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1999-02-10 第145回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前十時一分開議   出席委員    委員長 岩田 順介君    理事 荒井 広幸君 理事 能勢 和子君    理事 森  英介君 理事 柳本 卓治君    理事 石橋 大吉君 理事 川端 達夫君    理事 前田  正君 理事 青山  丘君       井奥 貞雄君    石川 要三君       大村 秀章君    熊谷 市雄君       小林 興起君    坂本 剛二君       白川 勝彦君    園田 修光君       棚橋 泰文君    長勢 甚遠君       保利 耕輔君    城島 正光君       中桐 伸五君    松本 惟子君       河上 覃雄君    桝屋 敬悟君       岩浅 嘉仁君    大森  猛君       寺前  巖君    畠山健治郎君       土屋 品子君  出席国務大臣         労働大臣    甘利  明君  出席政府委員         内閣審議官兼中         央省庁等改革推         進本部事務局次         長       松田 隆利君         内閣審議官   鈴木 正明君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         社会保険庁次長 宮島  彰君         労働政務次官  小山 孝雄君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働大臣官房政         策調査部長   坂本 哲也君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省女性局長 藤井 龍子君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         労働省職業能力         開発局長    日比  徹君  委員外出席者         労働委員会専門         員       渡辺 貞好君 委員の異動 二月十日         辞任         補欠選任   田中 昭一君     園田 修光君   藤波 孝生君     熊谷 市雄君   河上 覃雄君     桝屋 敬悟君 同日         辞任         補欠選任   熊谷 市雄君     藤波 孝生君   園田 修光君     田中 昭一君   桝屋 敬悟君     河上 覃雄君 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 岩田順介

    岩田委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大村秀章君。
  3. 大村秀章

    大村委員 皆さん、おはようございます。大村秀章でございます。  それでは、一九九九年、平成十一年の労働委員会、ある意味ではトップバッターとして質問をさせていただきたいと存じます。労働大臣所信に対する御質問をさせていただきます。  現下の国政の最大の課題、今予算委員会等中心に御議論をいただいておるわけでありますが、まさしくことしは景気回復そして経済活性化ということであるわけでありまして、小渕総理におかれましても、平成十一年を経済再生元年ということで位置づけをいたしまして、日本経済再生に全力で取り組む、そういう決意を表明されたところでございます。  総理施政方針演説におかれましても、必要な公共事業でありますとか中小企業対策、そしてまた当委員会にも関係をいたします雇用対策科学技術の振興といったようなことを重点的に配慮いたしまして、九兆円を超える減税とあわせまして積極型の予算を組んで、今御議論、御審議をお願いしておるわけでありまして、平成十一年度には我が国経済実質成長率を〇・五%まで回復するということを表明されたところでございます。  こうした中で、現在の景気でありますとか日本経済の現況を見ますと、金融不安でありますとか雇用不安そしてまた年金などの将来の生活設計への不安、そうしたことによりまして、家計や企業、そうしたところのいわゆるマインドが冷え込んで、そのことから、消費でありますとか設備投資そしてまた住宅投資といったような最終需要が減少している、そのことがまた景気の火を冷やす、そういった悪循環といいますか、そういった状況になっているわけでございます。  そういう中で私が思うのは、日本国民自体は、貯蓄率が非常に高いということから見ましても、決してお金を持っていないわけではないわけでありまして、大臣もよく御存じのように、昨年十月に軽自動車規格改定をされました。そのことで軽自動車大変売れ行きがいいわけでございます。ことし一月は、去年が悪かったというのもありまして、一月の対前年同月比で五〇・九%の伸びということでございまして、要は、マインドが好転したりいいものが出れば必ず消費に結びつくということをこれもあらわしているわけだと思うわけでありまして、そうしたこともぜひ期待をしていきたいと思うわけであります。  先ほど申し上げました金融不安につきましては、これは昨年の秋の金融再生関連法の制定、それから破綻した金融機関整理のための予算でありますとか金融早期健全化のための資本注入、そうした予算をどんと用意したわけでありますし、また、柳沢大臣中心に、金融機関への資本注入といったことも今急がれておるわけでございまして、そういうことで、おおむね金融不安というのはほぼこれで、底割れするというようなことの不安は払拭をされたかなと思うわけであります。  そしてまた、年金制度につきましても、基礎年金への国庫負担率を引き上げるということを明示したり、また確定拠出型の年金、こうした制度も導入をする、そうしたことから青写真を示していけば、今何となしに国民の間に広がっている年金制度に対する何か不信感不安感、こうしたものも払拭ができると私は思っております。  そうなりますと、残りますといいますか、大変重要なのが雇用の不安の払拭ということでございまして、まさしく、小渕総理施政方針演説で述べられたように、また甘利大臣所信表明演説で述べられたように、新世紀に向けた繁栄へのかけ橋、これを揺るぎないものにするために雇用創出、安定といったものを築いていかなければならないと思うわけでございます。そういう意味では労働行政そして当委員会仕事が、ことし一年、これまでにないほど大変重要ではないかと思っております。この雇用安心が確保できれば、そこから日本経済の歯車がうまく回り出して、経済再生景気回復といったことに必ず結びついていくというふうに私は確信をするものでございます。  そこで、現下雇用失業情勢について、まず率直に大臣の御所見をお伺いできればと思っております。  昨年十二月の完全失業率は四・三%ということでございまして、十一月より〇・一%下がったわけでありますが、これはどうも女性の方を中心に、もう実際の就職といいますか転職といいますか、そうしたことをあきらめたということから下がったということも言われておるわけであります。実際問題、実際に雇用されておられる方々雇用者数というのは十一カ月連続で減っておるわけでございまして、そういう意味では、厳しさはより一層増しておるというふうにも思うわけでございます。  そういう意味で、今のこの雇用失業情勢、これにつきまして大臣の率直な御見解をお伺いできればと思っております。
  4. 甘利明

    甘利国務大臣 大村先生指摘のとおりの中身でございまして、表面上の数字は若干改善をしておりますが、内容は正直言ってよくないわけであります。さらに、失業率というのは景気回復にタイムラグを持って後を追ってくるという性格がありますから、引き続き厳しい状況が予測をされると思っております。  表面上の数字に踊らされることなく、気を引き締めて取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
  5. 大村秀章

    大村委員 そこで、昨年十一月の政府・自民党におきまして策定をいたしました緊急経済対策でございます。  その中で、百万人規模雇用創出そしてまた安定を目指した雇用活性化総合プランというものを策定されたわけでございまして、事業規模が大体一兆円ぐらいということで、新雇用創出したり、また新たな臨時的な雇用、そうしたものを掘り起こしたり、あと高齢者対策とか障害者対策、そういったものをきめ細かにつくられておられるわけでございますが、実際に、補正予算そしてまた今御審議いただいておる予算の中に組み込まれておるわけでありまして、まだまだ始まったばかり、緒についたばかりだと思うわけでありますが、ぜひ、実施は速やかに円滑に行っていただければと思うわけであります。  それにつきまして、全体の進捗状況というのはまだちょっと早いのかもしれませんが、それについての今の状況、そしてまた、むしろこの雇用活性化総合プランに対する大臣取り組みに対する決意、これもあわせてお伺いできればというふうに思います。
  6. 甘利明

    甘利国務大臣 今回の雇用対策は、量、質ともに過去最大規模だというふうに思っております。  御指摘のとおり、金額でいいますと一兆円規模でありますから、これはもちろん史上最高額でありますし、今まで取り組んでこなかったようなところで効果的な策について思い切って組み込んでいこうということをさせていただきました。  例えば、今まではどちらかというと、雇用対策といいますと維持をしていく政策の範囲でありましたけれども、雇用の場がなくなりつつあるのであるならば新たにつくっていこうということで、雇用創出するという百万人規模雇用創出、安定、その創出というところに踏み込んでいきました。  もちろん、これは産業政策にかかわる部分でありますから、本来業務通産省でありますし、政府全体として取り組んでいくということで、通産省とも連携をとって、失業者個人事業あるいは中小企業をつくっていくときの支援措置労働省からいえば人的な支援措置であり、通産省からいえば金融税制産業政策上の支援措置を合わせわざでやるということに踏み込ませていただきました。  さらには、企業のリストラクチャリングを進める中で、整理解雇をできるだけなくして少なくしていこう、あるいは、どうしても雇用を外に出すときに、失業という過程を経ずにすぐに再就職につながるような支援措置をしていこう、労働移動の際にそれをきちんとフォローしていくような仕組みをつくらせていただきました。あるいは、セーフティーネットということで基金を積んで、二重三重の網をしいて安心感を与えよう。あるいは、職業訓練でいいますと、従来はブルーカラーが中心でありましたけれども、現状の雇用失業情勢にかんがみて、ホワイトカラーに対する職業訓練体制をしっかりとしいていこう、これは民間の機関の活用も組み入れて対応をしたというところであります。  その他、中高年の失業に対しましては、相談事業からカウンセリング、そして実践体験まで含めて、システマチックに取り組んでいくというようなこともさせていただきました。  もちろん、障害者方々につきまして、トライアル雇用を通じて、積極的に事業主団体連携をとっていくということもさせていただいたわけでありまして、かなり機動的に、今までなかった策を含めて組ませていただいたつもりでございます。これはまだ組んだばかりでございますので具体的な事例というのは挙がってきているわけではありませんけれども、できるだけ機動的に、速やかに対応できるようにさせていただきたいというふうに考えております。
  7. 大村秀章

    大村委員 ぜひ御期待を申し上げるわけであります。  もうすぐ大臣出かけられると思いますが最後に一点だけお伺いできると思うのですが、先ほど大臣も、新たに雇用をつくっていく、雇用創出していくということにお触れになりました。そのことは大変重要だと思うわけでありまして、これはまさしくある意味産業分野にかかわるものであって、通産省との連携というのは大変重要になると思うわけであります。まさしく大臣は、自民党きっての産業政策の、オーソリティーと言ったらあれでありますが、第一人者であるわけでありまして、新産業創出、あわせて雇用創出ということにつきまして、産業政策労働政策の融合というか連携というか、そのことがこれから、この一年、二年というのは本当に大事だなと思うわけであります。  その新たな産業創出する政策連携、そして、ある意味労働者労働移動を円滑にしていく労働行政、その有機的な連携についての大臣の御所見をぜひお伺いしたいと思います。
  8. 甘利明

    甘利国務大臣 打ち合わせしたわけではありませんが、過分なる御評価をいただきましてありがとうございます。  先生指摘の点がまさに大事なところでございます。雇用活性化総合プランの中に新事業の創造の分野を組み込んでおります。この分野で六万人とか七万人を新たにつくり出していこうということもありますが、実は、私が期待をしておりますし閣議でも申し上げておりますのは、通産省中心となりまして産業再生計画というプランが具体的に今進行しているわけであります。  これは、将来雇用の受け皿となり得る、新しい時代を担う産業分野、十五分野ございます、例えば情報通信とか介護福祉であるとか環境分野であるとか、あるいは新製造技術とか、いろいろ将来を担う部分がありまして、これを前倒しして規制緩和をし、集中投資をしていこうということが産業再生計画中心でありますけれども、これを迅速に行うことによって雇用創出効果がかなり出てくるわけでありまして、百万人の雇用創出、安定、この安定部分安定部分としておいて、創出部分ネット百万人にできるだけ早く到達をしたい。それは、その産業再生計画をできるだけ早く具体的な形にしてもらいたいと思うわけでございます。  これは通産省中心になり、労働省も加わり、政府全体として取り組んでいくわけでありますから、それをできるだけ早く具体的な形にしていきたいというふうに思っておりまして、産業政策雇用政策一体となって取り組んでいく、あるいは政府全体が雇用創出一体となって取り組んでいくということをやることを宣言していることであるというふうに思っております。
  9. 大村秀章

    大村委員 大臣、ありがとうございました。  それでは、先ほど大臣お触れになりましたが、この雇用活性化総合プランの中には障害者対策というものも含まれておるわけでございまして、そのことにつきましてお伺いをしたいと思います。  こうした厳しい経済状況、不景気になりますと、やはりその影響を大変受けるのが障害を持ちながら働いておられる方々であるわけでありまして、障害者健常者とがともに、一緒になって活動できる社会、バリアフリー、そうした社会をつくっていくということが大変重要だと私は思っておるわけでありまして、やる気と能力のある方々に働く場を提供して、そして、働くことの喜びを持っていただくということが大変大事だなと思うわけでございます。  そういう観点から、私の地元にも、自動車のメーターをつくっているデンソー太陽とか、あとクリーニング屋さんでイズミヤさん、そんな障害者の方をたくさん雇っておられる会社も現にありまして、そういう方々が、全国団体として全国重度障害者雇用事業所協会といったものをおつくりになって、そしてお互い連絡をとりながら、障害者雇用を積極的にやっていこう、普及啓蒙をしていこうという活動をやっておられるわけであります。  私自身、この団体税制面で後押しすべきだということで、これまでも税制当局を初め関係者にも強く働きかけを行ってまいりました。特に、今回、この雇用活性化総合プラン障害者雇用対策が盛り込まれている、重要な柱として位置づけられているということは大変重要なことでございまして、ぜひこのことを推進していただきたいと思うわけであります。  きょうは、小山労働政務次官、まさしく副大臣としてお越しをいただいておるわけでございまして、この点につきましての御所見、そしてまた御見解推進方についての決意をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  10. 小山孝雄

    小山政府委員 労働大臣参議院会議出席の間、かわって答弁をお許しをいただきます。  ただいま大村委員指摘障害者雇用、大変大事な点でございます。昨年の九月、全国障害者雇用促進月間というのを労働省ではずっと行っております。全国大会が埼玉県の大宮でございまして、私も出席をさせていただきました。その雇用に努力をしている企業皆さん、また、そこで働く、優秀な働きをしておられる障害者皆さん、一堂に一万名集いまして、大会が行われました。すばらしい大会でございました。  これからも、さらに労働行政の重要な位置づけとして障害者雇用推進ということを位置づけて、推進していかなければならないと考えます。
  11. 大村秀章

    大村委員 ありがとうございました。ぜひこの障害者雇用につきまして、こういう景気のときだからこそやはり進めていかなければいけないということで、取り組みをお願いしたいと思います。  それでは次に、労働者派遣事業労働者派遣法につきましてお聞きをしたいと思います。  これは昨年来継続になっているものでございまして、改めて私が申し上げるまでもなく、産業構造変化、そしてまたライフスタイル多様化変化、そして働く人自身就業意識変化ということがあるわけでありまして、大学卒業して、学校卒業して、最初に一度勤めたらそこで一生終えるということをもって勤める方は、むしろ今少なくなっているのではないかと思うわけであります。働きながら自分に合った仕事を見つけていくといったような方がやはりふえてきているのではないか。私と同じ世代なんか、私も三十代の後半ですけれども、大体そんな感じで、最初勤めたところに今まだそのままという人はもちろんたくさんおりますけれども、そうでない方も大変おられる。  そういう中で、固定的な雇用から弾力的な雇用の場の提供という意味でも、この労働者派遣事業労働者派遣法といったものの位置づけ、ウエートは大きくなってくると思うわけでありまして、むしろ働く人の権利をしっかり守りながらこうしたものを進めていくといったことも大事ではないかと思うわけであります。  もちろんこれは詳細個々具体的な議論はまたこの委員会の場で行うことになるわけでありますが、労働行政としての、労働省としての御見解、意義、そうしたものにつきましてお伺いできればと思います。
  12. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 ただいま先生指摘いただきましたように、産業構造がかなり急速に変化をする、あるいは労働者ライフスタイル就業意識変化するという中で、できるだけ労使の、事業と働きたい人とのミスマッチを解消しまして、産業界の要請する労働者あるいは労働者就職する職場、こういうものができるだけ速やかにマッチングをするということは、これからますます大事になってくるのではないかというふうに考えております。  現在失業率も四%台で推移をしているわけですが、労働省推計ではそのうち三%ぐらいはどうもこのミスマッチによる失業ではないかというふうな推計もしているわけでありまして、できるだけ多くのチャンネル整備しながら、労働力需給ミスマッチが速やかに解消されるという方策を樹立することが大事ではないかというふうに考えております。  今般国会に提案をしております労働者派遣法の改正は、臨時、一時的な就労の仕方につきまして派遣対象業務を広く認めていこうというものでございます。この労働力需給のいろいろなチャンネル整備ということにつきましては、例えばそこで働く労働者権利や利益の保護といったものを十分配慮しながら、そういった大きな枠組みをつくりながら、その中でできるだけ希望に合った職種、希望に合った働き方あるいは産業界ができるだけ迅速に労働者を充足する、こういったことにこたえられるような体制整備を今後とも進めていくことが必要ではないかというふうに思っております。  この派遣法に続きまして、現在審議会において職業安定法の見直しの議論も進めていただいております。その中で、有料職業紹介あるいは無料職業紹介のあり方といったような議論を今行っていただいているわけでありまして、今後とも労働行政といたしましては、労働力需給ミスマッチの速やかな解消等といった観点から、こういった対策について十分な取り組みをしていきたいというふうに考えております。
  13. 大村秀章

    大村委員 またぜひこの委員会議論を深め、そして成立をさせていければというふうに思っております。  続きまして、少子化問題につきましてもお伺いをできればと思っております。  二十一世紀我が国社会が直面する大きな問題は、高齢化問題とあわせて少子化問題というのが大変大事なことだと思っております。特に、合計特殊出生率平成九年で一・三九人ということになりまして、一・四人を切りました。今のままの推計で、平成九年の一月の厚生省の人口推計によりますと、今から八年後でありますが、二〇〇七年をピークにいたしまして日本人口は減り始めるという推計もあるわけでございます。そうなりますと、我が国日本の活力といった点では大変懸念をされる、そういう事態でございます。  実はけさ、朝七時のNHKのニュースを見ておりましたら、NHK世論調査、昨年十月に行ったものという中で大変ショッキングなデータがありまして、必ずしも結婚する必要はないというふうに答えた方が五八%もいる、むしろ女性の方が六五%という形で高いということでございます。それから、子供は必ずしも持たなくてもいいというふうに答えた方が、女性の方で五三%いるということでございます。それからさらに、このデータ年齢階層別に見ますと、二十代、三十代の女性の方で、必ずしも結婚しなくてもいいというふうに答えた方は八〇%を超えている。必ずしも子供も持たなくてもいいという方は、二十代、三十代の女性に限って言うと、七〇%を超えた数字でございます。全国で五千人の面接調査だそうでございまして、これはなるほどなというか、何となしに私の周りの人の話を聞いてもそんな傾向があるわけでありまして、大変ショッキングなデータでございます。  この点につきまして、私も大変関心がありまして、昨年来、私ども若手同僚議員でありますとか、また労働省の皆様とも勉強会をやりながら、ずっと今も勉強、研究を進めているところでございまして、これはいろいろな原因が言われます。経済的な面でありますとか、家が狭いと子育てが大変だとか、仕事が続けられないといったことも言われるわけでありますが、私は、先ほども申し上げた数字の中で見ると、やはり二十代、三十代の女性の人に今の日本社会とか職場というのは優しくないのだろうと思うのですね。やはり、実際に今も多くの方が仕事を持ち自分能力を発揮されておる、そういう中で結婚をして子供を産んで育てるということがそういった女性の方にハンディになっているということが一番大きな原因ではないかというふうに僕は思うわけであります。ですから、そういう意味では、子供を産んで育てられる、育児でありますとかそういった環境整備ももちろんでありますし、保育所なんかそういった施設の整備も必要であります。  それとあわせて、やはり職場の中で、そういった若い女性の方が子供を産んで育てながら働いていく、そんな環境整備をやっていかないと、これは口で何ぼ行政とか我々も、やはりそういった少子化社会は大変だ、そういったことをやっていかなきゃいかぬ、いろいろな、今回も子育て減税ということで、扶養親族の控除を拡充する、そういったことはもちろん大事でありますけれども、職場環境整備ということがどうしても必要だと思うわけでありまして、そういう意味では、労働省の働く女性のことを考えたそうした施策の充実というのはやはりもう避けて通れない、ぜひ必要だというふうに思っております。  その点についての労働省としての御見解をお伺いしたいわけでありますが、その前に、大臣にお伺いしたいと思ったのですが、小山政務次官、お子さんは何人おいででしょうか。
  14. 小山孝雄

    小山政府委員 男女二人でございます。
  15. 大村秀章

    大村委員 実は私、子供が三人おりまして、そういう意味では貢献しているかなと思うわけであります。さらにまた今月中ぐらいにもう一人、四人目が生まれることになっておりまして、そういう意味では、少子化問題には大変貢献しておるなということで自負があるわけでありますが、それはそれといたしまして、働きながら子供を産んで育てる女性の支援をする、そうした施策につきましての労働省の基本的な御見解をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  16. 小山孝雄

    小山政府委員 大村先生指摘の点、大変大事な問題だと思います。  実は、先生の地元に甲南大学という大学がございますが、三十年ほど前にそこに人口問題を大変研究なさっている教授がいらっしゃいまして、大変教わりました。三十年も前の話でございますが、その当時から、このままいけば日本国の人口はゼロになるというショッキングなデータなどを出して啓蒙を続けておられた方がいらっしゃったことを今思い出すわけでございます。まさに少子・高齢化社会、新聞、マスコミ、テレビ等でその言葉が語られない、出ない日はないぐらいの大きな問題になりつつあるわけでございますけれども、こうした中で、男女を問わず働く人々が仕事と育児というものの両立を図っていく、そして生涯を通じて充実した職業生活を送るためにも大変大事な施策だ、このように考えるわけでございます。  既に、労働省におきましては、育児・介護休業法に基づく育児休業制度の定着を図ることを進めておりますとともに、労働者子育てをしながら働き続けられるよう事業主に対する助成金の援助、あるいは育児に対するサービス、これは、二十一世紀職業財団が中心になって各地で行っております電話による育児相談に応じるという制度も進めているところでございます。  そしてまた、十一年度からは、予算も計上いただいておりますが、家庭にやさしい企業の普及促進ということが大事な点だということで、やはり働く女性皆さんが、働く場において育児と両立しやすい働き方ができるように応援をしていく必要があるということで、家庭にやさしい企業の表彰、あるいは家庭にやさしい職場のあり方の普及等々を促進してまいりたいということで考えているところであります。
  17. 大村秀章

    大村委員 ありがとうございました。  最後に、行政改革についてもお伺いしたかったわけでありますが、時間が参りましたので、私の意見だけ簡単に一言申し述べて質問を終わりたいと思います。  昨年、中央省庁等改革基本法が成立をいたしました。中央省庁の再編、労働省は厚生省と一緒になりまして労働福祉省という形になりまして、雇用社会保障という国民生活に深くかかわる分野を担当する重要な役所になるわけでございます。  実際にその省庁設置法というのはこの四月ぐらいに出てくるというふうにお聞きをいたしておりますが、その中で、省庁名についていろいろ、ああだこうだという議論がありました。これは、最終的には設置法のときに決着がつくといいますか、結論が出るというふうにお聞きをしておりますが、私は、日本国憲法二十七条においても労働の権利義務といったことが書いてあるわけでありますし、また、働く人がやはり生き生きとして働くその枠組みを整備することが国家としての大変重要な責務だと思うわけでございます。  そういう意味で、勤労国家日本、これをあらわす意味でも、私は、この「労働」という名称、概念をぜひ省庁名にも明記をしていただきたいということをぜひお願いを申し上げまして、一言私の意見を申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  18. 岩田順介

    岩田委員長 青山丘君。
  19. 青山丘

    ○青山(丘)委員 労働大臣所信表明の中には、二十一世紀を間もなく迎えようとしているこの重要な時期に、国民に将来不安を抱かせるようなことがあってはならないという考え方が述べられております。まさにそのとおりで、今私たちが取り組まなければならないことは、現下のマイナス要因、いろいろな見通しの暗さを十分指摘するだけではなくて、二十一世紀にはこんな夢がある、この希望をかなえていこう、こういうような明るいプラス面を進めていくという姿勢が私は非常に必要だと考えております。  そういう意味で、現下雇用失業情勢は極めて厳しくて、これに的確に対応していかなければならない。と同時に、長期的には、我々はこういう取り組みをやっていくのです、そういうことをきちっと示していただかなければならないと思います。  その前提としては、将来の労働力率がどのような推移を見ていくのであろうか。十五歳以上の人口の中で占める労働者人口の割合というものをきちっと見通しを立てて、そしてその対策をこれからきちっと講じていく、それが将来に対する不安をなくしていくということに私はつながってくるであろうと思いますが、二十一世紀初頭それから二十一世紀前半にかけて、労働力率というものがこれから我が国はどのように推移していくものだろうと受けとめておられるのか。  とりわけ、今も議論されておりました女性社会進出や高齢者が果たす役割、高齢者の生きがいというような立場からも幅広い考察の中でこれから施策を進めていく、そのときに、十五歳以上の人口の中で労働者人口の占める割合というものが非常に重要になってくる。どのような見通しを立てておられるのか、示していただきたいと思います。
  20. 小山孝雄

    小山政府委員 御指摘の労働力率の見通しにつきましては、昨年の十月に将来推計の見直しを行ったところでございますが、相対的に労働力率の低い高年齢層の増加によりまして、全体の労働力率は徐々に低下していくという見通しを立てているところでございます。ちなみに、昨年、一九九八年の労働力率は六三・三%と出ておりますが、ただいま御指摘の二十一世紀前半、例えば二〇一〇年には六一・九%に下がる、このように見通しを立てているところであります。  しかし、女性や高齢者に限りますと、労働力率は今後高まっていく見通しを持っているところであります。例えば、三十歳から三十四歳の女性は、一九九八年、昨年は五五・八%となっておりますが、二〇一〇年の推計では六一・一%と立てております。そしてまた、高年齢、六十歳から六十四歳の男女でございますが、合計は、昨年度は五六・九%でございますが、二〇一〇年には六四・一%と上昇すると見通しを立てております。  そして、以上の推計をいたしましたその理由でございますが、女性につきましては、先ほど大村先生から、けさのNHKの、女性の結婚観、出産観、子供を持つことについてどのような考えを持つか等々の世論調査の結果のお話もありましたけれども、雇用における男女の機会均等、この四月から完全実施されるわけでありますが、その施策の推進、あるいは女性の待遇の確保、職業生活と家庭生活の両立支援対策、あるいはパートタイム労働対策などの推進によりまして、こうした政策効果により、女性の意識の変化も想定をいたし、職場進出が続くことから、労働力率が上昇をすると見込んだところであります。  また、高齢者につきましては、企業における六五歳までの雇用機会の確保、あるいは年金の支給開始年齢の引き上げ等々から、労働力率が上昇すると見込んだところであります。  以上でございます。
  21. 青山丘

    ○青山(丘)委員 同じ見方だろうと思いますが、男性の場合はかまぼこ的で、一人の男性の一生で、健康で働ける、社会環境はもちろんですが、本人の意思もそれが満たされて、労働力率というものはかまぼこ的に上がっていって下がってくる。女性の場合ですとM字形。二十代後半から三十代前後にかけては一たん下がってくるけれども、もう一回働くことのできる環境が整ってくる、M字形になってくるのでしょう。  私は、今の労働力率の推計は、同じM字形でも、これからもだんだん高くなっていくでしょうし、女性社会進出をやはり求めていかないといけない、社会は高齢者にも支えていただかなくてはいけないという時代にだんだん入ってくるであろうと。そうなってくると、まさに本年四月から全面施行される改正男女雇用機会均等法の果たす役割が一層重要になってくると思います。  実は、先ほど議論されていて私はふっと思ったのですが、かつて日本は家庭生活が中心で、女性にとっては社会への進出はなかなか難しかった。社会も、そういう女性に男性と平等に活躍をしてもらえるような環境ではなかった。しかしだんだんと、この労働力率の推移から見ていきますと、女性が果たしてもらわなければならない、女性に依存していく部分社会には出てきておる。また、女性もそういうところで活躍をしていかなければいけないということになってくると、男性と平等の雇用環境というものをつくり上げていかなければならない。例えばそれが整ってくると、先ほどのような議論で、必ずしも結婚を求めていかないということになっていくのかと実は私は思っておりました。  でも、もっと深く考えてみますと、そうではなくて、問題は、女性が家庭に縛りつけられていると、大変な作業なんですね。子育てや介護に追われている、家事に相当な労力を要する、そうするとなかなか社会に出られないという一面もあった。それから、そうではなくて社会そのものがなかなか平等に受け入れるという社会ではなかった。だからこそ、社会へ出ていこうとすると結婚が障害になってくるという一面、あるいは子育て障害になってくるという一面があっては、今のように結婚を必ずしも望まないという社会になりつつある。それは私は正常な社会ではないと思う。家庭生活もできる、社会での活躍もできる、高齢者も社会参加できるし仕事で生きがいを持つことができる。そういうことの方が正常であって、したがって、結婚を望まないということは、実はいびつな社会現象の一つだというふうに受けとめた方が私は正しい受けとめ方ではないのか。  つまり、家庭生活もできますよ、あるいは遅く帰ってくるときは御主人がもう先に子供の世話であるとか保育所へ行って子供を連れて帰ってきているとか、あるいは親の面倒もいろいろな社会の仕組みの中で介護はしてもらえている、あるいは御主人が帰って後片づけをすればそれで十分というような環境になってきたら、女性安心して社会で活躍ができる。そうすれば、結婚は必ずしも望まないという社会ではなくて、結婚を望むという社会の方が私は正常のような気がします。  さて問題は、今問題になっている、いよいよ四月から、例えば女性のみ募集、これは禁止規定になってきておるということで、マスコミ報道では正しく情報が伝わっていないといいますか、若干の混乱がある。企業だって半分ぐらいしかまだそういう認識がないというニュースがありました。  この際、女性局長の方にお尋ねした方がよろしいのでしょうか、女性のみ募集を禁止した本当の意図というものをもう少しわかるようにしていただきたい。それから、それの施策の徹底、普及、促進のためにこういう取り組みをしていきたいというような方針について、ひとつぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  22. 藤井龍子

    ○藤井(龍)政府委員 女性がその意欲あるいは能力を十分発揮して働ける社会をつくるというのは、先生おっしゃいましたとおり、本当に大きな課題だと思っております。その中で、本年四月から改正男女雇用機会均等法を施行するということになっておるわけでございます。  最近、女性のみ募集というのが今回禁止されることになったということで、先生指摘のとおり、一部に誤解、理解が不十分であるというようなところもあるようでございました。それは私ども行政の努力が足りないところもあるかと反省をしておるところでございます。  この女性のみ募集につきましては、これまでは法律には違反しないということで取り扱いをしてまいったわけでございますが、その結果、この数年の状況を見ますと、仕事というのには女の仕事と男の仕事がもともと別々にあるんだとか、あるいは一般的に女性にはできない仕事があるとか、あるいは女性特有の感性がある、あるいは女性は補助的な仕事に向いているといったような先入観といいますか、あるいは固定的な男女の役割分担意識、こういうものに基づいて女性のみをそういう職に募集、採用されるということが、かえって女性の職域を一定の部分に限定、固定させたり、あるいは男性と女性の職務を分離してしまう、仕事を全く分離してしまうといったような弊害が見られるようになったわけでございます。  このような弊害を取り除くことが男女の真の意味の均等な機会及び待遇を確保していく上で必要不可欠であるという考えに基づきまして、今回の改正男女雇用機会均等法においては、女性のみあるいは女性優遇の措置というのも原則として女性に対する差別扱いであるということで、禁止をしていただいたわけでございます。  改正均等法はいよいよ本年四月から施行でございますが、改正均等法、今回の内容は、募集、採用から定年、退職、解雇に至る企業の人事管理の全分野において女性に対する差別を禁止するという内容、またセクシュアルハラスメント防止について事業主の配慮義務を定めているというようなこと、あるいは事業主に女性の活用を積極的にお願いしているといういわゆるポジティブアクションの規定を設けておるというようなことで、大変大幅な強化をしているわけでございますので、企業雇用管理に大変大きな影響を及ぼすものでございます。  それのみならず、国民の一般の方々の意識改革と言ったら大げさかもしれませんが、意識を変えていただかなければいけないという部分も相当含んでおるものでございます。そのため、私ども、この改正法の趣旨につきまして、企業方々及び労働者方々の十分な御理解を得るために、全国津々浦々におきまして集団説明会を何回も何回も開催をしてまいりますとともに、新聞、雑誌などあらゆるメディアを使いましてその周知徹底に努めてまいったところでございますし、これからも努めてまいるつもりでございます。  特に募集、採用につきましては、それぞれの事業主さんたちに女子のみ募集は禁止になりました等のことを周知するのみならず、新聞社あるいは求人情報誌を出しておられる会社あるいは団体等の方々にも法の趣旨に沿った取り扱いをしていただく必要があるかと存じますので、これらの企業団体に対しましても累次にわたって協力要請をしてまいっておるところでございます。
  23. 青山丘

    ○青山(丘)委員 現在の認識は私も理解できますし、その方がよろしいかなと。すなわち、女性のみ募集をそのまま認めることによって、かえって女性の、幅広い男女の平等な雇用環境というものを狭めていってしまう。これまでの経過から見て、私は今はそうだと思います。  ただ、これからは少し女性局長の意見と私が違うかもしれませんが、これから先の話です。もし、女性も男性と平等に雇用の機会がきちっと保障されてきて、社会の受けとめ方も正常に受けとめられて、成熟した男女の雇用の機会は平等になってきたという社会になってくれば、その段階では、男性のみ募集するとか女性のみ募集するとかということが出てくるような気がいたします、私は。ここは違うかもしれませんが、違っておったらまた指摘していただきたいと思います。  それからもう一点は、結局、女性が働くことによって家事に使う労力が狭められてくる。例えば、今まででしたら、働かなければ、子育てに追われていてもそれはそれでできてきた、あるいは親の介護に追われていてもそれはそれでよかった。けれども、そういう社会であったら、例えば、社会進出をしたい、社会女性の労働力を正しく活用していきたいといっても、それは必ずしも労働市場で十分に自分の、女性の力を発揮することはできない、やはりドロップアウトしていってしまう、それではよくない、そういうことを私は考えておるんです。  本年四月から実施されます例の介護休業制度の実施でありますが、この介護休業制度をきちっと普及していく、実際にこれが正しく運用されていく、そのためには家庭生活と職業生活がきちっと両立していかなければいけない。そういう立場から考えますと、この両立支援の施策というものは、労働省としてはきちっと、こういうような形で進めていきたい、そのことによって事業者が正しく理解してくれるであろうというような方針について明らかにしていっていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  24. 藤井龍子

    ○藤井(龍)政府委員 仕事と育児や介護の両立を図っていくということが大変重要なことであるということは、もう御指摘のとおりでございます。  介護休業制度がこの四月一日から義務化されるわけでございます。育児休業制度と並んで実際に法律で義務化されておりましても、とりやすい環境をつくっていかなきゃいけないということがあると思いますので、私ども、育児・介護休業法の趣旨の徹底にこれまで以上に努めてまいりたいと思っておるところでございます。  さらに、義務化された後は、介護休業給付、二五%の給付が支給されるということなどもございますし、また、介護休業をして職場へ復帰される場合に、復帰しやすくなるよう、休業中もそれなりの情報提供をしていただくというようなことも事業主さんにお願いし、そのための奨励金というのも設けてございます。その他、介護のためにホームヘルパーをお雇いになる従業員に事業主さんが補助される、これにまた私どもで助成金を支給するなど、さまざまな両立支援のための制度というものをつくっており、これを活用して、なるべく両立ができるような環境整備をしてまいりたいと思っておるところでございます。  さらに、平成十一年度からは、それぞれの企業で、労使でお話し合いの上、企業全体で従業員の育児や介護など家族的責任を果たしやすい雇用環境づくりをしていただく、それを促すための施策といたしまして、家庭にやさしい企業というものが普及するよう、新たな事業を展開することにしてございます。厚生省と連携したシンポジウムの開催、それから大臣表彰、あるいは事業主に対する助成措置などを講じてまいる予定にしておるわけでございます。  こういう形を、さまざまな制度予算措置を講ずる中で、私どもは、家庭と仕事を両立し、働きやすい、能力を発揮しやすい環境づくりをいろいろなレベルで講じていただけるよう、努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  25. 青山丘

    ○青山(丘)委員 私は、両立支援対策は、考え方として考えられる精いっぱいの努力をしておられて、奨励金、助成金の制度を設けたりして、仏はつくってきておる。問題は、魂を入れるためには、これで啓蒙活動に結構苦労されると思いますが、事業主の方でも正しい理解をしてもらえるように、ひとつ取り組みを進めていただきたいと思います。  それから、先ほども申し上げましたが、労働力率に関してですけれども、高齢者の果たしていただく役割が一層増加していくという見通しでございます。社会全体として、元気な高齢者の方には社会を支えていただく、支えていただかなければならない。そういう意味では、高齢者の雇用促進は、そんな見通しである、見込みであるというよりは、ひとつぜひ進めていく、実現をしていく、高齢者の雇用を拡大していく、こういう努力をしていただかなければならないと思います。  現在、政府としては、六十歳定年の上に六十五歳までの継続雇用を進めてきております。高齢者対策としては、年金制度とともに、この改革、この制度推進が求められておりますが、私は、六十五歳以上も視野の中に入れて高齢者の雇用対策について進めていかなければならないのではないか、そういう段階に来ておる。どのようなビジョンをお持ちか、明らかにしていただきたいと思いますが、これは、職安局長、お願いします。
  26. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 先ほどから、これからの労働力率の見通しについていろいろとお話がございました。  我が国は、欧米に比較しますと三倍から四倍のスピードで高齢化が進展しているようであります。人口の推移を見ましても、今後十年間に、十五歳から二十九歳人口は六百万人減じ、逆に、六十五歳以上人口はちょうど六百万人ふえるというふうな推計でございます。  こういったことでございますから、今後我が国が今までのように活力ある社会というものを維持していくためには、高齢者の方が長年培った知識あるいは経験というものを十分に活用していただいて、社会を支える側にこういった方が回ってもらうということは極めて重要な課題であるというふうに考えております。  現在、行政といたしましても、六十歳を過ぎてもできるだけ六十五歳まではその企業において継続して雇用ができる、働けるというふうな制度をつくっていただくことの指導をしております。六十歳を過ぎて新しい仕事につくということはもちろん大事なことでありますが、従来その企業で培った技能、知識、経験、こういったものをその企業で引き続き生かせるということは、やはり、これからの高齢者対策の基本になるのではないかというふうに考えております。  また、六十歳を過ぎて給与が随分とダウンするというようなケースに備えまして、雇用保険制度の中で賃金助成をするという仕組みを制定し、運用しております。徐々にこの利用者もふえておりまして、平成九年度の受給者数は八万九千人余というふうになっているわけであります。こういった制度も活用しながら、高齢者雇用の進展にさらに努力をしたいと思います。  また、六十五歳以上の方でありましても、我が国の場合は、できるだけ働きたい、元気なうちはずっと働きたいという方が大変多いわけでございまして、こういった方につきましても、例えばシルバー人材センター事業推進等に努めているところであります。シルバー人材センターも会員数がどんどんふえておりまして、現在時点では約四十六万人の方が全国でこのシルバー人材センターの会員になっておられるところであります。  こういったふうなことで、六十歳から六十五歳、あるいは六十五歳以上も視野に入れながら、高齢者雇用の確保ということに全力を投入していきたいと思っているわけでありますが、現在、国民各層を代表していただきます方で六十五歳現役社会推進会議というものを設けておりまして、これからの高齢者雇用あるいは活力ある社会のビジョンといったものについて議論していただいている段階でございます。こういった方の知恵もいただきながら、これからの高齢者の雇用ということについて、中長期的なビジョンをできるだけ早く策定していきたいというふうに考えております。
  27. 青山丘

    ○青山(丘)委員 高齢者の雇用を確保していく、これは重要な役割、仕事だと思います。  予定した時間が来ておりますので、最後に一点。  問題は高齢者の職業能力ですけれども、与えられた仕事に対応できるかどうか、高齢者の職業能力がそれにこたえられるかどうかということが問われてくるであろうと思います。そういう意味では、高齢者にとっては、生涯にわたる職業能力の開発を進めていく、そういう社会でないと、そういう日本でないと、これからの二十一世紀日本労働者の生活や社会というものが見通しが立たない。そういう意味で、職業能力を生涯にわたって開発していく、エンプロイアビリティーの向上、こういうことが社会に課せられておる大きな使命、役割だと思うのです。その施策について最後にお尋ねをして、私は質問を終わりたいと思います。
  28. 日比徹

    ○日比政府委員 ただいま御指摘のように、高齢者が現実に働いていくというためには、職業能力というものが当然必要なわけでございます。高齢者の職業能力にはいろいろなものがあると思います。直接的な技能もございますれば、従来の経験なりというものも大切な職業能力であろうと思います。  現在は、御案内のように、公共の職業訓練施設における訓練なり、あるいは個人主導の訓練ということで教育訓練給付等も設けたところでございますが、さらに、一部高齢者向けの訓練科目、あるいは同じ訓練科目でも高年齢者に見合った訓練の仕方ということを心がけておりまして、一部実施しておりますが、今後に向けましては、さらにきめ細かく訓練の内容、訓練の方法等についても漸次充実させたいということでやってきております。
  29. 青山丘

    ○青山(丘)委員 委員長大臣が戻っておられませんけれども、私が質問をすることでもし延びると、今後の委員会運営で質問時間が暫時延長するのもどうかと思いますので、実は、私は通告した質問をまだ幾つか残しておりますけれども、一たんここで終わります。
  30. 岩田順介

    岩田委員長 御協力ありがとうございます。  今、青山委員の発言にもありましたが、大臣が多少到着がおくれる模様でありまして、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四分休憩      ————◇—————     午前十一時十八分開議
  31. 岩田順介

    岩田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中桐伸五君。
  32. 中桐伸五

    ○中桐委員 民主党の中桐です。  大臣が来られてから質問を開始するということで、大臣には、忙しくて、息を切らせて来られているということで申しわけないんですが、一応大臣に対する質問から始めたいと思います。  昨日の所信表明におきまして、甘利労働大臣は、今ほど労働行政がクローズアップされ、国民期待が大きいときはない、そして、これまで労働行政が積み上げてきた知識や経験、施策の総力を挙げて国民雇用に対する不安を払拭し、再び希望と活力にあふれた経済社会をつくり出すべく全力を挙げて取り組むという決意を表明されました。  そこで、大臣にお聞きいたします。中央省庁再編が、これから行革の特別委員会中心にして具体的な作業が進められていくと思いますが、労働福祉省という省、これは名前は社会省になるかどうかという議論もあるようですが、この省になるのが労働省としては適切な、つまり、従来の厚生省と労働省という関係が適切であると思われるのかどうか。これは大臣の個人的な見解でも結構です。  つまり、雇用ということがこれから労働行政の中でどういうウエートを占めていくのか。その中で、将来、二十一世紀労働行政雇用政策ということから見たときに、雇用政策というものの基本的な重点施策の方向が、従来型のいわゆるセーフティーネット、つまり失業された方の生活の保障であるとかそういったこと、これはもちろん重要でありますけれども、そういったところにウエートを置くということから一歩前へ進んで、積極的な雇用政策、労働市場政策、そういったものに転換をしていく必要が私はあると思うのであります。  そういう意味におきますと、私は、雇用保険であるとかそういった分野の機能が、二つの労働市場政策というものを含めた財源のものを持っておりますけれども、労働福祉省というふうな、いわゆる厚生省とのマターでこれから雇用政策というのが進んでいくというよりは、通産とかあるいはマクロ経済政策とか、そういったものとの密接な関係の中で進んでいくという面があるだろうと思うのです。  そういう意味において、どちらかというと積極的労働市場政策を展開しようと思うと、地域的に、労使のネットワークであるとか、あるいはさまざまな教育機関、そういったものとのネットワークであるとか、そういったものが非常に重要になってくると思うのだけれども、そういう点で、この労働福祉省なるものに労働省が一応再編成されるということについて、甘利労働大臣はどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
  33. 甘利明

    甘利国務大臣 中桐先生指摘のとおり、いろいろな切り口があると思います。そして、雇用という観点から見ますと、産業政策との連携というのは非常に大事になってくると思います。  どうして厚生省と一緒になるのかということでありますが、これは私がこうしろと言ったわけではありませんけれども、御指摘のとおり、セーフティーネットとしての労働、厚生連携ということ、あるいは二十一世紀に向けての大きな課題としては、少子・高齢化にどう対応するか、あるいは男女の共同参画社会の形成をどう推進していくか、厚生省と一緒に取り組む課題が非常に多い。どういう視点で労働政策に取り組んでいくかというその考え方だと思うのですけれども、後者の考え方によってこういう結果になったのじゃないか。そして、産業政策との連携ですと、労使が一緒の場になるわけでありますから、利害関係が対立する部門もありますから、むしろある一定の距離を置いた方がいいのかなという観点も加味をされたのかなというふうにも思います。
  34. 中桐伸五

    ○中桐委員 これは、どこの省と再編されるかということで、一面的には、先ほど甘利労働大臣がおっしゃるように非常に多様な行政サービスの内容を持っているわけですから、これは一つのところとどことが再編して一緒になるかという話で、物事がオール・オア・ナッシングでどっちか選択するという話ではないというのはそのとおりだと思うのですが、要するに、問題は、重点的にどこにウエートを置いてやるかということで決めなければいけない。  したがって、例えば労働福祉省という形にするのであれば、当然、そこで補強しなければいけないというか、非常に強化しなければいけない行政の、何といいますか、タスクによる何か機構をつくっていくということがなければ、これは、ただ再編をどことして、省を幾つ減らすか、こういう話になってしまうわけで、私は、日本のこれからの雇用情勢は、国際的な経済環境、それから日本の成熟社会の構造変化というものを見ても、欧米に近い雇用情勢に多かれ少なかれなっていくだろうと思います。  しかし、それは、システムが明らかに違うわけですから、日本のシステムの中でいいところも保ち、問題点を解決していくということをやらなければいけない。しかし、全体として言えば、欧米の悩んでいる雇用情勢というものが、私どもが解決しなければいけない課題になってくると思うのですね。  そのときに、大体今問われているのは、ウエルフェア・ツー・ワークという、これはブレアの政権が言っている合い言葉でありますが、ウエルフェア、つまり失業したときの給付をしっかりやりますよということを従来型では重点的にやってきたけれども、それから先に進んで、失業しないで、いろいろな労働の転換なり転職なり、そういったものをうまくやっていく、より積極的な人材育成というふうなところへウエートがいっていることは間違いない。そうすると、雇用の不安を払拭するという政策にしても、ウエルフェア・ツー・ワーク、例えばイギリスの例で言えばそういう方向で重点的にいかなければいけない。そのために何をするのかということがこの中央省庁再編の中で問題になると思います。  その点については、労働福祉省という形にやるならやるでもそういう分野は当然あるでしょうけれども、しかし、もう一つは、タスクから見たときに、通産だとかあるいはそういうところとの関係を、労働行政はどうしていくのか。これは非常に重要な問題だと私は思いますが、その辺について、そういう緊急の雇用対策のための何とか会議というのは今までつくりましたけれども、しかし、これはそんな緊急の問題だけではなくて、構造が変わっていくわけですから、それに対して行政改革が必要なのではないかと思いますが、その辺について追加的に労働大臣、何かございますか。
  35. 甘利明

    甘利国務大臣 確かに御指摘のように、雇用という点、これは今後とも非常に大きい政策分野になってくるわけでありますけれども、労働省所管の雇用政策の中でこれから非常に重要になってくるのは、まず、能力と情報のミスマッチの解消というのは大事だと思いますし、もう一点は、職業能力のバージョンアップを適宜適切にどう行うか、あるいは労働力移動が、本人の能力希望企業側の要請する人材とのマッチング、スムーズにどうするかということが非常に重要になってきますし、そういう点でいいますと、まさに産業政策との関連性というのは今まで以上に大きくなってくると思います。  ただ、要するに、この省庁再編においてはどこに軸足を置きつつこうしたかということで、そこは、セーフティーネットとしての、働く側に軸足を置いてこういう編成になった。ただし、産業政策との政策連携というのは非常に重要でありますし、昨年、政労使の雇用対策会議というのもつくりました。これはまさに、産業政策、使用者側と従来の労働政策とをどうマッチングさせていくかということでも大変に効果がありましたし、その作業工程の中で出てきたのが、政策反映をした百万人の雇用創出、安定という具体的な成果でありますし、これからも、政策を策定していく上では、通産省産業政策との連携はしっかりとっていかなきゃならぬというふうに思っております。
  36. 中桐伸五

    ○中桐委員 ぜひそういう横の強力な推進機構というものが必要だと私は思いますので、それを強化していただきたいと思うんです。  私の個人的な見解を申し上げれば、省庁の数を減らすということが、結論として数の問題として最初からあるという規格じゃなくて、例えば、これから本当に産業構造経済の構造が変わっていくという形の中で、本当に働く人が不安を持たないで二十一世紀を暮らせるということにしようと思うと、雇用省ぐらいつくったってよかったと思うんですね。つまり、人材育成も含めれば教育も関係するかもしれませんが、そのぐらいのものをつくって対処してもよかったと私は思います。もし、そういうことがそのとおりだと思うんなら、大臣も閣議の中でも御主張いただきたいと思いますが、これは大臣のお答えを求めることではございませんので、私の意見として申し述べさせていただきます。  次に、雇用情勢の将来見通しは、先ほども政務次官の方に質問もありましたが、この衆議院の調査局の労働調査室の資料の一番最後ですが、雇用失業情勢の見通しというので、三菱総研とか野村総研とかいろいろなところが、これは二〇〇〇年度まで出しているところと九九年度までしか出していないところがございますが、いずれにしても、これは幾つありますか、十を超えるところが、完全失業率は今よりもすべて上昇すると予測をしている。これだけそろって完全失業率が上昇すると予測しているということは大変なことである。半分かあるいは三分の一ぐらいがふえると言っているんならいざ知らずだけれども、こういう将来見通しをする仕事をしているところが軒並み失業率は悪くなると言っている。中には、野村総合研究所とかは、二〇〇〇年度は六・〇%になるんじゃないかというふうなことを予測している。こういう状況がある。  最近の経済情勢からいうと、景気対策としてカンフル剤的に、私どもからいえばカンフル剤的だと思うんですが、かなりの借金をする。そうすると、国債が非常に発行されるので長期金利が上がってくる。つまり、これがさらに進行すると、これはもう設備投資は控えるし、いわゆる景気に対して、企業の経営が極めて厳しくなる。景気がよくなるどころか、収縮していくという形になる危険性がある。これを日銀が買い取れば当然悪性インフレになるだろうし、大変な状況に今なっているんではないのか。  そういう状況の中で、これらのいろいろな予測というものを、甘利労働大臣としてはどのようにお考えですか、それをまずお聞かせください。
  37. 甘利明

    甘利国務大臣 雇用失業情勢というのは、先生御承知のとおり、景気の数カ月後を追って数字にあらわれてくる。そうすると、景気が底をついて上昇に転じても、失業率はさらに悪化するということもあり得るわけであります。  私は、そのタイムラグは通常五、六カ月と言われていますけれども、できるだけこれを短くしたいし、そのカーブを景気のカーブよりも緩くして、景気への追随性をよくしたいというふうに思っておりまして、そこで、リストラという手段に企業が及ぶ際にも、失業率という数字に反映させないような手法とかいろいろ考えて、雇用活性化総合プランに盛り込んだつもりであります。  民間の調査機関数字が軒並み悪い、所によっては六%を超えるという数字も出ているではないかということでありますが、私といたしましては、私の在任中に最悪記録が底を打つ、それ以上は悪くしないで何とか好転するように頑張りたいと思っております。別に、もっと悪くなるようならもっと在任させてくれという意味ではありません。在任中にとにかく最悪の状況を脱することができるように、総力を挙げたいというふうに思っております。
  38. 中桐伸五

    ○中桐委員 在任中というのはいつまでかよくわからないんですが、この在任中というのは、二〇〇〇年度ぐらいまでを言っていらっしゃるのかどうか。  二〇〇〇年度というのはまだ景気が底をついてよくならないとすれば、先ほどの大臣のお話では、雇用情勢はワンテンポおくれて深刻化するわけだからという話になると、どうも先ほどの雇用失業情勢の見通しに対して、できるだけタイムラグを短くしたいという気持ちは私もよくわかるし、私もそういうふうに労働行政の中でやらなきゃいけないと思いますけれども、しかし、これまでのこういう事態に対して労働行政が、これまでは極めて右肩上がりの経済で来ているという構造を持っているわけですね、雇用政策の中では。ですから、相当強力な雇用政策に対する抜本的な発想の転換、実施体制の転換、これらをやらないと、大臣希望とは違って、深刻な状況が続くんではないかと私は思うわけです。  そこで、これは大臣のお答えでどうこうというんじゃありませんけれども、最も直近の雇用情勢から見ると、確かに中高年のサポートをするにしても、これは大変重要なんですが、サポートをしても、先ほど一番最初の質問にも関係しますが、雇用対策ネットワークを強力に張るということがまだできていると私は思っていない、十分に。パートナーシップで政府それから経営者そして地域の労働者も入れて、いろいろな地域の雇用計画をしっかりつくって、そして、しかるべき訓練なら訓練の受け皿をつくってもらうとか、地域に合ったプログラムをつくり上げるとか、そういったところからいうと、私はまだまだこれからだと思うんですね。  そういうことから考えると、四十五歳以上の直近の有効求人倍率は物すごく悪いといいますか、四十五から五十四歳、五十五歳未満までが〇・三五で、五十五歳以上になってくると〇・一〇という極めて低い有効求人倍率なんですよ。こういう状況ですと、しかも、この資料によると、一年以上の失業期間を体験しなければいけない失業者が今じわじわとふえているわけですね。つまり、失業期間も長期化しているわけです。  そして、この長期化した人たちの中心になる一つの集団というのが中高年だと私は思うんですね。これは、今の経済の厳しい状況の中では、トレーニングしても受け皿として出てくる事業所というのが非常に限られてくる。これは景気の問題との関係でありまして、構造上の問題は別です。そうすると、緊急対策としてはこの中高年の、ウエルフェア・ツー・ワークでいかなきゃいけないのだけれども、こういう状況になってくるとウエルフェアも必要なんで、私は、中高年の有効求人倍率を配慮した失業給付の延長とか、そういったことも考えなきゃいけないのじゃないかと思うんですよ。  この点については、きのうの時点で私は質問通告しておりませんのでお答えをあえて求めませんが、私は、そういうきめの細かい緊急対策も要るのではないかというふうに思っております。  それについて、担当の局でもいいし、何か御意見があればでいいです、通告していないので、これは急に言った話ですから。どうですか、何かありますか。
  39. 甘利明

    甘利国務大臣 失業給付期間、これは、先生御承知のとおり九十日から三百日でありますが、これを延ばすという御指摘、御注文は各方面からいただいております。延長給付については、個別にいろいろな対応措置がなされているわけでありまして、大事なことは、待機中に職業能力が落ちてしまったら何にもならないということだと思います。  例えがいいかどうかわかりませんが、トレードを待っている選手のようなものでありまして、トレード先が決まったときに体がなまっていて即戦力として使えなかったら、そのチームにはそこで実は要らないということになってしまうのであって、待機中のオフにも体を鍛えて、直ちに一軍登録できるように準備をしておくということが大事だと思います。  まして、今や産業構造が転換をいたしておりまして、新しい産業がこれからどんどん出てこようとしている。その新しい産業は新しい職業能力で武装した勤労者を求めているわけでありますから、待機中に職業能力のバージョンアップを図るということはどうしてもやらなければならないことだと思います。  そういう意味で、私が指示をしてまいりましたのは、単純に待機している期間を延ばすということではなくて、職場能力をバージョンアップさせるために待機期間に柔軟性を持たせるということを指示いたしまして、教育訓練給付、この延長措置というのがありますけれども、ここに、ホワイトカラーを含めて、いろいろな職業能力をプラスしていくという措置を加味させていただいたところでございます。
  40. 中桐伸五

    ○中桐委員 基本的には甘利労働大臣の姿勢に私は賛成です。しかし、きめ細かくやってもらいたいということです。  つまり、状況が極めて悪い。基本的に、いわば産業構造変化やいろいろの社会変化に合わせて、それに対応できる能力を育てるということに重点を置くということは私も賛成なんです。しかし、現状というものが、非常に深刻な状況がしばらく続くとすれば、長期化しているということも考えてみると、幾らバージョンアップをして待っていても、向こうが、受けとめてくれるところが少なくなっているという状況があるとすれば、それに対して、まあ私どもは全国的な延長給付の基準を緩和したらどうかという提案もしていますけれども、そこまで行く前に、この有効求人倍率はどうもひどいじゃないの、そういう状況の中で、それは、いつも新しいレベルのバージョンアップをしてフットワークを保っていることも重要だけれども、しかし、幾らこっち側が、失業者が主体的にやっていても、受けてくれないという構造が続いたら困るじゃないかということをもう少しきめ細かく、私も現実を全部把握したわけじゃありませんので、それは、ハローワークからの情報を集中して判断をするべき状況もやはりあるんじゃないかと思うので、この点については、今後の労働行政の中で御検討いただきたいと私は強く要望させていただきたいと思います。  先ほどからの議論で私も甘利労働大臣の基本姿勢に賛成なんですが、これからの質疑、幾つか、職業能力開発というものについてもう少し具体的に質疑をしてみたいと思うんです。特に、今失業情勢が非常に厳しいということもありますので、離転職者に対する職業能力開発というものに絞って、職業能力開発といっても大変たくさん課題があるんですが、離転職者の問題にひとつ絞って、中心にしながら質疑を行っていきたいと思うんです。  まず、これは労働省からもらった資料ですが、離転職者に対する公共職業能力開発施設等における職業訓練というのは、データからは、平成十年度で九・七万人ということになっている。果たしてこれで、二百七十万を超える現在の失業情勢の中で、現下失業情勢下にあって、この実績でいいのかどうか、まずお聞きしたいと思うんです。
  41. 日比徹

    ○日比政府委員 ただいま委員から九万七千という数字を御指摘いただきましたが、これは、平成十年度のいわば予算の枠でございます。十年度でございますので今時点で実績はまだ出ておりませんが、現在のところ、公共職業訓練で離転職者訓練をやることについて、予算的な意味で困っておるということはございません。  なお、昨年末、いわゆる十五カ月予算的発想で補正予算は組まれておりますが、それから、平成十一年度につきましてはまだ予算案は御審議中でございますが、予算が案どおりいきますと、平成十年度の九万七千人が、ほぼ倍の二十万人程度ということになる見込みでございます。  それから、この中身といたしましては、公共職業訓練施設のいわば施設内訓練、これにつきましては、既に夜間も行うという二部制の導入、あるいはコース定員の拡充、要するに、一コースで本来二十人やるところを二割増し、三割増しするというようなことでやっておりますが、施設内だけではもちろん消化し切れないといいますか必要な訓練を行うことが困難でございますので、現在、民間教育訓練機関等に理解、協力をお願いいたしまして漸次拡大中でございますが、教育訓練機関に委託しての公共職業訓練というものを大幅に拡大実施すべく、現在努めておるところでございます。
  42. 中桐伸五

    ○中桐委員 二十万人と、倍ぐらいになるというのですが、これが従来の公共職業訓練の施設の中で行われていく、拡大されていくということでいいのかどうかという問題が一つ。先ほどの御説明では、公共職業訓練施設で足らないところを民間へ協力して広げるというふうにも聞こえたんだけれども、私は、二十一世紀行政のあり方として、二十一世紀前半というよりも、今、これまでの日本経済構造が大きく変化をしていこうとしているときに、公共職業訓練所の果たす役割というものがどのようなものになっていくのかというのは十分評価をしてもらわなければいけないのではないかと思います。  これまで、重厚長大型の製造業を中心とする目覚ましい技術革新、それに対応して体制をつくってきたと思いますが、しかし、従来のものの必要性はもちろん維持するとしても、相当産業構造が変わってくるわけですから、公的なところがやらなきゃいけないのはかじ取りというか、要するに、基本的にどういう方向へ重点を置いていったらいいのかということ、そして基準、そしてそのための仕組みをサポートする環境整備する、そういうことであって、実際に職業訓練を行う機関というのは、多様な現場の、民間といいますか、公的な職場は公的な職場でやるのでしょうが、現場に重点を置いて、そこでやってもらうということがより効率もいいし、的確なのではないかと思うんですね。  そういうことからいうと、私は、足らないところを民間でというのじゃなくて、行政がやるのはかじ取りなので、基準をつくり、いろいろな環境整備をするのを公的にやって、舟をこぐのは、つまり職業訓練を実際やるのはそこの現場がやる方がいいんじゃないかと思うんです。私が言っている民間の職業訓練機関等の活用というのはそういう意味です。つまり現場が重要なんじゃないか。そういう形のシステムをつくり上げるということをどう考えているのかということをお聞きしたい。
  43. 日比徹

    ○日比政府委員 先生の御意見、まことにごもっともだと思っております。  実は、私どもで何らかの形で関与して、これは離職者でない在職者も含めてということで恐縮でございますが、つまり、給付金その他の形での訓練の対象者というのは、実は年間約百五十万人ほどになっております。これは、もちろん公共の施設内でやっているものというのはごくわずかなわけでございます。  先ほど申し上げましたのは、離転職者、特に現在の離職者の方々ということを考えますと、従来的には公共が責任を持つ、これは私どもが勝手にそう思っているというよりは、そういう仕組みでやってまいりました。ただ、御指摘のように、まさに民間教育訓練機関というものが世の中にはあるわけでございますので、これの活用ということを十分念頭に置こうということで、数量的にもそちらの方を多くとるということになってきております。  なお、そういう発想でございますので、私どもは、基本的には本当に必要な限度でやっていきという発想でいるということを申し上げたいと思います。
  44. 中桐伸五

    ○中桐委員 そういう方向でシステムを抜本的に見直していただきたいなというふうに思います。  それでは、さらに関連して、公共職業訓練を離転職者が利用することができる訓練課程、これはいろいろ制度が複雑になっているので私も頭の中に全部入り込んでいないので、まず単純な質問から伺いますが、この訓練課程というのは、普通職業訓練の短期課程になっていると理解していいですか。つまり、長期もあったりするのですが、離転職者が公共職業訓練を受けられる、利用できるものは、普通職業訓練の短期課程というふうに理解していいですか。
  45. 甘利明

    甘利国務大臣 基本的にそのとおりでございます。
  46. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうすると、この訓練は、現在の雇用情勢の中で、普通職業訓練で短期課程というものだけでいいのかどうかということが議論になると思うんです。  つまり、フットワークをきちんとバージョンアップしてやろうとするならば、これはやはり高度職業訓練、この現状がどうかということはさておいて、何か限られているということについては、高度等が入っていないとか長期が対象にならないとかそういうことについては、そういうものを拡充するべきではないかと思うんですが、お考えはいかがですか。
  47. 甘利明

    甘利国務大臣 先生の前の質問とも関連をしますけれども、実は、民間委託は私が提唱いたして実施したものであります。労働者が多様な選択肢の中からいろいろなことを選べるようにするということは大事なことでありますし、それと同等に、憲法の二十七条一項にある勤労の権利を担保していくという意味で、職業訓練は、営利事業と離れたところでちゃんと国家が責任を持つということも基本的な柱でありますから、両々相まって職業訓練というのはやっていくべきだと思います。教育訓練給付という制度が十二月からスタートいたしまして、もう既に三千四、五百が対象認定をされました。非常に多様な中から個人の意思で選べるということにもなりました。  そこで、先生のお話は、バージョンアップをするならば、本格的に、長期に、専門的に、高度に取り組んだらどうかというお話であります。確かにお考えはよく理解できます。ただ、離転職者というのは、できるだけ早く現場復帰をしていただきたい、戦力として、労働力として我が国を支えていただきたいということが前提でありますから、余りずっといろいろな課程で腰を据えてというよりも、集中的に職業能力をアップしていただいて、できるだけ早く戦線復帰をしていただきたいということが基本にあるものですから、現在の対応になっているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  48. 中桐伸五

    ○中桐委員 時間がなくなりました。質疑はこの辺で終わりますが、現在の情勢下でどうするかという問題と、それから平常な状態のときの対策というのは分けてやった方がいいかもしれません。その点については、今後検討して、さらに質疑のチャンスがあれば今後取り組みたいと思います。  一応ほかにもいろいろ質問したいことがあったんですが、今大臣が言われた、失業している人がいろいろな選択ができる、そういう意味では、経済戦略会議が教育バウチャーというのを職業訓練に導入したらどうかというふうなことを提案しております。この点については、これからの訓練を民間も含めたシステムにつくり直していく中で、多様な選択ができるような仕組みの中で考えるべき提案ではないかと思うので、この点については、また後ほど機会があればやらせていただきたいと思います。  では、以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
  49. 岩田順介

    岩田委員長 次に、松本惟子君。
  50. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 民主党の松本惟子と申します。私は、二つの点に絞って、質問及び大臣の御所見をお伺いをしたいと思います。  株式会社日本アイビー、株式会社リックの部落差別調査事件が第一点でございます。  この事件は、昨年六月に発覚した事件でして、大阪にある大手調査会社二社が企業から依頼を受けまして、就職希望者が被差別部落出身かどうか、宗教は、そして思想は、民族は何かといった身元調査を行ったものであります。関係者の事情聴取によりますと、部落出身者であるとわかった時点で、四つ出身とか家業が革屋などとして米印がつけられまして、その時点で調査がストップをされて、企業へは調査不能と報告をしていた、こういったものでございます。また、特定の宗教団体、例えば創価学会に入信とか聖教新聞を購読しているなどと調べられていたり、父親が労働組合の専従であるというようなことも調査されております。これは文字どおり、憲法の思想、信条の自由の侵害だと私は思うのでございます。  大阪府は事件後直ちに、条例、すなわち部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例でございますが、これに基づきまして立入検査を行っております。その結果、二社とも、差別身元調査をしていたことを認めました。その上で、大阪府の指示に基づき、会社内でやりとりされた差別的な内容を書き込んだ履歴書と、ここにございますけれども、こんなものでございますが、これは一、二の事例でございます、こういったものと、それから調査会社とかかわっていた千四百社を超える顧客企業リストを府に提出をいたしております。この千四百社を超える企業には、ゼネコンとか証券会社とか鉄道会社や商社など、大手企業が多数含まれているというふうに言われております。  大阪府の調査結果報告、これは十一月の十三日に出されておりますけれども、それによりますと、千四百社のうち少なくとも六百五十五社は、社員採用に当たって調査を依頼していた、こんな事実が明らかになっており、この中には府の関連法人や大阪市の第三セクターが入っている、こういったものでございます。  私は、事件の概要を今申し上げましたけれども、この事件は部落差別問題であることはもちろんですけれども、同時に就職差別の問題でもあるというふうに考えております。そこで、この事件について労働大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか、最初に御所見を承らせていただきたいと思います。
  51. 甘利明

    甘利国務大臣 先生指摘調査会社がこの種の調査を実施したのは事実のようでありますし、昨年十一月に大阪府が当該調査会社に対して再発防止の指示等を行い、また、同じく十二月に大阪法務局より当該調査会社に対して文書によりまして説示の処置がなされているわけであります。  労働省では、かねてから、就職差別を未然に防止する、そういう観点から、採用選考の際の身元調査を行わないように企業に対して啓発をしてきたところであります。本事件の調査会社による身元調査は、就職差別につながるおそれの強い身元調査であるというふうに考えておりまして、大変に遺憾に思っております。  そこで、今後とも、採用に当たっては、応募者の適性と能力を基準とした公正な採用選考が図られるように、さらに企業に対して啓発、指導に努めてまいりたいというふうに思っております。
  52. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 部落差別であると同時に就職差別といった傾向が強いというふうに大臣はおっしゃったわけでございます。すべての国民は個人として尊重され、その基本的人権は憲法によって保障されております。したがって、基本的人権の一つでございます職業選択の自由について見ましても、採用選考時において、家族の職業とか家の所在地とかを尋ねたり、ましてや宗教や支持政党等、信教や思想の自由を侵害するようなことは許されることではありません。  しかし、現状では、こうした就職差別につながるような事例が少なからず存在をしているということも事実でございます。差別問題が改善されるには、関係者の大変粘り強い取り組みが必要でございます。  大臣、いろいろおっしゃっていただきましたけれども、私、次に質問をしたいのは、この間、就職に際して労働省がお取り組みになったというふうに伺っておりますが、本人の適性と能力に基づいて差別のない公正な採用選考が行われますように、労働省としても行政指導等に取り組んでいる、そのことでどのような取り組みを具体的に行っていらっしゃるのか、政府委員で結構でございます、お伺いをさせていただきたい。
  53. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 労働省では、同和対策事業特別措置法の成立以来三十年にわたりまして、また部落地名総鑑事件以来の二十年にわたりまして、企業において応募者の適性と能力を基準とした公正な採用選考が実施されるよう、啓発活動を現在まで行ってきております。  具体的には、経済や業種団体に対しまして文書による要請を行っております。同和地区住民等の基本的人権、特に就職の機会均等の確保についての要請でございますが、平成十年度は百七の団体に対してこの要請を行いました。  また、公正採用選考人権啓発推進員、この研修の実施に努めてもらいました。企業に公正な採用選考をするための啓発推進員を設置をしていただいておりますが、この設置をできるだけ進めるとともに、この推進員の方の研修に努めてまいったところでありまして、この事業は昭和五十二年度から実施をしておりますが、平成九年度末で、百人規模以上の事業所について見ますと、約九八%で推進員が設置をされております。約十万人でございます。それから、平成九年度の研修回数は八百七回行っております。  また、昭和五十八年度からは、企業のトップクラスについての研修も開始をしております。  平成九年度以降は新たに事業を追加しておりますが、まず、採用選考時に配慮すべき事項を要約しました面接担当者向けのガイドシートをおよそ十万枚作成いたしまして、推進員を設置している企業にこれを配付しておりますし、また、JIS規格の履歴書には、従来、都道府県を記載する欄もありましたが、公正な採用をさらに確保するという点から、このJIS規格から本籍欄を完全に削除いたしました。平成十年に公示を行った。こういったことで、従来から努力を重ねてきているところでございます。
  54. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 労働省のこれまでの行政指導によるお取り組みについての御説明がございました。  私の手元に、新規高卒あるいは新規中卒予定者を採用の企業の皆様へというパンフレット、こんなものがございますが、そういったものに基づいての御指導、この中には、応募者の適性と能力に基づく公正な採用選考を確保するという統一応募書類制定の趣旨を踏まえつつ、つまり統一応募書類というものが出されておりまして、やってはいけないことはこの中には書き込まれていないはずだと思うのですね。人種差別撤廃条約への加入とか人権教育のための国連十年の取り組みに適切に対応するため、この国連十年の取り組みは、ほかのところの審議会審議をされ結論が出された、あるいは出されようとしているのでしょうか、そういった取り組みがございます、応募者の人権に配慮する観点に立ってこれを改定するとして、具体的には、本籍地だとか家族の職業などの本人に責任のない事項、宗教とか支持政党などの本来自由であるべきものなども含めまして質問しないようにして、そして、職務遂行のための応募者の適性と能力の判定に必要な事項だけに限るようにということがこの中に書かれてあるわけでございます。  それからもう一つ、これも労働省が作成をされたものでございますけれども、事業主の皆様へとして採用選考自主点検資料、こんなものもお出しになっていらっしゃいます。まだほかにも資料を拝見させていただいたわけですけれども、こういった資料は細部にわたって詳細に大変丁寧につくられていると私は思いました。この中で、身元調査について次のように書かれてあります。読ませていただきますと、「企業が従業員の採用に当たって、応募者の本籍、生活状況、家族の職業などを第三者等に依頼して調査することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握することとなり、結果として、就職の機会が閉ざされるという就職差別につながるおそれがあります。」「企業においては身元調査を行うことなく、応募者の職務遂行能力・適性によってのみ採否を決める採用選考システムの確立に努めてください。 重ねて申しますが、採用に際しての身元調査はやめてください。」こうあるわけであります。  行政の末端で努力をされている方々の気持ちがこの文章の中に感じられる、そんな思いで読ませていただいたわけでございます。職業安定所の末端の職員の方々、大変御苦労されているということを私も承知をしております。  この採用選考自主点検資料にある各事項につきましては、行政指導がされているわけですが、率直に申し上げさせていただいて、余り知られていないのではないか、そのように思います。そこで、例えば大臣告示、非常に丁寧に書かれているわけです、何年かにわたって行政指導が繰り返し行われているわけですけれども、浸透度がいまいちということから考えますと、大臣告示のガイドラインとして、守るべき基準として策定される必要があるのではないかと私は思いますけれども、大臣、ぜひ御検討くださるように要請させていただきたい、そのように思います。  このような指導がそれなりに行われているにもかかわらず、先ほど申し上げました大阪の身元調査事件が起きたわけでございます。これは今日の状況の中で、氷山の一角ではないかというふうに私は思うわけでございます。後ほど申し上げますけれども、そんなふうに思っております。  また、一昨年十月に、東京都労働経済局職業安定部が企業内同和問題研修推進員実態調査報告というものを出しております。これを見ますと、企業内同和問題研修推進員というのは、先ほど御説明にもございました地名総鑑事件をきっかけといたしまして、一定規模以上の事業所に設置されているものでありまして、現在は公正採用選考人権啓発推進員と、大変長い名前ですけれども、改称されております。その調査結果報告であるわけですが、採用選考時に次のような書類を提出させていた企業が多数あるということがこの報告書の中で率直にあらわれております。戸籍謄本、それから住民票、家族の職業を記入させる書類、家族の収入、資産を記入させる書類、本籍地を記入させる書類、宗教、信仰を記入させる書類、支持政党を記入させる書類などであります。  一九七三年に統一応募用紙がつくられてから四半世紀がたっているわけですけれども、残念ながら、行政指導の努力は努力といたしまして、依然として部落差別、就職差別はなくなっていないのが実情であるというふうに認識をいたしております。  そこで、次にお伺いしたいのですけれども、こうした状況にあって、労働省としては当該事件の真相究明と再発防止に向けてどのような取り組みをされるおつもりでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  55. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 先ほど来御指摘のあります大阪の調査会社による身元調査事件につきましては、労働省は昨年七月に大阪府から第一報を受けたわけであります。その後、労働省では、大阪府の職業安定機関からの情報収集に努めましたほか、現在まで次のようなことを行ってまいりました。  まず、大阪府の先ほどの条例を所管する大阪府人権室からのヒアリングを昨年の十一月に行いました。私どもの担当官を大阪に出向かせまして、当該調査会社から直接事情聴取も行いました。さらに、全国の職業安定機関に対しまして、応募者の適性と能力を基準とした公正な採用選考基準の徹底を図られるよう、啓発、指導の強化を指示いたしました。昨年の十二月でございます。それから、新聞広告によりまして、採用選考の際の身元調査の自粛を事業主に対して要請をいたしました。これも昨年の十二月でございます。  現在は、当該調査会社に対しましていわゆる採用調査を依頼した企業について、精査、分析をしているところであります。身元調査を依頼した企業が、先ほどのお話にもありましたが、六百数十社あるということでございまして、この企業についてのアンケート調査の結果、これは大阪府から私どもも受けておるわけでありますが、これを今分析中でございまして、問題があると考えられる企業に対しましては、これは会員企業全国に分散をしておるものですから全国の安定所を動員いたしまして、問題のある企業に対しては個別指導、啓発を行ってまいりたい。できるだけ三月中にはこの作業を終えたいというふうに思っているわけであります。  さらに、次のようなことを実施していく考えであります。  就職差別につながるおそれのある身元調査をしないよう、再発防止の観点から、求人説明会等あらゆる機会を通じまして企業に対する啓発活動を展開していくこと。あるいは、公正な採用選考の確立につきまして、先ほどからお話にあります、中心的な役割を果たすべき公正採用選考人権啓発推進員に対する研修をさらに充実する。こういったことを今後行っていきたいということを考えております。
  56. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 これまでの取り決めといいますか、行政指導要領に基づいてさらに行政指導を強化したり、それから実情把握をなさいまして今後の対策をお考えになるということであろうかと思いますけれども、私はそれだけでは足りないのではないか。本当に、先ほど申しましたように四半世紀にわたって、やってはならないと言いながら、なかなかなくならない。性差別の問題も同様に大変根が深い。こういった差別問題というのは根が深いので、強力な取り組みが私は必要だと思います。  そこで、これくらいはやっていただけないだろうかという提案をさせていただきたいのですが、今御説明ございましたこととあわせまして、一九八一年、いわゆる地名総鑑が問題になったときに、当時の労働大臣でございました藤尾労働大臣が、同和問題にかかわる就職差別の絶滅を期するというふうに国会で御答弁をなさっておられます。その具体化として、七種類の通達をお出しになっていらっしゃいます。  具体的には、部落地名総鑑購入企業に対してということが一つ。それから二つ目には、株式上場の企業千八百社に対して。三つ目には、経営者団体、つまり、日本経営者団体連盟だとか経済団体連合会、経済同友会、全国中小企業団体中央会それから日本商工会議所等々に対してでございます。さらには、政府、各省に対して。そしてまた、都道府県知事に対して。また、関係都道府県労働主管部長に対してなどでございますが、株式上場企業に対しては、次のように通知をしているわけです。我が国の代表的企業の責任者である貴殿に対し、かかる就職差別を絶対に行うことのないよう率直にお願い申し上げたい。また、経営者団体に対しては、企業社会的責任において、差別の入る余地のない公正な採用選考を行うようお願いをしたところであり、貴殿におかれまして格別の御尽力を要請したい、このような内容のものでございます。  こうした差別事件が起きましたときに、担当大臣がいかに迅速そして適切なアクションを起こすかは大変重要ではないかというふうに思います。とりわけ職業安定行政というのは、最先端が御苦労されている割には、本当にそれが余りよく知られていない向きもございます。当該者以外にはなかなかアピールしにくい。この際、職安行政のアピールも含めまして、大臣にぜひともお願いをしたいというふうに思うわけでございます。  ここに関西の五つの経営者団体の声明なんかがございますが、今回の事態を遺憾として、各企業に公正な採用選考を行うことを改めてこの中では要請をしているわけでございますから、中央の方からも、大臣のそういったアクションをぜひお願いをしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  57. 甘利明

    甘利国務大臣 労働省では、現在まで、公正な採用に努めるよういろいろな手だてを施してまいりました。各企業、百人以上の規模企業にはその啓発の推進員を置くということで、これは九八%の企業で既に推進員を置いているわけでありますし、職安にその推進員の方々に集まっていただいて、啓発活動を労働省としてしているところでございます。  今先生から、かつて藤尾労働大臣がなされました文書通達を引き合いに出されてお話がありました。私といたしましても、経済団体に対して今後とも強力に要請をしていきたいと思いますが、具体的にどういう手段で行うかは大至急検討させていただきたいというふうに思います。
  58. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 推進員のお話、実はもう少し私はここで掘り下げたいと思うんですけれども、ほかに用意した案件もございますのでまた別の機会にと思っておりますが、具体的なことを大臣が、私がお願いをいたしました趣旨に基づいて御検討くださるというふうにお答えくださったと思ってよろしゅうございますね。ありがとうございました。  この問題につきましては労働省としても真相究明に取り組まれるということでございますが、しっかりやってもらいたいのと同時に、やはりスピードアップをしていただきたいということをお願いしたいと思います。こういった問題については、なお引き続き審議があると思いますけれども、この点については岩田労働委員長に、ここで終わりにしない、さらに議論を続けていくということで強くお願いをしておきたいと思うのですが、お答えは後ほどで結構でございます。  次に進んでまいります。  冒頭申し上げましたように、雇用情勢の悪化の中で、残念ながら雇用にかかわる差別はむしろ潜在的に広がっているのではないかと私は危惧をいたしております。部落差別、障害者差別、それから高齢者の差別、女性差別、パートや派遣などに対する差別などでございます。  その代表的な事例が、大手の人材派遣会社テンプスタッフの個人情報流出問題でした。同社は、昨年の一月に九万人分もの個人情報を流出させ、問題になっておりましたが、さらに三月、六万人の登録者の名簿データがインターネット上に掲載をされまして、売買の対象になっておりました。しかも、容姿ランクとしてABCがつけられていた。これらの問題については、当委員会において別途質疑をさせていただくつもりでございますけれども、余りにも露骨な差別で、本当にあきれるばかりと言わざるを得ません。  もう一つは、つい最近起きた男女別退職勧奨問題であります。  これは新聞にも報道されておりますが、石川県の鳥屋町というところで、十歳も年齢差がある男女の退職勧奨制度、これは文章に書かれているわけであります、それを設けまして、退職を強要された女性が裁判に訴える事件が起きております。公務員には平等原則があり、むしろ民間の模範となるべきであるにもかかわらず、男女で年齢が異なる退職勧奨は明らかに均等法違反でございます。四月一日から均等法が施行されるわけでございますけれども、均等法違反である。  男女雇用均等法を実効あるものにしていくためには、担当する労働省の役割は大きいと私は思います。先ほどからどなたか中央省庁再編の問題に触れておられましたけれども、各省庁の所掌事務がこれから定められていくわけでございましょう。私は、職場における平等や均等を実現していくためには、担当する局は必要不可欠だと思っておりますので、大臣にもこの際、十分にその点について御留意をいただきますよう、重ねてお願いをさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、川端委員長代理着席〕  次の質問に移ります。第二の質問は、ILOの条約の批准についてでございます。  この労働委員会におきまして、私は折に触れてILO条約の批准問題について質問をさせていただきました。現在、ILOには百八十一の条約が採択をされておりまして、我が国が批准をしているのはこのうちの四十二条約です。最近の批准は一九九五年ですね。百五十六号条約、家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約でございますが、それ以降、一本も批准をしていません。  御承知のように、OECD加盟国と比較しても、これも前にも触れさせていただいたわけですけれども、その平均批准数を大変大きく下回っております。国際公正基準についてのルールづくりには消極的というふうに言わざるを得ません。歴代の大臣も、この批准数の少なさについては改善すべきであるというふうにおっしゃいまして、積極的な取り組みの必要性を繰り返し答弁をされています。率直に申し上げて、実効が上がっていないと思います。  昨年の六月のILO総会において、経済のグローバル化の中で、経済だけではなくて、社会政策もやはりきちんと国際公正基準としての基準が必要であろうという立場からるる議論があったわけですけれども、ようやくILOの総会で労働における基本的権利と原則に関する宣言が採択をされたわけです。この宣言は、グローバル化のもとでの競争についての社会的公正基準、そして公正競争を確保していく上で最低遵守すべき労働者の基本的権利を定めたものでございまして、結社の自由、団体交渉権、差別の禁止、強制労働の禁止、児童労働の禁止というものであります。  具体的には七つの基本条約の実施が求められております。この七つのコア条約の中で日本がいまだ批准をしていないのは、第百五号、強制労働の廃止に関する条約、第百十一号、雇用及び職業についての差別待遇に関する条約、そして第百三十八号、就業の最低年齢に関する条約でございます。  御承知のように、昨年の労働基準法一部改正によりまして、使用者は、満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日まで児童を使用してはならないものとするとなりました。労基法の改正がなされたわけでございます。批准に向けて大きく踏み出したものと私は理解をしておりました。当委員会の附帯決議でも、七つ目に、同条約の早期批准促進に向けて検討を急がれる旨が書き込まれたわけでございます。  しかしながら、今国会の批准案件に提起をされているのは、ILOの百三十八号条約ではなくて、一昨年採択されたばかりのILOの百八十一号条約、民間職業事業所に関する条約でございました。  そこで、質問でございます。  まず、外務省に確認をいたします。今国会に批准案件として提出予定のILO条約は第何号でございましょうか。
  59. 上田秀明

    ○上田政府委員 お答えいたします。  政府といたしましては、現在、ILO条約のうちの、今御指摘の民間職業仲介事業所に関する条約、第百八十一号条約を、今国会に提出して御承認をいただくために、国会に提出すべく作業を進めているところでございます。
  60. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 続いて、もう一つ外務省にお伺いをさせていただきますが、ILOの百三十八号条約批准の案件が今国会に提出をされなかった理由は何なんでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  61. 上田秀明

    ○上田政府委員 お答えいたします。  先生からも御指摘ございましたように、ILOの関係の条約、たくさんございますが、それぞれの条約の目的、内容、我が国にとっての意義、国内的なコンセンサスの形成、そういうことを十分検討して、批准が適当であるというものにつきまして、国内法制等との整合性を確保した上で、順次批准をしてまいっているわけでございます。  今御指摘の第百三十八号条約、就業の最低年齢に関する条約につきましては、先生も御指摘のとおり、ILOの昨年の総会でのいわゆる宣言におきましても促進をすべきということとされておりまして、我が国といたしましても、批准のためにいろいろ準備をして、鋭意検討を進めているところでございます。この必要性につきましては十分認識をいたしております。  そして昨年、御指摘ございましたように、労働基準法の関係部分につきまして改正案も採択をいただいたわけでございますし、早急に提出すべく準備作業を進めたいところでございますけれども、国内法制との整合性につきまして、まだ若干さらに詰めて検討していかなきゃならないところがあるものでございますから、関係省庁とも御協議いたしまして、今国会への提出は残念ながら見送らざるを得ないというふうに考えております。
  62. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 私は、国際認識といいますか、外務省に苦言を申し上げるわけではないのですけれども、少し違うんじゃないのかなと思います。  と申しますのは、百八十一号というのは、今国会にこれから法案が提起をされまして審議をされるはずですね。国内法の整備は終わってないわけです。片方は、後ほど御質問いたしますけれども、大きな問題は解決している、あとは運輸省だとか外務省だとかとの関係であるというふうに思っています。関係省庁とのすり合わせをして、できるだけ早い時期にというふうにおっしゃられましたので、ぜひともその方向で急いでいただきたいということを申し上げまして、外務省さんは何か次がおありになるということで、どうぞ御退席ください。  続きまして、労働省伺いますが、百三十八号条約を批准するのに必要な条件整備として、労働基準法の最低年齢の改正以外に何が不足をしているとお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  63. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 この問題は先生よく御存じであるというふうに承知いたしております。  ILO百三十八号条約の一番大きな批准上のネックは、今先生おっしゃいましたように基準法上の問題でございましたが、これも先生お話しのとおり、先般の改正によりましてその部分は乗り越えたわけでございます。しかしながら、それ以外に、現在船員法にもやはり最低年齢に関する規定等がございまして、こういった国内法制上の細部につきましては、現実にどういう不整合があるのか、詳細に検討する必要がございます。そういう意味で、同条約の批准に向けまして、今後とも鋭意検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  64. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 率直に申し上げまして、ILOの百三十八号条約の批准につきましては、我が国にとってばかりでなく、特に、この条約を批准して、我が国は国内の労働市場に対してそれほど大きな問題はないのではなかろうかと思っているわけで、そういった意味から、日本ということだけではなくて、他の諸国、とりわけアジア諸国に対して大きな影響を持つというふうに思っております。  過酷な児童労働というのは日本には存在しないというふうに言われておりますが、昨今また新たな、少女に対するポルノの問題なんかについても規制をする法律をつくらなければいけないということで、既に政府の方から法案も御提出をされているわけですけれども、いずれにしても、この百三十八号に抵触をするという立場からいえば、そういったことは存在していないのではなかろうかと思います。  しかし、世界には、学校にも行っていない二億人以上の子供たちが労働に従事をしている、こう言われているわけです。そのことにつきまして、労働省予算を拝見いたしましても、援助のための措置はとられているわけですが、それだけではなく、こういった基準について、私は、日本が率先をして姿勢を示すことが大変大事というふうに思っております。  アジアの国々では、子供たちの買春、売春、過酷な労働を強いられている人たちがたくさんいるわけでございます。ILOはことしの六月に、最悪の形態の児童労働の禁止及び即時撲滅に関する条約を採択すると。新しい条約でございます。ですから、私は、この採択をされる新しい条約の前に百三十八号条約が批准をされることが大変大事で、後から批准をされるよりも、日本のプレゼンスとして、できるだけ早く批准の段取りを整えていただくことがアジアの中の日本としてとりわけ大切なのではなかろうかと考えて、前々からこの委員会質問を幾度となくさせていただいたわけでございます。  私は、国際的に展開されるこうした児童労働を規制する運動の先端にこそ日本が立っていただきたい、支援ももちろんでございますけれども、そのことも含めて先頭に立っていただきたい、そのように願うわけです。  そのために、労働基準法改正によって国内法の整備で批准のための最大の困難がなくなったわけでございまして、船員法とのすり合わせが一番大きな問題だろうかと思いますが、そういったことをやろうと思えば急げるんだというふうに思っております。百三十八号条約、早急に、いわば待ったなしで批准をすべきと考えておりますけれども、この点について労働大臣の御見解決意をお聞かせいただきたいと思います。
  65. 甘利明

    甘利国務大臣 御指摘のとおり、国内法との整合性をとる必要がありまして、基準法は改正をいただいてそれがとれたわけでありまして、あと船員法が一番大きいネックになっていると思います。他省のことでありますが、こちらから働きかけをいたしまして、できるだけ早く法改正をして対応してもらうように働きかけたい、次期通常国会を念頭に置いて対応できるよう働きかけていきたいというふうに思っています。
  66. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 大変ありがとうございました。  次期通常国会、私は、もうここまで来ているんだから、その気になればそんなに時間はかからないんじゃなかろうかと思いまして、実はできれば臨時国会と申し上げようと思ったんですが、大臣から通常国会で手続ができるようにという御決意を述べていただきましたので、お礼を申し上げて、質問を終わりにさせていただきたいと思います。大変ありがとうございました。
  67. 川端達夫

    ○川端委員長代理 次に、城島正光君。
  68. 城島正光

    ○城島委員 大臣、長時間御苦労さまでございます。  私は、現下社会あるいは経済状況、特に戦後最悪と言われる雇用情勢、これを見たとき、労働行政というのはまさしく今行政の中で最重要課題であるというふうに思っているわけであります。すなわち、言い方を変えますと、労働大臣そのものが最重要閣僚であるというふうに私は率直に思っているわけであります。最大行政官庁というのは労働省である、現下ではまさしくそういう状況にあるんではないかという認識をしているということをまず申し上げたいというふうに思います。  それで、昨年の、特に年末年始にかけて、いろいろなところで大臣のごあいさつ等いろいろ聞かせていただいてきたわけでありますが、そういったことを含めて、冒頭、労働大臣の基本的な理念をお伺いしたいというふうに思っているわけであります。  先日の所信表明の中で、労働大臣としての基本的な認識ということで、今申し上げました雇用中心に、「雇用安心を実現すること、そして、働く人一人一人が希望にあふれ、安心して働ける社会を実現することが労働行政が果たすべき責務であると考えております。」というふうに述べられておりまして、「私は、このような認識のもと、新世紀に向けた繁栄へのかけ橋を揺るぎないものとするため、雇用創出、安定という堅固な礎を構築することが必要であると考えており、次のような各般の施策を積極的に推進してまいります。」ということで、まさしく雇用というものを真正面からとらえられているということは大変よく理解できるところでありますが、基本認識というのはそういうことだと思いますが、その前提となる、ちょっと幅広い概念で恐縮なんですが、ぜひ大臣の基本理念をお伺いしたいなというふうに思うわけであります。  すなわち、労働大臣としてというところにもちろん限定したところでありますが、一体、どのような社会ということを望ましいというふうに考えられておられるのかという点で、例えばということではございますが、例えば、今、現状の社会経済状況ということをあらわす表現として、市場万能主義ですとか、あるいはカジノ経済型だというようなことに代表される、これは特徴的でありますが、代表されるようないわゆる自由主義を中心としたアメリカ型の経済体制、一方で、そういう経済的な自由というのはありながらも一方では社会的な規制ということもきちっとやるべきだ、あるいはさらにセーフティーネットみたいなものをしっかりやるべきだというような意味での、ヨーロッパ型というんでしょうか、大きく言うとその二つの潮流があるかもしれませんが、そういったことをベースとした中で、労働大臣として、どういった基本理念をお持ちなのかをまずお尋ねしたいと思います。
  69. 甘利明

    甘利国務大臣 現在の世界の流れというのは、大競争時代に象徴されるように、確実に競争の激化の方向に向かっていると思います。まず、世の中の競争に日本だけが取り残されてしまうとすべてを失うということになりますから、これに勝っていかなければならないわけですけれども、しかし、先生指摘のとおり、市場原理、市場主義、市場万能かというと、私は実はどうしても素直にそうだとは言い切れないんであります。  私はよくF1レースの車に例えるんでありますけれども、F1レースカーというのは冷却ファンというのがついていないんでありまして、基本的には走っていることによってエンジンをクーリングしているわけであります。長時間とまるとオーバーヒートしてエンジンがだめになる、つまりいつも走っていないと正常に機能しないという車なんであります。世の中がいつも走っていないと脱落しちゃうということであって、本当に、豊かさはともかくゆとりが得られるんであろうか、精神的な居心地のいい社会というのができるんだろうかということをいつも思っているんでありまして、競争政策の中にどうやってとまって景色を見ても社会のはぐれ者になっちゃわない仕組みを仕組んでいくかということを、正直、どうしたらいいんだろうかといつも自問自答いたしております。  競争政策は競争政策として大事なんでありますが、要は、競争に敗れちゃった人、あるいは取り残された人、そういう人たちがしばらくリハビリ期間を持って再挑戦ができるような仕組みを世の中の競争政策の中に各所に仕組んでいくことが大事なんだろうなというふうに思います。それは労働政策の側から考えること、あるいは産業政策自体の中に織り込んでいくこと。  実は、私は、通産省に、産業政策として再挑戦のシステムをどう仕組んでいくんだという問題は個人的に投げかけておりまして、敗者復活戦を競争政策の中に産業政策として仕組むのはどう考えるかという宿題も個人的に彼らに出しているわけでありまして、失敗したらもう脱落者というんじゃなくて、意欲がある限り何度も挑戦ができる、そして負けてもリハビリがちゃんとできるというような仕組みをぜひ組み込んでいきたいというふうに基本的には考えております。
  70. 城島正光

    ○城島委員 よくわかりました。また、ぜひそういう方向で労働行政を進めていただきたいなと。全く同感であります。  特に、最後の方でお触れになりましたが、産業政策としてそういう仕組み、システムをどう構築できるかというのはまさしく大変重要なポイントだと思いますので、ぜひ通産を含めて検討に拍車をかけていただければありがたいなというふうに思います。  基本的な理念というのは同感だなというふうに思いますが、私は、この間の労働行政の流れを見ておりますと、大臣はそうはおっしゃいますけれども、どちらかというと、いわゆる規制緩和あるいは規制撤廃、そういう流れの方が強いのではないかな、それに対して、こういう必要な、今おっしゃった敗者復活戦も含めて、あるいは一たん敗者になる人を救うという面でのいわゆるセーフティーネットみたいなものとのバランスでいうと、やはりちょっと規制撤廃、規制緩和の方の流れが先行し過ぎているんじゃないかという感じが率直に言ってしているわけですね。  これは別に労働行政だけじゃなくて、金融なんかにおいてはまさしくそういう現象があらわれていると思いますが、バランスを失したりあるいは手順が狂ったりしますと、それは大変大混乱が起こるだけでありまして、不要な規制を撤廃していくという流れはもちろん正しいと思いますが、同時にそういった場合の、敗者も含めてでありますが、社会的規制あるいはセーフティーネットとの歩調みたいなものを非常にタイミングよくやっていかないと、これは、特に労働行政において言いますと、場合によっては雇用にも直結した話になりますので、大変重要ではないかなというふうに思っています。  今申し上げましたように、私の実感では、労働行政において、ちょっと規制撤廃の流れの方が先行し過ぎている嫌いがあるんじゃないかという感じを持っているのですが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
  71. 甘利明

    甘利国務大臣 例えばアメリカと比較をしますと、日本の今までの政府政策は割と社会民主的な政策で来たと私は思うのです。今、このままの状況で国際社会に取り残されないで済むかということに関して言えば、大企業も今転換期を迎えておりますし、新事業の芽もなかなか育たない。そういう意味では、新しい活力を生み出すという意味での規制緩和というのは非常に大事だと思っております。  ただ同時に、先生が御心配の点は私も実は心配をしておるのですが、正直、世の中の風潮が規制緩和はすべていいんだという流れになっておりまして、今はどうかというと若干軌道修正されたかもしれませんが、一時はマスコミが規制緩和に異議を申し立てる者は守旧派であるみたいな論陣をずっとしかれて、本当にいいんですかと言った人間が後ろ向きと言われた時代があったと思います。  社会の活力を生むための規制緩和セーフティーネットとして重要な規制、それをきちっと並列的に、冷静に議論すべきだというふうに個人的には思っております。     〔川端委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 城島正光

    ○城島委員 いわゆる規制緩和セーフティーネット関係でいうとそういう認識だということは、ほとんど違和感なく私も同感であります。  したがいまして、私は、そういう観点からすると、ここのところの労働行政というのはちょっと規制緩和の方が先行し過ぎているのではないかなという感じを持っていたということを申し上げたのですが、今大臣がおっしゃったように、規制緩和万能ということではなくて、やはり活力を生み出す、あるいは新しい産業、新しい雇用を生み出すという観点での規制緩和というのは積極的にやっていきたいということについては、私もそういう点では同感でありますので、そういった観点で、今後もぜひ規制緩和社会的規制ないしはセーフティーネットのバランスをとっていっていただきたいなというふうに思います。  そういう中で、少し具体的に問題提起をさせていただきたいわけでありますが、今、勤労者がどういう実態にあるかという点を、連合等のデータから少し申し上げたいというふうに思うわけであります。  連合の生活実態アンケート、これは九八年のデータでございますが、実は九八年は、長引く不況のもとで、組合員の生活実感に対しての変化が大きく生じているということであります。このデータをちょっと申し上げますと、現在の生活について満足しているという人の割合が約四一%、それに対して不満という人の割合が五八%、全体の約六割に達する人が現在の生活については不満であるという結果が出ているわけであります。実は、この連合の同じ調査が九〇年からずっと一貫して実施されているわけでありますが、九七年までは、この比率、すなわち四対六が逆でありまして、満足している人の割合が六割、不満が四割ということが続いていたわけでありますが、九八年になって初めてこの比率が逆転をして、不満足という割合が六割になったという転換点になっているわけであります。  詳細に見てみますと、企業規模別で見ても、あるいは年齢別に見ましても、いずれも半数以上の人は不満である、不満足であるというふうに答えているというわけであります。特に年齢別で見ると、生活に関するさまざまな問題を抱えているというふうに思われる四十代に至っては、不満であるというのが六割を超している、大変大きな比率になっているというのが一つ実態調査から出てきていることであります。  それから、もう一つ、極めて重要だと思われるデータがこのアンケートの中から出ているわけでありますが、それは、倒産とか業績不振による解雇についての不安を感じている組合員の割合、これが急速にふえているということであります。特に企業規模別に見ますと、九十九人以下の中小零細企業の組合員では、倒産や業績不振による解雇についての不安を感じている人が五割を超えているということでありまして、いわゆる中小企業労働者の多くが倒産による解雇に対する不安を抱いているという実態であります。  例えば同じような状況で、大企業の、五千人以上の規模の従業員について見ますと、確かに、倒産とか業績不振による解雇についての不安というのは、九十九人以下の五〇%を超えるところの約半分でありますから、相対的に低いわけでありますが、大企業の勤労者の不安は、今のこの企業に勤めたいんだけれども出向や転籍の不安があるというふうに答えている人が四割に達するということでありまして、大企業でありますと、そういった面での雇用不安があるということであります。  いずれにしても、生活に対する不満足、さらには雇用に対する、将来に対する不安というのがやはり実態としても明らかになったアンケート結果ではないかなというふうに思うわけであります。  こういう点からしても、大臣所信表明にもありましたし、私も冒頭述べましたように、今の政治における最大のテーマ、目標は、雇用を何とか安定させることによって社会の安定を図る、そして勤労者の安心というものを取り戻すということが政治の最大のテーマではないかなというふうに思うわけであります。  ちょっと話が飛ぶようでありますけれども、冷戦終了後に、ある著名な世界のリーダーがこう言ったのを私は鮮明に覚えているわけであります。冷戦が終了した後の世界という観点から見たときの政治における最大の敵は、貧困と貧富の差の拡大である、これに挑戦しなきゃいかぬということを言われたことを鮮明に覚えているわけであります。もちろん、貧困とか貧富の差の拡大というところまで我が国は行っているわけではありませんが、基本的な、本質的な問題は同じような状況にあるというふうにとらえた方がいいのではないかと思うわけであります。  そういう観点からすると、我が国の政治が今いい意味で戦わなきゃいかぬ相手というのは、テーマというのは、国民あるいは勤労者をこれだけ覆っております生活に対する不安、不満、そして雇用に対する不安であるというふうに思っているわけであります。  そういう点では、所信表明で述べられましたけれども、こういった今勤労者や社会を覆っております生活や雇用に対する大きな不安というものに対して、大臣決意を改めてお伺いしたいというふうに思います。
  73. 甘利明

    甘利国務大臣 御指摘のとおり、我々が戦うべきは、国民が持っている不安を払拭する、不安との戦いだというふうに思います。その不安の中身は、雇用不安であり、あるいは年金不安であり、あるいは医療制度に対する不安であり、現在と将来の不安をいかに払拭していくかにあると思っております。  私は、雇用不安の部分払拭を担当するわけであります。雇用不安は、景気が悪いということが一番大きい原因でありますが、それで済ませてはいけないというふうに思いますし、景気が悪い中でも雇用の改善をする余地はないのか、あるいは企業がリストラをしていく中で雇用不安を起こさないようにする手だてはないのか、今状況が変わらない中でどう改善をしていくか、いろいろな観点から施策を提案したつもりでありまして、それが雇用活性化総合プラン。この中には、現状の中で解決をしていくべきもの、それから、将来に向かってむしろ現状の枠を拡大していく、つまり雇用の枠を拡大していくという提案等、いろいろなものが盛り込まれているわけであります。  さらには、雇用不安の解消は、労働省のみならず政府全体として取り組んでいくわけでありますから、通産省中心産業再生計画の具体的な策定が進んでいるわけでありますから、その中でも、雇用の場をいかに早く拡大をしていくか、こちらに我々も今注文をつけているところであります。  いずれにいたしましても、御指摘のとおり、不安を解消するということが現下最大の政治課題であるというふうにとらえております。
  74. 城島正光

    ○城島委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それでは、少しまた具体的に幾つかお尋ねしたいと思いますが、その雇用に関してであります。  実は、今の状況から見て当然でありますが、解雇が相当ふえてきている。私のところにも、昨年の秋、何人もの人が解雇についての相談に来られたというのがあります。これはもちろん双方聞かなきゃいかぬわけですけれども、聞いてみますと、かなり一方的だなと思うような解雇の状況。  ただ、ここで問題なのは、そういった人たち、特にこの場合は、中小零細の企業でもちろん労働組合はないというのが圧倒的に多いわけだと思いますが、そういう人たちが突然、一言で言えば理不尽にと言った方がいいと思いますけれども、例えば解雇通知を受ける。そうすると、頼るところというのは、まずみんなが思うのは、労働基準監督署なんです。そこへ相談に行く。しかし、率直に言えば、ほとんどきちっとした対応あるいは有益なアドバイスが得られないということの中で、あきらめて、多くの人は泣き寝入りをするということがずっと続いてきたのだろうと思います。  確かに、前回の労働基準法改正の中で、昨年十月一日からそういったものが改正になった。これは大変前進だと思いますけれども、現実的には、まだそういった状況が多くの勤労者の皆さんに認識されていないという段階だと思います。ということを含めて、昨年、私も実際そういうことを体験して、基準監督署じゃ当てにならないということの中でいろいろ相談を受けたというのがございます。  そこで、これは政府委員の方でいいのですけれども、現実的に解雇という実態はどれぐらいふえているのかというのがありましたらその状況と、さらには、そういうふうに昨年十月一日から基準監督署の対応は少なくとも変わっているはずでありますので、そういう中で、具体的に監督署長が警告ないし指導を発した件数、実績がどれぐらいあるのか、その辺の具体的なデータがあったら、お示しいただきたいと思います。
  75. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 まず、最近の解雇をめぐる労使間でのいわばトラブル等の状況でございますが、今正確な統計的なデータは持ち合わせておりませんが、監督署の窓口から見ました解雇等をめぐる問題についての申告、相談件数はここのところかなり増加いたしておりまして、九年度それから十年度を見ますと、年間で二万件を超えて、現在は二万三千件ぐらいまで達してきているという状況にございます。  御指摘ございましたように、昨年九月成立させていただきました改正労働基準法を受けまして、私ども、昨年十月一日から、そうした問題、とりわけ民事上のトラブルにつきまして、都道府県の労働基準局長が申し出を受けまして、簡易または迅速な解決へ持っていくための制度を創設していただきました。  私ども、成立後間もないということで、全国の都道府県労働基準局に担当官を配置し、その手足となる労働条件相談員等を大幅に増員するなど、かなり準備に追われた嫌いはございますが、そういった準備も一巡してまいりましたので、現時点ではこの制度の利用者、まだほんの数件にとどまっておりますが、この制度の対象として処理し始めたという状況でございます。  先ほど申し上げましたように、監督署の窓口には二万三千件ほどのそうした申告、相談があるわけで、こうした問題への潜在的な需要というのは大変高いものがあると私ども考えておりますので、早急に一層の周知徹底を図りまして、この新しい制度を労働基準行政の主要な任務の一つとしてしっかりと活用をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  76. 城島正光

    ○城島委員 二万三千件にも上る解雇についての相談等があるということでありますから、今局長がおっしゃったように、潜在的にはかなりの需要といってはおかしいのですけれども、期待するところがあるんだろうというふうに思います。  こういう状況ですから、ぜひ、こういった解雇、あるいは賃金不払い等も含めてでありますが、そういった観点での、勤労者にとって本当に頼りがいのあるというか、そういう労働基準監督署に脱皮していただきたいな、率直に言ってそういう印象と、それから私自身の体験からいって、そういうふうに申し上げたいと思います。  そういう、特に労働基準監督署の姿勢が変わったということについても、ぜひもう一段のPRを含めて、その辺もお願いをしたいなというふうに思います。  続いて、同じ雇用関連で、午前中、大村委員の方も質問があったようでありますが、身障者雇用について、これも私は最近の状況においてちょっと危惧をしている点でありますので、ここについても少しお尋ねをしたいのであります。  率直に言って、身障者の方の解雇というのがふえているのではないかな、そういう印象を持っております。その状況、それから法定雇用率が昨今どういうふうになっているのか、これも政府委員の方でも結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  77. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 障害者雇用率は、毎年六月一日現在で調査をしておりますけれども、昨年の六月一日現在、このときは法定雇用率が一・六%でありましたが、達成率が一・四八%ということになっております。法定雇用率の達成率ですけれども、毎年少しずつではありますが向上してきておりまして、この点は景気の好不況と関係なしに右肩上がりで少しずつ向上しておりまして、関係者の方の大変な御努力があろうかというふうに思います。  それから、ちなみに公共職業安定所を通じた障害者の方の就職件数ですけれども、平成九年が二万八千八百人ありましたが、平成十年は二万六千三百人ということで、やや減じております。  それから、事業主が障害者の方を解雇しようとするときには事前に所轄の安定所長に届けるように法律で義務づけをされております。必ずしも全事業所がこれを履行しているかどうか明らかではありませんが、少なくとも傾向はうかがえると思うのであります。この数字が、平成九年の計で約一千六百名でありましたが、平成十年の計では三千百人ぐらいの方について解雇の届けがあった。この点につきましては、現下経済状況を反映していると思いますが、大変厳しい状況になっているというふうに認識をしております。
  78. 城島正光

    ○城島委員 一気に約倍にふえているということですね。やはりこの経済環境ということだと思いますが、それにしてもかなり急増だというふうに思われます。この点は何らかの対応が必要じゃないかと思うのですが、どうでしょうか、大臣。  ちょっと質問通告していなかったかもしれませんが、この辺について、私もこの数字を今初めて聞きましたので、ふえているとは思ったのですが、これだけ大きくふえているとは思わなかったので、あえて御見解を承りたいと思います。
  79. 甘利明

    甘利国務大臣 障害者雇用に関しては、法定率を引き上げさせていただきまして、労働省としても、各企業にこれを極力遵守するようにという指導を行っているところであります。  ただ、御指摘のとおり、不況になりますと、どうしても整理解雇の対象にされやすい。ただ、障害者を解雇する際には届け出をするということになっておりますし、今回の雇用活性化総合プランの中でも障害者対策トライアル雇用を含めて、事業団体連携をとりながら、できるだけ職を失った方々が再復帰できるような新しいプランも組み込んだ次第であります。  いずれにいたしましても、今までの施策と新しい施策、その周知徹底をしっかりと経済団体に図っていきたいというふうに思っております。
  80. 城島正光

    ○城島委員 これは、私も実際いろいろ、身障者の方の職場というのでしょうか雇用を拡大する上において、現実、職場段階で見てみますと、やはり仕事とかあるいは職域の開発をしていかないことにはなかなかふえていかないなというのが実感であります。したがって、職場あるいは仕事をできるだけ拡大していく、そういった取り組みも底流にないとなかなか拡大していかないなというふうに思います。  そういったことですとか、あるいは職場のまさしく環境整備していくということも一方で必要なわけなんですが、身障者の方にふさわしい、あるいはそういった方々がより力を発揮できるような職場をより一層開発あるいは拡大していくという部分での取り組みもぜひ労働省としてお願いをしたいというふうに思います。この点については強く要請をしておきたいというふうに思います。  時間がかなり迫っておりますので、私としては最後のテーマに移らせていただきます。  これは、最初から申し上げたいろいろな経過も含めた現在の状況、あるいは雇用状況も含めての私なりの結論でありますけれども、いわゆる労使協議制という問題について少し検討をお願いしたいというふうに思うわけであります。  すなわち、もう繰り返すまでもありませんが、今まで論議したような状況にあるということの中で、さらにつけ加えて言いますと、今、持ち株会社ですとかあるいは来年から導入が予定されております連結決算制の導入等々含めて見ると、企業の経営環境がさま変わりしてきているというのがもう一方であると思います。この不況下におけるさまざまな状況プラスこれからも大きく雇用環境変化をしつつある。これは同時に、働き方という面においてもかなり大きな変化が生じつつあるということだと思います。場合によっては、今起こっている状況は、そういった環境変化からくる新しい段階でのリストラが行われているという部分もあるというふうに私は思います。  いずれにしても、集団的な労使関係はもとより、個別的な個々人の労使関係においても大変大きな変化が生じつつあるという点もかんがみてみますと、労働大臣も先ほどちょっと触れられましたけれども、市場万能主義ではないというふうにおっしゃいましたが、そういう観点からしても、ある面で日本の今までのよさ、よさというのはある面で強みですね、というところの中で、特によさというものはできるだけ維持していく必要があるだろう。  もちろん変えていかなければいかぬところについては積極的に変えていくということは前提の話でありますけれども、そういう中において私は、やはり最大日本の武器、ある面で武器というのは人材であったのではないかと思いますし、まさしくこれからもそうであろう。資源が人材しかないと言った方がいいかもしれませんが、そういう点からすると、長期的に人材をきちっとやはり育成をしていくということも含めた、長期的視点に立った経営が非常にいい日本の強みではなかったのかなというふうに思います。それを支えてきたのが、ある面でいうと、いろいろな段階を越えてきた労使関係ではなかったかというふうに思います。  であって、これはまさしく、先ほど大臣おっしゃった、一言で言えば大競争時代、あるいは国際競争力ということも含めて見ますと、そういう観点からしても、人材をきちっと育てていく、そしてまたそういう意思疎通を図るための安定した労使関係というのはますます大事になってきているのじゃないかというふうに私は思うわけであります。  こういったことに対して手をこまねいていますと、先ほど言いましたように、労働環境が大きく変化していく中で、例えば経営と従業員との意思疎通というのがなかなか難しくなってくるということも容易に想定されますし、現実起こりつつあるというようなことも含めて見たとき、先ほど申し上げましたように、私なりの判断というのは、かなり大きく日本では長年の中で定着をしてきていると思われるこの労使協議制というものをより一層活用していくという観点に立って制度化をしていく、場合によっては法制化をしていくというようなことが、この大競争時代を乗り切るためにも、日本的なよさあるいは強みを残すためにも必須ではないかな、私はそういうふうに思っているわけであります。  そういう観点で、幾つか具体的にお尋ねしたいのは、今労使協議制というのは一体どれぐらい導入されているのか、まずその辺をお尋ねしたいというふうに思います。
  81. 澤田陽太郎

    ○澤田政府委員 お尋ねの労使協議制につきましては、私どもの方で昭和四十七年以来おおむね五年置きに労使コミュニケーション調査というものをやっておりまして、その直近の調査、すなわち平成六年の結果によりますと、労使協議制を導入している事業所の割合は平均で五五・七%ということになっております。社会経済生産性本部がやはり平成六年にやっております同様の調査でも五七・一%という数字が出ております。  私どもの調査、五五・七の内訳をちょっとだけお話ししますと、労働組合のあるところでは八○%に達しておりますが、労働組合のないところでは三〇%弱というような状況にございますし、規模別でもかなりのばらつきがございます。
  82. 城島正光

    ○城島委員 わかりました。  そういう中で、例えばアメリカとイギリスの例をちょっと引きながら最後日本の問題に移りますが、時間がないのではしょりますけれども、アメリカにおいても、ここへ来て、いわゆるハイロードアプローチという、これは日本的に訳せば、困難であるけれども建設的な道ということを経営方針としてとる企業がふえてきているというふうに言われます。  これはいろいろなことがありますけれども、この経営のアプローチというのは、まさしく従業員との対話も重視していくということが含まれている。もちろん、一般的に一言で言えば、高生産性、高賃金ということを目指していこう、難しいけれどもそういうアプローチをしていこうということでありますが、そのベースには、多様な労使関係というものを非常に重視していくということがあります。  また、イギリスの新労働党政権の提唱も同じようなことで、利害当事者参加型の経営ということを積極的に進めていくということを提唱しているわけであります。  さらには、日経連の労働問題報告の中にも、日経連としても、これはずっといろいろ書かれていますが、ポイントだけ申し上げますと、  多様な問題を労使協議の場で深めることが求められる。 さらに、組合のないところにおいてもということで、同じように、今後組合のないところにおいても、  経営側と従業員代表とが相互に情報・意見交換を行なう経営協議会など労使協議の仕組みを活用し、今後一層、労使の意思疎通を深める努力が期待される。   労使は社会の安定帯の役割を担っている。 いわゆる安定という役割を担っているという意味ですね。  あらゆる産業企業企業と従業員の間に真の意思疎通が図れれば、この安定帯はより強固に、かつより大きな役割を果たし得ることになる。 日経連もそういうことについての問題意識を非常に強く持っているということであるわけであります。  ぜひここは、最初申し上げたように、規制緩和、規制撤廃という流れと同時に、いい意味での社会的規制、あるいはセーフティーネットということとのバランスという意味においても、この辺の労使協議制についてはより大きく重要性が増してきているのではないかというふうに思うわけであります。  少なくとも、こういった面においての研究会みたいなことはぜひスタートしてほしいなというふうに強く思うわけでありますが、この点について労働大臣の御見解を承って、質問を終わらせていただきたいと思います。
  83. 甘利明

    甘利国務大臣 労使協議制については、先ほど労政局長がお答えしましたとおり、六割弱ですかのところで設けている。ある方がいいか、ない方がいいかといったら、ある方がいいと私も思います。  ただ、個別の背景を見ますと、いろいろな創意工夫がなされているようでありまして、例えば、検討する対象項目とかその結果の取り扱いとか団交との関係とか、いろいろな工夫を労使でしているようでありますから、労働省として、強制するというよりも、自発的にでき上がってくるのを支援するといいますか、そうした方がいいのかなというふうに思っておりますが、いずれにしても、大事な項目であり、いろいろ勉強させていただきたいと思います。
  84. 城島正光

    ○城島委員 よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
  85. 岩田順介

    岩田委員長 午後一時四十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  86. 岩田順介

    岩田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。前田正君。
  87. 前田正

    ○前田(正)委員 改革クラブの前田正でございます。  公明党・改革クラブを代表して質問をさせていただきたいと思います。  昨日、甘利労働大臣から所信をいろいろとお聞かせをいただきました。その中でいろいろと書いておられるわけでありますけれども、特に、「雇用の改善は景気回復よりおくれることから、今後しばらくは厳しい状況が続くことが予想されますが、このタイムラグをできるだけ小さくし、雇用安心を実現すること、そして、働く人一人一人が希望にあふれ、安心して働ける社会を実現することが労働行政が果たすべき責務であると考えております。」こう所信を述べておられるわけであります。私も同感に思うところでございますし、大変結構なことでございます。こういう厳しい状況の中で、できるだけ雇用安心に向けて労働行政をやっていただきたい、かように思うところであります。  私が考えますところ、実は経済状況というものは、バブルが崩壊をして以来というもの、全く景気は一向に上がっていくという状況ではありません。そこで、大臣所信の中に、いろいろな施策を講ずることによって雇用も安定していく、あるいはまた雇用安心ということも実は述べておられるわけであります。だけれども、こういう状況下において雇用安心、あるいは安心できる雇用ということが本当にできるのかどうかということに、私は大いなる疑問を感じておるところでございます。  昨年の十二月の完全失業率は四・三%であります。それでは昨年の一月の時点ではどうであったかといいますと、そのときは実は三・五%でございました。たった一年もたたないうちにその差〇・八%、実に約五十五万人失業者がふえた、こういうことになるわけでございます。  昨年の三月の労働委員会の議事録等々を見てみますと、当時は伊吹労働大臣でございました。そのときの答弁では、とりあえず予算とこの関連法案を早く成立をさせてくれ、それが雇用対策上何より必要なことだ、こう答弁をされておられるわけであります。その後、予算は上がりました。そして、さらに経済対策としての補正予算も組まれたわけであります。しかし、結果的には、実質的によくなるどころか、逆に、いわば五十五万人の失業者をふやしておるという現実でございます。  そこで、昨年、失業率が〇・八、五十五万人ふえた原因一体どういうところにあったのか、あるいはまた、そのときの労働施策には全く間違いがなかったのか、この点の現状について、労働大臣のまず御所見をお尋ねいたしたいと思います。
  88. 甘利明

    甘利国務大臣 三・五%から四・三%に悪化したと。中身を分析をしますと、会社の都合、事業主の都合による失業、つまり非自発的失業がふえているわけでありまして、景気がより深刻度を増したことによって会社がなかなか現状の体制で立ち行かなくなったということで整理解雇に踏み切ったという点が主原因であると思います。  雇用対策に落ち度はなかったかという御指摘であります。全くなかったとは申しませんけれども、打てる範囲での対応は、それなりの効果は上がったと思います。経済対策雇用対策、春にやりましたけれども、それがなかったらやはり深刻度合いはもっとひどかったのではないかというふうに思っております。  いずれにしても、景気回復をさせることが抜本的な処置でありますが、現状が変わらずとも、その中の工夫で、ミスマッチ解消等によって多少なりとも改善する余地はあるのではないかということを、春そして十一月と組ませていただいた次第であります。
  89. 前田正

    ○前田(正)委員 労働大臣は、労働施策には間違いはなかったとは言えないけれども、今日五十五万人程度で抑えられたということは確かに労働施策というものが大分きいておったというふうなことだというふうに理解をするわけであります。  私は、経済雇用というものは、これはもう一体であって、比例関係にあると思うのであります。すなわち、景気が悪くなると失業者というものはどんどんふえる、一方景気がよくなるとどんどん、そういう意味では雇用がよくなってくる、こういう関係であろうと思います。  私は、この間の一月の二十六日の予算委員会質問をさせていただきました。総理にいろいろと質問をした中で、昨年の橋本政権、この橋本政権のいわば政策の失敗というものが景気をこのようにして大分後退をさせたということを申し上げたわけであります。  また、経済企画庁から出ておりますミニ経済白書という中にもいろいろ書かれておるわけでございますが、銀行の不良債権というものを政府が先送りした、そしてまた景気対策だといいながら実は公共投資を次から次へと打ってこられたわけでありますけれども、しかしその公共投資というものは景気対策には余り影響がない、むしろ財政の赤字負担というものが非常に大きく足を引っ張った。こういうミニ経済白書というものが出ておるわけでございまして、総理も、責任も非常に認めるということもおっしゃっておられたわけでございます。  要するに、経済政策の失敗というものがあって失業率の増大あるいはまた雇用の不安を増長させているように私は思うわけであります。  そこで、ことしの十二月末ごろ、一体失業率というのは、政府として、大臣としてどれぐらいを見ておられるのか、あるいはまた来年度の労働省の施策は、ことし、特にどういう点を重点的に置いて組み込まれたのか、その辺をひとつまたお聞かせいただきたいと思います。
  90. 甘利明

    甘利国務大臣 ことしの末に失業率がどのくらいに行くかと。経企庁長官は予測がお仕事かもしれませんけれども、私の口からこれぐらいに行くであろうということはちょっと申し上げづらいのでございまして、経企庁長官が、昨年の十、十一が景気の底で、今そのまま底をはっている状況だということを説明されました。失業率雇用失業情勢は、景気の後追いで、大体五、六カ月後を行くという過去の例がありますけれども、そうだとするならば、五月ぐらいが雇用情勢は一番厳しいときを迎えるということになるわけであります。そこらまでは私も多分閣僚をやっていると思うのでありますが、そういう意味で、とにかく私の在任中を底にしたい、それ以上悪くならないように万全の策を講じていきたいというふうに考えております。
  91. 前田正

    ○前田(正)委員 経済の非常に予測のしがたい、こういう状況でありますから、十二月ごろに失業率がどれぐらいになるのかということを予測するというのは大変難しいとは私は思うわけであります。しかし、行政を進めていくという中で、失業率というものが大体これぐらいであろう、あるいはまた最悪でもこれぐらいであろう、こういう予測、計画というものを立てながらこういう労働行政というものは進めていかなければならないだろうと思っていますし、また大臣も、そういう弱気ではなしに、恐らく五月ごろにはまだやっているだろうということではなしに、これから引き続いてずっと労働大臣をやる、労働行政をやるのだという自信を持ってやってもらわなければ、おれはもう五月か六月にはひょっとすればやめなければならぬので、この間だけ何とかうまくやれればおれの大任は終わったというふうなことでは、労働行政あるいは雇用対策というような大臣はできませんので、私は労働大臣を引き続き何があろうともやるのだ、そういう気構えでぜひひとつやっていただきたいと私は思います。  それともう一つは、やはり景気対策雇用が変わるということですけれども、労働行政の中で景気対策あるいは景気の動向というのは微妙に関係するわけでありますけれども、一方では、景気に左右されないような対策というものもきちっと立てておかなければ、その都度その都度もちろん緊急を要する労働対策というのも必要でありますけれども、一方では、きちっとした、将来、二〇〇〇年以上を目標とするところの行政というものもぜひひとつ十二分に考えてやっていただきたいと思います。  それから、次にお尋ねをいたしたいと思います。何人かの先生方からも質問があったと思いますが、今政府で進められておる百万人雇用創出の問題でございます。  これもさきの予算委員会でも質問があったと思いますが、まず、百万人雇用創出の根拠を教えていただきたいと思います。
  92. 甘利明

    甘利国務大臣 百万人の雇用創出、そして安定という言葉をつけさせていただきました。もちろんこれは労働省のみならず政府全体で取り組むことでありますが、当面、あのプランを策定した時点ではっきり数字にあらわせるのは、GDP押し上げ効果プラス、労働省通産省連携をしている個人事業あるいは中小企業の新規事業創造部分、これを足して三十七万人くらいの創出効果、そして安定効果ということで、ほっておくと雇用が失われてしまう、それをしっかりと支えていく効果が六十四万ということで、約百万ということを算定させていただきました。  ただ、私は閣僚懇でも去年から再三申し上げているのでありますが、これはあくまでもその時点ではっきりはじける数字です、これ以外の数字が必ずあるはずですと。それは、通産省中心産業再生計画というのをつくっておりまして、将来を担う十五分野、例えば情報通信であるとか介護福祉であるとか環境であるとか、あるいは新製造技術であるとか、いろいろ将来の雇用を抱えてくれる、創出してくれる効果が期待される分野がありますから、それを産業再生計画で、規制緩和やら、あるいは集中投資を通じながら前倒しでやっていく、ということは、必ず雇用創出効果が生まれるわけでありますから、それをできるだけ早くはじいて、安定ということの力をかりなくても百万人に近い数字がはじけるようにしてほしいという要請は行っております。
  93. 前田正

    ○前田(正)委員 今大臣から百万人雇用創出の内容についていろいろ御説明をいただいたわけであります。要するに、実態としては、GDPあるいは経済成長率の問題で約三十七万人の雇用確保というものが認められる、あるいは残りの六十四万人に対しては雇用の安定というものを中心としてやっていく、こういうことだと思います。  憲法にも、第二十七条で、勤労の義務が規定されております。それは「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」こう書かれておるわけでございまして、第二十七条には、勤労の権利も明確に規定しておるところであります。しかし、残念ながら、今働く場所がない。失業者全国で約三百万人もいるという認識があるわけでございまして、百万人の創出ということではなくて、本当はやはり三百万人の雇用創出と言わなければならないというふうに私は思っています。  この点について、大臣はどうお考えか、お答えいただきたいと思います。
  94. 甘利明

    甘利国務大臣 安心感を与えるという意味では、数は多ければ多いほどいいと思いますし、目標を設定して、それに向かって努力を続けていくという姿勢は大事だと思います。  ただ、余りいいかげんな数字も閣僚としては発表するわけにはいきませんので、本当にはじける数字ということではじかせていただきました。  その百万という数字は何を想定しているかといいますと、三百万弱、三百万と丸めて言いますと、その中で非自発的失業が百万弱くらいでありますから、それを視野に入れながら、自分の意思ではなくて失業を余儀なくされた人たちに対してこの数字を確保していきますという感じで設定をさせていただきました。
  95. 前田正

    ○前田(正)委員 労働大臣数字にこだわるわけでは別にないわけでありますけれども、現実に三百万人あるいはまた企業失業者といいますか、こういう予備軍というものがさらにたくさんおられるということからして、五百万人くらいの失業ということも実に考えられる今の労働の現状からすると、どうぞひとつ百ではなしに三百以上というところに目標を置いていただいて、これからも行政に真剣に取り組んでいただきたい、かように思っております。  それから次に、平成十一年度の予算案の概要の中で、「新規雇用創出対策推進」で「中小企業雇用機会創出のための支援の強化」とか、それから「ベンチャー企業等振興のための総合的支援策」が盛り込まれております。それは、見てみますと、ほとんどが賃金の助成、あるいはまた創業とかあるいはまた異業種進出に対しての労働者の雇い入れに対する、これまた賃金の助成であります。  これは大変重要なことだと私は認識をしておりますけれども、しかし、考えますと、やはり雇用をどう拡大をしていくかということも大変大事なことでございますので、極端に言えば、これは私の考え方でございますけれども、労働省として雇用対策のための宝くじでも発行するとか、そうすれば資金確保というのもできますし、また、宝くじを売る人はそういう失業者雇用対策にも実はなるわけであります。  あるいはまた、何かやろう、あるいは長年トラックの運転手をし企業で働いていたけれども、リストラに遭ってとても就職が難しい、こういう人が例えば個人タクシーでもやろうか、こう思っておっても、運輸省の中に個人タクシーの規定というものがありまして、なかなかすぐに個人タクシーを営業するということはできません。  あるいはまた、簡単にできることなら、自分の家の玄関でも少しつぶしてたばこの販売所でもつくろうかと思っていても、たばこの販売をするにも、規定の人口とかあるいはまた距離の制限があったりして、これまたなかなかできないわけであります。さらに印紙の発売、そういうものもいろいろ考えてみればあるわけでありまして、失業者方々がいわば何とか起業する、業として起こせるような、簡単にできるような、そういうものというのは、実は私はいろいろと探せばあるだろうというふうに思っております。  これは、労働省だけではなしに、通産省あるいはまたいろいろな関係省庁と連絡をとりながら、規制で既にやっていらっしゃる方々、既存者を守るということも一つは大事だと思いますが、こういう緊急のときに、いろいろ制限を加えぬとこういう仕事も実はできるよというふうな、新しい雇用創出というものも私は考えていくべきではないかなというふうに思います。  ベンチャー企業をやったらいい、こういう話がありますけれども、しかし、実際私どもにも、失業で職がないからどこか探してくれ、こうおっしゃる方もいろいろあるわけでありますが、大抵頭のよい方は企業にちゃんと残っていらっしゃって、実際何もできないというような方のみがどんどんリストラをされる傾向にあるということからして、実は、そういう方々をどう職業につかせるか、あるいはこういったことを転機にしてどう仕事を見つけられるようにするかということ、これが私は大変大事なことではなかろうか。  ベンチャー企業、ベンチャー企業といいますけれども、この情報産業のすき間を縫って企業を起こしていくという、それほどの能力のある人はもちろん会社の中では一番必要だからやめないわけでありまして、やめられるというのですか、やめさせられるというのは大変言い方が悪いかもしれませんが、そういう方々に対してすぐにでも何か対応のできる、そういう仕事の場を提供するということが私は大事なことではないかというふうに思います。  そういう大胆な発想と政策というものがこの際私は必要だと思っていますが、大臣、どうお考えか、お尋ねいたしたいと思います。
  96. 甘利明

    甘利国務大臣 規制を緩和をしてタクシーとかたばこ屋とかというお話がありましたが、先生同時に御指摘のとおり、既得権者の生活をどう守るかというのは社会的規制の中で同時に考えなくちゃならないので、なかなかそこは難しいかと思います。  ただ、大企業から輩出をされる労働者は、実は中小企業にとってはかなり魅力的な人もいられるわけでありますし、特にそこに職業訓練という一過程を経ることによって相当な戦力が労働市場に存在をするということになりますので、中小企業にとってはいい人材を採れるチャンスでもあると思います。ただ、今その中小企業が四苦八苦をしているところに問題は深刻さを増しているわけであります。  これはもう産業政策分野になりますけれども、新しい産業がほうはいとして起こっていくような環境整備をする。これは従来ですと、物すごい技術とか世の中にきらめくような発想を持ってベンチャーを起こしていくという発想だったのですけれども、それだと少し時間がかかるものですから、極端なことを言えば、あしたからラーメン屋を始めようということでもいいのでありまして、ハイテクではなくてローテク部分事業意欲のある人が起こせるような支援措置を今回は組んでいるわけであります。  それ以外、先生指摘のお考えが正確に理解できないのですが、手っ取り早くということになると、昔は失業対策のための失対事業というのがありましたけれども、これは実は非常に後を引く問題がございまして、一方で行革を進めろ、一方で人を採れというのは政策矛盾を起こすことでありますし、期限が過ぎたらどうするのだという話がありますから、できるだけ民間の力を使って雇用の吸収はしていきたいというふうに考えております。
  97. 前田正

    ○前田(正)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、大臣、ラーメン屋さんをあしたからやろうといっても、大臣が経験されたかどうかわかりませんが、なかなか素人があしたからラーメン屋をするというのは大変に難しいことで、そういった意味で私は厳しいものがある。とりあえず即効性のきくような、そういうものをぜひひとつ雇用対策として積極的にやっていただきたいということを申し上げて、質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
  98. 岩田順介

    岩田委員長 次に、桝屋敬悟君。
  99. 桝屋敬悟

    桝屋委員 引き続き、公明党・改革クラブの桝屋敬悟でございます。大臣所信に対する質疑を行わせていただきます。  大臣、最初に、きょう大変お疲れとは思いますが、所信でおっしゃったことの前に、どうしても私は大臣のお顔を見ると、まだ宿題が残っていますよということを申し上げたいわけでありまして、そのことから入りたいと思います。  労働省、厚生省の政策連携についてでございます。たしか昨年の臨時国会でございますが、当委員会で私と大臣議論したことを思い出すわけであります。そのことを確認をさせていただきたいと思います。  私が申し上げましたのは、有料職業紹介事業を実施している家政婦紹介所、これが、制度が変わりまして病院内での仕事ができなくなった。したがって、ぜひ現在準備が進められております介護保険制度の中で有効にこの介護労働力を活用する、こういう方途を考えるべきですよ、こういう御提案を申し上げ、私はこの労働委員会でもずっとこのことを言っているわけでありまして、実は労働省平成十一年度予算の中で具体的な支援策を打ち出していただいております。  これは大変に私は高く評価をしたいし、効果を期待するわけでありますけれども、この十一年度予算を仕組む中で、大臣、こうした取り組みについては厚生省と連携しなきゃだめですよ。どれほど労働省が仕掛けをしたとしてもそれは決してうまくいかない。たまさか私も予算案を概算の段階から見ておりますけれども、厚生省と労働省は将来一緒になるのだから政策連携をしましょう、こういうワンペーパーをつくられて、私が議論したときには四項目だったと思いますが、一つの項目を立てられて、この分野については厚生省と労働省連携してやりますと内外にそれをはっきりされて取り組みをされるという動きがあったわけであります。  ちょっと私が申し上げたときは時期が遅かったかもしれないけれども、そういう動きをされるのであれば、ぜひともその項目の中にこれも入れていただいて取り組みをするというような位置づけをしなければ、具体的に前へ進みませんよ、どれだけ労働省が頑張っても実は困るんですと、るるいろいろな理由も申し上げてお願いをした次第であります。  甘利大臣からあのとき、おまえが言うことはよくわかるから入れさせていただきますというすぱっとした答弁をいただいて、私五年国会議員をやっておりますが、あんなにすっきりした答弁をいただいたのは初めてでありまして、夜感動して眠れぬかったぐらいであります。それぐらい実は大臣の御答弁には私は感銘を受けたわけであります。  さて大臣、入れさせていただきますというふうに御答弁がありましたけれども、具体的にどのように整理されたのか、きょうは宿題としてお伺いをさせていただきます。
  100. 甘利明

    甘利国務大臣 先生から御提言をいただきまして、私もそのとおりだと思いましたので、直ちに厚生省と相談をする項目に入れなさいという指示をいたしました。そのとおりでございます。  介護労働というのは、おっしゃるように、厚生の政策連携をとらなければならないのは当然でありますし、しかも、その中で具体的に先生が御指摘になった家政婦紹介所、これは今までのままでいくとその枠組みに組み入れられない、この大変大切なマンパワーといいますかウーマンパワーといいますか、これを利用しない手はないじゃないか、おっしゃるとおりでありまして、これが介護保険の枠組みの中でちゃんと稼働するように、具体的にどうしたらいいんだということを厚生省との話で詰めてくれという指示はいたしました。  その後の経緯がどうなっているかは事務方から御報告をいたしますけれども、先生の問題意識は共有しているつもりであります。     〔委員長退席、石橋(大)委員長代理着席〕
  101. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  ただ、私は、私がぬか喜びをしたのか喜び過ぎたのか、反省をしておるんでありますが、私の聞き方もちょっと中途半端だったかもしれません、そういう項目を立てて、きちっと整理をします、その中に入れさせていただきますというふうにお答えをいただいたものだから、恐らく十一年度の本予算が案として出てきたときには一つの柱立てになっているんじゃないか、私はこう期待をしたわけであります。あの当時は四項目でありまして、今見ましたら七項目ぐらいになっておりますが、残念ながらその中には入っていないわけでありまして、そこは、項目として整理することは、大臣、どうだったんでしょうか、難しかったというふうに理解をしてよろしいんですか。
  102. 甘利明

    甘利国務大臣 ちょっと事務方から経緯を……。
  103. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 先生からいろいろと先般来御指摘をいただきまして、介護労働について、現在の家政婦紹介所のままではこれが在宅サービスの主体的な力になり得ないということで、私ども検討を進めました。ということで、十一年度の予算には、家政婦紹介所が何軒か一緒になって共同で事業を進めてみる、そういったモデル事業のための予算を計上いたしました。  ただ、これは厚生省の方にもそのための予算を組んでもらうという事項ではないというふうに思っておりまして、予算は私どもの方で組み、実際にそれをどうやって進めれば在宅サービスの機関として成り立ち得るのか、いろいろ、介護保険法の中で、例えば法人でなければいけないとか、そのために人員は幾ら、あるいは事務所の設置は幾らというような基準を厚生省の方でおつくりになる、今検討中であるというふうにお聞きをしておりますので、その辺の条件がどういうふうに合致すれば家政婦紹介所が在宅サービスの請負事業主となっていけるのか、その辺を十分に実質的な厚生省との協議を進めながら、モデル事業労働省の方では進めていくというふうなことで今進めているというのが現状でございます。
  104. 桝屋敬悟

    桝屋委員 「厚生省・労働省政策連携について」というのが両省共管で資料が出ておりますけれども、これは、局長の今の御答弁では、両省がそれぞれ予算を計上する案件について挙げるんですよ、厚生省は予算がないから、少なくとも同じ連携はあるにしても向こうに明確な柱立ての予算がない、予算がないものはこういう整理にはなじまないんだ、こういうお答えですか。
  105. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 先ほどの厚生省との四本柱につきましては、それぞれ両省で、例えばダイオキシンの問題について両省で予算を計上しようというふうなことで取り組んでまいりましたが、今の家政婦紹介所の自立化といいますか在宅サービスの主体的な機関になるという問題につきましては、労働省の方の支援策でいくということで、厚生省が特にそれについて予算を組んでいただくということはないのではないかというふうに考えておりまして、実質的に厚生省のいわば指導を受けるような形で家政婦紹介所の転換というものについて労働省がいろいろと御指導をいただいている、相談をしているというふうなことで取り組んでいるということでございます。
  106. 桝屋敬悟

    桝屋委員 本当にしつこくて申しわけないんですけれども、もう一回確認させてください。「十一年度予算における厚生省・労働省政策連携について」という七項目が今立っています。これは局長、双方が予算化しなければ挙げないということなんですか。お互いに連携してやらなきゃいかぬような項目は、予算がどうであれ、やはり挙げるということじゃないんですか。予算の具体性がなきゃこの項目へ入らぬということですか。この定義を、どういう定義で、定義は明確にないかもしれませんが、両省の協議でどういうことでこの柱を立てられたのか、では伺わせてください。どういうものを入れられたのか。
  107. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 これから省庁再編の中で労働、厚生両省が統合するということで、その前倒しといいますか、そういったことで、例えば人事交流も行い、それから政策についても一緒に取り組んでみようというふうなことで何本か柱を立てるということにしたわけでございます。  そのときの柱の中心は、双方で予算も組んで取り組んでみようではないかというふうなことで柱を立てておりまして、先生の御指摘のこの家政婦紹介所の問題あるいはホームヘルプの問題、大変重要な問題で、これは厚生省との協力なしにはできませんものですから当時ああいうお答えをさせていただきましたが、そういうことで、実質的な連携ということで、両省密接な連携をとりながら進めている政策の当然大きな一つであるということでございます。
  108. 桝屋敬悟

    桝屋委員 局長の御答弁の趣旨がよくわかりませんが、そんたくをすると、やはりお互いに明確に連携をする意味で、新しく予算を出していくということが柱の一つにする背景のような気もするし、説明を聞くと必ずしもそうでもないような気もします。  ただ、私はあえてここのところをそんなに議論するつもりはありません。大事なことは、大臣が、入れさせていただきます、こうお答えいただいた、あるいは局長もそのときに、前の局長ではありますけれども、私の指摘を踏まえて、厚生省と連携を図りながら今後対処していきたい、こう御答弁をいただきました。私の主張をお認めいただいて、両省で取り組む、このことは前回の臨時国会のときに私は確認をさせていただいた、こう思うんでありますが、大臣何か御発言がもしありましたら。
  109. 甘利明

    甘利国務大臣 間違いなく、厚生省との連絡をとる、連携をとることの一項目にせよと指示いたしました。今、局長は両省の予算項目に係ることを整理して申し上げましたが、それ以外の厚生省と連携する項目の一つとしてしっかりと認識しております。
  110. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。大臣から御指示があった、大臣もその趣旨をよく踏まえて現場に指示をされたということは理解いたしました。  ただ、大臣、私は何でこんなにしつこいかというと、私は前から、これは厚生省と労働省で共管してやらなきゃいかぬと思っておりますが、実はこれは共管が難しいんです。厚生省は嫌がっています。極端に嫌がっていると思います。そういう認識を私は持っているものですから、本当にこれは柱立てぐらいして、項目ぐらい立てていただいてやらなきゃ絶対前へ進みませんよ。先ほど局長がいろいろ説明されました。先ほど局長が説明された検討した結果というのは、労働省としてはしっかり頑張る、厚生省とは連携しながらというふうにおっしゃったけれども、私は、あの説明ではうまくいかぬと思いますよ。疑って申しわけないんですが、疑います、これは。私は、まだうまくいかないというふうに実感を感じているわけであります。  局長、どうでしょうか。項目立てはこれからまた来年の予算で検討していただいてもいいんですが、この問題はまだ続きますから。実際の現場の有料職業紹介をやっている家政婦紹介所が介護保険の中で労働力を活用してサービスを展開しようとしたときに、労働省はさまざまな支援策を今検討していただいています。予算案の中へ入っています。それをやろうとしたときに、厚生省の現場は、福祉の現場は、本当にそこを理解して、地域によって相連携してうまく事業が組み立てられるかどうか、自信がありますか。もう一回お答えいただきたい。
  111. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 現在労働省行政対象としております家政婦紹介所は全国で一千百、それから家政婦さんは八万五千人おられるわけでありまして、この紹介所あるいは家政婦さんがこれからの介護保険制度の施行のもとで在宅介護の有力な力になる、なっていく、またそういうふうに進まなければならないということは労働行政にとりまして大変大きな課題であるというふうに思っているわけでございまして、少なくとも現在は厚生省と親密に連携をとって御指導もいただいているという段階でございます。  前段で申しましたように、この方たちのこれからの動向にもかかわりますし、日本の介護体制の確立という大きな問題にもかかわるわけでありますから、私ども、真剣に厚生省とこの点については議論をしまして取り組んでいきたいというふうに思います。
  112. 桝屋敬悟

    桝屋委員 本当にできるかどうかということをお伺いしたわけですが、努力をするというお答えであります。  もう少し具体的な話をします。  私はなぜ項目に入れるべきだというふうに主張しているかというと、今回のモデル事業は、家政婦紹介所が業態を転換する、今までの有料職業紹介という形ではなくて、本当に介護保険の世界の中で、地域でサービスの担い手になれるように請負の業態に転換をして、そのためには一つではだめですから、それぞれが中小業者でありますので、幾つかが手を相携えて、お互いに出資し合って新しい請負の会社をつくり、そして、ホームヘルプサービスであったりあるいは宅老事業であったり、そういう厚生省のサービスの一翼を担いたい、介護保険の一翼を担いたい、こういう仕掛けをするわけであります。そこに労働省は支援をしましょう。それはそれでいいんです。  ところが、その支援の中で、問題は、介護保険の世界で、市町村の福祉が、それはいいことだ、一緒にやりましょうというふうに思ってくれなきゃだめなんです。ところが、まず向こうは思いません。家政婦紹介所と聞いただけでまず遠ざけられる。それはなぜかというと、今までの経緯があります。そこは今回労働省が支援をして、業態を転換し体質改善をするんだということになるわけで、そこを理解してもらわなきゃならない。これはなかなか理解ができないんです。  端的に言うと、そうやって業態を転換して、幾つかの紹介所が集まってサービスの事業所をつくる。その事業所の中に、例えば介護保険の現場の一番キーになります在宅介護支援センターを取り込みたい、うちもそれをやりたいと手を挙げたときに、これは市町村が委託してくれなきゃだめなんですね、認めてくれなければ。今度は指定ということになりますけれども。それを市町村側がやってくれるかどうかといったら、私は最後になると思いますよ。まずこっちへ向きません。  そのためには、項目に入れて、両省が一緒にやっていくというようなことをしないと、さっきからの局長の御説明は、労働省は支援をします、そこは私も十分認めております。厚生省はその気になっていませんよ。だから、恐らく大臣が指示をされても、ではこの項目には入らないのか、あのうるさいのが言うから中に入らぬか、こう指示をされても、現場においては、いや、できるだけやめましょう、入れなくてもあの人は理解してくれますぐらいの話で終わっているんじゃないかと思います。  私は、大臣の発言というのは大きい。大臣、このことはこれからもあることですから、ぜひもう一回認識を新たにしていただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  113. 甘利明

    甘利国務大臣 過去の経緯については私も詳細に承知しておりませんが、先生の問題意識はしっかりと受けとめているつもりであります。これからも、事務方を叱咤して、国民にとってより適切な介護体制がしけるように努力をしていきたいと思います。
  114. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。私も、何もこの委員会でしつこく言うだけではなくて、厚生省へお願いをしたいし、現場においてもさまざまな問題がありますので、私なりに努力をしていきたい、こう思います。  それで、一つだけ確認でございますが、予算案では、先ほど局長から御説明がありましたように支援策を具体的に講じられておりますけれども、先ほど、幾つかの事業所が一緒になってモデル事業を仕組むというようなお話もありましたけれども、さらには中小企業雇用創出助成金等の活用も検討されているようであります。  私がぜひお願いしたいのは、現場の団体皆さん、先ほど家政婦紹介所の数はありましたけれども、私は全部が全部新しい体制でやれるとは思いません。まさに厳しい業界の話でありまして、意欲のないところ、努力をしないところは私は消え去っていく可能性も十分あると思いますけれども、そうした現場の実態がありますので、ぜひ団体とも十分協議をしていただきたい。それから、現場において介護労働安定センターなるものが動いております。これは全国展開をいたしておりますから、ぜひ介護労働安定センターの力を上げていただいて、こうした今私が指摘したようなことを、厚生行政に対して積極的な働きかけをお願いしておきたいと思いますが、その辺の状況はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。
  115. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 家政婦紹介につきましては、家政婦紹介所の団体がありますし、それから、全国的な組織としましても介護労働安定センターというものがございます。それぞれちょうど今岐路に立っていると思いまして、この紹介所の運命もこれからというところでございますから、団体を通じ、あるいは介護労働安定センターを通じて、今後の対応についていろいろと私ども指導をし、あるいは介護労働センターから各団体についてもいろいろな指導をしておるというふうな状況でございます。  具体的に申しますと、例えばさきの臨時国会で改正をいただきました中小企業労働力確保法、これは家政婦紹介所が請負化する、異業種へ進出するということになりますと、この法律の助成の対象にもなっていくわけですから、そういった内容もよく説明し、あるいは、現在の厚生省におきます審議会状況等についても逐次情報を流すというふうなことをやっておりまして、時代の流れにおくれないように、介護センターあるいは団体について、いろいろな助成とか援助とか指導、そういったものを行っている段階でございます。
  116. 桝屋敬悟

    桝屋委員 大臣、この問題は、私も関心を持って協議してまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。  次に、雇用保険料の引き上げの動きでございます。  ちょっと確認だけさせていただきたいと思っておりますが、朝日新聞や日経新聞等、二月の頭でございますが、いよいよ雇用保険料引き上げの記事が出ておりました。十一年度収支見通し、一兆円近い赤字が出そうだ、九千八百億という数字が出ておりましたけれども。今の失業率四・四%、百万人台の受給者がいらっしゃる、こうした状況の中で、現行保険料を引き上げざるを得ないんじゃないか、こういう記事が出ておったわけでありますが、私も、何度も質問のたびに確認をさせていただいております。  今までの財政構造改革の影響によりまして国庫負担が圧縮された、こういう経緯もあるわけでありまして、私は、直ちに引き上げということは心配をいたしておりまして、さまざまな検討をしなければならぬだろう、こう思っているのですが、ちょっと労働省の検討の状況を事実確認だけさせていただきたいと思います。
  117. 甘利明

    甘利国務大臣 事実関係を申し上げますと、現時点で、事務方でこの改定を検討しているという事実はありません。私も、そういう指示もいたしておりません。
  118. 桝屋敬悟

    桝屋委員 わかりました。  新聞報道によりますと、何か二〇〇〇年の通常国会に改正案提出予定などというようなことが言われまして、今の事実は確認させていただきましたけれども、せっかく小渕総理、まさに大変な思いをして積極財政案を今回つくられているわけであります。加えまして、年金の保険料アップも据え置こうというような、そういう状況の中で、私は、雇用保険料、社会保障の一環であろうと思いますが、その負担をふやすというようなことがこの時期に安易に流れることはいかがかというように思っておりますし、ここは大変にかじ取りを間違ってはいかぬというように思うわけでありまして、先ほど申し上げた国庫負担の圧縮をされた経緯もあるわけでありますから、慎重に議論をしていただきたい、私はこのことをお願いをしておきたいと思います。  次に、労災の問題、きょうは本当に限った話で大変恐縮なんですけれども、大臣は、所信の中で、働く者のセーフティーネットとして労災補償の迅速、適正化に努める、このように言われております。  私は、長い間労災補償制度を見てまいりまして、この国会から、私個人的な取り組みではありますけれども、労災の遺族補償の問題をぜひ取り上げていきたいというふうに考えております。きょうは、その最初の日にしたいと自分自身は思っておるわけであります。  労災の遺族補償は、業務上の事由あるいは通勤により死亡した労働者の遺族に対して、年金や一時金の形で給付されているものでございますが、私が問題としたいのは、例えば労災事故によりまして脊髄損傷になりまして車いす生活者になった、こうした方々の場合の取り扱いでございまして、当然ながら、労災の事故で脊髄損傷になられた、車いす生活になっておられる、したがいまして、傷病あるいは障害年金を受給されておられるという方が一般的だろうというふうに思っております。  こうした方々が亡くなった場合の取り扱いでございますが、遺族補償につながるケースとつながらないケースがあります。遺族補償になるケースとならないケースが実はあるのでありまして、その分かれ目が、まさに、車いす生活をされている方が死亡された原因が、車いすになっているその脊髄損傷に起因する、もっと言いますと、労災事故に起因する病名だと遺族補償につながる、全く関係のない病名がつきますと遺族補償にならない、因果関係がないということでありますから、そこで大きく分かれ目になってしまう。長年車いすの生活の方を介護されておられる配偶者等にとりましては大変に大きな問題になるわけであります。  私はこの問題に今後取り組んでいきたいと考えておりますが、本日はまず、私はそういう声を現場でたくさん聞いているわけでありますが、事実といいますか、数字がどんなふうになっているのか、御説明できる範囲で結構ですが、労働省が把握しておられる実態をちょっと教えていただきたいと思います。
  119. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 御指摘ございました傷病年金あるいは障害年金の受給者でございますが、傷病年金の受給者は、平成九年度末の時点で一万五千三百五十人おられます。それから障害年金の受給者は九万三千六十七人おられます。  この中で、先生指摘になりました脊髄損傷の方がどのくらい出るかということでございますが、傷病年金の方は、行政庁の方で長期療養者を傷病年金の方に切りかえていきますのである程度の把握はできるわけでございますが、傷病年金の方では、脊髄損傷者が、先ほど申し上げた数のうち二千八百九十三人おられます。それから障害年金につきましては、障害の種類別に把握しておりまして、脊髄損傷であるかどうかということではちょっと把握が現時点では難しいわけでございます。  先生指摘がございました、こうした方が長期の療養、あるいは障害を持っておられて生活されている中で、それに起因する何らかの疾病等によって亡くなられるケース、この場合の遺族補償の問題でございますが、この点につきましては、そうした脊髄損傷とその後亡くなられる際の原因となった疾病等との因果関係があるかどうか、これは、専門の医師の方等、各基準監督署、いろいろ意見等を求めながら、そこは非常に的確な、また厳正な判断をしていこうということで、その因果関係を求めていろいろ調査、専門家のお話を聞いた上で判断をいたしているところでございます。
  120. 桝屋敬悟

    桝屋委員 今の御説明では、私がお尋ねしたかった、現在、労災の傷病・障害年金を受けておられる方が亡くなった場合に遺族補償にどのぐらいの割合の方がつながっているのか、その傾向というのはなかなか数字の上では出ないという御説明でございましたが、私は、ニュアンスだけでもいい、現場でさまざまな声を聞くものですから、そんなことを労働省として検討、研究をされたことがあるのかどうか、ニュアンスだけでも私は教えていただければと思っておるのですが、いかがでありましょうか。  ちなみに、車いすの方々と私よく会合をやるのですけれども、聞いてみますと、労災補償の中で、例えばじん肺なんかの方は、傷病・障害年金をもらっている方が亡くなられた、八割ぐらいの方が遺族年金につながっている、遺族補償につながっている。ところが車いすの方はその半分ぐらいしか、四割ぐらいの方とか、数が相当少なくなる。それは、さっきまさに局長から御説明があったように、死亡したときの傷病名といいますか、死亡の原因ですけれども、それがなかなか労災の事故につながらないということなんだというような、そんな状況を聞いているのですけれども、その私の理解はどうでしょうか、大きく離れているかどうか、その辺だけでも教えていただければと思います。
  121. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、傷病年金あるいは障害年金を受けておられる途上で亡くなられる脊髄損傷の方ももちろん多いわけでございまして、実は私ども、先ほど申し上げましたように、傷病年金の方につきましては、そのうちの脊髄損傷者の数等も判明いたしておりまして、そうした方の年金の受給状況をコンピューターで管理いたしておりますが、その中から急遽当たってみますと、平成九年度中に亡くなられた傷病年金の受給者のうちの脊髄損傷者、百四十七人おられました。そのうち、遺族補償給付がなされた方が六十八人おられました。  これらの方々につきましても、脊髄損傷で、その後の療養あるいはいろいろな車いす生活等々の中で合併症等を引き起こされる、そういった合併症が原因になっている場合に、その因果関係をその都度専門家の方等と相談したり意見を求める中でこういった判断をいたしておるわけでございます。
  122. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。今の傷病年金データは、私自身にとりまして、今取り組んでいる問題からしますと、大変ありがたい実態であります。  傷病年金のうち、亡くなられた方が百四十七で六十八人ぐらいが遺族補償につながっている、こういう御説明でございましたね。半分以下ということでありますね。大体私がつかんでいる雰囲気もそんなものでありまして、これは恐らく、障害年金となると、いわゆる症状が固定しているということがありますから、さらに割合は低くなっているんじゃないかというように思うわけであります。  私がここで問題にしたいのは、いわゆる車いす生活者、脊髄損傷者の車いす生活者の実態でありまして、私はここで余り多くを語りませんけれども、例の介護補償給付のときも、この車いす生活者、脊髄損傷者の方々の特別の生活の実態ということはこの委員会でも議論させていただきましたけれども、もう一つ、今、局長の御説明の中でもありました、合併症という言葉ですね。  いわゆる車いす生活者になる、脊髄損傷になって車いす生活になるということは、私たちがこうして、大臣のように、ちゃんと自分の足で歩ける人間と違いまして、車いす生活になるということは大変な生活の変化でありまして、そこはさまざまな、端的に言えば血圧とか血流あるいは直腸膀胱障害もさることながら、人間の生活にさまざまな変化が出てまいります。  そうしたことで、労災事故とは別に、労災事故によって車いす生活になった、脊髄損傷になった、その状態で出てくる合併症というものがあるんだ、それでお亡くなりになれば、私は当然遺族補償につながっていいんだろう、こう思っているのですけれども、そういう意味では今局長がお使いになった合併症という言葉は極めて大事でありまして、このことも労働省もよく認識をいただいて、平成五年十月に労働基準局長通知で、脊髄損傷に併発した疾病の取り扱いについてという取り扱いの通知を出されておられます。  これは研究された結果だろうと思いますが、私は、この平成五年の局長通知、これが整理されたことで、労災の遺族補償認定上どのような影響を与えたのか。全く影響がなかったのか、影響を与えたのか、事務上のことでちょっと恐縮ですけれども、御説明をいただきたいと思います。
  123. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 御指摘平成五年の基準局長通達でございますが、これは、脊髄損傷に併発した疾病につきまして、専門家の方々の御参集を願って、最新の医学的な知見に基づきまして、併発する疾病のうち、例えば慢性期、急性期に分けまして、因果関係が脊髄損傷とあると認められるものそれぞれを、例えば慢性期に併発する症状につきましては二十五疾病ほど因果関係があるものとして整理する、あるいは急性期に併発する疾病につきましても二十疾病ほど因果関係があるものとして整理する、そういった内容の通達でございまして、これによりまして、第一線の労働基準監督署の方でもしそういった問題が出た場合に因果関係を判断する際の、判定業務にとっては非常に有効な、また、監督署ごとの判断、あるいは医師の方等との意見が分かれた場合のいわば行政上の判断のぶれがなくなってきた、大分少なくなったんではないか、そういうメリットが大きかったと理解しております。
  124. 桝屋敬悟

    桝屋委員 そうすると、今の御説明では、やはり脊髄損傷者の遺族補償給付の認定をめぐる上でこの通知は大きく役立っておるというふうに理解していいですね。  実は、脊損の方々もこれは大きな成果だという気持ちを持っておられまして、それがどれぐらい現場で運用されているのか期待をされているんですが、なかなかそれが理解されていないところもあるようだという声を聞きます。  時間もないんでこのぐらいにしますが、大臣所信に対する質疑の中でここまで小さい問題をやるということは私もちょっと抵抗があったんでありますが、しかし、私も労働委員を外れましたし、機会を見つけてきょうはお話を申し上げた次第でありますが、私が申し上げたいことは、やはりセーフティーネットとしての労災の制度であります。  そして、脊髄損傷者の方々にとっては、実は労災事故というのはその場で終わるわけではない。車いす生活を二十年あるいは三十年と続けられる方がいらっしゃる。その間もちろん労災によって稼得保障のための所得保障もあるわけでありまして、そしてその間ずっと付き添われた奥様がいらっしゃる、配偶者がいらっしゃる。  その方がさっきのような合併症と思われるような症状で亡くなった場合、遺族補償につながるケースとつながらないケースがある。しかも、それはどこで亡くなられて、どういう先生に出会ったか、死亡のときに。今の基準局長のその通知のように、合併症ということを十分理解されたお医者さんであれば当然ながらそういうことまで考えられるわけでありますが、そうでないお医者さんに出会うと、単なる肺炎だということで、これは因果関係が全くないということで遺族補償につながらない、こういうこともあるわけであります。  私は、じん肺に比べて、脊損の方は大変に遺族補償につながっている割合が少ないというふうに聞いております。これもこれから、まずは実態をつまびらかにしなきゃいかぬと思いますが、その辺の実態をつまびらかにしていただいて、改善する余地があるのかどうなのか、ぜひ大臣、事務方に御指示をいただいて、また宿題を差し上げて恐縮なんですけれども、そんなお取り決めをいただきたい、このように思うわけでありますが、最後に大臣の御所見伺いたいと思います。
  125. 甘利明

    甘利国務大臣 基本的には、労災の事故と直接、間接に明確な因果関係があるということを客観的に認定をするということが大事であります。医師によって判断がばらばらになったりするのはそもそもどうかと思うことでありますから、それは、きちんと因果関係が客観的に確立しつつある、あるいは確立したものについては、先ほどの通知の話を監督署が関係している医師団にきちんと連絡をする、意思の疎通をしっかりと図っていくということは大事だというふうに思っております。  なお、先生の御質問の実態の調査について、どういう方法があるか、少し検討してみたいと思います。
  126. 桝屋敬悟

    桝屋委員 引き続きこの問題を、私は今回、この委員会でぜひ取り組んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
  127. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員長代理 大森猛君。
  128. 大森猛

    ○大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  先般の予算委員会での雇用失業問題に続いて、本日も雇用失業問題について見解をお聞きしたいと思います。  今日の雇用失業問題を考える際にやはりきちんと押さえておかなくてはならないことは、先ほどもお話がありましたけれども、一体なぜこういう事態がもたらされているのか、この点で、政治の失敗による不況、それによって今日の深刻な雇用失業問題が起こっているんだ、こういうことの自覚とそれへの反省、そしてそれを本当に克服していく、そういう国の責任をしっかり自覚して雇用失業問題に取り組んでいく、このことがまずきちんと押さえられなくてはならない、私はこのように思います。     〔石橋(大)委員長代理退席、委員長着席〕  この点で、例えば雇用活性化総合プラン、四つの柱があるわけでありますけれども、一、「総量としての雇用の場の拡大」、あるいは二の「労働者就職支援対策」、三、四とあるわけなんですが、こういう課題については、私は大いにこのとおりだと。そういう面では、課題の方向、事態の認識、共通する面があるわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、大事なことは、この中に本当に国の責任を貫徹するかどうか、これが厳しく問われてくるのではないかと思います。  このことを押さえて、昨日の大臣所信表明、それから労働時報の巻頭における大臣の年頭のごあいさつも拝見しました。そして、一連の御発言を伺って、質問は、まず具体的に、率直にお聞きをしたいんですが、雇用創出という点で、中小企業における雇用創出は至るところで大変強調をされているわけでありますけれども、大企業雇用創出、これはもう所信表明にも年頭のあいさつにも、あたかも自明の理であるかのように全く出てきておりません。大企業については雇用創出はもう期待しない、専らそれは中小企業期待するということなのかどうか、まずこの点、お聞きをしたいと思います。
  129. 甘利明

    甘利国務大臣 先生もよく御存じだとは思うんでありますが、中小労確法の改正をいたしました。これは、失業者たる個人が個人事業あるいは小規模事業を起こすというところの支援のほかに、企業事業部を独立させて、その起こしたものが中小企業である場合には支援対象とするということであります。  私は、産業政策を少しかじってきた者として、大企業が業を起こすときに、基本的に大手には国の支援施策というのは余り行かないようになって、中小が中心になっているんですが、仮に大手が何かを仕掛けたときに、雇用に資する場合に支援することができないかということを考えたんです。事業部を独立させるときには、やはり新しい事業は収入がいきなり入ってくるということが見込めない。その場合、固定費はかかるわけでありますから相当な企業負担になって、独立して中小企業としてやらせるということのインセンティブにならないんではないか、そこのところを少し補完すれば雇用の受け皿にはなるんではないかということを産業政策側とも少し打ち合わせをしまして、労確法の中に、事業部を独立させる、つまり、分社化みたいな形で、できたものが中小企業であるときにはその支援対象にするということも組みましたので、必ずしも今の枠組みの中でも中小企業あるいは個人事業主だけに頼っているということではないわけであります。
  130. 大森猛

    ○大森委員 実態的に、これまで大企業が吐き出した労働者中小企業が吸収する、一定可能なそういう構図があったわけでありますけれども、これは大臣の休憩前の答弁でもありましたように、問題は、今中小企業にそういう吸収力がなくなってきているというところに事態の深刻さがある。しかも、昨年度でいえば、もうほとんど連続、毎月中小企業、中堅企業雇用人員が減っているというところにもそれは示されているわけであります。  先ほどの大臣の答弁はやはりよくわからな面があるわけなんですが、結局は、実態でいえば、大企業のリストラは、これはもう放置したまま、規制しないまま、中小企業に吸収を期待するけれども、しかし、そういうやり方も、今のような状況でいえば、もう通用しないということも明らかになっているのではないかと私は思います。  大企業のリストラの問題については後ほどもう一度伺いますけれども、国の責任、公共の責任を雇用失業対策で本当に貫いていくという点で、これは予算委員会でも、特に若年失業者の問題でヨーロッパ各国の事例の紹介をしたわけでありますけれども、ヨーロッパ各国においては、私は、こういう点でいって、明らかに雇用行政労働行政は今大きく流れが変わってきているという認識をしているわけであります。  例えばフランスにおける時短による雇用創出、国がリードしてこれを行っていくとか、あるいは公的部門を中心とした雇用機会の創出、これを大規模に行っていく、こういうようなことにも見られるわけでありますけれども、大臣は、来月ですか、雇用サミットにも参加をされるとのことですが、ヨーロッパ各国におけるこういう雇用行政、流れの変化、そういう認識があるかどうか、お聞きをしたいと思います。
  131. 甘利明

    甘利国務大臣 私も、本格的に勉強しておりませんが、欧米各国の雇用対策をざっと通し読みしてみましたけれども、向こうでやっていることはほとんど日本でやっていることなんですね。  例えば、日本でやっていないということで外国で例があるというのは、例えば、アメリカかどこでしたか、バウチャー制度という職業訓練の切符の配給、あるいは、いわゆる失対事業として公が雇い入れる、それくらいじゃないかと思いますけれども、あとはみんな、私は、日本で先取りしてやっていることだという自信を持っております。  それから、フランスの時短による雇用吸収効果、これはもう先生実は御存じだと思いますけれども、労働大臣が、実は雇用吸収効果はなかったということを認めちゃっているわけでありますし、よくワークシェアリング的な発想をという御指摘もいただきますけれども、ワークシェアリングということは給与のシェアリングも伴うんだということを受けとめていただかないと、これは実は、ワークシェアリングはするけれども給料はシェアリングしないんだというのであれば、単なるコスト高になるだけで、企業が倒れるということでありますから、その辺のところは、日本雇用政策上もしっかりと見きわめてやっていきたいというふうに思っております。
  132. 大森猛

    ○大森委員 私は、やはり認識としてはかなり不正確であり、共通するものは確かにあるかもわかりませんが、例えばフランスにおける時短による雇用創出、これは従業員規模によっても異なりますけれども、多くの企業は来年の一月一日から、これから実施をやる。しかし、来年一月一日からではありますけれども、労使間の協定の中で、これは外務省を通じての調査でありますけれども、既に雇用拡大維持効果が八千百七十八名出てきている、こういう形で、既に実施以前からもうあらわれてきているわけですね。  加えて言えば、フランスの国営電気・ガス会社も、労使協定によって、三十九時間から三十五時間に労働時間を切り下げると合意した。しかも、これは賃金切り下げはしないんだということと、加えて、青年労働者を一万八千人から二万人雇用する、こういうことも含めて、これは労使間で合意がされたということになっているわけであります。ですから、雇用吸収能力がないどころか、現実に今、雇用の拡大効果、それがもう既にいろいろな形で報告されているということを言わなくてはならないと思います。  さらに、こういう事例は幾つでもあるわけなんですが、サッチャー政権が、若年労働者失業保険の対象から外すとか、最低賃金制をなくしてしまう、労働の分野にも市場経済万能、効率万能、そういうものを取り入れたあのイギリスでも、ブレア政権のもとで大きな変化が生まれてきている。  これは最近の新聞に紹介されたものでありますけれども、富士通が進出していたイギリスの富士通関連会社工場、これが最近撤退をしたというときに、閉鎖を発表した直後にブレア首相が現地をお見舞いに訪問、貿易産業省が設けた再就職センターは、再雇用のあっせんだけではなく、失業で精神状態が不安定になった従業員のカウンセリングまで行ったということなんですね。大きな違いがここに出てきていると思うんですよ。その工場の幹部の方が、こんな工場閉鎖が日本でもできるだろうか、去り行く工場長はしばし考え込まされた。これが記事の最後の結びになっているわけなんですが、ここには、雇用行政労働行政における大きな転換が明らかに生まれている。そういう点で、認識をぜひこれは新たにしていただきたい、そういう認識のもとで雇用サミットに臨んでいただきたいと思います。  もう一つ、その変化の現象の一つに、解雇規制の問題、この問題でも新たな動きが出てきております。  例えばフランスでは、経済的理由による解雇の防止と職業転換の権利に関する法律、これが従来からあるわけでありますけれども、これがジョスパン政権のもとで、今まで一定時間かかっていたのを新たに手続を円滑にして、強化する方向で見直しを雇用大臣に指示をして、現在検討中であるというような動きが新たに生まれるとかあるわけであります。フランスあるいはドイツなどの解雇規制についての法律について、これは労働省の方でどのように把握されているのか、お聞きをしたいと思います。
  133. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 解雇規制につきましては、日本については基本的にないわけでございますけれども、労使関係の中で現実に解雇を規制する趣旨の労働協約等が欧米では行われているというふうに理解しております。
  134. 大森猛

    ○大森委員 よくわからないというような御答弁だったんですが、先ほど申し上げたフランスにおける経済的理由による解雇の防止と職業転換の権利に関する法律、あるいはドイツでは、解雇制限法などの形で、例えば社会的に不当な解雇は無効であるとか、いろいろな形で規制が現に行われていると思います。イタリアにおいても、解雇制限法等々があり、あるいは労働市場法で集団的解雇を規制していくということとかあります。さらにはもう一つ、イギリスの事例、新しい動きとして、職場の公正法案、こういうものをつくって、不当解雇についての賠償の上限を従来の最高一万二千ポンドから五万ポンドに引き上げる、こういう措置もとっているということも今日的な新たな動きであると思います。  私ども日本共産党は、これまでにもたびたび、労働委員会あるいは予算委員会、本会議等々の場で、こうした外国の事例も含めて紹介し、やはり今の雇用失業問題を深刻にしている根本問題として、大企業中心として行われているこういうリストラが事実上、野放しであるという問題を指摘し、これを規制すべきだという要求をしてまいりました。  先般の予算委員会などで吉井議員が改めてこうした問題を取り上げる中で、甘利労働大臣は、「リストラを進めていくのに、整理解雇ということに至らないようないろいろな手法を、ツールを用意いたしますからこれを活用してください、」こういう答弁をされているわけですね。これはもう本当に、一つは、リストラ促進、大いにやってくださいというようにも聞こえますし、何よりも、私は、これは全く今のリストラ解雇の現実を知らない御発言ではないかと思います。  いろいろ報道された、我々も紹介しましたように、一たん出向、転籍、これは午前中の討議にもありましたけれども、転籍はもう明らかにこれは解雇であります、出向、転籍、こういうものの対象に挙がれば、それを真正面から拒否できない。いろいろないじめが行われる、個別に呼び出されて説得される、それはもう大変な事態であるわけであり、全くひどい目に遭っているわけなんです。  そういう中で、解雇については、既に最高裁等で判例的には解雇四要件という形で確立されているわけなんです。現に労働省もリーフレットの形で労基署その他に配布をされているわけなんですが、司法の場で、こういう解雇に遭った人たちが司法に救済を訴え、司法がそれの救済に手を伸ばして、判例については既に確立されている。司法の場でそういうものが確立されておるのであれば、行政の面でこれを本当に確立していく、政治の場からそれに手を差し伸べることが今日やはり強く求められているのではないかと思いますが、改めて労働大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  135. 甘利明

    甘利国務大臣 合理的な理由がない限り認められないという判例が出ている、それに従って労働省はそれなりの指導をしているわけでありますが、法律によって解雇を禁止する、整理解雇を禁止すれば事が解決するということではないと思うんですね。どうしても人員の合理化をしなければ企業が立ち行かないというのを無理やりに抱えさせたら、本来解雇されなくて済む人までも事実上解雇されるようなことに会社が倒産してなるということでありますから、そこはやはり合理的な理由ということで整理をする必要があるんだと思います。  仮に、法律でかくかくしかじか、解雇をしてはならぬというような法律ができたとしたら、ほとんど、今度は企業は採用に対して物すごく絞り込んで、むしろ必要な人材を柔軟に採用できるという態勢がとれなくなるんじゃないかというふうに考えております。
  136. 大森猛

    ○大森委員 私どもは、一律に解雇を一切やってはならないというようなことをもちろん言っているわけじゃないわけです。  これは、労働省のリーフレットにもありますように、「整理解雇の要件が示された例」として四つの例が挙げられている。「人員削減の必要性」があるかどうか、「手段として整理解雇を選択することの必要性」があるかどうか、「解雇対象者の選定の妥当性」があるかどうか、そして「手続の妥当性」があるかどうか。これは全く当然のことだと思うんですよ。  これをどうして、法律の上できちんと整理し確定するのがいけないのか、先ほどの大臣の御答弁では全く納得できないのですが、もう一度御見解をお聞きしたいと思います。
  137. 甘利明

    甘利国務大臣 上場企業の人員削減計画がよく新聞に載ります。かなりセンセーショナルに、何千人削減という数字が載ります。これは、恐らく新聞を読んでいらっしゃる方は、これだけ整理解雇されるんだというニュアンスで受け取ると思います。これは書き方がよくないんだと思いますが、それが社会不安を逆にまた惹起をするということになります。しかし、何千人削減という中身は、とにかく整理解雇が出ないような工夫をしているわけです。何カ年計画で、やめる人と採用する人の調整をしながら幾ら減らす、出向する人が何人、もちろん中には転籍する人もあります。新しい仕事先を紹介して、何人を受け入れてもらう。そういう工夫の合わせわざで人員の削減を果たしていくわけでありますから、企業側の自主的な取り組みというのが非常に図られているわけであります。  法律で何をこうせよとがちっとやるよりは、裁判例で大枠がきちっと決まっているわけでありますから、それに向かって企業がいろいろな工夫をするということの方が、企業が採用に対して憶病にならないというふうに私は思うのでありまして、こういう一面日本的なやり方というのは生活の知恵である、歴史がはぐくんできた一つの雇用文化であるというふうに考えております。
  138. 大森猛

    ○大森委員 先ほど紹介した甘利労働大臣予算委員会での答弁と同じ場で、与謝野通産大臣が、一つの会社のリストラが真実であってもそれが合わさったら合成の誤謬という形で、それに対する懸念を表明されているわけですが、私は、一つの企業の真実が重なると合成の誤謬という場合、一つの企業が真実でない場合は一層これは大きな誤謬につながっていくという面で、今行われている一連のリストラ等々、本当にこれが真かどうか、きちんと法律の物差しではかっていくということが必要ではないかと思うのであります。  解雇四要件によって指導し、あるいは裁判に訴え、みずからの解雇を撤回する、こういう事例も少なくない。しかし、それはどうしても時間がかかるわけであります。私の知り合いがつい最近全面的な解決、千代田化工というところですが、復職したわけなんですけれども、約十年余りかかったわけです。本当にそういうことは絶対に避けなくちゃいけない。そういう面で、法律上きちんと保護を明確にするということが求められるのではないかと思います。  ちなみに、先ほど紹介したドイツでは、労働裁判所への判決手続の申し立て件数が約六十八万件、そのうち解雇案件が約六割になるわけですが、全体の七割が三カ月以内に終結しているわけです。やはり法律があるからそう長期にわたらない、長くて三カ月以内で大半が解決をするということになるわけであります。従来の判例に従って、さまざまなトラブル、行政指導に当たっていくというようなテンポではもう追っつかない。先ほども労基署へのさまざまな申告等々がふえているという答弁もありましたけれども、そういう意味では、法律をぜひ改めて真剣に検討する、私、せめてそのぐらいやっていただきたい。  本委員会にも参議院から既に予備審査という形で回ってきておりますけれども、解雇規制四要件を法案化した解雇規制法案、私ども参議院に提出をしております。重ねてこれについて真剣に検討されることを求めたいと思います。  もう一度大臣の御答弁お願いします。
  139. 甘利明

    甘利国務大臣 解雇禁止にかかわる法律はドイツと韓国にあって、韓国はIMFの勧告でやめさせたということですから、今はドイツだけにあるんでしょうか。このドイツの法案の中身は私承知しておりませんが、これは勉強はさせていただきますが、いずれにいたしましても、法律があるないにかかわらず、最終決着はやはり裁判でやるということは実態上そうなのでありまして、その裁判が迅速に進むように、あるいは裁判にならずとも行政がその間に入って調整ができるように基準法改正というのを行って監督署長が間に入れるようにしたわけでありますから、今、こういうふうに法改正をしたその仕組みを活用しながら、不当解雇案件が出ないように叱咤をさせていきたいというふうに思っております。
  140. 大森猛

    ○大森委員 重ねて要望して次に移りたいと思いますが、先般は私、若年失業者の問題を取り上げたわけなんですが、中高年の失業問題、これは当然、世帯主である等々の関係で、より深刻な状況があるわけでありますけれども、この点で特に、もうやむにやまれない、それこそ日々の生活に困っている、こういう状況全国各地で生まれて、そういう中で地方自治体が、極めて厳しい財政状況の中で就労事業を何らかの形で、単費で行っているというようなことも今生まれてきております。  ちなみに、北海道だけで百十九市町村で、何らかの形でこういう事業を行っていると聞いております。北海道は二百十二自治体でありますから、半数以上の自治体が既にこれを行っているわけであります。とにかく、季節労働者、出稼ぎ労働者、こういう方たちが、夏場の仕事がないという中で痛切な悲鳴を今上げておられるわけですね。  そこでお聞きしたいのですが、このように地方自治体がみずからこういう臨時の公的就労事業を行っている状況について、労働省は把握されているでしょうか。また、国の方はこれについてどういうような援助をされているでしょうか、お聞きしたいと思います。
  141. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 今先生がおっしゃいました、地方自治体が独自で、一種の公共事業的なもので就労事業を行っている実態について、私どもは制度的に自治体から聴取しているわけではございません。例えば新聞で報道されておりました岩手県の久慈の例とか、そういうものは把握しておりますが、制度的な把握はしておりません。  それからまた、国としてこういった事業に対する助成は行っておりません。
  142. 大森猛

    ○大森委員 調査も本格的に行われていないということで、これは本当に大変なことだと思うのですね。国の方にその声は来ていないのかというと、決してそうじゃないと思うのですよ。  例えば先ほども申し上げた北海道、ここは何と、去年の九月からことしの一月の初めまで三カ月余りの間に、二百十二市町村のうち七十一の市町村議会で、季節労働者雇用対策等に関する意見書を採択しているわけですね。例えばその中の一つ、北海道の名寄市議会、「国・および北海道において、季節労働者のための特別の就労対策並びに失業対策、生活対策を講じること。また、自治体のとる施策に財政的な助成措置を図ること。」こういう要望意見書を出されているわけであります。七十一市町村議会といえば、北海道の全自治体の約三割ですか、三割の自治体がこういう要望書を北海道やあるいは国に出される。これは、地方議会でありますから、まさに北海道道民の総意とも言える声ではないかと思います。  こういう点で、先般、雇用創出特別基金制度のことについて伺った際、甘利労働大臣は、これはいわば二重三重のセーフティーネットだ、とにかくあることで安心するという、見せ金という言葉はお使いになりませんけれども、しかし実際には運用しないものだ、あることが意義があるんだという趣旨の御答弁をなさいました。これは本当にひどい話だと思うのですね。  問題は、第一のセーフティーネットを外れた人たちが今おぼれかかっている。たくさんの人がおぼれかかっているのに、立派な救命ボートがありますよといって見せびらかす。そういうことじゃ今はだめだと思うのです。今、救命ボートをすぐ出動させる、これが、公共のそれこそ責任を果たす、この面で強く求められていると思いますが、この点、労働大臣、御見解はいかがでしょうか。
  143. 甘利明

    甘利国務大臣 正確に御理解をいただきたいと思うのですが、おぼれている人にボートが出なかったら、いつボートが出るのでしょうか。必ずボートは出るようになっているのでありまして、要するに、その前に中高年齢者に対しての支援をする措置はありますから、その上乗り部分が発動するということですから、何段階にも分けていろいろな発動策があるということをもってセーフティーネットを二重三重に張っているというふうに申し上げたのでありまして、永遠に出動しないボートではないのでございます。
  144. 大森猛

    ○大森委員 もちろん、永遠に出動しないのであれば、これはいよいよ問題なわけなんですが、現に今生活にあえいでおられるということで、やむにやまれないということで、北海道では半数以上の市町村が何らかの形でやっている。これは、従来の失対事業的なものの範囲からも出た新しい仕事もその中にはあるわけですね。ですから私は、ぜひ検討してほしいという要望書が出されておる、自治体がそれにこたえて、今もうやむにやまれぬ事情の中で行っている。それに対して国がどういう援助ができるか、少なくとも検討はすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  145. 甘利明

    甘利国務大臣 雇用活性化総合プランを策定をいたしまして、その中には新年度予算により対応する部分も含まれているわけであります。十五カ月予算ということで、補正と新年度予算と切れ目なく発動していく、両方の予算をあわせて雇用対策の万全を期すという仕組みになっておりますので、まだ大部分が発動はしておりません。ですから、具体的な事例に即応して対応できるように、あるいは新年度予算でいえば、予算が成立し次第対応する準備はいたしておりますので、ぜひこの対策の行方を見守っていただきたいというふうに思います。
  146. 大森猛

    ○大森委員 先ほどの、国や北海道に対する市町村の要望について、せめて検討してほしいということを伺ったわけなんですが、検討もしないということでしょうか。
  147. 甘利明

    甘利国務大臣 公が行う雇用吸収事業ということの御指摘でありますが、今行革が進んでいる中で民営化をしていく部分、公が担当している仕事で民営化をすべき部分等々、いろいろ検討がなされているわけでありまして、そういう官の守備範囲を整理合理化しようという大きな流れが進んでいる中で、突然、公共部門が昔の失業対策事業に類似するようなことをやるというのは、いささか政策矛盾があろうかと思います。  私は、それを、雇用対策をやるなとかいうことを一切言っているわけではありませんで、民間を鼓舞して雇用の受け皿になることを今は考えるべきだというふうに主張しているのであります。
  148. 大森猛

    ○大森委員 一般的な公的就労事業の拡大ということと、北海道などの市町村が行っているそういう事業に対する応援と、これはぜひ整理して行っていただきたいと思うわけであります。  最後に、これは先般の予算委員会でも申し上げた憲法二十七条、勤労の権利義務。このくだりで、当時、憲法議会では、当時は労働大臣ではなく河合厚生大臣労働大臣も兼ねているわけなんですが、「国に力のある限り、失業対策、その他の社会政策などに邁進しなければならないことは、疑いのないことである」、この二十七条に関してこういうことをおっしゃっているわけなんです。  北海道だけではなくて、失業情勢の厳しいそういう自治体、本当に自治体だって、それこそやりたくてやっているんじゃないと思うのです。住民に接して、住民の悲鳴が直接聞こえるところでやっていることに対して、国として、助けてくれと言っているのに、それに手を出さないということは、やはりこれは非常に問題ではないかと思います。そういう点で、ぜひ積極的な検討をされるよう重ねて要望して、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  149. 岩田順介

    岩田委員長 次に、畠山健治郎君。
  150. 畠山健治郎

    ○畠山委員 昨日の労働大臣所信表明に関連いたしまして、労働行政、特に公務員労働にかかわる基本的な問題について幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  まず、政府経済見通しと雇用問題との関連でございますが、経済見通しでは〇・五%の成長を公約いたされております。就業者総数においても、前年度比〇・二%増の六千五百十万人としておられます。これを見る限りでは確かに就業者数は増となりますが、これはあくまでも九八年度実績見通しに対するものでありまして、九八年度当初見込み六千六百五万人に比較いたしますれば、〇・五%増どころか、逆にマイナス〇・〇一四%であって、実際には九七年度実績に近い数値であろうかと思うのです。  経済見通しはいかにも増加するように見えますが、国民からすれば数字のマジックにしかすぎないというふうに言われても仕方がない、こういうふうに思うのです。しかも、成長率が下がればこのマジックはすぐにも馬脚があらわれるという結果になるわけでありまして、そういう点からしてみても国民から信頼される数値とはとても思えないというふうに考えますが、大臣所見についてお伺いいたしたいと思います。
  151. 甘利明

    甘利国務大臣 落ちた時点から立ち上がっても、もとからすればまだマイナスじゃないか、それは確かにそのとおりなのでありますが、要は、ことしを景気回復元年にするという総理の強い年頭の意思にあらわれていますように、マイナスに歯どめをかけてプラスに転じていく、そこのところが非常に大事だと思います。つまり、ここで、もうぎりぎり徳俵で踏みとどまって、これからは押し返していくんだという、元年にするという決意が込められているということをぜひ受けとめていただきたいというふうに思います。
  152. 畠山健治郎

    ○畠山委員 経済見通しに関連して、この六千五百十万人という数字の積算根拠は一体何でいらっしゃいますか。マクロ経済モデルから引き出したものと推測をいたしますけれども、最近の産業構造雇用変化について、これをどのようにモデル計算をなさったのか、御説明をいただきたいと思います。
  153. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 お尋ねのことでございますけれども、政府経済見通しにつきましては、就業者数の見通しも含めまして、経済企画庁の方で積算をしております。ただ、雇用構造、産業構造等の現在までの変化を踏まえまして、十分な考慮を行ってこの計算をしているというふうに承知をいたしております。
  154. 畠山健治郎

    ○畠山委員 議論を少ししたいのですけれども、時間がございません。別の機会にさせていただきたいというふうに思います。  次に、中央省庁等の改革大綱と公務員の身分問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  八十四の事務所、事業所を独立行政法人とすることが今回の大綱で明示をされております。これによって公務員は公務員型と非公務員型に身分が分けられようとしておりますが、働く者の身分保障の観点からすれば、公務員であろうとも最小限保障される基準があると考えます。つまり、労働関係法であれ、国家公務員法であれ、該当職員の身分変更を伴う組織の変更は当然団体交渉事項と考えますが、大臣見解を求めます。
  155. 甘利明

    甘利国務大臣 独立行政法人への移行に際しての問題は、直接には労働省の所管ではありませんけれども、労働問題を所管する立場から、一般論として申し上げさせていただきますと、労使の両当事者間で適切な話し合いが行われるということが望ましいというふうに考えておりまして、中央省庁改革基本法におきましても、独立行政法人に行わせる業務及びその職員の身分等を決定するに当たっては、これまで維持をされてきた良好な労働関係に配慮するものとする旨の規定が置かれているところでございます。
  156. 畠山健治郎

    ○畠山委員 非公務員型独立行政法人の職員とされた場合、労働三権は適用されるとされております。公務員型の場合は国営関係労働法と同じ、つまり団体交渉権、団結権のみ保障されるということになるわけであります。独立行政法人の設立目的は同じでありながら、ある者は三権が保障され、ある者は争議権なしでは、一体何のための独立行政法人だろうかと疑わざるを得ません。業務の性格でこれを区分するというなら、そもそも独立行政法人化は不要ということになるのではないかと考えます。行政法人をつかさどる大臣としての見解を承りたいと思います。
  157. 松田隆利

    ○松田政府委員 独立行政法人制度に関します御説明でございますので、事務局の方から御答弁させていただきます。  先生今御指摘のように、独立行政法人の職員の身分につきましては、制度の創設に際しまして、行政改革会議で真剣な御議論がございまして、中央省庁等改革基本法におきましては、一定の場合には国家公務員の身分を与えるもの、それ以外は国家公務員の身分を与えないということになってございます。かつ、基本法では、そこを具体的に、「独立行政法人のうち、その業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他当該独立行政法人の目的、業務の性質等を総合的に勘案して必要と認められるものについては、法令により、その職員に国家公務員の身分を与えるもの」と規定されておりまして、具体的にはこれからそれぞれの独立行政法人を設立する個別法令において決定してまいりたいと考えているところでございます。  このように、基本法におきまして、独立行政法人制度につきまして、二類型の労働三権の取り扱いが異なる類型を設けておるということでございまして、政府としてはこれは妥当ではないかと考えているところでございます。
  158. 畠山健治郎

    ○畠山委員 これも団体交渉事項を含めていろいろと議論したいところなのですが、きょうは時間がございません。別の機会に譲らせていただきたいというふうに思います。  今回の中央省庁等改革大綱と地方分権との関係についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  まず、地方分権推進本部にお尋ねしますが、いわゆる地方分権の推進に関する一括法において、機関委任事務制度の廃止と自治事務などへの移行は何年度ということになりますか。
  159. 鈴木正明

    ○鈴木(正)政府委員 いわゆる地方分権一括法、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案、仮称でございますが、ここにおきましては、機関委任事務制度を廃止しまして、機関委任事務に係る諸規定を整理するということにいたしておりますが、その施行日は平成十二年四月一日からとする予定でございます。
  160. 畠山健治郎

    ○畠山委員 中央省庁等改革大綱では、国家公務員について、平成十二年十二月三十一日の定員をもとに二五%削減する、こうなっておりますね。そうすると、機関委任事務制度の廃止と同時に、現在国家公務員総定員法の枠外にある職員については、総定員法の枠内に繰り入れるのか。例えば、一万六千人いる社会保険にかかわる地方事務官並びに約二千人の労働事務官についてはどうなるのか。この点について、労働大臣並びに厚生省の説明を求めます。
  161. 西村正紀

    ○西村(正)政府委員 地方事務官でございますが、地方分権推進計画でこれを廃止いたしまして、厚生、労働事務官となります。そういたしますと、総定員法の第一条に規定いたします対象の定員となります。もちろん、地方事務官も国家公務員でございますので、国家公務員全体がふえるわけではございません。  そして、これからの定員削減計画との関係でございますが、平成十二年末日の定員をもとに新たな計画ということが決められておるわけでございますけれども、地方事務官につきましても、従来から、今まで一次から九次までの定員削減計画をやっておりますが、対象になっております。総定員法の対象の事務官となれば、従来と同様に、定員削減の対象になると考えております。
  162. 畠山健治郎

    ○畠山委員 二五%削減しなきゃいけないという方向からすると、矛盾を感じませんかというようなことを私どもは常に感じているわけですね。そこの部分、ここは議論すれば長くなりますけれども、率直に言って矛盾を感じませんか、いかがですか。
  163. 甘利明

    甘利国務大臣 二五%削減するというのは相当なマグニチュード、衝撃波でございまして、このこと自体を実現するということも大変な大仕事でありますけれども、先生も御心配のように、残された職員に対して過重負担が来ないかということも心配事の一つであります。  ただ、人員のスリム化というのは業務のスリム化と一緒に行うわけでありますから、業務整理合理化といいますか、そういうこととあわせて取り組んでいくという必要が当然あるわけでございます。
  164. 畠山健治郎

    ○畠山委員 三党合意で一〇%削減、そして大臣所信時二〇、自自連合になったら二五、本当に数字がずっとひとり歩きしているわけであります。本来、これまでの議論の中でも、分権をすれば国から民へ、国から地方へ、こういう議論は当然スリム化の方向の一つとして言われてまいりました。いま一つは、規制緩和をすれば当然総体の枠が減るだろう、減らさなきゃいけないだろう、そういう二つが見えるわけでありますけれども、今この段で、先々が何もまだ見えていないでしょう、分権だって規制緩和だって。先がはっきりしない間に、一〇が二〇、二〇が二五になる。これはだれが考えたって、そうですかというふうに思えますか。とても思えないわけですが、大臣、もう一遍お答えいただきたいというふうに思います。
  165. 甘利明

    甘利国務大臣 業務の民営化というようなことも策の一つとして取り上げられていますが、いわゆる民営化した途端にそれは公務員の枠から外れるわけでありますから、それ自体はカウントできると思います。もちろん、それらを勘案しても二五という数字は相当厳しい数字だと思います。生首を切るわけにはいきませんから、需給調整といいますか、やめていく人、採用する人の調整で、しかも、ある一定の限られた期間内にやるということは、これは大変なことだと思っております。  総理が二五という最終決断をされたのは、それなりの決意があって当然されたわけでありますし、あらん限りの知恵を絞って、行政の円滑なる遂行に支障がないように、効率的に効果的に、そして雇用不安を公務員の方々が起こさないように、いろいろな知恵を絞りながら取り組んでいきたいというふうに思います。
  166. 畠山健治郎

    ○畠山委員 決意のほどはよくわかりますけれども、決意だけで数字がひとり歩きをして責任を持たなかったら、これは大変なことになろうかと思います。決意と同時に、しっかりと責任を持っていただくようにお願いをしておきたいというふうに思います。  それから、総定員法の枠内に繰り入れ、二五%の削減対象とした場合、自治体の年金課の職員約一万二千人、並びに二千人の専任徴収員の協力を得て初めて成り立っている年金行政、また雇用状況に照らして、安定的な労働行政は円滑に本当にこれから先も運営できるのかどうか。私どもからすると大変不安でならないというふうに思うんですが、この点について、厚生、労働それぞれ見解を求めたいと思います。
  167. 宮島彰

    ○宮島政府委員 まず、社会保険関係業務についてでございますけれども、これまでも、年金受給者が大変増加してくる中で業務量も増加しておりますけれども、これに対しまして、私どもとしても、事務の軽減なり事務の効率化という形で一生懸命対応してきたつもりでございます。今先生指摘のように、非常にこれから厳しい状況になるというふうに思いますが、今後とも、社会保険業務が円滑に運営できるよう、事務の軽減なり事務の効率化に最大限の努力を図っていきたいというふうに思います。  それから、国民年金部分につきまして、現在、市町村におきまして、いわゆる届け書の受理等の窓口事務を行っていただいておりますけれども、これにつきましても、私どもは、今後とも、市町村との連携を基本にして、必要な努力を重ねていきたいというふうに思っております。
  168. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 労働省の場合は、都道府県にあります雇用安定主務課の職員が、約二千三百名でございますが、地方事務官で、一線の公共職業安定所の職員は純粋な国家公務員ということになっております。今般の地方事務官制度の廃止によりまして、公共職業安定所の指揮監督の知事の補助職員として行っておりました地方事務官が国へ完全に移行するということでございます。  それ自体は業務に何か支障があるということはないと思いますが、定員の削減という点から見ますと、現下雇用失業情勢を反映しまして、大変今安定所の職員は仕事に忙殺をされております。安定所を訪れる求職者の方の数自体は景気の好不況等によって変動するものとは思いますが、いずれにしても、職業紹介とか職業相談というのは人と人との一対一のいわば手仕事でありますから、これを今後とも円滑に遂行していくためには、相当の体制整備をいろいろな面で工夫をしながらやっていくことが必要ではないかというふうに考えております。
  169. 畠山健治郎

    ○畠山委員 二五%の削減は、単に数字の上の可否の問題じゃないわけですよね。仮にこれだけの公務員が削減されるとすれば、それは勤務、労働条件の問題に深い影響をもたらすことは当然であります。この点については、当然人事院においても検討されるべきことでありますが、労働行政全般に責任を持つ労働大臣として、当然この削減率に対する明快な意思表示があってしかるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  170. 甘利明

    甘利国務大臣 総理決意を持って国民に示された数字でありますから、閣内にいる者としてこれを履行するためにあらゆる知恵を出さなければならないと思います。同時に、公務員の士気が落ちないように、あるいはこのことを通じて過重に仕事の負担が行かないように、行政も、仕事の内容のスリム化も含めて、整合性をとって取り組んでいきたいというふうに思います。
  171. 畠山健治郎

    ○畠山委員 時間がなくなりました。最後に一言だけ。  労働行政あるいは労働規制の行き届かない労働者、つまり内職労働者の実態の把握、恐らく労働省がなさる仕事でもないかもしれませんし十分できておらないかというふうに思うのです。ところが、景気のよしあしにかかわらず内職の数はどんどんふえています。そしていろいろの問題が現場で起こっています。これらに対してどうあるべきかということも含めて、優しい労働行政をどう見届けるかということも問題でありますから、これから先、内職労働者に対する労働省としてのあり方等々、ぜひひとつ御検討いただくようにお願いを申し上げて、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  172. 岩田順介

    岩田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十一分散会