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1999-04-28 第145回国会 衆議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十八日(水曜日)     午前九時三十二分開議   出席委員    委員長 岩田 順介君    理事 荒井 広幸君 理事 能勢 和子君    理事 森  英介君 理事 柳本 卓治君    理事 石橋 大吉君 理事 川端 達夫君    理事 前田  正君 理事 青山  丘君       井奥 貞雄君    稲垣 実男君       大石 秀政君    大村 秀章君       小林 興起君    坂本 剛二君       田中 昭一君    保利 耕輔君       望月 義夫君    今田 保典君       中桐 伸五君    松本 惟子君       河上 覃雄君    岩浅 嘉仁君       大森  猛君    寺前  巖君       濱田 健一君    土屋 品子君  出席国務大臣         労働大臣    甘利  明君  出席政府委員         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君  委員外出席者         議員      大森  猛君         議員      金子 満広君         労働委員会専門         員       渡辺 貞好君 委員の異動 四月二十八日         辞任         補欠選任   白川 勝彦君     望月 義夫君   棚橋 泰文君     大石 秀政君   城島 正光君     今田 保典君   畠山健治郎君     濱田 健一君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     棚橋 泰文君   望月 義夫君     白川 勝彦君   今田 保典君     城島 正光君   濱田 健一君     畠山健治郎君 四月二十三日  労働時間の男女共通法的規制実現に関する請願大森猛紹介)(第二九〇七号)  同(木島日出夫紹介)(第二九〇八号)  同(松本善明紹介)(第二九〇九号)  同(吉井英勝紹介)(第二九一〇号)  労働者派遣事業対象業務拡大反対労働者派遣法抜本的改正に関する請願大森猛紹介)(第二九一一号)  同(寺前巖紹介)(第二九一二号)  同(中路雅弘紹介)(第二九一三号)  同(松本善明紹介)(第二九一四号) 同月二十八日  労働時間の男女共通法的規制実現に関する請願大森猛紹介)(第三〇五一号) は本委員会に付託された。 四月二十七日  深夜・時間外・休日労働男女共通規制実現に関する陳情書外三件(第一五八号)  総合的な雇用対策充実に関する陳情書外二件(第一五九号)  緊急雇用安定地域指定拡大に関する陳情書(第一六〇号)  派遣労働者保護措置の拡充に関する陳情書外七件(第一六一号)  じん肺患者救済じん肺対策充実に関する陳情書外二件(第一六二号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十三回国会閣法第一〇号)  職業安定法等の一部を改正する法律案内閣提出第九〇号)  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案大森猛君外一名提出衆法第一五号)     午前九時三十二分開議      ――――◇―――――
  2. 岩田順介

    岩田委員長 これより会議を開きます。  第百四十三回国会内閣提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案及び内閣提出職業安定法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大村秀章君。
  3. 大村秀章

    大村委員 おはようございます。自由民主党の大村秀章でございます。  それでは、きょうは貴重なお時間をいただきまして、労働者派遣法そして職業安定法質問をさせていただきたいと存じます。  法案質問に先立ちまして、中央省庁行政改革につきまして、もうこれは決定したことでございますのでどんどん進めていかなければならないわけでありますけれども、大臣感想といいますか、御見解をまずお聞きできればと思っております。  昨年成立いたしました中央省庁改革基本法を受けまして、本日ですか、関係省庁設置法法案内閣より国会提出される予定となっておるわけでありまして、労働省は厚生省と一体となりまして、雇用から社会保障に至るまで国民生活に深くかかわる分野を担当する役所としてますます重要な責務を担うということになるわけでございます。今後は、これを着実に進めていって、行政改革の実を上げていくことが重要だと思うわけでございます。  こうした中で、昨年来、省庁名につきましていろいろ御議論がございました。私は、昨年も、そしてこの間の二月の大臣所信表明に対する質問でも申し上げましたけれども、やはり労働という概念、これを明記するということがどうしても必要だということを主張させていただいてまいりました。  今回提出された設置法案では、厚生労働省という形になりました。いろいろ御意見はあった上でこうして決まったわけでございますが、労働という名称が今回省庁名明記をされたということにつきまして、これは決まったことでありますので大臣の御見解というのも変でありますけれども、御感想でも結構でありますが、これにつきまして、今後の労働行政についての考え方も含めてまずお聞かせいただければというふうに思います。
  4. 甘利明

    甘利国務大臣 新しい省名につきましては、大村先生にも大変御心配をいただきまして、そして労働行政にかかわる多くの皆さん方に御心配をいただきました。おかげさまで労働という名前が新しい省名に入ることになりまして、非常に感謝をいたしております。  私、役所名前というのは、その役所が所管をします行政内容を端的に表現しているのが一番いいと思います。さきのG8雇用サミット出席をしましたときに、ほとんどすべての参加国大臣労働あるいはそれに類する名前のついた大臣でありまして、私が在任をしているときに新省名が決まって、そこに労働という名前がなかったら、これはどうしようかなということを非常に心配しておりました。  おかげさまで厚生労働省と。人によっては単純に二省の名前をくっつけただけじゃないかとおっしゃる方もおられますけれども、単純にそうしたのではなくて、いろいろ考えをめぐらせて、議論をして、最終的に両省の名前が一緒になった新省名になったということで、熟慮した結果、最終的に総理が決断をされたということでありまして、これは英断であったというふうに思っております。
  5. 大村秀章

    大村委員 まさしくそういうことだろうと私も思います。労働という概念明記をされたということは、やはり政府の中で労働行政、特にこうしたものが重要だということでもあると思うわけでありまして、ぜひこれも踏まえて引き続き労働行政の推進にお力をいただきたいというふうに思っております。  特に、今の雇用情勢考えますときに、労働行政重要性はますます高まっていると思っております。昨年の十一月に決定いたしました総合経済対策も含めまして、ことしの小渕内閣の大きなテーマとしてやはり経済再生景気回復というのがあるわけであります。その中に、雇用活性化総合プランという形で百万人の雇用を新たにつくる、そしてまた安定をさせるということをうたっておるわけでございます。  そういう中で、今の雇用失業情勢、二月が完全失業率四・六%という形で過去最高ということでもございますし、また雇用者数もずっと過去一年にわたって減ってきておることでもございます。そして、特に中高年齢層失業者という形も大変深刻なものでありまして、また一方で、若年者失業率といったものも大きな問題になっておるわけでございます。そういう意味で、失業率が一たん高まって、またこれを一生懸命下げるというのはなかなか難しいことがあるわけであります。  そういう意味で、法案質問の前に、この法案前提といいますか、大きな流れの中で、やはり失業率を抑えながら円滑に労働移動を進めていくというのが、今の小渕内閣が抱える、経済再生を図る上で大変大きなテーマであるというふうに思います。そういう意味で、こうした厳しい雇用失業情勢に対しまして、労働省としてどういう対策基本的に講じようとお考えなのか、その点につきましてまずお聞きしたいと思います。
  6. 甘利明

    甘利国務大臣 御指摘のとおり、現在は大変厳しい雇用情勢下にあります。経企庁長官の方の発表ですと、景気底打ち感が見えてきた、これから景気反転攻勢に出る幾つかの指標も出てきている、これを大事にはぐくんでいきたいというお話がありました。  今は非常にその大事な時期だと思いまして、雇用情勢が非常に厳しい、これは相当真剣に、そして積極果敢に雇用対策に取り組んでいくということが基本でありますが、もう一方で、余りいたずらに大変だ大変だというのを持ち歩かない方がいいという思いもいたします。  そういう発言をしましたら、一部のマスコミに、甘利労働大臣はのうてんきだと書かれたのでありますが、私は決してのうてんきではありませんで、つまり、不安をあおり過ぎちゃうと、せっかく景気が底をついたのにもう一段底割れを起こすおそれがある。つまり、雇用不安をいたずらにあおりますと、消費の停滞を必ず招きます、自己防衛本能が働きますから。そうしますと、さらに景気の腰折れを起こして、とまりつつある下降がとまらなくなるということを私は心配しているのでありまして、決して雇用対策をなおざりにするということではなくて、もっと真剣にやりますけれども、政府が真剣にやっていますから任せてもらいたいということを強く言う必要があるんじゃないだろうかというふうに思っております。  言ってみれば、今は、病気は治りつつあるけれども、病み上がりというのが一番大事でありまして、いきなり走り出したり、いきなり冷たい風に当てますと、ぶり返すということになります。そっちの方が厄介だと思っておりまして、真剣に、そしていたずらに不安をあおらないように積極果敢に取り組んでいくということが大事だと思います。  十一月の経済対策のときに雇用焦点を当てる対策を行って、今現在、そのほとんどは一月からスタートしているわけですから、まだ立ち上がったばかりであります。その中には、恐らく初めての試みでありますけれども、政労使で真摯に話し合って、そこでの取りまとめを政策提言という形で盛り込んだ、これが百万人の雇用創出、安定であります。その後に、雇用対策本部におきまして、この創出部分をもっと拡大していこうということで七十七万という数字が出て、これに向かって今努力をしている最中であります。  それから、今先生が御指摘をされました人材の適宜適切な供給のためのスムーズな移動、今回の法案にかかわってくることでありますけれども、企業が永遠に雇用を拡大し続けることができるかといいますと、大きくなった企業は、維持効果はありますけれども、さらに雇用を拡大していく効果というのはだんだん落ちてくるのでありまして、そこは、新しい企業が生まれて、それが伸びていく段階で急激に雇用吸収効果が出てくるわけでありますから、そういう急激に伸びていくところに適切に人材移動できるということは大事な政策でありまして、目詰まり状態を起こしてしまいますと、新たに雇用吸収力がある企業がその力を発揮できないということになります。  その際に、ただ単にスムーズ、円滑な移動というだけでなくて、職業能力をアップした、その企業に合った能力を持った、つまり能力で武装した人材移動できるというふうな措置をしっかりとセーフティーネットの一環として組み込むということは非常に大事なことだというふうに思っております。  また、先般、去る二十三日に、総理から新しい指示をいただきました。エンプロイアビリティーの向上と雇用ミスマッチの解消について、労働大臣は、通産大臣文部大臣その他と連携をとりながら新しい政策を出せという御指示でありまして、今、通産省他と鋭意打ち合わせ中でございまして、五月中にもその新しい政策も発表できるかというふうに思っております。
  7. 大村秀章

    大村委員 今大臣言われましたように、円滑な労働移動は大事でありますし、今総理から言われたという、その新しい雇用創出も含めた政策、これも、とにかくこれでいいというのはないと思いますので、どんどん新しいものをまた打ち出していただいて、ぜひ切れ目ない対策というのをお願いできればというふうに思っております。  そういうことで、今言われましたことを前提にして今回の改正案があるというふうに思っております。失業を抑えながら、適正な労働市場労働力移動を円滑に進めていくといったことが必要なわけでありまして、そのことが景気回復経済再生に結びつくわけでございます。  私、二月の大臣所信表明に対する質疑でも申し上げましたけれども、今回の両法案は、まさしく産業構造変化でありますとかライフスタイルの多様化、要は働く人自身が一生そこで勤めるという形の考え方がだんだん薄くなって、一たんそこで働いてみて、これは自分に向いているとか、やはりこういう仕事につきたいとかいうことを見つけながら仕事を選んでいく、そんな時代が来たかなというふうに思っております。そういう意味で、ジョブサーチ型の労働といいますか、働き方というのがだんだんできてきたんじゃないか。私自身、私の知り合いなり親友、私と同じ世代、三十代ぐらいの人間にとりましては、余り会社をかわるというのが抵抗がない、そういう時代でもあるんだろうと思っております。  そういう意味で、今大臣言われた、新しい雇用をつくり出すということはもちろん必要でありますけれども、それに労働力を需給調整するという機能をつくる、強化するということも、あわせて本当に大事だなと。今回の両改正案は、その意味での労働力需給調整機能強化という点に全く資するものだと思いますし、そういう意味で、ぜひこれを早目に成立させていただきたいと思います。  そのことを申し上げまして、労働者派遣法改正案につきまして少しお聞きをいたしたいと思っております。  今私が申し上げたようなことで、まず労働者派遣法改正案についてでありますけれども、今回の改正案の大きなポイントというのは、対象業務による限定を原則として外す。ポジリストをいわゆるネガリストに変えるということになるわけでございまして、派遣期間による限定の方式、限定をするということで、対象業務限定を撤廃するわけでございます。  これは、この国会にも提出されておりますILOの第百八十一号条約ですか、それにも準拠する形になっておるわけでありまして、私が先ほどから申し上げておりますように、大変望ましい方向だなと思っておりますが、今回、こうした内容労働者派遣法改正を提案された背景でありますとか、その目指すべき方向につきまして、労働省の御見解をお聞きしたいと思っております。
  8. 甘利明

    甘利国務大臣 今回、派遣事業規制緩和を行うわけでありますけれども、これは、働く側と働いてもらう側の両方からのニーズに合致をした規制緩和であるというふうに思っております。  企業の側からしますと、臨時的、一時的な労働力需要があって、そこに可及的速やかに人材供給をしてもらえるということが企業自身競争力の上でも必要だというときに、そういう仕組みがないとすると、それを見送ってしまう。そうすると、企業自身にとってもマイナスであるし、見送らなければそこに雇用の場があるのに、実は雇用の場が失われてしまう。  働く方からしましても、自分の働き方にいろいろな選択肢が持てる。もちろん、正規常用雇用として働きたい人、あるいは、自分はこういう仕事だけしたいし、こういう期間だけしたいというニーズも当然あるわけであります。あるいは、将来正規常用雇用としてずっと勤めたい仕事を探す間、派遣社員としていろいろな体験をしてみたい、その中から自分が生涯取り組む仕事だというのを見つけたいという思いも当然あるでしょう。  その両方ニーズを満たすということで、今回の改正をお願いしているわけであります。  国際的に言いましても、一昨年の六月に労働者派遣事業を含む民間労働力需給調整事業運営を認めること等を目的とする、先ほど来お話がありましたけれども、ILOの百八十一号条約が大多数の政労使の一致の賛成によりまして採択をされたところでありまして、これを国内法としてもちゃんと満たしていくというためにも今回の改正が必要だというふうに考えて、今お願いをしているところでございます。
  9. 大村秀章

    大村委員 この法案が通りましたら、ぜひILOの百八十一号条約、これにつきましてもこの国会でできるだけ早く批准がされればいいなというふうに思っておりまして、その点につきましての御努力もお願いできればというふうに思っております。  そして、今大臣からも御答弁をいただきましたが、私は、雇う側だけじゃなくて、やはり働く側の人の意識の変化というのも大きい流れがあると思っておりまして、そういう意味では、今回の派遣法によっていろいろなメリットというか効果も大変出てくると思うんですね。  例えば中高年齢者の方を再雇用するといった場合でも、こういった方は即戦力として雇う企業の方は考えるわけでありますけれども、今まで使ってきたわけじゃないわけでありますので、なかなかその人の能力をはかりがたい。そういった中で、リスクを冒してまでとにかくずっと本採用してあれするということはなかなか二の足を踏む場合もあるんだろうと思うんですね。ですから、そういう意味で、こういった派遣の形を活用して、そういった方々の雇用をもっとつくり出していくことも考えられるんじゃないかというように私は思います。  現在、この派遣労働者は、労働省の調べでは八十六万人という方がこういった形で働いておられるというふうにもお聞きしておりますし、何かずっとこういう形で働く方がふえておるわけですね。ですから、そういう意味で、こういう形のものが円滑に進むように、今回、この法律が成立した上でも、やはりその施行も含めて整備していくことではないかと思っております。  そういう意味では、一部の方から、今回の労働者派遣事業対象業務の縮小でありますとか、三年後の登録型の派遣の廃止なんかを言われる向きがあるようでありますけれども、こうしたことをやりますと、今やっている労働者派遣事業が広がっていく、そこにある意味でストップをかけるというようなことにもなると思いますので、これはいろいろお考えはおありかとは思うんですが、私は、やはりいかがなものかな、いわゆる実態に即してどうも余り合わないんじゃないかなと思うわけであります。そのことも少し申し上げたいと思います。  メリットはもちろんでありますけれども、今回の派遣法改正に際しまして一つの大きな焦点といいますか、ポイントとなったのは、やはり労働者保護措置といったものもあわせて当然やっていかなければならないわけでございます。派遣法が、今までこの労働者派遣事業がある意味ではいろいろな規制が強かったというのは、やはり過去の歴史を振り返りますと、労働者の権利の保護が十分でなかったという時代、そういった歴史があったことも私は否定できないと思うわけですね。  今回の改正案では、保険関係でありますとか苦情処理、さらには秘密保護、いろいろな保護規定がありまして、そういった保護規定につきましては十分配慮されていると私は考えておりますけれども、さらに、こういった点は十分なのかという声があるのも事実でございますので、この点につきましては、この規定はもちろんでありますけれども、実際の法律、制度の施行執行段階におきましても、労働省として、労働行政として十分そういった声にも耳を傾けてフォローしていく必要があるんじゃないかと思っております。そういった懸念に対して十分対応した上で、やはりメリットを生かしていくということが私は必要だと思っております。  そういう意味で、同じような話かもしれませんけれども、今私が申し上げた点、いわゆる労働者保護措置を十分講じながら、十分配慮しながら、一方でそのメリットを生かしていくといったことについての労働省のお考えをぜひお伺いしたいと思います。
  10. 甘利明

    甘利国務大臣 御指摘のとおり、今回の改正は、企業側労働者側両方からあるニーズに対処するということと同時に、懸念される働く側の問題について法改正の中に対処をしていくということを入れているわけであります。  先生指摘のように、個人情報守秘義務であるとか、あるいは常用正規雇用の代替として使われないように一年を超えた場合には正規雇用として採用するという義務を持ってもらうとか、これは努力義務でありますけれども、あるいは、労働条件が当初の話と違うあるいは明らかに労働基準法違反であるというようなときに、働いている者がちゃんと申告をしてそれに対処できるような仕組みを入れる、あるいは、そのことをしたことによって不利にならないようにする等々、労働者側心配に対処する部分も十分盛り込みまして改正内容としたところでございます。
  11. 大村秀章

    大村委員 先ほど私が申し上げた観点、そして今大臣が御答弁いただいた観点、そうしたものを十分踏まえて、その上で、今の労働省流れを踏まえてこのメリットをぜひ生かしていただきたいと思っております。  もう時間が大分来ていますのであれでございますが、そういう意味で、今回、労働者派遣法と、もう一つ職業安定法で従来ずっと公共の職業安定機関を中心に職業紹介をやられてきたものを、民間職業紹介をきちっと位置づける、そしてその範囲も広げる。あわせて、労働市場労働力需給調整機能強化していくということが今回の大きな流れだと思っておりまして、この二法案が成立した暁には、それを受けて労働市場機能強化をぜひお願いしたいと思っております。  最後にもう一度。本当は安定法につきましてももうちょっとお聞きしたかったんですが、残念ながら時間が来ておりますので……。  今回、この両法律案改正につきましては、民間需給調整事業の活用を図るという考え方のもとにいろいろなルール整備をされるわけであります。重要なのは、このルール履行確保を厳格に実施し、労働者保護を図るとともに、労働力需給調整システムに対する十分な信頼を確保していくということであると思っております。  ある意味で、官民相まっての労働力需給調整機能強化というのが、今後といいますか、ことしの、とりあえずまず当面の労働行政の一番大きな焦点ですね。ですから、そういう意味で、これをどういうふうに展開していくか、この両法案を踏まえてどう展開していくか、最後大臣の御決意をお聞かせいただき、私の質問を終わりたいと思います。
  12. 甘利明

    甘利国務大臣 国が働きたい人に仕事の場を紹介できる仕組みあるいは職業能力をつけていく仕組み、これは憲法上、条文の中に国が基本的なこと、最低限のことはやっていくということが明記をされております。ただ、国がすべてをカバーできませんから、漏れがないように民間の力を使って、あるいは国が手が届かないところを民間の英知でもってカバーしていくという体制、官民両々相まって労働需給調整機能をしっかりと持つということは、社会セーフティーネットでありますから大事なことであります。  その際に、あわせて労働市場ルール整備充実とその履行確保を図っていくということも大事なことでありまして、官と民が協力をして、働きやすい、そして将来ニーズを先取りして対応できる仕組み、それから働く者にとっての安心感を醸成する仕組み両々相まって構築していくということは大事なことでありまして、それらのことに資する法改正として現在お願いをさせていただいているところでありますし、委員の皆さんの御理解をいただいて、本法案が成立した際には、法案の趣旨に遺漏なきよう、しっかりと行政として取り組んでいきたいというふうに思っております。
  13. 大村秀章

    大村委員 終わります。ありがとうございました。
  14. 岩田順介

    岩田委員長 石橋大吉君。
  15. 石橋大吉

    ○石橋委員 わずか三十分の質問時間ですので、余り大した質問ができませんが、今国会も後半は省庁の再編や地方分権一括法案の審議、参議院におけるガイドラインの審議などもあって、本来なれば一日か二日かけて労働委員会でも雇用失業問題をやはりしっかり議論する必要がある、こう思っておりますが、そういう機会がなかなかとれないんじゃないかと思いますので、きょうは最初に政府雇用政策について労働大臣に少しお尋ねをしておきたいと思います。  御承知のように、政府は去年の十一月に緊急経済対策の柱の一つとして百万人規模の雇用創出計画を打ち出したわけです。ことしになりまして三月の五日に、産業構造転換・雇用対策本部の会合を開いて、先ほどもちょっとお話がありましたが、雇用創出に向けて新たな数値目標を決定した。御承知のように、七十七万人の期待される雇用創出規模を決定したわけであります。実現すべき雇用創出規模、こうなっていないところに少し問題があるんじゃないかな、こういう感じがしておりますが、どっちにしても、そういう雇用失業問題が深刻になっていますから、政府としての対策を決定したわけです。  民主党の労働部会の労働市場委員会を三月十八日に開きまして、関係省庁の課長クラスを呼んで、各省のヒアリングをずっと受けました。その中で明らかになったことは、この数字は産業連関表を使ってはじき出した数字だ、そういう意味では、さっき言いましたように期待される数字であって、何が何でもこれを実現する、こういうふうに必ずしも受けとめられていないように私どもは理解しました。  同時に、そのときにこの七十七万人の雇用創出、一両年の間に実現をするというわけですが、そのことについて全体を総合的にまとめ、かつ引っ張りながらこれの実現に向けて一体どこの省庁が責任を持ってやるのかと聞いたら、労働省からそのときにだれが来ておったか余り覚えていませんが、それは労働省が責任を持って全体の牽引車になってやる、こういう態度表明が残念ながらありませんでした。  御承知のように、雇用対策法では、完全雇用の達成を政府政策目標として鮮明にしながら、労働大臣関係行政機関の長に対する要請権を規定をして、雇用対策に関する労働大臣の調整機関としての地位を明らかにしているわけであります。どうも労働省全体がそういう規定を踏まえながら積極的かつ熱意あふれる雇用創出についての態度を持っておられるのかどうか、そのヒアリングを受けた感じではいささか疑問を持たざるを得ないような受けとめ方を私はいたしました。  御承知のように、この一月及び二月末発表の労働力調査によりますと、失業率は一月末四・四%が二月末は四・六%、完全失業者の数は一月末二百九十八万人が二月末には三百十三万人、こういうふうにふえているわけであります。  しかも、加えまして、三月三十一日の朝日新聞に「主要企業が最近発表した人員削減策」、こういうのをちょっと詳しく載せておりました。それを見ますと、例えば日立製作所は九八年度中に四千人の削減をする、九九年度には分社化などで四千人の出向あるいは転籍をする。東芝はATM部門の売却などで九九年度末で約四千人の減員をする。NECは二〇〇一年度末までに一万五千人の削減をする。ソニーは二〇〇二年度末までにグループ従業員の約一割に当たる一万七千人を削減する。こういう削減計画がずらっと並んでいるわけですね。こういう状況は、まさに人減らし競争の時代、こう言わざるを得ないほどリストラ計画が並んでいるわけであります。  四月の七日付の日経新聞の「検証 雇用改革」によれば、日本経済新聞のデータバンクの試算では、企業の過剰雇用数は五百六十万人だ、こういう数字をはじき出しているわけです。五百六十万全部をリストラするかどうかは別ですが、どっちにしても、まだまだそういう意味では企業労働者の削減、リストラが続く、こう見ておかなければならぬと思うのです。  そういう状況に照らして考えたときに、この七十七万人の雇用創出計画については政府を挙げてよほど真剣に取り組まないと失業者の増大に追いつかない、こういう状況になるんじゃないか、こう心配しているわけであります。  この点で、労働大臣雇用創出にかける決意と考え方をまず最初に伺っておきたいと思います。
  16. 甘利明

    甘利国務大臣 先月の雇用対策会議の席上、一両年の間に七十七万人の新規の雇用創出を図る、各省別に数字が出されました。  これについて、決意の度合いが足りないという御指摘も今いただきました。政府としては相当な決意で取り組んでいくつもりでありますし、現在そうしているわけでありますが、日本自体が計画経済の国ではありませんし、これは民間努力に依存するものであります。介護福祉のような分野は、予算をふやした分人がふえるという直結性がありますけれども、それ以外は予算と雇用の直結性がございません。そこで、環境整備政府が精いっぱいするから極力それに向かって頑張ってほしい、政府も挙げて取り組むという範囲を超えることがどうしてもできないわけであります。小渕内閣としては、雇用を最重点の課題と考えております。  きょうも産業競争力会議が朝ございました。そこで経営者側からもいろいろな意見が出されたわけでありますけれども、私からも発言をさせていただきまして、とにかく今の経済状態を回復する強力な世界の牽引役になっていくためには、個々の企業競争力を引き上げていかなければならないことは事実である、ただし、その場合に、安易に雇用の削減という手法で競争力を上げる、生産性を向上させるということではなくて、そこにいる従業員の労働能力を引き上げる、バージョンアップを図るということを通じて生産性の向上を図るということを最優先に取り組んでもらいたいというお話をさせていただきました。経団連の会長からも、雇用を守るというのは企業社会的責務であるということはよく承知をしておりますというお話をいただきました。  そこで、各社がリストラ計画を発表しております。先生指摘のように、上場企業は何千人あるいは一万何千人という単位でリストラ計画を発表しておりますが、確かにその本体で雇用者数が減るというのは紛れもない事実でありますけれども、一般にその分生首が飛ぶという印象、これは誤解がありまして、その誤解が社会不安をあおって、それが消費が停滞したままというふうにはね返ってきている。そうしますと、さらなるリストラを強いられるというエンドレスの追っかけっこになってしまう。これを断ち切らなきゃならない。  企業が、特に大手企業が発表しておりますリストラ計画は自然減で調整するものであって、私も調査をさせましたけれども、生首を飛ばすというのはほとんど、パーセンテージはうんと少ないわけであります。社会に与える誤解を払拭していくということがまず大事だと思います。  ただ、そういう前提があっても、その本体での雇用者数が減ることは事実でありますから、新たに雇用者の受け皿になってくれる企業がどんどん伸びていかないといけないということであります。  競争力会議でも、新しい分野のニーズをつくり出していくことが大事だと。そこで、ニーズがあるから企業ができるということも事実だけれども、サプライサイド、供給側の企業ができるから逆にニーズが起きるということも言えるんではないだろうかと。  例えば、今レンタルビデオとかレンタルレコードというのが非常に盛んであります。その業態ができますときに、そういう貸し業務が広範にできると物を買う人がいなくなっちゃって売れなくなるという心配が随分業界から出されました。しかし、レンタル業務ができて逆に物が売れたというのも事実でありますし、特に物によっては、例えばビデオは自分で買って見るかといったら、そういう業務がなかったらビデオは見ないで、映画館かテレビでやるのを見るだけということになっちゃう。そういう業ができたことによって、借りる人がふえて、レンタルビデオショップは同じ映画を一つだけ置くんじゃなくて、二十も三十も買い入れてレンタル用に置くわけでありますから、それが伸びるということになってきているわけであります。  サービス業分野、よく経企庁長官は家事のアウトソーシングということを言われます。家事をアウトソーシングで引き受ける業務がないからアウトソーシングをしないということも事実だと思いますし、そこで業ができることによって逆にニーズが起きてくる、それによって雇用が拡大をするということ等々ございまして、今の競争力会議では、社会全体での雇用の安定ということを踏まえてのいろいろな議論がなされているところであります。  総理は、最後にあえて発言をされまして、自分はスローモーだと一般的には思われているけれども意外とせっかちですよ、具体的に延々と議論をしないで結論を出して、法改正が必要なものはやっていくべきだと思うという発言をわざわざされておりますので、積極果断な対応ができるかというふうに思っております。
  17. 石橋大吉

    ○石橋委員 どっちにしても、景気回復のためにも、また本当の意味で働く場所を確保するという意味でも非常に大事な話ですので、真剣にひとつ頑張っていただきたい、こういうお願いをしておきたいと思います。  そういう意味で、次には政府景気対策に関連して少しお伺いをしたいと思っておりましたが、大臣が丁寧な答弁をされたものだから、これでもう十五分ぐらいたってしまいまして、余り時間がありませんから、次の質問は飛ばします。  労働者派遣法改正案について一、二伺っておきたいと思うのです。  まず、派遣労働の原則自由化をめぐってちょっとお伺いをしたいと思いますが、平成九年度の労働者派遣事業報告によりますと、派遣労働者数は約八十六万人、対前年度比で一八・一%の増加。一九八六年の労働者派遣法施行以降、派遣労働者数は急速に増加をしている、こういう状況になっているようであります。  労働者派遣労働を選択する理由は、おおむね労働時間や就労期間の柔軟性を重視して自発的に選択するケースもあれば、派遣以外の就業形態を選択する余地がなかったといった経済的理由を挙げるケースもあるようであります。このいずれが主要な要因になっているかは諸外国の例を見ても必ずしもはっきりしていない、こういう状況であるようですが、我が国では女性が派遣に従事している割合が非常に多い、こういうこともありまして、最近の労働省調査でも、この形態を今後も選択したい、こういう派遣労働者も少なくないようであります。  企業サイドの派遣労働の利用の理由を見ると、一つは、正社員の年休、病欠その他一時的な休業代替や季節的な一時的な労働需要の増加に対応するものとして、すなわち臨時的、一時的な労働需要を満たす手段として派遣を利用するケースであります。  ところが、最近は、これにとどまらず、もう一つ非常に注目される、心配されるのは、企業がその労働組織のスリム化や人件費削減のために派遣を利用する、こういう形が非常に広がりつつあるといいますか、心配をされているわけであります。  こういう派遣利用のあり方について、常用雇用システムに対する脅威として労働組合側が強く反対していることは御承知のとおりであります。連合が登録型派遣労働反対、こういう要求を出している根拠もここにある、こう思います。先ほど申しましたような大企業のリストラ計画などとちょうどたまたま同じ時期にこれが出てきたということもあって、殊さら心配をかき立てるような社会的な状況もあるわけであります。  そういう意味で、労働者側には、現在のポジティブリスト方式の維持を求める見解もありますし、連合のように登録型派遣の禁止を求める見解もあるわけでありますが、こういう点について、まず労働省の側の受けとめ方、考え方を最初にお伺いをしておきたいと思います。
  18. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今委員指摘のように、派遣労働で働く方の理由にもいろいろなものがあります。好きなときに自分の得意な分野で働いてみたいという積極的な理由もあれば、なかなか正社員の道がないので派遣で働くというふうな働き方もあるわけでありますし、企業の方から見ましても、臨時的、一時的な即戦力としてこれを緊急に雇用したいといった理由に基づくものも、あるいは一部にはリストラにかわるものとして派遣労働者を使いたい、こういったものもいろいろあろうかと思います。  今回の改正は、従来派遣労働についていろいろと指摘されてきた問題点、特に労働者保護という点に十分配慮しながら、いろいろな改正点を加えながら臨時的、一時的な、あくまで常用労働の代替を防止するといういろいろな仕組みをつくりまして労働者派遣対象を広く認めていこうというものでありまして、これをポジティブリスト方式だけにするということでは現在の労使それぞれの需要にこたえられないのではないかというふうに思います。  また、登録型派遣につきましても、我が国社会のいろいろな変化を背景にいたしまして、自分の働きたいときに働きたいという労働者が、先ほど申しましたが、随分とふえてきているわけであります。実際にも登録型で働いている方が多いわけでありまして、これを認めないということになりますと、これら多くの方の職場を逆に失うことにもなるというふうに考えております。  こうした観点から、あくまでも常用代替については厳格にこれを禁止するという方策をとる一方、また労働者保護についても十分な手当てをしながら、今回の対象業務は広く拡大し、労働者保護もしっかりとするという形で法案提出をしているところでございます。
  19. 石橋大吉

    ○石橋委員 足らざるところはこれから何日か時間をとって、同僚議員からも引き続きましてしっかり問題点の追及をさせていただきたい、こう思っておりますので、次に移りたいと思います。  次は、派遣受け入れ期間の制限とその実効性の確保について伺いたいと思うのです。  連合など労働組合側が非常に心配をしているように、派遣労働が常用雇用の代替となり、いたずらに拡大しないようにするための最大のかぎは、派遣受け入れ期間の制限に果たして実効性があるのかどうか、これが一番大きな問題ではないか、私はこう思っているわけであります。  そういう意味で、今回の改正案の特徴を見ると、一応、派遣労働の利用が常用雇用の代替とならないような枠組みを持っていることは間違いないと思います。すなわち、改正法案では、常用雇用の代替のおそれが少ない臨時的、一時的な労働需要に限って派遣労働の原則自由化を図ったものでありまして、その背景には、こうした就業の利用が長期雇用システムを不当に侵食しないように歯どめをかけるという考え方があると思うのです。  そして、具体的に、改正法案では、この第四十条の二第一項ですが、派遣先はその事業所ごとに同一業務について一年を超えて派遣を受け入れてはならない、こういうふうになっておりまして、問題は、果たしてこれが現実に実効性があるかどうかが問題になるわけであります。  このことに関連して、まとめて三つほど聞いておきたいと思うのですが、まず第一点は、一年の受け入れ期間を超えて派遣労働者を用いた場合の派遣先に対する制裁をどうするか、こういう問題であります。  改正法案では、制裁としては企業名公表などの措置が予定をされているわけですが、しかし、派遣期間限定する法制において、派遣期間を超えた場合にはユーザー企業である派遣先への雇い入れを強制される制度をとっている国、例えばドイツ、フランスもそうだったと思いますが、そういう国々が結構多いわけであります。我が国においてもそういう制度を導入することはできないのかどうか、これが一つ。  二つ目は、改正法案では、同一事業所の同一業務について一年を超えてはならない、こう規定しているわけですが、問題は、同一業務をどのように当事者及び監督官庁が特定、認識をするか、こういう問題があります。従来の適用対象業務という枠と違って、ネガティブリスト方式のもとでは企業ごとに多種多様な業務指定がされる可能性があり、また業務の境界線もあいまいとなるものと考えられるわけであります。この点も厳格にきちんとされなければ一年間の期間制限も全く無意味なものになってしまう、こういう問題があると思うのです。この点をどう考えるか。  三つ目の問題は、派遣受け入れが終了した時点からどの程度のインターバル、クーリング期間を置けば同一業務についての派遣を受け入れることも可能となるのかなどが重要な問題となると思います。期間限定の実効性が担保されるような基準を設ける必要があると思いますが、この点についてどういうふうに考えておられるか、承りたいと思います。
  20. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 まず、一年を超えて派遣労働者を使用した、その場合のいわゆる義務化の問題でございます。  確かに、諸外国の例には、派遣期間を超えて継続してこれを使用するといった場合には雇用契約が成立したものとみなすといったふうな規定を設けておる例が見られます。我が国の雇用に関する法制を見ますと、例えば障害者について雇用率の制度を設けているとか、あるいは男女について採用で差別をしてはいけないといった規定、こういったふうに雇用について一定の規制をかけておる法制度は既にあるわけでございますが、いずれにいたしましても、特定の個人の雇用を強制するという法制はないわけでありまして、この点は、事業主が広く有していると解されております営業の自由、採用の自由を含め営業の自由、こういったものの保障との関係でかなり大きな問題があるのではないかというふうに考えておりまして、現行では、雇用についての努力義務を課するというところがぎりぎりのところではないかというふうに考えているところであります。  また、同一の業務の範囲の確定の問題でございます。  改正法案におきましては、同一の業務について継続して派遣労働者を受け入れてはいけないというふうに規定しているわけでありまして、この解釈を確定するということが、常用代替の防止を図る、厳密に運用するという点から大変大事なことであるというふうに私どもも思っております。  現行の法令におきましても、この派遣労働関係でも、この業務という言葉はいろいろ使われておりまして、例えば職業や職種を用いて表現するものとしては秘書の業務とか通訳の業務というふうに使われていたり、あるいは具体的な行為を明記して表現するものとして事務用機器の操作の業務というふうに、確かにかなりいろいろな使われ方をしているわけでありますが、この同一の業務の解釈に当たりましては、これが常用労働の代替を防止するという観点から解釈をされる必要がある、こういった観点に立ってかなり厳密に解釈をする必要があるというふうに考えているところであります。  現在の段階では、この同一の業務につきましては、派遣労働者が就業いたします課よりも小さい、組織の最小単位であります係あるいは班において行われる業務、こういったものを基本として考えるべきではないかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、この点は指針等におきましてさらに具体化する必要がある、客観的にさらに明らかにする必要があるであろうというふうに考えております。  次に、いわゆるクーリング期間の問題でございます。  これは、継続して受け入れてはならないという場合のその継続の解釈に係る問題だろうと思いますが、これについては、この議論をしていただきました関係審議会におきましてもいろいろな議論が出たというふうに伺っております。三カ月程度ならどうかとかいろいろな議論が出たというふうに聞いておりますが、この問題につきましては、あくまでもこれも常用労働の代替の防止という観点に立ちまして、どのくらいの期間が適当であるか、これは、法案が成立しました後に、審議会の御意見も聞きながら検討したいというふうに考えております。
  21. 石橋大吉

    ○石橋委員 時間がそろそろ来ましたが、最後に二つほどまとめて質問をしたいと思うのです。  一つは、製造業における派遣の禁止に関する問題であります。  改正案附則第四項、製造業における労働者派遣事業を当分の間禁止、こうなっているわけです。しかし、産業界を中心にして、製造業における派遣を解禁すべきだ、こういう意見もあるわけであります。さっきの雇用調整の問題などもそういうところに絡まってくるのかなという感じもしないことはないんですが、製造業における派遣労働が禁止をされているということは、そういう意味では産業経済に非常に大きな影響を与えている、こう思うんです。  例えばフランスなんかは、鉄鋼だとか電機だとか自動車だとか、ほとんどそういう製造業中心で派遣労働が行われておって、四分の三は男子だ、こういう形になっております。日本では、製造業における派遣が禁止をされておるということも恐らく関係があるだろうと思いますが、派遣労働の大部分が女性、こういう形になっておるかと思うんです。  製造業における派遣の禁止をめぐっては、派遣と請負の関係をめぐって非常に問題がある。ドイツなんかでは、相当期間をかけて議論しているけれどもなかなか平行線でらちが明かない、こういう状況があるようですが、製造業における派遣の解禁問題と、請負と派遣関係について、労働省当局はどういうふうに考えておるのか、これをちょっと、時間の範囲内でいいですから、まずお聞きをしておきたい。  もう一つは、男女雇用機会均等法の適用について、ここでちょっと念のために伺っておきたいと思います。  改正男女雇用均等法が四月一日から施行されました。派遣労働の現場でもこれを厳重に守ることが非常に重要だ、こういうふうに考えているわけであります。派遣事業者に対して法の遵守の徹底をどのように指導していくのか、特に、派遣労働の制度上、均等法の事業主責任について、派遣元のみならず、派遣労働者を指揮命令する派遣先にも責任を負わせるべきだ、こういうふうに考えますが、この点どういうふうに考えておられるか、簡単にひとつお答えいただきたい。
  22. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 製造業におきます派遣の適用につきましては、特に製造業の現場にこれを適用することについて、強い懸念が表明されたところであります。したがいまして、改正法案におきましても、こういった意見に留意をいたしまして、製造業の現場業務につきましては、当分の間、労働省令においてこれを適用しないこととするというふうにしておるところであります。これは、特に製造業において、今委員指摘ありましたように、いわゆる偽装請負というふうなものがまだ存在するのではないか、こういった懸念があるために、今回もこういった措置になったというふうに理解をしております。  この請負と派遣との区分の基準でございますが、これは派遣法制定当時から、労働大臣告示によりまして、みずから事業を行うというふうに厳格に言えるための条件をいろいろと示しているわけでありますが、今般は、さらにこの基準について踏み込めるものがあるかどうか、さらに検討を進めていきたいというふうに考えているところであります。  また、いわゆるセクシュアルハラスメントの問題でありますが、現在でも現行の派遣法におきまして苦情の処理に関する規定がありますが、今般の改正法におきましては、派遣労働者の就業環境を派遣先が整備するためにいろいろと努力しなければいけないという規定を設けておりまして、そういった努力の一環としてこの問題も取り上げられることになると思いますが、具体的には、指針におきまして、派遣先におけるセクシュアルハラスメントの防止について規定をしていきたいというふうに考えております。
  23. 石橋大吉

    ○石橋委員 まだまだ不十分ですが、あとはこれからの質疑に譲って、時間が来ましたから、私の質問はこれで終わります。
  24. 岩田順介

    岩田委員長 次に、前田正君。
  25. 前田正

    ○前田(正)委員 公明党・改革クラブを代表して、三十分の短い時間ではございますが、質問をさせていただきたいと思っております。  質問に入る前に、まず労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  現下の雇用情勢は大変厳しいものがございまして、この二月で完全失業率が四・六%、三百十三万人ぐらいの方々が失業されているということが発表されたわけでございます。失業率という数字ではありますけれども、私どもは大変心配をしておるわけでございまして、これがどのようにして雇用が順調にいけるのだろうか、あるいはさらに悪化をしていくんだろうかということでございます。  この間、経済企画庁長官は、景気は底割れをした、これからの負の連鎖反応、デフレスパイラルというものは脱したというふうな会見をされておられたわけであります。しかし、私は大阪の地元のことしかわかりませんけれども、地元の中小零細企業者の方々はそれぞれ今大変苦しんでおられますし、また、私どもの事務所にも、大学を来年卒業する、あるいはことしの三月に卒業する、しかし、残念ながら就職がないので、先生、一遍どこか関係のところをどこでもいいですから紹介していただけませんかというふうなことの問い合わせがたくさんあるわけでございまして、大学を卒業しながら就職ができないという方々も幾人もおられるわけでございます。  こういうことを考え大臣として今の御心境と、これからの雇用対策をどう取り組んでいかれるか、この辺をまずお伺いさせていただきたいと思います。
  26. 甘利明

    甘利国務大臣 先般、経企庁長官が、景気が底打ちをして、デフレスパイラルの心配は脱したという宣言をされました。私もぜひそうあってほしいと思いますし、そういう具体的な要素は幾つか出てきていると思います。  中小企業で見ますと、御指摘のようにまだまだ厳しい状況は続いております。ただ、今までみたいに、見える限りの景色が全部灰色だったのから、少し明るい色も出てきたなという状況に変わっているわけであります。ただ、灰色部分がまだ依然として相当ある、灰色というのは見通しが非常によくないという意味ですけれども、それは事実でありますから、これからも手抜かりなく雇用対策、そしてそれ以前に景気対策をきちっと推進していく必要があろうかと思います。  アメリカが今建国史上最高と言っていいような絶好調の状態が続いていますけれども、これも、アメリカの景気拡大がたしか九二年の三月くらいから始まりまして、今最長記録に至っていると思うんですが、景気拡大が始まりましても失業率はうんと悪くなり続けておりました。景気拡大が始まって実に一年二、三カ月後に失業率は底を打ったという状況でありまして、当時アメリカでは、先生も先刻御承知だと思いますが、景気が拡大しても雇用情勢は改善しないのではないかというような不安さえ広がった。しかし、一年二、三カ月後に底を打って、反転して失業率が改善をしていって、今や日本を追い抜く低失業率に至ったということであります。  日本におきましても、失業率というのは景気の遅行指標でありますから、後追いで改善をしていく。だから、景気が立ち上がっていきながらもさらに雇用情勢は悪くなるという特性はありますけれども、しかし、アメリカほど長くはないと思います。通常、半年ぐらいと言われていますから、景気が立ち上がって半年後が一番つらいところだと思います。  堺屋長官の言ではありませんけれども、今一番つらいところを雇用情勢は乗り切ろうとしているんだというふうに思います。ここのつらいところをしっかりと耐え忍んで、そしてタイムラグをできるだけ短くしながら、景気が反転していくのに追随をしてよくなっていくようにすることが必要だと思っておりまして、各般の施策をとっているところであります。  もう説明の必要はないと思いますが、昨年の秋の対策、これは、補正それから本年度予算とあわせて雇用というものを最重点施策の一つとして掲げて、今までの安定施策に加えて、さらに創出、生み出すという施策に踏み込んで、しかも、労働省単体ではなくて、政府全体で取り組んでいこうということにしているわけであります。  さらに、先般、総理から、企業競争力をつけていく過程で雇用不安が極力起きないように新たな対策労働、通産で考えてみるようにという御指示もいただきました。現在、新しい傾向としては、ホワイトカラー、特に中高年のホワイトカラーの雇用不安が広がっておりますので、ここに焦点を当てた一連の対策が組めないかということで、当然、予算の限度もありますし、制約もかけられてはいるのでありますけれども、その中で、通産と打ち合わせをしながら、ホワイトカラーの中高年に焦点を当てた新たな雇用対策ということを今策定中でございます。これは五月中にも発表できるのではないかというふうに思っております。
  27. 前田正

    ○前田(正)委員 今大臣から詳しくお話がありましたけれども、大変に雇用状況というものは厳しい、そして経済と連動するということも我々わかりますし、経済の景気がよくなる、雇用というものはその後追いをする、しばらくの期間を置いてから雇用というものが発生するということもよくわかるわけでございますが、こういった大変厳しい状況の中で、本当に雇用対策がこれでいいのか、今のままで必ず雇用というものはよくなっていくのかどうかということももう一度検証しながら、やはり全力を挙げてこの問題に取り組んでいただきたいということを私は申し上げておきたいと思います。  次に、労働者派遣法の問題に触れてまいりたいと思います。  今お話がありましたとおり、今、雇用状況が非常に厳しいわけでございます。常用の方がどんどんリストラで切られていくわけでございますが、こういう状況の中でこの労働者派遣法という法律改正をされるということになりますと、むしろなぜ今こういう時期にあえてこの労働者派遣法という法律改正案を出す必要があるのか、まだもう少し先送りをする方がいいのではないか、今は、そういった派遣ではなしに、まず常用雇用というものを我々はどうしていくかということを真剣に考えるべきであって、今のところこの二十六業種だけで十分に業界としての要望にこたえておるのではないか、私はそう考えておるわけでございます。むしろこれを改正をする方が、より今のこの失業率が四・六、三百十三万人を救済する方向に向くんだというお考えであるのか、この辺の政府としてのお考え、省としてのお考えを一遍お聞かせをいただきたいと思います。
  28. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 本年二月の失業率は四・六%というふうに大変高いわけでありますが、この失業率内容ですけれども、二種類あるかというふうに見ております。  一つは需要不足による失業でございまして、昨今の失業率の上昇はこの面に負うものが大変多いところでありますが、片や構造的、摩擦的な要因による失業率の上昇という面も見られているわけであります。いろいろな事情で需給がマッチングしないという状況であります。この失業率は、近年、とみにといいますか、じわじわと上昇してきておりまして、現在では、四・六%の失業率のうち三%程度はこの需給のミスマッチによる失業ではないかというふうに見ているところであります。  実際にも、公共職業安定所に一年間に寄せられる求人の数は約五百万件近くございます。したがって、日本の労働市場において求人が絶対的に減少している状況ではないというふうに私ども考えているわけでありますが、ただ、残念なことにこれがいろいろな理由によりまして結合しない。例えば事業主の期待する能力を備えた労働者がいないとか、労働者側から見れば労働条件が低いとかあるいは年齢制限が非常に厳しくて就職できないとか、こういったいろいろな事情があって、ミスマッチがあって、五百万近い求人が実際には三割弱しか充足をされていないという大変不幸な状態にあるわけであります。  このミスマッチの中には、今議論いただいております、一時的な労働の場を見つけたい、あるいは短期の即戦力を見つけたい、こういった労使のニーズというものに的確にこたえ切れていない面がある、こういったところもミスマッチ一つの原因になっているのではないかというふうに考えておりまして、今般、派遣労働の対象を広く認めることによりまして失業の解消に向かう、そういう側面が大きいというふうに私どもは考えているわけであります。  ただし、これが常用労働を代替する、リストラの手段として使われるということは絶対に避けるべきであるというのが現在の我が国の共通の認識であろうかというふうに思います。  そういった意味では、派遣労働は、今般拡大するところは厳格に一年に限定をするということで、派遣労働が常用労働の代替になるということは絶対にないという仕組みを行いながら派遣労働を広く認めていくとしているところでございまして、こういった意味で、常用労働と今般拡充する派遣労働の働く場というものはぶつかり合うものではないのではないかというふうに考えているところであります。
  29. 前田正

    ○前田(正)委員 今説明をお聞きいたしますと、要するに、常用雇用がいわば派遣によって圧迫されることはない、また、むしろこの今の経済不況の中で雇用の推進につながっていく、こうおっしゃっておられると理解をしております。  そこで、労働者派遣事業の事業所数及び派遣労働者数、できれば男女別あるいは年齢別の、特にそういったもので突出しておるところの現状及び労働者派遣事業の総売り上げといいますか、どれぐらいになっておるのか。そしてまた、今回の法改正によって派遣労働者数というのがどの程度増加するように見込んでおられるのか、この辺についてちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。
  30. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 まず、派遣元の事業所数でございますけれども、平成十一年、本年の四月一日現在で一万五千六百九十二所というふうになっております。このうち、一般労働者派遣事業所が三千六百七十七所、特定労働者派遣事業所が一万二千十五所というふうになっております。  また、派遣労働者数ですが、これは平成九年度の報告でございますけれども、これによると、約八十六万人でございます。そのうち、いわゆる登録型の派遣労働者は七十万人、常用労働者が約十六万人であります。登録型の中には複数の事業所に登録をしている方もおられますので、この方たちについて常用換算してみますと、派遣労働者は平成九年で約三十四万人ぐらいではないかと思います。したがいまして、派遣労働者の実数は八十六万人と三十四万人の中にあるのではないかというふうに見ているわけでございます。  また、平成九年の調査によりますと、派遣労働者に女性が占める割合は七二・四%というふうになっております。また、年齢別では二十歳代が四〇・三%というふうになっているわけでございます。  また、この事業報告によりますと、派遣労働者の平成九年度の年間売上高は総額が約一兆三千三百三十五億円で、これは前年度比一二・八%増ということになっておりまして、平成六年度以降増加傾向にございます。  今回の改正によりまして派遣労働者がどの程度ふえるかということでございますけれども、現在は二十六業務のいわゆる専門的業務に特定しておるわけでありますが、これを広く拡大していくということになります。ただ、これは、そういった面では増大要因でありますし、また、従来の派遣と違いまして、あくまで臨時的、一時的な一年間の限定をつけるということでございますから、これが正確に今後どのくらい伸びるかという予測はなかなか難しいのですが、そう急激にふえることはないのではないかというふうに見ております。
  31. 前田正

    ○前田(正)委員 急激にふえるということはない、こうおっしゃっておられますが、この改正によって幅が広くなる、二十六業種以上に広くなってくるということになると、当然、派遣先がふえてくるわけでございます。ならば、業者数も当然ふえてくると思いますし、また業者さんも、それによるいわば労働者確保というものも当然ふえてくる。したがって、そうふえないのではないかというよりも、私は、急激にこういったものがふえてくる可能性がある、こういうふうに理解するわけであります。  そうすると、ふえてくるということになりますと、今度は派遣先の問題になります。派遣先は、極力安い賃金で雇えればその方がありがたいということになるわけであります。過剰の労働者を抱えている業者としてはできるだけそれを送り込みたいということになると、私は、これからの労働賃金というものは今のこの二十六業種の平均賃金よりもむしろ安値で安定していく可能性というものがどんどん出てくる、あるいはまた、労働条件そのものも大変悪くなってくるという可能性が多分に出てくるんではないかと大変懸念をしておるわけでございます。高値安定をするよりもむしろ安値安定ということになる、それだけ企業は使いやすいということになると、労働者そのものの質というものも悪化してくるということにもなるわけでありますが、その辺のことはどうお考えになっておられるのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  32. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 企業の側で派遣労働者に対する要望があるということは、これはいわゆる即戦力を求めているという要素が大変大きいと思いますし、また、派遣元事業主にとりましても、派遣した労働者派遣企業が要求している能力の水準に達しているということが事業の発展にも大切なことでございまして、この派遣業におきましては、とりわけ派遣労働者の教育訓練というものが従来から重視をされているというふうに考えております。  現行の法律の中にも、派遣元事業主は派遣労働者に対する教育訓練の機会の確保に努めなければいけないという規定を置いておりますし、私ども、実際に派遣業の許可やあるいは更新の際には教育訓練の状況についてチェックをするというふうにしているわけでございます。  また、今般、一時的、臨時的な分野について一年間に限って派遣労働の対象分野を拡大することにしておりますが、短期になればなるほど即戦力に対する需要という面が強くなってくると思います。そういった意味では、派遣労働者というのは、一定の能力あるいは技能水準を備えた労働者派遣の対象になるということで業務は広がりますが、すべての人が派遣の対象になるというものでは絶対にないというふうに思っております。  そういう意味では、即戦力としての能力を備えた、安心して企業の方も使用できる、こういったことでいいますと、今般の派遣労働の拡大が必ずしも賃金その他労働条件の低下につながっていくものではないのではないかというふうに考えております。
  33. 前田正

    ○前田(正)委員 私は、どちらかというと今の考え方とは反対です。だんだんこういう業者がふえてくる、そうすることによって人を集める。もちろん御本人の、派遣労働者の質を高めるということはそれぞれの企業努力で一生懸命やると思いますけれども、A社あるいはB社、C社それぞれがそれぞれの企業への売り込みについて、あとは何かというと、もちろん質も大事でありますけれども、雇う方にしてみれば金額的な問題がやはり一番ネックになると思います。A社、B社、C社の中でどう安く労働者を手に入れることができるのかというところになると、やはり全体的な値段、賃金というものが当然下がってくる、たとえこの人はこういう資格を持っておる、こういうことが特技としてできるということがあっても、そういうふうな傾向にだんだん進んでいく可能性は多分にあるのではないかというふうなことを私は危惧しておるところでございます。こういう点についても、私どもはまたさらに追及をしてまいりたいと思います。  次に移りたいと思います。労働者派遣に関する契約上のトラブルの問題でございます。  実は、国民生活センターの方にこういうトラブルがどういうふうなことで出ておるのかということを聞きますと、確かに平成六年ぐらいのときは非常に少なかったんですが、このところ、平成十年ぐらいにはぐんと、そういった相談事、苦情が非常に多いわけでございます。  整形外科医院で働く人を紹介してもらうお約束をし、一年分六十万円を支払った。ところが、面接の当日、きょうは行けないと電話が入るといった状態で先に進まない。本当に紹介する気があるのかというふうなことでございます。  あるいは、新聞折り込みチラシを見て人材派遣業に昨年九月末に登録し、十月から十一月まで六十日アルバイトをした。アルバイト先の企業からの支払いが滞っているという理由で支払いがおくれ、さらに、振り込まれるお約束をした日に給料の振り込みがない、こういうものもあります。  あるいは、直ちに就職可能なフルタイムの歯科衛生士を三名紹介すると言われて十五万円支払ったが、当日になっても連絡がなく、問い合わせたところ、現在ほかに仕事を持っていることがわかった、約束が違う。  これは一つの例でありますけれども、こういうことが国民生活センターというところに実はいろいろ来ておるわけでございます。そういった意味で、これからだんだんこういうものが広がってくる中でこういう契約上のトラブルあるいは苦情、こういったものがいろいろと発生してくるだろう、私どもはそう思います。  こうした苦情とかあるいはトラブル、こういうものの処理をどういうところでされるのかということがございますが、この辺についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  34. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 派遣労働者からの苦情、これはいろいろと確かにあるわけでございますが、現在、この派遣労働者の苦情の処理につきましては、まず、労働者派遣契約におきまして苦情の処理に関する事項を定めることとされております。また、派遣元、派遣先において選任されております責任者、派遣元責任者、派遣先責任者は、派遣労働者の苦情の処理に当たることとされておるところでございます。  実際には、派遣先と派遣労働者の間、派遣元と派遣先の間、あるいはこれら三者の間、こういった関係において苦情の処理が具体的に行われているようであります。  また、こういった派遣労働者からの苦情等に対しましては、全国の公共職業安定所において派遣労働者からの苦情相談を受け付けるほか、当該労働者からの申し出に応じまして必要な場合には事業所訪問を安定所で行いまして、違反事案が確認された場合には是正措置を行う、こうした措置をとっております。
  35. 前田正

    ○前田(正)委員 そこで、派遣元、派遣先、そして派遣労働者、この三角関係というものが当然今回できるわけでございますが、その中で、法律の中もいろいろ見てみましたら、要するに、その内容、条件等々については文書で明示をすること、こういうことが規定されておるわけでございますが、文書で明示をするだけで本当にいいのかどうか。やはり派遣元は、こういった諸条件に対してこういう会社があるんだけれどもどうだ、こういうことになります。そして、その本人が派遣先の方へ行って勤めるということになるわけでございますが、単なる文書の明示だけで、それだけで本当にいいのかどうかということでございますが、むしろ、明示をするんではなしに、短期だからこそ文書の契約書というものを本人ときちっと結んでおく必要があるんではないか、そういうことをきちっとさせることによってトラブルというものも大分少なくなるんではないかというふうな気が私はいたします。  文書でただ明示して、こうなんですよ、これを見てくださいという文書の明示だけというものは、そういう意味ではきちっと理解ができるのかどうか。本人のサインによって契約書というものをきちっと結んでとっておくということの方が、どちらかというとトラブルというものは少ない。  例えば、自分はコンピューターのそういう派遣としてA社に出向いた。もちろん条件も合った、賃金も合った、いろいろなものが合った。ところが、例えばきょうは取締役会議がある、取締役会議があったときに、女の子がすべて帰った、その女性がたまたまそこでコンピューターのいろいろな作業をしておった、ちょっと、君、済まぬけれどもお茶入れてえな、こうなったときに、いや、私はお茶を入れる者としては派遣されておりませんのでお茶は入れられません、きょうは帰ります、こういうふうなことになるとします。しかし、雇い主にしてみたら、お茶ぐらい入れてくれたってええやないか、別にそんなものでどうこう言うことないがなというふうなことで、こういうささいなトラブルというものは必ず起こってくるだろうというふうに思うわけであります。  そういうふうな単純なことからいろいろなことが仕事の中でありますから当然出てくるわけでございますが、こういったことを踏まえる中で、雇用元とその本人の契約というものを、私はこういうふうな契約をしてこっちへ来たということを、やはりきちっとそういうものを見せることによって相手に理解を得るということもできるわけでありますが、この辺はどうお考えであるか、ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
  36. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今委員指摘のように、派遣元事業主は、労働者派遣をしようとする場合には、あらかじめその派遣労働者に対しまして文書で就業条件を原則として明示しなければならないというふうにされているわけであります。  この文書明示につきましては、条件明示が適切に行われますように、モデル就業条件明示書というものを労働省が作成いたしまして派遣元事業主等に周知を図っているところでありますが、実際には、今御指摘ありましたように、通常の上司でない人から業務の指揮命令を受けたとか、あるいは本来の業務でない雑用もさせられたといったような苦情がなかなか後を絶たない状況ではありますので、今委員指摘のような点も踏まえて、今後さらに検討をしたいというふうに思います。
  37. 前田正

    ○前田(正)委員 それでは、次に、社会保険制度についてお尋ねをいたします。  一定の要件を満たす派遣労働者については、派遣元事業主は必ず社会保険の加入手続を行わなければならないということになっていますが、実際は必要な手続を行っていない事例というのも過去にあったように伺っております。  こういった法違反に対してはやはり厳しく対処すべきだと考えておりますけれども、その辺、今度の派遣法における対応というものはいかがになっておるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  38. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 従来、社会保険、労働保険の適用等につきましてもいろいろと問題が指摘されてきたところでありますが、法律上は派遣労働者につきましても一定の要件を満たす方については社会保険、労働保険の適用があるわけでありまして、その違反に対しましては、罰則とかあるいは滞納処分等の例によりまする処分を行うこととしているところであります。  こういったことに基づきまして、常日ごろから社会保険、労働保険の適用については努力をしているところでありますが、今般の改正法の中には、労働者派遣事業の許可の欠格事由の中に健康保険法等の規定により罰則の刑に処せられた者を追加する、こういったものについては許可を与えないという改正内容を盛り込んでおります。こういったことによりましても、社会保険等の適用が促進されるように努めていきたいと思います。
  39. 前田正

    ○前田(正)委員 そこで、こういった大変厳しい措置をとるということは、派遣労働者保護という点からも私は大事であろうというふうに思います。  ただ、この社会保険というものは省が違うわけでございまして、労働省と厚生省、今のこの段階でございますが。ただ、そういった派遣労働者が言われることには、例えば派遣前はいわば国民健康保険に入っておる、そして今度派遣先に行くと社会保険に入る、こういうことになります。そこの切りかえのその手続というものが非常に邪魔くさいと言ったらなんですけれども、なかなかその辺がスムーズにすっと切りかえるというところの手続という問題が一つあるんではないかと思います。また、あるいは一年間そこにおった、そしてそこをやめることになって今度は国民健康保険にまた切りかえなければならぬ、そこらあたりのその手続上の問題をもう少し労働省と厚生省で一遍いろいろとお図りをいただいて、やはり働く人のための手続で何かもう少し簡単に手続が済ませられるような、そんなものをぜひ考えていただきたい、かように思っております。  それから最後に、時間が参りましたけれども、この間、財団法人日本人事行政研究所というところから、将来あるべき人事管理を考えるための基礎調査というものが出されております。先ほど各先生方からもお話がありましたけれども、この調査の中で、上場企業ばかりの千七十社のアンケートの中で、過去一年間に雇用調整を実施してきたというふうなこと、それからまた、約七割が雇用の過剰感を持っている状況にあり、今後まだまだリストラを進めていきたい、こういう調査が出ておるわけでございます。  私どもといたしましても、これからこの四・六%、三百十三万人がさらに大きく膨れ上がるという可能性があるわけでございますので、特に労働大臣におかれましては、冒頭に申し上げましたこの雇用対策についてしっかりした御指導をしていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  40. 岩田順介

    岩田委員長 次に、岩浅嘉仁君。
  41. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 自由党の岩浅でございます。四人目でございますので重複する部分があると思いますが、お許しを賜りたいと思います。  大まかに数点伺っておきたいと思います。  今回の派遣法改正の最大のポイントは、臨時的、一時的な労働力の需給調整を図るため、派遣対象業務を専門的な業務に限定した現行の二十六業務からネガティブリストにより適用外となる一部業務を除く全業務に拡大するところにございます。このような改正に対しては、派遣労働者による常用雇用の代替が進むのではないかという意見もあり、現在の我が国の雇用慣行を尊重する観点から、こうした心配に法制度上適切にこたえていくことが重要であると考えております。  これは先ほど石橋委員からも質問があったわけでございますが、今回の派遣法改正案におきまして常用代替が生じないためにどのような取り組み、決意を持っておられるのか、まずお伺いをいたしておきたいと思います。     〔委員長退席、川端委員長代理着席〕
  42. 甘利明

    甘利国務大臣 今回の改正は、企業側そして労働者側両方ニーズにこたえる改正であることが一つ。それから、労働者側にとってこうした雇用形態に関して懸念をされること、これは以前からの懸念もありますし、新しく出てくる懸念もあろうと思いますが、それに対しての懸念を払拭するための策を講じるという二つの対応から構成をされているわけであります。  そこで、常用代替が生じないためにどういう措置を講ずるかということでありますが、まず、派遣期間を原則一年に制限いたします。そして、これに違反をした派遣元には改善命令を出しまして、それでもなお改善をされない場合には罰則を適用するということにいたしております。そして、一年を超えて派遣を受け入れた派遣先は、勧告、公表の対象とするとともに、派遣労働者雇用努力義務を設けるということとさせていただいたところでございまして、これによりまして働く側が持っている不安の払拭に資するものというふうに考えております。
  43. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 今御答弁ございました同一業務一年以内という期間制限については、労働者保護観点からぜひ実効性のあるものでなければならないと思っておりますし、労働界から懸念されている部署間のたらい回しなどが起こらないように、行政としても厳しく監視をしていただきたいと思います。  次に、労働者派遣制度は、常用代替防止や労働者保護のための措置整備して適切に活用すれば、労使双方のニーズをきめ細かに調整することを通じまして雇用確保に有効な機能を発揮する制度であり、今後ともより活用しやすい制度としていくことが重要であると思います。  雇用の流動化という言葉が最近頻繁に使われておりますが、これまでの日本の企業では、退職金や昇進なども勤続年数に応じるなど人事管理制度も終身雇用前提としてきておりましたが、これが大きく変わり始めております。しかし、雇用の流動化とは、労働者企業に拘束されることなくみずからのスキルアップを図るために積極的に職場をかえていくことができるという側面や、労働者一人一人の専門性や技術、技能を最大限に生かす場を提供するという側面もあり、適度な流動化は労働市場のマッチング機能強化し、全体として雇用の安定度を高めることになると思います。  労働力需給調整システムを適切に整備した上で雇用の流動化が図られるならば、失業のない労働移動が可能になり、また、失業したとしても最低限の期間で再就職が可能となるわけでありまして、そういう方向で制度のあり方を検討することが重要ではないかと思います。  労働市場の需給調整機能に対する評価は、労働力の需要と供給それぞれのニーズにいかに柔軟かつきめ細かい対応ができるかにかかっておると思います。そこで、この観点から、改正案につきまして質問をいたします。  まず、労働力需要についてでありますが、産業構造変化や国際競争が激しくなる中で、即戦力となる人材へのニーズが高まっております。特に、新規事業への進出やベンチャー企業の活躍が期待される情報あるいは通信などの分野では、必要とされる人材をスピーディーに確保することが最大の課題となってくると思います。  しかし、このような場合には、その事業の先行きは不透明であることが多く、有能な人材確保することは決して容易ではございません。直接雇用による人材確保のみならず、労働者派遣も組み合わせた形を活用できれば、ベンチャー企業の育成に極めて有効であり、また雇用の場を生み出すことにもなると考えますが、この点いかがお考えでしょうか。
  44. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 これから新しく事業を起こそうというふうな場合には特に、なかなか時間をかけて必要な労働者を教育訓練するということは難しいわけであります。また、専門的な能力を持った人を迅速に得たい、即戦力として活用したいという要望も強いというふうに思われます。  そういった意味でも、今回の派遣業務の拡大といったものは、こういった点についても大いに資することとなるのではないかというふうに思っております。雇用の面あるいは産業政策の面で、最近の起業率の低下等を考えましていろいろと助成策を講じることにしておりますが、派遣による人材面での助力といったことに資すれば大変いいのではないかというふうに思います。
  45. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 労働力供給側のニーズ変化に関しては、みずからのスタイルに合った働き方を求める労働力の増加が顕著であります。労働者がその能力を最大限に発揮できるようにするためには、それぞれのニーズに合った働き方を可能にする多様な選択肢を用意することが必要であります。  例えば、男女共同参画社会の実現に向けて、家庭と仕事の両立が社会的な課題となっておりますが、派遣労働者自身はもちろんのこと、派遣労働の活用により、派遣先の労働者も育児、介護等の家庭責任を果たしやすくなるのではないだろうか。今後、労働者派遣労働者のさまざまな就業ニーズに対応するための重要な選択肢の一つになるのではないかと考えておりますが、いかがでございますか。
  46. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 仕事と家庭との両立ということは大変大きな現在のあるいはこれからの課題でございまして、育児休業の制度あるいは介護休業の制度も全面的に施行に入ったところでございます。  そういったことで、職場において育児休業あるいは介護休業をとりやすい環境をつくるということは、それぞれの企業にとりましても大きな課題になっているわけでありますが、例えば育児で休業された方の短期の欠員の補充をするというふうなことにも、今回の派遣法改正というものは資するものであるというふうに思っております。
  47. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 次に、先ほどもいろいろ議論が出ておりましたが、二月の完全失業率は四・六%、完全失業者数は三百十三万人、労働者にとって依然厳しい雇用環境となっております。年齢階層別には、若年層と中高年齢層が特に高い数字となっております。有効求人倍率を見てみますと、四十五歳から五十九歳で〇・三七、五十五歳から六十九歳では〇・一六となっており、特に中高年齢者にとって厳しい状況であることが数字からもはっきり出てきておるわけでございます。  労働力需要そのものが直ちに大きく拡大することが必ずしも期待できない状況の中では、労使の多様なニーズをきめ細かに調整することにより雇用機会を生み出していくことが必要であります。労働者派遣制度の早急な整備を図ることが中高年齢者等の就職困難者の職場確保のためにどう有効に働くのか、どう効果があるのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  48. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 我が国の高齢者の意識調査によりますと、例えば定年で六十歳を過ぎましても、働ける間は働きたいという方が大変多いわけであります。ただ、その内容について見ますと、働き方については、いろいろな多様性を志向しておられるということがわかります。常用労働のほかに、働きたいときに働くといった希望も六十歳を過ぎると多くなってくるわけでありまして、特に高齢者の方について、今般の派遣制度は、働きたいときに従来の知識、経験を生かして働くといった面でも大きく貢献するのではないかと思います。  また一方、御指摘のように、高齢者の求人倍率は大変低いわけでありまして、失業者数も高いわけであります。そういったことで、まずは派遣自分の特技を生かして働きながら、その企業に引き続き雇用されるということも可能になるわけでありまして、そういった高齢労働者あるいは中高年労働者雇用の場の拡大ということにも大きな意味があるのではないかというふうに思います。
  49. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 次に、今回の労働者派遣法改正における労働者保護措置整備についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  今回の改正は、対象業務を大幅に拡大し、労働者派遣事業への入り口については相当間口を広げた内容となっております。それだけに、派遣元の雇用責任をより一層明確にし、労働者派遣事業を利用する労働者保護を的確に図り、トラブルを防止していくということが必要でございます。これは、先ほども御質問があったわけでございますが、労働者保護観点のみならず、労働者派遣事業への信頼を向上させ、より多くの労働者が安心して労働者派遣を通じて働く場を得ることができるようにする意味でも、このことは非常に重要でございます。  そこで、まず、いわゆる派遣契約の中途解約への対応についてでありますが、派遣契約が労働者の責任による事由以外で解除された場合、その労働者はこれを理由として解雇されるべきでなく、他の派遣先に派遣されるなどの対応が派遣元に求められることになると理解をしております。中途解約の際の適正な取り扱いの確保について、現在の行政の対応及び今後の検討の方向について伺っておきたいと思います。
  50. 甘利明

    甘利国務大臣 派遣契約の中途解除、これがどのぐらいあるかといいますと、全体の一、二%という報告を受けておりますが、この中には、派遣労働者の責任による解約と、それ以外のものとございます。労働者の責任による事由以外で解約されたという場合には、御指摘のような対応措置をとらなければならないということで、前回の、平成八年の改正の時点で指針を定めておりまして、これをきちんと実行できるように今まで以上に努力をするということが一つと、それから、このときに書きました指針をより実効あらしめるように新たな指針にどう書くかという二つの点がございます。  八年のときの指針の内容を具体的に申し上げますと、一つは、派遣元は、派遣先と連携して新たな就業機会の確保を図ること。二つは、派遣先は、契約の解除の事前申し入れや、損害賠償等について適切な善後処理方策を講ずることということを指針に定めてあるわけでありまして、これをさらに実効性を確保するために今回の指針でどういうふうに書いていくかということを検討していきたいというふうに思います。
  51. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 ぜひ適切にお取り組みをいただきたいと思います。  もう一つ、今後適用対象業務が大幅に拡大することに伴い、これまでにない労働者からの苦情やトラブルも発生することが当然予想されます。的確な苦情処理の対応が必要であると思います。派遣元及び派遣先において労働者からの苦情等に的確に対応する体制の整備が必要であり、また行政としても指導を徹底するとともに、行政機関が労働者からの苦情を受け付け、迅速的確に処理する仕組み整備することが不可欠であると思います。  今回の法改正におきまして、どのような苦情、トラブル処理のための対応が用意されているのか、また今後どのような方向でこれを整備していくのかを伺っておきたいと思います。
  52. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 現行法におきましても、従来から労働者派遣に係ります苦情につきましては、派遣元責任者や派遣先責任者が苦情の処理に当たるということにされております。その措置について、指針で具体化をしてまいりました。  今回の改正法案におきましては、苦情の事前防止等の観点から、公共職業安定所が派遣労働者の苦情あるいは相談に応じ、助言や援助を行うこと、こういったことを新たに規定しておりますし、さらに、労働者派遣について専門的な助言を行います民間の相談員であります労働者派遣事業適正運営協力員、これは今事実上置かれておるわけでありますが、この協力員の方の役割を法律明記するということにいたしております。またさらに、違法事案につきまして、労働大臣に対する申告制度を設けるというふうにしているところであります。  こういったいろいろな措置をとりながら、派遣労働者の苦情が軽減するように、あるいは迅速に処理をされるように手当てを図っているところでありまして、こういった手当てにより、あるいは従来からの措置とあわせまして、苦情の処理について万全を期したい、働きやすい職場としていくように努力をしていきたいと考えておるところであります。
  53. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 次に、職業安定法改正案についてでございますが、常用雇用を含めた労働力需給調整機能強化を図るためには、労働者派遣のみならず、さまざまな需給調整システムを活用していく必要がございます。個人の主体的な職業選択を促進するためには、求人情報を初め各種の雇用情報を効果的に提供していく必要があります。一方で、高度情報化の中で大量の情報のはんらんが生じており、十分なコンサルティング等のサービスを提供していく必要があります。  こうした観点に関しまして、今回の改正法案におきましてはどのように対応しようとしているのか、まず公共職業安定機関における対応はどうかということを伺っておきたいと思います。
  54. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今回の職業安定法改正案におきましては、公共、民間それぞれについて、それぞれの能力の向上を図ろう、機能充実を図ろうというふうにしているわけであります。  公共職業安定所におきます職業紹介等の業務につきましては、まず求職者への情報の提供及び講習の実施を安定所の行う職業指導の手段として法律明記をしております。さらに、学生や生徒等の職業指導を効果的に行うことができるように、学校等との協力によりますいわゆるインターンシップの実施を法律明記し、その推進を図ることとしております。さらに、公共職業安定機関職業能力開発機関との連携を法律明記いたしまして、それぞれが職業紹介あるいは教育訓練といった面で連携を図りながら、その業務の充実を図る。  こういったことで、公共職業紹介機関についてもその機能のアップをするということで改正案明記をしているところでございます。
  55. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 御答弁で若干触れられましたが、民間職業紹介については、公共職業安定機関にはない機能が求められることになると思います。  民間については、公共と異なり、各紹介所のいわば得意分野において事業活動を進めることが可能でなければならないと思いますが、この点について、今回の改正法案ではどのような配慮がなされているのか。また、民間紹介所には、不合理な差別などが生じない限り、できるだけ自由に事業活動の範囲を設定させることが必要ではないかと思っておりますが、いかがでございますか。
  56. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 職業安定法により、現在も、公共職業安定所及び民間職業紹介事業者は求人及び求職の申し込みについてはすべてこれを受理しなければならないというふうに、職業紹介に関する一般原則を定めております。  ただ、民間の有料職業紹介事業につきましては、これはあくまで営利を目的として行われる紹介事業でございますから、やはりそれぞれ得意の分野というものがあろうかというふうに思います。従来も、それぞれの得意分野において民間の有料職業紹介事業というものが発展を見てきているわけであります。  今般は、こういったことも配慮いたしまして職業紹介の範囲を広げるわけでありますが、その範囲につきましては、有料職業紹介事業者の申し出に基づきまして、これらの者が行う有料職業紹介事業において取り扱うべき職種の範囲を限定する、労働大臣がそれを定めるということにしております。  したがいまして、これから事業を起こそうとする方等につきまして、あるいは既に行っている民間職業紹介所につきましては、自分の得意の分野でそれぞれのノウハウを発揮しながら職業紹介に当たる、その中において、すべての求人、求職については平等な扱いをするという原則を適用するというふうにしているわけでありまして、民間のそういった活力と、それから公平扱いといいますか、そういったものとの調整を図ろうというふうにしております。
  57. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 最後大臣の御答弁をいただきまして終わりたいと思いますが、今後、労働力の需給調整に対するニーズはますます増大、多様化してまいります。そうした中で、もはや公共職業安定機関がこれを独占するという考えをとり続けることは適当ではなく、公共のセーフティーネットの上に民間がさまざまな創意工夫を行い、また公共と民間が十分な連携協力を行い、良質のサービスを提供していくことが重要であると考えます。  官民が大きな一つのネットワークを形成して労働者雇用確保を図っていくべきであると思いますが、今後どのような対策考えておられるか、御答弁をいただいて終わりたいと思います。
  58. 甘利明

    甘利国務大臣 労働力の需給調整機能をもとより公共が独占をしているというつもりはありませんが、御指摘のように、官民相まって、お互いに補完をしながら漏れがないように対応していくということは、これから最も重要なことだと思っております。  二月の失業率は四・六%、史上最悪でありました。失業率というのは景気の後追い指標ですから、景気がよくなっても半年間は逆に悪くなり続けるという経験的特性がありますので、引き続き厳しい状況が予測をされると思っておりますし、相当真剣に取り組んでいかなければならないと思います。  二月の四・六%のうち、いわゆる需要不足による失業は一・五%ぐらいで、それ以外は各種ミスマッチによるものであるという数字が出ておりますので、極力このミスマッチをなくしていく、そのために労働力需給調整機能を引き続き強化していくということは非常に大事なことでございまして、今回の法改正を踏まえて、官と民が協力体制をとりながら対応していきたいというふうに思っております。  さらに、先般総理から、総理は現時点で雇用が最重点の課題だということをおっしゃっておられまして、先般の閣議におきましても、労働大臣通産大臣は特に協力をしてこれに対処してほしいというお話がありましたし、新たな雇用対策関係省庁が取りまとめて五月中に発表するようにという指示もいただいております。  先ほども一部答弁をさせていただきましたが、中高年のホワイトカラーが特にこれから厳しいということでありますので、そこに焦点を当てて、失業者本人の主体性といいますか自主性を大幅に取り入れて、なおかつ、一連のシステムとして再就職に結びつくような新たな対策を今策定中でございまして、五月中にも発表できるかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、内閣を挙げて、あらゆる政策を駆使して雇用の安定に取り組んでいく所存でございます。
  59. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 終わります。
  60. 川端達夫

    ○川端委員長代理 大森猛君。
  61. 大森猛

    大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  いよいよ職安法、派遣法の両改正案委員会審議が始まったわけでありますけれども、先ほど大臣も、職安法は憲法に基づく、こう御発言がありましたが、まさしくそうで、私どもも、これは基本法である、こう思っております。  今回は、その基本法の性格が根本的に変わってくる。同時に、労働者供給事業、つまり労働者派遣事業が全面的に解禁される。このことは、日本におけるこれまでの雇用慣行、こういうものへの大きな、深刻な影響のみにとどまらず、雇用そのものの深刻な荒廃あるいは破壊につながる、私はそういう強い危惧を持っているものであります。  そこで、きょうは、時間も短いので、両法案基本点のみお聞きをしておきたいと思います。  まず、職安法についてでありますが、今回の改正案の最大の問題は、有料職業あっせん事業、これを全面的に自由化する、ここに職安法の改正の骨子があると思うんです。そこで、戦後、職安法が、有料職業あっせん事業、何人もこれをやってはならない、職業紹介の原則は、国が無料で行う、こういうぐあいに、それを原則にしたのはなぜか、まずこの点からお聞きをしたいと思います。
  62. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 現在の職業安定法が制定、施行されましたのは、昭和二十二年でございます。この職安法制定当時以前、すなわち戦前等におきましては、職業紹介については、いわゆる強制労働あるいは中間搾取等の弊害がいろいろと見られたところであります。そういった実情にかんがみまして、職業安定法、昭和二十二年に制定された当時におきましては、特別の技術を要する職業についてのみ例外的に民間の有料職業紹介事業を認めるということにしたわけでございます。  また、我が国が批准をしておりますILOの第九十六号条約におきましても、このような弊害が当初懸念をされまして、民間の有料職業紹介事業については、極力これを抑制する、あるいは漸進的にこれを廃止するというふうな規定になっておりまして、我が国は、極力これを規制するという九十六号条約の第三部を批准しておりまして、そういった条約の規定に基づきまして、有料職業紹介は、一定の部門についてのみこれを認めてきたという経緯でございます。
  63. 大森猛

    大森委員 中間搾取あるいは強制労働が戦前はびこったということなんですが、それでは、なぜ中間搾取をしてはならないのか、強制労働をしてはならないのか、その点でありますけれども、大もとには、私は、やはり憲法に基づく勤労権の保障、個人の意思にそぐわぬ就労を強制してはならない、この点が大もとにあると思うんですね。  これは、職安局編著の「労働法コンメンタール」の中でも、そのことを大いに強調をしているわけですね。つまり、戦前の旧職業紹介法、これが需要供給の調整だけを目的にしているということを排除して、こういうぐあいに言っているんですね。「単に産業に必要な労働力を充足するためにその需要供給の調整を図ることだけを目的とするものでなく、各人にその有する能力に応じて適当な職業に就く機会を与え、職業の安定を図ることを目的とするものであり、あくまで日本国憲法の精神に従い、個人の自由と尊厳を基調とするものである。」  これが新職安法の意義としてコンメンタールは説明をしているわけなんですが、有料職業あっせん事業、これを禁止した大もとの理由は、根本はここにあるんじゃないかということだと思いますが、どうですか。
  64. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 先ほど申し述べましたように、有料職業紹介民間によりますこういった事業についてはいろいろな弊害があった、こういうことにかんがみて現在のような規制がなされているというふうに思っています。
  65. 大森猛

    大森委員 そういう個人の自由と尊厳に基づくものだ、それが根本にあるということをしっかり認識をしていただきたいと思うんです。  有料職業紹介事業、あっせん事業を、今、先ほど来お話があるこういう深刻な雇用情勢のもとで全面自由化したら一体どうなるのか。有料職業あっせん業者は、求職と求人を結合して、結びつけて、初めてもうけ、利益になるわけですね。ですから、利益を上げるためには、当然、求人と求職を結びつけなくちゃならない。求人側の条件に無理やり押し込む、こういうことが当然予想されると思うんです。  現に、これはハローネットワーク構想研究会などの聞き取り調査などでも、民間と公共、両方行った人のさまざまな証言を紹介しておりますけれども、ハローワーク、つまり公共の方はまず求職者の顔色をうかがう姿勢が心強い。民間の業者はいつも企業の顔色をうかがっている、こういう証言がされておりますけれども、まさにそうだと思います。  また、とにかく利益を上げて営業として成り立つためには何が必要か。これは、求人側からは収入があるわけですから、求人側の需要を絶えず満たさなくちゃいけない。そのために必然的に求職者をたくさん集める。そのための広告、いわゆるおとり広告とかおとり募集、あるいは誇大広告、こういうようなものが蔓延することになると思うんです。  この点も、これは労働省自身のごく短い期間の調査、去年の七月の調査でも、労働者募集広告に関する苦情、これは相当数寄せられております。労働条件と実際の労働条件が異なるというような声が随分労働省の方には寄せられているわけですね。そういうことにつけ込んで、おとり広告とかおとり募集などに結局求職者がだまされてしまうというケースが、これはたまたま労働省に寄せられた声だけでもこういうふうにあるわけなんですが、今そういうのが相当数蔓延していると見なくちゃならないと思います。  今回、有料職業紹介事業を自由化した場合、当然こういう事態が予想されるのに、こういう面での規制がほとんど今度の改正案にはないと思うんですね。ですから、労働力の流動化の促進とかいうのは、確かにそうなると思います。しかし、結局、民間のあっせん業者が、公共職安とも競合しなくちゃいけない、他の民間の職業あっせん業者とも競合しなくちゃいけない、ミスマッチであろうがノンミスマッチであろうが、ひたすら結合を急いで利益を得なくてはもう生き残ることができない、そういうことにこれはなると思うんです。  そういう意味で、冒頭申し上げましたように、私は、戦前型の強制労働とかあるいは中間搾取、そういうものにとどまらない、今日、それこそ個人の自由と尊厳を侵すような、そういうものがこういう分野に入り込んでくるということを指摘しなくてはならないと思います。結局、そういう職業選択の自由とかあるいは勤労権の保障を労働者一人一人にしていくということではなくて、現行の職安法のそうした根本思想あるいは性格を根本から変えていくことになるんじゃないかという点は、これはいかがでしょうか。     〔川端委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今般の職業安定法改正によりまして、一部自由化が懸念される業界については、これを紹介対象業務から外しておりますが、その余は基本的に職業紹介の対象というふうに広く認めるということにしているわけであります。  この間、国際的な潮流も大きく変わりました。先ほどのILOの九十六号条約は、一昨年の百八十一号条約に取ってかわられたわけであります。この百八十一号条約の思想は、労働者個人個人の保護強化しながら、職業紹介あるいは派遣事業を、原則これを認めていくというふうに百八十度方向転換したわけでありまして、我が国の政労使も、この百八十一号条約の採択に賛成したわけであります。  もちろん、日本国内におきましても、昭和二十二年当時とこの五十余年間で状況は大きく変わったというふうに見ておりまして、こういった状況の大変な、根本的な変化を背景として、今般の職業安定法改正案を、関係審議会で十分審議をいただいて提案をしたというふうに考えております。  いずれにしましても、労働者保護という観点基本的には欠かすことはできないわけでありまして、今般、秘密の漏えいに対します罰則の新設、こういったこともあわせて整備をしながら、この職業安定法紹介対象業務の原則自由化という方向について提案をして、審議を願っているところでございます。
  67. 大森猛

    大森委員 現在、公共の職安が全国で六百カ所近く、ハローワークがあるわけですね。そういう公共の職安等々を機能強化していわゆるミスマッチの解消とか、そういう面でもそれは大いに可能だということを指摘して、派遣労働関係に移りたいと思います。  今日、派遣労働者の実態問題、最近の新聞、テレビ等でも大きく報道されて、あるいは労働省自身の調査でも、あるいは弁護士さんなどが自発的に行っておられる派遣一一〇番などにも、派遣労働者の実態が、非常に過酷な状況が報告され、共通しております。  先月、東京都労働経済局が発表した派遣労働に関する実態調査一九九八は、これまでの派遣労働に関する調査の中でも、公的機関が実施したものとしては最大規模のものじゃないだろうか。今回の東京都の調査、これは、派遣労働者が公認されて十三年になるわけなんですが、まさにこの十三年間の派遣労働一つの実態、一つの答えが、十三年間の派遣労働を通じてこの調査に示されているんじゃないかと。  先ほど来派遣労働者ニーズ論が言われているわけなんですが、労働者ニーズ論もこの数字だと破綻している。例えば派遣選択理由、一九八八年と一九九八年、十年たっての比較ですが、都合に合わせ働けるが、十年前五六・三%だったのが今回は四〇・六%、大幅に落ち込む。それから一方で、正社員の職がないという点は、十年前は二三・三%、それが今回三七・一%、大きく伸びているわけですね。さらに、今後、派遣を続けたい、これはどうかといいますと、十年前は三五・六%だったのが今回は二九・〇%。正社員で働きたいというのが、十年前は二三・五%だったのが今回は三〇・〇%、逆転して、こちらの方が多数になっているわけですね。  この東京都の調査の中では、派遣労働者に対して、今回の派遣法改正案についてはどう考えるかというアンケート項目もありました。一番多数だったのが、継続勤務が困難で雇用状態が不安定になる、六八・五%、七割近くに達しているわけですね。派遣労働者の権利の保護を優先させるべきだ、三九・一%、四割近い。専門性があいまいになり賃金が安くなる、二四・四%、四人に一人。改正案への否定的な意見が圧倒的に多いわけですね。肯定的な意見は、派遣労働の場所がふえ、好ましい、これはわずか一四・八%しかないわけであります。  そういう意味で、私は、この東京都の調査というのは、派遣労働十三年、その一つの結論だ、答えだ、今後へのサジェスチョンを与えていると思いますけれども、労働大臣はこの東京都の調査をごらんになって、率直な大臣の御見解を伺いたいと思います。
  68. 甘利明

    甘利国務大臣 東京都の労働経済局が最近調査をされた、その中で、過去の調査結果と大分変わってきているじゃないかという御指摘であります。  いろいろな要素があろうかと思います。もちろん派遣労働を肯定的に見ておられる方もそれはちゃんといらっしゃる。それから、いろいろな問題点を指摘する方もいる。それがちょっとふえたじゃないかと。これは、雇用失業情勢が悪化をいたしまして、本来常用雇用正規雇用で働きたいという人で失業者の方が、とりあえずこういう仕事が手っ取り早いし、それしか今は見当たらないから派遣でという方は、以前の調査時点よりはふえているんじゃないかというふうに個人的にちょっと今思いました。そうすると、本来派遣労働で働きたいという人以外の人が派遣労働に参入をしてきますと、それは、本来はこういう形で働きたいんだよという人の数値はふえるんだというふうに思います。  派遣労働には、当然いろいろな利点もあるし、あるいは心配な点もありますから、利点はちゃんと利点として位置づけて、心配な点をどうやってふさいでいくかという、この両面が今回の法改正にはうたってあります。  一番の心配は、常用代替に使われちゃうということで、長期に常用代替として使おうとするときには対応策がちゃんとあるというようにさせていただきましたし、いろいろな不利益取り扱い、不当取り扱いをされる派遣労働者は、申告制度ということで申告をしていただく。それによってさらに不利益な取り扱いを受けるということがないようにちゃんと対処をする等々、問題だとされている点を改善し、引き続き社会ニーズとして必要だとされている点はちゃんと位置づけていくという法改正として取り組んだつもりでございます。  大森先生も大変賢明な方でいらっしゃいますから、よく吟味をしていただくと、きっといずれ賛成をしていただけるかというふうに確信をいたしております。
  69. 大森猛

    大森委員 よく吟味した結果が、先ほど来、民主党の石橋議員も、正規労働者との代替の歯どめの問題、本当に歯どめになるのかという御質問がありましたが、大臣が冒頭に一番言われた点はこの点であるわけなんですが、本当に歯どめになり得るかという点で私ども吟味した結果、これはなり得ないというのが結論であります。  以下、それに関して幾つかお聞きしたいと思うんですが、まず、四十条の二で派遣期間制限を行っているわけなんですが、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、」ということがまず挙げてあるわけなんです。ここで、「その他派遣就業の場所」とはどういうところなのかということでありますけれども、先ほどの職安局長の御答弁では、係とか班とかいう、これは同一業務との関連でありますけれども、お話がありました。これは、就業の場所が変われば、派遣期間の算定は何カ月やっていようがまたゼロになるということに当然なり得ると思うんですが、それが一点。  それと、もう一点は、これから指針等で同一業務、同一の場所についての検討をするかのようなことを言われておるわけですが、現行法の二十六条で既に同一の場所及び同一の業務については示され、労働省の方もそれについての行政解釈をきちんと行っているはずであります。その現在の行政解釈は一体どういうものなのか、文書がありましたら、できれば文書で出していただきたい。この点、どうでしょう。
  70. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今委員指摘のように、現行法の二十六条の一項に「派遣労働者の就業の場所」という概念がありまして、この解釈としましては、従来から、原則として派遣労働者が所属する部署あるいは電話番号等必要な場合に派遣元事業主が当該派遣労働者と連絡がとれる程度の内容であることを必要としているということで、実際には課程度の部署がその対象となっていることが多いというふうに理解をしております。  また、これは場所の問題でありますけれども、特に重要な概念は同一の業務ということではないかと思います。同一の業務について引き続き一年を超えて派遣労働者を受け入れてはならないということにされているわけでございます。この同一の業務は、先ほどの御質問にもございましたが、現行の派遣に関する法令の中でもいろいろな使い方をされている場合があるわけでありまして、同一の業務というだけではかなり漠然とした概念であろうかというふうに思います。  この同一の業務の概念の解釈につきましては、常用代替の防止をするという点、さらには今般派遣労働を広く認めるようになったという点、この両方の要素を勘案しながら解釈、運用していく必要があるというふうに思っておりますが、現在では、この同一の業務の概念につきましては、その組織におきます最小単位、班とか係とかそういったところで行われる業務を同一の業務というふうに解釈をしていきたいと考えているところであります。したがって、仮に隣の机に変わったというふうな場合でも、それが同じ係や班の中の業務であれば、表面上は違った仕事に見えましても、これは同一の業務として規制をされるというふうなことになろうかと考えております。
  71. 大森猛

    大森委員 それは逆に、例えば机が一つ変わっても班が変われば違う業務ということになるわけですね。そうですね。
  72. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 これは、今般の改正法案規定のしぶりでございますが、就業の場所と業務と両方で縛っているわけでありまして、これは、あくまで脱法を避けるということを留意しながら解釈をしなければいけませんが、基本的には場所が変われば違った派遣が受けられるということでございます。
  73. 大森猛

    大森委員 現に日経連なんかも言っているわけですね。派遣期間の問題について、これは場所ごとの同一業務ということじゃありませんが、別の派遣労働者派遣することにより常用雇用代替回避のための期間制限は実質的に無意味になると。実際に、今まで現行法でもそういう形でのケースは幾らでもあると思うのですね。例えば渡邊電気なら渡邊電気という会社に何年も派遣されるということは、この今の規定では十分に可能になると思うのです。そういう意味で、場所ごとの同一業務という点では歯どめにならないんじゃないか。  現在の行政解釈について、これは内部で運用上、当然厳密な規定をしていると思うのですが、それをお出しいただけますか。
  74. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 これは、例えば就業の場所については、先ほど申し上げたふうなことでございます。これは内部の取り扱い要領でありますので、現在はそういったことで運用させていただいております。
  75. 大森猛

    大森委員 したがって、場所ごとの同一業務という点で、同じ会社の中であっても、何年でも同一人物が派遣されるということは、これは可能だということですね。
  76. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 あくまでも就労の場所、あるいは同一の業務といった概念でこの規定によって縛られるわけでありますから、その中で脱法的な行為が行われたという場合には改善命令を出し、あるいは、その命令に従わないときには罰則がかかるというふうに、厳しい措置派遣元について科す。派遣先につきましても、勧告や企業名の公表までいくという措置をとっているわけでありますから、その運用については、法の趣旨を踏まえながら厳しく運用したいと思いますが、また一方で、今般派遣労働を広く認めるということにしたわけでありますから、余り厳格にこれを解しますと、今般広げた趣旨が没却されてしまうという、両方の要請があろうかというふうに思っておりまして、そういったことを勘案しながら、例えば同一の業務については、先ほど申したような解釈、運用としてはどうだろうかというふうに考えているところでございます。
  77. 大森猛

    大森委員 つまり、なぜ私どもこだわってこの点申し上げるかといえば、弊害が予想される。当然対象業務二十六業務を外して原則自由にしていくと弊害が予想されるから、その歯どめとして第一に挙げたのが、大臣が言われたのが、この派遣期間の問題なんです。ところが、派遣期間について言えば、場所ごとの同一業務といっても、同じ事業所の中であっても、A班からB班に移りさえすれば、これはもう派遣期間はないに等しい。これについての明確な反論はないじゃないですか。
  78. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 先ほどから、その企業、組織におきます最小の単位である係や班、こういったもので取り扱っている業務を同一の業務というふうに解釈しようと思っておりますが、その場合に、例えば、余りに組織が類似の業務が多くて幾つかの班に便宜的に分けている、管理上これを便宜的に分けているにすぎないというふうなものについては、その実態を見て同一の業務かどうかを判断したいというふうに思っております。
  79. 大森猛

    大森委員 そういう場所ごとの同一業務と今申し上げたのですが、仮に、今までワープロを打つ仕事をしていた、それが今度はファイリングの仕事も加わった、ある派遣労働者が、きのうまではワープロだけの仕事をしていた、ファイリングの仕事もきょうからは加わったという場合も、これは同一業務でなくなるんじゃないですか。
  80. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今委員おっしゃった後者の点は、ワープロの仕事のほかに……(大森委員「ファイリング。何でもいいのですが、他の業務も加わった場合」と呼ぶ)先ほどから申し上げておりますように、一つの係で例えば庶務的な仕事もすればワープロの仕事もしているというふうなときに、派遣労働者がワープロの仕事派遣をされたけれども、一年たったので隣の人がやっていた庶務の仕事をする、これは十分あり得ることですが、こういったものは法の逸脱として禁止をするというふうに考えております。
  81. 大森猛

    大森委員 今の質問の趣旨は、六カ月ワープロの仕事をやってきた、その六カ月目から今度はファイリングの仕事も加わったという場合、これは同一業務じゃないと思うのです。そういうことになると思うのですね。さらに、仮にワープロだけで派遣労働者が一年間やった、しかし、その場合でも、この改正法案の条文どおりいきますと、新たに常用労働者を雇い入れる意思がない限りはその派遣労働者雇用するということにはならないわけですね。
  82. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 雇用に関しましては、法文上は努力義務でありますから、仮に一年を超えて使用を続けたというときには、かつ、その部署について労働者を採用したいというときには優先的に採用するように努力をしてくださいという趣旨の規定でございます。
  83. 大森猛

    大森委員 今申し上げたのは、四十条の三です。「派遣労働者雇用」というところで、「場所ごとの同一の業務について」云々とあるわけなんですが、「一年間が経過した以後労働者を雇い入れようとするときは、」ということで、派遣先が新たに雇用する意思がない限りは、一年間勤務した、派遣された労働者雇用されるということにはならないということですね。
  84. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 一年以上一つのポストについて派遣労働者を使用し、一年がたったので、事業主がそのポストについてだれか別の人を採用して、いわば常用労働者を雇おうというときには、一年間継続して使用した派遣労働者を優先的に採用するようにしてください、こういうことでございます。したがいまして、そのポストについて派遣先事業主が新たに人を雇う意思がないというときには、もちろん適用になりません。
  85. 大森猛

    大森委員 したがって、歯どめとして設けられた派遣期間及び派遣労働者雇用、この二つの問題はハードルが非常に高い。場所ごとの同一の業務、幾らでも抜け道がある。あるいは、派遣先に雇用をする意思がなければだめだというようなこととか、さらに、先ほどの答弁にもありましたけれども、努力義務になっている。これは強行規定になっていないわけですね。したがって、一年間派遣労働者が勤務して、正社員でやりたいと思っても、その夢はなかなか実現しないんじゃないか。  きのうの朝日新聞が、この派遣法の社説を出しておりますが、一番の問題点の一つとして、そういう一年間勤めた派遣労働者が本当にその派遣先に雇用される道は開かれないかというのを提起していますけれども、まさにこれは、今の八十六万に達する多くの派遣労働者の非常に切実な要望であると思うのです。  私ども先般対案も出したわけなんですが、その中では、やはりこれは、一年間勤めた、一年間派遣された労働者はその派遣先に自動的に、本人の意思があれば、希望があれば雇用されるということが非常に望ましいんじゃないか。このことは、また今後の議論の中で大いにやっていきたいと思います。  時間が参りましたので、今回の職安法、冒頭にも申し上げましたように、これは憲法に基づく基本法である、それと、今回の派遣法の全面自由化によって、私は、日本の雇用の現場の荒廃が進むのじゃないかと強い懸念を持っている、そういう問題でありますから、徹底した審議をぜひやっていただきたいということを委員長に強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  86. 岩田順介

    岩田委員長 次に、濱田健一君。
  87. 濱田健一

    濱田(健)委員 大事な法律案でございますので、相当な時間をかけての論議がなされるものということで、本日は、わずか三十分ですので、概括的な質問をさせていただきたいと思います。  ちょっと質問にはなかったのですが、局長に質問というよりも思いということでお尋ねしたいのですけれども、たしか九五年だったと思うのですけれども、日経連が、二十一世紀の日本型といいますか、経営者の側からこうあってほしいなという日本の雇用の形、長期能力蓄積型という雇用のあり方と、専門能力活用型という雇用のあり方と、柔軟雇用型という三つのカテゴリーに大まかに分けた雇いぶりといいますか、働き方というのを出しておられるようですけれども、局長は、この派遣労働というのは、このカテゴリーの中であればどの部類に入るとお考えでしょうか。
  88. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 派遣労働に関します需要を企業側から見るといたしますと、これはやはり短期の即戦力になる労働者雇用しようとする、そういった企業の要望もあろうかというふうに思います。
  89. 濱田健一

    濱田(健)委員 それは、この法律で短期、一時的、臨時的という言葉が言われておりますので、そうだと思うのですが、私が申し上げた、いわゆる日本型の長期雇用という形である長期能力蓄積型という部分と、今ある二十六業種に当たるのかどうか、ちょっと違うとは思うのですが、専門能力を活用して一定程度の期間はその企業のいろいろなものを開発するために雇う、有期雇用、有期契約みたいな形、またその人もどこかで新たな能力を発揮する。  今局長が答えてもらった、この法律でよく使われている臨時的、一時的なということであると、この日経連が言っている新しい時代の経営者としての雇用のあり方の中では、やはり柔軟雇用型という部類に入るだろうなと私は思っているのです。  柔軟雇用型というのをもう少し具体的に言うと、パートであったりアルバイトであったりというところと、これは私の勝手な位置づけですから、そうじゃないと反論していただいて結構なんですけれども、いつでも取っかえることが可能であろうと言われる雇用形態の中に位置づけられてしまうのではないのかな、これはもう少し論議しなくちゃならないと思うのですけれども、私はそう思っているのです。  それで、この改正案の中でやはり一番心配されているのが、常用雇用と取りかえられてしまうのではないだろうかということでございまして、今大森委員の方からも、少し時間をかけて、同一事業所、同一業務、この派遣期間の問題が触れられたと思うわけでございます。  余りやりとりはしたくございませんが、もう一回具体的にお聞きしたいのですが、同一事業所という部分は、課より小さく、係や班といったような単位でくくりたいというところでございますね。
  90. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 これは、同一の業務という規定の解釈として、そういう解釈で臨みたいというふうに考えております。
  91. 濱田健一

    濱田(健)委員 では、業務でも構いません。  同一事業所といったときには、どのような範囲で考えればよろしいのでしょうか。
  92. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 事業所という概念は、労働関係のいろいろな法令にも出てまいりますが、ある程度の組織的一体性を持って、そこである程度の人事労務管理等も独立して行い得る、こういったものを指すものではないかというふうに考えています。
  93. 濱田健一

    濱田(健)委員 わかりました。ある程度の大きさというのがそこでは言われているというふうに、現時点では理解をしておきたいと思います。  業務に関してであれば、先ほどもありましたけれども、班や係というところで、例えば三つの班がある。三人の人が派遣で来ている。難しくならないように、AさんもBさんもCさんも別な班で同じワープロを打つという派遣仕事をしていた。それに付随して、ワープロにプラスアルファ、違った業務がついている。そういう場合には、班がかわると、当然一年たった次の年も、新しい改正法案でいくと、違った班だけれども同一の事業所といいますか、働く場所といいますか、それに近いところでは働くことが可能だというふうに解釈してよろしいのでしょうか。
  94. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 一つの係とか班というふうに限定した場合に、その中には、例えば職種というような概念で見た場合には、いろいろな職種がある場合があると思います。  例えば、経理の事務をしている者とワープロを打っている方が一緒に一つの班にいるというふうなことは十分あり得るわけでありまして、その一つの班の中で、ワープロの仕事が終わったので、一年終えたところでは経理の仕事に移るといったものは、同一の業務としてそれは脱法的な行為になるというふうに思います。  また、先ほどちょっと申しましたが、班を超えましても、それは単に労務管理上の便宜性、例えば、大変大きくなったので特定の管理者が管理をする範囲を超えるので、班を今まで三つだったものを五つにふやそうというところで、ある班にいた人が同じような仕事を別のところに行ってやるというふうに、便宜組織を分けたようなものについては同一の業務というふうに解釈をすべきではないかと思っています。
  95. 濱田健一

    濱田(健)委員 きょうはこれ以上申し上げません。  よく使われる臨時的、一時的な業務に携わる正規雇用に影響を及ぼさない仕事派遣される仕事ということでございますが、臨時的、一時的な雇用というのは、今回の改正案のどの条文にそれが書かれているのでしょうか。
  96. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 臨時的、一時的という言葉は、条文には出てきません。  これは、今回拡充する派遣労働の対象期間を一年以内と限定したことを便宜そう呼んでいるものでございます。したがいまして、一年以内の業務ということと同義だというふうに理解しております。
  97. 濱田健一

    濱田(健)委員 そこで読み取ってほしいというところですね。きょうはそれでいいでしょう。  それで、働く側も雇い入れる側も、いろいろな働きぶりのニーズの中で変わってきて、短期間いろいろな仕事をしてまたほかの仕事にも移りたいというようなニーズがあるんだということでございますが、これも先ほど大森委員が出されました、東京都労働経済局の派遣労働に関する、企業側が、事業所が考えている派遣利用のメリット、長所、この考え方の推移、役所の方も資料をお持ちだと思うんです。  いろいろな要因があるかとは思うんですが、これは二つまで回答できますので足し算して一〇〇%になるわけじゃないんですけれども、一九八八年に一時的欠員の補充が五二・二%あったのが、一九九八年には四六・〇%に減っているんですね。約六%ぐらい減っている。これは誤差だと言えるのかもしれませんが、数字では減っております。一時的欠員、一時的にそういう仕事をする人が足りなくなったから一時的、臨時的に雇おうというところが長所だという形で考え派遣労働者を雇うという考え方が六%減っている。  逆に、自社従業員数の抑制というところがメリットだ、長所だと言っている部分は、一九八八年の一八・二%から三〇・九%に、約一二%上がっている。賃金や福利厚生費の減少につながるからメリットだと言っているのは、一九八八年の一一・二%から二四・七%、二倍以上にふえている。  現行二十六業種の、専門的な知識、技能、そういうことで、すぐには養成できないから一時的にそういう専門的な人たちを派遣労働にかりようという部分でありましょう項目の養成困難な労働力確保という部分も、三三・四%から二〇・六%に減っている。  これは東京都だけの調査ですので、全国そうだとは言えないかもしれませんが、この数字を見て、雇う側が、臨時的、一時的なこの派遣労働メリット感を本当に持っているのか。今一番心配されている、常用雇用を減少させないという歯どめをきかせてあるから、そのことが十分、労働省の言うように歯どめになるんだということにつながるのかちょっと心配なものですからこの数字を出させていただきましたけれども、局長、今申し上げた数字を見て、考えて、どのような御感想をお持ちでしょうか。
  98. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 現在企業を取り巻く環境も大変厳しいものがありまして、企業としては、できるだけ合理化あるいは経営の効率化に努めよう、そういう努力をされるということはまた当然のことであろうと思います。そういった意味では、人件費等の固定経費についてもできるだけ合理化を図ろう、そういった企業努力をされるのはむしろ当然であろうというふうに思います。  ただ、今般の派遣法改正は、そういった企業の要望に全面的にこたえようというものではもちろんございません。労働者保護強化しておりますし、あくまでも一年間の、先ほどの言葉ですけれども臨時的、一時的な派遣についての道を開くということでございますから、企業が自社の従業員を減らしましてその代替として派遣労働者を雇うということは、これは常用労働としてはその道はふさがれているわけでありまして、今般さらに育成をしたいという派遣労働は、あくまで一年以内の臨時的、一時的な派遣であって、そこにおきましては、その分野において労使のニーズが一致する、そういったものについて、これの育成、発展を図ろうといった趣旨のものでございまして、先ほど委員おっしゃいましたような、企業の要望に全面的にこたえるものとして提案をしているわけではございません。
  99. 濱田健一

    濱田(健)委員 申しわけありません。大臣にまずお聞きする予定にしていたんですが、少し局長とやりとりをさせていただきました。  今、労働省派遣業務の原則自由化という形に踏み切る大義名分といいますか、それは、正規雇用に取ってかわるものではない、いろいろな歯どめをしているんだというところを強調しておられますけれども、現場的に見ると、どう見てもこの自由化が、かつてない長期の不況下、そして企業の経営状況の悪化、それに正比例する形で、正社員のリストラ誘因として働きかねないというのを、現場で働いておられる皆さん方の実感した言葉で私たちは聞くわけでございます。  経企庁が景気の底入れという観測を言っておられますけれども、そういう中で、当然、企業にとっては大胆なコストの削減というのが至上命題になってくるというふうに思うわけでございまして、一年という期間制限を仮に設けたとしても、先ほど大森委員がしつこく追及をされました中身や私が冒頭で申し上げましたような、本当にそうなのかな、同じ職場の中で派遣という形でたらい回しされるのではないかなという危惧感を払拭できない中では、この新しい派遣法というものがやはり常用雇用を脅かす基礎になっていくということをどうしても考えざるを得ないわけです。そして、そのこと自体が、今政府が一生懸命努力をしておられる景気浮揚策、景気対策にも、労働者の消費を抑制する、萎縮させる、そういう逆効果につながっていくのではないかということを考えるわけでございます。  本会議でも大臣質問させていただいたわけでございますけれども、正規雇用の代替機能としてはこの新しい改正案は作用しないという、その明確な根拠といいますか、大臣の決意といいますか、その辺をお聞かせいただければ幸いでございます。
  100. 甘利明

    甘利国務大臣 今回の法改正に対して一番いただいております懸念は、常用代替になってしまって、本来の正規雇用の分野が侵食をされてしまう、それが雇用不安を起こして、逆に、景気が立ち上がる大事なときにむしろマイナスに働くのではないかという御指摘をいただいているところであります。  これは、先ほど来局長の方から答弁をさせていただいておりますとおり、常用代替にならないような期間制限、そして業務の範囲も絞って、従わないときにはペナルティーも含めて対処をしていくということにさせていただいているところであります。  脱法行為まがいのこともあるじゃないか、形だけ同一業務ではなくて実態は同一業務だというような抜け道もありはしないか、そういう点に関しましても、事実上、実態上同一業務の場合についてはもちろんきちんと指導をしていくつもりでございますし、懸念をされる部分が極力払拭をされるように取り組んでいきたいというふうに考えております。  それから、世の中にはいろいろな働き方のニーズがあっていいと思うのでありまして、それが働く方も自由に選択をできる。そして働く方にとっての不利な点だけ極力解消していくような法的措置あるいは行政指導をしていくということで対処していくべきであろうと思いますし、本来ならば雇用が生まれないところに、一定期間雇用であるならば、企業の戦略として戦力補充をして難局を乗り切っていくという選択も当然企業側にはあるかと思います。ですから、むしろ今のこの厳しい状況を乗り切っていくための戦力補充として使用することも当然可能でありますし、景気が立ち上がってきて、引き続き戦力として欲しい場合にそれが正規雇用に変わっていくというような努力措置ということもあわせて、いろいろ柔軟に対応していけるのではないかというふうに考えております。
  101. 濱田健一

    濱田(健)委員 先ほどから出ている疑問といいますか危うい点を解消するには、一年たって同じ課、同じ係、そういうところで持ち回れるような可能性を残すのであれば、やはりしっかりと雇い入れるという仕組みを何らかつくっていく方が企業にとってもメリットがあるのではないかなと私は思います。一回やられて途中で中断いたしましたインターンシップ制度みたいなものを、派遣元じゃなくて派遣先の方に法的に何らか位置づけるというようなことなんかも検討していけば、一年という形でしか派遣は雇えないけれども、その一年の中で、この人はよく働いてくれた、次すぐ雇おうというようなインセンティブにもつながりそうな気がしますので、お答えは結構でございますけれども、そういう点も絡んだ方法というものをぜひ検討していただきたいというふうに思うわけでございます。  そういう意味でいうと、ILO百八十一号条約の批准に伴って職安法も労働者派遣法も見直すということで、理由の一つのようでございますけれども、ILOに聞くと、いや、そういうことはない、職安法の見直しだけでも批准はできるという言葉も聞いております。  まだきょう始まったばかりの質疑でございますけれども、この過去最悪の水準を更新し続けている失業情勢等を踏まえているならば、政府の原案に固執をされずに、こういう言い方というのはまだ早いのかもしれませんが、労働者の懸念が十分解消される中身にこの改正案の中身を高めていくという姿勢が役所の方に求められていると思うんですが、局長、どうでしょうか。
  102. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今般の改正案は、従来からいろいろと派遣労働について指摘をされておりました問題点にこたえつつ、特に労働者保護という観点を強調しつつ派遣労働の対象を広げていこうということで、現下の情勢にも十分適応した内容になっていると私どもは考えております。  これは先ほども申し上げたことでございますが、現在、日本において職がない、求人がないわけではなくて、五百万もの新規求人が安定所に来るわけですが、いろいろな意味でのミスマッチング等の要素が大きくなってきている。そういった中には、なかなかこういったチャンネルがないので働きたくても働けない、あるいは企業の方も採用したいけれども採用できない、こういったものも含まれておるかと思いまして、今般の派遣法や職安法の改正失業問題を一気に大きく解決するというようなものではもちろんないと思いますが、少なくともミスマッチの解消に役立つ要素を持っている点は否定できないと思います。  そういった意味でも、現下の失業情勢の中だからこそ成立をさせていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  103. 濱田健一

    濱田(健)委員 本会議総理への質問でも、今私が申し上げました部分、現下の状況の中でこの法律案改正することが適宜性を持っているのかというふうに質問をしました。総理は、「現下の厳しい雇用失業情勢のもとで、労使双方の多様なニーズに対応し、適切な就業機会の拡大に資する」という答弁をされました。そして、甘利労働大臣は、この改正案について、「長期雇用メリットを生かしつつ、産業構造等が変化する中で、活力ある経済社会を維持する観点から、どのような雇用システムが望ましいか、労使間の十分な話し合いで決定されることが重要ではないか」と考えている、こういうふうにも答えておられます。  私は、きょうの質疑を通して、いろいろ出てまいりました契約の途中解除の問題や賃金未払いの問題を含めて、この派遣法そのものが九六年に改正されて、いろいろな改正の中身はあるわけでございますけれども、やはり先ほどの、局長の答弁だったかわかりませんが、労働者の側だけの歯どめ策じゃなくて、使う側、使われる側両方メリットを持つように、それは当然のことだと思うんですけれども、やはり働く側が、使われる側、派遣元、派遣先を含めて、平等、対等にきちっとその条件をつくり上げることができにくい状況がまだまだ介在している。  改正法案の中にもそのことが、これから論議していくといろいろな形で出てくる状況の中では、やはり、労働者保護という形でこの派遣法というのが最初つくられたときに、今までなかったけれども、新しい働きぶりがありますので、働きぶりとして派遣法をつくります、これは労働者保護のためにつくるんですよとうたわれた精神をしっかり生かしていくような中身に仕上げていかなければならないというふうに思っておりますので、次回以降、またいろいろな角度から質問させていただきたいというふうに思っております。  時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。      ――――◇―――――
  104. 岩田順介

    岩田委員長 次に、大森猛君外一名提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取します。大森猛君。     ―――――――――――――  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  105. 大森猛

    大森議員 提案者を代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業改正案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  労働者派遣事業は、本来、職業安定法四十四条によって禁止されている労働者供給事業であります。これが十三年前、専門的かつ臨時的な業務に限り、労働大臣の許認可を経て、労働者派遣事業という名で解禁されたものであります。  私ども日本共産党は、派遣事業が公認されるときから、これは労働基準法が禁じる中間搾取を容認するものであり、労働者の団結権を奪い、正規雇用に取ってかわって、極めて不安定かつ無権利な労働者を大量に生み出さざるを得ないことを指摘したのであります。  その結果はどうか。労働省の調査でも派遣労働者の数は八十六万人に達し、この周辺にはその数倍にも達する違法な派遣派遣類似の労働者の群れをつくり出しました。現在の深刻な不況のもとでは、丸ごと従業員を派遣会社に転籍させ、そこから派遣労働者として派遣させて使うなど、リストラの手段として露骨に使う事例もあらわれています。  これらの労働者の置かれた状態を見てみますと、労働省の調査でも、民間労働組合や有志の調査、電話相談でも、ほとんど共通して、契約の一方的中途解除、賃金未払い、社会保険、労働保険への未加入、プライバシーの侵害、暴露、個人情報の大量の横流しなど、いわゆる常用労働者においてはほとんど見られない権利侵害が蔓延しているのであります。  一昨年採択されましたILO百八十一号条約及びこれを補完する百八十八号勧告は、こうした無権利状態からの労働者保護を強く求めるものでありました。  本改正案は、ILO条約及び勧告の要請を満たし、我が国の派遣労働者の無権利状態を是正するために、事業法としての性格を強く持つ現行法を文字どおり派遣労働者保護法に改正しようというものであります。  その原則は、第一に、政府案とは違って、あくまで派遣労働は職安法四十四条の例外であり、直接雇用を原則とすること、第二に、現行派遣労働の範囲を現状以上に広げず、縮小の方向で検討すること、そして第三に、派遣労働者保護措置を抜本的に拡充することとしております。  次に、改正案内容の概要を御説明申し上げます。  第一に、法律の名称及び目的に派遣労働者保護を明確にうたいました。  第二に、正規雇用の代替を許さないために、特定企業へ専ら派遣する場合の定義を厳格にした上で、禁止することといたしました。また、人員削減を行った事業場には一年間の派遣受け入れの制限を定めました。  第三に、直接雇用原則を明確にするために、同じ派遣労働者を一年以上使用した場合や、直接面接して採用した場合、さらに派遣会社に転籍させて派遣労働者として受け入れた場合には、いずれも派遣先に直接雇用義務づけることといたしました。  第四に、派遣労働者保護を図るための具体的な施策を定めました。  その主なものを申し上げますと、派遣契約の中途解除を理由とした派遣元との労働契約解除の禁止、賃金や福利厚生施設の利用など派遣労働者との均等待遇の確保社会保険、雇用保険加入について派遣先の連帯責任の明確化、個人情報の収集制限、開示及び是正請求権の付与など個人情報保護措置の具体化、派遣先に団交応諾を義務づけるなど労働基本権確立の措置、時間外協定の派遣先での締結、セクハラについての派遣先責任の明確化などであります。これらの措置を実効あるものにするため、本法に基づく労働大臣への申告権を派遣労働者及びその他の労働者に保障することとしております。  第五に、派遣の中でも弊害の多いいわゆる登録型については、本法施行後三年の経過を見て、廃止することとしております。  第六に、製造業の現場で蔓延している請負に名をかりた脱法的な派遣を禁止するために、派遣と請負の区分を法律上明確にすることといたしました。  なお、この法律は平成十二年一月一日から施行することとしております。  以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明を申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  106. 岩田順介

    岩田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  107. 岩田順介

    岩田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  第百四十三回国会内閣提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出職業安定法等の一部を改正する法律案及び大森猛君外一名提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 岩田順介

    岩田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十五分散会