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1999-05-12 第145回国会 衆議院 労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十二日(水曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 岩田 順介君    理事 荒井 広幸君 理事 能勢 和子君    理事 森  英介君 理事 柳本 卓治君    理事 石橋 大吉君 理事 川端 達夫君    理事 前田  正君 理事 青山  丘君       井奥 貞雄君    石川 要三君       稲垣 実男君    大村 秀章君       小林 興起君    坂本 剛二君       白川 勝彦君    田中 昭一君       棚橋 泰文君    藤波 孝生君       保利 耕輔君    城島 正光君       中桐 伸五君    松本 惟子君       河上 覃雄君    桝屋 敬悟君       大森  猛君    寺前  巖君       濱田 健一君    土屋 品子君  出席国務大臣         労働大臣    甘利  明君  出席政府委員         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         労働大臣官房政         策調査部長   坂本 哲也君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         労働省職業能力         開発局長    日比  徹君  委員外出席者         議員      大森  猛君         厚生大臣官房審         議官      辻  哲夫君         労働委員会専門         員       渡辺 貞好君 委員の異動 五月十二日         辞任         補欠選任   河上 覃雄君     桝屋 敬悟君   畠山健治郎君     濱田 健一君 同日         辞任         補欠選任   桝屋 敬悟君     河上 覃雄君   濱田 健一君     畠山健治郎君 本日の会議に付した案件  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十三回国会閣法第一〇号)  職業安定法等の一部を改正する法律案内閣提出第九〇号)  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案大森猛君外一名提出衆法第一五号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 岩田順介

    岩田委員長 これより会議を開きます。  第百四十三回国会内閣提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出職業安定法等の一部を改正する法律案及び大森猛君外一名提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。能勢和子君。
  3. 能勢和子

    能勢委員 おはようございます。  今国民が最も関心を持っているのは、やはり日本経済景気回復の問題とあわせて雇用状況の問題というのが最も関心事であろうと思います。そういう意味で、私も労働委員会の一委員として、あるいは理事としてこの場にいますことを大変誇りに思っている労働委員会であります。  さて、その中でも、本年三月卒業いたしますいわゆる新規卒業者就職内定状況を見ますときに、やはり新規学卒者就職環境は引き続き厳しいものがある。労働省から配られましたこの資料を見ましても、大学卒状況を見ても、男性が九〇・七、女性が八四・七、さらに女子大卒の厳しい状況がうかがわれるわけであります。労働省としてもこの問題についてどう対策を練っていくかということは大変大事な問題であろうかと思います。  殊に、加えてこの資料から御質問申し上げますのに、卒業予定者が五十三万七千人、それに対して就職希望者が三十七万三千人ということは、ここに約十六万四千人という数が不明瞭といいますか、わからない形になっています。この十六万四千人の皆さん大学院進学ということではなかろうと思うんですが、この十六万四千という数は一体どのように動くんだろうか。と申しますのは、二十一世紀を担うこうした若い学卒皆さんが本当に職業意識を持って国家に役立つ人間として働いてくれるかどうかということは大変関心事でありますが、この数がもう少し明瞭にわかればありがたいと思っています。  そういう意味で、二点を御質問したいと思います。  一つは、新規卒業者に対して労働省としてはどういう対策を練っていき、特に新規卒業者が夢を持って社会に出ていくことをサポートしていかなければいけないと思っています点、そして、この数の違いをどういうふうに労働省は見ているかということ、二点をお尋ねしたいと思います。
  4. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 まず初めに、卒業された方と就職等される方との差でございますけれども、今御指摘の本年の三月一日現在の数字でございますが、大学卒業予定者が五十三万七千人、それから就職希望者数が三十七万三千人というふうになっておりまして、これは文部省の推計でございますけれども、その差が十六万四千人あるわけでございます。  この差の主な内訳の数まではわからないのですが、その十六万四千人の方の内訳は、大学院あるいは他大学への進学者、あるいはアルバイト等の一時的な仕事につかれる方、あるいは未就職でそのまま卒業された方、あるいは専門学校入学者とか大学院の受験の準備をする者、あるいは家事につかれた方、こういったことになっております。初めに申しましたが、それぞれの具体的な内数までは把握ができておりません。  それから、新規学卒者就職問題ですが、これから社会に出ていくというときに就職先が決まらないという方がことしも大変多いわけで、大変不幸なことであるというふうに考えておりまして、新規学卒者就職対策労働行政としても力を入れていかなければいけないというふうに思っているわけであります。  まず、四月に、こういった観点から、経済団体代表者に対しまして労働大臣名学卒就職者応募機会確保について要請を行っておりますし、また、全国に配置をしております学生職業センターあるいは学生職業相談室におきまして、学卒就職者の方については個人個人登録システムシステムとしてつくっていこうということにいたしまして、いわばマンツーマンによりまして個人個人希望を把握してできるだけ早い就職に結びつける、こういった対策を今年度これから講じていこうというふうに考えているわけであります。  また、ことし卒業はされましたが就職に結びついていない方につきましては、来年の春卒業して就職をする方と同じように求人の門戸を開いてほしいということで事業主等々に対して要請を行っているところでございます。  また、高校につきましても未就職者の方がおられるわけでありますが、高校卒業されて未就職者という方につきましては、学校公共職業安定所が連携をとりまして、これも一人一人の就職希望ニーズ等を把握しながら職業紹介を行っていくという対策を従来にも増して強化していくということにしております。
  5. 能勢和子

    能勢委員 今出ましたこととあわせて、今、就職難、いわゆる失業率が高いというふうに言われておりますが、高等学校の方の資料を見ますと、求人倍率が一・四三という数が出ておりますということを見れば、求職者よりも求人の方が多いわけでありますから、就職をしようと思えば全員が数の上ではできるという数値になっておりますけれども、実際の数では内定者が八三・七%。だから、人を求めているんだが人は入ってこない、倍率は一・四三でありますが。このあたりの数はいかがでしょうか。
  6. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 高校卒業者、高卒につきましては本年の数字はまだ出ていません。毎年文部省の五月の調査で出るわけで、したがいまして、昨年の数字について見ますと、進路状況を見ますと、高校卒業者総数は百四十四万一千人でございますが、そのうち進学者数が百万七千人で約七〇%、それから就職者数は三十二万人で二二%、その他の方が十一万四千人で七・九%おられます。この内訳は、したがって進学就職もされてない方、あるいは海外留学をされた方、あるいはアルバイト等の一時的な仕事についた方。こういったことで進学就職された方の差が出てきておるという状況ではないかと思います。
  7. 能勢和子

    能勢委員 今出ましたように、最近の大学卒高校卒の若い皆さん方が非常に職業意識というのが薄いように思うわけですね。だから、もちろん仕事をかわっていくことは自由でありますけれども、そのような若年労働力にかかわる需給のミスマッチを何とか解消することが必要でないか。そういう意味では、私は、インターンシップの推進等新たな対応も含めて職業指導充実を図っていく必要が本当にこれから大事だろうと。そうしないと、そのギャップでミスマッチというのが起こってくるわけです。  この職業指導充実を図っていくという観点労働省はどのように対応していくお考えを持っていらっしゃるか、お聞かせ願いたいと思います。
  8. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 高校大学卒就職をされてその後の転職率離職率というのを見ますと、大卒の場合で、卒業就職して三年以内に離転職をされるという方が約三割ある。それから高校卒の場合では三年以内の離転職者が五割あるというふうに、一たん就職はしたものの早期離職をする、転職をするという方が大変多いわけであります。  この中には、就職はしたけれども、どうも自分の適性に合っていないというふうなことで自分に合った職業を見つけるために移っていく、あるいはもう一度仕事について考え直そうというふうに、いろいろな理由があると思います。必ずしも消極的理由だけではないと思います。しかし、いずれにしましても、せっかく就職して三年以内というような短期の間に五割とか三割という方が離職をしていくということはやはり、社会的に見ましても、本人にとっても大変大きい問題だというふうに思います。  ここのところは、やはり在学中からの職業意識啓発ということが大変大事なことで、それだけではもちろんないでしょうけれども、大変重要なことだというふうに考えておりまして、大変遅まきではありますが、昨年度から、通産省、文部省と私ども協力をいたしまして、大学におけるインターンシップ制度導入ということを行ってまいりました。大学と企業とをつなぎまして体験実習講座というようなものを行ってきてまいりまして、昨年度は五十一の大学対象にしてインターンシップによる体験実習講座というものを開催してまいりました。本年からは、高校についてもジュニア・インターンシップというふうなものを開催していこうと考えているところであります。  今般の職業安定法改正案におきましても、若年者職業意識啓発重要性、こういったことを考えまして、公共職業安定所業務として、インターンシップに対する取り組みを強化する根拠になるような規定を新たに設けることにしておるわけでありまして、今後とも一層、特に若い方の職業意識啓発指導に努めてまいりたいと思います。
  9. 能勢和子

    能勢委員 ぜひそういう形で、職業安定所が果たす役割の中にそうした若い皆様方が育つという形を——最近周囲の若者たちを見ましてもそういう面が一番欠けている面ではないかというふうに見受けられるわけですね。せっかく就職して来るのだけれども、合わないということで三年、五年でやめていく。私たちが人を採用したときにもそのようなことを経験しているわけなんです。  なぜかというと、もちろん精神の問題、心の問題もあろうかと思いますけれども、そうした訓練といいますか、インターンシップということは労働行政の中で大きな役割だと思うのですが、今、渡邊局長からお話がありましたけれども、これは大体全国挙げてどの程度の場所にそうした制度導入できるようになっていますでしょうか、新しい形として。
  10. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 このインターンシップは、既に自主的に大学で取り組んでおられる数は、これはちょっと手元に数がないのですが、大学の全体でなくても例えば一部の学部について行うというふうなものは、かなりの数に上っております。  行政で昨年度から取り組み始めましたのは、先ほどちょっと申しましたが、まだ大学で五十一ということなんですけれども、これはだんだん、これから少し制度を広げていくとか、あるいはインターンシップ職場体験をした人についてはこれをできれば単位化をしていくとか、そういったことによって実も伴うようなことにし、あるいは対象もこれから拡大していく、今後の課題かなというふうに思っております。
  11. 能勢和子

    能勢委員 いやいや、私の聞きたかったのは、県庁所在地の各安定所ぐらいにずっとそういうことが行くようになっておりますか。
  12. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 現在始めましたのはまだ五十一というふうなことで、これは大都市中心であろうかと思いますが、今般の改正では、公共職業安定所業務として、公共職業安定所は、「学校その他の関係者と協力して、職業を体験する機会の付与その他の職業選択についての学生又は生徒の関心と理解を深めるために必要な措置を講ずるものとする。」こういった改正案を盛り込んでいるわけでありまして、この規定全国あまねく法律改正されましたら適用するということになると思います。
  13. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  その一方、そうして職業がかわっていくということについて、大変雇用に関する多様な情報がはんらんする中で、求職者に対しましても、どこが本当に信頼する情報かということを見ますときに、そうはいっても、公共職業安定所信頼性の高い情報提供できる、最も効果的、効率的な情報公共職業安定機関情報だというふうに考えています。駅前にも、いろいろなショップの中に就職情報というのがたくさん流れるように、本当にはんらんしているわけですが、その情報ページをめくっていますと、いろいろなことがたくさん書いてあります。しかし、信頼があるかどうかというと、やはりそこは必ずしも信頼性の高い情報と思っていない。国民が最も頼りにしていますのは公共職業安定所情報だというふうに思うわけですね。  その提供機能を強化していく必要があると思うわけでありますが、今後職業安定所として具体的にどのような形で国民にそうした情報提供していくかというところを聞かせていただきたいと思います。お願いいたします。
  14. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 求職者やあるいは失業者の方がまず手に入れたいと思われる、そういったものは、就職に関する、求人に関する正確な情報であろうというふうに思います。その情報も、さらに探せばまだいろいろな情報があるのではないかというふうなことで、求職者の方がいろいろと歩き回らなきゃいけない、こういったことではとてもなかなか就職活動はできないわけで、できれば一カ所ですべての欲しい情報は正確に手に入る、迅速に手に入る、こういった体制整備することが大変重要なことであるというふうに考えます。  今いろいろと求人情報誌がありますが、求人情報誌に寄せられる求人情報だけでも年間二百五十万件ぐらいあるそうでありますし、公共職業安定所求人情報年間五百万件ぐらいあるわけであります。  それらの情報が、例えば実際の労働条件を正確にあらわしているとか、そういったことで、正確なものである、あるいは迅速に手に入る、こういった体制整備をすることが極めて重要であると思います。求人情報誌の業界でも自己チェックをいろいろとそういった面について努力をしておられるようでありますし、安定所ももちろんそうした努力をしておるわけでありますが、今般の職業安定法改正案におきましても、情報提供というものを公共職業安定所の行う業務として法令明確化しておる、こういった措置を盛り込んでおります。  公共職業安定所情報について申しますと、昨今いろいろとその改善策を講じてきておりますが、例えば公共職業安定所タッチパネル方式自己検索装置導入するというふうなこともやっております。新宿の安定所にはこれが百五十台ぐらいあって、来所された方が自分情報検索ができるようになっておりますし、あるいは今年度からハローワーク情報プラザという、これも自己検索装置ですが、これを全国の少なくとも県庁所在地には展開をするというふうなことで計画をしておりますし、それから試行的に、東京都の区部求人情報検索できるということで、家庭のパソコンを使いましてインターネットによってある程度求人情報検索をすることができる、こういったことも始めたわけであります。  いずれにしましても、公共、民間を通じて情報の正確、的確な提供ということが大変重要であると思いますので、さらに体制整備に努めていく必要があろうかというふうに思います。
  15. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  今局長おっしゃいましたように、家庭にいてもインターネットを通して、動いていかなくてもさまざまな情報が見えるというふうな形がこれからは求められてくるのじゃないかというふうに思うわけですね。安定所まで足を運ばなくてもその情報がネットを探して見ていけるという形をぜひ広めていただきたいと思っています。  次に、今問題になっております派遣法の問題でありますけれども、国会の周辺には反対反対という声が大変大きく流れているわけですが、果たして反対反対と言っている皆様方がどのように理解しているかということであるわけであります。初めて導入をします、初めてといいますか、今までだったら十一種から二十六種という業務限定方式から、いよいよ新たに期間限定方式へという新しい試みで始まるわけであります。  日本でこのような期間限定方式というのを初めてやるわけであって、だれしも不安も伴うとは思うわけですが、既に諸外国ではこの問題について導入をされているわけでありますので、その他の調査労働省としてはなさっていらっしゃると思います。その実態日本と合わせて見て、いいようなといいますか、発展途上国でなくて、いわゆる先進国でこうした形でやっている国の状況がわかれば教えていただきたいと思うわけであります。
  16. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 余り広範に調べておるというわけではありませんが、英、米、独、仏について調査をしております。  常用代替の防止に係ります諸外国制度でございますけれども、何らかの規制を設けている国、あるいは何ら規制を設けていない国というふうにございます。  具体的に申しますと、同一の労働者に係る派遣期間制限として、ドイツにおきましては十二カ月、フランスにおきましては十八カ月の期間制限制度が設けられております。また、期間制限ではありませんが、労働者派遣を行うことができる事由によって制限するというものもあります。例えばフランスにおきましては、労働者が欠勤中である場合、あるいは一時的な業務の増大に対応する場合、こういったときに派遣を認めるというふうなことで制限をしている例もあります。  それから、派遣期間制限がある場合、その制限に違反したときの措置ですけれども、民事制裁として、フランスドイツにおきましては、いわゆるみなし雇用制度が設けられております。  これに対しまして、アメリカ合衆国あるいはイギリス、こういった国におきましては、一切期間等に関する制限は設けられておりません。ただ実際上は、イギリスやアメリカにおきましても、派遣期間は一カ月ないし二カ月という短期のものであるというのが実態のようであります。
  17. 能勢和子

    能勢委員 日本の場合も許可制届け出制でなく許可制でありますし、期間限定による常用雇用代替も防ぐことができるという形になっておるわけであって、私は、これは労働者雇用主の方にとってみても、両方にとって、うまくこれを活用すれば、選択肢がふえてきているわけですので、労働者にとっても、決して必ずしもああした反対でなくて、うまくこれを使うことができるんじゃないかというふうに思っているわけであります。  そしてさらに、私はこのたびお尋ねしたいと思ったのは、当時、ジョブサーチ型の派遣というのが出ておりました。労働者がみずからの希望自分能力に合った職業選択のために有効的な手段というふうに思うわけでありますけれども、我が国におきましては、労働者派遣法制定時以来、こうした派遣を禁止のまま放置といいますか、そのままになってきているわけでありますけれども、このジョブサーチ型の派遣について労働省はどのようにお考えで、今後どのように取り組み考えていらっしゃるのか、聞かせていただきたいと思うんです。
  18. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 このジョブサーチ型あるいは職業紹介を目的とする労働者派遣というものについては、派遣制度発足以来、法令上の根拠はないんですけれども、運用としてそういったものは認めないというふうにしております。  これは、派遣法制定されるときに、雇用主責任事業主責任明確化ということでいろいろと議論がありました。仮に派遣事業主職業紹介もあわせて行うというふうなことになりますと、雇用責任の所在というものが大変不明確になるのではないか、こういった議論制定当時随分あったようでありまして、そういったところから、派遣元についての使用者責任を明確にするという意味合いを込めまして、派遣事業主紹介的派遣を行う、ジョブサーチ型派遣を行うということは、運用において禁止するというふうなことで今日まで来ているわけであります。  この点につきましては、この派遣法審議をいただいた審議会におきましてもいろいろと議論が出ました。派遣労働者常用化を進める上でもこういったジョブサーチ型派遣というのは効果があるのではないかという議論もありますし、一方では、まだまだ派遣労働者の保護というものは不十分なので、これを認めるかどうか慎重に検討しなければいけない、いろいろな議論が出されておりまして、いずれにいたしましても、そういった議論あるいはこの国会におきます議論を踏まえながら、法の制定後にそういったものを認めていくのかどうか、さらに検討を進めていきたいと思います。
  19. 能勢和子

    能勢委員 これは意見でありますが、私も労働委員会派遣事業者のところへ見学に行かせてもらったりしながら情報を得る中で、労働者派遣常用雇用代替でなくて常用雇用の拡大に向けて有効に活用すれば、むしろジョブサーチ型の派遣を積極的に認めていく必要があるのではないかというふうに考えているわけですね。  そういう意味で、早期にこれを自由化させて前向きに取り組んでいくという形の方が、派遣法で行かせてもらってそこできちっとした自分自己実現の場が与えられ、しかも雇用主とのきちっとした形ができれば、私は、これは問題なく、むしろ働く側にとってみても利益が得るのではないかなと。いわゆる自分能力を発揮できる、自分も納得してそこでやれるということを、ぜひ今後、自由化に向けてということよりも、私も自由化に向けてという表現を使いましたけれども、労働委員会で十分審議する中で、こうした形も積極的に取り組んでいく形を提言したいと思っています。よろしくお願いしたいと思います。  その辺、現状は聞かせていただきましたけれども、過去の経過は聞かせていただきましたけれども、局長としてどのようにお考えでございましょうか。
  20. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 この点は、昨日の参考人質疑の中でもいろいろと議論がありました。  諸外国ではむしろ派遣から常用労働に移行する例が多いというふうなことについていろいろと質疑があったというふうに承知をしておりますが、今委員指摘のような点も踏まえて、運用の問題として今までやってきておりますので、この派遣法制定以来の情勢の変化、そういったことも考えながら検討させていただきたいと思います。
  21. 能勢和子

    能勢委員 私も、東京都の派遣主ですか、派遣業者主というんですか、あそこに見学に行かせてもらったときに、能力を持つ人がそこで期間内の派遣労働をする、それだけで終わってしまうということを非常に残念に思ったわけですね。自己責任、自分の責任においてそことの話し合いで進めていくという形は、決して労働者を無視した形ではありませんし、むしろ自己実現できる最高のチャンスだろうと。そこを認めていって、納得してそことの形ということは、狭い意味かもわかりませんけれども、そんな形は今後、もちろん自己責任ということは伴ってきていいと思いますけれども、ぜひ検討する場をこの場でも、委員長、つくっていただきたいというふうに思います。  最後に、この労働者派遣を初め労働力の需給調整システムが十分に機能しなければ、雇用の創出対策などということについてうまくいかないのではないかと思います。そういう意味で、労働力の需給調整システムを本当に適正かつ円滑に運営していくことは、引き続き政府の大きな仕事だろうというふうに思うわけであります。今の雇用状況あるいは新卒者の状況を見ましたときも、労働の問題について政府が労働市場の隅々まで目を配り、漏れなく適切な労働力需給調整ができることを私は望むわけでありますけれども、今幾つかの質問をさせていただく中で、労働大臣も聞いてくださいましたけれども、自己責任と、企業主あるいは雇用主との労働力の調整というのは大変大事になってくるわけですが、政府としても最終的には、全部任せますよというんじゃなくて、政府としてもこれらを、責任を持たせながら、きちっと目配りしながら、うまくいっているかというチェック機能といいますかはやはり労働省にあるであろうと思うわけであります。  最後に、労働大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  22. 甘利明

    ○甘利国務大臣 先生よく御承知のとおり、今の雇用失業情勢は大変厳しい状況を迎えておりまして、先月の失業率が四・八%であります。もちろん景気が底を打って回復に向かう時期にはタイムラグがありますから、底を打った時点から、過去の経験から申し上げますと半年後が一番厳しい失業率が出るということでありますし、そういう意味では、先般経企庁長官が底打ち宣言をされましたから、今の厳しさ、あるいはこれから迎え行く厳しさというのは希望に向かった厳しさということは、国民皆さんにぜひ承知をしていただきたいと思っているところであります。  そして、四・八%の中身、先ほどから御指摘もいただいているわけでありますけれども、需要不足が一・四、五%、そして残りが各種ミスマッチであります。各種ミスマッチを解消していくということに今回の法改正は資するのではないかというふうに思っておりますし、企業も、同じ仕事を、同じ業種を五十年も百年もやって存続し得るはずがないのでありまして、言ってみれば、耐用年数が来てしまった事業分野、企業から、これからを支えていく企業に経営資源がスムーズに移動していくということが、全体として雇用を守っていくことにとって非常に大事であります。  もちろんその中には、働く人たちが権利を侵害されないようにルールをきちっと決めていく、そういう点での目配り、気配りをしっかり果たしていくということも同時に大事なことでありますし、官民相まって需給調整システムをちゃんと機能させていく、その中で、働く人たちの権利をしっかりと守るためのルールづくりをしていくということが大事であろうと思っております。先生御指摘のとおり、この両法案が、そういった点で、産業形態が変わっていく中でしっかりと雇用を確保していくということに資するものであるというふうに理解をしております。
  23. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  今の四・八%という数字でありますけれども、データを見てみますと、何かデータの出し方が、過去ずっとそうだったそうでありますけれども、いわゆる定年退職して家庭でゆっくりしようという方の数もその四・八の中に入っているんですね。だから、実質が四・八まであるかどうかという問題は、四・八ないのかもしれない。まず四・八以下であるわけですよね、定年満期した人もいわゆる失業者の中へ入っているわけでありますから。このデータの出し方について今後検討が要るんじゃないかというふうに思うわけであります。  ただ、新規卒業者についてはまさに職を求めている人でありましょうけれども、現在言われております、四・八、四・八と大変マスコミも大きく取り上げますけれども、この数は本当の失業者の数じゃないんじゃないかなというふうに思うわけであります。その辺のデータの仕方が、過去ずっとそれで来ているということでありますからやむを得ないのかもわかりませんけれども、何かの資料でそれを読ませてもらって、あら、これでいいのかなというような感じもしておりますが、私の質問については以上で終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  24. 岩田順介

    岩田委員長 荒井広幸君。
  25. 荒井広幸

    ○荒井委員 大臣初め皆様、おはようございます。ただいまの能勢先生のお話、二点ほど、私も引き続いて大臣に御見解をいただきたいと思います。  まず、大臣、最後に能勢議員への答弁の中で、いつもの、そして今までの大臣のお取り組みの姿勢というものを伺ったわけでございますが、言ってみれば、守る雇用から攻める雇用というのでしょうか、そういうものを大臣は明確に目指しておられるということを大変私は学んでおるわけでございます。  その中で、やはり一つは、産業構造自体としても日本の産業の国際競争力をつけていかなきゃならない。またそのために、今言われている供給構造を変えようとか、また非常に高コスト構造になっている、これも変えよう、こういうことでの国際競争力の強化。それからまた、将来にわたっても、産官学の共同研究をやったり、それから環境とかバイオとか新素材、そういうところで新しいリーディング産業をつくったり、ベンチャービジネスのインフラを強化して新事業を創出するような、そういうこともやっていこう。これは、大臣がいろいろなところで言われている、通産の方も御専門でございますから言っておられるわけです。また、産業の技術力、こういった強化をしようということでいろいろお取り組みをいただいて、そういうものを含めて労働行政をお考えいただいているわけです。  まさにこういうときには、非常にみんな不安になっています。雇用を守るという表現よりも、守る雇用というような言い方で言うならば、攻める雇用、つくる雇用、こういうことの大臣の視点、労働省の視点というのはもっと浸透すれば力強いな、こういうふうに考えていくものだというふうに私は思います。  しかし、そこにあっても、やはり働く現場の方々の不安とか懸念、そういったものについては、目配り、気配り、思いやり、三つのリと私は言っているんです、目配り、気配り、思いやり、こういうものが必要だと思うんです。新しく職につく方ということも大切だと思うんですが、雇用の確保、労働移動の円滑化、これは絶対にやっていかなければ、産業構造、そして新しい産業をつくろう、こう言っても国民に支持されないと私は思うんです。ある程度の痛みは当然必要なんですが、そういう三つのリ、思いやり、目配り、気配り、こういったことは非常に大切なんだろうというふうに思います。  そこで、これまでの議論の中で、余り言われていないもので重要だなというふうに私は思うんですけれども、実は労働省の九年度の調査にあるんです。集計事業所数が一般五十、そのうち派遣実績のあった事業所七というふうに数字が出ているものがあります。これは、実は育児・介護休業特例労働者派遣事業の実績なんです。実はもう既に、育児休業については今議論をしているような形でしっかりやってくれというので、特例、こういう形でやっておるわけなんですが、余り利用されていないという状況があるんです。  そこで、今度の改正派遣法は、まさに労働需給調整の機能を強化して、労働力需給のミスマッチ、先ほどもございました三・三%、この点についても非常に効果があるという大臣の御見解は私もそのとおりなんですが、それが強調され過ぎるのではなくて、むしろ育児休業、介護休業をとりたい方がとれるということ、これはまさに現場で働く人の福音なんですから、私はもっと徹底していただきたい。そして、それはそこへ派遣される人にとってもまたいい機会であるし、派遣先もまた助かるわけでございますから、どうぞおとりくださいということにもなっていかなきゃいけない。三方一両得だというふうに私は思います。  そういう意味で、今度の改正によりまして、育児、介護、これは今までも特例がありましたけれども、徹底をしていかないと、結果的には男女共同が実現できない。それができないと少子化が、この少子化が実は産業構造のみならず日本全体の問題です、構造問題になっています。こういうことですから、この少子化対策も大きく、今度の改正がさらに理解への弾みとなって進むのではないか、こういうふうに私は思うわけです。  それで、きょう議員御出席でございますけれども、超党派で少子化社会対策議員連盟というものをつくっております。二百五十数名でございます。それで、法案ができ上がりました。自民党だけが党内手続がちょっとおくれておりますが、各党とも党内手続を終えました。それは、実はきのう大臣が、月内にも総理のもとでの少子化対策の閣僚会議、それから国民会議をつくるということがありましたが、既に私たちも同じような視点でこれを法案化しよう、議員立法だ、こういうことでやっておるわけでございます。私も、お手伝い役の事務局長ということで皆様の御指導をいただいておるわけでございますが、そういう意味でも、今回は非常に弾みになるんです。  育児休業、介護休業、そういう中で男女が共同していけるんだ、自己実現の場がふえるんだ、そういうものをどんどんとやっていただかなきゃならないんですが、今回、一年ということで派遣規定が特例化されているんです。しかし、特に育児休業については、法定の一年のみならず、企業がもっとどうぞというふうな休業の付与をする場合も出てくるわけですね。そういうときに広く派遣が活用できるようにしていくことが必要なんではないかというのが一つ。それからもう一つは、育児・介護休業をとれるんだ、とっても大丈夫だよ、三方一両得なんですから。そういう促進する、周知する一つの仕掛け、こういったことも必要なのではないのかなと私は考えておるわけでございます。  大臣、このあたりの、介護、育児に非常に効果がある、つまりは男女共同、そして少子化、そして派遣先もお休みをとりたい人も派遣される方も三方一両得だ、こういう視点を持っているんですが、いかがでございましょうか。
  26. 甘利明

    ○甘利国務大臣 荒井先生が中心的な人物の一人として少子化対策の議連をおつくりになって、政策を組み立て、そして議連として提言をされるという動きにつきましてはよく承知をいたしておりまして、これは労働省としても大変に心強い応援だというふうに思っております。  育児休業制度というのは、女性の社会参加と少子化対策、ともすれば二律背反の要素をちゃんと両方とも満たしていくために大変に重要な仕組みであると思いますし、その仕組みの中で派遣というものが有効に使われていく。これは、休みをとる方も安心してとれますし、終わった後ちゃんと職場復帰が保障されるということにもなりますし、企業側もあいた穴をきちっとその期間埋めていくということで、有効なシステムだというふうに思っております。  ただ、もう既に御指摘をいただいていると思いますけれども、育児休業というのは産前の休暇の後にとられるものでありますから、そこの点の不備がいろいろとまだ御指摘をされているわけでありまして、もちろん先生もそういうお気持ちを持って取り組んでいらっしゃると思いますが、この点についても今後前向きに取り組んでいきたいというふうに考えております。
  27. 荒井広幸

    ○荒井委員 常に大臣がいろいろな意味でこうして御発言をいただきますことも周知徹底ということになりますし、また、今御指摘いただいたような非常な課題も残っているんですが、議連の先生方の御意見のほとんどが、やはり具体的な諸施策の筆頭に挙げるのは、雇用環境の整備なんだ。やはり、産めよふやせよではない。御結婚したいのも御自由、そして産むも産まないも自由な意思の中で、産みたいんだが産む妨げがある、実はそういう方々が非常に多い。その方々の要望は、雇用環境の整備なんです。ですから、議連では、法案では冒頭にそれを持ってきている。そして、その次に来ているのが、今政府も取り組みをいただいていますけれども、保育環境の整備なんです。ですから、労働省役割というのは非常に大きいということが言えると思いますので、引き続き、大臣初め労働省皆様方が、今度の新しい省庁になっても、ますますこの役割は非常に大きいと思うんです。  もう一方で、今までも議論に出ました、この法案に戻りますが、苦情がやはりそれなりに出てくるんですね。今までの二者の関係から三者関係ですから。気分的な問題もあって、非常に苦情も出ています。  労働省の去年の調査で、これは四一%程度の方が業務の内容、それから三一%の方が上司、同僚との人間関係、そして三一%が時間外労働、休日労働、そういう苦情があった、こういうことなんです。  三者関係ですから表にも出やすいということがありますから、少し声高に聞こえている面があるかもしれませんけれども、ずっと議論にあるように、苦情処理の体制というものは、やはり当事者の自主的解決というのは難しい場合がこれはあると思います。これを公に解決する、そういう役割も、労働省、非常に大切なわけでございますが、より派遣労働者皆さんの保護を図る観点において、苦情処理体制、不安を払拭するという意味でも、改めて労働省に、この体制についてお伺いいたします。
  28. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣労働につきましては、今おっしゃいましたように、三者関係の特色から生じる苦情の処理の問題というものが相当大きな問題になってきているわけでありまして、この派遣法は、法律制定当初、あるいは平成八年の改正のときにおきましても、苦情の処理ということに相当の体制整備を図っているわけであります。  具体的には、派遣先と派遣元が連携をして苦情の処理に当たるべきであるというふうな規定、あるいは派遣元派遣先の責任者がこの処理に当たるというようなこととか、それぞれの管理台帳に、苦情の処理について、これを必要的記載事項とする、こういった措置が現在もとられているわけであります。  さらに、今回の改正におきましても、この苦情の処理体制整備ということを充実するというふうな観点から、まず、公共職業安定所派遣労働者の苦情や相談に応じまして助言や援助を行う、こういったことを安定所の任務というふうにいたしておりますし、さらに、現在、事実上設置しておるわけですが、労働者派遣に関しまして、労使の協力を得まして、労働者派遣事業適正運営協力員という方を置いておるわけですが、その方の役割法律上明記するということにしております。  さらに、派遣法等の違法事案がありました場合には、労働大臣に対して派遣労働者が申告をできる。さらに申告をしたことを理由として差別的扱いをしてはいけないというふうな制度を設けておりまして、苦情の処理につきましては、今般の改正によって、さらにその措置充実したいということにしているわけでございます。
  29. 荒井広幸

    ○荒井委員 その点評価をいたします。それは、あわせてプライバシー、こういったものの関連にもなりますので、ここは非常に不安を持つ人がいるので、しっかりお願いしたいと思うんです。  大臣の一連のお話の中に、私も非常に頭の中に残るんですが、選択肢という言葉がございまして、私は、その視点から、非常に今回の改正というものは重要であるということで評価をしているんです。  それは、やはり働くというのは楽しいことばかりでは当然ありませんけれども、自分を実現していく、先ほど能勢議員からもありましたけれども、新しい、あるいはいろいろな労働形態を積極的に認めていくんだ、認めていくからこそ、さまざまな、働く側の一人一人の方に満たす選択ができる機会があるんだし、雇う側の方にとっても、まさに労働者の方にいろいろな選択を広げつつ、自分のところにふさわしい方に入っていただきたいし、そこで大いに能力を発揮していただきたい、こういうふうになるわけでございますので、私は、今度の改正のキーワードの一つは選択肢、それを広げるんだということだと思うんです。  そういう意味では、例えば派遣で生きていきたいという人も、調査しますと当然いるんですね。そういう働き方に魅力を感じる人がいる。それから同時に、長期雇用、終身雇用というのは日本型だ、私はこれは非常にいい美徳だと思うんですが、競争社会になってなかなか難しい。海外との摩擦、いろいろあるということですが、あえてうちの会社は終身雇用だ、長期雇用いたしますから安心して入ってくれ、その中で落ちついて、しかしお互いにいい成績を残そうね、自己実現のいい成績もあれば効率のいい成績もある。こういうようなものを売りにして人材獲得、そして企業経営戦略ということをやっていく終身雇用の会社というのも、選択肢の一つですから、そういうことが出てくる。こういうことで、私は、広い意味で、これから、そして中期的にわたっても労働市場が安定してくるんではないかなというふうに期待をするんです。  もう一つ、そういう中でいいますと、SOHO、ちょっと私も具体的にわからないのでつけ焼き刃的にいろいろ見てまいりますと、情報通信が非常に発達した、会社の中にいなくても、会社に所属しながら、情報通信回線、インターネットなどを通じてパソコンで御自宅からあるいは分社でやる。それから、自分で一念発起で起業をして、自分でパソコン、コンピューター、情報通信、いろいろなものを使いながらやる、それで生計を成り立たせている。アメリカの発展の原動力は金融ビジネスとこの情報通信ビジネスであった、こういうふうにも言われているわけでございます、大臣がお詳しい分野でございますが。  そうすると、今度は一人事業者といいますか、SOHO、企業家が生まれてまいります。しかし、そういう人たちにお話をお聞かせいただきますと、共通して今悩みがあるんですね。自分で会社とやりとりしなくちゃいけないということで非常に負担がかかってくる。だから、知っている人たちで、同じような仕事をやっている人たちで連携しませんかという話になってくるんです。  特に、今までは企業側がどちらかというと福利厚生、健康管理をやっていました。企業側がやった。今度は自分でやらなくちゃいけないということで非常に負担が重いので、一緒に団体保険に入ると掛金も安くなるんです。これはお互いに得ですね、共済制度考えましょうやということで、個々になってきた人が、自分のやりたいようにやりながら、しかし同じ悩みでつながっていこう、そういう考えをしているわけです。  そうなりますと、私は、労政局が今度労働省になくなるというのは非常に不安を覚えるんです。今までの歴史的に考えましても、組合の皆さんと使用者の皆さんとの間の意見を調整したり、そういう役割をやった。そして、選択肢が広がっていろいろな就業形態がある、産業形態も変わってきた、その中で、個々として仕事をする人もふえてきたが、福利厚生を中心に一緒にやれるものはやろう、そうなったら、今度は新しい集団化というのが出てまいります。組合に近い組合かもしれません。私は、各連合を初め皆さんにも頑張っていただきたいと思いますが、そういう集まった声を拾うためにも、労政局がなくなるというのは非常に不安なんです。  この点、果たしてそういう役割をしっかりしていけるのかどうか、ここをお尋ねしたいと思います。
  30. 澤田陽太郎

    ○澤田政府委員 中央省庁再編後の厚生労働省におきましては、現在の労政局が担っておりますような行政機能を担当する局は設置されることにはなっておりませんが、先生御指摘のように、現在労政局が担っております、政府を代表して労使間の意見調整を行うなどの労使関係に関係します行政機能、これは、引き続き重要なものと考えております。したがいまして、厚生労働省設置法案におきましても、現在の労政局の役割に対応する所掌事務は明記されているところでありまして、これは、私が申し上げたような考え方が明らかになっているものと考えております。  また、今先生が御指摘なされましたように、労使関係の変化あるいは就業形態の変化する中で、労使関係そのものも変化してまいりますし、労働者の集団的な活動のあり方もまた変化してまいります。こうした中でいろいろ新しい課題も出てまいりますので、そうしたものに適切に対応するようなことが必要であるというのは、先生御指摘のとおりでございます。  したがいまして、厚生労働省設置後におきましても、労使関係にかかわります行政機能を適切に発揮し得るような体制が必要だというふうに私ども考えておりまして、現在、厚生労働大臣が労使団体と適切に意見調整をするとか、労使関係にかかわる行政機能が適切に発揮させられるような体制整備いたしたいということで、中央省庁等改革推進本部と調整を行っているところでございます。
  31. 荒井広幸

    ○荒井委員 いろいろお取り組みいただいて、これからも積極的に位置づけをしっかりしていくということですので、どうぞ大臣、新しい形態がやはり出てまいりますので、そういう意味で、新しい集団、新しい意見というのが出ますので、この点、お気を配っていただいて、思いやりのある形にしていただきたいと思います。  また、ある意味で一人事業者を含めまして、SOHO、小さい会社ですが、その支援策、これもあわせて、労働、働くという意味からもいろいろ考えていただくと非常にありがたいなというふうに思っているわけです。  あと十分になりましたので、大臣にお尋ねをさせていただきたいのです。  先ほど能勢議員からもございました。大臣が、いわゆる消費マインド、マインドということは非常に大切なのだという御指摘がございまして、そのとおりだな、そういうふうに思っています。それが景気回復の妨げでございます。私も、労働委員会に所属させていただきますまでは認識不足でした。完全失業者というふうにいいますので、完全失業者といったら、普通、恐らくこれは、中学生ぐらいの方に聞いていただいたら、会社を首になったか、新しいところに行きたいけれども失敗しているといいますか、そういうイメージですよ、これは。  ところが、常に発表する総務庁、これは政府発表という形をとるのでしょうか、そうすると、さあ四・八%になったというわけです。ところが、中身をお互いによく私は勉強させていただきました。  非自発的ですから、言ってみれば首になった人みたいな話でいえば、定年の方が三十万いるわけでございますから、その方を含めて九十六万人がというようなことを言うと、これは倒産か解雇かなと思ったら、倒産と解雇というのは七十万なのです、こうあるのですね。こういう、やはり実態を正しく映していないというところが非常にマインドを冷やして、景気、ひいては雇用の足かせになっていると私は思うのです。  今度は、自発的離職者というのですね、自発的離職です。離職者ですから職を離れる、こういう方が百十三万人いるのですけれども、自分または家族の都合というのです、この方々は二九%。ほかにやりたい仕事があったからという人が一八%いるのですね。そういう人たちが百十三万人なのです。聞いてみると、ああいろいろいるのだな、いろいろな方がいらっしゃるな、大変だな、また頑張れる方もいるのだな、こういうふうに見ていくと思うのですね。  それから、奥さんを含めまして、お父さんちょっと大変だから、私も子離れしたから働こうかしら、あるいは私も一生懸命働いてみようという女性の方、そういう方を含めると、そういう方々は、その他の者というので八十万人いるというのです。  そういうことを考えると、やはり実態をもう少し国民皆さんにわかりやすく申し上げないと、今後完全失業率が四・八が四・六になった、あるいは幾つに上がるかはこれからでございますけれども、何か、完全失業者、完全失業率、いかがなものかなと思います。例えば求職者と言う方がよほど実態をあらわしているのではないでしょうか。  そういう意味で、より実態をあらわす用語に変える必要がある、あるいはそういう発表の仕方が必要だと思いますが、大臣、これは小さくて大きな問題だと思います。いかがでございますか。
  32. 甘利明

    ○甘利国務大臣 荒井先生御指摘のような話が、実は閣議の懇談会の席上でもかつて出たことがありまして、失業率何%というと、一般的に受けるイメージは、首になってしまった人がこんなに出たのかねというイメージがある。中身を分析してみれば、自分の意思に反して失職してしまった人の比率が三分の一弱ぐらい。それから自分の意思によってやめてしまった人が三分の一強。残りが、新規参入者といいますか、そういう方々。そうすると、数字と世の中に与えるイメージが一致していないのじゃないのかという議論が実はあったのであります。  そしてまた、日本は、失業率のことを過去にはそんなに気にしなくていい経済でありました。常に三%を切っておりましたし、自分自分の意に反して失業するなんて思っている人はほとんどいないで済んだ経済状態でありましたから、意に反して失業するということの衝撃度合いがよその国よりも大きいのでありまして、それが、景気に与える、つまり消費の停滞を通じて景気のマイナス効果も大きいから、もうちょっと失業のイメージと中身を一致させた方がいいのじゃないかという話は実はあったのであります。  ただ、例えば国際用語でいいますと、英語での統一用語は、失業者というとアンエンプロイドパーソンということで統一をされております。  そして、求職者というのは非常に前向きな言葉だと私も思います。思うのでありますが、実は、求職者、職安を今訪れている人のうちの二割というのは在職者が来ていまして、うちの会社は大丈夫か、不安だなと思うから来られるのでありましょうし、あるいは、今よりももっと自分能力を生かせるのはないだろうかという気持ちで来られる人もいて、実は失業していないけれども求職している人はいらっしゃるのであります。でありますから、そういうこと等を考えますと、なかなか失業者という言葉以外の言葉を使いづらい。  ただし、御指摘のようなことがありますから、失業者の非常に暗いイメージをもっと明るくしていく必要があるわけですね。それは、今御審議をいただいております法案を初めいろいろなチャンネルをつくるということと、それから、新しい仕事に挑戦できるようなチャンネルとシステム、そこに能力開発を適宜適切に組み合わせる。これは、系統的にやるのもあれば、自分で在職中に、自己研さんといいますか、そういう方法でやる方法も用意する。もう既にしてありますけれども。  いろいろなやり方を世の中に設定をすることによって、自分の意思で移動する人もちゃんといるのですよということを世の中に知らしめて、しかも不本意な失業期間を極力短くする。その間の生活は最低限ちゃんと保障できるというようなシステムをきちっと引き続き整備することによって、失業のイメージをもっと変えていった方がいいのかなとか、それによって対応していくべきだというふうに思っております。
  33. 荒井広幸

    ○荒井委員 失業のイメージというところは、ちょっと考えつきませんでした。大臣の御視点、ぜひ進めていただきたいと思います。  そして、結びになりますけれども、時間がなくなりましたので、最後に大臣の決意、意気込みをお聞かせいただきたいのです。  考えてみれば、失業している皆さんには申しわけありません、何とか職についていただけるように全力を尽くす、その上で、私は、これは学歴偏重社会を変える千載一遇のチャンスだと。子供たちが試験でいい成績をとったらば、いい会社に入って、一生、終身雇用で安泰だ。ところが、今、大学卒で、入社試験で会社に残しているなんということはありません。私の知っている会社は、求人するときに、二日間でこの物を売ってきてくれと。売ってきてもらうことによってその評価をします。そこは営業の会社なんです。  そうなりますと、大学入試、いろいろ騒ぎましたが、結果的には出口の問題だった。聞こえもいい、見ばえもいい、そういう企業に行くために歩んできたというところはやはり否定できない面があった。その意味では、今、千載一遇の選択肢が子供たちにも来たのです。自分能力を磨く、そして自分の適性でいろいろな会社を自分が選べるんだという時代にも来た。企業自体がそういう人を望むんですから。  そういう意味で、大臣が今度の小渕内閣の中核として、雇用、これをしっかりせよという指示のもとで、大臣、労働省が先頭を切っておるわけです。これからは雇用だと言われているわけです。その目玉を五月までにまとめるということですが、どうぞ、ペーパー教育から、一人一人の能力をやはり開発する、発揮させていく、そういうようなものを含めた構造改革につながる大胆な雇用対策を私は打ち出すべきだと。  そうすると、子供たちの非行も恐らく少なくなっていくでしょう、伸び伸びと子供たちが成長していく。そこにまで労働大臣初め労働省が今入ろうとしている、入らなければできなくなった世の中になってきたんだ、こういうことだと私は思いますので、演説になってしまいましたが、大臣の御決意をお聞かせいただきます。
  34. 甘利明

    ○甘利国務大臣 まさに御指摘のとおりだと思います。  今までの個人の評価というのは、ペーパー試験等で総合点が高い人が優秀であるという評価を与えられました。もちろん、そういう人たちには本当に優秀な人はいっぱいおられるわけでありますけれども、ある部分については非常に特異な能力を持っているけれども総合点ではどうもいい点がとれない、そういう人たちが比較的世の中に評価をされていなかったわけであります。  しかし今は、委員指摘のとおり、企業が求めるのが、特定なスキル、技術力、特定な分野の能力がある人という、その能力を指名して人を求めてきます。ということは、自分は総合点はとれないけれどもこの分野ではおれは絶対負けないぞという人が評価される仕組みが加味されてくるということでありまして、今のアメリカでの新産業を見ていますと、恐らく学業成績、総合点では平均点以下か落第生の人が世界企業を創業したりするのでありまして、それは、そういうところの能力に秀でている者が世の中で成功できるいろいろなチャンスがあるということだと思いますし、そういう方向に向かっているし、現在の法整備その他、それに資するものだと思っております。
  35. 荒井広幸

    ○荒井委員 ありがとうございました。
  36. 岩田順介

    岩田委員長 川端達夫君。
  37. 川端達夫

    ○川端委員 大臣、よろしくお願いをいたします。  今、荒井委員の質問を一生懸命聞いておったんですが、失業にもいろいろあるというのはおっしゃるとおりでありますし、雇用形態の中で求職者の意識も実態も随分変わってきていることは確かなんですが、ちょっと気になりましたので、確認だけ、大臣の認識をお伺いしておきたいと思うんです。失業者のイメージということにお触れになりまして、おっしゃることはそうだと思うんです。ただ、今の実態の認識としてだけ確認をさせていただきたいんです。  失業率が上がっているけれども中身はいろいろある、それはおっしゃるとおりです。しかし、やはり一番ベースになるのは、失業率と同時に有効求人倍率だと思うんです。有効求人倍率が物すごく悪いということは、やはり職を求めていて職がないという部分の実態ということだと思うんですね。  地元でウイークデーに、めったにウイークデーにおらないんですが連休前でおりまして、走っておりましたら、何でもない道が非常に渋滞をしている。何か事故でもあったのかなと言いながら、この先税務署だから、いや、税金の申告は終わったのにと言いながら通り過ぎたら、実は税務署の隣が職安なんですよ、大津市は。車で来ている失業者という言い方もまたそれは言えばあるのかもしれませんが、要するに、職安の前が大渋滞を起こし、人が殺到しているわけですね、それも若い人が多くて。ちょっと気になったのでおりてみたんですが、本当に若い人が真剣というか必死のまなざしでいるという実態を見まして、やはり現実に事態は本当に深刻である。  ですから、いろいろな数字の見方をし、イメージアップをするということも大事なことだと思いますけれども、事態は、相当ではなくて本当に深刻であるというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。     〔委員長退席、石橋委員長代理着席〕
  38. 甘利明

    ○甘利国務大臣 事態はかつてないほど深刻だと思います。それは先生と同じ考え方であります。そして総理も、閣議や競争力会議の席上で、これからは雇用だということをおっしゃっておられます。  雇用の安定というのは、単に労働者に生活の保障ができるということではなくて、それを通じて、社会の安定要因、治安の維持にもつながっているわけでありますから、失業率が上がってくるに従って社会不安が起きてくる。そうすると、社会の安定維持のために新しい財政支出が別な分野で必要となるということになってくるわけでありますから、雇用の安定というのは、いろいろな意味日本社会全体の安定につながるわけであります。それが、今は四・八%というかつて経験をしたことのない数字であります。  委員も御指摘のとおり、有効求人倍率が物すごく高くて、つまり一以上あって失業率が高いというのであるならば、それはもう本人の意思だよということになるのでありますけれども、有効求人倍率が実質〇・五を切っている、つまり二人に一つの職以下しかないということは、深刻な状況だというふうにとらえております。  ただ、私が申し上げておりますのは、政府は、それが深刻だということをよく正面からとらえています、そして、前向きに取り組んでいるという姿勢を国民皆さんは理解をしていただきたい。つまり、深刻であるということと同時に下を向いちゃったままだということだともっと実は深刻なのでありますが、深刻であるということを正面からとらえて、前を向いて、この深刻さを何としても打開していくんだということを総理以下が取り組んでいるということは国民皆さん信頼をしていただきたい。その信頼感を通じて、必要以上の不安感をあおることがないようにしたいというふうに思っておりまして、それに見合った不安感は当然、起こすなと言う方が無理なのでありますが、それに倍するような不必要な不安感をあおるようなことにならないようにどうしたらいいだろうかということを非常に注意をしているつもりでございます。
  39. 川端達夫

    ○川端委員 ありがとうございました。私は、失業率が高いけれども、実は大したことないんだ、マインドに影響するからということは言うべきでなくて、大変である、大変であるからこそ、かくかくしかじかの手をきちっととるから大丈夫なんだと言うのが基本だというふうに思いますし、大臣もその御趣旨でお答えいただいたので、安心をいたしました。  数年前までは、間もなく二十一世紀が来るというと、二十一世紀という新世紀はバラ色みたいなイメージとして語られたはずなのが、目前にして、二十一世紀と言われても、先の見えない真っ暗のという言葉に何かなってしまった今の日本という感じがいたします。  時代の、経済だけではなくて社会も含め全部が非常に大きな転換期であるということをよく言われます。きのう頑張ったからきょうがある、頑張ってよかったなと。しかし、きょう、きのうと同じやり方で頑張っても、きょうと同じあしたが来ない、何とかしなければいけない、こういうことで、改革というふうにだれもが言うということであります。  ことしは日本はうさぎ年なんですね。ベトナムも、ね、うし、とらという十二支の国なんですけれども、ベトナムはうさぎ年でないんですね、しようもない話ですけれども。ベトナムは、ことしはねこ年なんです。もともとは、中国から十二支というのが渡っていったときに、絵文字というか絵で渡っていった。それで、ベトナムはネーティブにウサギはいない国だったようでありまして、だから見てもわからなかったので、多分猫ではないかということで、以来ずっとねこ年を祝うというか、している。それを何にも不思議なくやっているわけです。動物園はトラから猫に引き継ぎ式をしているというのをテレビで見ました。  たまたま正月にその番組を見たんですけれども、我々が改革をしなければいけないと言うときに、今までやってきたことは当たり前で正しいというか、それが普通だと思い込んでいるということがよそから見たら違うということ、これがグローバルスタンダードと言われたことだろう。十二支は文化だと思いますから、別にベトナムの人が猫だと言っているのをウサギが正しいとかいう論争をする必要はなくて、そのままでいいんだと思うんですが、我々は、自分の周りにいっぱい猫を飼っていて、ウサギにしなければならないということを突きつけられている。そして、これは妖怪変化であればできるんでしょうけれども、普通でいえばできないことだけれども、我々日本が今直面している改革というのは猫をウサギに変えるに等しいぐらい難しい、厳しいことを言われているんだろうな、私は正月にそんな思いをいたしました。  そういう中で、現実に本委員会のベースであります労働問題を考えても、労働者という立場、勤労者という立場から周りを見ても、その環境は大激変をしてきている。経済、企業の環境というのも当然変わってきている。今ですと、そんなに大きくない会社のいわゆる中堅ワーカーの人が海外に行っていろいろ仕事をするなんて、十年ぐらい前まで考えもしなかったことが当たり前みたいになってきている。工場で働いている人でさえどんどん海外に行かなければいけないというふうな変化だけではなくて、当然今起こっているような雇用不安も含め、企業の成長も含め、大変な激変の中にいる。と同時に、勤労者自体の意識も随分多様化してきているということが起こってきています。  そういう激変があるからこそ、最近、いわゆる労働者の憲法とも言われる労働基準法の大改正、あるいは男女雇用機会均等法の改正、労働安全衛生法の改正が相次いで行われてきた。そして今、職安法それから派遣法改正というものが俎上に上がっている。やはりこれは、そういう勤労者、労働者を取り巻く環境がどんどん変化していく中で、そういう時代背景に対応してこういうものが当然出てきたんだろうというふうに思うわけです。  変化が起きる、改革をしていく、大激変が起こるというときに、気をつけなければいけないことが当然あるわけです。それで、私は関西ですから、四年前に阪神・淡路大震災がありました。一瞬にして今までの生活と全く違う状況が起こったという意味では、自然災害でありますが、大激変が起こったわけです。こういうものが起こったときに現象的にどうなるのかといえば、一番たくさん亡くなったのは六十五歳以上のお年寄りなんです。そして、あの最中、大混乱のさなかに一番難儀をし苦労をしたのは、お年寄りと同時に、やはり体にハンディのある人、病人、子供。そして、復興しつつあるとはいえ、いまだに心の傷を引きずっているのが子供。震災直前の生活にどうしても戻れなくて途方に暮れているのは中小零細企業、商店の人たち。結局、瞬時にしてああいう大激変が起こると弱い順にやられるということなんです。強い順に立ち直れるということを如実に示しているんだと思うんです。  そうしたときに、勤労者を取り巻く環境、時代がどんどん変わっていく中でこういう法改正をするときに、一つ間違うと、弱い、強いという表現はしたくないですけれども、やはり経済の論理、企業の論理というものが優先してしまいがちになるのではないか。やはり会社が生き残るためには、日本経済がちゃんとするためには、より安くより使いやすい人を使うようにしよう、それしか会社は生き残れない。会社は生き残っても失業者は路頭に迷うというのは、これは会社の論理なんです。ですから、時代の流れでそういう変革をしていくという中でやらなければいけないことというのは、当委員会、そして労働省の大変大きな役割ではないのかなというふうに思うんです。  初め出たときはそんなに話題にならなかったんですが、さすがだなというか、九五年に発表されたのが、日経連の労務政策指針。一九九五年五月、日経連は「新時代の日本的経営——挑戦すべき方向とその具体策」と題した今後の労務政策指針を発表した。これからの雇用をいわゆる長期蓄積能力活用型と高度専門能力活用型と雇用柔軟型、こういう三つの部分に分けてやるべきだ。長期蓄積能力活用型というのは、企業経営の中心的な部分を担う社員、いわゆる基幹社員、総合職についてはこれまでの終身雇用を前提とした期間の定めのない雇用とする。高度専門能力活用型は、専門能力を持った研究者やセールスのプロなどを想定、期間を限定した契約を結び、業績に応じた年俸制などで処遇する。一定期間のプロジェクトだけに限定した専門職の活用がねらい。雇用柔軟型は、パートや派遣、契約社員、臨時工である。ということで、「その最大の真意は終身雇用を前提とした正社員を極力減らし、パートや派遣といった「安上がりの労働力」の勧めだったといっていい。」とこの著者は言っているわけです。  ということで、いわゆるいろいろな流れの中で、企業がちゃんとしていくためにという流れでいうと、こういうことは当然出てくるわけですね。そこの発想は、よしあしは別にして、やはり一番便利で安い人を適当に臨機応変に使っていけるというのが一番楽だ、楽だというかありがたいし、それが企業の生き残りだというのは当然出てくる論理なんです。  ですから、そういう流れは時代にマッチさせるためには必要だけれどもというところで、実は、勤労者、労働者にとって本当にそういう時代の中で守られるのかという視点が一番大事ではないかと思うんですけれども、一連の労働法制の大改正が相次いでいるわけですけれども、労働大臣として、そういう視点も含めての基本的な法改正に臨むお立場というのか方針というのを前段にお聞かせをいただきたいと思います。
  40. 甘利明

    ○甘利国務大臣 産業形態がいろいろと変わっていく中で、企業側そして働く側の思いといいますか価値観というのは、合致しているようで微妙なずれが当然あると思いますし、商工委員会での議論とこの労働委員会での議論は当然その軸足が違うわけであります。  私は、労働大臣としては当然でありますけれども、政治家個人としても、日本の伝統的な働き方、つまり終身雇用、日本型長期雇用、それから年功賃金制度、これは、両方とも評価される点はたくさんあると思うのです。今の世の中の流れというのは、メガコンペティション、国境がなくなった、ボーダーレスの中でどうやって生き残っていくかという点で、競争にさらされる企業が、つぶれないで立ち行くためになりふり構わず取り組まなければならない点が当然あります。そういった中で、私は政治家個人としても、どうやって企業の社会的責務がグローバルスタンダードになるか、それはどうすればいいんだろうかということに思いをめぐらせている一人であります。  今、企業が向かっている方向というのは、その企業に対する客観評価の高いものを得ないと資本の調達等が難しくなってくる。だから、例えばムーディーズのような評価が高くなることが世の中、競争社会の中で生き残るすべだといや応なしに追い込まれている点はあるのであります。しかし、企業というものの客観評価を考えたときに、確かにムーディーズのような企業評価というのも一つの評価ではありますけれども、企業全部の使命を評価したものではないと思うのであります。それはどういう評価かといえば、株主とか投資家に対して利益還元をよくしてくれる会社ですよという評価でしかないのでありまして、それ以外に、企業の使命というのは、雇用を維持していくという社会的な責務があります。あるいはトータルの評価として、世の中にとってこの会社は存続した方がほかの会社よりもっといいのですよという評価は、ムーディーズの評価ではできないのだというふうに思っております。  ただ、そういった評価のグローバルスタンダードというのが今ないのでありまして、世の中にとって存在すべき価値のある会社であるということは、単に投資家にとって価値のある会社とイコールではないということをどうやって世の中に訴えていくかということが非常に大事なんだというふうに思っているわけであります。  実は、産業競争力会議でも私はその点を強調させていただいておりますけれども、日本の企業経営者というのが健全だと思うことはいっぱいありまして、それは、私に対して親しい企業の社長や役員さんが、我々は終身雇用をいいと思っている、だからそれを維持したいと思う、それのどこがいけないのだ、そう言うと会社の格付が下がるというのは何としても納得がいかぬ。それは、もちろん企業というのは適正利潤を確保するということが当然一番大きな使命の一つでありますけれども、不当利潤を確保するなんということは企業の使命にはないのでありまして、適正利潤を確保していながら、もっともっと暴利をむさぼるために人を減らしていこうなんというのは企業の論理にはないはずなのであります。そのことに思いをはせている日本の企業家が、我が社は適正利潤を確保し、なおかつ雇用をしっかりと確保していく、あるいは終身雇用形態もその雇用の安定化の中でしっかりと位置づけていくということが実は評価されなければいけないんだと思うのであります。  ところが、今の時流というのはそうではない方向に流されている。それに対して日本の企業経営者というものの多くはかなり抵抗しております。その抵抗に対して、労働政策、労働省労働大臣が、頑張れというエールを送ってやらなければいかぬと思うのでありまして、ただ個人的に送るだけじゃなくて、何とかそういう企業の評価が定着をするような基準というのはないのだろうかということを今は模索しているところであります。
  41. 川端達夫

    ○川端委員 私も今のことは全く同感でありまして、私、何十年か前に民間会社におりましたけれども、その会社の当時の社是は三つありまして、株主に安定した配当を、社員には安定した生活を、消費者には良質な商品をということでした。私はもともと滋賀県近江商人の末裔なんだろうと自分で思っているのですけれども、近江商人の家訓に、三方よしという言葉が多くの家で引き継がれてきた部分でありまして、さっき三方一両得とかいうお話がありましたけれども、売ってよし、買ってよし、そして世間よしといいます。商売人ですから、売って利益を得るということでよし、買った人はその費用、対価に対していい商品を得たということで、売ってよし、買ってよし、そして世間よしというのが商人の基本だということがありました。  私は、そういういわゆる東洋的、日本的な、いわゆる終身雇用制もあり社会的貢献もということで評価されてきた部分が、おっしゃるように、ムーディーズ含めて何か、西洋的と言ったら語弊があるのかもしれませんが、一つの切り口だけでグローバルな部分が左右されるということは実に遺憾なことだと思いますし、いつ首になるかわからないけれども一生懸命働けやと言われて、なかなか働く気にはならないのじゃないの、それが日本の高品質、高技術の部分を支えているんだと私は思います。  この話をしていたらいつまでたっても終わりませんので、大臣がそういう御認識だということで、グローバル、グローバルと言われる中で難しい部分も非常にあるのですけれども、いろいろな形でそういう評価というものはぜひともにまたお知恵をお出しいただきたいというふうに思います。  そういう御認識の中で、逆に今回いろいろなそういうことで出てきた部分が、間違っても企業が悪乗りして勤労者にしわ寄せをするような法改正であってはいけない、こういうふうに思うわけです。  それで、ずっと議論がされてきたのですけれども、一度おさらい的にちょっと確認をさせていただきたいなというふうに思います。  先日、新聞に載っておったのですが、民間の生命保険会社が全国の保育園、幼稚園児と小学生対象調査を行った。大人になったらなりたい職業は何か。男の子の答えのトップは大工さん、第二位は博士、学者ということで、八九年の調査開始以来トップの座を守ってきたスポーツ選手が転落した。大工さんは十位から大躍進、博士、学者は九位からの躍進という、去年からだけで大激変を起こしておるわけです。  この会社の分析では、この結果について、景気低迷の中で子供たちも単なるあこがれより手に職を持つことを意識し始めたのではないかと分析している。何か世相を非常に反映しているようで、子供はもっと夢を持つというふうな部分から非常に現実的になってきているなという感じがして複雑な思いがしたのですが、手に職を持つということ自体は非常に大事なことであるし、私は、これは子供の意識としてもある部分で言ったら非常にいいことだろうというふうに思うのです。  今回のこの派遣法で、いわゆる手に職を持つという人たち派遣の部分と、それから要するにそうではない一般的な非専門的職種の派遣というのがあるわけです。今回ポジティブからネガティブリストということで、職種適用の部分が非常に広がるといったときに、いろいろな背景の中で突発的にできる仕事とかいうふうな部分のときに、こういう専門的職種の部分のニーズよりも、非専門的職種というものが、今回の適用業務の拡大によって多分そちらの方が多く膨らむのだろうというふうに思います。  先ほど子供の例をとりましたけれども、やはり何か手に職を持っていないというのはちょっと弱いなということを子供心に思っているということなのかなという部分では敏感な部分を反映していて、やはり非専門的職種の派遣というのは相対的に言えば弱い側にいるのだろうというふうに思います。  安上がりの労働力という話を先ほどからしましたけれども、そういうことでいえば、そこの部分が、競争も激しく、選択され、そしてたたかれ、劣悪なところに置かれるということに、ほっておいたらなりがちではないかというふうに思うのですが、今回の改正で、そのこと、対象業務が拡大されると非専門的職種がふえていく、そこはきっちりガードしなければならないな。具体的な話は結構ですから、そういう認識を持っているべきだと思うのですが、それはいかがでしょうか。
  42. 甘利明

    ○甘利国務大臣 子供たちの将来なりたい職業で、一位の大工さんは別として、二位に博士があって、昔は、末は博士か大臣かという大臣がないというのはちょっと寂しいので、できれば労働大臣というのが上の方に上がってくれると私もやりがいがあるのですが。  それで、派遣を専門業種からそれ以外に事実上自由化をしていく。そこは、子供たちの手に職をという、専門職という思いとどうなるのだというお話でありますが、なぜ派遣を選ぶかというアンケートをとりますと、要するに、積極的理由と後ろ向き理由と類型的に分けますと、積極的理由の方が相当高いのですね。個別の理由の中では、正規雇用の場がないからというのは確かにありますけれども、類型的に積極的理由消極的理由をとりますと、積極的理由の方が多い。それから、やはり短期、即戦力という点でも社会的ニーズには合っているのでありましょうし、それは、自分希望する方と会社が希望する方と両方のニーズに合っている。  それから、私も今までもこの委員会でも強調させていただいたのですが、いろいろ調査をしていますと新しい発見がありまして、先ほど局長の方からインターンシップの話もあったかと思うのですが、業につきながらのインターンシップ役割も果たせるのではないか。就業した方が短期離職をする比率がまだ大分あるのでありますけれども、それは、確かに自分の思い描いていた仕事と現場の仕事の落差というのも大きな要因がありますから、そういう実体験を積んでいって、将来自分がこれをやりたいというのを見つけられるということにも資するのではないか。  要は、その際の労働者の保護でありますから、情報の漏えいに対する防止措置をきちっとやるとか、あるいは正規雇用につながる道を少なからず、少しずつでも広げていくとか、あるいは派遣先の福利厚生施設について、そこの社員と同等の扱いを受けるとか、そういう環境整備をしながら、マイナス点はできるだけふさいでいってプラス点を伸ばすというようなことに、これからも努めていきたいというふうに考えております。
  43. 川端達夫

    ○川端委員 今おっしゃった中で、いわゆる自発的に私は派遣のタイプがいいのだという人が多いというのは、現実にそういう人がふえていることは間違いないと思います。一方、失業というか雇用情勢が悪いという中で、たちまち派遣で何とかつないでいくみたいな部分の人もいることも間違いない。  ただ、私が申し上げたいのは、そういう中で、非専門的業務の人たちというのは、相当ケアをしないと、相当保護というのをきっちりしておかないと、やはり非常に厳しい状況に置かれる。自発的に行くのはいいのですけれども、行ってもそこでいろいろな問題というような状況を招いてしまうということになるのだろう。今個人情報の保護とかいろいろおっしゃいましたけれども、そういうことだと思うのですね。  そういう中で、今、人材派遣業市場というのは急成長をしたのですけれども、やはり景気の波にそれは当然影響を受けるわけですから、非常に状況が悪いというふうに言われています。今、いわゆる人材派遣事業自体の現状というものを労働省としてはどういう状態と認識されているのか、ちょっと認識をお伺いしたいと思います。
  44. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣労働の現状を、事業所数あるいは派遣労働者数、売上高というふうに見てみますと、まず事業所数ですが、平成十一年の五月一日現在、本年五月一日現在ですが、一万五千七百七十八所の派遣元事業所がございます。登録型を主体とする一般が三千七百二十五所、常用型の特定労働者派遣事業所が一万二千五十三所。常用型の方が四倍近くあるのですけれども、これは、もともと通常は請負などの仕事をしていて、要請があるときに派遣も兼ねてやるというふうなことで、常用型が事業所としてはこういうふうに多くなっているかと思っております。  それから派遣労働者数ですが、平成九年度の調査ですと約八十六万人で、登録型が七十万人。この中には複数の事業所に登録をしているという方もありますので、その内訳はわからないのですが、これを常用労働に換算しますと約三十四万人ということで、派遣労働者の実数は三十四万から八十六万の中にあるのではないかというふうに見ております。雇用労働者の約一%ぐらいが現在派遣労働者であるというふうに思います。  また、この調査によりますと、平成九年度の年間売上高は総額約一兆三千億円でございまして、八年度に比べると一二・八%増ということになっております。ただ、平成十年度の調査結果はまだもちろんないのですけれども、派遣の事業所等の方から話を聞きますと、やはり昨今の景気の状況を反映して、派遣事業も相当今厳しい状況に置かれているというふうな話を聞くことがかなりふえております。
  45. 川端達夫

    ○川端委員 これは報道での情報ですが、日本人材派遣協会がまとめた首都圏二十三社の九八年の七—十二月、ですからいわゆる直近、今局長の方は去年の部分までのお話で言われたのですけれども、いわゆる平成十年の直近の数字でいうと、派遣者数は前年同期比二・三%増で四十五万人弱。伸び率が、九七年の一—六月は二九・八%伸びてきたという物すごい伸びを示した時期があったのですが、微増。そして伸びは鈍化。月々でいいますと、九八年十二月、昨年十二月は前年同月比〇・四%減というふうに四年半ぶりの前年割れを起こしている、ことしに入っても減少傾向ということで、いわゆる登録人数とかいうことではなくて実質派遣数は間違いなく減ってきているという状況にある。相当やはり厳しい状況に置かれている。  そこで、これも同じ協会の調査なんですが、職種別——これは労働省で、何かそういう職種別みたいなもので、こういうふうなデータとかはありますか。特にはないですか。——いいです。  この協会の調査の部分では、職種別ではファイリング、いわゆる文書の保管、分類や、取引文書作成など一般事務職の落ち込みが大きく、OA機器操作でも英語力など高度な技能を要求する企業がふえているということで、いわゆる文書のファイリングとかいう一般事務の部分の派遣というのは、落ち込んできているというふうに申し上げましたけれども、その中でやはり極端に落ち込んでいる。同時に、派遣料金も頭打ち感が出てきている。一般事務職の九九年度料金交渉は、大部分の顧客企業と据え置きで決着した、値上げが受け入れられたのは外資企業向けの翻訳、通訳、デリバティブ関係など専門性の高い職種にとどまる、こういう報告が出ているわけです。そして別の報道では、各会社間でも人材派遣事業値下げ競争、要するに競争に入ってきたと。  ここら辺の指標で見ますと、やはり一般の事務職的ないわゆる非専門職の部分というのは、派遣雇用状況が非常に厳しくなってきている、そして金額もむしろ据え置きから下がるのではないかというふうな状況に今来ている。まさに買い手市場の局面に入ってきているということだと思うのです。  そういう部分で、今回、適用職種を拡大していくときに、当然、派遣する人のトータルは、門戸を開くわけで自由化するわけですからふえると思うのですけれども、そのときにふえる部分は、やはり一般労働者派遣の部分が比率が高くなるというふうに思うのですよ、専門的な部分ということではなくて。ですから、結局、同じ派遣でも、今非常に厳しい劣位に置かれ、競争の激しいところに置かれる人が結果的にはふえる、市場拡大でそういう状況になるんだというふうに思うのですが、どうでしょうか。     〔石橋委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般、派遣の適用対象業務を広く拡大をして、いわゆるネガティブリスト化をするということでございます。  ただ、常用労働代替防止という措置は厳しくかけておりまして、一年以内の派遣ということですから、企業の方が派遣労働者を求める場合も、それは、常用労働者の代替、あるいは常用労働者として派遣を受け入れるということではなくて、あくまで一年以内の短期、臨時的な労働者、いわゆる即戦力としてこれを求めることになろうというふうに思います。  そういったことでいいますと、今般拡大される業務の中でも、やはり何らかの意味での即戦力になるような方、こういった方が派遣労働者としてこれからふえていくのではないかというふうに現在は考えております。また、派遣労働者派遣先ですぐに使える労働力ということですから、派遣元の方にも教育訓練をする努力義務を課しておりますし、私ども、派遣事業の許可や更新に当たりましても、教育訓練をどういうふうに行っているかというふうなチェックを行っているわけであります。  そういったことで、今般、広く業務は拡大になりますが、おのずと派遣労働の対象業務というのは限定があるし、また、短期、即戦力というふうなことからいえば、実際に力のある人が派遣されるのではないかと思います。また、短期労働市場ということでは、既に一千万になるパート労働市場というものがあるわけですから、働く側から見ましても、派遣労働がいいのか、あるいはパート労働市場がいいのかという、短期労働市場の中での選択というものも競合的にあるわけでありますから、そういったいろいろなことを考えますと、やはり、余り技能のない不安定な派遣労働者が著しくふえる、あるいはそこにしわ寄せが著しく行くというふうな状況ではないのではないかというふうに考えております。  ただ、先ほどお話がありましたが、派遣労働者の賃金がなかなか伸びないとか、売り上げも減っているとかいうような状況は、常用労働についても、現在、製造業や建設業を中心に雇用労働者数が減ってきているわけでありまして、そういった一般的な影響はもちろん現在受けているかと思います。
  47. 川端達夫

    ○川端委員 実際、これからの推移、法改正の後で答えは出る話なんですけれども、企業の本音の部分といいますか、きっちり守らなければいけないという部分でいいますと、やはり短期で即戦力になるというふうないわゆる技能や専門性の部分の仕事ももちろんそういうことでやりたいというニーズと同時に、通常業務の部分を変動する部分で、できるだけそういうことで消化しようということが大きな背景として、今回ネガティブリスト化するという部分でいえば、適用職種を限定から外した、働いている人がそういうことを求めている人が多いからという理由は言われましたけれども、実情としては、その懸念は余り心配しなくていいという認識では私はいけないと思うのです。  その懸念は、今局長は、求める方も、より能力の高い、専門性のある、即戦力の人を求めることになっていくだろうという旨のことをおっしゃいましたけれども、そうであるのであればハッピーなんですよ。しかし、そうでない要素というか予想という部分が実はいろいろ考えられるのではないか。それは杞憂だと言われたらおしまいですけれども、これは実態数は後から出てくる話でしょうけれども、後で申し上げますけれども、そこの部分の認識としては、一つ間違えばそういう部分がどんとふえて、一番厳しい状況の人たちがふえるおそれがあるという認識は持っていただかなくては困ると思うのですけれども、それはいかがでしょうか。
  48. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今、企業を取り巻く環境も大変厳しいわけでございまして、そういったところから、企業においても、人件費を初めとする固定経費の合理化、節約、圧縮に努めている、こういった努力を行っていることは当然であると思いますし、そういった中で、今申しましたが、例えば人件費についても合理化していくというふうな経営努力をしているということはもちろんあろうかと思います。  ただ、今回の派遣法改正は、そういったいわゆる企業のリストラにこたえて安い労働力を企業に豊富に提供する、そういったことは絶対に避けるべきである、これが現在のコンセンサスに我が国においてはなっているかというふうに思います。そういったことで、今般も違反した場合には、命令とか罰則とか、あるいは企業名を公表とか、こういった非常に厳しい措置をかけながら、一年以内の短期派遣に限るというふうにしているわけであります。そういったことからいいますと、常用労働の市場と今般の派遣労働の市場というものは明確にやはり一線が引かれている、そういった措置も十分している、そういった考えでおりますので、企業のリストラにこたえて不安定な低賃金労働力がこれによって拡大するんだ、そういうことはないようにしなければならない、厳格に担保措置運用しなければならないというふうに思います。
  49. 川端達夫

    ○川端委員 それでは、現実に今の状態の中でのお話で御質問したいと思うのですが、東京都の労働経済局がいろいろなアンケートをやっておられて、これがすべてではないのでしょうけれども、その中で、派遣先への要望、派遣トラブルベストスリーというのは、契約の不当な打ち切り、中途解約はやめてほしい三一・二%、労働環境をよくしてほしい二二・七%、契約外業務はさせないでほしい一一・九%というふうに、一番の部分が契約の不当な打ち切り、中途解約はやめてほしいという、いわゆる中途解約トラブルというのが非常に顕著に出ているし、ほかの調査でも中途解約のトラブルというのがよく聞かれるというふうに承知しておるのですけれども、実際の今の派遣労働の場合のトラブルの実態をどういうふうに把握されているのか、お聞かせください。
  50. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣労働に関する苦情、相談、トラブルといったものはかなりいろいろと見られるわけでありますが、労働省が平成九年に行った調査によりますと、派遣労働者からの苦情として、多いものとしましては、例えば業務内容に関するものとしては、派遣契約と実際の業務内容が違っていたというふうなこと、あるいは、契約業務のほかにコピー、お茶くみ、電話番等の仕事をさせられたといったふうなもの、あるいは労働時間について、これも行ってみると契約内容とどうも違っていたというふうな苦情があります。  さらに、これは派遣にかなり特徴的なあるいは潜在的につきまとう問題かと思いますが、上司とかほかの労働者とか、そういった人間関係に関する苦情もありますし、今おっしゃいましたように派遣契約の中途解除に関するもの、こういったものもいろいろと見られているところであります。
  51. 川端達夫

    ○川端委員 そういういろいろな苦情、トラブルに対して、行政としての対応というのは今どういう仕組みになっているのか、教えてください。
  52. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 行政の対応の現在の仕組みでございますが、派遣事業については公共職業安定所でこれを指導監督するということにしておりますので、労働者からの苦情あるいは相談といったものは公共職業安定所に寄せられております。そこで受理をした苦情、相談というものについては、必要な場合には職員が出かけていきまして事業所を指導するというふうなことを行っておりますし、法違反があるというふうなことになりますと是正措置を行うということにしております。  例でございますが、平成九年度の指導状況について見ますと、定期の派遣に関する指導件数が約二千件、労働者からの申告に基づきまして臨検指導を行った件数は八百三件、こんなふうな状況になっております。
  53. 川端達夫

    ○川端委員 派遣法の四十七条の二に指針というのがありますね。いろいろな御指導、処理というのは、基本的にはこれを基準にされているということでよろしいのでしょうか。
  54. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今御指摘の現行法の四十七条の二で、労働大臣派遣労働に関する指針を公表するということになっておりまして、この指針に基づいて具体的な指導を行っております。
  55. 川端達夫

    ○川端委員 この指針が平成八年の十二月十三日に出ているわけですけれども、今職安を通じてということで、当局を通じていろいろな苦情処理をしていただいているということなのですが、現実には、そこへ持ち込む持ち込まないは別にして、意識調査という部分では非常にたくさん出ているというのが実態です。  これは東京都の労働経済局の派遣労働に関する実態調査、一九九八年、昨年の調査をことしの三月十七日に発表された部分でありますが、そういう部分でも、例えば中途解除によるトラブルというので、派遣スタッフで、契約の途中で仕事をかえられたり、打ち切られたりしたことがある人は一三・九%、百十七人。また、派遣元調査によると、派遣先により派遣契約を中途で打ち切られたことがあるのは五七・一%、二百六十件。一方、派遣調査によると、派遣契約の途中解除の事例は、たびたびある、〇・三、たまにある、二五・四、合わせて七十六件ということで、働いている人の答えと派遣している派遣元の答えと、それから派遣受け入れ先、派遣先の答えが随分ずれているのですね。  そういう部分で、なかなかこれは難しいのだろうというふうに思いますが、中途解除のいろいろな理由が、先ほどあった、仕事ミスマッチとかあるのですけれども、今四十七条の二の指針でいろいろ御指導いただき、やってはいただいているのですけれども、どうも、平成八年以降でいうと、いろいろな調査を含めて、やはりトラブル、特に中途解約のトラブルというのが非常に多いというのが現実だと思うのです。  その部分で特に問題なのは、この東京都の調査を引用いたしますと、その理由なんですね、中途解約の理由派遣先による労働者派遣契約の中途打ち切り等の理由というのを調査した。そうしたら、働いている人の意識として、途中で打ち切られた理由の第一位は、派遣先の業務都合、七六・九%。要するに、行った人がやめてくれと言われたということですよ、もう要らないと言われたということです。派遣元調査の部分で、出した会社はどういう認識かというと、一つは、派遣先の事業変更、これは先ほどのと同じですね、五九・二%。能力仕事ミスマッチ、六五・八%。それが派遣先になりますと、派遣先が中途で打ち切った理由の中の、派遣先、自分のところの業務都合というのは二八・九%。ミスマッチが五九・二。  ですから、働いている人は、派遣に行った先の都合で首になったと思っている人が七六・九%で、出した会社は、そういうことだったなと認識しているのが五九・二%で、帰ってくださいと言った人は二八・九%という認識のギャップがあるわけですよ。ミスマッチとかいろいろあるのでしょう。ただ、この認識のギャップという部分があるということは、トラブルになるということです。  ですから、いろいろな適切な措置を講じなければならないと四十七条の二であり、その指針が公表されてあるわけですけれども、現実にこういう状態であるというならば、行くならばもっと気持ちよく働きたいし、行くつもりで予定を立てて行ったら途中でもう結構ですわと言われるような状況というのは困るわけですから、それを見てみると、どうも中途解約をした認識が全く違うというデータも出ているということであるならば、契約を中途解約する場合に、派遣先にその合理的な理由を明らかにする責任を負わすべきではないのか。この契約はかくかくしかじかの理由で途中ですけれども解除しますということを言うという義務を負わさない限り、全然認識が違うということになっているんですよ、どうでしょうか。
  56. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣契約が期間の中途で解除される、こういったケースが起きますその背景には、やはり何らかのトラブルがあって、そういうことが起きるわけであります。  私どもの調査によりますと、派遣トラブルといいますかその解除の原因が専ら派遣先にあると考えられるものは約半分で、あとの半分は、例えば派遣労働者能力とのミスマッチであるとか、あるいはその派遣労働者の方から途中で行かなくなるというようなケースもある、こういうようなことでございまして、そこのところは、今御指摘のように、両者の言い分、あるいは三者の言い分をいろいろ聞かないと本当の理由はなかなかわかりにくいというふうなことは確かにあろうかというふうに思います。  その点は、いろいろ、トラブル防止、あるいは途中で解除した場合には別の仕事場をあっせんするように努力しろとか、損害賠償についても誠意を持って努めるようにというような指針を出しているわけでありますが、今委員おっしゃいましたように、何かトラブルがあるというときには、やはりきちんと理由を述べる、あるいはそれを聞いて相手方もそれに反論する、そういったことがきちんとできるということが重要なことだと思いますので、そういったことがどういうふうにできるかは検討したいというふうに思います。
  57. 川端達夫

    ○川端委員 ぜひとも御検討いただきたいというふうに思います。  それと、こういう一方的な中途解約の保護措置として、今言われたように、一つは指針を一度総ざらえをしていただくという部分もあるというふうに思いますが、ある種の部分は、損害賠償の責任があるんですよということも考慮すべきではないか。  前段から延々と申し上げたのは、結局力関係というのがあるんですよ。結局、派遣先というのは派遣元から見たらお客さんであるし、労働者派遣元に所属をしていてそこに行っているということですから、一般的な力学という部分でいうとあいまいになる。さっき申し上げた、本人が認識している部分ということでは、何かようわからぬけれどももう要らないと言われたというけれども、向こうにしたらちゃんとした理由があるんだという認識のギャップが出てくるということになっているんだと思いますので、そういうことを明記し、あるいは、そういう無責任なことをしてはいけないという責務を負っていますよということをきちっとすべきだと思いますので、ぜひともそういうことの御議論を深めていただきたいというふうに思います。  次に参りますが、先ほど大臣も、個人情報をきちっと守らなければいけないという御趣旨のことをおっしゃっていただきました。いわゆる近代社会といいますか、特に高度情報社会という中で、個人の情報をきっちりと守る社会こそがちゃんとした社会であるということは、時代の中で特に顕著になってきた流れでもありますし、その中で、企業も個人情報をいっぱい持っているし、それから国際的な部分でも、ILOを含めて、個人情報というものに対してきちっとしなさいという趨勢でもあるということであります。  今回個人情報の保護規定が設けられたわけでありますが、この背景を簡単に御説明いただきたいと思います。
  58. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣元事業主は、労働力の需給調整機関としまして、その性質上、大変多くの労働者情報を扱う機会が多いというふうに考えられます。そういった中で、派遣先へ派遣労働者派遣するといったときに、それに伴っていろいろな情報派遣先に出る、あるいは、大変残念なことですが、社会一般にこれが漏れるというふうなこともかつてあったわけであります。  ILOの百八十一号条約、この国会に批准案件としてお願いしておりますが、その条約の中でも、派遣職業紹介を原則的に広く認めると同時に、個人のプライバシーの保護等については十分意を用いるように強調しているわけであります。  こういった我が国における過去の状況あるいは国際的な考え方、そういったものを踏まえて、派遣事業について、労働者の個人情報あるいは秘密というものがきちんと守られるようにそういったものを措置するということにしているわけでございます。
  59. 川端達夫

    ○川端委員 そういう背景の中で規定が設けられることになるという御提案だと思うんですが、派遣事業自体から人材派遣会社の個人データが流出したという事件が去年ありました。何かマスコミ的には、容姿ランクつきリスト流出みたいなことで出ました。それ以外にも、これは派遣会社ではないですが、ごく最近も、ある事業というか商売をしている人が、アルバイト募集ということで集めた履歴書をインターネット上にまるで何か援助交際受け付けますよみたいなスタイルのリストとして流して、その人たちは突然いっぱい電話が携帯電話にかかってきてというふうな事件で捕まったということもありました。これは別に人材派遣会社ではないですが、やはり就職にいくという部分では同じようなケースがありました。  こういう事件を見ますときに、特に容姿ランクつきリストの流出事件みたいな部分を見ますと、私は二つの問題があるんだと思うんです。一つは、その会社が持つ情報というものがどこまで持てるのかということです。  容姿ランクつきと新聞報道には言われたんですが、その企業自体のコメントが載っているのは、容姿に応じてA、B、Cのランクづけを行い、その他の個人情報とともに保管し利用していたとの疑惑である。人材派遣会社側は、適材適所の派遣をするために、身だしなみ、服装、接客態度などを記している、容姿という意味ではないと釈明。朝日新聞、一九九八年一月二十九日朝刊。  ということで、言い分はいろいろなことがあるわけですが、一つの問題は、どういう情報を会社として管理するのかということ。もう一つは、それが流出してインターネット上で売買されたという、いわゆる管理の問題。二つあるんだと思うんです、きちっとやらなければいけないという切り口は。  そこで、その内容と管理、このことに関して今回の部分でどういう御認識と対応を考えられたのか、教えていただきたい。
  60. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣の事業を行うに当たりまして、派遣労働者のプライバシーに関する情報が外に漏れるというふうなことは大変遺憾なことであります。今回派遣対象業務が広がることに伴いましてこの業界に参入してくる事業主もふえてくるというふうに思いますが、本来はそういった業界内部における自主規制、競争の中で良好な事業主が育っていくということが最も望ましいことだと思いますが、過去に御指摘のような事件もあったこと等々を考えますと、やはり法による規制も必要なことであろうというふうに思います。  そこで、今回の改正に当たりましては、派遣労働者に関する個人情報というのは、業務に必要な範囲でこれを収集し管理すべきだということを法に明記いたしました。したがって、派遣元、いかに事業主とはいえ、派遣業務に関係のない個人情報をいろいろと集めるというふうなことは禁止されますし、また、業務に必要な範囲においてこれを保管管理するということを義務づけましたので、その限度において事業主の立場で情報を収集する、かつまたその範囲でしか収集、管理できないというふうにしているところであります。
  61. 川端達夫

    ○川端委員 第二十四条の三で、私申し上げた部分で言うと、情報を管理するという部分に関してはそういう規定だと思うんです。問題は、その中身なんですね。そのときに、条文としては、「その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密」という書き方をしているわけですね。業務上取り扱ったことについて知り得た秘密というのは何なんですか。
  62. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 秘密漏えい等に関して言われます秘密の概念ですが、これにつきましては、一般に知られていない事実で、他人に知られないことについて本人が相当の利益を有すると客観的に認められる事実、一般的にはこういうふうに解されているのではないかと思います。  極端な例ですが、自分には幾ら幾ら借金があるのでどうしても働きたいんだというふうなときに、そういったものを外に漏らすということは明らかに秘密の漏えいになるというふうに思います。  ただ、今回の改正は、労働者の個人情報の保護、プライバシーの保護ということに大変力点を置いて改正を行いたいと考えておりますので、通常の秘密を漏らすという場合の秘密よりもむしろ範囲は広目に解すべきではないか、労働者のプライバシーの保護に十全を期すべきであるというふうに考えていますので、具体的な範囲等につきましては、法律が成立いたしますと、いろいろな関係審議会などの意見等も聞きながら、客観的にわかりやすいもの、そういった解釈を示したいというふうに思います。
  63. 川端達夫

    ○川端委員 去年六月の労働者の個人情報保護に関する研究会報告なんかを見ましても随分幅広の議論もありますし、おっしゃるように、いわゆる一般的に言われる秘密という概念よりは、労働者の部分での個人情報の保護というのはもっと幅広いんだろう。極端に言えば、年齢でさえ、あるいは住所さえ、知っている人は知っているよと言われるけれども、みんなに知られたくはないという人もいっぱいいるわけです。これは非常に個人差もあります。そういう部分で、しかしそれが非常に苦痛に思うということもいっぱいあります。  先ほどちょっとほかの事件を申し上げましたけれども、例えば、今いろいろな社会的な部分で事件を起こしていることでストーカーとかありますね。そういうことの被害に遭う人にとっては、住所や電話番号なんというものは絶対に知られたくないということです。  そういう意味で、流出に対しての責任はあるというけれども、何を会社として持っているんですかということが、少なくともその幅があり、個人によっても違うのであるならば、余計、派遣労働者の保護される個人情報というものが、私の部分は会社はどういう形で何を持っているんですかということの開示は要求できる、そして間違っていますよというのが直せる、あるいはこういうことは載せないでくださいという、会社が管理するのであれば、その中身に関して、勤労者、派遣労働者情報の開示と訂正の請求ができる権利を有しているのではないかというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。
  64. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 個人情報につきましては、業務に必要な範囲でこれを収集するということと、その情報については適正管理をしなければいけないというふうに法律で今回盛り込んでいるところでございます。  これに関する開示あるいは訂正の権利、こういったものについては確かに条文にはありませんけれども、個人情報を適正に管理しろという以上は、間違った情報等についての訂正あるいは開示、こういったことは当然認めていくべきではないかというふうに思いますので、これは運用の問題として検討したいと思います。
  65. 川端達夫

    ○川端委員 この二十四条の三で、派遣元における個人情報保護の実効性を確保する措置というのは一応担保した書き方になっているというふうに思うんですが、派遣先が労働者を使うときに、例えば派遣元にこういう技能を有する人で期間はこれだけということを提示したときに、派遣元からこういう人というのが派遣されるというのが普通だと思うんですけれども、そのときに、ちょっと事前に面接させろとか履歴書を渡せとか、そういうふうにすることはしてもいいんでしょうか。
  66. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 現行法の二十七条に、労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分あるいは労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として労働者派遣契約を解除してはならないという規定があります。これは、派遣された労働者を見て、その人の信条であるとか性別をそこで見て、これはまずいということで解除してはいけないというようなことを規定しているわけであります。  こういう規定がある以上、契約を結ぶ前に事前に面接をして、あるいは履歴書を見て、その人ならいいよということで契約を結ばないということが許されるとすれば、この二十七条の脱法的行為になるという可能性が大変強いというふうに思いますし、現行の派遣法はそういうものを許していないというふうに思います。
  67. 川端達夫

    ○川端委員 許していない、今のでいうといわゆる脱法的行為の部分で、そういうことはしてはいけないという読み方ができるということなんです。一応そういう部分ではガードはしているということになっているんですが、私はそれは非常に弱いというふうに思っています。  そういう意味では、何かすき間読みをしていったらそういうふうにできるはずがないんだということではなくて、はっきりとそういうことはしてはいけないと何らかの形で言うべきだというふうに思います。基本的にはそれはいけないことだという御認識はお持ちだということがよくわかりました。  そういう部分を含めて、二十四条の三は特に秘密を守る義務があるんだというときに、義務に違反をした場合には四十九条で改善命令だという規定になっているわけですね。ところが、職業安定法が今回同じ部分で改正される中で、職業安定法の個人情報保護規定では罰則規定になっているわけですね。職安法で、これは五十一条ですか、秘密を守る義務があり、そして六十六条で罰則を科している。  職業安定法では「有料職業紹介事業者及びその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由なく、その業務上取り扱つたことについて知り得た人の秘密を漏らしてはならない。有料職業紹介事業者及びその代理人、使用人その他の従業者でなくなつた後においても、同様とする。」と書いてある。こちらの派遣法の部分は「派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者でなくなつた後においても、同様とする。」という文章は、主語だけかえてあるだけの文章なんですね。  そして、一方は罰則があり、一方は改善命令ということになっているというのは、法のもとにおいて平等でないのではないかというふうに思うんです。趣旨は一緒だと私は思うんですね。そういう部分では、これは法の不備ではないかと私は思うんですけれども、いかがでしょう。
  68. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 職業紹介機関はあくまで紹介機関でありまして、みずからが求職者事業主、使用主になるわけではありません。そういうことで、これを紹介する際に、求人側からのいろいろな要望に応じて、あるいは秘密にわたることも、知り得た秘密についてこれを求人側に漏らすというふうなことも、そういった危険性は大変高い、そういったことは言えるかと思います。そういったことで、職業紹介機関について秘密を漏らしたときには直罰でいく、罰則を科するということにしております。  一方、派遣元事業主派遣労働者事業主でありまして、そういった意味では、一般の常用労働者を雇用している事業主と立場は基本的には同一なわけであります。そういったことでいいますと、むしろ派遣元については一般の事業主との均衡というものも相当考慮しなければいけないということで、こちらの方につきましては、改善命令を出して従わないときに初めて罰則がかかる、確かにこういったことになっているわけであります。  これは、他の一般事業主との均衡も考慮する必要があるということで、紹介機関と、直接使用者である派遣元事業主との立場の違い、こういったところから来るのではないかと思います。この点については、随分法務省とも協議をして、現在のような法案として提出をしているわけでございます。
  69. 川端達夫

    ○川端委員 御趣旨は、一般の事業主との兼ね合いというのはよくわかるんですが、今回の改正で言ういわゆる登録型も含めましての実態でいいますと、普通の会社が普通に人を雇っているという部分とはやはり随分形態が、間違いなく違うという実態の中でいうと、職業紹介の部分に非常に近いということだと私は思います。  時間がだんだんなくなってまいりましたので、同じような部分で確認をしておきたいのですが、先般の機会均等法の改正で、二十一条及び二十一条に基づく指針ということで、セクシュアルハラスメントに対するかなり抜本的な改正がなされました。  そこで、改正男女雇用機会均等法の第二十一条の二項、前段はいろいろちゃんとしなければならないということで、「労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が配慮すべき事業についての指針を定めるものとする。」ということで、セクシュアルハラスメントに対してこういうことをきちっとしなさいよということの指針を定めるというので、事業主が配慮すべきこと、こう書いてあるんですけれども、この事業主というのは派遣元ですか、派遣先ですか。
  70. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 一般論として申しますと、派遣労働者の苦情に関する処理については、派遣元派遣先が連携してこれに当たれということを書いてあるわけでありますから、その場合、特にセクシュアルハラスメントについては、派遣先の問題ということが大変多いと思います、そういったことでは、やはり派遣先が対象になると言えるかと思います。
  71. 川端達夫

    ○川端委員 法律の解釈として、第二十一条の二項の事業主というのは、今局長言われたように、これは派遣先と読んでいいんですか。
  72. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 失礼しました。  今の条文に規定しているのは派遣元でございます。
  73. 川端達夫

    ○川端委員 これは、せっかく雇用機会均等法で、セクシュアルハラスメントみたいなことは、とんでもないことは発生しないように、事業主はいろいろなことをちゃんとしなさいという指針をお出しになって、やっていこうとまさにスタートしたところです。  ところが、法律的に言うと、事業主というのは、派遣法の部分で読めば、当然ながら派遣元になる。そうすると、派遣元から派遣された派遣社員がこういう会社の職場に行けば、この会社はこの会社で、セクハラに対しいろいろなことをちゃんと就業規則とかでやらなければいかぬわけです。やっているときに、責任としては、派遣の人だけは別なのですよということになるわけですね、実際で言えば。  だから、今、局長言われたように、当然ながらその人の働く職場は派遣先なのですから、法律で読めないのですから、これはやはり読めるようにきっちりと、派遣先は派遣労働者に対しても、セクシュアルハラスメント等々の部分のいろいろな対処をしなければならないということを何らかではっきり明記しないといけないと思いますが、いかがでしょうか。
  74. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣労働者の保護に関連する事項といたしまして、今般の改正案におきましては、派遣先のいわば義務的な事項といたしまして、派遣先の労働者が通常利用しているような食堂とか診療所、こういったものは派遣労働者にも使用させるように努力しなさいということにあわせまして、派遣先は派遣労働者の就業環境を整備するために適切な措置をとるべきであるというふうな規定を入れたわけであります。  この規定は、セクシュアルハラスメントの防止等も十分読み込める規定でありますので、この規定に基づいて具体的に派遣先の今のような問題をどう対応するか、これは検討しなければいけないと思います。
  75. 川端達夫

    ○川端委員 どういうふうに措置するかは検討しなければならぬと思うのですが、確認のために、この趣旨を含めて、実態も含めて、派遣先は派遣労働者に対して、いわゆる雇用機会均等法二十一条に書いてある部分に関しても責任を負っているというふうに理解してよろしいでしょうか。
  76. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣先は派遣労働者の就業環境の整備に努めるようにするということでございますので、セクシュアルハラスメントにかかわらず、相当広いものが、今般の規定によって、派遣先においていろいろな義務が課されるということになろうかと思います。
  77. 川端達夫

    ○川端委員 くどくは言いませんけれども、一般の部分で、雇用主が働く人にちゃんといろいろな職場環境とかをしなさいということととりわけ別に、女性に対してのセクハラ条項を入れたということの流れでいえば、今のような御答弁ではだめだと私は思います。  時間がほとんどなくなってしまいましたので、もう一点だけ。  かねがね、この派遣労働法の国会審議、当委員会あるいは参議院の委員会含めて、いわゆる附帯決議がされております。そういう中に必ずあるのが、派遣労働がいわゆる常用雇用代替労働力になってはいけないということをきちっと留意しなさいということが、たびたび附帯決議されています。  そういう中で、今回、原則として派遣期間を一年とする、そして、継続して業務に従事させるときには正式に雇用することの努力義務をつけられました。それは多分そういう流れかなというふうに思うのですけれども、ごく簡単にこの部分の背景をお聞かせください。
  78. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 一つ、ILO百八十一号条約の規定するところでは、派遣労働について、これは、一時的なものにするとかそういった規定はもちろんないわけでありますが、この条約の規定の趣旨を踏まえながら、各国の実情に照らして国内法制を整備していくということに当たりまして、今の日本の大方のコンセンサスというものは、派遣労働というものが広く一般に拡大するにしても、これが常用労働者の代替になるというふうなことは避けるべきであるということが、現在の労使を含めたコンセンサスではないかというふうに思います。  審議会のそういった御議論を踏まえて、今般の改正では、拡大する業務については一年以内の派遣ということにしたということでございます。そういったことを踏まえながら、今般の改正をお願いしているところでございます。
  79. 川端達夫

    ○川端委員 一年以内にしたということは、まさに、今までの議論の中で、結局、派遣労働者が一番懸念をする、企業の使い勝手のいい安い労働力ということで、いつでもそこで適当に使えるというふうに、代替労働力になってはいけない。常用雇用者がどんどんそこに切りかわっていくとかいうことであってはいけない。あくまで、そういう本来の派遣の趣旨に基づいたものでなければならない。だから、それは一年ぐらいのものだということでやられたということで、これは、今までの議論経過で非常に大事な部分の一つだというふうに思っておるのです。それが努力規定という部分は弱いのではないかというふうに思うわけです。  その点、実効性が果たして担保できるのかなということでありますが、これは、努力義務にとどまったのはなぜなのかなという気がするのですが。
  80. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 一年間継続して派遣をされた労働者について、事業所が常用労働者を採用しようというときには、優先的にその人を採用するように努力しなければいけないという、今おっしゃいましたような努力義務規定を入れているわけでございます。  先ほども申しましたが、各国にはみなし雇用というふうな制度も確かにあるわけでありますが、ただ、日本の法制度におきましては、特定の労働者を採用しなければいけないというふうに法律で義務づける法制というのは、やはり企業における採用の自由とか営業の自由とか、そういったこととの関係でなかなか難しいものがあるのではないか。また、現在の社会的コンセンサスも、そういったことを義務づけるというところまでは形成されていないのではないかというふうに思います。  そういったことで、一年間継続して派遣された労働者の雇用の安定と事業主の方のそういった採用の努力と、こういった規定は調整のところのぎりぎりの規定ではないかというふうに思います。ただ、いずれにしましても、一年間を超えて派遣を受け入れるという場合には、労働大臣による勧告や、あるいは公表の制度というものがあるわけでございますから、これによりまして適正に対応すべきではないかと思います。
  81. 川端達夫

    ○川端委員 ありがとうございました。  ほとんど時間がなくなってしまいましたので、派遣法の部分はこれぐらいにいたしまして、大臣に、せっかくおいででございますので。  きょうの議論はずっと、雇用は深刻だということの部分に終始をしているわけですけれども、実は、五十年とかの長い目というか、五十年は相当先ですけれども、中長期的に言えば、この前も、厚生省の人口問題研究所の統計でも、いわゆる十五歳以下の子供の数がどんどん減っていると。まさに少子・高齢社会にどんどん入っていっているわけです。  今は深刻な雇用不安の中だというけれども、少しロングレンジで見たときに、日本経済構造という部分で二つありまして、一つは、いわゆる労働力人口がどんどん減ってくるではないかといったときに、これからの日本のあるべき社会みたいな部分の求められる労働力というのをどういうふうに考えておられるのか。  いろいろな生活面もあるのですけれども、一つは、高齢社会の中で、元気で働く意思のある、経験の多いお年寄りの人というのはいっぱいおられるわけですね。ところが今、実は、就職しようと思っても、〇・一以下みたいな部分でほとんど仕事がないんですけれども、そういう人たちがちゃんと働けるという政策というかビジョンと、それから、先ほどもありましたけれども、少子社会という中で、いろいろな背景があるんでしょうけれども、女性がどんどん能力に応じて働けるという社会環境と同時に、子供を産み育てても働き続けられるというこの二つの部分、それがないと、私は、多分働く人の人数が、今は失業だなんて言っているけれども、足りなくなるんではないか。足りなくなったときに三つしかなくて、高齢者と女性の職場進出をもっともっと図らなければならない、そういう人が働ける環境であることと、女性が子供を産んでもやっていけるということであること、これが二つともだめだったらどこかよその国から助けてもらうしかないという状況になるのではないかと思います。  非常に漠とした話ですけれども、そこら辺の中長期的な日本の労働力問題というのをどういうふうに考えておられるかだけお聞かせをいただいて、質問を終わりにしたいと思います。
  82. 甘利明

    ○甘利国務大臣 確かに、二〇〇五年ころをピークに労働力人口が減少するということが言われているわけであります。そして一方で、適正規模の経済成長を確保しなければならないということも言われている。これは、福祉水準を維持する意味でどうしてもそうしなければならない。そうしますと、経済成長というのは投下資本と投下労働力掛ける生産性向上という数字で出てくるわけでありますから、労働力人口の減少というのは、経済成長を維持できるかという深刻な課題に直面をしていくわけであります。  そこで、川端先生御指摘のとおり、労働市場に参画していない人をもっと活用するか、あるいは外から導入をしていくかの選択を迫られる。経企庁長官とはその辺はちょっと違うのでありますけれども、私は国内市場で対応していくべきだと。外国人労働力の流入というのは、最終的には移民政策まで正面に向き合ってやらなければならない、都合のいいときだけ来てもらってあとは帰ってくださいというのはなかなか難しいんでありますから、これは選択肢としてとるべきではないと個人的には思います。  そこで、高齢者の方々が意欲を持って参画できるよう、あるいは女性の方が子育てと両立をして仕事が持てるよう引き続きどう環境整備をしていくか、その方向でやるべきだというふうに考えております。
  83. 川端達夫

    ○川端委員 もっと掘り下げていろいろ御議論をしたいんですが、時間が来てしまいました。  ありがとうございました。終わります。
  84. 岩田順介

    岩田委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  85. 岩田順介

    岩田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。桝屋敬悟君。
  86. 桝屋敬悟

    桝屋委員 公明党・改革クラブの桝屋敬悟でございます。  職業安定法労働者派遣改正案につきまして引き続き質疑をさせていただきます。昼からでありまして大変ギャラリーも多いようでありますが、しっかり取り組んでいきたいと思います。  最初に、午前中も厳しい現下の雇用情勢等をめぐるさまざまな大きい話があったわけでありまして、その辺の確認を何点かさせていただきたいと思うのであります。  以前の委員会でもお話をさせていただいたことでありますが、私も時々しかこの委員会に来られませんが、いずれにしても、完全失業者失業率も過去最高がずっと更新をされている。今、四・八%、五%弱。五%を超えるのではないか、こう言われているわけでありまして、実は、恐らくここまで来るだろうという議論は昨年来この委員会でも何度もあったところでありまして、そういう意味では、私どもも一番懸念をしておった事態が着実に現実化している、こういう懸念を持っているわけであります。午前中の議論の中でも、大変な異常な事態だ、こういう認識も大臣の方から示されたわけでありまして、その点は本当に私たちも共通の思いであります。  四月十四日の労働委員会で、総理から御指摘のあった例の総点検の問題について議論をさせていただきました。その後、四月の二十三日の閣議で、総点検の報告が経企庁長官からあったということも伺いました。  つぶさに私も内容を見せていただいたわけでありますけれども、あのときも議論いたしましたけれども、四月二十三日経企庁から発表されました報告を見ますと、特に雇用対策の部分につきましては、今までずっと議論されていたこと、もちろん雇用活性化総合プラン、これは緒についたばかりという部分もありますので報告としては大変難しいというのは前回の議論のときもさせていただいたわけでありますが、特に新しい項目はないわけでありまして、着実に既定の路線を進んでいく、こういうことかなというふうに読ませていただいたわけであります。  特に、その中で、この前の議論のときも大臣は雇用活性化総合プラン、中小労確法の改正、あるいは中高年の再就職の支援、ホワイトカラーの離職者の訓練拡大というようなことを何点かお話をされたわけでありますが、あのときも、たしか高齢者の離職者の再就職、ここが一番大きな問題なんだというお話もされました。  私も現場を回ってみますと、若い方は、午前中の議論もありましたが、需給のミスマッチも当然あるわけでありまして、今までの失業の状況と違う状況があるわけでありますけれども、中高年に至っては、再就職をする場合の年齢要件、年齢制限というような問題、これは切実な問題でありまして、これは大臣も恐らく経団連あたりに大変な要請をされておられるということも想定をするわけでありますけれども、再就職の場合の年齢の問題、これについて大臣が今取り組んでおられる状況をいま一度確認をさせていただきたいと思います。
  87. 甘利明

    ○甘利国務大臣 ただいま御指摘のとおり、雇用失業情勢が特に中高年齢者にとって厳しいといいますのは、若年失業率も高いですけれども、有効求人倍率が圧倒的に違う。失業してしまうと、次に再就職するチャンスが中高年齢者の方がはるかに少ないということが一番深刻な点でありまして、長期に失業されている方々になぜ次の就職が見つからないのかというアンケート調査をいたしますと、年齢要件が該当しないんですというのがやはり一番多かった。二三%でありました。  つまり、年齢要件がというのは、もうその待遇でいいです、いいから雇ってもらいたい、しかし年齢がぶつかっちゃうということで、そこのところだけ解決すれば実は二三%が数字の上からは吸収されるのではないかという思いに立ちまして、特に経済団体要請に回らせていただいたところであります。  従来から、年齢要件の緩和については恒常的な課題として申し入れをさせていただいておりますが、特にこういう厳しい雇用失業情勢にかんがみて、日経連や日商に出向きまして、さらなる改善を関係団体に要請してくれということを具体的にお願いをしてきたところでございます。  それから、現場の職安におきましても、求人登録をされます企業についても、年齢要件がついている場合が多いのでありますけれども、年齢要件の緩和ないし撤廃について窓口でも求人登録企業に要請をするということを徹底をする、そういうことを全国職業安定主務課長を緊急に招集をいたしまして私から要請をしたところでございます。
  88. 桝屋敬悟

    桝屋委員 大臣、大変御苦労されてさまざまなところにそうやってアプローチをされる、その結果がどうなのかということが一番大事なわけでありますけれども、その後、今の四月二十三日の報告、それからさまざまな形で、特に総理が訪米された、そうした経緯の中でいろいろなお約束をされたような報道等も聞いておるわけでありますけれども、では、これからどうするのか。  大変に厳しい状況の中でともかく雇用活性化総合プランを立てて、それのフォローもやった。フォローがまだまだ進んでいるところですから十分できていない、評価そのものがまだできない状況にあるかもしれませんけれども、私は、現下の厳しい状況の中で総理もいろいろな思いを国民に対して矢継ぎ早にシグナルを出されているような気がする。その対応というのは私は当然必要であるし、この厳しい状況考えると、できることは何でもしなきゃならぬだろうと思うのでありますが、総理は五月中にまた新たな総合雇用対策をまとめるように労働大臣あるいは通産大臣に指示をしたという話も伺っているわけであります。  これからどう動いていくのかということが私も大変気になるわけでありますけれども、既にこの委員会でも何度も議論があったようでありますが、もう一度その辺を、これからの状況について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  89. 甘利明

    ○甘利国務大臣 桝屋先生御指摘の話は、四月の二十三日の閣議において、特に総理から御発言がありました。これからは特に雇用が大事だから、労働大臣は通産大臣や文部大臣、関係閣僚、関係省庁と打ち合わせをして、新たなる雇用対策をしっかりとやってもらいたいという特に御指示がありました。  その背景には、実は今、日本の産業競争力を抜本的に取り戻そうということで競争力会議というのが行われております。そこの会議での議論というのは一部マスコミを通じて表に出ているところでありますし、先生もよく御承知だと思うのでありますが、競争力をつけていく際に三つの過剰感がある、一つは債務の過剰、それから設備の過剰、それから過剰雇用ということがしばしば言われるわけであります。その過剰を適切に対処することによって競争力がついていくというような議論がなされているわけであります。全部ではありません。  ただ、総理が非常に気にされているのは、日本を再生させるために産業の競争力をつけていく、それがイコールどうも人員のリストラにつながるというようなことは本来意図していないところであるので、競争力をつけるイコール雇用を削減するということではないのだという御自身の思いと危機感を持っておられまして、産業競争力会議の中で、仮に雇用に影響があった場合にそれを吸収するような措置、あるいは失業なき労働移動、あるいは雇用の確保をするための措置、それらについて政府を挙げて取り組んでほしいという、特にその御懸念を持って指示をされたところであります。  その際の雇用対策につきましては、具体的にいろいろな指示が来ておりまして、人材のエンプロイアビリティーの向上と雇用のミスマッチの解消に向けて、まず、産学官の連携のもとに、職業訓練期間中の失業給付の延長をも活用した求人ニーズに応じた離職者等の能力開発の強力な推進、そして、求人と求職のミスマッチの解消のために、官民一体の取り組み体制の構築及び求職者状況に応じたきめ細かな相談、再就職支援、あっせんサービスの充実について検討すべきであるということが指示をされております。  もちろん、これは雇用の場をつくるという意味で、通産大臣に雇用含みの産業政策についての注文も行っているようでありますが、それらが両々相まって、今月、五月中に発表されるということになるわけでありまして、今、事務局レベルで鋭意詰めているところでございます。五月中にも具体的な策としての発表ができるのではないかというふうに思っております。
  90. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  そういたしますと、五月中に今から検討される雇用対策、それと、きょうあたりの新聞を見ますと、既に数日前からこの記事は出ておりますけれども、総理がおっしゃっている産業競争力強化あるいは雇用対策、こうしたものについて法整備も含めてやっていきたい、こういう話も出ているわけでありまして、いろいろな報道を見ますと、政府全体としてどう取り組まれるのか。ここまでは言えないかもしれませんけれども、総理はどうも、既にこの国会も会期一月ということで、会期の話までされたという話も聞くわけであります。  そこまで総理が思いを込めてやっておられる、これから進もうとしている。これは国民にとって大変に関心のあることでありますけれども、五月中におまとめになる雇用対策と、もちろん労働省、通産省それぞれ所管があるでありましょう、総理が言われている、予想される法整備、これとの関係はどうなるのか、それがちゃんと整理をされているのか、お示しをいただきたいと思います。
  91. 甘利明

    ○甘利国務大臣 法整備については、正直まだ把握をいたしておりません。  昨日も大蔵大臣とちょっと立ち話をしたのでありますけれども、大蔵大臣自身も総理がどこまで思いをはせておられるのかまだ全体像がつかみ切れないと。総理もいろいろな機会ごとに自分の真情を吐露されていますけれども、それを具体的にどこまでどうしていくかということは、まだ完全に全体像が組み上がっておられないのかというふうに思います。  ただ、いずれにしても、直近にできるものは直ちに組んでくれと。それから、産業競争力会議におきましても、どこの部分を強化すれば産業競争力がついて景気がさらに上向いていくのか、どの法律のどれを直せばどういう効果が期待できるのか具体的に指摘をしてくれということを産業界にはおっしゃっておられます。ただ漠然と、政府は頑張ってやれとか、政府は競争力をつけるようなあらゆる措置をとれみたいな話では困る、具体的にどこのどれをどうしてくれということで要請をしてほしい、そうすれば具体的に検討ができるから、そういうふうにおっしゃっているのであります。  法整備の方もいろいろなことが言われているのでありますけれども、その法律を、例えば産業競争力をつけるための過剰設備の処理に対する法体系をつくるのかつくらないのか、そして、もしそれをつくるとしたらいつの国会に出すのか等々もまだ決まっていないと思います。  それで大蔵大臣に、対策は今つくっておりますけれども、予算の話とまるで切り離しては議論ができないものですから、今のところの私への御指示は少なくとも新たな補正予算云々という話は届いておりませんから、それはないということのもとにやるのですねという確認をしておりますが、そう理解してやってくれと、これから先どうなるかはまだ将来の話であるから、五月に組む話については今ある予算の中で工夫をしてやってもらうということでやってほしいという話であります。  ですから、新たな法律が今国会に出るのか出ないのかはちょっと今のところわかりませんが、現状の中で組める雇用対策、競争力政策が、比較的まとまって今月中に出されるということは確かでございます。
  92. 桝屋敬悟

    桝屋委員 まさに今大臣が御説明されたことは本日の朝刊あたりに出ている話でありまして、恐らくそういうことで動いているんだろうなと我々も理解をしているわけであります。  午前中の議論でもありましたが、雇用情勢の異常なまでの厳しいこの状況の中で、やるべきはやはりきちっと手を打っていかなければならない。残り少ない会期ということもありますけれども、私は、会期はどうであれ、必要なことはやはりきちっと政府において立案をしていただいて、どんどん進めていただかなければならぬだろう、こう思っているわけであります。そういう意味では、今の大臣の話では、法制化までは労働省としてはまだその緒についてはいない、まだ検討の段階だ、こういうふうに理解をするわけであります。  そうしますと、五月中におまとめになる当面の雇用対策、これは予算との絡みも大臣は言及されましたけれども、これは大型な補正等を伴うものではない、当面、今まさに労働省がお持ちの手ごまの政策でもってできることをやっていこう、こういうことで理解をしてよろしいのですか。必要であれば、総理あるいは大蔵大臣がどうであれ、労働大臣として、場合によっては財政出動も必要だという御認識がおありなのかどうなのか、まだそれは必要ないという段階なのか。
  93. 甘利明

    ○甘利国務大臣 雇用対策は喫緊の課題でありますし、いただけるものがあるならぜひいただきたいとは思っておりますが、大蔵大臣も、補正についていろいろ質問が来ますときに、四—六の経済状況等を見てその後に検討すべき課題ではないかということもおっしゃっております。  そこで、私といたしましては、補正と離れてできるとすれば、予算でいえば予備費にかかわるのでしょうか、そこを多少使わせてもらえればありがたいということを頭の隅に置きながら、新たな雇用に資する対策を今組ませているところであります。  まだ調整中ですから詳しいお話はできないのですが、私なりに考えたイメージとしては、アウトプレースメントという業が民間であります。そのアウトプレースメントから肩たたきの部分を外してもらって、それを公的にやるというイメージを描いておりまして、それに失業者の主体性、自主性を加味したものにしたいというふうに思っております。つまり、失業された方の入り口から出口までといいますか、就職の結びつきまである程度考えながら訓練をする。もちろん従来もそうなんですけれども、より実情に沿って、あるいは近未来のニーズに沿ってそういう仕組みを組んでみたいということを考えておりまして、それ以上は今作業中でございますので、五月中にもお話ができるかというふうに思っております。
  94. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  いずれにしても、今まさに検討中の状況をお聞きしたわけでありまして、今大臣はできる限りの御発言をしていただいたというふうに思っておるのでありますが、おっしゃったような内容について、ぜひこれから大変な厳しい状況の中でお取り組みをお願いしたい。特に、職能開発プラン、それから就労促進、就労支援、今大臣は入り口から出口まで、こういう話がありましたけれども、大臣の御認識のとおり、今もあるんです、その仕組みは。あるんだけれどもそれが機能していないということでありまして、午前中の話でもありましたけれども、職安にまさに車が列をなしているという状況の中で、本当に何とか手を打たなければならぬ、そんな思いを我々もしているわけであります。  さて、そんな厳しい状況の中で、今回の職業安定法あるいは労働者派遣法、この改正の動きでありますが、特に派遣労働を原則自由化にする、こういう動きでありますが、先ほどの経企庁が発表されました報告でも、労働力の需給調整機能の強化ということで今回の改正の内容がありますけれども、今回の改正が労働市場にどれぐらい影響を与えるのかということでございます。  午前中の話を聞いておりますと、厳しい状況の中で売り上げとしては非常に伸びているという話もありましたけれども、人材派遣市場そのものがもう縮小傾向にあるのではないか、こういう話もあるわけでありまして、正社員から派遣社員への切りかえが既に一巡をしている状況ではないか、むしろ契約解除に踏み切る大手企業がふえたこと、そうした背景もあるのではないか、こんな報じられ方もしているわけでありますけれども、今回の人材派遣労働者派遣、この法改正によって新たな雇用創出が期待をされるのかどうか、あるいは労働市場にどういう影響を与えるのか。特に、雇用創出という観点で何か期待する部分があるのかどうか、この辺を最初にお聞きしてみたいと思います。
  95. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般、労働者派遣法の改正に伴いまして、その対象業務が拡大をする、ただしそれは常用代替の防止ということで一年以内のことであるということで、いろいろな条件を付しながらこれは拡大していくということになろうと思います。  先ほども議論がありましたが、現在の経済状況を反映して、今少し伸び悩みあるいは落ち込んでいる部分もあると思いますが、この派遣業務というものは、法制定以来、現在二十六業務ですが、これについてはかなり順調に推移をしてきているというふうに思います。派遣だけでなくて、一般常用についても今大変厳しい状況ですが、それは経済変動の一時的な波を受けているのではないかというふうに見ておりまして、今般これが拡大されることによって、労使の需給が合致する部分についてはこの派遣業務が拡大するということを期待し、またそれによって雇用情勢の改善に資するということを期待しているわけであります。  ただ、先ほど申し上げましたが、一年以内ということで厳格に制限されていることとか、やはり派遣業者というものがそれぞれ得意の分野においてこれをやっていくとなると、すべての労働者がとりあえず対象業務として想定されるということはなかなかなくて、おのずと得意の分野、一定の力量の発揮できる分野においてこれが伸びていくだろうというふうなことを考えますと、なかなかこれが急増していくというふうな事態は考えられないのではないか。また、諸外国で完全に派遣を自由にやっている国の事情を見ましても、数%ぐらいの派遣労働者の割合であるということを考えますと、派遣労働というものが短期労働市場においても支配的に大きくなっていくというふうな状況を見通すということにはならないと思います。
  96. 桝屋敬悟

    桝屋委員 私も実はそういう認識を持っておるわけでありまして、昨今の厳しい雇用情勢に有効な手だてになるということでは必ずしもないんだろう、こんなふうに思っているところであります。したがって、今回の改正では原則自由化になるわけでありますから、私どもとしては、むしろ労働者の保護といいますか、そうした観点をこの委員会でもしっかり議論をしなければならぬだろう、こんなふうに思っているところであります。  具体的な内容で何点か確認をしたいのでありますが、一つは、派遣の適用対象業務であります。  今回、私が気になるのは、ネガティブリストに上がる、中職審の意見を聞いて命令で定める、この部分がどんなものが上がってくるのか、現状、どういう議論になっているのかということをぜひ確認をしたいと思っているのです。この中職審の意見を聞いた上で命令で定める業務、これを決める上で、どういう決め方になるのか、どんな業務が上がってくるのか、これを決める理念というのはどういうことになるのか、最初に確認をさせていただきたいと思います。
  97. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今回の改正法案では、法律におきまして、港湾、建設あるいは警備業務、こういったものと製造業の生産工程の一部というふうなことで直接規定しているもののほかに、今おっしゃいましたように、政令で除外するものを定めるという余地を残しているわけであります。ここのところは条文が相当複雑に書いてあります。  ちょっと読んでみますと、これは四条の規定なのですが、労働者派遣を認めることがその業務の適正な実施を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと明確に認められる業務、こういうふうなことになっておりまして、条文は大変複雑なんですが、この規定の趣旨は、派遣労働というのは使用者と指揮命令権者が違うというようなことで、使用者も指揮命令権者も同じである労働者とこれが異なる労働者とが一緒に仕事をするということによってその業務をどうも適正に行うことはなかなか困難だ、難しい業務があるとすれば、そういったものは政令で除外していこう、こういう理念であろうというふうに思います。  警備業務法律には除外業務として今書いてあるわけですけれども、この警備業務は、指揮命令権者からそのもとで働く労働者から、これはすべて請負形式で、責任を持って一体として行うことが必要であるというふうなことで従来から警備業務は適用除外ということにしていたわけでありまして、こういったふうに使用者も指揮命令権者も同一の労働者によって行った方が業務が的確に遂行できるというふうなものはこれから議論しながら政令で除外していこう、こういうことになろうかと思います。
  98. 桝屋敬悟

    桝屋委員 私は、この分野はこの委員会で厚生省のお仕事との絡みをずっと議論をしてきているわけでありまして、前回の派遣法改正のときも随分しつこく議論をさせていただいたわけでありますが、今の局長の御説明でありますと、派遣適用対象業務については、その事業の性格上、実施の適正さが確保されるようなものでなければならぬ、あるいは労働者就業条件等を考えると、それがどう確保されていくかということで判断をする、こういうことかなというふうに理解をするわけであります。  ずっと私の中で問題になっております介護とか看護、こうした分野については、これから中職審で議論ということになるのでしょうけれども、どういう方向で議論されていくのか。前回の派遣法改正のときも大変私は気になったわけでありますけれども、この議論状況についてお教えいただきたいと思います。
  99. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 政令でどういうものを定めるかということについて、現在時点で私どもがどうこうということを申し上げるのはもちろん適当でないし、具体的にも考えていないわけであります。  したがいまして、従来どういう議論があったかということを簡単に触れさせていただきますと、看護につきましては、医師と看護婦、こういったものはやはり一体として患者の生命あるいは健康を守っていくという仕事をする、そういった業務ではないだろうかというふうなことで、例えば看護婦さんについて派遣でやることはどうか、慎重にすべきではないかというふうな意見が過去にあったというふうに承知しております。  また、介護につきましては、これも派遣対象業務にしたらどうかという議論がかつていろいろ行われたようですが、例えば在宅の方の介護につきまして、これは従来から請負で行われている、そういったところに派遣労働者が入ってくることはどうかというふうなことなどなど、いろいろと過去においては議論があったというふうに聞いておりますので、政令でいろいろ関係省庁等々と議論をする場合には、こういった分野については議論対象にはなろうかというふうに思います。
  100. 桝屋敬悟

    桝屋委員 前回の派遣法改正のときと大体同じ御説明でありまして、これから議論されるのだろう、今はそれは決めていないということだろうと思うのです。  そうしますと、この法律がもし成立したならば、いつぐらい、どんなふうにこの分野というのは決まってくるのでしょうか。今、恐らく議論対象にはなるだろう、こう言われましたね。私もぜひ議論対象にしてもらいたいなと思っているのでありますが、日程的にはどんなふうになるのでしょうか、これからの流れとして。今の法案が成立するということを前提で結構でございます。
  101. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今御提案申し上げております派遣法改正については、施行日を本年の七月一日というふうに規定しているわけでありまして、法律が施行になるときには、当然、関係政令、省令も一体となって施行されるべきものだというふうに思いますので、現在の施行日を前提としますと大変緊急な議論が必要だ、急いだ議論が必要だというふうに思います。
  102. 桝屋敬悟

    桝屋委員 七月一日に施行されるのであれば、それまでにこの部分も議論をするということですか。もう一回確認をさせていただきたい。
  103. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 現在は、政令で定めませんと法律に書いてあるものだけが適用除外になるということですから、政令の制定がおくれますと、一たん適用して後で適用しないということはできないと思いますので、法の施行と政令の施行は同時に行う必要があると思います。
  104. 桝屋敬悟

    桝屋委員 私は頭が悪いのでよくわからないのですけれども、具体的に聞きましょう。  介護とか看護の部分については、もし七月一日施行ということになれば、当然その舞台で、さっきの局長の御説明では議論にはなるだろう、こうおっしゃいましたが、まだ議論の結論が出るかどうかはわかりませんね。これはわからないと思いますが、一番近い可能性でいきますと、七月一日施行に向かってこれから中職審あたりで議論が行われる、法が成立した暁にはそういうことになるというふうに理解していいですか。
  105. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 あくまで改正法案の成立が前提でございますが、成立しました場合には法律と政令とはセットで施行しませんと、一遍対象業務として解除して、後に政令でそれを否定するということはできないのではないかと思います。
  106. 桝屋敬悟

    桝屋委員 そうしますと、局長、わかりやすく教えてもらいたいのですが、看護と介護は恐らく局長の御答弁では議論対象にはなるでしょう、中職審の議論対象にはなるでしょう。その議論の結論が得られるかどうかは、これはやってみなければわからぬだろうと思うんですね、恐らく。そして、これも仮定の話なんですけれども、結論が出れば、七月一日からその分野については政令の中できちっと明言をされる、明確にされるという可能性もあるということでございますか。
  107. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 政令で除外するというふうに決めませんと自動的に適用になるということでございます。もちろん一年以内ですけれども、適用になるということでございます。
  108. 桝屋敬悟

    桝屋委員 わかりました。やっと大分理解できたのですが、そうしますと、介護とか看護とかというのは、前回の改正のときにも私はこの委員会で随分議論しまして、大変にある分野では関心を持たれている話題でありまして、そういう意味では今までの議論の経緯があるわけでありまして、私は、恐らくこの法律が施行されるときにはこの分野が除外をされるかどうか、ある意味では最初の結論が出るのだろうな、こういうふうに思います。  そういう意味では、例えば看護ということは、あるいは介護にしてもそうでしょうけれども、中職審で議論をするということもありますけれども、一つは、専ら厚生省と労働省の事務方でもって十分議論をし、協議相調えば中職審で議論していただく、こういう流れになるだろうと思うのですけれども、私は看護の部分は大変難しいというふうに理解をしておるのですが。  介護の部分は、これからの多様な介護ということを考えますときに、これはその議論をもう一回ぶり返しませんけれども、一度は、労働省の中で私的な研究会をつくられて議論されたときに、現在の職業紹介という形よりもむしろ労働者派遣の方が国民の介護サービスということを考えたときには有益性があるのではないか、高いのではないかという議論もあったわけでありまして、それが今日どう議論が続いているかというのは私も定かではありませんけれども、そんな議論がかつてあったわけでありますから、私は、ぜひこの分野は議論をしていただいて一定の結論を出していただきたいな、こう思うのであります。  中職審の議論はともかくとして、まずは厚生省と労働省さん、とりあえず議論しなきゃならぬだろうと思うんですね。うまく議論が進むかどうか、やってみなければわからぬと言われるのでは、私ももう少し言ってもらいたいわけでありますが、今までの経緯からしますと、今回の法改正があるわけでありますから、大体その先どんなあんばいかぐらいはお示しをしていただきたいなと関心を持っているわけでありまして、もう少しわかりやすい御説明をいただけないかな。国民関心を持っておりますから、再度お尋ねをしてみたいと思います。
  109. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般の法改正に伴います政令においてどういった業務を定めるか、これを予断を持ってこの段階で申し上げることは適切でないと思うのですが、これもあくまで過去の経緯として申しますと、これから介護というのはますます重要な労働になっていくというふうなこともいろいろと考えまして、労働省はかつて介護は派遣労働の対象にすべきであるという結論を出したことがございました。私どもとしては、そういったものを踏まえながら検討させていただきたいと現時点で思っております。
  110. 桝屋敬悟

    桝屋委員 そこまで話をしていただけると大分私の心も休まるのでありまして、今まで一回そういう結論を出したことがあるというふうにおっしゃいましたけれども、多分それはまたいろいろな状況の中で変わっているだろうと思うのでありまして、ぜひ鋭意検討していただきたい。簡単なことではないというのは私も十分理解をしているつもりであります。特に看護については、これは簡単にはいかないだろう。しかし、介護の部分についてはぜひとも私は議論をしていただきたい。  これは前の大臣にも、介護労働者確保ということで厚生と労働と今までとかくの議論があったということも私は指摘をさせていただいたわけでありますけれども、近い将来、省庁再編の法案もいよいよ動き出すわけでありますから、厚生、労働一緒になって作業されるわけでありますから、そこはぜひ前向きな議論をお願いしたい。どっちにすべきかということは、私自身もまだよくわからない、大変悩んでいるところはありますけれども、そこは結論を避けずにぜひ議論をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。十分な関心を持って見ていきたいというふうに思っております。  そこでもう一点だけ、ちょっと議論が離れますけれども、どうしても私が労働委員会に立ちますとこの話題を一回はしないと済まぬわけでありまして、介護保険制度と有料職業紹介との問題であります。これもきょう結論が出る議論とは思いませんけれども。  現在、市町村、都道府県ではいろいろ介護保険の準備作業が進んでおります。大変な混乱もあるというふうに聞いておりますけれども、そうした中でさまざまな試行錯誤がされている、それぞれの市町村あるいは県の実情によりましてさまざまな検討をされているということを聞いております。  厚生行政の中で行われております介護保険のサービス、ホームヘルプサービス等と有料職業紹介との関係、私は、厚生省が進めております介護保険制度の中で、有料職業紹介事業と連携できるものはぜひ連携させてもらいたいな、こんなことをずっと議論しているわけでありますけれども、どうでしょうか、随分議論が進んでいる介護保険制度のホームヘルプサービスの中で、有料職業紹介事業と連携をしたありようといいますかあり方といいますか、そうしたものは検討されるのかどうか。これは、きょう厚生省さんに来てもらってもよかったわけでありますけれども、あえて厚生省さんを外して、労働省の御見解を、今の現状を伺いたいなというふうに思っております。
  111. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 この問題はもちろん厚生省ともよく議論を詰めなければいけないと思いますが、介護保険の指定業者が有料職業紹介事業者としてこれを兼業する、有料職業紹介の許可も受けるということにいたしまして事業を行うということは支障がないのではないかというふうに私どもは考えております。
  112. 桝屋敬悟

    桝屋委員 今の局長の御答弁も大変私の心を満足させるに十分な御回答でありましたので、重く受けとめておきたいと思います。  と申しますのも、この部分で随分大臣にも、冒頭申し上げましたけれども、大臣の御指導をいただきまして、厚生、労働一緒にしっかり議論していただいているということを高く評価したいと思います。ことしの三月三十一日の三時からやっていただいたという、何か意味のある数字かどうかも私考えながら、鋭意お取り組みをいただいているということについては評価申し上げたいと思います。  これは私はいつも言っておりますけれども、あくまでも地域の実情で展開されるべきでありまして、とかく上から、中央、国の段階から余り難しいことを言っていただきたくないな、こんなふうに思っているわけでありまして、蛇足でありますが、ぜひともお願いをしておきたいと思います。  さて、また労働者派遣の問題に戻りますけれども、今度は派遣労働者の保護の観点議論させていただきたいと思うのですが、これについても職業紹介なんかと同じようにさまざまな問題が現場であるということを聞かせていただいております。  特に、きょう取り上げたいのは、これは会計検査院あるいは行政監察あたりでもさまざま指摘されておりますけれども、健康保険等への加入の問題でありまして、大変にトラブルが多い、あるいは本来加入すべきが加入されていない、したがって、会計検査院から指摘されてばっくり後から追徴されたという話も伺っているわけでありまして、今回調査室につくっていただいた資料の中にもそうした実態が出ているわけでありますけれども、派遣労働者社会保険等への加入の現状、それから今回の法改正ではどういう取り扱いになっているのか、最初にそれを確認させていただきたいと思います。
  113. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 まず、加入状況の方ですけれども、加入につきましては雇用主である派遣元が全面的にその義務を負っているわけでありますが、平成九年の労働者派遣事業実態調査によりますと、雇用保険については加入している者が七三・七%、健康保険については六四・二%、厚生年金については六〇・九%、こういった労働者について加入がなされているところでございます。  ただ、厚生年金等々、加入の要件がありまして、派遣労働者についてこれは全員が加入義務があるというものではございませんで、そこのところの内訳はありません。したがいまして、加入の義務のない方も含めた派遣労働者のそのときの適用状況ということで、これは意味のある数字かどうかよくわからないのですけれども、概略で申しますと今のような適用状況になっているということでございます。  今般、社会保険あるいは労働保険等への加入の問題は大変重要な問題でございまして、審議会でもこの点についてきちんと手当てをするように指摘を受けているわけでございます。そこで、今回の改正に当たりましては、派遣元事業主社会保険等の適用について処罰を受けた場合には、許可等の欠格事由に該当するということにしているわけでございます。また、このことによりまして、既に許可を受け、あるいは届け出をして事業を行っている派遣元事業主につきましても、当該欠格事由に該当する場合には、許可の取り消しあるいは事業廃止命令の対象となることになります。
  114. 桝屋敬悟

    桝屋委員 現状については数字の御説明がありましたけれども、私も現場でいろいろ聞いておりますと、加入すべきが加入されていないという実態が大変あるわけでありまして、したがって会計検査院のこの資料にも相当大きい数字が出ているわけでありますが、これはぜひとも労働者保護の観点から解決すべきはしなきゃならぬ。特に、原則自由化という時代に踏み込むわけでありますから、この部分についてはやはりきちっとすべきだ。  今、この法案では、当然ながら社会保険の部分で処罰をされた者については欠格事由になるのだ、したがっていいかげんなことはないということだろうと思うのですけれども、果たして私はそれだけで本当に今の問題が解決するのかな、こういうふうに思っているわけであります。  それで、今回のこの法律案改正に対する審議会の答申を見てみますと、社会保険の適用等につきましては、労働者代表委員からは、社会保険制度等、現行の枠組みが登録型派遣労働者実態に合致していないことを踏まえ、新たな立法措置を含め社会保険制度等のシステムを確立していくべきである、こういう御意見があります。それから、雇用主代表委員からは、やはり同じような趣旨だろうと思うのですが、制度そのものが派遣労働の実態に合致していない面もあるので、その実態や特性等を考慮した方向での社会保険制度等及びその運用のあり方について見直しが図られるべきである、こういうことが答申の中に入っております。  私は、まずこれは何を意味するのか十分理解できないところがあります。と申しますのは、派遣労働という労働の実態が現行のさまざまな社会保険制度とうまくマッチングしていないということを言っているわけでありまして、したがって、制度のあり方あるいは運用についてもよくよく検討した方がいい、こういう答申になっているわけであります。  今回原則自由化になるわけでありまして、今までと全く違う時代が始まるわけでありまして、先ほどの、今回の法案で欠格事由等に入れていくんだということだけで、今の派遣労働者社会保険等の加入をめぐっての混乱が本当に解決するんだろうか。実態に即していないものは、どんなに法で枠をはめても、規制をかけても、これはなかなか改善しないわけでありまして、やはり今なぜそういう問題が起きているのかということをよく見きわめて、せっかくの機会でありますから制度の見直しを行うべきだろう、私はこう思っているのであります。  そこで、こうした答申等の内容について、きょうは厚生省さんに来ていただいておりますが、現行の社会保険制度で、派遣労働者派遣労働の実態から見て、実態に即していないといいますか実態に合致していないというようなこの指摘、表現、これはどういうふうに理解をしたらいいのか、お示しをいただきたいと思います。
  115. 辻哲夫

    ○辻説明員 登録型の派遣労働者に関しましての御議論かと存じます。医療保険を例にとりまして適用の関係を申し上げます。  登録型の派遣労働者の場合、就労期間中、つまり派遣期間中でございますけれども、これはあくまでも被用者ということでございますので健康保険の被保険者となる。その方が待機中、つまり登録期間中ということでございますけれども、これは被用者の形態ではございませんので、年間収入に応じまして、具体的には、百三十万円を超える年間収入がございますときは国民健康保険の被保険者、それから百三十万以下の収入の場合は健康保険の被扶養者、こういったなかなか複雑な適用関係になっているのは事実でございます。  また、就労する場合も、雇用契約期間が二カ月を超えないという非常に短い形で断続されるというような場合には、健康保険の適用の場合におきましても、従来から日雇い健保、日々の雇用という形の適用形態がございますので、そちらの被保険者になるということで、率直に申しまして、適用関係が就労実態に応じまして大変複雑といいますか、動くというのは事実です。  私どもといたしましては、現実には、この制度についての事業主の方々の御理解とかそういったことを含めまして、まだ十分にその形が雇用実態と合わないという運用上の一つの現象ではないかというふうに理解いたしております。
  116. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  今の説明を聞いても、何が問題で、どこをどう変えればうまくいくのかというのがよくわからないんですが。今の御説明だと、現行の社会保険、医療保険制度を例にとってみても、本人の収入であったり、あるいは勤務、例えば短期雇用、これは二カ月未満あるいは二カ月以上ということなんでしょうが、そうした雇用の形態によって加入する保険制度が変わってくる、したがって、まさにそういうふうに制度が変わるものですから、労働者派遣実態からするとなかなかに適用が難しい部分がある、こういう御説明だったんですが、何が一番現場で問題になるんでしょうか。  この資料を見せていただきましたけれども、派遣元事業主が資格を取得したあるいは喪失したという届け出をきちっとしないということが問題なのか。場合によっては、当然、保険に入るということは労働者本人もあるいは事業主も負担がふえるわけでありますから、負担はない方がいいわけでありまして、そんな保険料よりも収入としてもらいたい、こういう労働者自身のニーズなのか。いずれにしても、ここをきちっとしないとこれから悩ましいことになるのではないかと私は思っておるんです。この答申は、新たな立法措置を含め、社会保険制度等の仕組みを確立していかなきゃいかぬという提言を出しているわけでありまして、これは具体的に何を検討しなければいかぬのかということをもう一回わかりやすく御説明いただけますか。
  117. 辻哲夫

    ○辻説明員 ただいまは、医療保険すなわち雇用形態にある被用者保険と、それからそうでない方、自営業の方なんかが典型でございますけれども、国民健康保険といった、大きな体系上の違う制度があります。就労の形態によってはその間を行ったり来たりという形にならざるを得ない、そのことに伴って適用が必ずしもその趣旨どおりになっていないという問題があるということを申し上げたわけです。  その場合に、特に通常は家庭の奥様といった形態で被用者の被扶養者といったような方が登録型派遣労働者になられましたときには、基本的には、今申しましたように、被用者であれば被用者の制度が適用されるべきであるという実態になっている。それは、被用者保険になりますと、本人の場合は給付率も高いわけでございます。また、被用者本人である以上は、そのように被用者の保護を図るべきだという観点から制度がそうなっておるわけで、当然、そのときには被用者の保護という観点から、より保護されやすい仕組みで被用者に適用すべきである、こういった実態になっておるわけです。それが、現実には行ったり来たりという中で、届け出は事業主がなすべきものでございますけれども、それが行われていないということが先般の会計検査院の指摘では問題になったと承知しております。  私どもといたしましては、やはり被用者は被用者の保護が、また処遇が必要でございますので、むしろその適用で、事業主の御負担とかあろうかと思いますけれども、その制度の趣旨に沿った適用をお願いしたい。労働者派遣という場合以外にも、例えば業種によりましては従業員の移動が非常に多かったり、それから年度当初に新規採用あるいは中途退職の大変多い事業所、こういったところにつきまして今言ったような手続をしておるわけでございまして、私どもとしては、労働者派遣という業態についてのみ何か社会保険で例外を設けようといったことまでは必要ないんではないか。また、労働者の保護と、どこの事業所にいようがどのような雇用形態であろうが、被用者である限りは同じように社会保険では処遇されるべきだということから見まして、むしろ適用について事業主の方々、皆様方の御理解をぜひとも賜りたいというのが私どもの考え方でございます。
  118. 桝屋敬悟

    桝屋委員 私は、派遣労働者だけを対象とした保険制度を抜本的に考えた方がいいということまではまだ言っていないんです。そこまでお答えがありまして、その必要はないというお話がありましたけれども。  いずれにしても、この資料を見ますと、例えば会計検査院で指摘された事例を見ても、七百五十七人の派遣労働者を抱えているところで、百七人については何とかちゃんとやっていましたけれども、六百五十人については被保険者資格取得届を提出していなかった。ひどい話であります。  こういう実態というのは、今の厚生省さんの御説明では、入る制度状況によって変わってくるということで手続が大変なんだという、そこの部分をきちっと事業主に対して周知徹底をするといいますか、そうしたことで随分改善ができるような御説明がありましたけれども、本当にそうなのかなと。今この辺からいろいろな声が飛んできましたけれども、靴に足を合わせるのか、足に靴を合わせるのかという議論もありましたけれども、私は、本当にその原因が手続面だけなのかなということも気になっているところであります。  そこを改善すれば果たしてうまくいくのか、あるいはまた、今回の派遣法改正の中で欠格事由にしていく、より厳しくしていくということで、原則自由化になるこの世界で派遣労働者皆さん方が本当に社会保険等にきちっと入るべきは入るという状況が生まれるのかどうか、ちょっと心配しておるんです。  今から次の話になりますけれども、例えば現場の業界の皆さんに聞きますと、二カ月での線引き、制度が変わるというのはちょっと苦しいんですと。これは、実態としては四カ月あるいは五カ月なんという形もあるわけでありまして、二カ月で線引きをするというのはいかがなものかな、これを何とか検討してもらえませんかというような声も聞いたこともあるんですけれども、そんな声は皆さん方のところへ届いておりませんでしょうか、厚生省さんの方には。
  119. 辻哲夫

    ○辻説明員 具体的な要望書とかいった形でその二カ月の問題、現在のところ私ども承知しておりませんが、察しますに、契約雇用期間が二カ月を超える場合は一般の健康保険の適用、二カ月を超えない短期の雇用契約期間のときは日雇い健康保険ということになる。日雇い健康保険というのは、日々の適用、日々の徴収でございますので、そこのところは御本人の手続の御負担も大変あろうかと存じます。  そのことではないかと拝察いたしますけれども、ただ、これにつきましては、今の日雇い形態の方そのものが、むしろきめ細かにその方の立場に応じてその方の保護をするということから、そういう手続的なあるいは御負担での受忍もしていただいております。  それから、被保険者本人の立場でいうと、今、被扶養者から登録型派遣労働者になるケースを申しましたが、例えば国保の被保険者からなる場合には、国保は大変保険料が高い状況にございますけれども、むしろ被用者の場合は、報酬比例ということでございますので負担が安くなることもございます。  もとに戻りますけれども、もともと日々雇用という日雇いの方につきましてはそういう制度があるというのが二カ月になっているということから、この二カ月を動かすことが本当に関係者の要望に合うことかどうかというところは、ちょっと現時点では判断できませんけれども、今申しましたように、業態がどうであるかというよりも、その方々の保護という観点から、いかにきめ細かく適用するかということがむしろ社会保険制度の方からは問題になりますので、何とぞ現行制度につきましてより関係者の方々に御理解を承りたいし、また、私どもも御理解をいただくようにさらに関係者に丁寧な説明をさせていただきたいと思っております。
  120. 桝屋敬悟

    桝屋委員 今のお答えでありますと、現行の社会保険制度というのは、例えば労働者派遣制度から見ても、労働者保護の観点から今の制度はそれなりに整っているということでありまして、これはやはりきちっと適用することが大事だ、そのためにきっちりと皆さん方に、派遣元事業主等に対してしっかりと周知をしていきます、こういう話だろうと思います。  今の得喪手続が通常の場合よりもやはり派遣労働の場合は手間がかかるわけでありまして、その辺は、これから原則自由化になるわけでありますから、私は、何か知恵があるのであればぜひ考えていただきたいな、こう思うわけでありまして、これはぜひお願いをしておきたいと思います。  それでもう一点、今度は労働省さんにお聞きするのですけれども、安定所と監督署ですね、安定所派遣元事業主に対して定期的に指導されていくと思うのですけれども、その中で今のような事案を見つけた場合は、労働基準法に基づくさまざまな問題を発見した場合は、ちゃんと監督署と連携ができているのかということが大変気になるわけでありまして、そこら辺は行政指導観点からは、原則自由化になるわけでありますけれども、少し考えなければいかぬ部分がないのか、こんなふうにも思うのですけれども、いかがでしょうか。
  121. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 監督署の業務も、とりわけ安定所業務も、今、大変繁忙をきわめているということでなかなか連携が十分にできていないという点は確かにあると思うのですが、基本的には派遣業務安定所の系統でこれを指導監督するということにしておりますけれども、例えば労働時間の管理とか職場における安全衛生とか、そういったものについては派遣事業主事業主の責任を負っているわけでありますから、そういったところへ監督官が臨検監督に行ったときに、違反があるというようなことについて申せば、これはやはり安定機関との連携が必要であることは申すまでもないところであります。  現状では大変不十分なのでありますが、これから地方労働局構想といったふうなことで労働機関の出先も一本化するということでありますから、その点については特に留意をしなければならないと思います。
  122. 桝屋敬悟

    桝屋委員 それから、最後にこの分野でもう一点大臣と議論をしたいのです。  私は、この審議会の答申を見まして、社会保険の適用の問題だけに限って申し上げますけれども、さっき読み上げた、現行の枠組みが登録型の派遣労働者実態に合致していない、こう書いてあるわけでありまして、これを何とか変えなければいかぬ。あるいは雇用主代表委員からもそういう声が出ているわけでありまして、昨日、私は両省からいろいろな状況を聞きましたけれども、午前中の議論では派遣労働者は全労働者の一%ぐらいという話もありましたけれども、若干それがこれからふえるかもしれません、しかし、今回の改正によって今の社会保険の問題は大きく改善するなというふうにはなかなか、現場の実態からしますとどうも特効薬がまだないような気がするのであります。  特に、制度の問題として、現行の枠組みが派遣労働者実態に即していないということについて、やはりこの答申どおりきちっと検討すべきではないか。両省に伺いましても問題点あるいは論点あたりもなかなか見えてこないのでありまして、私は、ぜひここは引き続き検討すべきだというふうに思うのでありますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  123. 甘利明

    ○甘利国務大臣 まずやるべきことは、現行の枠組みで、なおかつ履行されていない部分をきちっとやるということが先決だと思います。そして、先生御指摘の、その枠組みで拾い切れないといいますか、そういうものについてどうするか。  先ほど来、足に靴を合わせるのか、靴に合わせるのかという議論がありました。当然、行政というのは足に合った靴を提供しなければならないというふうに思っておりますが、しかし、この部分の靴というのは特注品になってしまうわけでありまして、注文をしたはいいけれどもえらく高くついて買ってもらえなかったということになりかねないので、そこら辺のところをどう対処をしていくのかという課題が残ります。これは、関係方面でいろいろと見識を伺いながら勉強させていただきたいというふうに思っております。
  124. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ぜひ引き続き御検討をお願いしたいと思います。どう考えても、私は、この答申で言っているようなことを検討しているようには見えないという懸念だけは表明させていただきたいと思います。  それからもう一点、個人情報の保護についてでありますが、派遣法第二十四条の三で新しく守秘義務が規定をされております。これも私は今の時代状況に応じて極めて大事な点だというふうに思っておるのですけれども、この立法の精神を最初にお伺いをしたいと思います。
  125. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣事業と派遣労働者の秘密の保護につきましては、ILOの百八十一号条約にもうたわれているところでありますが、かつて我が国におきましても、派遣労働者のプライバシーが守られなかったというふうな不幸な事件がありました。  派遣元事業主労働者派遣するときに、その人の秘密まで一緒に派遣してしまうというようなことは大変まずいわけでありまして、特に派遣元事業主は、登録型に顕著なわけですが、非常にたくさんの派遣労働者についていろいろな情報を扱うというふうなことになりますから、とりわけ事業主としても個人情報の保護について厳格を期するということが期待されることだと思います。  そういったことで、今般、労働者保護の強化という観点から、労働者についての必要な個人情報の保護、収集、保管の範囲、保管の仕方、あるいは秘密を漏らしてはならない、こういったことについて新たに規定をしたわけでございます。
  126. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  今、局長、かつて不幸な事件というふうに言われましたけれども、私は、今日なおこういう事例というのは枚挙にいとまがないのではないかというふうに思っております。  そのように申しますのは、ただいま私は地方行政委員会の方では住民基本台帳の住民票コードの議論をしておりまして、行政の個人情報の保護という観点をずっと議論しておるものですから極めて問題意識を持つわけでありますが、特に民間の分野における個人情報の保護ということは我が国はまだおくれているわけでありますから、極めて大事だろうというふうに思っているわけであります。  今、御説明がありましたように、ILOで言うところの、労働は商品ではないという観点で、私は、ぜひ個人情報の保護ということはがっちりやらなければいかぬだろう、こう思っているのです。  ただ、この二十四条の三の文案を見ますと、「派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。」この正当な理由がある場合ということがついているわけで、余計難しくなっているわけであります。  さっき、登録型の一般の派遣労働の事例だという、まさにそのとおりだと思うのですけれども、そうした場合、派遣元事業主としては、営業活動としては、当然ながら個人情報そのものが営業活動に密接につながっている。そういう意味で多分「正当な理由がある場合でなければ、」ということになっているんだろうと思うのですが、この正当な理由というのはどういうふうに判断をするのか、どういう基準で判断をするのか、あるいはどういう形で判断をされるのか等について、概略で結構ですけれども、お教えいただきたいと思います。
  127. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣元事業主はもともと派遣労働者の秘密を漏らしてはならないということでございまして、正当な場合にそれが許されるというのも極めて厳密に解釈される必要があるかと思います。  なかなか考えにくいのですが、例えば本人の同意があったというふうな場合あるいは刑事訴訟法に基づいて証人として証言するような場合、こういった極めて例外的なときに正当な理由があるというふうに言えるのではないかと思います。
  128. 桝屋敬悟

    桝屋委員 そうしますと、ちょっと違う視点で。  私どもも業界の方と話をいたしました。登録型の派遣の場合、よくある事例としては、派遣先の事業主希望で、もちろんその派遣先の事業主はいい人材が欲しいわけであります。いい人材にはいろいろな要素があるわけでありまして、当然名簿の中から探したいということもニーズとしては出てくるのだろう。現実に登録型の派遣業務では一覧表の中から写真を見て選ぶというようなことも今でも行われている部分があるのではないかと私は心配をしているわけでありますけれども、そういうことは当然ながら正当な理由にはならぬ、一切だめだというふうに理解をしてよろしいですか。
  129. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今おっしゃいましたような事例、例えば履歴書を回すとか事前の面接が行われるとかといった苦情は今でも寄せられているわけでありますが、派遣労働の趣旨からいいまして、これはあくまで派遣元事業主派遣先に労働者派遣するということでございまして、派遣先が労働者を事前に選択するということは制度の趣旨に照らして好ましくないということで、現在でもそういうことはしないように指導しているわけであります。  今般こういった規定が盛り込まれまして、そういった行為はこの秘密の漏えい等にわたるケースも十分あり得ると思いますので、さらに厳格に指導しなければいけないと思います。
  130. 桝屋敬悟

    桝屋委員 そうしますと、例えば派遣先に派遣元情報を名簿で渡し、この中からいい人をと、こういうことは厳にだめだということでありますけれども、そうしたことがまかり通った場合は罰則というのはどういうふうに、もしそれを犯した場合どういう扱いになるのか。
  131. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 秘密を漏らしてはいけないという新規の規定と同時に、秘密を漏らした場合には、これは現行の規定に乗っていくわけですけれども、労働大臣から改善命令を発し、なお従わないというときには罰則がかかるということになっております。
  132. 桝屋敬悟

    桝屋委員 もう少しゆっくり御説明いただきたいのですが、そういう事例が発見された場合は、まずは改善命令をして、改善命令に従わなければ罰則があると。その罰則というのはどの程度なんでしょうか。
  133. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 六カ月以下の懲役と五十万円以下の罰金というふうになっております。
  134. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ここが個人情報の保護という観点からしますと大変難しいところでありまして、住民基本台帳の方も大体そういう取り扱いでありまして、我々一番心配するのは、そういう緩いやり方で、規制で果たして大丈夫かなと。個人情報というのは、大臣、一瞬にして、この前もNTTの情報漏えい事件がありました。あれなんかは、驚くことなかれ名簿が大変な価値を生んでいるわけですね。電話番号だけが物すごい価値を生んでいるわけでありまして、今、名寄せ屋あるいは情報屋といいますか、そうした業者というのは大変にばっこしているわけでありまして、しかも、それに結構価値がついている。その人たち情報収集能力といいますか、我々の想像をはるかに超える部分があるわけであります。  我が国は民間の個人情報の保護の法律が現在はないわけでありまして、私は、そうした状況の中で、今回、個人情報の保護ということを二十四条の三で入れていただいたことは確かに正しいことだろうと思っておりますけれども、なお、業界の現状、現場の状況から見ますと、今のような罰則のあり方で大丈夫かな。一瞬の間にだあっと情報なんというのは漏れてしまう、こういうこともあるわけでありまして、特に個人情報の漏えいについて私は心配いたします。  労働者の需給調整をある意味では派遣元事業主はやるわけでありますから、まさに個人の情報というものがあふれるようにあるわけでありますので、その漏えいを防ぐ措置というのは慎重の上にも慎重が求められる、私はこう思っているわけであります。  私は、業界として、本当に自主的な取り組みをぜひ指導しなければならぬだろう、こういうふうに思っているのですね。我が国は、さっきも言いましたように、個人情報の保護については民間の部分についてはないわけでありますから、行政サイドは法律がありますけれども、民間の部分はまさに自主規制といいますか、そうした部分でがっちりやっていこう、こういうことになっているわけでありまして、ぜひ派遣業界においてこういう個人情報の保護ということにさらに積極的に取り組んでいただくように、自主的な取り組みをしていただくように特段の行政指導をお願いしたいと思いますが、最後にその辺のお考えをお聞きしたいと思います。
  135. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 失礼しました。先ほど違反の場合の罰則ですけれども、六月以下の懲役または三十万円以下の罰金ということでございます。さらに、法違反があったということになりますと、そのことをもちまして許可の取り消し事由になりますので、営業ができなくなるという効果もございます。
  136. 甘利明

    ○甘利国務大臣 ということでございますが、さらに、先生御指摘の、事業主への指導、協会に行政から適切に指導を行うということも鋭意取り組んでいきたいというふうに思います。
  137. 桝屋敬悟

    桝屋委員 大臣、最後に。  時々来て大臣にいつもお願いばかりして恐縮なんですが、私は、現在の我が国の個人情報の保護、民間の個人情報の保護、これは本当にいよいよ新しい時代が来たというふうに思っております。  これは、この国会では住民基本台帳法が地方行政委員会が舞台になって検討されておりますけれども、私は、民間の個人情報保護という観点から、そろそろ政府を挙げて取り組みをしなければならぬときが来ているなと。一自治省だけではない、労働省だけではない、政府を挙げて個人情報の保護ということに取り組む時代が来ている。諸外国では例えばプライバシーコミッショナーみたいな専門の機関があったり、いろいろな形があるわけでありまして、そういうものを総合的に検討するときが来ているのではないか。ぜひ労働大臣におかれてもそういう御認識をお持ちいただきたい、このことをお願いしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  138. 岩田順介

    岩田委員長 次に、寺前巖君。     〔委員長退席、前田(正)委員長代理着席〕
  139. 寺前巖

    ○寺前委員 きょうは、私は三つの問題を聞きたいと思います。  一つは、本会議なり当委員会において大臣なりあるいは局長さんのお話を聞いておりますと、あたかも労使双方の側から派遣労働法の改正が求められている、改正はそれぞれの方から求めるのは当然だと思いますが、新しいニーズにこたえてこの法律を出してきたんだと。本当にこんな法改正労働者が求めているんだろうかということに疑問を感じましたので、その問題について一つは聞きたい。  それから第二番目に、この前、去年の九月、金融庁が国会に、金融安定化に関する特別委員会に、金融機関十九行でしたか、関連会社の資料をお出しになっているんですが、その資料を見ていますと、専ら派遣を金融機関の中にそれぞれ持っているんじゃないか。これは法律上許されていないことになっているのに、現に大手銀行にそれが存在しているというのは一体どういうことなんだろうか。私、事実の調査もやりましたので、これについて聞きたい。これが第二番目の専ら派遣に関する問題です。  それから第三番目に、きのう参考人として連合の代表の方がお見えになっておりました。あの人の提起している問題というのは、現実に今の社会の中で問題になっている幾つかの大事な課題がある。労働者としての権利を保護してやろうという立場から見たときに考えなければならない問題を提起しておられましたので、その幾つかについて聞きたい。きょうはこの三つに限ってお聞きをしたいと思います。  まず第一番目に、今度の法改正に当たって、労働大臣から、労働者の就業形態や就業意識の多様化が進んでおり、労働力の多様なニーズに対応したものとしてこの問題を提起してきておられます。そして、渡邊政府委員は、登録型派遣につきましても、我が国社会のいろいろな変化を背景にいたしまして、自分の働きたいときに働きたいという労働者が、先ほど申しましたが、随分とふえてきているわけであります、実際にも登録型で働いている人が多いわけでありまして、これを認めないということになりますとこれら多くの方の職場を逆に失うことになるというふうに考えておりますという発言をしておられました。私は、現実の労働者というのはそんな甘いものじゃない、仕事がなくて泣いているという姿じゃないんだろうか、働きたいときに働けるような環境だったら、みんな真剣にこんなことを論議することもなかろうと思うんです。  私は、そういう点で、この提起しておられる問題が気になって仕方がありませんので、去年、東京都が実態調査をおやりになった登録型派遣労働者資料がありましたので、それを調べてみました。そうすると、その東京都の資料を見ると、正社員で働きたいという人が、法律ができてから十三年になるわけですが、一九八八年の調査と比較をすると、一九九八年は何と二三・五%が三〇・四%にはね上がっていっています。全体の人は、正社員として働かせてくれよというのが流れになっています。また、派遣を続けたい、派遣労働者のままでおってよろしいよという希望だとおっしゃるんだったら、それがどうなっていっているんだろうかと見ると、三五・六%が二九・〇%と減っていっている。  私は、全体の流れというのは、まともに正社員として扱っていただきたい、これが労働者の気持ちであろうと思うんです。ニーズとして、労働者は働けるときに働いた方がというのが主要な流れなんと見ているのはとんでもない間違いじゃないだろうかと思うんですが、いかがなものでしょう。
  140. 甘利明

    ○甘利国務大臣 寺前先生から、東京都の調査のお話がありました。確かに、数字の変化は各項目別にあるんでありますけれども、先ほどもちょっとお話をさせていただきましたけれども、積極的事由でそういう選択をしたという一群と、消極的理由、つまり本当は違うのでやりたいけれどもこれしかないからという一群との比較をしますと、積極的事由で選択した方がはるかに多いことは事実であります。  御指摘東京都の調査によりますと、これは複数回答でありますけれども、派遣労働を選択した理由としては、都合に合わせて働けるからという自分の積極的理由が四〇・六%、あるいは技術や資格を生かして働ける、二二・九%、賃金水準が高い、一八%、人間関係その他が煩わしくなくていい、一〇・七%、これらはみんな積極的理由であります。消極的理由として、先ほどお挙げになりました、正社員の職がないから、三七・一%。複数回答での積極的理由と複数回答での消極的理由を比較いたしますと、積極的理由の方が消極的理由の三倍近くになっていることは事実でありまして、これをもってニーズがあると言っておしかりは受けないんだというふうに思っております。  それから、労働省はさらにきめ細かい調査を行いました。これは、派遣法実態と今後ということに思いをはせて正確に調査をしたつもりでありますけれども、これももちろん東京都と同じように複数回答でありますけれども、これによりますと、働きたい曜日や時間が選べるからというのが三〇・八%、働きたい仕事内容が選べるからというのが二九・一%、自分能力を生かせるからこれを選択するというのが一六・五%、これらはみんな積極的理由であります。逆に、消極的理由は、正社員としての就職先が見つからないからしようがなくてというのが二六・三%、正社員としての就職先が見つかるまでのつなぎであるというのが一〇・一%、ともに消極的理由であります。  この調査によりますと、消極的理由に比べて積極的理由は約六倍でありまして、これらを見ますと、やはり世の中には働く側にもきちっとそういう要望、ニーズがある。もちろん、働いていただく側にも、臨時、一時的な即戦力というニーズはありますし、介護や育児の休業制度が定着するに従ってそのカバーをしてもらうというニーズも当然企業側に生まれるわけでありまして、双方のニーズにこたえて制度を拡充する。  大事なことは、これを強制的にこうしなさいと言っているんじゃなくて、選択肢として置きますから、ニーズに従って選べる中の一つに置いておきますよということが大事なことだと思っておりまして、世の中の趨勢、ニーズにしっかりとこたえた選択肢を、主体的に選べるような選択肢を置いておくということは必要なことだというふうに思っております。
  141. 寺前巖

    ○寺前委員 リストラの時代に、失業者がこれだけ広がっているということになってきたら労働者というのは弱い側につくんだから、だから、選択自由ですと言うたら選択するのは経営者の側になってしまうじゃないか、そこに労働者保護という問題が重要になってくるわけでしょう。  今日、派遣労働者というのがどういうことになっているのか。去年とことしと比べてどんな変化をしているのですか、派遣労働者数字を示していただけますか、局長さん。
  142. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 これは、平成九年度の労働者派遣事業報告でございますが、これによりますと、派遣労働者数は約八十六万人、これは八年度と比べまして一八・一%増でございます。このうち登録型の派遣労働者数は約七十万人で、これは対前年度比で二一・四%増でございます。いずれも平成五年度以降増加傾向にございます。  ただ、登録型の派遣労働者は複数の事業所に登録しているケースがあると思いますが、これは八時間労働等々で常用労働者換算してみますと、派遣労働者数は約三十四万人というふうになっております。  いずれにしましても、平成九年度の調査が出ているところまででは、派遣労働者数は増加傾向にございます。
  143. 寺前巖

    ○寺前委員 今おっしゃったように、派遣労働者というのは、それこそウナギ登りにふえていくというのが今日の実態であろうと思うのです。また、改めて東京都の調査を見ますと、十週間以上働く意欲があっても働けなかったという人が二九%という数字が出てくるのです。これは驚くべき数字が出てくるのです。本人に意思がありながら働く場が与えていただけないんだ、つくれないんだという実態。こうなってくると、これは大変な時代になってきているな、だから、そういう意味で言うたら、ともかく働く場をつくってほしいという願いが広範な人々の共通した願いになっている。  そういうときに、自分希望する職場や日時等に合わせて働きたいというようなこと、それがニーズだなんというような気楽なことを言っていられないというのが現状であろうと私はこの数字を見ながらつくづく感じたものなのです。ですから、私は、そういうような甘い考えで、みんなのニーズだニーズだというふうには言っていられないなということをその次に感じたわけです。  同時に、今度は経営者の側はこの問題についてどう見ているのだろうか。その都の調査派遣利用のメリットの推移というところを見ると、こういう数字が出てくる。自社従業員数の抑制にこれがメリットとして役立ったというのが一八・二%からこの十年間の間に三〇・九%へと伸びているのです。自分の会社経営のためにこういうやり方が得したねという話です。賃金、福利厚生費の減少、一一・二%から二四・七%にふえている。だから、経営者の側から見たら、明らかに派遣労働によって助かったね、これで経営がしやすくさせていく条件がつくれるねという話は、非常に明確に日に日に広がっていっている。労働者の側からいえば、まともな仕事につきたいという希望の方向がどんどんふえている。私は、ニーズの実態から見たらそういうふうに見るべきではないだろうかというふうに思うのですが、主要な側面は一体どういうことになるんだろうか、改めてもう一度考え直される必要があるんじゃないかな。  そこで聞きたいのは、今度の法改正について、一体どんな労働組合の諸君たちがもろ手を挙げて、結構なものを広げてくれたね、派遣労働の分野、原則自由という方向になってくれて、これで我々のニーズにこたえる道になってくれたねと言って旗を上げてくれている労働組合はどこなんでしょう。あるのでしょうか。お答えいただきたいと思うのです。
  144. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般の派遣労働法の改正につきましては、公労使で構成します関係審議会において大変な長時間をかけて、あるいは関係の事業主等々の方からのヒアリング等も行いながら一定の結論をお取りまとめいただいて、今般改正法案として提出をしているものでございます。
  145. 寺前巖

    ○寺前委員 名前を挙げてくださいというのや。きのう連合の人がここへお見えになったけれども、このままでよろしいとはおっしゃいませんでした。全労連の諸君たちもそうですよ。その他の労働組合、いろいろありますわ、どこの労働組合がもろ手を挙げて、結構なものをつくってもらって、ニーズにこたえてくれたねと言っていますのや。具体的に教えてほしいわ。  私、むしろ具体的には、ちょっと調べてみたら、日経連が九六年六月に行政改革委員会に政府規制の撤廃、緩和について要望事項を出している。その中に、雇用関係では民間職業紹介事業の自由化労働者派遣事業自由化を挙げています。昨年の十二月の経団連の産業競争力強化に向けた提言の中でも、労働者派遣事業自由化、有料、無料職業紹介事業の自由化が提言されています。ことしの二月の規制緩和推進三カ年計画の見直し、検討状況の中間公表でも、適用対象業務の拡大など労働者派遣事業規制緩和を要求している団体というのは経営者団体になっているのじゃないか。だから、経営者の都合の立場から物を見られている労働者派遣法のニーズへの対応だということが、要求している団体と要求しない団体を調べてみたら結論的に明確になるじゃありませんか。政府の仕事というのは、弱い者のために政治的に規制をかけて弱い者を守っていく、それが国民主権という今日の憲法の中心的あり方じゃないのでしょうか。  私は、道に外れていると言わざるを得ないのですけれども、経営者団体以外に、もろ手を挙げて、この法改正結構ですと言うている団体があるならば、あえてお答えをいただきたい。いかがですか。
  146. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 先ほど申したことでございますけれども、今回の法改正は、基本的には個々の経営者あるいは個々の労働組合等々の意見を聞きながらやったというものではございませんで、中央職業安定審議会におきまして、労使団体それぞれから推薦いただいた労使それぞれの代表あるいは公益、こういった方で十分議論を重ねていただきました。そういった中で、今回の対象業務の拡大というのは常用労働代替になってはいけないのだということで一年以内の派遣ということで厳しくこれを制限していく、あるいは派遣労働者の保護について十全を期する、こういったいろいろな意見が出されまして、そういったもろもろの見解を踏まえて、今般、改正法の提案をしているところでございます。
  147. 寺前巖

    ○寺前委員 それはまあ意見はいろいろ聞くかしらぬけれども、結果としてだれが賛成しているんだと。私はこの間ちょっと拾ってみたのだけれども、規制緩和は東京商工会議所、適用対象事業の拡大は経済団体連合会、関西経済連合会、日本印刷産業連合会、石油化学工業協会云々、いろいろまだありましたけれども、何ぼ探したって労働組合という名前が出てこないというのは、労働省たるものがこんなものをやっておったら何のための労働省かと言わざるを得なくなるじゃありませんか。この問題をめぐって改めて、姿勢を直さなかったら、ニーズ論というのは労働者の真の主要なニーズにはこたえていないということになっているということを言わざるを得ないと思うのです。  大森さん、これについてどういうふうにお考えですか。
  148. 大森猛

    大森議員 御指摘のように、今回の政府の提案というのが、労働者のニーズというよりも、御紹介のありましたそういう財界のニーズに基づくということは、まさしくそのとおりであると思います。  私が重視したいのは、今の質問の中にもございましたけれども、派遣労働がスタートして十三年の間に、逆に、正社員、常用労働者になりたい、こういう要望がふえ続けている、こういう事実、これが今むしろ主要な流れではないかということだと思います。昨日の参考人質疑でも、派遣法の賛否の違いを超えて、各参考人の皆さんが共通して、常用労働はなくなっていいとは思わない、こういうことを言われている点でも基本的には共通していた、これは申し上げてよろしいと思います。  もともと職安法四十四条で労働者供給事業を禁止して直接雇用を原則としていた。派遣法が十四年前に制定される際にも、この四十四条のあくまでもこれは例外ということでスタートをしたわけであります。あれから十四年たって、その原則を積極的に変えなくてはならない理由は何もない。あるとすれば、これはもう使用者、企業側からのニーズ、財界側からの要望、これがこうした原則を変える直接の大きな要因になっているのではないかと思います。  私どもは、昨今の規制緩和の時流に乗ってこういうのが一気に今表面化をしてきたわけでありますけれども、あくまでも例外としてスタートした派遣労働、その結果が、きのう参考人の各皆さんからリアルに報告された、大変劣悪な条件下の派遣労働者皆さん、あるいは無権利の状態、不安定雇用、こういう結果がもたらされているということが言えるものと思います。もし、今回これを使用者側のニーズに沿ってさらに全産業、全労働者に拡大していくことになれば、こういう深刻な状況がさらに一層拡大されることに必ずなっていくものと思います。  そういう意味で、私どもの提案しております対案では、職安法四十四条、労働者供給事業禁止の原則に改めて立ち返る、あくまでも例外であるという基本を、この点を強調したわけであります。  同時に、現行二十六業務についても、これはもう運用の面ではかなり幅広くなっておりまして、お話にありましたような銀行業務についても、今日ではもう銀行の業務ほとんどすべてが該当する。したがって銀行の職場ごと派遣労働者というような状況も今生まれてきているわけであります。したがって、原則に立ち返るという問題と同時に、この二十六業務についても、これを拡大するのではなくて、むしろ縮小の方向で今後は検討していきたい、このように考えているところでございます。  以上で答弁にしたいと思います。
  149. 寺前巖

    ○寺前委員 次に、私は銀行の調査をやりまして、専ら派遣の問題について強く感じたわけです。というのは、労働省がお出しになっている「派遣先事業所が出資している派遣会社の有無」という資料を読んでおりますと、金融・保険業関係が六二・二%、一〇〇%資本を出資している派遣会社を持っているというふうに出ているからです。これだけ大きな位置を占めている分野はありませんので、特に金融機関について関心を持ったわけです。  その関心を持っているやさきに、改めて昨年の金融安定化に関する特別委員会に出された資料を見ますと、金融庁の資料の中に、関連事業について幾つか書いてあるわけです。どこの十九銀行について見たって、人材派遣業務をやっている関連会社を一〇〇%出資してやっているというのだから、これはどういうことなんだろうかということで、その業務の内容を見ると、待てよ、この会社はというふうに感じましたので、改めて、まず確認のために金融監督庁にお伺いをしたいと思います。  さくら銀行の子会社にスタッフサービスという派遣会社が書いてありますけれども、この会社は何をやる会社ですか。わかりますか、金融監督庁。
  150. 乾文男

    ○乾政府委員 昨年の金融安定化特別委員会に提出いたしました資料を今ごらんになって御質問でございますけれども、主要十九行は大体こういう会社を持っております。その中のさくらスタッフサービスにつきましては、その主たる業務は、「当行」すなわちさくら銀行「への人材派遣業務」ということでございますけれども、定款上で見ますと、大体こういう会社の場合、当該銀行への派遣またはその他の金融業務を営む会社に対する派遣というふうなことがうたわれていると承知しております。
  151. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、労働省にお聞きしたいのですが、そういうふうに定款には書いてある。実態はどういうことになっているのでしょうか。国会にお出しになったものには、さくらスタッフサービス、「当行への人材派遣業務」と書いてある。それから、兵庫県神戸市にあるさくらオフィスサービス株式会社、「当行への人材派遣業務」と。これは、国会に出された報告書には全部、そこの銀行の人材派遣会社は専ら派遣になっているのじゃないのか。労働省、お調べになったことはありますか。
  152. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今おっしゃった件について、調査したことはございません。
  153. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、このお出しになった資料の中に、富士銀行の子会社、株式会社富士キャリアビューローというのがありますが、ここはどうなっているのでしょうか。さくら銀行と同じようなことになっているのでしょうか。
  154. 乾文男

    ○乾政府委員 富士キャリアビューローでございますね。それも、ごらんいただいていると思いますけれども、「当行」すなわち富士銀行「からの委託による各種事務処理業務 主として当行にかかわる労働者派遣事業」というふうになっております。ちょっとここですべての定款を承知しておりませんけれども、おおむね同様のことではないかというふうに考えております。
  155. 寺前巖

    ○寺前委員 そうしたら、いっぱいありますけれども、東京三菱銀行の子会社のダイヤモンドスタッフサービスというのがありますが、これも同じようなことになっているのでしょうね。これを見ると、やはり当行への人材派遣と書いてありますが、いかがですか。
  156. 乾文男

    ○乾政府委員 お出ししました資料は、各銀行のいわゆるディスクロージャー誌という広報のものでございますけれども、それからとってお出ししたわけでございます。表記の仕方はまちまちでございますけれども、恐らく定款というのは先ほど申し上げたようなことで大体なっているのだろうというふうに考えております。
  157. 寺前巖

    ○寺前委員 金融監督庁からこうやって国会に出された資料が去年の九月にあるわけです。そこには当行への派遣と。見ると、定款ではそのほかの仕事もできるようになっているというふうに書いてあるわけです。  銀行の窓口へ行きますと、例えば第一勧銀オフィスサービスというところのこういうリーフが置いてある。これを見ると、「派遣スタッフ募集中」「事務(パートタイマー) ロビー業務(パートタイマー) 事務(フルタイマー)」こう三つ書いてあって、「ハートの銀行で働きませんか」と言うて、仕事内容、資格、待遇、勤務、勤務地、こういうのがちゃんと出ておるのですよ。銀行へ行くとこういうのがあるのです。それで、右肩上のところに、「他の金融機関または金融業務を営む会社の派遣登録も受け付けております。」ほかのこともやっていますよと言う。  ところが、行って、さてどういう実態になっているのかということを現場の人に聞いてみたら、何のことはない、専ら派遣になっている。そうすると、現行法でも専ら派遣は許されていない。四十八条の二項で、調査をして、それで勧告してということになっている。今度はそういうものは許可しませんよという強化をやってきている。労働省みずからが、六十何%、一〇〇%出資の派遣会社を金融関係では持っておるでと、ちゃんと資料にまで発表しておる。  そうすると、こういう金融関係について労働省として特別に、実態はどうなっているのか、それを調査したことがございますか。金融機関におけるところの派遣会社が専ら派遣になっているのかなっていないのか、文章だけではなくして実態がどうなっているのか、これを調査したことがあるのだろうか。また、その調査に基づいて勧告をしたことがあるのだろうか。法改正をやる以上は、実態が伴わないことを何ぼ書かれたって、信用するわけにいきませんから。お答えをいただきたいと思うのです。
  158. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 直接、御指摘の件ではないかと思いますが、安定機関におきまして、いろいろと具体的なそういった相談といいますか申告があったようなときには調査をしておると思います。  ただ、おっしゃいましたように、現行法におきましても、専ら派遣というものは改善勧告の対象になっておりますし、今般、新たに許可の基準の中に、専ら派遣というものは許可をしないということをはっきりうたっているわけでありますから、労働行政機関としましても、そういった疑いがあるというものについては調査をしていきたいと思います。
  159. 寺前巖

    ○寺前委員 今までに調査をされたことは全体として特別にない、勧告をしたことはないと理解してよろしいか。
  160. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 勧告をした事例はございませんけれども、これは一般的にもそうでございますが、できるだけ事前の指導、そういったものによって是正をさせるということになっております。御指摘の件についてそういった指導を行ったかどうかは、現在、手元に資料がございません。
  161. 寺前巖

    ○寺前委員 だから私の言うたことになるじゃありませんか。  そこで、ついでに聞きますけれども、専ら派遣というのは、どういう条件までを専ら派遣と言うのですか。百人の人をそこの派遣会社が専らそこの銀行に派遣していた、一人だけ違うところへ持っていったら、これは専ら派遣じゃないとレッテルを張るのですか。どういう基準でその判断をしているのですか。その判断の基準を言ってください。
  162. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 現行法でも専らと言っているわけでございますから、専ら特定なところのみに提供しているというふうなことになれば、この法律に触れると思います。
  163. 寺前巖

    ○寺前委員 だから、専らというのは、どういう事態を専らというのですか。何%までだったら専らというけれども、何%以下のときにはそれは専らとはいいませんよとか、何かあるのでしょう。
  164. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 業務対象として特定のところのみを規定して、実際にそういう運用をしているということになれば、これは当然専らということになると思いますが、定款等で、特定のところ以外にも派遣を受け付けるというふうなことを書いていて、それが実際に行われないときに、直ちにそれは専らの違反だということにはなかなかならないだろうと思います。あくまで、企業から申し込みがあればそこには派遣する体制が整っているというときに、それを専らだというふうに断定をするのはなかなか難しいかと思います。
  165. 寺前巖

    ○寺前委員 だから、受け付けますと書いておったらやろ。いろいろ探していますのやけれども、行き先ありませんでしたので、結局今のところはここだけですのや、それは違反行為にならないというのだったら、しり抜けやないか、そんなものは。法改正を何ぼやったって、何の突っ張りにもならないし、調べるのさえやらないというのだから、ひどい話やな、私はそういうふうにしか聞こえない。こんな態度でいいのだろうかということを、この専ら派遣問題については感じました。  そこで、私は、法律には専ら派遣というふうに、「専ら」とだけ書いてあるのだから、専らの基準というのはそんなものではだめなんだということをはっきりしてほしい。そして、専ら派遣というのはこういうものをいうのだということを、世間の人が見ても、それはそうだと言えるようなものにしなければいけないのではないかということが一つ。  それから、あなたたち資料によって、専ら派遣が行われている一番大きな分野として数字が出てくる問題として、六十何%というのが書いてあるのだから、その分野については全面的に調査をやってもらわなかったら、私は無責任だと言わなければならないと思う。これは二番目。  三番目に、そうして私は、はっきり一つずつが実績を持っているのだから、実績に基づいて、口だけ専らやっておりませんでしたと言うようなところは許可を与えるわけにはいかない、そういう姿勢が確立されてこそ、法律を守っていくんだなということが、信用を受けるという問題に通ずると思うのです。そういう問題を含めて検討していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  166. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般、許可の基準に関する七条を改正いたしまして、今御議論になっている専ら派遣については、こういうものは許可の対象にしないということを規定しております。  ただ、その中で、「労働省令で定める場合において行われるものを除く。」ということを規定しておりますから、当然、省令を定めます場合に、どういうときが専らであって、どういうときが許される場合かということを明らかにすることになります。そういった過程におきまして、この専ら派遣の中身についてさらに具体的に検討させていただきます。
  167. 寺前巖

    ○寺前委員 第二番目の、調査をやるか、第三番目の、過去の経過から見て、その結果に基づいて許可をこの際きちっとやるか、そうでなかったならば、何のための法改正かわからぬよという問題を提起している。これについてはどうですか。
  168. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今、特に金融機関の設立しておる派遣会社についていろいろと御指摘がございました。金融監督庁とも相談をしながら、ヒアリング等の調査を行ってまいりたいと思います。
  169. 寺前巖

    ○寺前委員 三番目はどうするんです、答えてよ。
  170. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 御指摘の点は、ヒアリングの過程の中で考えていきたいと思います。
  171. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもすっきりしないね、私。やるんやったらやるらしく、法改正までやるというんだから、すかっと言うてもらわぬことには信用置けぬなということになる。  私、専ら派遣の問題の調査をした経過をちょっと説明しますと、さくら銀行へ行ってみたら、ある営業店において、現金を扱わない内部事務については、どんな仕事にも派遣スタッフがおりました。従業員の二、三割は派遣スタッフで占められている。本店のある課では、五十名中十一名が派遣労働者になっているという実態を見てきました。それから、三和銀行の三和スタッフサービスというところへ行きますと、集金、ロビーセールス、内部事務など、行員と変わらない業務をやっておられる。第一勧銀オフィスサービス、全従業員の三割が派遣スタッフである。郊外店に行くほど派遣スタッフの比率がふえる。金融機関では随分派遣労働者がふえてきています。東京三菱銀行のダイヤモンドスタッフというところから派遣されている、一般職の半分は派遣で賄っている。来年度からは、営業店の事務部門については、課長を除いて、ローカウンター一人が正銀行員で、あとは全部派遣スタッフになっている。  これらの銀行で共通しているのは、パートの派遣労働になっている。いずれも登録型であって、派遣されている労働者はほとんど女性で、元行員も含まれているものもあるけれども、そうでない人が大半である。派遣労働者の働き方は、短時間労働者であって、実働一日五時間、月十五日就業で月間七十五時間、もしくは一日六時間で十三日就業し月間七十八時間となっておって、この結果、社会保険、雇用保険の権利は発生しない仕組みになっている。雇用保険の加入条件は週二十時間以上であるということから考えても、これは労働者としての権利がとれないように派遣の段階からなっている。ここにその条件、書いてありますから。どの派遣労働者も、勤務は一年契約で毎年更新すること、長い人はもう十年以上も派遣社員として勤務していること、したがって、臨時的でもないし専門的でもない、違法、脱法の派遣がまかり通っているという感じを私は受けた。  さあ、話聞いておったここでの法案審査の実態と現実がこれだけ離れているということを考えたときに、私は改めて、労働省は、言うた以上は、言うただけのことになっていないんじゃないかという疑問を持って調査に当たられて当たり前じゃないかという感じを受けたのですが、そこで聞きたいのは二つ。  一つは、労働者として、社会保険あるいは労働保険に入れない条件が募集の段階につくられている、合法的に。ここのところを改善することをやらなかったら、労働者保護規定がつくられないことになるではないか。ニーズ論で、どんどん広範に派遣労働が受け入れられるように原則自由にするのだというのでは解決しないところの労働者の権利問題についてどうするんだ。私は、これについて一体どういう実態になっているのか、それを一つは御説明いただきたいと思う。  現場へ行ってみたら、そんなことになっていない、全然そんな次元にないということがわかってくるだけに、加入状況は、雇用保険、労災、健康保険、厚生年金、それぞれ登録型の労働者はどんな実態になっているのか、御説明をいただきたいと思うのです。     〔前田(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  172. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 平成九年の実態調査でございますが、これによりますと、派遣労働者全体で、雇用保険につきましては七三・七%、健康保険につきましては六四・二%、厚生年金については六〇・九%の派遣労働者がこれらの制度に加入をしております。  このうち登録者について見ますと、雇用保険については六三・二%、健康保険については四九・八%、厚生年金については四六%というふうにそれぞれなっております。  先ほど申し上げたことですが、厚生年金、健保あるいは雇用保険につきましては、一定の適用要件というのがございまして、これに該当しない場合には適用の義務は少なくとも現行法上はないということになっておりますが、この数字は、適用の義務のあるなしにかかわらず、派遣労働者についてその適用の状況について見たものということで、適用義務があるのにこれしか入っていないという数字では必ずしもございません。
  173. 寺前巖

    ○寺前委員 要するに、実態がわからないままに労働者保護だというようなことを言ったって、本当に、現場の実態のこの募集の要項なんかを見ておると、派遣会社の方は、そういう雇用保険や健康保険や政府管掌健康保険やいろいろある、入っているかもしらぬけれども、個々の労働者の適用ということになってくると、およそ実態は離れてしまうということになっている。ここの改善点が法改正案の中に何か出てきてしかるべきじゃないだろうかというふうに私は感じました。  さらにお聞きをしたいのですが、有給休暇はどういうことになっているでしょうか、実態
  174. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 同じく先ほどの平成九年の調査でございますけれども、年次有給休暇の適用の有無につきましては、これも派遣労働者全体について見ますと、八七・六%が適用がありと回答しております。このうち、実際に取得した日数は十日以上とする者が四八・四%と半数近くを占めております。  また、登録者について見ますと、八一・六%がありと回答しており、このうち、実際に取得した日数は十日以上とする者が四二・一%というふうになっております。
  175. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、実態というのは大変なことになっているというのは、特に登録型で思うのです。  きのうも連合の松浦さんがここにお見えになって、中途解約で泣き寝入りをするという問題をお話しになっておられました。本当にそうなんだ。いいところで、労働者に、中途解約をやったら仕事を引き続き別なところにあっせんをしてくれる、あるいは、仕事がなくなっている間は、契約と変わったのだから休業補償をしてやろうというところはあります。あるいはまた、解雇の予告手当一カ月分を出すというところはあります。こんなのは全体として特殊な姿になってきている。文句を言うたら、こういうことを言いに行ったら、それこそ、もうあなた明くる日から来てくれなくてもいいですよという話になるんだから、泣き寝入りという事態が生まれる。本当に今派遣労働について心配して考えるとするならば、中途でやめるという問題に対して、その権利が生きてこないという問題についてどう対処していくのかというのが非常に大きな域を占めているのです。  私は、そういう問題から考えて、この解決法も準備をしないで何が改正だというふうに強く感ずるのです。この点で、大森さんは、きのうここで連合の松浦さんの意見を聞いておられましてどういうふうにお感じになっているのか、今やるべきは何かということを御説明いただきたいと思います。
  176. 大森猛

    大森議員 私も昨日の参考人質疑の中で申し上げたのですが、今派遣労働をめぐって必要なことは、対象業務を拡大することではなくて、御指摘にあったような大変悲惨な状態にある派遣労働者を保護すること、こういう立場で私どもの提案を行ってきたところであります。  御指摘のように、とりわけ派遣労働者の弊害が一番集中しているのが、圧倒的な比率を占めております、派遣労働に就業しておるときだけ派遣元との雇用関係が生ずる登録型派遣であります。これは、昨日の参考人の方の陳述にもありましたように、例えばドイツでは、派遣労働者は、派遣元との間で期間を定めない雇用、すなわちいわゆる常用雇用に限定しているわけであります。  労働保険、社会保険未加入の問題、これも大きな弊害の一つとしてさまざま指摘をされているわけでありますけれども、この問題を解決していく上では、やはり雇用主責任をしっかりと担保する、そういう点で、最も不安定な登録型については今後三年間の経過措置を置いた上で禁止することが望ましいのではないか、こういう立場で私どもの提案、附則の中でこれを盛り込んでいるところであります。  同時に、今お話のありました契約の中途解除の問題でも、これはもう皆さんの要望等々で出される一番多い点でありますけれども、この点でも、派遣契約の中途解除を理由とした派遣元との労働契約の解除を禁止する、これを三十五条の四で盛り込むとか、あるいは、派遣元に、派遣労働者の新たな就業機会確保努力義務を課す、これは三十五条の五でありますけれども、こうした登録型の派遣労働者を保護する条項もさまざま盛り込んでいるところでございます。  重ねて、先ほど言及された点でありますので。専ら派遣の面では、御指摘があったように、二つの問題がある。一つは、行政上そういう勧告条項があるにもかかわらずそれが行使されない。もう一つは、専ら派遣法律上明瞭でない。これは、今回の改正案においても定義が不明確であります。  私どもの提案では、ここは、二分の一以上特定企業に派遣する場合、それは専ら派遣に該当し、それについては許可をされない、禁止をする、こういう条項を設けて、第一線で活動される派遣労働指導官などの皆さんにとってもこれは判断する上で非常にしやすいという点でもそうした事実上の脱法行為的なことを防いでいく大きな力になるもの、こういうように確信をしているところでございます。
  177. 寺前巖

    ○寺前委員 時間も参りますので、最後に大臣にお伺いをしたいと思います。  一つは、社会保険あるいは労働保険の問題について、実態の上においては募集の段階から対象にならないような募集の仕方になってきている。これは、もともとそういう社会保険や労働保険が、派遣労働がなかった時代の制度ですから、それはそういうことを考えればできてくるわけです。さあそういうときに、この問題をどういうふうにこれから対処しようとしておられるのかという問題をお聞きしたい。  もう一つは、登録型の派遣労働というのは、このままでは大変な無権利状態の労働者をつくり上げていくことになるのではないか。その心配はお考えにならないのか。この二点、お願いをして終わりたい。
  178. 甘利明

    ○甘利国務大臣 今回の改正に関して、全労連からぜひやってくれという陳情がなかったことは事実でありますが、しかし、個別にアンケートをとりますと、働く側からのニーズがあることは厳然とした事実でございます。そこで、いい点はしっかり採用して、懸念される点を極力その懸念が発生しないように対処をしていくという意味で、各種保護措置を行っているわけであります。  法律違反、法律に抵触する事案の労働大臣への申告制度とか、申告したことによって不利な取り扱いを受けないとか、あるいは一年を超える派遣は常用、正規雇用するよう努力義務をかけるとか、派遣先の福利厚生、そちらの社員と同等の扱いを受けられるように企業が努力をせよとか、あるいは社会保険、労働保険に加入を促進させる措置として、これらに関して罰則を受けた者については欠格事由に入れるとかいうことを、いろいろ取り組んでいるわけであります。  もちろん、今の制度で要件が該当せずに社会保険対象とならない部分についてこれからどうしていくかという課題は当然あるわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、特注の靴を発注するのはいいのでありますけれども、高くついてしまってとても買ってもらえないという状況も起こり得るわけでありますから、適正な価格の特注品がどうやってできるかということも、これからの勉強させていただく一つとさせていただきたいというふうに思っております。
  179. 寺前巖

    ○寺前委員 登録型の問題についての御意見は。
  180. 甘利明

    ○甘利国務大臣 登録型についても、当然世の中のニーズがあるわけでありますし、これをいわゆる雇用型といいますか、それだけにせよということについては同意しかねるところでございます。
  181. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので、終わります。
  182. 岩田順介

    岩田委員長 次に、濱田健一君。
  183. 濱田健一

    濱田(健)委員 きょうの論議を朝から聞いておりまして、大分細かい問題点、各委員が触れておられましたので、私も何点か、少しダブるところもございますけれども、細かい点について質問をさせていただきたいというふうに思います。  先ほど、社会保険等々の加入についても、何人かの委員から御質問がございました。いろいろなアンケートの調査かれこれを見ておりますと、派遣元の会社が、雇い主が、我が社は社会保険を適用していないのだとか、社会保険に入るには賃金を一割とか一割五分カットするだとか、そういう使用者にあるまじき発言をしているというような調査も手元にございます。  先ほどお話がございましたとおりに、今回の法改正では、いろいろな保険の適用について、厳しいといいますか、一定の措置をとろうとしておられることは法律の中身から受け取ることができるわけでございますが、実際上、派遣労働の賃金が、この厳しい不況下の中で、現在の二十六業種の中でも特殊な、本当に専門性らしい専門性を持っているもの以外は下がってきているという現状の中で、保険に加入したくても加入できないという労働者も出てきている、自己負担の部分について。そういう観点からもひとつ検討を加えてみたいと思うわけですが、当然、社会保険等の加入の必要がある派遣労働者、これについては、派遣元派遣先の努める責務というものを私たちはもっともっと明確にする必要があるというふうに思っております。  ただ、先ほど厚生省の方も回答されていたようでございますが、特に登録型で言うと、実際に働いているときに社会保険を掛ける、働いていないときには国民保険になるというようなことを含めて、労働者自身がみずから、保険に加入するんだということに手を挙げてもらわなければこの問題も全体的には解決しないというふうに思うわけですので、そういうことを当然意識として拡大をさせながら、派遣料金の低迷、料金が低く抑えられているという現状の中で、労働者の手取りが保険に入ることによって減るということから保険を掛けようにも掛けられないというところを防ぐために、これは非常に難しい考え方かもしれませんけれども、派遣料金の中に保険料に値する部分も賃金として盛り込むというような方向性というものは考えられないのか、そういう措置というものは考えられないのかということを我が党では検討しているわけでございますけれども、局長、いかがでございましょうか。
  184. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 社会保険あるいは労働保険につきましては、一定の要件を満たす場合にはこれに加入する責務が使用者にあるわけでありまして、したがいまして、厚生年金あるいは健康保険、雇用保険、こういったものについて、一定の要件を満たす場合には派遣元事業主派遣労働者についてこれを適用する、加入しなければならないことになっているわけであります。したがって、保険につきましても派遣元が責任を負うという仕組みであります。  ただ、登録型の労働者を多く抱えている派遣元事業主が、例えばそういう福利厚生費あるいは社会保険料等の負担について、これをどこから持ってくるかということになりますと、どこかよそで利益を上げて、これを派遣労働に回すというふうなことは通常ないでしょうから、あくまで営利事業として行われる以上は、派遣料金の中においてそういった経費も見るということが通常ないと、今御議論のありますような社会・労働保険の適用というものもなかなかスムーズに進まない、そういった面から進みにくくなるという面もあると思いますので、料金設定におきまして、派遣先が、必要経費といいますか、そういったものも見るんだというふうな意識をはっきりさせるというふうなことについて何らかの方策を考えるということは、十分意義があるのではないかと思います。
  185. 濱田健一

    濱田(健)委員 今局長が答えてもらった、そういうことだろうと思うのですが、この法体系の中では派遣元が雇い主ですが、実質的に働いていく雇用先、そこもいろいろな働く場における保険適用という事由が発生する場所であることには変わりないわけでございますので、今回の法改正派遣先に何らかの保険を掛けさせるといいますか、これらに対する手だてというものは派遣先に責任を負わせるというようなことなどは考えられないものでしょうか。
  186. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 この労働者派遣制度を実効あるというか、的確にこれが行われるためには、やはり事業主責任雇用責任というものをまずはっきりさせた上で、それで派遣先においてどういう措置がとられるかというふうに、柱はやはり使用者というものをはっきりさせて、その上で対応をいろいろ考えることだろうと思います。  あくまでも保険関係については派遣元が責任を全面的に負っているということは間違いないと思います。これが派遣元派遣先が仮に折半をするということになりますと、責任の所在というものはあいまいになると思いますし、今おっしゃったような点は、やはり派遣料金の中において派遣先がこれをどういうふうに実際に負担するのか、こういった問題ではなかろうかというふうに思います。
  187. 濱田健一

    濱田(健)委員 そこのところは少し検討を加える必要があるということだけ申し上げておきたいと思います。  二点目ですが、派遣元が雇い主という法体系の中では、福利厚生や教育訓練等々を充実していくということがあるかと思うのですが、当然働く場所は違ったところでございますので、派遣先が行うべき責務というものを一層明確化する観点というものも大事であると思います。  そういう意味では、労働者派遣契約の必要契約記載事項として、今私が申し上げました福利厚生施設の利用や教育訓練の機会、ただ、この教育訓練の機会というのは、派遣労働という特殊性の中で、労働者の持つ能力、技術を高めていかなければ派遣先が使ってくれないということが当然あるわけですので、一元的には派遣元に教育訓練という大きな責務があるというふうに私も理解をしておりますけれども、そういう部分であっても派遣先の記載事項として契約の中に、福利厚生施設の利用や教育訓練の機会というものも、より派遣労働の厚みを加えるという意味で加える必要があるのではないかというふうに考えるわけですが、いかがでしょう。
  188. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 従来、派遣先につきましては、労働基準法の一定の規定あるいは安全衛生法の一定の規定等については、派遣先も事業主とみなしてこれらの法律を適用するというふうに明確に規定をしておりましたが、福利厚生等については従来、明確な規定がございませんでした。  今般の改正法案におきまして新たに、派遣労働者の適切な就業環境の維持、あるいは派遣先の労働者が通常利用している診療所とか給食施設、こういったものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるように派遣先は努めなければいけないという規定を盛り込んでおります。この規定の適用の一環として、今おっしゃいましたような派遣先における教育訓練も含めまして、こういったものをどういうふうに具体的に派遣先が配慮すればいいのか、こういったことは、この法律が成立しました場合に具体的に検討し、何らかの形で示していく必要があるのではないかというふうに思います。
  189. 濱田健一

    濱田(健)委員 局長がお答えになったとおりに、派遣元の一元的な福利厚生そして教育訓練ということだけではなくて、多分、ネガティブリスト化して派遣労働者がふえていくという状況の中では、元も先もこういう部分に手厚く厚みを加えて、労働者保護、新たに雇用の機会をふやす教育訓練というものの枠を広げていくという方向性をしっかりと模索していただきたいというふうに思います。  三点目でございますが、今回の見直し案にある中途解約に対する保護措置だけではなく、我が国ではやはり、派遣元に対して派遣先がいろいろな条件をつける中で優位な関係にあるというふうに思うわけでございまして、いろいろと言われている事前の面接かれこれ含めて、派遣先の恣意的なえり好みといいますか、これらを排除していくためには、派遣先が従来行ってきた派遣労働者の入れかえ要請、こういうものに対しても、今回の中途解約に対する保護措置に準ずるような、それと同様な観点から有効な措置というものを講じる必要があるというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。
  190. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣先によります事前面接とかあるいは履歴書の送付、あるいはいわゆる入れかえ措置、こういったものは派遣法の趣旨に反することは明確でありますから、従来から、そうした行為は行うことのないように指導してきているところでございます。  また、今ちょっと触れましたが、派遣労働者の入れかえ要請につきましては、二十七条では、派遣労働者の国籍とか性別、信条等を理由派遣契約を解除してはいけないというふうに書いておるわけですが、派遣契約の解除はしなくても、派遣された労働者の入れかえを要請するということは実質的に解除に当たる、そういった脱法的な行為になる可能性が大変高いと思いまして、こういった場合には中途解除と同様にこれらが行われないように、そうした行為を行う派遣先に対しまして、派遣契約の解除について指針に定められている措置を参考にして必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
  191. 濱田健一

    濱田(健)委員 派遣先は、一つの業務をさせる中で、いろいろな口実をつけて入れかえということを要求している現実がございます。ただそれが、きちんとした仕事能力を持っていながらほかの面で、業務に直接関係のある部分じゃなくて、それ以外の面での入れかえ要請というものがほとんどの場合であるというふうにいろいろな調査でも言われてきておりますので、今局長が言われた部分についてもより強化をしていただくということが必要だなと私たちは思うのでございます。  もう一点は、これまで派遣労働者派遣先への要望というか苦情というか、そのトップは、いろいろな調査を見てみましても、スタート以来一貫して、契約の不当な打ち切り、中途解約、中途解除、これを防止してくれというのが大半のようでございます。当然こういう中途解除、派遣法と労基法の関係いろいろとあるわけでございますけれども、このような派遣先の横暴といいますか、それを効果的に抑止する、歯どめをかける、そういう部分では、先ほども出ましたけれども、派遣先が派遣元に対して契約の解除理由、これらをしっかり明示をする、その明示の理由に解約の整合性が仮になければきちんとした歯どめを行政としてかける、制裁措置をかける、罰則をつけるというようなこともこれまた必要ではないのかなというふうに思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  192. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣契約の中途解除につきましてはいろいろなケースがあるわけでありまして、もちろんその中には、派遣労働者から解除の申し入れをするというようなこともありますが、正当な理由がなく派遣先の方が派遣契約を中途解約した、解除したという場合には、これは民事上の問題としては、派遣元は当然、民事裁判によりまして損害賠償の請求を行うことができるわけであります。  現行の指針におきましては、こういったケースにつきまして、解除の事前申し入れとかあるいは損害賠償につきましては、適切な善後処理方策を講ずべきであるというふうなことを指針の中に書いておりますが、先般の審議会からの答申におきましては、中途解除に関する措置というものをより強化すべきではないかという答申もいただいているところであります。  こういったことを踏まえまして、派遣先が一方的に中途解約をした、解除したというときの取り扱いについては、具体的に指針の中にどれだけ書き込むか、さらに検討を続けていきたいというふうに考えております。
  193. 濱田健一

    濱田(健)委員 損害賠償の仕組みというようなものは、当然、中途解約を言われた労働者から見ると正当な要求になるだろうと私たちは思うのですが、そういう法整備というのは今後検討できないものでしょうか。
  194. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 中途解約につきましては、先ほど申しましたように、損害賠償の責任が発生する場合が当然あり得ると思います。どういったケースについてどういったことが適当か、その基準のようなものについて指針の中で明らかにしていきたいというふうに思います。
  195. 濱田健一

    濱田(健)委員 先ほど寺前委員が専ら派遣の問題を時間をかけて追及されました。国民皆さんは、専ら派遣というのは何だろうか、よくわからないということがございますが、先ほどの論議を聞かれて十分認識をされたと思うのです。  今度の法改正でも、常用雇用を崩す、そういう派遣労働法の改正ではないのだ、あくまでも一時的、臨時的に雇用のミスマッチ等を防止していき、雇用をふやしていくのだということを主張されるのであれば、先ほどもお話がありましたとおりに、一つの人材派遣会社が、銀行の子会社的なものでもいいでしょう、自分の親元に人材を専ら、限りなく一〇〇%に近く投入をするということは、そこで働くであろう現実的な常用雇用者を排除していく、だれが見てもそういう解釈をせざるを得なくなるというふうに私も思っているところでございまして、今回のこの改正案の中で、役務を特定の者に提供することを目的として行われる専ら派遣は本当にだめなんだよということをどのように実効性を担保していかれるおつもりなのか、明快な答弁をいただきたいと思います。
  196. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 現行の派遣法におきましても、今御指摘の専ら派遣につきましてはこれを改善するように勧告をするという制度がございますが、今般新たに、改正法案におきまして、いわゆる専ら派遣につきましては許可条件としてこれを認めないということにしておりますので、その内容が特定の企業にだけ労働者派遣するという派遣事業については、これを許可しないということにしております。  ただ、先ほどもちょっと触れた点ですが、これが許される場合というようなことを労働省令で定めるということにしておりますから、その省令を定める際等々の議論の中で、どういったケースが不可でどういったケースが一定の場合に許される、こういったことは具体的に明らかにする必要があると考えております。
  197. 濱田健一

    濱田(健)委員 許可条件にするということでございますが、先ほどもありましたとおりに、では、更新をするときに更新しない、場合によっては専ら派遣というふうな認定をしたときに許可を取り消す、そういう方向性といいますか基準といいますか、それはどのように考えておられるのでしょうか。
  198. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 有効期間が経過をしましてこれを更新するときに、そういう事例があったときにはこれを更新しないというふうにして臨みたいと思います。
  199. 濱田健一

    濱田(健)委員 専ら派遣が途中で見つかった、その基準というのが、先ほど寺前委員もいろいろな話をされましたけれども、明快な答弁はなかった。だから、途中で許可を取り消すよというようなことも必要ではないか、そのお答えをいただきたいと思います。
  200. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 専ら派遣が行われておりますときには、現行法でも、その改善について勧告することができるようになっております。さらに、今般、許可基準の中に専ら派遣はだめだということをはっきりとうたうことにしておりますので、許可をするときの条件にこれを加える、条件とするということについても検討してみたいと思います。
  201. 濱田健一

    濱田(健)委員 労働者派遣会社の許可の取り消しというのは、役所の調査はどういうふうになっているかわかりませんが、いろいろな運動団体の皆さん方からお話を聞くときに、前の質問でも言いましたけれども、許可の取り消し等が行われるのはその会社が倒産したときくらいだ、非常に悪質な営業をやっていても更新をされるというようなことがあるわけです。ですから、専ら派遣が行われていても、一般の労働者から見ると、世間から見ると、なかなか許可の取り消しなんて行われないのではないかというふうな現実的な思いがあるわけですよ。だから、そういう面からいって、局長、今の部分、もう少し細かく見解を述べていただきたいと思います。
  202. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 行政の基本的な立場としましては、いきなり許可の取り消しということではなくて、法の建前も、改善について勧告をできるということでございますから、指導する、勧告をするという手続はまず踏みたいというふうに思いますが、どうしても見込みがないというときには許可の取り消しについて厳正に臨む必要があると思います。許可の取り消しはいわば企業の破産でございますから、これは相当重い義務が発生するものであるというふうに思います。やってみてもなかなか実効が上がらないということではなくて、今般の改正によって新たにそういった規定を盛り込むわけでありますから、その厳正な執行について意を用いていきたいというふうに考えております。
  203. 濱田健一

    濱田(健)委員 もう一点、常用雇用について。  これは常用型派遣に限られるかもしれませんが、派遣元自分の抱える労働者を新たに派遣労働者にしようとした場合に、その労働者はイエス、ノーをやはり言うだろうと思うわけです。そういう場合の不利益取り扱い、これの禁止、防止規定というようなものもはっきりと、労働者の意思に任せるということを含めて、講じられる必要があると思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  204. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣法の三十二条におきまして、派遣労働者とすることを予定していなかった労働者、これを新たに派遣対象とする場合には、その労働者の同意を得なければならないことというふうにされております。労働者の同意を得られなかった場合に、派遣元が当該労働者に対して不利益な扱いをするということになりますと、その意思に反して派遣労働者になるということも想定されるわけでありますから、こういったときの不利益扱いの防止については具体的な対応について検討しなければならないと思っております。  なお、三十二条、先ほど申しました同意を得ないで派遣労働者にしたというようなときには、改善命令は当然発出できますし、その違反については罰則も科されることになっているところでございます。
  205. 濱田健一

    濱田(健)委員 最後に、個人情報の取り扱い、これまでもマスコミ紙上をにぎわせてまいりましたけれども、今回の法の大枠が、派遣元情報の出をしっかりと縛るということをこれまでも言ってこられました。しかし、私たちは、果たしてそのことがしっかりと守られるのかどうか、これは非常に注意しなければならないというふうに思っておりますし、前回の質問でも言いましたけれども、派遣先が得た情報の担保というものもこういう状況の中ではなかなか厳しいというふうに認識をするわけです。  派遣労働者が個人情報について、自分情報は本当に履歴書その他で自分派遣という労働を得るために必要とするものだけを提示したにもかかわらず、それ以外のものが入っていやしないのか、それをきちっと見せてくれ、または入っていたらそれを訂正させてくれという請求等を行うのは当然の権利だと私は思います。そのことを理由として当該労働者に対して解雇やその他の不利益取り扱い、そういうのが現状では当然いろいろなところで起きているわけでございまして、こういう防止策というものも明確にしておかなければならないというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  206. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今回の改正におきましては、派遣労働者のプライバシーの保護というものについて万全を期したいというふうに考えているところでございますが、個人情報の適正な管理、その一環としての労働者からの資料の開示あるいは訂正の要求、あるいはこうしたことを要求したことに対する不利益扱いの防止、こういったものについて運用でどういうふうに具体化できるのか、これは十分に検討したいと思います。
  207. 濱田健一

    濱田(健)委員 これで終わりますけれども、今まで現行の二十六業種でも個人情報の保護ということが非常にずさんにされてきた。だから、私たちは、これまで何回も言ってきましたように、労働法制だけに個人情報の保護ということではなくて、包括的な個人情報の保護という方向性を国は検討すべきというふうに思っております。  そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  208. 岩田順介

    岩田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十二分散会