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1999-05-07 第145回国会 衆議院 労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月七日(金曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 岩田 順介君    理事 荒井 広幸君 理事 能勢 和子君    理事 森  英介君 理事 柳本 卓治君    理事 石橋 大吉君 理事 川端 達夫君    理事 前田  正君 理事 青山  丘君       井奥 貞雄君    稲垣 実男君       大村 秀章君    小林 興起君       坂本 剛二君    白川 勝彦君       田中 昭一君    棚橋 泰文君       長勢 甚遠君    藤波 孝生君       保利 耕輔君    城島 正光君       中桐 伸五君    松本 惟子君       河上 覃雄君    岩浅 嘉仁君       大森  猛君    寺前  巖君       濱田 健一君    土屋 品子君  出席国務大臣         労働大臣    甘利  明君  出席政府委員         労働省職業安定         局長      渡邊  信君  委員外出席者         議員      大森  猛君         議員      金子 満広君         労働委員会専門         員       渡辺 貞好君 委員の異動 五月七日         辞任         補欠選任   畠山健治郎君     濱田 健一君 同日         辞任         補欠選任   濱田 健一君     畠山健治郎君 本日の会議に付した案件  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十三回国会閣法第一〇号)  職業安定法等の一部を改正する法律案内閣提出第九〇号)  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案大森猛君外一名提出衆法第一五号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 岩田順介

    岩田委員長 これより会議を開きます。  第百四十三回国会内閣提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出職業安定法等の一部を改正する法律案及び大森猛君外一名提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青山丘君。
  3. 青山丘

    青山(丘)委員 四月三十日に一番新しい雇用失業情勢数値発表されまして、実は私はこの数値は非常に深刻に受けとめております。完全失業率四・八%、これは前月発表に比べて〇・二ポイント悪化しておりまして、それから失業者数が三百三十九万人。実は、私が初めて国会へ出たころは失業者数百三十万人から百六十万人という数字で心を痛めたことを思いますと、今や三百三十九万人、倍以上の数に上っておりまして、大変憂慮しております。有効求人倍率もここ三カ月〇・四九倍、改善の動きがありません。  しかし、政府それなりに取り組んでいただいておりまして、百万人雇用創出計画を出して、緊急経済対策の大きな柱として雇用活性化総合プラン、それに基づく各種の施策が今進められております。これが一つ。それからもう一つは、先般小渕総理から直接指示があったと聞いておりますが、労働大臣の先般の答弁でも、五月中にも新しい雇用対策を取りまとめをしていきたい、こういうことが答弁されておりました。  私は、今この段階が、景気回復でも雇用情勢改善についても非常に重要な段階にあるという気がいたします。特に完全失業率四・八%というのは、前月から〇・二%上がっておりますが、この状況でいきますと、今月末にも五・〇%の失業率、大台にいよいよ乗ってくるのではないかということで、もしそうなった段階政府が一定の雇用対策考えている、準備しているということであればまた別だと思うのですが、もし有効な手だてが準備されておらないというようなことになれば、これは国民雇用不安というものは決定的なものになっていく、景気回復に大きな障害になっていくのではないかという点では非常に憂慮しているところであります。その意味で、新たな雇用対策雇用不安を一刻も早く少なくしていくという意味で、非常に重要な段階に今来ておるということを私は感じます。  そこで、現下雇用失業情勢労働大臣はどのように受けとめておられますか。そしてまた、その上に立って、新たな雇用対策はこのように進めていかなければならないという考え方がありましたら、ひとつぜひ述べていただきたいと思います。
  4. 甘利明

    甘利国務大臣 先月の失業率が四・八%になりました。これは御指摘のとおり、前々月を〇・二さらに上回ったということでありまして、この状況は、我が国がかつて経験をしたことがない事態であります。  御指摘のとおり、失業率拡大をする、それが雇用不安につながる、雇用不安は生活防衛へとつながっていきますから消費の停滞を招く、それが景気の足を引っ張る、そこでさらなるリストラを要請されるという悪循環に陥る可能性があります、ほっておきますと。そこで、いかに雇用不安をなくしていくか、いかに早く失業率改善を図るかというのが喫緊の課題であります。  さらに失業率悪化をするのかどうかという御質問をよくいただくわけでありますけれども、毎回申し上げておりますとおり、失業率というのは景気の後追い指標であります。日本の過去の例で申し上げますと、景気反転攻勢に出てから半年後が雇用情勢が一番厳しいという統計結果が出ておりますから、既に景気が底を打った、いよいよ反転に入るという経済企画庁長官からの発言さきにもありましたから、それから数カ月雇用情勢にとっては一番つらい時期になるというふうに考えております。  ですから、ここのところから数カ月が一番厳しい。しかし、その厳しさというのは好転をするときに必ず経なければならない厳しさであるということを私はぜひ国民皆さんには御認識をいただきたい。底なし沼に向かって進んでいくのではなくて、反転攻勢に出るときのタイムラグであるということをぜひ十分に御認識をいただきたい。そのこと自体がまず、雇用不安を少しでも払拭をすることになろうかと思います。  あわせて、通常我が国においては、景気が回復する、底を打った時点から半年後が一番厳しい雇用失業情勢になるという、この期間のいわばタイムラグをできるだけ短くしていく責務が労働行政にはあろうかというふうに思っております。そこで、青山先生指摘のとおり、百万人の雇用創出、安定、これは創出だけではなくて安定が主体になった対策でありますけれども、雇用活性化総合プランの中に組ませていただきました。あわせて、先般の雇用対策会議におきまして、七十七万人、これは純粋に創出部分でありますけれども、この具体的な内容が発表をされたところであります。これを全力を挙げてフォローアップしていきたいというふうに思っております。  さらに、失業率が四・八%と発表された当日の記者会見で当面の対応を発表させていただきました。それは、一つには、労使と自治体のトップに参集をしていただきます、全国を各ブロックに分けての緊急会議でございまして、雇用活性化総合プランの効果的な推進を図っていく。それからもう一点は、学卒の未就職者の数が三十万人に及んでおりまして、内定率が昨年度より二、三ポイント悪くなっております。そこで、学卒就職者登録システムというのを緊急に設けまして、従来であるならば障害者に対して対応していた中身を未就職者に対しても手厚く対応していこうということで取り組んでいるわけであります。  さらに、四月二十三日に総理からの御指摘をいただきまして、新たなる雇用対策ということを他省連携をとりながら今細部を詰めているところでございまして、この中身につきましては今月中にもまとめて発表できるものというふうに思っております。
  5. 青山丘

    青山(丘)委員 今の大臣のお考えは、私、よくわかります。  現下の深刻な不況は多くの失業を生んでおる。ただ、ここで一つ留意すべきことは、今回の完全失業率の四・八%を分析してみますと、需要不足失業というのが一・五%、これは現下不況のために出てきた深刻な失業であるということはわかります。けれども、労働行政がもし円滑に進められていったときに、例えば摩擦的な失業構造的な失業は、あるいはこれからは防ぐことができるのではないかというところが実は三・三%ある。これは二百三十万人くらいの数でして、この点にこれから相当力を入れていくということをやはり労働省は十分留意して取り組んでいかなければならない。  そういう意味では、今回の労働者派遣法あるいは職業安定法、これの改正案が出てきておるということになってくるのでしょうが、一・五%の需要不足失業と三・三%の摩擦的、構造的な失業、問題は、この摩擦的、構造的な失業をどう解消していくのか。もとより緊急経済対策で前者の一・五%に対する手だてというものがなされていかなければならない、それは他省庁との連携も必要になってくるでしょう。しかし問題は、労働力需給調整機能を高めていく、こういう役割は、今、行政にとっても議会にとっても非常に重要な課題だと私は受けとめておりまして、そういう意味で、今回の法改正意味がある、率直に私は理解しております。  問題は、労働力需給調整機能をどう高めていくのかという方向はきちっとこれから組み立てていかなければならないと思っておるのですが、そのあたりの御見解は、労働省、いかがでしょうか。
  6. 甘利明

    甘利国務大臣 御指摘のとおり、いわゆる各種ミスマッチによる失業というものが多くの数字を占めているわけでありまして、この各種ミスマッチをいかに解消していくか、労働力需給調整機能官民両々相まって高めていくということが非常に大切であります。そのために、先生指摘のとおり、今回二法案を提出させていただいて、御審議をいただいているところであります。  日本伝統的雇用形態それなり意味がありますけれども、それによって労働力市場が硬直化してしまっている面もゼロではないわけでありまして、その硬直化している労働市場柔軟性を持たせていくという意味も、求人側求職側、双方にとって意味があることであるというふうに理解をしておりまして、このミスマッチをいかに解消していくか、失業されてしまっている方がいかに短期間のうちに自分希望に沿った新たな就職先を見つけることができるか、そのために資する法律だというふうに理解をいたしております。
  7. 青山丘

    青山(丘)委員 需給調整をどう高めていくかということがこれから重要な課題になってくると私は思いますから、そういう意味で、今回の法改正は率直に私は理解しております。  ただ問題は、今大臣おっしゃられたように、日本的雇用慣行長期雇用慣行というものが相当長い間しかも深く定着をして、これが日本雇用慣行である。それはそれなり雇用の安定と経済の大きな発展に貢献をしてきた。ただ、そういう状況が現在もなお続いておるのかというと、実はこの深刻な不況のために中途離職を余儀なくされた人たちが出てきております。あるいはまた、みずから転職を希望していきたい、こういう人たちニーズに、果たしてこの長期雇用慣行というものだけで雇用の安定を図っていくことができるかというと、なかなか難しい、そういう経済社会情勢になってきておるのではないかと私は実は理解しております。  そういう意味で、これまでのような低い失業率比較的落ちついた失業者数時代ではなくて、現在は非常に失業率が高く、失業者数も多い、雇用の機会が少なくなってきておるというような状況で、我が国長期雇用慣行というものを守っていくという視点だけで、これで果たして雇用調整需要と供給の調整がとれるのか、ミスマッチ解消することができるのかというと、なかなかそういう段階に来ておらない、そういう段階ではなくなってきておるというふうな理解をやはりしていかなければならないのではないかと私は感じております。今言われたように、労働力需給ミスマッチをどう解消していくのか、それから失業期間をどう短縮化していくことができるか、もっと言うならば、失業をどう防止することができるかということを総合的にきちっと組み立てていく、今はそういう段階に来ておるという認識ではないかと思うのです。  この点、もしあったら御意見を伺っておきたいのですが、今回の法改正は、そういう意味では、日本の長い間の常用雇用慣行、これをむしろ派遣労働者で代替するものになっていって、将来、ある企業常用雇用者がなくなっていくのではないか、派遣労働者だけでやっていくことができる、そういう時代になっていくのかなというような不安があります。  しかし、今回の法改正では、同一業務に一年を超えない、一年の期限制限をしていくということは、一つには、日本の長い間の雇用慣行に対する配慮がある。もう一つは、しかし需給ミスマッチ解消していくために、需給調整機能をより強化していかなければならない。ある意味では矛盾するようなニーズをここで調和させていくために、一年という期間が設けられて、臨時的、一時的な雇用制度派遣制度というものをさらに導入していこうという考え方が出てきておるのではないかと実は私は思っております。  問題は、日本長期雇用慣行に対してこうした派遣事業がどういう影響を与えてくるのか。雇用調整機能をより高めてくる、強化していくんだという考え方で進めていくときに、日本雇用慣行にどんな影響が出てくるのかということが非常に重要になってくると思いますが、労働省のその辺の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  8. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般提案をしております派遣法改正ですが、これは一昨年にILOで採択をされました民間職業仲介事業所に関する条約、百八十一号条約、この採択といった国際的な潮流も踏まえて提案をしておるものでありますが、この条約によりますと、民間派遣事業を含みます民間職業仲介事業活動範囲というものは、すべての種類の労働者及びすべての部門の経済活動にこれを適用するのだというふうに規定しているわけでありまして、広く民間職業仲介事業活動分野を認めるということになっております。  ただし、例えば派遣について、その派遣期間をどうするのかといったふうなことについては、直接の規定はしておりません。そういった面については、各国の事情によって判断される問題であるというふうな考え方に立っているのではないかというふうに考えております。  こういった条約も背景としまして、いろいろとこの提案までに議論がなされ、その過程では、今委員指摘の、我が国における長期雇用慣行システム、こういったものとの調和をどう図るかということが大きな議論になりました。我が国における長期雇用システムのいい面を尊重していく、こういったことに配慮をしまして、今般の改正は一年以内の派遣に限るということで、長期雇用慣行システム短期労働市場における需給の迅速なミスマッチ解消ということとの調和を図るというふうにしておりまして、そのための担保措置もいろいろと備えておるということでございます。  したがいまして、この長期雇用慣行というものも、産業構造変動等によっていろいろと今影響を受けておるわけでありますが、今般の派遣はあくまでも短期、臨時的な派遣ということで短期労働市場におけるミスマッチ解消を目的にしておるということで、両者の調和を図っているものだというふうに考えておるところであります。
  9. 青山丘

    青山(丘)委員 私も、これまでの雇用慣行に重大な悪影響が及ぶことのないように、しかし、今国は相当数失業者を抱えている状況ですから、この需給ミスマッチ解消していくことが非常に重要な政治課題であるということを考えて、できるだけ影響がないように、後で労働者保護の問題についても少し触れさせていただきます。  その前に、派遣料金について、実は先般、派遣料金が今だんだんと下がっているという指摘を私は受けました。  労働者派遣というものは派遣元派遣先が契約を結ぶということになっておりまして、これは一つには需給の問題。派遣料金というのは需給関係で金額が定められてくる。あるいは、現在のような厳しい雇用情勢ですと、こういう不況ですとまたそれが影響を受けてくる。あるいは、派遣事業者たち競争関係でその料金は定められてくる。そういう市場需給状況によって相場が形成されてくるのですが、派遣料金が下がっているのだという指摘を私は受けておるのです。  しかし、労働省は、派遣料金の水準はどのように推移していくものだというふうに理解しておられるのでしょうか。いかがでしょうか。
  10. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣料金実態ですけれども、現在、九年度までの派遣料金の調査結果が出ております。  これによりますと、九年度の派遣料金を八年度と比較をしてみますと、一般労働者派遣事業では、例えば広告デザインで一六・二%の増、建築物の清掃で一一・二%の増等平成八年度と九年度で比較が可能なものについて見ますと、八割程度の業務について上昇しております。また一方、放送機器等操作一三・八%の減とか、OAインストラクション八・五%の減とか、四業務で低下をしておるところであります。  十年度の集計結果の発表が来年の一月ごろになるということですが、昨今の景気低迷を反映しまして、一般には派遣事業につきましても売り上げが低迷をしている、あるいは伸び悩んでいるということが言われておりますが、正確な結果は来年早々ということになります。
  11. 青山丘

    青山(丘)委員 私は、今回の法改正の意図とされたところ、労働者にとってこういうメリットがあるということをひとつ述べてもらいたいことと、新しく法改正することによって、例えば申告制度を設けた、申告制度をとったことによって不利益な取り扱いを受けない制度を設けたとかいうような、労働者保護の点についてきちっと御説明いただいて、時間がとうとう来てしまいましたので、質問を終わりたいと思いますが、その二点、どんなメリットがあるのか、どんな労働者保護考えておられるのか、御説明いただきたいと思います。
  12. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 まず、メリットという点でありますけれども、現在認められております二十六業務について実態を見てみますと、女性の方が約七割を占めておりますし、また二十代、三十代の方で全体の六割を占めているといったような状況にありまして、自分の能力、経験知識、そういったものを生かして好きなときに働きたい、こういった特に若い方や女性の方のニーズにはさらにこれがこたえられることになるのではないかというふうに考えております。  また、特に高齢者につきましては、なかなか現在の失業状況の中で就職が困難なわけですが、派遣というふうな形態を利用しながら常用就職に結びつけていくこと、こういった道も開けるのではないかと思いますし、また、特に高齢者の方は、六十歳を過ぎますと、必ずしも常用だけではなくて、いろいろな働き方をしたいという要望が強いわけであります。そういった要望にもこたえられる、そういったことが言えるのではないかと思います。また企業にとっても、例えば育児や介護の代替要員の把握がしやすくなる、こういったメリットが十分にあるのではないかというふうに思っております。  また、労働者保護でありますが、今般派遣対象業務を広く拡充することにも伴いまして、労働者保護というものを強化しております。その一つが、例えばトラブルの防止とか苦情処理整備でございまして、労働大臣への申告制度の創設とか、あるいは安定所に対する相談、助言の申し出とか、そういったものを盛り込んでおります。あるいは、個人情報の収集も必要な範囲に限定すべきであるということ、あるいは秘密の漏えいについて派遣元にこれを厳しく対処することとしている。こういったことによって、労働者保護についても格段に今般強化をしているところでございます。
  13. 青山丘

    青山(丘)委員 質問を終わります。
  14. 岩田順介

    岩田委員長 次に、中桐伸五君。
  15. 中桐伸五

    中桐委員 民主党の中桐です。  私は、まず、きょうの質問の冒頭に、先ほど青山議員の方からも質問がありましたけれども、現在雇用問題の深刻な状況が進んでいる中で、実は、四月三十日に小渕総理がシカゴに行ったときの発言日刊ゲンダイの五月七日号に掲載をされているんです。これは同行した記者かぎ括弧で書いているんですが、現在の日本失業率、四・八%という戦後最悪の失業率になったというこのことに触れて、この日刊ゲンダイ記事によりますと、四・八%という記録のこの数字に対して、「「これこそが、日本経済の復活のうえで避けて通ることのできない、懸命な構造改革の努力の結果である」と言い切ったのだ。」こう書いてあるんです。  この記事は、ちゃんとした雇用対策をしっかりやれていない、あるいは、財政政策でも従来型の公共事業を依然として続けながら、雇用創出の有効な財政政策になっていないんじゃないかという問題の中で、こういった形で軽く言ってのけるというところに非常に問題があるんではないかというニュアンスで書かれていると思うんです。  こういうことを考えてみますと、小渕総理は、曲解すると、失業はもうやむを得ないんだ、構造改革が必要なんで、失業はやむを得ないんだというふうに言っているようにも聞こえるわけでありますが、この点、労働大臣はいかがお考えでしょう。
  16. 甘利明

    甘利国務大臣 総理発言の真意が正確に伝わっていないんだと思います。  総理は、さき競争力会議におきましても、雇用が特に大事だから、労働大臣通産大臣文部大臣と打ち合わせをして新たな雇用対策をぜひ策定してほしいという、わざわざ総理からの発言がありました。総理御自身は、これからは雇用なんだということを再三再四おっしゃっておられます。  ただ、一方、産業競争力をつけていかないと、このメガコンペティション時代に、結局抜本的な解決にはなりません。その経緯の過程において雇用影響がゼロというわけにはなかなかいかない、だけれども、限りなく少なくするために全力を挙げて取り組めという趣旨のお話を関係閣僚にされているわけであります。  過去の経験的な数値、あるいはアメリカの景気拡大雇用失業情勢との関連を見ますと、どうしても、景気が悪くなって底を打った後に回復してくる過程において、雇用失業情勢というのは必ず後追い指標になっておりますから、厳しい状況景気が回復した後にも続くという経験的な知識を我々は持っているわけであります。  だから、ほっておくと数カ月ないし一年間後追い指標になりますよ、だけれども、それを極力短くする、極力影響を小さくするということと、あと、国民皆さんには、後追いで数字が厳しくなるかもしれないけれどもそれは希望がちゃんと見えている厳しさですからねということを理解していただきたい。つまり、底なし沼に向かって進んでいく悪化状態ではなくして、反転攻勢に出るときに後追いで出てくる数字ですよということをよく理解していただく。そういう意味で、総理がおっしゃったことが正確に伝わっていなかったのではないかというふうに思っております。  重ねて申し上げますけれども、小渕総理は、このところの閣議での発言あるいは関係取材に対する発言を通じて、今そしてこれからは雇用が一番大事なんだということを再三再四おっしゃっていることは事実であります。
  17. 中桐伸五

    中桐委員 これは私も現地に行って聞いている話じゃありませんので、この問題でさらに根掘り葉掘りというつもりはございませんが、しかし、この間の失業問題というのは非常に深刻であることは間違いない。たしかきょうの新聞でも、川鉄が大規模なリストラ計画発表したというふうなニュースも出ております。そういう意味では、まさに重厚長大産業における構造改革というものが進み始めてから、まあオイルショック以降ずっと進んできてはいるんだけれども、さらにそれが進められようとしているということも事実だと言わなきゃいけないと思います。  そうしますと、川鉄のような大きな規模の大企業リストラをするということが進んでくるということは、先ほど大臣が言われましたように、これからまださらに失業率の問題というのは深刻になっていくと考えなきゃいけない。そういう状況の中で、実はこの職安法の改正が行われようと提起され、そしてまた労働者派遣事業法の改正案政府提案で出されてきているわけでありまして、まさに今国会における、現時点における委員会の審議というのは大変重要な意味を持っていると再確認をしなきゃいけないと私は思うわけであります。  さて、そういう中で、問題は構造改革が不可避の状況になっている。これは、金融システムの問題の改革も含め、現下の国際、国内、経済、社会の情勢の中から不可避の状況になっているという認識も、これはもう冷静にしなきゃいけない。そういう中で、従来型の、いわば日本型の経営と言われますか日本型の雇用システムと言われますか、そういった問題についても、この改革は避けて通れないというか、変動は避けて通れない状況にあるということも認識しなければならないんではないかと思うわけであります。  私ども民主党のといいますか、私の個人的見解も加えた立場でありますけれども、そういった構造改革やあるいは従来型の労使慣行といいますか、そういったものが変動を余儀なくされるという状況の中で、これまでの労働者の中における機会の均等と同時に、いわゆる雇用の問題でいえば就労機会の平等といいますか、そういったものを確保すると同時に、もう一つの問題は、余りにも大きな就業条件の格差を生み出してはいけないという立場に私どもは立つわけであります。  そういう中で、例えばリストラ構造改革の中で、規制緩和というふうなものも行われる必要がある分野においては、経済分野においては特にたくさんあるだろうというふうに思うわけでありますが、しかし、その規制緩和を行うということと同時に必ずセットにしてやらなければいけないのは、今日までの労働者保護のシステムがどこに問題があったのか。それを、大きく変動する今日の状況の中で、どう是正をすれば、労働者保護というか、あるいは不平等の拡大が極端な形で進まないようにすることができるのかという問題は、これは同時にセットしておかないと大変なことになる、こう私は思うわけであります。  そういう意味においては、例えば経済的な規制を緩和するということになりますと同時に、社会的な規制というのはむしろ強化しなければいけない、そういう分野が必ずある、そのように私は考えるものであります。  そういう立場から、政府提案している職安法あるいは労働者派遣法改正案について質疑を進めていきたい、こういうふうに思うわけであります。  さて、その中で、まず職安法の改正の問題でありますが、これは従来、日本雇用が、いわば大企業を中心とする日本雇用システム、つまり終身雇用型、年功序列型賃金でいわゆる労働力の流動が少ない、そういう形で言われてきた特徴のあるシステムまでが、今変動にさらされているということだと思います。  そういう中で、いわゆる日本雇用システムという形で位置づけられてきた部分というのは、しかし、これは大企業の、あるいは公務員の世界の話であって、中小零細企業では、そもそも雇用の勤続年数一つをとってみても、そんなに長くはない、決して欧米とそんなに大きく違う状況で今日まで来たわけではない、そういうことになろうかと思うのですが、ただ、我が国は、バブルがはじけるまでは世界でも有数の経済成長を保ってきた。そのために、新しい雇用拡大というものがその経済成長の中で解決をされてきていたために高い失業率を生み出さなくて今日まで来たと言えると思います。  しかし、そういう経済成長はもう我が国のこれから二十一世紀に期待はできない、こういう状況の中で、まさに今雇用不安というものが起こっていると言わなければならない。そのときに、果たして今までのシステムで十分機能できるのかどうかという問題をひとつ考えてみたいと思うわけです。  そのときに、職安法の改正の中で、いわゆる有料職業紹介事業というものを拡大するという形の措置がとられていこうとしているわけでありますけれども、その前に、では今までの公共職業安定所が果たしてきた役割とは一体どういうことなのか、どういう状況だったのか。そして、この新しい職安法の改正に伴う有料職業紹介事業の拡大というものを措置するに当たって、公共職業安定所機能はどのように再編成するのか、そういう問題が極めて重要であろうと思います。  その話に入る前に、今日までに、有料職業紹介事業にかかわってさまざまな苦情とか相談が労働者からなされてきた。その実情の把握から質疑のスタートを切りたいと思うのですが、まず、現在までの有料職業紹介事業にかかわっての苦情や相談の実情というのは一体どういうものなのか。まず政府の方から、余り長々しくではなくて結構ですから、簡潔に、要領よくお答えをいただきたいと思います。
  18. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 平成十年三月末現在で、有料職業紹介事業所というのは三千三百七十五所ございます。この有料職業紹介事業にかかわる苦情や相談件数ですが、その総数は把握しておりません。  ただ、毎年七月を労働者派遣事業適正運営推進月間ということにしておりまして、この中では、職業安定法の施行状況についても各都道府県で窓口を設けて苦情の受け付けをするということにしておりますが、昨年のこの月間に寄せられた民間の有料職業紹介事業関係の苦情、相談は、一カ月で二十四件でありました。そのうち比較的多かったものは、紹介を受ける際に提示された労働条件と実際の労働条件が異なっていた、こういったものが比較的多数を占めていたようであります。
  19. 中桐伸五

    中桐委員 紹介された情報がどうも異なっているという問題が多かったということなんですが、そういう苦情というものが来た場合に、その処理は一体どういうふうにされてきたのか。つまり事後措置ですね。その事後措置というのはどういうふうになされたのか。  つまり、苦情や相談を持ってきた労働者、また別の労働者が同じような苦情や相談に遭遇しなければいけない、そういうふうなことが起こらないようにするための事後措置というのがどういうふうになされたのか、お聞きしたいと思います。
  20. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 有料職業紹介事業につきましては、いわゆる軽易なものから大変大きな苦情といいますか、そういったものもあるわけでありますが、これにつきましては、許可の取り消し等によって悪質なものについては対応してきております。  平成二年から現在までのこの数字を見てみますと、行政処分件数は、許可の取り消しそれから許可の更新をしない不更新、こういったものを含めて五件となっておりまして、その内容は、許可された取り扱い職業以外の職業紹介を行ったというふうなもの、あるいは法定手数料以外の報酬を受け取った、こういったものでございます。  また、職業安定法違反につきましては、罰則の科されているものがありますが、いわゆる送検件数を見ますと、おおむね最近は二百人台、二百件台で推移をしております。平成九年は二百九件となっておりますが、その多くは無許可の有料職業紹介事業等に係るものであろうと考えております。
  21. 中桐伸五

    中桐委員 そうしますと、先ほどの苦情、相談の中の労働条件が違っているとか、そういった問題については許可の取り消しの基準とは関係ないのではないでしょうか。それは関係あるのですか、どうですか。
  22. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 許可の取り消し等は、これは法律の違反があった場合ということでございますから、単に労働条件が相違したというだけでは、許可の取り消し対象までにはならないかと思います。
  23. 中桐伸五

    中桐委員 そうしますと、いわゆる法律に違反する件数が二百九件ということだったのですね、職安法の法律違反が。そういう範囲内におさまらない苦情や相談というのがあるというふうに理解してまずスタートしなければいけないということでよろしいですか。
  24. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 この二百九件といいますのは罰則のかかるケースでございますので、そこまでに至らない苦情等はかなり多数あろうかと思います。
  25. 中桐伸五

    中桐委員 そうしますと、罰則のかかるものについては措置ができる、それからいわゆる法律に抵触する、許可の取り消しに抵触するようなものについては措置ができるということなんだけれども、しかし、実際にこれから民間のいわゆる有料の職業紹介事業を規制を緩和して拡張するということになりますと、この苦情、相談というのはさらにふえるというふうに予測をしなければいけないと思うのですが、その点はどうですか。
  26. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今回の改正案では、建設と港湾の事業を除きまして、広く有料職業紹介事業の対象業務にするということにしておりまして、職業紹介の対象は格段に広がるというふうに考えますので、それに伴いまして、やはり苦情というものもふえていくのではないかと考えております。
  27. 中桐伸五

    中桐委員 そうしますと、例えば労働者募集広告にかかわる苦情が多いというのが政府の統計からも出されておりますが、そういったものについて、罰則で全部措置をするという形以外のものを、どういうふうに有機的に労働者の苦情をスピーディーに処理して是正していこうとしているのか、今までのシステムとは違う何か強化するべき方策を考えているのかどうか、その点はどうですか。
  28. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 苦情の処理につきましては、従来から安定所においてこれを指導あるいは是正させるということを行ってきたわけでありまして、これからどのように件数がふえていくかもちろん不明でございますけれども、安定所による指導あるいは相談の受け付け機能の強化、こういったことによって対応していく考えでございます。
  29. 中桐伸五

    中桐委員 安定所機能の強化ということになるわけです。その安定所の問題でございますけれども、安定所の実際果たしてきた今までの機能ということの中において、職業紹介、つまりミスマッチングなどを防ぐ機能あるいは失業している方に転職のサポートをするとか、そういった機能が、先ほど来の日本雇用情勢の中から考えても、ますます従来とは違う形のシステムに変えなければいけない、そういうふうに私は思うのであります。  ちなみに、非常に転職のケースの多いアメリカにおいては、各州の職業安定所日本の公共職業安定所に当たるところに、ワン・ストップ・サービスという形で、国の連邦の情報からその州における地方自治体の情報まですべて集中して、財政もそこに集中して、いわゆる公共職業安定所機能を、ワン・ストップ・サービス化によっていわば情報をそこに集中しながらサポート体制を強化する。それから失業者に対しては、カウンセリングも含め、これは失業者の中に自殺をされる方なども日本でも結構ふえてきているという実態がございますが、そういう中でカウンセラーを置いてカウンセリングもするとか、そういった、いわば縦割りのばらばらの地方の雇用政策と国の雇用政策というものも有機的にそこで、ワン・ストップ・サービス化の中でマンパワーの配置や情報の集中もしながら有機的に転職サポートをするという形をとっているというふうに私は聞いているのです。  この職安法の改正をもしするとすれば、私は、日本でもそういった形のものを、そういった経験を、日本の中の今までの制度の延長の上にいいものを生かしていくという必要があると思うのですが、その点について、大臣どうでしょうか。
  30. 甘利明

    甘利国務大臣 今回の法改正は、民間機能強化のみならず、公共の機関の機能強化、そして官民両々相まって社会のニーズにこたえていくという改正内容、規定整備になっております。  具体的に申し上げますと、公共職業安定機関につきましては、主に四点の需給調整機能の強化を図ることといたしておりまして、まず第一点が、労働力需給ミスマッチ解消するための情報提供機能の強化であります。二点目は、今先生のお話の中にもありましたが、カウンセリング等きめ細かな職業指導や各種講習、そして学生に対するインターンシップの実施等の求職者の援助の充実。そして三点目に、労使団体との連携協力による広範な求人確保と求人、求職の結合。そして四点目に、職業能力開発機関との連携の一層の強化。  これらに関する規定を整備することによりまして需給調整機能の強化を図る、そして官民両々相まって現在そして将来のニーズにこたえていくということを想定いたしております。
  31. 中桐伸五

    中桐委員 一応、今大臣のお答えになった内容は大変重要な政策だというふうに私も同感いたします。そういう点で、公共職業安定所が果たす機能というのを労働者あるいは企業が使いやすい仕組みの中で再編成してもらいたい、こういうふうに思うわけであります。  ちなみに、最近出された書物の中の研究によりますと、日米の男性労働者の転職方法というものの調査の比較が行われておりまして、これは日本の男性のサンプルと米国の男性のサンプルを比較したものであります。東京の男性のサンプルとロサンゼルスの男性のサンプルの比較なんですが、どういう転職方法で転職をしたかという調査の結果なんです。公共職業安定所というのがございまして、東京では、転職経験のある労働者の全体の転職方法の中で五・五%、ロサンゼルスが三・九%となっておりまして、日本の場合の方が公共職業安定所を使って転職をしたというのがこの調査では多くなっているわけであります。しかし五・五%ということでありまして、これが多いのか少ないのか、なかなか簡単に判断はできませんが、転職する方法といいますか、この点については、今後転職がふえるということを想定いたしますと、かなり重要なことになってくるのじゃないかというふうに思うわけです。  そういう点で、先ほど大臣が言われた問題というのは、これを充実することによって転職の一つの方法として公共職業安定所が使われるということがより充実をしていくんではないか、こう思うわけであります。  ちなみに民間のあっせん紹介所というのは、ロサンゼルスが一・〇%で日本の東京で一・二。これは、職業紹介所事業が公共職業安定所に今までは限定をされてきた歴史がありますから、日本の場合にはこの一・二というのはこれからふえるんだろうと思いますが、この点については大体どのような予測を、つまり有料職業紹介事業がどの程度の機能拡大をするというふうに予測をされておりますか。
  32. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 従来の職業安定法によりますと、公共の職業紹介機関が主たる役割を行い、従たる役割として民間の有料職業紹介がこれを補うということになっておりました。これは、国際的な条約の流れを受けまして、あくまでも民間の職業紹介は従たる位置にあるものだという位置づけで今日まで来たわけでありますが、先ほど申し上げましたが、国際的な潮流の大きな変化ということも踏まえまして、今般、職業安定法改正によって民間の有料職業紹介事業を原則的にこれを自由にするという改正案を御提案しているわけでございます。これによりまして、今まで基本的にいわゆるブルーカラーについて有料職業紹介が適用対象となっておりませんでしたが、そういった分野にも適用が拡大されるということですから、民間の紹介所を経由する、利用する件数というのは相当程度伸びていくのではないかというふうに思います。  ただ、現在の民間有料職業紹介の取り扱い状況を見ますと、家政婦さんとかマネキンさんとか、比較短期雇用を繰り返すといった方の取扱件数が多いものですから、現在の動向をもって今後の動向を直ちに推しはかるというのはなかなか難しいかと思いますが、いずれにいたしましても、かなりの方が民間の紹介所を利用することになるのではないかと思います。     〔委員長退席、石橋委員長代理着席〕
  33. 中桐伸五

    中桐委員 そういうことを考えますと、先ほどの公共職業安定所機能の中で、大臣の答弁の中でちょっと気になるのは、というのは、もう一つ強化をしていただきたいのは、先ほどの苦情、相談、この仕組みを先ほどの四つのポイントのもう一つに加えていただいて、ぜひ今後の施策に生かしていただきたい、そう要望しておきたいと思います。  さて、日本の現在の職場の中で一つ大きな問題は、日本型のシステムというふうなことの中で議論をされてきたんですが、これから転職というふうなものがふえてくる、今日までの日本経済社会の状況の変化から見て多分ふえてくるものと予測をしなきゃいけない。そのときに、いわゆる賃金、労働条件を規定する要素として、その労働者本人が持っている職業能力、これをどうより普遍性を持った評価のシステムにしていくのかということが極めて重要なことになってくるんではないかと私は思っております。いわゆる日本労働力市場の中でいわば二重構造といいますか、二重労働市場があるというふうなことが、これは日本だけではなくて海外でもそういったことを主張している人もいるわけでありますから、そういう意味で、これから日本の場合も、労働市場において労働者の職業能力というものを、どうしても汎用性のある職業能力評価、こういったものが不可避的に問われてくるのではないかというふうに思うんであります。  そういう意味において、この職安法の中で職業の名称やあるいはその内容、そしてまたその分類等に基づく、それが資格やあるいはその他のものとも関連をしながら労働者の職場におけるいわゆる待遇、そういったものに関連をするものとして、職業というものの普遍性や客観性を持った基本的な基準というのですか、そういったものをしっかりとつくり上げる努力をこれから始めていかなければいけないというふうに私は思うんですが、その点についてはいかがでしょう。
  34. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般、公共職業紹介機関の機能も強化いたしますとともに、民間の職業紹介についてもこれを広く認めていくということでございますから、求職者あるいは求人者が民間の職業紹介事業を利用する割合等もこれから飛躍的に多くなっていくのではないかというふうに思われます。そういったときに公共と民間とで職業分類等について違った意味で言葉を使うということになりますと、需給の適切な結合ということにはなかなかなりにくいかというふうに思います。  そこで、今般、改正法案の中に、十五条でございますが、職業安定主管局長が、労働者の募集及び労働者供給事業あるいは職業紹介、こういったものに共通して使用されるべき標準職業名を定め、職業解説、職業分類表を作成し、その普及に努めるということにしております。この規定に従いまして、官民に共通して使用される標準職業名等を定めていく考えであります。
  35. 中桐伸五

    中桐委員 そのシステムは、先ほど大臣の答弁の中にもありましたが、職能開発、職能訓練を行う、これは民間、公共全部含んでだというふうに私は思いますが、そういったものとの連携を強化するということを考えていく必要があるということの中にもその職業能力評価の仕組みをぜひ重点ポイントとして今後対処していっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  さて、その次に、この職安法の問題との関係でいいますと、職業紹介事業が自由化されるわけであります。従来、公共職業紹介という形で限定をしていた歴史的な経過の中で、いわゆる職業紹介の中でさまざまな前近代的な、搾取だとかいろいろなことが起こってきた歴史があって、そういったことを起こさないために公共職業紹介というものを基本に今日まで歴史的に進められてきた事業を自由化する。その場合、適用除外ということで港湾運送業務とか建設業務とか、そういったことが指摘をされているわけであります。この適用除外については、自由化をしていく前段で予想できるものについては除外をするという形で対処していこうとしていると思うんですが、自由化をしていろいろ大きなトラブルが起こる、これから経済がサービス化するということの中でいろいろな新しい問題が起こってくる可能性もあるんです。その場合に、適用除外ということを迅速に労働者保護のためにしなければいけない場合も起こってくると思うんですが、そのことについては、この改正に伴ってどういうことを考えているのか、お答えいただきたいと思います。
  36. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今般の改正法案におきましては、従来からいろいろと弊害の指摘をされてきました、そういった問題がまだあるというふうに指摘をされてきました港湾運送業務それから建設業務をまず除外しておるわけでありますが、この二つと並びまして、一般規定でありますけれども、有料職業紹介事業を認めることが労働者保護に支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、命令によってこれを除外できるというふうに規定をしておりまして、そういった状況がありました場合には、これは労働省令によって適時これを除外することを検討したいと思います。
  37. 中桐伸五

    中桐委員 それに関連しますけれども、もう一つは、失業した労働者の再就職をする事業というものを行う、いわゆるアウトプレースメント事業というふうな形で呼ばれているんですが、これについても、労働者保護の観点から、このアウトプレースメント事業に関するもので職業紹介を含むものについては職業紹介事業の許可を取得すべきだ。つまり、一定の水準を確保するためにそういう担保が要ると思うのですが、その点についてはどのように考えているのでしょうか。
  38. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 いわゆるアウトプレースメント事業と申しますのは、何らかの事情、事由によって企業での雇用の継続が困難になった方について再就職のいろいろなお世話をするという事業を総称して言っております。その中でも、その労働者につきましてのカウンセリングとかあるいは教育訓練とか、こういうものをいわば請け負って労働者の再就職のための仕事をするというものでありますが、中には、それにとどまらずに、職業紹介を行うというものもございます。  このアウトプレースメント事業の中で職業紹介を行うものにつきましては、当然、有料職業紹介の許可が必要でありますから、そういった許可をとるように指導してまいる考えであります。
  39. 中桐伸五

    中桐委員 許可のところできちんとチェックをするということですね。それを具体的にはどういう形で明示をするようにしようということでありますか。具体的にはどこで。
  40. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 これは、労働大臣の定める指針の中において規定をしたいと思います。
  41. 中桐伸五

    中桐委員 ぜひ具体的に、質的な低下が行われない、悪質なものが出てこないようにしてもらいたい、こういうふうに思います。  さて、その次に手数料の問題ですが、今回の政府案では、求職者の利益のために必要があると認められる場合については、求職者から手数料を徴収してもよいと規定をしているわけでありますが、この場合の例外を省令で定めるということになると思うのですが、その場合に、求職者が望まないのに料金を請求されるというふうなことを防ぐために何かきちんとした措置が要ると思うのですが、その点についてはどうですか。
  42. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今御質問の点は、ILOの百八十一号条約におきましても、求職者からは基本的に手数料を徴収してはならないというふうに規定されているところでありまして、例えば芸能関係の仕事とか、求職者自身にとって手数料を払っても就職したいというふうに、そのことが求職者の利益にもなるような場合、こういった場合についてのみ手数料を徴収してもいいということになっているわけでありまして、今般の改正法におきましても、原則として求職者からの手数料徴収は禁止をし、それを除外する場合につきましては、これは省令において定めようと思いますが、その場合の基準等については、関係審議会ともよく相談をしたいと思います。
  43. 中桐伸五

    中桐委員 わかりました。  そのほかにも、この職安法の問題については、個人情報保護の問題とかそういった問題も含まれておるし、いわゆる自由化をした場合にさまざまな新しい問題というのが出てくる可能性があると思いますが、その点については、十分今後状況を見ながら必要な措置をとっていかなきゃいけない、そういうふうに思います。  職安法についての質疑はここで打ち切りまして、労働者派遣事業についての質疑に移りたいと思います。  私は、労働者派遣法の今回の改正政府案は、非常に不十分だと思っております。  それは、まず、審議会で公労使の意見が十分一致しないまま、やや性急に法案化されている。それから、もう一つの問題は、これもそのことを反映いたしますが、一体、二十一世紀の労働市場をどういうふうに見越してこの労働者派遣事業法の改正をしようとしているのかという点について、非常に不鮮明なところがある。しかも、その基本的なところで非常に不鮮明である。  確かに、ILOの百八十一号条約との関係で、新しい時代に、ILO条約の基本精神をもとにして、新しく労働者派遣事業法を見直すというふうに考えている流れもあるようにも思いますが、しかし、従来の労働者派遣事業法というのは、専門業種というものを二十六業種決めて、その専門業種に限って労働者派遣事業を認めるという仕組みになっていた。そこにもってきて、臨時的、一時的労働という形の概念がここに入ってきて、新しいもう一つの建物が労働者派遣事業法というものの中に入ってくる。こういう形になっているわけでありまして、一体、これは基本的にどういう方向へこの労働者派遣事業というものを位置づけていこうとしているのかというのが、私にもよくわからないところがあるわけであります。  個人的に私の見解を申し上げれば、今日までの仕組みの中で一つの建物としてできてきた二十六業種の労働者派遣事業法というものに、どういう実情があって、どういう問題点を解決しなければいけない課題が残っているのかという問題がまず一つあるわけでありますけれども、しかしこれは、現在の専門業種に限って認めるという考え方でできた枠組みというものと、臨時的、一時的労働という形でILO条約の中に確認をされているものとは、およそ考え方が違うのではないかと思うのですが、その点、どのようにお考えなんでしょうか。大臣、お答えいただけますか。
  44. 甘利明

    甘利国務大臣 従来は、派遣業務というのは、御指摘のとおり専門的な二十六業種あるいは特別の雇用管理を要するものというところに限られておりました。今回の改正は、これに合わせて、ネガティブリスト化を図りまして、基本的に自由化を図るということであります。これは、社会の短期的、一時的な労働力需給、これは就業したい側と採用したい側と両方ありますけれども、そのニーズにより的確にマッチするように改正を図るというところでございます。  とにかく、働き方というのが時代の推移とともにいろいろ変わってくるわけでありますから、いろいろな選択肢を用意してあげる。それを使う、使わないは自由でありますけれども、いろいろな選択肢があって、電車でいえば、東京—大阪まで急行しかないというのを、各駅あるいは別なところを回る電車も設定して、途中で乗りかえができるような措置をする。最初から最後までその電車で行く人もあれば、途中で乗りかえて別の路線に行く人もあるし、途中の路線からその電車に乗り込んでくる人もある。いろいろな選択肢がとれるように柔軟に対応できる道を設定したということであろうと思います。  さらに、育児休業法や介護休業法が本格的に実施されていきますと、短期的、一時的な労働力不足というものが当然出てくるわけでありまして、それをどう埋めていくか、育児あるいは介護の休業を終えた人が戻ってくるときにスムーズにスイッチできるような、正規常用雇用を逆に守るという意味合いもあるでしょうし、いろいろな意味でいろいろなツールを用意するということであろうというふうに思います。
  45. 中桐伸五

    中桐委員 そこで、先ほどの大臣のお答えの中に幾つかの非常に重要なキーワードがあるわけですが、一つは選択肢を用意するということ、これはこれで重要なキーワードであり、このことをどうするかということと、先ほどの常用雇用の安易な切りかえ、派遣労働のようなものにどんどん切りかえるというふうなことについては、同時にこれをきちんと対処しなければいけない、そういうことをやらせてはいけない、これは大変重要なセット論の話だと私は思うわけであります。  しかし、その場合に、私もこの派遣労働についてドイツやフランスに調べに行ってまいりましたが、ドイツなんかに行きますと、よく、日本の労働時間が問題になったときに、過労死なんという問題があって、その事件の死亡している労働者本人がどういう働き方をしてきたかというようなデータを外国の労働者人たちが見ると、一体、君の国には労働基準に関係する基本的な法律というのはないのか、こういうふうなことを質問されることがあるわけですね。  つまり、もちろん法律違反というのは幾つもあるだろうけれども、何しろ最近は労働時間の短縮でだんだん努力をして問題が少なくなってはきておりますけれども、しかし、例えば労働時間というふうなものを通して考えれば、労働基準というものが本当にきちんとしたナショナルなスタンダードになっていないんじゃないのという疑問を持つわけですね。いわば法律に書いてあることと現場の食い違いというのがそのぐらい大きい、かなり大きい国、そういう国に見られてしまうわけであります。  もちろん、ヨーロッパが法律と現実が全く一致しているというふうなことを私は言っているわけじゃありません。ただ、その格差が余りにも大きいということを、いわゆるナショナルなスタンダードを決めたのならそれをきちんとお互いに守ろうよ、こういうことがなかなかできていない国の一つなんじゃないかというふうに、私はずっと痛感をしてきているわけですね。  そういう中で、ドイツの人も言っていましたが、いわゆる事業の臨時的、一時的繁閑に正規雇用ではどうしても全部対応できない、そういうところに必要な労働力を供給する、その需要にこたえて供給をするという仕組みはどうしてもゼロにはできないということから、一定の条件つきでそういう働き方を認めざるを得ない。しかし、それは正規の常用雇用に比べれば労働条件が非常に悪くなるということがあのドイツでも非常に問題になっておりまして、そういう意味において、そもそも労働者派遣事業の中で働く労働者の労働条件というのは、いわゆる正規雇用労働者の労働条件に比べればどうしても悪い状況で働かなければいけない、ある種労働力需給関係の中でそういうふうに市場の法則が貫徹をしてしまうというところがある。  そういうことに対して、私は、このネガティブリスト化に伴う派遣労働の拡大、そしてその中で就業条件の非常に悪い状況が広がってしまう、そういうことについて非常に大きな問題を起こしてしまうのではないのかな、こういう懸念をずっと持ちながらこの法律整備をしなければいけないなと思っているわけです。  さて、その中で、いわば正規労働に対して非正規労働という形で働く働き方の中には、パートもあれば社外工みたいな形の働き方もあれば、いろいろな働き方が既にもう日本でも行われている。これはまあ世界でもそういう形で労働力市場が形成されているわけですが、そういう中で、最近の研究の報告でも、確かに経済成長の中で最低賃金は上がってきて生活のレベル、賃金のレベルは上がってきた、しかし企業規模間格差というふうなものを見た場合に、この企業規模間格差、一番上の大きな企業と一番下の企業の間の格差は実は拡大をしているという問題が言われているわけです。これは統計的にそれを調べて、拡大をしている。つまり、全体の経済成長の中でのレベルは上がってきてはいるが、相対的に規模間で見ると格差が拡大をしている。これは私のずっとやってきた安全衛生でも同じことで、労働災害の発生率は実は、発生率全体の絶対数は減っているけれども、相対的な関係では拡大をしている。  さて、メガコンペティションというような形で大臣もよく言われますが、いわゆる大競争時代というような形で言われるこの状況の中に、これからどんどん構造改革やあるいは規制緩和やそういったものをやっていくと、これはもう既にアメリカという国で所得格差というのがどんどん広がっているという結果が出ていることが明らかですから、そういうことを考えるとますます、これはかつて言われていた、日本で言えば二重構造ですね、大企業と中小零細、それと同じように、二重労働市場とか二重労働力市場というように二つ労働市場があって、第一次労働市場と第二次労働市場があって、その第一次と第二次の間は固定的になってしまって移動ができない。  つまり、労働市場というのは普通一つだと思っているけれども実は二つあって、第一次市場という、どんどん挑戦のチャンスがあって、職業訓練なんかどんどん受けて新しいことにどんどん挑戦をして自分の能力をいろいろなところへ展開をする、そういうことのできる第一次労働市場と、それから、その道が非常に狭くて、自分がどこかで自助努力で次のチャンネルへ移行しようとしても移行できないもう一つ市場ができてしまう。これを第二次労働市場といって、これは学説の一つですから、この学説論争をここでやるつもりは全然ないのですが、そういう考え方がなされるほど、言ってみれば大きく二つのグループに分かれるような傾向が出てきている。  しかし全体の生活がよくなっているのだからいいじゃないの、こういう話でそれを解決するかどうかという問題になってくるのですが、私はやはり余りこの格差を拡大し過ぎてはいけないと思っているわけで、私はそういう意味ではリベラルの立場に立つわけであります。  そうなると、何を解決していかなきゃいけないかという問題になってまいります、この派遣法の問題一つとっても。少なくとも派遣労働というものは正規雇用の上にいい労働条件をとれるということは、これは全世界を見ても私はあり得ないことだと思います。そうなると、問題は、その格差をどう拡大しないで適切な労働の市場としてこれを確保していくのかということが一つと、それからもう一つは、やはり第一次市場と第二次市場に固定してしまわないようにするためにはどうしたらいいんだという問題の二つを解決しなきゃいけない。  そのときには、選択肢を用意するということと労働者保護をしっかりやるということだけでは足らないので、もう一つのチャンス、つまり第一次市場に転換できるチャンスというか正規雇用というか。もちろん正規雇用そのものをされたら第二次市場から第一次市場へ移れるというものでもないんですけれども、これはややこしいから細かい話はやめますが、問題として、一つは正規雇用にどの程度移れるのかという問題があるわけであります。いわゆる不安定な雇用状況就業条件がどうしても落ちる、その落ちる状況から脱却をする道というのは、多様な選択肢の一つである派遣労働という選択肢を通じて正規雇用にどういうふうに移行できるのかという問題が私は非常に関心がある。その正規雇用に移行できる可能性というのは一体どのぐらいあるのかということが問題になるわけです。  さて、その点でどうでしょうか。今まで私が調べた限りでは、一九九〇年に雇用開発センターというところが調査をして、その調査結果があるようですが、アメリカでは非常に転職が頻繁に行われる。その中で、これはパートの統計のようですが、パートタイマーで働いていた人が正規の職員に転換をしていく、そういうふうに登用した経験があるというのが、アメリカの統計では八二%の企業がパートを正規にした。これは今までの経験ですから発生頻度じゃないのですが、そういうことなんですが、それに対して日本では、パートでは二六・四%。つまり、パートを正規の職員に登用したことがあるという企業がアメリカでは八二%、日本では二六%。派遣労働者ではわずかに三・七%というんですね。これは一九九〇年の雇用開発センターの統計なんです。  こういう中で、今労働省政府が、これまでの行政の中で経験したことも含めて、一体派遣労働というものが、二重労働市場から、下位の労働市場から上に転換する一つのステップである正規雇用への道がどの程度あるのか、それは把握をされたことはありますか。
  46. 甘利明

    甘利国務大臣 我が国におきましては、派遣から正規常用雇用への移動の公的な統計、把握はありません。  外国は、先ほど先生の八十何%という数字は、そういうことを過去に一回でもしたことがあるかというアンケートだと思うんですが、絶対量で言って、派遣から正規常用に移動したというのは、私の記憶ですと、たしか欧米では大体三割前後だと記憶をしております。スウェーデンはちょっと特殊な例で、たしか六割ぐらいあったと思いますが、日本でも今回の法改正で、御承知のとおり、一年を超えてはならない、その場合には正規常用雇用とする努力義務を設ける等々がありますので、比較的欧米の平均値に近い数字に近づいていくのではないかというふうに思っております。  それからもう一点、派遣労働のいい点で、前回の委員会でも委員から指摘をされましたけれども、いわゆる実業の世界におけるインターンシップ機能があるのではないか。いろいろ派遣現場を経験することによって自分が将来本当にやりたいところが見つかる、実務で、現場で仕事の内容が正確に把握できるということ等もありますので、今回の改正はいろいろな意味で社会のニーズにこたえるものだというふうに考えております。
  47. 中桐伸五

    中桐委員 大臣のお答えの中では、そういう可能性を秘めているということは私もわかりますが、ちょっと不安なのは、今までの派遣事業の中でそういうことがどの程度あったかという把握が政府がちゃんとできていないとしたら、そんな楽天的な予測をすることはできないんじゃないかということであります。  そういう点について、私は、今言ったように、労働者派遣という形で、事業の繁閑だとかさまざまな専門性の、しかしそれは長期的に正規雇用をするにはちょっと労働力の活用において硬直性があるというふうに企業の事業主が考える分野の労働市場というのはあると思うんですね。そういうことを全くゼロにするということは非常に難しいわけでありますから、そうしたら、一つニーズに対してそれがむやみやたらに常用雇用の代替になったり、それから就業条件の格差がどんどん広がるような働き方の選択肢になっては困るので、そのための一つの重要なポイントは、先ほど大臣も言われましたけれども、ある種インターンシップみたいなものなんですね。いろいろ情報を幾ら見ても、やはり働いてみないとわからない、ミスマッチを防ぐためには。まずは何しろその中に入ってみてやってみるということをやらなきゃ本当にこれは自分に合った仕事かどうかというのはわからない面があるわけですから、そういう意味では、この派遣という形での労働の形態というのはマイナス面ばかりではなくてプラス面も持っている。  では、それを生かすためには、マイナス面を少なくして生かすためにはどうしたらいいかということは、考える上において大変重要なことですから、政府がちゃんと今までの派遣の中でそういうことを調べてないということは私は非常に大きな問題だと思う。だから、そこはちゃんとこれからしっかり把握をして、どういう要素がそこの中に組み込まれれば新しい開かれた道に行ける労働者をふやしていけるのか、そういうことも考えていただかなきゃいけないんじゃないかと思うんです。
  48. 甘利明

    甘利国務大臣 大変重要な御指摘でありますので、調査項目の中で新しくそういう項目を起こして、できるだけ政府が把握できるようにしなければならないというふうに思っております。
  49. 中桐伸五

    中桐委員 それからもう一つ派遣のネガティブリスト化が実施された場合、今、女性労働者派遣労働の中では非常に多いということなのですが、男女の賃金格差あるいは就業条件の格差がいろいろな統計的比較を見ても日本の場合はやや大きい、G7の中で。イタリアはちょっとわかりませんが、主要に比較される国のドイツやそういったところと比べて大きいと言われているのですが、将来どういう労働者派遣労働のネガティブリスト化の中で参画をしてくるかということの中で、やはりネガティブリスト化されて女性の方がますます参加をしてくる中で、賃金格差を含め重要な就業条件の格差の拡大が起こると私は大変問題だと思うのですが、その点はどのように予測をされておりますか。
  50. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 男女雇用機会均等法がいわゆる強制法ということになりまして、男女間の差別は、採用についても配置についても禁止されるということにこの四月からなったわけでありまして、恐らくこれが定着するにはなかなか時間もかかることだろうと思いますが、従来から言われておりました男女の採用差別等の問題は、この法律の新しい改定を機にして是正の努力を十分にしていかなきゃいけないと思います。  そういった大きな流れの中で、男女間の労働条件の格差はどうなるか、これは単に法律の規定だけでなくて、企業の努力あるいはいろいろな努力があって是正されていくものだと思いますが、やはり基本的には、労働能力を高めていくということによって、男子も女子も、あるいは転職するときにも、あるいは派遣労働者から正規労働者に移っていくときにも、そういった自己の能力を高めながら移動していくということが男女含めてこれからますます大きな要素になっていくのではないかなというふうに考えております。
  51. 中桐伸五

    中桐委員 その問題にも関連すると思うのですが、今回の派遣法改正の中でも、そういった男女雇用機会均等法におけるいわゆる措置をした内容が派遣法の中に、例えば安全衛生というのは特例で入っているけれども、そういったのが落ちているわけですよね。特例措置で落ちている。これは、派遣事業というこの事業を法制化する法律の枠組みの問題との関係で極めて重要な問題を含んでいるので、次に、その問題に質疑の内容を移したいのです。つまり、私が言いたいことは、派遣労働が正規に雇用された労働者就業条件に劣る要因となるポイントは、派遣労働の中の登録型という形のものにやや集中して問題が起こってきているのではないかというふうに思うわけです。  連合が派遣相談ダイヤルというのをやって、相談の内訳を出しているのです。これは一九九九年二月八日から十日にかけてやった派遣労働者からの相談受け付けの結果なのですが、そうすると、相談は東京、愛知、大阪で受け付けた、全部で百十一件の相談があった、そのうち、登録派遣型と常用派遣型に分けて相談を受け付けると、登録が九十、常用派遣が二十一、常用派遣も問題を含んでいるわけですが、特に登録型の派遣の相談が多いということがはっきりわかっている。つまり、トラブルが多いのは、派遣労働そのものがトラブルを起こす就労形態であるということは言えるけれども、特に登録型が問題が多いということがはっきり出ている。  その登録型がなぜ問題があるかというと、正規雇用という形に常用型の場合にはなっている、それに対して、登録型というのは、派遣契約が成立したときに事実上雇用が発生するという状況になる。しかも、派遣労働という性格から、就業場所は派遣先、つまり雇用関係を持っている派遣元自分の指揮命令関係にある職場で働かせるのではない、そういう関係にあるから極めて大きな問題を発生させるということにあると思うのであります。  その場合に、二つの法律の枠組みの考え方がある。この間、いろいろ検討してみて、二つにポイントが絞られてくる。  一つは、日本のように、派遣元にのみ労働者との間に雇用関係を置いて、指揮命令関係のみがあるのが派遣先派遣労働者関係なのだ、こういう形でいわゆる就業条件のさまざまな発生する問題を防ごうじゃないか、そういう形で、いわば許可制にして、登録型の場合は許可制ということで、許認可という権限を公的に政府が持って悪質な業者の参入を防ごうじゃないの、こういう仕組みでつくっているのが日本労働者派遣法だと思う。もう一つは、派遣元派遣先の両方に使用者責任を明確にする、つまり、雇用関係というか使用者責任を明確に位置づけてこれをコントロールしようというのがもう一つの仕組みだと思うのです。  そこで問題なのは、登録型にいろいろ問題がある。つまり、許認可のところでコントロールしようとしてもいろいろトラブルが起こっている。その登録型の問題をコントロールするためには、許認可という形で、いわゆる派遣元派遣労働者雇用関係を持つという形で今デザインをしている日本派遣法という仕組みだけでこれが解決できるのかという問題があって、そこで、いろいろ派遣労働者の問題を取り上げている人たちからは、派遣先の責任というのにもうちょっと踏み込まなければだめなんじゃないかという意見が非常に強いわけであります。  そうすると、派遣先の責任を明確にするということになって使用者責任まで明確にするというシステムにしようとすれば、これはデザインをもう根本から変えますか、こういう話も含めてこの問題をどう処理するかということが問われている。そのときに、当然、例えば指揮命令関係にある労働者を労働災害が多発をするところで働かせてはいけないよというのでつくられている安全衛生法という法律派遣法の中に特例で入っている。ところが、指揮命令関係で、セクハラの問題だとかあるいは母性保護の問題だとかそういった問題についてはこの政府案には入っていない。つまり指揮命令関係の発生する範囲内の極めて重要なところが抜けているじゃないか。安全衛生法は特例で入っているのだからそれはもう当然入れてもいいのじゃないの、それを入れないというのはおかしいというふうに私は思うのです。  しかし、その問題をクリアしてもまだ問題は残る。例えば社会保険料の問題を取り上げても、派遣元の方が社会保険に入っていない労働者派遣先に送る、そういったことだって事件としては発生している。そういう問題について、では、派遣先はもう全く関係ないのか、全部派遣元の責任なのか。つまり、指揮命令関係範囲内だけではなくて、もう少し使用者責任というふうなところへ近づく派遣先の責任の範囲拡大、そういった問題も大きな議論になるんではないかと思うんです。  とりあえず、今の、安全衛生法に並ぶ男女雇用機会均等法というものの中のセクハラの問題だとか母性保護の問題だとかといった問題が抜けているのはどういうことなのか、お伺いをしたいと思います。
  52. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣労働者雇用責任について、これをどこに属せしめるかということは、この派遣問題を考える上で大変大きな問題であろうというふうに思います。  現行の仕組みでは、派遣労働者雇用責任というのは、原則的に派遣元に一元的に整理をするということで、派遣元派遣労働者との雇用関係、それに伴う派遣元事業主の雇用責任義務ということで現行の法体系が成り立っているわけであります。そうした上で、労働基準法の時間管理、あるいは職場における安全衛生、こういったものについて特例的に派遣先の事業主としてこれらの法律の規定を適用するというふうにしているわけでありまして、原則は、派遣元事業主がすべての使用者責任を負うということにしているわけであります。  したがって、どこまでこれについて例外を認めるかというのは、あくまで立法政策の問題であろうかと思います。  かつ、それ以前に、事業主は必要であるからこそ派遣労働者を受け入れているわけでありますから、派遣先において適切な就労環境が保たれるように努力するというのは、これは、法律の規定がなくても派遣先事業主の当然の責務であろうかというふうに思いますし、そういった努力がないと、この派遣労働の制度というのは発展していくことはないんじゃないかというふうに思います。  そういったことも勘案しながら、今回の改正案におきましては、派遣先における就業環境の維持、あるいは診療所や給食施設等の利用の便宜を派遣労働者について図るように、こういった規定を盛り込んでいるわけであります。  今御指摘の母性保護あるいはセクハラにつきましても、適正な就業環境の維持、こういった規定に基づきまして、指針においてその具体的な内容を明らかにする、こういった方向で臨めばどうかというふうに現在考えております。
  53. 中桐伸五

    中桐委員 時間がちょっとなくなってきたんですが、では、従来の登録型というものが非常に大きな問題があるということを前提に、その登録型の中で、登録型だけにこだわることはありませんが、今までの労働者派遣事業に関する法違反というものがどのようにあって、罰則をどの程度適用したのか。特に、改善命令だとか、それに従わなければ公表する、こういったところをどのように行ってきたのか。そしてまた許可の取り消しとかという事例はどのぐらいあったのか。  つまり、将来ネガティブリスト化にしたときに非常にいろいろな問題がたくさんふえてくることが予想されるので、そういった今までの労働者派遣事業の法制に関して実際にどの程度のことをやってきたのかを、まず簡潔にお聞かせください。
  54. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣法の制定、施行以来今日までの行政処分等の実態でありますけれども、労働基準法違反及び労働者派遣法違反、これは適用対象業務外での派遣の実施ということでございますが、こういったことによって許可の欠格事由に該当して許可の取り消し処分を受けたものが二件でございます。平成五年度に一件、平成八年度に一件です。それから、違法派遣の幇助によって事業停止命令を受けたものが一件、これは平成四年度にございました。それから、対象業務外での派遣を行ったことによって改善命令を受けたものが一件、これは平成五年度でございます。また、勧告、公表の実績は現在までございません。  労働行政としましては、いろいろと派遣法違反の事例が見られるという場合には、まず指導する、あるいは是正のための助言をいろいろするということによりまして、それを自主的に是正をしてもらうことを前提にして行政を行ってきておりまして、どうしてもそれで難しいものについて行政処分等に訴える、こういったやり方で来ております。  おおむねこういったことで現在まで推移をしております。
  55. 中桐伸五

    中桐委員 公表制度というものを活用していないという、活用するものがなかったというのか、出さなかったというのか、いろいろそこは難しいところですけれども、せっかくこういう制度を設けているわけですから、全くこれを活用しないというのは、活用すべき対象がなかったということですか。
  56. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 この公表の制度平成八年度の法改正で設けられたものでありまして、現在まで適用実績はございませんが、これから派遣対象業務を広く拡大していくということになりますと、こういった事例にも当然該当するものがあるかと思います。  ただ、先ほど申しましたように、まず是正のための指導をして、それを自主的に直していただくということが先決ではないかと思います。
  57. 中桐伸五

    中桐委員 それでは、この派遣法が制定されて以来の罰則の適用の歴史的経過ですね。何を分母にとればいいのか、分母は派遣労働者件数というのか、何かそういうものをベースにして判断すれば一番いいと思うんですが、派遣の罰則の適用件数というのは、歴史的推移でいえばこれはふえているんですか、それとも横ばいでいっているんですか、どうなんでしょうか。
  58. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 これは送検件数なので、実際に処罰されたかどうかという数字ではございませんけれども、まず昭和六十一年から見てみますと、六十一年のいわゆる検察庁新規受理人員というものは七人でございました。これが十八人、六十六人、八十七人というふうに法施行の経過とともにふえてまいりましたが、昨今では二百人台で推移をしておりまして、平成八年は九十四人、平成九年は百二十六人というふうに、ピークの二百人から、最近ではやや減少傾向にございます。
  59. 中桐伸五

    中桐委員 派遣の事業所及びそれに基づく派遣契約というのはふえてきているわけですね、大ざっぱに言うと。
  60. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣契約も、事業所数も、あるいは売上高も、近年は伸びてきております。
  61. 中桐伸五

    中桐委員 そうしますと、罰則を適用しなきゃいけないというか、送検をした件数ですから、これは条件の設定がちょっと狭くなると思うんですが、その発生件数は最近は、派遣契約はふえてきているけれども横ばいに一応なっているという理解をしていいわけですね。  しかし、そうはいっても、ネガティブリスト化して、また昭和六十一年からふえてきたような経過をたどらないとも限らない。つまり、派遣事業者が一定の安定してきた状態での派遣契約の増加というならまだしも、派遣元がどんどんふえていくというふうなことになってくると、やはりこれは問題のケースもふえてくる可能性はあると思うので、その点は、派遣元に対する許可制の規制だけでは不十分なところを、派遣先の責任の範囲というのはこれからも十分適切な方法を講じていかなきゃいけないと思うんです。  先ほどの一番最初の話で、日本派遣法のデザインを、欧米の国で幾つかとられているような、派遣元派遣先も使用者責任を明確にして共同責任を負うというふうな仕組みに変えるかどうか、その点について、もう時間がなくなりましたので、今の見解をお聞きしたいと思いますが。
  62. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣労働者につきましては、その大きな特色は、使用者と実際の指揮命令をする人が別であるということにありまして、また、そこから確かにいろいろな問題も起きているわけでありますが、雇用者責任ということでいいますと、あくまでも派遣元事業主が原則として雇用者責任を一義的に負うということが本制度の柱ではないかと思います。
  63. 中桐伸五

    中桐委員 時間が参りました。終わります。どうもありがとうございました。
  64. 石橋大吉

    ○石橋委員長代理 次に、前田正君。
  65. 前田正

    ○前田(正)委員 前田正でございますが、公明党・改革クラブを代表して質問をさせていただきたいと思います。  まず冒頭に、労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  前回もちょっと時間がなかったのですけれども、改めてお聞きをするわけでありますが、この間、平成十一年三月に、財団法人日本人事行政研究所というところから、将来あるべき人事管理を考えるための基礎調査、これは平成十年の調査でありますが、こういうものが出されております。  その内容を見てみますと、当研究所が平成十年十月現在で東証一部上場及びこれに準ずる企業千七十一社に対して行った調査結果でございます。その結果、過去一年間の常用雇用者雇用数の状況は、依然として五八・六%の企業において圧縮傾向にあり、非常用雇用者も二七・四%の企業で圧縮している。また、今後の雇用数の動向についても、七〇・三%の企業常用雇用者を圧縮するとし、非常用雇用者も三五・一%の企業が圧縮するとしておる。すなわち、常勤の従業員が過剰であると感じておる企業は三七%、平成五年の調査一六・八%に比べて倍増をしております。やや過剰であると感じている企業もやはり三三・二%。合わせると、実に約七割の企業が過剰感というものを持っておる。こういう調査がこの本で発表されておるわけでございます。  したがって、私は、今一番労働行政として大事なことは、こういった派遣労働ということも大事でしょうけれども、いかに常用雇用者をふやしていくかということが私どもは一番急務であろうというふうに思います。  また先日、失業率が実に四・八%、三百三十九万人の失業者が報じられており、大変深刻な状況に陥っておるということであります。また、先日小渕総理もアメリカに渡られ、日米首脳会談の中で、日本経済に関しては、景気というものは下げどまりつつあると説明をされました。そしてその対策としては、過剰な設備だとかあるいは人員の削減や企業の再編等、構造改革全力を挙げる方針だと伝えておられるわけでございます。  こういう状況の中で、私は、企業はさらにますますリストラリストラを重ねて、一層失業率というものはふえていく可能性がある。あるいは経済研究所ではこの四・八%はさらに五%台になるだろうという予測もされておるわけでございます。そういう状況の中でこの派遣労働法という法律改正され、これから各企業がどんどんこういった意味リストラをされ、こういう派遣労働市場は確かに活性化するかもしれませんけれども、むしろ、常用雇用は反対にどんどん失業に追いやられていく可能性というものは大変多いのではないだろうか、この辺を私は非常に危惧をしておるところでございます。そういったこと、改めて大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  あるいは、この間アメリカから総理が、いろいろ雇用問題について何か大臣の方に御報告があったのかどうか、その辺もあればひとつ御披露していただきたいと思います。よろしくお願いします。     〔石橋委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 甘利明

    甘利国務大臣 今回の法改正は、短期労働市場ミスマッチ解消をどう図るかということに主眼が置かれているわけであります。同時に、御指摘のような懸念、つまり常用代替がそれによって起こってしまうのではないか、この懸念をふさいでいく、対処していくということもあわせて内容に盛り込んでおりまして、御案内のとおり、一年を超える雇用に関しましては派遣先に正規雇用とする努力義務を設けておりますし、それから、一年を超えるということでそのまま使っているところについては適切な指導、そして従わない場合には企業名の公表も当然考えてあるわけでありますし、派遣元に関しましては改善命令から罰則規定まで盛り込んでいるわけであります。そういうことをあわせて、常用代替が起こらないように対処をしているつもりであります。今の失業率拡大の中にはミスマッチ要因が先ほど来御指摘のようにたくさんありますから、これを解消していく一助に両法案がなるのではないかということを期待をしているところであります。  また、総理からは常々雇用が大事であるという指摘がなされております。きょうの閣議におきましても、訪米報告がなされたわけでありますけれども、アメリカにおきましても景気の回復と雇用不安の払拭ということに重点を置いて総理も主張なされたようでありますし、さきの四月二十三日の会議におきましても、総理から、労働大臣通産大臣文部大臣等々関係閣僚と打ち合わせをして、新たな雇用対策を策定してくれという指示も具体的にいただいております。その件に関しましては、今月中に関係省と打ち合わせをしまして、新たな雇用対策として発表できるかというふうに思っております。
  67. 前田正

    ○前田(正)委員 経済専門家は、この四・八が五%台に上がる可能性があるということも指摘をされておるわけでございます。過日も、予算が通りまして、総理経済成長率を〇・五%にはぜひ乗せたい、これは政治生命をかけて、公約として何度も私どもも聞いたわけでございますが、この四・八%の数字そのものも我々としては大変深刻な状況でありますが、これがさらに五%台に上がるようなことになると、これからの景気に対する期待感というものは非常に厳しいものが全体的に漂ってくるというふうに思うわけでございます。そういったことも含めながら、さらに労働行政雇用対策、こういうものをしっかり、ひとつ大臣、先頭になってやっていただきたい、私はそう思うところでございます。  次に、派遣労働に関する質問に移らせていただきたいと思います。  今回の改正では、派遣労働市場というものが今日まで二十六業種に限定されておったのが、実質的にいわば自由化されてしまうということになるわけでございますから、当然、市場がさらに大きく拡大をしていくということは、確かに労働市場も活性化していくことにはつながっていくだろうというふうに私は思います。それだけにまた、登録型をどんどん各派遣会社は非常に大きく取り入れようという努力もされてくるわけでございます。  そこで一番大事なのが、やはり個人の情報、データというものがどう保護されるか。万が一漏れるようなことになればこれは大変なことでございますし、この辺もいろいろ法律では規制をされておるわけでございます。  この中で、例えば業界同士の個人情報の交換というものが可能であるのか。例えばA派遣会社とB派遣会社、これは全く経営者も違いますし、規模も全く違うわけでありますが、しかし、派遣先なんかが比較的同じ、派遣先のところでバッティングしておる。その派遣先からA派遣会社の方にこういう人材が欲しいのだけれどもA社はありますかといったときに、A社はいろいろ当たったけれども結局A社はない。しかし、派遣先のバッティングしておるところのB社に、こういう人材がおらぬだろうか、あったら紹介してもらえぬかということで問い合わせると、B社は、うちの方でこういう適当な人がおるから紹介しましょうかということで個人情報がA派遣会社に紹介をされた。こういう場合、これは個人情報の漏れとして秘密漏えいというものに値するのかどうかということが一つございます。  それから、もう一つは、同じA派遣会社の中で支店というものをいろいろお持ちでございます。例えば赤坂支店という支店があります、それから一方では渋谷支店という支店がございます。したがって、その赤坂支店で募集した登録型の募集者のデータを例えば池袋支店が必要としておるので、そういうところに情報を、同じ会社の中で、支店同士の個人情報というものがそちらの方に渡るということは、これは個人のプライバシーの保護の観点から個人情報の秘密漏えいに当たるのかどうかということ。  それからもう一つは、登録型で登録される人が、その個人情報、A派遣会社に登録をされる場合、大抵我々どこ行ったって就職する場合は履歴書というのを絶えず書くわけでありますが、自分の名前、住所、電話番号、最終学歴、中には幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、最終学歴、あるいはまた、それに付随してほかにいろいろ書くものもたくさんあるわけであります。しかし、こういう派遣労働というのは、それぞれ派遣する先がいろいろ条件としてつけてくる場合もありますけれども、一体その個人情報の履歴というものがどれほどまでが許されるものなのか。こういうところまでは許されていい、あるいは、これ以上のことは許されるものではないというものが、労働省として、モデル様式といいますか、そういうものがあるのかどうか。  何か労働契約におけるモデル様式というのは、賃金の問題とかあるいは勤務時間の問題、それから場所の問題、こういう派遣先派遣元とのお互いの労働契約によるモデル様式というのはあるように聞いていますけれども、自分たちがA派遣会社に行くとき、そういう履歴といいますか、何かそういうモデル様式というものが現にあるのか。いやいや、そういうものはありません、それは各個人ですというふうなことの中で、中にはプライバシーにかかわるような問題というものも当然発生するであろうというふうに思います。そういうものについてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  68. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 まず、今回の改正案におきましては、個人情報の保管管理、あるいは秘密の漏えいに関する規定を新たに設けておりますが、個人情報の収集、保管ということにつきましては、事業目的の範囲内でこれを収集する、あるいは保管するという義務づけを派遣元に課しておりますし、派遣元がその個人の秘密を漏えいしたというときには、改善命令あるいは罰則という措置をとることにしているわけであります。ただ、この個人情報というのは秘密よりも広い概念であろうと思いますので、個人情報の中に、その秘密漏えいの禁止によって禁止される秘密と、そうでない通常の個人情報があろうかというふうに思います。  そこで、派遣会社同士でこの個人情報を交換するというふうな場合、その個人情報の中に秘密に属するものがあるというものを他の派遣会社に漏らすということになりますと、これは一般には秘密の漏えいで禁止される行為になろうかというふうに思います。ただ、当該派遣労働者本人がその派遣会社を通じて他の派遣会社にも登録をお願いしたいという個人の意思があるというふうな場合は例外かもしれませんが、原則的には、ある派遣会社が自分以外の外部のものにその個人の秘密を漏らすということになると、これは禁止される行為ということになると思います。  また、同じ派遣会社の本店、支店間、あるいは支店間同士で個人情報を交換するということは、これは派遣労働者の就業のために必要なケースもあると思いますし、同一の企業、同一の商社の中での情報のやりとりということであれば、これは一般には外に漏らしたということにはならないのではないかというふうに思います。  また、履歴の書き方ですが、特にここまでという様式は現在ございません。ただ、これは派遣に限ったことではありませんが、就職の際の、採用の際の履歴書の提出については、その個人の能力あるいは就業する能力、そういったものと関係ない事項についてはこれを書かせないというふうに従来から指導しております。
  69. 前田正

    ○前田(正)委員 A派遣会社とB派遣会社における情報交換といいますか、個人情報の交換というものは秘密の漏えいに当たるという御見解でいいということですか。それから、支社間あるいは同じ系列の支店間同士であればこれはやむを得ないところもある、こういう回答だろうと私は理解いたしました。しかし、労働省の方も、この労働派遣法関係して、許可というものはそれぞれ、もちろん本店はそうでありますけれども、その支店ごとにも許可をとるように指導されておると思うわけであります。  したがって、同じ系列だから情報をお互いに交換をさせるということは、これは許可制度の問題からいうと、その支店に許可を与えておるということですから、そこで得た情報はあくまでもそこで管理監督をする。池袋支店なら池袋支店で与えられた許可というものは、そこで与えられているわけですから、そこで得た情報はそこでやはり管理監督をする。たとえ同じ支社同士、支店同士であろうとも、本人の了解、承諾というものを得ない限りは、私は、これは絶対そういう個人的秘密漏えい、個人的情報を流させるということはしてはならないというふうに思うわけでございますが、その辺もう一度御回答をいただきたいと思います。
  70. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 秘密を漏えいするということはあくまで外に出すということだと思いますので、同一企業間ではそれを漏らすと言えるかどうか、先ほど申しましたようになかなか問題があるかと思うのですが、確かに、今おっしゃいましたように、今般の法改正の趣旨は、あくまで個人の情報の管理に厳正を期すあるいは個人の秘密を守るということが趣旨でありますから、今おっしゃいました点につきましては、さらに解釈の問題として検討させていただきたいと思います。
  71. 前田正

    ○前田(正)委員 それでは、そのようにひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  それでは次に、実は、ことしの三月十一日の新聞でありますが、「カイシャが変わる」ということで、人材派遣ということでシリーズ物で出しておった記事がございます。この中に書いてあるのは、「大手商社などを中心に、自前で人材派遣会社を設立する企業が増えている。総合商社の丸紅が受け入れている派遣社員約三百人は、一〇〇%出資子会社の人材派遣会社「丸紅パーソネル・サポート」からだ。八六年に設立された同社には、現在三万人が派遣登録しているが、丸紅本社が一般職の女子社員の採用を抑制していることなどから、派遣社員への依存度は高まる一方だ。」こういうことが実は新聞に載っておるわけでございます。  そこで、私は、今度の改正法によって危惧するところは、こういうふうにして商社だとかいろいろな各大手企業が一〇〇%出資のそういう人材派遣の子会社をつくって、そして正規採用の試し雇い、試用ですね、試し雇いの制度となる可能性があるのではないか。  各大手企業も、もちろんその経営者というのは優秀な人材を確保したいというのはだれしも当たり前でございます。しかし、会社の採用試験だとか面接だとか、あるいは履歴、学歴、こういったもので普通は正規採用をするということになるわけでございますが、実際に雇ってみて、自分たちが望んでおった者が果たして確保できたかどうかというところがいろいろあるんだろうというふうに思います。  そこで、その大手企業は、自分のところの一〇〇%の子会社のいわば派遣会社をこしらえて、そしてこういう人材が欲しいから一遍送ってもらいたいということで送ってもらう、そして三カ月なら三カ月使ってみる、おお、なかなかこいつは使えるじゃないかという人材はいわば正規の採用といいますか常用雇用として取り扱う、しかし、これは思うような人材ではないというのはまた派遣会社へ戻してしまう、そういうふうな繰り返しによるいわば試雇い制度というふうな傾向になるのではないかというふうに私は危惧しておるところでございます。この辺についてどうお考えか、お答えをいただきたいと思います。
  72. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今お話しのようなケースにつきましては現行の労働者派遣法の四十八条に規定しているところでありますが、これによりますと、労働者派遣事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われている場合には、労働大臣はその是正について勧告できるというふうに規定してありますし、また、派遣法の七条におきまして、こういった派遣事業については許可をしてはならないというふうに決められているわけであります。  これはいわゆる第二人事部といいますか、そういったことを親会社が外に設立するということはこの派遣法の趣旨にもとるものでありまして、そういったものについては従来も指導してまいりましたが、一般的にいいまして、今後ともそういうケースがありました場合には是正の指導をしていきたいというふうに思います。
  73. 前田正

    ○前田(正)委員 ぜひそういうことのないようにひとつ指導していただきたい。将来は一〇〇%出資の子会社の派遣会社を持つと、ほとんど常用雇用者を解雇して、そういう派遣社員だけで運営してしまうケースも中にはあるのかもしれないなというふうな気もいたします。こういう点についても厳しくひとつまた監視をしていただくと同時に、こういうことのないようにお願いをいたしたいと思います。  次に移らせていただきます。  派遣先が同一業務について派遣労働者を受け入れる期間というのは、今度は原則一年という制限をされておられます。しかし、その派遣労働の業務内容によって、例えば何か新しい事業を開始しようとするとき、あるいは事業を転換をする、あるいは今の事業を拡大をしていく、こういう開始、転換、拡大のための業務にあっては一定期間内に完了することが予定されているものについては例外とする、こうあるわけでありますが、この一定期間というものはどれぐらいの年数なり日数を考えておられるのか、その辺お答えをいただきたいと思います。
  74. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 この一定の期間内に終了する事業につきまして、これが一年間の例外として定められておりますのは、これはあくまで一定期間内に終了するということで常用代替の問題が起きないということで、その期間派遣を認めていいのではないか、こういったことでこの規定が盛り込まれているわけであります。  ただ、制度全体の趣旨が短期、臨時的な、一時的な派遣について今般拡大しようということでございますから、この一定の期間というのも、著しく長いというふうなものについてこれを適用していくということになると、やはり制度の趣旨を逸脱する可能性が大きいのではないかというふうに思いますし、また脱法的にこれが使われる可能性もないとは言えないと思います。  現在、特にこの一定の期間の解釈について確定的な考えを持っているわけではありませんが、この一定の期間はどのくらいが妥当なのか、その上限はおのずとあると思いますので、これは関係審議会の御意見も聞きながら検討したいと思います。
  75. 前田正

    ○前田(正)委員 それでは、一定期間の方はよろしくお願いいたしたいと思います。  それから、同じ派遣先に一年間以上勤務して延長された場合、これは違反行為、違法行為であるわけでございますが、一年間以上勤務される場合、果たして労働省としてはこのお一人お一人をどう管理監督することができるのか、この辺が私は大変難しい問題ではないかというふうに考えます。  それからまた、派遣労働者の一年以上の雇用の場合は常用雇用の努力義務、こう書いてあるわけでありますが、この辺の努力義務というのは具体的にどういうふうなことをしていかれるのかということをお尋ねいたしたいと思います。
  76. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 法律では、一年を超えて派遣を受け入れてはいけないというふうに書いてあるわけでありますが、ただ委員指摘のように、実際問題考えてみますと、派遣された労働者も、派遣先も、派遣元も、そのことによって何か決定的な不利益をこうむるということはないわけでありますから、なかなか把握をしにくいという点は確かにあろうかと思います。  ただ、法の趣旨は、あくまで一年以内の派遣について、今般、常用代替の防止という観点からそういったものについてのみ認めるということでありますから、ここのところは私どもの行政機関によります定期の指導監督、あるいはそういった場合におきます派遣先の管理台帳の記載事項、こういったことによってこれをチェックすることになるのではないかというふうに思います。  それから、一年間継続して派遣を受け入れたその労働者についての雇用の努力義務でございますが、雇用というのはやはり長い契約関係でございまして、売買のように一回きりの契約行為で終わるというものではございませんから、雇用が成立するためには、あくまで労使の意思の合致というものがないとその雇用関係はうまく成り立っていかないというふうに思います。この法律の規定で雇用の努力義務と書いておりますのも、そういったところの調整のための規定ではないかというふうに理解をしているところであります。  そこで、こういったことを前提にして、どういうふうに指導していくのかということになりますと、やはりこれは派遣先に対します説得というか合意というか、あくまで派遣先の合意を得つつ当該労働者雇用について努力をしていただく、そういった粘り強い説得といいますか、そういった努力が必要ではないかなというふうに今は考えております。
  77. 前田正

    ○前田(正)委員 その一年以上の雇用の場合の常用雇用の努力義務というのは、法律では確かにうたっておられるようでありますけれども、これは相手先のこともあり、なかなか難しい問題だなと私は個人的に思うわけであります。  今度の労働派遣法改正は、要するにこういう労働派遣市場というものを活性化していくということも大事でありましょうけれども、同時に、労働派遣によるいわば常用雇用をどう引っつけていくか、ここがやはり僕は大事な焦点ではないかというふうに感じるわけであります。  優秀な人材がまだまだたくさんおられるわけでありますから、そういう人を一たん派遣労働者としてその派遣先に送り込むと、なかなかいい人だ、これは使えそうだ、これはぜひおれのところで雇いたいというふうなことをこれからどんどん指導していくということが私は今度の労働派遣法の大きな目的でもあるというふうに思うわけでございます。  そういうところで、常用雇用の努力義務ということだけで果たして常用雇用がふえていくかどうかというのは、私は非常に疑問に思うわけであります。  そこで、同じ派遣先に一年以上勤務した派遣労働者は、自動的に派遣先との労働関係が成立をするみなし雇用制度というものを導入してしまう、一年以上ずっと続けていくということになれば、いわばみなし雇用制度というものを確立して、これは自動的にそのまま常用雇用に切りかわってしまう、こういう制度を導入する方が常用雇用の努力義務というのに値するのではないか、私はそう思うわけでございますが、こういうものを制度として取り入れるようなことをお考えかどうか、この辺をお尋ねさせていただきたいと思います。
  78. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣先が一年間も同じ労働者を受け入れて一緒に仕事をしたということになりますと、それは、やはり能力とかいろいろな点でその労働者を評価して受け入れているんだと思いますから、その方が雇用につながるケースは確かにあろうかというふうに思いますが、これを法律的に強制をする、あるいはみなし雇用というふうに法律上みなすということになりますと、これは先ほど申しましたが、雇用関係は長い信頼関係の上に立つものであるということを考えますと、労使の意思が十分に合致しない場合のみなし規定あるいは義務規定というのはなかなか難しいのではないかなというふうに思っております。
  79. 前田正

    ○前田(正)委員 難しいとおっしゃいましたけれども、外国では既にそういうものも取り入れている国もあるようでございますので、もう一度こういう点もしっかりいろいろと議論をしていただいて、ぜひそういう形でお願いをいたしたいと思います。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  80. 岩田順介

    岩田委員長 寺前巖君。
  81. 寺前巖

    ○寺前委員 職安法の改正、それから派遣労働法の改正、二つの問題をそれぞれお聞きしたいと思います。  まず職安法ですが、有料職業紹介の自由化について、労働大臣は、労働者雇用の安定を図っていくためには、労働力需給ミスマッチ解消し、失業期間の短縮が図られるように労働市場のルールを変える必要があるのだという形でこの法改正の問題に対する提起をしておられます。  私は、この有料職業紹介事業について、確認的に三つの質問をしたいと思います。  その第一は、これまで認めていなかった有料職業紹介を全面自由化して、原則自由化した労働者派遣事業との兼業ができるようになったというふうに見ていいのですね。
  82. 甘利明

    甘利国務大臣 そういうことでございます。
  83. 寺前巖

    ○寺前委員 第二の質問です。兼業が認められたことで、派遣労働者として派遣されてきている労働者を、派遣先が気に入ったということで派遣契約期間中でも直用にすることができるのですね。
  84. 甘利明

    甘利国務大臣 まず当事者間の意思が一致しているということが大事でありますし、それから、派遣元との雇用契約が続いているのか切れているのか、切れていれば正規雇用に進んで構わないということであります。
  85. 寺前巖

    ○寺前委員 三つ目。大手企業の場合には、公共職安には求人を出さず、兼業の派遣会社にのみ求人を出すことができますね。
  86. 甘利明

    甘利国務大臣 それは、当然できます。
  87. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、この三つの点を総合的に考えたときに、えらいことになるなということを率直に感じざるを得ないわけです。  採用された派遣労働者は、派遣会社でまずどこの会社を選択してやろうかというて、選択された結果として紹介を受けることになるでしょう。派遣会社で選別された上に、派遣期間中、今度は派遣先の会社からいわば事実上の試用期間としての検討をされる、要するに選別をされるという状態に置かれる。そして、先ほど質問したように、その上に立って、たとえ直用になったとしても、直用の期間中においてまた選別されていく。  要するに、労働者にとって、長期にわたって選別権を全部握られてしまう、その一番の出発点になるのが派遣会社になってしまうのじゃないだろうかということを感ずるわけです。  そうすると、労働者の側から見ると、よい職業につくには、まず大手とつながる派遣会社からよい派遣先派遣してもらって正規労働者を目指すということになる。特に、青雲の志を持った若い青年にとっては、選別されることを恐れて直接派遣元に物を言うこともできないし、大きな派遣会社と結びつかない限り大企業の正社員にはなれないと考え、こうなってくると、派遣元に対して意見、苦情は一切言えなくなってくる、労働者の生殺与奪をすべて握られてしまうことになる。大企業就職したいという場合は、すべて派遣会社に一手に握られてしまう。これで雇用の安定というふうに言えるのだろうか。これは、私は、とんでもないことだな。  さまざまな労働法がこれまでにつくられてきました、労働者保護してきました。その根本原則というのは、ILOがフィラデルフィア宣言で労働は商品ではないということを宣言していることにあります。職業紹介へ商品に適用される市場原理を導入するということ自身が、労働者の権利保護はできなくなるというふうに私は思うのです。  ですから、そういう意味で、今度の派遣労働法それから職安法の有料職業紹介が一体となって執行していく道というのは、労働者保護を破壊する道になるなということを強く感ずるのです。労働大臣はこれについてどういうふうにお考えですか。
  88. 甘利明

    甘利国務大臣 先生のお話を伺っていまして、およそ究極的に悲観的に考えるとそういうお話が伺えるのかと感心して聞いておったわけであります。  問題はこの委員会でも現在までいろいろ指摘をされておりますが、この法改正は、世の中にとって、世の中というのは決して使用者にとってということだけではありません、求職者にとっても、世の中、社会のいろいろなニーズにこたえられるようにいろいろな手だてを用意する。ただし、その手だてを用意したときに、逆にこういう心配があるということについては個別に極力対応していこうというのが今回の法改正でありまして、究極の悲観的見方をすると、先生のおっしゃる見方が世の中にはあるんだなということをよく勉強させていただきました。
  89. 寺前巖

    ○寺前委員 悲観的な見方じゃないですよ。そういう方向にこの法律自身は引きずっていくことになるだろうと私は言わざるを得ないと思うのです。  次に、派遣法について聞きたいと思います。  先ほどからお話がありましたように、四月三十日に総務庁が発表しておりました。日本失業者は三百三十九万人だ、完全失業率は戦後最悪の四・八%。五年連続して最悪記録を更新する深刻な事態が続いています。それは、大企業中心のリストラにあることはだれもが認めるところです。  労働者は、今回の法改正派遣労働が原則自由化されれば、正規常用労働者が減らされて、どんどん派遣労働者に置きかえられていく。これは、労働大臣自身も危惧をしておられたところです。また、改正案派遣から常用化の道を開いたという政府考えについても、だれもがそんなことを信用しておっていいんだろうかと心配をしているところから、全労連や連合の労働組合の諸君たちが組織の違いを超えて今回の法改正に異論を唱えられるのも私は当然であろうと思うんです。  それで、労働大臣や職安局長が、常用代替への歯どめと派遣から常用化への道を開いたと強調してこられました。私はこの二点について大きな疑問を感ずるんです。この二つの問題をめぐって、そこには四つのしり抜けがあるというふうに感ずるわけです。  そこで、まず第一に、派遣労働を一年間に期間制限をするという規定を設けたことが常用代替の歯どめとして有効なのかどうか、この間当委員会における質問を聞いておって疑問に思いました。  その第一の疑問というのは、新たに設けられた法案の第四十条の二で、派遣先は「派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から一年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。」と、確かに派遣期間の制限ということが規定されている。しかし、大臣や職安局長は、四月二十八日の委員会での答弁を聞いていますと、この派遣就業の場所とは、同じ会社の同じ事業所の中でも課の単位だということをこの間答弁しておられました。ですから、一つの事業所の中において違う課に所属しているということになったら、それは違うんだ、一年の期間という制約を受けることにはならないんだというふうに私は感じました。これは普通の人の感覚からいうたらおかしいじゃないか、同じ事業所の中で異動したならば長期にわたって存在することができることになるではないかというふうに、これは私の理解でありますが、これが当然許されるんだったら、これが政府のとっている態度なんだろうかと疑問に感じました。  第二の疑問は、同じく四十条の二で、同一の業務の場合の期間制限でありますが、ここで同一の業務とは、末端の単位である班や係の仕事であるとの答弁をこの間おっしゃっていました。そうすると、同じ派遣労働者を今までと少し違う仕事をする班や係に所属をかえれば、これも期間の制限が適用されないでずっと同じ事業所で働くことができるということになるじゃないか。  こういうことを考えると、一体どこに常用代替の歯どめになるというようなことをおっしゃる根拠があるんだろうか。私は、私の理解が間違っているのか、間違っていないとするならばこの二つの点は理解できないなと言わざるを得ないんですが、いかがですか。
  90. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 改正法案におきましては、今御指摘の点について、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとのということで、まず事業所あるいは派遣就業の場所ごとに一つ見るということを規定しておりますし、その場所ごとにおける同一の業務について一年を超えて受け入れてはならないという二つの要件で言っているわけであります。  これは、派遣就業の場所というのは一般的に言えば課ぐらいの単位ではないかということをこの前御答弁申し上げましたが、課というものがやはりその事業体における一つの仕事の単位として活動しているものであると思われますが、そこに常用労働者がいなくてやっていければ、それはそういった状態で課の仕事は成り立つわけでありますし、常用労働者が要るということであれば、一年間の派遣労働者ではその課の仕事は成り立たないということであると思いますから、課単位でとらえることによって一つの縛りができるのではないかというふうに思います。  さらに、その場所ごとの同一の業務、これも解釈によるかと思いますが、業務というのは、職種というふうな概念に比べますとかなり一般的な概念でございまして、仕事というふうな言葉とほぼ似たような概念でありますが、この同一の業務の解釈に当たりましては、先般も申し上げましたが、常用労働の代替の防止という基本的な精神に立ってこの言葉を解釈すべきではないかと思います。  課よりさらに小さい班とか係とかいう単位における仕事というのは、まさにその企業における最小の組織の単位でございまして、そういったところで常用労働が要るのか要らないのか、そういったことで判断をすべきではないかというふうに思っていまして、仮にその係や班の中で隣の人と一年たったら席をかわったというだけでそれは同一の業務ではないとはとても言えないだろうというふうに考えているわけであります。  この業務というものがかなり広い概念であるものですから、やはり法の精神、立法の精神によってこれを解釈すれば、仕事の最小の単位としての係、そういったものでとらえるのが適当ではないかというふうに現在は考えております。
  91. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、この間聞いておった点が間違いじゃないなということを改めて今の御答弁からも感じました。要するに、大企業リストラと称して正規社員の人減らしを大々的にやっているときに、同一のという常用代替の歯どめを狭い範囲でしか考えていかないんだということになってきたら、これは有効な歯どめというふうに考えるわけにはいかぬなということを感じました。  次に、四十条の三について聞きたいと思うんです。  派遣労働者から常用労働者への道を開いたと大臣もおっしゃるし局長もおっしゃるわけです。そこで、同じ就業の場所ごとの同一の業務で、引き続いて同一の業務に従事させるために会社が新たに常用労働者を雇い入れる場合に、その対象者としてそこで働いてきた派遣労働者を優先的に雇い入れるように努めなければならないという形で四十条の三に出てくるわけですが、そこで一つの道を開いたとおっしゃるけれども、第一の疑問に感ずるのは、新たに常用労働者を雇い入れる場合にはということが前提ですが、新たに雇い入れるという態度をとるのは今のリストラ状況の中ではほとんどないんだから、これは別な言葉を使って言うならば、別の派遣労働者派遣してもらったら終わりですよという制約を逆に加えているのと同じことで、これが有効な役割をするというふうには感じないというのが私の疑問の一つです。  それから第二の疑問は、派遣労働者がその会社で常用労働者になれる道には幾つかのハードルがあります。今の期間制限などもそうです。非常に狭い範囲でしか雇用期間業務についても取り上げていません。それを越えたとしてもその対象者になれるだけであって、常用化の保証は何もありません。そこには、先ほど質問がありましたようにみなし規定でもあって、みなされてしまうんだというような積極的な保護規定がなかったら、努力義務では結局実効性は上がらないんじゃないだろうか。  私は、この二つの点が結局宣伝倒れになるんじゃないだろうかというふうに感ずるんですが、いかがでしょうか。
  92. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 まず、今回派遣の適用対象業務を原則として拡大する、いわゆるネガティブリスト化するについては、そうやって拡大された業務における労働の態様というのは臨時、一時的なものであるということが、現在大方のコンセンサスであろうかと思います。  そういったことを背景といたしまして、今般拡大する分野については一年限り、一年以内の短期労働市場における需給調整のシステムの強化、こういったことで提案をしているわけでございまして、基本は、一年間を超えて労働することがない。  仮にそういった場合には、派遣先については企業名の公表もできますし、派遣元については改善命令、罰則といった担保措置をとりましてこの防止を図っているわけであります。派遣元事業ももちろん営利事業でありますから、これが改善命令、罰則とか、あるいはそのことによって許可を取り消されて営業ができなくなるということは当該企業にとって致命的なことでありまして、それをあえて一年を超えて派遣するあるいは企業名の公表まで覚悟して一年を超えて受け入れる、そういったことはまず通常は考えられない、そのための担保措置であろうというふうに思います。  ただ、そうは申しましても、一年間を超えてずっと当該同一労働者派遣先で使用され、なお、その事業場にも常用労働者を雇う希望がある、こういったときには優先して雇うようにという努力義務を課しているわけでありまして、これは常用代替の防止と派遣労働者雇用確保、安定といいますか、そういったものを調整する規定であるというふうに思います。  基本の方は、あくまで短期、一時的な派遣について今般業務拡大をしたということであろうと思います。
  93. 寺前巖

    ○寺前委員 セールスポイントとして政府改正案は関心の高い二つの点を言ってこられたわけだけれども、私、今改めて聞いてみて、しり抜けでざる法になっているんだから、こんなことではセールスポイントにはならないよ、悪い結果を生んでいくなということしか私は感じられませんでした。期間の制限を新設しても常用代替の歯どめにはならない。常用労働者への道は、会社がその気になればその道は全く開かれず、結局、役人が法律で絵そらごとを言っているにすぎないなというふうに思うんです。  ですから、こういう点が克服されない限り、労働者派遣法というのは労働者にとって苦痛を持ち込むことになるんではないだろうか。そういう点で、別の法案提出者である大森議員にお聞きしたいんですが、この問題についてどういう認識を持ってこの法案に取り上げておられるのかをお聞きしたいと思います。
  94. 大森猛

    大森議員 寺前議員にお答えいたします。  御質問にもありましたように、常用労働者との代替をいかに防止するか、これは派遣労働におけるいわばかなめの問題の一つであります。この点で、政府案は四つのしり抜けということで有効でない、この寺前議員の御指摘はまさにそのとおりだと思います。  それでは私どもの案でありますけれども、常用との代替を防止するために幾つかの措置が必要と考えております。  法案に盛り込んでおりますその第一は、人員削減の穴埋めとして派遣労働者を利用してはならないことを明確にすることであります。その観点から、人減らしをした事業所においては、一年間の派遣労働の利用を禁止いたしました。  第二は、いわゆる第二人事部的役割を果たしている、特定企業のみに専ら派遣する派遣は禁止をすること。現行法では事実上野放しであります。派遣労働者の二分の一以上が同一企業派遣されることを禁止いたしました。  第三は、自社の従業員を系列派遣会社に転籍させて、そこから同じ労働者派遣労働者として受け入れるという、これは最近ある外資系企業で現実にあった話でありますけれども、こうした行為を禁止することであります。  第四に、今政府との間にやりとりがありましたけれども、派遣期間の限定であります。政府案では、寺前議員指摘のとおり、常用代替の歯どめは全くきかない。私どもの提案では、まず同一業務について同じ事業所においての派遣期間を一年としました。就業場所の問題で脱法を許さないために、大きく同一事業所でくくったわけであります。  さらに、派遣労働者の直接雇用については、この措置とは直接リンクさせず、業務の種類がどうなろうと、同一事業所で一年間派遣労働を行えば派遣先に直接雇用されたものとみなすこととしております。これは、一年間そこで働けば、その職場にはその労働者がなくてはならない労働者であることが明らかなこと、そして、労基法上原則として雇用期間は一年以内か期間の定めのない雇用契約しかなく、一年を超えたものはこの原則からも期間の定めのない雇用契約とみなすこととしたものであります。  以上の点を踏まえ、常用代替防止のためにも、派遣労働者保護のためにも必要不可欠の措置であると考え、対案として提案をさせていただいたものであります。  以上で答弁を終わります。
  95. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  96. 岩田順介

  97. 濱田健一

    濱田(健)委員 労働者保護措置の実効性という点からひとつ質問をしたいと思います。  今回の見直しの案をずっと見てみますと、派遣元に対する改正規定が主でございまして、派遣先という部分についてはほとんど触れられていない。法の体系、諸外国の例の中にも、雇用者責任というものが雇い元、雇い先両方にかけられていないという面から見ても、そして今回の改正中身から見ても、やむを得ない面があるのかなと思いながら、果たしてこれで本当に労働者保護措置というのが担保できるのかということを非常に危惧しているところでございます。  これまでの派遣労働にかかわるトラブルというものを見てまいりましたときに、日本企業はやはり使い勝手のいい労働力確保したいという側面が優先をしていて、そういう面での派遣労働者の活用を図ってきたということも色濃く出てきているというふうに思っております。  そういう面からして、今回の派遣法改正案派遣法という法律の性格あるいは法の構成要件としての制約を受けるために、政府原案以上には、労働者保護の面で派遣先を縛る法律規定に踏み込むことは困難であるのかなと思いながらも、指針とかほかの面で対応しなくちゃならないということに今後なっていくのかなというふうに思うわけですが、これを論議するに当たって、本当にそれでいいのかなと思う点が強くございます。  そういう意味からいって、登録派遣は実労働日数が三カ月程度という連合の調べによる実態がございますが、このような実態の中から、労働者保護という観点で派遣先に講じようとする見直し案の措置というものがどのような効力を実際に持ち得るというふうにお考えなのか。本会議でも質問いたしましたけれども、もう少し明快な答弁がいただきたいというふうに思います。
  98. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今回の法改正を行うに当たりまして、労働省平成九年に行った労働者派遣に関する特別調査によりますと、現行の二十六業務についてですが、現在の派遣契約によります派遣期間は、三カ月未満のものが約一〇%、三カ月から六カ月以内のものが約二七%、六カ月を超えるものが約三八%ありまして、この中には一年を超えるものも見られるところであります。  この労働者派遣期間あるいは実態等につきまして、調査対象労働者をどういったものにとるか、登録型だけにとるかとか、いろいろなとり方はあるかと思いますが、今申しました調査によりますと、かなり長期の派遣契約というものもあるわけでございまして、一年ということで縛る今回の改正案は、実際上の効果はあるのではないかというふうに思います。
  99. 濱田健一

    濱田(健)委員 私が言っているのは、二十六業種以外に新しい法の体系の中で登録型という形でこれが実施されるわけですので、いろいろなところから常用雇用という形に位置づけろというような提案等もなされておりますが、登録型という形で進む。そういう場合に、今局長が言われた、全体はそうかもしれませんが、登録型の場合には三カ月程度という中身が出てきている。そういう意味では、三カ月という本当に短期でどんどん使い捨てにされるというふうなことが危惧されるということを申し上げているわけですが、その辺いかがですか。
  100. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 この短期、一時的な今回の派遣対象業務拡大につきましては、労働側についてもこういったものを望む意識があるということ、あるいは企業側からも短期労働力、即戦力としてこういった形態を望む声がある、こういったものを踏まえて今般の改正案提案しているわけでございますが、特に審議会におきますいろいろな議論の中では、一年をもっと長期にすべきだというふうな議論もいろいろあったわけでありまして、労働側、使用者側の意見等をいろいろ勘案しながら一年間ということで見たわけでありまして、必ずしも、これからも登録型というのは超短期派遣であるというものだけにとどまるのではないというふうには考えております。
  101. 濱田健一

    濱田(健)委員 私が申し上げたいのは、働く側の労働者の意識、考え方と、派遣元派遣先、ここがしっかりと連携がとれていればいいんだけれども、今までのいろいろなトラブル、状況を見たときに、途中での解雇、途中の契約破棄等々の中で短くなっているということなんかも本当に今回の法改正の中で担保がとれるのかどうかということまで含めて、この三カ月という実態をしっかりと、労働者の側の思いを実現するという意味雇用確保というところが担保されなければならないというふうに思って申し上げているわけでございます。  そこは全体的に見て、働く者の、一定の期間働き続けたいという、そこのところは、途中解約等の問題について大きく歯どめがかかっているというふうに局長は見ておられるわけですね。
  102. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 現行法におきましても、派遣契約の中途解約につきましては、その際の措置について派遣契約できちんと定める、あるいは派遣元派遣先の責任者がこれについて管理をする、苦情を受け付けるといった措置をとっているところでありまして、今般、中途解約についてどう対応するかは、さらに詳しく指針等において定めるということは検討する課題であるというふうに思います。
  103. 濱田健一

    濱田(健)委員 適正な派遣就業の確保という観点からもう一点お聞きしたいのです。  やはり、派遣先が厳格に守らなければならない点というものをいろいろな形で明記しなければならないのじゃないかというふうに思います。これまでの論議の中でも、行ってみたら違った仕事、勤務時間も異なっていたということが出されてまいりました。例えば業務範囲、直接の指揮命令者、派遣就業の時刻、こういうものをきちっと明記させる、具体的に例示させるというような工夫も必要じゃないかと思うんですが、局長、いかがでしょうか。
  104. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 派遣労働と申しますのは、あくまで派遣先がそういった方を受け入れたいと希望して受け入れているわけでありますから、本来、派遣先事業主が就業環境の整備については意を用いて当然であるというふうに思うわけであります。職場環境をうまく整えられ、あるいは同僚の労働者の方ともうまくやって初めて派遣労働というのは日本に根づいていくものだと思いますが、おっしゃいますように、いろいろとまだ苦情が後を絶たないというのは大変残念なことであると思います。  従来ですと、例えば派遣契約で書きます従事する業務というものも、二十六業務のうちのこれというふうに特定をすればよかったわけですが、今般は幅広く対象業務拡大されますので、例えば派遣契約で規定する業務というのはどの程度具体的に書いていただく必要があるか、あるいは指揮命令権者につきましても、複数の人から指揮命令されるといった苦情もなかなか後を絶たないような状況でありますから、そういったことにつきましては指針等により具体的に書き込むことを検討しなければいけないというふうに思っております。
  105. 濱田健一

    濱田(健)委員 ちょっと観点を変えます。  社会・労働保険への派遣労働者の加入の促進ということを改正案では打ち出しておられることについて、これは評価をしたいというふうに思っています。  ただし、当然、一時的、短期的なという命題にあります派遣対象、これが拡大をしていくでありましょうから、今の社会・労働保険の枠組みを前提としたままでこれらの皆さん方に保険への加入の促進ということを出していったときに、どれほどの有効性が担保されるのか疑問を持たざるを得ませんけれども、その辺の見解について、役所としてはどういうふうにお持ちですか。
  106. 甘利明

    甘利国務大臣 確かに先生指摘のとおり、今の枠組み、つまり適用基準に合っている者だけを対象とする、事実上それ以外は現行ではできないわけでありまして、登録型の場合には基準に達している人、達していない人、いろいろ入り乱れてあるものでありますから、基準に達している人について加入をさせていないという悪質な件についてまず対処をしていくということが先決であろうというふうに思います。  それの対応については、御承知のとおりの内容になっているわけでありまして、健康保険法等の規定によって罰金の刑に処せられた者を許可の欠格事由に追加するということといたしまして、これによりまして、許可の取り消しとか事業廃止命令の対象となる者が当然出てくるというふうに思いますし、それを通じて加入促進はなされると思います。  ただ、現行で救われない者についてどうするんだということは、これは先の課題だと思います。いろいろな意見がありまして、それだけを対象とした一つの仕組みを組んだらどうだみたいな話もありますけれども、そうしますと、保険運営関係で料率が異常に高くなるとかいろいろな問題がありますから、これはどうするかというのは、今後の検討課題だというふうに思っております。
  107. 濱田健一

    濱田(健)委員 今大臣が述べていただいた今後の検討課題という部分については、どこも結論が出ていないというか、いろいろ考えておられても結論が出ていないというふうに私も認識しております。  二つの選択肢が考えられると思うんですが、オーソドックスには、加入要件の緩和をしていくということ。現行の社会・労働保険の制度自体の改善が必要だということでございますけれども、その際に、現行加入者に負担を強いない形で保険制度を維持していくという観点からは、国庫負担の拡充等が求められていくだろうというふうに思います。これは所管は厚生省でございますけれども、当然そういう部分についても一つの選択肢として前向きに取り組んでいかれる御覚悟があるのかどうかという点が一つ。  もう一つの解決策として、派遣事業を営む企業等にいわゆる共済制度という形を設けて、国が積極的に支援をしていくという形も出されるだろうというふうに思います。共済制度運営していくに当たっての資金や経費に対する優遇措置、こういうものなんかも講じられるべきというふうに思っているわけです。  この二点について、現時点で方向性は当然決まっておりませんけれども、どういう御見解をお持ちか、お知らせいただければ幸いです。
  108. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 確かに、登録型派遣につきましては、短期雇用の繰り返しというふうな面がありまして、現行の社会保険や労働保険の制度を前提にしてこの加入促進というのは労使それぞれにとって手間暇かかるといった問題が従来から指摘をされており、今般も許可の欠格事由に加えた点はありますけれども、現行の制度を前提としているものですから、なかなか運用が厳しいという点は変わっていないかと思います。  今大臣から御答弁申し上げましたように、この問題は、派遣労働者だけではなくて、臨時とかパートとかアルバイトとかいろいろな短期労働者についても共通する問題がありまして、大変大きい課題かというふうに思っておりますが、現時点ではなかなかコンセンサスが得られなかったものでありまして、今後引き続き検討課題としたいと思いますが、その際には、今委員指摘のような点についても当然考慮の対象になろうかというふうに思います。
  109. 濱田健一

    濱田(健)委員 終わります。ありがとうございました。
  110. 岩田順介

    岩田委員長 次回は、来る十一日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十分散会