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1999-01-28 第145回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年一月二十八日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       岩永 峯一君    植竹 繁雄君       江口 一雄君    小澤  潔君       小野寺五典君    越智 通雄君       大原 一三君    加藤 卓二君       亀井 善之君    河村 建夫君       岸田 文雄君    斉藤斗志二君       田中 和徳君    津島 雄二君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       牧野 隆守君    宮島 大典君       村田 吉隆君    村山 達雄君       森山 眞弓君    谷津 義男君       横内 正明君    岩國 哲人君       上田 清司君    上原 康助君       生方 幸夫君    岡田 克也君       奥田  建君    桑原  豊君       小林  守君    島津 尚純君       中川 正春君    肥田美代子君       藤田 幸久君    山元  勉君       山本 孝史君    横路 孝弘君       吉田  治君    赤松 正雄君       大野由利子君    長内 順一君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       並木 正芳君    西川 知雄君       山中あき子君    加藤 六月君       鈴木 淑夫君    西村 眞悟君       木島日出夫君    辻  第一君       東中 光雄君    藤田 スミ君       矢島 恒夫君    北沢 清功君       濱田 健一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     川崎 二郎君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   野田  毅君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国 務 大 臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       登 誠一郎君         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣総理大臣官         房審議官    佐藤 正紀君         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         証券取引等監視         委員会事務局長 舩橋 晴雄君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         科学技術庁研究         開発局長    池田  要君         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         環境庁自然保護         局長      丸山 晴男君         国土庁地方振興         局長      中川 浩明君         国土庁防災局長 林  桂一君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         通商産業省通商         政策局長    今野 秀洋君         通商産業省基礎         産業局長    河野 博文君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         建設省河川局長 青山 俊樹君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 一月二十八日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     田中 和徳君   岸田 文雄君     宮島 大典君   村田 吉隆君     岩永 峯一君   村山 達雄君     小野寺五典君   生方 幸夫君     上田 清司君   岡田 克也君     山元  勉君   吉田  治君     奥田  建君   草川 昭三君     山中あき子君   斉藤 鉄夫君     赤松 正雄君   春名 直章君     藤田 スミ君   平賀 高成君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   岩永 峯一君     村田 吉隆君   小野寺五典君     村山 達雄君   田中 和徳君     亀井 善之君   宮島 大典君     岸田 文雄君   上田 清司君     桑原  豊君   奥田  建君     山本 孝史君   山元  勉君     中川 正春君   赤松 正雄君     斉藤 鉄夫君   山中あき子君     長内 順一君   辻  第一君     東中 光雄君   藤田 スミ君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   桑原  豊君     生方 幸夫君   中川 正春君     岡田 克也君   山本 孝史君     藤田 幸久君   長内 順一君     並木 正芳君   東中 光雄君     平賀 高成君   矢島 恒夫君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   藤田 幸久君     島津 尚純君   並木 正芳君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   島津 尚純君     吉田  治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
  3. 岩國哲人

    岩國委員 おはようございます。  民主党を代表して質問をさせていただきます。  私も、おかげをもちまして、二年ちょっとでありますけれども、この国会の中で、特にこの予算委員会でいろいろと勉強させていただきました。ただ、国会というところは、最高レベル人たち最高言葉を用いて論戦をされるところというふうに、私は学校時代教わってまいりました。この二年以上、大変いい勉強をさせていただきました。  私は、人生の中でかなり長い期間、日本語から遠ざかっていた時期がございますけれども、こうした日本言葉で、そして、大事な問題がここで議論をされているという前提で、また、認識で入ってまいりましたけれども、確かに、国会の中には言葉がはんらんし、大量にあふれております。しかし、言葉は大量ではありますけれども、意味が非常にわかりにくいことが非常に多いなということを実感しております。言語大量、意味不明瞭、そのような印象を日々深めておるわけであります。  最近の安保論議、特にニューガイドラインにつきましても、周辺という、ごく世間一般で何の疑問もなしに使われているような言葉さえも、国会の中に入ると、各党各党によって解釈が違う。さらに根本的に、憲法そのものも、政党によって解釈が違うし、東大の法学部の先生説明と出雲市の中学校の社会科先生説明と、またこれは違う。一番大事な法律である憲法そのものが、立場立場で、政党政党解釈が違うというのは、これは立派な憲法なのか。恐らく、大切だ、大切だといいながら一番ばかにしておるんじゃないか、そのような気がいたします。だれが説明しても同じものである、それが憲法であるべきじゃないだろうか、そのようなことを思っております。  例えば周辺周辺というのは、近所の方に、あるいは世田谷区でもどこでも同じことですけれども、一般の方に説明されるときに、この国会の中でのああいう議論そのもの説明しても、とてもわからないと思います。  例えば、総理は北区王子本町に今お住まいだと思いますけれども、隣の三浦さんとか根本さんとか、御近所づき合いをしていらっしゃると思いますけれども、この御近所というのはやはり周辺の中に入っておるわけでしょう。隣に住んでいる人は、SPが警備していらっしゃる、そして所轄警察署も要人の周辺警備というのをしていらっしゃると思いますけれども、隣の根本さん、三浦さんはその周辺の中に入っているのですか。御近所ではないのですか、お隣は。ちょっとその点を。  総理は、いろいろボキャ貧とおっしゃって、国語能力については非常に謙遜していらっしゃいますけれども、まず、その程度認識はいかがですか。お隣周辺に入るか入らないか。
  4. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 一般的には、お隣さんは隣近所ということになるのだろうと思いますが、それを普通は周辺というような言葉では申し上げないだろうと思います。
  5. 岩國哲人

    岩國委員 所轄警察署は、周辺警備と称して、総理の御自宅だけではなくてお隣周辺の対象にしているわけです。私は、これが確立された日本語周辺という定義じゃないかと思うのです。  それが、例えば今度のニューガイドラインによりましても、いろいろな地方自治体の協力を得なければならないということになっています。では、地方自治体市町村長さんが、この周辺という言葉をきちっとそれぞれの住民説明できるかどうか。あるいは、住民説明しなくても、それぞれの議会に説明できるような言葉になっておるかどうか。周辺といいながらも、お隣根本さん、三浦さんを除いたような周辺という定義は、私は日本語では存在しないと思うのです。  私の言いたいことは、国境を接する、台湾を含む中国、韓国、ロシアというのは立派にこれは周辺であり、また、それが入っていない周辺という言葉一般日本人には説明できない日本語だと私は思います。  日本語だけではなくて、英語を見ていただいてもそれはもっとはっきりすると思います。サラウンディングエリアというのは、日本を取り囲むということになっているわけです。取り囲むお隣ということは、先ほどから根本さん、三浦さんと言いますけれども、取り囲むところの一軒を除外したような周辺という概念日本語には存在しない。ましてや英語を見れば、取り囲むといいながら取り囲まないような虫食いの概念ではどうにもならないと思います。  総理はどうお考えになりますか。英語の方の周辺ということはどういうふうな英語になっているか一度でもごらんになったことがおありかどうか、そしてそれを見てどのように認識していらっしゃいますか。総理、お願いします。
  6. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは日米間の協定でございますから、当然両国語で記述されておるわけですから、私自身も、当然、我が国法律用語としてこれを見ると同時に、英語の訳もそれは拝見をいたしております。(岩國委員英語そのものごらんになったのですか」と呼ぶ)はい。
  7. 岩國哲人

    岩國委員 英語そのものを、サラウンディングエリアと。  これは、いろいろと勉強された方もいらっしゃると思いますけれども、日本語で不明確だったら、相手の、同じような軍事力を持っているところがどういう解釈をするような言葉を使っているかということを見れば、私はもっと早くこういうことは結論が出そうだと思うわけです。また、そういうことでもって地方自治体の長にもそれから国民にも説明しなければならない、そのように思います。  きょうは、この問題について時間を使うほどの余裕はありませんので、そういう私の意見を申し上げて、次の質問に移らせていただきますけれども、同じように金融経済関係でも、私は、昨年の九月、宮澤大蔵大臣にお伺いしたことがあります。  ああいう公的資金税金とは大体どこが違うのかわからない人がほとんどです。また、この公的資金を、あのように立派な本店を持ち、そしてたくさんの土地、株式を持っている、お金持ちと思われている銀行に、なぜ貧乏な人の税金が使われてしまうのか、これも理解できない庶民感情であります。  そういうときに、去年の九月のこの委員会で私は御質問させていただきましたのは、長銀と住友信託が合併することについて六千億とか五千億という公的資金を役立たせる、それは持参金なのか支度金なのか大蔵大臣にお伺いしたことがありました。今となって考えてみますと、あれは支度金でもなければ持参金でもなく、御仏前になってしまったんじゃないですか。大蔵大臣のあのときの答弁は、必ずしも支度金でもなければ持参金でもないと。結局、お嫁に行かせようとしたところがお葬式を出してしまった。あのときの用意された五千億、六千億は結果的に御仏前になってしまった。  今から二年前に、日債銀のために、いわゆる奉加帳方式という言い方で、二千七百億円のお金が調達されました。その二千七百億の中には、日銀からの八百億も含まれております。この二千七百億円のお金を調達するときに、どのような経営内容が、日本債券信用銀行についての経営指標が提供されたのか。  この二千七百億円を調達するときの奉加帳方式というものは、結局、大蔵省がしっかりと内容検査し、情報を持っておって、健全であるという印象を伝え、あるいは少なくとも持たせ、そういう予見を持たせることによって二千七百億のお金が集まったに違いないと思うのです。  このときに、大蔵省はどういうデータを日銀あるいは興銀、日本生命、こういったようなところに提供されたのか、そしてそれは、提供したものが何カ月後に早くも大きく間違っておったということに大蔵省自身が気がつかれたのか、あるいは、奉加帳を回しておるときからもう既に違った経営指標を出しておられたのか、その辺についての宮澤大蔵大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、後ほど金融監督庁長官にこの問題を引き継がせていただきたいと思いますけれども、当時のいわゆる増資要請日債銀からございましたのは平成九年の四月—六月ごろのことでございます。その際日債銀は、将来の回収に懸念のある額は多分七千億程度であるというふうに説明をしております。  そして、日債銀のそういういわば各行支援要請する努力に対して大蔵大臣談話を発表いたしておりまして、大蔵大臣各行要請をするという談話はしておらないのですが、そういう日債銀再建支援について大蔵大臣としても再建について支援をする意思があるということ、並びに日本銀行に対しては、日本銀行として支援をしてほしいということを、この部分だけは大蔵大臣談話で言っておられます。  思うに、当時は平成九年の四月一日のことでございますから、今おかげで我々が持っておりますような救済のフレームというものは一切存在いたしません。公的資金導入という観念はそのころはまだ信用金庫の話であって、銀行に導入するということはございません、預金者保護だけはございましたが。  したがいまして、日債銀のような事件が、破綻が仮に起こりますと、その及ぼすところは、今の段階と違いまして公的な資金でどうこうするということがございませんから、できるだけやはりこれは救済できるものなら救済すべきだと大蔵大臣も考えられた。また、その努力が行われて、七月の二十九日に日債銀増資が完了しております。その後、大蔵省検査をしておりますけれども、その段階債務超過というようなことは外には発表しておりませんが、事実ございませんでした。  したがいまして、一般的には、日債銀懸念がある額は七千億程度という説明一般的にそうであろうと受け取られておったわけでございます。
  9. 岩國哲人

    岩國委員 大蔵大臣に再度お伺いいたします。  その七千億という外部に与えた数字が違っておったということを大蔵省はいつ、どういう方法で知ったんですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも実は監督庁長官にお答えをいただきたいところですが、記録によりますと、大蔵省は九月になりまして検査をいたしております。その前の検査平成五年でございますから、これは大変前になりますので。九月に大蔵省検査当局は第三分類がどのぐらいあるかということはつかんだようであります。  しかしながら、そのことは事の性質上、日債銀には伝えてございますけれども、外部には一切申しておりません。日本銀行にも申していない。
  11. 岩國哲人

    岩國委員 では日銀速水総裁にお伺いいたします。  速水総裁はこうした公的資金日銀特融枠を使ってお出しになった。八百億。これは、旧日銀法でいえば、二十五条の特融枠というのは返済が非常に確実でなければこの枠は使ってはならないということになっているはずです。この返済が確実であるという判断は、どういう数字を使ってその八百億のときになされたのか。二番目に、七千億ではなくて一兆一千億であったということを日銀はいつ、どういう方法で知り得たんですか。
  12. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  私ども、八百億円を資本投入いたしましたのは、特に特融という観念ではなくて、大蔵省から平成九年の五月に、日債銀検査結果で債務超過ではないという報告を受けました。  一方で、これをこのままでおいておけば、やはりかなり大きな金融システムの崩壊につながりかねないという判断がありまして、第三分類で七千億という数字は、これは大蔵省検査の後、日債銀の頭取から本行へ報告があったものであります。そういうことを考えて、八百億というのを、民間で集めた分の足りない分を本行で出資したということでございます。
  13. 岩國哲人

    岩國委員 日銀総裁に重ねてお伺いいたしますが、これは特融枠ということではないということですけれども、新しい基金を設けられました、旧日銀法に基づいて。その基金を設立する、あるいはその基金からそういった八百億というものを拠出されるときの、いろいろな制限がついているはずです、安全性について。そのお金にはどういう制約がついておるのか御説明いただけませんか。
  14. 速水優

    速水参考人 日本銀行が出しましたのは、新金融安定化基金を通じて八百億を出資したわけでございます。それを出資するに先立ちまして、日本銀行としても、同行経営再建策のベースとなっております自己査定方法内容について、限られた時間ではございましたけれども、二日間にわたって調査、確認をいたしまして、その限りでは妥当なものというふうに認識いたしました。  その後、大蔵省からも、先ほど申し上げたように債務超過でないという報告があったわけでございまして、我々としては、同行による抜本的な経営再建策の実施が、同行内外市場における信認の回復、ひいては内外からの我が国金融システム全体に対する不透明感の払拭に寄与することを期待して出したものでございます。  当時は、今備えられたような道具立てが一切できておりませんでしたから、恐らくこれしか、金融システム不安を回避して日債銀をサバイブさせていく道はなかったのではないかというふうに思います。
  15. 岩國哲人

    岩國委員 先ほど私が質問いたしました、もはや七千億ではないということをいつどういう方法でお知りになりましたかということについてまだ御答弁いただいていないようであります。  それから、あわせて二番目に、七千億であるという調査結果については、大蔵省からではなくて日債銀からお聞きになったと。これは我が党の菅代表質問に対しても同じように、大蔵からではなくて日債銀からだという、この点は一貫しておられますけれども、今の御答弁の中で、債務超過でないという点については、なぜか大蔵省から直接連絡があったと。これは一体どういうふうになっているのですか。あるときは日債銀から来てみたり、あるときは大蔵省から来てみたり、なぜか我々にはわかりにくい構図がここにあるわけです。  七千億が一兆一千億になったということを、いつ、どういう方法で、だれから知り得たか、その点を明確にお答えいただきたい。
  16. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  債務超過でないということを御報告を受けましたのは、一昨年の五月十九日で、日債銀検査結果について大蔵省から報告があったものでございます。  第三分類七千億というのは、これは、九月になって日債銀の東郷頭取が本行へ来られまして大蔵省検査結果を報告を受けたときに、第三分類は七千億でありましたという報告を受けたものであります。  それから、一兆一千億という数字は、私ども一切知らされておりません。私どもが最初に日本債券信用銀行を考査いたしましたのは平成七年二月でございまして、それ以降考査をいたしておりません。これはかなり期間がたっておりまして、本来ならばこの間に考査に行くべきであったかというふうにも思われますけれども、大蔵省検査が行っておりましたし、昨年来は、また、監督庁と日銀との検査、考査、同時に、一斉検査、考査の割り当てにおきましては、監督庁の方が日債銀を見ましたので、私どもは見ておりません。  そういうことが今までの現状でございます。
  17. 岩國哲人

    岩國委員 私の聞き方が足りないのかもしれませんけれども、一兆一千億という連絡はどこからもなかったということですか。今現在もないんですか。こうやって予算委員会菅代表質問にも、九月の大蔵省検査の示達によると、発表はその後になっておるが、第三分類は一兆一千二百億円と。  これは総裁、そこのいすで座っておられて初めて知られた数字ですか、それとも、その前に何らかの方法でそれを知り得る立場におられたんじゃないでしょうか。
  18. 速水優

    速水参考人 私どもは、一兆一千億という数字は聞いておりません。この間ここで菅代表がおっしゃって、初めてその数字を知った次第でございます。
  19. 岩國哲人

    岩國委員 これは民主党の方からいろいろと資料請求しております、日長銀に関しても日債銀に関しましても。例えば、経営破綻に至ったいきさつ、これは理事会の方に御提出申し上げておると思いますけれども。それから不良債権の飛ばしの実態、あるいは粉飾決算、タコ配当の疑惑に関する資料、こういった資料はいつ御提供いただけることになりますか。こういった資料が出てまいりませんと、なかなかこれ以上に我々の議論も入っていきにくい点がありますので。  予算委員会が全部終わってしまった、総括も公聴会も終わってしまってからこの資料が出てくるのではどうにもなりませんので、委員長、ぜひ早急にこの点については理事会でお諮りいただきまして、我々のここでの質疑がもっと実のあるもの、また、こうして御出席いただいている大臣あるいは総裁に対しても、意味のない質問を繰り返すことによって失礼なことにならないように御配慮いただきたい、そのように思います。
  20. 中山正暉

    中山委員長 各党から非常に膨大な資料要求が出ておりますので、各省、それに対応していることと思います。  十二時からも理事会がありますので、その場でまた御協議いただきたいと思います。
  21. 岩國哲人

    岩國委員 よろしくお願いします。  日銀総裁にたびたび質問して申しわけありませんけれども、こうした一兆一千二百億円といったようなことは報告は受けていないということですけれども、しかし、そういうことは新聞報道にあり、ここで、我々のような者でさえと言うとおかしいんですけれども、知って質問しているときに、日銀としては、大切な業務の一環である日債銀の実態について、何らかの資料を請求されたり、考査に行かれたり、必要な検査をされるとか、当然のことがあるんじゃないでしょうか。一切聞いておらないということでは、日本金融システムのために我々国民は何十兆というお金を出そうという決意までさせられているわけです。  それに対して、日本銀行そのものがそのような疑惑、懸念、そういうものについて先手先手と考査してもらわなかったら、我々は安心できないじゃないですか、日本金融システムについては。それでなくても海外からは、どうも日本大蔵省は、日本日銀は甘いとか、魚心あれば水心あり、水心あれば手心あり、手心あれば下心あり、何やっているのだ、そういうふうなことを言われ続けているときに、この一兆一千二百億円という、いつの間にか四千億円ふえていることに対して、何ら日銀として直接調べる、大蔵省に調べさせる、あるいは日債銀に資料を要求する、総裁の御答弁を伺っていますと何か、要求されたり、何かしてくるまでは、知らぬ存ぜぬ調べませぬというふうな日銀ではどうにもならないと思います。  まあそれは極端な言い方で失礼だと思いますけれども、この点について、もう少し正確に、納得がいくように、いつ、だれから、どういう方法で知り得たか、そしてそれを日銀としてはどういうふうに調べたのか、それを御答弁お願いいたします。
  22. 速水優

    速水参考人 日債銀に対しましては、先ほど申し上げましたように、平成七年の春に日本銀行の考査をいたしました。その後も注意深く監視を行ってきたところでございますけれども、平成九年四月に、同行の経営合理化策が決定された直後に大蔵省検査が入りました。平成十年になりましてからは、集中検査日銀考査、一貫して分担していたしましたので、日債銀は金融監督庁が担当され、私どもの方はほかの五行を考査したわけでございます。  そういった経緯もございまして、同行に対する本行の考査はここしばらく見送ってきたというのが実情でございます。
  23. 岩國哲人

    岩國委員 一般国民は、日本銀行はちゃんといろいろな必要な検査、考査をやっておる、そして日本の、少なくともちゃんとした銀行については経営内容も把握しておるという安心感のもとに日本銀行システムは今まで動いてきたというふうに思います。  それが今のような御説明で、やれ監督庁だ、大蔵省だ、日銀だ、いろいろな譲り合いあるいは責任の分担といったようなきれいな言葉のもとにあれこれあれこれ回されて、結果的には、最後にその破綻が起きたときには、破綻のツケだけはしっかりと国民に回される、これではそれぞれの立場立場の人がきちっとした仕事をやっていることにならないんじゃないでしょうか。  世界で一番大きな調査部を持っていると言われるメリルリンチの調査レポート、この二、三年非常に日本銀行システム、金融システム、マーケットの閉鎖性、封建制について批判的なことを言ってきております。これは総裁御承知のように、メリルリンチだけではなくて、海外のほとんどの調査機関、専門家はそのようなことを言ってきているわけでありますけれども。  この一番新しい一月二十五日の調査レポートで、驚いたことに、メリルリンチはその見解を変えております。「金融監督庁と金融再生委員会が金融市場の信認を得て銀行の信頼感回復を後押ししている」と非常に高い評価をしております。さらに続けて、金融監督庁の本当の姿が見られたという点でも前向きに受け取るべきだ、金融監督庁が先頭に立って金融再編を進めようとしていることは体力の弱い銀行のマーケットからの退場に積極的な姿勢を示しているということ。また、合併が合意された、これは三井信託と中央信託との合併についてその例を挙げているわけですけれども、それが一気に進展したということは金融監督庁の実行力。三番目、さらに、合併合意の発表までリークやうわさ、あるいは両行の株価に不審な動きがなかったということは金融監督庁が腐敗していないということを物語っている。今までのそういう日本の金融行政に関する評価というもの、この金融再生委員会、金融監督庁を皆が評価を非常に高くしてきておるんです。  私もずっと毎週これを受け取って読んでおりますけれども、「金融監督庁と金融再生委員会が金融市場の信認を得て銀行の信頼感回復を後押ししているのに対し、」ここからが問題なんです、「大蔵省日銀は必ずしもそうとはいえない。」と書いてあるのです。「それどころか、一見したところ相反する、あるいは逆効果となる政策をとったり、当惑させるコメントを出して相変わらず市場を混乱させているのだ。」と書いてあります。  四つの組織、金融再生委員会、監督庁、日銀大蔵、これだけはっきりと選別して評価を、二つについては非常に高い評価、そして、大蔵省日銀のやり方については市場を代表してこういう不満を表明しております。例えば、「大蔵省の場合、」「十一月二十日の資金運用部による新発国債買い入れ停止の発表、」これも市場を混乱させました。「この発表は国債のろうばい売りにつながり、最近の大幅な金利上昇の火付け役となったが、この発表が政府予算案の正式発表の一カ月も前だったため混乱には拍車がかかった。」このような評価であります。  世の中にはいろいろな見方、言い方、考え方というのがありますから、これはその中の一つとして御紹介させていただきました。私も今の答弁を見ながら、そういった日銀の対応については十分でなかったなということを、失礼ですけれども、思わざるを得ないと思います。  さて、金融監督庁長官にお伺いいたします。  金融監督庁の方から、菅代表質問に対しまして、二十五日でありますけれども、九七年の九月に「大蔵省から日債銀には示達しております。」恐らく、日銀総裁にはその後、日債銀からそれが報告されたから、大蔵省からの直接ではなかったのじゃないかと思います。  また、その前に菅代表は、大蔵省の伏屋政府委員に対して、大蔵省がどこへ伝えたかという質問をし、それに対して伏屋政府委員はこのように答弁しております。「現在は監督庁に引き継がれておるものでございますので、また調査いたします。」つまり、大蔵省としてその細かな点を調査すると答えたままでこの答弁は終わっているのです。監督庁長官がその後を引き継がれて、大蔵省が答えたであろうことを答えてはおられますけれども、しかし、これは大蔵省自身がその後調査されて、日野長官答弁内容というのはしっかりと検証されて、それで間違いありませんか、その点だけ確認をお願いします。
  24. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今委員言われました話でございますが、昨年の六月に、金融監督庁の発足に伴いまして、個別金融機関の検査、監督に係る事柄は、大蔵省から金融監督庁に引き継がれたわけでございます。(岩國委員「要するに九七年のことですね」と呼ぶ)まさに今言われるような九七年の九月の日債銀検査という具体的な事柄のさらにその示達先につきましては、これは既に一月二十五日の本委員会におきまして金融監督庁長官から答弁されたとおり、日債銀に示達したというぐあいに承知しております。
  25. 岩國哲人

    岩國委員 しつこく聞くようで申しわけありませんけれども、日野長官にお伺いいたします。  金融監督庁から、検査報告というものは、日銀大蔵に対しては遅滞なく行われておりますか。
  26. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  昨年六月に金融監督庁が発足しましてからは、検査とそれから銀行監督というのをかなり峻別するようになってまいりまして、従来は示達という用語を使っておりましたが、その後使わなくなったのも峻別するようになった結果でございます。  示達と申しますのは、単なる検査結果の通知のみならず、その検査結果の通知に伴いまして、もろもろの改善措置と申しますか、指摘した事項に対して当該金融機関がどういった措置をとるべきかといったこともあわせてその中で具体的に指示いたしておりますので、示達といったような用語を用いておりましたが、現在では、示達ではなしに検査結果通知というそのことだけにとどめているわけでございます。  もっとも、検査結果通知と同時に、私どもは、銀行監督の観点から、その検査の結果通知の中に盛り込まれたさまざまな指摘につきまして、それでは当該金融機関はどういうことをいたしますかということを、改めて銀行法に基づいて監督上の観点から私どもの方から聞かせていただくことはございます。ほとんどの当該金融機関については聞いているわけでございますが。  そういったことでございますので、直接の御質問にこれからお答えすることになりますが、あくまでも検査結果通知というのは当該金融機関に対する私どもの公権力の行使でございますので、特にどこからか何かよほどのことがない限りは、例えば国会から何か御質問がある場合でも、個別行についての質問に対してはお答えしないというそういう、破綻した金融機関は格別でございますが、健全な運営を行っている金融機関につきましては、仮に国会から御質問があった場合でも個別についてはお答えしないというスタンスをとっておりますので、積極的にみずからその検査結果の通知を、大蔵省であれあるいは日銀であれ、私どもの方からは通知するといったようなことはございません。
  27. 岩國哲人

    岩國委員 日銀大蔵省に結果を報告する義務はないんですね。その点を確認していただきたいということと、二番目に、日銀に対して日債銀検査報告を、監督庁長官として一番最初に日債銀に関するそういう経営内容報告されたのは、何について、いつ報告されたことがありますか。その二つの点をお願いします。
  28. 日野正晴

    ○日野政府委員 検査結果の通知につきましては、法律上の根拠があれば格別でございますが、私どもの方からはそういうことで通知することはないということをまずお答えさせていただくのと、それから、第二番目につきましては、日債銀につきましては、これは破綻しておりますので、破綻した金融機関についてはこれは公表もいたしますし、それから、破綻した場合にはさまざまな破綻に伴います公的資金の必要性が生じてまいりますので、これはそれぞれ通知、連絡しているところでございます。
  29. 岩國哲人

    岩國委員 そうした奉加帳で集められた二千七百億円、それから昨年三月、公的資金として投入された六百億円、こうした二回の資金調達が日債銀に対して行われているわけですね。ですから、その二千七百億円のころから、そして破綻のところまでの間に、監督庁の方からは日銀に対して検査結果というのは一切報告されておらなかったのかどうか。そして、それは義務はなかったということですから、それを責めているわけではありません。日銀として、監督庁の方からは一切そういう情報はなかったということを確認させていただきたいんです。  そして最後に、長官に、この日債銀検査結果を資料として本委員会に提出していただきたいと思います。  今おっしゃったとおり、それはもう破綻してしまったから、それは公表するのにやぶさかでないということを今おっしゃいましたから、それは当然資料として、委員長、資料要求の中につけ加えていただきたいと思います。
  30. 中山正暉

    中山委員長 理事会で協議いたします。
  31. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほどからたびたび御答弁申し上げておりますように、検査結果につきましては、当時は、大蔵省時代は示達でございましたが、示達は当該の金融機関についてのみ行っていたところでございます。  なお、先ほどのいわゆる奉加帳の問題につきましては、奉加帳が回されたといいますか、具体的に、九七年の四月に大変な経営の危機に瀕したことから、再建計画を樹立いたしまして、そして資金、資本を注入するといったことになりました後、検査に入りまして、実際に示達が行われたのも、当時の頭取でありました東郷氏に対して九七年の九月に行っているところでございます。(発言する者あり)  大変失礼いたしました。これは、日債銀が破綻いたしましたので、破綻する直前に行っておりました検査結果につきましては、私どもとしては公表もしておりますし、そのことは国会にも御提出したいと思いますが、ただちょっと一つだけお願いしたいと思いますのは、その検査結果と申しましても、大変膨大なものでございます。何といいますか、例えば貸出先でございますね、その中には、分類されている貸出先もございますので、そこはひとつ御容赦いただきたいというふうに思います。
  32. 中山正暉

    中山委員長 いずれにしても、理事会で協議いたします。
  33. 岩國哲人

    岩國委員 理事会に一刻も早く提出していただくということと、もちろん長官懸念されておられる、そうした現存する、営業を続けている貸出先のプライバシーに関するところまでは我々は要求しているつもりではありませんので、できる限り、しかしそういった点には配慮しながら、資料を提出していただきたいと思います。  また、こうした日債銀の破綻、それから長期信用銀行の破綻についてもそうでありますけれども、こうした日銀が、金融監督庁が、大蔵省が破綻の認定をされる前に、今お配りしましたように、実際には既にマーケットで破綻宣告は行われておるのです。  これはヨーロッパでもアメリカでもそうですけれども、日本でもはっきりと、そして株価よりも先に、こういう発券銀行については、これは一般銀行ではこういうことはありませんけれども、興銀、長銀、日本債券信用銀行のように債券と株式を両方発行しているところは、債券の方に早くその兆候があらわれてくるのじゃないかと思います。  これはアメリカのマーケットでもそうですけれども、景気に敏感なのは株価だということがよく言われますけれども、株価よりももっと先に敏感に変動するのが金利であります。そして、金利とか金融機関がなぜそれだけ早く敏感に動くかといいますと、株式も非常にそういった点は先見性があると私は思います、八カ月とか九カ月とか。しかし、こういう債券の所有者というのは非常に目の肥えた専門的な機関投資家、だからこそ一般の投資家が持っている株式よりも早目に動く。この辺のことももっと金融監督庁としては、あるいは日銀としても、どの辺から、この新発債の流通利回りの推移、このチャートを見ていただければこの辺一目瞭然じゃありませんか。  この図そのものがまさに長銀の破綻の系譜、日債銀の破綻の系譜を如実に絵にかいて見せてくれます。九六年のもう十一月ぐらいから、現に日債銀の債券は急激に下落を始めています。株式はなだらかにだらだらと、一般の株価と連れ合って落ちているときに、日債銀の債券だけはなぜか、興銀、長銀が下がっていないときにこれだけが下がっているということは、マーケットは既に死の宣告、デス・センテンスを日債銀に対してやっているということです。  単に株式の値下がりは経営には直接影響はありません。しかし、釈迦に説法ですけれども、日債銀の債券が下落するということは翌月から資金調達ができないということでしょう、発券銀行の場合には。だからこそ、債券のマーケットがイエローカードを出している、レッドカードを出しているということは、普通の三菱銀行とか三井銀行とはこれはまた違って、発券銀行の場合には特殊な判断と対策が必要だったんですよ。なぜそれが日債銀に、あるいは長期信用銀行にこれが出てきたか。これは二つとも発券銀行だったから、つまり出血がとまらない状態に追い込まれてしまったから、このようなことを国会で対応しなきゃならなくなってきたのです。そういう対応をもっと早目早目にやらなきゃならないときに、不良債権の金額は七千億だか一兆一千億だか報告が来るまで存じませんといったような対応ではなくて、マーケットは不良債権がそれ以上のものだよということをはっきりと金融監督庁に、日銀に、大蔵に、対応を迫っておったのじゃないですか。  私は、はっきり言って、これは行政の怠慢だと思います。この怠慢が国民に対するツケを大きくしてしまった。そしてこの奉加帳についても、大蔵大臣、月曜日に菅代表質問に対しお答えになりました。結果として過失があった、結果として責任が残るということを答弁されました。  今、興銀の株主が、今月、興銀に対して訴訟を起こしております。興銀が悪いのではなくて、興銀が日債銀に対して払ったお金が十分な判断、審査に基づかないで行われておった、株主の利益を損ねておるという点から、興銀の株主が訴えているのです。  では、興銀はどうするか。興銀は、だまされましたという状態かもしれません。現に、この奉加帳方式というのは大変大きな問題があります。そうした、大蔵省検査し、そしてその銀行は健全であるという印象を持たせ、持たせるだけではなくて、恐らくそういう数字を、資料を使って、そして二千七百億円を集めたんです。  結果的に、その二千七百億円は価値がゼロになりました。世間でこういうことをやれば何と言いますか。世間ではこれを詐欺と言うんです。普通の詐欺ではありません。大蔵省という、地位を持って、権限を持った人間がそういうことをやりますと、これは詐欺ではなくて脅迫、ゆすりという、一般的な概念からいいますとそういうことになってくるわけです。こういう嫌な言葉を使いたくはありませんけれども、現に週刊誌では、そういうふうな言葉がだんだん日本の金融行政について使われておる。  実際にこれは虚偽の資料が使われたのかどうか。しかし、この二千七百億円を出した興銀も日本生命も、あるいは考査をしておる日銀でさえも、その資料の信憑性についてあれこれ調べることもなく、日銀の勘定から八百億円のお金を出してしまったわけです。これもパアになりました、興銀のお金日本生命のお金も。  だれがこれをやったのか。だれがということになれば、当然これは大蔵省だと言わざるを得ないと思うんです。  大蔵省が長年にわたって日債銀というところの審査をしておった。これを一般に、身近な例で例えれば、町内の患者さんの診断をずっと何代にもわたってお医者さんが診ておった。町内の人はよくそれを知っていますから、あなた本当に、審査して、大丈夫ですか、検査して、大丈夫ですか、あの方ちょっとお顔色が悪いけれども、もっと大変な病気じゃないですかと。いや、あれはちょっと疲れているぐらいの話やと言われれば、お医者さんがずっと診ている人だから、まさか重い病にかかっているということはつゆ知らず、その人が今から長崎へ医学の勉強に行くと言えば、激励金二千七百億円集めてください。みんな出しますよ、お見舞金として、激励金として。長崎へ行くまでに、もう品川あたりでお倒れになった。結局それが、お見舞金どころか御仏前になっちゃった。  だれがこういうことをやっているのか。これは大蔵省じゃありませんか。しかも、大蔵省は、単に長年その患者さんを診てきた、家族を診断してきたというお医者さんの立場だけじゃなくて、権限、地位を持っていますから。町内会の会長で、しかもお医者さんで、皆さんの選挙区でもそういうところを想像してみてください、町内のだれがそれに抵抗できますか。だれが疑いを抱きますか。これが奉加帳方式なんです。  大蔵大臣、何か御所見ありましたら、どうぞ。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初に、委員が冒頭におっしゃいましたように、国会というのは言論を大切にするところでございますから、先ほど大蔵大臣が詐欺をしたとおっしゃいましたことは受け取ることができません。  先ほど申し上げましたように、その当時、公的資金が……(発言する者あり)大蔵省でも同じことです、代表する者は大臣でございますから。公的資金が用意されたのは信用組合、先ほど信用金庫と申しましたが信用組合だけでございますから、この日債銀の問題が起こりました九年の四月一日には、実際、公的資金でどうかするという方法はなかった。現在はいろいろな仕組みをしていただきましたから、それで金融監督庁も、いろいろなことを心配することなく、六十兆円という金がございますから、厳しく検査をし、さっきメリルリンチのリポートでおっしゃいましたように、何でもできることにおかげでなりましたが、九年四月一日にはそういう仕組みは一切ございませんから、そこで日債銀というものを存続させるかどうかということは、文字どおり存続させないとすれば、その及ぼす影響は非常に大きかったわけでございます。  したがって、当時の日債銀再建に対して大蔵大臣談話を出しまして、各行に個別に支援要請することはしておりません、日銀にはしておりますけれども。談話を出して、これを支援するということを言っております。そのときに、委員は、大蔵大臣債務超過であることを知っておったような印象をお与えになりましたけれども、そういう事実はございません。当時、日債銀は七千億と言っております。  そして、その年の九月一日に示達をして、これは当然のことですが、検査というのは検査をする者とされる者との相対関係でございますから、その結果をよそに言うということはあり得ない。そういうことをしてはならないことでありますから、日銀にも申していない。しかも、このときの示達は、債務超過ではないという示達をいたしております。その証拠は、その後にいわゆる公的資金の導入がございました昨年の三月の場合も債務超過ではないということでいたしておるわけですから、債務超過であるということを大蔵省大蔵大臣が認定したことはそのときまでないわけでございます。  したがいまして、問題は、日債銀がこういうことになったときに、これをどのように救済すべきか、救済すべきでないかということになるわけでありまして、行政の判断としては、これは救済をすることが適当であると考えました。しかし、各行に対して奉加帳にサインをしてくれと言ったことはない。日銀にだけはお願いをいたしました。  そういうことで、日債銀が一度救われるわけでございます。救われまして、昨年の三月の公的資金の導入もされて、そしてごく最近になって、金融監督庁において日債銀債務超過であるという決定がなされて、三十六条、三十七条でございますか、申請がなされた。それはごく最近のことでございます。  そこで、それが事実でございますが、私が申しましたのは、本会議で御質問がまずございましたときに、私は日債銀のことはあえて申しませんでした。大阪のみどり銀行の例を引きましたのは、実は日債銀の株価算定がまだ行われておりませんから、一般的にはゼロではないかと思われますけれども、それは推量にすぎない。みどり銀行のことははっきりしておりますから、行政がよかれと思ってしたことであちらこちらに御負担を願った。その結果が、所期の効果を生まずに全くの御損をかけたということは、故意や過失はなかったにしても、行政としては、それはやはり結果の責任はあると思いますと、思わないかとおっしゃるから、私はあると思うと申し上げております。  しかし、そのことはまた、株主訴訟が起こったときにどうなるかということとは私は別のことと思っておりまして、訴訟は、それは裁判所が御決定になることである。少なくとも、行政が故意とか詐欺とか重大な過失を起こしていない限り、私は、そのことの決定は裁判所がなさるべきものであろうというふうに考えております。
  35. 岩國哲人

    岩國委員 大変御丁重な御答弁をいただきましたけれども、故意もなかったあるいは過失もなかった、こういう御答弁ですけれども、結果として責任は残るという御答弁もしていただいております。この一言は、仮に訴訟においても大変重いものがある。また、今後の我が国の行政のあり方を考えていく上でも、私は大変重みのある言葉だと思っております。  そして、故意はなかったとしても、専門家がいろいろなデータを持ちながらそのような行動をとったということ、つまり、日銀には直接頼んだけれども、ほかの銀行には一切電話をかけておりません、頼んでもおりません、これが事実であったと思う国民は私は少ないと思いますけれども、仮に事実であったとしましても、大蔵省の方から奉加帳が回って、日銀でさえも出すことに合意しているということを耳に入れれば、ノーと言える銀行、生保はあるでしょうか。そういう環境をきちっと利用して、二千七百億という大金がこの不景気のさなか集まったんじゃありませんか。私は、その点は、その責任は逃れられないと思います。そしてそれは、故意はなかったとしても、未必の故意はあった、そう断ぜざるを得ないわけです。  先ほど詐欺とかなんとかいろいろ申し上げましたけれども、それは、一般の週刊誌にそのようなことを書かれるような対象にならないように……。  根本を突き詰めますと、大臣、私は、これはやはり情報の公開というものが我が国の行政においていかに足りないか、私が一時間、これは日銀総裁にも監督庁長官にも、いつ、何が起きて、どうなったのですか、こんなことを探し回らなきゃいけないというのは。  情報公開というのは、我が国行政において、特に密室的なこの金融行政において非常に欠落しておった。そこにいろいろな原因があったのじゃないでしょうか。善意も悪意も、裏返せば悪意が善意になり、善意が悪意になってしまう。どちらにも解釈できるような行政が行われてきた。  例えば、今から八年前、損失補てんという事件が起きました。損失補てんが起きたときに、これはアメリカのビジネス・ウイークの表紙、特集です。「ヒドゥン・ジャパン」、隠された日本。この隠された日本というのは、見てください、つい立ての後ろに透けて見えます何やらおどろおどろしい雰囲気の中で、わけのわからぬお金のやりとりをしている。損失補てんというのは、皆さん御承知のように、銀行、証券、保険、大企業が、いろいろな不正な方法を使ってまでも自分の利益を確保し、一般投資家を犠牲にした。そういうことがついに暴露されたのは九一年八月。アメリカは日本の社会をこういう目で見ております。そして、八年前、今でも同じようなことがまだ続いておるじゃないですか。  ヨーロッパはどういう目で見ているか。ヨーロッパはこういう目で見ております。「ジャパン・イン・ザ・ダート」、泥まみれの日本。土の中の日本。土の中に潜って頭だけ出して、御丁寧にほおかむりをして、傘の下に隠れて、そして人の手を握ったり、足をさわったりしている。これが日本だよと。これがヨーロッパの見ている目であります。八年たって、まだ同じことが続いておるじゃないですか。特に金融行政においては、二千七百億円あるいは六百億円という公的資金が結果的にはむだにされてしまった、そういう判断の誤りというものを私は責任を追及せざるを得ないと思います。  先ほど、メリルリンチの評価が高くなっている、日銀大蔵に対してではありませんけれども、金融監督庁と金融再生委員会に対して、その点は私も大変うれしく思います。そういう、一部では日本の金融行政は変わりつつある、いい方に変わりつつあるという信認が広まりつつあるときに、また嫌な記事が昨日のファイナンシャル・タイムズに出ております。  ファイナンシャル・タイムズの中に、日本銀行、金融機関、そして問題なのは公的機関までが債券の取引を利用して損失の先送り、いわゆる飛ばしです、トバシとローマ字で書いてありますけれども、こういうことをやっておるという記事、これはけさの毎日新聞、朝日新聞、いろいろなところにも紹介されておりますけれども、こういうことが今行われているということになれば、日本の金融機関の経営指標というのは当てにならないということなのです。  つまり、粉飾された、今私がここでパネルで見ていただきましたけれども、日本の経済のデータ、あるいは金融機関の経営指標というものはいろいろなテクニックを使って信用できない、そういうものになっている。これでジャパン・プレミアムがいまだに解消しない、ヨーロッパにおいて。そして、日本銀行株がかなり下がったままで、最近ちょっと回復しておりますけれども、そのままになっております。  日本銀行の株に至っては、ピークのときからもう十分の一に下がっておるじゃありませんか。日本株式会社、日本の金融を象徴する日本銀行の株式の値段そのものがピークのときから十分の一に下がっておる。これについて、速水総裁は総裁としてどういう所感をお持ちですか。
  36. 速水優

    速水参考人 日本銀行のバランスシートがここのところ非常に大きく変わりつつあることは御承知のとおりでございます。  そのポイントは、一つは、日本銀行のバランスシートの規模が、資産、負債の総額がふえた、一昨年秋以降拡大しているということ。二番目には、日本銀行のバランスシートの中で、コマーシャルペーパー、CPオペの拡充などによって、民間の企業債務のウエートが高まってきているということ。三つ目は、信用秩序の維持といいますか、金融システムの安定化を図るために、いわゆる中央銀行としての一つの機能であります最後の貸し手、レンダー・オブ・ラスト・リゾートとしてかなりの資金特融及び預金保険機構への貸し付けという形で出ている。この三つでございます。  このバランスシートの拡大につきましては、デフレ的な条件を回避するために潤沢な資金供給を行うということを行ってきたわけでございまして、処分にコストのかかる不良資産がふえているためではございません。  それから、第二のコマーシャルペーパーのオペの増加。これは六、七兆になっておりますけれども、企業金融の円滑化に資するということをねらいとするものでありまして、オペにあっては、信用力等の面から適格と認めるものだけを、金融機関の、現先方式ですから、企業と金融機関と両方二重に信用をとって安全を補強しておるわけでございますし、このことによって、企業の債務を売買できる市場が大きくなっていくということを期待しております。  三つ目には、信用秩序維持。先ほどのレンダー・オブ・ラスト・リゾート、最後の貸し手。これは特融と預金保険への貸し付け。これは日銀の財務の健全性を損なわないように、これを一つの原則として守ってきております。  こういうことで、一般の人がバランスシートを見て、内容が悪くなっているんじゃないかということを気にされて記事になって、価格が少し下がっている。今九万二千円ぐらいでございますけれども。  しかし、御承知のように日本銀行の債券というのは、株主の発言権もございませんし総会もございませんし、配当は五%までということで、極めて限られた、しかも金額の少ない、一億円でございますし、店頭の取引だけが認められておるわけでございまして、一般の株式とは非常に大きく違う。  ただ、私どもとしては、こういう危機的な情勢の中でも、日本銀行の資産の内容というものは三つの原則をしっかり守っていきたい。一つは健全性、第二には流動性、三つ目には中立性。いつでもどこへでも売れる資産を持ちたいということと、健全な資産を持っていく、それから特定のところへ偏らないものを持っていく。この原則を今後も守っていくつもりでございますから、一般の株式の価格の下落と並んで日銀の株が下がっているということは確かに認めざるを得ませんけれども、そういう原則をしっかり守って、特に日本銀行の株が一般の金融に対する不安を呼ぶというものではないということをはっきり申し上げておきたいと思います。  それをさらに、今申し上げたようなことをよく実行もし情報も公開して、三つの、三原則を維持してまいりたいというふうに考えております。
  37. 岩國哲人

    岩國委員 御説明ありがとうございました。  総裁の御答弁の中に、発言権もない、取引も少ない、極端に言えば余り上場している意味がないような点がありましたけれども、それなら思い切ってもう上場を廃止されたらどうですか、店頭市場。余りそういった指標性の意味もないし、それから、下がってもどうということもないし、上がってもどうということもないしということであれば、私は、こういうものは思い切って上場を廃止されるべきだと思います。  しかし、いろいろな理由があってやはり上場を維持しておきたいというのであれば、それなりの企業努力をされなければいかぬじゃないですか。中小企業、あるいは大企業も含めまして、上場している企業の社長というものは、その株価がどれだけ高くなるかを、下がらないように高くなることを目指して毎日毎日努力しているんです。その人たちがこの日本の経済を支え、景気を支えているんじゃありませんか。そういう上場している会社の社長の心がわからない、そういう会社の株主、株式を持っている人たちの投資家の心がわからないで、日本経済の運営や景気対策がどうやってできるんですか。私は、もう日銀はその株式を上場する資格がないと思います。それは、経営者自身が、そういう経営している、上場しているほかの会社の経営者と心を共有しておられないからです。  次の質問に移らせていただきます。  債券を使って、百円のものを百十二円で売る、そうすることによって利益を先に送る。あるいは、百円の国債が、去年の秋に発行された十年物の日本国債、〇・九%、今八十八円ぐらいに値下がりしています。一〇%以上値下がり。その損失を三月期に出したくないために、その損失を飛ばすために、八十八円に下がっておるものを百円で証券会社に買ってもらっている、そしてかわりに百円のものを百十二円でこちらが買って、お互いに不当な値段で取引を行っている、これが報道されている実態であります。  私は、こういうことは禁止すべきだと思います。去年の十二月までは、二%ルールと言われて、百円のものは百二円まであるいは九十八円まで、そういう価格調整のための取引というものは制限がありました。十二月にその制限を撤廃してしまったでしょう、日本証券業協会は。撤廃したら、今度は青天井。普通、青天井というのはいいときに使いますけれども、これはもう黒天井みたいなものです。疑惑の取引が急増してしまっている。そして、日本の企業のバランスシートが真っ黒けになってしまうんです。こういう取引は直ちに私は禁止すべきだと思います。  私は、日本のメリルリンチの会長をしておりますときに、十何年前の話ですけれども、そのときからこの二%ルールというのは厳存しておりました。その二%以内で許容されている取引でさえも私は禁止しました。アメリカの証券業協会はそれを禁止しているからです。ところが、日本の証券業協会は二%までならよろしいと。百円のものを百二円で買う、百円のものを九十八円で買う、こういうことが横行し、そして、メリルリンチの担当営業部員は、全部そういう注文を拒否したために、日本の証券会社に仕事を奪われておりました。はっきり言って、泣いておりました、そういう厳しいルールのために。  私は、それでもよかったと思っています。今こういうことをやれば、日本の証券会社だけじゃなくて、外国の証券会社も自由にやれるのか。外国の証券会社は依然としてやれないんです。日本の証券会社だけは百円のものを百十円、百十二円で、だからこのロンドンの新聞はそのようなことを非難しています。  こういうことについて、直ちに禁止されるお考えはおありですか。これは監督庁ですか、証取の方ですか。証券業協会に対する指導は日銀の方ですか。
  38. 速水優

    速水参考人 先ほど委員が、日本銀行の出資証券が上場されているとおっしゃいましたけれども、これは上場されておりません。店頭取引でございます。(岩國委員「ですから私は、上場を店頭取引とかえて御理解いただきたいと思います」と呼ぶ)はい。店頭取引ということでございます。
  39. 岩國哲人

    岩國委員 言いかえしますが、その上場というのは、広い意味でマーケットの中で取引されているという意味で、一部上場、二部上場、そういった店頭取引、そんな小さな差というのは皆さん余り気にされませんから、とにかく一般の投資家、四千人近い株主がいらっしゃるじゃありませんか、四千人近い株主の方は、自分の持っている出資証券、株式が市場で取引されているということで持っていらっしゃるわけですから、それで私は上場という言葉を使いました。店頭取引の資格さえもないと私はもう一度言い直します。  そして、今質問いたしましたこの日本証券業協会に対する指導はどういうふうになっているのか、簡潔にお答えください。
  40. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  先ほど先生が言われましたように、昨年十二月に撤廃されたわけでございますが、今御指摘のような異常な取引、問題のあるような取引については、まずは、従来からも同じでございますが、証券業協会が自主的にきちっと規制等をやっているところでございますが、いま一つ、さらに不公正ということになりますと、これは証券取引等監視委員会が関心を持つということになると思います。
  41. 岩國哲人

    岩國委員 不公正、不公平といったようなことになりますけれども、いろいろな、上場されている企業であれば、そういう形でもって、おかしな取引でもって、利益がふえてみたり赤字が減ってみたり、そして一般投資家はそういうことを知る由もなく売買をするということは、結局粉飾された数字、そういうものを黙認することにつながりますから、直接的な被害がなくても、市場全体の信認度を高めるという点から、これは直ちにそういうことは禁止すべきじゃありませんか。  もう一度、どこがどうということはありませんけれども、その立場にある投資家の利益を守るために、こういうおかしな取引を禁止すべきだという、その責任はどこで負っていらっしゃるのですか。
  42. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今申し上げましたように、まずは証券業協会の方が自主的に規制をするという、さらには、不公正ということになれば、証券取引等監視委員会が関心を持って対応するということで、今の考え方で対応してまいりたいと考えております。
  43. 岩國哲人

    岩國委員 監視委員会がということであれば、直ちに行動を起こしていただきたいと思います。現にこうやって内外の新聞がそういうことを報道しているわけですから、それに対して何ら対応されない、そして数字がゆがめられたままで転々流通する証券の取引が行われているというのは、おかしなことだと私は思います。  次に、日債銀に関連しまして、いろいろな、銀行の貸し付けに関して不正な貸し付けが行われておるんじゃないか。それは、特別背任の容疑がある、検察が動いている、そういった報道もされておりますけれども、監督庁自身は、こういうことについて既にもう調査を開始しておられますか。具体的に言えば、ダイア建設に対する貸し付け、そして利子の支払いは、その子会社に対して利子支払いの補てんをする、英語で言われるバックファイナンスという方向で、やり方でこういう貸し付けが行われてきておる。そして、それが不良債権を隠ぺいする材料に使われている。これに対して、特別背任の容疑で調査は開始しておられますか。その点についてお答えいただけませんか。
  44. 日野正晴

    ○日野政府委員 現在、日債銀は金融再生法の適用を受けまして、特別公的管理ということになっているわけでございます。  金融再生法には、御案内のとおり、民事上、刑事上の責任を追及する、追及しなければならないという規定もございますので、さまざまな観点から、これからその手続が進められていくものと思います。  私どもも、検査や監督の過程を通じまして、今御指摘がありましたバックファイナンス等の問題につきましては承知しているところもございますけれども、個別の問題でございますので、その点については言及を差し控えさせていただきたいと思いますし、それから、捜査といったようなことになりますと、これは司法御当局の判断でなさることでございますので、これも私どもの方から言及は差し控えさせていただきたいと存じます。
  45. 岩國哲人

    岩國委員 監督庁自身のそうしたことに関する検査は開始されていますか、されていませんか。
  46. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほどから申し上げておりますように、検査監督を通じまして、私どもの方ではさまざまなことは把握しております。
  47. 岩國哲人

    岩國委員 次に、質問を変えさせていただきます。  最近の日米貿易摩擦について、通産大臣に質問させていただきたいと思います。  大臣お帰りになったようですので、続けさせていただきます。  与謝野通産大臣にお伺いしたいと思います。  最近の日米貿易摩擦、これはまたかなり大きくなりそうでありますけれども、この点について、特に我が国のアメリカに対する輸出の比率、これが以前から非常に高過ぎるということを言われてきました。一九八〇年代に特にそれがピークに達している。ドイツの方は、八〇年代にアメリカであれだけジャパン・バッシングがありながら、ドイツは世界一の輸出国でありながら、ドイツに対するドイツ・バッシングは全然起きなかった。なぜか。  ドイツは、苦労しながら、どの国にも一〇%以上輸出しないようにしているからです。手間暇かける、アフリカのようなところにまで。日本の企業というのは、手間暇かかるところじゃなくて、行けばすぐ買ってくれそうなアメリカへアメリカへ。結局、そういう指導がなされたか、黙認されたか、アメリカの比重が非常に高くなり過ぎたために、アメリカが文句を言ってきたわけです。一番ピークのときには四〇%近いところまでいきました。  三〇%を超えるとクライシスライン、危機ラインと言われています。それは、外交関係に危機が生ずるのは三〇%を超えてからです。四〇%に達すれば、これはウオーライン、戦争を相手の国は起こしてもいい。一九八六年、その直前までまいりました。正確に言いますと、八六年、三八・四%。我が国の輸出の三八・四%は、たった一つのアメリカに向かったわけです。そして、それから徐々に徐々に今下がってきまして、二七・二%まで十年後に下がりましたけれども、それからまた再びアメリカへの輸出がふえてきております。  こうした三〇%ライン、四〇%ラインというものを意識しながら、通産省として、こういう貿易摩擦の観点から、アメリカへの輸出比率というものはどういう目標を持っておられますか。何らかの指導をお考えになっていますか。簡潔にお答えいただけませんか。
  48. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 アメリカに対する輸出というものは、過去最大三八・数%までまいりました。しかし、徐々に減ってまいりまして、最近十年間ぐらいは二七、八%でございましたが、ことしになりましてから、日本が世界に対して行っている輸出の中で、アメリカに対する比率というのが三〇%ラインになったということは、先生がおっしゃったとおりでございます。  また一方、アメリカは、ことしの、十一月までの統計を見ましても、対外収支で史上最大の赤字を出していることも事実でございますし、また、対日の赤字も相当大きなものになっているということも事実でございます。したがいまして、アメリカの国内で、日本との通商関係に関する議論がしきりと行われているということも事実でございます。  しかしながら、通産省は、個別品目について、この輸出がこうであるべきだ、どのぐらいの量であるべきだということを業界に対して申し上げるつもりは全くありません。これは、やはり貿易というのは、それぞれの国の事情に応じて、世界的に認められたルールの中で行われるべきものであるというふうに思っております。  ただ、そうは申しましても、やはり国が相手の国の立場を考えるという場面というのは大いにあり得るわけでございまして、それをどういうふうにこなしていくかということは、また別の問題として私は存在するだろうと思っております。
  49. 岩國哲人

    岩國委員 そうした民間企業の経済活動に直接通産省が介入していくということは、たとえ貿易といえども私は避けるべきだという考えでおりますし、また、逆にそういうことをやりますと、やればやったでまた、外国は、待っていましたとばかり、あれこれと言ってくるに違いないわけですから、非常に難しいことだと思います。  しかし、これは何らかの方法で、早く、安く、利益を上げられるようなマーケットへマーケットへと自由に行かせるということになりますと、結果的に、ドイツのように国家的なコンセンサスがあるのか、どういう指導が行われているかわかりませんけれども、そういうアメリカへの輸出が集中しないような。集中豪雨と言われるような、その国の経済を破壊するような勢いで雪崩を打って輸出が行くということは、これは戦争という名前に変わった、これはまさに経済戦争そのものと向こうは受けとめるわけですから、当然こういうのは、別に防衛庁長官にやっていただきたいということは言ってはおりませんけれども、我が国の安全保障という観点から見ればこれも私は大切な安全保障だと思うんです、日米間の良好な経済関係を維持するという点からいえば。  私は、そういう大義名分があるならば、もう少し何らかの指導、あるいは国内の貿易サミット会議なりなんなりして、我が国の経済的な安全保障、あるいはこれは安全保障そのものかもしれない、そういう観点から、対米輸出がこれ以上上昇しないような、そういう何らかのガイドラインを持っていくということは必要ではないかと私は思います。  ぜひ、通産省の方でも、また業界の方でも、そういった点を御検討いただきたいということを要望して、次の質問に移らせていただきます。  次に、金融再生委員会の柳沢大臣にお伺いしたいと思いますけれども、こうした大変金融環境の厳しい、また景気が悪いという中での金融再編というのは、非常に難しいと私も思います。その中で進めていかなければならないのは、単に銀行の数を減らしていく、要するに、霞が関の省庁数合わせで、小さなふろしきを大きなふろしきに包みかえて、大ぶろしき改革みたいなことを進めるだけが私は能ではないと思うんです。  銀行の再編にしても、数を少なくするだけではなくて、将来の、二十一世紀の我が国の金融機関はどういう役割を経済の中で果たしていくべきなのかという金融界のビジョンというのがなかったら、どっちに向かって走らせるのか。長崎へ行かせるのか、札幌の方に向かって走らせるのか。それだけの体力はどうやってつけるのか。投資銀行業務をどう位置づけていくのか。商業銀行の機能はどうするのか。  ロンドンのクリアリングバンクとマーチャントバンク、この戦いというものがあり、そして今のグローバルな金融市場の中で再編成が進められていきました。フランスにおいても、起業銀行、そして預金銀行、バンク・ダフェールとバンク・デポ、こういう二つの分野がはっきりと分かれておったのが、これが統合されるという動きになりました。アメリカも、コマーシャルバンク、そしてウォール街の証券界とが一つの方向になりつつある。  いろいろな、世界的な再編といいますか、業務分野の再編の中で、これから我が国銀行の再編というものをどのように進めていくのか。全部、外国の金融機関が日本のお世話をするということだけでいいわけはありませんから。  その中で大切なことは、八%、四%、このようなBISの規制というものに対して、日本銀行というのは、大体そういう外国の物差しでは、はかれないものがあるんじゃないかと思うんです。体型が違うからです。  アメリカやヨーロッパの銀行は、株式という余計なものをおなかに抱えていない、出っ腹のないスリムな体型でそういう物差しを受けているわけです。日本銀行は、大手十九行で合わせて四十兆円の、これが、株価が上がれば含み益、下がれば含み損。景気がよくなれば株価が上がる、株価が上がれば貸し出し余力はふえて、貸し出し競争にどんどん走る。景気が悪くなれば株価が下がる、含み損。雨のどしゃ降りのときに傘を取り上げる。景気を過熱したり、不景気を余計深刻にしたり、悪い役しか果たさなくなってきたのが最近の日本銀行の役割じゃありませんか。  そして、すべてではありませんけれども、その大きな原因はどこにあるか。余計なおなかを抱えているからです。四十兆が上がってみたり下がってみたり、そのたびにお客さんの意向に反したことをやらなきゃならぬ。お客さんを育てるのが銀行だと私は学校で教わってきました。今は、その逆のことをやっている面さえ出てくるのは、余計な株式を抱えているからです。  宮澤大蔵大臣にも、昨年答弁をいただきました。アメリカの銀行はほとんど株を持っておらない。日本の場合には、過渡的に株式を持たなければならなかった理由は私も存じております。しかし、もう経済的な戦後は終わったはずです。  ならば、金融再生委員会として、こうした銀行の持っている四十兆円の株式保有を、少なくとも半分は公的機関か公的スキームに移して、そして金融再編が、Aの銀行とBの銀行が合併したら、直ちに持っている土地は売らなきゃいかぬ、人は減らさなきゃいかぬ、持っている株式も売らなきゃいかぬ。今株式市場がおびえているのは、それじゃありませんか。銀行の合併が行われるたびに、持っている所有株式がいつどこでどういう形で売りに出されるか、これがあるから、幾ら堺屋長官が夜明け前と言われても、夜明け前なら株価はもう上がってなくちゃいけないんです。八カ月か九カ月先行性を持っている株式であれば、ことしの秋に上がるのなら、今上がらなきゃいけない。上がりもしないでしょう。それは、株式の売り圧迫におびえているからなんです。  銀行の持っている株式、これを、取り上げると言ったら大変失礼な言い方ですけれども、移管することによって、国民の手に——私が提案するのは、国債を発行して、そして銀行の持っている所有株式を二十兆円の国債で買い取って、一%の利子は株式の配当で払えます、そしてそれを転換させる権利を付与する。国債を買って、その上キャピタルゲインまでが自分が手にできる。  税金を使ってはならないと思います。税金ではなくて、たんすの中で、仏壇の引き出しで失業をしている日本お金がたくさんあります。お金の失業対策を兼ねて、そういう投資の機会を与える。投資の機会を与えるだけではなくて、日本銀行の体質改善にも、そして株式市場対策にもつながる。  きょう午前中からいろいろと、銀行のデータが信用ならないということを言いました。それは、銀行の持っている資産を時価で評価するか、低い値段の低価法でやるのか、もともとの値段の原価法でやるのか。去年の金融特でもその議論が盛んに行われました。三つ、それぞれのメリット・デメリットはあります。しかし、よその国でこんな議論は起きたことはないのです。三つの物差しをあれこれ使い分ける、そんなことはどこの国も必要ないからです。日本だけはなぜ必要か。それは、日本銀行は株式という余計なものを持っているから、やれ時価だ、低価だ、原価だと、それぞれ銀行はばらばらなことをやる。持っている株式がなくなってしまったら、低価法イコール原価法、原価法イコール時価法。なぜなら、評価するものが何にもないからなんです。  そういう解決策こそ求めるべきではないか、そのように思いますけれども、柳沢大臣の御見解を、簡潔で結構ですから、お願いいたします。
  50. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生自身は大変広範な問題にお触れいただきました。しかし、私に対しては簡潔にという御注文もいただきましたので、余りちょうちょう長ったらしい話は避けたい、このように思いますが、今のお話、最後のところの結論では、銀行の保有株が株価の変動に応じて大変いろいろな問題を国民経済に投げかけているということを考えるときに、銀行というようなものに株式というものを持たせる制度、これを認める制度を今後とも存続すべきかどうか、この問題に集約されたかと思います。  この問題は、宮澤大蔵大臣が本来御答弁いただく、まだ金融問題については、企画立案は大蔵省に所属しておりますので、その問題かと思いますが、あえて宮澤大蔵大臣の上におまえも意見を述べろ、こういうことであるようですので、若干のことを申させていただきます。  先生はもう既に、なぜ日本の金融機関が株式をこのように持つに至ったかという経済的な背景は、もとより御存じのとおりでございます。問題は、将来どうするかということでございますけれども、先ほど金融再編のビジョン等のお話もありましたけれども、私は、アメリカといえども明確な、金融、特に銀行、バンキングビジネスを中心としたビジョンは描き切れていないと思います。先般発行されました「二十一世紀の金融業」ですか、あれも私、ざっとでございますが目を通させていただきましたけれども、アメリカといえども、まだその最終的なありようについては暗中模索である、私はそのように読み取らせていただきました。  そういうことの中で、私どものこの保有株の主たる動機であるところのメーンバンクシステムというものは、本当に価値がなくなってしまったと見るべきかどうか、このあたりが大事な点ではないか。  商業銀行業務というか、預貸業務というか、そういうものがなくなってしまうという世界はなかなか考えにくい。そういう考えにくい預貸業務というものがなくならずにつながっていく、継続されていくということであった場合に、本当に、情報コストというか、社会的コストを最小にして効率的な預貸業務の遂行をしてきたメーンバンクシステム、それから、それとつながった銀行の保有株式というものが全く否定しさられるべきものなのかどうか、これは私、将来の検討課題とさせていただきたい、このように思います。
  51. 岩國哲人

    岩國委員 金融再生委員会は金融破綻処理委員会ではないわけですから、あくまでも、金融システムの再生、金融機関の充実強化という遠い将来の理念というのを掲げて、そしてそういった理念から見てどうすべきか。もう一つは、計数的に見て、今の持っておる規模はどうなのか、二つの問題があろうかと思いますので、またこの点は別の機会にでもお伺いしたいと思います。  最後になりますけれども、日本経済再生への戦略、これは、金融だけではなくて、経済全体の再生。それで、経済戦略会議というものが催され、その提言については私どもも説明を受けました。これについては、所管の大臣がいらっしゃらないということですので、総理の簡単な御所感だけでもお伺いしたいと思います。  私は、この経済戦略会議、大変専門家の方がたくさん入って、出していただいておりますけれども、いろいろなことの中で三つだけ申し上げます。  一つは、地方自治体の財政破綻についてほとんどこれは触れられておらないということです。これから地方の時代と言いながら、公共事業における地方自治体のウエートが高くなっているときに、この地方自治体の財政破綻をどう救うのか、どういうふうに活用する、それが国民経済的にどういう役割を果たすのかといった視点が完全に欠落しておるということ。  二番目に、国際的な視野からほとんど書かれていません。農業の国際的な生産をどうするのか、国際的な配分をどうするのか、そういったこと。それから、円の国際化ということを総理は強調されます。この円の国際化とかいったような国際的な視野がこの戦略会議の提言には抜けておる。  三番目、最後ですけれども、農業部門というのはほとんど触れられていないんです。農業というのは、日本経済を支えてきた、そして、今でも支えている大切な分野であると私は思います。  私は常々、尊農上位という言葉を使います。尊農というのは、農業を大切にし、上に持ってくる、尊農上位。農業政策というのは、私は、もっともっと大切に、これからの経済戦略の中でも、農業というのは、マイナスの部門ではなくて、もっとこれをプラスの部門にどうやって切りかえていくのか。その発想が全然ないという点は寂しく思います。  何か御所感があれば、お答えいただけませんでしょうか。
  52. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 実は、この経済戦略会議で御答申といいますか、それを一月中にちょうだいをいたしたいと思っておりましたが、今委員が御指摘のような点も含めましてさらに検討をすべき課題があるのではないかということで、先般、幾つかの問題につきまして、さらに筆を入れたい、あるいは検討したい、こういうことでございまして、これが延期になっております。  今御指摘をいただいた幾つかの点につきましても、私が諮問いたした立場でございますので、御検討願って、最終的には、将来にわたっての日本の中長期的な課題につきましても、立派な御提言をちょうだいいたし、そしてもって、政府としてはこれを実現するべく最善の努力をいたしますが、同時に、国会におきましても、いろいろと御審議、御意見、御検討いただければありがたい、このように考えております。
  53. 岩國哲人

    岩國委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  54. 中山正暉

    中山委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、小林守君から質疑の通告を受けております。これを許します。小林守君。
  55. 小林守

    小林(守)委員 民主党の小林守でございます。  私は、小渕総理の施政方針演説で述べられました、二十一世紀のあるべき国の姿、その理念と考え方等について、まず質問をさせていただきます。  小渕総理は、二十一世紀の経済社会の理念を富国有徳というふうな言葉で表現されました。この予算委員会総括質疑の中でも、委員質問の中で、二十一世紀のキーワードは富国有徳だというようなお話もされておりました。そういう点で、小渕総理の基本的な理念というふうに受けとめさせていただきます。  そこで、総理の施政方針演説の中では、「健全な資本主義は利潤追求だけでは維持できない」、「徳すなわち高い志を持った国家でなければ、豊かな国であり続けることは不可能であり、何よりも世界から信頼されなくなるわけであります。」このようにおっしゃっているわけであります。非常に抽象的な表現でございますけれども、私もそのとおりではないか、そのように考えているわけであります。  さて、戦後の経済成長と今日のバブル崩壊後の過程で、日本の経済社会がいかに徳のない経済社会になってしまっていたか、これが白日のもとに明らかになったのが今日ではないかと思います。政官業の利権構造の中で、それぞれの利益分配と経済支配を自己目的化して、社会的、公共的役割を、そういう徳を喪失してきたのが今日のモラルハザードの社会、日本ではないかと思います。そして、戦後最悪の経済不況、雇用不安の中で、将来生活への不安と閉塞感をより一層深めているのが、モラルを喪失した日本の政治経済社会への国民の不信ではないかと考えるわけであります。  昨年一年間の日本社会を象徴するキーワードとして、毒という言葉が言われました。いわゆる毒入りカレー事件に代表されるような、人間のモラルが崩壊これにきわまれりというような事件ではないかと思っているわけであります。  係争中の事件でありますから慎重に表現したいと思いますけれども、一般論として言うならば、生命保険というのは、本来、万一の場合に備えて、自分の愛する人のためにみずからの命に自分が保険を掛けていく、これが私は道徳だというふうに思いますが、他人の命に、その喪失に保険を掛けるというのは不道徳の始まりだろう、私はこのように思えてなりません。  毒の時代から、濁りをとった徳の時代へ。総理のお言葉をおかりするならば、まさに毒から徳の時代への転換が二十一世紀に向かっての五つのかけ橋の中の大きな基本的な理念ではないか、このように考えるわけであります。  そこで、まず、総理の言うところの徳すなわち高い志の国家とはどういう国家なのか、今日の日本は徳のある国家なのかどうかについてお聞きをしたいと思います。
  56. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今般の施政方針演説につきまして、日ごろから考えておりますその一端を申し述べさせていただきました。もとより、私自身、完全、完璧な人間ではありませんが、この日本の国について与えられた大きな責任を果たしていくという立場から、どのような基本的考え方を持っておるかについて、私なりに申し述べさせていただいた次第でございます。  実は、総理に就任いたしまして以降、二回の所信表明でも富国有徳ということを申し上げさせていただきました。やはり人間として、もちろん、経済といいますか、こうしたことの根底がなければ個人も国も十分な活動が行えないわけでございまして、そういう意味で、日本は戦後五十数年、本当に廃墟の中から立ち上がって、ひたすら経済復興を願い、日本人の持つすばらしいこの努力、勤勉、創意工夫、こうしたものが最大限発揮されて、少なくとも世界に、経済面では第二の大国にまでのし上がってきたわけでありますが、一方、半面である心の問題といいますか、こうした点については若干置き去りにされてきたのではないか、こう実は私なりに考えてまいりました。  そういう意味で、富国ということは、かつては富国強兵というような言葉が使われたので、必ずしも用語としてどうかと思いましたが、経済的に安定した、国際社会においても貢献のできるような経済力を持ち、国家としてさらに繁栄いたしますと同時に、反面、憲法の前文にありますように、国際社会からも信頼を受けるような国家として立っていくためには、徳といいますか、そういうものが必要ではないか。そういう意味で、これを組み合わせまして富国有徳、こういうことを申し上げさせていただきました。  この基本的な理念を持ちまして、でき得べくば、新しい世紀にもなることでございますので、二十一世紀に向けてこの日本のあるべき国の形としての姿というものを、多くの皆さんのお考えをお聞きしながらつくり上げていくべきだ、こう考えた次第でございます。  もとより、御批判いただくことであるとすれば、このような大任をいただくに当たりましては、みずからそうした考え方を明らかにし、国民に問い、そしてそれを実行するプロセスも明らかにいたすべきとは思いますけれども、かねがね私なりには勉強させていただきましたが、それを発表する機会なきままに、昨年この役をお引き受けいたしました。  また、当時としては最大の課題が、日本金融システムの安定化、これなくしては世界の中で伍していけないということでございまして、そのことに専念をし、そして同時にまた経済再生ということがございまして、二度の臨時国会を通じまして、国会の御協力もいただきながら、そうした歩みを続けてまいったわけでございます。  私は、なる前に、八月十五日に、実はかの中坊公平氏がテレビに出てまいりまして、今日の世相を嘆きながら、今自分がやっておることは、日本人の大きな欲望の塊が破綻をして、その後処理に非常に苦労しておるというお話をされておりまして、反面、日本の国がこのままでいいかということを論じておったのを拝見いたしまして、まさにこのことも念頭にありまして今のようなことを申し上げた次第でございます。  したがいまして、でき得る限り早い機会に有識者の皆さんの御意見も十分承りながら、日本の二十一世紀の国の形というようなものを描きつつ、それに基づいて将来の種々政策を創造しながら、そして御批判をいただきながら、これを遂行することによって、二十一世紀、まさに経済的にもそれから精神的にも世界に最も先進的な国家として、我が国づくりの一端を担うことができれば、こういう気持ちで今おるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  57. 小林守

    小林(守)委員 大変雄弁に語っていただきましたことを感謝申し上げますけれども、本当に今の日本の現実が豊かなのか、そして徳のある状態なのか、この辺をもっと、厳しく認識を踏まえたお話をいただきたかったなというふうに思うのです。  それでは、次に移ります。  この二十一世紀の五つのかけ橋の中に、安全へのかけ橋というところがございます。これについては、安全保障とか、それから犯罪対策とか、さまざまな安全という視点からの記述もございますけれども、私は、基本的にこれは環境問題をとらえた部分だというふうに考えるわけであります。  地球環境から国民一人一人の生活環境に至るまで、今日人間の安全が脅かされているのが現実であります。二十一世紀が環境の時代と言われながらも、改革への道筋が一向に見えてこない、そして汚染の状況がますます深刻になっているというのが今日の地球社会であり、また日本の経済社会ではないのかな、このように考えます。  そこで、総理は安全へのかけ橋のキーコンセプトとして、循環型経済社会を築き上げることが私たちに課せられた最も重い責任の一つだと表明しています。  そこで、総理の考えるこの循環型経済社会というのはどのような社会なのか、市場経済はどのような枠組みの中で行われることになるのか、そして、そのような循環型の経済社会に少なくとも構造改革していかなきゃならないはずでありますから、構造改革していくためにはどのような手順や手法が必要なのか、その辺について少し具体的なお話をしていただきたいと思います。
  58. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 具体的な取り組みにつきましては、それぞれの役所におきましても熱心にお取り組みでございますが、今御指摘いただきましたように、循環型の経済社会を築き上げるというためには、政府全体といたしましては、平成六年の十二月に閣議決定されました環境基本計画に基づき現在施策を順次展開いたしておるところでございます。  具体的な問題としては、その性質に応じまして、環境影響評価あるいは規制的措置、これは大気とか水の規制とか、家電製品に対するリサイクルなどがございましょうが、その他経済的措置、社会資本整備、環境教育、環境学習、事業者の、国民の積極的な取り組みへの支援、科学技術振興等の多様な施策、手法を適切に組み合わせて今後とも必要な施策を講じていかなければならないと考えておりまして、こうしたことの組み合わせを効果的に発揮することによりまして循環型の経済社会を構築してまいりたいと思っております。  さらに具体的な点につきまして、もしそれぞれの役所におきまして御答弁ありましたら聞いていただきたいと思います。
  59. 小林守

    小林(守)委員 総理の考えを受けまして、今度はそれぞれの委員会の方でより具体的に詰めさせていただきたいと思っておりますけれども、次に、美しき日本、そして美しい国土づくりというような言葉について伺います。  美しいという言葉を何度もお使いになっておる演説でありますから、言葉がどんどん軽くなってしまっているのではないか、口先だけの政治家のたわ言という批判も聞こえるわけであります。そしてまた、美しいものを美しいとごく自然に感じ取ることのできる社会、何となくわかるんですけれども、よくわからない。非常に能弁なんだけれども、ボキャ貧ということは当たらないと思うんですが、大変能弁、雄弁に語っているんですが抽象的な言葉で、しかも、美しいという言葉はなかなか使いづらい難しい言葉だと思うんですけれども、これを臆面もなくどんどん使っているというところに、聞いていて私どもは、恥じ入るというか少し気恥ずかしくなるようなところなんです。しかし、その言いたいところの真実味がどうも伝わってこないではないか、こういう感じであります。  そこで、総理にお聞きしますけれども、総理が身命を賭して、命をかけて今日の経済社会的苦難を克服して次の世代に引き継ぐと覚悟した。それは、力強い品格のある美しき日本だということなんですね。この美しき日本というのはどういう日本なのか、少し詰めさせていただきたいと思います。  例えば、総理の地元は群馬県でありますから私の隣であります。私は栃木県であります。県境で足尾と群馬はすぐ隣になりますから、足尾銅山の風景は見ていらっしゃると思うんですね。御存じですね。  それで、足尾には、いわゆる銅山の製錬所、銅の精製のために大変な鉱害問題を引き起こした地域でもあるんですが、松木沢という広大な岩肌の山岳地があるんです。これは日本のグランドキャニオンと言われるぐらい、「人間の条件」という映画のロケ地にもなった、非常に荒涼とした、異様な光景の地域なんですけれども、これはまさに鉱害の結果、亜硫酸ガスによって緑が枯れていった。そしてまた、製錬所の燃料に、その松木沢の沢の樹木を徹底して切り出したんですね。燃料として切り出してしまった。そして亜硫酸ガスで緑が全部やられてしまった。そして表土が流れ、岩肌の山に全部なってしまったというところなんです。  この日本のグランドキャニオンは観光地であります。結構そういう点では見学に来る方がいるんですが、このような、緑を完全に失った異様な広大な、日本のグランドキャニオンとも言われる荒廃地、これは、見方によっては美しいと言える場合もあると思うんですね。絵をかく人が素材にして、何人の方もとっております。美しいのかどうかわかりませんが、やはり引かれるものがあるんじゃないかと思うんですね。何か訴えるものがあるんじゃないかと思うんです。  それからもう一つは、もうちょっと具体的に言って、諫早湾の干潟、締め切り堤防がつくられた今日の光景と、干潟で底生生物、そういう動物たちが、小さな生物たちがひしめいている、命のざわめきが聞こえるようなあのどろどろとした干潟の光景、その潮受け堤防を締め切ってつくられた人工堤防のある光景とない光景、どちらが美しいのか。私は総理の見識をお聞きしたいと思います。美しい日本という場合に、私、また非常に大事なポイントになってくるんではないかと思うのですが。
  60. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず演説のことでございますが、実は三度、この「美しい」という言葉を使わせていただきました。これは、かねがね私が尊敬しておりました、既に故人になりました天谷直弘氏が、お話をしたときに、この日本の国を、美しい日本、品格ある国家、こういう言葉を使われまして、実は私に揮毫して残していっていただきました。美しい日本、一番端的に言えば白砂青松というようなことなのかもしれませんが、そういう意味で、美しき自然、美しい人間の心等を表現する方法としてなかなかよきものがありませんので、この言葉を率直に使わせていただきました。  そこで、今御指摘のように、自然を自然のまま残していくということは大変大切なことであります。今御指摘ありました渡良瀬鉱毒問題、これはある意味では日本の公害の第一の問題の点であったというふうに考えておりますが、そのことによってなお蘇生せざる自然が残されておるということは、これは日本全国の中にもそうあります。どういう理由でそこになったかということは、日本の明治以降の経済の発展のために国内のそうした鉱物資源というものを製品化していかなきゃならなかったやむを得ざる状況もあったかもしれませんが、そのことによって美しい日本の自然が破壊されてきたということも厳然たる事実でありまして、こうしたことを反省の材料にしながら、一つ一つ問題を明らかにしながら対処していくということが今日最も必要なことであると考えております。  そこで、どちらが美しいかと言われましても、なかなか難しい問題でございますけれども、それはやはり生のままの姿というものが最も美しさの原点ではあろうかと思いますが、そういった点で、それぞれの具体的な事例に当たりましていろいろな諸原因があったんだろうと思いますから、そのことはきちんと評価して、どのように対応するか、また今後どうあるべきかということについては大いなる反省の材料にしなければならぬ、このように考えております。
  61. 小林守

    小林(守)委員 私は、環境問題などをいろいろ見聞きし勉強してくる過程の中で、非常に悲観主義に立っています。どうしても悲観的にならざるを得ないのが今日の世界、地球環境であり、我々を取り巻く生存環境ではないか、このように思えてなりませんから、総理がおっしゃる大いなる悲観主義からの脱却、これはこれで言葉としてはよくわかるんです。それからもう一つは、確固たる意思を持った建設的な楽観主義、これもよくわかるんですが、その建設的な楽観主義というのが、建設的という言葉は別のイメージが、意味としては未来志向とかそういうことでしょうからいいんですけれども、建設的という言葉がその場でふさわしいかどうかちょっと疑問だなというふうに思ったところなんですけれども。  その楽観主義に立つためには、コップに水が半分になっている、これをまだ半分あるじゃないかというふうに見るのが楽観主義なんだというふうにお話しになっていますけれども、そのとおりだろうというふうに思うんですよ。  ですから、美しい日本を命をかけて二十一世紀に引き継いでいくんだというような視点から見るならば、悲観主義に陥りがちな日本の環境、自然環境の現実を見た上で、しかしまだ半分残っているじゃないか、半分、もっと少なくなっちゃっているのではないかと思うんですけれども、そういう視点に立って見るならば、私は、今回の藤前干潟の問題等については二十一世紀への大きなメッセージになっている、国際社会への大きなメッセージになっているのではないかなと思えてならないわけであります。  そこで、干潟の問題に入る前に、二十一世紀のグランドデザインという形で国土庁の方で五全総がつくられております。その五全総の中で、多自然居住地域の創造というような言葉で、どちらかというと自然や文化を重視した、美しい国土のフロンティアというような言葉で、これもまた非常に言い回しのある言葉なんですが、農山漁村を美しい国土のフロンティアというふうな位置づけで、そこを多自然居住地域の創造の対象地域にして国土づくりを考えていこうではないか、このような提案がされております。大変私自身も賛成でございまして、共感をいたしております。人と自然との望ましい関係づくりこそ美しい国土づくりの基本だというふうに私自身も考えているわけでありますから。  そこで、今、この美しい国土のフロンティアのはずの地域はどうなっているのか、ここを問いただしたいなというふうに思います。まさに過疎地域の問題であります。  少子高齢化、人口の急激な減少、そしてソフトな社会資本の不足、産業面の劣悪さ、就業機会不足、国土保全機能の低下、まさに、過去三十年にわたる過疎対策にもかかわらず、これらの問題はまだ解決されていない。  同じようなスタイルでこのまま十年経過していくとするならば、消滅してしまう可能性のある小集落、二十軒以下の小さい集落ですね、これを小集落と指定して、この小集落が全国で二千ぐらいある。人口的には、過疎地域対策対象地域には八百万人いる、六%なんですが、全人口の六%の地域が大変な打撃を受け、約二千の集落が消滅するということが言われております。  この二千の小集落を含む過疎地域は全国で千二百三十一自治体あります。全自治体の四割近い数が過疎自治体であります。そして、面積でいうならば、これは国土の二分の一になるんです、国土の二分の一は過疎地域なんですね。人口で八百万人。これがこのままの状態でいくならば、価値観の転換やライフスタイルの転換をきちっとしていかない限り、そういう状態になるということは明らかであります。  そこで、美しい国土のフロンティアとして位置づけられているこの過疎地域を、どのように再建、活性化していくのか。ただ単に経済的な豊かさを求めるのではなくて、きちっと存続をする、してもらう、このような施策が今求められているのではないかなというふうに思います。  関連して、そういう地域には、まさに人間と動物とのいよいよ厳しい戦いが始まろうとしております。動物保護法、狩猟に関する法律の改正であります。まさにその地域において、生きんがための、自分たちの農林業の食害を防ぐために、いよいよ組織的、計画的な戦争が人間と動物の間で行われようとしているのではないでしょうか。あえて言うならばそういうことなんだろうというふうに思います。  動物からするならば、これは侵略戦争じゃないかというふうに言えるかと思いますし、人間にとっては、科学的、計画的な、動物保護のためにやむを得ざる必要な措置なんだということが言えると思うんですけれども、明治以来、日本の近代化、工業化の過程の中で、私たちは、自然とのバランスをとったつき合い方が失われてしまった、忘れてきた、ここに大きな反省をしなければならないし、本当に科学的、計画的な個体数管理というやり方が可能なのかどうか。数十年、百年単位で実証してみなければわからないような、神様の手にかかるような問題を、人間が科学的、計画的という視点に立って個体数管理をやろうとしている、間引きをやろうとしている。  シカ害、シカの食害、大変深刻であります。どうしてくれるんだという声もよくわかります。しかし、自然と動物との、人間と動物とのバランスを崩してしまったのは人間であります。明治以降の、特に、急速な高度成長期におけるリゾート開発や、さまざまな自然への人間の動物のテリトリーへの侵入が、動物の生息域を完全に壊して混乱をさせた、こういう結果のあらわれではないかと思うのです。  そこで、まず過疎地域の問題について、どのようにとらえ、どのように二十一世紀の美しい国土づくりの中で再建させようとしているのか、それから、鳥獣保護の視点に立って、どのような理念のもとに野生生物との共存関係を図っていこうとしているのか、あわせて伺います。
  62. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 るる先生の御意見をお伺いしておりましたら、先生の御質問すべて解決できたときには本当にバラ色の日本ができ上がるんではないかなと思いました。  私は、過疎の問題からお答えをさせていただきたいと思うのでございますが、先生御指摘のように、新しい全国総合開発計画、「二十一世紀の国土のグランドデザイン」というのがございまして、副題といたしまして「地域の自立の促進と美しい国土の創造」ということでるる述べているわけでございますが、その中で、農山漁村等の豊かな自然環境に恵まれた地域を、二十一世紀の新たな生活様式を可能とする国土のフロンティアの位置づけというようなことで、豊かな自然をあわせて享受できる、また反面、都市的なサービスとゆとりある居住環境というようなことで、多自然居住地域というものを創造しようとしておるわけでございます。  私は、今先生御指摘のように、この過疎対策をどうするかというのは、今の少子対策と同等に、非常に難しい問題だろうと思っておるわけでございます。今ございます過疎法はこの十一年度末で終わるわけでございまして、十二年からの新しい過疎対策をどうすべきかということで、過疎問題懇談会というものを設けて今検討いたしております。  これは、平成十二年度の概算要求に間に合いますように、五月から六月に中間報告をいただくように委員の先生方にはお願いをいたしておるわけでございますが、その中にありまして、少しでも先生の御要望のように美しい豊かな自然環境を堅持しながら、また、雇用の場、居住のゆとりというものを持った、そういう過疎地域というものを、そういうときには過疎という言葉は使わなくていいようになるわけでございますが、そういう新しい農山漁村、自然環境とともに生活ができるという環境をつくるべく、最大の努力をしていきたいと私は思っております。  また、鳥獣の関連につきましては、これは環境庁の方でございますから、そちらから御答弁をいただきます。
  63. 真鍋賢二

    ○真鍋国務大臣 先ほど来先生の御指摘をいただいたことは、環境行政の中で大切な事柄ばかりでございます。  特に野生鳥獣の問題を取り上げていただいたわけでありますけれども、これは、人間と自然、言いかえれば鳥獣との関係がどういうふうにあったら好ましいのか。もちろん共生していかなければならないけれども、共生のあり方についての御意見ではなかったかと思っておるところであります。  鳥獣保護法ということで、今国会法律案を提出する予定になっております。その中においてもいろいろと意見が申されておるわけでありますけれども、近年、鳥獣を保護しなければならないという国民的な要請はもちろんでございますけれども、片や、農作物に対する被害とか、また人的被害等々も出ておりまして、その調整を図っていかなければならないと思っておるわけであります。  鳥獣保護法というのは、先生御案内のように、二十年来の改革法案であるわけでありまして、平成三年に小さい改革はされましたけれども、それほど大規模な改正法案になっておるわけでありまして、その点につきまして先生方の御協力をちょうだいしながら、この法案の早期成立を図っていかなければならないと思っておるところであります。  野生鳥獣の個体群を安定的に維持しながら人と野生鳥獣の共存を図ることができるような科学的、計画的な野生鳥獣の保護管理を推進することが必要と考えておるわけでありまして、どうぞ御協力方、よろしくお願いをいたしたい次第であります。
  64. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 既にお答えがありましたですが、一点、小集落のことを冒頭申されました。  非常に大切なことではないかという感じがいたしておりますのは、私ごとを申し上げて恐縮ですが、私自身も生まれ育ちましたのがいわば山岳地帯に近い中山間農業地帯でございまして、この問題につきましては、新しい農基法におきましてもいろいろ、デカップリングの問題を含めまして対処しようということでございますが、経済至上主義からいえば、そうした地域で生きていくということは非常に大変なことでございまして、そうしたところから人口がほとんど失われていくということでありますが、自然を守り、動物とともに生存していく、こういう地域の存在というものも無視し得ないのが日本の姿ではないか、こう思っております。  そうした点からも、いろいろな行政サイドからも、いかなる、お手伝いができないかというようなことも考えながらいかなければならない。そういった意味で、最初の御指摘、大変重要なことと心得て考えてまいりたいと思っております。
  65. 小林守

    小林(守)委員 富国有徳の視点からするならば、やはりそういう自然との共存、共生という視点がきちっと豊かさの中で守られているのかどうか。そういうものを破壊した上での豊かさというのは、これはごまかしだと思いますし、本当は富ではない、豊かではないんだというふうに言わざるを得ない。国民の皆さんが痛切にそれを感じるようになってきた時代ではないか、このように思うんですね。  総理の施政方針演説の中で、教育の原点という中でも、生きる力と助け合う心とそれから自然を慈しむ気持ち。自然を慈しむ気持ちという中には、私は、過疎地域の問題、中山間地の問題、そして動物保護と狩猟の問題、食害の問題、これらがすべて入っている。そして、自然を慈しむ気持ちの中で、動物に対して感謝の気持ちを持ちながら、折り合いをつけていかざるを得ないのが人間の生きる姿なんではないかな、このように思うんです。  実際のところ、シカは、またイノシシの害もありますから、イノシシなども個体管理の主な対象になると思うんです。シカ刺しなんというのを食べたことがありますから、大変おいしいから、これは狩猟という言葉が当てはまるというか、よくマッチングするんですね。  しかし、食害の中で、またはいろいろないたずらとか損害の中で、猿の害が大変に深刻になっています。特に日光、私、地元でございますが、これはもうとにかく人家にまで相当入り込んできているという現実がございまして、しかも、猿を銃で撃てる人というのはそういないんじゃないでしょうか。猿を食べられる人もなかなか、恐らく飢餓状態で生死をさまよっているような状態であるならば食べることがあると思いますが、やはり猿は狩猟という言葉にはなじまないんですよね。猿をやるのは駆除ということになるんでしょうか。私は射殺だというふうに思いますから、猿を本当に頭数管理しようとするならば、人間と猿との戦争だというふうなことになっちゃうんじゃないかという感じがしてならないんですね。  そういうことで考えるならば、大変深刻な問題だ。猿を撃つのに、しかも猿の肉を、動物だから、人間が生きるために動物の肉をシカのように食べるというんだったら動物はきっと本望かもしれませんが、しかし、猿は捨てられるだけですよね。麻酔銃で、違うところへ行けということで追い払われることになろうかと思うのですが、しかし……(発言する者あり)そうですか。私は食べたことがありませんからわかりませんけれども。しかし、邪魔だから、数が多過ぎるから殺すということですから、これは私は、想像力の問題として言うならば、最後には人間にまでその考え方は、感性というものは広がっていくのではないか。  猿を、邪魔だから、害があるから撃ち殺す、頭数を少なくする、間引きをする。この考え方は、私は、ひいては人間社会における、人間に対する感性にまで必ず浸透してくる、汚染をしてくる、このように思えてなりません。子供たちの自然を慈しむ気持ちの中に、もっともっと恐ろしい、厳しい感性を与えていくことになるのではないか。  こんなことをつけ加えさせていただいて、富国有徳という視点から、何とかこれは全力を挙げて、科学的、計画的な管理だと自信を持って国際社会にも言えるような体制をつくってほしい。本当に、今、科学的、計画的な管理ができる都道府県や市町村の組織的、人員的な体制がありますかということです。そういうデータをきちっと押さえていますか。これもないですよ。この辺をきちっととらえた上で、しかも試行錯誤の上で、恐る恐るしかできない神のわざを人間がやろうとしているんじゃないでしょうか。  それでは次に、藤前干潟の問題について伺います。  最近のマスコミ報道で、名古屋市が十八年来の計画をしておった、名古屋港の最も奥深い部分に残されたあの干潟をごみの埋立処分場にする計画を断念すると発表されました。大変な決断、苦渋の選択と言われております。しかし、極めて国際的にも高く評価をされる、二十一世紀から見て大きな英断だったというふうに評価される私は選択ではないかというふうに思います。  愛知県知事の働き、そしてそれを受けとめている国の関係省庁のこれからの課題解決のためにも一肌脱いで頑張ってほしい、こんなふうにお願いをしたいと思う問題でございますが、藤前干潟の埋め立ての問題の経過と現状について、まず環境庁長官の方からお話をいただいて、それから港湾計画等の問題について話を進めさせていただきたいと思います。
  66. 真鍋賢二

    ○真鍋国務大臣 藤前干潟の件につきましては、かねてからいろいろと御心労を煩わせておったところであります。  今、計画についてということでございましたので、私が長官に就任する以前のことでございますので事務的に読ませていただきますが、藤前干潟の埋立計画は、昭和五十六年に港湾計画に位置づけられた後、計画変更などさまざまな経過を経て、平成八年に事業者、いわゆる名古屋市及び名古屋港の管理組合でございますけれども、他の代替地はないとの考えのもとに環境影響評価の手続に着手いたしました。昨年八月に環境影響評価の手続を終了いたしまして、公有水面埋立法に基づく免許申請を行い、さらにその後の手続を地元で進めてきたわけであります。  環境庁としては、藤前干潟は我が国の有数のシギ、千鳥類の渡来地であると認識して、私自身も現地視察をするなどして検討してまいりました。  事業者が、埋め立ての環境影響が大きいことへの代償措置として人工干潟の造成やその試験施工を計画したことを契機に、環境庁は、昨年秋に、名古屋市、愛知県に対して、藤前干潟の上での人工干潟を造成することは不適切との趣旨の見解を示しました。これを受けて、今年一月二十六日でございますが、名古屋市は藤前干潟の埋め立てを断念する方針を表明し、同日、愛知県知事が環境庁、厚生省、運輸省等々を訪問してその断念の意を伝えたところであります。  現在、愛知県と名古屋市が共同して代替地の広域的な検討を開始したところと承知いたしております。  以上が経過でございます。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  67. 小林守

    小林(守)委員 そのような経過を受けまして、今、代替地をどこにどう探すかというのが最大の問題になるわけであります。  今日の社会経済情勢の変化や国民の意識の変化、自然との共生というような思い、これらが非常に高まっているのが現実でありまして、運輸省は、港湾埋め立ての、公有水面埋め立ての許認可権を持っている官庁でありますから、そういう点でぜひ港湾計画のあり方等について、埋め立てをするのを前提にするのではない港湾計画のあり方を導入するべきではないのかな。  運輸省の中ではエコポート構想というのも発表されておりますね。その中でも自然との共生という項目がございます。しかし、その時点での自然との共生というのは、干潟を埋め立てるのはやむを得ないんだ、だからその代償措置として人工干潟でやるんだというのが自然との共生だったんですよ。エコポートの中の自然との共生はそういうことを主張しているんですね。ところが、人工干潟がいかに自然の干潟に比べて代償措置たり得ないかというのが科学的知見として明らかになっております。  そういう観点に立つならば、自然との共生を大事にするエコポートづくりを運輸省の大きな課題として掲げるならば、伊勢湾の藤前干潟ばかりでなく、東京湾のさまざまな干潟、三番瀬の問題、さらに、残された、二分の一以下になってしまった、コップの水の二分の一に匹敵する、まだ残されているではないかというところをぜひ残してもらいたい。  こんな観点に立って港湾計画の見直しをしていただきたいというのが願いなんですが、いかがでしょうか。
  68. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 環境問題について運輸省はどう考えるか、こういう御質問だろうと思います。  港湾計画自体、つくるとき、また今日のように実施に移るとき、二段階にわたって、私ども、環境というものをどう考えていくか検討させていただいております。また、同時に、運輸行政を進める立場、ある意味では港湾行政専門家の立場、もう一つは、やはり環境行政専門の立場、環境庁が負われております。そういった意見というものを聞く機会、今回、藤前のことでいえば、環境庁の意見というものを私ども聞くよという立場の中で最終的な決断に至ったんだろう、こう思っております。  そういった意味で、全部を画一的にこうせいということについては、私ども、今そうであるとお答えはできません。やはり一つ一つを吟味しながらやってまいりたいと思っております。  ただ、人工干潟の問題については、私どもなりにやはり技術研究は進めてまいりたい、こう思っております。
  69. 小林守

    小林(守)委員 それでは、具体的に、藤前干潟の処分場計画断念という中で、ごみゼロ社会を目指す、これはだれも言うことなんですけれども、しかし、現実の話、当分の間はごみゼロというわけにはいかないのが現実だと思うんですね。そういうことになりますると、最終処分場を、やはりある程度の確保は避けられないことだと思います。  そういう点で、今岐阜県の愛岐処分場に埋めさせてもらっているような状態なんですけれども、今後二年、さらにもっとそれをもたせようじゃないか、こんな工夫も技術的にも検討してもらわなきゃならないと思うんですけれども、しかし何らかの代替地を探さなきゃならぬということになります。そうしてみますると、今日の状況からいって、愛知県の調整の役割というのは大きな役割が求められている。それと同時に、伊勢湾を管轄されている運輸省の役割も極めて大きいと言えると思うのですね。  そういう点で、名古屋市の方から、この断念に伴って、運輸省や厚生省にはどのような処分場の代替地確保についての要請がされているのかどうか、これについてお聞きしたいと思います。
  70. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 先ほど小林委員は名古屋市長の苦渋の選択という表現を使われました。まさにそのとおりだろうと思います。  一つは、長年の計画を白紙に戻す、これは一つの決断だろう。もう一つは、やはりごみというものを今岐阜県にお願いしている。でき得れば、ごみを名古屋の市内もしくは管轄内の中で処理をしていきたい、こういう思いがあったんだろうと思います。  白紙に戻すということは、逆に言えば、名古屋のごみを名古屋市内で処分できないという決断をせざるを得なかった。それを愛知県知事が受けとめて、広域行政の中で、みんなに相談をかけながらやっていこう、こういう決断をされた。当然、その決断というものを私ども運輸省という立場からサポートしていきたい。港湾行政の中でこの問題を解決していかなきゃならないという決断を愛知県なり名古屋市がするならば、私どもはその問題に対して、実は、おとといですか、二カ月以内でこの問題について誠意を持ってやろう、こう事務局側にも言い渡したところでございます。
  71. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 一昨日、今運輸大臣から報告のありましたように、愛知県知事が私のところにも参りました。そして、直接的には、代替地の、処分地の決定は名古屋市に一義的にございますので、その処分地の問題等について厚生省の協力は特に求められたわけではございませんが、私どもとしては、第一に、その処分地が決定すれば、技術的な援助、それからアドバイス、またさらにはそういう施設をつくるときの財政支援については約束を申し上げました。  また同時に、それができるまでには、今委員のおっしゃられたように、かなり長い時間を要しますから、そのつなぎの措置が必要であろうと思います。それは、リサイクル化であり、ごみの発生をなるべく少なくする努力等々いろいろの努力があると思いますが、つなぎ措置についても、私どもは、あとう限り技術的な御相談にはあずかっていきたい、このように思っております。
  72. 小林守

    小林(守)委員 この問題については、やはり二〇〇五年の愛知万博にも大きなインパクトになるというか、もう既に愛知万博が始まったと言っていいというようなことだと思うんですね。環境万博とも言われておる愛知万博が二〇〇五年を目標に実施されますけれども、自然との共生というのがテーマでございますから、まさに、干潟を守った、なおかつごみの問題を解決したというようなところをぜひ世界に示していただけるようなモデルケースとして——やはりこれは名古屋市だけで解決できる問題ではない。愛知県でも解決できる問題ではない。国だけでもだめだ。国や県や市が、町村が力を合わせて、地方分権という時代を考えるならば、それぞれの自治体がそれぞれの縄張りで権限争いをするみたいな視点では絶対に解決できない問題だと思います。  そういう点で対等協力という、新しい分権の時代の理念ではございますが、そうはいっても協力がなくして、国の責任であるラムサール条約の約束、これを守っていくという、湿地を守っていくという国の責任、しかし、ごみの問題を解決しなきゃならぬという固有事務である名古屋市の責任、この両方を解決しなきゃならない問題でありますから、それぞれが分権の権限を主張していたのでは問題は解決しないということなんですね。  基本的な流れは、自治体に、住民に、みずからの責任において選択をして行政を担ってほしいというのが地方分権だと思うんですけれども、しかし、それぞれの責任はそれぞれのセクションで、それぞれの段階であるわけでありますから、この辺については対等協力の関係の中で、非常に大きな実験のような気もいたします。名古屋市と他の市町村との関係、それから県との関係、これがもう決していい形で、スムーズな形で、ごみの問題でいっているとは思えません。  そんなことを考えますと、これを機に、ぜひ国と県と市と町村との関係が対等協力の関係でできるような、実験として、モデルとして、これもまた新しい分権時代を開く例として取り組んでほしいな、このように思っているところであります。  特に、現在、許認可権を運輸省が持っているわけでありますから、実際のところあの許認可権を愛知県が持っていたらどうだったろうなというふうに思うと、私は危ないなという感じがいたしてなりません。  いずれにしても、この問題について、それぞれの御協力をぜひよろしくお願いしたいと思っているところです。  総理の方から、干潟の問題、それからごみ保全の問題についての意義について、まとめた答弁をいただければと思います。
  73. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 いろいろと経緯がございました藤前干潟につきまして、これが一つの方向性が生まれてきたことは、これは評価いたしたいと思います。自然の保護、こういうことからいえば、渡り鳥の我が国有数の渡来地でございまして、そうしたことから、今回このような決定を受けたことは、関係各国からも高い関心が寄せられると同時に、評価もいただけるものではないかというふうに考えております。  が、御指摘のように、人間が生み出す廃棄物の処理の問題ということが一方ではありまして、それをどうするか。とかく私ども、私の地域でなければよろしい、自分の町でないところであればよろしい、また自分の自治体以外であればというようなことで、自分のところで発生したそうしたものの処理につきましては、これは日本全国、常々問題になることでありますけれども、一つ一つ丁寧に、こういった問題についてどう処理することが最終的には望ましいかということについては、非常に苦労の要ることでありますけれども、住民の皆さん、そして地方自治体の皆さんと十分話し合って最終的にこの難しい問題を解決することが、これは人類の、人間の知恵ではないかと思っておりますので、そうした点で、行政としてやるべきことがありますれば全力を挙げて対処したい、こう思っております。
  74. 小林守

    小林(守)委員 それでは次に、徳島県の吉野川第十堰改築事業についてお聞きしたいと思います。これも大変、マスコミ等で取り上げられて、注目されている大きな問題であります。  最近、住民投票条例の制定要求の住民の署名が有権者の半分近く獲得できて、選管の方でこの条例制定の公告縦覧が行われ、議会が開催される、こんな状態に至っているというふうに思いますけれども、この辺の住民投票条例制定要求運動の結果的な状況について、まず確認の意味でもお話しいただければと思います。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 第十堰に関します最近の動きでございますが、昨年の七月十三日に、吉野川第十堰建設事業審議委員会によります意見といたしまして、この改築は妥当であるというお答えをいただいております。  そういう中にありまして、九月の二十日に第十堰住民投票の会というのが徳島市で発足をいたしまして、十一月の二日に徳島市において署名のスタートが行われました。そうして、ことしの一月六日でございますが、徳島市の選管におきまして署名数の確定が行われまして、有権者の約四九%の方でございますが、十万一千五百三十五名の方の署名が確定をされたわけでございます。  一月二十六日、徳島市は、住民投票条例案を審議する臨時市議会の会期を二月の二日から二月の八日に決定をいたしておりまして、そこで、市議会においてこの住民投票条例案を審議することになっております。それが現在までの先生の御質問の流れでございます。
  76. 小林守

    小林(守)委員 間違いなく条例は制定されることになろうと思いますが、実施されるということになりますと、いわゆる建設省の直轄事業では初めての国民審査を受けるということになるんじゃないでしょうか。初めての直轄事業に対する住民投票ということになりまして、そういう点で、これは大きな河川行政の転換ではないかなと思えてなりません。  まず、どういう視点で言えるかというと、やはり川はだれのものなんだということが問われているというふうに思うのです。  それから、もう一つは、このような直轄事業の計画が、住民の意向となぜこんなにも離れてしまっているのか。しかも、なおかつ、第十堰建設事業審議委員会も含めて、県や市の執行部の皆さん方は推進であります。議会も推進だったのですね。しかし、住民の多数は恐らく、住民投票をしてみなければわかりませんが、このままでいいという答えを出すのではないでしょうか。なぜこんな状態になっているのか。  私は、そういう点で、今までの公共事業の決定の仕組み、それから自分たちの川を含む生活圏、これは自分たちが将来を決めたい、自分たちの決定にさせてくれ、こういうことの住民の主張ではないのかな、このようにも思います。  そういう点では、大変大きな意味を持った動きが、今徳島市を中心に、第十堰の改築事業に絡んで私はあると思うのですけれども、これらについて、現在建設省としてはどのように受けとめているのか、お聞きしたいと思います。
  77. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 建設省といたしましては、可動堰と固定堰というものを考えてみました場合には、可動堰の方が実に安定しておる、安全性の角度から見ると可動堰の方が非常にいいということでスタートをしたわけでございます。  それで、反対をされていらっしゃる方々の御意見はいろいろあるわけでございますが、その歴史的な観点からこれを保持してもらいたいという方も大勢いらっしゃるわけでございますが、調べてみますと、固定堰でございますと、内部は非常に空洞化した状態が何カ所もあるわけでございまして、大変大量の水が流れた場合には危険度が非常に高いということでございまして、第十堰は大量のコンクリートブロックを使用しておるのが内容でございます。  そして、第十堰におきましては、二百四十五年前に設置されておるわけでございまして、それ以後、流出と復旧の繰り返しを行っておるわけでございまして、過去百年間を見ましても二十八回もそれが流出をしておるということでございますから、私は可動堰というものが正しいと思っておるわけでございます。  ですから、あとは市議会の決定に従って、私たちはこの問題を進めていきたいと認識をいたしております。
  78. 小林守

    小林(守)委員 可動堰の方が正しいというふうに考えているということなんですが、住民は、現状のものを修復して、現在の、生活と一体となっている、地域の人たちの親水空間だ、水辺の、遊べる、親しみの持てる、なれ親しんできた景観なんですね。  しかし、建設省では可動堰の方が安全だということなんですけれども、安全の問題というのは洪水の問題、はんらんの問題だと思うのです。しかし、過去、いろいろなデータを民間の皆さん方も研究されたりなんかしておりますけれども、建設省が百五十年に一遍の確率で想定している水量、洪水量があっても大丈夫だ、しかも今の第十堰は、潜り堰というのでしょうか、一定の大水が出ると全部潜っちゃうわけですね。そういう構造になっているわけでありますから、むしろ壊れて流れた方が安全じゃないかというぐらいの考え方もあるんですね。しかも、江戸時代につくられた、非常にバランスのとれたつくりだそうなんです。斜めなんですね。斜め堰で、しかも伏流水はちゃんと流れる。そして、水がふえると、大水になると潜ってしまう、こんな構造のものだ。しかも、平常時では、そこを伝って渡ったり、釣りの足場になったり、非常に親しみを持たれているというようなものが、このままでいいという、住民の生活感覚、今まで生まれ育ってきた、そこで遊んできたそういうものが私はきっと大きいんだというふうに思うのです。  そういうことになると、無理して、安全だ安全だ、この方が安全だ。これじゃ、今のままでは危険だということを押しつけることではなくて、別の選択肢を、代替方式を、本当にそこに住んでいる人たちの、百五十年に一遍の危険をどうしてもこれは避けたい、国の責任で避けたいということであるならば、別の方式をとったっていいんじゃないでしょうか。なぜあくまでも可動堰でなくちゃだめだというふうに主張されるのか。これは長良川河口堰の教訓をまだまだ学び取っていないんじゃないかというふうに思えてならないのですが、いかがでしょう。
  79. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 私は法学部の卒業でございまして、潜り堰なんというのは今初めて伺いましたので、そのあたりはちょっとわかりませんので、それは、最後の政府委員のチャンスでございますから、担当の者に技術的なこととして答弁をさせてやりたいと思います。
  80. 青山俊樹

    ○青山政府委員 実務的なことについて答弁をさせていただきたいと思います。  堰につきましては、固定堰というのが現在の第十堰の状況でございまして、洪水時は堰の上を洪水が流れるという形で、結果的に洪水の下に潜るということで潜り堰という状況になっているわけでございますが、土でできた堤防の中に、川の中にかたいものがありますと、かたいものを越す流れの方が土の方に向かってまいりまして、かたいものは壊れずに、土の堤防の方が、命の堤防が壊れてしまうという危険性が非常にございますので、私どもは、このようなかたい大きな構造物が川の中にあることは大変危険だというふうに認識いたしております。
  81. 小林守

    小林(守)委員 そういう議論をやはりぜひ地元の住民と円卓を囲んでやってもらいたいというふうに思うんですよね。  それで、実は、これは民主党の方でこういう資料がないのかということで資料を要求してようやく出されてきた。昭和五十一年度、昭和五十五年度の、洪水の問題とか費用の問題、どういう方式でやれば幾らかかるという。これは昭和五十五年度の時点での数値なんですが、こういう方式だったらば幾らかかるというような民間の調査を既にやられておる資料が出てまいりました。いろいろな代替策を考えていく上での大変貴重な資料だと思いますし、私は非常に参考になる資料ではないかというふうに思うのです。私も専門的なものはわかりませんけれども、この辺の問題を、やはり十堰事業の審議委員会に、論議の場に、こういう資料もあるということを出されているのかどうか、これはいかがでしょうか。
  82. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 まず、先生御指摘の、昭和五十五年それから五十二年でございますか出されました資料でございますが、これは意思形成過程での予備的なものでございましたので、正直申し上げまして、その時点におきましてこのことは説明いたしておりません。  そのことは反省をいたしますが、ただ、その後、第十堰の建設事業審議委員会におきましては、その他のものにつきまして、審議に必要なものはすべて提出をいたしておりまして、約百点余りの資料はそういうことで提出をし、かつまた、すべて情報公開をいたしておるところでございます。  ですから、先生御指摘の、その二つのものは提示はしていなかったということは事実でございます。
  83. 小林守

    小林(守)委員 研究者、住民団体の方からも非常に不信の大きな原因にもなっておったというふうに言えると思うんで、ぜひ、これらについて誠実に情報開示をお願いしたいなと思っております。  いずれにしても、冒頭の問題点に戻りますが、住民の意識と、そして直轄事業を担う建設省、国の、また都道府県の、市の執行部の認識が大変かけ離れてしまっているという原因の一つに、十分な情報開示、信頼関係、そういうものがなされてこなかったのではないか。それから、よく言われているように、一たん決めたことは何が何でもやり通すんだというような、そのようなスタイル、これはもうはやらないということだと思うんです。また、大きな損失だ、国民的な損失になるではないかというふうに思いますので、そういう点で、私は、それらを見直すのが新たな公共事業の再評価システムではないのかなというふうに思うんです。  しかし、導入された公共事業の再評価システムを見てみますると、その審議をする委員会の構成は知事さんが推薦する、任命する、お願いするというような形をとっていますね。知事が推薦するということになると、大体このダムは必要だ、この堰は必要だと考えている知事さんであるならば、その見直しをしてもらう審議委員会には、まあそういう意向の学者先生、関係者の方をどうしても選ぶんじゃないでしょうかね。  そういうことを考えるならば、このダム審議委員会の構成と機能をきちっと見直すことが——大きなギャップになり過ぎてしまっている、住民と行政とのギャップが余りにも離れ過ぎているのではないか、民主主義そのものが機能していないんじゃないか、こういうことなんだと思うんです。  そういう点で、少なくとも、ダム事業等の審議委員会等については、その人選、構成、機能の見直しを求めるべきだ、するべきじゃないかというふうに思います。いかがでしょうか。
  84. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 委員会の構成でございますが、現在は、先生御指摘のように、地域の総合行政に責任を持つ関係都道府県の知事さんにお願いしておるのが事実でございます。  ですから、先生御指摘のように、そこにいささかそういうものがあるということは否定はし得ないと思うわけでございますから、それを、それでは今後また違った形でやっていくということもまた考える必要はあるんではないかなとは私も思います。  それと、先ほど先生おっしゃられました再評価システムの問題でございますが、これは結局、例えばダムであるとか道路であるとか、そういうようなことがいつまでたっても土地が買収できない等々で進捗が進んでいないというようなときの、それが再評価システムでありまして、その持っております意義と、今回の第十堰のことを進める、どうかというのは、私は別の問題だと思っております。
  85. 小林守

    小林(守)委員 これほど住民の意識と、国、県、市の理事者の意識が違ってきているということをどうやって埋め戻していくのか、きちっとタイアップできるような、民主主義が正常に機能するような関係をどう制度的にも保証していったらいいのかという観点に立って考えるならば、この直轄事業の多くの部分を、少なくとも、地方分権の中で、都道府県、市町村、市に任していくという視点が極めて大事ではないかな、このように思えてなりません。  そのような仕組みの中で、任せていって大丈夫なのかというような、問題の内容によってはあるのですけれども、しかし、少なくとも、都道府県知事や市町村長は四年に一遍は住民の審判を受けます。その審判の責任は住民、有権者が持っているわけですから、間違った人を選んじゃったということになるならば、四年後にはきちっと違う選択があるわけであります。しかし、建設省のやり方、まあ大臣が決めるのだということになれば、それはそれでいいのですが、大臣が責任をとってもらえばいいことなんでしょうが、実際は、仕組みとしては、やはり官僚というか、意思決定の仕組みはがっちりとできているのじゃないでしょうか。  そうすると、その人たちは四年に一遍責任をとらないですよね。審判を受けないですよ。その辺に、まあ大臣がしっかりしないからだと言われれば、国民が大臣を審判する、それは仕組みとしてあるわけです。しかし、官僚に対する住民の審判が届かないというのが現実ではないでしょうか。その辺も含めて、ぜひ御検討をいただきたいなというふうに思います。  総理、残された美しい日本、川や山林や緑、干潟、まだまだ残されていますよ。確固たる意思を持って、建設的な楽観主義で残そうじゃありませんか。いかがですか。
  86. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 吉野川の第十堰改修事業につきまして、今、委員と建設大臣との質疑応答をお聞きいたしておりました。  私も、無責任に物を申すことができないとは思いますけれども、二百四十五年にわたってこの堰があったということでございまして、この堰の果たした役割も歴史的にはあったのだろうと思います。  ただ、単純に考えまして、いろいろたび重なる、恐らく洪水で堤防も壊れ、住民の被害があったのだろうと思いますが、過去、歴史的にこういった事態がありましても、その責任を住民が問われ、かつ、その責任を補償するというような形は、それこそ江戸幕府以来なかったのだろうと思います。  しかし、今日には、万々が一にもそうしたことが起こりましてその被害が生じれば、大変なそれに対する国家的な補償というものも存在してくるわけでありまして、私も去年、那須その他で行われた、この地域の洪水、特に堤防が決壊したことによりまして多大な被害を生じたというようなところを見ますると、ある種の危険度というものを最大限に見ながら、そうした被害が発生することのないようにということでいろいろ計画されたのじゃないかと思いまして、住民投票についてもいろいろ御議論ありましたが、よって来るその責任もそうした方々が負うということになり得るのかどうかというような点もございますので、ぜひ、科学的な根拠も含め、そして災害が、災害というものは、この間の東北地域も、それは百年に一遍とか、一日で一年間の大変な降雨量が降ってしまったというようなケースもありまして、しかし、被害が起きれば当然被災者が出ますので、そういった点も含めまして十分検討し、住民の御理解もいただきながらするために、今御指摘されましたような情報につきましても、親切に、公開するものはして判断を仰ぐということが必要ではないか。  お聞きをいたして、適当な答弁になったかどうかはかりかねますが、私は今率直にそう考えておる次第でございます。
  87. 小林守

    小林(守)委員 それでは、時間も残り少なくなりましたので次に移りますが、OECD加盟の各国に対して、化学物質等の環境汚染物質の排出・移動登録制度というのがございます。これを加盟国は早急につくるように、そういうことなんですね。既にアメリカとかイギリス、カナダ、オランダ、フランス、オーストラリア、韓国などでは法制化されているというふうに聞いておりますが、簡単にその頭文字をとるとPRTRということであります。何の略字かは、ちょっと私も発音がよくできませんので申し上げませんが、環境汚染物質の排出・移動登録という非常に難しい制度なんですが、PRTRというふうに略称で言っております。  これを今、日本でも今国会で法制化しようという形で、環境庁や通産省がかなり詰めた議論をされているんだろうというふうに思うんですが、我々も、この問題は非常に重要な問題でありますし、特に、欧米先進国に比べて、化学物質の最も危険な毒性の強いダイオキシンなどの汚染は、欧米に比べて十倍以上進んでいるというのが現実に言われております。大気も、そして土壌も、水質も、欧米に比べて十倍以上汚染されているという数値が出ております。そういう現実を考えるならば、いち早く欧米水準以上のものを何とか、化学物質に対して、これは調査、データをつくるための、対策をとるためのデータをそろえるための制度なんですよ。そういうことで、相当思い切った、さすが日本と言われるような、対象物質も広げたものにしていかなければならないのではないかな。  少なくともダイオキシンの問題をとって言うならば、焼却主義の国、国土が狭いということもあるんでしょうけれども、燃やすことによってきれいになるというような感覚、考え方、これが非常に根強いんですね。これは日本独特の考え方があるんだと思うんですが、しかし、その焼却主義というものをやってきた結果が、ダイオキシンの汚染という形で欧米先進国よりも十倍も汚染されているという姿が出ております。  これがすぐに、人間の生活に、そして子供たちに、赤ん坊に影響が出るとは言えないと思いますけれども、しかし、長い時間かけて蓄積されたものについては、これはもうできるだけなくすことが求められるわけでありますから、そういう点で、十倍汚染が進んでしまっている、数十年おくれた、これを取り戻すためには十倍ぐらい厳しい内容の法制度でなければだめじゃないかというように思うんですね。  そういう点で、対象物質の範囲、それから有害な物質という有害性の概念、どちらかというと、今までは発がん性物質、これを有害だというふうにとらえていたようでありますが、今日では催奇形性という、奇形を生む作用をするんだ、生殖毒性と言われています、要は私たちの子孫を生みふやす機能が損なわれるという問題。神経毒性、内分泌毒性とか、いろいろな、ごく超微量の物質で人間の神経系統が、内分泌系統が狂ってしまう。こんな現象が環境ホルモンという問題でも明らかになってきているわけであります。  そういう点で、対象物質の範囲や有害性について私自身はこういうふうに考えておりますから、検討課題の中で現在、今相当議論しているんだと思うんですが、その中にぜひ加わらせていただきたいという意味できょう発言させていただいているんです。今後、法制化の段階委員会の中でもきちっとやっていきたい思うんですが、その辺について、今どんなふうに検討されているのか、お知らせをいただければと思います。
  88. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 これから答弁申し上げますことは、いずれも環境庁とよく打ち合わせた上での答弁でございます。  先生の第一点の御質問、有害性の範囲ということでございますけれども、現在、PRTR制度の対象とする化学物質の範囲については、人の健康等に対し有害性があることが判明しており、環境中に広く存在していると考えられる化学物質について、国際的動向も踏まえまして幅広く対象としていきたいと考えております。  具体的な物質の選定は、有害性についての国際的な評価基準等を踏まえ、専門家の意見なども伺いながら今後検討してまいります。  以上でございます。
  89. 真鍋賢二

    ○真鍋国務大臣 先ほど来、先生からいろいろな御心配をいただいておるわけでありますが、それらの問題につきまして、今通産大臣からもお話がございましたけれども、通産省の審議会であります化学品審議会、そしてまた環境庁の中央環境審議会において答申を得て、その後いろいろ論議を深めておるところであります。  やはり農林省とか建設省にもかかわる問題でありますから、各関係省庁と連絡をとりながら、おくれておるこの法案といえども立派な法案にしようということで、各省庁間で話し合いを進めていっておるところであります。  いずれにいたしましても、三月九日がこの提出法案の締め切りでございますので、法制局とも相談をしながら鋭意努力をいたしておるところでありまして、どうぞ今後ともよろしく御指導願いたいと思います。
  90. 小林守

    小林(守)委員 それじゃ、最後になりましたので要望させていただきますが、人体ばかりへの有害性でなくて、生態系への有害性、これをやはりきちっととらえてもらいたい。生態系への有害性なしに考えられない時代になっているわけですね。そういう点でぜひお願いしたい。  それから、この制度の中では、東京都の杉並区に清掃関係の中継所がございますが、いわゆる杉並問題、中継所問題。この周辺人たちの健康被害の問題を考えていった場合に、恐らく未知の化学物質の汚染が出ているのではないかなと思えてなりません。  予断は許せませんけれども、少なくとも九六年にその施設がオープンして、稼働して毎年百人ずつふえております。その障害を訴える人たちの数が百人ずつふえて、現在三百人を超えております。これは化学物質過敏症という病名、お医者さんのお名前があるんですけれども、この問題について、きちっと対応できるようなデータをつくる制度をつくるんですから、相当の化学物質も対象にしておかないと、杉並病の問題に対する対処のできない仕組みじゃないか。少なくとも、ああいうものにきちっと対応できるような制度になるように、ぜひ検討をお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  91. 中山正暉

    中山委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  92. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。肥田美代子君。
  93. 肥田美代子

    ○肥田委員 民主党の肥田美代子と申します。よろしくお願いいたします。  まず、総理質問させていただきます。  スウェーデンのエレン・ケイという人が、二十世紀を子供の世紀にしよう、そういうメッセージを世界に発信されましてから来年でちょうど百年でございます。子供たちにとってこの百年がどうだったかと私は振り返ってみたいと思いますけれども、まず総理は、世界じゅうの子供がこの二十世紀に本当に幸せだったかどうか、どういう御所見をお持ちでしょうか。
  94. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 二十世紀、子供たちがどうであったかというお尋ねに対するお答えはなかなか難しゅうございます。ただ、非常に思い起こされるのは、大変不幸な子供たちの姿がイメージとして浮かんできまして、あのベトナム戦争のときに裸で子供たちが泣き叫びながら追われておる姿とか、イラン・イラク戦争であの地雷原を子供たちが走り抜けて大変な被害が出たりしておりますし、あるいはアフリカにおける飢餓の状況で、ほとんど生死をさまよっておる、手足の細ったそういう子供たちの姿が非常に頭を去来するわけであります。  幸せなことは幸せでもう申すことはありませんが、子供たちにとっても、今世紀というものは大変厳しい、悲しいこともたくさんあったのではないかなと思うと同時に、ぜひ来世紀は、そうした悲劇が一つでもなくなって、まさに子供たちが未来を支える者として、よき環境の中で生き抜いていただき、かつ親となって子孫を残し、そして地球が平和なそういう社会になることを祈念しておる、答えになったかわかりませんが、そのような感想を持つ次第でございます。
  95. 肥田美代子

    ○肥田委員 総理は今、外国の子供たちのことに言及されましたけれども、私は、日本の子供たちを振り返ってみても、やはり受験戦争という本当に過酷な戦争の中で、そんなに幸せな子供時代を過ごしていなかったんじゃないかなという感想を実は持っております。  それで、二十一世紀は、我が国は、まだ体験したことがない、そういう少子化による社会の構造変化が現実のものとなってくる世紀でございます。このことに関しましては、小渕総理は、年頭のあいさつでも、今国会初頭の施政方針演説でも、安心できる子育ての環境、そして家庭や子育てに夢の持てる環境の整備、そういうことの必要性を述べておられます。これはまさに喫緊の課題だからですね。ですから、そういう認識をお持ちの総理に、これから少子化に対して政治はどういうことをしていったらいいかということについて御質問させていただきたいと思います。  ただ、考えてみますと、子供を産むとか産まないとかいうのは、実は夫婦とかまたは女性の選択でありまして、至って個人的なものであります。したがって、子供が少なくなるから社会に活気がなくなるとか、それから労働力が足りなくなるとか、福祉を支える人たちがいなくなるとか、だから少子化は困るんだ、そういう言い方は、やはり個人よりも社会を重視した趣が私には感じられまして、当事者である子供に対してもちょっと失礼じゃないかなという気もいたしております。子供は決してそういうことのために生まれてきたわけでもないし、そしてそういうことのために生きていくわけでもないんです。  ですから、少子化は、ある女性は女性の現在の社会へのもろもろの現象へのノーの表現であるとおっしゃっている。ノーだとおっしゃっているのですね。しかし、そういう考え方もありますけれども、私は、さらに言わせてもらえるならば、子供たちの大人社会への厳しいメッセージじゃないか、そういうふうにも受け取れるわけでございます。  総理は、この少子化という現象につきましてどういうふうに認識していらっしゃいますか。
  96. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 お話ありましたように、私、ことしの年頭会見でも、育児と教育、すなわち広い意味で子育てに対する安心について強調をいたしたところでございます。現在少子化が進行しておりますが、その背景として、特に女性にとって結婚や育児に伴う負担が大きく、結婚をためらうことや子育てと仕事の両立が難しいなどの原因が指摘をされておりまして、子供を産み育てるのにはこれらのことが制約要件となっておるものと考えられます。  こうした中で、若い男女が、ともに社会に参画する中で家庭を築き子供を育てていくという責任ある喜びや楽しみを体験できますよう、その制約要因を取り除くため、国、地域社会、企業、家庭を挙げて雇用のあり方や保育サービスの充実などに取り組んでまいりたいと思っておりますが、世界的に、子供さんが生まれてこられることにつきましては諸外国にも非常に差がございまして、ヨーロッパ社会とかと比べて、またアフリカその他の地域との差もございますし、また宗教的にも、神からの授け物だと考えるかどうかというような問題もございまして、いろいろの考え方があろうかと思います。  しかし、我が国におきましては、厳然たる事実として少子化の傾向にあることは事実でございまして、こうした趨勢が続いていきましたら、統計的には、来世紀、大変我が国の人口も減少してくるわけでございますし、そういう意味で、国家と個々人のそうした生活というようなものも相比較しながら考えていかなきゃならないと思いますが、傾向としては、現在の親の気持ちからいたしまして、子供さん方をかつてのように多く産み育てるという環境にない。その環境を何とか、政府といいますか、政治の立場からいえば、それをいかに改善していくかというところに焦点を絞って努力をする必要があるのではないか、こういうように考えております。
  97. 肥田美代子

    ○肥田委員 聞くところによりますと、総理は三人のお子さんのお父さんでいらっしゃいます。私も、三人の子育てを経験いたしました。その経験を振り返りましても、親、とりわけ母親というのは、子供のライフステージのそれぞれにいろいろな不安を抱くんですね。  今、妊産婦にとりまして、一番の不安はダイオキシンの存在でございます。  それで、このダイオキシンにつきましては、相手の実体が見えないわけですね。幽霊みたいな存在だとも言われておりますけれども、その存在が見えないだけに恐怖が増幅されるわけでございます。  このダイオキシンの汚染につきましては、海外では既に動物実験の検証もあり、そして生殖毒性を含めた人体への影響評価も着実に進められているというふうに聞いておりますけれども、厚生省は、ダイオキシンによる母乳汚染と胎児に与える影響に対する研究をいつごろから始められ、現在どの程度の成果を得ておられるのか。これが国民の目にはさっぱり見えないのですね。ただただお母さん方は不安なのです。ですから、その進捗状況についてちょっと御説明いただきたいと思います。
  98. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 厚生省におきましては、ダイオキシン類の汚染実態を把握するとともに、人への健康影響を解明するために、平成九年度から厚生科学研究事業というのがございまして、これによりまして総合的な調査研究をやっているところでございます。ちなみに、平成十年度は約六億円、平成十一年度は十八億七千万円という予算を計上いたしまして、取り組まさせていただいております。  なお、母乳につきましては、全国二十一都道府県におきまして、母乳中のダイオキシン濃度を測定するとともに、母乳で保育された乳幼児の健康状態に関する調査を実施しているところでございます。母乳中のダイオキシン類に関する調査でございますが、平成九年度にも四都道府県を対象として、母乳で保育された乳幼児のアレルギーあるいは免疫、甲状腺機能等の調査を行いまして、母乳中のダイオキシン類が乳幼児に与える健康影響調査について調査研究をいたしております。なお、人の胎児につきましては、現時点では特に調査を行っておりません。  これらの調査研究で得られた成果につきましては、取りまとめられ次第、逐次公表する予定でございまして、今後とも、ダイオキシン調査研究を積極的に推進して、その成果を国民に広くわかりやすく公表してまいりたいと思っております。
  99. 肥田美代子

    ○肥田委員 平成九年からお始めになっているということですから、もう数年がたっているわけですけれども、取りまとめ次第ということですけれども、それではいつごろをめどにして取りまとめられるのでしょう。
  100. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これははっきり申し上げられませんが、実は、委員も御存じのとおり、ダイオキシンの基準の問題等がございます。WHOで最近一キログラム当たり一ないし四ピコグラムというような基準を提示しておりまして、今厚生省と環境庁で、専門家で事務協議をきょうから始めておりますけれども、そういった問題も頭に置きながら、これを国民に発表するとなると、そういう基準値との絡みもございますから、そういう問題を含めて、できるだけ早急にいたしたいと思っております。
  101. 肥田美代子

    ○肥田委員 今大臣の方から、要するに耐容一日摂取量の基準値という話が出ましたので、これについてちょっとお尋ねしたいのですけれども、WHOでは、今までは十ピコグラムであったのを四ピコグラムにしようという提案をしておりますね。ただ、日本ではまだ検討中ですか、それとも、もうその数値はWHOに合わそう、そういう動きになっておりますか。
  102. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 WHOにおきましては、昨年の五月に一ないし四という数値を、一応私ども厚生省としても仄聞をしておりますが、それが正式なものでございませんで、中身はよくわかりませんでしたが、このたび、ある程度専門家の中間報告として出されておりますから、それをもとに統一した基準を検討してまいりたい、こう思っております。
  103. 肥田美代子

    ○肥田委員 大臣のお話を聞いておりますと、検討中、それから調査中というのはよくわかるのですけれども、毎日おっぱいを飲ませている母親の気持ちになりましたら、一日が千秋の思いなんですね。ですから、なるべく早くこういうデータを情報公開していただきたい。特に、マスコミにブリーフィングするようなそういう手段だけではなくて、一人一人のお母さんが納得できるような形で情報公開して、情報伝達していただきたいと思うのですけれども、大臣、いかがですか。
  104. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 おっしゃるような方向性でやってまいりたいと思いますが、特に母乳との問題は、検査期間も限定されておりますし、後でお話があろうかと思いますが、費用負担の問題等々もございますし、そして、ダイオキシンの基準の問題と母乳の中にどういう影響があるかということは極めて慎重を要すると思いますので、これは厚生省の実験結果と医者の間で必ずしも見解が統一されておりません。母乳の中にはないんだ、人工乳と比べて、大丈夫だという学者もありますし、その反対の説もあります。  そんなようなこともございますから、よく検討をして統一的な見解を出した上で、なるべく早くそういう方向で処理したいと思います。
  105. 肥田美代子

    ○肥田委員 母乳検査をしたいという母親がふえているわけです。それで、身近なところに検査機関がない。検査費用も一回当たり三十万から五十万ぐらいかかるわけです。ですから、この検査費用につきましても、十八億という予算をとっていらっしゃるわけですから、こういうことに少し回していただくわけにいきませんか。
  106. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 母乳中のダイオキシンの測定でございますが、確かにおっしゃるとおり、私どもでも、一検体当たり二十万円前後を要すると経験値その他から思われております。  したがって、これは、まだダイオキシンの基準値も決まらないし、それだけお金がかかりますし、また検査がどこでもできるということではございませんで、民間検査機関は国内に三カ所、それから国公立で三カ所ということでございますので、おのずから限定的でございます。  なお、この性格は、研究段階ともいうべき段階だと私どもは把握しておりますから、実際に不安な方々がおありだということもよく承知はしておりますが、それを診断行為として普遍的にやる段階にはまだ至っていないという感じでございます。
  107. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生省は、九七年ですけれども、「母乳中のダイオキシン類の安全性及び今後の母乳栄養の在り方について」という内部文書を出されております。  その中で、母乳中のダイオキシン類の摂取が乳児に与える影響は直ちに問題となる程度ではないと書いていらっしゃって、いわゆる断乳はしなくてもいいというような御指導でありました。厚生省は、また、母乳中からのダイオキシン類の摂取は短期間であるため、そのまま一日摂取量を用いて安全性を検討することは妥当ではない、そういう意見も出していらっしゃいます。  これは、私、ちょっとおかしいなと思うのです。実は個体差を無視した意見ではないかと思うわけですね。といいますのは、これまで、環境汚染でありますとか薬物被害の体験からも私たちは学習してまいりました、毒性の与える影響は一人ずつ違うのだということを。ですから、短期間の摂取だから安全である、そういう根拠はどこかにございますか。
  108. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御指摘のように、平成八年に、母乳中のダイオキシンに関する検討会をいたしましたその報告書を提出してございます。  母乳中のダイオキシンの濃度につきましては、特に母乳につきましては、通常一年間程度の短期間の摂取である。つまり、母体の方でなくて赤ちゃんの方ですね。受けるのが大体平均的に一年程度の母乳給与であるということからして、生涯にわたって摂取する場合の耐容一日許容量、これはTDIでございますが、これをそのまま用いて安全性を検討することは必ずしも妥当ではない。つまり、一ないし四ピコといっておるのは、一人の人間が生涯それを摂取した場合の一キログラム当たりの一日当たりの容量を定めたものでございますから、一年くらいの哺乳期間でございますれば、それは一生を通じての基準値そのものではないということが言えるのではないかと思います。  それからもう一つは、母乳が乳児の発育、感染防止、栄養補給に与える効果が大きいことがございますので、母乳栄養を推進していくべきとの報告をしておりますが、この報告につきましても、都道府県、関係団体によく周知しておりまして、現在も、母乳について警鐘を打ち鳴らしておるというような段階ではないように思います。
  109. 肥田美代子

    ○肥田委員 警鐘を打ち鳴らす段階ではないとおっしゃるけれども、例えば、新生児と大人とは体の大きさも違いますけれども、まず毒性に対する感性が違いますね。ですから、短期間といえども、私は、新生児に関しては大変な心配をしてもいいと思うのですね。  ですから、確かに母乳を飲ませるという大変大きなメリットもありますけれども、それとダイオキシンをはかりにかけて、では、母乳のメリットの方が少し大きいからということで厚生省がまだ楽観していらっしゃるとすれば、少し甘いんじゃないかなという気がするのですけれども、大臣、もう一度お願いします。
  110. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと簡潔に申し上げ過ぎた感じがいたしますが、ダイオキシンの毒性につきましては、動物実験等では種々の毒性が確認されております。しかし、人の健康に対する影響につきましては、まだ科学的に解明されていない部分が多いというのが現実でございます。そうした意味で、先ほど申しましたように、厚生科学研究におきまして、総合的な調査研究をやっておるところでございます。  それで、ダイオキシンの発がん性あるいは催奇形性ということが言われておりますけれども、これにつきましても、平成九年の二月ですが、WHOの下部機関であるIARC、国際がん研究機関ですが、ここにおいて、高濃度の暴露を受けた人の疫学データをもとにいたしまして、人に対して発がん性があると評価をされている事実を承知しております。  また、ダイオキシンの催奇形性につきましては、ダイオキシンをラット等に投入した場合に高濃度で催奇形性を示す事実が把握されておりますが、人における催奇形性とダイオキシンとの関連は、まだ因果関係が確認をされていないという状況であると理解をいたしております。  しかし、長期にわたる微量のダイオキシン暴露と人の健康影響につきましては、そういう意味で国際的にまだ十分解明されていないという点もございますので、先ほどのようなことを申し上げた次第でございます。
  111. 肥田美代子

    ○肥田委員 因果関係がはっきりしたときにはもう遅いわけですから、何とか早く研究成果を出していただきまして、母親たちを安心させていただきたいと思います。  厚生省は、平成四年ですけれども、アトピー性疾患調査報告書で、人工保育よりも母乳保育の方がアトピー性皮膚炎の発症率が高いと指摘しておりますね。それから七年がたっておりますけれども、この間、母乳の中に含まれるダイオキシン類とアトピー性皮膚炎の発症の因果関係は解明されておりますか。
  112. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 平成四年度の実態を申しますと、アトピー性疾患の実態調査をやりまして、この報告書では、人工栄養の乳児に比べまして、母乳保育の乳児にはアトピー性皮膚炎のある者が多くなっているということでございます。  しかし、この結果につきましては、医学界で必ずしも評価が一致していないというのは先ほど申したとおりでございますが、医学界の通説と相違しておりますので、専門家の間で、調査方法を含めてその解釈をめぐって議論がございます。  ちなみに、アトピー性疾患実態調査によれば、厚生省の調査では、十二カ月児でアトピー性皮膚炎のある者が、母乳では八・〇、人工乳では五・八ということでありますが、今これに対する両論があるということを申し上げました。  本年度も、厚生科学研究費の補助金で、母乳で保育された乳幼児の血液検査等を行いまして、母乳中のダイオキシン濃度と、それを飲んだ乳幼児のアレルギーの問題や免疫、甲状腺機能等の調査を行いまして、母乳中のダイオキシン類が乳幼児に与える健康影響について調査研究を行っておりますが、年度末までに集計をいたしまして、なるべく十一年度の早い機会に結論を出すようにしたいと思っております。  委員の御指摘のとおり、平成四年にやって以降、これが行われていなかったというのは、多少私も疑問に思いましたので、それを問いただしたところ、そういうような経過があるということでございます。
  113. 肥田美代子

    ○肥田委員 これもまさに子供たちにとっては死活問題に近いことでございますので、先ほどから調査中、それから研究中、いろいろございますけれども、ぜひ頑張っていただきたいと思いますね。母親たちは、厚生省を頼りにしているんですから。  それで、総理に伺います。  こういう状況の中で、十八億という予算が計上されましたけれども、特に子供たちの安全性に対して、国を挙げてどんどん応援していくぞ、厚生省のおしりもたたいていくぞ、そういう御決意をちょっとおっしゃってください。
  114. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 厚生省としても、省を挙げてこうした問題について取り組んでいると思いますし、特に、弱いといいますか、子供たちですから、そうしたことに影響の起こってくるような問題については、より深く関心を持って、いただきました予算につきましては、これを適切に運用させていかなければならない、こう考えて努力をいたしたいと思います。
  115. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは次に、乳幼児医療についてお尋ねしたいと思います。  厚生省の小児救急医療のあり方に関する研究班、そこの全国調査によりますと、全国の医療機関などで調べた結果、小児科医師が毎日当直できる施設はわずか一六%、検査が可能なのは、血液検査が三八%、エックス線が三二%、また、小児科医が不足している医療施設は実に七一%ございます。同研究班は、このまま放置すれば、ごく近い将来、小児医療は破綻し、社会問題化する、こういうふうに警告しております。過日、小児科医の過労死も報道されているところでございます。  厚生大臣は、この研究班の提言をどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  116. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御指摘の平成八年度の厚生省の研究班の報告書によりますと、小児救急医療につきまして、このまま放置すれば、小児救急医療は破綻するので、早急に対策を講ずべきである、御指摘のようにまとめられております。小児の救急医療体制の強化というのは大変重要な課題だと私も思います。  厚生省におきましては、その後、救急医療体制基本問題検討会というのを設けまして検討を行いまして、平成九年の十二月に、地域の救急医療機関の機能分担に基づきまして、初期救急医療機関の支援をする体制をつくることが望ましい旨の報告がなされております。  この報告を受けまして、私どもとしては、すべての二次医療圏、おおむね三十万人くらいを範囲にいたしますが、夜間と休日に小児科医を確保して小児の救急医療に当たる医療機関を支援する体制をつくるための新たな事業を平成十一年度予算に計上したところでございます。対象としては、百十八医療圏くらいを三年計画で全国整備したいと存じておりますが、今後とも、小児を含めた救急医療体制は極めて重要でございますから、充実に努めてまいりたいと思います。  なお、委員の御指摘の、小児科の専門医が不足しているのではないかとか、あるいは若い医者の過労の問題等も御指摘がございました。確かに小児科の専門医は数としては不足していないようでございますが、ただ、これは非常に、二十四時間勤務みたいな激務であります。したがって、若い先生方が小児科医療に従事する割合が非常に少なくなっているようでございますが、そういうような問題が一つあるということ。それから、小児医療の不採算性という問題があるようでございます。そういった点は改善していきませんと、小児科医療の充実は期せられませんから、担い手の対応をきちっとすべきである、そのように感じております。
  117. 肥田美代子

    ○肥田委員 今の大臣の御答弁は、小児科医療の医療報酬についてもこれから改めていこうという御意思もございますか。
  118. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今申し上げたような現実にございますから、それをやはりある程度均衡のとれた配置にするなり、あるいは若い先生方が拠点的なブロックの病院にある程度適正配置ができるようなこととか、そういう指導はしていかなければいかぬということでございます。
  119. 肥田美代子

    ○肥田委員 そうしますと、採算が合わない小児科医療ということを大臣はおっしゃいましたけれども、医療報酬についてはどうですか。重ねて伺います。
  120. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 採算性の問題を申し上げましたが、医療保険におきましては点数評価によりましてその報酬等が保証されておりますので、こういった問題も、中医協なりで診療報酬の改定のときにやはり指摘して、検討すべき必要があれば検討し、対策を講じなければならぬ、こう思います。
  121. 肥田美代子

    ○肥田委員 その点ぜひ進めていただきたいと思うわけでございます。  昨年の秋でございますけれども、毎日新聞に「モモちゃん笑って」という連載記事が載せられました。このモモちゃんというのはミヒャエル・エンデの「モモ」からとった名前だそうでございますが。そのモモちゃんは、実は十八トリソミーというちょっと聞きなれない病名でございますけれども、要するに十八番目の染色体に異常があって、発育障害とか先天性心疾患を合併すると言われているわけですね。  このモモちゃんが今実は病院のベッドの中で小さい命を輝かせながら一生懸命新生児医療の改善を訴えている、私にはそういうふうに思えるわけでございますけれども、今新生児に対する医学は進歩しております。ですから、例えば低酸素性脳症で出産した子供も体重四百グラムで出産した子供も助かるわけですね。ところがその後が大変なんです。  実は、こうした子供の出生率が高まって子供たちが助かっていくんですけれども、新生児集中治療室というのが不足なんですね。それで、そこにとりあえずは預かってもらえるわけですが、その後行くところがないわけです。というのは、その後、要するに中間施設でありますが、小児の集中治療室がないんです。小児ベッドも不足している。そうすると、モモちゃんみたいな子はいつまででも新生児の集中治療室にいなければいけないという状況があります。ところが、じゃ、その後緊急で運ばれてきた子は、その新生児集中治療室が満員なものですから、どうしても病院病院にたらい回しにされるという状況があります。  ですから、このことを解決せずに、私は、お母さんたちの出産それから最初の育児の不安は解消できないと思うんですけれども、大臣いかがでしょうか。
  122. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 「モモちゃん笑って」というのは資料を拝見させていただきました。大変感動的といいますか非常に気の毒なといいますか、そういう感じを受けました。  それに関連いたしますけれども、今お尋ねの新生児の集中治療室、NICUでございますが、これを持つ病院の整備は大変私は重要なものだと思いますが、これらのNICUを整備すること、それから、今お話しのように、後方ベッド、つまり、その集中治療室から出て、終わった後に移る新生児室または小児の一般的な病床でございますが、御指摘のようにこういったものはやはり非常に重要だと思います。したがって、そういうものも整備の対象として今後充実を図っていきたいなと思っております。  エンゼルプランでも、特に周産期あるいは新生児の医療のための施設設備の整備推進を掲げておりますが、これらもひとつ重点的に整備しなければならぬ、そういう基盤をつくることが小児医療対策になるというふうに思っております。
  123. 肥田美代子

    ○肥田委員 大臣から今周産期医療についてのお言葉がございましたので、これについてちょっと伺いたいと思いますけれども、平成八年度を初年度として各都道府県に一つの施設、おおむね四十七カ所の総合周産期母子医療センターを設置しようという計画がございますね。ところが平成八年度は、目標五カ所に対して実績は四カ所、平成九年は目標十二カ所に対して実績は五カ所、平成十年は目標十二カ所に対して実績八カ所でございました。そして平成十一年度は、ついに目標を下方修正して十カ所にしております。  これは、予算化した国の補助金は宙に浮いたままになります。どこに使われるかわからない。子供たちが待ち望んでいる医療センターは遅々として進まないという状況がある。私は、まことに残念だと思うわけです。  ですから、大臣が今周産期医療についても頑張って努めているとおっしゃったわけですから、地方自治体の財源不足を理由にしないで、もう少し国で積極的な進め方ができないものかと思うのですけれども、いかがですか。
  124. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 周産期医療体制ということで、妊娠、出産から新生児までの高度、専門的な周産期医療を総合的に提供する施設として、総合周産期母子医療センターというものの整備を進めておりまして、現在八つの府県に運営費等も補助いたしております。本センターは、東京都のように運営費補助を受けていないところもありますが、それらを含めて九都府県、十五カ所ということでございます。私どもとしては、これで十分だと思っておりません。現在十二の自治体が本センターの整備に向けた検討を行っておりますので、今後とも、都道府県において早期に設置されるよう、厚生省としても指導してまいりたい。  なお、総合周産期母子医療センターにつきましては、三分の一の補助ということで、平成十一年度には二億八千万、一カ所当たり二千八百万くらいの国庫補助をいたしておりますが、ひとつ、今後ともその充実には努めてまいりたいと思います。
  125. 肥田美代子

    ○肥田委員 四十七カ所、最初の目標どおり、なるべく早い時期にこれをつくっていただきたいと重ねてお願いしておきます。  それから、先ほど診療報酬の話を申し上げたのですけれども、例えば、子供が集中治療室に入りまして、一日どのぐらい概算でかかるというふうに思っていらっしゃいますか。
  126. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 新生児の集中治療室、NICUにおきまして、未熟児でありますとか新生児に医療を提供した場合には、現行の診療報酬の上では、新生児特定集中治療室管理料ということで適切に評価をして対応しております。これは包括的なやり方でございます。  そこで、これは六十一年に新設されましたが、二年に一度の診療報酬改定がございますから、しばしば見直されてまいりましたが、平成十年四月の診療報酬改定におきましても、一日当たり一床七千三百点から七千六百点、一点は十円でございますから七万六千円に引き上げたところでございます。  これだけかといいますと、これは定額的な処置、包括的な処置でございますから、そのほか静脈注射をやったり点滴をやったりというようなことがございますと、それに付加されてまいりますから、それよりもさらに加算されていくということになりますが、それは具体的なケースに応じてその多寡が決まってくる、こういうことでございます。
  127. 肥田美代子

    ○肥田委員 というわけでございますから、重ねてお願いしたいのは、診療報酬体系の中でこの小児医療については特段の発想で善処していただきたいと思います。お願いいたします。  それでは次に、子供の虐待についてお話を伺いたいと思います。  この子供の虐待は、厚生省によれば、一九九七年には、全国の児童相談所に寄せられた件数は五千三百五十二件でございます。これは調査を始めた九〇年の五倍になっております。公的な記録が手元にないので新聞報道から拾い出したのですが、毎日新聞の調査でもやはり、九七年の一月から九月までの間に虐待が原因で死亡した子供は全国で五十七人、これは私、大変な数だと思うのですね。被害者のほぼ九割は六歳以下の子供です。  子供虐待の動機は千差万別ですけれども、やはりはっきり言えることは、子育てに対する相談相手がいない、それからまた仕事上のストレスが将来不安にかかわり合っているとか、保護者のフラストレーションが大変大きな原因になっていると思うのですけれども、厚生省と文部省はこの子供虐待について何か連携したアクションプログラムをお持ちでしょうか。両大臣に伺いたいと思います。
  128. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、委員の御指摘のように、平成二年に千百件くらいでございましたものが平成九年には五千三百五十二件になっているというのは、私も、最近非常に急増をいたしておりますので、大変憂慮すべき事態だと思っております。  そして、虐待の相談件数、報告でございますが、これらが、いろいろの報告様式がございますが、家族あるいは福祉事務所等を通じての報告が多いということと、それからもっと驚きは、五千三百五十二のうち身体的な暴行を受けているのが五二%であるということ。それから、保護者の怠慢ないし拒否が千七百件近く、性的暴行が三百十一件、心理的虐待が四百五十八件というようなことで、さらに驚くべきことは、これをだれが実施しているか、虐待者はだれであるかというのを調べますと、実に実母、実のお母さんが五五%で二千九百人を占めているという、これは衝撃的な数字だと思って私は受けとめました。実父が、お父さんが、実の父親が二七%、千四百四十五人ということでございまして、その数でもって八三%近くを占めておるということでございます。  これは今委員のおっしゃられたように、家庭における問題が非常に大きい、また、その家庭を支える社会の問題もあろうかと思いますが、非常にこれは私どもとして看過できない問題であろうと思います。  なお、虐待児童の年齢構成を見ますと、やはり義務教育の終了前が圧倒的に多うございまして、小学生で三六%、六歳児以下で四四%くらいでございますから、やはりそういった点も考慮しなければなりません。  そういうことで、私ども厚生省としては、家庭における子育て支援と一言で言いますけれども、こういう悲惨な状況というものがございますから、早期発見、早期対応を図っていくための啓発をやったり、児童相談所への指導強化等、種々の取り組みをやってまいりたい、こう思っております。  なお、文部省との関係では、私、これは当然子供の教育、義務教育の問題もございますから連携があると存じますけれども、具体的にどういう機関でどのようになっているかは今ちょっと承知しておりませんので、必要であれば事務当局から報告させます。
  129. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 データにつきましては、ただいま厚生大臣より詳しくお話があったとおりでございます。  子供虐待防止のためのアクションプログラムにつきましては、昨年六月十九日に子供と家庭を支援するための文部省・厚生省共同行動計画を策定いたしました。そこに教育・児童福祉施策連携協議会というものを設置いたしまして、現在、両省のさまざまな施策を連携して進めようとしているところであります。  児童虐待防止につきましても、学校教育機関において児童虐待を発見した場合に直ちに児童相談所との速やかな連携を図ることや、虐待の防止、早期発見及び再発防止に向けた地域における連携体制の構築について、現在共同研究を進めております。  今後とも、児童の虐待に対しましては、何とか防止をすべく両省で協力をし、さらにまた文部省といたしましては、例えば都道府県教育委員会等々を通じまして、学校の教職員の人々にも、早い時期に虐待を見つけ、それで速やかに児童相談所等に相談をするように、こういうふうなことを連絡を図っているところでございます。
  130. 肥田美代子

    ○肥田委員 ぜひ、厚生省、文部省は、連携してこれからもアクションプログラムをどんどん進めていってほしいと思います。  それでは、厚生省にもう一度お尋ねしますけれども、児童福祉法の二十五条で、親から虐待されている子供に気づいたすべての人が通報の義務があると定められております。  児童相談所の家庭への立入検査、それから児童の一時保護、施設入所、親権剥奪の申し立てなどの権限も児童相談所にもあります。しかし、児童相談所は慢性的な人手不足でございます。通告を受けてもなかなか十分に対応できる体制にはなっていない。  特に、現行法で、家庭の中へ踏み込み、立入検査をする場合に、その基準がないんですね。加えて、職員が、その子供を虐待している親から危害を受けないという安全の保証はないわけです。ですから、このガイドラインを実は早くつくらなければ、子供たちを守っていけないんじゃないかと思うんです。  欧米諸国では、子どもの権利条約を締結しました際に国内法が改正されまして、通告制度や親のケア、虐待に対する重罰化が進んでおりますけれども、特にアメリカでは、医師や教師、専門家が通告を怠ると処罰されるようにもなっておりますし、資格も剥奪されると書いてありますけれども、日本ではその通報義務の実効性を上げる方法がまだ確実ではない、それから立入検査のガイドラインもないということでありますけれども、この通報義務の実効性を上げるためと、それから立入検査のガイドラインについて、大臣、お願いします。
  131. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 児童福祉法の二十五条によりますと、福祉事務所への通告でありますとか、あるいはそれを通じての児童相談所への通告等が規定されておりまして、これはなるべく実施していかなければなりません。  同時に、立入調査も二十九条という条文によりましてできることになっておりまして、判定をした上で、場合によると一時保護をするなりして処理方針を決定してまいりますが、それは、強制的な場合は、施設入所をやる場合には、親と児童とが同意すればよろしゅうございますが、そうでない場合は、家庭裁判所等を通じて措置をいたして施設入所措置をやるというような建前になっておりますし、それからまた、都道府県に児童福祉審議会というのを設置してございますので、施設の入所者について、不同意の場合にはそれにかけるとか、あるいは児童福祉士指導の措置によって、そういうプロセスを経て措置するとかいうような、いろいろ諸手続が進められております。  問題は、これが委員のおっしゃるとおり本当に実効性が上がっているのかどうかという点でございますから、これは、児童虐待対応の手引というのを今までもつくっておりましたが、もっともっと精緻なものをつくりまして、現在三百ページぐらいの詳細なものを作成中でございますから、これによって児童虐待に対して児童相談所が適切に対応できるための対応ができるのではないかと思っております。  その詳細の内容につきましてはまだ発表しておりませんけれども、初期対応をどうするかとか、立入調査等の具体的方策はどうするかとか、あるいは児童相談所における被害児童の心理治療をどうするかとか、あるいは被虐待児の心理的治療等々、いろいろの問題、児童相談所の専門機関が遵守すべき専門的事項について解説をしたものを今準備中でございまして、なるべく早くこれを出したいと思っております。  なお、主任児童委員というようなものも、ボランタリーでございますが、民生委員と兼ねてお願いしておりますので、そういった方々の登録もきちっとして、そういうところにマニュアルも示して実効性を上げたい、こう思っております。
  132. 肥田美代子

    ○肥田委員 大臣、恐縮ですが、そのガイドライン、いつごろ現場に回りますか。
  133. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、ただいまのところいつという限定は申し上げられませんが、なるべく早く今年やりたいと思っております。
  134. 中山正暉

    中山委員長 児童家庭局長が来ておりますが、手を挙げておりますから、呼びましょうか。横田児童家庭局長
  135. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童虐待のための対応の手引でございますが、現在鋭意作成中でございまして、できれば今年度中にも完成したいというふうに考えております。
  136. 肥田美代子

    ○肥田委員 私は、史上最高と言われました平成十一年度予算の中で、いわゆる子供関係予算はどのぐらいあるかなというふうに思いまして、各省から数値を挙げていただきました。それを合わせてみますと、全体予算のおよそ九・四%でございました。  総理も少子化社会に本当に対応しようという強い御決意をいただきましたけれども、この史上最高の八十一兆円という予算というふうに言われておりますけれども、その中で収入が四十七兆円ですから、恐らくたくさんの借金を子供たちに残すわけでございますね。この数字は当たっているかどうかの確認を私はしておりませんけれども、おおよそ子供一人が五千万円ぐらいの借金を将来担っていくことになるというようなことを週刊誌で見たことがあるんですけれども。そういう大きな借金を子供たちに負わせる割には予算の中の九・四%、一割に満たない子供のための予算というのは少し少ないんじゃないかなという気はするんですけれども、総理はどう思われますか。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お話を大変注意して伺っておるんでございますが、御承知のように、予算そのものは国民全体に向けられたといいますか、男もあり女もあり、お年寄りもあり子供もありということでございますから、全体としての予算、国民全体という観点がございますので、特にお年寄りのための予算、子供のための予算というのは、ないわけではございませんけれども、それだけがそのためであるというわけでもございません。  肥田委員が御質問に先立たれて、私どもの方の主計局に子供関係予算を書き出してみろとおっしゃったそうで、それは大変に実は事務的には難しいと申し上げたそうでございますけれども、お話伺っておりまして御主張の意味はわかりますので、これからも心がけてまいります。
  138. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 後世の方々に大変な御負担をかけるということでございまして、そういう意味で、大変財政的な負担を負わせることになりますし、その点は大変残念に考えておりますが、ぜひ予算全体が効果的に経済を押し上げることによりまして今の子供たちができる限りその負担額が減少するように、またよりよい、住みよい後世の社会をつくり上げるというために現下この予算を編成させていただいておるわけでございまして、その効果を十分発揮のできるようにこれからも十分目配りをして努力をしていかなきゃならないと思っております。
  139. 肥田美代子

    ○肥田委員 ぜひ予算の上でも子供たちに厚い、温かい国であってほしいと願っております。  一昨年でございますけれども、国際子ども図書館設立推進議員連盟が要請いたしまして、総理のもとに子どもの未来と世界を考える懇談会が発足いたしました。懇談会は六回ぐらい会合が持たれまして、実は二月上旬に提言をまとめられます。  これは、世界に通用する国際人をはぐくむために私たち大人が何ができるか、そういうことがテーマのようでございますけれども、これは私、大変いい懇談会であり、これが大きく成長していきますと、実はなぜいいかと申し上げますと、この懇談会の提言を受けましてもし一つのシステムができるとすると、ここには現在は七つの省庁の方々がお集まりいただいているのです。それぞれに子供政策について持ち寄ろうじゃないか、そういう案が出ておるようでございますけれども、私は、七つと言わず、この懇談会の提言に基づいてシステムができるとしたら、すべての省庁がここに集まっていただいて、子供政策について一元化した予算を考えていこうじゃないかという提言をしていただきたいと思うのですが、総理、まだこの提言が出ておりません間に御質問して恐縮なんですけれども、おおよそ内容はお聞きいただいていると思いますので、これに向けて総理はどのようにしようと思っていらっしゃるか、少し御決意のほどを伺いたいと思います。
  140. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今御指摘の子どもの未来と世界について考える懇談会が一昨年十二月の発足以来精力的に御議論いただきまして、近く最終会合におきまして提言がまとめられる運びになっておるところでございます。  提言におきましては、日本人としての自己を確立し、世界で評価され、活躍できる人材を育てるための有意義な施策が盛り込まれるものと承知をいたしております。子供たちを世界に通用する日本人として育てることは、活力ある未来を創造する上で極めて重要な課題であり、政府としては、関係省庁が一丸となって、これを着実に実施するべく、最大限の努力を払う所存でございます。  さらに、国民各層におきましても、提言を真剣に受けとめ、国民的な広がりを持った取り組みが促進されることを期待いたしておりますが、かねてから児童の教育問題に大変御熱心な肥田議員のいろいろの御提言等も参酌をしながらこの取りまとめに取り組んでおられると思いますが、これは、前の橋本総理のときに、肥田議員初め熱心な皆さんのお考えもあって懇談会が設置されたと聞いておりまして、私もそのメンバーシップを拝見いたしましたところ、非常に、何といいますか、それこそマラソン選手の有森さんから始まりまして、あいうえお順でございますけれども、大変ユニークといいますか、いろいろなところで御活躍されておられる方々で、これだけバラエティーといいますか、いろいろの層の方がお取り組みいただいたという懇談会は珍しいのではないか。したがって、その御提言も大変楽しみに実はいたしておる次第でございます。  どういう提言が出てくるかわかりませんが、それを予算面で、一元的な取り組みの予算の仕組みを考えたらどうかということもございますが、この提言を受けました以降、どのような形で、予算をつくり上げるのに、また、よりこの提言を生かし得るかどうかについて、その段階で検討させていただきたいと思っております。
  141. 肥田美代子

    ○肥田委員 総理大臣が今、大変積極的な御答弁をくださいました。  それで、私は一つ御提言申し上げたいんですが、今のその経済的な部分でございますけれども、例えば、子供基金というようなものを立ち上げる。これは大蔵大臣、嫌だなと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、子供基金というのは、政府だけに頼るのではなくて国民的に、例えば子供にも一人百円ずつ、くれる子供たちにもらって、国民的な広がりで子供基金というのをつくって、そして子供政策をどんどん進めていこうじゃないかと。そういうふうな形にしていくと、かなり国民の皆さんが参加しているという意識も生まれるんじゃないかと思うんですけれども。総理、こういうことに応援してくださいますか。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、この懇談会のいわば結論を年度内を目指して皆さん御議論していらっしゃるらしいんですが、その今の段階のことをちょっと聞かせていただきますと、この関連で、子供の交流と協力の輪を広げるため、子供参加型の基金の設立を検討すべきであるというようなことを中心に御議論があるらしいんです。  その基金が何の役割を果たすのかというようなことは、あるいはこの御答申を受け取った方がもう少し考えるべきなのかもしれませんが、ちょっと方向が読めないので、もう少し、どういうことにされるのかをあるいは詰めていただいたらいいのかなと。意味のあることだと思いますので、国としてもお役に立つことがあれば、それは私はお役に立ったらいいと。今の方向がちょっとよくわからないということを、これを拝見して思っております。
  143. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今大蔵大臣から、国の立場での財政支出の問題についてお触れがありましたけれども、肥田委員のお考えをそんたくをさせていただきますと、子供たち自身も何らかの意味で基金をみずから提供したらどうかというようなお考えもあるやに、ちょっと拝聴いたしました。  例えば、子供さん方は自分たちでこども銀行みたいなものをやっておりまして、ある意味で、そうした利子なども、みずからそういうものを蓄積をして、子供たち全体がみずからお金を集めて、そしてこうした運動を展開するというようなことになれば大変理想的な姿に、もちろん今大蔵大臣お話しのように、必要とあれば国の方からの助成もいたしますが、子供みずからがみずからの将来についてそうした形のものができ上がるとすれば大変望ましいことだ、こうお聞きをいたした次第でございます。
  144. 肥田美代子

    ○肥田委員 時間が参りましたので終わりますが、ぜひ二十一世紀を子供の世紀にしよう、そういう意気込みで、閣僚挙げて、皆さん、内閣こぞって頑張っていただきたいということを最後にお願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  145. 中山正暉

    中山委員長 これにて肥田君の質疑は終了いたしました。  次に、赤松正雄君。
  146. 赤松正雄

    赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。  私は、日米安保条約というものが、もちろん永遠ではないにせよ、当面は堅持すべきだという立場に立っている身でございまして、日米同盟関係をより成熟したものにしていかなければならない、そういう立場でありますけれども、その私の立場からいたしましても、今回、今、国会に提出をされておりますいわゆる周辺事態法案、これにつきましてはいかにも不審な点が多い。なぜ今この時期に、周辺事態法案という名の限りなく日本有事に近い、いわば準有事ともいうべき、日本の参戦対応法案ともいうべき問題法案というものが急いでこの国会で成立を図ろうとされているのか、疑問に思うわけであります。  幾つかの論点があろうかと思いますけれども、きょうは、周辺事態の定義、総論的な部分ですけれども、その事態への対応、法律では二条に書かれているところですけれども、それから国以外の者への協力、法律では九条に入っておりますけれども、この三点を中心に、いわゆる旧ガイドライン、そして新しいガイドライン、新旧ガイドラインの比較を通じて今申し上げた三つの問題点を明らかにしたい。一体どんな事態が起こったら日本が国を挙げて協力をするということになるのかということについて、多くの国民の皆さんが不安に思っているその点について質問をしたい、こんなふうに思います。  まず冒頭に、この予算委員会が始まってから最初の二日間ほどの間に、小渕総理は、私の知る限り三つの訂正をなさったと思います。一つは、菅民主党代表が、この周辺事態ということの概念定義に基づいて、日米安保条約の範囲を超えるということがあるのかという問いに対して、絶対あり得ないことでございますと答えられた問題が一つ。それからもう一つは、周辺事態の範囲について、中東、インドネシア、こうおっしゃった。この問題。そしてもう一つは多国籍軍への武器弾薬輸送についての問題。この三つのうち三番目の問題は、政府が統一見解をお出しになったということで、あえてここでは問題にしませんけれども、前二者の問題については、私は改めてここではっきりさせていただきたいと思います。  といいますのは、これは当日の速記録を見させていただきましたけれども、総理の御答弁に対しては、直接総理はその後で答えられないで、高村外相が出られて、どういうふうに答えられたかといいますと、日米安保条約の要するに米軍の活動範囲というのは、極東にとどまるものではなくて、極東の周辺ということでありますし、日本周辺が極東を超えないとか超えるとか、そういう話は全く関係のないところであると答えられているわけです。  これは、私は非常に重要な問題だと思うのですね。といいますのが、総理がどういう文脈の中で絶対あり得ないことでございますとおっしゃったのか。これは、かつて外務省の北米局長が同じ趣旨の答弁をされて、更迭かどうかという問題はまた別の問題だろうと思いますけれども、されている。そういう大変重要な答弁をなさっている。これについては、翌日総理がそれなりに見解を述べておられますけれども、あの日の議事録を見る限り、総理は何もおっしゃっていなくて、高村外相が補足をというか、答弁しておられる。  ということは、総理がおっしゃったのは、要するに、周辺事態ということに関しての地理的な問題ではなくて、いわゆる日米安保条約という枠を超えるんじゃない、それは絶対あり得ないことでございます、こうおっしゃったのか、それとも、周辺事態という概念そのものについて、旧来言われてきた極東あるいは極東周辺といった概念を絶対超えないとおっしゃったのか。これは、そのときの答弁を見る限りでは非常にはっきりしないわけであります。  ということが一つと、先ほどのインドネシアをインド洋に変えられた問題、これも、簡単に間違えましたといったことでは済まされない問題だと思います。現に、メディアでは、総理のあの発言を何となくひとり歩きさせるような書き方をしているのもあるわけです。  したがって、そういう意味で、きょうのこの場面で周辺事態についての考え方を総理のお口から改めて聞かせていただきたい、こんなふうに思います。
  147. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 お答え申し上げます。  まず、三点について私が訂正をした、こういうことでございますが、一部、顧みて舌足らずの点はあったかと思いますが、またケアレスミスといいますか、そういう点もありまして正した点はございますが、真意を改めて申し上げさせていただければ、まず第一の、安保条約の対象の枠内を超えないかということにつきましては、これは、法案は安保条約の目的の枠内であり、安保条約を超えることはない、すなわち、安保条約の目的が日本の安全及び極東における平和と安全の維持であり、法案が日本の平和と安全の確保に資することを目的としており、日本の安全に着目したものであるという観点でこのような答弁をさせていただきましたが、若干この点についてあるいは誤解が生じたとすれば、政府一体でございますので、外務大臣から御答弁を付記して、いたしていただいたことで御理解をいただきたいと思います。  それから二番目の、多国籍軍に対する武器弾薬、これを運ぶことができるかということにつきましては、そのときも答弁しましたが、これは武力の行使と一体にならないという範囲においては、憲法上では許容されるものであるというお話を申し上げました。  ただ、このことを政府の政策として行うかどうかについては、後ほど官房長官が記者会見で申されましたので、これは私の発言とそれから官房長官、すなわち政府一体の考え方として、あわせて政府の基本的な姿勢を申し上げさせていただいたわけで、御理解いただきたいと思います。  それから、インドネシアということにつきましては、本当にこれは、中東ないしインド洋ということで従来の国会でそれぞれの担当の者が発言をしておりまして、この点、インド洋と申すべきところをインドネシアと言ったことは、何らの意図があって申し上げたわけではございませんので、改めて御理解をちょうだいいたしたい、こう思っておる次第でございます。
  148. 赤松正雄

    赤松(正)委員 小渕総理大臣、今、インドネシアと言ったことについては何ら意図はない云々とおっしゃいましたけれども、では、このインドネシアというのは、いわば周辺事態というところの地理的な範囲といった場合には入らないということを明確にされたということにつながるわけですね。だから、何か簡単に、言い間違えたということでは済まされないと思うのですよ。  そこで、官房長官が、実は私は新聞を見たので、実際に官房長官の記者会見に同席したわけじゃない、全メディアが報道しているわけじゃないのでいささかどうなのかという思いはあるのですけれども、きょうの新聞によりますと、日本経済新聞ですが、野中広務官房長官が周辺事態範囲で表明されているのですね。これは日本周辺、近海を指す、「地理的概念に基づかずにわが国周辺、近海を指す」、こうおっしゃっているのですよ。これは総理大臣、御存じですか。
  149. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まだその新聞を拝見しておりませんので、そのことは承知をしておりません。  それから、重ねてでございますけれども、中東、インド洋、こういうのはたまたま、前のそれぞれ外務大臣等がこのような発言をされておったのを引用したのでございまして、もとにさかのぼれば、いわゆる周辺事態というものは地理的な概念であるということではない、こういうことでございます。
  150. 赤松正雄

    赤松(正)委員 官房長官に。官房長官が言われたことについて。
  151. 野中広務

    ○野中国務大臣 私が申し上げた中で、一部報道でそのような報道がありますが、近海ということは、私の報道の適切な報道ではございません。
  152. 赤松正雄

    赤松(正)委員 では、この「日本周辺・近海指す」、「地理的概念には基づかず」、これは従来のお考えですから、あと、その後ろに書かれている「わが国周辺、近海を指す」というのは、完全にこの新聞は間違いだと。わかりました。  それで、今総理がおっしゃったこと、外務大臣が既にこの委員会等でおっしゃっていること、この間うちから周辺事態何なんだということを一生懸命考えてきているのですけれども、ちょっと角度を変えますけれども、旧ガイドラインと新ガイドラインにおけるところのいわゆる日米間の協力、その日米間の協力の中身についての表現が明らかに違っているわけですね。  旧ガイドラインでは、「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」。それから新ガイドラインでは「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)」。英語では、シチュエーションズ・イン・エリアズ・サラウンディング・ジャパンということのようですけれども、この「日本以外の極東における事態」、それから新ガイドラインは「日本周辺地域における事態」。これは明らかに新旧のガイドラインの表記が違っているわけですけれども、これはなぜこういうふうに変わったのでしょうか。
  153. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日米防衛協力のための旧指針第三項におきましては、安保条約に言う極東における事態に対する米軍の対処行動に対する便宜供与のあり方について研究を行うこととされ、第三項の表題には安保条約に言う極東という文言が用いられたところであります。一方、新指針においては、新たに我が国の平和と安全に特に着目し、我が国周辺の地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生じた際の日米協力に関する事項が盛り込まれたわけであります。  以上の点を踏まえて、周辺事態という用語が用いられているところであります。
  154. 赤松正雄

    赤松(正)委員 旧ガイドラインが極東という部分に関心を持っていた、新ガイドラインではそれに加えてとおっしゃいましたけれども、日本に関する影響というものをより重視した、こういうふうな考え方ですか。
  155. 高村正彦

    ○高村国務大臣 それに加えてじゃないのです。新ガイドラインは我が国の平和と安全ということに着目した。それに加えてと言うとちょっと誤解を受けますので。  そういうことであります。
  156. 赤松正雄

    赤松(正)委員 まさに、極東についての関心から、それとはまた別に、日本の平和と安全に対する影響ということに強く力点を置いたのが今度の新ガイドライン。それを私たちは、ガイドラインの変化というのはまさに日米安保条約の再定義、新たな日米安保条約の位置づけの大きな変化だというふうにとらえて、新ガイドラインができた時点からそういう角度の質問をしたりしてまいりました。  そのように変えたというのは、なぜそういうふうに変えたのか。明らかに、今申し上げたように、極東への関心から日本に対する影響、同時にもう一方で、この新ガイドラインの中には繰り返し、さっきおっしゃった極東という言葉にかわってアジア太平洋という言葉が随所に出てくるわけです。アジア太平洋への日米両国の関心という問題と、それから日本そのものに対する影響、こういった観点が新ガイドラインには内在していると思うのですけれども、この新ガイドラインが持つ今申し上げた点、新たな関心の移動といいますか、それはどうしてそういう形になってきたのかという点について。
  157. 高村正彦

    ○高村国務大臣 もともと安保条約というのは、我が国の安全とそして極東における国際の平和と安全、こういうことがあったわけでありますが、特に我が国が協力する場合には、我が国の平和と安全ということに着目して、それに重大な影響を及ぼすものに限って我が国は後方地域支援をしよう、こういうことにしたわけで、特に広げたとかそういうような話じゃなくて、逆に、もともとあったものの我が国の平和と安全というところだけに絞ってやったということが、別に再定義とか何だとか言われる意味が私にはよく理解できないということでございます。
  158. 赤松正雄

    赤松(正)委員 高村外務大臣、それはわかっておられながら言っておられるのだと思うのですが、長い間伝統的なこの日本国会において、安保条約、旧ガイドラインの間では、要するに極東並びに極東周辺といういわゆる第六条の極東有事という問題と第五条の日本有事という問題、この二つが日米安保条約の五条、六条ということで、それについての具体的な日米防衛協力の指針としての旧ガイドラインがあったわけです。そこへ今度新しく新ガイドラインができた。それを今大臣は日本に対する関心とおっしゃいました。  もともと、日本有事と極東有事なんですけれども、この新ガイドラインは、日本有事と極東有事、こういう二段構えの安保条約の方針、ねらいというものからしますと、今いみじくも外務大臣おっしゃったように、日本そのものへの脅威に対してどう対応するかということが非常に強く出ている、そういうふうに感じるわけです。言ってみれば、日本有事がある、そして極東有事というものがある。  言ってみれば、今までのガイドライン、旧ガイドラインのもとでは、極東という地理的な概念、あるいは極東周辺でもいいですけれども、そういったところにどういう事態が起こるのかということに強い関心があったのだけれども、今度の新ガイドラインはそうじゃなくて、日本に対する影響、日本に対する平和と安全というものをどういうふうに考えるのか、ここに明らかに力点が移っているわけですよ。それを何か、そんなことないというふうに言われると困っちゃうんですけれども。
  159. 高村正彦

    ○高村国務大臣 旧ガイドラインにおいても、極東事態の中の日本の安全に影響を及ぼすものということでやっていたわけなんですね。本来、日本の平和と安全、日本の安全と極東における国際の平和と安全というのは、この二つの目的があったわけなんですが、日本の平和と安全、日本の安全なり日本の平和と安全でも同じですが、その二つとこのことは並列的な意味で安保条約において使われているにもかかわらず、旧ガイドラインでは、極東事態の中の日本の平和と安全にもかかわるものということで、本来、極東事態と日本の平和と安全にかかわるものというのは、理論的にそんなに密接な、直接的な関係がないにもかかわらず、並列的なものでもあるにもかかわらずそういうふうにしていたのは必ずしも理論的でないということで、日本の平和と安全ということに目的を絞って、そしてそれへ重大な影響を与える地域を周辺地域としたということでありますから、別にそれがどういうことだかよく……(発言する者あり)変わっていると言えば変わっています。それは日本の平和と安全ということに絞ってやった、こういうことであります。
  160. 赤松正雄

    赤松(正)委員 元防衛庁長官が横から答弁をされていますけれども、日本の安全に絞っているというふうなことがありました。さっき官房長官は否定されましたけれども、この新聞を見ると、日本周辺、近海を指すというのは、むしろ私は、そういう内在化している、内在化しているというよりも、周辺事態をめぐるこの数日間の議論の上で、どうもよくわからない、地理的概念なのか事態概念なのかわからないといったときに、今日本に絞ったという観点からすると、官房長官は否定されましたけれども、日本周辺、近海を指すなんというのはある意味でわかりやすいなというふうに思ったわけであります。これは全否定されたんですから、あれですけれども。  事ほどさように、周辺事態の概念、どうとらえるかというものは非常に私はよくわからない、正直言ってわからないというものがあると思うんですね。  それで、実は昭和三十五年の、極東の範囲についての政府見解、これを読みますと、既に今日の事態概念というのは出ているんです。出ている。よく御存じだと思いますのであえて言いませんけれども、出ている。政府統一見解の中に、極東の範囲というのは地理的概念ではない、いわゆる事態じゃなくて事情、サーカムスタンスという言葉が使われていますが、事情という言葉で、あとはそっくり同じ。つまり、極東ということが話題になった時点での極東の範囲ということについての政府統一見解は非常にわかりやすかったわけです。ある意味でわかりやすかった。今日までの、ここに極東の範囲がありますけれども、これはわかりやすかった。  今、周辺事態ということについて、総理の御発言あるいは外務大臣の御発言あるいは官房長官あるいはまた政府・与党の側の党首の御発言、いろいろな意味で混乱をしている。したがって、私はきちっと政府の統一した見解というものを出すべきだ、こんなふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  161. 高村正彦

    ○高村国務大臣 周辺事態とは、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であり、あくまでもその事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するものであります。したがって、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定し、あるいは一概に画定することはできない。このことは、従来より明確に説明してきたところであります。  それぞれ答弁する者が自分の言葉でそれぞれ話せば、微妙にそれは違ってくるのは当たり前なんで、それがいけないというのであれば、我々は全部これを何度でも読む、そういうことになります。
  162. 赤松正雄

    赤松(正)委員 では角度を変えますけれども、今度は事態。今周辺事態ということについて、外務大臣、事態ということを強調されるわけですけれども、じゃ、どういう事態を考えているのか。地理的概念ではない、事態概念だとおっしゃるんだったら、どういう事態を考えているのか。
  163. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 武力紛争が発生したり、あるいは発生のおそれがある場合です。
  164. 中山正暉

    中山委員長 重ねての御質問がありますので、高村大臣、ちょっと先ほどの質問に対する解釈をしてくれということですから。(発言する者あり)
  165. 高村正彦

    ○高村国務大臣 いや、誠実に答えているんですよ。私は極めて誠実に答えているので、そして、それぞれの大臣が、できるだけ誠実に、自分の言葉で、どう言ったらわかりやすく聞こえるかということを、わかりやすいかということを考えながら説明をしているところで、そこに微妙な言葉の差があるのは、それは仕方ないことじゃないでしょうか。  それが内容に矛盾があるとかそういうことであれば、それは問題だろうと思うんです。私は、矛盾があるんならどこに矛盾があるというふうに指摘してもらいたいと思いますが、説明言葉が微妙に差があるというのは、それは当然のことだろう、こういうふうに思います。
  166. 赤松正雄

    赤松(正)委員 いや、言い方の差ではなくて、いろいろな人が、じゃ、今おっしゃったように、言う人間によって違うんだと言われると、聞いている方はますます混乱してしまう。  だから、そういうことでは、この後で、さっき防衛庁長官が短く言ってぱっと帰られたのでよく意味がわからなかったんですけれども、これからこういう周辺事態というものが起こる、それに対して、日本の国、国民が全部挙げてそれに対して協力をしろということが出てくるわけですよ。そういうこと。そして、その周辺事態に基づいて計画が立てられる、そういう非常に重要な中身を含んだ法案である。その周辺事態というものについての説明の仕方が際立ってわかりづらいというのじゃ困るじゃないですかということなんですよ。  では大臣、その周辺事態を、どういう事態を周辺事態と認めてこれを計画に発展させていく、周辺事態が発生した、どの時点でだれが周辺事態を認定するんですか。
  167. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 何回も申し上げているところでございますが、周辺事態というのは、我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態でございます。  具体的には何かと言われれば、代表的なものは、武力の紛争が発生したとかあるいは発生のおそれがあるとか、あるいは大量な難民が日本に押し寄せてくるような緊急事態が発生したとか、そういう場合が予想されると思います。  そして、だれがこれを決めるかということでございますが、これは、総理大臣が閣議に諮って決めるわけであります。
  168. 赤松正雄

    赤松(正)委員 総理大臣が閣議に諮って決める。何を諮るんですか。
  169. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 具体的に基本計画を決定する場合とか、そういう事態に対処することについて閣議に諮るわけであります。
  170. 高村正彦

    ○高村国務大臣 ある事態が周辺事態であると判断され、法令に基づき特定の対応措置を実施する必要があると認められる場合には、内閣安全保障危機管理室を中心として基本計画の案を策定し、安全保障会議における審議を経て閣議の決定を求めることになります。こういうことは内閣総理大臣のもとで行われるわけであります。
  171. 赤松正雄

    赤松(正)委員 ということは明快に書かれていませんね。だれが決めるかということについて、今外務大臣は、内閣総理大臣が、事態の発生を受けた後、閣議に至るまでの過程の中で決めるようなことを言われましたけれども、この法案の中には明記されていません。
  172. 高村正彦

    ○高村国務大臣 私が申し上げたのは、内閣が、総理大臣が決める、こう言ったわけではないので、こういった組織は、全体、内閣総理大臣のもとに内閣はあるわけでありますから、そういうことを申し上げたわけです。
  173. 赤松正雄

    赤松(正)委員 今基本計画を諮るとおっしゃいましたけれども、では、この事態が発生する、この事態発生、どの時点でそれはこの法案で言うところの周辺事態なのかということを、今高村大臣おっしゃったのでは、どの時点かわからない。そういう、さっき言ったような指示をするのがだれかもわからない。要するに、そんな基本計画というものを、その事態が発生してからみんなで集まって計画を練るんですか。
  174. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 少し御理解を得るために、長くなりますが御説明することをお許しいただきたいと思いますが、ある事態が周辺事態に該当するか否かということは、周辺事態に際しまして、いかなる措置を実施するかにつきましては、日米両国政府がおのおの国益確保の見地から、その時点の状況を総合的に見た上で主体的に判断することとなるわけであります。その際、日米両国間においては、随時密接に行われている情報交換あるいは政策協議が一層緊密に行われるということになります。このような事態について、共通の認識に到達するための努力が真剣に払われるわけであります。これがまず第一段階であります。  そして、この周辺事態安全確保法案には、内閣総理大臣は、周辺の事態に際して、特定の対応措置を実施する必要があると認められる場合、当該措置を実施すること及び対応措置に関する基本計画の案につきまして閣議の決定を求めることとされているわけであります。  政府においては、これに先立ちまして、さっき外務大臣が言ったとおり、安全保障会議等において審議を行う手続をとっているわけであります。  なお、基本計画は、このように内閣の判断と責任のもとで閣議により決定された後、遅滞なく国会報告され、国会における議論を踏まえて対応措置が実施されていくということになります。  今委員が御指摘のように、主体が明確じゃないのじゃないかということは、こういう一連の全体の措置から見て、私どもは、内閣総理大臣が当該措置を実施することや、この基本計画を閣議で決定するということ等から見まして、おのずから内閣総理大臣がその主体になっていくということを申し上げているわけでございます。
  175. 赤松正雄

    赤松(正)委員 周辺事態については、先ほど言ったように、よくわからない。そのことなんですけれども、今、その周辺事態というものを総理がいわば認定する、そして慌てて基本計画を練る、それで閣議にかける。非常に大ざっぱな言い方をすると、そういうことを言われたのだろうと思うのですけれども、一体、そのかける基本計画というのは、どういう事態を想定してかけるのか。そういう事態が起こってから考えるのか、あるいはあらかじめ考えているのか。  旧ガイドラインの中で、日米間における約二十年間における、「便宜供与」という表現があります。新ガイドラインには、「便宜供与」にかわって「後方地域支援」という言葉が入っている。だから、便宜供与にかわって後方地域支援ということは、同じ中身を指すのだろうと理解していますけれども、そういう約二十年間の日米における便宜供与をめぐる協議研究があったと仮にするならば、その中で基本計画が、今問題になっている周辺事態ということに対する原型的なるものはそこにあるのか。あるいは、旧ガイドラインにおける便宜供与をめぐるような協議研究というのは全く関係がない、それは関係はないんだ、全く新たに、何かわからないけれども、どこの地域とかそういうことは関係なしに、ともかく日本の平和と安全を脅かすような事態が起こったときに、慌ててそのときに基本計画を練るのか。これは大いなる違いがあると思うんですよ。  何か高村大臣は、どうも私がわかりが悪いと怒っておられるようですけれども、要するに、今のこの周辺事態法を見る限りにおいては、地理的概念ではない、事態概念だと。  かつて安保条約で議論のあったように、極東、極東周辺というふうな、それなりにわかりやすかったという部分があった。それは三十五年の政府統一見解の一番最後の部分には出てきています。ところが今、どうもどこで起こった事態なのかということをはっきりさせない。ともかく日本が脅威を感じる場面だ。何が何だかよくわからないけれども、ともかく日本が攻められたときに、日本がそういう危ないという状況になったときに、どう対応するのかということを慌てて決めるんですよというふうにしか読めないですよ、この法案は。違いますか。  基本計画の中身というものは、どういう角度で決められるのかについて言ってください。
  176. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほども申し上げたとおりでございますが、ある事態が周辺事態に該当するかどうかということは、周辺事態に際していかなる措置を実施するかになるわけですが、日米両国政府が、おのおの国益確保の見地から、その時点の状況を総合的に見た上で、主体的に判断するということになるわけであります。したがいまして、政府としては、あらかじめ特定の国や地域で事態が生ずることを前提とした基本計画を策定することを想定しているということは全くございません。  しかしながら、政府としては、緊急事態に円滑かつ効果的に対応していくことができるよう、平素から米国との間で相互協力計画につきまして検討を行っております。我が国としての対応についても所要の検討を進めまして、その対応に遺漏なきように期していくこととしているところであります。
  177. 赤松正雄

    赤松(正)委員 今、防衛庁長官は、日米が双方に日常的に協議をしている、いろいろ検討をしている、こうおっしゃるんですけれども、これは何を検討するんですかね。協議検討の間には、何かやはりテーマがあるはずですよね。何もないところで、いつどこで何が起こるかわからないことについて日米が協議するわけがないと思うんですよ。
  178. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 詳細につきましては、政府委員から答弁させます。
  179. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 ガイドラインにおきまして、日米間で平素からいろいろなことを検討する仕組みとして包括的メカニズムというものを設けることにしているわけでございますが、その中で相互協力計画、こういったものを検討していくということになっているわけでございます。そういう中で、いろいろな状況に対応し得るような検討を行っていく、現在検討中ということでございます。
  180. 赤松正雄

    赤松(正)委員 いろいろな状況に対応云々とおっしゃったから、その中でいろいろなケースを想定されているんだろうなということが想定されるわけですよね。  いずれにしても、私は、やはり国民からすれば、そういったことが非常にブラックボックスになっている。日米間でいろいろやっている、しかし、日米間で協議されていることの中身というのはなかなかわからない。  以前は、繰り返すようですけれども、極東及び極東周辺で起こった事態ということで、それなりに政府の統一見解もあったし、わかりやすかった。今度は、そういった地理的概念ではない、事態概念だと。具体的にはどういうことを想定しているのかといったら、よくわからない。それじゃどうも困るというのが私たち一般の感覚だと思うのですね。  では、さらに言いますと、例えばこの法案の中には、いわゆる後方地域支援活動、付表一、二の中に、物品、役務の提供に、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に給油をしないとわざわざ書いてあります。  物品、役務の提供に、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に給油しない。これは何でしないのですか。
  181. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 給油とか弾薬の戦闘機に対する積み込みは、米国が自分でやるので、アメリカから全く要請がないから除いているわけであります。
  182. 赤松正雄

    赤松(正)委員 長官、それは、やったらどうなりますか。
  183. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 これは事前協議等に全部反することになります。
  184. 赤松正雄

    赤松(正)委員 何か、防衛庁長官、事前協議に反することになると妙な言い方をされましたけれども、何で事前協議に反するのですか。事前協議に反するというその答弁は、何かちょっとおかしいじゃないですか。何かよくわからない言い方をされたら困ります。
  185. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 こちらの、日本の基地から直接そういうものを、弾薬等を積んで戦闘行為に加わることは事前協議の対象になっているから、今そう申したわけであります。  しかも、先ほど申したとおり、もともとこのことについては、給油等については、アメリカの方から全く要請がないわけでありますから、私どもとしては、要請のないものを要るというふうに書く必要はなかったわけであります。
  186. 赤松正雄

    赤松(正)委員 要請のないものを何で書いたのですか、ここに。
  187. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 しないということを別表で除いて書いているわけなんですよ、よく見てください。
  188. 赤松正雄

    赤松(正)委員 わかっていますよ、それは。  では、法制局長官、発進準備中のいわゆる……
  189. 中山正暉

    中山委員長 佐藤防衛局長はどうですか。
  190. 赤松正雄

    赤松(正)委員 いや、いいです。もう法制局長官に聞きます。
  191. 中山正暉

    中山委員長 一人、前に挟みましょう。佐藤防衛局長
  192. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 私の方から補足して御説明させていただきたいと思います。  今先生から御質疑がございました、戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油及び整備、これに対して我が国は行うことがないということを書いてございますのは、これはまさに、アメリカとの間で協議しておりましても、アメリカからは、そういうことはないということがございました。  それから、実際のオペレーションといたしましても、そういった戦闘作戦行動に出るときに、それに対する整備をするというのは、これは非常に専門的、それからいろいろ秘密も要しますし、したがって、そういった整備員がクルーと一体になって運用するのが、軍事上の常識と申しましょうか、そういうことでございます。したがいまして、そういったものはないということを明確にさせていただきました。  先ほど防衛庁長官から事前協議の点につきましてお触れになりましたのは、まさにその戦闘作戦行動のためということがございますので、その関係で説明をされたということでございまして、直接の、今の記述ということは、今申し上げたところでございます。
  193. 赤松正雄

    赤松(正)委員 そうしますと、戦闘作戦行動に出る航空機が日本の在日米軍基地から飛び立つ、こういう事態があった場合、戦闘作戦行動に携わる航空機が日本の基地から飛び立つという場合、これは、その基地を持つ日本というものは、相手の国から見れば、いわば参戦している、戦争に参画している、こういうふうにとらえられて自然だと思うのですけれども、法制局長官、この点に関する見解を述べてもらいたいと思います。
  194. 大森政輔

    大森(政)政府委員 なぜ法律案の別表第一及び第二の備考でこのようなことを書いたかという御質問でございますけれども、直接的には、先ほど防衛庁の方から答弁がございましたように、米軍側にその要請がないということではありましたけれども、なおこれをここに書きましたゆえんは、私ども、一昨年の夏前に、ガイドライン自体の内容検討、いろいろ私どもも参加して議論したわけでございますが、その際に、こういう形態における物品及び役務の提供というものは、やはり米軍の武力行使との一体化の問題について慎重な検討を要する問題ではないかということで問題にいたしまして、そして延々と議論を重ねたわけでございます。  そのうちに、いや、そもそも要請がないならばもう最後まで議論をし尽くす必要もないじゃないかということで、今度は、アメリカに、米軍に対して、そういうことを求める余地があるのかということを照会いたしましたら、いや、要請するつもりはない、そもそもこういうことは自前でやるべきことなんだというようなことがありましたので、その段階で、憲法上慎重な検討を要する問題であるということまでの共同認識を得て、それ以上の、絶対クロだというところまでの断定はしてないわけでございますが、私どもの立場では、今もやはり憲法上の適否について慎重な検討を要する問題であるという認識には変わりございません。(赤松(正)委員「後半の部分。出ていくこと」と呼ぶ)  この安保条約第六条によりまして、アメリカ軍にいわゆる基地の提供をしているわけでございます。そして、基地の使用形態といたしましては、その基地から直接、戦闘作戦行動のために飛び立つということも予定しておりますことは、これが事前協議事項になっているということからもおわかりのことと思います。  そして、このような形で使われる基地の提供と憲法との関係につきましては、たとえこれが米国の軍事行動への協力として行われましても、施設・区域の米軍による使用の応諾という行為にとどまりまして、私どもが常に問題にいたします一体化の問題が生じ得る活動の類型には該当せず、また、それは実力の行使の概念、応諾するというのは実力行使の概念には当たらないと思いますから、我が国として武力の行使等をしているとの評価には当たらないのではないか。  したがって、現行安保条約は合憲であるというのが大体大方の理解でございまして、その安保条約六条によって負う義務の履行の一形態でございますから、この点については問題がないというふうに考えている次第でございます。
  195. 赤松正雄

    赤松(正)委員 今の事前協議についてのことですけれども、旧ガイドラインの中で、「前提条件」というくだりがあって、いわば、事前協議それから日本憲法それから非核三原則については、これは協議研究の対象にしない、そういう前提条件が旧ガイドラインの冒頭にあるわけですね。  これは、私の解釈でいえば、この旧ガイドラインにおいての事前協議というものは、いわば聖域。非核三原則にしても憲法問題にしても、それはさわらないということだったんだろうと思うんですが、今、新ガイドラインにおいては、この事前協議云々のことがないんです。ない。これは言ってみれば、旧ガイドラインにおいて事前協議は一度もなかったわけですから、今この周辺事態法というものを生み出す母体になっている新ガイドラインにおいて、いわばそういう旧ガイドラインにおける事前協議というものを研究協議の対象としてないというくだりを抜いたということは、これは、通常の考え方でいうと、事前協議というものに対して以前以上に随時やる、随時やるというか積極的な取り組みというふうに考えていいのですか。
  196. 高村正彦

    ○高村国務大臣 新ガイドラインにおきましては、安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的枠組みは変更されない、こうされているわけであります。  事前協議は、この変更されないとされている枠組みに含まれているわけであります。
  197. 赤松正雄

    赤松(正)委員 これは、先ほど防衛庁長官日米間の緊密な協議、政策協議等の話をされました。今も高村外務大臣から、日米安保の基本的な枠組みというものに変わりはない。そういう意味で、建前どおりといいますか、決められているとおりの事前協議というものがこれからも行われる、そういうことになる、こんなふうに私は理解をいたします。  いずれにしましても、この法案の、先ほどの周辺事態概念定義、そして、この事態の認知から始まって計画策定、この問題については、その流れの中で当然ながら日米の緊密な協議というのはもちろんあるだろうと思うのですけれども、それがどのような形でなされていくのか。もちろん、日本の主体的な判断ですから、法律の中にどうこうというのは出てこないわけですけれども、非常にこの過程というものが、先ほども申し上げましたけれども、はっきりしていない。  つまり、我々の先輩、仲間が、この重要な法案については国会においての報告だけで済ませるのじゃなくて国会の承認が必要だ、事前事後を問わず承認が必要だということを、既に何回もいろいろな方からの提案がありますけれども、この問題は、短い時間の中で大変重要なことを決める、少なくとも今の議論、私の質問能力が稚拙なために十分にできていないわけですけれども。  外務大臣に私が申し上げたいのは、この日米安保条約ができたとき、私は最初の予算委員会で高村外務大臣が菅民主党代表におっしゃっている答弁を聞きながら思ったのですけれども、非常にいらいらされているところがうかがえるのですけれども、要するに、長い、それこそ二年ぐらいかけて、私は当時まだ中学生でしたからよく存じ上げませんけれども、安保条約をめぐっては大変な議論があったわけです。総理が三回答弁を間違えられたということを私は言いましたけれども、余り心配されなくていい。七回ぐらい政府は当時答弁を変えているという歴史があるわけですから。それぐらい重要な問題なんだから、これはそんなに怒らないで、しっかりと丁寧に、私にではなくて国民に説明するという気持ちになっていただかないと困る、そんなふうに思います。  いずれにしましても、また場を変えて詳しくやりたいと思います。まだ本会議でもかかっていないわけですから、私がこうやって中身に深く入るということはちょっと行き過ぎかもしれないのですけれども。  私は、今の日本の中で、至ってこの周辺事態法について——きょうも町村外務次官がアメリカでアメリカ側と、国務次官補ですか、交渉されたというのをテレビのニュースでやっていました。あるいは、官房長官が法案を早く通してほしいというようなことを記者会見でおっしゃっていた。こういうふうなことがあるのですけれども、中身をつぶさに見ると、非常にわからない、腑に落ちないという部分がいっぱいあります。  一方で北朝鮮の情勢というものを、さまざまなメディアが非常に危機をあおり立てているという状況があるわけです。北朝鮮の情勢をどう見るかという問題はまた別の問題として大きくあるわけですけれども、この周辺事態法の中身はやはりきちっと丁寧にやっていかないと、この法案そのものが北東アジアにおける緊張を高めることにつながっていってしまう。  なぜかというと、さっき言ったように、どういう事態が起こるかわからない。事態の中身がよくわからない。もちろん、地理的な概念ではない。そういうものが、いつどこでどうなるかわからないものが来る。そのときに対応するということだけが強調されて、際立って中身がよくわからない。  そういった面で、私は、北朝鮮に対するさまざまなレベルでの外交努力というものが必要だろうと思います。委員長はそういう面で活躍をなさっているということはよく存じ上げておりますけれども、さまざまなパイプで幾重にもやっていかなくちゃいけない。  今、北朝鮮の情勢というのを見たときに、アメリカがイラクに空爆をした。この問題は時間がないので余り触れませんけれども、イラクにアメリカが空爆をしたということ、これは日本政府は非常に速いスピードでアメリカ、イギリス支持の表明をされたわけですけれども、こういった、国連安保理が明確な結論を出さない前にアメリカがやった空爆に対する日本の反応。あるいはまたアメリカが原子力発電所の、いわゆる水爆の材料になるトリウム、これをいわゆる民生利用から軍事利用への移転というものを非常に簡単にやってのけた。こういうアメリカのやり方というのを見ていますと、非常に核軍縮に対する姿勢のいいかげんさといったことも感じる。  いろいろな意味で、私は、冒頭に申し上げましたように、日米同盟というものを成熟化させていかなければいけないという立場ではありますけれども、アメリカに対して、無批判に何でもアメリカの言うとおりという形ではいけない。  この法案は、三条で見ますと、日米安保条約に寄与する米軍に対する日本支援ということが書かれています。要するに、アメリカに対して日本が何をするのかということが繰り返し書かれているわけです。では、そういう日本が大変な事態になったときに米軍が日本に何をしてくれるのかというようなことは全然書かれていないわけです。当たり前といえば、この法案の性格からいえば当たり前かもしれませんが、同時にそういった懸念というものも起きてくるということがあります。  そういったことを指摘しました上で、最後に、この法案の中で、やはり、ある意味で一番重要な問題と言える国以外の者への協力という部分について触れたいと思います。  この国以外の者への協力、ここではすべて法令、基本計画にゆだねている。民間あるいは地方自治体一般の個人ももちろん民間の中に入ってくる場合もあると思いますけれども、それに対して、法令、基本計画にゆだねて白紙立法しているという格好になっている。この問題。  まとめて言いますけれども、これは、こういった協力要請というものを断るということはどうなるのでしょうか。
  198. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 この法文では、九条第一項に、地方公共団体の方につきましては「協力を求めることができる。」ということになっております。また、第二項の民間に対しては「依頼することができる。」ということになっております。  なぜこういうふうに書きぶりを変えたかということでございますが、これは、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態である周辺事態に対応する措置の重要性、それから公権力の行使に係る権限の公共的性格、それから他に代替手段を求めることが困難であるということを考慮いたしまして、地方公共団体の長と民間等に協力の法律上の位置づけに差をつけたものでありますけれども、求められた地方公共団体は、求めに応じなくても、それだけで直ちに違法になるものでは全くございません。ただ、一定の行為をなすべき一般的な義務づけを付したという程度のものでございます。  また、これに対して、依頼するという用語は、相手方に義務を課さない要求であることを明示する趣旨で用いたものであり、国に協力を依頼された民間等は、これに応ずる義務を負うものではないと考えております。
  199. 赤松正雄

    赤松(正)委員 法制局長官に聞きますけれども、この今の点で、協力しなくても違法ではなくて何ら罰則を受けることはない、こんなふうに解してよろしいですか。
  200. 大森政輔

    大森(政)政府委員 これは、今回の法案、隅から隅までどこにも罰則規定がございませんので、罰則を科することができない、積極的にできないということでございます。
  201. 赤松正雄

    赤松(正)委員 最後に、この国以外の者の協力という部分で、政府の中に、関係省庁会議官房長官のもとに平成十年の九月設置をされているわけですけれども、この関係省庁会議、今日まで何回開かれて、一体、かみ合った議論というか、この周辺事態法が発生した、そして事態への対応が始まったというときに、どういうふうに関係各省庁が動くということについて、今どの程度現状で話が進んでいるのか、それについてお伺いしたいと思います。
  202. 野中広務

    ○野中国務大臣 お答えいたします。  有事に対する対応については協議をいたしておりますけれども、この法案に基づく対応につきましては、法案を今御審議いただいておる時期でございますので、官房長官を中心にそんな組織を持ってやってはおりません。
  203. 赤松正雄

    赤松(正)委員 全くやっていない。新聞報道によりますと、去年の五月に一回やったというふうに、官房副長官のもとでやったと。官房長官御存じない。  これは、新聞報道によりますけれども、一回開いたけれども、米軍から何の要請もない、全く取り扱うべき中身がないということで、多くの不満を残してその会議が流れたというふうにメディアを通じて私は存じておりますけれども。
  204. 野中広務

    ○野中国務大臣 昨年の五月に、官房副長官を中心にして、ガイドラインの取り扱いについて会合を持ったということはございます。
  205. 赤松正雄

    赤松(正)委員 それは同じことだと私は思いますけれども。  いずれにしても、非常に多くの問題をはらんでいるというか、よくわからない部分が多いということを最後に申し上げまして、きょうの質問を終わります。
  206. 中山正暉

    中山委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。  次に、西川知雄君。
  207. 西川知雄

    ○西川(知)委員 西川知雄でございます。  きょうは、私の質問要旨の一番目に書いてありますように、いわゆる裁量行政、それから法律用語解釈、まずここから始めてみたいと思います。  これは何を申し上げたいかといいますと、基本的に、いろいろな法律内容というものが、法律用語の規定にしても、非常に不明確である、また、本当に基本的なことだけ法律で決めて、あとは政令、規則に委任をしている、こういうことが現状でございます。  そうするとどうなるかというと、一たんその法律国会を通りますと、その後の解釈、また規定のあいまいさにおける解釈というものはだれがするかというと、それはもう国会の手を離れてしまいますから、それは行政府がしたり、また裁判所でその用語というものが最終的に決定されるわけですが、基本的には官僚の手、それにゆだねられてしまう、そういうことが裁量行政の非常に欠陥であるというふうに私は思います。  きのう、野中官房長官が、私にとっては大変重大なといいますか、非常に示唆のある発言をされました。これはどういうことかと申しますと、財金の分離ということについて、この三会派の合意、これについて見解を述べられました。そのときに、この覚書では、「金融再生委員会の設置に伴う財政・金融の完全分離及び金融行政の一元化は、次期通常国会終了までに必要な法整備を行い、平成十二年一月一日までに施行する。」こういうふうに、簡単に、非常に明確に私にとっては書いてある、こういうふうに思ったわけですが、野中長官はこういうふうにおっしゃいました。ここには、閣法にこれを書くのか、それとも衆法に書くのかということまでは決めていないから、中央省庁の改革案の大綱にはその点について配慮しなかった、こういうことをおっしゃいました。  私、議員になる前に弁護士をやっていまして、いろいろな国の人と交渉をしたり契約書をつくったりしていました。それで、一字一句これは誤解のないように、間違いのないように、相手がこういうふうに言ってくるかもしれないからここはぴちっと詰めておこうということで、例えば両当事者は合意をするというときに、日本では単に合意と書きますが、英語では、合意する、保証する、そして約束すると、こう五つか六つぐらい並べて、絶対に間違いのないようにする、こういうような方式を国際契約の場ではとっているわけです。  私、なぜ野中長官がおっしゃったことが非常に意義深かったかというと、いろいろな解釈を、仙谷委員はそれはたしかへ理屈とかそういう言葉で言われましたが、いろいろな解釈をその文書を読んでされるんだな、こういうふうに思って、ある意味では感心をしたわけです。  そこで、私、この機会にはっきりとしておきたいことがあります。私もこの覚書の作成に関与させていただきましたので、野中官房長官がいらっしゃるときに私もおりました。  そこで、一つ確認をいたしたいと思います。  閣法でするのか衆法でするのか、これはまあどちらでもいいというふうにいたしまして、その内容でございますが、財政と金融の完全分離ということは、野中官房長官のこの覚書を読んだ限りではどういう意味であるのかということをお答え願いたいと思います。
  208. 野中広務

    ○野中国務大臣 担当する総務庁長官がお答えをするべきと思いますが、御指名でございますので。  当時、それぞれ各党の関係者の皆さん方が連日、土日もなく徹夜で金融の問題を真剣にやっていただいておるときでございまして、総理以下大蔵大臣、関係閣僚もそれぞれ深夜に至るまで対応をいたしておりまして、私もまた院に入りましてそれぞれ御苦労をそばで見てまいりましただけに、今委員がおっしゃったような場面にも私も列席をした次第でございます。  そこにおきまして、いろいろな経過から、先ほど御紹介になりましたように三会派によります合意、覚書ができたのは事実でございます。  そういう中で一つには、その前に、金融再生委員会の組織づけがございました。そして、財政、金融の完全分離がここに覚書としてできたわけでございます。したがいまして、私どもは、金融再生委員会には日付がつけられ、そしてこれは政府の責任でやれということで、議員立法でありましたけれどもお決めになった次第でございますので、この着実な、金融担当大臣を置き、そしてこれにかかわる人選を行い、そして再生委員会の発足を院の皆さんとお約束したとおりに実施をしてきたところであります。  ところが、今度の場合、省庁再編の基本法に基づいて大綱を決め、そして四月に設置法を出すときには、この基本法は既にできておったわけでございますので、その後この覚書ができましたので、この覚書につきましては、その大綱を決める際に総務庁長官に、国対委員長を通じてそれぞれの三会派にこの取り扱いを閣法でやるのか衆法でやるのか、そのことをきちっと整理してもらいたいということをお願いして、総務庁長官も昨日答弁を申し上げましたように、関係の向きにお願いをしたわけであります。ただ、十分それが、きのうの段階までに連絡が円滑にいって理解をいただいておらなかったということでございます。  ただ、御承知のように、金融再生委員会は二〇〇二年の三月三十一日に一応その業務を終わることになるわけでございます。それと、二〇〇〇年に立ち上げる金融、財政の分離とどう整合性を持っていくかというところが非常に重要でございまして、そしてまた、再生委員会のすべてが終わらないかもわかりません。そこのところが残りますので、必ずこれは実務者を含めた十分な話し合いをしておいてもらわなければ、大綱と別個に議論をしておいてもらわなければ、我々は、そこにそごを来したら今度は組織的な混乱になって実体が非常に不明確になると考えたので、あえて大綱から外して御協議をいただくことにしたわけであります。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  209. 西川知雄

    ○西川(知)委員 経過はよくわかりました。そしてまた、金融庁と金融再生委員会との関係、これも経過的な措置として、これは法整備をしないといけない、整合性を保たないといけない、これはよくわかっております。  しかし、私の質問の趣旨は、財務省の設置法から、金融の破綻処理制度と金融危機管理に関する調査、企画、立案という所掌事務を含めない、ここから取る、すなわち、金融に関する行政、これは全部財務省、今の大蔵省からなくなる、こういうふうに解釈するのが普通の財政と金融の完全分離だというふうに私はこの文章を見て思うわけですが、野中官房長官はその点についてはいかがですか。
  210. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほど私間違って申しましたので、二〇〇一年と訂正をさせていただきます。  それからただいまの問題は、審議の経過からいって完全に金融、財政は分離をされるというように理解しております。
  211. 西川知雄

    ○西川(知)委員 総理に確認しておきたいのですが、今の野中官房長官の御意見でよろしゅうございますね。
  212. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 そのように理解いたしております。
  213. 西川知雄

    ○西川(知)委員 そこで、ちょっとまた法律用語の問題に戻りますが、周辺事態ということについて、ちょっと言葉の問題をやりたいと思います。  実は、周辺事態、周辺事態と言っておられますが、その定義はどこにあるかといいますと、まず、いわゆる指針、ここの中に一つ書いてございます。それはどういうことかというと、日本語では「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」、こういうふうに書いておりまして、そこをとらえて事態ということであって、地理的概念というものは、特定の地域を指定する意味での地理的概念ではありません、こういうふうに総理も外務大臣も言っていらっしゃる。  ところが、英語の方を見ますと、先ほど赤松議員の方から紹介がありましたが、それをちょっと日本語に正確に訳しますと、日本周辺地域において日本の平和と安全に重要な影響を与える事態、これが周辺事態ということの正確な定義なわけです。二つの要素がある。  これは前の総括質疑のところで冬柴議員も指摘をされましたが、まず第一点は、日本周辺において発生しないといけない、二番目は、日本の平和と安全に重要な影響を与える、この二つ。この二つが、この要素が合致して周辺事態ということでございますから、まず日本周辺地域ということが定義づけられなければならないということをまず私は思うんですが、総理、そこはまずよろしいですね。  総理、お願いします。これは重要な問題ですから、総理にお答え願いたいと思います。
  214. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私は、英語解釈をいたすべき、正確な用語の解釈をすることの立場にありませんで、私は、日本語として与えられた、日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合、これを周辺事態、こう言っておりまして、それに対する協力ということで理解をいたしております。
  215. 西川知雄

    ○西川(知)委員 そこで、日本語でも実はこう書いてあるんです。この法律は「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」ですから、我が国周辺の地域というのがまず第一条件で、第二条件が平和及び安全に重要な影響を与えるということですが、それでよろしいですね。
  216. 高村正彦

    ○高村国務大臣 この場合には、周辺地域というのが必ずしも最初に画定されてそしてそれから事態が出るのではなくて、お互いに影響し合う概念だ、こういうふうに思っております。
  217. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それは高村外務大臣だけの考え方じゃないでしょうか。  というのは、私が何を申し上げたいか。じゃ、もう少し具体的に言いましょう。  先ほど、今度の法律では国以外の者による協力というのがございました。その中で、九条の第一項は「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」ということでございます。  そこで、具体的に一つ総理にお伺いしたいと思います。  総理または内閣全体が、これはどういう意味かはっきりわかりませんけれども、周辺事態であるというふうにまず認定をした、基本計画を立てた、後方支援をやってほしいという要請があったと。そこで、病院を使わないといけないということになりました。そこで、例えば横浜市の市立病院に、何人かけが人がいるようだからここでちょっと治療をしてやってくれないか、こういうようなことを言ったとします。  ところが、その病院の人は、いやこれは周辺事態ではないんだ、まず第一に周辺地域ではないと。非常に重要な事態が起こっていることはわかる、だけれども、これは私の解釈では周辺地域ではないと。確かに小渕総理解釈では周辺地域であろうというふうに解釈したと。  このときに、具体的な問題としてお尋ねしますが、その病院の院長さんなり病院は、この病院の施設の提供義務ということはありませんといって病院施設提供義務不存在確認の訴え、例えばそういうことは果たしてできるんでしょうか、できないんでしょうか。総理、どうですか。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  218. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 そういったもろもろの諸点につきましては政府挙げて検討もいたしてきまして、正確に答弁をした方がよろしいかと思いますので、法制局長官から答弁いたさせます。
  219. 大森政輔

    大森(政)政府委員 ただいま委員が挙げられました場合についての、いろいろなお答えのしようがあろうかと思うんですけれども、九条の、結局、地方公共団体の場合は「必要な協力を求めることができる。」となっているんですね。それ以外の、国以外の者に対しては「必要な協力を依頼することができる。」ここで、やはり言葉の正確性を期して、言葉をちゃんと変えているわけですね。  したがいまして、この「協力を依頼することができる。」という用語を使ったのは、相手方に対してそういうことをお願いすることは何も悪いことはないけれども、相手にそれに応ずる義務を……(西川(知)委員「一項の話をしているんですよ」と呼ぶ)ああそうですか。二項は、要するに義務が生じない……(西川(知)委員「一項の話を質問しているんです」と呼ぶ)  一項の場合でございますと、「協力を求めることができる。」というのは、それに応ずることが法的には期待されるということではありますけれども、それに対して応じなくとも、そもそも罰則その他があるわけじゃなし、またその義務を強制履行することも予定されてない。したがいまして、この九条一項の解釈として、応ずる義務不存在確認の訴えがどうかと言われますと、義務がないんですから、強制される義務はないんだからということだけであるいは片づく問題かもしれません。あるいは、委員はもう少し先のことを考えておられるのかもしれませんけれども、それならばそれで、また別のお答えをいたします。
  220. 西川知雄

    ○西川(知)委員 まず、裁判所に、私が例えば病院の代理人として、いや、基本計画を定められて、どうもうちの病院が使われそうだ、そういうことは困る、大体これは、自分の意見では、日本周辺地域において起きた事態ではない、だから、そういうことは、こんな病院を使ってもらっては困るといってまず私が裁判を起こすということはよろしいですか、総理
  221. 大森政輔

    大森(政)政府委員 ただいまの、委員お尋ねの事柄につきましては、訴訟が係属した裁判所において、具体的な訴訟事件の具体的事案ごとにそれに即して判断すべき事柄でしょうから、一概に、一般的に答えることは本来は差し控えたい事柄ではございます。  ただ、せっかくのお尋ねですので、今の質問を聞きまして私の頭の中を駆けめぐる事柄だけをちょっと披露させていただきますと、大体、この周辺事態対応スキームと申しますか、この法律のスキームというのは、先ほども答弁に出ておりましたように、まず総理が、内閣総理大臣が、周辺事態の発生に際して後方地域支援等が必要と認めたときは基本計画の案を作成して閣議を求める。それで閣議は、内閣は、閣議決定によって基本計画を定める。次に、防衛庁長官が、その基本計画に基づいて実施要領を作成する。それについて内閣総理大臣の承認を求める。承認があれば、防衛庁長官は、今度は部隊等に出動命令を出す。こういうスキームになっているんですね。  したがいまして、委員がもし訴訟を提起される場合に、どういう請求原因、請求の趣旨及び請求原因をどういうふうに立てられるのかなとまず思うわけでございます。その場合に、民事訴訟としてなのか行政訴訟としてなのか、あるいは、行政訴訟の場合にいかなる類型の訴訟としてであろうか、そもそも原告として訴えの利益をお持ちであろうかというようなことがいろいろ頭の中で駆けめぐるわけでございまして、それについては、厚木基地騒音訴訟の判決が一つの参考判例として参考になるのかなと思いながら、なかなか、いかなる形態で訴えを起こされましても、目的を達せられることは難しいんじゃなかろうかということを考えている次第でございます。
  222. 西川知雄

    ○西川(知)委員 私は何を申し上げたかったかというと、これは、周辺地域とそれから重大な事態ということ、これをまず内閣が判断をする、そして、今は閣議決定となっていますが、例えばそれが国会の事前承認なり事後承認にかかることになった、またはそれが裁判の対象になったというときに、その周辺事態または周辺地域というものが、その概念自体がある程度明確になっていないと、我々国会議員が、これは周辺事態で、この基本計画というものは果たしていいのか悪いのか、まずこれを大体判断できない。二番目に、裁判官も、これを見て、果たしてこれは周辺地域または周辺事態かどうかということも判断ができない。  したがって、これは非常にそのときそのときにならないと判断できないようなほわっとしたものである、こういうことは、そのときそのときの判断において事態が、定義が変わってきたり、その内容が変わってきたりする。私は、こういうことが非常に危険な今典型的な裁量行政の一つ、このあらわれじゃないかというふうに思って聞いているわけです。  そこで次に、そのことに関連して聞きます。  極東の範囲ということについて、昭和三十五年二月二十六日に政府の統一見解が出ております。ここでは全部は読みませんが、極東の範囲について見解が出ておりますが、「かかる区域」、これは極東ですが、「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」こういうふうに定義が、政府統一見解が出されているわけです。  そこで総理、まず基本的なことなんですが、極東の範囲については政府見解がこうやって出ているわけなんですが、周辺事態または日本周辺地域についての政府統一見解はお出しになるんでしょうか。また、お出しになるとしたら、いつ出されるんでしょうか。また、お出しにならないのなら、どうして極東の範囲だけ政府見解が出て、周辺事態、周辺地域については見解が出されないのか、その辺についてお尋ねします。
  223. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 極東の範囲の問題につきましては、そのときの時点におきましての政府の判断として出されたものと理解しております。  周辺事態につきましては、しばしば申し述べておりますように、繰り返して申し上げませんが、周辺事態につきましての政府の基本的考え方は、それぞれの外務大臣、防衛庁長官、また私自身も申し上げておることが、これが政府の基本的考え方でございます。
  224. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それで、ここの極東の範囲にこういうふうに書いてあるんですが、「大体において、」今申しましたように「フィリピン以北」、そして「並びに」というのがありまして、「日本及びその周辺の地域であって、」こうなるんです。  そこで、私はこれをよく読んでみて、よく意味が、全然わからない。なぜかというと、「日本及びその周辺の地域」というのはフィリピン以北であることは確かですね。さらにその後、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれるというのも、たしかフィリピン以北に全部、韓国とか中華民国、この後には中華民国の支配下にある地域は台湾地域と読みかえられておりますが、この両方の支配下にある地域も含まれる、これは当たり前だと思うんですが、この「フィリピン以北」のほかに「日本及びその周辺の地域」というのがつけ加わっているんですが、これは外務大臣、特に特別な意味はあるんでしょうか。  委員長、外務大臣に。これは重要な極東の話ですから、政府委員じゃなくて外務大臣が答えてください。
  225. 中山正暉

    中山委員長 竹内北米局長。まず前提で。
  226. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 この極東の範囲につきましては、当時の安保国会、昭和三十五年のときにいろいろ議論がございまして、その経過の中で表明されたものでございます。  それで、先生ただいま御引用なさいましたところの前に、そもそも極東につきましては、「別に地理学上正確に画定されたものではない。」という前提がございます。「しかし、日米両国が、条約にいうとおり共通の関心をもっている」、そういうところにつきまして、「極東における国際の平和及び安全の維持」ということが関心事項であると書かれております。  それで、それを前提といたしまして先生がおっしゃられましたような表現ができているわけでございまして、その当時の国会におきましても、それぞれの、個々の地域、具体的な細かな地域、島々、海域につきまして、これが極東に入るか入らないかという議論をすることは必ずしも適当でないということを当時から言われているわけでございます。  それで、その「日本及びその周辺の地域であって、」というところに関しましても、今私が申しましたように、まさに日本及びその周辺の地域ということでございます。
  227. 西川知雄

    ○西川(知)委員 まず、こんな重要な話を外務大臣が答えられない。そして、今政府委員が言ったのも、何を言っているのかわからない。こんなんじゃ、私、もう本当に国民は、一体、周辺地域とか周辺事態をどういうふうにして本当に政府は思っているんだろう、国会ではどういうふうにして議論されているんだろうということが全然わかってこないと思うんですね。  そこで、もう一回外務大臣に聞きます。  今の答弁ありましたね。そこで、「フィリピン以北」というのは書いてあるんです。その後に、「日本及びその周辺の地域」、周辺地域ということは、日本プラス周辺地域とここの概念で昭和三十五年から出ているんです。昔から、なかった、今度新しいというわけじゃなくて、ここに出ているんですが、そこで、何で「日本及びその周辺の地域であって、」というのがここへ出てくるのかというのが一つの質問。  二番目の質問は、韓国及び中華民国、これは台湾地域、の支配下にある地域もこれに含まれる。これは「日本及びその周辺の地域であって」ポツの後にそう言っているんです。ということは、これは説明なんですね。ですから、これを素直に読むと、日本及びその周辺の地域というのは韓国及び台湾地域、いわゆる中華民国の支配下にある地域も含まれる、こういうふうに読むのが普通だと思うんですが、それで高村外務大臣、間違いないですね。外務大臣、いかがですか。
  228. 中山正暉

    中山委員長 ちょっと打ち合わせしてください。  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  229. 中山正暉

    中山委員長 速記を起こしてください。
  230. 西川知雄

    ○西川(知)委員 外務大臣からやってください、それは当然。政府委員じゃなくて外務大臣から。いや、これはだって、極東って、これは一番重要な話をしているわけですから。
  231. 中山正暉

    中山委員長 前提に、それじゃ北米局長から。局長、どうぞ。
  232. 西川知雄

    ○西川(知)委員 前提ばかりじゃ困りますよ。これは困りますよ。やはり外務大臣と総理が答えてもらわないと。
  233. 中山正暉

    中山委員長 ちょっと速記をとめておいてください。     〔速記中止〕
  234. 中山正暉

    中山委員長 速記を起こしてください。  外務大臣。
  235. 高村正彦

    ○高村国務大臣 新ガイドラインにおきましても、今度の周辺事態安全確保法案におきましても、極東という言葉は使われていないわけでありますから、これは過去の言葉でありますから政府委員答弁させようと思いましたが、どうしても私に答弁しろ、こう言うので、「かかる区域」、ずっと言っている中の「かかる区域」に含まれるということでありまして、日本、その周辺の地域だけに含まれる、こういうことではない、こういうことであります。
  236. 西川知雄

    ○西川(知)委員 これは非常に微妙な話もあると思うんですが、私は何が申し上げたいかということだけはっきりしたいんです。  これはやはり、物事は玉虫色にすると、非常に、そのときはみんながそうかと思って安心するというか、和解したとか合意したというふうになるわけですが、いざというときになったらそこで問題が起きてくる。そして、そのときに慎重な判断ができないし、また、裁判所も国会も国民も、ちゃんとした、そのときに本当に合意ができているのか、これはわからなくなる。こういうことを避けるために、物事というのは重要なことについてはちゃんと法律で決めておくんですよ。  ですから、周辺事態というよりも、日本周辺地域というのがあるから、それはその事態事態によって周辺地域は変わるでしょうからそこまで全部、こことここが周辺地域だと、そんなことを言えと私は言っているわけじゃなくて、大体どの辺なんだと。さっき野中官房長官が、私は日本近海と言った覚えはないとおっしゃいましたが、そういうような概念。それは言っていただきたかったわけですけれども、そういうような大体の概念ということが日本周辺地域だということを国民の前に明らかにする、そして我々もそれを判断材料にできるということじゃないと、あやふやにして玉虫色で全部やってしまうととんでもないことになりますよということを私は申し上げたかったわけでございますので、その点について御了解というか御理解をいただきたいというふうに思います。  そこで、私、本来、きょう、金融問題ばかりやろうと思っていたのですが、安保の問題がこれだけ言葉で重要になってきましたので、ちょっと金融問題に移らせていただきます。  債権放棄。これは、例えばある金融機関からあるゼネコンがお金を借りている、そこである一定の要件に当てはまれば、これは無税償却をしてよろしい、こういう話でございます。その銀行に対して、一方、資本増強ということで公的資金が導入をされる。そこで、これは国民の普通の考え方からするとどういうことかというと、公的資金がゼネコン救済に使われる、徳政令ではないかということになります。そういうような批判もあって、長銀の場合は、日本リースその他の子会社に対する債権放棄を計画していたわけですが、これをやめたということになっております。  そこで、私は全部やめたのかなというふうに思っておりましたら、実はそうではなくて、「金融再生委員会の運営の基本方針」というのが十一年の一月二十日に出されまして、そこで、「不良債権をバランスシートから切り離す手段の一つとしての債権放棄については、借り手企業の再生につながることで残存債権の回収がより確実となる等の合理性を有する場合があり、当該企業の経営責任の明確化等を考慮して、債権放棄を行う金融機関に対しても資本増強を行うことを可能とする。」こういうふうに書いてあるわけです。  そこで、私が非常に懸念しているのは、まず、国税庁が通達を改正いたしまして、その通達の中で、無税償却をできる場合、これをより明確にしたということがございます。それは、平成十年の六月一日付の法人税の基本通達の一部改正ということでございます。  これは、ある観点からすると、国税庁そして金融再生委員会、この二つの機関が、この債務者、例えばゼネコンの再建計画、リストラ計画は合理的かどうかということを判断する。どういうふうに判断するのかは、これは合理的にと書いてあるだけで、その合理的な基準というものもはっきりしない。そして、債権放棄をして無税になりましたと。無税償却ということはどういうことかというと、銀行がその分を損金算入することができるということですから、その分の法人税率の約四〇%が税金として払わなくて済む、こういうことになるわけです。しかも、プラスして公的資金を入れるということですから、これはある見方によると、国民が二重の公的資金を払って、いろいろなビッグプロジェクトの開発に失敗したとか、そういうような建設会社等に徳政令をしいているのではないか、こういうことになるわけです。  そこで、こういうことがあると、国民は何のために税金を払っているのか、公的資金、自分の税金は一体どういう用途に使われようとしているのか、これははっきりとすることができません。  そこで、これがいいとか悪いとかいう議論をする前に、これは総理にもお尋ねしたいのですが、こういうようなことがなされないように、やはり、例えば債権放棄をしたといった場合に、その資本注入をする銀行、これが債権放棄をしたという場合には、どういう債権を放棄したのか、そして、例えば救済されたゼネコンというものがどういうようなリストラ案をつくって、そのために無税償却をしたのかとかいうことを国民の前に明らかにしてこそ、初めて国民は銀行公的資金を注入するということについて理解を示すというふうに思うのですが、その点について総理のお考えをお尋ねします。
  237. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 幾つかのことを一緒におっしゃいましたので。  まず最初の点は、国税庁の通達の話ですが、確かに、従来、とても取れないものでも国税庁は取れるかもしれないということで話がつかないで、いつまでも債務の処理ができないということがしばしばあって、頑迷固陋だなんて言われたこともございましたから、合理的な再建計画の一環であれば、そこに悪意がない、むしろ善意であるというのであれば、実際取れないのならば債権放棄を認めてもいいじゃないかという、比較的常識的な意味で通達をそういうふうにいたさせたわけであります。きょうはちょっと専門家がおりません、大体大筋は間違っていないと思います。  さて、そこで、その結果として、今度は、銀行にそれだけ資産が減りますから、公的資金の導入になる材料になりますね。それは、公的資金を導入するときに再生委員会がよくそこはお調べになるわけでございますから、その再生委員会はやがて、プライバシーに当たらない限り、将来その決断の記録をお示しになるわけでございましょうから、少なくとも従来佐々波委員会はそういう建前でしたから、それによって御判断をいただくということになるのではないかと思います。
  238. 西川知雄

    ○西川(知)委員 総理の御意見はいかがですか。
  239. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 大蔵大臣が御答弁いたしたとおりでございます。
  240. 西川知雄

    ○西川(知)委員 そこで、野田自治大臣にもお尋ねしたいのですが、野田自治大臣は、九八年の八月十八日の予算委員会でこの債権放棄のことについて若干述べられております。これは権利調整委員会との関係で述べられておるのですが、この調整委員会での、これは成案になりませんでしたが、その関係で、例えば債権放棄というものが認められる、そして認められると無税償却になる、そしてこれはモラルハザードを引き起こす、これは大変問題であるというふうにおっしゃっているんです。  ちょっと記憶を喚起するために読んでもいいんですけれども、「企業の再建を図るために銀行に債権放棄を強要して、そしてそれを無税償却を行わせる。言うなら、形を変えた公的資金によって会社救済をやろうという話に実はなっているんですよ。だから、そういう安易な債権放棄の促進ということは、いわば借り手のモラルハザードをもたらすわけでありますし、日本的美徳である当たり前の、借りたものは必ず返すという風潮を失わせてしまうということにもなりかねない、そういう問題がある。」こういうふうにおっしゃっているわけです。  今もそういうお考えだと思いますから、もしそうだとするならば、その債権放棄をした、一体どういう具体的な理由で債権放棄をしたのか、またその金額は幾らなのか、そして債権放棄の対象の相手となった借り主、それのリストラ計画は何なのか、そして、その債権放棄をした分について、果たして公的資金は幾ら使われているのか、そういうような内容を開示させるということがモラルハザードを防ぐ一つの手段になると思うのですが、自治大臣の御意見をお願いします。
  241. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 全く通告のなかった御質問なんで、私も、当時のことを記憶を思い起こしながら申し上げなければなりません。それから、私も今所管が必ずしもそっちの方ではないので、そこのところは、もし私の言葉に問題があるならば、後で金融再生委員会担当の柳沢大臣から御訂正願いたいと思います。  それを前提として申し上げますが、私が当時そのことを申し上げたのは、非常に恣意的に銀行が、特定の企業については助けてやるよと、とにかく、たくさんの中小企業は非常に厳しい環境の中で、債権放棄してもらうならどんどん助けてもらえるのに、逆に貸し渋りという状況下にあって、厳しい状況に立ち至っているわけですね。そういう点で、そういう恣意的なやり方だけであっていいのか、そういうことを許さない枠組みというのが必要なのではないか。  むしろ、中身を情報開示するしないということよりも、私は、一つの銀行が債務者の状況によって恣意的に判断するということでないような仕組み、だから、複数の、よく債権者会議やなんかできちっとしたことがあればそれはあるわけですね。お互いに同じ率でカットするとか、そういうやり方は、結構民間のいわゆる法的処理の中でもそういうことは現に行われていて、それは当然のこととして認められているわけです、そういう場合は。それを、一つや二つぐらいの銀行で恣意的なやり方をしたら、それはよくないんじゃないですかという趣旨で私は言ったわけであります、当時。私は、その考えは今も変わっておりません。  だから、情報を開示すればいいんですよという話じゃなくて、私はやはり、民間の銀行と借り手の間のいろいろなやりとりというのは、何でもかんでも情報開示すればいいというものじゃない。むしろ、特定の小人数だけでやってしまうということはよくない。相手によって対応を変えるというやり方が決していいことじゃない。できれば、そういう複数、より多くの金融機関、債権者が一緒になって相手方の再建計画にどう協力するか、そういう意味でのきちっとした枠組みができるんならそれはそれで結構だ、そういう意味で申し上げたわけです。
  242. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 ここでちょっとお答えしておきます。  今先生の方から、情報開示の観点に立って、公正さをどうやって確保していくかというお話がありましたけれども、我々の今回決定、発表させていただいた運営の基本方針は、むしろ私としては、我々の機関がたまたま合議制の委員会制である、しかも、私以外は専門家五名をもって成る委員会制である、こういうようなことに着目して、そこのところはもうかなり公正さが確保されるというふうに考えまして、しかもこの五名の委員は、この合理性ということの判断が我々の使命である、任務であるということを十分意識して、この文書においてこういう決定をさせていただいた、ぜひその点は御信頼いただきたい。そもそも、皆様方がおつくりいただいた委員会でございまして、ぜひこの我々の委員会を支持いただきたい、このようにお願い申し上げます。
  243. 西川知雄

    ○西川(知)委員 私、この金融再生法案の作成にかかわらせていただきまして、柳沢大臣がいろいろと一生懸命やっていらっしゃって、そして情報開示の見地からも、法律で決まっているよりももっと厳しい引き当てのガイドラインをつくったりされているということで、私は、そういう意味では信頼をしておるわけですけれども、やはり人がかわったりすると、またその合理性の範囲とかいろいろなことでそれは必ずしも同じような結果になるとは限らないということなので、どういう場合に、債権放棄をしてもいいようなリストラ策があるのかどうかとか、その合理性の範囲というものをやはりもう少し明確にしていただきたい。また、これはしていただくことができると思いますので、ちょっと日銀総裁にも御質問したいので、ちょっと柳沢大臣からその確認だけ、そういうふうな方向でやっていただけるんだなという確認だけとりたいと思いますので、ちょっとお答えをよろしく。
  244. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 この文書の性格が、できるだけ大筋において、私どもの委員会のやっていること、またこれからやらんとする方向、これを示そうということでありまして、率直に言って、法律家の西川先生あたりから見れば随分穴だらけの表現ではないか。私は法律家ではありません、役人育ちですけれども、それでも随分思い切った書きっぷりだなと思う点もなきにしもあらずでございました。  そういうようなことで、合理性ということで片づけているわけでございますけれども、このときどういう話が出たかといいますと、ちょっとこれを思い起こすわけですが、結局は、例えば自分の引き当てているものよりも少額の債権放棄額だねとか、そういうような場合はもうこれは大丈夫だねとかというような話が出ました。  しかしそれは、それだからそうでなければならぬということを私がここで言っているのではなくて、そういうように、恐らく出てくるケースは非常に千差万別であろう、これを逐一検討して、要件として網羅的に書き連ねるということは、正直申して、現在の私どもに課せられている課題が余りにも膨大なものでありまして、もう日曜日も返上して作業しているくらいなものですから、ちょっとそれを委員長の私が求めるということは、私としてはかなりちゅうちょする。ひとつぜひ、我々のケース・バイ・ケースの判断を御信頼賜りたい、このようにお願い申し上げます。
  245. 西川知雄

    ○西川(知)委員 信頼しておりますが、情報開示をしていただいて、そして、もしそういう信頼を裏切るようなことがございましたら厳しく指摘をしてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。  ところで、日債銀の問題について、日銀総裁にお伺いをいたしたいと思います。  先ほど、この問題について、日銀総裁は、九年の五月十九日に大蔵省から、日債銀債務超過ではないと、そして、その報告を受けて出資をしました、そういうふうにおっしゃったのですが、これは実は違うのではないかというふうに思うのですね。  というのは、何かというと、私の聞いている範囲では、三月の半ばから下旬にかけて、大蔵省の方から、ぜひ協力をしてほしいという出資の要請があった。そこで、余りもう時間がないということで、実際の出資は後になるわけですけれども、政策委員会で四月の一日にもう既に了承したと。これは、考査というのは七年の二月なんですけれども、そのときに、日債銀自己査定の結果を見て、これなら大丈夫だなというふうに思って、四月一日に政策委員会で基本的に了承した、そういうふうに聞いておるのですが、総裁、いかがですか。
  246. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  順を追って申しますと、平成九年の四月に、日本債券信用銀行が抜本的な経営再建策というのを発表いたしました。日本銀行は、日本債券信用銀行に対して、平成七年二月に考査をしたきりで、その後、考査はしておりません。関連ノンバンク等の不良債権の動向とか、その処理の実施状況等について、定期的に報告を受けておりましたが、注意深く監視はしてきたわけでございます。  日債銀は、平成九年四月に先ほどの再建策を発表しまして、これに伴います新金融安定化基金を通じた八百億円の出資に先立ちまして、日本銀行としても、同行経営再建策のベースとなっている自己査定方法内容等について、限られた時間ではございましたけれども、先方からの報告に基づいて調査、確認して、その限りでは適当なものと認識したものでございます。  その後、大蔵省からも、当時実施された検査の途中経過として、日本債券信用銀行債務超過ではないという認識を確認いたしております。もちろん、その後、同行の資産のうち、追加的に償却、引き当てを要するものが出てくることはある程度予想はしておりましたけれども、その場合においても、毎期の収益で対応し得るものと判断したところでございます。  政策委員会で八百億を出すということを承認を受けましたのは、四月の初めでございます。
  247. 西川知雄

    ○西川(知)委員 ということは、これは日銀考査でも、大蔵検査でも、監督庁の検査でも、本当に時間を要するわけですね。そして、今度の大手の十七行の検査結果、これは自己査定と大分違っている、特に長銀と日債銀は大分違っているということが明らかになっているところ、今度は考査じゃなくて自分が投資するわけですよね、安定基金を通じて。その投資をするときに、自己査定の結果だけを見て、そしてわずか二、三日の結果、この検査だけで投資をしてしまったということは、これは出資をしたり投資をするときに普通の投資家がとる慎重な態度ではないというふうに私は思うのですが、総裁はいかがですか。
  248. 速水優

    速水参考人 先ほど申し上げましたように、四月の政策委員会で八百億を出資する承認は受けましたけれども、その後、いろいろ情勢を見ながら、実際に出資をいたしましたのは七月の終わりでございます。
  249. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それはそうかもしれませんが、承認をするということは、相手の財務内容をちゃんと審査をして、慎重にして、そして、八百億という巨大な、巨額なお金ですから、しかもそれは日銀お金ですから、それを出資するというときに、わずか二、三日、その審査だけで出資をするということは、そしてその日債銀がこういう状態になったということは、私は、日銀の審査能力というのは果たしてどこにあるんだろうか、こう疑わざるを得ないのですが、実際に審査をされたのは何日間審査されたんですか。
  250. 速水優

    速水参考人 日債銀自己査定を審査いたしましたのは、実質的には二日間でございます。
  251. 西川知雄

    ○西川(知)委員 普通、銀行の考査をされるときは何日間かかるんですか。
  252. 速水優

    速水参考人 大体、平均して二、三週間でございます。しかし、四月から、七月に払いますまでに、その都度銀行からも大蔵省からも随時情報はとっております。
  253. 西川知雄

    ○西川(知)委員 総理、今の話を聞かれて、二、三日の、実質二日ですか、二日の審査だけで、そしてこれは、相手の銀行を考査する、検査するだけじゃなくて、自分のお金、国民のお金を八百億円入れる、そして果たして大丈夫なのかなというときに、普通、相手を考査するときでも二、三週間かかるのに、わずか二日で、自己査定をそのまま信じて、そしてやるということは、これはどういうふうに思われますか。まず大蔵大臣に答えていただいて、そして総理に答えていただきたいのですが。
  254. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 けさほども申し上げましたが、今でこそ六十兆円の金があり、レジームもつくっていただきましたが、このときは全くそういうことがございませんで、公的な金は信用組合に出せるだけでございますから、日債銀がこの際再建されなければならないということは各行の間でも合意があって、日債銀が動かれました。それで、大蔵省も、大蔵大臣も、それはそういうことができれば大変に結構なことだという判断をされて、そして日本銀行にはひとつこれに金を出してくれないかという御依頼をしております。  そんたくいたしますと、このときに日債銀債務超過だという話は全然ございません。このときにないのみならず、昨年の三月の資本注入のときにもなかったわけでございますから、ついこの間起こったことで、債務超過ということは、当時、四月に始まりました検査でも全く出てきておりません。九月に示達いたしましたときにも出てきておりませんから、日本銀行総裁が、大蔵大臣要請もあってこれに八百億円を安定化基金からお出しになられたのは、いろいろなことを考えますと、これ以外に事態を平穏に処理するレジームがない、内外のことを考えられてのことだと思い、私は妥当な判断をされたというふうに考えております。
  255. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 わずか二日間の、こうおっしゃられましたが、先ほど速水総裁答弁されたように、大蔵省あるいは当該金融機関からの報告等もあって日銀としてはさような決定をされたものだと考えておりますので、そのような経過であると承知をいたしております。
  256. 西川知雄

    ○西川(知)委員 質問時間が来ましたので、これで終わりますが、きょう私が申し上げたかったことは、要するに、重要なことを法律で決めるときは、やはりみんなが後から見て、その言葉を見て、その意味がはっきりとわかるというようなやり方をこれからもしていただかないと、それこそ総理が言っている官僚政治の打破にはならないんじゃないかというふうに私は思います。  以上です。
  257. 中山正暉

    中山委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  258. 東中光雄

    東中委員 私は、ガイドライン関連法案について質問をしたいと思います。  ガイドラインは、周辺事態で武力行使、軍事行動を行う米軍に対して、日本が協力支援をするということについて、それを取り決めているものだと思います。  それで、問題は、その周辺事態で言っている周辺周辺地域がどこなのかということについて、非常に無限定なような、そうでもないようなことが今繰り返されております。それからもう一つ、周辺事態というのは一体何なのかということについても、極めて無制限で抽象的でわからないという状態になっておると思うんであります。  それで、周辺あるいは周辺地域の地理的範囲についてお伺いをしたいわけであります。  小渕総理は、この間、二十六日の本委員会での答弁で、日本周辺地域は、中東とかインド洋とか、ましてや地球の裏側というようなことは考えられないというふうに言われました。もっとも、インドネシアと言われて、後でそれはインド洋だと訂正されたように聞いておりますが、いずれにしましても、そういう地理的なやはり概念があるということは明らかになったわけですが、これは、要するに、在日米軍が周辺事態として行動する、事態に対する、行動するその範囲のことであります。  それで、総理にお伺いしたいんですが、そもそも、日本にいる在日米軍の作戦行動地域あるいは責任区域というものはどういうふうになっているか、お伺いをしたい。
  259. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生のお尋ねは、米国軍隊が、我が国にございます施設・区域を使用する際に、どういう活動が、どの関連でそれが認められるかということかと思われます。  それは、安保条約第六条に書いておりますとおり、日本の安全並びに極東における国際の平和と安全のために、日本の基地、施設・区域を使用することができるということでございます。  極東の平和と安全のために活動する米軍の行動範囲というものは、もちろん、極東は当然でございますが、その極東に局限されるわけではないということは、統一見解で昭和三十五年に表明したとおりでございます。
  260. 東中光雄

    東中委員 いや、そういうことを聞いているんじゃないです。在日米軍というのは、明白に東アジア戦略でもはっきり載っています。第七艦隊と第三海兵遠征軍、そして第五空軍であると、その中身までずっと詳しくやっていますね。  この三つの軍隊が太平洋軍の前方展開として十万人体制で日本にいるんです。この三つの、第三海兵遠征軍、それから第七艦隊、それから第五空軍、その部隊の行動範囲は、あるいは責任区域はどうなのかということについていいますと、私、例えば第七艦隊の行動区域ですが、横須賀を母港とする第七艦隊の責任区域は、国際日付変更線からアフリカ東海岸まで、北は千島列島から南は南極までの太平洋とインド洋の五千二百万平方マイルに及ぶものである。世界の人口の半分以上が第七艦隊の責任区域に住んでいる。これは、インターネットでとりました第七艦隊のホームページにちゃんと書いています。もっと長いのが書いてあるのです。こんなに厚くなるのです。それで、責任区域というのは一体何かと言うたら、紛争が起こった場合に指揮官の判断でそれに対処する地域なんだ、こう言っているのです。  そして、東アジア戦略、昨年の十一月に出たものを見ますと、日本に前方展開している三つの部隊の責任分担地域、これはこう書いています。太平洋、東北アジア、東南アジア、南アジア、インド洋を含み、四十三カ国の周囲を取り巻いていると明白に書いています。これはインターネットでも出てきます。  この四十三カ国というたら何かというと、随分あるので、何かと読んでみますと、オーストラリアが入っている、チャイナも入っている、インディアも入っている、ジャパンあるいはノースコリア、ニュージーランド、ロシア、台湾、ずっと四十三カ国です。だから、この地域で、これは責任区域とするということを言っているわけです。在日している米軍はそれを任務として行動しているわけであります。  それが全部、安保条約の、今局長答弁しました極東の範囲内ということと、それから周辺地域というのは、米軍が作戦行動をするその地域のうち、全部がそうなのか、どこかで限界があるのか、その点をお聞きしたいのです。総理はインド洋や裏側は違うと言われたけれども、現実にはそういう、公式には、広範な、まあいわば太平洋、アフリカ東海岸までと言うているのですから、それはどこに限界を引きますか。
  261. 高村正彦

    ○高村国務大臣 在日米軍は、日米安全保障条約の目的のために行動しますが、それ以外の目的のために行動してはいけないということはないわけで、直接出撃するのは別ですけれども、ほかに移動してそれをやるというような分担地域もあるのだろう、こういうふうに思います。  そして、今度の周辺事態法案における周辺事態というのは、あくまで日本の平和と安全ということに着目したものでありますから、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすような地域、それがそういう範囲内でなければならないということでありますから、当然、地球の裏側みたいなものは入らないことになるわけであります。
  262. 東中光雄

    東中委員 米軍が、その地域で紛争が起これば司令官が責任を持って対処する、軍事行動を行う地域として在日米軍はこれだけの任務を持っているんだと言うておるわけです。それで軍事行動を起こすわけですね、紛争が起こったといって。  その場合に、インド洋は入っておらぬと言うのですが、それなら、そういう行動を起こした場合の限界はどこなんだと。影響を及ぼす範囲だと言うけれども、影響を及ぼす範囲というのはどこになるのだと。周辺地域と書いてあるのですよ、ガイドラインにも。「日本周辺地域」と書いてあるのですよ。それは米軍の作戦行動範囲の中の、限定されるのかされないのかということを聞いているのです。
  263. 高村正彦

    ○高村国務大臣 あらかじめ明確に画定できない、その地域についてはということを、総理も私も、防衛庁長官官房長官も再々において述べているところでございます。
  264. 東中光雄

    東中委員 そんなもの、画定しろと言っておるわけじゃない。  だから、あなた方は、インド洋は入らぬと言っているんでしょう。それならインドネシアは入らぬのか入るのか。入らないと言うたけれども、今度は取り消された。それはどういうことなんですか。  総理、それを言うてください。
  265. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 インドネシア、先ほどもおわび申し上げましたが、インド洋と申すべきところをそのように誤って申し上げて、これは取り消させていただいた次第でございます。
  266. 東中光雄

    東中委員 ということは、インド洋は入らない、それでインドネシアは入ると。入るのに入らないと言うたから、誤ったから取り消した、こういうことになるんですか。
  267. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 例示として、しばしば今までの御審議の中で、過ぐる国会も含めまして、そのように発言をされておりましたことをそのように私も表現したわけでございまして、意味を問うと言われれば、ある特定地域における、そこで起こる事態があらかじめ周辺事態に当たるか否かということを申し上げることは不可能だ、こういうことでございます。
  268. 東中光雄

    東中委員 要するに、無限定だとどうも言われておるように思うんです。あらかじめ言えない、そのときそのときでやっていく、しかし地球の裏側はというだけで、それ以外のところは、挙げたところ以外は行く可能性があるというふうに、無限定だというふうにとらざるを得ません。  しかし、この間の質疑で、米軍の行動について、安保条約の枠を拡大するものではない、枠を超えるものではないというふうに言われました。その枠というのは、外務大臣も、地理的概念ではないが地理的要素を全く含まないわけではないということを言われましたけれども、そんなものは初めからわかっておることであって、それが安保の枠と、さっき局長もお話がありましたが、米軍の支援を行う範囲は安保条約六条に言うている極東の範囲の枠内という、枠内を超えるものではないというふうに言われておるようにもとれるんですが、どうですか、その点は。
  269. 高村正彦

    ○高村国務大臣 安保条約の目的の枠内、こういうことを言っているので、安保条約の目的というのは、日本の安全と、そして極東における国際の平和と安全でありますが、周辺事態確保法案は、日本の平和と安全に資するためということでありますから、当然安保条約全体の中の日本の平和と安全というところに着目したものである、そういう意味で安保条約の目的の範囲内、こういうことを申し上げているところでございます。
  270. 東中光雄

    東中委員 安保条約の目的の範囲というのは、それは言葉だけであって、内容的には無限定になります。  だから、それでは安保条約六条に言い、前文に言い、四条に言っている極東というのは、極東の範囲についてはどう考えているんですか。
  271. 高村正彦

    ○高村国務大臣 先ほど話題になりました昭和三十五年の政府統一見解のとおりでございます。
  272. 東中光雄

    東中委員 政府統一見解を言うてください。  では、私が読みましょう。こう言うてますね。  政府の統一的な、確定的な見解ということで、その極東についてでありますが、一般的な用語としては、別に地理学上正確に画定されたものではありません。しかし、日米両国が、条約で言っておりますとおり、共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということであります。この意味で、実際問題として両国共通の関心の的となっている極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域ということになるわけです。こういう区域としては、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれると。そのとおりだとあなたはおっしゃった。韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる。  中華民国の支配下にある地域は、今どこにあるんですか。
  273. 高村正彦

    ○高村国務大臣 委員の御存じのとおりでございます。
  274. 東中光雄

    東中委員 答弁がありません。これは答弁拒否です。(発言する者あり)だめだ、これはだめだよ。政府の責任で言えということを言っているときに、失礼だよ君、先生の考えているとおりでありますと、こんな答弁がありますか。これが国務大臣の答弁か。予算委員会だよ。
  275. 高村正彦

    ○高村国務大臣 何度も何度も政府として繰り返し答弁していることでありますが、中華民国の支配下というのは台湾地域と読みかえる、こういうことを何回も何回も政府として答弁しているところでございます。
  276. 東中光雄

    東中委員 ふざけたことを言うな。(発言する者あり)いやいや、いいです。  この統一見解が出る前に、統一見解を愛知揆一さんが求めたその前に、愛知揆一さんはいろいろ論議をしています、極東の範囲について。  そこで言うているのを見ますと、極東の地域というのは、六〇年当時ですよ、自由陣営に属する領域であると、はっきりそう言うています。そして、したがって、共産圏に属する地域は入らない。例えば、中共が支配しておりますシナ大陸、ソ連の領土、北朝鮮、北ベトナム、北千島というようなところは、そういう概念構成から申しますと、具体的には極東というものには入らない、そういうことですかと聞いたら、岸内閣総理大臣は、極東の範囲内には、今言われた点は入らないと。それを皆統一見解にせいと言われて、韓国及び中華民国の支配するところ、だからそれ以外のところは入らないんだ、こういうことになったんですよ。  しかも、ここでは言うていますね、地理的概念ではないと。あなた方のお得意のことを言うているんですよ。しかし、大体として言えばと言うて——この岸さんのものはなかなかはっきりしているんですよ。地理的概念でないというような楽なこと言わないで……(発言する者あり)いやいや、概念規定自身がはっきりしているということを言うている。地理学的なものではない、政治的な、日米間での合意によって決まっているんだということをはっきり言うているんですよ。だから、後で、台湾地域であると。統一見解ではそうなってない。あなたの言うているのは、七二年の田中内閣のときの統一見解じゃないか。あなたは六〇年ということを言いながら、読みかえるという、そのことを何回も言うているじゃないか。答弁が違うじゃないか。ごまかすようなことを言いなさんな。  それで、私が言いますよ。七二年に日中国交正常化ができて、中華民国の支配下にある地域を台湾と読みかえる、今何回も言うているというけれども、そういうことを田中さんが言うたのです。なぜそうなるのかと言うたら、そのときは米台相互防衛条約があるから、米国の方から見たら、中国は一つということになっておるけれども、まだそういう条約があるからということで極東から外すということは米国はしないということになったのです。これは極めて理屈に合わないことをやったのです。だから、そういう状態になっているのですから、米台条約が生きていた時代に、台湾地域は、まだ中華民国の支配下というのに準ずるようなことにしようということになったのです。  それから二十七年たっているのですよ。そして、昨年の十一月には、小渕総理は、来日した江沢民中国主席との日中共同宣言で、二十一世紀に向け、平和と発展のための友好協力パートナーシップの確立を宣言しました。台湾問題に関しては、改めて中国は一つであるとの認識を表明したのです。だから、台湾は中華人民共和国の一つである、中華人民共和国の支配下にあるということを確認したことになるわけです。およそ中華民国の支配する地域、あのときは、一九六〇年はそうだったでしょう、中華民国を承認しておったのだから。小渕さんがそういう宣言を出した段階では、これはちゃんとせないかぬ。二十七年前の田中さんがやったものをそのまま持ってくる、いかがなものかと思うのですが。
  277. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 非常に重要なことでございますし、また、私自身、江沢民国家主席と話し合いの中で申し述べたことでございますので、正確に申し上げますが、一九七二年の日中共同声明において、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認いたしておる、その前提として、我が国は、中国は一つであると認識をしているのであり、日中共同宣言にある認識とは、日中共同声明に示されたそうした認識を示すものである、この考え方にのっとって私としては申し上げたわけでございます。  したがいまして、台湾をめぐる問題につきましては、我が国は、従来からこの問題が当事者間で話し合いにより平和的に解決されることを強く希望する立場を明らかにしており、この立場にいささかの変更もないことを申し上げておるわけでございまして、先般の江沢民国家主席の訪日におきましても、私から江主席に対して、かかる我が国立場を直接表明いたしておるところでございます。
  278. 東中光雄

    東中委員 全然、事柄の性質を無視して、あなたの共同宣言の中身あるいは談話を言われただけでは、これは意味をなしません。  この問題については、七九年の二月五日の衆議院予算委員会議論があります。このときは、正木議員が、米中の正常化が行われたという時点で極東の範囲から台湾は外すべきではないかということを言うているのです。それに対して、当時の外務大臣は園田直さんでした、園田さんは、アメリカとの相談でありますが、向こう一年間は米国と台湾の条約が、これは米台条約ですね、今その条約があるからまだ何とも言えないんだ、こう言いました。それで、極東という範囲の考え方というのは、基本的には米国と日本との話し合いによってできたことでございますので、これは一方的に日本がどうこう言うべき筋合いのものではない、言えないということを言っているんです。そして、十分時間をかけてアメリカとも相談をし、検討をすべき問題であると思うと。  だから、大筋から言うと、米台条約があるから丸一年間有効なんだから、今ちょっと言うたってそれはあかんのや、アメリカと話をせなあかんのやと。筋から言うたら、中華民国の支配下と言ったが、もう一切そういうことはなくなってしまうからということになって、アメリカと検討すべき問題だと言っているんです。これが七九年ですから、もう二十年になりますか。  時の外務大臣が予算委員会で言うたこと、話し合いをやったんですか、やっていないんですか。それで、外すということを、その間に日中共同宣言、小渕さんもこの間やった、しかし、このことについては一切やっていないんですか、どうですか。
  279. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 当時の園田外務大臣の御答弁の後も、日米間におきましては、もちろん中国問題、中国との関係につきまして種々の機会にいろいろな協議をしておりますが、特別この昭和三十五年の当方の統一見解を変更するということには至っておりません。
  280. 東中光雄

    東中委員 当時の園田外務大臣が検討すべき課題であると言うてから二十年間、日本は、中国が一つと言って確認しながら、中華人民共和国の支配地域だということは認めているわけでしょう。だから、極東の、六〇年のあの統一見解のときは、シナ大陸と書いてあるわけだ。それから北朝鮮、これはいわゆる自由陣営じゃないから、だからはっきりとそれは極東の範囲に入りませんと、総理大臣がそう言うているでしょう。  その統一見解に従ってと言うて、まるっきり違うことをやっている。中国は一つだと言いながら、実際はそういうことでない方向へ行く。なぜこういうことになるか。米台条約があった。今はアメリカは台湾関係法というのを台湾との関係で持っています。それに従って、中国は一つだということを言いながら台湾を特別の扱いをしておるということなんですが、日本はそれに同調して全く変えようとしていないということだと思うんです。  それで、私は、最終的に申し上げたいのですが、日中共同宣言で改めて一つの中国を表明して、二十一世紀に向けて平和と友好協力のパートナーシップを宣言した。クリントン大統領も昨年の訪中の際に、六月三十日上海で、三つのノーということを明言している。こういう点からいえば、これは日米間で台湾を極東の範囲から除外するというふうになっていくのが当然のことなんで、そういう合意によってできたものだからといって外務大臣が、園田さんが言うているんですから、これをそういう方向で変えていくということをやる意思があるか、やはり前のままでいくんだということなのか、そこらはどうでしょう、総理大臣。
  281. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 台湾の地位については、御党がどのような認識をし、判定をしておるかは、私、承知をいたしておりませんが、政府としては、我が国の基本的立場は、日中共同声明にあるとおり、すなわち、台湾が中国の領土の不可分の一部であるとの中国の立場を十分理解し、尊重する立場であるということはしばしば申し上げておるところでございまして、こうした考え方につきましては何ら変更がございません。  また、日米安保条約に言う極東につきましては、昭和三十五年の政府統一見解に述べられておるとおりでありまして、この政府統一見解に変更はありません。
  282. 東中光雄

    東中委員 そんなことを聞いているんじゃないのです。  だから、園田外務大臣が言うたように、極東の範囲から外すということについて、中華民国があったときとまるっきり違うのだから、そのことについて、アメリカとの話し合いで極東の範囲というのは決まったものだから、一方的に変えられないんで、十分協議をするということを言うて、そして二十年たって、今の時点でまだ協議しているということは一言も言わぬから、協議する意思もないんですか。やりますと言うのか、やはりもう意思はない、台湾は極東の範囲内で、だから在日米軍が軍事行動を起こす対象になり得るということを依然としてとり得る、とるということなのか。外す方向で努力するということなのか。その方向を聞いているのです。
  283. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 繰り返して申し上げますが、台湾につきましては、今申し上げた考え方に基づきまして、政府としては、一貫してそうした立場をとってまいるつもりでございます。
  284. 東中光雄

    東中委員 では、極東の範囲内で、台湾を含めて、周辺地域は、極東の地域での平和と安全を確保するためのそういう行動を起こすということですから、当然、極東の中に入るんだから、周辺地域の中にも入るということ、そういう見解を示されたと思いますが、よろしいですか。
  285. 高村正彦

    ○高村国務大臣 全くよろしくありません。  何回も何回も申し上げていますように、周辺事態あるいは周辺地域というのは、あらかじめ特定の地域を言っているわけでないわけでありますから、どこの地域がそこに入るとか入らないとか、そういうことは全く関係のないことであります。
  286. 東中光雄

    東中委員 地理的概念でないということと地理的範囲が全く無限定だということとは違う。  それから、在日米軍の行動範囲は、彼らの軍事的な、世界に明らかにしておるのは、太平洋、それからインド洋、アフリカの東海岸までと言うておる。しかし、極東の平和と安全に寄与するという、そういう目的の範囲内でその行動をするんだ、極東の範囲内で行動するんだということを言うている。そして、日本周辺地域というのは、極東の範囲内と全く無縁じゃないということも、枠内だということを言ったんだから。そして今度は、いざということになると、全く無限定だ。こういうことになれば、これは言葉面はどうであろうと、実際上は、台湾が周辺地域外である、その中に入らないということを言わないというところに重要な意味があるんだということを申し上げておきたい。
  287. 高村正彦

    ○高村国務大臣 周辺事態というのは、日本の、我が国の平和と安全に着目しているわけであります。  安保条約というのは、我が国の安全だけじゃなくて、極東の平和と安全、そういうことがあるので、その中の我が国の平和と安全ということに着目して、そしてそれに重大な影響を及ぼす地域、こういうことを申し上げている、あるいはそういう事態、こういうことを申し上げているので、なぜここで一遍に極東というのが入ってきて、それが周辺事態あるいは周辺地域と同じように解釈されるのか、私には全く理解ができないところであります。
  288. 東中光雄

    東中委員 あなた方の意図はわかりました。  ただ、周辺事態というのは、日本周辺地域というのは全く特定の地域でない、こう言うのです。ところが、地域と書いてあるんだ、日本周辺地域と。先ほど言いました極東の統一見解もこう書いているんですよ。さっき読みましたから、注意を喚起しておきますけれども。大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、これは日本日本周辺地域であって、中華民国と韓国の支配しているところが含まれると。これは、日本周辺の地域というのはちゃんとこの統一見解でも出ているのです。  それが今度の法律で出てきた。法律で出てきたら、途端に無限定だ、無限定だと。そして、極東の範囲内で行動するということになっておるのに、その極東の範囲に台湾が入っておると言うけれども、それは除外すべきだ、それをやろうともしない。そして、今度は無限定にして入れていく。こういう意図は極めて危険だということを申し上げておきたい。  次に、周辺事態についてでありますが、周辺事態はだれがどのように判断するのか、事態の認定についても、これは何にも規定がない。そして、周辺事態というのはどういうことなのかということについても、極めてはっきりしていません。政府は、周辺事態は、その事態の態様、規模などを総合的に勘案して、日米両国がおのおの主体的に判断する、こう言うているんです。  それで、私はまず聞きたいのですが、米国は周辺事態をどう判断し、いかなる行動を行うのかということを言わなきゃいけません。プルアー米太平洋軍司令官、在日米軍を指揮する立場にあります、これが九八年三月の議会証言で、新ガイドラインによって、日米同盟は強化され、日米両国が日本周辺地域の危機に対して共同の計画づくりを実施できるようになったという証言をしています。そして、プルアー司令官は、別の日でありますが、太平洋軍の危機対処についてこう言っています。平時におけるエンゲージメント、予防防衛、危機対処、それから大規模紛争の戦闘と勝利、これをやるんだ、こう言うんです。この危機対処のところが問題なんです。こう言うています。ある特定の出来事が危機または紛争になるおそれがあるとき、我々はこの暴力を抑止するため軍事力で対処する、外交活動を強化し、抑止がきかない場合に備えて決定的な戦力を派遣する、こういうふうに言うているんです。  こうした米軍の活動は、平時から危機対処そして大規模紛争へずっと連動するようになっておるわけです。こういう米国の行動というのは、国連決議に基づいてやることでもなければ、また国連憲章五十一条に基づく自衛の活動でもない、そういう軍事活動であります。こういう行動が周辺事態の米軍の行動なのです。そういうふうに読めるのですが、異論がありますか。
  289. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日米安全保障条約というのは、国際憲章と整合するということが規定されているわけでありますから、当然、米国もそういう行動をとると思いますし、日本日本として主体的に判断していくわけであります。
  290. 東中光雄

    東中委員 何を言っているのですか。答弁じゃないじゃないですか。危機対処としてそういう軍事行動を起こす、そして強力な戦力を行使するとまで言うている。それが周辺事態対処なのだというふうに米国が言っている。そういうものを肯定するのかと聞いているのです。それは、国連の決議によってやるとも言うていないし、それから国連憲章の五十一条の自衛の措置だとも言うていない。そういう行動を日本は認めるのかということを言っているのですよ。あなたの答弁は何にもならぬじゃないですか。どうですか。
  291. 高村正彦

    ○高村国務大臣 今の文言は初めて聞いた文言でありますが、その文言だけでその具体的な行動がどうだということを判定することはできないわけでありまして、具体的な状況において、それがどういう行動なのか、そういうことをきっちり見きわめた上で、日本とすれば、国際法、国連憲章等に整合性のある範囲内できっちり協力をすることあり得べし、こういうことであります。
  292. 東中光雄

    東中委員 では、同じプルアー太平洋軍司令官は、インドネシア危機のことについていろいろ証言をしています。こういう中で、アジアで深刻な金融危機は地域の安全保障と安定にとって重要なかかわりがある、そういう認識なんですね。金融危機があったらもう安全保障の問題が出てくる。そして、民衆暴動、労働争議、種族間の対立の増加及び反米的言論の増加など、不安定な兆しがあった場合はそれに注目すると。そして、太平洋軍はアメリカの軍事プレゼンスを目に見えるものにし、また特に東南アジアの軍部のカウンターパートナーと接触するなどの措置をとる、こういうことを証言しています。だから、もう金融危機になったら、これは安全保障の問題として米軍は目に見える行動をするんだと。  そして、この間の三月、昨年の春のスハルト大統領の退陣、民主化を要求するデモが広がったあのインドネシアの危機といいますか、それが起こったときに在日米軍のとった措置、これは、ベローウッド強襲揚陸艦など三隻が在日米軍基地佐世保から出動をしました。そして、沖縄のホワイトビーチで約二千百人の特殊戦力を持つ第三一海兵遠征隊を乗船させました。そして、インドネシアへ展開をしていった。そして、横須賀からは、第七艦隊の旗艦ブルーリッジなどがインドネシアに出動して展開の態勢をとった。そういう行動ですね。それでさっき言ったように、暴動が起これば、場合によっては強力な武力を示して、そして行動を起こすということを言っています。  さらに、沖縄のトリイ・ステーションからグリーンベレー、米陸軍第一特殊部隊群、それから嘉手納の米空軍特殊部隊群、これも出動しています。特殊部隊の任務というのは、他国で秘密に遂行する干渉軍事行動の部隊であります。これは、こういう形で軍事行動を起こすわけです。現に起こしたわけです。それ以上へそこからは進まなかった、在日米軍がですよ。こういうふうに進んでいった。これは日米安保条約の目的達成のための行動というふうに見られますか、見られませんか。
  293. 高村正彦

    ○高村国務大臣 具体的な事実を私存じませんので何とも言いかねますが、実のある審議にするためには事前にそういうことを通告しておいていただければ、私もそれなりに調べて、実のある審議ができたかと思うと残念であります。
  294. 東中光雄

    東中委員 インドネシアの危機で、まして在日米軍が出動していったということは、あなた方知らぬとでも言うのですか。  そのとき日本はどうしたかといえば、日本だって軍隊を送ったじゃありませんか。日本は、五月十四日の大暴動発生直後にインドネシア危機対策関係会議を設置して、インドネシア在留邦人の安全確保のため、邦人輸送の準備行動と称して、自衛隊C130H輸送機六機、それから自衛官約二百十人をシンガポールのパヤレバ空軍基地に出動させましたね。海上保安庁の巡視艇も行った。要するに、インドネシアにおける内政について、日本は輸送機や何かを送ったのです。それはそれなりの目的があってやったのでしょう。そのことを私は今どうこう言っているのじゃないのです。  在日米軍は、それを反米行動あるいは反米言論あるいは暴動、デモ、こういうものに対して、暴動鎮圧ということを含めて内政干渉の部隊を送っている、そういう事態があったのですよ。それは去年のことです。そういうのを周辺事態というふうに思うのか思わないのか。  そういう在日米軍の行動ですよ。地球の裏側まで行かないにしても、インドネシアでそういう、言えば内政干渉行為、内政干渉軍事行動です。目に見える軍事プレゼンスを示すんだと称して公然と行くというふうなことは許されている、あるいはそれに対して日本は協力するのか。アメリカは、少なくとも平和と安全のために必要だと言って行動を起こしているのですよ。
  295. 高村正彦

    ○高村国務大臣 私自身、事実を詳細に知らないわけでありますが、私が知っている範囲の事実を前提にすれば、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態にはならないと思います。
  296. 東中光雄

    東中委員 日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態ではないと思うと。僕が言うているのは、そういう行動は安保条約の目的達成に寄与する行動なのかどうかと聞いているのです。
  297. 高村正彦

    ○高村国務大臣 少なくとも、今お諮りしている周辺事態法案で後方支援をすべき事態ではない、それは先ほど言った理由でございます。
  298. 東中光雄

    東中委員 後方支援をやる事態かと聞いているのじゃないのです。そんなことを聞いているのじゃないのです。  米軍のそういう行動は、細かいことは知らぬけれども大まかなことをと言ってあなたがさっき言うたから、その行動は——在日米軍の行動ですが、先ほど私が言いました。そういうのは安保条約の目的達成に寄与する行動なのか、そういう行動は安保条約の目的達成に寄与する行動ではないということになるのかということを聞いているのです。安保条約の目的達成に寄与する行動ということをあなた方は法律でも書いているんだから、それになるのかと聞いているんです。
  299. 高村正彦

    ○高村国務大臣 今お諮りしている法案は、そういう概念もありますが、それと同時に、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態で、そちらの方でひっかからないということは確かだと思います。  さらに、この法案と関係なく、極東の平和と安全という意味でいえば、私は、それは、今もうちょっと詳しい事情をきっちり調べてからでないと、なかなか一〇〇%確信を持って判断ができない、こういうことを申し上げておるわけです。
  300. 東中光雄

    東中委員 米軍のこういう行動は、インドネシアの危機といいますか、暴動といいますか、ということに対して、在日米軍が軍事行動を起こす、実際上ドンパチはやりませんでしたけれども、そういう行動は、ベローウッド、それから海兵隊、それからグリーンベレーと行ったのですから、そういう行動は安保条約の目的達成に寄与するという概念があるわけでしょう。だからといって、それは日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすなんという問題じゃないというのは、そんなことを聞いているんじゃないんだから。  安保条約の目的達成に寄与する行動というふうに、安保条約上規定のないそういう言葉をこの法律では使っているから、それに入るのか入らぬのかと聞いているんですよ。わからぬですか。——外務大臣がわからぬでどうします。北米局長でなきゃわからぬのか。
  301. 高村正彦

    ○高村国務大臣 この法案の審議をお願いしているんで、この法案の意味はわかっているんですが、その当てはめられるべき事実を具体的に私は知らないということを申し上げておるんです。
  302. 東中光雄

    東中委員 私は、法案の審議をしているんではありません。予算の審議をしているんです。  予算審議の中で、在日米軍というのは日本はいろいろ駐留経費を出してやっているのでしょう。その在日米軍が内政干渉になる軍事行動を起こしている。国連憲章上の何の権限もない、自衛の行動でもなければ国連決定に基づくものでもない、そういうことをやっておるのを安保条約の目的達成に寄与する行動というふうに思うのか思わぬのかということを聞いているんです。それについて結論が出せないというのが外務省の態度か。
  303. 高村正彦

    ○高村国務大臣 繰り返し繰り返し申し上げておりますが、そのときのインドネシアの状況とかそういった詳しい事情を私は知りませんから、今おっしゃっていることに当てはまるのか当てはまらないのかわからない。だから、物差しがどうかということについて聞かれるのであればそうだけれども、その物差しが、当てはまる事実がわからないんですからそういうことを申し上げているんですが、もし委員がよければ、政府委員は答える用意があるようであります。
  304. 中山正暉

    中山委員長 いかがですか。安保条約の話をしておられるから、条約局長答弁させましょうか。
  305. 東中光雄

    東中委員 安保条約じゃないんです。個々の具体的な事実じゃないんです。そんな、外務大臣も法律家でしょうがな。事実関係と法律の適用なんというような問題は、それは個々の細かいことを見なければ最終的な結論は出ないけれども、輪郭がわかっておって、そこでわかっている範囲において安保条約の目的達成に寄与する行動というふうな極めて変な概念を新たにつくっているわけだから、そういうことで、だから、外務大臣はそういうことがわからないままでやっておるというふうに聞いておきます。だから、何とでも解釈できるような……
  306. 中山正暉

    中山委員長 だから、それは条約上どうなるのかということを答弁させましょうか。
  307. 東中光雄

    東中委員 条約上の問題じゃないんです。条約にそんな規定はないんだから、条約上の問題じゃないんです。いいです。  要するに、事態についてアメリカは、米軍は明らかに安全保障上の軍事干渉をやっていく、在日米軍がですよ。それが、安全のために、金融危機で暴動が起こった、それでも武力を持っていく、そういう介入をやるというのは、そして現にやっているわけです。それについて、日本は基地を提供して、日本の基地を使ってやっている、それが安保条約の目的達成に寄与するという……
  308. 中山正暉

    中山委員長 条約の話をしておられるじゃないですか。だから、条約と関係ないとおっしゃるけれども、安保条約という言葉がしばしば出てくる。
  309. 東中光雄

    東中委員 外務大臣がわからない、そういう状態だということで、これは、非常に事態というものについて、アメリカは事態として軍事行動を起こしている、日本はそれが事態だということであるかどうかについて判断ができないというふうな状態であるということでそのまま周辺事態法を進めていくということは許されぬと。
  310. 中山正暉

    中山委員長 東郷条約局長、ちょっと答弁してください。(東中委員「条約局長はいいよ」と呼ぶ)条約局長。(発言する者あり)  これは国民が聞いているものですから、だからちゃんとしておきましょう。
  311. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 安保条約の目的との関係についてのお尋ねでございますので、私の立場から一言補足説明させていただきます。  安保条約の目的ということに関しましては、委員御承知のように、基本的には、安保条約第五条、日本が攻撃された事態、それから安保条約の第六条、極東の平和と安全のために米軍が行動し得る、この二つが安保条約の主要な目的でございます。したがって、そういう目的で日本に来ております米軍が行動する、これが安保条約の目的に関する一義的な米軍の行動の意味でございます。  しかし、そういう目的で日本に来ている米軍が、例えば、今委員御指摘のようなインドネシアにおける事態のために移動いたしまして、その地域の平和と安全のため、インドネシアの平和と安全のために行動するということは、安保条約の本来の目的と十分両立し得る行動であるというふうに考えております。  特定のケースに関しましてどういう判断をするかということは、先ほど来大臣が申し上げましたように、その特定のケースに即して判断せねばならない。しかし、法的な、基本的な枠組みは今私が申し上げたようなことではないかというふうに考えております。
  312. 東中光雄

    東中委員 そういうことは聞いていないんです。そんなことはわかっているんだよ。問題は、安保条約の目的達成に寄与すると書いてあるんです、この条文は。周辺事態法に書いてあるのはそう書いてあるんですよ。目的達成に寄与すると書いてある。平和と安全の寄与というのは、これが条約の条文なんですよ。そこで広げているんですよ、周辺事態法は。  そこのところで私は、広げたやつに該当すると思うておるのか思うていないのかと言うたら、そんなに広げて何とでもできるようになっておることが危険だぞという意味で私が聞いているのに、そのことさえもおわかりになっていない。適用するとかせぬとか、そんな問題じゃないんだ。この周辺事態法の規定というのは極めて無制限になるということを事実上認めたというふうに私は判断をします。  時間がありませんので、次の問題に移ります。  それで、昨年、防衛装備品をめぐる調達担当者の背任事件、それから、水増し、過大請求で大変な過払い事件が起こりました。これは、かつてない、調達行政そのものが犯罪である、これは、調達行政としてやったことが国に対して莫大な損害を与えたということで、私も、本会議でも、それからこの予算委員会でも総理に直接お聞きしました。総理は、そのときこう言われました。それこそいまだかつてないことであります、自衛隊の最高責任者としての責任を十分受けとめ、防衛庁長官とともに、その責任において徹底的な調査を行い、事態を解明する、事実関係を明らかにすることが総理の責任をとるゆえんだと思っている、こういうふうに、いろいろありますけれども、そうおっしゃいました。  ところが、今日に至るまで、発端の四社事案、そこからNEC本体及び防衛受注にかかわる関連企業全体に広がる水増し請求、過払いがいつから始まって、どの程度になっておるのかというのが、全然、一切その内容について明らかにされない。徹底的に調査し、事実解明をすることが防衛庁の最高責任者としての総理の責任をとるゆえんだと言われたのですが、一切発表されていないのです。責任をとるゆえんはどうなっているのですか。まず総理にお伺いしたい。
  313. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 防衛装備品の過大請求による調達実施本部をめぐる背任事件の事実関係の解明につきましては、今後公判等で明らかにされると考えております。  防衛庁では、昨年十一月に取りまとめました四社事案関連文書の管理実態に関する報告におきまして、事案の実態解明に向けての取り組みに不十分な面があったことについても指摘するとともに、関係者の厳正な処分を行ったところでございますが、詳細につきまして御要求がありますれば、防衛庁長官から御答弁いたさせます。
  314. 東中光雄

    東中委員 報告があったのは、文書の管理実態について、文書管理なんです。水増し請求、過払い、国に損害をかけたその一連の調達行政の不正の実態というのは、何にも明らかにされていないのです。だから、最終報告と言われたけれども、それは文書管理の報告、文書をごまかしたとか隠ぺいしたとかということについての報告なんです。  しかし、それで、実態を解明する調達行政の責任者である装備局長が、自衛隊法による懲戒処分を受けた。その懲戒処分の中身は、四社事案に関する実態解明に向けての一連の取り組みが不十分だ、そして結果として防衛庁の調達行政に対する国民の信頼を傷つけたと。これは、防衛庁全体としての調達行政の責任者ですね。だから、四社事案に関する実態管理が不十分で、その不十分なのは法律違反だということでしょう。法律上の義務違反だといって、自衛隊法の四十六条で処分しているのですから。こんなのはかつてないことですよ。  それで、総理答弁で、事実関係を徹底的に究明して解明することが総理の責任を果たすゆえんであるとまで言った。その後何にも言うてこないですね。だからお聞きしたいのです。その四事案を含めて、水増し請求、過払い、いつから、どれだけ、どういうことについて起こったのかということについて、答弁を求めます。
  315. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 防衛庁がいろいろな危機管理ができないで事件を起こしたことにつきましては、改めて遺憾の意を表したいと思います。  私どもは、再びこういうことがないようにと思いまして、四月までには一切の改革の成果を得まして実施してまいりたいということで、ほとんどめどをつけることができました。  今御指摘の、東洋通信機とかニコー電子とかNECの水増しの問題でございますが、東洋通信機やニコー電子等につきましては、これまで返還金の積算作業等を鋭意行ってきたわけですが、何しろこれは大変な作業がかかるものですから、今までやっておりましたが、ごく近々一括返還を求めてまいる所存であるということを申し上げておきたいと思います。  それから、過大請求が判明しております日本電気、日本航空電子工業及び日本電気電波機器エンジニアリングの三社につきましても、事案の仕組みや規模等の把握をするために、特別調査を今大わらわでやっているところであります。これにつきましても、できるだけ速やかに過払いを確定して、返還請求を行ってまいりたいと思います。  これらの事案につきましては、先生御指摘のとおり、過払い額を算定して、所要の措置が完了次第公表してまいりたいと思います。
  316. 東中光雄

    東中委員 四社事案に挙げられました東洋通信機あるいはニコー電子の水増し請求、過払い事件については、昨年の検察庁が起訴した、そして東通では二十九・九億円、それからニコー電子については十七・二億円、これを返還させて、それは補正予算に組みました。  ところが、これは検察庁が調べてやった部分だけなんです。防衛庁が実態を徹底的に調査して、どういう水増し請求があって、過払いをやったのかと、東通について。検察庁は外部から行って、調本なんかも聞きながら調べて、こういう結論を出したんでしょう。実際にそれをやった調本、防衛庁の調達行政がどういう誤りをやったのかということについて、検察庁のやったことだけ予算措置をとって、徹底的に解明する、調査しますと言うて、何もしない。  この間、新聞では、東通については五十数億円のものがあったという趣旨のことを報道されていますね。一体、東通、ニコーについて今もまだ何もわかってないと。どの程度の過払いがあったのか、国に損害をかけたのはどうなんだ。いまだにそうですか。
  317. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 もう一度申し上げますが、検察庁で出てきた金額、あるいは一部の報道で出ているような金額とは違いまして、私どもが独自の調査をやった結果を近々発表するということを申し上げておるわけであります。
  318. 東中光雄

    東中委員 近々発表の問題じゃないんだよ。調べたんなら調べたということを言いなさいよ、ここで。近々発表するといって済ましていられるような問題じゃないんだよ。
  319. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 公に発表するのに調べないで発表するものはないんですから、当然それは厳重に調べたということをさっき答弁しているじゃないですか。
  320. 東中光雄

    東中委員 一切厳重に調べなかった。だって、調べるのが不十分であったと言って、懲戒処分までしているんじゃないか。政治的に注意したというんじゃなくて、懲戒処分までしたんでしょう。そして、やった結果、実はこうでした、こんなに防衛庁は悪いことをやっていたんですということや、過払いを認めておったんですと出さなければいかぬわけですよ。何を威張っていますか。  それなら聞きましょう。膨大だからなかなかわからないんだということで済むのかということであります。  この間で明らかになった問題で、NECとその関連会社は、工数等を実績より増加させて、原価監査及び実績報告用に、防衛庁への実績報告をするについて虚偽の原価元帳をつくった。そして、別に真の元帳というのは持っておる。いわゆる二重帳簿システムをつくって、そして数年間、あるいは十数年かわかりませんが、とにかく多年にわたって、そういうシステムをつくって過払い、過剰請求をやった。そして水増し、過大請求をやって、そして防衛庁に過払いをさせたということを認めていますね。  それについて、これはゆゆしい問題だと思うのです、NEC本体ですから。国との取引というのは随分あります。そして、防衛庁も随意契約の取引がうんとあるわけですが、それがシステムまでつくって二重帳簿で国に過払いをさせる。防衛庁は、それにだまされたのか、通じてやったのかわかりません。どっちにしても、そういうことでの過払いをやったということをNECから防衛庁へ申し出てきた、去年の十一月五日です。ということは委員会でも答弁されています。  これはもうゆゆしい問題ですわね。担当者が悪くて過払いを認めたとか、水増し請求を認めた、あるいはわいろを取った、こんなのじゃないんです。システムをつくって二重帳簿で系統的にそういう過払い請求をやっていたという事態です。  それについての調査、これはゆゆしい問題としてやらなければいかぬと思うのですが、総理、これはもういまだかつてないことですよ、それこそ。過払い請求なんて。徹底的にやるべきだと思いますが、どうですか。
  321. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 先ほども触れたんですが、もう一度念のために申し上げますが、東洋通信機とかニコー電子につきましては、詳細な調査を終えて近々返還金等その他のことについて公表することにいたしております。  今先生からお話のありました日本電気、日本電気電波機器エンジニアリング、それから日本航空電子工業、こういうものにつきましては、今特別調査をきちっと実施しているところであります。  特に、今御指摘のあった日本電気につきましては、昨年の十一月三十日から特別調査を開始しまして、府中とか横浜とか相模原の事業所について、二重帳簿の存在を確認した上で、正しい原価元帳を確認するための作業を実施しているところであります。  また、日本電気電波機器エンジニアリングにつきましては、これも同じころから特別調査を実施しているところであります。  日本航空電子工業につきましては、現在までの調査によれば、原価元帳と帳簿類との照合を終え、過払い額の算定に必要なデータの収集を終えたところであり、現在最終整理中であります。これに基づく過払い額の算定につきましては、東洋通信機及びニコー電子の過払い額の算定方法をモデルとする必要がありますので、両者の過払い額が近く確定いたしますので、そういうものもモデルとしながら早急に日本電子工業についての過払い額を確定し、できるだけ速やかに公表したい、こういう段階であるということを御報告いたします。
  322. 東中光雄

    東中委員 科学技術庁にお伺いしたいんですが、防衛庁と同じように、宇宙開発事業団もNECとの随意契約の取引をやっています。そういう中で、水増し、過払い請求があって、それについて昨年の九月から調査に入られて、向こうからその過払い内容について明らかにする。今調査に入っておられますが、現在までの段階で、どういう過大請求があって過払いが行われていたか、明らかになった分を明らかにされたい。
  323. 中山正暉

    中山委員長 科学技術庁池田研究開発局長。まず先に答弁してもらいます。
  324. 池田行彦

    池田政府委員 事実関係でございますから、私から御説明申し上げます。  宇宙開発事業団では、先生御指摘のとおりに、昨年の九月にさかのぼりますけれども、今回の過払い問題につきまして、事業団からNECに対しましてその事態について調査を指示しました。十一月に終えまして、NECから、過大請求があったといった報告がございました。この間、公表してございますけれども、現在このような事実を踏まえまして工場での実地調査等を実施してきてございます。これまでのところ、発生した費用が正しく集計されているかどうかを確認するために行いますシステムに関する監査を終えてございます。  現在、各個別の契約ごとの原価監査というものを改めて実施中でございます。過大請求が行われたとされます、三十三件に上りますけれども、件数にしまして約八割程度につきましては、原価元帳と帳簿類との照合を終えてございまして、現在、計上されました費用の妥当性等につきましてのチェック作業を進めております。  このように、相当の進捗を見ていると聞いております。  これまでの調査によりますと、正規の経理システムに基づきます数値と事業部のシステムに基づきます数値とが食い違っている、いわゆる二重帳簿が存在しているということを確認しているとのことでございます。  今後、宇宙開発事業団におきましては、これらの調査を早急に進めまして、できるだけ早く事実関係を把握する、これとともに、正確な過大請求額というものを確定いたしまして返還請求を行う方針と承知しております。当庁といたしましても、これら作業が円滑に進められるように事業団を指導しているところでございます。
  325. 東中光雄

    東中委員 今御答弁ありましたが、監査づき契約が、事業団としては七十一件七百九十三億円の契約をやっておったと。そのうちの、過大請求があって過払いをやったのは三十三件である。その三十三件の契約名が全部明らかにされています。そして、契約確定額、監査づき契約ですから監査した後の契約額があります、それも各件名ごとに明らかにされている。  今、公表したと言っていますが、それは出ている。そして実際の、本当の、真の元帳による真実の金額を書いて、だからその差額が過払い額だ、各契約ごとに過払いはこれだけですということを一覧表にして出しているんです。これはNECが出したわけです。それについて本当かどうかということを今調べているんだと。まさにこれで当たり前だと思うんですね、私たち、二重帳簿をつくってやりましたというふうに向こうから言うてきたんですから。そして、こうなっていますと、二十三億の過払いをしたことになりますというのは、NEC側から言うてきているんです。これ、一覧表があるんです。  それで私聞くんですが、長官、向こう側がそういうインチキをやったということ、これは詐欺にも相当することだと思うんですね。でも、こっちは、だまされたということで、普通の売買なら、だまされた、だました方が詐欺罪でと、こうなります。これはしかし、公的な立場なんですからね。ちゃんと規則があって、防衛庁も科学技術庁も一緒です、ちゃんと原価計算方式で計算をして、向こうから出したデータに従っても、だまされたとしても、過払いになるようなことをやったら、それは責任があると思うんですがね。だから、これについてどうなんだということを聞きたいんです。責任、どう思っていらっしゃるのか。
  326. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 本件につきましては、まず第一に、宇宙開発事業団が現在実施しております実地調査等を確実に実施し、早期に事実関係を解明するとともに、その結果に基づき、事業団においてしかるべく返還請求等を行うことが肝要であると思っています。その上で、監査のあり方、例えば二重帳簿をどうしたら見抜けるか、こういうふうな監査のあり方等、改善すべき点があれば必要な措置を講じていくべきだと考えております。  いずれにいたしましても、過大請求があったことについては、私も大変遺憾に、残念に思っております。したがいまして、当庁といたしましても、今後厳正な対処を行うよう事業団を強く指導しているところでございます。
  327. 東中光雄

    東中委員 ついでに聞いておきますが、事業団、その二重帳簿による過大請求をやり始めたのはいつからなのかということについては、明らかになっていますか。
  328. 池田行彦

    池田政府委員 お答え申します。  先ほど御説明申し上げましたように、ただいま五年間にさかのぼりまして調査をしてございます。そうした意味では、この範囲で三十三件ということを申し上げましたけれども、今御指摘もございましたように、いつごろから、あるいはどういう仕組みでこういう不正がされたのか、そういったことにつきましても、この調査の結果をまとめる過程で答えが出せるものと思っております。
  329. 東中光雄

    東中委員 それで、防衛庁にお聞きするのですが、同じ仕組みで同じように防衛庁もやられているわけです。  それで、宇宙事業団にはちゃんとこういうふうに契約件名、例えば、平成五年度の「大型衛星射場点検取扱設備(そのイ)(衛星高周波回線設備)」についての契約と。それで、その最終確定金額は、要するに支払い金額は幾らか、それからNECが実際にやっておった報告は幾らか、だから過大請求は幾らと。こういうのを全部出しているんですね。そして公表されているんですよ。これについて調査しているんですよ。  防衛庁は、向こうから言うてきた、わざわざ言うてきた、こういうシステムでやりました、五年以上前からやりましたと言うてきたということを言いましたね、それで調査に入ったと。調本も、それから各幕から技本ということで、四十人で十一月三十日から入りましたね。調査はやっていると言うけれども、こういう、報告に来たんだから、事業団で出したものを何で防衛庁は出さないのか。調べています、調べていますと言うだけで、内容を一切言わない。なぜだ。はっきりしてほしい。
  330. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 NECとの取引関係の書類はまことに膨大なものでございまして、特別調査を目下鋭意実施中であり、できるだけ早い機会にそういうものを公表したい、こういうふうに改めて申し上げておきたいと思います。
  331. 東中光雄

    東中委員 これは、全然違うんですね。宇宙事業団は、調査に入るに当たって向こう側からこう言うてきたといって、それを調べているんです。防衛庁は、向こうから報告に来たと、それで調査に行ったと言うんだ。報告に来た、二重帳簿つくってやりましたと。今までの東通なんかでも全部そうなんですが、一件の契約ごとに一切やらないんです、防衛庁というのは。そういうやり方。  ところが今度は、向こう側が、こういう、悪いことをやりましたと言うて、契約ごとにちゃんと書いて出してきておるんですよ。それを求めてないの。膨大だからなかなかできないと言うんだったら——四十人も参加してやっているんでしょうが。
  332. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 ですから、ほぼ調査を終えて、近く発表すると言っておるわけであります。  なお、またこういう事態が絶対に二度と起こらないように、四月からひとつ新しい、そういう問題が起こらないような体制でこの調達業務を開始していきたい、こういうことを先ほど申し上げたわけであります。
  333. 東中光雄

    東中委員 宇宙事業団は七十一件、そのうちの三十三件が水増しだった。その三十三件は全部出てきた。  防衛庁は、同じ五年でとれば日本電気とどのくらい契約があったのか。システムをつくってからの契約ですね、少なくとも。それがどのくらいあったのかといったら、なかなかその契約数さえ言うてこないのです。やっと言うてきたのは、約七千件、契約額は三千五百七十億円。それぞれ一つ一つの契約について、水増し要求している、水増し要求しないのもある、そういうシステムをつくってやるんだ。どういうふうにやっておったかということは、その数字は、今度は日本電気でつくっているシステムをたたけば、ぽんと差額が出てくるようになっていますよ。そういう特別の水増しをしてもわからなくするようなソフトを開発しているんですね。だから計画的な、これはもう本当に恐るべきことですよ。それを、契約する、随意契約は客観性を持たにゃいかぬということで、規則があるわけでしょう。防衛庁でいえば訓令三十五があるわけです。それに従って見抜かなきゃいけないものを見抜きもせぬで、それで、膨大だからわかりません、明らかになったら示しますと。宇宙事業団では明らかにしているんだ。それを何で防衛庁はやらないんだ。膨大だからといって、前から取引しているからといってやらないのですか。
  334. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 不確定なものを発表するということは、これは大変不都合が起こると思いますので、今先生も御指摘なさったとおり、何千件という大変膨大なものであります。だから近くこれを、特別調査を終えますので、発表したいと言っておるわけであります。  なお、今先生が読み上げた資料等につきましては、装備局長の方から答弁させます。
  335. 及川耕造

    ○及川政府委員 大臣から先ほど申し上げましたように、昨年の十一月三十日から特別調査を開始いたしておりますが、申し上げましたように七千件、さらに、支払いベースになりますと一万件を多分超える件数がございます。  現在、府中、横浜、相模原の事業場につきましては、二重帳簿の存在を確認した上で、正しい原価元帳を確認するための根拠となる作業報告書等の照合を行っているところでございます。したがいまして、それ自身の信憑性についての確認作業を現在行っているところでございまして、実際に現場の作業員等からのヒアリング等も行っております。  このために、いまだ正しい最終的な原価元帳の確認というものができていない段階でございますし、さらに、今申し上げました三つの事業場以外の三事業場等についても調査をしなければならない、こういう段階でございますので、申し上げましたような形で、個々の契約について明らかにすることができない段階でございます。  以上でございます。
  336. 東中光雄

    東中委員 私が言っているのは、個々の契約について明らかにせいなんて一言も言うていないのですよ。NECがこういうふうになっていますと言って、NEC側から出てきたデータを、だからNEC報告ベースとして宇宙事業団は発表しているのです、個々について。NECは、自分で契約して自分で請求したと認めた以上は、こうなっていましたということを出してきているのですよ。ところが、防衛庁は出してこないのが当たり前みたいな、自分でまとめるみたいなことを、不正確なことはやれませんからと。NECからなぜとらぬのか。宇宙事業団では出しておるのに、なぜそれをやらないのかということを聞いているわけですよ。まともに調べていると言われへん。
  337. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 NECからそういうデータが出てきても、結果は、その結果と全く違うものが出ると思いますので、いまだそういう不正確なものを世間には公表したくない、こう言っておるわけであります。
  338. 東中光雄

    東中委員 時間が来ましたので、私は、防衛庁はまともに、一切、東通以後、四事案から、検察庁の言うたことだけ公表したけれども、それ以外は一切隠している。  それで、この際、これはシステムをつくって、系統的に何年も、何千件もというようなことでありますので、資料要求と、このことについての証人喚問を要求したいと思います。  防衛庁並びに宇宙開発事業団に対するNEC及び同関連会社の水増し請求、過払い問題に関して、NECの二重帳簿システムをつくった経過それからその内容、それから水増し請求と過払いの内容について明らかにするために、証人としては、NECの元社長、こういうシステムをつくった時期の社長と思われる関本忠弘氏、それから現在のNECの社長、金子尚志氏、それから東洋通信機株式会社社長の副島俊雄氏、この三人を当委員会で、そういう大変な過払い請求……
  339. 中山正暉

    中山委員長 時間ですから早目に。
  340. 東中光雄

    東中委員 はい。  それから資料要求として、今宇宙事業団で出ている分ですね。NECが原価監査及び実績報告用に作成した虚偽の原価元帳と真の原価元帳の二重帳簿システムを作成して水増し請求を開始して以来の水増し過大請求のあった防衛庁とNECとのすべての契約について、契約件名と最終確定金額、支払い金額と、それからNECが報告した水増ししていない場合の真の価格と、そして過大請求額、この一覧表ですね、ここに出ている、そういうのを政府が当委員会に出すように資料要求をしたいと思います。
  341. 中山正暉

    中山委員長 後刻、理事会を開会いたします。その際に検討させていただきたいと思います。  これにて東中君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  342. 中山正暉

    中山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算審査のため、明二十九日、参考人として日本弁護士連合会副会長上田國廣君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  343. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、明二十九日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会