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1999-02-02 第145回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月二日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       小澤  潔君    越智 通雄君       大原 一三君    加藤 卓二君       亀井 善之君    河村 建夫君       岸田 文雄君    斉藤斗志二君       津島 雄二君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    牧野 隆守君       村田 吉隆君    村山 達雄君       森山 眞弓君    谷津 義男君       横内 正明君   吉田左エ門君       岩國 哲人君    上田 清司君       上原 康助君    生方 幸夫君       岡田 克也君    桑原  豊君       小林  守君    島   聡君       葉山  峻君    肥田美代子君       藤田 幸久君    横路 孝弘君       吉田  治君    大野由利子君       旭道山和泰君    草川 昭三君       斉藤 鉄夫君    冨沢 篤紘君       中野  清君    並木 正芳君       西川 知雄君    山中あき子君       加藤 六月君    鈴木 淑夫君       西村 眞悟君    木島日出夫君       春名 直章君    平賀 高成君       古堅 実吉君    吉井 英勝君       北沢 清功君    濱田 健一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣 川崎 二郎君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣 野田  毅君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官   安達 俊雄君         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総局審査局         長       平林 英勝君         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         沖縄開発庁総務         局長      玉城 一夫君         沖縄開発庁振興         局長      襲田 正徳君         国土庁計画・調         整局長     小林 勇造君         国土庁地方振興         局長      中川 浩明君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         国税庁次長   大武健一郎君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         水産庁長官   中須 勇雄君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       岩田 満泰君         通商産業省貿易         局長      佐野 忠克君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省基礎         産業局長    河野 博文君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         中小企業庁次長 殿岡 茂樹君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君         運輸省航空局長 岩村  敬君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省都市局長 山本 正堯君         建設省河川局長 青山 俊樹君         建設省道路局長 井上 啓一君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         会計検査院長  疋田 周朗君         会計検査院事務         総局次長    深田 烝治君         会計検査院事務         総局第二局長  諸田 敏朗君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         参  考  人        (日本銀行理事) 引馬  滋君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月二日  辞任         補欠選任   谷津 義男君    吉田左エ門君   生方 幸夫君     葉山  峻君   岡田 克也君     島   聡君   横路 孝弘君     藤田 幸久君   草川 昭三君     並木 正芳君   西川 知雄君     冨澤 篤紘君   志位 和夫君     平賀 高成君   不破 哲三君     古堅 実吉君 同日  辞任         補欠選任  吉田左エ門君     谷津 義男君   島   聡君     上田 清司君   葉山  峻君     桑原  豊君   藤田 幸久君     横路 孝弘君   冨沢 篤紘君     中野  清君   並木 正芳君     山中あき子君   平賀 高成君     吉井 英勝君   古堅 実吉君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   上田 清司君     岡田 克也君   桑原  豊君     生方 幸夫君   中野  清君     西川 知雄君   山中あき子君     旭道山和泰君   春名 直章君     不破 哲三君   吉井 英勝君     志位 和夫君 同日  辞任         補欠選任   旭道山和泰君     草川 昭三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。
  3. 河村建夫

    河村(建)委員 おはようございます。自由民主党の河村建夫でございます。一般質問トップバッターとしてお時間をいただきました。ありがとうございます。  時間が限られておりますから、早速質問に入りたいと思いますが、きょう私の質問は、日韓漁業協定並びに日中の漁業協定に関してでございます。  ことしの一月二十二日に日本韓国の間に新しい協定発効いたしまして、今十日ばかりたったところでございます。去年の一月に旧漁業協定日本側から終了の通告をいたしまして、一年以内に決着をいたしませんと無協定状態になる、こういうぎりぎりの中で、約一年間、日韓両国国連海洋法条約の精神というものを尊重しながら、お互い沿岸二百海里の排他的経済水域を認め合いまして新協定にこぎつけたわけであります。この間、特に竹島問題、この地域については暫定水域とする、こういうことで、粘り強いといいますか、ぎりぎりまでの御努力をいただいた外務省また農水省、大臣を初め関係者皆さんに心から敬意を表したいというふうに思います。  しかし、残念なことに、最後詰め段階で、日本沿岸での漁業条件といいますか、漁法条件等が折り合いませんで、見切り発効となっておるわけでございます。その結果、これまで韓国水域に依存をしてまいりました西日本、特に山口九州三県、福岡、佐賀、長崎でありますが、その地域漁業者はちょうどこれから冬場の盛漁期に入るわけでありますが、韓国側の二百海里水域に入れませんので、大変苦しい思いをいたしておりまして、一日も早く入漁できるようにしてもらいたい、強い要請があるわけでございます。  日本側としても、早急にこの漁業交渉最後詰め段階へ、お互いの二百海里に入れる条件の整備を図っていただきたい、このように思っておるわけでございますが、その見通しといいますか、この辺については、農水大臣、いかがになっておりましょうか、お伺いします。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 今河村先生からお話がありましたように、一月二十二日で新協定発効いたしましたが、協定で大枠がきちっと決められたということが、無協定状態になっていないということの一つ意味はあると思います。  ただ、今先生指摘のように、お互いお互いEEZの中に入っていくということについては、実務者協議、あるいは協定に基づく毎年のルールづくりというものがないとできないわけでございまして、現時点においては、今先生指摘のような状況にあります。  そういう中で、先週の土曜日に向こう海洋水産大臣が来られまして、これはあくまでも協議ではなくて懇談の形式をとりましたけれども、その中で、とにかく両国とも、そして両大臣とも、一日も早く操業条件がきちっとできるようにしていこうというお互いの今までの意思を確認し合ったところであります。  そういう意味で、できるだけ早く操業条件を確定することによって、新しい時代日韓漁業ルールを構築し、そして操業が実現できるようにしていこうということで、近々、多分あした、国会のお許しがいただければ、水産庁のできるだけ高いレベルの実務者を派遣いたしまして、できるだけ早い時期での操業条件の確定、そして向こうEEZ内で出漁されている漁業者皆さんに対して、操業ができるように、できるだけ早く努力をしていきたいと考えております。
  5. 河村建夫

    河村(建)委員 漁法といいますか、操業条件が合わないということについて、私も聞いておるわけでありますが、特に、韓国側ズワイガニ中心とした底刺し網漁、それからかご漁、これに固執しているといいますか、これまでの漁法だと。  ただ、いろいろ調べてみますと、この漁法日本ではもう既に禁止をしているものでありまして、一隻が一組四キロメーターぐらいの大きい網を、三点セットだそうでありますが、これを底に張るわけでありまして、これを一隻が何組も持ちますと、一隻だけで二十キロ、三十キロの網を張ってしまう。その船が大体百隻ぐらいおるそうでありますから、その地域の海は完全に占有されてしまう状態だそうでありまして、日本のトロール、底びきなんかは全然立ち寄れない。  また、ズワイガニをとるといいながらほかの魚もとってしまいますから、漁業資源の枯渇という問題からも非常に大きな問題だ。かご漁にしても、一隻当たりが五百、六百のかごを下げるわけです。これを何十組も下げますと、一隻で七千、八千というかごをずっと海に広げるわけでありますから、大変なことになる。  そういう点で、特にこの二百海里の時代国連海洋法条約の決まりといいますか、自分の二百海里内は自分資源管理責任を持ってやるようにということでありますから、日本側としては、こんな漁法でやられたのではとても資源管理はできない、責任を持てない、ぜひやめてもらいたいというのは、これは当然の言い分だというふうに思います。  したがいまして、この資源管理我が国みずからの海域はやるんだということは、これはもう貫いていただかなければならぬ。これからの交渉基本だとは思いますが、残念ながら、まだ韓国はそのことについて、既に日本側もそういうことは当然予測して通告してあったわけでありますが、国内調整が済んでいないということで、これをやりたい、こう言っておるようでありますが、これはまず禁止してもらわなければならぬ、この姿勢は貫いていただきたい、こう思うわけであります。しかし、これが韓国側が固執するということになりますと、交渉が長引く懸念があるわけであります。  ということになりますと、これから北へ魚が入っていく、西日本、先ほど申し上げました山口県あるいは九州三県の漁業者は、韓国沿岸にこれから行くわけであります。これができないということになるわけでありまして、特にフク漁とか、あるいはアマダイ、カレイ、イカ、サバ漁は大変な打撃を受けることになるわけでございまして、ぜひ早急に再開をしてもらうと同時に、もしこれがこのまま長引くということになりますと、この打撃をどういうふうにしてくれるかというのが、漁業者の強い不安と同時に、政府行政当局に対する要請になってあらわれておるわけでございます。  それで、この資源管理をやらなければいけない、これはもう国策でやるわけでありますから、これを貫くために漁業者はある程度我慢をしなければいかぬ。これについて、この犠牲を国が補償してくれないか、この救済対策、一体どういうふうにしていただけるんだろうか、強い要請があるわけでございます。  また、例えばフク漁なんかをとりましても、漁業者がとる、それだけではなくて、それに関係する加工業者というのもあるわけでありまして、これは大きなすそ野があるわけであります。そういう業界もすべて影響を受けるわけでありますが、これに対する対策については国としてはどのようにお考えなのか、お示しいただきたいと思います。
  6. 中川昭一

    中川国務大臣 今御指摘のように、底刺しあるいはかご漁というものが、我が国の管轄する資源、あるいはまた漁法日本漁業者が禁止している大変独占的な漁法であるということで、我が国でも禁止しているわけですから、我が国EEZ内で禁止するのは当然のことであり、このことは、去年の九月の基本合意以来、我が国韓国に対してずっと言い続けてきておるところでございます。  そしてまた、これは、今河村先生指摘のように、御地元を初め、向こうに行っておられる漁業者皆さんにとって、この事態というのは、全体として日本の主張を共有していただくと同時に、行っておられる漁業者皆さんには大変御心配をおかけしていることも、我々重々承知をしておるところであります。  一方、韓国の方も、何も底刺しかごだけではないわけで、多くの水産物を日本EEZの中で過去とっており、またこれからもとるわけでございますので、そういう中で、お互いに全体のことを考えて早く交渉を決めましょうというふうに、そこのところだけはお互いに認識はしておるわけであります。  しかし、現実に、そういう漁業については引き続き我が国としては認められないという強い態度で交渉に臨んでいきたいと思いますが、一方、そういう関係漁業者皆さんの御心配もあるところでございます。  したがいまして、そういう漁業者方々に関しましては、いろいろ実態調査をいたしまして、関係県等と、よくその状況を踏まえまして、仮に操業中断影響が生じる、あるいは漁業だけではなく、関係水産加工業者等々の方々に被害が出るということになりますれば、例えば低利融資施策等、万全な対策を講じていきたいというふうに考えております。
  7. 河村建夫

    河村(建)委員 今大臣の方から万全の対策をとるということでありますから、この点はぜひよろしくお願いをしたいというふうに思うわけであります。  これに関連をするわけでありますが、あの竹島を中心とした暫定水域を設けた、その地域資源管理が図りがたいということもございまして、さきに新日韓漁業協定関連対策特別基金というのを今年度予算に計上してあるわけです。約二百五十億の基金が用意されているわけでありますが、私はこれをその排他的経済水域にも活用できないだろうかというふうに思います。暫定水域の問題があれば、それ以外の排他的経済水域だって同じような影響を受けることは考えられるわけでありますから、この基金活用範囲拡大することはどうであろうかということ。もし、それが現実に不可能だということであれば、万全の対策の一環として、やはり今後新しい、いわゆる暫定水域外地域に対する、いろいろな影響を受けるだろう、はかり知れない影響があるだろう、それに対する基金を設ける話。  要するに、暫定水域はそういうことで対応が図られたんだけれども、排他地域についての問題、あるいはいろいろな問題、入漁料等の問題もあるかもわかりません。そういうような対応を十分やっていただきたいというふうに思うわけでありますが、これの対応を、きょうは予算委員会でありますから常時大蔵大臣も御出席されておるわけでありますが、このこともお聞きをいただいて、ぜひこの基金の扱いについても枠を広げるということについてはいかがでありましょうか。
  8. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、既存の制度といたしまして、過去の日ソ漁業で大変に中断の期間が長かったという例もございまして、そのときには国際規制関連経営安定資金という制度が現にございます。これはあくまでも操業中止が長引いて損害が発生したということが前提でございますけれども、こういう制度がございます。  一方、今先生が御指摘のように、今回の新協定対応いたしまして、新日韓漁業協定関連対策特別資金、いわゆる二百五十億の資金でございますが、この資金は新しい協定により影響を受ける漁業者等を想定しております。操業中断に伴う対策についても、調査の結果を踏まえ、この基金対応することが適切かどうか、関係者とよく協議をするということで、拡大とかそういうことではなくて、そもそもこの基金対応できるのかできないのかということも含めまして柔軟に対応していきたいと思いますし、拡大ということも先生から御指摘ありましたが、いずれにいたしましても、影響を受ける漁業者に対しては、万全の対策をとらせていただきたいというふうに御理解いただきたいと思います。
  9. 河村建夫

    河村(建)委員 暫定水域関連対策基金思い切ってやっていただいたということはありがたく思っておるわけでありまして、あわせて、この排他的経済地域の、特にこういう中断もございますし、こういうことも考えて、ぜひ対応を考えていただきたい。きょうは予算委員会でありますから大蔵大臣もお見えでありますので、ぜひ胸におとめをいただいて今後の問題にお取り組みをいただくとありがたいというふうに思っております。  もう一点、日韓はそういうことであと一歩というところに来ておるわけでございますが、日中の漁業協定の問題でございます。  御案内のように、平成九年の十一月十一日に両国政府代表者はもう署名が済んでおるわけでありまして、むしろ日中の協定が先に進むであろう、そうすると韓国日本の間が無協定状態に入ると、これこそ漁業が大変なことになるという思いもあって日韓を急いだという格好でありますが、この中国との関係がまだ発効をしていない。この方が先に進むのではないかと思っておっただけに、漁業関係者は意外に思うと同時に、今、だから日中関係は無協定でありますから、日韓との間はそういうことで、例えば今協定ができなければ排他的にお互いに入らないということになっておりますが、中国側は自由に出入りができるわけでありまして、現在、いわゆる日本海を含めて、東海、黄海、中国側の船が非常に目立っておるわけでございます。  また、この協定実績というのは漁獲実績に基づいて次の漁獲高を決めるというようなこともあって、恐らく中国側はそういうこともねらっているのではないかという推測もあるのでありますが、これは今盛んに漁業野放し状態で進めておる。これを早くしていただかぬと、せっかくの日韓の間での資源管理の話をしても、一方では、底が抜けたように中国側の船がとっていくという状況になるわけでありまして、まさに日本海は乱獲の海だと言われるもとでありまして、早くこれを何とかしなければいかぬという思いでございます。  これについては外務省が表に立っておられると思うのでありますが、外務大臣、なぜおくれているのか、その後の状況についてお知らせをいただきたいと思います。
  10. 高村正彦

    高村国務大臣 九八年七月以来、日中間で四回の準備会合と三回のワーキンググループ会合を開催して、操業条件及び新協定実施のための細目等につき、鋭意調整を行ってきたわけであります。  しかしながら、新たな日中漁業協定は、現行協定に基づく漁業秩序を大幅に変更し、国連海洋法条約の趣旨を踏まえた新たな漁業秩序を創設するものであるため、発効日につき合意するまでには、大変申しわけないんですが、いましばらく時間を要する見込みであります。  日中双方は、昨年十一月の江沢民国家主席訪日の際の共同プレス発表においても、新協定を早期に発効させることで一致しており、できるだけ速やかに新協定発効させるべく一層努力してまいりたいと考えております。
  11. 河村建夫

    河村(建)委員 いましばらくということでございますが、漁業者にいたしましては、同じ海を挟んで同じ資源をこれから扱うわけでありますから、これはお互いさまでございますが、ぜひ乱獲の海と言われる日本海を守るためにも、これは外務省としても早急にひとつ立ち上がっていただいて、もし中国側にいろいろな事情があるようでしたら、督促をしていただいて、早く協定に結びつけるように全力を尽くしていただくように特にお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  12. 中山正暉

    中山委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田左エ門君。
  13. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 委員長、おはようございます。私は新潟第一選挙区から選出させていただいております吉田左エ門と申します。  今水害の大変な状況をつぶさに感じ、そのことを先輩、皆さんに披露申し上げ、ぜひこの予算委員会で一言御質問をさせていただく機会を授かりたい、こう懇願させていただきましたところ、十分ではありますけれども、こうしてその思い質問させていただく機会を授かりました。関係各位に心から感謝を申し上げさせていただいて、質問に移らせていただきます。  まず、建設大臣、早々にお入りいただいたわけでありますけれども、大災害が発生しますと、ヘリコプターが一番のこのための道具なんですね、救援であれ、あるいは情報活動であれ。こうしたときに、その離着陸に対する許可その他ができ得るだけ柔軟に行われること、これが大事だとつぶさに感じました。  そして、阪神・淡路の場合には、あまたヘリがあそこへ押しかけたものですから、これをコントロールするに運輸省大変御苦労をされたと伺っていますが、大災害時における航空管制について、その後どのような御見解あるいはお手入れができたのか。そこのところ、一言短目にお聞かせいただきたいと思います。
  14. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 吉田委員から気合いのこもった御質問をいただいたわけですけれども、まず第一に、例えば防衛庁、警察庁、都道府県の警察等の所有する航空機、これについては、基本的に災害時には許可を必要としないという形でまず動いてもらう、これが第一であります。  それから第二番目、民間が協力するという場合については、安全上支障がないと判断されれば、書類ではなくて口頭で許可をしよう、こういうことになっております。  それから第三番目の問題として、今御質疑いただいたわけですけれども、みんなが寄ってきてしまったために、かえって二次災害、ヘリコプター同士がぶつかるということも当然考えられますので、運輸省、郵政省、警察庁それから消防庁、特に日本新聞協会、日本航空事業連合会、こういう中でマニュアルをつくっていただいて、しっかり対応してほしいということでやっております。  いずれにせよ、災害時にできるだけの態勢が整えられるよう、我々も努力してまいりたい、このように思っております。
  15. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 よくわかりました。  それでは、当時に思いをめぐらせて、建設大臣が八月の六日朝早く新潟へ視察に入っていただきました。ちょうどその折、新潟空港周辺、大変大規模なネギ畑の湛水がありまして、私はそこへ視察に行っておったものですから、大臣新潟へ入られるということで、本当にありがたく、長靴履きのまま、ワイシャツをたくし上げて、そして救難隊からちょうだいしたキャップを裏返しか斜めにかぶって飛んでいったことを思い出します。大臣、その折、防災服に身を固められて、関係課長さんを供に連れられて駅頭へおりられたときは、まずその形りりしく、地獄に仏とはこのことかと手を合わするような思いでお迎えをしたことをきのうのことのように思い出します。  結果して、いち早く、再度災害防止のため福島放水路の完成を早める趣旨の大臣発言があり、地元は歓喜し、勇気づけられたわけです。大災害の後に再度災害防止のための措置を迅速にとることは、災害地の復興しようという意識、元気を高める上で極めて大切なことだと実感をいたしました。このときも、建設省自慢の信濃川河畔を整備したやすらぎ堤から、空港局の許可を得て、ヘリで飛び立たれたというあの様子も、今私はまぶたにしっかりと焼きついております。  昨年の全国的な水害の後に、再度災害防止のために制度整備等がどのように行われているか、このことをまずお伺いしたいと思うのです。  引き続き、八・四新潟水害では、北蒲原地方の福島潟周辺で大きな災害がありました。上流には折居川、荒川川、これらの復旧がいかがなるものかな。あるいは、その下流では、新発田川の支川であります太田川でも越水がありまして、消防団あまた、あるいは町村民がすべて出て、この水防活動に携わったと聞かされていますけれども、この太田川の整備なども重要なのではないかなと思いますが、これらについての方針をお伺いしたいと思います。  そして、いま一つ、福島潟放水路は、周辺地域の治水の根幹に位置をしているのであります。根幹的な施設なのであります。その福島潟放水路は、新潟東港のコンテナバースのまだ掘られていない部分の一番奥につながるわけなんですね。そうしますと、その放水路周辺には国道百十三号がまた整備未了であるという。  省庁再編、そして行く行くは国土交通省、これがもはや間近な今にあって、水路整備にあわせて河川、道路、港湾が連携して行われなければならない、こういった省庁再編の先取りをして進まなければならないような状況にある、こう聞いております。  特に、運輸省であれば、おれのところはまだ掘らなくてもいいバースなんだけれども、どうしても建設省がそこへ排水を流すと言うから、そこのところ、水路を掘らなきゃならぬじゃないかというような、少し口をとがらせたくなるような条件も出てくるわけなんですね。こういったところがスムーズにあわせて整備されるために、両省とも何か特別なお考えというか思いでこれにかかわっておられるのであれば、その辺の口吻をお聞かせいただきたいと思います。
  16. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 吉田先生から過分のごあいさつをいただきまして、大変感謝をいたしております。ありがとうございました。  先生のそのお言葉を聞きながら思い出したわけでございますが、新潟の佐渡にもお見舞いに伺いましたときに、当地の町長さんが、これだけの災害に遭ったけれども、これは砂防をやっていただいておったからまだこの程度の災害で終わったというふうにおっしゃっていただきまして、私本当に感激をいたしましたが、この防災の対策というのは特段に力を入れていきたいと思っております。  それで、るるございましたが、福島放水路の件、それと太田川のことを触れさせていただきたいと思います。  御承知のように、福島潟放水路は、仕上げる時期を二年間短縮したわけでございまして、それで今後も鋭意進めてまいります。  そして、放水路の東港のところでございますが、これは後ほど川崎運輸大臣から御答弁をいただきますが、両省連携をとりまして進めております。  それから、一級河川の太田川の整備は、これは平成十一年度より改修に着工をいたしまして、極力早く、工事自体は一年半ばかりでできるのでございますが、先生御承知のように、その周辺が人家連担地、これは建設省の専門用語だそうでございますが、土地の、用地の買収をしなければならないものですから、その用地の買収さえスムーズにいけばそれだけ完成することが早くなりますので、その用地の買収につきまして、また先生御指導いただきますようにお願いいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、再度こういうようなことが起こらないように、急いで対策を行っております。
  17. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 福島潟放水路について、建設省としっかり協議をしながら仕事を進めろ、こういう御指摘でございます。  当然、放水路、海への出口につきましては港湾整備事業でやらせていただくということで受けとめさせていただいて、鋭意今検討を進めているところでございます。  なお、建設大臣からもお話がございましたけれども、新しくやるわけでありますので、当然まず買収からかかります。地元の御協力が特に必要でございますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。
  18. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 ありがとうございました。  引き続き、新潟、水戸、高知という県庁所在地、いわゆる都市水害だという認定がなされました。これは、都市の中核が水没して、十日も一週間もその機能をしなくなるわけですから、市民生活はもちろんでありますが、キャピタルでありますので全県的に大きな影響を及ぼす。スーパーマーケットの地下は、食品売場は水浸し、まるでプールのごとく、そして、県庁から各ビルの地下駐車場は、車が全部水浸しになってしまう。そして、通信網すべて思うようでない。こうしたことで、都市水害に対する総合的な治水対策が、今後どのような対応がされるのか、このことを一言。  そして、最後になりますが、栃木県那須の余笹川の水害、これも決して忘れるわけにいかない大変大規模な、十メートルの川が五十メートルにもなってしまったということであります。これは、時間がありませんので、一言このこともお忘れなくと申し上げさせていただいて、私の質問を終わらせていただこうと思います。
  19. 中山正暉

    中山委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  20. 中山正暉

    中山委員長 この際、お諮りいたします。  最高裁判所石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  22. 中山正暉

    中山委員長 次に、吉田治君。
  23. 吉田治

    吉田(治)委員 民主党の吉田治でございます。  本日は、いろいろ金融問題が起こってまいりまして、特に破綻金融機関の経営責任ということをまずそれぞれ担当大臣からお聞かせをいただく。  そのときにおいては、やはりこういう金融機関の問題というのは、一番最初はニューヨークの問題を起こした大和銀行、大和銀行の問題からこういうことが起こっているのではないかというふうな強い意識を持っております。そういう中において、刑事、民事それぞれ、やはり道義という部分も責任という部分に入ってくるのではないかなと思うんです。  まず法務大臣にお聞きをしたいんですけれども、大和銀行の事件以来、また金融機関がさまざま破綻し、さまざまな責任問題が起こっておりますが、特段の法律上の措置というんですか、私が調べた、聞く範囲におきましては、金融監督庁にかかわる法案以外は、従前どおり、背任、特別背任、横領、粉飾決算、有印私文書偽造等々が刑事の対象になる。また民事においては、株主代表訴訟というふうなものが中心になるというふうに聞いております。特段の何か法律的な改正、また今後そういう動きがあるのかどうかということ。  そして法務当局の方には、では当時の大和銀行はこれらの事件性というふうなものが当てはまったのかどうか。もう事件が起きて数年たっておりますので、今でしたら調べたのかどうかを含めてお答えがいただけるのではないか。そしてまた、現に破綻をしております日債銀並びに長銀については、この辺のことについては現在どういうふうな取り扱いになっているのか。ちょっとまとめてお答えをちょうだいしたいと思います。
  24. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 刑事、民事において適用される法律等は、委員が御指摘になったとおりだと思います。  その後法律的に何かの手当てがあったかというお話でございますけれども、大和銀行事件のことを、これからいろいろな事件が起こったという御指摘をされました。ただ、大和銀行事件は、これは実は外国で起こった事件であり、現地法人が米国においてこういう事件を起こしたということで、ちょっと特殊な事件じゃないかと思います。  一つ今動きがありますのは、株主代表訴訟を見直そうという動きが与野党の中であるということを伺っております。ただ、この株主代表訴訟というのは、取締役等の違法行為により生じた会社の損害を回復するとともに、取締役等が法令に従い適正な業務を行うことを確保するための有効な手段として機能しているというふうに考えておりまして、もしこれを見直すとすれば、このような株主代表訴訟制度の機能を損なわないように配慮することが必要であろうというふうに思っております。  また、もう一つ御質問されましたのは、日債銀、長銀等に関してでございましたですか。  民事上の責任に関することにつきましては、金融機関の業務執行について経営者に違法な行為があり、そのため金融機関に損害が生じた場合には、当該経営者は金融機関に対して損害賠償の責任を負うことになるということでありまして、この場合には、会社、株主、その他の関係者が当該経営者の民事上の責任を追及することになりますが、関係者から当該経営者に対して民事上の責任を追及する訴訟が提起された場合には、これは裁判所によって、民法、商法等に基づいて処理をされるということになると思います。  次に刑事上の責任でございますけれども……(吉田(治)委員「刑事上どうなっているかは検察の方に、刑事局長の方に聞かせていただきます。それで結構でございます」と呼ぶ)
  25. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 大和銀行の件から申し上げますが、大和銀行の事件を刑事事件の面で考えますと、中心はアメリカにおける事件ということになりまして、米国においていろいろな角度から訴追をされたものと承知しております。  我が国においても、我が国の国内法に照らして処罰の可能性があるかどうかについてはいろいろな角度から検討いたしましたが、あえて立件するに足る事実はないという判断でございます。  それから、次のお尋ねの、長銀、日債銀の件でございますが、個別の問題について今どのような捜査を行っているかということについてはお答えいたしかねるところでございますが、長銀につきましては、民主党の先生方から、国会議員の方々から東京地検に対しまして、氏名不詳者を被告発人として背任の告発がございます。二百三十四億円の追加融資を長銀が日本ランディックに行ったことは、商法四百八十六条一項の特別背任罪に当たるのではないかという内容でございます。  以上でございます。
  26. 吉田治

    吉田(治)委員 告発されているということは、それは調査をしているということでいいのですか。
  27. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今告発事件として東京地検で捜査中ということでございます。
  28. 吉田治

    吉田(治)委員 今後の推移を見なければならないと思うのですけれども、今法務大臣も取り上げられました株主代表訴訟の件について、もうお答えをちょうだいしたようなものですけれども、代表訴訟、特に平成五年から訴訟費用が八千二百円に引き下げられて、非常に乱訴の声が当時から危惧されたんですけれども、現状というものをどういうふうに認識をされ、それが平成五年の定額になる以前とどういうふうに変わってきたのかということを、きょうは最高裁おいでいただいておりますので、お答えを簡潔にちょうだいしたいと思います。
  29. 石垣君雄

    ○石垣最高裁判所長官代理者 株主代表訴訟の係属件数でございますが、定期的な調査平成五年から実施をしておりますが、それによりますと、毎年の年末の係属件数、つまり現に裁判にかかっているものということで御理解いただきたいと思いますが、高裁、地裁を合わせた数字で申し上げますと、平成五年末は八十四件、六年は百四十五件、七年は百七十四件、八年は百八十八件、九年は二百十九件という状況でございます。
  30. 吉田治

    吉田(治)委員 その場合に、それ以前の件数は明記されていないということと、それ以前に比べて急激に伸びたという現象はあるのかどうかということ。
  31. 石垣君雄

    ○石垣最高裁判所長官代理者 それ以前の数字ですが、実は先ほど申し上げました数字で、平成五年末が八十四件と申し上げましたが、うち平成五年末の地裁の件数は七十四件でございました。  それ以前の平成四年以前は実は調査をしておりませんで、ただ、たまたま平成四年末の地裁の本庁にかかっております事件数が三十一件でございました。これを比較すると、どういうふうに見るべきかということになろうかと思いますが、平成四年末の地裁本庁分で三十一件、平成五年末の地裁支部も含めた事件で七十四件、そして平成六年末は百三十三件、こういうことになるかと思います。
  32. 吉田治

    吉田(治)委員 法務大臣、非常に慎重な対応、民事に関しては株主代表訴訟の議論が起こっているということで、私も議論は承知しておりますし、問題点がないかといえばすべてないということはないと思います。ただ、中村法務大臣は会社を経営されていて、やはり取締役のリスクとしてこういう株主代表訴訟がある。現実に件数、今言われたように平成九年度末で二百十九件。  本日の数字でいいますと、東証一部上場企業千三百四十五、二部が五百、店頭公開が八百六十五、これだけが対象じゃないんですね、もう大臣御承知のとおり。全株式会社、日本じゅうにある、有象無象と言うと語弊がありますけれども、無尽蔵の株式会社が全部株主代表訴訟の対象になっているという中で、この二百十九件というのは果たして乱訴という声に当たるのかどうか、この辺を私は強く法務省に対しては慎重な対応を望むということを申し上げたいと思います。  さて、この経営者責任の場合によく言われますのは、あと道義的責任。本件大和銀行に関しましても、当時の会長、頭取等の役員が皆さん退職された、退職金ももらわずにやめられたというふうに聞いておりますが、しかしながら、現頭取におかれましては、ちょっと私いろいろなマスコミの記者会見等を読んでおりますと、責任ということに対する発想がちょっと違うんじゃないかなと。どうも、一人の責任、その人間を信じ過ぎた、頭取を初め、当時の会長を初め、皆さんやめられましたけれども、担当されたディーラーというんですか、その人だけの責任だ、こういうふうな発想を持って現在の銀行経営をなさっているということは、事の事態にかんがみていかがかなというふうに思う。  同時に、これは大蔵大臣大蔵大臣も衆議院議員の一員でございます。実は、国会、衆議院と参議院にそれぞれ大和銀行は支店を持っておられます。私は今でも不思議でならないなと思いますのは、アメリカと先ほど大きな声が出ておりました、アメリカでの事件、そういうふうな事件を起こした銀行が国権の最高機関であるこの衆議院、参議院において支店をそのまま持ち続けているということ。ゼネコンにおいても、例えば不祥事が起こった場合には、指名停止であるとか入札制限であるとかということが行われる。  ただ、この支店に関しては、過去の資料を調べてまいりますと、国会、衆議院におきましては、議院運営委員会の庶務小委員会において設置がなされて決定だということで、国会ということでいいましたら国会が決めなければならないことかもしれませんが、委員長、これはまた改めて予算委員会並びに議運の方で私はお取り扱いしていただきたいんですけれども、大蔵大臣として、または一衆議院議員として、そういうふうな支店があるということは、例えば海外から見た場合、余り海外の声を私は気にするのはいかがかと思うんですけれども、海外から見たとき、あれだけ大きな事件のところが国権の最高機関の中に支店を置いている、しかも堂々と営業をしているということは、果たしていかがかなと思うんですけれども、その辺は大臣としてどうお感じになられますでしょうか。
  33. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大和銀行のこの事件につきましては、関係者が米国において刑事上の処罰を受けた、それから大和銀行としては撤退を命ぜられたというようなことがあったと記憶いたします。それから、当時の頭取及び国際業務担当の副頭取が退任をいたしまして、国際関係関係のなかった、国内業務担当であった方が副頭取から頭取に就任された、そういうことを聞いております。  そこで、今の支店の話は、これはいろいろな意味で銀行行政といえばそういうことでございましょうが、それは今全く私の所管でございませんので、意見を申し上げることを控えさせていただきます。そもそもそういうことが行政の対象に今なおなっておるのかどうか、国会のことは別にいたしまして存じませんが、少なくとも大蔵大臣の所管事項ではございませんので、申し上げません。
  34. 吉田治

    吉田(治)委員 当時、大蔵省は銀行の支店に対して許認可権をたしか持っていたと私は思う。大臣がかわられましたし、その後、金融監督庁で分離されましたので、この件については、大臣並びに金融再生担当委員長大臣ですか、柳沢大臣等を含めて一考をしていただきたいなと思っております。  さて、では大和銀行のことが起こって、起こって済んでしまったことですけれども、私は、ではそのときの大蔵省、日銀の対応をいろいろ当時の議事録を調べておりますと、一九九五年八月八日、大和銀行の白金寮において、大蔵省西村吉正銀行局長、村木利雄銀行課長、大和銀行側は藤田頭取並びに元造幣局長である源氏田専務が同席して、その場合に、当時の本を読んでおりますと、銀行局長にお会いするのは頭取だけで、それ以下というか、その下の人たちは会えないのを特段御配慮いただいて、安井副頭取、山路常務、勝田常務というのが同席をして報告した。その後、お酒を飲んだとか飲まないとかというのは週刊誌ネタですので、外させていただきます。  八月二十九日には、永田審議官、村木課長がまた頭取に会った。九月十二日には大蔵省、九月十四日には日銀に詳細な報告がなされ、ニューヨーク連銀九月十八日、二十六日に公表がされ、十一月四日に業務停止命令が発表されたというふうなのが経緯です。  では、その後、大蔵省、日銀が、そういう大和銀行から来た報告をアメリカに連絡しなかったと。当時の記録を読んでおりますと、三万点に上る伝票があるから、そんなの二カ月も三カ月もかかるからできへんのやというふうな当時の予算委員会での西村政府委員の答弁なんかございますけれども、やはりこういう大きな事件というのは、まず連絡をして、共同して事に臨むということが必要になってきているんではないか。  特に、経済の国際化ということが言われる昨今においては重要ではないかと思うんですけれども、その後の大蔵省、日銀の、例えば海外金融機関の検査のあり方、当時も問題になりました。行って、ちょっとだけ見て、あとラスベガスに遊びに行っているんと違うかとか、そういうことは申しません。現状はどうなっているのか。また、こういう事件が不幸にして再び起こったとき、米国等への連絡体制、また国内の危機対応というんですか、あのときのようにまた同じような事件が起こると、銀行の寮に呼んで、まあ一杯飲みながら頼みますわというふうにはなっていないと思うんですけれども、その辺について今現状はどうなっているのかということを、担当の、このことについては今はもう金融監督庁になっているんですか、それから日銀、それぞれ御報告をいただきたいと思います。
  35. 日野正晴

    ○日野政府委員 大和銀行事件を踏まえまして、当時大蔵省におきましては、金融機関自身のリスク管理あるいは内部管理のあり方、監督当局の役割について見直しを行いました。そして、平成七年の十二月二十六日でございますが、これからの金融監督行政のあり方と具体的改善策についてというものを発表いたしまして、特に、海外拠点に対する検査の充実策を幾つかの項目に分けて発表いたしまして、海外検査の充実に努めてまいりました。  昨年六月、金融監督庁が発足しましてからも、今御指摘がありましたように、大変現在の金融取引は国際化しておりますので、検査官に対する研修を一層充実強化したり、あるいは海外主要検査当局との人材交流などを通じまして、海外拠点に対する検査体制の充実に努めているところでございます。  ただ、昨年の七月から大手十九行に対する一斉検査に入りまして以来、人員あるいは体制等に大変まだ不十分な点がございますので、体制は、現在そういうことで充実に努めつつございますけれども、現に、海外の我が邦銀の海外拠点に出向いて行って検査をするといったようなまだ実態にはなっておりません。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕
  36. 速水優

    ○速水参考人 私ども、大和銀行のニューヨークでの事件を聞きましたのは平成七年の九月十八日でございます。本人から頭取に書簡で報告があったという七月からは、二月ぐらいおくれていたというふうに言えようかと思います。  また、九月二十六日には大和銀行が事件の概要について発表いたしました。その際には、日本銀行としても同行から事件について詳しい報告を受けまして、不正事件の発生について厳重注意を行いますとともに、適切な善後策と再発防止についての措置を講ずるように求めると同時に、ニューヨーク連銀にも報告のありました……(吉田(治)委員「その辺の経緯は結構です。現状、これからどうしているのか」と呼ぶ)はい。  現状につきましては、これを契機に海外店の考査を強化いたし、拡大いたしました。リスク管理体制を強化しますとともに、考査範囲を、都銀、長信銀、信託を含めて従来十三行でありましたのを十九行にし、さらに香港を加えるということをいたしております。それと同時に、考査員のマニュアル、リスク管理チェックリストをチェックするやり方をマニュアルとして全面改定をいたしております。  それから、海外中央銀行との連絡強化についても、緊密な情報交換に努めてきております。また、これを契機にして、BISのありますバーゼルで……(吉田(治)委員「いや、そういうのだったら文書で後で出してくださいよ、そんな答弁だったら。私の答弁に答えていないじゃないか」と呼ぶ)G10諸国でバーゼル・コンコルダットというルールをつくりまして、それを実施して、お互いに情報の交換をいたしております。  以上です。
  37. 吉田治

    吉田(治)委員 参考人、申しわけございません。つい……。  ただ、参考人、では、今のお話の中で、総裁が聞かれたのは九月十八日と言われましたね。私が得ている資料によると、九月十四日に大和銀行から日銀に詳しいことについての報告が行っているとあるのですけれども、何で四日間もあいているわけですか。どういうことですか。ちょっと教えてください。
  38. 速水優

    ○速水参考人 私の方の記録によりますと、九月十八日に大和銀行は本行に正式報告をいたしたという記録が残っております。そのとき初めて報告があったというふうに思います。
  39. 吉田治

    吉田(治)委員 ちょっとおかしいですね、私の持っている資料とは。ですから、これはまた後ほど、何かの機会に対応をお聞きしたいと思います。もう古い話ですから、前の話ですから、これ以上突っ込むのはいかがかと思うのですけれども。  ただ、これは全然余談な話なんですけれども、国税庁が入りましたね、日銀の方に。それで、支店長の家とか、その辺はまあいいだろうというふうな形になりましたけれども、ちょっと一つだけ教えていただきたいのは、昔の、日本銀行の大阪支店長の例えばお宅だとしましょう。これは戦前からすると大したもので、これからゲストハウスに使うといった場合に、瑣末なことかもしれません、私は、日銀さんが一生懸命頑張られていたらこういうことを質問する気は全然ないのですけれども、その支店長のお宅には支店長が住まわれる、単身赴任、家族で住まわれる。見てみますと、坪数が約八百坪ぐらいあるのですね。では、これは支店長が御みずから掃除をされているのか、はたまた、それを掃除をなさったりする人を別途支店長が雇っているのか、日銀が雇っているのか。  私、その辺、ちょっとあの国税の報告を見ながら、そこのところは例えばどういうふうなことになっているのかというのは疑問を感じたんですけれども、ちょっとお答えいただけますか。
  40. 引馬滋

    ○引馬参考人 支店長舎宅につきましては、公的な目的にも使われる、そういう事情もございまして、その管理並びに清掃等につきましては、必要に応じまして外部の専門業者に委託をいたしております。それにかかります費用につきましては、業務上必要な支出であるということで、日本銀行が経費を負担いたしております。  なお、大阪支店長舎宅につきましては、関西財界人を含めまして内外の要人との会議、会合を行うための公館としての機能もあるということで、その管理、清掃等のために、銀行の負担で管理人を置いているというのが実情でございます。
  41. 吉田治

    吉田(治)委員 いい質問かどうかは別にして、やはり日銀の今置かれている状況と、そういうふうなものが出てきたということを考えると、そういう付随的なものですか、では、だれがどうしているの、だれがお金を払っているのというのは結構やはり、情報開示といったらそこまで開示する必要があるのかと言われるかもしれませんけれども、そういうことも含めて、これから積極的にオープンにしていただくことをお願い申し上げたいと思います。  一応、参考人の質問はこれまでだと思いますので、どうぞお戻りいただければ結構かと思います。ありがとうございます。  それでは、今お話し申し上げましたのは破綻金融機関という形ですけれども、実は、金融機関が破綻する以前に、非常に私は問題点というか感じておりますのは、では、それを監査してきた人たち。上場企業であれば監査法人というのが監査をしていきます。それについて、このごろ企業内におきましても、コンプライアンスという、遵法部というのですか、法を守りましょうという部ができ、営業と管理というものを、まさに営業というのは列車でどんと突っ走っていく、管理というのはそれの線路であり路床である、それが二つ合わさって初めて日本の企業は世界に通用する企業だと。海外から投資をするときも、営業はすばらしいけれども管理はどうなっているの、その会社の実態はどうなっているのと。まさに、金融問題における情報公開、後ほどペイオフのところで御質問させていただきますが、二〇〇一年のときにペイオフされたときに、金融機関の情報はどうオープンされているのと。その大きな指標というものが、公認会計士の皆さんですとか監査法人が出される監査報告である。  それがどうも、破綻金融機関、例えば拓銀の場合でありましたら、事前に出した監査報告よりも十倍も二十倍も実は不良債権が出てきた。また、ヤクルトの問題もそうですし、私どもの地元、私のところのもう家の真向かいといってもいいぐらいのところへ三田工業というのがございます。三田工業は、今の社長の先代の御夫妻が青焼きから始められて苦労されたというのは、私どもの町ではある意味で誇りに思う会社だ。それが公認会計士、監査法人を巻き込んでというか、同級生という話も聞いておりますが、での粉飾決算というふうなことで、今は公認会計士のある立場というのが非常に問われております。  まず大蔵大臣に御確認させていただきたいのは、監査法人の監査、または公認会計士の監査というのは投資家、株主のためであるという大前提は、それは間違いないのかということ。そして、監督官庁は、公認会計士法によって大蔵省にあるということ。そして、実は懲戒権というのは、先日御質問させていただきました司法制度の部分においては弁護士会自身が持っておりますが、大蔵省が持っていられるということ。この三点、イエス、ノーというふうな答え方をしてくださいというのは失礼な話ですけれども、それでよろしゅうございますでしょうか。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公認会計士が株主のために仕事をするということは、そのとおりと思います。  権限のことは、ちょっとわかりませんので、政府委員から申し上げます。
  43. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生が言われましたように、財務書類の監査に当たりまして、監査法人及び公認会計士は、その専門的な能力と実務経験に基づきまして、まさに投資家及びそれを含めまして社会的な信頼を得るよう、独立かつ公平、不偏な立場から、専門家としての正当な注意を払いつつ、適正な監査手続を実施していくことが求められておりまして、先ほど言われました権限の関係は、おおむね先生の言われたとおりでございます。
  44. 吉田治

    吉田(治)委員 全部大蔵省ですか。ということでございますので、大蔵大臣、まあ後の話は、大蔵大臣として金融行政、再生委員会もおいでですけれども、こういうふうなものだよということを、まあ参考までにお聞きいただきたいというのは大変失礼な話かもしれませんけれども、聞いていただきたいのは、公認会計士制度というのは、できて五十年、まあ法務大臣がお好きかどうかわかりませんけれども、進駐軍がやってきて、進駐軍が日本の計理士制度と税理士制度を足して、アメリカ的な公認会計士制度というのを日本に導入したというふうな経緯があると聞いております。  そして、今政府委員が答弁されたように、大蔵省の監督下で、しかも懲罰権、懲戒権、公認会計士の資格を剥奪できる権利を大蔵省が持っているという中において、これは公認会計士の先生方が言われるので、私が言っているのじゃないのですよ、皆さん方言われるのは、まさに私たちも護送船団方式だったと。大蔵省に守ってもらって、自分たちの中でやってきたと。その結果として、これは政府委員にお答えいただきたいと思うのですけれども、実は昨年の末に退任されましたけれども、公認会計士協会の事務総長は大蔵省出身のお方で、この方は、聞きますと、いろいろ天下りの問題が起こるので、前の会長と話をして、自分が退任したら後は大蔵省から人は入れないということを決められたやに聞いております。  また、五大会計監査法人、ビッグファイブとよく今言われております。これは大臣の方がお詳しいのではないかと思うのですけれども、各ビッグファイブには、これは特に会計監査法人ですけれども、会社と組合の中間的な組織立てをされているという中において、公認会計士がパートナー、社員という形にされておるのですけれども、実は大きな会計監査法人になりますと、その社員会の会長を大蔵省の方が務められているのですね。公認会計士でもないのにという言い方がいいのかどうかわかりません。  例えば、私の手持ち資料がちょっと古いのでもう退任されているかもしれませんが、中央監査法人においては元国税庁の長官の田辺さん、朝日監査法人においては冨尾さん、そして太田昭和監査法人においては矢沢さん、センチュリーにおいては、これは特別顧問ですけれども、小幡さんというのですか、青山監査法人においては伊豫田さんが会長を務められ、実はトーマツというところにおいては、トーマツの創業者富田さんが日経ビジネス一九九八年四月二十日号に、トーマツさんもうちのOBを入れた方が何かと都合がよろしいんじゃないですかと大蔵省の課長補佐クラスの人がやってきたと。天下りの条件は、年収三千万、大きな個室、自動車で送り迎え。私は、ノーと言わぬかったけど、いいですよ、でも、うちは三千万払えない、大きな部屋もありません、みんな電車通勤ですよと申し上げたからかわかりませんが、松川さん、鈴木さんが非常勤で顧問に入られていると。  まさに業界、そしてビッグファイブというところがそういう形で、護送船団方式という形で今まで守られてきたのではないか。しかしながら、こういう金融機関の中において、例えば金融機関の貸倒引当金は今まで銀行局長に報告をし、結果として金融機関が破綻した場合には、責任は会計士にあるというふうに会計士の先生方は言われるのですけれども、それも、一年半か二年ほど前からだんだん、自己責任でそっちでおやりなさいという形で、どうも護送船団方式というのは崩れてきたのではないかなというふうに言われております。  しかし、その中で一点、大蔵省の事務当局にお聞きしたいのですけれども、粉飾決算というふうなものがあった場合に、公認会計士協会に、処罰者、だれが責任者なのだ、だれが罪をかぶるのだということを随分強く、首を出せという言い方はよくないかもしれませんけれども、しているという事実があるそうです。それに対して公認会計士協会が、いや、いろいろ調べなあかんから時間がかかると言っても、とにかく早く出せ、早く出せということですけれども、こういうことについては、事務当局としては了解をしているのかどうか、そういうふうな事実があったのかどうか、お答えをいただきたいと思います。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  まず最初に、これは公認会計士法第三十条におきまして、「公認会計士が、故意に、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合には、」先ほど先生の御質問がありましたのですが、「大蔵大臣は、一年以内の業務の停止又は登録の抹消の処分をすることができる。」という規定がございます。  それから、先ほどの大蔵省に在職した者の話でございますが、監査法人及び公認会計士には、被監査会社はもちろん監督当局からも独立した立場で監査を行うことが求められておりまして、会計監査の内容に影響を与えるようなことがあってはならないということは当然であると考えております。  今最後に言われました公認会計士協会との話でございますが、ちょっと今、個別の事実について私は承知しておりませんが、公認会計士法第四十四条によりまして、会員の品位保持に関する規定を含む会則を定めなければならないこととされておりまして、会則には懲戒処分に関する規定が置かれております。言われたような具体的な事実については、ちょっと私、今承知しておりません。
  46. 吉田治

    吉田(治)委員 ここで一つ申し上げておきたいというか、会則と法律という両建てという形で、都合のいいときには法律で、こっちが都合のいいときにはまた会則でというふうな形になると同時に、今政府委員の答弁で監査の内容について云々というのですけれども、これは私も今調べているところですけれども、実は金融機関の破綻する前の中において、監査法人等々が調べて、これはどうもおかしい、ちょっとこの金融機関やばいんと違うかと思いながら、それについてそういうふうな報告をすると、実は報告書というのは、先ほど申しました社員会の会長、ビッグファイブの中には結構大蔵省OBの方がいらっしゃいますね、そこにおいて報告をするわけですね。  監査法人というのは、事務当局御承知のとおり、昭和四十一年の山陽特殊鋼の問題以降、公認会計士一人では監査するのは力が弱いだろうから、組織化、効率性、そして意見の多角性という中で監査法人の社員自身が話をしなさいよと。その社員というのが、これはちょっとどうも危ないんと違うか、内容的にこれはやばいからちょっと特記事項で書こうか、この報告をこう出そうかといったときに、そこの会長さんに大蔵省のOBがいる。  どう考えても、例えば今政府委員は監査の内容について適正だ、独立性だと言っても、ちょっとこれは待ったらどうかとか、やめろとは言わないと思うのですけれども、どうなんだ、ちょっと与える影響が大きいのじゃないかという示唆というものが、私は多々ある、あったと。今あるかどうかわかりません。そういうようなものがあると聞いておるのですね。  ですから、監査法人の問題、また公認会計士の問題というのはそろそろ世の中に出てきているのかなというふうな、私はそういう認識を持っていただきたいと思っております。  時間もございませんので、今の件については、先ほど言いました、公認会計士協会、公認会計士自身も護送船団方式だったという公認会計士の先生方の話もございます。その辺も含めてまた次に申し上げたいと思いますが、ただ、大蔵大臣、戦後五十年たちました。大蔵大臣は戦後政治の生き証人だと私は思って、いつかはいろいろ御指導いただきたいなと思うときが多々あります。しかし、その中において、五十年たっていろいろなほころびが出てきた。この制度自身も、今申し上げましたように、特定企業との永続的関係であるとか、監査法人の問題。  一緒にはなった。先ほどのトーマツの富田さんいわくには、大沢商会がつぶれたときの監査法人が太田監査法人、三光汽船がつぶれたときの監査法人は昭和監査法人、小さい監査法人だからだめなんだという、大蔵省の命令みたいなもので二つが一緒になった。そういうような形で合併、合併で監査法人は大きくなっていながら、実は、地域であるとか、旧の法人同士で独立採算を保っているとか、そういうふうな部分がある。  また、監査報告書自身、例えばアメリカにおきましては、ゴーイングコンサーンという形で一年間は大丈夫だよと。その結果として、大丈夫と言われるかわりに、失敗したら損害賠償を、先ほどの話じゃございません、株主代表から会社側に訴訟を起こせ、そういう監査をしたおまえたちが悪いんだからと。会社側がそれを起こさない場合には株主みずからが訴訟を起こすというふうな、国際的スタンダードとよく言葉を聞きますけれども、そういうふうなこともこれから問題点であるのではないか。  また、会計士協会独自にいろいろ、監査法人を監査しようとか、倫理の年間四十単位の規定をしようとかいうふうなことも進められていますが、いずれも努力目標であり、社内における監査役との連携というものも、なかなか公認会計士の先生、おれは試験を通ったんだという部分で難しい部分もあるんだと思うのですけれども、この辺の制度を含めて、今後の公認会計士のあり方、特に法改正を含めたこれからの議論ですとか、そういう方向性というものについて、大臣並びに事務当局としてはどう認識し、今後、先行き、そのことについては議論をし、法改正を視野に入れて進めていくのかどうかというふうなことは、お考えになっているのでしょうか。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たまたま私はちょうど五十年前に、我が国が占領下にありましたときに、CPAというものが誕生に至る経緯を私、大蔵省におりましたものですから、直接見ておりました。当時は、新しい、また非常に資格の難しい職業として誕生しました。  その後、最近のことを存じませんが、今細かいことをいろいろおっしゃいました、それも存じませんが、こういう情報というものあるいはディスクロージャーというようなものが非常に大事になりました時代になりますと、今までのあり方でそのままでいいということは違うだろうとおっしゃるのは、私は気持ちの上で同感できます。  そのことは、しかし、公認会計士協会なんかでも皆さんいろいろに議論をしていらっしゃるようでございまして、気がついていらっしゃらないわけではないように思いますけれども、おっしゃいますように、何十年か、ある意味で、護送船団とおっしゃいましたが、かばうというか、干渉しないというか、そういう行政があったことも私は事実であろうと思いますから、これから本当に、サーティファイド・パブリック・アカウンタントというものの責任というのは、あるいは監査法人の責任は、もう飛躍的に大きくなりますので、やはり今おっしゃいましたようなことは、御当人方も気がついていらっしゃるとは思いますものの、行政をいたします私どもも十分に考えておかなければならない。  具体的な事実は存じませんままに、御指摘のことについては共感をいたしております。
  48. 吉田治

    吉田(治)委員 ありがとうございます。  ただ、大臣、これだけはまた何かの機会で聞いていただきたいんですけれども、公認会計士の先生方に聞くと、やはりまだ大蔵省はお上なんですね。だから、法改正でお上に物申すというのはなかなか言いづらい。こんな言うたら怒られますけれども、まだこんな世界があったのかと感じる場合もあるんですけれども、その辺は、大臣、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。  金融機関の破綻に関しては、破綻前、破綻後の問題点、いろいろ指摘をさせていただきました。それと同時に、前回の総括でちょっと質問できなかった部分、質問をさせていただきたいと思います。  まず、医療保険。あのときわざわざ厚生大臣おいでですのに、短い時間でいっぱいしゃべるのがお得意と言ったら語弊がありますけれども、大臣、御説明がお好きだと聞いておりますけれども、今回もあと質問が多いということで、ちょっと御理解をしていただいて、数点、肝心なことだけ教えていただきたいのです。  あのときも申し上げました。大臣もおっしゃられました、平成十二年に向けて、三月に向けて抜本改革をされていくと。抜本改革の内容は、以下申し上げる四点ということで御理解させていただいていいのか。一点目、高齢者医療制度について、二点目が薬価制度について、三点目が医療制度自身について、そして四点目が供給体制と診療報酬体制、この四点でいいのかどうかということ。  そして、前回も、しつこい質問になるかもしれませんけれども、今回のこの特別措置というふうなものはつなぎの措置とされていますけれども、こういうふうな抜本改革の中でどのような解決策を大臣はお考えになられているのか、ちょっと簡潔にお願い申し上げたいと思います。
  49. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私ども、今医療改革を検討中でございますが、それは今委員の御指摘のとおりでございまして、一つは医療保険に関すること、その中を申しますと、今申されたように、診療報酬のあり方、それから薬価の問題、それからまた高齢者医療、特に老人医療制度ですね、それと診療提供体制の問題、この四点に絞られております。今それぞれ検討中でございます。  なお、これは十二年度から実施したいというように予定をいたしておりまして、なかなかいろいろ複雑な見解の相違その他もございますので、それらを鋭意調整して法案化したいなというふうに思っています。  それから、先般もちょっと簡潔に申し上げましたが、今回の予算で、薬剤費の一部負担を、七十歳以上の方を免除、免除といいますか、システムは変えませんが、国がかわってこれを負担する制度を七月から導入することにいたしました。これは、この前も申し上げましたように、医療関係者、党の中の意見等も踏まえ総合的に判断をしたもので、これは抜本改革までの経過的措置として位置づけして措置をいたしました。  抜本改革との関係でございますが、薬剤費の負担というものは、これは九年の九月に負担をお願いしたんですが、そもそもそのときにいろいろ議論がありまして、定率制で負担願ったらどうかとか、診療報酬の中の一部ではないのかというようないろいろな議論がございまして、まあ私としては、私見でございますが、十二年以降の改正の問題におきましては、その負担は定率制にした方が、より患者負担と明確になるし、いいのではないかなという感じは持っております。
  50. 吉田治

    吉田(治)委員 ありがとうございます。  ただ、大臣、私は、これは、政府・与党という議院内閣制のもとにおいて非常に心配しておりますのは、審議会でまとめられた薬価制度の改革案というふうなものを、例えば自民党の社会部会・医療基本問題調査会合同部会で厚生省が説明をしようとすると、説明すらできない状態だということがマスコミ等で報道されておりますけれども、本当にこれは十二年度中に改革が、与党の中でそういう状況で果たしてできるのかということ、これは担当大臣としてその辺を明確にしていただきたい。  と同時に、今、この薬剤一部負担軽減について、前回も質問をさせていただきましたけれども、一千二百七十億プラスの部分、波及措置というんですか、その辺の財源というんですか、どういうふうな内容でどういうふうな金額が使われる見込みなのか。そして、あのとき大臣御答弁いただきましたけれども、国の責任で措置するということは、これはもちろん保険者に迷惑をかけない形でやるということ。この辺の御確認というんですか、これをお願いしたいと思います。
  51. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員の御指摘は、特に先ほど四点の医療改革を申し上げましたが、薬価基準等について一応審議会の答申等もいただいておりまして、そのことを指されているようにも思いますが、全体としてもまだまだ本格的審議に党との関係では入っていないということでございますが、私どもとしては、やはりこの抜本改革は、一昨年、当時の社民党とさきがけの与党三党における与党協というのがございまして、そこで基本的な方向が合意され、それに基づいてずっと継続的に検討を続けてまいって、ことしその結論を得る段階にだんだん近づいておるわけでございまして、これは何としてもなし遂げていきたいというように思っております。  今四点について触れましたが、それぞれいろいろ議論の中身もございまして、特に薬価制度は一月七日の日に答申をいただいておりまして、何とかこれを合意にこぎつけたいと鋭意努力しておりますが、そのほかの点も今審議中でございますから、これらを踏まえてやりたい、こう思っています。  それから次に、高齢者薬剤費の一部負担問題でございますが、これは、先ほど申し上げましたように、予算編成過程におきまして、医療関係者等の意見等も踏まえながら我が党との間で折衝を重ねまして、総合判断をいたしまして、先ほど申しましたように、七月から七十歳以上の薬剤費を国が負担することにいたしました。  そこで、千二百七十億円という予算措置をいたしてございますが、これは、実は患者負担とか国の負担分とか、そういう直接的な軽減措置、国が肩がわりする分をとりあえず計上いたしました。そのほかに、やはり保険料とか地方公共団体の負担が予想されます、波及的な効果等による増も予想されますので、これらについては、昨年の予算編成の過程で確たる数値をまだ明確にできないということもございまして、この種の問題は精算的な補助になりますが、私どもとしては、保険料負担あるいは地方公共団体負担等々、保険者に対しても、そのほか地方団体に対しても一切迷惑をかけないという前提で、これは、大蔵大臣いらっしゃいますが、予算編成の過程で、大蔵大臣の折衝過程でもそのことを特にお願い申し上げまして確約を得ておりますから、これからの予算措置がどういう形になるかはともかくとして、責任を持ってこれはやらなけりゃならぬ、こう思っておるところです。
  52. 吉田治

    吉田(治)委員 それで結構でございます、国の責任で保険者に迷惑をかけないということで。  ただ、波及措置について金額を出していないというのですが、どういうわけか私の手元に、これは厚生省の資料らしいんですけれども、あるんですね。所要財源二千二百四十億。八百二十億が保険料、地方公共団体が百五十億、そして今大臣が言われた国、患者負担が一千二百七十億、足して二千二百四十億というふうな数字が出ているんですよね。  これは、ためにすると言ったら語弊がありますね、参考に、こういうふうになるんじゃないかという発想でいいんですか。それとも、どういうふうな意味合いを持って厚生省はこういうふうな数字を出されたのかということをお聞きしたいんです。
  53. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、薬剤費を国が負担することによりまして、受診率の向上その他が見込まれますので、それらを傾向値として推定したものだと思いますので、二千二百四十億というのは千二百七十億円を含めた数値として試算をしてございますが、これはそれで本当に確定できるかどうかという点はありますが、おおよそのめどをつけたということでございます。
  54. 吉田治

    吉田(治)委員 それだと大臣予算委員会質疑なんですから、こういうふうな数字もありますよと言っていただかなければ。大臣の先ほどの答弁でしたら、そういうのはできていません、知りませんという話だったわけですから、これはどういうふうに大臣としては私に対してお答えをいただけるわけですか。どっちが正しいんですか。
  55. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、委員が最初からそういう試算のことのお話を御提示いただければ、隠しも何もすることでございませんから申し上げたはずでございますが、ただ、不確定要素がありますから、私は最初の答弁で、そういう要素がある、それは精算的なものであるということを申し上げただけでございまして、別に隠すつもりでも何でもございません。
  56. 吉田治

    吉田(治)委員 大臣、大変失礼な言い方かもしれません。では、提起しなければ黙って過ごそうというふうに聞こえるんですよね、これは。申しわけないですけれども。  ですから、これは情報公開とか情報開示という問題が非常にある。特にこの問題はみんなぴりぴりしている問題ですよね。あのときの質問でも申し上げました。きょうは堺屋さんおいでではありませんけれども、やはり長期悲観という中でどうなるんだろうと。やはりそういう数字は、試算だけれどもという部分でこれから出すようにしていただきたい。それだけちょっとお約束をいただきたいと思います。
  57. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 可能な限りそのように措置をいたすつもりでありますが、さっき申しましたように、確定値でないという点と、それからやはり試算値でございますから、これはこれで決定額ではございません。そういう意味で申し上げたわけで、今後注意して、量的なめど等もお示しいたすことにいたします。
  58. 吉田治

    吉田(治)委員 それから、これは医療保険のみならず年金の話の中でも議論は出てくると思うのですけれども、果たしてこういうことを言うのかどうかという部分で適正かどうかわからないのですけれども、審議ですとかそういう検討の中で織り込まれていると思うのですけれども、老人というのは私は弱者だと基本的に思っております。しかし、経済的に言いますと、例えば可処分所得という部分で言うと、どうも六十歳以上と、三十代、四十代と平均値が一緒ではないか、果たしてというふうな部分もあると思います。その辺も織り込んだ社会保障制度の抜本改革というものをしていただきたいということだけを申し添えさせていただきたいと思います。  続きまして、貸し渋りという形でございますけれども、日野金融監督庁長官は一月二十七日、貸し渋りに関して、貸しかえについて、業務改善命令を四銀行、改善命令を一銀行、一信金になさったというふうに発言をされております。具体的にこの金融機関名とその内容について簡潔にお答えをちょうだいしたいと思います。
  59. 日野正晴

    ○日野政府委員 信用保証協会の保証つき融資に関して、不適切な表現を含む内部文書が作成されて支店に通知されていた四つの銀行、これは横浜銀行、青森銀行、福島銀行及び親和銀行の四銀行でございますが、一月十四日付で銀行法第二十六条一項に基づく業務改善命令を発出いたしました。一月二十九日にこれはそれぞれ所管の財務局に提出されて、今これが金融監督庁の方に向けて取りまとめ中と聞いております。  それから、もう一つの方のカテゴリーでございますが、これは信用保証協会の保証つき融資に関するものではございませんけれども、債権の管理、回収に関しましてやはり不適切な表現が含まれている文書を支店に通知していたということで、鳥取銀行、東京産業信用金庫の二つの金融機関につきまして、さきの四銀行と同じ一月十四日付で内部管理体制の強化等について、同じく銀行法二十六条一項に基づく業務改善命令を発出し、一月二十九日にそれをこちらの方で、また所管の財務局が受け取っているところでございます。
  60. 吉田治

    吉田(治)委員 そういうふうな形で、これは氷山の一角という言い方も随分されております。たまたまそういう文書が内部から出てきたということもあるのかもしれません。  それにつけても、一つありがたいなと率直に言えるのは、保証協会特別枠二十兆円ということをつけていただいた。しかしながら、総括審議の議論の中で随分大蔵大臣も、一月—三月期の経済の腰折れというんですか、悪化の懸念をされておりました。通産大臣、この保証協会の枠の再広がりというんですか、私の手持ち資料では二十兆円のうち既に十一兆三千三百億が、制度スタート、十月から十二月度で使われた。もう一月終わっていますので、多分数字はふえていると思います。  それともう一点は、それ以前に、政府系の三金融機関に関して特別枠という形で十二兆円。しかしながら、これが昨年の四月から十二月の段階では五兆七千六百億しか対応されていない。政府系三機関の融資条件というんですか、担保、人的担保、それから評価の部分が随分厳しいと聞いておるんですけれども、この辺についての、金をお貸しする方ですから、なかなか条件を緩和しろというのは言いづらいことですけれども、あえて申し上げますと、政府系……
  61. 中山正暉

    中山委員長 ちょっと吉田君。宮下大臣帰っていいですか。
  62. 吉田治

    吉田(治)委員 結構でございます。ありがとうございました。ついのめり込むタイプでございまして。  政府系三機関の融資についての条件の緩和というふうなもの、この辺については何かお考えを今お持ちか、御検討中か。この二点についてまずお答えをちょうだいしたいと思います。
  63. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 昨年十月一日から始めました保証協会の特別枠は、先生の数字は十二月末で締め切られた数字でございますが、最近参りました数字では、保証承諾は六十万九千件に達しておりまして、金額も十二兆三千億を超えたところでございます。したがいまして、用意いたしました二十兆のうち既に六割以上が使われている。大変これは各県とも努力をしてくださいまして、事務手続等も円滑にやっております。  もう一つの先生の御質問は、政府の三機関があるじゃないか、ここの貸し出しが意外に伸びていないなということでございますが、十年度の実績全体で申し上げますと、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫を合わせまして五兆七千六百億の融資を実行しております。これは、実際は、それぞれ独立した金融機関という側面もございまして、やはり審査等は適正にやらざるを得ないということでございます。  しかし、大蔵省も通産省もやはりこれらの中小企業三機関に対しましては、それぞれ中小企業が置かれている立場に対して親切、親身に対応をしていくようにということを繰り返し申しております。したがいまして、三機関とも、こういう経済情勢のもと、また信用収縮が非常に深刻化している状況の中で、中小企業に対しては特段の配慮を払いながら業務を運営する、そういう姿勢でやっているわけでございます。
  64. 吉田治

    吉田(治)委員 大臣、特段の配慮というのは、条件緩和という部分も視野に入れながらと理解してよろしいんでしょうか。
  65. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 条件というのは金利とか借入期間とか保証とかいろいろな側面があると思いますが、特別急に全部を緩めるというようなわけにはまいりませんけれども、それぞれの中小企業が置かれている立場にも十分配慮をしながら融資を実行していく、そういう親切、親身な態度でやるということは、三機関とも今徹底していると考えております。
  66. 吉田治

    吉田(治)委員 私、質問項目で「貸し渋りとペイオフ」というふうに書いたのは実は、これは大臣なのか両大臣かですけれども、この一千万という上限——まず最初に確認したいのは、二〇〇一年四月一日ペイオフは確実にするということ、これはいろいろ議論はあるでしょうけれども、するということはもう決められたことだということで、大蔵大臣、確認をさせていただいてよろしいんでしょうか。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 既定の方針を変えるつもりはございません。
  68. 吉田治

    吉田(治)委員 既定の方針を変えられないということでございますので、今、多分金融機関はそれに向けて必死。柳沢大臣が本当にいいことを言われたと思います。もうそういうふうに、二〇〇一年の四月一日でがたつくような金融機関は退場してもらうんだというふうなことを、記者会見でされたというのを私は記憶しておりますが。  ペイオフの中でもう一点、上限の問題を私は取り上げさせていただきたいと思います。  ペイオフは、大体個人資金、個人の預金ということが重きを置かれている。個人預金自身も、一千万に決まりました昭和六十一年以降からしますと、日本のGDPは当時三百三十九兆三千億が今五百四兆九千億、国民一人当たりにしましても二百七十九万円が四百万円、月間平均現金給与総額が三十二万七千円が四十二万円と、確実に個人資産もふえている中で、個人自身が一千万の上限で果たしていいのかどうかというふうな部分もあると思います。それとあわせて、企業の預金も一千万であるということは間違いないですね、ペイオフの上限は。うなずいていらっしゃいますから間違いない。あえて聞きません。  その場合に、大体、中小零細企業の取引銀行は、信用の分散を避けるため、どこか一行にする。大体、大手ではなく、銀行、信用金庫等通常一行に絞られていきますので、流動性預金も一行に集中しますので、大抵一千万を超える。中小企業にとっては二重の意味で、金融機関は大丈夫かなということと同時に、大抵一千万を超える流動性預金というものを置く場合にそれで大丈夫かなという意味で、二重に危険をヘッジしなければならなくなってくる。  実際上、これは大蔵省にお聞きしても、禁止されているからないよとは言われながら、取引銀行に対して借入金を起こした場合には、それの見合い預金というんですか、その分ちょっと、これだけ貸すけれどもこれだけは預金してよというのは、これは私は現実だと思うんです。そうしますと、この預金に対しても、ペイオフに関して危険を借り手がかぶることになる。  私は余り商売は知りませんけれども、しかしながら、中小企業等々、私の父親もやっておりますので聞きますと、通常、事業、商売を継続する上で中小企業は月商程度の流動性が必要であり、通常は預金であることを思えば非常に危険が大きい。柳沢大臣がはっきり二〇〇一年でだめなときには退場だという、それほどしっかりした金融機関になるのであれば、預金保険に預ける利率を高くして、ペイオフの金額を一千万とは言わず、上限を上げるという発想が中小企業対策においても必要ではないかな。  と同時に、貸し渋りということでいいますと、特に私どもの地元大阪においては、中小企業の町ですし、地銀、第二地銀というものが八行ございます。信用金庫もたくさんございます。信用金庫につきましては質問を飛ばしましたけれども、過去に破綻したところがどういうわけか二行でしかない。これはいい意味でとらえていいのか、業界の中で内々で処理しているという意味で悪意にとらえていいのかわかりませんけれども、しかしながら、こういう中小の銀行にとって、私の聞く話では、資金量の五〇%以上が一千万円以上の預金で占められている。  ですから、二〇〇一年に向かって、俗に言う信用力がちょっと乏しい、週刊誌等に出てくるような中小企業が三分の一ぐらいの預金引き出しというのは事前に考えられて、それに対する対応をしていくと、先ほどの一月—三月期、大蔵大臣もかねがね言われております貸し渋りというんですか、その間に優良中小企業、たしかこの議論を柳沢大臣がされていたと思います。いや、銀行も優良なところへ貸し出せと言うんですけれども、反対に銀行は優良なところからお金を引き揚げろというふうに今されている。  そうしますと、そういう中小の銀行は、二〇〇一年に向けて現状の三分の二の預金量で経営することが迫られて、それが貸し渋りに向かっているんではないかというふうなことを言われているんですけれども、このペイオフということの上限について、中小企業、中小金融機関のサイドから考えた場合に、企業預金等を含めて上げていくというふうなことが必要になってくるんではないかと思うんですけれども、その辺は、お考えはいかがなものでございましょう。やはりあくまでも一千万は一千万だというふうにいつまでもされるのかどうか、いかがでしょうか。大蔵大臣、お願いできますでしょうか。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今おっしゃいましたこと、歩積み両建てなんかも含めまして、きっとそういうことはあるだろうなとは私思って伺いました。  そこで、しかし、心を鬼にしてとまでは申しませんが、やはり企業は個人と比べまして金融知識というものはかなり専門的に持っているものでございますので、答えとしては、そういう中小企業等々に特例を設けるということは、全体としては結果は余りよくないんじゃないかなと思いますものですから、お話の雰囲気は何となくわかりますが、従来の方針を堅持させていただきたいと私は考えます。
  70. 吉田治

    吉田(治)委員 企業だけじゃなくて、先ほど個人の給与のお話も申し上げました。個人も確実に、今こういうデフレ景気の中においては預金をふやされているというふうな中において、やはり一千万というと、正直言いまして、今固めて預けた方が利率はいいですね、相対でございますから。個人の預金者と銀行の支店長か課長かと話をして、どう違うのかと。そうしますと、一千万で区切られますと困ったなと。おやじ、おふくろの金もちょっと集めて一緒に預金しようかとかいうふうな方向になると思うんですけれども、この辺は、大臣、ちょっと特段の御検討ぐらいはしていただけるようにお願いしたいんですけれども。  それと同時に、今大臣は企業の方はよく知っていられるというお話をされました。そうしますと、先ほどのような公認会計士、監査法人の問題、やはり情報というものがちゃんと開示されるということが私は必要だと思うんですけれども、これはお願いにさせていただきたいと思います、それは個人のことを含めていかがなものでしょうか。答えは一緒ですか、個人もやはりリスクを負えということで。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お話の雰囲気はわかりますが、ここはやはりあいまいなことを申し上げてはかえってよくないことになると思いますので、例外を設けるつもりはないというふうに御了解ください。
  72. 吉田治

    吉田(治)委員 例外ということをお願いしているんじゃなくて、全体的に金額を上げてくれという話でございますので、これは、今後のいろいろな経済の変化によって変わってくると思います。  それと同時に、国内問題のみならず、今スーパー三〇一条がアメリカで復活する。また、総括質疑の中にも、また本会議質疑にもございましたように、日米の鉄鋼摩擦というものが今随分話題になっている。  通産大臣、通産大臣はもう覚えていらっしゃらないと思いますが、私は、通産大臣が議員のときに一度、ちょうど日米構造交渉のとき、SIIのときですが、アメリカ人の新聞記者と一度訪問したことがあるんです。日本の国会議員でワシントンのこと、通商政策のことをよく知っている議員はだれだとアメリカの経済記者に聞かれまして、いろいろ調べましたら、これは与謝野さんだという。ワシントンの事務所長もやられた、ワシントンでは原発の著名なロビイストだったというふうにお聞きしましたので、それで、行って通訳をさせていただこうかと思ったら、通訳するまでもなく、非常に流暢な英語をしゃべられたというのを今でも記憶をしておるんですけれども。  その中で一点、通産大臣としてこれから通商問題に臨む態度というのは、やはり鉄鋼の問題、もう私が言うまでもなく、アメリカは、実は日本が集中豪雨だと言うんですけれども、数字のやりとりもあるでしょう、しかしながら、日本があの鉄鋼を売らなければどうなるかというと、アメリカの産業が成り立たないという現実があるんです。これを英語ではマーケットフォースと言うらしいんですけれども、やはりマーケットフォースに基づいた通商政策というか通商交渉というものが私は必要になるんではないかなと思うんですけれども、通産大臣のその辺の御覚悟というんですか、その辺をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  73. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 二国間の通商問題は、一つは二国間に横たわる国際的なルール、二国間が加盟している国際的な機関等による国際的なルールと、それからもう一つは、やはり政治として考慮しなければならないのは国民感情の問題でありまして、そういうものをバランスよく考えながら物事を解決していかなければならないものと思っております。  先生は今鉄鋼の問題を取り上げられましたが、日本側として、米国市場に鉄鋼を洪水的に輸出しようという意図は実はなかったと私は考えております。  たまたま、一九九八年度、米国の鉄鋼需要が非常に盛んでありまして、日本の鉄鋼会社、商社等にもたくさんの引き合いが参りました。引き合いが参りましたので、注文に応じておりました。この注文に応じておりましたのは、日本ばかりでなく、例えば韓国、ブラジル、ロシア等々も引き合いに応じておりました。  結果として、米国市場の中で日本が占める鉄鋼の占有率というのは、二%から四%までに上がったわけです。二から四というのは、見かけの数字としては大したことないのですが、二から四になったということは、倍になったというふうにも表現できまして、これに関しまして、かなり米鉄鋼業界あるいは政府、議会も大きな関心と懸念をお持ちになりました。  したがいまして、数次にわたりまして、米国側と公式、非公式にお話し合いをしました。幸いなことに、昨年の十一月、十二月ぐらいからは日本からの鉄鋼の船積みが自然に減るということがわかりまして、現在は、日本の鉄鋼の船積みというのは、米国のほとんど期待値どおりの減り方を自然に達成しているという状況で、そういうことはワシントンもよく最近おわかりいただいていると思いますので、私どもも感情的にならず、相手の国の立場を考えながら、しかし、WTOのルール等にもきちんと適合したような方法の中で、日米間に横たわる通商問題を解決していくということが我々の姿勢であるべきだと考えております。
  74. 吉田治

    吉田(治)委員 その中で、大蔵大臣、アメリカ通商代表部のフィッシャー次席代表がやってきて、外国人記者クラブでこうほざいたと言うたら大変失礼になるんですね、こういうふうにほえたと言うのも悪いんですね、こういうふうに意見発表をした。保険の業界への参入の問題、これはもう彼らにとったら自分の得意のええとこ取りになる、まあ、ええとこは大阪弁ですから、いいとこ取りになろうという部分があると思うんですけれども、大蔵省に話をしに行ったら、話も聞いてくれなかったと。実は、翌日、この鉄鋼問題に関して、鉄鋼課長がそこで話をすると、私は幾らでもこういうふうに話をしている、USTR、向こうの担当者ともしょっちゅうEメールでやりとりしているんだと。  やはり、この辺の態度の違いというのが、先ほど言いましたマーケットフォースというこれからの概念の中において、今の概念でもありますけれども、それではちょっとまずいんじゃないかなと思うんですけれども、まず、そういうのが来たときに会わなかったのは事実なのかどうか。  また、スーパー三〇一条をこの保険に対してはちらつかせておりますけれども、この辺について対応をどうされるのか。  そして、先ほどちらっとお聞きしましたけれども、私はかねがね思っておるのですけれども、大体諸外国を見てまいりますと、国内政治の権力闘争に勝ち残った人というのは、トップにつきますと、海外ではさまざまな活動をしていくというのが、例が多うございます。  日本におきましては、戦後大蔵大臣が見てこられたいろいろなリーダーがおいでになられると思いますけれども、どうも国内の、日本の権力闘争には勝つんだけれども、海外へ出ると、何か急に外務省だ何だの言うことばかりよく聞く人になってしまうなというイメージも、私は結構強いのではないかな。そうしますと、意見としては、日本の権力闘争と海外の権力闘争のスタンダードが違うんじゃないかという意見なども出てくるようになるんですけれども、最後のところで、保険の問題と同時に、戦後五十年の生き証人と言ったら大変失礼な話ですけれども、ずっと諸外国とのいろいろな関係を見てこられた先輩として、もう時間が余りありませんので、あと質問したいことが多いので、ちょっとだけコメントをいただければと思います。お願いいたします。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この話は大変いきさつの長い話で、一九九六年に実はさかのぼるわけなのですが、日米間に了解があって、第一分野、セクターと言っておるのですが、第一、第二のセクターを日本が完全に自由化をする、そうすると二〇〇一年には第三セクターも当然自由化しますよ、アメリカは、第三セクターを自由化してもらうことは本当は余り歓迎していないという実情はありますけれども、そういうことでお話ができている。  御承知のように、アメリカは役人がよく交代いたします。殊に、次官補クラスあるいはその次ぐらいはどんどん交代をいたします。日本側はそういうことがございませんので、こういう長い話になりますと、ちょっと、交代をする側に、そのいきさつを忘れたと申しますか、批判的であると申しますか、という場合がある。私は、これはそういうケースであろう。  したがって、このケースに関する限り、二〇〇一年には自由化しますよというのは今までの約束だ、日本側がそう言うのは多分間違いがないのですが、それはそれとして、会わないとか会うとかいう話は余りいい話ではないので、特定の今のセクターの話はもうできている、だから、保険行政一般についていろいろ話をしたいとかなんとかいうことであれば、それはもう断る筋の話ではない、そういうふうに申し上げておきます。
  76. 吉田治

    吉田(治)委員 戦後五十年の話はまた機会を改めてお聞かせいただきたいと思います。  そういう中で、通産大臣、産業構造をさまざま展開、改善していくという中で、昔は例えば構造不況業種カルテル特別法、過剰設備廃棄という形があったと思うんですけれども、これは独禁法政策の見直しの中でできなくなってきた。私は、そういうのは業界とかを見ていると必要ではないかなと思うんですけれども、ひとつ、日本の地場産業であり、またリサイクル産業という位置づけの中で、普通鋼電炉業の問題について、大臣、この産業構造というふうなものについて御所見を賜りたいんです。  御承知のとおり、スクラップを溶かしてまた鉄をつくるという、まさにリサイクルであり、地域地域、地場で行っている。企業数も四十四社あって、従業員が二万人もいられる。日本の粗鋼生産量の三割、アメリカにおいては四割を占めているこの普通鋼電炉業界ですけれども、まさに過剰設備という中において、カルテルもままならないという中において、通産省の指導というか考えとしては、業界で独自にやってくれというんですけれども、例えばこの中で、新規事業に出ていく場合であれば、長期の低利融資であるとか工場用地の活用に当たっての税の軽減措置であるとか、こういうふうな施策というのを誘導しやすいように、また産業構造を改善しやすいような施策というのを私は打っていく必要があるのではないかと思うんですけれども、とりわけこの業界に対してどういうふうにこれらの施策を打っていくのか。  特にダイオキシンの問題、先週、友党である公明党さんが参議院に法案を出されましたけれども、ダイオキシン対策法案という形になると非常に産業に与える影響がある。そうしますと、ダイオキシンは全日本の問題として考えた場合に、こういう影響のある産業においても補助金の交付というようなものも今後考えていっていいのではないかと思うんですけれども、この辺あわせて三点、いかがでしょうか。
  77. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 まず、第一点の独禁法改正の問題でございますが、簡単に申しますと、不況カルテル等の廃止については経済構造改革の一環として行われるものでございます。しかし、こうした経済構造改革の推進にあわせまして、セーフティーネットの整備も進める必要があるというふうに考えております。  次に、ダイオキシンについてでございますが、先生の御関心は、ダイオキシンに対する規制、そして電炉業界との関係についてどう考えているのかという御質問でございますが、現在、製鋼用電気炉については、大気汚染防止法において、ダイオキシンの排出抑制施設として指定されるとともに、排出の抑制に関する基準が定められているところでございます。  また、大気汚染防止法による指定を踏まえまして、普通鋼電炉工業会及び日本鉄鋼連盟において、平成九年十二月に自主管理計画を定め、平成十二年三月三十一日までにダイオキシンの総排出量を三〇%削減する計画を公表し、これに取り組んでいるところでございます。  一方、電炉業界は、鉄くずを原料として鉄鋼生産を行っておりまして、先生指摘のとおり、資源リサイクルの観点からも重要な役割を担っているものと私どもも認識をしております。  通産省としては、これまでもダイオキシンの排出抑制にも資する鉄くずの処理技術開発等を行ってまいりましたが、引き続き、科学的知見の充実と技術開発の動向等に応じ、必要な対策を進めるとともに、電炉業界が円滑にそれに対応するために何が必要かを検討してまいるつもりでございます。  なお、これに対するいろいろな助成等々につきましては、ダイオキシンということだけでなく、どういうことが考えられるかということを、もう少し研究させていただきたいと思っております。
  78. 吉田治

    吉田(治)委員 では、申し上げた長期低利融資であるとか税の軽減とか、そういうのを含めてお考えいただけるということで、イエス、ノーで結構でございます、いいんですね、それで。
  79. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 これは環境行政の推進ともかかわりますので、通産省だけでは決められないことでございますし、財政当局とも御相談しながら、こういうことも考えてまいりたいということでございます。
  80. 吉田治

    吉田(治)委員 ダイオキシンのみでなくて、産業構造転換全体ということで理解させていただきます。  もう時間がございませんので、残り三点、くくらせていただきます。大臣、大変申しわけございません、長いことお待たせして。  一点目は、雇用問題と賃金債権。前回、質問を積み残してしまいました。一点目は、雇用が厳しい中で、労働大臣の方で、雇用保険の期間延長でありますとか雇調金の早期運用、また、こういう経済状況が厳しい中で二〇〇一年に年金の支給年齢が繰り延べになるということ、これをちょっと変える必要があるのではないかというお話が来ております。これについてどういうふうにお考えなのかということ。  それから、法務大臣におかれましては、商法の改正の中で、企業倒産法制というふうなものがございます。企業がたくさん倒産していく、そういう中において、これは労働大臣のお答えになるのかもしれませんけれども、賃金債権、ILO百七十三号条約というのがございまして、前もちらっと申し上げましたけれども、倒産してしまったら、お金、債権として取れる順番が随分低い。それは会社に勤めていたんだから仕方がないという意見と同時に、やはり働いている人の賃金債権というものを確定していくというのが、今回、この企業倒産法の中において重要だと言われておりますけれども、その辺についてのお考え。  そして、建設大臣におかれましては、前回、自民党の伊藤議員の質問の中にも、公共事業の都市部の配分というものについて、いろいろ意見が出ておりました。まさに、単に公共事業というものは、よしあしを別にいたしましても、地方だけではなくして、交通渋滞等を含めまして、都市部への重点配分というものもこれから必要ではないかという中で、平成十一年度予算においてどういう配慮がなされているのか。  そして、私、毎年予算委員会で取り上げておりますが、ETC、高速道路の自動料金収受システムというのが、いよいよ九九年度末において運用がされると聞いております。その中において、今、私どもユーザーで言われておりますのは、首都高、また阪神高速等々では、実は回数券がありまして、回数券を買っておけば非常に割引率が高い、安く乗れる。では、こういうシステムが入ったら、それはもうバツになるのか。それだったら、ちょっと渋滞しても安い方がええわという声もある。それについては、どういうふうに調整をなされていくのか。  そして最後、自治大臣、大変あちらこちらで麻薬の件、御苦労さまでございました。  これは、本当は先ほどの公認会計士のところで、外部監査制度についてお答えをいただきたかったんです。実は、公認会計士さん、弁護士さん、税理士さん、三千三百の市町村に関して、今度外部監査制度が入る。公認会計士さんの業界からすると、これはいい商売のネタがと言うたら怒られますね、できた。それで、一生懸命頑張って走り回っている。弁護士さんは、余りそういう政治的なものを使わない。これは各議会が決めるということで、いろいろな議会でそれぞれ動きがあるやに聞いておりますが、これの指針であるとか、実際何ぼ外部監査制度について各自治体は予算化というのですか、大きさによるでしょうけれども、あるのかということ。  そして最後、大阪、特に私どもの地元、委員長も近くに住んでおりますのでお気づきだと思うんですけれども、特にホームレスの問題。  大阪市の実態調査におきましては、平成十年、昨年の夏ですけれども、八千六百六十人。冬柴議員の質問の中で、あいりんの問題がありました。あいりんの中は一千百九十一名でございます。翻って東京に目を向けますと、これは調査の仕方が違うので一概に言えないのですけれども、二十三区内は四千三百人しかいないというのか、四千三百人もいるというのか。大阪でしたら、来ていただいたらわかりますけれども、大阪城へ行ったら、テント村なんですね、青いビニールテントで。私の家内、久しぶりに二人で散歩しますと、きょうは何かキャンプの大会があるのかというぐらい、たくさん住まれている。  これについて、地方自治体、大変御苦労されている。予算を出されたけれども、ちょっと今回は認められなかった。また、権限の部分でも、こういうふうな権限が欲しいんだけれどもということを国に対して要望もされていると聞いております。どこの省がこれをこれから担当されるかわかりませんが、まず一番最初に窓口になる地方自治体をまとめられる自治大臣としてのお立場で。  失礼ですけれども、それぞれ大臣、いろいろ申し上げた点、御質問にお答えいただければと思います。
  81. 甘利明

    ○甘利国務大臣 まず、賃金債権の順序を上げるということでありますが、これは、今私はずっと、法制審議会で議論ができないかという問題提起をしております。  ただ、法制審議会にも限界があるようでございまして、法務大臣とも打ち合わせしておりますが、そこでできるのが微調整だとしたら、いずれにしても、できることはやってほしいと。できないことについて、国税徴収法とか、あるいは民法、商法にかかわるような問題について、それぞれの所管官庁間でどういう話し合いができるか、その場を設けたいというふうに提言したいと思っております。  それから、雇用保険の延長に関しまして、これは現在もいろいろな延長制度がありますから、これをぜひ活用していただきたい。  それから、教育訓練に関して、ホワイトカラーを中心に充実をしましたので、これも幅を拡大して対応できるようにしておりますので、ぜひこの制度を活用していただきたいということであります。
  82. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 それでは、簡潔にお答えいたします。  今委員が御指摘のように、企業が倒産した場合には、賃金債権、一般の取引債権、租税債権等でその優劣が問題になるわけでありますけれども、これは今何で決まっておるかと申しますと、民法の三百六条の賃金債権の先取特権、それから、民法三百八条の六カ月間という規定があります。しかし、その後に実体法がいろいろつくられまして、国税徴収法、地方税法というようなこと、また保険に関する法律等で、先取り権が後からかけられておりますので、優劣がそこで決まっている。  倒産法制は、基本的には、そうした賃金債権と一般債権等の優劣が現状の実体法で決まっているものに合わせて手続をつくっていくものでございますので、倒産法制の中で、この優劣そのものを論じるものではございません。  そこで、今労働大臣から、これの調整が必要であり、それを検討する必要があればその場をつくるというお話がございました。そういうことがあれば、法務省も協力してまいりたいと思っております。
  83. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 答弁の前に、私も二十数年国会におりますけれども、こういう、質問を全部固めてやっておいて時間内に答弁さすというのは、なかなかずるい、うまい考え方だな、やはり時代は変わっておると驚いております。  それで、私への質問は二つでございますが、都市部におきます公共事業に重点を置くようにというようなことでございますが、いずれにいたしましても、国といたしますれば、これは都市部、地方部というのを問わず、国民の豊かな社会を実現するということで公共事業を進めておるわけでございます。確かに、ここ一、二年といっていいんじゃないかと思いますが、都市部の方々先生方のそういう動きが非常に大きなものになってまいりました。それだから都市部に云々という意味ではありませんが、そういうようなことで、既成市街地の有効活用に資する整備事業、例えば街路整備事業や密集市街地対策等々につきまして進めていきたいと思っております。  それからもう一つ、ETCの件でございますが、今、現在は、割引の種類は七種類ございますが、そういう割引制度を勘案しつつ、このETCにいたしますと、個々の利用者の利用実績を正確に把握することができる、そういう特性もございますので、そういう観点から合理的な割引制度を考えていきたいと思って今準備をいたしております。
  84. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 大きく二つのポイントについての御質問があったと思います。  地方公共団体に対する外部監査制度関連する問題ですが、これはもう御指摘のとおり、平成九年の改正で導入されたわけであります。弁護士、公認会計士あるいは税理士、そういった方々が、専門的な立場から、独立性を持って外部監査をやろうというシステムを導入したということで、これによって、地方議会あるいは監査委員によるチェック機能、これと相乗効果をもたらして、適正な運営が確保されるようにという期待感を持って導入されたわけであります。  先行的に平成十年度から導入するというのが、北海道、山梨県、それから広島県、この三団体と報告を受けております。平成十一年度から、都道府県、指定都市、それから中核市に義務づけをするということでありまして、それに向けてそれぞれの団体が今鋭意検討を加えておるという段階でして、まだなかなか全国的に集計的なことはできかねておるというのが現状であります。  それからいま一つ、ホームレスの問題でありますが、これは確かに頭の痛い問題だと思います。  いろいろな方面が絡んでおるわけでありまして、これまで福祉事務所での相談援助とか職業紹介等の取り組みがなされてきておるわけですが、福祉、あるいは就労、医療、さまざまな面から総合的な対応が必要だろうとは思います。ただ、一方で、この問題は治安の悪化ということとも関連をしておりまして、ただ単に、そういうような親切な側面からのアプローチだけでは済まない問題もある。特に、公共施設についての管理責任という立場からもきちっとした対応も一方で必要だろうというふうには思います。なかなかこれは厄介な問題でして、そういう点で。  この点は、特に大阪がこのところ急増しておるというところもあって、一度ゆっくり具体的に私自身も話を伺ってみたい、そういうふうには思っております。
  85. 吉田治

    吉田(治)委員 もう終わりますけれども、柳沢大臣、せっかくおいでですから、ペイオフ、二〇〇一年四月、もう既定の方針どおりということでいいんですね。一言言ってください、せっかくですから。
  86. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先ほど宮澤大蔵大臣の御答弁なさったとおりでございます。
  87. 吉田治

    吉田(治)委員 ありがとうございます。終わります。
  88. 中山正暉

    中山委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十三分休憩      ————◇—————     午後零時三十分開議
  89. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大野由利子君。
  90. 大野由利子

    ○大野(由)委員 インフルエンザウイルスが大変な猛威を振るっているということで、報道によりますと、ことし冬、既に少なくとも九十六人の方が亡くなられた、こういう報道があって大変心配をしているわけでございます。昨年は、何か百二十七万人、この十年間で最多の百二十七万人の人の発症があった、こういうことでございますが、厚生省は、ことしの冬どれぐらいの規模になると予想をしていらっしゃるのか。  それからまた、乳幼児に脳症とか脳炎を発症することが多くて、高熱が出て意識障害を引き起こして死亡することもある、また脳性麻痺などの後遺症を残すこともある。こういうわけで、なぜインフルエンザウイルスが脳症や脳炎を引き起こすのかという、この辺もまだよくわかってないようでございますが、この辺の研究調査、治療に力を入れていただきたいと思いますし、厚生省としてこの問題にどのように取り組まれるのか、お伺いしたいと思います。
  91. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 インフルエンザの疾患の発生患者数と推移でございますが、これは二つばかり視点がございます。  一つは、全国の小中学校等を対象としたインフルエンザ様疾患発生報告というのがございますが、それによりますと、大体今までのところ平年並みの動きではないかと言われております。また、ちなみに数字を申し上げますと、患者数でいきますと、ことしの冬は今まで三万一千件でございます。昨年の冬、累計でございますが、七万四千件くらい。過去の平均でいきますと、五万一千くらいの実績を示しております。  そんなことで、もう一つのアプローチの仕方は、全国約二千四百の小児科と内科の定点医療機関を対象といたしました感染症発生動向調査というのをやっておりますが、その結果によりますと、インフルエンザ様疾患発生報告数は、現在、例年よりやや多目であるという推移をたどっているようでございます。  これらのことから、今後のインフルエンザ疾患の患者数がどれだけふえるかを予想することは難しい点がございますが、例年の傾向をたどれば、今後、二月の中旬に向けて患者数が増加することが予想されております。  さらに、委員指摘の全国的な流行に伴って発生したインフルエンザに関連する脳炎、脳症でございますが、これは、昨年の七月に実施しました研究班の調査報告によりますと、全国で百人から二百人死亡しておると推計されております。  今後の状況につきましては、都道府県関係部局に指示し、一月から三月の三カ月間で、全国の医療機関を対象とした悉皆調査を実施中でございますので、そうしたことを含めて、その報告も申し上げたいし、対応をしていきたい、こう思っております。
  92. 大野由利子

    ○大野(由)委員 インフルエンザワクチンの予防接種が大変効果がある、こういう意見がございます、効果がないという意見もあるわけですけれども。大体五千円から六千円かかるということで、若い世帯にとっては大変な負担がある。何とかインフルエンザワクチンを保険適用にできないものか、予防だから難しいということなのかと思うんですが。もしくは、高齢者、子供、乳幼児に対しては公費負担で受けるというようなことができないかどうかについて伺いたい、このように思っております。  かつて、このインフルエンザワクチンが学童を中心にして公費負担で行われていて、いろいろ後遺症の問題があったものですから、その後、保護者の判断ということで義務化が外された。そしてまた、その後、予防接種法の改正で公費負担もなくなった、こういう経緯があることは私もよく承知をしております。  ですから、義務化するという必要はない、このように思うんですが、老人ホームだとか保育所だとか、そういうところで、子供たちとかで希望する人は公費負担でワクチンを受けられるとか、その辺が必要ではなかろうか、このように思いますが、御意見を伺いたいと思います。
  93. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 インフルエンザの予防接種の費用負担のあり方というのは、やはり予防接種制度全体のあり方と深く関係しております。  いろいろの審議会、公衆衛生審議会等で検討をいただきまして、昨年の十二月に中間報告をいただきましたが、この中でも、インフルエンザ等の四疾患、これを、対象疾患のあり方についての議論を踏まえてさらに検討すべきじゃないかというようなことが言われております。  確かに、御指摘のとおり、平成六年以前、学童につきまして、これは強制接種でございまして、国の勧奨に基づくものでございますので、公費負担を実施した経験がございます。  そんなことで、これからも、やはり予防接種の有効性というのはあると存じますので、さらに、委員のおっしゃられたように、必要な、希望される方にはそういう接種ができるような体制は築いていきたいと思います。
  94. 大野由利子

    ○大野(由)委員 この冬、間に合うんでしょうか、大臣
  95. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ことしの冬のワクチンにつきましては、百五十万人分のワクチンが生産されております。  ことしのインフルエンザの特色は昨年のA香港型が主流でございまして、B型、Aソ連型というのがございますが、昨年と大体同様な種でございますので、大体それに合わせて百五十万用意してございますから十分対応できるんじゃないかと……(大野(由)委員「公費負担も間に合う、一部」と呼ぶ)  公費負担の点は、公費負担すべき人たちにはもちろんいたすつもりでございます。
  96. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひ、この辺、よろしくお願いをしたい、このように思います。  それから、子育て支援の立場から伺いたいんですが、私も、三十年近く前になりますが、子供が突然発熱をいたしまして、本当に慌てふためいておたおたしたという経験がございます。その上、若い世帯、結婚して間もなくです、もう財布の中のお金も本当に乏しいということで、医療費にも大変やりくりも苦労する、そういうことがございました。  そういった観点からも、私は、子育て支援という意味で、三歳未満の医療費は無料化すべきじゃないか、このように思うわけです。既に、地方自治体では、単独でやっているところがいろいろふえてまいりました。しかし、いまだに全くやってない、そういう地域もございますし、私は、これは地方任せじゃなくて、国が乗り出して、本当に医療費が大変負担になっている若い世帯、三歳未満の医療費の無料化に国もこの事業に踏み出すべきではないか、このように思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  97. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 医療費につきましては、医療を受ける者と受けない者との均衡という観点は、当然これはなされなければならない、それが原則であるということは、申し上げるまでもございません。  その上で、国としては今、難病の子供とか未熟児、障害児といった手厚い援護が必要な児童の疾病につきましては、公費負担を実施しているのは委員の御指摘のとおりでございます。予算的にも、慢性疾患の難病の子供たちに九十七億円くらい、それから、未熟児医療で十六億円、育成医療等で十七億円くらい十一年度予算でも計上をいたしております。  したがって、乳幼児医療費一般につきまして国として新たな特別の対策を講ずることは、現在のところ考えておりませんが、各市町村でも公費負担をやっているところもございまして、これからいろいろ少子化対策等の絡みもございますから、中期的には検討すべき課題ではあろうかというように思っております。  なお、先ほどのワクチンの公費負担につきましては、先ほど検討会の話もちょっと申し上げましたが、本年の六月中くらいまでに結論を出したいということでございますので、補足させていただきます。
  98. 大野由利子

    ○大野(由)委員 三歳児未満の医療費につきましてもぜひ御検討をお願いしたい。各地方自治体でやっています費用を伺いましても、そんな大きなお金じゃございませんので、これは子育て支援という観点からぜひお願いをしたい、このように思います。  それからもう一つ、小児科医が今非常に不足しているようでございまして、当直医、緊急医というと外科とか内科医。ですから、やはり小児科というとちょっと違いまして、急な発熱や呼吸困難等々、一般の内科医ではとても対応ができないということで子供がたらい回しになって、そして、もっと早く手を打てば治るものをというようなことがございます。  この小児科医、手間がかかって大変で、どうしても希望者はほかの内科とか外科に向かうような状況があるようでございますが、厚生省としてこれは対策を考える必要があるんじゃないか、こう思いますが。
  99. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 小児の救急医療体制の強化というのは大変重要な課題でございます。厚生省でもいろいろ検討会を設けまして、そのあり方について報告を受けております。救急医療機関の機能分担に基づきまして、初期救急医療機関を支援する体制をつくることが望ましいということが報告されております。  厚生省としては、この報告を受けまして、すべての二次医療圏に夜間と休日に小児科医を確保して、小児の救急医療に当たる医療機関を支援する体制をつくるために、小児科医等を確保する費用の一部を補助する新たな事業を十一年度予算に計上しているところでございます。  ちなみに、この小児救急医療支援事業というのは新しく設けたわけですが、これは、休日、夜間の小児科医に対する市町村事業に対しまして国が三分の一補助をいたします。そして、小児科医と看護婦のその当該日における人件費等の補助をいたそうとするもので、二億五千万円を計上して、新しく体制を充実しようとしておるところでございます。
  100. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひ積極的な支援をお願いしたい、このように思います。  薬学教育の六年制の問題で厚生大臣と文部大臣に伺いたいんですが、薬剤師は、医薬品の適正使用を初めといたしまして、患者とか医者への情報提供、また助言等々医療人としての高度な専門知識が要求される、こういう大変な変革のときを迎えているわけでございます。医薬分業も大変進展をいたしまして、今全国平均で医薬分業率は三〇%を突破し、また五〇%を超えている県も二県ある、このような事情のようでございます。  薬剤師の資質の向上と申しますか、単なる薬を対象とした基礎薬学だけじゃなくて、生身の人間を対象にした臨床薬学とか、また医療薬学というものが大変ウエートが大きくなってきている、こういう状況でございます。  厚生省は、平成六年の六月に薬剤師養成問題検討委員会で、今世紀中に六年制延長を実現するよう検討を進めるべき、こういう中間報告を行われたわけですが、その後の進捗状況について伺いたいと思います。
  101. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員の御指摘のように、医薬分業の担い手として薬剤師の役割は極めて重要でございます。  平成六年の今御指摘委員会の結果を踏まえましてその後検討してございますが、この検討委員会の報告では、薬学教育の年限延長につきまして、大学院の整備等大学の受け入れ体制の整備、あるいは病院等の実務実習のための受け入れ体制の整備、それから大学院に進まない薬学士の取り扱いといった課題もあわせて必要であるということが指摘されております。  こうしたことから、平成八年度から、文部省と厚生省、関係団体によります薬剤師養成問題懇談会というのをつくりまして、六年制移行に係るこれらの諸課題を含めまして、病院での実務実習の充実方策や、それから生涯研修の充実方策、大学院修士課程の充実方策等について幅広く検討を進めておるところでございます。  今後とも、関係者の合意形成を図りながら薬学教育の改善に努力したい思いますが、なかなか、いろいろ各面の調整も要する問題でございますので、鋭意検討を進めておるというのが現状でございます。
  102. 大野由利子

    ○大野(由)委員 文部大臣に伺いたいと思うんですが、今厚生大臣からこういう御答弁がございました。また、世界の各国を見ましても、アメリカの薬学教育も、かつて五年制、六年制とあったわけですが、六年制に一本化されるようになって、二〇〇〇年十月の入学生からは六年制のみということが一九九二年の段階でもう決められている。イギリスも、一九九七年の入学生から四年制に教養時代を入れると六年制がもう適用されている。そのほか、フランスとかオランダとかタイとか、六年制をとっている国がふえてまいりました。教育年限の延長の動きが世界的にある。  日本は、先進国でもあります、経済力もあります、教育、科学立国でもあります、国民の進学熱も非常に高い、そうでありながら、日本はなぜまだ決まるところまでいかないのか。さっき私申しました、今世紀中に実現するように検討するということを言いながら、確かに検討はしていただいているんでしょうが、まだ決定するところまでいっていないというのは、何が一体ネックになっているのかを伺いたいと思います。
  103. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 確かに、薬学を勉強する方たちの資質向上、特に薬剤師の資質向上が非常に大切だということは、私どももよく知っているわけであります。  今の御質問の点に少し入りますと、どこでネックなのかということだろうと思うんでありますが、現在、大学院ということを充実しつつあります。薬学教育の年限を現時点で直ちに延長することが非常に難しい問題は、その大学院の現状だということを申し上げておきたいと思います。  大学、大学院の現状、両方合わせまして、平成十年度現在、薬学部の入学定員は七千七百二十人であります。大学院修士課程の入学定員は千六百四十一人、すなわち学部定員比の中で二一%にすぎないということが一つ問題でありまして、六年制にするためには、まず、大学の教員、施設設備等の整備を急いでやらなければいけない。そういうことにおきまして、膨大な投資を要するかと思います。そういう点で、現在のところ、なかなか難しい状況であります。  それからもう一つ、私も、何も薬学の方たちだけじゃなくて、一般に大学で勉強する人々が現場で実習することは極めて大切だと思って、常にそういう主張をしている者でありますが、特に、病院等での実務実習を充実していくことが薬学教育の上で大変大切だと思っております。  六年制にいたしますと、六カ月間の実習、実務実習を前提としておりますが、当面の目標である学校や薬局での一カ月実習、一カ月の事務実習につきましても、現在、実施大学は十三大学、千百三十五人、学部定員の中で一五%程度にとどまっておりまして、もっとも、平成九年でありまして、十年は少しふえたかもしれませんが、円滑な実務実習の実施について一層努力をしていかなければならないと思っています。  また、もう一つ問題点は、大学院を修了した、すなわち六年勉強した人々の、修士を取った人々の需要でございます。  平成九年三月に修士課程修了者は千五百九十四人ありましたけれども、病院、薬局に就職した者は二百八十四人、一八%程度でありまして、医療現場の需要動向を踏まえる必要があると思っております。  こういうことをあわせまして、学部カリキュラムの改革や大学院の整備を充実することをまず推進しなければいかぬと思っております。その進捗状況や医療現場の需要の動向を見ながら、薬学教育の充実について、教育年限の延長も視野に入れつつ、引き続き検討してまいりたいと考えております。
  104. 大野由利子

    ○大野(由)委員 さまざまな困難が大変ある、これはもう当然予想されることでございますが、私は、もう少し国としてどういう方向を目指すのかということを当然、文部大臣、大変期待を受けて文部大臣になられているわけですから、明確な方向をぜひ指し示していただきたい。  これは、単なる薬学教育だけじゃなくて、日本の将来の医療改革の抜本的な改革につながる問題でございます。単なるそっちの進む人たちの教育の問題だけという問題ではございませんので、ぜひこの問題は、今いろいろ大学院の問題でもお話がございました。私は、六年教育、最初からそれが無理であれば、四年制とプラス二年大学院、大学院卒業の段階で薬剤師の国家試験の受験資格が得られる、そういうふうにまず改革をする、そしてその後六年制に移行するというような段階を踏んで移行するのもいいのではないか。だから、薬学部を四年、卒業したときは薬学士、単なる薬学士であって、薬剤師の国家資格を得られるのはマスターを卒業して得られる、そういうふうに改革を途中の段階としてやるというのも一つの方法だと思いますし、これは、私は国の方向としてもっと積極的にぜひ取り組んでいただきたい。  先ほど、膨大な投資が必要だ、こういうお話もございました。確かにそうだと思います。しかし、これからの日本を担う人材の問題、国のありようの問題ですから、膨大な公共投資をそっちの方へ向けていただきたい、こう思うわけです。  そしてまた、個人個人の学生にとっても、きょうは私、後で時間があったら質問したいと思っているんですが、高校、大学へ行けば、薬学の学生だけじゃなくて、進学したい人は全部自分で奨学資金をもらって、そして勉強する、卒業したら自分で働いてお金を返す、そういう自立した学生というものをつくっていかなきゃいけない。そう思えば、今、一部薬科大学の経営者の中には、六年制になると学費が高くついて生徒数が減るんじゃないかということを心配していらっしゃるような向きも伺いますけれども、私は、学生の方には、そういう奨学資金、低利の奨学資金も少し拡大されたようでございますが、無利子の奨学資金をもっと思い切って希望者全員に、親の収入とか本人の成績関係なしに借りられる。返還率は九八%ですから、利息分だけ国が負担すればいいわけですから、その辺の無利子の奨学資金拡大というものもあわせてぜひ御検討をお願いしたいと思うんですが、その点についての御答弁を。
  105. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 大変重要なポイントを御指摘くださいまして、ありがとうございます。奨学金というのは極めて大切だと私も思っております。余計なことを申し上げますけれども、私自身が高等学校、大学を卒業できたのは、奨学金のおかげだと思っております。  ただ、今の御指摘の点、できる限り大勢の者に奨学金をという御希望でございまして、これも非常に重要なポイントだと思っておりますけれども、今のところ、財政状況を考えますと、なかなか全員ということにはまいりません。しかし、ことしは予算要求の中で、まず第一に、無利子の人々も相当数ふやしていただく。例えば、大学院でありますと三千人ふやす、それから大学の学部ですと千六百人ふやすことをお願いいたしておりますし、特に、有利子になりますと十万人を二十万人と倍増計画を立てておりますので、努力をしているということについてひとつ御評価賜れれば幸いでございます。
  106. 大野由利子

    ○大野(由)委員 国が学生の奨学資金として実質持ち出しで使っていらっしゃるお金は、幾らになりますか。返ってくる分は除いてです。
  107. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 少し詳しく申しますと、まず、無利子事業のための政府貸付金九百五十三億円、有利子事業にかかわる利子補給金が約百三億円、それから、貸し倒しがございますので、貸し倒しに対する償却費を含めた日本育英会に対する補助金が約七十九億円、それから日本育英会への出資金が三十七億円というふうなことでございまして、これにまた有利子事業に対する千四百九十億円ということで今お願いをいたしております。全部合わせまして三千七百八十一億円、これが奨学金の予算でございます。
  108. 大野由利子

    ○大野(由)委員 お話を伺っていますと、要するに、戻ってくる元金を除くと、利息分というのは大体百億単位のお金ですよね。大したお金じゃないんですよ。本当に私は、そういう意味で、ぜひ、細かいことはちょっと時間もないので省略いたしますが、今、子供を大学生二人東京に下宿させて行かせれば、親は年収の半分を持っていかれちゃうとか、こういう状況であってはとてもとても。私は、本当に思い切ってこの辺についても予算を組んでいただきたい、こういうふうに思うんですが、大蔵大臣もちょっと一言、御所見いかがでしょうか。無利子の奨学資金にもっと国の予算を組んでいただきたい。
  109. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 ただいま申し上げましたように、全部で四千億程度の総予算でございまして、そして、先生の御指摘のようにあらゆる人に全部出そうとしますと、約三兆円要るかと考えております、全体で。ですから、そういう意味で、やはりかなり大きな予算をふやさなきゃならないかと思っております。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 全体の問題として、文部大臣がいろいろお考えくださって、どうしてもこういう結論になるということをおっしゃればまた考えなければならぬなと思います。
  111. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今三兆円というお話もありましたけれども、財投を使うこともできます。ほとんど不良債権にならないで奨学資金はきちっと戻ってくるわけですから、そういう意味では、本当に必要なお金はごくわずかでございますので、国の大変な次の時代を担う子供たちの育成、国を担う人たちのためですから、ぜひその辺はまた御検討をお願いしたい、このように思います。  それから、介護保険につきましてどうしてもちょっと伺っておきたいことがございます。  今、介護保険、いろいろ認定基準とか基盤整備とか財政基盤とか、多くの課題が指摘をされておりまして、保険あって介護なしとか、第二の国保になるのではないか、いろいろな心配をされているわけですが、一つ、今医療保険は、高額療養費というのは個人で六万三千六百円が限界で、それ以上はとても個人負担ができないというので高額療養費制度というのがあるわけですね。それで、介護保険の方はそれがどういう額でどうなるのか、まだ明らかになっていないようでございます。一応高額サービス費制度というのを設けようというお考えのようですが、それがどの額になるのか。  それから、もう一つは、今までは医療保険一本でしたから六万三千六百円までの負担でよかったんですが、これから両方にかかるようになれば、こっちが六万円、こっちが六万円、両方ともその制度が使えないわけですね。だから、両方足すと、両方で十二万円自己負担しなきゃいけない、こういうふうになるわけです。これだと、もともと介護保険というのは医療保険が担っていた分を一部介護保険に分けて二つの制度に分けたわけですから、二つを合併して本人の個人負担の限度額を決めるべきだ、こういうふうに思うんですが、この点についていかがでしょうか。
  112. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 高額介護サービス費につきまして、利用者負担の上限額を設定した方がいいということでありますが、今御指摘のように、健康保険制度の中で高額療養費を認めておりますが、それとの整合性を図らなければいかぬということと、それから、介護が長期にわたりまして継続して行われるサービスであるという介護の特質性等を踏まえて、今検討しております。  具体的には、所得が一定水準以下の方につきましては、通常の負担上限額よりも低い額を適用するということにしたいと思っておりますし、それから、負担上限額の設定に当たりましては、健康保険制度等の高額療養費における、過去一年間に三回以上高額療養費の支給を受けている場合、これは継続してそういう高額療養費を受けている場合の自己負担上限額の特例との均衡を考慮する必要もあろうかと思って、現在検討中でございまして、これらについても、なるべく早く決めることが必要でございますが、審議会の検討等の結果を待って、本年の中ごろまでにはお示しをしたいと思っております。具体的な額については省略させていただきますが、健康保険、国民健康保険等のバランスを考えながらやっていきたいと思っております。  なお、委員指摘の医療保険の自己負担と合算した形で徴収できないのかということでございますが、医療保険と介護保険は、それぞれ保険者がもちろん違いますし、実施主体が一致しないという点がございますので、これは統合が全く不可能かといえばそうでないかもしれませんが、かなり事務処理上問題がございますので、私どもは、今、合算することは考えておりません。
  113. 大野由利子

    ○大野(由)委員 合算して徴収をしてほしいという意味ではなくて、上限額を、合算して幾らと、そういうふうに合算しての上限額を決めてほしい、そういうことなんですが、もう一度答弁をお願いします。
  114. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 そういうことも含めまして検討をさせていただき、中旬までに決定をさせていただきたいと思います。
  115. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひ御検討をお願いいたします。  それから、今特養ホームとか老人保健施設に入所されている方に五年間の経過措置がございます。介護保険で施設入所に該当しないという意味ですね、施設入所の認定基準から外れた場合ですが、出ていってくださいとは言いませんよ、五年間は経過措置を設けますよ、こういうことなんですが、該当しない人、五年間はいいですよとは言いながら、しかし、この旧措置の入所者に従来どおりの介護報酬が計算されるのかどうか。  これが従来どおりの介護報酬ではなくて、施設介護サービス費が支給されるそうなんですが、従来よりもぐっと額が減ったら、結局、経営者の方は、老人ホームの方は、この人を預かっていると経営が成り立たないからともかく早く追い出そうというふうになるのは、もう目に見えているわけです。今も病院は三カ月ごとにお年寄りがたらい回しにされているという実態がありますね。それと同じように、今老人ホームに入っている人が、実際には全部追い出し、結果的には追い出しになるのではないか。  そういうわけで、入っている人も非常に不安に思っていますし、老人ホームの経営者等も、これから経営がどうなるのかということを大変不安に思っているわけですが、この辺、五年間の経過措置はきちっと守られる、そういう御答弁をいただきたいと思うのですが、ぜひ御答弁をお願いします。
  116. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 特老等に入所している方が、五年間に限り、今度の新しい介護の基準で要支援とか、あるいは自立、介護を必要としないと認定された者も、五年間については要介護者とみなして介護保険給付の対象とする経過措置を法律上規定されているのは、御指摘のとおりでございます。この旧措置の入所者にかかわる介護報酬の額につきましても、入所者の要介護度に応じて算定することを基本として、予定いたしております。  その具体的な区分や額につきましては、特老の運営に対しまして、全体として重大な支障を来さないように配慮をしつつ、審議会の審議を踏まえながら検討するということでございます。これは、今委員の御指摘のように、いわば今の措置費は入所者の要介護度を問わず一律に算定してございますから、入所者本人の給付は低下することはないと思いますけれども、ただ、経営上の問題として、今委員の御指摘のように、経営が悪化すればそういう追い出しの問題ということが予想されないこともございませんので、そういった点は十分配慮しながらやってまいりたいと思います。  それと同時に、五年経過後に非常に不安感をお持ちだと思いますので、訪問介護等の在宅サービスの供給体制の整備を図って、受け入れ体制の方もきちっとしていかなければなりません。そのために、軽度の費用でできるケアハウス等の整備、これはゴールドプランでもやっておりますが、それを整備していくこと、それから、デイサービスセンター等に附置、併設されまする居住部門ですが、今までは過疎地域等に限定されておりましたが、一般化いたしましたので、そういうものも強化して、受け入れ体制も整える、そういう二段構えで対応してまいります。
  117. 大野由利子

    ○大野(由)委員 以上で終わります。
  118. 中山正暉

    中山委員長 これにて大野君の質疑は終了いたしました。  次に、山中あき子君。
  119. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 山中あき子でございます。改革クラブでございます。  私は、冷戦終了後、世界の情勢が非常に変わってきて、そして日本を取り巻く国際情勢も随分変わってきたわけですから、平和社会のメンバーの一員として日本が一体どういう役割を果たせるかという意味で、新たな外交政策をきちんと樹立するというのは非常に大事である、そのためには両手を日本は使うべきであるということを、外務委員会も通して何度か申し上げてまいりました。  もちろん、両手というのは、きき手の方は非軍事的な外交のさまざまな努力です。しかし、もう一方で、やはり力の準備というものが、現状を見ていますと、どうしてもこれは必要である。そういう意味で、今回の周辺事態法というのも、その左手の方の準備であるというふうに認識をしておりました。おりましたというのは、ちょっと過去形を使わせていただきます。  そういうふうに考えましたのには、大きく分けて三つの理由がありまして、一つは、やはり今、冷戦後から二十一世紀、どういった国際情勢になるかという過渡期であるという意味で、国際関係学会の会長のカルビ・ホルスティ・ブリティッシュコロンビア大学教授が、これからの紛争というのは国家間の紛争ではなくて、さまざまな紛争が起こり得るので、今までの伝統的なアプローチではこれに対処していけないだろう、つまり、予想を超えるさまざまなことが起こり得るので、それに柔軟に対処する準備が必要であるという指摘をしております。  また、冷戦時代は、ある特定の対象に対して、つまりアゲンスト、ある特定の対象に対する安全保障でありましたけれども、今、冷戦後は、ウイズという言葉を使わせていただきたい、つまり、その地域にあるすべての国家がどうやって一緒にその地域の安全を保障していくか、そういう過渡期でございますから、この時代というのは大変に不安定な時期である。そして、私たちは、戦争の時代と言われた二十世紀から、やはり戦争の悲惨さというのをきちっと学び取っていかなければいけない、そういうふうな認識でおります。  実は、こういう認識も含めて、外務委員会もそうでございますけれども、今度、特別委員会がもし組織されるとすれば、一体今世界がどんな状況にあって、なぜこういったガイドラインの改定が必要になってきているかというようなことを、見方はさまざまあると思いますけれども、本来はそういうことをきちっと議員同士で、あるいは専門家も交えてさまざまな形で認識をした上で、それでは日本として今どういう政策をとるかと。そういう委員会のあり方というものは、政府委員を廃する、廃さないということだけではなくて、これから国際情勢に関しては非常に必要なあり方ではないかということを一言申し上げたいと思います。  つまり、今の状況では、出てきた法案をどうするかというようなことにしか委員会の議論がいかない。これでは、一体日本はこれからどうしようかというその指針を示すというところがなかなか立法府の機能として果たせないという意味で、その辺のもどかしさを非常に今感じております。  それはそれといたしまして、二十五日からのこの予算委員会において、さまざまな形でこのガイドライン関連の周辺事態法が討議されてまいりましたけれども、実は新しいガイドラインを見たときにはそんなにわかりにくいとは思わなかったのです。もちろん、いろいろな意見があるし、これでいいのかなと思う点もありますが。ところが、周辺事態法が出てきて、そしてたまたまタイミング的にPKOの法案とか、あるいは安全保障の国連の決議の問題とか、国連の多国籍軍の問題とか、たまたま自自連合の会合の話の中、そしてそのほかにテレビなどで、例えば北朝鮮はどうするのですか、そういうような番組を見て、さまざまな方がきのう、おととい、何だかわからない、だれも信用できない、どこを信用していいのかということで、何が何だかわからないというふうな意見が随分聞かれてきます。  きょうは、私は時間も余りございませんので、一応この周辺事態法をもう一度ガイドラインと照らし合わせて一度整理をさせていただいて、その認識をもとにぜひ、もし御準備が必要であれば特別委員会までにきちんと説明できる準備もしていただいてという意味で、きょうは整理をさせていただく、そういうスタンスで質問をさせていただきたいと思います。  まず一番最初に、ガイドラインの中で最初の「基本的な前提及び考え方」というところ、ここに、日米安全保障条約及びその関連の取り決めに基づく権利義務というようなことが書いてありますし、日本の憲法上の制約の範囲内においてとか、専守防衛とか、非核三原則の日本基本方針に従ってということがガイドラインの中にきちっとうたわれているわけですけれども、周辺事態法を見ますとそこのところがちょっと見えてなくて、安全保障条約という言葉が出てくるのは、アメリカ軍の活動にかぶせる形で一カ所出てくるということなものですから、私の理解の仕方が悪いのかどうかわかりませんが、これが一体どこにかかるかというのがちょっと明確でなくて、では、ほかの部分は安全保障条約に基づかない活動ができるのだろうかというような疑問を抱くということがあります。  これまでの議論の中でも、この周辺事態法は安全保障条約の枠の中であるということをもう一度確認させていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございますか、外務大臣
  120. 高村正彦

    高村国務大臣 この委員会で何度も申し上げておりますのは、日米安保条約の目的の範囲内であると。これは、日米安保条約の目的が極東と我が国の平和と安全を守るためである。そして、まさにこの周辺事態というのは我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態でありますから、まさに日米安保条約の目的の範囲内にある、こういうことを申し上げているわけで、さらに申し上げれば、委員が今御指摘になった三条一項一号に、我が国が後方地域支援をする米軍というのは、こうこうこういう米軍である、この安保条約の目的の寄与のために行動している米軍である、こういうような意味のことが書いてある、こういうことでございます。
  121. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 目的の中にそのことをうたうというようなことはお考えでいらっしゃいますか。
  122. 高村正彦

    高村国務大臣 政府とすれば、今提出している法案で先ほど申し上げた趣旨も含めて足りるのではないか、こういうふうに思っております。
  123. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 周辺事態法だけを読んでいますとそこがどうしても見えないので、これからまた委員会の中の議論になるかと思いますけれども、そこが見える形というのもぜひ検討いただきたいと思います。  それから、ガイドラインの中で三番目に「平素から行う協力」というのがありまして、ここに大変いい文面がございます。これは、日本の防衛及び安定した国際的な安全保障環境の構築のために平素から密接な協力をするという中で、「安全保障面での地域的な及び地球的規模の諸活動を促進するための日米協力は、より安定した国際的な安全保障環境の構築に寄与する。」「この地域における安全保障対話・防衛交流及び国際的な軍備管理・軍縮の意義と重要性を認識し、これらの活動を促進するとともに、必要に応じて協力する。」  つまり、日米それぞれがこういう形で安全保障対話、防衛交流などをやっていくということで、私は防衛交流はかなり進んできたと思うのですけれども、この安全保障の対話ということは、ずっと前になりますね。大平内閣の後だと思いますが、一九八〇年の「総合安全保障戦略」、これを読みますと、このときから十年後、二十年後の日本のあり方を目指してということで、文化論的な視点も入っておりますし、また防衛、そのほかエネルギー、食糧の危機管理ということも入って、大変すばらしいものがまとめとして出てきているのです。また一方で、小渕外務大臣も総理になられてからの演説の中でも、やはり世界規模の紛争の予防というのが大切であるというふうなことをおっしゃっています。  そういった中で、予防外交ですとか安全保障対話というのは、平成十年に国際会議が開かれた後、この周辺事態法がここに議論に至るまでの一年間の間というのは、それをかなり積極的に推し進めるという、例えば日本の十カ年の安全保障の対話をアジアに広げていく計画であるとか、予防外交の具体的な計画であるとか、これはARFのトラック2も今経済的なものもあって少しトーンダウンしているし、ASEANもトーンダウンしているし、いろいろなことを考えますと、アジアが経済危機であればあるほど総合的な安全保障の大切さというのがあるのですが、ガイドラインに書かれているここの部分というのが、私は右手の外交だと思うのですけれども、そこが少し弱いのではないかというふうに思います。  そういった観点で、これは総合的なものですから、防衛だけではなくて食糧の安全保障、エネルギーも含めてですので、官房長官のそういう安全保障の対話に関する御認識、それから、この大平内閣当時のこういったものが提案されていながら今まで二十年の歩みの中でどういうふうに今後をとらえていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  124. 野中広務

    ○野中国大臣 政府といたしましては、今委員からもお話がありましたように、我が国の安全と繁栄を維持しながら、国民の生命財産を守ることが政府の最も重要な施策でございます。そういう意味におきまして、我が国がいかにして危機管理体制を一層強固なものにしていくか、そういう点が重要なことでございまして、今回のいわゆる周辺事態に対しましても、政府が一体となって迅速かつ的確な対応をしていかなくてはならないというように存じておるところでございます。  したがいまして、今先生から、我が国の安全保障政策が、周辺事態安全確保法のような、何が起きたときの対策かということについて、予防外交というものの必要性をお述べになりました。まさしくお説のとおりだと思うわけでございまして、日米安保体制を堅持いたしますとともに、また適切な我が国みずからの防衛力も整備をし、かつ国際の平和と安全を確保するための積極的な外交努力が必要であると考えておる次第であります。
  125. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 外務大臣に伺いますが、この総合安全保障戦略というような、そういった発想で外交の柱を築いていくということについて、これからまた特段の、今まで以上に具体的な努力をなさるというお気持ちはおありでしょうか。
  126. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国の安全保障政策の三つの柱でありますが、国際の平和と安全を確保するための外交努力ということがまず第一段だと思います。そして、その上で、日米安保体制の堅持、適切な防衛力の整備。今一番最初に申し上げたことが委員がおっしゃる右手の方で、二番目と三番目が左手の方だ、こう思うわけであります。  政府といたしましても、アジア太平洋地域の信頼醸成を促進して我が国の安全及び地域の安定を確保するとの観点から、ASEAN地域フォーラム等の多国間の枠組みや、域内各国との二国間の安全対話、防衛交流に積極的に取り組んできており、今後ともかかる努力を継続する考えであります。  今の委員の御指摘は、ただ今までの努力を継続するだけじゃだめだ、もっと総合安全保障というところでやれ、こういうことでありますが、私もそのとおりだと思いますので、そういうところに目を配りながらきっちりやってまいりたい、こういうふうに思います。
  127. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 外務大臣の決意を伺いましたので、ぜひ、与党野党なく、日本の国全体の安全保障をどうするかという対話を始める対話の枠組みをつくっていただきたいと思います。  それでは、周辺事態法に絡んで少し整理をさせていただく中で、「日米いずれかの政府又は両国政府が国際連合平和維持活動又は」というのが出てきておりますが、この辺に絡んで、PKOの法案にかかわることに関しましては、今の周辺事態の中であってもPKOの法案があるわけですから、そちらの方で、私、九月の二十五日の外務委員会のときに、地雷の撤去ということで、PKOの本体を網かけを、もちろん、無制限ではなくて網かけをするにしても、そういう海外における地雷の撤去ができないような形で国際貢献が十分できるかどうかという質問をさせていただきましたが、この件はPKO法案の再検討というところで扱うというふうに考えてよろしゅうございますか。これは防衛庁長官でしょうか、外務大臣でしょうか。
  128. 高村正彦

    高村国務大臣 防衛庁長官が私を指しておりましたので、私がお答えいたします。  まさに今のPKOの範囲を、どういうことをするかということで、そういう中で、地雷の撤去というようなことについても日本が積極的に貢献していくことができるのではないか、そういったことをこれから検討していくことが大切なことだ、こういうふうに思っております。
  129. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 一般的なことではなくて、この周辺事態にかかわることの中には、ですからPKOに関することは別であるというふうな認識でよろしいのですね。そこの確認をお願いいたします。
  130. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案でできることというのは、この法案に書かれていることでありますから、地雷の撤去というようなことはこの法案に書かれておらないと思いますので、それはまた別のところで検討すべきことだと思っています。
  131. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 ここの部分はこちらの委員会であるいはこの法案で、こちらの部分はこの法案でとやっていますとごちゃごちゃになるので、私が申し上げているのは、PKOの法案の方で一括して基本的なところをきちっと審議するということであれば、それに基づいて周辺事態の場合にも、それに準拠して、そして活動ができるということになるので、そのような区別をきちんと確認をしておいた方がいいのではないかというふうに思ったのですが、いかがですか。
  132. 高村正彦

    高村国務大臣 多分、委員がおっしゃっているようなことを私は申し上げているつもりでございます。
  133. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 私の申し上げたことがおわかりいただいたということでございますので、次に移らせていただきます。  これは、国会承認ということが何度か出てきておりますけれども、例えば、米国の戦争権限法上の規定というものは米軍が活動しているものには当てはまるわけですけれども、日本が担当する部分の後方の支援という部分は、範囲として、これはアメリカでする、しないではなくて、職務として戦争権限法の中には入らない部分です。しかし、その部分を日本としては国会の承認をするかしないかというような議論が出ているわけですが、ここのところは非常に難しくて私もわからないわけですけれども、例えばイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどは、もちろん正式な軍隊というものがありますから、このような後方支援に関しては特別の国会の承認というのがないという形で進んでいるわけです。  ただ、日本の場合には、日本という国のアイデンティティーの問題として、戦争にかかわる部分になるのだからということで、やはり国会の承認が必要であるという議論も今出ているわけです。その辺のところというのは、アメリカと日本が一緒に活動をして、前方か後方かという中で、その片方のアメリカ軍がアメリカの議会の承認を戦闘活動であれば得る、日本日本で承認を後方活動について得るというときに、それがさまざまな形できちんとバランスがとれるかどうかというのもなかなか難しい問題だと思いますが、その辺のところに関しましてはどういう見解をお持ちでいらっしゃいますか、防衛庁長官
  134. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 お答えします。  ある事態が周辺事態に該当するか否かは、周辺事態に際していかなる措置を実施するかについては、日米両国政府が、国益確保の見地から、その時点の状況を総合的に見た上で主体的に判断するというのが法律の立場でございます。  その際に、今先生が御指摘なさったようなことが起これば困るわけでございますので、日米両国間においては、随時密接に行われる情報交換あるいは政策協議がこの時点で一層緊密に行われることになります。したがって、このような事態について、共通の認識に到達するための努力が一段と深まるわけでございます。  したがって、日米間において周辺事態に係る共通の認識が成立しないということは、このような日米間の密接な協議や連絡が積み重なっているわけでありますから、私どもとしては、想定されないところであります。
  135. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 想定されるかされないかというよりも、一応日本の主権という立場からいえば、日本の判断というのは日本政府として責任を持つ、アメリカはアメリカの判断で責任を持つ、それがいい形で連携がとれればいいという解釈でよろしいですか。  つまり、想定されないからいつも一緒だろうというふうに受け取ってしまう、今の御説明だと受け取られる向きもありますね。そういうことでは日本としての主体性がどうかということがやはり問われるわけで、一九八六年のアメリカがリビアを攻撃したときも、英国以外の同盟国は飛行場を使わせない、そういうこともあったわけで、同盟国といえども、今おっしゃった、それぞれの国のアイデンティティー、国の利益ということにかんがみて、主体的にきちんとアメリカと話ができる。そこだけ一点確認させていただきたいと思います。
  136. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 全く御説のとおりでございまして、両国が主権に基づき国益保護の見地から主体的にそれぞれ判断をする、その上で、適時適切に密接な連絡をとることによって、両方の判断がそごを来さないようになっていくということを申し上げているわけです。
  137. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 時間の制約がありますのでこれはお答えをいただきませんが、私は頭が悪いのかどうかわかりませんけれども、何度読んでも、IVの(3)のところに出てまいります後方支援活動、これはガイドラインの方ですが、それからVの2の(2)の(ロ)というところに後方地域支援というのがありまして、後方支援活動の方には輸送ですとかいろいろな補給ですとかが入ってきていますけれども、後方地域支援の方は一般に後方的な支援をするために民間の協力を得るとかということがガイドラインには書かれているのですが、周辺事態法の第三条の二項には後方地域支援という文言で、二項、三項にそれぞれ別表一、二とあって、そこが輸送とか補給とかとなっております。  つまり、後方支援活動というふうにガイドラインで言われている項目がなく、ちょっとずれていますけれどもほとんど同じ内容が周辺事態法では後方地域支援という言葉のみで呼ばれています。ガイドラインの後方支援活動というのは別のどこかで扱われているのですか。ここのところが私はどうしても理解できませんので、また特別委員会までに、そこのところの文言の整理はぜひしておいていただきたいと思います。  時間がありませんので、最後にもう一つ聞きたいことがあるので、申しわけありません、特別委員会で。  最後の一つというのは何かと申しますと、民間の協力を得るというところがございますけれども、これに関しまして、例えば何か事故が起こった場合の賠償であるとか補償であるとか、そういったことがこの中に盛り込まれなくても当然でございますけれども、この法案が採決されて発効した段階で急に何か起こったときに、ああ、そのことはまだ詰めておりませんでしたというようなことでは、民間の人々に対しての説得力がありません。ですから、その辺はきちんと作業は進んでいるかというのが一点と、私は、これがここに出てきたことというのは非常に残念に思っております。  というのは、四年前の阪神・淡路大震災のときに、あれだけ、例えば、消防自動車が通れないような道路交通法に対する危機管理の網かけができないとか、それから、レスキュー隊がイギリスやスイスから来て、犬の検疫に六カ月かかるから結局レスキュー活動ができなかったとか、あるいは、ボランティアで来たアジアのお医者さんが、医師の免許証がないので日本では医療活動ができないとか、さまざまなものがありました。  危機というのは、内的な要因、つまり国内のものと国際的なものと両方の要因があるわけですが、国としては、一つの危機管理という中で、防衛庁に関するものはその一部分で、実際に活動が行われる。四年前に、私、まだ国会議員ではありませんでしたが、「論壇」に災害予防国家というものへの脱皮を図れということを申し上げました。その視点から見ても、これがまだ確立していないので、今、こういう周辺事態法の中で、補償をどうするとか、どういうふうな周りの権限をどのように地方の自治体に持たせるとか持たせないとかということになっていると思います。  そのことで、最後一点は、今のような補償その他のものがどのぐらい進んでいるかということと、最後に官房長官に、総合的な内外の危機管理というものに対する日本対応を、これから早急に検討していくという点についてはどう思われるかという二点だけお伺いして、終わりにしたいと思います。
  138. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である周辺事態に対しまして、国以外の者から協力を得るに当たりましては、当該協力に起因する損失が生じた場合に国が必要な財政措置を講ずる、こう九条第三項に、御指摘のとおり書かれているわけであります。  ここで損失と申しますのは財産上の利益とか価値の喪失のことでありまして、法案第九条三項の損失は、同条第一項の協力の求めまたは第二項の協力の依頼に応じて行った協力との間に相当な因果関係がなければ、もちろん損失というわけにならないわけでありますが、この第一項、第二項の協力については、通常、対価が支払われるわけでございます。正当な対価が支払われることが当然の前提であることから、損失というのは対価をもってもカバーできないような特別の支出ないし負担があるということを意味しているわけでございまして、こういう場合には、その損失についてこの九条三項で適切な補償をする、こういうことになっているわけでございます。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  139. 野中広務

    ○野中国大臣 先ほど申し上げましたように、我が国危機管理体制が政府一体となって行うべき重要な問題であるということは、先ほど委員お説のとおり、申し上げたとおりでございます。  ちょうど、我が国危機管理のあり方が深刻に問われたのは、四年前のあの阪神・淡路大震災、あるいはその次、三月二十日に起きた地下鉄サリン事件、こういうときに、もろくも、我が国危機管理のあり方というのが非常におくれておるということが問われたわけでございます。  自来、政府といたしましては、国家としての一体的な危機管理のあり方について、その法整備を初め体制の整備に鋭意努力をしてまいったところでございまして、災害基本法や情報収集、あるいは官邸におきます危機管理センターや危機管理監、あるいはその他危機管理に対する省庁連絡会議等、すべての危機管理に対する対応を行ってまいりました。  今回、八月末のテポドンの発射に伴いまして、また新たな危機管理を求められたわけでございまして、そういう点については、偵察衛星の問題を含め、今鋭意取り組んで、一体的な体制を整えていきたいと存じておるところでございます。
  140. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 備えなくして憂いありというのが阪神・淡路大震災だったと思います。これから、国際的なことでもいろいろなことが起こり得ます。英断をもって、そしてわかりやすい、国民が見て、何が行われているか、何を決めているのか、説明のできる形でこの周辺事態法を審議できますように、特別委員会までの間にぜひ関係方々の御努力をお願いしたいと思います。  終わります。
  141. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 これにて山中君の質疑は終了いたしました。  次に、冨沢篤紘君。
  142. 冨沢篤紘

    冨沢委員 公明党・改革クラブの冨沢篤紘でございます。  二点について御質問を申し上げます。  まず、防衛庁関係で、防衛庁長官にお尋ねをいたします。  予算書に基地周辺対策費が計上をされておりまして、その中の住宅防音工事について伺います。  住宅防音工事は、米軍機騒音から住民生活を守るという大事な仕事になりますが、この費用が、平成十年六百八十八億円から平成十一年度は六百四十六億円に減額をされております。率にしてマイナス六・一%の減額でありますが、この減額をしたわけをまずお尋ねいたします。
  143. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 住宅防音事業につきましては、従来から、航空機騒音に係る環境基準並びに厚木の騒音訴訟に係る最高裁判決などの趣旨を踏まえまして、当庁の周辺対策事業の重点事業として積極的に推進してきたところであります。しかし、平成十一年度予算案においては、現下の大変厳しい財政事情にかんがみ、計上総額においては、御指摘のとおり、対前年で六・一%の減になりました。四十二億円の減でありまして、六百四十六億円の予算となったところであります。  これは何でなったかと言われると、現下の大変厳しい財政事情の中で厳しく査定されたということでございますが、しかし私どもとしては、当該計上額のほかに、平成十年度補正予算で約五十九億円が計上されておりますので、住宅防音工事の促進を図ることによりまして、こういう有効な金を生かしまして積極的にこれからも対処してまいりたい、こう思っております。
  144. 冨沢篤紘

    冨沢委員 当初予算の数字というものは、防衛庁のこの仕事に取り組む基本的な姿勢を示しているもの、こういうふうに私は解釈をいたします。  横浜地裁の判決で、騒音訴訟、国が負けました。原告約三千四百人、そして補償総額は二十七億円の判決が出ております。司法で国が負けた、この司法の判断を防衛庁は尊重しなければいけないんじゃないですか。行政府として、司法がこれは受忍限度を超えた騒音であると、こういう判断であって、被害者に二十七億円の補償をせい、この判決が出ている。これを尊重すれば減額という数字は出てこないはずですが、この点、長官はいかがお考えになりますか。
  145. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 まことに防音措置の事業につきましては、先生指摘のとおり、大変大事な事業でございますが、防衛庁全体が予算が減っているものですから、それに比例して減っているということでありまして、私どもとしては、しかしながら、これが基地周辺対策の一番大事な事業であるということで、これからも真剣に力を入れてまいらなければいけない、こういうふうに思っております。
  146. 冨沢篤紘

    冨沢委員 地元の受けとめ方としては、この減額措置は国防の音に苦しむ住民に弓を引くものだ、こういう受けとめ方でございますので、今御答弁をいただきましたが、ぜひ復活への御努力を、ここで注文をつけておきます。  次に移ります。  空港の進入表面下のジェット騒音への補償制度を新しくつくるべきである、こういう主張をかねてから私はしてまいりました。ここに久間代議士いらっしゃいますが、防衛庁長官のころ、そして前長官で額賀長官のころ、同じ主張をしてまいったんですが、御理解をいただくために簡単に御説明を申し上げますと、三沢市、小松市では、それぞれ滑走路への進入表面下への、民間機でございますが、民間機への補償制度ができております。三沢市では年間二千万円、進入表面下の自治会に金が出ている。小松市では年間五千万円、市、県の事業として出ている。しかし、厚木飛行場の進入表面下に、これは軍用機でございまして、一切こういう制度はございません。  国防の音、国の責任で騒音に苦しむ住民への補償制度を新設すべきと私はかねてから主張しておりますが、この考え方について、長官のお考えをいただきたい。
  147. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今先生がおっしゃいましたように、石川県や小松市では町内会の経費負担を軽減するために一般財源から交付金を交付している事例があることは、先生指摘のとおりでございます。  他方、防衛庁が行っている飛行場の周辺基地対策は、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の規定に基づきまして、自衛隊等の航空機の離着陸等における騒音対策として、地方公共団体が学校等へのあるいは病院等への防音工事などの必要な措置を講ずる場合に、当該公共団体等に対し補助金や周辺整備調整交付金を交付しているものであります。  だから、前者の方は地方公共団体が町内会に軽減措置として交付金を交付している、防衛庁がやるのはあくまでも法律に基づいて公共団体に対し補助金や調整交付金を交付しているということで、本質的に違いがございます。御指摘のような、地方公共団体が一般財源から町内会に対し、特に使途を限定せず、特定せず交付する交付金とは、したがって全く違うものでございます。  防衛庁としてもこのような、先生指摘のような補償制度を設けることができないかということで大変苦慮して、今までいろいろ調査をしてきました。例えば、三沢基地とかあるいは小松の方へも行きまして、いろいろ調査をさせているわけでございますが、なかなか同じようなことをやることは法律の建前からいっても難しい、こういうことになってきておりますが、ぜひひとつ、歴代長官もこのことについて触れておるようでありますから、引き続き勉強をしてまいりたい、こう考えております。
  148. 冨沢篤紘

    冨沢委員 厚木基地ではジェット艦載機のNLP訓練が行われておりまして、この騒音は並の音ではございません。初めて聞いた方はぶったまげるような大変な音でございまして、私はそれを聞きながら育った人間でありますけれども。  民間機はもうけのために飛んでいるんですよ。軍用機というのは日本の国の安全保障のために飛んでいる。もうけのために飛んでいる飛行機の騒音に対して補償金が出るならば、軍用機の騒音、国の安全のために苦しんでる住民、進入表面下の住民にもっと補償をしなければいかぬ、補償の必要性は高い、私はこう思いますが、野呂田長官、いかがお考えになりますか。
  149. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今私どもが検討しておりますのは、使途を特定しない、それから相当な因果関係があるか、そういう場合に地方公共団体に対して補償することが可能かどうかという検討をさせていただいているわけであります。  こういう検討の中に、実は自治省所管の基地交付金とか調整交付金のようなものの配分上の問題もあるのじゃないかというようなこともありますので、自治省等ともこれから協議をしてまいりたい、こう思っております。
  150. 冨沢篤紘

    冨沢委員 基地交付金、調整交付金は、確かに騒音も含まれておりましょうけれども、本来の目的は、音に対する交付金、調整交付金ではないはずでございます。前額賀防衛庁長官は、この必要性を御理解いただいて、そしてどういう方法でそれができるか検討をしてみたい、こういう御答弁をいただいているんですが、防衛庁の中で具体的にどんな検討が進められているか、お示しください。
  151. 大森敬治

    ○大森(敬)政府委員 お答えいたします。  先ほど大臣がお答えしましたとおりでございまして、私ども、三沢基地ですとか小松基地に派遣いたしまして、具体的に、市町村が行っております交付金の考え方というものを検討いたしまして、それを踏まえまして調査をしているところでございます。  また、先ほど大臣がお答え申し上げましたとおり、防衛施設庁で担当しております周辺整備法の基本的な考え方からいたしまして極めて難しいところがあるわけでございますけれども、地元の方々の軽減をいかに図っていったらいいのか、また、自治省の方でも交付金を持っておりますので、その辺との兼ね合いについて現在勉強を進めているところでございます。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 冨沢篤紘

    冨沢委員 自治省の交付金、調整交付金とは、私が申し上げている補償制度とは筋が違うものでございまして、自治省の所管の金というのは、地方自治体に配分をされる交付金、調整交付金でございますので、これは基地の資産とか施設に対して、あるいは土地の固定資産税分に対して支払われる、これが筋なんですよ。私は、自治省関係で新しい制度をつくれ、こう申し上げているんではございませんので、その点、間違いのないようにひとつお取り組みをいただきたいと存じます。  軍用飛行場の音は防衛のための音だ、これに苦しむ住民に新しい制度をつくってほしい、つくるべきだ、国の責任でつくるべきだ、こういう主張でございますので、交付金をふやすという筋ではございませんので、その点、念のためにもう一度、長官、御答弁願います。
  153. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほども申し上げたところでございますが、石川県や小松から出しておりますのは、使途を全く特定しない、そこで、そういうお金を一般財源から交付金として交付しているという、かなり包括的な助成であります。  私どもの方は、防衛施設周辺の生活環境の整備に関する法律というものできちっと金の出し方が特定されますので、今、小松や石川県でやっておるような、目的を特定しない、それから相当な因果関係がどうあるかというようなことも必ずしもはっきりしない、こういうようなものにこの法律から助成をするということは非常に問題が多過ぎる。だから、いろいろな部門を考えて、何か、先生がおっしゃっているような、地元に対する思いやりの対策はできないかということを重ねて勉強させていただきたい、こういうふうにお願いしているわけでございます。
  154. 冨沢篤紘

    冨沢委員 ぜひお願いをいたします。  次に、外務大臣にお伺いをいたします。  日米安保条約の適用範囲と台湾問題、こう通告を申し上げておきましたが、私は、日米安保体制、これは日本外交の基軸である、さらに、一九七二年、田中内閣のときにでき上がった日中国交回復、それに続く平和条約、日米、日中を両足、右足、左足にして、そしてしっかりと太平洋外交に取り組む、これが私の理想的な日本の外交の姿勢である。そういう意味で、田中内閣の一九七二年日中国交回復の意義は大変大きいものだという認識をしております。  しかしながら、その後の日本の外交姿勢を見ますと、どうしてもアメリカに傾きがちになっている。日米関係の強化というのは、これはこれで大変結構なことでございますけれども、しかし、対中国との関係を考えると、対米強化がえてして日中間の友好強化よりも不信、不安を招いている、こういう懸念を持っていることであります。  日中が二千年の歴史がある、一衣帯水の関係にある、さらに、近年の両国の経済関係は非常に強化され、緊密化している。ここらを考えますと、これからの日本の外交の姿勢は、申し上げたとおり、右足と左足、日米、日中、この両足をしっかりと踏まえていく、これが基本姿勢でなければいけない、こういう認識を持っておりますが、高村外務大臣のお考え、いかがでございましょう。
  155. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保体制を基礎とする強固な日米関係が、戦後今日に至る我が国の繁栄を外交面で支えてきたことは紛れもない事実である、こういうふうに思っております。我が国は、今後も日米関係を基軸としてその維持強化に努めるとともに、共通の価値観を有する国同士として、ともに国際社会の平和と繁栄に貢献していく考えであります。  また同時に、我が国は、アジアの一員として近隣諸国との関係を強化してまいります。委員指摘中国との関係につきましても、アジア太平洋地域全体の平和と発展に責任を有する国家として、単なる二国間関係にとどまらず、国際社会に目を向けた対話と交流を一層拡充させてまいりたいと思っております。  日米中それぞれの二国間関係というのは、ゼロサムの関係ではなくて、そのどれかが強まればほかもより一層強まるという関係でなければいけないと思いますし、現実にそういう方向に動いているのではないか、動いていない面があるとすればそれは動かすようにしなければいけない、こういうふうに思っております。
  156. 冨沢篤紘

    冨沢委員 一九七二年の日中共同声明、さらに七八年の平和友好条約、ここには、台湾は中国領土の不可分の一部である、さらに、お互いに内政には干渉しない、内政不干渉の原則が明記されておりました。  ところが、それ以前の安保条約の極東の範囲というのは、一九六〇年に政府の統一解釈が出ておりますが、おおよそフィリピン以北、日本及び周辺地域であって、韓国、台湾を含む、これが政府の見解でございます。この統一見解は一九六〇年。そして七八年の平和条約では、六〇年からおくれること十八年、台湾は中国領土の不可分の一部である、こう明記されておりますが、この整合性をどうお考えになりますか。
  157. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約に言う極東については、昭和三十五年の政府統一見解に述べられているとおりであります。  我が国は、日中共同声明において、中華人民共和国政府中国の唯一の合法政府であることを承認した上で、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する、こういうふうに述べているわけであります。  一九七二年の日中共同声明において表明された我が国の台湾に関するこうした立場は、一九九八年の日中共同宣言によっても何ら変更されていないわけであります。  我が国は、中国政府が、台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知しておりますし、我が国としては、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望しております。  ちなみに、先ほど委員が評価をされた田中総理大臣が当時国会で述べていることでありますが、台湾という地域に対しましては、従前極東の範囲の中に入るということでありますが、現在の日中の国交正常化というものは、安保条約というものと全然かかわりなく行われたものでございますので、現時点において極東の範囲という定義、解釈は従前どおりであるかということでございますから、そのとおりでございますと、こう述べておるのでございます。それで、その後一貫して、従前の見解であるということを申し上げているところでございます。
  158. 冨沢篤紘

    冨沢委員 周辺事態という概念が、私は、今までの政府からの御説明で、極東と同一かな、そんなふうに解釈をしているところでございますが、日中国交回復の原則、平和条約を尊重すれば、台湾は周辺事態には含まれない、こういうふうに読み取れませんか。
  159. 高村正彦

    高村国務大臣 これも何度も申し上げているわけでありますが、あらかじめ特定の地域を指すものではない、こういうことを申し上げているわけでありますから、特定の地域でないから、これを入るとか入らないとか、これは台湾に限らずどこの地域でも、入るとか入らないとかあらかじめ申し上げることは、大変困難であります。
  160. 冨沢篤紘

    冨沢委員 日米ガイドラインを新しくする、これは時代要請で当然のことだと認識をしますが、中国の不信、反発を受ける形で新しいガイドラインが設定をされてはいけない、こういう懸念を私は持っておるわけでございますが、これからの日本中国の長い友好関係を考えた場合、十分中国の御理解がいただけるような、こういう外交の対応をしていただきたい、このことを申し上げながら、質問を終了いたします。
  161. 高村正彦

    高村国務大臣 委員がおっしゃるように、日本にとって中国というのは大変大切な国でありますから、不信を招かないように、今までも一生懸命御説明を中国に対してしてきているところでありますし、それなりの、それなりのということでありますが、理解を得られている、こういうふうに思っております。
  162. 冨沢篤紘

    冨沢委員 ありがとうございました。
  163. 中山正暉

    中山委員長 これにて冨沢君の質疑は終わりました。  次に、上原康助君。
  164. 上原康助

    ○上原委員 できれば総括質問のときにお尋ねしたかった案件が幾つかあるんですが、そうはいきませんでしたので、きょうは国際問題で、まず外務大臣にお尋ねすることになると思うんですが、朝鮮半島情勢についてまずお尋ねをさせていただきたいと思います。  これは、小渕総理が参議院の我が党の代表質問のときに、北朝鮮が国際的懸念や日朝間の諸懸案に建設的な対応を示すのであれば、対話と交流を通じて関係改善を図る用意があると、北朝鮮との対話再開への用意がある旨表明をされております。  これまでの日朝間の対話と交流というのは、御承知のように、昨年八月の弾道ミサイル発射があって以降、停止された状態にある。総理が述べた対話と交流とは、国交正常化交渉の再開までを恐らく視野に入れたものなのかどうか、これから対話と交流を朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮と進めていく上で、日本としてはどういう外交姿勢でやっていかれようとするのか、まずその点からお聞かせを願いたいと存じます。
  165. 高村正彦

    高村国務大臣 北朝鮮が建設的な対応を示すのであれば関係改善を図る用意がある、こういうことでありますから、建設的な対応をしてもらえるのであれば、それは、視野とすれば国交正常化というところまであり得る話だと思います。  その前にも、今話し合いのチャンネルが全くないわけではないですが、極めて細いわけでありますから、少しでもそういうチャンネルはつくっていかなければいけないな、お互いに近くに存在しているわけでありますから、相手の考えはよくわかるようにしていかなければいけないな、そういうことは考えておりますし、そういうふうにするつもりでございます。
  166. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと抽象的なお答えですが、確かに、私も先ほど指摘しましたが、北朝鮮をめぐっては、弾道ミサイルの発射問題や秘密核施設疑惑あるいは拉致疑惑等々の、日本国民からすると、大変神経をいら立たせる懸案というか行動というのがある、この点は私も否定はいたしません。問題は、総理が述べた国際的な懸念や日朝間の諸懸案とは、具体的にどういうことを念頭に置いたものなのかを私は知りたいわけですね。  先月行われた秘密核施設疑惑をめぐる米朝高官協議は、当初は、何の進展もない旨伝えられて終わったという報道がマスコミ等でなされました。この点は、政府はどういうふうにお聞きになっているかという点。他方、ここ二、三日のマスコミ等の報道によりますと、米朝協議は今月いっぱいにもいわゆる合意に達するんじゃないかという報道もありますね。北朝鮮の核施設疑惑をめぐる米朝協議が次回の交渉で妥結する可能性が強まったという報道がなされている。こういうことについて、政府はどういう情報をお持ちなのか。  もう少し具体的に申し上げますと、これは報道の域は出ませんので、確かめたわけではありませんから。北朝鮮は、三月中に第一回の査察受け入れをやっていく、第二回以降も原則として応じる姿勢を示している、また一方、米国は、意味ある規模、ある一定の規模の人道食糧支援を供与する、米国政府がとってきた経済制裁か、政治経済制裁の一部を解除していくことになるであろう、こういう報道もなされているわけですが、その前段においては、米国の対北朝鮮外交について、米議会、特に共和党を中心に大変厳しい姿勢を示しておったことも御案内のことだと思うんですね。一々は指摘はしませんが、いわゆる北朝鮮への重油費用拠出についても、米国議会で一定の枠をはめてきていることも御案内かと思います。  こういうことを含めて、現在の米朝協議というものはどういう状況にあり、どういうことが展望できるのか、日本政府としては、そういったことについてどのように情報をおとりになり、また、冒頭申し上げた北朝鮮とのいわゆる対話と交流の外交を進めようとしているのか、もう少し具体的に、今私が指摘をした問題等を含めてお聞かせを願いたいと存じます。
  167. 高村正彦

    高村国務大臣 米国自身が対外的にはっきりした形で説明していないわけでありますから、米国からもらった情報をそのまま日本がしゃべってしまうわけにもいかないということは、ぜひ御理解いただきたいと思います。  その上で、一月十六、十七日、そして二十三から二十五日、ジュネーブにおいて秘密核施設疑惑に関する米朝協議が開催されましたが、かなり真剣な話し合いがなされた、こういうふうに思っております。ただ、双方の立場の間には依然として差がある、こういうふうに承知しております。  次回の協議において話し合いが妥結するか否かについては、とても現時点で予断を持ってお答えすることはできない状況であります。我が方としては、北朝鮮側の前向きな対応を得て協議が前進することを期待しております。
  168. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、日本政府としては、米国からはジュネーブにおける米朝の、秘密会議と今おっしゃいましたが、そういう会議の模様であるとか、いろいろそういうことについては情報をおとりになりながら、それなりの外交ルートというか、水面下といいますか、努力をしている、こういうことですか。
  169. 高村正彦

    高村国務大臣 米国としては、日本に対して内容をきっちり説明してくれていると思っております。
  170. 上原康助

    ○上原委員 この点、突然ですが、野中官房長官も北朝鮮問題には大変、党の役職をおやりになっているころから熱心に御努力なさっておられます。  官邸としては、今私が指摘したような問題等について、もちろんこれは、外交は一元ですから変わらないかと思うんですが、今後の北朝鮮との対話、交流問題をどのように打開していかれようとするのか、もしお考えがあればお聞かせを願いたいと存じます。
  171. 野中広務

    ○野中国大臣 先般来より、総理が本会議及び予算委員会の総括質問を通じまして申し上げておりますように、今、テポドンをめぐる問題あるいは地下核施設疑惑の問題等、さらに我が国の諸懸案が払拭をされるような環境づくりが行われることによって、我が国としても日朝間の関係改善について積極的に進めたいというメッセージを二回にわたり送っておるわけでございます。  私もいささか、党にあるときにこの日朝間の関係の改善にかかわってまいりましたけれども、二度にわたる総理のこのメッセージに対しましては、非常に頻度の低い打ち返しが向こうの報道を通じて出てくることを、むしろ残念に思っております。  今外務大臣から話がありましたように、米国及び韓国と緊密な連絡をとりながら、そして米国も、四カ国会議を通じて、何とかしてこの北朝鮮の状態を打開したいと努力をされておりますし、韓国はまた太陽政策を今大統領を中心としておやりになっておるわけでございますので、そういう中から両国との情報交換、さらに信頼関係を打ち立てて、さらに日朝間の改善が行われるように官邸としても願っておる次第であります。
  172. 上原康助

    ○上原委員 一々は申し上げませんが、日本の国内世論というか、マスコミ報道にしても、一時期大変過剰な反応を示した。それについては、ある意味ではむしろ米国の方が、もっと冷静に受けとめていいんじゃないかというコメントもあったやに報道されている向きもございます。  私がなぜ冒頭この点を取り上げたかといいますと、恐らく周辺事態確保法にしても、新しいガイドラインの締結というか協定にしても、取り決めにしましても、いろいろ地域を特定していないとは総理も外務大臣防衛庁長官も、関係大臣おっしゃるわけですが、最も念頭に置かれているのは、やはり、万一朝鮮半島情勢が緊迫化した場合ということがあると思うんですね、政府も、日米間にも。  先ほども予防外交とか総合安全保障というお話もありましたが、今一番、日本側が米国とも中国とも韓国とも共同行動、対話をとりながら、やはりどう北朝鮮との国交正常化に持っていくかという外交努力が私は必要だと思うんですね。そういう面で特段の御努力を要望をしておきたいと思います。私たちも、今後の米朝間あるいは日朝間また中国韓国、ロシア等の動き等についても注意深く関心を持ちたい、こう思っておるところであります。  次に、本委員会で、予算総括を含めてロシア問題が余り出ませんでした。そこで、一言だけ聞いておきたいわけですが、どうもエリツィン・ロシア大統領の健康状態等も大変気になる状態があるようですが、それも関連しているかもしれませんが、日ロ間の北方領土返還を含むいわゆる平和友好条約の締結について、御承知のように二〇〇〇年までにそれを両国間で実現するというこれまでの経緯があるわけですが、一月二十一日、二十二日、モスクワで国境策定委員会と共同経済活動委員会があったようですが、ロシア側の姿勢が従来より大きく後退をしているように受けとめられた、こういう報道もなされておるわけですが、今後の領土問題、領土返還、北方四島返還を含む日ロ交渉の展望はどういうふうにお考えなのかということが一つ。  それともう一点は、二月下旬にイワノフ外相が来日をする予定かと思うんですが、これは予定どおり実施、実行されるのか。あるいはまた、高村外相が三月か四月に訪ロなさってエリツィン大統領の来日の下準備もしていくということがこれまで進められてきたと思うんですが、そういう方向で。こういう点については目下のところどうなっているのか、これからどういう動きを見せていくのか、その点、ひとつお答えをいただきたいと存じます。
  173. 高村正彦

    高村国務大臣 今御指摘ありましたように、一月二十一日にモスクワにおいて、平和条約締結問題日ロ合同委員会の次官級分科会のもとで国境画定委員会と共同経済活動委員会の第一回の会合が開催されたわけであります。その際に双方は、東京宣言及びモスクワ宣言に基づき二〇〇〇年までに平和条約を締結するため、引き続き精力的に作業を進めることで一致をしたわけであります。  政府としては、今後とも、両国間のハイレベルでの間断なき対話の継続を通じて、あらゆる分野における関係を一層強化しながら東京宣言とモスクワ宣言に基づいて平和条約を締結して、両国間の関係を完全に正常化するように全力を尽くしていく考えであります。  今おっしゃったように、今月にはイワノフ外相の訪日が予定されておりますし、また、春ごろには私もロシアに行きたい、こう思っています。国会等の関係もあるわけでありますが、私とすれば行きたいと考えているわけでありますが、さきに申し上げたような考えでロシア側との協議に臨んでいきたいと思います。
  174. 上原康助

    ○上原委員 外交ですから、日本側の、東京宣言あるいはモスクワ宣言、これまで積み上げてきた土台というか課題の上で領土問題と平和友好条約を二〇〇〇年までに実現をしたいという、これをもちろん変えるとか変えないということは言えないと思うんです。  ただ、状況が大変厳しくなっている。一時期期待されておった方向にそう運ばないのじゃないのか、私はそういう推測を、感じを持つわけですが、この点はどうお考えですか。
  175. 高村正彦

    高村国務大臣 私たちは最初からそう簡単でないことにチャレンジしているんだ、こう思っていますし、そこに可能性があるわけでありますから、簡単ではありませんが、一生懸命あらゆる努力を通じて二〇〇〇年までに東京宣言、モスクワ宣言に基づいて平和条約を締結したい、こういうふうに思っております。
  176. 上原康助

    ○上原委員 まあ、しっかり御努力してください。  それと次に、せっかく予算委員会ですから宮澤大蔵大臣に一問だけお尋ねさせていただきたい、私も経済問題に大変疎いんですが。  今、本委員会の審議を聞いても、あるいは私たちが地方というか選挙民と接触しても、国民の皆さんと対話をしても、一体日本の経済、金融、財政の二十一世紀の形はどうなっていくんだろうか、こんなに借金を背負って、本当に将来の国民の生活や社会保障や年金等、どうなっていくんだろうと、最も国民が懸念しているのはその点なんですね、正直申し上げて。これはどの党とかどなただとかいうことではない。本当に実態がそうなっている。  私のような素人が申し上げるまでもありませんが、何と次年度予算の面でも公債発行額が三十一兆一千億。公債依存度はもう三七・九%、約三八%ですね。国債残高が三百二十七兆円。長期債務残高を入れると四十六兆円。国債費の予算に占める割合は、十九兆円、利子も返済をして、まさに四分の一、二四・二%は借金払いを毎年やっている。地方自治体の公債を含めると、何と六百兆円とも言われておるんですね。  私が今言った、非常に素人でもこういうことについては大方の国民はわかるわけですよ。だから、なかなか減税をしても消費に回らない。将来、未来に対する不安がある。少しでも生活を節約をしてというか切り詰めて、預金に回そう。貯蓄ということになる。これはまさに財政の破綻寸前にあると言ってもいいと思うんですね。そういうことを見越して、前橋本内閣は、いろいろ御苦労をなされながら財政構造改革という財政転換をやったと思うんだが、残念ながら長い不況の中でこれが挫折をしてしまった。  しかし、現在の財政状況は、いずれこれは早急にというか、できるだけ早目に軌道修正をしてこの借金構造というものを改革をしていかなければならないと思うんです。そういう面で、いろいろ専門の方々の御質問ややりとりを聞いておっても、経済見通しも〇・五%をようやくできるかどうか。これも危なっかしいんじゃないかという見通しさえある。そう一、二年でできそうにもないですね、私なんかが考えても。  こういうことについて、私は、やはり大蔵省も内閣全体として、もう少し国民に情報も開示をして、今私が指摘をした年金とか社会保障、まあ年金も社会保障に入るかもしれませんが、そういった国民の将来の生活不安というものをなくしていくという手だてをやっていただかないと、景気もなかなか回復しないでありましょうし、国民の明るさというものも出てこないんじゃないかという気がするんですが、大蔵大臣のわかりやすい御見識をひとつお聞かせ願えればと存じます。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまいろいろ数字をお挙げになられて、現在の財政の現状、将来における展望の十分でないこと等々御指摘になられました。言葉だけでお答えをすることはできますけれども、長いこと国政に御参画の上でそういう御心配をなさいますことは、ただ言葉だけでお答えをして済むという話ではない。私自身も、正直を申しまして、将来我が国の財政というものをどうするかということは極めて重大な問題として心を痛めております。  ただいまおっしゃいました数字は、全部そのとおりでございます。しかるがゆえに、橋本内閣の時代におきまして、総理経験者、村山先生を含めまして、財政再建のための会議を一年やられまして、そして案をつくられた。それはついに凍結することになりましたが、ただ、その中で、今お話しのように、一種の長期計画、年金であるとか医療でありますとかいうものにつきましては、将来の人口の動態等をとらえまして、これはここで新しい考えをしておかないと先行き破綻するという部分だけは、再建計画全体は凍結せられましたけれども、現に施策の上に残りまして、今その再建策がつくられている。そういう部分の貢献はあのプログラムにあったわけでございます。それは今日もそのとおりでございます。  ただ、他方で、理由はいろいろあると思いますが、あのときに考えられましたような我が国の経済成長はなかなかそのようにまいりませんで、実際には小渕内閣が成立するその以前において、本予算よりは早く補正予算をやって方向転換をしなければならないというような雰囲気になってしまいました。  今、私どもはその延長線上におるわけですが、小渕内閣が財政再建のラインを凍結すると決定いたしましたのは、将来の財政の心配がないという意味ではもとよりございません。もとよりございませんで、必ずその日は来なければならないが、しかし、今財政再建と不況脱出と両方を図ることは、しょせんは二兎を追うことになるのではないか。まことに残念なことであるが、今二兎を追うことはできない。一兎を追うということに専念をして、とにかくこの不況をまず脱出をすべきではないか。そうでないと、全体、国の財政そのものもそうでございますけれども、日本経済そのものあるいは日本の国民生活そのものが二十一世紀に向かって計画が立たないではないかという考え方が支配的になったわけでございます。  そういうラインに基づきまして、私自身も、減税をお願いします際にも、あるいは十年度の最後の補正予算をお願いいたす際にも、あるいは今御審議中の十一年度の予算の編成にいたしましても、ともかく二兎を追うことはこの際考えまい、全力を尽くして不況の打開を図りたい、こういう決心をいたしました。その結果は、ただいま言われましたように、平成十一年度における公債依存率は三七・九でございます。これは、十年度の最後の姿が三八・七でございますので、もう最後の姿が最初から出てくる。十年度の当初は二〇%でございましたので、いかに高く公債に依存しておるかがおわかりいただけると思いますが、そういうことで今予算の御審議をお願いしている。それが大体実情でございます。  ただ、財政そのものから申しましても、実は、この十一年度の租税収入の見積もりは四十七兆円でございますが、この四十七兆円という租税収入の見積もりは、昭和六十二年の見積もりと同じでございます。つまり、財政の租税徴収能力というのは十何年前に押し戻されてしまったということでございます。  それは、ごらんのように、ここのところ歳入欠陥が毎年出ておりましたが、それはむしろしかし、経済成長がマイナスでございますとプラスで考えておった財政収入が確保できないのは当然でございますが、それでも来年は大丈夫だろうというようなことで毎年毎年租税収入を出してまいって、毎年毎年歳入欠陥が出まして、それは二期もマイナスが続きますとどうしてもそうなるわけでございますが、そこで四十七兆のところまで押し戻されてしまった。これは実は、財政そのものも何かしなければ、自分の力では再建ができないということになっていることを意味いたしますので、ただ国民経済だけが悪いのではない、当たり前のことですが財政自身もこのままにすれば回復能力を失ってしまうという状況にございます。  そういうことを考えまして、とにかくこの際不況脱出をして、国民経済に何ぼかでもプラスの成長を呼び戻しませんと、財政そのものがプラスの租税収入を見込むことができない。当然のことですがそういうことになりまして、したがって私がいろいろ決心をいたしました理由の一つは、財政自身の事情もあったということを御理解をいただきたいと思うわけでございます。  そこで、こういう大きな公債依存を決心したわけでございますが、文字どおりこれは、もしこれでできなかったらどうなるのかということについて、なかなかそうたやすく、こういうことをいたしますという案が浮かばないような状況でございます、正直を申しまして。これはどうしても、ここまで来たら何とかしてプラスの成長に日本経済を戻して、それによってやがては財政、税収もプラスになってくる、財政にとってもどうもこれしか方法がないという思いがいたしておるわけでございますから、ある意味でそれは甚だ無謀なことをしておるのではないか、そういうふうに御感想をお持ちになる向きもきっとあるだろう。しかし、正直を申して、どうもそれ以外にこの現状を打破する方法は見つからない、大変正直を申しますと、そういう気持ちを持っておるわけでございます。  したがいまして、この十一年度予算編成に当たりましては、私は各省庁の予算編成の中で、とにかく不況脱出に即効のあるものは、将来害のあるものは別でございますができるだけ採用させていただいて、減税を含めまして、たとえそれが多少国債増発になっても、中途半端なことはできないという思いでいたしたわけでございます。  それが大体の気持ちを申し上げたわけで、これで御納得をいただけるとはすぐには思いませんけれども、ただ、今具体的に、やはりこの一月—三月期というものは、この路線にとって私は非常にキー的な時期であるというふうに考えています。それはしたがいまして、どうも企業から見ますと、この一—三の決算、決算期になりますが、これが仮に景気上昇の胎動が片っ方であったといたしましても、決算そのものは過去の集積でございますので一番悪い決算になることはもう必至であって、したがってそこからこの雇用の問題にどうしても響きかねないという点が一つ。それからもう一つは、金融機関の、金融システムの信用の回復、公的資金の導入等々でございますが、これが予定どおりいくという、この二つのことが一—三月で一番大事なことだと思っておりまして、私としましては祈るような気持ちで、この一—三月というものを何とかプラスになるように日本経済をしていきたい。  正直を申しまして、長いこと国政に御経験のおありの上原委員から、これでどうするのかねという率直なお尋ねでございましたので、まあ、こういう思いでおりますということをお聞きいただいたわけで、大変長くなりました。申しわけありません。
  178. 上原康助

    ○上原委員 宮澤大蔵大臣が、私にとっては久方ぶりですが、本当に誠意、誠意というか何か率直なお答えをしていただきましたが、これはいろいろあると思うのですよね、これまでの歴代内閣の経済財政政策、金融問題を含めて。野党の立場で言えば、いろいろ文句も言いたいし、批判もできるわけですが、しかし、それだけで事済む実態、構造でないですね、この状況というのは。これこそ、やはり与野党で危機突破の会話とか、何か政策合意形成を図るようないろいろな手だてを講じないといかない状況にあるという点を申し上げて、恐らくこういうのは集中審議もあるでしょうから、私も、全然素人でわかりませんが、機会があれば、今大蔵大臣が御回答いただいたこと等と関連して、また質問をさせていただきたいと思います。  本当にこの状況というのは、このことは国民はよく知っているのですよ。だから、みんな心配して、なかなか話題も明るくならない。小渕内閣、ここをどうなさいますかね、大変気になるところですね。  次に、この間からというか、ずっと空振りをさせられているわけですが、日米安保とこの事前協議の問題について、これも古くて新しい課題で、なかなか議論がかみ合ってきませんでしたが、私は、やはり政府のこれまでおっしゃってきたことには相当無理がある、これでいいのかという懸念、疑問を、疑念を絶えず持ち通してきた一人であります。  日米安保条約第六条で、日本の安全に寄与し、並びに極東の平和と安全の維持に寄与するため、米国は、その陸海空軍が日本において施設及び区域を使用することを許される、こう規定されておりますね。米軍に日本の基地の使用を認めているのは、第六条の今私が読み上げたことだと思うのですね。それと、この第六条に基づき米軍が日本の基地を使用するに当たっては、岸・ハーター交換公文で、一つは配置における重要な変更、装備における重要な変更、日本から行われる戦闘作戦行動のために使用する場合は事前協議の主題とする旨の交換公文がなされている。これももうずっと議論がされてまいりました。  だが、私は、これは防衛庁長官外務大臣に、専門家に聞いてもいいんですが、その後、この事前協議の具体的な事例について、配置における重要な変更とは、陸軍の場合には一個師団程度、空軍の場合にはこれに相当するもの、海軍には一個機動部隊程度の配置、装備における重要な変更とは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設を指す、こういうことと、日本の基地を使用して直接戦闘作戦行動が展開された場合は事前協議を行うと口頭了解が取りつけられた、こうなっているわけですよね。  だが、今ごろこの三要件を満たさなければ事前協議をしないというようなことは、全くこれは軍事的に考えてももうあり得ないことだと思うのですね。だから、事前協議というのは、日本がアメリカのそういった基地使用とか戦闘作戦行動によって戦争に巻き込まれない歯どめをするためにこれは設けられるというのが歴代の外務大臣、特に当時の福田外務大臣はそのことを強調しておられます、いろいろ会議録を読みませんけれども。  そういう意味で、この三要件の内容というものは余りにも現状にマッチしない、また近代装備、兵器装備とか兵力の態様ということにそぐわない、マッチしないと思う。これをいつまでも、こういうことでないと事前協議というものはできない、アメリカ側がそういう申し入れがないから一度もないというようなことで、我々から言うと、大変ごまかしですね、これは。まさにこれは一つの安保の虚構です、失礼な言い方ですが。  したがって、こういうことについては六〇年安保から、もう九九年やがて二〇〇〇年ですよね。四十年も経過をしようという時点になったって、それで事前協議問題をくくろうということは、私は相当無理があると思うのですが、まず今私が指摘をしたことについて、外務大臣なり防衛庁長官はどうお考えか、まあ外務大臣でしょうね、見解を聞かせてください。
  179. 高村正彦

    高村国務大臣 事前協議の運用にかかわる事項については、日米両国政府が日米安保条約締結以来、長年にわたり確認をしてきているものでありまして、政府としては、この法的枠組み及びその運用の見直しを行うことは考えておりません。
  180. 上原康助

    ○上原委員 考えておりませんといって、そんなそっけない返事ではいかないんだよ、外務大臣。かつて、宮澤大蔵大臣、元首相も、外務大臣をなさっていて、そういう御返事をして私は相当やり合ったことがあるのですね。  だが、皆さんはそうおっしゃいますけれども、この間も私がちょっと指摘をしましたように、この安保条約で言う事前協議について——これを指摘する前にもう一つただしておきましょう。  これも何回も議論されてきたことなんですが、事前協議をするしないの申し入れは日本側からできるんですか、できないんですか。
  181. 高村正彦

    高村国務大臣 事前協議というのは、アメリカ側がこれをやりたい、事前協議の主題として岸・ハーター交換公文に書かれているような事態を、これがやりたいと思ったときに、日本側にイエスかノーかを求めるものでありますから、それはアメリカから言うものであります。  ただ、日米の防衛協力等については、事前協議と離れて、平素から随時協議というのを密接にやっておりますので、私は、それによってかなりの両国の意思疎通ができている、こういうふうに思っております。
  182. 上原康助

    ○上原委員 事前協議はアメリカ側がその主題として申し入れる場合にはできると。安保条約の第四条では、今外務大臣がおっしゃるように随時協議ができるようになっていますよね、確かになっている。それは、「いずれか一方の締約国の要請により協議する。」となっているんですよね。第四条でどちらかが申し入れすればできるものが、どうして六条ではできないという立場に立つんですか。岸・ハーター交換公文でも、日本側からやっちゃいかないということは書いてないですよ。
  183. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 これは、先生御承知のとおり、従来から政府側からお答えしているところでございますけれども、随時協議に関しましては、日米間でいわば形式にとらわれず随時に行われるということでございますが、事前協議に関しましては、先ほど大臣から申し述べましたとおり、米国がある一定の行動をとる際に、安保条約、交換公文にあります制約の解除を日本に求めたいと考えるときに協議を発議してくるものでございます。そのような発議をしてくるということは、米国側から行ってくる立場に米国がある、そういうことでございまして、その背景には、やはり相互の信頼関係というものがあるわけでございます。
  184. 上原康助

    ○上原委員 そういう信頼関係とか、それは外交というのは、行政、内閣の専管事項かもしらぬが、しかし、安保条約によって受ける犠牲とか疑問というのは、あなた、国民が受けるんですよ。国民が納得する条約や協定の解釈、運用じゃないといかぬわけですよ。政府の専管事項だからといって、そう勝手気ままに皆さんだけが有権解釈していいというものじゃないはずなんだ、それは。そこに大きな問題があるんですよ、これ。  そこで、あとの質問もありますので、余り深く議論するわけにもまいりませんが、皆さんは、この事前協議の中身を変える考えはないというように盛んにおっしゃっていますが、この間も私が指摘をしましたように、平成九年四月七日の沖縄の軍用特措法の審議のときにもこれが取り上げられておる、事前協議の問題が。  我が党の前原議員がこれを取り上げて、そのときに、前橋本総理は、一たん議論を整理する、整序すると言った方がいいのでしょうか、整序する必要があるんじゃないか、こういう答弁をしているんですね。検討してみるということを言ったなら、外務省、その後、どう検討してきたの。なぜ、総理大臣が検討してみたい、整序する必要があるということを国会で答弁をしておられるのに、こういうことを、指摘されないまでも皆さんやらにゃいかない課題じゃないですか。これだけ疑問が出るわけだから、絶えずこの問題というのは。御答弁ください。
  185. 高村正彦

    高村国務大臣 御指摘の、橋本前総理の答弁でありますが、日米両国が同盟国として従来以上に緊密に協議していくことが重要であって、また、日米同盟関係について議論を深めていかなければならないということを述べたものと考えているわけであります。  このような考え方のもとで、政府といたしましては、日米安全保障体制の信頼性の増進に向けて、日米防衛協力のための指針の策定作業を米側との間で進めてきました。  この結果、平成九年九月に取りまとめられた指針において、その「基本的な前提及び考え方」として、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係基本的な枠組みは変更されないということとされたわけであります。これは橋本政権下でそういうものができた、こういうことでございます。
  186. 上原康助

    ○上原委員 大変こだわるお立場はわからぬわけではないですが、それでは納得できかねますね。納得できません。  それは、一つは、ぜひ御検討いただきたいと思うのは、これは野中官房長官にも要望ですが、私は申し上げておきたいんですが、やはり日米安保条約で言う第六条の交換公文のその事前協議というのが一つあるわけですよね。ずっと懸案としてすれ違い論議になっている。  もう一つは、今度、この周辺事態確保法、ガイドライン等々が適用された場合には、より日本の米軍基地というものが直接活用されて、米軍の出動というか出撃行為、戦闘行動というのはあり得ると思うんですよね。あり得ると思う、それは。その点についてはどういう御認識ですか。まずそこから聞きましょう。
  187. 高村正彦

    高村国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がよくわからなかったんですが、この周辺事態安全確保法案ができたことによって、いわゆる作戦行動ですか、事前協議の主題となる戦闘作戦行動の回数がふえるということにどう結びつくのか、ちょっと私にはわかりません。
  188. 上原康助

    ○上原委員 それは、ないのを期待するのはだれでもそうですよ。しかし、きのうでしたか、朝鮮半島は入るのか入らぬのかという議論はありましたが、冒頭言いましたように、朝鮮有事を想定して、このガイドラインとか周辺確保法というものは皆さん急いでいるわけでしょう。  一衣帯水の関係にある朝鮮有事の場合に、在日米軍基地から米軍の直接な出動というか行動展開というのはないと否定できるんですか、それは本当に。それは常識だと思うんですよ。そういう事態がもし起きた場合に、一体、これまでのような事前協議ということで、三要件にないとか、アメリカ側からそういう申し入れがないからやりませんということで事は済まないと言うんです、私は。そうでしょうが。  その事態に、ないことを期待するけれども、そういうことも想定をして、関連法案というものが今整備されようとするならば、当然、事前協議のあり方、運用についても、政府全体として再検討してみたいというのが、私は、やはり誠意ある態度じゃないかと思いますよ。官房長官、お答えいただけますか。
  189. 野中広務

    ○野中国大臣 今回、周辺事態の法案をお願いしておりますのは、まさしく我が国周辺における事態に対応した問題でありまして、我が国の国連平和活動とはその趣を異にするものであります。  委員十分御承知のとおり、我が国が直接攻撃を受けることあれば、武力を行使するのは当然のことであります。それ以外に、我が国が何をもっても武力を行使することはあり得ないという意味においてこの法案をお願いしておるわけでございます。ただ、まだ特別委員会も始まっておりません。ぜひ、特別委員会の中で、私、これは特別委員会になるのか、あるいは常任委員会でやられるのか知りませんけれども、ぜひ濃密な御論議をいただいて、せっかく予算が国民生活に大きな影響を与える重要な時期でございますだけに、予算についてのまたぜひ御審議をお願いする次第でございます。
  190. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと私のお尋ねしたことを取り違えておられたら失礼ですが、我が国の有事事態においては、今官房長官の御答弁のとおりだよ、それは。当然。しかし、朝鮮半島有事とか、我が国周辺である事態が発生した、生起したという場合に、在日米軍基地が米軍によってどう使われるかということが最も国民の関心の持つところなんですね。その在日米軍基地を主体として行動する米軍に対して自衛隊がどう協力しようかということが今議論されているわけで、問題は二つある。  前段の、米軍が、必ずしも私はそういう事態が、規模にもよると思うのですが、在日米軍に駐留する米軍だけじゃないと思うよ、それは。アメリカ本国からだって展開してくるかもしらない。それにも協力しようというのでしょう、皆さんは。  であるとするならば、在日米軍基地というものは、第六条に、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」なんですよ、これは。許されるのです。だから、極東の平和と安全のためだという概念でどんどんエスカレートすることもあり得るかもしらない。直接、私は、必ず在日米軍基地の活用ということはあり得ると思う、朝鮮有事に。まあきょうは台湾海峡のことまでは申し上げぬでおきましょう、いろいろややこしくなるから。  そういうことが想定されるということであるならば、従来の事前協議のあり方では対応し得ない面が出てくるのじゃないのか。そのことについてはぜひ御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  191. 野中広務

    ○野中国大臣 委員御承知のように、第四条では、「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」ということになっておるわけでございます。今日まで、日米両国政府間におきましては、我が国の安全保障委員会等、種々のレベルにおきまして密接な情報交換なり政策協議を随時に行っておるわけでございまして、いついかなる事態にも対応できるように、随時それぞれ協議が行われ、情報交換が行われる体制になっておることは御承知おきを願いたいと思う次第でございます。
  192. 上原康助

    ○上原委員 六条の事前協議よりも四条を活用なさるという政府の御見解のようですが、それも一つの選択肢でしょう。私も、それも否定はしません。  だが、今私が指摘をしたような事態というものは、あってはならないこと。あってはならないというか、ない方がいいわけなんだが、そういう事態は想定できるということであるならば、六条の事前協議の問題について、これは外務大臣、もう少し、条約局長なり、あんな木で鼻をくくったような答弁じゃなくして、真剣に我々が、各党が問題指摘をしたことについて、皆さんも検討するぐらい言ってみたらどうですか。検討するように、それは。どうでしょう。
  193. 高村正彦

    高村国務大臣 仮に、我が国の施設・区域、いわゆる基地を利用して米軍が戦闘作戦行動を行うときは、必ず我が方にその事前協議の申し出があるはずでありますし、そういうときは真剣に、主体的に、イエスもあればノーもある、そういう形で検討し、返事をすることにいたします。
  194. 上原康助

    ○上原委員 なぜこのことにそんなに拒否反応を示すかよくわかりませんが、そこいらがまあ安保の一番グレーゾーンなんで、またやっている間に何か飛び出してくるかもしらないから、次にまたやりましょう。  次は、このこととも関連するのですが、沖縄の問題について若干触れておきたいと思います。きょうは少し具体的にお尋ねします。振興策の方から行きましょう、基地問題からやるとまた……。  せんだって二回目の沖縄政策協議会が持たれて、稲嶺新知事が御提案なさった六項目については、大方実現する方向で御検討していくということが申し合わされたようです。そのことについて、簡単にひとつ政府の考え方をお聞かせ願いたいということが一つ。  いま一つ、沖縄経済振興二十一世紀プランというものを、御承知のように前橋本総理が沖縄復帰二十五周年記念式典で沖縄の方で御発表なさって、その後、県と政府のコミュニケーションがうまくいかずに中断しておったのですが、このことについても、政府は沖縄経済振興二十一世紀プランを早目に取りまとめたいと。本当は昨年の春ごろまでということでしたが、この作業の進めぐあい、あるいはいつごろをめどとしてお考えなのかというのが二点目ですね。  このことについて、まず沖縄開発庁長官の方から御見解をお聞かせ願いたいと存じます。
  195. 野中広務

    ○野中国大臣 去る二十九日に第十回目の沖縄政策協議会が開催をされまして、稲嶺沖縄県知事からそれぞれ要望のされました問題について、鋭意努力する方向で、今具体的な詰めを行っておるところでございます。  つきましては、ただいま上原委員から御指摘ございました沖縄経済振興の二十一世紀プランについてでございますが、先般の政策協議会におきまして、このプランの早期の策定、具体的には、本年半ばごろまでに少なくとも中間的な方向をひとつ取りまとめていただきたいという知事の御要請がございました。これを受けまして、政府といたしましては、今後逐次検討を進めることにいたしまして、次回予定をされます政策協議会におきまして、このプランとして目指すべき方向についての県側の御意見をちょうだいいたす段取りをいたし、協議会としてその方針を了承していただいたところでございます。  政府といたしましては、まず、今も申し上げましたように沖縄県側の意向をお聞きすることが第一であると考えておるわけでございまして、その上で、二十一世紀に向けて依存型の経済から自立型経済へと移行ができるように取り組みを重点的に配慮をしていかなくてはならないと考えておるわけでございまして、このプランの目指すべき方向や、あるいはポスト第三次沖縄振興開発計画との関係などを含めまして、鋭意、委員が今おっしゃいましたようにその検討と努力を重ねてまいりたいと存じておるところでございます。
  196. 上原康助

    ○上原委員 そこで、今も御答弁があったわけですが、私の、昨年この構想が前総理から御発表、沖縄でなさったときのイメージ、受けとめ方は、恐らく第三次振興開発計画後の、沖縄総合経済振興プランというのか、そういうことをお考えになっているのかなと期待を持ったわけです。ポスト三次振計を構想した内容だ、これは県の意向ももちろん今御指摘のように聞かなければいかない面があると思うのですが、政府はそういうお立場で考えておられるのか。私が申し上げたようなことを含めてお考えなのか。その点をもう少し具体的にお示し願えればと思います。
  197. 野中広務

    ○野中国大臣 委員指摘のとおりでございます。
  198. 上原康助

    ○上原委員 ぜひポスト三次振計の大きな二十一世紀への構想として、これは我々も、相談すべき方々と相談をし、また知恵もかりながら、何らかの提言なり提案をしたいという気持ちがありますので、その点御理解を願いたいと存じます。  そのことと、もう一つは、稲嶺知事が公約をしておられるいわゆる経済新法も関連をしてくるんじゃないかと思うんですが、このこととの関連性についても、政府内では何か御検討か意見調整か、まあ調整というのはいかぬと思うんですが、協議はしたことはございますか。
  199. 野中広務

    ○野中国大臣 稲嶺知事のおっしゃいます新経済法というものと、そして従来の沖振法というものとの問題等、今後具体的に県側と調整し、詰めなくてはならない問題もございますので、事務当局は事務当局とし、政策協議会は協議会として今後取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
  200. 上原康助

    ○上原委員 ぜひ、そういう点は、県側なりあるいは関係団体等の意見なども十分しんしゃくの上で進めていただきたいと要望を申し上げておきます。  それと、もう一点ですが、御承知のように、島田懇のプロジェクトというのが構想されて、これは基地所在市町村にとっては大変評価を受けておると私は理解をしております。そのプロジェクトの内容について一々申し上げませんが、ただ、各所在市町村の関係者心配しておられることは、予算措置が十分なされるであろうか、持続性があるのかという点があるわけです。  これは大蔵大臣にも要望として申し上げておくわけですが、こういう、さっき指摘をしたような財政、経済状況ですから、予算状況ですから、余りそういうことは言いにくい面もあるわけですが、島田懇では、向こう七、八年ないし十年間に七、八百から一千億の財政措置をやって、予算措置をして、いろいろの基地所在市町村に対しての基地被害緩和のための諸施策を推進するというメニューができているわけですね、御承知のように。そういうことについて、政府として、沖縄開発庁あるいは内閣として、これは既定方針どおりお進めになっていくと思うんですが、そのことに対する沖縄開発庁長官・官房長官の御意見と、それをやはり担保していただく御努力大蔵大臣にもお願いしておきたい。  このことについて、両大臣の方からひとつお考えを聞かせておいていただきたいと存じます。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は内閣を挙げての最も大事な問題でございますから、私どもで、財政の方でできることがあれば、もう最大限いたさなきゃならぬと思っております。
  202. 野中広務

    ○野中国大臣 今大蔵大臣お答えのとおりでございまして、既に、委員御承知のとおり、平成十年度の第三次補正予算におきましても総額八百三十五億円の沖縄開発庁予算をお組みいただきましたし、また、来年度の予算におきまして、今御審議を賜っておるわけでございますけれども、各省庁計上の沖縄関係予算、総額五千三百七十二億円、対前年比四・五%増において、沖縄の振興を図るための施策が着実に推進されるように配慮をしておるわけでございます。  さらに、こうした予算上の対応に加えまして、極めて深刻でかつ高い失業率に示される沖縄の深刻な状況を踏まえまして、総額百億円の特別調整費を総理の決断によって計上させていただいた次第であります。この効果的な活用によりまして、さらに施策の充実を進めてまいりたいと思うわけでございます。  今大蔵大臣からお話がありましたとおり、今後も内閣の最重要な問題として位置づけて、沖縄振興の重点的配分を確保してまいりたいと考えておる次第であります。
  203. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ引き続きの御努力と御理解をお願いしておきたいと思います。  そこで、この振興策の方の、今野中長官から御答弁があったわけですが、きょう労働大臣もお呼びしようかと思っていましたが、余り深い議論ができないと思って、貴重な時間ですから、沖縄開発庁でお答えいただけると思って労働大臣は来ていただいておりませんが、やはり雇用対策というのは失業雇用というのが非常に重要なんですね。  政府がおとりになろうとしている今度の緊急雇用創出特別基金事業というのは、その発動要件というのが、失業率が五・二ですか五・七を超えた場合。沖縄は八%を超えているわけですから特定地域として六百億の中から支出をするという御答弁が、この間労働大臣からたしかあったような記憶があるんですが、対象が四十五歳以上になっている点です。  沖縄の場合は、若年者が多いわけですよ、失業は、二十前後から二十代というのが。そういう意味で、私は、この雇用対策というものは、政府全体の、まあ、総理の諮問機関も設けてさらにやる、努力なさるという報道もけさほどどの新聞かに出ていましたが、そのことは是として、やはり若年者の雇用失業対策あるいは女性の雇用失業対策、こう分けるのはいかがなものかと思うんだが、年齢的には四十五歳という線引きはいかがなものかと思いますので、この点については開発庁で少し御検討いただいた上で、労働省や、通産も関係するんでしょうか、何かもっと効率的というか効果的な雇用失業対策を進めていただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  204. 安達俊雄

    ○安達政府委員 去る二十九日の沖縄政策協議会において御了承を得まして、労働省サイドで進めていただきます対策といたしまして、緊急雇用創出特別基金の沖縄への発動が決まったわけでございます。一月三十日から発動がされました。  この対策は、御指摘のように、中高年の非自発的失業者を雇用する雇用主に対して助成を行い、その雇用機会の拡大を図るものでございますが、これに先行して、沖縄につきましては特別の配慮から、若年者の雇用の拡大を図るような助成金の制度を労働省を中心に既に進めていただいておるところでございます。  こうした対策が合わせて効果を発揮することを期待したいと思いますし、また私ども、御指摘のような視点を今後ともよく踏まえて、若年者または中高年者ともども、政策の効果を発揮するよう努めてまいりたいと考えているところでございます。
  205. 上原康助

    ○上原委員 重ねて大臣の御答弁は求めませんが、今お聞きのように、中高年にウエートが置かれた基金活用のようですが、そうじゃなくして、ぜひ若年の方も含めて対策を講ずるように要望を申し上げておきたいと思います。  最後に、基地問題について二、三点お伺いしたいと思います。  せんだって、私がSACOの見直しをお考えになったらということを申し上げて、大変誤解というか、議論がかみ合わなくて失礼をしましたが、私が申し上げているのは、既に二年が経過をした、二年有半経過をしている、なかなか県内移設条件だけでは、合意をしたものを全体的に実行していくことは困難性があるということを指摘しておきたかったわけで、全面的にSACOを見直せ、否定しているということではありませんので、その点、野中長官、きょうはお怒りにならないで、ひとつ御理解を願いたいと思います。  そこで、一つは、例えばSACOの合意の取り決めの中に、ギンバル訓練場の移転があるわけですよね。ヘリコプター着陸帯をギンバルから金武ブルー・ビーチ訓練場に移す。  だが、ブルー・ビーチについては、振興開発、リゾート等の計画が金武町はあるので、これは受け入れがたいという金武町の強い要望が出ていることは御承知のとおりですよね。こういう弊害が出ているわけですよ。だから、ヘリポートをブルー・ビーチに移すのではなくして、キャンプ・ハンセンの中にそういう施設は移設できるんじゃないか。こういうことについてはやはり米国側ともよく相談をし、地元の意向を受け入れ、理解と協力がなければうまくいかないわけですから、そのことについてどうお考えかというのが一つ。  もう一つは、泡瀬通信施設の制限水域の解消問題というか、制限水域を取り払ってもらいたいということを、私はこれまで予算委員会、昨年三月にも取り上げております。  既に沖縄市東部海浜開発計画の中で、もうおわかりと思いますので中身は言いませんが、政府に要望をして、防衛庁、施設庁あたり、日米合同委員会にも提案をして調査をして期待にこたえたいということがこれまでの御答弁でなされているわけですが、この点についてはどうなっているのか。見通しなど、二点についてひとつお聞かせを願いたいと存じます。
  206. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 このギンバル訓練場で行われております重量物の輸送訓練等のヘリコプターによる訓練は、事故防止とか地上への安全確保のために海岸及び海上で行う必要がある。そのため、返還に伴い必要となるヘリコプターの着陸帯を海岸に面している金武ブルー・ビーチ訓練場に移設することとしたものでありまして、キャンプ・ハンセンへの移設は非常に困難だというのがアメリカ側の返事であります。この点については、さらに私どもも根気よく折衝したい、こう思っております。  泡瀬通信所の問題につきましては、現在米側が、今先生がおっしゃったような提案を受けて、通信施設の運用上の所要を満たしつつ、地元の埋め立て、開発等の利用計画が実現可能となるような方策について検討をしているところであります。  私どもとしては、この件が沖縄の中部圏の活性化を図る沖縄市東部海浜地区開発計画を推進する上で大変重要な位置を占めていることを十分認識しているところでありまして、できるだけ早急に沖縄市の要望が満たされるよう、引き続き努力してまいる所存でありますが、御案内のとおり、沖縄の市長さんは、三月一日までにこれを返還するようにしてほしいということを強く要請しております。  平たく言いますと、米軍もこれをまことにまじめに対応しておりまして、幾つかの条件を満たせば可能になってくるのじゃないか、私はこう思っております。  幾つかの条件と申しますのは、例えば埋立地につくる場合に、通信施設があるものですから、余り建物の高さが高かったりすると電波障害が起こるというようなことも含めまして、そういうこと等調整しながら早急に回答をしたいというところまで来ているということを申し上げたいと思います。
  207. 上原康助

    ○上原委員 泡瀬通信施設の制限水域の解除については、幾つかの条件が双方で了解できれば見通しは立つというあれですから、そういうことについては沖縄市の市長さんも理解のある方だと思いますので、もちろんみんな理解はあるわけですが、ぜひ年度内の解決に向けて一層の御努力を願いたいと思います。  それと、ギンバル、これも確かにアメリカ側の要望はそうかもしれませんが、アメリカだって少しは辛抱せねばいけませんよ、それは。何でもかんでも彼らの訓練に都合のいいようにやりなさいといったって、そうはいかないですよ。ですから、そこは拒否するわけじゃない。キャンプ・ハンセンの一部に移してもらったらどうか。飛んでいって海岸でやればいいじゃないですか、海で。  この二点について、重ねて米側と積極的な折衝をしていく、そういう理解でいいですね。御答弁ありますか。
  208. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先生おっしゃるとおり、根気よく折衝したいと思います。
  209. 上原康助

    ○上原委員 最後に、これはちょっと頭の痛い問題なんですが、私が、これも昨年でしたか、五月の二十七日、安保委員会で取り上げたことなんです。  きょうは特に那覇軍港とか普天間飛行場のことについてはあえて触れませんでしたが、最近、沖縄県民の皆さんが非常に関心を持っていることは、沖縄に米海兵隊の最新兵器と言われているオスプレーの配備計画があるということを、去る一月二十日に沖縄の米軍第三海兵遠征軍のカステロー副司令官が、これはワンスター、准将のようですが、現地で明らかにしているわけですよね。私も、昨年アメリカ側の資料を入手することができましたので、そのことを政府に、今申し上げたように、ここにおられる久間さんが防衛庁長官のときだ。それで、MV22オスプレー三十六機を新しい海上基地というか普天間の代替基地ができたら配備するということが米軍の資料には書かれておる。  返還、移転先も決まらない、大変神経質になっている状況で、現地の司令官が、責任者がこういう発表を県民の頭越しというか、政府と相談があったかどうかわかりませんが、この事実関係についてどうなのか。オスプレー配備というのは、日本側にも何かの問い合わせなりあるいは相談なりがあるのかどうか。こういう米側の一つのレポートがあるわけですが、これはきょうは触れませんけれども、この事実関係についてどうだったかということと、また政府のお考えはどうなのかということを、ぜひこれからのいろいろな議論のためにお聞かせを願いたいと存じます。
  210. 高村正彦

    高村国務大臣 MV22の沖縄への配備に関する報道があったわけでありますので、これを受けて米国防省に対し照会をいたしました。米国政府としては、現時点においてMV22の沖縄への配備については何ら具体的な予定は有していない旨の回答を得たところであります。
  211. 上原康助

    ○上原委員 それはそれなりに受けとめておきますが、えてしてこういった非常にセンシブルな問題になると今のような御答弁に終わってしまう。しかし、実際には、米側が公表したように、公表というか明らかにしたように、配備されてしまうということが間々あるわけですね。それは、基地問題がなかなか進展をしないやさきに、近代装備というか、新しいそういった兵器を配備するということについては県民の理解と協力がますます得にくくなる、こういう点を指摘しておきたいと存じます。  そこで、では、その点について米側は何らそういう計画はないということでしたが、政府自体はどうお考えですか。
  212. 高村正彦

    高村国務大臣 米側から正式にそういう回答が来ているわけでありますから、少なくとも現時点でそういう計画はない、こういうふうに承知しております。
  213. 上原康助

    ○上原委員 時間どおり終わりますが、ぜひ慎重にこの点については御配慮を願いたいということを要望申し上げて、終わります。  ありがとうございました。
  214. 中山正暉

    中山委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田幸久君。
  215. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。  きょうは、まず防衛庁長官に、次期初等練習機の疑惑について、昨年来話題になっておりますが、そのことについてお伺いをいたしたいと思います。  まず、全般的な経過として、数年前には機体部分が四億六千万円あるいは機体価格が五億五千万円という見積もりで富士重工の方から提案があった初等練習機が、昨年の八月二十七日の段階で二億四千万円という形で、富士重工のT7で採用が決定をされておるわけですが、この数年間に半分以下の価格で実は富士重工の初等練習機に決定をした。そもそも、まず、その経緯について概観を述べていただきたいと思います。
  216. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 まず申し上げますけれども、先生今お話のございました中期防策定時に行いました初等練習機の試算、それから今回の具体的な機種選定におきます提案書、それは目的を異にするものでございまして、両者はまず関係がございません。  それで、まず最初の中期防におきます試算でございますが、これは、中期防を策定するに際しまして、中期防の総額というものをはじく必要がございます。そのために、中期防期間中に、現在使っております初等練習機のT3というものの後継機が必要になるだろうということで何らかの計算をする必要があるということで、当時、富士重工に対して、T3と同等の性能を有する航空機を調達する場合の経費の試算を求めた、こういうことでございます。  一方、具体的に、十一年度概算要求におきましてT3の後継機を選定する必要があるということで、これにつきましては機種選定手続というものが決まっておりますので、そういう中で、四月の末に要求性能書、運用要求書等を定めまして、これを関係する会社、これは六十社に対しまして説明の案内をし、また三十社がこの説明に参加された。そういう中で、具体的に提案をなさる御意思のある六社に対しまして提案要求書を提出した。これに基づきまして、六月の十五日に二社から提案書が出てきた。その提案書におきます価格がそれぞれ出てまいりまして、そういったものを踏まえ、経済性それから要求性能をあわせて機種選定を行った、こういう経緯でございます。
  217. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 目的が違うとはおっしゃいますが、それから中期防に対する試算で何らかの計算が必要だと言いますが、実際につくっている会社は同じでございまして、内容の同じ飛行機でございます。そして、これは、少なくとも国が民間企業に委託をし、数字を民間企業が出してくるわけですから、仮に、何らかの計算といっても、目的が違っても、飛行機そのものの内容については、半分以下の価格差が出るというような、内容にこれだけ差が出ること自体が非常に不可思議な気がいたしますが、長官、お聞きになっていて、これは常識的に考えても非常におかしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 両者の違いについては今防衛局長から答弁したとおりでありますが、中期防の策定に際し、空幕担当者から、初等練習機の製造実績のある富士重工に対して、異なるエンジンを整備した上でT3と同等の性能を有する航空機を調達する場合の経費の試算を求めたところ、富士重工では、T3の機体の一部、例えば胴体中央部、胴体後部、それから水平尾翼を利用し、それ以外の部分は新規に開発することを念頭に置いて、平均機体価格四億四千万と試算したと承知しております。  また他方、今回の機種選定における候補機種であるT3改に関しては、富士重工では、具体的な運用要求や要求性能に基づき、T3だけではなく、生産が継続している海上自衛隊の練習機T5の機体も活用し、新規開発部分をごく一部、ごく一部と申しますのは胴体の前部と中央部の接合部分にとどめることにしまして、そのことによってコストの大幅な削減を図ることが可能になったという判断に加えまして、民生品の活用やエンジンの一括発注等を積極的に進めることで、平均機体は二・四億になったと承知しております。
  219. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今、T5、海上自衛隊の練習機の大部分を使って一部を改良するということであるならば、そもそもの海上自衛隊のT5のコストに近い形のコストが要求書の中に出てきていいと思うわけですが、T5の方も実は四億六千万円ということでございますので、T5と今度のT7が、今の御説明ですと、ほぼT5のほとんどを使ってこのT7というのをつくろうとしているにしては、価格が余りにも下がり過ぎていると思いますが、いかがでしょうか。
  220. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 今、長官から御説明しましたように、T7の場合は、T5の機体部分の大部分であるとかいろいろなところを活用するものですから、例えば治工具だとかといったものについて、新たにそういったものをつくる必要がないとか、いろいろな形でもってT5に対しまして経費の節減要素が大きいということだろうと思います。
  221. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 T5の契約が決定したのは一九八六年。それから、納入が始まったのが八八年。それから、昨年の購入価格も、やはり四億数千万円で実際に購入されておるわけです。  ということは、仮にT5のある程度の部分を削ったにしても、それが昨年、T7では二億四千万円になっている。一方、ほぼ同じT5は、昨年やはり四億数千万円で購入をされておる。ということは、この二億四千万円のT7から逆にさかのぼりますと、昨年いろいろ話題になりましたが、T5の数年前の四億数千万円というのは、まさに倍近くなるわけですから、むしろこれはT5の方が水増し請求であったんじゃないか、常識的に考えればそういうふうに言えるんじゃないでしょうか。長官、いかがでしょうか。
  222. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 T7では、生産ラインのあるT5の胴体前部と後部、それから主翼、水平尾翼と垂直尾翼をそのまま利用することで、これらの部分の設計費や生産ラインを構築する費用の節減を図る。そのほかに、ここが大変大事なんですが、既に作業員がT5でいろいろな訓練を受けておりますから、作業員がこれらの部分の生産に習熟していることが、加工費の節減が大幅に可能となったと思われます。これに加えて、T3の胴体中央部の設計ノウハウ、設計図等でありますが、これを活用することで設計費を節減したということがあります。  このように、既存の機体の構成部分を大幅に活用すること等で、新規開発部分を胴体前部と胴体後部の接合部分に限ることが可能になりまして、開発費用の削減を図った。さらに、これもまた大きい要素でありますが、搭載通電機器や速度計や高度計といった計器類等は民生品を活用した。それから、エンジン五十台を一括して発注した。こういうことがT5に比べてコスト削減になっている要素だと考えられます。
  223. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今の論理でいきますと、自衛隊がこれからいろいろな航空機を調達していく場合に、年がたてばいろいろなノウハウ、あるいは作業員の習熟度が高まるわけですから、年々開発費が安くなっていくという論理になりますが、それでよろしいでしょうか、長官。
  224. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 御指摘のとおりのようなことはあると思います。そこで、私どもも、コスト削減ということで、この三年間で五%のコスト削減を図るという中には、そういう要素も加わってくると思います。
  225. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 五%じゃなくて五〇%の話をしているわけですから、半分以下になったということと五%削減というのは、非常に質的にも本質的に違うわけです。それでは今までの説明の整合性がないと思います。  ちょっと今の答弁は非常に承服できませんが、また戻ってまいりたいと思います。  別の聞き方をしたいと思いますけれども、六十社に対する会社説明があり、それから六社に対して提案要求書があった、そして最終的に二社から提案書が出されたということでございます。これは、六十社というのは、今回は機種選定に当たっていわば国際入札のような、海外企業にも呼びかけをしたというふうに聞いておりますが、長官、それでよろしいでしょうか。
  226. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 私は今、T7がT5に比べてなぜ下がったかということを申し上げたわけでございますし、後で申し上げたことは、全般として、今先生が言われたようなことも考えながらコスト削減に努めているということを申し上げたわけでございます。  詳しい部分につきましては、政府委員の方から答弁させます。
  227. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 私どもの方から、平成十年の五月八日に、要求性能を満足する可能性のあると思われる機種を取り扱う者に限りませんで、およそ航空機を取り扱う国内メーカー及び商社、これが約六十社でございますけれども、これを幅広く対象として、五月十二日の事前説明会のための案内を御連絡をしたということでございます。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  228. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ということは、外国企業も含めて国際入札的な説明会を開いたということでございます。  それで、この中で最終的に二社が残るわけですけれども、このいわば提案要求書といいますか、外国企業も含めました企業に対する要求書が、外国企業も参入するということで、今までの国内のメーカーに対する要求書といろいろな意味で内容が異なっていたのかどうかについて、一般的にですね、まず長官にお聞きしたいと思います。
  229. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 私どもとしては、まさに必要な航空機が調達できるように、それを御提案されるに必要な内容を盛り込んだものを提案要求書として出しているということでございます。
  230. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 つまり、今まで国内メーカーだけの機種選定の場合と、今回外国企業も含めた機種選定、国際入札の形にしたわけですが、その提案要求書の内容に変化があったんでしょうか、なかったんでしょうか。  それから、ついでに伺いますと、そもそも、今回、外国企業も含めた会社説明会の案内を出したということの理由も、あわせてお答えいただきたいと思います。
  231. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 申しわけありませんが、提案要求書の内容を変えるということの趣旨が私よく理解できないんですが、理解できないなりに申し上げますと、要するに提案要求書は、候補機種につきまして、企業等に対し、性能、所要経費、後方支援等に関する資料を含めた提案を求めるための文書でございまして、まさに、そういう必要事項について記しているということでございます。  それから、今回なぜ六十社を対象にしたのかということですが、まさに、およそ航空機を扱う国内メーカー、商社を幅広く対象にしたということでございます。
  232. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 なぜ今回は海外メーカーも対象にしたかということをもう一度お聞きしたいことと、それから、今の理由で、性能仕様等についての要求を機種選定に対してしているということであるならば、例えば、T5、海上自衛隊の練習機の際にも提案要求書があったはずでございますが、実際そうであったのかどうか。その二点についてお聞きしたいと思います。
  233. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 最初の点でございますが、私どもとしては、やはりこの機種選定に当たりまして、できるだけ広く選定対象を求めた方がいいだろうということから、できる限り幅広い御説明というんでしょうか、御連絡をしたということでございます。  それから、T5でございますが、これはもう先生御存じの上でのお尋ねだと思います。これはまさに、KM2という海上自衛隊が使っておりました航空機につきまして、これはいろいろな騒音の苦情であるとか、そういうことから、その一部性能改善を図るという観点から、その改造機ということで、改めて機種選定を行う必要がないものとの判断に基づきまして行っているものでございますので、機種選定を行わなかったものですから、今申しましたような提案要求書というものの発出もしていないということでございます。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  234. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 二つ、論理矛盾だろうと思うのです。  一つは、昨年はできるだけ広く該当企業を広げたということは、昨年の五月なりまでは広くなかった、つまり狭くやっておった。つまり、国内企業だけしておったということにとっていいのかということが一つ。  それからもう一つ。今、T5に関して提案要求書を出さなかったのは、改造機であるから提案要求書を出す必要がなかった。であるならば、T5を改造したT7も提案要求書を出す必要はなかったんじゃないですか。どうですか。
  235. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 私どもといたしましては、航空機の機種選定等につきましても、できるだけ透明性を高めていくといいましょうか、調達につきまして改善すべきところがあればもちろん改善をしていきたい、こういうふうに常に思っております。  今回、このT3の後継機種を選定するに当たりまして、そういう点から、今の時点で、できるだけ透明性と申しましょうか、そういうものを図るという考え方からやらせていただきました。  それから、T5の場合ですけれども、まさに、先ほど申しましたような騒音苦情の問題だとか学生の体位向上だとか、そういったものも踏まえて、KM2を改造するというような観点のものとして当時認識をしておりましたので、今回のような機種選定手続をとらなかった、そういうふうに私は理解しております。
  236. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今のでは答えになっていないと思います。  つまり、KM2を改造したT5は、改造した飛行機であるから提案要求書が要らなかった。一方、このT5を改造したT7の場合には、提案要求書が要る。これは同じ改造機でありまして、しかもT5とT7の類似性の方がはるかに高い、同じエンジンを使っておりますし。しかも、そのT5からT7に、価格が半分以下になるほど変わっておるわけです。ですから、その二つの点で、これは満足できる答弁ではない、非常に論理矛盾だろうと思います。  さらに続けたいと思いますけれども、この提案要求書に関しまして、今まで日本の自衛隊の方で、提案要求あるいは性能に関して網羅されていなかった整備に関する項目が入っておったというふうに聞いておりますけれども、このIRANという整備方式がこの提案要求書の中に入っておったのかどうか、長官、お答えいただきたいと思います。
  237. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 防衛庁では、昨年五月上旬から中旬にかけまして、航空機を取り扱う国内メーカー及び商社全般に連絡した上で、T3後継機の機種選定に関する会社説明会を実施したのでございますが、この説明会における説明者に確認したところ、当該説明において、空幕から提案会社に対してIRAN方式の採用を要請したという事実は把握しておりません。  なお、提案要求書においても、IRAN方式の採用を要求するような記載は存していないところであります。
  238. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 委員長の了承を得まして、資料を準備しておりますので、お配りをしていただきたいと思います。
  239. 中山正暉

    中山委員長 結構でございます。
  240. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 資料をお配りいたしましたが、これは、昨年の五月十五日に防衛庁が六社に対して配ったとされております提案要求書でございます。  この三十ページと三十二ページ、それからほかに十ページにも、実はIRANという記述がございます。しかも、IRAN、つまり定期検査という意味でございますけれども、この二枚目の資料にワンサイクルというような形で出ております。  要するに、航空時間によって検査をしなければいけない、あるいは期間で、何カ月置きに検査をしなければいけないという定期検査を義務づけておるわけであります。しかも、かなり詳細にわたって、様式まで付録につけて、この提案要求書、かなり厚い分量の提案要求書でございますけれども、添えてあるわけです。  十ページにもこのIRANということが入っておりますし、それからIRANということの説明書きも書いてあるわけです。そのIRANという説明書きのところを読みますと、インスペクション・アンド・リペア・アズ・ネセサリー、つまり必要に応じて修理をする、あるいは検査をする。このIRANという言葉自体は、国際慣行上、必要なときに検査をするというのが世界の航空界の通念だそうです。ところが、日本語のところを見ますと、防衛庁のところを見ますと、航空機体定期修理。  ですから、IRANのもともとの言葉で言えば必要なときに修理をすればいいことが、防衛庁のこの提案要求書の中では、機体定期修理、つまり定期的にしなければいけないという、いわば国内ルール、自衛隊ルールをこの国際入札をした会社に対しても言っておるわけです。  しかも、きょう二枚ほどは委員皆さんにもお配りをいたしましたが、仕様まで添えて、かなり詳細な、つまり、こういう定期的な検査をしなければならないという形で実は提案要求書を出しているわけです。  このピラタス社について少し調べましたが、アメリカを初め欧米のかなりの国がこのピラタス社の初等練習機を採用している、国際的にも非常に定評がある、そして独自のいわば整備体系を持っておる。ところが、そういう会社、あるいはほかの会社も含めて国際入札かのような印象で呼びかけておきながら、実際には国内ルールをクリアしなければ提案書が出せない。しかも、このIRANという日本の国内の整備計画を入れることによって随分コストが高くなる。  したがって、もともとピラタス社の方でPC7という世界的にも定評のある練習機を入札に提案をしてきたわけですけれども、IRANが入ったがゆえに非常にコストが高くなってしまっている。一方で、富士重工の方はこの数年間に半分ぐらい下がってきてしまっているという状況になっておるわけです。  今大臣は、このIRANは要求提案書に入っていないというふうに明確に発言をされましたし、きょうたまたま私が受け取りました私の質問主意書に対する答えでも、要求提案書にIRANは入っていないという、いわば質問主意書というのは議長に対して答える内閣からの回答でございますけれども、これに偽りがあったし、現在の防衛庁長官の発言にも偽りがあったということですが、いかがでしょう。
  241. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 私は、偽りは決して言っておりません。私の先ほどの答弁は、提案要求書においてもIRAN方式の採用を要求するような記載は存していないと言ったのであります。  そこで、詳しく御説明させていただきますが、提案要求書とは、候補機種について、企業に対し性能や所要経費や後方支援等に関する資料を含めた提案を求めるための文書でございますが、後方計画に関する事項の一部においてIRAN及びこれと同意義である航空機体定期修理の文言があるのは事実であります。  しかし、これはあくまで項目名や記入例を示したものにすぎません。これはIRAN方式によるべきだとの趣旨で記載されたものではありません。また、仮に提案会社がIRANを不要と考える場合は、同じく後方計画に関する事項に設けられている整備計画全体構想のような項目の中で、IRAN方式によらない独自の整備方式を提案し、IRAN等の欄を空欄ないし該当なしとすることも自由であり、十分可能であるということになります。
  242. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 それは詭弁じゃないですか。この提案要求書の中に相当詳しく、別紙第一以下別紙二十四まで入っておりまして、今お配りしたようなマニュアルまで入っておるわけです。これをもって要求じゃない、提案する企業の方が勝手に独自の方式でやっていいというのは詭弁じゃないですか。  これは、今まで日本の国がこういう公募というものを国際的にしておって、そしてマニュアルまで、仕様まで出しておいて、それでこれは要求じゃない。そもそも題名が提案要求書と書いてあるわけですよね。提案要求書と書いてあって、しかも前言、目的、意義、概要等々書いてあるわけです。しかも、前言の中に、「提案された内容は以後、契約完了に至るまで及び運用期間中、貴社を拘束するもの」であるというふうに書いてあるわけです。これをもって要求じゃないというのならば、提案要求書じゃないじゃないですか。
  243. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 最初にお断りしておきますが、この質問の主意書に対しても、私どもは、御指摘の初等練習機に対する要求性能等においてIRAN方式の採用を求める旨の記述はない、こう回答したわけであります。  今言ったことは、もう一回申し上げますと、この要求書は、あくまで項目名や記載例を例示したにすぎないものであります。だから、これはIRAN方式によるべきとの趣旨で記載されているものではありません。ですから、IRAN方式によらない独自の整備方式を提案し、IRAN等の欄を空欄ないし該当するものなしということも自由なのであります。実際上、提案要求書には、例えばシミュレーターの項目や油圧系統の項目のように、提案会社から該当がなしとして空欄のまま提出されているものも数多くあります。
  244. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 それは詭弁だろうと思います。一国が、政府がこういう提案要求書といったものを出す際に、しかも、目的、意義、性格、前提条件、提案要領、要領まで書いてあるわけです。しかも、これは拘束をするということも先ほど申しましたように入っているわけです。しかも、客観的に見て公正かつ妥当であるというようなまくら言葉も入っておるわけであります。そして、貴社を拘束する、しかも、提案された経費については契約金額となり得る、ここまで縛った上で提案要求書となっているのです。  これは提案書じゃないわけです。提案書でございましたらば、各メーカーが独自の方法をとるということも可能ですが、提案要求書という形で、しかも、後にこれを回収するというようなことまでしておるわけですから、それをもって、これは全く関知しない、勝手にメーカーの方が取捨選択していいということでは、これでは国際的に日本が、この間もこの席で二枚舌という言葉がありましたが、これはもう二枚舌どころか虚偽そのものじゃないですか。どうでしょうか、長官。
  245. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 私どもは、決して二枚舌でうそを言っているわけじゃありません。いつものとおりやっているだけです。
  246. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 二枚舌でなければ、提案要求書のこの要求という言葉と先ほどからの答弁ですと、論理矛盾じゃないですか、どうですか。
  247. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 要求書と書いてあっても、該当がなかったり、書く必要のないものは書く必要がないということで、先ほども申し上げたとおり、シミュレーターの項目や油圧系統のようなものにつきましては空欄のまま提出されたりしております。
  248. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 提出されたというのはあくまでも結果でありまして、実際に要求をしている。それで、そういう形で、もしIRANなりを提案をしなかった場合には、これは入札から外れる、機種選定から外れるという非常に大きなポイントになっているんじゃないでしょうか。  これは先ほど長官が例に挙げられたことと、このIRANという形で非常に詳しい形でこれを例示をしておるということは、これはどう考えても、入札をしている企業にとっては、これはオブリゲーションと当然とる認識。例えば国際入札の場に行きまして、日本政府がやっているこの提案要求書というのを、これは要求をしていないんだと言っても、国際的にまるで通用しないんじゃないでしょうか。  これは非常に日本政府の信頼そのものにかかわることでございますが、もう一度お聞きします。これは要求書の中にある記述で間違いないんじゃないですか。
  249. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 要求書の中に書いてあるということは事実でございますが、それには拘束されないということを申し上げているわけであります。また、書かなかったから入札から外れることはないと考えておりますが、詳細につきましては政府委員の方から答弁させます。
  250. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 私どもといたしましては、航空機の整備というのは、航空機の安全性の確保等の観点から適時適切に行う必要があると考えております。  ただ、私どもとしては、必ずしもそのIRAN方式が唯一の方式というふうに決めているわけでもございませんので、また別途の御提案が仮にあったのであれば、それが本当にそういう形でもって我が方が考えている航空機の安全性が確保できるのか、運用上支障がないのか等々の観点から、またそこは検討をさせていただくだろう、こういうふうに思います。
  251. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 問題は、この提案要求書、つまり要求書の中に記載されておるということは、今の局長あるいは先ほどの長官からの答弁ですと、これは要求書として出していながら、出す側の方は、これにこだわらず全く勝手気ままにやっても影響がないということでしょうか、そういうふうに論理的にはなりますけれども。
  252. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 少し観点を変えて御説明したいと思いますが、「提案要求書の前提条件」というのがございまして、提案要求に当たって航空自衛隊が提示する前提条件は、次のとおりであります。  まず、「性能及び機能に関する要求事項」、それから「本航空機の取得」、これは本航空機の取得は五十機とし、機体形態は原則として全号機同一にするとか、いろいろなものが書いてあります。「その他の前提条件」として、「外国機の場合、一般輸入あるいはライセンス生産による方式とします。」とか、るる書いてありますが、この初等練習機の提案要求書の提案企業への通知については、IRAN方式については一言も必要要件として書いておりません。
  253. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 修理ということが非常にたくさんの分量において書かれておるわけです。それから一般の輸入関連事項ということも特に項目を持たせて書いておるわけです。これは恐らく外国企業というものを想定してこの一般輸入関連事項ということも入っておるわけです。その一般輸入関連事項というところにこのIRANが入っているわけです。  したがいまして、先ほどおっしゃったような、このIRANがなくても外国企業の方で勝手にそれは選択していいということとのこれは論理矛盾になると思うのです。この一般輸入関連のところの中にIRANが入っているわけです。これは後方計画に関する事項ということでございますから、これは非常に重要な部分を占めるわけであります。しかも、その要求書の中でそこまで入っているわけでありますから、これはその要求ではないということは立証できないと思いますが、長官、いかがでしょうか。
  254. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 私どもは、新初等練習機の提案要求書の提案企業等への通知という、こういう分厚いものをきちっと出しておりますが、その中に概算要求の前提条件としてIRAN方式について等の記述は全く書いておらない、こういうことでひとつ御理解をお願いいたしたいと思います。
  255. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 いや、ですから、提案要求書にこのIRAN方式ということが、整備のところに、一般輸入関連事項のところに入っておって、しかも先ほどお配りしたような非常に細かい例示までしてあるわけです。これをもって要求じゃないと。だって要求書の中にこれだけ詳細に記述をされているわけですから、要求じゃないわけないじゃないですか。
  256. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 提案要求書の中にそういう記載があることは事実でございます。これは先ほどから大臣も申し上げているところでございます。  ただ、その要求書に入っているいろいろな欄にすべてそのまま答えなければならないということではないということも、先ほどこれは大臣からも申し上げましたように、そのほかの項目で、提案要求書の中に入っておりながら空白のまま提出されているものもあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしまして、このIRAN方式でなければ受け付けないとかそういったことを言っているわけではございません。
  257. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 しかしながら、先ほど私がこの資料を配る前の段階で長官は記述がないとおっしゃったわけですね。ところが、実際に明らかに記述がされておるわけですね。ところが、資料を渡した途端に記述はあったというふうに切りかえをしているわけです。そもそもそのこと自体がおかしいじゃないですか。
  258. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 もう一度申し上げますが、私は、提案要求書においてIRAN方式の採用を要求するような記述はないと申し上げたわけでありまして、記述がないとは言っておりません。
  259. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 要求書の中に記述があるということは、要求を求める記述じゃないんですか。
  260. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 あそこに書いても空白で出すのもたくさんありまして、私どもは、それは絶対に書かなきゃいかぬものだというふうには考えておりません。空白の欄も随時出てくるわけでございます。
  261. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ちょっと堂々めぐりになりますから、またこの件については戻ってまいりますけれども、一方で、採用を経た富士重工のT7、先ほど来話が出ておりますが、T5を改造した飛行機でございますけれども、この要求書を出した段階で、このT7にはいわゆる型式証明がないということになっておりますが、それは事実で間違いないでしょうか。
  262. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今回のT3後継機、つまりT7の候補機種のうち、富士重工提案のT3改は、航空法第十二条の一項に規定する型式証明は受けておりません。  そもそも型式証明は、通常量産機の審査、これは耐空証明でございますが、それを簡略化するためのものであり、自衛隊は、自衛隊法上、かかる審査から適用除外になっております。自衛隊機が型式証明を受ける必要はないということになっているわけであります。また、航空法上も型式証明は航空の用に供するための要件とはされてないところであります。  したがって、現行の初等練習機T3のみならず、要撃戦闘機F15やF4等についても型式証明は受けておりません。
  263. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 T7とか、あるいは一方で入札に参加をしたピラタス社のPC7というのは、これは民間機じゃないんでしょうか、長官。
  264. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 T7というのは自衛隊で使うことを予定しておりまして、民間機ではないと思います。
  265. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そうすると、自衛隊で使わない、例えば富士重工がこれに類似する飛行機を実際に飛ばしていると思いますが、それは民間機じゃないんでしょうか。
  266. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 お尋ねの点はちょっと私どもからお答えするような性格のものではないのではないかな、運輸省からお尋ねに対してお答えするような問題じゃないかと思います。  少なくとも自衛隊が使う航空機につきましては、これは民間機ではないのであろう、こういうふうに考えます。
  267. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そもそも目的が、つくられた用途が必ずしも軍事的な飛行機ではないという意味で申し上げたわけですが、型式証明がないというのは、自衛隊機の場合には型式証明が一切要らないと考えていいのでしょうか。
  268. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 少なくとも、先ほど申しましたように、型式証明というのは航空法第十二条によるわけでございます。これは、いろいろな意味があろうかと思いますけれども、その目的といたしまして、通常は耐空証明を簡略化する、こういう意味と理解しております。  それで、この耐空証明そのものは、これはたしか航空法の第十一条だったと思いますが、この規定は自衛隊法によって適用除外になっている、こういうふうに承知しております。
  269. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ただ一方で、またこの提案要求書の二十八ページに、過去発生した航空事故の状況というところに、型式と書いてあるわけです。それから一方で、この三十六ページですか、整備のところで、算定の根拠となった実績総飛行時間あるいは実績値というようなことが書いてあるわけです。  ということは、型式証明がないということは、実際にこのT7の場合に、そもそもできた飛行機がなかったわけです、試作機はあったようですけれども。そうすると、こういう実績値もない、つまり実績もない飛行機を、しかも数年前の半分以下で採用してしまったということになるわけですが、証明いかんとは別に、要するにそもそも試作しか存在しない、実績のない飛行機を採用した、その根拠について伺いたいと思います。
  270. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 機種選定の候補機につきましては、必ずしも実機が存在することを要件としておるわけじゃございません。会社から提案された飛行性能、飛行特性等の種々のデータが、機種選定のための技術的な分析、評価にたえ得る程度の科学的根拠に裏づけられていれば、候補機種となり得るものと考えております。  例えば、過去の機種選定においても、四十一年のF4選定時において、当時開発中であったフランス製のミラージュF1等が候補となって選ばれた例があります。
  271. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ミラージュというのはいわば戦闘機だろうと思いますが、今回問題になっておりますT7とか、PC、スイスの飛行機等に関しましては、ごく普通の民間用にも使える飛行機でございます。先ほどからミラージュとかF15とかいう例示を出されておりますが、もうちょっと通常使われるような、先ほど量産体制というような言葉も出てまいりましたが、通常の飛行機についてきょうは質問しているのですが、例のところになってくると、ミラージュとかF15とか、そういった飛行機が型式証明がないという形で逃げていらっしゃいますけれども、それは非常におかしいのじゃないでしょうか。つまり、むしろ科学的根拠に欠けているのじゃないですか。いかがでしょうか。
  272. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 別に逃げておるわけじゃありません。理解してもらおうと思って例を申し上げただけです。
  273. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今回は、T7とかいう、いわば二人乗りとか小さな飛行機についての選定についての話をしている際に、その型式証明についてあるいはその実績について話しておるときに、ミラージュとかF15とかいう例を出してきて、極めて実態の違った例を出してこられて科学的根拠というのは、非常に説得力がないと思います。  例えば、このT3とかT5についても型式証明をとっていなかったのか、それについてもお答えいただきたいと思います。T5は型式証明をとっていないのでしょうか。
  274. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 型式証明をとっていないと思います。  それから、ちょっと補足させていただきますと、確かに初等練習機でございますから、いわゆる戦闘機と違っているという印象をお持ちかもしれませんが、初等練習機の段階からも、例えばループを描くような、宙返りをするようなそういう訓練であるとか、あるいは失速したときのスピンをどういうふうに回復するんだとか、そういうこともございますし、それから、そもそも操縦桿でもって操縦をする、これは民間機と違うと思います。そういうことで、それは、民間の航空機と違って、軍用機としてのいろいろな特性を備えているもの、こういうふうに私は理解しております。
  275. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 実績がないということについてはいかがでしょうか。もう一度、長官あるいは局長にお伺いしたいと思います。
  276. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 これは、やはり機種選定をするに当たって、適正かどうかということを判断するに十分な飛行性能なり飛行特性なり、そういったものが確保できるかどうか、そういう技術的な分析、評価にたえ得るそういったデータが把握されるかどうかということによると思います。  したがいまして、必ずしも実機があるということが絶対的な条件ということではないだろう、こういうふうに思う次第でございます。
  277. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 それでは、ちょっと違った角度から質問したいと思います。  この今回の機種選定国際入札、先ほど来、なぜ国際入札、企業に門戸を開いたかという理由づけも、非常にあいまいな理由でございましたけれども、少なくとも結果的に国際入札にして機種選定を行った。しかも、契約時期まで拘束をする形での国際的な説明会も行って、提案要求書も出した。  その実際に採用になった富士重工が一年間停止ということになっておりますけれども、ということは、停止が終わることしの十二月以降、昨年富士重工が採用されたわけですけれども、十二月十五日以降、このT7を業務停止が解除された段階で採用する計画はおありでしょうか。長官、いかがでしょうか。
  278. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 先ほど御説明しましたような経緯で、平成十四年度から現在初等練習機として使っておりますT3が減勢してまいりますものですから、これに対応するためには、十一年度からこの調達に着手する必要があるだろう、こういうふうに考えまして、T7を選定し、概算要求いたしたところでございます。  ところが、その後、今先生御言及になりましたような事情で、富士重工に対します制裁措置というのがとられたわけでございます。この制裁措置によりまして、真にやむを得ないもの以外なものはこれを見送るという考え方に立ちまして、この初等練習機につきましても、十一年度から着手するぎりぎりの緊急性、緊要性というのをさらにその時点で精査いたしました結果、各種の工夫をすることによりまして、十一年度に着手せずとも、十二年度からの着手で十四年度からのT3の減勢に対応し得る、そういう見込みがつきましたので、十一年度予算には新しい初等練習機の整備の予算は計上してございません。  したがいまして、今先生がおっしゃいましたような富士重工と、このT7について、十一年度予算の執行としてこれを契約するということはございません。
  279. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 十一年度に執行しないとして、十二年度はどうなるんでしょうか。つまり、十二月十五日で一年間の停止が解けた後、このT7を採用するということはあり得るんでしょうか。
  280. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 機種選定をやり直すということで十二月予算に向けて検討したい。ほかに代替する機種があるかどうかということも含めて、十二月の予算要求に向けて検討したいと思っております。
  281. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 やり直すあるいはそれにかわるものがあるかどうかも含めてということですが、これは国際入札の場合には、普通でしたらば、採用された企業が何らかの事情で採用が取り消された、あるいは延期になったという場合には、それに準ずる企業が落札する、あるいは採用されるというのが合理的な理由ではないかと思いますが、そういうこともあり得るんでしょうか。普通であればそうだろうと思うんです。
  282. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 現在のところ、御指摘のような、政府調達において一位の企業に不備が存在した際に二位の企業が受注するというような国際慣行があるとは私どもは承知しておりません。
  283. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 私もいろいろな国の事情にそれなりに通じているつもりでございますが、ましてこれだけ、いろいろきょうかなり細かい質問をしてまいりましたが、やはり長官、どう考えても、数年前に四億幾らしたものが数年後には二億四千万円で落札をし、しかもその飛行機の型式もなかったし実績もなかった。しかもその飛行機が類似をしておった、同じ自衛隊の中で海上自衛隊が採用しておった飛行機の半分以下に数年後にはなっておる。そして、その企業が昨今以来のいろいろな不祥事、中島洋次郎代議士が残念ながら辞職をされましたけれども、そういう経緯。それから先ほど来いろいろ細かい質問をしてまいりましたが、そもそも、あえて国際入札に踏み切った理由も不透明、不明確でございました。  それから、国際入札をして、しかもその国際的な企業に対して提案要求をし、しかも例示までされておられる文書を出しておきながら、それは拘束力も持たないと。一方で、文書の中には、契約時まで含めて拘束力があるんだというような記述もある。  そういう中での機種選定が行われ、これはたまたま今回の場合には最終的に参加をしたあるいは提案をした国際企業は一社でございますけれども、これがだんだん国際入札、より広く機会を広げるという先ほど答弁がありましたが、ほかの企業もどんどん入札あるいは機種選定に参加をしていく段階で、これだけの要求をしていながらそれはあなたの企業の勝手だよというような言い方では、これはますます国際的な信用を失い、かつ調達問題に関しては昨年来いろいろな事柄があったわけでございまして、そして一人の同僚議員も辞職をされておる。  そういう中で、私はできるだけ客観的な説明が必要だろうと思って、非常に細かく説明をされたわけですが、それにもかかわらず、いわば説得力のない答弁をるるされておられるということでは、ますます、防衛庁の体質全然変わっていないのではないか、また同じようなことが起こり得るんではないかというのが今までの小一時間ほどの質問をさせていただいた印象でございますが、もっとさらに聞いてまいりたいと思います。  長官、どうなんでしょうか。余りにも整合性のない先ほど来の答弁、あるいは防衛庁の体質が変わっていない。これでは本当に、これからガイドラインの話もどんどん出てきますけれども、非常に防衛庁に対する信頼感というものが失われてしまうんではないかと思っておりますが、この段階でもう一度長官からコメントをいただきたいと思います。
  284. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 価格がなぜ大きく差がついたかという点や型式の問題につきましては、私どもとしては誠心誠意、御理解いただけるように説明したつもりでございます。なお足りなければ、また委員の方に私どもの方から詳細説明に上がりたいと思います。  なおまた、提案要求書について確かに、私も先生から御指摘を受けましたが、今までのやり方では誤解を受ける可能性もなきにしもあらずですから、もう少し国際入札にもたえられるような明白なものに切りかえて公平性を期したい、こういうふうに考えているところでございます。
  285. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今の前向きな答弁、ありがとうございました。  それからIRANのことでございますけれども、余りにも、要求でないということをおっしゃられますが、これは報道にもありますけれども、実際にこの提案要求をされた昨年の五月十五日の説明会の際に、装備部長の方が海外の企業も自由にやってくださいというふうにおっしゃっているわけです。ところが、その同じ場でその直後に別の方は、整備方式は自衛隊方式でという言い方をしているわけですね。  ですから、これだけはっきりした記述に加えて、実際に防衛庁の方々がそういう発言をされておる。これは明らかに要求そのものであると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  286. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほども申し上げたところでありますが、委員指摘のようにIRAN方式の記述等については誤解を受ける可能性がありますので、公正なものに改めたい、こう思います。  なおまた、津曲装備部長が海外の会社も自由にやってくださいと発言したとの御指摘でございましたが、防衛庁が本人に確認したところ、そのような事実はないと再々言明しておるところであります。
  287. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そうすると、IRAN方式というのは、今後国際入札等に関する際にはいわば国内ルール、通常的な言葉で言うといわば航空機に関する車検制度のようなものではないかという気がいたしますが、そのいわば飛行機の車検制度に関するようなものをこれから国際入札を防衛庁の方でされる場合には、それをいわば義務としてのような要求というふうにはしない、そういうことでしょうか。
  288. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 そういうことも含めて、誤解を与えないようなはっきりした記述にしたいと思っております。
  289. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 それでは、大分初等練習機の問題について質問してまいりましたけれども、いずれにいたしましても、価格が半分以下になっている。この価格が半分以下になっているということ、本当にそれで富士重工の方が今後採算がとれて妥当なビジネスが行われていくのか。  それから、改めて確認をしておきたいと思いますけれども、仮に復活をするというような場合がもしある場合に、この二億四千万円の中にすべての経費が本当に富士重工の方で含まれておったのか。やがて整備その他の面で泥縄式に、実はもう少しかかるものだというようなことがないのかどうなのか。それから、T5が本当に水増し調達がなくて妥当な価格であったのか。  その二点について確認をさせていただいて、質問を終わりたいと思います。
  290. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 例えば、こちらの提案要求に対しまして二社から提案書が出された。その中で、平均の機体価格は、T7の方は二・四億円であり、PC7マークIIの方は三・一億円であった、こういうことになっているわけでございます。  それで、先ほど来先生が御言及されておりますように、会社はその提案内容に拘束されるというのは、いわば安い価格で提案しておいて、後からそれを勝手に改定するということがないように、こういう意味でございます。したがいまして、提案内容そのものについては拘束をされるということでございます。それに対しまして、一定の防衛庁側からの指示に基づく改定というのはあり得るわけですけれども、基本的にこれに拘束されるということでございます。  なお、今回のこの提案内容は十一年度の概算要求に係ります提案でございますので、次回、平成十二年度に向けまして機種選定をするときに行われる内容につきまして、それはその時点のものとして、また新たな拘束を受けるということになろうかと思います。
  291. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございました。  長官、本当に非常に重要な問題でございますので、きょう非常に整合性のない矛盾した答弁もあったかと思いますけれども、ただ、幾つか前向きなお答えをいただきましたので、前防衛庁長官もこちらにいらっしゃいますけれども、ぜひ防衛庁の信頼回復のために、さらに努力を続けていただきたいと思います。  それでは、外務大臣大蔵大臣、お待たせをいたしました。ジュビリー二〇〇〇ということについてお聞きしたいと思います。  これは重債務最貧国に対する帳消し問題でございまして、昨年のあのバーミンガム・サミットにおきましても、数万人の市民がサミット会場の周りに……
  292. 中山正暉

    中山委員長 防衛庁長官はもういいですか。
  293. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 防衛庁長官はもう結構です。
  294. 中山正暉

    中山委員長 防衛庁長官、お帰りください。もう結構でございます、御苦労さまでした。
  295. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 では、外務大臣大蔵大臣にお願いをしたいと思いますが、七万人ぐらいの方がそのバーミンガムのサミット会場を囲みまして、債務帳消しについての訴えをしたわけであります。それで……
  296. 中山正暉

    中山委員長 会計検査院長はどうですか。会計検査院長をお呼びになっておられるのですが。
  297. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 済みません。そうしたら、一問忘れましたので、会計検査院長に。  先ほどのあの初等練習機の機種選定に関しまして、会計検査院の方で調査を今までしたことがあるか、あるいは今後されるおつもりがあるのかということについてお答えをいただきたいと思います。失礼しました。
  298. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院長 お答えいたします。  先ほどの御論議はよく承っておりましたけれども、その中心となっておりますのはT7の初等練習機の調達に絡む御議論であったというように承っております。  委員御承知のとおり、まだ現在調達に至っておりませんので、私ども会計検査院といたしましては検査を実施する段階にはございません。今後実際に調達されました場合には、防衛装備品検査の一環といたしまして、ただいまの御論議も念頭に置きながら、契約手続あるいは調達価格などの妥当性について鋭意検査することになるものと考えております。
  299. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございました。
  300. 中山正暉

    中山委員長 では、お帰りいただいてよろしいですか。
  301. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 はい、結構でございます。
  302. 中山正暉

    中山委員長 どうぞお帰りいただいて結構です。
  303. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 どうも長い間お待たせしました。  ジュビリー二〇〇〇に戻ってまいりたいと思いますが、これは大蔵大臣あるいは外務大臣御承知のとおり、西暦二〇〇〇年に、最貧国で返済不可能な対外債務を帳消しにしようということでございます。主にアフリカ諸国等の最貧国がこの対象になるわけですけれども、しかもこの重債務最貧国の債務の内訳を見てみますと、各国からのいわば公的融資の割合が非常に多いわけでございます。  それで、時間も余りありませんので、そもそもこの重債務最貧国に対して、日本の融資割合、特に公的融資、円借款の割合がどの程度あるのかということについてまずお答えをいただきたいと思います。
  304. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 重債務の貧困国、HIPCに対する我が国の債権は全体で四・五%、うち円借款は三・九%だそうであります。
  305. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 それで、この無償援助供与による債務削減という形で日本対応しておるわけですが、ということは、無償援助供与による債務削減を図ろうとしている場合に、結局、日本のODAが相当吸収されてしまうということは、非常に、最貧国にとって、ある意味では、一方ではよくなるけれども、一方ではより負担がふえてしまうという仕組みになっておるわけですが、この現状についていかがお考えでしょうか。
  306. 大島賢三

    ○大島(賢)政府委員 国連のUNCTADの会議におきます決議に基づきまして、日本は開発途上国、特に最貧国に対します債務救済措置をとっておりますけれども、日本の方式は、日本の円借款の返済を確認いたしまして、それに見合う同額の資金を無償資金協力という形で実行しております。  これによりまして、円借款の債務を負っている国は自助努力により返済義務をきちんと実行していく、この原則は私どもとしても大事にいたしたいと思っておりますが、同時に、これが返済負担というものがその国の開発努力にいろいろ困難をもたらし得るということでございますので、相当額を社会開発のために供与する、こういう形で日本対応して、返済努力と同時に経済再建への自助努力も促すということで対応をいたしております。  現在、ODA予算に占めますこの種の債務救済のための無償資金の割合は、平成九年度でODA全体の四%程度になっております。
  307. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 もうちょっと詳しくお話をお伺いしたいと思いますけれども、結局、債務は今の方式ですとわずかながら削減されるわけですが、必要な日本からのODAそのものが余り行かなくなってしまうということになっているんじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  308. 大島賢三

    ○大島(賢)政府委員 債務救済に対しましては、今申し上げました債務救済のための無償資金の供与のほかに、返済の意欲はありながらいろいろな事情で困難になっている国に対しましては、別途、パリ・クラブという債権国会議で諸外国、国際機関等と調整をいたしましてその救済に当たっておるわけでございます。  こういう組み合わせをとっておるわけでございまして、債務の繰り延べをいたしますと、ニューマネーを供与するということは、やはりいろいろリスクを伴いますのでこれは控えざるを得ないということでございますが、返済があれば先ほどの無償資金による供与ということで対応いたしますので、できるだけ、私どもとしては債務の返済とそれから新規の供与が成り立つような方法ができればいいという考えに立って対応しております。  したがいまして、一般論としましては、確かに、債務の返済負担が大きくなりますとニューマネーを出しづらくなるというのが現実でございますし、この辺については、個々のケースを見ながら、その国のために一番なるような対応を私どもとしては研究をしているところでございます。
  309. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 鶏が先か卵が先かということになるわけですが、今、パリ・クラブということを局長がおっしゃいましたが、ある最貧国がパリ・クラブに入りますと、パリ・クラブに入ったがゆえに日本からの返済が受けられないという矛盾した状況になるだろう、そういうシステムだろうと思います。  数年前ですが、いわゆる復興後の総選挙直後のカンボジアにおきまして、パリ・クラブに入ったならば日本からの返済が受けられない、一たん返済をしなければいけない、それで非常にジレンマに当時の大蔵大臣、財務大臣、サム・レンシーという今野党の党首ですが、日本にいらっしゃって困っておった状況を覚えております。同じようにベトナムが、やはりまず返済先にありきということで、当時の東京銀行が一たんお金を貸した形で返済をして、その返済をもって日本からの融資が始まった。  カンボジアの場合には、大型プロジェクトを支援するという形で便宜上返済をさせておいた上で日本の方で融資を行ったという便法をベトナムとカンボジアの両方に使ったわけでございますが、今、ジュビリー二〇〇〇という世界的な動きの中で言われていることは、そもそも初めに返済ありきということが結果的に最貧国に対して非常に過剰な負担を強いることになってしまう。  いわば日本の大蔵省とほかの支援国との間の哲学論争が続いておるわけですが、これをどこかで、大蔵大臣、超えない限り、いつまでも日本の援助哲学、そのシステムにこだわっている限りはなかなかこの難しい問題を克服できない。せっかく小渕総理もおっしゃっておられる新しいミレニアムでございますので、それを超えて日本が本当に途上国の方々に対するより効果的な貢献をするいい機会ではないかと思いますが、その点について大蔵大臣いかがお考えでしょうか。
  310. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはいわゆる先進首脳国のサミットでよく話題になる話で、殊にフランスなんかが、サブサハラについてはやはり自分関係が深うございますから、いわば債務免除をしようというような話はしばしば出るわけでございます。  ですから、大蔵省とおっしゃいますよりは、やはり納税者の金でございますものですから、では前の分はもう帳消しにしましょうと言えば、そういう払わないところへまた貸すのかねということは、我が国の会計検査の建前からいっても非常に困るわけでございますね。国民に御説明ができない。貸した金を返さない、それは帳消しにしてあげます、それで話がおしまいならいいんですが、その次もまたお貸ししますというんなら、返さないことを承知で貸すのかねという話がどうしても切れないんですね。  ですから、本当にそういうことを考えていくとしますと、やはりもうはっきり、言ってみれば、過去の債務はもう忘れます、これから新規にやりましょう、こういうような国際的な合意でもあって、そして国内にもそれが説明できるということでありませんと、問題は、おっしゃることは実際私どもはサミットなんかで随分悩む問題ですからよくわかっているんですが、そういう問題がございますね。
  311. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 国民の税金だからという理由づけでございますが、そうすると、昨年の金融機関に関する支援というようなこととの比較で申しますと、今対象にされておりますサハラ以南の諸国の状況あるいは構造的な苦しみということを考えてみた場合に、私はちょっと今の理由だけで放置していいのかなという気がいたします。  時間がありませんので、そういうお考えでありながら、九四年のナポリのサミットにおきまして、最貧国の二国間債務の六七%を削減ということに関しましてほかの国が先行して、やっと最後日本が、渋々なんでしょうか、合意をしましたが、最後日本が合意をしたということはどういう理由でしょうか。哲学が変わったのか、やむを得ず変わったのか。いかがでしょうか。
  312. 大島賢三

    ○大島(賢)政府委員 九四年のナポリ・サミットにおきまして、御指摘のように六七%まで削減率を高める、それまでは最高五〇%でございましたけれども、さらにこれを高めるということがナポリ・サミット経済宣言の中で成立をいたしたわけでございます。  さらにその際には、従来は、一定期間に返済義務が生ずる債務に対する救済措置、いわばフローの債務の削減を取り上げてきたわけでございますが、今のナポリのサミットでは、ストックベースでの債務の扱いも取り上げようということで合意が成立しました。そういう意味で、国際的な合意がナポリにおいて進んだわけでございます。  我が国につきましては、基本的に債務削減の問題につきましては、こういう国際的な場で検討され合意されていく債務削減措置については、これは協力するという基本姿勢で臨んでおります。このいわゆるナポリ・スキームも、日本政府として特に基本的な立場を変更したということまでは言っておりませんけれども、削減率を高めるとかストックベースの債務が導入されたという合意につきましては、日本政府としても従来の考え方の延長線上でこれに協力をしたということでございます。
  313. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 延長上ということは、哲学はまだ変わっていないということかと思いますが、昨年のバーミンガム、今度はG8になりましたが、この最貧国の債務帳消しに反対をしたのは、日独伊、防共協定じゃありませんが日独伊だけだったわけですが、その中で、イタリアの新しい政権は、今度のケルン・サミットでは債務帳消しに賛成ということを表明しております。それからドイツにおきましては、シュレーダー新首相がG8サミットにおいては債務救済の新しいイニシアチブを提起する、それから一方、女性の国際開発相ソイルさんという方もこの債務帳消しは正しいと発言をしておる。それからフランスも、ケルンにおいて新しい債務イニシアチブを呼びかける。  フランスは別にしまして、昨年反対をした日独伊のうちドイツ、イタリアはしたがいまして賛成の意思表示をいたしておりますけれども、日本は、この六月のケルン・サミットにおきまして賛成をするおつもりなのか、それとも、その日独伊の中で唯一、一国が残って反対をするのか、いかがでしょうか。これは大蔵大臣でしょうか。
  314. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 私どもからお答えするのが一番適切かどうかわかりませんが、先ほど来大島経済協力局長からお答えいたしておりますとおり、我が国としての考え方は既に述べられたとおりでございますけれども、他方で、委員指摘のとおり、債務の問題、ごく一部の国でございますけれども、非常に深刻化しているということも事実でございます。  その中で、パリ・クラブの、いわゆる二国間の公的債務についてのお話も従来からございましたけれども、最近はいわゆるマルチの債務、つまりIMFや世界銀行等の債務についてもその削減を図ろうというようなことが行われております。  したがいまして、我が国としての基本的な考え方は貫きつつ、いろいろな各国の動向等も十分留意して対応していかなければならないと思っておりますけれども、あくまでも、先ほど来申し上げましたとおり、やはりODAの円借款の貸し付けにいたしましても、大蔵大臣から申し上げましたとおり、毎年納税者のお金をつぎ込んで貸しているものでございますので、もし仮にそれが返ってこないということになりますと、その後の貸し出しということが非常に困難になるということはやはり事実でございまして、そういったことも踏まえて今後議論を深めていく必要があるというふうに考えております。
  315. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 やはり、このサミット八カ国の中で日本だけが孤立をするのかどうなのかという問題でもありますし、今、いわば繰り延べになった場合にという話がありましたが、これははるかにもっと次元を超えた重要な問題ではないかというふうに思っております。  そんな意味で、大蔵大臣あるいは外務大臣、あるいは両方から、このケルン・サミットにおいての日本の態度について、まだ検討中ならばどういう点が検討の要素に入っているのか、あるいはどういう姿勢でこれから、もう六月というのはすぐでございますけれども、どういう考え方で取り組んでいくのか。  これは非常に重要な、昨年のバーミンガムでもヨーロッパの方々が、七万人ぐらい市民の方々が集まったということでございますが、恐らく今度のケルン・サミットでは、もっとたくさんの方々が世界じゅうから集まるのではないか。  一昨年、たくさんの方々が集まって地雷の禁止条約の調印に至り、昨年は批准に至りましたけれども、もっとはるかに大きな規模で世界じゅうの方々の注目を浴びるようなテーマになると思いますが、大蔵大臣あるいは外務大臣から一言、どういう姿勢で臨むのかということについてお答えをいただきたい。先ほどのあの局長の次元の話で、レベルの話で済む問題ではないと思うのですが、いかがでしょうか。
  316. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、藤田委員は恐らくよく御存じのことであるのですけれども、いわゆる首脳サミットなどでこういう問題が出ましたときにいつも感じますのは、さっき日独伊というお話がございました。実は偶然ではないので、やはり、例えば一番いい例はフランスでございますけれども、そういうODAを与えている先は、確かにもちろん独立国ではあるのですけれども、かつての植民地であって、そしていまだにそういうきずながあるのでございますね。ですから、与えることについて比較的、どう申しますか、自然だと申しますか、そういう動機が強い。  それで、我が国からいいますと、サブサハラの国なんというのは実は非常に遠いところでございますから、本当にある意味で人道的と、人のことを悪く言うんじゃありませんが、そういう素直な気持ちでやっておって、それを全部帳消ししようというような話が出ますと、まあ連中にしてみますと、昔なら出した金は返らない関係だし、そういう話になりやすい。ところがこっちは違うんだがなという気持ちがございまして、それで、いつもそういう背景がこういう話にはあるのです。  そこで、しかしそんなことを申し上げましてもしようがありませんから、これからどうするのかなということであれば、やはり我が国がこれからそこを乗り越えていくかと。ちょうど今、経済としては余り我が国はよくございませんけれども、もう今までのああいうことをもう少しこだわらずに考えるかということは、これはちょっと、やはり内閣として考えを決めませんと新しい道はなかなか歩めない、いろいろ相談をしなきゃならない問題だというふうに思います。
  317. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 時間が参りましたから一言申し上げますが、これはいつまでも借金が云々のレベルではなくて、日本の信頼と、それから国連を含めた国際社会における日本の地位と、それから広い意味での、長期的な意味での日本の安全保障の問題だろうと思っておりますので、それを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  318. 中山正暉

    中山委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、中野清君。
  319. 中野清

    中野(清)委員 公明党・改革クラブの中野清でございます。  川越で三十七年間中小企業の経営に携わった一人といたしまして、今日の中小企業対策と町づくりについてお伺いをしたいと思います。  政府は昨年、緊急経済対策を発表しまして、その目玉の政策として、向こう五年間の中期計画としての生活空間の質的向上を目指す生活空間倍増戦略プランと、産業の生産性向上をさせる構造改革を盛り込んだ産業再生計画を、二十一世紀に向けた重要政策として閣議決定をされました。  生活空間倍増戦略プランの実践編としての地域戦略プラン関係予算は、景気対策地域振興の二頭立てでございますけれども、四兆円の規模と伺っております。これに先立ち、これも、全国各地における中心市街地の空洞化対策、商店街活性化対策を軸とした都市機能の再生、復興及び景気回復を目指す最重要政策として、十一省にわたった中心市街地活性化対策が昨年立法化され、一兆円を超える予算が計上されています。  そこで、この両重要政策に関してお伺いをしたいと思うのです。  まず最初に、生活空間倍増戦略プランの計画立案から実施に至る経過について、堺屋長官にお伺いしたいと思うのです。  まず第一に、あなたが委員として、昨年二月から四月まで、前企画庁長官の私的研究会で検討され、四月に問題提起されたスペース倍増緊急アピールが基本ベースとなっている。それで、あなたが長官になって、長官の考え方がこのものを中心にして実践されたというふうにまず認識していいかどうか、これだけ確認したいと思います。簡単でいいですよ。
  320. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のものは、前企画庁長官の私的な諮問機関でございましたスペースとゆとり研究会というものでございまして、私もその委員でございました。その中で私も活発に発言させていただきましたので、かなり私の意見も反映させていただいていると思います。
  321. 中野清

    中野(清)委員 今おっしゃるとおり、堺屋長官も大分活発に発言されたこのスペース倍増緊急アピールで問題提起二ヶ月後、この時点では、今おっしゃるとおり、長官は、前長官から堺屋さんにかわられた。そして、小渕総理はプランづくりの構想を明らかにされまして、翌月の十月には、都道府県を通じて各市町村に地域戦略プラン策定要綱が通達されました。都道府県によっては多少のばらつきがあると思いますけれども、説明会を経まして、ことし一月二十九日には四百カ所の地域戦略プランの骨子を提出されまして、三月十五日までに地域戦略プランの提出が行われることになっていると私も伺っております。  発足以来わずか三カ月であります。しかも大半が公共事業でございまして、二千五十億のうちことしは二千億と、ハードが先行しているというのが事実だと思います。非常にユニークな計画でありまして、産業再生計画と両輪をなしてその効果を期待したいところですが、余りにも急いだ結果、どうも基本方針と実施における内容が乖離してしまっているのではないか、そういう疑問がございますけれども、特に、各自治体のでき合いの計画を寄せ集めて、いわゆる新味のない、どっちかというと哲学も思想もないけれども、公共事業上乗せという批判があちこち出ておりますけれども、その批判に対してどう答えられるか。  これについては国土庁長官にお伺いしたいわけでございますけれども、堺屋長官も実質的なあれでございますから、お伺いをしたいと思うわけでございます。
  322. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お説のとおり、大変押し詰まったスケジュールでございますが、景気対策あるいは国民生活の観点から見ましてこれは急いでやるべきことだということで、そういう押し詰まったスケジュールになっております。  各市町村では大変熱心に議論していただいておりまして、ばらつきはございますけれども、ユニークな計画も出てくると期待している次第であります。
  323. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生指摘の、少し早急にやり過ぎたのではないかという御指摘でございますが、昨年の十月以降、市町村に策定を進めていただきますようにお願いをしておりまして、この一月の末日までにその骨子は報告をしております。そして、これから三月の末までにまとめていくということでやっておりますので、先生指摘のように、多少そういう時期的に間に合わないという市町村がありますれば、私はそれは柔軟に対処をしていきたいと考えております。
  324. 中野清

    中野(清)委員 堺屋長官にお伺いしたいのですけれども、この研究会で堺屋さんが一生懸命、都市の商店街の空洞化とか取り上げたり、土地利用とかの問題をやっていらっしゃる。私は、これを高く評価しております。また、第二回のスペース研究会では、土地の、資産という考え方から資源という考え方だとか、それから土地情報の共有と価額形成の透明化のための土地取引所の新設とか、商店街整形のための土地交換促進等を述べられております。土地交換の促進なんかは実は、後で申し上げますけれども、中心市街地でもあるわけですけれども、そういうのがあります。私は、こういう考え方については賛成でございますし、敬意を表したいと思います。  ただ、長官は都市計画法、建築基準法を改正して用途別の線引きを廃止すべきとおっしゃっていらっしゃいますけれども、御案内のとおり、大規模小売店に対する政策が近時大きな変換をした、その中でのいわゆるゾーニングという話も中にありまして、従来の商業調整から都市計画法によるところの土地利用規制への転換が昨年来行われているわけです。その点について、私自身も、この新制度の施行に備えまして、都市計画法で言うところの未線引き地域とかいわゆる白地地域の解消、それを訴えてきたつもりであります。そうしますと、長官のおっしゃった、スペースの有効利用としての用途別線引きの廃止を主張されておられますけれども、閣僚として、この点については中心市街地の活性化との関係でどう整合性をとられているか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  325. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 都市計画というものは、長い年月の過去がありますので、急にすべて変えるというわけにはいかぬと思いますけれども、私は、基本的には都市計画の規制は用途別よりも環境別の方に切りかえていく、例えば一定の音響は出しちゃいけないとか、煙は出しちゃいけないとか、工場であっても今やもう全然そういうのを出さないという工場もありますから、そういう環境別の方に切りかえていくのがいいのじゃないかと個人的には考えております。  ただ、長い経緯がございますから、今すぐに変えるということになりますといろいろと問題が出てまいります。今委員指摘になりました土地交換その他の点では、税制その他の点ではかなりこの報告、研究会の結果も取り入れていただいておりますので、やはりその方向に、土地の資源化という方向に進んでいるんじゃないかと。そういう点で、現段階としては満足すべき方向だろうと考えております。
  326. 中野清

    中野(清)委員 おっしゃっていることの中に私がお伺いしたことが入っていないのですよ。  といいますのは、今、御承知のように大型店がいわゆる無差別に今まで郊外に立地しまして、いわゆるスプロール化現象というのができて都市の空洞化が起こったというのは、長官、事実なんですよ。そうしますと、やはり民間投資とか行政投資を向上させるためには、中心市街地の活性化をやる一方で、やはり片方の、豊かな田園の空間を維持する、そういう都市郊外の開発を抑制する方向というのが私はあるんじゃないかと思うのですね。そうすると、それは、御持論は御持論で結構だけれども、そういう点どうなんだろうか。これについては、長官からもいただきたいと思いますし、通産大臣もこれは当事者でしょうから、また建設大臣も、もしあったら、簡単で結構ですから言っていただきたい。  あわせまして、これと一緒に私がもうちょっと聞きたいのは、長官に特にお伺いしたいのですけれども、都市中心部の空洞化に対する、いわゆる町づくり三法というのを昨年度つくったわけですね。これは大店法を廃止して、それから都市の空洞化、その中での大型店と商店街の共存という話があるわけでございますけれども、その町づくり三法というものをむしろ整合性を持って実行すべきであろう。  その中で特に、この国会においても都市計画法の改正とか、それから大店立地法の指針においては、いわゆる国会の附帯決議として、国会の意思というものが町づくりを重要視しろというふうに出ているはずでございますけれども、この点についてあわせてお伺いをしたいと思うのです。
  327. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 町づくりの問題は、各地域によってそれぞれ違う問題を抱えているので一概に言えないと思いますが、中心的市街地、要するに商店街の活性化というのをやはり居住者を呼び戻す形で考えていくべきだ。そうなりますと、住宅と商店とが混合する、職住接近するというようなものも出てくるのじゃないか。一方、田園地域、離れたところに急に巨大なものができるのはどうかと。これは、地域の判断というのが大事だと思います。  そういう意味でこの三法を組み合わせて運営していくべきだと思いますが、長期的に見ますと、やはり都市の競争力というものも大事でございますし、国民の生活で便利さというものも大事でございますから、その地域地域でそれぞれに判断しながら改善していく、そういうような態度がいいのじゃないかと考えております。
  328. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 今先生のお尋ねは、スプロール化現象にどう対応するかということだろうと思いますが、今までの古い時代の百貨店法から今の大店法の考え方の中には、やはり商業調整という考え方が出ているわけでございますが、今般成立をして来年の六月から施行になります大店立地法の考え方は、そういう商業調整という考え方は実は入っておりません。これは、世界的な要請から、いわば規制緩和の一環として大店立地法というものをつくったわけでございます。  しかしながら、スプロール現象を別に奨励しているわけではありませんで、スプロール現象というのはやはりいわばゾーニングという考え方の中で解決せざるを得ない問題だと思いますし、中心部における大店、大きな店舗の立地というのは、町づくりという考え方、あるいは交通とか廃棄物とか、そういう一連の考え方の中でやっていただく。それについての指針というのは現在通産省の中で検討しておりまして、ことしの夏ぐらいまでにはその指針の作成を終えて、その指針に基づいて地方自治体において法を運用していただく、そういうことになっております。  したがいまして、ゾーニングがどうであるかということがスプロール現象に対する大事な考え方であろう、そのように思っております。
  329. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 私の担当のところは、先生指摘の町づくり三法の中の都市計画法の一部の改正をいたします、都市の再構築といいましょうか、改正都市計画法に関する問題でございます。  それで、町づくりの基本法でありますこの都市計画法におきましては、地方公共団体が地域の実情により的確に対応した町づくりを進めるよう、特別用途地区の多様化というのを図っておるところでございます。  いずれにいたしましても、先生指摘のように、今まではいわゆる都市化社会でありましたけれども、これからは、都市が落ち着いた、成熟をした状態の都市型社会に大きくなってくると思いまして、中心市街地活性化法案というのは、私は、時期を的確にとらえた対策ではないかなと思っておるわけでございまして、両々相まって発展できるように努力をしていきたいと考えております。
  330. 中野清

    中野(清)委員 私、堺屋長官にお伺いしたいんですけれども、先ほどおっしゃった環境というお考えもすばらしい考えだと思うんですよ。しかし、通産大臣はゾーニングとおっしゃったんですよ。先ほどの御持論とゾーニングという考えは違うわけですけれども、これはどうなっているか。  例えば、長官、そのほかにも、中心市街地の活性化の中では、公共施設の中心部への誘致、私は、公共施設の都市中心部への誘致とかその有効活用というものも一つの有力な手法と思っておりました。しかし長官は、これはむしろ阻害要因だとおっしゃっていらっしゃるというふうに私も理解したのですけれども、それが、もし私の理解が違ったらば、それは訂正で結構なんですけれども。  それで、そういう意味で、とにかく日本の経済をリードする長官でございますから、私は長官に、商店街の空洞化とか中心市街地の活性化に対する一つの理論というものをぜひつくってもらわなきゃ困る。はっきり言って、そういう点ではちょっと我々と違うところがありますけれども、ぜひ御理解いただいて、お願いをしたいと思います。
  331. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私の言っていることと委員の認識とちょっと違うと思いますが、私は、商店街に劇場、公共施設、文化施設、そういうものを持ってくるべきだ、これを強く主張しております。それで、外国の文化都市を見ますと、必ず商店街の真ん中にオペラ座があったり音楽堂があったり美術館があったりしまして、そこへ来る人がまた商店街とタイアップして発展している。  また、町づくりについて私が強く主張しておりますのは、歩いて暮らせる町づくり、これからの高齢社会に、下が商店街で、事務所があって、文化施設も娯楽施設も、歩いて暮らせるような町づくりをして、高度成長の間にどんどん拡大した日本の都市を、むしろそういうコンパクトな、省エネルギーで、何でも地域でできるような、そういった町づくりにすべきだ。  これは経済演説でも申し上げましたし、今度の二十一世紀先導プランの中でも取り上げている問題でございます。これは長期的にはやはりそういう方向に、商店街と住民とそして公共の文化施設、あるいはNPOと言われる市民活動などが一体となって町づくりを進めていくべきだ、そう考えております。
  332. 中野清

    中野(清)委員 今お話伺いまして安心しましたので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  次に、野中長官、申しわけございませんけれども、幾つかお伺いしたいと思うんです。  と申しますのは、この地域戦略プランというものと中心市街地活性化を見ますと、ほとんどダブっているんですよ、項目的には。私は、強いて言えば、もちろん表現は違いますよ、でも相手というのは大体同じじゃないかと思うような感じがします。特に、田園空間の拡大を除けばほとんど重複しているんじゃないかとまず第一に思うのですけれども、それについて、これを重複しているからだめだとは言いません。しかし、どうも重点がぼやけてしまっている。そういうことについて内閣としてどう考えるかということが一つであります。  それからもう一点は、実は、今長官もいろいろおっしゃいましたけれども、町づくりというものは一朝一夕にできないわけです。私は、前内閣の、橋本内閣のときの中心市街地活性化という一つの考え方はすばらしいと思いました。しかも、法律もつくり、予算もつけ、各省庁が一体となってやるというこの姿勢というのはいいと思いました。ところが、内閣が変わったら途端に今度こういう新しい政策が出たことについては、率直な話、戸惑いを感じておるんですよ。  そういう意味で、この関連性というのはどうなんだろうかという点については、実は総理にお伺いしたかったわけですけれども、一般質問でございますから、総理の代理として、ぜひ官房長官にお願いをしたい。  それから、これは通産大臣、建設大臣にも聞くべきだと思いますけれども、時間がありませんから、野中長官、ぜひ、大店法を廃止してまでつくった、橋本内閣の目玉であったこの中心市街地活性化という法律がございますけれども、このポイントをどういうふうに今この小渕政権というのは位置づけているのか。これは一緒でございますとか、中には、率直に申し上げますけれども、いわゆる商業というものを矮小化して考えて、つまり、商店街のことをやればいいんでしょうと。中心市街地活性化というのは、商店街をちょこちょこっとやるものじゃないと思うんですよ。だから一兆円も出して目玉にできたはずなんですよ。決してそんな小さな計画じゃなかったはずだ。そうすると、この位置づけについてはきちっとしてもらわなきゃ困る。それはそういう点でお伺いしたいと思うんです。  なぜかといいますと、今、昨年度中心市街地活性化を言われて一生懸命やった市町村は、果たしてどれだけ予算つけてくれるんだ、ことしの内閣は地域戦略プランだと。そうなったらば、とてもじゃないけれども、そんなことでもって町づくりなんかできるわけがありません。一年や二年でできるものじゃないんですから、これはもう、せっかく橋本内閣時代政府が始めたこの中心市街地活性化ということをどのように位置づけるか、ぜひ改めてお願いをしたい。また、市町村の不安についてもできればお答えいただければありがたいと思います。
  333. 野中広務

    ○野中国大臣 ただいま中野委員がおっしゃいましたように、全国すべての市町村におきまして、その規模の大小にかかわらず、中心市街地が空洞化し、そして近隣にスーパーやあるいはコンビニやあるいは生協等が進出をしてまいり、中心市街地は後継者難のためにあちらこちらに空き地ができていくという状況に、非常に切迫感を持っておるのが実態でございます。  そういう中におきましてこの中心市街地の活性化の施策が出たわけでございますので、規模の大小にかかわらず、市町村はこれに熱い思いと期待と、そして何とかしてこれを実施したいと願っておるのは、委員がおっしゃったとおりでございます。  そういう中で地域戦略プランが出ましたのは、ある意味において、中心市街地活性化に取り組もうとしておった地方公共団体にとってやや唐突であったという感は、また戸惑いを感じておるという感じは、委員もおっしゃるとおりだと私も認識をするわけでございまして、これを実施していく上におきまして、この戦略プランにのらないから中心市街地活性化の事業がそごを来すとか、あるいは補助について何らかの冷遇を受けるとか、そんなことはないわけでございまして、委員が懸念されるようなことのないように、私ども関係省庁、十分取り組んでまいりたいと思いますし、既にお地元の川越市も指定をされておるわけでございますので、一層この施策の充実に各省を挙げて取り組んで、地域活性化のための大きな施策にしていきたいと思うわけでございます。  地域戦略プランはまた、これを大きく広域的にやってまいろうというわけでございまして、必ずしも私は、ダブるものでありませんし、また、地域のそれぞれ広域的なあり方の上に好ましい状況をこれからつくっていかなければならないと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、そごのないように、私どもも十分きめ細かく対応をしてまいりたいと存じております。
  334. 中野清

    中野(清)委員 官房長官、ありがとうございました。今のお話で結構でございますので、今の御発言どおりぜひ実行していただきたいとお願いをしまして、このことはもうお約束いただいたということで、確認させていただきます。ありがとうございました。  続きまして、ちょっと今申し上げたのですけれども、国土庁長官、建設大臣、御一緒でまことにちょっとやりにくいわけですけれども、先ほど地域戦略プランにおいてちょっと触れられましたけれども、中心市街地活性化というものが買い物空間の拡大というように、いわゆる買い物イコール商業という、矮小化されているような感じ、つまり一小節しかないんですよ。私に言わせれば、中心市街地活性化も地域戦略も同じようなスケールの話だと、しかも内容的には、これを見てみましても、ほとんど中心市街地で言った話が今度の地域戦略にも出ているんです、はっきり言って。みんな同じなんですよ。ですから、そこら辺については、今官房長官がおっしゃっていただいたから私は納得しますけれども、ぜひはっきりとしていただきたいということで、その認識がどうか。  それから、先ほどいみじくもおっしゃっていただきましたから、ありがたいと思いますけれども、期間がわずか三カ月であった。これについては、やはり全国の自治体に対して、やる気があるんだったらばこれで結構だとおっしゃいましたけれども、もう一回、簡単で結構ですから御確認を願いたい。  それからもう一点は、ついでにお話ししますけれども、地域戦略プランの場合に、複数の市町村によるところの広域連携というのが要件になっておりますね。ところが、例えば政令指定都市とか中核市は別ですよという話になってきたときに、果たしてどうなんだろうか。その点についてはちょっと明確じゃない。しかも、そうなってくると、先ほど堺屋長官がおっしゃった理想というものが、それはもちろん広域連携もいいんです、結構なんです。それだけでいいんだろうかという話になってくれば、これはちょっと、そういうふうな要件設定そのものが余りにも、それも認めてもいいけれども、やはりもっと土地、空間というものを考えたときにおいては、ただ単に広域連携だということだけで本当にいいのかどうか。まず、それを確認したいと思います。
  335. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先ほど官房長官が御答弁をされたことにも関連するわけでございますが、おっしゃいますように、三つの法律案、その中で、先生指摘中心市街地活性化法案は、これは商店街を活性化すればいいというように矮小化されているのではないかというふうにおっしゃられますが、私たちは、もちろんそういう認識をしておるわけではございません。今回の地域戦略プランにおきましても、おっしゃいますように複数の市町村の連携のもとにということはあるのでございますが、その中に関連施策間の連携を図るということ、それはすなわち、中心市街地活性化法案と十分に連携を図るということがその中にあるわけでございます。そして、トータルプロジェクトとして高い事業効果を得るようにということもその要件の中に入っておるところでございまして、中心市街地の方をおろそかにするというようなことはさらさら考えておりませんので、よろしくお願いいたしたいと思います。  そして、この法律案を出しましたときには、現在の時点におきましては、おっしゃいますように複数の市町村の連携のもとで事業を起こすということで、今月の末までの骨子もそういう内容になっておるわけでございます。先生指摘のように、政令指定都市それから中核都市においてはその単一の市でも結構、しかし、それ以外のところはできるだけ連携で行っていただきたいという今条件にはなっております。ですから、そのことはまた、どうするかということも考えてみなければならないと思います。
  336. 中野清

    中野(清)委員 幾つか問題点だけ、二つばかり取り上げていきますと、都道府県の役割が明確じゃないという点がありますので、明らかにした方がいいと思うのですよ。  これはちょっと具体的な話をしますと、例えば埼玉県が、独自の交通情報空間の多機能化、高度化整備計画というのがありますけれども、出した場合、また新潟県の複数の町村が、地域環境エネルギー及び資源拡大整備計画というようなユニークなテーマを取り上げた場合があります。私もその幾つかを自分で持っておりますけれども、しかし、それは今度の場合において言うと、各省庁が中期的計画や景気対策に盛り込んだ政策とか来年度予算案に盛り込んだ事業、それが優先されておりまして、あらかじめ都道府県サイドでもって例えば交通問題だとか何かでやっている。それ以外は——認めますと言っているのですよ、国土庁は。だけれども、実際の話として、そういう地域的な、個別的な独創プランがあっても、なかなか、さっきの広域という考え方、広域的連携が十分でない、そういう中でもって取り上げていないということも実は聞いております。そういう点がどうか。  それから、そういう意味では、もう一回原点に戻りますと、市町村から提出されたところの地域戦略プランの認定を、何を基準にして、どういうスキームで行わせるか、この点についてもあわせて、ほかにも質問がありますので簡単で結構ですから、御答弁願いたいと思います。
  337. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 認定の方法でございますが、現在のところは、先ほど述べさせていただきましたように、広域的な生活・経済圏の形成の観点からこれを認定していくという形になっておるのが現状のところでございます。  それと、先生指摘のようないろいろな問題点が今後出てくると思いますが、三月の末までにそれを具現化するといいましょうか、内容を固めていくということになっておりますので、まだ二カ月間ございますし、それまでにどうしてもコンクリートできない場合には、いささかの時間的余裕は与えるべく今考えておるところでございます。
  338. 中野清

    中野(清)委員 時間がございませんから、次へ進みます。  貸し渋りについて一点お伺いしたいと思うのですけれども、大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、大臣は一月十九日に、二〇〇一年四月のペイオフの開始は予定を変えるつもりはないと強調されたと伝えられておりますが、これは事実かどうか。そうしますと、いわゆる地銀、第二地銀、信用金庫についての不良債権処理、これに対する公的資金注入についてはどうお考えになっているのか、お伺いをしたいと思うのです。  一九九九年は本当の意味でバブル決算の年となるのか。特に、ペイオフ対策現実のものになってきまして、現金の移しかえというのは、大臣御承知のとおり、二〇〇一年を待たなくたって、もう今進行しているわけですね。それで、実は、貸し渋りどころか預金も集まらないという金融機関もあると伺っておりますけれども、そうしますと、金融再生委員会が九九年三月に基本的に不良債権を処理したいというこの決意は私は十分認めますけれども、それならば、これによって受けるところの中小企業への影響というものをどのように御認識になっているか、お伺いしたいと思うのです。  時間がありませんから、そうしますと、現状を見てみまして、大臣、本来は中小企業を守るはずの地銀とか第二地銀とか信金とかという人たちが、実は後で言おうと思ったのですけれども、例えば貸し渋りなんかのときに、御承知と思いますけれども、二カ月で二千四百二十九億円、監督庁が融資回収があったと。そのほとんどが地銀であり、第二地銀であり、信用金庫なんです。大手はないのです。そういう場合において、いわゆる縮小均衡に浮き足立っているのじゃないか。この際、第二地銀とか地銀、信金に対する基本的な方針といいましょうか、それから不良債権の問題とか、それからまた資金注入についても、やはりある程度国が——大手行は十月に、ここでやりましたですね、十月に注入となって、決意なさってやった、そういう点がはっきりしないのじゃないか。もちろん、しているのかもしれませんけれども、我々にはわからないのは不勉強かもしれませんけれども。その点について、特に中小企業を守る立場での大臣のお考えを、この点だけ、一点だけで結構でございますから。
  339. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 宮澤大蔵大臣に対しての御質疑の部分もありましたが、大方が私に関連する部分ですので、まとめて私から、お時間の都合もあるようでございますので、御答弁申し上げます。  まず、宮澤大蔵大臣が、二〇〇一年四月一日以降はペイオフを行うということを御発言になられたことは、先生が御引用になられた日付以外にも、この委員会でもしばしば、私ども関連の者も含めまして御答弁申し上げているところであります。  ところで、今先生が御指摘になられた貸し渋りだとかあるいは預金が集まらないというような問題というのは、要すれば、金融機関の資本が不足しているじゃないか、もしかのときに、本当はそれがバッファーになるべき資本がだんだんやせ細って、バッファーにならずに倒れてしまうのじゃないか。こういうところから、それを懸念する預金者もひょっとしてもうあらわれているのではないかと先生指摘でございますが、そんなことも起こり得るわけですし、また貸し渋りの原因にもなる。  そこで、我々は今度、昨年の臨時国会でつくっていただいた健全化法でもってこの資本の力を強くしよう、資本を注入しよう、公的資金でもってあえてそれをやろう、こういうことにいたしたわけであります。そして、その場合に一番注力すべきなのは地域経済である、また中小企業への貸し出しである。とかくそういう、資本の不足の中で起こりがちな信用収縮の中でしわ寄せを受ける中小企業、こういうものに対して、手厚い計画がなければ資本の注力はいたしませんよ、そういうようなことで、そこは、先生心配の点はきちっと確保されるようになっておりますので、御理解を賜っておきたい、このように思います。
  340. 中野清

    中野(清)委員 今、大臣のお話については、私の方はちょっと……。
  341. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 大変失礼しました。  もう既に地銀トップともいうべき横浜銀行が申請をされて審査に入っておりますけれども、今、地銀、第二地銀の人たちも、ちょっと様子見をしている面があるかとも思うんですけれども、申請があれば、いつでも我々、真っ正面からこれを審査させていただいて、必要な資本の注入をいたします。  御理解賜りたいと思います。
  342. 中野清

    中野(清)委員 まだ貸し渋りについていろいろあるんですけれども、大臣は中小の第二地銀とか信用金庫については十分やっているとおっしゃっているけれども、本当に浮き足立っていますよ。そして、はっきり言って、公的資金の注入があるかもしれないというと、それには監査が厳しくなるだろう、監査が厳しくなると、財務体質が問題だからやはり貸し渋りだという、この悪循環があるということだけはぜひ御理解願いたい。  特に、私は、この三月についての問題は、実は時間がなくなっちゃったものですから聞けないんで、申しわけないんですけれども、これは通産大臣なんかに聞きたいわけですけれども、実際に本当はそういう問題がある。ですからこれは、今おっしゃったように、十分やっていますという御答弁についてはちょっと納得できない。ぜひ頑張っていただいて、それは、やっても限界はあると思いますよ、あっても、今のでいいなんて思っていただいちゃ困るということだけ申し上げたいと思います。  それから、最後に一点だけ大蔵大臣にお伺いしたいんですけれども、税制の話も実はいっぱいあるんですよ。いっぱいあるんですけれども、これは余り言ってもしようがありませんから、一つだけお伺いします。  それは実は、今日の不況の原因の中に、特に中小企業対策についていいますと、やはり私は、自己資本の充実とかキャッシュフローの経営というものが行われなかったというところに問題があると思うんです。イギリスでは自己資本が三七・一だ、日本は一三%で、八七が外部資金だ、御承知のとおりなんです。ところが、大臣、いわゆる同族会社の留保金課税なんというのを現実にやっております。これはもう大臣も、おっしゃらなくてもおわかりと思いますけれども、私は、これは確かに、設立した当時の昭和三十六年代は、法人税が三八で、所得税が七五で、結局三七の差があった、だから法人成りになった方が得だというような、当時としてはいわゆる公平性というのはあったと思うんです。今は、大臣御承知のとおり、あれでしょう、所得税が三七で、今度は法人税三〇パー、七%ですよ。しかも、これから日本の国は——私は通産大臣にも一言だけ伺いたいんですけれども、この税制の中において、これからいろいろまだいっぱいあります、はっきり言って事業継承の話にしても。とにかく日本の中小企業というものを守るには、金融も大事だけれども税制が大事なんですよ。税制についてやっていただく一つの代表選手が、実はこの留保金課税の撤廃だと思います。  聞くところによると、今は二%ぐらいだ。それでしたら、世界にもないこの税制を、むしろ、これから政府は自己資本を充実するんだ、内部留保を充実させるんだ、そういう姿勢がなければ困る。それは、大臣御存じか知りませんけれども、イギリスなんかにおいてのサッチャーさんの改革以来、イギリスの中小企業が変わった。それは、今までの、いわゆる借金づけでもって、銀行で金を借りて、金利を払えば税金で経費で落ちるんだ、だから水膨れでもいいからどんどんやったという経営から、そうじゃないんだという経営をこれから中小企業はやるべきだと私は思うんですよ。しかし、そのときにこういう税制を残しておいて、幾らやれやれと言っても無理に決まっています。  ですから、きょう、私はほかにもいっぱい用意してきましたけれども、大臣、この時間の中でこのことについてだけは一言お願いしたい。大臣と、それから通産大臣、ぜひこのことをお願いして、私の質問としたいと思いますので、お願いします。
  343. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中野委員は中小企業のことについては本当にお詳しいし、また御経験も長いので、きょうは税の話がたくさんありましたから、主税局長と国税庁の次長を呼んでおりましたんですが、今のぐらいは私はお答えできるかもしれません。  つまり、法人成りするという傾向はずっと多うございますから、やはりそういう課税の格差というものがあって、留保についての課税をさせていただいているというのがいきさつと思います。確かに、今度税率が変わりましたから多少そういう点は違ってきたかもしれませんが、考え方としては。  しかし、これは中小企業の事業用資産の承継とかたくさん問題があります。一々きょうはお出しにならないかもしれませんが、私どもよく、おっしゃることをまた聞かせていただきます。
  344. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 御存じのように、留保金課税制度というのは、間接的に配当支出を誘引しよう、そういうこともございますし、法人形態で経営する場合と個人形態で経営する場合、税負担が違ってしまっては困りますので、それを調整するという意味で設けられた制度というふうに私どもは理解をしております。  しかしながら、この制度のあり方については、先生指摘のように、やはり資本を充実させる、そういう観点からも今後考えられていくべき課題である、そのように考えております。
  345. 中野清

    中野(清)委員 終わります。
  346. 中山正暉

    中山委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  347. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  きょうは、私は、景気対策について質問をいたしたいというふうに思います。  先日、我が党の志位書記局長質問では、この大不況の中で庶民にさらなる増税をかぶせて経済に何の影響もないと考えるのか、こういうふうに問うたのに対して、総理や各大臣から直接の答弁はなくて、消費マインドはわからないとか、気の持ちようだとも受け取れるお話もありました。  後ほどそういうマインドのことも触れてまいりますが、いずれにいたしましても、まず最初に、政府の九八年経済の回顧と課題、いわゆるミニ経済白書において書いてあるところから入っていきたいと思うんですが、世帯主にも雇用不安が広がっていることが将来の所得の見通しを悪化させ、消費マインドを大きく悪化させる要因となった。また、消費税増税など九兆円負担増とともに、所得の伸びは低調に推移するなど、実質可処分所得は減少し、消費性向だけでなく、実質所得も低下した、これが個人消費の冷え込みだと指摘しているわけですが、そこで、まず、消費マインドを悪化させ、雇用不安を生み出している企業のリストラについて質問をしたいと思います。  与謝野通産大臣は、昨年、十二月十日の参議院の経済・産業委員会で、この問題に関して、我が党の山下芳生議員に対してこういう答弁をしていらっしゃいます。  リストラというのはその一つの企業にとってはバランスシートをきれいにするという意味では大変いいわけですが、全部の会社がリストラをやるということは全部の会社で不況運動をやっているのと同じだ。それから、リストラリストラといい、また分社化といい、何か企業経営を合理化していくということが大変近代的な経営というふうに錯覚に陥ることよりは、経営者は従業員の雇用を維持する、やはり社会的責任もまたあるということは自覚していただかなければならないという御答弁をされました。  私は、これは今日の状況下で当を得た指摘をされたというふうに思っているのです。もちろんこのお考えは変わっていらっしゃらないと思いますが、まず最初の段階で、まずこのお考えというものを確認しておきたいというふうに思います。
  348. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 私が申し上げようとしたことは、合成の誤謬ということを申し上げたかったわけでございまして、一つの会社にとって真であることが、それが合わさりますと、社会全体として真でなくなるケースがあるというふうに考えたわけでございますし、やはり会社の経営にとってリストラというのは大事なことでございますけれども、やはり社会全体のことを考えた経営ということもまた経済界あるいは経済全体の責任であろうということは今でも思っております。
  349. 吉井英勝

    吉井委員 次に、ミニ経済白書をさらに見ていると、九〇年代に入ってからの長期的な課題としても、企業のリストラ努力が雇用の不安感を高め、消費者マインドを悪化させる要因となっているなどと分析をしております。  それで、経済企画庁長官も、通産大臣の、個々の企業にとってリストラが意味があっても、全部がやれば不況運動をやっていることと同じだという合成の誤謬というお話が今ありましたが、この考え方と同じ見解というふうに理解してよろしいでしょうか。異なるならば異なると一言だけ言っていただいたら結構ですから。
  350. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 その点に関する限り、基本的に同じでございます。
  351. 吉井英勝

    吉井委員 それで、今不況の中でどういう事態が進行しているかということですが、日立製作所では四千人とか、東芝で六千人とか、日本鋼管で三千三百人など、多くの大企業が大規模なリストラ計画を発表しております。これが雇用不安を深刻化させ、消費マインドをますます冷え込ませ、消費不況を一層深刻にするという、まさにこの点では、大臣おっしゃった、全体では企業が大不況運動をやっているということになると指摘した事態が現実に今広がっているわけです。  そこで、次に労働大臣に、大規模なリストラの名による大量の人減らしを放置しておいて家計消費の回復はあるとお考えかどうか、この点、労働大臣にお考えを聞いておきたいと思います。
  352. 甘利明

    ○甘利国務大臣 企業が不景気の中で立ち直っていくために企業内の構造改革をする、つまりリストラをする。実はそのことによって、今までの御答弁にもありますように、雇用不安、社会不安を惹起して、それがむしろ不況の足を引っ張る。つまり、不況対策をしようとしたところが不況の泥沼に入るという可能性は非常に高いのでありまして、そこで、大手の企業がリストラ案を発表するわけでありますけれども、ただし、これはいきなり生首をそれだけ切りますということではなくて、採用とやめていく人の調整を図ったり、あるいは出向で対応したりとか、いろいろな手だてをとりまして、整理解雇というのは最後最後の手段であります。  私としては、整理解雇もできるだけ起きないような対応をする、つまり、雇用不安を起こさないようなリストラの手法はないものかということを考えながらいろいろ策を練ってきたわけでございます。
  353. 吉井英勝

    吉井委員 策はまた伺うとして、もう少し、率直に言って、要するにリストラの名による大量人減らし、これを放置しておいて家計消費の回復はできるだろうか、この点について労働大臣としてのお考えを端的に伺っておきたいと思います。
  354. 甘利明

    ○甘利国務大臣 できるだけ雇用不安が起きないように、具体的に何人リストラ、何人解雇というような数字が躍らないような周辺整備をしていかなければならないというふうに思っておりまして、こういう数字が躍りますと、やはりそれを見た人はあすは我が身ということを必ず考えるわけでありますから、それが当然消費マインドにはね返ってくることは御指摘のとおりであります。
  355. 吉井英勝

    吉井委員 そうすると、現実に数字が躍っているだけじゃなくて、それぞれの企業で示されているわけです。これは現実の姿としてありますし、この間、例えば東京商工リサーチが上場千七百二十五社を対象に調査したところでは、九四年九月から九八年三月までの三年半で五十一万人、従業員の約一割の人減らし、リストラが行われていたということが紹介されておりますが、やはり今この深刻な現実から出発して景気の問題を考えていかなきゃいけないと思います。  ですから、さっき言いました日立で四千人だとか現実に出ている問題について、その人減らし、リストラについては抑制をしてもらうように、やはりそういう働きかけというものをやっていかないことには不況を打開するということはできないんじゃないかと思うんですが、この点についての労働大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  356. 甘利明

    ○甘利国務大臣 この十一月に策定をいたしました雇用対策の中にもいろいろと幅広い施策を仕組んでおりまして、それらを各企業に周知徹底をすることによりまして、できるだけ企業の存続の上でも雇用というものに対して衝撃が少ないような手法でやってもらうよう、情報伝達をしっかりやっているところでございます。
  357. 吉井英勝

    吉井委員 今おっしゃった十一月には、日経新聞が、十一月十八日付でしたけれども、おっしゃったお話などについて、実態は雇用創出の具体案づくりがなかなか進んでいない、事業規模のつじつま合わせに終始すれば、雇用情勢の改善どころか雇用不安の霧を晴らすことすらおぼつかないと指摘しているわけですね。  ですから、今大事なことは、具体的に現に出てきている人減らしの計画について、やはり労働大臣として、それはこの深刻な不況の中で、大臣もおっしゃったようにマインドをますます冷やし、不況を打開して家計消費も回復しなきゃいけないときに逆の方向に行っているわけですから、これはリストラを抑制するようにきちっと申し入れをされるとかそういうことをなさっていらっしゃるのか、あるいはされるのかということを伺っておきたいと思います。
  358. 甘利明

    ○甘利国務大臣 企業がリストラをするというのは、企業も生きんがために、つまり、残っている従業員を巻き添えにしないために合理化策をとるわけでありまして、それ自体をやめさせるというぐあいにはいかないと思うのであります。  ただ、それを進めていく中にも、失業という数字に出さないような手法をいろいろ用意いたしますから、これを最大限活用してください。そして、政労使の雇用対策会議というものを設定いたしましたけれども、その場でも、雇用不安というのは即景気の足を引っ張りますよ、ですから、みんなが一斉にリストラをするということは、逆に言えばさらに景気は泥沼に入っていくということになりますからね、そういう私の思いはお伝えをさせていただいております。
  359. 吉井英勝

    吉井委員 それでは、資料を委員長に御了解を得て配っていただきたいというふうに思います。
  360. 中山正暉

    中山委員長 お配りしてください。
  361. 吉井英勝

    吉井委員 私やはり、そこまでおっしゃっておられるんだから、実際には、リストラを考えている、リストラといいましても私はいろいろなリストラクチャリングというのはもちろんあると思っているんですよ。今私が特に言っているのは、最近多いのはリストラの名による大量の人減らしの方ですね。これについてはやはり労働大臣がこういう状況のもとできちっと企業に対して、先ほど通産大臣の方の御答弁を御紹介しておきましたけれども、経営者は従業員の雇用を維持する、社会的責任もあるんだ、その立場をきちっと貫いて、やはり企業に対して、こういう時期だからこそ大量人減らし、これは抑制するように、私はそういう働きかけ、申し入れというものが必要だと思うんです。そういう姿勢を持たなかったら庶民の消費マインドというのは、これは改善されませんよ。  次に、今配っていただいた資料なんですが、私は、この問題は、不況だからリストラが問題になってきたというだけの問題じゃないと思うんです。自動車、電機などを中心とする輸出大企業は、長期にわたってリストラを進めて雇用不安を実は拡大してきたというのが実情です。  これら輸出大企業の国内と海外の企業行動を見ますと、個々の企業が市場競争の中で個々に海外進出を計画を立てて進めたとしても、その結果として生じた事態は、この表の1と図1に示しておきましたように、九〇年から九六年にかけて海外生産比率は毎年ふえ続けて、電気機械、電機では一九・七%へ、自動車では二四・九%へ、製造業で六・四%から一一・六%へ、ですから約二倍にいずれも急増しております。  表2の方をごらんいただきますと、九一年と九七年で、電機の国内での設備投資は八千九十億円の減少、一方海外では、電機の設備投資は五千六十億円の増加と二・六倍になっているわけです。同じ時期に、自動車の国内での設備投資は一兆二百億円減少し、海外では八百六十億円の増加、一・三倍。  表の3から、同じ時期に、電気機械の国内での雇用は二十七万九千人の減少、海外での雇用は二十九万九千人の増加で一・七倍。自動車の国内での雇用は七万五千人の減少で、海外での雇用は二十五万五千人の増加、二・一倍。  つまり、海外で設備投資を電機でいえば二・六倍、自動車で一・三倍とふやし、これによって雇用も、海外では電機で一・七倍、自動車で二・一倍と猛烈にふやしているわけですが、国内では電機も自動車も設備投資を大きく減らしてきている。これがGDPの二割近い設備投資を縮小させる、不況を加速する方向に作用してきているわけです。  雇用の面でも、自動車、電機の二つの分野だけで、海外で五十五万四千人ふやして、国内では三十五万四千人リストラをしてきている。これが、ミニ白書に言うように、家計所得の落ち込みと雇用不安、消費マインドの冷え込みとなって不況を長期化させる要因となっております。  表4の方で、家電五社と自動車三社について、これは東洋経済の方で、資料に穴のあいている部分があるものですから自動車は三社でとどまっておりますが、引いた数字も出しておきましたけれども、そこで、こうして本当に、ミニ白書で言うように、家計所得の落ち込み、雇用不安、消費マインドの冷え込みと、不況を長期化させる要因というのはずっとこの間傾向的にあったということを見ることができると思うのです。  そこで、通産大臣、国内で雇用と設備投資を縮小して、海外でそれをふやしてきた、こういう企業行動が今日の雇用不安を生み出している大きな原因になっていると思いますが、これを規制や抑制する、そういうことをしないで雇用とか消費の回復ができるのだろうか、この点についての通産大臣のお考えというものを伺っておきたいと思います。
  362. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 日本の経済も国際化をして、いわば物、人、金の移動というものが全く自由になっておりますから、資本や技術の移動を直接的に規制するということは既にもう不可能なような制度の中で我々は生きているわけでございます。  海外の生産拠点がふえているということは、私は喜ばしいことでございますと申し上げたいのですが、一方では、そのことは逆に、国内で物をつくるということがいわば幾つかの原因によって大変割高になっている。それは、一つは高コスト構造と私ども言っておりますけれども、法人税率は今回下がりますけれども、法人税率が高かったとか、あるいは物流コストが高いとか、あるいはもちろん人件費も高いとか、いわばいろいろな生産要素について一つ一つ点検してみますと、日本の国内で我々が持っているいろいろな手段というものが割高であるということをすぐ見つけることができるわけです。  これは、このまま放置いたしますと、二十一世紀にわたりまして、日本の国際競争力が今後ますます落ちていくということが予想されます。したがいまして、このまま放置しておきますと、生産拠点も海外へどんどん移動する可能性があります。  そこで、小渕内閣が考えておりますのは、現在やっております経済対策、まあ景気対策と呼んでもいいのですが、これはいわば需要の面からの景気対策であり、また、金融収縮、信用収縮に対する対策というものを、一連のことをやってきたわけでございますが、やはり先生が御指摘になったように、この傾向を長期的に歯どめをかける、そのためにはやはり供給サイドの構造改革ということをやらなければならない。  その中には、もちろん高コスト構造是正という、いろいろな生産要素の高い部分を低くするという努力も必要ですし、あるいはイノベーションという技術的な側面から日本独自のものを持つということも必要でしょうし、そういうあらゆる努力を払いながら、日本のいわば生産性というものを高め、日本の企業、あるいは日本の製造業、サービス業含めてあらゆる企業の国際場裏での競争力を維持するということは、今後、日本の社会を豊かにするために我々が避けて通れないここ数年の、あるいは十年ぐらいの一番大きな課題であるというふうに考えております。
  363. 吉井英勝

    吉井委員 高コスト構造のお話もありましたけれども、これはかつて野村総研の研究員の方が悪魔のサイクルという言葉で分析し発表された論文なども出ておりますが、長時間過密労働の問題、下請単価を徹底的に切り下げていくという問題。そういう中で異常な輸出競争力を高めて貿易黒字をうんと生み出したこと、これが為替レートがうんと円高に振れていって、今日でも消費購買力平価からすればうんと高いわけですから、それが高コスト構造を生み出しているわけですから、まさにその点では、かつてソニーの盛田会長が日本型経営が危ないという論文を書かれたときに、やはりヨーロッパのような国際標準に合った経営に切りかえていかなきゃいけないと。それは、労働法制の基準緩和じゃなくて、逆に、長時間過密労働を規制していくとか、下請との契約を適正なものにするとか、そういうものにしていかなきゃいけないということを指摘しておりますが、私はそういう点がまさに大事な点だというふうに思うわけです。  規制がないかといえばそうじゃなくて、何でもかんでも全部縛ってという意味じゃなくて、民主的なコントロールというものは、例えばEUでいえばEU指令でもって、大規模な企業が海外へ地域から展開していくことについての協議を義務づけるとか、やはりそういう一定のルールを設けてコントロールするように、大臣おっしゃったように、社会的責任を果たさせるようにしているということは国際的な教訓でして、今、日本でも、そのことを無視して、とにかくこれまでのような悪魔のサイクルを繰り返しておったのじゃ、それは最後は海外へ行き日本が空洞化するということに当然行き着かざるを得ないわけで、そこをやはりどう切りかえるかということが非常にこの中で大事だ。それをやらないと雇用不安がどんどん進行し、マイナスの方へどんどん悪循環を繰り返すわけですから、そこの切りかえが必要だということを言っておかなきゃならぬと思うのです。  海外へ行けているというのも、これはODA資金その他を使って、海外での実際に進出できるインフラ整備その他は、道路、港湾、電力その他、どんどん政府として支援をして、それで実際に企業が海外へ行ける条件整備もしてきたという一面があるわけです。ですから、そういう点では、またそのほかの法人税減税だとか、優遇税制の問題とか、さまざまな利益を与えてもきているわけです。  例えば、そういう中で、優遇税制などによって、日立製作所で見ますと、九〇年に比べて九八年には、従業員一人当たり内部留保は、実は千六百七十九万円から二千三百七十八万円へと六百九十九万円ふやしているわけです。これは九三年の不況の底からの五年間でも一万一千百十三人リストラして、一人当たり内部留保をその間五百二万円ふやしている。ですから、リストラで企業のため込み利益は一兆六千七百三十五億円へと大きく積み増しをしている。これが実態です。同じ時期に、海外では一万五百二十二人雇用をふやし、国内ではリストラだと言って一万一千百十三人を人減らしをやっていく。  こういう実態というのは、私は日立の例を挙げましたけれども、大企業、諸表を調べておれば全部わかるわけですから、そういうのがいっぱいあるわけですね。  そして、そういう企業について、税の面での優遇だけじゃなしに、例えば通産省は、その所管分だけ見ても、一社当たり毎年大体五十億から六十億の技術開発補助金なんかも大手には出しているわけですし、ですから、政府としてもやはり社会的責任を求めていくだけの根拠というのはきちっと持っているというふうに思うのです。企業の方も、内部留保の一部を取り崩すことでリストラを回避する体力もあるわけです。  ですから、不況対策としてリストラを取りやめるように、抑制するように、企業としての社会的責任を果たすように求めていく。私は、これは労働大臣にしても通産大臣にしても、それだけの努力というものは、今日のこの深刻な不況をどう打開するかということを考えたときに、やはりそれはおやりになるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  364. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 リストラという言葉はもともとリストラクチャリング、再構築という言葉からきているわけですから、それは直ちに人減らしということではなくて、ある企業体が持っている経営体質を再構築することによって、経営自体を効率的なものにするということだろうと私は思っております。  しかしながら、リストラといいますと、とかく人減らしというふうに先入観がございまして、やはり企業としては、新しい分野を開拓するとかあるいは新しい事業計画を立てるとかいうことで新規分野に進出をする、そういう努力をぜひしていただきたい。そういうことによって、非効率な部門から労働力が効率的な部分に移動するというのはやむを得ないことだろうと思いますが、それを社外に放出するということの前に、やはり社内で新しい分野を開拓することによってその過剰労働力を吸収する、そういう考え方の方がより社会的要請にマッチをしているのではないかと私は思っております。
  365. 甘利明

    ○甘利国務大臣 基本的に通産大臣が答弁をされたとおりでありますが、要するに内部留保をどう使っていくかということに関してなんですが、一時しのぎ対策としてそれを取り崩しても、企業の体質は変わらないわけでありますから、これから先の競争社会においてその企業が生き抜いていけるような構造改善に投資をしてもらわないと、結局、一年、二年はもったけれども三年目からだめだ、もっと取り崩せと、解決策になっていかないとうまくないんだと思うのであります。  私どもの方策は、リストラを進めていくのに、整理解雇ということに至らないようないろいろな手法を、ツールを用意いたしますからこれを活用してください、そして体質改善に努力をして、いかなる状況下でも生き抜いて雇用を守っていけるだけの企業に生まれ変わってもらいたいということを間接的に要請しているわけでございます。
  366. 吉井英勝

    吉井委員 私は、今競争の堂々めぐりをやっておったのでは、これは人類社会としても非常に問題が今後出てくるだろうと思います。  つまり、自動車などに見られるように、国内であれば、大規模な合併は独禁法で、これまででいえば一定の規制、ルールというものがあったわけです。しかし、国際的に、超巨大な合併について何ら規制もないままに、本当に二つ、三つの巨大なものに集約されていって、その行き着いた先に、ほとんど競争が最後にはなくなってしまう。それがそういうところへ競争競争と言っているうちに行き着かざるを得ないという問題もありますから、今、これは国内における独禁法の問題とともに、国際的にも、競争を排除するような、余りにも巨大なそして異常な競争の加速をするようなものについての、それをコントロールする、規制する、そういう取り組みというものは必要だろうと思います。  それから、国内においても、やはりこれまでのような輸出大企業の余りにも異常な企業行動については、これは民主的なルールというものを組み立てていかないと、その中で地域経済や中小企業の内発的な発展をどう実現していくかという方向へ転換しないと、根本的に、大企業の競争だけの話をしておったのでは、これは悪循環の中に落ち込むことにならざるを得ないというふうに思いますし、そのことを指摘しておきたいと思います。  それで、政府の方は、海外生産比率の高い大企業約三千社に五割強の減税効果を集中させる法人税減税を今出してきているわけですが、これまで、法人税減税を進めるに従って実は大企業の海外直接投資がふえてきたというのが、これは大蔵省と通産省の報告書を突き合わせれば出てくる実績です。  例えば一九八六年、法人税率は四三・三%でしたが、このときの海外生産比率は三・二%だった。九七年は法人税率三七・五%になりましたが、海外生産比率は一三・〇%と大幅に海外生産がふえていっています。つまり、先ほど言っておりました、海外での投資がふえて、海外での雇用がふえて、国内で投資が縮小し、国内での雇用が縮小していっているという問題があります。  そこで、法人税減税をやったとしても、国内での設備投資が進む保証がないということであれば、うまくないはずなんですね。法人税減税分が海外への直接投資に向かい、それが国内でのリストラを進める、そういうことにならないように歯どめをかける保証というものを大蔵大臣の方は何か考えていらっしゃいますか。
  367. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今お話を伺っていまして、何にも申し上げなくてもいいかと思ったんですが、お呼びがありましたので。  やはり今、日本の経済もつらいし東南アジアもつらいですから、長い目で見るということは本当にちょっときついんだと思いますけれども、今海外へ行くというようなお話があって、私は、これはプラザ合意からの一種のトレンドだと思います。  そして、日本が要するに付加価値の高いものをつくっていけるかどうかということなんだろうと思いますので、それは、リストラはつらいですけれども、リストラしないで競争力を失って企業がつぶれればもっと失業が出ますから、そういうものじゃないのではないか。少し長い目で見るというのは今お互いにつらいですけれども、私はしかし、東南アジアも日本も蹉跌が今あるけれども、プラザ合意以後起こっているこういう傾向というのは間違っているんじゃないんだろう。  通産大臣が今産業再生ということをしようとしていらっしゃるのも、日本にどういう産業、産業という言葉で広く言えばですね、あるいはどういうものが必要かということをサプライサイドで今考えようとしていらっしゃるんだと思いますので、私はそれでいいのではないか。  法人税を下げましたが、それはやはり、今はどこへでも本社を持っていけますから、日本の法人税法が高ければよそへ本社を持っていきますでしょう。そういう時代でもございます。そして、海外に行く企業の法人税が負担が軽くなる。しかし、そこは日本に設備投資しないではないかとおっしゃいますけれども、それは、日本に必要な新しい設備投資は何だということをやはり私は考えていくべきなんだろう、そのためには法人税は押しなべて低い方がいいんだと。  ですから、お言葉を返すようですけれども、ちょっと長期を考えるのはつらいけれども、やはりそういうふうに考えていくべきではないでしょうか。
  368. 吉井英勝

    吉井委員 プラザ合意のお話をされましたが、まさにそれ自体が、異常な輸出競争力を身につけて貿易摩擦を深刻にした中の話で、そして、プラザ合意の後、円高政策をとったけれども、その円高の中でも、どんどん円高へ振れていきました。しかし、一ドル八十円でもやり抜ける体質をということで、私はあのとき自動車の調査にも行きましたけれども、下請単価でいいますと半値の六掛け二割引き、そういう状況まで親企業から言われていましたよ、つまり、そうして一ドル八十円でも成り立つコストをと。スーパーコストダウンという言葉をトヨタへ行ったらそのとき聞きましたけれども、そういうふうな異常な輸出競争力をつけて、それでまた貿易黒字をふやしていく、それがまた円高に振れていくという要素であったわけですから、そういうふうなやり方からの転換というものを図らないと、長期的に見てもそれは問題だということを指摘しておきたいと思うんです。  そういう点で、やはり私は、消費マインドの話、好転させる政策が必要だとかいろいろ言っておられるんだけれども、そのマインドを冷やすリストラに対して、あるいは今の、今日の経済の問題について、もう仕方がないんだ、こういう立場では展望は出てこないということを指摘しておきたいと思います。  次に、景気対策中心をもう一つの角度から見ますと、これはGDPの六割を占める個人消費を伸ばすということですが、宮澤蔵相は、消費を規定するのは所得と、もう一つは消費性向、消費マインド、この二つの要素で決まるという趣旨のことを言っておられます。そこで、リストラ、雇用不安による消費マインドの冷え込み問題は、私はこれを抑える対策をとらなきゃいけないと思っておりますが、これはマインドの問題ですが、もう一つは、庶民の暮らしや所得につながる減税について、ここについて次に聞いておきたいと思います。  政府の家計調査、資料から見るとこれは九七年分であれどの分でも皆傾向は一緒なんですが、九七年分で見れば、年間収入十分位階級別の平均消費性向について、第一分位は八三・七%と消費性向は高いわけです。だんだん下がっていって、第十分位は六五・四%と最も低い。ですから、消費性向の高い庶民に減税効果が及んでこそ個人消費を伸ばす上で効果があるというふうに思うわけですが、この点について大蔵大臣のお考えを伺ってみたいと思います。
  369. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前にはよくそういうふうに考えられてきましたが、どうも最近、実証的にはなかなかそうとも言えないなと。低額所得者の方が限界消費性向が高いかというとむしろ逆だということも出ておりますようですから、一概に言えないということかと思います。
  370. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今委員の挙げられました数字は平均消費性向でございますけれども、減税の効果のあらわれる限界消費性向について見ますと、この点は非常に複雑でございます。  例えば九七年の限界消費性向を見ますと、これは委員の挙げられた十分類じゃなしに五分類でございますけれども、第一階位、一番低い方の四百九十四万円以下の方々が四八・七%でございます。それで、第二階位が四七・八、第三階位が三九・一、第四階位の人が六三・三というような形になっておりまして、必ずしも下の方が高いとは限りません。平均を見ますとそうでございますが、まさに限界で見ますと必ずしも所得の低い人が高いとは限らない数字が出ております。  そういうことを考えますと、やはり減税というものも税の形ということを大事にすべきだと私たちは考えております。
  371. 吉井英勝

    吉井委員 限界消費性向のお話があったんですけれども、私は理論計算について数値をいじくる議論は、今それはおいておいて、現実の、毎年毎年出していらっしゃる政府実績値、データから見て、私は、第一分位が消費性向は高く、第十分位が最も低いという傾向は変わらないわけであって、だから消費性向の高い庶民への減税ほど個人消費を伸ばす、これは言えると思うんですが、消費性向の高い庶民への減税が個人消費を伸ばすことにならないというお考えですか。
  372. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 減税は消費を伸ばすと思います。ただ、どの分位にするのが一番効果が高いかというのは、今ちょっと非常に複雑な状況になっておりまして、一概に言えないと申し上げておるわけでございます。
  373. 吉井英勝

    吉井委員 理論計算の話じゃないんです。理論計算をやるとすれば、いろいろな数値の置き方、初期条件から係数から境界条件からいろいろぶち込んで、それはいろいろな数式の立て方があるんですよ。その議論をするんじゃなくて、現実に、政府の出している資料でも消費性向というのはきちっと出ているわけで、その消費性向の高い庶民への減税ほど個人消費を伸ばす。それは、減税すればそのことに効果があるのは明らかな話であって、限界消費性向の議論でもってそれをそらせるということは、それはよくないと私は思います。  政府の所得税減税案によると、平均世帯で七百九十四万円以下で、つまり、第一分位から第六分位までの層で新たにことしより一兆円の税の負担増となるわけですが、消費性向の高いこの階層への負担をふやして、この層で個人消費は伸びると見ていらっしゃるのか、落ち込むと見ていらっしゃるのか、あるいは変わらないと見ていらっしゃるのか、大蔵大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  374. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 くどくは申しませんけれども、堺屋さんが言っていらっしゃることは、平均の話ではなくて、今ある消費があるとして、そこに一単位の減税を与えるときの議論でございますから、それはやはり限界の、マージナルな議論をしなければいかぬのではないかと思います。
  375. 吉井英勝

    吉井委員 それは理論計算の話であって、理論計算は理論計算で、だから、初期値、係数、境界条件などさまざまな数値をぶち込んで、いろいろな議論は、それはできるんです。  その議論じゃなくて、政府の所得税減税案によると、平均世帯で七百九十四万円以下で、つまり第一分位から第六分位までの層で新たにことしより一兆円の税負担増となることは出ているわけですから、しかもその層は消費性向の高い階層でもあるわけですから、そこへ負担をふやしたときに、この層で個人消費は伸びると見ていらっしゃるのか、あるいは個人消費が落ちると見ていらっしゃるのか、変わらないと見ていらっしゃるのか、この点を大蔵大臣に聞いておきたいのです。
  376. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 課税のふえる層だけ見ると、それはやはり消費は減るでしょう、また、逆の方で減税の分はふえるでしょう。  ただ、委員おっしゃる消費性向、消費マインドということを見ますと、やはり今一番問題なのは、行き先、ずっと先を長期的に見て、日本の経済に希望があるかどうかという問題でございます。リストラの問題も含めて、やはり新しい産業が起こってくるようなことがなければいけないと思うんです。今の状態で、じっとリストラもやらなきゃ人も減らさないので抱えていたら、それでよくなるかというと、決してそうではない。やはりここは一時的につらいところはあっても、新しい投資及び新しい産業が起こってくるような展開を考えていかなきゃいけないと思うんです。  そういう意味では、ある段階、夜明けの前が一番暗いと私は表現いたしましたけれども、ある段階、苦しいときがありましても、そういう新しい産業が起こるような、またそういう投資マインドが、投資が起こるような状況をつくらなきゃいけない。そういう意味では、やはり資本利益率あるいは労働生産性というものの改善を求めなければ経済はよくならない。そういう希望がないと消費マインドも長期的には起こってこないんじゃないかと思います。
  377. 吉井英勝

    吉井委員 GDPの六割を占めている個人消費の部分ですよ。マインドの問題をおっしゃったけれども、まさにそれは今、現に四千人とか六千人とか、首切りの計画、人減らしの計画が示されている、そして現実に雇用不安が加速してきているもとでマインドが冷え込んできているわけですから、そのマインドの議論が抽象的な話じゃなくて、現実に起こってきているこのマインドの冷え込みを食いとめるには、その人減らしをやめるようにきちっと働きかけていくことも必要だし、同時に、何といっても個人消費の、所得の分からいえば、それは庶民に減税が行き渡るようにするということが最も大事なことであります。  私は、そういう点では、きょうは時間が終わりになってまいりましたから終わりますが、この消費税の減税というのは、これは逆進性のある税だから、税負担率では低所得者層ほど消費税負担が軽くなるし、消費性向が高い部分ですから個人消費は確実に伸びるし、しかも高所得者層も含めてすべての階層で平等に減税になる。だからまさに、こういう消費税率の引き下げで個人消費を伸ばすということをこそやらないと景気対策にはならない。このことを申し上げまして、ちょっと申しわけないが、自治大臣国土庁長官には、あなたのところまで行き着かないままに終わっちゃったんで、そのことはお断りしておいて、終わりたいと思います。
  378. 中山正暉

    中山委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会