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1999-01-26 第145回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年一月二十六日(火曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 通雄君    大原 一三君       奥谷  通君    加藤 卓二君       亀井 善之君    河村 建夫君       岸田 文雄君    小林 多門君       斉藤斗志二君    阪上 善秀君       島村 宜伸君    津島 雄二君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       松本  純君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       谷津 義男君    横内 正明君       渡辺 博道君    岩國 哲人君       上原 康助君    生方 幸夫君       岡田 克也君    小林  守君       中川 正春君    肥田美代子君       松崎 公昭君    横路 孝弘君       吉田  治君    石垣 一夫君       大野由利子君    草川 昭三君       斉藤 鉄夫君    西川 知雄君       冬柴 鐵三君    前田  正君       丸谷 佳織君    山中あき子君       加藤 六月君    鈴木 淑夫君       達増 拓也君    西村 眞悟君       木島日出夫君    志位 和夫君       春名 直章君    平賀 高成君       伊藤  茂君    北沢 清功君      知久馬二三子君    濱田 健一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     川崎 二郎君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   野田  毅君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国 務 大 臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         金融監督庁長官 日野 正晴君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁国民         生活局長    金子 孝文君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         国土庁計画・調         整局長     小林 勇造君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働大臣官房政         策調査部長   坂本 哲也君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         建設大臣官房長 小野 邦久君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省行政局選         挙部長     片木  淳君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 一月二十六日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     奥谷  通君   河村 建夫君     阪上 善秀君   村田 吉隆君     松本  純君   岩國 哲人君     松崎 公昭君   岡田 克也君     中川 正春君   草川 昭三君     石垣 一夫君   斉藤 鉄夫君     冬柴 鐵三君   西川 知雄君     前田  正君   加藤 六月君     達増 拓也君   平賀 高成君     志位 和夫君   北沢 清功君    知久馬二三子君 同日  辞任         補欠選任   奥谷  通君     亀井 善之君   阪上 善秀君     河村 建夫君   松本  純君     渡辺 博道君   中川 正春君     岡田 克也君   松崎 公昭君     岩國 哲人君   石垣 一夫君     丸谷 佳織君   冬柴 鐵三君     斉藤 鉄夫君   前田  正君     西川 知雄君   達増 拓也君     加藤 六月君   志位 和夫君     平賀 高成君  知久馬二三子君     伊藤  茂君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 博道君     小林 多門君   丸谷 佳織君     山中あき子君   伊藤  茂君     北沢 清功君 同日  辞任         補欠選任   小林 多門君     村田 吉隆君   山中あき子君     草川 昭三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冬柴鐵三君。
  3. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党・改革クラブを代表して、質問をさせていただきます。  総理、現在の国民生活、かつてない危機に瀕している、このように私は認識をいたしております。長引く不況によりまして、失業率統計以来という四・四%をずっと更新しておりますし、完全失業者二百九十万人、大変な数でございまして、関東地方で考えてみますと、実に茨城県の一県の人口全部が失業していらっしゃる、そういうような大変なことでございます。  この失業者方々にも、奥様もいらっしゃれば子供様もいらっしゃる。こういう御家族を考えれば、一見豊かなこの日本の国の中にありまして、一千万人前後の人たちが切り取られたように窮乏に耐えていらっしゃる。失業者の方は、ハローワークと言いますが、職業安定所に通って血眼になって職探しをしていらっしゃる。そしてまた、打ち切られる日も明らかな失業保険を頼りに生活をしていらっしゃる。  そういうことを考えますと本当に胸が痛みますし、一日も早くこういう不況というものを脱して、この雇用状態というものを改善していかなきゃならない、このように思いますし、総理もそのような認識のもとに、所信表明等でも明らかにしていられるところであります。  私は、地元に帰りますと、平素お世話になっているところへあいさつ回りに当然出かけるわけですが、大阪にもたくさんお世話になる方がありまして、そういうところへ回るときには、大阪内部の方にあいりん地区という、失業日雇い方々がたくさんいらっしゃる地域があります。私はそういうところへ車を迂回して、その状況を必ずと言ってもいいほど見に行くわけでございますが、去る十二月十八日にもそのようにいたしました。  そういたしますと、いつもより大変な人でございまして、もう歩道からあふれた、日雇い方々だと思いますけれども、車道をふさぐほどにたくさんの人がいられました。ちょうど昼食時分で、ボランティアの方でしょうか、食料等を配っていられる方もありまして、その周りには黒山の人だかり。本当にこの豊かな日本の中で見ることのできないような光景があるわけでございます。もちろんそれが日本全体の雇用状況ではありませんけれども、しかし象徴的に、縮図と申しますか、そういうものがそこで見られるように思われてならないわけでございます。  労働大臣、そういう状況でございますけれども、関西にはそういうふうにあいりん地区と言われる場所がございますが、東京にも山谷、それに日雇い方々がたくさんいらっしゃるところがあります。最近、視察されましたですか。
  4. 甘利明

    甘利国務大臣 現況の雇用情勢の厳しさというのは、日雇い労働者も例外ではございませんで、むしろ大変厳しい状況に遭われているということであります。  私自身、現場の視察はしておりませんが、資料提供を、委員方々からいただいたものをつぶさに拝見をさせていただいております。
  5. 冬柴鐵三

    冬柴委員 労働大臣としては、いろいろな制約はありましょうけれども、ぜひ足を運び入れて、そこから伝わる状況というものを肌身に感じていただきたいな、このように思います。  あいりん地区日雇労働保険者手帳というものを持っていられる人はどれぐらいいらっしゃるのか、また、持っていられない、それを含めた日雇い労働者というのは大体どれぐらいあいりん地区にいらっしゃるのか、そしてまた、その人たち平均年齢というのがどれぐらいになっているのか、お示しをいただきたいと思います。
  6. 甘利明

    甘利国務大臣 あいりん地区日雇い労働者の実情でありますけれども、平成十年の十一月現在、推定で約二万人おられます。このうち、いわゆる日雇い手帳を持っていらっしゃる方が一万五千人であります。  そして、求職者数は一日平均七千五百人でありますけれども、このうち未就職者は約五千人、つまり五千人の方が仕事につけない。この五千人のうち、約四千百人の方が日雇労働求職者給付金を受給されておられます。  それから、日雇労働保険者手帳所持者、いわゆる日雇い手帳を持っていらっしゃる方の平均年齢でありますけれども、平成十年の十一月末現在では五十四・三歳になっております。
  7. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、例えば飯田橋とかあるいは地元兵庫県の神戸のハローワークにも参りました。大変な人が押し寄せているといいますか、いらっしゃいまして、ところが、四十五歳以上の方々というのは、まだ子供教育費もかかりますし、また、このごろ家を買えば、みんな大体十年、二十年のローンで買われますので、ローンも残っていらっしゃる。企業が倒産したあるいはリストラということで肩たたきで職場を追われたという、働く意思はあるけれども働く場所がない、そういう人たちがたくさんいられるわけですね。  しかも、ハローワークで聞きますと、四十五歳以上の求人というのは著しく少なくて、しかもその労働条件というのも劣悪で、百人の職を求める人に対して十数人の求人しかない。そういうことで、何回通っても職につくことができないという人がたくさんいらっしゃるわけです。  そういう意味で、総理が、現在の雇用情勢は極めて厳しい状況にある、雇用確保に万全を期するとともに雇用の先行き不安を払拭する、これは就任直後の臨時国会所信で述べられた言葉でありますし、さきの国会では、雇用情勢に臨機に対応して中高年の失業者雇用機会を提供できるよう、緊急雇用創出特別基金を創設します、こういう所信を述べられて、平成十年第三次補正では六百億円というものを予算計上されて、そしてこれを財団法人高齢者雇用開発協会基金として造成された、こういうことを知っております。  そこで、労働大臣、この基金からの支給対象者やそれから支給額とか、この基金についての内容の御説明をちょうだいしたいと思います。
  8. 甘利明

    甘利国務大臣 基金説明の前に、先ほどの日雇い労働者の件に関しての対応もございますので、その点、一言だけ触れさせていただきます。  通常建設業者建設会社日雇い労働者を主に雇っているわけでありますが、その平均の数字というのは、大体一割が日雇い労働者でございまして、そこで、昨年の緊急経済対策の中で日雇い労働者対策というのも政策として入れまして、これはその平均値を超える日雇い労働者を雇った企業には、一人当たり五千円を支給するということでございまして、これは一月一日から、十五カ月間の暫定でありますが、スタートをさせていただいております。  それから、ただいま先生の御質問緊急雇用創出特別基金の話でございます。  既に御案内のとおり、今までも中高年齢者を採用した企業には補助制度がございまして、これは特定求職者雇用開発助成金年齢を四十五歳以上、従来は五十五歳だったんですが、春の経済対策のときにこれを十歳年齢を下げまして、四十五歳以上の中高年齢者を雇い上げた企業には賃金一定割合助成するという仕組みをつくりました。今回の基金は、これに上乗せをする形で、四十五歳以上六十歳までの中高年齢者を雇い入れた企業には、三十万円、一律助成をするという制度であります。  これはもちろん発動要件がありまして、全国ブロックあるいは地域ブロックにおきまして、ある一定要件を、つまりその失業率を超えたときにはこれが発動をされる。これは従来の中高年齢者雇用開発助成金に加えて、上乗せ発動される。これは非自発的失業、つまり会社の都合によってやめざるを得ない、あるいは会社が倒産をした、そういう方々に対して上乗せ措置として重ねて発動をされるというものでございます。
  9. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは緊急の雇用対策ということでございますが、まだ造成されてから一カ月足らずですけれども、何人かこれの適用を受けられる人が出ているんですか。
  10. 甘利明

    甘利国務大臣 ただいま申し上げましたように、発動要件がございます。これは中高年齢者通常雇い上げた企業には、賃金一定割合を補助する。それに加えて、非自発的失業者についての上乗せ措置発動要件がありますが、この発動要件が、全国におきましては、連続する三カ月の各月における完全失業率が五・二%を超えた場合。それから地域ブロックにおきましては、連続する二四半期の完全失業率平均が五・七%を超えた場合。これが発動要件ですから、まだ失業率がそこまでいっておりませんから、通常中高年齢者雇用開発助成金というのは出ておりますけれども、こちらはまだ発動要件を満たしておりません。
  11. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理、今聞いていただいたと思うけれども、総理は大変な状況にあるから緊急で雇用創出をする、こうおっしゃったわけです。そしてせっかく六百億を積んだ。しかし、これはまだ何にも、見せ金のように積んだだけで一銭も使われていないと今労働大臣はおっしゃった。そうですね。  発動条件が、今何か聞くと、全国で三カ月五・二%。今四・四が、総理、四・四が過去統計をとり始めてから最高でしょう。それを五・二まで予想するわけですか。これはどうするんですか。今が発動しなきゃならない時期じゃないでしょうか。税金六百億を積んだままで、町には、私るる申し上げましたけれども、本当に行っていただいたらわかるけれども、朝、職安のシャッターが上がったら、その下をかいくぐって走るんですよ、職を求めて。それでも十人に一人か二人しか職にありつけない。そんな時代に六百億の金、緊急経済対策でございますということで積んでおきながら、一銭もまだ、発動要件が充足されていないから使わない、総理、これはどうですか。総理
  12. 甘利明

    甘利国務大臣 所管でございますのでその前に。  説明が足りませんでしたが、現状でも四十五歳以上の方を雇い上げたときの補助システムというのは既に発動しているわけでありまして、さらにこの中で非自発的失業については上乗せ措置をします。  これは言ってみれば、今回種々の雇用対策を講じましたけれども、その中でのセーフティーネット、つまり一段ネットが張ってあって、その後ろにもまだありますよ、安心のネットを張ってありますということを知らしめるという意味が非常に大きいと思います。既に今も四十五歳以上は自発的、非自発的を問わず発動しているわけですから、その後ろにもまだキャッチャーがもう一人構えていますよということをお知らせするという意味が非常に強いと思います。
  13. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今労働大臣が答弁いたしたとおりだろうと思いますが、一方、委員指摘のように、緊急でこうした制度をつくっておりながらこれが発動されないということについてでございますが、二重にこの基金を活用するという制度になっておらないのだろうと思います。  一方で、この基金の問題につきましては、失業率について四・四がいいのか五・二がいいのかという議論もあるんでありましょうけれども、今、現行の制度によりまして機動的、弾力的に運用されておることでございますので、したがって、さらに万が一のときにという形のことに相なっておるんではないかと思っております。  しかし、御指摘がありましたので、その第二の対応についてどういう条件がよろしいかということについては、現下の経済の全体の状況あるいは不況状況等を見ながらあるいは検討する要があるのかもしれませんが、二重に安全のネットを張ってあるということだろうと思いますので、ぜひこの点については御理解もいただきたいと思います。
  14. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理前向き答弁、ありがたいと思うのですけれども、ぜひこれは発動条件——五・二%、かつてあるんですか、この日本に。そんなひどい、四・四でもアメリカを抜いたか抜かぬかというようなことが話題になるときに、全国で三カ月連続五・二なんといったら大変ですよ。今からまだ五、六十万人失業者を出すまでほっておくということになりますよ。  そして、労働大臣、第一段目ネットが張ってあるというのはわかりますけれども、それでほとんどの人が就職が得られるのであれば私はそれでいいと思いますよ。だけれども、じゃ、四十五歳以上の人で、今求職に対する求人率は一体何%になっているんですか、四十五歳以上五十五歳までの十年間。
  15. 甘利明

    甘利国務大臣 全体の有効求人倍率は御案内のとおり〇・四七でありますけれども、このうち、四十五歳から五十四歳までが〇・三六、五十五歳を超えますとぐっと低くなりまして〇・一〇ということですから、非常に厳しくなっております。  ただ、先生指摘の点はよくわかるんでありますが、それだけじゃなくて、いろいろな雇用対策を講じております。例えば、労働移動支援助成金というのも新しくつくりました。これは、企業——いいですか。  ということで、いろいろ合わせわざでやっておりますから、二重、三重、四重にセーフティーネットが張ってありますよということでございます。
  16. 冬柴鐵三

    冬柴委員 大変心強いんですけれども、二百九十万人の人が職を求めているという事実は厳然としてあるわけですよ。そうでしょう。  私、北海道も行きましたけれども、あれは北拓をつぶしてしまったために三十万人以上の人が失業しているじゃないですか。五百五十万人の中で三十万人というのは、もう第二の都市の旭川を超えるじゃないですか。そういうところに発動できないような六百億という貴重な財源を置いておく、これは考え直してもらわなきゃいけない。  僕は、全国でということよりも、局地的に、兵庫だって面的に破壊されて、平均よりずっと高いですよ、失業率。そういうところに一人でも二人でも助けられるような基金を造成してこそ、ああ、小渕さん、いいことをやってくれたな、所信表明演説で緊急にこれは対策を講じますと約束されたことをすぐやっていただいたな、こう感じられるけれども、六百億積んだけれども、まだ一人も——ことしじゅうにそんな五・二にするんですか、失業率。大変ですよ。ことしじゅうに五・二になんかやったら、そんなことをしたら飢饉ですよ。そういう状況の中で、貴重なお金を積んだだけじゃなしに、三十万円ずつやったら二十万人助かるじゃないですか。ぜひ総理、これはお考え直しをいただきたいと私は思います。  要するに、発動要件、特に地域ブロックにおける発動要件というものをもう少し、もう少しというよりも、際立って緩和をして、あすの日からでもそれによって地域的には職が得られる人が出てくるようなものに、この基金内容発動条件は改めていただきたい。その点についてだけ、総理から一言御回答をちょうだいしたいと思います。
  17. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 発動条件につきましては、先ほど労働大臣から、全国統一、こういうことを言っておられるわけですね。この点、今、例の北拓の北海道が出ましたが、一方、沖縄県などは本土に比べて相当高いものになっていますね。したがって、そういう形で地域地域状況を勘案してできるかどうか、この辺はコンセンサスを得ないといけない問題もあろうかと思います。  ただ、失業問題につきましては、今大臣がおっしゃっているように、あらゆる方策を講じながら、失業率を上げないように全力を挙げておりますし、また、政府全体としては、何といっても経済を活性化して、そしてこの不況を乗り越えるという政策を最大限やっていかなきゃならぬという点でございますが、一方、失業との関連も深いことでございますから、できる限り検討して、地域の偏差ということができるかどうか、この点も研究してみたいと思います。
  18. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ぜひお願いいたします。スピーディーにやっていただきたい、指導力を発揮してほしいと思います。  小渕内閣では、緊急経済対策を講じられまして、百万人の雇用創出ということを国民に明らかにしていられます。労働省に聞きますと、平成十年度の雇用者数というのは五千三百五十五万人というふうに聞いております。  したがいまして、この上に緊急経済対策を講じて百万人の雇用を創出する、平成十一年は五千四百五十五万人の雇用者数にするということを意味するんでしょうか。何か、いろいろ聞いてみるとどうもそこら辺があやふやなので、一体、百万人の雇用対策を講じた場合に、この五千三百五十五万人の雇用者数というものが、いつ、何人になるのか。いろいろなセーフティーネットを張っているとおっしゃいましたけれども、そういう雇用創出はどのように進められるんでしょうか、一言お答えをいただきたいと思います。
  19. 甘利明

    甘利国務大臣 百万人の雇用創出、そして安定という二文字がつくのでありますけれども、この話はもともと、政労使雇用対策会議の席で労使から強い要望でいただきました。こういう雇用不安を抱えているときには、具体的な目標数値を掲げてそれに取り組むという姿勢がむしろ安心感として社会にいいインパクトを与える、だから、とにかく具体的な数字を掲げよという強い要望を労使からいただきました。私もその姿勢に関してはそのとおりだと思いましたが、実は、政府部内で議論がございました。  経企庁といろいろ話を詰めましたときに、具体的な数字がきちんと算定できない限り、百万という数字は掲げられないということでありました。しかし、私は、政労使雇用対策会議で考え方も一致したことでもありますし、それに向かって努力をするという姿勢は政府として大事じゃないかということで、さんざんやり合ったわけであります。  ならば、具体的にはじける数字はどうなんだ。この緊急経済対策のGDP押し上げ効果が雇用にはね返るいわゆる雇用弾性値ではじきますと、三十数万人である。それ以外に、労働省がやっております雇用活性化総合プランの中で踏み込んだ政策としては、雇用を維持することから、雇用をつくり出すということまで踏み込んだ政策を掲げておりまして、この雇用創出効果が六、七万人ある。両方で三十七万人ぐらいの雇用創出効果はすぐにはじける。それ以外については、まだプラスアルファで具体的な算定根拠が成り立たない。では、三十七万人の雇用創出ということで掲げますかと、いかにもみみっちい話になります。  そこで、労働省といたしましては、ほうっておけば雇用が失われてしまう、その部分をほうっておかないで、雇用を失わせることを食いとめる、つまり雇用維持効果ということも今回の雇用活性化総合プランの中でかなり積極的に盛り込んでありますから、そうすると、百万人の雇用創出と、それから安定という言葉も含めて、百万人の目標は達成できるんじゃないだろうか。それ以外に、この経済対策が進んでいく中で新規雇用の創出効果もいろいろ出てくるのではないか。それはプラスアルファとして置いておいて、百万人の雇用の創出と安定ということでとにかく政府としての姿勢を示しましょうということで、政労使の意向をしっかりくみ上げたということでございます。
  20. 冬柴鐵三

    冬柴委員 さっぱり……。わかりますか。  今の話をずっと聞いていますと、何かほうっておいたら首を切られる人がたくさんあるけれども、ほうっておかないから維持できるから安定できる、そういうものが六十万人ぐらいある。そして、いろいろやって、三十数万は雇用ができる。  大体、今、二百九十万人失業している人のうち、二十万人ぐらいですかね、職場を与えられるのは。時間がどんどん過ぎていますのでこの程度にしますけれども、私は、五千三百五十五万人の雇用者の上に上積みできるのはせいぜい二十万人ぐらいだ、今の労働省の政策が完全にできて。百万人なんてとんでもない話だと思いますよ。私は、看板に偽りがあると思います。  これは、総理、努力目標は努力目標としても、やはり近づけられる目標を国民に示してもらわないと。今、三百万人の失業者が一体どうしたら我々の働く場所が得られるのだろうというふうに思っている中で、百万人の雇用創出と言われれば、ああ、三人に一人は働くところをつくっていただけるんだなという気持ちになりますよ。しかし、それがせいぜい私は二十万人ぐらいだろうと思いますけれども、これでは、緊急雇用対策とか厳しい雇用条件にありますという総理認識とその打ち出されている政策とに乖離があると私は思います。  ぜひ、現下の厳しい状況の中で最も苦しんでいられるこの失業者というところに光を当てることをもっと優先して考えていただきたい、このように思います。  次に移ります。  周辺事態法、ガイドライン関係でいろいろ国民の間に不安があります。それは、この周辺事態法によれば、活動するアメリカ軍に対して後方地域支援ということで、日本の自衛隊だけではなく、地方公共団体もまた民間人も協力を求められるというようなことが言われております。活動するアメリカ軍に対して、補給、輸送、修理、整備、医療、通信、宿泊、消毒等々、そういうものを行わなければならない。それからまた、それ以外に、空港及び港湾業務、基地業務というようなものをアメリカ軍に対して提供をする後方地域支援というものを、この法律によって創設をしようということに国民は不安を感じているわけであります。  ただ、これは日米安保条約に由来するものでありますから、日米安保条約というのは、もちろん日本の、我が国の安全に寄与する、それから、まあそれ以外には極東における国際の平和と安全に寄与するためにアメリカ軍が活動する、行動する、そういうものについて我が国は一定の施設・区域を提供しますというのが安全保障条約第六条の取り決めなんですね。それを、骨格、枠組みは変えずに、より内容を充実し、そしてその信頼性を高いものにしようというのが運用指針、ガイドラインであり、新しいガイドラインの性格であろうというふうに思うわけです。  そういう日米安保条約及びそのガイドラインに由来して周辺事態安全確保法というものがこのたびつくられるということになれば、当然その枠組みを超えてはいけないわけでありまして、活動する米軍の範囲、周辺事態というのは地理的概念ではありませんで云々というようなややこしいことを言われると、それこそ地球の果てまでも、アメリカ軍が活動しているものについて後方支援しなきゃならなくなるのではないかという国民の不安が起こるわけですよ。  そこで、この周辺事態というのは初めてつくられた言葉なんですね。何万本も日本には法律がありますが、周辺事態という言葉はこの法律で初めてつくられた概念だと思います。それで、この周辺事態というものの概念は、この法律の一条に規定されてあります。そして、これは我が国周辺の地域に発生した事態であるということが一つ。それから、その事態というものが我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるものであるという、こういう二つの要件というものを満たすことが周辺事態であるというふうに第一条にうたわれていると私は理解しているわけであります。  大体、これを二つに分けずにすっと言ってしまうからややこしいのです。私は二つに分けてみたのですが、我が国の周辺の地域という場合、これはどこなのかということが非常にややこしくなっているわけです。だから国民の不安もそこにあると思うのです。  ここで地域という言葉は、これは区画された一定の土地あるいは空間と言ってもいいでしょう。区画されなきゃ地域と言わないですよ。地域社会あるいは地域代表、すべて区画された一定の土地の中から選ばれた代表は地域代表。ですから、地域という言葉を使う以上、これは地理的概念なんですね。私はそのように理解します。  そうすると、日本周辺の地域というものを厳密に言ってみますと、日本の領土、領空、領海、領域、これは含まれないですね、周辺ですから。日本の周辺の地域と言えば、それは含まれない。それは、外務大臣ですか、防衛庁長官ですか。一言、どちらか。総理でも結構ですけれども。
  21. 高村正彦

    ○高村国務大臣 周辺ということでありますから日本の領土、領海、領空は含まれないということでありますが、それと同時に、周辺という言葉自体は極東周辺という言葉で長く使われてきた言葉でありまして、極東周辺と言った場合も、その周辺というのは、一定地域を画定する、あらかじめ画定するような意味で使われてきておりません。事態、規模、そういったことと関連して極東周辺というのが定められているんだと。  それは日本周辺とも、これは今まで伝統的に伝えられてきた言葉と同じで、周辺という言葉の中に地域という言葉も、概念、たまたま使っても同じようなことだ、私はそういうふうに理解をしております。
  22. 冬柴鐵三

    冬柴委員 だめですよ。私、地域のことを言っているんですよ。地域社会の地域とか地域代表とか、地域のことを言っているので、日本周辺地域と言った場合には、私も法律をやっている人間ですけれども、日本そのものは、領土、領空、領海は含まないです。しかし、そこから出発して、ずっと広がって、地球は丸いですから、外側がなければ、全部地球を覆ってしまうじゃないですか。ですから地域という言葉があって、どこかで区画しなきゃいけないんですよ。外縁がなきゃいけないですよ、その外側の線が。内側の線は日本の領土、領空、領海、領域から出発をして、ずっと広がる面、空間の中でどこかで区切るときに、初めて日本周辺の地域ということがはっきりしてくるわけですよ。外務大臣、そうじゃないですか。
  23. 高村正彦

    ○高村国務大臣 委員ほどではありませんが、私もちょっと法律を勉強した人間ではありますけれども、地域と言ったからといって、必ずしも、あらかじめこの地域と定めたもの以外は地域ではないということは言えないんだろうと思います。  前々から御説明しておりますように、あらかじめ一定地域と明示できるような意味で地理的概念ではないということを何度も何度も防衛庁長官からも私からも説明しているところでございますが、私たちは地理的要素を全く含まないということを言っているわけではないんです。  ですから、事態の態様、規模、そういったものと相関させながら、現実問題としては地球の裏側までいかないでしょうということを、地理的要素も考慮すべきですよという意味を含めて私たちは周辺地域あるいは周辺事態ということを言っているので、このことについては委員と私の間は、これはもう平行線と言う以外ないんだろう、こういうふうに思います。
  24. 冬柴鐵三

    冬柴委員 こんな議論をするから、国民は不安になって、こんな周辺事態法なんか成立させるわけにいかない、こういう議論になってしまいますよ。大変な話ですよ、これは。  これは日米安保条約から出発したんでしょう。では、もう外務大臣というより、法制局長官に聞いてもいいですけれども、実際問題、どうですか。総理、こんな不安なままでこの法律を通したらだめですよ。通りませんよ、こんなこと。押し通せませんよ。不安はだめですよ、不安は。日米安保条約をより信頼性の高い、より確実なものにしようという目的でこういうものをつくるというのであれば、しかも枠組みは変えない、こういうふうに新ガイドラインの冒頭に宣言しているじゃないですか。そうすれば、少なくともいろいろなことが行われます。日本独自の活動もあります。  しかし、一番不安なのは、外国の軍隊、アメリカ合衆国の陸海空軍というものがある地域で活動している、戦闘しているかどうか知りません、それに対して日本は後方地域支援をしますということをこの法律は約束しようとしているわけですから、この米軍が活動しているのが地球の果てまで行ったら、日本もついていかなきゃいけないじゃないですか。そうはいかないじゃないですか。  日米安保条約の第六条には、日本の安全に寄与する、これが一つですよ。これはもう当たり前の話。それを後方支援するのは当たり前の話。後方支援というよりも、日本が侵略されたら、我々は個別的自衛権でこれはやはり対抗しなきゃいけない、そういう事態ですから。しかし、それ以外に六条には、極東における国際の平和及び安全に寄与する活動をしている米軍に対して日本は施設や区域を提供します、こう言っているわけですから、この枠組みを超えないということは、後方地域支援をするという今回の周辺事態法の中には明確に書いていないけれども、極東及びその周辺、それを超えて活動する米軍に対して我々は後方地域支援をすることはない、こういうふうに言わなきゃだめですよ。  その極東という一つの概念、この概念を今回の周辺事態という概念は超えることはない、どうですか、それは。ちょっと待ってください。総理にお願いします。総理大臣、お願いします。
  25. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず、この重要なガイドライン法を国会で御審議いただく過程におきまして、国民の皆さんの御理解が十分得られるように政府としては最大限努力をし、そのためにも御質疑をいただきながら誠実に答弁を申し上げているところでございます。  そこで、まず周辺地域でございますが、周辺地域については、日本の周辺地域、こういうふうに限定をしておるわけでございまして、したがいまして、しばしば歴代外務大臣も答弁しておりますように、これは、中東とかインドネシアとか、ましてや地球の裏側というようなことは考えられない、こういうことでございます。  それから、安保条約については、安保条約の米軍の行為というものは、これは米軍の行動そのものでございまして、しかし、今度のガイドライン法というのは、日本の周辺地域に、その事態に着目をして、それに対して日本側は日本側として主体的にこれに対しての協力を申し出ているわけでございまして、安保条約において米軍が行う行為すべてについてこのガイドライン法で協力する、こういうことでないことだけはぜひ御理解いただきたいと思います。
  26. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常に正確に総理は言われたと思うのですね。ですから、いろいろな、周辺事態法では日本固有の行為というのもありますから、私が今問題にしているのは、アメリカの陸海空軍の後方地域支援をする範囲、そういう意味においてこの安保条約の域を出てはいけません。その安保条約というのは、外側は極東、極東周辺というふうに一つのきちっと、今までからはっきりしているわけですから、概念的にこれを超えることがない。  もちろん、総理もおっしゃいました。では、極東の範囲で米軍が活動しておれば直ちに全部やるのかといったら、それは違います。それは私は今言っていませんけれども、広範にその事態というものが日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすものにしか、それはその極東の範囲であったってそうですよ。しかし、その外縁として、外側として極東の範囲の概念を超えるものではない、そこははっきり言ってくださいよ。  そこのところがはっきりしないと、いや、地球の裏側とか、いや、どこまでは行かないとしばしば言っています。それは言われたって、それは個別的ですから、概念的に極東周辺という概念を超えるものではない、少なくともそれは米軍を後方地域支援する活動についてのみですよ、それはそれでいいんじゃないんでしょうか。総理、そこのところを確認してください。そうしたら随分安心されると思いますよ。  今までの日米安保よりは絶対大きくならない。しかも、日本の国の平和と安全に重要な影響がある、そういうことを米軍がやっているのに日本がそれに対して後方地域支援をしようというわけですからね。そうでしょう。だけれども、日本に関係のないようなところまでどんどん、日本の周辺地域と言われながら、地域がどこかわからぬ、地理的概念ではありません。地域という言葉が地理的概念でないというのは、これは日本語じゃないと思いますね。  ですから、総理、私がもう一度言いますけれども、日米安保条約第六条で、そういう行為に寄与する活動をしている、すなわち、極東における国際の平和と安全に寄与する活動をしているアメリカ軍の行為のうち、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態、こういう場合には、我々は、その極東の範囲、極東周辺の範囲という外側の、外縁ですね、区画されているから、その範囲であれば後方地域を支援しますという意味なんですということを説明してもらえれば随分はっきりしてくると思うんです。どうでしょう、その点、総理
  27. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日米安全保障条約の範囲内、枠内ということは、これは何度も答弁しているとおりで、そのとおりであります。  外縁が、委員は極東の範囲内と言ったり、周辺をつけ加えたり、場合によって分けますので、周辺ということをつけ加えるのであれば、その極東周辺自体が伝統的に、一定の範囲を明確に画するという意味で地理的概念として使われてきておりませんから、それは、日本周辺というのと極東周辺ということを言ったからといって、極東周辺ということを言ったからとして明確な地理的概念になることではないと。  ただ、再三申しているように、今までの極東周辺の範囲内が日米安保条約の枠内であるとすれば、その範囲を拡大するものでないということは当然のことであります。
  28. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ここは法律家の議論をしている場所じゃないと思いますので、テレビで国民もたくさん見ていらっしゃるわけですから、国民にわかる議論をしたい。  ですから、はっきり申し上げて、米軍の活動に対して後方地域支援をするという行為は、日米安保の域を、枠を出るものではない、そこだけちょっと総理総理の口から言ってください。
  29. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 全くお説のとおり、枠内を超えるものではないことは、申すまでもないことでございます。  なお、先ほど私の答弁中、インドネシアと言ったようでございまして、これは大変間違いでございますので、インド洋と訂正させていただきます。
  30. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どんどん時間がたちますので、第二点に移ります。  周辺事態安全確保法につきましては、これから委員会で慎重かつ詳細な議論がされると思いますので、私は二点だけに絞って、今周辺事態というのは随分時間をとってしまいましたけれども、その内容を明らかにしたかったわけであります。  その次に、二つ目は、周辺事態の対応措置と国会との関係について。これも随分の方が議論をしてきたところでありますが、この安全確保法の十条では、「内閣総理大臣は、」周辺事態の対応措置に関する「基本計画の決定又は変更があったときは、その内容を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。」こういうふうに書いてあります。私は、これは報告では足らないと思っております。  時間が迫っておりますのでこちらから申しますと、自衛隊法では、七十六条の「防衛出動」、それからまた、七十八条の「命令による治安出動」、こういうものについて国会の承認を得なければならないことになっておりますし、また、国際連合平和維持活動等に関する法律第六条、この平和維持隊に、本体業務に我が方の自衛隊部隊が参加する場合には、これも国会の承認を得なければならないということになっております。国会の承認が得られない場合には途中でも引き返す、そういう緊張ある行政府と国会との対立によって、国家国民の権利を守ろうとしているわけです。  ところが、これは、私から申し上げますと、何か従来の答弁では、国民の権利義務に関しないとか、あるいは武力行使が伴わないとか、そういうことだからこれは報告にしましたというようなことをおっしゃっているようですけれども、私は、今回の周辺事態安全確保法によってとられる対応措置というのは、我が国の領土、領空、領海、領域を越えてその活動分野が設定される場合があるということ、それから、地方公共団体の長とかあるいは民間人にも協力要請をすることができるという九条の規定、これはもちろん義務を課すものではありませんけれども、拒みがたいですよ、こんなもの。  例えば、傷病者がある港から何人か上がってきて、そしてそれについて、国立の病院がないので県立あるいは私立の病院で手術をしてやってほしいという要請があったときに、これは人道的に拒めませんよ。それは国民の権利義務に関することが九条で決められているじゃないですか。そしてまた、自衛隊の部隊が活動する、そういう構成をこの周辺事態法はとっているわけです。そうすれば、少なくとも治安出動と同等以上の扱いはされるべきだろうと私は思いますよ。  そういう意味で、総理、これは報告というようなことではなしに、ぜひ国会承認、当然そういうふうに修正を、まあこれは国会でやるべきことでしょうけれども、総理としても考えていただいてしかるべきであろう。これは閣法ですからね。そういうふうに思いますが、いかがですか。
  31. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今、冬柴委員の御主張は十分承りました。  ただ、政府といたしましては、従来、法律案を提案した以降の答弁におきまして、今委員からも御紹介ありましたような観点に立ちまして、基本計画を国会に遅滞なく報告をして御議論いただく、議論の対象にしていただくということで御答弁を申し上げてまいりました。今後、本格的な国会での御審議等によりまして、各党会派どのような考え方に立たれるかということも十分お聞きをいたしまして政府として対応しなければならぬかと思いますが、従来、法律案を出して以降、政府としては、先ほどの三要件をもとにいたしまして、そうした対応をとることによってこの法律そのものの効果を十分発揮し、国民にも安心感をいただけるものと、こう認識をいたしておりまして、従来からの御答弁を申し上げる以外にないと思っております。国会の御議論を待ちたいと思っております。
  32. 冬柴鐵三

    冬柴委員 各党会派の御意見云々と言われましたが、今与党になられた自由党、野田自治大臣のお考え、これはまあ閣内にありますからあれですけれども、自由民主党と自由党との政権協議の中においてこの問題が協議をされたと報道で知っております。そのときには、自由党としてはどう主張されたのか、その点について御答弁いただきたいと思います。
  33. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 シビリアンコントロールの観点から単に国会に報告するだけではよくないという冬柴委員の御主張、私ども自由党という立場からしても、率直に言って同感のところがございました。これはかつて新進党、冬柴先生とも一緒に組んでおったころからその考えを持っておったわけであります。  もう一方で、日米安保条約に基づくこのガイドラインのいわゆる実効性あるいは事柄の迅速性、その必要を考えた場合に、承認ということについて、やはりおのずからどういうやり方がいいのかということにおいてはいろいろ工夫するところもあるのではないか、そういう意味で、余りかたく縛り過ぎても困るがルーズになってもいけないねというようなことを両党間で議論をしておったわけでございます。いずれにしても、この点について、おおよそのお互いのその辺の感覚が、意見を交換している中で理解が深まったというふうに我々は判断して、その上で連立政権のスタートということになったわけであります。  したがって、今ここでは議論はなされておりますが、まだ実際の法案審議という段階には至っておりません。そういう点で、小渕内閣として提案をしておりますこの法案がまだ具体的に当該委員会で議論が入っていない段階から、政府のサイドからその辺について、具体的なポイントについて修正云々という議論に入るのはかえって議会に対して御無礼なことにわたるのではないか、そういったことの配慮もありまして、多少歯切れが悪くなっていることは事実であります。
  34. 冬柴鐵三

    冬柴委員 あうんの呼吸で、限りなく修正に近いなという感じを私は受けました。ぜひ、国家国民のために安心できる法律にしなきゃならないと思います。  しかし、承認だけでいいかというと、なお報告していただかなければならないのが抜けているんじゃないかと私は思います。それは、周辺事態が終了したときに終了報告をするということがここには書かれてありません。それから、計画については総理国会に報告することになっているけれども、現実にとられた措置について、どういう対応措置がとられたかということを国会に報告するということが全くここに書いてありません。  私は、そういう意味におきまして、周辺事態が終了したときあるいは適時、とられた対応措置については国会に報告をする、そういう条文も追加修正をすべきであるというふうに考えておりますが、これは委員会の審議にお任せした方がいいと思いますので、あえて答弁は求めませんけれども、今、野田自治大臣の答弁でも、その点についてはコンセンサスが得られつつあるように私は伺いました。(発言する者あり)答弁、答弁と言われていますので、総理、それじゃ一言
  35. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 事後のことにつきましての報告義務につきまして御主張がございました。承らせていただいております。
  36. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それから、自自連立について一点伺いたいと思います。  自由民主党、自由党、連立政権を組まれました。その過程でいろいろな協議をされたということを新聞等で拝見をいたしておりますが、その中で、一月六日に国会議員の定数削減に関するプロジェクトチームというものが開かれたようでございまして、両党から三人ずつの委員が出られて六人で話し合われた。そして、その結果が七日の各紙朝刊一面トップで大きく扱われておりますけれども、衆議院の定数五百のうち五十を削減する、そしてそれは比例代表区からのみ、三百の小選挙区には手をつけずに二百の比例代表区からのみ五十人を削減する、そういう合意をした上、両党の議員提案でこの通常会に提案をして成立を期するということを確認した、このようなことまで書かれているわけであります。  もちろん、我々公明党といたしましても、定数削減という問題については、行政改革で国家公務員、地方公務員の定数を厳しく削減すべきである、こういう主張もいたしております。ヨーロッパの議会の定限と申しますか、人数と議員の割合を比べてみたときに、必ずしも日本の国会議員の数が多いとは思いませんけれども、しかしながら、そのように社会ではいろいろな銀行を初め多くの会社が、リストラということで非常に多くの削減をやっていらっしゃる。国家公務員も地方公務員もそうだという以上は、我々、隗より始めよでありまして、議会も例外ではない。  その点は全く一致いたしておりますし、定数を減らすということはいいわけですが、しかし定数を減らすということは、各党会派はもちろんのことですが、議員個人個人にとっても大変な問題であります。それを二党だけで、比例区からのみ五十人減らす。  今とられているのは、小選挙区比例代表並立制という全く違う選挙制度を二つひっつけた、そういうものによって成っているわけであって、しかもこれは、六年という長い長い政治改革という作業を経て、そして最後、三百と二百というふうに決めたのも、最後の最後になってから、当時の総理大臣と自由民主党の総裁との間の総総会談、六時間にわたって話し合われた結果決まったという、本当に大変な作業を通じて決められたものであります。そして、それぞれの違う選挙制度を結び合わせているけれども、相互に補完をし合って長所をこういう組み合わせで出すことができる、そういう総理の声明も出されて、これが現在の現行法を成立させているわけであります。  そういうものを、三人、三人の両党の代表者だけで、減らすということの合意はいいけれども、それをどこからどういうふうに減らして、しかもそれをこの国会で成立させるというようなことは、政治家として多少行き過ぎではないのか、私はそのような感じを受けました。  総理と自治大臣から、もう少しその内容について説明をいただきたいと思います。
  37. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 自由党小沢党首と私との間の合意によりまして、本件につきましても合意をし、二党におきましては今国会においてこれを成立せしめてまいるということで合意をいたしております。  結論から申し上げますと、国会といいますか議員の身分にかかわることでございますから、国会全体の御議論も承らなければならないというふうに考えております。  ただ、御指摘のように、この定数の削減につきましては、委員みずからお話しのように、やはり国民の目から見ましても、現在の実態にかんがみまして、それぞれ削減をしてその態度を示していかなきゃならぬということでございまして、内閣としても御案内のとおりに、内閣法によって二十名の大臣が許されておるわけでございますけれども、二名削減するというような姿勢を示させていただいたわけでございます。  よって、この問題については、合意以降、両党のプロジェクトチームにおきまして、今御指摘のように比例区代表定数を五十名削減することによりまして、この衆議院の定数を四百五十ということにしようということで合意を見ておるわけでございますが、いずれにしても、議会政治の根幹にかかわることでございますので、各党会派と十分議論を深めていただく過程で対応していきたいと思っております。
  38. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 基本的には、ただいま総理が申し上げたとおりでございます。  ただ、この問題、選挙制度の問題、いろいろ一緒に論議しますと、実際にはなかなか各党のいろいろな考え方が異なっておりまして、法案自体を提出できないということになれば、いつまでたってもこの問題は一歩も進まないということもあり得るわけで、そういう点で、やはりきちっと、国会議員の数を減らすのだというこのことを具体的にまず法案を出した上で、しかし、実際にその出口を求めるときには、当然それぞれの各党の考え方があわせて議論になって、そこで、当然のことながら、お互いの話し合いの中で出口が求められていくということは当然のことだろうと考えております。
  39. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理も冒頭おっしゃいましたように、身分に関する問題でもありまして、こういうものは、議員提案する場合でも、ほとんど各党の代表が名を並べてやるべきものだろうと私は思います。  そういう意味で、私は、そういう記事を見て、すぐに自由民主党の幹事長にも会見を申し入れまして、二党だけでやられるというのはおかしいんじゃないか、減らすということについて同意の各政党、与野党含めて、代表者を出し合って話し合うべきではないのか、こういうふうに私は申し上げました。共感を得たと思うんですけれども、そういう手続を経ずして一方的に提案をされるということになりますと、この大事な国会、与党と野党が真っ二つに対決をしてしまうということになれば、大事な、今るる申し上げてきたような法案が、ただでさえ短いタイトな日程の中で大変な混乱をしてしまう、私はそういうことを憂うわけであります。  ここは、まず提案がありきではなしに、各党の合意を求める努力をした上で、それでなおできない場合にはそういうこともあり得るでしょう。そういうものを、手順を踏んで丁寧にやっていただきたい。大変な問題であります。そういうふうに私は思う。そのことを申し上げたいと思います。  総理、その大筋ですね、今申し上げたような私の考え方というものについてどういうお考えですか。やはり各党会派で一度は協議の場をつくって、そしてその上でそれができなければ、それは政府としてどうされるのかは別として、こういうものは各党会派の意見を十分聞くべきである、このように思いますが、どうですか。
  40. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 重ねてでございますけれども、国会議員の身分にかかわることと同時に、国民の皆さんから大変注目を持たれている点でございますから、十分御審議をいただかにゃならぬと思います。  ただ、連立政権を組みますに当たりまして、両党の党首自身がこれを約束として実行する、そして具体的にはということで比例区における五十人の削減ということで、プロジェクトチームもこれを決定しておることでございますので、こうした両党間の信義といいますか、申し合わせというものも十分認識をしなければ信頼は失われるわけでございますから、そうした点も十分勘案しながら、今後の国会における審議等も見守ってまいりたい、こう考えております。
  41. 冬柴鐵三

    冬柴委員 我々は、この国会で十分冷静な議論をしたいというふうに思っておりますので、怒号と喧騒のようになるようなことはやめてもらいたいということを申し上げておきます。  次に移ります。地域振興券について若干聞きたいと思います。  我が党は、今次の長引く不況、こういうものを克服するための対策として、合流前ではありますけれども、公明あるいは新党平和が協議をして、昨年の一月の末には、十兆円規模の減税をやるべきである、こういうことをいち早く申し上げました。  その内容といたしましては、中長期戦略と短期戦略、二つあります。  中長期戦略としましては、所得税、個人住民税、そして法人税の恒久減税を即時六兆円超の規模で行うべきである、こういうことが中長期戦略でございました。  短期戦略というのが、これはなかなかユニークでありまして、大変悪口も言われました。しかし、我々は、一億二千五百万国民すべてに、お一人三万円ずつ、期限つきの商品券という形でお返しすべきである、返還の費用も含めて約四兆円規模、これを即時お返しすることによって国民総支出の六〇%と言われている三百兆に及ぶ消費支出を喚起すべきである、これによって景気を立て直すべきである、こういうことを申し上げたわけであります。  それに対して、税金を払っていない人が減税の恩典を受けるのはおかしいという議論がありました。しかし、私は、税金は所得税、住民税だけではない、消費税も立派な税金であります。この消費税は、例えば年金だけで生活している御夫婦、一カ月十五万円しか生計費を払えない人でも、一年間には百八十万円のお買い物をしていらっしゃる。この中には五%の消費税があるわけですが、平成九年四月、二%上げられた、増率された消費税だけをとらえても、百八十万円の二%、三万六千円を、つめに火をともすような年金生活者でも払っているではないか、この消費税の増率というものが今次不況の引き金であったとするならば、これをまず返したらいいじゃないか、こういう思想でございます。  したがって、一億二千六百万人の国民ひとしく三万円、貧富にかかわらず定額で返したらいい。なぜそうするかといいますと、所得税、住民税減税というのは所得税や住民税を払った人にしか減税の恩典が行きません。当然の話です。しかしながら、この国には、税金を払えない、例えば二百九十万人の失業者がいらっしゃるじゃないですか。失業者は税金払えません。払う必要もありません。ですから、幾ら減税をやっても失業者の人に対しては一銭も恩典は行き渡りません。  また、先ほど言いましたような、年金だけでしか生活をしていられない六十五歳以上の、個人住民税の支払いすら免除されている御老人が一千四十五万人、この国にはいらっしゃいます。この人たちの上には、減税をした減税をした、昨年も二月と八月に二兆円ずつ、合計四兆円の所得税、個人住民税の定額減税が行われまして、平均世帯、夫婦と子供二人に約十三万円が配られました。しかし、そのようなものは、このような失業者の方あるいは低所得の高齢者、あるいは生活の保護を受けなければ生活ができない要保護世帯三百三十六万人、こういう人たちには全く均てんしないわけです。  我々はその点に着目いたしまして、そういう人たちも生きている限り消費税を払っているじゃないか、失業者失業保険の中から生計費を払って、その中には税を払っているじゃないか、これを返そうじゃないか、そういうことで、この商品券構想というものを設計したわけです。  これをただ単に現金で払ってしまったのでは貯金をしてしまわれる。だから、期限つきの商品券であれば、これはその期限の中で使わなければ無効になっちゃうわけですから、消費の即効性、確実性というものは担保できる。そういうことで、我々はそういう設計をして公約として打ち上げたわけですが、これは大変不評でございました。天下の愚策、そういうことを言っていただいたために、大変国民の間で話題になりました。これがよかったわけでございまして、我々は、毎日のお褒めの言葉もくさしの言葉も、それも一つの話題提供として非常にありがたいな、そういう受けとめ方で今日まで参りました。  そうしますと、最近は随分悪口がなくなってきまして非常によくなってきたわけでございますが、そういう公約を掲げて参議院を戦わせていただきまして、七百七十五万票、我々は大勝利をさせていただきましたが、自由民主党、何人も予想しなかった大敗北を喫してしまいました。参議院では過半数を大きく割り込んだということから、橋本内閣は総辞職をされて小渕内閣が組閣されたわけであります。  小渕総理は、就任とともに、我々が言っていました六兆円超の所得税、個人住民税、法人税、この恒久減税を平成十一年から実行する、このように記者会見でおっしゃいました。我々の参議院における公約、約六割はこれで実現したわけでありますが、その残りの商品券問題につきましても協議を始めようとおっしゃっていただきました。  協議をしましたところ、自由民主党の方では、世間も大分厳しいし、これは初めての事業だ、そして結果もわからない、だからやるとしてもせいぜい数千億範囲でやるべし、こんな話で終始をいたしました。最終的に十一月十日に、もうこれ以上延ばすと第三次補正には間に合わない、そういうところで、最終的に地域振興券交付事業ということで七千六百九十八億円の規模でやろうということが合意されたわけであります。  我々にとっては、四兆円という約束をしていたのが五分の一以下の七千億になるわけですから大変つらかったわけですけれども、二十代、三十代、四十代で子育てをしていらっしゃる可処分所得の少ない層、そういうところに渡る、そういう意味で、十五歳以下の子供を持つ世帯にまず優先して配分しよう。その子供たちは二千八十八万人であります、そういう人たちにまずお渡しをしよう。  中学生で切ったのは、高校生、大学生には、御承知のとおり、特定扶養親族控除ということで税で教育減税が行われております。所得税で五十八万円の所得控除が行われております。そういう意味で、それの行われていない中学生以下の二千八十八万人にまずは受け取っていただこう。子供に渡すわけじゃない、それを育てる二十代、三十代、四十代の可処分所得の少ない世帯にまず取っていただこう。  それから、六十五歳以上の年金生活者、そして要保護世帯、締めて三千五百九万人の方にお受け取りいただこう。その後、在日の朝鮮・韓国人の方々、永住者の方々にも限りなく同じ扱いをすべきだということで、九万人の子供たちが受け取れることにしていただきましたけれども、いずれにいたしましても、そうなりますと、我々、三万円を主張いたしましたけれども、一兆円を超えてしまいます。そういうことで二万円ということで折れ合ったというのが現状でございました。そういうことでスタートをいたしました地域振興券、大変話題を生みながら今日に来ております。  このときの四兆円が七千億になったわけですから、最後の幹事長会談では、結果がよければ第二弾、第三弾もやったらいいじゃないですか、これが景気対策になるということになればやったらいいじゃないかということで、結果よければ第二弾も再検討すべし、こういう書面まで一札入れていただいて、こういうものが合意が成立したわけであります。  総理、自民党総裁として、結果よければ再検討もあるべし、こういう合意がされたということは御存じですか。それについての所感をお伺いしたいと思います。
  42. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 いろいろ経緯がございましたが、この地域振興券をいよいよ実施をいたしておる段階になりまして、改めてこの機会に、この事業につきまして、事業主体でございます市町村に大変な事務的な御負担を願っております。大変御苦労なことでありますが、改めて感謝も申し上げたいと思います。  今、私のところにも既に地域振興券のそれぞれのものが届いておりまして、もちろん使用するわけではありませんが、そういう意味で、非常にこれが進んでおる。特に、一月から既に交付する市町村もございますし、三月までにはかなりの市町村においてこれが実行されるんじゃないかというふうに思っております。そういう意味で、この事業の目的、内容につき広く国民の皆さんに周知を図るとともに、市町村と連携を密にして、この事業が円滑に実施され地域振興の効果が上がりますように、万全を尽くしていきたいというふうに思っております。  この件につきましては、市町村や商店街が非常に工夫を凝らしておりまして、さまざまなイベントや地域おこしに結びつけるなど、地域振興券を大きな施策として育てていただいておると承知をいたしておりまして、私としても大いに期待をいたしておるところでございます。  委員指摘のように、これが発表され、与党との間で話し合いが進みました段階におきましては、私自身も相当、大変御批判の対象になっておりまして、大いなる実験について、いかがか、あるいはまたお話しのように天下の愚策であるというような御議論もありましたが、しかし始めてみますと、今お話しのように、これが地域振興に非常に大きなインパクトを与えておるのではないかということも考えておりまして、ぜひそういう効果が上がりますように、せっかくのことでございますので、心から願って協力いたしていきたいと思います。  そこで、今お尋ねの点につきましては、冬柴幹事長と森幹事長が会われた折に、両幹事長間で地域振興券について、地域の活性化に役立ち地域での期待が多いなどの点が話題になり、また、冬柴幹事長から第二弾の実施の可能性についても言及されたと承知をいたしております。  今後の取り扱いにつきましては、今後、経済情勢、今回の事業の効果等を十分見きわめつつ、また、御党初め関係の方々の御意見を拝聴した上で考えなければならない課題であると思っております。まずは、現在この地域振興券がどのように効果的にそれぞれの地元住民のためにも益するものであるかというような状況を十分見きわめた上で、判断してまいりたいと思っております。
  43. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この場をかりて、各地方の自治体の長の方、またこれに携わっておられる方が本当に日夜、それを円滑に、また迅速に配付できるように御努力いただいていることについて、心から敬意を表したいと思います。また、自治省におかれましても、地域振興券推進本部というものをおつくりになって、審議官を長にして本当に年末年始なく頑張っていただいたということで、現在、島根県の浜田市を皮切りに交付が始まる。  過日、我が方の議員が浜田へ行って、それをもらってきました。こういうものが二十九日には配られるようでございまして、これは大変な話題で、テレビ各局全部、何か外国からまで来られて、旅館、ホテルは全部満室という地域振興が起こっているようでございます。  ただ、これは非常におとなしい意匠ですけれども、大変いろいろな、中学生にコンクールで求めて優勝したものを採用するとか、あるいは福井県で越前和紙を使うとか、目黒区では目黒のサンマというものを配した大変おもしろい意匠がつくられたりということで、夢のある、むしろこれは夢クーポンという名前にした方がよかったかなと思うぐらいでございますが、自治大臣から、ひとつそういうものを、一定のコンテストを、この商品券もいいけれども、この商品券をめぐる地域振興の策というものを、いろいろ独自の予算を組んで横出し、上出しをやっているところがあります。そういう意味で、地域振興に頑張っている人のコンテストをやったらどうかと思うのですが、どうですか、自治大臣。
  44. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今冬柴委員指摘のとおり、最初は率直に言って、各自治体戸惑いぎみ、どういうふうにやろうかと。だんだんやっていく上で、御指摘のとおり、単にいわゆる地域振興券を配るという事務作業を行うだけじゃなくて、これを機会に、どうせやるのなら、地元の本当の意味での地域振興にどうやって役立てていくのか、あるいは自分たちの地域おこしと同時に、消費そのものを地元の商店会なり商工会なりを通じても、そういう地域ぐるみでの景気を、自分たちの手で消費を喚起するようなことがあってもいいのではないか、さまざまな工夫を始めまして、そういう意味で、今御指摘のとおり各地域でいろいろなアイデアを現に出してきております。  大体、三月中には約二千八百ぐらいの団体が、市町村が交付できるような態勢にまでなってきておるようでありますので、御指摘のとおり自治省としても、これのコンクールといいますか、その種のいろいろなアイデアをお互いに出すことによって、それがまた明るい話題として、さらに景気の浮揚のためにもプラスになっていければ、いわゆる金額の側面だけではないプラスアルファの効果も生まれてくるのではないかということを期待をいたしております。
  45. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常に暗いニュースが多い中で、明るいといいますか夢のある話で喜んでおります。  通商産業大臣にもお伺いをしたいのですが、地域の商店街、私どもの尼崎市というのは日本一の大きな商店街があるのですが、衛星都市で五分か十分乗れば大阪、京阪神へ行ける場所なのですね。ですから、こういう高いものを買う場合には全部大阪、京阪神のデパートとかそういうところで買ってしまうわけですけれども、今回はそうはいかない。その尼崎市内でしか使えないということになっておりますので、これは大いに、その地域の商店街とか商工会議所や商工会も、非常にいろいろなイベントと組み合わせて我々の方で使っていただこうとか、あるいは旅行業者も、夫婦と子供一人を一泊二日で二万円ぽっきり旅行というような、こんなものまでつくって、それをしかもコンビニエンスストアで受け付けをするというようなことまで、これは庶民の知恵といいますか、我々が、あるいは役所の秀才が考えられないようなことが起こるわけでございます。  そういうことで、通産省にもいろいろな話題が入っているのではないかと思うのですが、そういう売り手の方からの反応をちょっと聞かせていただきたいと思います。
  46. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 野田自治大臣からお話がございましたように、各地区ではそれぞれ工夫をしておりまして、イベント等も組み合わせております。  通産省に入ってきております幾つかの例を申し上げますと、地域振興券を使う以上、それだけではつまらないので、やはり一枚を使用しますと補助券を一枚進呈します、これが二十枚集まりますと共通の商品券を交付する、こういう例もございます。  それから、地域振興券を使った場合、抽せんに参加できて賞品が当たるという懸賞を実施している例もございますし、また、従来から実施してまいりましたスタンプ事業に参加をしていただく。スタンプ事業に参加した場合には、従前よりも割り増しの条件でスタンプが発行されるという場合。あるいは出雲市では、中心商店街の駐車場を利用したイベントを開催する予定、先ほどの島根県浜田市ではいろいろなPRについて工夫をしております等、全国でイベントと組み合わせる、あるいは従来の商店街振興策の中に組み入れる等々いろいろな工夫がされております。  これが本格的に始まりますと、もっとユニークな例がたくさん集まるはずでございますので、それはそのときにまた御報告させていただきたいと思います。
  47. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今のように売り手、それから買う方も、いろいろな、経済学で言えば期待形成、あれが来たらこれを買ってやろう、あるいはあれを目当てにこういうものを売ろう、こういう期待形成が非常に醸成されて、もうピークに達しつつあるように私は思います。  そういう意味で、十万人都市で大体四分の一の二万五千人の方がお受け取りになる。一人二万円ですから五億円が行くということになります。しかも、それがその範囲でしか使えないということが大切でありまして、特に大都市周辺の衛星都市では、今まで中心部へ流れていた客筋がその衛星都市の中で滞留する。しかもこれが、浜田市は一月二十九日でございますけれども、二月、三月で配っていただくということになると、これは六カ月以内といいますけれども、十一年の第一・四半期、四、五、六、気候もよろしいですし、五月には連休もありますし、入学、入園、進級、旅行にもいい、私は、ほとんどこの第一・四半期で使われるのではないかと予想をいたしております。  そういう意味で、経済企画庁長官に、三百兆の中の七千億ですから大したことないかもわかりませんけれども、そういうふうに固まって使われる、そしてまた周辺が今のようにいろいろなイベントとかお祭り気分で盛り上げていただいていることにかんがみますと、このGDP押し上げ効果は幾らかは期待できるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。残念ながら、去年の四兆円の、二兆円ずつ四兆円の大変大きな所得税、住民税減税では、GDP押し上げ効果は全く見られなかったわけでございますが、今回は、その五分の一以下でも、若干でも押し上げ効果は期待できるのかどうか、企画庁の見通しを聞かせていただきたいと思います。
  48. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 地域振興券、いわゆる商品券でございますけれども、これが意外な効果を生んで、各商店街あるいは市町村の知恵を引き出しているという点では、非常に予想外の効果もあったということは言えると思います。  今、委員から四兆円の減税が全く効果がなかったと御指摘ございましたけれども、やはりある程度の下支え効果はあったのだと思います。あれがなかったらもっとおっこちていたということは言えると思うのですが、この地域振興券を予測いたしますと、大体七千億でございますから、減税と同じように可処分所得がふえたという形で仮定いたしますと、大体GNPを〇・〇六%押し上げることになりますが、委員指摘のようにそういうイベント効果あるいは期間の限定性等を加えますと、〇・一%ぐらい押し上げる効果があるのではないかと期待しております。
  49. 冬柴鐵三

    冬柴委員 〇・一といったら、小さなようですけれども大変大きな数字でございまして、私は、こうなれば大成功だというふうに思います。  いずれにいたしましても、四、五、六、そういう実施状況を見て、経済企画庁のこういう個人消費支出についての指数を見きわめて、総理、先ほど言われたように、これは本当に、党利党略じゃないですよ、国家国民のために、この冷え込んだ景気を回復する呼び水になれば最高だと思っているのです。そういう意味で、四、五、六、そういうところで様子を見て、これが日本人受けした、まだ期待感があるということであれば、ぜひ考えていただいてもいいテーマではないかと思うのですが、一言だけ総理の御答弁をちょうだいしたいと思います。
  50. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 先ほど申し上げましたけれども、これが本当に十分な効果を発揮できる、効果が生まれてくると期待しておりますが、期待どおりになりますれば、その後また御協議をさせていただきたいと思います。
  51. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次へ移ります。  平成十一年度の税制改正についてであります。  総理も、現下の厳しい経済情勢を踏まえ、景気に最大限配慮して所得税等について恒久的減税をする、こういうふうにおっしゃいました。就任のときの記者会見では、的はなかったように思われますけれども、もうこの議論はきょうはやめますが、恒久的減税を行う、こういうふうに言われました。  そして、この十一年度税制改正案を見まして、私は、非常に意外というか、驚いたわけであります。景気に最大限配慮しということは、景気対策としてこれが役に立つ、そして三百兆円に及ぶ国民支出というものを刺激して、景気は拡大することができる、回復することができる、こういう思いでこういう言葉が使われていると思うのです。  これを見てみますと、ちょっとこういうものをつくってみました。この真ん中の線というのが所得八百万円の人です。それで、こちらへ行くほど所得が少ないわけで、七百、六百、五百、四百、三百となります。こちらへ行きますと、九百、千万、ちょっと除去して、二千万、三千万、四千万と書いてありますが、そしてここの線が、平成十年に二回減税されましたけれども、それぞれが支払った税金、所得税、住民税の額をゼロというふうにいたしました。  そういたしますと、ここではっきりするのは、年収七百九十三万円以下の所得の人は、ずっとこちらへ下がっていくわけですけれども、税金がふえる、ことしよりも負担がふえる。これは減税と言われるけれども増税になっている。増税という言葉は私使いたくないのですが、平成十年に比べて支払わなければならない税額が多くなるということがわかるわけです。幾らと言われましたが、五百万円の層で、年収五百万円で九万三千二百五十円ふえます。  そして、こちらの七百九十三万円を超える層は税金がずっと安くなります。そこにこういうふうにカーブを書いて、余り多いものですからここは波線で切りましたけれども、三千万円の人で七十七万一千百円安くなります。それから、四千万円では百六十五万九千百円安くなります。そして、五千万円では三百八万四千四百円、ことしよりも安くなります。  しかし、年収七百九十三万円以下の層は、七百万円の人は四万二百円、六百万円の人は六万八千九百円、五百万の人は九万三千二百五十円、四百万の人は三万六千三百二十五円、これだけことしよりも税がふえるわけです。  これでは、減税と言われても、一般庶民、大衆がこれは減税じゃないじゃないか、増税じゃないか、こういうふうに言われてもしようがないと私は思うのですね。大蔵省、一体、この年収七百九十三万以下の人、中低所得者層と言ってもいいと思いますけれども、その人たちは納税者の何%になるんですか。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは今、冬柴委員は大きな問題を御提起しようとしておられますので、私からお答えを申し上げます。  昨日も申し上げましたが、前回、一遍限りの、それも定額減税ということが行われました。これはやむを得ない事情があったと思いますが、このたびは、一遍限りでなく恒久的に、しかも、いわゆる累進を将来に向かって生かしていきますために定率減税をいたしました。  このこと自身は、昨日も御説明を申し上げましたが、その結果といたしまして、前回減税を受けられた方より今度受けた減税が少ない、あるいは前回納税者でなくなった人々が納税者として復活された、そういう方々が多数おられることは事実でございます。  これは、一回限りの減税と原則に基づきます定率の恒久減税との違いでございますので、理屈としてはその点は冬柴委員もおわかりいただいておって、あえて増税とは言わないがとおっしゃいますが、しかし、一人一人の納税者にとっては前年よりも負担がふえる結果になったということは、それは事実でございます。  そこで、どれだけの人がどのような負担増になったかということは、各家庭の構成が違いますので正確にわかりませんのと、住民税との通計ができませんので、統計的にきちんと申し上げられません。しかし、問題の御提起がございましたので、私は、事務当局にある程度大数的な観察をしてみろということを申しまして、その結果を今御報告いたします。  まず、典型的な夫婦子供二人の世帯、そのうち十三歳以上二十三歳未満の大きい子供が一人といいますと、年収七百九十三万円以下の結果、おっしゃいましたように、減税額が減ることになります。いろいろ前提を捨象いたしまして、そのような世帯が占める割合は、全体の六割ないし七割あると思われます。相当大きゅうございます。金額はもとより違いますけれども。  それから、単身世帯についていいますと、その限界は三百九十七万円でございますが、その場合、減税額が減少するものの割合はおおむね六割強程度と思われます。  それから、給与世帯全体について考えますと、やはり六割あるいはもう少し多い世帯が、金額はいろいろでございますが、今おっしゃいましたように、昨年よりは今回納税する額が多くなる、そういうことをほぼ推算で事務当局は出してまいりました。
  53. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私の認識もそうで、もう少し高いんじゃないかなと思っていましたけれども、六割から七割。私は七割超じゃないかと思っていましたけれども、いずれにいたしましても、過半の人が十年に払った税金よりもことしの税金の方が多くなる。  これは、それで厳しい景気に最大限配慮してこういうことをやったということには通じない。なぜならば、高額所得者には潜在的消費需要、減税が来たからあれを買おう、これを買おうというような意識は少ないと言われています。中低所得層は、減税が来ればあれを買いたい、これを買いたい、こういうふうに使いたいという、いわゆる潜在的消費需要があるわけでありまして、減税によってそういうものをいかに工夫して掘り起こすか、それによって景気拡大をするか、景気の呼び水にするかということが主題であるはずであります。  第一次オイルショックの後に、アメリカの好調な景気はマイナスにまで落ち込みました。そのときにフォード大統領が行った大型減税というのは、当時の邦貨に換算しまして七兆数千億円の規模の減税をいたしましたけれども、今のように中低所得者層の潜在的消費需要を掘り起こすという観点で、何と七兆五千億のうち八五%までが年収二万ドル以下の層に渡るように工夫をされたと言われています。しかもその渡し方を、我々は商品券ですが、フォードさんは小切手にして書留で世帯主に送り届けた、そういうことは有名な話であります。これによって、一発で消費は喚起されました。指数が示しております。  そのように、中低所得者層の潜在的消費を掘り起こすことこそ今一番大事なのに、そういう年収七百九十三万円以下の層にはことしよりも税が重くなるということは、ことしの経済対策を行う意味においては全く、私は、人の言葉をかりれば、愚策ではないか、このように思います。  私は、この高い層の年収の六五%も所得税、住民税で支払わなければならないという、国は、いずれこれは直さなければならないとは思います。しかし、この段階で、今の時期に直すということでこういうところに多くの税金を使いながら、低所得者層からは税金を十年よりもたくさん払ってもらう、そういう考え方は、少なくとも公明党の立党の精神に照らして、我々はこれは納得はできません。この部分の、赤色で塗った部分、増税になる部分を何らかの形で埋め合わせをしてもらう、そういう工夫がなければ、こういう予算を我々は認めるわけにはまいらないというふうに思うわけであります。  総理、大蔵大臣で結構ですが、その考え方について所見をいただきたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 冬柴委員も、ただいま御指摘のことを御指摘の上で、他方で、非常に高い課税最低限に達した我が国の所得税の体系は将来やはり考えなければならないということは片方で言っていただいております。  従来の課税最低限でございました三百六十一万円というものは、アメリカよりもイギリスよりもはるかに高い数字になっておりましたが、昨年の定額減税の結果、それが四百九十一万円になりましたので、さらに数百万の納税者が納税者であることをやめてしまったということは、将来の我が国のあり方を考えますと、やはり本当ではないだろうということを考えました。それで、この際、本則に返って、そのかわり今度は、一遍限りでなく、将来にわたってこういう税体系をとりたいということを国民に申し上げたわけでございます。  そのことは、おっしゃいますように、平成十一年度に関する限り、平成十年度よりは税金の負担がふえる層がある。そうして、納税者はある程度もとに戻っていただきますけれども、しかし依然として、今度は三百六十一万円でなくて、控除をふやしましたので三百八十二万円ぐらいになりました。これも実は高うございますが、なかなかもとへ戻るということも実は難しいであろう、現実の政治は。ただ、このぐらいのことは維持してまいりませんと、将来我が国の社会のあり方にも関係するのではないかという気持ちもございまして、あえてさせていただきました。  もとより、所得税全体としては大きな減税になっておるわけでございますが、一番、何と申しますか、勤労所得者の数の多いところでそういうことが起こりましたことは事実でありまして、このことが短期的に景気刺激にならぬではないかとおっしゃることも、私はさようであろうと思います。ただ、そのかわり、今度は一遍限りでなくて、将来に向かってこういう減税体制をとりますということを国民にわかっていただくことはできるかと思います。
  55. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、そういう意味で課税最低限がどんどん上がっているということもよくわかっております。  それに対する一つのダイナミックな政策の変更を提案したいと思うわけでございますが、今我が国の合計特殊出生率というのは、一・三九まで落ちました。これは、人口を静止させようと思ったら、二・〇八。それは、二人の大人が一人半以下の子供しか産んでいなかったら人口は減りますから、二・〇八というのは、夫婦二人で二人の子供とちょっと産んでもらったら、その人が成人して子供を産むまでの間に亡くなったりいろいろ事故があっても人口は静止するというわけですから、これから比べたら大変な話でございます。  もっと平たく言えば、三組の夫婦、六人の大人が四人しか子供を産まないということになっています。そうしますと、その生まれた子供が成人してもう一度子供を産むまでを一世代としますと、約二十五年間の間に六人が四人に減る、三分の一人口は減る。しかも減る場所が、高齢者からじゃない若年者から減っていくということが、大変なことでございます。我が国の将来を考えたときに背筋が寒くなるような問題。  このような人口構成をもとに保険とか年金とか、あらゆる政策が組み立てられていることを思えば、今にしてこういうものに対して早く手を打たなければ大変だ。そういう意味で、子育て支援というものが大事である。  我が党も、今党内でネストプランというようなことで、ネストというのは鳥の巣ですね、トータルな、早く結婚してたくさん子供を産んでいただけるような雰囲気をどういうふうにしたらつくれるのかということを考えておるところでありますが、今回の平成十一年度の、政策減税でしょうけれども、所得税減税の中に、十六歳未満の扶養親族に係る扶養控除を月額十万円増額するという、大変な政策であります。現在が三十八万ですから、四十八万までふやすという、これはもちろん非課税世帯もありますけれども、二千八十八万人の子供に対してそういう子育て支援の意味での減税をしようというわけですから、大変な政策だと思います。  これによる、四十八万円扶養控除することによって失われる税収というのは幾らになるんですか。概算で結構ですが、お示しいただきたいと思います。
  56. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 数字でございますので、お答え申し上げさせていただきたいと思います。  この扶養控除の問題でございますが、本来、やはり所得税の根幹にかかわる問題でございまして、いろいろ検討しなければならぬ問題があるわけでございますが、十六歳未満の扶養親族に係る扶養控除を廃止した場合の増収額でございますが、全部廃止するということになりますと、所得税で一兆円程度、個人住民税で〇・四兆円程度、国、地方計で一兆四千億円程度と見込まれているところでございます。——申しわけございませんでした。今回の国税だけの改正で申し上げますと、五百五十億円でございます。
  57. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いずれにしても、一兆円を超える、一兆数千億円の税収が失われるということで……
  58. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 申しわけございません。今のは特定扶養控除の数字と間違えておりました。  今の先生のお尋ねは、十六歳未満の扶養控除の三十八万から四十八万にかかわる分でございまして、二千三百億円でございます。
  59. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そして、そのもともやってください、三十八万円も。全部で。四十八万円では幾らになりますか。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少し混乱いたしましたので、申し上げますが、十六歳未満の扶養控除、これは二千三百億でございますね。それから、特定扶養控除五百五十億。  そこで、もとのお尋ねは、十六歳未満の扶養親族についての扶養控除を全部やめると幾らかと。所得税で一兆円、それから住民税で四千億円、合わせまして一兆四千億ですね。
  61. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ところで、これが課税最低限を四十八万円押し上げているわけですね。  ちょっとまたこういうものもつくってきましたけれども、ここの一番下の緑色が扶養控除です。  扶養控除を今のように四十八万円引いた場合に、課税最低限の人は関係ないですね。こういう言葉は嫌いですけれども、貧乏人の子だくさんと昔言われた。貧乏人は何ぼ子供がいても課税上は全く関係ない。国から支援は受けられないわけです。ところが、三千万の人は一人の子供について年間二十二万五百円の子育て支援が国からいただける。いわゆる税で恩典が受けられる。年収七百万の人は六万六千四百五十円の、同じように四十八万円を控除するといっても所得によって、七百万の人は年間六万六千四百五十円、一人の子供に対してですよ。しかし、三千万の人は二十二万五百円を受ける、こういうことがあります。  そうしますと、大蔵大臣も先ほど言われましたように、こういう基礎控除を税で考える世界でやると、課税最低限をどんどん引き上げてしまう、こういうことになるわけでして、しかもその結果、課税最低限以下の人には全く均てんしない。そして、所得の高い人ほど同じ金額でも高い恩典を受けられるということになる。これはもう理屈からいって当たり前の話でございます。  そういうことを、もし税の世界で考えるということをやめちゃって、そして国が児童手当という、こんなに子供が減るということは、子供は親の宝であるとともに国の宝でもあります。したがって、両親と国が相携えて子供を育てていこうという形で、国も子供に対して、貧富にかかわらず同じように、生まれた子供には同じ額を給付してあげよう。金持ちの子供だからということでたくさんあげるのではなしに、貧乏人の子供も金持ちの子供も同じ額を平等に与えようじゃないか。  そういう制度があるかということで調べてみましたら、世界の先進国ではほとんど、ヨーロッパではそれが趨勢なんですね。ドイツ、イギリス、スウェーデン、フランス、ともに今私が言ったように、税の世界ではなしに、国が貧富にかかわらず同じ額を子供一人当たりに幾ら渡すか。そして、たくさん子供を産もうというところでは、第一子、第二子は低く抑えて、第三子以降は高くする、たくさん産めばたくさん児童手当を渡しましょう、こういう世界があります。  例えばドイツでありますが、第一子、第二子には、日本円に換算しまして、現在月に一万三千四百五十四円ドイツでは渡していられます。第三子はちょっと上がりまして二万百八十一円。第四子、第五子になりますとこれが、六子も一緒ですけれども、二万三千五百四十五円。日本から見れば相当大きな金額でございます。  日本でいえば、第一子、月一万ずつで年間十二万渡すということになりますと、年収千二百万円の人が大体十一万九千五百円という税の優遇を受けていますから、月に一万円ということになれば、千二百万以下の所得の人は今の制度よりも有利な扱いを受けることができる。しかしながら、年間千二百万以上の所得の人には今の制度を置いておいた方が得と言ったらおかしいですけれども、得だという結論になります。どう選択するかであります。  これは厚生大臣になりましょうか。もし私が言うように第一、第二子は月額一万円ずつ、そして十六歳になるまで、義務教育の範囲までそれを支給する、第三子からは、第四子も第五子も、産んでいただければ一カ月に二万円ずつの児童手当をお渡しする、そういう制度に改めた場合に、その二千八十八万人の子供さんに所要額は幾ら要りましょう。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどの続きをちょっと申させていただきますが、例えば、アメリカでは児童手当というものは一切ございません。全部税で処理をしております。イギリスは、今度は逆に、税の方の控除はありませんで、児童手当で処理しております。ですから、いろいろな考え方があるのだと思います。我が国は両方やっておるような感じでございますね。  先ほど十六歳未満の扶養手当が一兆四千億円だと申し上げましたが、そのうち三二%が地方に行きますと、残りが国に残るわけですが、ただいま御指摘の、しかし、所得制限をやめて、第一子、第二子は一万円、第三子は二万円としますと、給付総額は二兆九千億円程度というのが私どもの概算でございます。
  63. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 子育て支援、少子高齢化に対する御認識は、私どもも、少子高齢化社会を控えまして、子育てが非常に重要だということを考えております。  しかし、ちょっと申し上げますが、私どもとしては、児童手当も支給しておりますけれども、これは経済的な支援の一つとして考えておりまして、そのほか、女性が職場に進出した場合に子育てはいかにできるかとか、その基盤をどうするかとか、家庭における医療問題その他保健政策をどうするか、また住宅政策、教育政策、総合的に考えて子育てをやる必要があると考えておりますことをまずちょっと申し上げさせていただいた上で、今お尋ねの、幾ら所要額を要するかというのは、今大蔵大臣がお答えいただいたように、二兆九千億要します。これは、公明党の提案のとおり、第一、第二子が一万円で第三子以降二万円、しかも十六歳まで、こういう前提で、全額国費でやった場合に二兆九千億でございます。  なお、先ほど大蔵大臣の方からも申されたとおり、所得税で一兆円、住民税で四千億ですから一兆四千億、なお、現在の児童手当の支給額は一千八百億でございますから、総じて一兆四千億くらいの持ち出しになる、持ち出しといいますか超過になる、こういう計算になります。
  64. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理、時間が迫ってきましたけれども、私は事前に役所に聞いてやったところでは、一兆四千億の持ち出しでこれができるということであります。ぜひこの一兆四千億、非常に大きなお金ではありますけれども、課税最低限というものを引き下げる効果もあります、長い目で見れば。それから、貧富の差なく子供に対して同じ金額が国から児童手当として支払われるということは大きいんじゃないでしょうか、目に見えますから。扶養控除の額を幾ら引き上げるなんといったって、頭の中で計算しても、自分のところの子供に幾らふえるかわからないです、こんなこと。  そういうことじゃなしに、第一子、第二子は一万円だけれども、三子がおなかに入った、生まれたら月二万円ずつ、国民にはっきりわかるじゃないですか。そういうふうにすることにより、先ほどの低所得者層にことし税が重くなってしまうというところを埋め尽くして余りあるんです。代替措置として私は考えていただきたいと思います。  もう一つ、十五歳ばかり言っていたら、じゃ十六歳以上はどうなるか。十六歳以上二十三歳までの特定扶養親族控除というのも非常に大きいですね。五十八万円を今度五万円上げていただいて六十三万円になる。これだけの控除をする。これも、もう示しませんけれども、高額所得者には物すごく手厚くなりますけれども、低額所得者にはその恩典は少ないし、もちろん、課税最低限以下の人には大学生がいても高校生がいても全く関係ありません。均てんしません。  私は、そういうことはやめて、これをやめるかどうかは大変私の党でもあれですから私の意見ですけれども、そういうことに置きかえて、義務教育を親に終えていただければ、高校以降は自分の判断で、自分が借金をして高校も大学も行くということでやったらどうでしょうか。  そのためには、日本育英会における育英資金というものをもっと充実をさせて、そして親の所得要件というものを外す。高校、大学の成績というものは一応外して、入学試験を通ったら若干できが悪くても育英資金は貸してあげる。成績要件ではねるということじゃなしに、申し込みがあれば貸してあげる。これは財政投融資の資金をそこへ入れて貸せばいいわけでしょう。私の調べたところでは、育英会の返済率というのは九七・八%、九九%、優良債権です。私は、それに対して政府が利子補給をしてあげればあすの日にでもできる。奨学金でやったらいい。  これは私ごとで申しわけないが、私は高校も大学も夜間へ行きました、昼働きながら。ですから、義務教育を親にしてもらえば、高校以降は自分でやればいいでしょう。そういう世界を国が用意してあげれば、自分のかい性で自分が借金をして、そして成人したらそれは自分が返すんだということで勉強に打ち込む、そういうことが日本の活力を呼ぶんじゃないかというふうに思います。  総理、どうですか。
  65. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 児童手当の問題あるいは特定扶養控除の問題につきまして冬柴委員のお考えをお聞きをいたしました。  なるほど、一律にすべて支給をするというお考えも考慮されるべきことであるかと思いますが、現行におきましては、先ほど大蔵大臣から御答弁申し上げましたように、日本におきましては、こうした控除を行うということと同時に、三歳未満の手当てを行うという併用の制度をとっておるわけでございます。  そういう意味で、一つの極めてわかりやすい制度を取り入れた方が結果的に子供さんがより生まれてくるという形になるかどうか、こうしたことも十分検討しなければならないんじゃないかというふうに思っておりまして、特にそれぞれの控除をされる方々によって、そのことで子供さんを産むということではないとは思いますけれども、それぞれ所得が多い方々にはそれなりのまた子供さんを育てる意味での費用というものもかかるのではないかというような点もございます。ですから、もろもろ検討させていかなければならない課題ではないか。  したがって、こうした控除によっての減税によって効果を生むか、あるいはまた、今先生指摘のように、一律にそうした形で児童手当等かなり高年齢まで付与する方がよろしいかということにつきましては十分検討いたしていきたいと思っております。  ただ、現実にこれを実施をいたしていくとなりますと相当の額の予算を必要とすることでもございますので、こうしたことも十分検討して対応していかなければならぬと思っております。
  66. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どうもありがとうございました。  時間の使い方が悪くて、公的介護保険の問題、永住外国人に対する地方選挙権付与の問題、被災者のローンの減免の問題、市町村合併の問題等々たくさんのことを用意しながらできなかったことをおわび申し上げながら、同僚議員にかわりたいと思います。ありがとうございました。
  67. 中山正暉

    中山委員長 この際、前田正君から関連質疑の申し出があります。冬柴君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前田正君。
  68. 前田正

    前田(正)委員 公明党・改革クラブを代表いたしまして、冬柴議員に関連して、改革クラブ前田正が質問をさせていただきたいと思います。  まず、経済政策問題ではございますが、小渕総理はことしを経済再生元年として位置づけられ、あらゆる政策平成十一年度の予算案に盛り込み、景気浮揚のための大盤振る舞いの予算を組んだと強調されておられるようであります。しかし、残念ながら、先日の施政方針演説を聞かせていただいた限りでは、総理が今の日本経済危機認識をどれほどお持ちであるかと考えますと、どうも疑わしい感じがするのでございます。  小渕総理は、施政方針演説の冒頭に、今や大いなる悲観主義から脱却すべきときが来ている、そして、今必要なのは確固たる意思を持った建設的な楽観主義であると強調をされました。これは、コップの半分の水も、もう半分しか残っていないと嘆くよりも、まだ半分も残っているじゃないかという意識の転換が求められているという意味でおっしゃったのであると思います。  悲観主義に陥るというのは大変問題であると思いますけれども、単に意識を切りかえただけでこの不況から脱出できるほど、総理、現実は甘くはないと思います。橋本前政権から経済政策を大幅に変更をした、ただそれだけで過去の失政への反省とか責任の問題が免責をされているということしか私には見えない、そんな思いを実はいたしております。  昨年の一年間の倒産件数は実に一万九千件に上り、そして負債総額たるものは実に十四兆円、戦後最悪を記録いたしました。失業率も四・四%であります。ことしはさらに五%に行くだろう、こう予測される方もおられるわけであります。  こうした現在の不況の原因について、実はこれは経済企画庁が出された、一九九八年のいわばバブルの白書という、ミニ経済白書というものがこの間経済企画庁調査局というところから出されております。これはいろいろ非常に、なかなかよくまとめられて、我々も読んでおって大変参考になるわけでありますけれども、官と民が金融機関の不良債権を先延ばしにし、バブル経済崩壊の後遺症を悪化させたことにあるということが現にこの本の中に載っております。  そしてさらに、政府はこの不況の原因をそのままにし、公共事業拡大を柱とする従来型の景気対策を繰り返し、結果、効果が出なかっただけではなく、財政の赤字の増大も招いたと実は指摘をしておるわけであります。これは、今日までの政府がとってこられた経済政策というものが大きな誤りであったことにほかなりません。この本は政府から出ているわけですから、この本が示してあるということは、当然政府がその認識にあるということだと思っております。  まず、この点から確認をしておきたいと思いますが、橋本政権の失政を総理は認められますか。いかがですか、お答えいただきたいと思います。
  69. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ミニ経済白書も要点を拝見いたしました。従来になく率直に過去の施政へのあり方についての反省も込めて書かれておることは、承知をいたしております。  そこで、橋本内閣の失政、こう申されますが、私ども、橋本内閣として前の国会でも申し上げましたが、適宜適切にその時点での対応にタイミングが合っておったかどうかのことについては私は問題がある、こう答弁申し上げております。  財政再建ということを非常に強く訴えまして、まず財政を再建するということで財革法を制定して、その路線に沿って今年度予算も成立せしめてきた、こういうことでございます。しかし、その間には、いろいろ世界の経済の大きな変動等が大きな影響を及ぼしたという点もございまして、そういった意味では、その時期時期に、結果的に見ますと、適切であったかどうかという判断はあろうかと思います。  でありまするがゆえに、今回、私が政権を担当いたしまして以来、従来の考え方をかなり変更させていただきまして、そして、今のこの経済状況を乗り越えるために各般の政策を打ち出させていただいておる、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  70. 前田正

    前田(正)委員 今の総理のお答えを要約すると、すなわち、橋本政権はやはり失政をしておったということを認めたということになりますか。どうですか、もう一度お答えをいただきたいと思います。
  71. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 失政という言葉、難しい言葉でございますけれども、要は、結果的に、今日の状況におきまして、経済が回復して、二年続きのマイナス成長の状況であるということを考えますと、適宜適切、タイミングが合ったかどうかということについての反省はあるべきものだ、こう考えております。
  72. 前田正

    前田(正)委員 それでは、経済企画庁長官にちょっと伺いたいと思いますが、経済企画庁長官、ミニ経済白書を出されたことでございます。長官ももちろん目を通しておられると思いますが、その辺ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  73. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お示しの書物は、経済企画庁長官の私が全責任を持って全文目を通して書いたものでございます。  その中で、この間経済演説でも申し上げましたけれども、財政再建で橋本内閣のとりました政策の基本的考え方は間違っていなかったけれども、時期は著しく悪いものであった。政治において時期が悪いというのは、つづめて言うと失政ということになるんじゃないかと思います。  ただ、そこにも書いてありますように、それはひとり橋本内閣の責任ではなくて、それ以前から、九〇年代に入りましてから、バブルの崩壊の後、官民あわせてやはり日本のバブル崩壊後の経済不況というものに対する見方が非常に甘かった。これは、橋本内閣だけではなしに、官民あわせて大きな長い責任であった、それを十年間にさかのぼって書いておる次第でございます。
  74. 前田正

    前田(正)委員 それでは、野田自治大臣にお聞きをいたしたいと思います。  野田大臣は、昨年の八月の予算委員会での質問に立たれた折、議事録を実は見てみますると、「前内閣の経済政策の失敗をまず徹底的に総括するということからスタートしなければいけない。そこで、どこが間違っていたのか、あるいは政策のどれをどのように組み立て直すのか、国民に対するおわびと同時に、明確な説明をする責任があるのではないか、」こういうことをおっしゃっておられました。間違いないと思います。  そこで、その野田大臣にこのことについて私はお尋ねをいたしたいと思いますが、今もそのお考えは変わりがないと思いますか。そしてまた、内閣に入られるときに総理から一言のおわびでもあったのかどうか、その辺もお聞きいたしたいと思います。
  75. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 もう既に総理あるいは堺屋長官から御答弁ありましたように、前内閣における経済政策に関して、いわば反省という言葉を用いて表現をしておられるわけであります。私は率直に言って、なかなか従来ああだこうだといってそういう言葉すら出ないという長い間の傾向があった中において考えれば、大胆に、総理の表現というのは素直に言葉として受けとめていいのではないか、そう思っています。  いわば、それがあって、その上で、経済政策そのものについて、私たちが、率直に言って、野にあって新進党時代から、十八兆円減税だとか、いわゆる所得税、住民税、法人税、大幅減税を我々主張しておった、それに対して真っ向から否定をされてきた、そういう脈絡の中で、いろいろなことについて、おわびという言葉を言うかどうかは別として、それらの反省の上に立った上で、今回大幅な法人税あるいは所得税、住民税の減税にあえて小渕内閣になって踏み込んで具体化しているという、これは私は実は大きな転換であるというふうに考えております。  あるいは、それだけじゃなくて、タイミングが悪かったというお話、財政構造改革法の問題。この問題も、私は素直に、言うなら凍結というのも事実上かなり無期限凍結に近いわけですね、期限なき凍結でありますから。そういう意味で、私は、それらの路線について、財政再建ということと経済再建という二兎を追う経済政策から、今回ははっきりと、まず順位を決めて、まず経済再建ということに全力を投球する、そしてめり張りをつけた上で、経済の再建のシナリオがはっきりした上で、今度は大きく財政再建に向けてみんなで考えていくという形のめり張りをつけられた、そう評価をいたしておるわけであります。  あと細かい内容は、いろいろ主張が具体的にどういうふうに反映されたかということは、後ほどまた御質疑があればその段階で申し上げたいと思います。
  76. 前田正

    前田(正)委員 総理、今我々はやはり国民に対して、今日までとってこられた自民党の政策というものがやはり間違っておったということをまず国民の前におわびをするということが大前提ではないか。  私どもの地元にも企業がたくさんありまして、去年でも、我々の知っておる企業が倒産した、こういう会社もやはりあるんです。それは、もちろん自己責任で負わなければならぬと思いますけれども、しかし、やはり政府の経済見通し、あるいは前の尾身経済企画庁長官も、桜の花の咲くころには経済がよくなる、こういうことを現におっしゃっておられたわけであります。そのために、春には景気はよくなるということであれば、それは衣料会社の社長でありましたけれども、注文するのは冬ごろに注文して春に合わせてやるわけでありますが、結果的に春に合わせてやったけれども一個も物が売れなかった、こういう現実もやはりあるわけであります。したがいまして、会社が倒産をされたり、あるいはまたその倒産によって失業されたり、あるいはまた中には、もうどうしてもしゃあないという借金で自殺をした方々が最近特に多い。  こういうことを考えると、やはり、橋本前内閣のときに小渕総理は重要閣僚としてその中におられたわけでありますから、それはもう閣議の中でもいろいろ提言もされたことだと思います。だけれども、私は、橋本前総理がすべてが全部どうだったということはないんです。総理も一生懸命日本のために、国民のためにやろうという意思は、確かに私どもはそれは十二分に認めるわけでありますけれども、政治家はやはり結果責任というものが問われるわけでありますし、また、その後を引き受けてやられる小渕総理に関して、やはり私は、国民の前にどうも申しわけないという一言のものがあって、それから小渕政権というものが初めてスタートするんだ、これが物の道理ではないかということをぜひ申し上げておきたいと思います。  それでは、次に移りたいと思います。  次に、来年度の予算案の中身についてお伺いいたしたいと思います。  一般歳出は五・三%、久しぶりの高い伸び率であり、遅まきながらも表面上は確かに積極財政になっております。公共事業も一〇・五%の伸びをしておりますけれども、しかし、中を細かく見ると、省庁別のシェアというのは余り従来とは変わらないものであり、いわゆるばらまき型というものでございます。  減税についても、規模だけはある程度、非常に大きいもので、我々もそれは認めるわけでありますけれども、しかし、税そのものの抜本改正とはかけ離れておるように感じます。所得税減税についても、今度は定率減税という方式を導入されましたけれども、しかし、これはだれもみんなそう思っていますけれども、中堅所得者層以下の方々においては増税というふうな、そういう矛盾が生じ、結局、個人消費がどれほど活性化するか、その効果はまことに不透明であると思うわけであります。あるいはまた、福祉、年金、介護、こういったところの将来に向けての総合的なプランというものも全くないということであります。  そこで、もしこの予算案が来年度このままで事業が行われた場合、総理は、実質成長率が〇・五%に回復する、こうおっしゃっておられます。  すなわち、小渕内閣予算は、橋本内閣時代の予算に比べて、まず一つは、もちろん数字そのものには大きな、若干の出入りというものはあることは認められます。それから二つ目は、いわば財革法というものを停止されて、そして積極的財政の中で非常に、赤字国債というものの増発は理解できるわけでありますけれども、そのほかの中身はほとんど橋本内閣時代と変わっていないというふうに、私はそう思っています。  そこで、どこがどのように変わっておるのか、そしてまた、どこでその景気対策として〇・五%押し上げるような力のある予算づけをしておるのか、その辺について少しお聞かせをいただきたいと思います。
  77. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現下、予算の審議に入っていただいておりまして、ただいま委員からの厳しい御指摘もございました。ただ、今次この内閣といたしましては、今御指摘のように、何としても二年続きのマイナス成長を変えて〇・五%程度の回復を、プラス成長させたいという一念のもとに予算編成をさせていただいたつもりでございます。  幾つかのポイントがあろうかと思いますけれども、まず、恒久的減税を初めとして、国、地方合わせて九兆円超の減税を実施ということであります。これは、私、総裁選挙のときには六兆円超と申し上げておったのですが、かなり政策減税というもの、特に住宅やその他を含めまして十兆円に近い減税を行うことにいたしました。これは自由党とのお約束もございまして、私は、従来にない大きな減税額になろうかと思っております。  その内容については、先ほど来しばしば御指摘もいただいておりますが、総体的にはこれだけの減税額を実施しておるということになろうかと思います。  それから予算につきましては、これまた公共事業費についていろいろ御指摘をいただいておりますけれども、公共事業費につきまして、プラス五%、そしてまた公共事業予備費として五千億、すなわち、合わせまして一〇%増ということでございます。  内容につきましての御指摘は、今後予算審議によりまして御指摘があろうかと思いますが、政府といたしましては、やはり公共事業の持つ大きな経済に対する影響力もありますが、同時に、それだけでなくして、将来を見通した上で、やはり国民的資産を拡大すべきだという意味では、これだけの成長率を持たせたということは、必ず効果を生むものだと思っております。  それから、財政構造改革の基本的な考え方は維持しつつも、めり張りのきいた予算配分になっておるということもぜひ強調いたしたいと思っておりまして、特に、二十一世紀に向けての将来計画を実行していくために、まず科学技術振興費というのをプラス八・一%、それから社会保障関係、これはある程度法律によってふやしていかなければなりませんが、これがプラス八・四。そして、厳しい環境の中ではありますけれども、ODAなども、昨年は一〇%カットというようなことでありましたが、これもプラス、ふやしまして、あるいはまた失業対策その他、こうした予算は、それぞれの特徴を生かしながらかなり効果的にその成果が生まれるものと私ども確信をいたしておるわけでございます。  いろいろと厳しい御指摘はちょうだいをいたしておりますが、できる政策はすべて予算面に反映したという形でこの内閣としては計上させていただいておるということをぜひ御理解いただくと同時に、これをより効果的に、そしてむだのないように実施していけば、必ず私は当初の目的は達し得るもの、こう確信いたしておる次第でございます。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  78. 前田正

    前田(正)委員 総理から、るる細かくいろいろとお話をいただいたわけでありますが、要するに、今回のこの十一年度の予算というものは、間違いなく、成長率というものは〇・五%は必ず回復できる、こういう自信を持っておられることだと私は理解をいたしたいと思います。  そこで、この予算が最善の予算であるということならば、来年度の後半ぐらいに補正予算を組むというようなことはまずお考えでないであろうと思いますが、その辺の総理の御意見を賜りたいと思います。
  79. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 十一年度予算の前に実は今年度予算の第三次補正もいたしておりまして、これはそれこそ、これまた第一次補正に加えまして相当の額になっておりますので、特に予算の執行上からいいますと、一—三月というのはいつもいつも、新しい予算を実施する前に、いわば端境期のような形になっておりまして、そういうことのないようにということで、前の補正予算から含めまして十五カ月予算という形にいたしておりまして、加えての十一年度予算でございます。  長くなりましたが、御指摘のように、今の段階におきまして次の補正というようなことは全く考えておりませんで、今、この予算を十分、一日も早く執行させていただくということで、ぜひお願いいたしたいと思っております。
  80. 前田正

    前田(正)委員 そうすると、総理から今御発言がありました、今のところは補正予算を組むつもりはない、しかし、将来の経済状況に応じては補正予算を組むかもしれない、こういう発言であろうということですかね。その辺、そういうことですか。総理、もう一遍。
  81. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今の段階でと申し上げたかもしれませんが、この十一年度予算、我々としては、この予算を実施、実行いたしてまいりますれば、御指摘のように、成長率につきましてもそれが達成できる、そう確信をいたして提出をさせていただいておりますので、ぜひ、これが一日も早く隅々にわたりますように、執行ができますようにお願いをいたしたい、こういうことでございます。
  82. 前田正

    前田(正)委員 要するに、私が申し上げておるのは、最善、最良の本年度予算であると総理が自信を持って提出をされたわけでありますし、また経済成長も〇・五%、これでもって必ず、いわば先の経済の見通しも含めて、必ず〇・五%の景気は回復する、そういうことになれば、これは別に補正予算を組む必要はないと思うんです。それはまあ世界で、例えば中国の元が切り下げになったとか、あるいは株が大暴落して、これはもうとても大変、日本経済危機が訪れたというときは、これは別だろうと思うわけでありますけれども、総理は、要するに、この予算でもって補正予算は組む必要がないというふうなことであろう、私はそう理解をいたしたいと思います。  それから、次に移りたいと思いますが、平成十一年度の予算案は、公共事業はやはり相も変わらずばらまき型であります。確かに公共事業そのものは、それなりの景気対策というものはやはりある、私はそう認めるわけでありますけれども、しかしやはり、この経済白書にも出ておりますように、公共事業を何ぼ一生懸命やっても、結果的になかなか景気の浮揚にはならなかった、そして反対に赤字国債がどんどんふえた、こういう結果であるということも出ているわけであります。  そういうことも踏まえて、私は、この際、公共事業そのものを全体的にもちろん見直しての話だろうとは思いますけれども、やはり生産性の高い公共事業と、そして非生産性のあるものの公共事業と、二つあると思うんです。  今一番緊急的にやらなければならないのは、公共事業の中でも、これをやったら、必ずこのものを使って景気はよくなるんだというものに対してはやはり思い切り予算をそこで投入する、あるいはまた、非生産性の高いものについてはしばらく少し延ばすというふうな、こういうめり張りというものをつけるとか、あるいはまた、だれか発言がありましたけれども、一括して自治体に予算を全部投げてしまって、それでその中で考えてやってもらいたい、そういう工夫が実はこの予算の中にないということでございます。  そういう基本的なことがやはりこの予算に欠けておると私は指摘しておきたいと思いますし、そして所得税の減税についても前回の定額方式から今度は定率方式に、ただ名前が変わっただけであります。そして、各層のそれぞれの減税額というのは、大変多く減税するところもあれば増税するところもある。そのでこぼこというのは確かに大事な問題であると考えますけれども、今やはり国民が求めていることは、恒久減税なのか恒久的減税なのかという、言葉的に非常にわかりにくいそういうものではなしに、これから先何年間はこのままで税金を減税をするんだ、そういうもの、あるいはまた景気がよくなるまで先何年間やるんだ、そういう先の見通しというものがないために、今国民はさらに不安を感じながら、要するに、消費になかなかお金が回っていかないというところが根本的に欠けておる。だから私どもは、この予算は欠陥予算ではないかということを言っておるわけであります。  そして、その財源のかなりの部分は赤字国債で賄われております。我が改革クラブは、私どもは、やはり景気浮揚のためには多少の赤字国債発行はやむを得ないということを実は主張をしてまいりました。今回赤字国債を出されたということからして、私どもの改革クラブが主張してきたことは正しかった、私どもはそう思っておるわけであります。しかし、小渕総理は、実はつい昨年の夏までは、赤字国債の拡大はいかにも無責任だと言わんばかりのことを言っておられたわけであります。その意見が百八十度も転回して今度やることになったわけでありますけれども、そういったことに至る経過なりこの発想に関して、国民に明確にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  83. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 いわゆる公債発行について、私は否定的なことを申し上げたつもりはありません。  現下の状況の中では、財政再建ということは最も大きな、後世代に負担をかけないという意味で考えていかなければならない問題でありますけれども、しかし、その年々の予算の編成においても、これが必要とあらば、かなり思い切ってこれを発行してでも景気を回復しなきゃならぬという考え方は、私自身は従来から持ってきたつもりでございます。  もとより、基本的には、入るをはかって出るを制するということは古来政治家の心がけなきゃならぬことですし、レベニューニュートラル、予算としてはそれこそ赤字を抱えない形で歳入歳出を見ていくということが必要であるということは基本問題だと思いますけれども、しかし、今や世の中が極めて複雑になっておりますし、いろいろな施策を講じなきゃならない時点にあっては、やはり単年度ですべてこれを解決するということは無理なことでございますので、そういった意味で、十一年度予算につきましては三十一兆、大変大きな国債を発行させていただきましてでも経済再建元年という年を迎えたいという気持ちでの予算編成であることをぜひ御理解いただきたいと思います。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 前田正

    前田(正)委員 結果的に、今年度末で三百二十七兆円という赤字国債の累積残高。地方債を含め、あらゆる借金で約六百兆円ほど実はあるわけであります。これは、単純に国民一人当たりに割ってみますと大体四百七十万、そして夫婦子供二人の計算でいうと、一家で千八百八十万といういわば国の借金を背負うことになるわけであります。  したがいまして、赤字国債を出されたということの評価は多少あるわけでありますけれども、財革法を停止しても、やはりこれらのものは全部我々なり我々の子供たちに残っていくものでありますから、総理は、景気がよくなったら中長期的にひとつ検討していくというふうなお話も聞いているわけでありますけれども、具体的にこれからの、そういった借金をどう返済していくかということを早急に私は計画を立てていただきたい、かように思います。  そして、次に移りたいと思いますが、平成十一年度の予算は自自連立の政権下で作成をしたものであります。両党からいろいろと協議をされ、いろいろと審議をされたことだと思いますが、しかし、実際的に新聞で出る限りでは、いわば大臣の数を減らしたり、あるいはまた日米ガイドライン、あるいはまた政府委員を廃止する、こういう問題だけがどんどん新聞報道されるものでありますから、我々として、この自自政権で果たしてどういう、今一番国民の求めていることはどういう景気対策だとか、あるいは経済の再建をしていくか、こういうことが一番希望しておるものだと思いますが、そういった問題がなかなか表に出てこられないということであります。  したがいまして、私は、この自自連立については大変信じがたい、異常としか思えないわけでありますけれども、野田先生なんかは、実はもうつい最近まで新進党として我々と御一緒にやった仲間でありますし、それから自由党を結成されて、そしてつい最近まではやはり非自民というお立場でやってこられたわけであります。それが一夜にして、自民党と自由党が連立をされたということ、そういうことに関して、総理も何遍も答弁はございますけれども、何のための連立であり、この連立で総理は何を目指しておられるのか、そういったことをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  85. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これもしばしば申し上げておりますように、自由党と自民党と連立政権をつくることによりまして国民の大きな期待に全力でこたえたいということでいたしておりまして、種々の改革を、これもぜひ俎上にのせてこれを実現していきたい、そのためには安定した政権も必要であるということで、両党、両党首が合意をいたしたことであります。これからこの効果を十分発揮させていただきまして、国民に期待される政治を行っていきたいというふうに思っております。  なお、予算につきましてでございますけれども、実質この連立政権が成立をいたしましたのはことしでございますが、昨年末の予算編成におきましては、ここにおられる野田自治大臣も、時の自由党の政調会長として、我が党の政調会長とともに、予算編成に当たりましては相協力をして今次十一年度予算を編成したという経過がございますこと、したがいまして、ともどもに、この予算につきましては責任を持ってこれからその効果あらしめるように努力をしていくということには間違いないと考えております。
  86. 前田正

    前田(正)委員 いや私は、要するに、安定した政治基盤をつくるため、こうおっしゃっておられるわけでありますけれども、私だけではなく、国民の皆さん方も恐らく釈然としないと思うのであります。この自自連立の小渕内閣においては首班指名ということがされていない。そして連立内閣をつくられたということであります。そして昨年の、十年の七月三十日、小渕内閣が成立したとき、多分自由党の皆さん方は、菅さんと名前を書かれたわけでございます。  それで私は総理にお尋ねをしたいと思いますが、今まで連立を組まれた中で、首班指名をせずに連立を組まれたという内閣はありますかどうか、その辺、御認識があればお聞かせいただきたいと思います。  突然の話でよくわからないかもわかりませんけれども、ちょっと私、調べた結果では、現憲法施行のもとにおいて、片山内閣、芦田内閣、第三次吉田内閣、第二次の中曽根内閣の連立があったわけでありますけれども、いずれも首班指名の選挙をして連立を組んでおられるわけであります。例えば、昭和五十八年の、当時の自民党が新自由クラブと連立を組んだときも、首班指名は、新自由クラブもやはり当時総理だった中曽根康弘と書いているのであります。しかしながら、自由党の方々は、小渕さんではだめであって、菅さんだ、こういうことをついこの間、首班指名で言っておられるわけであります。  しかし、今回、こうして連立を組まれたということは、要するに国会ルールというものを無視した連立内閣、こういうことと言えるわけでありますけれども、この辺、小渕総理並びに自治大臣にお尋ねいたしたいと思います。
  87. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 政権のつくり方については昨日も実は御答弁させていただきましたが、これはいろいろなケースがあろうかと思います。理想を言えば、いわゆる総選挙において国民の意思を明らかにして、過半数を維持して、そして政権をつくるということだろうと思います。しかし、いろいろなケースがありまして、その後におきまして政治の動向の中でいろいろな組み合わせというものが行われていることは、ひとりこの日本のみならず、諸外国におきましてもそういう形をとっておることは事実でございます。たしか、総選挙後において政権が交代されたということであれば、近々でいえば羽田内閣もそのような形ではなかったかという気がいたしております。  そこで、御指摘は、首班指名選挙において、両院において異なった首班が選挙によって選ばれたことについてのお話でございますが、その後自由党が、私自身を首班としてともに連立政権を持とうということをされたということにつきましては、これは自由党にお聞きを願わなければならぬかとは思いますけれども、しかし、その当時において選ばれた方とともにあるいは政権を維持するということについて御疑念が生まれ、かつ、今の小渕政権とともどもに政権をともにしようという御決断をされたことについては、私としてはこれを高く評価して、ともどもにやっていこうという決意を新たにいたしておる、こういうことでございます。
  88. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 先般の参議院選直後の首班指名で私たちが菅さんを指名したことは事実であります。それは、その当時の国民の考え方というのが、少なくとも政策的にも非常に壁にぶつかっている、そういう局面の中で、一刻も早く国民の民意を反映する形での政権ができるということを、一刻も早くあった方がいいのではないか、そういう意味において、選挙管理内閣的な意味における菅首班ということを我々は主張したわけであります。しかし、その後いろいろな経緯があったことは御案内のとおりで、そういう発想ではなくて、そういう形にはならなかったわけであります。むしろそういう発想はよくないという話になったわけですね。  そこで、そうなれば、我々はこの政争をいつまでも繰り返すという閉塞状況を継続するわけにいかない。私たちは、あくまで基本政策の実現ということを掲げて結党しておる自由党であります。  そういう意味において、我々が、民主党の皆さん、今やじがありましたが、いろいろ話をしているうちに、経済政策にせよ、いろいろな政策テーマにせよ、政策の違いがだんだん明らかになってきた。あるいは、安全保障問題についても民主党の中は一体どの程度まとまっているのか。いろいろな意味で、日本の国をこれから、それほど時間的余裕がない中で根本から立て直そうという、そういう基本政策について十分な一致がないままに、ただ単に数だけを求めてやっていくということは決してよくない結果を生み出すに違いない。  そういった中で、先ほど来総理が申されましたとおり、時局認識なり、あるいは基本政策の理念なり、あるいは基本政策という方向性が一致をするという、そういう中からしっかりした協議を行い、その上に立って、どっしりとした政権の中でその実現を目指していく、果断にかつ迅速に対応していくということの方が、今日の政治のあり方として、我々はその方が国民に対する政治家としてのあり方である、こう判断したわけであって、その点において、今回の結果について国民からの審判は、この後行われるであろう総選挙において、自由党としてそれがよかったかどうか、それはこの連立政権の成果とともに審判を受けるというのは当然のことである、私はそう思っております。
  89. 前田正

    前田(正)委員 時間が参りましたけれども、いろいろと申されましたけれども、衆議院を解散して国民に信を問うということがやはり本当だろうと私は思います。しかし、こういう厳しい経済状況の中で政治空白をつくる、こういうことを私も考え、総理もそういう考えであろうと思いますけれども……
  90. 中山正暉

    中山委員長 前田委員に申し上げます。  質疑時間が終了いたしておりますので、質疑を終わってください。
  91. 前田正

    前田(正)委員 百歩譲っても、私は、やはり一たん小渕内閣が総辞職をして、そして自自の政策協議を経て、そして首班指名をやってやるべきである、それが国民に対して本当であろう、そういうふうに思います。  以上をもって質問を終わらせていただきたいと思います。
  92. 中山正暉

    中山委員長 これにて冬柴君、前田君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  93. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤六月君。
  94. 加藤六月

    加藤(六)委員 考えてみますと、平成元年一月七日、平成のおじさんとして小渕官房長官が平成の看板を高々と上げられて、平成の御代が始まりました。そして今日、国会において、この平成の大危機をいかに乗り切っていくかということで、その平成のおじさん、小渕総理が先頭を切って必死の御努力をされておる。このことに、まず冒頭敬意を表しまして、私の質問に入らせていただきます。  いろいろあると思いますけれども、冒頭、ひとつ総理に思い出しておいていただきたい。これは私が一昨年暮れに書いた「掉尾の勇」という本ですが、その中に、何やかや書いておるんでありますが、平成二年の二月の第三十九回衆議院総選挙、ありましたですね。そして、その前の年参議院選挙があって、自民党は大敗を喫した。そして平成二年の二月の総選挙にて辛うじて自民党が過半数を衆議院においては維持した。首班指名選挙では、衆議院では海部俊樹、参議院では土井たか子、そして参議院では二回土井たか子の首班指名があったということがあったわけでありますが、それはさておきまして、そのときに、当時の政局で一番大変な問題であったのは消費税問題であります。平成元年の参議院選挙、消費税問題で大変な国民の批判を浴びた。それが平成二年の衆議院総選挙で辛うじて自民党が食いとめた。  したがいまして、院の意思が、その後いろいろ展開するんでありますが、衆議院では消費税の修正案を通し、衆議院では通過しました。参議院では消費税の廃止法案が成立して、衆議院へ送付してくる、こういうことになりまして、御存じのようにそういう両院の意思が違うということで、いろいろ両院知恵を出したんでありますが、結局、両院協議会でもない、両院常任委員長会議でもない協議機関というものを両院でそれぞれ多くの皆さんをそろえて会議をするようになりました。  発足当時は与党の小沢幹事長が全体の会長になり、そして衆参両院のそれぞれの幹事長、政審、政調会長、書記長あるいは税制専門家等々が集まって総会その他を行い、また小委員会を設け、また専門家会議を開いて延べ二十七回やったんであります。そこで、今度は小沢幹事長から小渕幹事長にかわられてそこら辺で頭打ちになったりいろいろ問題があったものでありますが、新会長としていろいろ言われまして、結局私も専門家の方の政調会長として座長としてやったんでありますが、小渕会長の全体のあっせんで、会期末二日前にその案をまとめることができた。  それで、ふと昨晩そのことを思い出してこの本を開いてみたら、実に修正の提案者には、日本社会党・護憲共同山口鶴男君、大出俊君、伊藤茂君、中村正男君、早川勝君、公明党・国民会議の市川雄一君、神崎武法君、二見伸明君、宮地正介君、日笠勝之君、民社党の米沢隆君、神田厚君、中野寛成君、中井洽君、進歩民主連合の阿部昭吾君、菅直人君、それで自民党は、全体をまとめて、小渕恵三それから梶山静六、中島源太郎、野田毅、平沼赳夫、尾身幸次、大石正光、こうこうで、ずっと出て私ということで、私が代表して、衆参両院の大蔵委員会その他でやって通したんであります。  これはある面では、発起人がこういう方で、賛成者が四百二、三十名になった。ただ一つ協議会では賛成してもらわなかった共産党も、大蔵委員会では賛成してもらっている。あの衆参両院の委員たちが大変な、国民生活にとって消費税というものが初めて導入されて二、三年のときですから大変なときであったけれども、やはり両院のそれぞれの英知を絞ってやっていけば、平成三年の会期末の五月六、七、八、衆参両院が一本になって、圧倒的多数というか、全会一致で衆議院を通り、参議院で通った。  このことを考えてみると、今日、冒頭、平成の大危機と申し上げましたが、国民生活、国民が大台風に遭っておるというか、燃え盛る火事の中に置かれておるような立場を思うときに、国際的にも国内的にも私たちは、この現状を見るときに、英知を絞って取っ組んでいかなくてはならぬ、この気持ちを強く持ちます。したがいまして、きょうはその立場に立っていろいろ質問させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げる次第であります。  予定を変更しまして、そういう立場と若干似ておるんではございますが、国連改革、国連問題について先に御質問させていただきたいと思います。  自自連立合意の、政策協議の重要な柱と我が党がちゃんと言い、総理も署名していただいて合意してもらっておるんでありますが、政治を国民の手に取り戻すための政治・行政改革、それから二番が国民の命を守るための安全保障、それから三番目が国民の暮らしを守るための税制改革、三つあるんでございます。その中で、この国会で非常に議論をされておるのが、安全保障に絡む問題あるいはガイドラインの問題がありますが、私はその前に、もう一つ進んで、合意の中の二番目の「国民の命を守るために」ということでいろいろ言っておるのでありますが、その根源は、国連という問題と日米安保という二つがあると思うのです。その場合の国連ということについてまず考えさせていただきます。  私たちは、今申し上げましたように、国連の問題、あるいは国連の安全保障における立場と役割という問題をさらに強く考えていかなくちゃならぬわけでありますが、この二番目の(1)で、「わが国の平和と安全は、次の原則に従って確保する。」確保するですよ。「わが国は、わが国が武力による急迫不正の侵害を受けた場合に限り、武力による阻止、反撃を行い、それ以外の場合には武力による威嚇または武力の行使は一切行わない。」ということと、「国際連合の総会または安全保障理事会で国連平和活動に関する決議が行われた場合には、国連の要請に従いその活動に参加する。」この場合の国連のいろいろな安全保障あるいはその要請という問題が言われておるのでありますが、その国連というものについて、まず私の考え、並びに御質問をいたします。  アメリカは財政黒字になっている。先般は、クリントン大統領は、その黒字の使途についていろいろ述べておられます。うらやましい限りだ、こうも思うんでございますが、一方、よく考えてみますと、国連の分担金滞納問題をアメリカは抱えておられる。昨年十二月三十一日現在で、約十三億ドル滞納しておられます。  そこで、これはどなたがお答えいただくか、一体、この問題に対して、ホワイトハウス並びに米国議会はどのように説明しておるんでございますでしょうか。
  95. 高村正彦

    ○高村国務大臣 クリントン大統領は、確かに一般教書で黒字を誇らしげに言っておられたわけでありますが、それと同時に、その一般教書の中で、国連の分担金を支払いたい、こういうふうに言っているわけで、支払わない正当性などということは全く言っていないわけで、議会との対立の中で支払えない状況が続いている、こういうふうに承知しております。
  96. 加藤六月

    加藤(六)委員 しからば、これは外務大臣にお聞きするのかどうか、議会はどういう理由でそれを滞納しておるか、御存じでございますか。
  97. 高村正彦

    ○高村国務大臣 議会の方は、右滞納金支払いを含む予算関連法案に対して堕胎条項、妊娠中絶に関する海外団体に対する資金供与の禁止を挿入して、それに対して、クリントン大統領がこの右条項が挿入されている法案全体に対して拒否権を発動したことから、この法案が成立しなくて滞納金が支払えない状況にあるということであります。
  98. 加藤六月

    加藤(六)委員 そこで、この国連に対する日本の分担率及び分担金額は、国連の安全保障常任理事国でありますアメリカを除いたフランス、英国、ロシア、中国の合計額よりか日本の負担率並びに負担額が多いというのは間違いではございませんでしょうか。
  99. 高村正彦

    ○高村国務大臣 間違いございません。
  100. 加藤六月

    加藤(六)委員 我が日本の、改めてサンフランシスコ平和条約並びに国連憲章を読ませていただき、日本が国連に加入するときに衆参両院の国会でどういう議論をしておるか、あるいはサンフランシスコ平和条約におけるところのいろいろの中に、日本の自衛権とか集団安全保障権の、あるということを認める条項その他がいろいろあるわけでありますが、私も勉強したのでありますが、そのことはちょっとこっちへ置いて、今アメリカが滞納しておると同じような方法を日本国が、日本政府が国連に対してとった場合は国連の運営はどうなるか、ちょっと考えたことがあるのでございますが、外務大臣、何かお考えになったことがありますか。
  101. 高村正彦

    ○高村国務大臣 ごく抽象的なことでありますが、ただでさえ国連の財政は大変逼迫しておりますから、アメリカに続いて日本まで払えないということになると、これは大変なことになる、ただそれだけでございます。
  102. 加藤六月

    加藤(六)委員 先ほど申し上げました、日本の一九九九年、ことしの負担率は、率は一九・九八四%、額にして二億七百六十五万一千八百四十六ドルになるわけでありますが、調べてみますと、来年、二〇〇〇年からは負担率が二〇・五七三%になるようでございます。  そして、日本政府は、かねがね国連においてもあるいは国際社会においても、分担に応じた責任、日本はこれほど分担しておる、それに応じた責任というものをとる立場をもらわないといけないということを主張してきておるのでございますが、どうもその主張が紳士的過ぎて、ちょっとかすんでおるのではないか、心配でなりません。  国連総会の中身その他を勉強してみますと、一昨年、九七年九月にクリントン大統領が日本、ドイツの常任理事国入り支持の演説をされておりますが、それ以来、国連関係では日本のそういう分担に応じた責任という立場を理解したり推奨するような演説は聞いたことがないんですが、外務大臣、何かこれについて感想なり考え方がおありでしょうか。
  103. 高村正彦

    ○高村国務大臣 分担に応じた責任ということも言っておりますし、それと同時に、責任に応じた分担、分担率が高過ぎるのではないかということも主張しているところでございますが、今、国連の分担金で日本が大変な貢献をしているわけでありますが、それだけでなくて、かなり広い分野で日本は国際的な貢献をしているわけであります。そういう中で、日本が常任理事国になることに明示的に反対だと言っている国は北朝鮮以外にないわけでありまして、大方の国が、日本が常任理事国になることは賛成だ、こういうことを言ってくれているわけであります。  それでは、なぜ日本が常任理事国入りしないかというと、安保理全体の改革の枠組みが決まらない。例えば安保理のメンバーを幾つにするのか、それぞれの国がそれぞれの意見を持っていて、それが収れんしないために入れない、こういう状況が続いているということもあるわけであります。ですから、そういったことに、国連改革の論議を加速化させることによってそれを収れんさせると同時に、日本はますますグローバルな貢献を分担金の面以外でも広くすることによって、ますます常任理事国、日本が入るべきだ、そういう支持を強くしてもらえるような状況をつくっていきたい、こういうふうに思っております。  ちなみに、クリントン大統領と小渕総理の首脳会談のときも、日本とドイツは当然に常任理事国になるべきだということは、クリントン大統領が述べておられたのを私は横で聞いておりました。
  104. 加藤六月

    加藤(六)委員 分担金云々の問題は注意を喚起する意味で申し上げたのでありますが、我が国の憲法の前文にも書いてありますように、国際社会において名誉ある地位を得るという立場に立って、政府、外務大臣、頑張っていただきたいと思います。  次に、経済関係の質問をさせていただきます。  冒頭ちょっと申し上げましたが、平成十一年度は我が国経済の再生シナリオの中で必ずプラス成長に転換する年にしなければなりません。そのための必要な処方せんは、改めて申し上げるまでもございませんが、公共投資、減税などによる十分な需要喚起ということと、徹底した構造改革、規制緩和であります。このため、断固たる決意を持って機動的、弾力的な経済運営を行うことが何よりも必要である、こう思っておるところでございます。  我々自由党は、我が国の経済危機の一番の原因は構造問題にある、こう主張してまいりました。そして先般、総理直属の経済戦略会議が昨年末に中間報告を出されましたが、これを拝見してみますと、我が党の基本政策日本再興へのシナリオと方向性においても、また各論においても似ている点が多々見受けられるわけでございます。  今回の予算において、思い切った公共事業の伸びや九兆円を超える減税が盛り込まれましたが、さらに十分な構造改革がなされますと、十一年度以降プラス成長に転ずる可能性は十分にあると考えております。  規制緩和を中心とした種々の構造改革を断行し、ぜひとも我が国の経済再生、日本再興を実現しなくてはなりません。これは、ある面では国民全体の気持ちでもあると思うわけでありますが、総理の御決意をお伺いいたします。
  105. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 全くもって同感の至りでございまして、現下厳しい経済情勢でございまして、私、内閣を組閣いたしまして以来、この内閣を経済再生内閣と位置づけまして、最善の努力を開始させていただいておるところでございます。  二年続きのマイナスになりますと、もちろんその中で、ある意味では不況であるがゆえに構造改革というものも加速されるという面も、正直申し上げて事業体の中にはあると思うんです。  しかし、こうした状況が続きますと、ひとり日本のみならずアジアあるいは世界経済に大きな影響を与えるだけの、日本経済は世界第二位の状況になっておりまして、そういった観点から、御指摘のように、あらゆる構造改革を実行いたすことによりまして、この経済を再生させるというところにすべて主眼を置いて対応させていただいてきたわけでございまして、昨年来種々の改革を行い、また予算的な面でもこれに取り組ませていただき、かつまた十一年度予算におきましては、大変、一部では、その予算額が前年度に比べまして積極的な色合いがあるということで、言葉をかえて言いますと、ばらまきだという批判もありますが、この際はあらゆる財政出動、そしてまた税制面でも積極的に取り組ませていただき、確かに法人課税あるいは所得課税につきましての、その実施の時期について御批判をちょうだいいたしておりますが、これだけの恒久的減税を行ったということは、かつてなかなかこれを実行しようと試みながらできなかったことを考えますと、もしこのことをこの予算とともに御了承いただければ、私は、必ずこうしたことがよきマインドを起こして、目標を達成できるものと確信をいたしておる次第でございます。  何とぞよろしく御鞭撻、そして御支援をいただきながら、一日も早い予算執行をさせていただくようにお願いいたす次第でございます。
  106. 加藤六月

    加藤(六)委員 何としても、総理、プラス成長に持っていかないといけないと思います。そしてまた、このプラス成長を達成するためには、各種指標というものを注視しながら、それに対して迅速かつ的確に対応する必要があると私は考えております。  そういった中で、昨年十二月二十一日のたしか予算内示の日でありましたか、宮澤大蔵大臣が記者会見で、十一年度予算はハマの大魔神、横浜ベイスターズの佐々木投手のことだと思いますが、ハマの大魔神を一回から登板させたようなものだ、こうおっしゃいました。  私はそれを聞きまして、ある面では胸がじんとするような、ある面では宮澤大蔵大臣の本当のお気持ちだな、こういうような感じも実はいたしたのでございますけれども、しかし、どうしてもプラス成長に転ずる、あるいは〇・五%の成長を達成するということになりますと、今総理がおっしゃったようなことも非常に大切でありますが、私は、ハマの大魔神が出るのなら、今度は逆に、場合によっては、去年新人王をとった中日ドラゴンズの川上憲伸投手をピンチヒッターでなくしてリリーフに出さすぐらいの心構え、適宜適切に各種指標を見ながらやっていって、何としても死力を尽くして景気を回復する、経済を再建するという考え方が必要ではないか、こう考えておるわけでございますが、大蔵大臣、大魔神だけでなく、ほかのいろいろなピッチャーもリリーフに出せるというような考え方について何かお考えがございますか。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十一年度の予算は、御承知のとおり、国債依存率三七・九という非常な高さでございますが、実は十年度の、まだ終わっておりませんが、最終、補正を重ねました末に三八・六であったわけでございますから、九回に三八・六であったものが今度は初回からもう三七・九という、初めからピンチが来ているという気持ちで申し上げたのでございます。  今お話しのように、しかし、それは財政としてはベストを尽くしましたが、何といっても我が国は大きな市場経済の国でございますので、殊にこれから一月—三月の間、労使の間でいろいろな意味での雇用あるいは賃金のやりとりが行われますが、どうぞここで雇用というものをできるだけ大事にお願いをいたしたいということと、それから、金融機関の早期健全化の措置がここで行われますので、この二つのことがどうぞ破綻なく行われて、とにかくこの一—三月を乗り切ることができるならばという思いが強うございます。
  108. 加藤六月

    加藤(六)委員 総理大臣、大蔵大臣のお考え方あるいは考えの中核というものを理解できたところでございます。  そこで、これは自治大臣にちょっとお伺いいたしたいと思いますが、我が自由党は、いつもあらゆるときにも申し上げておるのでありますが、先ほど大蔵大臣が金融システムというような問題等もお触れになりましたが、我が党は、フリー、フェア、オープンの原則に立って経済運営、政治運営をやっていかないとならない、それをやっていくと、必ず国民に理解していただき、また奮発していき、将来に対する見通しもしっくり持っていただくんじゃないだろうか、こう主張をしておるわけでございますが、自治大臣、改めて、今の総理、大蔵両氏のお答えに対するあなたの感想というか、考え方があったら承っておきたいと思います。
  109. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 総理、大蔵大臣からお話があったことが基本であると思いますが、せっかくのお尋ねでありますので、あえて申し上げさせていただきたいと思います。  それは、これは当然のことでありますが、自由党の考え方というのは、あくまで我が国経済の本当の担い手は民間そのものであって、そういう意味で、現在の日本経済をどうやって立て直すかということにおいて、本質的に、あるいは財政なり、あるいは税制なり、いわば上からの手法だけあるいは需給対策だけででき上がるものではない。したがって、これから、この国の経済のみならず、いろいろなあらゆる分野を根本から改革をしていかないと、本当の意味での日本経済の立ち直りもできないのではないか。  そういう意味で、経済の構造改革、これは当然のことながら行政改革そのものにもつながっていくであろうし、あるいは社会構造改革にもつながっていくであろうし、あるいは社会保障の改革にもつながっていくであろう。結局、制度面の改革だけではなくて、基本的にはそれを担っている我々個々人の意識そのものの変革をも迫っていかなければならないわけで、そういう意味で、キーワードで言えば、自立と自律といいますか、みずから立つという、自己責任にもつながるわけでありますが、安易な依存心、安易にすがるのではなくて、やはりみずからきちっと責任を果たしていく、みずから立っていくんだと。  同時に、自己規律という意味での自律。これが一つのキーワードでありますし、我々の目指す一つの社会のあり方というのは、御指摘ございましたように、フリー、フェア、オープン、言うなら、日本語で言えば正々堂々、公明正大な社会をつくり上げていくんだ。  そういう中で、本当の意味での、いわゆる弱肉強食的な市場原理なのではなくて、一つのフェアなルールに基づいた市場原理というものがもっと徹底されていかなければならないし、そういう中で私たちは、本当の意味での二十一世紀の日本というものを、活力のある社会、そして選択肢の幅広い社会にしていかなければならないし、今日の経済状況を立て直すという上でも、そういう本質的な構造改革という部分で我々は一生懸命していかなきゃならぬ。  ただ、今の社会は、個々人がそういう意識を随分多くの方々がお持ちになってきたように思いますけれども、言うなら仕組みの方がその足を引っ張っている側面があるのではないか。そういう意味で、その制約をできるだけ少なくしていくという意味での規制の緩和あるいは撤廃ということが非常に大事なことにもなるだろう。そういう意味で、御指摘のとおり、そういうもろもろの構造改革を一緒にやっていくということが本質的に大事だ。  その上で、そうはいってもそれだけですべてうまくいくわけじゃなし、あるいは金融機関の不良債権処理の問題であれ、余りにも大きい需給ギャップということを考えるならば、公的セクターにおけるある意味での需要喚起対策ということも当面はあわせて必要なことであるということが両々相まって反映されて、今度の税制改正なりあるいは予算歳出に関する形になってあらわれてきたというふうにも思います。  その中で、特に税制に関して言えば、目先の需要対策、消費対策ということだけで今回の大幅減税ができたというのではなくて、むしろそういう意味での、本来あるべき租税負担のあり方というものが今まで余りにも安易に、言うなら金持ち優遇だということに対する批判に目を向け過ぎてしまって、その結果、経済構造そのものについていびつな影響を与えていた面もないではないか、そういう反省の上もあっての大幅な所得減税であり、法人税減税である。  そういう意味で、私どもは、国際的にも比肩し得る、そういう経済の姿に、システム改革に今回は一歩、二歩進んできているというふうに考えておるということでございます。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  110. 加藤六月

    加藤(六)委員 フリー、フェア、オープンに、あえて今自治大臣がおっしゃった、最後はグローバルといいますか、世界の常識と日本の常識が一致しなくてはならないということは、我々のかねて主張したところであります。  次に、ちょっとこれはどう申し上げますか、注意というよりか、あるいはPRというか、先ほどちょっと申し上げましたが、最近の景気動向指数等から考えてみると、企業がみずからの生き残りをかけたリストラというか、激しい体質改善をしております。あらゆる企業がそうでありますし、また、冒頭申し上げましたように、多くの中小零細企業あるいは大企業を含めて倒産が相次いでおるわけでございますが、それらのもろもろを見ますと、本年三月末の我が国の企業の決算というものはある面では最悪のものが出てくるんではないか、こう考えられます。  先ほど来、後からもちょっと時間があれば申し上げたいとは思っておりましたが、民間の消費というものと設備投資というもの、それから、今総需要を活発にするためにいろいろな予算措置を講じておるわけでございますが、そういう中で総理は、経済再生に内閣の命運をかける、こう申され、昨年末第三次補正や、今この場で審議しております十一年度予算案など思い切った施策が出されており、最善の努力をされておると私は思うんでございます。しかし、悲しいかな、今申し上げたようなことで三月末の我が国の企業の決算は恐らく最悪のものが出てくるだろう。  そこで、十年度末の企業決算内容は非常に厳しいものが予想される、しかし、これが最後の最低のものであって、これを越えれば必ず回復に向かうんです、どうぞ右往左往しないで、悲観論に引きずられないようにしてくださいということを、あらかじめ今から国民各界各層の皆さんに理解を得るようにしておく必要があるんではないかと私は考えるんでございますが、何か総理、御見解があったら承りたい、こう思うわけです。
  111. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 三月期決算における日本企業の状態につきましては、これは経企庁長官からお聞きいただいた方がよろしいかと思いますが、今、長い間この問題についても大変よく見ておられる加藤委員、そうした実勢について予測をされておられるわけでございます。抽象的に言うと、夜明け前は暗いという感じで、いよいよ来年度に近いところからは薄日が差し、朝の光が入ってくるということを望ましく実は考えて、最善の努力を傾注しておるところでございます。  実は正月、恒例の経済四団体の会合に出席をさせていただきました。例年、非常に厳しい厳しいという意見が横溢しておったようですが、今般は、それぞれ日本を代表する企業から、あるいは中小企業の団体も含めまして、それぞれの出席者の声を聞いていますと、自分の企業その他は非常に厳しい、しかし中には、ポスト不況を考えよう、こういう気持ちで新たなる戦略に取り組んでおるというようなことを言われる経済人も多々おりまして、これから明るい展望を持って進んでいくという方が非常に多かったように実は拝見をいたしました。  現実には、企業ですからリストラをして非常に厳しい状況ですが、新しい設備投資なども考えていきたい、そのためにはまず、伸びんとすれば屈しよということで、非常に厳しい環境を生き抜いてきて、これからという感じが出てきているような感じが実はいたしております。  ぜひそうあってほしいと願いつつ、ごあいさつを申し上げてきたところでありますが、おっしゃられるように、ある意味ではこの三月期というのは、日本経済、各企業にとりましてはこれが最後のボトムという感じで進んでいけるのではないか、こういう感じがいたしております。  それぞれの指数については十分掌握いたしておりませんが、ぜひ加藤委員のおっしゃられるように、これが最後の厳しい底であるという感じで次に向かっていくように、政府としてもいろいろな形でバックアップしていかなきゃならぬ、こう思っております。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 加藤六月

    加藤(六)委員 ありがとうございました。  そこで、国民にはっきり見ていただくためにも、あるいは元気づけるというか光を与えるというか、将来に希望を持たせるものとして、いろいろ政府も勉強されておるようでございますが、こういった問題全体に関して、今月末に策定される産業再生計画、これは案外、各界各方面が注目し期待しておるんではないか、よしという決意をしていただけるチャンスになるんではないか、こう思っておるんでありますが、この内容は一体どんなものでしょうか。  あわせて、新事業の創出とか生産性向上のための具体的なものがどのように施策として施されておられるのか。  まあ、まだ決定されておるかどうかわかりませんが、お答えできる範囲内でお答えいただきたいと思います。
  113. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生今お触れになられました産業再生計画につきましては、今月中に策定すべく、現在、通産省において取りまとめ作業をしているところでございます。これは、昨年の九月、小渕総理から御指示をいただいて、作業を進めているものでございます。  したがいまして、具体的内容は完全には明らかにできない、現在検討中でございますが、基本的な考え方としては、新事業、雇用の創出及び生産性の向上に向けた投資に重点を置きつつ策定を進めているところでございます。  具体的には、新事業、雇用創出については、新規開業及びその成長支援、次は、既存企業を核とした産業活性化や企業内起業支援、第三番目は、将来の我が国産業をリードする新規・成長十五分野における規制緩和等の推進、人材移動の円滑化に向けた施策。また、生産性向上に向けた投資については、創造的技術開発・普及に向けた投資、情報化社会への投資、物流システムの高度化に向けた投資に関する施策を盛り込むよう、現在検討中でございます。  具体的には細かい資料もございますので、後ほど先生のお手元にお届けしたいと思います。
  114. 加藤六月

    加藤(六)委員 この産業再生計画、これを企業側が、供給サイドが真剣に取り組んでいただきますと、先ほど総理が新年の経済五団体の話をされましたが、私も新年いろいろな団体へ出ていっております中で一つ感じたのは、経済社会生産性委員会等の中でも、こういうものに対する期待が非常に強かったということを申させておいていただきたいと思います。  そこで、一つ二つ、若干これは懸念になるような問題もお聞きしておきたいと思います。  それは、平成十一年度の今回の予算に、新たにというか、最高の三十一兆円の国債が発行されるということになりまして、これを市場が吸収していかなくてはならないということははっきりしておるわけですが、この発表と予算編成前後から、長期金利が急上昇いたしました。今はやや落ちついてきたようでございますが。  この大量の国債を市中消化することによって、民間の資金循環というものの弊害が起こってきたり、そして、せっかく今回また思い切ってやった住宅減税並びにそれに伴う投資というような住宅着工、こういうものの阻害要因に、国債の大量発行、市中消化という問題がなるんではないだろうか。逆に今回一生懸命やった景気対策というものの効果を減殺することになるんではないだろうかと一部懸念が言われておるわけでありますが、大蔵大臣の御見解を承りたい、こう思います。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 タイムリーなお尋ねでございますので、お答えをさせていただきます。  昨年の暮れに予算編成ができましたときに、平成十一年度の国債発行高が非常に多いということ、並びに、御承知のように、かつて郵貯でいたしました定額貯金でございますが、これが十年たちまして、平成十二年からかなり大きなものが欠落するんではないか。数十兆と言われておりますが、二年間にわたりまして。そうでなくても恐らく資金運用部の運用資金は平成十二年度はマイナスになるのではないかという予測がかなりございますために、それに備えまして、資金運用部は、平成十一年度は、従来国債を市中で少し買っておりましたけれども、これは控えておいた方がいいという、そういう二つの問題がございまして、年末に長期資金が上昇をいたしました。一・九から二に近くなったわけでございます。  もとより一%台の金利というのも異常ではございましたけれども、かなり上昇いたしまして、これは少し過剰反応ではないかと思いましたけれども、注意して見ておりました。  一月の初めに十年債の最初の公募がございましたが、その段階では既に、この一年間の全体の六十兆ばかりの発行は、シンジケートとは比較的円満に合意ができておりまして、発行条件はその時々によることでございますけれども、その点はまず大丈夫だということで、発行のクーポンレートをどの辺に設定するかということで、二%に設定いたしました。しかるところ、それは市場には好感されまして、無論額面以上の値がつきまして、ただいま長期レートが一・八とかその辺になっておるかと思います。したがいまして、一遍やや過剰と思われる反応はおさまっております。  それで、間もなくまた新規発行いたしますが、クーポンレートをこれ以上上昇させるような傾向には私はないように思いますので、まだちょっと先でございますけれども、まず全体としては落ちついているなと。  それから、住宅金融公庫のレートは確かに二・二になりましたが、これはもう既に応募が始まっておりますので、三月十二日でございますか、そこまではこのレートが上がることはございません。  それから、あとは、もとより今の長期金利に関係をすることでございますけれども、今のところは長期金利水準そのものがこれからさらに上昇しそうな気配はございません。正直申しますと、民間の資金需要が出てまいりまして、その間にクラウディングアウトのようなことがあれば、かえってそれはそれでよろしいのかと思いますが、そのようなふうにも見られないものでございますから、これで落ちつくのではないかと考えております。
  116. 加藤六月

    加藤(六)委員 要は、総理の決意の、本年を経済再生の年とし、〇・五%成長を達成する、これは政府全体が、そういうところでいろいろの手を打ったんですが、そのうちの一部が逆に障害になるかならぬか、ここら辺も、私がたびたび申し上げておる、もろもろの指標によく目を配って、適宜適切に、迅速に手を打ってくださいとお願いしておる点でもあるわけでございます。  これは最初からたびたび申し上げておるんですが、我が国のGDPの構成を見ますと、民間消費が六〇%、民間設備投資が一六%、この二つがその大宗を占めておるわけでありまして、政府投資の占める割合は、平成九年度の基準ですが、八%にしかすぎません。したがって、当面は公的需要というものが景気の下支えをしておるとしても、厳しい経済状況から真に脱却して、我が国経済が安定的な成長軌道に乗るためには、民需の回復というものが必至であります。たびたび申しておるように、現在の冷え込んだ消費マインドを回復させるためには、現下のデフレ状況から脱却することが重要であります。  しかし、考えてみますと、今まで申したのは、私の質問も、構造的問題と循環的問題と両面をある面ではごちゃまぜにしたような質問もいたしましたが、ここでもう一つの冷え込みというのは、国民の将来への不安あるいは不透明感があるんではないか、こう考えております。その中の最たるものが、急激なスピードで迫ってくる少子高齢化社会でありまして、それに対する政治の姿勢、対策、ここら辺に対して不安感あるいは不透明感を国民が持っておるんではないか、こう思うんです。  きょうは質問ですから余り理屈は申し上げませんが、少子高齢化社会とは、たびたびここでも議論されてきたのですが、働く人が減ってくるということ、社会を支える人が減ってくるということ、したがって、老人が多くなるのでありますから、預貯金が減るということ、そしてまた個人資産がふえなくなってくるということ、こういった問題が少子高齢化社会の一つの特徴ではないかと思うのです。したがって、従来の発想のままでは、二十一世紀の日本の活力を維持し、ダイナミックな社会をつくるということはできないのではないだろうか。  総理所信表明演説で、総理は未来へのかけ橋ということを言われましたが、改めてここでお伺いしておきたいのは、我が国の社会経済のあるべき姿について、総理の中期的な、当面じゃなくて中期的な展望というものをこの際国民にはっきりお示しいただいておくのがいいのではないかと思います。
  117. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御指摘のように、将来に対する不安といいますか、このことがますますもって景気の低迷とともに国民の意識を沈ませておるということは御指摘のとおりでありまして、そのことの原因となっております中に、急速に少子高齢化社会が招来しておるということ。ただ、これにつきましては、堺屋長官などは、例えば経済につきましても、高齢者がふえてくるということは多くの大消費者層を生む、こういう見方もできますが、いずれにしても、国民から見ると、将来を支える子供たちが少なくなるということで、それが将来に対する大きな不安感になっておるということだろうと思います。  それを解消する方法として、しばしば言われるように、やはりきちんとした社会保障制度を確立し、その将来性を明らかにし、そのことによって将来も安心して暮らせるという姿を明らかにし、理解を求めていくということに尽きるんじゃないかと思います。  そういう意味で、高齢化の進展に伴いまして給付の増大が見込まれる中で、我が国に定着したこの皆保険、世界にまれに見るようなこうした制度、また皆年金制度を維持していくと同時に、この社会保障制度を、高齢者介護や子育て支援といった国民の新しいニーズに的確に対応しながら、経済と調和のとれ、将来世代の負担を過重なものにならないようにしていくことが必要でございます。  ある意味では、具体的な一つ一つの政策を今申し上げておるわけでございませんが、政府を挙げて、こうした問題について将来像を明らかにしながら国民の理解を求めていく努力を本内閣といたしましても取り組ませていただき、このことによって、今御指摘のような将来不安というものを一つ一つ解消していく努力を誠実にいたしていきたい、こう考えております。
  118. 加藤六月

    加藤(六)委員 今回の予算、いろいろ評価するところはあるのでございますが、私は、今総理が申されたような立場から申し上げますと、自自合意に基づきまして、新たに消費税の使途を基礎年金、高齢者医療、介護に限る規定をされたということ、これは総理所信表明で言われましたが、これは、国民の皆さんの消費税に対する理解が一層深まったという点もありますが、社会保障の基盤を確かにするという点についても非常に意義があったのではないか。冒頭私が申し上げました、総理が会長として消費税法の一部を改正する法律案を衆参両院二日で通した、あれ以来のことではないか、こう考えておるのでございます。  ただ、一つ、これは注意を喚起するというか、これはもう申し上げておきますと、今私が申し上げました三つの、基礎年金、高齢者医療、介護ですが、消費税の本年度国分の税収は七兆三千億円ですね。全体は消費税五%で十兆三千七百六十億円でありますが、地方に一%、二兆七百億円。それから国の残った四%分の二九・五%が地方交付税に入れられますから、これが九千億円。そこで、国に残る消費税は七兆三千億円になる。  本来の論争は、国民消費が一%上がった場合、何が何%というふうに申し上げたいんですが、それを言わずに、しからば基礎年金にかかる国費を調べてみると四兆三千億円、高齢者医療三兆九千億円、介護六千億円、合わせて、これだけで八兆八千億円になっておる。消費税全部は七兆三千億円である。ここら辺を今後国民、皆さんがどう考え、どう判断されるか。  これは、私はさらに言いますと、政管健保や国民健康保険の若人分というのと年寄り分というのをどういうようにするか、いろいろな議論がありますが、それは時間がありませんから次回に譲るとして、こういう問題があったということを指摘しておきたいと思います。  ほかにも、今日、国民の当面の不安というものは、一つは雇用であり、一つは年金であり、そして一つは教育である。ここら辺の問題、これも解消していかないと全体的、総合的に、ことしが経済再生元年となって二十一世紀に向かってたくましい進展をしていくかいかないかの問題は、大きくこういう問題を解決しないとなっていかない、こう思うわけでありますが、これは私の感想として申し上げておきます。  そして、もうあと時間は数分しかございませんから、最後に、総理、一つお願いしておきたいと思うんです。  これは、私がきょう質問通告に、解散について、こう書いておいたのでありますが、それは、昭和二十一年から昭和三十年、一九四六年から一九五五年、いわゆる五五体制というふうな体制ができるまでの間に六回総選挙をやっておるわけです。昭和二十一年四月十日、昭和二十二年四月二十五日、昭和二十四年一月二十三日、昭和二十七年、二十八年、昭和三十年一月、九年の間に六回総選挙をやっておる。  敗戦でがちゃがちゃになった日本が、ある面で言いますと大変なときにたびたび解散をやって、民意を吸収して、民意を反映して、その間に政党の合従連衡、栄枯盛衰、大変なものがある。そういう中で、私は、民意を吸収し、政治の空白とかなんとかじゃない、それを恐れずに解散を我々の先輩がやってきて、世界の一五%のGDPを誇る我が日本を築き上げてきたのは、時に応じて積極果敢に解散した、このことが一番大切なのではないだろうかと思うわけであります。  そういう意味におきまして、ことしは平成のこれからの日本を左右する大変重要な年である、こう考えておりますので、時と場合によっては、もう政治の空白を恐れずに、この予算こそ最大のものである、このガイドラインこそ最善のものであるという決意で、信を国民に問うぞというぐらいの決意で当たっていただけば、私は、二十一世紀の日本、これからの平成は非常に明るいものになるのではないかと思います。  念のために申し上げますと、その間、自民党の今の長老の中で、したがって党名が変わった、七回変わった、八回変わったという方は、この五五体制、昭和三十年、一九五五年までの間にある。私の恩師の星島二郎先生は、さらに何倍かあるというぐらいある。ところが、今回の自自連合ぐらいで皆さんびっくりしておるぐらいですが、これからはさらにさらにいろいろ展開があると、総理はまた、いざとなったらおれが決めてやるんだ、この決意でやっていただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  119. 中山正暉

    中山委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  次に、志位和夫君。
  120. 志位和夫

    志位委員 私は、日本共産党を代表して、小渕総理質問いたします。  まずお聞きしたいのは、日本列島を覆っている戦後最悪の不況から国民の暮らしをどう守り、日本経済をどう立て直していくかという問題についてであります。  今回の不況の著しい特徴が、国民経済の六割を占める家計消費が著しく冷え込んでいるところにあること、消費大不況にあることはだれも否定できない事実だと思います。  私、ここに持ってまいりました、経済企画庁が出した「平成十年経済の回顧と課題」という冊子がありますが、大変興味深く読みました。これを見ますと、次の点を指摘していました。まず一つ、九七年春以降の景気後退局面においては個人消費が景気後退の先導役を務めたこと、二つ目、現状において消費は引き続き低調であり、景気低迷が長引く要因の一つとなっていること、そして三つ目は、消費は外部からのショックがなければ自律的に景気回復をつくり出すことはできないということ。つまり、消費税増税をきっかけに起こった消費の冷え込みが景気全体の後退の先導役を務めた、現状でも消費は低調であって景気回復の足かせになっている、そして消費は自力では盛り返すことができない、これを盛り返すには外部からのショックが必要だという認識であります。  私、これはなかなか的確に今の現状を診断したものだと読みました。  ところが、小渕内閣が今やろうとしている対策は何か。消費を喚起する対策として四・三兆円の所得減税をやるという。しかしこれは、もう既にたびたび問題になってまいりましたが、最高税率引き下げと定率減税を組み合わせ、四兆円の特別減税を打ち切るかわりに行われるために国民多数が九八年に比べて九九年が増税になる、いわゆる標準世帯で年収七百九十四万円以下、納税者の大多数が増税になる、これは明瞭であります。  私、政府統計をもとに家族構成ごとに増減税の試算を行い、それを合計してみました。そうしますと、増税となる中低所得層は総額で約一兆円の増税、減税となる高額所得層は総額で約一・三兆円の減税であります。  まず総理の基本的な認識をお伺いしたいんですが、不況で今最も痛めつけられている低所得層、中所得層から一兆円を吸い上げて高額所得層に一・三兆円を移す、こういうことを今の景気のもとでやっていいものかどうか、こういうことをやったら今の経済に一体どういう影響を及ぼすのか、これについて総理がどういう認識をされているか、まず端的に伺いたいと思います。総理、どうぞ。
  121. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現在極めて厳しい経済的環境であることは承知をいたしております。  そこで、共産党の御意見を常々聞いておりますと、消費税を下げれば消費がすべて回復してかなり景気の回復に大きな影響を与える、こう言っております。  私は、もちろん消費税が景気に対して大きな影響を与えていないとは申し上げませんが、しかし、先ほど加藤委員が十年前のお話をされましたが、三%で初めて消費税を導入した時点、いっとき、本当にわずかの間は、それは全体的に消費が減退しましたが、直ちに戻ってまいりました。ですから、必ずしも消費税だけが大きな影響を与えるとは私は言いがたいと思っております。諸般の情勢、先ほどお話がありました将来への不安その他のことも含めまして、もろもろの状況があって消費の問題はあると考えておりますので、政府といたしましては、あらゆる政策を遂行することによってこの問題については取り組ませていただきたいと思っております。  さらに、減税の問題について、それの影響する階層その他についてお話がありました。しかし、本年度行いました二回にわたる特別減税、こういうような形で減税を行っていくことは、将来にかかって構造的な税制改正をきちんとやるということの重要性も一方ではあるわけでございまして、こうした特別減税を歴年にわたりまして続けていくことは、最終的には日本の税制をゆがめていくことになる、こういうことでございまして、その点につきましては、どのような影響がこれあり、それに対する政府としての考え方につきましては先刻来大蔵大臣から御答弁いたしておりますが、必要があればぜひ大蔵大臣からも御答弁いただきたいと思います。
  122. 志位和夫

    志位委員 総理、私が聞いたのは、あなた方がやろうとしている今度の所得減税、これをやったらどうなるか、中低所得層から一兆円もの増税をやる、こういうことをやったら一体どうなるのか、景気に対してどういう影響を与えるのかということを聞いたんですよ。あなたは何にも答えていない。いいですか。その問題についてきちんと答えないので、もう少し景気の実態に即して議論をしたいと私は思うんですね。  ちょっとこのグラフを見てください。いいですか。総理は、消費税の増税をやってもその効果はいっときで、回復してくると言いましたよ、さっき。そんなことはない。よく見ていただきたい。これは、勤労者世帯の可処分所得、すなわち給与から税や社会保険料を差し引いた手取りの給与と、消費支出がどのように推移したかのグラフであります。九六年度に比べて、九七年度、九八年度がどう推移したかを総務庁の家計調査からつくったものであります。  これを見ていただきたいんですが、赤い棒が可処分所得の動き、青い棒が消費支出の動きです。九七年度を見ていただけばわかりますように、可処分所得は大きく減りました。これは九兆円の負担増の影響です。九七年度は、それにさらに消費マインドの冷え込みが加わって、消費支出はさらに落ちています。  問題は、九八年度を見ていただきたい。九八年度も引き続き可処分所得はさらに落ち、消費支出も落ちているんですよ。九八年度というのは、四兆円の特別減税をやった年でしょう。四兆円をともかく国民に戻した年ですよ。戻した年なのに可処分所得が落ちているということはどういうことか。勤労者の実質の収入がどんどん減っているということですよ。総務庁の統計を見ても、十六カ月連続で勤労者の実質賃金は低下している、こういう経済情勢にあるわけですよ。  いいですか、こういうときに、この九八年と比べても、納税者の大多数に増税をかぶせちゃっていいものかどうか、こんなことをやったら経済が大変ではないか、景気に対してどういう影響を与えるのかということを私伺ったんですから、総理、きちんと答えてください。総理。いや、総理総理に聞いているんですから。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたびの所得税の問題につきましては、けさほど詳しく冬柴委員に御説明を申し上げましたので繰り返しません。  今、志位委員のお話を承っておりますと、非常に御説明がよく考えておられまして、何かことしも四兆円の減税があるはずだった、そんなふうに聞こえますですね。ことし四兆円の減税があるはずだったんではないんですね、四兆円の減税は昨年一年限りなんですから。そこのところは、あるはずのものをさらに一兆何千億円値切っちゃったというのは、それは全く間違いでございます。ほうっておけばことしは減税はなかったのですから。それを四兆三千億円減税しているということが事実じゃないですか。
  124. 志位和夫

    志位委員 私が聞いたのは、いいですか、勤労者世帯の大多数で、去年の、九八年の納税額に比べて九九年の納税額がふえることは間違いなかろう、それが景気にどういう影響を与えるかということを聞いているのですよ。  いいですか。一年限りのものであろうとなかろうと、減税をやったという事実に変わりはないのです。そして、家計からしたら、九八年の納税額と九九年の納税額を比べざるを得ないのですよ。そして、増税になったら財布のひもを締めざるを得ないのです。そうしたら景気に悪い影響が与えられるのじゃないですかと聞いているのですよ。  ちゃんと答えてください。総理、今度は総理です。大蔵大臣が何度答えてもしようがない。総理です。きちんと答えてください。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御議論は、今回の減税が減税であるかないかということを実は議論していただきたいので、政府は所得税で四兆三千億円の減税をしているわけですから、そのことに私は間違いはないでしょうということを申し上げている。  そこで、可処分所得のお話がありました。私は、それには幾つか理由があると思うので、そこは間違いだと申し上げていません。つまり、可処分所得が減っているのは、全体の所得が減っているか、あるいは限界消費性向が落ちておるか、あるいはその両方であるか、そのどっちかでございますから。いいですね。(志位委員「可処分所得と消費性向は関係ない」と呼ぶ)いやいや、そうでしょう。ですから、可処分所得は確かに減ってきたが、ことしも可処分所得が減るだろうと推測する理由は私は別にないと思いますね。消費性向は幾らでも変わりますから。
  126. 志位和夫

    志位委員 可処分所得と消費性向は別の話でしょう。消費性向というのは消費マインドの話でしょう。可処分所得というのは、実際にどれだけの手取りの給料があるかという問題ですよ。この問題については、統計を見ても十六カ月連続実質賃金マイナスという実態があるのですよ。だから、こういう実態が出ている、この問題についての経済にどういう影響を与えるかということの御認識、本当に吟味がないのか。  私は、もう一枚、こういう図を見ていただきたいのですね。これは、九七年と九八年度を比較した場合に、収入階層別の可処分所得と消費支出の関係であります。これは、赤い棒が可処分所得、青い棒が消費支出です。これは総務庁の家計調査からつくったものであります。これを見ていただけるとわかりますように、勤労者平均でも、青い棒、赤い棒ともに前年度割れをしておりますね。  ただ、これは所得階層によって明暗が出ているのですよ。左の方は中低所得層、いわゆる五つの所得階層の分位で見た場合に、第一分位、第二分位、第三分位の平均値です。今度の政府の税制改定では、大体八百万ぐらいまで増税になりますから、第三分位といいますと大体年収八百万ぐらいまでの層ですから、増税の対象になる層です。増税の対象になる層で可処分所得が平均以上に落ち込み、そして消費支出はうんと下がっているでしょう。一番右の方は第五分位、高額所得層の推移です。こちらは所得、消費とも伸ばしているのですよ。  いいですか。九八年というのは特別減税をやった年です。特別減税というのは定額方式だったわけだから、その是非は別にして、下に厚い減税だったわけですよ。しかし中低所得層は、それであるにもかかわらず、所得が減り、消費はうんと減った。高額所得層は自力で所得も消費も伸びているのです。こういうときにあなた方のような税制改定をやっちゃっていいものかということを聞いているのです。  今度の税制改定というのは、ただでさえ所得も消費も落ち込んでいる中低所得層に増税をかぶせ、自力で所得、消費を伸ばす力を持っている高額所得層に減税をやってやるというものでしょう。これは逆さまじゃないか。こんなことをやって景気に大丈夫なんですか、景気をもっと悪くするんじゃないですかということを私は聞いている。  今度は総理、お答えください。総理、お答えください。総理
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が申し上げておりますのは……(発言する者あり)
  128. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が申し上げておりますのは、そこが実はポイントじゃないということなんですね。まず、その可処分所得が減ったということも、私はそうだと思っているのです。それから、消費支出がしたがって影響を受けたということもそうだと思っているのです。  しかし、問題は、実は消費がどうなるかということなんで、それは消費性向によって決まるじゃありませんかということを申し上げているわけですね。可処分所得が低くなれば、消費性向が同じなら、それは消費は減ります。しかし、可処分所得が仮に低くなっても、消費性向に変化があれば消費は逆に上がるのであって、そのことはさっき志位委員経済企画庁の文章を引用されて、この低い消費は何か外的な刺激がないと上がらないと言っている意味は、所得が小さいからと言っているのではないのですね。消費するというマインドが出てこないということをあれは言っているのであって、したがって消費性向を問題にしなければならないのだということを申し上げているのです。
  130. 志位和夫

    志位委員 いいですか。消費というものが二つの要因で決まるというのは、私もそんなもの百も承知で聞いているのです。消費を規定するのはまず所得ですよ。つまり財布の中身がどれだけあるかです。もう一つは消費性向、消費マインド、財布のひもがどれだけ緩いかです。この二つの要素で決まるのですね。  この二つの問題で、私は、少なくとも所得も消費もこういう実態にあるではないか、そのときに、そういう所得も消費も落ち込んでいる層に増税をかぶせちゃっていいものですかということを聞いているのに、あなたはお答えにならないわけだ。さっきから何度も聞いているのに。  いいですか。それで、消費マインドということをおっしゃいました。じゃ、今度の減税やったらこれは消費マインドがどうして温まるんですか、あなた方の減税やったら。これは温まると考えているのですか。今度は総理に聞きましょう。
  131. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 その今お挙げになりました文章は私どもの書いたものでございますけれども、確かに所得が減っている。これは、税制の問題ももちろん、減税したのでございますが、不景気で下がっている。これに対する不安が一番大きいのですね。  だから、今我々にとって大事なことは、これから景気が回復するという信認を与えることでございまして、将来どんどん下がるという、まさに今九七年と九八年だけお示しになりましたけれども、他のケースも見ますと、消費税が上がったときでも消費性向が下がらなかったとか、上がったときもございます。去年まさに下がったのは、不景気でさらに将来悪くなるというこの不安感があったのです。  したがって、今恒久的な減税をやりまして将来の見通しがよくなるという心理を与えなければいけない。それが一年限りの特別減税では、その効果は、なかったとは言いませんが少なかった。ことしはこういう恒久減税をやりますから、そういう点ではかなり大きな効果が上がるだろうと考えております。
  132. 志位和夫

    志位委員 いいですか。今の説明ですけれども、恒久的な減税だから今度は安心して使ってくれるだろう、要するにそういうことでしょう。マインドは温まるだろうと。  しかし、こういう世論調査がありますよ。NHKがことし、今月の一月十九日に発表した世論調査ですが、総額九兆円の減税で買い物や旅行などに使うお金をふやそうと思いますか。これに対して、思うという方は一〇%。それから思わないは八三%ですよ。  それで、これはもちろん将来不安という問題がある。将来不安をつくり出したのはあなた方だ。雇用の問題だって社会保障だって、あなた方が将来不安をつくっている。それから雇用の不安、社会保障の不安と並んで景気の不安があると言いました。私は、庶民に増税をかぶせるやり方が景気を悪くして、そこでも不安をつくっているのじゃないかということをさっきから何度も聞いているのですよ。  これは、例えば、大蔵省が試算したものがあります。いいですか、大蔵省が試算したものでも、年収五百万の世帯、標準世帯で九万三千二百五十円の増税ですよ。それから、年収六百万では六万八千九百円の増税です。年収七百万では四万二百円の増税です。これだけ九八年に比べて九九年に税金がふえたら、これは消費マインドだって冷え込みますよ。だから、景気にどういう影響を与えるのか、このことを私これだけ聞いても、まともに吟味した様子がないですね、あなた方の内閣は。  九兆円の負担増のときにも私聞きました。九七年の四月、あのときも消費の伸び方というのは、ようやく弱々しいながらも消費が回復しているその途上でしたよ。そのときに九兆円もの負担増をばさっとかぶせちゃっていいのか、日本経済は大丈夫かということを随分、橋本前総理と論戦しました。大丈夫だ大丈夫だと言ってその増税をかぶせた結果が今日の状況じゃないですか。それと同じ失敗を繰り返そうとしている。  国民の大多数に、去年に比べてことし増税を押しつける。その吟味もなしに、今のこの経済情勢の中でそんなことをやっちゃって大丈夫なのか。私は第二の失政になるということを言っているわけですよ。総理、これは総理です。これ、経済に対する何の影響もないというのですか。こんなことをやって経済、足を引っ張る影響を及ぼさないというのがあなた方の考え方ですか。総理総理に聞いているのです、総理に。
  133. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 しばしば申し上げていますように、増税増税、こう言われますけれども、今年度につきましての四兆円の特別減税というものをベースにして物事をはかって増税という言葉は、大変誤解を生みやすいではないかと思いますよ。そして、その方々が一体所得税も含めてどの程度の所得があり、それに対しての減税額があるかということの論議をいたしませんと、今回の増税がすべからく景気に大きな影響を与えてと言われることは、これはむしろ悲観的な考え方をますます増長することになると思っておりまして、今回行いますことを総合的に、政府の今回の税制改革につきましても御理解をいただきたいと思っております。
  134. 志位和夫

    志位委員 私、あなた方の内閣は本当に今の経済の問題を考えていないと思う。私は、一般的にどういう税制がいいかという議論をしたんじゃないんです。経済の現局面の問題について、消費がどうなっているか、所得がどうなっているか、この問題をあなた方の政府が出したデータをもとにきちんと示しました。このもとでそういうことをやったら、あなたは増税じゃないと言ったけれども、家計から見たら、九八年と九九年、増税になるというのは、これはもう避けようのない事態なんですよ。こういうことをやっちゃって大丈夫なのかとこれだけ聞いても、これに答えない。私、こういうやり方を続けるということは、本当に経済のかじ取りをあなた方に任せるわけにいかないという思いを強くしました。  私、真剣に景気回復を考えるならば、減税方式の根本的な切りかえが必要だと思います。所得の落ち込み、消費の落ち込みで苦しんでいる中低所得層にこそ手厚い減税をやるべきであって、私たちは消費税を三%に戻す減税こそその最も効果的手段であると考えます。  政府も先ほどの経企庁の文章で、消費は外部からのショックがなければ盛り返すことはできない、こう認めています。この外部からのショックというのは、所得をふやすことと消費マインドを温めることですよ。この二つですよ。  消費税の減税というのは、総理、これは景気論としてお尋ねしますけれども、所得をふやす。つまり、二%減税をやることによって、全世帯に実質二%の賃上げと同じ効果ですから、実質所得をふやすという効果がある。それから、毎日の売り買いで一番の重圧になっているのはやはり消費税ですから、これは消費マインドを温めるという効果もある。所得をふやし、マインドを温めるという、これは二重の外部からの一番のインパクトになる、こうお思いになりませんか。総理、どうでしょう。総理です、総理に聞いているのです、それ。総理に聞いているのです。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私、間違いなことを言っていらっしゃるとは思いませんけれども、つまり消費税が減れば、例えばそれは百五円のものが百三円になるわけですね。問題は、その節約された二円がさらに消費に移るかどうかという、それが消費マインドの問題じゃありませんか。ですから、消費税を減らせばそれだけ負担は楽になる。しかし、その楽になった二円がもう一遍消費になるかどうかというところが消費マインドじゃないのかと思いますよ。
  136. 志位和夫

    志位委員 消費税という減税が、消費して初めて減税は生まれる、そういう意味では、減税効果が一〇〇%上がる減税であるということは、もうこれは明瞭です。  それから、消費マインドということをおっしゃいましたけれども、大手のスーパーや、まあ百貨店なども一部やりましたけれども、還元セールに見られるように、やはりそういう需要を生むんですよ。これは消費マインドの効果なんです。  今度は総理にもう一つ、総理、お答えにならないので、もう一つ別の角度からお聞きしたい。  私、政治の信頼という問題がこの税制の問題で問われていると思います。総理は、新春の記者会見で、国民の政治に対する信頼を確立することが何よりも経済再生などの前提でありますとおっしゃられた。どうすれば政治への信頼が回復するのか。私は、もっと国民世論に素直に耳を傾ける、そうしてこそ政治の信頼が回復するんじゃないか。  この問題は、国民の世論は明瞭ですよ。一月一日に朝日新聞が世論調査を出しました。そこで、最高税率の引き下げに賛成ですか、反対が六一%ですよ。それから、望ましい減税の方法は何ですか、消費税率の引き下げが六八%ですよ。あなた方はこの問題、ずうっとこの間拒否し続けているけれども、国民の声はもう明瞭なんです。  私、総理に伺いたいけれども、総理の姿勢というのは、これだけ明瞭なのに、国民が反対している最高税率の引き下げはやる、国民が切望している消費税の減税は拒否する、そういうことで、あなたが年頭の会見でおっしゃった、政治に対する信頼がどうして回復できるのか。どうですか、まさに政治に不信を広げているのがあなた方の姿勢じゃないか。どうですか。なぜこの国民の声にこたえないのか、言ってください。
  137. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 しばしば本会議でも、税は低いことが国民の望まれることであるということは十分承知をしておるということは申し上げております。  ただ、これを消費税で考えるか、あるいはまたその他の税で考えるかということは、総合的に政府としては判断して決断いたしておるわけでございまして、今回、この消費税問題につきましては、御案内のように、これを福祉の関係として、今後とも本予算についてもひとつ限定的に考えるということを考えると、この予算によりまして、介護も含め、あらゆる社会保障のことに問題を起こさない、給付を下げない、こういう形で考えておるために大きな税源になっておることにつきましても国民の理解を強く求めてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  138. 志位和夫

    志位委員 私は、きょう、まずこの税制の論議で、今の経済にとってあなた方のやろうとしている税制改定がどういう効果を持つのかを大分聞いたのに対して、答えなかった。  あなた方は、消費税の増税という第一の失政をやりました。そして、今度、所得税の減税についても国民の大多数に増税をかぶせるという第二の失政をやろうとしている。消費税の減税の拒否というのは第三の失政になりますよ。  私、これはあなた方がどんなに拒否しようと、国民のこれを願う声というのは広がらざるを得ないので、この問題、引き続き強く求めていくということを申し上げて、次の問題に移ります。  次に伺いたいのは、財政破綻と自治体問題についてであります。  日本経済の重大問題は、深刻な不況と同時進行でかつてない財政破綻が進んでいるというところにあると思います。今年度末の国と地方自治体を合わせた借金総額は、長期債務残高でありますが、五百六十兆円、来年度は六百兆になると言われていますが、年間の国内総生産約五百兆円を大きく上回りました。この財政破綻が国民に何をもたらすのか。私は、地方自治体がその矛盾の最も有害な集中点に今なっていると思います。  今、全国の地方自治体は戦後最悪の財政危機に直面しております。全国の自治体の借金は、一九九〇年度には六十七兆円だったのが九八年度末には百六十六兆円に、約百兆円膨れ上がりました。国民生活にとって重大なことは、この財政危機を口実にして、地方自治体の最も重要な役割である住民の福祉、医療、教育のための施策を根こそぎ切り捨てていく動きが全国各地で起こっているということであります。  まず総理の基本的認識を伺いますので、よく聞いていただきたい。いいですか。九〇年代に入っての自治体のこの財政危機の原因が一体どこにあると考えているかということについてであります。もちろん、この間バブル経済の破綻によって税収の停滞があったことは事実です。問題は、そういう状況であるにもかかわらず、莫大な借金に頼って公共投資の無謀な膨張政策が行われてきたということにあるのではないか。  政府の統計をもとに試算してみますと、一九八〇年代後半の五年間での全国の自治体での公共投資は、年平均十九・二兆円です。それが九〇年代に入って急膨張し、年平均三十・三兆円。年平均で何と十一兆円ですよ、十一兆円の膨張が起こりました。  このグラフを見ていただきたいのですが、これは、一九九〇年代に入っての地方自治体の公共事業費の膨張額の累積と借金の残高の推移であります。これは政府の資料からつくりました。自治省の行政投資実績等々からつくりました。青い棒の方が公共事業費の膨張額の累積です。八〇年代後半の水準に比べて累積ベースでどれだけ公共事業が膨らんだかという数字でありますが、見ていただければわかりますように、九八年度、累積で百兆円膨らんでいるのです。赤い棒の方は借金の残高でありますが、これは、九〇年度が六十七兆円だったのに対して九八年度が百六十六兆円ですから、こちらも大体百兆円膨らんだ。公共事業を八〇年代後半に比べてこれだけ膨らませた、百兆円膨らませたそっくりその分が大体借金の増大につながっている。一目瞭然になってまいります。  私、これはまず事実の問題として総理認識を伺いたいので、きちんと答えていただきたいのですが、今の自治体の財政危機の問題について、この財政危機の一つの重要な原因が公共事業の膨張にあったという事実は、これはお認めになりますね、総理総理、どうですか。
  139. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 一つの要因であったことは事実であると思います。
  140. 志位和夫

    志位委員 一つの要因である。重要な要因であると私たちは思いますが、要因であるということはお認めになりました。  そこで、その責任がどこにあるかというのが次の問題であります。  自治体の責任はあると思いますよ。地方の責任はある。地方もこれを進めたわけですから、地方自治体の責任はもちろん大きい。しかし同時に、私は、政府が重大な責任を負っているということを指摘しなければなりません。  第一に、九〇年代に入っての自治体の公共事業の異常膨張の出発点になったのは、九〇年にアメリカの外圧に屈してつくられた四百三十兆円の公共投資基本計画であります。これは、九四年には六百三十兆円にさらに膨張されました。この基本計画では、地方自治体が公共事業拡大で重要な役割を果たすべきだという、いわば号令がかけられました。  第二に、九二年の宮澤内閣、あなたのときからです、宮澤内閣以来八回にわたって行われてきた、景気対策の名での公共投資積み増し政策に自治体を動員してきた。毎回毎回、自治体に公共投資の重荷を背負わせてきた。これで、八回の景気対策で、累計六十四兆円に上る公共投資積み増しが行われ、地方財政に巨額の負担を背負わせた、これは事実だと思います。  それから第三に、自治体を動員する手法として、国が補助金を出さない地方単独事業を奨励し、押しつけてきたことであります。そのため、これも宮澤内閣の九二年からでありますが、それまでは公共事業をやる場合に、二、三割は一般財源からの支出が必要だった地方単独事業について、全額借金で賄うことを認める仕組みをつくりました。こうして、野方図な単独事業の拡大が進みました。  このグラフを見ていただければわかりますように、この青い棒のうち、濃い部分が単独事業の膨張分ですよ。全体で百兆円公共事業が累積で膨張したと言いましたけれども、そのうち約八十兆円は単独事業の膨張分です。これらの事実を見ますと、まさに政府主導で自治体を異常な公共投資積み増し政策に駆り立てて、その結果として今日の深刻な財政危機を招いたのではないか。  この点は、総理に伺いましょう。総理は、歴代自民党政府がやってきたこと、この重大な責任をどう認識されておりますか。反省はないのですか。はい、総理
  141. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 政府の責任、こう言われますが、まず、地方団体が多額の赤字財政を抱えて厳しい状況にあることは承知をしております。ただ、それがゆえに、すべて今日までに行われました政策そのものが誤りであったがごときお考えには、私どもは賛同できない。  確かに、借金は残高があるかもしれませんが、そのことによって全国の自治体そのものが平均化して地方の発展につながっておるし、そのことは、その地域経済状況を活性化し、かつまた雇用も拡大しておるわけでございまして、そうしたものがきちんと背景にあるわけでありますので、そうしたこととの中でこの残高と事業のあり方、あるいはまたその地域経済状況というものを総合的に判断して是非を論ずる必要があるのではないかというふうに考えておりまして、そういう意味で、景気対策や社会資本の整備、国がすべて押しつけておるようなことを言われますけれども、地方としても全力でその地域の責任者がこれを発展させようという努力、そういうものが強く政府をしてこれを推し進めさせていただいたということでありまして、決して、国がこれをすべて押しつけた結果こうなったというお考えは、私はあり得ない、こう考えています。
  142. 志位和夫

    志位委員 国に全然責任がないかのような答弁をされたので、私は驚きました。本当に、はっきり言って驚きました。  経済の活性化と言われたけれども、そういうまさに公共事業の積み増しをどんどんやってきたために財政破綻が起こって、それを理由に今福祉の切り捨てがどんどんやられているのですよ。それが地方から景気を冷え込ます要因に今なっているのですよ。あなたは御存じないのか。国が押しつけたんじゃないと言いますけれども、押しつけた証拠なんて山ほどありますよ。  これは宮澤内閣時代の自治省の通達ですけれども、地方単独事業を景気対策としてやることになったから、ぜひあなたのところも積極的にやってくれ、そして、別途調査を行う、やったかどうかの調査も行う、そこまで言っていますよ。まさに押しつけてきたんじゃないか。  自治体は何と言っているか。大阪府が、財政健全化方策というのを今つくっています。これは福祉切り捨ての計画として大問題になっておりますけれども、この大阪府が、なぜ建設事業がふえたかについて、このような分析をしております。建設事業、公共事業が増加している要因としては、「国において「公共投資基本計画」に沿った社会資本整備の推進や平成四年度以降の数次にわたる景気対策により公共事業関係予算が増額されてきたことなどによるものである。」  やはり国の政策の結果そうなったというのは、これは自治体の方からも上がっているわけですよ。だからといって、自治体の責任がないとは言いませんよ。しかし、国の責任があるのは明瞭なんです。  もう一つ資料を出しましょうか。  これは自治省が出している資料でありますけれども、自治体はもう単独の公共事業を消化する能力はないのですよ。これは、地方単独事業費の見込み額と決算、見込みがどれだけで実際使われたのはどれだけかという数表ですけれども、一九九三年度、四千五百六十七億円の未消化があります、全体の二・四%です。九四年度、一兆二千四百三十一億円の未消化があります、全体の六・七%です。九五年度、一兆九千五百四十二億円の未消化があります、全体の一〇・〇%。九六年度、二兆九千二百二十一億円の未消化があります、全体の一四・六%です。  毎年あなた方は地方財政計画の中で単独事業の計画を決めるけれども、使い切れないわけですよ。その力はもうないのです。使い切れないとわかっていて毎年毎年自治体に単独事業をやれというやり方は、果たしてこれはいいのかどうか。これをずっとやってきたわけでしょう。  あなたは国の責任がないようなことをおっしゃいますけれども、挙げて地方の責任であって、国の責任は一切ないということですか。地方の財政がこんなひどい状況になっているのに、国の責任は一切ない、自分たちはかかわりないというのがあなたの態度ですか。きちんとお答えください。総理総理に聞いているのです、総理
  143. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 公共事業の一番大きなところを担当いたしております建設大臣の関谷でございます。  先生の今までの御指摘をお伺いいたしておりますと、何も国の責任がゼロであるとはどなたも言っておりません。いやいや、総理はそんなことおっしゃっていませんよ。  それから、地方は今でも、ダムであるとか道路であるとか住宅であるとか、そういう社会資本整備に大きな要望を持ってきておるわけでございまして、今回、国幹審を行いまして、高速道路の二車線を四車線にするとか、新しい高速道路の施行命令を出しましたときの地元方々の感謝の声は、もうごまんと来ておりますよ。それは、地元は、何も負担がないところがそれを受けるなんというところは一つもありません。負担のないところに我が建設省あるいはそういう関連のところが押しつけるなんということは、一切いたしておりません。
  144. 志位和夫

    志位委員 ダムだとかなんとか言いましたけれども、全国でむだなダム、むだな港、むだな空港、たくさんつくっているじゃないですか。  それで、あなたに、いやいや、ちょっと待って。総理に伺っているのです。  今、こちらの方から、責任がないとは言わないというふうにおっしゃいました。総理も同じ認識ですね。こういう財政危機をもたらした責任が国にもあるという認識は、これは総理も同じですね。総理、どうですか。
  145. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 いかにも地方のそうした問題は地方の責任でなくして中央の責任であるがごとく申されますから、お互い、これは地方も国もお互いこうした状況を越えていかなきゃならぬということにおきましては、その責任の側面というものは持っておるだろうと思います。  しかし同時に、地方は地方としてこれから発展をしていくためには、国と協力して、今建設大臣が申されましたように、地方の要望というものを完遂するためには中央としても全力で協力をして、両々相まって地域地域の発展に寄与しておるのでありまして、赤字財源の問題だけを取り上げていくということはあり得ない、こう考えています。
  146. 志位和夫

    志位委員 地方の要望でいろいろな事業をやっているということですけれども、地方が出している要望、単独事業も補助事業もいろいろあるでしょうけれども、公共事業の中身が、私は、もう一つ吟味しなきゃならない問題があると思う。  先ほども答弁がありましたけれども、住民型でない、ゼネコン型とでも呼ぶべき大規模開発が中心になっている。多くが、開発に乗り出してきたものの、採算がとれず、借金を一層膨れ上がらせる悪循環に陥っております。  例えば、東京都の臨海副都心では、雪だるま式に借金が膨らみ、既に都財政で巨額の穴埋めをしています。大阪のりんくうタウン、泉佐野コスモポリスでも、破産の後始末のために府財政を圧迫する財政支出が行われている。全国至るところに、つくってはみたけれども船は来ないで釣り堀になっている港がたくさんある。  その一方で、本当に必要な公共事業にお金が行かない。小中高の公立学校の施設整備費は、調べてみましたら驚きました。八〇年度は五千七百十三億円、これをピークに、九九年度予算で一千六百三十八億円、そのため、全国の学校で老朽化した危険校舎が放置されたままという状況があります。  総理は、この問題を指摘した我が党の不破委員長の本会議での質問に対して、市町村等の毎年の事業計画に支障が生じないよう所要の予算を計上するとともに、近年は、耐震性向上のための補強改築事業等にも力を注いでいると答弁をされました。  そこで、総理にさらに伺いたいのです。  私、全国を回りますが、実態は大変深刻です。例えば、神奈川県の県議会で、高校生の子供さんを持つお母さんからこういう訴えがされました。相模原の高校では、二階の踊り場の天井の壁がごそっと落ちて、今は立入禁止になっています。横浜の青葉区の高校でも、校舎の壁の化粧板が崩れ落ち、生徒の自転車がめちゃめちゃになりました。トイレの悪臭と汚れには言葉もないといいます。どうしても子供たちの荒れの状況と施設の荒廃は重なって思えてなりません。子供は県民の宝です。その宝に予算を注いでくださいという訴えであります。  私、全国状況を調べてみました。各年の地方財政白書を調べたところ、こういう一つの数字が出てまいりました。公立高等学校の危険校舎の面積が九〇年代に入ってどうなっているかという数字ですよ。これを見ますと、一九九〇年に二十五・五万平米だったものが、九七年には四十六・二万平米に、倍近く伸びているでしょう。  ですから、こういう問題を放置しておいていいのか。公共投資、むだなものには膨大なお金を使っているけれども、本当に必要なこういうところにお金が回らない。公共の危険校舎は放置されている。これでいいのでしょうか。  これは総理がお答えになったのですね。本会議で改築事業に力を注いでいるというふうにお答えになったので、私は、責任を持ってここで総理に答弁していただきたい。これは放置してはまずいですね。これはきちんと直すと、総理に答弁願いたい。総理、どうぞ。総理総理です。
  147. 中山正暉

    中山委員長 所管大臣ですから、建設大臣関谷勝嗣君
  148. 志位和夫

    志位委員 総理に聞いている。建設省、関係ないでしょう。時間がもったいないです。総理に聞いている。
  149. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先ほどのダムの件について一言述べさせていただきますが、先生指摘のように、今、社会……(発言する者あり)まあ、聞いてください。先生が御要望されておるような流れに、今、社会資本整備の流れはそういうふうになりよるわけでございます。それで、国民の生活を豊かにする方向に社会資本も大きく動いております。(発言する者あり)
  150. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  151. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 公共学校につきましては、一つは、学生数、生徒数が急激に上昇したときには予算をふやしました。それ以後ずっと減ってきているのですね。そのことが一つあるのです。  それから、その後、確かに国立学校等々に対しまして、私は非常に心配したことがあります。そういうことで、国立学校に関する文教施設費は一時補正で非常にふえました。そういうことの努力はいたしております。  それからもう一つは、公立学校に関しましては、地震対策というふうなことで相当今努力をしているところです。
  152. 志位和夫

    志位委員 総理に答弁を求めます。  この公立高校の危険校舎、これは直ちに解消していただきたい。
  153. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 必要とあるところがありますれば、政府はその責任を負って対処いたします。  ただ、単純に、公共事業がむだであるということの反面として、今御指摘のような点を御指示されるということは、これは間違っておると思います。公共事業は公共事業なりに、しっかりとしたその地域社会に対する責任を負っておるわけでございますので、もし不必要とあるということがありましたら、そのことを御指摘の上で今のような御論議をしていただきたいと思います。
  154. 志位和夫

    志位委員 必要とあらば整備するということだったんですけれども、文部省の基準でこれは危険校舎と認定しているんですから整備が必要なんですよ。ところが、私、調べてみてもう一つ驚いたことがあるんです。  九九年度予算案では、高校の危険校舎の改築のための国の補助金を廃止しようとしているんです。これは御存じですか。これまでは、国から事業費の三分の一までの補助金が出ておりました。それを九八年度限りで廃止して、九九年度からは全日制の危険校舎の改築は県の単独事業にする、こういう計画になっているんですよ。危険校舎が解消に向かっているんならともかく、ふえているんですよ。ふえている最中に補助金をなくしてしまって、国がこれから手を引いていいものか。  総理は、必要だったら整備するとおっしゃいました。だったら、こんなとんでもない計画をやっているんだったら、役所をしかりつけてでもそういうことはやめて、きちんとした整備をする。国が手を引くのはやめて、国が責任を持つべきだ、こう思いますが、いかがですか。総理、どうですか。
  155. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 文部省といたしましては、国立大学もそうであります、先ほど申しましたように。それから、公立高校も随分心配はしております。今、非常に努力をして調査をし、さらなる努力をするつもりでおります。
  156. 志位和夫

    志位委員 調査をし、努力をするという答弁でしたので、これはぜひ補助金をカットするなんてむごいことはやめてくださいよ。いいですか。  あなたも大学の学長をやっていらしたころは、国立大学の校舎も大変荒れた状況があって、本当に心を痛めた一人だと思うので、ぜひ公立高校の補助金カットみたいなことはやめるべきだということを言っておきたい。  私がなぜこの問題を取り上げたかといいますと、全国で、国と地方自治体で五十兆ものお金を公共事業に使いながら、地方自治体で三十兆以上ものお金を公共事業に使いながら、大事なところにはお金は回っていないということは、よっぽどむだなところに回っているということの逆な証明だからですよ。  私、自治体の財政危機の原因というのは、この二十年来の開発型政治の自治体への押しつけにあると思います。これが要因であるということは政府もお認めになった。そして、特に九〇年代に入って政府がゼネコン型の大規模開発に自治体を動員してきたことにある。この責任があるということの責任の一端をお認めになった。  そうであるならば、解決方法は明瞭なはずであります。やはり大規模型の公共事業には思い切って縮減のメスを入れて、そして公共事業はこういう教育など本当に必要なものに思い切って重点化する。そして、つくられた財源を福祉や教育に回す。これが本当の地方財政の立て直しの大道であるということを申し上げておきたいと思います。  次に、私、ガイドラインの関連法案について質問いたします。  ガイドラインの法案は、周辺事態への対応として、アメリカが武力行使に踏み切った場合に日本がそれに軍事的に協力するという仕組みをつくろうとするものであります。私、二つの角度から総理に問題点を伺いたい。  第一は、アメリカの武力攻撃が先制攻撃として行われた場合、つまり、相手方の武力行使に対する自衛反撃でないケース、そういうケースでも日本は米軍の活動に協力するのかどうかという問題であります。  これは架空の設定の問題じゃありません。昨年十二月十七日から四日間にわたって、米英両軍によるイラクへの一方的な軍事攻撃が行われました。日本政府はこれに直ちに支持表明をしました。総理の名前でしました。これは、同じ事態がアジア太平洋地域で起こったら、日本が支持にとどまらず米軍に協力する、ガイドラインが発動されるという危険を浮き彫りにするものとなったと思います。  私、支持表明を行った小渕総理にまず端的にお伺いしたいと思いますが、あなたは、この米軍への支持声明を行った際に、その瞬間、国連安保理でどういう協議が行われていたか、知っていましたか。知っていたら、それを吟味した上でこれを支持されたのですか。どうですか、支持声明をされたその瞬間、国連安保理での協議の状況、知っていらしたかどうか。
  157. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ちょうどそのときは、私、ASEANプラス3でハノイに滞在しておりましたが、刻々その状況につきましては報告を得ておったところでございます。
  158. 志位和夫

    志位委員 だから、武力行使の直前に国連安保理でどういう協議が行われていましたか。ちょっと今ここで言ってください。
  159. 中山正暉

    中山委員長 高村外務大臣。
  160. 志位和夫

    志位委員 総理認識を聞いているのです。総理がどういう認識を持っていらっしゃるか、総理認識を聞いているのです。どういう認識で支持表明をしたかを聞いているのです。
  161. 高村正彦

    ○高村国務大臣 イラクの問題について、UNSCOMの査察をイラクが拒否していることについてどう対応するか、そういったことについて協議が行われていたわけであります。
  162. 志位和夫

    志位委員 まさにその瞬間は、イラクに対して国連安保理としてどういう対応をするかの協議がされていたわけです。  武力行使の直前にどういう協議が国連安保理で行われていたかについて、私、突っ込んで調べてみました。アナン国連事務総長が十二月十五日付で国連安保理議長あてに書簡を送っております。この書簡、インターネットでとりましたが、これであります。  これは、IAEA、国際原子力機関が行っていた核兵器の査察についての報告書、それからUNSCOM、国連大量破壊兵器廃棄特別委員会が行っていた生物化学兵器の査察についての報告書を添付して、国連安保理に提出されております。  その書簡の中でアナン事務総長は、IAEAの報告書ではイラクは必要な協力を提供したと書いています。つまり、核兵器の疑惑は基本的に晴れたという認定ですね。もう一つ、UNSCOMの報告書ではイラクの全面的協力は得られなかったと結論づけているとしているということが書かれています。こちらはまだ不十分だと。そして、この二つの報告書を受けて、次のような問題提起を安保理に対して行っています。  報告に含まれている所見と結論に照らし、総合すれば、理事会は以下の三つの可能な選択肢の検討をされるでしょう。一つ、一九九八年十一月十七日以降の経験は、現時点で経済制裁の包括的見直しの方向に進むための十分な基礎を提供していない。二つ、イラクは全面的協力を提供してはいないが、全面協力することを示すためのもうしばらくの時間を与えられるべきである。三つ、理事会は、一九九一年以来の全期間に軍縮分野で何が達成されたのか厳密に知ることは十分に重要であるという前提に立って、経済制裁の包括的見直しを進めたいとするであろう。この三つの選択肢を出しているのです。  アナン事務総長が提起した三つの可能な選択肢というのは、経済制裁を続けるか、それとも、その包括的な見直し、経済制裁の解除につながる措置をとるのか、それとももうしばらく時間をかけてイラクの協力を見守るか、この三つなんですよ。軍事制裁をやるかどうかなど全く選択肢の外であります。平和的な解決に向けた問題提起がアナン事務総長からなされ、各国がまさに協議を始めていたその瞬間に一方的な軍事攻撃が開始された、これが事の真相です。  総理に伺いますが、あなたは、アナン事務総長のこの書簡、そしてその書簡を受けて安保理で協議が始められていたその最中に一方的な軍事力行使がやられた、これは国連無視だと考えませんか。これは何の問題もなかったというふうな認識ですか。これは、支持声明をやられたのは総理ですから、総理に伺いたい。総理、どうぞ。
  163. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今、アナン事務総長のレターにつきまして御紹介がございました。恐らく、国連の安保理も含めまして、公式あるいは非公式に種々の話し合いも進められておったのかもしれません。その経過につきましては、ニューヨークの我が方の大使を初め、報告を外務大臣が受けておって、恐らく諸判断の要素にしたとは思います。  ただ、私が最終的に結論をいたしましたのは、たび重なるイラクのこの安保理決議に対する違反に対しまして、米国としてはこれに対して対処いたした、こういうふうに認識をいたした次第でございます。
  164. 志位和夫

    志位委員 たび重なるイラクの安保理決議に対する重大な違反が行われたから武力行使は当然なんだというのが日本政府の見解でしょう。もちろん、イラクがUNSCOMの査察に全面協力しなかったという事実があるわけですから、これは安保理できちんとこれに対する対処の方針を決めるのは当然ですし、イラクの態度はその点は批判されなければなりません。しかし、だからといって一方的に軍事制裁をやる権利がアメリカにあるのかという問題なんですよ、問題は。いいですか。  あなたは、国連決議に対する重大な違反があった、だから当然なんだということをおっしゃったけれども、十一月十七日以降、国連の査察が再開されているわけですね。それ以降、イラクの行為が停戦決議六八七の停戦条件を崩すほどの重大な違反だということをいつ安保理は認定したのですか。安保理は認定していますか。たびたびの重大な違反と言いますけれども、十一月十七日以降のイラクの行為が安保理決議の停戦条件を崩すほどの重大な違反だということをいつ安保理が認定したのですか。総理、あなた今言ったでしょう、そういうふうに。いつ認定したのですか、安保理で。安保理の認定を聞いているのです。総理総理に聞いているんです。
  165. 高村正彦

    ○高村国務大臣 国連決議六七八によって、加盟国がイラクに対してしかるべき措置をとるということは認められていたわけであります。そういう中で、いわゆる多国籍軍が形成され、しかるべき措置を行っていたわけでありますが、安保理決議六八七によって、それをイラクが受諾をして、そして停戦が成立した。そして、その六八七についてたび重なる違反が行われた。そして、さらにたび重なる警告も行われた。それにもかかわらず、守らなかった。そういう中で、六八七の停戦の状態の基礎がなくなった、そういうことによって六七八でまさに攻撃をした、こういうことでございます。
  166. 志位和夫

    志位委員 いつ認定したのですか。いつ認定したの。
  167. 高村正彦

    ○高村国務大臣 もともと、そういう六七八によって加盟国によって認められているわけでありますから、六八七の基礎がなくなったということを国連安保理で認定する必要は必ずしもあるとは思っておりません。
  168. 志位和夫

    志位委員 これは、本当に今重大な答弁をされました。六八七の停戦条件が崩されたという認定は安保理でなかったということですよ。安保理でそんなことを認定してないんです。  それで、そういうもとで一方的な軍事力行使をやるということは、本当に重大な国際法違反ですよ。  さっきの問題に続けたいと思うのですけれども……(発言する者あり)認定してない、認定していないでしょう。
  169. 高村正彦

    ○高村国務大臣 安保理の中で、六八七の決議に違反があったということは認定をしております。(志位委員「だから、いつやったんですか。いつの決議で」と呼ぶ)私は、それは……
  170. 中山正暉

    中山委員長 外務省から答えさせましょうか。(志位委員「いや、あなたに言ったんだよ」と呼ぶ)
  171. 高村正彦

    ○高村国務大臣 そんなこと、質問通告もないのに、今いつと言ったってわかりませんよ。
  172. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 お答え申し上げます。  一番近いところから申し上げますと、十月三十一日にイラクはUNSCOMとの協力を全面的に停止するということを言ったわけでございます。それを受けて、十一月の五日に安保理は、決議一二〇五を採択いたしまして、十月三十一日のイラクの決定を決議六八七及び他の関連決議の重大な違反として非難したわけでございます。そして、イラクに対して、その決定の撤回とUNSCOM及びIAEAへの協力の再開を要求いたしました。  それから、委員が御指摘になりました十一月十七日の後も、イラクは十一月二十五日には文書のアクセスを拒否いたしました。それから、十二月十一日には金曜日の査察を拒否いたしました。十二月九日にはバース党本部への査察を拒否いたしました。(発言する者あり)
  173. 中山正暉

    中山委員長 ちょっと答弁が済むまで待ってください。
  174. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 そういうことを受けまして、先ほど既に外務大臣から答弁がございましたように、六八七の停戦決議の基礎が崩れた、したがって、六七八により武力行使を容認されたその状態に戻ったということで必要な行動がとられた、そのことについては常に警告が発せられていた次第でございます。
  175. 志位和夫

    志位委員 これだけ聞いても何にも示せませんでしたよ。  いいですか。今役人が挙げた決議一二〇五というのは、確かに十月三十一日にイラクが一たん査察の停止の声明をやりました。それに対して、十一月五日に安保理が重大な違反という決定をやっています。しかし、それを受けて、十一月十七日に査察は再開されたんですよ。再開された結果として、二つの報告書が出てきたんじゃありませんか。それを受けて、重大な違反という認定は安保理でやってないんですよ。あなた方の一方的な認定なんだ。だからこそ、安保理で、この武力行使はもう国際法違反だという声がたくさん出たんです。  先ほどの話に戻しますけれども、総理、いいですか、国連安保理では、アナン事務総長の書簡を受けて、非公式の協議は始めておりました。平和解決への真剣な努力が続いていました。それがまさに一方的な軍事攻撃でめちゃくちゃにされた。武力攻撃を受けて行われた安保理の議事録を見ますと、そのことへの怒りと憤りが多くの国から表明されております。  これは、インターネットからとった安保理の議事録でありますけれども、これを読んで私は、本当に日本政府の対応には情けなくなりましたよ。  例えばスウェーデンの代表。この空爆は、安保理のメンバーが非公式協議の会議で、イラクの協力に関するUNSCOMの最新の報告と事務総長の書簡について話し合いが行われているまさにそのときに行われた。遺憾なのは、軍事行動が事実となる前に最新の事態についての我々の評価の結論を引き出す機会さえなかったことだ。  ブラジルの代表。理事会が事務総長に提唱していたように、イラクに科された制裁体制についての包括的見直しを行う準備をしていたまさにそのとき、国際社会が別の困難に直面させられたことは遺憾なことである。我々は事務総長が書簡の中で提案していた三つの選択肢の論議に参加することを期待していた。ところが、現実には安保理はみずからの結論に到達する機会を逸することになった。  もう一つ、ガンビアの代表。けさ、UNSCOMの最新の報告書に続いて事務総長が提案した選択肢を見ながら、我々は、これが我々が陥っている窮地から抜け出す一つの可能な方向を示していると考えていた。武力が使われたことは不幸なことであり、嘆かわしいことだ。  アナン事務総長は武力行使について、国連と世界にとって悲しむべき日というふうに言いました。  安保理の十五カ国のうち、これは議事録を見ましても、中国、ロシアは武力行使を厳しく批判し、フランスも遺憾を表明しました。はっきり支持を表明したのは、米英を除けば日本だけですよ。情けないじゃありませんか。  私、総理に伺いたい。  国連事務総長が三つの選択肢という形で平和解決のための提案を行い、安保理でそれに基づく協議が始められていたまさにそのさなかに一方的に武力行使を行う、こういうやり方が国連無視でないというんですか。何の問題もない、これはあなたの見解ですか。今度は総理に伺う。今度は総理、答えてくださいよ。総理総理委員長総理
  176. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今回の米英の対応につきましては、今いろいろ御紹介ありましたが、世界各国いろいろな反応をしたことは事実でございます。しかし、我が国としては、我が国の立場に立って、この対応につきましては責任を持って対処いたしたところでございまして、先ほどのお話のように、国連の決議に対しましてこれがしばしば重大な違反を犯しておるということについて対応したことについて、日本政府としてはこれを認めて適切な対処をした、こう考えております。
  177. 志位和夫

    志位委員 国連安保理の決議に根拠はないんですよ。さっき、もう詳細に言ったでしょう。UNSCOMとIAEAと二つの報告書を受けて、アナンさんの書簡を添えて、イラクの行為がどういう決議に照らしてどういう行為なのかということをまさに判定する、その協議をやっていたんですから。国連は何にも判定していない中で一方的に軍事制裁、軍事力行使をやるというのは、本当に国際法に無法を持ち込むことになります。  私、このイラクの事態というのは二つのことを浮き彫りにしていると思います。アメリカが、国連も国際法も無視して一方的な軍事攻撃、先制攻撃を行って恥じない国である。日本政府が、アメリカのやることなら何でも賛成と追従する自主性のかけらもない国であるということ。私は、そういう両国が協力して海外の軍事協力に乗り出すこのガイドラインというのは、本当に危険なことだと思います。  そこで、もう一つさらに伺いたい。  イラクに対してアメリカが行ったことは偶然じゃありません。これはアメリカの一九九五年の国防報告、これを見てみますと、「軍事力を行使することがあるケース」として、次のように述べています。「米国の死活的な利益がおびやかされるケース」、こう述べて、次のように続けています。「死活的な利益とは、米国または主要な同盟・友好国の生存にかかわる場合、米国の緊要な経済利益にかかわる場合、もしくは米国または同盟国に対する将来の核脅威を伴う場合、である。米国が死活的な利益への脅威に直面していると判断した場合には、その脅威を抑止し、あるいは終わらせるために軍事力を行使する用意がなければならない。その場合にはまた、米国の死活的な利益が将来受ける脅威に対する予防措置として行動することも必要である。」  いいですか。国連憲章では、国連が決定する行動以外は加盟国が勝手な武力行使を行うことを禁止し、その唯一の例外として、国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、武力侵略が行われた場合の自衛反撃を挙げているわけですよ。ところが、アメリカは、この国防報告でも明らかなように、自衛反撃以外でも軍事力を行使する戦略を持っている。これに述べられている「米国の緊要な経済利益にかかわる場合」とか「将来の核脅威を伴う場合」とか「将来受ける脅威に対する予防措置」とか、こういう軍事力行使というのは、自衛反撃としてではなくて先制攻撃としての軍事力行使であることは明らかであります。  総理に伺います。  総理は、参議院での我が党の筆坂議員の質問に対して、米国に先制攻撃戦略というものがあるとは承知していない、こう述べましたけれども、政府の公式文書で、国益のためとあらば自衛反撃以外での軍事力行使、先制攻撃をやるとはっきり書いているじゃありませんか。  私、総理に伺いたい。  周辺事態への対応として、アメリカがこの国防報告にもあるような先制攻撃を行った場合でも、ガイドラインを発動して日本は協力するんですか、それともそういう場合は拒否するんですか。これは総理に伺いたい。総理、どうですか。
  178. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 米国は、単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけでなく武力の行使ができる旨規定されているわけでなく、一般国際法上の自衛権行使の要件とされている必要性及び均衡性に基づいた上で、急迫かつ圧倒的で、他にとるべき平和手段がないような明白な必要性がある場合には、自衛権を行使するに当たって、自国を無能にするような第一撃を相手から受けて現実の被害が発生するのを待たなければならないということはないとの考えであると承知をいたしております。  したがいまして、米国は、国連憲章によりまして国際法上違法な武力行使を行わない義務を負っておる。したがって、同盟国としてこれを遵守することを確信いたしておるわけでありまして、ただし、米国の個々の行動については確定的な法的評価をおろし得ない、こう考えております。  なお、先ほどのお話をお聞きいたしておりまして、サダム・フセイン本人かどうかわかりませんが、イラク側の主張をそのままにお示しをされておられるようにお聞きをいたしておりまして、我々は、かつて十年前にイラクがクウェートを侵略をし、その後核兵器に対する不安や化学兵器に対する不安があって、国連としては十分対処したことに対し、そのことに対して十分な答えをされておらないということから今回の問題が発生しておるわけでございまして、イラク側の御主張そのままに御紹介をされることそのことは、御党のお考えかどうかわかりませんが、誤解をされるゆえんではないか、このように考えております。(発言する者あり)
  179. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  180. 志位和夫

    志位委員 驚きました。私は国連の文書を言ったんです。いいですか、国連の事務総長のアナンさんがどういうふうに判定しているか、この問題について言ったので、イラクの問題、イラクの立場を言ったわけじゃありません。とんでもない。  イラクが査察に対して十分協力しなかったという問題点がある、しかし、そういう問題点が起こったときに、アメリカは制裁権を持っていないですよ、その問題点が起こったときに対処する権限を持っているのは国連しかないんですよということを言ったんです。そんな使い分け、その区別もわからないで何を言っているのか。  それで、アメリカは違法な軍事力行使を行わない、こういうことをまた繰り返すわけですけれども、もう一つ、これ一九九八年の国防報告ですけれども、こっちはもっとすごいですよ。「軍事力を使用するかどうか、いつ使用するかについての決定は、なによりも、かかっている米国の国益によって導かれるべきである。」米国は国益を守るためなら何であれ必要な行動をとるであろうし、必要なときには、一方的な軍事力の使用も含まれるであろう。一方的な軍事力の使用というのは、国連の支持がなくても、アメリカは単独で、必要とあれば武力攻撃をやるということなんですよ。これは毎年の国防報告で、毎回書いているんです。  しかも、アメリカは口で言うだけじゃない、実際にやっている。昨年のイラク攻撃だけじゃありません。八〇年代に入っても、八三年のグレナダ攻撃、八六年のリビア攻撃、八九年のパナマへの侵略。この三つのケースはすべて先制攻撃そのものですよ。三つとも国連総会でアメリカに対する非難決議が上がっている。アメリカの武力行使は国際法違反だという非難決議が国連総会で上がっております。  もう一回総理に伺いたい。きちんとお答えにならないので伺いたいのですけれども、グレナダやパナマやリビアなどのように、国連総会が国際法違反と非難するような武力行使をアメリカが行った場合でも、政府がこれは周辺事態だというふうに判断した場合には、ガイドラインを発動し、米軍の軍事行動に協力するんですか、それとも、そういう場合には協力をはっきり拒否するんですか。これは拒否するのかどうか、拒否するならはっきり言ってください。総理
  181. 高村正彦

    ○高村国務大臣 我が国は、国際法上違法な武力行使に対しては、一貫してこれに反対するという立場であります。  グレナダ、リビア、パナマに対する米国の行動でありますが、日本は米国だけでなくて、他国の行動について、あらゆる場合にその法的評価がどうであるかということを下しているわけではありません。グレナダ、リビア、パナマに対する米軍の軍事行動は、我が国は当事者でもなく、すべての事実関係を把握しているわけではないわけでありますから、確定的な法的評価を申し上げることはできないわけであります。  周辺事態の場合は、我が国はまさに当事者でありますから、きっちり我が国として事実関係を把握して主体的に判断する、こういうことです。
  182. 志位和夫

    志位委員 先制攻撃の場合はどうですか。先制攻撃の場合は、これは参加するんですか、外務大臣。アメリカの方から武力攻撃に打って出た場合は、これはどうするんですか。
  183. 高村正彦

    ○高村国務大臣 委員がおっしゃる先制攻撃という場合をどういう場合に特定して、そのときの状況によって……(志位委員「侵略がない場合です」と呼ぶ)侵略が全くないような場合に、先制攻撃を米国がするとは思っておりません。
  184. 志位和夫

    志位委員 あなた、本当に情けない。アメリカはもうさんざんやっているじゃないか。グレナダのときにどういう侵略がありました。自国民の保護という口実でアメリカは侵略したじゃないですか。  法的評価ははっきりしないということをおっしゃったけれども、じゃ、どうしてリビアやパナマのときに国連決議に、非難決議に反対するんですか。法的評価もはっきりしないのにみんな国連決議に、非難決議には反対する、アメリカのやることには何でも賛成、本当に情けない国だ。  私、第二に、これだけ言っても先制攻撃への協力は拒否しないというところに、ガイドラインのこの問題の一つの危険があると思うんですが、もう一つの問題は、ガイドラインで日本が引き受ける行為とは何かという問題であります。  政府は、日本が引き受けるのは米軍の軍事活動の後方地域支援だ、補給、輸送、医療、通信などの活動で、戦闘が行われていない後方地域で行うものだから、武力攻撃と一体化せず、憲法違反ではないという説明をしてまいりました。  しかし、これは総理に伺いますからよく聞いていただきたいんですが、ここで言われている兵たん活動というのは、戦争行為と切り離せない、まさに不可欠の構成部分であります。兵たんなしの戦争なんてありませんよ。区別などしようがない。当然、相手国はそれを攻撃対象とするでしょう。  総理に伺いたいんですが、米軍の軍事活動への後方支援を行う自衛隊が、相手側から攻撃対象にならないという保証はあるんですか。保証はあるんですか、攻撃対象にならないという保証。総理
  185. 高村正彦

    ○高村国務大臣 世界には無法な国家というのがあるわけでありますから、何にもしなくたって、攻撃を受けないという保証はないわけであります。
  186. 志位和夫

    志位委員 戦争行為であるかどうかというのは、日本政府の勝手な線引きで決まるわけじゃありません。国際社会で、あなた方が言っている後方地域支援なるものがどのように扱われるかが問題であります。  これは訳でありますけれども、アメリカ軍の、海軍省が作成した「指揮官のための海軍作戦法規便覧」というのがあります。これは、「海上における合衆国海軍の作戦を規律する国際法及び国内法の基本原則を説明している。」と書いてあります。これは一九八七年に作成されたものでありますけれども、この第八章に、何を攻撃目標にするかということの法規が書いてありますよ。これを見ますと、補給、輸送、通信などで敵国の戦争遂行に貢献する働きをしているものは、たとえ第三国の商船であっても攻撃対象とされる旨が明記されています。  例えば、次の場合も攻撃対象として例示されている。敵国の軍隊の補助艦としての立場で行動している場合、これはすなわち物資の輸送とか軍艦に対する補給の業務に携わっているような場合であります。それから、敵国の軍隊の情報システムに組み込まれているかまたはいずれにせよそれを支援している場合、すなわち、通信、偵察、早期警戒などの業務に携わっている場合であります。  このガイドラインであなた方が後方地域支援と呼んでいるものは、アメリカの戦争法規、これは戦争の際の国際法規の常識と言っていいと思うのですけれども、これではすべて攻撃対象とされる性格のものであります。これは何もアメリカだけの基準じゃありません。カナダもドイツも同様の海戦法規がつくられております。  日本が幾ら、これは武力行使と一体じゃない、後方支援は違うんだと言っても、国際的には攻撃対象になるとアメリカ自身が言っているじゃありませんか。すなわち、これは戦争行為として扱われているというのが国際社会の実態じゃありませんか。攻撃対象となれば、攻撃されれば、そこが戦闘地域になるのです。これはまさに武力行使と一体じゃありませんか。総理、どうですか。総理に伺いたい。
  187. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 ちょっとこの法律の定義を見ていただきたいんですが、第三条の一項の四号の「後方地域」というのは、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」ということになっております。  したがいまして、こういう後方地域において行われる後方地域支援というものは、ガイドラインに基づいて実施することを想定している活動、その活動は、それ自体、武力の行使には該当しない。または、国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対して行う我が国の協力は、国際法の基本原則にも合致し、国際法上許容されるものであり、他国の我が国への武力の行使を国際法上正当化させることはない、こういうふうに考えております。
  188. 志位和夫

    志位委員 そこに立っていて結構ですけれども、今、戦闘行為が行われることがないと認められると言ったでしょう。一体だれが認めるんですか。認める主体はだれですか。認める主体、それだけでいいですから答えてください。認める主体は。
  189. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 それは、法律の定義でそうなっていて、日米で認めるわけです。
  190. 志位和夫

    志位委員 日米が認めるといったって、相手方がどういうふうに判断するか、国際社会でどういうふうに扱われているかが問題なんですよ。日本が勝手に、これは幾ら戦闘地域じゃありませんと言ったって、これは戦争行為じゃありませんと言ったって、相手方がこれは戦争行為だとみなして攻撃してくる、そういう性格のものなんです。  もう一つ、空軍にも同じ法規をアメリカは持っていますよ。これはもっと明瞭なことが書かれています。  ここでは、これは米軍の一九八〇年に作成された「指揮官のための武力紛争法便覧」という空軍の法規でありますけれども、何を攻撃の目標にするかについて、直接軍事作戦に携わっているものだけでなく、「軍事作戦に対する行政上及び兵站上の支援を提供する建物及び対象物も攻撃を受ける。」「軍事関係者を兵站に連結する輸送体系、交通線の集中している輸送中心地、戦闘部隊のための備品及び資材を生産している産業設備、交通線を修復し、補充する産業設備(発電所、自動車工場など)には攻撃することができる。」  これを見ますと、補給、輸送などの兵たん活動はもちろん、兵たんを支える交通施設、民間の港湾であろうと空港であろうと、みんな攻撃対象になるんですよ。これは国際的にはそう扱われるのですから。あなた方が幾ら武力行使と一体でないと言っても、これは本当に憲法の息の根をとめるような無法になることは明瞭であります。  私たちは、このガイドラインの関連法案、これを厳しく撤回を求めて、質問を終わるものであります。
  191. 中山正暉

    中山委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君から質疑の申し出があります。これを許します。伊藤茂君。
  192. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 社会民主党を代表いたしまして、本日の委員会の締めの質問をさせていただきます。  真剣な議論が行われておりますが、私どもは、あともう間もなく新しい世紀、二十一世紀のドアをあけるということになるわけであります。本当に我が国の将来にとりまして大事なときだと思います。  私ども社会民主党は、村山内閣以来数年間、与党の努力をさせていただきました。そうしてまた、政治倫理とか今のガイドラインとかさまざまなことがございまして、昨年六月に連立を解消させていただきました。今、野党の立場を鮮明にして努力をしていきたいと思っております。議席の数は別にいたしまして、やはり我が国の政治にも社会にも、新しい世紀に向けて新しい大きなドラマが展開されるべきだと思います。ヨーロッパで進んでいるような社民の政治、やがてと申しましょうか、なるべく早くそういう時代を目指しながら、私どもは、誠実に、また精いっぱい努力をしていきたい、そういう気持ちでこの国会にも取り組んでまいりたいと思います。  その気持ちを前提にしながら、まず総理にお伺いしたいのですが、施政方針演説の冒頭に、五つのかけ橋の中の冒頭に、世界へのかけ橋ということを述べられました。実は、私はそれを伺っておりまして大変失望したわけであります。  今、世紀の大きな変わり目のときに、日本それから北東アジア、非常に難しい問題がございます。しかし、今大事なことは、次への構想をどうつくるのかということでありましょう。ところが、総理がお述べになりましたことは、冒頭にガイドライン、さまざまな国とのおつき合い、そしてPKFの解除の問題という中身でございました。  私は、年頭に当たっての、日本総理大臣が内外にメッセージを送るわけでございますから、やはりPKOというよりも、この時代に当たって、どうやって次の時代へのピースメーキングかピースビルディングか、そういう構想を述べるというのが日本総理大臣にふさわしい見識というものではないだろうかという気持ちがするわけであります。  対人地雷のときに示されたイニシアチブはどうなったのかという気もするわけでありますが、施政方針を伺いまして大変残念に思いましたが、そのことを今どうお考えになっておりますか。
  193. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 かねて、アジア・ビジョンを含めまして、伊藤委員、国際社会の中でそれぞれの地域がいかに発展していくべきかということで御構想を持っておられるということは、承知をいたしております。そういう立場で、先般の私の演説に対しましての御批判をちょうだいいたしました。  できれば、今申し上げましたような、あらゆる諸点にわたりまして演説の中でこれを明らかにすべきと思っておりますが、このことにつきましては、今伊藤委員のお言葉も改めて甘受し、こうした課題につきましてはそれぞれの施策を通じておこたえいたしてまいりたいと思っております。  ただ、アジア問題についての考え方につきましては、私自身も、暮れのASEAN及び日中間の首脳会議に出席をいたしまして、いわゆる政策演説というのをさせていただきました。この折、アジアの二十一世紀を人間の尊厳に立脚した平和と繁栄の世紀ということで、特にそこの中で、ヒューマン、人間のセキュリティーの問題について述べさせていただきました。こうした考え方も、委員のお考えとある意味では非常に似通った点ではなかったかという気がいたしております。  したがいまして、やはりアジアの地域の平和と安定を確保するために、アジアの再生を図る、人間の安全保障を重視する、知的対話を推進する、こういう分野で努力をしていくことを強調し、賛同を得たところであります。そうしたことのすべてを御紹介できなかったことはまことに残念でありますが、考え方としては、ぜひそういう基本的考え方を持ちまして、アジアにおける我が国の今後の責任というものを明確にいたしていきたいというふうに思っております。
  194. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 新しい年の冒頭に、日本国の総理大臣が今日のアジアの状況の中で述べるべきことは、世界へのかけ橋でしたら、例えば北東アジアの地域的な安保組織、日本がそれをつくり上げるためにどういう展望と努力をするのか、そういう構想力と決意を語るべきである。なかったのはまことに遺憾であります。  具体論に入ります。  まず、ガイドラインのことで考え方を伺いたいんですが、私どもも自社さの与党三党時代に、これにつきまして長い真剣な議論をいたしました。その中で三項目、いつも三党で実は確認をしていたことがございます。  一つは、有事の備えの前に平和外交、予防外交を推進することが前提として大事である。二つ目には、当然ですが、憲法の立場、そして安保の性格は変えません。三つ目には、近隣諸国に懸念を抱かせない。この三つは、年じゅう確認をしてきた、これは我が国としてあるべき大前提だと思います。  残念ながら、平和外交の推進の面でも、あるいは安保の性格の面でも、中国の御意見などを含めまして、近隣諸国の懸念の意味でも、さまざまな問題が現実に起きているという状況ではないだろうか。その三つ、確認したことは不動なんですか、変わったんでしょうか、どうなんでしょうか。
  195. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今委員おっしゃっている点については、そのことを十分認識して対処しているつもりでございます。
  196. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それでは、私の懸念を具体的に申しましょう。二、三申し上げます。私にとりましては、日夜非常に痛感をする問題でございます。  小渕総理が外務大臣の終わりのころにも、外務委員会で議論をしたことがございました。  昨年一月に横須賀から空母インディペンデンスが、キティーホークになったのは八月ですからその前ですが、緊急出動を湾岸にいたしました。そのときに、米軍のマニュアルですから、一週間、二週間前にパイロット全員がタッチ・アンド・ゴーの訓練、夜間の訓練をするということが義務づけられております。異常なことなんですが、神奈川県にも地元の市町村にも連絡なし、通告なし、どかどかと訓練をしました。そうして、それが終わりましたら、艦長はこれから湾岸に参りますと言って出動をいたしました。一体これはどういうことでしょうか、安保の適切な運用というものでしょうか、あるいは事前協議とかそういうものはどうなっているんでしょうかということを小渕外務大臣に申し上げたことがございます。  二つ目に、もっと重要なことがございます。  私ども、神奈川県で、さまざま平和運動の、市民運動の仲間の皆さんと一緒に勉強したり調査をしたりいたしております。最近、御案内のように、アメリカの議会会計検査院、GAOの発行したもので「海軍空母—通常型、原子力空母の費用対効果」という報告書がございます。それをいろいろと読んでみました。  驚きましたが、もうこれから先は通常型空母は全部退役、つくりません、これからは全部原子力空母にいたしますと。まあケネディという航空母艦だけは、練習艦ですからこれは現役ではないと書いてございます。そして、横須賀を原子力空母の母港にするためにどうしたらいいのかという研究をしていると。そのためには、航路のしゅんせつ、家族住宅、支援施設、さらには、その担当者の発言として、原子炉管理施設の建設、埠頭の延長と強化、強力なクレーンの整備。今、埠頭の延長工事をやっているわけですね。ことしから、来年度完成という予定で施設庁が盛んにやっております。  世界じゅうで航空母艦が母港化している国は、もちろん日本だけであります。そしてまた、原子力空母が横須賀を母港として、そのことにつきましては、国防総省の方は、原子力空母の横須賀配備の問題は日本側との協議が必要である、もちろんですが、書いてございます。そしてまた、これらのことにつきまして、今その資料などを読みまして、重大な懸念を私は感じているわけであります。  要するに、今は攻撃型原潜が来ますけれども、母港ではありません。母港としての原子力空母が横須賀に何年後かには、キティーホークの後はそれにしますということを書いてあります。  米軍の機関紙でスターズ・アンド・ストライプスなどの資料もございますが、スターズ・アンド・ストライプスには、第七艦隊のキーティング少将の発言として、空母キティーホークの退役後、米海軍横須賀基地に原子力空母を配置する方向で日米当局が既に協議に入っている、昨年十一月九日の機関紙にそういうふうに述べられております。  さらには、今度、先ほどもお話がございましたが、イラクへの攻撃、これについても私ども反対でありますが、膨大な何百発かの巡航ミサイルが発射をされました。大部分は船からの発射というふうに聞いております。横須賀には、駆逐艦、巡洋艦などで巡航ミサイル発射可能な船が何隻か入っております。そのときには皆おりませんでした。それから先は軍事情報ですから私どもはわかりません。一体どうなんだろうかという不安が市民の中にも高まっているというふうな状況がございます。  これは大変な重大なことだと私は思いますので、恐らく、こういうGAOの報告その他のことは、外務省も防衛庁も、私どもがインターネットでいろいろ調べるのと同じように全部情報は常時とっているのが仕事だろうというふうに思いますが、こういう状況に対して、イエスなんですかノーなんですか、どう対応しているんですかということが一つ。  もう一つは、総理に申し上げたいのですね。周辺とかそれから事態とかケース・バイ・ケースとかいろいろな議論が、御説明がございました。こんな状況を考えますと、私は、やはり周辺、地理的にはっきりする、事態とは何か、言葉の説明だけではわかりません。しかも、ケース・バイ・ケース、自自の協議の中からそういう言葉が随分出てきております。危険な方向にさらに拍車がかかるのではないかという心配を私どもは持っているわけでありますが、これは理屈、論理の問題ではありません。私ども、地元の市民の一人として非常に心配しながら、みんなで議論があり、懸念が高まっているという状況でございますから、これらに対して、外務省、防衛庁あるいは総理の御見解を伺いたい。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  197. 高村正彦

    ○高村国務大臣 原子力空母、例えば横須賀を母港化しようとかそういう要請がないことはもちろんでありますし、その要請の前の打診というか相談というか、そういったものも全くありません。  そして、このGAOの報告、GAOというのは、これが独自に調査して連邦議会に提出したものであって、政府の立場とは必ずしも関係ない、こういうふうに承知しております。
  198. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理の御答弁を伺いたい。  その前に申し上げますが、外務大臣、GAOの報告、これは政府の決定ではないと申しましたが、原文がありますけれども、英文のままございますけれども、今申し上げましたように、米軍の機関紙のスターズ・アンド・ストライプスの昨年の十一月九日号には、第七艦隊の責任ある人が、キティーホークの退役後、横須賀に原子力空母を配備する方向で日米当局が既に協議に入っているというふうにこれは報道されております。  これらがありましたら、これらを確かめる、重大な問題ですから、イエスかノーかどうか、当たり前じゃないですか。通り一遍の答弁ではだめだと思います。
  199. 高村正彦

    ○高村国務大臣 少なくとも、外交当局は協議に入っておりません。
  200. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 防衛庁長官、どうですか。知っているの。
  201. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 私ども防衛庁といたしましても、そういった協議を行っている、そういう事実はございません。
  202. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 少なくとも日本よりは情報公開が進んでいるアメリカのGAOの報告書としてペーパーになって載せられている。ということを、我々もえらい苦労なしに、今インターネットの時代ですから、手に入れて読んで勉強していますね。市民の中に不安が高まっています。外務省、防衛庁が知りません、交渉ありませんだけで済むんでしょうか。少なくともこういう事態に対して、こういうのがペーパーが出たりしているわけですから、我が日本の国策としてというか日本の態度として、あるいは日本のビヘービアにふさわしい態度として、そんなことはだめですとか、そんなこと、考え方はあるのが当たり前じゃないですか。
  203. 高村正彦

    ○高村国務大臣 外交の責任者として、今そういうことはないと私が申しているのですから、それ以上のことはないと思っております。
  204. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それじゃ、水かけ問答してもしようがありませんから、私どもはデータその他も全部整備をして、外務大臣、改めてこれはきちんとやりましょう。重大な問題だと思います。  総理、いかがですか。そういうことがあって、政策とか何かの難しい問題ではなくて、周辺とか、何だろうかと。それから、横須賀に巡航ミサイル撃てる船がいるけれども、みんないなくなった。どうしたんだろうか、わからない。非常に懸念を感じている。それだけに、今までの、総理がおっしゃっている、閣内不統一もございましたが、さまざま総理がおっしゃっている周辺であるとか、地理的概念でないとか、事態とか、ケース・バイ・ケースとかと言うだけでは、とてもこれは理解のいく話ではない。  また、責任があるのですね。私どもは、政党政派は違っても、真剣に議論しながら、やはり国民の将来と国の将来とアジアの未来に責任を持つというのが、日本の政治家の私どものそれぞれの責任だというふうに思いますから、今のままでは果たせないというふうに思いますが、総理、どうでしょう。今までのことではなくて、もう一歩、そういうことについてのきちんとした議論がなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日米間の同盟、信頼性を確保していくということは、これは当然のことだろうと思います。そういった意味で、諸般にわたりまして、米国側の対応につきましても留意をすることは必要なことだと思っております。  また、地域社会の支持がなければアメリカとしても我が国とともに我が国の安全を守ることはできないということであると思いますので、先般もコーエン国防長官が参られて、よき隣人としてやっていきたい、こう言っておられるわけですから、そうしたことからも、信頼を失わないようなことは考えていくべきだと思っておりますが、先ほど外務大臣、防衛庁長官が御答弁申し上げましたように、本件につきましては、外交の責任者としてはそうした事態を考慮しておらないということでございますので、その点は御信頼をいただきたいと思います。
  206. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理、これはもう問題の是非、現実の議論の前提となる当然の初歩的な措置だと思いますが、今申し上げた、私どもいろいろな資料を取り寄せて研究しております。決してこれはでたらめではありません。少なくとも、GAOの正式の報告書として、きちんとお願いをして私どもがちょうだいした資料ということになるわけであります。それらについて、当然ですが、政府としても、それらの全資料を取り寄せて研究して、それからどうするべきかということをすぐ急いでやるというのは、提供をした者としてはこれは当然のことではないかというふうに、これは事実を確かめてないのですから、と思いますが、当然でしょうね、それは。
  207. 高村正彦

    ○高村国務大臣 せっかくの委員の御指摘でありますから、今そういう交渉がないことは事実でありますが、ではそのGAOが一体どういうものを出しているのかとか、それはどういうことから出たのかとか、私なりに調べてみます。
  208. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 その上でさらに本格的な議論をいたしましょう。  総理、外務大臣、一言だけ気持ちを申し上げたいんですが、実は、無届け無連絡での夜間の離着陸訓練、ごうごうたる爆音のもとにさらされます。実は、横浜の私どもの家の上も飛びます。  私は、これは忘れがたい思いがございまして、私の自宅の玄関に一株のバラの花がございます。和枝のバラという札がついております。もう随分前になりますが、厚木をベースとするアメリカのジェット機が近くで墜落をいたしまして、そして二人の、一歳と三歳の小さな子供がその日のうちに全身大やけどで亡くなりました。そして若いお母さんも全身大やけどで、のどがつぶれて何も言えない。切々たる思いを日記に書いて、私もお手伝いをしてその日記を出版したりいたしました。そのお母さんも亡くなりました。そして、二人の小さな子供と若いお母さんの像を横浜の港の見える丘公園にみんなでつくりました、みんなで平和の誓いを持つように。  今まで、自民党のある防衛庁長官に、安保には光と影が、こういうことがあるのですよというお話をいたしました。そうしましたら、伊藤さん、ぜひ案内してください、花束を持って伺いたい、そしてそういうことのない時代をつくるように、政治家の一人としてそう思っております、加藤紘一さんでございましたが、というふうなことがございました。ポスト冷戦の時代ですから、やはりいろいろな意見を激しくやりながらもそういうものをつくって、同じ土俵の同じ気持ちの上でやるのがポスト冷戦の政治ではないだろうか。毎朝、私は家を出る前にそのバラを見ながらそんな思いをする、その思いを込めて実は申し上げているわけでございます。  ガイドラインに関連をして、もう一言実は申し上げたい。  昨日来、武器弾薬の輸送の問題につきまして、総理の御答弁と官房長官の記者会見と違うとかいう報道がされておりまして、先ほど聞きましたら、政府の統一見解を出されたというふうなことも先ほどテレビでちょっと知ったところでございます。  数々の問題、懸念を非常に私は感じます。例えば、さっき申し上げましたように、武力行使の一体化と申しますが、ケース・バイ・ケースの問題。一体、ケース・バイ・ケースとは何だろうか。あるいは周辺事態の認識についても、自自の合意の後、官房長官と小沢党首との意見の違いということも随分大きく報道をされました。また、この予算委員会でも、国連の平和活動とは何だろうか、国連軍まで含む全体なんだろうかというふうな御議論もございました。さらには自自両党の合意書などを見ますと、四項目の(2)、(3)とか、さらに討議を深め、さらに明確にしていく。さらに勉強して、さらなる別の法案を出すつもりなのかなとかいうことも判然といたしません。いろいろな問題がございます。  ただ、たくさんの問題を全面的にここで議論する時間はございませんから申し上げたいのですが、少なくとも、武器弾薬とか、前線あるいは後方とかいうことについて、私はこう思います。  私と同じ意見を雑誌「世界」の二月号の中で後藤田さんが述べられておりました。そこで述べられていたのですが、近代戦争で前線と後方の区別があるのか。武器、弾薬、兵員の輸送はやるのか。建設を支援する、通信を支援するとあるが、どういうことなのか。輸送をやると言うから、それは戦争に参加することだよと私は言ったと。実際にはアメリカ軍中心の多国籍軍が実態ではないか。それに参加することは、日本の憲法として認めるわけにはいかない。  ずっと前の、湾岸のときの企画物についてのことでございます。  いろいろな意味で、これは党派を問わずさまざまの御意見もございます。またさまざま、党派を超えて良識ある御発言もございます。私が申しましたように、本当にこういうことは真剣にお互いに、社会と国の将来とアジアの将来のために議論すべき、そういうところがやはりポスト冷戦の政治家の責任だというふうにも思います。  そういうことを考えますと、何か武器弾薬の輸送などという問題あるいは前方、後方ですね——さっきも、横須賀の市民が、巡航ミサイルを撃つ船、皆行っちゃったけれどもどうしたのかな、撃ったのかどうかな。わかりませんからね。こういう懸念がございますけれども、そういうことについてきちんとした態度をとる。少なくとも、この国会冒頭からさまざま政府部内の答弁の食い違いもございましたが、これらについては、やはり武器弾薬についても国民から心配のない鮮明な態度表明が必要であるというふうに思いますが、いかがでございましょう。
  209. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 昨日、多国籍軍に対しての後方支援につきまして私から答弁を申し上げました。その後、記者会見で官房長官からもこの問題につきましてお触れになられまして、そのことが閣内における考え方の違いではないかという御指摘もちょうだいいたしました。  実は、私が申し上げましたのは、これは憲法上の理論として、法制局の見解も考え、そしてこのことは法的には問題ないところである。しかしながら、もちろん、申し上げましたように、これはいわゆる武力の行使と一体の問題にかかわっているわけでございますが、そういう意味で、昨日の考え方につきましては、全く両者間には見解の相違はないということで一致をして、先ほど委員指摘のように、見解を明らかにさせていただいた次第でございます。  いささか長くなるかもしれませんが、お許しをいただいてお答えいたしたいと思いますが、やや誤解がありましたのは、多国籍軍に対する対応と、それから今般の、法律として出しておりますガイドラインの法律案と、やや混同して受け取られた点もございましたので、この辺は明確にさせていただいて、見解を明らかにさせていただいたわけでございます。  まず、多国籍軍に対しての後方支援等については、この多国籍軍の概念そのものがまず明確ではありません。そこで、これに対する後方支援については、周辺事態安全確保法案にあるいわゆる後方地域支援とは異なりまして、いまだ法案も作成されておらず、具体的関与のあり方については今後さらに検討を進める必要がある。政府といたしましては、国会にお諮りしているのは指針関連法案でありまして、まずこれについての御議論をいただくようにお願いを申し上げておるところでございます。  このような前提で一般論として申し上げれば、憲法上、多国籍軍にいかなる後方支援をなし得るかにつきましては、個々の具体的ケースにおいて武力の行使と一体化するかどうかとの観点から判断されるべきものでございます。さらに、実際に多国籍軍に対し武器弾薬の輸送を含めいかなる後方支援を行うかにつきましては、憲法解釈上の問題を加えまして、諸般の情勢を総合的に勘案した上で慎重に判断すべきものと考えております。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、私が昨日申し上げました答弁上、憲法上我が国が多国籍軍に対する後方支援を行えるか否かにつきましては、武力の行使と一体化するか否かが基準である旨述べたものでありまして、他方、官房長官の記者会見での発言は、憲法解釈論の次の段階としての政治判断を慎重に行うべきものとの考え方を示したものでありまして、したがって、この二つの考え方には矛盾なく、両立するところでありますが、申し上げましたように、現在、日米ガイドライン問題を論議しておりまして、この問題といわゆる多国籍軍の問題と、質疑の過程で私自身が十分これを分離して御説明すればよかったわけですが、誤解を浴びたとすればまことに申しわけないことでありますので、改めて、委員の御質問をちょうだいいたした機会にこのことを説明させていただいた次第でございます。
  210. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理の御見解は伺いましたが、このガイドラインに関連をいたしましては、本国会の最も重要な問題の一つでもございますし、やはり新しい時代の世界とアジアに我々の国がどういう生き方をするのか、基本にもかかわる重要なことでございます。  また、総理の御意見につきましても、もちろん私の反論もございますけれども、全面展開する時間はございませんので残念でありますが、さらに真剣な議論をしていきたい。  大前提は、あくまでも今大事なことは、ガイドライン、PKO、いろいろな議論がございます、我々政治家が、日本の政治家が、また日本の政府がやるべきなのは、世界に向けてピースメーキング、ピースビルディングですね。これはオーストラリアの外務大臣とかカナダの外務大臣とか——高村さん御承知ですね、いろいろないい御発言をなさったり、私もファクスをいただいて論文を読ませていただいたりいたしておりますが、大変いい勉強をした。そういう意味で、やはり憲法前文にございますように、国際社会に誇りある役割を占める、そういう方向のために、威張らないで大汗かいて、いい時代の判事役の努力をするということが必要である、前提でやっていきたいと思います。  もう一つだけ、朝鮮半島のことで伺いたいのでございます。  この国会、本会議の論戦から始まりまして、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国とのもっと直接の対話、ドアを開くべきではないかという意見がいろいろございます。もちろんですが、今両国の間、さまざまの意見の違いが大きくございます。さまざまの問題もございます。しかし、大事なことは、ドアもあかない、窓も開かない、課長クラスが時々何かちょっとのぞき見をするだけという状況ではいかぬだろうと思います。また、アジアで重要なポジションを持つ我が日本のとるべき基本的態度だろうか、そうではないだろうと私は思います。  実は、二つ、私は経験がございます。一つは、もう一年前になりますが、予算委員長など御一緒いたしまして、当時の与党三党でピョンヤンを訪問いたしました。さまざま議論をいたしました。例えば拉致問題とか、予算委員長も当然あれですが、激しい、激烈な議論を、私も隣に座っておりまして、いたしましたが、しかし、お互いに議論することは、直接に会ってやることは大事なことだなというのが正直な印象でございます。  もう一つは、前にも、首相、小渕さんに申し上げたことがございますが、非常に私が印象に残っているのは、NHKで二回放送されましたが、ハノイ対話、ベトナム対話でございます。あのベトナム戦争、第二次大戦後最大の戦争であります。その戦争の最も責任者だったマクナマラさんと、それからボー・グエン・ザップさんは最後に出られましたが、関係者が集まって三日間缶詰でハノイで、あれは何だったんだろうか、北爆をした、あのときにペンタゴンはこう思った、あなたはどう思ったの、違うよ、ああそうかとか、いろいろな議論を三日間にわたってやりました。またやろうとなっております。  その番組を司会した方が最後に言われたことが私は強く印象に残っております。歴史的なそういうことがあって、歴史観を共有する、大戦争の当時の責任者が一緒になって、何だったのかということをやる、そういう時代だ、残念ながら日本は何もやっていないということを最後に言われましたことが印象に残っております。  そして、マクナマラさんもボー・グエン・ザップさんもテレビのインタビューで最後に言われたことは、どんな場合でもコミュニケーションが大事だ、話し合いが大事だ、それがあったらあんなたくさんの犠牲者を出さないで済んだということを異口同音に実は言われておりました。  私は、意見が違います、堂々とお互いに議論すればいいと思います。しかし、ドアも窓も閉じたままでやるという状態は超えるべきではないでしょうか。それについてのやや前向きな御見解も総理からも伺いました。  私は、ここで申し上げたいんですが、それは、将来ではなくてもうこの一月から、二月、三月、四者とか何がどうとかいろいろなことがございますね。進んでおりますね。韓国も必死になって努力をしている。米朝も、しのぎを削ったと申しましょうか、真剣な議論が行われている。日本は、はらはらしながら見ているだけというわけにはまいらない。今月、来月、二月、三月とかこういう期間のうちにそれらについての、やはり長い目で見て我が国にふさわしい国交正常化への決断をするということが政治として大事なのではないだろうか。  直接話し合う、率直にやり合う、率直に話し合うということから、初めて私は道は開ける。近い時期に決断が必要だと思いますが、いかがでしょうか、総理
  211. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 伊藤先生が長らく、北との問題につきましても、国交正常化のために御尽瘁されておることは承知をいたしております。  私自身も、外務大臣のときも含めまして、できる限り北朝鮮と、最後の国連加盟国の中で国交が正常化していないという、これは何としても乗り越えなきゃならないと思っておりますし、また、自民党の副総裁をいたしておりますときに、米の五十万トンの提供につきましてもかかわり合いを持った者といたしましても、ぜひそう願って努力を続けさせていただいておりますが、何といっても、先般ミサイルが発射をされまして、我が国の上空を飛んでいったというようなことも含め、同時にまた核秘密施設の問題等もありまして、そうした問題が大変残念ながら日本国民に大きなショックを与えておるという状況でございます。  さはさりながら、これは南北の問題として、統一の問題を掲げて金大中大統領も熱心な太陽政策といいますか、包容政策をとっておるということにかんがみますれば、我が国としてもこれを支持しておるわけでございますので、可能な限り我が方の誠意あるメッセージをお伝えしよう、こう考えて施政方針演説でも申し上げさせていただきましたが、どうも反応の方は大変厳しゅうございまして、今のところ、表面的にこれに相呼応して話し合いが進む状況ではないことはまことに残念ですが、不断にこの問題については、もちろん日本と北朝鮮の問題ではありますが、関係する国々がございますので、私としては、年来申し上げておりますように、周辺六カ国、話し合いを進めて、今やっております四カ国あるいは米朝、こういうものに加えて、積極的に北において、門戸を開くと言ってはいかがかと思いますが、国際社会の中でともに生きていくという体制ができるようにいたしていきたいと念願して、あらゆる手段を講じて努力をしていきたいと思います。  また、衆参両院の議員の先生方も、こういった関係では非常に現地においでになられて関係を深くいたしておりますから、そういった意味での議員外交にもこれから期待を寄せながら努力をしていきたい、こう考えております。
  212. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私ども、政党というよりも、政治家としてもさまざまなできる努力はしなければならないというふうに思います。直接仲よくすることも、直接やり合うことも非常に私は大事なことだというふうに思っております。  続きまして、総理に憲法観を一言伺いたい。  これは今、憲法調査常任委員会とか、いや、憲法調査委員会にしろとかいろいろな議論があるようでございます。私は直接かかわっておりませんが、ございまして、実は私は非常に懸念を持っているわけでございます。それに関連して、また中村法務大臣の発言の問題なども今国会の話題にもなっているわけでございます。  私はこう思います。憲法調査会、特に中心でございました中山太郎さん、尊敬する友人ですから、私のところにも何遍かお見えになりまして、種々の話を伺いましたし、趣意書も拝見をいたしました。  ただ、私はこう思うのですね。趣意書を拝見いたしますと、五十年間大きな変化があった、例えば地方分権、自治という問題もある、環境問題もある、国際構造の変化もある、いろいろなことが書かれておりました。検討が必要だ、議論が必要だということが書かれております。私は、そういうことについてのさまざまの重要な柱についての議論はまさに必要だと思います。ただ、だから憲法をということにつきましては、私は本末転倒だと思います。  例えば、憲法が悪いから地方自治が進まなかったのでしょうか。やはりさまざまの政府の政策をもっと自治を中心に変える。そういう方向の中で、例えば自治基本法というのがあってもいいでしょう。環境基本法があってもいいでしょう。あるいは安全保障か平和基本法があってもいいでしょう。いろいろな議論がある。というふうなことであって、憲法が悪かったから環境対策が、分権が進まなかったというのは、私はだれが考えても本末転倒だろうと思います。  憲法の問題を未来永久に議論するなとは私は申しません。いろいろなところで国の将来に関して議論はされたらいいでしょう。ただ、今政治家が、政党が、国会が議論すべきなのは、例えばアジア・ビジョン、あるいは財政、税制の将来像、福祉社会の構築のためにどう仕組みを変えるのか。あるいは、分権型社会のために、行革もございますから当然なりますけれども、そういうことを骨太にどう議論するのか。言うならば、憲法議論の前にビジョン論争をやるということが、今政治家の、また政党の課題ではないだろうか。私ども社民党は、議席は少のうございますけれども、そういう意味では知恵と、やはり政策の問題ですから、精いっぱい汗も絞って誠実にいい役割を果たしていきたいというふうに思っております。  したがいまして、法務大臣の御発言につきましても、取り消しました、謝りました、いや、憲法遵守条項、憲法のとおりやりますということを総理からも御答弁で伺いました。しかし、今必要なのは、たまたまミステークがありました、謝りましたではなくて、今申し上げたことも含めまして、毅然として国の将来を総理が述べる、これが大事なときではないだろうか。そういう気持ちでの憲法観、どうお考えでしょうか。
  213. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 言うまでもありませんが、憲法の基本的原則であります民主主義、平和主義あるいは国際協調主義、基本的人権の尊重の理念を高く評価し、この理念を将来にわたって堅持すべきものと考えております。  内閣総理大臣といたしましては、憲法第九十九条に基づきこの憲法を尊重し、擁護することは当然であり、従前同様、今後とも憲法を遵守していく所存でございまして、今お話にありました中村法務大臣の発言につきましても、真意を確かめた上、そうした内閣としての基本的憲法遵守の考え方に違背するものでないということがわかりましたので、私としてはこれを了承したところでございます。  今、国会に憲法調査会をつくるかどうかのお話もございました。  私は本会議で、参議院だったと思いますけれども、憲法の改正の発議というものは、国会がたしか三分の二でこれを国民投票にかける前提があるわけでございますので、そういった意味で、国会の問題としてお考えを持たれるということについては、これは国会の問題としてお考えいただきたいということを申し上げたわけでございます。私自身率直に申し上げれば、長きにわたって国会に籍を置かせていただきましたが、こうした問題を国会でお取り上げになられるということは本当に、かつてはタブー視されたといいますか、非常に取り上げることはありませんでした。昨今、新聞等拝見いたして、今、中山太郎先生のお話もございましたが、こうした点については各党でもいろいろ御論議があるようになられたということの事実は、やはり時代を経て、基本法たる我が国の憲法につきましても、いわゆる不磨の大典ということでなくて、いろいろ勉強されたいというお気持ちがあってかな、こう拝見させていただいておりますが、内閣総理大臣としては、今申し上げましたように、基本的に憲法の基本をしっかり守りながらその行政に誤りなきを期していきたい、こう考えております。
  214. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 政党間の議論の問題でございますから、今申し上げた気持ちで私どもは対応してまいりたいし、真剣な意見交換をしたいというふうに思っております。  次に、大蔵大臣に二つお伺いをいたします。  その前に、宮澤さんというお人柄の方には言いにくいのですが、一言申し上げたいのは、ハマの大魔神ということをおっしゃるのですが、私横浜市民で、ベイスターズが三十八年ぶりに優勝して沸き返ってみんな喜んでいるということからいたしますと、ちょっと実は残念と申しましょうか、迷惑と言ったら気の毒かもしれませんが、という気持ちでございます。やはりハマの大魔神というのは、あれだけ奮闘して三十八年ぶりに優勝をおさめて、そしてみんなが沸き返るように応援をして、ああよかったねという形で自然発生的に生まれまして、おさい銭を入れた人がたくさんいるので、この間残念ながら一応クローズをいたしましたが、こういうことでございまして、何か内閣として御苦労なさって今の予算案をつくったという経過でございましょうから、気持ちとしてはそう言いたいかもしれませんが、やはり今の予算案イコール、ハマの大魔神初番から登板ということは、あやかりたいとおっしゃるのはわかるのですが、やはりそうネーミングされるのはちょっといかがかという地元のファンの一員としての気持ちは申し上げておきたいというふうに思います。  それは別にいたしまして、二つ大蔵大臣にお伺いをしたい。  一つは、展望の問題がございます。  財政構造改革法の凍結のことで、大蔵大臣とも委員会でいろいろと議論をさせていただきました。そのときに、私は率直に申しまして、橋本内閣時代、与党の一員としてさまざまな反省を真剣に持ちました。その上に立って、今はそういう措置をとらなければなりません。しかし、平成十一年度予算が終わるときには財政危機構造は極限状態になるでありましょう。平成十二年に同じ予算案を同じ手法で組めるか、これは国の破滅につながるということだと思います。  そうなりますと、本当の意味での構造改革というものをどうしていくのか。橋本前首相は構造改革への大きな一歩であると言われましたが、私は、正直言って一歩にすぎないという反省の気持ちを持っております。やはり公共事業、福祉その他含めまして財政構造自体を本当に構造を変えなくちゃならぬ、大事業だということになると思います。  宮澤さんは大変御正直な御答弁で、昨日テレビで伺っておりましたら、せめて二%安定成長でもならなければ次の絵はかけない、本音かもしれませんが、そんな気持ちをおっしゃいました。そういう気持ちになるかもしれませんが、政治家としては、政府としてはそれは許されないことだろうと思います。  あのときにも申し上げたんですが、次どうするのか、そのためにはやはりさまざまな努力をしなくちゃなりません。地方財政の危機もあります。今までの国と地方との関係を根本的に変える大作業をしなくちゃならぬ。福祉の問題があります。どうやって福祉型の社会にするのかという工夫をしなければならない。税制の問題もあります。今の問題でも、もっと二十一世紀型の国民負担と社会をどうするのかという議論をしなくちゃならぬ。本当の意味での構造改革をしなくちゃならぬ。  不断に勉強しながら、次に向けてこうしたい、こういう努力をします、こういう勉強をします、社会でも各党でもこういう議論をしていこうではないかというのが今果たすべき役割。先が明るくなる、先の展望と確信がなければ、景気にも経済にも個人の御商売にも元気が出るはずがないのですね。企画庁長官がよくお書きになる「今日とちがう明日」じゃないけれども、先々の責任を真剣に果たされるべきであろうということが一つであります。  もう一つは、税制の問題でも同じでございまして、私どもは、減税法案と申されますが、年収七百九十三万以上は増税になる。大蔵大臣おっしゃるには、去年は特別減税だったんですから、あれが恒久にあると思って今度減ると思っちゃ困りますよということを言われました。私は、そういうようなこともあるし、将来の日本の所得税制のブラケットなどをどうするのか、負担とサービスをどうするのかという議論がございます。  しかし、今、異常なといいますか、あらゆる手段を講じて何とかことしはプラス経済にしよう、私もプラス経済にしなくちゃならぬと思う、ことしは。というために異常な手段を講ずるということですから、そのために、今の理屈でおっしゃって、多くの方々が去年よりは重くなっちゃったな、もう買い物やめようとかいう雰囲気になるというのは政策判断の問題としておかしいのではないだろうかと思いますが、時間ございませんので、もう一問ちょっと質問したいと思いますので、簡単にお答えいただきたい。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初の問題は、あやかりたいという一念で申しましたので、他意はございません。  財政構造改革法につきましては、伊藤委員もいろいろな意味でお知恵をおかしくださいまして、それを凍結するということになりましたことは、せっかくの御努力に対してもある意味で申しわけないという感じがしておりますけれども、何分にもこういう財政状態になりまして、平成十一年度の税収見積もりは昭和六十二年よりも低うございます。減税はございましたが、十年余り税収が逆転をしてしまうような状況で、それはマイナス成長が二年も続きますとその都度歳入欠陥が出ましたので、そういうような状況でございますから、今後を展望するにも、税収そのものの展望のしようがないというのが実際でございます。  したがいまして、将来財政構造改革を考えます一つの前提は、やはり我が国の経済がプラスの成長を始めて税収が伸び始めるということでないとなかなか考えにくいということから、例えば二%というようなことを申し上げました。  しかし、もとより、おっしゃいますように、行財政の改革であるとか地方財政であるとか福祉であるとかいう問題は、現在、現にある問題でございますから、あのときにも御議論になりましたようなことがやはり大変にプラスになっておりまして、いろいろに検討をし、また議論がされておるところでございます。  税制につきましても、けさほども御議論がございまして、昨年ほどの減税がかなりのたくさんの方々に及ばなかったということは残念なことだと思いますけれども、ただ、やはり累進ということは将来に向かって捨ててはならない考えでございますから、定額減税というものは定率にすべきであろう、あるいは課税最低限が四百九十万というようなことは、将来の日本にとって決して維持し得ることではないといったような気持ちであったわけでございます。
  216. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、いろいろな意味で今度の予算もよりよき改善をすべきであろうというふうに思っておりますし、与野党というよりも、野党の諸君ともできるだけやはり努力をいたしまして、具体的ないい改善がなされるような努力はぜひしていきたいものだというふうに思っております。  最後に一つだけ、これは厚生大臣にお伺いいたします。  時間がございませんから簡単に申しますけれども、一つは介護保険の問題でございます。  一昨年の夏、当時菅さんが厚生大臣でしたか、非常に難航いたしまして、これは与党でやらなくちゃならぬということで、一夏返上いたしまして、全国各ブロック、与党の政調会長三人走り回りまして説得をした記憶がございます。何とかスタートさせたいと思います。そういう中でも、多くの人々の切なる切実な声を私どもは肌身にしみて伺いました。いきなり完全なことにはいかぬかもしらぬ、しかし、何かやはりスタートをして改善を積み上げていく、多くの人の声を本当に伺いました。  率直に申しまして、これはなんですが、私個人もそうでございまして、最愛の妻が七年間意識がない状態で倒れておりまして、もうみとりながら仕事をさせていただいております。個人のつらいことを申し上げようとは思いません。病院に行って、いろいろな人と、しょっちゅう参りますから、伺います。隣のベッドの人が、若い御主人が事故で意識を失いました。若い奥さんがベッドのそばでしくしく夜になると泣いております。奥さん、病人のそばで泣いたり悲しんでちゃだめですよ、意識が戻るように、元気になるにはどうしたらいいか、家族の言葉がいいというので、小学校の小さな子供の歌のテープを聞かせましょうというようなことをいたしましたが、本当に、これは社会が、そういう方々に光を当てるように努力をするのが政治家の使命だ、私はいつもそう思います。  そういう意味で申しますと、厚生省、真剣な努力をされておることはよくわかっております。しかし、さらなる次々と努力を重ねる真剣さを持っていただきたい。例えば、ゴールドプランの完成その他がございますけれども、次のスーパーゴールドプランの提案をするとかいうぐらいの迫力を持っておやりいただきたい。  年金の問題も同じでございます。次の世代の人がコップの半分水もなくなると困りますから、次の世代の人が、おれたちも、こういう制度になって将来があるんだ、明るくなるんだという形にしなければならぬ。そのためには、財政構造も、あるいは五年前の国会決議、附帯決議がございますから、そういうようなことも勇断を持ってやるというのが、今求められている日本の社会ではないだろうか。  時間になって恐縮でございますが、御答弁いただきまして、質問を終わりたいと思います。
  217. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 まず、介護保険でございますが、委員の御指摘のように、一昨年法案が成立いたしまして、厚生省としては、何としてもこれを来年の四月から実施に移したいという気持ちで今準備中でございます。  詳細は省かせていただきますけれども、いろいろシステムの上で懸念すべき問題もございます。認定をどうするか、あるいは保険者である町村の財政はどうなのか、あるいは負担はどうなのか、資力に応じて保険料負担、差等を設けるのか、いろいろな問題がございます。しかし、私どもは、正しくこれを認識していただいて、そして、理解をしていただくと同時に、不備なものがあれば十分これを受けとめて、まだ一年ちょっとございますから、その間に十分詰めていきたいということでございます。  一例をもって申しますれば、介護につきましては、ほとんどの市町村で、実験的に十八万人を対象にして実施もいたしました。それに基づきまして、不満等が二千件くらい寄せられておりますから、それに基づく改善をやるとか、そういう具体的な、やはり国民の皆さんの声に耳を傾けながら、もう一年の間にそれを完成していきたい、こういうのが一つです。  それから、年金の方でございますけれども、今委員がおっしゃられたように、私どもは、二十一世紀に向けてやはり、安心、安定できる見通しを与えるということが極めて重要だと考えておりまして、この年金問題は、御承知のように五年ごとに財政再計算で対応することになっておりまして、十一年はその年金財政の再計算期で、検討を迫られています。  その第一は、少子高齢化のより進んだ形、それから経済低成長ということでございまして、これらを踏まえながら、私どもとしては、なるべく保険料の値上げは抑えながら、しかし、給付も、現在の給付をカットするようなことはしない、あるいは賃金スライドでやるというようなことを中心に考えて、二〇二五年までにおける中期的な試算を前提に、今鋭意努力しているところでございます。  社民党さんのプロジェクトチームの九九年年金案というのも承知しております。非常に共鳴できるところもございます。例えば、今の二階建て制は維持すべきであるというのは、私どももそう考えておりますし、保険料の基礎になる報酬を総報酬制にするということも現実的な提案だと思いますが、そのほか、完全税方式を目指して当面二分の一にするということは、私どもは、完全税方式は批判があります。  しかし、私どもの気持ちとしては、国民年金法の改正に書き込まれておりますように、二分の一程度にすることは、これは妥当な選択かなと思っておりますが、ただ、それには二兆二千億くらい平成十一年でかかりますし、来年以降はその額が、規模が、より大きくなってはね返ってくるという問題がございますから、これは中期的な課題として、税の財源の徴収のめど、その他もつけながら対応していきたい、こう考えております。
  218. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 終わります。ありがとうございました。
  219. 中山正暉

    中山委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十六分散会