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1999-02-03 第145回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月三日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       小澤  潔君    大原 一三君       加藤 卓二君    嘉数 知賢君       亀井 善之君    河村 建夫君       岸田 文雄君    斉藤斗志二君       島村 宜伸君    下村 博文君       津島 雄二君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    牧野 隆守君       宮島 大典君    村田 吉隆君       村山 達雄君    望月 義夫君       森山 眞弓君    谷津 義男君       横内 正明君    石毛えい子君       岩國 哲人君    上原 康助君       生方 幸夫君    岡田 克也君       鍵田 節哉君    北村 哲男君       小林  守君    中桐 伸五君       肥田美代子君    山元  勉君       山本 孝史君    横路 孝弘君       吉田  治君    石垣 一夫君       漆原 良夫君    大野由利子君       長内 順一君    木村 太郎君       久保 哲司君    草川 昭三君       斉藤 鉄夫君    田端 正広君       西川 知雄君    丸谷 佳織君       加藤 六月君    鈴木 淑夫君       西村 眞悟君    大森  猛君       木島日出夫君    春名 直章君       北沢 清功君    濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         労 働 大 臣 甘利  明君         自 治 大 臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   野田  毅君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       竹島 一彦君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         環境庁大気保全         局長      廣瀬  省君         外務省欧亜局長 西村 六善君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         社会保険庁次長 宮島  彰君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働大臣官房政         策調査部長   坂本 哲也君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         会計検査院長  疋田 周朗君         会計検査院事務         総局次長    深田 烝治君         会計検査院事務         総局第二局長  諸田 敏朗君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   江口 一雄君     望月 義夫君   越智 通雄君     下村 博文君   岸田 文雄君     宮島 大典君   岩國 哲人君     鍵田 節哉君   上原 康助君     石毛えい子君   岡田 克也君     北村 哲男君   横路 孝弘君     山元  勉君   大野由利子君     長内 順一君   草川 昭三君     丸谷 佳織君   斉藤 鉄夫君     田端 正広君   西川 知雄君     木村 太郎君   志位 和夫君     大森  猛君   不破 哲三君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   下村 博文君     嘉数 知賢君   宮島 大典君     岸田 文雄君   望月 義夫君     江口 一雄君   石毛えい子君     山本 孝史君   鍵田 節哉君     中桐 伸五君   北村 哲男君     岡田 克也君   山元  勉君     横路 孝弘君   長内 順一君     大野由利子君   木村 太郎君     西川 知雄君   田端 正広君     斉藤 鉄夫君   丸谷 佳織君     漆原 良夫君   大森  猛君     志位 和夫君   春名 直章君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   嘉数 知賢君     越智 通雄君   中桐 伸五君     岩國 哲人君   山本 孝史君     上原 康助君   漆原 良夫君     石垣 一夫君 同日  辞任         補欠選任   石垣 一夫君     久保 哲司君 同日  辞任         補欠選任   久保 哲司君     草川 昭三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長内順一君。
  3. 長内順一

    長内委員 おはようございます。公明党の長内順一でございます。  きょうは、予算委員会で、これまで随分この場でガイドラインを中心といたしました、どちらかというと安全保障日米安全保障の件が中心議論されていたわけでございますけれども、きょうは私はちょっと所を変えまして、同じ安全保障でも、エネルギーと食糧の安全保障についてお伺いをさせていただきたいというふうに考えております。  二十一世紀、何が大切かということになりますと、私はやはり、一つエネルギー問題、そしてもう一つは、食糧問題がどうあるのかということが非常に大事な点ではないか、こんなふうに考えているところでございます。きょうは、一つ石炭の問題、それからもう一つ水産それから農業の問題、こんな問題について率直に大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  初めに、石炭の問題について率直にお伺いをさせていただきたいと思います。  実は、先日、一月の二十五日でございましたけれども、北海道中央部空知という地域がございますが、そこの旧産炭地夕張、三笠、砂川、赤平といった、かつては石炭大変繁栄をした、そんな地域を視察してまいりました。私が思っていた以上に町は変わっておりまして、疲弊をしておりました。特に夕張は、あの映画で、「幸福の黄色いハンカチ」なんというので随分紹介されたところでありますが、閉山になりまして約十年たちまして、随分町の様子も変わってしまっておりました。  私は、この産炭地の問題、どちらかというと最近は忘れられがちといいますか、議論されないままに来ているような気がしてならないわけでありますが、夕張にしましても、閉山して十年たっております。いろいろな対策がこれまで行われておりましたけれども、ここでいま一度、閉山後の地域振興策、これについて考える必要があるのではないか、こんなふうに思って、きょうはここに立ちました。  石炭産業は、御存じのように、戦後の経済復興を図るために国策石炭産業が起こったわけであります。そうして、その後のいわゆるエネルギー流体化革命が世界の潮流になりまして、国策で起きた石炭産業国策で幕を閉じたというふうに言ってもいいのではなかろうかと思います。そしてその結果、地域、そこに暮らしていた人だけが残った、こういうことではないかなと思います。国策として始まった炭鉱閉山して、そして町は基幹産業が失われてしまって大変な状況で、そこへ国が振興策を施したわけでありますが、私は、率直に言って、この振興策十分効果があらわれていないということを実感いたしました。  これにつきまして、閉山後の地域振興策実効についてどのように御認識をされているのか、大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。
  4. 稲川泰弘

    稲川政府委員 大臣がお答え申し上げます前に、産炭地振興策を現在までどのように推進してきたかという実情を御報告申し上げたいと思います。  産炭地振興対策につきましては、平成三年に、法律に基づきまして、ブロックごと産炭地振興実施計画を策定し、総合的な施策の指針としてまいりました。策定当初、七道県、十九圏域、二百四市町村対象とした計画でございましたが、平成九年以降、現在は、四道県、八ブロック、百二市町村対象としたものでございます。  この計画の中には、圏域ごと振興の方向、振興すべき産業あるいは産業基盤生活環境整備内容等を決めてございますが、主な事業としましては、工業団地造成し、ここに企業誘致を行い、また基金造成し、市町村財政支援を行うという内容でございました。  現在まで、関係市町村あるいは関係省庁と連携をとりながら進めてきたところであります。今後とも、この着実な実施努力をしていきたいという考えでございます。
  5. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生がお話しされましたように、日本石炭産業というのは、戦後復興に関しましては重大な役割を担っていたわけでございます。その後、エネルギー石油に移ってまいりますと同時に、日本国内石炭炭鉱というのは非常に深部に及んでおりますし、また海底にも及んでおりますので、採算がとれないということで、石油に移行してまいりました。ただ、その間、石炭消費量が減ったかといえばそうではなくて、製鉄を中心石炭輸入というのは相当ふえて、消費量もふえてきたわけでございます。現在では、火力発電所石炭で多く建てられておりますので、石炭消費量自体は減る傾向ではないというふうに私は認識しております。  ただ、そういう採算の合わない山を持っておりましたので、それについて徐々に閉山をしていくということをやりました。これは、一つ雇用対策であり、一つ地域振興の問題もありますし、一つは、やはり国内でもエネルギーの一部を担う必要があるという考え方にも基づいていたわけでございます。  これは、随分いろいろな努力をいたしましたが、現在、実際に残った炭鉱というのは二つになっております。これをどう考えていくかということは今後非常に重要なところでございますが、やはり大きな流れとしては、採算性日本炭鉱は非常に悪いという現実は無視できないと考えております。
  6. 長内順一

    長内委員 私は、閉山後の地域振興策が果たして実効が上がっているかどうかということを今長官に伺ったわけでございます。策がいろいろあるだとかこういうことをやってきたということでなくて、十分な実効が上がっているかどうか、これを私は伺ったわけであります。  私は、実際に見てみて、決して長官がおっしゃるような形がうまく推移しているというふうには実感できませんでした。これは今後の問題として非常に大事な問題だと思います。今までのその振興策だけで本当にいいのかということを私は改めてお伺いしたいわけでございます。  そうして、この産炭地振興については、平成十年の六月に、政府、いわゆる通産大臣でございますけれども、産炭地振興審議会に対しましてこういう諮問を行っております。「産炭地域振興対策の円滑な完了に向けての進め方について」、こういうタイトル諮問を行っているわけであります。  ここでお伺いしたいのは、今、産炭地のその地域産炭法でカバーをされているわけでありますが、この対策がもし、ここで諮問されているように円滑な完了に向ける、終了に向けるということであれば、私は、これは大変な問題だなという認識を実は持っているわけであります。したがいまして、ここで言う、諮問したこの完了となる、完了するための条件、これはどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいわけであります。
  7. 稲川泰弘

    稲川政府委員 御指摘産炭地域振興臨時措置法平成三年四月に法期限を十年間延長いたしましたが、この延長に際しまして、産炭地域振興審議会答申におきまして、延長した十年の間にこの産炭地域振興対策目的を達成するよう最大限関係者努力すべしという答申がございました。この答申があるがために、したがいまして、昨年六月、御指摘のありました、通産大臣から審議会に対する諮問を行ったところでございます。  この審議会、昨年の六月から現在まで四回審議を行ってございまして、現在まで審議しております中身は、産炭地域の現状をどう考えるか、また産炭地域振興対策成果とその評価、まさに先生指摘の点でございます。これらを含めて、今後どういうふうな形で進めていくかという議論でございます。  この審議におきまして、現在の産炭地域の厳しい経済状況にかんがみまして、引き続き、法期限の後もこの支援を続ける必要があるのではないかという意見がございます。ただ、他方で、この日本経済全体の状況、あるいは産炭地域以外の地域状況を勘案したときに、法律延長を初めとして、この施策を続けることが果たして妥当なものかどうか、そういう意見も出されているところでございます。  産炭地域の現在の状況をどう評価するかという点につきましては、財政指数でありますとか、人口の動態でありますとか、工業出荷数生活保護率、いろいろなメルクマールがございますが、こういうメルクマールを含めて、この審議会が、委員指摘の、現在までの振興対策成果評価をどう考えるかという点で御意見を賜るものと考えてございまして、こういうものも注視しつつ、十三年度末まで円滑な完了に向けての努力を続けておるところでございます。
  8. 長内順一

    長内委員 長官審議会内容の説明はいいんですよ。だから、いわゆる産炭地地域振興策完了するというタイトルを使っていますが、完了というためには、どういう条件の場合に完了になるか、これをお答え願います。
  9. 稲川泰弘

    稲川政府委員 完了条件でございますが、この産炭地振興策は、石炭鉱業不況という特別の影響によって生じた産炭地の窮状をどの程度まで回復するのかという点でございまして、通常の地域経済状況になったときには、一般地域対策一般地域振興策でフォローをするという形になってございます。  したがいまして、石炭鉱業不況によります影響をどういうメルクマール考えていくか。先ほど申し上げました財政力指数、今なおかなり平均よりも低い状況でございますが、例えば過疎地と比べてどうであるか、あるいは人口の動向、工業出荷数生活保護率、そういったメルクマールを使いながら、我々としても、この審議会の御意見を踏まえて検討したいと考えてございます。
  10. 長内順一

    長内委員 今の条件であれば、これは資料を見たらわかるんじゃないですか、完了などという状況じゃないですよ。財政力指数にしても人口にしても、それから生活保護世帯、どれをとってみても、この産炭地全国平均どころか北海道平均までもいっていないわけですよ。ですから、そういう中で簡単に完了などという、いわゆるそこで今生活をしている人々の息の根をとめるような、こういう表現を使うことはふさわしくない、こんなふうに私は思います。  御所見をいただきたいと思います。
  11. 稲川泰弘

    稲川政府委員 産炭地域振興目的完了することは極めて至難のわざであるというふうには理解をいたしてございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、十年の延長をするに際して、十年間で所期の目的を達成すべく最大限努力をしろという前回の御答申がございましたので、その前回答申趣旨に沿うべく努力をしたいという趣旨完了という言葉を用いているわけでございます。もちろん、非常に難しいことであるということは重々承知の上で努力をしたいと考えてございます。
  12. 長内順一

    長内委員 長官、きっと思いは同じだと思うんですよ。ただ、表現の仕方で、今その産炭地人方生活をしていく最低限の補助策である産炭法中心とした振興策、これを完了するためにというような表現は実にけしからぬし、不的確だというふうに私は思います。そうであればもっと、検討するだとか、いろいろな議論の余地があるような表現にすべきだったのではないかな、こんなふうに考えます。  そこで、今回の産炭地振興臨時措置法産炭法ですが、平成十三年にこの期限がいよいよ切れることになるわけでございます。私は、空知の各地域を回ってみて、各地域では、この産炭法をぜひ延長してもらいたいなどということを言っておりません。それどころか、地域で何とか自立していきたい、人々が力を合わせて、知恵を出して、そしてその地域の中で何とかこの地域振興を図っていきたい、こういう意欲が私には伝わってまいりました。  長官、残るところあとわずかでありますけれども、この平成十三年の産炭法期限切れまでに、国としてはどういう支援策をもってこの地域にこたえようとしているのか、率直にお伺いしたいと思います。
  13. 稲川泰弘

    稲川政府委員 支援策につきましては、冒頭申し上げました産炭地域振興実施計画内容事業としてその着実な実施を実現したいということでございますが、あわせて、残り数年の中での、法失効までの期間での国の支援のあり方、これについても御審議を賜っております。そういう内容を踏まえて、最大限努力をしたいということでございます。
  14. 長内順一

    長内委員 できるだけのことと。  それから、長官審議会に今諮っているということは、もう十分これは承知をいたしております。そうじゃなくて、私は今、先ほど申し上げましたように、地域の実態をつぶさに伺って、その上で、さあどうするかということをお尋ねしているわけですから、審議会に任せてあるよということじゃなくて、この残った期間にこういう形で支援をしていきたいんだという長官の御所見をお伺いしたいと思うんですよ。  なぜならば、先ほど申し上げましたように、別に産炭法延長してずっとということじゃなくて、地域として、何とか振興していきたいと、いろいろな施策も持っているわけです。それに対して国はどういう形でこたえようとしているのか。  これは冒頭に申し上げましたように、石炭産業というのは国策で起こって、そしていろいろな事情はあったにせよ国策で幕を引いた、そういう産業です。ですから、私は、こんなときにこそ国の丁寧な対応が必要と考える。だからしつこく質問しております。  御所見をお願いしたいと思います。
  15. 稲川泰弘

    稲川政府委員 現在の実施計画、地元の各種のプロジェクトに即してその実現を一緒に努力をするという内容でございます。  現在まで、団地造成企業誘致、あるいは各プロジェクトに対する財政面での支援、その他、空知釧路基金造成してございます。この基金造成運用、あるいは財政支援の中での臨時交付金の中のプロジェクトのとらえ方、助成の仕方、そういった面で、現在実施をしておられる各市町村の意向をよく踏まえながら、今後の運用をしていきたいと考えてございます。
  16. 長内順一

    長内委員 地域でも一生懸命必死になって頑張っておりますので、ぜひとも今お答えをいただきましたような支援策で積極的にこたえていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  続きまして、平成十三年にはこの地域振興策中心である産炭法期限切れになるわけでありますが、もう一つ重要な課題があるわけでございます。  先ほど通産大臣の方からもお話をいただきましたけれども、国内に残っている炭鉱二つあるわけでございます、九州の池島、それから北海道釧路太平洋と。率直に申し上げまして、この存続について、通産大臣、どのようにお考えになっているのか。存続について御所見伺いたいと思います。
  17. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 現在稼行中国内炭鉱は、先生指摘のとおり、二つ炭鉱のみになっておりますが、石炭というエネルギーは、埋蔵量が豊富であり、日本の一次エネルギー供給の一六%を占める大変重要なエネルギー源でございます。  こうした中で、国内炭をどう位置づけるかについては、雇用確保及び地域経済に与える影響の側面も踏まえながら考えていく必要があると思っております。また、日本のすぐれた炭鉱技術を維持することが、ある種のエネルギー安定供給確保の一助となるという考え方もあります。しかしながら、もう一つの大事な視点は、やはり輸入炭と比較した経済的な合理性から考える、こういう視点も大変重要でございます。  こうしたさまざまな考え方がございますので、これらの考え方について十分な検討をいたしまして、現在稼行中の二炭鉱位置づけについて、石炭鉱業審議会の場において、現行石炭政策の円滑な完了に向けての石炭政策全体の議論の中で御審議いただいております。  国内炭鉱存続については、最終的には個々の会社の経営判断の問題ですが、私といたしましても、今後、審議進捗状況を踏まえながら、国内石炭鉱業位置づけについて的確に判断してまいりたいと考えております。
  18. 長内順一

    長内委員 今御答弁いただきましたけれども、大臣のもっと率直な決意というか御所見伺いたいと思います。  というのは、ここの太平洋炭鉱、私、釧路太平洋炭鉱を例にとって申し上げますけれども、ここの技術レベルが非常に高レベルであるというふうに言われているわけですね。そうして、これは、ここの炭鉱で、採炭事業で収益を上げるという本来の企業の目的、これとまた別に、海外の技術支援といいますか、さまざまな国にここの技術を提供しておるわけであります。例えば、これを見てみますと、海外からの研修員の受け入れ、トータルで、平成九年度で五百四名、それから、逆にここの技術を海外に派遣している、この人数が二百七十二名。これは大変な数だと思います。  別に私はこの会社を擁護するわけではありませんが、この会社は、そんなメリット、自分のところの損得、これとは別に、日本が大変な石炭輸入国であって、エネルギー源としての石炭がどうしても必要だ、そのためには自分のところの持っている技術をひとつ後発のそういう地域炭鉱に提供しようじゃないか、こういうことでこういう事業を行っているわけであります。  大臣、確かに内外価格差の問題だとか現実的な問題があるのは事実でありますけれども、こういうグローバルな視点から、こういう炭鉱技術、特にハイレベル炭鉱技術を残していく、まさに、通商産業大臣日本にはいろんなすぐれた技術がたくさんあります。ところが、これがだんだんなくなってしまう。どうしてかというと、実用化されてないうちに形骸化されて、なくなってしまうわけであります。  炭鉱のこの技術、私は、ぜひとも日本のこの国際貢献の中で位置づけて、残し、活用すべきだ、こんなことからも、太平洋炭鉱並びに池島炭鉱存続、こんな視点からは考えられないだろうかと思うわけでありますが、御所見伺いたいと思います。
  19. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 日本炭鉱というのは、露天掘りと違いまして、相当深いところ、なおかつ場合によっては海底まで掘っております。したがいまして、水、ガス、地盤の落下、あらゆることと戦いながら石炭を掘ってきた歴史でございます。最近は大きな事故はなくなりましたが、従前は、いろいろな事故が起きて多数の生命も失われる、そういう中で、日本石炭産業は、大変すぐれた技術を培ってきたわけでございます。これは、先生指摘のように、なくすには大変惜しい技術であるということは間違いございません。  それから、国際的に、いろいろな国々が行っている炭鉱、こういうものに対しても、私は、そこまでの人数の方が来られている、あるいは派遣されているということは今まで知りませんでしたけれども、そういう意味では、すぐれた技術をいかに残すかということも一つの大事な視点であって、石炭鉱業審議会においては、そういう経済性ということも大事なことですが、やはりすぐれた技術を残すということはどういう意味を世界的に持っているかということもぜひ委員の方々にはお考えをいただいて、結論を導いていただきたい、そのように思っております。
  20. 長内順一

    長内委員 私は、今大臣がおっしゃったような内容で、一私企業ではあるけれども、その持っている技術をもって世界へさまざまな形で貢献していく、その後押しをぜひともやるべきであると。  それともう一つ、実は、太平洋炭鉱というのは釧路にございます。大変な基幹産業になっているわけであります。昨年、北海道では拓殖銀行が破綻をいたしました。中心の銀行であったために、地域は大変な影響を受けたわけであります。私は、基幹産業が失われるということも、ある意味で、その地域にとっては銀行が一つなくなるのと同じくらいの、いや、それ以上の影響があるかもしれない、私はこんなふうに考えるところでございます。  先ほどの大臣の、広い目で、グローバルな目でこの炭鉱技術評価していただいたのと同じようにこの地域のこともぜひ御勘案いただきまして、北海道のこの太平洋、それから九州の池島と、あの存続をぜひお願いしたい、このように申し上げておきたいと思います。  続きまして、ちょっと時間がありませんので、次に進みたいと思います。  次は、水産業の件について中川大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。  我が国の水産業なんでございますけれども、私のイメージでは、どうも国際会議の場での外交交渉、ここが私たちの目に触れる何か唯一の、私は札幌の都市の議員なものですからそういうふうに感ずるのかもしれませんけれども、日韓漁業交渉だとか日ロ漁業交渉だとか、こういう場が、一つ私たちの目に触れる、日本の漁業の姿をかいま見る、そんな場面であろうかなというふうに率直に思っております。  しかしながら、今よくよく考えてみますと、かつてはいろんな港から大漁旗を押し立てて、それで遠洋の海へどんどん魚を追いかけてこの我が国の漁業というのは拡大をしていたわけでございますけれども、最近は、二百海里ですとかさまざまな問題でだんだん、外へ行っていた、そういう船や何かがどんどん押し込まれまして、非常に漁場というのが限定されてしまったんではないかな。したがって、今までのこの水産業、漁業のあり方と、この辺で、一つ大きなターニングポイントにあるのかな、そんなことを実感しているわけでございます。  そうなりますと、限られた漁場の中で魚をとるわけでありますから、これは今、とる方はすごい技術が向上しております、ハイテクを搭載した魚探を持った船だとか、人工衛星から魚群をつかまえたりなんかしまして。そうなってきますと、当然のように、限られた漁場の中でそうやってとり尽くすわけですから、資源が枯渇をしてくる。  私は、これからの水産業のポイントは、私たちの子供だとか孫の代、次の世代にこの日本の海の豊かな漁場を残すこと、これが我々に与えられた使命ではないかな、こんなふうに思っているわけでございます。  大臣は、お父さんも大変水産業に力を入れられた方でございまして、十分この辺の私が申し上げたことは御理解されていると思いますが、改めてこの資源確保、現状の水産資源の状況をどのように御認識されているのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  21. 中川昭一

    ○中川国務大臣 今先生指摘のように、日本は伝統的に魚文化の国と言ってもいい国でありますし、また、一時は世界一の漁獲量を誇っておりましたが、現在はもう世界でも七番目か八番目に低迷をしております。我が国の近海を見ましても、一部資源状態がよい魚種も見られますけれども、マイワシ、ズワイ等、極めて資源が悪化している魚種がありまして、総じて非常に低位な状況にあります。  一方、国際的な環境も、先生承知のとおり、国連海洋法条約のもとで資源管理をきちっとやっていくという国際ルールができまして、そういう中で、我が国としては、まず自分たちの海の資源管理をきちっとやり、そしてその中で漁業資源をつくり育てていきながら国民に対して漁業の安定供給をやっていく。あくまでも資源管理が前提であります。と同時に、国際的にもそういう国際ルールのもとで、漁業国と、そしてまた消費国といいましょうか、日本のように魚をいっぱい消費する国との協調の中で、国際的なルールの中でやっていくという体制になっていくと思います。  ほうっておくと本当に、先生指摘のようにどんどん漁業能力がアップしてまいりますから、資源は限られておりますので、世界的にも国内的にも漁業資源が枯渇していくことを何とか防ぐという体制のもとで、国内的にも国際的にも、つくり育て、安定的な漁業の供給のためにこれからいろいろな施策をとっていく時代に入ってきたという認識を持っております。
  22. 長内順一

    長内委員 まさしく、資源というのは有限でございますから、これを私たちが守っていかなければ当然枯渇してしまうわけでございます。  今、さまざまな施策をもって臨むというふうに大臣の方からお話がございました。大臣、私は、この資源管理の問題というのは、何か今始まったことじゃなくて、随分前から、資源は大事だよ、しっかり管理していこうということは随分言われてきたように思います。言うなれば、火の用心と言いまして、みんなも、火の用心、火の用心、火の用心、これではいつまでたってもどうしようもないわけで、さあそろそろ、せっかく農政それから水産に精通された中川大臣の登場でありますから、この辺で資源管理の数値目標、これを決めて、そしてお互いにそれに向かって資源管理をしていく、こんなこともひとつ考えられないだろうかと思うわけでございますが、その実効性についての御所見をお伺いしたいと思います。
  23. 中川昭一

    ○中川国務大臣 先生も私も北海道ですから、サケ・マスの増養殖事業については歴史があり、全国でも日本は昔からそういうことには非常に熱心でありましたけれども、新しい時代の中で、今先生の御指摘の数値目標、資源回復のための目標を具体的に策定すべきでないかという御指摘につきましては、消費者に水産物を安定的に供給する上で極めて大事なポイントだろうというふうに考えております。  現在、TAC制度の中で七魚種が指定されておりますが、これは資源状況あるいは漁獲法が全国的にきっちりと実態が把握できているという前提で七魚種が指定されておるわけであります。これをほかの魚種についても指定をしていくべきじゃないかという御指摘は極めて重要だというふうに認識しておりますけれども、資源の現状を正確に把握する必要がまだあること、あるいはまた漁船や漁労機具の性能が資源にどういう影響を与えるかということも含めまして、先ほど申し上げたように、資源と漁獲可能量というものとのバランスを正確に把握するということが技術的にまだまだ残された作業として残っておるわけであります。  しかし、先生の御指摘というのは、これからの資源を管理する、あるいはまたきちっと安定的に魚を供給するという両面から見ても重要な御指摘だと思いますので、これからも検討を深めていきたいというふうに思っております。
  24. 長内順一

    長内委員 大変前向きなお答えをいただきました。私も、これは立場だとか何かは全く別に、大臣おっしゃるように、やはりこの問題はきちっとやっていかなかったらだめだ。  それで、冒頭に申し上げましたように、資源の管理というのはみんなわかっているわけですよ。これは大事だとみんな言う。でも、こういう数値目標をきちっとすることによって、何をだれがどんなふうにしていいのかということがはっきりしてくる。私は、ぜひ積極的に、これは余り時間をかけないで実現をされるようにお願いをしておきたいと思います。  そこで、こういう資源管理、そして漁業のターニングポイント、一つの岐路に立っているということを考えましたときに、もっといろいろな議論をしたかったんですが、ちょっと時間がなくなりましたので結論を申し上げますけれども、私が要望したいのは、今農業の方で新農業基本法というのが一生懸命に議論されておりますけれども、漁業の場合も、こういう資源の確保、それから資源の管理、こういうものを中心といたしまして、現在の沿岸漁業振興法を見直して漁業基本法をぜひとも制定すべき時期に来ている、こんなふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  25. 中川昭一

    ○中川国務大臣 先ほどからの先生の御指摘にもありますように、今転換点に来ているということは共通認識だと思います。  そういう中で、新しい漁業基本法というものをこれからに向かって位置づけていく。国際的な状況の変化、さらには日本の漁業者が高齢化している、担い手が非常に少なくなっている、また漁獲量も減っている、こういう状況で、日本の水産業もまた守り、発展をさせていかなければいけません。そういう観点からも、新たな時代にこたえられる基本法というものを、現在、基本政策検討会で議論をしていただいておりますけれども、ことしの夏をめどに方向性を出していきたい。基本法というものは新たな時代にとって私は必要なものではないかというふうな方向で、私自身、今この検討会を見守っている状況でございます。
  26. 長内順一

    長内委員 日本の水産業を守るために、そしてそれを育てるために、また、私たちの子供だとか孫の次の世代に豊かなこの日本の海の資源を残すためにぜひとも御奮闘をいただきたいと思います。  続きまして、農業の問題について若干触れてみたいと思います。  これは随分議論されたようでございますけれども、食糧の国内の自給率について、時間がありませんので率直にお伺いさせていただきたいと思います。  私は、農業問題の基本はここにあるんではないかなというふうに思っているんですね。それは何かというと、やはり食糧の自給率を定めるということは、今までの農業でいうところの減反方式で調整を図るのと違いまして、自給率が決まれば量が決まる、量が決まれば耕地面積が決まる、耕地面積が決まれば担い手といいますか生産者の数が決まる。一方、生産側からいくと、そういうふうに全部が数値化して見えてくるということが大事なところかなというふうに私は思っております。  今、何か知らないうちに、日本の国というのは先進国で最低の食糧の自給率の国になってしまっている。これなんかはもう大変なことでございまして、農林水産省では二〇二五年時点での食糧自給率見通しというのを出しておりますね。この中では、世界の人口は二〇二五年には現在の四割増の八十億人になる、そして、割愛しますけれども、食糧生産が追いつかない、そういう事態になるのだ、そして穀物の国際価格が現在の四倍に高騰する、こういう見通しを立てていらっしゃいます。九六年に総理府で世論調査をしたときにも、将来の食糧事情に国民は大変大きな不安を抱いていまして、この総理府の調べでは、当時七〇・五%の方が将来何らかの形で食糧に不安を持っているということでございました。  私は、今、この食糧の自給率をきちっと定める必要がある、そうして、先ほどの漁業の資源管理じゃありませんけれども、ひとつ数値目標をきちっと定めて、国内でこれだけの食糧は確保していくんですよという一つの目標を、生産者の方もそうだし、それから消費者の方もそうだし、国民全体で一つの共通目標にしてこれから取り組んでいくことが食糧行政において非常に大切なことだと思います。  大臣、どうでしょうか。食糧の自給率、数値化して、ひとつ目標を立てて取り組むお考えはございませんでしょうか。
  27. 中川昭一

    ○中川国務大臣 主な世界の国々の中で、中長期的に自給率が低下しているのは日本だけであります。しかも、先生の今の御指摘のように、世界的な人口と食糧とのバランスを考えたときに、これは日本だけの問題ではなくて、世界的な意味でも、日本の食糧の自給率というものをできるだけ上げていって、国産の食糧を基本として安定的に食糧供給をするということが、今回の農政改革大綱、そしてこの後御審議いただきます新しい基本法の中でもぜひ御議論を深めていただきたいと思っております。  具体的に、自給率につきましては、先生指摘のように、ただつくればいいという時代ではなくて、消費者とともに、お互いに共通認識の持てるような国内食糧生産、その結果として自給率の向上というふうにつなげていきたいと考えております。  したがいまして、生産面では、品目ごとに品質、コスト面における課題を解決して、到達可能な生産努力目標を作成していきたい。また、消費面では、日本の自給率低下の大きなポイントの一つが食べ残し、あるいはまた日本型食生活から脂質分のよりウエートの高い食生活への移行が自給率という観点からかなり気になるところでございまして、そういう意味では、食べ残し、あるいは本来の健康にいい日本型食生活の普及という消費者サイドの認識もいただいた上で、個別の品目ごとの自給率の設定を、基本法に基づいた基本計画の中で策定できるように、また御議論をいただきながら、それに向けて努力をしていきたいというふうに考えております。
  28. 長内順一

    長内委員 最後になりますけれども、ぜひそういう形で、品目ごとだとか地域ごとだとか、こういう実行が可能な形、効果がしっかりとあらわれるような形をぜひお願いをいたしたいと思います。  私は、水産にしても農業にしても、ともすれば、都会の消費者の立場で考えたときには忘れられがちなことが随分たくさんあるなと今回つくづく思いました。消費者側にいる人間も、それから生産に携わっている人方も、二十一世紀において食糧というのは極めて大事な問題であるという問題意識を高く持って、そして、私どもはそれに明確にこたえていくというような姿勢で頑張ってまいりたいと思います。  大変ありがとうございました。
  29. 中山正暉

    中山委員長 これにて長内君の質疑は終了いたしました。  次に、大森猛君。
  30. 大森猛

    大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  きょうは、私は、戦後最悪の状況を迎えております雇用失業問題についての政府の基本的な認識と、とりわけ緊急を要する学卒者の未就職問題、そして中高年の雇用失業問題への対策、これについて質問し、また提案もさせていただきたいと思います。  最初に、有馬文部大臣、私は、先日、就職難に泣き寝入りしない女子学生の会など、学生の皆さんから陳情、要請を受けました。かつて、学生の就職問題は、氷河期とか超氷河期とかこういうような表現がされてきましたけれども、今日の事態というのはそれをもはるかに上回る極めて深刻な状況にあります。  しかも、それに加えて、いわゆる就職協定が廃止をされたために、今、学生は、二年、三年から求職活動に走らなくてはならない。ある学校では一年生にまで就職予備校から勧誘が来る、こういうような状況まであるわけであります。大企業の方は、こういう中でも身勝手に無秩序に自分のところに必要な人材だけを確保して、あとは野となれ山となれというような状況も放置されて、不況の中で総量が縮小している中で、ますますこういう事態が加速的に深刻な事態を引き起こしているわけであります。  その結果、どういうことになっているか。落ちついて勉強できない、ゼミに出れない、説明会が平日の昼間である、学校に行くこともできない、こういう状況が長期に続く事態も生まれているわけであります。学問探求の場、あるいは人格形成の場としてじっくり四年間勉強すべき、そういう学問の場がこういう状況では、本来の大学のそういう機能、そういう使命が脅かされかねない状態になっていると思うのです。  この点で、まず、こういう状況を放置していいのか、文部大臣の率直な御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  31. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 今、幾つか大森先生から御指摘、御質問を受けたことでございますので、一つ一つ少しお答え申し上げたいと思います。  まず、全般的なことでございますが、私も大変さまざまな点で心配をいたしております。就職が非常に厳しいというふうなことについても、就職協定に関しましても、さまざまな点で大変心配をしているということを、まず最初に申し上げたいと思います。  文部省、労働省共同で調査いたしました本年三月卒業予定学生の昨年十二月一日時点での就職内定率は、昨年度に比べ、大学で、残念ながら四・五ポイント減の八〇・三%、短期大学、女子でありますが、三・九ポイント減の五六・六%となっております。このように、本年三月卒業予定の学生の就職を取り巻く状況は、景気の低迷による雇用情勢が厳しさを増しておりまして、大変厳しい状況となっており、特に女子の就職について厳しくなっていることは大変憂慮しているところでございます。  今後の見通しにつきましては、例年、卒業時に向けて就職内定率は上昇する傾向にあることは事実でございますが、景気低迷が続く中、やはりこれもまた大変厳しい状況であろうかと思っております。したがいまして、文部省並びに私といたしましても、こういう点に大変苦労いたしまして、いろいろな努力をさせていただいている次第でございます。産業界にお願いをしたり、さまざまな努力をさせていただいております。  また、先ほどの就職協定の問題でございますが、新規学卒の就職、採用につきましては、従来から大学側、就職問題懇談会と、企業側、日経連が連絡協議を行っているところでございます。  私が東大をやっておりましたころまでは就職協定を厳しく守る努力をいたしましたが、平成九年度から、それまでの就職協定にかわって、大学側では就職についての申し合わせ、企業側では採用・選考に関する倫理憲章をそれぞれ作成し、双方がそれぞれ尊重していくという方式がとられているところであります。  私も大変心配をいたしまして、文部省といたしましては、大学側と企業側との協議の結果がよくなるように努力をさせていただいておりますが、現在、両方の協議の結果を尊重しつつ、学生の就職、採用活動が円滑に行われるよう、引き続き努めてまいりたいと思っております。
  32. 大森猛

    大森委員 今、文部大臣からは大変心配しているというお話がありました。私は、単に学生の皆さんが就職できない、そのことを心配するだけじゃなくて、このことを、日本の将来にとって、国家にとって極めて重大な問題だという受けとめ方をするかどうか、このことが極めて重要であると思います。  加えて、就職協定の問題では、御答弁ありましたけれども、企業の倫理憲章にゆだねる、こういうものでは全くだめだというのがもう多くの大学人の共通の常識になっていると思うのです。恐らく文部大臣もそういうことは御承知の上で答弁されているのではないかと思いますが、本当に学生が安心して四年間を全うできる、あるいは二年間を全うできる、そういうきちんとしたルールを、大学関係者の意見なども聞きながら、これは改めて確立する必要があるのではないかと思います。この点、重ねてお願いをしたいと思います。
  33. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 先ほどは就職率のことについてお話をいたしましたけれども、今の就職協定の問題について、私の、そして文部省の考えなどを申し上げてみたいと思います。  就職協定が廃止された影響がございます。採用情報の公平、公正な公開や通年採用の拡大が進んだ、そして学生の就職機会が拡大したというふうなよい点も指摘されておりますが、一方、大森先生指摘のように、就職、採用活動が早期化し、学生が最終学年の当初から授業に出席しないため、大学教育に影響が生じているという指摘がなされております。この点を私、非常に心配をしている。  就職、採用活動の早期化につきましては、昨年十月の大学審議会答申、これも六月まで私もメンバーでございましたが、その大学審議会答申におきましても、まず、大学は、学生の卒業時における質の確保を図るため、教育内容及び教育方法の改善を進め、責任ある授業運営を行うとともに、産業界においては、大学の教育活動を尊重し、可能な限り休日や祝日等に採用活動を実施するとともに、過度に早期の採用活動を行わないよう期待する旨、強く述べられているところでございます。  私といたしましても、昨年十一月、経済関係団体へ、まず就職できるように採用を多くしてほしいという要請をいたしましたが、同時に、採用活動の早期化の自粛を強くお願いしたところであります。  今後とも、大学側及び企業側に対しまして、学生の就職、採用活動が過度に早期化することなく、秩序ある形で行われるよう求めてまいりたいと思っております。その結果、大学側、企業側、双方の良識と努力により、就職協定が果たしてきた役割が実質的に確保されることを期待いたしているところでございます。
  34. 大森猛

    大森委員 ぜひ学生の皆さんの要望が通る形で、実効ある措置をとっていただきたい。きょうは学生の方もたくさん傍聴に見えておりますので、こういう学生の皆さんが安心して帰れるような答弁を今後もお願い申し上げたいと思います。  先ほど、就職内定率の状況報告がありましたけれども、高校生では約七万人の方がまだ内定していない、未定だ。そして、大学の方も戦後最悪、大学、短大合計で十四万四千人が就職が決まらない。希望の春は遠い、こういう声が出されているわけであります。  そこで、労働大臣に基本的なことをお聞きしたいのですが、こういう学生の皆さんが、学校で学んだことを社会の中で生かしていきたい、そういう思いを持った青年、学生たちが、その入り口でつまずいてしまう、社会から受け入れられない。先ほども申し上げましたけれども、こういうことが国家にとって、日本の将来にとって極めて重大な問題であるという認識をお持ちかどうか、基本的な点、労働大臣にお聞きをしたいと思います。
  35. 甘利明

    ○甘利国務大臣 学校を卒業して社会にデビューをする入り口でありますから、入り口のところからとんざしてしまうということは、御本人にとっても人生上の重大な影響を与えますし、それは社会の有力な戦力でありますから、社会にとってもスタートがうまくいくようにいろいろ環境整備をするということは非常に大事なことだと認識をしております。
  36. 大森猛

    大森委員 私は、ぜひ大臣の口からお聞きしたかったわけなんですが、問題は、やはりこれは政治の責任である。御存じのように、憲法二十七条は勤労の権利と義務を高らかにうたっております。働く意思と能力がある者に対してきちんと仕事を保障する、これが政治の責任であり、政府の責任、社会の責任でもあると思います。こういう立場で、文部大臣の基本的な見識、もう一度お聞きをしたいと思います。
  37. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 ともかく、皆さんが、特に学校を出たばかりの人たちが喜んで働く場所を多くつくるということが極めて大切だと思っております。それが、若者たちが一生懸命勉強しようという意欲、生きる力を養成しようとする、勉強しようとする意欲を促進いたしますので、やはり就職のできるような最大限努力を図るべきだと思っております。
  38. 大森猛

    大森委員 今日の社会において、働く意思や能力を持つ者に対して仕事を与えることができない経済とは一体何だ、政治とは一体何だということを私は申し上げたいと思います。  では具体的な対策、先ほど大臣は経済団体へのお願いなどに行かれたと、まことに御苦労さまでありますけれども、具体的な対策として、学卒者の就職対策、労働省、文部省、それぞれどういうような対策をこれまでとってこられたでしょうか。
  39. 甘利明

    ○甘利国務大臣 先ほど文部大臣から答弁がありましたとおり、この十一月、十二月期での内定率を見ますと、高卒、大卒、それぞれ予定者、四・五ポイントから六・九ポイントほど例年より下がっております。三月に向けてもちろん内定率は上昇していくのでありますが、それにしても、例年に比べても非常に厳しい状況であります。  そこで、私どもとしては、緊急の就職面接会というものを開催する。昨年実績でいいますと、一―三月で開催しましたのが二十六回でございます。ことしは、すでに開いたものも含めて、予定しておりますものは四十五回、倍近く開こうと。  それから、就職促進員の配置をいたしまして、これは特に高卒者の方々に適切な情報提供をしていこう、それでミスマッチを解消していこうということで取り組んでいるところであります。  それ以外にも、いろいろ労働省の施策を駆使して対応していきたいというふうに思っております。
  40. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 二つに分けてお返事申し上げた方がよろしいかと思います。  まず第一は、大学、短大卒業者についてでございますが、先ほど申しましたように、就職というのは、学生が将来に希望を抱き、職業生活に入ろうとする重要な一歩であると考えております。そのため、文部省では、各大学等に対しまして、就職指導や就職相談体制の充実を求めております。そして、学生の就職機会の拡大を図るため、大学側及び企業側、双方の参加を得まして、全国就職指導ガイダンスを開催させていただいております。  また、先ほど申し上げましたように、私といたしましても、昨年十一月十三日及び十七日に、日経連を初め経団連等々、経済関係団体を訪問いたしまして、まず第一に、学生の雇用枠を拡大してほしい、第二に、特に女子の積極的な採用などについて格段の配慮をお願いしてまいりました。各団体としてもできる限りの努力をしていただいているところでございます。また、その後も機会あるごとにお願いを続けております。  こういうふうに、今後とも、就職内定状況の把握に努めながら、労働省など関係省庁とも十分な連絡、連携を図り、一人でも多くの学生が就職できるよう、全力を尽くしてまいりたいと思っております。  もう一つ、高等学校の卒業予定者、このことに対しましても大変心配をいたしております。  そこで、どういうことをやっているかと申しますと、高等学校においては、公共職業安定所との連携を図り、積極的な求人開拓や職場見学の実施、就職面接会の開催等に協力するなど、一人でも多くの生徒が就職できるように懸命に努力をいたしております。  そこで、先ほど申しました、昨年の十一月に日経連を初め経済関係団体を訪問いたしましたときにも、同じように、生徒の採用枠をふやしてほしいこと、特に女子の積極的採用についてお願いをしてまいりました。また、一月二十六日付で、各都道府県教育委員会等に対しまして、職業安定部局と連携して一層の求人開拓に努めるよう、改めてまたお願いをいたしました。そして、関係経済団体に対しましても、再度、初等中等教育局長名で、新規高等学校卒業予定者の求人枠を拡大してほしいということを強く要請いたしたところでございます。
  41. 大森猛

    大森委員 いろいろ対策をとられているわけですが、昨年も悪い、ことしはそれを上回ってさらに悪い、実際に効果が出ていないんじゃないかと思うんです。  そこで、具体的にお聞きしたいんですが、労働省の方で、今年度、インターンシップ制度、今年度のいわば目玉的な事業として出されましたけれども、在学中の専攻あるいは将来のキャリアに関連して就業体験を積んで、職業意識を高めるというものだそうでありますけれども、今年度の実績はどういう状況でしょうか。
  42. 甘利明

    ○甘利国務大臣 ちょっと具体的な資料が今手元にないのでお届けをします。  このインターンシップ制度といいますのは、就職をする人と実際の仕事との意識の違いといいますか、ミスマッチを解消していこうと。と申しますのは、大卒で三年以内に三割ぐらいがやめちゃうんですね。就職をしても、この仕事は自分に合わないとか、この仕事は自分のイメージしていたのと実際にやってみると違ったということで、スピンアウトしちゃうんです。  ですから、実際に就業体験を通じて、そういうミスマッチを極力なくしていくということが安定雇用につながるんではないかということで、これは大学側にも協力をいただきまして、経済団体と積極的に今進めているところであります。
  43. 大森猛

    大森委員 対策についての具体的な質問ということで通告は申し上げていたんですが、私どもの調査では、これはもうほとんど実績がないというぐあいに伺っております。  問題は、私は、そういうミスマッチの問題等々、いろいろ言われるわけでありますけれども、大学にしても、あるいは短大、高校にしても、雇用の量が決定的に不足している、これがやはり今最大の問題じゃないか。この点で、従来型の就職対策、これでは今日の状態では本当に効果がないということを申し上げたいわけであります。そういう点で、直接雇用の門戸を広げていくという対策は、残念ながら、文部省にしろあるいは労働省にしろ、具体的なものは見られない。  そこで、先ほどの、働く意思と能力を持った者に対して本当に雇用を保障していく、そういう機会を、チャンスを与えていく、政府、政治の責任というのは、この面でやはり果たされていないんじゃないか。今、特に若い皆さんの、若年失業者の問題は、これは日本だけじゃなくて各国共通の問題になっております。新聞、テレビ等でも、各国の若年失業者対策、いろいろ特集をしております。  私も、若干各国の状況を調査してみました。例えば、ドイツでは、若年失業者の削減のための緊急プログラム、これが昨年九月の総選挙の際のドイツ社会民主党と緑の党の連立協定に盛り込まれて、十一月に閣議決定、さらにそれが社会保険改革及び労働者の権利保護法、こういう法律にされて、既にことしの一月一日から実施に移されております。  具体的に、この中身は、若年労働者雇用のための賃金助成を含む若年失業者対策、あるいは養成訓練援助措置なのでありますけれども、最近では、十万人の青年に職をと職業訓練職、こういうものを保障する計画を作成し、強力にこれを進めております。そのための予算が、日本円にして千三百五十億円であります。また、計画を普及するパンフレットを同封した、労働大臣、文部大臣、連邦雇用庁長官、三名連記の手紙を四十八万人の青年に郵送する、こういうことも伝えられております。  外務省の方、この点は間違いないですね。
  44. 西村六善

    西村(六)政府委員 ただいま先生がおっしゃられましたことで大体大筋正しい御説明だと思っております。そういう事実がドイツにおいては行われているわけでございます。
  45. 大森猛

    大森委員 こういう若年失業者に対する対策というのはドイツだけじゃないですね。  イギリスでも、一昨年の総選挙でブレア政権が圧勝をしたわけでありますけれども、ブレア政権の施政方針で、主要な経済課題として、経済の安定とともに、雇用確保、特に若年失業者と長期失業者対策を最重点とする計画、WTW計画とか、あるいはニューディールなどを進めている。去年の一月から全国で実施されている若年失業者対策には三十一億五千万ポンド、約六千億円予定されているわけですね。  この中身は、若年失業者の雇い入れに対しては、事業主に対して週六十ポンド支給するなどの助成とか、あるいは環境保護活動、ボランティア組織での就労、いろいろ選択できるようになっている。サッチャー時代にはおよそ考えられないような雇用政策の転換が行われ、現に今進められているわけであります。  フランスでも同様に、一昨年の総選挙の結果、新しくジョスパン政権が誕生したわけでありますけれども、これも若年失業者対策に強力に今取り組んでおります。  一昨年の十月には、若年雇用の就業機会拡大に関する法律、これがすぐ成立して、その中身は、今後五年間で公共部門、民間部門のそれぞれ三十五万人の雇用を創出しようというものであります。地方自治体や各種公共団体が二十五歳以下の若年者を一年間の期限つきで雇用をするときに、政府が、社会保障分も含めて賃金の八割分を助成金として支給する。ついでに申し上げれば、最低賃金が六千七百フラン、約十三万円、総額で、二〇〇〇年にかけて七百億フラン、一兆三千億円、こういうものが予定されているわけであります。  具体的な雇用の中身としては、これは新聞等でも報道されましたけれども、学校開放行事の監視、クラブ活動の指導、通学児童や高齢者、障害者のための交通機関の利用を助ける補助要員、自然保全のためのごみ収集など、我が国でも今日必要であり、すぐにも実現できる、社会的なニーズもある、こういうものが含まれているわけですね。オーブレー雇用・連帯大臣は、こういう雇用を保障すると同時に、最終的には正規雇用につながることを希望する、こう語っておられるそうであります。  イギリス、フランスの最近の事例を紹介しましたけれども、外務省、この点もおおむね間違いないと思いますが、いかがでしょう。
  46. 西村六善

    西村(六)政府委員 今先生がおっしゃられたことでおおむね間違いございません。  一点だけ申し上げさせていただきたいと思いますのは、イギリスに関しましておっしゃられました三十一億五千万ポンドの予算でございますけれども、これは単年度のものではございませんで、九七年から二〇〇一年までの期間の間におきましてこの政策のために支出されるべき予算として計上されているものでございます。
  47. 大森猛

    大森委員 ドイツ、フランスも、これは御存じのように時間短縮で雇用創出を行ったわけですが、さらにイタリアでもこれを行うと同時に、公共機関が失業者を各種の公共サービス事業に就労させる社会的有用事業制度の拡充を図る法律が制定された。社会的なニーズもあり、持続的な雇用創出に展望を持てる、そういう部門で就労事業に力を入れているというわけですね。  ですから、今、サミット参加国、ヨーロッパの四カ国の事例を紹介したわけでありますけれども、これらに共通するのは、若年者失業対策、まず政府が直接雇用の機会をつくり出す、しかも正規の安定した職業につくことを展望しながらこういうものをやっているということですね。同時に、その上に立って賃金助成を行う、生活不安をなくすということもやっていく、さらにそのためにそれぞれ、お聞きになったように国の予算を相当規模準備しているということであります。ここには、やはり働く意思と能力のある者に対して本当に政治が責任を持つ、その気配が少なくとも私は感じられるのではないかと思います。  そこで、日本の労働大臣と文部大臣に端的にお聞きしたいわけでありますけれども、我が国と同じ発達した資本主義国であるこれらの国々で、経済情勢やら雇用慣行等、もちろん異なる面はありますけれども、今日の学生の就職難あるいは若年失業者の問題に直面している点は、これは全く共通していると思うんです。しかし、私は、先ほどの文部省、労働省の対策と今紹介したこれらの四カ国の事例と、天地ほどの開きがあるんじゃないか、大きな違いがあるんじゃないかと思います。この違いは一体どこから出てくるのか、それぞれの大臣からお聞きしたいと思います。
  48. 甘利明

    ○甘利国務大臣 先生指摘のとおり、憲法二十七条一項に勤労の権利と義務が規定をされております。これを担保するために、国は、国の政策として、職業を紹介し、雇用保険を支給し、あるいは職業訓練を公的な機関で行う、これを三位一体として今国家が責任を持っている体制をとっているわけであります。  そこで、御指摘のとおり、ドイツやフランスやイギリス、この失業率、そして全体の失業率と若年者失業率、この乖離をどうやって埋めていくか。ドイツでは、全体の失業率が一〇・九%で若年者失業率が一五・一%。フランスでいえば、全体が一一・五%で若年者失業率は二二・五%。日本でいいますと、全体の失業率が四・三%で若年者失業率が七・一%。これは、若年者に対してどう対応していくか、確かに政治課題でございます。  ただ、今先生は欧米と日本を比較されましたけれども、大前提が違うというのが一つあるんです。  それは、欧米は基本的に通年雇用で、若年者といえども職業能力を持っていない人ははじかれちゃうんです。日本は学卒一括雇用でありますから、企業が、その人に職業能力がついていようがついていまいが一括採用をして、企業内訓練をしっかりと行って将来の戦力として育てていく、これは決して悪いことじゃないと思います、長期戦略が立ちますから。  ですから、ヨーロッパにおいては、職業能力がない人は、どんなに有名な学校を出ていてもそこではじかれちゃうから、だから職業訓練について相当な費用を投入するというのは当然のことであります。一方、日本は、企業内訓練を行いますから、その企業内訓練が認定訓練とかあるいは公共訓練施設に人を出して訓練をするときの支援措置はしっかりとやらせていただいておるわけであります。  雇用形態がこれからどういうふうに変わっていくかということと、それに対する支援措置をどう充実していくかというのは密接な関係にあると思いますので、私も、そういう点を注視しながら、これからも労働政策の充実に努めていきたいというふうに思っております。
  49. 大森猛

    大森委員 失業率の違いあるいは雇用慣行の違いがあるのは当然だと冒頭に私は申し上げたわけでありますけれども、例えばドイツの事例を出しましたが、国会図書館からいただいた資料によれば、ドイツの若年失業者は四十五万人であります。今日本の若年失業者の数、何人か御存じでしょうか。五十八万人であります。はるかに日本の方が多いわけであります。雇用慣行の面でも、ヨーロッパの場合、それが一つの到達点でもあるわけですが、若年者ほど先任権との関係で職を失う率が高い、こういう状況はあるけれども、問題は、やはり姿勢の違いじゃないかと思うんです。  ドイツ政府の連立政権の協定ではこういうぐあいに言っているんですね。これは最近のものですが、青年の職業養成は我が国の未来のための最も有意義な投資である、こういう位置づけですよ。我が国政府は、銀行には投資する、ゼネコン型の公共投資はどんどんやるけれども、未来に向かって最も有意義な投資として青年を位置づけるようなことは何一つしない。私は、こういう姿勢の大きな違いがあると思うんです。  ドイツのリースター労働大臣、どう言っているかといいましたら、青年の失業は逃れ得ぬ宿命ではない、若者の社会への第一歩が失業への一歩でないように全力を尽くす、こう述べているわけであります。ここにはやはり二十一世紀のドイツに対する思いやりと青年に対する希望の表明あるいは信頼、社会的位置づけがしっかりされている。ここが日本政府と大きく違う点ではないかと思います。  こういう点で、今日就職問題が大変深刻な事態を迎えている中で、謙虚にこういう、今紹介したような外国の事例について学んでいく姿勢が必要ではないか。とりわけ青年、学生の雇用不安をなくし、意欲と能力に合った仕事を保障していくという点で、ぜひ大胆な、実際に雇用の拡大につながるような、そういう抜本的な制度、対策を今日改めて検討すべき段階に来ているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  50. 甘利明

    ○甘利国務大臣 意欲的にいろいろなことをやっていくというのは、全く先生と同じ意識であります。  ただ、若年者の失業の中身が日本と欧米では大分違います。日本は、数字でいいますと、若年者の失業のうち非自発的失業、つまり自分の意思でない失業というのは八万人であります。自発的失業は二十六万人でありますから、つまり、自分が思っていた仕事の内容と実際の中身の乖離を埋めていくという作業をちゃんとしていくということが大事なのでありまして、そのために今いろいろな施策をとっているということであります。  これは、日本雇用形態が学卒一括採用ということで、就業経験を全く持たないでいきなり現場に行くということがあります。ですから、インターンシップ等でそのギャップを埋めていこうということでありますし、それから、十一月の緊急経済対策においても、雇用の安定ということを正面の柱に、恐らくこれは初めて据えられたんだと思います。私も強い主張をいたしました。それから、予算規模でいっても一兆円を確保いたしました。ちなみに、春の対策が五百億でありますから、今政府が今雇用対策ということに相当力を入れているということは御理解をいただけるかと思っております。
  51. 大森猛

    大森委員 ミスマッチのことを大変強調されておるわけですが、私は、今の若年失業者の中で、先ほど申し上げた大学、短大あるいは高校の就職問題、これらは当然深い関係があるわけなんですが、今、これらの学卒者の場合、そういう問題じゃないと思うのですよ。  私も直接伺いましたけれども、例えば高校の就職担当の先生たち、本当にもうこれは大変な思いをして、学校に来るもの以外に職安まで行っていられる。あるいは学生の方からいえば、高校の場合は学校の方で選抜するということですから、総量が少ない、そうすると、もうそのチャンスも与えられない。ある女子高校生は、チャンスがないのは本当に悔しい、こういう思いを切々と語っておられるわけですよ。私は、そういうミスマッチの問題等々という問題じゃない、総量が決定的に不足しているということがまず第一の問題だということを指摘されなければならない。  その意味で、私は、雇用を直接提供していく抜本的な提起をしていくべきだということを提起しているわけでありますけれども、先ほどおっしゃった一兆円という数字も出てまいりましたが、これはマスコミがかく指摘しているように、もともとの枠組みの中でのやりくりということで、上げ底じゃないかというようなことに示されているように、その本質は、積極的な中身に乏しいものだと言わなければならないと思います。  この点で、私は、今提起していることは、決して非現実的な提起ということじゃない。先ほど緊急雇用創出基金、これについてはお触れにならなかったのですが、これを六百億円確保されておるわけですよ。しかし、これは実際に発動されるのか。発動の要件というのが五・二%。発動されるようになれば大変であるし、実際には発動されないのじゃないかというような危惧もある。こういう基金という形じゃなくて、これを直接、雇用の拡大に役立てるような方向での検討などを行うべきではないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  52. 甘利明

    ○甘利国務大臣 基金のお話はこの予算委員会の場でほかの委員からも御質問をいただいておりますし、一部、基金地域発動要件を緩和した対応もあります。  ただ、先生よく御承知だと思いますが、この基金というのは、セーフティーネットを外側にもう一枚張ったということでありまして、いろいろな措置が構えていますよという安心感を世の中にメッセージとして発したいということが一番の主眼でありまして、この発動がぽんぽんぽんぽん出るようだと大変な社会不安の状況ですから、その前にとにかく食いとめるんだと。しかし、二重三重目のセーフティーネットが張ってありますよという、世の中に対する安心感の発信を主体とさせていただいております。  失業率が高いというのは、もう大前提は景気がこういう状態だからということでありますから、景気を立ち上げていくためにいろいろなことをする。それから、労働政策として恐らく初めてと言っていいくらい、要するに、雇用維持政策から雇用をつくり出す政策に今回踏み込んでおります。それは、失業者が個人事業あるいは中小企業を立ち上げたときのいろいろな支援措置を大胆に組みましたので、雇用の維持政策からさらに、労働省としては、産業政策の境目ぐらいまで踏み込んだ政策を、もちろん通産省と連携して行ったというところでございます。
  53. 大森猛

    大森委員 労働大臣認識がやはり違うと思うのですよ。甘いと思うのですよ。というのは、今日の事態というのは、景気が回復したら解決するのか、そう言い切れますか。  先般、NHKが高校生の就職問題で特集したその中でも、企業に対するアンケートが紹介されておりました。高校生、今は採用していないけれども、景気が回復したら採用するか、これにイエスと回答したのはわずかに二六%であります。つまり今、若年失業者の問題、特に学卒者の問題、これはもう構造的な要因になってきている。だから今、抜本的な対策をしっかりと打ち立てる必要があるということを申し上げているわけであります。こういう点でぜひ検討をお願いしたいわけです。  厚生大臣にも来ていただいておりますので、一点だけで大変恐縮でありますけれども、この就職できない学生、そしてこの家族の皆さん、本当に不安な思いを持っておられます。国民年金保険料の支払いについても不安の声が高まっているわけでありますけれども、これまでは親の扶養のもとにあったのが、四月から親を離れて独立する、しかし安定した就職がないという中で、保険料の支払いがどうなるのか、免除をしてもらえることができるのかどうか、不安をお持ちで、私どもの方にもたくさん声が寄せられております。  現行制度でも、所得が著しく低い場合には免除申請できることにはなっておりますけれども、学卒就職未定者にも当然この制度は適用されると考えますけれども、学生の不安の声に、家族の皆さんの不安の声にこたえる形で、厚生大臣からはっきりとお答えいただきたいと思います。
  54. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 学生につきましては、平成三年度から国民年金は強制適用になっております。しかしながら、学生は一般的に稼得能力がない、それから被保険者期間が、おおむね二年くらいだと思いますが、非常に短期であるというようなことで、しかも、原則は、卒業後には社会人となって保険料を負担していただくということでございまして、他の一般の第一号被保険者とは異なる特性を有しているということから、一号被保険者よりも緩やかな免除基準を適用しているのは御案内のとおりでございます。  ただ、御指摘のように、新規学卒の者であっても就職が決まっていない方々につきましては一般の免除基準を適用することとしておりますが、この理由は、このような方々に対して学生の免除基準を適用することは、新規の学卒者でない一般の求職者の方々との均衡も考えなくてはなりませんので、私どもは大変困難なことであるというように考えております。
  55. 大森猛

    大森委員 時間が参りましたので、中高年の失業対策の問題、残念ながらそこまで入り込むことができませんでしたけれども、憲法で保障する生存権そして勤労権、この双方に直接密接なこの中高年の失業問題、失業対策、大変そういう事態に今立ち至っていると思います。  地方自治体の中では、公的就労事業を改めて起こしていく、そういう自治体もあらわれるようになりました。また、与党の内部でも、この国会内での委員審議の中で、公的就労事業を検討する段階に来ているんじゃないかというような御意見も出されるようになってきております。ぜひこの点で御検討をお願いしたいということを最後に申し上げると同時に、冒頭、質問の中ほど紹介しましたように、ヨーロッパにおけるサミット参加国四カ国、これらの国においては、正規の安定した雇用を展望したそういう公共的な雇用を提供する、そういう面で抜本的な政策転換あるいはそれに近い方向での施策が進められているわけであります。  これに比較してこの日本では、雇用の流動化最前線に押し出されて、先国会からも、派遣法など一層雇用を不安定にするそういう方向まで出されてきている。それから、雇用失業問題の一番根本問題の一つでありますいわゆる企業のリストラに対しても、これらの先ほどのヨーロッパ各国、解雇規制、これを新たに見直ししてさらに強化する、そういう方向も一つの流れになっているのに対して、この日本では、逆に、労基法が改悪され、そして、今日また、失業なき雇用移動というような形で一層不安定なものにされるような政策もとられている。  私は、今世界の流れ、アメリカにおいても、大規模にパートから正規に転換していくような……
  56. 中山正暉

    中山委員長 時間が過ぎておりますので、よろしくお願いします。
  57. 大森猛

    大森委員 もう終わります。  そういう流れもあるわけでありますから、日本雇用政策、労働行政も、ぜひ今抜本的な転換を検討されるよう強く要請して、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  58. 中山正暉

    中山委員長 これにて大森君の質疑は終了いたしました。  次に、生方幸夫君。
  59. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫でございます。一時間御質問させていただきたいと思います。  先月の末に、産業再生計画というのが出されました。これは、経済構造の変革と創造のための行動計画、これは、二年前になりますか、出されたやつの、第一回フォローアップ、第二回フォローアップの続編として今回出されたというものと承知をしておりますが、この産業再生計画、これまでの経済構造の変革と創造のための行動計画とどのように違うのか、どのように発展をさせたのか、そこからまず通産大臣にお話をお伺いしたいと思います。
  60. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 経済構造改革自体は、もうここ数年の日本の社会の課題であったろうと私は思っております。  その中で、小渕内閣が発足した後、昨年の九月でございますか、小渕総理から、産業再生計画として各省と打ち合わせて取りまとめろ、こういう御指示がありまして、ようやく一月の末にそれが取りまとめられたわけでございます。これは、通産省が取りまとめの役をやりましたけれども、各省との緊密な御相談の上でできたものでございます。  その中で重要な考え方というのがございまして、一連の小渕内閣の経済対策というのは、昨年からいろいろやってまいりましたが、一つは、総需要をふやす、いわゆる需要を喚起するという一連の政策でございます。これは、財政支出による需要を創造するということも一つでございますし、また、まだすぐには効果があらわれませんが、所得税の減税による、何とか可処分所得をふやして消費性向を高めようといういわゆる需要サイドの対策、あるいは法人税率を下げて、期待収益率を上げて設備投資を促そうという政策、それから一連の金融システムに対する対策、これは信用収縮に対する対策、一連のことをやっておりましたが、概して言えば、これらの政策はいずれも対症療法的な部分がございまして、やはりそれだけでだめだろうと。やはり、日本産業、企業の体質を強くする、生産性を高める、競争力を高めるという供給サイドの対策というものが喫緊の課題になってきた、そのために何をするのかということがその産業再生計画の中に書いてある主要なテーマだというふうに御理解をいただければと思っております。
  61. 生方幸夫

    ○生方委員 具体的な中身について通産大臣のお口からちょっと御説明していただきたいんですが。
  62. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 その中では、まず競争力と申しますか、生産性を高めるということは一体何なんだろうか。これは、資本、労働、技術、いろいろございますけれども、資本に関していえば、資本力という問題で生産性とか競争力が高められるということはちょっと考えづらいという思想がその中に入っております。やはり、技術革新とかイノベーションとか、そういう部分を重視した考え方が入っておりますし、供給サイドを強くするという意味では、いわば、例えば会社経営の形態、こういうものに対して経営者側が選択の幅が広がるようなことが必要だろうということで、連結納税とか分社化とか、そういう一連のことも重要であるということも書いてあります。  それから、今後供給サイドを強くするためには、設備を廃棄したりいろいろなことをやらなければなりません。その場合の税制上あるいは資金支援の面での対策も必要だろうということも書いてございます。  いろいろなことが書いてありますが、その中では、特に成長十五分野に対して日本の社会全体として力を入れるべきだということも書いてありますし、また、経済構造改革ということをやってまいりますと当然痛みのある部分が出てまいりますので、そういうものに対していかにセーフティーネットを用意するかという必要性も実は書いてあります。  具体的には、これらのテーマにつきましては、総理が長となりまして、具体的な政策を進めるための官民の会議というものを小渕総理が考えておられますので、そういうものの具体化についても通産省としては努力をさせていただきたい、そのように思っております。
  63. 生方幸夫

    ○生方委員 今、生産性の向上ということを資本力で高めるのはなかなか難しいというようなお話がございました。確かに、日本産業界そのものは非常な高コスト体質の中にあるわけでございますね。これは、もちろん土地も高いですし、人件費も高いし、それからエネルギーコストも高いし、税金も今まで非常に高かったというようなことがあって、その分野だけで比較すると、国際競争力というのが弱まっているのは事実だと思います。したがって、個々人の能力の向上ということが極めて重要だというふうに私も考えております。  そこで、その生産性の向上とか品質の向上とかという言葉が、かつては非常によく論じられてきたわけですね。ところが、ともすれば、バブル崩壊以降、日本の製造力そのものの力が弱まったというようなことがあって、私も、生産性の向上とか品質の向上という言葉を聞かなくなって確かに久しいんですね。だから、やはり日本の企業力を強めるという意味では、個人の力をいかにして高めていくのかということが欠かせないポイントだというふうに私も考えております。  一番最初、私、この予算委員会の場で橋本元総理に質問させていただいたとき、アメリカの経済が復活したその裏には、やはり個人の生産力の向上があったんではないかというようなお話をさせていただきました。  そこで、私、アメリカを全部まねろというような考えを持っているわけではございませんが、やはりいいところはどんどん学んでいかなければいけない。その点で私が注目しているのは、かつて日本にはデミング賞というのが、今でももちろんございますが、デミング賞というのがございましたですね。アメリカのデミングさんが品質を向上するプログラムというのを戦後提唱されまして、日本の企業がそれを非常によく吸収して、いわば子が親を抜いたような形で、品質の向上に非常に寄与したということがあった。アメリカは、このデミング賞を学んだ形で、一九八七年にマルコム・ボルドリッジ賞というのを導入いたしましたですね。これで、品質管理と同時に今度は顧客満足度という考え方を取り入れて、企業の変革をしていった。  このマルコム・ボルドリッジ賞という賞をとった企業が、どうしてとれたのかという内容をいわば毎年公開するわけですね。ほかの、例えばおっこちた企業も、何でおっこちたのかという点数をいわば全部公開する。それをみんなが広く見ることによって、じゃこういうところをうちも改善していけばマルコム・ボルドリッジ賞がとれるんじゃないかというような格好で、いわば各企業が企業そのものの経済力を向上させるという一つの大きなアメリカ全体での運動というのがあったと思うんですね。  やはりアメリカも一九八〇年代の後半には非常に、今の日本状況と同じような厳しい状況に置かれた中で、何とかしなければいけないというところで、デミング賞と同じようなマルコム・ボルドリッジ賞という、いわば国民的な賞を企業に与えるということが果たした役割が極めて私は大きかったんじゃないかな。  私もアメリカに何度も行って話を聞くと、もちろんこの賞をとった会社は非常に誇りに思っているし、賞をとるための努力をしている会社もある。また、賞が基準を明らかにしておりますので、その基準に自分たちの会社が、これは何項目もあるんですけれども、どのぐらい離れているのかというのを社員の方たちも経営者の方たちも見ることができて、そこの目標に向かって努力をするという格好が、アメリカの企業体質に非常に大きな力を発揮したんじゃないかというふうに私は思うんです。  そこで、通産大臣にお伺いしたいんですけれども、もちろん同じ、まねた賞をつくる必要はないと思うんですけれども、この賞、賞がいいのか何がいいんだかわかりませんが、やはり生産性を向上させるための動機づけというのが必要で、その動機づけの一つに賞はなり得るんじゃないかと私は思うんですけれども、その辺で通産大臣のお考えをちょっとお伺いしたいんですが。
  64. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生指摘のように、一九八〇年代のアメリカというのはいろいろなことに気がつきまして、一番著名なのは、ヤング・レポートというレポートを出して供給サイドの改革に着手をして、ここ五年ぐらいのアメリカ経済の繁栄というのはやはりそのとき始まったいろいろな改革の成果が出てきていると私は思っております。  それから、今、賞のお話がございましたが、確かにそういうことも企業がいろいろな努力をするための一つの大事なスティミュラスになったのではないかと私は思います。日本でも多分、生産性本部の賞とか特許庁の賞とかいろいろな賞があるんだろうと思いますが、手元に資料がないので詳しくお話しできないんですが、日本は比較的そういうことは過去熱心にやってまいりましたが、今では余り顧みられないようになっております。発明協会も多分そういう表彰をやっていると思いますし、そういう一連のことも一つの刺激策として大事ですし、一定の評価をそういう技術革新をした方あるいは経営努力した方に差し上げるということは、私は望ましいことであると思っております。
  65. 生方幸夫

    ○生方委員 この経済構造の変革と創造のための行動計画、確かに、経済構造を変えていかなければいけないというふうに私は考えております。  アメリカも八〇年代に一番最初に行ったことはリストラ、とりあえず余分なものを削っていくということは非常に大事でございまして、リストラを大規模に行ったわけです。これは、ただリストラを行えば、当然余剰人員がカットされるわけですから、その余剰人員がそのまま失業者になってしまえば、リストライコール失業者の増大、失業者の増大イコール社会不安の増長、それが経済の足をまたさらに引っ張るという、逆の、景気を引っ張るような要因になってしまうんですが、アメリカの場合はリストラを行うと同時に、今では余り話題にはなりませんが、リエンジニアリングというような運動を取り入れて、これは、作業工程から生産販売から品質管理から、それから物をつくるという設計の段階から、あらゆるものをゼロベースで見直していこうじゃないかというような動きがあって、あらゆる企業がそれを取り入れたということによって産業構造が変わっていったということがあったと思うんですね。  産業構造の転換ということをおっしゃって、ここにも厚い本がございまして、このように転換をしなければいけないというようなことがいろいろ書いてございますのですけれども、やはり私は、根本はゼロベースで見直す時期に来ているんではないか。後ほど堺屋長官にもお伺いしたいと思うんですけれども、大きな流れが今終わって新しい流れが始まっているというときに、やはり今までの手法でいいのかどうかということを根本的に考える必要があるんじゃないか。ただ、安易にリストラをやるんであれば、先ほどの労働大臣に対する質問もございましたように、だんだん雇用不安というのが高まってくる。雇用不安をしなくて構造転換をするためには、やはり私はリエンジニアリング的な手法というのを取り入れる必要があると思うんですが、いかがでございましょうか。
  66. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 もちろん企業がそれぞれの企業の中でリストラと言われるものを進める必要はございます。ただ、リストラというと、単に人員をカットするという方法は余りにも性急過ぎますし、むしろ企業の中で既存の労働力をいかに活用して他分野に進むかということを実は私は考えていただきたい。そうでないと、先生言われますように、リストラというのがすぐに雇用不安に結びつく。ということは、万般、消費性向も落としますし、あらゆる面で縮小型の経済になってしまうわけで、それはやはり企業の経営者が、従来の経営を見直す中で、新しい分野にも進む、新しい経営手法も取り入れる、新しい技術も積極的に活用するという積極的な経営姿勢というものをやはり示していただきませんと、ただ小さくなろう、小さくなろうという一つの企業だけの合理性を追求するだけでは日本の経済というものは力を失ってしまうんではないかという心配を実は私はしております。
  67. 生方幸夫

    ○生方委員 この産業再生計画の中にも当然新規事業を立ち上げていかなければいけないというふうなことが書いてございまして、それの対応というのもこの中に示されております。私も、やはり一番大きい問題は、日本にベンチャーも含めて大きな新規産業分野が育っていないというのが日本の成長力を弱めている非常に大きい原因ではないかというふうに危惧しているわけでございます。  今の日本のトップ企業というのは、前で言うと十年ごとぐらいに大きく変わってきたわけですね。ところが、残念ながら、ここ十年か二十年を見ますと、日本のトップ企業、もちろんそのトップ何社かの間でシェアの違いで一位になったり二位になったりというのはございますけれども、大きな分野で言うと、その日本のトップ企業が余り大きくは変わってないわけですね。アメリカなんかだとマイクロソフトというのが出てきてみたり、いろいろな新しい企業がベンチャーとして起こってきて、それが何兆円を売り上げるとかという形の企業に育っていく、それがいわば経済成長力を引き上げていくということになっていってアメリカ経済の元気さというのがあると思うんですけれども、残念ながら、日本はベンチャー企業というのが非常に育ってこなかったというのがあると思います。  ベンチャーを育てなければいけないというのはここ十年以上言われていることで、政府としてもベンチャーキャピタルを充実させたり、いろいろな施策をとってきたことを私よく承知しておるんですけれども、どうしてベンチャーが育ってこなかったのか。ここにも施策を盛り込まれておりますが、これでもやはり私はまだそうは育ってはいかないと思うんですけれども、通産大臣がお考えになるには、どうして育ってこなかったのか、一番の原因は何だというふうにお思いになりますでしょうか。
  68. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 いろいろな理由が考えられると思いますが、やはり、資金、人材、技術と分けてまいりますと、まず、日本の資本市場あるいは金融機関というものは新しいものとかリスクの高いものになかなか資金を投入しないという傾向がございます。そういう意味で、新しいベンチャー、新しい試みをされようとする方が、まず資金の面で非常に苦労をされるということがあります。  それから、ベンチャーという以上はリスクを伴うわけですから、成功する場合もあるし失敗する場合も実はあります。日本の場合ですと、やり直しというのがなかなかきかない社会になっておりまして、やはり倒産法制を含めた法制上の問題、あるいはベンチャーに対する社会の見方というものも大変私は大事になってくると思っております。  それからもう一つは、ベンチャーといってもお金と意気込みさえあればできるというものではなくて、やはり私は、最も重要なのは新しい技術と申しますかイノベーションと申しますか、そういうものがベンチャーの最も大事な基礎であると思っております。そういう意味では、特許制度とか、あるいは研究開発に対する投資とか技術の公開とか、もろもろのことがまだ日本の社会では十分ではないと私は思っておりまして、そういう技術の側面を充実させるということもまた一つの重要な要素でございますし、また、人材はたくさんおりますけれども、人材の横の移動がうまくいっていない。ヘッドハンティングもなかなか日本では、例外的に扱われております。  そういう人材の供給の面、技術の面、資金の面、それからいろいろな法制の面、社会的な国民性、社会の物の考え方、もろもろのことがあって今まではベンチャー企業がなかなか育たなかったということはありますが、今後やはり二十一世紀を本当に豊かな社会として維持し続けるということであれば、こういう分野に日本社会全体として積極的に進むんだという、いわば社会的なコンセンサスというものが私は必要な時期になってきたんではないか、そのように思っております。
  69. 生方幸夫

    ○生方委員 私も、アメリカのシリコンバレーとかテキサスとかいろいろ見てまいりまして、ベンチャー企業がどうしたら育ってくるのかというようなことをいろいろこの間勉強してきたわけでございます。  一つは、やはり大学を核としてベンチャー企業が起こるということがあるんではないか。シリコンバレーでいえばスタンフォードがございますし、テキサスでいえばテキサス大学があったり、おのおの核になる大学があって、その大学を卒業した方たちを中心にある企業がつくられると、そこへ今度その後輩が人材を供給するというような格好で、一つ大学を核として、シリコンバレーならシリコンバレーというような形の、ベンチャー企業のいわば固まったブロックができてくるというふうに私は考えておるわけです。  そう見ますと、日本の場合、大学が果たしている役割が非常に小さいんではないか。日本でベンチャー企業の創設者というのを見ると、残念ながら東大卒の方というのは余りいらっしゃらない。東大を出ると官庁に行っちゃうのか大企業に行っちゃうのか、極めて限られたところにしか行かない。  アメリカでいえば、スタンフォードであろうがハーバードであろうが、やはり一番最初に目指すのは自分で企業をどう立ち上げようかと。立ち上げるためには、とりあえずは一たん官庁に行くのもいいでしょうし、一たんは大企業に入るのもいいだろうという選択になっているんですけれども、日本の場合は、まず最初に大企業に入っちゃうと、これはもう、また後ほど労働大臣ともお話をしたいと思うんですけれども、そこにずっと一生いるというのがいわば最善の選択であって、出るのは第二、第三の選択になり、しかも職業をかえればかえるほど条件が悪くなってしまうという中では、なかなか職業をかえるという選択はできないと思うのです。  そこで私は、大学にベンチャーを育ててもらうやはり芽というのをつくるためには、何か仕掛けをしなければいけないんではないか。  政府もいろいろないわゆるインキュベーターというのをつくるということで、各土地土地に、ベンチャー企業をつくりたい人が事務所を出すための施設とかというのをおつくりになっておりますね。私のところも近くに柏がございまして、柏にこの間そういう施設ができたのを見学させてもらってまいりました。ただ、残念ながらそれは非常に遠いところにあって、学生さんが気軽に行ってその施設を利用するというようなことになっていないんですね。  これは本来文部大臣に聞くべき問題かもしれませんけれども、大学でいうと、だんだん人数が減ってきているわけですから、空き施設とか空き教室というのがかなりたくさん今国立大学等にはもう出ているわけです。極端に言えば電話とパソコンさえあればベンチャー企業の初期というのは立ち上がるわけで、そこへいろいろな人材が、学生が遊びに来るというような格好の中からアイデアも出てくるというようなことが起こってくると思うので、私は、これは通産大臣お一人の考えで云々ということじゃないのでしょうけれども、大学の空き教室をもっと利用してベンチャーに開放するとかベンチャーを育てるとかというような発想があってもいいんじゃないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  70. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 日本は産学が連携するということを相当避けてきた社会でございまして、学者は象牙の塔にこもって学問をやっている、産業は大学の研究とは無関係の世界で物をやっているという、いわばそのように非常に疎遠であったと私は思うわけです。  しかし、アメリカの例を見ましても、MITの教授が研究をする傍ら自分で企業を始めるとか、相当自由度があって、そういう中から非常に有望な企業あるいは有力な産業というものが生まれているわけです。特に、私の知っている例ではバイオなんかはそういう形で、相当新しい分野のことを大学の先生方が手がけてやっておられる。  日本も、文部省も相当そういう考え方になってまいりましたが、やはり大学の教授の人たちは、確かに国立大学ですと国家公務員なんですが、そういう新しい分野での活動に対してもっと自由度を私は与えたらいいと思いますし、大学の研究で得た例えば特許とか実用新案とかというものも、やはり相当個人のレベルで活用していいというような制度をもうちょっと深めていく必要が私はあると思っております。  そういう意味で大学の研究者に相当な自由度を与える、自分の研究した成果を企業化するということも自由に認めるということをやってまいりませんと、どうしても世界の全体の流れの中では立ちおくれてしまうと思います。それで、日本の大学でも相当いい研究をしておりますけれども、実際上の企業化にはなかなか結びつかない、それが日本の産学の間の非常に大きな問題点であろうと私は思っております。
  71. 生方幸夫

    ○生方委員 やはり大学をもっと開かれたものにして、大学の教授と学生だけが利用するんじゃなくてもっと地域も利用できるような交流の場ができてくれば、産学協同なんていうかたい言葉を使わなくても、当然それは国の施設なわけですから、だれでもが利用できるような格好にしていくということが、そこが一種のインキュベーターの役割を果たすようになるんじゃないかなというふうに私は考えております。  それと同時にもう一つ大事なことは、アメリカの例ばかりで恐縮なんですけれども、見ていると、いろいろな国の人間がやってきて、インドの方がいたり中国の方がいたり、フィリピンの方がいたりヨーロッパの方がいたり、アメリカの方がいる。そういう中で、議論をしていく中でいろいろなアイデアが出てくる。これは日本人単独だとアイデアが出ないという意味ではなくて、やはりそういういろいろな人種、いろいろな考え方を持った人が集まってくるという環境をつくっていくということもベンチャーを育てるには極めて大事ではないか。  もちろん、今日本の大学も外に向かって開かれてはおりますから、留学生をかなり受け入れてはおるのですけれども、私は、やはりまだまだその数が少ない。  という意味は、やはり海外から来る方にとって日本の大学がどれぐらい魅力的かということに尽きると思うのですね。魅力があれば当然来る。これはもちろん経済的な制約というのもございますが、まず魅力を与えなければいけないということと同時に、来ていただくようなやはり仕組みというんですか、もちろんこれは経済的な援助も含めてもっと出していかないと、なかなかベンチャーというのも、育て育てといってもまず芽が出てこなければいけないわけで、芽をつくるための仕組みづくりというのも重要だと思うのですが、いかがでございましょうか。
  72. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 実は、技術や学問の世界でここ五十年の非常に大きな特徴というのは、英語がエスペラント語になったということだろうと私は思っております。これは、技術の世界も例えば医学の世界も、そういう科学分野の世界というのは、いわば世界の共通語というのは実は英語になってしまった。これは事実の問題としてそうなっているわけです。  そういうときに、日本の大学に例えば東南アジアの方が留学されるという場合には、どうしても日本語という語学のハンディキャップがありまして、そういう意味では、東南アジア等の優秀な学生は、語学のハンディがあるためにアメリカ等に留学するケースが大変ふえております。そういう意味では、日本の国立大学の一部では理科系の授業を既に英語でやろうという試みを一部しておりますが、これはやはり、日本に来たんだから日本語を使えというだけでは相済まない部分が実は科学の分野ではあるんだろうと私は思います。  それからもう一つは、留学生の受け入れについては、最高十万人まで受け入れようということで、日本政府は、留学生の受け入れについては相当なお金を使っております。それがよく皆様方に御理解をいただいていないのと、所期の目標の十万人というところまではまだいっておりません。多分半分ぐらいまでしかいっておりませんが、やはり、ベンチャーを育てるという意味で、多国籍的な研究をするということも大事ですし、また、そういういろいろな国々の方に来ていただいて日本を知っていただくということも大事ですし、あらゆる意味で、留学生の受け入れということは、これは文部省、文部大臣の分野ですけれども、私は大変必要なことだろうと思っております。
  73. 生方幸夫

    ○生方委員 私もアジアなんかに行くと、日本に対する関心は極めて高いことは高いんですね。だから、もうちょっと広報というんですか、結局、やはりお金持ちの人しか来れないというような状況に今なっておりますので、もうちょっと広報をすれば、来たいという人はかなりいるんじゃないかと思いますので、その辺の努力も続けていただきたい。  それからもう一つ、やはり日本のベンチャー企業を見ていますと、私、売り上げ百億円というのが一つの転機になるような気がするんです。百億円を超えていけば多分うまくいくんでしょうが、大体が、売上高六十億円ぐらいから次に百億円を目指したときに挫折をするというのが多いんですね。これは多分、六十億円とか五十億円とかという企業規模から百億円を超えると、多分中企業ということになって、ベンチャー的な考え方ではなかなか運営をできなくなる会社の規模になったときにほとんどが挫折をするということになって、そこを多分乗り越えてしまえば、あとはもう五百億とか千億という世界が見えてくると思うんですけれども、私もよく見ていますと、大体百億円の壁でつぶれて、百億円までは非常にもてはやされて、あとはだめになってしまう。去年もまたそういう会社が倒産したりしていますけれども。  この百億円の壁を取り払うためには、これはエンゼルがいいのか何がいいのかわかりませんけれども、やはり経験がある人間がそこでサポートするという体制をとっていくのが非常にこれは金融的な面からも人材的な面からも大事だと思うんですけれども、そこの面で、通産省では何か、特に百億円ということではないんでしょうけれども、ベンチャーがベンチャーからいわば中堅企業に成り立つときの支援、ここを見た限りでは入ってはおらないんですけれども、その辺は、何かお考えになっていることがございましたらお聞かせいただきたいんですが。
  74. 江崎格

    ○江崎政府委員 ベンチャー企業の育成策ということを考えますと、税制が非常に大きな有力な手段というふうに私ども位置づけておりまして、今御指摘のエンゼル税制でございますが、これは一昨年に導入されて、行われております。  ただ、今のエンゼル税制で十分かといいますと、私ども必ずしもそうは思っておりませんでして、これを拡充する必要があるというふうに考えておりますけれども、ただ、エンゼル税制ということですと、ほかの金融関係の税制とも関係してまいりまして、いろいろな意味での検討が必要だということで、今のところはまだこれの拡充について実現を見ておりませんけれども、今後とも、ベンチャー育成の有力な手段ということで、その充実のための検討をしていきたいというふうに思っております。  それから、先生指摘の人材の問題でございますが、これも、ベンチャー企業の育成それからそれの拡大ということも考えますと、非常に有力といいますか不可欠の問題でございまして、そういう点からしますと、今、人材が必ずしも十分供給されていない。先ほど大臣の方からの、新しい人がそういうところに行くというお話をいたしましたが、中高年の方でもベンチャー企業で十分働ける余地の方があるわけでございますし、また、そういう方がベンチャー企業に対して非常に有益なアドバイスをするということもできると思いますけれども、そういったことについて、現在、大企業の退職者の方を中心にしてアドバイザー制度というようなものをつくっておりますけれども、こういったものもさらに充実していきたいというふうに思いますし、さらに、その他の人材の制度についても充実するようにしていきたい。  それから、御指摘の大学の問題でございますが、大学における人材の活用の点、先ほど大臣が、より自由にするということを申し上げましたけれども、大学の持っております研究成果を企業化に結びつけていくという点でも私ども非常に重要だというふうに思っておりまして、これは、大学の技術移転を促すということで、技術移転機関を設立するための大学技術移転促進法という法律を昨年国会で成立させていただきまして、現在、各大学におきましてそれに基づいて設立の準備が進められております。もう既に四つ設立されております。  こうしたことによりまして、大学の研究成果、人材を十分活用するということをさらに進めていきたいというふうに思っております。
  75. 生方幸夫

    ○生方委員 やはり、シリコンバレーなんかを見ても、成功体験が非常に重要だ。うまくいっている企業があれば自分もやってみたいというふうになるけれども、やはりうまくいかないなというふうなのが積み重なっていくとやっていきたくないなというふうになっちゃうわけで、やはり、成功する企業を幾つも育てていくことが逆に言えば新しい供給を生み出すということになりますので、ぜひとも、日本人に能力は極めてあるわけですから、十個ぐらい育っていけばあと百個は簡単だと思うので、その辺の御努力を続けていただきたいというふうに思います。  もう一点だけ通産大臣にお伺いしたいのですが、経済構造の変革と創造のための行動計画で十五の分野を出しておりますね。十五だと思いましたが。それで、第一回のフォローアップでは、ここに、手元にございますけれども、二〇一〇年の市場規模とそれから人員の吸収というのを、それぞれの分野について数値をお出しになっておりますね。  例えば、新製造技術関連分野ということでいうと、雇用規模・市場規模予測ということで、現状が、七十三万人の市場規模が大体十四兆円ある。これが二〇一〇年には百五十五万人になって四十一兆円程度になるというような数値がここには示されておるのですけれども、第二回のフォローアップからこの数値が抜けちゃっているんですが、これは何で抜いちゃったんですか。これは達成不可能だと思って抜いたのかどうかということをちょっとお伺いしたいのですが。
  76. 江崎格

    ○江崎政府委員 第一回の行動計画のときに、予測ということでお出しいたしました。これについては、引き続きこれを目標にして、各省が連携をいたしまして規制緩和ですとか支援策をやっておりまして、現在もこの目標に向かって努力をしているという状況でございます。
  77. 生方幸夫

    ○生方委員 ということは、この数値はそのまま二〇一〇年には達成できるだろうというふうにお考えになっているということでよろしいんですか。
  78. 江崎格

    ○江崎政府委員 これ自身は予測でございますけれども、私どもの施策としては、これを目標にして各種の施策を講じているという状況でございます。
  79. 生方幸夫

    ○生方委員 通産大臣、もう結構でございますので、どうもありがとうございました。  それでは、次に堺屋経済企画庁長官にお伺いしたいんですが、堺屋長官が文春の二月号に書いておられる論文とか、それから、これは「プレジデント」でございますが、「時代末」という新しい著書について書いてあること、私も拝見をさせていただきまして、非常に共感する部分が多いのでございます。  日本経済が今非常に大きな転換期に差しかかっているという堺屋さんの御認識でございますが、近代工業社会が、日本は一九八〇年代のバブル期がピークになって、それから知価社会に突入したんだという御指摘、まことにもっともだということで、私も、私ごとであれなんですけれども、これは四、五年前に書いた本なんですけれども、この中で私も、工業社会というのが終わって、知価社会という言葉じゃなくて、私は単純に情報社会という言葉を使ったんですが、とにかく今までの手法ではだめですよ、堺屋さんは規格大量生産という言い方ですか、私は、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代が終わって新しい時代に移っているんだから、今までの大量生産、大量消費の思考ではだめですよというような指摘を本の中でさせていただいたのです。  堺屋長官が今御指摘になった知価社会、「知価革命」という御著書ももちろん私は読ませていただいたのですが、知価社会に移行するために、もちろん、長官長官になる前にお考えになっていたこととそれを実際に政策化するということは非常に違って、難しい面があると思うのですけれども、長官になる前にお考えになっていた知価社会に移行するためにどういう変革を行ったらいいのかという部分をまずお伺いさせていただいて、それを今度政策化するときにどんな難しさがあるのかということをちょっとお伺いしたい。  とりあえず、知価社会に移る、どういう社会を想定しておるのかというところをちょっとお伺いさせていただきたいのですが。
  80. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 いろいろ御愛読ありがとうございます。  私の申します知価社会といいますのは、技術とか情報とかアイデアあるいはデザイン、さらには経営、金融のノウハウなど、人間の知恵の値打ちが経済の成長と企業の利益の主要な源泉になる、こういう社会でございます。全体の生産量、産出量とか、就業でいいますとやはり従来型の製造業や小売サービスが大きいでしょうが、そういう経済の成長と資本の蓄積の先端部分が知恵の値打ちで占められてくるような時代だということでございます。  この本を書きましたのは一九八五年でございまして、執筆しておりましたころにちょうどアメリカ、イギリスあたりが工業社会のどん底に落ちて、日本から自動車が輸出されてデトロイトは非常な不況だという時代でございました。そしてまた、今問題になっております金融のビッグバンなども行われました。  この本が出ました八五年というのは、CNN放送が始まったり、あるいはマイクロソフトのウィンドウズ・バージョン1が発売されたというような時期でございまして、まさにこの知価革命が始まったときでございました。生方委員おっしゃいますように、アメリカもそのころは大変苦しい時期で、失業率も高うございましたし、前年にはコンチネンタル・イリノイの倒産などもございまして、大変なリストラ、リエンジニアリング、さらには産業そのもののつくりかえが起こったんですね。シリコンバレーのような先端的なものだけではなくして、飲食関係、ケータリング関係というようなのがわっと出てくるようになったのが八〇年代の末、九〇年代に入ってからでございます。  そういう時代を私は知価革命と呼んでおるのですが、これをつくり出したのは、やはり一つは古い形の産業がそれだけ疲弊したということもございますし、ビッグバンを初めとして、運輸にいたしましても他の産業にいたしましても、物すごい規制緩和をやったんですね。だから、航空でも陸運でもいろいろなところで規制緩和をして、旧来の、例えばパンアメリカンというような、私ら子供の時分にはあこがれた飛行機会社もつぶれるような大胆な政策をとりました。そういう中からやはり次の芽が出てきたということでございます。  やはり、日本も今、金融問題を初めとして大きな転換期に来ておりますから、一時的な痛みもこらえてやらなきゃいかぬ部分、もちろん痛みはない方がいいのに決まっているのですが、そういう部分もあるんではないかと考えております。
  81. 生方幸夫

    ○生方委員 私は、工業社会が限界に達した原因というのは二つあるんじゃないか。一つは、消費の成熟化というのですか、これは当然、工業社会になってから二百数十年たっているわけで、生産力はどんどん大きくなっていくわけで、人口はそれに比例して、少なくとも先進工業国においては伸びないわけですから、当然供給が上回ってしまって消費が下がってしまうという状態が起こってくるというのが一つ。それからもう一つは、環境、エネルギー面の制約というのが当然これは出てくるわけですね。大量生産をすれば、当然それに伴って大量の廃棄物は出るし、大量の排気ガスは出る、それから大量のエネルギーを使うということで、これにも限界がある。  つまり、私は、必然的に大量生産、大量消費というのは終わりを告げざるを得ない。先進工業国においてはこれをやめざるを得ないような状況になっているというところを出発点にして、では次の社会には何をしなければいけないのかというときに、私は、必要なものを必要なときに必要なだけつくるよう、これは物だけじゃなくてサービスもそうなんですが、やはり需要を中心とした社会、需要をいかに発掘していくのかということが重要な社会になってくるのではないか。  それを発掘するためのインフラとしての情報ネットワークの整備というのが非常に大きな力を発揮するんじゃないかなというふうに思うのですが、その辺、長官、工業社会がピークに達したのは八〇年代であった、どうしてそれが限界に達したというふうにお考え、限界に達したのか、それとも限界ではなかったのか、その辺のお考えをちょっとお伺いしたいのですが。
  82. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 規格大量生産社会が限界に達したというのは、一つは需要の面で、人々が同じ型のものが、物さえあればいい、数さえそろえばいいというような単純な欲求から、より複雑なものを要求する、自分に合ったものを要求する、さらには情報とか楽しみとかいうようなものを求めるという需要面の転化があったと思います。  私は、この「知価革命」という本の中で、世の中を動かすものは三つある、それは技術と人口そして資源、環境である、こういう三本立ての指摘をしておりますが、その中で、御指摘のように、人口も変わってまいりましたが、技術の点でも大きく変わって、例えば情報技術が物すごく進歩したことで、規格大量生産ではなしに多様な生産が割に簡単にできるようになった、これも重要なポイントだろうと思います。  したがって、需要の面の変化、それから供給の側の体制の変化、これも非常に大きな問題があると思います。したがって、今通産大臣もお答えになりましたように、一方においてはサプライサイドの構造変化というのも大事な問題じゃないかと思っております。
  83. 生方幸夫

    ○生方委員 私は、工業社会というものと、堺屋長官が知価社会と呼ぶもの、私は情報社会と呼ぶものは基本的に違う社会になるだろう。そうなりますと、今の都市のあり方とか官庁のあり方、長官もここで、官庁の指導のあり方というのはもう時代が終わったというふうにおっしゃっていますけれども、官庁のあり方とか、それから企業経営のあり方とか企業の組織のあり方とか、これをすべて変えていかなければいけないというふうに思うのですよね。  それを実際に政策化していくということになるとこれはまた別次元の問題で、非常にまた難しい問題があると思うのですが、堺屋長官がこの文春の中でも指摘しておりましたように、今度、小渕総理が二十一世紀先導プロジェクトというので四つの分野を提唱しておられます。私は、これは中長期的な課題と、それから景気対策を絡めながら短期的に行わなければいけない課題とあって、非常に難しい状態であるのはもうよく承知をしておるのですけれども、長官がこの中で御指摘なさっているように、これは縦割り行政を排した形で、バーチャルエージェンシーという言葉をお使いになっていますが、バーチャルエージェンシーというような形で各省庁からアイデアを出してもらったというふうに言っているわけですが、このバーチャルエージェンシーというのは具体的にはどんなことを想定なさっておるのでしょうか。
  84. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 小渕内閣の政策といたしましては、金融の改革から始まりまして、いろいろなところで新しい時代をつくる政策を取り上げております。  その一つに公共事業、社会資本の面で二十一世紀先導的プロジェクトというのを立てておるわけでございますが、これは、電子立国でありますとか、大都市の生活、国際競争力のある町づくりとか、あるいは高齢化社会に合った歩いて暮らせる町づくりでありますとか、流動性のある完全雇用、安定雇用とかそういうことを挙げておるわけです。  こうなりますと、それぞれ一つの役所ではできません。したがいまして、総理直属のもとに、各官庁の担当官に、このプロジェクトの担当官であるという二枚鑑札みたいな制度をつくりまして、随時情報を総理の主導のもとに集めながらこれを遂行していこう、そういう試みをしておることでございまして、これは前の臨時国会の所信表明で総理大臣が、小渕総理が発表された話でございます。
  85. 生方幸夫

    ○生方委員 この本の中で、こうしたことが取り入れられた新しいプロジェクトができて、そこに予算がついていけば、当然今度、来年度予算を編成するときに、それが刺激になって今までの縦割りの行政のもとの予算編成というのが変わっていくのじゃないかと、期待を込められて書いておるのですけれども、今回、現実にどのぐらいの予算がついて、これが来年度の予算編成に向けてどのような変化を与えるというふうに長官御自身がお考えになっているのか。具体的な額は大して問題ではございませんで、来年度予算編成に向けて、これがどのような刺激を与えて、どう変えていけるのかというお見通しをお聞かせください。
  86. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 本年度予算は、大蔵大臣も再三申されておられますように、非常に思い切った金額をつけました。その中にこういうものが入っているわけです。そうすると、来年度、従来のものを残すか、新しく始まったものを続けるかという各省選択が迫られますと、必ず新しいものも残ってくる。幾らかそれは古いものも続きますけれども、新しいものが残ってくる。その中に、こういうバーチャルエージェンシーの仕組みがだんだん育ってきて、最適な配分になっていくのじゃないか。来年度予算はまだ編成しておりませんからわかりませんけれども、そうなるだろう、またそうなるべきだと信じて申し上げている次第でございます。
  87. 生方幸夫

    ○生方委員 期待をして注目をしておりますので、今年度予算、去年と違ったような新しいものが見えてくるようにお願いを申し上げます。  長官、これで結構でございます。ありがとうございました。  労働大臣、大変お待たせをしまして申しわけございません。先ほどの大森議員のお話を聞いていましたのでなかなか、重なってしまう部分があるといけないということでおくれてしまいまして、申しわけございません。  今度の予算の中の目玉の一つとして百万人の雇用の創出ということが打ち出されておりまして、それの施策というのがいろいろ出されておるわけです。この百万人の雇用をつくり出すというのは、さっきの新規事業も含めまして非常に難しいことだというふうに思いますが、具体的にどのような分野で百万人の雇用をつくり出し、それをいつまでに実現するというふうにお考えになっているのか、お聞かせください。
  88. 甘利明

    ○甘利国務大臣 以前にもここで百万についての具体的な中身の御質問をいただきました。そのときに経緯を申し上げましたけれども、現状で掲げている百万人というのは、雇用をつくり出す部分が三十七万で、それ以外がその維持効果ということでやっております。それは現時点で、つまりあのプランを作成した時点で具体的にはっきり言えるものということで掲げた次第であります。  そして、これから、先ほど通産大臣産業再生計画の中、あるいは先生が御質問の中で、二〇一〇年までに七百四十万人、これは具体的にちゃんと積み上がっていくのかというお話もありました。産業再生計画は、この七百四十万人に関して、成長十五分野に関して、さらに規制緩和と集中投資で前倒しをしてやっていくというふうに私は理解をいたしておりますから、それが進んでいくに従って、百万の内訳の三十七万の部分はもっとうんと広がっていくだろうというふうに期待をいたしております。  そして、閣僚懇でたびたびそのことに私も言及をいたしまして、とにかく雇用をつくり出すということに関しては、労働省の範囲を超えて政府全体の取り組みが重要である、特に産業再生計画においては具体的に将来の成長分野を先取りしていこうということであるから、ここを集中的にやってもらいたい、そこから算定される雇用創出効果というものもできるだけ子細にはじいてもらいたいということで要請をしているところでございます。
  89. 生方幸夫

    ○生方委員 雇用活性化総合プラン、これは四方面からいろいろ出されておりまして、私もこれを拝見いたしまして、非常に総合的なものだという判断をしております。  その中で、さっきもお話をいたしましたが、雇用環境というのもこれから大きく変わってくると思うのですね。終身雇用、年功序列というのはもうもちろん崩れているわけで、これからの社会の中では雇用が非常に流動化していく。流動化することに対して、政府がどのようにそれをうまくソフトランディングさせていくのかということが重要になってくると思います。  この中で、例えば、失業中に職業訓練等をはっきりやる、それにちゃんとお金もつけるという施策が盛り込まれておるのですけれども、これを私はさらにもう一歩進めていただきたいなというふうに考えております。  アメリカの例ばかりで恐縮なのですけれども、アメリカですと、企業の中で、これは全部の企業がそうというわけではないのですけれども、そこに就職している方たちが一定の、例えば年間五十時間なら五十時間、訓練でもいいのですけれども、教育でもいいのですが、とにかく五十時間自分の時間を使って職業訓練、手に職をつけるということもいいですし、新しい勉強をしてもいいというような時間を設けるようになっているわけですね。これが労働者の権利となっているわけです。そこで、自分たちのいわば能力を高めることによって、仮にそこの会社からほかへ移ったときもそれを生かしていこうというような仕組みがもう既に企業の中にでき上がっているというようなことも行われておるのですけれども、こういう考えについては、労働大臣、いかがお考えになりましょうか。
  90. 甘利明

    ○甘利国務大臣 生方先生の、職業訓練に対する意欲的な取り組みをすべき、これは私も全面的に賛成であります。労働省の政策の中で今までは、職業紹介とか、もちろん保険給付というのが主要な仕事でありましたけれども、これからは職業訓練という分野がうんと重要になってくると思います。  そこで、今回の雇用活性化総合プランの中での特色は、今まで職業訓練、職業能力のバージョンアップというと、大体これはブルーカラーが中心だったのです。しかし、それも大事なのですが、これからホワイトカラーも間口をうんと広げていこう。アビリティガーデンというのが、おととしの七月につくって一年ちょっとたちまして、これは非常に好評なのですが、もう定数いっぱいであります。昼夜間制の二部制をここもしきますけれども、この機能を全国で持たせようじゃないかということで、一定のカリキュラムを全国に展開できるようにすると同時に、民間委託を私が提唱いたしまして、民間で委託料を払ってやれるようにしようということを考えております。  それから、企業内の認定訓練も補助を当然いたしますし、それから、訓練施設で訓練を受けることについても助成措置をきちっと今やっているところでありますし、特に、時代を先取りをした職業訓練をカリキュラムに入れていこうということで、旧態依然とした内容になっていないかの点検をさせておりまして、新しいニーズに沿った職業訓練ができるようなプログラム設定というのを指示しているところであります。
  91. 生方幸夫

    ○生方委員 これからやはり個人の能力をいかに高めるのかということが非常に重要でございますので、その観点からひとつよろしくお願い申し上げます。  官房長官、大変長い時間お待たせしまして申しわけございませんでした。  先日の新聞にも出ておりましたが、九九年でコンピューターの問題が起こったというようなことが出ておりまして、雑誌とかテレビとかで、二〇〇〇年問題というのがいろいろなところで取り上げられていて、国民の間に漠然とした不安というのが広まっているというふうに思うのですが、二〇〇〇年問題、政府の対応、今どのようなことを行っているのか、心配はないのかどうか、お伺いしたいのです。
  92. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員お話しのように、コンピューターのプログラムが、二〇〇〇年で、この以降日付に対応しておらない場合はシステムが正常に機能しないという二〇〇〇年問題というのは大変重要な問題でありまして、その対応を誤りますと、国民生活はもちろん、企業活動にも大きな支障を生ずるわけでございまして、現代社会の、便利なコンピューター社会の背後に思わぬ落とし穴があるという言い方をしても過言でないと思うわけでございます。  残された時間も少のうございますし、後がない問題でございますので、高度情報通信社会の構築に向けた信任を揺るがしかねないこの問題に、重大な認識を持って取り組んでおるところでございます。  今お話しになりました二〇〇〇年問題のこの重要性、緊急性にかんがみまして、昨年の九月、小渕総理の指示のもとに、総理を本部長といたしまして高度情報通信社会推進本部を設置いたしまして、官民を含めた強力な取り組みを進める行動計画を決定したところでございます。  コンピューター西暦二〇〇〇年問題に関する行動計画をいたしまして、特にそういう中からも、官民一体的な取り組みを必要とするわけでございますから、その中で、中央におきましては、大体、本年六月に原則的な模擬テストを完了いたしまして、危機管理に対応するようにいたしております。  また、地方公共団体、中小企業等が特に影響を受けるわけでございますので、予算措置を今の予算にもお願いをいたしまして、万全を期してまいりたいと考えておる次第でございます。
  93. 生方幸夫

    ○生方委員 漠然とした不安があるのを取り除いていただく対策をとっているということなので、これは生命とか国民の財産にかかわる問題でございますので、くれぐれもよろしくお願いいたします。  これで私の質問を終わらせていただきます。
  94. 中山正暉

    中山委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  95. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石毛えい子君。
  96. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  本日は、いただきました時間、介護保険の実施につきまして、やや細部に踏み込む質問になるかと思いますけれども、質問をさせていただきたいと思います。  介護保険、改めて申し上げるまでもなく、二〇〇〇年の四月に実施でございます。私も、この審議の過程で参加をしてまいりましたということもございまして、多くの皆さんから声をかけていただきまして、一体どんな状況になっているんだろうというような質問をいただきます。そういうこともございまして、きょうは細部に少し踏み込んでいくことになると思いますが、本日の質疑を通じて、この内容が多くの関心ある国民、市民の皆様に伝わっていけば、介護保険に対します評価も正しく得られるのではないかと思いまして、これに絞って質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、厚生大臣にお尋ねいたします。  第百四十四臨時国会でございますが、参議院の予算委員会、これは昨年の十二月十日でございますが、民主党の今井澄議員の質問で、二〇〇〇年四月に確実に実施になるかどうかという確認の質問をされました。  そのときには、野中官房長官それから小渕総理、そしてまた厚生大臣も、実施をいたしますという御答弁をされておりましたけれども、その前後あるいはその後の報道でも、実施に向けてさまざまな問題点等が新聞報道で指摘をされましたり、また一部には根強い実施延期論などもございますので、改めてここで確認の質問をいたしますけれども、二〇〇〇年四月、もう一年ちょっとの期間を置いてでございますけれども、予定どおり実施の方針に変わりはない、実施をするということでよろしゅうございますか。その点、まず御確認いたします。
  97. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 そのとおりでございまして、この介護保険制度というのは、これからの社会を支える介護保険システムであろうということでございまして、十分な国会の御審議をいただいた上でシステム化されたものでございまして、そして各種の準備をずっとやっておりますから、もうこれは既定の事実として、私どもは変更するつもりは全然ございません。したがって、予定どおり四月から実施することに変わりありません。  一部、町村会等で、準備が整わない場合は延期したらどうかというようなことを言われる向き等もございます。あるいは、政党というよりも議員の間でそういう声もあることは承知しておりますが、私どもは、あと残された一年有余をとにかく万全の体制で臨むということが我々に課せられた至上命令だ、こう考えております。
  98. 石毛えい子

    ○石毛委員 今、揺るぎなく実施という御答弁をいただきましたけれども、さまざまな政治状況の動きの中で、どういうフライングが起こるかわからないというような懸念も、率直のところいたすところでございます。ぜひ、しっかりと気持ちをお据えになられまして、着実な実施に向けて揺るぎない進展をお図りいただきますように、この点は要望をいたします。  引き続いて厚生大臣にお考えをお伺いいたしたいと思いますけれども、この介護保険をめぐりましては、あるいは昨今の状況の中で、例えば、介護は消費税という方式によるべきではないか、あるいは、自自連立の協議の中でも、消費税は基礎年金、老人医療、介護に限定をするという論理なども主張されているというふうに伝えられております。  私は、この論議はもっともっと精細に、正確に詰めていかなければならないと思いますけれども、例えば介護保険は、二〇〇〇年四月スタートのときの規模でいきますと、現行の消費税でも、税をどう運用するかということの結論を得れば、それで金額的には可能だということも申せます。また、基礎年金、老人医療、介護まで消費税を膨らませますと、消費税対応はそのときに何%まで膨らむのかというような議論はまだ展開されておりません。  あるいはまた、国民の皆さんから消費税を何%までならよいという合意をいただいたとしますと、その合意が仮にそれほど高くないというふうに想定しますと、その消費税で実現する年金や老人医療、介護の水準というのは、低くならざるを得ないわけでございます。また、すべて消費税で賄うのかどうかというような問題もございます。そのあたりが詳細に理論展開されないままに、消費税論議などというのが走っているようにも私には受けとめられるところでございます。  介護保険は、私が改めて申し上げるまでもありませんけれども、利用者の方の原則一割負担を除きまして、社会保険方式としまして、保険料半分、それから国税、地方自治体の負担含めまして税半分でございます。  この議論がされましたときに、社会保険方式を導入するメリットということで、保険証を持てばサービスを選択できる。これは、行政の方が一義的に決めてサービスを提供してくるそうした今までの福祉制度とは違う、そういうメリットがあるということが盛んに主張されたところでございますし、私もその点は同感をするところでございます。  また、社会保険方式で、介護保険は市町村実施主体でございますから、市町村が保険者といたしまして、介護保険の運用、第一号被保険者の保険料の決定を初めといたしまして、運用に保険者自治を貫いていく、情報公開を前提にして、そこにお住まいの皆様の御意見などを伺いながら保険者自治を貫いていくというメリットが、実は社会保険方式の大きなポイントになるところだと思います。  また、保険方式だけではなく、公費を投入するという、社会扶助方式と申したらよろしいのでしょうか、その突き合わせといいますか、共同させることによってシステムをつくり出していくというところでございます。昨今の社会保障あるいは介護の論議では、税制先行論のようなものが行き渡っているように私には聞こえてまいりますけれども、この社会保険の方式を含んで介護保険方式はつくられているということに関しまして、厚生大臣の御認識を改めてここで確認させていただきたいと存じます。いかがでございましょうか。
  99. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私どもは、二十一世紀の少子高齢化に対応して年金、医療それから介護等の問題について、はっきりとした見通しを示して安心感を与えるというところに基本的なねらいがございます。  そこで、財源の問題は、これは私どもとしては、財源がなければ全く宙に浮いた議論になってもいけませんが、しかし、財源論だけでこのシステムを私どもは考えているつもりはございません。もちろん、財源との組み合わせ、今委員のおっしゃったように、社会保険方式と税方式との組み合わせ、これは財源を要することでございますから当然財源論は必要でございますが、ただ特定の、消費税だけについて限定してこれを賄うとか賄わないかという議論は、これは私は、率直に申しますと、多少個人的な見解になりますが、私どもにとっては二義的な話でございます、今は。  ただし、自自の連合の協議の中で、消費税の目的税化といいますか目的化といいますか、そういうことが議論にされまして、そして、なるほど消費税が今は少ない、消費税率その他の関係で実質の国の手取りが少ないということもございまして、それは社会保障に充てる、つまり、やった方が国民的合意が得られやすいという点は、私どももよく理解できます。したがって、予算総則に、年金、それは基礎年金ですね、それから医療の面でも老人医療、それから介護について、消費税の使途をそれに限定する。つまり、社会保障の方が大きいわけですから、その中の一部に消費税が入るわけですね。消費税といっても、地方に行く分その他を除いた実質手取りでは少ないわけです。したがって、その議論の中では、消費税は国の手取り分は上げて、こういう年金それから老人医療、介護に充てるということにした方が、消費税に対する国民的理解が得られ、抵抗感もないだろうという意味では、私どもはそれに反対する理由は全然ございません。  したがって、予算総則でそのようなことをさせていただいておりますが、ただし、これが将来的に、今委員のおっしゃるように、社会保障の給付額がそれぞれ、年金におきましても医療におきましても、また介護におきましてもどんどん膨れる可能性が少子高齢化を控えますとあります。したがって、それが本当に賄えるのか賄えないかという財源論、将来の見通しとその財源については、確たる結論をまだ得ていないと率直に申し上げざるを得ないと思います。  いずれにいたしましても、私どもとしては、そういうシステムを構築してそれを維持していくことが国の責任でございますから、それを第一義的に考えて、合理的な、そして効率的な制度を構築するということで、今全力を挙げているところでございます。
  100. 石毛えい子

    ○石毛委員 御答弁の御趣旨については理解させていただきましたけれども、消費税、例えば、少し先のことになりますけれども、これからの日本人口構成がどう変わっていくかということとも絡みまして、消費税の絶対額がどれほど見込めるかというような問題もございますので、ぜひそこは、十分に国民が考えられるような情報提供をいただきながら、きちっと厳密な議論をお願いしたいということを申し上げまして、もう一点、この介護保険の社会保険方式について、今の御答弁に含まれていたとは存じますけれども、もう一度、その点を厚生大臣から御確認をいただきたいと思います。
  101. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 社会保険方式という場合は、民間保険と比較していただけばわかりますけれども、民間保険の場合は、公的な負担は入っておりませんが、全く保険を掛ける人と給付する、それはコマーシャルベースで行うということでございますが、社会保険の場合は、保険料負担と給付の均衡ということはもちろんございますが、同時にそこに公的な扶助を介入して、なるべく保険料が少なくて給付を維持しようという我が国の社会保険としての機能、目的がございますから、これは十分尊重していかなければならない。そういう意味で、私は大変すぐれた制度だと存じております。
  102. 石毛えい子

    ○石毛委員 社会保険方式が、民間の私的保険と違って、公費助成、公費の投入と相まって機能するものだという今の厚生大臣の御答弁は、大変日本の社会保険のあり方に沿ったその趣旨を御答弁いただいたと思いますので、御確認させていただきまして、この点に関しましては、お礼を申し上げます。  それでは、次の質問に移りたいと思います。  介護保険の第一号被保険者の保険料についてでございます。まだ介護報酬が検討中ということもございまして、確定していないことなどあり、保険料の決定というのが、決定の方式につきましては政令でもう出されておりますけれども、多くの方々の関心はその金額が幾らぐらいになるかというところにあると思います。  厚生省は、直接厚生省ではございませんけれども、介護保険制度施行準備室監修で長寿社会開発センターなどが作成されましたこうしたリーフレットを初めとしまして、さまざまな情報では、第一号被保険者、六十五歳以上の方の保険料は二千五百円というふうに広まっております。この金額がひとり歩きをしてしまったという感もなきにしもあらずなわけですけれども、ごく最近に厚生省が各都道府県の担当者に示されましたその試算例でも、例えば二千四百四十円ですとか、あるいは二千六百円ですとか、二千五百円前後の金額が出されておりますけれども、もう一方、全国市長会の調査によりますと、これは最近の新聞報道でございますけれども、月額三千四十円という金額が知らされております。  仮に、厚生省が基準として情報を伝えてまいりました二千五百円ということと比べますと、六十五歳以上の方、五百四十円違うということになってまいりまして、これは第一号被保険者の方からすれば大変心配をされているところだと思いますし、それから市長会の試算は、介護保険料の料金を階層別にもとっておりまして、三千五百円を超え、あるいは四千円を超えるようなところも試算として出されているわけでございます。  そこでお尋ねしたいと存じますけれども、この市長会の試算と厚生省の数字がかなり違うということの理由はどのあたりにあるというふうにお受けとめになられていますでしょうか。この点を御回答いただきたいと思います。
  103. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 確かに、法案審議の過程等を中心にやはりめどを示す必要があるということで、第一号被保険者の介護保険料の平均を二千五百円ということで、それを基準としてお示ししたことは事実でございますし、それを中心議論されたと思いますが、これは要介護者の見込み数に対しまして、平成七年度の補助単価や診療報酬の単価を乗じまして暫定的に推計したものでございます。  また、各市町村ごとのサービスの水準、これはいろいろな要因によって水準が決まってまいりますが、このサービス水準や被保険者の所得水準との違いがございます。所得水準の高いところの層の多い村、低いところの村、それぞれ違いますが、そういった違いを考慮に入れずに、単純に一人当たりの全国平均額として試算したものでございます。  一方、もう一つ申し上げたいのは、今委員のおっしゃられたとおり、政令によりまして中心価格をつくります。そして、地方税の課税、非課税によってこれを展開するという格好になっておりまして、五割増までできる、あるいは低所得の方々には五割減まで、半分までできる。なお、条例によってはさらに上乗せもできるし、さらに下回ることも可能だというのを政令で昨年の十二月に提出させていただきましたので、一本価格だけで介護保険が行われるような誤解が国民の間にあるように思いますので、この点は中心価格という意味でお考えいただきたいと思います。  それからもう一つ、市長会の問題でございますが、これは確かに、先日発表されました全国市長会は回答市が百三十でございますが、それによりますと、回答市の保険料の平均額が三千四十円というのは、御指摘のとおりでございます。  なお、その中でも例えば、我々中心価格と考える二千五百円以上三千円未満というようなのは四十一の市でございますし、三千円以上三千五百円未満というのは二十七ぐらいの市でございますし、場合によると、二千円以上二千五百円未満というのも二十八の市に及んでおります。こういう展開はございますが、平均して三千四十円ということで、二千五百円に対してかなり上回っているのではないかという感じを御指摘になっておられると思うのです。  私どもは、昨年十月にいろいろ実態調査をいたしましたが、今度は平成十年度の補助単価とか診療単価を用いまして、制度の施行当初どのような保険料になるかと粗く推計をするために、今計算方法を関係市町村等にお示ししてございます。これは五月までに県を通じて報告することになっておりますので、実態はより明らかになると存じます。  いずれにいたしましても、推計方法その他もさまざまでございますし、市長会の結果が、これは大きい市だと思うのですが、実際の保険料額の全国平均水準を必ずしも反映したものと即断しにくい要素もある。政令指定都市等は除かれているようでございますが、中核都市等を含んでおるようでございます。したがって、介護保険料の最終的な水準につきましては、今市町村が作成することとしております介護保険事業計画というのをつくりますが、この事業計画をもとに平成十一年度末に最終的には決定されるという性格のものでございますが、厚生省の方としては、全国の給付費総額の見込みを立てまして、ことしの夏ごろ、つまり七月ごろに市町村の介護保険事業計画を積み上げて一応算出して、平均見込み額についても算出をしてみたい、こう思っておるところでございます。  そのように、制度をもう少し国民の皆さんによく知っていただかないと、単一の料金だけでないということもありますし、それから、保険者である市町村のいろいろな状況によって違うということですね。施設が非常に多い市町村とそうでない市町村とかいろいろ、療養型病床群なんか多いと、どうしてもコストがかかりますから平均して上がりますし、そういうことをよく踏まえて、私ども、実態に近い数字をキャッチして国民の皆さんにも明らかにしていかなければいかぬなと思っております。
  104. 石毛えい子

    ○石毛委員 今大臣から御答弁いただきまして、七月ごろまでには、算出の基準といいましょうか考え方と、そして実際に幾らになるかということを個々の自治体がわかるようにするという御答弁だったと思いますけれども、市長会での試算状況を見ますと、大臣今おっしゃられましたように百三十の市についての調査でございますけれども、ここを見ますと、人口五万未満の回答市でも二千九百四十六円ということで、厚生省がモデルとして示しておりました二千五百円よりはかなり高いというようなこともございます。それから、階層分布で見ますと、確かに大臣がおっしゃられましたように、二千五百円未満というところも合計すれば三十二自治体ございますけれども、二千五百円から三千円というところは、一番多いわけですけれども四十一自治体ある。  それで、私が申し上げたいのは、この平均三千四十円という金額が、これはこのところ新聞報道などが、例えば要介護認定をめぐる問題ですとか介護保険の具体的な制度化に向けた今の準備状況で、不安なことや心配なことを報道してその解決を求めていくというのはよろしいんですけれども、ある意味で不安が先行するような嫌いがあって、三千四十円というのも、計算の仕方の問題もあるのかもしれませんけれども、二千五百円と三千四十円、どちらが正しいのかというような意味合いも含めて広がっているような、そういう受けとめ方を私もいたしますし、多くの人たちも、本当は二千五百円じゃ済まないんじゃないのというような意見がたくさんあるわけですね。  ですから、そういうことを受けとめますと、例えばこの全国市長会の試算状況で三千円ないしは三千五百円を超えているような市は、どういう理由でこういう金額になっているのかというようなことを厚生省の事務担当とされてはお調べになりまして、そしてまた、報道機関などを通じて理由をきちっと明らかにしていっていただけると多くの人たちは納得できると思いますけれども、そのプロセスといいましょうか実態がきちっと知らされていないために、AかBかを比較してどちらが正しいんだろうとか、それから、保険料の負担というのは低い方がいいというのが一般的な受けとめ方だと思いますので、もしかしたら介護保険というのは何かおかしいのではないかというような印象すら与えかねないという実情があるんだと思います。  高いところの自治体などにつきまして、事務担当の方としまして、このあたりを市長会との議論の間で詰めて、そして、なぜそうなっているのか、それはこれからどんな方向で考えられていくということなのか、そのあたりをきちっと情報公開といいましょうか、表明していただけるというふうにはまいるものでしょうか。そのあたりをもう少しお答えいただきたいと思います。
  105. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 あと計数的な問題が必要でございますれば局長等から答弁させますが、基本的にはやはり、給付がこの市町村でどのレベルになるかということが基本になります。それは、例えば在宅介護が非常に多いというところもありますし、それから療養型病床群といって、今まで病院であって長期療養型のところを介護施設に一応するということになりますと、かなりコストがそこは高まります。それから、特別養護老人ホーム、老健施設等もそれに準じたような形でコストが高くなりますね。したがって、そういう施設基盤が多い、今現在利用されているようなところは、平均値をとりますと比較的コストが高く出てくるということがございます。  一例で申しますとそういうことでございますが、厚生省としては、これは市長会の試算と突き合わせをしたりなんかする必要があると思います。それはまた後で事務当局の方からちょっと説明させていただきますが、全国の課長会議等におきましては、これは一応の想定をして、幾つかのタイプに分けて、そういった、例えば特養、老健施設、療養型が、単価がそれぞれ違いますので、それぞれどの程度の要介護者の状況になっているかという想定を置きませんと実態的でありません。それで、それを八つの類型に基づきまして課長会議で試算したものもございますが、それによっても、必ずしも三千円を全部超過しているわけでもございません。  そういうことで、ばらつきが非常にあるということがはっきりしておるわけですが、そこら辺は、委員のおっしゃるとおり、やはりわかるように、わかりやすく説明する必要があると思います。私どもは、情報開示はもちろん当然だと思っておりますから、その計算過程その他明らかに、これはもう公然とした方が理解は進みやすいと思いますので、そういう態度で臨みたいと思います。  なお、計算の問題がございましたら、局長の方から答弁させます。
  106. 石毛えい子

    ○石毛委員 もし補足する点がございましたら、お願いいたします。
  107. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 十月に介護の保険料がどうなるか、こういうことを試算するようなフローチャートをお示ししたわけでございます。それを使いまして、各市町村で実態調査をして、要介護度の調査をいたしておりますので、それを代入いたしまして金額をはじき出す。こういうことによりまして、どれだけの水準の保険料が必要になるとか、あるいはこういうサービスを充実したらどうかとか、こういうサービスはやはりやめた方がいいんだとか、そういうことのデータを出すために試算を出したわけでございます。  それから、市長会の関係でございますけれども、私ども、はっきり申し上げて、詳細を承知いたしておりません。それで、そのフローチャートの資料をいただきましたので、それを私どもなりに分析をしてまいりたい。市にも直接お聞きして原因を確かめたい、こういうふうに思っております。
  108. 石毛えい子

    ○石毛委員 ぜひ、それは確かめられましたら、やはりきちっと何らかの形で、多くの関心を持つ国民が知ることができるように、情報を積極的に開示をしていただきたいと思います。  次の質問に移ります。  介護保険は、先ほどもちょっと触れましたように、利用料のほかに、保険料トータルで五〇%、それから国費が二五%、都道府県、市町村各一二・五%という財源の分担になるわけでございますけれども、今自治体の方とお目にかかっていますと、その国費二五%、この五%分は調整交付金に使われるわけですからその点はちょっとおいておきまして、二五%の国費が介護保険を運営する各自治体に財源として投入されてくるというときに、その投入される母数となる基準はどこなんだろうということが大変不安を持たれております。  介護保険は、第四十三条の三項で、居宅介護サービス費区分支給限度基準額で、それを超える部分は市町村特別給付等々で第一号被保険者が条例に基づいて負担するということになっています。この部分については、国費二五%の投入ということは法令上ないんだと思いますけれども、そうしましたらば、あと二五%が投入される上限のラインはどこになるのかということでございますけれども、その点はどのように考えたらよろしいのでございましょうか。
  109. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 財政システムにつきましては、今委員のおっしゃるように、介護給付の額が決まりますね。認定して、それからその市町村の基準が決まります、額が決まります。その額は、今委員のおっしゃられたような支給限度基準額というもので一応アッパーリミットを決めるということになります。そして、国費で二五%、五%は調整交付金、それから各県と市町村で一二・五%ずつ。  なお、四十歳以上の二号被保険者からもいただきますから、それは医療保険と一緒に、同時に徴収いたしますが、その額は、介護給付額が総体として決まれば、結果として、割り掛けて、三三%は必ず投入するというシステムになっています。それで、あと残りが一七%でございますが、それは、年金の支給者は上乗せをして、言葉はちょっとなんですが、天引きをして、いただくことになります。  したがって、あとはほんのわずか、それはカバー率が大体八割ぐらいになりますから、残りを市町村で徴収をしていただく、こういう仕組みなんですが、問題は、その基礎になる介護の総トータル、それに、それでは今先生のおっしゃったような基準値をはるかに超えたものが含まれるのかということになりますと、私どもはやはり、支給限度基準額というものを一応設けておりますので、そのことを市町村がやることは否定はいたしませんが、そういうシステムの中へ組み入れて介護給付額の全体像の中へ入れるわけにはいかない。つまり、それは公費負担の対象とはいたしませんということでございまして、これは結果において、どうしてもそういうことをやろうとなされば、保険料の中へ投入していただいて保険料で負担するということになると思いますけれども、我々としては、モデル設計は、そういう超過分は基本的には公費は負担しないという建前で構築をしているということを申し上げさせていただきます。
  110. 石毛えい子

    ○石毛委員 そこで、今厚生大臣がおっしゃられました、ちょっと長いですから、最後の基準額というところだけ申し上げさせていただきますけれども、その基準額がどの程度に設定されるかによりまして、各自治体の対応のいかんがそれぞれになると思います。基準額がかなり高く設定されれば、その天井が高い分だけ国費が投入されるということになりますから、自治体は介護保険を財政的には運営しやすくなる、こういう構造になっていると思います。  それで、その基準額は今まで、私の方から申し上げさせていただきますけれども、介護保険制度施行準備室が公表されてまいりましたサービスモデルがございます。二〇〇〇年までにこの程度までの、例えば在宅介護サービスの種類ですとか、それから回数等々を含めた量を実現していきたいというサービスモデルがございますけれども、この厚生省令で定める基準額というものの上限はサービスモデルだというふうに受けとめてよろしいのでございましょうか。そこの点の確認をさせてください。
  111. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 支給限度額の水準の考え方でございますけれども、これは一応私どもとしては、高齢者の夫婦世帯で一方が寝たきり等になった場合でも在宅で自立した生活を送ることができるようにするといった介護保険制度の目指すサービスの水準を踏まえまして、要介護状態にある高齢者が、その程度に応じて標準的に必要とするサービス量を勘案しながら決定されるという基本的考え方に基づいております。  つまり、一人だけ介護者がいるパターンを必ずしも基準額では想定はしておりません。それに、例えば奥さんが要介護者になって寝たきりになる、御主人は健全だという場合は、そういうパターンを描きまして、そういう世帯を前提にして、元気な人が一人いて多少手助けができるというようなことを前提として、例えば要介護度Vの場合ですと、給付限度額を定めるようにいたしておりますが、これを実際に適用する場合には、それぞれの、個々の認定者について適用するわけでございますので、基本的考え方に沿って基準額は設定しますけれども、実際に給付限度額を適用する場合には、その実情に合わせて、ひとり、独居老人なら独居老人と同じ扱いにするということになると思います。  今委員のおっしゃられている点は、支給限度額が、厚生省の示されたモデルで上限を示すのかという御質問だと思います。基本的にはそう考えておりますが、最終的にはそれがまだはっきり決まっておりません。先ほど申しましたように、これから決まるわけですから、めどとしてはそういうことが言える、今の段階ではということじゃないかと思います。
  112. 石毛えい子

    ○石毛委員 この点は、各自治体では大変気にしているところだと思います。  それで、お一人お一人の給付額が幾らになるかということも、もちろん、高齢者の方々の自立した生活支援するためには大変重要でございますし、同時に、介護保険の実施主体であります市町村からすれば、トータルとしましてどこにラインが引かれて、そのラインの引かれた二五%に国費が投入されるのかということがとても大きな意味を持ってまいります。  自治体によりましては、もしも国がこのラインを低く設定しまして、これより高く現在サービスをしているとしますと、これは今の法律では支給限度額を超えた部分として第一号被保険者の保険料にということになるわけですけれども、ここが高くなれば、その保険料の部分というのは、決めなくてもよいか、あるいは低額におさめることができるわけですから、このラインの引き方ということによりまして、第一号被保険者の保険料の負担に転嫁されるのか、あるいは自治体が単独で負担しなければならないのか、あるいは、制度を高い水準でつくっていこう、あるいは維持していこうと思いますと、この限度額が低く設定されていますと、今申し上げましたことの繰り返しになりますけれども、自治体の負担が多くならざるを得ない。制度は、市町村の負担は一二・五%で設定していますけれども、それにプラスアルファの自治体単独負担が出てくるのではないか、そういう心配を随分されているわけでございます。  ですから、介護保険制度は、全体の第一号被保険者、第二号被保険者の方の保険料がどのぐらいの水準だったらいいかという、ここのコンセンサスの得方もありますから、全体の規模を大きくすれば保険料も大きくなりますから、とても難しいところだと思いますけれども、この限度額をどう決めるかということはやはり非常に重要であるという御確認をもう一度厚生大臣にいただきたいと思いますし、それからもう少し踏み込んで、そこのあたりに進んだ御答弁がいただければお願いしたいと思います。
  113. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今委員が分析されましたことは、まことに事柄の本質をそのとおり正確に言われておるように思います。  したがって、基準額を決めるというのは非常に重要です。それが最終的にどうなるかということによって、そして、介護を受ける人の人数掛けて総トータルが出ますから、それによってシステム全体が控除は幾らになるとかいうことに、委員のおっしゃるとおりになりますから、これは極めて重要でございまして、今のところ、いろいろの介護の調査等もやっておりますし、それらを、さっき言ったように、いろいろ実態調査も踏まえながら最終的には決めることになると存じますけれども、今のところは、モデル的にいろいろのことを考えてやっております。  つまり、どういうことかというと、例えばさっきの療養型病床群とか特老とか老健施設で単価の問題がございますね。それは内容に関係します。そうすると、やはり実績値を用いて試算をするということをとらざるを得ません。  そういうことで一応のめどをつけつつあるということでございまして、最終的には、委員のおっしゃるように、いろいろの保険料の面からの制約もありますし、給付額も一割負担がございますから、そちらの面からの検討も必要でございます。総合勘案して納得できる水準にしていく。  それから、それをはるかに超えるものについては、やはり、今おっしゃったように、公費でそこを見て全部そういうシステムに底上げするというわけにまいりませんので、そこはそれぞれの自治体の単独事業でやるなり、保険事業で、独自の保険料負担でやるなりということになるだろうと思います。  御指摘の点はごもっともでございますから、我々もそこは非常に重要な点だと考えております。
  114. 石毛えい子

    ○石毛委員 老人保健局長にこれは質問通告をしていなかったので、可能でしたら回答をいただければと思います。  今、介護保険料の算定をめぐりましては、後で質問をさせていただきますけれども、入所施設に関しましては、三施設の仮置きの金額ですけれども出されていますから、その中で、地域によってどういうタイプの施設が突出するかによって保険料が違ってくるという議論は随分されるようになっております。  質問通告外で、もし可能でしたらというお尋ねをしたいのは、在宅サービスの方で、サービスモデルを厚生省はお示しになっていらっしゃいますけれども、二〇〇〇年四月のスタート時点でこのモデルを超えることができている自治体はどれぐらいあるというふうに、老人保健福祉マップなどの作成、そういう作成を通じた調査で、もしおわかりでしたら、そこのところを御答弁いただければと思います。
  115. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 残念ながらその数字は把握いたしておりませんけれども、福祉ユニットサミットに参加されている市町村が百幾つかあるわけでございますけれども、こういう市町村は当然この水準に達しているところが多い、こういうふうに思っております。
  116. 石毛えい子

    ○石毛委員 もしもこのサービスモデルが、先ほど来の大臣の御答弁にもございますように、これから最終確定をしていくということではございますが、このサービスモデルのところが給付限度額の上限としまして設定されますと、今局長が御答弁になりました、例えば福祉自治体ユニットなどでこれを超えているところの自治体は、超えている分につきましては第一号被保険者の方の保険料ということになってまいりますね。
  117. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 そういうことになろうかと思います。  そういうところの住民の方は、非常にいいサービスを受けているので、保険料が少々高くなっても構わない、こういうお考えの方もあるようにお聞きしておりまして、そういう面での理解は進んでいる市町村かな、こういうふうに思っております。
  118. 石毛えい子

    ○石毛委員 もちろん、保険料が高くなっても、いいサービスを、いい介護システムを地域にと考えていらっしゃる方もたくさんいらっしゃると思います。私は、それを否定するつもりはございませんけれども、申し上げたいのは、公費を投入していくその基準額あるいはその内容考え方をどう設定するかによって、第一号被保険者、第二号被保険者、そして国、都道府県、自治体の財源負担の実態額が全く変わってきてしまうわけですから、基準額の設定に関しましては、十分細心の注意と、それから、だれもが納得できる合理的な考え方をきちっとあらかじめ情報公開して、自治体や被保険者の意見なども反映しながら決めていただきたいということを強調したいと思います。  次の質問に移ります。  先ほどちょっと触れましたけれども、今、介護保険のお話などでいろいろな地域に出かけてまいりますと、入所三施設の費用、特別養護老人ホーム三十一万五千円、老人保健施設三十三万九千円、療養型病床群四十六万一千円。これは、説明では仮置き費用という聞きなれない言葉ですけれども、仮置き費用であるというふうに言われてはおりますけれども、しかしながら、とりわけ特別養護老人ホーム三十一・五万円、療養型病床群四十六・一万円と申しますと、一人の方がどちらに入院するか、入所するかによって月額十四・六万円の差が出てくるわけでございますけれども、どのような算定根拠でこの仮置きは出されているのかということをまずお尋ねしたいと思います。
  119. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 先生指摘の数字でございますけれども、これは平成十年度におきます特別養護老人ホームの措置費、それから老人保健施設、療養型病床群の診療報酬の実績、まさに支払い実績、これをもとに推計をいたしたものでございます。  実際の施行の段階では、当然要介護度別に変わってくるわけでございますし、地域差も当然つくわけでございますけれども、これは先ほど申し上げました保険料の試算のために丸めた形で実績値を示した、こういうことでございます。
  120. 石毛えい子

    ○石毛委員 保険料の試算のためにこの実績値を示されたといいますのは、まずいのではないでしょうか。  と申しますのは、これも直近の、厚生省が出されております資料でございますけれども、例えば、要介護認定で見まして自立と判断された方が特別養護老人ホームで二・七%、老人保健施設で四・一%、療養型病床群で四・三%。自立と判定されながら入所されている方が、療養型病床群、実は医療機関の方が多いという。それから、一番介護度の高いと申しましょうか、要介護Vの方が特別養護老人ホーム一〇・二%、療養型病床群一〇・八%、老人保健施設六・五%ということでございまして、これは介護度でしておりますから、医療ニーズは判断しているわけではないと説明されれば、またそれはそれについての詳細な御説明を求めたいと思いますけれども、少なくとも介護度の判断からすると、これぐらいの先ほどの仮置きの金額が出てくるという合理性はうかがえないというふうに思います。  それで、実績値でそういうふうにお示しになられたということでいいまして、多くの関心の中で寄せられている意見といいますのは、例えば療養型病床群と、それから特別養護老人ホームを居住環境水準ということで比べてみますと、療養型病床群は完全転換だとしましても一人当たりの居住面積六・四平米でしょうか、特別養護老人ホームは十・六五平米でしたでしょうか、むしろ特別養護老人ホームの方が、居住環境とすれば、例えばその一例をとればいいわけですね。ところが、保険料算定のためとはいいながら、現行費用で幾ら支出されているかといいますと、特養は三十一・五万円、療養型四十六・一万円ということで、例えば居住水準はどうかということと比べますと、まさに逆比例の関係になっているわけです。  そういうことを多くの方たちは知っているわけですし、それから、介護保険になれば選べますからというふうによく言われますけれども、供給が需要を規定するという側面もございますから、選べるだけの施設の種類と量がなければ、選択できるということは、これは絵にかいたもちにしかすぎない。  そうしますと、療養型病床群がたくさんある地域は必然的にそこに入らざるを得ないという地域構造があって、しかも、繰り返しますけれども、居住水準は悪くて、この仮置きの金額がそのまま介護報酬の算定に移行していったとしますと、療養型病床群のある地域の方、そこにお住まいの第一号被保険者の方の保険料というのは、あるいは、場合によっては国民健康保険に加入している第二号被保険者の方の保険料も高くならざるを得ないというような問題が起こってまいりまして、これは制度が内包する不公平になりかねない大きな問題を持っていると思うのですけれども、そのあたりはどのように認識されておられますでしょうか。そこのところをお尋ねしたいと思います。
  121. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、委員の御指摘の点は、現実にはそういうことだと思いますが、ただ、実際の施設の状況が各市町村で非常にばらつきがあるといいますか、療養型病床群の多い市町村もありますし、特老の多い市町村もありますし、老健施設の多いところもありますし、それぞれの施設を前提としてこれを算定しておりますから、今委員の御指摘のような、理論上、計算上、そういう問題のあることは否定できないと思いますが、私どもとしては、将来、この保険システムというのは、やはり公平な負担と公平な給付ということが非常に重要でございますから、給付の施設基盤等もやはり公平に、バランスのとれたものであることが必要だと思います。  したがって、これは、直ちに来年の四月までその公平感が維持できるとは私考えておりませんけれども、将来的には、やはり施設でどれだけ対応するか、療養型病床群でどれだけ対応するか、老健施設でどう対応するか、それぞれの特色に応じて地域の方々が選択し、公平な給付の基盤が共通に持てるようにすることはぜひ必要だと思っています。  そういう意味で、これからも、ちょっとこれは前向きの、これからの話になりますけれども、特老その他の問題は、介護保険とはいえ非常に重要な視点だとも思っておりまして、ゴールドプランの前倒しその他をしておりますけれども、なおその後のポストゴールドプランの問題もあろうかと思います。そういう公平化を図るということは、とても重要だと思います。  ただ、現実の問題としては、最初に申しましたように、いろいろの施設が各市町村間で必ずしもバランスがとれていないという現状を踏まえてのスタートでございますから、しばらくこのようなことにならざるを得ない。
  122. 石毛えい子

    ○石毛委員 現実、スタートのときにそういう状況があるというのは、大臣が御答弁になられたとおりだと思います。  しかしながら、そういう状況といいますのは、これは鶏か卵かの話になってしまうかもしれませんけれども、好んでそこに暮らしている方々がそういうアンバランスをつくり出したということではないわけです。むしろ、許認可権を持ちます都道府県の考え方ですとか、あるいはさまざまな要因が絡まって、先ほども申しましたけれども、供給が需要をつくり出してきたという側面がある。それを、余りにも、保険料の格差として第一号被保険者が負うということは、これはやはり制度の不公正ではないか。  厚生大臣は、来年四月スタートのときにその問題が解決できるかどうかは別として、計画を作成し進行していく中でバランスのとれたものにというふうに御回答になられましたから、シフトさせていくという御答弁だったかと思いますけれども、私は、そのシフトが明確にできるまでは、むしろ、現行療養型病床群といいますのは医療保険の中で担保されているわけですから、介護保険適用の療養型病床群の病床数を医療保険との間で切り分け、きちっと論理的な整理がつくまでは、現行制度をこの療養型病床群に関しては継続していく、特例として一定期間医療保険の方に残していくという考え方もあると思いますけれども、その点につきまして、いかがでございましょうか。
  123. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 療養型病床群とか老健施設とか特老は、それぞれの目的がございますので、従来の福祉政策の中で位置づけられているものでございます。したがって、全く同じ収容施設ではございません。  委員の御指摘のお言葉ではありますが、供給が需要をつくり出しているということではなくて、需要があるからそういうタイプのものをつくってきた、それはもう申し上げるまでもございません。  ただ、療養型病床群について申し上げられた点は、なるほどそのような考え方もあるかなと今思いましたけれども、療養型病床群は、これは医療制度の改革とも関係ありますけれども、急性期の一般医療は出来高払いでやる、療養型の、例えば慢性期の病床群は定額でやろうというような案も今中心に検討されておりますが、その外にある話なんですね。  病院全体が二つに分けられる。急性期とそれから慢性期とに分けられる。しかし、慢性期の中で、よく調べてみると、医療行為をそんなに必要としない人、介護中心の人ですね、それは。医療行為をある程度必要とする方々もいらっしゃる。そこで、その仕分けを、一応そちらの療養型病床群の方は医療保険の世界で、それから比較的医療の給付をそんなに必要としないということを線引きいたしますが、その方々は福祉の、介護の世界へ、こういう仕分けになっておるわけでございます。  委員のおっしゃるように、それはもう区別がなかなかつかないんじゃないかという場面もあるいはケースによってあるかもわかりませんが、私どもは、それは県を通じてきちっとそこは仕分けをしていただくことをお願いしておりますし、基準はきちっと明確にいたしますから、それは恣意的にやるわけではございません。需給の状況その他ももちろん考えながら、そういう実態に応じて線引きをやっていくということでございますので、その点は御理解をいただきたいなと思います。
  124. 石毛えい子

    ○石毛委員 療養型病床群が、急性期医療あるいは慢性期医療を中心に医療サイドとそれから介護サイドに仕分けをしていくということは、私も承っております。  問題は、仮置きとはいいながら、介護サイドに仕分けをしたその療養型病床群の金額と、例えば特別養護老人ホームの金額がこんなに違うという説明が、本当に合理性あるものとして、被保険者の方あるいは第二号被保険者の方々に納得され得るかどうかという問題だと思います。  介護保険、新しい制度がスタートするに当たりまして、これは最後にも申し上げたいと思ったところでございますけれども、何よりも、被保険者となる方々、第二号被保険者は、ある場合には介護者のお立場にもいらっしゃる方々でおられるわけですから、納得できるそうした制度が設計されていただかないと、やはり介護保険制度はスタートのときから不信感を持ったものとして出発せざるを得ない。それは、やはり、制度のスタートということでとらえましても、それから本当に介護制度をきちっと機能させていくという意味でも、あってはならない悲しいことだと思いますので、これ以上きょうはこの場では申し上げませんけれども、ぜひともお決めになられるその考え方が納得できるようなものに、それは制度の信頼を得るためには非常に重要なポイントになるということを強調いたしまして、次の質問に移りたいと思います。  残された時間が少なくなりましたので、要介護認定につきましては、いろいろなことが指摘されておりますけれども、私も行って厚生省の方から説明をいただいておりますので、これは割愛させていただきまして、ポスト新ゴールドプランという観点でお尋ねをしたいと思います。  介護保険の設定は、入所施設に関しましては一〇〇%のニードを満たすもの、在宅介護に関しましては、二〇〇〇年四月のときには、全国平均でいえば四〇%の整備水準がスタートというふうに設計されていると伺っております。その後、二〇〇五年には六〇%、二〇一〇年には八〇%の整備水準を目標とする、そういう説明資料が公にされていると思います。  ここで確認させていただきたいのですが、介護保険料は、原則としましてランニングコストを賄うという考え方だと思います。療養型病床群のストックの返済分をどうカウントするかとかいろいろありますけれども、大枠分類すれば、保険料で充当するのはランニングコストということになろうかと思います。  そうしますと、在宅サービスの水準を、介護保険、二〇一〇年に八〇%の整備水準まで引き上げていくには、どうしても在宅サービスを支えるサービス基盤、例えば、デイサービスをするにも場所が要るわけですし、ホームヘルプサービスをするにも事務所ですとかというような場所が要るわけです。そしてまた、新しく介護保険にはグループホームという、皆さんからとても歓迎される施策も入ってきているわけですけれども、これも必ずしも、どのぐらい整備されているか、今、予算では四百カ所計画されていると思いますけれども、これでは約三千三百の自治体に一カ所というふうにもならない寂しい水準だと申し上げざるを得ないと思います。  そうしたことをあわせますと、ぜひ、ポスト新ゴールドプランの策定をしていただいて、在宅サービスについて確実にきちっと実現していく、そういう方針を明示していただくことが介護保険制度に対する信頼感にもつながっていくと思います。  その質問をさせていただきたいということと、それからもう一点、お考えをお伺いしたいと思いますけれども、私は、このまま介護保険がスタートしますと、介護保険は、法律では第二条第四項で明確に、可能な限り居宅での介護を充実するという、先行するということを法律で明記しているにもかかわらず、実態は施設介護の方が先行して、なかなか在宅介護の方にシフトしていくのは難しいのではないかというような感想を持っております。  そこで、在宅サービスにシフトさせていくためには、むしろ在宅サービスの介護報酬を、相対的にではございますけれども優遇していって、ぜひ、在宅サービスの基盤整備と、それから在宅サービスにシフトしていくような介護報酬の考え方というのをとるべきだというふうに考えておりますけれども、その点、いかがでございましょうか。
  125. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 介護サービスというのは、この構成は、在宅サービス、この在宅サービスの中には、例えばショートステイ施設とかデイサービスセンターの施設ももちろん入ります。それを利用しての在宅サービスでございますが、それ以外に施設サービスがございまして、これが今、特別養護老人ホームでありますとか老健施設ですとか療養型病床群の議論がされているところでございまして、法律は居宅サービスを全部そこに一点集中すべきであるということを私は規定しているとは思いません。  そういうことでありますので、そこのバランスをとりながら、それぞれの地域の実情に応じて介護が全うできるような組み合わせが必要だろうと存じますので、今委員のせっかくの御指摘ではありますが、これは在宅だけで必ずしも介護が全うできると私は思ってないんです。  つまり、どういうことかといいますと、これから二十一世紀に独居老人の数がどんどんふえていくことは人口問題研究所も指摘しておりますが、例えば、私の田舎なんかにおきましても、非常に離れた一軒家がぽつぽつとあるようなところで、独居老人がおられても、実際は、その介護というのはなかなか全うすることはできないと思うのですね。  したがって、今委員のおっしゃっていたグループホームとか、あるいはさらに大きくすればケアハウスとか、あるいは場合によると老健施設とか、そういうものの整備がやはり介護を全うするためにはぜひ必要な、地域的な、地理的な状況もあると存じますから、一概に今委員のおっしゃったような点で政策をそこに集中的にやるということはいかがかなと。御意見ではございますが、承っておきますが、そんな感じがいたしております。
  126. 石毛えい子

    ○石毛委員 私も施設サービスが必要ないというふうには申し上げておりません。そこは誤解をしていただかないようにお願いいたしますけれども。  グループホームは、介護保険制度の解説でいいますと在宅サービスの方に入っておりますし、そういう意味で、私はグループホームはこれから大変重要な施策になると思います。それから、今回の介護保険制度の検討の中で、高齢者生活福祉センターというような、今までは過疎地ですとかというような地域指定がございまして、そこも外した、これはやはり私は制度の改善だというふうに評価をさせていただいているところでございます。  そうしたことも含めまして、おっしゃられましたケアハウスというようなことも含めまして、御自分の住宅、あるいは地域でグループホームというような住まい方、あるいは高齢者生活福祉センター、これは高齢者アパートメントの機能も持つわけでございますから、そうしたところが本当に安心して頼ることができる、そしてまた、介護保険事業計画を立てる市町村はそうしたところに社会資本投資ができるように、安心した見通しが持てるようなポスト新ゴールドプランをつくれば、サービス基盤の充実ということに関しまして、介護保険制度のスタートと合わせて、非常な制度に対する安心感が持てるのではないかということを申し上げさせていただいたわけでございます。
  127. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 真意のほどはよくわかりました。私も全く同感です。  その限りにおいては、これから施設整備もしていかなければなりません。それは、各市町村が介護実施計画をこれから策定いたしますので、それは各地域の要望等がはっきりしてまいりますから、それらを集積しながら、新しい計画というものも必要になると存じますから、一概に療養型病床群がいいんだというような先入観でなしに、地域の方々の介護の利便性ということとか、そういうことをよく中心に吸い上げながらそういう新しい計画も策定していきたい。その根拠になる実施計画を今つくろうとしておりますので、それらの集積を見て検討してまいりたいと思います。
  128. 石毛えい子

    ○石毛委員 新ゴールドプランは、必ずしも全部の自治体がその水準まで実現し得てはいないにせよ、やはり一つの物差しとして大きな意味を持ってきたんだというふうに受けとめております。そういう意味で、新ゴールドプランが終了とともにもう計画的なものはないんだというようなことがございませんように、今厚生大臣は検討というふうにおっしゃってくださいましたけれども、ぜひポスト新ゴールドプランをつくるという方向で、各自治体からの事業計画の報告などを集約していただけますように、これは要望させていただきたいと思います。  ここで、大変恐縮ですけれども、老人保健局長に通告外の質問をさせていただきたいと思いますが、お許しください。  この在宅サービスに関連しまして、訪問介護の指定基準でございますけれども、今、常勤換算で二・五人以上の配置、それから常勤一人以上というふうになっておりますけれども、サービスモデルなどの要介護度Vのところを拝見しますと、早朝、深夜の巡回サービスというようなのもモデルに入っております。そうしますと、早朝ですとか深夜は、実施しているところの実情を伺いますと、常勤の方が多く携わっていらっしゃるというような実態報告もございますので、ここはもう少し詳しく、例えば、早朝、深夜、二十四時間ホームヘルプサービスをするような事業者については、例えば二・五人以上じゃなくて四人以上ですとか、そうしたダブルスタンダードを設けていただいたらいかがかというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  129. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 訪問介護の最低基準は、先生指摘のとおり、二・五人になってございます。  これは、訪問介護はこれから非常に大事でございますし、残念ながら、まだ参入といいますか、十分な供給ができておりませんので、多様な事業体が参加しやすいようにという形で二・五人という最低基準を定めているわけでございまして、先生指摘のような二十四時間介護をやるようなシステムでは二・五人ではとても足りませんので、これは当然二・五人にプラスしてやっていただく。ただ、最低基準という形では定める考えはございません。
  130. 石毛えい子

    ○石毛委員 定める考えはございませんと今おっしゃられましたけれども、先ほどの質問では申し上げませんでしたけれども、早朝、深夜を行うということになれば、介護報酬の設定の仕方もそのあたりで違ってくるかと思いますので、ぜひ二十四時間ホームヘルプにインセンティブが働くような仕組みをつくっていただかないと、実際は、在宅で要介護度Vの方の在宅生活というのは非常に困難になってしまうのではないかと思いますので、その点、ぜひお受けとめいただきたいと思います。  次の質問でございますけれども、今年度の予算措置で、在宅高齢者保健福祉推進支援事業というのがトータルで百億円の予算でございます。これは、伺うところによりますと、介護保険との関連で、介護保険がすべての、例えば要支援と自立との境界にあるような方をフォローするわけではございませんから、介護保険と合わせて地域社会サービスが順当に機能するようにという趣旨でつくられた新しい予算措置だというふうに御説明をいただきましたけれども、いかんせん、今年度予算で百億円という予算規模は、いかにも少ないのではないでしょうか。  これも厚生省が発表しております要介護認定のモデル調査の結果でございますけれども、現在在宅サービスを受けている方で、モデル認定で自立と判断された方は一割いらっしゃるということ。一割いらっしゃる方は、現行のサービスから、介護保険適用になると外れていくわけでございますし、私が自治体などで伺いますと、例えばホームヘルプサービスですとかデイサービス、恐らく四割、五割外れるのではないかというような声も伺います。まだ要介護認定の方式が確定しているわけではございませんから、これは見通しというようなところだと思いますけれども。  そうしますと、話を戻しまして、トータルで百億円では、今サービスを利用されている方で漏れていく方に対してとても対応できないのではないか。三千三百の自治体で単純に計算しますと、一自治体三百万円ぐらいでしょうか。補助率二分の一ですから、倍にしまして六百万。六百万といいましたら何ができるでしょうかと言ったらちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、本当に、介護保険のスタートと合わせて、今までのサービスを、介護保険とそのほかの制度をトータルに合わせて、地域でサービスがきちっと機能していくためのそのスタートを切るときに、やはり介護保険と関連する分野のサービスを厚くしていくということは、厚くといいますか、不必要に厚くすることはないわけですけれども、きちっと対応していくというのはとても重要なことだと思います。  繰り返しになりますけれども、百億円ではとても足りないと思いますけれども、ここはもっと大幅にふやすべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
  131. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この在宅高齢者の保健福祉推進支援事業百億円は、これは平成十一年度に創設したものでございますが、確かにこのまま介護保険が来年の四月からスタートして、それで補完できるかといえば、私も同様な疑問は持ちます。  平成十一年度は、まだ介護保険が本格的に実施されておりませんので、その問題は、現実には来年の四月以降の問題として発生してくるわけでございますから、私どもは、十分それは今御指摘の点も頭に置きながら、やはり寝たきり予防の施策とか、あるいは独居老人を対象とした、介護保険の対象でない方々の問題が残りますから、それは十分配慮をして、頭の中へ置いて、十二年度予算の編成の段階で、スタートする段階で考えていかなければならない問題があるなという意識は持っております。
  132. 石毛えい子

    ○石毛委員 今の御答弁で、介護保険がスタートする二〇〇〇年四月のときには一層充実の方向で検討されるというふうに伺わせていただきました。  そこで、引き続き、ぜひともお受けとめいただきたいと思いますけれども、介護保険という保険制度の仕組みは、いろいろと新しい部分を内包している制度としてスタートするというふうに私は受けとめております。  その一つとしまして、介護保険は、例えば、介護保険事業計画の策定に被保険者代表が市民として、住民として参画するというような新しい参加の仕組みをつくっているということと同時に、サービス事業に従事する民間事業者といたしまして、例えば法人格、NPO法人格を取得して、あるいは基準該当サービスという場合には法人格を持たない任意団体としても地域での市民事業が展開していける、そういう新しさを持っているところに介護保険の一つの大きな特徴があるというふうに思います。  そこで、ただいまの質問に続けてでございますけれども、ぜひこういうNPO的な活動をしている団体、実はこの在宅高齢者保健福祉推進支援事業で挙げられていますのは、例えば配食サービスですとか移送サービス、生きがい対応型デイサービス、こういうサービスは、地域で、いわゆる市民参加型ですとか住民参加型ですとか、そういう活動が圧倒的に多く担っているわけです。  介護保険は、あるいは介護保険関連制度は、そうした参加型の活動をも想定して十分に機能する、そういう性格のものだと思いますので、ぜひ私は、二〇〇〇年四月にスタートするときには、そうした活動がインフラ整備ができるように、先ほどもちょっと触れましたけれども、移送サービスをしているところが車一台手に入れるというようなことも、それから事務所を持つことも、コーディネーターを擁することも非常に苦労してされているわけですから、インフラ整備ができるようにということを要望申し上げたいということと、もう一点、もしこれはお答えをいただければということでございますけれども、社会福祉基礎構造改革の中では、多様な主体の参入ということが記されておりまして、社会福祉事業法の中でもそういう改正が方向性として目指されているというふうに聞き及んでおります。  そこで、この基礎構造改革の議論等もかかわりまして、この多様な主体の参入ということの保障をどのように進めていくのかというところで、厚生大臣の御認識を承りたいと思います。
  133. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 やはり介護保険というのは地域住民と非常に密着したシステムでございますから、今委員の御指摘のように、地域住民の御理解、協力なくしては、なかなか私も成功しないと思います。  その一つとして、今御指摘のNGO等の活動の場面があろうかと思っております。現実に、地域によりましては、特に御婦人の方々を中心に非常に関心を示されてその動きを示しておられますが、私どもはこれは歓迎いたします。そして、それのサポートもしなけりゃならぬなというように思っております。  それから、供給主体の多様化という問題は確かにそのとおりでございまして、NPOの方々もそれに参加できるようにしたいと思っておりますし、これは法人格を持っておれば社会福祉法人と同様な役割を担わせることは可能でございますから、サービス面で、あるいは供給面で可能でございますから、そのように取り計らっていきたいと思います。  それから、やはり過疎地等に参りますと、NPOといってもなかなかそういう法人格を持たせるまでの組織化ができない場合もございますから、これは機能的にそのサービスを提供できるようなグループ等があれば、それは市町村が認定すれば、そしてそのいわばコントロールのもとできちっとした仕事をしていただければ、私はそれは差し支えないと思っております。そういう多様性のある供給体制を考えることが、何としても円滑にやるための前提条件だと存じております。
  134. 石毛えい子

    ○石毛委員 ぜひ積極的な支援を要請したいと思います。  質問時間がもう終わりに近づいてきましたので、大急ぎでお尋ねしたいと思いますけれども、介護保険は実施主体を市町村と定めております。自治体が広域連合で実施することを決して法自体が否定しているわけではございませんけれども、新聞報道等々で、福岡県内の七十三町村が、認定、サービス給付、保険料、財政、それらをトータルに合わせて、連合として一本化して介護保険を実施するというふうに報じられております。これは、介護保険は地域に住む住民の意見を反映して、そして地域に根差した形でつくっていく、そうした観点からいいますと、少しく広域的過ぎるのではないかという思いがいたします。  厚生省といたしましては、この辺に対して原則的な見解をお示しになる必要があるというふうに私は考えるところでございますけれども、いかがでございましょうか。
  135. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 介護認定の問題につきましては、もう御理解をいただいておりまして、これは一部事務組合等でやった方がいい、公平で公正な認定ができるということは、大体コンセンサスが得られていると存じます。  ただ、保険主体として、今福岡県の例を申されましたが、確かに福岡県の場合には、九十七全市町村のうち七十四市町村一つの連合を形成しようと。これは地方自治法上、そういうことは可能でございます。私どもとしては、広域化の問題は基本的には賛成であります。  つまり、どこまで賛成かという問題はありますけれども、介護保険事務全体の広域化を図るということは、やはり保険料の格差の解消がまずできる、それで、安定的な財政運営が可能になる基盤がつくられる。それからまた、介護保険事業計画を共同で作成いたすことになりますから、広域的な区域で均衡のとれたサービスを提供できるようになる、そういう基盤を効率的に整備できるのではないか。あるいは、共同で事務処理することによりまして、効率的な事務処理が可能となるというようなメリットを私どもとしては考えております。  ただ、委員の御心配のように、一つの県で、福岡のような場合はかなり広域的になりますので、実際の地域住民と密着した介護サービスが欠けるのではないかという御懸念だと存じますけれども、これは私ども、やはり構成市町村の区分がはっきりわかるように具体的にはなるでしょうし、また運営上もそうなると存じますが、そういうことで、いやしくも地域住民と遊離した形の、組織の巨大化だけを求めるものではないという点は十分配慮しているつもりでございますから、広域連合その他も、私どもとしては、制限を加えるつもりは今のところございません。
  136. 石毛えい子

    ○石毛委員 広域連合も、その地域的な広がりの性格がどうであるかということが重要なポイントだと思いますから、ぜひその点は積極的に御確認いただきたいと思います。  最後に一点ですけれども、障害をお持ちの方が六十五歳以上になられますと障害者サービスから介護保険のサービス対象に移るわけでございますけれども、多くのところで心配されておりますのは、それまで、つまり六十四歳まで障害者福祉から受けていたサービスよりも介護保険のサービスが下がってしまう。介護サービスは、今の試算で出されていますのは上限が三十五万円程度ということでございますから、下がってしまうのではないかという心配がされております。  今までそういうことはないというお返事を随所でいただいているというふうに承っておりますが、下がることはないというところの御確認をもう一度お願いしたいと思います。
  137. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御指摘のように、六十五歳になりますと介護保険のサービスに障害者の方々も入られます。そうなりますと、障害者に特有なサービスを今まで受けていたのが、介護保険ではカットされるという可能性が形式的にございます。  しかし、私どもは、やはり障害者のそういう給付の必要性があればこそ今やっておるわけでありますので、そういった障害者固有のサービスは、介護保険に移行した場合でも、引き続き介護保険と別の、今の制度の延長考えるかどうかはともかくとして、引き続き障害者施策から給付を受けるようにしたいというように考えております。
  138. 石毛えい子

    ○石毛委員 介護保険のスタートの趣旨は、自立支援ということを原点にして制度をつくり上げたという点をいつも御確認いただきまして、これから二〇〇〇年四月まで、ぜひともいいスタートを切れるように御尽力を要請したいと思います。  質問を終わります。ありがとうございました。
  139. 中山正暉

    中山委員長 これにて石毛君の質疑は終了いたしました。  次に、田端正広君。
  140. 田端正広

    田端委員 公明党・改革クラブの田端正広でございます。  最初に、環境庁長官、よろしくお願いいたします。  先般、私どもはダイオキシン対策特別措置法を参議院の方から提出させていただきましたが、我が国のダイオキシン対策というのは大変おくれていると思っております。いろいろなところで社会不安が起こっておるわけでありまして、例えば埼玉県の所沢のくぬぎ山とか大阪の能勢町とか、きょうもまた大阪市内で二万一千ピコという検出がされたということが報道されておりますけれども、そういった意味でこの問題は緊急を要する課題だと思いますが、本来なら環境庁が法案をつくられても当然であったと思っておるわけであります。  私どもは、各党の皆様と御協議させていただき、また御理解をいただいて、この猛毒のダイオキシンを規制する法律を今国会で何としても成立させたい、こういう思いでございますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  141. 真鍋賢二

    ○真鍋国務大臣 先生ただいま御指摘をいただきましたように、ダイオキシン問題は環境保全上極めて重要な問題だと認識をいたしております。  そこで、国民の健康を守るために、関係省庁とも連絡をとりまして、現在、排出削減とか、汚染実態の把握とか、汚染土壌対策の検討など、各般にわたって検討を進めておるところであります。環境庁としても、既存の法制度を十分に活用しながら、最新の知見を踏まえて、幅広い観点から総合的な対策の確立を進めていかなければならないと思っておるところであります。  ただいまも、環境庁から出すべき法案であったというようなことで、ある意味での御叱声もいただいたわけでありますけれども、今回公明党が出したダイオキシン類対策特別措置法案につきましては、提出後、拝見をさせていただいておるところであります。  いろいろな問題がこれから生じてこようと思いますけれども、それらの問題を包括して、よりよい法案として処理していかなければならないと思っておるわけでありまして、より一層の御指導、御鞭撻をいただきたいと思っておるところであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  142. 田端正広

    田端委員 より一層の御指導、御鞭撻というよりも、ぜひ環境庁の方も前向きにお取り組みいただきたい。要望しておきます。  続いて、地域振興券の問題についてお尋ねいたします。  一月二十九日に浜田市で初めて交付され、そして二月一日に野田市など五市町村でスタートをいたしました。新聞、テレビ等で大変な反響になっているようでありまして、それぞれ実施した町なんかは、マスコミの方が殺到して、それだけでもう地域が活性化するような、そういう状況にもなっているようでありまして、それぞれの商店街でもいろいろなアイデアを出したり振興券そのものに付加価値をつけたり、そういうことで非常に明るい話題として今提供されているわけであります。  先日、堺屋経済企画庁長官が、当初長官は余り御賛成でなかったような記憶もいたしますが、テレビで、思った以上の効果があった、地域の活性化に非常に役割を果たしている、こういうお話をされていたようでありまして、長官もお変わりになったなというふうに私も喜んでおります。  小渕総理が、引き続いて第二弾のことについてもお触れになって、経済情勢や今回の効果等を見きわめつつ、十分なる検討をしていきたいという趣旨のことをお話しになっております。堺屋経済企画庁長官の現時点における御所見をお伺いしたい。そしてまた、官房長官、済みません、お見えになっていただいていますので、官房長官はどういうお考えなのか。あわせてお願いしたいと思います。
  143. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 地域振興券につきましては、経済効果として所得増加ということで見ますと〇・〇六%、期間が限定されておりますから減税以上の効果があるだろうというので、〇・一%ぐらいGNPを押し上げるだろうということを申し上げておりますけれども、最近、委員指摘のように、各地方、市町村でいろいろイベント的な知恵を出してにぎやかにやっていただいている点では、非常に、思いのほかと言っては失礼かもしれませんが、予想外の明るさが出ていると思います。この件に限らず、地方の方々、市町村の方々が、何か自分のアイデアを出す機会を待っておられるような感じがいたしますので、これから地方分権を推進して、そういう知恵を引き出すような政策をとっていったらいいと思いますが、これを繰り返すかどうかにつきましては、この結果どういう反応があるか、市町村の方々あるいは国民の方々の動向等を慎重に見きわめ、財政、経済状況、景気判断等も加えて検討する必要があると思います。  確かに、委員指摘のように、明るい話題になっていることは事実でございまして、今始まりだから余計そうなんだと思いますけれども、最後までそうかどうかわかりませんが、今のところは確かに委員指摘のとおりでございます。
  144. 野中広務

    ○野中国務大臣 お尋ねでございますけれども、今堺屋長官お話しのように、全国それぞれの市町村で、振興券そのものを工夫したり、振興券とその地域の商店街等のイベントをどのようにやっていくかというさまざまな地域おこしの行事が考えられておることは、地域の活性化のために私は大きなインパクトを与えたと思うわけでございます。まして最初に交付いたしました浜田市を初めとする報道は、とても、三兆、四兆の減税をしてもあれだけのテレビ、新聞を通じ、週刊誌を通じた広告、宣伝をしてくれなかったことを思うと、この事業成果というのはまことに大きいと思っておるわけでございまして、大変な御苦労を関係市町村にいただいておるわけでございますけれども、なおこの問題について、先般、冬柴委員の御質問に対して野田自治大臣が、こういうイベントに対してコンクールみたいなものを考えてみたいといったようなことを大臣としておっしゃっておりましたので、そういう意味で、地域振興にさらに継げていくことができれば幸いだと考えております。
  145. 田端正広

    田端委員 ありがとうございます。  まだ始めたばかりだからということですが、しかし、これからが大きいところ、大きい都市が始まるわけでありまして、東京とか大阪とか大都市がこれからどんどん三月末にかけて実施していけば、この反響はもっと大きくなっていくだろうし、もっと明るい話題が続々誕生するんじゃないか、私はそういうふうに思っております。したがって、そういう意味では、これがこの不況の中で明るい話題となり、活性化に大きく役立つことを大変に私も期待したい、こう思っております。なお政府の方も、引き続いてまた御検討をよろしくお願いしたいと思います。  少し、ちょっと暗い話になりますが、路上生活者といいますか野宿生活者といいますか、いわゆるホームレスの問題についてお尋ねしたいと思います。  昨年、私は財政特別委員会でこの問題を取り上げましたが、あれからまたことしになって大変ふえているわけですね。経済の状況の悪化が非常に深刻な事態を生み出していると思っております。  私は大阪市西成区に住んでおりますが、いわゆるあいりん地区のあるところでありまして、ここには大変なホームレスがいます。私の感じでは、去年の秋には八千六百人大阪でいると言われたのが、実感として今はもう一万人を優に超しているだろう、そういうふうに感じます。  東京でも五千は超えているだろうと思いますが、新宿かいわいだけでも千人はいる、あるいは、いよいよ皇居の広場のところにまでテントが出てきた。あるいは、川崎なんかも六百六十円の食券を配るわけですが、それに千人の人が列をつくる、こういう状況が今起こっているわけでありまして、何も大阪だけの問題ではなくて、これはもう大都市特有の問題として起こってきた、これは新しい日本の都市問題である、私はこういう思いをしております。  きょうは、そういう意味で、私は地元なものですから、今お配りさせていただきましたが、写真で実態を見ていただきたい、こう思います。  これは、一番の写真ですが、大阪城の中の大阪城公園が、こういう青いテントがいっぱいであります。そういった意味では、もう本当に金のしゃちほこが泣いているな、こう思うわけであります。  それから、二番の写真ですが、長居競技場というのがありますが、長居公園、ここがまたこういうふうに青いテントがいっぱいある。  先日、大阪女子国際マラソンが行われました。長居競技場を発着にして大阪城を回って帰ってくる、こういうコースでありますが、つまり、こういうテントの中をマラソンしていく、こういうことでありまして、もし大阪でオリンピックをするようなことになって、こういうテントが続いているとなれば、本当に恥ずかしいことだな、こういう思いをいたします。  これは皆さんのお手元に、三番になっていますが、西成公園というところですが、この西成公園は小さい公園ですが、もう満杯のように、三百以上ぐらいの青いテントがありまして、真ん中に野球場があるんですが、そこに出入りするのは、親がついて行かなければ、子供だけでは野球場に出入りできない、こういう状況であります。  四番の写真ですが、西成区に三角公園というのがございます。ここでボランティアの方々が炊き出しをやっているわけでありますが、これはつい最近撮った写真でございます。本当にすごい人が、お昼の炊き出しの時間にはこういうふうに列をつくって順番に待つ、こういう状況であります。  下の、五番の写真は、もう一つその近くに四角公園というのがあるのですが、これは西成警察署の裏側にあるのですが、西成警察署を一周してこういう行列ができる、こういうことでございます。  これらはボランティアでやっていただいているわけですけれども、あいりんセンターというのがございまして、あいりんセンターで支給しているところにも千人ぐらい列ができます。これは、こういう乾パンを、大阪市の災害救助用の乾パンを支給するわけです。これに千人ぐらいの人が列をつくる。これをどういうふうにするかというと、お茶わんみたいなものに入れて、砕いて水をぶっかけて食べているわけですけれども、こういう、これはお水ですが、これは今冬場はやっていなくて、夏のときにはこれも支給しているようですけれども、千人ぐらいの人がこれもやはり並ぶ。  こういう状況でございまして、あと、七番というのは恵美須町という阪堺線の駅ですが、最終電車が終わりますと、ホームを開放してこういうふうにたくさんの人が寝泊まりをする。  それから八番の、これはでんでんタウン、秋葉原のような日本橋の電気街ですが、シャッターがおりる八時から九時、シャッターがおりると同時に段ボールのおうちがずらっと並ぶ、こういう状況であります。  九番は、例の隅田川のテラスで、白鬚橋から桜橋のあのかいわいですけれども、これは東京の写真でございます。  六番は、これは今宮工業高校の横ですが、十二月末に今宮中学校周辺だけは撤去しようということで撤去しました。そうしたら、何のことはない、中学校は撤去されたけれども、今度今宮工業高校へその人たちが移ってきただけで、六番の写真がこういうふうになっています。  こういうことで、全くそういう意味では本当にイタチごっこでもあるわけですが、この問題はもう単に大阪府とか大阪市とかいう自治体の問題ではなくなっているのではないか、こういう思いを強くしているわけであります。  ホームレスと言われる人たちの大半は、中高年、五十代から六十代、平均年齢五十五、六歳というふうに言われておりますが、いろいろな事情があってこういうふうになっているんだと思いますが、これはすなわち景気と反比例する形でこういうふうにふえてきている、こういうふうに実感をしております。  したがって、根本的な解決策というのは、私は、景気、経済活動を活性化する以外に解決策はないと思いますが、しかし、もう自治体だけに任せるのではなくて、もうここは国が乗り出していく、そういう状況になっているんではないか。  例えば労働省の方にもお骨折りいただき、厚生省にもお骨折りいただき、また、治安という面からもこれは大事な問題でありまして、本当に地元では困っているわけでありまして、正直言って、私が夜中に自宅に帰りますと、家の前に寝ていてもうどうにもならないというのが現実でありまして、文句も言えないし、どうしようもない。だから、地域住民の人は、そういう意味では非常に困っているわけであります。  官房長官、ぜひ、人情味お厚い政治家として手腕を振るっていただきたいと思いますが、こういう多くの省庁、多数の垣根を取り払って解決しなければならないようなこういう社会問題に対して、これはぜひ、合同的な対策本部といいますかプロジェクトチームといいますか、そういうものをつくっていただいて、とりあえず、まず実態調査からやっていただいて、そこから一つの何らかの方向、いろいろな知恵が出てくると思いますので、そういうことをお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  146. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員からただいまお話がございましたように、深刻な経済状態あるいは雇用状態の中で、特に今おっしゃいましたようにホームレスの方々がたくさんふえてまいりまして、平成九年の八月の累計でありますけれども、全国的に集計して六千三百九十八人と言われましたのが、平成十年では一万四千九百三人というように、大変なふえ方でございました。  特に、お地元の大阪におきましては、平成九年度は千二百五十四人であったのが、十年は八千六百六十という大変な数字になっておるわけでございまして、福祉、就労、医療または住宅等多岐にわたる問題がございまして、おっしゃるように、関係省庁が横断的に取り組む必要があると考えておるところでございます。  十一月の二日に小渕総理が大阪に参りまして、関係市長さんあるいは知事さん初め皆さんとお会いをし、地域の視察をいたしました際にも、磯村大阪市長さんから特にこの問題が指摘をされました。総理も、その場で、ホームレスを抱える大都市の自治体の皆さんと省庁横断的に取り組むことを考えたいということを申しまして、翌日、直ちに関係省庁にその指示をいたしまして、総理のもとでこの対策考えることにいたしました。十二月の九日にそれぞれ、東京都、川崎、横浜、名古屋、大阪あるいは神奈川県、愛知県、大阪府、こういう府県あるいは都市にお集まりをいただき、また、おっしゃいましたように、労働、厚生、警察を初め、自治省等関係省庁にもお集まりをいただきまして、第一回の会合をいたしまして、それによりまして、大阪市を含めて実態調査をやってみるというお話をいただいたようで、ただいま実態調査をやっていただいておるところでございます。  こうした中から、労働省とされまして、日雇い労働者の就労の場が不足をしておりますことから、こういう方々になられた背景を見ながら、日雇い労働者を多数雇い入れる事業主に対する奨励金制度を創設するとか、あるいは、厚生省としても、福祉事務所、保健所等において各種の相談あるいは援助を行いますとともに、生活保護制度による保護施設への入所等を行うなど、国といたしまして、現在の諸施策でも対応をしながらも、今後どのような支援策が適切かつ効果的か、関係自治体とも協力しながら積極的に進めてまいらなければならない重大な課題であると思っておるわけでございます。  ただ、御承知のように、こういう人は住民登録もしていらっしゃいません。こういう人を市民権を与えながらどのようにしていくかというのは、行政的にはいろいろな隘路があるわけでございます。私もこの間、京都御所のところでこういう人がジョギングしておるのを見まして、どうしてジョギングしているんだと言ったら、いや、このごろは、O157がふえてから、あれから駅弁屋とホテルのところにおるとすぐぜいたくな食い物がみんな出てくるから、我々もなかなか食べ物が豊富になったなんと言う人を見ますと、働かないでこういうところにおる人も中にはあるのかな、こう思いながら、そういう背景をもまた調査をして、そして自立の道を考えていかなくてはならないと存じておるところでございます。
  147. 田端正広

    田端委員 官房長官、御丁寧にいろいろなお話をいただきました。それはもう私もよくわかっております。わかった上で質問させていただいているわけで、要するに、もうそういう段階を通り越しているのです、今は。だから、対策本部をつくっていただいて、リーダーシップをとっていただきたいということをお願いしているわけで、ぜひその方向で御検討いただきたい。  諸外国でもやはりいろいろなことがあるようですけれども、いろいろな知恵を出しているようであります。例えば、地下鉄の駅を夜は開放して、そこに泊まっていただくようにするとか、こういういろいろな知恵はあるかと思いますので、ぜひこの問題を前向きにお取り組みいただきたい。  もう時間があれですので、野田自治大臣、済みません、国家公安委員長として、正直言って、ひったくりとか窃盗とかいろいろな事件が多発しております。警察も一生懸命やっていただいているのですが、社会不安というものと裏表になっていることも事実でありまして、また、あいりん地区は、ここは覚せい剤の密売の日本の一番の密集地です。そういった意味でも、非常に暗い影が漂っているわけでありまして、この問題に対して、国家公安委員長としての御決意といいますか御所見をお願いしたいと思います。
  148. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、その周辺の地域の住民にとって、大変治安の上で不安を感じているということも十分承知をいたしております。そういう点で、治安の維持に万全を期していかなければなりません。それには、防犯体制をさらに一層強化をして生活の平穏が乱されないように、治安当局としてはさらに督励をしてまいりたいと考えております。
  149. 田端正広

    田端委員 最後に関係大臣にお願いしておきたいと思いますが、労働大臣、きょう来ていただいて、どうも済みません、お答えしていただけなくて。  ぜひ一度現地にお越しいただきたい。現場を見ていただくのが一番早いと思います。自治大臣国家公安委員長としてもぜひ見ていただきたいし、労働大臣にも見ていただきたい。官房長官にもできたら見ていただきたい。堺屋長官も、大阪を離れてしばらく時間がたっておりますので、ぜひ一回また現地をしっかり見ていただければよくわかっていただけると思いますので、お願いしておきたいと思います。ありがとうございました。
  150. 中山正暉

    中山委員長 これにて田端君の質疑は終了いたしました。  次に、木村太郎君。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕
  151. 木村太郎

    木村(太)委員 連日各大臣には御苦労さまです。心から敬意を表したいと思います。  私、いただいた時間が大変短いので、一つのテーマに基づいてお考えをお聞きさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それは、ちょうど一年前のこの予算委員会一般質疑のときも同じテーマに基づいて質問しました。というのは、児童福祉法改正の動きで、ちょうどその施行前であった、ちょうど今が、今度施行してから一年を間もなく迎えようとしているということで、子育て支援、つまり少子化対策というような思いから質問をさせていただきたいと思います。  まず、何よりも国の施策考え方中心となるのが、基本となるのが、平成六年に策定されたエンゼルプランだと思います。これは、平成七年から十六年ぐらい、大体十年間の実施ということで既に始まっている。だとすれば、十一年度はちょうど折り返しになっていくと思います。このエンゼルプランにも、みずから子育て支援施策を総合的、計画的に推進するというふうにうたっておりますが、このエンゼルプランの現在の実施状況というものをお聞かせいただきたいと思います。
  152. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 子育てに対します社会的支援を総合的、計画的に行うために、今御指摘のように、平成六年に厚生、文部、労働、建設の関係四省におきましてエンゼルプランを策定いたしました。また、具体策の一環として、厚生、大蔵、自治の三省で緊急保育対策等五か年事業実施したことは、委員の御承知のとおりでございます。  具体的にどういうことをやっておりますかと申しますと、子育てと仕事の両立支援をまず促進する必要があるという視点に立ちまして、緊急保育対策等五か年事業に基づきまして、待機児童の完全解消とか、それから低年齢児の受け入れ枠の拡大、延長保育の推進、あるいは多機能保育所の整備の推進等をやってまいりましたほか、今御指摘のように、児童福祉法の改正によりまして、利用者が保育所を選択できる仕組みにいたしました。それから、育児休業の制度化等の雇用環境の整備も図っておったところでございます。  なお、これから家庭における子育て支援を行うためには、母子保健サービスあるいは周産期医療の整備の充実等、保健体制の充実が必要でございますし、地域の子育て支援センターの整備促進も必要でございます。  また同時に、言うまでもありませんが、住宅及び生活環境を整備していくとか、あるいは心のゆとりある教育を行うとかいうことが必要でございますが、特に最近問題になっている点は、子育てに伴う経済的負担の軽減を図るために、多子世帯への保育料負担の軽減をやっております。つまり、三子以降は九割まで免除する、一割だけにするというようなこともいたしておりますし、保育料の公平化等も図っております。  それから、児童手当につきましても、所得制限を緩和いたしました。そしてまた、これは税の世界で、所得税、住民税の扶養控除の引き上げ等を行っておるところでございまして、総じて、こうしたエンゼルプランそのもの、あるいはそれにまつわる状況等を御説明申し上げた次第です。
  153. 木村太郎

    木村(太)委員 そこで、児童福祉法を改正して、施行されて間もなく一年がたとうとするわけですが、施行されてその後の変化というものを具体的にどう国は認識しているのか、大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  154. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 平成九年度の児童福祉法の改正というのはどういうことかといいますと、基本は、市町村の今までの措置による入所から、保育所に関する情報提供等をやりまして、保護者が保育所を選択する仕組みに改めたことが非常に重要な点でございます。  それからまた、保育所は情報提供を行うとともに、乳幼児等の保育に関する相談、助言を行うように努めなければならないというようなことで、積極的にそういう機能を強化したものであるというように理解しております。そして、昨年四月一日からこれが施行されております。  この結果、保育所の選択利用方式が導入されましたことを踏まえまして、保育所の利用者の需要に即した多様な保育サービスを柔軟に提供できるように、延長保育について、保育時間の延長について利用者の希望に弾力的に対応できる仕組みを整備いたしましたし、それから、入所定員の弾力化等も推進してきたところでございます。  延長保育につきましては、いろいろの対応がございますけれども、利用者が増大しておりますから、これを充実しておりますし、今後も続けたいと思っております。それから、児童数の少ない保育所、五人以下につきましても、新たに実施対象に、補助対象といいますか、施設対象にするというようなことどもも行っております。  なお、この結果、入所児童数が全体で平成十年度で四万八千人増加をいたしております。それから、保育所に関する情報提供が着実に行われるようになってまいりましたし、今申しました延長保育の実施箇所数が着実に増加をいたしております。  ちなみに申しますと、平成九年に三千四百カ所くらいの延長保育でありましたが、五千カ所以上ということでございまして、かなり増加しておるということでございます。  こうした法改正後の新しい実施状況につきましては、厚生省としてさらに実情を把握しながら、法改正の趣旨を踏まえまして、運用がきちんとできるように適切に対応していかなければならないと考えております。
  155. 木村太郎

    木村(太)委員 特に延長保育の情報提供、つまり、保育所、保育園を選ぶ、この選択を任せるための情報提供ということが今大臣の答弁からも特にありましたが、ただ、私、手元に今持っているのですが、ある紙面にも出ていたのですが、延長保育、あるいはまた、さまざまな改正を受けて、それに伴ってのいろいろな努力をする中で、やはり現場では大変苦労も多いというふうにも聞いております。  例えば延長保育でいえば、たかだか時間的には三十分というような考え方を外野から見ますと思うのですけれども、しかし、現場ではその三十分、十五分の延長が人手を新たに必要とするとか、大変御苦労が多いというふうにも聞いております。あるいはまた、朝方の延長をしたらいいのか、どちらかというとニーズが高い夕方の延長を目指すべきなのかとか、いろいろ、この延長保育一つとってみても、現場では大変御苦労が多いというふうにも聞いています。  ただ、今大臣からの答弁もありましたが、着実に、数からいくと努力している姿勢というか、三千から約五千カ所までふえてきている。こういったことで、これは一つのいい動きだと思いますので、しかしまた、今言ったように、現場での苦労というのも、ぜひ行政というか国も適時とらえながらの対応をお願いしたいと思います。  いま一つ続けてお聞きしますが、私、一年前にも指摘したのですけれども、特に親の立場になった場合に、保育料という経済的な面、これが大変意見が親から出ておりまして、どういうことかというと、この保育料そのものは、決めるのは市町村というふうになっておりますが、しかし、その前に国の国庫精算基準というものを最大限参考にして市町村が決める。しかしまた、その保育料の設定が、市町村間、つまり地域間においてかなりの差が現実にある。今言った国庫精算基準というものは、法改正に伴って、その前までは十段階であったのが七段階まで圧縮された、これ一つとってみれば、これもまた大きな前進だと思います。  しかし、私は、現実にこの保育料のお金の姿を見た場合に、その地域間の差というのが、二千円、三千円というような差でなくて、二倍、三倍という差がやはり現実にある。私の地元でもそういった姿がありました。ですので、この保育料の設定というか、この格差是正に対して、今後の考え方というものを御披露いただきたいと思います。
  156. 横田吉男

    ○横田政府委員 保育所の保育料の設定についてでございますが、先生指摘のとおり、従来十段階であったものを、将来均一化に持っていくということで七段階にいたしております。これは、従来の入所方式は措置方式でございましたけれども、利用契約方式に変わったことに伴いまして利用料的な性格を持ってきたということで、将来的にはできる限り均一化を図ってまいりたいと考えているところでございます。  ただ、国が示しております保育料の基準額表というのは、これはあくまで先生指摘いただきましたように国庫負担の精算基準ということでございまして、具体的な保育料につきましては、各市町村の判断によりまして条例等により定められているということでございまして、現在のところ、国基準に準じたものから、五十段階ぐらいに分けているものもございます。  法改正の施行後の状況を見ますと、例えば、そういう多段階の保育料方式をとっていた市町村におきまして、これをかなり減少するというような傾向も出てきておりまして、全体的な把握は今行っているところでございますけれども、私どもといたしましては、徐々に均一化に向かって減っていくのではないかというふうに考えているところでございます。
  157. 木村太郎

    木村(太)委員 そう願いたいと思います。  きょうは文部大臣にも御出席をお願いしておりましたが、今は保育所、保育園、つまり厚生省の方とやりとりしたわけですけれども、いま一つは幼稚園の存在があります。幼稚園と保育所のお互いの位置づけというのはもちろん違うわけでありますが、ただ、現実に子供さんを預かる場ということを考えれば、子育て支援という環境をつくっていく中で、今後の幼稚園に対する文部省の取り組みということを大臣から御答弁いただきたいと思います。
  158. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 幼児期の教育というのは大変重要なものだと思っております。生涯にわたる人間としての健全な発達の基礎を培う上で、大変重要であると思っております。  そういう意味で、幼稚園教育の振興を図るために幾つかの施策を行っておりますが、まず第一に、教育内容を改善したい、第二に、就園奨励のための助成をしたい、第三番目に、私立幼稚園の経常費の助成などの施策を推進しております。例えば、保育料減免をするというふうなこと、それに対する助成というふうなこともそこに含まれているわけでございます。  また、今日の社会や家庭の変化に対応した多様な保育の需要にこたえるため、幼稚園と保育所の連携を図っております。ただいま厚生省と大変協力をいたしているところでございます。具体的には、預かり保育の推進、子育て相談など子育て支援活動における連携の促進、幼稚園と保育所の施設の共用化の推進などを行っております。  今後さらに、幼稚園と保育所との間で、教育内容、保育内容、教師、保母の研修のあり方などについて連携を緊密にいたしまして、保護者や幼児の立場に立ち、利用しやすい環境の整備を図ってまいりたいと思っております。
  159. 木村太郎

    木村(太)委員 幼稚園の方もさらにその環境をつくっていくという趣旨の御答弁でありました。ただ、先ほど私もみずから、幼稚園は幼稚園の考え方、保育所、保育園のまた考え方があるのは事実でありますが、しかし、現実に、私の周りのいわゆる親の意見考え方を聞けば、例えば、それこそ私の地元でも多いのですが、自分のうちから一番近いのがたまたま幼稚園であった、ですので幼稚園に通わせる、あるいはまた、保育所、保育園が一番近いので保育所、保育園に通わせるという考え方で入所させている親御さんがいるのも事実です。もちろん、反対にまた、うちの子はぜひ幼稚園に預かってもらうんだという方もいると思います。しかしまた、一方では、そういった考え方で幼稚園に通わせている、保育所に通わせているという方もたくさんいると私は認識しております。  この点、児童福祉法改正の中でも、厚生省、文部省はお互い連携を密にしてというような考え方で取り組んでいるというふうにも聞いておりますので、私は、ある面では、保育所、保育園そして幼稚園とのいろいろな面でのそれこそ格差というものが出てきて、それが親の立場からいった場合に不満になるようなことがあってはならないし、両大臣中心に、こういった点でもお互い協力し合って子育て支援の環境づくりに努めていただきたい、こう思います。  時間がないので次に移りますが、次は虐待の問題なんです。これも、ちょっと私、紙面で見まして気になったのですけれども、ある紙面によりますと、九五年の数字でありますが、虐待や無理心中などで死んだ十二歳以下の子供さん、被害者が九十人いたと。しかしまた、警察庁によると、九五年のすべての殺人、傷害致死事件での十二歳以下の被害者は百五十六人いると。これは年齢的に十九歳以下となればもっと数はふえるのは当然でありますが、こういった被害者の大まかに半分は、加害者はだれかというと、いわゆる親あるいはまた養育者というふうにある紙面では述べておりました。  私の地元の県の話なんですが、県の方では子供虐待防止マニュアルというものを策定していまして、県行政でもいろいろと取り組んでおります。また、子育てメイトと称しまして、感覚的に民生委員のような感じで、子育ての相談にいつでも乗れるような方を身近に、地域にたくさん配置しながら、いわゆる子育て支援の環境あるいはまた虐待防止なんかに努力しているというふうになっております。  私、この紙面にも書いていたのですが、では、この虐待そのものを国の方がきちっと把握しているかどうかというと、そういったデータをとっていないというふうに聞いております。しかしまた、難しい点は、どこまでが虐待なのか、どこまでが親の子供に対するしつけの一環なのかとか、これはまた判断も分かれるところであって、正確なデータ、数字を探るとすればこれまた難しいことも私も承知します。  しかし、やはり今、虐待の問題あるいはまた少年の犯罪の低年齢化とか、子供たちをめぐる社会情勢というものが大変厳しく、殺伐としてきておるということを思っておりますので、この点について、国の取り組みに対する考え方を御披露いただきたいと思います。
  160. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 虐待防止の問題の統計でございますけれども、これは、確かに委員のおっしゃるとおり、虐待が家庭内で行われることが非常に多いということもございます。また、どこまでが虐待かという問題がございますが、しかし、最近非常に多くなって、私どもの把握しているところでは、五千三百五十二件もあるという状況にあります。しかも、その八割方は親が、実母、実父がやるということでありまして、私どもとしては、やはり児童相談所等を通じてそのPRその他に努めるとともに、これは教育と非常に関係がございますから、よく連携をとって対応していきたい、こう思っております。
  161. 木村太郎

    木村(太)委員 時間が来ましたので質問は終わりますが、大蔵大臣にも御同席いただいたのですけれども、景気対策を意識しての予算案の中でも子育て支援にかかわるようなことが盛り込まれておりますので、財政当局も一体となって、政府のこの少子化対策、子育て支援にぜひ一層御尽力をお願いしたいと思います。我々も、超党派での議員連盟が設立されまして、私も心から賛同して参加させていただきましたので、国の一層の努力を求めて、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  162. 臼井日出男

    ○臼井委員長代理 これにて木村君の質疑は終了いたしました。  次に、山本孝史君。
  163. 山本孝史

    山本(孝)委員 山本孝史でございます。お疲れの中、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  まず、冒頭、きょうは年金についてお伺いをさせていただきたいと思っておりますが、その前に二点ほどお伺いをしておきたい点がありますので、先に触れさせていただきたいというふうに思います。  一つは、社会保険庁の事務職員による保険給付金の着服問題についてであります。  社会保険庁職員による保険給付金の不正受領や、あるいは保険料の着服があるのではないかということで、質問主意書を出させていただきましたところ、五年間で九件、三千五百万円あるという答弁をいただきました。ただし、事案の詳細についてはこれを公表しないということで、社会保険庁、公表を拒んでおります。  ところで、会計検査院法の第二十七条によりますれば、会計に関係のある犯罪が発覚したときは、直ちに、その旨を会計検査院に報告しなければならないと定められております。  社会保険庁はこの九件の事実を会計検査院に報告しておられるのか、あるいは報告していないのならばその理由は何なのか、まず厚生大臣にお伺いします。
  164. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員から質問主意書が出まして、お答えしたとおりでございました。九件ございます。  そのうちの一件につきましては、北海道の件でございますが、これは会計検査院に平成十年の四月の二十三日に報告を行っておりますが、他の八件につきましては、現在報告はまだ行っておりません。早くこれはすべきでありますが、まことに残念なことで申しわけなく思っております。  したがって、これらの事案につきましては、速やかに報告の手続をとることとしたいというように存じております。
  165. 山本孝史

    山本(孝)委員 その報告をしておられない理由は何なのかというのが質問でございます。
  166. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 失礼しました。  これは事案の性格が、例えば、一たん着手したけれども返還をしているとか、結果において国損を与えていないとか、いろいろな事情がありまして、その軽重いろいろな点がございますので、それらを検討もしていたというようにお伺いしております。  そんなことではありますが、しかし、よしんば返還されたとしても実行行為そのものはあるわけで、それは非難さるべきことですから、報告はしなければならぬというように考えております。
  167. 山本孝史

    山本(孝)委員 重ねてお伺いをいたしますが、うち二件については、処分をする前に退職されたためにその事後処理が宙に浮いているというふうに聞いております。  この二件についてどういうふうにされるのか。例えば、告発をするつもりはないのでしょうか。そして、今回の件についての厚生大臣としての謝罪の言葉があってしかるべきかと思います。
  168. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 未処分となっている二件につきましては、国民年金保険料の還付金を不正受領したものと、それから、国民年金保険料を着服したものでございます。  この二件の処分につきましては、現在、社会保険庁に設置されております懲戒審査委員会で検討しておりますが、実は、この職員はその罪を犯した後、退職しているんですね。そういうことで、その責任は大きいと思います。これは、本人の問題であると同時に監督者の責任問題もあると存じますから、今調べておりますが、厳重に対応していきたいというように思っております。  なお、この業務執行にかかわります不正事案につきまして、過去の事案等もございますけれども、現在、捜査当局と相談をして、告発の当否について検討中でございます。
  169. 山本孝史

    山本(孝)委員 厳正に臨んでいただきたいというふうに思います。  きょうは、あわせて、会計検査院からも来ていただいておりますが、今回の何件かは、未遂の事件であったり、あるいは返還をしているとかと言っておられるわけですけれども、こういった未遂の事件も報告の対象というふうに理解してよろしいのか。今後とも、この会計検査院法の第二十七条が厳格に守られるように指導していただきたいというふうに思います。会計検査院からの答弁を求めます。
  170. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院長 お答えいたします。  まず第一点でございますが、会計検査院法第二十七条の趣旨は、検査の徹底という見地から、検査を受けるものに対しまして、会計に関係のある犯罪の発覚あるいは財産の亡失などの場合に事故報告義務を課したものでございます。  このような趣旨から、会計に関係のあります犯罪の事実が発生したと客観的に認められるときには直ちに報告していただくべきものでございまして、刑法などによって処罰されるというような性格のものでございました場合には、未遂事件についても報告すべきことになるものと解しているところでございます。  それから、今後の報告あるいは通知の周知徹底の点でございますが、不正行為等が判明した場合に、報告すべき内容につきましては、これまでに各省、各庁の長などに対しまして本院から通知を発しているところでございまして、報告すべき事案があった場合には、この通知に従って報告されるものと私どもとしては期待しているところでございます。  今後、報告漏れ、あるいは報告が著しくおくれているというような省庁がございました場合には、本院からの通知に従って速やかに報告されるよう、改めて注意を喚起することといたしたいと存じております。
  171. 山本孝史

    山本(孝)委員 どうぞよろしくお願いをいたします。  今、年金改革をやっている中で、社会保険庁の職員の中で、せっかく国民が納めているものがどこかに消えてしまうということは、大変この年金制度改革に対しても不信を抱かせてしまいますので、ここはしっかりとした対応をお願いしたいと思います。  会計検査院の院長さん、どうぞ、結構です。ありがとうございました。  続いて、ホームレスの問題について、官房長官にもう一度お願いをさせていただきたいというふうに思います。  先ほど田端委員が御質問をされまして、私も後ろで聞いておりまして、京都御所のところでジョギングしておられる方を見てというふうにおっしゃいました。一つの例としてはあるのかもしれませんが、そういう例をお引きになってお話しされますと、全体像がどこかへ行ってしまって、ホームレスの問題の深刻さが消えてしまいますので、そこはぜひ御注意をいただきたい、私が注意を申し上げるような立場ではないです、僣越でございますが、ぜひそれはお願いしたいということ。  それから、特にあいりん地区の場合で申し上げますと、一概には言えないんですね。あそこにおられる方たちは、日雇いで働いておる方もおられる、あるいは、いわゆるくず拾いということで、大阪市内全域を歩き回っておるような方もおられる、あるいは労働能力の全くない方もおられるわけですね。  あいりん地区の日雇い労働者の方々は主に建設業に従事しておられますけれども、東海、北陸方面から西日本全域にかけて、大阪がいわば供給源になっているわけですね。今、建設業界がどんどん機械化が進んできていますので、だんだんそういう仕事ができなくなってきておりまして、結局のところ仕事にうまくつけないという状況があります。ケースワークをするにしても、数が大変多いですから、ここはなかなか苦労をしておられるという部分があるわけですね。  先ほど官房長官もお触れになりましたように、去年の秋、小渕総理が大阪に来られました折に、磯村大阪市長から特にお願いをさせていただきました。早速にも、おっしゃいましたように、労働省が事務局になられまして、労働、建設、厚生、自治の各省とともに、あいりん対策等連絡協議会が開催をされました。先ほどお触れになったとおりです。これが、しかし残念ながら、一回の開催で終わっております。今後、開催の予定もないというふうにお伺いをしております。  昨年十二月には、これも先ほどお触れになりましたように、厚生省が今度は中心になって、関係の都市からのホームレス問題関係自治体ヒアリングを労働、建設、自治、警察の各省と一緒になっておやりになりましたけれども、これも、まずヒアリングをされたという段階で、残念ながら今とまっております。  どこかに行ってもらえばいいという話でもない、お金を出せばいいという話でもない。さっき、お金を出しているとおっしゃいましたけれども、事業主に出しても本人のところには行きませんので、ここはなかなか思うようには事が進んでいないという状況があります。  大阪市立大学の島先生がずっと、実態調査といっても、我々がこのままで行っても本当のことを言ってはくれませんので、一緒に住みながら一人一人のことを聞かないと実態調査には実はならないんですね。大変にそこを苦労して今調査をしておられます。  そういうこともありますけれども、どこかの省が、例えば、厚生省が、あるいは労働省が、警察だから警察がという話で片がつく話ではないので、そういう意味合いでぜひ、先ほどもおっしゃいましたけれども、関係省庁またがっていますので、総理大臣のもとに対応を協議すると先ほど御答弁なさいましたので、そうであるならば、政府の中に体制をつくっていただいて、まずは所管をどこかにしっかりと決めていただきたい。例えば、内閣の内政審議室でやるならやる、あるいは厚生省がやれというならやるという形をきっちり決めた対応をぜひしていただきたいという思いで官房長官にお願いをし、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  172. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほど田端委員にもお答えをいたしましたように、今山本委員からそれぞれ御指摘を賜りました問題は貴重な御提言でございまして、私ども、先ほど御報告申し上げましたように、十二月にそれぞれ関係地方公共団体等にお集まりをいただき、省庁を網羅した会合をいただき、現在、横浜、大阪市を中心に調査を行っていただいております。なお、他の市においても調査を今行っていただいておるようでございますので、この結果を待ちまして、お話がございましたように、関係省庁を一体とした組織をつくりますとともに、関係地方公共団体とも一緒になりまして積極的な施策を講じられるように対応してまいりたいと存じております。
  173. 山本孝史

    山本(孝)委員 官房長官、くどいようで申しわけございませんが、その組織をつくっていただくという御答弁、ありがたく受けとめさせていただいて、事務局といいましょうか、中心は、官邸といいましょうか官房長官のところで御担当いただけるのか、あるいは何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  174. 野中広務

    ○野中国務大臣 所掌につきまして、どこにいたしますかはそれぞれ内閣で相談をいたしたいと存じますけれども、現在私の考えるところでは、内政審議室を中心にして考えたいと存じております。
  175. 山本孝史

    山本(孝)委員 どうぞよろしくお願いいたします。  官房長官、記者会見、どうぞ御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。  それでは、年金の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。  もう既に何人かの委員先生方が御質問なさっておられるので、大蔵大臣、申しわけありません、同じような質問になって恐縮なんですが、私も私なりにもう一度確認をさせていただきたい点がありますので、お話をお伺いさせていただきたいと思います。  まず、消費税の使い方について予算総則に今回お書きになっているという点についてのお考えをもう一度明らかにしていただきたいと思うのですが、消費税の国の収入が今七・三兆円で、予算総則に書いてあります経費は全部で八・八兆円というふうにたしか答弁の中でございました。したがって、丹羽先生がここで御指摘なさいましたように、福祉に充当させていただきますと宣言しているだけのものでしかないんではないかというふうに丹羽先生はおっしゃって、自民党の中にもそういうふうに良識派がおられるのかと思ったんですが、私も全く同じ受けとめ方をしたんですね。  それで、それに対して大蔵大臣の御答弁は、意味のあることだと思っておりますというふうにおっしゃいましたので、どういう点で意味があるというふうに理解したらいいのか、申しわけありませんが、ここを教えていただきたいと思います。
  176. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 予算総則にそういうことを書きましたのは、予算編成過程におきまして、そういう御主張が他の政党にもあり、私どもの中にもございましたことを反映したものですが、つまり、この消費税の税収というものは他のことには使いません、この三つの目的に使いますということをいわば行政府として国会にお約束をしてお許しを受ける、こういうことが総則に明記をしたということでありまして、確かに、おっしゃいますように、その三つのための経費は八兆八千億円でございますし、国庫で利用し得る消費税の額は七兆三千億円でございますから、今としてはその金額の方が小さい、それはそのとおりでございますが、それですら明記をしないでほかのことに使っても構わない、それはしかし、明記をいたしますというのが一つの姿勢を示す、そういう意味合いでございます。  ただ、その後、これにつきましては御質問がございましたし、今も山本委員が御質問をなさっていらっしゃるとおり、これは最終的にこういう姿でずっといくという恐らく意味合いではございませんでしょうと思います。  これが明記をしたことによっていろいろな御議論を引き起こしておるわけでございまして、将来を展望いたしますと、やはり福祉関連の経費はどんどん大きくなっていくということが必定でございましょうから、今は八兆八千億円でも、今でもそうでございますが、もっともっと大きくなっていくということ。それはしかしそれに対応しなきゃなりませんので、さあどう対応するのか。  三つのことが、年金と老人医療と介護、こう書いてございますけれども、先々それと消費税との関連をもう少しどうしていくのかという少なくとも御議論を呼んで、御議論に発展していることは私ども十分気がついておりますので、やはりこれは将来に向かってどうすべきかということを、国会としてもあるいは政府としても、少し方向づけをしていかなきゃならない問題にやがて発展するであろうという予感は持っておるわけでございます。
  177. 山本孝史

    山本(孝)委員 予算総則にお書きにならなくても、消費税の使い道と福祉との関係についてはずっと消費税導入のときから議論が続いてきているわけですよね。  今の御説明で、結局、何で意味があるのかということでのお答えとして受けとめれば、今回こう書いたことで消費税の税額と福祉に対するお金との関係がはっきりしてきて、だから消費税が上げやすい環境ができるというか、消費税の使い方に対しての議論がもっと深まるだろう、深まることなのでその意味があるということでよろしいんでしょうか。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国民の御理解の上で消費税というものは何に使われておるのかといえば、国の消費税、国の歳入は少なくともこれこれの目的に使われているんだ、そういう理解を国民がしていただけるのに役立つであろう、今はそこまででございますね。  それで、今お話を伺っていますと、そうすると、しかし福祉の費用はもっともっとふえるのであろうから、今でさえも消費税では足りないので、それは消費税の将来増徴を意味するものかと。必ずしも私はそういうことで即そういうことだと思っていませんで、そういう問題もございますから、福祉というものを決して軽率に考えておるわけではございませんけれども、そういう三つの歳出のアイテムについてもやはりいろいろ将来に向かって工夫をする余地があるのではないかという方の議論にもなっていき得る、両様であろうかと思います。
  179. 山本孝史

    山本(孝)委員 きのうのうちに私の質問の流れを全部お話ししていますので、先取りしながらお答えいただいている部分もあるんですけれども。  そうすると、今のお話で若干質問が変わりますけれども、八・八兆円のお金の中で、あれはたしか四・七兆円が基礎年金で四・一兆円が医療と介護だというふうな仕分けになると思うんですね。この三つの領域に消費税は使うとおっしゃっていて、これは両方ともに上がっていくわけですが、今後ともにこの三領域に消費税を使っていくんだ、この三領域は変えないというお考えなんでしょうか。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さあ、それは今何とも私は申し上げられないと思いますのは、この三つの問題のこれからの国の経費というものがどういうふうになっていきますか、まだこれからの問題でございますし、みんなどうも上向き、上昇であろうという予想はできますのですけれども、そういうこともございますから、その経費と財源との関係におきまして、このうちの三つ全部いつまでもこの対象にしていくことに合理的な意味があるのか、あるいはその中のどれか一つがそういうものの対象になっていくのか、これからの御議論だろうと思います。
  181. 山本孝史

    山本(孝)委員 先ほど御答弁の中で、来年どうなるかわからないというようなニュアンスが若干ありましたけれども、これまでの御答弁の中でも、ことしはああいう措置をさせていただいた、ことしは予算総則に書きましたとおっしゃっておられるので、では来年はどうされるんですかという思いがするんですが、来年はどうされるんでしょうか。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは各党のお考えを伺ったり、また、国の経済、財政の見通しにもよることでございますけれども、少なくとも、今回こういう考え政府の哲学として述べましたそのことから後退すると申しますか、普通の状況に戻りましたというようなわけにはまいらないだろう、ごく常識的に考えましてそう思っております。
  183. 山本孝史

    山本(孝)委員 そうすると、来年も予算総則に書いて、政府としては、この消費税はあそこの年金、介護、老人医療に使っていくという姿勢を引き続き示していきたいというお考えである、今の段階でですけれども、ということでしょうか。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうでございます。最低そうであろうと思っております。
  185. 山本孝史

    山本(孝)委員 そうしますと、一足飛びになりますが、そこまで姿勢をしっかりしてこられるのであれば、消費税法の本体そのものに、消費税は年金とか介護とか医療に使うんだというふうにお書きになった方がよりはっきりするのではないかと思うのですけれども、そこはいかがなんでしょうか。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのお話は、結局、消費税を目的税とするということに非常に近いことになってまいると思います。  目的税にもいろいろございまして、電源開発促進税のようにきちんと法律目的が書いてありますもの、これは税と使途とが極めて密接に関係しておりますから。あるいは揮発油税のように、法律には書いてございませんけれども、別の法律で使途が事実上決まっておる。あるいは従量税のように、法律には書いてないが、ある部分が特殊目的に使われるということが慣例的に決まっておるもの、いろいろございますが、私どもの気持ちとしましては、電源開発促進はいかにもはっきりし過ぎている例ですけれども、よほど目的が非常にはっきり結びついているということでない限りは、できるだけ目的税というものはやはりしたくないという思いがございます。  それは、仮にでございますけれども、仮に年金というものだけと結ぶといたしますと、それは税ときちんと結ばれてしまうことになりますから、一種の社会保険的な性格、給付と負担とのバランスというような思想はだんだんそこから薄れていくことになるであろうと思われます。  また、税の方にも税の方で、それだけのものをはっきり目的税にしてしまうということはどうだろうかという税そのものの考え方もございましょうから、なるべく目的税ということにはいたしたくない。本心から言えばそういうふうに思っておりますので、したがいまして、これは、こういう三つにしろ一つにしろ、そのための税金であるということは、なるべくそういうふうにいたしたくないというふうに私どもは思っております。
  187. 山本孝史

    山本(孝)委員 野田自治大臣、恐れ入ります。  先ほど私が質問しておる折に、うんうんとうなずいておられました。消費税のこの予算総則での扱い方、あるいは消費税法本体にきっちりと書き込んだ方が政府としての姿勢がもっとはっきりするのではないかという考えについての大臣の御見解をお願いいたします。
  188. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 現段階における政府としての考え方は、今大蔵大臣が御答弁をされたとおりであると思います。  ただ、せっかくのお尋ねは、むしろ、自由党から入閣しておる立場として、自由党としてもそういうことなのかということに関する御質問だろう、そういう認識の上で申し上げたいと思います。  私どもが主張しておりましたのは、消費税そのものを、その必要性、導入の時点から国民に対してどういう説明をしてきたか。これはあくまで、やはり高齢社会における社会保障の充実のためだということを一生懸命言ってきたわけで、そういう意味で、直接税の減税財源に使うためとは言っていないのです。  だけれども、今日までの経過は、何だかんだ言いながら、まず直接税減税をやって穴があいたということが消費税引き上げの原因になってみたり、そういう意味で、必ずしも高齢社会における社会保障の充実のためということとのリンケージがはっきりしていなかった。そういう点で、現段階では、御指摘のとおり、基礎年金や、あるいは介護や、あるいは老人医療、特にこの三つの分野については、いずれ多かれ少なかれ普通であればお世話になるような世界のことでありますから、そうであるなら、それらに限定をして使途を決める。  現在は、金額的にはそっちの経費の方が消費税収入よりも大きいわけです。そういう意味で、現段階では、完全に一〇〇%そっちに使われているんですよということだけははっきりするということは意味があるんじゃないか。多くの国民は、中には、やれ軍事費に回るんだとか、さまざまな主張をするところもあるわけでありまして、どこに使われているかわからない。  私は、消費税導入の時点、あるいは先般の引き上げの時点、いずれも、国民の議論の中に行革の議論と必ず連動しているということを憂慮しております。それはなぜか。どこに使われているかわからないからなんです。ですから、消費税について、納税者の感覚からいえば、何に使われているかということだけはやはり限定した方がいい、これが第一点であります。  そういう点で、今後、これから高齢社会がどんどん進んでいく、しかも少子化が伴っていく、その中でどうやって老後の不安を解消していくか、その財源をどこから調達するのか、ここの問題を目をつぶっては絶対にうまくいかないと私どもは考えてきたわけであります。これは、新進党時代、一緒に山本委員もまじめに、本当に誠意を持って一生懸命勉強した、お互いそういう間柄でありますから、十分御理解をいただいていると思います。  現下の経済情勢を考えても、社会保障、特に老後の不安を乗り越えるということが非常に最優先課題の一つである。その財源を何によって賄うのか。社会保険料ということから一体どこまでそれが充実できるのか。特に年金の世界でも、今、国民年金の世界においてもかなりの部分、未納問題がたくさんあったり、本当に保険制度としてどこまでそれが充実できるのか。基礎年金と、あるいは二階建て以上の部分とはおのずから違ったっていいのではないか。その種の議論もやってきたことは事実であります。  そういった点で、この点をより明確化していくということであれば、消費税という税目、税の名称自体も、自由党としては、社会保障税という形ではっきりと明確化した方がいいのではないかという考え方を持っておることも事実であります。したがって、使途、目的についても、税法の中にきちんと明示するということがあった方がかえっていいのではないかというのが自由党の考え方であります。  しかし、この点については必ずしも両党の間で合意に至っていない。そういう点で、現段階で予算総則においてその使途について限定をしたということは、自由党としては一歩前進だ。そして、その問題意識についてはお互い共有をしながら、まだ先のことについて、今すぐの結論は出ておりませんが、引き続いて、社会保障、特に老後の不安解消のための財源問題あるいは仕組み、こういったことについては両党間でさらに誠意を持って協議を重ねていきましょう、こういうことになっておるわけであります。
  189. 山本孝史

    山本(孝)委員 そこは協議の外から拝見をさせていただいて、どの程度御主張が通っていくのかというのを見させていただきたいというふうに思います。  大蔵大臣、先ほどおっしゃいました御答弁の中で、基礎年金の部分に税をどんどん入れていくと、税方式になると社会保険のよさがなくなるというようなお話もされましたけれども、これは後で議論になりますが、要は、国民に信頼される一番安定的な制度をどうやってつくるか、その財源が保険がいいのか、税がいいのかという議論であって、そこは、保険制度がまずありきで、そこで税の負担が高くなってくると制度が崩れてしまうということではないというふうに思いますね。  今回の予算総則にお書きになったことで、これは公明党の坂口先生も御質問になっておられて、私も御答弁が余り、もう一つはっきりしないなと思うので、ここは御確約をいただきたいと思うのですが、この予算総則に書いてあるこの表現でもって、消費税は福祉のみに使いますよということははっきり読み取れる、そういうことを言っているのであって、福祉には消費税だけを充てるんですよ、福祉は消費税だけで賄っていくんですよということを言っている意味ではないということを御確約いただきたいと思います。
  190. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、予算面をごらんくださいましても、八兆八千億円の需要に対して七兆三千億円しかございませんのですから、もうおっしゃるとおりでございます。
  191. 山本孝史

    山本(孝)委員 そういうふうにわかり切った話を申し上げたのは、先ほど、三項目が外れることもあり得るというような御発言もありましたので、今、確かに、八兆八千億、七兆三千億ですね。こっちが多いわけですから、お金に色はついていないですから、これが本当にどこへ行っているかという話はわからない。金目の話でいけば、こっちが多いから全部当たっているというふうには理解はできる。  ただ、この中から、場合によっては、将来の動き方によってはどこかの項目が外れるということもあり得るというふうにさっきおっしゃったものですから、すなわち、基礎年金だけに限定するという考え方も出てくるでしょうし、従来ともに、老人医療も介護もずっと、やはり三項目ともに賄っていくんだという考え方もありますから、そうすると、ここがどんどん大きくなってくる。そういう意味合いで、こっちを上げていける環境ができるのが今回の予算総則に書いた意味だというのが御答弁だと思いますので、そうであるならば、そこのところの関係が、やはり今度上げるときの議論として非常に大きくなってきますので、そういう意味で御確認をさせていただいているという意味です。私の理解が違っているのであれば御答弁ください。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そんなに深慮遠謀で申し上げたのではございません。
  193. 山本孝史

    山本(孝)委員 いや、国民は常にだまされ続けてきていると思っているものですから、特に税の問題については、大変問題ですから。  予算総則にことしはお書きになった、来年以降もお書きになるということであれば、私の質問の中に、これは予算総則からひょっとしたら消えることもあるんですか、消えるというのはいつのことですかというふうに思うので、ずっと今の自民党政治が続いていく中では予算総則は残るのかなと思ったりもするものですから、いろいろと手をかえ品をかえ質問してみないといけないというふうに思っておるわけであります。  でも、野田自治大臣がおっしゃったように、やはり消費税法の中にきっちりと書き込みをした方がより関係が明確になって、しかも国民が何に使っているかがわかってという、大蔵大臣の先ほどの主張に私はより沿ってくるというふうに思いますので、その沿うということがわかりながら書けない、書きたくないんだというお気持ちがいまいち私にも理解しづらいという思いなんですが、お書きになるつもりはないと。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 目的税というようなことにはなるべくしたくないと私自身は思っております。そうでない議論もございましょうと思います。
  195. 山本孝史

    山本(孝)委員 時間がありますので、次の質問に進ませていただきたい。そこはぜひ御検討いただきたいというふうに思います。  基礎年金の二分の一への引き上げと、保険料の凍結という問題について御質問させていただきたいと思います。  これは、両方が今回は自自合意の中でセットにされているわけでありますが、まず厚生大臣にお伺いをしたいのですが、この自自合意である基礎年金の国庫負担率二分の一への引き上げということについて、今回の改正法の中にどういうふうにお書きになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  196. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御承知のように、年金改正につきましては、いろいろなプロセスを経まして、昨年の十二月の初旬に、自由民主党の年金制度調査会におきまして、年金制度改革についての大枠の方針を協議させていただきました。  その中で、基礎年金の国庫負担割合につきましては、今直ちにはできませんが、二分の一に中期的に上げていく。それから、十一年度に予定されていた年金保険料の引き上げにつきましては、景気の状況にかんがみまして凍結をする。ことしの十月から上げる分は凍結します。国民年金も、四月から上げる分は、これは法案を出して凍結します。  それから、二〇〇四年が次の財政再計算期でございますが、それまでになるべく早くそういう措置がとられることが私は望ましいと考えておりますが、それは、今申しましたようないろいろの財源計算との関係がございまして、なかなか直ちにはできないということがございますので、法律にどういうふうに書くかというお尋ねでもございますが、ある程度そういった姿は法律の中に記述すべきものだと私も思っております。  それから、あと制度としては、厚生省の方から出しました、給付水準は大体年収の六〇%くらいを目標にするとか、あるいは比例部分の支給開始年齢は二〇一三年から二〇二五年にかけてこれを実施したいとか、あるいは、物価スライドにつきましても、これは保障いたしますから、既裁定年金者については物価スライドでやる、これからの人たちは賃金スライドも入れていきますというような改革案を今出しております。  それから、六十五歳から六十九歳までの在職老齢年金制度をつくりたいというようなことどもを私ども提案をいたし、党の間では大体了承を得ておりますので、これらに基づきまして年金法の改正法案をまとめて、これは予算非関連でございますから、三月の中旬、所定の時期までには提出をしたい、こう考えております。
  197. 山本孝史

    山本(孝)委員 るる御説明していただいたんですが、私の質問をもう一遍繰り返しますと、国庫負担率の二分の一についての問題です。国庫負担二分の一への引き上げというものを、本法の中で、今三分の一と書いてある部分を二分の一というふうに書き直すのか、あるいは、前回改正のように附則で、次期再計算までの間に環境が整ったら二分の一に上げますというふうに書くのか、どっちの方向をとられますかという意味です。
  198. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 法形式につきましては、今直ちにどちらの方法がいいか、まだ断定する時期ではないように私は思いますが、いずれにしても、そのことは法律上ある程度明らかにしないといけないものだ、こう思っております。
  199. 山本孝史

    山本(孝)委員 本法で直す方が附則に書くより法律上明らかになるので、どちらのお考えなのかというのが質問なんですよ。今はお答えになれないんですか。
  200. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今、年金法の実体を合意しておりまして、それに基づく法制局との調整も並行して行っておりますから、全体としてそういうものが固まってきませんと、法形式については、私から今の立場でどちらがいいということは申し上げられません。
  201. 山本孝史

    山本(孝)委員 これは法形式という話じゃなくて、一番大きな改正のところをどういうふうに法に書いて自分たちは臨んでいくのかということを聞いているわけで、しかも三月の頭にはもう出てくるわけですから、今、こんな基本的なところが大臣と事務方の間でお話し合いはないんですか。
  202. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 実体的には、今申しましたように、三分の一を中期的な目標として二分の一にすることはもう申し上げたとおりでございまして、この点はいささかも変わりございません。  しかし、例えば国民年金の法律平成六年に改正されたときには、たしか本文の方に、いろいろの諸事情を勘案して引き上げを検討すべきであるというような趣旨のことが書かれておったと存じます。そのときは、三分の一から二分の一にするということは附帯決議で措置されておりますが、今回は附帯決議というわけにまいりませんので、私としては、やはりそれは明確にすべき話だということを今の段階では申し上げ、それが附則がいいか本則でいいのか、附則であるから別にそんな軽視するとかそういうことじゃございませんけれども、今、法形式の点はもう少し、しばらくお任せいただきたいと思うのです。
  203. 山本孝史

    山本(孝)委員 年金改正にかかわる一番大きなところをこの段階でもまだお答えになれないということは、かなり改革が、改革になるのか、あるいはかえって非常に国民の不信を招くという気もするので、そこはできるだけ早く形を見せていただきたい。  では、財政再計算について、質問通告がないかもしれませんが、今回、財政再計算するわけですね。この自自合意のもとでいくと、平成十六年までの間にもう一遍、いわば中間的な財政再計算をするわけですね。そのときにやることは、凍結している保険料を解除して、将来の最終保険料に向かって何%ずつ上げていくかというような姿を書くという部分と、国庫負担の二分の一が入ることで姿が変わる部分がありますね。そのいわゆる凍結解除されるときの中間的な財政再計算の折に、給付水準を見直すような改革案は盛り込まれるのでしょうか、盛り込むお気持ちなんでしょうか。
  204. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本的には今委員が仰せられた全般のものだと私どもは考えておりまして、給付については格段の事情、今から予測はできませんけれども、今我々が設計をしておるものを維持していくということになろうかと思います。  ただし、凍結期間が非常に長うございますと、次の計算期へのずれ込みといいますか、そういうものが、保険料を上げざるを得なくなりますね。そういう問題もありまして、余り上げられるのかどうか、そういう検討は必要になろうかと思います。  その限りで給付の問題も議論対象にはなるかなと思いますが、今の段階では、基本的には給付はそういじらないで、その中間的な見直しのときは、今申されたポイントだけについてやっていくべきものかなというように考えております。
  205. 山本孝史

    山本(孝)委員 そういう考え方でないと、今回の給付抑制というか、給付水準の見直し策がかなり場当たり的なものになってしまうので、全体の構想を考える中で、国庫負担の部分だけをどうするかというのが中間的な財政再計算としてあるだろうという理解を私も今の答弁でさせていただきたいのですね。  問題は、今大臣がお触れになりましたように、凍結期間の問題ですね。何年間これを凍結するのかというところが、決まっているのは平成十六年までの間に凍結が解除されるというのが自自合意の中ではありますので、十六年という次期再計算、この五年先のところまでには、凍結解除と国庫負担二分の一の話はここでは読めるんですけれども、じゃ、どういう状況になったら凍結解除をしていいという判断ができるのかというところを、まずは大蔵大臣、どういう状況になったらこれは凍結を解除していいという状況と判断できるのでしょうか。
  206. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこのところはよく厚生大臣と御相談をしなければならないところだと思います。財政だけの都合を言うわけにもいきませんでしょうし、しかし、相当大きな金額でございますから、それは、やはり最後には総理ですけれども、厚生大臣と私とでいろいろ御相談しなきゃならぬのじゃないかと思っています。
  207. 山本孝史

    山本(孝)委員 答弁をはぐらかされてしまいましたので、じゃ、まず厚生大臣に聞きます。  いつの段階になったら凍結が解除できるかというその判断材料は、何をもってして判断されるおつもりなんでしょうか。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 凍結と二分の一への引き上げとが、いわば、言葉は適当かどうかわかりませんが、リンクをされて決定を見ております。したがって、そのためには、二分の一にするという前提が満たされませんと、凍結がなかなか解除できないという実態がございます。  私としては、早期になるべくそれが可能な条件ができることを期待いたしておるわけですが、一般的な条件としては、例えば経済、今マイナスでございますけれども、適正な成長率が持てるような状況になるとか、あるいは一般に言われているのは行革でありますが、行革財源だけではなかなか私はこれは賄い切れないと思います。  それから、継続的にこれが続いてまいりますから、しかも、ことしの、平成十一年の計算で、二兆二千億がだんだんふえてまいりますから、それは恒常的な財源を充てないといけないという問題もございます。  したがって、そういった万般の問題を頭に置きながら、なるべく早期に実現できるように努力していかなければいかぬと思いますが、これは厚生省だけの努力でもどうにもならない点もございますので、政府全体として、そういうお約束を申し上げる以上は、そういう方向で努力すべきものだと思っています。
  209. 山本孝史

    山本(孝)委員 大蔵大臣にもう一度お伺いします。  この間の大蔵省がお出しになっている中期財政計画で、この五年間、毎年三十兆円程度の公債を発行し続けなければいけないという見通しをお示しになっておられます。  それで、ことしの経済成長率を幾らに見るか。政府は〇・五とおっしゃっていますが、民間機関はほとんどがマイナスを予測している。三十兆円ずつ毎年出し続けるということの大量発行がこの金利の上昇につながってきてという話は、私が説明するまでもない状況がどうも見通せるではないか。  そうすると、経済成長率、先ほど経済が成長してきたらというふうに厚生大臣おっしゃいましたけれども、この五年間の間に、そういうふうに経済の成長が回復をして、この国庫負担の二分の一への引き上げ、あるいは保険料凍結解除というようなことができる状況になり得るものだろうか、そこの見通しはどういうふうに大蔵大臣はお持ちでしょうか。
  210. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中期財政計画の資料にちょっとお触れになられましたが、あれは、前にも申し上げましたとおり、昭和五十年ごろから、当委員会に、その当時、御要請がありまして提出いたしましたが、こういう経済が激変いたしますと、平成十年、十一年の予算をベースにして、十五年までプロジェクションをする、そうしますと、一般歳出はゼロでも国債はどんどんふえ続けるというのは、これはもう一種のプロジェクションという機械的な作業で、政策意思とか努力とかいうことが入りませんので、今、余り意味のある資料だというふうには私ども考えずにおりますけれども、しかし、長年の慣例でございますので、ごらんをいただいておるわけです。  それはそれといたしまして、御質問の本体は、あと五年ぐらいするとそういうことができるようになるかということでございましたが、確とは申し上げられませんが、私どもは、今年は、仮に十一年度は〇・五%の成長があるといたしまして、その後、やはり年間二%ぐらいな成長のコンスタントに見込めるような経済が来ませんと、いろいろな財政再建とか将来の本格的な計画ができないと思っておりますが、その時期が五年ほど先かなとおっしゃれば、さあ五年まで要らぬのじゃないかな、少なくとも、それだけの努力を私どもはしなきゃならぬのだろうと思っております。
  211. 山本孝史

    山本(孝)委員 五年はかからないように努力しますという御発言であって、ただ、先ほど来、二%程度というふうにおっしゃっておられるので、その経済成長率を何%に見るかということで、今、凍結解除の時期をどう判断するかということとリンクしていますけれども、年金の将来像を考えるときに、経済成長率を幾らと見ていくかというのは非常に大きな問題なんですよね。  そういう意味で、将来をどういうふうに展望しておられるのかということが年金の将来像には大きくかかわってくる。今回、それは入り口の部分で、凍結解除と国庫負担二分の一引き上げという問題とが、どうも入り口のところになっている。  厚生大臣、かねてからおっしゃっているように、二年間ぐらいの凍結であれば取り戻しはできるかもしれないけれども、ことしはもうそういう意味ではほとんどだめですから、そうすると、来年、戻るか戻らないか。そうすると、とても厳しいんじゃないか。そうすると、五年ぐらい凍結せざるを得ないんではないかというぐらいの覚悟はお持ちなんですか。
  212. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私は、やはり五年では長過ぎるので、そうなりますと、五年間の据え置き分が、結局、面積計算では後ほどにここを加算、プラスアルファしていきませんといけませんから、それだけ保険料が我々の設計よりも多くなるということになります、その時点以降。  したがって、私どもとしては、まあせいぜい、今大蔵大臣のおっしゃられたように、悪くても三年、二、三年のうちには何とかめどをつけていかなくちゃいけないかなと。そうしないと、保険料の後ろ倒しになりますから、それがたえられないものになるような長い期間であっては、今つくっている設計自体が成り立たないということになりますので、私どもとしては、なるべく早期に回復できることを期待いたしております。
  213. 山本孝史

    山本(孝)委員 今までの御答弁を総合しますと、この五年間では長過ぎる、それまでの間に二%ぐらいに戻るかもしれないとおっしゃっているけれども、そうすると、先ほど厚生大臣は、行革財源でこれをひねり出すのは難しいということであれば、考えられる手だては二つ。消費税を上げるか、あるいは新たに公債を発行して、二分の一をとにかく上げるという形をとるかということになるかと思うんですが、大蔵大臣、そこはどうなんでしょう。
  214. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ですから、日本経済が正常な軌道に乗ったと判断をされる時期、五年かとおっしゃるから、いや、五年はなかなか遠いことでと申し上げていますので、その間にこの問題についての解決もできるような経済運営にしていきたいと思っておるわけです。
  215. 山本孝史

    山本(孝)委員 ここは、先ほど冒頭で申し上げましたように、本則にどう書くのか。本則に二分の一と書けば、先ほどの消費税の話と同じで、しっかりとした自分たちの姿勢が見えるわけで、それを附則の中に、いつまでにやりますよ、努力しますよ、検討しますよという形で書くと、そこがまた不信を生んでしまう。五年先へ延びてしまう。五年間だけ保険料は凍結される。将来、またそこで保険料は先の人が負担しなければいけなくなる。仕方がないから、給付水準は次の中間的な財政再計算でもまた下げるという話になって、非常に悪い回転にしかならなくなるので、ここはしっかりどこかで、やはりやるときにはやるということで考えていただかないと、いつまでたったらどうなるのかというのが、先送りではないのですけれども、結局改革先送りと同じ姿になってしまうという思いがしますので、そこは一つの判断というか、踏ん切りをつけていただきたいというふうに思うのですね。  そういう意味で、厚生大臣、どこかで踏ん切りがつけられるという話、あるいはつけるというお考えなのか、あるいは、このままずっと経済が回復しないかなと思いながら、待ちながら毎年過ごしていくことになるのか。そこのお考えはどうですか。
  216. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 なかなか難しい御質問でございますけれども、事実は、例えば税制の構造改革その他も当然これからの中では考え直していかなければならないことは、ことしの恒久的減税というようなものから見ても明らかでございます。そして、直間比率の問題その他を含めて、やはりそういう世界も包含をして、景気の動向を中心にしながらも全体として考えていくということで、今、一義的にどこに財源を求めるかというのは決められませんので、赤字財政でやるというのは、私は個人としては反対です。  したがって、そこの悩みはあるわけですね。二分の一にはしたい、しかし、直ちにそれに対応する恒久的な、パーマネントな財源がなかなか確保できないというジレンマの中で、私どもは今そういう御答弁を申し上げているわけでございますが、これは、国政全般の中におけるいろいろな施策の組み合わせの中で年金問題というのは位置づけないといけないと思いますので、そういった総合的な視点で、ひとつ今後検討していきたいと思っています。
  217. 山本孝史

    山本(孝)委員 厚生大臣、総理が本会議での横路委員の質問に対する御答弁の中で、大変厳しい財政状況にかんがみ、今回の年金改正で国庫負担率の引き上げは困難である、だから今回は見送りました、ただ、新たな財源確保のための具体的方法と一体として検討する必要があって、それは中期的な検討課題だという御答弁がありました。  まあ、お役所の皆さんの中期的というのは大体五年程度のことを中期的というのだそうで、先ほど、こんな当てにならないもの、ずっと出し続けているから今回も出しましたとおっしゃった中期財政試算も五年程度のものと書いてありますので、中期というのは五年。大蔵大臣、ぜひ信頼に値するような資料を出していただきたいというふうに思いますけれども、五年程度のところで、新たな財源確保のための具体的方法と一体としてという総理の御答弁がやはりひっかかりがあるわけですね。  今、公債の増発でそこを埋めるというのはとりたくない手だてである、かといって消費税の引き上げというのは、なかなかそういう環境には、多分経済的な環境がないのだろうということになると、袋小路にはまり込んでしまう。だけれども、そこはやはり行財政改革をしっかりやって、むだな経費がいっぱいあるはずなんで、本来的なしっかりとした制度をつくれる方向に、そこはお金の使い方をしていった方がいいのではないか。  お金に色はついていませんので、さっきの八・八兆と七・三兆の話じゃありませんけれども、ああいう話の中でも、ここはしっかりとした取り組みをしていただいて、五年以内に国庫負担を二分の一に引き上げる。できるだけ早くやりませんと後へ負担が回っていきますので、その形はとっていただきたいというふうに思います。  それで、先の質問に行きたいと思いますけれども、これも本当は総括質問で総理に直接お伺いすればいいのですけれども、そういうわけにもいきませんので、多少回りくどい質問になって恐縮なんですけれども、総理の施政方針演説の中に、セーフティーネットとしての役割を担う年金や医療、介護等の社会保障制度という表現がございました。それで、セーフティーネットという言葉をどういう意味合いでお使いになっているのかなと。  御本人に直接お伺いすると一番早いのですけれども、そこは、内閣全体としてこの文章をおつくりになって、総理が代表して読んでおられるのだという認識をして、セーフティーネットとは一体どういう意味合いで小渕内閣としてはお使いになっておられるのか、申しわけありません、厚生大臣にお伺いをしたいと思います。
  218. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 社会保障の役割につきましては、言うまでもないことでございますが、基本的には、病気とか失業とか老後の生活不安など個人の力だけでは対応し切れない難しい事態に対しまして、社会全体で支援することによって国民生活の安定を図る、そして国民に安心を与える、そういうシステムの構築、そういったものを含めてセーフティーネットと言っておると私は理解しております。  したがって、少子高齢化が進む中で、そういう意味のセーフティーネットをつくるという意味で、社会保障は極めて重要な分野を占めるというように考えておりまして、安定した社会保障制度をつくることが総理のおっしゃるセーフティーネットの確立だというように理解しております。
  219. 山本孝史

    山本(孝)委員 安定した社会保障制度をつくる、安定した社会保障制度がセーフティーネットなんだというお話だと思うのですけれども、別に言葉の意味をどうこうと言っているわけじゃないのですが、セーフティーネットというのは、普通、私が思っているのは、サーカスの空中ぶらんこがあって、空中ぶらんこでこう飛んでおられる、その下にネットが張ってあります。あれをセーフティーネットというふうに私は理解をしているのですね。すなわち、上で落ちても床まで落ちないで、きっちりとしたネットで支えられて、そこで命は救われるというのがセーフティーネットという意味合いじゃないのかなというふうに思うのです。そういう意味で、しっかりとしたそういうセーフティーネットがそこにできるのか、それをつくっているのか、つくろうとしているのかというところが一番の問題なんですね。  年金も医療も介護もそういう意味でセーフティーネットの役割を担っているんだ、それはおっしゃるとおりだと思う。では、それが本当にそうなのかという問題なんですよ。何か一たん事が起きたときにしっかりとした体制で今支えてくれるのかというところですね。とりわけ、医療は今医療改革をしておりますし、介護は今度新しい保険制度をつくられたので、それはそういうお考えなのかもしれませんが、年金というものが今本当のセーフティーネットになっていないから、国民が非常に不安に思っているのじゃないでしょうか。  将来、自分の、これから先長生きをしていくところのリスクをきっちりとこの年金が守ってくれないと、セーフティーネットじゃない。総理はセーフティーネットだとおっしゃっているのだけれども、国民は実はそれはセーフティーネットじゃないんだと思っているところに一番の問題があるのじゃありませんか。
  220. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 例えば、景気対策としていろいろ減税をやっても消費が拡大しないのは、それは失業の問題等が最大の原因だと思いますが、同時に、こういう社会保障システム、例えば年金が、自分たちが、例えば若い人たちは六十歳になったらもらえるのか、あるいは今、既裁定年金者で年金を受給しておられる方々はこの年金はカットされるのではないかという不安感があることも事実でございます。  私どもは、そういったことを頭に置きながら、やはり安定したものにする。つまり、今回の年金制度改正におきましても、具体的に申し上げますと二〇二五年までを一応の財政再建の計算の目標年次といたしまして、その間における給付と保険負担とのバランスをいかにとっていくかという基本的な考え方をとっておりますので、これは短期の一年や二年のものではございません。したがって、そういったことを中心に改革を今考えておるわけでありまして、まさにその不安感を除くために努力をしていると言って過言でないと思います。  そして、若い人たちは、例えば年金の算定に当たって、物価スライドだけで賃金スライドを廃止するのはとても不安じゃないかということを言われるかもしれませんが、今の現職の若い人たちの、五年ごとの再計算を事実上やっていくわけですが、これはそのまま維持いたしますが、既裁定年金者ですね、つまり退職時以降は物価スライドだけで実質価値を保障する。しかし、その場合でも、賃金と物価の関係は、これはどちらが高くどちらが低いかというのは、過去の歴史を見ても必ずしも一義的に言えません。  しかし、物価スライドでいった場合に、賃金スライドまで加味してやった計算値と著しく格差が出るような場合は修正をすることも、私ども、今の制度で考えておりますし、そういう意味では、完全な賃金スライド、全面的にやめているものではないわけでありますが、そういった理解がどうもちょっと国民の間に不足しているのかな。まあ、我々、PR不足もございますし、まだ全体像をお示ししてございませんのでそんなことがあるのかなというような感じがいたしておりますが、いずれにしても、非常に長期計算で、我々は、安心、安定できる制度をとにかくつくることで精いっぱい努力したい。  医療についても同様の趣旨でございます。  医療は、今の世代と古い世代との世代間の問題というよりも、世代内で医療を維持していこうという国民皆医療制度でございまして、これも、しかし、そういう安定した制度をつくるということに私どもは最大の目的がありまして、今医療改革に取り組ませていただいておるところでございます。
  221. 山本孝史

    山本(孝)委員 しっかりとしたセーフティーネットをつくるときに、先ほども私、若干先取りして御指摘申し上げましたように、それが社会保険方式でやるのがいいのかあるいは税方式でやるのがいいのかというのは、やはり、もう一度国民的議論がここは必要だと思うんですね。  社会保険方式というときに、その社会ということの中には、公費が入っているから社会保険だというような御答弁をさっき石毛委員のところでしておられましたけれども、そうすると、残った保険制度という、保険が本当に保険になっているのかというところは、これは保険になっていないんですね。民間保険と違うのは社会保険だ、それは公費が入っているから民間保険と違うんだと言われても、じゃ、公費の部分、残った保険の部分はきっちりとした保険の体制になっているのかといえば、これは保険の体制になっていないというところが一番問題なんじゃないんでしょうか。  そういう認識は、厚生大臣、お持ちなんですか。
  222. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 民間保険はコマーシャルベース で、いわば収支を、保険料と給付の関係はバランスとれませんと営業的に成り立ちませんから、そういう商品の売り出しになると思いますが、国家が保障する所得保障方式でございますから、それは民間保険とはまた違った視点で構築して構わないし、また、それが国家の所得保障のあり方だと思うんですね。  そういう意味で、今、社会保険方式と言われるのは、一定の保険料もいただく、それが余り過度にならないようにしたい。給付もある水準は、国際水準並みくらいは維持したい。しかし、それで十分賄うことができればいいんですが、どうしてもそこのアンバランスが出ます。それを公的負担によって補完して、そして給付水準もある水準を維持していこう、保険料もそんなに上げないでいこうという役割を公的な負担面が担っているんじゃないかなというように思っておるところでございまして、私どもは、今のこの社会保険方式と言われる年金制度、これは、すぐれて国民皆年金という決定をしたのは、一種の国民の宝みたいに私は思っているんです。それを崩壊させるということ、これは非常に問題が多いんです。  例えば、基礎年金だけを全額税方式にして、報酬比例部分は全く自由化して、自主的に任せた方がいいという意見が結構戦略会議等でも提案されておりますし、私もそれはよく承知していますが、これはやはり、いわゆる国の所得保障のあり方としてセーフティーネットに非常に欠けるおそれがあるというように思います。したがって、今の基礎年金と報酬比例部分の組み合わせは、改善すべき点が全くないわけではございませんから今検討しておりますけれども、しかし、基本的には維持すべき制度だと私は思っています。  その上に、確定拠出とかいろいろな問題が出てまいりますから、そういったのは企業年金あるいは税制適格年金等で、今度また確定拠出型年金がつくられればより重層陣地になるということはございますが、それをもって報酬比例部分にかえることは私はできないと思うんです。  そんな意味で、今の保険制度を私は中心に据えて構築していかなければならぬ、こう信じております。
  223. 山本孝史

    山本(孝)委員 私ども、後半の部分、大臣考えが一緒で、二階の部分を民営化したらという考え方は我々も持っていないんですね。そこは、そういう意味で、公的に関与する制度を残しておかなければいけないというのは、これは全くお話は一緒なんです。  問題は基礎年金の部分ですね。税を入れる基礎年金の部分をどう今後ともに考えていくのかというときに、そこをセーフティーネットとして考えるならば、しっかりとした制度にここをした方がいいのではないかという考え方ですね。  その財源として保険がいいのか税がいいのかという議論、それで、先ほど来から、保険の方がいい。だから、二階部分が保険の方がいいというのは、報酬比例ですし、それはその形がいいんだろう。基礎年金の今の部分は、一号は定額でもう取っているわけですし、そういう意味でいけば、きっちりとした体制に、ここは横に切り分けちゃった方がよりわかりやすいでしょうし、その財源としては税の方がいいのではないか。その方が本来的なセーフティーネットとしての役割はしっかり保てるんじゃないかと思うわけです。  保険方式でやったときに、例えば今だってそうですけれども、免除されている人たちは最終的に三分の一しかもらえませんね。免除期間は三分の一しかもらえないということは、現役世代のときに大変不遇な目に遭った人たちが、結局のところ、年をとってもその状態がずっと続いてしまう。そうすると、あなたは一生不遇ですねという話になってしまう。それが本当に制度としていいのか、セーフティーネットという場合にいいのか。  老後の生活の自分の基準を考えるときに、国の制度としては最低限これだけのものは保障してくれるんですという部分のこれだけの部分が随分人によって動くわけですね。そこをしっかりした方が実はセーフティーネットという意味合いではいいわけであって、そのための方策をどう考えるのかというのが今回の一番の議論ですね。  そのときに、どこまでいっても負担と給付の関係が明確なとおっしゃるけれども、それは報酬比例の部分としてはそれでいいのかもしれない。しかし、基礎年金の部分までその話をすることが本当にセーフティーネットとして妥当なのかという考え方はもう一度考えていただいた方がいいのではないでしょうか。  それと同時に、年金の生活生活保護の内容が同じようなものになってしまうので税方式はだめだとおっしゃいますけれども、しかし、国民として最低限ここまでは保障されているんですよと、当然生活保護は年金は全部そこは差っ引かれているわけですから、そういう意味において、国のナショナルミニマムとしてここまで保障する、そういうセーフティーネットを国は用意しているという意味合いでセーフティーネットということが本当は生きてくると思うわけで、税方式ということについてもう少し議論しなければいけませんけれども、税方式ということをもう少し真剣に考えてみるというお考えはないんですか。  どうも紋切り型で、社会保険制度がいいんだ、いいんだということで、頭から否定されているような気がするので、大臣としてそこはどうお考えになりますか。
  224. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 従来御説明としては、社会保険のいい点が失われていくということと、それからもう一つは、税金に一〇〇%依存する所得保障ということになりますれば、受給者の方々が、所得、資産、そういうものがどんなにあろうとなかろうと、それだけは保障するということになりますから、今、それと似た、全額税でやっている負担の方式は生活保護なんですね。これは四人世帯で、東京の場合十四、五万というのを保障しております。これは全く税で全額保障しているわけですね。  ところが、全額税でやるということになりますれば、例えば我々国会議員は歳費をいただいておるけれども、年齢が来たら最低限のものだけは給付して公正であろうかという疑問はどうしても残りますね。その場合は、資力制限をかけたりしていきますと、行き着くところは生活保護と同じようなレベルになっていくと思うんですね。  かなり税を取って投入するという合意ができればいいですけれども、そうなかなか今の財政状況ではいかないと思うんですね。そうなると、やはり全額税方式というのは、どうしてもちょっと私どもとしては、それは当然御提案がいろいろございますから検討の対象にはしてはおりますが、現実の問題としては極めて難しい、困難なことだというように理解しております。
  225. 山本孝史

    山本(孝)委員 現実問題難しいからということで議論対象から外すという話はまずないんですね。それは本当に議論をして、国民に選択する選択肢として出すべきであって、はなからそこは吹っ飛ばしてしまうのはないんだ。  高額所得の人がもらうのはどうだとおっしゃるけれども、それは所得に対する課税をどうするかということを考えればいいわけであって、むしろ今の年金控除のあり方だとか、もう少し総合的な課税、それこそ早く納番制を入れてしっかりとした総合的な課税をすれば、その問題は出てこないんですね。だってそうでしょう。だから、高額所得の人に出すのはどうだと言われたって、それは高額所得の人からきっちりと取り戻せばいいことであって、そこの課税の仕方あるいは控除のあり方が問題なのであって、そこをちゃんと見直せばいい。そこを見直さないで、そういう議論だけするから話がおかしくなる。  だから、そういうふうにきっちりと、将来、自分はこれから先何があるかわからない、保険料も払えない状況も出るかもしれない、しかし、六十五になれば、六十になればこれだけの保障はされるんだという姿を見せる方が、よっぽど将来に対しては安心感があって、しかもそこは絶対に保障してもらえる。  今、一番年金に対しての不安があるのは、一体幾らもらえるかわからない、五年に一遍ずつころころ変わるじゃないか、今回の場合はまたここ二、三年のうちに変わるわ、その次また変わるわでしょう。それがだめなんで、将来幾らもらえるんですということをしっかり見せるという中で、少なくとも国民共通、全員の基礎年金は、例えば六万五千円なら六万五千円の水準を全員に保障する。そこから先の話は、皆さん、私的年金の世界も考えてください。  それは後でまた大蔵大臣に聞きたいと思いますけれども、個人年金の部分なんかも、もっと控除の枠を広げて、もっと自分でやれるようにしなさいという形にした方が、よっぽど制度としてはセーフティーネットに近いんじゃありませんか。そういう考えになりませんか。
  226. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 もう一つちょっと申し上げたい点は、国民年金の対象者は二千万人と言われておりますね。そのうちの約六百万人が、免除者が約百五十万くらい、それから加入しているけれども未納の人、加入していない人、合わせて三百万と言われてもいますね。そういうものが存在するからやはり税方式がいいんだという主張の根拠がございます。その点だけについて言えば、それは徴収上の問題であり、また設計上の問題でもあると思うのですね。  国民年金のそういった方々も現実にあるとすれば、今、免除者は三分の一の国庫補助部分だけ計算期間に入れるという扱いをしておりますが、場合によりましては、私どもの提案しておりますのは、保険料を半分くらい納めていただいて三分の二くらいの給付ができるような、そういう階層をつくって、強制徴収がなかなかできないですから、現実に対応したらいかがかという議論もしておるわけです。  したがって、そういう欠落者があるから税の方がいいんだという主張については、ちょっと次元を異にしているように私は思いますので、その点だけはちょっと申し添えさせていただきます。  なお、委員の御指摘になられた視点は、考え方としてそういう考え方もあることも承知しておりますし、十分我々は検討した上でございまして、ただ、先ほど申しましたように、現実的に考えてもなかなか対応し切れないということを申し上げたわけでございます。
  227. 山本孝史

    山本(孝)委員 未納、未加入の話は別にして、今の国民年金の二分の一の保険料制度をつくるという話は、これは国みずからセーフティーネットの水準を下げる、下げる新たな制度をつくると言っているのと同じじゃありませんか。
  228. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 それは、未加入あるいは加入していても納めない人たちを頭に描いておりますから、それが取れないままで制度がむしばまれていくよりも、きちっとそこに手当てした方がいいという考え方でございまして、別に水準を下げるつもりはありません。
  229. 山本孝史

    山本(孝)委員 では、結果的に、二つの制度をつくって、安いものをつくっているという話になりますよと言っているわけです。  今、国民年金の保険料を集めるために八・何%の徴収費をかけているわけですよ。百円集めるのに十円近いお金をかけてやっておられる。全員から取れば問題ないでしょうとおっしゃる。だったら、それ、二十円かけても三十円かけてもやるんですか。そういう話をしているときじゃなくて、きっちりとした制度をつくる方が先で、しかも、払えない人がいるんだったら、低水準のもう一つの準国民年金をつくってそれでやったらいいじゃないかというのは、国みずからセーフティーネットの水準を下げているという話じゃないですか。そういう話だったら、セーフティーネットというのは何なんですか、国はセーフティーネットというのを本当に用意するんですか、用意する気ないですねという話ですよ。
  230. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと誤解があるといけませんけれども、私どもはそういう二段構えでやるつもりはないんですよ。要するに、欠落している部分を、これは強制徴収の法律の適用もできますし、コストがかかりますから、実際は過去にちょっとやったことはありますが、ほとんど強制徴収をやって保険料収入を得られるというようなことはございません。そういう現実に着目して、そういうところだけに着目した手当て制度を考えてはいかがかということを申し上げているのであって、年金制度、基礎年金全体にそういう選択を、全部二階建てにして、どちらを選択してもいいよということを考えているわけではないことは御承知願いたいと思います。それは誤解になると思います。
  231. 山本孝史

    山本(孝)委員 それだったら、今の制度を守るように努力すればいいんですよ、そんなものは。そんな制度を投入するのがおかしい、そこでみずから逃げているんだから。国民にこんな、もっと低い水準で、とにかく入ったらいいですよという、それは国のメンツだけの話じゃないですか。徴収率が上がっていますよというだけのことを言うために国民のセーフティーネットを下げるという話は、それは厚生省みずからセーフティーネットを壊しているという話になりますよ。だから、そこはもう一遍冷静に考えていただきたい、制度を今度提案されるのかもしれませんけれども。  それと、国庫負担の二分の一の話は、これは国民年金というか、今基礎年金のところでずっと続いていますけれども、介護保険が公費二分の一負担ですよね。どうも皆さん方は、税の負担が高くなると、それは社会保険から外れてくるし、制度としてよくないから、せいぜい上限が今度も二分の一までなんだということでおっしゃっているわけです。  実は、先行している介護保険はもう公費負担二分の一になっていますよね。一部の人たちからは、ここはもっと公費の負担を、全額とまでは言わなくても、公費負担を上げてくれというのが自治体の中にもありますよね。しかし、今までのこの理念というか考え方でいけば、介護保険の公費負担率というものは二分の一を超えることはない、超えると厚生省としては考え方がずれてくるというふうな理解なんですか。すなわち、二分の一を超えていくことはないんですね。
  232. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 介護保険の方は、介護費用、介護給付の二分の一を公費負担するということでございまして、その五〇%の半分を国が見ております、二五%ですね。あとの二五%は……(山本(孝)委員「公費負担です」と呼ぶ)だから、それは府県と市町村に持っていただく構成になっておりまして、年金の方は、これは市町村の負担は求めていないのです。  だから、公費負担といっても、そのシステム、システムによってそれぞれの要請がございますから、また地域住民に密着した介護サービスというようなものと年金とはまたおのずから趣を異にしていると思いますので、公費といっても地方公共団体等の拠出分は年金の場合は求めておりません。
  233. 山本孝史

    山本(孝)委員 いやいや、お金には色はついていないので、国民が納めているのはみんな税金なんですから、保険料なんです、同じなんですよ。だから、地方で市町村が出そうが、国が出そうが、これは公費という話ですよ。公費二分の一という話は、基礎年金の部分は今二分の一で頑強に抵抗しておられる。  そういう意味で、今度介護保険の方は公費二分の一なんですから、市町村中心としてここの公費割合を上げろという声がありますけれども、それは厚生省の今の理念の整理の仕方、社会保険における公費の負担という考え方からくれば、だれが出しているかという話じゃなくて、公費の二分の一、介護保険における二分の一というのは今後ともに上がっていく余地はないんですねということです。
  234. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 制度の仕組みが違いますので、もう一回繰り返しますけれども、それは、先生のおっしゃられる点はわかります。ただし、社会福祉は、これからのあらゆる制度を二分の一で公費負担にしていく、そういうものでもございません。もっと高めている施策もございます。  ですから、そこは、介護保険が二分の一にしたから厚生年金の基礎年金部分も二分の一にすべきであるという横並び的な意識よりも、基礎年金のあり方について、公費で負担するとすれば二分の一までで、社会保険方式を維持するには二分の一までかなという判断をしておるということでございます。
  235. 山本孝史

    山本(孝)委員 いや、いつも頭のところで、社会保険方式だ、社会保険だ保険だと言われるから、介護保険は保険で、随分抵抗されて保険制度になったわけです。公費二分の一になったわけです。これ、同じ話なんですよ、基礎年金の部分も。公費二分の一という話。今回は、いわば介護保険がそうなったからそうなったわけじゃないけれども、そこの部分はいいんだと。だから、二分の一を超えろ、超えてくれというのが介護保険という中で声が大きいから、それに屈して厚生省は上げるということはあり得るのかと。保険という従来からの説明でいけば二分の一を超えることはないじゃないですか、という説明をしてきたんでしょう。
  236. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 介護保険についてのお話ですね。  だから、介護保険については、私どものセットの仕方は、公費負担が二分の一で、あと二号被保険者に三三%出していただいてということになっておりまして、なお、介護を受けながらまた保険料を納めていただく階層は年金から天引きをさせていただく、そういうシステムになっておりますので、私どもは、特に二分の一をさらにふやせというようなことよりも、むしろ、市町村の間のアンバランス、財政的なアンバランス、給付のアンバランス、施設整備のアンバランス、そういったものを調整してほしいという声はかなり声高に言われておりますので承知しておりますが、この二分の一をさらに上げろという声は余り私は聞いたことはありません。
  237. 山本孝史

    山本(孝)委員 いや、それは出てくるから。出てくるし、そのときに厚生省はどう答えるんだという答えを用意しておかないと話が崩れますねと。声の大きいところに負けて、野中町長のところみたいな声が上がってきて、全額税でやれという話になって、では政治の力で今度はもっと税の負担が上がるのか。それは保険だ、保険は何なんだという説明をしてこられた理屈がそこで変わるんですか。変わるんだったら、今だって変えてくれたらいいじゃないかと私は思うわけです。  どうせまた厚生委員会で引き続きやらなきゃいけないんでしょうけれども、時間がありません。せっかく労働大臣もずっと、労働大臣、これは違う話じゃなくて、労働省はやはりちゃんとした雇用確保、六十五歳現役社会をつくらないと、この年金の負担は上がっていくばかりですから、きょう、御質問は最初のところと一番最後にしかないんですけれども、ぜひお願いをしたいと思います。  質問時間の関係がありますので、企業年金改革について二、三お尋ねをしておきたいと思います。  まずは確定拠出型年金ですけれども、これは厚生大臣に。小渕総理の答弁は、平成十二年度中の導入に向けて準備をするというのが答弁でした。このことは、それでは十二年には導入されるということで進んでいかれるのかというところが厚生大臣。  それから大蔵大臣は、今回、税制改正の中で退職年金等の積立金に係る特別法人税、二年間の凍結という形で税制改正になっております。二年間の凍結、これも、凍結ですけれども、これはそのまま凍結が続くのか、あるいは、凍結というのはこれは廃止と同じ意味合いというふうに理解をしていいのか、そこのお答えをいただきたいと思います。  それから労働大臣、恐れ入りますが、労働大臣も、確定拠出型年金については労働省所管の財形の今後の姿として合流していくだろうということの見通しを述べられましたが、合流していくとはどういう姿を思い描いてそうおっしゃったのか、御答弁をいただきたいと思います。
  238. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 それでは、私の実施時期についての質問が最初でございますので、お答え申し上げます。  これは総理の答弁されたとおりでございまして、私どもとしては、十二年度の実施を目標に今年中に諸準備を整えて、実際上は六月くらいをめどに関係省庁の合意を得て設計をできる状況にしたい、そして、年末の要求、これは税制が絡みますから、そういった問題を詰めて来年度から実施に移したい、こう考えておりまして、これは総理の申されたとおりでございます。
  239. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 凍結というのは文字どおり凍結でございまして、本来これは課税をする意味があるのでございますから、今の金利が大変低いとかいろいろな状況で凍結をいたしましたけれども、正常になりましたらもとに戻したいと思っております。
  240. 甘利明

    ○甘利国務大臣 ようやく御質問いただいてありがとうございます。  どういう形で合流していくのか、これは今、四省庁で具体的に議論をスタートいたしました。つまり、その一部を構成するということになります。先ほどお話がありましたとおり、来年の通常国会に向けて法案を準備していく、そのために一番大きな問題は税をどう仕組むかということでありましょうから、六、七月、八月あたりまでにこれはまとめていくのかなというふうに考えております。
  241. 山本孝史

    山本(孝)委員 最後の方は聞き取りにくかったんですが、確定拠出型年金が入れば財形は残るんですか。合流するということはなくなるという理解ですか。
  242. 甘利明

    ○甘利国務大臣 文字どおり合流するということでございます。
  243. 山本孝史

    山本(孝)委員 なくなるということですね。  大蔵大臣、仮定の質問で申しわけないんですが、今確定拠出型年金の議論になっていますので、厚生年金基金が確定拠出型年金とどう連動していくのかという部分の中で、いわゆる加算の三階部分がそのまま確定拠出型年金に受け皿として入っていくという理解はしやすいんですが、そうすると、そのときは、御案内のとおりに厚生年金基金の代行部分の返上という問題が出てくるわけですね。これは返上した後、この三階の加算部分が残ります。そうすると、こっちに大蔵省所管の適格退職年金が残ります。これはそれぞれに税制の対応が違います。ここの違いをどういうふうに整理をされるのか。  今の自民党の案では新しい制度をつくるという形にたしかなっていますので、それぞれに残るという理解を私はしているんですが、それぞれに残るということもあり得るのか。代行が返上された後の加算部分の税制の扱いは適格年金との関係でどうなりますか。
  244. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 主税局長からお答えをさせていただきます。
  245. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 確定拠出型年金制度が導入される場合には、年金制度の位置づけをどう考えるか、あるいは他の課税とのバランスをどう考えるか、相当幅広い観点から適切な課税のあり方について検討していく必要があるというふうに考えております。  先生今、厚生年金基金の代行制度がなくなったらということでございますが、私ども、昨年の年金審議会では、この代行制度の部分については「引き続き検討すべきである。」ということでございますので、現段階において廃止したらどうなるか、まさに姿が見えないものでございますので、なかなかお答えできないということを御理解いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、この年金課税の問題、かねて税制調査会からもどう考えるのかという問題提起がなされておりまして、全体として適正公平な課税を考えながら、また、世代間の公平をどう考えるかというような観点からも検討していく必要があるというふうに思っております。
  246. 山本孝史

    山本(孝)委員 わかりました。  厚生大臣、その税方式についてもう一度きっちりとした整理をしながら、介護保険、二分の一の公費負担のあり方も考えながら、何が一番いい制度かというのをもう一度議論させていただきたいと思います。  きょうはありがとうございました。
  247. 中山正暉

    中山委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  248. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今山本委員も、消費税の目的化の部分や年金の二分の一国庫負担引き上げの部分を取り上げてお話をされました。私も、その観点で大蔵大臣と厚生大臣に、そして、情報公開について総務庁長官に幾つか質問をさせていただきたいと思います。  今回の自自連立の中で両党が合意されました消費税の福祉目的化という言葉、これが、これまでも論議の中で出てまいりましたように、今の消費税の国の取り分、七・三兆円あるわけでございますけれども、基礎年金と老人医療及び介護、これらに目的化して使うということであるようでございます。ただし、来年度の所要額が八・八兆円ですので、不足を生じるということはこれは目に見えているわけでございます。  そういう中で、目的税という税が直接日本の税制度の中で、ないといいますか、つくられていないという……(発言する者あり)あるわけでございますけれども、この消費税を目的税化するという方向ではなくて、目的化という言葉を使われたときに、目的税化するということは、自自合意の中の三つのジャンルの中で、やはり必要な財源をすべて賄わなければならないけれども、今の消費税の国の取り分の中ではそれは賄えないという実態がございますよね。ですから、目的税化としたときには、将来に向けてまず、こういう質問がいいのかどうかわかりませんけれども、消費税を上げていかなければならないから目的化という言葉で合意をされたのかどうか。  その辺、大蔵大臣にお聞きするべきではないのかもしれませんけれども、その辺の御見解はどうでしょうか。     ―――――――――――――
  249. 中山正暉

    中山委員長 ちょっと御答弁の前に、皆様方に御紹介申し上げたいと思います。  議事の途中でございますが、ただいまピノ・アルラッキ国連薬物統制計画事務局長がこの予算委員会に傍聴にお越しになりました。  サッサーリ大学の社会学教授であられたり、またイタリアの下院議員、それからイタリア上院議員をお務めになられて、今UNDCP事務局長、申し上げました薬物関係の事務局長をしていただいております。  イタリアのジョイア・タウロ生まれで、マフィア及び国際組織犯罪の研究で御高名でございまして、イタリアの内相上級アドバイザーをお務めになりました後、ジョバンニ・ファルコーネ基金名誉会長をしておられます。  御紹介申し上げます。     〔拍手〕     ―――――――――――――
  250. 中山正暉

    中山委員長 それではどうぞ、大蔵大臣
  251. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたが、国民に消費税という御負担をしていただいているけれども、これはほかの何かの目的に使おうというのではございませんで、そういう三つの福祉関連に使うのでございます、こういうことを予算にはっきりしておいた方が国民の消費税についての御理解を得やすいだろう、こう考えたのでありまして、御質問は逆に、もしこの福祉アイテムがどんどん大きくなったときは、したがって消費税を上げさせていただきます、そういう意味か、こうおっしゃったようですが、そんな気持ちはございません。
  252. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 目的化という意味で、福祉という形で今限定をされておられるようですが、始まったばかりの自自連立でございますので、将来に向けても、この政権の中で約束された目的化というのは続いていくものと考えてよろしいわけですか。
  253. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどもこれも申し上げましたが、こういうことを総則に書きました。そういう目的あるいは考え方は今後とも続いていく、あるいはこれからいろいろなもう少し具体的な問題に展開する可能性もあるかと存じますけれども、国会の御意向にもよることでございますけれども、少なくともこういう方向は将来続いていくと申し上げるべきで、逆行することはないと思います。
  254. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今大蔵大臣が、具体的な方向に展開をするかもしれないというふうにおっしゃいましたけれども、その辺はどういう意味なんでしょうか、具体的な方向に展開をするというのは。
  255. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三つの目的を掲げておるわけでございますが、そのことをもっと具体的に言えるかとか言えないかとかいうことも一つの問題点であろうと思いますが、少なくとも、今申し上げましたことは、大変大まかな方向を国会に行政府としての考えを申し上げたわけでございますから、もっと具体化せよというような問題の展開はあり得るかもしれない、こういうだけの意味でございます。
  256. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 基礎年金の給付費用の国庫負担というのが基礎年金の部分に入っていますよね。それで老人医療について、老人医療給付費に係る公費負担のうちの国庫負担、老人保健医療費拠出金に係る国庫負担等、そして介護については、高齢者居宅介護事業に係るものと特別養護老人ホームの措置費、そういうものに特化していくんだというふうに述べておられるようですけれども、それがもっと細かく具体化していくということなんですか。
  257. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今は八兆八千億円と七兆三千億円でございますから足りないのですが、まあまあおっつかっつでございますが、もしこの三つのアイテムがだんだん大きくなってまいりますと、三つとも消費税で本当に抱えられるのかねというようなことはあり得ることだと思いますものですから、そんなような意味でございます。
  258. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ですから、今でも抱えられていないわけですので、当然一般財源を投入されておられる。このままどんどん負担がふえていった場合に、今具体的な展開という部分について、もっと消費税を上げるという方向性になるのか。やはり、一般財源をシフトさせてこういう福祉の部分に使っていくという方向性を、財政の健全化といいますか、将来に向けて、財政が今のこの沈んだ部分からもっともっとよくなる中においては、そういう展望を政府としては持ちながら今この三つに特化しているんだ、そういう展望があるんだとおっしゃるのか。もっと違う具体的な何かの手当てをすべきとお思いなのかということなのです。
  259. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それもございましょうし、最後に、余り申し上げたくもないことですし、おっしゃいませんけれども、その三つのアイテムのコストが大きくなって、少し合理化をしていただかないと困りますといったような問題も、可能性としては考えられるのだろうと思います、別にそれを思っているわけじゃございませんけれども。
  260. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 合理化というのはどういうことなんでしょうかね。合理化をしていく、アイテムを合理化していく、上げない。
  261. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 コストと給付とのバランスみたいな、一般的に申しましたら、例えばそのようなことでございます。
  262. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 わかりました。  つまり、目的化した税が、将来の給付等の負担の増に対して、取る税の方を仮に上げていくという方向性をとるのか、給付の方を今と同じように、または今よりも低く抑えるというか、その方向性はまだ定まらずというふうに考えているんだということでよろしいんでしょうか。
  263. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いずれにしても、国によるスキームでございますから、それに要するコストとそれに要する財源とはあるバランスを持っていなければならない、一般にそういう意味とお考えくださいまし。
  264. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 福祉目的化ということでいいんでしょうけれども、もっともっと今回の合意については、少子高齢化社会という中で、高齢化の部分に対応している目的化だと思うのですけれども、少子という部分には、これは厚生大臣にお尋ねした方がいいかと思うのですけれども、質問の要旨にはございませんが、少子という部分に焦点を当てるという考え方はどうなんでしょうか。
  265. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 一言で少子高齢化と言われますが、これは相互に関連をいたしております。すなわち少子化と高齢化問題。  ところが、私個人の感じでは、高齢化社会の問題は非常に関心が持たれておりますが、少子化の問題というものはややちょっと劣後している感がございまして、これは総理もそのことを意識しておられまして、有識者会議等を開いて具体策を今検討中でございますが、今後の施策の中におきまして、特殊出生率が一・三九というような状況になりますと、来世紀における我が国の人口が急激に半減、来世紀、百年後には半減するとも言われております。  そういう状況考えるときに、いろいろの面でこれは非常にひずみを生じますし、大変な事態だなと思いますので、少子化問題というのは大変私は重要な視点であると思いますから、それを消費税の対象として目的化するかどうかというのは、それは判断の問題だと思います。重要度においてはいささかも私は劣るものではないというように考えております。
  266. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 私たちは、八・八兆円の所要額に対して七・三兆円という形で既に、これまでも一般財源としてずっと使ってこられたわけですけれども、差額を一般財源で賄うということであれば、やはりこれからここの部分、どうしても金が要る。  今、厚生大臣、少子化の部分に一概に切って話はできないけれども総合的に勘案してというふうに言われまして、やはり財源の使い道のベクトルというものをこの部分に集中をさせるという展望を持つ必要が今の国民的な要望であるのではないかと思うんですけれども、大蔵大臣、その辺いかがでしょうか。
  267. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ですが、そうはおっしゃいますものの、消費税いっぱいまででもういいよ、そうおっしゃっているわけではないんでしょう。(濱田(健)委員「いいえ。一般財源を」と呼ぶ)そうでしょう。それは今でもそうで、やっております。
  268. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ですから、そこの部分を、この消費税導入をしたときの、少子高齢化社会に資するための税という大きな意味合いが、今、予算の総則に記されて、国民の皆さん方は、ようやくそうなったかというふうに思っていらっしゃるわけですよね。(発言する者あり)まあ、そういう理解を示すことはできるというふうに申し上げておきましょう。  ただ、もっと財源的に必要だと言われている部分がどれだけ一般財源から投入されるかということについては、まだまだ、先ほどセーフティーネットという話も出ましたけれども、それを二十一世紀に向けてつくっていくためには足らないのではないか。そういうベクトルとして財源の使い道を、今度も公共事業いっぱい入っていますけれども、シフトをさせていくというような考え方を私たちは明らかにすべきだと思うんですけれども、いかがですかとお聞きしているわけです。
  269. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 例えば、一般会計の中で、いわばプライオリティーの低いものは切って、こっちへもっと動かすべきではないか、もとよりそういう御議論も誘発するだろうと思います。
  270. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 もう一点、住宅の取得税制の部分を大蔵大臣にお聞きしたいわけですが、住宅減税についてですけれども、ローンの利子控除制度の採用が言われておりましたけれども、それは今回見送られまして、税額控除方式というものが図られました。  控除額、現行の百八十万から五百九十万弱という形になるようでございますけれども、ただし私たちが今考えていることで、中低所得者対策として意義がありました現行の一千万までの借り入れ部分、ここの部分が昨年の控除額二十万から政府案では十万円に半減をしているというふうに思うわけでございますけれども、これらの部分については、やはり諸般の事情でたくさんのお金を借りられない皆さん方には制度として継続をすべきじゃないかと思うんですけれども、新しく取り入れたものと相殺できるのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  271. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 先生の今のお尋ねは、今まである制度、改正前の住宅取得控除が一千万までの部分が一%よりも高かったではないか、そういうことからするならば一千万以下の部分については何か考慮すべきではなかったかというお尋ねかと思います。  ただ、現行制度でも、三年目以降は一千万以下の控除率が一%に下がるというふうに実はなっているわけでございます。したがいまして、今度の制度は六年間から十五年間になるわけでございますけれども、そのうちの二年間の部分だけがそういう面が出てくるということかと思います。六年から十五年間に大幅に延長されるわけでございます。  それからもう一点、今回の制度拡充に当たりましては、住宅だけではなくて、同時に取得されます敷地にかかるローンも対象になる、こういうことになるわけでございまして、ローン残高が比較的少額な人がどうなるかというお尋ねでございますけれども、ほとんどの場合には減税額は拡大することになるのではないか、こういうふうに考えてございます。  また、制度の簡明性を考えまして、先生がおっしゃいますように、一千万までの優遇措置を残せということはなかなか適当ではないのではないかというふうに考えているところでございます。
  272. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 一千万までのいわゆる借り入れといいますか、こういう部分でしかできない皆さん方のことを考えると、今話があったように、具体的になるのかどうかということはもう少し論議をしなければならないというふうに思います。  次に、年金の部分についてお尋ねをしたいというふうに思いますが、先ほどもありましたとおりに、九四年の村山内閣のときに、来年度について二分の一国庫負担を検討すべき、検討でございますので、検討しているんだということになってしまうのかなと。附則の中に何かを書き込まれるということでございましょうけれども、山本委員もずっと述べておられたとおりに、この年金の部分をすべて税でやるとしたときには生活保護と一緒になっちゃうということを厚生大臣おっしゃっておられました。  ただ、私は、いろいろなところで申し上げているんですけれども、将来の年金への不安からいっって、基礎年金の部分を含めて、もう掛けない、意図的に掛けないという人や、将来もらえないんだったら生活保護でいいんじゃないかというような話をあちこちで聞くものですから、だから、やはり一階建て部分だけについてはせめて来年の再計算期に二分の一にする、そして次はもう少し、私たちの党は全額税方式でいくべしというふうに主張しているわけですけれども、その辺のところは、やはり検討だけに終わるということがはっきりと決められておるのかどうか。もっと検討に検討を重ねて、どうにかする、この不安がいっぱいなときにどうにかするという方向にならないのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  273. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 しばしば申し上げておりますように、基礎年金の国庫負担分を、三分の一を二分の一にすることにつきましては、一つは、国民年金法の平成六年のときの改正に、法律の中にその検討が記載されておりまして、附帯決議で三分の一から二分の一にすることが院の決議として申し合わせがございます。  それから、もう一つは、しばしば申し上げておりますように、先ほどは山本委員にもいろいろおしかりを受けたのですが、二分の一までが社会保険の制度を維持するならば限度ではないかという考え方を私ども持っておりますし、また、現実の問題として、直ちにやれという御発言でございますけれども、これはできれば私はそうした方がいいと思いますが、何せ二兆二千億、ことしの平成十一年で巨額の資金を要します。  それから、来年以降は、それが、給付費が増大すると同時に増加してまいるわけでございまして、これは一年限りの経費ではないわけでありますので、なかなかこれを今直ちに財源措置をしてほしいと政府部内で強力に主張するというのも、全体的な立場で私ども物を考えなくちゃいけませんのでそういうこともできない。  となれば、しばらく時間をある程度置いていただいて、先ほども御答弁申し上げましたが、景気の状況その他を総合的に判断して、それが可能な見通しを早くつけて、そしてその実現を図りたいということでございますから、決して空手形に終わらせるようなことはしてはならないというふうに思っております。
  274. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 附則に書くということは、次、来年度、九九年、二〇〇四年にはこの部分はきちんと二分の一になるということが担保されるというふうに今厚生大臣は言われたというふうに理解してよろしいんですか。
  275. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは財源の確保の問題でございますから、今直ちに私の方で担保されたかどうかということを申し上げる立場にはございませんが、少なくとも制度としてそういうことを二〇〇四年までには、なるべく早い時期にそういう状況をつくり出したいということを申し上げておるわけでございます。
  276. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がありませんので、情報公開関連について、総務庁長官にお考え伺いたいと思います。  情報公開法、この国会で、速やかな成立とまではおっしゃいませんでしたけれども、総理もこれが国民の希望にこたえられる内容ででき上がることを期待するという趣旨の答弁をされておられます。  いろいろ聞こえてくるところによりますと、この国会の極めて早い時期に審議がある程度短時間で成立する方向に進むのではないかと期待をされていたわけでございますが、ちょっとそこが残念でございますけれども、総務庁長官として、この情報公開法を総理と同じように早く制定ができるように考えておられるのかどうか、その辺の御意向を聞かせていただきたいと思います。
  277. 太田誠一

    太田国務大臣 情報公開法につきましては大変長らく御努力を各党においてされまして、やっと昨年法案が提案をされ、審議をされることになったわけでございますから、早くこれを成立させて、国民が本来持っております主権者としての役割、主権者としての立場というものを確立した方がいいと思っております。  総理も施政方針演説でそのように決意を表明したところでありますし、私も、もちろん早く成立させるべきだ、そういう考えでございます。
  278. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今お話しになられましたとおりに、昨年政府案の提出後に、当時の野党が十二項目にわたる修正というものを出してこられました。この中身については私たちが与党のときにもさまざまな角度から論議し、主張をし、そしてある程度の方向に進んだものも数多くあるわけでございまして、長官としてはこの修正の中身、補強案といいますか、これが政府案をより内容的に高めるものというふうに御認識いただいているでしょうか。いかがでしょうか。
  279. 太田誠一

    太田国務大臣 さまざまな修正の御提案については、今それこそ、先ほど濱田委員もおっしゃいましたように、政党間の協議が進んでおりますので、直ちにこれがいいとか悪いとかいうことは論評はできないわけでございますが、要は、理想を言うならば、だれもが、自分がこれを知りたいと思ったときにすぐに請求をして、御本人がコストをかけずに請求して、直ちにその答えが返ってくるということが望ましいわけでございますが、そのことをやるためには、大変たくさんのところで同時にそのような請求が起こってきたときに、開示を求められた役所はそれに対応する体制を整えておかなければいけないとすれば、今は一方で、私などは行革担当として定員、定数を削減することを求められているわけでございますが、余りそこの国民の、請求をする側の便利さ、あるいはコストを低くするということを考えると、その分膨大な行政側の対応をしなければいけないわけでありまして、その場合に、納税者としての国民がそこまで求められるのであろうかということがあるわけでございます。  ですから、それは国民の多数の、一人一人の、局部の国民ではなくて全体の国民がその辺の折り合いをどこでつけるかということを私どもとしては想定をして、この辺でいいんじゃないかということを判断すべきだと思うわけであります。
  280. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 基本的に情報公開というのが地方の議会を先頭に進んできておりますけれども、今長官が言われたさまざまな障害というものを乗り越えていく基本的なスタートとしては、今政府案が出されたもの、そして十二項目の修正等々、それはのめる、のめない、いろいろあると思うんですが、基本的な部分はその中に織り込まれているというふうに理解してよろしいでしょうか。
  281. 太田誠一

    太田国務大臣 基本的な考え方では一致していると思います。つまり、制度としてスタートさせなければいけないという考え方では、どのような政治勢力も、政党も一致しておるものと思います。政府も一致しておると思います。
  282. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 この情報公開法というのを制定しようという機運が盛り上がってきたときに、国民の持っている知る権利という言葉がよく使われました。この知る権利をちゃんと行使できるようにしたいなというのが、いろいろな運動を含めて、もちろん政治家もそれにこたえていこうという気持ちになったからこそ制定を急ごうではないかというふうになったと思うんですが、この認識について、知る権利はあるんだ、ないんだという論議もございましたけれども、認識そのものについては、長官、それこそいかが認識しておられるんでしょうか。
  283. 太田誠一

    太田国務大臣 知る権利という言葉が、我々がイメージするものと、今私どもが言っております国民が主権者であって、その主権者である国民が国会議員を選び、そして国会が内閣総理大臣及び内閣を指名して、そこに行政権がゆだねられている。そうすると、主権者である国民がゆだねているわけでありますから、それをどの程度知るかということについての判断は国民全体にゆだねられていることだというふうに思います。  ですから、そのことを知る権利というふうにいっているのか、それとも、さっきから言いますように、局部の方々がこれは知りたいということを思っていて、大半の国民がそれはあからさまにすべきではないという判断をされる場合もあるわけであります。  例えば、アメリカ大統領についてのスキャンダルについて、これは白日のもとにさらすべきかどうかという世論調査をすると、三分の一の人はさらすべきだと言うし、三分の二の人はさらすべきでないというふうに言うわけですね。そういたしますと、そこで、国民の一人一人がこういう知る権利ということを主張してもいいのかどうかということは、私は、全体の、トータルとしての国民の判断というのがそのとおりなのかどうかということはちょっと違うと思うのです。  ですから、そこは、当然の、主権者である国民のもとにある行政府が果たすべき説明責任というものと知る権利という言葉が持っております意味合いというのは、あるいはちょっと違うかもしれない。しかし、ここで例えば濱田委員議論していくと、多分そこではそんなに違いはないと思うのです。意味、内容というのは違いはないと思います。
  284. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 憲法の中に、国民、納税者は知る権利があるんだという説と、それはあるけれども、だからそれを法律の中に記載する必要はないんだというような説、まだまだこれは少し成熟していない論議だというふうに思うわけですね。  ですから、修正といいますか補強案の中に、知る権利明示というものが書かれているようですし、私の立場から見るとそれは必要だとは思っているわけですけれども、もうしばらくこのことについては、法律ができたとしても論議を続けなければならないという認識に立ちたいというふうに思っているところでございます。  もう一点は、政府案では、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の保有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされ得るようにすることを目的としておられます。この点については、説明責任、アカウンタビリティー、この観点を明確にしたものとして非常に評価できるというふうに思っているわけです。  とすれば、行政に説明する責任があるならば、また知る権利という言葉に返ってしまいたくはないわけですが、説明を求める権利といいますか、そういうものはごく自然的に発生をするのかな、説明をする責任と説明を求める権利というものはあるというふうに考えていいのかなと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  285. 太田誠一

    太田国務大臣 説明責任ということはどういうことか、これはディスクロージャーということはどういうことかということでもあるのですけれども、人に身をさらす、つまり、説明を求められる、説明をできるような状態にしておくということが、実際には、参加をして、本当に説明を個人が行政に対して直接求めているかどうかは別として、説明をできる状態にしておくということが説明責任を果たす第一だろうと思うのですね。  それから、この議論のときに、私は自民党の中で議論しておったときにその点を何度も強調したわけでありますが、説明責任というのは、国民に対する説明責任は、第一義的にはむしろ国会に対する説明責任ではないか。その国会の今の議院証言法などでもって行政情報の開示を求める部分も随分制限されております。そちらの方はおいておいて、一億二千万人の一人一人が求める方だけが先行していくということがどうなのかということも、思いとしてはあるわけでございまして、ディスクロージャーというのは、そこで、国民を代表する国会でもって、いろいろな質問にさらされる状態に置いておくということが第一義ではないかと思いますし、さらにそれを進めて、国民が直接請求できるようにしておくということもまた情報公開の意味ではないかと思っているわけでございます。
  286. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がなくなりました。  当然、知りたいものを開示請求をやって開示するという方向に定まったときに、そこに、開示をしてもらうときに、手数料その他必要だというふうに思います。  これは、当然そのための経費として負担を、どこが負担をするのかというところでつばぜり合いがあったかというふうに思うのですが、私は、情報の開示を受けた場合の手数料、諸外国いろいろあると思うのですが、まずはペーパーでもらうということになるかと思うのですが、コピー代程度の実費の枠内にとどめる方が国民の側に立った手数料というふうに考えているわけですけれども、この辺は、長官、いかがでしょうか、やはりもっともっと、実費かれこれ必要だということになるのかどうか。
  287. 太田誠一

    太田国務大臣 これは、手数料が高額なために一般の人が利用しにくくなることがないように、でき得る限り利用しやすい金額になるようにしたいとは考えておるわけでございます。  ただ、それがどのぐらいなのか、今おっしゃったコピー代ということなのか、あるいはもう少し違う物差しで利用しやすいということを決めるのかということは、まだまだよく考えてみる余地があるというふうに思います。
  288. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 最後に、情報開示についての請求が却下された場合に不服の訴訟が起きる可能性、当然この法律案でも論議をされました。  政府案では、訴訟所轄の規定がないために、不開示処分の取り消しを求める訴訟は東京地裁、高裁で行われることというふうになっているところでございますが、明らかに地方に住む皆さんには、東京までわざわざ出てきてやらなければならないということでございます。  私は、鹿児島県に住んでいるというところから見ると、この辺の方向性をもう少し、情報の公開という、国民の皆さん方にできることを明らかにしたい、そういうベクトルでこの法案を成立させようとお互いが努力してきたわけですので、こういう部分についても手当てを講じるべきというふうに考えるわけですが、長官、いかがでしょうか。
  289. 太田誠一

    太田国務大臣 今の提起されました問題が最初に私が申し上げた点でありまして、例えば、これはアメリカが一番細かく、各地区でもってこういう請求ができ、または訴訟に対応できる状態にしておるというふうに聞いておりますけれども、それでも平均すると各州二カ所ぐらいだろうと思うんですね。  そういたしますと、例えばユタ州の端から端までどのぐらいあるかというと、あるいは鹿児島と東京の間ぐらいかもしれない、私ははかったことがないので知りませんけれども。そうすると、そういうアメリカのような広大な国であればあるいはそういうこともあるかもしれないけれども、日本ならば、いや一カ所とは言いませんけれども、一カ所でちょうどそれに相当するというふうに考えられるかもしれない。  だから、そこは私は、どのぐらい国民の、請求をされる側の人に便利なのかということと、それから、それに対して行政コストがどのぐらいかかるかというところの折り合う場所がどこかにあるんではないかと思いますから、その点はぜひ国会の場で、さまざまな政党間協議で詰めていただきたいと思うのであります。
  290. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 長官が今最後にまとめられました、国会の場で政党間協議でまとめてほしいということでございまして、本当に一日も早いこの成立が期待されておりますので、各政党、御努力いただきたいというふうにお願いをして質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  291. 中山正暉

    中山委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会