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1999-02-17 第145回国会 衆議院 予算委員会第六分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成十一年二月十六日(火曜日)委員 会において、設置することに決した。 二月十七日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       江口 一雄君    亀井 善之君       谷津 義男君    海江田万里君       肥田美代子君    平賀 高成君 二月十七日  谷津義男君が委員長指名で、主査選任され  た。 —————————————————————— 平成十一年二月十七日(水曜日)     午後一時開議  出席分科員    主 査 谷津 義男君       江口 一雄君    大村 秀章君       亀井 善之君    海江田万里君       肥田美代子君    穀田 恵二君       平賀 高成君    兼務 島   聡君 兼務 吉田  治君    兼務 太田 昭宏君 兼務 瀬古由起子君    兼務 濱田 健一君  出席務大国臣         通商産業大臣  与謝野 馨君  出席政府委員         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     山田 昭雄君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         大蔵大臣官房審         議官      福田  進君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       岩田 満泰君         通商産業省通商         政策局長    今野 秀洋君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省環境         立地局長    太田信一郎君         通商産業省基礎         産業局長    河野 博文君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君         通商産業省生活         産業局長    近藤 隆彦君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務総局経済取         引局取引部長  上杉 秋則君         環境庁自然保護         局企画調整課長 小林  光君         環境庁自然保護         局計画課長   小林  光君         環境庁自然保護         局野生生物課長 森 康二郎君         大蔵省主計局主         計官      村尾 信尚君         商工委員会専門         員       野田浩一郎君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 分科員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     大村 秀章君   海江田万里君     大畠 章宏君   肥田美代子君     石毛えい子君   平賀 高成君     穀田 恵二君 同日  辞任         補欠選任   大村 秀章君     亀井 善之君   石毛えい子君     今田 保典君   大畠 章宏君     海江田万里君   穀田 恵二君     中林よし子君 同日  辞任         補欠選任   今田 保典君     肥田美代子君   中林よし子君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     平賀 高成君 同日  第二分科員島聡君、第三分科員吉田治君、第四  分科員瀬古由起子君、第五分科員濱田健一君及  び第八分科員太田昭宏君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算  (通商産業省所管)      ————◇—————
  2. 谷津義男

    谷津主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました谷津義男です。よろしくお願いを申し上げます。  本分科会は、総理府所管経済企画庁及び通商産業省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省庁所管事項説明は、各省庁審査の冒頭に聴取いたします。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算及び平成十一年度政府関係機関予算通商産業省所管について審査を進めます。  政府から説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣
  3. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 平成十一年度の通商産業省関係予算等について御説明申し上げます。  現下の我が国経済は、戦後初めて二年連続のマイナス成長が見込まれ、失業率についても依然として高い水準にあるなど、極めて厳しい状況にあります。  現在の困難な状況を打破し、我が国経済再生を図るため、昨年十一月に緊急経済対策を取りまとめるなど、目下、さまざまな措置が講じられているところであります。私といたしましても、景気回復経済再生といった当面の重要課題に加え、二十一世紀の新たな我が国経済発展基盤を形成する観点から、経済構造改革などの中長期的課題にも力強く取り組み、一段と活力と魅力にあふれた我が国経済社会実現に努力してまいる所存であります。  このような認識のもと、通商産業省といたしましては、平成十一年度において、以下の五つ重点項目に沿って、全力を挙げて政策の遂行に取り組む所存であります。  第一の柱は、産業再生に向けた政策手段の総動員であります。  政府は、先般、新事業創出による良質な雇用の確保と生産性向上のための投資拡大重点を置いた産業再生計画を策定いたしました。  当省としては、本計画の着実な実施を図るため、個人等による新規開業及びベンチャービジネス成長支援新規成長十五分野における市場整備等の加速的な推進産業フロンティアを開く創造的技術開発促進経済社会のあらゆる分野における情報通信技術の本格的な展開などによる高度情報通信社会実現経済の動脈たる物流システム高度化などの施策を強力に実施いたします。  第二に、中小企業基盤強化、新事業展開に向けた支援であります。  我が国経済活力の源泉たる中小企業が、金融システム不安定化、低迷する景気等の厳しい状況を克服し、二十一世紀発展に向けた基盤づくりを進める環境整備すべく、貸し渋り対策を強力に推進するとともに、新規開業雇用創出を図ってまいります。また、新商品開発など中小企業経営革新に対する支援や、対応のおくれが懸念されるコンピューター西暦二〇〇〇年問題への中小企業対応促進などの施策を強力に推進してまいります。  第三の柱は、生活の質の向上への支援であります。  先般取りまとめられた生活空間倍増戦略プランの着実な推進を図る観点から、住宅における情報化省エネルギーリサイクルのための技術開発普及促進を図ってまいります。  また、地域における人、物、情報が交流、集積する場所である中心市街地活性化を図るため、中心市街地における施設整備各種プロジェクト推進等、ハード、ソフト両面からの支援を充実し、活力に満ちた豊かな商業空間実現を目指します。  第四の柱は、二十一世紀国際経済を支える基盤構築への貢献であります。  アジア経済我が国経済回復の好循環を形成するため、経済的困難に直面しているアジア諸国に対し、金融対策人材育成技術支援インフラ整備制度整備等の各面における経済再生支援策を早急に講じてまいります。また、諸外国との適切な協力を図りつつ、多国間の国際経済ルールの形成、維持等に積極的に関与してまいります。  第五の柱は、環境エネルギー制約への挑戦であります。  近年広がりを見せている地球温暖化問題、廃棄物リサイクル問題など、通常の事業活動日常生活に深くかかわる環境問題、資源エネルギー問題を克服するため、地球温暖化対策推進大綱の着実な実施、各分野におけるリサイクルシステム構築技術開発推進PRTR制度導入による化学物質管理促進等、新たな経済発展の原動力ともなる循環型経済システム構築に努めてまいります。  また、エネルギーセキュリティー環境保全という政策課題対応するため、原子力開発利用や新エネルギー導入促進省エネルギー推進等重要課題に積極的に取り組むとともに、二十一世紀に向けた新たなエネルギー供給システム構築や戦略的な国際エネルギー政策推進してまいります。  以上申し上げました平成十一年度通商産業政策実施していくため、一般会計では、総額九千百七十二億円を計上しております。また、特別会計については、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計七千億円、電源開発促進対策特別会計四千七百十六億円を初め、五つ特別会計にそれぞれ所要予算額を計上しているところであります。  さらに、財政投融資計画につきましても、貸し渋り対策を初めとして所要措置を講じております。  平成十一年度通商産業省関係予算及び財政投融資計画の詳細につきましては、お手元に資料をお配りしてありますので、委員各位のお許しをいただき、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 谷津義男

    谷津主査 この際、お諮りいたします。  ただいま与謝野通商産業大臣から申し出がありました通商産業省関係予算重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 谷津義男

    谷津主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 谷津義男

    谷津主査 以上をもちまして通商産業省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 谷津義男

    谷津主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位お願い申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力お願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。大村秀章君。
  8. 大村秀章

    大村分科員 自由民主党の大村秀章でございます。  本日は、先ほど与謝野大臣も、第五の柱のところで環境問題への対応ということを言われましたが、私は、リサイクル問題といいますか、むしろ一歩進んで、リサイクル産業を確立といいますかつくっていくべきだという観点から御質問をさせていただきたいと思います。  与謝野大臣は自民党きっての政策通であるわけでありまして、私もかねがね尊敬申し上げておるわけでありますが、ぜひきょうは、明快な御答弁とともに、それ以上にむしろ私に御教示をいただければというふうに思っております。  今回の小渕総理施政方針演説の中にもございましたが、総理は、二十一世紀に向けた国政運営の基本を五つかけ橋に例えて述べられたわけでありますけれども、そのうち、安全へのかけ橋というところで、   大量生産大量消費型の社会は、大量の廃棄物を生み、地球環境に大きな負担をかけております。美しい安定した環境を守り、子孫に引き継ぎ、循環型の経済社会を築き上げることは、私たちに課せられた最も重い責任一つであります。   この責任を果たすべく、地球環境問題への対応省エネルギー対策原子力や新エネルギー開発利用促進実態に即したきめ細やかなリサイクルなどに努力してまいります。 ということを申されたところであります。  また、さらにダイオキシンでありますとか環境ホルモン化学物質管理などに触れ、その上で、自然を慈しみ、資源を大切にする社会を築き、かけがえのない地球を守るため、我が国が先頭に立って取り組んでまいりますというふうに表明されたところでございます。  まさしく、この地球環境問題は、我々人類社会が二十一世紀において直面する切実な課題でございます。自然と共生し、地球環境を守りながら持続的な成長を続けていくためには、人々の意識の中に、省エネルギーなどによるある程度の不便、不利益はこれを甘受するといったような意識でありますとか、環境対策のためには応分の負担を受け入れるといった意識を定着させることが必要になるわけでございます。そして、さらに物を大切にするという意識を定着させまして、いわゆるリサイクル型社会といったものをつくっていかなければならないというふうに思っております。  エネルギーに限らず地球上にあるすべての資源は有限でありまして、二十一世紀の初頭には六十億人を超えるというふうに見られます地球上の人類がそれをそれぞれ分け合って消費するということになるわけでありまして、必然的に、可能なものはリサイクル、つまり再利用しなければならないわけでございます。来るべき環境の時代、先ほど大臣も言われたわけでありますけれども、これは省エネ型社会であるわけでありまして、あわせてリサイクル型社会をつくるといったことでもあると思うわけでございます。  そういう意味で、資源リサイクルというのは、日本では、いろいろ議論はあるわけでありますけれども、古紙の再利用という形で、その発想といいますか、そのこと自体は既にある程度定着をしておるというふうに思っております。また、自動車メーカーでありますとか家電メーカーといったところでは、資材のリサイクルといったものに今真剣に取り組んでいるところもあるわけでございます。  そういう意味で、九七年四月、今から二年前でありますけれども容器包装リサイクル法というものが施行されまして、ガラス瓶でありますとかPETボトル、そうしたものの回収、再利用が義務づけられたわけでございまして、さらに来年の二〇〇〇年四月からは、プラスチックでありますとか紙製、そうした容器包装リサイクル対象になるということでございます。さらに、その後五年、十年を考えますと、リサイクルというのはもっともっと徹底的に行われなければならないと思うわけでございます。  そのためには、私、これは私の考えを今ずっとるる申し上げておるわけでありますが、二つ大きなポイントがあるのではないかと思っております。  そのうちの一つは、リサイクルを促すためには経済的なインセンティブを与えることが必要だと思うわけでございます。リサイクルは大切だ大切だ、こう言われながら、なかなかこれの実施が進んでいかないということは、これは経済的に合わないということが大きな原因であるわけでありまして、これに要するコストをだれが負担するかということが必ずしもはっきりしない。これをはっきりさせて進めていくことが一つポイントだと思います。  それからもう一つは、責任分担ですね。リサイクルに当たって、これをつくる事業者と使う消費者、それから、その間の廃棄物を処理する責任を負っております自治体でありますとか政府、そうしたそれぞれの役割分担を明確にして、ここからここは事業者、ここからここは消費者、その真ん中は自治体、そういう形で役割分担を明確にするということも必要だと思います。  リサイクルというのは、資源消費ワンウエー型社会から、資源循環・再利用型社会、こうしたものへの転換ということの起爆剤にもなるわけでありまして、また、あわせて息の長い取り組みが必要なわけでございまして、打つべき手は早く打たなければならないと思います。  以上、リサイクル型社会をつくっていくための私の基本的な考え方を申し上げたところでございますが、通産省におかれましては、大変積極的にこのリサイクルにお取り組みをいただいておるわけでございまして、ぜひぜひこうした取り組みをさらに深めて続けていただきたいと思うわけでございます。  まず大臣に、通産省リサイクルについてのこれまでの取り組み、そして今後の対応方向につきまして、基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
  9. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 委員がお話しになられましたように、日本でもリサイクルの問題が真剣に取り上げられるようになって、国民も非常にこれに対しては理解を示しているというのは、幾つかその背景があるんだろうと思います。  それは、いずれも先生が今述べられたとおりですが、まず一つは、やはり地球上にある資源というものは有限であって、人類利用可能な資源人類全体として大切に使っていく、そういう観点一つあります。  それから、資源消費型というのはやはり環境負荷をかけます。環境負荷をかけるというのは、例えば、紙をつくるためのパルプパルプをつくるための木材、こういうものをどんどん多消費しますと、世界森林資源というものがどんどん少なくなる、そういうことで環境負荷をかける。  それから三番目は、そういう経済活動をした結果、大量の廃棄物が出てきて、例えば東京の例をとっても、生活から出てくるごみの処理をするための、これを投棄する場所も少なくなってきた、それから産業廃棄物も非常に始末に困っている。そういう廃棄物が大量に出てくるという側面もあります。  また、これも先生ちょっと触れられましたけれども、人間の物を大切にするという意識、教育の問題としてもやはりリサイクルというのは大切だろう、私はそのように思っています。  ですから、そういうリサイクル社会をつくるということは、日本人にとっても、人口が今急速に増加している世界全体の、人類規模での物の考え方としても、やはりリサイクルというのは非常に大事なことだし、このためのいろいろな政策をやってきたわけです。  それで、一つは、リサイクルと申しましても、品物にはいろいろな種類品物がありますし、原料はプラスチックなのかアルミか鉄かガラスかというようにいろいろな種類もありますし、それから、リサイクルをさせようと思う製品種類も違いますので、それはなかなかきめの細かい政策が必要です。そういう政策を遂行していくためには、だれが責任を持って、だれの費用でやるかということもやはり決めなきゃいけないことがあります。  そこで、通産省としては、平成九年度からPETボトルとかあるいはガラス瓶等容器包装につきましては、容器包装リサイクル法施行いたしました。昨年は家電リサイクル法を制定するということで、個々の品目実態に応じたリサイクルシステム構築を進めてきております。  今後どうするのかということですが、やはり分野ごとの、生産流通消費、こういうものの実態に即したリサイクルシステムをできる分野から着実に構築していくことが、先生の言われました循環型経済社会構築のかぎであるというふうに認識をしております。  そういう方向で今後とも努力してまいりますが、その全体の方向として、リサイクル型の社会をつくるという先生の御主張は、私ども通産省が考えていることと全く同一方向であって、それを実際に実行に移すためには、個別の分野ごとにきめの細かい政策を選んでいくということが必要である、そのように思っております。
  10. 大村秀章

    大村分科員 ありがとうございました。  それで、今大臣が言われたように、まさしく個別の分野ごとに事情が違いますし、リサイクルの結果いい製品ができないとこれは回っていかないものですから、それはやはり着実にやっていただくということが必要だと思うわけであります。  そのときに、今大臣言われました容器包装リサイクル法は、PETボトルとか瓶なんかはもう既にやられておるわけでありますが、来年からプラスチックでありますとか紙容器、そうしたものも対象になるというふうにもお聞きしておりますし、その具体的な検討状況といいますか進捗状況、このことと、また、家電リサイクル法が昨年六月に成立をいたしまして、今から二年後の施行を目指しておるわけでありますが、要は、法律はできても実際に運用していく段になって回るようにしなきゃなりませんので、その辺につきましての今の検討状況をあわせてお伺いできればと思います。
  11. 太田信一郎

    太田(信)政府委員 環境立地局太田でございます。  それでは、今大村先生から御質問のあったうち、容器包装リサイクル法について御説明をさせていただきます。  一般廃棄物の相当の部分を容器包装廃棄物が占めるわけでございます。具体的には、各家庭から大体年間五千万トンぐらいの一般廃棄物が出ますが、容量ベースで大体六割、重量ベースで二割が容器包装でございます。このリサイクル推進するため、先ほど大村先生言われたように、役割分担、まさに市町村分別収集を行い、事業者が再商品化を行うことを定めた容器包装リサイクル法平成七年に制定されまして、一昨年、平成九年四月からガラス瓶PETボトル分別収集及び再商品化が始まりました。  昨年度が最初の年でございますが、分別収集を行った市町村が、ガラス瓶で約千六百ございます。それから、PETボトルで約六百三十ということで、再商品化量にしますと、ガラス瓶が六十万トン、PETボトルが約二万トンとなっております。今年度は、まだ年度が終わっておりませんが、参加市町村数も拡大しております。再商品化量も昨年度の実績を上回るものと考えております。そういう意味で、この法律によるリサイクルが、まだ二年目でございますが、定着しつつあるものと考えております。  これらに加えて、今先生指摘のように、来年四月からは、我々完全施行と呼んでおりますが、PETボトル以外のプラスチック製容器包装、これはトレーとかお菓子が入ったプラスチック容器、そういうものも対象になります。それから、紙製容器包装、靴箱だとか化粧品の箱だとか菓子箱だとかあるいはデパートの包装紙なんかも対象にするということで、さらに、再商品化の義務を負う方が、大企業のみならず中小企業小規模企業の方は除外というか免除になっておりますが、中小企業にまで拡大されることになっておりまして、そのための準備作業をただいま鋭意やっております。  いずれにしても、大臣が御答弁申し上げましたように、容器包装リサイクルというのは循環型の経済社会を築き上げるための大きな一歩だと思っております。私どもとしては、ぜひともこの円滑な施行に向けてさらに頑張っていきたいと思っておるところでございます。
  12. 広瀬勝貞

    広瀬(勝)政府委員 家電リサイクル法についての御質問がございました。  先生指摘のありましたように、リサイクル型社会構築のためには、各分野ごと生産消費流通実態に合った形で体制を整えていくべきだというお話がございましたけれども、まさにそのとおりの考え方でございまして、家電製品リサイクルシステムをこの法律でつくらせていただくということで、昨年、国会で成立をさせていただいたわけでございます。  この法律につきましては、昨年の末でございますけれども対象機器をテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機という四品目にするということで指定をさせていただきました。関係業界家電メーカーとか小売業者あるいは地方自治体などにおきましても、この本格的な実施に向けて体制整備を進めているというところでございます。  私ども通産省といたしましても、この法案を御審議いただいたときに、初めてのケースだから国としても相当いろいろな意味でのバックアップをしていく必要があるぞという御指摘をいただきました。したがいまして、まず予算面では、消費者あるいは小売業者に対するPRのための予算お願いしたり、あるいは、税制で固定資産税とか事業所税軽減措置をこのリサイクル施設についてお願いをするとか、あるいは、財政投融資計画の中でこの設備の整備について低利融資お願いするとかいったようなことを今回の予算お願いをしておりまして、ぜひ国会の承認を早期にいただきまして実施をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  13. 大村秀章

    大村分科員 ありがとうございます。  容器包装、それから家電、その次はやはり自動車が大きな分野かなと私は思っております。  実は、私の地元は、自動車の一大産地というのはちょっと表現があれですけれども、そういうところでございます。私は、先般、地元のトヨタ自動車のところを見に行きまして、そのリサイクルの部分を説明も受けました。業界全体で七十数%、トヨタでいえば八〇%もリサイクルしているんだよというような話もお伺いしました。  鉄からアルミからガラスからウレタンからプラスチックから、また鋳物、いろいろなものがまざっておるわけでありまして、大変手間もかかるしコストもかかるということだと思いますが、これは台数がとにかく多いわけでありますから、これをそのままリサイクルせずに廃棄するということでは、もう日本列島が廃棄された自動車だらけみたいになってしまいますので、これはやはりもっともっと進めていかなきゃいけないということだろうと思いますし、業界も自主的に取り組みもしておるというふうにもお聞きしておりますが、今後これについてどういうふうに進めていくべきなのか、その辺についてのお考えもあわせてお伺いできればと思います。
  14. 広瀬勝貞

    広瀬(勝)政府委員 御指摘のとおり、自動車は大変台数も多うございますし、かさばるわけでございますから、使用済み自動車のリサイクル率の向上ということが大変大事なテーマでございます。  今御質問の中にもございました使用済み自動車リサイクル・イニシアチブというのを通産省の方で定めておりまして、これに基づいて業界にも自主行動計画をつくっていただいているわけでございます。  今リサイクル率は七五%くらいでございますけれども、先ほど申し上げましたようにリサイクル率を上げていくということが非常に大事なテーマでございますので、このイニシアチブの中では、二〇〇二年にこの率を九〇%に上げていこうというようなことで目標を設定して努力をしているところでございます。  また、この自動車のリサイクルの問題につきましては、もう一つ、使用済みのものがちゃんとリサイクルの過程に回される必要があるものですから、再生資源利用促進法に基づきまして、この年度中ということでマニフェスト制度の導入を今検討しているところでございます。それによって使用済みの自動車がちゃんとリサイクルのルールに入っていくようにということを考えております。
  15. 大村秀章

    大村分科員 ありがとうございました。  それで、環境問題に関しましては、よくゼロエミッションという言葉が使われるわけでございます。これは、あるところでは不要なものでも別なところでは有用なものになるということでありまして、その利用された結果がまたもとのところでも有効に働くというようなことを私はゼロエミッションというふうに思っております。  それでよく私が例えに使うのが木と落ち葉の例でありまして、落ち葉は木にはもう不要なものでありますけれども、それが地上に落ちて、それを微生物が分解して腐葉土でありますとか栄養の豊富な分解物にするわけでありまして、その土に返った腐葉土とか栄養がもとの木の成長を助けるという、まさしく資源循環、再利用ということかなと思うわけでありまして、こうした仕組みを産業とか社会にやはり組み込んでいく、取り入れていくということが必要であり、これがゼロエミッションだというふうに私は思っております。  資源循環、再利用するだけではなくて、その過程で新たな付加価値もつけるということが求められているし、大変大事かな、そして、そのことが新しい産業をつくっていくということにもなるのだろうと思っております。  環境保全というと、どうもマイナスだ、コストが余計にかかるというような感じの受けとめ方をされるわけでありますけれども、私はむしろ、これを再利用循環させることによって新たな産業をつくるという観点が必要ではないかな、環境保全経済成長、両方つくるんだ、これがゼロエミッション社会の目標かなというふうに思っております。  そういう意味で、同僚議員とともに超党派で、ゼロエミッション社会を目指す議員懇談会というようなものもつくりまして、これは愛知和男先生に会長をやっていただいておりますけれども、そんな勉強会をつくって今少しずつ勉強も進めております。こうしたゼロエミの社会をつくるためにも、リサイクルを行っていくことが経済的に事業的に成り立つということでなければ、やはり進んでいかない。  そういう意味では、物をつくって消費者に供給するのが人間の体で例えると動脈の産業だとすれば、その消費者からまた引き取ってリサイクルに戻っていくというのが静脈だろうと思うのです。そういう意味では、私は、この静脈産業というのを新たな産業分野成長分野として、二十一世紀の戦略産業として育てていくべきではないかというふうに思うわけであります。  その点につきまして、大臣のお考えをぜひお伺いできればというふうに思っております。
  16. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生が御指摘のように、かつて日本の人口あるいは世界の人口が非常に少ないとき、あるいは経済活動が今のような水準でないときには、いろいろなことをしても自然の治癒力ですべて治してくれたわけです。  これだけ人口が多くなって経済活動のレベルが高くなりますと、そこらじゅうで汚して歩く、壊して歩くということを人間はやるわけですから、それは、みずからの手でいろいろなものを修復して環境をもとの状況に常に戻すという努力をしなければならない。今、ゼロエミッションというのは、多分、大気とか排水とか、あるいはいろいろなSOx、NOxのガスとかそういうものの排出ということを言われたと思うのですが、それもなるべくコントロールしなければなりませんし、また、自然が治せない部分は人間が知恵と技術と努力でもとの状況に常に戻す、やはりそういう努力をする必要がある。  これは、五十億も六十億も今地球の表面は人間が生活していますから、やはり非常に意図的に努力をして自然の回復力を十分補わないと、地球は限りなく汚れていくし、また人類が生存できなくなる場所になる可能性もあるので、そこは、二十一世紀を目前にした人類は、英知を持ってそういうゼロエミッションならゼロエミッションという理想に向かって進む必要があるというふうに私は常に思っています。  これは、意識の問題も大事ですし、なるべく環境に排出するものを抑える、あるいは資源の浪費を抑えるというのは、技術の問題でもあるし、科学の問題でもあるし、また経済の問題としても取り組まなければいけませんし、こういう人類にとって非常に大事な問題、日本人にとって非常に大事な問題というのは、ある意味では企業化してそういうものに取り組むということも大事な考え方であろうと私は思います。  先生の御意見には全面的に賛成でございます。
  17. 大村秀章

    大村分科員 ありがとうございます。時間がだんだん迫ってまいりましたので、最後の質問をさせていただきたいと思います。  今大臣からも明快な御答弁をいただきました。そういう意味で、まさしく、一九九二年に、こういった地球環境問題を議論した地球サミットというのが開かれました。そして、それを受けて日本では、一昨年十二月に、一年二カ月前ですが、京都で地球温暖化防止のための京都会議というものも開かれました。そういう意味で、地球環境保全の必要性と大切さというのは十分認識が深まってきたのだろうと思っております。  そして、そうした環境への認識をより高めるために大きなイベントがあるわけでありまして、二〇〇五年に、私どもの愛知県瀬戸市におきまして、海上の森でいわゆる愛知万博が開かれるわけでございます。  そのテーマは、環境を守る社会実現ということでございまして、その前に、一足先に二〇〇〇年に、ドイツのハノーバーで万博が開かれますけれども、これも「人間・自然・技術」をテーマにいたしまして環境を強く意識したものになっておるわけでございますが、長い万博の歴史の中で、環境というものを真っ正面からとらえるのはこの愛知万博が初めてだというふうに私は思うわけであります。まさに環境の時代に開かれるにふさわしい万博でございます。  愛知万博は、日本を初め地球環境保全を目指す各国の努力の報告の場にしたらいいのではないかと私は思うわけでありますし、また、アジア諸国でありますとか全世界、そうしたところに魅力ある環境保全のための提案を、日本がここまでやっているということを示す場にすべきではないかと思っております。  環境問題は何も、地球の温暖化でありますとか資源の有効利用、そうしたものだけではなくて、我々の身の回りの豊かな自然でありますとか生態系の保全、快適な都市・居住環境の確保といった広い問題を含んでいるわけでございます。こうしたことに愛知万博が、一人一人が考える場を提供するということになるのでないか、そのことをぜひ期待したい。そこで生まれた意識がまた、地球的な視野から環境を見て、ゼロエミッション社会をつくるということに結びついていくということをぜひ期待していきたいと思います。  そういう意味で私は、地元では、とにかく愛知がどうのこうのじゃなくて、地球市民の一人としてこれは成功させなければいかぬのだということをいつも訴えております。きょうも午前中、愛知県の新旧知事が小渕総理のところにごあいさつに参りまして、私も御一緒させていただきましたけれども、残念ながら、今、愛知県の財政が大変厳しい状況になっておりまして、地元では、どうも万博がやり切れるのかどうかという不安が若干言われております。私は、そんなことはない、これはもうナショナルプロジェクトだから絶対進めなければいかぬのだ、意義もあるということを訴えております。  この二〇〇五年日本国際博覧会、愛知万博への取り組みに向けての決意をぜひ大臣にお聞かせをいただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  18. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 二〇〇五年の日本国際博覧会につきましては、県知事を初め県庁の方々、あるいは関係市町村の御関係者の方、またすべての愛知県の国会議員の方々に熱心に御支援をいただいております。心から感謝を申し上げます。  この博覧会は、「自然の叡智」というテーマのもとで、環境資源エネルギー、人口、食糧等の人類共通の課題について世界の英知を集め、来るべき時代の実験場となることを目指す新しい試みでございます。  現在、事業主体でございます財団法人二〇〇五年日本国際博覧会協会において、博覧会の基本理念を具体的な事業内容に展開していくための十二の森構想を提示し、そのさらなる具現化に努めていると伺っております。  また、会場の自然をなるべく保全しながら、地形を活用した建築を行おうとする会場計画を策定中でございまして、これとあわせまして、環境影響評価の手続も着実に実施されていると伺っております。さらに、里山利用のあるべき姿を明らかにしていくとともに、CO2を飛躍的に削減したコミュニティーづくりや、廃棄物を限りなくゼロに近づけることを目指した環境プログラムを検討中と伺っております。  以上のように関係者が一体となってその準備に取り組んでいるところでございますが、私も博覧会担当大臣でございますので、通産省を挙げて、引き続き最大限の努力をいたしたいと思います。  また、先生におかれましては、引き続き地元におかれましてこの博覧会に向けての御努力に御参加をいただければと思っております。
  19. 大村秀章

    大村分科員 ありがとうございました。
  20. 谷津義男

    谷津主査 これにて大村秀章君の質疑は終了いたしました。  次に、穀田恵二君。
  21. 穀田恵二

    穀田分科員 きょうは、伝統的工芸品産業の振興に関する法律、いわゆる伝産法に関連してお聞きしたいと思います。  この法律ができてから、ちょうどことしで二十五周年の節目の年に当たります。法律がつくられて以降、百九十二品目が通産大臣によって指定されています。  伝産法の目的は、「伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もつて国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」と述べていますが、大臣にまずお聞きしたいのは、伝統的工芸品産業の現状について、どうお考えですか。
  22. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生指摘のように、この法律は、昭和四十九年に制定されたものでございまして、伝統的工芸品産業を一層魅力と活力にあふれたものにするため、平成四年に、製品の共同販売等の需要開拓事業に対する支援策の追加等を内容とした改正が行われたわけでございます。  具体的には、この法律に基づきまして、伝統的工芸品として、平成十一年一月現在、先生指摘のように、全国で百九十二品目を指定するとともに、当該指定品目の産地組合がこの法律に基づきまして策定した振興計画により行う、後継者の確保また需要開拓等の事業に対する支援を行うなど、財政、金融、税制上の施策を通じまして、伝統的工芸品産業の振興を図ってきております。  しかしながら、昨今の経済の低迷等の中で、生産額、従業者数等に近年減少傾向があると思っております。
  23. 穀田恵二

    穀田分科員 今お話がありましたが、一九九二年に法改正を行って、いろいろ努力をなされてまいったと思います。問題は、当時、その前年に、伝統的工芸品産業審議会の答申で、産地の疲弊は進み、多くの産地が産業としての活力を失い、このまま推移すれば、産地の維持すら困難になりつつあるのが現状だ、こう述べています。  今お話ありましたけれども、この答申を受けて法改正したけれども、それから七年目、そのときの状況とどう変わっているのかについてお聞きしたいと思います。
  24. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 お答え申し上げます。  平成四年に、答申を受けまして法律を改正いたしました。その後、新しい制度としまして、例えば、需要開拓につきましては製造業側と流通販売側が一緒に組むとか、あるいは新製品の開発につきましてはもっともっと意欲的な部分があれば共同出資をして事業をするとか、いろいろな制度をつくりまして、多方面からこの振興を図ってきたわけでございます。  他方、経済状態が非常に厳しいという状況もあったものでございますので、伝統的工芸品産業全体の動きを見ますと、その後、例えば、生産額が減少傾向にある、あるいは従事者数も減少傾向にあるといった傾向は継続しておりまして、そういう意味では、なお非常に厳しい状況にあるというのが現状というふうに認識をいたしております。
  25. 穀田恵二

    穀田分科員 現状は、引き続き生産額においても厳しい状況が続いている。  問題は、その法改正の際に打ち出した重点、つまり共同振興計画、活用計画そして支援計画の三つが当時の目玉でした。そこで、三つの計画が現在一つ一つどのように進行しているのか、お聞きしたいと思います。
  26. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 御指摘のとおり、従来は、製造業関係者が組合を中心としまして振興計画をつくるというのが中心でございました。これに関しましては、現在まで含めますと、累計で百八十三計画が既に認定をされておりますけれども先生指摘になりましたような、平成四年におきまして新しくできました共同振興計画、これはメーカー、製造業者側と流通側が一緒にする計画でございますけれども、これは現在まで六計画の認定でございます。  それから、新商品の開発に関します活用計画、要するに伝産技術を活用して新商品の開発、そういう趣旨でございますけれども、これは現在まで一計画の認定。  それからさらに、支援計画、これは主として地方公共団体の第三セクターがこのような産業の人材育成等を中心とした支援計画をするというものでございますけれども、これは現在まで三つの計画について認定をしております。
  27. 穀田恵二

    穀田分科員 法改正から七年たっています。通産大臣が指定した伝統工芸品産業の品目は百九十二です。このうち、合計しますと、たった十しか計画がないわけです。  問題は、一体、申請が多くあるけれども認定が少ないのか、それとも、申請も少なく認定も少ないのか、なぜこれほど進んでいないのか、この問題についてはどうお考えですか。
  28. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 申請をする段階では、各産地組合が地方公共団体等と十分相談をしてまいりますので、非常にいい計画になってきております。したがいまして、申請があったけれども認定をしないというケースではなくて、申請がありますと認定ができるような内容になっておりますので、残念ながら、申請の件数が現在までこのような程度だったというふうに認識をしております。
  29. 穀田恵二

    穀田分科員 事実はそうなんですけれども、なぜ進んでいないのか。つまり、伝産協会はこうした産業が実は大体千あると言っているんです、いろいろな産地を含めて。そうして、そのうち百九十二を指定しているわけです。要するに、今ありましたように、申請があればすべて認定しているということですから、申請も物すごく少ないということですね。  だから、産地が申請しないというのか、どこが進まない原因なのかということについてもお述べください。
  30. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 おっしゃられましたように、指定品目は百九十二ございますけれども、主として指定品目に関しましては、先ほど申しました、これは従来からの制度でございますけれども、振興計画という、製造にかかわります産地組合が中心になってやるわけでございますが、これにつきましては百八十三ございます。  それで、例えば新しい共同振興計画について申しますと、製造業者側と販売側、いわば流通側といろいろ相談をしまして話し合っていく必要があるといった点、この協力関係が現地でどういうふうに進んでいるかといった点があると思います。  それから、新商品の開発に関します活用計画につきましては、これは新事業を起こすものでございますので、事業資金が必要であるといった点がございます。  それから、支援計画につきましては、これは地方公共団体が主として、地方公共団体の第三セクターでやるものでございますので、地方公共団体の財政問題がございます。  したがいまして、特に活用計画支援計画に関しまして考えますと、昨今の大変厳しい経済状況とか地方公共団体の財政状況、そういったものも一つの影響があって少ないのではないかというふうにも考えておりますけれども、特に共同振興計画につきましては、地元のいわば商、工の、製造業側とそれから卸、販売側もそのような共同が要るという点が、場合によっては困難な原因かという感じもしております。
  31. 穀田恵二

    穀田分科員 今お話あった資金の問題をめぐる点や地方公共団体の財政状況、それはあると思います。ただ、問題は、七年推移して十件しかできていないという現状についての評価なんです。やはりこれは振興計画、三つの計画が十分に作動していないといいますか、そういう結果だと思うのですね。  そこで、先ほどお話があった、産地からの申請に基づいて、こうありましたけれども、当時、これらの問題を考えたときに、産地からのそういう計画をつくる上で、例えば、現地での事務局やそういうものをつくる際に伝産協会が支援する、そういったことがうたわれていました。  問題は、そういう力が本当に現地であるのか。つまり、計画を具体的に立てるような専従事務所だとか事務局体制というのは、全産地で、どのような状況だと把握していますか。
  32. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 おのおのの産地の組合、今おっしゃいましたように、事務的な能力に関しましては、例えば、先ほど申しましたような振興計画の方でございますけれども、これが百八十三の産地ででき上がっております。したがいまして、それなりの事務的な能力なりまとめる力というのは持っているのではないかというふうに考えております。  しかしながら、それだけでは必ずしも十分ではないという面もございますので、今先生おっしゃいましたように、地方公共団体の御支援でありますとか、あるいは伝産協会の指導といったものが必要でございますので、それにつきましても、非常にきめ細かくできるようにということで、いろいろな指導をしておりますけれども、組合自身の能力は、振興計画を見ますと、それなりの能力はあるんじゃないかというふうに考えております。
  33. 穀田恵二

    穀田分科員 どうもその辺が、私は三つ違うと思うのですね。  一つは、産地組合のところに能力がある。それは、自分たち自身の振興のための、そういう仕事があるのは事実なのですよ。問題は、専従事務局だとか、そういう事務所がないというのははっきりしているわけで、二分の一から三分の一しかないんですよ。そういう意味でいいますと、それを支援する二つ目に、体制としての伝産協会の役割があるのですね。そういう仕組みになっているのですよ。  ところが、おっしゃるように、百八十三、百八十三と何度も強調されるけれども、従来からのものであって、今、いわば法改正の際に、それが不十分だからと決めて新しく立てた計画に対して十しか出ていないというところを問題にしているのであって、どうも、話をばくっと広げずにやっていく必要があると思うのですね。  ということは、そういう認識に立っているということは、つまり、新しい法改正のもとでの具体的な推移、それの法に基づく振興が、それ自身としてはたった十しか進んでいないということに対する評価は非常に不十分だと私は思うのですね。その到達点に対してどういう立場で接しているのかということが問われると思うのですよ。ですから、私は、今言ったように三つの点で、やはり極めて不十分だということを申し上げたいと思うのです。  そこで、現地は、例えばさまざまな状況を聞きますと、やはり、まず支援計画でいいますと、建設費に四分の一の補助はあるけれども、地元負担が大きいだとか、後の維持管理、運営費に困るだとか、それから、生徒が集まるかどうか不安などと、比較的大きな京友禅の組合でも、組合だとやりたくてもできないメニューという声だとか、後の負担を考えるととても乗れない、こんな声が出されています。  ですから、支援計画がもう一つ十分に、もともと当時の法制定の際の審議を聞いていますと、大体十ぐらいが、そういう学校を含めた、カレッジを含めた、新しい要望にこたえて、法にこたえてそういう要望を出していたということからしましても、私は、現状はそれ自身もいっていないという点から見れば、残念ながら、うまくいっていないということだと思うのですね。  問題は、その際に、十にとどまらず、今新しい三つの計画に基づく計画を、百九十二の産地に対してどの程度持ってもらおうと思っておられるのですか。
  34. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 これは、おっしゃいますように、産地は本当に中小零細企業が多いものでございますから、これからも引き続き、地方自治体それから伝産協会の職員等ができるだけその産地の声を聞きながら受けとめていきまして、そのような振興ができるようにしたいと思っております。  具体的に幾つという数字ではございませんけれども、これからも極力きめ細かく産地の方のお話を伺いながら、できるだけの振興策ができるように進めていきたいというふうに考えております。
  35. 穀田恵二

    穀田分科員 産地の声を聞く、きめ細かく行う、この二つが生活産業局長のキーワードなんですね、今お話を聞いていると。それはそれでいいと思うのですよ。  問題は、私が言っているのは、百九十二の対象があって、新しく法制定のもとで出された計画に基づいて認定したのは十しかない。ここで百九十二全体をやはり視野に入れてやる必要があるんじゃないかということを、私、言っているのですね。そこをちょっとよく押さえておいてほしいと思うのです。  そこで、次に聞きたいのは、後継者養成なんですね。この点で、さきに述べた答申を受けた一九九二年の法改正のもとで、どんな施策を進めてきたかについてお答えいただけますか。
  36. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 後継者の育成に関しましてでございますけれども一つは、今お話のありました支援計画でございます。現在まで三地域で計画がありますけれども、それが一つの新しい制度でございます。  それから、同時に、伝産協会、伝統的工芸品産業振興協会によります施策としまして幾つかございまして、一つは伝統工芸士の認定事業でございますけれども、これは、従来から協会の自主事業としてございましたものを、法改正の後に、通産大臣が認定をするというような制度に変更しまして、さらに、いわばきちっとした格好にしたということではございます。  それから、二つ目は、伝統的工芸品技術習得奨励事業という事業を新しく平成四年度以降に設けまして、これは、伝統的工芸品技術の伝承者となるような強い意志を持っているけれども、まだ伝統的工芸品の具体的な製作に関してはその経験の日が浅い、そういった従事者に対しまして奨励金を交付する制度でございまして、これによりまして、大体毎年百名から百二十名ぐらい、若手で、伝統的工芸品の伝統的工芸技術の伝承者となろうといった人に対しまして、奨励金を交付しているということでございます。
  37. 穀田恵二

    穀田分科員 今お話がありました奨励事業などは、非常に若手にとっても喜ばれていることだと思います。ただ、一人当たり年間三十万円程度で、しかも一年限りなのですね。これではやはり、後継者養成という点ではまだまだの感があります。  といいますのは、もともと後継者育成には、さっき述べた審議会答申では、一般に一人前の職人になるためには十年にも及ぶ長時間、弟子として修業しなければならないと言われている、こういう内容が書かれています。そうしますと、一年ぽっきりで、この支援事業では、十年ぐらいかかる養成に対して余りにも少ないと言わざるを得ないと思います。  そして、今詳しく述べられませんでしたが、そのほかに研修事業があることも私はよく知っています。その研修事業を京扇子の協同組合でお聞きすると、年間で三コース、各コース一日三時間で五日間、三コース合計で三十五名が研修会に参加し、修了していると言われています。この組合の場合、大体育成に五年はかかると言っています。今詳しくお述べにならなかった研修会を、どれだけの産地で開催し、参加人数はどれくらいいるのか、お答えください。
  38. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 研修会の件でございますけれども人材育成はすべてのといいましょうか、振興計画も含めて中心的な事業でございますので、大変多くの振興計画の中で、人材育成それからその研修会というものが書かれておると思います。ちょっと必ずしも人数等につきまして全貌がつかめていなくて恐縮なんでございますけれども、場合によっては、振興計画でない、計画に基づかない研修会といったものもあるようでございます。  例えば、一例としまして、西陣の関係の例ということでお話しいたしますと、平成九年度の例でございますけれども、二千十八名の方が研修を受講されまして、製織部門あるいは意匠部門等々で合計三百五十一時間という数字がございまして、これが一つの例でございますけれども、そういった例があるということだと思います。  その他、多くの計画の中で、いろいろな研修会を行っているというふうに承知をいたしておりますけれども、ちょっと具体的な数字がなくて恐縮でございます。
  39. 穀田恵二

    穀田分科員 後継者育成は五年から十年かかると言われています。今お話がありました西陣の例も、手織りコースが八十時間だとか、基本技術コースが四十時間だとか、専門技術コースが四十時間というふうになっています。それではやはりまだまだ、先ほどお話ししましたように、一人前になるということを目標にしますと、極めて初歩的な研修と言わなくてはなりません。  したがいまして、私は、今局長からお話あった、全貌がつかめていないというのは、きょう、今数字を言うことができないということだったら結構ですけれども、やはり百九十二品目、つまり、わざわざ通産大臣が指定した百九十二品目の後継者があと何人必要なのか。つまり、このままいけば消滅する危機があるとわざわざ書いているのですね、この問題について。そうしますと、それぞれの業界でどれほどの研修を行い、どれほどの後継者が必要なのかということについて見なければ、消滅する危機があると言われている事態に対して、極めて私は残念なそういう回答だと思うのですね。  学校といいまして、皆さんがおつくりになったさまざまな施策のうちのカレッジというのを見ましても、現在三カ所しかなくて、学校として機能しているのは京都だけなんですね。学校という広い意味じゃなくて、狭い意味で本当に機能していると言われているのは。高山やその他もあります。だけれども、そういうことからしますと、私は、今、当時の審議やまた審議会の答申を見ていますと、何も学校をつくらなくてはならぬと言っているわけじゃないのですね、施設をつくれと言っているのです。  私は、大事なのはここだと思うのですよ。つまり、百九十二品目というのは非常に多種多様である、産地の力量もある、そして現地における育成の事業もさまざまある。そういう実情をよく踏まえて、それこそ、先ほど局長がおっしゃった、きめ細かな対策が必要じゃないか。  ところが、今聞いてびっくりしたのは、研修会が幾ら行われているか全貌がつかめないといった話にありますように、私はそこに見る、先ほど一貫して指摘していますように、百九十二品目を全部視野に入れて、それをどうするかというふうになっていないということがあるのじゃないかと思うのです。  そこで、もう一つ、国会審議の中では、先ほどありました伝統工芸士については、確かに通産大臣の認証ということが新しいことになりました。ただ、審議の中では、伝統工芸品産業の中核、後継者育成の中核、ますますその社会的地位の向上に意を用いていくと当時生活産業局長答弁されています。どのくらいの伝統工芸士が後継者育成で役割を果たしており、またその報酬はどうなっているか、お述べください。
  40. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 伝統工芸士でございますけれども、これは最初の自主事業の当時からの累計でございますけれども、認定者が四千七百名弱でございます。  後継者の育成に関しましては、この伝統工芸士の方々が、例えばいろいろな意味の講師でありますとか実技の指導でありますとかいう面で、率先をして、イニシアチブをとって、いろいろな面で御貢献いただいているというふうに承知をいたしております。  こういう方々、通産大臣が認定するということにしましたのも、このような指導的な役割をぜひとも果たしていただきたいということでございますので、そういう意味では、これからもますます重要な役割を果たしていただけるというふうに思っております。
  41. 穀田恵二

    穀田分科員 どのぐらいの報酬になっているかということは、いかがですか。
  42. 近藤隆彦

    ○近藤(隆)政府委員 いろいろケース・バイ・ケースだと思いますが、幾つかの例で聞いてみて、平均的に考えますと、時給が三千円から四千円ということだそうでございます。
  43. 穀田恵二

    穀田分科員 私は、時給それ自身としては、いろいろ評価があると思います。しかし、伝統産業というもののわざを教え伝えるという立場からすると、私は、そんなに高いとは思えないのですね。  そこで、もう最終の時間になりましたので、次の、私自身もこの伝統的工芸品産業の振興のために若干の提案をしてみたいと思うので、その点については、最後、大臣に御所見を承りたいと思います。  私は、今言いましたように、伝統的工芸品産業を真の意味発展させるには、国や地方自治体がもっと力こぶを入れ、本腰を入れる必要がある。その立場は、まず第一に、百九十二品目全体として責任を持っていくという態度だと思っています。  二つ目に、その新しい法制定に伴う計画を、すべての産地、そのでこぼこはさまざまあるでしょう、しかし、計画をつくっていただく、そして計画をつくれないところは専門的知識のある方を派遣する。特に、伝産協会の体制強化は極めて大事かと思います。伝産協会の方々は、その対象となる伝統産業の指導のマニュアルは出すことができるけれども、現場に行って、一つ一つ指導し作製をしつくり上げることの援助はなかなかできないと言っておられます。そういう意味からも、私はかなめだと思います。  三つ目は、後継者育成の問題では、先ほど申しましたように、ただ箱物をつくるということだけではなくて、産地組合や自治体がやろうとすることに、もっと話を聞き、補助金や交付税措置支援していく。そして、人づくりに必要なことは、教える側にも教えられる側にも、奨励金制度などをつくって奨励する必要があるのじゃないだろうかと思っています。その点で、先ほどお話あった伝統的工芸技術奨励問題については、単年度にとどまらず、長いスタンスで援助することが必要だろうと私は思っています。  四つ目に、伝統工芸品産業を支えているのは人だけではありません。原材料、材料、それから道具、機械、これがなくなりつつあるという警告が発せられているところは多数あります。ですから、そういう点でも、実態がどのようになっているのかなどを調査することや、仕事をしている方々の声を聞くことが大事かと思います。  最後に、以上のことをやろうと思いますと、私は、ある意味で年次計画ぐらいのことを持ってやっていく必要があるだろうと思っています。その年次計画を支える予算を拡充することが必要だ。先ほどありました学校、カレッジの援助金も平成十年度でもう既に打ち切られていたり、それから補助金が事実上下降していたり、こういう実態があります。  こういうことを、今どうしても上向きにさせることなくして、伝統工芸品の産業を振興させる意味での施策を充実させることにはならないだろうという立場が私は必要かと思います。そういう点での御所見を賜りたいと思います。
  44. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 私は、東京の真ん中が選挙区ですが、ここでそんなものがあるのかなと思っていましたら、実は、繊維染物等は神田川の流域でやっておりまして、なるほどなと思ったことがあります。  この分野というのは、なかなか教科書にも書いていない、技術を人から人に伝えるということで、なかなかの難しさがあります。また、若い方はなかなかそういう分野には進まないという傾向があって、後継者を、人を見つけるという点でも難しいですし、それから、人から人へ技術や芸術を伝えていくという難しさもあります。しかし、この分野はいずれも日本人が長年かけて育ててきた大事な文化でございますので、私は、後の世代にも残すというのは、現代に生きる我々の責任であるというふうに実は思っております。  ただ、先生よくおわかりいただいていると思うのですが、そういう伝統工芸品というのは、大変希少価値ではありますが、日常的に使われていない品物が多いということで、やはり事業として成り立つためには大変な努力が必要なわけです。それらのものはいずれも、趣味、嗜好の分野にも属することもありますし、奢侈品であることもありますし、日常生活に使われることが少ない分野になってきてしまっているわけです。  しかし、通産省としては、そういう伝統的な文化、芸術、技術というものを後の世代に残すというために、先生指摘された点を含めて、今後とも私どもは努力をさせていただきたい、そのように思っております。
  45. 穀田恵二

    穀田分科員 そういう意味での法改正を求めて、質問を終わります。
  46. 谷津義男

    谷津主査 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。  次に、太田昭宏君。
  47. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 公明党の太田昭宏です。  時代が大きく変わりました。大変な競争原理社会になります。それは必然です。そういう、時代が変化するということの中で、産業再生計画という政府の重要な閣議決定が、一月二十九日だったと思いますが、なされてきているわけです。そこで、どうしても、私たちの論調としましては、中小企業を守れとかいう形、セーフティーネットが必要だと。しかし、本当は違うのではないか。  イギリスを見ましても、またアメリカ等を見ましても、情報通信産業を初めとするさまざまなものを見ましても、新しい二十一世紀は、中小企業、ここにこそ本当の発展の礎、シーズがあるという、そうした強い認識に立つことが私は大事なのではないか。韓国と我が国を比べてみましても、やはり中小企業がある、強い、そしてそこには技術的な蓄積もある、集積もある。  そうしたことが非常に大事で、中小企業こそ日本経済再生のリーダー役である、そこにこそ経済発展のシーズがある、そういう認識に立ってバックアップをする、というよりはそこに集中的に力を注いでいく、そういう観点がまず大事であるという認識を持っているのですが、これについて、大臣、どうお考えでしょうか。
  48. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 私は、先生の御意見には全面的に賛成でございます。日本経済を今まで支えてきたのは、表向きは大企業の競争力のように見えますけれども日本の大企業を支えるすそ野産業としての中小企業、あるいは独自の技術を持って独自の製品生産、発売している中小企業、独自のサービスを提供している中小企業、こういう中小企業活力がやはり日本経済を支えてきたんだろうと思っております。  大企業を中心とした雇用というのを考えますと、例えば、官公労を含めた連合の傘下組合員というのは八百万でございまして、そのほかに、日本では就業人口が五千六百万とか七百万ということでございますから、雇用の面でも生産の面でも、中小企業が占める割合というのは大変大きいし、また、役割も大変大きいと思うわけです。  日本経済をさらに力強くしていくためには、中小企業再生ということが多分先生の念頭にあられると思うのですけれども、やはり中小企業再生というものを図るような積極的な政策が必要だ。どういう方面で必要かといえば、一言で言えば、資金の面、人材の面、技術の面、こういう面に対して公が応援をしていく、そして、そういう方に活力を持っていただくことが日本経済活性化につながる、そのように私は考えております。
  49. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 今、大臣からせっかくお話がありましたから、私、順番を変えてお話をいたしますが、どうも今までの日本は、教育という出発の時点から、エリート大学がいい、そして大きな企業がいいと。そしてまた、大学自体というのは一体どういうものかといってアンケートをとったりしますと、あなたは大学で何を学びましたかと言うと、何も学ばなかったけれども友人関係だけは財産ですねというような発言が、私たちもしたような記憶もあるわけなんですが、ある。  しかし、もうそういうところで、実は欧米諸国とかなり違っているのではないか。欧米のアンケート等を聞いてみますと、そこで非常に技術的なことを身につけたとか、あるいは経営学というようなもの自体をかなり実務的に身につけたとかと言う。そういうような教育自体、あるいは社会の物の考え方というのが非常に私は大事な気がするわけなんですが、大臣、いかがでしょうか。
  50. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 日本の教育制度というのはすぐれているというふうに一般的に言われていますけれども、私は、欧米先進国あるいは発展途上国に比べて、必ずしも現在の状況というのは満足のいく状況ではないと実は思っております。  例えば、算数、数学というものの学力水準をずっと比べていきますと、小学校ですと大体日本が相当いいところまでいく、中学も相当いいところにいく、高校になりまして、高校の二年生、三年生になりますと、たちまち外国に追い抜かれてしまう。そういうことで、日本の教育制度というのはよさそうに見えるのですけれども、学力という面では、教育にお金をかける割には成果があらわれていないという面が実はあって、それが最も典型的にあらわれるのは大学教育です。  親が一生懸命学資を子供に投資しても、子供は、大学というのはレジャー産業だというふうに錯覚に陥っている部分があって、私も私の息子たちも、遊びまくった大学なわけです。ところが、発展途上国、特に東南アジアの人たちの大学生活というのを見てみますと、やはり大学の四年間の教育というのは大事な資金を投下して受けている貴重な機会だという意識が物すごく強くて、物すごくこの四年間で勉強をするわけです。  ですから、そういう意味では、長期的に日本が競争力を維持するとか国際水準にとどまるためには、今の、先生がおっしゃっていることは多分、日本の大学の四年間というのをもう少しちゃんと、きちんとする必要があるんだぞということを御主張だと私は理解しているのですが、もしそういう御主張だとしたら、私は、日本の大学の教育の四年間というものをもっと充実させる、あるいは大学に行く子供たちも、社会と親が用意した貴重な機会だということを自覚して勉強や研究に励んでもらわないと、長い意味で非常にむだな投資を重ねるということになっていくのではないかということを心ひそかに懸念しています。
  51. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 省庁が縦割りになっているということはそれなりの歴史的な沿革があるのでしょうが、私は、ベンチャーの育成だとかなんとかということについては、通産とか中小企業庁とかそういうところでバックアップする、だけれども、いろいろな方に話を聞きますと、結局、根っこのところの教育というようなことになるのかなとか、創造力というのはそういうところにあるのかなとかいう話になるわけですね。  ぜひとも通産大臣として、これから省庁再編もあるわけなんですが、その辺の大学のあり方、去年は、TLOとかそういうことで大学が、技術移転の問題とかさまざまなことが一歩前進をしたと私は思いますけれども、もう少し教育とか技術あるいは基礎研究、そういうところを総合的にバックアップするような政府であってもらわないと日本の二十一世紀はなかなか難しい、こういう感じがするのですが、そこにちょっと発言力を増していただいて、踏み込んでいただけませんか。
  52. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 私は、何とか二十一世紀日本を豊かな日本として後の世代に引き継ぐというのは我々の責任だと思っています。  今、技術だけの側面で考えますと、例えば、自転車をつくるとかテレビをつくるとかといういわゆる在来型の技術というのは、日本の独占状態ではなくて、これは、もう一般的な技術として発展途上国がみんな持っている。それでは、日本は先端的なところはどうかといいますと、先端的なところは、この十年間ぐらいでアメリカとかヨーロッパにおくれをとっている分野も出てきてしまった。  そういうことで、それでは急いで何をするのかといっても、これは急いで解決できる問題ではなくて、やはり先生言われるように、基礎研究分野に力を入れる、あるいは大学の研究室を充実させる、あるいはそういう大学、研究所等にもう少し国の資金や地方公共団体の資金が入るようにする、それから、大学で生まれた新しい技術とか新しい発見が社会にフィードバックされるシステムをどうつくるか、そういうことをきちんとしませんと、日本の豊かさというものはいずれ失われてしまうのではないかというふうに私は危惧をしております。
  53. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 こういう話は文部関係の分科会の方がよかったというふうに思うかもしれませんが、文部省の人にこういうことを言ってもしようがないわけで、当たり前の話でしょうが、通産とかそういうところがぜひとももっと押し込んでやってあげていただきたい、私はこういうふうに思うわけです。  それから、イギリスの例、例えばサッチャー政権からずっと見ますと、三つの柱をうたった。個人主義と小さな政府そして中小企業。開業率、廃業率を見ましても、一〇%ぐらいで推移ということがありまして、それに比べて、日本の開業率、廃業率というのは、両方低い。ここのところに非常に活力がないという感じがしてならないのですが、この点について、何が原因なのか。これは景気の問題になるかもしれませんが、これは、どうしたらいいというふうに思われますか。
  54. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 一つは、なかなか簡単には解決しない問題だと思うのですが、日本で価値あるコースというのは、いい小学校に行って、塾に通って、いい私立中学校に行って、それから立派な大学に進学して、官庁か一流の大企業に就職してサラリーマンになる、こんなことが一般的な母親の子供の進路のイメージなんですが、みんながみんな同じことを考えると、恐らく大変活力のない社会になってしまうと、私は実は危惧をしております。  これはやはり、自分で事業をやろうという、ベンチャー企業というのはアドベンチャーと同じ言葉ですから、そういう冒険心に満ちた、新しいフロンティアを開拓しようという精神の力、精神の活力を持った子供たちがどんどん生み出されていかなきゃいけない。それは、教育の力であるし、また、家庭での子供に対する教育だろうと私は思っています。  しかし、これは、活力のない社会というのは衰退していきますから、そういう人たちが出てきたときに、やはりそういう人たちを大切にするという精神を少なくとも我々は持たなきゃいけないと思っています。  それから、新しく開業しようと思っている人たちはこの社会でも随分いるわけですが、新しく開業しようとした人たちがいたときに、自分は技術を持っているんだというのだけれども、その人が、果たして資金が手に入るのか、あるいは会社の経営ノウハウを持っているのかというとそうではなくて、やはり、そういう資金と技術と人材をうまく組み合わせられるような環境整備は、私は国でやってもいいと思っています。  特に、新しく仕事を始めようという方が、少しお金があるならば仕事が始められるのに、なかなか資金が工面できないというようなときに、やはりそういうものに対して、直接金融であれ間接金融であれあるいは個人の投資であれ、何らかの形で資金が提供される環境をつくる必要があるし、これは、予算の面でも税制の面でもそういうことを相当工夫してきているのですが、さらに工夫をする必要がある、私はそのように思っています。
  55. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 来年度予算を見ましても、私はどうしても、中小企業を守れという形、ちょっと後ろ向きというか、攻めではない守りの側にということが強いように思うのです。  例えば、減税をします。減税をするといっても、中堅所得層以下、七百九十三万円以下は負担増であるということが、予算委員会でもかなり大きな問題になったりしました。  これについては、いろいろそれはあるのでしょう。しかし、その論議の中で、この間、堺屋経企庁長官、大蔵大臣もおっしゃったと思うけれども、七百九十三万円以下が負担増ということに対して、いや、消費性向というものを見ますと、必ずしもそうでもございませんよみたいな理屈をこねているということが、私は非常に気になったわけなんです。  政府として、それは何遍も何遍も同じような発言をされているということは、この右肩上がりから右肩が下がってきたという時代の中で、私たちが現場を回ってみましても、常識的には、中堅所得層以下の方が消費性向はかなり高いということは当たり前だと私は思うわけなんですが、何かしっかりしたデータがあって、明確にそういう根拠に基づいて政府は学説と異なった見方に踏み込んだのかどうか、それについてお聞きしたいと思います。
  56. 新保生二

    ○新保政府委員 消費性向にも二つ概念がありまして、所得に占める消費支出の割合、いわゆる平均消費性向、これは、通常言われるように、低所得者層の方が消費に回る割合が高いという形で非常にはっきり出てきています。しかし、もう一つの概念である限界消費性向、二時点間を比較して、所得がふえた分のどの割合を消費に回すかというチェンジの部分、レベルではなくてチェンジの部分を見ますと、必ずしも低所得層の限界消費性向の方が高いという形にはなっておりません。  例えば、九〇年から九七年にかけての変化を見ますと、一番低い所得階層、第一階層と言っておりますが、この限界消費性向は四八・七%、つまり約半分を消費に回すということですが、上から二番目の所得階層、一番裕福なところから次の階層の消費性向はこの間六三%ですから、こちらの方が限界消費性向は高くなっているわけです。これはたまたま最近七年間のチェンジですが、その前の五年間、あるいはその前の五年間というふうに比べましても、限界消費性向を見ると、必ずしも所得の順になっていないということがございます。  これは、当たり前ですが、消費性向というのは、所得だけではなくて、経済情勢とか家計のマインドとか年齢とか家族構成とか、さまざまな要因の影響を受けますから、機械的に低所得者層の方が限界消費性向が高いというふうには必ずしも言えないということでございます。
  57. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 そうしたら、経企庁に聞かないで総務庁に聞けばそういう発言じゃなくなるということですか。
  58. 新保生二

    ○新保政府委員 総務庁でも同じ統計を使って話しているのですから、恐らく同じ結論になるだろうと思います。
  59. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 今おっしゃったように、それは九〇年から九七年という長いスパンで、標本を使ってやるわけですから、そのときのさまざまなデータがある。私は、九〇年から九七年という長いスパンの中で、どういう標本を使ってそのデータを出したかというのは存じません。  しかし、まさに今、景気対策で問題になっている話は、この一年間、今の消費者が、あるいは中小企業に勤めている大勢の方々、七七%の人たちが、どういう気持ちでいて何に消費をしようとしているか、そこのマインドも含めたものをつかむということが大事なので、必ずしもそうではございませんみたいなことをこういう時期に言うこと自体が、私は大変問題だという認識をしております。  お答えは要りません。  そこで、中小企業という観点に立ちますと、せっかく大蔵省から来ていただいて申しわけないので、時間の関係で三つまとめてお聞きします。  法人税減税が行われた。中小企業的に言いますと、留保金課税、これが残っているというのか、そういうことが非常に気になってならない。現状では、これが一体何億ぐらいになっているのか。そしてまた、これは三十六年ごろにでき上がったお話ということですが、数字はそんなに正確に要りません。もう時代が変わってきているし、特に、今はキャッシュフローが大事だとか直接金融が大事だという時代になっていますから、これは考え直していく時期に来ているのではないかということが一つ。  それから、欠損金の繰り戻し還付の適用、これについても、欠損金の繰り戻し還付制度の復活ということの検討が必要ではないか。  三番目には、事業承継税制、これも大いに検討して直していく必要があるのではないか。  税制については、特にこの三点についてお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
  60. 福田進

    ○福田政府委員 簡単にポイントだけ御説明させていただきます。  まず留保金課税でございます。  御案内のように、同族会社について留保金課税をさせていただいているわけでございますけれども、同族会社にありましては、少数の株主が意思決定権を有しておりますので、会社から支払われます配当に対する個人の累進所得課税を回避するために、必要以上に会社に所得を留保することが予想された。そういうことから、これに対応するための税負担の公平確保という観点から、この留保金課税制度ができております。  御案内のように、先生が今おっしゃいましたように、三十六年からこの留保金課税をやっていますが、実は、それ以前の歴史を持っているのも事実でございます。この課税を行うことによりまして、間接的に配当支出の誘因としての機能も果たして、一方で、法人形態による税負担と個人形態による税負担、その負担差を調整しようというものでありまして、現行の法人税と個人所得税の基本的仕組みを前提にいたしますと、必要とされる制度であると考えているところでございます。  それから、もう一つの欠損金の繰り戻しの制度でございますけれども、これも御案内のように、厳しい財政状況にかんがみまして、平成四年度からこれを停止しております。ただ、昨年度の税制改正におきまして、停止措置を十二年三月まで二年間延長させていただいております。  十一年度の、今回の税制改正におきましては、新規創業の支援等の観点から、設立後五年以内の中小法人につきましては、停止措置から除外して、原則に戻って欠損金の繰り戻し還付を認めるというふうな案を、今御提案させていただいているところでございます。  それから、いわゆる承継税制でございますけれども一つには、かつて相続税が非常に高いということで御批判がございましたが、昭和六十三年の抜本改革以降、平成四年度、六年度と累次にわたる大幅減税を行ってきたところでございますし、他方で、相続税が高いと言われた一つの原因としての地価があったわけでございますが、これも、近年地価下落がございまして、負担感自体は従来ほどではない、相当緩和されているというふうには思われます。  ただ、実際問題として、今御指摘のような中小法人、特に相続で問題になるのは株式評価であろうかと思いますが、これは取引相場がないわけでございまして、平成六年それから昨年の九月、こういった取引相場のない株式の評価についての見直しも行っているところでございます。  それから、今年度の措置としましては、事業の承継に対する配慮の一つといたしまして、事業用の小規模宅地、これは、現在二百平米までの特例がございますが、この特例につきまして、現在、対象面積を百坪、三百三十平米まで拡大するという措置も御提案させていただいているところでございまして、できるだけの配慮をさせていただいているというふうに考えております。こういった措置も、中小企業事業承継の円滑化に資するものとなっていると考えているところでございます。
  61. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 できるだけ検討し、中小企業をバックアップしていただきたいと思います。  中小企業の貸し渋りということについて、現状をどう認識しているのか。もう時間がありませんから簡単で結構ですが、企業庁長官認識を。
  62. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 貸し渋りにつきましては、毎月四千数百社、各団体を通じて、状況について調査をいたしております。  昨年の三月あるいは十月、かなり貸し渋りに悩んでおられるという統計結果も出ておりますが、十月以降は、十月一日から発足させていただきました貸し渋り特別保証制度の運用といいますか、利用状況が非常に進んでおりまして、こういった貸し渋りに悩んでおられるという中小企業者の方のお声は、わずかながらでありますが、低下傾向にございます。  ただ、いずれにいたしましても、三割以上の中小企業者が貸し渋りに悩んでおられる。あるいは、今後貸し渋りにまた悩むであろう、こちらについては五〇%以上になっております。そういう状況でございますので、我々といたしましては、貸し渋り保証制度の運用、あるいは、政府関係金融機関を通じました融資特別貸付等々につきまして、中小企業者の方に円滑に御利用いただけるように留意をしていきたいと思っております。
  63. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 特別保証枠がきいていることは事実ですが、それが一月はかなり少なくなっているということについて、それ自体の数字について、それは貸し渋りが少しなくなってきたという認識ですか。
  64. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 申込件数は、確かに、一月に入りまして、十二月に比べますと大分落ち込んできております。二月の二週間につきましても、一月よりもまたやや低下傾向がございます。  これについてはいろいろな見方があろうかと思いますが、一つには、十月の制度発足以来、かなりの周知徹底に努めてさせていただきました。それを受けまして、例年ですと十二月に保証需要はピークが参りますが、本件につきましては十一月にピークが参っております。この解釈といたしましては、やはり中小企業者の方々が、資金手当てについて、かなり前広に手当てをされた結果ではなかろうか。したがいまして、その一時的な揺り戻しということで、一月、二月の初めについては申込額が減少傾向にあるということでございます。  ただ、また三月に年度末の資金需要も控えておりますし、どういった見方にするかについては、慎重な判断が必要だと思っております。
  65. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 それ自体の数字を見て、貸し渋りが多少緩和したという認識ではない、厳しいということで認識をしているわけですね。
  66. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 先ほど申し上げましたように、貸し渋りに悩んでおられるというアンケート調査結果、依然三〇%を超えてございます。  我々は、そのアンケート調査結果、あるいはそれ以外のチャネルを通じました中小企業の方々のお声を聞いておりますと、貸し渋りについては依然悩んでおられるという前提で対応しております。
  67. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 終わります。
  68. 谷津義男

    谷津主査 これにて太田昭宏君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  69. 濱田健一

    濱田(健)分科員 化粧品流通価格問題について、公取に質問をさせていただきたいと思います。  いろいろなところで、前も質問をしましたけれども化粧品の価格がメーカーの希望小売価格にほぼ拘束されているのではないかという意見があるわけですが、その辺のところについて、部長としてはどういうふうに御見解をお持ちですか。
  70. 上杉光弘

    ○上杉説明員 化粧品の小売店の中には、先生おっしゃるとおり、メーカーの希望小売価格どおりに販売しているものが多数見られるという現象は承知いたしております。  独占禁止法上、この種の問題に対応するものとして、不公正取引方法のうちの再販売価格の制限という行為類型がございまして、これが独禁法上問題になるのは、メーカーの何らかの人為的な行為によりまして、メーカーが示した価格、ここで言えばメーカー希望小売価格で販売することについて実効性が確保されている、そういうような状況があればこれは独禁法違反になるわけでございますけれども、そういった事態がない場合には問題にならないということでございまして、私どもとしては、その背後に販売店の販売価格を拘束しているような事実があるかどうか、これによりまして独占禁止法上問題となるかどうかということを判断しているわけでございます。
  71. 濱田健一

    濱田(健)分科員 今の答えが出てくるだろうと思っていたわけですが、それはそれとして、値引きされる化粧品、いわゆるセルフ品という言葉も使っておられるようですし、ほとんど値引きされない化粧品、値引きを許されないと言った方がいいのかもしれませんが、カウンセリング品という分類があるというふうに言われておりますけれども、そういう区別された商品の分類があるのかないのか、または、市場にそういうものが出回っているのかどうか、その辺の公取としての認識はいかがでしょうか。
  72. 上杉光弘

    ○上杉説明員 化粧品の販売に当たりまして、いわゆる対面販売を義務づけているような種類と、そうではないもの、そういう二種類の売り方があるというふうに承知いたしておりまして、その場合に、対面販売を義務づけているようなものをカウンセリング商品、それから、そうでないものをセルフ商品というふうに呼ばれているということは承知いたしておりまして、そういったような一定の販売店の負っている義務に応じてそのような区別がなされているということは承知いたしております。
  73. 濱田健一

    濱田(健)分科員 販売店の負っている義務というふうに言われました。そこがメーカーと小売店の契約関係だろうというふうに思っておりまして、ある程度、裁判の関係かれこれもその辺は認めているようだということは私も承知しております。  公取として、このセルフ及びカウンセリング品、どこでどういうふうに区別するというのはなかなか難しいのでしょうけれども、一般的に見たところで、化粧品というのは十円や二十円ではないわけですから、千円とか二千円とか、その辺から始まるような感じがいたしますが、セルフとカウンセリングの分類をしたときに、どの辺の価格帯ぐらいから分かれているように見識をお持ちですか。
  74. 上杉光弘

    ○上杉説明員 化粧品といいましても多種多様ございまして、それに応じまして価格帯も多種多様でございますけれども、例えば同じ化粧水とか口紅、そういう細分された範囲で見ますと、セルフ品とカウンセリング品、つまり対面販売されているものとそうでないものというふうに分けていきますと、相対的に対面販売を義務づけられているものが高い価格帯にある、そういう現象にあるということは事実だと思います。
  75. 濱田健一

    濱田(健)分科員 こういう質問は実におかしな質問ですが、小売店が化粧品を値引きしてはならないという商取引上の根拠が、どこかに適用できる部分がありますか。
  76. 上杉光弘

    ○上杉説明員 独占禁止法上、再販制度というものがございまして、独禁法の二十四条の二に基づきまして公取が指定した商品についてでありますればそういったことが許されるということが過去あったわけですけれども、公取の商品指定、つまり化粧品とか医薬品に対する指定というのが平成九年三月末ですべてなくなっておりますので、いわゆる著作物以外の分野、一般の商品につきましては、再販売価格を制限していい、こういうことはないわけでございまして、もしそういうことがございますならば、先ほど申しましたような要件のもとに独禁法違反になるわけでございます。
  77. 濱田健一

    濱田(健)分科員 去年の二月に、東京都の生活文化局が都内の化粧品販売店の調査をいたしました。六品目やっているようですが、スーパーマーケットが最もメーカー希望小売価格どおりに売っている店が多いということで、平均九七・一%。次が化粧品の専門店で九六%。その他が九〇%。ドラッグストアが八九・五%。薬局が八五%。  完全に希望小売価格どおりに売っているとはこれでは言えませんけれども、ほぼ一〇〇%に近い形で、これだけ今定価どおりに物が売られていない中で、本当に定価に近い形で化粧品が売られているというところに私たちは、前にも申し上げましたけれども、何らかの意図が働いているのではないかというふうに思うわけでございます。  これも、私たちが去年、化粧品問題を考える会というところと適正な価格を実現する会というところで、四月の十一日から十八日間、札幌、仙台、埼玉、京浜、千葉、東京、名古屋、広島、福岡、こういう量販店やドラッグストア、化粧品店を対象にして、どのお店でも同じ商品を買ってみようということで調べてみましたけれども、まとめた中にあるものが、すべて、ほぼ一〇〇%同じ値段で売られているという結果が出ました。あなたたちが安売り値引き店に出会わなかったからだと言われてしまうかもしれませんけれども、そういう傾向を私たちはこれでつかんでいるわけでございます。  先ほど部長が言われたカウンセリング商品、ある程度高額な商品と言っていいと思うのですが、店頭・対面・説明販売が原則というふうにメーカーが主張してきているようですけれども、これは商品の取り扱い上妥当性があるというふうにお考えでしょうか。
  78. 上杉光弘

    ○上杉説明員 公正取引委員会といたしまして、一般的に、対面販売を義務づけることが商取引上妥当性があるか否かということを申し上げる立場にはないわけでございますけれども、私ども考え方は、対面販売の義務づけということにつきましては、それを用いる、商品の適切な販売のため等の合理的な理由が認められて、かつその条件が他の取引先小売店にもひとしく適用される、そういった場合におきましては、そのこと自体は独占禁止法上の販売方法の制限というようなことで問題になるわけではない、そういう問題になるものではない、そういうふうに考えております。
  79. 濱田健一

    濱田(健)分科員 そういうふうに、全体の同じ商品を取り扱うところが、例えば、契約なら契約で、そういうふうな対面・説明・店頭販売ということがあるのであれば、妥当性を欠くものではないのではないかというような今の御答弁ですから、それはそれで引き受けましょう。  では、今までそういう形をとっていなくていろいろなごたごたする関係が生じた、そういう小売店が、店頭で対面で要望があれば説明をして販売をする、そういうふうに切りかえたときに、例えばメーカーが商品を出荷しないというような形で商品を卸さない合理的な根拠というものが商取引上あるとお考えでしょうか。
  80. 上杉光弘

    ○上杉説明員 先ほどの説明で、ちょっと申し上げていない部分がございます。それは、あるメーカーがどういった取引先、卸であるとか小売であるとかと取引をするかということにつきまして、取引先選択の自由というものがあって、どういった取引先とは取引し、どういった取引先とは取引しないという自由が最大限に尊重されるべきであろうというのが私ども考え方でございます。したがいまして、今後取引関係に入るか否かという際に、こういった方々とは取引したくないということであれば、それは取引先選択の自由の問題であろうというふうに考えております。  ただし、例えば、一たん取引関係に入って、取引を行っている相手方が自分の販売価格を守っていないとか、そういった理由で、契約を打ち切るとか、出荷をとめるとか、リベートを差別するとか、こういうことになりますと、これは先ほど申し上げましたように価格拘束ということで独禁法上問題になる、こういうふうに考えております。
  81. 濱田健一

    濱田(健)分科員 今言われた、新たに取引を開始するというときに、取引をする選択の自由、こういうところとはする、こういうところとはしない、そういう選択はどういう原則にあるのか。例えば、一定の数を購入する、代金支払いについても問題はない、そういう商品の取引をする上でスムーズにやりとりのできるお互いの関係があるというふうに見られるのに、いや、やりませんよと言うこともできるのですか。
  82. 上杉光弘

    ○上杉説明員 契約自由の原則といいますか、私どもは当事者間の取引先選択の自由と申し上げていますけれども、そういっただれと取引するかということが自由経済の中では最大限尊重されてしかるべきだろうということを申し上げまして、その範囲内であるならば、私どもとして独禁法上問題にするような行為ではなかろうというふうに考えているわけでございます。
  83. 濱田健一

    濱田(健)分科員 ということは、化粧品メーカー、いろいろ大きなところ、小さなところがあると思うのですが、それは、ただ企業という立場だけじゃなくて、社会的な責務というものを持っておられる。これはある意味では、化粧品という、生きていく上での、女性も男性もそうでしょうが、生活に潤いを与える、また希望を与える、お年寄りが介護施設に入っていても化粧をすることによって見違えるように生きていく意欲を喚起させられたとかという話もいっぱい聞きますけれども、そういう中で、値段のある程度張るものを販売しているということを含めて、社会的な責務というのがあるのだけれども、今部長のお話では、それを条件なしに、こことはやりたくないからやらないとか、こことはやるというような、その程度のことで取引の選択の自由というのが許されていいのでしょうか。
  84. 上杉光弘

    ○上杉説明員 いろいろ御意見あろうかと思います。独禁法上の考え方ということで申し上げさせていただいていまして、例えば、一定の商品が非常に国民生活に不可欠であるということで、その供給側に社会的責務として供給責任を負わす、拒否してはいかぬ、こういう立て方も、ほかの目的で正当化される場合もあると思いますけれども、およそ独禁法の中では、自由な判断で物をつくり、自由な判断で流通させ、消費者に物を供給していく、こういう考え方で、その自由な流れを阻害するようなことを取り除こう、こういうことでございますので、一定のメーカーならメーカーの判断で、私はこういう種類の、こういった類型の販売店において商品を販売してもらいたいということがありますならば、それを尊重してもいいのではないか。ただし、ほかの違法な目的の達成の口実にそれを使っているのでは、これは私ども法律に触れる、こういう考え方でございます。
  85. 濱田健一

    濱田(健)分科員 例えば、そういう取引上の自由、選択の自由ということは、うちの商品については、うちの希望価格で売ってもらうところしか卸さない、安売りするところには卸さない、そういう自由はあるというふうに考えていらっしゃるわけですね。
  86. 上杉光弘

    ○上杉説明員 その点は全く違っておりまして、私どもは、この問題というのは、メーカーがありまして、流通業者がいまして、小売店なり消費者がいる、そういう三段階で考えていただきたいわけですけれども、今問題になっているのは、メーカーが卸とか小売に対しまして自分の指示した価格で売らせる、つまり、自分がどの価格で売るか、だれと取引するかの話ではなくて、間に立っている事業者たる小売店、卸売店に自分の思いどおりのことをさせることでございますから、これは、いわばその当該事業者にとっては自由を拘束していることになりますので、こういった場合、その価格を維持する目的、そういった行為でありましたらこれは独禁法に触れる、こういうことでございます。
  87. 濱田健一

    濱田(健)分科員 例えば、話は少しかわるのですが、本店がある、そこはチェーン店を当然持っている。本店が、ある化粧品の商品を一括して購入する、それを自分たちの系列の支店に卸して販売する、こういう商行為は公取から見て何らか問題点がありますか。
  88. 上杉光弘

    ○上杉説明員 どういう形で取引するかというのは、基本的に自由に当事者間で契約で定めてしかるべきだと考えておりますけれども、私ども、いろいろな取引を見させていただいておりますけれども、本店でまとめて購入して、それを支店に流して支店を通じて販売する、こういう取引を行っている分野というのもたくさんございますので、そのこと自体が何か商慣行上とか独禁法上おかしい、そういうふうには思いません。結局当事者で、例えば、お店ごとに契約するのか、だれとでも契約して、一定まとめて買っていただいたら有利な取引条件にするか、これは基本的には、契約自由の原則の中で当事者間で話し合って決めていただくような話であるというふうに考えております。
  89. 濱田健一

    濱田(健)分科員 これも一つの事例なんですけれども、今まであるメーカーからチェーン店を持っている本店に化粧品が出荷されて、それが支店に回されていた。それについては何ら流通上のトラブルはなかった。ところが、あるときから、本店から流してもらっちゃ困るんだ、支店に流してもらっちゃ困るんだ、個々の店で契約をしなければこれからはだめですよと言われた。では、個々の店で契約をしましょう、言われたとおりにそういう形で契約を結ぼうとすると、それはやりません、おたくとはもう、今までやっている本店そのもの、一店舗ですね、そこしか取引はしませんよと。そういうふうな差別というか、取引を行えない、実質支店の方に商品を回せないというような形が出ている事例を一つ私知っているのですが、その辺は許されるのでしょうか。
  90. 上杉光弘

    ○上杉説明員 なかなか難しい事例ではないかと考えております。  といいますのは、メーカー一つの販売方法のあり方として、販売をする拠点ごとにといいますか、各店舗ごとに取引契約を結びたい、そういうふうに考えているメーカーもあり得るわけでございます。その際に、本店とも契約をし支店とも契約をしておる、そういう条件のもとで、本店がまとめて購入して、比較的安い価格で仕入れて、それを支店に回すというのは、ほとんど通常の商行為そのものでございますから何ら不都合はないのだろうと思いますけれども、たまたま支店と称するところの店舗との間で契約がなかったということで、そういたしますと、その本店が支店の方に商品を供給するということは、当該メーカーの持っている店舗ごとの契約で販売したいというところと相入れなくなるわけでございますね。  その際に、そのこと自体がどうかという質問は非常に難しいのですけれども、先ほど来のことで、そういった店舗ごとの契約という形で売りたいというメーカーの判断というものも、それ自体で独禁法上問題があるというふうにはなかなか言えないのではなかろうかと思っているわけでございます。
  91. 濱田健一

    濱田(健)分科員 ですから、これまで本店がメーカーから一括して仕入れて、それを支店に回していた、そういう仕入れと販売ルートで数年間何ら問題がなかった。それが、ここに来て、そういうふうに支店に回してもらっては困る、私たちはこれからは個々の店で契約をして売ってもらいたいのだと。個々の店で契約をするということは、じゃ、これまでは本店一つでしたから、各支店も個々の店として、十店舗あれば十店舗契約をしていただきたい、ノーマルな形で販売してきたのだからと言うと、いや、本店さんとしか契約していなかったわけだから、今まで本店から流しておられた支店とはこれから契約はしませんよというふうな形での対応がなされている。これは、先ほど部長が言われた、どこと契約するかというところの自由に即適用されるのですか。
  92. 上杉光弘

    ○上杉説明員 今申し上げましたように、先生のおっしゃることが、本店と支店の間で、これまで契約上も事実上も自由に認められていたのに、あるとき、例えば価格を引き下げて売り始めたらそういうことが起きたということになりますと、それは、私どもとしては、一体これはメーカーが示した価格で販売するようにさせていたのではないかという疑いで、そういった事案を調べる、調べざるを得なくなるのだろうと思います。
  93. 濱田健一

    濱田(健)分科員 規制緩和が叫ばれておりますね。どこに行っても価格をこれで売れという商品を見つけ出すのに苦労をする。そういう時代の中にあって、まだまだこの業界には、この商品は値引きして売るな、だめだよというふうに制限をする傾向を私は感ぜざるを得ません。  ましてや、値引きする店だから商品を出荷しないというような対応が幾つか見られている。値引きといっても、一万円のものを三千円にしたり二千円にしたりということじゃなくて、私たちが調べた量販店、世俗的な言葉で言う安売り店でも、一〇%か一五%、大きくて二〇%、例えば六千円で仕入れたものを一万円で売るか八千円で売るかというような商行為をやっていらっしゃるところで、価格破壊という形ではないのですよ。そういうところに出荷をしない。  先ほど言ったような、これまで数年間ノーマルに本店が仕入れて支店に卸していた、それを突如、支店に卸しては困るんだ、個々の店で契約するんだ、では個々の店で契約しましょうと言うと、いや、本店しか今までやっていなかったからほかの支店とはやらないんだというようなところは、いかにも、先ほど部長が言われた、安売りをするからそのほかの店とは契約しないという意図がありありだと思うのです。  そういうところを公取が、何も調査をしないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、手を入れておられない状況を私は感じるのですが、それでは、黙って、この国民の厳しい生活の中で、消費税の問題、減税の問題ある中で、商品そのものを少しでも安く提供しようという善良な販売店、小売店の意思を無にする形になるというふうに思うのですが、いかがですか。
  94. 上杉光弘

    ○上杉説明員 私ども化粧品の再販制度といいますか、化粧品の再販指定というのを取り消しまして一般の商品と同じにしたという以降、化粧品というものが他の商品と同じように自由な価格形成が行われるかどうかということを興味を持って見ておりますし、また、値引きをするから出荷をしない、そういうことが言えるような事案でありますれば、再三申し上げておりますように、私ども法律に触れる行為でございますので、これは厳格に対応したいと考えておるわけですが、いわば因果関係のところで、価格を引いた、つまり値引きをして売ったからある事態が発生したのか、そうではなくて、何らかの正当化できるような条件を守っていないからそうしたのか、こういう判断が非常に微妙な場合もございます。  これは、具体的なケースごとに私ども判断せざるを得ないわけですけれども、おっしゃいましたように、私どもも、こういった規制緩和の時代、自由な価格で売れるように努めるのは我々の責務と考えておりますので、そこは目を光らせているところでございますし、また今後もそのように努めていくつもりでございます。
  95. 濱田健一

    濱田(健)分科員 独禁法の十九条は、不公正な取引方法を禁止している条文になっておりますね。  公取は、平成三年の七月に事務局が、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」というものを作成されているようです。私も手元に持っておりますけれども、その中に、不公正な取引方法の事例として十六項目ですか、書かれているわけですが、昭和五十七年に告示という形でつくられたこれは、十分に不公正な取引を禁止するという立場で生かされているというふうに認識されておられますか。
  96. 上杉光弘

    ○上杉説明員 先生がおっしゃいましたのは、私ども法律の十九条に違反する行為を公取の方で告示で指定することができるということで、十六の行為類型を指定いたしておりまして、これは、おおよそ私どもがいろいろなビジネスの世界で起こり得る不公正な取引というのを十分カバーしておるというふうに考えております。  ただし、それぞれの規定がすべての産業に当てはまるように書いてありますので、例えば流通で見ると、どういう行為がどう悪いのかというのはなかなかわかりにくいということで、今御指摘流通・取引慣行ガイドラインというものを作成いたしました。これは、その十六の行為のうち特に流通において問題となるようなものというのが幾つか、四類型ぐらいございまして、それらにつきまして具体的にわかりやすく示したものでございまして、そういったものを通じて、こういったことが独禁法上問題になるんですよということを理解していただいて未然防止に努める、こういう目的でつくったものでございまして、これは流通世界に携わる方々に比較的よく理解されていて、十分機能を果たしているんじゃないかと思っております。
  97. 濱田健一

    濱田(健)分科員 最後に、私は、いろいろな場面を見ながら、この十六項目に書かれていない、または見えてこない内容によって、そういう場合には不公正な取引をやってもいいというような認識メーカーに与えるおそれが、そういう逆な形で指針を使われている、告示を使われているというふうに感じるところがございます。この告示の内容を、大分古い告示でございますから、変えるおつもりはございませんか。
  98. 上杉光弘

    ○上杉説明員 この告示は、独禁法の二条九項に六項目の行為が定められておりまして、それを法律の趣旨の範囲内で明確化したというので十六項目になったわけでございますが、今私どもの、いろいろな意見まで含めてお聞きしている範囲内では、特にこういった行為がその外にあって問題じゃないかというようなものに接しておりませんので、もし何かございましたら検討させていただきたいと思いますけれども、現時点では私ども、この十六項目で大体世の中で不公正取引と言われるようなものはカバーしているんじゃないかと思っております。
  99. 濱田健一

    濱田(健)分科員 ありがとうございました。
  100. 谷津義男

    谷津主査 これにて濱田健一君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田治君。
  101. 吉田治

    吉田(治)分科員 民主党の吉田でございます。  二月二日の予算委員会で、通産大臣にるる御質問させていただきましたが、その後のほんの二週間の間でさまざまな動きが出てまいりましたので、改めて、この分科会質問をさせていただきたいと思います。  まず最初はダイオキシンに関してですけれども、ダイオキシン対策緊急措置法という形で、昨日、私ども民主党、参議院の方へ提案をさせていただきました。また与党の方も、政府・与党としてこの問題に取り組むということであります。  前回の予算委員会でも、このダイオキシンの関係するもの、発生源というふうなものでとらえてまいりますと、御承知のとおり、清掃工場等の一般焼却炉が大体七、八割、そして産業廃棄物があと一、二割というふうに、ごみという形で非常に大きい。所轄省庁も、環境庁、厚生省、そして、所沢のホウレンソウに代表されるように、土壌という部分を含めて、農水省という形です。  実は、あのときも大臣に御質問させていただきましたように、残りの一〇%が大臣所轄の鉄鋼業の中で発生をしている。大手五社の高炉が、焼結炉で大体五%前後、そして普通鋼電炉業の電炉の部分で約五%ぐらいが発生源になる。  与野党含めてこぞってのダイオキシン対策をしていく場合において、産業に与える、変な意味じゃなくて、影響というものが私はあると。特に高炉メーカーに関しましては、大手という形、五社体制ということもありますけれども、普通鋼電炉は、先日の質問においては、構造改善が必要だと言われるような事業である。  しかしながら、あのときも大臣に申し上げましたけれども、この普通鋼電炉業の持つ意味というのは、環境リサイクル型産業で今後とも重要であるということ、そして地場産業であるということ、そして、申し添えなければならないのは、雇用という部分で、会社自身は四十四社ですか、二万人の雇用ですけれども、関連を含めると約十万人から十五万人をこの産業は雇用している。  そしてもう一点、後ほど質問させていただきますが、大きな意味でのエネルギーの安全保障という中において、実はこの業界、電力の平準化、まさに大臣御出身の電力というふうなものの中において、夜間電力の最大の需要家である。  まさに、この産業がどうするかによっては電力の平準化ということ自身も変わってくるというふうな状況の中において、二月八日の日経新聞によりますと、例えばUSTRの高官と言われる人が、日本の鉄鋼産業自身、過剰だ、過剰については減らしてもらわなければというふうな発言をした。  これは、ワシントンの人ですとかワシントンに関係する人たちに言わせますと、まあこれは大体通産省と話がついているから言うんやでというふうな意見もあるように、まさにこれからの独占禁止法の規定等の厳しい運用の中においては、政府主導のようなカルテル的なものができない中での構造改善事業というのを、ダイオキシンというふうなものを含めて、今後進めていく。  あのときも申し上げましたように、長期、低利融資であるとか、また税の軽減であるとか、補助金等々も同時に言われておりますし、その後のこの数週間の動きの中においては、残存者負担による構造改善基金の設立などをしてもいいのではないかという声等も出てきております。  たかが二週間しか過ぎてはおりませんけれども、この事態の深化の中において、通産大臣または通産省として、この業界に対しての構造改善という部分においては、あのときの質問の最後のところに、大臣からは、財政当局と打ち合わせて、検討するという言葉で言っておられましたけれども、具体的にそれはどういうふうなことをあらわし、どういうふうにそれを協議していくのか、お答えをいただきたいと思います。
  102. 河野博文

    ○河野(博)政府委員 電炉業界の構造改善でございますけれども先生御承知のように、今おっしゃいましたことは、恐らく普通電炉工業会などでも検討が進んでいるということを踏まえての御質問ではないかと思いますけれども、そういった場で今勉強会が設置されておりまして、おおむね過剰設備であるのではないかというような前提も頭に置きながら、どういう構造改善が必要か、あるいは可能かということが議論されている状況でございます。  私どもとしては、この議論を見守りまして、具体的な政策要望等あれば、それにこたえて検討していくというのが基本的な考え方でございます。  また、今御指摘ありましたように、先般の予算委員会大臣が御答弁申し上げましたけれども、御案内のとおり、公害防止関係の税制あるいは低利融資制度というのが現在ございますし、そういったものの活用も今後一層考えていかなければいけないと思います。また、具体的な提案について業界の方からの要望があるようであれば、それも検討していくということだろうと思いますが、いずれにせよ、そういった税制上の措置等であれば、先般大臣答弁申し上げましたように、財政当局との相談も、当然のことながら必要になってくるということだろうと思っております。
  103. 吉田治

    吉田(治)分科員 今局長お答えいただきましたけれども、事は、何度も申し上げていますように、よく大臣初め皆様方御理解していただいていますように、ダイオキシンという、緊急不可分というんですか、日々マスコミ等にも取り上げられている問題でございます。  さまざまな法案も出てきますし、調整もされるという中において、局長、公害防止等の一般的な税制上の措置というふうな言い方をされておりましたけれども、また、業界からの要望を受けてというお話をされておりましたけれども、事ダイオキシンに関しては、これは特別に、例えば官房副長官が自衛隊であのホウレンソウを買えと言うぐらい重要な案件でございますので、特段の配慮というふうなものは今後考えられるのかどうか。その辺はいかがでしょうか。
  104. 河野博文

    ○河野(博)政府委員 今御質問ございましたように、ダイオキシン対策、そして同時に、先生お考えでおられるように思いますのは、電炉業の構造改善をある種結びつけながら、総合的に対応が可能かどうかという御指摘のように思います。  そういった点も含めまして、今、業界自身の問題として議論がなされております。私どもも、これと並行して、さまざまな観点から検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。
  105. 吉田治

    吉田(治)分科員 ありがとうございます。  くどいようですけれども、二つをリンクする部分と別の部分と、両方あると思います。先ほども申し上げました、ダイオキシン自身が通産省の中で影響するのは、まさに、普通鋼電炉業のみならず鉄鋼業全体という認識は持たれていると理解していいんでしょうか。
  106. 河野博文

    ○河野(博)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、特に、もう先生御承知でございますけれども、電炉業につきましては、業界の自主管理計画も定められておりまして、具体的な排出削減に既に取り組んでいるわけでございますので、これに必要な支援は私どももしてまいりたいというふうに思っております。
  107. 吉田治

    吉田(治)分科員 そういうふうなお話の中で、そういう意味で、たまたま電炉業自身の構造改善という中において、ダイオキシンという問題が起こってきた。これは悪くとらえるのではなくていい意味にとらえて、環境にも優しい、また、先ほどからも何度も言っておりますように、環境リサイクル、また電力というふうな一つの業界ではなく、ほかにも影響を及ぼすという中において、これはぜひともしっかりと取り組んでいただきたい、かように思う次第でございます。  続きましては、同じ鉄という関係で申し上げますと、二月二日以降の鉄鋼に関しましては、新聞等でも報道されているとおりでございまして、対米輸出に対する鉄鋼製品のアンチダンピング提訴、二月十二日には、熱延鋼板、俗に言うホットコイルについて、商務省でのクロの仮決定。仮決定されるということは、これはほぼ今後決定されていく、高率のダンピングマージン率がかけられていくという中で、六月のアメリカの国際貿易委員会、ITCの決定を待たなければならないというふうな中において、昨日には鋼板の部分がアンチダンピング提訴の対象になる。まさに、アメリカにおいて、アンチダンピング提訴の鉄鋼製品に関する乱発という状況になっているのではないかと私自身は認識しております。  先日の予算委員会でも大臣に申し上げましたように、大臣はワシントンに長くおられて、その辺のことは非常によく御理解をなさっている。アメリカのやり方というのは非常に理解されて、やり方自身、なるほどこういうふうなと納得をされている部分はあるのではと私は思いますし、また二月二日の大臣の御答弁にもありましたように、アメリカへの鉄鋼輸出というのは、市場原理に従って減少していき、ことしもそうした傾向がこれから続くというふうに見られておりますし、現実そういうふうな数字になってくる。  しかしながら、アンチダンピング提訴の対象品目をこういう形で拡大するということは、一つには、今、アメリカの産業政策、というよりも通商政策、また政治の流れというふうなものが、私は個人的に、随分変更してきたのではないかなと。俗に言う金融中心の、ウォールストリートというものに代表される、グローバルスタンダードという名称も出てくるかもしれませんが、そういう方向から、もう一度、産業である、物づくりというふうな部分、その辺を見直そうという方向性が出てきているのではないかなというふうに考えているところです。  まず大臣、この辺の、アメリカの今までの通商政策のスタンダードが、なぜこういうふうな通商政策のスタンダードに変わってきたのか。さきの中間選挙の結果、また次の大統領選挙を目指してというふうなこともあるかと思いますけれども、これは極めて外交問題にも触れてくる問題ですけれども大臣から一言御感想を賜れれば、お願いしたいと思います。
  108. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、鉄鋼の輸出量、熱圧延鋼の量的なことからお話ししますと、確かに九八年は相当輸出が伸びました。しかし、年末にかけまして日本からの出荷量、これは日本からの出荷ベースの話ですが、これはどんどん減ってまいりまして、一番最近の数字ですともうゼロに近いというところまで落ち込みまして、これは、多分アメリカの国内需要が激減しているということにもよると思いますし、やはり鉄鋼各社がそれぞれ独自にいろいろな判断をしたんだろうと私は想像をしております。  したがいまして、アメリカが非常に日本に対して苦情を言ってまいりましたホットコイルについては、事実の問題として、そういう現象がもうとまってしまったということだと思います。  それから、アンチダンピングはホットコイルについても提訴が既になされておりますが、またそれについての手続が進んでおりますが、私は、これについては、日本政府として、あるいは日本社会として余り大騒ぎをするべきものではなくて、むしろアンチダンピング法それ自体の法手続に乗っているわけですから、そういう法手続を冷静に見ていく必要があるし、各社とも、それぞれ米国内で法律の専門家とともにそれに対抗していると思います。これは、その状況を冷静に見ていく、法手続の進行ぐあいを冷静に見ていくということが私は必要だと思います。  ただ、アメリカのアンチダンピング法というのは幾つかありますけれども、それがWTO整合性があるかどうかという問題は、実はヨーロッパでも疑問を持っている方がありますので、それは、いずれにしても、国際機関の場で、これがWTO整合性があるかどうかということは多分議論になるんだろうと思っていますし、それについては日本政府は、その法制度が国際的なルールに適合したものかどうかということについては、意見を言えといえば言わなければならないと思っています。  それから、アメリカの通商政策、あるいは全体の金融政策とか、万般のことが変わったのかという御質問が最後にございましたけれども、特にここ一、二カ月で顕著に変わったということは私は感じておりません。ただ、アメリカにも政治があり、選挙があり、そういう万般のことを考慮せざるを得ないという側面は、十分私は理解できるわけです。  ただ、アメリカの対外的な赤字というものは相当な水準に達しておりまして、その中で対日赤字も相当な部分を占めておりますので、そういう点では、私どもとしては、アメリカの対日赤字、日本から見れば対米黒字というものが、マクロ経済回復することによって縮小をするという状況をつくり出さなければならない、そのように思っております。
  109. 吉田治

    吉田(治)分科員 まさに大臣言われたことは重要でして、アメリカは、双子の赤字、いっときは随分、SIIのときも随分その議論がありましたけれども、いつの間にか貿易赤字のみになって、議論がなくなったというのは非常におかしいことではないかなというふうに、私は、強い懸念というのですか、このままでいくと、日本が貿易黒字が多いから云々だけではなくして、アメリカの経済自身に与えるマイナスの影響、今はいい循環ですけれども、悪い循環になったときの貿易赤字の多さというのは、累積をあわせてもおかしいのではないかということだけ申し添えさせていただきます。  今、大臣はアンチダンピングということを言われましたけれども、まさに二〇〇〇年に新ラウンドというふうなものを迎える。今大臣もWTOのもとにおいては整合性云々がありましたけれども、アンチダンピング提訴の乱発というふうなものを防止するために、この新ラウンドに向けて何か準備をされているのか、またどういうふうにこの新ラウンドに臨むのかというふうなことが一言ございましたら、お答えをいただきたいと思います。
  110. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生指摘のように、まずアンチダンピングについては、法手続として発動される分には、私どもとしては何ら意見はありませんが、これが通商政策の一環として使われたり、あるいは政治的に使われるということは望ましくないということは、もう世界じゅうの人がわかっていることだろうと思っています。またアメリカも、そういうつもりはないんじゃないかと私は期待をしております。  それから、WTOが二〇〇〇年からいよいよ本格的に始まります。その準備のWTOの関係閣僚会議がことし十一月から始まりまして、これはアメリカがホスト国でやりますが、日本がこの交渉に臨む幾つかの方針があります。一つは、やはり工業製品の関税等を追加すべきだ、あるいは投資についても何らかの合意が得られないかということで、アジェンダに追加すべきものがあるのだろうというふうに思っております。ヨーロッパも同じです。  それから、アメリカは、少し今は変わってきているのですが、従来はセクター別に交渉しようということを言っていたのですが、セクター別に交渉しますと、セクター別の利害関係が顕著になりまして、交渉がまとまりません。したがいまして、日本もアメリカも、いわゆる包括交渉という言葉を使っていますが、全部の問題を一つのテーブルにのせて、それをえいやと全部一遍に決める、そういう包括交渉、シングルアンダーテーキングとも呼んでいますが、そういうことでやろうということです。アメリカもややそれに傾いてきております。  ただ、このWTOの二〇〇〇年ラウンドを成功させるためには、先進国間で幾ら合意ができても世界貿易を拡大するような方向に物事が動かなくて、やはり発展途上国がこのWTOの次のラウンドに熱心に御参加いただくということが、次のWTO交渉の成功をもたらすものだろうと思っておりますし、また、できれば……
  111. 吉田治

    吉田(治)分科員 大臣、御説明はよくわかるのですけれども、私が聞きたいのは、アンチダンピングの乱発について、新ラウンドに対して何か対応するのかという一点だけお答えをいただきたいということですので、時間がありませんので、済みません、それだけ、ちょっとだけお答えください。
  112. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 私どもとしては、アンチダンピング法は多分一九一六年のものと最近のものとあるのだろうと思うのですが、よく勉強すれば、必ずしもWTO整合性がないと私どもは考えておりますので、ない部分については、我々が各国と共同で意見を言うということは当然のことだろうと思っています。
  113. 吉田治

    吉田(治)分科員 乱発という部分についてもちょっと配慮をいただきたいと思っております。  続きまして、時間がございませんので簡単にお答えいただきたいのですけれども、地域振興券交付事業が今なされております。事実関係だけを私はお答えいただきたいと思います。そして、最後に、通産としての今後の対応というものをいただきたいのです。  自治省の方に来ていただいていますけれども、この地域振興券の交付事業において、質問主意書も出ているようですけれども、一部、俗に言う大手スーパーでは使えないとか、使う期間が限られているとかいう話を聞きますけれども、それは事実としてあるのかどうか。あるのであれば、どこなのか。  そして、公取に来ていただいています。それは、公取として、何らかの調査だとかなんとかの対象になるものなのか。それは、法の設立趣旨、目的として、いいものなのかどうか。  そして、それを受けて、通産としてどう考え、例えばこの事業が続いていく場合にはどう対応していくのか。  それぞれ、時間の関係もありますので、簡単にお答えをいただければと思います。
  114. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答えを申し上げます。  お尋ねの事例でございますけれども、神奈川県の二宮町で、振興券二万円が交付されるわけでありますけれども、その券を、一万円分はピンク、一万円分はブルーにしまして、ブルーの方は大型店舗では使えないようにしておるというような事例がございます。もう一つは、東京都の葛飾区でございまして、大規模小売店舗の場合は、地域振興券を使用することができる日を交付の開始の日から約四十日間ずらすというような扱いをいたしております。  私ども、これは、市町村に対する補助事業として組み立てております。地域振興を目的とするという事業でございますので、地域振興ということになりますと、地域の実情によって異なるものでありますので、こういった取扱店舗の選定等については市町村対応を尊重する、こういう扱いにさせていただいておる次第でございます。
  115. 山田昭雄

    ○山田政府委員 まず、独占禁止法に違反するかどうかということにつきましては、これは事業者の行為を禁止しておりますから、地域振興券について、どういうところで使われるかということに仮にある程度限定を設けたとしても、それが独占禁止法上問題になるということではないと思います。  ただ、私どもとしては、一般的に申し上げれば、公正な競争の確保という観点から、種々留意しているところでございます。そういうことでございますが、地域振興券の具体的な使用方法につきましては、それぞれの地方自治体におきまして、もう御承知のとおり、個人消費の喚起とか地域経済活性化を図り地域振興に資する、こういった制度の趣旨その他の条項を踏まえまして、それぞれが判断されている、このように認識しているところでございます。
  116. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 具体的な判断は市町村に任されているとはいえ、極端な差別的なことをするということは、制度の趣旨から好ましくないと私は思っております。  これは、振興券を受け取った人の選択の幅を狭めることでございますし、幾ら中小企業の振興とか商店街の振興といっても、一方では消費者の自由を奪うということでもありますので、それは平衡感覚を持って、各市町村で御判断いただくべきものだろうと私は思っております。
  117. 吉田治

    吉田(治)分科員 ありがとうございます。これについては、もうそれだけいただいたら結構でございます。  最後になりましたけれども、ずっと御質問したくて、私は、大臣エネルギーの専門家だと思うのですけれどもエネルギーの安全保障という部分。安全保障にはいろいろあると思うのですけれども、まさに日本というのは、極東の島国、そしてエネルギーの自給率が低い上に、中東への依存度が非常に高いという中において、特にエネルギーでも、石油、天然ガス、石炭等を使って発電する電力が今後小売自由化という形の法案も今度出てくるという中において、エネルギーの安全保障というものに対する大臣の御所見を賜りたい。  特に、私、個人的かもしれませんけれども、また、いろいろな方とお話ししていて、このごろ非常に感じるのは、エネルギー政策を実際に実務として担当する通産省の皆様方、お若い方が多うございます。私は、昭和六十年に大学を出まして、今三十六歳。私が小学校五年、六年のときに石油ショックが起こりました。あの日の衝撃というのは、私は今でも忘れておりません。  大臣も御承知のとおりに、まず灯油がごんと値上がりする、ガソリンが上がる、町じゅうの電気が消える、「11PM」は十二時で終わる。そして、気がついてみれば、何でかトイレットペーパーはなくなる。あげくの果てにサラダ油までなくなる。何でやというと、油と書いてあるだろうという、笑えないようなことまで起こってしまった。あれを原体験として今持っている中で、やはりエネルギーの安全保障というものは非常に重要だ。  しかしながら、私よりも年が若い、まさに最前線で今エネルギー政策通産省の中で扱っているこの人たち、これから中核になっていく人たちは、多分、そのことというのは何とはなしにしか、はたまた、そういうことは何か遠い昔の話という中において、どうも自由化、自由化という中において、本当にエネルギーの安全保障というのを、骨身にしみてわかっておられるのかなと感じられる方も中にはいらっしゃる。  そういう中において、通産省、特にこのエネルギー問題を引っ張っていかれる大臣としての御所見というもの、まさに、単に電力だけではなく、中東への依存度、また原子力、安全保障上の原子力の役割というのも重要だと私は思うのです。最後に、その辺を含めて、大臣の御答弁をいただければと思います。
  118. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 エネルギーの安全保障というのは、長期的な安全保障と、それから短期的に、何か事が起きたときに日本が安全にエネルギーを手に入れられるかどうかという、両方の側面があります。  そこで、昭和四十八年に起きました石油ショック以降日本がとってまいりました政策というのは、一つは、エネルギーを使うことに関して省エネという考え方が非常に強く出てまいりました。これは、特に産業界では省エネは相当進んで、鉄鋼業なんかのエネルギー消費量というのは劇的に下がったということもあります。それから、一般家庭も、今でも省エネ型の冷蔵庫とか、そういうものが現に売られております。ですから、省エネというのは、安全保障の面から、まず考え方として必要です。  それから、もう一つは、考え方としては、脱石油ということが言われたわけです。その当時の石油に対する依存度というのは七割ありましたが、今の石油依存度というのは、正確な数字は覚えておりませんが、五割程度になっております。そういう意味では、日本の石油政策エネルギー政策というのは、いい方向に進んだと思うわけでございます。  それから、供給国を偏らせない、そういうソースの多様化ということもやりましたし、それからエネルギー源の多様化ということもやりました。脱石油でどこに行ったかといいますと、やはり原子力それから石炭、これは国内炭ではなくて、輸入炭による発電あるいは製鋼用の石炭、こういうものはエネルギーとして石炭に大きく依存していったわけでございます。  プラス、今申し上げましたのはいずれも長期的な安全保障を図るということですが、そのほかに、やはりエネルギー日本に輸出してくれている資源を持っている国との外交関係を円満なものにしておく、そういう目に見えない努力も日本政府はやってきたわけでございます。  それから、短期的なエネルギー対策としては、やはり突然石油が、何らかの事情で、特に戦乱が大きな原因になると思いますし、また政治的な判断で、石油がとまるということも理論上はあるわけですから、日本の国内の備蓄を進めてまいりまして、今百日を超える備蓄というものを持っておりますから、これはいわゆるランニングストックを入れたもので百日を超えておりますけれども、それだけ持っておりますと、一週間や二週間、場合によっては一月とまっても、何ら影響がない。現に、クウェートのときも、実際は全く影響がなかったわけです。  ただ、先生が最後に指摘された点は非常に重要なことでして、現に、石油ショック以降世界じゅうで探鉱が進んで、油が見つかる、天然ガスの利用も進むという中で、みんな少し安心をし過ぎている。それから、昨年、一昨年二十ドルぐらいであった原油の建て値が、現在は十ドルをちょっと超えるところまで原油価格が下がってきておりまして、何か現時点の日本人というのは、石油というのはお金を出せば幾らでも手に入る、エネルギーは簡単に手に入るという錯覚に陥っているのですが、そんなことは決してない。  やはりエネルギーがちゃんと引き続き日本国の中に入ってくるというためのいろいろな政策とか施策とかというものを間断なくやっていくということは、先生の御指摘のとおり必要ですし、これを先生の世代のもう一つ下の世代の方には特によくわかっていただかないと将来が心配だというのは、まさに私は先生の御指摘のとおりだ、そのように思っております。
  119. 吉田治

    吉田(治)分科員 時間です。ありがとうございました。  エネルギーの安全保障はまさに環境問題ともかかわってきますので、よろしくお願いします。
  120. 谷津義男

    谷津主査 これにて吉田治君の質疑は終了いたしました。  次に、島聡君。
  121. 島聡

    ○島分科員 民主党の島聡でございます。  今、本年度の予算審議されているわけでありますけれども、私も選挙区の方でいろいろな経営者と話していますと、随分大盤振る舞いはされているけれども、どうもいま一つである。いま一つというか、本当にこれでうまくいくのかどうかというのは、今までの状況から見てもわからない。今回これだけ国債を発行して、クラウディングアウトのような状況も起きている。つまり、今までのような手法はもう通用しなくなっているのではないかということは、多くの方が、特に経営を実際にやっていらっしゃる方は感じておられるというような思いをしております。  彼らがよく言うのは、本当に、今までの日本状況、いわゆる経済というものを、経済構造自身をどんどん変えていかなければいけないのだろうと。これは、多分通産省も同じような流れにおられて、その一つのキーワードがいわゆる業を起こす、起業という形で、いろいろな政策展開しておられるのだろうということは推察しております。  きょうは、昨年の臨時国会で新事業創出促進法が制定されまして、中小企業創造法とかいろいろな法律があって、いろいろな形で政策が起業というものを重視するような形になってきておりますけれども、問題は、それが本当に実効性があるものになっているかどうか、そういうことに焦点を絞って質問を進めていきたいと思いますので、お願いを申し上げます。  私ども民主党も、いわゆる雇用問題を非常に重視しておりますが、その雇用問題はやはり起業というもので考えていかなくてはいけないだろう。これはよく言われる話でありますが、開業率がもう今三・七%である。これは、やはり何とか政策的にも目標値をつくって、例えばこの倍の七%ぐらいにするとかいうことを考えることも必要ではないかとか、あるいは、アメリカの新規雇用は、九一年から九七年までに一千四百万人も創出されているけれども日本は、八六年から九六年の十年間で、新規事業による雇用創出は百九十五万人しかされていないということから考えましても、今後こういうことに力を入れていくべきであろうというのが私どもの思いでありまして、民主党としても、プロジェクトチームをつくって、現在、政策をまとめているわけでございます。  先ほど申し上げました新事業創出促進法が制定されまして、中小企業技術革新促進制度が動き出した。いわゆる日本版SBIRと言われておりますが、これにつきまして、まず、本当にこのグラント、この量でいいのだろうか、予算規模の問題について質問したいと思います。  アメリカの場合は、全体が現在十億ドルで、しかも、一件当たりが二十一・七万ドルである。日本の場合は、いろいろな意味で制度が異なるので単純に比較をするつもりはありませんけれども、現在、三次補正等では大体百億円程度でありましたし、単純に計算すると、一件当たり五百万円ぐらいにしかならない。  今後、いわゆる起業家経済にしていくというのであれば、この問題についてどのように取り組んでいくのか。アメリカも、最初は非常に少なかったわけでありますが、徐々にふえていって、今や主力のものになっていると聞いております。今後どのように取り組んでいくのかということについて、まず最初に大臣にお尋ねしたいと思います。
  122. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、冒頭の先生のお考えですが、一連の経済対策というのは、すべて需要サイドからの、有効需要をふやすという方向政策をずっとやってきたわけです。財政支出も減税も、すべてそういう方面からの経済対策でございまして、やはり業を起こすとか新規産業を創出させるとか、そういう中で雇用を増大させるという、構造改革の面、供給サイドと言ってもいいのですが、そういう面の政策がこれから必要になってきて、それが本物の政策だろうと私は思っております。  それから、今お尋ねになりました、予算の規模とか、あるいは本当にできるのかとか、実効性があるのかということでございます。  新事業創出促進法というのは、実は、昨日から施行されることになりました。これは実際には、平成十年度の三次補正からは、これまでのところ、約四百億円が特定補助金等として指定されまして、交付金額については、補助金ごとに異なりますけれども、一件五百万円とは限られておらないわけでございます。また、現時点では、中小企業に交付される資金の規模について把握することは、残念ながらできないわけです。  ちなみに、米国の例、米国のSBIRの制度は、一九八三年から開始されたものですが、当初の対象額は五千万ドル、当時の日本円にして百億円程度にすぎなかったのですが、徐々に現在の十一億ドル、約千三百億円まで増加してきたという経緯がございます。  私どもとしては、関係省庁とも連携しながら、特定補助金等の中小企業への支出機会の増大というものに努めてまいりたい、そのように考えております。
  123. 島聡

    ○島分科員 まさに供給サイド、当然でありますけれども、今大臣おっしゃったような形で政策転換、ただ供給だけじゃなくて、需要サイドもきちんと同時にやっていかなければいけないことだとも思います。  これから、かなり具体的な質問に入っていきますので、お願いします。  昔「失敗の本質」という、日本陸軍がなぜ失敗したか、そういう本がありました。それはなぜかというと、日本というのは、うまくいったかうまくいかないかということをきちっと検証しない文化風土があるというのがあります。つまり、フィードバックができないような状況にある。そういうことが、日本陸軍が戦争に負けた原因であるという結論であります。  どうも、そういう文化が今日本にも残っているようでありまして、それが、アメリカは成功した、アメリカ軍が日本陸軍に勝った原因だと言われています。だから、失敗をきちんと研究し直して、それをどうクリアしていくかということを研究したことによって、やっていった。  今回の日本版SBIRとアメリカ版SBIR、本家のSBIRを比較しますと、審査結果をフィードバックする体制というのがまさしくそうなんです。例えば、企業の方が、審査は通りませんでしたと。それに対してアメリカの場合は、こうこうこういう理由で審査が通りませんでした、あるいは、こういうふうにすれば今後通る可能性もありますよというようなヒントを与えているわけです。  これは、次回の応募を促すこともできますし、当然、こういう理由でだめだったのだと言うことは、例えば日本のようにだれかの口ききがあったとか、そんなようなことを否定する、審査の中立性や透明性を確保することにもつながるということであるわけですが、日本版のSBIRにおいては、フィードバック体制というのはどのようになっているわけですか。
  124. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 ただいま先生から御指摘をいただきましたように、アメリカ版のSBIR、十数年の歴史を持っておりまして、インターネット等で公募して、具体的に応募がございまして、審査をいたします。採択されなかった場合については、どういう理由で採択されなかったのかということについての情報開示といいますか、内容のフィードバックがやられておると我々も聞いております。  日本版SBIR、新産業創出促進法につきまして考えておりますのは、現在、二月十五日付で、特定補助金を四百億ばかり指定いたしました。  これは当然のことながら、通産省あるいは中小企業事業団の持っておる外部委託研究費以外の、各省の持っておられる補助金等について指定申し上げているわけで、一概にそれぞれの補助金、委託費について、運用について、詳しくは申し上げられませんけれども、御承知のように、政府といたしましては、平成九年に、内閣総理大臣の決定によります、国の研究開発全般に共通する評価の実施方法のあり方についてという大綱的な方針、指針が出されております。その中におきまして、評価の結果あるいはその理由が、被評価者、応募をされてリジェクトされた方について、開示されるように適切な措置を講じろということで、指針が既にできております。  したがいまして、特定補助金等で指定されたものにつきましては、こういった形で御本人から直接、どういう理由で落ちたのかというお申し出があれば、お話をし、説明を申し上げるという体制になると思います。
  125. 島聡

    ○島分科員 これは成功させなくてはいけないわけですから、フィードバックする体制、今、本人が聞けばという話でありますけれども、より改善方を望みたいと思います。  同じように、アメリカの方は、各省庁別にいわゆるトピックス集といいますか、こういうものを今求めているという分厚いトピックス集が用意されている。私も、日本版SBIRと書いてあったものですから、きっとそういうものなのだろうとイメージして、いろいろな審議にも臨んでいたわけでありますが、日本版の方は、技術開発課題というのが出た。何か九ページぐらいであったというふうに聞いております。  これは、日本版SBIRというから、私のイメージだとそれぐらいたくさん出てくるのだろうと思っていたら九ページ、これでは、魅力のあるものになっているのかどうか、なっていないような気がする。  ベンチャー企業経営者にとっても、あるいは企業経営者にとっても、これを見て、さあ、どうしようかということになりますと、極めてお寒い状況であると私は思いますし、現実に、私は、ベンチャー企業の経営者の皆さんといろいろなところで話し合いをしているのですが、アメリカで企業を経営していらっしゃって、私の企業は随分アメリカのSBIRをもらっていますという人もその中にはいます。そうすると、全く違うんだ、今回このように少ない、これでいいはずがないということでありますので、今後どのように充実させていくおつもりか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  126. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 先生は非常に米国版SBIRにお詳しいようで、まさに御指摘の点、事実だと我々も考えております。  たまたま第三次補正で、中小企業事業団で緒につきました制度につきましては、私ども、できるだけそういった面での配慮はしたいということで、インターネットを通じまして、事業団のホームページで、今先生がおっしゃったような九ページ程度の技術的な課題といいますか、技術開発課題について公募をさせていただいております。  これにつきましては、今後、関係各省とも連絡会という形で、いろいろな制度の改善について努力をしていきたいと考えております。中小企業の方々には、具体的にどういった技術研究開発課題というのが将来ニーズがあるのかという、大変重要な道しるべになる部分でもありますので、その充実整備については努力をしていきたいと思っています。
  127. 島聡

    ○島分科員 運営ですから、本当によろしくお願いしますね。これでは魅力がないというような意識を持っている人が多いですから、よろしくお願いします。  引き続きですけれども、いわゆる知的所有権、特許権では、アメリカ版では、研究開発を行った企業に所属することになっております。日本版では、いわゆる中小企業事業団に所属しているわけでありますね。これで本当に誘因がわくのだろうかというような思いを私はしています。自分たちが開発しても、結局中小企業団所属である。  とはいうものの、いろいろな問題があってこういうふうになったのだろうから、私なりに考えたのですが、例えば、アメリカのように一応企業に所属させまして、政府が、一定期間、研究開発プロジェクトの企業秘密を外部に公表できなくして、成果に対してはライセンス料を払わずに利用できるという形をとるようなことは考えられないかと私は思うわけであります。ほかに何か具体的な、例えばこういうふうに考えてやっていけばいいということも含めて、御見解をいただければと思います。
  128. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 今先生指摘の点につきましては、このSBIRに限らず、国が国費を使って外部に研究開発委託をする。補助金の場合には、当然、御承知のように事業者の方に帰属するわけですが、そうやって得られた工業所有権の帰属の問題一般論でございます。  もう釈迦に説法でございますけれども、会計法あるいは予決令の規則によりまして、一部について、事業者側、開発を実際された側に、それなりの対価を得た上でお渡しをする、帰属させるという制度があり得るのですが、全般について、その開発をされた民間の中小企業の方に帰属をさせるということは、制度上、今はできないことになっております。  ただ、そういう状態の中でも、私ども中小企業事業団が発足させましたSBIR制度、七億円で発足をいたしますけれども、これにつきましては、例えば特許権等は、事業団に専属的に帰属いたします。ただ、それについては、当然メンテナンスのコストがかかるわけでありまして、ある意味では、そのメンテナンスのコストは事業団、国が持って、それを維持した上で、中小企業者がこれを利用される場合、つまり、その開発者が利用権を得られる場合には、大変有利な低料率でこの実施権を活用していただくというような面では、現実に配慮をして対応しようと考えております。
  129. 島聡

    ○島分科員 この面につきましては、私どもも党の方でいろいろな検討をしておりますので、またよろしくお願いを申し上げます。  アメリカ版の方では、かなりサポート体制が充実していると思います。例えば、カンザス州のカンザス・テクノロジー・エンタープライズ・コーポレーションとか、あるいはマサチューセッツにありますセンター・フォー・テクノロジー・コマーシャリゼーション、CTCなど、かなりサポート体制が充実しているわけでありますが、日本版では、なかなか、今の状況では貧弱ではないかなと私は思っております。  もちろん、インキュベーター施設とか、サイエンスパークにおける研究開発支援のための中核的なセンター施設などが存在することは存じておりますが、職員の多くの方というのは、行政機関からの出向者など、ある意味事業経験が全くない人で構成されておる。  私は、松下政経塾というところを出たのですが、そこの友人が自分で企業を起こしまして、三年ぐらい前に株を公開して、そして、いわゆる所得番付にまで載った人間がおるわけでありますが、その人間が言うには、こういうところには全く相談をする気にはならないと言うわけであります。  なぜかというと、基本的に二、三年のローテーションで入れかわってしまう。ノウハウは蓄積されにくいし、担当者がかわっていくたびに、一生懸命やっていらっしゃることはわかりますけれども、どうも、試行錯誤しているというような状況を如実に感じている。予算も使って頑張っているのに、これで本当にいいんだろうかと思っているということでございます。  こういう体制につきまして、今後、どのように改革し、充実させていくつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  130. 太田信一郎

    太田(信)政府委員 今先生指摘のように、各地域にインキュベーターとかリサーチパークができておりまして、それぞれ、一生懸命運営しております。  ただ、やはり中には、特に管理面で、行政機関のOBの方とか出向者がいて、ローテーションが割と短く、なかなか実効が上がらない面というのもあるかと思います。しかし、中には、民間で非常にいろいろな経験を積んだ方が来られるとか、あるいは大学の先生が来られる、その方々は、半生をささげるつもりでそういうところで指導をされて、非常にうまくいっている例もある。  いずれにしても、アメリカなんかの例に比べると、非常にそこは不十分だという認識を我々は従来から持っておりまして、そういうこともございまして、さきの臨時国会で新事業創出促進法を成立させていただきまして、今のSBIR等と並んで、各地域の集積を育てる、育てるためにプラットホームを整えるということで、総合支援体制を整える態勢ができたところでございます。かてて加えて、例えば、インキュベーターに入った企業に対して、技術面とか経営面でアドバイスするための予算等も、今回の十一年度予算の中に盛り込ませていただいているところでございます。  いずれにしても、まだまだ不十分なところはございますが、こういう法律でできた仕組みを十分生かしながら、本当に役に立つ支援をしていきたいと考えているところでございます。
  131. 島聡

    ○島分科員 割と柔軟な発想を持って、ぜひやっていただきたいと思います。  例えば、インキュベーターするなら、やはり二十四時間体制というのが普通だろうということになるでしょうし、これはよく言われる話でしょうけれども、シャワールームなんかあってもいいんじゃないかと私は思います。本当に、ある意味で、知的な産業ですから、行政の枠を超えて、それで、もっといろいろな知恵が出るような形で運営をしていただきたいと思っておる次第です。  聞いていますと、それが一番いいんだそうであります。それこそ、みんなが集まってしゃべっているときにいろいろなアイデアが出るものだから、そういう場も欲しいというようなこともよく言われておりますので、ぜひ柔軟にやっていただきたいと思います。一般的には、そういうことはけしからぬというのがこういう場合は多いんでしょうが、私はそれは柔軟にやってほしいと思いますので、よろしくお願いします。  次ですが、この制度というのは、公正な審査が極めて重要であると私は思っています。それを担保するためには、優秀な審査員を確保する必要があるわけでありますが、にもかかわりませず、これは横浜市立大学の吉川先生という人の試算でありますが、審査費用が一件当たり千円しか確保されていないんじゃないか。  といいますのは、これは、先ほどの数字が前提ですので、ちょっと計算が合わなくなりますが、先ほどの一件当たりは、例えば補助金五百万円程度という平均した数字を前提とすれば、補助金のわずか〇・〇二%ぐらいであります。もっと多くなればもっと少ないわけでありまして、一般的に、例えば補助金の四、五%程度は審査費用をつけるべきだと私は思うわけでありますが、小さな額で公正な審査を担保する審査員を確保できるとお考えなのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  132. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 事業団が課題対応新技術研究調査事業を運営していく上で一番核になる部分は、この評価、審査の部分だと思います。具体的に、体制といたしましては、技術評価委員会という専門委員会をつくらせていただいて、外部の、例えば研究者の方、あるいは公設試験場の長の方、あるいは実際に民間の開発部門におられる方の知恵をおかりしようということで、今準備を進めております。  先ほど、先生の御質問にありましたが、おおよそですが、一件当たり五千円ぐらいは入るのではなかろうかということで今考えておりますけれども、結果として申し上げますと、そういった大変薄い謝礼にもかかわらず、現在のところ、約六十名の方々にもう既に御参加をいただいております。材料分野、機械分野、電子分野あるいはバイオ、医療、環境、その他ということで、具体的に国立大学の物質工学系の先生だとか、あるいは民間の企業の企画開発関係の部長さんだとか、計六十名の方が既にお集まりをいただいております。  ただ、いずれにしても、これに甘えることなく、実際にやっていただく審査の業務なりコストに見合うだけのものはできるだけ考えていきたい、今後、改善を考えていきたいと考えております。
  133. 島聡

    ○島分科員 ありがとうございます。  その審査の際のポイントなんですけれども、アメリカ版と日本版とはかなり異なっているんじゃないかと私は思います。つまり、アメリカの場合は、事業として成立するか否かがかなり重視されているのではないかという感覚を持っています。それが結局は、アメリカが非常に雇用創出できた成果なのではないかと私は思っていまして、日本版では、どちらかというと、技術の新規性というものが重視されている。  これから先は、やはり事業性こそが、実際にベンチャー企業を育成するための本質的な点ではないかと私は考えています。だから、日本版についても、事業性を重視するような方向審査方向を変えていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  134. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 先生の御指摘のとおり、この日本版SBIR制度、中小企業技術革新促進制度の目玉は、単なる技術開発ということではなくて、事業化を前提にしたような、そういった技術開発支援を開発段階からやっていこうということであります。二月一日に、法律に基づきまして基本方針というのを公表しておりますが、その中におきましても、中小企業者等がその成果を利用した事業活動を行うことができる、そういったような外部委託研究費を指定して、それを機会増大ということで中小企業者が使えるようにしようということでうたっております。  したがいまして、先ほど技術評価の方につきましての委員会も申し上げましたが、別途、事業化のフィージビリティーといいますか、マーケットで通用するかどうかという点につきましても、また別の外部人材を活用させていただきました。例えば、ベンチャーキャピタルの方、あるいは、民間企業のまさに商品の企画開発をされているような方も多数お集まりいただいて、総合的なチェックをさせていただきますし、そういった方々のある種の技術指導、ノウハウ指導というのもあわせて実行していきたいと思っております。
  135. 島聡

    ○島分科員 いわゆるベンチャーといいますと、非常にハイテクな、エリート型ベンチャーを一般的にイメージされる方が多いんですけれども、実は、私どもの周りには、自活型ベンチャー、あるいは雇用創出型ベンチャーといいますか、極めて小さなところからスタートしていく人が多いわけであります。そういう方々から、今SOHOというのもいろいろな意味でかなり注目されておりますけれども、私どもも、このSOHOというのも、今後の雇用を維持するという意味で大きなテーマではないかと思っておるのです。  起業するときにそういう方が、まずオフィスを借りるとなりますと、日本の地価は極めて高いですし、オフィスの借り賃だけで極めて、スタートから困ってしまう。  例えばでありますけれども、東京の一等地なんかに、国立大学など公の施設にビジネスインキュベーターをつくったり、あるいは、これがよく言われるのですが、公団住宅のうち、空き家になっている部屋も結構ある。そういうものをビジネスインキュベーターとして使用できるようにするということを考えていってはいかがなものかという提案を私ども承っておりますけれども、私は、いろいろな意味で今検討に値すると思っておりますが、それにつきまして、どうでしょうか。
  136. 太田信一郎

    太田(信)政府委員 先生指摘のとおり、立ち上がりのときにいかにスムーズに手助けをするかというのは、非常に大きなポイントだと思っております。  インキュベーターにつきましても、今度の新しい法律のもとで、地域整備公団が、インキュベーターを自治体整備する場合に、これを助ける仕組みができました。それから、工場とか団地を買うのじゃなくて、貸し工場的なものもできるようにする。そうすると、非常に機動的になりまして、いろいろな形でのビジネスが生まれてくるのじゃないか。  さらに、SOHOというか、そういうところで公団のあいているところを借りられるかどうか。これは、公団のいろいろな規則があって、なかなか難しい面もあるかと思いますが、いずれにしても、私どもは、そういう中小企業が立ち上がるときに、いろいろなニーズがあるというところは、今後とも十分勉強していきながら、できることはできる限りやっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
  137. 島聡

    ○島分科員 このような形で起業とかSOHOというものをテーマとして取り上げていると言いますと、いろいろな人からいろいろな御意見をいただきます。つまり、それだけ今興味、関心があるわけですね。決してベンチャーというだけじゃなくて、このところ痛切に感じておりますのは、今申し上げたSOHOの問題につきまして、本当に、要するにお二人ぐらいで、夫婦で始めたとか、そういう方々が随分ふえられて、そういう方々がたびたび、逆に、今までどちらかというと、政治家である国会議員がそんなことまでやらなかったということで、我が党の方にたくさん来ていただいております。  実は、これが私は大事だと思っておりまして、アメリカが雇用を確保したのも、余りそんなハイテクばかりではない。エリートベンチャーというのは、ある意味で、そのままいけばそのままいくところでありますから、そういう、もう少し援助すればすっと伸びるようなところをどんどん伸ばしていくような形で、今後、政策実施していっていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  終わります。ありがとうございました。
  138. 谷津義男

    谷津主査 これにて島聡君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬古由起子さん。
  139. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  私は、愛知万博について質問をいたします。  万博が一つの争点となりました、先日行われました愛知県の知事選挙の結果なんですが、万博見直しを求める候補が八十万近い得票をとることになりました。この大きな批判票をどう受けとめるのか、また、この県民の声にどう対応するのかという点で、最初に通産大臣認識を伺いたいと思います。
  140. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 愛知県の知事選挙につきましては、博覧会を積極的に推進する立場を表明された候補者が当選されたというふうに私どもは理解をしております。  二〇〇五年の国際博覧会は、国、地元、経済界を挙げて実施するものと認識しております。地元において、博覧会準備を推進する体制が継続するわけでございまして、魅力的な博覧会づくりに向けて、それぞれの立場で一層積極的に取り組まれることを期待をしております。
  141. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 批判の票というのは、私は半端なものではないのではないかというふうに思うのです。  地元紙の中日新聞の一月五日付の記事でも、有権者のアンケートで、瀬戸市の海上の森での万博開催の見直し、中止を求める声というのが半数以上になっています。また、知事選挙中に行われた朝日新聞の世論調査でも、賛成、反対がともに三八%と同率になっているのですね。また、愛知県職員組合が行いましたアンケートでも、万博、空港など、大規模プロジェクトに対する見直しとか中止と回答した数は八割以上という状況になっていまして、実際に現場で携わっている県の職員自身が批判や疑問を感じながら仕事をしている。これはやはり多くの愛知県民の世論のあらわれだということを、これは指摘だけしておきたいと思います。  次に、環境庁に伺いたいと思うのですけれども、二月七日の夜、NHKテレビで里山特集というのが放映されました。日本の里山が、長い時間をかけて生き物の世界と人の世界一つになったところとして重要な生態系を形成しており、極めて重要なものだけれども、どんどん今日本からなくなっていくのだという紹介をしています。  万博が行われる海上の森は、ここで放映された里山にまさるとも劣らない大変重要な里山であると考えますが、環境庁の認識はいかがでしょうか。
  142. 小林光

    小林(光)説明員(計画課長) 会場予定地及びその周辺の森につきましては、コナラ林などの人間生活とのかかわりの中で成立してきた二次林を主体としておりまして、先生指摘のように、ギフチョウとかシデコブシ、サギソウなど、この地域に特徴的な動植物が生息、生育する地域であると認識しております。したがいまして、愛知万博につきましては、開催申請に至る過程で、当初の計画が変更されまして、貴重な動植物がまとまって分布する地域というようなものは保全できるよう区域設定をするなどの措置が講じられてきたところであります。
  143. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 貴重な動植物が果たして保全できるのかどうかという問題なんですけれども、実は、長時間かけて人と自然との共存システムというのはつくられてきているわけです。この貴重な里山、海上の森に、最近、この万博会場と同じ場所で行われます長期整備事業、名古屋瀬戸道路と新住宅市街地開発事業、いわゆる新住事業なんですけれども、この開発が調査というふうな名前のもとで行われているのですが、この間、二百本ものボーリングのくいが打ち込まれたのです。ボーリングをするために貴重な樹木が伐採されたり、また、工事のためのモノレールなどの道づくりで森はずたずたになった。私自身も現地に行ってまいりましたけれども、絶滅のおそれのある、先ほど御紹介がありました危急種のギフチョウのえさでありますスズカカンアオイなども踏み荒らされて地下水が噴き出している。本当にひどいものです。  きょう、実は大臣に見ていただこうと思って持ってきたのですけれども、これがボーリングしている調査とモノレールの状態なんですけれども、自然の本当に豊かな場所に、もう大変ひどい状態でこういうものがあちこちにできているわけですね。それで、このボーリング調査が余りにもひどいというので、通産省のアセス評価委員の方がここを視察されたのです。二百本のボーリングはアセスには必要ないのじゃないかとか、これは明らかに行き過ぎだとか、それから、通産省の通達では、整備事業のアセスと万博アセスは連携して進める、こういうふうになっているのですけれども、これに違反するのではないかと、通産省のアセス評価委員の方が疑問の声を上げておられたのですね。  このように、環境が本当に破壊されている。これが環境万博だということで進められているわけですけれども、果たしてこれでいいのだろうか。私たち国会の調査団も入らせていただいたのですけれども、自然を全く壊さずに調査することは不可能だ、このように県の担当者が言っておられるわけです。  差しどめの住民監査請求が今住民からされていまして、その資料をこちらに持ってきましたけれども、その監査結果の内容が監査委員事務局から出ているわけです。これを見てみますと、「現行法令の下では、ボーリング調査等の事前調査の実施方法について遵守すべき基準が定められている訳ではない。ボーリング調査等による多少の動植物への影響があるものとしても、それは調査方法についての裁量の範囲として許容されているものと解され、」このように、裁量の範囲だ、少々動植物に影響があっても構わないと、私からすると、少々の自然破壊は許されるのではないかと居直っている状態ではないかと思うのです。  この点では、通産省はこの事態をどのように認識しておられるでしょうか。
  144. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 愛知県において、道路あるいは住宅事業等に関しまして詳細な計画を策定して、そのための環境影響評価等に活用するためボーリング調査を実施したということは伺っております。  事業実施に当たりまして環境に配慮することは重要なことと認識しておりますが、本ボーリング調査における環境への配慮については、基本的には当該道路事業等を所管する愛知県等において判断すべきことであるというふうに私は考えております。
  145. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 一応関連事業と万博のアセスは連携ということが言われているので、県がやるからそれは通産省として知ったことではないということではないと思うのです。  当然環境に配慮して進めるように、そして、今回の場合は通産省自身のアセスの先生たちからもこれはひどいという御意見が出たわけですから、当然それは通産省としても一定の配慮なりをする必要があったのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  146. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のように、通産省環境影響評価会の一部の委員の中にそういう御意見をお持ちの方があることは承知をいたしております。  今連携というお話が出たわけでございますけれども、この評価会の前身と事実上なっております環境影響評価の手法を検討する委員会で、手法としてどうあるべきかを御議論いただいたときに出た連携の議論と申しますのは、長期の整備計画とこの博覧会の事業というものの両方をにらみまして、環境影響評価が全体として適切に行われるようにということで、内容的には、準備書の提出時期を合わせるとか、あるいは、資料を共用する、統一的な資料を作成するということとか、そういうことによって博覧会に係る環境影響とか保全とかの措置が一体のものとしてわかりやすく提示できるというような意味合いにおいてでございます。  今御指摘のボーリング調査と申しますのは、まさに長期整備計画に係りますアセスメントないしはその実施計画を策定する前提としての調査ということでございまして、私どもとしては、まさにそのボーリング調査等々について、今大臣から御答弁申し上げたように、適切な環境に対する配慮というのは必要ということが前提ではございますが、それらは県あるいはその他の当局において御配慮いただかなければなりませんけれども、今の連携のお話というのはそのようなものとして、つまり、整備計画のアセス、我々の万博の関係のアセス、このようなものを一体として対応することを考えようということでございまして、少しステージの違う話になっているというふうに理解をいたしております。
  147. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 御指摘があった委員は、それは通産省のアセス評価委員の一部の方かもしれませんが、少なくとも委員の方が指摘されているわけです。専門家ですよ。そういう方の意見をやはり真摯に聞くべきだというふうに思うのです。  今、連携の問題も言われましたけれども、一応連携して、いろいろな準備書の期日を統一させるとか、統一した資料を使うというけれども、どんどん関連事業で開発しておいて、後で幾ら環境を守るといっても、これはもう到底、いざアセスをやる段階になったら実際には環境が破壊されているという事態が起きるということをこの事例は典型的に示していると思うのです。ぜひ私は慎重にやるべきだというふうに思います。  そこで、環境庁にお聞きしたいのですけれども、このボーリング調査を県が断念した理由は、二月ごろから絶滅危惧種のオオタカの営巣期に入る、こういう状況がございました。  実は、日本野鳥の会の調査によって、この海上の森でオオタカの繁殖の求愛活動、ディスプレーフライトというか、雄雌が相重なって飛ぶ、こういうフライトがかなり見られ、営巣活動の可能性が十分あったという指摘をされていたわけです。  野鳥の会によりますと、九八年の一月から七月までに三十四回のオオタカの飛行を確認して、そのうち十一回ディスプレーフライトがあったと報告されているのです。特にディスプレーフライトは万博の展示施設の中心地域に大変多いということが指摘されております。  きょう、私、野鳥の会から図面を借りてきたのですけれども、二羽連なって飛んでいる図面がかかれているのです。私、この話を聞いて感激したのですけれども、オオタカのフライトを調査するのに高い木の上に登って、四時間も五時間もじっとオオタカが来るのを待っているのです。そして、来たというと図面にかいて、もう本当に苦労して幾つかの、毎日のようにオオタカが来るわけですけれども、こういう図面がつくられているのです。  そういう意味では、ことしは特に、去年ディスプレーフライトが多かったものですから、巣づくりの可能性が十分あったのです。ところが、ボーリング調査でドンドン音を立てて、結局、オオタカがもう巣がつくれないような事態になってしまったというふうに専門家の方が御指摘されているわけです。  さらに、この地域には実はオオタカの古い巣があったのです。オオタカというのは、古い巣があるとそこにまた戻ってくる可能性もあるわけです。ところが、これが九五年に見つかったのですが、このオオタカの巣が壊されてしまったのです。  この壊され方も大変ひどくて、この地域の巣という巣というか、特にオオタカの巣にも似ているようなカラスの巣まで全部取り払う。高い木の上にあるわけですから、普通素人では取り外せないのです。明らかに妨害活動だと思われるような取り外し方だというので、地元の野鳥の会の皆さんは、意図的な巣づくりへの妨害活動ではないか、実際には鳥類調査に名をかりたオオタカ追い出し作戦ではないかということで、専門家が、毎日毎日木に登って苦労されている方が実は告発されているのです。  私はオオタカというのはすごいと思うのだけれども、それでも毎日どこかに巣をつくろうと来るわけです。それで、ともかく巣をつくらせたら大変だと。そういう事態になっているというのを現場のそういう関係者の方が言ってみえるのですが、環境庁は、このオオタカの営巣はもとより生息さえも危ぶまれるような状態を放置しておいていいのかという問題なのですけれども、直ちにこの場合は調査して対応すべきだと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  148. 森康二郎

    ○森説明員 オオタカの保護の問題でございますけれども、私どもといたしましては、オオタカの保護をめぐる問題は各地でございますが、それぞれの事業に際してどうやってオオタカを保護していくかということにつきましては、それぞれの事業者におきまして適切な配慮をいただくということが肝要というふうに考えてございます。  私どもといたしましては、そういった観点から、事業者の方々が、専門家の指導助言を受けまして、必要な調査あるいは保護対策の検討を行っていただく指針といたしまして、平成八年の八月に「猛禽類保護の進め方」というものを取りまとめいたしまして、これを公表させていただいたところでございます。  私どもといたしましては、それぞれの事業実施に際しましては、この「猛禽類保護の進め方」に基づいて、これを活用して、それぞれの事業者におきまして必要な調査あるいは適切な対策が行われるということを期待してまいりたいということでございます。
  149. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 少なくとも専門家の皆さんが大変な事態になっているということを言ってみえるわけですから、もちろん事業者にも、よく関係者の意見を聞きなさい、そういう専門家の意見も聞きなさいと言いながら、環境庁自身も、このボーリング調査のときには、カンアオイが踏みつぶされたときに、事務連絡という形でそれなりの指導をなさっているわけですよ。そういう点では、こういうケースの場合でも、よく関係者の御意見も聞いて、調査もぜひしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょう。
  150. 森康二郎

    ○森説明員 本件につきましては、先ほど先生の御説明がございましたような資料につきましては、県を通じて情報はいただいております。  基本的な考え方といたしましては、先ほど申し上げましたように、個別の問題につきましては事業者において適切に対応していただくということで、そのためのバックグラウンドの整備ということで「猛禽類の保護の進め方」のようなものを出しまして、これに基づいて適切にやっていただくということで対応してまいりたいと私どもは思っています。
  151. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 ぜひ県にも強力に指導をお願いしたいというふうに思います。  それから、この万博の県の環境影響評価調査の大部分を引き受けているのが社団法人の環境創造研究センターというところなんですね。実はこのセンターの理事長に、私が取り寄せました資料によりますと、万博協会のアセスアドバイザー会議委員長が就任なさっているわけです。それからまた、理事には通産省環境影響評価会の委員長がこの中に加わっているわけです。  万博や関連事業についてのアセスの評価を外部委託された会社の責任者が、第三者的に判断しなければならないアドバイザー会議責任者と同一人物であっていいのか、また、理事が通産省環境評価会の委員長であっていいのか、これで果たして公正なアセスは実施できるのか、こういう声が出ているわけですけれども、いかがでしょうか。
  152. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 今御指摘いただきました二名の方につきましては、博覧会協会にせよ私どもも、この環境問題についての極めて専門的な、高度な知見を豊富にお持ちになる方々でございまして、そういう意味委員長あるいは座長というものをお願いをいたしておるわけでございます。  ただ、博覧会協会が協会として行いますアセスメントに関する調査がこの団体に委託をされているという事実はないわけでございます。  一方、今、何かアセスメントに対してこのセンターがというようなお話であったように思いますけれども、博覧会協会からアセスメントの調査を受託する事業者が、このセンターはその受託した事業者ではないわけでありますけれども、必要に応じて既存のデータあるいは知見を有効活用するというのは、私どもはむしろ推奨をする立場にございます。  御指摘のセンターというのは、名前のとおり環境創造研究センターという環境関連のセンターでございますから、もろもろの研究調査をされておりまして、環境関係のデータの蓄積というものももろもろお持ちだろうというふうに思います。その意味で、この御指摘の団体が作成したデータというのは、既存のもろもろのデータのうちの一つとして、あるいは有効活用できる、あるいは信頼性を有するデータとして存在するということはあり得ると思います。  その意味で、博覧会協会が委託をいたしました先の、受託事業会社と申しましょうか、機関が、御指摘環境創造研究センターのデータを既存データのワン・オブ・ゼムとして利用するということはあると思いますけれども、それはあくまでそういう立場からのものでございまして、それが一部に入っているからといって、全体としては、いずれにせよ、この評価会の場で検討をなされる多数の先生がいらっしゃるわけでございますから、その場で検討がされるということによって、まさに公正な判断というものが今後下されるものと私どもは思っておるわけでございます。
  153. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 直接万博協会がその仕事を委託しなくても、実際にその資料が大半使われるわけですよ、判断で。そうすると、チェックされるべき調査内容を提供する側とチェックする側が同じというのは、信頼性がなくなるといいますか、やはり疑念をもたらすものだというふうに思うんですね。  万博協会そのものがそこに仕事を渡さなくても、この名簿によりますと、万博協会の事務次長もこのメンバーに入っているんですね、このセンターの中にいらっしゃる。そうすると、一体本当にその資料がどうなのかということがやはり問題になってくると思うんですよ。こういう疑問、疑念がわくような問題についてはやはりきちんと再点検をするべきだというふうに思います。  次に参ります。  通産省は、この万博のアセスのプロセスが二十一世紀における人類共有のモデルとなることを目指すというふうに位置づけているんですけれども、二十世紀型のモデルと二十一世紀型のモデルというのはどのように違っているんでしょうか。
  154. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 御指摘のとおり、今二十一世紀型のモデルというようなお言葉をお使いになったわけですが、これはこの博覧会に係りますアセスメント手法検討委員会の報告書の中にそのような言及がされ、それを目指すという形で書かれておることは事実でございます。  その内容でございますけれども、まさにこのレポートに書いてございますとおり、平成九年の六月に公布されました環境影響評価法の趣旨を先行的に取り込んで、事業に関する情報を広く国民に提供して、これに対する意見を的確に把握する、それによって事業計画の立案と実行に適切に反映させることを基本原則とすることを求めるということになっております。また、第二に、環境の構成要素に関する個別的な評価だけではなくて、生態系や環境への負荷観点にも配慮をして、環境への影響の回避、低減に努力することを求める。この二点が大きな点として、このモデルを目指すという内容として具体的に書かれているわけでございます。  この文書を踏まえまして、まさに現在、博覧会協会におきまして環境影響評価の作業を行っている、このように考えておりまして、今後とも、このやり方、手法に沿ってアセスメントが進められるということになると考えております。
  155. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 今二十一世紀型といいますが、今の二十世紀型のアセスでも、例えば、環境影響評価の結果ここはふさわしくないという場合は、代替地も含めたアセスはもう当たり前になっているんですね。そうしますと、ここの場合に、海上の森ではふさわしくないという結論がアセスによって出た場合には代替地を考える、こういうアセスになっているんでしょうか。その点はいかがでしょうか。
  156. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 現在の主たる会場候補地でございます瀬戸市の東南部でございますが、これは経緯として、長期的な町づくりとか交通アクセスというようなことで、平成二年に地元で選定されたという経緯がございます。その上で、八十八に及びます市町村、近隣の県から推薦が行われまして、政府は、これらの提案に対しまして、その後、環境に配慮をするという観点から、主要施設整備する区域を大幅に縮小するなどの所要の修正を加えた上で、平成七年でございますか、閣議了解ということになったわけでございます。  かつ、私どもは当然のことながらこれをBIEに対し申請をし、BIEにおいて国際的に圧倒的な支持を受けて開催が決定した、このような経緯を持つわけでございまして、その意味におきまして、私どもとしてはこの場所を基本として準備を進めていきたいと考えておりまして、博覧会協会においてはこのような方針に基づいて現在アセスメントの実施をしていると承知しているところでございます。
  157. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 アメリカなどは、何もしない、こういう代替案を含むアセスのやり方だとか、それこそゼロ案と言われているようなものが提起されているわけです。EU、それこそユーロ、ヨーロッパなどでもそういう代替案というのはもう常識になっているんですよね。ところが、皆さんが今やろうとしているアセスは代替案を持たないアセス、そこだけで、ともかく海上の森は何としてもやると。これは私は、やはり二十一世紀のアセスなんて大きく言えないような内容になっていると思いますし、環境万博と言うにも、そこでやったら環境に大きな影響があるという場合はやれないということだってあるわけですよ、それを一切考えないアセスというのは二十一世紀に向けてのアセスなんて言えないというふうに指摘したいと思います。  そこで、今後、しかし心を入れかえていただいて二十一世紀にふさわしいアセスをやった場合に、海上の森でやることは中止もしくは見直しということになった場合には、そういう手続上の措置はできるんでしょうか。
  158. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 御質問の点に一般論として申し上げる以外にないわけでございますが、仮に博覧会の中止をする、あるいは内容を変更するというような場合でございますけれども、手続的には、そのことをBIEに申し出まして、BIEにおいて必要に応じ検討が行われるということになると存じております。その場合には、申し出がそのまま認められることもあるでございましょうし、修正を求められることもあるものと考えております。  いずれにいたしましても、二〇〇五年の日本国際博覧会は、国を挙げた取り組みによって、国際的に強い支持を得て決定されたものでございます。開催に向けまして引き続き努力をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  159. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 今までの万博の歴史、百五十年の歴史があるわけですけれども、この間でも、経済的な問題、そして環境の問題、住民投票の結果という形で、例えばウィーンだとかブダペストなどは中止になった経過もあるわけです。ですから、そういう点では、今幾つかの環境問題や財政負担の問題などが出されているので、やはりそういうことも考慮に置きながら私は考えていただきたいと思いますし、正式な登録は二〇〇〇年の総会ですから、そういう点では、今お話があったように、まだこれからですし、また、これで決まってもなおかつまだ中止もしくは見直しというのは可能だということを確認したいと思います。  最後に環境庁にお聞きしたいと思うんですけれども、藤前干潟の問題は、御存じのように、日本じゅう、そして世界の、自然と鳥を守れという本当に多くの人々の声と勇気ある行動で保全の第一歩がつくられました。今後は、ラムサール条約の登録指定地にという積極的な対応が求められていますし、名古屋市も、積極的に取り組みたい、この意向を示しています。  今海上の森の問題を取り上げましたが、海上の森と藤前というのは川でつながっているわけです。自然を実際に直接体で触れることができる、そして自然のすばらしさを体験できる場所として、この藤前干潟をラムサール条約の登録地として条件が整うようにぜひ御努力いただきたいし、また、海上の森も重要な環境教育の場として、藤前とあわせて位置づけていただきたいと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
  160. 森康二郎

    ○森説明員 藤前干潟のラムサール条約への登録の御質問でございますけれども、ラムサール条約への登録を行うためには、我が国といたしましては、その前提としまして、鳥獣保護区の特別保護地区などによりまして水鳥などの生息環境の保全が図られているということが必要というふうにいたしております。この藤前干潟の所在いたしております庄内川、新川、日光川河口部につきましては、環境庁といたしましても、国設鳥獣保護区の設定を進めるべき地域というふうには位置づけておるところでございます。  一方で、現在、名古屋市の御当局におかれまして、処分場の代替地の検討に全力を注がれているという状況でございますので、環境庁といたしましてはその推移を見守ってまいりたいというふうに考えてございます。
  161. 小林光

    小林(光)説明員(企画調整課長) 環境教育についてのお尋ねがございましたけれども環境教育、環境学習の推進に当たりましては、自然との触れ合いの体験を持つということが非常に大切なことだというふうに思ってございます。  環境庁におきましては、例えば「ふるさといきものふれあいの里」といった事業を行ってございますが、これは、いわば二次的な自然と人との触れ合いの場をつくっていく、こういうことでございます。  具体的なお話として瀬古委員の御発案を拝聴させていただいたわけでありますけれども、いずれにいたしましても、環境教育ということになりますと、すぐれた自然の場所から日常の身近な自然まで含めて、あらゆる場所であらゆる主体が取り組んでいただくということが特に大事だというふうに考えてございます。  そういう意味で、環境庁の方では、そういったいろいろな場所で取り組む方々の支援あるいは教材の準備、そういったようなことで御支援を申し上げていきたいなというふうに考えてございます。
  162. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 藤前に続いて、海上の森の保全が人類共通の賢明なる選択になるように強く要望して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  163. 谷津義男

    谷津主査 これにて瀬古由起子さんの質疑は終了いたしました。  次回は、明十八日午前九時から開会し、通商産業省所管及び総理府所管経済企画庁について審査することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十五分散会