運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-02-04 第145回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月四日(木曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       小澤  潔君    小野寺五典君       越智 通雄君    大原 一三君       加藤 卓二君    亀井 善之君       河村 建夫君    岸田 文雄君       斉藤斗志二君    津島 雄二君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       牧野 隆守君    村田 吉隆君       村山 達雄君    望月 義夫君       森山 眞弓君    横内 正明君      吉田左エ門君    岩國 哲人君       上原 康助君    生方 幸夫君       岡田 克也君    小林  守君       肥田美代子君    山本 孝史君       横路 孝弘君    吉田  治君       大口 善徳君    大野由利子君       近江巳記夫君    斉藤 鉄夫君       冨沢 篤紘君    中野  清君       西川 知雄君    加藤 六月君       鈴木 淑夫君    西村 眞悟君       木島日出夫君    瀬古由起子君       中林よし子君    春名 直章君       平賀 高成君    北沢 清功君       中川 智子君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣 野田  毅君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 康宏君         科学技術庁科学         技術振興局長  田中 徳夫君         環境庁水質保全         局長      遠藤 保雄君         法務省民事局長 細川  清君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         文化庁次長   近藤 信司君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         食糧庁長官   堤  英隆君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       岩田 満泰君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         郵政省貯金局長 松井  浩君         郵政省電気通信         局長      天野 定功君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         建設省建設経済         局長      木下 博夫君         建設省住宅局長 那珂  正君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         国立国会図書館         長       戸張 正雄君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月四日  辞任         補欠選任   江口 一雄君     小野寺五典君   岸田 文雄君     望月 義夫君   谷津 義男君    吉田左エ門君   岡田 克也君     山本 孝史君   大野由利子君     近江巳記夫君   草川 昭三君     冨沢 篤紘君   斉藤 鉄夫君     大口 善徳君   志位 和夫君     平賀 高成君   不破 哲三君     中林よし子君   濱田 健一君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   小野寺五典君     江口 一雄君   望月 義夫君     岸田 文雄君  吉田左エ門君     谷津 義男君   山本 孝史君     岡田 克也君   大口 善徳君     斉藤 鉄夫君   近江巳記夫君     大野由利子君   冨沢 篤紘君     中野  清君   中林よし子君     春名 直章君   平賀 高成君     瀬古由起子君   中川 智子君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   中野  清君     草川 昭三君   瀬古由起子君     志位 和夫君   春名 直章君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。海江田万里君。
  3. 海江田万里

    海江田委員 おはようございます。連日大変お疲れさまでございます。風邪もはやっておりますようでございますが、ここ数日、長期金利がまた上昇をしております。  まず、堺屋長官にお伺いをしたいと思うんですが、この長期金利上昇景気に与える影響でございますね。景気が回復をしていて、それで長期金利上昇しているんだよということであれば、これはよい金利上昇とでも言えるのでしょうか。ただ、現状はそうではないと私は見ておるわけでございますが、長官の御認識はいかがなものでしょうか。
  4. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 長期金利動向は、私たちも大変注目して見ております。  昨年の暮れに、十二月の三十日に二・〇一という数字をつけました。それから、正月になりましてからずっと安定してまいりまして、二十六日に一・七一五という数字に下がりましたので、やや解決したのではないかなというように見ておりましたところ、二月に入りましてからどんどん上がりまして、きのうあたりは二%台前半の上の方に張りつくような値段になりました。  二月に入ってからの現象でございまして、この原因が何であるか、私たちも今全力を挙げて分析をしているところでございまして、民間資金需要がふえたというような報告もないわけではございませんけれども、一方、国債の方は既に約束済みのものもございまして、この原因について正確にとらえ切れていないというのが現状でございますが、必ずしも、民間資金需要がふえてきた、つまり景気が回復してきたから上がっているということではなさそうだと思っております。
  5. 海江田万里

    海江田委員 堺屋長官にしては非常に慎重なというよりも、むしろ若干事実認識が違うと思うんですが、きのうあたり金利上昇原因はもう非常にはっきりしておりまして、これは、やはり各金融機関なり機関投資家が持っておった手持ちの国債をどんどん投げ売りをしたからでありまして、民間資金需要がふえてきたからというのとはおよそほど遠い現状でありまして、そのあたり認識をやはりまず真っ先に持っていただきませんと、これはこれから景気の判断をしていく上で重要な認識の違いになると思います。  改めてお尋ねをしますが、今回の、とりわけ二月に入ってからの長期金利上昇というのは、むしろ国債投げ売りだ、国債価格が下落をすることによって、利回りが高くなって金利上昇になったというふうな認識が正しいと思うんですが、いかがでしょうか。
  6. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 短期金利が下に張りついているところから見ると、まさに仰せのとおりだろうと思っておりますが、確信を持ってこれだけと言うのは、けさの段階ではちょっとまだたじろぐところがあるんですが、ほぼそうだろうと推定はしております。
  7. 海江田万里

    海江田委員 本当に時間が短いわけでございますから、初めからそう言っていただきたいわけでございまして、しかも、今の言い方も、そうだろうとということですが、きのうだとかおとといだとかはまさにそういう流れでありまして、これは国債の売買の出来高を見ればすぐ一遍にわかるわけでございますから、そういう意味では、率直に言っていただけるのが堺屋長官の身上でございますから、これはぜひ率直にお話をいただきたいということでございます。  さて、宮澤大蔵大臣宮澤大蔵大臣は、当委員会におきまして、長期金利についてでございますが、最近二度発言がございます。  一つが、これは加藤六月委員、与党でございますけれども、きょうもいらっしゃいますが、一月の二十六日の加藤六月委員長期金利上昇に対する懸念に対して、「今のところは長期金利水準そのものがこれからさらに上昇しそうな気配はございません。」という御答弁がございまして、そして、その翌日、二十七日でございますが、これもここにいらっしゃる太田委員の質問に対しまして、「私はこの委員会クーポンレートはもう上がることはないだろうと思うと申し上げましたが、」これは二十六日のを受けて、そして、一つ下げまして受け入れられておりますので、まず落ちつくのではないだろうかというお話がありまして、当委員会では、そういう意味では、もう長期金利はまさにこの一月の末の、先ほど長官お話をしました一・七一五のあたりで、これでこのまま推移をするんではないだろうか、これ以上上がることはないという発言があったわけでございますが、今現在の動きを見て、この発言を訂正されるおつもりはありますか。これは訂正していただかないと困るわけでございますが、どうしてそういう間違った認識になったかということも含めてお答えをいただきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的にこれは市場動向に関することでございますから、確たることを本当は申し上げるという方が私としては本意ではございません。  ただ、いろいろお尋ねがあって、お答えする側からいいますと慎重でなければならないと思っておりますから、現実にここへ来て国債利回り、仮に指標銘柄で申しますと昨日は二・三五〇でございますから、二に乗っけておるわけです。  それで、さっきおっしゃいました、これは太田委員でございましたか、これ以上クーポンレートを上げることはなかろうと申し上げましたのは、実際に一月債は二・〇でクーポンレートを設定しましたが、二月債は一・九で設定することができましたので、その辺まではそういう含みであったわけでございますね。しかし、ここへ来て上昇していることは確かで、これは市場のことでございますから、何が原因ということは申せないにしても、例えば十年物から、四年物を出しましたので、どうも期近なものを、クーポンレートよりは償還期限の短いものの方が買いになって、長いものが売りになるというようなことはどうも一つの心理としてあるらしい。  それはなぜかというようなことは、恐らく大事なことでございます。大事なことでございますが、そういう要因があったり、あるいはだんだん三月の決算が近づいたり、仕手関係があったり、いろいろだろうと思いますから、市場について余りとやかく本来申すべきではないんだろうと思いますし、全体といたしましては、私はやはり市場に任せておくことが大事だという気持ちは変わっておりません。  ただ、それによりまして今後の発行条件というものは当然左右されるわけでございますから、関心を持っていないはずはないので、関心を持たざるを得ないことでありますし、また、それが例えば住宅金融公庫の金利などに影響いたしますと、これは国民全体、市場だけの問題じゃなくなりますので、これはいつぞやも申し上げましたが、現在の二・二でございますが、これは三月十二日が締め切りでございますか、それまでの間、これを変える気持ちはございません。それは市中のレートがどうなりましょうとも、それを変える気持ちはございません。  総じて申し上げますと、今海江田委員の御指摘になりましたこの動きに私ども関心を持っております。基本的には、これは市場動きであるということについてとやかくの干渉をすることもできませんし、またすべきでもないだろう。ただ、今度は国債発行者としての問題はまた当然ございますので、そういう意味でも無関心ではおりません。
  9. 海江田万里

    海江田委員 今いろいろなことをおっしゃいましたので、ちょっと話が拡散をしてしまったんですが、もともと大蔵大臣は、金利の問題は市場の問題だから市場に任せよう、ずっとそういう考え方があるんだと。ただ、たまたま一月の二十六日、二十七日、これはそれぞれの委員からこもごも金利はどうなるんだということを聞かれたから、心なくも、このままで推移をするんじゃないだろうか、これ以上上がる心配はありませんということをおっしゃったということですか、これは。どうしても聞くものだからということで、本当は言いたくないんだということですか、これは。まずそこを押さえておきます。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうまで申しますと、それは大変失礼な言いようになるので、国会がこういうことに関心をお持ちになられるのは当然でございますので、それはお答えをした。  ただ、お答えをいたします方は、やはりどう考えているかということは市場にいろいろ影響を与えるということも正直ございますものですからということをちょっと申し上げようとしただけで、お尋ねがあってそれにお答えするのは、これはもう当然のことと思っております。
  11. 海江田万里

    海江田委員 この両日の御答弁を見ておりますと、市場のことだからわからないけれども、このまま推移すればいいんじゃないですか、このまま推移しそうな気配ですよとか、そういうことじゃないのですよ。  これはかなり、私はきのう読んでみましたけれども、やはりここは、もう金利はこれ以上上がることはないから心配しないでいいよというようなことをおっしゃっているのですね。太田委員なんか、きのうやはり怒っていましたよ。本当は太田委員の順番が回ってくれば太田委員が質問するのが一番妥当なのでしょうけれども、太田委員にかわって私が質問しているわけでございますが。  そこはやはり、あのときは確かに、新規のをシンジケート団がかなり低いところで大体引き取ってくれそうだというようなこともあって安心をしておったのだけれども、やはり事態はそういかなくなって、まさに大蔵大臣が二十七日に答弁をした翌日からきのうまで、この六営業日全部、国債が売られて金利は上がっているのですよ、長期金利が。だから、そこの不明は、恐縮でありますけれども、これはしまったというか、言ったことと現実が違ってしまったということをやはり率直にお認めになって、そこから、では何ができるのか、何ができないのかということをこれから議論に入っていくわけですから、そこのところをやはりしっかり押さえていただかないと。  事志と反して市場はそういう動きをしなかったということをおっしゃってくださいよ。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 市場を左右するというつもりで申したのではないのですが、相場観としては間違いを申しました。
  13. 海江田万里

    海江田委員 それで、また最近になりまして、先ほどこの委員会でも発言がありましたけれども、マーケットの問題ですからということをしきりにおっしゃっている。  二月二日の閣議後の記者会見、朝八時四十八分から九時〇二分まで、参議院の議員食堂記者さんに囲まれまして、これは朝飯を食べながらですか、いろいろ聞かれて、この中で大蔵大臣は、うん、これはまあ、これは一種のやっぱりマーケットですから、マーケット自立性を尊重したいと、しきりとマーケットマーケットということをおっしゃっている。  一貫してそれを言っていたらいいのですけれども、ここへ来てマーケットということを言うと、これは当局が金利上昇を容認しているというふうにマーケットは受け取るわけですよ。現にそういう動きが起きているわけですよ。ここでもって、やはりかなり重要な問題だから、ここは注視をしなきゃいけない、できることは限られているけれども、できるだけやはり、今この時期の金利上昇というのは好ましくないということぐらいおっしゃっていいのじゃないですか。どうして言えないのですか、それが。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 できることは限られているとおっしゃいますが、できることはそんなにないのでございます、実際は。ですから、何かこういうことが左右できるんだ、そういう物の考え方は私は本来信用していないものですから、確かに海江田委員のおっしゃるように、その時々でもう少し言いようがあるだろうと言われれば、つい正直を言っているところはあるかもしれません。よく注意をいたします。
  15. 海江田万里

    海江田委員 正直におっしゃっているという言い方をしましたけれども、新聞なんかの書き方は、不用意だとか、あるいは投げやりなんというのもどこかで僕は見たことがあるのです、投げやりな応答をしているとか。これは、私もそういう方ではないと思っていますけれども、やはりここは本当にマーケットに対する発信をする一番重要なところですから、その意味で、私は、もう少し、正直なことはもう重々承知をしているわけですけれども、不用意でない、用意周到な発言をやはりぜひしていただきたいというふうに思うわけでございます。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ついつい、発信することばかり長くやっているものですから、受信側の心構えが足りませんで、よく注意いたします。
  17. 海江田万里

    海江田委員 それから、打つ手は、私は限られている、大蔵大臣はそうはない、これは同じことなわけでございます。  今これは、いろいろうわさというか、あるいは当予算委員の中でも大原先生なんかは、新聞に投稿ですか、寄稿ですか、例の日銀国債引き受けの話が出ております。これはもちろん言うまでもありません、財政法の五条と日銀法の三十四条で禁じられているわけでございまして、しかも、これは減税と同じだという表現もあるわけです。一回日銀引き受けたら、特に今、時限引き受けたらどうだろうかとかいう議論がありますから、時限引き受けた日には、その時限が切れた後、ちょうど今当委員会でも議論になりました、去年ああいう形で定額減税というものをやった、その定額減税が切れたその瞬間に、まさに八百万以下の人たちが今度は負担増になるのじゃないだろうか、制度減税をやろう、こういう状況になってきているわけですから、この日銀引き受けというのも、とりわけこの年限を区切っての引き受けなんというようなことになったら、その後の問題が出てくるわけです。  私は、よもや大蔵大臣はこの日銀引き受けというようなことはお考えになっていないと思いますけれども、改めてその御発信をお願いしたいと思います。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどのお諭しから申しますと、ここは何とお答えするのか難しいところでございますが、いろいろな御提案があるので、本当は詳しく承ってからでないといけませんけれども、おっしゃいますように、私は、そういうことをする必要はないだろうと本心は考えております。
  19. 海江田万里

    海江田委員 それから、では、大蔵省がとれる手は何なのかというと、さっきちょうど大蔵大臣がおっしゃいましたけれども、今、十年物より実に四年物の方が売れているのだという話で、一つは、やはり五年物の利付国債を出す御準備があるのかということ。  それからもう一つは、三十年物をいよいよ出すわけですね。ただ、今の状況からいくと、では三十年物が果たして売れるのかどうなのかという心配がありますね。そうしますと、例えば、三十年物の出し方ですけれども、これは今の十年物と同じように毎月毎月一定量を出していくのか。それとも、アメリカのあの国債のように、四半期ごとに、クオータリー・リファンディングといいますけれども年四回出しますね、二月、五月、八月、十一月ですか、ああいう出し方をやはりこの三十年物の国債に応用するのか。あれをやりますとやはりボリュームがまとまるわけですよ。これは実は私は、十年物もそういう出し方を考えた方がいいのじゃないだろうかというように思っているわけです。  やはり十年物を毎月毎月出していきますから、その時々によって、もちろんさっきおっしゃったように、クーポンの利率も違ってくる。それから、幾ら大量に、ことし借換債も入れますと六十兆を超えて出しますけれども、毎月毎月にやっていくと、やはりボリュームが少なくなってくる。ボリュームが少なくなってくると、やはり一部の人が買って、それがいろいろな事情でもって、市場にどうしても、決算前なんかになったら投げ売りをしなければいけないということになると、それが国債価格全体を引っ張っていくことになるわけですよ。  だから、国債はなるべくやはり発行するときまとめて、まさに三カ月に一回ぐらい、四半期ずつぐらいに一回出していくというアメリカのやり方もあるわけですから、そういうことは御検討になっておるのかどうなのか、これをお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席伊藤(公)委員長代理着席
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今おっしゃいました国債銘柄多様化あるいは発行の仕方等々、実はまさにいろいろ問題があるように思っております。  今までは、シンジケートと相談をして、大体、おっしゃいますように、ことし六十兆とかなんとかいうものを、わかりましたというようなやりとりで、発行条件はそのときそのときで決めていくというようなことで、一種の取引の慣行が定着しておりましたが、ここへ来まして、そういう長期金利の安定を図らなければならない立場と、もう一つ発行者としての立場というものがございますので、したがって、発行者としてどうあらねばならないかという問題は、実はだんだん、やはりここへ来ると、もう一遍よく考えなきゃならぬことなんではないかということを、お尋ねがございますように私自身も考えています。  最近の現象はやはりそういうことの問題意識に警鐘を鳴らしているのかもしれませんし、他方でまた、預金部資金が、明年の郵便貯金の定額貯金の払い戻しのようなことがございますものですから、かなり影響を受けるのかもしれないということもあって、この問題は、一遍いろいろ考えてみなきゃならないと思っておりますことは御指摘のとおりです。
  21. 海江田万里

    海江田委員 私は、もう時間もありませんので極めて具体的に、その発行体の問題だとか、それから郵貯の資金、二〇〇〇年、二〇〇一年の定額貯金を、十年ぐらい前は一生懸命になってV90とかいいまして九割をまた自分のところへ持ってこようとしたが、今度は、自主運用に自信がないとかいろいろ、きょうは貯金局長もお見えいただいていますが、早々とそういうことを放棄してしまって、最初からもう郵貯には戻さないんだというようなことを決めております。  そういうような問題も実は議論したいわけでございますが、きょうは本当に時間がありませんので、私言いたいことはいっぱいあるんだけれども、そこを抜きにして、具体的にとれることというのは、五年物の利付国債一つあるんじゃないですかと。これはまだ発行していませんから。  しかも、そういう方向へ出ています。片一方では、長期信用銀行、いわゆる五年の利付債の発券銀行はもうこれから役割を終えていくわけですから、これまでみたいにもう気にしないでいいわけですから、だから、それはもう出すチャンスなわけですよ。それによって、これは金融行政にも関係してくるわけですけれども、ああなるほど、そっちの方面でのいわゆる国策銀行はもう役割を終えたんだなということがはっきりします。  それから、三十年物国債をこれからお出しになるということであります。しかもこれは初めての試みでありまして、最初は発行量も少ないわけですよ。四千億円しか出さないわけですよ。だから、その四千億をこれまでと同じような、十年物の利付債と同じような発行の仕方をしておったのでは、やはりそれによってかなり毎月の発行額が少なくなってくるとかということがありますから、この発行あたりをきっかけにして、先ほど来お話をしておりますクオータリー・リファンディングについて研究をしてみるつもりはあるかどうかという、非常に具体的な質問をしておるわけでございます。  これについて、全く方向性として間違っているんですか、あるいはその方向で何とか研究をしてみたいということなんですか。どうなんですか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 具体的にそれにお答えいたす用意はございません。用意はございませんという意味は、実は、もう少しいろいろな問題を検討する必要があるだろう。  つまり、基本的に申せばマーケットはなるべくマーケットの自主性にしたいが、他方で、政府はかなり大きな国債発行者でありますから、無関係な立場ではないのでございますね。今海江田委員のおっしゃいましたことも、発行者としていろいろ考えることがあるだろうとおっしゃっているわけですから、それは私もそう思っているんです。全体的に発行者としてどうあるべきかということを考えます中で、今おっしゃったような具体的な問題が出てくるのかもしれない、こういうのが今の現状でございます。
  23. 海江田万里

    海江田委員 わかりました。  とかく、マーケットのことはマーケットにとかいうことだけを言っておりますと、まさに発行者としての問題意識とか認識とか、そういうことについてどうも希薄なんじゃないだろうかというふうに受け取られてしまいますので、やはりそこは重々お考えいただきたい。  とりわけ、これは経済企画庁長官も、最初は景気の回復の胎動とか言っていましたけれども、今度は一—三月が大事だということを言い出したというか、若干軌道修正したと私は思うわけでございますが、まさにここの一—三月でいうと、機関投資家が大量に国債を抱えちゃっているわけですよね。これは実はやはり大蔵省の、まさに金融行政のツケがここのところへ来て出てきたんではないだろうかと私は思うわけでございます。  ここ数年の決算状況を見てみますと、各金融機関、大手の都市銀行なんかそうですけれども、どこで業務純益を出しているかというと、みんな国債の売買で業務純益を出しているわけですよ。そうでしょう。しかも、この間はずっと金利が低下傾向にありました。九五年から金利が下がりましたから。だから、まさに、これから金利は下がっていくよ、だから一番いい業務純益を上げるやり方というのは国債をとにかく買ってくださいと。国債を買ってくださいということで、片一方で金利低下のアナウンスをやっておくから、これは、買った国債は全部もうかっていたわけですよ。  だけれども、ここへ来て、大きな流れの逆転があるわけですから、これからはもう国債を買ってくださいということも言えなくなったし、あるいは、そうやってこれまで買わせた、買わせたという言葉をあえて使わせていただきますけれども、これまで買わせた国債が、この間の下落でもって全部評価損が出てしまう。しかも、その損を、もう今投げ売りのような状況になってきているわけじゃないですか。  だから、やはりそのことに対する反省というか、それも持っていただかなければいけないと私は思うわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これまで買わせたというようなことは、ちょっとないですね、マーケットの出来事ですから。買わせたという、それに損が出たというようなことじゃないと思います。しかし、傾向は、確かにそういうことは起こりました。  その次に、これから逆転するということも、今そうなっていますけれども、これから先のマーケットということはやはり簡単にはなかなかわからないと思いますので、そういう傾向がここまでありましたが、しかしその次に申したいことは、売りもあれば買いもあるということもあるということじゃございませんかね。
  25. 海江田万里

    海江田委員 では、ひとつ問題意識を共有しているかどうかということはやはり確認をしておかなきゃいけません、そうしませんと全然議論がかみ合いませんので。  私は、その意味では、この期末を控えて今国債が暴落をしていることによって、まあ金融機関に買わせたか買わせないかは議論のあるところですからいいですけれども、金融機関がこれまでの決算の中で、まさに国債を大量に買って、その国債を売却して益出しをしてきて、それで不良債権の償却の原資に充ててきた。こういうやり方のツケがやはりここのところへ来て出てきているというような認識はおありですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あります。金融機関はそれで実際何とか息をつないできたということは、もうそうだと思っています。
  27. 海江田万里

    海江田委員 だから、それが今ここへ来て非常に大きな問題になっているという認識はおありですか。そこが聞きたいんです。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでいいんですが、それは、実は前からわかっていることであって、いつどうなるかということの方はマーケットという問題であると思うんですね。  ですから、そういうことが、そういうトレンドがあったということは、そのとおりと思っています。
  29. 海江田万里

    海江田委員 堺屋長官お尋ねをしますが、どうですか、この景気回復の胎動ですね。胎動というのは、まあこれは胎児の心臓の鼓動であってもいいわけですが、これがだんだん月がたつにつれて力強いものになっていって、それで景気回復へ向かっていくということです。十二月の各種数字なども出てまいりましたけれども、そういうものを見て、現状では、やはり景気回復の胎動というものは相変わらず長官の耳には響いているんでしょうか、どうなんでしょうか。
  30. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 十二月から一月になりまして、かなり弱気、強気の動きが交差している。特に、一月の消費動向というのは、かたずをのんで見守っている状態でございます。  委員御指摘の金利の問題につきましても、為替等とも関係があって微妙な影響を与えると思いますが、これが果たして長期的な、趨勢的なものか、ここ数日のことでございますから短期でおさまるのかいう問題はありますけれども、やはり今は、非常に用心深く見守っていかなきゃいかぬときになっているなという感じはございます。  全体の見方といたしましては、以前から申し上げていますように、景気は極めて厳しい状況の中に新しい動きもあるという判断は変えておりませんけれども、今非常に分かれ道のところに来ているという意識は、重々感じております。
  31. 海江田万里

    海江田委員 堺屋長官もだんだんわかりにくくなってきましたが、今の発言の中で、これが長期的なものになるかどうかというのは、ここ数日はそうなっておるけれどもという御発言がありました。  大蔵大臣、これはもうまさに本心でおっしゃっていただきたいのですけれども、これから毎年、まさに財政の中期試算、これはまた後で時間をかけてじっくりやらなきゃいけないわけですけれども、その中で、景気がよくなっても国債の大量発行。これは、金利が上がることによって国債費がかかりますから、ですから、国債の大量発行というものは、新発債だけでも毎年毎年三十兆、借りかえも入れると六十兆を超える金額を出していかなきゃいけないんじゃないだろうかというような見通しも立っておる。  借換債はまだこれからの話ですけれども、新発債だけでも三十兆ぐらい出さなきゃいけないんじゃないだろうかということから考えると、やはり金利上昇していくというのは、大きな流れ、トレンドで、私はそういうふうに考えておった方がいいんじゃないだろうかと思うわけですけれども、これはごく一時的な、ここ数日の現象なんですか、どうなんですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大蔵大臣にこれから金利はどうなるかとお聞きになるのは、証券の価格がどうなるかとお聞きになるのと同じことでございますので、これは、やはりお答えをする方は注意をして申し上げないと。
  33. 海江田万里

    海江田委員 交代の時間が来ましたので、この続きは、またいずれ機会を見ましてやらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  34. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 これにて海江田君の質疑は終了しました。  次に、肥田美代子さん。
  35. 肥田美代子

    ○肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。よろしくお願いいたします。  まず、郵政大臣に質問させていただきたいと思います。  最近、伝言ダイヤルを使った犯罪が起きておりまして、女性二人が亡くなるという事件も起きております。今後ますますこういう事件はふえてくると考えられますけれども、最終的には、こういう問題は、利用者の意識を高めるということが一番必要かと思います。啓発教育も必要かと思いますけれども、郵政大臣は、所管大臣といたしまして、これらの事件を防止するために、伝言ダイヤル業者にガイドラインを作成することを求められていると聞いておりますけれども、どんな内容を期待していらっしゃるか。  それから、今後、関係各省庁と協力して問題解決に取り組んでいく、そういう姿勢でいらっしゃるかどうか、そのこともあわせてお答えください。
  36. 野田聖子

    野田(聖)国務大臣 ただいま御指摘いただきました伝言サービスを初めとして、今、さまざまな電気通信サービスを悪用した犯罪事件が相次いで発生しておりまして、これが大変大きな社会問題になっていることを私は真剣に受けとめているところであります。  今先生が御指摘のとおり、先月、その関係者、事業者の人たちには、これらの犯罪の未然防止のために何か自主規制ができないかどうかということで要請をしたところでございます。  伝言サービスの中身というのは二つに分かれると思うのですけれども、一つは、確実に違法性があるもの、例えば伝言の中に、麻薬を売りますとか売春をしますとか、そういうものというのは非常に取り締まりしやすいわけですけれども、問題点はやはり、専ら出会いの場に使われていて、内容自体には何ら違法性がない場合には、今先生がおっしゃったように、郵政省だけではなく、利用者の皆様方に、いろいろな、今後のそういう、電気通信サービスは便利なものだけれども、どう扱っていくかということを広く議論していただかなければならないということを感じています。  事業者にそういう要請をする傍ら、私の方は、閣議の後の閣僚懇で、総理初め全大臣いらっしゃる場で、特に教育の問題もあると思いましたので、文部大臣には特に、こういうことについても広く議論する場をつくっていきたいということを申し入れたところでございます。  その自主規制の中身なんですけれども、既にインターネットのプロバイダーの方では、例えば違反性のあるものについては削除ができるとか、そういう約款ができているので、それに準じたことをしてもらえないだろうかというような形で要請を進めているところでございます。
  37. 肥田美代子

    ○肥田委員 ありがとうございました。内閣挙げて頑張っていただくテーマかと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。  次に、厚生大臣にお伺いしたいと思います。  インターネットを活用しました医薬品や毒劇物の広告を行っている事例が見受けられますが、承認された医薬品であっても、無許可、無登録販売を前提として広告されているものがあるわけですね。厚生大臣は、今後、こういうことに関してどういうふうに対応されていくつもりでいらっしゃいますか。
  38. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私、インターネットを余り利用したことはございませんからよくわかりませんが、そういう麻薬とか麻酔剤その他の情報を起因としてああいう犯罪が行われております。特に札幌の問題ですね。  よくいろいろ話を聞いてみますと、どうも普通では発信者がわからない、それを何とか記号で、そこへ連絡するとか、払い込みだけ連絡がとれる、それも実在かどうかわからないというような事態がございまして、現実にその行為者を把握することが通常ではなかなか困難のようでございます。  でも、監視員等もおりますし、そういうインターネットの情報をすべて悉皆的に常時監視するというのはなかなか困難かと思われますけれども、そういう情報、薬事法あるいは毒物法違反の提供等があれば、それは一種のおとり捜査みたいになるのかもしれません。要するに、記号が送られている、そこへ問い合わせをする、そうすると問い合わせをした人の名前を聞いて、そこへ送ってくる、相手はわからない、口座だけはっきりさせるというような例のようでございますから、そういう事例から追及していけばある程度本人も確認できると思いますが、なかなか困難な状況のようでございます。  でも、ああいう犯罪がそういうインターネットを通じて行われるということは許しがたいことでございますし、また特に、国境のない世界でございますので、非常に通信手段の発達によって難しい問題を惹起しておりますが、今後とも、やはり注意をして、監視を怠ってはいけないなというように思っております。
  39. 肥田美代子

    ○肥田委員 インターネットに関しまして、もう一つ質問させていただきます。  きょうは国会図書館長もお見えいただいております。  国際子ども図書館は、二〇〇〇年開館に向けまして、電子絵本館、これは仮称でございますけれども、この準備を始めていらっしゃると聞いております。ところが、例えば戦前の絵本とか雑誌を電子化しようと思いますと、既にもう住所のわからない方も多くいらっしゃったわけでございますね。著作権法上の本人許諾をいただくという作業が大変困難になっているというふうに伺っております。著作権は当然守らなければいけないことではございます。しかし、今後多くの図書館でこういうふうに電子化が行われることになりますと、この著作権問題はこれから大きなテーマになってくると思います。  国会図書館は、国内の多くの図書館のトップリーダーとなるわけでございますから、この問題の解決に臨んでほしいと思いますけれども、館長はどんな解決策をお持ちでいらっしゃいますか。
  40. 戸張正雄

    ○戸張国立国会図書館長 お答えいたします。  今おっしゃいましたように、国立国会図書館では、電子図書館というものを実現するためにいろいろ努力をいたしておりますが、その一つといたしまして、児童書のデジタル化というのを進めております。そのために必要な著作権の処理を、現在の著作権法の規定に従いまして鋭意現在進めているところでございます。確かにいろいろ難点はございますが、今一生懸命やっているところでございます。  また、CD—ROMなどの電子出版物あるいはファクス送信を使いました文献提供など、今後新たな図書館の業務を展開していくための著作権の処理につきましても、関係諸団体と現在協議を続けているところでございます。  国立国会図書館といたしましては、著作権というものが現在世界的に尊重されているという事実を念頭に置きまして、我々、図書館の業務を積極的に進めていくために、業務に関係の深い諸団体と、意向、権利を十分に尊重しながら、積極的に問題の解決に取り組んでまいりたいと思っております。  以上でございます。
  41. 肥田美代子

    ○肥田委員 今館長は、著作権問題は大切だ、そして積極的に諸団体と話し合っていきたいとおっしゃっていらっしゃいましたけれども、聞いておりますと、やはりこの問題については、かなり難しいものが山積しているなという実感を聞かせていただいて持ちました。  ところで、文化庁がいらしてくださっていますけれども、この電子図書館化問題をスムーズに解決するには、私は二つの方法があると思うんですね。一つは、著作権法を改正して権利制限の対象とすることです。二つ目には、やはり権利者との契約をどんどん進めていくことですね。恐らくこの二つしか私は今のところ考えられないと思うんですけれども、やはりどちらも大変難しい問題だと思います。文化庁は、この問題について私はきちんと対応すべきお立場にいらっしゃると思うんですけれども、どうすべきだとお考えでいらっしゃいますか。
  42. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 若干、技術的な問題につきまして、私の方から御説明申し上げたいと思います。  今委員御指摘のように、この著作権の制限をする法律改正が必要ではないか、こういうお尋ね一つございました。  確かに、図書館が今後ネットワークを利用してサービスの向上を図る、こういう方向で進むことが予想をされるわけでございますが、ネットワークを通じた利用は、その利用者も広範囲にわたりまして、著作権の制限を行った場合に著作権者に大きな不利益をもたらすことになるではないか、こういったおそれもあるわけでございまして、現時点では、まず著作権者と利用者の契約によって円滑な利用秩序が形成をされるということを期待しておるわけでございます。  そして、文化庁、文部省の所管で、社団法人日本複写権センター、こういう団体がございますが、この団体は、権利者から預かっておる権利は、実は現在は複写に関する権利などに限られておるわけでございまして、今後、電子図書館化構想が具体的なものとなり、書籍に係る公衆送信権などの集中的な権利処理が求められているわけでございまして、現在、このセンターにおきまして、子ども図書館を含む国会図書館の電子図書館化構想に対応するために、こういった権利をセンターが管理し契約を締結することができるようにするかどうか、こういった問題について鋭意検討を進めておるわけでございます。  私どもも、そういった著作権の権利の円滑な処理が進みますようにまた努力もしてまいりたいと思っておるところでございます。
  43. 肥田美代子

    ○肥田委員 ぜひ頑張っていただきたいと思っております。  次に、文部大臣にお尋ねしたいと思います。  小学校や中学校で、子供たちが教師の指導に従わずに授業ができなくなっている、そういう学級崩壊が広がっております。授業に自信をなくす教師もふえております。他方、子供たちの中には嫌々ながらみんなに合わせて行動する子供がいて、拒食症でありますとか円形脱毛症とか、そういう症状が出ている子供たちも多いと聞いております。登校拒否する子供ももちろんたくさん出てきております。子供にとっても教師にとっても学校がつらい場所になっている、そういうふうに私は思えてならないんですけれども、文部大臣は、子供の目線から見て、学級崩壊がなぜ起こるのか、お答えください。
  44. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 このごろ子供たちが教室内で勝手な行動をして授業が成り立たないという、いわゆる学級崩壊について御指摘でございますが、私も大変重大な問題として認識しております。  ただいまさまざまな手を打っておりますし、また打とうと思っておりますが、この原因について中央教育審議会で心の教育などの検討等々を通じて検討いたしましたけれども、やはり問題は、学校だけではなく家庭や地域できちっと幼少の子供たちに対応してほしいと思っています。家庭や地域で忍耐や他人との譲り合いなどの基本的な集団生活上のルールを身につけるという機会をきちっと与えたいと思います。  それから二番目に、やはり先生方の御努力も大変でございまして、私はいつも申し上げるように先生方に全幅の信頼を持っているわけでありますが、それにもかかわらず、子供たち気持ちを十分に受けとめられないことがやはりあるようでありまして、子供たちが遊ぶ楽しさや学ぶ意義を理解して、授業は楽しいんだ、学校は楽しいんだと感じられる方向に持っていきたいと思っております。  こういう難しい問題でございますが、今後も最善の努力をさせていただきたいと思います。そのために、まず、いわゆる学級崩壊について、さまざまな側面のある課題であると受けとめ、さらに実態把握をするべく努力をさせていただきたいと思います。
  45. 肥田美代子

    ○肥田委員 ちょっと重ねてお伺いしたいんですが、ちょっと私、今聞き漏らしたかもしれませんけれども、子供たちの目から見て、大臣は、この学級崩壊はどういうことなんだろうと、そこのところ、もう少し丁寧にお答えくださいませんか。
  46. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 実は先日、NHK教育テレビで一時間半にわたって中学校及び高等学校の子供たちと討論をいたしました。その中で私が感じましたことは、確かに子供たちに学校に対するさまざまな不満がある。この点に関しては、私ども大いに、きちっと、もう一歩突っ込んで調査をし、私も現場に出かけていきたいと思っておりますが、子供たち気持ちをよく聞いた上で進めたいと思います。  しかしながら、私はやはり家庭での教育をしっかりしていただきたいと思う。何も教育というのは、英語を教えてくれとか数学の方程式を覚えてくれと一言も私は申しません。社会に出ていったときに、みんなと一緒に楽しく遊べる、楽しく勉強できるというようなこと、それから尊敬すべき者に対しては尊敬するというふうなことは、やはり家庭で、特に子供の時代にしつけていただきたいと思います。  そして、家庭で例えば手伝いをきちっとする子供というのは学校へ出てきても大変楽しく積極的にやってくれるというふうなデータがありますので、私はやはり家庭にまず第一歩の教育をしっかりやっていただきたい。教育というのはそういう難しいものではなく、易しく、やるべきことをきちっと、正しいことを正しい、悪いことは悪いんだというふうに指導していただきたい。これが、この前NHKで一時間半討論をし、その前後のいろいろなことから、心の教育などの議論に一年以上中央教育審議会で参加させていただいたときなどから、私はやはり子供の教育にはまず親がしっかりしてほしいと思いました。  と同時に、子供の立場からという御質問で、これに直接まだお答えしていなくて申しわけありませんが、子供たち気持ちはどこが問題か、やはりもう一歩私としてもゆっくり聞きたいと思っています。この前、一時間半のNHKにおける討論は大変参考になったということを申し上げておきたいと思います。
  47. 肥田美代子

    ○肥田委員 まず、子供のことは子供に聞けというのがもう大原則なんですね。ですから私は、大臣、お忙しいかと思いますけれども、ぜひ、一月に一回でも定例で子供たちと話す、そういうチャンスをつくっていただきたいと思います。大臣のお答えを聞いておりますと、どうしても大人の目線になってしまうんですね。そこのところ、やはり強くお願い申し上げたいと思います。  文部省は、生きる力でありますとか心の教育を初め、いろいろな教育改革案を出しておられます。しかし現状は、いじめや校内暴力、不登校、学級崩壊という現象が出てきております。文部省の教育改革が私は空振りに終わっているんじゃないか、そういう印象を強く持っております。  総合的な学習の実践にしましても、文部省の提言が都道府県や市町村レベルでどう具体化されているか、そういうことにかかわってくるわけですけれども、予算の裏づけがないんですね、これ。本当に総合学習はいいことなんですけれども、予算の裏づけがない。自治体では動きにくいわけです。お題目に終わりはしないかという懸念もされております。  実は、兵庫県なんですが、昨年の秋、単独授業で、全中学校の二年生を対象に一週間ほど学校の授業から解放する、地域に学ぶトライやる・ウイークを実施したわけですね。これは、勤労生産活動や農業、漁業それから林業などの体験学習をさせるものでありました。子供たちには大変好評だったようです。  ことしも実施するというふうにおっしゃっていらっしゃいますが、昨年は連続五日間、参加した学校数が三百三十五、学級数が千五百十九、生徒数は五万四千四百三十一人ですが、実はこの必要経費なんです。これが一学級当たり三十万円。このうち県の補助が二十万円で、市町村負担が十万円だそうでございます。総合計で約四億六千万という出費があるわけですね。この経費から見て、どこの都道府県でも実施できるものではありません。  しかし、総合的な学習の実践に当たっては、国による何らかの予算の裏づけがないと、私はどうしても机上の空論に終わるという危惧感を持つんですけれども、大臣はどうお考えですか。
  48. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 今幾つかの問題について御指摘があったと思います。  まず、総合学習や心の教育を推進していく上で予算の問題、それからもう一つは、それを具体化する一つとして、兵庫県のトライやる・ウイークなどについて、随分金がかかる、どうするか、こういう御指摘であったと思います。  まず、総合的学習の時間は私は大いにやるべきだと思っております。それからまた、心の教育はぜひともさまざまな工夫をしていかなければならない。そういう意味で、昨年十二月に改訂されました新しい学習指導要領において創設されました総合的な学習の時間や、中央教育審議会答申を踏まえた心の教育が十分な成果を上げるためには、まず教員の資質の向上、学校の校内体制の整備、家庭、地域との連携が大切であり、その実現のためには、非常に御指摘どおりでありまして、関連する予算の充実を図ることが極めて重要だと思っています。  そして、既に心の教育などでは、例えば二十四時間相談できるような体制に対して予算を出すとか、さまざまな努力を現在いたしております。今申しましたように、心の教育の充実のために予算等はかなり講じてきているところでございます。来年度の予算に対しましても、いろいろお願いをいたしております。今後とも、こういうことは実行する上でお金が要るんだということを重々認識いたしまして、努力をさせていただきたいと思います。  さて、自然体験とか学校外の学習ということは極めて重要であると私はかねがね主張している張本人の一人でございます。現在のところ、引率教員の交通費などの旅費につきましては、地方財政措置が既に講じられております。こうした旅費については、各都道府県等において、教職員数を基準にして、過去の校外実習の実施状況等を踏まえながら、各学校に現在配分されております。ただし、個々の教員に対する交通費等の支給につきましては、各都道府県が定めている旅費条例に基づいて取り扱われております。  それから、兵庫県のトライやる・ウイークは、肥田先生御指摘のように、大変成功いたしたと思います。私も出かけていって、つぶさに一日子供たちと話し合ってきましたし、迎え入れてくださった各地域の方たちともお話をしてまいりました。これは大いに成功したと思っています。しかし、お金が要ることも重々認識しております。こういうことについては、今後ともさらなる努力をさせていただきたいと思っております。
  49. 肥田美代子

    ○肥田委員 自然体験学習を進めようと強く望んでいらっしゃる文部大臣でいらっしゃいますから、やはり市町村にそういう支出を任せるのではなくて、国が本当に総合学習を子供たちの今の状況の突破口にしようと思われるならば、私は、学校自身が自由裁量で使えるお金、そういう形の予算のつけ方を国が率先してすべきだと思いますけれども、御決意のほどをよろしくお願いします。
  50. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 いろいろ努力をしておりますけれども、なかなか思うようにいかないところがございます。財政が大変厳しいということもあります。しかし、子供の教育というのは極めて大切だと私も思っておりますし、特に子供たちの自然体験ということは大変重要でございますので、今後さらに努力をさせていただきたいと思っております。  例えば、田んぼを自由に遊べる場所にするというようなことについては、現在農林水産省と協力をして子供たちが遊べる田んぼをつくるというふうな努力もさせていただいております。それから、環境庁と協力して、国立公園あるいは国定公園などに子供たちが行ってレンジャーのお手伝いをする、そして自然体験をするというふうなさまざまな努力を現在させていただいておりますので、この点、ひとつ御理解賜れれば幸いでございます。
  51. 肥田美代子

    ○肥田委員 大蔵大臣、済みません、突然でございますけれども、これほどに文部大臣も夢を語っていらっしゃいます。それで、文部省というところは、はっきり申し上げますけれども、なかなか予算取りが下手な省庁でございます。ですから、大蔵大臣、ぜひ子供たちのために予算を使っていけるような、そういうお力を将来的に強くおかしくださいますようにお願い申し上げたいと思いますが。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 有馬文部大臣を深く尊敬もし、また御信頼もしておりますので、かしこまりました。
  53. 肥田美代子

    ○肥田委員 学校の校舎は伝統的に、コンクリートの建物であれ木造校舎であれ、廊下の片側に教室が一列にずらっと並ぶ構造が一般的でございます。しかし、今は自由な学習空間や広い窓をつくったり、それから廊下にベンチを置いたり、じゅうたん敷きのオープンスペースというところも、そういう学校が少しずつ出てまいりました。こうした学校では、少なくとも学級崩壊というような、そういう荒れが少ないという報告が出ているわけですね。  ですから、平成十一年度文部省予算で計上されました公立学校施設の整備促進事業費は自治体や学校の希望するような自由な学校の校舎をつくれる予算として理解していいですか。
  54. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 詳しくはまた政府委員からお答え申し上げていいと思いますが、ただいまいろいろな観点から努力をさせていただきまして、古くなった校舎に対して、例えば地震対策をきちっとするというふうな整備を今充実することを図り、一方、今先生おっしゃられましたような新しい学校づくり、例えばエコスクールというふうに太陽光を十分使うとか、それから子供たちが自由な気持ちになれるようなオープンスペースをふやしていくとか、こういう新しい学校をつくることを、重点的に今図っているところでございます。
  55. 肥田美代子

    ○肥田委員 そういたしますと、学校施設の整備促進事業費は自由な学校の校舎をつくれる予算として理解していいですか。もう一度、お答えください。
  56. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 来年度の公立文教施設整備予算につきましては千六百三十八億円をお願いをしているところでございます。これは、国が市町村等の具体的な学校建築計画に基づいて補助金を出すということでございますので、具体的にどういう学校をつくり、いつつくり、そしてどういう設計をしていくかということは基本的に市町村の方で決めていただくということでございます。  ただ、予算の制約上、一定の児童生徒数や学級数等に見合った面積まで補助させていただきます、あるいは、この単価まで補助させていただきますという予算の制約はございますけれども、設計その他は各市町村が独自にそれぞれの地域の実態に即してつくっていただくというのが基本的な原則でございます。
  57. 肥田美代子

    ○肥田委員 少子化で余裕教室が生まれたり、子供が減ると教員採用枠が狭まって年々教師の数が減ってきております。八十一人で三クラス、八十人は二クラス、そういう基準を再検討しなければいけないときに来ていると思うんです。  例えば大阪府下のある小学校の場合でございますが、ことし四月でございますけれども、八十三名から七十八名に子供の数が減ります。そうしますと、教師一人が減らされるそうですね。一方、この学校で、昨年八月に八十名から八十一名に子供の数がふえたそうでございますが、このときは年度途中ということで教師の数はふえなかった。ですから、子供の数がふえても教師はなかなか年度途中ではふやしてもらえない、そういう状況にございます。  文部省は自由裁量に任せると言っていらっしゃいますね。ところが、この基準を変えないと、どうしても自治体は国の基準に引きずられていくのです。ましてや、文部省が自由裁量に任せるとおっしゃっても、予算化されていないものですから、学校自身で、教育委員会で、じゃ、三十人にしよう、二十人にしよう、そういう自由な形がなかなか組めないわけです、お金がついてきませんから。ですから、この現在の基準は自治体と学校現場が柔軟に対応できるような内容に改めるべきであるし、文部省が本当に自由裁量とおっしゃるならば、予算措置ももう少しお考えいただきたいなと思うのですが、いかがでしょうか。
  58. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 法理的な説明は私の方からさせていただきたいと思います。  現在、義務教育につきましては、国、地方が責任を持って、協力してそれを担保するという観点から、市町村の小中学校の教職員の給与等につきましては、都道府県がこれを原則全部負担するということにしてございまして、国はその二分の一を負担するという仕組みがございます。  そのために、教育条件の整備充実を図るという観点から、学級編制の標準的な基準を現在四十人とさせていただいているところでございまして、これはやはり標準という法律の趣旨でございますので、原則的にはこれに基づいて学級編制をしていただくわけでございますけれども、例えば、その中でも、小学校の六学級ですと七人の教員が一般的には配置されるということになりますし、また、十八学級ですと二十二人の教員が一般的には配置されるということになっておりますので、そういった実情の中で、各学校で年度の途中等々につきましては弾力的な対応をさせていただくということでございます。  今後、これをもっと弾力的に各都道府県あるいは市町村の実態に応じて使えるようにしてはどうかという点につきましては、中教審からも昨年の九月に答申をいただいてございますので、文部省といたしましては、現在、今後のあり方につきましてもう少し市町村あるいは都道府県等の実際の責任者の方々の御意見も伺いながら、今後検討してまいりたいと考えているところでございます。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 肥田美代子

    ○肥田委員 文部大臣、今お聞きになりまして、やはり現在の基準がかなり現場を邪魔しているというふうに私は思えるのですけれども、いかがですか。
  60. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 先ほど局長より御答弁申し上げましたように、現在のところ、中央教育審議会より答申を受けまして、地方教育行政ということに関してさまざまな工夫をさせていただいているところであります。  それからまた、文部省といたしましても、御指摘のことに関して大変私は心配はしており、いろいろ工夫をさせていただいておりますが、まずは現在の第六次計画を完全にやらせていただきたい。それから、その先のことに関しましては、現在、学級編制等に関する専門家の研究会をやっていただいておりまして、ここで、どういうやり方が一番いいか、例えばチームティーチングの先生をふやすのがいいのか、あるいは、大きなクラスに一方ではし、一方では小さなクラスにして、理科なんかは多分小さい方がいいと思いますが、小さなクラスで教えるというふうなさまざまな工夫をすべく現在検討してもらっておりますので、こういうことが出そろった段階でさらなる方向をきちんと詰めていきたいと思っております。
  61. 肥田美代子

    ○肥田委員 次に、厚生大臣にお伺いしたいと思います。  医薬分業に対する国の決意を伺いたいわけでございますが、医薬分業については、医薬分業法があるにもかかわらず、特例で医師の調剤を認めてきた経緯がございます。それでも、医薬分業は着実に進展しております。これは、厚生省が意欲的に取り組んできた結果であると思います。  将来、我が国の医薬分業率をどのぐらいまで持っていこうと思っていらっしゃるか、厚生大臣に伺いたいと思います。
  62. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 医薬分業率は、平成九年度には平均で二六%ということになっておりまして、平成十年度にはこれが三〇%を超えるものと見込まれております。順調に伸びていると言ってよろしいかなと思うのですが。現在では、医薬分業の進んでいる地域では五〇%を超えておる一方、進んでいない地域では五%と、大きな地域格差がございます。それぞれの地域の実情に応じた取り組みが必要であるというように私どもは認識しております。  現在私どもは医薬分業を進める立場でございますから、それはもうできれば、一〇〇%という体制ができればいろいろの医療制度の中で大変な変革を来すと思いますが、ただ、今申しましたような事情がございますので、最終目標水準とかその時期を、今幾らがいいかということを数値でもって示すことはできませんが、医薬分業は厚生省として積極的に進めていきたいと考えておるところでございます。
  63. 肥田美代子

    ○肥田委員 せっかくここまで厚生省が努力してくだすったのですから、やはり厚生大臣がみずから、国の医薬分業率を何%にしたい、それも何年後ぐらいにはしたいというスケジュールを出さないといけない時期に来ていると私は思います。  さっき一〇〇%とおっしゃってくださいましたけれども、恐らく一〇〇%にはならないなとは思います。もう少し現実性のある数をお示しいただければ私は元気づくのでありますけれども、お願いします。
  64. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員のおっしゃるように、数値目標をあらかじめ設定して、その充実を図るというのは政策手法としては当然なことであると存じますけれども、今申しましたように、地域全体で非常にばらつきがございますし、なかなか数値でお示しすることは困難な状況だと思います。  ただ、実際上、都道府県が、地域の実情に応じて、薬剤師会等の協力のもとに二次医療圏ごとに医薬分業計画を策定するように、これはかなり強く指導をいたしております。また同時に、薬剤師の生涯教育の推進等資質の向上を図るとか、あるいは、医薬品の安全性情報の提供とか、住民の薬歴管理のためのマニュアルの作成、普及でありますとか、薬剤師が設置する医薬分業推進支援センターというのがございますが、これの整備への支援等を行っておりまして、今後とも、これらの方策を活用することによりまして、実質的に医薬分業を進めていきたいということでございます。  委員の御質問は、数値の目標を示すべきではないかという点でございますが、この点についてはなお検討はさせていただきますが、なかなか、実数を示すということになりますと、それについての目標達成へのいろいろな措置が必要でございますし、今申しましたような諸措置を充実することによって、この分業措置を推進していくということではないかなと今のところ考えております。
  65. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは、厚生大臣が先ほどおっしゃいました、一〇〇%の医薬分業率になれば日本の医療は充実する、そのお答えを承っておきます。  労働大臣に来ていただいております。  労働省管轄の労災病院でございますが、全国で三十九施設ありますが、院外処方せんを発行している施設はわずか十三施設であると聞いております。岡山労災病院のように、院外処方せんの発行率が九〇%という病院もございます。しかし、国立病院における医薬分業の進捗状況に比べますと、著しくおくれております。その原因はどこにあるのか、院外処方せん発行率を高めるために今後大臣はどのように取り組んでいらっしゃるつもりか、労働大臣の決意を伺いたいと思います。
  66. 甘利明

    ○甘利国務大臣 ただいま先生御指摘をいただきましたとおり、労災病院は全国に三十九施設ありますが、十五施設で院外処方せんを発行いたしておりまして、国立病院の平均の院外処方せんの発行率が二九・五と伺っておりますが、労災病院は三%でございます。  この原因は何かということでありますが、いろいろ言いわけはありますけれども、要するに指導が足りないということだと思います。  そこで、ではどうしていくかということでありますが、先生御指摘のとおり、これをちゃんと指導して進めていくということであります。  ただ、言いわけの中で一つだけ御考慮いただきたい点は、労災病院に今薬剤師が七百十二人おります。これを進めるに従ってこの人たちの仕事がなくなって職を失うわけでありますが、雇用を守る労働省が率先垂範して整理解雇をするというのも非常につらい話でありますから、その行き先もいろいろ考慮をしながら進めていくということで、若干スピードは御満足をいただけない点があるかと思いますが、より適切に指導していきたいというふうに思っております。
  67. 肥田美代子

    ○肥田委員 今の労働大臣のお答えですけれども、では、院外処方せん率がかなり高い国公立の病院で、院外処方せんを出したから薬剤師が首になったという話、聞いてないんですよ、実は。ですから、それは私は言いわけにならないと思います。むしろ、数値を申し上げますが、大阪なんかは〇・〇八%なんですね。ほとんど医薬分業をやる気がないという数値なんです。  ですから、もう一度大臣、これは大臣として進めていかなければいけない、今厚生大臣もおっしゃいましたけれども、一〇〇%になれば日本の医療は充実するんだとおっしゃっているわけですから、ぜひ御決意を伺いたいと思います。
  68. 甘利明

    ○甘利国務大臣 冒頭申し上げましたように、いろいろ理由はあるけれども、言ってしまえばこれは言いわけじゃないか。ですから、指導が足りなかったというふうに私自身は思いますので、これからさらにしっかりと指導していきたいというふうに思います。
  69. 肥田美代子

    ○肥田委員 次に、薬剤師教育について文部大臣にお尋ねします。  文部大臣は、薬学六年制を要望した大野由利子議員に対する答弁で、教員や設備で膨大な投資が必要であること、それから需要動向などを述べられまして、六年制にはかなり消極的な姿勢を示されたように私には見えました。  しかし、そうした困難な事情をあれこれ述べるのではなくて、やはり薬剤師六年制は、我が国の医療制度の中で薬剤師の役割と任務をどう定めるか、また国民に安全な薬をどう提供していくかという、この課題と深くかかわっていると思うわけです。さらに、介護保険法などが実施されますと、地域社会における服薬指導、薬剤師の任務は大変大きなものになってくると思います。特に、平成九年には薬剤師法が改正されまして、薬剤師の情報提供義務も規定されました。薬剤師の資質向上は緊急の課題となっていると思います。  そういう大局的な見地から、文部大臣は薬剤師教育の将来像についてどうお考えになっていらっしゃるか、述べていただきたいと思います。
  70. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 今肥田先生御指摘のように、六年制にするということに関しましては、大変な予算等々を伴うという私の申し上げたことを御引用くださいましたけれども、それじゃ何を理想とするかということでありますが、やはり何といっても医療現場で働く薬剤師の資質は向上すべきであるということを重々認識しております。薬学教育の改善を進めることも極めて重要であると認識しておりますし、私がまだ大学の現場におりましたころも薬学部の人々とよくお話をいたしました。例えば、御質問と無関係で申しわけありませんけれども、獣医さんたちの教育は四年制より六年制にいたしました。  こういうことから見まして、薬学教育に関して、特に私立大学の方たちが十分それに対する準備がおできになったり、さらなる合意が得られてまいりますれば、この六年制ということは私は大いに可能性があると考えておりますが、現在のところ、やはり四年制で卒業して薬剤師になっていくという人々がかなり多いと私は聞いておりまして、こういう点で、理想的にどうかと御質問でございますので、理想的に、ともかく薬剤師の資質向上を図るということに関しては一生懸命やらせていただいておりますが、いきなり今すぐに六年制に踏み込むかということに関しては、ややまだ時間が早過ぎるかなという気がいたしております。
  71. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。  医療審議会は、薬剤師の人員配置基準の見直しについて、現在、病院薬剤師でございますが、患者七十人に対して薬剤師一人という結論を出しております。しかし、これは今後、医薬分業の進展や薬局薬剤師の充足状況などを把握して、三年後をめどに見直されることになっておりますが、これに間違いございませんか。
  72. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 薬剤師の配置基準と申しますか、薬剤師は調剤数八十に一人というようなことを基準に今までやってまいりましたが、医療審議会で平成八年の四月に意見具申がございまして、薬剤師の業務をめぐる状況を踏まえながら病院の薬剤師の人員配置基準の見直しの検討を進めてきておりまして、昨年の十二月に、新たに、入院患者の数等を基礎にした薬剤師の人員配置基準を定めたところでございます。  これは、例えば外来で申しますと処方せん七十五枚に一人でありますとか、入院でありますと一般病床入院患者七十名に一人とか、老人病床・療養型病床群では入院患者百五十名に一人等々決めてございます。そして同時に、施行後三年間は従来基準、調剤数八十に一人というその基準で経過することもやむを得ないというようにしてございます。  なお、医療審議会の答申におきまして、今委員のおっしゃられましたように三年後を目標に、病院薬剤師の業務の実態とか薬剤師の需給の状況を踏まえましてその見直しを行うこととされているところでございます。  私どもとしても、今後とも医療の質を適正に確保する観点から、薬剤師の人員配置基準の適正化については一層努力してまいりたい、こう考えております。
  73. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生省が昨年十一月にまとめた麻薬・覚せい剤行政報告によりますと、睡眠導入剤トリアゾラムの盗難件数は七件、被害は約三万錠に上っております。前年の六千五百七十八錠の四倍以上になっております。発生状況は、病院、薬局のドアの窓が破られたり、無人、無施錠の調剤室などから盗まれております。  管理のずさんさを指摘せざるを得ないわけでございますが、医療法上の責任追及はしておられますか。病院に対して行政命令は出されましたか。
  74. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 向精神薬等の問題は盗難その他ございまして、過去の事案等詳しい数値は今ちょっと手元にございませんけれども、かなりいろいろの点で管理の問題、保管管理の状況等が問題があるのではないかというようなこともございまして、医療機関、薬局等への立入検査等も実施をしております。しかし、なかなか事案はそんなに簡単に完全に根治できないものでございますから、先般、向精神薬等の適正な保管管理とか販売につきまして、都道府県あてに改めて通知を出しましてその徹底を図ることとしたところでございまして、今後とも適正な取り扱いがなされるように努力してまいりたい。  なお、一月の十三日に、都道府県と政令市及び特別区に対しまして、医薬安全局長より、その徹底方について通知をし、指導をしておるところでございます。
  75. 肥田美代子

    ○肥田委員 次に、医療保険に関連してお尋ねいたします。  平成十一年度政府予算には、高齢者の外来患者の薬剤費一部負担をことし七月から免除する臨時特別措置として千二百七十億円が計上されております。薬剤費一部負担制度は、増加傾向をたどる医療費を抑制して、あわせて薬漬け医療の改善を目指すという、いわば医療保険制度の抜本改革までのつなぎ措置でございました。その後、薬価基準制度や診療報酬体系の見直しなどの問題につきまして各政党で論議されております。関係者の間でも精力的な論議が進められております。  その論議のさなかに、一説によれば、日本医師会と昨年交わした覚書に基づいて免除の特例措置を取り入れたといううわさもございます。それが事実とすれば、一部利益団体の圧力で転換されたことになりますが、平成九年の通常国会における健康保険法改正論議は、今思い出してみますと何だったろうなという気がいたします。国会審議をかなり軽視したものになっているんじゃないか、手続的にもこれはかなり不十分ではないかと大変私は不満を持っておりますけれども、大臣、いかがですか。
  76. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 薬剤の扱いにつきましては、昨年の十二月の予算編成の段階におきまして、医療関係団体等の要望等も踏まえながら、これはもう政党政治でございますから、党と一体となって、抜本改革を十二年度からすることの既定方針はそのとおりでございますが、応急的な臨時的な措置として、しかもつなぎの措置として、そのような措置をとらせていただきました。  これは薬剤使用の適正化を図る観点からの負担制度に背馳するのではないかという御意見でございますが、私どもとしても、いろいろの点を総合勘案いたしまして予算編成段階で決定したものでございまして、これによっていささかも、医療改革の抜本改革が後退するというようなことは考えておりませんで、あくまでつなぎの措置としてやっていこうということでございます。
  77. 肥田美代子

    ○肥田委員 現段階で臨時特例措置のような財政措置ができるのならば、健康保険関連法の改正を行う必要がなかったと思うんです。なぜ平成九年に今回のようなつなぎの措置ができなかったか、今回どうしてつなぎの措置ができたのか、その辺をお答えください。
  78. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 平成九年度におきましては、当時、抜本改革論議がいろいろございまして、とりあえず抜本改革の道筋を当時の与党協等でつけると同時に、その前提として薬剤費の一部負担をお願いするということで決定を見たわけであります。その背景には、やはり医療費の増嵩等もあったことも事実でございまして、その合理化、効率化に資するものとしてやったわけでございます。  その後、経過を見ますと、一時的には減少傾向をたどっておりましたが、しかし、最近は全くもとの状況に戻ってきておりまして、その点は抜本改革によってもう少しシステムを変えていかなければいけないのかなという思いを強くしておるところでございます。  今回の措置は、そういった意味で、私どもとしては、諸意見を総合勘案の上、あくまで暫定的な措置としてやったということは御理解をいただきたいと思います。  そして、法律改正その他の問題も検討はいたしましたけれども、私どもは、支払い義務、つまり老人の方々の支払うその支払い代金を国がかわって政策的に一時的に立てかえるということを考えておりまして、それは法律改正を要しないということで予算措置として措置をさせていただいたものでございます。
  79. 肥田美代子

    ○肥田委員 私の聞きたいことにお答えいただいていないようですが、それでは、臨時特例措置で現下の経済情勢を理由にしていらっしゃいますが、臨時特例措置で経済効果はどのぐらい見込まれるのか、数値目標を示してください。
  80. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 直接的な経済効果といいますか負担の軽減は、患者負担としてございます。それと同時に、それの波及する面等もございまして、それらを全体として見ますと、直接的な問題は七百六十億円くらいでございますが、さらに、そのほか診療費の、チャンスが多くなるという可能性、つまり波及効果等もございまして、それらをあわせて勘案しなければいけないということで、とりあえず千二百七十億円を計上したわけでございます。  直接患者負担として軽減されるのは七百六十億円ということで、これがどれだけの経済効果を持つかという議論になると思うのですが、私どもは、景気対策の経済効果という視点だけではございませんで、そのほかの諸要素を勘案しながらやったということでございます。
  81. 肥田美代子

    ○肥田委員 具体的な数値はお示しいただけなかったようですが、政府が本当に経済効果を見込まれるのならば、私は、老人保健法の対象者に限らず、健康保険関連法を改正前に戻す、それをした方がよほど経済効果が上がると思うのですけれども、大臣はどうお考えですか。
  82. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 老人保健以外で各種の法律がございまして、共済組合まで含めましてそれぞれ措置されておりますが、私どもは、老人医療については、やはり老人医療の実態あるいは負担、その他のことを勘案して決めたわけでございまして、全体としてそれを撤回するというような趣旨ではございません。  そして、この経過措置は来年度の抜本改正に至るつなぎの措置でございますので、その中で薬剤費の問題も抜本的に解決をしていきたい、こう思ってやったところでございます。
  83. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生省の調査では、薬剤費一部負担導入後、受診件数はふえ、他方、一人当たりの医療費は多剤投与の減少などで下がっている。これは、高齢者の受診手控えが起きたという見方を覆していますね。受診機会を奪うことなく医療費の適正化が進んでいるという見方もできるわけですが、今回の特例措置はその適正化の流れと逆行するんじゃないですか。
  84. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 せっかく一昨年の九月からそういう薬剤費の負担もしたわけでありますので、できれば持続した方がいいという考え方、これは私どもも基本的にはそう思っております。  しかし、七十歳以上の方々、六十五歳以上の身体障害者の方々については、その経済状況その他も勘案しながら、とにかく、これはパーマネントな制度としてそうするわけではございませんで、来年度の抜本改革、薬価基準制度の改正も予定しておりますので、それまでのつなぎ措置。しかも薬価基準制度におきましては、ただいま検討しているのは、ああいう何剤の場合は幾らとかいうようなやり方はいかがかな、そういう感じもないわけではございません。したがって、適正な改革をやろうとすれば定率負担等がいいんじゃないかなという思いもございまして、あくまでつなぎの措置として総合判断をして決めたものでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  85. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生大臣の大変苦しい立場も私はわかります。ただ、やはり国会議員の一人といたしまして、国会論議がこれほどに無視された、そういうことを、私はやはり悲しいと思います。そして、手続的にも随分省略されていらっしゃいます。ですから、これからやはり医療制度問題についてしっかりと議論していくときでございますから、余り私たちを失望させないでほしいと思うんですね。  ですから、ぜひ、こういう物事の進め方ではなくて、医療制度という本当に国民生活に密着した事柄に関しましては、じっくりとした論議、そしてみんなにわかりやすい、そういう納得のいく政策を進めていただきたいと思うのですけれども、大臣、最後にお願いいたします。
  86. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この薬剤費の負担問題は、あくまで経過的なつなぎの臨時応急的な措置として考えておりますから、今委員のおっしゃられているように、やはり薬価制度あるいは医療保険制度全般にわたって抜本改革の必要がございます。  そこで、今、医療保険審議会、医療保険福祉審議会等で四点ばかり検討しております。つまり、診療報酬のあり方とか、あるいは薬価制度のあり方とか老人医療のあり方とか医療提供体制、非常に医療全般にわたる検討を今行っておりまして、平成十二年度からこれが実施に移されるようにひとつ精力的に取り組んでいきたいと思いますので、またいろいろ御意見もちょうだいしたいと思います。
  87. 中山正暉

    中山委員長 これにて肥田君の質疑は終了いたしました。  次に、大口善徳君。
  88. 大口善徳

    大口委員 公明党・改革クラブを代表しまして、質問をさせていただきます。  生活者の政治ということが言われて久しいわけでございますが、特に衣食住の住という問題につきましては、特に都市部等におきまして非常にひずみが出てまいっております。その中で、特にマンションと言われる形態の居住者、これが非常に多くなっているということでございまして、今回マンションということに視点を当てて質問をしてまいりたい、こう思っております。  そこで、建設省におきましてのマンションの定義をまずお伺いしたいと思います。
  89. 那珂正

    ○那珂政府委員 お答えいたします。  マンションの定義ということでございますが、必ずしも確定したものはございませんけれども、私どもがマンションに関するいろいろな調査をする際の一応の定義づけといたしましては、中高層の鉄筋コンクリート造などのつくりで共同建てで、かつ分譲住宅を指してマンションというふうにしております。  なお、賃貸マンションという場合もございまして、その場合は、同じようなつくりのものにつきまして賃貸用に供されている住宅を指して調査等データをつくっております。
  90. 大口善徳

    大口委員 賃貸マンション、分譲マンション、マンションの定義はというふうに私は聞いたわけですが、そういう形で建設省がとらえられているということは理解いたしました。  そういう中で、我が国におけるマンションの戸数、そしてその中でどれぐらいの人が入居をされているのか、分譲と賃貸、あわせてお伺いしたいと思います。
  91. 那珂正

    ○那珂政府委員 分譲マンションについては、平成九年度で約三百三十万戸と推計されます。ここにお住まいの方は、九百五十万人から一千万人の方々ではないかと推計されます。  また、賃貸マンションにつきましては、ちょっと時点は古いのですが、平成五年度で二百九十万戸と推計されまして、およそ五、六百万人の方が居住されていると推計されます。
  92. 大口善徳

    大口委員 合わせますと、大体六百万戸、一千五、六百万人の人が住んでいる、こういうことになるわけですね。マンションは今、過去十年の統計をとってみますと大体十六万二千戸ずつふえている、こう言われておりまして、その蓄積が今後も当分続いてくるんじゃないか、こういうふうに考えております。  そこで、このマンションのストックの中で特に私ども注目しておりますのは、築後三十年以上のマンション、これがどれぐらいあるのか。そして特に、一九八一年以前というのは新耐震基準以前のマンションとなります。その数につきましてお伺いしたいと思います。
  93. 那珂正

    ○那珂政府委員 建築基準法に言う新耐震基準が制定されました昭和五十六年以前に建てられたマンションを推計いたしますと、九十万戸強という数値でございます。
  94. 大口善徳

    大口委員 私どもも資料で調査しましたところ、その中で二〇一〇年、総理が今度「二〇一〇年」という本を出されるようでありますが、この二〇一〇年にどうなるかということでいきますと、新耐震基準以前のものが今おっしゃったように九十万戸もある、また、築三十年以上と同じような形でいっても九十三万四千戸ある。これは、二〇〇〇年に三百八十二万三千戸のマンションのストックがあると言われていますが、それでいきますと、二四・四%が三十年以上、また新耐震基準以前というもので、これが今後マンション問題を考えるに当たって非常に重要になってくる。大修繕とか建てかえの問題が、二〇一〇年になってきますと非常に大きな問題になってまいる、こういうことであります。  東京都でいきますともっとこれは深刻でございまして、大体東京都というところは、共同住宅が住宅戸数の三分の二を占めている、それから持ち家の四分の一がマンションである、そういう状況の中で、二〇一〇年において三十年以上のマンションというのは二十万二千五百戸。これは、一九九三年のストック四十二万四千八百戸で見てみましても、四八%が三十年以上、そして新耐震基準以前の建物である、こういう現状でございます。  そこで、こういう状況につきまして、大臣から、かかる状況についてどういう認識をされているのか、お伺いしたいと思います。
  95. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 まず、マンションの当省の定義でございますが、住宅局長答弁いたしましたのもまた一つの考えだろうと思いますし、私のような田舎で育った者からいいますと、マンションというといかにも豪華な住宅というようなイメージがありますけれども、逆に、都会の方々の、いわゆる分譲マンションとかあるいは賃貸マンションといいますと、そう豪華という感覚ではないようでございます。  ですから、一律に定義はできないんだろうと思いますが、いずれにいたしましても、先ほど先生御指摘のように、我が国の人口の一割強が居住する都市的な居住形態として定着をしておるというふうに認識をいたしておるわけでございまして、住宅政策上、このマンションをどのように今後定義づけていく、あるいはまた国民の要望にどのようにこたえていくか。その過程においては、私は、中古マンションの市場もまた当然開発されてこなければならないと思うわけでございますが、そういうようなこと。  いずれにいたしましても、良質な住宅ストックの供給、それから適切な維持管理、そして先生御指摘のような老朽マンションの円滑な建てかえ、これも、大勢の方が住まわれていらっしゃるわけでございますから、その方々の同意を得なければならないわけでございます。この建てかえということも、そういう点では非常に難しい問題が出てくるんではないかなと思っておりますが、そういうふうに認識をいたしております。
  96. 大口善徳

    大口委員 そこで、建設省の取り組みなんですが、これまでマンションの管理の現状とか居住者の意識調査とかそういうことを、昭和五十五年、六十二年、平成五年、こういうふうにやっているということが一つ。それから、マンションの総合プロジェクトということで、百年ぐらいもつようなものを、新型タイプですね、これの開発。あるいは、ストックの長命化、スーパーリフォームというような形で長命化ができないか。そしてまた、建てかえの円滑な手法の開発、こういうもので総合プロジェクトは今やっと動き出した、こういう状況であるわけであります。  このマンション問題についてやはり一番深刻なのが東京都でございまして、しかし、その東京都におきましても、やっと昨年の九月、その前に住宅審議会があって、答申が平成九年、十年と出ましたが、昨年の九月、やっと東京都住宅局の開発調整部の民間住宅課に分譲マンション担当係というのが新設されて、そして関係団体の連絡協議会が設置される。昨年の秋にやっとそれが設置された、こういう状況です。  ところが、建設省、我が国におきましてはどうかといいますと、総合調査はやっていますが、これも定期できちっと五年ごとにやっているわけじゃない、その時々でやっている。そしてまた、建設省の中には、マンション問題対策室ですとか、そういうものもない。それから、インターネットの時代ですから、ホームページにマンション一一〇番とか、そういうものを設置しているか。欠陥住宅については私が提案してホームページになりましたが、マンション一一〇番についてはそういうものがない。それからマンション相談、そういうものにどう取り組んでいるのか。それから、管理組合の団体ですとかあるいは管理会社の団体ですとか、あるいは地方自治体もいろいろな形で、このマンション問題、現場では相談を受けているわけですから、そういう連絡協議会、こういうものも国にはない、こういうことでございます。  マンションの特性というのはやはり共同住宅の持ち家である、区分所有法によってそういう形になっている。それから、管理組合ですとか集会ですとか管理規約という制度がある。法律上、技術上の非常に専門知識が要る。そしてまた、多数の区分所有者の合意を形成しなきゃいけない、大臣もおっしゃいました。そういうことで、普通の戸建て住宅にはない非常にいろいろな問題が生じておるわけですよ。  やはり生活重視の政策ということからいきますと、私が今提案しましたような、マンション問題対策室ですとかマンション一一〇番ホームページ、あるいはマンション相談の充実、そして官民の連絡協議会、こういうものを早急に、東京都におくれることなく、このマンション問題というのは、御指摘のように、もう国民の一割以上の十数%の方がマンションに住んでいるわけでございますから、早急にこれは設置すべきであると思いますが、大臣、いかがでしょう。
  97. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 いい質問だという声が出ておりますが、私も、先生の質問の流れをけさ方伺いまして、本当に今のは時宜を得た重要な問題であろうと思うわけでございまして、そういう部署も設置もいたしますし、また、そういう建設省の指導という体制づくり、これは本当に言葉だけではなくして、この一年の間にきちっとしたものをつくり上げていきたいと思っております。
  98. 大口善徳

    大口委員 では、一年の間に私が今言ったようなことは全部設置するということですか。特に、ホームページなんていうのはあすからでもつくれるんですよね。
  99. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 トータルで一年以内に頑張るということでございます。ですから、早くできるものはもちろん早くやる。
  100. 大口善徳

    大口委員 今、大臣から極めて前向きな答弁がございましたので、早急にやっていただきたい、こう思っております。  次に、今も言いましたように、そういう点で、管理組合あるいは入居者の関心が、建てかえとかあるいは修繕についての関心、テレビでも最近放映されたりしておりますので関心が出てきておりますが、さて、自分が住んでいるマンションのこととなると、やはりまだまだである。そういう点で、特に管理組合の役員の方、非常に御苦労されておりますから、もっともっとこの維持とか管理、それから建てかえについても講習会をきちっとやる、あるいは財団法人のマンション管理センターなんかでやっているという話もございます。あるいは、建てかえのマニュアルとかガイドブックとか、こういうものを作成し普及していく、こういうことも非常に早急にやるべきであるということを私は指摘しておきたいと思います。  そしてまた、居住者の合意形成を円滑化していく。そのためには法律上の専門知識、あるいは建築に関する技術上のいろいろな知識、あるいは法律のいろいろな知識、区分所有法ですか、そういう専門知識が非常に必要なわけであります。そういう点で、大幅な修繕ですとか、あるいは建てかえについても、コーディネーターですとかアドバイザーですとか、こういうものを早急に養成する必要がある、こう考えております。  耐震診断ではかなり一生懸命やっておるわけでありますが、やはりこういうアドバイザーとか、あるいはもっと、一歩進んで積極的にはコーディネーター、こういう方を二〇一〇年を目指して早急に養成していくための具体的な計画の策定、いつまでにどれくらいの方を養成していくのか。今まで、もちろん公社の方ですとかあるいは民間のボランティアの方ですとか、いろいろ携わっておられる方も含めまして、どれだけの要員でやっていくかという計画を早急に立てるべきであると思いますが、いかがでございましょう。
  101. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生御指摘のような、維持管理であるとかあるいは建てかえに関します講習会、あるいはマニュアル、ガイドブックの作成等々につきましては、今その普及を図っているところでございますが、マンションで共同生活をする、そういうことにまだ我々はなれておりませんので、したがって、建てかえの合意形成に向かってのコーディネーターやアドバイザーが必要と思っておりますので、そういう方々の育成につきましても急ぎ検討をしていきたいと思っております。このことも一年内の範囲に入れていきたいと思っております。
  102. 大口善徳

    大口委員 一年後をしっかり見ておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  また、不動産取引、その中でマンション取引ということが非常に景気に大きな影響を与える、こういうことでございます。ですから私も、昨年の建設委員会におきましても、住宅性能表示、これをしっかりしなさい、このマンションの住宅の性能はどうなんだということをきちっと明らかにしなきゃ安心してマンションを買えないじゃないか。こういうことで、新築については、今回住宅性能表示についての法律をつくられるということでありますから、それは私の提案も受けてやっていただいた、こう思っております。ただ、これも新築の住宅についての性能表示でございまして、中古マンションの性能表示については全然まだ今回の法律には入っておらない、こういうことです。  しかしながら、構造の安全性とか火災に対する安全性とか耐久性、それから床とか壁の遮音性、それから長寿社会への対応性、省エネ性、採光とか換気性、やはりこういうものについて、中古マンションにおいても、フランスのキャリテル制度というのが今あります。ミシュランのあれじゃないですけれども、その項目について、これは五つ星なのか三つ星なのかというようなことがわかるようにしていかないと、中古マンションを安心して買えないんじゃないか。  やはり段階的には、良質の、価格的にも中古だから安い、そういうもので、第一次取得者が取得する、そしてまた買いかえていく、そういう点で、中古が動かなきゃ、今度は新しいいいマンションにもいかない、こういうことがありますので、中古マンションについての住宅性能表示、これをしっかりすべきである、私はこういうふうに考えております。  そしてまた、ちゃんと管理組合が設立されているか、管理規約が設定されているか、それから長期の修繕計画が作成されているかどうか、そしてその長期の修繕計画に従って適正な修繕の実施がされているか、大修繕を含めてやっているか、そしてまた、修繕とか建てかえ金の積立金がちゃんと積んであるのか、こういうことを知ることも、これは履歴情報というわけですね。この履歴情報もやはり取引のときにわからないとなかなか買えない。特に、これは、大修繕をしなければいけないようなものとか、あるいはもう建てかえをしなければいけないようなものと、それが十年後だとかいうものが、そういうことになっているかどうかわからないと、これは怖くて買えないという面もあります。むしろ大修繕を予定しなければいけないとか、建てかえを予定しなければいけないということになりますと、価格もそれだけ下がります。適正な価格でそういうものを覚悟して買う、こういうことにもなっていかなければいけません。  そういう点で、中古マンションの性能表示制度、履歴情報をきちっと開示する。そしてまた、大修繕とか建てかえまで必要なマンションなんか、特に既存不適格みたいな、今度容積率が足りなくて厳しい、こういうマンションも、これはきちっと提示しないと、そういうものをわからないで買う人がいたら大変なことになってしまいますので、その点について、大臣、いかがでございましょうか。
  103. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 私もこの中古マンションの市場というものを大きく開拓していかなければならないと思っておるわけでございまして、建設省の新築住宅着工戸数、年率換算で、バブルのはじける前には百六十四万戸なんというのがございましたけれども、ここ最近百十万戸台になってきた。  それで、新築住宅のそういう社会資本の整備を指導していくといいましょうか、リードしていかなければならないというふうに役所の方は言うのですけれども、私は、それはもう間違いだと。これからは、もちろん新築住宅も開発はしていくべきではあるけれども、それよりも、私は、中古住宅の市場というのを大きくつくっていくべきではないか。子供さんが大勢いらっしゃるときにはそれだけ大きな家屋が要るでしょうけれども、年をとられて老夫婦になれば、小さな中古の住宅を買って、そこで老夫婦が人生を楽しむ、そういうような社会的な考え方、思潮というのもいろいろ変わってくるのではないか。そういうことを考えたときに、この中古の市場を広げていくというのは、私は重要なことだと思うのです。  そして、そうなりますと、人間にでも履歴書というものがあるわけでございますから、住宅の履歴書というものがあって当然だと思います。ですから、どういうところを修理した、そしてどういうところに欠陥があったというようなことであるならば、そこに自然に中古住宅の価格というものが形成されるでしょうから、私はぜひ先生の御指摘のこの問題については鋭意努力をしていきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つ先生触れられました。いわゆる修繕積立金の問題がございましたが、これなどもちゃんと、管理業者の名義などにすることではなくして、そして管理組合がそれをきちっと管理をしておかなければ、いろいろ事件も起こっておるようでございますから、そういうようなことで積み立てということもまた考えていかなければならないと思っております。
  104. 大口善徳

    大口委員 そこで、履歴書をつくる、これは一年以内という言葉はなかったのでちょっとあれなのですが、それはどうなのかということを、一年以内なのか。  それと、履歴情報をやはり不動産取引の重要事項説明書の中に記載すべきである。これは早急にできると思うのですね。要するに、修繕計画に基づいて修繕していますと、こういう履歴を重要事項説明書に書けると思うのです。それはどうでしょうか。
  105. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 早い時期にそれをやっていきたいと思いますが、そういう修繕の問題について履歴にきちっと書くということはできると思います。
  106. 大口善徳

    大口委員 では、今できるということでございますので、どうかよろしくお願いします。これはもうあしたからでもできるわけですから、省令でもってそれを書き込めばいいのです、省令で。  それでは、次にマンションの管理について、これは行政監察においてもいろいろしております。平成十年の十二月に総務庁の各管区あるいは監察事務所で監察しております。特に、関東管区を見てみますと、今大臣がおっしゃいましたような修繕積立金、その口座名義の不備が指摘されております。  その中で、二十八の組合の中で二の組合は、管理会社が倒産したために修繕積立金が破産財団に入っちゃって、マンションの住民が困っているということが二件ある。それから、一件、またこれも管理業者の名義である。それから、これは○○管理組合代行管理会社名義、こういうものもあるわけですね。これはどうなのか。これは二十八のうち六つもあるのですね。そして、今言ったように、管理組合の名義にすべきだと大臣はおっしゃいましたが、それが九なんですね。ですから、○○管理組合代行管理会社名義というので、○○管理組合というのが入っているから、これは管理会社が破産したときに破産財団に組み込まれないんじゃないかという誤解をしている人がいると思うのですね。法務省、この点どうでしょうか。
  107. 細川清

    ○細川政府委員 一般論としてお答え申し上げますが、御指摘のような場合に、積立金が管理組合と管理代行会社のいずれに帰属するかという問題につきましては、預金名義のほかに、預金通帳及び届け出印鑑の管理状況、それから管理組合と代行会社との管理委託契約の内容がどうなっているかというようなことが考慮されまして、最終的に裁判所で判断されるわけでございます。  したがいまして、場合によっては、そのような名義になっておりましても、これは代行会社の預金である、こういう判断がされる可能性があるわけでございまして、そのような場合には、倒産した場合には、その預金は管理代行会社の破産財団の構成する財産に帰属する、こういうことに考えられるわけでございます。
  108. 大口善徳

    大口委員 そういうこともきちっと周知徹底をするということも、よろしくお願いします。どうでしょうか。大臣。
  109. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生御指摘の問題でございますが、分譲マンション管理業については、昭和六十年より中高層分譲共同住宅管理業者登録制度というものを実施いたしておりまして……(大口委員「それはもう一つ後です」と呼ぶ)後ですか。  それは、先ほど言いましたように、管理業者の名義にすることのないように周知徹底をいたしておりまして、具体的には管理組合の理事長名義にするように指導をいたしておるところでございます。
  110. 大口善徳

    大口委員 次に、行政監察局等の方でも指摘があったのですが、二〇〇一年の四月一日以降ペイオフが実施される。いろいろ延期論なんかあるようでありますが、金融担当相も、あるいは大蔵大臣も言明して延期しない、こうおっしゃっております。  それで、そういうときに、いわゆる修繕積立金ですとか、建てかえ資金の積立金、こういうものを銀行に預けることに対して不安がある。これも関東行政監察局の調べだと、三十九組合中七組合が二億円以上の修繕積立金を持っている。ところが、一千万しか保証されなくなってきますと小口で分けなきゃいけない、こういう問題が出てくる。  そういう点で、このことについては、大体一戸当たり修繕積立金は、残額、これは調査によりますと二十六万ぐらい。しかしながら、大体二、三百万必要だそうですね、修繕積立金というのは。現時点の残高で行きますと、一戸当たり二十六万円なんですね。それだけで、計算しますと、二十六万掛ける三百三十万戸あるとしますと、八千七百億円から一兆円修繕積立金として銀行等に預金をされている。これらに対して、不安だ、こういう声があるわけであります。そして、これからどんどん積み立てがふえてまいります。そうなってきますと、十兆円ぐらいまでなってくるわけです。  そういうときにおいて、私は、一つのオプションとして、住宅金融公庫において、修繕積立金であるとか建てかえ資金積立金というものを受け入れる制度を創設する、いわゆる管理組合版の「つみたてくん」、そういうものをつくって、安心してお金を預け入れ、そして、大規模修繕とか建てかえに当たっては優遇される融資が受けられる、こういう仕組みをつくるべきだ、こう提案しますが、いかがでしょうか。
  111. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 これは、いずれにいたしましても、もしそういうようなことをするとなると法律改正が要るわけですから、ちょっと勉強させていただきます。
  112. 大口善徳

    大口委員 これは非常に深刻な問題ですので、勉強というとどうも勉強するだけに終わっちゃいますので、前向きに答弁していただけますか。大臣、お願いします。これは大事なことです。
  113. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 今、新築住宅の取得のための積立金を受け入れる仕組みはあるんです。住宅金融公庫に「つみたてくん」という愛称で、住宅宅地債券という制度を設けているんですけれども、さて、この債券を発行して、それをその積立金で買われてということができるのかどうかちょっとわかりませんが、これはまた専門の分野でもございましょうから、役所に帰りまして早速検討をしてみます。
  114. 大口善徳

    大口委員 局長、どうですか。専門的な事項だから、ちょっと局長
  115. 那珂正

    ○那珂政府委員 ただいま大臣から検討を申し上げるというふうにお答えさせていただきました内容でございますが、現在、先生御指摘の「つみたてくん」という住宅宅地債券の仕組みを、また御指摘の修繕積立金を受け入れる仕方として何とか活用できないかということについて、検討してまいりたいと思います。
  116. 大口善徳

    大口委員 次に、マンションの管理会社というのは非常に大事なんです。マンションの管理においてマンション管理会社というのは非常に大事でして、ちゃんと適正に管理をしているかということ、そしてまた委託費が明快かどうか、あるいはきちっとした管理人を備えているか、こういうことで、私は、管理会社については、管理会社の格付をできれば財団マンション管理センター等でやるべきじゃないか。あるいは、それができないとしましても、そのマンションの管理会社がいい管理会社か、あるいは悪い管理会社でかえた方がいいかということをチェックするリストというものを早急につくるべきじゃないか、そのことがマンション管理において非常に大事だと思うんですが、いかがでございましょうか。
  117. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 このことははっきり御答弁できるわけでございますが、やはり管理組合の方がみずから判断できますように、管理組合というのは、そこに住んでいらっしゃる方々の任意の組合でございますから、逆に言えば素人の方の集まりですから、管理会社についても専門的な知識はないわけですから、管理会社について第三者機関による格付ということを行って、組合の方がしっかりとした管理会社を指定できるように、その情報提供の方法等々につきましては、これは対処してまいります。
  118. 大口善徳

    大口委員 それから、今マンションもこれからどんどん高齢化が進みますし、また、今度は賃貸化といいますか、所有者がそこへ住まないで、貸していく。これは完成年次が古くなれば古くなるほどその賃貸化の率が高まっておって、今、平均でいきますと一四・九%が賃貸化している、こういう状況であります。それから、賃貸化の割合が二一%以上が二一・一%もある、こういう状況です。  これでどんどん賃貸化が進みますと、区分所有者でそこに住んでいる人がいなくなる。こうなってきますと、管理組合自体が機能しなくなってくる、こういう問題もあります。ですから、フランスやドイツのように、そういう区分所有者のために、管理する人を、職業的な管理者制度というものをつくらなきゃいけない、こう思います。これにつきましても、提案でございますが、いかがでしょう。
  119. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先ほど諸外国の例もお出しになられましたが、マンションの管理が適切に行われますように、やはり管理組合に対します支援というものも法律的にきちっとできるように進めていかなければならないと思っております。
  120. 大口善徳

    大口委員 建てかえにつきましては、平成十年五月時点で、阪神・淡路を除いて全国で四十件しかまだ建てかえがなされていないそうです、マンションの建てかえ。そのうちの八割は、分譲の主体が公的な団体であるし、それから容積率に余裕があるものですから、自己負担を伴わない等価交換方式でできるということもあって、四十例は建てかえができております。そして、その場合、建てかえ後は一・五倍ぐらい床面積がふえておる、こういうことなんです。こういうものは建てかえがしやすいわけですが、ほとんどはそうでない。  そういう中で、平成五年の建設省の調査でも、建てかえを検討していないというのは八六・二%もある、それから、検討しているけれども問題が多くて進んでいないというものが二・六%、こういうような状況なわけです。  そこで、阪神・淡路において被災したマンションの建てかえ事例は非常に参考になるわけでありまして、百八がもう建てかえについて方針決定をし、そして百ぐらいがそういう形で建てかえができている。こういうノウハウをやはりしっかり研究をして、そしてどういう施策が必要なのかということが大事じゃないか。阪神・淡路、私も十例ぐらい見ましたけれども、補助をきちっとしている。  補助、そして融資、それから総合設計による容積率の緩和等、それからコンサルタントですとかアドバイザー、それから建てかえ主体を法的な株式会社にするとか、あるいは高齢者に対してどうするか、あるいは住宅供給公社が非常に積極的に関与している、あるいは仮住居の確保、こういうようなことが非常に大事になってくるわけです。  これもまた平成五年のアンケートをとりましても、公的融資制度を優遇措置をとってほしいとか、あるいは税制上の優遇措置をとってほしいとか、あるいは高齢者ですとか低所得者層の資金の負担の困難な人に対する支援措置をとってほしいですとか、あるいは容積率の緩和ですとか、あるいは公的機関のアドバイスが必要だとか、仮住居、出ていかなければいけないから仮住居をやってほしい、こういう要望が出ております。  そういうことで、阪神・淡路での事例も踏まえた上で、私は、早急にマンション建てかえ促進法というようなものをつくっていかなきゃいけないのじゃないか。二〇一〇年にそういう形で大変な、三十年以上のストックが、百万戸近いものができる。ですから、それはすぐに対応できないですから、これから十年積み立てても間に合わないわけですから、直ちにそういうマンション建てかえ促進法等をつくっていかなきゃいけないと思いますが、いかがでございましょうか。
  121. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 現在、そういうもろもろの問題、例えば建てかえか改修かの判断指針の問題、あるいはその円滑な合意形成をするための支援の手法等につきまして、建設省で、総合技術開発プロジェクトというところで、真摯にその対応策を現在進めております。
  122. 大口善徳

    大口委員 その上で私は、そういう立法的な措置も必要だということで促進法等を制定していただきたい、こういうことを言っておるわけでございます。大臣も大きくうなずいておられますので、よろしくお願いをしたいと思います。  次に、マンションというのは、団地型も含めまして、非常に大きな住居形態の一つなわけであります。そういう点で、それとやはり福祉との連携、また少子化対策ということを考えますと、子育て支援施設との連携ということをしっかり考えていかなきゃいけない、こう思います。  今回の予算におきましても、子育てにつきましては、保育所にミニ保育所という形で、分園というものを今度百カ所やるというような話も出ております。また、福祉施設につきましては、デイサービスセンター等も、介護保険が施行されまして、デイサービスセンターというのは指定基準にかなえば民間会社でもどこでもやっていい、一定の指定基準さえ整えば、そこでやれば介護保険が適用されて運営費が出る。  そういう点で、マンションとデイサービスセンター、そのデイサービスセンターには入浴のサービスも、あるいはヘルパーステーション、あるいは訪問看護センター、こういうものを含んだもの、そういうものとの連携。それから、保育所の分園とか学童クラブという子育て支援の施設との連携。そして、その併設とか合築とか、そういうことも考えていかなきゃいけない。特に、地理的にいってマンションを利用しないとほかに適当な場所がない、こういうところもあるだろうし、またディベロッパー等もセットにした方が売りになる、こういう形によって推進していけることもあるわけです。  そういうことについてのお伺いと、それから、既存のマンションの空き部屋も結構出てきております。平均値で二・五%ぐらい空き部屋だそうです。そういう空き部屋を利用してそういう施設をつくったらどうか。千里ニュータウンとか多摩ニュータウン、かなり古くなっている。こういうところにデイサービスセンターをつくれば、入居者と非常に接近しているわけですから、三十分も一時間もかけてデイサービスセンターに行ったらそれだけでもうくたびれちゃうわけですから、住居と接近しているという意味で、既存のマンションについてもそういうものを設置していくということ、この辺について厚生省にお伺いしたい。  これと、あと建設省がそれについてはどう考えているかということと、そして最後に、少子化対策、子育て対策ということを考えますと、都市部において、やはり新婚向けを含めファミリー向けの公営、公団、そして特優賃の整備、これを積極的に進めていただかなきゃいけないのじゃないか、こう思っております。その点、後の二点については建設大臣からお答えを願いたいと思います。
  123. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 デイサービス事業等の在宅サービスにつきましては、これまでも民間事業者の積極的な参入促進に努めてまいりました。平成十二年度からは、御承知のように、介護保険制度が導入されます。一定の基準を満たし、県の指定等が受けられれば、主体を問わずに、介護報酬を得てこれらの事業を行うことが可能でございます。  委員の御指摘のように、マンションとの関係でございますが、民間事業者等がマンションの建設とあわせてデイサービスセンター等の整備を行うことも、介護サービス基盤の整備を進める一つの方法であると考えます。  ただし、事業者の指定基準につきましては、人員あるいは設備基準等がございますから、これはこれから医療保険福祉審議会で審議いたしまして、厚生省令でその基準を定めますが、それに合致するようなものであれば、私どもとしては、人口が密集している地帯であるだけに、傾聴に値する御意見だと存じます。  それから、保育所の分園方式につきましても平成十年度から試行的に実施しております。これは従来、過疎地域だけに限られておったものを、特に都市等の面で一般化してやろうということでございます。保育所の待機児童解消等は、特に都市型の地域において大変問題でございまして、我々としては、そのために新規の分譲マンションに保育所の分園を併設することも保育所の機能を高める一つの方法であるというように考えておりますので、これも分園方式の条件に合致すれば認めていきたい。  それから、放課後の児童健全育成事業につきましても同様でございまして、新規の分譲マンションの部屋を活用することも、整備を進める一つの方法であろうかと思っております。  なお、委員の御指摘のように、既存のマンションにつきましても基本的には考え方は同じでございますけれども、今空き部屋の話もございましたが、余りその条件が、飛び飛びになってしまったり保育その他の機能に差し支えがあるようであると困りますし、それから、余り古いので、構造上、例えば介護の場合に非常に段差があるとか、いろいろなそういう諸条件がございますから、そういう障害がない限り、人的、物的な基準を満たせば認めていって差し支えないのではないか、こう思っております。
  124. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 前段の問題でございますが、デイサービスセンターや子育ての支援設備を併設するということは、私たちも意図して進めておるところでございまして、ましてや民間マンションが、そういう医療福祉施設が併設されたものが提供されるということは大変望ましいことと思いまして、そちらの方向に私たちも努力をいたしてまいります。  それから、新婚世帯を含みますファミリー向けの公営あるいは公団住宅、特定優良賃貸住宅の整備についてでございますが、大口先生の同僚の方の御質問にもかつてございましたが、これは重要なことと認識をしておりまして、ファミリー向けの低廉な賃貸住宅の供給ということにつきましては、積極的に推進をしていきたいと思っております。  一つの例が週刊誌で報告されておりましたが、駅構内に保育所を併設しておるというケースがございまして、お母さんは勤務に行くときにそこに、駅で子供を預けて、退社したときに子供と一緒に帰るという、これなどは本当にすばらしいアイデアだろうと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、先生の各般にわたります御指示、意欲的な、いい御注文でございました。一年以内に、できることもできないこともあるかもしれませんが、本当に私はまじめに一生懸命行います。
  125. 大口善徳

    大口委員 非常に、両大臣、特に建設大臣、一年以内と連発されまして、心から敬意を表しますとともに、マンション問題の第一弾として、きょうはこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  126. 中山正暉

    中山委員長 これにて大口君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君から質疑の通告がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近の経済情勢というのは極めて厳しいわけでございますが、株安、あるいは円高、あるいはまた長期金利上昇、トリプルダメージと言っても過言じゃないと思うのですね。私、三日付の経済指標も拝見させていただきました。依然として、設備にいたしましても個人消費にいたしましても、非常に低迷いたしております。心配しておるわけでございますが、最近の動向につきまして、簡単に要点を経企庁長官からお伺いしたいと思います。
  128. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私どもの景気判断では、引き続き景気は極めて厳しい状況にあるというのは変えておりません。  ただ、昨年の十一月末ぐらいから、かなり新しい胎動が見られる。半導体、白物家電、それから最近になりましてマンションの購入の見学者が非常にふえている。これは、減税効果、低金利効果等もございまして、そういった面での効果もあります。公共事業も、発注は一段落いたしましたが、施行の方は今真っ盛りでございまして、そういう下支え効果も出ております。  ただ、一月後半から、やや消費が思わしくないといいますか、期待したほどの効果がない。これは攪乱要因がたくさんございまして、例えば東京の百貨店でとりますと、東急日本橋店の閉店セールなんかが乗っかっておりまして、いい数字が出たりしておりますが、これは一時的なものだろうと言えると思いますね。そういう点で、まだ見きわめがつきません。  また、委員御指摘のありました長期金利上昇につきましても、二月に入ってから数日、また上がってきております。年末、一時上がって下がったのですが、これは短期的な問題なのか趨勢的な問題なのか、見きわめ、それにおける影響なども目下非常に大急ぎで用心深く資料収集しているところでございまして、どっちになるかということを非常に気にしているところでございますが、まだ結論を申し上げるような状況ではございません。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 韓国も大変な状況でございますけれども、IMFとの協議で、当初マイナス一%と見ておったものを修正して、二%ぐらいいくんじゃないかというようなことが報道もされておるわけでございます。これは非常にいいことでございますけれども、我が国の状況は、今長官からもお話がございましたように、消費も低迷しておる、設備ももう御存じのとおりでございます、一番大きなエンジンがやはりこういう状況ですね。したがって、私たちはその点を非常に懸念するわけです。政府見通しの〇・五%も、本当にこれを達成できるのかどうか、私は重大な懸念がそこにあるわけでございます。  御承知のように、やはりデフレスパイラルの、そういうのが依然として、株の低落からずっと渦を巻いてきておるわけでございますし、またクレジットの、その辺の信用の収縮といいますか、その辺のデフレ、あるいは世界の状況を見ましても、依然としてアジアまたブラジルもそういう引き金の要素もございますし、そういう点からいきますと、先行きについては非常に厳しい状況だと思うのですね。  そこで、何とかして景気を浮揚ということでございますけれども、最大のエンジンである個人消費ですね。設備投資というのは、これはやはり経済の動向、当然経営者もその辺のところは慎重な判断をされますから、やはり前向きの、そういう構造改革といいますか、また政府の出すそういう政策に信頼、安心、安定というものが見えて、また底力が入ると思うのですね。そういう点からいきますと、やはり個人消費、最大のエンジンのここのところをどのように考えていくかという問題でございます。  一つは、我が党から地域振興券の提案を申し上げ、当初とは額が相当に落ちたわけですけれども、しかし、七千億というその地域振興券が、浜田市を皮切りに全国各地やり出してきておりまして、今までにない、私どもの耳に入っておるのも、大変いい声が届いておるんですね。  今まで、もう寂れていく一方で、このままであれば商店街も、いつ全店閉鎖するかと言っておった商店街が、この地域振興券が出たということで、商店街に、これから春を迎えるわけですから桜の造花も飾ろうとか、あるいはまた街灯も明るくしようだとか、みんながやはり活性化を目指して、商店街の人も皆そういう気分になってきておる。  あるいは、この間会った若いお母さんが、とにかくサラリーマンの給料というのは大変ですから、子育ての中で、二人子供があるんですけれども、四万円もらえると。電気洗濯機が、もう前からので傷んでかえたかった、だけれども、お金が足らなかったけれども、これで四万円入るから、今までためたのと合わせて、同じ買うんだから最新型のを買うんですと喜んで報告してくるんですね。そのように、やはり上乗せで買うというような空気も出てきております。  そういうことで、最初にこういうスタートを切ったわけでございますので、野田自治大臣から、実施状況等、また感想がございましたらお聞きしたいと思うのでございます。
  130. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今、近江委員御指摘のとおり、今いろいろな市町村、大変御努力いただきまして、随分盛り上がりを見せてまいりました。特に、既に幾つかの市町村で交付が始まっております。  今御指摘いただきましたようないろいろなアイデアが重なっておりまして、大変いいことは、単に消費喚起という側面だけじゃなくて、言うなら地域おこしというか、そういうことと非常に結びついた形で、積極的に市町村の方も盛り上げようという機運が出ておるということでございます。  地域振興券事業の実施に関しての話題となった事例を若干御報告させていただきたいと思いますが、振興券のデザインを地元の中学生から募集するとか、券面に地域の名産や名勝をあしらったりしているとか、あるいは全市町村が連携して、地元の特産品である和紙を用いて全県統一デザインの地域振興券を発行するということにしたところもありますし、地元商店街における取り組みとしては、商工会が地域振興券の発行に合わせて一斉に消費拡大セールを展開することとしたようなところ、あるいは商工会が地域振興券に数%上乗せして使用できるようにしたようなところとか、商店街が地域振興券での買い物客に支払い額の数%分の独自の商品券を還元するというようにした、あるいは景品を交付したり、あるいは買い物ポイントというものを出して通常よりも多く加算するとか、あるいは業界、いろいろな業界がありますが、その中で旅行業者やおもちゃ、玩具の業者が、地域振興券の支給額に合わせて、二万円パックとか四万円パックとかそういうような商品を開発して発売するとか、事ほどさように、いろいろな工夫を凝らして、今おっしゃいました、言うなら上乗せ効果をもねらったような動きも一生懸命努力をしていただいておるということでありまして、大いにその成果が上がることを期待いたしております。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは経済閣僚として柱になる方に来ていただいておるわけでございまして、堺屋長官の方では、この地域振興券の影響というのは、当初これは愚策であるとかいろいろなことも言われてきました。しかし、私たちは、中央に対する地方、また官に対する民、デスクに対する現場と、本当に下からのこういうアイデアというものを地域振興券という形で提案したわけでございます。したがいまして、数字的にはどのぐらいの効果が出るか、学者というものはそういう点にこだわるわけですけれども、私は、大変な影響がいい方向に働くと思います。  今、自治大臣からお話がございましたように、地域挙げての取り組みの空気があるわけでございますので、堺屋長官としてはどのように受けとめていらっしゃるか、率直にお伺いしたいと思います。
  132. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 経済モデルを使った計算によりますと、七千億円の所得増と考えますと、〇・四一ぐらいの消費性向が出てまいりますので、〇・〇六%ぐらいGNPを押し上げる。これはモデルの計算でございます。ただ、時期を切っておりますのと、今委員御指摘のような、地域によってイベント効果があらわれておりますから、もう少し高くて、〇・一%ぐらいGNPを押し上げるのじゃないかという感じがいたします。  やはり何よりも、私どもが予想していた以上に、各市町村あるいは商店街の方々がこれを契機としていろいろな知恵を出していただいている。これは、今初めの報道だから特に活発なのかもしれませんが、これがより多くの市町村に広がっていくと、地域の知恵を出す習慣が生まれてくる、そういうきっかけになるのじゃないかという期待も私もしております。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、通産大臣、通産大臣は地元商店街を初めとして最も大事な部門を抱えていらっしゃるわけでございまして、通産大臣はこの地域振興券につきましてどういう御感想をお持ちであるか、お伺いしたいと思います。
  134. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 通産省、中小企業庁はかねがね商店街の振興ということを重要な施策としてやってまいったわけでございます。そういう中で、今までやってまいりましたのは、例えば商店街にアーケードをつくるとかカラー舗装をするとか、いろいろな工夫は凝らしてきておりましたが、今回の商品券が出るということで、各地区の商店街の様子を聞いておりますと、いわばこれをきっかけに大がかりな商店街振興に結びつけようという動きが出てきております。  これは、先ほど野田自治大臣が御説明されましたようなイベントとか懸賞とか、さらに上乗せをするとか、いろいろな方法でやっておられまして、それ自体各地区の商店街で工夫を凝らし、また創意を凝らしてやっておりますことは、大変商店街振興の上ではいい効果が出ているんだろうと思いますし、こういうことをきっかけに商店街が一体感を持っていろいろな事業を進めておりますことは、大変商店街振興にとっては望ましいことである、そのように考えております。
  135. 近江巳記夫

    ○近江委員 三大臣の御報告、いずれも大変、効果といいますか、その辺につきましては非常に予想以上のものであったというふうに私は受けとめておるわけでございます。そういうことで、これからまだ数カ月続いていくわけでございますけれども、今、御承知のように、雇用情勢も大変厳しい、いろいろな点で国民の心というものはやはり閉ざされた方向になろうとしておるんですね。そういう中に、非常に大きな明るさといいますか、希望を今もたらしておると私は思うのでございます。  そういうことで、結果を見て、先において第二弾というようなものにつきましてもぜひこれは考えるべきであると思いますし、また、税制の問題におきまして、御承知のように、減税ということを言っておりますけれども、七百九十三万以下は現実には昨年に比べればプラスの、増ということになるわけでございますし、これもやはり、消費動向ということを考えますと、冷え込ます。したがいまして、私たちは、少なくとも二兆円程度の、やはり戻し金といいますか、何らかの手当てをしなきゃいけないんじゃないかと思うわけでございます。  この二点につきまして、大蔵大臣もいらっしゃいますので、お伺いしたいと思います。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 地域振興券でございますが、戦前のことを御存じでいらっしゃいますので、ポンプは、水が切れましたときに、上から水を入れますと呼び水になって出ることがございましたですね。そういう呼び水的な効果がかなりあるかなと思って、大変に関心を持って見ております。それは、ある意味では、今お話しになりました定率減税から生まれたところの前年比の多少税が高くなったかなというあたりに多少の関係がある、あるいはまた、控除を二つほどふやしましたので、それも幾らか緩和をすることになっておると思います。  実は定額減税は、御承知のように、もう御承知ですから詳しく申し上げませんが、累進を壊してしまうものでございますから、できれば定率でやりたいということでいたしましたが、そういう問題につきましては、いろいろな意味で今おっしゃいましたような影響を少なくしなければならないと思っております。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 申し上げましたその二点につきましては、大蔵大臣初め各経済閣僚、出席していただいておりますので、ぜひひとつまた検討を強く要請しておきたいと思います。  それから、自治大臣、非常に先ほどから別の案件で何回も要請が来ていますので、自治大臣の御退席、結構です。  それから、倒産状況につきましてですが、御承知のように、昨年は一万八千九百八十八件、負債総額は十三兆七千四百八十三億というようなことでございまして、平成最悪の記録をしております。倒産件数は最悪です。負債は一昨年が十四兆四百四十七億ですから、二番目ということです。  そういうことで、倒産状況をずっとつぶさに見てまいりましたけれども、年末に至って若干減少傾向に入っておる。これはいろいろな原因があろうかと思いますが、信用保証協会の特別枠というもの、これはもう本当に私どもも、全国調査を展開し、強く政府に申し入れをし、政府も真摯に受けとめてくれまして、これがいろいろな皆さんのお力もあって実現することになりました、二十兆ということでございますけれども。年末、本来なら大変な状況に入っておった企業もこれで相当やはり助かったということを、私どもも多くの皆さんから聞いておるわけでございます。  しかしながら、二〇〇〇年三月まで、昨年の十月からこれはスタートしておるわけでございますけれども、二十兆という枠でございますけれども、既にもう十二兆は超えているんじゃないかと思うんですね。この一—三月に入りまして需要も非常にたくさんあるんじゃないかというようなことで、ほとんど使い切ってしまうんじゃないか。二〇〇〇年三月まで枠があるといいながら、実質上、これでもうだめなのかという不安もまたあるわけでございます。  そういうことで、現在の実施状況等と、それからまた、先、さらにこれをプラスアルファをすべきであると私は申し上げたいわけでございますけれども、その点についてはどうお考えか、二点お伺いしたいと思います。
  138. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 御承知のように、昨年十月一日から始まりました保証協会の特別枠は、大変中小企業の皆様方に利用していただいております。  概数を申し上げますと、大体、中小企業十社に一社これを使っていただいておりますし、また、保証額の累計も十二兆を、先生おっしゃるように最近超えました。会社の数にしましても六十万社を超えたというところでございます。  一月に入りましてからの状況を見ますと、昨年の十二月までは大変保証の要請が強かったわけなんですが、十二月の年末資金の時期が終わりまして、一月はやや保証の御要請の数が少なくなってきております。  全体の枠としては二十兆という枠を設定いたしまして、今は七兆数千億、八兆近い枠が残っております。これをどうするかということですが、これはこの保証枠の利用状況を見ながら、また景気動向あるいは全般的な中小企業対策、こういうことを総合的に勘案しながら、将来、枠を使い切った場合はどうするかということは、今後考えていくべき課題であろうと思っております。  あわせまして、政府の関係金融機関、商工中金、国民金融公庫、中小企業金融公庫、それぞれ熱心に中小企業の金融をやっておりまして、おおむね、昨年の暮れなどは大きなパニックもなく過ごせたと思いますのも、また皆様方、先生方の御協力のたまものであると思っておりますし、また開銀法の改正等々、もろもろの一連のことをやっていただきましたので、信用保証の対象も中小企業から中堅まで広がったということは、私は大変望ましい姿ができているだろうと思っております。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはぜひ、今後恐らく一—三月、三月、年度末にかけまして相当なやはり需要が来ると思いますし、恐らくこれは使い切るに近いようなことになるんじゃないかと私は思います。したがいまして、当然、あとまた、プラスのそれにつきましては政府当局としてよくお考えをいただきたい、これを強く要望いたしておきたいと思います。  それから、御承知のように、旧債振りかえの問題なんですけれども、これは政府としても金融機関に対して相当強く言っていただいているということも聞いてはおりますけれども、やはりまだそういう形というものは随所にあるわけですね。なかなか、やはり弱い立場にありますから、どこということをはっきりと言ってもらうと困るとか、いろいろな声もございます。したがいまして、これは後をフォローして、しっかりと、そういうことのないように、実質にこれだけの枠をつくって、中小企業者の救済のためにこれだけのことをやっているわけでございますから、強くこれを要望しておきたいと思います。  一言だけ大臣から。
  140. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 旧債振りかえというのは、本来、信用保証協会の特別枠をつくったときの趣旨とは全く反しております。  そういうことで、中小企業庁も、全国に展開しております信用保証協会を通じまして実態調査をいたしましたし、また、私どもとしては、金融監督庁と連携しながら、そのような旧債振りかえというような制度の本来の趣旨に反したことが行われないように今までも気をつけてまいりましたし、今後とも中小企業の立場に立って十分気をつけてまいりたい、そのように思っております。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 次は、ちょっと話題を変えまして、きょうは有馬大臣に来ていただいておりますが、今回、文部大臣、そして科学技術庁長官を兼任されるということになりました。私ども議員の立場からしますと、先生は大臣に御就任されているわけですけれども、長年東大におられ、東大総長として、また理化学研究所の理事長として、私ども国会におりました者も何回となく先生の講義も聞いたわけでございます。そういう先生でございます。  そういう立場からいきますと、理化学研究所理事長、これはまさしく科学技術庁の行政でございましたし、また東大学長というのは、これは学術行政でございます。そういうことで、文部省と科学技術庁の立場を考えてみますと、科学技術庁というのは、どっちかといいますと、国家戦略に基づいていろいろな計画を立て、トップダウンでくるわけですね。文部省の場合には、本当に積み上げ、学問の自由といいますかボトムアップといいますか、そういう性質じゃないかと思うんですね。  そういうことで、これは、中央省庁改革の骨子というものはもうできておりますし、二〇〇一年からスタートすると。そして、現実には文部省と科学技術庁をもう兼任されているわけですから、もう動きが実態面では始まっておると思うんですね。  そこで、この両省の統合におきまして、どのようにうまくそういう点を融合し、されていくのか、その辺につきましてお伺いしたいと思います。
  142. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 今御指摘のように、文部省を中心といたしました学術行政というものと、科学技術庁を中心といたしております科学技術の振興というところに、共通性とそれからやり方の違いというふうなものがございます。  まず、学術行政でありますと、御指摘のように、大学を中心として、研究者の自由な発想に基づいて、人文社会を含めてあらゆる学問分野にわたるボトムアップ型の学術研究を推進しております。一方、科学技術行政の方は、今御指摘のように、科学技術の振興を図るために主として社会的、経済的需要に対応した研究開発をしてまいりました。  しかしながら、かなり共通な面が今強調されているということを私は認識しております。それは、どちらも基礎研究が極めて重要である、そういう意味で、基礎研究の重要性が高まるという点で両者の関係が極めて密接になってきていると私は認識しております。  そこで、科学技術庁と文部省との両方をあわせた教育科学技術省というものが二〇〇一年に設置されることに向けまして、現在既に文部省と科学技術庁の間では、まず第一に、文部省で持っております学術審議会の審議へ科学技術庁の方たちに参加してもらっておりますし、それから、学術と科学技術分野、理科離れ対策等における連携を非常に強く推進をいたしております。また、両省庁の間の相互認識を深めるため、審議官級の職員を初めとした人事交流を強力に実施しておるところでございます。  また先般、すなわち先月二十六日に決定されました中央省庁等改革に係る大綱におきましても、学術及び科学技術関係の業務をあわせて取り扱う局編成を行うことになりまして、中央省庁等改革基本法にある学術及び科学技術研究の調和及び総合性の確保を具体的に図っていくことができるようになっていると考えております。  私といたしましては、両省庁の統合によりまして日本の学術行政と科学技術行政が非常に伸びていくこと、それぞれの利点を生かしつつ総合的な学術・科学技術行政を推進してまいりたいと思っております。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣も御承知のように、平成七年に、私ども議員立法で科学技術基本法を制定することができたわけでございます。私も提案者の一人にさせていただいております。これによりまして、平成八年から十七兆の科学技術基本計画に基づく予算の積み上げが今日まで図られてきておるわけでございます。  平成八年からスタートいたしまして、平成十一年度、これは予算はまだ通ってはおりませんけれども、関係各省全部合わせまして今日まで十三兆三千億。そうしますと、平成十二年度で十七兆達成ということになるわけでございますが、あと三兆七千億なんですね。今年度が、この予算が通りましたら、速報値を見ますと三兆一千五百十一億ということになっております。平成十年におきましては一次補正、三次補正で相当な積み上げができているわけですね。  そういうことで、今年度はどうなさるのか、十一年度。そしてまた、十二年度の予算はどうなるか。少なくとも、この科学技術基本計画において金額まで明示をして合意をした、打ち出したということは、これは画期的なことでございました。そういう意味で、来年度、単年度三兆七千億、三兆七千億来年度予算ですれば、十七兆を達成するわけですね。そういうことで、これが一つです。  これに対して、二十一世紀科学技術創造立国を標榜したときに、これはどうしても達成しなければならない額であると私は思います。資源も何もない、言うならば狭い国土の我が国において、二十一世紀をどのように展開させていくか。科学技術の果たす役割というのは、これはもう大変大きなものがあるわけでございます。この重要性についてはもう御承知のとおりでございます。したがいまして、十七兆の達成について政府を挙げて取り組んでいただくということの確認ですね、これが一つです。  それから、これは十二年度で終わるわけです。後をどうするかということでございます。  御承知のように、政府研究開発投資の状況というのを見ますと、九七年度、一番新しいデータで見ましても、今日まで積み上げをしてきても日本は〇・六三。米国は〇・八〇、ドイツが〇・八二、フランスが一・〇一、英国が〇・六八ということでございます。そういう意味において、第二次五カ年計画といいますか、五年間で十七兆積んだわけですから、平成十三年度からさらに新たなそういう企画を、政府全体として、科学技術基本法、また基本計画に基づきさらにそうした新たな観点で着手する必要がある、このように思うわけでございます。  その二点につきましてお伺いしたいと思います。
  144. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 まず、現在行われております科学技術基本計画、それをどうしていくかということについてお答え申し上げ、後に、その後どう考えているかについてお答え申し上げたいと思います。  それに先立ちまして、科学者の一員といたしまして、国を挙げてこの科学技術基本計画をお立てくださったことに対しまして心から感謝をいたします。  そこで、平成八年七月に閣議決定されました科学技術基本計画においては、政府研究開発投資の対GDP比を欧米主要国並みに引き上げていくために、先ほどお話がございましたように、平成八年度から十二年度までの五カ年の間に倍増を実現するということが強く求められており、この期間に、先ほど御指摘のように、科学技術関係経費の総額で約十七兆円が必要とされているところでございます。  こういう点から見ますと、平成十一年度の予算案におきましては、科学技術関係経費といたしまして三兆一千五百十一億円を確保し、特に主要経費である科学技術振興費につきましては、一般歳出の対前年度伸び率五・三%を上回る八・一%増の九千六百三十億円が計上され、科学技術振興の重要性に配慮した措置が講じられているところでございます。  同計画の政府研究開発投資については、平成十一年度予算案までの総額が十三兆二千八百二十八億円、御指摘のとおりでございまして、計画期間中に十七兆円を達成するためには、引き続き相当の努力が必要であると考えております。  今後とも研究開発の適切な評価を行いつつ、これが私大切だと思うんです。非常に大きな国費を使って研究を進めるわけでございますので、研究の成果がどうなっていたかということを適切な評価を加えつつ、研究開発資金の重点的、効率的配分を図り、関係省庁の協力を得ながら政府の研究開発投資の拡充に努めてまいりたいと考えております。  次に、将来どう考えるかということでございますが、十七兆円が幸いにいたしまして平成十二年度で達成いたしまして、そのときどうするかということですが、御指摘のとおりでございまして、国全体で使っている研究開発費の中で政府の投資が占めている割合は、依然として西欧諸国、先進諸国に比べて非常に少ない。先ほどGDP当たりの比を御指摘くださいましたが、やはりまだ少ないと私も認識いたしております。  今後、さらにこの点についても皆様方と御相談申し上げながら、先生方のお力をおかりしながら、さらなる日本の二十一世紀における活躍を確保するために、科学技術の振興に向かって努力をさせていただきたいと思っております。これはもう、まさに先生方のお力をおかりする以外には手がございませんので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に時間も迫っていますので、要点だけ申し上げたいと思いますが、何といいましても、やはり科学技術創造立国という点からいきますと、人材の育成ということになるわけでございます。  最近、文春の二月号、立花さんの論文、この中に風間先生の論文が引用されておりました。私なりにもその辺は認識しておりましたけれども、大変ショックを受けたわけでございます。  そこで、要約して申し上げますと、どういうことを言うておるかといいますと、風間晴子国際基督教大学準教授の「国際比較から見た日本の「知の営み」の危機」という論文なんですね。この論文は、国際教育到達度評価学会が四十六の国・地域を対象に一九九五年に実施した国際数学・理科教育調査の結果を分析したものでございますが、それによりますと、日本は、理科が好きな生徒の割合、理科は生活の中で大切と考える生徒の割合、理科は易しいと思う生徒の割合、将来、科学を使う仕事をしたいと考えている生徒の割合が、いずれも調査対象国の中で最低なんですね。最低なんですよ。先進国なんて威張っておったって、最低なんですよ、これは。恐ろしい結果だと私は思うんですね。  風間準教授は、この結果から見えてくる日本の若者像をこういうふうにおっしゃっておるんです。  理科の勉強は難しくて、おもしろくなくて、だから退屈で、好きでもないし大切とも思わない、けれども、今はただ入試のためにやるしかない、だから、ましてや将来、科学を仕事になどしたくない、このようにとらえているんですね。こういうような状況に立ち至った根源は、学校教育のあり方にあるんじゃないかと指摘されているんですね。知の営みの結果を伝える教育から学生とともに知の営みにあずかる教育に、早急に改革すべきではないかとおっしゃっております。  今、大学に入りましても、補習授業というのが盛んに行われているんですね。御承知のように、センター試験は物理、生物から一科目、そういうことで、高校で物理か生物のどちらかを学ばないで理系へ入ってくるわけです。わかっていない、基礎的なことが。だから補習授業をやっておる。こういうような状況で果たしていいのかということなんですね。  本当にもう時間がございませんので、また別の機会に——では、簡単にこの点についてお答えください、今後どうなさっていくか。
  146. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 私もこの点は非常に心配しておりまして、毎年夏休みになりますと、実験器具を持って、各地方でサマースクール等々で実験を交えた物理の話などをさせていただいております。  しかしながら、理科離れというのは、実は小中ではないのです。小学校、中学校では理科離れがない。確かに、八〇%ぐらい小学校の六年で理科に関心を持っていて、それが中学校の三年になりますと、下がってはきますけれども、まだ理科離れという段階ではない。しかしながら、高等学校が問題なんです。高等学校で文科、理科という志向が分かれていく。そこにおいて初めて理科離れがはっきりしてまいります。ですから、高等学校にまいりますと五〇%程度になります。  こういう点をどう考えるか。ここのところは、やはり、御指摘のとおり、日本の活力を保全していくためには、知的創造力が最大の資源でございますので、我が国といたしましては、小中も含めて、理科教育を高等学校、大学全体で改善をしていく必要があると思っております。  したがいまして、昨年十二月に改訂いたしました新しい小中学校学習指導要領では、まず、自然に対する関心、興味、知的好奇心を高める、科学的に調べる能力や問題解決能力を育成すること、自然体験や日常生活と関連づけて科学的な見方や考え方を育てること、科学技術の発展が人類の文明の発展を支えてきたことなど科学技術と人間とのかかわりについての認識を高めることなどに特に留意した改善を図っているところでございます。  そして、文部省といたしましても、科学がおもしろくなくならないということで、ぜひとも理科教育の上で発見する喜びを体験できるような理科教育を目指し、今後ともさらに指導方法、教育方法の改善、各種の研修授業の実施や理科教育設備の計画的な整備等を進めてまいりたいと思いますし、また科学技術庁といたしましても、先生よく御承知の科学の祭典や高等学校生を対象といたしました国立研究所等における夏休みのサイエンスキャンプなどをさらに一層推進いたしたいと思っております。  風間先生などとはよくお話をしていて、私も重々その点は、むしろ早いくらいに認識しておりまして、先ほど申しましたように、夏休みのさまざまなサマースクールに参加している次第でございます。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、最後に、もう時間がありませんので提案したいと思います。  いよいよ、今世紀、そして来世紀へと入るわけでございます。何回も申し上げておりますように、我が国は二十一世紀科学技術創造立国を目指す、これは、政府また与党の皆さんもほぼ同じ考えじゃないかと思います。  そこで、このスタートに当たりまして、例えば、八九年にデザインイヤーというのを設けまして、これは名古屋を中心にやったわけでございますが、大変な大きな反響を呼びまして、これは、「ひと・夢・デザイン—都市が奏でるシンフォニー」というテーマでやりまして、総計千五百十八万の人が三会場にわたって来ている。大変盛り上がったわけですね。  そういう意味がございまして、私は、例えばこの二〇〇一年、サイエンスイヤーというような、サイエンステクノロジーイヤーでもいいですし、それは考えていけばいいんですけれども、そこで国民意識、関心を高めて、二十一世紀におきます科学技術創造立国建設へ向けて新たなスタートを二〇〇一年に切る。  その二〇〇一年になぜ私がそれを、二〇〇一年、頭であるからということは当然でございますけれども、ちょうどこの年は非常にいろいろなことがあるのですね。  それは、一つは、今申し上げました科学技術基本法に基づく第二次五カ年計画といいますか、大臣も積極的にやるということをおっしゃっていますし、当然これはスタートするでしょう。そういうスタートの年である。あるいはまた、これは法案が通らなければわかりませんけれども、文部省と科学技術庁が合流する最初の新しい展開の年でもある。それから、ノーベル賞ができてちょうど百周年の年にもなります。それから、行政的にいきますと、臨海副都心、さいえんすワールドが発足しますね。これはもう大変な規模でございます。これがちょうどスタートするわけです。あるいはロボリンピックが、これは二〇〇一年、大阪、神奈川を中心に展開されます。  そういうようなことで、全国的に年間を通して、サイエンスエキスポとかサイエンスサミットとか、サイエンスフォーラムとかサイエンスフェスティバル等、いろいろなことも考えていただき、国民の理解、関心を深めていただく、そういうことを私は提案したいわけです。  きょうは本当に、宮澤先生初め枢要な幹部の皆さん、大臣がおそろいでございますし、ぜひこれは政府として検討していただきたいと思うのです。  その代表として、有馬大臣にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  148. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 今お話しになられましたように、二〇〇一年というのは、さまざまな点でやはり重要な年と考えております。特に、科学技術基本計画の最終年に当たる年でありますし、また文部省と科学技術庁が統合する、あるいはノーベル賞の百年のお祝いがある等々、非常に意義のある年と私も認識いたしております。科学技術教育が新たな展開を迎える年でもあるわけでございます。  二〇〇一年をサイエンスイヤーとするのはどうかという大変すばらしい御提案をいただきましたが、これから、それではどういうふうな施策を実行していけばいいか、新しい世紀に向けて何がふさわしいかということをさらに一層検討させていただくことを、そして努力をさせていただくことをお誓いいたしまして、お返事といたします。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。どうもありがとうございました。
  150. 中山正暉

    中山委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  この際、休憩をいたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後三時十四分開議
  151. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中林よし子君。
  152. 中林よし子

    ○中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。よろしくお願いいたします。  私は、米の関税化の問題についてお聞きいたします。  政府が米の関税化を決定してから、全国の農家あるいは安全な食べ物を食べたいという国民の皆さんから、牛肉やオレンジの二の舞だ、もう日本から農業がなくなるのではないか、こういった大変な怒りの声が出てきております。  一度関税化すれば、とめどなく関税が下がっていく。日本共産党や識者が指摘したことが、実は、WTOに政府が関税化を通告してまだ一カ月半ぐらいがたったことにしかすぎませんけれども、既にそのことが明らかになってまいりました。とりわけ、アメリカ政府からは大変強い遺憾の声が出てきております。  一月二十六日、バシェフスキー通商代表部代表がこう言っております。二〇〇〇年に始まるWTOの次期交渉について、我々は関税の大幅引き下げを想定していると述べ、二十九日には、ゴア副大統領がスイスで、現在平均して四〇%という高率関税を課している農業分野で、アメリカは大幅な関税引き下げを呼びかけると演説しています。また、米についても視野に入れた包括通商法のスーパー三〇一条などの復活も決めております。そして、アメリカ政府は、一月二十六日に、通商代表部のフィッシャー次席代表を日本に派遣して、米の関税額が高過ぎるとして、その是正を日本に求めてまいっております。  農水大臣、こういう状況の中で、あなたは、まだ関税化しても日本の米が守れる、こういうふうにお考えでしょうか。また、アメリカ政府は、日本の米の関税額、これについて了解をしているんでしょうか。
  153. 中川昭一

    中川国務大臣 先生御承知のとおり、昨年の十二月十七日に、日本は本年四月一日から米の関税化をすることをWTOに通知をし、関係国に対してその説明をしているところでございます。  先生の御質問の日本の米が守れるかということについては、守れるということを前提にしての関税化措置であり、また、関税化することによって日本の米の需給も悪化をしない、むしろミニマムアクセス米の増加が抑えられるというメリットもあるというふうに考えております。  アメリカからの、バシェフスキーさん等からのいろいろな発言は、私は間接的には聞いておりますけれども、ルールが一応あるわけでございまして、我々はそのルールにのっとってやっておるわけでありますけれども、アメリカが正式にルールにのっとったそのような措置をとっておるとか、あるいは、日本に対して正式に、今回の関税相当量が高過ぎるとかいうことで正式の会談を持っているというふうには承知をしておりません。  我が国としては、アメリカを初め関係諸国に、ルールにのっとった透明かつ公正なWTO上の関税化措置であるということを、これからも友好国として御理解を求めるべく、誠意を尽くして説明を続けていきたいというふうに思っております。
  154. 中林よし子

    ○中林委員 それならば、お伺いしますけれども、米の関税化については、食糧法の国内の改正などとともに、WTO農業協定に定められているように、条約上の我が国の関税率を定める譲許表の改正が必要ですよね。  その改正案件の国会提出について、今資料としてお配りしております1を見ていただきたいんですけれども、これに譲許表の手続が書かれております。  仮にWTO事務局に異議申し立てがなければ、日本が通告して三カ月目、つまり三月二十一日になるわけですけれども、お休みが入りますから三月二十三日以降にいわば国内の国会提出というのはなるわけですよね。しかし、アメリカなどが三月二十一日までにWTO事務局に異議を申し立てたり、あるいは紛争手続に入ったときには、政府はその改正案件の国会提出ができなくなるということになると思いますけれども、外務大臣、間違いありませんか。
  155. 高村正彦

    ○高村国務大臣 譲許表の修正に関する限りは、おっしゃるとおりだと思います。  譲許表の修正が確定して、WTO事務局より確認書が発出された後、速やかに国会に提出したいと考えておりますが、そうであっても、譲許表の修正手続が完了しない場合でも、我が国が特例措置の適用を終了させるために国内法令により関税化を実施することは可能であると考えております。
  156. 中林よし子

    ○中林委員 とんでもないことだと思うんですね。つまり、国際法のルールは、それを待たなければできないし、異議申し立てがあったりあるいは訴訟に入るというようなことがあったらそれはできないというんだけれども、国内法の手続でできる、こういうふうに大臣は今御答弁をされました。  従来、関税交渉の際は、WTO事務局への譲許表改正の通報の際には関係国との調整を済ませてから通報してきたために、異議申し立てがあるということは全くありませんでした。しかし、今回は関係国との事前調整なしにWTO事務局への通報をしたため、異議申し立ての可能性は現実味を帯びてまいりました。特に、アメリカ政府は高率関税について強い不満を持っており、異議申し立てないしは紛争手続の可能性が非常に高い、このように私は思います。  そこで、外務大臣に伺うわけですけれども、WTO農業協定の特例措置からの関税化手続、これは農業協定附属書五に基づいて行われるんですよね。それによると、これは資料2で、今お配りした二枚目なんですけれども、これを見ていただきたいと思いますけれども、我が国の譲許表の改正ができなければ農業協定に定められた関税化の手続の要件が満たされないことになるんではないでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
  157. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 協定解釈の技術的な点について、最初に若干申し上げさせていただきます。  委員御指摘のように、附属書五におきまして規定がございます。第2パラグラフに「6に定めるところに従い、当該指定産品に関する特例措置の適用を終了させることができる。」というふうに規定されておりまして、その第6パラグラフの中に、当該通常の関税は当該加盟国の譲許表において譲許されるという規定があるのは、委員御指摘のとおりでございます。  そこで、この譲許というものが何かということでございますけれども、一般的に申し上げれば、譲許と申しますのは、譲許税率以上の関税を課さないということを国際的に約束するという趣旨でございます。  そこで、このパラ6にございます当該加盟国の譲許表において譲許されるという意味はまさにそういう意味で、関税化に伴い、関税化の措置の内容について明らかにし、譲許税率以上の関税を課さないということを国際的に約束するということを要求しているということでございまして、一定の時点までにそのような譲許をせねばならないという義務はこの部分からは出てこないというふうに解釈しております。
  158. 中林よし子

    ○中林委員 特例措置から関税化に移る場合のルールがここに書かれているわけですよね。そうしますと、この6の要件を満たさないで、大臣が言われたように、国内法の改正だけでできるんだ、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、6の要件、これはすべてが満たされないで国際的に通用できるというものでしょうか、どうでしょうか。
  159. 高村正彦

    ○高村国務大臣 譲許表の修正手続が完了しない場合でも、我が国が特例措置の適用を終了させるために国内法令により関税化を実施することは可能であります。したがって、四月一日までに譲許表の修正のために必要な確認書の締結が行われず、譲許表の修正が発効しなくとも、国内法令により関税化を実施することは可能であります。  政府としては、譲許表の修正が確定して、WTO事務局より確認書が発出された後、速やかに国会へ提出したいと考えておりますが、以上のようなことでありますので、四月一日までに譲許表の承認をいただくことが絶対不可欠であるとは考えておりません。
  160. 中林よし子

    ○中林委員 今、関税税率の国内法の改正だけでできるという話ですけれども、実は、関税の問題は今回の米だけじゃありませんよね。農産物すべてがありますし、それから工業製品だってあるわけです。それならば、これまで国際的手続が必要な関税の決め方というのはあると思うんですけれども、工業製品であれ農産物であれ、国際的な手続をとらなくて国内法の改正だけでこれからもいけるんでしょうか。ほかのものについてはどうですか、外務大臣。——外務大臣、政治的判断です。工業製品も聞いているわけですから、農水大臣じゃないでしょう。
  161. 中川昭一

    中川国務大臣 工業製品等については外務大臣の方からお答えいただくといたしまして、今回の米については、WTO協定上、あくまでも例外なき関税化という大原則の中でのミニマムアクセスという特例措置を我が国は選択をしたわけであります。その特例措置から一般措置に戻るということに関しての関税化でありまして、それが附属書五に書かれております。  そしてまた、附属書五に基づくルールというものがありまして、そのルールにきっちり基づいて今回手続をとっておるところでございますから、先ほど条約局長が答えたとおり、我が国の一方的な国内措置でもってこの手続を進めることができるという立場で政府として進めておるところでございます。
  162. 高村正彦

    ○高村国務大臣 農業製品の場合には、既にこういう協定がある中でその協定どおりするということでありますから、譲許表が承認されなくともそういうことができるということでありまして、ほかのことすべてについて知っているわけじゃありませんが、同じような法制になっているとは承知しておりません。
  163. 中林よし子

    ○中林委員 それならば、今回の米に関してですけれども、WTOのどこに、国内の法改正だけで、国際的に譲許表確定がされないうちにそれが発動できると、その手続は書いてありますか。国内法だけでいけるというのはどこに書いてありますか、教えてください。
  164. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、附属書五のパラ6の、先ほど申し上げました当該加盟国の譲許表において譲許されるという、この文言の解釈でございます。先ほど申し上げましたように、この当該加盟国の譲許表において譲許されるというのは、いずれかの時点でこの枠組み全体に従いまして譲許するということは必要でございますが、しかし、特定の時点までにそれをなさねばならないということはこの文言上要求されておらないというのが私どもの理解でございます。
  165. 中林よし子

    ○中林委員 何を言っているんですか。あなた方は、三カ月というその間に異議申し立てがなければということで、非常に今回のWTOの協定の関税化に特例措置から移るというのを急いだでしょう。それが何よりの証拠でしょう。  それで、国際的なルール、ルールというふうに今まではおっしゃっていたんだけれども、国際的なルールと言うならば、農業を守るならば、農産物がどんどん入って、セーフガードをWTO協定に基づいて発動しなさいと私どもが幾ら要求しても、一度も発動しておりませんよ。それなのに今回は、国際ルールは、これは解釈の仕方でございましてなどというような非常にあいまいな態度で、国際的にはそうでなくても、国内法の関税率を変えるだけでいけるんだなどというような強弁は、私はとても通らないということを申し上げておきます。  そこで、もしこの譲許表の改正がなされなかった場合、現行の譲許表でいくんでしょう。ここに譲許表があるわけです、関税率が書き込んである膨大なもので、その一部を引き出しておりますけれども。そうされると、ここに記載されているミニマムアクセス米の数量、これは、ミニマムアクセス米のところは数量がちゃんと数字が書き込んであります。そうすると、それが現行どおりでいくわけでございますので、農水大臣が量を削減できるできるとおっしゃっておりますけれども、削減できないんじゃないですか。現行どおりでいくんじゃないですか。外務大臣、いかがですか。
  166. 高村正彦

    ○高村国務大臣 繰り返して述べていますように、加盟国による特例措置の適用の終了は、農業協定の定める指針に従った関税を算定している限り関税化という農業協定上の基本原則にかなうものでありますから、譲許表の修正手続が完了していない場合でも、我が国が農業協定の規定に従って特例措置の適用を終了させるために、国内法令により関税化を実施することが可能であるということであります。  その場合に、特例措置の適用が終了したわけでありますから、最小限度のアクセス機会は、農業協定の規定に従って、毎年基準期間における国内消費量の〇・四%ずつ増大するということになるわけであります。そういうわけで、今までどおりということとは違うわけであります。
  167. 中林よし子

    ○中林委員 そうすると、ミニマムアクセス米を輸入する相手先ですね、よその国、それはどこを見るわけですか。ミニマムアクセス米は、関税については書き込んでありません、これから書き込んでいくわけですが。その譲許表そのものがこれでいくんだということが確認されない限り、現行のままがいくでしょう。ミニマムアクセス米については何トン入るんだということがしっかり書き込んであるわけですよ、数字が。  そうなると、その〇・八%が〇・四%に削減できるんだということをおっしゃるけれども、数字の方、この表の方が優先するわけですから、それが削減できるなんということはとても私は言えないというふうに思いますけれども、関税率が書き込まれない、つまり譲許表が成立しないときに、ミニマムアクセス米、ちゃんと削減できると断言できますか。
  168. 高村正彦

    ○高村国務大臣 まさに先ほどから申し上げているとおりでございます。
  169. 中林よし子

    ○中林委員 先ほどから申し上げているとおりというのは、相手国については全く答弁ないです。  日本は勝手に関税率を国内法で変える、そしてミニマムアクセス米も〇・四%になるんだ、決して減るわけじゃないのだけれどもふえ方が多少減るんだ、こういうふうにおっしゃるのですけれども、その根拠は何ですか、外務大臣。
  170. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日本が、そういうことが国内法措置でできると申し上げているのですから、その反射効として国際社会はそれを受け入れざるを得ない、こういうことでございます。
  171. 中林よし子

    ○中林委員 国際的なルールは、WTOでの異議申し立てあるいは提訴、こういうもので、実は、もし異議があれば、紛争なりあるいは話し合いがされるであろうというふうに思います。ちゃんとWTOの農業協定という協定があって、そのルールに基づいてやられるわけですよ。関税化の場合はどうしましょうということが事細かく、要件まで、条件までついて書いてあるのに、それはあっちに置いておいて、国内の法律を変えるだけでそちらが優先するんだというような論法は、これは絶対に私は通らないというふうに思います。  アメリカは、それはもう足元を見ますよ。譲許表、ちゃんとなってないじゃないかと。じゃ、ミニマムアクセス米は前のとおりだから、つまり国内消費量の〇・八%、今年度も入れるよ、こういうことで圧力をかけたり、それが嫌ならもっと関税を下げよ、こういう圧力をかけてくることはもう言うまでもないというふうに私は思います。  これまで農水省は、今農家の人たちだとかあるいは農業団体に行って関税化受け入れのさまざまな説明をされております。どういう説明をされているかというと、ミニマムアクセス米は減るんだという説明と、それから関税は高いところで保たれるんだ、だから大丈夫、四月一日からは順調に船出できますよ、こういう説明をされておりますけれども、こんな国際法、ルールを無視して国内法で勝手にいけるんだなどというようなことを言っていたのでは、船出さえできないのじゃないか、船出したら大きなあらしに遭うんじゃないかというふうに私は思います。  そこで、じゃ次期交渉、一体どういうふうにするのかということで、農水大臣にお聞きします。  昨年の十二月十八日の農水委員会で、  次期交渉は改革の継続ということが二十条ではっきり書いてあるわけでございます。そして二十条に限らず、各条項の字句を変えていくということ、あるいはフレームワークを変えていくということは非常に難しいことであろう。 こういうことを繰り返し答弁をされています。  そこで聞くわけですけれども、日本政府の従来の立場は、食糧安全保障や農業の多面的機能の考え方を農業協定に入れる、こういうことだったと思うのですけれども、字句の変更やフレームワークの変更なしでそれができるとお考えでしょうか。
  172. 中川昭一

    中川国務大臣 次期交渉に当たっての基本的スタンスについては、長くなりますし直接の御質問でありませんから、前回お答えしたことと同じでございますが、それを実現するためには、字句の修正等が必要であれば、それも我が国としてはやっていかなければならない、当然のことであります。  ただし、今先生御指摘のように、次期交渉も改革を継続していくんだという基本のスタンス、これは我が国としてもそれを否定するものではありません。したがいまして、WTOの農業交渉に当たっては、その農業協定全体を最初からつくり上げる、一たんチャラにしてつくり上げる、そういう考えはございません。  ただし、我が国の立場をその協定の中に、各国の御理解をいただきながら実現をしていくということについては、強い意思を持って臨んでいきたいと考えております。
  173. 中林よし子

    ○中林委員 資料の3、お配りしておりますけれども、これは、今度変えていくときの改革過程の継続の条項、やり方、それが書かれているわけですね。  私は、中川大臣のお話を聞いておりますと、前段のところ、この交渉は助成及び保護を実質かつ漸進的に削減する改革過程の継続という観点から行われることになっており、まさに輸出国サイドの観点から関税水準だとか国内助成の大幅な削減等を要求することが想定されているのではないか、まさに輸出国の側に立っていることではないのかというふうに思うわけですね。  私は、この中で非常に大切だと思うのは、実は後段の部分だというふうに思います。後段は、「実施期間の終了の一年前にその過程を継続するための交渉を開始することを合意する。」ということで、「次のこと」ということで、(a)、(b)、(c)、(d)、こういう観点が書かれております。私は、この中で特に(c)の項目、非貿易的関心事項、つまり食糧安保だとか自給率問題だとか、それから環境問題ですね、こういうものを交渉するならばぜひ貫かなければならないというふうに思うのですけれども、この観点については貫いていくおつもりなんでしょうか。
  174. 中川昭一

    中川国務大臣 まさに先生御指摘のように、現在の農業協定が輸出補助金あるいは輸出規制のようなものが残ったまま、輸入国に対する義務というものが非常に厳しいという意味で、バランスを欠いておるというふうに私ども思っておるわけでございまして、そういう観点から、輸出国、輸入国のバランス、あるいは農業の果たす多面的機能、あるいは世界的な人口と食糧との将来的なバランスの問題等々、この資料にあります非貿易的関心事項について、大いに我が国の立場を主張していきたいと考えております。
  175. 中林よし子

    ○中林委員 大臣、そうなれば当然、字句を変える、フレームワークを変える、新たな改正要求をすることが必要だというふうに思うんですけれども、それはおやりになるという考えですか。
  176. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、このいただいた資料3にありますように、これはまさに、そういうふうにWTO次期交渉でもやりましょうということがこの二十条に書いてあるわけでありまして、それをやっていくという中でのこの非貿易的関心事項の議論を日本の立場でやっていこうということでございますから、まさに協定のこのフレームワークにのっとった上で、いろいろな我が国の立場を主張していくということでございますから、その場合には、字句の修正等について、最初から動かさないということは全く考えておりません。
  177. 中林よし子

    ○中林委員 外務大臣にお伺いいたします。  前回のWTO協定のとき、協定を結ぶときの話ですけれども、日本政府が一番頑張ったのは、まさにこの非貿易的関心事の項目だったというふうに思うんですね。  一九九四年十一月十七日、WTO特別委員会で、当時の河野外務大臣がこういうことをおっしゃっているんですね。我が国の強い主張によって、ウルグアイ・ラウンド交渉の最終段階では環境保護あるいは食糧安保、こういった視点が文言としても取り入れられるというふうなことになっております。さらに我が国としては、今後ともWTOを初めとする国際機関において、この問題については主張を続けていかなければならないというふうに思う、こういうふうに答弁されているわけですが、今でもその主張は変わりませんか。
  178. 高村正彦

    ○高村国務大臣 当然変わりません。
  179. 中林よし子

    ○中林委員 外務大臣は変わらない。農水大臣も、字句を変えるということを、こういう手続にのっとって、非貿易的関心事項の問題も含めて、今後の交渉には臨む、こういうことをおっしゃるわけですね。何かありますか。
  180. 高村正彦

    ○高村国務大臣 私が農水大臣とあたかも矛盾したことを言ったかのようにとられるのは非常に心外でありまして、全く同じことを申し上げているんで……(中林委員「いや、いや、そうは言っていないですよ、私。何を言っているんですか。全然言っていないですよ」と呼ぶ)そうですか。それは失礼しました。
  181. 中林よし子

    ○中林委員 いや、同じことを確認しただけの話ですよ。ちゃんと聞いておいてくださいよ。  字句を変える、農水大臣は、そういうものにのっとってやるとおっしゃった。それならば、今、農家の人たち、あるいは国民すべてですけれども、その人たちが何を望んでいるか、御存じでしょうか。  農家の人ですけれども、これはもう農水省が褒めてもいいような農家の人の声です。米と麦三十七ヘクタールつくっている専業農家の人です。  農民、消費者が幅広く議論する余地もなく、米関税化が慌ただしく決定された。米専業農家が大変です。ここ数年の生産者米価引き下げと大幅減反が経営を苦しくして、将来展望が持てない。政府は、WTO協定を改正するよう提案すべきだ。こういうことをおっしゃっております。  政府が奨励して奨励して、大規模農家をつくった。そういうところが今、次期交渉に当たって、政府が率先してのWTO協定そのもののいわば改正を要求しているわけです。  そこで、日本共産党は、こういう農家の方々の御意見、専門家の方々の御意見、あるいは政府がこれまで言ってきたことも含めて考えて、次期WTO農業交渉において、どこをどう変えるかという具体的な提起を行っております。これは全文ではありませんけれども、どういう観点で私たちは政府にぜひそういうものを取り入れてやってほしいと考えているかということを少し述べてみたいと思います。  第一に、食糧自給の根幹をなす米を自由化の対象から外す、実効ある輸入規制が行えるようにすること。二つ目は、各国に農業生産の縮小を迫る内政干渉的規定を削除し、各国の自主性が尊重されるように改めること。それから、三番目には、環境保全のための施策に、アジアモンスーン地帯などでの農業生産の維持を加えていく。  大臣、御存じですけれども、WTO協定第十条で、三分の二以上の賛成で改正ができる、こういうことになっているわけですね。ですから、今、外務大臣もおっしゃった、農水大臣もおっしゃったのならば、政府は全力を挙げて改正に向かって、字句のどこをどういうふうに変えていくんだ、どこの条項をどう変えるんだ、こういう案をお持ちのはずですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  182. 中川昭一

    中川国務大臣 基本的にどういうスタンスで臨むかということにつきましては、我が国の立場、これは一々説明していると長くなりますし、前回、たしか先生等にもお答え申し上げたと思いますが、そういう基本的スタンスで臨んでいきたい。では、具体的に何条をどう変えるかということにつきましては、まだ国内的に私はやるべき作業がたくさんあると考えております。  今、農業団体の方の御意見をよく聞いておるというお話がありました。私どもも、また各党さんもいろいろと聞いていらっしゃると思いますが、そういう農業の生産現場の方々、あるいは農村地域の皆さん方、さらには、それを代表する方々、そしてまた消費者、都市に住む皆さんを含めた全国民的な立場、そしてそれを代表する各党、国会の場の御議論等を集大成した形で、国際交渉に臨んでいき、さらには、日本の立場と立場を同じくする、また理解をしていただく世界じゅうの国々との協調関係というものも広げていきながら、次期交渉に臨んでいかなければならないと考えております。  そういう意味で、我が国としてのスタンスは基本的には固まっておりますけれども、まだそれに向かって内を固め、また外に向かって輪を広げていくための作業というものもございまして、何条をどういうふうに改正するかということについては、具体的に申し上げる段階ではございません。
  183. 中林よし子

    ○中林委員 関税化に先に踏み切っておいて、本来、その関税化というのは米の完全自由化をもたらすものなんですよ。口ではその非貿易的関心事項、これを中心に主張したい、このようにおっしゃるわけですけれども、どこをどう変えるかということを今おっしゃらない。  私は、どうも聞いていて、言うだけは言うんだけれども、実は変えないままにいくんじゃないか、こういう懸念を持ってしまうわけです。だから、私は、本当に日本の農業を守る、そして今世界が求めている食糧を安定的に供給する方向に日本政府がちゃんと突き進んで二十一世紀を迎える、こういう方向を出すその保証、もう二〇〇〇年の交渉といったらすぐそこですから、具体的な提案を持ってそうおっしゃるならば、もうあすからでも各国を回って、ここをこう変えましょうと一緒にやって、三分の二以上の賛同を得るような努力、これを当然やるべきだ、このように思います。そのことを強く主張し、次の質問に移ります。  次は、自給率問題なんですけれども、一九九七年の食糧自給率は、カロリーベースで四一%、穀物で二八%と、前年より一ポイントずつ下がりました。  今回の自給率低下の原因は、農水大臣、何だとお考えなんでしょうか。  私は、原因は明らかだというふうに思うんですね。それは、WTO協定のミニマムアクセス米の輸入と、それから減反政策によって米の自給率が一〇〇%をついに割ったわけですよ。九九%になった。米の供給カロリーというのは全体の二五%を占める。ここが下がれば全体が下がる、こういうことだと思うんですね。  ことし以降、さらにミニマムアクセス米がふえるんですね。それから、九八年度産米は九七年度産に比べて不作になっております。米の自給率はさらに下がって、全体のカロリーベースは四〇%を下がるのじゃないか、こういうことが言われております。  それに加えて、米の関税化が導入されれば、私たちは阻止するよう頑張りますけれども、輸入がさらに増大して、国内米生産農家は大打撃を受けて、農家の人が米づくりから離れる、こういうことも予測されるわけです。そうすると、自給率はますます低下をすると予測されるわけですけれども、米自給率が下がらない、こういう保証はありますか。だから、原因と保証です。
  184. 中川昭一

    中川国務大臣 昨年の供給ベースの自給率、カロリーベースで四二から四一に下がった、あるいはまた穀物ベースで二八とまた一ポイント下がったということの原因につきましては、国内生産の増加分、あるいはまた米の作況が八年度に比べて下がった分等々の結果としての、整数値で一ポイント下がったということになっておるわけであります。  我々としても、自給率を上げていこうということが今度の新しい大綱、プログラム、そしてこれから御審議いただく基本法の中の大きなポイントの一つでありまして、上げていきたいということで、今実現可能な自給率というものをこれから目標をつくっていかなければならないと考えております。  なお、米の関税化によって自給率が下がるということは、つまり米が入ってきて、それによって生産者に影響を与えるということはないということが今までの基本スタンスでありますし、関税化によってもそれはないという前提で我々は関税化にしております。  保証があるかといえば、別にルール上の保証はないわけでございまして、それだけの関税相当量を払えば輸入できることは事実でございますけれども、過去四年間における実態、あるいはルールに基づいて張った関税相当量の結果を見ますと、これによって、関税化による米が入ってくることによって、生産者あるいはまた自給率に影響を与えるということはないと私は判断をして関税化をしたわけでございます。
  185. 中林よし子

    ○中林委員 米の自給率が下がる、その予測は今私が述べました。では、米の自給率はどうやってふえるんですか。不作になったんでしょう。それから、減反も進められるんでしょう。どうやって自給率は上がりますか。
  186. 中川昭一

    中川国務大臣 不作になったと申し上げたのじゃなくて、平成八年度の作況が一〇五で、九年度が一〇二と、やや良という状況であることは変わらないわけでありまして、だから、それで米の生産量がよかったことは間違いないわけであります。  そういう中で、米の消費がだんだん落ちてきている。これは別に外国との関係ではないわけでありまして、そういう状況の中で、消費が落ちているという状況が米の問題にあるわけであります。しかし、それと関税化によって自給率が下がるということは全く関係のない話であります。
  187. 中林よし子

    ○中林委員 関税化の問題が関係ないと言い切られました。とんでもないと思います。  実は典型的な事例としてもう既に日本にはあるでしょう。牛肉は一九八八年に関税化され、そのとき五八%あった自給率は九七年には三六%にまで急落しているんですよ。  牛肉・オレンジ輸入自由化についての日米交渉の自民党の責任者の一人でありました江藤隆美衆議院議員が、一九九三年の十月五日のこの予算委員会でこうおっしゃっているんですね。  質問されているんですけれども、「私は抜かったと思うことがある。それは、牛肉・オレンジの自由化、十年やった。外務大臣も一緒にやってきた。今にして思うと、関税化というものがいかに怖いものであるかということを今つくづく私は反省をする。」こう述べられているんです。  あなた方は、主食の米について、こう反省されていることをまた繰り返すつもりなんでしょうか。
  188. 中川昭一

    中川国務大臣 米の関税化につきましては、九五年からのミニマムアクセス制度の実態を判断いたしまして、関税化をルールにのっとってやることによって、これ以上の米が関税化によって入ってくることは予想できない一方、義務的に入ってくる米の量を半減することはできるという状況の中での判断であります。それともう一方、関税化することによって、次期交渉への対応がより有利になるという判断があったこともあるということを御理解いただきたいと思います。
  189. 中林よし子

    ○中林委員 国際的なルールを無視してやろうとすることが、なぜ次期交渉に有利に働きますか。足元を見られますよ。とんでもない言い方だというふうに思います。  そこで、実は、これは日本農業土木総合研究所というのが「わが国の食料輸入が開発途上国に与える影響の検討」というものを出しておられます。この中で、日本が輸入している輸入依存熱量で、世界の栄養不足人口、八億人と言われておりますね、その人たちをどのくらい救えるかという計算をしているんですが、何と三三・五%、二億六千万人分を救済できるということを言っているわけです。  政府も参加をしました国連食糧農業機構、FAOがローマで開催した世界食料サミット、ここのローマ宣言、何を書いてあるか。政府は参加しているんだからおわかりだと思いますけれども、これを一々述べる時間がありませんけれども、もう高らかに、主食を含む食糧の増産が世界で図られなければならない。世界の飢餓人口を救うためにも、また地球環境を守るためにも、食糧自給率を高めることは日本政府として全力で取り組まなければならない不可欠な課題だというふうに思うんですけれども、この米関税化は自給率低下にさらに拍車をかけ、世界が求め、政府も参加した宣言にも逆行するものなのではないでしょうか。
  190. 中川昭一

    中川国務大臣 まず冒頭、先生は国際ルールに違反した今回の措置とおっしゃっておりますが、全く我々は国際ルールにのっとった形でこの作業を進めているということを申し上げなければいけないと思います。  それから、関税化をすることによって大量に米が入ってくるということが仮にあるとするならば、平成五年のあの大凶作ではありませんけれども、これによって世界じゅうの人たちに迷惑をかけるということになりますが、我が国としては、先ほどから何回も申し上げておりますように、関税化移行によって、日本に外国からの米が入ってくることは予想しないという状況、それからミニマムアクセス量も半減することができるということは、逆の意味で国際貢献に私はなるのではないかと考えております。
  191. 中林よし子

    ○中林委員 何を言っているんですか。ミニマムアクセス米輸入という特例措置をあなた方は決定したけれども、農民は断じて受け入れを認めてはいないんですよ。あなた方がやってきたことでしょうが。それを多少、今度の関税化によって減るから農家の人たちのためになるんだなんて、そんなことを農家の人たちが聞いたら何と思うでしょうか。  私はもう本当に、今の質問を通じて怒り心頭です。米の関税化は日本農業破滅への道ですよ。あの牛肉やオレンジその他の関税化で日本の食糧自給率がここまで下がってきて、本当に二十一世紀がこれで迎えられるのか。日本国民の命がかかっているという政策ですよ。だから、今からでも私は遅くないと思うので、米の関税化は撤回すべきだ、このことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  192. 中山正暉

    中山委員長 これにて中林君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬古由起子君。
  193. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  私は、国立病院・療養所の再編成問題について御質問をいたします。  厚生省は、一九八六年一月に、国立病院・療養所の再編成全体計画を発表いたしました。  これは、十年をめどに、ハンセン病療養所十三施設を除く二百三十九施設のうち七十四施設を統合、移譲、再編成するというものです。現在、四十六の施設が残っております。  この再編成に当たりまして、国会の審議の中でも、この再編成についても今後十分地域の医療を確保していくんだ、こういう確認や、また、地元の自治体との十分な話し合い、こういうものを積み重ねて合意が大事なんだ、このような確認が何回もされているわけです。  そこで、お聞きしたいのですけれども、厚生大臣、このような数々の国会の答弁、審議過程を含めまして、今日の再編成に当たっての精神といいますか、これは引き継がれているというふうに私は考えているわけですけれども、厚生大臣の所信をまず伺いたいと思います。
  194. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 再編計画の推進に当たりましては、従来から、地元関係者と十分話し合いをいたしまして、特に自治体、議会、医師会の理解を得ながら進めてまいっておりますが、その方針に変わりはありません。今後とも、こうした考え方に基づきまして再編成をやっていきたいと思っております。
  195. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 現在、国民の医療を守り、国立病院・療養所の廃止、民営化反対、独立行政法人化阻止、これを求める署名は全国で百万を超えております。地方議会決議も六百四自治体、宮崎県では全自治体が決議を上げているという状態になっております。厚生大臣のお地元であります長野県でも、六割がこの決議になっているわけです。  長期間にわたって地域医療に貢献し、そして地域の人々によって支えられてきた国立病院や療養所は、国民の共有財産だと思うのですね。国立病院や療養所の統合や移譲というのは、今大臣が述べられたように、あくまでも地元の関係者との合意、理解、こういう点が大変大事だと思います。  ところが、私、全国の幾つかのこの統合問題、移譲問題を調査しましたら、大臣の今述べられた趣旨と反する事態が幾つか生まれてきております。  私、きょう、ちょっと二つの「議会だより」というのを持ってきたんですが、一つは、香川県の高瀬町の議会なんですけれども、ここでは、四国の医務局、地元の関係者と意見交換している内容が載っているのです。ここでは、厚生省は、「十二年末までに決着なければ存続はあり得ないと判断してほしい。」こういうふうに町に迫っているというのが「議会だより」に出ております。  もう一つ、これは鹿児島県の隼人町というところなんですけれども、ここでも、ここに書いてありますが、厚生省との話し合いの中で、平成十二年度末には、霧病、霧島病院は国立として廃止になる、早く決定すれば有利になる、早く移譲せよ、こういうふうに迫られたということがこの「議会だより」の中には出ているわけです。  今、私二つの「議会だより」を御紹介しましたけれども、実は、こういう実態というのは、決してこの二つだけじゃなくて、全国で、厚生省が幾つかの移譲する自治体にはこういって無理やりに、自治体にとっては何だか無理やりに引き取れと言われているような気分になる、そういうふうに受け取られるような、そういう進め方がされているわけです。  もうこの方針が決まってから十年以上たっていまして、なおかつ引き取れない、移譲できないというのは、それぞれ自治体の事情がやはりあると思うのですね。そういう場合には、少なくとも地元の自治体の関係者と合意が得られないという場合は、無理やりにこうした統合や移譲を進めるべきではないと私は考えるのですけれども、その点いかがでしょうか。
  196. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 国立病院と療養所の再編成につきましては、委員が十二年末ということをおっしゃっておられますが、そのとおりでございまして、平成八年の十一月に国立病院・療養所の再編合理化の基本方針というのを改正いたしております。  また、同年十二月、行政改革プログラムというので、引用いたしますと、統廃合及び経営移譲の終了していない施設については、平成十二年度末までに施設の廃止を含む処理対策を決定した上、速やかに実施すると閣議決定しております。  それから、昨年の六月に施行されました中央省庁等の改革基本法におきましても、引用いたしますと、「民間若しくは地方公共団体への移譲、統合又は廃止を推進すること等により、その再編成を一層促進する」というように法定されております。  そういうことでございまして、再編成が終了していない施設、七十四病院くらいを統合目標にいたしておりますが、それにつきまして、現在までのところ実行で二十六病院くらいは完結しておりますが、平成十二年度末までに廃止を含めた対処方策を決定して速やかに実施していくことは、既に今申し上げた方針が決定されておりますので、私どもとしてはその方針を変えるわけにはいかないということでございます。  しかしながら、現場における香川県と鹿児島県の例を引用されましたが、職員が、この方針に従って何とかして移譲をして、この法律あるいは閣議の方針に従ってやろうとして努力いたしておりますので、今おっしゃられたような誤解を招くような態度なり言質を与えるようなことは、あるいはあったかもしれません。これは、私も確認しておりませんが、職務遂行上熱心の余りというか、そういうことは十分考えられると思います。しかし、先ほど申しましたように、処理方策を決定するに当たりましては、地元の関係者と十分話し合いながら、自治体、議会、医師等の理解を求めて進めていくという方針には変わりございません。
  197. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 現場では熱心の余りというお話がありました。しかし、今大臣が言われたように、地元の理解、そして合意、こういうものを大事にされるなら、こういう踏み込んだやり方というのは大変問題がある。その点で、今後こういう地元との話し合いについては、よくその趣旨を徹底していただきたいというふうに思うわけです。  そこで、今大臣が国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針の問題を言われたと思うのです。私もきょうここに持ってまいりました。  この中には、確かに、平成十二年度末までの施設の廃止を含めという内容が載っております。しかし、その前提として、経営移譲の対象とする国立病院・療養所はどういうものかということがここに書かれているのですね。  これを読みますと、「地域住民の一般的医療の確保の役割は果たしているが、病床数、診療機能、診療圏等を総合的に勘案して国が直営するよりも他の経営主体が経営することが適当と考えられるものについては、経営移譲の対象として検討するものとする。」このようになっております。いわゆる、ここで載っておりますように、地域住民の一般的な医療の確保の役割を果たしている、このように述べているわけですね。  そして、数々のこの再編成の問題が論議された国会でも、地域医療を確保するということが大変大事なんだ、むしろこの法律、再編成を進めることによって地域医療を充実する明るい展望も出てくるんだというお話も、この答弁の中でもあったのですけれども、明らかに、地域医療が必要だということをあなたたちが決めて、そこに移譲するんだということになるわけですね。  そうしますと、今大臣が言われたように、数々の方針で、もちろん統合した場合には二つの施設が一つになったりして廃止という場合はあるわけですけれども、移譲の場合は、皆さんが、厚生省が出している方針どおり、ここは医療が必要なんだというふうに決められているわけですから、そこにしか移譲という形に指定されていないわけですよね。  ですから、必要なところを廃止するということはどういうことになるんでしょうか。必要なら、ここが医療として必要だ、しかしできたら地方自治体に、違う経営主体にやってもらいたい。しかし、そこの自治体は、困ります、うちとしてはいろいろ話し合ってみたけれども、どうしても引き取れない。そういう場合は、当然もう廃止するぞということではなくて、では話し合いができるまでは国立で続けましょうかということも当然選択肢としてあり得るんじゃないかというふうに思うんですが、なぜ廃止ということが出てくるのか、その辺お聞かせいただきたいと思います。
  198. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは法律をつくりまして再編整備を進めておるわけでございまして、地域医療の重要性については私どもいささかも疑うものではございません。しかし、国立病院の機能を基幹的な政策医療機関として特化していきたいというのが再編成の根底にあると思うんですね。そういう意味で、僻地でありますとか医療に恵まれない地域は、あるいは公的な他の自治体における病院その他でカバーしていただけるというような前提に立っているように思われます。  したがって、地域医療を軽視するわけではございませんが、国立病院自体のあり方を私どもは今申しましたような方針でやろうと進めておるわけでございまして、これは何が何でも強行といっても、移譲といっても、移譲を受ける方が絶対受けませんのでは、それはもう話にならぬわけですから、粘り強く、とにかく厚生省の方針を説得して貫いていくという折衝をやるということしかないとしか申し上げられません。
  199. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そうしましたら、大臣、粘り強く粘り強くお話しいただいて、もうあれ決めてから十三年もたっていますから、それでもどうしても引き受けられないという場合には、まだ引き続き、二〇〇〇年度の末に来ても当然話し合いをしていくということになるんじゃないでしょうか。二〇〇〇年末までに決まらなければ廃止だぞというふうにはなりませんよね。その辺はいかがですか。
  200. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本方針とか閣議決定の話は先ほど申し上げたとおりでございまして、これは明確に二〇〇〇年末を目標といたしております。  したがって、我々としては粘り強くやりますが、そしてまた、その間に解決されることを期待するわけでありますが、あらかじめ、解決しなければ延ばすんだよということは今のところ申し上げる立場にはないということだけ申し上げておきます。
  201. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今のところはもちろん皆さんの方針どおり進められるとしても、その時点で必ず廃止ですともまた言えない。引き続き話し合うということは当然あり得ると思うんですね。  これは実は、この再編の特別措置法が審議された国会の中でも当時の斎藤厚生大臣が述べられているわけですけれども、見切り発車をしてやっていくという性格のものではないということはたびたび申し上げてまいりました。まさに話し合いを十分に重ね、大方のコンセンサスが得られるまで努力をいたしてまいる。その大方のコンセンサスが得られるまでは、これまでの国立病院・療養所はこれまでどおり存続していくということは当然であると思っておりますと、このように当時の大臣は答えられているわけですね。  ですから、コンセンサスが得られない場合は当然持続的に話し合っていく、国立として存続するということになっていくんじゃないでしょうか。この点いかがですか。
  202. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 当時斎藤厚生大臣が、たしか六十二年ごろでございますが、この統合編成の方針が決められたのが六十一年でございますから、それに関しての御発言だと存じます。  趣旨は当然だと思います。しかし、その後の情勢の変化によりまして、今申しましたように二〇〇〇年末、十二年末までにはやるということも閣議決定もされておりますし、基本法には十二年ということは記載はされておりませんけれども、基本方針でも定めたところでございまして、当時はまだ、斎藤厚生大臣のころはそんなに具体的な絵も描けていなかったんじゃないかと思われますが、趣旨はわかります。
  203. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 趣旨はわかるけれども、もう当時の斎藤厚生大臣の発言は御破算にしてもらう、もう変わったんだという御認識でしょうか。  この斎藤大臣の、もう何度も、合意をきちっとやってもらいたい、そして、もし理解が得られない場合はきちっと存続させてくださいよということを確認した場合にこのように斎藤大臣は答えられているわけですよ。そうすれば、当然引き続き、あなたが最初に言われたように、住民との合意、これが基本なんだ、合意が得られない場合は引き続き粘り強く、今の段階では何とか移譲するようにそれは努力されるかもわからないけれども、その時点で、期限が来てもなおかつ理解が得られない場合はそのまま引き続きというのは、今の斎藤厚生大臣の当時の答弁は生きているというように考えていいんじゃないでしょうか。いや、もうそんなのは時代が変わったんで、斎藤大臣がどう言おうともう二〇〇〇年度末に来たらさっさと廃止してもらう、こういうように転換されたというように考えていいんでしょうか、どちらですか。
  204. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 斎藤国務大臣の発言を今ちょっと詳細に見ましたが、見切り発車をしてやっていくというような性格のものでないことをたびたび申し上げてまいりました、まさに話し合いを十分に重ね、大方のコンセンサスを得られるまで努力をいたしてまいる、このことはそのとおりでございます。  それからその次の、その大方のコンセンサスが得られるまでは、これまでの国立病院・療養所はこれまでどおり存続をしていくということも当然であると思います、こう記述されております。  私が申し上げたのは後半の点でございまして、当時はまだ十二年とか二〇〇〇年に統廃合を七十四するんだというようなことを決定していなかった事実を申し上げたわけでございまして、そういう前提での御発言ではないかということを申し上げたわけで、決して、全くこれが継承されていないということではございません。先ほど申しましたように、粘り強く二〇〇〇年までにそれを実現していきたい、そういうことでございます。
  205. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 その当時は二〇〇〇年までにという年度は出ていなかったけれども、しかし、斎藤大臣のこの答えられた趣旨は十分理解して進めていただく、この点で確認させていただいてよろしいですか。
  206. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 趣旨はよく理解して、粘り強く折衝を重ね、結論を得てまいりたいと思っております。
  207. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 自治大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、先ほど紹介しましたように、行き過ぎたというお話もありましたが、今、全国の地方自治体、大変地方財政も危機的な状況に陥っております。そういう中で病院を引き受けるということはもう大変な決意が要ると思うんですよね。  それで、今大臣が言われたように、国立病院は地域医療としても重要な役割を果たしている、こういう場合に、引き取ってくれと言われても財政事情が大変なんでどうしてもできない。そうすると、二〇〇〇年までにやらなければ廃止するぞとか、早くやっておかなきゃ予算がつかないぞみたいな、こういうやり方が率直に言って幾つかのところで出ているわけです。地方自治という立場からこの点は、こういう強引なやり方、今地方自治体が病院の移譲を受けるという点についてその辺はどのようにお考えでしょうか。
  208. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 先ほど来の質疑のやりとりをずっと聞いておりまして、厚生省の方も何とか早くきちんと整理をしていきたいという一つの大きな簡素化の方向というのはあるわけですが、同時に一方で、御指摘のとおり地元自治体としても、そういう地域医療という観点からも非常に大事な役割を果たしているわけで、引き受け相手が必ずしも自治体だけでなくて、言うなら公的な医療機関、開設者等もその引き受けの対象ということになって、今日までもそういう実際に地域の医師会などが受け皿になって継承してもらうということもあるわけであります。そういう点で、直ちにすぐ自治体に移譲するとか引き受けてくれということだけじゃなくて、できるだけいろいろな努力を粘り強く今していただいておる最中だろうと思っております。  そういう点で粘り強くやっていただきたいと思っていますが、自治体に対して無理強いをすることのないようにはしてもらわなければいけないということで、これはもう御案内と思いますが、既に昨年も、自治省の財政局長から厚生省の官房長にあてても、その趣旨のことを、無理強いをされることのないように連絡をいたして、十分この点は申し入れをいたしておるところでもあります。
  209. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひ自治体の関係者の合意、そういうものの理解を十分、納得を得た形でこの問題は解決を図るべきだというふうに思います。  そこで、私、今、統廃合や移譲の対象になっているところが何で自治体が引き受けざるを得ないという状態になっているのかということについてお聞きしたいと思うのですが、国立病院の施設が、大変ひどい状態になっているところが大変多いわけですよね。  こういうひどい施設なら新しい病院に合併した方がよくなるんじゃないか、こういう声が自治体関係者や住民から出るとか、それから、お医者さんもまともに配置されていない国立よりは自治体病院になった方が医者が確保できるんじゃないかとか、こういう声も率直に言って今の国立病院・療養所にはあるわけです。  私、全国の病院・療養所について幾つか調査をさせていただきました。そうしますと、ひどいのは、手術室の雨漏りがあって手術を中止する、それから自家発電の装置が呼吸器を使っている難病患者の病棟にないために台風で停電になったら大変な事態になる、それからMRIとかCT装置がないために、せっかく国立病院に入院しているのにまた検査だけ違う病院に行かなきゃならない、こういうケースですね。それから老朽の配管改善の予算がつかないために、外来患者の待合ホールは石油ストーブをたいてやっているとか、それから筋ジストロフィー病棟の人工呼吸器に一台も予備がない、緊急時には対応できないとか、幾つかの事例が次々と出て、私も本当に背筋が寒くなる思いをするわけです。  特に、ここは統廃合の対象だ、将来廃止する予定だと厚生省は思ってみえるかもしれないけれども、私たちはそれは納得しませんよ。そういう対象だという病院でも、少なくとも命とか患者さんの人権にかかわるこういう施設などは、設備などは、せめてきちんと緊急対応するべきではないか。特に自家発電装置だとか人工呼吸器などは、やはり直ちに、どういう病院であってもきちんと調査して配備すべきだと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  210. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 国立病院とか療養所につきましては、再編対象の施設も含めまして、従来、保守、保安整備や医療スタッフの配置は行ってきております。ただ、機能強化を目指した施設とか、人的な面での強化につきましては、限られた予算とか定員の枠内でございますので、その必要度、緊急度、あるいは優先順位などを考慮して整備せざるを得ないというのは御理解いただけると思うんです。したがって、二百十四カ所ある国立病院・療養所のすべての施設を、点検はぜひ必要でございますけれども、一律に充実強化するというのは、なかなか現実問題としては困難な状況がございます。  今委員の指摘されましたような、自家発電機のないところとか、あるいは人工呼吸器がないというような点は、人間の生命を預かる施設としては、たとえその経営形態はどのようになろうとも、今直ちに、医療に支障を来すようなことがあってはなりませんから、委員の指摘されるような事実は、あればよく調べて対応しなければならぬと思っております。
  211. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 もう一点、病棟集約、職員不足の問題についてお聞きしたいと思うのですが、一九九〇年から一九九七年の間に、百二十六病棟、五千五百八十八ベッド、そして看護職員は二百六十六人減員されています。その大半は結核病棟と小児病棟なんです。  全国的な統計を見ますと、全国の病院では夜勤三人以上の体制が約五割になっているんですが、国立では、夜勤三人以上というのは一割台しかありません。中には、調べてみますと、一人夜勤というところもあるんですね。もし何かあったらどうするんだというふうに思わざるを得ない状態なんです。  特に国立療養所の重度の心身障害者、筋ジス病棟では、本来必要な配置基準の七割、実質的には七割程度しか配置されていません。特に重心病棟は、今問題になっております看護の二交代制長時間勤務をそこでかなり実施をして、看護婦さんにもとても過酷な労働条件になっています。  それで、私も調べてみましたら、例えばそういう重度の障害者の病棟で、人手がない、おふろの回数を減らすという問題があるんですよね。重度の障害者というのは、その発達というのは本当におふろの中で、例えば笑顔が出てくるとかちょっと体が動くとか、物すごい長期間かかってその人たちが発達していったり、いろいろな障害をそれなりに克服するという長い過程があるわけですね。それで、おふろの回数を減らすために人を減らすということになると、その人の一生にとってもどんなに重い負担になるかというのは明らかだと思うのです。  それで、厚生省は七四年度に、七七年までにはこの重度の障害、重心病棟の配置基準、これを達成するんだというふうに前に出されたことがあるんですね。ところが、二十五年間たってもいまだに全体の配置基準の七割程度しかないという大変ひどい状態になっているわけです。  せめて配置の基準までは、その基準でも実際にはなかなか対応できなくて、現場の看護婦さんやスタッフが本当に苦労されているわけです。せめて基準までは何とか確保する、この点でも、もう統合、移譲対象の病院だからほっておいていいということじゃないと思うんですね。これについても至急に調査していただいて、やはりきちんと基準を満たすように措置をとっていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  212. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今、人員の問題、特に看護婦の配置人員についての御指摘だろうと思いますが、これは御承知のとおりでございますが、重心病棟の患者につきましては四十人に二十二人看護婦をつけるという基準になっておりまして、一般病棟が十七人ということは御存じのとおりだと存じます。  そこで、トータルとして見ますと、今看護婦が三万三百四十人くらいおりますが、この間定削等ももちろんかけられておりますが、さらにそれを上回る増員をいたしまして、一万一千六百人くらい増加いたしてきております。定削が毎年二百から二百三、四十ありますから、それを超えて増員が行われておるということでございます。  ちなみに平成十年度が二百九十人、十一年度が二百十八人というようなことになっているということを、まず全体的な姿を申し上げた上で、それで、今おっしゃいました重心病棟の看護婦配置が七割というお話でございますけれども、実際私ども、委員の御指摘があったものですから調べさせてみましたが、七割というのはちょっと過少ではないかな。八八%ですから、大体九〇%くらいは充足しているというのが実態のようでございますから、そのことだけは申し上げさせていただきますが、重度心身障害児の医療の問題でございますから、十分配慮して適切に配置しなければならぬ、これはもうおっしゃるとおりでございます。  なお、おふろの問題等御指摘がございましたが、いろいろ不備な点があれば、これは看護業務等に工夫を加えまして、患者にとって大変な事態であればそれは改善していかなければいかぬというように思っています。
  213. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 職員の配置の問題は、八割、九割と言われたんですけれども、実際には、配置されても、違う、例えば外来へ回されるとか、実態としてはそういう状況だということはもう一度よく調べていただきたいと思うのですね。数はいっているよ、しかし働いている人はこういう状態になっているということもよく調べて、せめて基準は満たせるようにぜひしていただきたいと思います。  それで、今、施設の問題も職員の問題も、実はこれが系統的にといいますか出されてきているというのが、いわゆる立ち枯れ政策と言われているものなんですね。これはもう一般に、ちまたに言われているわけです。  病院の統廃合、移譲予定のところを、施設設備が必要だけれども予算をつけない。配置基準があっても守らない。こうやっていると、だんだん地域の病院に対する期待がなくなってくるわけですね。そして、だんだん病棟も閉鎖する。こういうやり方が今とられてきているという点が、大変私は問題だと思うのです。こういうやり方も、病院の再編成の措置法が制定された当時の国会の論議からしても、またその後のいろいろな厚生省の答弁の中でも、地域医療を確保するのだという点からも大きく外れていると思うのです。  実は、この立ち枯れ政策というものが何かどこかから来ていたわけじゃないということが、最近よくわかりました。  私、きょう持ってきたのですけれども、国立病院・療養所改革検討会中間報告というのがあります。これは平成二年三月となっていまして、取扱注意というふうになっているのですね。これはなかなか、手に入れようと思っても大変でした。とうとう手に入ったわけなんです。  この内容がまたすさまじい内容で、これは聞きますと、厚生省内の課長補佐クラスの検討会だというふうに聞いているのですが、これまで立ち枯れ作戦をやってきたがと書いてあるのですね。立ち枯れとちゃんと自分で書いてあるのですね。やってきたが、手ぬるい。重点的、効率的な立ち枯れ作戦を、企画・統括部門を設置して予算を配分する、人の配置も戦略的に徹底してやれと書いてあるわけですね。  それで、この報告書には、廃止しようとねらった病院や療養所をどうやってつぶすか、そのために障害になっている労働組合を実質的に、実質的ですよ、どういうふうにつぶすか、こんなことまで書かれている報告書なんですが、大臣はこれは御存じでしょうか。
  214. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私も、予告がございましたから、それは承知して、拝見いたしました。  その問題は、これは御案内のように、今委員も指摘されたように、当時の、一九九〇年でございますから今からもうかなり前の部内資料として、しかもこれは任意の私的な勉強会のものでございます。そして、中間報告という形で出されまして、確かに、立ち枯れ作戦の実施等の言及がございます。また、職員組合問題についての提言等もございます。管理体制の整備についての提言がございます。  しかし、これは、課長になりたてといいますか、課長になる直前の方々と言っていいでしょう、企画官を座長とした課長補佐クラスで構成しておりまして、いろいろ憂うる余り、問題が多いものですから勉強した結果だろうと思いますが、これは厚生省の公式のものではございませんから、その点は御理解をいただかなくてはならない。  それから、労使関係は、また後であるいは御質問あるかもしれませんが、その中にも触れられておりまして、私も拝見いたしましたが、これは、労使関係はなかなか、いろいろな経緯があったようでございますが、交渉のあり方に関するルール化の取り決めもなされておりまして、ここで指摘されているような点のある程度の解決も図られているようでございます。  一つ一つこれを検証するということは、厚生省の公式文書でございませんからいたしませんが、当時の、九年前の若手の人たちがどのような意識を持って取り組んでおったか、病院が大変だなということがよくわかります。そんなことで、拝見はいたしました。
  215. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 これは、私的な文書という程度のものじゃないのです。このとおり実行されているから、私は大変問題だと言っているわけですよ。この中に、あなたが私的だと言うけれども、課長になりたてか課長寸前の人たちが正式の、私的かどうかは別にして、きちんと会議をやっているわけでしょう。時間外でやっているのですか。時間中にやっているわけでしょう。  それで、ここに書いてあることはすさまじいことなんです。たとえ国会等からの圧力であっても毅然としてはね返すと、こんなことが許されるか。幹部を先頭に大臣まで動かせ、こんなことを書いているのですね。こんなことは、大臣、これは今もう私的なものだから廃止されたのか、もう完全に廃止したものなのか、引き続き厚生省の中に生きているのか。どうなんですか。
  216. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 内容的には、いろいろその当時の若手の人たちが述べたことでございますけれども、これはそもそも厚生省の公式文書として存在していないものでございますから。  ただ、内容を読ませていただきますと、その後解決されたものもかなりあるしということもございますから、当時の事情は今よりもっと厳しかった、いろいろの諸条件だったと思います。そんな中での一つの一里塚と言うと言い過ぎになりますけれども、そういう感じで私は読ませていただきました。
  217. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そうしますと、この方針そのものはもう厚生省の基本方針でないというように理解していいですか。それとも、これは生きているということなのか。どうでしょうか。
  218. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 中身の問題につきますと、いろいろ指摘されている項目については、今なお検討されている事項もございますし、それから労使関係は先ほど申しましたように申し合わせで解決もしておりますし、解決している点もありますし生きている点もあるということで、内容的にはそういうことが言えますが、その文書それ自体は厚生省の正式文書ではございません。
  219. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 正式文書でなくても、これはもう廃棄したものだとも言われないわけです。生きているものもあると。生きているということでしょう。そして、実際にはこのとおり、今の病院の統廃合の問題なんかもやられてきているわけですよ。国会の圧力にも屈するな、毅然とはね返せ。どういうことですか。厚生省の幹部がそういうことをやる。許されないですよ、こんなことは。  少なくとも、これは廃棄するというようにはっきり言ってくださいよ。どうですか。
  220. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 廃棄も肯定も、これは厚生省の文書でございませんから、そう申し上げる以外にないわけでございます。  ただ、それはそれとして、ただいま申しましたように、項目的にはいろいろ現在につながっている問題もありますし、解決した問題もあるということでございますから、これを廃棄しろとか、廃棄しないで尊重しろとか、そういうことではないということを再度申し上げます。
  221. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 結局、これは厚生省の、正式なものではないと言われるけれども、正式な、役人が、役所の皆さんがつくっている内容なんですよ。そして、ある意味では、これを一つずつ見たら、国会との関係や、そして不当労働行為とも思われる事態も幾つもあるのです。例えば国鉄の労働組合はどうやってつぶしたのか、それから郵政事業はうまくいったのかいかなかったのか、それに照らして例えば国立病院の労働組合はどうするのかというところまで踏み込んで書いてあるわけですよ。  私は、断固こういうものについて撤回していただきたいというふうに思います。しないという点は、本当にこれは大問題、許せない問題だというように思います。  次に行きます。  それで、時間がございませんので最後なんですけれども、今、ともかく立ち枯れ作戦をやって、人も配置しない、そして病院の施設もぼろぼろにしたままやった結果、無理やりに自治体が病院を引き受ける。その結果、どうなっているか。  例えば千葉県の柏市立病院なんですけれども、開設されたんだけれども、二十五億七千五百万の累積赤字を出して三年間で撤退、今公社として運営されているけれども、もう今後黒字になる見通しは全然ないというわけですね。  それで、古い建物であるために、この建物を改造するために膨大な費用を必要とする。こんなことだったら建物を壊してから移譲を受けた方がよかったという声が出るぐらいになっているとか、例えば京都府の福知山の市民病院なんですけれども、九七年度の一般会計からの繰り入れは四億円になっています。柏市と違って、ここは運営費の補助金というのが出ているんですけれども、これは五年で打ち切りなんですね。そうすると、また一般会計から繰り入れする、そういう事態が起きているわけです。  今問題になっております移譲を受けるという病院の中で、先ほど御紹介しました鹿児島県の隼人町なんですが、これは「議会だより」に書いてあるんですが、起債制限比率、平成九年度では一〇・七%だが、今後振興計画どおり事業を実施すると、平成十四年度では一五・四%になる、それで霧島病院を買い取って黒字で運営されるかどうかに関係なく、一般会計は破綻するおそれがある。  こういうところにも今病院を受け取れと言って移譲を迫っているわけですよ。こういう事態になって、本当に自治体はどうなっていくのかという問題がありますね。  私先ほど紹介しました基本指針の中にも、経営をどうするのかということがきちんと書かれております。例えば、経営移譲後の施設の経営の安定等に十分配慮する必要がある、そこまで書かれているのに、どんどんこういう自治体に、赤字がもうパンク寸前の状態、破綻状態になっているところまで押しつける。これは、自治大臣、いかがでしょうか、こういうやり方というのは。
  222. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 先ほども申し上げたんですが、この点について、地元の自治体に強要することのないように、事前にしっかりとした協議をしてもらいたいということで、改めて、どういうことを申し入れておるかということを申し上げますと、国立病院・療養所の再編成、合理化に当たっては、地域医療の確保、救急医療の確保に配慮し、地方公共団体と十分協議を行うこと、また、施設の移譲、譲渡、職員の継承等を地方公共団体に強いるようなことにならないよう配慮されたいことということを、先ほど申しましたとおり、厚生省の方に申し入れをいたしておるということであります。
  223. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 もっと、こういう強引なやり方を本当に進めるということは自治体にとっても深刻な事態を生み出すわけですから、ぜひ、自治省としてもきちんとそこは引き続き強力に働きかけていただきたいというふうに思います。  もう時間がございませんけれども、先ほど、国立病院の今後のあり方の問題でも、例えばよく厚生省は、赤字対策とか財政対策じゃないんだ、国立の役割は広域で、また高度な専門的な医療をやるんだ、こういうように何度も述べられています。  しかし、実際に調べてみますと、中心的な、例えば新宿の医療センター、国立大阪病院なんかは、実際にはそこに占めている人たちは、一般のそこの地域の患者さんが多いわけですね。広域、高度医療といいながら、調べてみますと、七割、八割の患者さんが実際には地域の人たちで占められている。だから、厚生省の言っているとおりじゃないわけですよ。  ですから、今インフルエンザの流行で大変お年寄りや子供たちが犠牲になっている問題もあります。それから、再興感染症の問題がある。地域医療にとってもそういう国立病院の果たす役割というものは大変大事だ。  そういう点では、厚生省が、国立の役割を特化する、こういうことで、一般病院をどんどん地方に無理やり押しつけるなり切り捨てていく、また独立行政法人化で事実上国立の役割を、国の役割を放棄していくという点では大変問題がある内容だということを最後に指摘して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  224. 中山正暉

    中山委員長 これにて瀬古君の質疑は終了いたしました。  次に、中川智子君。
  225. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  今週の月曜日なんですけれども、そこのところに初めて、日本で初めて、国会に初めて、介助犬が予算委員会を傍聴いたしました。ほぼ十五分ぐらい傍聴していたんですけれども、こちらの方にお座りの方はそれに気がつかないほど静かに、その二頭の犬は、障害を持った方に本当に体の一部のように付き添って、あそこのところで、一階で、特に御配慮いただいて傍聴しました。  シンシアとリンカーンがこの予算委員会を傍聴したんですが、今まで六回盲導犬は国会にも入り、そして予算委員会も傍聴したりということがございましたが、介助犬というのは初めて国会の中に入り、そして衆議院議長の伊藤宗一郎議長にもお会いしたり、本当に三時間ぐらいこの国会の中を障害者の方と一緒に歩きました。それは各紙報道していただきましたし、ジャパン・タイムズにも紹介されました。ジャパン・タイムズちょっと忘れましたけれども、ちゃんと報道されました。  それで、介助犬というのはまだ盲導犬のように法整備というのが一切ございませんで、ペットと同じ扱いになっております。そのことを厚生大臣御存じかなと思うんですけれども、初めてで、とても、議院運営委員会なんかでも大丈夫かなと思ったんですが、本当に皆様の御協力で、中に入ることができました。  でも、その木村佳友さん、宝塚から国会に来たんですけれども、新幹線に乗るにも三カ月ほど前からそれを申請し、それから面接をわざわざいたしまして、シンシアなんていうのは、面接のときに、しっぽを踏まれたりそして足を踏まれたり虐待されながら、ワンともうんとも言わないからじゃ大丈夫だというようなことで乗り越えていっているんですね。本当に、新幹線、そしてまた宿泊施設も限定されておりますし、レストランなんかも盲導犬のように入れずに、利用を断られることが多々あります。  そして、国会を訪れた木村さんとシンシアの温かい関係をいろいろな方が見てくださったんですけれども、本当にすばらしいねと。訓練をきっちりして、そしてあれほどまでに障害者の方たちの手助けになる。器具とか、また人的な介助ではなくて、犬がやはり障害者の人たちにとって社会参加の大きな手助けになるということを実感されたようです。  そこで、厚生大臣にお伺いいたしますけれども、障害者の社会参加やバリアフリー社会の実現に向けて、介助犬の必要性についてどのように御認識されているか、お伺いしたいと思います。
  226. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今委員の御指摘のように、スーザン・ダンカンさん、木村さんがお連れになった写真も拝見、私も、これはあなたが質問されるというので見たわけじゃなくて、見ました。ああ、そういうこともあるのかなと思って、ちょっと一瞬驚いたような感じもしましたけれども。  介助犬というのは、確かに、身体障害者の方々の、不自由な人たちを助ける役割を果たすという点で非常に有効なものだと思いますが、ただ、現実にはなかなかそこのところの、一定の資格を与えるとか法律上の位置づけをするというのにはまだまだいろいろ検討すべき課題が多いように思います。したがいまして、厚生科学研究の方で一千万円ぐらい支出いたしまして、今そういうもののあり方について検討させております。  そういうことで、前向きな姿勢では臨んでおりますが、今のところ、盲導犬等は約八百頭ぐらいあるようですが、この介助犬の方は、新聞にも十頭と書いてありますが、まあ七、八頭くらいだというように承知しておりますので、これからのいろいろな問題、認知される問題、これは、盲導犬の方は道路交通安全法等で法律上の根拠も与えられているわけですね。しかし、介助犬についてはそういう措置もなされておりません。それで、その性格づけなりいろいろな問題点をよくキャッチして、そして、本当にある面では有効な働きをしていると思いますから、それが定着するような方向にあれば今後それを取り上げていくということではないかなという感じがしております。
  227. 中川智子

    中川(智)委員 今の大臣の御答弁は非常に前向きでありながらやはり検討ということで、まだ数が少ないというようなお話がございましたが、とても訓練にお金がかかるわけなんですね。障害者の方の、例えば手の悪い人ならその手、目が見えない方の盲導犬というのは一つの役割で決まっているんですが、障害者の方はいろいろな形で、その人その人、ニーズが違います。ですから、訓練に八カ月から一年近く要しまして、大体二、三百万円のお金がかかる、そのことによってかえって数がふえないというようなことがございます。  ですから、ぜひとも法整備を一たん盲導犬と同じような扱いをしていただいて、その同時進行のような形でトレーナーの養成ですとか、訓練機関の施設のきっちりとした認定というのをしていただけば、もっと社会的な認知とそして介助犬がふえていく、そして障害者の方の社会参加が積極的に進むということなんですね。  もう少し前向きな答弁をいただくわけにはいきませんでしょうか。
  228. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先ほど申し上げましたように、私ども厚生省としても、そういう研究費を出して、その実態を把握しようということで前向きに取り組ませていただいております。  そういうものが確立いたしませんと、なかなか国の助成制度、今三百万円かかる、そのとおりのようでございます。盲導犬の方につきましては、一頭当たり百五十万円、これを出して、大体二百六十頭ぐらい平成十一年度で助成金を出しておりますから、それとのバランスからいえば、本当にきちっとした体制が整えば、私はやはりそういう方向へ持っていってもいいと思いますが、まだまだちょっとその前の段階だということですから、前向きには対処していきたいと思いますが、現状はそういうことで御理解をいただくしかないと思います。
  229. 中川智子

    中川(智)委員 その研究班のあれで、お金を投じていただいて、厚生障害保健福祉総合研究事業として取り組まれていらっしゃるのは、世界でも類を見ないのです。ですから、それはとても評価しておりますし、ぜひとも早い時期にこれが実行に移されるように要望したいと思います。  そして、要望ついでにいま一つなんですけれども、かえって今、介助犬とともに外に行くことが、介助犬が障害になって、ホテルとか電車とか乗れないという状況があります。約十頭介助犬がいるんですが、せめていわゆる公共機関ですとか鉄道ですとか、そのような公共施設なんかに介助犬が入れるような通達なり要請なりということを厚生省の方から出すということはいかがでしょう。
  230. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 盲導犬につきましては、今御指摘のように、通達によりまして、鉄道、バス、タクシー、航空会社等に受け入れを求めております。それから宿泊施設、飲食店等でございます。  しかし、介助犬につきましては、今申しましたような体制の整備等がまだ整っておりませんので通達等は出しておりませんが、ただ、JRの各社それから航空会社等では、個別にお話しいただけば判断する例があるというようにお聞きしておりますが、そういうことが必要であればまた、通達というわけにはすぐにまいりませんけれども、何なりと御助言は申し上げてもよろしいと思うんですね。
  231. 中川智子

    中川(智)委員 大臣、御助言というのは、すごくいい形でのかなり大きな御助言ですか。そのように受け取らせていただいてよろしいですか。
  232. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 もしも、そういう方が、身障者の方がどうしても必要なんで同乗させてほしいというようなことで、航空会社の方ではいい返事してもらえないな、しかし、非常に訓練されて、ほかの乗客に迷惑もかからぬというような実態が明らかになれば、どうしてもその意向に沿うようにしてやってもらえぬかということは、厚生省の方から言うにやぶさかではございません。
  233. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございます。本当に入り口を、国会見学してたくさんの方々に接していただいた、そのもう一歩進めた形で、ぜひともその取り組みを、またお力添えをよろしくお願いいたします。  では、シンシアとリンカーン、きょうもリンカーンちゃん来ていたんですが、先ほど帰りました。またぜひとも、接していただく方は私の部屋に、アメリカのスーザンさんとリンカーンさんは十二、三日まで日本に滞在しております。御要望がありましたら触れる機会を皆様にもう一度、勉強会やったんですけれども、ほとんどいらしてくださらなかったんです。案内は厚生委員会とかその方たちにお渡ししたのですけれども、残念でしたので、御電話いただければまたお目見えをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、次に質問を移ります。次はダイオキシン関係で質問をさせていただきます。  けさの朝日新聞の報道で所沢産の野菜が暴落したという記事がございました。ここでは、もうスーパーですとか生協なんかが入荷をやめたということが載っております。非常に深刻な事態だと受けとめまして、これに関して質問をさせていただきます。  所沢のダイオキシン汚染が問題になりましたのは、四年前に摂南大学の調査で、所沢の土壌が、ドイツでは農作物の生産規制そのものが行われるほど汚染していると公表したことがきっかけになっています。また、さきの環境庁の発表でも、やはり所沢はドイツでは農作物の生産規制が行われる以上の汚染が明らかにされています。松の葉っぱで今回いろいろ調査しましたけれども、松の葉っぱに至っては、同じ埼玉県の秩父地方の十倍以上のダイオキシンを蓄積していることも明らかになっています。松の葉っぱの汚染が十倍以上なら、当然、野菜も秩父地方の十倍以上の、同じように降りかかってくるわけですので、同じような汚染が心配されていますけれども、実は所沢の市民の方、農家の方は、摂南大学の発表があった今から四年も前からずっと、所沢の野菜というのは食べて安全なのだろうかということを心配しています。  そこで、二点質問いたしますけれども、環境庁、厚生省の方にお伺いいたします。  環境庁、厚生省は、大気、土壌、松の葉っぱ、魚などのダイオキシン濃度は地域別に公表していますけれども、農作物のダイオキシン濃度だけは地名を公表しないでいます。そこの根拠を教えていただきたいと思います。厚生省と農水省、お願いします。
  234. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 お答え申し上げます。  農作物及び土壌につきましての調査につきましては、本年度に予算計上して、現在実施中でございます。それで、全国四十七を対象にいたしまして今実施中ということでございまして、これは結果が出ましたら発表ということにさせていただきたいと思っております。
  235. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 食品類に関しましては、魚、野菜それから果物等につきまして全国的に調査を実施いたしておりますが、このいずれにつきましても、地域名は発表いたしておりません。現在の段階では、広範な試料収集をしながら評価をしなければいけませんので、そういった意味も含めまして、地名公表はいたしておりません。
  236. 中川智子

    中川(智)委員 実際、所沢は、産廃処分場、いろいろな焼却場がもう林立しています。  私は、ずっと子供たちの学校給食を守るという市民運動をしてきたわけなのです。埼玉なんかはなるべく地場の野菜を学校給食にということを実践しておりますし、これは学校給食の運動では本当にずっと一貫して言い続けていることなのですけれども、何か、想像しましても、煙突がにょきにょき立っていて、そしてそこからどんどん煙とか飛灰で大気がダイオキシンで汚染されて、人間は、ああもうここは危険だと思ったら逃げることもできますけれども、野菜なんかは逃げることはできません。そこのところでどんどん上に降りかかったものは、厚生省、環境庁に伺いたいのですけれども、これは食べても安全だとお考えでしょうか。そこに植わっている野菜を食べても人体に影響はないというふうなことで、野菜とかそのようなものに対して何ら今まできっちりと調査もせずに、その地名も公表せずにしてきたということに対しての御見解を伺いたいと思います。
  237. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 御指摘の所沢のホウレンソウ関連につきましては詳細な数値を把握しておりませんが、私ども厚生省におきましては、食品のダイオキシン汚染実態調査を実施いたしておりまして、その結果によりますと、ホウレンソウは、その他の野菜と比較いたしましてダイオキシン類の濃度が若干高くなっているということは事実でございます。  しかしながら、食品中のダイオキシンによります健康影響を評価する場合には、耐容一日摂取量を踏まえた、食品全体から摂取されますダイオキシンの総量について考慮する必要があるわけでございます。我が国の食品を通じてのダイオキシン摂取量についてでございますが、諸外国と比較いたしましても、特段に高いものとは考えておりません。  ちなみに、平成九年度の汚染実態調査によりますと、コプラナPCBを含めまして二・四ピコグラムというふうになっておりまして、先進国のダイオキシンの汚染レベルが、WHOの公表によりますと、二から六ピコグラムというふうになっておりますので、特段高いものというふうには考えておりません。  現在、私どもといたしましては、関係省庁と連携をとりながら、ダイオキシン類健康影響評価特別部会におきまして、ダイオキシン類の耐容一日摂取量につきまして専門的な見地から検討をいただいているところでございます。食品等関係分野にどのような対応をとるべきかにつきましては、この検討結果を踏まえまして対処してまいりたいと考えております。
  238. 中川智子

    中川(智)委員 今私が質問したのは、そのようなダイオキシンで明らかに土壌も松の葉っぱもすべて高い、十倍ぐらいの汚染がされているというところになっている葉物の野菜を安心して食べていいのかどうか、心配ないのかどうかということを聞いているだけなのです。そこを明確にイエス、ノーで、安全ですよというのだったら、言ってください。
  239. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 御質問ではございますが、個々人によりまして食生活の習慣が異なります。野菜をたくさん食べる方、あるいはそうでない方もいらっしゃいます。したがって、今御指摘のように、特定の場合のみを固定して危険か安全かということを論ずることはいかがかというふうに思いますが、通常の食事であれば、今数値を御説明申し上げましたように、先進諸国の平均的な暴露量とほとんど変わっておりません。先進諸国におきましても、それで特段健康影響は今指摘をされているところではございませんので、そのような判断でよろしいかと思います。
  240. 中川智子

    中川(智)委員 ドイツなんかでは、そのような数値が出ましたら、先ほど申しました、重なりますけれども、農作物の生産規制というのが行われたり、きっちり——厚生省は、国民の命と健康を守ってくれるところですよね。それに対して、能勢でもそうだったのですが、クリなんかはもう全然怖くて食べられません。やはり能勢の野菜というのは怖いから食べられない。だけれども、一方では大阪府は安全宣言をする。市民は、消費者はどうしたらいいかわからない。国は今調査中ですとか、その全体が、今おっしゃったようなことが何かわからないで、新聞報道される。  ただ、きょうのこの新聞でもありますように、所沢産のものはやはり数値が高いし、スーパーなんかももうそこのは買わない、売らない。そして、消費者も買わない。それで、国としてはもうそれを外から見ているという状態でいるのでしょうか。  大臣、どのように思われますか。きょうの新聞はごらんになりましたね。能勢のこともずっとございました。やはり大臣は、そうやってどんどんダイオキシンが降り積むところに、葉物というのは、葉っぱは呼吸しておりますので、洗っても煮てもそのダイオキシンはなくならないのです。根っこ物はダイオキシンの濃度は低かったのですね。能勢なんかは既にもう焼却炉はとまっておりましたということもありましたが、今回の所沢のこのようなことに対して、やはり緊急に国としては出荷停止をして、それに対して農家に補償をするとか、そのようなことはお考えではないのでしょうか。
  241. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員はダイオキシンについて大変関心が深く、また造詣の深いことはもう承知しておりますが、今小野局長が言われましたことは、全国的なベースで物を申しておると思いますね。平均的なことを申し上げたわけです。  ただ、野菜の中でも、野菜は多少魚介類よりはピコグラムは少ないですけれども、しかし、普通の、ほかのものより若干高いということを申し上げたわけですが、所沢の地点における地域的な調査はまだ私なされていないように思いますので、そこをまず調査することが先決ではないかなと思います。  そして、単なる風評によって出荷を停止したり、あるいは不安感をいたずらに醸成するということは、私どもとして、あってはならないことだと思います。客観的にどうかなということをまず知った上で、消費者の皆さんにも賢明な選択をしていただくということでなければなりませんから、これは農林省あるいは環境庁とも相談しながら調査した方がいいなというように、私もけさの新聞を拝見して、そう思いました。風評被害が広がると大変だと思います。  そんなことで、なお、いろいろ聞いてみますと、ダイオキシンの調査というのは結構時間がかかるのですね。きょう行ってすぐ結論が出るという代物でもないようでございますが、しかし、さはさりながら、なるべく早期にその方針を決めた方がいいと思いますので、その対応を両省と話し合ってみたいと思います。
  242. 中川智子

    中川(智)委員 今の大臣のお答えでは、調査はする、結果が出るまでにある程度時間がかかるから、その間のことに対しては——私が今言っているのは、調査するのはいい、してほしい、でも、その結果が出たときに、やはり、あれあれ大変だった、でもそれまでは食べていなさいよというふうにおっしゃるのでしょうか。
  243. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先ほど小野局長の方から申し上げたのは、個別食品調査について全国的な調査の数値を申し上げたわけですが、そんなに高くはございません。しかし、それと比べて所沢のところがどのくらいかということはございますが、これはちょっと緊急調査でもやって、簡易な方法ででもアプローチしてみないと何とも言えませんが、私は、全体的なこの傾向を見ておりまして、一日の摂取量の調査、つまりトータルダイエットスタディーというようなことをやっておりますから、それから判断しますと、その野菜だけが特段もう物すごいピコグラム、ダイオキシンの濃度が高くて、ということはちょっと想像しにくいように思うんです。ですから、それも私は断定はできませんから、何らかの簡易な方法ででも、とにかく安心させないといけませんから、調査をした方がいい、こういうことを申し上げておるわけです。  だから、今食べてもいいよということは、断定はできませんが、まず大丈夫じゃないかなと、これは、聞かれれば私はそう思います。
  244. 中川智子

    中川(智)委員 それでは、せめて子供たちの学校給食ですとかそこのあたりには、いわゆる所沢とか、ダイオキシンがもう既に——いらしてみたらわかりますが、林立しているところに畑があるわけですよね。そこで野菜。それで農家の方に聞くと、決して自分たちは食べないと、怖くて。本当にそうです。(発言する者あり)では、いらしてくださいませ。本当に聞いてください。  それで、能勢などもそうだったんですが、実際行って伺いますと、谷合いで、においがきついときには農作業ができないということでした。そこに野菜はどんどん成長していって、出荷していく。せめて学校給食には入れないでいただきたいという思いがあるんですが、そこは緊急事態としてぜひとも検討していただきたいと思います。  それで、農水省の方に伺いたいんですけれども、かつて水俣のときに、風評被害については、一九九七年、水俣病関係で全国の水産産業が減収に追いやられたときに、水銀等による水産動植物の汚染に係る被害漁業者に対する資金の融通に関する特別措置法というのがございました。単年度で百六十四億かけて融資を行いました。  今回の食品のダイオキシン汚染についても、やはり農家に対する補償というのがある程度なされなければ、今回、所沢のJAも一千万かけてダイオキシンの濃度を調べて、それが公表できないでいるという状態。これがニュースステーションで報道されて、非常に大変なパニックになっているわけなんですけれども、このような形で、水俣病のときのような特例措置、漁業補償、今回はその風評被害や実害に対する補償というのは考えられないものでしょうか、お答えください。
  245. 中川昭一

    中川国務大臣 私も、一月二十九日に答弁をいたしまして、そしてまたテレビ、新聞等を見ましたが、現時点で、厚生省、環境庁と実態調査を早急にやらなければいけないということで、一月二十九日から県と対策を始めておるわけであります。  私の立場からは、生産者の皆さんが食べないものを出荷するということはちょっと私には考えられないわけでありまして、生産者の皆さんが本当に自信を持ってといいましょうか、丹精込めてつくられたものが仮に風評被害、テレビでは風評ではない、もう風評の段階を超えたというふうに言っておりますが、我々としてはそれはまだ断定しかねます。風評なのかあるいは本当に実害が発生するのか、それがまだ知見が余りにも少ないということで、ですから、緊急に農林省としても、次年度からと前回は答弁をいたしましたが、急遽、県あるいは所沢市とすぐにその態勢に入っております。  そういう状況の中で、所沢について我々強い関心を持っております。私の立場からは、所沢のいろいろな農産物、特に葉物のダイオキシンの量が多いという報道でございますが、例えばホウレンソウなどは、これは、所沢の場合にはハウス栽培が中心でございまして、白菜等は露地が多いようでありますけれども、そういう個別の差もあるわけでございます。  仮に、風評被害ということに対しての何らかの対策を考えているかということに関して申し上げますならば、風評被害で生産あるいは販売が減少した場合には、基本的には、その損失は汚染原因者が費用を負担することが原則で、農林省が農家に直接個人補償をするということは困難だというふうに言わざるを得ません。ただ、融資制度とかいろいろな制度が、農家の経営支援という観点から融資制度等はございますので、農家が経営に困難を来すような場合に対する資金制度は現時点でもあるわけでございます。  いずれにいたしましても、私は、先ほどの厚生省の現時点での判断を信じて、所沢の野菜を積極的に私自身は食べていきたいと考えております。
  246. 中川智子

    中川(智)委員 勇気ある御発言にちょっと驚いておりますが、今の中川農水大臣の発言の中で、汚染者責任というふうにおっしゃいました。この間、汚染者責任ということがずっと言われておりますが、汚染者に対して国がしっかりとその責任を問う姿というのは、私は、能勢に限りましても、三井造船に対してそのような形で責任をきっちりととりなさいということはしていないというふうに認識しております。  特に所沢の場合などですと、汚染者が特定しにくいですね。たくさんの焼却炉、いろいろな事業者があって汚染者が特定しにくい。その場合はどうするのかということと、偽装倒産というか、いわゆるごみの山をつくってそのまま倒産した場合、今、自治体で撤去しなさいとかということで、自治体が悲鳴を上げております。  この二つに対して、農水大臣か厚生大臣、このような場合はどのようにするのかということをお答えください。汚染者が特定しにくい場合と、倒産した場合などの汚染者責任というのは、どういうふうな形で決着するのか。
  247. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、今農水大臣の言われましたように、この種の問題は、PPPの原則ですね、ポリューター・ペイズ・プリンシプル、そういうことで処理するのが基本だと存じます。  しかし、今委員のおっしゃるように、そのポリューターがだれであるのかわからないという場合は、これはケースによると思いますが、ケース・バイ・ケースできちっと対応していかなければなりませんし、どうしてもそれが見つからぬということはないとは思いますので、水俣病の場合もそうでございますが、あくまでもPPP原則だけは貫いていかないといけない、基本的にはそう考えております。
  248. 中川昭一

    中川国務大臣 厚生大臣と同じでございます。
  249. 中川智子

    中川(智)委員 私、PPPという言葉を知らなかったんですが、PTAとメモに書いてしまったのですが、PPP原則を貫かなきゃいけないのはわかるんですが、貫けないときにどうするのかということを質問したんです。
  250. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 それはいろいろのケースによって違うと思いますけれども、今、例えば仮装倒産をするという話がございましたが、それはやはり行為者が行為をしているときの事実は把握できると思いますし、それを追及していくというようなことも必要でございましょう。原因者が、ポリューターが全然わからないで物事が行われるということは、私はないと思うんです。  だから、それをきちっとつかまえて、そして、それが本当に賠償能力があるのかどうかという問題はまた別個の判断になると存じますが、あくまでもそれは、悪いことをしっ放しで仮装倒産とか逃亡して、それをそのまま許すというのは、これからのいろいろの公害行政がございますから、それは許されないことだということを申し上げておきます。
  251. 中川智子

    中川(智)委員 今の発言ですと、最終的な責任というのは国というふうにとってよろしいんですか。
  252. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 最終的な責任はどうかということを、国だと断定もできないと思います。それは、この種の性格のものは、例えば廃棄物の処理とか不法投棄、これは地方公共団体に権限を委任しておりますし、その責任でやっていただいておりますから、いろいろなケースによって差等があると存じます。  しかし、いろいろケースがございますから、一つ一つケースを想定して申し上げるわけにはまいりませんが、最終的に国の責任で処理するとか、あるいは県の責任で解析をして対応、処理していくということは、必ずしも賠償責任が国にあるということを意味しておるわけではないと思うのですね。  そんなことで、国で全く無関心でというわけにはまいりません。水俣の場合も、国は非常にそこの公害防止という観点に立ってやりましたが、すべてこれは汚染者の負担で解決をしたのは委員御承知のとおりだと思います。そんなことを申し上げたわけです。
  253. 中川智子

    中川(智)委員 わかりました。この問題はまた続けて別の舞台でさせていただきたいと思います。  私は、厚生省というのは、国民の命と健康を守ってくれる省だと思っておりますし、一貫してこれからもそのようにあってほしいということを心に刻んで、次の質問に移ります。  クロイツフェルト・ヤコブ病に関する質問でございます。  この二月一日月曜日に、大津地裁で一つの裁判が行われました。それは、人の死体から不正に採取した、汚染されたヒト乾燥硬膜の移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病に感染した患者が亡くなっているわけです。多数亡くなっていますし、今もその病気と闘っています。そして、先月の三十日もまたお一人亡くなられました。この方は、今申しましたその裁判で、国や企業を相手に裁判をされている原告のお一人でした。  このクロイツフェルト・ヤコブ病という病気は、発症すると脳細胞がもうスポンジのようにすかすかになって、そして大体一年か二年で、一切の治療の方法もなく亡くなってしまう、確実に死に至る病です。発症すると、数カ月で、動くことも話すこともできない、本当に寝たきりの状態になって亡くなっていきます。  そして、ここに一つの「心のさけび」という冊子があるのですが、これはクロイツフェルト・ヤコブ病の被害者の方たちの叫びが文章にいろいろ書かれていますが、本当に一言一言ここで読みたい思いです。でも、この中で、少し紹介したいと思いますけれども、二十九歳で亡くなったお兄さんのことを書かれた妹さんの文章なんですが、兄は、自分の病気の名前も知らず、一体自分が何で死んでいくのか、それさえも知らず、なぜ自分がこんなに苦しまなければならないのか、その原因さえもわからず、ましてや病名さえ知らずに死んでいったという悲しみをつづっております。  また、自分の息子を介護したお母さんが子供さんのことを書いていますけれども、入院して二年三カ月で亡くなったのですが、もうずっと、本当に自分自身の人格がなくなる、私は一体だれなの、私は一体どうなっていくのかという叫びで多くの方が亡くなっていますが、その方たちの言葉が、もう本当に叫びとしてたくさんここに書かれています。すごい力で歯を食いしばって、でも、たんが詰まったら、歯と歯が物すごくかたく閉じてしまうので、歯を折って、そしてそこから管を通して、最後はもう血だらけになって、それで絶命してしまう。たくさんのそのようなことがここに書かれています。  私は、このクロイツフェルト・ヤコブ病のことで、どうしてこうなってしまったのか、なぜ私は死ななければいけないのか、私の病名は何なのかというような思いで死んでいった方たちの本当に一つの身がわりとして、きょう質問したいと思っております。  繰り返された薬害への反省と教訓が全く生かされなかったこの薬害クロイツフェルト・ヤコブ病に関して質問する中身なんですが、これは、きょうはビデオなんかとてもあれなんですが、毎日放送が昨年三月十五日に放送しました「映像90薬害ヤコブ病」というビデオの中で映像で映っているのですけれども、汚染されたヒト硬膜を製造したドイツのB・ブラウン社にわいろをもらっていた解剖アシスタントによると、ある病院では、死因と全く関係なく、亡くなった人の九九%の死体から、遺族の承諾もなく解剖をして、ヒト硬膜をやみ取引した。それを日本が輸入して、そして、いわゆる脳の外科手術のときに本当にガーゼのように使っていたヒト乾燥硬膜、それの移植によって、潜伏期間を六、七年経て発症して亡くなっていっているのが、このクロイツフェルト・ヤコブ病です。  現在、滋賀県在住の薬害訴訟の原告である谷たか子さんは、一九八九年一月に、汚染されたヒト乾燥硬膜の移植手術を受けまして、そしてクロイツフェルト・ヤコブ病に感染しました。谷さんが移植手術を受けたのは一九八九年です。でも、その二年前の一九八七年二月に、CDC、米国疾病センターは、週報で、このヒト乾燥硬膜の移植によるヤコブ病の初症例、これは汚染された硬膜なので、その硬膜を移植した人はこのようにヤコブ病にかかったという初症例を報告しました。そして、二カ月後の四月には、FDAが、全米の医療機関に、このドイツのB・ブラウン社の二千番台のロット番号の乾燥硬膜の廃棄処分命令を出しました。  その警告を出しましたので、アメリカでは、この後、この硬膜を使った移植手術はしていません。また、カナダやイギリスも、このCDCの初症例報告の後すぐ、自国に安全警告を出したわけなんですね。  このことを厚生省は承知していたか。一九八九年にCDCが出したこの初症例の報告を厚生省は承知していたかどうかを伺いたいと思います。
  254. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 お答えいたします。  第一号の症例報告につきましては、一九八七年の二月に、CDCがMMWRという週報に掲載したわけでございます。その後、第二例につきましても、八九年の一月に出ておりますが、これらの情報につきまして、当時、厚生省におきまして、これらの情報を、保健医療局の疾病対策または感染症対策を担当していた当時の職員、または薬務局におきまして医療用具の審査または安全対策を担当していた職員に対して当時の状況を調査したわけでございますが、当時、これらの情報につきまして何らかの認識を有していたというふうには確認されなかったわけでございます。
  255. 中川智子

    中川(智)委員 今、調査をしたけれども認識していなかったとおっしゃいましたね。そこのところをもう少し。
  256. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 MMWRについて報告されたそれらの刊行物につきまして、当時、厚生省の保健医療局及び薬務局の安全対策を担当していた職員に対しまして、昨年、その当時の状況を調査いたしましたが、当時何らかの認識を有していたという者は確認されなかったわけでございます。
  257. 中川智子

    中川(智)委員 昨年調査したんですか。  今私が聞いたのは、第一症例報告後直ちに何らかの調査をしたかということを伺っています。八九年の、その当時です。——八七年です。
  258. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 MMWRに報告されたのは八七年でございます。  それで、厚生省が当時のことを、どの程度担当職員が認識していたかということにつきましての調査は、一昨年のことでございます。
  259. 中川智子

    中川(智)委員 では、その十年間の説明をしてくれますか。一九九七年に調査をした。でもこれは、出ているのは一九八七年です。その十年間、なぜ十年かかっているんですか。
  260. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 第一例がMMWRに報告された時点におきましては、厚生省として恐らく関心を持っていなかったということだと思います。  その後、イギリスにおきます狂牛病等の報告がございまして、その当時のことをさかのぼって調査をしたのが一昨年であったということでございます。
  261. 中川智子

    中川(智)委員 何か驚くべき、関心を持たなかった、人の命に直接かかわることに対して関心を持たなかったということが、ちょっと理解不能ですので、その関心を持たなかったということに対してのもう少し詳しい御説明をお願いします。
  262. 中西明典

    ○中西政府委員 今保健医療局長から説明いたしましたが、要は、FDAのとった八七年のアクションについて、当時の担当者、規制を担当していた者は承知していなかった、規制情報について入手していなかった、そういうことでございます。
  263. 中川智子

    中川(智)委員 でも、そのMMWRはとっているんでしょう、厚生省は。いかがですか。
  264. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 一昨年調査いたしましたが、当時MMWRにつきましては、厚生省の保健医療局結核難病感染症課、また予防衛生研究所、それらのところでその週報をとっていたというふうに考えられます。
  265. 中川智子

    中川(智)委員 とっていて、とっているだけでだれも読まなくて、そして十年間に何人もの人が死んでいくことをそのまま厚生省は見ていたわけですね。見ていたというか、放置していたわけなんでしょうか。
  266. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 放置していたというよりは、そういう事実について関心といいますか、認識がなかったというのが正確ではないかと思います。
  267. 中川智子

    中川(智)委員 ちょっと、とても理解できないんですけれども、いわゆる回収命令を出し、一九八七年にアメリカやカナダやイギリスがとった処置をしていれば、もう何十人、何百人かもわからないですけれども、それはまた後ほど質問しますが、その人たちは亡くならずに済んだわけなんですね。  言ってみれば、厚生省がそこでしっかりとした責任を全うせずに、単にそのような情報、そしてそれはまた日本語訳にされていて——いわゆる放置したという先ほどの言葉に対しての厚生省の今の答弁というのは、先ほどの繰り返しになっているわけなんですけれども、これは裁判の準備書面で聞きますけれども、一九九七年の国の方の答弁は、今のと少しずれるんですね。世界で一例のみの報告がされた時点では、ヒト乾燥硬膜をクロイツフェルト・ヤコブ病との関係が予見可能であったとすることは適当でなく、というふうな表現をしています。  そして今は、調査されたのはおととし、そしてそのような本を買ってはいたけれども、だれの目にも触れずに、そしてそのことを十年間も知らずにいたということの認識でいいわけですね。厚生省はそれに対してしっかりと情報を入手し、きちんと一九八七年に対応すべきであったのに、十年間放置していたのは厚生省の責任だというふうに思っていいわけですね。ヒト乾燥硬膜を、汚染された硬膜を移植された人への責任というのは、今のお答えからいきますと厚生省にあるというふうに思ってよろしいんですね。
  268. 中西明典

    ○中西政府委員 国の責任論の話でございますが、クロイツフェルト・ヤコブ病の発症原因というのは長くわかりませんで、ヤコブ病の発症原因について、プリオン仮説、プリオンによるものという仮説が定説化したのが、一九九三年のビューラーらの動物実験が報告されたことによってでありまして、また、我が国においてヒト乾燥硬膜とクロイツフェルト・ヤコブ病との関連性が疫学的に相当程度明らかになったのは、一九九六年のクロイツフェルト・ヤコブ病に関する研究調査班の全国調査によってであります。その後、WHOがヒト乾燥硬膜の不使用を勧告したのは一九九七年でございます。  他方、第一症例が報告されたのは一九八七年当時でありまして、その当時は、クロイツフェルト・ヤコブ病の発症原因としてプリオン仮説も定説になっておらない、非常にわからない。また、世界で一症例のみの報告がなされた時点におきまして、ヒト乾燥硬膜がクロイツフェルト・ヤコブ病発症に関連するということを予見するというのは非常に困難でありまして、その時点で、不活化していない、未処理の製品の回収措置を厚生大臣がとり得なかった、とり得る状況にはなかったというのが法的責任論に対する国のこれまでの主張でございます。  なお、先ほどの、FDAの一番最初の第一症例のアクション、特定のロットについて各病院に対し、どうもCJDとの関連性が疑われるから使わないようにという警告を出した事実についてでありますが、これについて、先ほど保健医療局長が申し述べましたように、私ども二回にわたって当時の担当職員の調査をいたしました。  それで、予防衛生研究所において発行されております「臨床とウイルス」あるいは「病原微生物検出情報」において、アメリカCDCの情報の概要、要約記事というのが掲載されたことは事実でございますが、それを記載した職員は、厚生本省に対して何ら情報伝達をしていないということでございますし、それから、当時本省にいた薬務局あるいは保健医療局の職員がそういった情報に接した、要約記事を知っていたとする者はいなかったという調査結果を申し上げた次第でございます。
  269. 中川智子

    中川(智)委員 CDCレポートが出た当時、予研の中でディスカッションしたということを厚生委員会答弁されているんですけれども、では、そのディスカッションというのは、どのような中身でしょうか。
  270. 中西明典

    ○中西政府委員 当時「臨床とウイルス」にCDCが発行するMMWRの要約記事を掲載した職員の報告によりますと、昭和六十二年当時、予防衛生研究所の内部でそうした議論がなされたことは承知していないという答えをいただいております。また、その事実を厚生本省のだれかに連絡した記憶もない、こういう回答を得ておるところでございます。
  271. 中川智子

    中川(智)委員 では、もう少し順を追って質問いたします。  大臣、最初に私がクロイツフェルト・ヤコブ病のことを言いました。そして、一九八七年にきっちりと、その第一症例の後、アメリカ、イギリス、カナダは、それが汚染されたヒト乾燥硬膜であるということで、すべて警告を出して、その移植をしておりません。日本は、一九八七年に諸外国がとったそのような措置をとらずに、一昨年、一九九七年までそれを放置していて、その十年間にたくさんの人がその移植を受けて亡くなっております。  症例報告後、直ちに今の外国のように調査をしていれば、例えば日本国内でも、新潟県の新発田市内で二十五歳の男性が八六年暮れに発症して八八年の七月に死亡しました、そのような存在などなかったはずですし、その症例をCDCがちゃんと出した後に、書類が出た後に、症例が出た後、二年もたって手術を受けてその汚染された硬膜を使われた谷さんはまた今も植物状態になっている、このような状態にならずに済みました。  これに対して、厚生大臣、お話を聞いて、大臣のお考えを聞かせてください。
  272. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 一九八七年にアメリカで第一症例が、ある向こうの雑誌に記載されて、今局長答弁されたとおり、一部はこちらに到着しておったようでございますけれども、それほど意にとめなかったのではないかと思われて、本省の方ではなかなかそれをキャッチできなかったという事情があったようでございます。  いずれにいたしましても、百数十人、百四十七人とも聞いておりますが、このクロイツフェルト・ヤコブ病患者の中で、今御指摘の乾燥硬膜を使っておられる方が一割くらいあられるようであります。大変悲惨なことだと思います。そんなことで、私どもとしては、今厚生省としては、それは難病指定をいたしまして、自己負担は全部公費で持つとか、あるいはいろいろ家族的な支援も申し上げるとか、そういうことをしております。  一方、裁判も七件起こされております。しかし、残念なことに、そのうちの四人がもう既にお亡くなりになっているという事情もございます。大変悲惨な、残念な事件だと思います。  今後は、なるべく情報の伝達その他、国際的な面で非常に連携をとらないといけませんから、そういった点はよく注意してやらないといかぬなという感じを率直に申し上げておきます。
  273. 中川智子

    中川(智)委員 国際的に連携をとらなければいけませんねと、今の言葉で。では、今まで連携をとらなかったということですね。それに対して、ちょっと厚生省、後で答えてください。  それで、今、CDCレポートはとっていた、そして、入手しているけれども、その認識がなく、報告がなく、それに対しては十年間、二年前まで、何ら厚生省としては、回収命令とかそれに対してストップをかける措置をとらなかったということですが、それでは、当時CDCレポートをファイルしていた担当課と、そのファイル名というのを教えていただけますか。
  274. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 当時、CDCから送られてきますMMWRにつきましては、予防衛生研究所と、それから厚生省本省におきましては、保健医療局の結核難病感染症課というところに届けられておりました。これは、毎週届くものを、穴を二つあけまして黒いひもでとじたような、それで、どんといつも部屋の中にあったというふうに、調査の結果そういうことがわかっております。
  275. 中川智子

    中川(智)委員 今のその調査を全面公開していただきたいんですけれども、お答えください。 どこが担当課で、当時の職員、すべて情報公開をお願いします。
  276. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 私どもの局と医薬安全局合同でやったものでございまして、担当局長と相談の上対応させていただきたいと思います。
  277. 中川智子

    中川(智)委員 委員長、担当局長と相談の上ではなくて、その情報の公開をしっかり求めます。  これは、ヤコブ病の患者の方たちの本当に悲痛な、いわゆるエイズの轍をまた踏んでしまった薬害なんです。委員長から言ってください。
  278. 中山正暉

    中山委員長 理事会で協議させていただいて、それなりの手続をとらせていただきたいと思います。
  279. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この公開につきましては、基本的にはそう思いますけれども、今、何せ七件の訴訟が御存じのように起こっております。したがって、裁判上に影響があってはいけませんし、いろいろ照会文書その他の開示要求もございますが、公判を公正に維持するために、公判廷で御要求があれば当然これは提出すべきものでありますし、それからまた公判で開示することもございます。  そういう点で、裁判上との絡みがございますので、その点は公開は直ちにできないということを私の方から申させていただきます。
  280. 中川智子

    中川(智)委員 HIVの訴訟のときには公判中に、係争中にファイルが出ました。それは一切理由にはなりません。もう一度御答弁ください。
  281. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 HIVのときは、和解の勧告がございまして、和解交渉に入ってから資料が公開されておりますから、その点は、和解でどういう条件を進めるかという段階にもう入っておってから開示しております。  そんなことで、裁判中ではございません。
  282. 中川智子

    中川(智)委員 これは、一九八七年にきっちりとそのような文献が手元にも来ていて、見落として、ちゃんとした保管をする、きっちりとその情報を一体化していなくて、国際的なそのような報告を、無視ではなくて、無視よりもっと悪いですね、知らずに十年間放置していてたくさんの方々が亡くなった大変な事態なのです。それに対してそのような悠長なことでは困ります。  委員長の先ほどの発言が生きるように理事会で御協議をお願いします。
  283. 中山正暉

    中山委員長 今の厚生大臣の御答弁を参酌しながら理事会で協議をいたします。
  284. 中川智子

    中川(智)委員 参酌する必要はないと思います、委員長委員長、それはおかしいですよ。
  285. 中山正暉

    中山委員長 御答弁を参考にしながら理事会で協議していただくというんですから、各党の皆さんいらっしゃるから、あなたの党からもそういう主張をしていただけばいいんです。
  286. 中川智子

    中川(智)委員 わかりました。ぜひとも御協力をお願いいたします。  それで、もう一つぜひともお願いしたいんですが、一九九八年八月二十八日に発表しました、いわゆるヤコブ病の緊急全国調査がございます。そして、厚生省は新たに六名を追加して、合計六十名となった。この六十名の患者の家族や遺族は硬膜移植により感染したことを知っているのかどうか、それをお答えください。厚生省、この間六人追加して六十名になりました。
  287. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 ただいまの調査でございますが、平成八年の四月からこのクロイツフェルト・ヤコブ病に関する緊急全国調査を開始いたしまして、現在、昨年の八月二十八日現在で、九百八例中六十例につきまして硬膜移植歴があるというふうに判明しております。  これらの調査につきましては、各医療機関に医師を通じて調査をしていただいたわけでございますが、この調査に当たりましては、それぞれの患者さんに、こういう調査に協力していただくということをあらかじめお願いいたしまして調査をしておりますので、大部分の調査対象になりました患者さんについては、それらの事実を医師から告げられているものというふうに考えているところでございます。
  288. 中川智子

    中川(智)委員 今のお答えでは、厚生省として責任を持って、硬膜移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病に感染したという伝え方はしていないんですね。
  289. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 この調査の実施に当たりましては、主治医は、患者に対し、本調査の目的、内容を十分説明の上、当該情報提供に協力するという同意が得られるように努力してくださいというふうに厚生省から依頼しておりまして、厚生省から患者さんにそのことについて直接説明をしてそのことを告げているということはやっておりません。
  290. 中川智子

    中川(智)委員 この文集にもあるんですけれども、ほとんどの方は、精神病、アル中、自殺、さまざまなことを言われて、そして本当に、うつるんじゃないかとかいろいろなことを言われて、のたうち回って、家族も悲惨な思いをして、亡くなっています。  これは、厚生省が——責任問題とは関係なくていいです、今は。ただ事実を知らせて、そして、なぜ自分がこんなになったのか、原因は何だったのか、なぜ死んでいくのか、それは責任を持って知らせるべきでしょう。御答弁ください。
  291. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今お答えいたしましたように、このクロイツフェルト・ヤコブ病につきましては、九百八例中六十例の方が硬膜移植の既往歴があるということで、大部分のクロイツフェルト・ヤコブ病につきましては、移植歴がなく、その原因がはっきりわからないという状態でございますので、特にこの移植歴のある方につきましては、調査の段階を通じまして、主治医からこの調査の目的などを十分御説明いたしまして、協力をお願いしたという経緯でございます。
  292. 中川智子

    中川(智)委員 全然答えになっていないんですね。原因がはっきりわからなくてとおっしゃいますけれども、もう既にWHOの勧告、そして二年前に厚生省はそのような通達を出したわけで、原因はわかっているわけでしょう。お答えください。
  293. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 この全国調査をお願いいたしましたときに、患者さんのプライバシーに対する配慮ということもございまして、厚生省は、九百八名、そのうち六十例の方が硬膜移植の既往歴があるわけでございますが、直接国が患者さんの住所、氏名を同定できない形で調査をしておりまして、主治医の先生を通じて、いろいろこの調査の目的などにつきまして十分御説明をし、御協力をいただく、そういう方法をとったわけでございます。
  294. 中川智子

    中川(智)委員 今私が言っているのは、主治医の先生を通じてじゃなくて、厚生省が、やはりこの間の経緯と、患者、家族がしっかりとそのことを知ること、その責任はあるんじゃないかと言っているんです。責任はあるでしょう。あるんじゃないですか。十年前にこれをやっていれば……。
  295. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 その点につきまして、現在、法廷におきまして国側としても主張して、係争中であるということでございます。
  296. 中川智子

    中川(智)委員 私は、これが、国が争うというのが、何という国かなと思っております。  もう一つちょっと言葉を、法務省さん、残っていらっしゃいますか。法務省に伺いたいんですけれども……。  済みません、今のをちょっともう一回。  私は、もう絶対に、患者、家族が知りたい、そしてそのことを、本当にもう何にもわからなくて——みずからの身に置きかえてみてください。責任を持って、原因、そして自分がどうしてこういうふうになったのか、どうして死んでいかなきゃいけないのか、それをちゃんと伝えていただきたい。  大臣、いかがでしょう。これは伝えるべきですよ、その六十人の人たち、家族に。厚生省、これぐらいのことをやらなくてどうするんですか。お答えください。——大臣、答えてください。
  297. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 この六十例の方が全員危険な硬膜移植を受けたということではなくて、この六十例の中には適切な処理をされたものもございますし、もちろん移植の時期なども異なりますので、一律、六十名の方につきまして硬膜移植歴との関係について説明するというのは、なかなか難しいのではないかと考えております。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、現在法廷において係争中でございますので、今、六十人の患者さんとその遺族の方に委員御指摘のような点を厚生省から直接お話をするということは難しいというふうに考えております。
  298. 中川智子

    中川(智)委員 これは、難しいとかそういうことじゃなくて、本当に、もう谷さんもわからないですよ。本当は一、二年で亡くなるのが、献身的な家族の介護で、全く植物状態ですけれども、まだ御存命中です。せめて、やはりしっかりとその因果関係を含めて、厚生省はこの六十例の家族の方たち、御本人に伝えるべきだというのは、ここは要望としてしっかり言っておきます。  これ以上は、もう本当にがっかりしてどうしようもありませんが、別のところでもきっちり、これはもう一度、大臣もそのような逃げ腰じゃなくて、本当に今どんどん大変な思いで亡くなっていったり、家族の方はいまだに自分の夫や妻、子供が何で死んだかわからない、そのような状態に置かれているわけです。追跡調査もちゃんとして、責任ある形でやっていっていただきたい。切に望みます。  法務省の方に伺いますけれども、民事訴訟法の第百六十三条の当事者照会について質問いたします。  これは、訴訟の係属中に、当事者が主張または立証を準備するために必要な事項について、当事者が相手方から直接に情報を入手することができるようにする規定です。  ただし、許されない照会というのも六つ列挙しているんですけれども、許されない照会というのは何を指すのか、ちょっと簡潔にお答えいただきたいと思います。
  299. 細川清

    ○細川政府委員 お答え申し上げます。  民事訴訟法百六十三条に定められております当事者照会につきましては、これは、主張または立証を準備するために必要な事項であれば、同条ただし書きの一号から六号までに定める事由がなければ当然相手方はこれに応ずる必要がある、義務もあるということになっております。したがいまして、相手方もこれに基づいて適切に対処すべきであるというふうに考えております。
  300. 中川智子

    中川(智)委員 そうですか。そうしたらば、回答しないということは、不誠実な当事者という何か一つの言葉があるんですけれども、不誠実な当事者として考えていいのかどうかということを伺います。  ちなみに、当時の医薬安全課の担当者が既に退職していて照会できないというふうに回答しているんですが、その人は現在、環境衛生金融公庫の理事長さんになっています。なぜ公職にあるのに照会できないのか。どうか、これは厚生省の方に、今の法務省の方の答弁に合わせてお答えをいただきたいと思います。
  301. 中西明典

    ○中西政府委員 退職者の方につきましては、いろいろプライバシー保護の観点から、法務当局とも御相談の上、そういう回答をさせていただいた、そういうことでございます。
  302. 中川智子

    中川(智)委員 今のは絶対おかしいです。もう一度、納得のいく御答弁ください。今の法務省のあれとは違いますよね。公務にある人ですよ。
  303. 細川清

    ○細川政府委員 一般論としてお答え申し上げますと、当事者照会の内容が、お答えすることが、特定の人のプライバシーを侵害するおそれがあるという場合には、この百六十三条ただし書きの六号に当たる可能性があるわけでございます。
  304. 中川智子

    中川(智)委員 法務省、今の厚生省の答弁に対しては、法務省はどうでしょう。
  305. 中山正暉

    中山委員長 今、法務省。
  306. 中川智子

    中川(智)委員 ごめんなさい。済みません、ちょっと混乱して。はい、わかりました。  時間がちょっと残り少なくなってきましたので、厚生省の方にもう一度伺いますけれども、クロイツフェルト・ヤコブ病全国緊急疫学調査研究班の班長だった、現在国立精神・神経センターの病院の名誉院長の佐藤猛さんとか、班員の自治医大助教授の中村好一さんは、原告側の証人として、今、ヒト乾燥硬膜とクロイツフェルト・ヤコブ病との間に高度の関連性があるということを証言されました。二月一日の裁判でも中村さんはこのように証言いたしました。そのことを大臣は御存じかどうかということが一点と、このような形で、もう既に、その現場にいた方が、班員の方が、高度の関連性があるということを証言されています。そして、それを踏まえて、この薬害問題で、滋賀県のほとんどの議会で、しっかりとこれに対して厚生省は薬害ということを認めて早期に解決してほしいという意見書が出されています。患者が本当に生きているうちに、一日も早く救済していただきたいんです。  このクロイツフェルト・ヤコブ病の患者の方に対して、一人の政治家として、ぜひとも厚生大臣、しっかりとこれに対して前向きに取り組んでいく、早期の救済をしていくという言葉をいただきたいんですけれども、大臣の御答弁をお願いいたします。
  307. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 大臣のお答えの前に、ちょっと事実関係だけ御説明をさせていただきます。  国立国府台病院の病院長の佐藤先生を班長に、全国の緊急実態調査をやっていただいたわけでございますが、佐藤先生は報告書の中でも、疫学的な因果関係は認められる、ただし個々の患者さんについてはそれぞれの事例について判断すべきであるということでございまして、因果関係があるというのは、疫学的に因果関係があるということを報告書の中で述べているわけでございます。
  308. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 大変重要な、これは薬害と申しますか、硬膜の使用によるヤコブ病でございますので、関心を示していかなければならないと思っておりますが、裁判の実際の詳細につきましては私もちょっと承知しておりませんが、今局長の言われたとおりだろうと思うんです。なお引き続き関心を持って検討していかなければならない、こう思っております。
  309. 中川智子

    中川(智)委員 私、この間、大臣席に下からちょっと声をかけまして、この谷さんとかはもう全然動けません。全く体が動かせない。ですから、ぜひとも、ヤコブ病の患者の方というのはこういう状態になって、そして本当に命をなくしていくんだ、それがだれのせいなんだ、どこに原因があるんだということを見ていただきたい。私は、ぜひともヤコブ病の方に会ってくださいと大臣にお願いしました。そうしたら、あのときは大臣は会いましょうとおっしゃってくださいました。今は会期中でお忙しいかもわかりませんけれども、本当にあした亡くなるか、あさって亡くなるかわかりません。ぜひとも患者、遺族の方に会っていただきたい。要望としてお願いしたいんですが、大臣、いかがでしょうか。  そして今、薬害ということを大臣はっきりおっしゃいました。そのことを受けて私は、政治家としての大臣の心意気を感じ取りました。お願いします。
  310. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと予定が立ちませんけれども、そういう機会があり、これは滋賀県の方ですか、そういうことですから、ちょっと遠いし、直ちにというわけにはまいりませんが、機会を求めてみたい、こう思っております。
  311. 中川智子

    中川(智)委員 ぜひともお願いいたします。  私はきのうからずっとこの質問のためにこの冊子を読んだり、昨年、実は患者の遺族の方にはお会いしてお話を伺いました。そしてこのビデオを見て、なぜこんなふうになったのかということを詳細に見まして、本当に、質問をつくるまでに至らずに、もうずっと泣いてしまいました。  もしも私自身が——私の母も三叉神経痛でここのところ手術いたしました。五年前に手術しました。硬膜をそこに移植しております。今なお不安に思って生活している人もいるわけなんです。それが汚染されたものかどうかわからない。厚生省はきっちりそれに対して——調査しながらそれを言ってくれない、そして責任も回避する。そのような状況の中で、私も、母がもしもそれを使っていたらどうなるだろうという、子供としての不安も持っております。  しかし、私はこのような原因でこうなるということを知りました、この質問をつくることによって、お会いすることによって。でも、亡くなった方たちが本当に何で死んだかわからない。そして、いまだに非常に肩身の狭い思いで、一生、自分のせいだったんじゃないかという十字架を背負って生きております。  ぜひともその方たちの声を聞いていただきたいし、せめて原告団の方、勇気を持って訴訟された方、その方たちにお会いになっていただきたい、心からお願いいたします。  最後の五分、済みません、あと五分ですから我慢してください。五分以内にしっかりやります。  中村大臣、お待たせいたしました。  私は、ことしの一月十二日の朝日新聞を拝見して、夫婦別姓選択制をめぐって、中村法務大臣は導入に向けて検討を始めるよう自民党に要請したと書かれていまして、もうわくわくしながら待っておりました。ところが、その後何ら音さたがございません。これに対して、進捗状況、自民党の説得などはどうなっているかということをお伺いしたいと思います。
  312. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 事の経緯から簡単に御説明させていただきたいと思うんです。  実は、政府におきましては、男女共同参画社会の実現というのを目指すという方針を立てておりまして、その中で男女共同参画二〇〇〇年プランというのを策定しております。策定したのは、総理大臣を頂点に全閣僚が参画する男女共同参画社会の推進にかかわる会議なんですね。  その二〇〇〇年プランの中の行動計画、これは平成十二年までの行動計画でありますが、その中に、法務省が担当すべきこととして、具体的に男女平等等の見地から選択的夫婦別氏制度の導入の推進を図るということが書いてあるんです。ですから、これは政府の方針なんでございます。  ことしになりまして、小渕総理の施政方針演説の中で、今回の国会に男女共同参画社会基本法を提出する予定ということが言われております。そういう中で、私ども法務省といたしましては、政府の方針に従ってこれは推進するべき立場にあるということを認識して、そして行動しているわけでございます。  さはさりながら、御存じのとおり、これは極めて御意見が多様な問題でございまして、世論も必ずしも一致しておりません。しかも年齢層によって、政府の行った世論調査でも非常な差があるわけでございます。  そういうことで、これはちょっと考えてみますと、国民生活そのものの話であり、また非常に基本的人権にもかかわる問題でありますから、こういったものはやはり広く国会で御論議していただくべきであろうということで、まず、なかんずく与党で、実は御担当の森山先生はこの予算委員会に今御出席でございますけれども、お願いいたしまして、御論議をしていただきたいということをお願いしたわけであります。  私どもは、そうした御論議に関しまして、政府の方針に従って推進するという立場から御協力して、広く御論議をしていただきたいということの状態に今ございます。
  313. 中川智子

    中川(智)委員 自社さで連立、懐かしい、遠い昔になってしまいましたけれども、そのときに、民法改正プロジェクトの小委員会が発足いたしました。座長であられた野中広務官房長官には随分頑張っていただいたんですけれども、与党の中ではまとまりませんで、残念なことをいたしましたが、超党派の議員立法も去年出して、継続になっております。  ですから、ぜひともこれは、意見がばらばらだったら党議拘束を外してやっていただきたい。そして法務大臣、そちらでしたね、つい宮下大臣を見てしまって。厚生委員会なものですから、済みません。ぜひとも今国会で、党議拘束を外して今国会で、選択制なんですから、嫌な人はやらなくてもいいんですから、参議院先議でも何でもいいです、成立するために頑張るということでちょっとこぶしを上げていただけますか。頑張りますか。よろしくお願いします。
  314. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 今申し上げましたように、政府の方針でありますから我々は推進に努めてまいりますが、さはさりながら、これは提出して、法律が国会で御審議して通らなければこれはどうにもならないわけで、今御示唆のありました、いろいろな席からそうだそうだというお声もありました、しかし、この党議拘束を外すかどうかというのは、これは国会運営で、党派の間で御相談されることだと思いますが、個人的には、そういうのも一つの方法だと思います。  当面、与党の御議論を側面的にバックアップしてまいりたいと思っております。
  315. 中川智子

    中川(智)委員 それでは、時間になりました。ヤコブ病のことに関しましては一日も早い救済を心からお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
  316. 中山正暉

    中山委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十四分散会