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1999-02-18 第145回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十八日(木曜日)     午前九時開議  出席分科員    主 査 伊藤 公介君       植竹 繁雄君    大原 一三君       久間 章生君    宮腰 光寛君       小林  守君    辻  一彦君       中桐 伸五君    中川 正春君       大野由利子君    並木 正芳君       山中あき子君    濱田 健一君    兼務 小野寺五典君 兼務 大畠 章宏君    兼務 渡辺  周君 兼務 菅原喜重郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         環境庁水質保全         局長      遠藤 保雄君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         農林水産技術会         議事務局長   三輪睿太郎君         食糧庁長官   堤  英隆君         林野庁長官   山本  徹君         水産庁長官   中須 勇雄君  分科員外出席者         外務大臣官房審         議官      樽井 澄夫君         大蔵省主計局主         計官      松元  崇君         運輸省海上技術         安全局船員部教         育課長     井上 善雄君         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 分科員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   大原 一三君     宮腰 光寛君   小林  守君     辻  一彦君   大野由利子君     並木 正芳君   濱田 健一君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   宮腰 光寛君     大原 一三君   辻  一彦君     中桐 伸五君   並木 正芳君     山中あき子君   中川 智子君     横光 克彦君 同日  辞任         補欠選任   中桐 伸五君     中川 正春君   山中あき子君     大野由利子君   横光 克彦君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   中川 正春君     小林  守君 同日  第三分科員大畠章宏君、第四分科員小野寺五典  君、渡辺周君及び第八分科員菅原喜重郎君が本  分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算  (農林水産省所管)      ————◇—————
  2. 伊藤公介

    伊藤主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算及び平成十一年度政府関係機関予算農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。
  3. 宮腰光寛

    宮腰分科員 おはようございます。まず、農業共済についてお伺いしたいと思います。  昨日の農林水産委員会におきましてもダイオキシンお話が出ておりました。隣の先生お話をしておりまして、このダイオキシンの今の風評被害についても共済対象にできないのかというような、笑い話のようなお話も実はしておったわけであります。  それはさておきまして、昨年は、全国的に豪雨や長雨によります農作物被害が多く発生をいたしました。大臣おいででありますけれども中川大臣の御努力おかげ激甚災害の指定を受けたところも多々あります。そのほか、そうでない地域におきましても、農作物被害が大変だったところもあるわけであります。  そこでまず、全体として、農業共済は昨年の災害にどのように対応しておいでになったのか、伺っておきたいと思います。
  4. 竹中美晴

    竹中(美)政府委員 農業共済についてのお尋ねでございますが、昨年は、八月上旬の集中豪雨等によりまして、西日本から北日本まで、広範な地域で大きな被害が発生したところでございます。  農林水産省としましては、そうした被害実情にかんがみまして、都道府県、農業共済団体に対しまして指導通達を発出することによりまして、迅速な損害評価共済金早期支払いについて指導をさせていただいたところでございます。  共済金支払いにつきましては、被害農家に対しまして、水稲年内支払いが行われたところでございますし、大豆につきましても、特に被害が甚大でありました富山県等では年内支払い実施したところでございます。
  5. 宮腰光寛

    宮腰分科員 今ほど経済局長の方からお話しいただきましたけれども富山県では、昨年、大豆被害が極めて大きかったわけであります。壊滅状態と言ってもいいぐらいの状況でありました。転作作物のエースとして、昨年、富山県が初めて大変なてこ入れをいたしまして、大豆のコンバインでありますとか、そういうものをどんどん入れていって、本当に今力を入れ始めた途端に壊滅的な打撃といったことで、大変な年であったわけであります。転作作物に関する農家の経済的な打撃あるいは心理的な打撃も極めて大きかったわけであります。  そのようなときのための農済制度でありますけれども北陸農政局管内水稲あるいは大豆等共済金支払いは、今ほど、ひどかったところについては年内に支払っていただいたということでありますが、どういうふうになっておったのか、お聞きしたいと思います。
  6. 竹中美晴

    竹中(美)政府委員 北陸四県でございますが、お話ございましたように、特に大豆を中心とした農作物被害が大きかったということでございます。  共済金支払い額でございますが、特に被害の大きかった大豆につきましては十四億七千万円の支払い実績となっておりますし、水稲につきましても四億七千三百万円の支払いというような実情になっておるところでございます。
  7. 宮腰光寛

    宮腰分科員 大豆はそういうことでしっかりと見ていただいたということであります。  水稲共済の問題でありますが、これは要望としてお話を申し上げたいと思います。  現行の農業災害補償制度は、昭和二十二年にスタートいたしまして、既に半世紀が過ぎたところであります。その農作物共済のうち、この水稲共済につきましては、共済金支払いが開始される損害割合、つまり足切りと言っております割合が、一筆方式では全国一律に三割というふうに定められております。共済制度改正が過去何度も行われておりますけれども、この全国一律三割という部分につきましては一度も手がつけられていないという状況にあります。  過去十年の被害率を見ますと、一番低い方から、富山県が〇・二四、新潟、福井、石川県の順番となっておりまして、低い方の四位以内はすべて北陸農政局管内になっているわけであります。つまり、北陸農政局管内では、水稲共済金支払いは極めて少ないという状況が過去ずっと続いてきております。  ちなみに、被害率の一番高い県は一〇・六七と、四十四倍もの被害率の違いがあります。全国的に見て、必ずしもこの四県だけが天候に恵まれているといったことは絶対ありません。例えば富山県の場合ですと、土地改良事業に非常に熱心である、あるいは栽培技術の向上、さらには豪雨災害の防止や農業用水の確保のために数多くのダム堰堤を長年にわたって整備しているということが被害率全国一低いということにつながっていると思います。いわば農家や行政の長年の努力が実を結んで米の被害を最小限に今食いとめているというのが実態ではなかろうかと思っているわけであります。  これまでの半世紀全国一律で三割の足切りが続けられておりますけれども北陸農政局管内ではそのような実態があるわけでありまして、農済制度に対する農家の不満は非常に大きいものがあります。まさに制度存続の危機と言っても過言ではないというふうな状況であります。ぜひ、平成十一年度におきまして、北陸農政局管内足切り割合を三割から二割にしていただくように、制度改正をこの際強く要望しておきたいと思っております。  次に、中山間地域関連予算についてであります。  中山間地域総合整備事業につきましては、平成十年度の予算、約五百億円から、十一年度は五百三十四億円と、約七%増加していただいております。まず高く評価をいたしたいと思います。そのほかにも、中山間地におきます農地保全棚田対策農地防災あるいは都市との交流なども昨年同様に盛り込まれておりまして、大変いい予算ではないかというふうに思っております。  そこで、中山間地域総合整備事業広域連携型でありますが、地元のことを申し上げて恐縮でありますけれども富山県に立山というのがありまして、そのたてやま山麓地区立山町、大山町、上市町というところで今計画をつくっております。  この地域はもともと、富山県が石川県から分離する前、そのまた前に新川県という名前で一体的な地域であったところであります。特に昨年は、この立山町の特定農業法人おかげさまで農林大臣賞を受賞したということであります。中核農家の育成や集落営農も先進的な取り組みがなされている地域であります。  また、観光地でもありますので、立山黒部アルペンルートを擁しまして、年間百三十万人以上の観光客が訪れております。地域農産物の一層の特産化を図ることにより、高付加価値化推進できる、あるいはそのことによって地域農業経済が大変よくなるという地域でもあります。さらには、民間の宿泊施設とともに農林省の補助事業による宿泊施設ども整備をされておりまして、これらの施設連携を図ることによりまして、通過型観光から滞在型へと転換を目指している地域でもあります。  このたてやま山麓地区は十一年度に新規採択されるよう熱心に要望しておりますけれども、これからの農政改革に当たりましては、このような中山間地域に関する事業は極めて重要な事業であると思いますので、どのように今後推進していかれるお考えなのか、伺っておきたいと思います。
  8. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 中山間地域が、農業生産の場のみならず、国土の保全あるいは景観の維持、そういう点でかなり高い公益的機能を果たしていることは御承知のとおりでありますし、今後、そういった中山間地域に対して重点的に施策を講じていくということは重要なことだろうと思っております。農政改革大綱の中にもその点が明示をされております。  今御指摘がございました中山間地域総合整備事業でございますけれども、これも、地形条件等が不利なこういった中山間地域におきまして、農業農村活性化を図ることを目的とし、これまでも採択要件なりあるいは農家負担の点でも相当に配慮をした生産基盤整備生活環境基盤整備、これを総合的に行うという事業でもございます。広域連携型、今お触れになりましたけれども、これも、一つの構想のもとに幾つかの市町村が連携をして行う、単独事業も組み合わせるという新しいタイプの事業で、七年度から実施をしたわけでございます。  先生お触れになりましたように、予算面でも農業農村整備事業全体の伸びが一〇〇・七%というふうな状況の中で、この事業につきましては一〇七%、五百三十四億八千万を計上いたしております。  こういったことを通じまして、この広域連携型も含めまして、今後も着実に事業推進に努めていきたいと考えております。
  9. 宮腰光寛

    宮腰分科員 大変要望の多い事業だと伺っておりますので、引き続いて推進をしていただくようにお願いしたいと思います。  次に、今のたてやま山麓地区関係をするといいますか一体的なものでありますけれども常願寺川国営農地防災事業についてお伺いをいたしたいと思います。  この地域におきましては、七千九百ヘクタールを受益面積とする国営農地防災事業が総事業費百五十億円で計画をされております。この常願寺川と申しますのは、明治の初めにドイツ人技師デレーケという人が改修に参りまして、これは川ではなく滝であるというふうに表現したぐらいに急流荒廃河川であります。上流地域では、国営と申しますか建設省の直轄砂防事業が長年にわたって行われているということで、上流砂防ダム砂防堰堤の中に、天蓋を守るというような銘板などもありまして、延々と砂防事業が続けられている地域でもあります。  そこで、既に整備されている堰堤あるいは水路橋などが大変老朽化をいたしてきているわけであります。幹線水路などは、もともと石積みで大変きれいな幹線水路でありますけれども、最近老朽化しておりまして、桜並木が、根っこの問題などもあるのかもしれませんけれども、それらも含めて、堰堤幹線水路など大変老朽化してきているわけであります。ぜひ早急に整備をしていかなければならないと思っておりますが、幸いにいたしまして、横江堰堤と左岸の連絡水路橋を十一年度に着工していただく見込みというふうになりましたけれども事業完了までの見通しはどういうふうになっているのか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  10. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御指摘がありましたように、デレーケの言葉を引かれましたけれども、まさに滝と言ってもオーバーではない、その名のとおりの暴れ川でございます。  国営事業でもございますので、国営総合農地防災事業常願寺川沿岸地区におきましては、十一年度予算政府原案において新規着工に必要な額を計上いたしました。  この地区土地改良事業計画は、予算決定をいたしました後、土地改良法に基づきまして手続に入るわけでございます。その上で正式に決定をいたしますけれども、現時点での見通しといたしましては、平成二十年度にこの地域全体の事業完了させるということを予定いたしております。  私ども予定工期内の完了を図るために鋭意事業推進に努めていきたいと考えております。
  11. 宮腰光寛

    宮腰分科員 実は県と富山市もこの中に含まれておりまして、いろいろな関係で今農業用水機能が見直しをされてきているわけでありますけれども生活維持機能等もあります。そういうものを含めて計画をされているわけでありまして、ぜひ、できるだけ早い期間内で完了していただくようにお願いをいたしたいと思います。  次に、漁業問題につきましてお伺いをいたしたいと思います。  先日、大臣初め長官等皆さん方おかげで、何とかEEZ内の問題に決着がつきました。深く敬意を表したいと思っております。これから、新協定における暫定水域に関する協議が始まっていくということになるわけでありますけれども、その点についてお伺いをいたしたいと思います。  特に漁業者方々が心配をしておいでになるのは、EEZ内の取り締まりにつきましては我が国の方針どおりやっていくということになるわけですけれども暫定水域につきましては、取り締まりが具体的にどのような保証をもってなされるのかというのが一番懸念されているところであります。  漁業者方々は、日韓両国共同乗船による取り締まりをぜひ行っていただきたい、共同取り締まりを行っていただきたい、それが監視、取り締まり保証と申しますかになるということで要望をしているわけでありますけれども、現在の協議の中で実現する方向になっているのかどうか、伺っておきたいと思います。
  12. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま先生指摘のとおり、お互いの二百海里内における操業条件協議につきましてはようやく合意を見たわけでございますが、暫定水域内の資源管理なり取り締まりの問題については問題が残されているということで、これまでの協議経過を踏まえながら、早急に日韓漁業共同委員会を立ち上げて、その中で結論を得ていきたいというふうに思っているわけであります。  その中で、まず取り締まりの問題でございますが、ただいま先生指摘のとおり、暫定水域取り締まりというのは協定の中で、基本的に旗国主義で行う、こういうことになっている。ただ、もちろん日韓両国は、相手国漁船違反操業というものを暫定水域内で発見した場合にはその事実を相手方に通報して、相手方において事実を確認して必要な措置をとる、こういうことが協定上決まっているわけでございます。こういった規定を真に実効あらしめるために具体的にどのような形で取り締まりを行っていくか、強化をするかということが議論対象になるわけでございます。  そこで、この問題に関しましては、現在の協議では、暫定水域操業する漁船の名簿の交換、あるいは標識の表示を義務づけて、操業できる船であるということを明確にしていく、あるいは重点海域というものがございますので、そこで日韓両国で集中的な取り締まり活動を行う、こういった点についてずっと議論をしているところであります。  ただ、先生今御指摘になりました共同乗船実施ということについては、実は韓国側は、自国漁民への我が国権利行使の色彩が強くなるということから大変強く難色を示しているというのが協議現状でございます。  私どもとしては、いずれにいたしましても、今後共同委員会での協議に当たりまして、やはり漁民皆さんの、暫定水域で本当に取り締まりができるのか、そういう不安にこたえられるように、適切な取り締まり強化が図られるよう引き続き努力をしていきたいということで、現段階ではなお未確定のものが残っているという状況でございます。
  13. 宮腰光寛

    宮腰分科員 相手のある話でありますし、EEZ内とは違いますので相当難しいと思いますけれども、全面的にということでなくても、そういう形が幾分かでもできるということが漁業者皆さん方不安感を低減させることにつながると思いますので、段階的ということであっても結構でありますので、ぜひ実現方向で頑張っていただきたいというふうにお願いをいたしたいと思います。  暫定水域における資源管理の問題がこれから出てくるわけであります。EEZ内の操業条件がこれまでより韓国側にとっては大変厳しいものになったということで、その分暫定水域に入って漁をするのではないかという懸念も大きいわけであります。  そこで、今回のEEZ操業条件の中で、日本側の長年の願いであった底刺し網禁止、これは実現をしたわけでありますけれども暫定水域におきましてもやはり資源管理をしていく必要があるということは協定の中にもうたわれているということでありますので、暫定水域における底刺し網漁禁止あるいは制限協議対象になっているのかどうか、伺いたいと思います。
  14. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま先生からもお話がございましたが、率直に申しまして、今回の一連の協議におきまして、私ども、やはりまず第一に、日本EEZの中における底刺し網漁業禁止実現しよう、これに何よりも重点を置いて交渉に当たってきた、こういうことがございます。  そういった大きな流れの中で、暫定水域の問題、これからの協議ということに残されているわけでありますが、これまでの議論の中身といたしましては、暫定水域における韓国底刺し網漁業操業につきましては、私ども、今一定の水域における操業制限、これは特に保護礁等が設置されておりますので、そういう部分については操業禁止していただく、それから稚ガニの採捕禁止、あるいは漁具標識設置等操業ルールを十分なものを課す、こういった方向韓国側協議をしておりまして、暫定水域におきましても、底刺し網漁業資源に与える悪影響をできる限り防止して、また我が国漁船との間で操業上のトラブルが生じないようなルールをつくって操業していく、そういう方向での議論を現在進めているという状況でございます。
  15. 宮腰光寛

    宮腰分科員 この資源管理の問題につきましては、将来的に共同委員会資源状況などを調査研究されるというふうにうたわれておりますが、その結果として、将来的に危ないといったような数字が出る懸念もあるわけであります。そこで、将来的には、その結果を眺めながらということでありますけれども暫定水域におきましてもTAC制の導入を図っていただくように御検討いただきたい、これはまだ当面の課題ではないと思いますが、御要望を申し上げておきたいというふうに思います。  具体的な規制の問題でありますが、暫定水域におきます漁業種類別最高操業隻数規制、特にイカ釣り漁船隻数、あるいは、以前も申し上げましたけれども光力規制についてはどのように協議が進んでいるのか、伺いたいと思います。
  16. 中須勇雄

    中須政府委員 暫定水域におきます漁船種類別最高操業隻数の設定ということについては、条約上もそういうことをやろうということが書いてあるわけでございますので、私ども、ぜひそれを実現するという方向で取り組んでまいりたいというふうに思っております。  ただ、率直に申しまして、日本海の暫定水域におきましては、我が国の方が漁船数でいうとかなり多いというのが実情でございまして、これまでの議論の中で、韓国側からは、規制を設けるならば暫定水域での操業隻数日韓同数にすべきではないか、そういったお話も出てきたりしております。なかなか難しい問題がございますが、基本的には、これまでの実績というのをまず頭打ちにして、さらにこれより漁獲努力量暫定水域において拡大するということをまずとりあえず防ぐというふうなことで議論を進めたいというのが、現段階における私どもの率直な考え方でございます。  なお、イカ漁船光力制限につきましては、実は日本側もあるいは韓国側もそれぞれ自国漁船に対して光力規制を現に課しておるわけでございます。もちろん漁船トン数等によって若干の違いはございますが、実は日本規制よりも韓国規制の方が厳しいというのが現状でございまして、直ちにことしからそれを厳しい方に全部合わせるということだとまた問題も生じますので、とりあえずはそれぞれの現状規制光力規制については遵守する、こういう方向協議をしていきたいというふうに考えております。
  17. 宮腰光寛

    宮腰分科員 規制実態とは違う面もあるということでありますから、当面は規制そのもの日本韓国双方ともしっかりと守る、遵守するということでありますが、ぜひ間違いなくそのようにしていただくようにお願いしたいと思います。  次に、海洋深層水の活用についてであります。  大和堆付近で操業しております二十八隻の富山漁船のうち、富山県の東部漁協所属の船がほとんど大部分を占めているという実態でありまして、安全操業あるいは漁獲量への影響が懸念をされております。  そこで、今度の予算で、新日韓漁業協定関連沿岸漁業振興対策、つくり育てる漁業を展開することとしておいでになりまして、大変心強い限りであります。今回その中に漁港高度利用活性化対策事業として深層水取水施設整備が盛り込まれておりますが、富山東部の入善町からも深層水利用計画が出てきております。この十一年度新規事業としての採択可能性はどのようになっているのか、伺っておきたいと思います。
  18. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま御指摘がございました海洋深層水につきましては、非常に低温で安定している、それから富栄養性がある、あるいは清浄である、そういった特性を活用することによって、水産物の衛生的な取り扱い、あるいはつくり育てる漁業における種苗の生産、そういうものに活用ができるのではないかということで、十一年度予算案にもこういった取水施設整備について計上しているところでございます。  今御指摘がございました、富山県の入善町におけるこの施設整備については、こういった事業の目的に合致するものであれば、県あるいは事業主体からよく要望をお聞きいたしまして検討していきたい、こういうふうに存じております。
  19. 宮腰光寛

    宮腰分科員 海洋深層水を使った氷を使うと、魚の鮮度が普通の氷とは全く違うというようなことも実証されているわけでありますが、そのほかにも、海洋深層水は自然のポカリスエットだというふうに言われておりまして、非水産分野におきましても非常に将来性の高い資源であるというふうに思います。既に商品化されている中でこの深層水の化粧水というのがありまして、好評だそうであります。あるいは温泉としても健康飲料としても活用できるというふうに言われているわけであります。  今ほど申し上げました入善町の場合は、保養施設に使うとか、あるいは漁協関連企業などにおいて非水産分野でも活用したいということが検討されているわけでありますけれども、この非水産分野での利用につきまして可能かどうか。既に化粧水も商品化されているということでありますが、可能なのかどうか、お聞きしたいと思います。
  20. 中須勇雄

    中須政府委員 私ども、こういった事業補助事業として考えていくということは、基本的に水産利用に関する施設である、こういうことを想定したわけでございます。  ただいま先生から御指摘がございました保養施設とかあるいは化粧水だとか、その他の目的ということもあわせてやりたいという場合については、基本的な考えとしては、それぞれの事業ごとに費用を分担して、アロケーションをして施設整備を行うというふうな形で実施が可能ではないか、こういうふうに思っております。
  21. 宮腰光寛

    宮腰分科員 今ほどアロケーションというお話が出ました。せっかくの深層水、費用の関係もありまして、全国どこでもくみ上げるということはなかなか難しいわけであります。地形的な条件と申しますか、急激に深くなっている、三百メートル余りの深さのところに短い距離で取水ができるというところでないと構想的に無理、そういう性格のものであります。例えば毎分一トンくみ上げるといった場合に、漁業だけですべて使い切るのは難しい、せっかくの資源でありますから、垂れ流しするのももったいないということでありますので、ぜひ非水産分野での活用につきましても、アロケということもありますが、前向きにこれからも御検討いただきたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  22. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて宮腰光寛君の質疑は終了いたしました。  次に、辻一彦君。
  23. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 米の関税化について二、三質問したいと思います。  その前に、中川農相には、その後委員会で論議をする機会がなかったのですが、ガット、米の部分自由化の闘いのときには、まあいろいろな立場でありましたが、ともに随分と取り組んだ思い出があります。そういう意味の同志が農相に就任されて御奮闘いただいておる、今度はカニの刺し網も非常に御苦労いただきましたが、敬意を表し、お礼を申し上げたいと思います。  限られた時間でありますが、若干、米の関税化について。ウルグアイ・ラウンドのその後の交渉で、平成五年にはやむなく苦渋の選択として米の部分自由化を受けたわけですが、当時私は社会党の農林水産部会長をやっておりまして、そういう意味では、まさに体を張ってこの問題に取り組んでいった記憶があります。  そこで、ちょっと私は苦い体験をしたので、そういう体験を踏まえて、二、三お尋ねしたいのです。  一つは、平成四年の暮れ、十二月であったと思うのですが、ガットへの訪欧団を編成して、ジュネーブを訪ねたその帰りに、ブラッセルのECの本部へマクシャリー農相を訪ねて、そして関税化論をかなり論議したことがあります。それは、ちょうどお昼過ぎだったのですが、マクシャリー農林大臣は、たった今ECの農相理事会を開いてバナナの関税化二〇〇%を決めてきた、だからこれでその域内へのバナナの輸入はとめられると思うので、日本もこの際関税化に踏み切って自由化に応じたらいいじゃないか、関税をちゃんとかければ米の輸入を抑えることは可能なはずだ、こう言って切り込んできたわけですね。  そこでかなりな論議をやりましたが、ポイントは、確かに当時は七〇〇%ぐらいの内外価格差の関税、こう言われたのですが、それをかければ一時は入ってこないかもわからない、しかし貿易立国の日本がそういう関税をずっと維持していくというのも容易でないと思う、一年じゅう批判をされてそして関税を下げるというふうな羽目に追い込まれる、それに従って外国の米が入ってくる可能性が非常に強い、したがって、関税化をもって直ちに米を守り得るとは我々はなかなか考えていない、こういう反論をして、その問題で一時間ぐらい論議をしたと思うのですが、物別れで帰りました。  それから、第二は、かなり前ですが、昭和六十二年に私はアメリカの米の調査にカリフォルニアからクリントンさんの地元のアーカンソーを訪ねて、そして南部諸州の米の状況を調べてみたのですが、アーカンソー大学の育種所を訪ねると、そこでは中粒種に対する大々的な試験、育種をやっておるのですね。長粒種の南部諸州の中で、なぜこれだけたくさん中粒種の育種をやっているんだと聞くと、将来日本に向けて米を送り得る可能性があるので、米が自由化等々関税化されれば、それに備えて南部の長粒種を中粒種に切りかえるために育種を今から準備している、こう言って、かなり広いアーカンソー大学の構内で研究しておるのですね。  そこで、農林省の筑波の研究所から担当者がアーカンソー大学へ二年間共同研究に行っておったのですね。その情報をいろいろ聞いてみると、あそこでライスランドというアメリカ最大の米を栽培して輸出している会社があるのですが、そこに伊藤忠等の商社が入って、そして一部あきたこまち、コシヒカリ等をつくっているが、それらの状況は、日本ともうほとんど変わりのない米ができてそして生産費は五分の一ぐらいでできる、こういう実態が一部にあるということも聞いたのですが、今なおそういう育種が続いておるというふうに思うのですね。  そこで、第三は、一月十一日から十四日まで南米ペルーのリマでアジア・太平洋議員フォーラムがあって、私は民主党を代表して行ったのですが、その帰りにニューオーリンズ、ミシシッピ川の河口、ここには穀物の集散地、例えば全農のグレイン・エレベーターというのをやっていますが、一千万トンの穀物といってもえさが中心ですが、それを全部そこで処理をして、日本やほかの国に一千万トン処理している、日本の米と同量ぐらいをそこで処理している。それも見てきてその状況をいろいろ聞いたのです。今すぐ南部諸州の米関税化について動きは余りないが、まずは加州米を日本へ送って、その加州米の空白分ができればその分を南部の米でずっと埋めていく、長期にひとつ取り組んで、そういう意味では、カリフォルニア州も南部諸州の利害も一致をするので、協力をしてこれからだんだんと働いていくことになるだろう。  こういうことで、今特別大きな動きは、一泊二日の短い期間ですから余り聞かなかったのですが、中央新聞も調べてみたが余りそういうのは出ていないのですが、将来、関税化後、この懸念、問題はあると私は思うのですよね。もっとも、パナマを通るために経費がかかって、パナマ経由太平洋という運賃の問題がネックにはなっていますが、これからの懸念が十分にある。  こういう中で、政府の方は去年の十二月にさして論議もなしに関税化に踏み切ったわけですが、今のような関税化の道を通して日本の米を守り得る確信は、担当大臣、農相としてどう思っておるかということをちょっとしっかり聞かせていただきたい。以上です。
  24. 中川昭一

    中川国務大臣 辻先生には、本当に私自身も三党のそして両党の農林の代表として大変御指導いただいたことを今でもはっきり覚えております。農業を愛する気持ち、そして国を愛する気持ちについては本当に頭の下がる思いで今のお話を伺わせていただきました。  昨年十二月に決定をいたしました米の関税化につきましては、ウルグアイ・ラウンドのあの決定、例外なき関税化という大原則の中で、何としても関税化を阻止するというぎりぎりの選択の中でミニマムアクセスという措置をとったわけでありまして、当時私自身も先生と同じような気持ちでいたわけでございます。  その後、九五年からその制度がスタートをいたしました、その中でお米が外国から四%、毎年毎年〇・八%ずつふえて入ってくるという状況、そしてそれがほとんど国民的に使われていないという現状、つまり在庫が積み上がっていくという状況、そしてまた一方では、国内生産に影響を与えないという大原則があるわけでございますので、それを守りつつお米が入ってくるという状況、それから国産米の需給の状況、さらには今後の次期交渉に向かいましての戦略というものも頭に入れた上で関税化という決定をしたところでございます。  そういう前提でございますが、もっと下に根本的な前提としては、今回の措置によってことしの四月一日から関税化するわけでございますけれども、それはWTO協定に基づいた極めて中立的な透明性の高いルールで客観的に算定をしたわけでございまして、来年度におきましては、キロ当たり三百五十一円十七銭という従量税で対応する。また、二・五%下げて、平成十二年度は三百四十一円ということでございますが、この二次税率を外国から入ってくる米のCIFに乗っけた価格というのは、現在国内で出回っております自主流通米の価格の中で高いものと比べても高くなる、これは客観的な数字の結果でありますけれども、現実としてそういうことになるわけでございます。  したがいまして、関税化措置をとったということは、そういうメリットがあるという判断、そしてそれ以前に、日本の米生産あるいは生産者の方々には決して影響を与えないという見通しの上で決断をしたということを御理解いただきたいと思います。
  25. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 アメリカは初めから従量税による第二次関税に批判的な立場をとっておるのですが、政府はこれについてどう考えているか、その点をお伺いします。
  26. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、あくまでもWTO農業協定の附属書五のルールに従って特例措置から一般措置に戻ったわけでございまして、その戻ったときのやり方というものがきちっと書いてあるわけでございまして、それに基づいて決定をし、その決定は一義的にはその国の自主的な判断でできる。ただし、WTOに通知をしなければならない。通知を受けたWTOは関係諸国に、そういう決定日本がいたしましたということで、一応三カ月間の異議申し立て期間、仮に中立的でない方式をとった場合とかいろいろあるわけでございまして、そういう場合に備えての異議申し立て期間というのが三カ月あるわけであります。  現時点におきまして、少なくともアメリカの、私に対して公式にこの決定に対して異議申し立て、あるいはこれはルール違反であるとか、あるいはまたおかしいとか——一般論として高い高いと向こうは言っておりますけれども、それにつきましては、アメリカだけではありません、友好国であり、そしてまた向こうから見れば米の輸出国であります中国、タイ、オーストラリア等に対しましても、決定とほぼ同じ時期に、農林省を初めとして政府を挙げて、友好的な観点から、きちっとこの決定に至る経緯を説明しておるところでございます。  もちろん、アメリカは低い方がいいに決まっておるとは思いますけれども、これは客観的なルールに基づいた決定であることを理解していただかなければならないということを何回も御説明し、これからも必要があれば説明をし続けていくわけでございますけれども、これは決して、協議であるとか、あるいはまた向こうの意見を何か聞いて、それぞれに対して反論をするということではなくて、あくまでもカインドネスの部分で話をしているということでございます。  したがいまして、先ほど申し上げたように、各国当局から正式に日本政府あるいは私に対して、今回の決定に対して、けしからぬとか、あるいは正式に協議をしたいというような申し入れは現時点においてもございません。
  27. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 今回の従量税による第二次関税を今後とも維持していくのは、そう簡単でない感じがするのです。私は、関税は安易に下げるべきではない、こう思いますが、政府はそれについてどう考えているか、お尋ねしたいと思います。
  28. 中川昭一

    中川国務大臣 少なくとも二〇〇〇年まで、そしてまた二〇〇〇年から交渉が開始するわけでございまして、その次期協定ルールが確定するまで何年かかるかわかりませんけれども、その間は、多分二〇〇〇年における関税相当量がそのまま適用されるというふうに理解をしております。  そして、次期交渉の結論が出た後どうなるかということは、出るに際して、日本の立場を最大限努力していくわけでございますが、日本農業、それから日本の米、米生産、生産者を守るという国民的コンセンサスがまず私は極めて大事ではないかということで、今回の関税化決定に当たりましても、関係者だけではなくて消費者の皆さん、あるいはあらゆるマスコミ媒体を通じていろいろと御説明を申し上げ、日本の米、そして将来にわたる国内の米の確保という観点から、国民的な共通認識に立って次期交渉に臨んでいくことがまず大前提であろうと思います。  その上で、この次期交渉に当たって具体的にどういうふうに臨んでいくかにつきましては、これから先生を初め国会、あらゆる場で御議論をいただき、そして国としてオール・ジャパンの交渉方針というものを決めていきたいというふうに考えておりますが、現時点におきましては、そういう大前提の上に立って、日本の米を生産面、生産者の面でも守り続けていくという基本方針がある。  そして、そういうために、今御議論をいただきたいと申し上げましたが、私自身、今申し上げられるのは、例えば米というものの我が国における特別の位置づけ、あるいは我が国の文化、伝統、あるいはまた農業が果たす多面的役割とか、世界の食糧と人口とのバランスにおける日本の貢献のあり方とか、いわゆる非貿易的関心事項といいましょうか、食糧あるいは国土あるいはまた地域、文化、そういうものも含めて我が国の立場というものを強く主張し、そしてまた、その我が国の立場を理解してくれる国々の輪を広げていくことも大事だろうというふうに考えておりますので、国内的共通認識、そしてまた国際的な共通認識の広がりを前提として我が国農業、米を守る、これがひいては国民生活のいわゆる食糧安全保障に資するというふうに考えておりますので、また先生の引き続きの御指導お願い申し上げたいと思います。
  29. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 今の後の方の考え方は、私も非常に共通した認識を持っております。  この間、南米のペルー・リマでのアジア・太平洋議員フォーラムで、食糧安全保障の論議なんかは今までの経緯からすると余りやっていないということを聞いたものですから、せっかく行ったのだからここでこれを提起したいということで、食糧安全保障論というものを私なりに本会議に提起をしたのですが、そこに集まる人たちの性格上か、立場上からか、我々が考えている食糧安全保障論は大きな反響はなかなか難しいという感じがしたのです。  そういう点で、まさに今大臣も表明がありましたが、食糧安全保障、我々は主権国家として自給権を主張すべきであると思っております。しかし、その食糧安全保障と農業の持つ多面的また公益的な機能の役割、特に水田農業の果たす役割、こういうものをもう一遍理論構築をして、日本としての論理を整理して、その理論の再構築の上に立ってWTOの中でこれを強力に展開しないと、なかなか日本の言い分が通るような状況ではないと思うのです。大臣の今の所信に共鳴を覚えながらも、これに特に力を入れていくということが大事だと思いますが、その点の見解はいかがですか。
  30. 中川昭一

    中川国務大臣 まさに、先生と私とのWTOに向かう基本的な考え方はほぼ同じではないかと思います。そして、交渉で何としてもその立場を貫き、実現をしていくことが大事なわけであります。  そういう意味で、先ほど申し上げましたように、消費者を含めた国民的な共通認識というものを共有するということにまず我々として努力をしていかなければなりません。それから、国際交渉の場におきましては、率直に申し上げて、日本に対して文句を言ってくるのは一部の輸出国だろうと思います。数的にはそんなに多くない。ほとんどの国が食糧を多かれ少なかれ輸入をしているという状況の中で、一部の輸出国の議論がまさに前交渉においては大手を振ってしまったということが、輸出国と輸入国とのバランスを欠いた協定になったという認識を我々としては持っておるわけでございます。  そういう意味で、我が国といたしましては、先ほど申し上げたような我が国の主張を、あるいは先生が特に強調された多面的機能というようなことを申し上げると同時に、輸出国の言っていることの正当性のなさというものについても強く我々としては主張をする。ただ言われたことに対して防御するだけではなくて、輸出国の例えば輸出補助金あるいは輸出制限等々といったものについても我が国としては強く主張する。そしてそのためには、先生も今御指摘があったように、厳しい交渉になることは予想されるわけでありますけれども、さっき言った、世界一の純輸入国と数カ国との闘いではなくて、百三十数カ国の中で一体どっちの議論が正しいんだということを、一カ国でも多くの国に日本の考えというものを理解していただくことが国際交渉において極めて大事なことだろうと思います。先生が先日、南米でそういうお話をしていただいたことも大変ありがたいことでございますし、我々も含めて、あらゆる場で国際的に日本の立場をこれから主張していくことが極めて重要なことではないかというふうに考えております。
  31. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 これは、今私の申し上げることについては答えを求めませんが、ウルグアイ・ラウンドの交渉の結果、苦渋の選択としてミニマムアクセス米を受け入れているわけですね。それが六十数万トン、まあ八万トンぐらいになるでしょうが、相当な量に達しておるのですが、国内では平均して三五%減反をしている。そして、中には余り売れない外国の米を無理な形で受け入れている。日本の農民や農家の心理としては、まことに割り切れないものを持っておるということを、これから国際舞台のいろいろな論議の中で率直に表明し、訴えていただきたいと思います。  次に、この問題の最後ですが、私も五年前、平成五年のあの苦渋の選択をせざるを得なかったときに、最後は国民世論が割れてはやはり力にならぬということを非常に痛感しました。食糧安全保障と農業の多面的、公益的な必要性、役割、こういうものに対して国民的な合意を、さっきもありましたが、どう形成するかということが非常に大事だと思うのです。その場合、今、関税化の論議とあわせて新農業基本法の制定をめぐる論議がいろいろなところで行われておるのですが、これはしっかりやらなければいかぬと思うのですが、農民や農家農業団体あるいは国会の中で論議をするだけではやはり国民合意は、形は別として本当はなかなか形成されない。  そういう意味で、新農業基本法の制定を機会に広く国民的論議を、農業のこの大事な役割、国民合意の形成のために広範な論議を起こす努力を今やるべきではないか。それなしには国民世論が結集しない。やはり次のWTOにおける交渉も似たような轍を繰り返すことになりかねない。この点についていかがでしょう。
  32. 中川昭一

    中川国務大臣 先生の御指摘、まことにそのとおりでございます。今度の新しい基本法も、食料・農業農村基本法、そういう名前の法律になるかと思いますが、冒頭に食料という言葉を持ってきたということは、つまり、すべての国民に必要不可欠な生命物資である食料にかかわる基本法ですよということでございまして、国民にとりまして、自分あるいは子供たち、あるいは未来の自分の子孫が、健康ですくすくと育つことのできるような食糧の安定的な確保が必要だ。  そのためには、やはり世界の食糧事情、人口が爆発的にふえている、あるいはどこかの国で、きょうもやっていましたけれども、近くの国ではここ数年間で三百万人の人間が国外に出ていったり、また餓死をしていった。世界で八億人とも言われる飢餓者がおる。そういう中で、食糧の増産というものが有限であり、しかも極めて恣意的に取引されておる。輸出国の都合でもって取引されている。そういうときに、国民が将来的に不安を感じざるを得ないというのは、各種の統計からも私どもは事実だろうと認識をしております。  したがいまして、国民的な理解をいただく。しかし、ただそれは、だから大変なんだということではなくて、例えば基本法の中でも、国民的な御理解をいただいた上で諸施策をとらなければいけないとか、あるいは今回文部省に御協力をいただきまして、都会の子供たちが自然を体験することによって教育的な効果を上げるということでありますとか、あるいは自然に触れ合う機会をできるだけつくってもらうとか、そういうようなことも含めまして、あるいはまた、消費者といっていいのでしょうか、先生おっしゃったように、前回は生産者対消費者あるいはまた都市対農村みたいな分裂した形の交渉であったというふうな印象を私は持っておるわけでありますけれども、現時点におきまして、例えば消費者の皆さんのところに私が御説明に行っても、米の関税化についての反対賛成ということではない、日本の食糧をもっときちっと安定的に供給してもらいたい、そして先生から先ほどおしかりをいただきましたけれども、何でもっと早くやらなかったんだとか、説明が何でこんな急に来るんだというようなおしかりを受け、その政策そのものについては、もっと日本の食糧を安定的に供給するようにあなた方努力しなさいというようなおしかりをいただいておるわけであります。  私としては、いい方向ではあるなと思いますけれども、さらに、これは国会の場あるいは行政の場だけではなくて国民的に、こういう食糧という極めて大事なものについて、国内生産を基本とした安定的な国民への供給について、さらに国民に対して御説明をし、御理解をいただく努力をしていくことは極めて大事であり、基本法の位置づけ、あるいは先ほどの次期交渉に向けても私は大事なことだろうと思っております。
  33. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 私はもう一つ、中国の三江平原の農業開発の現況の中で、さらにいろいろな協力、支援をすべきであるという論議で若干質問したかったのですが、もう時間が大体来ておりますから、希望だけ述べておきます。  実は、三江平原は、一九八一年に日本農林水産委員会が衆議院から現地を調査して以来これにかかわってきて、私も現地に三回行って、一昨年は、五・二億トンのダムをつくるその現場に行って、ここにダムをつくるというそこまで現地へ行って見てきました。  実験区は五万ヘクタールで、三江平原の一千万ヘクタール、農耕可能地六百万ヘクタールの百分の一にまだ足りないわけですが、ああいうふうな実験区、モデル区をつくって、洪水を制御し、かんがいをやり、それから低湿地の水をはかす、こういうことをやれば、三百万ヘクタールほどの三江平原の残された低生産地はかなり変わっていくと思うんですが、モデル区を踏まえてこれからもこの支援、協力をする必要があるんじゃないかと思いますが、もう一言だけそういう考え方、気持ちを伺って、終わりたいと思います。
  34. 竹中美晴

    竹中(美)政府委員 三江平原は先生大変お詳しいところでございますが、三江平原におきます農業開発は、今後の中国の食糧需給の安定、ひいては世界の食糧安全保障といった観点からも大変重要な地域であると考えております。  今後とも、中国政府からの要請を踏まえまして、関係省庁とも御相談の上、必要な協力を推進していきたいと考えております。
  35. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 大臣、これは私もちょっといろいろな因縁が、小学校の四名の同級生が三江平原の現地で満蒙開拓青少年義勇軍というのに入って、それでその後、シベリア、ウクライナまで抑留をされて亡くなったりしている。そういう思いがあるので、ここを、平和の中で、何とか日中協力の中で、彼らが五十年前に描いた農業建設の夢を果たさせてあげたい、こういう思いでいろいろ取り組んできておるんです。  きょうは論議の時間がなかったのが残念ですが、ぜひひとつ農林省としてもこれからも中国のこの面の支援に力を入れていただくように要望しまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  36. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて辻一彦君の質疑は終了いたしました。  次に、小野寺五典君。
  37. 小野寺五典

    小野寺分科員 中川大臣には、日ごろ、日本農業、林業そして水産業、食糧の基幹産業に対しまして大変な御尽力をいただき、ありがとうございます。きょうは、その中で特に私が関心を持っております遠洋マグロはえ縄漁業の国際減船の問題についてお伺いをしたいと思います。  御存じのとおり、マグロといいますのは、非常に日本にとっては、食文化といいますか、歴史的に長い伝統を有し、また今でも子供たちにまで大変親しまれている、そういう食糧資源でありますが、そのマグロ、実は公海上で主に漁獲されるというような特性がありまして、日本は長年この漁猟技術を開発してまいりました。  ところが、御案内のとおり、現在、環境保護問題が大変盛んになっております。また、資源の問題でも、どうも日本以外にも各国がこのマグロ資源を利用されるということが大分出てまいりまして、そういう中で、資源にもそろそろ陰りが見えてきているんではないか。そういういろいろな要因がありまして、昨年十二月のFAOの行動計画の中で、日本がほかの国と足並みをそろえまして、二割の漁獲能力の削減ということを行おう、そういうふうに今回決まったということになっているわけです。まず初めに、大臣に今回の遠洋マグロはえ縄漁業の国際減船の意義ということをぜひお伺いしたいと思うんですが。
  38. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のように、FAOによりまして、マグロ資源が、現時点の資源に比べまして漁獲能力が二割から三割多いということで、その能力を削減すべきという行動計画が合意されたわけでございます。先生の御地元を初め関係漁業者にとって大変厳しい選択だったと思いますけれども我が国としては、永続的な漁業資源の確保等々の観点から、この合意に基づきまして、国際漁業再編対策を適用したところでございます。  もとより日本は、世界最大のマグロの生産国であり、また消費国でもあるわけでございまして、マグロ文化の国と言ってもいいんだろうと思います。そういう中で、漁業関係者の皆さんの大変厳しい選択に対して、今申し上げたような再編対策を適用して、減船を着実に実施しながら、また漁業者に対しての救済策を最大限とっていきたい、とってきているという状況でございます。
  39. 小野寺五典

    小野寺分科員 今大臣お話しされましたように、本当に今回政府としてはかなりの努力をしていただいている、そういうことも、私の地元気仙沼の漁業者も痛切に感じております。特に、今回の減船に対しては、減船交付金ということで、国と地方分合わせまして一隻当たり約二億八千万の交付金が出まして、これで新たに離職者に対して、あるいは新たな産業に展開するというような、そういう方策を各経営体はとろうと今努力をしている最中であります。  そういう中、実は今回二割減船ですので、八割の残った漁業経営体の方々が今常々思っておりますのは、今回こういうふうに国際的な資源保護のために減船というのはやむを得ない、それは仕方ない、努力をしましょう、自分たちが汗を、血を流しましょう、そういうことなんです。ところが、その反面、今回はFAOの行動計画ということですので、同じく遠洋マグロはえ縄漁業を営んでおります韓国、台湾、この両国にも当然日本は同一歩調で努力お願いする。そうでなければ、日本だけが環境保護のために公海上での漁業を削減し、かわりに韓国、台湾、ほかの国がふやしたのでは、結局資源には何のメリットにもなりませんし、また、日本にとっては一体これは何のための努力だったのか、そういうふうな矛盾も生じます。  ぜひこの辺のことについて、現在の韓国、台湾の協調減船の状況についてお伺いしたいと思うんですが。
  40. 中須勇雄

    中須政府委員 先生ただいま御指摘ございましたように、我が国はもちろん遠洋マグロはえ縄漁業最大の生産国ということでございまして、六百六十隻余の船がいるという現状にございます。他方、今御指摘になりました韓国、台湾につきましても、韓国が約二百隻、台湾は六百隻という船がいるわけでございまして、今回のFAOの行動計画自体も、こうした我が国を含む全生産国に対して減船を求めている、こういう基本的な性格のものだというふうに私どもも考えております。  したがいまして、私どもとしては、当然のことながら、我が国が率先して減船に取り組むわけでございますが、こういった台湾、韓国においてもぜひ協調して減船に取り組んでいただきたい、こういうことで、内々両国ともいろいろ話し合いをしているところでございます。  特に、韓国につきましては、いろいろこれまでの協議状況を御報告いたしますと、韓国自体、遠洋マグロはえ縄漁船が近年かなり隻数が減っている。最近のデータでいえば、二百四十五隻から二百三隻まで減ってきている、こういうふうな状況にあって、大変船齢の古い船がございます。韓国側の説明によれば、こういう状況を続けることによって今後とも隻数が減っていく、そこは新たなものをふやさないということによってかなりの隻数減が見込まれる、こういうような言い方をしております。もちろん、これから先のフォローなりその話し合いということを引き続きやっていこうというふうに思っておりますが、韓国状況はそういう形でございます。  一方、台湾につきましては、これも何回か協議を行ってまいりました。最近の状況ということでいきますと、先ほど申しましたように、大体今台湾では六百隻の遠洋マグロはえ縄漁船があるわけでございますが、これを明年末までに現在の操業隻数の一割に当たる六十隻の減船を目指して取り組みたい、この減船事業は明年末までにさらに見直しを行い、その内容の充実を図っていく、そういうような態度が台湾から表明されている、こういうふうな状況にございます。  ですから、基本的な方向としては、協調して減船をしていくという方向になってはいるわけでありますが、なお今後とも両国との話し合いなり両国の取り組みに対するフォローアップというか、そういうことに努力をして、その実が上がるように私どもも引き続き努力していかなければならないな、こういうふうに考えておる次第でございます。     〔主査退席、植竹主査代理着席〕
  41. 小野寺五典

    小野寺分科員 台湾の六百隻というお話があるんですが、実は、この六百隻の内訳、御存じのとおり、日本のような公海上で漁猟ができる能力があります大型船と、それからかなり近海で従来から操業している中型、小型船が一緒になった数字です。  一番今心配していますのが、隻数だけの削減ということで、老朽化した小型船の数だけをどんどん減らしていって大型船が残っている状況では、結局、漁獲能力ということに関してはとても削減されたということにはならない、そういう現状があります。  ですから、今回の二割減船というのは、日本の場合にはあくまでも同一基準の遠洋はえ縄漁船が減船されるわけなんです。そうしますと、漁獲能力も二割削減ということが明確になるんですが、今回は、漁船ということではなくて、漁獲能力の二割削減ということをぜひ台湾にも強硬に主張していただきたいんですが、その辺についてのお考えをお聞かせください。
  42. 中須勇雄

    中須政府委員 私ども、先ほど申し上げましたとおり、今回のお話で台湾との話が終了したというふうに思っているわけではございません。内容の充実と、それから少なくともそういう表明されたことについては、今お話しのようなしっかりした形で減船が行われるというものをフォローアップしていくということを含めて、引き続き努力をしていきたいというふうに考えております。
  43. 小野寺五典

    小野寺分科員 現在、台湾の漁獲されるマグロというのは日本に輸入されてきます。ですから、今後、現在民間ベースである程度の枠は決めておりますが、その日本への輸入状況に応じて恐らく漁獲能力がどのぐらい下がったかというのはウオッチできると思いますので、ぜひその辺のフォローもしっかりとしていただければというふうに思います。  次に、少し国内の関連産業の問題についてお話をお伺いしたいんですが、今回、国際減船ということになります。日本は二割削減するということになりますと、御存じのとおり、マグロ漁業に関しては、非常にすそ野が広い産業であります。例えば、マグロのえさを主に積みます仕込み屋さんとか、あるいははえ縄漁具を納入される漁具屋さんとか、かなりすそ野が広い産業になります。それで、二割削減される。  今回は、政府の減船交付金ということで、船主さん、経営者に対してはある程度の交付がなされたわけなんですが、その関連産業、今まで十の商売ができたものが八の商売になってしまう、そういう関連産業に対してどのような対応を考えているのか、国の対応についてお伺いしたいんですが。
  44. 中須勇雄

    中須政府委員 確かに、遠洋マグロはえ縄漁業、大変すそ野の広い漁業でございまして、それに物を仕入れる、あるいはそこから物をいただいて販売をするということを含めて、非常に広範な関連陸上産業というものが存在するわけでございます。  しかも、御承知のとおり、先生の地元なんかがまさにそうであるわけでありますが、大変地域性が高いというか、一定の地域に集中しているということがございますので、そういった面でも、今回の二割の減船ということが関連産業に与える影響は決して見過ごすことができない大きな問題があろうかと思います。  基本的には、私ども、そういった問題については関係県等を通じまして、既存の施策を含めて必要な対策ということには努力をしていきたいと思いますが、やはり基本的には、減船される漁業者に対して減船交付金を支給する。そのことがひいてはそれぞれ、例えば仕入れをしている、あるいは売掛金がある各種の業者にとってはプラスになるわけでありまして、そういう効果をぜひ期待したいということと、いずれにいたしましても、今後とも、関係省庁あるいは関連道県と十分連携を図りながら、地域経済への悪影響の防止という点では引き続き努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  45. 小野寺五典

    小野寺分科員 そういう関連産業を基幹産業とします地域の住民にとっては、今回は国際減船という国策で基幹産業の一部が削減される。そういう場合に、当然、国策ですので、国の手厚い保護があってしかるべきだ、そう思う方がほとんどであります。ぜひ、地域の声を真摯に受けとめていただきまして、御努力お願いしたいと思います。  それから、実際、今回そういう形で処理をしていく、減船をしていく段階で、実は新たに表になったことがあります。それは、幾つかの経営体の中身を見ましたら、どうも債務超過になっていたというか、経営環境が大変厳しかったということがわかりまして、今回減船になることによって、いわゆる不良債権が表にたくさん出てきたということがあります。  特に、こういう基幹産業で二割削減ということで、厳しい関連産業の皆さんの中には、ここに債権を持っている一般債権者の方も多数いらっしゃいます。これは国にどうしろということで特に言う話ではありませんが、そういう不良債権が表面化してきて、それでもまたダブルパンチで関連業界の皆さんが大変苦しんでいる、こういう事情は、ぜひ国の方にもしっかりと理解して受けとめていただければというふうに思っております。  それでは、次の質問に移ります。  今回、減船ということで船はなくなってしまうわけですが、当然そこに、大体一隻当たり、遠洋マグロ漁船ですと二十数人の方が乗船をされています。こういう方が今回の二割減船で職を失ってしまう。全国でもかなりの数に上りますが、私の地元では約六百人以上の方がこれで一気に職を失ってしまう、そういうことになります。この減船の離職者の方に対しての対策についてはどのようなことをお考えか、お伺いしたいんですが。
  46. 中須勇雄

    中須政府委員 私ども暫定的に調べた範囲では、今回の減船によりまして、全国では千五百名、先生の地元の宮城県でいえば約六百五十名の離職者が出る、こういうふうな状況だというふうに把握をしております。  減船対象漁業者に対しましては、先ほど来のお話にありますように、国際漁業再編対策の中で一定の交付金が交付されるわけでございますが、この交付金の構成要素の一つとして労務費という部分がございまして、漁船員に対して船主さんが支払った給与の一部、あるいは退職金等の相当額、そういうものについて、実績に応じた交付金が漁業者に対して支払われる、こういうことになりますので、それは回って離職されるその就業者の方の懐に入るというか、そのことを逆に確保する意味で、漁業者に対してそういう交付金を交付するというふうにしておるというのが第一点でございます。  それからもう一つは、離職者を、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法、いわゆる漁臨法と言っておりますが、今回、遠洋マグロはえ縄漁業につきましては、この漁臨法の対象業種ということに指定をしていただきまして、労働省、運輸省等関係省庁において、漁業離職者求職手帳、これを発給する。それによりまして、職業転換給付金の支給等再就職の促進のために特別の措置が講じられるということになっておりまして、こういった制度を活用して、円滑な転職ということが可能になるように努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  47. 小野寺五典

    小野寺分科員 一口に六百人ということなんですが、私の地元の人口は六万二千人です。そのうち六百人が今回一気にこういう形で失業してしまう。例えば、これを世帯ということで考えますと、二万数千世帯のうち、もし一世帯で恐らく一人が乗っていらっしゃると考えた場合には、六百世帯の家が失業してしまう。これはもう世帯数の数%に当たる。こういう非常に大きな打撃が一気に地域に来るということです。  今、漁臨法の指定ということが確かにありましたが、漁臨法でも、確かに失業保険あるいはその延長という形でいろいろな対応がありますし、あるいは雇用主に対しての助成ということもあると思うんですが、何せ漁船から離職されたという方がまた漁船に乗るにも、もうその乗る漁船がありません。ですから、悪い言い方をすればおかに上がったかっぱということで、陸上で産業を見つけなければいけない。  ところが、今のこの非常に厳しい雇用環境、陸上でも四・三%という高い失業が見込まれる中で、長年漁船業務に携わりましてもう中高年に当たる、そういう方々の再就職というのは、これはもう本当に、ほとんど可能性が厳しい、そういう現状にあります。  ですから、これは国の政策、国際減船という形で行われた非常に未曾有の問題でありますので、特に、ある特定の地域においては本当に深刻な課題になっているということをぜひ重く受けとめて、今、漁臨法というお話がありましたが、それ以外にもいろいろな対応をしていただければと思います。  また、特に今回、地域に対して、関連産業も、十あった産業が八に減ってしまいます。そうしますと、今まで十売り上げがあったのが、単純に言うと八に減ってしまうわけです。そうしますと、その関連産業からも新たに失業者が出なければならない、失業者が地域にあふれてしまう、こういう非常に深刻な影響があることをぜひ重く受けとめていただければというふうに思います。  それから一点、ちょっと心配なことがありまして、細かい点ですが、少しお話をさせていただければと思うのです。  今回、減船というのは、これは今までのような形で遠洋マグロ漁船をほかの船に転用するということではなくて、当然、交付金が出ますし、あるいはその交付金の中には減船に対する費用も含まれているわけですから、船をスクラップする、完全に使えなくしてしまう、そういうことだと思うのです。その中でちょっと現場の声で心配なのが、実はこの解体費用は約一千万円ぐらいかかるというふうに伺っているのですが、もし数字がわかったら教えていただきたいのです。その際に、当然強力な冷蔵庫を積んでいます。その中にフロンがかなり含まれるということになるのですが、この処理というのが、実はかなりお金がかかるというふうに伺っています。  ですから、フロン処理に対してある程度きちっとした指導がなければ、ひょっとしてこれをまた海上で投棄してしまうとか、そういう可能性も全然ないというわけではないと思うのですが、その辺の減船処理に対する対応について少しお話を伺わせていただければと思うのですが。
  48. 中須勇雄

    中須政府委員 御指摘のとおり、現在、大部分の遠洋マグロはえ縄漁船については、冷凍設備の冷媒としてフロンを使っているという実態にございます。実はこのフロンについては、御承知のとおり、オゾン層を破壊する物質ということで、いわゆる環境基本法に基づく環境基本計画によって、回収、再利用あるいは破壊をするということ自体がそもそも求められている、こういうことでございます。  そのために、実は私ども平成九年の十一月でございますが、各漁業関係団体に通達を出しまして、今申しましたような特定フロンの回収、再利用あるいは破壊ということを進めていかなければならないということで、どういうやり方でそれを進めていくかということについて通達を出して、各漁業関係団体あるいは個別の漁業者、あるいは関連産業の皆様方に御協力を要請してまいりました。  今回、このような形でかなりの隻数についてスクラップが行われるということになりますと、当然このフロンの問題は、この通達に従って処理をしていかなければならないということになりますので、ことしに入りましてから改めて関係団体にもう一度通達を出しまして、スクラップする際、平成九年に出しました通達に沿って、フロンについては回収をし、再利用なり破壊をするようにということをお願いしているところでございます。  最終的な姿としては、私ども自体も、スクラップ処理後、その処理状況ということを確認する等によって、そこはフロンが大気中に出るということがないように万全の措置をとってまいりたいというふうに思っております。  ただ、その際、御指摘のとおり、費用の問題がどうしても出るわけでございます。ただ、率直に申しまして、この費用の問題は、それぞれ関係する方々が話し合いの中でどういう分担関係でこれを処理するかということをお決めいただきまして、そのルールに従って処理をしていただくということにならざるを得ないのではないかというふうに考えておりまして、そのことを含めて指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  49. 小野寺五典

    小野寺分科員 それから、廃船の問題なんですが、地元の漁業者の方からよく伺う話なんですが、実は沿岸に、沈船というんですか、漁船が沈んだ場所に、それがかなり有効な魚礁になる、そういう御意見がありまして、今、環境問題でも、船にもいろいろ塗料が塗ってあったり油がしみついたり、いろいろ問題があると思うのですが、ぜひそういう有効利用ということも考えていただければありがたいなというふうに思います。  それでは、最後の質問になるのですが、今回の国際減船、そういう問題があるのですが、それ以上に、実は現在のマグロ漁業は経営的にも非常に厳しい環境に直面しております。この一番の問題、根っこに、実はマグロの輸入増加によります供給過剰の問題というのがあります。  今マグロの値段がどのぐらいするかというのをちょっと調べてもらったんですが、昭和五十五年、冷凍メバチマグロというのが一キロ当たり八百三十一円しました。それが、平成十年の四月では七百四十四円です。ですから、約二十年前の値段以下の値段で、現在、主要なマグロであります冷凍メバチが取引されています。同じようにキハダにつきましても、二十年前の値段とほぼ変わりません。  確かに物価の優等生といえば優等生と言えるかもしれませんが、実はかなり原価を割って取引をされている部分も一部ある。これは間違いなく輸入供給過剰による市況のだぶつき、さらに現在のバブル崩壊以降の不況の問題もあると思うのですが、経営が非常に厳しくなっています。特にマグロの輸入に関しましては、先ほどお話ししました昭和五十五年、このときには九・六万トンだったんですが、平成九年、一昨年では二十八万トン、このような三倍の輸入増加になっています。  こういう厳しい環境の中で、日本漁業、遠洋漁業、このマグロ漁船皆さん、一生懸命頑張っていらっしゃるのです。  ところが、その中に、例えば適正な漁獲をされて日本に輸入するのであれば、これは問題ないのかもしれませんが、一部、便宜置籍船の問題、国籍を、特定の国じゃない、本来の国じゃないところに移管して、そこの船として操業をして、それを日本にまた輸入してくる、いわばちょっと反則というのでしょうか、そういうふうな形で操業している漁船、国も多々あるというふうに伺っております。  ある地元の漁業者の方がおっしゃったんですが、こういうふうな環境にあるのであれば、むしろ、よく日本が今アメリカからいろいろなことを突きつけられていますスーパー三〇一条、そういうものを逆に日本が、水産、特に遠洋漁業に関して、環境にうまく対応してくれない国、あるいはこういう便宜置籍船のようないわば反則的な漁獲をしている国に関しては、日本がそのスーパー三〇一条を科すんだ、そういうふうなお考えみたいなことをできないものなのか、そういうことを常々考えているんですが、ぜひその辺の、現在の輸入増加によって苦境に立たされている日本漁業、そしてまた漁獲する国というのが決してすべて適正な漁獲をしているわけではない、そういう国に対しての対応についてお話伺いたいのですが。
  50. 中須勇雄

    中須政府委員 確かに大変大きな問題だろうという認識は持っております。  ただ、これは御承知のとおり、本当に国際ルールに反して、便宜置籍船というような形でルール逃れをしている場合については、一定の限定された形ではございますが、議員立法によりましてマグロの輸入規制ができる、こういうような一定の前進も見られているわけであります。  ただ、正直言いまして、私ども、全体としての国際的な貿易ルールというものは基本的に守っていかなければならないという立場にあるのと、やはり自由に貿易をするということはそれはそれとしても、資源に悪影響を与えているようなものが自由に貿易をされていいのか、そういう問題意識は当然他方でもあるわけであります。ただ、問題は、やはりこういうことが国際的な場でもって議論をされて、国際的にそういうことが容認をされていくというふうな状況をつくっていくということが基本的に重要だろうと思っているわけであります。  マグロの国際的な管理機関におきましても、ICCAT等の場では、そういった便宜置籍船について、国際機関の中で議論をして、そういうものについては一定の統計証明制度によって排除できるようにする、こういうふうな動きが現にあるわけでございまして、私どもは、基本的にそういう方向でこういう問題については取り組んでいくべきではないかというふうに思っております。  ただ、幅広い意味で、資源の適正な保存、利用ということと、貿易ルールというのがどうあるべきかということについては、さらに国際的な場においても議論を進めていただいて、そこに適正な答えが出ていく、そういう方向での努力はしていきたいというふうに思っております。
  51. 小野寺五典

    小野寺分科員 平成八年に制定されましたいわゆるまぐろ法ですが、これでは、国際的なそういうルールによって、違反した国に関しては日本が輸入制限等ができるという状況になっていると思います。  今回、特に台湾に関しましては、FAOの行動計画の中で削減するということが明確にうたわれているわけですから、いわばこれが準用できるのではないかというふうに自分は受けとめております。ぜひ、少し日本も強硬な主張で、今回の国際減船に関しては台湾も同じ土俵についていただくように、しっかりとした対応をお願いしたいというふうに思っています。  最後に、このような日本漁業、いろいろな厳しい状況にあります。ぜひ大臣に、日本漁業にかかわる基本的なお考えをお聞かせいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思っています。
  52. 中川昭一

    中川国務大臣 今先生からマグロを中心とする遠洋漁業の厳しい状況を改めて聞かせていただきました。私自身も、漁業全般が今非常に厳しいという認識を持っておるわけであります。漁業従事者の高齢化の問題、資源の悪化、あるいは先生今御指摘のような輸入水産物の急増、さらには国際的な資源管理体制の強化といった漁業全体の厳しい状況があるわけであります。  そういう中で、農林水産省といたしましても、適切な資源管理、特に我が国周辺水域での資源管理、あるいはまた、つくり育てる漁業という新しい時代に向かって、秩序ある輸入、あるいは流通、加工、販売体制の整備に努めているところでございます。また、国際的な資源管理体制の構築にも、我が国の立場としてもこれは積極的に貢献をしていきたいと考えております。  また、この漁業の大きな変化に対応し得るような基本的な考え方を水産基本政策検討会というところで今御検討いただいておるところであります。その一つの柱といたしまして、今回、農業の方でも新しい基本法を御審議いただき、成立をお願いしているところでございますが、水産にかかわる新たな基本法のようなものを漁業者皆さん関係皆さん方に、将来目標等も含めた形できちっとした基本法をつくっていくべきではないかという御議論もあります。私も、それについてはそういう方向で御議論をしていただいておるものと考えておりまして、今後の基本政策のあり方について、検討会の結論を見ながら、基本法の制定についても私自身は前向きに考えておるところでございますので、御指導よろしくお願いいたします。
  53. 小野寺五典

    小野寺分科員 水産に対しての前向きな御発言ありがとうございます。  現在の農林水産省の看板、農林に水産をつけていただいたのは、中川一郎、当時の大臣であります。ぜひその水産のことをこれからもよろしくお願いいたします。  きょうはありがとうございました。
  54. 植竹繁雄

    ○植竹主査代理 これにて小野寺五典君の質疑は終了いたしました。  次に、並木正芳君。
  55. 並木正芳

    並木分科員 改革クラブの並木正芳ですが、どうぞよろしくお願いいたします。  きのうも質問させていただいたのですけれどもダイオキシン対策についてお伺いしたいと思います。  ダイオキシンについては、既に大臣も御認識のことかと思いますけれども、史上最強の毒物と言われ、青酸カリの一万倍、あるいはサリンの二倍以上の毒性があるのじゃないか、こういうふうに言われております。また、内分泌攪乱系の、いわゆる環境ホルモンと言われるものですけれども、その一種としても取り上げられておりまして、WHOでも発がん性等が指摘されております。また、催奇性等々もいろいろな実験データでも指摘されるところでありますけれども、農薬等にも含まれていたり、あるいは殺虫剤に含まれている。  一方で、農水省側は、いわゆる焼却場の灰による農作物の汚染とか、あるいはそれが積もり積もって魚介類への汚染とか、被害者でもありますけれども、同時に肥料や殺虫剤云々ということではそれなりの、加害者側といいますか、そういう面もあるわけですけれども、その辺についての大臣の認識を、ダイオキシンについてどのような御認識をお持ちか、まずお伺いしたいと思います。
  56. 中川昭一

    中川国務大臣 ダイオキシンというのは、科学的には、もう先生御承知でございますから、この文章を読み上げることはいたしませんが、急性毒性、慢性毒性、発がん性、あるいは催奇形性等の強い毒性があるということを認識しております。したがいまして、国民的にも今非常に関心が深いわけでございます。  蛇足でございますけれども、その議論農林水産省としての立場の議論とが、ちょっと何か変な形で野菜について被害をこうむっているなという感じを持ちますが、これは先生の御質問とは関係ございませんが、いずれにいたしましても、強い毒性のあるものだという認識を私自身も持っております。  一部のマスコミにも書いてありますけれども、史上最強の猛毒という表現については、ちょっと強調し過ぎではないかというような新聞報道もございます。いずれにいたしましても、率直に申し上げて、今回も、我々が持っているデータが余りないということを率直に言わざるを得ないわけでございまして、もちろん、厚生省、農水省、最近特にいろいろと知見を集めておりますけれども、そういう中でございますので、ダイオキシンの問題についての実態把握、あるいは長期的な影響について今後十分留意すべき、また調査研究すべき問題だというふうに認識しております。
  57. 並木正芳

    並木分科員 このダイオキシンについて、今大臣の発言にもあったわけですけれども、私の出身でございます所沢産の野菜が高濃度のダイオキシンに汚染されていると、テレビ朝日の、これは後ほど誤った報道であるというようなことがはっきりしたわけですけれども、こういうような報道がありました。中には、そのアナウンサーですか、キャスターというのですかね、所沢産のホウレンソウは食べられませんねというようなおまけの発言までついて、所沢産のホウレンソウを初め埼玉県産の野菜の販売中止が大変相次いで、二月十日までの集計で、推計ですけれども、所沢産の野菜で四千万円、埼玉県産では約三億円、こういういわゆる被害が出たということで、大変な問題になっているわけであります。私も地元でございますからわかるわけですけれども、大変苦労して野菜を育てられております。そういうような農家の方が、自分が手塩にかけて育てたものを売るに売れなくなってしまった、こういう怒りと苦しみといいますか、それはもう察するに余りあるところであります。  農林水産省の方は御存じかと思いますけれども、ホウレンソウというのは、所沢の、目にしている場合ですと、ほとんどビニールの覆いで覆って育てております。また、大変生育の早いもので、三日や四日出荷を間違えると、大変育ち過ぎて売り物にならなくなってしまう、そのような、大変生育が早いということでもあります。ビニールもまた、農家の方は、燃やしたりしないようにこれを回収したりして、それこそダイオキシン対策の一環もあって、非常に繊細に処理をされているわけです。  こういうような形で育てたホウレンソウというのは、汚染されるというのがダイオキシンの場合は、特に今回の産廃の処理場から降ってくる煙とかそういうもので汚染されるということですから、非常に時間をかけて降り積もるように蓄積されていくわけですから、そういったことからすれば、全く早く生育して、しかもビニールで覆っているということでは、汚染の可能性が大変低いものだというふうに言えるわけです。  それで、JA所沢市が二年ほど前に自主的に調査をしております。そのデータを今回発表されたわけですけれども、これでも政府も、直ちに健康に障害があるというようなものではないというふうに言い切っていただいたわけです。その後、テレビ朝日も、こうした経緯を踏まえて、野菜じゃなくて葉っぱ物であったというような誤りを認めたわけです。この葉っぱ物というのは、一般的には木の葉を葉っぱとはいいますけれども、聞きなれない、わかったようでわからないような表現なのです。だから、私は、こんな言い逃れというか、逆に報道が非常にあいまいな表現であるという印象を持ったわけなのですけれども、農水省でこういうような分類をされているものがあるのでしょうか。
  58. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 用語のお話でございますので、やや技術的な答弁になるかと思いますけれども農林水産省の統計調査、例えば野菜生産出荷統計というようなものに載っておりますけれども、それでは、ホウレンソウとか白菜とかシュンギクあるいはアスパラガスなどのように、食用部としてその植物体の葉や茎を利用する野菜につきましては、一括して葉茎菜類と総称をいたしております。  なお、青果市場等で、関係者の中では、葉物とか葉物野菜という言い方はされているというふうには承知をいたしております。
  59. 並木正芳

    並木分科員 そういう葉物とかいうものは聞いておりますし、根菜類だとか葉菜類だとか、こういう表現は聞くのですけれども、葉っぱ物でしたというようなことで、現在それ以上明らかにはしていないわけですけれども、この辺ちょっと何となく、逆に疑惑を大きくするようなものかなという気もしております。  それで、これに関して、郵政大臣の方から農水省に対して、農家の方からテレビ朝日に真相をただすべく要請をするように指導すべきだ、これはテレビ報道にあったのですけれども、こういう申し入れがあったと聞きますけれども、これは事実でしょうか。そしてまた、農水省ではこれに対してどのような方針で臨まれるのか、その点についてお伺いします。
  60. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 今先生の御質問にございましたような形での申し入れ、つまり、農家からテレビ朝日に真相をただすべく要請をするよう指導すべきではないかというような形では、私ども申し入れを受けていないわけでございますが、二月一日の放送で、所沢産の野菜のダイオキシン濃度が高いというようなことがございまして、それを契機として、所沢等一部地域のホウレンソウ等の流通が混乱をしているという状況を踏まえまして、二月十日付で、テレビ朝日の報道局長に対しまして課長名で、いたずらに混乱を生じさせないような事実に基づく報道をするよう、そういう文書での申し入れを行っているところでございます。
  61. 中川昭一

    中川国務大臣 今の先生の御質問に正確に申し上げますと、郵政大臣から私に対して、私があの報道に対して強い抗議の記者会見をした後、きちっと謝罪すべきだとか訂正すべきだということを申し上げたと思うのですが、番組の訂正については直接の被害者もしくは直接の関係人がやるべきことであって、これはたしか放送法四条か何かに規定があるそうでありますけれども、私なり農林省が訂正をするような要請をすることはできない、あくまでも、できるのは直接の被害人あるいは直接の関係者であるというようなお話がありました。
  62. 並木正芳

    並木分科員 わかりました。そうすると、それをアナウンスしていくことによってそれなりに、やれとは言いにくいでしょうから、農家の当事者が判断していく、そういうことでよろしいということですね。  それで、こういった問題に触発されてということでは本来はないのでしょうけれども、九九年度には調査等々を進める予定にはなっていたと思うわけです。それを前倒しといいますか、大変早急に調査を実施していただく、そして来月中にはそのデータを公表されるというような運びになっているということも聞いております。  ところが、このデータというのが、安全基準というのは現状では大変不明確なわけであります。しかも、全国的な調査データというのは、今申し上げたとおり後から出てくる。比較するものがない中で、このデータだけがひとり出てくるということですけれども、このデータに対する国民の理解というのは、つまり安全基準というのが、環境庁にもこれは欧米等々の諸国の基準等を見て早急に決めてほしいというお願いもしたわけですけれども、農水省としては、その辺のデータ、これはひとり歩きしかねないところもあるわけですけれども、どういうふうに理解を求めていく方針なのでしょうか。
  63. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 今先生お話ございましたように、緊急に実態調査を行うということで、これは御承知のとおり、県ともよく調整をとりまして、一昨日既にサンプリングを始めておりまして、一部必要なものは手に入れております。  調査結果につきましては、年度内のできるだけ早い時期に取りまとめて公表するという予定にいたしておりますが、この三省庁で行います調査結果を受けて、十分評価をして、その上で必要な対応をしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。     〔植竹主査代理退席、主査着席〕
  64. 並木正芳

    並木分科員 三省庁協議していく中で必要ということで、非常にその点ではまだ方針がはっきりしないようなところもあるのですけれども、とりあえず調査についていただいたということです。ただ、こういう目に見えないような、一兆分の一グラムの云々というような世界の話ですから、大変怖がるというか、国民の不安が大きいものですから、その辺の取り扱いについて、ぜひしっかりとした見解を持って、安全基準なりをやはりそれなりに踏まえて発表をしていただければというふうに思います。  先ほどもお話ししたのですけれども、テレビ朝日の放送を見ても、大変、農業に対する理解が今進んでいないという面もあると思うのです。何か小学生では、ピーナッツは木になるとか、ひどい話ではニンジンとかもどこかの木になっているような、それは笑い話に近いのですけれども、そういう子供さえ出てきた。都会の中で、農林水産業とやや、現場と違う感覚が非常に大きくなってきていると思います。  先ほどもホウレンソウの育て方について述べたわけですけれども、野菜というのはどちらかというと早く育つわけですから、ダイオキシンに汚染されるメカニズム、何年にもわたって微量な量が降り積もっていって、水に溶けないということでたまっていく、そういうメカニズムからすれば、野菜というのは、本来、一番汚染されにくいとも言えるわけです。  ただ、こういう特徴の中で、ニンジンなんかも汚染されない。つまり深いところに根っこが入っていくわけで、地表を覆うようなダイオキシンには余り汚染されないということですけれども、例えばゴボウなんかでも、その根っこを食べているわけですけれども、ゴボウの葉っぱを調べて、葉っぱが汚染されているのでゴボウが汚染されるといった場合には、食べるゴボウが汚染されているという感覚になりかねないわけです。  お茶の葉なんかでも、御存じのとおり新しい芽をとって、一番目の芽が一番茶とかいって、二番目とか三番目と、新しいものを常にとってそれを飲用にしていくわけですけれども、もとの木というのはこれは十年も十五年も生えているということで、それをあえて、風向きとか工場の距離とかいろいろなものが影響すると思いますけれども、そういう特別な場所のを、古い、逆に言えば飲用にされない、長い間ほっておかれている葉、そういうようなものを汚染しているというように発表すれば、今度はお茶が汚染されていると。  こういうふうに、象のしっぽで象をはかるような議論が生まれかねないし、先ほどお話ししたように大変微細な量なので、目に見えればこれは、虫ならついているから落とせばいいということですけれども、何か最近の学者の話では、植物の気孔から吸い込まれることがあるなんて、これは学者の世界だと思います。表面に気孔はないわけですから、葉の裏側に気孔というのはほとんどあって、それは実験的にはそういうこともあろうかと思いますけれども、今言った象のしっぽで全部をはかるような、そういうことになりかねないので、その辺についてはきちっと、農産物の育成の実態というか、そういうものも踏まえてこういうデータも発表していただきたいなというふうに思っているわけです。  こうした農業とか農産物への理解を国民に求めていくべきと考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  65. 中川昭一

    中川国務大臣 一般論として、特に農山漁村地帯以外の地域に住んでいる子供たち、特に子供たちの、今先生が例に挙げられたようなことを私も時々聞いて愕然といたしますが、それはある意味では現在の彼らの暮らしの中では仕方がない部分もあるわけであります。  しかし、それを放置するわけにはいきませんので、我々といたしましても、文部省等々と協力をしながら、農業の大切さあるいはまた農業実態を知り、また体験をするということについて、積極的にこれから対応していかなければならないというふうに考えております。
  66. 並木正芳

    並木分科員 大臣の前向きな御発言ですけれども、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  報道の問題なんですけれども、先ほどお話しのとおり、この報道をきっかけにいろいろ大問題になっているわけですけれども、その際に大臣が、農家が補償というようなことを口にされた方もいる、それについては原因者負担じゃないかというようなお話をされたと伺っております。  もちろん先ほども出ました、風評被害に対して当事者が訴えていくというのが法の立場だと、非常にリーガルなお話なんだと思いますけれども。一般的に、こういう総量的な汚染とか複合汚染とか、要するに一つの焼却施設では全部それが原因じゃなくて、極端に言えば、我々がたき火をしたり小さな炉で燃やしたり、こういうものも合わさって複合汚染、今回の場合は集中的に施設があるというところでの汚染という問題にはなっているわけですけれども、これも集中して何カ所もが出しているわけですね。リーガルな世界でも、例えばみんなで殴ってだれかが亡くなってしまったということだと、だれが殺人者なのかわからぬというようなたぐいの、例としてはよくないかもしれませんけれども、話でもあるんですけれども、そういう中で、大臣は原因者はだれだというふうにお考えなのでしょうか。
  67. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、だれが被害者かということになりますと、第一義的には、いわゆる葉っぱ物をつくっている、野菜類をつくっている農業者である。地域はどこかというと、所沢を初めとする近隣の狭山とか入間とか幾つかの市町だと思います。  そして、被害は何かというと、自分の丹精込めてつくられた野菜の値段が暴落をしてしまった、あるいはまた農家のプライドあるいはやる気が大変に影響を受けた。さらには、お聞きするところによると、お子さんが学校でいろいろなことを言われているというようなこともきのうの委員会でもお聞きいたしました。  そういう被害が今回直接的に発生した原因は何かといえば、二月一日、二月九日のテレビ朝日のニュースステーションの報道ぶりだと考えております。
  68. 並木正芳

    並木分科員 わかりました。そういう意味での原因者ということですね。  先ほど私が述べたいろいろな施設の複合的あるいは総量的汚染だということはもちろん御存じで、そういうことになると、どの施設を訴えるとか全部訴えるという壮大な、日本じゅうで問題が起き上がるようなことになるわけですけれども、今回の風評被害についてということでそれはそれで理解しました。私も、そういう意味では農水省というのはむしろ被害者側の方かなということもありますけれども。  そういった意味では、農水省が加害者、原因者でないということですから、補償しろと言われても農水省から補償は非常に難しいということかと思いますけれども、例えば価格安定制度とかいう、これは加盟して保険みたいなものなので、ちょっと例として出させていただいたわけですけれども、加盟していない人にどうするかなんということもあると思いますけれどもね。こういうような、いわゆる価格差が生じた、それに対しての一種の補てんをしてあげるとか、あるいは先ほどお話ししたようなトンネル、ビニールで覆いを被覆する、そういうようなものに援助をするとか、あるいは洗浄機を買ったりとか、いろいろ農業運転資金もあろうと思いますけれども、そういうものに援助をしていくというふうな形で、先ほどお話ししたように実害が出ているわけなので、その辺の方策は考えられないかどうか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
  69. 中川昭一

    中川国務大臣 本当に、事実に基づかない報道によって大変な損害をこうむられた。それについての補てんについては、私は率直に言って、お気持ちはよくわかるわけでありますけれども、行政の立場またルールといたしましては、その損害の原因者が、今回のことに関して言えば先ほど私が申し上げたとおりの認識を持っておりますので、その補てんということになれば、残念ながら国あるいは農林省が補てんをするということはできないというのが、つらいことでありますけれども実情として御理解をいただきたいと思います。  ただ、支援措置といたしましては、施設に対するいろいろな補助あるいはまた経営の安定に必要な資金の融通、あるいはまた関係金融機関に対しましても、既に農林省から柔軟に対応されるように依頼をしておりますし、またチェーンストア協会等に対しましても、現時点でのデータでは安全であることは御承知のとおりですから、ぜひ冷静な対応をしていただきたいということを文書でお願いしたり、またテレビ朝日に対しても、きちっとした対応をとるべきであるという申し入れもしておるわけでございます。  県の方でもいろいろ対策をとられておるようでありますが、国としてもでき得る限りの御支援のための対策をとっていきたいというふうに考えております。
  70. 並木正芳

    並木分科員 先ほどのデータも二月十日現在ということですので、まだ、今後被害がどうおさまっていくか、また実質的には野菜価格も変動する、そういう中での被害確定というのも難しい面もあろうかと思いますけれども、非常に大ざっぱに言えば、暴落したり野菜を受け取ってくれなかったり、被害が出ていることは確実でありますので、今の大臣のお言葉では支援策は考えているということなので、今後いろいろな情勢を検討しながらぜひ積極的な措置を期待しております。  その中で、今回のいわゆる焼却施設からの汚染とは違うのですけれども、先ほど冒頭でお話ししたとおり、肥料あるいは殺虫剤からの汚染も考えられる。この辺についての有害物質の調査、これは当然行っていくべきであり、行う体制になっていると思いますけれども、その辺。  さらに、両方合わさってということだと思いますけれども、きのう環境庁に、公園や校庭、こういうものの土壌のいわゆる汚染についての基準というかそういうものについてもお聞きしたのですけれども、農地について、これは環境庁の方になるのでしょうか、農地については今後どういうふうに考えていくのか。  その辺、あわせてお答えいただければと思います。
  71. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の、農地自体のダイオキシン汚染というのはどういった原因で云々ということでございますけれども、これは現在、全国でまず調査を平成十年度に行っております。それは農地と農作物両方やっております。それで、その場合の農地のダイオキシンの汚染を調べますと、それが燃焼系であるかあるいは非燃焼系であるか、その辺についてはわかると思います。これは所沢においても農用地濃度を調べますので、そういう結果は出てまいると思います。  次に、では農用地についてどういった形で、先生はガイドラインとか何かをという御提案ということでございますね。  その点につきましては、先生先ほど御指摘になりましたように、一般にダイオキシン類というのは水に溶けにくく、土壌中のダイオキシン類が植物に吸収されることはほとんどないとされております。これに対しまして、植物中から検出される微量のダイオキシン類は大気中のダイオキシン類によるものではないかとの研究報告がございます。  いずれにしても、我が国におきましては、農用地及び農作物の測定例が非常に少なく、汚染の実態に関する知見あるいはデータ上の制約があるのが現状です。このため、現在、今申し上げましたように全国調査及び所沢でも調査をするということでございます。  そういったものを踏まえまして、今後農用地のガイドラインの検討に当たりましては、農作物と土壌との関係、どういうふうな移行過程にあるか等々、そういう知見の解明をしなければいかぬ、そういう現段階にあるということを御理解いただきたいと思います。
  72. 並木正芳

    並木分科員 現段階はそれなりには承知しておりますけれども、ぜひ今後とも積極的な研究調査をお願いしたいと思います。  時間が余りなくなったのですけれども、今回は野菜ということでしたけれども、畜産等への影響、あるいは魚介物への影響、こういうものが考えられます。龍ヶ崎市周辺でもいろいろ問題が起きていまして、中には、畜産物、豚ですか、何かちょっと変な現象が出たとかいううわさ、仄聞をしているわけなのです。この辺をきちっと農水省でも掌握されて、これが即ダイオキシンということではないと思いますけれども、ただ、そういう現象が出ているものを検討し、今後、畜産とか魚介物への影響調査、これについてはどのように取り組まれているか。  大臣に最後にお聞きするということで、いわゆる食糧安全対策本部という感じの連絡会議を今回もつくったわけなのですけれども、そういう中で陣頭指揮に当たられる、これはもう先ほど冒頭に、その決意のほども、大変積極的な考えをお持ちだということもお聞きしました。  最後に、時間が余りございませんので、今の畜産物あるいは魚介類、そして一部分での畜産に対する影響のデータというか、そういうものがあるのかどうか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
  73. 本田浩次

    ○本田政府委員 ダイオキシンの畜産への影響の調査の件でございますけれども、私どもとしては、まず、平成十年度に全国の牛乳の調査を実施いたしまして、昨年の十月に公表したところでございます。  この結果につきましては、厚生省が毎年実施しております調査結果、平成九年度の調査結果でございますけれども、この結果とほぼ同じ値でございまして、特段の食品衛生上の問題はないと考えているところでございます。  また、牛乳以外の、食肉、飼料などにつきましては、現在、全国的な調査を実施しているところでございまして、調査結果がまとまり次第公表することとしております。  それから、龍ヶ崎市周辺の問題でございますけれども、豚などの家畜に異常があった場合には、農家が家畜保健衛生所にその旨を届け出ることとなっているところでございますが、現在、龍ヶ崎市周辺地域において、異常があったとの届け出が家畜保険衛生所に行われたという報告は受けておりません。それからまた、茨城県を通じまして確認をしていただいているところでございますけれども、そのような事実は確認をされていないという報告を受けております。  いずれにいたしましても、今後とも情報収集に努めますとともに、家畜に異常があった場合には、原因究明などに適切な対応を行っていきたいと考えております。
  74. 中須勇雄

    中須政府委員 魚介類の関係でございますが、農林水産省では、従来からダイオキシン類等の魚介類中での蓄積状況について調査を行ってきております。昨年十月には、それらの結果を取りまとめて公表をいたしました。  引き続き、この問題については、魚介類中のダイオキシン類等の蓄積状況についての実態把握を行うと同時に、今年度からは、新たに魚介類への蓄積のメカニズム解明のための調査も開始をしているところであります。  なお、昨年十月の公表におきましては、数値的には厚生省が発表しているのとほぼ同レベルということでございまして、魚介類を含む食品からのダイオキシン類等の摂取量が健康に影響を及ぼすことはないというふうに考えておる次第でございます。
  75. 伊藤公介

    伊藤主査 中川農林水産大臣、時間が来ていますので、どうぞ手短にお願いいたします。
  76. 中川昭一

    中川国務大臣 農林省はもとより、安全な食糧を安定的に国民に供給するという責務があるわけであります。  今回の、異常な報道によりまして大きな影響を与えましたダイオキシンの問題につきましては、特に問題連絡会議を設置いたしまして、実態調査をしているところであります。関係省庁、あるいは自治体ともよく対応をとりながら、できるだけ早い実態の解明、そして公表に努めたいと考えております。
  77. 並木正芳

    並木分科員 ありがとうございました。時間でございますので。
  78. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて並木正芳君の質疑は終了いたしました。  次に、菅原喜重郎君。
  79. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 分科会ですので、地元からの要望を中心に質問させていただきたいと思います。  まず最初に、つくり育てる漁業推進についてですが、今回、持続的養殖生産確保法案が提出されることになっているわけでございますが、栽培漁業の一層の展開を図るため、国及び都道府県の栽培漁業センターの施設整備はやはり不可欠だと考えております。種苗生産、放流等にかかわる技術開発について、平成十一年度予算ではどのように配慮されているのか伺います。  また、養殖業の振興を図る立場から、養殖漁業環境の保全、養殖工程における品質管理の徹底、食品として安全な養殖魚を生産する、人と環境に優しい養殖技術の確立、内水面活性化総合対策事業の継続、資源管理漁業推進総合対策事業の継続等は、予算的にどのように配慮されているか。  まず、二点をお伺いいたします。
  80. 中須勇雄

    中須政府委員 初めに、栽培漁業の問題でございますが、これについては、御承知のとおり、基礎的な技術開発を国が担当し、種苗の量産及び応用的な技術開発を都道府県がそれぞれ行う、そういう分担関係のもとに、施設整備あるいは技術開発ということを推進してきているわけでございます。  平成十一年度につきましても、引き続き、国及び都道府県の栽培漁業センターの施設整備、効率的な種苗の生産、放流に関する技術の開発、あるいは地元漁協が実施する栽培漁業推進に係る必要な経費についての予算、そういうものを予算案に計上してお願いをしているところでございます。  特に、三陸の沿岸地域におきましては、国営栽培漁業センターの宮古事業場における施設整備、あるいはニシン、クロソイ等の栽培漁業関連技術の開発、こういうことに取り組んでおりますし、岩手県が実施するヒラメ、アワビ等沿岸域の重要種に関する放流技術の開発、地元漁協によるヒラメ類、アワビの栽培漁業実施に要する経費に対する助成、こういうことを実施したいということで予算案に計上をお願いしているところでございます。  次に、養殖業関係、特に養殖漁場の環境の保全ということに関しましては、先生からただいま御指摘ありましたように新しい法制度を準備いたしまして、持続的な養殖生産というものを確保していこう、やはり漁場に見合った規模での養殖を持続的な形で推進をする、こういうことで取り組んでまいりたいというふうに十一年度は考えているわけでございます。このための基準の策定だとか、そういうような必要な経費についても予算案に計上をお願いしているところでございます。  また、養殖生産物の安全性の確保ということについては大変国民の関心も強いということでございますので、十一年度では、特に養殖工程でのいわばHACCP方式を導入する、そういうことによって安全な養殖水産物をつくっていく、そういう意味での品質管理マニュアルの策定だとか、そういうことに新しく取り組みたいというふうに考えております。  内水面漁業につきましては、引き続き、内水面活性化総合対策ということを進める予算の計上をお願いしておりますし、資源管理漁業についても、海域を拡充して推進をしていくということで、必要な経費についてお願いを申し上げているところでございます。
  81. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 個別な予算の問題につきましてはまたいろいろ折衝をさせていただきますが、漁業生産基盤及び漁村生活環境の整備も大切でありまして、とりわけ、水産業のみならず、農業、林業にも共通する若年労働力、担い手の確保、高年齢者が働きやすく生活しやすい漁港漁村づくりは極めて重要問題でありますが、そのためには、第九次漁港整備長期計画、第四次沿岸漁場整備開発計画及び第六次海岸事業七カ年計画に基づく漁業基盤、漁村生活環境及び海岸保全施設整備を的確かつ積極的に推進すべきであると思います。  そこで、平成十一年度予算案では、この点についてどのようになっているのか、また何か特色ある配慮がなされているのかどうかお伺いいたします。
  82. 中須勇雄

    中須政府委員 平成十一年度予算案におきましては、特に水産物の安定供給あるいは漁村地域活性化を図るという観点から、例えば、つくり育てる漁業資源管理漁業を一層推進していく、あるいは産地市場の統合に取り組む、あるいは水産物の流通の効率化等漁業面での水産業に関する重要な課題がいろいろあるわけでございますが、こういった課題について、地方公共団体が漁協などと共同して一定の計画をつくっていただく、そういう計画に即して、漁港漁村事業、沿岸漁場整備開発事業あるいは海岸事業、こういった事業連携強化して一体的に整備をしていく、こういうプロジェクト型で各種の公共事業あるいは非公共事業を組み合わせてやっていく、そういうことを新しい仕組みとして導入することを考えているというのが第一点目でございます。  それから二点目は、これは従来からの考え方でございますが、やはり漁村地域活性化、立ちおくれた漁村の生活環境の改善を図ることが重要だということで、引き続き、漁業集落排水施設整備等、こういった生活関連事業に一層の投資の重点化を図るということを考えております。  さらに、新しい試みとして、先生お話ございました、女性だとか高齢者にとって、海の、あるいは漁港における作業は大変厳しいものがございます。こういうものが容易になるように、漁村に近接した漁場の造成を図る、あるいは浮き桟橋等の整備によって漁港施設のバリアフリー化等に取り組む、こういった事業を経済発展基盤特別枠を活用して推進する、こういうような取り組みを新たに実施をしたいというふうに考えておるわけでございます。  今後とも、こういった事業の着実な実施を図りまして、生産基盤あるいは生活環境整備ということに引き続き努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  83. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 活力ある漁業、漁村づくりに対しましては、何といいましても、漁村社会活性化のために、増養殖場の造成とか水産物荷さばき施設等の整備とか漁村環境の改善等を総合的に行う沿岸漁業活性化構造改善事業は当然のことではございますが、今後ともそういう意味で積極的に推進していただきたい。さらに、その結果として、農業、林業、水産業の連携による美しい村づくり、漁業と遊漁、海岸性レクリエーションとの調和のとれた海面利用、そして漁業経営の安定、漁業就業者の確保、育成へと結びついていくものだと考えております。  そこで、一つ具体的例題としてお伺いしますが、中央省庁再編の中で、組織、人員の削減とあわせ、独立行政法人の検討対象として、地元であります宮古海員学校が俎上に上っているようでありますが、資源が乏しく、また地理的に周囲を大海に囲まれた我が国にあっては、経済活動を貿易に依存するところ大であり、海運の占める役割ははかり知れないものがあります。この海運を担う船員を育成するには、多大の費用と長い教育期間、多数の専門家が必要とされており、民間企業としては成り立たないのではないかと疑問を感じております。  漁業、船員の担い手不足の深刻化の中で、果たしてこのような国立海員学校の独立行政法人化が有効な措置という結論に至るとすれば、運輸省として整合性ある根拠をお示ししていただきたい。また農水省としては、担い手確保という観点からどう判断されているか、双方にお伺いいたします。
  84. 井上善夫

    ○井上説明員 海員学校につきましては、一昨年の十二月の行政改革会議最終報告では民営化にグループ分けされたところでございますが、その後、先生初め関係する皆様方の御理解をいただきまして、本年一月二十六日の中央省庁等改革推進本部が決定いたしました中央省庁等改革に係る大綱におきましては、海員学校は独立行政法人化されることとなりました。島国であります我が国にとりまして、海運は、安全かつ安定的な物資の輸送の確保のために極めて重要な役割を担っておるところでございます。  海員学校におきましては、内航海運の船舶職員を育成することによりまして、我が国にとってのライフラインであります海運を支える良質の日本人船員を確保する業務を行っております。我が国の国民生活及び社会経済の安定のために必要不可欠でありまして、優秀な日本人船員の養成、教育は国の責務であると考えております。  このような海員学校の教育の質の低下は、日本人船員の質の低下や事故の多発に直結するおそれがありますので、独立行政法人化されました後におきましてもこの重要性は何ら変わるものではないことから、運輸省といたしましては、教育の質を維持してまいるよう引き続き努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  85. 中須勇雄

    中須政府委員 先生指摘ございましたとおり、我が国漁業をめぐる環境がいろいろ厳しさを増している中で、漁業就業者についても、その減少あるいは高齢化ということが進んでおります。今後、将来を考えますと、新しい後継者の確保ということは大変重要な課題だというふうに私どもも認識をしております。  お話のございました海員学校の独立行政法人化につきましては、農林水産省として直接御意見を申し上げる立場にはございませんが、私どもとしては、今後とも引き続き、漁業の担い手確保のために、いろいろ各種の補助事業を含めて事業実施しておりますが、その充実に取り組み、担い手確保のために努力をしていきたいというふうに考えております。
  86. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 何しろ日本現状は、かつての海運国日本という面影を薄くしてきている現状でございます。しかし、やはりこういう教育は大切でございますので、ひとつ運輸省、農林省ともに、この学校をつぶすことのないよう、むしろ質のいい発展ができるように大いにサポートしていっていただきたいことをお願いいたしまして、次に、林業についてお伺いいたします。  御承知のように、我が国は森林に取り囲まれている、そういう国土情勢でございますが、最近の木材自給率の低下、木材価格の低迷、林業経営費の増嵩に加えて、林業労働力の減少、高齢化によって未曾有の危機に直面しております。  一方、近年、森林の有する国土保全、水資源の涵養等の公益的機能の発揮に加え、地球温暖化防止のために課せられた森林、木材の役割に対する国民的期待もとみに高まっているわけでございます。  さきの国会で、国有林野事業特別会計の三兆八千億円に及ぶ累積赤字の解消策が講じられましたが、国有林野事業改革関連二法によって二兆八千億円は一般会計に継承させたわけです。その一兆円は今後の五十年間の経営努力によって解消されるという計画になったわけですが、現時点での森林・林業が抱えている木材価格の低迷など諸状況から考えますと、私は、このままでは、早晩、計画変更を迫られるのではないかと懸念している一人であります。  一兆円の債務については、今度の国有林改善特別措置法第十七条で、実施状況を国会へ報告することになっているわけですけれども、今回のように三兆八千億円という膨大な事態になってからこれをどうするかということのないようにすべきであると考えております。  そこで、林野庁としては、本当にこの一兆円、計画どおりに返済できていけるのかどうか。私はむしろ、この森林の果たす役割から考えますと、やはり国民の生命財産を守るためにも、残った一兆円の解消のためには、広く国民に訴えて、平和的国防費といいますか国土保全費といいますか、環境保全あるいは健康保持、そういうような意味から位置づけて検討していただいてもいいのじゃないかと思うわけでございます。  このことについて、ひとつ林野庁の方から御答弁をお願いいたします。
  87. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生指摘の一兆円が五十年で返済できるかという点でございますけれども、私ども、国有林野事業の今後五十年間の長期収支の試算を提出させていただいておりまして、この内容は、まず木材収入の点でございますけれども、収穫量につきましては、現在の国有林の資源状況から、短期的には減少いたしますが、長期的には増加すると見込まれるところでございます。  また価格でございますが、これはオイルショック後、約二十五年間、横ばいに推移いたしておりまして、私ども、これも、今後とも五十年間横ばいで推移すると見込んでおります。  それから、土地等の売り払いの収入でございますけれども、これは、これまでの売り払いの実績相当下回った見通しを立てさせていただいておりまして、全体として収入の見通しというのは手がたいものになっていると思っております。  また、この一兆円の債務については、その債務増加を防止するために、利子につきまして一般会計からの繰り入れを行っていただくことにいたしておりまして、今後五十年間でこの一兆円は確実に返済できるものと考えております。  ただ、先生指摘のように、最近、木材価格の低迷等大変著しいものがございますが、また最近では、景気対策の一環としての住宅の建設促進対策が功を奏していると思われますが、住宅着工戸数の増加傾向が見られること等によりまして、木材価格もやや上昇の傾向を見せておりますし、私どもとしては、今後、今回の改革法の趣旨にのっとりながら、また自助努力ということで木材等の販売方法の改善、さらに経費の節減、また効率的な事業運営の実施等に努めて、国民あるいは地域住民に期待されるきちんとした国有林の管理運営を行ってまいりたいと思っております。  それから、国民の健康維持や国土保全等を重視すべきだという御指摘でございます。  これも大変重要な点でございまして、私ども、そういった観点から、木材生産を目的とした国有林をこれまでの五割から二割に減少させて、八割は国土保全、水源涵養、また国民の保健休養の場等に広く活用していただける国有林として今後育ててまいりたいと考えております。
  88. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 いや、国土保全、水源涵養という立場からいたしますと、今の林野庁の施業方式を変えて、やはり間伐、除伐を本当に今実施していかなければいかぬと私は思っているわけです。むしろ四齢級以下の木はもうほとんど除伐にし、それを肥料にするんだという考えで実施していかないと、もう山は、植林の針葉樹林はブッシュ化しておりますから、枝打ちだなんという費用があったら、間伐、除伐に回す。そういう意味で、ぜひこういう方向に今の施業技術を転換させていっていただきたい。  このことについても、ともにあわせて、いわゆるこの一兆円の解消の問題と除伐、間伐費の増額問題に対しましては、これは大蔵省としても林野庁と協力して適正に対処していっていただくよう、山を守る意味で強く要望しておきます。  次に、地元自治体から、木の研修交流、学校施設への木材利用の促進を図るべきだという要望が強いわけですが、学校施設への木材利用、森林空間を利用した児童の交流自然体験型学習授業などについて、文部省としてはどのような措置を講じようとされているのか。私の地元の方からの要望では、自然塾の設置等いろいろな構想で要望書も参っているわけでございますので、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  89. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 まず、公立学校施設への木材の利用の点につきましてお答えをさせていただきます。  文部省といたしましても、積極的に学校施設に木材を使用するようという観点から、都道府県教育委員会を通じましてとりわけ市町村にお願いをしているところでございます。これを促進するために、文部省といたしましても、昭和六十一年に、それまで鉄筋コンクリートづくりと差がございました補助単価を同じように引き上げると同時に、補助基準面積につきましても、逐次、鉄筋コンクリート造と差のないような改善を図ってきたところでございます。  御指摘にございました学校の施設の中に、とりわけ内装等に木材を使用いたしまして、宿泊施設や和室あるいは研修室等を整備する木の研修交流施設整備事業につきましては、昭和六十一年度から各市町村のニーズに応じてさまざまな施設を木材で補助できるような補助制度を設けておりまして、来年度の平成十一年度予算案におきましても、今年度の補正事業で始めました心の教室の整備、さらには読書スペースの整備などメニューの多様化を図っているところでございます。  また、その後、とりわけ学校の普通教室等の内装の床フローリング等につきましては、平成九年度の実績で見ましても、九六%が木質フローリングを使うというふうな形で着実に推進してきているものと考えているところでございます。
  90. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 この自然塾、体験塾のような、村づくりの一環としてもなしている自治体の要望についてもよろしく検討していっていただくよう、文部省に要求しておきます。  次に、松くい虫の予防対策についてですが、これは私は長いこといつも主張しているんですが、今の松くい虫防除は殺虫剤を散布することで一応対応しているわけですが、いわゆる天敵の研究開発ができないものか。あるいは、土壌、土質の活性化、いわゆる肥料で土質の機能を高める、そういうことで木に活性化を与えて松くい虫を防除する。いろいろな対策があるのではないかと考えるわけなんですが、このことについてどのように今対策をしておりますか。土壌改良の面についても、森林総合研究所などで試験的なことをやっている例はないのか、お伺いいたします。
  91. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生指摘のように、松くい虫の防除対策として、土壌改良やあるいは天敵利用といったような技術開発も大変重要でございまして、私どもも、森林総研あるいは大学等においてこういった研究に取り組んでいただいております。  まず、土壌改良でございますけれども、これは大学等においてこれまで行われてきて、現在も行われておりますが、まだ残念ながら成功したという事例はございません。  それから、天敵利用でございます。これも、例えば鳥類の利用として、アカゲラがマツノマダラカミキリ幼虫を捕食する天敵鳥類であるということを明らかにいたしまして、アカゲラを松林へ誘導する巣箱とか繁殖用の丸太の開発等々、これも過去これまで行って、一応の成果は上がっております。それから、昆虫とか微生物の利用等々もございますが、いろいろな研究成果が出ておりますので、これをどの程度現場で実用化できるかということが一つの課題でございますけれども、まだそれほどこの天敵も幅広く利用されているというようには承知いたしておりません。  それから、今取り組んでおります研究開発といたしまして、病気を起こす力が弱いマツノザイセンチュウを松に事前に接種することにより松の抵抗力を高める開発等にも取り組んでおりまして、今後とも、こういった研究を森林総研や大学等にお願いしながら取り組んで、これは現場で実用していただくことが重要でございますので、成果についてはできるだけ現場への普及を図ってまいりたいと考えております。
  92. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 いずれにしても、殺虫剤散布では益虫までも殺してしまうし、周囲の環境も汚染するわけですから、そういう天敵関係や何かの研究に、あるいはこれの耐性のある松の木の樹種の開発ということに力を注いでいっていただきたいなと思います。  それでは最後に、農業共済事業についてですが、集中豪雨や台風等による被害からの救済措置が的確に確保されることが重要だと考えておりますが、この農業共済事業の円滑な運営と拡充強化のため、平成十一年度の予算規模はどの程度か、これにさらに上積みする余地はどうなのか、あるのかないかをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  93. 伊藤公介

    伊藤主査 時間が経過していますので、簡略に答弁をお願いします。
  94. 竹中美晴

    竹中(美)政府委員 農業共済事業予算でございますが、平成十一年度の予算案につきましては、千三百八十一億七千万円を計上しているところでございます。  その内容につきましては、共済掛金の国庫負担につきましては、最近の引受実績等を踏まえまして、七百九十八億五百万円を計上いたしておりますし、共済事業の事務費負担金につきましては、前年度と同額の五百四十一億円を計上いたしております。  また、農業共済団体が、地域実情に即しまして、農業者のニーズに適応した事業の展開を図るための農業共済地域対応強化総合対策費補助金としまして、五億五千八百万円を計上しているところでございます。  こうした形で、厳しい財政事情のもとではございますが、必要な予算は確保されておるというふうに考えておりまして、これによりまして共済事業の円滑な運営に努めていきたいと考えております。
  95. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  96. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて菅原喜重郎君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺周君。
  97. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 民主党の渡辺でございます。午前中最後ということで、大変寂しい状況の中で質問をさせていただくわけでございます。きょうは、外務省の方も来ていただいておりますね。  まず最初に、質問に入ります前にぜひお尋ねをしたいと思いますが、二十一世紀に向けてのODA改革懇談会の報告書というのが、一年ほど前、昨年の一月に出されました。ざっと読ませていただきまして、書いてあること、本当にそのとおりだなというふうに思っているわけでございます。  冒頭にまずお尋ねをしたいわけでございますけれども、ODAについては、私が今さらここで申すまでもなく、やはりこうした厳しい経済情勢の中で、国民の理解、納税者の理解を得ることが何より大切であろう。もちろん、この援助という言葉、これは決して日本国内のものだけではなくて、やはり日本としての国の責任、アジアあるいはアフリカでありますとか、一つには民生の安定あるいは世界的な環境の破壊の阻止、あるいは日本をめぐる、ある意味では世界的な安全保障、この一環として、もっと言えば、日本の果たす役割というのはひいては日本のためである。これは、資源のない我が国、あるいは食糧を輸入に依存せざるを得ない我が国の今の現状を考えますと、とにかくこういう形で進めていくことが大事だということは、大前提として私もよくよく承知をしております。  ただ、ここにおいて出てくるのは、今の経済状況の中で、誤解を招かずに申し上げますと、こういう経済危機の折には、どうしても一種のナショナリズムとでもいいましょうか、とにかく、人の国を救うだけの余裕があるんだったらおれのところを何とかしろという中で、ODA自体に対する見方というものも大変厳しくなっているのも事実でございます。  このODAの改革、改革というからにはそれなりの思い入れを皆さん持っていらっしゃって、変えていかなければならない、従来型ではもういけない、これは世界的な状況が随分変遷を遂げてきている、そんな中で出されたわけでありますけれども、この中における一つの情報公開という点について、これからのあり方についての現在の御認識というものについて、まずはお尋ねをしたいと思います。
  98. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 ただいま先生が御指摘になられましたように、ODAの重要性というものはまさに先生がおっしゃったとおりでありまして、我が国の外交、安全保障、すべてとりましても、このODAの果たす役割というのはまことに御指摘のとおりだと思います。  他方、今先生が御指摘になられました、大変厳しい経済状況の中でどうしていくんだというお問いかけがございました。私ども、そこは十分承知しておりますので、こういった厳しい経済状況と、それからODAの持つ重要性をバランスさせていくという努力を一貫してやっていきたいというふうに思っております。例えば環境を重視する、それからより貧しい人への援助といった、そういった重点のシフトも含めまして、さまざまな努力をしていきたいというふうに思います。  それから、先生がおっしゃいました情報の公開、これはもう当然のことでございますので、私ども、極力そういうことで努力させていただきたいと思います。
  99. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 情報公開というのは、今はこうしたインターネットのようなツールがあるわけでございまして、ある意味では、関心のある方が知る権利というようなことを考えて、あくまでもこれは納税者の負担によって行われていることなんだといったようなことを考えますと、これからのODAを見る目というものは大変厳しくなってくるだろうと思います。  そうした中で、実は、今申し上げていることは、先般申し上げた要旨にはございませんけれども、「国民参加」という言葉がこの報告書の中にございます。そこの「基本認識」と書かれている中に、「ODAは民間企業、地方自治体、NGO更には職場や家庭をも含むできるだけ幅広い層との協力、参加そして理解を得て、実施されるべきである。そのためには、情報公開と開発教育の促進が不可欠である。」ということが昨年の報告書の中にございます。  ちょっと私の身近な例を一つだけ挙げさせていただきますと、私は静岡県の沼津というところにおりますけれども、ここにいる青年会議所のOBの方々と現役のメンバーとで、有志でございますけれども、全くの任意団体をつくりました。  例えば、昔は学校の中によく英文タイプ部というのがあったのですけれども、今、英文のタイプライターというのは、もうほとんど学校の中では使われなくなってきた。そんな中で、学校に眠っているものを集めて、それをフィリピンのセブ島に送ろう。これは、たまたまそのセブ島の方と日本の私どもの沼津の方が親交がございまして、例えば、そこで何かタイプライターを打てるようなことを授業の中で取り組んでもらえれば、将来の職業を得るときにも一つの武器になるのじゃないだろうかということで、実は、近隣の高等学校ですとか、あるいは県内も駆けめぐりまして、トラック何台分も積んでくる、それをフィリピンのセブ島へ持っていく、当然、全部自腹を切ってやるわけであります。  いい運動だからと、地元のマスコミ等にも随分協力をしていただいて呼びかけをしてもらったのですけれども、意外とあちこちに眠っているのですね。この眠っているものを、当然これはトラックを用意して、県内を駆けめぐって、メンバーが時間を見て集めてきまして、それを沼津のある運送屋さんに保管をしておいて、それを横浜港まで持っていって船便で送る。こういうことをやっていますと、運動としてはとてもいいのだけれども、費用の負担ということになると、これはなかなか大変でございます。  この例を出すだけでなく、全国的にもいろいろな運動をしている方がいます。私はかつて読売新聞の記者をしておりましたときに、東京の多摩におりましたが、そのときに、例えばアフリカに靴を送りたい、子供がはだしで歩いているその姿を見てショックを受けて、破傷風になっている子供を救うために皆さんの要らない靴を提供してもらえませんかと呼びかけた方を取材したこともございます。  あるいは、都立の東大和高校の野球部のOBの方は、青年海外協力隊で外国に行ったときに、子供たちに野球を教えたい。そして、グローブだとかバットだとかボールだとか、もう使い古しのものでいいからぜひ集めてほしい。呼びかけますと大変な量が集まるのですけれども、これはなかなか保管することもできない。中には、靴を欲しいと言った方なんか、悲鳴を上げてしまいまして、家じゅうが靴だらけになってしまいました。どこで知ったのか、北海道や九州からも送ってきた。それも、ひどいものは、穴のあいたものから、片っ方ないものからみんな送ってきまして、本当に、ある意味では問題だなと思ったのは、まるでごみのような扱いのものまで送ってきた。しかし、その方々も、自分で仕分けをして、こん包をして、捨てるべきものは焼却をして、何とかアフリカのどこかの国へ持っていったわけですね。  ただ、やはり問題になってくるのは、善意はとてもいい。もちろん全部が全部というわけじゃないのですが、こういう意識が今大変高まってきているわけでありますから、こういう方々に対しての何らかの支援といいましょうか、自治体を通じてでも、あるいは何らかの基金みたいなものを使って、何らかの形で少しバックアップをしてあげられるような制度というものはできないか。ある意味ではそうした住民の参加、家庭や地域あるいは学校を通しても、もっともっと積極的にやっていくべきだろうかと思うわけですけれども。  ちょっと長くなりましたが、その辺についての御見解をもしお持ちでございましたら、ぜひお答えをいただきたいと思っております。
  100. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 ただいま先生から大変貴重なお話を承りました。  私は、日本の国民というのは、そういう大変温かい気持ちを持っている国民だと思います。たまたまODAの仕組みがそういうものになかなか追いついてこなかったという実態は、確かに、私ども率直に反省する必要がございますけれども、最近、NGO支援というので、随分政府も努力いたしまして、NGO支援分のODAをふやしつつございますので、そういった中できちっと対応していきたいというふうに思います。  また、これからもいろいろ御指摘、御指導をいただきながらやっていきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
  101. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 国内はもちろんなんですけれども、例えば在外公館、大使館の方々、あるいは地域に住んでいる、日本連携をとりながらやっている、そうしたNGOの方々とぜひとも情報交換をしていただいて、今までのやり方を徐々に変えて、やはり国民を挙げていろいろな形でやっていくべきだろう。  そして、やはり何よりも意識というもの、先ほど、大変温かい国だというふうにありました。確かに、物が豊富にある、行き渡っている中で、しかし世の中はそういう方ばかりじゃないんだ、特に若い方々の中にはそういう意見があるわけです。そういう思いが強いわけですから、できるだけ、日本という国は何ていい国なんだ、優しい国なんだと思っていただけるような質の転換というものはこれから本当に考えていかなければならないなというふうに思っております。  そこで、質問をちょっと変えますけれども、これは先般の新聞紙上でございました。農林水産省がインドネシアに対して行った緊急の支援米がインドネシアの倉庫で眠ったままになっていたといったような報道がございました。決して報道をすべて肯定する、私も報道機関にいたと言いながらそういうことを言っちゃいけないのですけれども、こういうふうな大きな見出しで出ておりました。緊急支援米は眠ったままである。日本政府が昨夏以降インドネシアに送った総量五十万トンに上る緊急支援米の大半が、四カ月以上たった今も放出されない、インドネシアの倉庫に眠っているといったようなことが報道されました。  先ほど最初に一つ申し上げたODAに対する不信感というものは、こういうことが出てきますと、どうも何か目の届かないところでいいかげんにやっているんじゃないか。しかも、情報公開という意味では、相手国のあることだから、なかなかすべての情報を知り得ることができない。こういうふうなスクープといいますか報道が時々されますと、そこで必ず一種の不信感を生むわけであります。  こういうことがありますと国民の理解というものはなかなか、非常に得られにくい。そんな中で、こういうことが実際あったのかどうなのか。その点について、事実かどうかということをまずお尋ねしたいと思いますし、また、その原因についてもぜひお尋ねをしたいと思います。
  102. 堤英隆

    ○堤政府委員 報道の件につきましてちょっとお答えさせていただきます。  この点につきましては、今世紀最大の干ばつというようなことがございまして、インドネシアの食糧事情が非常に厳しくなったということで、WFP、FAOのアピールを受けまして、かつインドネシア側からの要請を受けました形で対応をいたしております。  おっしゃられましたように、五十万トンにつきましては、既にインドネシア側にすべて到着をいたしております。そのインドネシアに運ばれましたお米の配布の状況でございますけれども、これは、今の状況でございますと、どうもインドネシア側から見ますというと、日本のお米につきましては、異物の混入が少ないということで相対的に品質が高い、そんなこともございまして、インドネシア側としましては、これを踏まえて、市場放出をどういう段階でやるのか、どの程度やっていくのか、それから価格をどうするかといったことにつきましていろいろと注意深く探ってこられたのではないかと思います。そういう状況の中で、おっしゃいましたように、送りました、届きましたお米が、大半がまだ十分配布されていないというのが現実でございます。  したがいまして、これは外務省と十分連携をとっているわけでございますけれども日本の非常に大きな財政負担、国民の真心ということを送ったわけでございますので、これがインドネシアの国民の方々、とりわけ貧困層の方々に対しまして確実に配布されますよう、そのことがもともとのねらいでございますので、そういった意味でインドネシア側に対しまして、できるだけ早急に計画を立てて配布するようにということで、要請をたびたび、外務省も私どもも一緒に申し上げてきております。  そういう状況の中で、先般、インドネシア側としましては、支援米を低所得者層に対しましても廉価で販売しようということが決定されたというふうに聞いておりまして、逐次、その趣旨に沿いまして、米不足の解消、社会的弱者の救済ということに役立つことを強く期待いたしているところでございます。
  103. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 たび重なる要請をしてきたということでございますけれども、それでいて、政府の方として、その後、昨年の十二月に二十万トンの追加支援を決定しておるわけであります。  そうしますと、新聞報道をそのまま読みますと、昨夏以降、インドネシアから、いわゆるエルニーニョによる干ばつでありますとかあるいは例の国内的な状況を考えて、そういうことがあって要請があったということはもちろん私どもも理解しているわけでありますけれども、申し上げたいのは、そういう状況であった、にもかかわらず、現地でどのような状況になっているかということが、果たして日本国政府の方で、ある程度現地で把握をできなかったのかどうなのか。  しかも、その後の追加支援ということを考えますと、言葉は悪いですが、何か非常にずさんといいましょうか、どうなっているかわからない、また後で追加をした、報道されてみて、どうも向こうの相手国政府で眠っているじゃないか、こんなことを考えますと、その点について実態を実は余り把握していなかったのではないだろうかというような疑念を持つわけでありますけれども、追加支援の決定に至るプロセス、あるいは、そういうことが実際把握しないで起こったかどうか、その辺の状況についてもちょっと御説明をいただきたいと思います。
  104. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 ただいまの御質問で、十二月に二十万トンの追加支援ということで、日本政府から、決定しまして交換公文を結んだわけでございますが、当時におきましても、五十万トンの流れが、日本であればこうするであろうというようなスピードでは進んでいないということは、私どもも大使館の報告を通じて承知しておりました。  ちょうどその時期でございますけれども、我が方の大使から、再三にわたりましてインドネシア側に対しまして、支援米の趣旨を踏まえて、やはりきちっと貧しい人々に配布されるようにという申し入れは実はその当時でしておりまして、私どもは、実態は、大きなところでは当然承知していたわけでございます。  ただ、そういう状況がございましたけれども、同時に、インドネシアの米の不足というのが大変深刻な状況にございまして、当時、WFPそれからFAOの報告書、去年の十月に出されておりますが、ことしの三月までにおよそ五百十四万トンの米が不足するという報告がございまして、日本からの五十万トンを合わせましても大変な不足が生ずるというのもまた事実でございます。  そういう状況を踏まえまして、国際機関、WFPそれからFAOからの大変強い支援要請がございましたのとあわせまして、インドネシア政府、ハビビ大統領初め大変高いレベルから再三再四追加の要請がございましたので、そういう大変深刻な米不足という状況を踏まえまして、十二月の時点で新たに二十万トンの支援米ということを決定させていただきましたわけでございます。  当時におきまして、申し上げましたように、五十万トンにつきましてはもう少し早く分配される必要があるなという感じは私ども持っておりました。その趣旨は、私どもの方から随時申し入れはしておりました。
  105. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 まさに日本政府としては、再三再四にわたって国の指導者層の方に向かって申し入れをしてきたのだ。私も、こうした干ばつでありますとか先般の経済情勢のことを見まして、ましてや低所得者層に人道的な支援をするということになりますと、確かに、いや、おまえらのところは、言葉は悪いですけれども、ちゃんとやっていないじゃないか、だから、その行く末を見てから次をどうするのだということは、現場の政策決定において非常に難しい選択であったろうとは思うのです。  ただ、やはり、先ほど申しましたような、今、ODAに対する不信でありますとか、あるいは日本経済の状況の中で、どうもむだ金になっているのではないか、あるいはむだになっているじゃないかといったような指摘が本当にあるわけでございまして、その点についてのことはこれ以上申しませんけれども。  こうした中で、ちょっと話を進めますと、この支援の実施は、国際農業交流・食糧支援基金という実施機関が行っております。これは昨年の五月に改組創設されたものということがありますけれども、実は私も幾つかの資料を集めてみました。そうしますと、実施機関というのが大変多うございまして、また、非常に似通ったものが多いわけですね。これ、本当にこういう団体がこれだけあるのかと思ったのですが、二十九ほどの団体が平成九年度の実績であるわけでございます。  平成九年度に実施された農林水産省による技術協力の国内実施協力機関、一般会計予算が九十九億六千八百万円でありますけれども、大変にたくさんのこうした公益法人がございます。しかも、大変似たような名前がありまして、例えば国際農林業協力協会、国際農業者交流協会、海外農業開発協会、国際食糧農業協会、正直言って、どういう役割がどう違うのかもまるでわからないわけであります。例えば平成九年度、このODAの実施協力機関として、財団法人日本農業土木総合研究所というのがあるのですけれども、反面で、農水省には農業総合研究所という試験研究機関もまたあるわけでございます。  非常に類似した、どう違うかわからない、これだけの公益法人でありますとか、役割をそれぞれどういうふうに分担していらっしゃるのか、ちょっとわかりにくい部分がありますので、その点についてまずひとつお尋ねをしたいと思いますし、先ほど申し上げた、インドネシアの米支援については、国際農業交流・食糧支援基金、これが改組されたことが、これまで既存の団体がやってきたこととどう違うのかという点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  106. 堤英隆

    ○堤政府委員 それでは、国際農業交流基金のことにつきまして、私の方からお答えさせていただきます。  御案内のように、先ほどからお話しのように、インドネシアを初め世界各地で水害等々が非常に起こっているわけでございまして、そういった大規模で、かつ緊急な食糧支援ということに対します国際的要請が非常に高まっているということでございます。したがいまして、既存の食糧支援スキームではなかなかおこたえしにくいということがございまして、そういう意味で、新たに平成十年度に緊急食糧支援のための新たな仕組みということを創設したわけでございますが、その中の問題としては、大きく二つあると思います。  一つは、政府米等を食糧支援に供します場合には、やはりその負担関係をどういうふうに平準化していくかということが一つ大きな課題でございます。  それから今申し上げましたように、大規模かつ緊急な食糧支援というふうになりますので、そういう意味で、あらかじめ食糧等を備蓄しておくということがないと、そういった要請に十分こたえ切れない、こういう二つの課題にどうこたえるかということでございますが、そういう意味で、他方で行政改革を推進しているということと財政効率の観点ということから、新たな法人をつくるのではなしに、既存の公益法人を活用するという方向で検討いたしました。  そういう意味では、先ほど来お話しのように、国内外の農業事情に精通しているということと国際的な業務に対応できる、この二つの観点から、新たな法人をつくるのではなしに、国際農業交流基金を改組いたしまして、今申し上げましたような新たな業務がやれるような定款変更という形で対応して、こういった課題にこたえているということでございます。
  107. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 今、既存の公益法人の活用という言葉がございましたけれども、先ほど申し上げたように、既存の法人が大変たくさんあるわけでございまして、本当に、素朴な疑問を提示させていただければ、財団法人日本農業土木総合研究所と、どういう役割を果たしているのかわかりませんが、農水省の持っている農業総合研究所という試験研究機関、例えばどういうふうに違うんだというふうなことをお尋ねもしたいわけでございます。  そういう意味で、なぜこれだけ多くの公益法人が必要なのか。先ほど、既存の法人の活用ということを考えれば、もうそろそろこの二十九、私が今知っているだけで二十九あるわけですけれども平成九年度に実施された国内実施協力機関、これをそれぞれもっと統合するなりあるいは役割を一元化していくなりしてそろそろ、ある意味では既存の法人の活用というものを合理化に持っていくべきじゃないかと思うわけでありますけれども、その点についての御見解はいかがでございましょうか。
  108. 竹中美晴

    竹中(美)政府委員 農林水産省関係のODA事業でございますが、これは大変多岐にわたっておりまして、技術協力のための調査とか情報収集あるいは技術研修や人材の育成、さらにはまた専門家の派遣とか受け入れ、そういったことをやっておるわけでございます。  これらにつきましては、それぞれの事業の特性に応じまして、農林水産省所管の既存の各種の公益法人があるわけでございますが、それぞれが持っておりますそれぞれの専門分野の知見や技術を生かすという観点から一番適切な機関にお願いしているところでございまして、そういう事業の内容の特性あるいはそれぞれの法人の性格といったことを考えました場合に、機械的にこれを一本化するというのは必ずしも適当ではないのじゃないかというふうに考えております。
  109. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 それでは、中川大臣にお尋ねをしたいわけでございますが、このような個別の例を挙げると切りがないわけでございます。名称の違い、中身の違いをあれこれどう聞くというのも、ちょっと時間でもうできませんけれども、その中で、大臣、どのようにこの状況を御認識していらっしゃるのか、もし御発言をいただければと思っております。
  110. 中川昭一

    中川国務大臣 確かにODA関係、二十九の公益法人が農水省関係であるわけでありますが、私も、一々説明しろと言われるとなかなか難しくてよくわからないわけであります。しかし、これはそれぞれきちっとした活動をされておるわけでありまして、まさに海外に対する貢献の仕方も多様化してきておるわけであります。  したがいまして、時代に合った形の体制というものにしていくということも一方でありますし、もちろん、効率性あるいはまた効果というものをきちっと評価して、事業の見直し、あるいは本当に不必要なものであれば、これは不要ということも当然考えられるわけでありまして、その辺は適切に、柔軟に対応してまいりたいと思っております。
  111. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 今、不必要と思われるものはというような御発言もございました。この問題、もうやる時間がなくなりましたけれども、ちょっと概要を、技術協力の実施状況を見ますと、大方の機関の概要というのは、情報収集、整理分析、あるいは整理解析とどう違うのかというのもありますし、情報収集あるいは開発研究というものが大変多うございまして、一体この研究というものがどれだけこれまで貢献をしてきているのか、あるいは具体的にどういう政策決定に肉づけをされたのかということも、これはあわせていずれのときかにお尋ねをしたいと思います。  そうしませんと、情報収集であるとか調査分析というのはあくまでもプロセスでございまして、結果、それがどう生かされているかということが本当にODAに対する不信を払拭する一つではないかな。また、その結果についても、いずれかのところでまた質問をしていきたいと思います。  最後に、きょうは経済企画庁にも来ていただいております。そこでお尋ねをするわけでございますけれども、今回の国際協力銀行の設置目的、また、国際協力銀行となった場合の従来に比べたメリットは何であるのか、また、こうしたものの設置によってこれまでのODAとどこか変わるのかどうか、その点について御質問しておきたいと思います。
  112. 河出英治

    ○河出政府委員 国際協力銀行でございますけれども、これは特殊法人の整理合理化の一環として、日本輸出入銀行と海外経済協力基金をこの十月一日から統合しようとするものでございます。これによりまして、国際経済社会への機動的、効率的な貢献のための執行体制が図られると考えております。  それで、このメリットでございますけれども、まず組織面では、この統合によりまして役員の数が十七名から十二名に大幅削減されるとか、あるいは共通しております海外事務所の統合、こういったことによりまして組織のスリム化を実施することとしております。  また、業務面の効果といたしましては、これまで日本輸出入銀行がやっておりましたいわゆる非ODA業務と海外経済協力基金のODA業務の窓口が一本化されまして、まさに資金供与相手国の経済状況あるいはプロジェクトの特性などに応じて資金を有効に、有機的に利用できるような体制が確立されまして、今回のアジア危機対応のような国際金融支援につきましても機動的、効果的な対応が可能となるというふうに考えております。  それからまた、ODAに関するメリットでございますけれども、こういった統合によりまして、いろいろな総務管理部門あるいは調査研究部門あるいは業務支援部門等につきまして、これまでの両部門の情報、ノウハウの共有化、効率化が図られるというふうに考えておりますし、また管理部門からまさに業務部門への人員のシフトができるというふうに考えております。  それから、ODA業務の透明性ということが非常に重要であるということになっておりますが、これにつきましても、今回の銀行法案におきましては、ODA業務の重点分野、地域を定める業務実施方針というのを定めてこれを公表するということになっておりますので、こういった面でも情報公開に資するものと考えております。
  113. 渡辺周

    渡辺(周)分科員 時間もなくなりましたので、また改めての機会にいろいろさらに御質問をしたいと思いますが、いずれにしましても、情報公開の徹底、それから、本当に納税者の納得のいく形でのODA、この点について、我々もさらなる御提言を申し上げながらともどもに考えてまいりたいと思います。  終わります。
  114. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  115. 伊藤公介

    伊藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中桐伸五君。
  116. 中桐伸五

    中桐分科員 民主党の中桐です。私は、国営岡山南部土地改良事業計画土地改良法に基づくこの計画について質疑を行いたいと思います。非常に計画の名前が長いので、足守川パイプライン化計画というふうに略して話をさせていただきたいというふうに思います。  足守川という川の一部の機能をパイプライン化して、いわゆる農業用の用排水を行おうという計画が含まれているこの計画でありますが、まずこの計画について、その目的、これは足守川のパイプライン化計画の概要書というものですが、これは建設省の担当の方に聞きますと、平成十年一月に発表された計画書だということであります。この計画書の中に、「目的」というのが第一章で書かれてあります。この「目的」というところを読みますと、足守川という川は砂質の天井川であって、そのために伏流等により効率的な取水が困難な状況にあるというふうな認識のもとに、営農の合理化と農業経営の安定化を図るためにこの計画をつくった、こういうことなんであります。これについて、余りにも簡単なものですから、この目的をもう少し説明をしていただきたい。簡潔にかつ要領を得た説明をお願いしたいと思います。     〔主査退席、植竹主査代理着席〕
  117. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今先生から、まさに足守川のパイプライン化を含むというふうに御指摘があったわけですが、この計画は、この地域農業用水、六市町村にわたりますけれども、高梁川合同堰から取水いたしまして、湛井十二ケ郷用水路を経由し、この地域内にかんがいをしているというのが現状でございます。  この基幹的水利施設は、造成をいたしましてから三十年以上たっておりますので、老朽化によって施設の安全性や機能の低下が生じております。その結果、必要量を下に落とすことができないという状況にございます。また、地区の中下流域では用水不足を生じている地域がございまして、幾つかのブロックに分けて番水といいますか、交代に水を使っていくというふうな、水管理に大変な労力を要しているわけでございます。  こういう事情を踏まえまして、この事業を通じて、老朽化をした高梁川合同堰、それから湛井十二ケ郷用水路等の改修を行う、それと同時に、用水路として利用している足守川の区間につきましてパイプラインを新設する。  これによって、一つは、高梁川からの必要水量を将来にわたって安定的に取水をすること、それから、水管理システムを導入することによって地区全体に農業用水を安定的に供給する、この二つでございます。これを通じて乾田化も進みますし、裏作等に高収益野菜を導入して農業生産の増大が図られるということを目指すものでございます。
  118. 中桐伸五

    中桐分科員 いろいろ問題点が今出されているわけなんですが、私のきょうの質問時間は三十分と限られておりますので、この計画の中でも、一番今現地の関係する農家との間で異議申し立ての取り組みが行われている、その異議申し立ての争点のポイントを特に幾つか絞って質疑をさせていただきたいと思います。  まず、先ほど用水の安定供給ということが目的として言われたわけでありますが、現地の農家、特にこのパイプライン化に対して非常に危惧を持っている人たちがまとめた岡山地方気象台の降雨量の調査によりますと、例を挙げますと、これは明治二十四年からのデータが出ておりますが、その中で、昭和十四年に非常に渇水があった。明治二十四年以降の記録でいえば昭和十四年が一番ひどかった。その次に平成六年の渇水、これが非常に深刻な渇水であったということであります。しかし、農家の人たちの実生活、農業経営の生活の実態からすると、平成六年の渇水状況の中でも、何とか農業用水としてこの川の水源の供給は持ちこたえていたと言っておるわけであります。何とかですよ。もう大変厳しかったけれども持ちこたえられたと言っておるわけであります。  そういう歴史を持つこの現状の中で、この計画をこのような安定供給の目的としてやるということとの間にどうも疑義があって争点になっているということであります。その点についてはどう御説明いただけますか。
  119. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 二つの点を申し上げなければいけないと思うわけでありますけれども、第一点は、平常時といいますか通常時の問題でありますが、通常の時期におきましても、この足守川の農業用水の取水の状況は、時期にもよりますけれども、幾つかのブロックに分けて番水を行うというふうな、非常に水管理に多大な労力を要しているというふうな実情がございます。  それから、今先生平成六年の干ばつのときの事例をお取り上げになりましたけれども、このときの実情を調べてみますと、高梁川からの取水量がこのときは大幅に制限をされております。その結果、湛井十二ケ郷の用水の取水時間も制限をし、同時に仮設ポンプによりまして足守川の伏流水のくみ上げというふうなことで応急的な対応をしているわけでございます。  そういったことが、果たして、これから農産物もいろいろ多様化をしていく状況の中で、安定的な水供給にこたえた形と言えるのかどうかというのが私どもの着眼点でございまして、そういった状況を解消する意味でも、また農家の労力を軽減する意味でも、こうした計画を立てるのが適当というふうに判断をした次第でございます。
  120. 中桐伸五

    中桐分科員 ここで、ちょっとその目的の議論を詰める時間が十分ございませんので、一応さっと今争点になっておる問題点について質疑を行わせていただきたいと思います。  先ほどの問題については、私の方も、いろいろな情報を集めた結果、極めて大きな疑義があるわけでありますが、それはさておきまして、この安定供給ということを考えるときに、やはりこれだけの税を使って公共事業としてやるということになりますと、その効用というものが問題になるわけであります。最近は特にそれが重要だと思います。  この計画書には、第六章「効用」とある。「効用」とあるんだが、この計画書全般が、私は大変問題点を含んでいると思うのは、説明責任といいますか、そういったものを念頭に置いた計画書になっていないということがまず非常に大きな問題として言えるのではないかと思うんです。中でも、「効用」というところにちょっと絞って、全般的にそういうことが言えるんですよ、この計画書は。行政の説明責任、政治の説明責任というのはこれから大変重要なものになってくると思うんですが、そういう点で非常に欠陥を持った計画書ではないかと思います。  その第六章の「効用」というところに、この事業計画を行いますと、これは年の所得の増加見込みというのが書かれてありまして、約四十四億強ということが示されているんですが、これについて、どういう意味なのか説明をしてもらいたいと思います。
  121. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 この事業土地改良事業計画書に示されました「年増加見込所得額」、これは、この事業とそれからこれに関連をいたしました圃場整備等の事業、この実施によって、まず農業用水が安定的に供給をされる、それから圃場の大区画化が進む、乾田化、言ってみれば汎用化水田になるわけでございます。  こういう、今三つぐらいのことを申し上げましたけれども、こういった事業の成果の上で、三つほど申し上げたいんですけれども、野菜などの高収益作物が導入をされて、作物生産量が全体として増加をする。ここはもちろん水田地帯でございますので旧来は稲作でございますけれども、ほかの高収益作物が導入できる。それから二つ目には、大型機械を導入することによって営農に係る労働時間が短縮され、機械経費が低減をする。そして三点目は、施設でございますけれども、明渠タイプの用水ではなくてパイプラインになりますので、土地改良施設維持管理に係る費用が一部ふえますけれども、全体としては減るというふうなことで、こういうことを全部積み上げまして、受益地全体から一年間に得られる効果を金銭に評価をし、そのうち農業所得の増加に係るものを積み上げたということでございます。  数字を申し上げますと、今申し上げた三つのうち、作物生産に係るものといたしまして三十一億円、それから二番目の営農経費の節減に係るものとして十三億円、維持管理費の節減に係るものが約二千万円ということで、四十四億円と試算をした次第でございまして、そのベースには、個別作物、機械等々の細かな積み上げがあるところでございます。
  122. 中桐伸五

    中桐分科員 今のお答えになった資料を文書にして後ほどもらいたいと思います。よろしいですか。  それで、また時間がないから余り深く議論もできないんですが、継続的に取り上げたいと思いますが、実際に農業経営の現状、これとの関係でそういったことを、この地域農業計画、要するに農業を営んでいる人たちがそういうことを望んでいるということがあっての計画なんでしょうか、どうですか、簡単に。
  123. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 土地改良事業の本旨に立ち戻るわけですけれども、こういった地域でどういうことをするかというのは、国が決めるわけではなくて、地元の関係者、農業者が大半でありますけれども、その申請に基づき大多数の同意を得て実施をするわけでございます。最終的には計画書公告縦覧ということになりますけれども、そのプロセスで相当細かに回数を重ねてお話し合いをした上で、こういったことも申し上げながら結論を出してくるという状況にあります。
  124. 中桐伸五

    中桐分科員 そうしますと、もし、これをやるとします、この計画を実行して、でき上がったとします。そうしますと、そういうふうに農業転換が行われたかどうか、つまりこの計画の大きな目標ですから、メリットなんですから、そういう評価というものを、農水省としてはこういう事業評価システムというものをこれから導入されるんでしょうから、やりっ放しじゃなくて、そういうことをやられるということも前提に含まれた話として理解してよろしいですか。
  125. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御指摘があったわけですけれども農林水産省農業整備事業はこれまでも再評価システムということの中で再評価はしてまいりましたけれども、事後のフォローアップという点についてややおくれをとっている面がございましたので、かんがい排水審議会の御審議も得まして、来年度から試行的に、そしてその後本格実施にするというふうな方向で事後評価のシステムを導入することを検討しております。
  126. 中桐伸五

    中桐分科員 こういう数値目標を設定するということが大変重要なわけでありますから、そういう設定をされたものが本当にそういうふうに目標に向かっていくのかどうか。つまりこれは、先ほどの御説明のように、現場からの要望があってやっているんだという話なんですから、それが本当にそういうふうになるのかどうかというのは極めて重要な問題でありますから、大前提が崩壊してしまうわけですから、この評価システムができないと。ぜひしっかりとやっていただきたいと思うのであります。  次に、今この問題について、土地改良法の第八十七条に関係する異議申し立てが行われて、異議申し立ての決定が行われる前の段階、つまり縦覧期間を経て異議申し立てが行われて、この異議申し立てが三千二百七十八通というふうに新聞で紹介されております。この異議申し立て書に基づいて申し立てた人が三千二百七十八人ということなんですが、この異議申し立ての決定は六十日以内というふうになっておりますね。いつこれは出されるんですか。
  127. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 厳密な数字を申し上げますと、異議申立人の数は最終的には三千七百七十四人でございます。そして、公告縦覧して以降異議申し立て期間、一月六日から一月二十日までとなっておりますので、これを経まして、三月六日にはこの異議申し立てについての決定を行うこととなっております。
  128. 中桐伸五

    中桐分科員 その際、専門技術者の意見聴取ということが行われるということになっているようでありますが、その専門技術者とは一体どういう、まあ意見をだれかにお聞きになるわけでしょうから、その意見聴取はどういう方に意見聴取をされる予定ですか。
  129. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 どなたから意見を聴取するかということを最終的に決めているわけではないんですけれども、通常のケースでいいますと、工事に係る問題と経営に係る問題がございますので、農業土木工学の専門家それから農業経営、農業経済の専門家ということになろうかと思います。大学の先生あるいは研究所の方、そういうところが候補として挙がってくるのではないかなと思っております。
  130. 中桐伸五

    中桐分科員 これは私の要望なんですが、土木の専門家、経済の専門家、結構です。しかし、これは争点になっている当事者をどういうふうに扱うかという問題になるんですが、そこで農業をやっている人というのは、これはある意味ではそこの現場の専門家ですよね。そうでしょう。そういう人たちのいろいろな主張、意見、そういったものが十分検討をされてしかるべきだと思うんですが、専門技術者というと経験者というものも含んでくるんでしょうから、そういうものが含まれるんですか、それとも含まれないんですか。
  131. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 若干技術的なことを申し上げますと、この事業は、当然のことながら地元の農業者、それから市町村、県の負担と国の負担という形でできておりまして、最終的には農業経営に寄与する事業でございます。したがって、その異議申し立てに係る当事者、それから、意見を聞く場合には地域方々というのは含まれないというのが通常の理解であります。  では、それを全く聞かないのかというふうにいいますと、それは計画書をつくるまでの段階において既に地域方々と何度も話し合いをしておりますし、また市町村、都道府県から御意見をちょうだいしている、そういうプロセスは経ているわけでございます。
  132. 中桐伸五

    中桐分科員 それはわかるんですが、先ほども言いましたように、この計画書を見ても、もうほとんど不親切そのものでありまして、非常に専門的な分野であるにもかかわらず極めてぶっきらぼうに書かれてある。よくわからない。こういうものがベースになって、申請の準備が行われる手続が行われていったというプロセスがどうもあるようであります。  私は当事者ではありませんから、全部その一部始終わかるわけではないんです。また、私は農業の専門家ではありませんから、これを見てももうさっぱり。章がたったったっと並んでいるだけというのがほとんどでございまして、こういう形で公共事業、つまり税金を使う計画をつくるというのはいかがなものかという非常に素朴な疑義がもう最初から私はあるわけであります。  それはさておきまして、これはやはり私が見てもほとんどわからない。農家の方はわかるのかもしれませんが、しかし、この異議申し立てが出まして、今まで賛同していた人たちの地域の中でも、この異議申し立てで、正確な数字ではございませんが、今まで同意をしていた人たち、つまり先ほどおっしゃいました、最初に現地の人たちの意見をよく聞いて準備をいたしましたというその同意した人たちの中で、よくよく検討してみるとこれはおかしいと言って、同意を覆して異議申し立てをしたという人がかなりいると私は聞いております。  それで、これは現地の地域の細かい具体的な地名を申し上げても、こういう場では話がそんなに詰まるわけではございませんが、大字というところで幾つか申し上げますと、例えば倉敷の矢部というところでは、異議申し立てをしている人が九割に達しているというふうなことを聞いておりますし、そのほかでも八割とか七割とかいうふうな形に、同意率は大半がもう九〇%を超えていたんですが、そういうふうになっている地域が出てきているというふうに聞いております。  その中で、どうも一つの争点になっているのが、一番疑問を呈した人が多かった地域の人たちとの間に確約書なるものが出ておりまして、その確約書というのは、中国土地改良調査管理事務所の所長が倉敷市の庄土地改良区の赤木という理事長あてにその間出した確約書。農民の方から、この確約書がそのまま実行されていないと、この計画書の中に。  この計画の概要は平成十年一月、この確約書はその一カ月後の二月二十三日となっているわけですが、その中に「足守川の流量については、従前の水質並びに流量を維持します。」こうなっている。ところが、今進められているこの計画は、確約書の中で確約した内容になっていない、変わっていない、そういう意見を聞いているんですが、この点についてはいかがですか。
  133. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 異議申し立ての中の三つの柱のうちの一つに足守川の水量の激減というのがあって、それに加えて先ほどの確約書の話が出たわけでありますけれども、これは、事実関係の説明を何度も重ねる、御相談をするというプロセスの中で出てきたものだろうと思います。  私、調べてみますと、この事業計画で、これまた地名が出てまいりますけれども、いわゆる岩崎堰から福富堰までの区間、これがパイプラインで送水する計画になっておりますけれども、ここの流量をどう見るかという点。  一つは、湛井十二ケ郷用水路の改修に伴って、高梁川からの取水量が毎秒四トンないし五トン上昇する、そういうことが大前提にあるわけでございます。本体の高梁川からの取水量がふえます。それから、パイプライン化をすることによって、岩崎堰から四ケ郷合同堰までの取水がパイプラインからの取水に変わりますので、直接足守川からとりませんので、それを考慮いたしますと、先ほど申し上げました岩崎堰から福富堰までの流量は、時期によって差はあるかもしれませんけれども、パイプラインで送水をしても現況とは変わらないというふうに考えた次第でございます。
  134. 中桐伸五

    中桐分科員 岩崎堰からこの一番最後の福富堰までの間が変わらないという意味ですか。ちょっと正確にそれは、議事録に残るからそれをまた確認をしたいと思います。時間がありません。  そこで、最後に、この異議申し立てをしている人たちの意見というものをよく聞いてみますと、私は農業の専門ではございませんが、相当この事業計画には無理があるのではないかということです。問題点がたくさん含まれているという意味でもあります。  先ほどの確約書の問題でありますけれども、一部の地域の人たちがこの計画の問題点に気づかれて、大変なことだというので一生懸命取り組みを始めて、少しずつこれはやはり大変だ、それならば大変だということになって、少しずつ現場でも情報が広がっていったように私は認識しております。  したがいまして、これは非常に広範囲な農業用水の排水計画の、いい点もあれば、またいろいろな弊害、デメリットもあるという問題でありますから、こういう機会ですから、これは全体に一番末端の興除地域というところまで含めたしっかりした計画にしていかなきゃいかぬと思います。そのときに、現地の人の言うこと、問題があるんじゃないかということを言っている人たちの声、これをもうちょっと真摯に聞いてもらいたい。そうしないと後顧に憂いを残すことになると私はどうも直感として思うんです。  ですから、いろいろメンツもあるかもしれないが、そこは、どうもこの計画書が私は非常に納得しにくいものだったわけですよね、最初に。どうも何を書いているのかわからないというところからきていますから、やはりこれはいろいろ危惧を持っている人たちの声というのをもう少し聞いてもらわなきゃ困る。しかも、一部の人の農業用水の利水権というものだけではなくて、全体を考えなきゃいけないんだから、そこはしっかりと、三月に出るということなんですが、出すに当たってはそういうことを十分配慮してやってもらいたいということを要望して、もう時間が参りましたから、私のきょうの質疑はここで一応終わらせていただきまして、またこの問題は取り上げていきたいと思います。  大臣もこの問題は、各論の、岡山の一つの計画ということでありますけれども、目標をどう設定してそれを評価していくかということとか、あるいは政治や行政の説明責任というふうな問題からいって、かなり問題を含んでいる計画なので、ぜひこれは関心を持っていただいて、やっていただきたいということを要望しておきたいと思います。どうもありがとうございました。
  135. 植竹繁雄

    ○植竹主査代理 これにて中桐伸五君の質疑は終了いたしました。  次に、山中あき子君。
  136. 山中あき子

    ○山中(あ)分科員 山中あき子でございます。  私、去年の六月にデンマークのオーフスで環境大臣会議がありましたときに、そちらの農業学校を視察してまいりましたり、それから、一九九七年の三月四日の予算委員会のこの第五分科会において、そのとき新農政プランということで、ウルグアイ・ラウンドの六兆円のお金を、日本は、これからの農業基盤の整備に、人材の育成も含めてぜひ使っていただきたいという質問をさせていただいたのでございます。  その後、三十六年ぶりに農業基本法も今変わるということで、農政改革の大綱、そして基本問題調査会の答申、予算などを見せていただきました中で、新しい農業基本法については、予算はこの中に含まれないで、来年からのことに実際はなっていくとは思いますけれども、しかしその兆候がわずかに見えるかなというぐらいのところでございまして、その準備という意味でももう少し、大きな転換期に向かっての施策を、どういうところに重点政策を持っていくかというようなこと、これからの農業の政策の方向について幾つか質問させていただきたいと思っております。  きょうは、その中でもまず全体の、これからの農政の基本的な押さえと、それから、中にも出ておりますけれども、担い手の問題ということもありまして、そういう人材の育成の問題、それから農業を中核とした地域開発という視点で、どのような重点政策が実現していくかということ、そして、農業だけではなくて、実は、十二月十一日の外務委員会で日韓漁業協定の質問をさせていただきましたときに、漁業資源の管理ということも少し触れさせていただきましたので、きょうは農水大臣漁業資源の管理ということも含めて、時間が許せばそういう質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、基本問題調査会の答申の中に「生産者から経営者へ」という言葉が使われておりまして、これはまさに、これから二十一世紀農業というものが、単なる農業生産物の提供者から一つの経営者という方向へ意識もそれから構造も改革していくという意味ではないか。さらに、ここにうたわれております「幅広い人材の」、私は育成、確保だと思うのですが、逆に「確保・育成」と書いてありますが、「を図り、自立の精神と優れた経営感覚を持った農業者が、地域農業の中心を担う農業構造を実現する必要がある。」というふうに書いてあります。「実現する必要がある。」ということは、まだ十分実現されていないということでもありますけれども。  そういった方向に基づきまして、実は、二月十二日に、空知管内のJAそれから農業に携わっている方たちのヒアリングをお聞きしていましたら、今までの農政はしょっちゅうその方向が変わるということで、負債が多くなったり、減反になったり、また戻ったりというようなことで、農政全体か政治全体かわかりませんが、非常に不信感が高まっているということもあって、長期的な自分のプランが立てられないという声を随分聞きました。  今ちょうどチャンスであろうというふうに思いますので、その辺も踏まえて、まず、そういうふうな方向へ向けていくのには、具体的にどういうところがこれからの農政の基本というふうに押さえておられるか、大臣にお聞きしたいと思います。
  137. 中川昭一

    中川国務大臣 これからの農政のポイントをというお話でございますが、ここ数年を振り返ってみましても、WTO体制の発足でありますとか、あるいは平成五年ですか、米を中心とした大冷害による米不足、そしてそれ以降の豊作による需給の逆の意味でのアンバランス、さらには食品の安全性に対する、あるいはまた自給率に対する国民的関心とか、環境の問題とか、あるいは農村地帯に対する国民的な関心の高まりとか、そういう新しいニーズが出てきておるわけでありますし、また国際的にもいろいろな変化が起こっておるわけでございます。  そういう中で、今回、新しい基本法を文字どおり基本といたしまして、農政全体を新しい方向に少しずつ変えていこうということで、きょうも先生から御議論をいただいておるところでございます。  その中で、大きなポイントといたしましては、基本法の骨子に沿った形でお話をさせていただきますならば、まず一つには、食料と農業とそして農村というものを一体的に考えていく。別の言葉で申し上げますと、つまり、農村対都市とか生産者対消費者という対立、あるいは、別次元の話ではなくて、消費者と生産者とは一体の関係である、いわゆる最近の言葉で言えば共生関係にあるという認識を持って、食糧という、すべての国民に関係のある物資について国民全体に共通の御理解をいただかなければならないということから、消費者の視点をまず重視していこうということでございます。  二点目は、その消費者に対して安定的な食糧供給、特に国内生産を基本としての安定的な食糧供給をしていくためには、農業が持続的に発展をしていくということが不可欠であろうというふうに考えておるわけでありまして、その農業に携わる方、今、農業経営者という、新たな経営感覚をというお話がありましたが、まさしくそういう観点も含めまして、よりよい農業経営ができやすいような体制をつくり上げていかなければならないということでございます。  さらには、農業が存在する農村地域というものの、産業の場としての農村地域だけではなくて、日本の地理的条件の中での農村地域の果たす役割というのは非常に多岐にわたっている。また、公益的な面が非常に高いわけでございますので、そういう地域の振興、景観とか国土保全とかいろいろございます、教育的な観点もあると思いますが、そういう地域の振興。そしてまた、条件的に不利と言われておりますいわゆる条件不利地域、中山間地域等の条件不利地域の振興というものも大事なポイントであろうというふうに思っております。  大変大きな御質問でございましたので、特に大事だと今思ったことを、ポイントだけ述べさせていただきました。
  138. 山中あき子

    ○山中(あ)分科員 総合的なお答えをいただきましたが、私はきょう、その中で、最初にお触れになりました、農業とほかの産業も含めて地域をどういうふうに形成していくかという点で、これはウルグアイ・ラウンドのときにも、前に申し上げたことがあるかもしれませんが、例えばスウェーデンですと、農業に依存度の高い北西部に大変大きなウエートをかけて、各省庁またがって、そこの地域にどういうふうにして農地を確保し、そして人手を確保しながら、高い生産高になるスウェーデンの農業を、当面は別な形で、いざというときのために確保するか、集中的な地域の配分というようなことをしていたわけですが、日本は非常に公平の発想がありますので、かなりどこにも公平にということになっていると思います。  そういった中で、日本のウルグアイ・ラウンドそれからWTOというようなことも含めて、では、その五年間でどういうような準備ができたかということを考えてみますと、今申し上げたスウェーデンの例だけではなくて、各国で大変な思いをしているわけです。  多分大臣もよく御存じと思いますけれども、九四年にはデンマークで食品クラスターという発想を導入いたしまして、そのクラスターの定義というのが、持続安定性があり、一定の規模を持つ広範囲な生産・サービス分野ということと、最終製品・サービスの生産のための共通条件のもとで相互に依存あるいは関連し合う部門、それから、共通のビジネス環境に依存しており、共通の戦略課題に直面している、そして、クラスターは一つあるいは複数の競争優位群を有するというような発想で、第一次産業である農業を中心にしたクラスターは、農業と食品加工業、卸売業、そしてそのほかにさまざまなインベストのできる産業というふうな位置づけになっております。  これがどういうふうなとらえ方かというと、世界的な経済の低成長、食品部門における国際的な、これはデンマークですからEUですけれども日本でいえばウルグアイ・ラウンドもありますでしょうし、ガットそれからWTO、いろいろなそういった国際条約の制約、そして西側諸国における食品消費の伸び悩み。アジアは食品が今伸びているところで、経済的な低迷が少し影響しておりますけれども、しかし逆に、アジアの場合にはこれから人口爆発が行われるとすれば、やはり同じような発想のちょうど逆を行くという意味で、日本は輸入がなかなか難しくなる。そういった状況を踏まえてのクラスター政策ということを導入したわけでございます。  この辺の規制の緩和の拡大とか食品部門における生産フローの国際化、あるいは人口増加あるいは人口の減少というような要素をどういうふうに農業を中心とするクラスターに取り入れていくかとか、売り手市場なのか買い手市場なのか、技術の革新はどうなるか、そういったようなことで、農水省と労働省と教育省が共同でお金を出しまして、もちろん通商産業の部門も含めてですけれども、そういった省庁を超えたプロジェクトとしてやり始めているわけです。  私は、やはり食ということと、日本の場合はエネルギー、これが不足しますと思い出したくない経験にまた戻るということにもなりかねませんから、そういった意味で、今これから省庁改編の時期でもありますから、もっと広域的な形の大きなプロジェクトとして、例えば、こういうクラスターのあり方というようなものを大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  139. 中川昭一

    中川国務大臣 先生も私も北海道ですからクラスターという言葉にはなじみが非常にあるわけで、クラスターというのはもともとブドウの房みたいなことだそうですけれども、北海道で産業クラスター構想なんというのをやっておるわけであります。  今先生御質問の農業におけるクラスター、つまり農業を基幹としてと言っていいのかどうか、先生の御趣旨と違うかもしれませんが、農業あるいは食というものを中心にして、いろいろな要素を組み入れていくことによって国民的な生活なり福祉なりの向上に役立てていくということについては、これは当然農林水産省だけでやれる仕事ではありません。農林水産省も含めまして政府全体あるいはまた自治体、それぞれのいろいろな組織と文字どおりクラスター状態でやっていかなければならないというふうに考えております。  日本の場合は、御指摘のように、今、世界で一番の食糧輸入国でありますが、今後、世界の人口と食糧とのバランスを考えたときに、お金さえ出せば何でも買えるからいいじゃないかというままでいいのだろうかということについて、我々はそうではないのではないかと。むしろ、日本の中で自給率を上げることによって、八億人とも言われておる世界の飢餓者に対して何らかの貢献をしていく時代に入ってきたのではないかというようなことも基本法の中にも理念を取り入れておるつもりでございます。  そういう意味で、先生のお答えになっているかどうかわかりませんが、国民全体にとって必要不可欠、そしてまた、ただエネルギー源であるだけではなくて、食文化というような、精神的といいましょうか、伝統から、あるいは現在の我々が共有しておるアイデンティティーといいましょうか、文化といいましょうか、そういう面にまで食というものは関係してくると思います。  したがいまして、農林水産省だけではなく、今デンマークの例をお示しになりましたけれども、今度の農政改革というのは、ある意味では農村地域の発展のスタートであると同時に、国民全体の食に対する意識の前進というような観点からもこの政策を進めていきたいというふうに考えております。
  140. 山中あき子

    ○山中(あ)分科員 大変力強い決意なんですけれども、具体的には、例えば全部の都道府県がそれぞれいろいろするという考え方ではなくて、私は、日本というのは縦に長いですから、北海道から沖縄まで、植生も違いますし、あるいは農村の形態も違うし、あるいは生産している状態も違うし、農業の規模も違うとすれば、ある程度のくくりで、例えば北海道とか東北六県とかというようなブロックごとにクラスターというものができていけば、それぞれがお互いに競争で、金太郎あめになるのではなくて、特性を生かした日本農業のあり方ができるのではないかというふうに思っているのです。  そういう意味で、他業種というどころじゃなくて、他省庁との本当の連携は私はやはり第一次産業を中心にしてというふうに思っていますけれども、その辺はぜひ英断を持ってほかの省庁に呼びかけない限りはなかなかちっちゃなものしかできないと思いますので、思い切った発想になっていただきたいと期待しているのですけれども、いかがでしょうか。
  141. 中川昭一

    中川国務大臣 日本に限らず、農業というのは自然相手、生き物相手ですから、地域によって条件が極めて違うわけであります。今、先生おっしゃられたように、日本というのは、国土は狭いといいながらも大変細長い国で、例えば海洋、日本の経済的な海洋面積は世界で大きい方から七番目というような、ある意味では、別の意味でいえば自然条件が非常に多種多様な地域を持った国でありますから、そういう中で地域特性をどういうふうに生かしていったらいいのかということがこれからの一つのポイントだろうと思います。  それは、国がこうあるべきだとアドバイスをすることはあっても、押しつけるべき問題ではないのではないか。まさに、地域がそれぞれ、極端にいえば、ある町のある集落が隣の集落と違うことをやることによってだんだん前に進んでいくというようなことの積み重ねが全国的に広がっていくことが理想的なのではないか。それに対して、農林省だけではなく、行政がどこまでお手伝いできるかということだろうと思います。  また、これからの農業に関していえば、物の移動にしても人の移動にしても、流通というものは非常に大きくなってくるわけでありますから、これも農林省だけでできる仕事ではありませんし、また、これからは消費者ニーズあるいは情報というものは非常に重要になってくるわけでありますから、その情報を得る手段というのも農林省だけでできることではございませんから、グローバル、オール・ジャパンの観点と、それから極めてローカルな観点とをうまくマッチングするために、農林省だけではない、関係省庁と文字どおりクラスター状態で連携をとりながらやっていくことが必要なのではないかと考えております。
  142. 山中あき子

    ○山中(あ)分科員 随分前、一九八五年になりますけれども、アメリカのミシシッピ州に行きましたときに、農業中心から、一つの技術の革新ということも含めて、ITDという、研究したものをどのように製品に落としていくか、事業化していくかというような五年間のプロジェクトで、国が支援して、それから州が支援して、そのほか民間からの委託も含めてということで、そういう中で、例えば、センサーの技術を使って森林の松くい虫を発見するとか、いろいろな、そういうことにもチャレンジをしていた。  それと同じ発想で、フィンランドでは、今度EUに加盟しまして、一九九五年から、アグロポリス、テクノポリスならぬ、アグリカルチャーを中心にした、実際の研究をどのように事業化していくかということをやはりやっていた。そういう観点のところにもう少し予算をつけて、そして、新しい農業のあり方、それから今の流通に至るまでの後押しをするというようなことも非常に大事な観点だと思うんですけれども、具体的には、そういったことも含めて、日本は、研究者は研究者、それから実際にやっている方は実際にやっている方、そこで、もちろん、こういう品種が改良されましたよということになると普及するのですけれども、こういうふうなものが製品化できないだろうか、そういったインタラクションは私は極めて弱いと思うんですね。  そういった意味で、新しいものをつくるのではなくて、フィンランドの場合には、百年の伝統のあるフィンランドの国立農業研究センターが中心になっていますけれども、このアグロポリスプロジェクトは、専任の人は三人しかいない。そして、プロジェクトごとに必要な研究者やそれから人手を雇うということで、予算としては極めて少ないわけですけれども、現在二十のプロジェクトを動かしている。そういった小さな研究センターの後押しで、実際に事業化するというところのつなぎをするような小さな事業体、これもまた全国にそれぞれのところでつくっていくということで、これが実は将来に向けての一つの大きな方向性の原動力になるのではないかというふうに私は思っているんですけれども、テクノポリスならぬアグロポリス、そういうような意味でのこれからの政策もお考えでいらっしゃいましょうか。
  143. 中川昭一

    中川国務大臣 やはり試験研究、そしてまたその普及、実用化というものは、当然我が国農業政策、食糧政策においても大きなポイントであろうと思います。  過去におきましても、全国に広がっております国立の農業試験場あるいは都道府県の試験場において、米やすばらしいいろいろな農作物を開発してきたところでありますし、それがまた世界に、昔の話ですとお蚕だとかそういうものも含めて実績はあるわけでありますが、今後、二十一世紀に向かって、それが今度バイオテクノロジーとかそういう新しい横文字に変わっていくわけでありますが、そういう時代にも我が国としても十分対応できるように、今、農林水産省としても、その試験研究について、研究費をできるだけ重点的に確保し、研究に重点を置いてやっておるところでございます。  一つのその象徴的な例がゲノム、遺伝子のうちの稲の部分の研究というのはやはり世界の中でも非常に進んでいると思いますし、また、先端部分だけではなくて、発展途上国に対する農業技術等の普及という面でも、あるいは人材の育成という面でも、日本はかなり世界の中で大きな貢献をしておると私は思いますが、今後、ますます先端的な技術あるいはその実用化、普及というもの、そしてまた、そういう技術指導等の広い意味の国際的な貢献というものも含めて、先生指摘の点については私も同感であります。
  144. 山中あき子

    ○山中(あ)分科員 食品産業の形成と同時に、地域の開発という中で、農業製品それから加工品に付加価値をつけていく、そういう努力をぜひやっていただきたいと思います。  それで、一番大事なのは人材の育成だろう。私はもともと大学におりましたから、どうしてもそう思うという点もありますけれども、この農政改革大綱にも、「担い手の確保・育成」ということが挙げられておりまして、農業高校から大学の農学部への推薦入学の拡大、それから文部省協議機関を設けて農業教育への支援策の具体化をするというふうにあります。  これは大変大事なことですが、私がちょっと心配していますのは、これを見て、その後のプロジェクトというところを見ても、ほとんど同じことがちょっと違う言葉で書かれているという状況でございまして、具体的にどういう形になるのかというのは、これから協議会を設けて多分話し合われるんでしょうが、今までのように審議会で、こういう形になりましたという今までの延長のような形ではなくて、私は、政府委員の廃止というのは、委員会そのものが、委員会そのもので一つの方向性を見出す政策の議論ができるところという形になるんだろうと思いますので、専門的な議員の方たちが、私は農水部会ではありませんけれども、たくさんいらっしゃるわけですから、審議会でこうなりましたという委員会への出し方ではなくて、ぜひ委員会そのものの中でうんと議論をしていただきたいというふうに思うんです。  先ほどちょっと申し上げましたように、デンマークでは、若手の農業者のためのプログラムというのが非常に行き届いております。どういう研修をすれば例えばどういうサティフィケートがもらえるかとか、管理者までなるためにはどういうようなプログラムをとればいいかという、順繰りに上がっていけるような形になっております。  それと同時に、既に就業している農業者の方への生涯教育的な農業のコースというのが、これはわずか一週間なんですけれども、そういうものがきちんと、これは公的なものではなくて地域地域農業組合、もちろん国の後押しもありますけれども農業関連の団体の人たちが集まって、それぞれのところに適した新しい情報ですとかそういったものを入れるということで、既に就業している人たちがさらにバージョンアップとかグレードアップしていけるようなこと、あるいは熟練の技術者とか農業経済の専門家というのは、大学を出なくてもその地域の経営ができるというようなさまざまなプログラムがあります。  私は、大変すばらしいと思っていますのは、それを後押しするシステムとして、その地域地域でヘルパーを組合として雇っていて、一週間講義を受けに出るとなると、だれがその間の農作物の世話をするかとか家畜の世話をするかということを憂いなくやれるような、つまり、受講者はお金は払うんですが、非常に安いお金で、あとはヘルパーを地域として派遣する、そういうようなことがあります。  このヘルパーの制度というのは、高齢社会になっていきますけれども、しかもまた、若手の農業者の方は、子供を抱えて、家族農業の場合には人手が欲しいというときもある。あるいはベルファストの酪農家は、夫婦でかわるがわる海外旅行をして、その間コントラクターかヘルパーを使っているというようなこともあります。  そういった後押しをする周辺のものも含めて、起業家マインドのある農業経営者を育成するためには、思い切ったカリキュラムの改革、それから、どういった教材を使うか、どういったコースを設定したらいいかというのを、それぞれの地域の特性を生かしながらぜひやっていただきたいということと、非常におもしろいのは、その中でデンマークは、ああいう地域にありますから、海外での研修ということに重きを置いておりまして、酪農大学もいろいろ研修生を受け入れておりますが、農業経営者になるにはデンマーク語と一緒に英語も勉強するということもプログラムに入っております。  そういったことも含めまして、ぜひ、協議会というのは、単なる今までの延長の農業教育ということではなくて、新しい発想を入れていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  145. 中川昭一

    中川国務大臣 先生は海外の情勢に大変お詳しくて、今いろいろな例をお出しになりました。  日本におきましても、やはり生涯教育というのは文部省の一つの大きな柱でありますし、農業におきましても、新しい技術、あるいは、今回特にポイントになっております農業経営というものの知識といいましょうか、そういう研修というものも必要になるわけでありますし、そういう意味で、農業においても生涯の研修というものがますます必要になっていくのだろうというふうに思います。  そういう意味で、文部省あるいは地方自治体と連絡をとり合いながら、地域の特性というものもありますけれども、とにかく農業者が、特にこれからの先端的ないわゆる担い手としての役割を果たすべきような人々には、農業に就業してから後でもそういうような時間がとれるようにしていくということについては大いにバックアップをしていきたいと思います。  なお、ヘルパーにつきましては、もちろん我々、今ヘルパーについて一生懸命、利用していただきたいというふうに考えておりますが、日本現状は、残念ながら、ヘルパーを雇って一週間勉強するためにというよりも、むしろちょっと病気になったからとか、あるいは親戚なんかのおめでたや不幸があったからちょっと行かなければいけないということ、せめて月に二日か三日は休みたいという、何といいましょうか、前向きのというよりも、酪農の厳しい労働時間を少しでも緩和するためのというような役割ですら今なかなか厳しい現実があるわけでございまして、今の話を聞いてうらやましいなと率直に思ったわけであります。  いずれにしても、いろいろな意味で、豊かな農業経営あるいはまた農業経営者の心の豊かさの深まりというものがどんどんまた深まっていくような面にも気をつけながら、新しい政策を進めさせていただきたいと思っております。
  146. 山中あき子

    ○山中(あ)分科員 時間になりましたので、最後に一言だけ。  一九〇二年に発足したICES、その後いろいろ調べてみましたら、こちらで北太平洋の海洋科学に関する機関というのが、やはり同じような発想で、日本、アメリカ、カナダ、中国、ロシア、韓国の六カ国で一九九二年からスタートしているのでございますけれども、その中で一つだけ大変大きな違いは、今日本が加盟しているのには資源管理委員会というのが委員会の中にない。この点で、ヨーロッパのように、共通の資源をどのように管理して、どこがどういうふうにとるか、何の漁獲はどうするかという、その点が抜けているということで、私はこれから、日韓、日中、日ロ、いろいろありますけれども、もうひとつ日本が踏み込んで、今ある機関を充実するという意味で、管理の委員会を設けるということをぜひお願いして、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  147. 植竹繁雄

    ○植竹主査代理 これにて山中あき子君の質疑は終了いたしました。  次に、大畠章宏君。
  148. 大畠章宏

    大畠分科員 民主党の大畠章宏でございます。  林業問題について、的を絞って少しお伺いをしたいと思います。  中川大臣におかれましては、大変農業あるいはまた林業、もちろん外交問題も今非常に厳しい状況でありますが、そういう中で、若さを発揮して取り組んでおられることに対しては敬意を表したいと思います。  きょうは予算分科会でございますから、私の地元の課題ですね、政治家というのは地域社会の中でいろいろな人の話を聞くわけでありまして、そういういろいろな声が相まって一つの政策になり国の方針になりということが重要だと思うのです。したがって、そういう意味から何点か、私の地元の方から聞こえてきている声というものを中心にお伺いしたいと思うのです。  最初に、私は茨城県の日立の方に住んでおりますが、茨城県の十王町に林木育種センターというのがあります。これは長官、種から始まって、種を植えて、芽が出て、それが育ってきて、どんな木がこの気候に合うのかとか、あるいはこれからのことを考えるとどんな種類の木をつくっていったらいいのかという、非常に長い年月がかかる研究を一生懸命しているセンターがあるのです。  これはたまたま茨城県の県庁をつくるために、従来あった育種場のところを、県庁をつくるのに最適だというので、今まで育った木には大変申しわけないのだけれども、移転していただきまして、今県庁がそこにできました。そして、新しく移転先が、先ほど言いました十王町というところで林木育種センターというのをつくったのです。  過日私もそこに行ってまいりまして、いろいろ話を聞きました。大変苦労をしています。一生懸命努力をしながらセンターの職員の方が日夜励んでいるのですが、このセンターが、いろいろな話を聞くと、どうも民営化されるかもしれないという話が出ていまして、非常にみんな働いている人が、民営化なんかして本当にこんなのができるのかなというような不安を持っていますという話を、去年私はお伺いしたことがございます。  それから農林省の担当課の方に来ていただいて、いろいろな意見交換をいたしましたが、基本的にこういう、松ぼっくりの中から松の実を出してきて、それを植えて、育ててきて、どんな木がいいかとか、あるいはまた広葉樹林もそうでしょうし、アジアあるいは日本国内のあらゆる木の種を持ってきて、あるいは木を持ってきて、育ち方、どんなところにどういうものがいいかという研究をしているわけでして、そんなものを民営化なんかしたって継続できるわけないじゃないか、だれが、民間がお金を出すのだろうかということで、私自身もおかしな話が流れているなと。  そうじゃなくて、逆に、日本の森林あるいはアジアの森林というものを考えますと、日本の育種センターというのが、日本だけの木じゃなくて、アジア全体の木の研究センターになる。そういう研究成果を日本やアジアの森林の保護のために大いに役立てて、もっと盛んにすべきだと思うのです。それがどうもなかなか、林野庁といいますか、全体的に予算が厳しいので、少しずつ削れるところはないかというようなときにそういうふうな話が出てきたそうなんですが、まことにそれは間違えた方針でありまして、私は、日本の国、国破れて山河ありという話がありますが、本当に自然が豊かで、そして山も、明治のころから先人が一生懸命やってくれたおかげで、木を切って、戦後の日本の復興もできたのですね。そんなことを考えますと、もっと私は、木を育てる、あるいは気候も変動してきていますから、どんな木が一番日本に最適かということを研究することは大変重要じゃないかと思うのです。  そこで、最初にこの育種センターの役割というものを、最近少し育種センターに対する将来の方向性が徐々に変わりつつあるという話も聞いているのですが、育種センターの役割を農林省としてはどういうふうに考えているのか、最初にお伺いしたいと思います。
  149. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 林木育種センター、先生指摘のように、日本の真ん中に本所が、これは茨城県の十王町でございますが、ございます。この本所のほかに四つの育種場が、北海道、東北、関西、九州にございます。この組織において、日本の森林において活用するのに適当な樹木の品種改良と、またこのために必要な育種、選抜技術の開発、さらに林木の遺伝資源の保存、これは国際的にも、これから品種改良あるいは遺伝子組み換え等々の時代の到来を控えて、遺伝資源の保存というのも大変重要になっておりますけれども、林木のそういった遺伝資源の保存等の実践的な業務を担当いたしております。  先生指摘のように、特に樹木の品種改良というのは、五十年、百年というような大変長期を要して、かつその間に、種から育てたり、あるいは選抜したり、あるいは交配したりというような、息の長い、また地道な作業をする必要がございますが、長期で、かつ民間ベースに乗らない、非常に採算がとりにくい、またリスクも大きいという点が特徴でございます。  一方では、地球の温暖化防止のための森林の役割というのが一昨年来大変重視されておりますが、水源涵養、国土保全、また国民のレクリエーションの場等としての森林を健全に日本で守り育てていくための立派な苗を開発し、生産していくための重要な機関だと位置づけております。
  150. 大畠章宏

    大畠分科員 その認識は、私も同じように感じておるところであります。  そこで、全国に全部でセンターが五カ所ありますね。そことネットワークを組みながらやっているんですが、そこの予算と人員というのはどういう実態になっているのか、お伺いしたいと思います。
  151. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 御指摘のとおり、本所と育種場の五カ所がございます。予算平成十年度で十八億円、また定員は百五十五名でございますけれども、茨城県十王町の本所のセンターは五十五名、それから北海道は江別市に二十一名、それから東北は岩手県の滝沢村に二十六名、関西は岡山県の勝央町というところに三十二名、それから九州は熊本県西合志町に二十一名を配置いたしております。
  152. 大畠章宏

    大畠分科員 十八億円という話でありますが、ある見方からすれば大変な予算というふうに見る人もいるし、私から見れば、二千年の歴史を持つという日本の山を基本的に技術的に支えることに十八億円、あるいはまた、この研究成果をアジアに応用することができるのであれば安いものだなという感じもすごく持っているところでございます。  そういう中で、結局は、私は後ほど営林署の問題についてもちょっと申し上げたいと思うんですが、山といいますか、林野といいますか、森林といいますか、そんなものを一体どういうふうに林野庁としてとらえて今後やっていこうとするのか。  私は先ほど冒頭にまくら言葉のように申し上げましたけれども、明治の初期の先人たちが一生懸命山に木を植えた、その木が大きく育って、戦前、戦中、戦後、特に戦後の経済復興に大変な貢献をしていただいたことは皆さん御存じのとおりであります。そのころから林業という業というものが強調されたわけですが、林業ももちろん業として成り立てばそれにこしたことはありませんが、それは日本の自然というものをきちっと保ちながらの業でありまして、最近では、業のなりわいがなかなか難しいということで、山に対する関心が非常に薄れてきている。それが過日、私の茨城県でも、那珂川の洪水にもつながりました。  私は、山に対する認識というものを、金になるという発想から、そろそろ人間が、日本人が生きていくために必要な環境であるという意識にしていくことが必要だと思いますし、特に最近では、雨が降れば洪水、雨が降らなければ渇水ということで、ダムをつくろう、ダムをつくろうと言うんですが、やはり、昔の山というのは広葉樹とか何かもありまして、いわゆる水を随分山がためてくれたんですね。それで少しずつ流れ出てくるわけですよ。そういうことも含めて、私は、治山治水という発想が江戸時代からあったんだと思うんですが、それが林業ということに転換してからもうかるかもうからないかという発想になってしまって、何となく秩序が乱れたんだと思うんですね。  そこで、森林に対する評価とか、あるいは山、あるいは木材、国有林等々の位置づけというものを林野庁としてはどういうふうに受けとめておられるのか、お伺いしたいと思うんです。
  153. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 毎年日本の森林から生産される木材は約四千億、二千立方でございまして、かつて二十年代、三十年代に比べて生産量も三分の一程度に減少している。これは日本の木材の三十年代の自由化により、現在、外材が八割を占めるに至っておるという理由によるものでございます。  しかしながら、森林は、木材の杉、ヒノキという、これは日本の風土に合った建築用材としてなお大変重要であり、貴重でございますけれども、こういった木材の生産の場のみならず、先生ただいま御指摘のように、水源を涵養し、また洪水を防止するという国土保全のための大変重要な役割、また炭酸ガスの吸収源といったような国の地球的規模での環境保全の役割も大変重要になっておりますし、さらに、市民の憩いの場、レクリエーションの場、保健休養の場としても大変重要になっておる。  このように、林業の場としては、山村の人々あるいは都市の人々も、今木材は過剰でございます、二十年代、三十年代と比べていわば買い手市場でございますので、関心が薄れている面がございますけれども、多面的な、公益的な役割を持った貴重な地域として、森林が大変新しい観点から重要性がクローズアップされていると考えております。  私どもは、こういった観点から、もちろん木材の生産も重要でございますけれども、あわせて、国民に期待されている公益的機能を十分に発揮できる森林として健全に育てていただけるように、平成十一年度の予算案でも約五千億の予算お願いいたしておりますけれども、こういった予算を十分効率的に活用させていただきながら、多面的な役割を果たせる森林として健全に育てていきたいと考えておる次第でございます。
  154. 大畠章宏

    大畠分科員 今長官がおっしゃったことを具体的に実践していただかなければならないわけであります。  そういう意味でも、私は、一つは、ちょっと大臣にお伺いしますけれども、林木育種センターというものの位置づけ、先ほど長官からもお話がありました。民営化という一つの話が地元の方では流れたんですが、この林木育種センターというのはやはり民間で運営できるわけはないし、要するに利潤を生むということじゃないんですね、それも短期間に、投資したら来年利潤が上がるというものじゃないですから。したがって、こういうものこそ私は国がきちっと運営をしていくということが必要だと思っております。一部、一月の末のころに一つの方針が、ある方向性が出されたという話も聞いておりますが、改めて、この林木育種センターの位置づけ、あるいは日本の森林あるいはアジアの森林の研究センターとして、きちっと、研究者も安心してこの研究に没頭できるような体制を打ち出すべきだと思っておりますが、大臣からこの問題についてお考えをお伺いしたいと思います。
  155. 中川昭一

    中川国務大臣 今先生と長官とのやりとりを聞かせていただいておりまして、まさしく、日本のこれだけの急峻な国土を四季の自然豊かにしている木の役割あるいは森林の役割というのは、私も本当に極めて大きいものがあると考えております。  ある数字によると、その日本の森林が果たしている公益的な役割をお金に換算してみると、三十九兆円という数字になるという試算もあるぐらいでありまして、三十九兆円といえば国家予算の半分になるわけでありますから、そのぐらいのことを木がやっていただいていると。  一方、山は守っていかないと大変なことになるわけでありまして、先生先ほどお話ありましたように、昨年の数々の災害、特に私も那珂川のあの洪水、実際に見てまいりましたし、また水戸市がああいう水に埋まってしまった状態、これはやはり山が荒れている、そしてまた保水力が少しずつ失われてきているということ、これを何としても食いとめていかなければならないということで、農林水産省はもとよりでありますけれども日本人一人一人が木を大切にしていくという意識をさらに強くしていかなければならないと思います。  そういう我が国状況でございますから、そういう中での林木育種センターというものの位置づけというものは、やはりこれからもますます大きくなっていくだろうというふうに考えております。  したがいまして、ことし一月に決定されました省庁改革大綱においても独立行政法人化ということになっているわけでございますが、そういう位置づけの中で、今申し上げたような、また先生や長官を含めた、木の大切さ、山の大切さ、そして行き着くところは国土の大切さというものを守っていくという、その役割の中心を果たすこのセンターのさらなるその役割に対して、できるだけの対応ができるように頑張っていきたいというふうに考えております。
  156. 大畠章宏

    大畠分科員 大臣からそういう御意見といいますか考えを披瀝していただきましたけれども、先ほどの話だと、百五十五人の研究者がおりまして、一生懸命やっているんですね。本当に地味な仕事なんですね。派手ではありません。派手ではありませんが、こういう地道な仕事をしてくれる人がいるから、言ってみれば、日本の森林の基礎的な技術が伝承されていると思うんですね。  先ほど独立法人というようなお話をいただきましたけれども、この独立法人という形にすると、国は、まあ独立したんだからというような意識になっては困るわけでありまして、この独立法人という形の方向性を出されましたが、基本的にこういうものの財政的な裏づけ、あるいは一生懸命やっている研究者が不安に思うことなく研究に没頭できる、そういう環境は農林省がきちっとすべきだと私は思いますが、改めて大臣にその辺についてお伺いしたいと思うのですが。
  157. 中川昭一

    中川国務大臣 独立法人一般についてのお話になりますけれども、これは所管大臣がきちっといまして、そしてそれぞれの業務の目標というものを立てて、そしてまたそれについて定期的に業績を評価するということであります。この森林あるいは木というのは、先生も先ほどから御指摘のあるとおり、三十年、五十年、あるいは百年というタームのものでございますから、そういう意味で、これはまさしく農林水産省がきちっとバックアップをしていかなければ、一年一年、あるいは三年、五年というタームで物事が判断できる性質のものではないということは重々承知をした上で、農林水産省としても、このセンターについてそういう対応をしていきたいと考えております。
  158. 大畠章宏

    大畠分科員 私も何人かの方とお会いしましたが、本当にいい方が多いですね。本当にまじめです。最近、何か日本人、おかしくなったんじゃないかというふうに言われ、いろいろな事件が発生していますが、本当にまじめにこつこつとやっている方がおられますので、皆さんが自分の生活や将来に不安を持つことがないように、ぜひ大臣お話のとおりに長官の方でも実務として実行していただきたいことをお願いしておきたいと思います。  それではもう一つ。実はその山の問題で、高萩営林署と大子営林署というのが私の地元にあるんですが、この高萩と大子の営林署、あるいはまたその地域方々から要望書をいただいております。  高萩営林署に関しては、日立市、高萩市、北茨城市、十王町という、その近隣の市町村から、「この度の国有林野事業改革の一環として廃止が予定されている高萩営林署については、日立市、高萩市、北茨城市、及び十王町を含めた三市一町にわたる国有林を管理し、創設以来百年余に及ぶ長い歴史の中で、地域住民と多面にわたる深い関わりをもちながら今日まで地域振興の重要な役割を果たしていただいてきたところであります。」そういう中で、「つきましては、現下の行財政改革の必要性は十分に理解するところでありますが、当地域の諸事情を」十分考えて、「地域の林産業と山村の活性化、そして国民の森として国有林の充実を図るため、今日の改革により暫定組織となる高萩事務所を恒久的な組織として存続させることを強く要望する次第であります。」という、この要望書もいただいています。  さらに、大子の営林署の存続に関する要望書につきましても、この大子の全林野労働組合大子営林署分会の本間さんという執行委員長さんの名前で、これは大子議長に出されたものですが、同じような趣旨の要請書が出されております。この「大子営林署の廃止は地域にとって多くのマイナス面となる要素をもっております。つきましては、地域の森林・林業・林産業ならびに山村の活性化と、国有林の充実をはかるため、大子営林署の廃止反対運動に是非ともご理解をいただき、大子営林署をはじめ、東京営林局ならびに林野庁の各当局に対し、森林管理署に変わるべく何らかの恒久的な組織の設置を強く要請していただきたく存じます。」というような要請書も出されています。  関係お話伺いますと、今この大子営林署、それから高萩営林署等々のいろいろな動きがあるんですが、要するに、農林省としてどんな形で山を管理されようとしているのか。このままいきますと、先ほどの話じゃありませんが、もうかるかもうからないかという話、あるいは林野事業が大変赤字であるということもあるんでしょう、どんどん、何か採算が合うところまでというか、縮小していきましょうという動きがあるんですが、では、山はどうするかと。現在でも山がなかなか大変なのに、組織改編とはいいながら、高萩森林事務所では、定員内一人、定員外ゼロ、計一。一人で千七百ヘクタールぐらいを管理することになっているんですが、私は、今でもなかなか大変なのに、こういう体制をとって本当に山が守れるのだろうか。林野庁は守れても、目的は山を守ることですから、そういう発想から変えていかなければならないのじゃないか。これは国の財政的に大変厳しい状況がありますから、合理化というものも考えていかなければなりませんが、本来のやるべきものを、目標を見失いながらの改革というのは、何か間違えてしまうんじゃないかと思うのですね。  先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、まさに林野事業というのは五十年、百年の事業なんですよ。したがって、日本の財政危機、ここ十年ぐらい続いておりまして、ことしも大変ですが、今の対策がもしもおかしな形になれば、五十年後、百年後よりももっと早く影響が出るでしょうけれども、いろいろ問題が出てくると思うのです。  したがって、この問題をどういう形で今後進めようとしているのか。また、各所からそういう要請書も出ていると思うのですが、山を守れるのか。そして、山で今働いている方が随分、定員内とか定員外の方もおられるんですが、そういう方々がこれからどうなるんだろうかと非常に不安に思っていらっしゃるのですね。山の問題と働いていらっしゃる方々の問題、両方含めて、いろいろな仕事でたくさんお金がもうかる業界もたくさんあるでしょうけれども、山の男というのは本当にみんなこつこつとやっているんですね。そういう方々のことを考えた事業展開というのが必要だと思いますが、総合してちょっと長官にそこら辺のお話伺いたいと思います。
  159. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生指摘のとおり、山を守るという仕事は大変重要な仕事でございます。  本年の三月一日から国有林は新しい組織体制で発足させていただきますけれども、この新しい体制の中では、伐採あるいは造林といったような現場の作業は地元の民間の業者さん、森林組合等に委託して実施していただく、森林管理署等の職員の方は森林の巡視あるいは発注業務等を中心に実施していただくことになるわけでございます。そういった面で、管理業務が中心になりますので、森林を適正に守り管理する、見回るという仕事は、今までより濃密に実施できるようになる面があると考えております。  私ども、国の業務の効率性と国有林を適正に守るという課題、両方の課題にこれから取り組んでいかなければならないわけでございますけれども、幸いに、今いろいろな現場、確かに大変な面もございますけれども、交通事情あるいは情報通信の手段も昔と比べて大変よくなっている面もございますし、現場の業務はそういうことでお任せするといったようなこと等を踏まえながら、効率的な国有林の管理運営と、一方ではまた、私どもの自助努力により、国民や地域住民に期待される国有林として一層立派に守り育てていきたいと考えておるところでございます。  なお、先ほど、日本の木材生産量、二千立方メートルと御説明させていただいたようでございますが、正しくは二千万立方メートルということでございますので、訂正させていただきます。
  160. 大畠章宏

    大畠分科員 時間ですからこれで終わりますが、山の仕事というのもプロなんですね。そういう方がだんだん今少なくなってきて、高齢化が進んでいまして、非常に私は危惧しております。ぜひ、今仕事についている方が安心して仕事にいそしめるように、そして今長官からいろいろお話がありましたけれども日本の山をきちっと後世に残せるように、財政問題もあるでしょうけれども、本来の林野庁の仕事は何が基本なのかということを考えて頑張っていただきたいということをお願いして、終わります。ありがとうございました。
  161. 植竹繁雄

    ○植竹主査代理 これにて大畠章宏君の質疑は終了いたしました。  次に、中川正春君。
  162. 中川正春

    中川(正)分科員 民主党の中川正春でございます。私は三重県の中川なんですが、同姓のよしみで、親しみを込めて質問をさせていただきたいというふうに思います。  きょうお尋ねをしたいのは、生鮮食品の流通のかなめになっている卸売市場の問題であります。  これは私の地元でも以前からいろいろな形で関与をしておるのですが、最近特に、いろいろな審議会なりあるいは局長のもとにある協議会なりで論議を尽くされているわけであります。ここで改めて指摘するまでもなく、非常にさま変わりといいますか、縮んできておりまして、それと同時に、それぞれの荷受け、仲卸、ともに経営的に行き詰まってきておるということ、この状況を踏まえて、今度新しい促進法の一部を改正する法律案というのを用意していただいておるようなんです。  この中身を見ていると、これまで、この方向でやろうよ、まさにここで指摘されている方向でやろうよということでずっと努力をしてきた、してきたけれども、やはり構造的にこれだけ大きく基本的な部分が変わってきておるという流れに対して、これまでのフレームワークではなかなか限界があるんじゃないかなというぐらいに、我々の努力してきた結果、今感慨としてあるわけであります。  そこで、私、ちょっと一つ印象を持ったのは、このフレームワークも、言い尽くされたものをまた羅列しているというふうな感じを持ちながら受け取らせていただいたのですけれども、まずはそこのところから、どこで問題意識を持ちながら従来型のフレームワークを入れていこうとされているのか。言い方をかえたら、これまでの議論とどこが違ってきているのかということをまずちょっと整理をしていただきたいというふうに思います。
  163. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今先生の言われましたように、卸売市場を取り巻く状況が非常に変わってきているわけでございます。要するに、川上、川下とも変わってきているわけでございまして、川上でいえば産地の大型化の進展、また川下でいえば大型小売店の発言力の高まり、したがいまして、市場外流通が拡大しておりまして、市場流通と市場外流通との競争が常態になっているということでございます。その結果、卸売業者あるいは仲卸業者といった卸売市場関係者の経営が非常に悪化しているという状況でございます。こうした状況に対処するために、卸売市場法等の改正法案を今通常国会に提出して御審議いただきたいというふうに思っているわけでございます。  考えております方策は、具体的に言えば、まず一つは、先ほど申しましたように、悪化しております市場関係業者の経営体質の強化を図るために、卸売業者なり仲卸業者の大型化を推進するために金融上の支援措置を講ずるということ、また、卸売業者の財務の健全化のための措置を講ずるということでございます。  また、川上、川下の市場利用者のニーズに適切にこたえるために、市場それから品目ごとの実情に応じました取引方法の設定、あるいは情報の開示や取引規制の緩和などによります取引方法の改善などを図ることとしておるわけでございます。  従来の手法と特に違いますのは、従来、卸売市場といいますのはどちらかといえば規制手法でやっていたわけでございますが、今回はそれに対しまして、プラス誘導手法、金融等の誘導手法、プラス規制をむしろ緩和するということも取り入れながら、卸売市場の活性化を図っていこうということをねらいとしているものでございます。
  164. 中川正春

    中川(正)分科員 かつて三重県の場合は、中央卸売市場それから地方公設が二つ、合計三つあるのですけれども、その中央卸売市場で、同じ議論が出ました、もう六年から七年前ですね。  それで、荷受けが二つある、魚と青果で二つずつあるということから、これをそれぞれで一つにしていこう。これは今回の方針の中に出ている意図そのものなんですけれども、それで動き始めた。融資の問題あるいは補助金の問題についても、三重県で用意をしましょう、それで誘導していきますよということで努力をしたのですよ。ところが結果的には、もう一つ、その上部に大きな構造がありまして、ということは、三重県の場合だったら近くは名古屋市場でありますが、それぞれの地域で大都市市場というのがあって、そこにいわゆる大手の流通企業というのが位置していて、それとの関連の中で、縦系列で弱いところが吸収される。いわゆる経営体質は改善されたのだけれども、結果的には、大手の市場の系列の中に三重県も組み込まれていって、それのサテライトとして機能していくという流れになってしまった。  ですから、二つを一緒にできるということよりも、逆に、それぞれが大手の系列化の中でそれぞれサテライトとして機能していくというふうな結果に終わったわけであります。それがまだ続いておるのですね。  それと同じような形の流れが地方公設の方でも起きてきまして、数年来、そうした形で系列化されてきた。地方公設の場合は、片方は、それこそ縦系列の中での商売をやって、もう片方は、地場の資本でやるんだということで頑張っておる、その中での競争という流れになっております。  力関係からいったら、今、それをオープンにというか、こちらが誘導せずに、自由に経営体質を改善してくださいよ、こういうふうな形でいったとすれば、大手の中で系列化していくというのは、いわゆるマーケットの自然の流れなんだろうというふうに思うのですね。  そこのところはどういうふうに判断をされているのですか。
  165. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生指摘のように、特に大都市圏の中央卸売市場と比較しまして、集荷力なり販売力の弱いものが多い地方卸売市場は、取扱高の減少なり、あるいは関係事業者の経営悪化など厳しい状況に直面していることは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、全国的に見まして、地方市場にも重要な役割はあるわけでございます。  まず、全体として見て、地方市場の生鮮食料品の扱いは約五兆円でございます。約千五百の地方市場におきまして、五兆円の取り扱いを行っておる。また、その相手は、約二十万人の売買参加者を相手に行っておるということでございます。  したがいまして、これから、特に大都市圏の近郊の地方卸売市場につきましては、建て値市場に負けない魅力を持った地方市場として個性を増す、あるいは魅力を増す必要があるわけでございます。  そのためには、例えば地場野菜等の品ぞろえをするとか、あるいはリテールサービスを仲卸と連携しながら強化するとか、あるいは転送物といいますか、大都市物では扱えないような特色を持ったものを地域から、あるいは他の地方から見つけてきまして販売するとか、そういったそれぞれの創意工夫をする必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。  そうすれば、現在でも、特色のある地方市場はそれなりに伸びておるわけでございまして、そうした自助努力に対しまして、先ほど申しましたように、支援手法という形で支援をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  166. 中川正春

    中川(正)分科員 私の聞いた答えになっていないと思うのですね。  そうした形で、縦系列の資本の中に入っていっていいんだ、それでしか商売ができないんだというふうに割り切るのですかということなんです。
  167. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 それにつきましては、市場経済でございますから、それを規制するということはできないと思います。  要は、我々としましては、卸売市場が持っております力といいますか、機能をより発揮できるような、そういう生鮮食料品の流通構造あるいは流通市場をつくっていくというのがまず第一のねらいでございます。
  168. 中川正春

    中川(正)分科員 私は、それは違うと思うのですね。もし、その傾向が一つの流れとして出てきたら最終的にどうなるかというと、その辺の量販店対応、この後仲卸の問題も指摘をしたいと思うのですが、量販店対応があるわけですね。  今見ていると、やはり大都市の中央卸売市場での機能強化されておるだけに、青果でいえばそれこそ半分ぐらいかな、魚でいえば七割ぐらいかな、例えば三重県の場合だと、これが、県の中央卸売市場じゃなくて、愛知県へ直接行ってしまうのですよ。しかも、三重県の中央卸売市場が系列化されているということであるとすれば、それは愛知県のいわゆる中央の親会社の戦略の中で三重県は使われるだけであって、その辺の大きな流通形態というのは、やはり直で流れていく、その傾向をさらに助長していく。少し足らないものだけ中央で仕入れをするということ、あるいは地場産品だけやるというような機能に分化していくということなんですね。  それは、当初言われた特徴のある地方の公設市場を育てなければいけないという意図とは、荷受けの動かし方によって全く逆の結果を生んでいくんだということ、これを私はまず指摘しておきたいというふうに思うのです。  そこのところに対して、全体としてどういうビジョンを描くのか。これはこの研究会でも述べられていますけれども、スーパー、SCだけに頼っていくというのじゃなくて、町並みをどう活性化していくかということも含めて、農林省も実は新しいプランをつくっていただいているようですけれども、そういうようなものを前提にしていって、地方をもう一回活性化していこうとするのであれば、もう少し掘り下げた形で、この大型化、あるいは特に荷受け企業の健全化というのを考えていかなければならないということだと思うのですね。自由マーケットだから、自由資本だからそれでいいじゃないかというふうなことだけでは、これは全く逆の形になってしまうということ、これをまず指摘しておきたいというふうに思うのです。  もしコメントがあれば、大臣どうですか。
  169. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今言われました点は十分留意しながら、成立した後の改正法の施行に留意してまいりたいと思っております。  特に、先生も今言われました、いわゆる専門店、八百屋さん、魚屋さんといった専門店が活性化すること、またそのことは、日本農業なり漁業にとって非常に重要な役割を持っているわけでございます。それをつなぐのがまさに卸売市場でございますので、そういう大型スーパー等を中心にした流通だけではなくて、そういった流通と、それからまさにこういう専門店の流通、それをつなぐ、またそれをサポートする卸売市場というものも育てていきたいというふうに思っているわけでございます。
  170. 中川昭一

    中川国務大臣 今先生のおっしゃりたいことというのは、私は何か非常にわかるような気がいたします。  大型店のよさだけが強調されて、その結果、地方の市場が衰退していくということは、これは、大型店のいい点もあるんでしょうけれども、やはり魚屋さん、八百屋さんというものが地域社会の中で今こそ存在価値というものがあるというふうに私は思っております。それに対しての市場の役割というものが全国にそれぞれあるわけでありますから、大型化とか経営体質強化とかいう面での支援措置も必要でありますけれども、あくまでも、地域の流通の中心の役割というものを、地域ごとの特色を担いながらやっていかなければいけないという意味での存在意義というものは、私は、こういう時代であっても、少なくなるどころか、ますます強くなっていくというふうに思っておりますので、先生の御主張されておる地方卸売市場の存在意義、また、その中での経営形態にまでお触れになりましたけれども先生のおっしゃりたい御趣旨というのは、私自身十分理解させていただいたつもりでございます。
  171. 中川正春

    中川(正)分科員 さっきの話は仲卸にも通じることでありまして、現在、仲卸の数が多過ぎるというのは共通した問題点として把握をしていただいておるようですね。それを一つ一つ中の経営形態というのを見ていくと、一部の非常に特徴を持った強い業者は別として、ほとんどがスーパー系列の中の、いわゆる量販店系列の中の仲卸というもの、これが経営の軸になっている。ここは大丈夫だよということですね。それを持っていない、本来の業務というか、値段なり集荷なりあるいは情報提供なりというのを本当に、さっきの話の専門店へ向いて卸していく、その役割を担わなければならない仲卸についてはほとんどだめなんです、これは。やっていけないという流れが出ているのですね。  そういうようなことも踏まえて、ただ、いわゆる金融上の支援措置というのがあまねく、市場で活動している人たちが合併したり、あるいは荷受けが合併したりしていく、それで体質強化していくという流れの中であまねく適用できますよという流れは、この一つ一つを見ていく中ではやはり峻別していくべきだというふうに思うのですね、全体に対してというのではなくて。どちらに誘導していきたいのか。本当に地方での公設なり、あるいはそれぞれの県で持っているものなりというのを生かしていこうとするのであれば、その峻別というのをもう一工夫して入れていただきたいというふうに一つは思います。  それからもう一つは、両方が中途半端というか、市場の規模、これがどっちにしたって中途半端なんですね。三重県の例を見ていても、それぞれ小さな都市が幾つも分散している形態の中で、真ん中にあるのが、いわゆる県庁所在地にあるのがたまたま中央卸で、県がやっていますよ、両端にあるのが市を中心にした地方公設ですよ、こういう形態なんですね。  昔の開設した当時の議論を読んでいますと、この真ん中にある市場を開設させるためにいろいろ理屈をつける。理屈をつける中で、例えば市場の範囲、これが影響していく範囲がどの程度かというと、本来、申請が上がったときには、地方公設の地域も含めた全体像の中でこの市場が機能していきますよという形でその規模を、言うたらそういう基準があったから、その基準を満たすためにそういうへ理屈をつけて補助金を確保した。だから中央ができた、こういうことなんです。その後、地方公設が順番にできてきた。こういうことでありますから、これは全体からいっても、今沈んでいく中で、余計にいわば規模的には問題が出ているということなんですね。これは三重県だけの特徴ではなくて、それぞれ同じような経過の中でつくられていったのだろうと思うのです。  それを整理統合していきますよという報告が出ていますね。そのときに、思い切った形で、市場機能を残していくというものはその市場だけじゃなくて、それからもう一つ枠を超えた形、今方々でやり始めていますけれども、直接小売に手を出していくとか、それから町の中の繁華街と兼ね合わせた形で町の活性化につないでいくとか、そういう一つの工夫があっていいと思うのですね。  もう一つの、地方公設などは今の規模で本当にやっていかなきゃいけないのだろうか、それよりももっと違った、いわゆるにぎわいとか、かいわいとか、新しい都市基盤の中でつくり上げていく流通機能とか、そういうようなものの中でまたスーパーや百貨店とは違う形の市場というか、そういうものを一つの流通のあり方として、生活を楽しんでいく、そういう流通のあり方として模索をしていくというふうな、そんな思い切った新しい切り口の整理があっていいように思うんですね。  そこが、この今の議論を聞いている限り、整理して出てきていない。どっちかというと、ただただつぶすとか合併するとか、規模が小さくなってきたのだから、その規模も小さくして経営の健全化を図っていく、担い手を小さくして健全化を図っていくという程度のことしか出てきていないような感じがするんですね。それについてはどういう認識をお持ちなのか。     〔植竹主査代理退席、主査着席〕
  172. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生指摘がありましたように、二つの方策があるだろうと思います。  一つは、特に地方卸売市場につきましては、流通が広域化しておりますし、またインフラも整備されてきております。したがいまして、この地方卸売市場の統合、大型化を図っていくという方向が一つでございます。  もう一つは、今、後段で先生指摘がありましたように、要するに、地域の特色を生かした地方卸売市場の展開ということでございます。例えば、先ほどちょっと申し上げましたけれども、京都の南部市場などは京野菜という地場のものを育成しておりますし、また、岩手のメフレではオゾンを使った衛生管理を売り物にしているということでございます。また、下関の唐戸市場ではファーマーズマーケットというような形で、先生まさにおっしゃったような、いわゆる伝統的な仲卸、卸以外に漁民が直接売る、あるいはそこに外食店等から買い出しに来る、あるいはさらに、そこで食事もできるような場所もつくっていく、そういう展開も見られるわけでございます。まさに、地域地域の特色に即しました市場整備というものをこれから進めていきたいというふうに思っております。
  173. 中川正春

    中川(正)分科員 ちょっと時間が足りなくなってきたので、またこれは時を改めて議論をしたいと思います。  それで、もう一つだけ、ちょっと完全に別なテーマで、WTOの米の関税化の問題で一つだけ確認をしていきたいというふうに思うのです。  これで関税化していって、当初の関税率というか金額そのものについては、今、頑張っておっていただく、できるだけ国内に対して影響の少ない形で精いっぱいこれをやってください、これしかないと思うんですね。それに期待をさせていただきたいというふうに思うのですが、それ以降ですね。  私は前の生産者米価を運動していたときに、鉢巻きして、絶対に上げるよ、こうして政治が農民に対して語りかけていた、私もその一人だったのですが、その教訓からいくと、今度はそれをやったらだめなんじゃないかと思うんですね。そうじゃなくて、逆に、最終的には生産者米価はここまで行きますよ、だから覚悟してください、それについて、例えば減反についてはこういう流れにしていきましょう、それを期限的にこれぐらいの期限の中で流動化させていきましょうというふうな、いわゆる正直な語りかけというのがあって初めて、農民の方もそれに対しての腹の決め方が準備ができる。恐らく、私の地元でもこの議論を出しますと、もう農業者の方がしっかりその腹のくくり方をしているようでして、まだこちらから情報が出てこないのが逆に政治不信というか農政不信というか、そういうものにつながっているというふうな気がいたします。  そういう背景の中で、どうなんですか、どれぐらいのものになって、あと最終的に米の値段というのはどれぐらいの腹づもりをして対応していかなきゃならないか。それに近づいていくのに減反政策はどうなるのか。最終的に米を幾らでつくったらいいのか。これは大臣、改めて返事をいただきたいというふうに思います。
  174. 中川昭一

    中川国務大臣 先生御承知のとおり、今は外国との間の管理はきちっとやりますけれども、また全体の需給調整というものは農林水産省、食糧庁の仕事でありますけれども、その中での価格決定というものは、政府が買い入れる政府米だけでございまして、これはあくまでも備蓄というものに主眼を置いたもので、昨年なんかは非常に微々たる量しか買い上げなかったわけでございます。大半が自主的な価格形成がされておるという状況でございますから、今後、米価が一体幾らになっていくかということについては、もちろん政府米の価格の決定方式というものはございますけれども、それも自主流通米の変動比率を加味したものになっておるわけでありますから、そういう意味で、今後どうなっていくかということについて予測をすることすら避けなければなりませんし、また予測することは大変不可能だと思います。  ただ、一つ申し上げられることは、今の需給バランスを、少なくとも、安定的といいましょうか、需給バランスのとれた状況に、何としても、昨年、ことしの二年間の緊急の需給調整の対策でもって、再来年からは生産者の皆さんに大変つらい生産調整というようなことをできるだけ軽減した形で、需給バランスがとれた形にしていきたいということで、現時点におきましては、昨年、ことしと、生産者の皆さんの御努力による生産調整によって、安定的なというか、本来のバランスのとれた需給関係に戻していくために今全力を挙げているということでございます。  食糧庁長官の方から何かあれば。
  175. 中川正春

    中川(正)分科員 時間が来たようでございますので、これぐらいにしますが、もっと直接的に語りかけていいんじゃないかなと思うんですよね。特に、我々の世代が新しい政治を求めていくということ、これは大臣に対しても、国民の期待があるわけでありますから、ちょっとそこのところは腹を据えてしっかり語りかけるということをぜひやっていただきたいというふうに思います。  以上、希望を申し上げて、私の質問を終わります。
  176. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後三時三分散会