが、ややもすると二十世紀ではこれは相矛盾することであって、景気の悪いところにエコロジー、エコロジーなんて余り言うなと言われたこともありますし、そのエコロジーに配慮するとエコノミー性といいますか経済性がややもすると退化する、こんな考え方もあった。しかし、これは二十一世紀では完全に両立させていかなければいけないということの中に恐らく、通産省も言っておられますが、新しい環境経済社会という、こういうものの姿が見えてくるのではないか、循環型経済社会と言ってもよろしいと思いますが、ここについてどんな具体的なビジョンをお持ちなのか、お尋ねしたいと思います。
  106. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御指摘になられましたように、この地球上で何人人間が生活できるかというのは、昔はマルサスの人口論で多分農業生産がその上限を決めるだろうと言われてまいりましたけれども、ここ二十年ぐらい人類が環境問題に大変関心を持ち、また日本ではそれぞれいろいろな対応をしてまいりましたが、環境と人口、環境と資源とか、いろいろな観点から物を考えていかなければならない時代になってきておると思います。  現在の人口の状況は、日本は人口が減っていくというふうに予想されておりますけれども、世界の人口の増加というのは年に一億人を超えたぐらいのところで毎年ふえていっております。こういう状況ですと、人類の営みというものはやはり経済と申しますか資源によって制約されるという部分もありますし、また環境によって制約される部分も出てくるということは当然のことであろうと思っております。  日本だけの立場でいえば、先生が今御指摘になったような循環型経済というものをつくり上げる必要がある。これは人々のライフスタイルの問題もありますけれども、やはり技術で支えられていくような資源の循環のやり方、また制度によって資源を循環させるというようなやり方、いろんな方法がありますが、今のままで資源とエネルギーを多消費するような産業構造あるいは生活というものが持続できるということは、資源の制約あるいは環境に対する負荷から考えて到底私は考えられないと思っております。  そこで、世界に対してデファクトスタンダードをつくれ、日本が率先していろいろな技術を開発しろと。これは大変いい考え方でございまして、省エネ技術をとってもそうですし、また廃棄物の処理の仕方あるいはリサイクルの仕方、こういうものは大いに通産省としては力を入れているつもりでございますが、先進国の一つでございます日本が率先してそういうことを行い、また各国の方々が使えるような技術を開発するということは大変重要なことだろうと思っております。  例えば、石炭一つとりましても、粗鉱の中から硫黄分を取り除くような技術というのはすぐれて日本が持っておりまして、こういうものも積極的に各国に提供するというのは人類に対する貢献の一つだ、そのように思っております。
  107. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。  今いろいろお話もございましたが、特にエコロジーとエコノミー、つまり経済性と環境性というものをどう両立させていくかといういろいろな試みが民間企業でも随分出てまいりました。私も最近見た記事の中で大変おもしろいと思いましたのが、一九九五年に特定フロン全廃の規制ができたわけでございますが、これを逆ばねにして大いに企業経営のコストダウンをしたという例がございます。  これは、NECという会社が、いわゆる精密機器部品あるいは半導体、これをつくる過程でフロンガスを使って洗浄していた。精密部品というのはほとんどフロンで洗浄するということが常識だったわけですが、この工程をやめる。つまり、無洗浄でプリントできるレーザー捺印機という機械を導入した。これは確かに五十億を超える投資がかかった。しかし、それによってフロンでの洗浄過程が省略できたということと、不良品率が著しく下がったということで、何と三年足らずでこの五十億の投資を回収できる。その後はもう完全にコストダウンというメリットだけが残るというような事例が紹介をされておりました。  こういった技術開発、これは実は必ずしもこういった大企業が取り組んでいるものだけではなくて、中小企業でありながら非常に技術のすぐれた企業がこういった開発に取り組んでいるという事例も多いわけでありますけれども、こういった成功事例ばかりではない。やはりなかなか開発に金も手間も時間もかかる。まして今のように経済状況がよくないときに、そういった開発に対してより国が大きな支援をしていくということが大事だと思います。  もちろん、いろいろ補助金のこともおやりになっていらっしゃる、いろいろなシステムをお考えになっているということは承知しておりますが、その中で、やはり特に税制上の優遇措置、こういったものも含めた相当ダイナミックな政策というのがさらに必要なんじゃないかなと私は思うんですが、その点についていかがでございましょうか。
  108. 太田信一郎

    政府委員太田信一郎君) 循環型の経済システムをつくっていくことは、今、水野先生がおっしゃったように大変重要な課題だと考えております。  昨年の六月から、私ども産業構造審議会の場でかんかんがくがく議論をしていただいております。ことし六月ごろには御報告をまとめていただいて、それに基づいてまた必要な施策を打ち出していきたいと思っておりますが、当然のことながら、今先生言われましたように、技術開発あるいはいろんな意味での税制あるいは融資等の助成措置をこれまでも講じているところでございます。  若干申し上げますと、例えばエコタウン事業というのをやっておりますけれども、これは厚生省さんと一緒にやっておりまして、例えばPETボトルの工場をつくるとかあるいはRDF発電の設備をつくるとその二分の一を補助させていただくとか、あるいは企業から提案公募型で、これは中小企業も含めていろんなアイデアを技術開発について出していただいて、これに対してNEDOから委託をするというような助成もしているところでございます。  いずれにしても、税制、金融、あるいは補助金等を組み合わせて、かつ一番大事なのは、やはりイメージをはっきりさせる、国としてこういう方向に向かっていくんだということをきちんとメッセージとして国民、事業者に与えることが重要だと思っておりますので、先ほど申しましたような審議会の意見等を踏まえて、私どもはさらに充実した施策を講じていきたいというふうに考えているところでございます。
  109. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう一つ手短に伺いたいと思います。  通産大臣の所信表明の中で、二番目に挙げられたテーマ、つまり「産業再生に向けた政策手段」という部分にも大変重要な意味が含まれていると私は考えます。新事業の創出を促す各種支援及びその一環として知的財産の法的保護の強化、さらに高度情報通信社会構築に向けた重点投資などの施策には、旧来の公共事業依存型支出からの脱却を図って、より成長力のある新しい日本産業日本経済の中で重要な位置づけにしていきたいという大臣の強い願いが込められているのではないかと思うわけであります。  産業構造の転換ということ、これはやはり三十年、五十年、百年というロングスパンで考えていくこと、これが私は重要だと思うわけであります。国全体がこういったまさに循環型経済の時代に、さらに過剰な設備を抱え込むというようなことは非常に問題があると私は思うわけでありますが、いろいろこういった大きなパラダイムシフト、転換をする痛み、あるいは障害というものも大きい。  こういう中で、大臣のお考えになる転換の方向性ということは、直近、来年、再来年というようなテーマではなくて、大きな将来像としてどんなイメージをお考えになっているのか、最後に伺って終わりたいと思います。
  110. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 産業構造の転換というのは、そう簡単なことではないだろうと思っておりますが、二十一世紀を目前にした日本としてはどうしてもやらなければならない重要なチャレンジであると私は思っております。  先生が御質問の中で指摘されましたように、まず一つは過去のことの清算ということが必要でございます。それは、例えば過剰設備を抱えているというようなところは、過剰設備を抱えること自体によって企業の決算上は大変負担になって、それが十分な企業活動を行えるような環境をつくっていないというようなこともございます。ですから、設備の面でもあるいは過剰に人員を抱えているという問題も当然それに付随してまいります。そういうときに、外科的に物事をやっていいのかという問題もありまして、私は、過剰設備の解消あるいは過剰人員の解消ということもやはり相当緩やかに、大胆にはやらなければならないんですが、もろもろのことに配慮してやっていかなければならないと思っています。  設備過剰に対してどういうことができるかといえば、税制上どういうことができるのか、あるいは資金手当ての上でどういうことができるのかということも、いわば一種のセーフティーネットとして考えなければなりません。過剰雇用といいますけれども、私は、リストラリストラといって企業雇用している人間をどんどん外に出すということには余り賛成できない。むしろ、その企業の中で他の分野、あるいは他の分野に企業活動を広げていって吸収していただくということがベストだろうと思っておりますし、そのための再訓練も企業の中で行っていただくということが社会問題を起こさない大事なところだろうと思っております。いずれにしても、雇用の問題も社会的なセーフティーネットというのを考えていかなければならないことだと思っております。  そういう過去の清算に加えまして、将来二十一世紀に日本はどうするのかという問題が残っておりますが、我々としては、新しい技術、新しい企業等々をどんどんつくり出していかなければならないと思います。新しい技術とか新しい企業をつくり出すというのは、やはり日本が国際経済社会の中である種の競争力を維持する、その中で我々日本人全体が生活の糧を得ていくために必要な経済活動ができる。その根本はやはり国際経済社会の中におけるある種の特色とか競争力とか独自性とか、そういうことが今求められているのだろうと思っております。
  111. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。
  112. 加納時男

    ○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。  きょう午前中に山下委員からだったと思いますが、中小企業金融安定化特別保証制度について質問があり、非常に効果が上がっているという大臣の御回答がありました。  全体として確かに大きな効果が上がっていると思うんですが、特徴といいますか、月次の動きですとか現在までの状況からどういう御印象を持っていらっしゃるでしょうか。
  113. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 現状に関するお尋ねですが、昨年十月から実施しております特別保証の承諾件数は三月五日現在で六十八万九千件、約十社に一社、承諾金額は十三兆五千億円に到達いたしました。
  114. 加納時男

    ○加納時男君 月次の動きはどうでしょうか。  今おっしゃった十三・五兆円というのは累積だと思います。これは長官お願いしたいと思うんですが、十月から二月までどんなぐあいでしょうか。
  115. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) ただいま大臣の方からお話を申し上げました六十八万九千件で十三兆四千七百億円、これが十月から二月までの累計でございます。  月別に追いますと、一言で申し上げまして、通常保証の場合ですと年末の資金需要が高いものですから十二月にピークを打つわけですが、本保証制度につきましては十一月にピークを打っております。それに加えて、一月、二月、三月の初めにかけて保証需要の方は鎮静化をいたしております。  数字で申し上げますと、承諾ベースでございますが、十月が件数九万七千件、二兆六千億円でございます。十一月に至りましてピークを打ちまして、件数約二十二万件、四兆六千億円になっております。十二月になりますと、金額の方に限って申し上げさせていただきますが、十一月の四兆六千億円に対して四兆円に落ちております。一月、二月はそれぞれ一兆円を切っておりまして、九千七百億円、九千八百億円という流れになっております。
  116. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  実は、私、商工会議所とか中小企業の方としょっちゅうお会いして状況を伺っております。十月、十一月、十二月は保証協会も行列で大変だったわけでありますけれども、確かにおっしゃるとおり、一、二月は落ちついているということであります。  これをどう読むかなんですけれども、おっしゃったように、七十万件近い申し込みということは、中小企業六百数十万ですから約一割を超える中小企業の方がこれを利用した、そしてまた十二月に非常に懸念されておりました年末の資金手当てがめどがついたので十二月の終わりから減ったのかなと思いますが、そういう認識でいいのでしょうか。あわせて、間もなく年度末、三月末を迎えますけれども、きょう現在の印象はどうでしょうか。
  117. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) いずれにいたしましても、特別保証制度は私ども初めて運用する制度でございますので、分析ないし先を読むのがなかなか難しいわけでございますが、いろいろ中小企業団体とかあるいは中小企業関係者のお話を私が聞く限りでは、必要な資金手当てにつきましては一応かなりな手当てがついてきている、大変助かってきているということで、いろいろ苦情相談窓口がございますが、御不満の件数も減ってきている状況にございます。したがいまして、委員仰せられたように、かなりのペースで浸透してきているのではないかというのが一つございます。  ただ、御指摘にもございました三月の年度末の資金需要でございますが、これについてはある程度、一月、二月の一兆円弱のベースよりは伸びるのではなかろうかという気持ちを片や持っておりますが、また別の情報では、年度末の資金需要についても早目早目に手当てをされておられるというようなお話もございますので、この点についてはなかなか予測が難しいところだと考えております。
  118. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  これの一つの成果といいますか効果として、私は倒産率というのに非常に注目しているわけであります。  商工リサーチですとか帝国データバンクのデータを見ているわけでありますけれども、十一月、十二月、一月と件数から見ると激減しているわけです。前年比で十一月がマイナス六%、十二月がマイナス三〇%、一月がマイナス三五%、これは商工リサーチの調べでありますけれども、件数は大幅に減っている。金額は、たまたま一月に日債銀モーゲージの関連会社の倒産があったので一月だけ多くなっていますが、特殊要因を外してみると非常にこれは効果が上がったのかなと思うんですけれども、その辺はどういう認識でしょうか。
  119. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 貸し渋り対応保証制度の運用といいますか利用実績との関係で申し上げまして、確かに倒産件数の方が十月をピークに激減しております。  具体的に申し上げますと、昨年の十月には中小企業で千六百六十八件の倒産がございましたが、十一、十二と千三百二十一件、千百八件、一月に至っては九百五十九件ということで、千件を割る状況になっております。  これは、過去五年間の平均の中小企業の倒産件数というのを計算いたしてみますと直近五カ年間で千三百件でございますので、その水準をもかなり下回ってきておりますので、貸し渋り対応保証制度の本来の趣旨、つなぎ融資、つなぎ保証ができるという効果は相当上がったのではないかと考えております。
  120. 加納時男

    ○加納時男君 今いい話が随分続いたわけですけれども、心配なことも幾つかあるわけです。  一つは、返済に当たって、私の記憶ではたしか最大据え置き一年というのがあったと思うんですが、ところが実際はもう一カ月か二カ月の据え置きで返済が始まってくる。また、返す方だって余りためちゃうよりも早く返した方がいいわけでありますから。早く返すのはいいんですけれども、そのことが今後、例えば事故率だとか代位弁済率の増加につながるのではないかというのが一つの心配であります。  二つ目の心配は、非常に今好評発売中でいいんですけれども、さっき承諾ベースで十三・五兆と言われたんですけれども、申し込みベースは恐らく十五兆を超えていると思うんです。そうすると二十兆のうち、二十兆というのは来年三月までの枠です、ですから二十兆を超えちゃうんじゃないかという心配もあるわけです。二十兆を超えるならば閣議了解か何かでまた枠をふやすとか手は打てるのかもしれないけれども、こういう非常に好評発売はいいけれども、二十兆を超えるのじゃないかというのと、それから返済に当たって、事故率を一〇%というふうに今回設計してありますけれども、事故率が今どのくらいで、増加の気配があるのかどうか教えていただきたいと思います。
  121. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 昨年十月に発足しましたこの制度自身についての事故率はまだ統計がとれる状況には至っておりません。ただ、制度設計のときに申し上げましたように、これは過去平成五年度から眺めてみますと、従来の一般保証制度では、代位弁済率、いわば事故率というのが平成五年から平成八年度にかけましては約一・五%でございまして、平成九年度には一・七一%と、流れとしては右肩上がりで増勢にございます。  本件、貸し渋り対応保証制度につきましては一〇%程度の事故率を前提に制度設計をいたしておりますが、今後中小企業をめぐる金融情勢あるいはマクロ経済情勢がどうなるかによって相当影響を受ける、そういったたぐいの性格のものだと思います。
  122. 加納時男

    ○加納時男君 ちょっと意地の悪いことを言って悪いんですけれども、一・五とか一・七とおっしゃっているのは、今のお話だと平成五年から九年ぐらいでしょう。私が一番心配なのは、この委員会でも取り上げたんですけれども、平成十年に入ってからの話なんです、事故率は。  去年四月、六月、それから七月、八月と上がったのじゃないかと思うんですけれども、もしお手元数字があったら教えてください。
  123. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 代位弁済率というのは年度間で計算をいたしておりまして、平成十年度の場合ですと当該年度の代位弁済額を分子に置きまして、分母の方に保証債務残高という平残を出すわけであります。したがいまして、ちょっと月別では私のところに手元には数字がございませんので御容赦を願いたいと思います。
  124. 加納時男

    ○加納時男君 ないというものを聞いてもしようがないんですけれども、常識で考えたら平残なんてすぐわかるんだし、代位弁済件数もすぐわかるので毎月すぐわかりそうだと私は思いますけれども、特殊な世界にいらっしゃるのかもしれません。企業だったらすぐこんなのは毎月、毎週のようにわかる一番大事な数字かと思います。失礼なことを言って済みませんけれども、今後なるべく早く教えてほしいということだけ注文して、きょうはそれ以上は追わないことにさせてもらいます。  この問題は、実は去年いろいろ同僚議員と一緒に注文をつけました。ざっくばらんに言いまして、よくやってくれたと思います。中小企業の人の生の声を聞いたならば、こんなことを言っていました。今まで国というのは当てにならなかったけれども、国の施策でこんなに効果があったものは初めてだということを私は中小企業の方から現実に聞きました。そういう意味では実によくやってくれたと思いますけれども、先ほど申し上げたように、今後いろいろな課題が、まだ心配なこともありますので注目してやっていきたいと思っております。  大臣の所信に沿って次の質問に移ってみたいと思いますが、PRTRのことでございます。特定化学物質の環境への排出量等の把握及び管理の促進に関する法律案であります。これはまだ法案の提出に至っていないと思いますけれども大臣の所信を読ませていただいて、その中にありましたので、その範囲質問させていただくということでお願いしたいと思います。  実は、化学物質というのは非常に我々にとって有用なものでありますけれども、数が非常に多い、数万に及ぶ化学物質があって、しかも人間の健康に対してどういう悪さがあってどの程度の量をとったならば影響があるのかというのがわからない、またどの病気とどの化学物質という因果関係もよくわからないものがたくさんあるわけであります。  今回の法案のねらいというのは、私が理解しているところでは、OECDで提案しておりますPRTR、化学物質の排出ですとか貯蔵ですとか移転だとかについてのデータを企業が自主的に調査して管理してそれを発表するということでありまして、次々と化学物質が移転していくときに、MSDSと言っておりますけれども、データシートをつけてユーザーの方にも情報をわからせるんだという、これは実は画期的な制度だと思うんです。そういう意味で、大臣が先週わざわざこの問題に触れられたと思っているわけでございます。  私は、この法案自体は非常にいいと思うんですけれども、心配なことが一つありますのは、データだけが表へぽんと出まして、片仮名のある物質が何グラム出た、これはだれもわからないわけです、それでどうなのというのはわからないわけであります。  思い起こすと十八年前であります。一九八一年にピコキュリー事件というのがありました。大臣も御存じかと思いますけれども日本原電の敦賀というところで廃液が漏れまして、コバルト60だとかマンガン54というのがホンダワラにくっついたわけです。魚には入らなかったんですけれどもホンダワラにくっついたというので暁の記者会見をやって、放射能漏れが大騒ぎになったわけで、漁業に対しても被害が、被害というのは風評の被害でありますが、出て大騒ぎになりました。  それで、調べてみたら、実際はホンダワラについた量は微量であって、毎日ホンダワラを三十グラム一年間食べても全然何ともない、自然界の何万分の一といった小さなものだというのは後でわかってお笑いになってしまったんですけれども、当該の漁業者にとってはお笑いどころじゃないし、海水浴客も減ってしまって大騒ぎだったわけであります。  そういう愚かなことをまたやったわけであります。それは大臣のせいでは決してないんですけれども、テレビのせいなんですけれども、今回のピコグラム事件でございます。前回はピコキュリー、今回はピコグラム。ピコというのは、御存じのとおり一兆分の一でありまして、これは今回の場合にはダイオキシンがある野菜にくっついていたと。野菜というのが〇・六四から三・八ピコグラム・パー・キログラムというような単位なんですけれども、このピコグラムとかいってもこれまたわからないわけです。そこでまた大騒ぎになって、農家が大打撃を受けたわけであります。  話を戻すと、大事なことは、あのお茶なんて幾ら飲んだって全然影響のない量だったんですけれども、そういうことが数字だけ出ると世の中に大変な混乱を起こすので、これは質問になりますけれども、PRTRをやるときにはぜひともハザードデータといいますか、どういう特質があるんだ、それを一定の量、どのぐらいの量をとったならばどういう影響があるのかないのか、こういったことは国民にとっては物すごく大事なことでありますし、下手をするとまた大騒ぎが起きかねませんので、これを実施するのは結構なんですけれども、そのときにはぜひともリスク評価とかリスクコミュニケーションというのをしっかりやっていただきたいと思っているわけでございます。  これは大きな話で結構なんですけれども大臣の所信といいますか、その辺を教えていただけたらと思います。
  125. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 御指摘のとおり、PRTRの実施に当たっては、数字のひとり歩きを可能な限り防ぎ、リスク評価、リスク管理を事業者自身が適切かつ効率的に行えるようハザードデータを充実することが重要であると認識しております。  近く国会に提出する予定の法律案につきましては、化学物質の性状及び取り扱いに関する情報に係るデータベースの整備及びその利用の促進に国が努めること、第二には、化学物質の排出状況に関する国民の理解を得られるよう国及び地方公共団体が努めること、第三には、国民の理解を深めるために必要となる人材の養成に国及び地方公共団体が努めること等の規定を盛り込むこととしており、国としてはハザードデータの充実に努めるとともに、事業者はもとより国民に対して広く化学物質の性状及び取り扱いに関する情報提供に努めてまいることといたしております。
  126. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。ぜひその御覚悟で取り組んでいただくようにお願いいたします。  大臣の所信の第七というところに移ってみたいと思うんですけれども、「環境・エネルギー制約への挑戦」の中で、原子炉等規制法の改正が入っております。これは恐らく文教・科学委員会審議するんじゃないかと思いますので、恐らくきょうが最後のチャンスかと思うので、ちょっと一言だけ触れさせていただきたいと思います。  原子炉等規制法の一部改正でございますけれども、今回はここにありますように、中間貯蔵というものを位置づけするということが明記されております。  中間貯蔵をどう考えるのかというのが質問でございます。これを厄介者、お邪魔虫を一時的に避難させるんだと考えるのか、あるいはもっと前向きに貴重な国産リサイクル資源の貯蔵と考えるのか、私は当然後者だと思うんですけれども、この辺についての御見解を伺いたいと思います。
  127. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本というのはエネルギー資源の大宗を輸入に依存しております。長期的なエネルギーの安定供給及び放射性廃棄物の適切な処理処分の観点から、使用済み燃料を再処理いたしまして、回収されるプルトニウムなどを利用する核燃料サイクル政策を推進しているところでございます。  平成九年二月の閣議了解において、使用済み燃料はプルトニウムなどの有用資源を含むことから、再処理するまでの間適切に貯蔵することとし、原子力発電所外の施設における貯蔵についても検討を進めるとされております。  通産省といたしましても、使用済み燃料の中間貯蔵を貴重な国産リサイクル資源の貯蔵と位置づけ、使用済み燃料を再処理するまでの間、原子力発電所外において適切に貯蔵するため、所要の規定を整備する原子炉等規制法の改正法案を本国会に提出したものでございます。
  128. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  今の大臣のお言葉の中で、貴重な国産リサイクル資源という明確な位置づけがありましたので、ぜひそういう観点でこれを取り扱っていただければと思っております。  ちょっと話は飛ぶんですけれども、これに関連しまして、原子力長期計画というのがあります。原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画というものであります。これが近々改定されると承っておりますので、恐らく通産省も科学技術庁もこれを準備していらっしゃるんだろうと思います。  原子力で一番気になりますのは、なかなか国民の間で必要性、原子力は必要だというのと不安だというのがかみ合っていないところがまだ少し見られるようであります。ある人は必要だと言い、それに対して不安だと言う。不安だと言うのに対して必要だと言っても全然答えになっていない。そこに私はどうもこの議論の不毛なところがあるんじゃないかと思っております。  世の中で科学技術、役に立つものは必ず潜在的な危険性、リスクがあると思います。先ほどのPRTRじゃないですけれども、化学物質も役に立つものは必ずリスクがあると思っています。ではリスクがあるものは全部拒絶するのかというと、リスクをしっかりと正面からとらえて、技術的に社会的にコントロールしていくということだろうと思っております。  そういう意味で、例えば今回の原子力長期計画の改定に当たってぜひ希望したいことは、こういった原子力の必要性と不安というものを、ただすれ違いのような議論で終わらせてしまうんじゃなくて、原子力の持っている光の面、それから影の面、というのは潜在的危険性であります、それから影の制御、つまり技術的、社会的コントロール、こういうことを正面から明確にもっと打ち出してもいいんじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  129. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 原子力発電につきましては、安定供給あるいは環境問題という側面のほかに、御指摘のような安全性の問題、さらには将来的な管理をするためのバックエンド対策というような課題があると理解をいたしてございます。特に、このバックエンド対策につきましては、原子力委員会、科学技術庁、通産省政府一体となりましてこの課題の解決に向けて精力的に取り組んでいるところでございます。  原子力委員会においては、現在、原子力政策円卓会議などでの議論を踏まえながら、今後原子力開発利用長期計画の改定の審議が進められるものと承知してございますけれども、御指摘のございましたようなこの原子力政策の影の部分あるいは課題を明らかにいたしまして、これらの対策を明確化していくことが今後の原子力に関する国民の御理解を深める上でも大変有意義である、かように理解をいたしてございます。
  130. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  そこで、今お話があったことなんですけれども、確かに原子力委員会、原子力安全委員会、科学技術庁、そして通産省資源エネルギー庁、こういうところでやっていくというのは私はいいと思うんですけれども、実はそこに落とし穴があったような気がします。  現実に、地元の方々お話をし、市長さんだとか町長さん、あるいは議会の方、地元の方、いろいろお話を聞いていきますと、彼らの考えていらっしゃる地域とエネルギーとの共生に当たっては、科学技術庁とか通産省マターでないのが結構あるわけであります。例えば農水マターあるいは運輸マター、インフラの話です、建設、運輸、国土、いろんな省庁にまたがるものがあります。  そこで、一つの考え方として、せっかく原子力長計をつくるならば、今までは直接関係していなかったようだけれどもよく考えると関係する、例えば文部省であるとか国土庁であるとか建設省とか農水とか運輸とか環境とか、最後にでき上がったところで意見をもらうんじゃなくて、途中段階でもどんどん参加をしてもらって、政府としての総合計画にしていかなきゃいけないんじゃないかということを痛感するんですけれども、いかがでしょうか。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)
  131. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のとおり、原子力につきましては、通産省としても、政府全体としてこれに取り組み、原子力を促進することが重要であるという認識でございます。  特に、電源地域における地域振興を実現していくことは立地促進には不可欠でございまして、その意味で、立地地域との真の共生を図るという趣旨から、今回の予算措置におきましても、雇用創出につながる産業振興策に重点を置いて、新たな交付金制度を創設するなどの施策の強化を図ってございます。  他方、交通インフラなどの整備につきましては、関係省庁の協力を得ることが必要でございまして、既に電源開発調整審議会の立地部会という場がございまして、広域のこうした各省協力、政府全体の取り組みを議論する場がございますが、今後とも関係省庁に働きかけていくこととしてございます。  今後、この原子力開発利用長期計画の改定に際して、地域振興に関する議論がさらに深まっていくことを期待しているところでございます。
  132. 加納時男

    ○加納時男君 今、電調審の立地部会と言われました。確かに、十二省庁ですか、集まってやる非常にいい場だと思うんですが、心配なのは、この電調審が今回、行政改革もあって廃止になるんではないかと言われているわけでありますが、例えばこの立地部会のような機能はどこかでやっぱり持たなきゃいけないと思うんです。それが例えば総合エネルギー調査会、これは残る方だと思うんですけれども、そこに入っちゃったとするとエネ庁マターで小さくなってしまうというので、先ほど民主党の同僚委員からも励まされましたけれども、こういう政府トータルとしての計画はぜひ私は必要だと思います。あるいは国会議論するとかいろんなことも大事だと思います。ぜひとも総合的な視野で取り組むように、これは大臣にぜひお願いいたしたいと思っております。  最後になりますけれども、電気事業法の改正が大臣の所信の中にございますので、若干、きょうは一つ二つだけ承りたいと思っております。  ゼネラル石油という石油会社があるんですけれども、最近、これが独立系電気事業者、IPPとして入札をしたわけです。五十五万キロワット、燃料は、石油精製から出てくる最後のかすですけれども、残滓を使って、それでガス化発電をする。環境はクリアします、値段は安いですと。とてもいいお話だったので、入札して、落札して、川崎の方なんですけれども、五十五万キロワットできるはずだったんですが、ドタキャン、ドタキャンなんてこういう席で言っちゃいけない。土壇場でキャンセルを食っちゃったわけであります、あれはできませんと。これは新聞で大きく取り上げられたわけでありますが、これは一体どういうふうにお考えになるのか。  例えば五十五万キロワットというのは、これはただごとでない、大きな電源だと思うんです。それが、ただ採算が合わなくなったからやめたという、こんなことでいいんだろうか。  通産省としての、あるいは大臣としての御感想をぜひ承りたいと思います。
  133. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のありました今回落札された発電所につきましては、電力会社自身の発電所と同様に一定規模以上のものでございますから、当然環境アセスメント手続を経ることとなってございまして、IPPだからといって環境対策において特別扱いされる性格のものではございません。  したがいまして、入札段階から必要な環境対策を盛り込んだ計画を策定して、その前提で応札をしたものだというふうに我々としては考えてございました。  ただ、詳細設計の段階で、所要費用の見込みが当初の計画を大幅に上回ってしまうという、いわば通常では考えられない事例であると承知いたしてございます。いわば特殊な事例であろうということでございます。  今後、電力の発電コスト低減の観点から導入された入札制度による落札電源につきましても、環境アセスメントの適切な実施等の環境対策には万全を期していきたい、かように考えてございます。
  134. 加納時男

    ○加納時男君 大臣が先週お話しになったもの、所信表明を丹念に読んでみたんですけれども、例えば電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案の前に目的が二行ほど書いてあるんですけれども、そこにはコストしか書いてないんですね、「国際的に遜色のないコスト水準を目指し、」とか「競争原理の導入、」。  こういうことでおやりになるというのは一つの考えだと思うんですけれども、私は、エネルギー政策としてはこれでは不十分だということを去年の九月のこの経済産業委員会でも大臣がはっきり約束していらっしゃると思うんです。ともかくコストとそれからセキュリティー、エネルギーの安全保障と環境適合、これは重要な柱だということを通産大臣ははっきりとおっしゃっていると思うんです。  今回の電気事業法の改正の部分は、これはコストの話だよと読めないことはないから、別に意地悪な質問をしているつもりはないんですけれども、私は、どうも環境の問題をどこかにやっちゃって、安ければいいといったような風潮があるのは非常にゆゆしい問題ではないだろうかと思っています。  今、資源エネルギー庁長官は、環境アセスではイコールフッティングであると。一般電気事業もIPPも同じように環境アセスメントをやるとおっしゃったけれども、それは当たり前のことであります。かねて私も中環審の委員をやっていて、十五万キロワット未満の小さなものに対する簡易アセスというのはおかしい、環境に対してはすべて同じようにしてシビアに見ていかなきゃいけないということを申し上げてきたつもりであります。  そういう意味で考えていくと、どうもこのIPPというのも、頭から環境にインパクトの大きいものばかりが出てきているのではないかなと。出てきたものを見ると、ほとんどが石炭とかそれから石油、それも残滓、これが圧倒的にあるわけであります。  私は、石炭だって残滓だって環境を守ればいいと思っているし、あらゆる対策をとってコストが安ければいいと思うけれども、余りにも安易に、ともかく場所さえとればいいといってやってきたのがエクソンというアメリカの非常に目先の収支にたけたのが親会社になったのでキャンセルになったんだというのが本当じゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  135. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 簡潔にお答え申し上げますと、今回の改正法案は、競争の導入によって電気事業の効率化を進めることを目的とするものでございますが、その際、エネルギーセキュリティーや地球環境保全等の公益的課題を前提として、新規参入者に対し、電力会社のネットワークを借り受ける際には公平な負担を求める、こういうことが改正案の趣旨でございます。
  136. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  私は、大臣がおっしゃったとおりに理解をしたいと思っております。  たまたま先週の所信表明を見たらコストしか書いてないので、大臣はまさかお忘れになっているわけないんですけれども、多分、部下の方が忘れたんじゃないかと思ったもので、念のために申し上げました。失礼をいたしました。  今後、いろいろ電気事業、あるいは原子力、エネルギー関係の問題もこの委員会で討議されてくるかと思っております。今、大臣がはっきりお約束いただいたコストとセキュリティーと環境適合性、この三つを十分に踏まえた総合的なエネルギー政策を推進していただくことをお願いして、時間はちょっと、五十秒ほど残りましたけれども、終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  137. 畑恵

    ○畑恵君 トリを務めさせていただきます自由民主党の畑恵でございます。  本当に長時間の御審議、お疲れさまでございます。  先日の大臣所信を伺っておりましても、経済再生に取り組まれるさまざまな施策が大所高所から述べられておりました。本日は、私ごときで恐縮でございますけれども、常々考えております三点、経済再生に向けた私なりの施策を御提案申し上げながら、御意見等を伺ってまいりたいと思います。ただ、私に与えられた時間が二十数分でございまして、十項目ほどございますので、大変恐縮ながら一分めどぐらいでお答えいただけると大変ありがたいと思います。  まず一点目は、知的財の担保化の促進ということでございます。  先ほど、加納議員の方からも特別保証枠の拡大など、中堅・中小、ベンチャー向けの金融対策、効果は大であったという御報告がございました。私自身もそう思いますが、これからはやはり根本的な措置として、土地ですとか有価証券といった目に見える資産ではなくて、先ほど水野議員もおっしゃられた、まさにソフト、知的財の価値を正当に評価して、その価値に対して融資ですとかあるいは投資をしていく、そういう環境を整備することが肝要だと常々考えております。  まず、この知的財を担保とする貸し付けということについて、現在政府はどのような施策を行っていらっしゃいますでしょうか。
  138. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 例を申し上げますが、例えば中小企業金融公庫におきましては、民間金融機関が通常担保の対象としない特許権やソフトウエアを担保の対象とするなど、担保の範囲のとり方、評価を弾力的に行っております。また、日本開発銀行においても、ベンチャー企業対象に、特許権等の知的財産権を融資の担保としている例があると承知をしております。
  139. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  政府金融機関で既に実施されているということ、それ自体評価させていただきたいと思いますが、ぜひ一般の金融機関全体にもこうした知的財を担保とする融資を定着させるべきだと思います。  それに先立ちましては、やはりこの知的財の価値を評価する、しかも的確かつ迅速にそれを行わなければいけないということで、日本では残念ながらそうしたスキルを持っている人材というのが非常に枯渇しているのが現状だと思います。  そこで、この知的財の価値評価を行える人材の育成ということなんですけれども政府はどのような措置を行っているか、また今後必要だと考えていらっしゃるのかどうか、お答えいただけますでしょうか。
  140. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のとおり、価値評価を行えるような人材の育成というものを私ども極めて重視いたしております。ただ、一般的に申し上げますと、日本の場合にそういう事業に取り組む数が少ないということもございまして、まずは知的財産権取引に従事する人たちのリストをインターネットで流させていただく、社会的な認知をまずしていただく。それから、そういう方々に私どもの持っております知見というものを積極的に移転する、そのためにセミナーを開催する。それから、私どもが内部で蓄積しております知的財産権の価値の評価についての手法、こういったものにつきましても、そういう方々に御理解いただくというようなことを行うことによって、少しでもそういう人材が育っていくことを期待いたしております。  それから、欧米の場合にはこういう人たちがかなりいるわけでございますので、欧米におきます非常に経験の豊かな人をお呼びいたしまして、そういう人材育成というものにどういう有効な施策があるかというようなことのアドバイスをいただきたいということで、これは来年度におきましてそういった仕事もさせていただければと思っております。
  141. 畑恵

    ○畑恵君 長官から大変心強い今お答えをいただきました。とにかく特許庁が今実際に有しているその知的財に関するデータベースというのも電子化が非常に進んでいて、世界でも最高峰と言って全く過言ではない今データベースができていると思いますし、ぜひそれを駆使して今後とも頑張っていただきたいと思います。御期待いたしております。  では、変わりまして、今度は情報家電、あるいはデジタル家電という言い方もしますけれども、この分野の発展に向けての国家戦略的な支援ということについて伺ってまいりたいと思います。  テレビやプリンターのみならず、将来的には家庭電化製品全体がインターネットとネットワーク化される時代がやってきて、こういうものを情報家電と呼ぶわけでございますけれども、二十一世紀において最も成長が期待される分野の一つでございます。しかも、私ども日本というのは家電王国でございますので、この分野で世界の先陣をこれから走るということができましたら、もう一度ジャパン・アズ・ナンバーワンに返り咲ける可能性があるという、やはりこれからの世界経済戦略上、私自身は切り札中の切り札と思っておるんですけれども、恐らくそうした考え方は共通して持っていただいているのではないかと思います。  そこで、今月の四日ですが、東芝とソニー・コンピュータエンタテインメントが共同で開発しましたプレイステーション2用のその心臓部にあります高性能のCPU、これを生産するために両社が合弁会社を設立するという発表がございました。東芝とソニーの合弁というのは非常にダイナミックな動きでございますし、日本でも米国に引けをとらないような非常に新たな時代の幕が切って落とされたのだなと私は感慨深く思ったのでございます。  もちろん、御案内のとおりに、決して今、ゲーム機というのは単なるピコピコとゲームをするだけのものではございませんで、まさにデジタル時代の家庭用端末の最有力のプラットフォームでございます。しかも、この中に内蔵されます新しい高性能のCPUというのは決してプレステ2のためだけではございませんで、インテルが先日、同時期に最新鋭のペンティアムⅢというCPU、これを発表したんですけれども、これと比べましても四、五倍の処理速度という圧倒的な性能を誇っております。現在世界を席巻していますのはウィンドウズとインテルが連合したウィンテル連合でございますけれども、これと堂々と渡り合おうという、まさに世界の大舞台に堂々と、殴り込みをかけると言ったら言葉はよくないのかもしれませんけれども、切り込んでいこうという非常に壮大な試みだと思います。金額だけ見ましても、ソニーはこのプロジェクトに今後一、二年で総額一千二百億円を投資する見込みだということでございます。  それで、別に何の借りもないんですけれども、とにかくこうしたダイナミックな動きというのは夢と希望に満ちております。ただ、さらに大きなリスクにも満ちておりますので、やはり国として思い切った支援を行って、今後、この二社だけではなくて、世界戦略に打って出ようという後続組が次々と名乗りを上げたいなと思えるような、そういう環境をつくっていくべきだと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  142. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 今出ておりますゲーム機器というのは、例えばゲーム機器をデジタルの一つの機械として考えますと、非常に大きな可能性を秘めております。  一つは、先生御指摘のように、ゲーム機器でありながらインターネットにつながる機能を持っているゲーム機器もございます。実際、私も見てみましたが、なかなかよくできておりますし、処理速度も速いし、画面もきれいだと。  それから、今先生が言われました新しいCPUを使ったということは画期的なことでございまして、今までは特定の業者に偏りがちだったCPUに関して、ゲーム機器の開発というものを通じて非常に新しいものができたということは日本にとっては大変いいことだろうと思っております。  これに対して具体的には大変な大きな設備投資が行われるわけでございますし、ゲーム機器とはいえ、他の分野に発展する可能性が大変高いものでございますし、CPUについては、計算機、コンピューターに使う可能性も出てくるんだろうと思っております。  我々はやはり、どちらかというと、そういうCPUの面でもあるいはソフトの面でも若干他の国におくれをとっているという感じが実はございまして、アメリカなどでは現段階での状況にまだ満足をしていない、次の世代に向かってハードの面でもソフトの面でも再挑戦しようという機運が出てきているようでございます。日本もたくさんの人材を持ち、たくさんの優秀な研究所、企業を持っているわけですから、新しい地平線に向かって進むという決意がないとさらに立ちおくれるということになると思います。  今回開発されましたいろいろなCPUやチップというのは、次の世代を示唆する私は大変大事な技術だろうと思いまして、特にペンティアムⅢよりも速いというのはきょう初めて伺いましたので、そういう意味では私は大変有望な技術だろうと思っております。
  143. 畑恵

    ○畑恵君 大臣は御自身でパソコンも組み立てられてしまうぐらいの、こうした分野には大変な御造詣の深い方でございますので釈迦に説法で大変恐縮だったんですけれども大臣がそのように、こういうことを今御自身の言葉で評価してくださるというだけでも大変なインセンティブになると思いますので、ぜひマスコミの前でもどんどん言っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  こうした動きと並びまして、先日、私、松下電器のHIIハウスというモデルハウスを視察させていただきました。これは広瀬局長が既に御視察なさっていらっしゃいます。HIIのHはホーム、Iはインフォメーションとインフラストラクチャーでございます。デジタルネットワーク時代の二〇〇三年ごろの家庭生活を想定したモデルハウスでございまして、情報家電が私たちのライフスタイルをいかに変えるかというのを目で、体で感じさせてくれる大変興味深いモデルハウスでございました。ちなみに野田郵政大臣はごらんになったということでございますので、もしお時間がございましたら、ぜひ通産大臣もその目で確かめていただければ大変ありがたいと思います。  それにつけましても、今後情報家電の成否を決定づけますのは一にも二にも消費者でございます。彼らの理解なしに情報家電の成功はあり得ない。けれども、日経新聞ですとか、そういうわかる人間の間ではデジタル家電というのは割合とフィーバーしているんですけれども、どうも一番便利さを受容する消費者の方はデジタルって何のことというところがまだまだあるように思えてなりません。  このデジタル家電時代のイメージを具体的に広報する措置というのは政府の方では何かなさっていらっしゃるんでしょうか。
  144. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 先生御指摘のように、情報家電というのは、目に見える形で国民生活の質的向上を図るという観点からも大変期待をされますし、それからコンピューターの世界で考えましても、先ほどゲームのお話がございましたけれども、それと並んで日本の非常に得意な分野の家電について情報化をしていこうということでございます。そういった意味で、ゲームと並んで、これからいろいろデファクトスタンダードをとっていくいい分野ではないかということで、我々産業政策の観点からもそういう面から非常に期待をしているところでございます。  そういう場合に、消費者がいかにこれがすぐれたものかということを理解していただいて使っていただくということが非常に大事な点でございます。そのことを我々も常々思っておりまして、実は平成十年度の補正予算を活用いたしまして家庭等の情報化推進事業というのに取り組んでおりますけれども、その中では、技術開発ということだけではなくて、それを実証実験という形で消費者に訴えていくあるいは消費者の皆さんからいろいろ意見をもらっていく、そういうことで消費者との対話において推進をしていこうというようなことを考えております。このあたりは、御指摘のようなまさに消費者中心に開発を進めていく考え方ではないかというふうに考えております。  これからもこの情報家電を進めるに当たりましては、いろんなライフスタイルの提案とかコンテンツの提案といったようなことを通じまして、消費者の気持ちを引きつけながら対策を講じていきたいということを考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  145. 畑恵

    ○畑恵君 もう既にコンテンツ、ライフスタイルの提案ということを局長がおっしゃられましたけれども、まさに何がサービスとして提供されるのか、コンテンツがどういうことかという、そこの部分が大事でございまして、情報家電はそれを流すインフラの部分、パイプの部分でございますので、流れるものが大切と。  要するに、情報家電によって流れる各種のサービス、これを育成しないと情報家電の発展もないということでございますが、例えば在宅医療ですとかホームセキュリティーですとか、また近隣の小売店と連動しての電子御用聞きといいましょうか電子の宅配サービス、さまざまなものが考えられますけれども、こうしたサービス産業の育成ということについてはどのような措置を考えていらっしゃいますでしょうか。
  146. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) まさに御指摘のとおりでございまして、家庭に幾ら立派な電子端末を置いてもアプリケーションがないと情報家電の真価が発揮されないわけでございまして、どういうアプリケーションをつくっていくかということがこの政策の大変大事なポイントだろうと思っております。  お話がございましたように、在宅医療とかホームセキュリティーとかそういったことももちろんでございますけれども、私どもとしましては、電子商取引の推進というのを今逐次やらせていただいておりますけれども、そういう中であらゆるアプリケーションの開発を進めております。また、開発だけではなくて、これも実証実験を含んでやっておりまして、そういう中で、家庭にきっと受け入れられるあるいは国民生活を豊かにするようなアプリケーションが続々と出てくるのではないかというふうに期待をしております。また、そういう方向で進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  147. 畑恵

    ○畑恵君 ぜひ各メーカーとも連動しながら施策に励んでいただきたいと思います。  例えば、二〇〇〇年から体系が変更になるんだそうでございますけれども、バーコード、これも恐らく情報家電に非常に役立つと思いますので、ぜひその有効活用について考えていただきたいと思います。  また、既に建っている家の中にラインを引く、ネットワークを引くのは非常に難しいので、必然的に無線の拡充ということが必要なんですけれども、これになりますと周波数の問題も出てきます。各省連携がまた大切になってきますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  三番目、おしまいに、サプライ・チェーン・マネジメントについて若干伺いたいと思います。  経済が成長期に入って、かつ急速に今グローバル化、情報化が進んでいる中で、日本企業が国際競争力を持つためには、さまざまなロスをできる限り削減して、そして商品供給の質とスピードを向上させて必要最小限の在庫でかつ販売機会損失を回避できる、夢のようなシステムでございますが、このサプライ・チェーン・マネジメントの早期導入が望まれるところでございます。政府としては今どのような措置をとっていらっしゃいますでしょうか。
  148. 岩田満泰

    政府委員(岩田満泰君) 御指摘のとおりでございまして、大量生産、大量供給の時代が転換をいたしまして、個々の消費者ニーズを適切に反映した商品の提供のために、企画、生産、販売、一貫した供給の仕組みをつくるという意味でサプライ・チェーン・マネジメントは極めて重要な課題になっておるわけであります。  こうしたものをつくるためにはどうしても情報システム化の技術を使うことが不可欠でございます。私どもとしては、従来からこのバーコード、いわゆるJANコードの普及あるいはPOSの普及というようないわば一つの部品の普及に努めてきたわけでございますが、さらに加えまして、電子商取引の標準化のために標準EDIというようなものの開発を平成八年度までかけて終わりました。その後、二年間をかけて実証実験を行ってまいりました。  こういうものを、平成十年度からはもろもろの補正予算をいただきながら、電子・電気、自動車、流通等々の幅広い業態のサプライ・チェーン・マネジメントの開発を推進いたしますとともに、小売まで視野に入れますと、業種横断的な意味合いでこの流通EDIを使って皆さんが共通の言語で会話を、会話といいますかまさに受発注をする、そういう仕組みをつくっていく、このことが極めて重要であろうと思い、私どもSPEEDプロジェクトと名づけまして、現在それに取り組んでいるところでございます。
  149. 畑恵

    ○畑恵君 これまでのEDIの積み上げというのはよく存じておりますけれども、たしか先ほどSPEEDプロジェクトと言われた、消費者起点サプライチェーン推進開発実証事業という、こちらは昨年の三次補正で十二億円ということなんですけれども、来年度ゼロなんですね。  これに参加した企業方々から直接伺った話では、いや非常に将来性があるので、あと一けたふえるんじゃないかと思っていたらゼロになっちゃったというところがありまして、そういう意味で大変がっかりしていらっしゃいますから、私どもも頑張りますので、もう一度ぜひ復活をして、こういうところにはどんどん予算をつけて後押しをしていただきたいと思います。  さて、特にサプライ・チェーン・マネジメントの中で主眼となりますのは流通コストの削減でございます。現在、日本GDPに占める流通コストの割合はおよそ一一%と言われておりますけれども、これがサプライ・チェーン・マネジメントの導入によって約三〇%削減できるという予測もございます。実に画期的な効果が望めるわけですけれども、実際これを実現するためには、例えば運送でいいますと効率化が必要、現在はトラックなど貸し切り輸送が中心になっておりますし、やはり運送業界の再編などというようなことも必要ではないかと思います。諸課題があると思うんですけれども、この点について特に特筆すべきことがございましたらお教えいただけますでしょうか。
  150. 岩田満泰

    政府委員(岩田満泰君) 物流とか運送業界のことにつきましては、私ども所管外でございまして、コメントはむしろ差し控えた方がよろしいと思いますが、いずれにいたしましても、私ども、このサプライ・チェーン・マネジメントを導入いたしますためには、業種あるいは企業の壁を越えたシステムづくりということが大事でございます。  残念ながらと申しますか、現状を見まするに、業種あるいは企業ごとに既に確立いたしました個別の情報システムを採用されておるわけでございまして、そのことがむしろ壁を越えたサプライ・チェーン・マネジメントの構築には一つのまたそこの壁になっておる、こういう状況にございます。  そこで、極めて基本的であり、かつなかなか解決の難しい課題が一つございまして、それはまさに意識改革の問題でございます。広く産業界の方々がこういうサプライ・チェーン・マネジメントなどというようなものは業種を越えた経済社会における一種のインフラである、したがって自分の会社、企業グループだけの問題ではない、そういうものをつくることが実は社会のコストを下げることにつながるんだと、自分の利益にもなるんだという意識を持っていただけるかどうか、これが極めて重要でございます。先ほど御指摘いただきました第三次補正予算の中のプロジェクトの取り組みにつきましても、この意識改革につながるような、業種を幅広くとらえるようなプロジェクトの採択という方向で、私どもぜひ取り組みたいと考えておるところでございます。  そういう意識改革を前提としながら、先ほど申しました流通標準EDIのようなものを使いまして、全体として各産業界の取り組みを私どもとしてもその普及を図って支援していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  151. 畑恵

    ○畑恵君 時間もなくなってしまいましたけれども、まさに今のお言葉に尽きていると思います。本当に革命的な意識改革というのが必要だと思いますし、業種を越えるということはある意味で省庁間の壁も越えることになりますので、ぜひ連携をとって頑張っていただきたいと思います。  あと、本当はぜひ大臣のお言葉を伺いたかったんですけれども、今一、二、三と伺いましたすべてに共通していることは、通信料金がインターネット系になっていないといずれも決して発展は望めないというところがございまして、現在の高どまりしている、定額制になっていないインターネット通信料金というのは非常に大きな阻害要因になっていると思いますので、ぜひ関係省庁とも連携をとられて、大臣の力でここに突破口をあけていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  152. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 本件に対する質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時五十四分散会