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1999-02-05 第145回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月五日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       小澤  潔君    越智 通雄君       大原 一三君    加藤 卓二君       亀井 善之君    河村 建夫君       岸田 文雄君    斉藤斗志二君       阪上 善秀君    島村 宜伸君       園田 修光君    津島 雄二君       中野 正志君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    牧野 隆守君       村田 吉隆君    村山 達雄君       森山 眞弓君    谷津 義男君       横内 正明君    岩國 哲人君       上田 清司君    上原 康助君       生方 幸夫君    岡田 克也君       小林  守君    肥田美代子君       細川 律夫君    横路 孝弘君       吉田  治君    池坊 保子君       石垣 一夫君    大野由利子君       長内 順一君    木村 太郎君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       西川 知雄君    加藤 六月君       鈴木 淑夫君    西村 眞悟君       石井 郁子君    木島日出夫君       佐々木陸海君    春名 直章君       平賀 高成君    北沢 清功君       畠山健治郎君    濱田 健一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         自 治 大 臣 野田  毅君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君  出席政府委員         内閣官房長官 鈴木 宗男君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         証券取引等監視         委員会事務局長 舩橋 晴雄君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         郵政省郵務局長 濱田 弘二君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         建設大臣官房長 小野 邦久君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省行政局選         挙部長     片木  淳君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行理事) 小畑 義治君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   森山 眞弓君     阪上 善秀君   谷津 義男君     園田 修光君   肥田美代子君     上田 清司君   横路 孝弘君     細川 律夫君   大野由利子君     池坊 保子君   草川 昭三君     長内 順一君   斉藤 鉄夫君     石垣 一夫君   志位 和夫君     平賀 高成君   不破 哲三君     春名 直章君   北沢 清功君     畠山健治郎君 同日  辞任         補欠選任   阪上 善秀君     森山 眞弓君   園田 修光君     中野 正志君   上田 清司君     肥田美代子君   細川 律夫君     横路 孝弘君   池坊 保子君     大野由利子君   石垣 一夫君     斉藤 鉄夫君   長内 順一君     木村 太郎君   春名 直章君     佐々木陸海君   平賀 高成君     石井 郁子君   畠山健治郎君     北沢 清功君 同日  辞任         補欠選任   中野 正志君     谷津 義男君   木村 太郎君     草川 昭三君   石井 郁子君     志位 和夫君   佐々木陸海君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
  3. 岩國哲人

    岩國委員 おはようございます。民主党を代表いたしまして質問させていただきます。  まず最初に、文部大臣に、日本教育あり方について、文部大臣の率直な御意見を伺いたいと思います。  戦後日本が、あの敗戦の後、ドイツに比べて全く資源もない日本が、ドイツと同じように、あるいはそれ以上の速さでこのような経済的に豊かな強い国になれたのは何のおかげだったのか。もちろん、戦争がなかったという幸運に恵まれたこともありますけれども、私は、一にかかって人的な資源だったのではないかと思います。  鉄鉱もなければ石炭もない、何にもないようなところから、一九四五年のあの敗戦の後から急速な経済復興をなし得たのは、鉄鉱もなければ石炭もない、しかし、それにまさる人間という資源があったからではないかと思います。そういう教育された人的資源があったからこそ、今の日本も、そして今までの五十年間の経済復興もなし得た、そのように思っております。  そういう人間という資源、これは二十一世紀、いろいろなこれからの変動はあると思いますけれども、やはり日本にとってはかけがえのない資産であり宝であり、またそれだけに、教育に対する投資というものはしっかりとやっていかなければならないと思います。  私は外国で勉強したことはありませんけれども、私の二人の娘は、ロンドンで、パリで、ニューヨークで、いろいろなところで教育を受けてきました。そういうことを通じて、私は外国教育を見る機会を得ました。そういう各国の教育制度との比較から見ますと、日本教育については、すぐれた点もありますけれども、まだまだ足りない点もある。  これは大臣がかねがね指摘していらっしゃることと同じことでありますけれども、これからの日本が、国際的な貢献というものについて、お金とか技術とか貿易ということだけではなく、人的な貢献を要求されておる。これは、国連職員が、例えばお金は出しても国連職員として働く日本人がいない。優秀な日本人がいないかといえば、優秀な日本人がいながらも、人の面で汗をかこうという態度が足りない。  それは、例えばクウェート湾岸戦争のときにもそのようなことが見られました。日本はどこの国よりもたくさんのお金貢献しながら、クウェート政府がアメリカの新聞で、ヨーロッパの新聞で、世界の友よありがとうという感謝広告を出したことがあります。私は、当時ニューヨークにおりましたから、ジャパンという名前を一生懸命探しました。ありませんでした。それから、一つか二つの国が漏れておるということで、クウェート政府はもう一回出し直したんです。私は、それが日本だと思ってもう一度探しました。やはりありませんでした。日本という国は、お金は出してもクウェート人たちからすっかり忘れられておる。それは、人の面での貢献が足りないからだろうと私は思います。  決して私は、日本の自衛隊をあそこへ派遣すべきだったとかいうことを言うわけではありません。しかし、いろいろな印象の積み重ねとして、日本お金は出すけれども人を出さない、顔を見せない。しかも、教育の点ですぐれているにもかかわらず、それだけの人的資源経済の面では十分に活用しながら、国際貢献ではそれが十分に行われていないという点は、大変残念に思います。これから期待される環境の保全の面でもそうです。平和維持の面で、あるいは先ほど申し上げましたが、国連職員の面で、私は、これからはもっと国際貢献できる教育が必要だと思います。  そういう大臣がおっしゃった心の教育というのは、やはり自分けが幸せになろうという心ではなくて、人の幸せを自分の幸せとできるような心の教育が必要じゃないでしょうか。私は、そういった点から、日本義務教育は少しおかしいんじゃないかと思うんです。義務教育という言い方をしながら、義務について教えることはほとんどない。義務教育といいながら、中身は権利教育ばかりやっているわけです。  私は、日本憲法にも少しおかしいところがあると思います。ですから、教育という観点からも、日本憲法は少し書き直し、見直しもしなければならないことがあります。それは、権利を主張する国民を育てるのではなくて、義務を実行した人間けが権利を主張できるんだというごく当たり前のことが教育の中で行われていないからじゃないでしょうか。  この義務教育という言葉言い方もおかしいと思いますけれども、義務教育といいながら義務を教えないで権利ばかり教えている、このような指摘に対して、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  4. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変御正論をおっしゃっていただきまして、まことにありがとうございます。  まず、国際貢献ができる人材を育てるべきであるということは、このところの中央教育審議会並び教育課程審議会等々でも主張されてきていることでございます。心の教育の中では、単に自分権利を主張するということではなく、人を思いやる、国際協力をしていくというふうな人材を育てることも、特に生きる力という言葉の中で定義しております。これをどんどん伸ばしていきたいと思っています。  そして、義務教育という言葉が極めてどうも誤解をされているところがございまして、教育を受ける、教育をされることが義務なんだというふうにお考え子供さんたちがおられるので実は私もびっくりしたんですが、そうじゃなくて、お父さんお母さん、国、地方自治体子供たちにきちっと教育を与えるべきだという意味での義務教育であるということでございます。  しかしながら、子供たちがしっかりと、自分たちお父さんお母さん地方自治体や国から、あるいは地域社会から受けているいろいろな恩恵に対して、それにこたえるべき義務があるということをきちっと教えなきゃいけないと私も思っております。  そして、現に、調べてみましたけれども、指導要領の中には、憲法等々を教える、社会を教える際に、やはり義務をきちっと守るべきだ、権利とともに義務を守るべきだということを教えてはいるのですが、なおこの点を強く今後も指導してまいりたいと思っております。
  5. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございました。  ぜひとも早急に、そういった指導要綱等についても、弱いところは強めるとか、方向がずれている場合はもっと軌道修正をしていただいて、義務教育というのは日本人としての義務を徹底的にまず教育するんだ、それを学んだ人だけが権利を主張できるという、ごく普通の日本国民を私は教育していただきたいと思います。  例えば、一般に、選挙のときも、投票権投票するということは権利ではありますけれども、一面、それは国民としての義務であるということを先生は教えておられるのかどうか。投票率がどんどん下がる、あるいは選挙に行かないことがナウいことだ、そのような若い人たちが出てくるのは大変嘆かわしいわけです。  もちろん、我々が選挙に出ているから投票率が上がることを期待しているというその気持ちもあるかもしれませんけれども、投票率を高めること、それから投票に行かないことは国民としての義務を果たしていないことだというごく素朴な義務観念というものを、私は学校でもっとしっかりと教えることが必要じゃないかと思います。ぜひそういった本来の義務教育に帰っていただきたいということが一つ。  そして、次に、質問をかえまして、私は、校舎あり方につきまして、もっと木づくり校舎を推進していただきたいと思います。  私は、小学校も中学校も高校も、全部田舎木づくり校舎でした。自慢しているようですけれども、そのころは木づくりしかなかっただけの話です。今それは全部コンクリートに変わってしまいました。確かに立派ではあります。しかし、木づくりのあの素朴なぬくもり、やわらかさ、木の香りというものは完全に失われてしまいました。そして、コンクリート校舎の中でけがをすると、そのけがはいつまでも、すねの傷は消えていかない。木の廊下で転んでも、そういうけがというのはすぐに治ります。木づくり校舎が持っているそういう感性を育てる、あるいはそういったぬくもりのある人格を育てる、上杉大臣は、殺菌効果もある、こういうことを答弁で答えていただいたこともありますけれども、私は、木の校舎をもう一回見直すべきではないかと思います。  ある動物学者実験によりますと、同じ犬のきょうだいを木の犬小屋コンクリート犬小屋、別々で育ててみる。木の犬小屋で育てた犬の方がはるかにいい性格に育つ。犬でさえというと大変犬に失礼ですけれども、ましてや人間の子。  私は、出雲市長、二期六年間、コンクリート校舎に一切判こを押しませんでした。六年間、私の判こコンクリート建物で汚れることはなかったんです。そういう木のぬくもり、木の香り、木のやわらかさ、これこそ私は日本人のいい性格を育てる原点ではないかと思います。そういう日本人感性は、木の校舎で、木づくり教室で育ちます。コンクリート教室から育つのはいじめの感性だけじゃないでしょうか。  大臣木づくり校舎に対する御所見をお伺いいたします。
  6. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まさに私も同感でございまして、まず、子供たちがゆとりを持ってゆっくりと勉強できる、楽しく勉強できる、特に楽しく学校に行けるという環境をつくっていかなければならない。そのためには冷たい環境はいけない、余り四角四面はだめだというのが私の考えでございまして、岩國先生のお考えに非常に近い考えを持っております。  ただ、防災、防火が特に問題でございまして、これとの調和ということが大変大きな問題でございます。  文部省といたしましては、もう既に昭和六十年に、学校施設に積極的に木材を使用するよう都道府県教育委員会に対して通知を出しております。その後、木造建築の、木造建物整備を促進するため、補助単価の改定や補助基準面積引き上げ等を行うとともに、内装などに木材を使用した宿泊施設和室等整備する木の研修交流施設整備事業昭和六十一年度から開始しております。  平成十一年度の予算案におきましても、生徒の心の居場所となる心の教室カウンセリングルーム整備学校内で楽しくゆったりと本に親しめる読書スペース整備につきましても、材木を使った木の研修交流施設整備事業の中で計上しているところでございまして、先生のお考えもここで実現できるように努力をさせていただきたいと思います。  この前、実は出雲に参りましたときに、先生がお建てになった木の時計台を見てまいりました。
  7. 岩國哲人

    岩國委員 大臣、わざわざ出雲まで御視察いただきまして感謝いたします。  私の木づくり校舎推進ということに御共鳴いただきまして大変ありがたく思いますけれども、もしそれを本当に大臣も同感していただいているんであれば、答弁書を読まないで、そういう部分だけでも御自分言葉で言っていただければなおよかったな、私はそのように思います。  それから、最近、学校規模学級規模についての議論がいろいろ行われております。これは、行政コストの削減、教育も最小のコストで最大の効果を上げなければなりませんから当然のことでありますけれども、そういう中で学校規模はどれぐらいがいいのか、学級規模はどうあるべきなのか。  我々は戦後に教育を受けましたから、戦後は学校規模も大きかった、それから学級規模も、五十人の教室でもあふれそうだった。私は、そのころの教育が一番よかったと実は思っております。最近は、四十人に減らせ、三十人に減らせ、そのような少子化傾向の中で、家でも二人きょうだい学校へ行っても友達は三十人、本当にそういうところでいい子供は育つんでしょうか。  私は鬼平犯科帳が好きで鬼平言葉をよく引用しますけれども、鬼平はこういうことを言っています。女はすべて男の磨き砂、人生の中ですべての女は男の磨き砂だと。これは逆に言えば、男性は女性の磨き砂かもしれません。  言葉をかえて言えば、人を磨くのは、やはりたくさんの人間とのつき合いの中から磨かれるのであって、先生が何人に教えるかという、その効率を重視した教育の中から私は本当にいい子は教育できないと思います。むしろ五十人ぐらい生徒がいて、にぎやかに、もみ、もまれ、その中から自然に性格はでき上がっていくんじゃないでしょうか。  学校先生にしても、卒業してから卒業生会同窓会のときに、三十人しか集まらない同窓会より五十人集まる方がはるかに先生としても幸せでしょう。私は、教師というのは、普通のサラリーマンとは違って、卒業した卒業生からいつも喜びを返していただくすばらしい職業だと思っています。私たちもそうしてきました。そして、多くの先生はそれにこたえてくれました。  先生喜びというのは、退職してからもいつも卒業生が訪ねてくれる、同窓会に呼んでくれる。しかも、三十人じゃなくて五十人の顔がそこで見られる。言ってみれば、これは心の年金です。心の年金の額が五十人から三十人に減る方がいいのか、五十のいつも幸せな笑顔を見ることができる方がいいのか。本当に教育に熱心な先生は、三十人に生徒の数が減ることを喜んでおられるでしょうか。私は、その辺について、五十人のにぎやかな学校の方がいいんではないか、そのように思います。  いろいろ教育専門家の方は違った御意見もあろうと思いますし、また教員の先生方の御意見もあるかもしれませんけれども、私は、そういう田舎で育ち、そういう立場で見ていましても、やはりああいう木づくり教室で、大勢友達がいて、たたいたりたたかれたり、そういう中で先生が指導する、それが教育原点として一番いいんではないか、そういう多くの友達に磨かれるという、それも教育だ、先生から教わるだけが教育ではないというふうに思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  8. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘の点、大変ありがとうございます。  両面あると思うんです。例えば、大勢で勉強した方がいい、体育なんかも大勢の方がいろいろなチームをつくりやすい、こういう問題が一つあります。それからもう一つ、逆に、私の専門でございますけれども、理科の教育などは、実験をやる、こういうときには、むしろ十人とか二十人とかごくごく小人数の、少なくともグループに分けてやった方がいい。こういう両面があると思います。  今度二〇〇二年より導入いたします完全学校週五日制に向けて新しいカリキュラムでいくことになります。その際に、一体どういうふうなクラスの編制、どういう教え方などがいいだろうかということを専門家方たちを交えまして今検討を始めているところでございます。そこの中で先生のようなお考えもまた出てくるかもしれませんし、逆にもっと減らせというお考えも出てくると思います。それをさらに、財政的な裏づけ等を図りながら検討してまいりたいと思っております。  ただ、校長先生は、やはり一つ学校子供たち名前を全部覚えられるぐらいが全校としてはいい規模かなというふうな個人的な考えも持っております。
  9. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございました。  私は、学級は大きく、しかし学校規模は小さい方がいいと思います。このごろは、学校統合と称して随分遠いところまで通ったり、だんだんそれぞれのコミュニティーとの縁が、距離が遠くなれば縁が遠くなり、心は離れていきます。私は、できるだけ小さな学校、大きな学級、これが地域との交わりが一番密度が濃くて、そしていい子が育つ、私の独断と偏見でありますけれども。これは必ずしも民主党意見ではありません。  その点は、教育については、言いわけをするようですけれども、私は一人一人の議員の方は全部違った御意見を持たれていいんではないかと思います、何も党によって一々拘束されるということじゃなくて。先日も、伊藤公介委員も随分自由な意見をおっしゃっていました。あれは私は自民党の意見だとは思って聞いておりませんでした。そういった点は自由に意見を闘わせていただきたい、そういうふうにお願いしたいと思います。  そういった点で、この間、伊藤公介委員がたまたま、パソコン教育英語教育重要性指摘しておられました。私も、ニューヨークロンドンパリと、娘たちと一緒に暮らし、そういう近代的な社会に住んできたつもりではありますけれども、私は、余り学校の早期の時期に英語教育だとか、やれ、日本語もろくすっぽできないのに英語をさせるとか、それからパソコン教育をやるとか、英語ぺらぺら、パソコンぱちぱち、こういうふうな日本子供を見るというのは何か嘆かわしい気がするのです。  私は、もっと子供たちは、英語よりも豊かな日本語をしっかりと使える。英語は少々下手でもいいと思うのです。本当に英語を必要とするのは、メリルリンチかモルガンに勤める何人かの人間じゃないですか。きちんとした日本語を使うような国民を育てなければ、三十年後の日本の国会の中で、今以上の言葉の混乱がもっともっと起きると思うのです。ガイドラインの問題にしても、何か英和辞典と広辞苑を持っていかないと、その場で意味がよくわからないような議論が行われておりますけれども、きちんとした日本語を教える、英語は全然不要とは言いませんけれども、英語教育パソコン教育を重視し過ぎるのは私は間違いだと思います。  英語よりも日本語、パソコン教育よりも土に親しんで、あるいは大根の一本もつくる、トマトの一つもつくる。夏のトマトが水を欲しがっている、その表情がわかるような、ナスビがもう一杯水を欲しいとわかるような、私は小学校二年から高校三年までずっと百姓をやっていました。私は、そういう野菜の顔がわかること、それを幸せだと思いました。  そういう子供たちを育てることが大事であって、パソコンなんか使えなくても、そういう心のある、大臣も先日心のある教育とおっしゃいました、私は、そういうことを日本教育指導要領の中に具体的に、わかりやすく、一日も早くそういう教育を実行できるように変えていっていただきたい、そのように思います。  もし大臣の御所見がありましたら。
  10. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今の中にいろいろな御感想が入っていたと思います。  語学力は、確かに、一方では若いときにヒアリングと発音は覚えておいた方がいいと思いますね。これは明らかです。私は二十九になって初めてアメリカで働くわけですが、発音が、LとRの違いがわからない、これはだらしないですね。もっとも、フランス人はHが発音できないから、ざまを見ろと私は言うのだけれども、逆に。ですけれども、これはやはり若いうちに身につけておかなければいけません。文法は後でいい。  それから、もう一つ、私が切歯扼腕をするのは、国際会議に出ていって日本の若手がどんどん物が言えなかったことです。しかし、この十年は極めて積極的に彼らが発言してくれるようになりました。これは私は大変喜んでおります。我々の世代とは違う、この点は明らかに日本英語教育も進んできたと思っております。  自然についてでございますが、教科書の指導要領をつい昨年の十二月に出しました。これは平成十四年、二〇〇二年より学校完全週五日制が置かれたときのものでございますが、そこでははっきりと自然の勉強の重要性について強く書いているところでございます。既に、自然体験は極めて重要だという認識から、文部省としてもいろいろ指導したり、お願いをしたりしております。そして、既に自然体験が随分学校で盛んになってきたと思っております。  特に、今農林水産省や環境庁と協力をさせていただきまして、田んぼを子供たちが自由に遊べるようにしていただくとか、巨大都市の子供たちが農家に行って泊まるという経験をするようにしていただくとか、あるいは国立公園等々の原始林をレンジャーの後ろをついて子供たちが観察できるようにしていただく、こういうふうなことをお願いしているところでございまして、長期自然体験村とか子どもパークレンジャーなどという自然体験活動の振興を図っているところでございますので、どうぞ御援助賜れれば幸いでございます。
  11. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございました。  私の家族の例を引いて恐縮ですけれども、パリの小学校、その小学校というのは英語とフランス語と二つの言葉教育しておりました、小さいときから英語、母国語とできるように。  その学校はもう一つ変わったことをやっていました。毎週水曜日になると、近くのムドンという林の中へ行って、森の中で一日教育をして帰ってくる。あのパリコンクリートでつくられたような都市の中で、自然と少なくとも週一回は触れ合って、そこで帰ってくる。私は、そういう自然との触れ合いというものを失おうとしないように努力している、そういう学校教育はすばらしいなと思いました。  そういう思いから、私は木のお医者さんをつくったことがあります。今でもそれは日本の制度として残っておりますけれども、人間が病気をしたらお医者さんがいる。動物が病気をしたら獣医さんがいます。木にも命があります。その命のある木にだけはお医者さんがいない。樹医制度をつくり、今全国で四百人の樹医さんが誕生しております。  たったそれだけのことで小さな子供にもすぐにわかります。樹医さんが木を診断して、そして木は元気になる。木にもお医者さんがいる。木にも僕たちと同じように命があるんだ。木に命があるということを知ってしまった子供たちは、木をいじめなくなるんです。身の回りの木にも緑にも命がある、そういうことが大切ではないかと思います。  小学校の夏休みになりますと、木の塗り絵ノート、そういうものを教育に使っております。五十の代表的な木の種類を塗り絵にして、いつ、どこで見つけたか、そして木の名前を覚えて、五十人の木の友達をつくって夏休みが終わります。何のためにそんなことをしているのか。人間人間友達になるときに一番最初にやることは、相手の名前を覚えることです。相手の名前を覚えられなかったら、その人とは友達になることはできない。出雲子供には木の名前を覚えてもらって、木と友達になる、そういう教育が私は必要ではないかと思います。  大臣もおっしゃったように、私は、学校先生よりも偉大な先生は、自然こそ最も偉大な教師ではないか、そういう原点をもっと日本教育にもう一回持ち込んでいただきたい、それを強くお願いいたします。  最後に、教育について、学校に日の丸を掲げている学校が最近少なくなりました。アメリカでも、いい学校は、特にプライベートで教育に熱心なところは必ずアメリカの国旗を掲げております。それは、その学校で勉強する、学ぶことが立派なアメリカ人になるということへ直行しているからです。よい国民になるためには自分の国の国旗を常に尊敬する、私はそれも大事な教育原点ではないかと思います。  学校の国旗掲揚とか国歌に対する、国歌に対してはまた別の意見もあろうと思いますけれども、国旗については、いろいろな歴史を経て、そして今もなお日本を代表するものであります。小さな子供のうちから日本の国旗を愛し、そして誇りに思う、どこの村へ行っても、日本じゅう必ず小学校、中学校にはきちっと日の丸がかかっている、私はそれは美しい風景だと思うのです。そういう美しい、そして外国に誇れるような、そのような小学校、中学校でありたいと思います。  私がロンドンに赴任しましたときに、二人の娘を学校に行かせるときに、教育のいい学校を探しました。家主さんが一生懸命探してくれた。ミスター岩國、あそこにパブリックスクールがある。私の貧弱な英語の知識では、パブリックスクールというのは公立学校。公立学校で大丈夫かなと思いましたら、パブリックスクールというのが実はイギリスでは私立学校。そして、なぜわざわざ私立学校をパブリックというのかと聞きましたら、それは将来、その学校で学んだ人たちが、パブリックのために奉仕する人、パブリックサーバント、あるいは政治であれ経済であれ行政であれ、国や社会のために役に立つ人を教育するからパブリックスクールだと言う。私は、こういう精神も日本には少し欠けているんじゃないかと思うのです。自分のために、自分の就職のために、それは必要なことかもしれませんけれども、そうしたよりよい公人を育てるという誇りを持った学校がもっともっと私はふえていいと思います。  小学校や中学校にしましても、最近の世田谷の小学校のある例ですけれども、卒業生が百人、そのうち女子生徒は五十人。五十人のうち四十八人が私立中学へ願書を出したのです。残り二人はなぜ出さなかったのか。それは転勤のために出さなかったというだけなんです。実質的に、五十分の五十が私立学校へ出した。そして、もちろん公立中学校はなくなったわけではありません。私立中学校に入れなかった子供たちは公立中学校へ行く。私たちの小さいころは、私立学校というのは公立学校へちょっと行けないような、失礼な言い方になりますけれども、そういうイメージが一時あったことがあります。今は何か逆になっていますけれども。  ですから、日本の小学校、中学校の民間委託とか民営化ということも、先ほどの義務教育とも絡んできますけれども、規制緩和とかあるいは教育におけるビッグバンの一環として、将来的に民営化とか民間委託ということを大臣はお考えになっていらっしゃるかどうか。それを最後にお伺いして、教育に関する質問を終わりたいと思います。
  12. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、国歌・国旗でありますが、まずは、国歌・国旗というものが大切であるということを今強く教えるようにお願いをしているところでございます。そして、少なくとも卒業式、入学式においてはきちっと国歌を歌い、国旗を掲揚するようお願いをいたしております。ただ、毎日出すかどうか、これは各地方自治体学校に任せてありますので、この点についてはさまざまな学校での御判断にまっているというのが現状でございます。  それから、私学にするかどうかというふうなことに関しましては、まず、初中教育はやはり公立が非常に多い、まだ私学にたくさんお願いをしているという段階ではありません。しかし、高等教育に関しては、既にもう七五%の高等教育機関が私学でございます。そして七五%以上が私学で高等教育を受けているわけです。これは多分日本だけだと思いますね。イギリスは国立が全部です。ドイツは州立です。(岩國委員「中学校、小学校です」と呼ぶ)ただ、小学校、中学校はかなりイギリスは私学が頑張っています。おっしゃられるようにパブリック。そういう意味で、私学に関して、初中教育における私学をどうするかということは、さらに進行していくというふうなことも考えられると思っております。
  13. 岩國哲人

    岩國委員 どうもありがとうございました。  今後とも、日本教育のあるべき姿、私たちも大変期待しておりますし、大臣がこの委員会でいろいろ御答弁いただいたことを着実に、また強力に推進していただくことをお願いさせていただきます。  次に、地方財政について、自治大臣、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  シャウプ勧告以来、日本の地方自治、地方の独立、地方の自治ということについては、戦後大変、そういったことが占領軍時代に言われたわけですけれども、結果的には換骨奪胎。何がその後進行したか。結果的には、税金はほとんど霞が関へ、そして地方には三割しか税金が残らない。しかし実際に支出は逆の七対三で地方の方が多い。  これについてはそれぞれの政党から、地方財政のあり方、そういった中央と地方の財政のバランスということについて提案がなされておりますけれども、結果的には、財政的に自治とか独立というところには非常にほど遠く、霞が関帝国の実質的な植民地や属国や保護国のような存在になりつつあるわけです。  今、統一地方選挙が行われ、各地で知事選挙、市長選挙が行われていますけれども、もうほとんど財政破綻に瀕しているような自治体においては、知事とか市長の選挙といいながら、それはその地方の自治を統括する首長ではなくて、実質的には経営破綻に近い企業の管財人を選ぶような感覚が必要なんだ、そういう自治体さえもあるわけです。今こそ私は思い切った、そういう地方財政の大改革、手術が必要ではないかと思います。  百六十六兆円という巨額の債務を抱えて、今、地方自治体は利払いに追われ、まさに借金地獄。これからの地方の時代と言われながら、権限や財源や人間や、この三つのゲン、私は三ゲンセットと言っておりますけれども、三ゲンセットで中央から地方への分権が行われる日を待たずして次々と破綻していく。援軍が来るのを待っておれないんじゃないかと思います。  そのような状態の中でどうするか。私は強力な公的資金の投入をやるべきじゃないかと思います。今、銀行の経営破綻に対して三十兆だ六十兆だという巨額の公的資金の投入が行われつつあります。これは民間企業であります。全国民のためのものではなくて、一部の企業や一部の預金者のための民間企業に対してこれだけの巨額な公的資金を投入しながら、地方自治体というすべての住民のための組織が今財政的に破綻しようとしているときに、私はそういうところにこそ公的資金を投入すべきではないかと思います。  昨日の新聞にも出ておりました。いろいろなゼネコンへの救済、あるいは北東公庫の不良債権千四百三十億、この不良債権を一掃するとか、こういうところにどんどん公的資金という名前の税金が使われるのであれば、私は、地方自治体の百六十六兆円の債務、三割をめどにして、そういう特に七%、六%、五%という高利で発行した債券を中心に、それは地方の金融機関あるいは大手都市銀行にも所有されております。そういう銀行から強制的にそれを買い上げる。国がそれを消却して、そして地方自治体の債務残高を一遍減らす。一時的に体力を回復させなければ、権限、財源、人間で地方分権を行っても、そのときにめり張りのきくような行政、地方自治の時代はやってこないのではないかと思う。  表現は悪いんですけれども、徳政令の地方版、地方自治体に対してそのような徳政令を、それは、借金をふやしたのは地方の勝手じゃないかという意見もあるかもしれませんけれども、しかし、勝手と言われても、住民の要望に対してやらなきゃならなかった、十分な財源がなかったから借金しなきゃならなかった、あるいはバブル崩壊以後は中央政府の景気対策と称するものの片棒を担がされて、片棒を担いではしごを外されて、次々と借金だけが残っていった、こういう現状もありますので、私は思い切った、これはもう政治だと思います。経済的にどっちが正しいとか、理論的に、体系的にというのではなくて、地方分権、地方の時代というものを本当にこれから力強く展開するのであれば、まず、この借金地獄に入ろうとしている地方自治体をどうやって救済するか、自治大臣の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  14. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 地方財政の非常に厳しい状況について真剣、深刻にお考えをいただいた上での今のお話であると思います。その心情において理解し、大変御支援、心から感謝を申し上げますけれども、一方で国家財政そのものも、これまた地方財政に負けず劣らず、どこかでそういう徳政令をだれかが出してくれれば一番いいと思うぐらいの状況にあることも事実でありまして、そういう中で、国、地方、お互いが、何といいますか、責任のなすり合い的なことをするのではなくて、本当に双方ともにどうやってこの地方財政、国の財政を立て直していくのか、その前提になる経済をどうやって立て直していくのか。  そういったことにおいて、ただ、今日までの役割分担の中で、とかくすれば、かなりそういった本来国がやるべきような事柄が結果として地方財政に傾斜がかかってしまった。その結果が地方財政をより深刻な状況に追い込んだということも私は否定はできない側面もあった。そういったいろいろの反省もあって、特に今度の予算の中で一つの歯どめをかけ、そしてともに再建をしていこうという、そこへ向けた一つのスタートになり始めたというふうに私は理解をいたしております。
  15. 岩國哲人

    岩國委員 そういった、国も苦しいという事情は私はよくわかっております、この予算委員会でしょっちゅうそれは議論されていることでありますから。  しかし、国も苦しいから地方も苦しめというお考えではないでしょう。両方が苦しむよりも、まず地方の苦しみ、どっちかといえば弱い者の苦しみの方を少し軽減してやる。そして、これからの地方自治が前進するところへ権限、財源、人間を移転することによって国が楽になる。私はやはり何らかの、どこかから始めなきゃいかぬのじゃないかと思います。国も地方も両方苦しみ合って、そしてお互いに憎しみ合いという状態ではなくて、やはり苦しみは国に一極集中して、そして活力を地方に分散するためには、私はこういう思い切った政策が必要ではないかと思うわけです。  結局、権限、財源、人間の地方移譲はほとんど行われないままに、借金の地方分散だけが着実にこの十年間進んでいって、この数年間の間に地方の債務は二倍、三倍に急増しております。これはもう異常な状態と言わざるを得ない。  だからこそ、私は、この経済再生内閣の中で地方自治体の役割、そして地方の単独事業あるいは国の補助事業も含めて、そういう経済的な役割というものをもっと高く評価する、そのためにはまず、公的資金を投入して債務を減らしてやる、利払いの地獄から解放してやるという政策が必要ではないかと思います。  もう一度大臣の御答弁をお願いします。
  16. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 財政的な手当てについては今申し上げたとおりのやり方で今回はやるということにしたわけでありますが、今御指摘の中で大事な視点は、一つは、三ゲンの中のいわゆる権限の移譲ですね。この問題をさらに今まで以上に拍車をかけてやっていきたい。  そういう点で、今日まで地方分権推進法に基づく委員会の勧告をもとに計画をつくり、この国会でそれを法案化して具体的に御審議をお願いしよう、今そういう段取りでおります。しかし同時に、権限だけでなくて、実際にもろもろの補助金等のあり方も変えていかなきゃならぬ。第五次勧告の中で、統合補助金というような勧告も出てきております。いずれにせよ、これらの財源、権限の移譲を含めて精力的にやっていきたい。  同時に大事なことは、一方で権限移譲、そういう地方分権を促進していくということと同時に、合併ですね。市町村における地域住民に対する行政サービスの質的な向上の問題ということをも含めて考えていかなきゃならぬ。もちろん、行政の国、地方を通ずる簡素効率化という要請、両方あるわけですが、このことを通ずることによって、国、地方を通ずる財政再建への一助にもなっていく。行財政改革を徹底していかなきゃならぬという要請も実はあるわけでありまして、そういう点で、合併の促進の問題あるいは地方行革、これは国の行革はもとよりでありますけれども、そういったことをも含めて徹底していかなきゃならぬ。  そういう点で、財源の問題というのは、権限の問題あるいは合併の問題、それらのことを一体として進めていかなければならぬというふうに考えております。
  17. 岩國哲人

    岩國委員 私は、地方行革について、総務長官の御意見も伺ってみたいと思います。  臨時行革審で、私は専門委員として一年半仕事をさせていただきました。地方の行革についても、そのときは非常に大きなウエートづけで議論されておったわけです。今回の行革大綱には余り地方行革については触れられておりません。しかしそれは、法案としては触れられていなくても長官の頭の中に、あるいは総務庁の事務局の中で、もう着々と、あれから数年たっておりますから、地方行革についても大胆で具体的な案が進行中ではないかと私は期待しております。  自治大臣にも同じことを後ほどお伺いしたいと思いますけれども、まず最初にお伺いしたいのは、行政コストを下げる、税金のコストを下げるという観点から、市町村合併についてのシミュレーションはどの程度行われていますか。  大変難しい問題かもしれませんけれども、市町村合併については、長官は、今の三千三百市町村を一千ぐらいにというようなことを御発言されたことがおありではないかと思いますけれども、具体的にはどれぐらいの数字を目標としておられるのか。いつまでに、どれぐらいを目標としておられるのか。もちろんこれは強制するわけにはいきませんけれども、いろいろな誘導あるいは助成措置、あらゆる手段を講ずることによって、いつまでに、どれぐらいという数字的な目標を持っておられるのか、長官の御意見をお伺いします。
  18. 太田誠一

    太田国務大臣 行政改革大綱をこの間推進本部で決定をさせていただきましたが、そこは基本法にのっとってやっております。基本法の中に盛り込まれておりますのは、地方自治体においてみずから自発的に行政改革に取り組むこと、そしてそれに対して中央が応援をするというふうな抽象的な書きぶりであったと思います。そして昨年の五月に地方分権推進計画が発表されましたことも、同様にして、それぞれの自治体がみずから計画を発表し、そしてそれを批判にさらすというふうな表現でとどまっていたと思います。  今先生が言われました統合の問題については、もちろん、直接的には自治省の所管であろうと思います。しかし、我々も行政改革をやっている以上、行政というのは実際には、言われますように、七割は地方で行われているわけでありまして、七割の地方で行われることを視野に入れずに行政改革というのはないわけであります。ただ、現在の中央省庁等改革の段階では、正直申し上げまして、そこまで踏み込んで地方のことを考えて、視野に入れているわけではありません。  なお、千の自治体という、三千の自治体を千の自治体へということを私は申し上げたことはありませんが、もっと少なくていいというふうに思っております。(岩國委員「どれぐらいですか」と呼ぶ)三百ぐらいでいいのじゃないですか。
  19. 岩國哲人

    岩國委員 これは新進党の時代に野田大臣も、新進党の一つの政策目標として三百ということを打ち出しておられたと記憶しておりますけれども、仮に今の三千三百から三百の自治体に集約された場合に、そのときの節税効果といいますか、コストダウンの効果というのはどれぐらいに考えていらっしゃいますか。お願いします。
  20. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 担当大臣として、オーソライズされた数字を申し上げると大変なフライングということになりましょうから、その辺は控えたいと思います。  ただ、三百という一つの数字について、新進党あるいは自由党においてもそれを目標としていこう、そこへ向けて段階的にやっていきたいという、ある種の目標数値ということなんですが、または実際問題、現実には何百万という都市もあれば、したがって、それをではどうするのかという話もあるでしょうし、それから、大体自治体として大事なことは、住民の行政ニーズをどういうふうにレベルダウンしないできちっと充足できるかという、まずその視点が必要だろう。特にこれから、介護を初めいろいろな行政ニーズについて、それだけの専門的なサービスがきちんとできるんだという、その部分が確保できるということがもう一つは必要なことです。いま一つは、もちろん、特に管理部門を統合することによる効率化、簡素化によって重複部門が排除されるというある種の経費削減効果。  こういったもろもろのことがあわせて行われるわけで、ただ単純にあわせたからどうのということだけじゃなくて、それによって、合併による言うなら行革効果といいますか、この部分をどこまでやるかということとあわせて考えていかないと、数字にして端的に示すということはなかなか難しい。  これは私たちがやってみても、実際そういうことがございました。民間では何兆円という数字を気楽に出せるという、それはそれで一つの参考資料としてあると思います。ただ、私どもが自由党においていろいろ提言した中でありましたのは、合併だけじゃなくて、特に補助金を包括交付金に切りかえていくことによって、国、地方を通じて、単なる人員削減だけじゃないそういう一つの経費削減効果といいますか、こういったことをトータルいろいろあわせていくと兆円オーダーの、いろいろな国、地方を通ずる行財政改革に伴う合併効果というのは当然出てくるのだろうというふうには思っています。
  21. 岩國哲人

    岩國委員 また出雲市の例を引いて恐縮ですけれども、出雲市の場合には民間委託それから民営化。私は、市町村の役所でやっている仕事の中にも、何もこれは役所でやらなくてもいい仕事はたくさんあるはずです。そういう業務の見直しをどんどんやって、今民間は仕事を欲しがっていますから、民間にそういう業務をどんどん開放していく。民間は喜んでそれを引き受けていきます。  ごみの委託についても二割しか民間委託していなかった。それを全部、十割。十割、全部というと、やる気が出てきます。責任を持って仕事をします。そして、新しい会社をみんなが力を合わせてつくって、生き生きとして仕事をやっています。役所の中からどんどんリストラすることによって、地方のいろいろな経済界の人たちに喜ばれるような仕事もたくさん出てくるんじゃないかと思います。  そういう民間委託、民営化ということを積極的に進めること、あるいは女性職員の登用をもっともっと進めるべきだと思います。これは人員削減効果にも直結いたします。  私は、十年前、市長になってびっくりしたのは、六十人の管理職、全部男ばかりでした、全員男ばかり。今、男だけでやっているのは暴力団と市役所だけです。私はそれから三人、二人、二人、次々と女性の管理職を登用しました。女性の能力を引き出すということによって、今、出雲市役所は七割の人数で十割の仕事をやっています。よその自治体の規模に比べて三割少ない。仕事はふえる、予算はふえる、人口はふえる、それでもふやさないで、七割で十割の仕事。その上、土曜日も日曜日もショッピングセンターで店を開いています。一年じゅう店を閉めないんです、十年間。  リストラ効果というか経営の合理化というのは、それほどの大きな痛みを伴わないで、私は霞が関の行政改革も大切だと思いますけれども、行革の宝の山は、行革の配当を払いたいというんであったら、その配当を払うためには地方の行革の方が、もっと早く、そしてもっと大きな、霞が関の行革より四倍の効果があると思います、人数的にいって。三割の地方公務員の数を削減するだけで、年間十兆円の配当を国民に支払うことができます。私はこれを行革の配当と呼んでいます。そういう配当を毎年十兆円、十年間で百兆円、そういう体制に早く持っていって、そして地方の債務を減らす、そして国のお役にも立つ、そのようなことのためには、地方行革をもっともっと推進していただきたい。  市町村合併というのはその中でも特に大きな目玉だと思います。この小さな日本で、なぜ三千三百の市町村に分かれている必要があるんですか。今から二十年前、二里離れたところへ行くのに二時間かかりました。今、二里離れた隣町へ行くのに、七分ぐらいアクセルを踏んでいればもう行ってしまうんですから。十分アクセルを踏んだら通り越してしまいます。それぐらいに情報が発達し、交通が発達しているわけですから、この四十年間の間にずっと三千三百市町村のままの体系で来ているということは、私はむしろ不自然じゃないかと思います。  もっともっと勇気を奮って、大胆に、早くそういった地方行政の推進をやるべきじゃないでしょうか。それは、国が困っているから、国の財政が大変だからこそ、それを実行する必要がある、私はそのように思います。  それでは、自治大臣総務庁長官、質問をさせていただきましたので、結構でございます。文部大臣ももう、質問を終わらせていただきましたので、お忙しいでしょうから。  あと、日債銀とそれから消費性向等について質問させていただきたいと思います。  日債銀の株価は、一番最後の日に百五十八円で、終わり値で引けました。それは波乱もなく、静かに百五十八円で取引が終わったわけです。問題は、その翌々日、もう取引がされないということになってしまった。額面の三倍で取引をされた株価がゼロになってしまう。このような、財産が奪われてしまう。憲法第二十九条で、「財産権は、これを侵してはならない。」国の手によって百五十八円の価値をゼロにしてしまったわけです。  その百五十八円の取引について、大蔵省そして金融監督庁の方にお伺いしたいんですが、これは調査を行われましたか。百五十八円での取引というのは、百七十円、百六十五円、いろいろありますけれども、ふだんだと百万株から二百万株の取引しかない日債銀の株式が、最後の二日間、今から思えば直前の二日間、一千万株の取引が行われているんです。だれが売ったんですか、だれが買ったんですか、そのことについて十分調査はされましたか。東京証券取引所そして証券取引監視委員会、それぞれの調査結果はどうであったかを御答弁お願いいたします。
  22. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  私ども証券取引等監視委員会といたしましては、市場において公正な取引が行われているかどうか、日常的に監視を行っております。こうした中で、一般論で申し上げますけれども、取引の公正を害すると疑われるような事例が認められた場合には、取引の売買状況等を聴取いたしまして、事実関係を解明するということをしているわけでございます。  委員指摘のように、十二月の十日、十一日に日債銀株の取引高が急増をしております。また、これについてインサイダー取引があったのではないかという報道も行われていることは私ども承知しておりますけれども、個別事案を具体的にどう調査を行っているかについては従来から御答弁を差し控えさせていただいておりますので、御容赦いただきたいと思います。
  23. 岩國哲人

    岩國委員 監視委員会とは別に、東京証券取引所でも当然調査が行われたはずです。それについても御答弁いただけますか。
  24. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  証券市場に対する信頼を確保するために、証券取引法第百六条の二でございますが、市場の公平性、透明性の確保が重要でございまして、インサイダー取引とか相場操縦等の証券市場の公正な価格形成をゆがめるような不公正な取引に対しましては、証券取引等監視委員会等により、法令に基づきまして厳正な対処が行われるとともに、先ほど先生が御指摘になられましたように、証券取引所においても、証券取引等監視委員会と連携しながら、値動きの大きい銘柄等を相当数選定いたしまして、売買審査を集中的に行っているわけでございます。  そうやって連携しまして売買審査した事案の中で、犯則事件として調査を要すると認められるものにつきましては、証取法百五十四条の規定に基づきまして、一般的に、証券取引等監視委員会に報告を行っているわけでございます。  今先生が言われました具体的な、個別の審査をやっているかどうかとか、具体的にどういう内容の審査をしているかということにつきましては、これを公表することになりますと、監視委員会の方の取り組み状況も明らかになってしまうものですから、関係者に予断を与えるというようなことで、その事務運営に支障を来しかねないものでございますので、従来から、先ほどの監視委員会のお話と同様に、これは公表を差し控えさせていただいているところでございます。
  25. 岩國哲人

    岩國委員 私は、監視委員会も取引所も間違っていると思います。今現在も存続している会社の株式であればいろいろな影響を与えるでしょう、その調査結果を公表するということは。もうその銀行はなくなっているんですから、株式は取り引きされていない。何も残っていない。残っているのは、一般投資家の不信感だけが残っているんです、取引所の中で。  公平、公正、透明性とおっしゃいましたけれども、そんな立派な言葉をお使いになるんであれば、当然何が起きたのか十分調べて、何もおかしなことはなかったということをしっかりと公表する、それが義務じゃありませんか。こういう異常な事態における異常な取引が行われながら、ごく何百件もある、出来高がちょっとふえたぐらいの感覚で調査をして、結果も発表しないでほおかむり。私ははっきりと、何の不正もなかった、何の異常もなかったということを、調査されたんであれば公表すべきだと思います。日野長官、どうお考えになりますか、こういう事態について。  投資家の利益を守るというのが監督庁の最大の義務であるならば、投資家の利益を守るということは、投資家の信頼感を市場にしっかりと持ち帰らなきゃならぬでしょう。株価はどんどん下がっています。下がっているということが今の日本経済、景気の大きな問題の一つになっているときに、これは見逃していいことではないと思うんです。御答弁をお願いします。
  26. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  インサイダー等が一般論として念頭にあるわけでございますけれども、先生御承知のとおり、インサイダーの法律、証取法の百六十六条でございます。この法律におきましては、規制の対象となる者、会社関係者と言われておりますけれども、そういう人からどのように、当該会社の決定事実、発生事実と言っておりますけれども、その事実をだれが入手し、そして株の売買が行われたかということを正確に把握をしていくということが大変必要になってまいります。  したがいまして、私ども委員会といたしまして、今までインサイダーの事案につきましては、九件ばかりだったと思いますが告発をいたしておりますけれども、一番短いケースにおきましても三カ月半ぐらいの時日を要しておりますし、長いものに至りましては二年を超えるようなものもございます。  そのように、私どもといたしましては、法と証拠に基づいて告発ということをしてまいることが私どもの委員会の使命でございますので、そういった綿密な調査をいずれについてもいたしているというふうに御理解いただきたいと考えております。
  27. 岩國哲人

    岩國委員 それでは、調査はまだ終わっていないということですね。そして、調査は今継続中であり、調査の結果によっては告発することがあり得るというふうに理解してよろしいかどうか、御確認いたします。
  28. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、個別の事案についての対応は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、証券市場で行われた可能性のある取引の公正を害する悪質な違法行為については、すべて関心を持って対応しているというふうに御理解いただきたいと思います。
  29. 岩國哲人

    岩國委員 私は、こういう異常な事態において、そして異常な取引が、これは偶然にしては余りにもでき過ぎていると思います。Aという会社から同じグループのBという会社に損失飛ばしをやる、損失の移転をやるためにマーケットを使ったという可能性も含めて調査すべきだと思います。決算諸表の間で、日債銀の株価を持っている、それを同じグループのどこかに移す、そうすることによって利益あるいは損失の移転というものが可能になります。  そういう疑い、可能性も含めて調査していただきたいし、また、これだけ公的資金が失われたということはこの国会でも予算委員会でも問題になっているわけですから、ほかのときよりももっと集中的に調査をして、そして、何が起きたかということをもっと早く明らかにしていただきたいと思います。  その結果によっては、ここでの銀行に対する公的資金の投入ということの議論にも私は影響してくると思います。国会が終わるのを待っていつも大事な発表が行われるというようなことではなくて、国会開会中に急いでその結果を発表していただきたい、そのことを強く要望いたします。  次に、日債銀の七千億という不良債権、それが一兆一千億に膨らんでおった。今お手元にお配りしましたこの「経緯」というのは、日銀の方にまとめていただいたものであって、私が全部したことではありませんけれども、これを見ましても、大蔵省は今から二年前の四月から九月にかけて検査をしております。日債銀の増資が完了したのが七月末ということは、検査がまだ続行中で終了していないときに、検査を受けている銀行の増資が行われたということなんです。  大蔵省に質問いたしますけれども、銀行でも企業でも、そういう特別な検査が入っているときに、その会社が堂々と増資をやって何百億、何千億のお金を集めた、そういう例というのはありますか。
  30. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生が言われましたように、当時の大蔵省の検査の着手は四月十六日でございまして、その検査の結果の示達、これは九月十一日でございます。その間の七月に増資は完了しております。  ただ、他の具体的な例につきましては、現在私ちょっと承知しておりません。
  31. 岩國哲人

    岩國委員 局長が御存じないということは、恐らく全く例がないんじゃないか。  私も一生懸命調べてみました。私もアメリカのマーケットで十年、ヨーロッパのマーケットで十年おりましたけれども、これはという大企業や銀行が増資をするときに、検査も終わっていない、監査も終わっていない段階で増資が行われたという例は、私は寡聞にして一つも知らないんです。  なぜ検査が終わるのを待てなかったのか。検査が続行しているということをそれぞれ払い込みの人たちは十分承知しておったはずだと思います。そして、その段階で不良債権七千億というのは、検査に行っている人たちが一生懸命まだそれを調べ直しているところでしょう。そういう状態でなぜ増資が行われるのですか。  有価証券報告書、これは一般の株式あるいは債券のときにそれが用意されますけれども、有価証券報告書に監査人、公認会計士の証明がないままで、今までそういう証券の発行が行われた例はないでしょう。この二千七百億円については、幾ら私募、ごく少数の私募形式で増資が行われたとしても、責任のある銀行、しかも上場企業である銀行がそのような証券を買い付けるということは考えられないことです。  なぜ、検査終了、九月十一日を待って増資をするということができなかったのか、その点を御説明お願いします。
  32. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたしますが、民間会社がいわゆる私募で増資をする場合には、有価証券届け出書がその段階では必要ないというぐあいに私は聞いております。
  33. 岩國哲人

    岩國委員 有価証券報告書が必要かどうかということではなくて、大蔵省が日債銀のために二千七百億円のお金を集めるということは、一般の例でいえば、企業のために、野村証券、日興証券、そういうところがアンダーライター、第三者のために資金を集める行為を大蔵省はそのときやったということなんです。有価証券報告書という名前ではなくて、奉加帳という名前の有価証券報告書で二千七百億円が集められたわけです。  そういう事実は、一々それぞれの銀行に依頼した事実はないと大蔵大臣はここで私に答えていただきましたけれども、私に対する答弁を国会の外で、記者会見で訂正されました。私は、そのことを大変残念に思いました。  たまたま大阪にいて、そして大阪で夕刊を見たら、あっ、私に対する答弁が国会の外で訂正されている、予算委員会の権威は何なのか。そして、質問者に対する、私は決して礼儀だとかマナーとか大げさなことは申しません、しかし秘書官から一本の電話でもいただきたかったと私は思います。  奉加帳で集められた二千七百億円。なぜその検査結果を待てなかったのですか。  もう一つの質問をいたします。  重ねて、あわせてお答えいただきたいんですけれども、株価について、株価も相当下がっていますけれども、その前に、債券市場で日債銀の利付金融債が暴落しておるでしょう。暴落は九六年の十一月から始まっております。そして、暴落の極致は九七年四月です。だれが売っておったんですか、これは。  株式取引の手口を調べることも必要ですけれども、日債銀にとって必要なのは、株式よりも債券の方です。債券こそ命の綱なんですから。毎月毎月、債券を発行して資金を調達し、その命綱が既に断ち切られようとしておったんです。それが九七年四月です。八%の利回りで、暴落した値段で取引されているということは、企業でも相当低い格付。あるいは、今経営問題等々でいろいろとその不良債権の免除を依頼しているフジタとか、そういったようなところが七・五%で取引されている。日本のちゃんとした長期信用銀行の一つである日債銀の債券が、それよりも安い値段で売られている。だれが売ったのか。  そして、市場が既に、そのとき、イエローカードどころか、これはもうレッドカードを出しているのです。市場がレッドカードを出しているものに対して、検査を続けながら、検査終了を待たず奉加帳で二千七百億円。こんな例を、私は、アメリカでもヨーロッパでも、調べましたけれども、私の記憶の中に、そしていろいろな文献にも全くありません。市場がレッドカードを出している。もうこれは破綻を宣言しているのです、九七年四月には。それを、検査をしながら、検査終了を待たないで二千七百億円をかき集めて、そして増資を完了してしまう。これは全く、異常というか、もう考えられないことです。何か御説明いただけますか。
  34. 日野正晴

    ○日野政府委員 最初の方のだれが日債銀の利付金融債を売買したかという御質問は、ちょっと今資料を持ち合わせておりませんのでお答えできませんが、確かに、日本証券業協会発表の店頭基準の気配によりますと、九七年の四月に八%近くまで利回りが上昇して、グラフの上昇率が極めて高いということは、客観的な事実としてございます。  ちょうど九七年四月一日には、経営再建策が発表されたのと軌を一にしているわけですが、ちょうどそのときには、関連会社の破産の申し立てなどもございまして、世評、やはり日債銀に対する信用のリスクというものがかなり低下したことがこれでうかがえるのではないかというふうに考えます。  そこで日債銀が、そういうことで、大変、市場からレッドカードといいますか、それを突きつけられたようなことになりますので、当時、経営再建策の一環として、主要な株主でありました銀行、これは日債銀が倒れますと当然その株主にかぶってまいりますので、銀行、あるいは日債銀に劣後ローンを提供していた生損保会社、それから同じ業態の長銀あるいは興銀、それから当時新金融安定化基金に対して出資しておりました日銀に対して資本の拠出の要請を行って、最終的には各関係機関のそれぞれの判断で出資が行われたというふうに承知しております。  当時、大蔵省としては、日債銀の経営再建策が発表されまして、これを実施するのに対しましては、関係機関の協力が円滑に進むように最大限の支援を行っていくという方針で、個々の金融機関に協力の依頼を行う等の対応を行っていたということを私どもは現在承知しているわけでございます。
  35. 岩國哲人

    岩國委員 これにつきましては、払い込んだ興銀、日本生命等々の金融機関の株主からも訴訟が起こされております。起こされた以上、興銀は、大蔵省を訴えるのか、だれを訴えるのか。だれかを訴えなければならないでしょう。訴えなかったら自分の非を認めなければならない、こういう問題も起きております。  また、先日質問させていただきました、九月十一日に伝えられた一兆一千億円という不良債権が、なぜか九月十九日に至っても、八日たって古い数字の七千億のままで日債銀は日銀に報告に行っている。これは、九月十九日にはもはや七千億という不良債権の数字はもう過去の数字になっているわけです。九月十九日に七千億でございますということは、これは偽りであります。俗に言ううそなんです。そのようなことを堂々と言う方も言う方、聞く方も、ああ、そうでございますかと聞いてしまった日銀も、私は大変大きな責任があると思います。  世間一般で七千円のものが一万一千円でございますと、値段が違いましたと言われたときでも、これでも世間では一騒ぎです。それが、人様のお金を、七千億から一兆一千億円、場合によってはこういった不良債権に公的資金を投入しなければいかぬかもしらぬ、そういう異様な雰囲気の中で七千億と聞かされて、そうでございますかという会話だけで終わったのですか。そのときに日銀はどういう聞き返しをされたのですか。お答えいただけませんか。
  36. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  先生指摘の将来回収懸念のあるいわゆる第三分類の七千億円という数字でございますが、私どもは、平成九年の四月の日債銀の増資、その後大蔵省検査が入りましての途中経過を踏まえた日債銀からの報告、それから今先生指摘の九月十九日に私ども日債銀から聞きました第三分類七千億、その認識は、去年の十二月十三日に日債銀が公的管理に入りますまで私どもとしてはそういう認識はいたしておりました。  私どもの考査は、平成七年の二月に入って、その後我々は、オフサイトモニタリングと言っておりますが、日債銀の経営状況、不良債権の状況、資金繰り等を見まして、要するに不良債権の状態は増加状況にある、あるいは株式の含み損も株価の低下で増加傾向にあるという認識はいたしておりましたけれども、結論的に申し上げれば、第三分類が幾らかどうかというのは、私ども自体、考査は平成七年二月以降入っておりませんけれども、日債銀は債務超過ではない、そういう認識は要するに平成九年の四月以降ずっと持ち続けていた、それに見合って対応したということでございます。
  37. 岩國哲人

    岩國委員 要するに、そのときに七千億円という説明がはっきりとあったかどうかということの確認を一つと、そしてその七千億についていろいろと質問をされたかどうか、これを簡潔にお答えいただきたいと思います。
  38. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  最初の七千億円は、そのとおり七千億と聞きました。それについて聞き返したかどうかというのは、そのとき聞いた者がどういう会話をしたかというのはつまびらかではございませんけれども、大蔵省の検査が終わった後、日債銀からの報告でございますので、それを踏まえた上での数字だろうという認識を私どもは持っておったということでございます。(発言する者あり)
  39. 中山正暉

    中山委員長 小畑参考人、もう一度御答弁願えますでしょうか、直接会話をした人に対して質問をしたいという御意向でございますが。  小畑参考人。
  40. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  そのときは日債銀の頭取の東郷頭取が御報告に来られて……(岩國委員「日銀はだれなんですか」と呼ぶ)日銀は、その当時の担当の理事以下、しかるべく信用秩序のラインで聞いたということだと思っております。(発言する者あり)  だれと申しますか、そのとき聞いた者、日本銀行といたしましては、それぞれ日債銀の連絡というのはそのラインで、レベルでやっておりますけれども、その情報は、要するに総裁、副総裁まで上げて、日本銀行全体として、日債銀の資産状況等については組織全体として把握しておったというふうに御理解いただいて……。
  41. 岩國哲人

    岩國委員 こういう答弁では全然真相解明に迫ることにならないのです。これは日銀総裁に何人もの人間が質問をしている、この疑惑のポイントのところですよ。  そのときに、だれがどういう説明を聞いて、どういう質問をしたか。これは四千億という大きな数字が違ってきたというストーリーですよ。それについて、たとえ去年、おととしの話で、いいかげん忘れましたとか、お金を一番大切にする日本銀行の人がその程度の感覚でやっているんですか。お金に囲まれて金銭感覚が麻痺しているんじゃないかと逆に思いたくなります。  そして、日銀総裁は九八年三月、佐々波委員会に出席されましたね。そして、そのときにまだ七千億という数字で出席されたのか。  それから、監督庁長官にお伺いしますけれども、その七人の出席者、その中で、一兆一千億という、債務破綻であるという情報を持っておったのはこの七人の中のだれだったんですか。お願いします。
  42. 日野正晴

    ○日野政府委員 一兆一千億、第三分類というのは、大蔵省の検査によりまして日債銀に通知しているわけです。したがいまして、これは大蔵省は当然、自分が検査したことですから承知しておるわけですね。  三月の当時はまだ金融監督庁という組織がございませんでしたので、佐々波委員会の委員は、いわゆるエキスオフィッショーといいますか、立場からいいますと大蔵大臣、日銀総裁、監督庁長官それから預金保険機構の理事長というのが委員でございまして、当時、そういう意味でまだ委員のメンバーではなかった……(発言する者あり)引き継いではおりますが、それは、大蔵省の銀行局やあるいは検査部の仕事は引き継いでおりますが、審査委員会の委員という立場は、これは自分のことを弁解しておるわけでは決してございません。わけではございませんが、大蔵大臣もそれから金融監督庁も両者委員でございまして、そういう意味では、もちろん委員会の最終的な最後の解散の直前の委員会には出席させていただいておりますけれども、三月の時点でだれがどういう認識を持っていたかということを今私がここでお答えする立場にはないかと思いますので、御了承願いたいと存じます。(発言する者あり)
  43. 岩國哲人

    岩國委員 六人ですか。出席者の中で、そういう正確な情報を持った者と持たない者とが全員一致で一つの結論を出すということは、これは情報を持った人間による情報操作だとしか思えないわけですよ。  誤った判断ではないと昨日大蔵大臣答弁されましたけれども、私は、誤った判断ではないとしても、誤った数字で判断した可能性があるんじゃないかと思います。  その点を日銀総裁あるいは理事に再度お伺いいたしますけれども、七千億と聞かされて、そして菅代表が質問するまで一兆一千億円というのは全く寝耳に水だったということは、私はこれは考えられないと思うのです。そういう日銀と大蔵との関係の深さ、あるいはそれほど、何かロンドンと東京で話をしているわけじゃありませんでしょう。そういう数字を、四千億の数字が違ったということについてもっと明快な説明を、いつだれからどこでどういう方法で聞かれたのか、それをはっきりとわかるように答弁していただきたい。
  44. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  日本債券信用銀行の検査結果につきましては、大蔵省から検査結果の資料を一切入手いたしておりません。日ごろ大蔵省とも緊密な情報交換をいたしておりますけれども、検査結果については入手していないということでございました。
  45. 岩國哲人

    岩國委員 私は、そういう答弁しかできないというのは日銀として怠慢だと思います。  八百億のお金を出して、しかも翌年また六百億のお金を出そうという環境の中で、しかも自分が長年考査し指導してきた大事な銀行が経営破綻にあるとき、その不良債権の七千億を、大蔵検査が終わって、ああ、そうですかということでは決してなかったと思います。ですから、正確な数字を大蔵省のだれから聞いたのか。  それから、東郷頭取は日銀出身だということですけれども、日銀出身の頭取だから安心しておったということも世間一般では容易に想像できるわけですけれども、その程度でもってこの大事な数字が簡単に了解されたり、質問もされないで、そして再度、八百億を払った後また六百億を出すというようなことがどうやってできるんですか。これは場合によったら特別背任になるんじゃないですか。  聞いておった人が隠しておったとすれば、何のために隠したのか、隠さなければ次の六百億は出なかったんですから。答弁してください。
  46. 小畑義治

    ○小畑参考人 繰り返しになりますが、大蔵省と認識を共有いたしておりましたのは、債務超過でない、こういう認識でございました。  具体的な検査結果については、私どもは、要するに具体的な三分類が一兆一千億円というのは、繰り返しになりますが、公的管理に移行した時点で私どもも金融監督庁の記者会見で間接的に知ったわけでございまして、先生指摘の一兆一千億円という数字は本当に日本銀行としては認識していなかった。そこが甘いとおっしゃれば甘いかもしれませんが、私どもは要するに具体的にはそういう流れでございます。
  47. 岩國哲人

    岩國委員 我々、常識ではとてもこういう答弁は納得できないんです。私は、委員長御自身もそうだと思います。  これは何千億という金について、甘過ぎるどころの話じゃなくて、これは全く仕事をしていなかったか、あるいは何らかの意図を持って、情報を持っていたにもかかわらず情報はなかったと言い続けようとしておられるのか。この疑惑は徹底的にまだまだ解明しなきゃならぬと思いますけれども……(発言する者あり)その証人喚問をこの間要求いたしました。東郷頭取そして当時の大蔵大臣、そういう方たちです。この間民主党から出しておりますけれども、証人喚問を再度要求して、私はこの日債銀に関する質問は一たんここで打ち切らせていただきます。  次に、せっかく外務大臣それから経企庁長官においでいただいておりますので、外務大臣に質問をさせていただきます。  外務大臣、今までの御答弁の中で、第三国に対する支援をした場合に相手国から交戦されるということについて、これは濱田委員の質問に対してお答えになりましたですね。そういった国際慣習法上、仮にアメリカと北朝鮮が不幸にして交戦状態に入った場合に、日本がアメリカを後方支援しておるという場合に、北朝鮮が日本をそれを理由に攻撃することはできないんだ、こういう答弁をされました。  これは国際法上間違っているんじゃないか。これは昨日の産経新聞にも指摘されておったのをお読みになりましたですか。ある特定の国と交戦状態にあるとき、その国を応援している国に対して撃ち込んでもいいというのは、むしろ戦時国際法の慣習じゃありませんか。  そのような根拠を与えることはないと大臣答弁されました。この点について、今言ったような具体的な国名でなくても結構ですから、再度御答弁いただけますか。
  48. 高村正彦

    ○高村国務大臣 かつては戦争ということが国際法上原則的に認められていた時代があって、お互いが国際法に違反しないで戦争ということがあり得た時代がある、そういうときに中立国とか交戦権とかいう概念が確立されたわけで、その当時の中立国とか交戦権とかいう言葉が今そのまま適用されるわけではない。必ずしもそのまま適用されるわけではない。  そして、この法案で想定されているのは、米軍が、安保理決議なりあるいは自衛権の行使なり、そういうことを行って、日本の安全を守るために活動している、そういうことに後方支援するわけでありますから、その相手の国というのは、決して合法的に、国際法的に認められている戦争をしているわけではなくて、不法なことをしている国でありますから、それが、日本にすれば、かつての中立国とかなんとかいう概念ではなくて、不法に不法を重ねることになる。これは従来から政府答弁していることでございます。
  49. 岩國哲人

    岩國委員 これは濱田委員指摘されましたけれども、椎名外務大臣はそれとはかなり違った答弁をしておられますね。つまり、北ベトナムの例を引かれたわけですけれども、北ベトナムがもっと近くにあればわかりやすい形になっていただろう、そして、そういう危険がないとは言えないと。つまり、戦時国際法の慣習に基づいて北ベトナムが日本に大砲を撃ち込むという危険がないとは言えない。  つまり、そういう場合には、北朝鮮が日本に対して戦争をしかけてくるということは、むしろ不法ではなくてある意味の国際法上の慣習として合法ではないかというのが、この産経新聞の記事でもありますし、当時の椎名外務大臣答弁でもあるわけです。  これと高村外務大臣のお考えとはちょっと違うようです。相手は国際法上の根拠を持っていないんだ、したがって不法だということですけれども、戦時国際法の慣習からいえば、それはむしろ合法的な行為であるというのが国際的な解釈なんです。
  50. 高村正彦

    ○高村国務大臣 重ねて答弁いたしますが、かつてはお互いに合法で戦争をやっている時代があったんです。今は、片方が国際的に不当なことをやっているんで、そして、国連憲章なりあるいは安保条約に基づいて行動している米軍に対する相手というのは、そこは正当な戦争をやっている国ではないんです。ですから、事実行為の場合はまた別の話ですが、国際法的な裏づけを持って日本に攻撃するということはあり得ない、そういうことがあり得る場合には日本は参加しない、こういうことでございます。
  51. 岩國哲人

    岩國委員 時間の点で大変残念ですけれども、私はそういう解釈は、これは非常に大事なポイントだと思うんです。これは一般国民として、これから第三国から、ただ友好国アメリカと一緒に行動したということでもって敵性国とみなされて攻撃を受けるという可能性を、当然不法ではなくて合法的に戦争をしかけられるという解釈が、高村外務大臣は否定されても、国際社会の中でそれが認知されていることであるならば、これは大変危険なことであります。  何かありますか。
  52. 高村正彦

    ○高村国務大臣 私が申し上げているのは、今岩國委員がおっしゃったようなことは国際社会の中で認知されていないということを申し上げております。
  53. 岩國哲人

    岩國委員 それは見解の相違かもしれませんし、そういった、国際社会に認知されていれば、北朝鮮は不法な戦いしか日本にしかけてこないということで安心していいのか、それがやはり依然として問題なのか、私は、問題は解決しないと思います。  次に、経企庁長官、せっかくおいでいただきましたので、一つだけ。  株価の先行性について、日本では八カ月先行性がある、アメリカでは九カ月、いずれにしても、八カ月、九カ月ということをよく言われております。そして、夜明け前というのであれば、株価はもう八カ月ぐらい前から少し上がっていなきゃいけない。これについて、株価の先行性は、今回は株価はそういう指標としての役割を全く果たしていないのかどうか。ごく簡単で結構ですから、伺います。
  54. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御通達になかった突然の質問でございますが、株価の先行性と実体経済とのグラフをとりますと、おっしゃるように、八カ月ぐらいの先行が平均的には出ますけれども、場合によっていろいろと違います。  今、先行性を発揮しているかどうかということでございますが、私は、今の段階でこれを判断することは、事後的にしかわからないんだろう、相場のことでございますから、事後的にしかわからないだろうと思います。
  55. 岩國哲人

    岩國委員 私も不勉強ではありますけれども、株価がどんどん下がっているときに景気が上昇したという例を実は知らないんです。ですから、今までどの辺で株価が上がった、いや、それはもう三年前の上がったのが今の景気に、三年前から読んでおりましたと言うのかもしれませんけれども、そんなことはまたあり得ないと思います。  もう一つ、これは共産党の志位委員の質問に対して、限界消費性向について、長官、大変大事な見解を述べられました。つまり、所得層についてばらつきがあると。  限界消費性向について私は思うんですけれども、これは右上がり曲線のときの理論であって、今のように可処分所得そのものが下がっているときに、下がり方が、一万円減って、つまり、右下がり曲線の中で一万円ふえる場合と右上がり曲線の場合に一万円ふえる場合、私はこれは全然違ってくるんじゃないかと思うんですけれども、この点について御見解をお願いします。
  56. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 総務庁の家計調査によりますと、平均の消費性向は所得の低い水準の方が高くなっておりますが、これも非常に変わりまして、一九八〇年ごろから九七年の今日まで見ますと、低い人も消費性向が低い、つまり貯蓄をしているということになります。  いつから限界消費性向がこの間私が申しましたように変わってきたのかということを見ますと、一九八〇年と八五年の間の動きは、第一階位、一番所得の低い人が高くて、順番になっておりまして、多少、第四階位と第五階位の逆転、第三階位と第四階位の逆転はありますが、大体そうなっております。  ところが、八五年から九〇年、そして九〇年から九七年、これは委員指摘のように所得が余り伸びなかったときでございますけれども、そのときにこそばらばらになっているんです。だから、恐らくこれは消費の多様化、消費品目の多様化とか、あるいはソフト化の影響とか、あるいは家族構成の変化あるいは人口の高齢化、そういうようなことがいろいろ絡んで、いわば知価革命的様相の一面ではないかと私は理解しております。  時間がございませんので残念でございますけれども、詳しい資料がもし必要でございましたら、また説明に行かせていただきます。
  57. 岩國哲人

    岩國委員 時間の点で私も大変残念ですけれども、またこの点については、機会があれば長官と議論をさせていただきたいと思います。  そうした、所得は去年よりもことし、ことしよりも来年とふえているときに、限界消費性向として一万円ふえたならば何に使うかという理論なり調査というものと、現に総務庁の調査では可処分所得そのものが下り坂に入っているわけです、九六年から。その下り坂に入っているときに、五万円可処分所得が減ったときに、減り方が、減税で一万円ふえたならばこの一万円を何に使うかというのは、本当は、去年に比べて四万円減った場合の消費性向はどうかということの方がむしろ大事であって、ふえたらどうかという議論よりも、減ったらどうかという、これは日本にとっても新しい事態ですから、経企庁のあるいは総務庁のこういった分析も、右上がり曲線ではなくて、右下がり曲線のときの回答をまたいただきたいと思います。  大変時間をオーバーして申しわけありませんでした。ありがとうございました。
  58. 中山正暉

    中山委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、小林守君。
  59. 小林守

    小林(守)委員 民主党小林です。  私は、野田自治大臣に、地方分権の観点から幾つかの見解をただしておきたいと思います。  自自連立政権の顔とも言えるのではないかというふうに思いますし、また、新進党、自由党の地方分権論というのは、極めて先鋭なというか、奇抜なと言っていいか、非常に特色のある分権論を出されておるわけでありまして、そういう点で、今後、この自自連立政権の中で自治大臣がどのように持っている分権構想を進められていくのか、厳しく見きわめをさせていただき、検証させていただきたい、このように思っているところでございます。  まず、自治体の合併促進について、自由党のこのパンフレットの中でも、市町村合併促進のための新しい法律をつくるんだというようなことも提案されております。それから、三百自治体構想というのもあります。しかし、これをどうやっていくのか。  現実に、三千二百三十二の自治体を十分の一にしていこうというようなことになるんですが、極めて困難な、発想は奇抜でおもしろいという感じはするんですけれども、手続的な意味からも手順からいっても、それでは中間自治体である都道府県の広域的な役割とか都道府県の役割はどういうふうに位置づけすることになるのか。それから、実際に中央で強権的にやるしかこれは達成できない話ではないのかなと思えてならないわけでありまして、そういう点で、非常に危険なというか、怖いものも感じるところがあります。  そういう点で、地方分権の視点から考えるならば、合併推進というのは、あくまで自治体の、住民の主体的、自主的な運動の中からつくり上げられていくものでなければならない、このように思うんですが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  60. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 地方自治体の合併が、基本的には地域住民の協力といいますか、自主的に、自分たちが合併することの方が自分たちにとっても有益であるという理解が進んで行われるということが基本であることは、御指摘のとおりであります。  しかし、特に最近の国内のいろいろな地域間のアンバランス、それからいま一つは、福祉行政の世界においてもそうでありますけれども、かなり専門的に高度な行政のレベルを維持しなければならぬという、これは所々方々に出てきているわけであります。  そういった点で、そういう行政サービスのレベルをどうやって高度なものに対応していくのかという上でも、やはり住民の福祉の増進のためにも、そういう意味での受け皿としての能力アップを進めるということが一つ大事な視点であると思っています。  それからもう一つは、これは国、地方を通じて、御承知のとおり財政が大変厳しい状況にある、そういう中で、どうやって国、地方を通ずる行政の簡素効率化を図っていくかという視点、この視点もまた大事な視点であります。  そういう中で、市町村の合併ということは、両面からいっても私は非常に大事なテーマである、これは大体多くの方々がお認めになることだと理解をしております。  特に、地方分権を強力に推し進めていこう、そういうことになればなるほど、三ゲンという表現があります。人間つまり担い手である人材、あるいは財源、あるいは権限、こういったものを、やはり地方の住民に近いところの行政はそこの地域の基礎的自治体が担っていくんだ、そういうような地方分権というか、そういうようなものをより強力に進めていこうということであればあるほど、なおさら受け皿である基礎的自治体の強化ということは避けて通れない課題である。そういった観点からも、この市町村の合併というものを、その基盤を強化していくという上で非常に大事なことだ。ただ、そのことについて、なかなか他から強制されてというと問題もあるかもしれない。そういう点で、私たちは、少なくともそのメリットをぜひ理解してもらう、そういう中で進めていきたい。  これは、じっと黙っておると百年河清を待つというような部分なきにしもあらずである。そういう点で、自由党という形の中で、私たち日本再興へのシナリオということで、今お示しになった中にかなりラジカルな表現で書いてあることは、これは事実であります。しかし、やはり基本目標ということをある程度掲げて、そこへ具体的に、段階的にどういう手順でやっていくかというのは、その次の政策の選択の世界であると思っています。  今お聞きになりましたテーマについて、どうやら、自治大臣としての答弁よりも自由党の基本政策ということをどう実現していくかというお話であったかと思いますので、そこのところをかみ分けて申し上げたつもりでございます。  自治省としては、この問題は、特に合併促進については、今度の地方分権推進法、これをこの国会にお示しする中で、合併の特例法についても思い切った改正を出して、それに対する財政的な支援なりいろいろな形での具体的な支援措置、バックアップ措置を盛り込む予定にいたしております。  その際、地元の市町村の自主的な努力と同時に、都道府県がそれについてかなり協力をしていただくということも大事なことであるというふうに考えております。
  61. 小林守

    小林(守)委員 自由党の分権構想と、現実に今進められようとしている合併促進法の改正、このギャップが私は相当なものがあるのではないか。少なくとも、自自連立政権の中で野田自治大臣は、自分の持っている構想と現実の合併促進法の改正という中のその溝の深さというか広さというか、実際に三百自治体構想に打ち上げられたような姿を構想するならば、これは何十年先の話になってしまうような遅々たる改革にすぎないのではないか、このように思えてならないわけであります。  少なくとも、その方向については、私は基本的には広域化の方向については間違っていないというふうに思います。ただ、その手法として、相当合意形成をしっかりとしながら手順を踏んでやってもらわなきゃ困る。そして、合併のためのインセンティブをきちっと行財政的に県の協力も得ながらつくっていくということが必要だろう、このように思います、これはもう一度詳しくはやりませんけれども。  次に、地方分権の視点から極めて大事な住民参加の制度化ということも御党の方のシナリオには書かれているわけでありますけれども、この住民参加のシナリオという視点に立つならば、私は住民投票制度、これについて触れないわけにはいかないだろうというふうに思うんですね。  そういう点で、今日の各自治体、住民の動向にはさまざまな住民投票条例制定要求の動きがあり、その条例制定によって住民投票を行って、さまざまな環境の問題、産廃の問題とか原発立地の問題とか、それから基地の問題とか、それから最近では、徳島市のいわゆる吉野川第十堰の問題についてもそういう方向で動いているわけなんですけれども、そういう点で、この住民投票制度をどう受けとめ、現在の地方自治法に位置づけられている直接民主主義の価値というものですか、代議制民主主義と直接民主主義の調和というか、その共存関係というのですか、補完関係がどうつくられていくのか。私は、しばらくは成熟を見なければならない、実践的な事例の積み重ねの中でその成熟化が求められているのだろうというふうに思うのですが、大臣の所見を伺います。
  62. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 住民の直接参加の問題は、今御指摘のとおり、なかなか画一的にイエス、ノーという形で割り切れない部分があることは御指摘のとおりです。  そういう点で、代議民主政治というものと、それから、これは何も地方自治だけではない、国政のレベルにおいても国民投票的な発想というのはやはりあるわけで、いわゆる代議民主政治というものが十分に国民のニーズを受けとめ切っていないという、それは、既存の政治のあり方そのものに対する一つの反省点をも含んでいることであろうとは思います。  しかし、ただ、できることならば、そういう直接的な意見が反映できるような仕組みが、オール・オア・ナッシングで考えるのではなくて、もう少し内容において検討できないかというのが再興へのシナリオの中の表現になったわけで、この点については、引き続いてそれになじむもの、なじまないものの交通整理をしてみたい、そういう気持ちでそこに表現してあるということであります。この点は、もう少し勉強しないと結論は出ないと思います。
  63. 小林守

    小林(守)委員 今、地方分権推進計画に基づく地方自治法の改正を含めて、四百七十八本ぐらいの関係法律を一括した地方分権関連一括法案というのが今国会に出されるという方向に進んでいると思うのですが、その中で、やはりこの住民投票制度をどう位置づけていくのか、極めて重要なポイントだろう、私はこのように思うのですけれども、大臣、一括法案の中で、この住民投票制度はどう位置づけられるのか、られないのか、見解を伺いたいと思います。
  64. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 この問題は、地方分権推進委員会の勧告の中でも触れられております。しかし、結論からいえば、まだ結論を得ていない、両論があります。これについては、メリット、デメリット、両方の論議が出ておりまして、必ずしもこの点について一定の方向性を持って結論づけるという段階に立ち至っていない、こういうことでございます。  なお、これは地方分権推進委員会の勧告のみならず、地方制度調査会でも、かねてからいろいろ御勉強いただき、御議論をいただいてきたわけでありますが、今なおこれは先ほどいろいろ申し上げましたメリット、デメリット、両面からの意見考え方がありまして、これに対する結論はまだ出ていない、引き続き勉強するということになっております。  しかし、いつまでもずるずる引きずるわけにもいくまい、そういうこともあって、大体これになじむもの、なじまないものの交通整理ぐらいは少し具体的に始めてもいいのではないか、そのように考えてはおります。
  65. 小林守

    小林(守)委員 我々としては、やはり住民参加の多様化、豊富化、そして代議制民主主義というか、間接民主主義を補完するものとして、住民が直接政治、行政に意見を言える、制度的に言える、そういうものを組み込んでいくべきだろうというふうに思いますし、できるならば、それをきちっと位置づけていくような工夫、そして改革を求めていきたいなと思っております。  少なくとも自由党の論理の中から言うならば、当然これは位置づけていく方向が出てくるはずだろうというように思うのですけれども、そういう点で、自自連立政権に入ったという視点からも期待を申し上げたいというふうに思います。  それと、次に、やはりこれは新進党の前回の総選挙の政策資料の中に、法人事業税の外形標準課税の問題について触れられております。  その文面をちょっと読みますと、「現行地方税体系の中で最も税収が不安定で、自治体間の税収格差の大きい法人住民税、法人事業税について外形課税化をはかり、税収の安定性確保と地域間の平準化に努めます。」こういうふうな表現になっておるので、当然御存じのところだと思うのです。  現在、地方財政危機状況の中で、自主税源、分権に伴う税財源の確保ということもあります。充実確保という観点からも、やはり法人事業税の外形標準化というものが大きな課題になっているのは事実だと思うのですが、なかなか経済状況との関係の中で、これをストレートに持ち出すことについては時期的にいかがかということはあろうと思うのですが、基本的なこの問題の取り扱いについて、大臣、それから大蔵大臣にもこれはお聞きしたいのですけれども、どのように今後進めようとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  66. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 地方の自主財源をどのように安定、強化するか、これは長い間の懸案であります。  私たちは、少なくとも地方行政サービスというものが、必ずしも景気変動に左右されるというよりも、安定的なサービスを、ベーシックなサービスを要請されるわけでありますから、基本的には、そういう意味で景気変動にも強い、そういう安定した税収構造ができるということが望ましい。そして、できるならば、より身近なサービスということが優先するわけでありますから、そうであれば税収そのものも応益課税的な、そういう受益との関係がより濃いようなものが安定的な財源としてある方が望ましい。  そういう点からいえば、御指摘のとおりの事業税についても、いわゆる応益課税的な、言葉をかえて言えば外形標準課税的なものに何とかあってほしい。事業税という言葉にとらわれるかとらわれないかは別でありますが、これは昭和二十年代のころから少なくとも所得型付加価値税であったり、シャウプ勧告のころからも地方税源の安定のためのいろいろな考え方があったわけであります。しかし、残念ながら、今日の極めて厳しい財政状況下にあって国も大変だ、地方も大変だという中で、なかなかそこまで行き切っておりません。  そういう中で、政府税調においても、この事業税の外形標準課税化ということについては、そちらの方向性を望ましいことである、非常に大事な検討課題なんだということの答申なり報告もあるわけでありまして、私たちとしては、そういう地方税収の安定性ということを念頭に置いた応益課税化にぜひさらなる努力をしていきたいし、多くの国民の、住民の皆さんの御理解と御協力を得たいものだ、かく考えておる次第であります。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本心は、今、野田大臣の言われたとおりに思っておりますけれども、これについては、御関係の皆様が大変に御苦労されていることでもございますので、この程度にさせていただきます。
  68. 小林守

    小林(守)委員 地方税財源の確保充実というのは、第五次答申まで含めて分権推進委員会の中で議論をされながらも、答申の文面ではお題目だけしか出てこないのですね。しかし、分権の大きなかなめとして、私は、やはり税財源の移譲というのですか、これが明確化されない限り、本当の意味での自立した地方分権体制はできないだろう、このように思えてならないわけでありまして、そういう点でも、中央から地方への三ゲンの移動の中で、やはり財源の移譲というものをきちっと、あるきちっとした機関で覚悟を決めてやってもらわないと、これは分権というものが本当に実体のないものになってしまうのではないか、そういうことを恐れるわけであります。  そういうことで、分権推進委員会の方では、政府税調とかほかの機関で内容については触れるべきものであって、推進委員会の方で中まで踏み込んだ答申は難しいという話を聞いておりますが、本当に政府税調の方にお預けしてしまって、しかも国の機関、大蔵省の関係機関になるのではないでしょうか、ということになると、本当にみずからの持っている権限を、財源を地方に移譲するという話でありますから、相当きつい話でありますし、これは第三者機関的なものでないと難しいのかなというふうにも思うんです。しかし、いずれにしても、政府の責任において、推進計画を具体化、担保するためにもぜひ厳しい取り組みをお願いしたい、このように思うわけでございます。  それでは次に、分権の税財源の構造改革という視点に立って幾つかお聞きしたいと思うんです。  第五次勧告も含めまして、国庫補助金の整理統合の中で、国庫補助金については、廃止という一つあり方一般財源化というあり方、それからその運用のあり方、こういうことが主な視点として出されておるわけなんですが、その運用弾力化等の中で統合補助金というあり方が提言され、これが今後の方向の中で構造改革の一つとして現実的に取り組めるというか、相当切り込んでいける角度の課題として、私は、統合補助金のあり方については相当思い切った方向を出してもらいたい、このように思うわけであります。これについて今どのように進められているのか、お聞きしたいと思います。
  69. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今御指摘のとおり、昨年の十一月の十九日に、地方分権推進委員会から、第五次勧告という形で統合補助金等についての勧告がございました。それを受けて、今日まで、閣議においても、その勧告をベースにして、この三月いっぱい、今年度中に地方分権推進計画という形で内容を取りまとめて、そして、それをもとにして法案化を図って、具体的に予算等にあらわしたいというようなことを既に表明をしておるわけでございます。  そういう点で、これは自治省だけでできるわけではございません。関係省庁のもちろん御協力を得た上で、そういった統合補助金の問題、あるいは直轄事業等々さまざまな事柄がございます。そういう点で、これを取りまとめをしてやっていきたい。できれば、遅くとも十三年度予算にはこの問題を反映させる、早ければ、そのうちの一部でも十二年度予算にでも反映できるような形に持っていきたいというのが現在の状況であります。  ただ、内容において多少、さらに欲張っていろいろアクセルを踏むことができないかという議論もなくはない。そういったことも頭に置きつつ、さらなる努力をしてみたいと考えております。
  70. 小林守

    小林(守)委員 今、努力をされているというようなお話の中で、私もお聞きするところによると、少なくとも局の中での統合化というかメニュー化というか、そういうレベルの補助金の統合化が進められているというようなことを聞いております。  しかし、それじゃ何にもならないのであって、少なくとも省庁を超えた、事業の視点に立って、それを受け取る住民、自治体の立場に立って考えるならば、局のレベルでの話なんというのは全くこれはナンセンスな話でありまして、中央省庁改革再編の問題も含めて補助金の統合化という形で考えていくならば、少なくとも省庁を超えた統合が進められなきゃならないのではないか、これができなければ何のための省庁再編なのかというふうに思えてならないんですよね。  そういうことで、例えばの例なんですが、生活雑排水、それから下水などの問題について、現状の補助システムというんですか、補助のセクションをずっと見ていきますると、例えば合併浄化槽については厚生省所管でやっている。それから農村集落排水事業、これについては農水省でやっている。そして、自治体の公共下水道、それから広域下水道、これについては建設省がやっている。それから、そのすき間みたいなところに対応するところでやはり農水省あたりの事業もあるようですけれども、コミュニティープラントなんというようなこともあるようですけれども、そういう下水の問題、生活雑排水の問題一つとっても、三つの省庁に最低かかわりがある。  しかし、全体的に考えると、これは自治体からするならば、一括して下水対策、生活雑排水対策として、それぞれの地域にうまく使えるような、一括した補助金体制をとるべきである。補助金を続けざるを得ないという前提のもとで、考え方なんですが、本来ならば、補助金そのものはもっともっと地方へ交付しちゃえばいいんだというところまでいくんですけれども、当面、省庁再編に絡んで、少なくとも省庁を超えた補助金の統合化を進めなければ何の意味もないではないか、こういうことを強く申し上げたいなと思うんです。  今後の進め方の中で、省庁を超えた、事業に観点を置いた、地域住民の、自治体の行政需要にきちっとマッチできる、そういう補助事業の、補助金のシステムをどう取り入れようとしているのか、もう一度お聞きしたいと思います。
  71. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今回の勧告の内容をまだ完全に全部一つ一つ点検、チェックできかねておりますが、今御指摘のような方向性が一番大事な視点だと思っています。そうでなければ、なかなかこれ、実際に統合補助金としての趣旨が生かされないということになるのではないかという懸念、その御指摘はもっともだ。  私たちも、実はそういうことをもっと、何といいますか、ドラスチックなことを言ってきておったわけで、できれば、統合補助金がさらに進んでいくというなら、包括交付金的な形にまでいくならなお結構だ。やはりそういう方向性の中で、ただ、一気にそこへいけないというにしても、できるだけそっちへ向けて一歩前進であるというような形がとれないものか。私は、そういう中での今回の第五次勧告であったというふうにも理解をしておりますし、今御指摘のようなことをできるだけ具体的に表現できるような努力をさらにしていきたいと思っています。
  72. 小林守

    小林(守)委員 この問題を自治省が強く主張するというのはなかなか難しいというふうに思うんですね。そういうことで、これはやはり大蔵省が主導権を握ってやっていかないと解決できる問題ではなかろうというふうに思うんですよ。ほかの省庁は、自治省が何か下心があるんじゃないかというふうな視点で見られがちだと思うんですよ。  そういう点で、これはまさに省庁を超えた、この補助金の統合化というのは大蔵省の責任でやってもらわなきゃならないんですけれども、大臣、いかがですか。
  73. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 考え方としては賛成でございます。
  74. 小林守

    小林(守)委員 どこまでどう、賛成されていただいたわけですから、具体的に、省庁を超えるかどうか、その辺はいかがですか。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少し長くなると思って簡単に申し上げましたが、こういう問題は、戦後何回も言われて一度も実現したことのない、しかし非常に大事な課題でありますが、結局、中央と地方との関係というのは、行財政全般、行政の中にはいろいろ法律関係も含みますし、財政の中には税制も含むというようなことをやりませんと、最終的な解決はできない。そのことは、いろいろ議論をしてどなたもわかっておられることに今やなりつつあると思います。ですから、そういうことを頭に置いて、そっちへ向かって進みたい、そういう背景のもとにこういう問題もやっていくべきではないかというふうに思っておるわけです。
  76. 小林守

    小林(守)委員 財政構造の改革というか、分権に対応する税財源の構造改革のもう一つの視点として、私は、先ほど岩國委員も触れられましたが、地方歳出規模と地方税収入との乖離の問題、これをできるだけ縮小して、地方の自主税財源の充実確保、こういうことはどなたも触れてお話ししていると思うんですけれども、これについて、交付税の交付税率を変えようとか、補助金を一括交付金化しようとか、そういうことはあるんですけれども、税そのものを、国と地方のあり方を変えていくということが、私は、分権の税財源の観点からするならば、一番正しいというか一番望ましい姿なんだろう、やはり交付税や補助金を改革していくことは、過程的には、過渡的には必要なんですけれども、抜本的なものではなかろう、このように思うのです。  そういう点で、民主党としては、所得税の比例部分、一〇%部分を地方へ、地方税にする、住民税に入れていくというような視点でいろいろ検討をしているところでございますけれども、税財源の確保の視点から、構造改革として、現在、地方と国の税収入の割合は国が二で地方が一である。しかし、最終歳出の率で見ると、地方が二で国が一である。この間に三分の一の税源移転が行われるんですね。これが交付税であり補助金である、交付金であるというふうに言えるわけなんですが、そこに中央集権的な今日までの日本の行政システムが形づくられたわけですけれども、これを抜本的に改革していくためには、やはり税源そのものを逆の形にする、仕事をやっているところがみずからの税源でやるんだということが、住民が、納税者が、自分たちの納めた税金がこう使われていることが直結するわけでありますから、極めてそれがわかりやすいし、自己責任、自立という観点からも必要だと思うのです。  しかし、全国的規模で見るならば、地方団体いろいろありますから、財政規模、財政力、これらについては、やはり一定基準の行政サービスを受ける権利を持っておると思いますから、そういう点で、財政調整機能を否定することはできないわけであります。  そういう点での地方交付税の役割というのは今後とも必要になってくるだろうというふうに思うのですけれども、しかし、地方の自立とか自己責任ということを考えていくならば、税源上はやはり移譲をしていくという形で、我々としては、税収構造が国と地方二対一を当面一対一ぐらいにしてはどうか、こういうふうな考え方を持っているのですけれども、そういう税そのものを、国と地方の配分を考えていくということについて、大蔵大臣いかがでしょうか。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 小林委員は地方行政の実態について本当にお詳しいお方ですから、いわば、今のあり方について、いろいろ迷惑をしていらっしゃる点も間々おありになるだろうと思うのですね。実際そうだろうと思います。  ただ、今おっしゃいますように、したがって、財政の話は税源の話だ、私もそうだと思いますが、そこまでいきますと、必ずそれは仕事がついてまいりますから、どうしても行政の方と、権限の方と分けられない、すぐそこへ来ますので。しかし、関係がここまで複雑になりますと、そろそろもうきれいにしませんといけない問題だということは、私も痛感をしております。
  78. 小林守

    小林(守)委員 それでは次に、平成十一年度の地方財政計画並びに対策についてお伺いをしたいと思います。  今日の地方財政の現状については、申すまでもないところでありますけれども、四年連続の財源不足というような状況の中で、今日では十兆四千億ぐらいの通常収支上の財源不足を生じておる。そして、さらに、恒久的な減税に伴う減収、法人事業税や住民税の減税がございました。そういう観点で、また地方交付税への所得税や法人税のはね返りというか、影響額も含めまして、二・七兆円の財源不足が生じている、減収である、こういうことでございます。  なおかつ、起債を増発いたしまして、年度末の借入金残高は百七十六兆円になる。そして、自治体、全体の五六%、千八百四十七団体が、危険信号というか黄色信号と言われる公債費負担比率一五%以上になっている、こういう数値も出ているわけでありますし、今後このような状態でいくならば、地方の公債費負担は毎年一兆円ずつふえていくというようなこともきちっともう言われているわけであります。  そういう点で、さらに、介護保険の導入による福祉基盤の、介護基盤の整備とか、高齢社会に向かっての対策等の行政需要が新たに出てくる、さらに強くなるわけでありますから、そういう点で、地方財政は大変な状況になっていきますよ。少なくとも、民間でいうならば、破綻した金融機関や企業と実態的には変わらないような起債制限団体も随分出てきているわけでありまして、そういう点で、自治体の破綻、破産がさらにふえていくということが現実だろうというように思うのですね。そういうことで、地方財政対策についても大変厳しい決意で臨んでいかなければならないと思うのです。  時間の関係で、私の方でどんどん説明してしまいますけれども、平成十一年度の地方財政対策について、恒久的な減税に伴う地方税への影響については一兆七百十一億円あるわけですけれども、これについては、国のたばこ税の一部移譲とか、それから法人税の地方交付税の税率の引き上げ、こういう形で行い、そして特例交付金という制度を設けて、これを四分の三分、一兆七百十一億円の四分の三を国の責任で補てんしましょう、そして、あと四分の一については、二千六百七十八億円については地方が痛み分けしてください、こういう話でございますね。  ですから、この減税に伴う減収については、国が三持ちましょう、責任を持ちましょう、そして、あと四分の一部分については地方が減収補てん債で借金してください、こういう話なんですが、この三対一に決めた根拠というのですか、大蔵大臣と自治大臣が覚書を交わしたというようなことでございますけれども、これが、そのほかのいろいろな、交付税への影響については、交付税特会借り入れについて、これは将来返していくのに大蔵省と自治省が折半しましょう、半々に責任を持ちましょう、これも大臣の覚書でやろうとしているのですね。今日のルール型行政という視点からするならば、非常に裁量型というか、あえて言うならば、その場、場当たり的なというふうに言っていいかどうか、私も自治省でそういうことにかかわったことがありますから、みずから反省を込めて、やはりルールなき場当たり的な財源対策、財政対策にこれからも走っていってしまうのではないか。  今期限り、臨時特例的という措置が何カ所も出てくるんですよ。確かに目的とか趣旨が違うから、臨時特例的で今年限りですよというのだけれども、恒常化していくと、いつの間にか法制度化されていくというのが、折半の問題もそうなんですね、大蔵と自治の折半の問題もそういうことだったんですよ、昭和五十九年からそんなことが始まってきているわけですから。  そういうことになりますると、今後そんなうまい話ができるか。右肩上がりの財政、経済の成長の中であるならばそういう約束も履行できるということなんでしょうが、私は、今後こういう亭主とおかみさんが何とか借金やりくりでなあなあでやっていくというか、そんな感じがしてならないのですが、相当ルール化をしていくということ、裁量行政というのはもう続かないんじゃないか。  あえて言うならば、公債費負担対策という形で、起債制限比率一五%以上の団体に対しては今回しりぬぐいを国がやりますね。あえて言うならば、これは、破綻自治体、破綻しそうな自治体の早期健全化対策ですよ。これを大蔵省と自治省がやろうとしています。  先ほど要望の中にもあったように、国の責任でそういう起債をどんどんさせて、景気対策、一般公共事業を導入させてきた、単独事業に対して起債をどんどん取り入れさせてきた、こういう責任の結果が自治体の公債費負担の増嵩につながっているわけでありますから、私は、国の責任は絶対免れないと思うのです。  そうはいっても、選挙目当てと言うのは恐縮ですけれども、これもやりましょう、これもやりましょうという形でどんどん起債を起こしてやっていった場合に、将来への負担、自分は三期十二年やれば、後はだれかやってくれるだろうということなんですが、後の自治体の首長さんになる人は、本当に、借金返しのために、ぎりぎり悪い役を務めなきゃならぬということにもなるわけですから、そういう点で、将来を見通した継続性というか、行政、財政の安定性という視点からするならば、やはりこれは今の時点で相当、自己責任、自立、こういう財政上の仕組みをつくっていかなければならないのではないか、こんなふうに思います。  今回行った公債費負担対策については、私はやはり、地方の中央に対する依存心、こんなに財源が厳しくなってもう参りそうだ、赤字でもうバンザイだという団体に対しても、国が何とかしてくれたじゃないかということにならないかという心配があります。  そういう点で、国、地方を通した財政上の自立をどう進めていくのか、そのためにも相当きちっとしたルールをつくっていく必要があるのではないか。継ぎはぎの臨時特例的な形で、財源を何とか迷惑をかけないようにやりましょうという形でやっていくやり方は、もう限界が来ているよということをはっきり申し上げたいと思うんですが、いかがですか。
  79. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今、いろいろるる御意見をおっしゃいました。私も、拝聴しながら、率直に言って全く同感でありまして、やはり今、時代の変わり目といいますか、非常に大きく日本の行政の内容、あるいは国、地方を通ずる役割分担、そういったところからもう一遍きちんとやり直しをして、そして国、地方、いわゆる公的セクターも、もう本来なら民でやるべきところは余り余分なことをやらないということをも含め、そして、先ほど来のそういう権限の移譲、その中で、きちんとした責任のある仕事ができるような、そういう財源手当てをまた一方できちんとやる。そういうような一つの安定した配分というか、役割分担というものが、権限、財源両面においてもきちんとでき上がる。その上で、自己責任できちんとやっていくということが一番望ましいことだというふうに思います。  今現在、その過渡期の中にあって、しかも、かなりそれはいつまでもだらだらやっていっていいというものではない。今、この残された極めて限られた短い時間の中で、かなり拍車をかけて改革をスピードアップしていかなきゃならぬ。今、私は、そのさなかにある、しかも、その中で経済状況は御案内のとおり極めて厳しい低迷状況にある。そういう中で一体、ノーマルな姿、安定成長になったときに、どの程度、どういう税目が税収として上がってくるのかということがまだ完全につかみ切れていない。そういったことを考えますと、今ここで完全に、ここ一、二年の間に仕分けを全部完了できるという環境にはなかろう。  そういう意味で、それぞれ、大蔵、自治、なかなかお互い頭がいいものですから、役人同士の中で貸し借りが、長い間の積み重ねがあって、帳消しにできないので、いろいろな覚書が山ほど積み重ねがあって、その中で、やはりよかれかしと思ってやってきたことが、率直に言って私どももよくわからぬところはたくさんありますよ、本当に私は、もう少しルール化できないものかと。そんなことを両方の役所が考えながら、数年たつとまた臨時例が上乗せされる、また新しいルールができて、また臨時例があるという、何となく、そういうことが幾つか積み重なってきていることは事実であります。  したがって、そろそろここいらで、大蔵大臣もおっしゃいましたように、本当に、きちんと仕分けをしていかなきゃならぬタイミングになってきている。ただ、ここ一両年でできるかというと、それに先立つ経済の問題あるいは権限、財源の配分問題等について、もう少しきちっと拍車をかけてやっていかなきゃならぬ。地方分権の問題、その中で中核的な問題であると思っています。  この点は、私は、与党対野党ということじゃなくて、お互い、与党においても野党においても、目指す方向は同じだし、問題意識は同じだというふうに思っていますので、ぜひひとつ、御協力をいただいて、一緒に拍車をかけて、いい結論が出るように努力をしたいと思っております。
  80. 小林守

    小林(守)委員 いずれにしても、ルール化を明確にして、自己責任、自立の方向を地方にしてもらう。そして、自主的、主体的な、総合的な行政ができるような仕組みをつくっていくことが責任だろうというふうに思うんです。  申し上げるまでもないですけれども、交付税の税額不足というような状況が三年以上続いて、その不足額が一割以上あるならば、これは法律上、地方行政や財政に係る制度の改正または交付税率の変更を行うというふうに法律で書いてあるんですよ、交付税法六条の三の二項で。これを踏まえて、もう三年以上になっていると思います。足りないときだけそういうことを言うのかという御指摘もあろうかと思うんですが、少なくとも、自立の方向性、自己責任の方向性、そういうことで、一つは、ぜひ制度改正をお願いしたい、このように思います。  それからもう一つ。やはり情報開示が大事なんだというふうに思います。  そういう点で、自治体の起債制限比率一四%以上の、特殊な事情のある一四%起債制限比率の団体、一般的に一五%以上の起債制限団体に対しては、今回繰り上げ償還を認めて、まあ公債費負担を軽くしてやろうという一種の臨時特例的な措置がとられました。  これは今回限りだということなんですが、やはり一定の期間を決めて、ばちっとやって、これ以降はもう絶対あり得ないですよという形での切り方をしないと、臨時特例が毎年続いていくようなことが心配されます。これは国の責任でありますから、そういうこともやむを得ない面もあると思うんですけれども、これをきちっとやってけじめをつけてもらいたい、こんなふうに思います。  そういうことで、一つは、住民に、うちの首長さんが執行している、進めているこの自治体の財政状況はこういう状況で、今回国によってしりぬぐいをしてもらっているというようなことも含めて、一四%以上の起債制限比率団体の自治体名、六百八十ぐらいあるそうでありますから、これは住民に知らせることが大事だと思うんですよ。住民が、逆に言えば、むだな公共事業まで求めない、本当に必要な公共事業を求めていく、事業を求めていく、そういうところに視点がいくように、しかも、自治体の首長も、人気取りのための事業はやらない、こういうことも必要だと思うんですよね。そういう厳しい民主主義の住民参加の成熟化を図るためにも、私は、情報開示というのは極めて重要だろうというふうに思うんです。  そういう点で、その起債制限団体一四%以上の今回対象になった団体名をぜひ委員会の方に提示していただきたい、お願いします。委員長、いかがですか。
  81. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 委員長の御命令であれば、さよういたします。
  82. 中山正暉

    中山委員長 理事会で相談してみます。
  83. 小林守

    小林(守)委員 時間がなくなってしまいました。一問だけちょっと入らせていただきますが、介護保険制度の円滑な運営にとって、地方団体は大変心配をされております。  さきに、厚生省が二千五百円という基準額を保険料として出しましたけれども、全国市長会が実施したアンケート調査によると、回答された市の平均が三千四十円である、こういう結果が出ておりまして、大臣の方も御承知の上のことだと思いますが、これについてどう受けとめていくのか。  そして、その際に、全国市長会の方からは、「介護保険財政の健全性確保に関する意見」というものが出されております。その文面は、現時点の最新の数値等に基づき、法定給付額、市町村特別事業及び財政安定化基金の負担、低所得者対策、人件費を含む制度運営事務費の総支出額の見通し並びにこれに対する財政措置の内容を明らかにされたい、こういうことがされておりますので、これに尽きると思うんですが、厚生大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  84. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 全国市長会の調査報告は、この一月、先般発表されまして、平均三千四十円ということでございます。  これは、私ども昨年十月の全国の担当課長会議で提示いたしました、保険料算定のいわばワークシートを示しまして、それをもとに独自の方法により試算したものと受けとめております。六百七十くらいある市の中で百三十市分について取りまとめて、その平均を算定したものでございます。その算定の方法その他推計方法等もいろいろでございますから、現時点で、この結果が実際の保険料額の全国平均水準を反映したものであるかどうかについてはにわかに即断しにくい要素もあると考えられます。  一方、平成九年度の時点で厚生省がお示しいたしました、制度施行当初の第一号被保険者、六十五歳以上の方々の介護保険料平均が月二千五百円という額をお示ししてありますが、これは要介護者の見込み数に平成七年度の補助単価や診療報酬の単価を乗じて暫定的に推計したものでございまして、御承知のように、市町村ごとにサービスの水準とか、あるいは市町村単位で被保険者の所得水準の違い等がございますから、それらの要素を考慮に入れずに単純に全国平均を試算したものでございます。  そのために、実際の来年の四月の施行時における第一号保険料の全国平均額というのは、その後の単価の上昇によって若干上がることが予想されます。また、内容的に申しますと、特に療養型病床群等医療系の施設が多くある地域におきましては、やはり単価が高くなるということもございまして、ある程度高くなるのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、二千五百円という保険料額は、平成七年度の単価等に基づきまして暫定的に算定したものでございますので、それ自体を私どもは固定的には考えておりません。そして、適正な保険料で必要な介護給付が行われるということが極めて重要であると考えております。  なお、市長会の要望については、今委員が御指摘のように、市長会としては、保険財政の見通し、そしてまた給付額が一体どのくらいになるのか、市町村の今やっている特別事業は介護保険によってどうなるのか、あるいは財政安定化基金をどうするのか、低所得対策をどうするのかとか、いろいろの諸点についての不安、懸念を示されておりますが、一々ここで申し上げませんけれども、私どもとしては、これらに十分対応できる措置を講じて、不安のないように、なるべくこの一年間に精力的に詰めて、制度の大筋はできておりますから、それに基づいて円滑な実施ができるようにしたい、こう考えております。
  85. 小林守

    小林(守)委員 終わります。ありがとうございました。
  86. 中山正暉

    中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  87. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林守君。
  88. 小林守

    小林(守)委員 民主党小林です。  内閣官房長官鈴木宗男氏の政治資金についてお聞きをいたします。  その前に、北海道の帯広市に本社を置く業界売上高全国二位と言われている大手林業会社やまりん、そしてそのグループ企業十社、このやまりんの国有林盗伐の問題を先に触れたいと思います。  平成十年の九月に、このやまりんは、国有林のトドマツ三百二十四本を無断伐採した、盗伐したということで、森林法違反の疑いで、釧路地検、そして帯広営林支局の強制捜査を受け、現場作業員ら五人が逮捕され、そしてその後、国有林の伐採入札について七カ月の停止処分という行政処分を受けております。  この大手林業会社やまりんとそのグループ企業十社につきましては、鈴木宗男当時北海道沖縄開発庁長官という立場にあったわけでございますけれども、平成九年の政治資金収支報告書によりまするならば、二十一世紀政策研究会という鈴木宗男氏の資金管理団体に多額の政治献金を、個人並びに法人名に分けて、分散して献金をしておったというような事実でございますが、まず、その事実について、そして鈴木宗男氏とこの二十一世紀政策研究会との関係について、本人の方から御答弁をいただきたいと思います。
  89. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 お答えをいたします。  二十一世紀政策研究会は、私の政治管理団体、今は、平成七年からの新法では、一政治家一政治管理団体としての団体であります。  同時に、山田グループといいますか、前の社長さんは私の初代の後援会長で、昭和五十八年当時から大変お世話になっている、私にとっては大恩ある方であります。
  90. 小林守

    小林(守)委員 そのやまりんさんが森林法違反、しかも鈴木長官が北海道沖縄開発庁長官のときに国有林の盗伐を行ったという事実でございますが、みずから支援をいただいている、政治資金的にも世話になっているその社長初めグループ各社が、法人名それから個人名を合わせて、このやまりんに限っては、一年間の総額で六百四十万寄附を受けているということでございます。その手法は、法的には違法とは言えない献金のやり方、それから手続はきちっとやっているとは思うのですけれども、しかし、そのいただいているやまりんさんが、こういうような国有財産を盗伐したというようなことで摘発され、問題になっているわけでありますけれども、それについての受けとめ方をどういうふうにされているか、お聞きしたいと思います。
  91. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 正確を期したいと思いますが、私が大臣になりましたのが平成九年の九月の十一日でございます。このやまりんさんが森林法違反等で帯広営林支局から調査が入ったのは昨年の五月、さらに昨年九月に検察当局の捜査が行われたと報道等で私は伺っております。私が大臣になった際は、こういった事件といいますか、問題といいますか、あるいはそういった話というのは一切なかったわけでありまして、私は、この事件が起きた後の献金は、捜査される前の献金、平成十年分も入っておりましたけれども、これはもう返還をいたしております。
  92. 小林守

    小林(守)委員 自分はそのときに知らなかったというようなことだろうと思うのですけれども、少なくとも、今日政官業の腐敗、癒着というものが厳しく問われている状況の中で、みずからの資金団体の中に違法な、しかも国有林の木を無断で伐採している、しかも、いろいろな情報を調べてみますると、かなり常態的に、支障木だ、伐採に入るときに邪魔になる、道をつくるために邪魔になる木は無償でもらっていいというような一つのやり方を通してきた、まかり通っていたというような実態が明らかになっておるようでありますけれども、そういう団体からわかった後はもらっていないということではなくて、私は以前にさかのぼって返すべきじゃないか、このように思うのですが、いかがですか。
  93. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 森林法違反等につきましては、私は今、法のもとで厳正に捜査が進められて、また法のもとで結論が出るものだと考えております。  同時に、少なくともこの山田さんという方は業界でも大変に全国的に名の知られた、しっかりした企業でありまして、この事件が起きた段階で私は驚いたのです、こういうことがあったのかということで。  そこで、今もまだ捜査の過程でありますから私は知る由もないのでありますけれども、少なくとも政治家というのは人間関係でありますから、私はその人間関係においては、もう長い長い、かつての中川一郎先生の秘書時代からのおつき合いでありまして、きのうきょうのつき合いではありませんし、同時に、政治献金も、例えば私が何かポストについたからもらっただとか、あるいは一年スポットでいただいたとかというのではなくて、私がまだバッジをつける前から、最初のときから、立候補したときから応援をしてもらった大変ありがたい方でありますから、私はその人の心だとか思いだとか、また私を支援してくれたときの情熱というものはしっかり受けとめて、私自身が政治家としての大道を歩いていけばいい、こんなふうに思っております。  同時に、これも結果論として、そういった森林法違反があったというのは去年の九月に初めてわかったわけでありますから、それまでは私は全く知る由もないということは、これだけは明言をしておきたい、こう思います。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  94. 小林守

    小林(守)委員 いずれにしても、政治資金規正法が改正されて、個人並びに法人、団体の企業献金、これについては厳しい上限規制が設けられたわけであります。  そういう状況の中で、今までもずっとそういう形で献金をいただいていた、そのやり方が法規制上困難になったということで、分散献金というか、個人の名義で、それから会社の名義で、グループ企業の社長の名義で、そして法人の名義でという形で、法律の抜け道を利用して、前と同じような、それ以上の献金を集めてきたのではないか。まさにこれは脱法行為、分散献金という政治資金規正法のまさに抜け道を絵にかいたように見事にやっている姿ではないか、私はこのように思えてならないのですが、この脱法行為という批判に対して、どのように受けとめていますか。
  95. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 先生がどう解釈するかですが、脱法という言葉は、私は極めて遺憾な表現だと思っています。  私は今広辞苑から、辞書を持ってきましたら、脱法というのが、「実際は、法が禁止していることを犯すこと。」こう書いてあります。私は、法律は犯しておりませんし、今の政治資金規正法に基づいて適正に処理をしている。  同時に、私から言わせるならば、正直者がばかを見るような話であってはいけないと思うのです。私が正直に申告しているからこういった問題も出てくるのですけれども、私は、はっきり言って政治家の方でも政治資金は多い方です。それは、私はすべからく全部オープンにしているから、私はそれは自信を持って言えるのです。特にまた、うちの事務所はしっかりしている職員がおりますから、法律に基づいてやっているということだけは、これは明らかにしておきたい。  同時に、脱法という表現は、広辞苑の辞書からしても、「実際は、法が禁止していることを犯すこと。」という表現でありますから、この発言は私は受け入れることはできない、こう思います。
  96. 小林守

    小林(守)委員 私は、その脱法行為という言葉を取り消すつもりはございません。  それでは、それぞれの企業・団体献金をされた方、それから個人名で献金をされた方、それぞれの資金管理団体並びに鈴木氏の任意の政治団体、これらすべてに名寄せをしていただいて、本当に脱法行為がなかったのかどうか、これを確認したいと思いますが、その名寄せ行為というものは公表していただけますか。
  97. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 先生もう既に御承知おきかと思いますけれども、この政治資金規正法は公開されておりますから、これは自治省に行けばだれでも見られますし、だれでも閲覧できますし、だれでも調査ができるようになっておりますから、これはお調べをいただいてもらって結構であります。
  98. 小林守

    小林(守)委員 業界団体を統合した、鈴木氏の任意の支援団体である未来政策研究会21というのが、北海道の建設業協会正副会長並びにOBも含めて道内十一カ所の協会をまとめて、約三十五社の代表者がこの未来政策研究会21というものをつくっておりますけれども、これらについても、法人そして個人名での党への献金、党というのは自民党北海道第十三区支部、支部長鈴木氏でございます、そこに献金をされている。もちろん、前提条件として、そのメンバーは必ず二十一世紀政策研究会、鈴木氏の資金管理団体に入ることを条件につくられているというような事実もございますので、そういう点で、我々もさらに調査を進めたいと思いますが、脱法行為ということについて私は取り消すつもりはございません。  そして、今一番問われているのはやはり政治倫理の問題だろう、このように思います。確かに、法には触れないんだというような主張だとは思いますが、中坊公平氏の言葉をかりるならば、法律は最低の道徳であるというようなことを申しております。政治的、道義的責任が問われるのがやはり今日ではなかろうかと思いますし、政治家は、さらに高い志を持っていなければならない、より厳しい道徳が求められる、こういう立場ではないのかな、このように思うわけであります。そういう点で、富国有徳、高い志を持った徳のある国を目指す官房の副長官としてふさわしくない、私はこのように思えてなりません。  まさに政官業の腐敗、癒着を絵にかいたような姿がここにあらわれているのではないか、このように思いますし、鈴木氏の厳しい反省を求めたいと思います。
  99. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 少なくとも、私は、法治国家というのはやはり法律に基づいて行われている。例えば、過去の例を見ても、総理大臣経験者であっても法を犯せば捕まるのでありますから、私自身も、何か法に触れることがあれば御指摘を受けるわけでありますから、この点、法律も犯していない、それをもって倫理がどうだとかあるいは人格がどうだと言われるのは、私は、これはいかがなものか。しからば、私自身が人様の人格について云々言えば、これまた批判を受ける話でありますから、この点、ぜひとも先生、私は、ある程度のきちっとした倫理観、さらには法律という枠の中でそれぞれがその立場をつかさどっている、こんなふうに思っています。  なお、今先生から御指摘のあった任意団体の話ですが、この任意団体も、私がつくってくれとか、私がその会の設立を依頼したというならば御指摘されてもいいのですけれども、向こうの、第三者の全くの善意で、こういうものをつくりたい、しかも大方が私の後援会に既に入っている人の集まりなんです。全くもって新しいメンバーという人は一人か二人ぐらいのもので、全部のメンバーが、私の後援会に入っている人がその同志的な集まりで勉強会をしたいという話が来たのであって、これで何か私が政治活動をするだとか事を起こすというのとは、全くこれは別であるということもぜひともおわかりおきをいただきたい、こう思います。
  100. 小林守

    小林(守)委員 今、任意の建設業協会関係団体の幹部の、北海道全域にわたるその組織の問題なんですが、断れば仕事に影響するのではないかという心配があって入会したというような話も聞こえております。  なおかつ、このやまりんの会社には営林署の署長が即天下りをしているというようなことも出ておりまして、確かに中央の幹部以外については、手続的には二年以内は就職できないというようなことはありますけれども、しかし、営林署の職員が天下りをしている、そのやまりんが国有林を盗伐するというような形、その盗伐している会社の代表さらに関連グループ会社が政治献金をする、そして鈴木氏が北海道開発庁長官を務めていた。こういうことを考えると、まさに政官業のトライアングルが見事に、絵にかいたように出てくるんじゃないでしょうか。  以上で終わります。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 ここは大事な予算委員会という場所でありますから、これは事の事実だけははっきりしておきたいと思います。  私が国務大臣の肩書を利用して何か企業に便宜を図った、特に森林法違反している山田グループに何かしたというならば、今の先生の御指摘も、これは反省しなくてはいけない最たるものかと思いますけれども、私は全く、何か仕事に手をかしたとか、森林法違反を助けることをしただとかということはないわけであります。  あと、やまりんグループさんも、私がバッジをつける前からの後援会の人であって、しかも、私からお金を下さいだとか、政治献金をお願いしますと言ったことはありません。すべて善意の行為でありまして、この点、私が何か無心をしたというならば、これまた反省をせよと言われてもそうかなという感じはしますけれども、少なくとも献金というのはやはり善意の行為ですから、この点、私が何か圧力をかけてとったような今の言い方は、先ほどの任意団体にしても、それに入らないと後で仕事に差し支える、迷惑千万であります。  さっき言ったように、既に私の後援会のメンバーの人ばかり、大方がメンバーなんですから、それをもって、ためにするような、しかも新聞記事をもとにしての発言といいますか、質問はちょっと御勘弁願いたい、私はこう思います。
  102. 小林守

    小林(守)委員 では、さらに事実調査を我々も進めたいと思います。
  103. 中山正暉

    中山委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、細川律夫君。
  104. 細川律夫

    細川委員 民主党細川でございます。  私の方は二つの質問を予定しておりましたけれども、質問時間が少なくなりましたので、すべてが質問できないかもわかりませんけれども、その点はお許しをいただきたいと思います。  まず、地域振興券と宅配の関係について質問をいたします。  一月の二十八日、読売新聞におきまして地域振興券についてこのような記事が載りました。地域振興券の配布は宅配便はだめ、郵政省が横やり、自治体は困惑、こういう見出しの記事でございました。それには、兵庫県高砂市が民間の宅配業者に委託することを決めまして県に報告をした翌日、地元の郵便局長が、振興券は信書に該当する、こういう郵政省の公式見解を持参いたしましてその高砂市を訪れ、再考を促した、こういう記事の内容でございました。  これは一体どういうことかということで調べましたところ、全国の市町村から宅配業者に対して契約のキャンセルが相次いでいる、こういうことでございます。郵政省は、各地方郵政局への指導という形で、地域振興券は信書に該当する、こういう書面を出していることもわかったところでございます。  そこで、この振興券につきまして法的に見てまいりますと、郵便法第五条で「何人も、他人の信書の送達を業としてはならない。」こういうことが規定されております。確かに、この現行法では民間業者は信書を配達できないということになっておりますけれども、それでは信書とは何かということになりますと、法律上の定義はないわけでございます。  判例を調べてみますと、特定の人に対して自己の意思を表示し、または事実を通知する文書を総称するものというところでありまして、郵政省が郵便局に出しました文書にも、最高裁の判例ということで昭和三十三年一月十六日のものを載せてあるところでございます。  地域振興券がなぜこの定義に当てはまって信書であるのか、私にはよくわからないところでございます。郵政省の説明では、特定の個人あての通信文が記載されているということでありますけれども、これは特定の人に対する通信文とは言えないのではないかというふうに私は思います。そこで、この点について郵政省にお聞きをいたします。
  105. 野田聖子

    野田(聖)国務大臣 ただいま、地域振興券の、信書かどうかということについての御質問でございますが、信書の定義につきましては、今先生指摘のように、最高裁判所での判例によって明確にされているところであります。  これによりまして、地域振興券には、使用者は、交付された本人、その代理人及び使者に限られる旨等の通信文が記載されていること、また、市区町村から封筒のあて名の特定の人に対し送付されるものであることから、特定人に対する意思表示あるいは事実の通知であることが明確であり、信書に該当するということでございます。
  106. 細川律夫

    細川委員 商品券とかギフト券、こういうのは信書ではない、貨物だということで、今これは郵政省の方の専業にはなっていないわけでありまして、商品券あるいはギフト券と今回の地域振興券が一体どういうふうに違うのか、私にはよくわからないところであります。  法律論は水かけ論になりますからもう避けますけれども、こういう観点からお聞きをいたします。  規制緩和ということがございます。民間にできることは民間に任せよ、あるいは民間と官とが対等な条件のもとで競争をすべきだ、こういうことは政府・与党も認めているところでございます。  なぜ信書が独占事業の対象になっているか、こういうことを考えますと、これは、通信の秘密を保護する、基本的人権の通信の秘密を守る、こういう観点から独占事業の対象になっているのだろうということを思います。したがって、百歩譲って、地域振興券が信書だということに当てはまるとしても、地域振興券について保護すべき秘密というものが一体あるのかどうか。そういうことから考えますと、これは、郵政省がお上の方のやり方で民業を圧迫しておるというふうにしか言えないところでございます。  既に判例から四十年も経過して、社会情勢ももう大変変わっております。独占を与えるという信書の範囲、これはもうそろそろ考え直すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  107. 野田聖子

    野田(聖)国務大臣 数点御質問がございましたので、簡単に申し上げたいと思います。  まず、今般の地域振興券と一般の商品券の違いということなのですが、信書性、いわゆる信書と判断する材料としては特定性と文書性があるわけで、特定性というのは、特定の人に対するものであること、また文書性というのは、自己の意思を表示しあるいは事実を通知する文書であること、この二点が重要なわけでありまして、地域振興券は、先ほど私が申し上げたとおり、特定性としては、使用者が限られている等の通信文が記載されており、また、市町村から封筒のあて名の特定の人に対して送付されるということで、これが特定性と文書性ということで信書に該当するわけです。  これに対して、一般の商品券というのは、それに記載された通信文は一般人に対するものであり、特定性がありません。また、あて名をつけたとしても、一般人に対するものであることに変わりはないので、信書には該当しないというふうに理解しているところであります。  さて、規制緩和ということで、いろいろと通信の秘密をどうのという話があるわけですけれども、まず、信書の独占について重要なことを申し上げたいと思います。  私が言いたいのは、郵便というのは、この日本の国、国民の基礎的な通信手段でありまして、不採算地域を含めて全国あまねく公平にユニバーサルサービスを提供しなければならない、それによって公共の福祉が増進される、それを目的としています。これを財政面から担保するために、信書の送達の独占が法律上定められているわけであります。  先ほどの裁判所の判例の中にも、郵便事業が国の独占として認められているのは、「遠隔の地、交通不便の地、利用者少なき地をも含めて国内全体にわたり、共通の低額料金で、郵便物の迅速・確実な配達を為し、もって国民全体にあまねく利便を与えんとするにある」というふうに言われているところでございます。  つまり、私が申し上げたいのは、もうかるところとかもうけの多いところだけ民間事業の参入を認めれば、今ある、例えば簡便なポストの投函システムとか、手紙とかはがきの全国均一の料金によるユニバーサルサービスの提供を維持することが大変難しくなってくるだろう、そういうことから信書の送達の独占が定められているところであるわけです。このことは、四十年前にできたからというよりも、むしろ今日的にも意義を有するものだと考えています。  また、世界におきましても、こうした郵便のユニバーサルサービスの確保のために、信書の送達は基本的に郵便事業体の独占となっているわけでございます。  私は、郵便につきましては、不採算地域を含めて全国あまねく公平なユニバーサルサービスを国民利用者がしっかりと確保してもらえるような、そういう国民利用者の利益を第一義としてこれからも取り組んでいきたいと思います。  ちょっと走って済みません。秘密につきましてですが、信書の定義について、今の判例によりますと、「特定の人に対し自己の意思を表示し、あるいは事実を通知する文書を総称するもの」と明確にされています。そうした文書であれば、その内容がどのような意味を有するか、または秘密を要する事項であるか等は当事者間に任せられているものであって、要は、秘密の有無によって信書性が判断されるものではございません。そうでないと、信書に記載されている意思表示や事実の内容自体を第三者が関与、判断することになり、逆に秘密の保護を侵害することになってしまうということが考えられるわけであります。  郵政省としては、通信文の内容自体について関与することはありませんが、これらの信書に対して、どこの御家庭が配達の対象になったか、受取人の住所、氏名等の秘密の確保には十分注意をするように指導しているところでございます。  あわせて申し上げるならば、郵便局の職員には、郵便法第九条で秘密の確保が義務づけられているとともに、国家公務員法第百条で秘密を守ることを義務づけられているように、秘密保持の厳格性が法律上担保されているところでございます。
  108. 細川律夫

    細川委員 秘密の保護という意味においては、大臣の説明では納得がいかないわけであります。  例えば、それでは、郵便局がアルバイトを雇って、高校生などいろいろな方が郵便を配達している、そういうのなんかについては一体大臣はどういうふうに考えられるのか。国家公務員としてのあれではないですから、そういう意味では、国家公務員としての守秘義務というのはアルバイトの場合はないのではないかというようなことにもなってくるのではないかと思うのですけれども、そういう意味では、私は、地域振興券については、秘密の保護という意味からしますと、別にこれについて、特に言うことなく民間に任せてもいいのではないかというふうに思うわけであります。
  109. 野田聖子

    野田(聖)国務大臣 今先生のお話にありました、ゆうメイトを初めとする非常勤の方にも同じ義務が課せられておりまして、あわせて、今回も秘密確保につきまして、管理者に対し、ゆうメイトさんを初め、やめられてからも確保義務は続くということを申し上げているところでございます。
  110. 細川律夫

    細川委員 最後に、自治大臣にちょっとお尋ねをいたします。  この地域振興券というのは、地域の振興を、こういうことでつくられてやられるわけなんです。そうしますと、地域振興ということならば、なおさらこういうのは民間に任せて、民間の仕事をふやすということも必要じゃないかというふうに思います。そして、地域振興券をつくってやることについては、地方自治体は大変手間暇がかかってその労力も多くなる、こういうふうなことも言われております。  そういうことも考えますと、地方自治の効率化の観点からいいましても、これは民間業者の利用が図られていいのではないかとふうに思いますが、そういう点からはどうでしょうか。
  111. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 この問題、先ほど来の質疑を拝聴もしておりましたが、宅配業者から地域振興券の配達をしたいという申し入れを受けた市町村から、自治省にも照会がございました。しかし、この問題について郵政省に照会をしましたところ、信書に該当するという明確な回答があるわけであります。郵便法の有権解釈は、これはやはり郵政省。自治省ではございません。そういう点で、そういうことであればそのことをお伝えする、これは政府としては当然のことであります。そういう点で、市町村が郵送方式を行われる場合には、郵便局においても頑張っていただいて、できるだけ早く住民の方々にお届けをしていただきたい。  地域振興券は、そういう意味で、その使い先が、全国どこでも使えるというものではありません。その地域内の限定がある。そのことがまた、地元のいろいろな商店街などと連動しながら、地域おこしなりに大いに有効に活用していただきたいし、今せっかくそういう機運が盛り上がっておるところでありますから、できるだけ早くその実が上げられるように心から期待をいたしております。
  112. 細川律夫

    細川委員 信書につきましては、いろいろこれまでにも解釈がございまして、まだ確定がされていないというふうに私は思いますけれども、この点については、いろいろな観点からもう一度再考をしていただきたいというふうに思うところでございます。  時間が来ましたからこれで終わりますけれども、交通事故の被害者の救済についても質問を予定いたしておりましたけれども、急に時間が短くなりましたので、失礼をするところは御勘弁いただきたいと思います。  私の方は終わります。以上でございます。
  113. 中山正暉

    中山委員長 これにて細川君の質疑は終了いたしました。  次に、上田清司君。
  114. 上田清司

    上田(清)委員 どうも御苦労さまです。  早速ですが、大蔵大臣、通常の銀行の検査は、着手してから終わるまでにどのくらいかかるのでしょうか。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事務当局からお答えいたします。
  116. 日野正晴

    ○日野政府委員 一概にはこれはなかなか、申し上げることは大変困難ではないかと思います。ことしの集中検査を例にとりましても、七月から始めたものが、二カ月ぐらいで終わったものもございますし、あるいは三カ月かかったものもございまして、当該の銀行の規模、それから資産の内容、状況などによって区々ではなかろうかと思います。
  117. 上田清司

    上田(清)委員 日債銀の大蔵省の検査が四月十五日から着手されて、最終報告が九月十一日であります。これは相当時間がかかっております。当時の大蔵省の通常の検査によりますと、大変おくれている。  にもかかわらず、五月の段階で大蔵省は各増資銀行系統に要請をしている。見込み七千億だと。この七千億という見込みを大蔵省の検査でどのようにして根拠を出されたのか、大臣、お伺いしたいと思います。
  118. 日野正晴

    ○日野政府委員 これは前にも御答弁申し上げたかと思いますが、金融機関の検査と申しますのは、検査に着手して終了するまでは一切外にはもちろん申し述べることではございません。検査結果につきましても、検査結果の通知、現在は検査結果と申しておりますが、当時は示達と申しておりました。示達は、当時の大蔵大臣官房検査部長と銀行局長との連名で、検査並びにその後の監督上の観点から示達をしておりまして、その示達まで、大蔵省の心証と申しますか、検査の途中で知り得たさまざまなことについて、他にそれを申し述べるといったようなことはなかったものと承知しております。
  119. 上田清司

    上田(清)委員 大蔵大臣、先般、この委員会で、二月一日に、私の質問に対して、検査の結果は第三者に報告しない、このように申されましたけれども、確かでしょうか。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 詳しいことは存じませんが、みだりに申すべきことでございませんから、検査をした者、検査を受けた当事者、示達という形でなされているというふうに厳格には聞いております。
  121. 上田清司

    上田(清)委員 第三者というのはどのような範疇なのでしょうか。
  122. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事務当局からお答えいたします。
  123. 日野正晴

    ○日野政府委員 検査はあくまでも公権力の行使でございますので、当該金融機関以外の者ということになります。
  124. 上田清司

    上田(清)委員 大臣もこれがこの国会の、場合によっては終盤の一番の問題になってきているということも踏まえて、もう少し内容について把握をしていただきたい。再三再四、それぞれ同僚議員が質問をいたしております。ぜひ、事務当局ではなくて、問題点を的確に把握していただきたいということを強く要望しておきます。集中審査もあると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それで、大臣は、また金融監督庁長官は、第三者に報告すべきではないということでありますが、では、なぜ五月の二十日に大蔵省は増資要請先金融機関に、第三分類の見込みは七千億だということをそれぞれの機関にお伝えされたんでしょうか。  そしてまた、同じく十九日の日に、日銀に対しても、債務超過じゃないということを、何らかの形で検査の中間報告をなされておりますよ。第三者に報告しない、みだりに言わない。みだりに言っているじゃないですか。この辺はどうなんですか、大蔵大臣
  125. 日野正晴

    ○日野政府委員 日債銀とそれからその増資要請先との間で個別具体的にどのようなやりとりがあったかということを、当時の大蔵省が聞いていたわけではございませんけれども、当時の状況は、四月一日に関連会社が破産するといったことから、かなり日債銀としては切迫していたということは、これは認められるところでございます。ただ、大蔵省といたしましては、検査が、先ほど申し上げましたように何らかの心証は得ていたかもしれませんけれども、途中の段階でございますので申し上げることはできません。  しかし、日債銀としては、大蔵省との検査のやりとりの中で、自分たち考えている資産の内容ということは当然増資要請先に対しては説明する必要がございますので、その時点で、検査の途中ではあったものの、自分たちが得ている感触と申しますか、そういったものを増資の要請先に対しまして説明したのではないかなというふうに私どもは承知しているわけでございます。
  126. 上田清司

    上田(清)委員 委員長にも申し上げますが、金融監督庁長官は大蔵大臣の配下ではございません。総理直属の機関でありますので、大蔵大臣を指名したときには監督庁長官に振らないでいただきたい。(発言する者あり)そうだ。  それで、申し上げますが、長官、今申されたのは、日債銀がお知らせをされたということでありますが、私が申し上げたのは、大蔵大臣、大蔵省で五月二十日に電話で増資関係金融機関に連絡をしているんですよ。この事実関係については御存じですか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 四月の日債銀の再建については、大蔵大臣が支援をしたいということを言っておられますから、大蔵省の者も大臣の趣旨に従ってこの支援に努力をしておったということは、聞いて知っております。
  128. 上田清司

    上田(清)委員 それでは中身についてみだりに言っているじゃないですか。中身を言わなければ支援の要請もできないじゃないですか。どうですか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうでございましょうか。四月一日に再建計画を発表し、大蔵大臣がそれを支援すると言われましたから、その趣旨に従って行動したのであろうと思いますが、それは、私はそういうふうに推察をするしかございません。
  130. 上田清司

    上田(清)委員 なかなか矛盾したお話であります。  それでは日銀の理事、お願いいたします。  まず、五月の十九日に大蔵省から日銀に対して、債務超過でないということを御連絡を受けたはずですが、これはどなたがどのように受けられましたか。
  131. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  当時、日本銀行と大蔵省のそれぞれの担当部署でそういう情報、連絡を行いまして、この日本債券信用銀行は債務超過でないという認識を確認したわけでございます。当時、私どもの担当部署は信用機構局でございました。大蔵省は銀行局銀行課ということでございまして、担当レベルでございますので、本行でいえば調査役、あるいは大蔵省銀行課でいえば課長補佐、そういうレベルで連絡をとり合って確認したということでございます。
  132. 上田清司

    上田(清)委員 そのときに、債務超過でないという根拠資料というのはいただいたんですか。
  133. 小畑義治

    ○小畑参考人 根拠資料はいただいておりません。
  134. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、この信用局の調査役並びに大蔵の担当補佐とのこの報告というのは、理事会なり政策委員会にかけられたんですか。
  135. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  私ども、日本債券信用銀行は債務超過でないという認識は、実は、その日本債券信用銀行が再建策を講じます前に、日本債券信用銀行の自己査定あるいはそういうリストラ、健全計画、あるいは私ども、平成七年二月に考査に入りましたけれども、その後のオフサイトモニタリング等の結果を踏まえまして、私ども自体、債務超過でないという認識を持っておったところでございますし、また、本行といたしましては、八百億円の新金融安定化基金を通じます増資に応じる方針を固めたところでもございましたので、そういう認識は私ども自体で持っておりました。  大蔵省におかれましては、大蔵省自体の御判断で債務超過でないという御認識を持っておられたというふうに私どもは理解いたしておりまして、そういう認識のすり合わせ、共有が行われたというふうに考えております。
  136. 上田清司

    上田(清)委員 新金融安定化基金の日銀の出資枠から八百億出されたとき、この決定は、どの日銀の組織で、どのようにして、何日に決められたんですか。
  137. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  新金融安定化基金は、住専処理との絡みで実はこの平成九年より前の平成八年の九月に立ち上がっておるところでございまして、この新金融安定化基金は、当時の金融情勢をかんがみまして、内外の金融システムの安定化のために設立されて、住専処理との絡みもあったわけでございますけれども、それに対する出資におきましては、一千億円を私ども新金融安定化基金に出資したわけでございます。これは政策委員会の決定を経ております。  今度、この新金融安定化基金へ一千億円出資した中から日債銀の八百億円の優先株の増資に応じたわけでございますが、これは、新金融安定化基金にとりましては要するに基金の運用でございまして、その運用にかかわりましては、日本銀行に対して個別に協議するという建前になっております。当然、この日債銀への優先株の出資に当たりましては、運用につきまして日本銀行に対して協議がございました。日本銀行といたしましては、この協議に対しましては、執行部でその運用が新金融安定化基金の趣旨等に即して適当かどうかということを検討いたしまして、政策委員会に報告いたしまして全員異議なく了承される、そういう手続を踏んで増資に応じたわけでございます。(上田(清)委員「日付」と呼ぶ)  正確には、新金融安定化基金に出資いたしますときの政策委員会の要するに決定は、平成八年九月、後でまたあれでございますが、それから、報告、了承を得ましたのは平成九年の四月一日でございます。
  138. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、理事会でお決めになって、そして政策委員会で認めてもらってこの八百億の出資を決めた、その決めたのは七月一日、そして実質的にお金が出たのは九月だ、こういうことですか。
  139. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  先ほどの新金融安定化基金に対する拠出にかかわる政策委員会決定は平成八年の九月二十四日でございます。それで、四月一日に政策委員会の了承を得まして、実際にお金が出ましたのは、日債銀は七月二十九日に増資を完了いたしておりますが、この時点で資金は出たというふうに御理解いただきたいと思います。
  140. 上田清司

    上田(清)委員 では、お金の方が先に出たということでよろしいですか、理解は。
  141. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  私、間違って御報告——政策委員会で出資を報告、了承をされましたのが平成九年の四月一日。それで、お金が出ましたのは七月の二十九日、増資完了時点。
  142. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、九月二十四日には何をしたのかもう一回言っていただけますか。
  143. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  住専処理との絡みで設立されました新金融安定化基金への一千億円の出資、それの決定でございます。
  144. 上田清司

    上田(清)委員 ちょっと今のはおかしい。九月二十四日に一千億を決めて、そして、七月二十九日にその一千億の中からの八百億の支出じゃ、おかしいんじゃないですか。どういうことですか。
  145. 中山正暉

    中山委員長 次の年。
  146. 上田清司

    上田(清)委員 次の年、八年と九年ですか。これは八年の話ね。はい、わかりました。オーケーです。  それではお伺いしますが、九七年九月の十九日に東郷頭取から日銀総裁に第三分類が七千億の見込みだということを、再三再四この問題が言われておりますが、このとき間違いなくどういう中身で報告されたのか、その辺のくだりを詳しく説明してください。
  147. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  大蔵省検査結果につきましては、委員指摘平成九年九月十九日に東郷元頭取が本行に来られまして、当時の信用局長がお会いいたしまして、そのとき東郷頭取からは、要するに、バンカースとの提携などの経営の再建策の進捗状況とか、あるいは当時における資金繰りの推移、見通し等について状況説明を受けたわけでございますけれども、その際におきまして検査が既に終了いたしておりましたので、信用機構局長から当時の東郷頭取に対しまして、資産内容についても質問したわけでございます。  これに対しまして、頭取からは、回収に懸念のある債権額として、増資に先立って私どもが五月に報告を受けたときと同じ数字でございますが、約七千億円であるという説明を私どもは受けた次第でございます。この計数は、検査の途中経過を踏まえましたものとして五月に、繰り返しになりますが、報告を受けたものと同様でございましたので、それ以上の頭取と信用局長との間のやりとりはなかったという記録が残っております。  なお、その後、平成十年三月のいわゆる佐々波委員会に対して日債銀から提出されました自己査定額の数字もほぼ同様のものでございます。  このため、日本債券信用銀行の回収懸念債権額、いわゆる第三分類額が約七千億円であるという点につきましては、金融監督庁の十二月十三日の記者会見で行われましたその報道で一・一兆円と聞くまで、私ども日本銀行としては何ら疑問を抱いていなかったという次第でございます。
  148. 上田清司

    上田(清)委員 それはおかしいですね。  株価の動向、資産の劣化、そしてその当時からアエラやあるいは東洋経済で、日債銀の関連のダミー会社の話だとか、再三再四いろいろな観点から指摘されていますが、そういうのは一切考慮されなかったんでしょうか。
  149. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のように、いろいろ、要するに金融の不安な状態にあったことは事実でございます。私どもも、平成七年二月以降考査には入っておらないわけでございますが、日債銀からのその時々の報告資料の徴求とかヒアリングとかでオフサイトモニタリングを続けながら、日債銀の不良債権の動向等の把握に努めてきたところでございまして、景気の悪化に伴う不良債権の増加傾向とか、あるいは株式市場の軟弱化に伴います株式含み損の増加とか、そういう傾向については私ども認識いたしておりましたけれども、債務超過ではない、そういう認識は私どもは常に、不良資産の増加傾向あるいは株式含み損の増加傾向はございましたけれども、そういう認識はずっと持ち続けておったわけでございまして、事実、御案内のとおり、日債銀の平成九年の三月期あるいは平成九年の九月期の決算におきましても資産超過であるということが日債銀自体の決算でも確認されておるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  150. 上田清司

    上田(清)委員 おかしいですね。  日銀は、シンクタンクも内部にたくさん持っておられます。資産の劣化はあの当時明らかでありました。それが三月と九月が同じだという報告を受けて、そのままうのみにされるという、ちょっと常識では考えがたい。少なくとも日銀のこの八百億によって、呼び水として、その他の金融機関二千三百億が増資された経緯があるのですね。とすれば、相当それは慎重になされなければいけないにもかかわらず、極めて安易ではないですか。
  151. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  平成九年四月のその増資の際、あるいは佐々波委員会への公的資本の注入の際、いずれも日本銀行といたしましては、日債銀が提出いたしました自己査定につきまして、考査局中心にそれぞれの貸し出し査定表、ラインシート等によりまして、我々の立場から厳密な審査を行ったわけでございまして、そういう結果の中で、私どもも、ほかのいろいろなヒアリング等を通じます情報等も踏まえまして、債務超過でないという認識は持ち続けておったという点、御理解いただきたいと思います。
  152. 上田清司

    上田(清)委員 いいですか、佐々波委員会のときに、この席で佐々波委員長は、大蔵と日銀に検査を依頼した、つまり、どういうお金の出し方をすればいいのか、債務があるのかないのか、あってもどの程度なのか、そういうことを日銀と大蔵にお願いしたということでありますから、当然日銀と大蔵とその間協議があるわけでしょう、協議が。なかったんでしょうか。
  153. 小畑義治

    ○小畑参考人 お答え申し上げます。  先生指摘の協議というのをどう理解すべきかあれでございますが、私どもは、大蔵省と日本銀行の間で常に事務レベルで意見交換等もやっておりまして、債務超過でないという認識は共有し続けていたわけでございます。  私どもは、佐々波委員会の当時は私ども日本銀行総裁もメンバーでございましたので、日本債券信用銀行から危機管理審査委員会に提出されました書類につきまして、私ども独自で平成十年の三月五日から十日にかけて、極めて限られた時間ではございましたけれども、日本銀行の専門知識を有する職員として考査局がございますが、その考査局の職員が自己査定の正確性とかあるいは経営の健全化の確保のための適切性について審査した結果でございまして、私どもとしては、可能な限りチェックして債務超過でないという私ども独自の判断を持っておったということでございます。
  154. 上田清司

    上田(清)委員 大蔵大臣、大蔵省が示達書を出した九月十一日、このとき一兆一千二百十二億ですね、この数字は佐々波委員会のときに一切提示されなかったんですか。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 佐々波委員会のときに私は大蔵大臣でございませんでしたので、事務当局からお答えいたします。
  156. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が言われましたいわゆる佐々波委員会に、九年九月の日債銀に対する検査結果は提出しておりません。
  157. 上田清司

    上田(清)委員 これはおかしいですね。  一兆八千億から総額でなる、そして日債銀にも一千四百億、こういう資本注入を決める大事な資料が、全然佐々波委員会に提案されていない。あるいはまた、日銀と大蔵に検査の依頼をしたという委員長の報告に基づいているにもかかわらず、そうした報告も委員会の方になされていない。こんなでたらめなやり方があるのだったら、これはもらい得じゃないですか。これは認められませんね、こういう答弁じゃ。認められませんね。伏屋局長、認められませんよ、これじゃ。本当にそうなんですか。もう一回聞いてください。
  158. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今申し上げましたように、検査結果は、この間も監督庁長官もお答えになりましたんですが、佐々波委員会には提出されておりません。  他方、先ほど日銀からもありましたんですが、今先生が言われましたような経緯がございまして、その審査に先立ちましてラインシート等を徴求いたしまして、過去の検査結果等に基づき精査した結果を委員会には報告している。また、それは議事要旨にも出ているところでございます。
  159. 上田清司

    上田(清)委員 もう時間が来ましたので、また同僚議員の質疑に譲るわけでありますが、しかし、これは日程、期日、そして事実関係が大変はっきりしてまいりました。これは大変なことであります。国民お金を、一兆八千億、極めて、かなりいいかげんな形の中で決定をされ、資料も十分開示されることなく決定がされたということがほとんど判明いたしましたので、ぜひ、今理事会で証人喚問の件も協議中だと思いますが、絶対にこれは証人喚問が必要だということを強調して、終わります。  ありがとうございました。
  160. 中山正暉

    中山委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、池坊保子君。
  161. 池坊保子

    池坊委員 公明党の池坊保子でございます。  宮下厚生大臣に、家庭内暴力について、その対策をお伺いしたいと思います。  まず初めに、幼児虐待についてお伺いしたいと存じます。  幼児虐待は年々増加し、今や看過できない社会問題となっております。幼時に虐待を受けた子は、児童になったとき、今問題となっております学校現場での学級崩壊を招いたり、あるいは少年非行の原因となったり、あるいは親になりましたときにまた虐待を繰り返すという事実がございます。  全児相の調査によりますと、虐待が直接の原因で死亡いたしました子供は一昨年の九月から昨年の一月までの間に五十七人、そして、車内に置き去りにされた等々の原因で百九十名もの命が奪われております。親から離した方がよいと判断され、児童養護施設に引き取られた児童は約九百人となっており、児童相談対象時の約二倍強となっております。一九九八年、全国の児童相談所に寄せられた虐待相談は五千三百五十二件、一九九〇年の五倍になっております。  幼児虐待について大事なことは、まず未然に防ぐこと、そして未然に防いでも防ぎ切れなかった場合のケアだと思います。児童福祉法二十五条には、すべての国民は児童に虐待があったと感じるときには児童相談所等々に通告しなければならないという通告の義務がございますけれども、現実には、この通告の義務があるということすら知らない国民が多いと思うのです。  厚生大臣は、現状を踏まえてどのような対策をなさるのか、それから、その通告を受けたときにどのように保護をなさるかをちょっとお伺いしたいと存じます。
  162. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 まず、児童虐待の実態でございますが、委員の御指摘のとおり、最近非常に件数がふえておりまして、平成二年に千百件であったものが平成九年に五千三百五十二件ということでございます。  それで、児童相談所における虐待相談件数がそのように増加しておりまして、その内容を見ますと、身体的虐待が約五割でございまして、保護の怠慢や拒否等を含め、それが三割でございますから、両方で八割以上を占めておりまして、その中で、特に実母や実父による虐待が八割を超えているという極めて憂慮すべき事態でございます。  こうした中で、虐待を受けている児童の年齢構成も、幼児が五割程度を占めておるということでございまして、看過できない非常にゆゆしき問題であると思いますが、虐待を防止する上で、今委員のおっしゃられたように、早期発見、早期対応が極めて肝要だと存じます。  特に、児童虐待は家庭という密室の中で起きるために、国民の通告あるいは知らせることが非常に重要だと考えておりまして、この点、平成九年の六月とか平成十年の三月に通知を出しまして、医師とか教員とか保健婦等につきましてはとりわけ通知義務の履行が求められておりますので、住民に対して身近な市町村による通告義務について、このことを啓発して指導してまいっておるところでございます。  また、平成九年三月には、児童虐待防止の手引書というのを作成いたしまして、虐待とは一体何なのか、また虐待発見の目安等についてわかりやすく解説したガイドブックを作成しております。  なお、最近、児童虐待の対応、今度は対応でございますが、その手引、かなり分厚いものでございますが、これを作成中でございまして、本年中にこれを完成したいと思っております。  虐待問題とか通告義務についての国民一般理解を求めることは極めて重要でございまして、これは児童福祉法をまつまでもなく非常に重要なことで、私ども、全国の児童相談所等がございますので、それを通じて啓発を図っていきたい。そしてまた同時に、各地で民生委員等が二十万人くらいおられますが、その中で一万四千人くらいを主任児童委員ということで、ボランタリーな活動ですが任命いたしまして、地域のネットワーク等も含めて防止の充実に努めておるというのが現状でございます。  なお、虐待がなぜ発生するかというようなことは大変重要なことでございますので、ちょっと簡単に申し上げますと、私どもの認識としては、親が八〇%を占めているということで、親の生育歴の問題等がございます。親自身が虐待を受けて育ったような場合とか、あるいは愛情に恵まれないで育った場合等がございます。  また、家庭の状況で、やはり夫婦関係が非常に不安定で、経済的困難であるとか、そういうこともございますし、あるいはアルコール症疾患や精神疾患の家庭等も多いようでございます。社会から孤立しているという点もありまして、近隣、親族との関係がいかに重要かということも知らされております。等々、いろいろな問題がございます。  同時に、社会的背景としましても、最近、都市化あるいは核家族化に伴いまして、家庭や地域における子育て機能が非常に著しく低下しているということもございますので、そういうことを踏まえて的確な対応をしてまいりたいと思っています。
  163. 池坊保子

    池坊委員 大変丁寧に御説明いただきましたけれども、私もたくさんの問題を大臣に質問したいと思っておりますので、お互いに手短にと思っておりますけれども。  話は変わります。  農事組合法人のヤマギシ会というのを大臣は御存じでいらっしゃいますでしょうか。そのヤマギシ会のおじいちゃん、おばあちゃんを中心として、ヤマギシの子供を救う会というのが一九九七年に厚生省に要望書を出したと思いますけれども、その事実を御存じでございましょうか。ちょっと手短にお願いします。
  164. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 存じ上げております。私の選挙区にも一つございまして、私は中をお伺いしたことはありませんが、そういうことでございます。  それから、おじいちゃん、おばあちゃんの方からいろいろ孫の問題について要望のあったことも承知しております。
  165. 池坊保子

    池坊委員 それについて、大臣は、厚生省として何か対応なさいましたでしょうか。
  166. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは本部が三重県にございまして、県庁の方で一義的にやっていただくことで、連絡はとっておりますけれどもこの団体は、言うならば閉鎖的社会といいますか、そういう点がございまして、なかなか入り込めないという点がございますので、私ども、問題はよく承知しておりますが、それに対してどこまで踏み込んで是正できるかということでございまして、率直に申しまして、非常に、ちょっと困ったケースではないのかなと思っておるところでございます。
  167. 池坊保子

    池坊委員 先ほど大臣は、幼児虐待には早期発見、早期対応が必要だというふうにおっしゃいましたことと、家庭の中は閉鎖的になっているからわからないんだ、わからないのはいけないから通告の義務というのを児童福祉法二十五条でつくり、そしてそれをみんなに広めているんだと思いますので、この村が閉鎖的だから入れないというのは私はちょっと困るのではないかと思います。  それで、このときに出されました問題は五つございまして、強制的な母子分離、月に一回しか子供に会えない、これは言うまでもなく、子どもの権利条約九条三項で、子供はいかなることがあっても父母に会わせなければいけないというふうに書いてございます。また、二つ目には、直接的な暴力、これも子どもの権利条約十九条によって、体罰をしてはならないと書かれております。また、個別研さん会として、一人で長時間部屋に閉じ込められたり、学校にも行かせてもらえない、食事も抜きであるというふうに言われております。また、三、進路の自由選択禁止、つまり高校に行くのを禁止しております。四番目は、一般社会との遮断、学校に行くことはできるけれども、放課後部活等をすることはできない。また、五は、強制労働というふうになっております。  これだけの通告を厚生省にしながら、厚生省が何にもしなかったというのはこれは私ちょっと怠慢なのではないかと思うんです。まず厚生省が、通告を幾ら受けましてもそれについて対応しなかったら、これはやはり子供たちは放置されていくわけでございますから、私は、厚生省が見本をまず示してほしいというふうに強く希望いたします。いかがでございますか。
  168. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 大体今御指摘のような事情にあることは、私どもも承知しております。ところが、さっき三重県の本部の話を申し上げましたが、児童相談所等で県が一義的にやっていただくわけでありまして、それを飛び越えて厚生省がいきなり中へ介入していくということはなかなか今の制度の建前でできないのでございます。しかし、そういう事態が本当に深刻な事態であれば、私も、これは少し考えないといけないなということで、県庁ともよく相談をして、本部ばかりでございません、これは全国各地にございますから、対策を検討しなければいかぬ、こう思っております。
  169. 池坊保子

    池坊委員 私が調べましたところによりますと、広島弁護士会は、広島県三次市のヤマギシズム学園花見山初等部に対して、憲法や子どもの権利条約で保障された人権が侵害されているとして警告書を出しております。  どうして広島弁護士会がこのような警告書を出すようになったかといいますと、子供を預かっております学校が、担任が子供たちを見ているときに、おなかがすいて輪ゴムを食べたりとか、あるいは体が悪くないのに長期に休ませるとか、放課後部活もできない、そういうことを見て、これは子供が普通じゃないんじゃないか、それで連名で、校長先生名前で広島弁護士会の方に出しているわけでございます。広島弁護士会も、平手打ちなどの体罰、あるいは反省させる名目で数時間から数日間も狭い一室に一人で閉じ込めた、また、三、通学日に朝食を与えず、十八時間も食事をさせなかった、四、子供の手紙を無断で開封し閲覧した、無断で私物を検査し、取り上げた、家族との交流は月一回に制限され、休日も学園のスケジュールどおりで、テレビ、新聞の視聴、閲覧を制限したというふうに書いております。  この警告をヤマギシ会にいたしましたら、三十名の子供はすぐに強制転校させられまして、三重県の方に、本部に転校されました。  これは、これだけでございませんで、岐阜県の武並小学校でも、校長先生が、人権侵害なのではないかという警告書を出しました。これは、食事抜きであるとか、雨の中裸で外へ出したとか、登校させない、会の中での暴力行為がある等が子供たちの様子から感じられて、これは放置できないということで警告書を提出いたしましたら、そこに通っております二十六名の子供がまた転校させられて三重県の方に行きました。  ですから、これは私は看過できないことではないかというふうに思っておるんです。もし実態調査して、それがそうでなかったならば別に構わないわけですから、私は、これは命にかかわることでございますので、速やかにお調べいただきたいというふうに思っております。  労働大臣にお伺いしたいんですけれども、放課後、部活もすることができずにすぐ帰って、強制労働に近い形で一般人間に売るものをつくらせられているのは、これは労働法違反にはならないのでございましょうか。
  170. 甘利明

    ○甘利国務大臣 労働基準法は、第五条で強制労働の禁止をいたしておりますし、第五十六条で、十五歳に満たない児童は労働者として使用してはならないということを法律で規定いたしております。  そこで、先生指摘のこのヤマギシ会につきまして、過去に労働基準監督署で責任者を呼んで事情聴取をしたことがございます。そのときには、共同生活者である児童については、放課後などに農作業に従事させているものであって、これはヤマギシ会の趣旨に基づいて共同生活及び教育の一環として行われているという向こうの主張を、はっきり言えば突き崩すことができなかったということであります。  要するに、労働基準法は、労働に当たるのかどうかということを客観的に把握しなければいけないわけでありまして、労働に当たるのか、単なる手伝いとか教育の一環であるのか、その線を客観的にしっかり引かなければいけないということでありまして、普通の学校でも市民農園みたいなことで働くことはやらせているものですから、これがそういうものとははっきり違うという客観的な把握が必要だと思います。  そこで、しかし、今まで先生の御指摘とか県の報告によりますと、ちゃんと世話係がいてそれが体罰も加えるというようなことが報告されていますから、そういったことがあるとするならば、できるだけ早く再調査を行って、事実関係を把握したいというふうに思っております。
  171. 池坊保子

    池坊委員 三重県に学校法人をヤマギシ会は設立したいということで要望書を出しました。そのときに、子供たちの実態調査のアンケートをいたしております。これは無記名のアンケートなんですけれども、そのアンケートによりますと、八割の子供が暴力を受けていると言っておりますし、それから労働も、したくないけれどもさせられているというのが多うございます。確かに、労働省のお役人がいらしてどうかと言ったって、させていると言う人はいないので、聞き取り調査等々が私は必要だと思います。  これはぜひ、厚生省を中心として、文部省、法務省、それから労働省で協議会を持っていただきたいと思いますけれども、厚生大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  172. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 大体御指摘のような事実が極めて高い確度で想像されますので、一度よく調査をして、そして、今申されたような、厚生省、文部省あるいは労働省、また警察庁も必要かもしれませんし、何よりも県当局とも相談をして、そういう組織をつくって対応した方がいいかどうか、なるべく早く検討してみたいと思います。
  173. 池坊保子

    池坊委員 これは、神戸の弁護士会、また日弁連も調査中でございます。行政はいつも、調査ができてからやる、後手後手対策だと言われておりますから、行政こそが、後手後手じゃなくて、迅速に見本を示すということであっていただきたいと思います。  私は、少子化対策の第一になすべきことは、生まれ出た子供を私たちの宝として愛情を込めてみんながはぐくみ育てることではないかと存じます。言うまでもなく、安全な環境で安心して自信を持って育つ道を確保してあげるということだと思います。ですから、本当に安全な環境で安心して育っているかどうかは、必ず協議会をつくっていただきたいと、主張できない子供にかわって私は強く申し上げたいと思います。  最後に、これはヤマギシ会に行っております子供が書いた、学校に提出した作文でございます。「ヤマギシでは、いつもおばあちゃんとおじいちゃんの事を考えています。お腹が痛くなります。ヤマギシで嫌な事は、いじめられる事です。早くおじいちゃんとおばあちゃんのウチへ帰りたいです。頑張ります。」  この子供の作文を、どうぞ労働大臣も厚生大臣も胸にとめて生かしていただきたいと思います。  それではもう一つ、ドメスティックバイオレンス、夫から妻への暴力ということで——労働大臣、ありがとうございました。お忙しくていらっしゃいますので、御退席くださいませ。  厚生大臣にお伺いしたいと思います。  今、ドメスティックバイオレンスというと、何だとおっしゃる方もあるぐらいでございます。大臣はどのぐらいあると推定なさいますか。これも短くお願いいたします。私の持ち時間がないんです。
  174. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、先ほど申しましたように五千件近くに上っておりますが、大半が要するに主人の暴力ということに理解しております。
  175. 池坊保子

    池坊委員 お正月に山中に子供が置き去りにされて凍え死んだというのがございますけれども、あれも夫から妻への暴力などが原因でそういうような環境になったと言われております。  全国で唯一調査している東京都の調査によりますと、女性相談センターによる九七年度の夫の暴力、酒乱に関する妻からの相談は四百二十三件、九三年度の約四倍になっております。都が九七年に四千五百人の成人男女を対象に実施したアンケート調査でも、女性の約三分の一が、夫や恋人から殴る、けるの身体的暴力を受けた経験があると回答しております。  それで、ぜひ厚生省としては、全国的にこの実態調査を、幼児虐待のようにきちんとしていただきたいと思いますけれども、それは来年度からしていただけますでしょうか。
  176. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 できるだけ把握をして対応していきたいと思います。
  177. 池坊保子

    池坊委員 国がようやく重い腰を上げて支援されるということでございますが、どのような支援を考えていらっしゃるのかをちょっと手短にお願いいたします。
  178. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 まず、県当局に一義的に事務を委任しておりますから、よく相談をして調査をし、そして、やはりしかるべき施設へ一時的に避難させるとかそういうことも必要でございましょうし、また、相談業務その他も、各機関がございますから、やる必要もあると思います。一時的な措置の内容等はもう詳しくは申し上げませんが、既存の施設等も利用しながら一時的な退避をさせて、しかしそれでは根本的な解決になりませんから、さらにそれを深めた解決策を考えていきたい、こう思います。
  179. 池坊保子

    池坊委員 私は第二に、速やかに公的シェルター、避難所の整備をお願いしたいと思います。  今でもNGOなどでシェルターをやっているところがございます。公的には今、福祉事務所とか婦人相談所などを通じて全国約三百カ所の母子生活支援施設で保護しているというのが現状でございますが、これだけでは到底足りません。  民間の力をかりるという行政のこれからの方針からいっても、NGOをうまく活用することがいいことではないかと思います。それから、今までいろいろな経験がございますので、どのような運営をしたらいいかということがわかっております。ノウハウが自治体よりも経験豊かではないかと思いますので、ぜひ連携をとっていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  180. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 いわゆるボランタリーなシェルターは、箇所数が今少ないようでございますから、それは非常に有効な働きをしていると思います。ただ、人員、資金面あるいは連携面、その他考慮すべき点が非常に多うございます。私どもとしては、そういう自発的な組織によってこれを解決していく役割は非常に大きいと思いますから、十分注意して助成をしていかなくちゃいけないなと思います。
  181. 池坊保子

    池坊委員 私が調べてびっくりいたしましたのは、今までそういう問題に対して放置されておりましたことと、シェルターの公的な位置づけというのがないんですね。これをぜひつくっていただきたいというふうに希望いたします。  私、調べましたら、これは大臣も聞いていただきたいし、委員の方も聞いていただきたいんですけれども、公的には、シェルターがないからどういう位置づけでやっているかといいますと、実に、売春防止法三十四条の一項に基づいて各県に設置されている婦人相談所の一時保護所が唯一の国の公的保護所となっていることでございます。  平成四年六月二十九日の厚生省社会局生活課長通知の「要保護女子」というのはこういうことで、そういう人たちを拡大解釈して保護するようにというのを読みましたら、「売春を行うおそれは当面ないが、その者が家庭関係の破綻、生活の困窮、性被害等正常な社会生活を営むうえで困難な問題を有しており、かつ、その問題を解決すべき機関が他にないために、放置すれば将来売春を行うおそれが生ずることとなると認められる場合に、未然防止の見地から保護、援助を要する者」としているそうで、これ、随分失礼なことで、私がもし駆け込み寺、シェルターに参りましても絶対に売春はいたしませんけれども、こういうような解釈できているとしたら、暴力を受けて逃げ込みたい方たちにも大変にこれは侮辱的ではないかと思いますので、きちんとしたシェルターの法律をつくっていただきたいと思いますけれども、いかがでございますか。
  182. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 婦人相談所は、売春防止法に基づきということで各県に設置することになっておりますから、恐らく厚生省としては、その法律を改正するまでもありませんし、違法な状況ではできませんから、売春とくっつけてもっと範囲を広くしようという配慮だったと思いますが、これは十分検討して、今売春防止法という視点だけでとらえるべき問題ではございませんから、検討させていただきます。
  183. 池坊保子

    池坊委員 時々、検討するとおっしゃっても何もできないことがございます。これからは政治家主導ということでございますので、これは大臣の御英断があれば速やかにできることではないかと思いますので、検討だけに終わらすことなくきちんとこれは対処して……
  184. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 時間がありませんから簡単に申し上げますが、もしも、ちょっと検討して、法的にそんな条件をつけなくてよろしければ、そしてまたその施設がそういう目的で使われることが可能であれば、直します。
  185. 池坊保子

    池坊委員 念のために申し上げますと、女性相談所と母子生活支援施設が今現在はシェルターの役目を果たしておりますが、母子生活支援施設というのは女性のための施設でございますので、十歳ぐらいの男の子は入れることができないわけでございます。ですから、十一歳ぐらいの男の子と入ってきた場合には、母と子が分離して生活しなければならないということがございます。また、警備体制がなく、夫が押しかけるということもあるわけです。そういうときに、それに対処することができませんので、危険が伴うことがございます。  ですから、危険が伴わない、そしてまた子供、男の子とも一緒に住めるようなシェルター、それから、今女性相談所は広域に保護することができませんで、その地域地域の問題として取り扱っておりますけれども、追っかけてくるので、自分が住んでいるそばの女性相談所では保護してもらえない、むしろ遠くに行かなければだめということがございます。その辺も考慮していただきたいと存じます。
  186. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今の母子生活支援の年齢の問題は、やはり十八歳まで可能なようでございますから、ちょっと施設の対象が違っているんじゃないかと思うんですけれども。  いずれにしても、母子生活支援施設、それは同行しないで単独で入所はできませんから、それはそれとして十分活用できるようにしたいと思っています。
  187. 池坊保子

    池坊委員 それでは、時間もございません。公的シェルターが法的にきちんとできるということを信じております。
  188. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 シェルターが法的な位置を与えられるかどうかは、NPOの法案が通っておりますから、これは容易に法人格も取得できますから、法的な位置づけということになると、NPO法に基づきましてこれは県の方で認可できますから、そして割かし簡単にできるんじゃないかなと思いますので、そういうことでやっていただければいいし、もしもお知りにならない方があれば、そういうことを相談していただけば、そのようにいたしたいと思います。
  189. 池坊保子

    池坊委員 今のところ駆け込み寺に三千万ほどの予算がついているのではないかと思います。私が調べたところによりますと、母子生活施設には自分たちの衣類とかがなくて駆け込んでくるから、衣服もお布団もない、そういうものは援助するというふうになっているように聞いておりますけれども。
  190. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと事務的な話でございますのであれしますが、定められた施設においでになったときに着のみ着のままというようなこともあり得るのかもしれません。そうした場合は公的に、きちっとした施設であれば、そういう助成はあり得るというように思います。
  191. 池坊保子

    池坊委員 わかりました。  私は、民間の力をかりることは大変いいことだと思います。ですから、どんな形であれ、困っております女性が保護され、そして新しい道を歩むことができるならば、方法論は問題ではございません。それを手助けするのが行政の役目ではないかと私は思っておりますので、民間の力をかりるにしても、それが速やかになるように御配慮いただきたいと思います。  それからもう一つ、人工授精の保険適用でございます。  今超党派で少子化社会対策議員連盟というのができました。少子化というのは、これからの日本が取り組まなければいけない最大の課題ではないかと思っております。  不妊検査並びに治療には、御存じのように、保険が適用されております。でも、人工授精とか体外受精には現時点では保険が適用されておりませんが、いかがでございますか。
  192. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 一般の不妊治療は、これはもちろん保険でやります。しかし、人工授精と言われるもの、それから体外受精、胚移植等は、これはやはり安全性の問題がまだ確立されていないという状況にあるようでございますし、もう一つは倫理性の問題がございます。そういった点から、これを一般の不妊治療と同じように保険を適用することはちょっと時期尚早であるし、なお検討を要するというように思っております。
  193. 池坊保子

    池坊委員 安全性というと、危険をはらんでいるということでございますか。
  194. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 場合によると危険もありますし、成功率が非常に少ないようでございますし、そういった一般的な治療としての、一般の不妊治療と比べまして、そういう意味の安全性あるいは確率の問題、それからまた、特に倫理性の問題等もございまして、なかなかこれが、一般人たちが本当に理解できる状況にあるかどうかというような点も考慮すべきだと思います。
  195. 池坊保子

    池坊委員 倫理性の問題を申し上げるならば、一般の人が理解するよりも、その当事者である、子供が欲しいと思っている夫と妻が理解したらそれはよろしいのではないかと思います。人工授精は一回約二万円で、一回ではできなくて数回かかるという現実がございますし、体外受精、試験管ベビーは経費が三十万から五十万かかると言われております。  そして、これは日本の婦人科学会からの発表でございますが、日本の生殖補助医療を使った出生児は、一九九六年の一年間は七千四百人でございます。それから、一九八三年以降の累積は二万七千三百人なんです。だから、二万七千三百人の子供たちがこの世に生をうけております。だけれども、保険が適用できないという現実がございます。ですから、現実を踏まえてもうちょっと、安全性、倫理性とおっしゃいましたけれども、お考えいただきたいと思います。  先ほど申し上げましたけれども、少子化対策の問題点として、まず、結婚をしたくない人に結婚をしろしろ言ったって、これは無理でございますし、また、結婚をしても子供が欲しくない人に、子供を産むことがいいことだいいことだと推奨するよりも、今、環境ホルモンとかストレスなどで、子供が欲しくてもできない夫婦、若夫婦が結構ございます。このような不況になりますと、欲しいけれども、これだけの経費は自分で持てないという方が、そういう若夫婦もございます。  まずは、子供が欲しい人たちの手助けをするのが少子化対策の最大の課題ではないかと私は思いますので、最後、時間がございませんが、厚生大臣にもう一度このことについてお答えいただきとうございます。
  196. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員が少子化対策の視点からそういった問題をとらえておられるというのは、私も、興味があるといえば悪いですけれども、非常に一つの識見だなと思います。  少子化対策というと、通常は、産み育てた後の条件の整備というように考えられがちでございますが、そういった点、御指摘いただきました。いろいろ、保険診療の問題につきましては、これは医学的な問題その他ございますから、なお引き続き検討をしていくつもりでございます。
  197. 池坊保子

    池坊委員 ありがとうございました。  ただ、前向きの検討というのが実行に移されますこと、政治は実行でございます。生きている私たちが対象でございますので、また、時間もゆっくりではいけないと思いますので、御英断を期待いたしております。ありがとうございました。
  198. 中山正暉

    中山委員長 これにて池坊君の質疑は終了いたしました。  次に、石垣一夫君。
  199. 石垣一夫

    石垣委員 公明党の石垣一夫でございます。  たゆまざる改革、責任ある政治、これは、私たち政治に携わる者の基本姿勢として常に原点に踏まえなければならない、そういう立場から、私は、特別会計の見直しの問題について御質問申し上げたいと思うのです。  国の場合は、一般会計だけでなくして特別会計あるいは財政投融資、それから地方財政など、非常に複雑に絡み合っております。きょうは、その中で特に、三十八ある特別会計の中から二、三の具体的な例を挙げて、そのあり方について御質問申し上げたい、このように思います。  財政法の十三条では「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。」と。この2には、特定の経理対象を一般会計から区分したものであるということで、特に特別会計設置の目的が書かれておりますけれども、こういうふうに、原則、はっきりと分かれている以上は、一般会計との間で財源の授受を限りなく認めるとしたら一般会計から分離した目的はなくなる、私はこのように思うわけであります。  この原則に照らして一般会計と特別会計との関係を比較いたしますと、昭和五十八年度予算以降、これはちょうど第五次臨調答申が出たときでございますけれども、平成九年度までの十五年間の決算の推移を見ますと、五十八年度特別会計の歳出総額は約百十三兆円であるのに対し、平成十年度の歳出見込み額は二百八十三兆円、約二・五倍に増大しております。この中身を見ますと、約百六十一兆円の重複予算を除いても、いわゆる純計額は二百十二兆円に増大しております。国民負担が年々増大している現象がはっきりと見えるわけであります。  そこで、お聞きしたいことは、一般会計は、年々やはりシーリング、それから総額予算主義、PPBSなどで厳しく査定されております。しかし一方、その影響で、一般会計で削られた分が特別会計に回っている、こういう実態が見られるわけであります。  例えば、一般会計からの繰入金は、平成七年度では四十一兆三千億であるのに対し、平成十一年度予算は四十七・五兆円、四年間で約六兆二千億ふえるという実態であります。これは、各年度別に見ましても、その予算の推移がわかります。平成七年度では四十一兆三千億、八年度では四十四兆七千億、九年度では四十五兆五千億、さらに十年度では四十九兆一千億、こういうふうに年々一般会計からの繰入額がふえております。  そこでお聞きしたいことは、政府は毎年、予算編成に当たっては閣議でシーリングの実施を決定するんですけれども、一般会計についてはこういうシーリングが適用されているんですけれども、特別会計についてはこのシーリング適用があるのかないのか、まずお伺いしたいと思うんです。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 特別会計におきましては、シーリングというものはございません。
  201. 石垣一夫

    石垣委員 今大臣からはっきりと、シーリングがない、こういう答弁があったんですけれども、では、財政法第十三条は、国の会計を分かって一般会計と特別会計とするとあります。当然、国の会計でありますから、特別会計といえどもこれはシーリングの対象になる、私はこう思うんですけれども、なぜこれは聖域なんですか。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本来、シーリングそのものが、石垣委員御承知のように、いわゆるコストとベネフィットの関係を効率的にするということ、並びに一般会計ができるだけ膨張しないようにといういろいろな目的でつくられたわけでございますが、特別会計は一般的に、特定の収入がありまして、それを特定の目的に財源として事業を行って使う。事業収益と受益の、負担の関係なんか等も比較的特別会計では明確になりやすうございますから、そういう意味で一般的なシーリングというものは必要ない、こう考えておるものと思います。  ただ、これは後でお尋ねが、きっとなさるのかと思いますが、だからといって、例えば郵政特別会計とかエネルギー会計とか、ほうっておいていいわけではありませんで、それ自身の節約が必要であることはもとよりでございますけれども、一般的に目的がかなり局限されておりますし、その収入も、したがって支出もある意味で自律的に決まってまいりますから、シーリングというものになじまないということで置いておらないと考えております。
  203. 石垣一夫

    石垣委員 では、この財政法十三条はどう読めばいいんですか。国の会計を分かって一般会計と特別会計とする、こうあるわけなんです。これはもとは一緒なんですよ、根っこは。したがって、一般会計にシーリング適用するんだったら、当然特別会計にもシーリング適用せねばいかぬ、私はこう思うんですけれどもね。  これは、一面考えれば、特別会計というのはそれぞれのいわゆる省益を持っている。したがって、懐に手を入れるな、こういう省庁間の暗黙の取り決めがあるんじゃないか、私はこう思うんですけれども、結果的に、さっき申し上げたように、特別会計はどんどん膨張していっているわけですよ。これはどこで初め書いているんだといえば、この財政法十三条によって、シーリング適用、一般会計で初めかけながら、特別会計を野放しにしている。終局は全部国民負担なんですよ、これは。今までこの論議が割と国会の中で行われていないんですよ。やっていなかったんですよ、これは。そのことを私は指摘しているんですよ。大臣、いかがですか。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事業会計でございますと、一般的に事業目的を持っておって、そのための収入があってということでございますから、その間に一種の市場経済的なと申しますか、コストとベネフィットの間の因果関係がございますから、むやみに膨張したり冗費があったりすることは恐らく一般的にありにくいと申しますか、一般会計に比べればそれは少ない事業会計的な部分があるからだろうというふうに思っております。  しかし、それは冗費があったり浪費があったりしていいという意味ではもとよりございません。そうして、その会計自身で自律してもらう、そういうことが基本的にやはり原則であろうと思います。
  205. 石垣一夫

    石垣委員 いやいや、シーリングを適用しないから、結局一般会計で削られた分が全部特別会計へ行ってしまうんですよ。特別会計は一つの省益を持っていますから大蔵省でも手を入れられない、こういう仕組みの中で、先ほど申し上げたように、どんどん特別会計は膨張していっているわけです。  大蔵大臣として、このままこれは放置していい問題ですか。私はちょっとここで問題提起しましたけれども、少なくともこの問題を、特別会計についても大蔵省としてシーリングを適用する、検討する、こういうお考えはありませんか。
  206. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 正直を申しまして、特別会計がふえていくことは、私は好きでありません。いろいろな意味でおっしゃるようなことが起こりやすうございますから、決して奨励すべきことだと思いませんし、同時にまた、特別会計におきましても、先ほども申しましたが、郵政の会計などはそうでございますけれども、ここへ来て非常にいろいろな合理化策をやっておられます。それは、一つのことを申せば、定額貯金が来年度からは満期になるというような事情があったりいたしまして、会計自身でいろいろお考えになって、局長さんの宿舎であるとか、いろいろ節約策をやっていらっしゃることを知っております。エネルギー特別会計もそうだと思いますが、もとよりそれは、特別会計といえども全くそういうことから自由であるというわけではございませんし、現に多くの会計でやっておられます。  ただ、もう一遍もとへ返って申しますなら、どっちかといえば自律のしやすい会計でございますから、その点は外からの関与というものがありにくいということはあるいは言えるかと思いますので、したがいまして、こういう会計が余りたくさんできるということは、やはり財政の秩序から申しますと好ましいことではないと思います。
  207. 石垣一夫

    石垣委員 好ましいことでない、こうおっしゃっているわけですから、少なくとも今後この特別会計についてもシーリング適用を検討するということはどうなんですか。
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは賛成でございます。
  209. 石垣一夫

    石垣委員 わかりました。  では、次に入ります。  第五次の臨調答申の実行効果についてお伺いしたいと思うんですけれども、政府は、昭和五十八年三月十八日及び五月二十八日に閣議決定いたしましたね、行政改革に関する第五次答申。その中で、特別会計制度についても述べておられます。この答申から十五年経過しているわけでございますけれども、損益計算書あるいはまた経理部門と運営の一部を除いてはほとんど実行効果が上がっていない、私はこのように理解しております。  ところで、なぜ政府は臨調最終答申について各省任せにしているのか。この際、特別会計制度に限らず、臨調の最終答申について政府としてフォローアップ作業をしてきたのか、また、その実行効果についてどうなのかお伺いしたいと思うんです。総務庁長官
  210. 太田誠一

    太田国務大臣 臨調の答申から十五年たったわけでありますが、一つは、その間にどれだけ見直しについて努力をしてきたかということでございますが、実際にこれは三十八の特会からふえておりませんので、消極的にはスクラップ・アンド・ビルドで対処して、六十年には二つの特会が誕生しておりますが、二つスクラップにしたというふうなことで、消極的な努力はなされてきていると思います。  積極的な努力については、今石垣委員が問題にされたのは、規模の小さい、そして一般会計への依存度の大きいところをスクラップしてはどうかという御指摘……(石垣委員「そんなこと言いませんよ。まだ質問していません。よく聞いてくださいよ。そんなこと質問していない」と呼ぶ)そうですか。わかりました。失礼しました。  どうやっているかということでございますが、今、これは総務庁長官としてではなくて行政改革担当大臣としてお話を申し上げますと、独立行政法人化というのを進めておりまして、それは、大どころでは、国立病院特会につきましては独立行政法人化をすることになっておりますし、また、その他の大どころの特別会計についても独立行政法人化することをお願いしているところでございます。
  211. 石垣一夫

    石垣委員 大臣、まだ質問していないことを、そんな答弁ないです。  だから、この臨調答申の最終答申について、政府として、全体でですよ、特別会計だけじゃないんですよ、総務庁としてフォローアップをしてきたのか、してきていないのか。してきたら、その成果を出してくださいよ、成果を。こうやってきたという成果を出してください。してなかったら、これから取り組んでください。二つに一つのどっちかです。
  212. 太田誠一

    太田国務大臣 従来の総務庁の考え方では、臨調答申のこの部分については財政マターであるということで、総務庁が他に先駆けて先導的にやるというふうには理解をしておらないようでございます、きょう聞きましたところでは。  ただ、今おっしゃったことは、独立行政法人化をしているということは、特別会計というものをさらに進めていくと、これは独立行政法人の姿になるわけでございますから、そういう意味では、先生のおっしゃっている趣旨に、今やっていることは、行政改革、中央省庁の改革そのものが御指摘の点についてはこたえているということを申し上げているわけであります。
  213. 石垣一夫

    石垣委員 大臣は、独立行政法人がイコールその答えだ、こういうニュアンスの答弁なんですけれども、時間がありませんので、これはまた改めてやります。  そこで、具体的に五十八年の閣議決定の主な指針についてお尋ねしたいと思うのですけれども、五つあるんですね。一つは、短期資金の借りかえによる長期の収支不均衡による財源不足を補っているものがある、これを改善すべきだ、これが一つですね。それから、一般会計からの繰り入れの比率が高いものあるいはまた規模が小さいものについては、廃止または統合すべきである。三点としては、事業の目的が達成し、あるいは役割を終えたと思われるもの。四点は、他の事業形態の方が望ましいもの。五点は、民間における同種事業の発達等、社会経済の情勢変化により見直す必要があるもの。こういう五つの指摘があります。  私は、その中で特に、規模の小さいもの、また一般会計から特会に繰り入れている比率の高いものを、事例を挙げてお伺いしたいと思うのです。  まず最初の、規模の小さい部門については、十年度予算を見ますと、特定国有財産整備特別会計十八億円、自動車検査登録特別会計二十一億円、園芸施設勘定が三十八億円、果樹勘定が五十一億円、これらは過去五年間ほとんど変わっていない、恒常的な予算になっております。  次に、一般会計から特会に繰入比率の高いもの、例えば国営土地改良事業特別会計についてお伺いしたいと思うのです。  委員長、資料を配りたいと思います。
  214. 中山正暉

    中山委員長 はい。もう皆お配りしてございますので。
  215. 石垣一夫

    石垣委員 はい、どうも済みません。  これを見ますと、平成七年度、総決算額が六千三百八十一億、一般会計の繰り入れが三千七百六億。平成八年度六千四百五十四億円、繰り入れが三千六百十三億円。平成九年度六千百六十六億円、繰り入れが三千三百六十二億円。また、この会計の繰り越し及び不用額を見ますと、平成七年度、繰越額が千百十五億円、不用額が九十二億円。平成八年度八百十七億円、不用額が百四十四億円。平成九年度、繰越額が五百億円、不用額が九十四億円。  大臣、まず、こういう資料の実態はお認めになりますか。農林大臣
  216. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 数字は、御指摘のとおりだろうと思います。
  217. 石垣一夫

    石垣委員 これだけ毎年毎年繰越金、不用額を出しながら、さらに翌年には一般会計から、例えば平成八年度、これはちょっと申し上げましたけれども、三千六百十三億円繰り入れしております。この繰入割合は五六%。九年度決算では三千三百六十二億円ですから、その割合は五四・四%。予算の半分以上が一般会計で賄っている。こういう特会は、先ほど申し上げました閣議決定の繰入比率の高い指針に当たると思うのです。これならば土地改良事業は一般会計でやった方がいいと私は思うのですよ。これほど予算に繰越金とか不用額が生じる予算計画は、余りにもずさんじゃありませんか。  こんなずさんな特別会計について、なぜシーリングがきかないのか、答弁してください。
  218. 中川昭一

    中川国務大臣 国営土地改良事業特別会計につきましては、先生指摘のように、一般会計からの繰入額は五五とか五六%というふうに認識をしております。  また一方、行革における先生の五点という御指摘がございましたが、その中で該当するものは、一般会計からの経常費の繰り入れの比率が高く、あるいは規模が小さくということになっておるわけでございまして、土地改良特別会計は事業規模が非常に大きく、また長期にわたるものでございまして、一般会計からの繰り入れの比率が高い特別会計というものとの、あるいはまた事業規模が小さいという御指摘には、この土地改良特別会計は該当しないというふうに考えております。
  219. 石垣一夫

    石垣委員 事業規模が小さいというのは、これは私は言っておりませんよ。先ほど例を挙げただけですよ。これは混同した答弁をしては困る。そうじゃないですか。何でこれが事業規模が小さいのですか、これだけ大きな財政で。それを、大臣、混同した答弁をしては困ります。私は、繰入比率の高いものについて具体的な例を挙げたわけです。  これは現実に先ほど、事務次官が認めているわけですから。だから、私は、こういうずさんな特別会計に対してなぜシーリングがきかないのかと聞いているわけです。これはシーリングをやっているのですか。
  220. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 具体的な事実に関することでありますので、ちょっと補足をさせていただきます。(石垣委員「簡単でいいよ。やっているのか、やっていないのか、どっちですか。それだけでいい」と呼ぶ)  まず、繰り越しの問題でありますけれども、これは、事業の都合上、やはり水が出るとか、岩が出るとか不測の事態が起こります。そういったものに対しまして……(石垣委員「だから、シーリングについて、やっているのか、やっていないのか、それだけでいい。イエスかノーかでいい」と呼ぶ)次にそのことをお答えいたします。  シーリングの問題につきましては、この特会に一般会計から繰り入れをいたします事業それぞれにつきまして、予算編成の過程で、どの事業に一体幾らをつけるかというふうな検討をした上で繰入額を決めております。したがって、実質的にはシーリング全体の原則のもとに入っていると認識をいたしております。
  221. 石垣一夫

    石垣委員 それじゃ、随分ずさんですね、このシーリングは。そう指摘せざるを得ませんよ。  さらに、私はもう一つ申し上げたいと思うのですけれども、国営農地開発事業、これは全国で十二カ所で、開拓地が三百三十五ヘクタール未利用地になっております。これは、もう時間がありませんので、ずっと読みたいのですけれども、青森県で二十五ヘクタール、三重県五十ヘクタール、山口県三十五ヘクタール、石川県百二十ヘクタール、島根県九十六ヘクタール、宮崎県八ヘクタール。十二カ所あるのですけれども、現在こういう状況にあって、私は時代に合わない事業だと思うのですよ。これ、時間があったらずっと読みたいのですけれども、お手元に資料を配ったので、なかなか時間的に読めませんので端的に今数字を挙げましたけれども。  こういうふうに、農地開発という事業そのものが、結局、一方では米余りの時代に減反制度を推進しながら、一方では農地開発という矛盾を抱えておる、こういう時代に合わない特別会計だと思うのですよ。まさにこれは先細りの特別会計だ、こう私は思うのです。したがって、当然これは臨調指摘の対象になる、私はこのように考えております。  次に、農業経営基盤強化措置特別会計について聞きたいと思うのですけれども、これの歳入歳出決算を見ますと、平成七年度千二十五億、歳出三百二億。平成八年度千百二十一億、歳出二百九十四億。平成九年度千二百二十四億、歳出が三百二十二億円。平成十年度千二百二十七億円、歳出が八百六十四億円。全部これ予算計画のずさんさを示した資料です。  また、この特別会計の歳出で、農地等買い入れ諸費では、平成六年度、予算額が二十四億九千百万円、決算額はわずかに四千二百万円。平成七年度、予算額十一億三千五百万円に対して、決算額が六千三百万円。平成八年度、予算額八億五千百万円に対して、決算額二千七百万円。平成九年度、予算額六億二千八百万円に対して、決算額一千五百万円。こういう状態であります。  この事実、認めますか、大臣
  222. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 数字は御指摘のとおりだろうと思いますけれども、これは御理解いただきたいのですけれども、農地を強制買収してそれを売り渡すというのをこの特別会計の柱の一つとしているわけですけれども、強制買収した農地を売り渡す、農地価格が先安の傾向で推移してまいりますとなかなかそれがうまくいかないというふうなこともございますし、金利の状態もございます。したがって、当初見込んだ、あるいは過去のトレンドから見た額よりも執行が少なくなることはございますが、時代の要請に合わせまして、十一年度、十二年度ではこれを極力絞りまして、ほかの需要が多い事業に予算をきちんとつけるというふうなことをしているところでございます。
  223. 石垣一夫

    石垣委員 それは努力は私認めますよ、時代が大きく変化しているのですから。しかし、現実のこの数字は、いかに計画がずさんであるかということを証明していることになるのじゃないのですか。だから私は、実際この特別会計自体というものが、改めて見直しせにゃいかぬと違いますか、大臣
  224. 中川昭一

    中川国務大臣 基盤特別会計につきましては四つの勘定がありますが、そのうちの一つについて、二十五億円に対して決算額が極めて少なかったという年度があったことは事実だと思います。したがいまして、次の年には大幅に減額するとかいろいろやっておるというふうに考えておりますが、先生指摘のように、この特会につきましても、財政状況あるいはまたいろいろな諸般の状況をよく見ながら、厳しく事業運営をしていかなければならないというふうに認識しております。
  225. 石垣一夫

    石垣委員 じゃ、もう一点申し上げたいと思うのですけれども、農業経営基盤強化措置特別会計にも未利用地があります。一つは、国有農地等買収にかかわる土地七百九十三ヘクタール、開拓財産買収にかかわる土地四千九百二ヘクタール、これが売れ残っております。理由はいろいろあると思います。また、鋭意この解消に私は努力をされていると思うのですけれども、これは、閣議決定の指針である、民間における同種事業の発達等、社会経済の変化に当てはめて云々とありますね。この指摘に当たるのではないか、こう私は思うのですけれども、いかがですか。
  226. 中川昭一

    中川国務大臣 農地につきましては、強制的に買い上げる、そしてまたそれを売り渡すという戦後の農地改革の事業が主体の特会でございますけれども、四つの特会のうちの一つとしてそういうものがあるわけでありますが、これを一般の民間に任せるべきではないかという御指摘に関しましては、あくまでも農地としてこの農業を営むという目的に合致させていかなければならないということ等、農地の大切さあるいはまたこの強制性等々の観点から、確かにもうこれは文字どおり、事業としては、買う事業よりも、もう買い終えつつあるということでございますから、将来的なことは別にいたしまして、現在あるものについてはやはり特会という国の会計の中での事業としてやっていくことが必要ではないかというふうに考えております。
  227. 石垣一夫

    石垣委員 したがって、今具体的な例を申し上げましたけれども、この特別会計といえどもシーリングを適用し、そして見直す、こういう方向に行政として取り組むべきではないか、私はこう思うのですけれども、最後に大臣、どうですか。
  228. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほど宮澤大蔵大臣から、特会についてシーリングは適用しないという御発言がありましたが、そうは言いながらも、きちっとやっていかなければいけないという財政当局と、我々も必要な事業についてはきちっとやってまいりますけれども、財政あるいはまた国民的な見地から厳しく見直していくということは、より一層我々の行政として求められていることだというふうに認識しております。
  229. 石垣一夫

    石垣委員 先ほど大蔵大臣から、来年度についてはこのシーリング適用については検討したい、こういう答弁をいただいたところですから、やはり所管大臣みずからがそういう姿勢なんですから、所管の大臣としてももう一度所管する特別会計を見直して、国全体がこの際特別会計について認識を改める、こういう方向に行かれることを望んでおきます。  以上です。
  230. 中山正暉

    中山委員長 これにて石垣君の質疑は終了いたしました。  次に、石井郁子君。
  231. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。私は、子供教育の問題で質問をいたします。  言うまでもなく、二十一世紀を担うのは今の子供たちであります。その子供たちの間にさまざまな問題がある。荒れと言われるような問題が広がっているということは、もう大変胸が痛むわけであります。  学級崩壊ということも言われております。授業中子供たちが立ち歩く、教室から出ていく、授業が成り立たないということなんですね。この点は、先月、滋賀県、岡山県で先生方教育研究集会もございまして、生々しくそういう実態も報告されているわけであります。校内暴力も八〇年代に大変な社会問題になりましたけれども、今日はそれ以上という、一万件を超えて過去最高ですね。いじめを苦にした自殺ということも後を絶たないわけであります。こうした子供の現状を見ますときに、私は、本当に社会の土台が崩されかねない、社会的な危機というべき事態だというふうに考えております。  この点で、日本共産党としましては、昨年来三つの角度で国民的な討論また運動を呼びかけ、私たち取り組んでいるところであります。  その一つは、やはり学校教育の抜本改革が要るのではないか。これは、受験を中心とした教育がいろいろ子供たちをゆがめているという問題がございます。それからもう一つは、やはり社会全体で道義を確立する。大人の社会にモラルが荒廃をしている、政治、経済は大変責任が重いわけでありますけれども、そういう中で子供たちにだけ市民道徳を説いても空文句になるわけですよね。そういう面で、本当に大人社会が問われている問題。三つには、やはり文化の問題もあるというふうに思います。国際的に見ても、日本ほど暴力あるいは性という問題で映像あるいはいろいろな商品に子供たちが無防備でさらされている、こういう国はやはりありません。  そういう点でも、自己規律、いろいろな問題の取り組みが求められているというふうに考え、皆さんと一緒にそうした運動に取り組んでいるところでございます。  まず最初に、私は、こうした子供たちの現状についての基本認識について、きょうは特に官房長官にお尋ねを申し上げたいというふうに思います。
  232. 野中広務

    ○野中国務大臣 教育専門家文部大臣が来ておられますので、その前で私が、委員が今御指摘になりました教育問題について申し上げるのはいかがかと思うわけでございますけれども、私どもにとって、多くの子供たちが心身ともに健全で育ってくれること、そして、それによって地域社会や国家が営々として二十一世紀に活力を持って発展をしていく、そういうのはまた私どもに課せられた責任であろうと思うわけでございます。  しかしまた、委員が今おっしゃいましたように、暴力行為とかあるいは不登校の学童、児童がふえていくとか、いわゆる学級崩壊とも言われるさまざまな問題が今大きく教育界を覆っておるわけでございます。  この背景というのはいろいろなものがあろうと思います。しかし、委員も今御指摘になりましたように、学校教育あり方の問題、いわゆる教育そのものが問われておる問題が一つはあろうと思いますし、またもう一つは、お触れになりましたように、家庭や地域社会における教育力というものが低下をしてきたのではないか、あるいは、これも御指摘ございましたように、情報化の洪水のような中で、また物質的な豊かさの中に心が失われてきたのではなかろうかというように、さまざまな問題が挙げられると思うわけでございます。  私も、最近見聞いたしました学校の中で、小さなところで、地域にCATVが根づいております。そして、保育所、幼稚園、小中学校に至るまで、入学あるいは春、秋の運動会、学芸会あるいは卒業式というのを一人も漏らさず映像で映しております。それが家庭に全部チャンネルで入ってくるわけであります。そうすると、子供が自然に、自分たちが映像の前に照らされておるという責任感を持つのか、大変行儀がよくなって、暴力がその学校からなくなったという事情を知りまして、情報というもののある意味における存在感を、地域教育と結び、あるいは家庭と結ぶところに大きな問題があるというような認識を持ったわけでございますし、また、暴力が非常に大きく問題になった学校におきまして、先生方が勇気を持って生徒と対峙していくような、連帯的な先生方の団結ができました。そこで、やはり暴力がなくなる学校ができたように感ずるわけでございます。  これから困難な二十一世紀の歩みを考えるときに、我々は、今一番重要な子供教育について、教育の現場あるいは家庭、地域社会を、国家の、あるいは地方公共団体相まって、責任として人づくりをやっていかなくてはならないと認識をしておる次第でございます。
  233. 石井郁子

    石井(郁)委員 子供の問題についての基本認識については、今後ともさまざまな角度から議論を進めていかなければならないというふうに考えますが、きょうは各論に入らせていただきます。  初めに、子どもの権利条約の実施の問題でございます。  昨年、これは五月から六月にかけてでございますが、国連子どもの権利委員会で、日本における子どもの権利条約の実施状況についての審査が行われました。大変厳しい内容だと私は受けとめていますが、二十二項目に及ぶ勧告が日本政府に送付されているわけであります。その勧告の中では、今議論にも入っております高度に競争的な教育制度日本子供に発達障害さえもたらしているという指摘を初めといたしまして、子供の健康、発達問題、遊び、暴力、ポルノの問題など、多岐にわたって日本の施策の検討を迫る内容になっているというふうに私は考えているわけです。  こうした勧告について、まず政府としてどう受けとめておられるのか、またその勧告をどういう体制で検討を進めていこうとされているのか、その点を、これも官房長官、ぜひよろしくお願いいたします。
  234. 野中広務

    ○野中国務大臣 ただいま御指摘がございました児童の権利に関する委員会の昨年六月五日の最終見解に基づきまして、政府といたしましては、この提案及び勧告を十分検討した上で体制をつくり上げたいと考えまして、自来、関係省庁の責任者会議の開催を数回にわたって行って、今後、それを受けまして、この勧告と提案に対して十分な施策の対応が総合的にできるようにただいま取り組んでおるところでございます。  詳細につきまして、必要とあらば政府委員からお答えをさせていただきます。
  235. 石井郁子

    石井(郁)委員 数回にわたって既に検討が始められているということで、大変結構なことだというふうに思うのですが、しかし、今政府に求められていることは、この勧告全体を各省庁に割り振って終わりではなくて、やはり全体として、あるいは包括的にどうこれを検討するのかという、そこではないのかというふうに思うんですね。  施策というのは各省庁で行われていくわけですけれども、この勧告の中には、例えば子供権利に関する体系的な研修及び再研修のプログラムということがございます。これはもう警察官、司法関係者、教育関係者、児童福祉の職員、医者とか看護婦など、子供にかかわる大人たち全体に求められているわけであります。これだけでも各省庁にまたがるという問題。  それから教育の問題でも、過度のストレス及び不登校という問題も、それをやはり防止して、そのための適切な措置をとらなければいけないということになりますと、これは文部省だけの問題じゃないわけですね。児童相談所、あるいは民間のフリースクールもそうでしょうし、子供たちの遊び場、学習塾、あるいは親の労働時間の問題、あらゆる問題の検討が必要とされるのではないかというふうに思います。  そして、実際この勧告の一つに、これは三十項目めなんですが、こういうふうに書かれております。子供に関する包括的な政策を発展させること、並びに本条約の実施の実効的な監視及び評価を確保することを目的として、子供権利に関するさまざまな政府機関間の調整、これを中央及び地方レベルにおいて強化すべきだというところがございます。私は、これは大変今大事だと思いますし、日本政府には、国連の権利委員会からも特にこの点を力を入れるべきだということがいろいろ議論の中で出されたというふうにも聞いているわけでございまして、政府として、こういう勧告を受けとめる包括的な機関の設置、政府間の調整機関、そういうものを設置するというように踏み込んだお考えはございませんでしょうか。
  236. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほど申し上げましたように、文部省が主管をいたしまして、現在のところは、総務庁、警察庁、法務省、外務省、文部省、厚生省、労働省の各省庁の責任者が出まして、省庁横断的にこの最終的な、児童の問題につきまして取り組みをして討議を重ねておるところでございまして、最終見解の取りまとめができました段階で、また今後の推進のあるべき方向を見出していきたいと考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、児童の権利に関する問題でございますので、積極的に、先ほど申し上げましたように、今後の新しい世紀を担っていく子供たちの健全な発展のために、その児童の権利に関する委員会の最終勧告を厳守する形で、一層努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  237. 石井郁子

    石井(郁)委員 それでは、重ねて伺いますが、その総合的な政府間、各省庁での何か連絡会議というもの、これは官房長官のもとに置かれているというふうに理解してよろしいでしょうか。
  238. 野中広務

    ○野中国務大臣 今申し上げましたように、文部省が主管をいたしまして、それぞれ関係省庁が一体となって取り組んでおる次第でございまして、その会合を集約いたしました結果、どのような組織でこれを積極的に推進するかは、その結論をもって取り組んでいきたいと考えておる次第であります。
  239. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、野中官房長官でございますのであえて申し上げたいんですけれども、例えば、女性の問題で見ますと、労働省女性局は、労働問題にとどまらず、女性の地位向上、その他女性問題の調査及び連絡調整という役割を持っていますし、男女共同参画室というのができましたね。この点では、大変官房長官の積極的な姿勢を伺っているところでございますけれども、そういう点でいいますと、やはり子供の問題についても、各省庁に子供担当というふうに置くのがいいのか、あるいは子供連絡会議というようなものを置くのがいいのか、そこはいろいろもっと考えが、知恵があるかと思いますけれども、やはり政府として、内閣として、子供の問題を、本当に調整役を果たして積極的に取り組んでいるんだということを見せていただきたいなということを強く願うわけでございまして、そしてまたそれは勧告の趣旨に沿っているという点でも、このことを強く申し上げているところでございます。重ねてよろしく。
  240. 野中広務

    ○野中国務大臣 私、条約でございますので、主管は外務省でやっておりまして、今後、その結果を待って、今おっしゃいましたように、内閣としてどのように総合的にこれを施策の上に生かしていくかは、委員のおっしゃったようなことを踏まえながらも、検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  241. 石井郁子

    石井(郁)委員 やはり、ちょっと出ましたように、主管は外務省だ、いや文部省だ、こういうふうにどうしてもなりがちなものですから、私は強くきょうも主張したところでございまして、官房長官からそういうお言葉をいただいておりますから、ぜひ前向きにこの権利条約の実施についての体制をつくっていただきたいということを、重ねて強く要望しておきたいと思います。  次の問題ですが、私は、公共事業と文教施設の整備の問題、特に危険校舎の解消の問題について質問いたします。  冒頭申し上げましたように、今子供たちのためにやはり何ができるのか、政治が問われているわけですし、政治が真剣に取り組まなければならないということだというふうに思います。  そういう点で見ますと、子供たちへの施策というのはどうなのか、政府の姿勢は極めて冷たいものがあると言わなければなりません。実際、この小渕内閣が進めたことの一つに、財政構造改革法の凍結がございましたけれども、教職員の定数の改善計画、第六次の計画は二年先延ばし、この見直しはされておりません。また、来年度予算案を見ましても、公共事業の予算というのは大きく伸ばしているわけですね。しかし、学校建物の改築、改修予算が削られているわけであります。今、全国至るところから、大変危険な校舎の状況を何とかしてほしいという声が寄せられております。  私、具体的に御紹介したいんですが、大阪では、小学校でトイレの水が漏れて、その下の階にしみ出している、外壁にひびが入って落下の危険がある、あるいは講堂の雨漏りで天井が脱落しかけている。高校の場合でも、築後四十年たっているが、一度も改修されたことがないという問題があります。これは和歌山県なんですけれども、特に聞いていますのは、トイレが男女共用になっております。これは、まだまだ多くのそういうところが残っているんですね。小学校四、五年生になると、もう思春期に差しかかっていますから、女子生徒などはとてもそういうトイレに行けないということで、もう体調を壊してしまうわけです。私は、このトイレ問題というのはまさにもう人権問題でもあるというふうに言わざるを得ません。それから、東京の江東区では、小中学校の七三%で雨漏りがするということです。それから、老朽化した体育館の床からくぎが出て、教職員が金づちでたたいて回っている、こういう状況にもかかわらず、予算がつかなくて修理ができないというんですね。  これは十年前には、大学の老朽化問題で、我が党も調査団を全国に組みまして、このときに、文部大臣御出身の東大の老朽施設も見せてもらったことがあります。そのときには、その東大で赤水が出る、実験に差し支えるということで大問題になったんです。今、この水問題は、小学校で赤水が出るんですよ。だから、水が澄むまで三十分も蛇口で流しておく。しかし、こういう水はやはり子供たちが飲んでいいのか、はらはらするわけですよねという状態であります。  私は今こうした危険校舎の一部の例を申し上げましたけれども、まずこの実態について、官房長官大臣、それぞれどう御認識をされていらっしゃるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  242. 有馬朗人

    有馬国務大臣 危険校舎についてのお尋ねでございますが、平成十年五月一日現在、全国の公立小中学校でおおむね改築の時期を迎える、大体三十年と見ているんですが、建築後三十年以上を経過したものの保有面積は約二千九百二十三万平米になっております。それで、この面積は公立小中学校建物全体の約二割弱を占めております。今後さらに増加する傾向にあることは、よく知っております。学校は、学習の場でありますとともに、子供たちが一日じゅう多くの時間を過ごす生活の場所でありますので、学校施設整備を図ることは極めて重要であると私どもも考えているわけであります。  このため、文部省といたしましては、平成十一年度予算において千六百三十八億円を計上しているところでございます。今後とも、厳しい財政状況のもとでございますが、緊急度の高い改築及び耐震、特に耐震補強事業を中心に、市町村の計画に支障が生じないよう、必要な事業量を確保してまいりたいと思っております。
  243. 石井郁子

    石井(郁)委員 こうした危険校舎問題というのは、やはりもう早急に対応しなければいけないというか、解消しなければいけない、そういう問題だろうというふうに思うんですね。  今大臣からいろいろと御説明がございましたけれども、公立小中学校学校の施設整備費、これは一九八〇年には五千七百十三億円でございました。今お話しのように、来年度予算では千六百三十八億円ですね。これは、昨年は千七百三十一億円ですから、昨年よりもことしは少なくなっているんですよ。だから、一九八〇年から比べますと、二八・七%まで落ち込んでいるわけですよ。  それで、こういうことでいいのかという意味でいいますと、まず、どうしてこんなふうに予算を減らされるのでしょうか。
  244. 有馬朗人

    有馬国務大臣 一つ御注意いただきたいことがございます。  今御指摘のように、確かに、来年度の予算は千六百三十八億円で、十年度よりも少し減っているように見えております。  御注意いただきたいことが一つある。それは、平成十年度の場合に、第一次補正が三百十三億円入って、合わせて二千四十四億円でございますが、平成十一年度の中では、第三次補正は一緒に考えるという考えがございます。したがいまして、両方合わせまして、平成十一年度予算額は千六百三十八億円、御指摘のとおり当初予算としては減っておりますけれども、第三次補正予算額が五百六十九億円でございまして、合わせて二千二百七億円ということになりますので、この点、ひとつ御理解を賜りたいと思います。  このことによってやはり大きな金額、二千二百七億円となりますので、これで市町村の事業計画が円滑に実施されることを希望しておりますし、そうなるものと考えております。
  245. 石井郁子

    石井(郁)委員 先ほど、小中学校での危険校舎面積が二割程度残っているというような数字を挙げて御説明がございましたけれども、中学校だけで見ますと、危険校舎面積は、十年前には七十七万九千平米なんですね。ところが、九八年度には五十万六千平米ですから、多少減ったとしても、まだまだこれほど残っているという問題なんですよ。今、多少事業量を確保されたということで大臣おっしゃっていただきましたけれども、しかし、本当に足りないということはもうはっきりしていると思うのですね。  それで、なお、この小中学校についても、二十年を超える建物が今全体の五五%です。だから、今後もっともっとこれは改築が必要になってくるだろうという問題でいいますと、私は、今予算をつけなければ、十年前の大学老朽化問題と同じような事態を迎える、小中学校でもこの危険校舎の改修にやはり追いつかないという事態を迎えるのじゃないかという意味で、大変危惧をしているわけであります。  公立学校の施設整備費、これをやはり抜本的に増額する、あるいは補助金も引き上げるというぐらいの姿勢を政府として持つべきだと考えますが、いかがでしょうか。これは官房長官、そういう御決意はございませんか。
  246. 有馬朗人

    有馬国務大臣 確かに、戦後急激に生徒数が伸びてきた、大学にしても学生数が伸びてきたというふうなことがあって、急激に建物を建てましたが、その後児童の数が減ってきたというふうなことで、昭和五十五年度のピーク時五千七百十三億円に比べまして、その後ずっと減ってきていることは確かでございます。しかしながら、今申し上げましたように、平成十一年度の予算においては、現在の厳しい財政状況のもとで極めて努力をいたしたということを御理解賜りたいと思っております。  なお、もう一つ、地方分権を推進するという意味で、国と地方の役割分担の一層の明確化を図る観点ということも必要であると考えております。
  247. 野中広務

    ○野中国務大臣 今文部大臣からもお話ございましたけれども、学校施設というのは健全な学習の場であり、生活の場であるわけでございますので、より立派な施設が望まれることは言をまたないわけでございます。  けれども、委員十分御承知のとおり、本来、義務教育学校は市町村が管理運営をするわけでございまして、市町村の財政と大きなかかわり合いを持つわけでございまして、私どもは、文部省における危険校舎の予算の増額に相努めるとともに、市町村がまた取り組みができるような状況というものを十分配慮していかなくてはならないと思うわけでございます。  ただ、先ほど御指摘がございましたように、赤い水が出るとかあるいはくぎで補修しなきゃならないとかいうような問題というのは、これは全く市町村段階で解決がされなくてはならない基礎的な問題であると考えるわけでございまして、今後、市町村の関係の向きにつきましても十分連携をとって、私どももそういう点、遺漏のないようには配慮をしてまいりたいと考えておる次第であります。
  248. 石井郁子

    石井(郁)委員 もちろん、市町村が進めるべき問題でありますが、しかし、それはもう言うまでもなく、財政難の中でやりたくてもできないという声を上げているわけですから、それはやはり国の問題なんですよ。それから、やはり文部省として、子供たちの命それからちゃんと人権を守る、この危険な校舎を放置してはいけないのだという文部行政の根幹にかかわる問題として、文部省自身がやはりそういう姿勢を示すことが大事ではないのかというふうに私は思うのですね。  そういう意味で、こういう危険な校舎について、文部省としての何らかのこういう姿勢をも、通達になるのか何になるのかわかりませんけれども、お示しされるということも、これだけの危険な実態が出ているわけですから、そういう中では必要ではないかというふうに考えますが、文部大臣、いかがでしょうか。
  249. 有馬朗人

    有馬国務大臣 たびたび申し上げることになりますけれども、まず第一に、国立大学にしてもあるいは公立学校にしても、実態を把握しておくことは大切なことでございます。ですが、その点に関しましては十分把握をしていると思います。  しかしながら、特に公立学校に関しましては、地方分権との関係がございますので、余り国が一々言うことはむしろいけない。それは各地方で、各地域でのきちっとした役割分担の上で、どこから早くやるべきかなどということについては御努力を賜りたいと思っております。その上で、国としてどうしてもやらなければならないようなことが緊急にあれば、私どもとして大いに努力をさせていただきたいと思っております。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  250. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、本当に今の学校の危険な状況あるいは校舎問題を解消するために必要な予算がつけられているとは到底思えません。また、そういう予算を要求しているというふうには思えません。そういう点では一層のやはり努力が要るというふうに思うのです。  そもそもこの問題は、やはり、大規模な公共事業には国民の税金をどんどんつぎ込んできたじゃないか、その一方で子供たちの予算が大幅に切り詰められている、そういう国民に冷たい政治の典型の姿がここにあらわれているのですね。そういう意味で問題にしているわけであります。  実際、学校の改修の事業は、この深刻な不況のもとでも、中小企業の皆さんには直接に役立つ事業なんですよ。ここが大変大事なところでありまして、この点でもう一点お尋ねをしておきたいのですが、これは建設省にちょっとお願いをしております。建設省の直轄事業における中小企業への発注実績、最近いかがでしょうか。
  251. 小野邦久

    小野(邦)政府委員 お答えを申し上げます。  私どもの所管事業でございますが、工事につきまして、官公需法に基づく中小企業への発注状況でございますけれども、平成七年度四四%、平成八年度は四五・七%、平成九年度は四七・七%、こういうことで、順調に推移をしてきているものというふうに思っております。
  252. 石井郁子

    石井(郁)委員 この点で、文部省はいかがでしょうか。こういう数字は把握しているのでしょうか。学校の改修改築工事などの中小企業の受注実績ですね、もしつかんでおられたら、ちょっと教えてください。
  253. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 文部省は、毎年そういった観点から数値をとってはおりませんが、たまたま、最近では平成五年度に受注実績をとった実績がございまして、補助事業ベースで見ますと、補助事業の全体の八〇%が中小企業分だったということでございまして、これにつきましては、ほぼ毎年そんなに大きな変化はないのではないだろうかと認識しているところでございます。
  254. 石井郁子

    石井(郁)委員 この点は言うまでもないかもしれませんが、私はあえて、東京の場合でちょっと調べてみました。平成九年度には、「大企業・中小企業別受注実績(工事関係)」という表があるんですけれども、土木工事で中小企業は九五・五%でした。建築工事でも九八・一%、設備工事でも中小企業が九六・八%ですね。全体で見ると、九七・一%は中小企業が受注しているわけであります。大阪市の場合でもほぼ同じですね。受注件数の九二%でした。  ですから、こういう点でまさに地域密着型の公共事業になる。当たり前といえば当たり前なんですけれども、多くの中小企業が潤うことになるわけであります。だから、景気対策上でも大変有効なものだ。だから、子供たちにも喜ばれるし、景気回復にもなり、中小企業の皆さんにも歓迎される、こうした公共事業こそやはり率先して行うべきだというふうに思うわけであります。  だから、私どもは、公共事業のあり方の問題としてこの問題をやはり重視しているという点で、もっとこの点での予算を抜本的にふやすべきだということを重ねて要望したいわけですが、あえてどうでしょうか、官房長官、御答弁いかがでしょうか。
  255. 有馬朗人

    有馬国務大臣 教育の上での施設の充実ということは、文部省としても一番重要なことと考えております。補正予算にせよ来年度の予算にせよ、最大限の努力をさせていただいている次第であります。今後もその努力は続けさせていただきたいと思う。同時にまた、さまざま、それ以外に教育に係ることもありますので、そういうものとのバランスをとりながら、さらなる改善を図るよう努力をさせていただきます。
  256. 石井郁子

    石井(郁)委員 本予算委員会でも、総理自身も、政府として責任を負って対処しますという御答弁がございましたが、やはりその立場をぜひ堅持していただきたいということで、この異常というべき事態をやはり政府として早急に解決する、あらゆる手だてを尽くすという点を強く要求いたしまして、私は次の質問に移ります。  それで、この新しい荒れの問題とやはり三十人学級の問題なんですね。  今、学校教育の問題は、こうした学校の改修、改築の問題だけでないことは言うまでもありません。やはり、先生の数をふやして、子供たち一人一人に目が行き届く教育が求められているわけであります。これはもう今や国民的な世論だと言ってもいいと思うんですね。三十人学級の実施を求める自治体決議は急激に広がっておりまして、五百五十を超えているかと思います。今こそ国としてやはり三十人学級に踏み出すときだ、そのことを積極的に支援すべきだと思いますが、なぜ国がやらないのか、私もたびたびこの問題は取り上げているんですけれども、あえてちょっとその理由をお聞かせいただければと思います。
  257. 有馬朗人

    有馬国務大臣 石井先生御承知のように、現在、第六次教職員配置改善計画を一生懸命やっているところでございまして、まず第一に、この平成十二年度の完成に向けて最大限の努力をさせていただきたいと思っております。しかしながら、さらにその先をどうするかということも我々は大いに検討しているところでございます。  まず第一に、私自身も参画いたしました中教審答申においても、教員一人当たりの児童生徒数を欧米並みにしてほしいというふうな提言をいただいております。平成十四年になりますか、二〇〇二年、学校週五日制時代に入ります。そこでは新しい教育課程の実施になりますので、そういうことを視野に入れまして、現在専門家の協力を得て、どういうクラスがいいか、本当に三十人がいいのか、それともチームティーチングをさらにふやすのがいいか、さまざまなやり方があると思いますし、けさは、岩國先生より、むしろ大きなクラスにしたらどうか、ただし学校は小さくしたらどうかというふうな御指摘も賜りました。これも、私も非常に気になっているところでありまして、本当に一番いい構成はどういうものかというふうなことを、あと一年ほどをめどに検討させていただきたいと思っております。  ともかく、非常に国家財政が厳しいので、その厳しい国家財政の中で最もいい教育はどういうふうにしていけるか、今後さらに検討をいたしたいと思っております。
  258. 石井郁子

    石井(郁)委員 この点では、きょうは時間がありませんので別にしたいと思いますが、やはり少人数学級が本当に効果があるということは、もうあちこちで実証というか実践がされてきておりますので、私は、早くそこに踏み切るべきだということを重ねて要望しておきたいというふうに思います。  あと、本当に残り時間わずかなんですけれども、私はきょう、特に内申書問題、高校入試のときに使われる調査書という問題、その中の観点別評価というのがあります。この問題で御質問いたします。  これは、国連の勧告でも、高度に競争的な教育制度の具体的な問題として審議になったというふうに聞いているんですが、なぜ日本で高校入試があるのかという問題です。それは置いておきまして、その高校入試のときに、今申し上げましたように、内申書を最近使われるようになりました。その観点別評価という名のもとに、これは中学生に対する人格評価ではないのかという問題です。  観点別というのは、各科目、授業が、関心・意欲・態度という項目が真っ先に来て、そこが点数化されたり、いろいろな評価がされるわけですね。クラブ活動、生徒会活動あるいは行動の記録それからボランティア活動、こういうものが全部評価されて調査書に書かれるという問題であります。  この点は、先月の十日、NHKの教育テレビで、文部大臣も御出席されておりまして、十四時間の生放送がございまして、大変多くの意見が出されました。私も、部分的ではありましたけれども見ております。その中でも、子供たちの多くが、こういうものをやはりやめてもらいたいということを強く主張していたわけであります。それは、子供がやはり仮面をかぶってしまう、先生の前でいい子でなければいけない、それから友達関係が壊れるし、あるいはそれがいじめの原因にもなったりする、さまざまなことを言っていましたね。  大臣、あのテレビにも出演をされまして、そしてそういう子供の生の声を伺いまして、どういう感想をお持ちでしょうか。この評価というものを、もうこういうものを続けちゃいけないなというような御感想は持たれなかったんでしょうか。
  259. 有馬朗人

    有馬国務大臣 どういうふうに入学試験を行うかというのは、大変難しい問題だと思います。中教審でもさんざん議論を何年も重ねてまいりましたし、例えば、今のは高等学校についての御質問でありますけれども、大学入試をどうするかというのは、大学審議会でもさんざん議論を積み重ねてまいりました。同じように、高等学校でもそういう問題があるわけです。  特に、観点別評価についての御質問でありますが、やはり学力試験だけでもって高等学校の入試を行うということに対しては、大変世の中の御批判が強かった。内申書ということを使ったらどうかというような御意見が大変多い。逆に、余りにも内申書に偏りますと、今度は学力の方がいいとか口頭試問とか、いろいろな問題が起こってくるわけです。そういう点で、大変難しい問題だということを最初に申し上げた。  さて、観点別学習状況というものでありますが、この評価、どういうことを行っているのかということを私も勉強いたしてみました。  第一に、関心・意欲・態度、自然事象への関心・意欲・態度。あるいは思考・判断、科学的な思考。技能・表現、観察・実験の技能・表現。知識・理解、自然事象についての知識・理解の四つの観点から評価することになっています。しかし、重要なことは、子供たちの相対的な位置だけではわからない、子供の努力をしている状況やよさなどを評価する上では、私は意義のあるものと考えております。
  260. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、子供たちから随分率直な声が出されていたと思いますが、それを聞いてなお大臣は、やはり必要だ、意義があるというふうに御判断されるというのは、ちょっと解せないことなんです。  実際、本当にこの行動の記録というのは、この調査書で見てみますと、例えば明朗快活かどうかだとか、思いやりがあるかどうかだとか、あなたは向上心があるかどうかだとか、協調性があるかどうかだとか、こういう項目を全部評価されるんですよね。では、例えば明朗快活を、あなたはネクラですとかよく言われると、もうその子はそれだけで落ち込んでしまうわけです。  こういう人格という内面に関する問題というのは、こんなふうに評価できるものなんでしょうか。しかも、それが入試の手段となるということがあっていいのでしょうかということが、今社会的には大問題になっているんですよ。だから、私は、子供の人格の発達あるいは教育界にどんなゆがみをもたらしているのかについて、もっとやはり真摯に考えていただきたい。でなければ、子供たちは本当にかわいそうですよ。とんでもない問題なんです。  時間がありませんので、私は結論を急ぎますけれども、実は調査書というものが各県どんなふうになっているのか、ちょっと取り寄せてみました。そうしたら、もうほとんど全国一律なんですよ。今申し上げましたような行動の記録というのは、全部同じような項目ですね、全国が。それを点数にしているか、どういう形式にしているかはいろいろあるかと思いますけれども、結局そういうものを文部省がやはり推進してきた。それは指導要録という形で学校に記録が残されるわけですから、まさに指導要録と内申書は同じ項目なんですよね。  ですから、こういうことを全国一律にやはり学校に押しつけているという問題、まさに子供たちはもう全国どこでもよい子競争に駆り立てられるわけですよ。そういうことで、学校が非常に行きにくい場所だ、行きづらい場所だ、もう苦しい、嫌になるという声がたくさん出ているわけですね。  私は、文部省の責任は本当に重い、こういう害をもたらしているということについて、本当に真剣に反省をして、これはもうやめる、あるいは見直しをするということに今こそ踏み切らなければ、日本教育は、本当に子供たちはとんでもないことになってしまうというふうに思うわけで、文部大臣、重ねて、もっと真剣にここは検討してもらいたい。いかがですか。
  261. 有馬朗人

    有馬国務大臣 しかし、一般的に学力検査だけでは、私は入試がいいとは思わないわけですね。どうしても調査書というものが必要だと思う。なぜならば、子供たちが三年間どれだけ努力をしてきたかということを何にも評価しないで、一回の学力試験だけで決めることは私は賛成できないわけです。ですから、両方を組み合わせていくということが必要だと思う。  そこで、今、高等学校の新しい教科書に対する指導要領などを終わり次第、調査書とか入学試験のやり方についてさらに検討を進めてもらうべく、教育課程審議会にお願いをしつつあるところであります。  それから、もう一つ申し上げておきますと、今回、中高一貫というふうな制度を導入すると同時に、高等学校の入学試験において、調査書及び学力検査の成績のいずれも用いない方法による選抜を可能といたしました。そこで、各高等学校での御検討を待つところでございます。
  262. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、今ここで議論しているのは、高校入試のときに一発勝負の試験がいいのか、それともそういう調査書を使うのがいいのか、そういう議論をしているのじゃないんです。調査書というもので使われている観点別評価というのは人格評価ですよ、これは教育的な意味は持ちません、ここを言っているわけです。だから、入試のあれこれの方法を論じているわけじゃないということをはっきりさせておきます。  それから、入試問題でいえば、十五歳人口が急激に減っています。高校をふやさなくても受け入れる条件があるわけでしょう。だから、希望者はやはり高校に入れるということに踏み切っていいんですよ。この点でも、私は、文部省の英断が本当に今求められているというふうに思うんですね。だから、高校が子供を選抜するのではなくて、子供が高校を選択するんですよ、子供が選択をする。こういう道を今こそ開くべきだというふうに思うんですね。むだなことで本当に子供たちを苦しめたくありません。そういう意味でも、私は、ぜひ有馬文部大臣、その英断を求めたいというふうに思います。  私は、きょう最初に申し上げました。本当に子供たちのために政治は何ができるのか、そこが問われているんですよ。できることを思い切ってやろうじゃないですかということで、きょうは幾つかのことを御質問させていただきました。  どうもありがとうございました。
  263. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 これにて石井君の質疑は終了しました。  次に、佐々木陸海君。
  264. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  周辺事態になって米軍が戦闘行動を行う、それに対して自衛隊が後方支援を行うということにしようということが提起をされております。そこで、まず後方支援についてお聞きをしたいと思います。  後方支援というのは、一般的に言いますと、前線で戦争をしている軍隊に対して、兵員や武器弾薬あるいは水や食糧などを補給したり輸送したりする、そのほか通信とか医療とかを含んでいますが、そういったサポートのすべての活動を指している問題であります。一般的に言って、この活動は武力行使と不可分のものと受けとめられております。  元副総理の後藤田正晴氏は、去年の四月二十九日の朝日新聞ですが、ここで、「いったい近代戦争で武器弾薬、兵員を輸送することと武力行使を区別できるだろうか。」ということで、武力行使と後方支援というのは一体であるということを強調されております。  そこで、まずお聞きするのですが、宮澤大蔵大臣も、かつて後方支援、ロジスティックスについて発言をされております。文芸春秋の九〇年の十月号、あの湾岸戦争のころでありますが、日本の自衛隊が国連軍の後方支援をやれるかという問題に関してこういうふうに言っておられます。輸送や通信のようなロジスティックス、兵たんはだめです。それは戦争ではないとは言いがたい。ぎりぎりメディカルで、つまり医療はぎりぎりできるかもしれない、しかし筋は後藤田さんの言うとおりです。これは、当時後藤田さんが、負傷兵の治療は戦争に加担することになるからだめだと言っておられたのを受けて、メディカルはぎりぎりいいかもしれないが、しかし筋は後藤田さんの言うとおりだというふうに文芸春秋で、インタビューで述べておられました。  自衛隊が国連軍の後方支援をやれるかどうか、それがだめかだめでないかという部分ではなくて、輸送や通信のようなロジスティックス、兵たんは戦争ではないとは言いがたい、メディカルも含めて。その点についての当時の御見解を今どう考えておられますか。
  265. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう問題については、私も長いこと関心を持ってまいりましたし、今も持っておりますが、ただいま主管大臣でございませんので、お答えを申し上げません。
  266. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、兵たん、ロジスティックスというのはいかなるものかという、まず国際常識といいますか、一般論を確認しておきたいということで大蔵大臣にお聞きしているわけです。そして、十年前にこういうように言っておられた。今も変わっていないかどうかということを確認したいんですが、いかがですか。
  267. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一カ所お答えいたしますと次々に発展いたしますので、主管大臣でございませんから申し上げません。
  268. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 昔の話だと言いますけれども、きょう言ったことがあすはもう事実でなくなるような、そういうこともあるわけです。十年前に言われたことであろうと、今も真理であればその真理は輝くわけでありまして、大蔵大臣はコメントしないということですが、かつてはこういうように言っておられた、これは事実であります。輸送や通信などのロジスティックスは戦争ではないとは言いがたい、メディカルも含めてそうだ、筋としてはそうだということを言っておられた。確認しておきたいと思います。  同じく今度は野田自治大臣にお聞きしたいのですが、これはもっと最近の話でありまして、昨年の十一月二十九日のNHKの日曜討論、この発言でこういうふうに言っておられます。  後方支援をする場合でもね、あるいは物資の補給そのこと自体が、相手から見ればですね、一体なんですよ。これはもう過去の歴史から見れば当たり前なんですよね。食糧を運ぶとかね、医療船を派遣するとか、いろんなものを、物資を搬送すること自体が相手から見れば敵対行為なんですね。こういうふうに発言されておられます。  つまり、輸送とか補給とかいうようなことは戦争と一体であって、相手から見れば敵対行為なんだという御認識ですが、これは今も変わらないでしょうか。
  269. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 具体的に正確にそういう表現をしたかどうか、ちょっと私も今確認できませんが、多分そういうことを言ったのでしょう。  ただ、私どもは、そんなに難しい物の言い方というよりも、お金を出すこと自体がすごく大変な後方支援の一つだということは前から言ってきているんですよ。ですから、お金はいいけれども何はだめだとか、医療はいいけれども食糧はだめだとか、いろいろ言ってみたってなかなか始まらぬじゃないですかと。そういう点で少し議論が余りにもいろいろあり過ぎているのじゃないのでしょうか。だから、そこのところをはっきりしましょうというので、両党間でいろいろ議論をした結果、やはり戦闘行為そのものにはやりませんね、あるいは戦闘地域でないところであればいいですねというような仕分けをしたということだと思っています。
  270. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 宮澤さんも野田さんも、今は確認されない、できないということもあるかもしれませんが、後方支援というのは、戦争ではないとは言いがたい、あるいは戦争と一体であって、相手から見れば敵対行為なんだということを言っておられるわけで、野田さんもそれは否定はされないということだったと思うのです。  私、まだこの後方支援ということの一般論をお聞きしているのですが、湾岸戦争の際にも、多国籍軍の司令官だったシュワルツコフは、広大な規模の兵たん活動なしに湾岸戦争の勝利はなかった、こういうふうに言っています。だから、補給のない戦争というようなものはあり得ない。つまり、後方支援のない戦争もなく、武力行使、戦闘行為と一体でないような後方支援などはあり得ない、これは国際常識であります。  野田さんは、そのお金を出すことがもう後方支援だと言う、それは少しその意味を広げて言っておられるわけでありまして、一般に言うロジスティックス、後方支援というのは、武器や弾薬を補給したり輸送したり、あるいは通信したり医療活動をしたりということがロジスティックス、後方支援と言われているものであることは間違いないわけであります。そして、それは戦闘行為と一体のもの、武力行使と一体のもの、これはもう世界の常識でありまして、宮澤大蔵大臣も十年前にその常識を述べておられたし、それからまた野田さんも、テレビの討論の中でもそういう常識を述べておられたということだと思うんですね。それでよろしいですか。
  271. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 それでよろしいですかという、そのそれでという意味がちょっとよくわからなかったんですがね。  僕は、率直に言って、さっき後方支援という、それはロジスティックスであるということに限定をした今のお話、それはそれで一つ考え方だと思いますが、物の見方によっては、さっき言ったように、お金を出すこと自体が大変な後方支援だという見方だってあるのですよと。ただ、問題は、それが相手国から見ればおもしろくないことなんでしょうね。だから、それは当たり前の話であって、しかし、それを対等の立場に置いて物を考えるのかどうかということじゃないのでしょうか。
  272. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いろいろ言われますけれども、後方支援という日本語は、確かにそういうお金を出すことも含むようなあいまいな概念を含んでいますけれども、厳密に言えば、これはロジスティックス、兵たんなんですよ。これはもう宮澤さんが当時非常に正確に言っておられるわけです。輸送や通信、そして筋でいえばメディカル等々もこれはロジスティックス、兵たんだ、そしてそれは戦争ではないと言いがたい、これが国際的な常識だということを私ははっきりと申し上げておきたいと思います。いろいろ考え方があるなんということで、この後方支援、ロジスティックスという問題の概念をあいまいにすることは許されないと思うのです。  そこで、防衛庁長官にお聞きしますが、今度の周辺事態法にかかわってお聞きするのですが、周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対する「物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置」という言葉がありますが、この周辺事態で戦争をやっている米軍に対する「物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置」というのは、国際的に言ったら、一般的に言って、後方支援あるいは兵たん、ロジスティックスと言われている活動であるかないか、いかがでしょうか。
  273. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほどからいろいろな御議論がありましたが、後方支援というのは、先ほどから御指摘のように、ロジスティックサポートの訳であろうと思います。一般に、作戦部隊に対する装備品等の補給とか整備とかあるいは回収、輸送など、あるいは人員の輸送、傷病者の治療、後送、施設の取得、建設、維持運営及びこれらに関連する役務の提供を指し、特に活動の地域を限定した概念ではないと思います。  これに対しまして、周辺事態安全確保法における後方地域支援というのは、ガイドラインの英文では、リア・エリア・サポートという記述になっておりますが、これは後方地域という活動地域に着目した概念でありまして、後方地域において日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する輸送や補給といった物品、役務の提供等の支援措置を実施することを指すものと考えます。
  274. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今、防衛庁長官は三条一項の全体を言われたと思うのですが、要するに、周辺事態に際して戦闘している米軍に対して自衛隊がサポートをする、ここはロジスティックスというふうに理解してよろしいわけですよね。法律の文章では「物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、後方地域において我が国が実施するものをいう。」  だから、支援措置であってという部分までを言えば、これはロジスティックスだと。それを後方地域において実施するという理解でよろしいんですね。
  275. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 さっきも申したのですが、後方支援は、特に活動の地域を限定した概念ではないのに対しまして、後方地域支援の方は、あくまでも後方地域という活動地域に着目した概念である、そういうふうに考えております。
  276. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ですから、私、先ほどから詳しく聞いておりますように、この法律の前半で言っているところの、周辺事態で戦っている米軍に対する自衛隊の一定のサポートというものはロジスティックス、後方支援という概念に包括されるものであって、それを後方地域という特定の地域で行うというふうに位置づけているから、全体として見れば、一般で言うロジスティックスとか後方支援とかいうものとは少し違うんだということをあなたは言いたいわけですよね。そのとおりですね。ちょっと確認してください。
  277. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 やる内容はほとんど同じですが、地域概念が違うということであります。
  278. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 やる内容はまさにロジスティックス。国際的に言われているところの、戦争でないとは言いがたい、あるいは戦争と一体、相手側は敵性行為と見なす、そういう活動をするのだけれども、しかし、それを地域を限定してやるから、戦闘とは一体化しないんだ、戦争行為ではないんだということをおっしゃりたいということだと思うのです。  それでは、その後方地域というのは一体どういう地域ですか。
  279. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 これは法律の第三条第一項第四号に書いてありますとおり、後方地域とは「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」のことであります。
  280. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういう地域を設定して、そこでロジスティックスを行うということですね。よろしいですか。では、それは確認します。  防衛庁長官にお聞きしますけれども、では、過去の紛争や戦争において、あらかじめ、ここは戦闘行為が行われません、そういう後方地域でございますという後方地域と、こっちは戦闘が行われますということを区分けしてやった戦争というのはございますか。
  281. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 いずれにいたしましても、私どもとしては、各種の情報に基づいて後方地域というものを判断し、その中で実施をしていくということになろうかと思います。
  282. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そんな、ここは戦闘行為が及んでこない地域だなんということを設定してやった戦争なんというのは世界にないですよ。当たり前の話ですよ。戦争で、あらかじめ、この範囲でだけ戦闘しましょう、この範囲では戦闘しないようにしましょうなんということが決まるはずがないわけですね。  防衛庁長官にお聞きしますが、一体だれがどのようにしてその後方地域というのを設定するんですか、決めるんですか。
  283. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 後方地域を決めるのは、法律にちゃんと定義がありますから、後方地域を決めるという行為は基本計画等では定められておりません。  後方地域において行われる後方地域支援とか後方地域捜索活動は、当該後方地域においてそれぞれ指定される区域において実施されるということになりますが、基本計画においては、これらの活動を実施する区域の範囲及び区域の指定に際し考慮すべき事項が定められ、閣議決定されるということになります。これは四条の二項であります。  そして、具体的な活動の実施区域の指定については、基本計画に定められた事項に従って、防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得て行うことになるわけであります。
  284. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、周辺事態に際して後方地域で支援を行うというんですが、その後方地域というのは国民にはわかるように示されるんですか。
  285. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほども申したとおりでありますが、基本計画においては、後方地域で行われる後方地域支援活動それから後方地域捜索救助活動が実施される区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項について定められ、閣議決定されることとなりますが、この基本計画の閣議決定があった場合には、内閣総理大臣が遅滞なく国会に報告することとされているので、国民にも周知されるということになるわけであります。
  286. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その範囲は、例えば日本海東部とかいうような形で示されるのか、それとも、北緯何度何分、東経何度何分で囲まれた範囲というようなことが、公海が示されるんですか。そこをはっきりさせてください。
  287. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほども申し上げたのでありますが、基本計画においてこれらの活動を実施すべき区域というのは、今先生おっしゃったように、大まかな範囲とか方面を決めるわけでありますし、それから、区域の指定に関し考慮すべき事項等においては、紛争の全般的状況とか部隊の配備状況というものが考慮されて定められていく、こういうことになるわけであります。
  288. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その大まかな範囲も、それから実施区域も、国民にきちんとわかるように示されるわけですか。特に、実施区域の範囲というのは国民にわかるように公示されるんですか。
  289. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、区域の範囲や区域の指定に関しては、閣議決定されるわけですから、国民に周知されるわけであります。ただ、具体的な活動の実施区域については、基本計画に定められた事項に従って、後方地域において防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得て指定することとなっておりますので、これらについては公開はしない、こういうことになろうかと思います。
  290. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ですから、基本計画の枠内で大きな範囲は示されるでしょう、日本海東部とかなんとかという漠としたものは。それは国民にわかるだろうけれども、しかし、実際に自衛隊が出ていって支援活動する、その具体的な区域になるようなところは一切、防衛庁長官が決めて自衛隊に伝えるだけで、国民には全くわからないということですね。
  291. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 実施区域につきましては、米軍の活動との関係から、公表することは適当じゃないと考えております。
  292. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それでは、それらの具体的な実施区域なんというのは、すべて防衛庁長官がお決めになるわけでしょう。しかし、この周辺事態は、米軍が戦っているその相手があって、自衛隊はその米軍を支援する形ですね。それで、その実施区域というようなものは、日本とアメリカ、米軍と相談した上で決められるのか、それとも日本が独自に決めるんですか。
  293. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 防衛庁長官が勝手に決めるのではなくて、先ほどの基本計画がまずあって、これらの活動を実施する区域の範囲、区域の指定に関して考慮すべき事項がまず閣議決定をされるわけで、これは国の内外に周知されると思いますが、この基本計画の決定があった場合に、防衛庁長官は、内閣総理大臣の承認を得て、その基本計画に従って後方地域の中からそれぞれの実施区域を指定するということになっているわけであります。  もう一度申し上げますが、これらの実施区域につきましては、米軍との活動の関係からも、作戦上いろいろな問題がありますので、公表はされない、こういうことであります。
  294. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、米軍と協議しながら決めるわけでしょう、米軍が戦っている相手と相談するわけにはいかないわけですから。そんなことは当たり前の話ですよね。
  295. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 これはあくまで主体的に決めるわけでありますけれども、しかし、緊密な連絡調整をとって常にそごのないように、そういう関係を維持しているわけでありますから、結局は両者の意思が合致したところで決まるということになると思います。
  296. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この実施要領で言うところの実施区域、これは国民には公表されないわけですが、それは、論理上でいいますと、戦闘行為が行われているところと、接しているようなところまで行って支援しなければ意味がないわけですから、接していると思いますが、違うんですか、どうですか。
  297. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 接するようになって危険になってくれば、これは中断したり休止するわけであります。
  298. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この後方地域あるいは実施区域というのは、日本の領海あるいは領空が含まれる場合が当然ありますよね。
  299. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 そのとおりでございます。
  300. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 では、外に向かっては、この実施区域とかあるいは後方地域というのはどこまで広がるんですか。これは言えないですね。周辺事態というのは地理的概念ではないというあなた方の今までの立場からいけば、外については限定できない。どこの領海まで行くかということは、インド洋や中東は除外されていますけれども、それ以外のところまでは広がっていくという可能性があるということですね。
  301. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 今言われましたように、先ほど我が方の長官からも御説明しましたように、我が国領域、それから現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施されている活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいうということでございます。ですから、公海に及び得るということでございます。  それから、その範囲につきましては、あくまでも周辺事態に際してこういう行動がとられるということでございます。
  302. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ですから、周辺に限定がないわけですから、自衛隊の後方支援をする地域というものも、皆さんの立場からいけば、限定がないということにならざるを得ないじゃないですか。  それから、先ほど防衛庁長官言われましたが、実施区域はいろいろな要件を満たさなくなった場合には変更する、この要件を満たさなくなった場合というのは、戦闘行為が及んできた場合のことを指すわけですね、間違いありませんね。
  303. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 法律によれば、防衛庁長官は、実施区域の全部または一部がこの法律で定められた要件を満たさないものとなった場合においては、速やかに、その指定を変更し、またはそこで実施される活動の中断を命ずることができる、こうなっております。  同時に、後方地域支援やあるいは後方地域捜索救助活動を実施することを命ぜられた自衛隊の部隊等の長またはその指定する者は、これらの活動を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合または付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該活動の実施を一時休止するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、防衛庁長官による実施区域の指定の変更や活動の中断を待つことになるというのが法律の建前であります。
  304. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 自衛隊の幹部が、今の兵器は射程が長くて、戦闘場面でないところまで飛んでくる場合もあると言っておりますし、航空優勢というのは時間的、地理的にどんどん変わり得るというようなことも言っているわけです。  戦国時代でも、桶狭間、今川義元なんかは、あそこに戦闘活動が及ぶことはないだろうとたかをくくっていたら、織田信長の軍勢に襲われて、そこが戦闘区域になったということがあるわけですけれども、今はまさに、偵察能力も発達していますし、長距離兵器システムも発展しているし、それから迅速な輸送能力も発展しているということになってきますと、やはり後方地域がいつでも戦闘地域になる危険性を持っている。それは、この法律案の中にもそういうことが反映していると思うのです。  ですから、後方地域支援の実施区域というのは、極端な場合には、時々刻々変更されなきゃならぬというようなこともあり得るわけですね。そうじゃありませんか。
  305. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 いずれにいたしましても、その紛争の全般的状況であるとか部隊の配備状況であるとか、そういったものを判断して、合理的に実施をする区域を決めることは可能である、こういうふうに考えております。また、状況に応じてそれが変化し得るであろうということは、私どももそういう可能性はあろうかと思います。  そういったものも十分念頭に置いた上、この活動を行っている間そういった戦闘行為が行われないであろう、こういうふうに考えられるところでもって実施をしていくということになろうかと思います。
  306. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いろいろお聞きしましたけれども、周辺事態における米軍の戦闘活動に対する自衛隊の後方地域支援、これは、国際的に言われるところの後方支援、ロジスティックスとは違って、後方地域というものを指定して、その中でやるものだから、戦闘行為とは区別されるし、一体ではないし、戦争でないとは言いがたいということは言えないというのが皆さん方の論理構成だと思うのです。  しかし、その線引きというのは、結局、当たり前の話ですけれども、戦争の一方の当事者であるところのアメリカと相談しながら日本が決めるわけであって、相手側がその決定に参与するわけじゃ全然ありません。こちらがいろいろ考えてみて、様子を見て、ああ、ここは大丈夫だろうなということで決めるだけの話であります。  そして、しかも、そうやって決められた厳密な実施区域というようなものは、国民には全然示されない。そして、その区域は、日本の領海、領空からどこまで及ぶかということも限定はされてはいない。そして、戦闘区域に事実上接するようなところにあっていつでも変わり得るようなものだということになりますと、そこでやる支援だから一般的に言われるところのロジスティックス、後方支援とは違いますといったって、それは全然通用しないんじゃないですか。  結局、ややこしい規定を設けているけれども、それはもう、一般的に言われるところの後方支援と何ら変わることがない、ロジスティックスそのものだ。戦争と区別されるなんてことが言えるようなものじゃないということを申し上げたいと思うのです。本当に変わらないじゃないですか。わざわざこんなややこしい仕掛けをつくって、いかにもそれが戦闘行為と一体でないかのように言っていますけれども、とてもそんなことがこのことで言えるものじゃないということを私ははっきりと申し上げておきたいと思うのです。それから、この後方地域支援が極めて危険なものであるということも申し上げなきゃならぬと思うのですね。  わざわざ厚生大臣にちょっとおいでいただいてあれなんですが、厚生大臣は、最近現代セミナーというところで、一月十九日に講演をされておられまして、その講演録というものを私、拝見させていただいたのです。  防衛庁長官当時のことを回顧いたしまして、これはPKOへの自衛隊の協力について述べておられるのですが、当時、前方と後方とをどこかで区別するんだというような議論になりました。海部総理が、危ないところは出さないということなんですよという仕切りをされましたが、危なくないところというのは近代戦争であり得るのかという議論になりました。危ないからとか危なくないからとかいう判断は、実際は極めて難しいです。今、飛び道具でミサイル時代ですから、いろいろな協力をやっていれば、相手国から敵性国だとみなされますし、国際法上もそうなると思うんですと。  厚生大臣ではいらっしゃいますが、防衛庁長官当時のことを回顧して言っておられるわけですから、権威のある発言だと思いますが、このとおりですか。
  307. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先ほど宮澤大蔵大臣がおっしゃられたように、当時、総理大臣は宮澤総理でございまして、私は防衛庁長官でございました。したがって、権限がないからというお断りをしたいわけでありますが、それは、私のしゃべったことを引用されておりますから、改めて申し上げますと、当時、私どもが成立させた法案は、PKO法案でございまして、平和五原則に基づくものでございます。しかし、海部内閣のときに提出された国際平和協力法、これはまさに多国籍軍への後方の問題が議論されまして、当時のことでございますが、憲法上それは合憲であるという前提のもとに方向性がつくられたわけでございますが、実際の国会論議等において、それがなかなか、危険なところであるのかないのかというような議論もございまして、難しい話になって、その法案は廃案になりました。  したがって、当時の国際協力法というのは、あくまで多国籍軍への協力ということを前提にした、その当時のことを申し上げたわけでございまして、宮澤内閣で成立したのは、戦争状況ではなくて、戦争が終結し、国連の要請で、なおかつ相手国からも要請のあるというような条件のもとに派遣するPKO法案を成立させた、そういうことを念頭に置きながら今のお話を申し上げたわけでございます。
  308. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、飛び道具でミサイル時代ですから、後方支援といってもいろいろな協力をやっていれば、相手国から敵性国とみなされるし、国際法上もそうなると思うんだということはそのとおりでございますね。よろしいですね。
  309. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 それは政府見解で申し上げておるとおりだと思いますが、当時のお話を申し上げればそのような見解であったということを申し上げたわけでございます。
  310. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 戦争をしている米軍への補給や輸送ですから、何を補給するか、何を輸送するかといえば、戦争遂行に必要不可欠なものを補給し、武器弾薬を輸送する、それなくしては戦争の継続ができないという性質のものをやるわけですね。  だから、日本側が、勝手にといいますか、線引きをして、その線引きの後ろの方でやっているから戦争とは無関係だと幾ら言い張っても、相手側が攻撃をしてくる可能性はいつでもあるわけであります。そういう形で戦闘行為が及んでくることもあり得るから、法律の中でも実施区域をいろいろ変えるということもうたっているわけであります。  米軍の各種のマニュアルでも、後方支援は敵側の攻撃目標になる、各種火力の長射程化や航空戦力の現代化が進む中、相当後方の補給活動が攻撃にさらされることを前提にしなければならぬというようなことが米軍のマニュアルなどの中でも書かれているわけであります。  防衛庁長官にお聞きしますけれども、後方地域でやる支援だからといって攻撃されない保証がありますか。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  311. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 これは、少なくとも国家の存立にかかわるような、我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態ですから、別に後方地域じゃなくたって東京あたりにも飛んでくるかもしらぬということでもあるわけでありますから、だから、そういう危険があれば変更したり中断するということをきちっと法律上担保しているわけであります。
  312. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、攻撃されない保証というのは、後方地域支援だからといって、ロジスティックス、後方支援じゃない、後方地域支援だからといって全然問題が変わるわけではないということははっきりしていると思うのですね。相手側は攻撃してくるわけですよ。攻撃してこられれば、それが重大な事態になるという問題であるわけです。  この後方地域支援では、さきの答弁でも、日本の領海も後方地域に入るわけですから、その日本の領海で反撃を受ければ、それを理由にして、今度は安保条約の第五条が発動される。つまり、今後は後方支援などではなくて、米軍と共同して自衛隊自身がその相手と戦うということになる可能性もあり得るわけですね。防衛庁長官、いかがですか。
  313. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 私どもが実施いたしますのは、まさに国際法の原則にのっとり、国連憲章にものっとり行う正当な行為をするわけでございまして、それに対して第三国が攻撃を行うとかなんとかということであれば、まさに不当な行為を行っている、こういうふうな国際法上の評価になる、こういうふうに思います。
  314. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 我が方が常に国際法を守って、国連憲章に沿った正当な行動をしているのかどうなのかという点についても、これは我々、いろいろこれまで疑問を投げかけてきました。  つまり、戦争を決定して始めるのは米軍が始めるわけですから、その米軍は、イラクで見られるように、あるいはパナマとかグレナダなどで見られるように、相手側が武力攻撃をしかけたのでないのにもかかわらず先制的な攻撃をするということをアメリカはやっているわけです。そして、この日本の周辺地域でも、いろいろ話が出ていますけれども、北朝鮮であるにせよ、どこであるにせよ、相手が攻撃してこないのに先制攻撃をするという可能性もあるわけですね、今までの例に照らせば。  その場合に、その活動が正当であって、相手側に反撃する権利がないなんということを簡単に言えるような状況ではないと私は思いますが、同時に、日本の側、米軍の側が正当であったとしても、その行動をやることによって、日本が安保条約第五条に沿ってアメリカと一緒になってそれに反撃していかなければならぬような、そういう戦闘行為に引き込まれていくということもあるということを否定できない問題であるわけであります。  実際の問題として、私は、そういう意味では、これは本当に重大な問題だということを言わざるを得ないと思うのです。つまり、米軍の戦争への後方地域支援、実際は後方支援なんですが、言ってみれば、その協力が戦争そのものを日本に引っ張り込んでくるという結果もあり得るということを率直に申し上げなければならぬと思うのです。  それで、米軍へのこういう自衛隊の協力、これが安保条約の枠内であるかのように政府は強調しているのですけれども、しかし、安保条約が規定しているのは、第五条の日本有事、日本が攻撃された場合に米軍と一緒に共同対処するという問題と、第六条の、日本の安全と極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために米軍が日本の基地を使用することを許される、このことを定めているだけであります。日本以外の地域で、つまり、あなた方の言う周辺地域で、どこまで広がるかわからない地域で自衛隊が米軍の戦争を支援するなどという規定は、安保条約のどこにもないじゃありませんか。どこにありますか。
  315. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 周辺事態において後方地域支援として行われる輸送等の我が国の行為は、それ自体武力の行使に該当しない。また、戦闘地域と一線を画される地域で行われる行為でありますから、米軍の武力の行使との一体化の問題が生ずることも想定されないものであります。このような後方地域支援が戦闘行為と評価されることは、私は当たらないと思います。  日米防衛協力のガイドラインのもとで行われる協力は、日米安保条約の枠内で行われるものでありますから、日米安保条約は、その第一条及び第七条に規定されているとおり、国連憲章と両立する範囲内において機能することを前提としております。このような国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対し、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態において我が国が行う協力は、国際法上の基本原則に合致し、国際法上許容されるものであることは言うまでもないことだと考えます。
  316. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 安保条約のどの規定によってこういうことが行われるのかということの説明は、今のお話の中ではなかったと思うのです。
  317. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 五条、六条がそれに該当すると思います。
  318. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 先ほど申し上げましたように、五条は、日本が攻められたときに共同対処する、六条は、米軍が極東の平和と安全のために日本の基地を使用することを許される、そこまでしか定めていないのですよ。その米軍の行動に自衛隊が後方支援、ロジスティックスをやってどこまでもついていけるというようなことの規定がこの安保条約にあるわけじゃないのです。  幾ら正当なことをやってとかなんとかとあなたがおっしゃっても、アジア諸国なんかから見れば、自衛隊が米軍について出てくる、そして、その米軍は先制攻撃戦略を持っている、非常に危険だ、問題だ。だから、この周辺事態法案は廃案にするしかないということを私は申し上げて、時間が来ましたので、質問を終わります。
  319. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 第六条は、極東の平和と安全の維持に寄与する、その前に日本の安全ということを明記しております。
  320. 中山正暉

    中山委員長 佐々木君、質疑は終了いたしました。
  321. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 最後に一言、最後に一言。今防衛庁長官が言われたから、最後に一言。  六条には、基地の使用が許されるということがあるだけで、自衛隊が外まで出ていって協力するなんという規定はないということです。  終わります。
  322. 中山正暉

    中山委員長 時間が過ぎておりますので。  これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、畠山健治郎君。
  323. 畠山健治郎

    ○畠山委員 私は、社会民主党を代表いたしまして、地方税財源及び地方分権について、幾つか基本的な問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思っております。  現行の税源配分は、中央二に対しまして地方は一の割合になっております。しかも、地方独自で課税標準や税率を定めることができないばかりか、地方債についても中央のようにいわゆる赤字地方債の発行は認められていない現状では、単純に中央、地方の財源状況を比較することは、これは間違いであるというふうに言わなければいけないと思う。  特に、景気対策が求められている折でもあり、公的経済における一方の車輪である地方財源に対し、中央の地方財政に対する制度上の責任を保障しつつ、地方財源の安定化を図り、もって景気対策に寄与するための地方財政の制度的安定を図ることは、今何よりも大事な問題であろうかと思っております。  以下、この問題をベースにしながら、下地にしながら質問させていただきたいというふうに思うのです。このことが狂っちゃうとまた問題が行き来しちゃうことになりますから、ぜひひとつこのことをしっかりと守っていただきながら質問させていただきたい、さように考えます。  そこで、まず地方交付税についてお尋ねいたしたいというふうに思います。  財政調整制度としての地方交付税の使命は、地方の基準財政収入額と需要額との差を完全に調整、補てんをすることにあります。バブル崩壊以降の地方の財政不足は多額に上りまして、九九年度に至りましては、幾つかの総額確保対策は講じられておるとはいえ、通常収支で十兆四千億円、これに恒常的減税による減収分を加えた不足額は、実に十三兆も不足額となっておるわけであります。確かに、これに対する補てん措置は講ぜられ、総額は確保されておりますが、国税五税の法定税率では財源不足を補償し切れない地方交付税額の実態は、財政調整制度としての役割を半減させていると考えていいかと思うのです。  この点、地方財政に直接責任を持つ自治大臣のお考えをまずお尋ねいたしたいと思います。
  324. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 かねてから、地方財政の充実強化のためにいろいろ御意見をちょうだいしておりますことに、まず心から敬意を表します。  その上で、今、地方交付税の趣旨から考えて、特に来年度の地方財政対策について、補てんはできたけれども大丈夫かという御懸念が表明されたわけですが、もう既に御案内のことと思いますが、来年度の地方財政対策において、恒久的な減税に伴う減収に対しては、将来税制の抜本的な見直しなどが行われるまでの当分の間の措置として、たばこ税の一定割合の国から地方への移譲、それから法人税の地方交付税率を引き上げたこと、そして地方特例交付金の創設ということによって対処したということは、御承知のとおりでございます。  それ以外の巨額の財源不足については、平成十年度に定めた平成十二年度までの三カ年にわたる制度改正、つまり、交付税対応分については国と地方が折半してそれぞれ補てん措置を講ずるということを基本として対処することとしたわけでございまして、国も極めて厳しい財政状況にある中にあって、できる限りの加算措置を講じたわけですが、残念ながらその多くは借り入れによって対処せざるを得なかったということも、これまた事実でございます。  しかし、いずれにせよ、これらの措置によって、地方交付税法の第六条の三第二項、この趣旨を踏まえつつ、地方財政運営の上で支障を来さないように対処できたものだと考えておるわけでありまして、ともかく、今の極めて厳しい経済状況の中、それを反映しての国、地方を通ずる財政の極めて厳しい現状でありますので、まずは景気を回復軌道に乗せるということが必要でありますが、同時に、今おっしゃいましたように、その際、地方財政の基盤をしっかりと確立していくということを、我々も全力を挙げて努力をしてまいりたいと考えております。
  325. 畠山健治郎

    ○畠山委員 今自治大臣、地方財政の苦しみのお話がございました。地方交付税は、地方固有の財源であります。かつ財政調整財源であることからすれば、大蔵省もまた、国税五税で不足財源を賄えるようにする責任があろうかと思うのです。そういう立場から、大蔵大臣の見解をお尋ねいたしたいというふうに思います。
  326. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 地方財政に生じました財源不足額十三兆四百九十七億円につきまして、経常収支の財源不足分が十兆余り、恒久的な減税の影響額が二兆五千億余り、それにつきまして、今自治大臣が言われましたような措置で合意をいたしたわけでありますけれども、平成十一年度の予算編成の中で、ある意味で一番難しかったのはこの地方財政の問題でありまして、野田大臣の前任者でいらっしゃった西田大臣と私は、何度か会談をいたしました。  それで、文字どおり、国もそうでございますけれども、地方財政もまことに同情すべき状態にあって、こうなれば、長い間いろいろ貸し借りもあり、いろいろですけれども、これは助け合うしかしようがないではないかというような気持ちで、先ほど野田大臣が御説明されました減税の影響分と通常の収支の財源不足分について幾つかのお約束をし、ともかく、お互いに苦しいが乗り切っていこうではないかというような話でございます。  ですから、おっしゃいました、本来交付税というものはこういうものであろうということ、そのとおりでございますけれども、もう今度のこの処理というのは、大変正直を申しまして継ぎはぎだらけ。これもまた財源不足が続きますと、またこれを今度はどうするかというような、これも本当の、ともかく急場の仕事をしたという感じなものでございますから、本来こういうものは特別交付金で、交付税でどうかすべきものじゃないかという御議論はこの際ちょっと休止していただきまして、先々お互いに、国の財政あるいは税制等々抜本改革を考えますときには、地方との関係も基本から考えなければならない。  ただ、そのときに、本当は中央と地方の行財政そのものの再配分ということに、不可分でございますから、そこまで行ければすっきりするわけでございますけれども、そうでなくても、こういう継ぎはぎのような、昔からの貸し借りのような話は、実はなかなか私自身にわかりかねるような、こうやって紙を見ながらお答えをしているようなことで、これはなるべく早くすっきりさせたいものだと思っております。
  327. 畠山健治郎

    ○畠山委員 大蔵大臣は率直に継ぎはぎだらけの実態だというようなことをおっしゃいましたので、そう言われると余り言うことはなくなってしまうわけであります。  何はともあれ、こういう状態であります。そしてまた、国会に中期財政計画試案が出されていまして、これから先もまた大変よというふうな状況が出されておりますから、よくわかります。と同時に、単純に、地方財政の中期計画の見通しは一体どうですかというようなこと、自治体の実態からするとなかなか難しいということもよくわかりますが、やはり中央という立場からすると、中期計画全くありませんよということもまた少し無責任だ、そう言わなければいけないというふうに思うのです。  自治体の実態からするとなかなか難しいということもよくわかりながらも、あえて中期計画とすれば、どんなことが言えるだろうかというようなこと、自治大臣、お願いいたしたいというふうに思います。
  328. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 大変難しいということを御承知の上での御質問なので何とも申し上げにくいのですが、実際、地方自治体全体の集大成というのが地方財政計画ということであるわけで、その中で、それぞれ個別の都道府県、個別の市町村というもの、ここのところがなかなか、それぞれ出入りがあるわけですね、でこぼこもあります。それから、特に都道府県が市町村に補助金として出している部分もまたあったり、そういう点で、予算編成のときに、今出しているようなタイミングの中で、都道府県と市町村と別々に地方財政計画、今あるようなものをそれぞれに分けて出すということは、率直に言って、これは物理的に極めて難しいということも実はございます。  その点、御承知の上なので、なかなかこれは難しいのですが、かつてはそういうことをやった時期があるようです。しかし、その時期なり、あるいはそのころに比べて、今は大分内容が複雑になっておりまして、このタイミングで出すというのはちょっと難しいということは、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  329. 畠山健治郎

    ○畠山委員 それから、最近の特徴として言えますことは、今まで自主財源の豊かな、大きな都道府県それから大都市、そこほど今は財源が落ち込んでしまっているわけですね。もちろん、それぞれの自治体の財政運営に問題がなしとは言えないわけでありますけれども、やはり景気対策ということで、中央の要請にこたえて過剰な景気対策をやったというところに大きな原因があるというふうに、率直に認めざるを得ないのではないだろうかというふうに思えてならないわけであります。  そういう実態からすれば、今自治大臣がおっしゃいましたけれども、地方財政計画を、都道府県も市町村もがっくるめて、はい、地方財政計画、こうよと出すこと自体に難しさが出てきたのではないだろうか。やはり都道府県と市町村の財政計画を一緒にするということ自体になかなか、これは作業的には大変だと思いますよ、仕事がふえるわけですから。大変だというふうには思いますけれども、あえてこの実態を見れば、大変だけれども、やらなければならないという節目にも立っているのじゃないのかなというふうな気がしてならないわけであります。自治大臣、どうお考えでしょうか。
  330. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 前半の部分、特に大都市において歳入の落ち込みが大きいということ、あるいは歳出需要があって、これが景気対策との関連での御指摘があったわけです。しかし、この点は、どうしても大都市部の都府県では法人関係税がかなり大きなウエートを占めておって、これがやはり経済の今日の情勢を反映して落ち込んでいるということは一つ言えることでもあります。そういう点で、よかったときはまたよかったわけでありまして、この点は、これだけをもって云々ということはなかなか難しい面がございます。  一方で、単独事業につきましても、それはそれなりにそれぞれの地域における地域の活性化というか、国全体の景気動向というものは、必ずしも大都市だけじゃありません、大都市においてもまたひどかったわけでありますが、それだけに、それぞれの地域をどうやって景気を回復していくかという主体的な判断もあって、それぞれ独自の判断の中でいわゆる景気対策への御協力をいただいてきたということも、これまた現実の姿でもあったわけで、そこは、一概に何か国の景気対策の犠牲になってしまったというだけで片づけるのは、ちょっとしんどいところもあるんじゃないかというふうには実は思っています。  それから、今、後段の部分で、都道府県なりあるいは市町村とそれぞれ別個に地方財政計画をつくったらどうかということについて、先ほど少し先走ってお答えをしてしまったんですが、この点について、さっき言いましたように、実際問題、技術的になかなか難しい部分がございます。  それは、一つは、地方財政計画の歳出面におけるいろいろな補助事業があったり、あるいは歳入面の国庫支出金あるいは地方債計画、こういったことがあるわけですが、これを計画時点で道府県分と市町村分に的確に分別するということは、なかなかこれは時間がかかるわけで、あらかじめそれを分けてしまうということが非常に難しいこと。  それから、さっき言いましたが、道府県から市町村への補助金ということも現に行われているわけで、これを地方財政計画を策定する時点ではっきりと確定してつくってしまうということも、これまた現実的には、そういう意味では難しいということがある。  ただ、いずれにしても、地方財政計画というのは、標準的な水準における地方財政全体の収支見込みを把握するというか、大局の中で把握していく、その中で地方財源をトータルとしてどう措置していくかという、そこに主眼があるわけですから、そういう意味では、現在確かに都道府県、市町村分が一本になった地方財政計画でありますが、計画をつくる目的からすれば、今日の姿でも果たしているのではないか、そんなふうに考えておるわけであります。
  331. 畠山健治郎

    ○畠山委員 自治大臣、作業的にも大変だというのはよくわかります。よくわかりますけれども、逆に、法人課税を引き下げることによって影響を受けるのは、都道府県がもろに受けるわけでありますから、大蔵サイドからすると、やはり分けてもらった方がいいのじゃないのかという議論も出てくるのではないだろうかというような気がしますね。  大蔵大臣、いかがでしょう。今回法人課税が下がるんですね、法人税。これをもろに受けるというのは都道府県なんですね。だとすれば、地方財政計画だからもろに一本だというようなことからすると、大蔵省だって困る部分が出てくるのじゃないの。大蔵という立場からして見ていかがですかというふうにお尋ねしているわけです。
  332. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、今度の経緯を申しますと、私どもの党の中で総裁公選がございまして、そのときに、各候補者が経済政策について抱負を述べられて、結局小渕候補が当選された。したがって、税についての公約は比較的早く決定をしなければなりませんで、その段階で、所得税の最高税率は五〇にしよう、それから法人税率は思い切って四〇にしようということが幸いにして決まったのですが、難しかったのは、では、それをどういうふうに中央と地方で分けるかという話でございまして、正直を申しますと、私は、国税の方の所得税は、トップ税率は四〇で、そして住民税で持ってもらおう、それで両方合わせて六五から五〇と。しかし、それはもう大変な減収になるわけでございますね。  同じ問題が法人税にございまして、四六であったのを四〇にするんですが、事業税の持ち方と国税の持ち方をやはりどうするかということで、結局両方とも、ある意味で、当時考えましたよりは国の方の持ち出しが多かったわけです。しかし、それでも富裕団体は事業税、法人事業税であれだけ苦しまれて、またそれは、今度は特例で差し上げるというようなことをしましたから、それは国の都合はどうだとおっしゃれば、もうちょっと税制としては地方に持ってほしかったということは、もうそのとおりでございます。
  333. 畠山健治郎

    ○畠山委員 九九年度の財政対策についてお尋ねいたしたいというふうに思うんですが、今回の地方財政対策について、あえて目玉といえば何なのかというと、三つあると思うんですね。その一つは、財源不足額に対する中央、地方の折半方式をとって、通常収支十兆三千億円から一般会計加算分五千五百億円を除外して適用したということが一つだと言えると思うんです。二つには、地方税の減収に対する六千四百億円の地方特例交付金の創設をしたということ、そして三つには、交付税率における法人税の配分割合の引き上げを行ったということ、この三点ではないだろうかというふうに思うんです。  そこで、第一点についてまずお尋ねいたしたいというふうに思いますが、不足総額から一般会計加算分を差し引いて折半方式を採用したわけでありますから、この点については、従来の補てん方式より一歩前進したと評価してよろしいかというふうに思っています。しかし、かといって手放しで歓迎していいのかというと、どうもそういうわけにはいかぬでしょうという思いがいたします。それは、これまでの交付税の不足で九九年度に一般会計から繰り入れることとなっている三千三百億円を含んでおるからであります。ですから、純然たる一般会計加算額は二千二百億円にすぎないと言わざるを得ないというふうに思うんです。  このような加算措置は、今回に限らず、これまでもたびたび行われてきておるわけでありますから、今回も両大臣の覚書で同様なことが行われたことは、言葉は少し過ぎるかもしれませんが、何かまやかしではないのかというふうな気がしてならないんですが、自治大臣、どうお考えでしょうか。
  334. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 あの覚書も大変複雑に書いてありまして、私自身、実はまだそのときサインした立場でなかったので、なおさら頭が痛い書き方になっております、率直に言って。実際、かなり技術的なお金のやりとり、貸し借りなどが反映されておるわけで、今大体御指摘されたような結論の数字になっております。  もう一遍それを若干、復習というとなんですけれども、申し上げますと、平成十一年度の一般会計からの加算額五千五百億円につきましては、法定加算額に加え、財源不足額の規模、覚書加算額の状況、交付税特別会計における借入金の抑制の必要性等を総合的に勘案して、できる限りの一般会計からの加算措置を講ずることとした結果であります。  そこで、法定加算分約三千三百億円に加え、臨時特例加算額を約二千二百億円とし、合わせて一般会計からの加算額を五千五百億円としたのは、国も多額の特例公債の発行により一般会計予算を編成する中にあってのぎりぎりの結果であり、御理解願いたいというのが内容でありますが、もっと詳しくということであれば、きょうは政府委員をしてさらに詳しく説明をさせていただきたいと思います。御要請があればさよういたします。
  335. 畠山健治郎

    ○畠山委員 いや、詳しく経過を踏まえてお尋ねしたいという気持ちもありますけれども、何せ時間がございません。先を急ぎたいというふうに思います。  この加算措置についてもう一点お尋ねいたしたいというふうに思っております。  折半方式の外枠として行われた今回の一般会計加算措置は九九年度限りの措置なのか、大変微妙なところだというふうに思うんですが。純粋な一般会計加算額は、先ほど指摘いたしましたように二千二百億円にすぎませんが、これが外枠で措置されたところに意味があると考えれば、制度減税が行われておる間まで今後も当然引き続き行われるものと理解したいんですが、自治大臣、いかがでしょう。
  336. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 平成十一年度における一般会計からの加算方式の変更については、財政当局と単年度の措置として合意し合ったものであり、平成十二年度以降の措置については改めて協議をすることとなる。したがって、今後どのような措置を講ずるかについて現段階では確たることを申し上げられないが、いずれにしても、今回の加算方式の変更の趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたい、こういう報告を受けております。  以上です。
  337. 畠山健治郎

    ○畠山委員 これほど苦しいというふうに大臣おっしゃっておきながら、せっかく評価のできる方向で一歩今回出たわけですから、単年度限りよというふうに言われたら、これは多くの地方自治体はがっかりしますよ。これから先も何とかひとつ頑張っていただくというような決意を、自治大臣の決意のほどをひとつ御披瀝いただきたいんですが。
  338. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今年度だけでなくて、その点については来年度以降においても、地方財政にとって必要な額は断固として確保するというのは、それは私どもの責任であると考えております。
  339. 畠山健治郎

    ○畠山委員 自治大臣に決意のほどを申し上げていただきました。  大蔵大臣もどうぞ一言お願いしたいと思います。
  340. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今の同じ部分は、私の方にもなかなか微妙なことが書いてございまして、本年度のように巨額の財源不足が見込まれる異例の事態においては、将来の法定加算を前倒しして加算することは制度の趣旨にかなった対応と考えると、こう書いてございます。
  341. 畠山健治郎

    ○畠山委員 大変微妙でございますが、改めてひとつそういう方向で頑張ってほしいという御要望をしておきたいというふうに思っています。  次に、昨年十二月十九日、大蔵、自治両大臣間で取り交わされた覚書についてお尋ねいたしたいというふうに思うんです。  これによりますと、例えば四項、五項、七項すべて平成十七年度以降において調整するとされております。ここで十七年度以降とした理由は一体何だろうかな、もう不思議に思えてならないわけであります。財政構造改革法の凍結について十六年ごろぐらいまでか、そんなことが意識にあってこんなことをなさったんではないだろうかなという思いはいたしますが、自治大臣、いかがでしょうか。
  342. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 説明によりますと、平成十一年度のこの特別借入金地方負担分の償還は、五年据え置き、十年償還でございますから、十七年度以降借入金の償還が生じまして、その分交付税総額が厳しいものとならざるを得ない。このため、法定加算を十七年度からとして借入金償還の影響を緩和することにしている、こういう配慮だ、こう聞かされております。
  343. 畠山健治郎

    ○畠山委員 次に、地方税制改正についてお尋ねいたしたいというふうに思います。  これまで政府は、個人住民税について、負担分任論の立場から薄く広く課税するとして、税のブラケットの簡素化に努めてきたところでございます。しかし、この論理からして、何ゆえ最高税率を二%引き下げなければならないのか。  しかも、一方では、昨年までの定額減税から定率減税に切りかえたことで、七百八十万以下の層は前年度に比べて負担がアップする結果になります。これでは、政府のおっしゃる負担分任とは中低所得に対する負担増ということになるわけでありますから、政府のこれまで言ってきた個人住民税の原則と今回の最高税率の引き下げとは両立しないんではないだろうか、そう言わざるを得ないというふうに思いますが、自治大臣、御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  344. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 御案内のとおり、個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分任するという、まさにこの負担分任という性格を有するんだという説明をずっとしてきておるわけで、そういう点で、課税最低限は所得税よりも低いし、また税率も緩やかな累進という形になっておるわけです。ここは御指摘のとおり。  そこで、そういう中で、では、最高税率の引き下げの意味というのはこれとどういう関係か、こういうことだと思うんですが、今回の最高税率の引き下げは、その角度ということだけではなくて、むしろ、我が国の将来を見据えて国民の意欲を引き出すという観点から、個人所得課税トータルとしてとらえて、そういう所得課税の一環として、所得税とあわせて最高税率の判断が行われたんである、こういうことだと思っています。  他方で、御指摘は、前年に比べて負担がふえるということですね。これは、特別減税が定額控除方式で行われたということとの関係での比較、これはよく言われるんですが、もしそうであれば、これを乗り越えよと言うんなら、定額控除方式を今後もずっと続けろという論理になってしまうわけで、果たして本当にそれでいいんでしょうかと。やはりここは、一回限りの減税であったんだと。やはり、そこはある程度理解をした上で抜本的な税制改正なりそういった形を考えていかないとうまくいかないのではないか、ここはちょっと次元の違う話なのではないか、そのように感じております。
  345. 畠山健治郎

    ○畠山委員 大蔵大臣に一言だけお尋ねしたいんですが、高額所得者の税率負担を下げるためになぜ個人住民税を道連れにしなければいけないのかということを素直に思うんですね。いかがでしょう。
  346. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、先ほど申しましたところに戻るわけでして、私どもとしては、六五が五〇になるのですから、法人税は四〇と。四〇といいますと、国税でございますね、個人のトップ四〇といいますと、各国の税制の中でまあまあ、もう本当にいいところでございますが、実際に住民税が一五持っていただけませんでしたから、個人の所得税のトップは三七になっております。三七という所得税の税率のトップは少し低過ぎるとお思いになりますでしょう。それはそうせざるを得なかった。
  347. 畠山健治郎

    ○畠山委員 いや、余り深い議論はいたしません。下に薄く上に厚く、今回の減税の中身は何かそんな感じがしてならないというふうに思わざるを得ないと思っています。  個人住民税における、買いかえの場合の譲渡損失の繰越控除制度の創設もその一つであるというふうに言わなければならないのではないでしょうか。これは、同じ給与所得を得ている人は、控除される、されないということによって差が出てくる、税率に差が出てきてしまう。確かに景気対策で税制を使うというようなことは十分にあり得るというふうに思いますから、そこまでどうこう言うつもりはございませんが、同じ所得であって均等割だけというような人も出てくる、片一方は税制上でうんと優遇される、こんなことになったのでは、何か末端からすると、ええ、これ一体どうなのという不公平感は免れない。少し行き過ぎじゃないのかというのは率直に思っておるわけでありまして、その辺の判断はいかがでしょうか。
  348. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 率直に言って、そういう見方もあるいはあろうかとは思います。ただ、住宅の買いかえを促進することによって景気の回復を一刻も早く図りたいという趣旨から、国税の所得税はもう既にできておるわけで、それを個人住民税においても、居住用財産の買いかえの際の譲渡損失の繰越控除制度を特に二年に限った臨時時限措置ということにしたわけです。これはつまり、当然のことながら、取得したときよりも譲渡時の価格が、逆に損失が発生しているというわけですね。ですから、これは、譲渡益が発生しているのを、何か逆に宥恕しようというのとはちょっと違うので、そこのところは、何といいますか、本当にどう評価するかだと僕は思うんですが、私は、許される範囲、しかも譲渡損失の繰越控除の話ですからね。ですから、私は許されることじゃないかと思っています。
  349. 畠山健治郎

    ○畠山委員 多少論議のあるところでありますが、時間がございません、先に進ませていただきたいというふうに思います。  法人事業税についてお尋ねいたしたいというふうに思いますが、法人課税に対する実効税率が高いとして、その原因を法人事業税に求めて、今回これを一・四%引き下げをしておるわけであります。そして一生懸命諸外国と対比をして、高い高い、こうおっしゃっておるわけでありますが、一体どこでどう比較してそうなるかというようなこと。これまで何回も、自治省を含めいろいろと議論しながら比較論をやってまいりました。比較の仕方によって違うのは当たり前の話ですけれども、私どもからすると、公平公正な目で見て、高いとは思っていなかったのです。今回、高いという判断から一・四%下げましたけれども、その辺の自治大臣の見解をお尋ねいたしたいというふうに思います。
  350. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、今回、事業税の基本税率を一一%から一・四下げて九・六%ということにしたわけです。これは、よく言われますいわゆる国、地方合わせた法人税の実効税率、この実効税率というのは所得に対する実効税率という形でとらえておるわけです。それを四〇%程度に引き下げるという大目標の中で、結局、雇用を生み出し日本経済を引っ張っていく、これの一番の原動力である企業も大いに世界の競争の中で活力を保持していってもらいたい。そういう中で、せめて国際水準並みの税のインフラだけは整備をしておこう、こういう角度からこの議論がずっと行われてきたことは御承知のとおりでございまして、法人税の方においても、先ほどもお話がございました基本税率の引き下げなどもあり、その中で、地方の方も大変厳しい状況の中ではあるが、いささか何らかの配慮はできないだろうかという中で、事業税においてもそういう形での協力体制をしいたというのが、率直に言って今回の結果であります。  ただ、国際比較の中で事業税的なものだけを取り上げて外国と比較すると、御承知のとおり、この種の地方税として法人課税がある国もあればない国もあるし、それだけをとれば日本よりも高いところもあればそうでないところもあるし、同じアメリカ国内でもそれぞればらつきもある、州によって異なるということはもう御承知のとおりでありまして、事業税そのものが外国と比べて高いか低いか一概に比較するということはなかなか難しいことだと思っています。
  351. 畠山健治郎

    ○畠山委員 時間もなくなりましたが、そこで、この法人事業税を一・四%下げることによって景況に一体どんな影響があるのか。  率直に言って、全法人の六〇%は欠損法人である、税を納めていない中で、法人事業税の税率を引き下げたとしても、その恩恵は極めて限られた数値より出てこないのではないだろうかというような気がしてならないわけでありますが、この点についての経済効果は、経済企画庁、どうごらんになっていらっしゃるでしょうか。
  352. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員指摘のとおり、法人事業税だけをとりまして経済効果がどれくらいかと尋ねられると、これは大変難しい問題でございます。  法人課税全体をとりましても、それが配当に回る分と内部留保される分といろいろございまして、なかなか出せないんでございますけれども、やはり一番重要なのは、日本がよその国に比べて法人税が高い、工場、事業所が出ていくという、国際的な流動性の中で外国に立地されるという、この問題が一番大きいんですね。  ドイツ日本より高いんでございますが、フランスとかアメリカとか、アメリカにもいろいろございますが、例えばカリフォルニア州あたりをとりますと四〇%ぐらい、フランスも四〇%ぐらいでございますので、日本もそれに合わそうというので今回の税制改革を行いました。  やはり各都道府県、地方に産業が立地してくれない、どんどん流出してしまうというのが一番恐ろしい効果だということで、今回、国際水準ということに合わさせていただいたと承知しております。
  353. 畠山健治郎

    ○畠山委員 いよいよもって時間がなくなりましたので、最後になりますか、懸案の地方分権推進、法案の提出という段階を迎えました。  ところが、出されたのは、一本の体系でどんと出てまいりました。広辞苑にして三冊分になるぐらいの分量が法律の中身だというふうに承っております。これは、法律の形態は一体どうなるんだろうか、どんな審査したらいいだろうか、受け取る国会どうするだろう、本当に大変だというふうに思っております。  そこで官房長官、提出法案の形式は一体どんな格好になるんでしょうか。その点、まずお尋ねいたしたいというふうに思うんです。
  354. 野中広務

    ○野中国務大臣 今委員から御指摘ございましたように、地方分権の推進を図りますための関係の法律の整備等に関する法律案を、仮称でございますが、御承知のように、昨年の五月に政府が作成いたしました地方分権推進計画におきまして今国会にこの法律案を提出することになっておるわけでございます。現在内閣官房において取りまとめ、提出をするものでございます。  法案の内容につきましては、行政の各分野に及ぶものでございますので、一つは、改正事項が、御承知のように計画に基づきまして地方分権の推進を図る、そういう同一の趣旨、目的を有するものでありますこと、二つ目には、今回の法案の大宗を占める機関委任事務制度の廃止及び関与の見直しにつきましては、機関委任事務に係る諸規定をすべて整理をいたしまして、法定受託事務と自治事務という新しい区分に基づいて関係法律の所要の整備を図る必要があるわけでございます。したがいまして、関与の見直しにつきましても、関係法律において、地方自治法で新たに規定される通則との整合性に配慮した整備を行うことが必要であるということでございまして、個別の法改正を行いますよりは、一つに取りまとめまして、改正の趣旨、全体像がわかりやすくなる方法をとることがよかろうということの理由で、政府といたしましては一括法として提出をさせていただくことにした次第であります。
  355. 畠山健治郎

    ○畠山委員 政府の提出の姿勢はわかりました。ただ問題は、国会に出しましたから、あと審議は、煮て食おうと焼いて食おうと、国会の自由よというような、そんなことではこれは大変だというふうに思うわけです。  ですから、どんな審議をしたらいいのかというと、国会は国会なりにこれはいろいろと苦労をしなければいけないというふうに思いますが、出したからあと政府は知りませんよなんというようなことじゃなくて、国会と一緒になって、審議のあり方というようなこと、効率的な、しかも中身のある審議のあり方ということに政府もひとつ積極的に参画していただきたい、このことをひとつ要望しておきたいというふうに思っております。  それから、せっかく総務庁長官に来ていただきましたので……(発言する者あり)はい。じゃ、時間でありますから、やめます。ありがとうございました。
  356. 中山正暉

    中山委員長 これにて畠山君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る八日午前十時から委員会を開会し、金融、財政並びに景気対策についての集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十八分散会