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1999-05-27 第145回国会 参議院 外交・防衛委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      高野 博師君     大森 礼子君  四月二十八日     辞任         補欠選任      大森 礼子君     高野 博師君  四月三十日     辞任         補欠選任      田  英夫君     村沢  牧君  五月六日     辞任         補欠選任      村沢  牧君     田  英夫君  五月十三日     辞任         補欠選任      佐々木知子君     倉田 寛之君  五月十四日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     佐々木知子君  五月十七日     辞任         補欠選任      佐々木知子君     阿部 正俊君  五月十八日     辞任         補欠選任      阿部 正俊君     佐々木知子君  五月十九日     辞任         補欠選任      佐々木知子君     有馬 朗人君  五月二十日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     佐々木知子君  五月二十四日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     浅尾慶一郎君      山崎  力君     高橋紀世子君  五月二十五日     辞任         補欠選任      浅尾慶一郎君     木俣 佳丈君  五月二十六日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     岸  宏一君  五月二十七日     辞任         補欠選任      亀谷 博昭君     脇  雅史君      岸  宏一君     岩崎 純三君      木俣 佳丈君     小川 敏夫君      高橋紀世子君     山崎  力君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         河本 英典君     理 事                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 柳田  稔君                 高野 博師君                 小泉 親司君     委 員                 岩崎 純三君                 岸  宏一君                 佐々木知子君                 村上 正邦君                 森山  裕君                 脇  雅史君                 小川 敏夫君                 木俣 佳丈君                 齋藤  勁君                 吉田 之久君                 続  訓弘君                 立木  洋君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 山崎  力君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外務大臣     高村 正彦君    政府委員        外務大臣官房審        議官       小松 一郎君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  東郷 和彦君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○外交防衛等に関する調査  (コソヴォ問題に関する件) ○国際海事衛星機構(インマルサット)に関する  条約改正及び国際移動通信衛星機構(インマ  ルサット)に関する条約改正の受諾について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○投資促進及び保護に関する日本国とバングラ  デシュ人民共和国との間の協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○投資促進及び保護に関する日本国政府とロシ  ア連邦政府との間の協定締結について承認を  求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 河本英典

    委員長河本英典君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、岩崎純三君が委員辞任され、その補欠として岸宏一君が選任されました。     ─────────────
  3. 河本英典

    委員長河本英典君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河本英典

    委員長河本英典君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事高野博師君を指名いたします。     ─────────────
  5. 河本英典

    委員長河本英典君) 次に、外交防衛等に関する調査のうち、コソボ問題に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 佐々木知子

    佐々木知子君 実は一昨日にコソボ問題について質問するようにというふうに言われましたが、時間がないこともございますし、またコソボというのは我が国から非常に遠いところでありまして、バルカン半島の歴史というのは非常にわかりにくいということもございますので、一般の関心もメディアで騒いでいるほどは余り関心を持たれていないというような状況も実際のところはあるようでございます。  勉強はそれなりにはしたんですけれども、もう一つよくわからないところも非常に多いということで、まず外務大臣の方から、現在のコソボ問題に対する背景をどのように日本政府としては認識されておられるのか、そしてまた現状はどうであるのか、そして我が国対応としてはいかなるものを行っておられるのか、それにつきまして御報告いただきたいと存じます。
  7. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) コソボ問題は、セルビア人アルバニア人との間のコソボ支配権をめぐる長い歴史的経緯を持った複雑な問題でございます。  一九八〇年代以降は、自治の拡大を求めるコソボアルバニア人と、この要求を力で押さえ込もうとするユーゴ及びセルビア当局との間で対立が深まり、衝突事件も繰り返されてきたわけでございます。  両者間の緊張関係が続く中、九八年二月末、アルバニア系武装組織セルビア治安部隊との武力衝突が発生しました。それ以来、ユーゴ軍セルビア治安部隊は圧倒的な軍事力のもとにアルバニア系住民に対する武力攻撃を行いました。その結果、大量難民避難民が発生し、周辺国にも流出する事態となりました。  このような事態を受け、国際社会は、人道的な観点及びこの地域の平和と安定の維持という観点から、この問題の政治解決のために国連やG8等の場において種々の粘り強い外交努力を行ってまいりました。特に、本年二月から三月にかけて、欧米諸国が仲介する形でランブイエ、パリにおけるユーゴ政府コソボアルバニア人の両当事者間の和平交渉を行いましたが、ユーゴ政府は最終的に和平合意案を拒否するとともに、一方で四万人以上の軍、治安部隊を新たにコソボ及びその周辺に投入しました。  このような状況のもと、本年三月二十四日、NATO軍は、さらなる人道上の惨劇を食いとめるため、やむを得ざる措置として軍事行動をとるに至りました。  NATO空爆開始後も、国際社会によって政治解決に向けた種々外交努力が行われております。それにもかかわらず、ユーゴ側は依然として国際社会要求を拒否し続けるとともに、コソボにおいてアルバニア系住民に対する攻撃を行っており、これまでに約八十万人の難民アルバニアマケドニア等周辺国に流出するに至っております。  この問題の政治解決のためには、ミロシェビッチ大統領国際社会要求を受け入れることが必要であり、そのためには、ロシアも参加するG8が統一ポジションを固め、その上で国連主導的役割を果たし得る状況に持っていくことが必要であります。五月六日のG8外相会合におきましては、このような観点から、政治解決のための七原則について合意されるとともに、これらの原則を実施するために国連安保理決議採択を目指して準備を進めること等が合意されました。  現在、G8諸国間で同外相会合合意に沿って国連安保理決議案の具体的な内容について検討が進められております。  我が国といたしましても、この問題の政治解決を強く望むものであり、国連安保理決議採択を目指し、今後ともG8の一員として貢献していく考えでございます。  アルバニアマケドニアなど周辺国に流出し、悲惨な状況に置かれている難民に対する支援は、問題の政治解決と同様に重要であり、このため我が国は、四月二十七日、難民に対する支援難民を受け入れている周辺国に対する支援及び和平達成後のコソボ復旧難民帰還に対する支援から成る総額約二億ドルの支援策を行うことを決定いたしました。  大体こういう状況でございます。
  8. 佐々木知子

    佐々木知子君 簡単にコソボ問題の背景についてお伺いいたしましたけれども、NATO側、つまりアメリカ側にとりましては、ミロシェビッチというのは非常に悪役である、ミロシェビッチさえいなくなればこの問題は片がつく、そういうようなお考えでありましょうし、反対セルビア人にとりましては、コソボ自治州のアルバニア人たちコソボ解放軍というのを組織してかなりの抵抗をしていると。どちら側から見ましても相手が悪いというような、多分そういうような理屈というのはどんな状態でも成り立つわけでしょうけれども、一方に偏していては多分まともな中立的な立場で物は見られないだろうということを私は全般にどんな問題でも言えるかと思います。  日本政府は、もちろんNATO側アメリカ側に立つのは非常にたやすいことだと思いますけれども、そうではなくて、中立的な立場としてコソボ問題というのを本当にもう少し深く考えておられるのかどうか、ちょっとその点について、難しいかもわかりませんがお伺いできればと思っております。
  9. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ランブイエ合意案というのは、これは本来的に民族紛争でありますから、その中に立ってやるわけですから、ミロシェビッチ大統領側にも強い要求をするし、それと同時にコソボ解放軍の側にもかなり強い要求を出していたわけで、それに対して両方がなかなかのまないという状況にあったわけであります。  ミロシェビッチ大統領の側に対しては、先ほども申し上げましたように、民族浄化と言われるような人道上の惨劇を生むような行為はやめなさい、そのために軍、治安部隊は引き揚げなさい、こういうことを強く言うとともに、コソボ解放軍の側においては、独立なんというのはそれは無理ですよ、国境線を新たに変更するようなことは無理ですよ、それはあきらめなさいと。そういうことを強く言い、そういう中で最後ぎりぎりの線の中でコソボ解放軍側はやむなしということでのんだのに対して、ミロシェビッチ大統領側はそれをかたくなに拒否した、そして今まで以上に弾圧ができるように軍、治安部隊四万人というものを、少しずつ投入していたんですが、新たに増強してきた。  こういうような状況があったということでNATO空爆に踏み切らざるを得なかった、こういう状況だというふうに理解をしております。
  10. 佐々木知子

    佐々木知子君 エスニッククレンジングという言葉ボスニア危機のときからも非常によく使われておりまして、我が国のように民族問題というものがまずほとんどないと言われる国では非常に理解しがたいものがございます。  民族が違いますと、当然のように宗教も違いますし言語も違いますし、いろいろな意味であつれきが起これば大変なことになるというのは容易に考えられることですけれども、今回本当にエスニッククレンジング民族浄化だけというか、主にそれが引き金になってこういうような状況になっているというふうにお考えでしょうか。
  11. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) それが引き金ということの意味がちょっとよくわかりませんが、少なくとも民族浄化のようなことが行われなければ空爆は行われなかった、こういうふうには私は思っております。  民族浄化が行われる前には長い民族間の対立があった、そしてコソボ解放軍等独立を目指して、そしてユーゴ側国境線を変更するようなことはだめだよ、こういうこともあったと思いますが、端的に言うと、八九年ですか、ミロシェビッチ大統領の側がコソボ自治権を廃止するという、強い側が攻撃に出た、現状を変えるようなことに出た、そういうところから、また今度はコソボ解放軍が活発に逆に独立を主張するようになったと。もっと長く言えばもう何世紀も前からそういう話がずっとあるわけですけれども、ただ、空爆に至る状況というのは、それは民族浄化という言葉で代表されるような人道上の惨劇を食いとめるためであった、こういうふうに理解をしております。
  12. 佐々木知子

    佐々木知子君 外務大臣談話というのはもちろん承知しているわけでございますけれども、今回の問題点は、国連安全保障理事会決議によらずに武力行使を行ったということにあるというのは私はもう明らかに言えることではないかと思っております。  もちろんNATO側としては本当は国連安全保障理事会決議があればそれにこしたことはなかったのでしょうけれども、自国内にみずからも少数民族を抱えている、民族問題を持っているロシアや中国が必ず拒否権を発動するであろうというような状態のもとで踏み切らざるを得なかったのではなかったかというふうには考えておりますが、それはやはり国連憲章の第八章の地域的取り決めにも反するものではございますし、日本政府としても、直ちにNATO武力行使したのは納得できるというふうな形ではなかなか言えないのではないだろうかというふうにも思いますけれども、その点についてのお考えはどのようなものでしょうか。
  13. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ユーゴにおけるNATO軍事行動は、国際社会による政治解決のための粘り強い外交努力にもかかわらず、ユーゴ政府がこれをかたくなに拒否し、他方で、コソボにおいてユーゴ軍及び治安部隊によるアルバニア系住民に対する攻撃が続く中で、さらなる人道上の惨劇を食いとめるためのやむを得ざる措置として理解しているわけでございます。  政府としては、ミロシェビッチ大統領がG8外相会合合意された七原則を早急に受け入れ、これによって政治解決の道が開かれることを強く期待しているわけでございます。  私の談話をよく承知していると聞いた上で私の談話を繰り返したということでございますが、政府立場はこれを繰り返すということが一番正確なことだと思いますので、御理解をいただきたいと思います。
  14. 佐々木知子

    佐々木知子君 ただ、これにつきましては御存じのように、国連危機であるという考え方も随分なされておりまして、それについてのお考えをもう一つ聞かせていただければというふうに考えております。
  15. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 見方だと思いますが、これは国連危機だと言って心配される方もおられるかもしれませんが、やはり私たち国連というのは大事に育てていかなきゃいけないものだと、こういうふうに思っておりますし、やはりG8が統一ポジションをとったとしても、その後きっちり安保理に戻して、安保理決議をつくって、そのことでこの問題が政治的に解決が図られる、こういう形にしたい、日本政府はそういうことをG8の中でも主張して、そういう方向でG8全体も動いているというふうに承知をしております。
  16. 佐々木知子

    佐々木知子君 実は、私はこの問題が起こってから初めて欧州安保協力機構OSCEという存在を知ったわけですけれども、この機構というのは一体どういう機構であり、今回のコソボ紛争に関しましてはどのような貢献をして、どのような時点で引いたというんですか、結局、NATO武力行使を容認するようなことになったのかということについて、お伺いしたいと存じます。
  17. 西村六善

    政府委員西村六善君) OSCEはヨーロッパの非常に多くの国を包含的に加盟国としている組織でございまして、全体で現在五十五カ国が加盟している組織でございます。この組織は実際的な軍事的な機能を発揮するという性質のものではございませんで、安全保障のための枠組み安全保障上の状況を検討する、話し合いを行うという機関でございます。そもそもそういう機関でございます。  コソボ問題との関係におきましては、先ほど大臣が御答弁になっておられましたランブイエにおきます和平合意案の中におきましても一定の役割を果たすように位置づけられておりまして、OSCEが管理をいたしまして大統領選挙を行ったりすると、いろいろな行政組織上の妥協案というものがあるわけでございますけれども、それが正しく実行される。双方が疑いを持って非難をするということのないように、中立的な機関であるOSCEがそこに目を光らすという役割を与えられているわけでございまして、そういう意味におきましても、コソボ問題との関係におきましては、今私が御説明をいたしましたような意味合いにおきまして役割を果たすことが想定されている機関でございます。
  18. 佐々木知子

    佐々木知子君 日本政府といたしましては、このOSCEに対する何らかの働きかけというのでしょうか、外交ルートであれ何であれ、そういうことは不可能だったのでしょうか。
  19. 西村六善

    政府委員西村六善君) コソボ問題、事態解決の過程におきましては、先ほど大臣が一番最初に御説明をいたしましたように、国連中心としまして解決のための議論、協議、交渉が行われたわけでございます。それからさらに、コンタクトグループと称します西側諸国西側の八つの国でございますけれども、その国が双方立場の接近を図る外交交渉中心になったわけでございます。  国際社会がこの問題を解決するに当たりまして中心の場を提供いたしましたのは、したがいまして国連とそういう西側諸国であったわけでございまして、OSCEは、その結果、何らかの役割を果たすという役割、そういう想定は行われたわけでございますけれども、OSCE自体解決中心的な枠組みになるということはなかったわけでございます。
  20. 佐々木知子

    佐々木知子君 今回の我が国対応といたしましてやはり人道的支援はやらざるを得ないであろう、そしてG8の一員として積極的に貢献していく、このこと自体についてはもちろん反対する理由は全くないわけですけれども、現在のところ、総額約二億ドルの支援策を行うことを決定しているということももう当然知れていることですが、この内訳を詳しくお聞かせ願えればというふうに思っております。
  21. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 総額約二億ドルの支援につきましては、まず第一に、難民に対する支援として約四千万ドルを国連難民高等弁務官事務所UNHCR等国際機関に拠出いたしました。このほかに物資協力として、既に供与したテント一千張りに加えて、毛布一万枚及びスリーピングマット五千枚をUNHCRに供与いたしました。  それから第二に、大量の難民を受け入れている周辺国に対する支援として、マケドニアアルバニアの両国に対して今後二年間で約六千万ドルの無償資金協力を実施いたします。また、資金協力のみならず、医療等の分野への支援として、本邦医療専門家派遣関連機材の供与及びその他の支援要員派遣を行っております。  第三に、和平合意が達成された際には、コソボ復旧難民帰還等支援するために、今後約一億ドルを人間安全保障基金等に拠出いたします。  つけ加えますと、この問題には官民一体となって取り組む必要がありますので、本邦NGOによる支援活動を応援すべく、弾力的な資金協力を行っているわけでございます。有意の方々に国際人道機関活動への参加の道を開くための支援を行いたいと思っております。
  22. 佐々木知子

    佐々木知子君 大臣御存じでしょうけれども、我が党から四人の議員が現地に調査に行っております。その話を伺ったんですけれども、アメリカドイツは、例えば缶詰を配るときにアメリカ産である、ドイツ産であるということがわかるようになっている、それを見るかどうかわかりませんけれども。ただ日本は、お金は出しますが、例えばそれで小麦を買う、小麦を拠出というのかもしれませんけれども、パンは向こうで焼く。そのパンにメード・イン・ジャパンというふうに書いているわけではもちろんございませんので、難民としては日本が何かをやってくれているという意識は非常に乏しいというか全くないというか。  この前、難民として大阪の堺の自分の親戚を訪ねてきたという方のお話も少し聞く機会があったんですけれども、難民としては本当に毎日生きていくのが精いっぱい、食べることで精いっぱいで、そしてそのときにこの食べ物はどこの国から来ているのかな、一々ああ、ありがとうございますと言って食べることはやはりないと、そういうようなことを言われました。  確かにそれはそうだと思います。何もわからないままでボランティアをやるというのは、それは神様が見ていることでありまして非常に立派なことかとは思うんですけれども、やはり税金を随分高く出している日本国民といたしましては、日本がやっているということが何かの形でわからないと、やはりむなしさはすごくつきまとうと思うんですよ。  特に、今不況でございまして、リストラにもかかりまして、倒産して自殺までしている人がいる。税金をなかなか払えないとか、高額の税金で悩んでいる日本国民も多い。その中で人道的支援と。人道的支援と言われればなかなか人間、表立って反対はできないですけれども、そこら辺はやはり日本支援をしている側としても報われるような方法というのをぜひとっていただきたいんですけれども、それについてどのようにお考えでしょうか。
  23. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 我が国が二国間支援をいたしますときには、日の丸とかODAマークがついておりますし、いろいろと二国間支援の報道も行われますので随分浸透していると思いますが、おっしゃるとおり、国際機関を通じます支援の場合になかなかその点がわかりにくいという点はあろうかと思います。  しかしながら、できる限り、例えばWFP世界食糧計画を通じます日本食糧援助等に関しましても、日の丸とかあるいはジャパンとかいう字が入った形で行えるようにしておりまして、WFP等はそういう点について非常に協力的でございまして、飛行機をチャーターして運ぶときに、その飛行機全体のわき腹に、この援助の輸送は全部日本資金で行われておりますというようなことを書いてくれたりしておりました。まだいろいろと改善すべき点はあろうかと思いますけれども、そういう方向で努力してまいりたいと思います。
  24. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 一番大切なことは相手側がどう助かるかということで、それと同時に、委員がおっしゃったように日本人の血税でもってやっているわけですから、やはり日本がやっているよというのは同時にわかった方がベターである。この二つをどう組み合わせるかということですが、UNHCRなんかにすればできるだけお金でくれるのが一番ありがたいんだ、こういう感じは一方であるということも事実であります。  それから、私も党から派遣された方々からいろいろお話を伺いました。そういう中で、テントについてもほかの国の国旗がかいてあって日本のは一つもかいてない、こういうお話もありましたけれども、実は日本が供与したテントにもちゃんと日の丸はついていて、ただアルバニアの方に我が国のがいっていましたのでマケドニアに視察に行かれた方の目にはとまらなかった、こういうことでありまして、今後ともできるだけ日本がこういうことをしているんだよと多くの方にわかるような努力は続けたい、こういうふうに思っております。
  25. 佐々木知子

    佐々木知子君 支援策は、難民に対するものとそれから難民を受け入れる国に対するものと、二とおり大まかに分けてあるかと思いますけれども、難民受け入れ国に対してです。  今回は、マケドニアとかアルバニアとかにお金が渡された場合に、その国が難民に対してというよりは自分たちで使い込んでしまうのではないかという懸念をこの前アルバニアの方が言っておられましたけれども、そのようなフィードバックというんですか、どういうふうに使われているかとか、そういうのはどのようにして検証されるのでしょうか。
  26. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 国際機関を通じまして拠出を行ったような場合には、国際機関の方から使途先、それから配分先、効果等について報告がございます。  それから、二国間援助で協力をいたします場合には、そもそも二国間協力のプロジェクトを決めます際に使途をきちっと日本側として把握できるような形で決めております。  それから、その後も我が国が供与する物資、機材が不適切でないというようなことも確認いたすような仕掛けが実施機関、すなわちJICAとかそういうところでフォローできるような形になっております。
  27. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 二国間支援の場合に、それが何に使われるかということがきっちりわかるように、きっちり検証できるようにそれは一般的にしてあるわけであります。  それで、これは受け入れ国が難民のためだけに使うものの援助という意味では必ずしもないわけで、難民受け入れ国というのは一般に財政負担が物すごく大きいわけですから、難民だけでなくて一般の人たちがかかる病院の援助だとかそういうことにも使っていただいていいんだ、そういうことで受け入れ国に対しては支援をしたい、こういうふうに考えております。
  28. 佐々木知子

    佐々木知子君 後の方で言われておりました約一億ドルは、コソボ復旧難民帰還等支援するために国連に設けられた人間安全保障基金等に拠出ということを言われておりましたけれども、これは具体的にどのようなことに使われるのでしょうか、もしわかっていたらお教え願いたいのですが。
  29. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) まだ和平が未達成でございますからなかなか難しゅうございますけれども、和平の合意の過程の中で必ずや、難民の帰還をどういうふうに進めるか、そしてそれをどのような国連機関等が担当するかということが恐らく定まっていくと思います。  今のところその点が明確でございませんので、全体として国連の事務総長の直轄のもとに日本が拠出してつくってございます人間安全保障基金というところに拠出することにしておいて、そこからかなり弾力的かつ迅速に、例えば難民高等弁務官事務所でありますとか、国連のUNDP、国連開発計画等が行うであろうそういう難民の帰還の支援の事業に回していただくということを考えております。
  30. 佐々木知子

    佐々木知子君 我が党では、この二十八日から新たな調査団を派遣して現地ニーズに合った新たな支援策考えるということでございます。  現地は非常に寒いところであり、十一月から本格的な寒さが来るようです。テントとかでは凍え死んでしまうような状態が来るということで、我が国としては、阪神大震災のときの教訓を生かして、例えば仮設住宅をつくるとか、そのような形で物的また人的な援助が何かできないものかどうかというふうに私自身も考えるわけですけれども、それについてはどのようにお考えでしょうか。
  31. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 難民の皆さんが避難所、キャンプ等でとりあえず生活しておる、それを支援しているのが難民高等弁務官事務所でございますが、御指摘の今後の対応の問題としては、今は目下これから夏になるので、暑さをどう防ぐか、衛生状態の悪化をどう防ぐかという問題がございますが、引き続きまして、今御指摘の越冬対策の問題がございます。  この点につきましては、緒方難民高等弁務官も対策を講じなければならないというふうにおっしゃっておられますが、非常に悩ましい問題でございまして、そういうことを今直ちにやるといわば長期化を覚悟しているようなことにもなりますので、なかなか微妙な問題であるということをおっしゃっておられます。  いずれにいたしましても、難民高等弁務官事務所の方での方針が定まること等を見きわめつつ日本としてそれに協力をしていくという形で協力ができるのではないかと思っております。
  32. 佐々木知子

    佐々木知子君 今回、一組の御家族が親戚を頼って大阪の方にやってこられました。遠いといえば遠いのですけれども、彼らに言わせれば、安全なところに行くためには一週間だって子供を連れてただひたすら歩くと。日本は、ある意味では飛行機で一日で来られるようなところであって、安全という意味ではこれ以上安全なところはない。もし、難民として向こうが来たいと言えば、日本政府としては引き受けるような状況にあるのかどうか。それについてお聞きしたいと思います。  と申しますのは、非常に個人的な事情、個人的な経験になりますけれども、阪神大震災のときに、コスタリカはその当時女性大使でございまして、私は個人的に親しかったのでおうちによく参っていたのですが、そのときに彼女は、コスタリカの方で何人でも引き受けるということを宣言いたしまして、実際に彼女のうちに神戸の家を焼かれたという方を引き取って暮らしておりました。ああ、すごいことをやるんだなというふうに非常に感心した覚えがあるんですけれども、日本としてはそれについてどういうふうにお考えかということをお聞きしたいと思います。
  33. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) この問題については日本政府としても空爆開始直後ぐらいから検討をいたしました、余り具体的な検討まで入らなかったのですが。UNHCR等の意見も聞きました。私自身もこの問題について緒方貞子さんと二度電話をいたしました。UNHCRの方の意見では、ともかくコソボ難民は、あれだけの数がいますからいろんな人がいるかもしれませんが、全体的にはコソボに帰りたがっているんだと、余り遠くまで行くということは望んでおられないのではないかというのが緒方貞子さんの意見でありました。  ただ一方で、急速に難民がふえていますので、マケドニアなどはもう受け入れ限度に来ていると。そういう中で、UNHCRの側が、アメリカとかオーストラリアとか幾つかの国に緊急避難的に受け入れてくれ、こういうことを言いました。そのときも、UNHCR側の意見を聞いたときに、アルバニア系の方たちが移住をしていて、何か受け入れ態勢があるようなところにお願いしたということで、必ずしもUNHCR自体日本にお願いするような状況ではないというふうな意見を持っていました。  ただ、これからどうなるかわかりませんので、我が国としても、場合によったらそういうことはあり得べしということは考えておかなければいけない、こういうふうに思っております。
  34. 佐々木知子

    佐々木知子君 現在、日本政府が財政的な支援人道的見地から鋭意行っているということは私も非常に理解しており、すばらしいことだというふうに思っております。ただ、予防法学、予防医学という例もございまして、こういうことが起きないようにするというのがやはり一番いいことでございます。そのために、日本政府としては政治的な役割、リーダーシップを何らかの形でとれないものだろうか。これは理想論かもわかりませんけれども、私はそれを非常に考えております。  というのは、日本政府は、NATO側にも属しておりませんし、またロシアや中国のような、そういうように利害関係も持っておりません。ある意味では非常に中立的な立場にございまして、こういう方が仲裁役、ミディエーターとして本当の意味で貢献できれば、立ち回っていろんなところで解決策を見出していけるならばこれ以上すばらしいことはないし、世界の経済大国でありながらもっと政治的なプレゼンスというのを高めていくべきだというふうに考えておりますので、G8に参加されていろいろ原則を出されたということはもちろんよくわかっておりますけれども、今後どのような形でこの政治的なプレゼンスを高めるというふうにやっていかれるおつもりなのかどうか、そこら辺の御決意があればお伺いしたいと存じます。
  35. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) コソボ問題の解決のためには、国際社会が一致してミロシェビッチ大統領に一層の圧力をかけることが重要である、こういうふうに考えております。  このためには、まずG8としての共通のポジションを固め、その上で国連主導的役割を果たし得る状況に持っていくことが重要である、こう思っております。  このような観点から先般のG8外相会合においては、政治解決のための七原則について合意されるとともに、これらの原則を実施するための国連安保理決議の準備を進めること等が合意されました。  この合意を受けて、現在、G8政務局長会合において国連安保理決議案の具体的な内容について検討が進められており、我が国もこの作業に参画をしているわけであります。我が国としては、国連安保理決議採択を目指して、今後ともG8の一員として貢献してまいる考えでございます。  他方で、政治解決のために我が国としてさらに役割を果たし得る機会があれば、そのような機会をとらえて積極的に貢献してまいりたいと考えております。  G8の中の立場というのは、米英からロシアまで幅広いわけで、その中で日本政府としてG8の中でいろいろなことをここはどうだこうだという話をしておりますが、そういう中で日本政府として統一ポジションができるようにも努力いたしましたし、その統一ポジションに基づいて具体的に、統一ポジションといっても全く同じことを考えているとは限らないので、そういう中で具体的なことを詰める作業を今、一生懸命やっているわけであります。  もちろん、日本日本立場としてこうだということを、旗を高く掲げろということも一つの意見ではあろうと思います。そういうことが現実に役に立つ時期、役に立つ状況であればそうしたい、こう思っておりますが、今はG8の中で、現実にそれが動いている中で、いたずらに日本はこうだよと言って旗を掲げることが現実に役に立つかどうか。プレゼンスを示すことになることもあるかもしれませんし、失笑を買うことになるかもしれません。そのときに、役に立つ場所でやればプレゼンスを示すことになるし、役に立たないときに、ただいたずらにプレゼンスを示すために行動しているんだと思われると、あの国はそういう国だな、こう思われることも、国際社会の中でそういう国もあるかもしれませんし、いろいろあるわけです。  私たちは、その場その場において、政治解決のために何が一番役に立つか、日本政府としてやることで何が一番役に立つか、それを考えながら行動してまいりたい、こういうふうに思っております。
  36. 佐々木知子

    佐々木知子君 ありがとうございます。非常にその点を期待しております。  もう時間もございませんので、最後に私の意見だけを言わせていただきまして終わりにしたいと思います。  これは、今回の難民支援だけの問題ではなくてODA全般の問題にもかかってくるかと思うんですけれども、ODA白書を見ておりますと、「日本が最大の援助供与国となっている国一覧」という表がございまして、一九九六年度の時点で四十七カ国ございます。その中に、私が前の職業のときに出張で行きましたサウジアラビアやスリランカやタイやベトナムやフィジーというふうなさまざまな国が載っておりますけれども、果たして向こうの国に、日本がそれだけ援助をしてくれているという認識があったのかどうか、私はその時点でこういうことを知りませんでしたので、そういう認識がなかったからわからなかったのかもわかりませんが、知られているのかどうか、そこのところもよくわかりません。  もっと私が関心を持っていることは、日本の国民が、日本国がこれだけのことを他国に対してやっているのだ、そして、見返りを求めてはいけないのかもわからないですけれども、やはり経済的な援助をする限りは経済的に日本にとって何らかの見返りはあるのだということも、これは経済学者などはそのようなことも、結構納得するようなことも言っておられますけれども、ODAはもう日本はそんなにやるべきではないというふうに言っておられる方もたくさんおられます。  そういうふうな意味で、やはり血税を使う以上は日本国民のまず理解を得なければいけないということで、その意味での広報活動、教育活動というのに特に力を入れていただきたい。これは国会議員というよりも一国民として切に願いまして、時間ですので、私の質問を終わらせていただきます。
  37. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 民主党・新緑風会の木俣でございます。連日連夜、本当に御苦労さまでございます。  質問でお願いした中にはちょっと入ってございませんけれども、今ペリー調整官が北鮮の方に行かれております。きのうも、何という方かちょっと今記憶にございませんが、かなりハイレベルな方にお目にかかったというふうに伺っておりますが、その後金正日さんにお目にかかったのかどうか、またはかかるような感じに今なっているかどうか、ちょっと伺いたい。
  38. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 金正日総書記に会ったという報告は受けておりません。会うようになっているかどうかも存じません。わかりません。
  39. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 訪朝の前にペリーさんは日本に寄られて、外務大臣、総理大臣とお話になったというふうに新聞報道で伺っておりますが、その際に、第一に日本としてはこれを約束取りつけてくれよと言ったことというのは何でございましょうか。
  40. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) この間お会いしたときに言ったということでは必ずしもないわけでありますが、ペリー調整官が示しているのは、包括的、統合されたアプローチ、その包括ということの中に、国際的関心事でもあるけれども日本国民の特に関心事であるミサイルのこと、こういったことは入れてほしいということは前々から言っているわけでありますし、例えば、これも人権という意味では国際的な問題ですが、日本国民にとっては直接の問題であるいわゆる拉致疑惑の問題、こういったことについても前々から申し上げているところでございます。
  41. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ミサイルももちろんさようでございますが、私などは、対話と抑止というふうによく言われる中で、この拉致の問題というのは主権国家としてどうしてもこれは解決していただきたい最重要な問題だというふうに思っております。  今いろんな方面で、シンガポールでこの間も、局長級でございましたか、会合を持たれたり、いろんなチャネルを通じて外務省の皆さん、大臣を初め挙げてやっていらっしゃるのはよく存じ上げておりますけれども、早急な解決をぜひお願いしたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
  42. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) そのために全力で取り組みます。取り組んでいるつもりですが、今後さらに取り組みます。  大声で言えば解決するのかどうかと、それほど簡単な問題ではないから今までなかなか解決しないわけですから、どうやったらということをいろいろ工夫をしながら一生懸命取り組ませていただきます。
  43. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 与野党問わず、まさに人命にかかわる問題でございますので、ぜひ全力を挙げて一致団結した御協力を賜りたいと思っておる次第でございます。  次に、本題に入りましてユーゴスラビアの話でございますが、まず不思議に思いますのは、空爆が始まった時期が三月二十四日、ちょうど二カ月がたったという認識だと思うんでございますが、二カ月たってなぜ戦争が終わらないのかなということを思うんでございますが、いかがお考えでしょうか。戦争が終わらない理由。
  44. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 戦争が終わらない理由というのは、なかなか難しいのか簡単なのかよくわかりませんが、それはミロシェビッチ大統領国際社会の声に耳を傾けないから終わらない、あるいは屈服しないからという言葉を使ってもいいのかもしれませんが、国際社会の声に耳を傾けないから終わらないんだ、こういうふうに思っております。
  45. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 戦争というのは、交渉が決裂して、その後の最終手段だというふうに私は認識しております。  戦争を始めたならば、第一の目的というのは被害を最小限にすること、これは攻撃する側も、そしてまた攻撃される側も、やはり人権という意味でも被害を最小限にすることだと思います。つまりそれは、大量殺りく兵器を使えということは言いませんけれども、しかし短期間に終われば、短期間ならば短期間であるほど被害というのは最小限に終わる、少なくて済むというふうに認識しておる次第でございます。  二カ月、六十日たつわけでございまして、米国の例のウオー・パワー・アクト、ガイドラインのときに何度も質問もさせていただきましたが、たしか六十日という期間で再度議会の承認ということを法律の中に書いてあったというふうに記憶しておりますけれども、この場合は米国の方はどういう扱いになっておるんでしょうか。
  46. 西村六善

    政府委員西村六善君) 米国の国内法制すべてをつまびらかにいたしておりませんので、さらに調査の上、御報告に参上させていただきたいと思いますけれども、米国におきましては、NATOの行動の一部としまして政府が行動し、議会におきましてこれに強く反対する議論はあろうかと思いますけれども、現在そういう制度ないしはその議会の決定としてこういう行動を阻止するといったような決議とか決定とかといったようなものが行われてはいないというふうに了解しております。  それから、議会におきましては、このようなNATO空爆、それに対する米国の参加に関しまして財政的な費用を支弁する、支出するという決定が行われているというふうに承知しております。
  47. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 これは質問をお願いした中にないものですから、他国の法律でございますので、即座にお答えいただくのも難しいかと思いますけれども、たしか大統領戦争権限法の中で、六十日という期間があったと思うんですが、これは御記憶ございますね、御存じだと思うんですが。今回の場合はそれにかからないんですか。
  48. 西村六善

    政府委員西村六善君) その点につきまして、調査をさせていただきたいと思います。
  49. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ぜひ教えていただきたいのでございます。  それでは、なぜ終わらないのかということでございまして、なかなか空爆というのは、猪口参考人が以前にガイドライン特別委員会の中で言われましたが、つまりアメリカというのは被害を最小限にする方針にしている、被害というのは自国の被害である、つまり戦闘員の被害を最小にするためにピンポイント、そしてまた空爆ということで始めるんだという認識があるわけでございますが、いずれにしてももう二カ月も終わっていない。  この間の戦費についてはどのように、トータルでどのぐらい使ったというふうに御認識されているんでしょうか。
  50. 西村六善

    政府委員西村六善君) この点につきましても正確なところは外部の国が承知する状況にはございませんが、報道によりますと、数週間前の報道でございますけれども、たしか一日四十億円の戦費が使われているという報道があったというふうに承知しております。
  51. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 大変なお金だと思います。  五月二十四日の日経新聞でもユーゴの被害、「最初の五週間で被った損害額がユーゴ全土で一千億ドル」、「単純計算すれば二カ月で千六百億ドル以上になり、ユーゴ国民総生産(GNP)の約十倍。」、これは被害額でございますね。それから空爆費用というものが、今言われた四十億円掛ける例えば六十でいえば二千四百億円、ドルはちょっとわかりませんが。今言いましたように、ユーゴの国民総生産の何十倍かを、例えば二十倍ぐらいをこの二カ月で使ったというふうなことだと思うんです。  先ほども同僚議員からお話がありましたように、対話と抑止ということであるならば、では、初めにGNPの二倍ぐらいの援助をしてやったらどうだったかとか、そういう考え方が、軟弱かもしれませんが、あるのでございますが、そういった考え方というのはどうでしょうか。
  52. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) おっしゃることの意味がよくわかりませんが。
  53. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 では、もう一度言います。  つまり、初めに二カ月以上かかるなんてだれも思っていなかったというふうな認識でよろしゅうございますか。まず、それから。
  54. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) みんなが早期解決を希望していたと思います。  ただ、だれも思っていなかったと言えるかどうかはわかりません。
  55. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 これは実は今度のガイドラインの法にもかかわってくると思うんですが、要はアメリカ、イギリスですね、二大軍事大国が、総力を挙げてかどうかはわかりませんが、目いっぱいとにかく威信をかけてやった戦争だと思うんです。要するに聞かないものがあるならねじ伏せてやろうということで、私、この方法は正しいと思います。  正しいのですが、しかしながら、当初もっと短く期間を区切ってやろう、こういうことだったやに違いないわけなんです。今、状況を見ますと、この外務省のペーパーにもありますように、八十万人の難民が出ている状況にあるわけです。そしてまた、恐らくはより厳しい制裁というか、セルビア共和国の軍隊なのか治安警察なのかわかりませんが、こういったものの虐殺というのが行われているらしいという報道もあるわけなんです。ですから、当初の目的が実は大分外れてしまったという事実は否めないと思うんですが、いかがでございましょうか。
  56. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) NATOとすれば、要するに、ランブイエ合意案を受けてくれ、期限を切って、さらに延ばして、両側、コソボ解放軍ユーゴ側にのめ、のまないんだったら空爆するぞと、そういうこともしている。そのことによって両方がランブイエ合意をのんでくれると思っていた、そこに誤算があったんだろう、私はそう思っております。  それでのんでくれなかったところで、そこで空爆をやるぞと言って、空爆をやらなかった場合にどういうことが発生するか。そこに新たに四万人もの軍、治安部隊を増強している、そこでやるぞと言っておいてやらなかった場合に、その人たちはもう我々がうまくいったんだと言ってやる場合と、空爆をやった結果、軍、治安部隊民族浄化的なことを行って難民避難民が出ることと、どっちの惨劇が大きかったかということは、これは検証できないわけです。時期的に言えば、空爆を行ったときから多くなったということは、これは間違いない。その前よりも難民の出方が多くなったことは間違いないわけですが、やらなかった場合にどうだかということはこれは検証できないわけです。  いずれにしても、ランブイエ合意案で、それをのまなければ空爆するぞと、こう言ったときに、のんでもらえなかったということに大きな誤算があったことは間違いないことだと、こういうふうに思っています。
  57. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 複雑なことを単純に例えて言いますと、例えば夫婦げんかでもそうだと思うんですけれども、同じ家の中にいながら、最近は家庭内離婚とかいろいろ話がありますが、同じ家の中に住んでいる者で、同じ自治州に住んでいる者として、一日も早く仲直りをしなければ居づらいどころの騒ぎじゃないなというふうに思うのは当然だと思うんです。  そういう意味で、何が解決かということはそれは目標の設定によって違うことはもちろん存じ上げながら申し上げておりますが、少なくとも当初目的としていましたような非人道的な対応に対する、そういったものに対する抑圧をかけようというものからすると、一刻も早くおさめていくということがどうあっても大事ではなかったかというふうに思うんです。  それで、結局、空爆を続けた結果で、先ほどから申しているように、外務省のペーパーにもありますように、八十万人を超える難民の方々が出ている。いや、もっと多いかもしれません。今どうなっているかといえば、ミロシェビッチの権力がより強化されているというふうに言われております。窮鼠なのかどうかわかりませんが、どんどん追い詰められていくと、権力をより集中させて、また自分の側近をも粛清しておるのかどうかわかりませんが、そういうふうになりやすい独裁制をより強めているというふうに言われ、そして、今やNATO軍攻撃は、当初にあった人権という問題からすりかわって、ミロシェビッチというのをどう倒したらいいかというような話に移り変わっているわけなんです。  ですから、もちろん時期がたつにつれて目標設定というのが変わっていくのはそれはよくあることではありますけれども、しかしながら、先ほどから言いますように、抑えがきかない、そんなに世界のスーパーパワーがこぞって何とか抑え込もうと思っても抑え込めないものとすれば、これは大変なことではないかということを思うわけなんです。  フィンランドのアハティサーリ、この方なんかも仲介をしようということで動かれているわけでございまして、非常に積極的に動いているところと、いや消極的に動いているところといろいろあると思うのでございます。確かにユーゴというのは日本からすれば、先ほど同僚議員が言われましたように、随分あっちの国という感じはするのでございますが、もちろん拠出金も二億ドルも出していただけるということは大変ありがたいと思うんですが、一つのケーススタディーと言うには余りにもちょっと忍びないんですが、ケーススタディーとして、例えばそのほかに何か大臣としてできることはないんでしょうか、和解に向けて。
  58. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) この問いに対しては私はいつも言っているんですが、ともかく最初お答え申し上げたように、ミロシェビッチ大統領国際社会の声に耳を傾けることによって人道惨劇も終われば空爆も終わる、こういうことでありますから、そのためにはやはりG8の統一ポジションをつくる。  G8の統一ポジションは一般原則としてはできたわけですが、個々具体的なことについてはまだ完全に足並みがそろったとは言えない。こういう状況の中で、それを完全に足並みをそろえるべき努力を日本政府としてもする、まさにG8の中での調整的役割日本に課せられておると私は思っております。  その調整的役割をするときに、最後にここでのんでくださいという旗を上げた方がうまくいく場合と、そんなことしなくて、その段階段階でいろいろあるんだろうと思いますし、置かれた立場でいろいろあると思いますが、少なくとも現時点ではG8の中の会合において日本政府として統一的なロードマップができるような形にしたい、こういうふうに考えて行動しておるところでございます。
  59. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ありがとうございます。  もう少し具体的に、教えていただければと。どのように合意を取りつけていくのか、そのプロセスを若干かいつまんででも結構でございます。
  60. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) どのように合意を取りつけるかというよりも、今、何がそのG8の中で問題になっているかということで言えば、シビル・エンド・セキュリティー・プレゼンシーズという、それは何か。そのセキュリティー、安全保障措置の中にミリタリー、軍事的なものがどのくらい入るか。軍事的なものが入るということはロシアも含めてなっておるんですが、どのくらいのどういう形でなるかということについて、特に英米とロシアが非常に離れた考えを持っている、そこについて一つの一致した考えが出てくるのではないか。  それからもう一つは、余りどこまで言うのがいいのかわかりませんが、一般原則とすれば、あくまでミロシェビッチ大統領がすべて国際社会の言うことを聞いた後での話です、空爆停止というのは。だけれども、そういう状況の中で、ロシアからすれば空爆停止が前提ですよ、こういう話ですが、そこの中でどういう折り合いがつくのか。これは言葉だけ聞いているとつかないみたいな感じもしますけれども、それはそんなことはないんです。つくんだと思います。幾らでも方法はあり得る話だ、こういうふうな感じを持って日本政府としても努力をしている、こういうことです。
  61. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 今、ロシアというお話がありましたが、たしかあしたからロシアに行かれるんですか、外務大臣は。あした、あさって……
  62. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) あしたの夜出発することになる、こういうふうに思っております。
  63. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 御苦労さまです。ロシアへ行って、恐らくそのお話も積極的に、ポイントはG8の合意であると、恐らくそこに向けて今言われた御努力をされると思うんですが、そもそもユーゴスラビアというのは何でユーゴスラビアというのか、御案内ですか。
  64. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 私は知りませんので、政府委員に。
  65. 西村六善

    政府委員西村六善君) ユーゴという言葉は南のという意味だというふうに承知しております。したがいまして、スラブの南部のスラビア、南部のスラブ国という意味だというふうに承知しております。
  66. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ありがとうございました。  そうだと聞きましたが、そうすると、ロシアがスラブ民族の一体として守ってあげたいなという気持ちは当然あるわけでございます。もちろんかつての共産国としてということもあると思うんですが、特にギリシャ正教の人たちセルビア人なんかもたしかそうでしたか、が多いと思うんです。ギリシャなんかもそういった意味でギリシャ正教の方々、ロシア正教の方、東方教会ですね、こういう方が多いものですから、ギリシャなんかも空爆反対を強く言っているなんということを伺ったりするんです。  つまり何が言いたいかというと、解決策の一としては、トラック1としては今言われたようなG8の場があって、そこで正規外交ルート外交チャネルを持って、例えば欧亜局長も大変御苦労されておるし各課長なんかもやっていらっしゃる。そういうのも非常に大事だと思うんですが、トラック2というんでしょうか、正規外交ルート以外のチャネルというのが実は相当大事ではないかなというのを私はずっと思っておりました。  例えば、思い起こせば例の朝鮮にカーターが飛んでいって金日成さんと話をして解決したなんという事例は卑近な例でございますし、ペルーのときも、シプリアニという司教がうまく中継ぎしてなんというのもすごく日本人には印象的でしたし、フィリピンのシン枢機卿もその役目を果たしたり、実はそういった社会の中で、その国の中で精神的な、または宗教的な非常にリーダーシップをとっているような人が、いわゆる正規外交ルートでないやり方で、特に内紛に近いようなものについては役割を果たしているというふうに私は認識しております。  ユーゴの問題というのは、今までというか歴史を顧みても、だんだん難しくなっていますのは、こんなことは御案内のとおりでございますが、経済戦争というものからだんだん民族とか宗教対立、こういったものに向かっているわけでございます。これは、言ってみると援助を幾らふやしたからどうなるということでもなさそうだなというのが一つ。それからあとは、先ほども民族浄化という言葉がぽんと出てくるように、アメリカやイギリスが思い切ってよしやってやろうと思っても、いやおれたちは死ぬまで絶対に負けないんだみたいな、そういった精神を持ち続ける限り実はゲリラ的に終わらないということではないかというふうに思うんです。  これは私もいろいろ勉強させていただきながら、国際問題調査会のときにある参考人が言われた言葉がありまして、非常に印象深くとらえたわけでございます。ことしの四月二十一日に行われたものの中で、柴さんという東京大学の方ですか、若干議事録を読ませていただきますと、   こういう国境周辺民族の問題だとかというのを解決していくためには、この周辺地域のいわゆる自治体だとか、そういうところの代表も含めた、それからNGOも含めた形の新しい会議、そういうNGO、地方自治体だとかというのが、例えば今後難民の問題やなんかを解決していく際でも非常に重要だと思うんです、自治体のネットワークというか。そういうものを含めた新しい形の和平会議というものを国連だとかを中心考えていく。   そういうもっとアイデアだとかを出せるんじゃないか。それによって日本がこの地域で非常に大きな役割を果たし得る、非常に好機なんではないか。このあたりの人たち日本に対する期待というのは物すごく大きいんです、 こういうふうに、参考人というより事情を聴取した公述人といった方がいいんでしょうか、こういうお言葉がありました。  先ほどもカーターの話をしましたけれども、CSISのダグラス・ジョンストンというナンバーツーの方が書いた本で、これは日本名だと「宗教と国家」という本がございます。この中にもベギンとサダトのあのキャンプ・デービッドの和解のことがございますが、この和解の裏に、敬けんな信仰者である、信仰心というのは彼らの人格、歴史的洞察、政治的信念を形成していたというような、これが予想以上に大きく働いたんだというようなカーターが書いた文章がございまして、大変感銘深く思っておるわけなんです。  何が言いたいかといいますと、考えてみますと、全世界に紛争と言われるのがいろいろ小さいのも含めますと、明石さんが行ったのが九十ぐらいある。特に、また紛争ではないかもしれませんが、最近問題になっているようなイラクの問題とか、そしてまた金日成、金正日、それからカダフィであるとか、そういう独裁的な者が出てきて、そしてまたこれが民族意識と絡んで非常に複雑になっている。  日本外交官、外務省の職員の方というのはたしか五千人ぐらいだと思うのでございますけれども、アメリカなんかと比べると多分四分の一ぐらいだと記憶しておりますし、そしてまたイギリスなんかと比べても小さい。そして、アメリカは情報部員であるCIAが約四万人ぐらいですか、ちょっと古い数字しか頭にございませんが、外部で働く方も合わせればもっとある。  そしてまた、米国の場合で言えば、私もおりましたワールド・ビジョンという援助のNGOがございますが、全世界に百のフィールドを持っておりまして、特に貧困を解決しながら、私もロビーを若干やりましたので、毎日、写真とレポートが来るんですね。ソマリアで、フランスの武器の商人、国の名前を出すのはどうかと思いますが、武器の商人が反政府ゲリラをどうやってトレーニングしているかという姿を撮って、これを上下院議員の関係者に渡しながら説明をしていく、そういうようなことを若干やりました。  そういう多層外交というものが、本当に日本に大事ではないかなというふうに思うわけでございます。何度も申しておりますように、援助もNGOにもっと任せてUSAでは四割はもうとにかくNGOに任せるんだと。任せるという意味は、任せながらいろんな情報を、単に物を与えるというようなことだけではなくて、それだけでももちろんすばらしいことだし、草の根的に助かるわけでございますけれども、しかしそれ以上に情報というものをアメリカというのは大事にしているなというのが私の印象です。  今言われたG8の場でも、例えばもっと日本国独自の多くの情報がずっと吸い上がってきて、そしてトラック1の外交のところで正しい情報として、そしてまた大臣の答弁の押さえとして、そういう情報が上がってくるような外交インフラというか外交体系というものが恐らく日本にすごく大事だというふうに思います。そしてまた、新聞なんかでガイドラインのときに世論調査をしましても、アジアを守るためには外交努力をという人が五五%ぐらいいまして、軍事的努力をという人は大体一〇%ちょっとなんですね。  ですから、そういう外交がこれからの二十一世紀の日本外交ではないかなんということを思っておりますが、外務大臣、最後の質問でございますが、いかがでございましょうか。
  67. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 外務省の応援をしていただいているようで、大変ありがたいことだと思います。  確かに、情報というのはただたくさん集めればいいというだけではなくて、きっちり情報を集めた上で、その評価、そういったことも含めてきっちりしていかなければいけない。そして、それが届くべきところにきっちり届いている。情報の専門家だけは知っていたけれども、私は知らないで政策決定をしているということではそれは全然だめなので、そういったことを含めてトータルの情報というものをより大切にしていかなければいけないということはおっしゃるとおりだと思っております。  現実に国際情報局というのが外務省の中にありますが、この国際情報局をさらに強化していきたい、具体的にそういうふうに考えております。
  68. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 情報網が日本の命だと私も思っておりますので、国際情報局を本当に独立した機関ぐらいにしなければいけないと思っておりますので、ぜひ前向きな御尽力を心からお願い申し上げまして、質問を終わります。
  69. 高野博師

    高野博師君 NATOユーゴ空爆について、最初に国際法上の問題について何点かお伺いいたします。  政府は、このユーゴに対するNATO空爆については有権的解釈をする立場にないということですが、それでは、これはなぜそういう立場にないと言っているんでしょうか。なぜ有権的立場にないんでしょうか、解釈をする立場に。
  70. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 第一義的には国連安保理がするべきだということを申し上げているわけであります。  私たちは、日本政府として外国のいろいろな行動について法的評価をきっちりする場合もありますし、しない場合もあると。それは一見明白できっちりできる場合はいたしますし、事実関係がわからないからできない場合はしないということが一般的に言えるわけであります。  それと同時に、我が国全体の外交政策上、かなり難しくてもきっちり研究してやった方がいい場合と、必ずしもそこまでやらない方がかえっていい場合と、そういうことはいろいろ考えられますが、我が国政府として外国のあらゆる行動について国際法的な評価をしているわけではないと、これは従来からそういうことでございます。  そして、この問題については第一義的に安保理が判断すべきことであると、こういうふうに言っているわけでございます。
  71. 高野博師

    高野博師君 これはきっちり日本政府としても国際法上の位置づけというのはやっておくべきではないかと思うんですが、第一義的に安保理とおっしゃいましたが、NATO諸国とかあるいは国際司法裁判所、有権的解釈ができる機関、人はほかにたくさんいるんじゃないでしょうか。そこはどうでしょうか。
  72. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 国連憲章との関係で、第一義的に判断すべきところは安保理であると、こういうふうに思っております。
  73. 高野博師

    高野博師君 それでは、ユーゴ空爆国連憲章上の位置づけというか、この法的根拠についてはNATOは何と言っているんでしょうか。
  74. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 累次御説明申しておる所存でございますけれども、NATO諸国は、これは空爆が行われた後のソラナ事務総長の説明でございますけれども、今回の軍事行動は、ユーゴ政府和平合意案をかたくなに拒否し、他方で国連安保理決議などに反し、コソボにおいてユーゴ軍及びセルビア治安部隊による過度な武力行使が続く中で、人道上の惨劇を防止するためにやむを得ざる措置であるという説明を行っております。  このソラナ事務総長の説明以上に、委員御質問の国連憲章との関係でどう考えるべきか等、NATOから公式の説明はないというふうに承知しております。
  75. 高野博師

    高野博師君 NATOの国際事務局の説明は、ユーゴは三つの国連決議、これは一一六〇、一一九九、一二〇三、これに対する違反を繰り返した、そして人道上の破局を生んだので、これに対する制裁だと、こういう言い方をしているわけですね。  安保理決議は、中国とロシア拒否権があるのでこれは無力だということ。しかし、空爆非難決議というのが三対十二で否決されたということで、NATOの行動は国際社会の広い支持を得ている、こういう言い方をしているんですね。  そこで、NATOの行動の国連憲章上の位置づけはどうなっているのか、これはどうでしょうか。
  76. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) まさに委員御指摘のような事実関係があったわけでございまして、私の理解は今のNATO側説明、すなわち三つの国連決議ユーゴ側がこれまで合致した行動をとってこなかった。それから、ロシアの提出した、このNATO空爆というのは国連憲章違反であるという決議が三対十二で否決された、こういうことをもって国際社会全体の支持があるという、そういう政治的な見解の表明というのはNATO側からなされていると承知しておりますが、国連憲章上のどの条項に照らして合法である云々という、そういう法的な説明というのはNATO側からは伝わってきていないというふうに承知しております。  委員が御指摘になられました事実関係そのものが、まさにそういうことを示しているのではないかというふうに理解しております。
  77. 高野博師

    高野博師君 NATOの主張は別にしまして、現代国際法上の最も重要な原則として、武力行使は禁止されている、これは確立された国際法だということは認めますでしょうか。
  78. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 御指摘のように、国連憲章の第二条四項におきまして、原則として武力の行使が禁止されている、国連憲章というものが現在の国際法における根幹をなすその考え方であるというふうに私どもも考えております。
  79. 高野博師

    高野博師君 この武力行使の禁止原則、憲章の二条四項は今おっしゃったとおりですが、これは例外として二つあって、安保理の決定に基づく強制措置の場合、それから集団的あるいは個別的自衛権の行使の場合、この二つの場合は例外として認められている。  ところで、憲章の五十三条に、地域的取り決めとか地域機関が強制措置を行う場合は安保理の許可が必要だということになっていますが、NATOというのは国連憲章の中で言う地域機関なんでしょうか。それとも、地域的取り決め、どういう位置づけなんでしょうか。
  80. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) NATO国連憲章上におきます位置づけというのは、私は二つの側面があると理解しております。  一つは、委員御指摘のこの国連憲章第五十三条における地域的取り決めという性格がございます。それから、他方におきまして、国連憲章第五十一条における集団的自衛権の行使、これが委員御指摘のように各国に認められているわけでございまして、NATOの行動というのは、この集団的自衛権の行使という観点から理解される側面もある、これがこれまで国際的に理解されていたNATOの性格ということかと思います。
  81. 高野博師

    高野博師君 NATO側地域機関ではないというような言い方はしているんですが、しかし実態的にこの憲章の五十三条で言う地域的な機関ではないかと私は思うんです。  問題は、国連での合意形成が非常に非効率的だ、安保理決議もなかなか出ない、それでアメリカも含めてNATO等が自国の軍事力でこれを行使して紛争を解決しちゃおうという手段をとるのが手っ取り早いという傾向が強くなっている。NATO安保理決議を得ないでやった、迂回をしたということは憲章五十三条に私は違反しているのではないかと思うんですが、NATO側はその国連憲章上の正当性については何ら言及していないというか議論をしていないということがあると思うんですが、そこは外務省、どう考えますか。
  82. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) まさにその点は委員からも御指摘がありましたように、国連憲章NATOの行動は違反するのではないかという決議案が安保理事会に提出され、その決議案が三対十二で否決されたということでございます。  したがいまして、憲章五十三条との関係でいかに考えるべきか、あるいは憲章全体との関係NATOの行動をいかに考えるべきか、このことにつきまして、その件について一義的に判断すべき安保理事会が憲章違反というものを否決したということでございまして、私どもとしては、そういう国際社会の現実というものを受けとめながら日本政府としての法的判断をいかにすべきかということをずっと考えてまいったということでございまして、その結論はただいま大臣から申し上げましたように、我が国政府としては法的判断はいたさないということでございます。
  83. 高野博師

    高野博師君 NATO側は、論拠としては人道上の介入だと、これを強く前面に出しているんですが、一九八六年にアメリカがニカラグアに干渉したときに、これはその理由の一つは人権侵害があったということで、いわゆるニカラグア事件ということで国際司法裁判所に提訴されているんですが、国際司法裁判所は武力の行使は人権確保の適切な手段とは言えない、こういう指摘をしているんですね。  人道上の武力介入、この問題についてお伺いしたいと思うんですが、湾岸戦争を一つの契機として、一部の国あるいは機関国連安保理武力行使を授権する、権利を与える、そういうパターンが一般化してきている。問題は、NATO側ユーゴが三つの国連決議に違反している、だからこれに対する制裁措置だというんですが、今回の空爆NATO国連安保理から武力行使を授権されているわけではないと思うんですね。そうすると、空爆を正当化する理由にはならないと思うんですが、そこはどうでしょうか。
  84. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 先ほども申し上げましたように、私どもは、NATO側は今回の空爆につきまして人道上の惨劇を防止するためにやむを得ざる措置であると、専らこの点を中心説明をしているというふうに理解しております。  委員御指摘の、それではこういう人道上の惨劇を防止するために介入するいわゆる人道的介入というものが法的にどういう意味を持つのか、こういう点に関する詳細な議論はNATO側から一切伝わってきておりません。  したがいまして、現下の国際法上の状況の中で、この行動に対するNATOのやむにやまれぬ政治的な意見表明というものを、この人道上の惨劇を防止するためにやむを得ざる措置であるというふうに表明しているというふうに受けとめております。
  85. 高野博師

    高野博師君 NATO空爆の合法性について、イギリスの代表が、ユーゴ当局による過酷な抑圧状況のもとでの圧倒的な人道的必要性を理由とする例外的措置として軍事的干渉が法的に正当化できる、現在用いられようとしている武力は専ら人道的破局を避けるためにのみ用いられる、この目的のために必要とされる最小限のものである、だから合法的である、こういう主張をしているんです。  問題は、人道上の介入というのが、先ほども言いましたように、ニカラグア事件も含めて国際慣習法、あるいは実定法上も確立されていないということは指摘できるんだと思うんですが、何よりも先ほど言いました国連憲章の二条四項の一般的な武力行使の禁止、これに違反するんではないか。あるいは、一方的な判断で人道的干渉ができるということになると、これは大国が人道とか人権、これを理由に勝手に幾らでもやっちゃう危険性はないのか、乱用されるおそれはないのかどうか。それから、何をもって人権侵害あるいは人道上の問題があると認定するのか、その判断の基準というのがあいまいではないか。  それから、人道上の武力介入によって、今回のコソボであれば、誤爆によって民間人が相当犠牲になっている。その人たちの人権はどうなんだ、その人道はどうなんだ、武力介入そのものに矛盾が内包しているんではないか。私はそう思っているんですが、大臣はこの点についてどういう認識をされていますか。
  86. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ユーゴにおけるNATO軍事行動は、国際社会による政治解決のための外交努力にもかかわらず、ユーゴ政府がこれをかたくなに拒否し、一方でユーゴ軍治安部隊によるアルバニア系住民に対する攻撃が続く中で、さらなる人道上の惨劇を食いとめるため、やむを得ざる措置としてとられていると理解しております。  先ほども申し上げましたように、我が国は、今回のNATOの行動の当事者でないことに加え、作戦面を含むNATO軍事行動に関する詳細な情報を有していないので、今回のNATOの行動につき我が国として法的評価を下すことはできないわけでございます。
  87. 高野博師

    高野博師君 私が期待した答弁と違うんですが。  ちょっと変えますが、武力介入の限界というのが今明らかになっているのではないか。今まで二万回以上の空爆をやっても解決にほど遠いと。そういう状況の中で、例えば地上軍の投入ということにでもなった場合に、ユーゴ側が生物化学兵器なんかを使う可能性もある。あるいは、空爆を何万回やっても相手を屈服させることができないということになると、小型の核兵器を使ったらどうか、安い経費で効果が上がると、そういう議論も若干出てきているという報道もあります。これは非常に危険ではないかと思うんです。  また、NATO軍が劣化ウラン弾も使っているという情報もあります。湾岸戦争のときに劣化ウラン弾を使って、今でも相当の後遺症が出ているということも言われているんですが、人道上の介入の場合に手段を選ばないのかという問題があると思うんです。それから、化学工場が爆破され有害物質が出ている、ダイオキシンの問題も相当出ていると。この有害物質がドナウ川に流れているということで、住民が被害を受けつつある、環境破壊というのも非常に深刻になりつつある。こういう問題について、どうお考えでしょうか。
  88. 西村六善

    政府委員西村六善君) 劣化ウラン弾が使われているという御指摘でございますけれども、NATOの正式発表の中にそういうものが確認されていないと私は承知しておりますが、さらに調べをいたしたいと思います。
  89. 高野博師

    高野博師君 それは調べることができるならぜひ調べていただきたいと思います。  それからもう一つは、膨大な戦費を使って空爆をやっている。アメリカが補正予算として百五十億ドルを認めたということなんですが、こういう空爆背景に軍需産業の存在というのがあるのではないか。その目に見えない圧力があって空爆が何万回と繰り返されている、そして実験、新しい兵器の開発、そういうものにつながっている面はないのかどうか、僕はそれは大変重大な問題だと思うんです。  しかし、それはどこにどうなっているかというのはもちろん明らかに出てこないんですが、この軍需産業の存在という点について大臣はどういう認識をされていますか。
  90. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) アメリカあるいはNATO諸国内の政治的決定がどういうことによってなされるかということについて私が論評すべきことではない、こう思っていますが、そういうことが仮に一部に、仮にですよ、一部にあったとしても、それが大きな理由になったとは到底考えられないというのが私個人の感想でございます。
  91. 高野博師

    高野博師君 到底考えられないと言い切れるほどのものかどうか、僕は若干疑問があると思います。  もう一つ、コソボ問題でNATOが失敗したらどういう影響が出るのかということも若干議論されているようですが、軍事介入の成否、成功したかどうかというのはアルバニア難民コソボに戻ることができたかどうかによるんだ、こういうことも言われています。もしこれが失敗した場合には、NATOの信頼性が損なわれる、NATOの将来にとってもこれは難しくなるのではないか、そしてその場合にイラン、イラク、あるいは北朝鮮、こういう国々に影響を及ぼすのではないかということも言われています。  失敗したらという前提でこういう議論をするのはどうかとは思いますが、非常に今厳しい、難しい状況にあるのではないかという認識をしているんですが、要するに通常兵器でこれだけやってもなかなか屈伏させることができないということがある意味では実証されると、これは非常に影響が大きいのではないか。その辺はいかがでしょうか。
  92. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) NATOの信頼性云々ということはNATO諸国考えることだと思いますが、私たち考えているのは、コソボ難民がかわいそうじゃないか、難民の人たちにはそんなNATOの信頼性と関係なくやはり安全に帰っていただきたいということがまず主たる理由であるわけでありまして、そのために政治的解決をしようと日本政府としても一生懸命努力をしているところでございます。
  93. 高野博師

    高野博師君 難民がかわいそうじゃないかと、それは当然でありますが、難民が出てきている原因の一つとしても空爆があるわけですから、ではその空爆はどうするんだという議論がなければ、ただかわいそうじゃないかという議論では僕はおかしいと思います。
  94. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 私は、空爆が怖くて直接出た難民というのは、ゼロではないかもしれませんが、仮にあったとしても物すごく少ない数、ほとんどゼロと評価していい程度の数だと思っております。それは、現実にはユーゴ軍、治安当局、あるいはその周りの人たちによる民族浄化という、そういった行為によって難民が出ていると判断することが正しいんだと思います。  ただ、かわいそうじゃないかということで云々と言いますが、ただ空爆けしからぬでやめろやめろと言うことが本当にいいのかどうかという話を私はよくさせていただいているわけであります。ユーゴ国際社会の声に耳を傾けて、そしてそのことがきっちり実行されれば空爆は間違いなくやむと。それに対して、空爆を一方的に停止したからといってユーゴ難民の帰還を認めるかどうかということは、そんなことはわからないから、やはり政治的道筋をつけなければいけないということを私たちは申し上げているわけであります。  一方的に中止することがかえって難民を出すような、ユーゴ当局にフリーハンドを与えるようなことになったらそれはどうするんだと、私たち政治解決にどうやったら最もいいかということを考えながら行動しているわけで、ただかわいそうだからどうしろ、かわいそうだから空爆やめろ、かわいそうだから何しろ、こういうことを申し上げているわけではありません。
  95. 高野博師

    高野博師君 私は、一方的に空爆をやめろなんということは一言も言っておりません。しかし、空爆を開始してから二十万人もの難民が出ているという事実もあるということと、この問題についてミロシェビッチ大統領がG8等の停戦合意を受け入れればいいんだということもありますが、このコソボ問題については、外務省がつくったこのペーパーによると、このコソボ問題は歴史的な経緯を持ったまさに複雑な問題だと。  したがって、民族問題あるいは文化の問題、宗教の問題、いろんな問題があって、そういう中でこの問題が起きてきたので、一方的にミロシェビッチが悪いから武力でもって屈伏させようということをして難民がもとに戻ったとしても、この問題は解決に向かうかどうかは非常に疑問だと私は思います。  そういう意味で、空爆の問題も、国際法上の問題は一体どうなっているのかということも含めてきちんと対応する必要があるのではないか、国際法上違法であればそれはやめなくちゃいかぬじゃないかということを言っているので、有権的解釈はないと政府が言っているから、そこは政府に言ってもしようがないんですが。  そこで、我が国対応についてお伺いしますが、NGOに対する支援をやると言っているんですが、どういうNGOに対してどういう支援をやるんでしょうか。そのNGOの要件あるいは援助をする中身について教えていただきたい。
  96. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 今回のコソボ難民に関連しますNGO支援の内容でございますけれども、一つにはNGO事業補助金というのがございますが、五割の補助率だったのでございますけれども、それを四分の三まで補助をするということがございます。  二つ目には、草の根無償資金協力がございますが、申請をそれぞれ現地の大使館に行うということが原則でございますけれども、この際、コソボ難民支援に関しては本省の方でも受け付けるというようなことにいたしたことが第二点でございます。  第三点目といたしましては、日本のNGOが国連難民高等弁務官事務所の行ういろいろな事業の実施機関として働いていただけるようにということで話を進めておりまして、そのための資金支援としては、人間安全保障基金の方から拠出をするということを考えております。  それから、国連ボランティア計画というのがございますが、それに日本の方が行っていただけるようにということで、これも今UNHCR及び国連ボランティア計画の方と協力して行っております。  それから、現在の動きでございますけれども、既に難民を助ける会あるいはAMDA、そういった方々、それから日赤の方も既に活動しておられますが、今後さらに若干の日本のNGOの方が難民支援のための具体的な活動を行われるべく、今申し上げましたようなさまざまな支援のための手だてに応募なさっておられます。追ってそれぞれの団体の方から活躍が開始されるというふうに考えております。
  97. 高野博師

    高野博師君 終わります。
  98. 河本英典

    委員長河本英典君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  99. 河本英典

    委員長河本英典君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、亀谷博昭君、木俣佳丈君及び高橋紀世子君が委員辞任され、その補欠として脇雅史君、小川敏夫君及び山崎力君が選任されました。     ─────────────
  100. 河本英典

    委員長河本英典君) 休憩前に引き続き、外交防衛等に関する調査のうち、コソボ問題に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 小泉親司

    ○小泉親司君 NATO軍によるユーゴ空爆問題について質問をいたします。  まず初めに、NATO軍によるユーゴ空爆は二カ月が経過いたしました。一体この空爆がいつまで続くのか、今のユーゴの問題の打開が図られるのか、こういう憂慮の声が世界各地で出されているというふうに思います。  私もガイドライン特別委員会で外務大臣に御質問いたしましたけれども、イタリアの下院でも、この事態解決について国連にゆだねることを条件に空爆停止をNATOに働きかけるべきだという決議が出されております。アメリカでも、きょうの報道によりますと、下院でアメリカ中心とするNATO軍による空爆は戦争権限法に違反しているというような決議案が出されたやに聞いております。  私どもは、NATO空爆を即時停止して和平交渉を直ちに再開すべきであるという点を、この間強く要求してまいりました。委員の皆さんのお手元にも来ておると思いますが、NATOによる空爆の即時停止を求める日本のNGOの声明なども出されまして、ここで言っているのは、「NATO空爆が、ユーゴスラビア連邦政権によるコソボアルバニア系住民に対する弾圧を止めることができず、かえって難民流出を加速させ、民族間の憎悪をあおる結果になってしまったことを深く憂いています。」「私たちは、アメリカ政府などNATO加盟国政府に対して、空爆の即時停止を訴えます。」と。同時に、武力紛争をユーゴ国内で直ちに停止して、「話し合いによる紛争解決を強く求めます。」という声明も出されております。私は、このように、世界の各地でも今空爆に対して即時停止しろという世論が非常に高まっているというふうに思います。  そこで、私がお尋ねしたいのは、現在のNATO空爆を見ますと、中国大使館初め九つの大使館が空爆を受けたということが報告されております。この間、新聞に出されました幾つかの事例をとりましても、例えば四月十二日の国際列車の爆撃、続いて十五日のアルバニア難民に対する爆撃、五月一日のバスの爆撃、四月五日、四月九日、住宅地への爆撃、続いて五月七日と八日、学校や病院施設への爆撃、テレビ局や政党本部などへの爆撃初め、教会や美術館などへも空爆する。この間のものでも、ガソリンタンクへの空爆ですとか発電所だとかテレビ局だとか、そういった国民生活関連施設が大変無差別に近い形で空爆されているということが、事実問題としてあるのではないかというふうに思います。  この点、外務省はこういう事実を承知して空爆停止という点での要求を受けないのか、この点をまず初めにお尋ねしたいと思います。
  102. 西村六善

    政府委員西村六善君) 今、先生がおっしゃられました、民間施設に対して空爆が行われているという事実の問題でございますけれども、NATOの当局は、幾つかの誤爆があることは認めているわけでございますけれども、大部分の爆撃、軍事行動は軍事施設を目標にして行われているということでございまして、そういうふうに言明をしているところでございまして、今、委員がおっしゃったような認識をNATO側が持っているということではないというふうに私どもは理解しているところでございます。  もとより、現在行われております空爆についていろいろな国において議論が行われている、その議論をする方々の視点から見て、それぞれの立場からそれぞれの議論が行われているということは現にあるわけでございますけれども、NATOの当局者は最大限の注意をもって民間施設を攻撃しないように注意をしているということを言明しているというふうに理解をしている次第でございます。
  103. 小泉親司

    ○小泉親司君 二十四日のワシントンポストで、NATO軍のショート司令官がインタビューに応じております。そのインタビューによりますとショートNATO軍司令官は、我々は今まで軍事施設に限ってきた、それはなぜ限ってきたかというと、NATO十九カ国で、この爆撃が実際に大衆的な規模に及ぶとNATO軍の中に大変な大きな不安が生じるんだ、よって軍事目標に攻撃してきたけれども、これからはそうじゃなくて、実際には例えば電力施設、続いて通勤の橋だとかそういうものを攻撃するんだということで、次のように言っております。   もしあなたが朝起きた時に、家には電気が通じてなく、ストーブにガスが通じてなく、通勤途中の橋は落ちて二十年間はドナウ川に落ちたままだとしたら、あなたはこう言うだろう──「ミロシェビッチよ、こりゃ一体どういうことだい? どれだけ我慢しなくちゃいけないんだ?」 そしていくつかの点で、世界にセルビア人の力を誇示することに拍手を送るのをやめて、この状態が続けばこの国はどうなってしまうのか考えるようになるだろう。 こういうことを言っておるわけです。このNATO軍司令官のこのようなインタビューを見ますと、事実上の無差別攻撃をやろう、実際に非軍事施設の攻撃も辞さないということを言っていると思うんです。  この点で、私、違法な戦争においても、つまり戦争の正邪という是非を超えて、ジュネーブ条約は文民施設、文民を保護すること、それから軍事施設への攻撃に限ること、このことを明記しているというふうに思います。私、この点で今度の空爆は大変ジュネーブ条約に違反するひどい行為だと思いますが、その点外務省はどういうふうに考えられておられるんですか。
  104. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 今回の行動に関しましての法的評価、これは政府として申し上げないということは累次申し上げておりますが、その上で、今、委員御質問の軍事目標、これをどういうふうに考えるべきかということについての現下の国際法上の理解というものを申し上げたいと思います。  委員御指摘のように、敵対行為が行われた場合に、文民及び民用物の尊重及び保護のため、戦闘員と文民、軍事目標と民用物をそれぞれ峻別し、軍事行動はその対象を戦闘員と軍事目標に限定するべきであるという一般的な考え方、これは現下の国際法のもとで共通に分かち合われているというふうに申し上げてよろしいと思います。  しかしながら、それでは何が軍事目標かという点につきましては、これは現下の国際法上、委員御指摘のジュネーブ条約第一追加議定書を含めまして、ここのところは明確な定義というものはなされておりません。国際法の議論の中で、何が軍事目標かということについての議論というものはこれまでも行われてきたわけであります。しかし、国際法上の明確な定義を形成するに至っていないというのが現状でございます。  一つの例として申し上げたいのですが、例えば一九五六年の赤十字国際委員会規則案というものが審議されました。この規則案の中では、軍事目標リストといたしまして、一般に認められた軍事利益をあらわすものとしまして、本質的に軍事目標であるもののほか、鉄道、道路、橋のような交通線、それからラジオ、テレビ施設、電信電話交換局、戦争遂行に本質的に重要な産業、戦争手段の研究実験開発施設といったものを軍事目標、逆に申し上げれば民用物、文民として保護する必要のないものというふうにこの国際赤十字委員会の規則案においては掲げられております。  さればといって、今申し上げたようなものが明確な軍事目標の定義になっているかというと、そこは議論のあるところでございます。しかし、委員御指摘のようにアメリカが無差別爆撃をやっているというふうには私どもは受け取っておりません。アメリカなりNATOなりに、同僚の政府委員が申し上げましたように、今回の一連の軍事行動に関しましては民間施設、民用物を保護するという視点を踏まえて、その視点の上で現在の攻撃が行われているというふうに理解しております。
  105. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は、そのような民間人まで殺傷している行為について、政府としてしっかりとその点は調査もし、踏まえていく必要があるというふうに思います。  特に、政府は今度のNATO軍による空爆について、一つは、国連決議があるわけではない、国連から授権されていない。二つ目は、日本政府としては人道介入の一つだというふうに考えているけれども、今、人道介入というのは形成過程の問題だと。それから三つ目に、適法かどうかわからないけれどもNATO民族浄化を座してこのまま認めていていいのかと言っているのでやむを得ざる措置として理解と、高村大臣はこういうふうに言っておられます。  NATO軍空爆というのは、政府の言うように国連決議がない、しかも人道上の介入ということを言っております。私が質問した点について高村外務大臣は、人道介入は形成上の過程の問題で日本政府としてはっきり言えないというふうに答弁をされましたが、ユーゴのような国連決議のない、私どもは国連決議があれば人道介入は可能だということを言っているわけではありませんが、ユーゴのような国連決議のない人道介入でも武力行使は許されるという立場なんですか。
  106. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 大臣の前にちょっと、日本立場について法的な観点から一点だけ整理して申し上げさせていただきたいと思います。  私どもは、今回のNATOの行動を法的に人道的介入として正当化され得るということを申し上げたことはございません。あくまで今回のNATOの行動というのは多数のさらなる犠牲者が出ることが必至という人道上の惨劇を防止するためにやむを得ざる行動であったと理解しているということを申し上げた上で、法的な観点につきましては累次申し上げているように私どもとして法的な評価を下すことはできないということを申し上げている所存でございます。
  107. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今条約局長が言いましたように、説明の過程でいろいろ言ったかもしれませんが、結論としてはあくまで日本政府としては法的評価ができないということを私は何度も申し上げているわけでございます。  それから、まさに人道上の介入というのは国際法上形成過程にあるような問題でありまして、それは、では国連決議がなくてもいいのかどうかということも含めて形成過程の問題である、こういうふうに考えております。
  108. 小泉親司

    ○小泉親司君 高村大臣は、これは私の質問なんですが、国際法においてはそういう一般国際慣習法というのは非常に多いわけで、そういう中で人道上の介入というのが許されるのではないかという意見が台頭してきている、まずこう言って、それから、台頭してきているけれどもそれについては適法かどうかわからない、こう言っておられるわけです。  この点について、私がこの前の委員会で指摘をしたのは、人道介入というのは何か外務省は新しいようなことを言っておりますけれども、実際に人道介入という問題は十九世紀に欧米の大国が他の小国に対して干渉をする、内政干渉をする、その口実として使われてきたのが人道介入論なんですね。そのことはもう外務省もお認めになっているというふうに思います。  ところが現在は、国連憲章が制定された世界のもとでは、先ほども同僚委員から質問がありましたが、国連憲章の二条四項、二条七項の規定からも、武力の行使はできない、続いて、他国の内政に干渉はできない。つまり、不干渉の原則、武力不行使の原則。  この国連憲章のもとでは、人道介入といっても、そのことを理由にしてこれは武力介入はできないんだと、こういうのが現在の国際法の中では極めて定着した事実であって、何か人道介入だと許されるんじゃないかという意見が台頭してきているという議論は私は間違いだと思いますが、その点、外務大臣いかがでございますか。外務大臣の答弁です。
  109. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 国際法の発展の問題にかかわる点につきまして、最初に私から申し上げたいと思います。  委員御指摘のように、いわゆる人道的介入ないしは当時は人道的干渉という言葉で呼ばれていた行動というのは、十九世紀の前半に国際法社会の中で議論されていたことは委員御指摘のとおりでございます。  しかし、それでは国連憲章のもとで、国連憲章が成立した後に人道的介入という議論が全くされなくなったかというと、これは私の理解する限りそういうことではございませんで、国連憲章二条四項というもので原則的に武力行使が禁止された後におきましても、一定の非常に限定的な条件のもとでは人道的介入というものは許されるべきではないかという議論も、特に戦後の国際法社会の中で人権というものが非常に大事だという考え方が台頭するに従って出てきているということかと思います。例えば、厳格な人道的な理由に基づく武力行使は、国連憲章第二条四項の規定する他国の領土保全にも政治的独立にも向けられたものではなく、国連憲章の最も基本的な強行規範に合致しているというような学説も存在するところでございます。  したがいまして、累次大臣より申し上げておりますように、この点については学説上統一した見解が成立していない、両方の説が今国際法社会の中に存在しているというのが現状かと思いまして、その意味でいわゆる形成上の過程にあると大臣が申し上げている次第でございます。
  110. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は今、人道的な介入の問題が議論がないなんて言っておりません。確かに議論はございます。しかし、その議論は、今条約局長がいみじくも言ったように、一定の厳しい条件のもとで認めるという議論があるのであって、人道介入による武力行使国連憲章上できないんだというのが多数の現代国際法の常識なんですよ。  ですから、例えば一九七〇年の友好関係宣言、これは国連憲章二十五周年に当たりまして実際に国連憲章の解釈をしっかりとし直そうというこの宣言の中でも、いかなる国家または国家の集団も直接または間接に理由のいかんを問わず干渉してはいかぬのだということが明記されておる。  それから、先ほども出ましたが、一九八六年のニカラグアの判決だって、あれは、この前の委員会でも相当議論されてきましたけれども、ニカラグアの人権を非難したアメリカ武力行使については、これはアメリカがたとえニカラグアの人権を調査してその現状がひどくなっているんだということだとしたとしても、武力の行使、つまりアメリカはこの当時機雷封鎖をしたわけですけれども、そういう機雷封鎖、武力の行使は認められないんだと、これは国際司法裁判所のニカラグア判決だって明確にしているじゃないですか。  人道介入を理由にしたというのは、確かに条約局長がおっしゃっているようにあります。それはどういうところにあるかといったら、いわゆる冷戦終結後、我々は冷戦は終結していると言っていませんから、あなた方の冷戦終結後のアメリカの戦略の中から欧米の方々が冷戦後のいわゆる大国の小国に対する干渉ということを理由にして出されてきた議論であって、やはりその点では国際法上は人道の理由による介入は違法である、このことはやはりニカラグア判決から明確なんじゃないですか。  その点、外務省はどう承知しているんですか。
  111. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 私どもは、今回のNATO空爆人道的介入という観点から正当化されるということを申し上げたことは一度もございません。  私どもは、あくまで今回の事案というものは、一方において国連憲章との関係に関しては、国連憲章違反だという決議は十二対三で否決されている。他方において、実際に空爆を行っているNATO諸国人道上やむを得ざる措置であるという一種の政治的な評価をすることによって現在国際社会説明している。こういう状況のもとで、日本政府としては法的判断を下す立場にないということを申し上げているわけでございます。  それで、人道的介入という点は、お尋ねがございましたので、国際法上、人道的介入という考え方がどういう位置づけであるかということを累次御説明してきた所存でございまして、それに関しては、確かに委員御指摘のように、国連憲章のもとでは人道的介入は認めるべきでないという説があるのは重々承知しております。
  112. 小泉親司

    ○小泉親司君 説があるんではなく、多数説なんですよ。
  113. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) それはいろいろな見方があると思います。例えば、国際法関係辞典をごらんいただければ両説あるというような記載がございます。  しかしいずれにせよ、人道的介入とは認められないという説があるのは委員御指摘のとおりでございますが、他方におきまして、非常に限定的な状況の中では認めるべきだという説もございます。そういう意味におきまして、国際法における人権の問題とそれから国連憲章関係とをどういうふうに考えていくかということについては諸説あって、したがって形成上の過程の問題であるという御説明をしている次第でございます。
  114. 小泉親司

    ○小泉親司君 先ほど条約局長は、NATO人道介入でやむを得ない措置だと言っておるとおっしゃった。  ところが、ソラナNATO事務総長が九九年二月一日、これは空爆の前であります、このときにアスペン研究所でNATOの二十一世紀の戦略ということを演説しております。この中で、NATOは世界規模の警察官にはならない、NATOはいつでもどこにでも国際法と国連憲章の方針に基づいて行動する、こう言っております。これは外務省がよく言う言葉と同じでございます。ところが、その後、しかしコソボ問題は明らかにジレンマに陥っている、人道的な大惨事を回避するために、そして暴力を中止するために緊急の必要があるときは国家主権と不干渉の国際法規に逆らっても判断しなければならないのだとソラナさんは言っているんです。  あなたはこの事実を承知されておられますか。これは私はインターネットでとったものですから、あなた自身だってとれる話です。こういうふうにソラナさんが人道介入であれば国際法規を違反してでも介入してもよろしいんだ、こう言っているんです。
  115. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) まさに私の方も繰り返し、NATOがこの問題に関してどう考えているのか、NATOの公式的な立場の表明としては、ソラナ事務総長が空爆の直後に、コソボにおいてユーゴ軍及びセルビア治安部隊による過度な武力行使が続く中で、人道上の惨劇を防止するためにやむを得ざる措置であるという説明以上のことはNATOは正式にはしておらないということを繰り返し申し上げているわけでございまして、ソラナ事務総長が個人の、アスペンセミナーというのは個人の資格でいろいろな人が発言する場でございますから、そこでどういうふうに言ったか。それはソラナ事務総長が御説明すべきことだと思いまして、私の方からソラナ事務総長の立場を御説明する立場にはないと思います。  しかし、NATOとしての説明が今申し上げたところでとまっているというところに、委員がおっしゃったところのソラナ事務総長のジレンマに陥っているという言葉がもし事実であるとすれば、極めて明瞭にこの事態の難しさ、そして今の国際状況の中で国家実行としてのNATOが何を申しているのかということを端的に示しているのではないかと思います。  その状況を踏まえまして、日本政府としてそれでは法的に何を言うべきかということに関しましては、累次大臣から申し上げておりますように、日本政府として今なすべきことは、この問題に対して法的判断を下すことではなくて、人道的やむを得ざる措置として理解し、さらに二億ドルの支援を行い、今この問題を平和的に解決するために日本政府として何をすべきかというところに心血を注ぐことになる。これが政府としてなすべきことであるというふうに考えております。
  116. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は大変矛盾した御答弁だというふうに思います。  実際にソラナさんが、私が言っているんじゃないんだから、ソラナさんがそのような国際法に違反しても人道介入や武力行使もしていいというふうにおっしゃっているんです。あなたはソラナさんのことを説明するまでもないと言いましたけれども、やむを得ざる措置というのはソラナ声明なんですから、NATO声明。あなたは説明しているじゃないですか。  その点では、こういうことを政府が検討もしないで法的評価はできないと言うのではつじつまが合う問題じゃない、NATOの事務総長が国際法に違反してでもやるんだと言っているんですから、それは私は非常に矛盾しているというふうに思います。  次に、NATOは四月二十四日に新戦略概念というのを決定しました。この点については、この中ではNATOは、欧州大西洋地域内のいわゆる周辺諸国では民族的、宗教的な領土紛争、不適切な改革の失敗、人権の虐待、国家の解体は現在の地域等の不安定化を招きかねないという、つまりNATO加盟国武力攻撃を受けていなくても人道上の理由で、つまり日本周辺事態みたいな、つまり域外の諸国に対して軍事行動を起こすことをやるんだ、こういうふうにNATOの新戦略概念では言っておりますが、日本政府というのはこういうNATOの方針というのをお認めになるという立場なんですか。
  117. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 我が国NATO加盟国ではありませんので有権的な説明を行う立場にはないわけでありますが、これまでに収集した情報に基づけば、NATOの新戦略概念におきましては、国際の平和及び安全の維持に関しては国連安保理が主要な責任を持つことを明記し、集団防衛をNATOの基本的任務と位置づけつつ、欧州大西洋地域の平和と安定に寄与するため、紛争予防、危機対応策を含む危機管理を新たにNATOの任務に規定していると承知しております。
  118. 小泉親司

    ○小泉親司君 新同盟戦略概念に今外務大臣がおっしゃったことは事実そのとおり書いてあります。  その後に大変重要な指摘があるんです。NATOの戦略では、この前もどなたかが質問して西村欧亜局長ですか、お答えになっていないんだけれども、その文脈において、NATOはバルカンにおける危機対処対応に対する決定を想起する、つまり安保理の授権がない、つまりNATO単独でのユーゴ空爆を想起するんだと。だから、実質的に国連安保理決議なしで空爆を行ったユーゴ空爆をその先例にするんだということを戦略概念の中できちんと明記しているんです。  そして、特に、ソラナNATO事務総長は、NATOの域外介入に安保理決議が必要かと新聞記者に問われてノーだと、こう言っております。オルブライト国務長官も、NATO国連憲章原則に沿って行動するけれども、これはあくまでもケース・バイ・ケースなんだ、よってアメリカの戦略としては国連決議なしの軍事同盟による単独の武力行使も認められるんだという立場を繰り返し表明しているわけです。これはNATOも同様なんです。  この問題は、大臣が言われるようにNATOの問題、ヨーロッパの問題にはとどまらない。私は今度の周辺事態法の議論の中でも相当この点を詰めて議論してまいりましたけれども、そういう人道介入で武力行使が許されるのか、国連授権なしの武力行使が許されるのか、こういう大変重大な問題を示唆しているというふうに思うんです。  その点では、この点で法的評価は下せないというような議論じゃなくて、NATOのこういった国連決議なしの人道介入による武力行使なども非常に重大な問題があるということを政府としてきちんと言明する必要があるんじゃないかと思うんですが、この点、外務大臣はいかがですか。
  119. 西村六善

    政府委員西村六善君) 今、先生が引用なさいました文言は確かにございますけれども、この文言におきましてはバルカンのオペレーションが言及されておりますけれども、これはもちろんバルカンのオペレーションズという複数になっておりまして、コソボにおける今回のオペレーションだけを意味するという解釈は成り立たないというふうに思います。  その前に、この文章におきましてはクライシスリスポンスということを言っておるわけでございまして、バルカン地域全般にここ数年間にわたりまして幾つかの危機管理的な状況におきまして行われた行動全体を指す文言ではないかというふうに思います。  さらにもう一つ、その次の文章におきましては、このNATOの文章はそういう行動に入るか入らないかということは各国の決定にゆだねられるのであるということが書いてございまして、NATOが全面的にそういうことをやるということを決めているというふうな書き方になってはいないわけでございますので、その点につきましては御理解をいただきたいというふうに思います。
  120. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は理解できません。それはなぜかといえば、あなたが私の意見を認めましたように、あなたは欧亜局長ですから、まさかバルカンにユーゴが入らないなんということを言われないと思います。そうですね。  クライシス・リスポンス・オペレーションズと言っているんだから、実際にクライシス・リスポンス・オペレーションズというのは軍事行動だって含むじゃないですか。そういう大変問題をごまかした議論は私はうまくないというふうに指摘をしておきます。  時間が参りましたが、この問題は、新戦略概念というのはNATO加盟国武力攻撃がなくても欧州大西洋地域に軍事出動する、今回通過しました周辺事態法も日本への武力攻撃なしにアメリカ軍がアジアや太平洋に軍事行動を行う、自衛隊がこれを支援するというふうな仕組みがつくられたわけで、私はこの点では、NATOは欧州大西洋を、日米軍事同盟はアジア太平洋をという、そういう世界規模でのアメリカの戦略が大変浮き出ているというふうに思います。NATO人道介入による新戦略という点についても、日本政府が一体いかなる態度をとるのか、この点は大変重大な問題だと思いますし、この点で問題があるという点をきちんと日本政府として私は表明すべきだというふうに思います。  ドイツの著名な国際法学者のシンマさんという方がおられるんですが、この方も国際法に関する欧州ジャーナル誌の中で、この方は人道介入は違法だという立場でありますけれども、今度のユーゴへの空爆については動機が理解できると言っておられる方です。その方でも何と言っているかというと、NATO安保理を迂回して行動する用意があると直言し、武力をもってある種の利益と価値を守ることを確認するというならば、国連憲章に体現される集団安全保障の普遍的なシステムにとってはかることのできない大きな破壊的影響を与えることになるんだと、大変厳しくNATO新戦略を指摘しております。  皆さんも御承知の宮本信生元駐チェコ大使も、朝日新聞の五月十八日の「論壇」の中で何と言っているかというと、ユーゴでの国際法違反の可能性が強い軍事行動の先例が新同盟戦略だということを指摘した上で、このようなことを認めると、NATO国際社会の事実上の判定者、強制力執行者として国際社会を仕切ることになる、それは国際社会の構造的な変革なんだ、よって国際法違反の可能性が強い軍事行動NATOが今後安易に発動しないよう、今回の行動には違法性が強いんだということを指摘すべきだ、沈黙は合意意味する、こう言っておられます。  あなた方の元同僚がそう言っておるんですから、この点はやはり大変重要であり、国連の特に集団安全保障体制及びその形骸化を意図したNATOの新戦略概念は認められないんだという立場日本政府としてははっきりと示して、日本政府のきちんとしたユーゴ空爆問題での意思を示すべきだと。  重ねて、ユーゴへのNATO軍による空爆を即時停止して、話し合いによる平和解決を強く求めまして、私の質問を終わらせていただきます。     ─────────────
  121. 河本英典

    委員長河本英典君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、岸宏一君が委員辞任され、その補欠として岩崎純三君が選任されました。     ─────────────
  122. 田英夫

    ○田英夫君 コソボの問題に入ります前に、外務大臣に御見解を伺いたいことがあるんです。  朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長というんですか、日本の国会議長であると同時に元首の権限の一部を持っているという、ナンバーツーという人物のようですが、この人が六月三日から七日まで中国を訪問するということが言われております。中国と北朝鮮の間は、一九九二年の中韓、中国と韓国の国交樹立以来冷えてしまってそうした交流が全くなかった、そういう意味でいうと大変画期的なことだと思いますし、またいわゆる新ガイドラインということをこの間まで議論する中で、やはり北朝鮮というのは明らかにアジア太平洋の中の一つの不安定要因であることはだれも認めざるを得ない。そのナンバーツーが中国を訪問するということは大変注目すべきだとは思いますが、外務大臣は、政府はどういうふうにこれを受け取っておられるか、伺いたいんです。
  123. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ある国の有力政治家がほかの国を訪問することについて、我が政府がどういう評価をしているかということは、これはどう答えるのか、なかなか難しいわけでありますし、具体的にどのような目的を持っていらっしゃるのかしかと存じているわけでもありませんが、今、田委員がいみじくもおっしゃったように、注目しているとおっしゃいましたが、我々も注目をしております。
  124. 田英夫

    ○田英夫君 この問題だけでも時間が二十分間使われてしまうぐらい大きな問題だと私は思っているんです。  つまり、北朝鮮という国がいろんな問題を抱えているといいますか周囲からも見られている、軍事的な要因はもちろんありますし、あるいは食糧難に陥っているという経済的な困窮ということもありますし、また自己の主張を容易に曲げないという、そういう中で、国際社会の中で円満な存在ではないというのも事実と認めざるを得ない。そういうことを何とかしてみんなこの国際社会の中に円満な形で引き入れたい、こう願っている国が周辺に多いと思います。私どももそう思います。日本という国は、そういう意味では非常に大きな役割を果たせる可能性を持っている。ですから、私は、今外務大臣は非常に消極的な意味の注目という表現を使われたように受け取らざるを得ないんですけれども、もう少し積極的にこの問題に注目していただきたい。  金永南という人は、一九七四年だったと思います、IPU、列国議会同盟会議が東京であったときに、一度来日したことがあります。私は、その以前からかなり何度も彼とは話し合ったことがありまして、一九七五年には二日間二人だけで話し合ったことがありますから、人柄その他はよく理解しているつもりですが、あそこの国の指導者の中では国際情勢については一番冷静によく知っている人じゃないかなというふうにかねて見ております。長いこと、労働党の国際部長から昨年まで、最高人民会議常任委員長についたのはたしか昨年だと思いますが、それまではずっと外務大臣をやっていたということからしても、国際問題については一番詳しい人、こう見ていいわけです。  しかも今回、中国を訪問するに当たって、私の得ている情報では、金永南氏を団長にしてかなり大型の代表団であり、その中にはこの人もというふうに日本の皆さんも思うであろうような人が入っているということを聞きました。しかも、中国側は一行を上海に案内するといいますか、上海を視察すると。上海は言うまでもなく中国の開放政策の象徴的な場所ですから、北朝鮮が今開放政策をとらないというところに一つ問題がある、それを中国がどう要請し、またそれをどう受け入れたかもわかりませんけれども、上海を見るということが実現したことも一つプラスの方向で見ていいのかな、こういうことと私は受け取っておりますが、これ以上伺う時間もありませんし、またきょういきなり伺ったわけですから、これ以上のことを聞くつもりはありませんけれども、どうぞひとつ注目をしていただきたい。
  125. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 委員が、外務大臣は消極的な意味でと、こうおっしゃいましたが、私は必ずしも消極的な意味ではありません。注目というのは文字どおり注目でありまして、今まで中国とすら積極的な交流が十分でなかったように見受けられた国が中国とそういう交流を持つということは、積極的な意味を含めて私は注目をしております。  むしろ、委員がガイドライン関連法案の話に触れていらっしゃるということを言ったから、委員はむしろ消極的にとらえておられるのかなとちょっと思ったぐらいでありましたが、私はむしろ積極的に注目しています。
  126. 田英夫

    ○田英夫君 突然で失礼しましたから、これ以上は聞きません。  コソボの問題もこれはまた大変大きな問題でありますし、どこから伺ったらいいか。今、国連憲章との問題も同僚委員から出ました。私も、国連憲章ということはこの間特別委員会でも随分繰り返し申し上げました。これからの二十一世紀の国際社会というのは、国連憲章、これは現実にはやや理想主義的に見える、そういう内容であることは事実でしょうけれども、この国連憲章の規定していることをみんなで国際的に守っていこうということが非常に大事な時代になったんじゃないかな、私はこう思っているものですから、例えば国連憲章の三十三条、これはもう申し上げる必要もありませんから中身は読みませんけれども、いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれがあるときには、当事者は、交渉とか審査とかいろいろ書いてありますが、そういうことをやって、とにかく平和的な解決を求めなくちゃいけない、安保理はその当事者に対して紛争解決のための手段をとるように要請すべきであるという、そういう規定をしているわけで、繰り返して言いませんけれども、国連憲章というのは全文平和的解決をまずやれということを言っているわけで、今度のコソボの問題というのはそれに真っ向から反すると私は言わざるを得ないと思っています。  さっき条約局長は十三対二ですか、そういう表決の結果も言われて、だからいいんだという意味のことでしょうけれども、それはそれで確かに手続としてそういう事実があったことは私も承知しておりますけれども、やはり日本の場合は、外務大臣もさっきNATOのメンバーではないしという意味のことを言われました。NATOのメンバーでもないし、かといってもちろんユーゴの政権側ではないと。非常に日本立場というのは国際的に、この問題を解決していく、しかも国連の場で解決していくためにいい発言ができる立場にあるんじゃないか、このことをもっと使うべきだ、こう思うんです。  国連憲章のことは同僚委員から言われましたから、もうこれ以上申しませんが、もう一つ気になることは、政府立場を見ていて、日本という国はアメリカとの日米基軸という立場が非常に強いものですから、いろいろな場合に入ってくる情報というのはどうしてもアメリカ側の情報が非常に多い。アメリカ中心になってNATO攻撃をやっていることは事実ですから、このアメリカ側からのコソボ問題の情報というのが全体の中でどのくらいになっているかわかりませんけれども、今度はユーゴ側も随分広報活動に力を入れていることは事実のようで、元ジャーナリストとして見ているとそれはよくわかりますが、どうしても日本に入ってくる情報というのはアメリカ側の流す情報が中心になる。  そういう意味で一つ申し上げたいのは、中国の大使館を爆撃した問題、これは誤爆ではないということを中国が公式に発表しておりますが、中国側の人にそのことをなぜだと聞いてみました。つまり、誤爆というのはアメリカ側から一方的にだあっと日本のマスコミで流れましたから、日本人のほとんど大部分の方はそれは誤爆だったと思っておられると思います。こういうときに、そうじゃなくて、中国側の意見というか情報をとるということがジャーナリズムとしては原則だと思うにもかかわらず、日本のマスコミはそれをやっていない。  同じことが実はベトナム戦争のときにありました。ベトナム戦争のときははっきり調査が出たんですが、日本の新聞、朝日、毎日、読売という三つの大きな新聞の紙面に載ったベトナム戦争のニュースを東大の新聞研究所が調べたことがあります。  結果として、八五%がアメリカのニュース。つまりワシントン発APとかサイゴン発UPIということでわかるわけですね。北ベトナム側が五・何%ですよ、モスクワとか北京とかハノイそのものとか。そういう情報を日本人が頭の中に入れて積み重ねた結果、この戦争はアメリカが勝っているなと、こういう結論を出すのが当たり前だと思います。結果はアメリカは負けたわけですよ。こういう誤りを犯すことを二度繰り返しちゃいかぬと思います。  中国は、大使館は誤爆じゃない、明らかに意図的に攻撃をされた、三発当たったとNATO側は言っているけれども、五発である、しかも真上から二発、一方の横から二発、反対側から一発、合計五発当たって、しかも的確に攻撃が行われているということが一つ。それから、攻撃は三機編隊の飛行機、これはどうやらアメリカ本土から直接飛来したステルス戦闘爆撃機だということのようですけれども、空中給油をやって、直接アメリカ本土から来て、そしてまたアメリカ本土へ戻っているという、こういうことも言われております。  日本の報道に全く出てこないことが中国側の調査で、真偽のほど、私はどっちを信じると言っているわけじゃありませんが、出てきている。こういう態度が私は必要じゃないかと。そういうことができるのは、客観的に第三者的な情報収集をやって、真実を知り得るのは日本だということを大事にしていくべきじゃないかということを申し上げたいんです。  いろいろ申し上げましたが、今私が申し上げたことについての外務大臣の御見解を伺いたい。
  127. 西村六善

    政府委員西村六善君) 中国大使館の爆撃につきまして、どういう事実関係であったかということにつきまして、関係者がそれぞれの立場からいろいろな議論をしているというのが現在の状況だと思います。現在NATOは誤爆だと称しているわけでございますけれども、それにつきまして調査を行うということを言明いたしまして、近く調査の結果が発表になるというふうに理解しております。  したがいまして、何が行われたのかということにつきまして、まずNATO側がどういう説明をするのかということを承知するということも、真実、何が起こったかということにたどり着くための重要な一つの手がかりではないかというふうに考えております。
  128. 田英夫

    ○田英夫君 そういうことを私は言っているんじゃなくて、日本という国の立場考えたら、日本政府がおやりになるべきことというのはおのずから明らかなんじゃないかと思うんです。  ユーゴの問題というのは、日本からすると本当に日本は第三者的な立場にあるということ、これは非常にいい立場だと言えると思うんです。ところが、どうしてもアメリカ寄りになる、さっき申し上げたように、情報といい。そうではないんじゃないか。  そして、世界で見たら、ユーゴの確かに民族浄化ということはあるかもしれない。このことについての批判、これはそのとおりだと私も思います。ドイツの社民党政権がNATO攻撃に参加をすることを決断したのは、かつてのナチのユダヤ人虐待ということと今度の民族浄化をオーバーラップさせて、これを黙っていたらドイツは再び同じ道を歩いていると言われると。これはちょっと日本人にはわからない感覚かもしれませんが、それが大きな理由だと聞いています。これも一つの理由でしょう。しかし、それはあのドイツの理由です。我々はそうではない。第三者的にこの問題もクリアできる。  こういうことからすると、結果としてどういうことになるかというと、国際社会の中でNATOアメリカ中心とした勢力と中国とロシア、これが非常に関係がよくない。現在既にそうですね、この問題をめぐって。これは国際社会のために不幸じゃないですか。それを救うことができる立場日本はいるんじゃないですか。そういうことをぜひ考えていただきたいということを言いたいんです。  もう時間が参りましたが、外務大臣、一言。
  129. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) G8の中に幸いなことにロシアも参加しておりまして、一般原則でG8、七項目で合意をいたしました。その合意をするに至った過程において、私は日本政府は相当の貢献をしていると自負しております。
  130. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  131. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 今、コソボ自治州には、アルバニア人が百八十万人とセルビア人が二十万人で二百万人ということで、難民が八十万人流出したと。それと、まだアルバニア人というのは百万人ぐらい残っているわけですね。その人たちはどういう生活をしているんですか。弾圧されたり殺りくされたりしているわけですか。ちょっとそこのところをお聞きしたいんです。まだ残っているわけですね、半分以上。
  132. 西村六善

    政府委員西村六善君) 大まかな数字としましては先生が今おっしゃったような状況だろうと思います。  残っているコソボの住民がどういう生活をしているかということはまさしく国際社会の大きな関心事でございまして、その関心を反映いたしまして国連が人権調査団というものを派遣いたしております。これは国連人道援助調整官を団長といたしまして、関係する機関の代表によりまして調査が行われております。十六日に現地に入りまして、二十七日まで調査が行われました。  その結果につきましては、幾つかのことが表明されておりますけれども、確定的な調査報告書はいずれ公表されることになろうというふうに思いますが、二十四日の時点におきまして、同調査団の団長は、コソボ州において民族浄化が確認され得る十分な証拠を発見したとし、我々は驚くべき数の市民を国内外に追放する試みがあったということについて十分な証言及び証拠を得たということを述べておるわけでございます。
  133. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 その調査団の報告はそうなんですが、まだ百万もいるわけですね。その人たちというのはちゃんとした生活をしているのか。また、この百万人は流出してくるのか。話によるとあと十万か二十万ぐらいは流出するだろうと。残っていることもできるわけなんですか。  それで、出てきたたびに支援をしているというような感じもするんですけれども、その辺の見通しというか調査というのは、よその国じゃなくて日本の国もちゃんと行ってしたらどうかなと僕は思うんですが、行っているかどうか知りませんが、その辺どうなんですか。現状をよく調査していないんじゃないかなという感じがするんですけれども。
  134. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) ただいま欧亜局長の方から御答弁いたしましたように、国連人道調査団が入って、その報告が追って、今のところの予定では六月一日に事務総長になされることになっておりますので、それは一つの有力な報告かと思いますが、目下のところ、国連難民高等弁務官事務所の方では難民の数が、今八十万人でございますけれども、百二十五万人までなり得るということを想定して計画を立てているというのが一つございます。  それからまた、難民高等弁務官事務所の方では、これは今のところ、コソボの中での調査がなかなか難しかったわけでございますけれども、六十万人ほどがコソボの中で、自分の住居は出ていろんなところに避難したりあるいは徘回している、あるいは森に隠れているというような状況にあるというふうに見ております。その他、住居を移って共同あるいは合同でいろんな施設、学校とかそういうところに避難して、集団的な生活をしているという状況もあるようでございます。
  135. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 日本政府調査しているんですか、していないんですか。それで、どういうふうな見通しを立てているんですか。人道援助して二億とか、随分お金を出しますね。それは出してもいいんですけれども、自分たち調査に基づいて今後どのくらいのことをしようとして、今その第一弾なのかこれが全部なのか、それはどうなんですか。
  136. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 難民が流出してまいりましたマケドニア及びアルバニアの方に調査団を出しまして、避難してきている難民状況は直接調査いたしました。それから、大臣マケドニアにおいでになりましたし、私どももその後もまたアルバニアにも行っております。  現在のところは、そういうふうに難民高等弁務官事務所を中心とする国際的な機関におけるさまざまな情報、それから日本が直接行いました調査というのを合わせて日本対応を検討しているというところでございます。流動的でございますので、今後いろんな状況を勘案しながらさらに支援の形あるいは支援の規模等をまた考えていかなきゃならないというふうには考えております。
  137. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 私は、もうちょっと日本自身があらゆる方法を使って現状を把握すべきだと思います。  高等弁務官の話だとかアメリカサイドの話だとかそういうのだけで、自分で何も情報をとっていないんじゃないかなという感じが物すごくするわけです。だから、その辺の現状を、私がまず思うのは、あと二十五万流出する、まだ六十万か七十万残っているわけです。その人たちは生活しているんですか、していないんですか。どういう状況にあるのかということが、いる人もいるし流出する人もいるし、徘回していると言われても、どういう状況にあるのかということがよく把握されていないんじゃないかなといろいろなところに聞いてみて思うわけです。  お答えにならなくても結構ですから、自分のところできちっと情報をとる。情報というのはただではくれませんから、情報というのはお金がかかるわけですから、きちっとした情報をとらえて、その認識のもとに支援対策なりをしないといけないんじゃないか。  次に移りますが、NATO軍空爆した目的は何ですか。外務大臣、何回も答弁されていると思いますが、もう一度よく教えてください。空爆をしている目的。
  138. 西村六善

    政府委員西村六善君) 空爆を行いました目的は、明らかにコソボにおいて行われております軍及び治安部隊によるアルバニア系住民に対する攻撃をやめさせることによりまして、同時にユーゴ治安部隊コソボ地域から撤退することを目的としておるわけでございますけれども、そうすることによりまして、同時にコソボから流出した難民コソボの地に戻って安住できる、そういう状況をつくり出すために行動をとっているというふうに理解しております。
  139. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 コソボ共和国の総理大臣というのは今ロンドンにいるんですか、どこにいるんですか。コソボ共和国の内閣総理大臣というのはいるでしょう。
  140. 西村六善

    政府委員西村六善君) ルゴバ氏のことであろうかと思いますけれども、ルゴバ氏は……
  141. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 ブコシさんというのがいるんじゃないですか。大統領じゃなくて、共和国の総理大臣ブジャール・ブコシという人。
  142. 西村六善

    政府委員西村六善君) その方はドイツに現在おります。
  143. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 その人はこういうふうに述べています。我が政府の緊急の課題は、国外に追放されたすべてのアルバニア人を早急に彼らの故郷に帰すことです。このゴールを達成するためには、NATO軍がその目的を完全に果たし終えるまで軍事行動を継続することが不可欠ですと言っています。今、その目的は達しているんですか。
  144. 西村六善

    政府委員西村六善君) 目的を達しているという状況にはないと思います。  ただ、NATOはブコシ首相が言っていることとNATOが決めることとはおのずから別のものだということであろうというふうに私どもとしては了解しております。
  145. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 コソボ共和国というのは、亡命していますが、二百万のいわゆるコソボ人ですね、アルバニア人セルビア人も入れてそういう共和国だったわけでしょう。自分の国をきちっと守るということを怠ったんじゃないですか。
  146. 西村六善

    政府委員西村六善君) コソボの現在の政治形態はユーゴスラビアの中の自治州でございます。したがいまして、今、先生がおっしゃったような意味で自分の国を守るという義務を怠ったという判断を下すに足るような国家の体制をとっていたと言うわけにはいかないというふうに思います。
  147. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 けれども、ずっと武力衝突を積み重ねてきていたんじゃないんですか。
  148. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 武力衝突を積み重ねてきたのは、コソボ解放軍……
  149. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 それはセルビアですか。
  150. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) いや、そうじゃなくて、アルバニア人側の解放軍が、その解放軍をやっつけるのと同時に住民まで弾圧したというのが今度のユーゴ軍あるいは治安部隊あるいは民兵、そういったものが来たというのが今度の人道上の惨劇を生んだということでございます。
  151. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 そうすると、それはコソボ共和国の軍事組織というかそういうのがきちっとあるわけじゃないけれども、蜂起したゲリラみたいな、そういうのとユーゴ政府から派遣された正規の軍隊と衝突していた、こういう意味ですか。
  152. 西村六善

    政府委員西村六善君) 先生の方におかれましては再三コソボ共和国とおっしゃっておられますけれども、コソボ自体は、繰り返して申し上げますけれども、ユーゴスラビアの自治州でございます。  そこにおきまして、今、大臣から御説明がございましたように、解放軍という組織があったわけでございますが、その組織が立ち上がってユーゴスラビア軍と戦っているという図式というのは必ずしも正しくないと思います。それより以前にユーゴスラビア軍及びセルビア軍事当局が、さらにそれより以前をさかのぼりますと、ミロシェビッチ大統領によりまして、与えられておりました自治権が剥奪されたという点がございますけれども、コソボ住民はかなりの長い間にわたりまして平和的な抵抗運動をしていたのでございますけれども、それに対しまして弾圧が加えられたというのが歴史的な推移でございます。  その弾圧に今度は対抗して、コソボの側におきまして解放軍というものが次第次第に形成されたという流れになっているわけでございまして、解放軍というものがそもそも最初からかなり強い存在として存在していて、それとユーゴ側の軍事組織とが対峙してきていたという状況ではなかったというふうに思います。
  153. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 ユーゴミロシェビッチ大統領というのは、日本では余り聞かれていないからぴんとこないんですが、ヨーロッパでは悪名高きめちゃくちゃな男だと、こんなのを生かしておいたらためにならない、そういうような感じを私は受けるんですが、局長、いかがですか。
  154. 西村六善

    政府委員西村六善君) もちろん、ミロシェビッチ大統領は老練な政治家であるという定評が国際的な評価であろうと思います。  ミロシェビッチ大統領は、ボスニア・ヘルツェゴビナの問題の解決との関連におきましては、大統領自身がアメリカに参りまして合意文書に署名したといったようなこともあるわけでございまして、一国の独立国の大統領として行動しているという状況があるのではないかというふうに私どもは承知しております。
  155. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 私は、ぜひ日本政府に期待するのは、NATO軍が目的を達成する、達成しないとしようがないわけですから、空爆というのは手段ですから、達成できるようなシステムをぜひおつくりいただきたいということをお願いいたします。外務大臣がいろいろ努力されて、国連決議案も出るような、出るんですかこれ、そういう御努力を賜りたい。目的を達していないと何にもなりませんから。  以上です。
  156. 山崎力

    山崎力君 いろいろこういった国際的なトラブルといったとき、あるいは先般のガイドラインのときも若干それに絡んだ問題が出てきましたけれども、こういう国際間と言っていいトラブルに対して国際社会が、特に国連をつくって以降、どういうふうにやっていくかという仕組み自体がなかなかはっきりしてこなくなったというふうな観点から、法的な問題をもう一回点検してみたいということで、絡めてお願いしたいと思います。  まず、よく言われてくる言葉なんですが、国際法に違反しているとか、国連憲章にこの行為は違反している、こう言われるわけです。そういったときに、この違反というのが、条文上明らかにこのことに関して定めたものと違ったことが行われているという意味で違反だと、普通の社会ではそう言うわけです。ただ、その仕組みを考えてみたときに、普通の一国の刑事犯罪等の仕組みとかなり違ったものにならざるを得ない、これは承知しているわけです。  ただ、どうしても我々が考えるのは、悪いことをした人が国内においてどのような形で処罰のあれになるか。釈迦に説法かもしらぬですけれども、一種の摘発とか取り締まりとかというのを警察、検察が行う。そこのところを行うことに関して、容疑があれば裁判所が関与して令状を出す。それで、違反の容疑が固まった段階で裁判所がその処罰を決定する、行政のときもありますけれども。そして、その執行は刑務所という違ったところでやる。こういうふうな仕組みになっているというのは頭に入っていて、それで違反だ違反だというのは、摘発、取り締まりの段階で違反だということで騒がれてといいますか見つけて行われると。その判断は裁判所が行う、こういうふうな決まりになっているんです。  いわゆる国際的なトラブルのときに、国際司法裁判所があるよということは事実として知っているわけですけれども、中身が我々の考えている裁判所と相当違ったものであるという前提を踏まえまして、国際法違反であると。例えば軍事施設でない民間の施設に対しての攻撃は違反であると言われているわけですが、それじゃ、その違反があったらどうするんだということを、どうなっているのかちょっとここでお示し願いたいと思うんです。条約局長で結構です。
  157. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 一般論でございますけれども、一つの側面としましては国連憲章というのがございます。したがいまして、その国連憲章にのっとった措置として、これは具体的には安保理事会の決議等、いろいろな方策があると思いますけれども、侵略行為等を行った場合に国連としての措置というのがとられていくというのがあるかと思います。  それから、一般国際法上、国家と国家との関係で他国が違法行為を行った場合には、その違法行為を行われた方の国が、これは対抗措置、復仇等の一連の合法的、もしくはそれ自体は違法だけれども相手国が違法行為を行ったことによってその違法性が阻却されるような措置がとり得るというのがもう一つの方向かと思います。  現実にはそういうことを踏まえまして個々にそれぞれの国家が対応していくということになるかと思います。
  158. 山崎力

    山崎力君 ということになりますと、こういう席で言うのはなんですが、我々の社会では、ある行為が違反であったということを最終的に決めるのは裁判所であって、一人の人がある行為をしたことについて、これは刑法なら刑法の第何条に違反しておる、よってあなたは有罪であるというのは裁判所が決めるということになっているわけですが、国際社会において、ある国の行為が国際法並びに国際連合憲章に違反しているということを決めるのは安保理事会と考えていいのかどうか。いかがでしょうか。
  159. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 先ほど申し上げたことに加えまして、委員が御指摘になりました国際司法裁判所、つまり国際的な司法手続というものが、国際法に合致しない行為が起きたときに国際社会対応するもう一つの方向性があるということかと思います。  しかしながら、それでは今申し上げたような国連憲章に基づく安保理事会の対応、それから国際司法裁判所を通ずる措置、さらには各主権国家が主権国家としてとり得る措置、それの何が現下の国際法のもとで決定的に違法行為があった場合に解決する手段になっているかということでございますれば、これは、どれか一つが決め手になってこれならば解決するというものは、ただいま現在の国際法社会の中ではいまだに形成されていないというのが現状かと思います。
  160. 山崎力

    山崎力君 そうしますと、特に国際司法裁判所の場合、いわゆる関係両国が国際司法裁判所の裁定に従うという前提がなければ、一方的に一つの国、今回例を入れて適当かどうかわかりませんが、例えばユーゴスラビアが国際司法裁判所にNATO軍のあれは違法行為であると訴えたと。ところが、NATOの方はその裁判に応じないとなった場合、国際司法裁判所はそのことにたしか対応できないというふうに私は記憶しておりました。  それで、安保理でそういったことを決めることは可能であって、現実に行われたこともある。ということは、いわゆる法学者であるとかあるいは一般人が、これらの行為は国際法違反である、あるいは国際連合憲章違反であるというふうに言うだけのことはもちろん言えるし、国際公法その他の学問上はこれは違法行為であったということは言えても、いわゆる実態的な法律の運営の中において違反か違反でないかというのは、関係両国が国際司法裁判所に訴えないものである限り、特に武力紛争においての片っ方の行為が違法か違法でないかということをみずからの国が関係しているところで国際司法裁判所に訴えるケースというのはほとんどないと考えれば、紛争を引き起こした領土問題とか何かの原因措置は別として、国際紛争が発生した場合、武力衝突が発生した場合、現状においては、安保理の判断が結局は違法であると認定する、現状においては唯一の機関なのかなというふうに感じているんですが、その辺はいかがでしょうか。
  161. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 現下の国際法社会というのは、主権国家の共存によって成り立っているというのが、これが基本かと思います。  その上で、諸国家の意思の総体としまして国連憲章というものが採択され、国際社会の圧倒的多数がこの国連憲章のもとでの権利義務関係を引き受けているという状況でございます。  したがいまして、委員御指摘のように、安保理というものが国際安全保障、国際法の秩序というものに関してきちんとした対応をいたしますれば、それは一義的に国際違法行為に対して重要な役割を果たすということはこれは疑いがないところでございます。  他方、冒頭に申し上げましたように、主権国家の共存である国際社会というのもこれも現実でございますので、先ほど申し上げましたような主権国家としての対応とか、さらにはICJをめぐるいろいろな問題とかもともに起きてくるわけでございまして、すべての問題に関してこれならば大丈夫というものがなかなかまだ形成途上の過程にあるということかと思います。
  162. 山崎力

    山崎力君 形成途上とおっしゃいましても、国連ができてから既に五十年、それからそれのめどが立つのがあと何年先かということですが。  それでもう一つ、先ほどの流れでいけば刑務所に相当するもの、要するに強制執行その他をやる機関というものも、国連決議して、金融措置その他経済制裁というようなことはあろうかと思うんです。武力制裁もかつてのあれでいけば朝鮮戦争とか湾岸戦争とかというのも、正式にはどうかは別ですけれども、そういうふうなことになっている。  ということから考えてきますと、現状においていわゆる国際社会の同情を得るため、あるいは同情というのはシンパシーというだけではなくて一種の国際世論を形成するための多数派工作としての言論という意味も含めて、相手国に対して、相手国の行為は国際法違反である、あるいは国連憲章違反であるという非難をすることは可能だとは思うんですが、我々が普通の社会において違反した、けしからぬことをしたと訴えるということになった場合のその後の手続と国際社会における手続というのはかなり違ってこざるを得ない。  現実に言えば、安保理がその判断をできなければ、いわゆる国際社会的に言う合法的な強制執行は、法律に裏打ちされた裁判であるとか刑務所であるとかということはできない仕組みになっている。裏を返せば常任理事国、拒否権を持つ五カ国が絡んだこういう国際紛争というのは、現実に国連の用意した法の枠組みの中では強制的な解決は不可能であるというのが国際社会の現実ではなかろうかというふうに判断することはいかがなものでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか、その辺は。
  163. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 申し上げましたように、現下の国際法社会のもとで一義的に違法行為というものを解決する方策というのはなかなか難しいということだと思います。
  164. 山崎力

    山崎力君 ということは、幾ら今の場合ある行為が国際法に違反しているとか国連憲章に違反しているとか言ったところで、そのある国が常任理事国五カ国かあるいはそれと密接に関係する国の行為である限り、国連としてその行為を強制的に解決する手段は国際社会は現在持っていないと考えていいと思うんです。今のと繰り返しになりますので、お答えは結構です。  そうなってくると、国際法違反だ、国際連合憲章違反だというふうに言うことは、要するにある意味では、学問上はともかく、そして人道上はともかく、国際法の社会では単なる宣伝、同情を呼ぶための宣伝であるという側面も出てこざるを得ない。  それで、そういう宣伝でもって理事国がすべて、五カ国が一つの結論を出すのであればこれは何なりかの強制力を持つのでしょうけれども、幾らそういう宣伝があろうと、五カ国のうち一カ国でもそれは我が方としては受け入れられないと言えば、これはなかなか国際法、国連中心活動では対応ができない。これが私は残念ながら国際社会の現実だろうと思うわけでございます。  そこで、今回のコソボに関してみれば、安保理は今回のNATOの行動に対しての非難はしない、しかも一カ国だけではなくて多数をもって安全保障理事会というのは違法化しなかったわけです、コソボに対するNATO軍の行動を。ということになれば、もうこれ以上国際社会として交渉、話し合い、そういった法的な手続によるような国際社会での話し合いというものとは別の世界に、次元に来ている、国連を離れている。その中で国連の活躍する場所はいろいろあるとしても、非常に法的に切り分けていけば、そういうふうな形になってしまっている。  さりとて、それでは国連にかわるようなそういう紛争調停の組織というのは全然萌芽すら見えない、芽吹きすらない、これしかやっていられない、こういう現状だろうというふうに私は思うわけです。  それが本当に日本国民にそういった事情がわかっているのかわかっていないのかという、これは別の次元の大きな問題ありますが、そうすると、今回の措置は、いわゆる直接ではないんだけれども、一種の集団的なNATOならNATOというところとヨーロッパならヨーロッパというところの中でのある民族、地方における民族に対する、それも違反ではあるんだけれども、強制力のないいわゆる人道上の人種差別的な虐殺も含めてでしょうけれども、そういったことに対する主権国家への制限。そういうことをやろうとやるまいと、うちの国のことだから文句言うなというユーゴの主張、それに対して、それは言えるんだと。それは主権国家同士のいろいろの中での考え方を強制するんだという感覚がやはりあったのかなと。  そうすると、やはりここで最後に問題になってくるのは、国内における主権国家の主権の行使の制限というものを国際社会がその時々の力関係、バランスの中、あるいは気持ちといいますか、思想といいますか、いわゆる人道主義というのも一種の思想だとすれば、そういった中でのせめぎ合いの中で今回のコソボ紛争というのが現実のものとして行われているのかなというふうに私は感じているわけです。  そういった中で、我が日本が、外務省と言わずにあえて我が日本と言いますが、国としてどのような対応をとるのかといったときに、その辺に対する意識を持って、国際社会の意識を持ってやるのとやらないのとでは、単に外務省一つが逆立ちしたところでなかなか国民の理解は得られないと私は思うわけです。  時間ですので、最後に質問させていただきたいのは、そういう国際社会の中で我が国は何をなし得るのかという基盤を押さえた上での国民に対する説得がいま一つ私には見えてこない。その辺をもう少し、外務省というのはどうしても外側を見ているところで、国民の方の理解を得るというところからすると、なかなか本来の仕事からすると難しいかもしれませんけれども、その辺のところをどう考えて、どうやろうとしているのか、考え方をお聞かせ願えればと思います。いかがでしょうか。
  165. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 小渕外務大臣のときから、国民とともに歩む外交と言っていますので、外交政策について国民に理解を求める、御説明するというのは決して外務省の仕事ではないわけではなくて外務省の重要な仕事の一つだと、こう思っております。  私としてもそのために一生懸命やっているつもりでありますが、十分でないというおしかりを受けるとすれば、評価というのはみずからするものではなくて人がするものでありますから、それはそれで仕方がないかなと。これからもできるだけ国民の理解を求めるように努力してまいりたいと、こう思っています。
  166. 山崎力

    山崎力君 終わります。
  167. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大分難しい問題は出尽くしたものですから、私からは一般的な、初歩的な、かつ常識的な問題をお伺いしたいと、こう思います。  最近、世界じゅうが何かきな臭いと、戦火のにおいが漂っているという感じを持っておられる方も多いと思います。昨年の八月にアメリカはスーダンとアフガンにミサイル攻撃をかけたと、ことしの一月はイラクにと、そして三月からは今度はユーゴ空爆ということで、これが延々と続いていると。  こういう戦争状態と一口に言っていいのかどうかわかりませんけれども、多分に世界の指導者をもって任じているアメリカの、その指導者のクリントン大統領の性格が私は反映しているような気がして仕方がないんです。  空爆発表のテレビなどを見ておりますと、本当に三日三晩寝もやらずに考えて、悩みに悩み抜いたと。これをやればもう犠牲者が何百人、何千人、何万人と出るかもしらぬ、大変な被害が及ぶと、しかしやらざるを得ないんだと、世界の秩序を維持するために空爆をせざるを得ないんだと。本当に悩み抜いて決断をして、そしてテレビの前にあらわれてきて、世界の人民に訴え、国民に訴えるとはちょっと思えない、極めてあっさりした顔をしまして、晴れ晴れとした顔をしまして、何しろ相手相手ですから空爆を決定いたしましたと、悪いのは相手ですという感じなんですね。不倫疑惑のときは彼は本当に悩んでいましたよ。テレビを見てもよくわかりました、あれはね。しかし、空爆決定についてはごくごくあっさりとした顔なんですね、さばさばしたような。  彼は本当は平和愛好家とは言えないんじゃないかと。言葉は悪いけれども戦争好きなんじゃないかという気もしておるわけでありまして、子供のころは戦争ごっこが大変好きだったと。しかし、ベトナムのときは徴兵拒否しておるんですね。ですから、みずから出かけていって血を流すことは嫌だと。しかし、空爆なんというのは大変おもしろいといえばおもしろい話ですからね、そういうことを考えてにわかな決断をしておるのかと。  外務大臣はクリントン大統領とじかにお会いになって言葉を交わされたこともありましょう。率直な御感想で結構なんですけれども、彼は平和愛好家なんでしょうか、そう見てよろしいですか。
  168. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 平和愛好家だと思っております。
  169. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ちょっと理由ぐらい言ってくださいよ。
  170. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今、委員がおっしゃったことは、お話として聞けば大変おもしろく聞けるかもしれませんが、私はそうだとは思っておりませんし、空爆などということをすることに悩んで悩んで悩み抜かない人はいないだろうと思います。  ただ、決断をした後晴れ晴れするということは人によってはあるかもしれないと。これはわかりませんが、人を説得する上に、幾ら悩んでも悩んだようなそぶりを全く見せないで言った方がいいという場合もありましょうし、場合によっては悩んだんだよと言って理解を求める場合もあるだろうし、いろいろあるから、一概に今、委員がおっしゃったことについて私はそのとおりだとはとても申し上げられないということであります。
  171. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 太平洋戦争の終了後、アメリカは世界の指導者、世界の警察官をもって任じてきたわけでありまして、東に動乱があればそっちに飛んでいくと、西で人権じゅうりんがあればそちらに行って介入し口を出すと。世界の警察官をもって任じていると。  それはそれで結構なことでありまして、大変御苦労なことであったと私も思っておりますが、警察官というのは法執行機関ですから、言うまでもなく、みずから法律を守ってくれなければ困るわけでありまして、自分が法律を踏みにじっておいて、そして正義さえ実現すればいいんだと、こんなことは通用するわけじゃないのであります。  一つの例ですけれども、昨年八月のあのスーダンに対する空爆、アフガンに対する空爆、あれをどういうふうに理解したらいいのか。アメリカはこれは自衛権の行使だと言っておりましたが、こんな理屈は絶対に成り立たない。  殺人犯がおりまして、殺して逃げていった。後ろから追いかけていって殺しちゃって、これを自衛権の行使だと、こんなばかげたことはないわけですから。やっぱりきちっと逮捕しまして、裁判に付して有罪無罪を決定する、これが警察官のやり方なんです。  このスーダン、アフガンに対するアメリカ攻撃、これは一体どういうふうに法的に評価したらよろしいんでしょうか。教えてください、私はわからないものですから。恐らくこれはわかる人はいないんじゃないでしょうか。あなた、おわかりなら答えてくださいよ。
  172. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) ちょっと事実関係について……
  173. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 外務大臣にお願いできれば結構なんですけれども。
  174. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 大臣の前に、法的観点から私から最初に一言……
  175. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 あなたは法律家じゃないでしょう。
  176. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 確かに、アメリカは自衛権の行使だということを言っております。  その前に、アメリカは世界の警察官を任じていると、こういう御発言ですが、アメリカ自身が自分が世界の警察官である、こういうことを言ったことはないというふうに……
  177. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 あえて否定していないから、認めているんですよ。
  178. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) むしろ、世界じゅうの人が時々アメリカをやゆする形でそういうことを言っている言葉だと、こういう認識をしております。まるっきり的外れだとは思いませんが、そうだと思います。  自衛権の行使、あれは計画的、連続的なテロ行為の中で自衛のための手段であったと、こういうことを言ってきております。そして、より詳細な事実関係日本政府に知らせてきておりますが、そのより詳細な事実関係について日本政府はそれがすべて事実かどうか判断できないということで法的評価を差し控えると、こういうことを言っているわけですが、そのより詳細な部分をちょっと政府委員から話させたいと思います。
  179. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 アフリカにあるアメリカの大使館を爆破した犯人がスーダン、アフガンの施設に潜んでいる、CIAかどこかの情報でそれがわかったということで攻撃をしたと、こういうふうに言われております。これは常識的に考えましても、そういう情報が入りましたらば、それを相手国に提供いたしまして、犯人の検挙と訴追を求める。これは当たり前のことです。  日本でオウムが暴れまして、アメリカ大使館、今度はアメリカ帝国主義は我々の敵だと、こういうことを言い出しまして、アメリカ大使館にサリン攻撃をかけたと。日本の警察は一生懸命犯人の割り出し、検挙に努力をしているが、なかなかそこまで至らない。アメリカがいらいらして調べてみたら、オウムの犯行に間違いないと言って、ある日突然、横須賀にいる軍艦からミサイルを上九一色村ですか、あそこに向けて発射いたしまして、そして吹っ飛ばして、やあやったと。これは個別自衛権の行使と。  このとき、日本政府アメリカのやったことを理解すると言うんでしょうね。スーダンについても理解するということを言っているようですからね。スーダンと日本で全然区別はないわけですから、向こうは開発途上国だからどうでもいいんだと、こっちはもう文明国だからそんなことは許さない、アメリカもしないだろうと、そういうわけにはいかぬのでありまして、同じような事実関係として考えてみた場合に、両方に対して日本政府理解すると、こう言わざるを得ないんじゃないだろうか。一体、その場合、何を理解するのか、とてもじゃないけれども説明できない話じゃないでしょうか。  それから、今、スーダン攻撃につきまして事実関係が定かじゃないものだからということを大臣はおっしゃいましたけれども、理解するあるいは支持するという言葉は、わかったわかった、おまえさんを応援するよ、こういうことなんですから、その言葉を発する前に、わからないことがあればどんどんアメリカあるいはNATO諸国に、NATOの事務局に問い合わせをしまして、法的根拠は何なんだ、動機、目的は何なんだ、いつごろこれは終わることになるんだ、犠牲者は出るのか出ないのか、そういうことを全部問い合わせた上で初めて理解するとか支持するとかそういう言葉が出てくると私は常識的に考えるんだが、どうもそうじゃないようでして、あったらすぐぐらいに、間髪を入れずと言ってもいいぐらいで、わかったわかった、理解する、支持する、こういうことを言っておる。少しおかしいと思いませんか。
  180. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) アメリカ日本に対する説明ではと、そういう前置きをしなきゃなりません、日本みずから調べられないわけですから。スーダン、アフガニスタンに対してはたび重ねて犯人検挙を求めたが、かえってかくまっているような、具体的な文言ははっきり覚えているわけではありませんが、アメリカ側からすれば、全くその犯人を検挙するという方向ではなく、かえってかくまっているような状況であった、そしてこれを放置すれば連続的なテロ攻撃がさらにアメリカ並びにアメリカ人に向けられる、こういう差し迫った危険もある、こういう説明をしているわけでございます。  テロに対する断固たる姿勢を理解する、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  181. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 スーダン政府などが犯人をかくまっているかもしらぬ、それだけのことでああいうふうに踏み切ること自体に私は大変疑問を投げかけておるわけです。  やはり国家と国家の問題ですから、これだけの証拠がある、おまえさんのところはあの薬品工場、あそこにかくまっているのではないか、これだけの証拠が挙がっている、すぐに検挙し訴追をすべきであるということをまず申し入れまして、それも一回二回じゃなくて再三申し入れて、それでも聞かなければ今度は国連の舞台に持ち出して制裁を求めて、国連の団結の力でもってスーダン、アフガンにそういう処置をとらせる。これが法治主義の上で極めて当たり前のことだと思うんですけれども、どうしてアメリカはあんなふうに簡単に踏み切っちゃうんでしょうか。どういう理屈をつけておるのか。  それは嫌になるくらいお尋ねになったと思うんですけれども、大変大事なことですから、二度とあってはならないことでもありますから、法的な根拠を説明してほしいと言うべきじゃないでしょうか。
  182. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) アメリカは、再三申し上げるように、自衛権の行使であると、こういうことを言っているので、そしてアメリカとすれば、スーダン、アフガニスタン政府がかえって犯人をかくまっているという断定のもとにやっているわけであります。  我が政府はそこまではわからぬ、こういうことでありますから、我が国としてアメリカの言うとおりだ、あれは自衛権だ、だから支持するとも言えないし、逆にけしからぬという話でもその時点ではないし、そういう中で我が政府としては、テロに対する断固たる姿勢は理解します、こういうことを申し上げている、こういうことでございます。
  183. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 なぜ一言アメリカに対して、そういう問題は国連の場に持ち出して国連を通じて制裁するのが筋道じゃないでしょうかということをおっしゃらないんでしょうか。
  184. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 残念ながら、残念といいますか、我が国としてもアメリカのテロに対する断固たる姿勢というのは理解しているわけでありますし、国連の場に持ち出して具体的にどういういい結論が得られるか。その間にまた大使館爆破があってどうなるか、そういったこともある中で、我が国政府として、事実関係の詳細は知りませんから支持するというわけにもいきませんが、繰り返すようですが、理解すると、こういうことでございます。
  185. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 正義を実現するには手間暇がかかるということをクリントン大統領は知らないようなんですね。すぐ簡単にああいう実力行使に踏み切ってしまう。今度のNATOユーゴの問題につきましても、ああいうことでユーゴ政府と話し合いが続けられておる。この際にいきなり伝家の宝刀を抜くような態度は、平和的な解決を最初からもう考えていないんじゃないか。  日本の憲法は、国際紛争を解決する手段として武力を行使してはならない、こう言って、これは当たり前のことと言えば当たり前のことなんでありまして。しかも、この憲法はアメリカの押しつけだと、こう言われておって、アメリカは我々にああいう憲法を押しつけておいて自分たちはいきなり伝家の宝刀を抜く。一体これはどういうことなんだろうか。  たとえ人道の旗印、正義の旗印を掲げておきましても、話し合いの最中にいきなり、これだけ言ってもわからぬのかと言って相手を殴りつける、暴力を振るう。これはもう正義も人道も何もなくなってしまう。暴力対暴力、これはやくざの世界と同じことなんだ、いかにきれいごとを言ったにしましても。正義を実現するために殴ってでも相手をわからせてやろうなんて、こんな理屈はどこにもないわけなんです。これは民主主義じゃないんです。そういう極めて大事なことだと私は思うのであります。  アメリカ人というのは正義を実現するためには少々の犠牲もいとわないという考えがあることは、終戦時のあの原爆の投下、広島、長崎に対する原爆投下がよくあらわしていることなんです。非戦闘員である一般市民を何万、何十万殺す、しかし戦争を早目に終わらせるためには、それ以上の犠牲を防ぐためにはこれはしようがないことだと割り切りがあるんですね。そのくせ、南京で日本軍は何か虐殺をしたじゃないかなんということを目くじら立てていろいろ言ったりする。自分たちがやったことは、あれはもう正義の実現のために仕方がないことだと割り切りがありまして、世界もそれはそれとして何か暗黙のうちに公認しているかのごとくですけれども、あれは絶対に許されない戦争犯罪でありましょう、非戦闘員をあんなふうに一遍で殺しちゃうなんというやり方は。  しかし、アメリカ人は、これは西欧的な合理主義だと言ってもいいと思うんですけれども、一つの割り切りがあるんですね。今回のユーゴの問題、それからアフガン、スーダンに対するミサイル攻撃の問題にしても、彼らは彼らなりに割り切っているんですよ。これは正義を実現する、人道主義を貫くために必要なことだ、黙ってついてこいと。  しかし、もう二十一世紀ですからね。彼らにいつまでも、はいはいと言ってついていくことは必要ないのであって、言うべきことは言う。これが私は大事だと思うんです、これからの国際関係につきましても、言えばわかってくれる。  アングロサクソンというのは、理屈を通して筋道を言う人には大変弱いんですよ。生麦事件、昔の話になりますけれども、薩摩の大名行列をイギリスの商人が乱した。そして、イギリスは幕府にかけ合って犯人を引き渡せと言った。幕府は、薩摩藩の問題ですから渡せないと言った。そして、イギリスは軍艦を派遣して鹿児島城下を焼き払ったけれども、薩摩はそれでも渡さなかった。理屈はきちっとあるんです。大名行列を乱した者は領主がその場で手討ちにしてもいいという一種の慣習法が日本にはあるんだ、その法律を執行しただけだ、それを引き渡すわけにはいかないと言って渡さなかった。  そうして鹿児島城下は丸焼けになりましたけれども、イギリス人は、いろいろ考えてみると、幕府というのはあれはどうしようもない人間だ、本当の東洋人だ、植民地の人間だと。ところが、薩摩というのはしっかりしている、筋道を通す連中だと。東洋にもああいう者がいたのかということで、薩英同盟ができたわけでしょう。これが維新の原動力にもなったわけですよ。きちっと筋道を通すことについてはアングロサクソンというのは非常に同調する、感動するというのか理解する。  ですから、私は、折を見て言うべきことはきちっと、あらゆる場を通じて、クリントンさんを初めアメリカの要人たちに言うことが大切だと思うんです。何もかももみ手をしながら、わかったわかった、理解する、大変御苦労さまですなと言うだけが私は能じゃないと思うので、これは大臣の場合だってそうでしょうし一般の外務省の職員の場合も同じことなんで、折に触れてそういう議論を向こうの外交官と交わすということも大切なことじゃないかなと思うんです。理解できないことは理解できない、それでいいわけですからね。  最後にいかがでしょうか、私のこういう考えは。
  186. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 城下を丸焼けにされて、後でなかなかのものだと、こう評価されても、それが外交的成功だと私は必ずしも思いませんが、それはそれとして。  話し合いの最中にいきなりぶん殴ったという感じではないんで、昨年の三月からずっと国連安保理の場において、そしてその後いろいろランブイエの調停工作等、国際社会は大変な努力をしてそして調停工作を行い、そしてそういう中でも非常に人道惨劇が起こったために、そういうことがどんどん片方で起こってきている中で、アメリカだけではなくNATO十九カ国、これをのんでくれなきゃ空爆をやりますよという形で最後通告みたいなものを突きつけて、そしてそれものまれない中でさらに期限を延ばして、そしてそういう中で、これはかなりコソボ解放軍側にとっても非常に厳しい案でありましたが、コソボ解放軍側は最後はのむと、ユーゴ側はのまないと、こういう中で、そういう調停工作を無視するようにさらに軍あるいは治安部隊を四万人増強する、こういう状況の中でさらなる人道惨劇を防止するためにやむを得ずとられた措置であると理解していると、こういうことを申し上げているので、何か話し合いがどんどん進んでいる中でいきなりぶん殴ったと、こういう感じではないと私は理解しております。
  187. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 終わります。
  188. 河本英典

    委員長河本英典君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  189. 河本英典

    委員長河本英典君) 次に、国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約改正及び国際移動通信衛星機構(インマルサット)に関する条約改正の受諾について承認を求めるの件、投資促進及び保護に関する日本国とバングラデシュ人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件及び投資促進及び保護に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。高村外務大臣
  190. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ただいま議題となりました国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約改正及び国際移動通信衛星機構(インマルサット)に関する条約改正の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  これらの改正は、それぞれ、平成六年十二月及び平成十年四月にロンドンで開催された国際海事衛星機構の総会において採択されたものであります。  これらの改正は、国際海事衛星機構の名称を国際移動通信衛星機構に改めること及び会社を通じてインマルサット衛星システムを運営するために機構の目的、構成等を変更することを内容とするものであります。  我が国がこれらの改正を受諾してその早期発効に寄与することは、移動衛星通信業務の継続的な提供を確保するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、これらの改正の受諾について御承認を求める次第であります。  次に、投資促進及び保護に関する日本国とバングラデシュ人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、バングラデシュ側の強い希望を受け、バングラデシュと投資促進及び保護に関する協定締結するため、平成六年以来交渉を行いました結果、平成十年十一月十日に東京において、先方アザド外務大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、投資の許可及び投資の許可に関連する事項について最恵国待遇を相互に与えているほか、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動に関する最恵国待遇及び内国民待遇、収用等の措置がとられた場合の補償、送金等の自由、投資紛争解決のための手続等について定めております。  この協定締結により、我が国とバングラデシュとの間の投資の増加並びに経済関係の拡大及び緊密化が促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  最後に、投資促進及び保護に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ロシアとの間で投資促進及び保護に関する協定締結するため、平成十年二月以来、ロシアとの間で交渉を行いました結果、平成十年十一月十三日にモスクワにおいて、我が方都甲特命全権大使と先方シャポバリヤンツ経済大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、従来の我が国投資保護協定と同様、投資の許可及び投資の許可に関連する事項について最恵国待遇を相互に与えているほか、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動に関する最恵国待遇及び内国民待遇、収用等の措置がとられた場合の補償、送金等の自由、投資紛争解決のための手続等について定めております。  さらに、この協定は、投資環境の整備における国際的傾向とロシア投資環境の現状を踏まえ、法令の公表、貿易に関連する投資措置の禁止等の従来の我が国投資保護協定にはない新しい規定を設けております。  この協定締結により、我が国ロシアとの間の投資の増加並びに経済関係の拡大及び緊密化が促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  191. 河本英典

    委員長河本英典君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  三件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十六分散会